1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十二年十二月十七日(月曜日)
午前十時十五分開議
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議事日程 第五號 大正十二年十二月十七日
午前十時開議
第一 大正十二年勅令第四百十二號(承諾を求むる件) 會議
第二 大正十二年勅令第四百九號(承諾を求むる件) 會議(委員長報告)
第三 大正十二年勅令第四百三號(承諾を求むる件) 會議(委員長報告)
第四 大正十二年勅令第四百七十一號(承諾を求むる件) 會議(委員長報告)
第五 大正十二年勅令第四百七十五號(承諾を求むる件) 會議(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
一昨十五日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
非常徵發令(承諾ヲ求ムル件)特別委員會
委員長伯爵寺島誠一郞君副委員長服部-三君
大正十二年勅令第四百九號(承諾ヲ求ムル件)外一件特別委員會
委員長伯爵副島道正君副委員長富谷鉎太郞君
大正十二年勅令第四百七十一號(承諾ヲ求ムル件)外一件特別委員會
委員長伯爵松浦厚君副委員長菅原通敬君
同日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十二年勅令第四百九號(承諾ヲ求ムル件可決報告書
大正十二年勅令第四百三號(承諾ヲ求ムル件)可決報告書
大正十二年勅令第四百七十一號(承諾ヲ求ムル件)可決報告書
大正十二年勅令第四百七十五號(承諾ヲ求ムル件)可決報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、內閣總理大臣山本
伯爵
〔國務大臣伯爵山本權兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=2
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003・山本權兵衞
○國務大臣(伯爵山本權兵衞君) 上山君ヨリノ御質問ニ對シマシテ、誤解ナ
キコトヲ期スルガ爲ニ、茲ニ一言シテ置キマス、一ハ詔書ニハ營利事業ヲ營
ム者ノ個人タルト會社タルトヲ問ハズ、專ラ私利ヲ圖リ、罹災民衆ノ利益ヲ
顧慮セザルガ如キ措置ニ出デザルベキコトヲ一般ニ仰セラレタルモノト拜察
イタシマス、二、實際問題タル見舞金トカ、保險金ノ一部支拂トカ、具體的
ノコトハ固ヨリ詔書ノ御趣旨トハ何等關渉スルモノデナイト存ジマス、三、
政府ハ火災保險會社ニ對シテハ唯犧牲的精神ヲ發揮スベキコトヲ勸〓シタル
ニ過ギマセヌ、固ヨリ保險契約ヲ原因トスル支拂ヲ爲スベキコトヲ、保險會
社ニ强要スルノ趣旨ハ毛頭アリマセヌ、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=3
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004・上山滿之進
○上山滿之進君 唯今、總理大臣ノ明快ナル御答辯ニ依リマシテ、九月十二
日ノ詔勅ノ仰言葉ノ中ニハ保險金支拂トカ、見舞金支拂ト云フヤウナコトハ
一切包含シテ居ナイノダト云フコトガ明カニナリマシタ、私ハ非常ニ滿足ヲ
致スノデアリマス、唯、此詔勅ニ引續イテ總理大臣ノ御出シニナリマシタ〓
諭ノ中ニハ明瞭ニ保險金或ハ見舞金支拂ノコトガ書イテアリマス、之ガ爲ニ
世間ハ御詔勅ノ中ニ矢張リ會社ニ對シテ見舞金カ何カ、兎モ角モ拂ヘト云フ
コトノ聖旨ガ含マレテ居ルヤウナ誤解ヲ起シタノデアリマス、此點ハ甚ダ私
遺憾ト致スノデアリマス、政治上ノ問題ニスレバ可ナリ重大デアルヤウニ存
ジマスガ、私ハ唯今ノ場合ニ於テ、政治上ノ責任ニ對シテ云爲スルコトハ適
當デナイト心得マスカラ、此點ニ付テハ重ネテ質問ヲ致シマセヌ、唯、私ノ
御尋ネ致シマシタ意味ハ、御詔勅ノ御聖旨ノアラセラレル所ヲ明カニシ、皇
室ノ至仁至愛デ一視同仁デアラセラレル所ヲ、我〓一般國民ハ能ク了解ヲ致
シタイ、些カノ誤解ノ無イヤウニシタイト云フコトガ趣旨デアリマシタノデ、
政治上ノ問題ニ付テハ唯今申シマセヌ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 上山君ニ伺ッテ見タク存ジマス、是カラ上山君ノ
質疑ヲ許サウト思ヒマスガ、農商務大臣ガマダ出席セラレマセヌガ、農商務
次官ハ出席シテ居ラレマス、農商務次官デ御滿足デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=5
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006・上山滿之進
○上山滿之進君 私ハ政府側ノ御答辯ヲナサル方ノドナタデアルコトヲ要求
スルコトノ意味ハ毛頭ゴザイマセヌ、ドナタデモ宜シウゴザイマスガ、唯
私ノ伺ヒタイノハ、事務的ノ質問デナイノデアリマス、政府ノ方針、覺悟ト
云フヤウナ點ニ付テ伺フンデアリマスカラ、御答辯ナサル農商務次官ノ方デ
ハ御不便デナイカト思ヒマス、殊ニ現農商務次官ハ極ク最近ニ御就任ニナッタ
ノデ、此問題ノ經過ニ付テ御承知デハアリマセウガ、御自分デ其局ニ當ッテ
居ラレナカッタノデ、一層御不便ト思ヒマス、私ノ希望ヲ御尋ネ下サルナラ
バ、農商務大臣御出席ノ上デ質問イタシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) サウ云フ御希望ナラバ暫ク上山君ノハ後ニ廻ハシ
マシテ、勝田君ノ質疑ヲ許シマセウ、勝田主計君
〔勝田主計君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=7
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008・勝田主計
○勝田主計君 私ハ質問ノ
〔副議長侯爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
通〓ヲ致シテ置キマシタガ、皆樣ノ御承知ノ如クニ既ニ多數ノ諸賢ヨリ御質
問ガゴザイマシテ、之ニ對シテ政府ノ御答辯モゴザイマシタ、此御質問竝ニ
御答辯ニ依リマシテ、私共ノ疑惑ト致シテ居ル所モ大分了解ヲ致シタンデア
リマス、併ナガラ私ノ承ハッテ居ル所ヲ以テシマスルト、御質問ニナツタ方〓
ノ一々内容ヲ拜見スルト、質問スベキ事柄ハ殆ド質問サレテ居ルヤウデアリ
やく、併ナガラ政府ノ御答辯ヲ拜聽ヲ致シテ居リマスト、此質問ニ對シテ明
噺ナル御答辯ガ無イ廉ガ大變ニ多イカノ如クニ私ハ拜聽イタシタンデアリマ
ス、ソレ故ニ或ハ私ノ申上ゲマスルコトガ、質問ト致シテハ重複ヲ致シテ居
ルヤウナコトガアリハセナイカ、斯ウ云フ懸念ヲ持ッテ居リマスカラ、此點
ニ付キマシテハ皆樣ノドウカ御諒承ヲ願ッテ置キタイノデアリマスル、私ノ
質問ハ極メテ常識的ノ質問デゴザイマシテ、又左樣ニ澤山ノ質問デハゴザイ
マセヌ、先ヅ第一ニ私ノ問ハムト欲スル所ノモノハ、現政府ノ誠意ト云フコ
トニ付テデアリマス、今日國家多難ノ場合ニ山本首相ハ皆樣ノ御承知ノ如ク
ニ誠意ヲ以テ大政變理ノ衝ニ御當リニナッタノデアリマス、凡ソ政治家ガ此
誠意ヲ要スルコトハ、是レ殆ド說明ヲ要セナイコトデアル、併ナガラ殊ニ此
誠意ノ必要ト云フコトハ、斯ノ如キ國家多難ノ際ニ、益〓是ガ必要ニ相成ルノ
デ、私山本伯ガ此誠意ヲ以テ御立チニナルト云フコトニ付テハ滿腔ノ敬意
ヲ表シ、又非常ニ山本伯ニ向ッテ期待ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ
山本伯御就任以來僅ニ百餘日デアリマスガ、此間ニ於テ遺憾ナガラ山本伯ノ
誠意ニ對スル疑惑、是ガ澎湃トシテ世間ニ起ッテ居ルノデアリマス、是ハ事
實デアリマス、私ハ誠ニ之ヲ遺憾トスルノデアル、先ヅ復興ノ問題ニ付テ申
シテ見マシテモ、先日、山本首相ハ此壇上ニ於テ震災後直チニ山本首相ハ上
野ノ山ニ御上ガリニナッテ、東京市ヲ瞰下サレテ感慨無限、其際ニ此復興
ニ關スル大體ノ直覺的ノ閃キヲ得ラレタ、併ナガラ段々其後今日ノ案ヲ提出
サレルマデニハ紆餘曲折ヲ經テ、當初上野ノ山ノ上デ御感ジニナッタ所ノ其
直覺的閃キヲ實行スルコトハ出來ナカッタト云フガ如キ御物語ガ此席上ニ於
テアッタンデアリマス、此婉曲ナル山本首相ノ御物語ノ其裏面ニ付キマシテ
ハ、藤村男爵アタリカラ段々御話ニナッタヤウデアリマスルガ、私ハ事實如
何ト云フコトハ能ク了解イタサヌ、併ナガラ復興ノ計畫ニ致シマシテモ、兎
ニ角當初御考ヘニナッテ、此處デドウシテモ國策上行カナケレバナラヌ、斯
ウ御考ヘニナッタコトト云フモノハドウ云フ關係デアリマスルカ、兎ニ角、
好イ言葉デ言ヘバ紆餘曲折ノ結果ト致シテ、山本首相自身ニモ不滿ナル成案
ヲ得ラレタデハナイカト云フヤウナ感想ガ致スノデアリマス、此點ニ付テハ
世間ガ非常ニ疑惑ヲ懷イテ居ルノデアリマス、又此內閣ハ皆樣モ御承知ノ如
クニ、普選問題ト云フモノヲ以テ大切ナル問題トシテ、政綱ノ一ニ揭ゲラレ
テ居ルノデアリマス、此普選問題ニ付キマシテモ、當初宣傳サレマシタ所ノ
コトハドウデアリマスルカ、普選、卽チ殆ド有ラユル制限ヲ撤廢シタル普
選ヲ茲ニ行フ、而カモ其行フコトハ卽行デアル、直チニ之ヲ行フノデアル、
何ゾ其理想ノ高遠ニシテ、其元氣ノ旺盛ナル、國民ハ此宣言ニ對シテ殆ド目
ヲ張リ耳ヲ聳ヤカシテカラニ、寧ロ驚イタノデアリマス、然ルニ其後、私共ノ
見聞イタシマシテ居ル所ニ依リマスルト云フト、又違ッタル宣傳ガアル、普
選ニアラズ、是ハ選擧權ノ擴張ト云フコトダ、卽行ニアラズ、徐々ニ之ヲ行
フト云フコトデアル、斯ウ云フヤウナコト、玆ニ於テ國民ノ多數ハ非常ニ迷
ウテ居ルノデアリマス、一體何ヲ爲サレルノデアルカ、斯ウ云フ疑惑ガ大イ
ニ起ッテ居ル、ソレカラ今囘ノ臨時議會ニ提出ニナッテ居リマスル火保問題、
··火災保險問題、之ニ付キマシテモ最初政府ノ御意向ハ、內閣ノ〓諭ヲ出
サレ、保險會社ト云フモノニ義俠的ノ公憤ヲ誘發シテ、或ハ詔勅ヲ其意味ニ
一般ニ解セシムルガ如キ勢ヲ以テ御進ミニナッタト云フヤウナ形勢ガアル、
サウ云フコトデアレバ、之ヲ徹底サレタラ宜イノデアル、政府ガ積極的ニ御
ヤリニナッタラ宜イ、斯フ云フ風ニ國民ノ一部ハ考ヘテ居ル、所ガデス、最
近ニ至ッテ農商務大臣等ノ御說明ニ依ルト、政府ハ告諭ハ出シタ、出シタガ、
併シ是ハ要スルニ自ラ進ンデ德義上ヤッテ來ルノヲ待ツベキコトデアルカラ
シテ、保險會社ガ申出ルマデ悠然トシテ待ツ申出デヲ受ケテ初メテ之ト折衝
ヲシテ、今日聲言シテ初メテ解決ヲ得タノデアル、斯ウ云フヤウナ農商務大臣
ノ御考ラシイノデアル、是等モ何ゾ其事ノ徹底セザルヤ、當初ハ大イニ此保險
金ヲ拂ハスベシト云フヤウナ勢ヲ以テ、脫兎ノ如クニ御進ミニナルカト思へ
バ、今度ハ如何ナル理由デアリマスルカ、兎ニ角、處女ノ如クニ、極メテ受
動的ノ働キヲサレル、斯樣ナコトニ向ッテモ國民ハ非常ナ疑惑ヲ懷イテ居ル
ノデアリマス、非常ナ疑惑ヲ懷イテ居ル、併シ私ト致シマシテハ、山本首相
ノ御性格上、如何ニモ誠意誠心ノ御方デアッテ、斯樣ナル國民ノ疑惑ト云フ
モノハ全ク事實ニ根柢セザル一種ノ疑惑デアッテ、山本伯ノ誠意誠心ト云フ
モノハ徹底イタシタモノデアル、ト云フコトニ信ジタイノデアリマス、伯ノ
御人格上カラ私ハ左樣ニ信ジタイノデアリマス、私ノ申スマデモナク、至誠
ナルモノハ徹底デナケレバナラヌ、殊ニ此際······國國多難ノ際ニ當ッテ至誠
ヲ苟モ標榜スルナレバ、眞面目ナル至誠デナケレバナラヌト私ハ思フノデア
ル、卽チ國策ノ上ニ立脚シテ勇往邁進、策ニ流レズ、略ニ陷ラズ、所信ヲ徹
底セラルル、此精神ガ卽チ至誠デアラウト思フ、又斯樣ナ國家多難ノ際ニ當
リマシテ國民ガ伯ニ要求シテ居ル所ト云フモノハ、恐ラクハ此點ニ在ルモノ
デアラウト私ハ思フ、然ルニ世間ニハ先刻申シマシタ如キ疑惑ガアル、マダ
疑惑ハ例證ヲ致シマスレバ澤山アリマスルガ、兎ニ角二三ノ例ヲ申シマシテ
モ疑惑ガアル、私ハ最モ之ヲ遺憾ニ感ズルノデアリマス、山本首相ノ內閣
ニ對シテ大イニ期待スルガ爲ニ、非常ナル遺憾ヲ私ハ持ッテ居ルノデアリマ
ス、故ニ斯樣ナル事柄ノ疑惑ガアル以上ハ、是ハ政府ガ議會ニ向ッテ法律案、
豫算其他ヲ提案イタシテ居ルノデアリマスガ、之ヲ私共ガ判斷ヲ致ス上ニ於
テ〓妙ナル、而カモ有力ナル心理的ノ作用ヲ來タスモノデアリマスルカラシ
テ、先ヅ第一ニ私ハ山本伯ノ標榜ヲサレテ居ル所ノ誠意誠心、洵ニ結構ナコ
トデアル、併ナガラ之ニ對シテ世間ニ疑惑ガアル、斯樣ナコトヲ申上ゲテ、
山本伯ノ御所見ヲ伺ヒタイ、如何ニモ漠然タル問デアリマスルガ、是ハ實ニ
重大ナルコトデアラウト思ヒマスルカラ、第一ニ私ハ之ヲ御伺ヒ致シタイ、
次ニハ復興問題ノ大體ニ於テ御伺ヒ致シタイノデアリマス、此御伺ヒ致シタ
イ事柄ハ藜村男爵アタリカラ既ニ御質問ニナッテ居ルコトデアル、併ナガラ
多少私ノ伺ヒ方ガ違フノト、其藤村男爵ノ御質問ニナッタ點ニ對シテ政府ノ
御答辯ガ甚ダ不明瞭デアッタト云フコトヲ私ハ遺憾トスル、ソレ故ニ第二ノ問
題ヲ御尋ヲ致シタイト思フノデアル、先日來、政府ノ復興ニ對スル御答辯等
ヲ段々拜承イタシテ見マスルト、帝都ノ復興ハ卽チ帝國ノ復興ナリ、斯ウ云
フコトヲ仰ッシヤッテ居ルノデアリマス、私共モ當ニ然リ、政府ノ斯樣ニ御考
ヘニナッテ居ルコトト云フモノハ當ヲ得テ居ル、斯ウ考ヘルノデアリマス、
而シテ動モスレバ此帝都ノ復興ハ帝國ノ復興ナリト云フ意味ヲ斯樣ニ解釋サ
レルヤウナ御答辯ガアルノデアリマス、卽チ東京或ハ橫濱ノ都市計畫ヲス
レバ、ソレガ卽チ帝國ノ復興デアルト云フヤウナ意味ニ聞エルヤウナ節ガ多
イノデアリマス、是ハ私等ノ甚ダ贊成セザル所デアル、私等ハ寧ロ都市計畫
モ都市計畫デアルガ、此際、帝國ハ諸般ニ亙リ非常ナル艱難ナ境遇ニ立ッテ
居ルノデアルカラシテ、諸般ノコトニ互ッテ、卽チ帝國復興ト云フコトヲ主
眼トシテ、之ニ對スル國策、經綸ヲ立テテ、サウシテ此帝都ノ復興ト云フコ
トガ初メテ出來ル、斯ウ私ハ考ヘル、建物ノコトモ其一部分デアリマセウ、併
ナガラ此建物ガ主ト云フ譯デハナイ、是ハ恐ラク政府ノ御答辯ガ足リナカッ
タノデ、政府ノ御趣意モ私共ノ考ヘテ居ルコトト同ジコトデアラウト思フノ
デアリマス、斯ク帝都ノ復興ト云フコトヲ考ヘテ來マスト、何ガ此帝都復興
ノ根本義デアルカト言ヒマスレバ、正ニ是ハ藤村男爵ノ御述ベニナッタ如ク
ニ、所謂言葉ハ甚ダ學問的デアリマセヌガ、精神復興、經濟復興、此二者ガ
卽チ根本義ト見ナケレバナラヌノデアリマス、此精神復興ニ付キマシテハ是
ハ既ニ御詔勅モ出テ居ルコトデアリマスルシ、色〓諸賢カラモ御話ガアッタ
コトデアリマスカラ、私ハ深ク此場合ニハ申上ゲマセヌガ、殊ニ申上ゲテ見
タイノハ、經濟復興ト云フコトデアルノデアリマス、此經濟復興ト云フコト
ニ付テ、或場合ニ政府當局方ガ、斯樣ナコトヲ言ハレテ居ル、例ヘバ東京市
ヲ建造スル、橫濱市ヲ建造スル、サウスルト之ニ對シテ數億ノ金ヲ費ス、是
ガ民間ニ散布スル、サウスレバ民間ノ景氣モ付イテ、是ガ經濟ノ復興ニナル
ンダト云フヤウナコトモ言ハレテ居ルガ如ク私ハ見聞シテ居ルノデアリマ
ス、或ハ左樣デアリマセウ、是モ一部デアル、一部デアリマスガ、私共ノ經
濟復興ト稱スルモノハ左樣ナ狭小ナ範圍ノモノデハナイ、卽チ帝國復興ト云
フ意味ニ於テ、此意味ニ於テ經濟復興ト云フコトヲ私等ハ絕叫ヲ致シタイノ
デアリマス、之ヲ細カニ說明ヲ致スト云フコトハ甚ダ時間ヲ潰スコトデアリ
マスカラ、申シマセヌガ、兎ニ角、此經濟復興ノ意義ハ財政ノ整理ナリ、或
ハ金融政策、或ハ產業ノ政策、或ハ交通ノ政策、或ハ貯蓄ノ政策、或ハ海外
ニ對スル所ノ貿易、若クハ經濟ノ發展ノ政策、其他各種ノ問題ガ之ニ含マレ
テ居ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、是等ノ各種ノ問題ニ付テ經綸政
策ヲ立テテ進ンデコソ、初メテ此帝都ノ復興モ出來ルノデアル、是ガ無クン
バ、此帝都ノ復興ト云フモノハ出來ヤシナイ、復興ノ費用ガ大ナリト云ヒ、
或ハ復興ノ費用ガ小ナリト云フ、小モ大モ私共ノ考カラ見マスレバ、右ノ如
キ經濟復興ノ政策ガ玆ニ確立ヲ致スナラバ、決シテ大デモ差支ナイ、併ナガ
ラ玆ニ何等ノ經濟政策モ確定ヲセナイト云フコトデアレバ、今日ノ此提出サ
レテ居ルモノモ尙ホ過大ナリトセザルヲ得ナイヤウナ結果ニナッテ來ルダラ
ウト思フノデアリマス、斯樣ナ意義ニ於テ私ハ經濟復興ト云フコトヲ唱道ス
ル、卽チ之ヲ行ウテ、初メテ帝國ノ復興ト云フコトガ出來ル、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマスガ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
斯樣ナル觀察ヲ以テ今期議會ニ政府ガ提出サレテ居リマスル所ノ法律案、或
ハ豫算案、或ハ總理大臣其他ノ內閣諸公ガ當議席ニ於テ御話ニナッタ事柄等
ヲ綜合イタシテ見マスルノニ、殆ド其片鱗ダモ認メルコトガ出來ナイ、是ハ
事實デアリマス、是ハ事實デアリマスカラシテ、內閣諸公ニ於カレテモ御否
定ニナルマイト思フノデアリマス、併ナガラ私ハ此內閣ガ大震災、大火災ノ
場合ニ御成立ニナッテ、是等ノ應急ノ仕事ニ對シテ非常ニ繁忙ヲ極メラレ、
頭腦ヲ其方ニ御取ラレニナッテ、先ヅ其事ニ遑ナクシテ、他ノ計畫ヲ立テル
遑ガナカッタト云フヤウナコトニ付テハ、是ハ大ニ御同情ヲ致スノデアリマ
ス、併ナガラ一面ニ、几ソ內閣ヲ組織シテ大政燮理ノ任ニ當ラムト欲スル者
ハ平素是等ノ計畫ガ無イト云フコトハ私ハナイト思フ、況ヤ此大震大火災ガ
無イニ致シマシテモ其以前ニ於ケル日本ノ狀態ハ既ニ此經濟ノ復興、精神
ノ復興等ヲ必要トスル時機ニ、モウ到著シテ居ッタンデアル、此場合ヲ見テ
御立チニナッタ所ノ山本首相ニハ何等カノ經綸ト云フモノガ玆ニ無ケレバナ
ラヌト私思フノデアリマス、ソレ故ニ此事ニ付キマシテ藤村男爵ヨリ御尋ネ
ニナリマシタガ、何等ノ御答辯モ無カッタヤウデアリマス、ソコデ私ハ御尋
ヲ致シタイノハ斯樣ナ場合ニ具體的ニ事柄ヲ一々御列擧ニナッテ、御說明
ニナルト云フコトハ、是ハ不可能デアラウト思フノデアリマスガ、併シ是カ
ラ帝國ノ復興ニハ俺ハ斯樣ナ精神デ、斯樣ナ方法デ以テ行クノデアルト云フ
位ナ大體ノ事柄ハ私ハ御說明ニナリ、御示シニナルト云フコトガ出來得ルコ
トデアッテ、又是ハ今日我ガ國民ノ考ヲ安定セシムルノ方法デハナカラウカ
ト思フノデアリマス、ソレ故ニ私ハ此問題ニ付キマシテハ旣ニ藤村男爵ヨリ
御尋ガアリマシタガ、重ネテ總理大臣ガ此經濟復興等ニ對スル大體ノ御經綸
ハドウ云フコトデアルカト云フコトヲ我〓ニ〓ヘテ貰ヒタイ、是ガ第二ノ質
問デアリマス、第三ノ質問ハ復興計畫ノ機關ニ對スル所ノ質問デアリマス、
是ハ私ハ山本首相ガ上野ノ山ニ御登リニナッタ時ノ感想ヲ御物語リニナリマ
シタガ、丁度左樣ナコトヲ申スヤウニ當ルカモ知レマセヌガ、本員ハ此大震
災ガアッタ曉ニ復興ノ機關ニ付テ、チヨット斯樣ニ考ヘテ見タンデス、是ハ
二ツノ方法ガアリハシナイカ、第一ハ極メテ簡單ナ方法デアル、既ニ政府ニ
於テハ多年都市計畫ノ調査ヲ致サレテ居ル、又政府ノミナラズ、公共團體
ニ於テモ是等ノ調査ヲ致サレテ居ル、大體ニ於テモモウ其輪廓ハ出來テ居
ル、斯ウ私ハ思フ、サウ致セバデス、之ヲ速ニ御發表ニナッテ段々デス、保
險問題ヲ解決スルナリ、或ハ其他金融ノ方法ヲ十分ニ付ケルナリ、或ハ材料
其他ノモノノ運搬等ヲ十分ニ付ケラレルナリシテ、私ハモウ一切皆市民ノ
ヤルニ委シテ置カレル、是ガ一ツノ方法デハナカッタラウカ、是ナラバデ
ス、餘リエライ官府モ作ラズシテ出來得タノデナイカ、斯ウ一ツ考ヘル是
ガ一ツノ方法デス、ソレカラ他ノ方法ハ先刻、私ノ申上ゲマシタ如クニ、帝
都ハ此震災ナクトモ既ニ各般ノ事情ニ於テ大ナル改善、或ハ言葉ヲ强メテ
申セバ改造ヲ要スル所ノ時期ニ到來シテ居ッタノデアル、之ニ今囘ノ大震災
大火災ト云フモノガ來テ其必要ト云フモノヲ倍加シテ來タノデアル、斯樣
ナ場合ニ立至リマシタノデアリマスルカラシテ、玆ニ大ナル諸般ニ亙ル改善
改良ヲヤッテ全ク帝都復興ノ實ヲ擧ゲル、斯ウ云フコトガ必要カモ知レヌ、
サウスレバデス、左樣ナコトヲ實行シ得ルダケノ特殊ノ機關ヲ設ケテ、此
特殊ノ機關ヲシテ之ヲ實行セシムルト云フコトモ亦一ツノ方法デアラウト、
私ハ考ヘタノデアリマス、而シテ發表ヲ致サレルノヲ見マスルト、御承知
ノ如クニ復興審議會ナルモノガ出來ル、實ニ絕大ナル機關デアル、復興院
ナルモノガ出來ル、是モ實ニ規模壯大ナル機關デアル、又復興評議員ナドト
云フモノガ數十名モ出來ル、參與ガ若干出來ル、實ニ其陣立ト云フモノハ
堂々トシテ······是ハ私ハ考ヘタノデス、是ハ私共ノ考ヘテ居ッタ第二ノ案ヲ
御採リニナッタノデハナイカ、是モ一ツノ意義ノアルコトデアルト、斯ウ思
ウテ居ッタノデアリマス、然ルニ復興院ノ官制ト云フモノヲ拜讀イタシテ見
マスルト云フト、都市計畫ヲナシ、都市計畫ヲ遂行スルノ機關ニ過ギナイ
ノデアル、私ハ實ハ失望イタシマシタ、是ハモウ少シ意義ノアル機關デアソ
テ斯樣ナル陣立ガ出來タト云フコトハ誠ニ結構デアラウト思ッタ、所ガ幾ラ
讀ミ返シテ見テモ、ソレ以外ニ何ニモナイ、是ニハ私ハ非常ニ失望イタシタ
ノデアリマス、ソレデ斯樣ナコトデアリマスルト、世間ニ於テ復興院ノ機
關ガ厖大ナリト云フヤウナコトヲ申シテモデス、ドウモ辯明ノ餘地ガナイ
デハナイカト云フヤウナ感ガ致サレタノデアリマス、復興院總裁ハ此問題
ガ、······確カ是モ藤村男爵ノ御質問デアッタト思ヒマスルガ、此問題ニ對
シテ御辯明ニナッテ居ル所ハ復興院ノ仕事ト云フモノモ段々是カラ大キクナ
ルノデアル、ソレ故ニ是ダケノ陣立ト云フモノガ要ルノデアル、是ダケノ御
說明デアル、此說明デハデス、ナカ〓〓今日一般ニ亙ッテ居ル復興院ガ厖大
ナリトスル所ノ其頭ヲ向變ヘル譯ニハ是ハイカヌト思フ、モウ少シ茲ニ何カ
理由ガナケレバイクマイ、斯樣ニ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、玆ニ於テ私ハ
甚ダ是ハ非常識ナヤウナ質問ノ仕方デアリマスルガ、政府ニ向ッテ質問ヲ致
スノハ復興院ノ計畫ナルモノハ之ヲ飽クマデ固持ナサルノデアルカ、之ヲ減
縮サレル意味ナキヤ、又若シ此意思ガ無イトスレバデス、復興院ノ權限ヲ擴
張サレテ名實共ニ日本ノ改造ヲヤリ、帝都ノ復興ヲヤッテ行クト云フヤウナ機
關ニサルルノ意思ナキヤ否ヤ、斯樣ナコトヲ私ハ御尋ヲ致シテ見タイト考ヘ
ルノデアリマス、次ハ保險ノ問題ニ付テ一應御尋ヲ致シテ見タイト思フノデ
アリマス、保險ノ問題ニ付キマシテハ同僚ノ上山君ヨリ精細ニ互ッタ御質問
ガゴザイマシタ、未ダ不幸ニシテ當局大臣ノ之ニ對スル御答辯ヲ得マセヌガ、
私ハ左樣ニ細カイ御質問ヲ此場合ニ致サウト云フ考ハ持ッテ居ラヌノデアリ
マス、併ナガラ私共ノ此常識ヲ以テ大體先達テアタリカラシテ政府ノ御答辯
等ニ依テ此問題ヲ判斷ヲ致シテ見マスルト、是ハ御趣意ト非常ニ違ック提案
デハナイデアラウカト云フヤウナ疑念ヲ持ツノデアリマス、御趣意ハドウデ
アルカ、是ハ帝國ノ復興ト云フ······此帝都ノ復興ト云フコトニ對スル解決問
題ノ一ダト云フコトデアリマス、帝都ノ復興ト云フコトガ矢張リ其目的デア
ル、然ルニ細カイコトハ私ハ此場合ニ申上ゲルコトヲ避ケマスル、アノ案ノ
大體ヲ見マスルト、一方カラ見マスルト此保險會社ヲ·······種種類ノ保險會社
ヲ保護サレタ案ノ如クニモ拜見ガ出來ルノデアリマス、又一面カラ見ルト上
山君ノ御質問ニモアリマシタ如クニ罹災者ヲ救濟スルト云フヤウナ意味デ
アッテ、ホンノ是ハ一部ノ罹災者ヲ救濟スルノデアル、多數ノ罹災者ト云フ
モノハ何等其恩典ニ與ラヌヤウナ方法ノヤウデアルノデアル、其他種々ノ點
ニ亙ッテ考ヘテ見マスルト、此案ヲ見マスルト此案ヲ實行サレテデス、實行
サレテ政府ガ目的トシテ居ラレル程度ノ復興ハ卽チ斯ウ云フコトデアラウト
思ッタノデス、此金ヲ渡シテヤッテ、ソレデ家屋デモ建築スル一部ニシテ帝都
ノ復興ガ早ク出來ルヤウニト云フ、斯ウ云フ御趣意ノヤウデアルガ、左樣ナ
コトニハナラヌノデアル、結果ガ······斯ウ云フ風ニ私ハ常識論カラ考ヘルノ
デアリマスルガ、併シ茲ニ議論ヲ致スノデハナイ、尙ホ農商務大臣其他ノ詳
シイ御說明ヲ聞カナケレバ其判斷ハ出來マセヌガ、先ヅザット私ハ思フ、斯
樣ナ案ダラウト思フノデス、之ニ對シテ政府ガ前代未聞ナル一億、二億ト云
フヤウナ金ヲ何十年間二分ノ低利デ御出シニナルト云フ大膽ナル御計畫ヲナ
サレタコトハ私ハ實ハ意外ト致スノデアリマス、ソレデ若シ此場合ニ二億ニ
近キ所ノ金ヲ何十年間、二分ノ低利デ御貸シニナルト云フヤウナコトヲ此處
デ御決定ニナッテ居ル、サウ云フ御決心ガアルナラバ、斯樣ナ問題ハ、或ハ
政府ノ御考ニナッテ居ル其目的ヲ達スル爲ニハ有效ナル方法ハ幾ラモアルデ
ハナイカト云フコトヲ私ハ疑フノデアリマス、勿論、此場合ニ罹災者ニ對シ
テ十分ナル保護ヲスル、政府ハ適當ナル之ニ對スル所ノ支出ヲスルト云フコ
トニ付テハ、私ハ全然同意ナノデアリマス、併シ之ヲ出スナラバ······出スナ
ラバ、其目的ニ十分適合スルダケノ責任ヲ以テ出スト云フコトガ、是亦爲政
者トシテ考ヘナケレバナラヌコトト私ハ考ヘマス、ソレ故ニ私ハ此問モ餘程
妙ナ問デアリマスルガ、御尋ヲシタイノハ、必ズ今日ノ閣僚ノ御揃ヒニナツ
テ居ル內閣ニ於カレテハ、此問題ヲ御研究ニナルニ付キマシテハ、此目的、
卽チ帝都ノ復興ト云フコトヲ根本トスル、其目的ノ上カラデス、此問題ヲ御
研究ニナッタコトデアリマセウガ、尙ホ之ニ代ルベキ諸案ヲ色〓御考ヘニナソ
タト私ハ拜察スルノデアリマス、若シサウ云フコトガ御研究ニナッテ居ルコ
トデアルナラバ、本員等ノ參考トシテ之ヲ御示シヲ願ヒタイ、若シ無ケレバ
無イト云フダケデ宜イノデアリマス、唯茲ニ一言イタシテ置キマスノハ、私
ノ御尋ヲ致スノハ保險官營問題デハアリマセヌ、左樣ナコトヲ御尋ネスルノ
ヂヤナイト云フコトヲ一言イタシテ置キマス、次ニ、最終ニデス、質問ヲ致
シタイノハ、財政ノコトニ關シテデアリマス、私ガ申上ゲルマデモナク、今
囘、此臨時議會ニ提出サレマシタ所ノ政府ノ諸案ガ實ニ重大デアリマス、其事
自體ガ實ニ重大デアリマス、ノミナラズ其費用ガ數億、卽チ六億、七億ト云フ
ヤウナ巨額ニ全體ニ於テ上ボルノデアリマス、此關係ニ於テ政府ノ御提出ニ
ナッテ居ル所ノ問題ヲ所謂愼重審議スルト云フコトデアリマスルナラバ、ドウ
シテモ是ハ將來ノ財政計畫ト云フコトヲ御考ヘニナラナケレバナラヌ、將來
ノ財政計畫ト、今日御提出ニナッテ居ル所ノ此豫算トハ、私共ノ見解デハ殆ド
是ハ一致スベキモノデアル、決シテ是ハ分離スベカラザルモノ、所謂不可分
ノ關係ニアルモノト斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、
將來ノ財政計畫ト云フコトヲ十分ニ討究イタサナケレバナリマセヌ、併シ此
將來ノ財政計畫ニ付キマシテハ、私共ノマダ伺ッテ居ル所ノモノハ、ホンノ
片鱗ニ過ギナイト云フコトデアリマス、將來ノ財政計畫ハ大體ニ於テハ出來
テ居ル、ソレハ既定ノ公債資源ヲ以テ爲スベキ事柄ヲ中止シテ、是ヨリ新ニ
起ッテ來ル所ノ數十億ノ事柄ハ皆公債デ支辨スル、斯樣ナ財政計畫デアル
斯樣ナコトガ仄聞サレルノデアリマス、マダ詳シイコトハ御說明ヲ聽キマセ
民や、果シテ是ガ間違デアルカドウカト云フコトハ斷言ハ出來マセヌガ、左
樣ナコトラシイノデアル、之ヲ財政計畫ト云フナラバ、殆ド財政計畫ノ私ハ
意味ヲ成サヌノヂヤナイカト云フヤウナ感ガ致スノデアリマス、併シ是モ先
刻申上ゲマシタ如クニ、洵ニ此大震災、大火災ニ際シテ應急ノ仕事ニ沒頭
サレテ十分ニ御考慮ヲ御運ラシニナル餘地ガナカッタト云フコトデアルナラ
バ、先ヅ差當リ斯樣ナコトニデモ致シテ置カウト云フ御計畫デアルトナラ
バソレハ御同情シテモ宜シイ、併シ之ヲ財政計畫ナリトシテカラニ、立派
ニ大キナ顏ヲスルコトガ出來ルモノデアルマイト考ヘルノデアリマス、ソレ
デ此事ニ付キマシテハ、尙ホ委員會其他ニ於テハ私モ能ク御伺ヒヲ致シテ見
タイト思ヒマスルシ、又皆樣モ定メシ左樣ナ御考ガアルダラウト思フノデア
リマスルガ、玆ニ私ガ關聯シテ政府ニ問ハムトスル所ハ、政府ハ速ニ財政行
政ノ根本的整理ヲナスノ意思アリヤ否ヤ、斯ウ云フコトデアリマス、此速ニ
ト云フコトヲ十分御諒解ヲ願ヒタイノデアリマス、イヤ、先ヅ大正十三年度
ハ是デヤッテ置イテ、ソレカラ段々研究ヲシテ、御前ノ言フコトハ宜イカラ、
ソロ〓〓ヤロウ、斯樣ナコトデハ私ハ頗ル不滿足デアル、大正十三年度ノ實
行豫算ノ上ニ於テモ、出來得ルダケノコトハ矢張リ其方針デ進メテ行カレテ、
モウ少シ財政計畫ラシキ財政計畫ヲ御立テニナルト云フコトヲ希望シテ止マ
ヌノデアリマス、是デ私ノ政府ニ對スル質問ノ要領ハ盡キテ居リマスルガ、
終リニ臨ミマシテ重ネノ〓申シテ置キマスルガ、餘リ詳シキ御答辯ハ私ハ要
サナイ、又私ノ質問ガ漠然トハ致シテ居リマスガ、常識ノ質問デアッテ、技
術的ノ御答ナドハ要サナイノデアリマスカラ、唯簡單ニシテ而カモ明瞭ナル
御答ヲ願ヒタイ、曖昧模糊タル長演說ハ私ハ御斷リヲ致シテ置キマス、ドウ
カ左樣ニ幾重ニモ御願ヒ致スノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=8
-
009・上山滿之進
○上山滿之進君 私ハ自分ノ一身上ニ付テ一言ヲ致シタイ、唯今勝田君ノ御
質問中ニ私ノ一身ニ關係シタコトガアリマスカラ、質問ヲ御許シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=10
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011・上山滿之進
○上山滿之進君 言葉各メヲスルヤウニ皆樣ハ御聽キニナッテハ大變私ハ迷
惑ヲ致シマスガ、勝田君トハ年來ノ懇意ナ友人デアリマス、私情トシテハソ
ンナ感ジモアリマセヌガ、唯聊カ御言葉ノ中ニ私遺憾ニ考ヘルノデ、火災保
險問題ニ付テ勝田君ハ御尋ネノ時ニ、上山ハ精細ニ色〓言ッタガ、自分ハソ
ンナ細カイコトヲ尋ネヌ、尋ネルノハ常識ノ範圍デアッテ、御尋ノ最後ニ又
常識ヲ御重ネニナッタ、別段惡意アッテトハ勿論思ヒマセヌガ、此言葉通リト
シマスト、私ノ質問ハ些細ナコトデアル、斯ウ云フ風ニ聞エルノデアリマス、
實ハ私ハ此臨時議會ニ於ケル最モ重要ナル問題ガ火災保險デアルト眞實思ウ
テ居ル、多少ノ調査モ致シマシタ、カルガ故ニ色〓數多ク質問ヲ出シマシタ
ガ、質問ハ自分ノ信ズル所ニ依レバ、私ノ見ル所ハ私ノ見ル所デアル、細カ
イ問題トハ毛頭思ハナイ、是ハ各〓人ノ見ル所デ、勝出君ハドウ御覽ニナル
カト云フコトヲ爭フノデハアリマセヌガ、唯何トナク私ノ質問ヲ輕クセラレ
タヤウナ感ヲ懷カザルヲ得ヌ、私ハサウ云フ些細ナコトヲ問フタ積リハナイ、
ドウゾ各〓此信ズル所ニ依ッテ發言ヲスル以上ハ、他人ノ言論ニ亙ッテソレヲ
批評スルヤウナコトノナイヤウ將來アリタイコトヲ、玆ニ一言希望シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=11
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012・勝田主計
○勝田主計君 此席カラチヨット一言御許シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=13
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014・勝田主計
○勝田主計君 唯今、上山君カラ御發言ガゴザイマシタガ、實ハ私ハ意外ト
致スノデアル、私ノ申上ゲタコトハ、上山君ノ御質問ガ詳細ニ亙ッテ居ルカ
ラ、イカヌト云フヤウナコトハ申上ゲタンデハナイト思フ、上山君ガ此問
題ニ付テハ〓心ニ研究サレテ、詳細ナ質問ヲ出サレテ居ルカラ、私ハ別ニ之
ニ對シテ詳細ナルコトヲ政府ニ御伺ヒスルノ殆ド必要ノ無イト云フ意味ニ於
テ實ハ申上ゲタノデアリマスルガ、ドウ云フ御感違ヒデゴザイマスルカ、左
樣ニ御考ヘニナッタト云フコトヲ私ハ甚ダ遺憾ト致シマス、決シテ私ノ趣旨
ハ左樣ナ意味ノ趣旨デハナイノデ、上山君ノ詳細ナル御質問ニ付テハ却テ敬
意ヲ表シテ居ルノデアル、ドウカ左樣ニ御承知アラムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣伯爵山本權兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=14
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015・山本權兵衞
○國務大臣(伯爵山本權兵衞君) 唯今、勝田君ヨリノ御質問ニ對シマシテ一
言御答イタシタイト存ジマス、何レノ內閣ト雖モ誠意ナクシテハ決シテ內閣
ヲ組織シ得ルモノデハナイト信ジマス、而シテ震災及火災後、私ガ上野ノ臺
ヨリ見マシタ所ノ直覺的感想ハ此帝都復興問題ノ今日ニ於テ同ジデアル
カ、或ハ違ヒハセナイカ、恐ラク違フデアラウト云フヤウナ御意見デアッタヤ
ウニ伺ヒマス、抑〓此帝都復興ニ對シマスル所ノ大體ノ意見ハ過日簡單ナガ
ラモ此議場ニ於テ愬ヘタノデアリマス、今ニ於キマシテモ私ノ抑〓初メニ感
動イタシマシタ所ノ一部分ハ、其大體義トシテ採用ヲ致シ、今日ニ於キマシテ
モ尙ホ且ツ聊カソレニ相違シタコトデハナイト云フコトヲ一言申上ゲテ置
キマス、而シテ又普選問題ニ云々ト仰セラレテ、大キニ世ノ疑惑ヲ招クト云
フコトノ御話モゴザイマシタガソレハ或ハ新聞紙上其他ニ散見シタルモノ
ヲ土臺トシテノ御質問デハナイカト思ヒマス、是ハ地方長官ニ對シマシテ私
ノ演說中ニ大體ノ希望ヲ申述ベテ置キマシタ、是等ハ何レ成案ト致シ、其筋
ノ審議ヲ經マシテ後、議場ニ愬ヘネバナラヌ重大ナ問題デアリマス、然ルニ
甚ダ御質問中ニ或ハ之ヲ卽行ヲ致シ、或ハ是ニハ多少ノ行掛リヲ付ケルガ如
キ、殆ド曖昧ナコトヲ私ガ申シタヤウナ御言葉ガアリマシタガ、左様ノコト
ハ決シテゴザイマセヌカラ、左樣御承知ヲ願ッテ置キタイ、ソレカラ此火災保
險ノコトニ付テノ御話デゴザイマシタナレド、私ガ直接、震災直後ニ罹災民
ヲ代表サレタト云フ所ノ諸氏ニ一囘若クハ一二囘面會ヲシタコトガゴザイマ
シタガ、其際ニモ斯ノ如キ場合ニ際シテハ、個人ノ利益ヲ或程度ニ犠牲ニス
ルト云フコトハ、道德上、今日ノ場合ニ於テハ已ムヲ得ヌコトデハナイカ、
卽チ私ヲ捨テテ、公ニ殉ズルト云フコトハ、此時デアラウ、然ラバ責任アル
所ノ會社諸氏ハ、各〓自分ノ權能ニ訴へ、將ニ道德心ニ訴ヘベキモノナリト云
フ量見ガ付イタナラバ、其考ヲ以テ初メテ足ラザルモノヲ政府ニ向ウテ考ヲ
言ハレルト云フコトガ穩當デハナイカ、己レヲ捨テテ直チニ何事モ政府ニ之
ちづち
ヲ哀願スルト云フコトハ順序デハナイト自分ハ思フ、ト云フコトヲ私ハ其際
其筋ノ人方ニ言明シタコトノ外、他ハ一言モ申サヌノデアリマス、又政府ハ、
斯ノ如キ帝都復興ノ如キ大計畫ヲ爲スニ當リ、政府ハ諸般ノコトニ對シテ考
ヲ持ッテ言ハネバナラヌノデアルト云フコトヲ、御質問デゴザイマシタガ、
是等ハ先日來、貴衆兩院ノ中ニモ少シヅツ意見ヲ申述ベテ置キマシタ通リ、
實ハ今囘ノ短期日ニ重大問題ニ向ッテ、御協賛ヲ請ハナケレバナラヌコトデ
ゴザイマスガ故ニ、政府ハ成ルベク諸般ノコトニ對シテハ、此通常議會ニ讓
リマシテ、已ムヲ得ヌコトニ關シテ、局限シテ御話イタシタコトデゴザイマ
ス、目下ノ狀況ハ、震災後ノ非常ナ時ニ際シマシテハ、非常ノ手段ニ出ヅル
ノ外、語ヲ換ヘテ申セバ、卽チ勝田君ノ言ハレル通リ、卽チ今囘ノ非常時ノ
救濟ニ沒頭シテ居ッタ次第デゴザイマス、時日コソ多少ノ年月ヲ經マシタケ
レドモ、實際的ノ仕事ハナカ〓〓思フガ儘ニ參ラヌノデゴザイマス、又一般
經濟、其他ニ對シテハ、勝田君ノ如キハ嘗テ大藏ノ當局ニ居ラレ、朝鮮ニ於
テモ、ソレゾレ重職ニ就カレタコトデゴザイマス、之ニ對シテ其跡ヲ見マシ
テモ、隨分色〓御困難ヲ遊バサレタコトト考ヘルノデアリマス、此國家經濟
及一般的財政ニ對シマシテハ、是ハ實ニ重大ナルコトデアリマシテ、決シテ
私ガココデ素人ナガラ、經驗アル勝田君ニ滿足ナル御答ヲ致シ兼ネマスカ
ラ、是等ハ當局大藏大臣ヲシテ十分ニ意見ノアル所ヲ申述ベルデゴザイマ
セウ、且ツ又帝都復興ノ問題ニ對シテ、是ハ簡單ニ申セバ伸縮アルモノデア
ルや、ドウデアルカト云フ御問デアッタヤウデアリマス、又之ニ對スル所ノ
諸特別機關ニ對シテハ、勝田君ノ意見ト、大イニ趣ヲ變ヘテ居ルモノノヤウ
デアリマス、遺憾ナガラ勝田君ノ希望ニハ副ヒマセヌガ、今日ノ所ハ政府モ
今設ケテアリマス所ノ機關ヲシテ十分ニ是ガ實行ニ當ラセル積リデアリマ
ス、又此必要ノナイ場合ニ於キマシテハ、宜シク相當ノ處置ヲ執ルベキコト
ト信ジマス、又復興豫算ノ大體ニ於キマシテモ、今ヨリ之ヲドウスル斯ウス
ルト云フコトハ其問題ガ當議場ニ現ハレマシテ、再ビ御相談ヲ申上ゲルコ
トト考ヘマス、大要質問ノ一部分、大體ニ對シマシテ御答ヲ致シテ置キマス
ル、尙ホ足ラザル所ノモノハ同僚ヨリ御答辯ヲ致スコトト考ヘマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=15
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016・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 唯今ノ勝田君ノ御質問ニ對シテ御答イタシマ
ス、政府ハ帝國ノ經濟復興ニ付テ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フ御問デゴ
ザイマシタガ、日本ノ產業ハ既ニ震災前數年前ヨリ根本的ノ改良改善ヲ致ス
ベキ必要ニ迫ラレテ居ルト考ヘテ居ルノデアリマス、海外貿易ノ奬勵トシマ
シテモ、尙ホ海外ノ發展ト致シマシテモ、根本ハ此日本ノ產業政策ノ改善ニ
アルコトト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ此產業政策ノ改良改善ニ付キ
マシテハ唯獨リ政府ノ政策ノミニ於テ此目的ヲ達スルト云フコトハ非常ナ困
難デアリマシテ、官民共ニ相倚ッテ之ヲ圖ラナキヤナラヌト考へテ居ルノデ
アリマス、ソレニ付キマシテハ種々ノ考モ持ッテ居リマスガ、唯今、總理大臣
ヨリ御答イタシマシタヤウニ、若シ議會ニ諮リマスコトガアリマシタナラバ、
通常議會ニ是ハ讓ッテ御諮リシタイト云フ考ヲ持ッテ居ル次第デアリマス、
尙ホ最後ノ御問ノ行政財政ノ整理ヲ急速ニ根本的ニスルカト云フ御問ニ對シ
テハ、行政財政ノ整理ヲ致ス積リデアリマス、卽チ根本的ニ急速ニ此整理ヲ
試ミテ見タイト云フ考ヲ持ッテ居ル次第デアリマスカラ、此點ヲ御答イタシ
テ置キタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 坂本男爵
〔勝田主計君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 勝田君ハ今御發言ガゴザイマセヌカッタカラ、坂
本男爵ニ許シマシタガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=18
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019・勝田主計
○勝田主計君 實ハ何ンデス、政府ノ御當局カラ、何カ私ノ質問ニ對シテ御
答辯ガ殘ッテ居ルヤウデスカラ、有ルカト思ウテ緩ツクリ致シテ居ッタノデス
ガ、若シ無ケレバ、チヨット私一言言ッテ置キタイノデゴザイマス、御許シ願
ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 坂本男爵、一遍御名ヲ呼ビマシテ取消シマスノハ、
先例ニ致シタクゴザイマセヌガ、事情モ能ク分ッテ居リマスカラ、一時、坂
本男爵ノ登壇ハ御延バシヲ願ヒタウ存ジマス、今勝田君ニ御發言ヲ許サウト
思ヒマス···勝田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=20
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021・勝田主計
○勝田主計君 此席カラ、簡單デゴザイマスカラ······唯今、總理大臣竝ニ大
藏大臣ノ御答辯ニ依リマスト、一部了解ヲ致シタコトモアリマスケレドモ、
殊ニ大藏大臣ノ速ニ根本的ニ財政行政ノ整理ヲスルノデアルト云フ御明言ニ
ハ、是ハ私ハ頗ル滿足ヲ表スル次第デアリマス、其他、私ノ御問ヒ申シタコ
トニ付キマシテ、マダ御答ノナイ點モアリマス、アリマスルガ······又私ニ
ハ不明瞭ト考ヘラルル點モアリマスルガ、斯樣ナ際デアリマスルカラ、其詳
細ニ亙ルコトハ他日ノ機會ニ讓リマシテ、私ハ敢テ茲デハ反問ヲ致シマセヌ
カラ······併シ私ガサウカト言ウテ問ウタコトヲ、スッカリ私ノ呑込メルヤ
ウニ御答辯ガアッテ、承知ヲ致シタモノデアルト云フ誤解ノナイヤウニ念ノ
タメ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 坂本男爵·········坂本男爵ノ御登壇ヲ願ヒタイト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=22
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023・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 登壇イタシマスル前ニ議長ニチヨット申上ゲテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長ニデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=24
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025・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 議長ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=26
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027・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 本員ノ御尋ネ致シタイト思ヒマスコトハ事多ク帝都復興
ニ關シマシテ後藤復興院總裁ノ御答辯ヲ煩ハシタイト考ヘマス、唯今他ニ行
カレタヤウデスカラ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今直グニ出席ヲ求メマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=28
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029・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 ソレヂヤ御出席ニナルマデ待チマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 藤山雷太君ニ御相談イタシタイト存ジマス、唯今
坂本男爵ノ御要求ニ依リマシテ、後藤帝都復興院總裁ノ出席ヲ求メツツゴザ
イマスガ、後藤子爵ハ今衆議院ノ委員會ニ是非出席セラルル必要ガ有ル趣デ、
コチラヘ出席セラルルヤ否ヤガ今未定デゴザイマス、藤山君ノ質疑ハ總理大
臣ノミデハイケマスマイカ、復興院總裁ノ出席モ必要デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=30
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031・藤山雷太
○藤山雷太君 私ハ總理大臣竝ニ大藏大臣、內務大臣ノ出席ヲ願ヒタイ、併
シ最初ハ大藏大臣ト總理大臣ガ御出デニナリマスレバ私ハ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大藏大臣モ豫算委員會ニ今出ラレマシテ、實ハ總
理大臣モ衆議院ヘ出席セラルル爲ニ退席セラルルト云フ今御申出デゴザイマ
シタガ、暫ク此處ニ御止リヲ議長ハ願ッタ次第デアリマス、藤山君、如何デ
ゴザイマセウカ、總理大臣ニ對スル部分ダケ今御述べニナッテハ如何デゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=32
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033・藤山雷太
○藤山雷太君 承知シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公傅德川家達君) 坂本男爵、今ノ次第デゴザイマスカラ、坂本男爵
ニハ暫ク御待チヲ願ヒタウ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=34
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035・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 承知シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 藤山君ノ登壇ヲ望ミマス
〔藤山雷太君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=36
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037・藤山雷太
○藤山雷太君 私ハ本年八月ニ此議員ノ光榮ヲ得マシタモノデ、初メテ此臨
時議會ニ出席スルノデアリマス、本來ナラバ沈默ヲ守ルノガ當然デアラウト
自分デモ深ク信ジテ居リマス、併ナガラ此臨時議會ハ帝都復興ノ爲ニ開カレ
タ議會デアリマシテ、此帝都復興ノ成否ハ帝國ノ休戚ニ係ハル大問題デアル
ト信ジマス、而シテ此問題ガ政府ノ意思モ十分ニ國民ニ貫徹セズ、又我〓國
民ノ要望スル所ガ政府ニ徹底シマセズシテ、其間ニ總テノコトガ議了デモサ
レマスルト、實ハ私ハ遺憾ナリト信ズルノデアリマス、十分ニ政府ノ意思ヲ確
メ、我〓ノ希望ヲ十分ニ徹底シマシテ、其間ニ齟齬ナク隔意ナキ諒解ヲ得ルノ
ガ此議會ニ於テハ最モ大事ト考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ私ハ東京市ニ
永ク住居シマシテ、又有ラユル方面ノ市民ト有ラユル機會ニ接觸スル所ノ仕
事ニ從事イタシテ居リマス、故ニ此帝都復興ニ現レテ居ル問題ニ對シテハ我
我市民トシテモ如何ナル考ヲ有ッテ居ルカ、又ドウ云フ希望ヲ有ッテ居ルカト
云フコトヲ貫徹セシムルコトハ私ノ義務ナリト信ジテ居ルノデアリマス、故
ニ此議會ニ初メテ席ヲ得タカラ諸君ニ私ノ考ヲ申上ゲテ見、且ツ政府ニ十分
御尋ネ致シタイト考ヘルノデアリマス、帝都ノ復興ト申シマスルケレドモ、我
我ハ此帝都ノ復興ニハ第一、第二ノ要素ヲ備ヘナケレバナラヌト考ヘル、ソ
レハ第一ハ精神的ニ國民ガ復興ヲシナケレバナラヌ、故ニ此精神ノ作興ヲ如
何ニシテ策スルカト云フコトガ第一ノ問題デアラウト考フル、第二ニ物質的
ノ復興デアル、卽チ此度、帝都ノ震災火災ト云フモノハ數十萬ノ人命ヲ損シ、
數百萬ノ財產ヲ糜シ、實ニ非常ナ災厄デアリマス、併ナガラ此機會ニ所謂物
質的ノ囘復ヲ非常ナ緊張シタル精神ヲ以テ圖ラナケレバナラヌト考ヘル、其
モノハ何デアルカト云ヘバ、卽チ產業的復興竝ニ都市計畫、此二ツデアラウ
ト考ヘル、私ハ精神的復興ニ於キマシテハ、畏クモ陛下ハ御詔勅ヲ下サッ
タ、是ハ啻ニ此度ノ震災ノミノ問題ヂヤナイト思フノデス、全國國民ノ卽チ
精神的復興ノ急務ナルヲ御示シニナッタコトト信ジマス、而シテ私ハ常ニサ
ウ考ヘテ居リマス、總テノ問題ハ人ニ存スル、何事デモコノ人ト云フモノノ
改善ガ出來ナケレバイカヌト常ニ考ヘテ居リマス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕
我ガ日本帝國ハ實ニ維新以來、非常ナル一大進步ヲナシタト云フコトハ掩フ
ベカラザル事實デアルノデス、併ナガラ日露ノ戰役ヲ境トシテ、日露戰役終
了後ノ日本國民ノ精神狀態ト、日露戰役前ノ日本國民ノ狀態トハ、如何ニ精神
的ニ違ガアルカト云フコトヲ私ハ認メテ居ルノデアリマス、我ガ國民ハ日露
戰役マデハ非常ニ緊張シタ精神ヲ以テ、私ハ皆進ンデ來タモノデアラウト信
ジマス、政治家モ學者モ實業家モ、其他有ラユル方面ノ人ガ歐米先進ノ國ニ
劣ラヌヤウニ、我〓ハマダ一歩其後ヘニアルト云フコトヲ自覺シテ居ッタノ
デアル、故ニ產業ニ從事スル者ハ產業ヲ以テ國ヲ立テナケレバナラヌト考ヘ
學者ハ學問ヲ以テ天下ニ誇ルベキ發明ヲシナケレバナラヌト云フ考デアッタ
デアリマセウ、其他政治家モ有ラユル方面ガ、日露戰役マデハ非常ニ緊張シ
テ國家ヲ各自ニ荷フヤウナ精神ヲ有ッテ居ラレタト私ハ考フルノデアル、而
シテ日露戰役ノ終了後十四五年、此間ニ歐羅巴ニ大戰爭ガアリマシタ、併ナ
ガラ我國モ歐羅巴ノ戰爭ニ參加ハ致シマシタガ、遠ク戰場ニ遠ザカッテ居ル
爲ニ戰禍ヲ被ラズシテ、サウシテ貿易ノ上ニ於テハ二十有餘億ノ卽チ利益ヲ
得タ、俄ニ國民ハ卽チ成金ニナッタノデアル、而シテ國モ忽チニ一等國ノ卽
チ列ニ列シタ、其間、國民ノ精神ハ總テ弛緩シタノデアルト云フコトハ事實
デアル、而シテ國民ノ思想ハ今日ハ皆サン恐ラクハ誰デモ慨嘆スベキ狀態ニ
アリヤシナイカト思フ、此儘ニシテ置ケバ實ニ日本ハ如何ナル設備ヲシ如何
ナル物質的計畫ヲヤッテモ、之ヲ指導シテ行キ、運用シテ行ク所ノ其人ニ
シテ緊張シタル精神ヲ持タナケレバ、迚モ我ガ日本帝國ノ十分ナル復興ハ出
來マイト考ヘルノデアリマス、此場合ニ於テ大震大火ガ起ッタ、或ル人ハ之
ヲ天譴ナリト云フ人モアリ、日本國民ガ非常ニ驕ッテ居ル、非常ニドウモ惡
イ今日ノ狀態ヲ天ハ譴メタノデアルト云フ人スラアリマス、私ハ今日ノ時世
ニサウ云フコトヲ信ジマセヌ、併ナガラ此天災ハ卽チ日本國民ニ精神的復興
ヲ與ヘルベキ一ツノ機會ヲ作ッタト云フコトハ爭フベカラザル事實デアラウ
ト思フ、此震災ノ爲ニ非常ニ人心ニ「シヨック」ヲ與ヘタ、人心ハ此儘デハイカ
ヌト云フ感ハ今恐ラクハ東京市民ノミナラズ全國ヲ通ジテ漲ッテ居ル所ノ精
神デアラウト思フノデス、此精神ヲ利導シテ能ク日本ノ國民ノ思想ヲ今日ヨ
リ轉換セナケレバナラヌ、卽チ大事ナ時節ニ遭遇シテ居ル、而シテ其國民思想
ヲ轉換スル方法、之ヲ利導スル方法ト云フモノハ如何ニスベキカト云フ問題
ハ、是ハ皆サンモ平生御考ヘデアリマセウガ、私ハ〓育ト宗〓ヨリ外ナイト考
ハ!〓育ニハ文部省ニ文部大臣ガアリ、有ラユル方面ノ色〓ノ事ヲシテ居
ラレルト云フコトデアリマスガ、私ハ此國民ノ信仰ト云フモノヲモット固ク
シナケレバイカヌ、宗〓デ民衆ノ〓化ヲシナケレバナラヌト私ハ考ヘテ居ル、
民衆ヲ〓化スル所ノ力ハ宗〓ニ依ラナケレバナラヌ、私ハ最近歐米ヲ漫遊シ
テ來マシタガ、先進國ノ彼ノ科學ノ進ンダ國民デモ宗〓ト云フモノニハ非常
ニ重キヲ置イテ居ル、ソレハ各國、此宗〓ヲ以テ人心ヲ收攪シ、利導スルコ
トニ十分ナ力ヲ持ッテ居ルノデアル、然ルニ我國ニ於テハ成程、佛〓ト云フ
モノモアリマス、其他色〓ノモノモアリマスガ、此民衆ヲ〓化シテ思想ヲ十
分ニ涵養スル方法トシテ、今日ノ佛〓ノ人達ガ誰デモ骨折ッテ居ルカト云フ
コトハ非常ナ問題デアラウト考ヘマス、然ルニ此度ハ帝都デ御寺ノ燒ケタ數
ハ何デセ五百何十軒アル、而シテ今マデノ御寺ト云フモノハ何デアルカト云
ハ、御承知ノ通リニ葬式ヲスルダケノ所謂葬式坊主ト云ッテモ宜イノデア
ル、決シテ〓化ノコトナドニ力ヲ盡スコトハ出來ナイ、殊ニ寺ノ維持スラ出來
ナイ生活ニ困難ナ寺ガアル位デアル、私ハ斯ウ云フ場合ニコソ、此寺院ノ整理
ヲ一ツシナケレバナラヌ、寺ガ五百何十軒モ燒ケテ、サウシテナカ〓〓大事
ナ場所ニ大事ナ土地ダケハ持ッテ居ル、併ナガラ是ガ民衆ヲ〓化スル場所ニ
ハナッテ居ナイ、斯ウ云フモノニ對シテハ復興計畫ノ中ニ、卽チ精神復興機關
トシテ、ドウ云フ政府ハ御考ヲ持ッテ居ルカ、私ハ此場合ニコソ內務省ノ社
寺局デアリマスカ、サウ云フ所ニ於テ大イニ此寺ヲ整理併合シテ或必要ナ場
所ニ大キナ寺院ヲ立テテ、サウシテ民衆〓化ノコトヲ十分ニヤラセテ、サウ
シテ此日本ノ今日、此精神的ニ萎靡シテ居ルモノニ對シテ十分ナ〓化ノ方法
ヲ講ズルト云フコトガ非常ニ必要デアラウト私ハ考ヘル、今ノ情勢デ勞働問
題モ宜シ、社會問題モ宜シ、併ナガラ何處ニ歸一······人心ヲ歸一セシムル信
仰ト云フモノガ何處ニアリマスカ、國民ニ信仰ノ無イ國民コソ非常ナ危險ナ
モノデアルト私ハ考ヘル、〓育ノ方法デモ宜シイ、宗〓ノ方法デモ宜シイ、
サウ云フ途ヲ此場合ニ於テ政府ハ十分ニ御研究下サラナケレバイカヌト思
フ、卽チ此帝都復興ノ一項日ニ寺院ト云フ問題ハドウシテモ當然現ハレテ來
ナケレバナラヌ問題ト私ハ考ヘテ居ル、今ノヤウナ情勢デアッテハ此寺ト云
フモノハ全ク自分ノ維持スラ出來ナイモノガアル、斯ノ如キ寺ガ散在シテ居ツ
テハ何等國家〓育ノ衝ニ當ルコトハ出來ズシテ終リハシナイカト私ハ考へ
ル、第二ハ何カト云ヘバ、是ハ勿論、生產的復興デアルト考ヘマス、生產ト
云フモノノ復興ガ行ハレナケレバ、ドンナ立派ナ町ニナラウガ、ドンナ立派
ナ建築ヲ造ラウガ、是ハ駄目デアル、而シテ生產的復興ニモ緩急二樣ガアルト
私ハ考ヘル、第一ハ現在ノ市民、現在ノ罹災者ヲ如何ニ利導シテ生產ヲ與ヘル
カト云フ方法デアル、是ハ非常ニ私ハ······大藏大臣ハ此處ニ御居デニナラヌ
ヤウデスガ、大藏省ニ於テモ御注意下サルコトヲ希望シマス、何カト云ヒマ
スルト、今日燒ケテ現在アノ「バラック」ヲ拵ヘテ居ル、アノ「バラック」ヲ拵
ヘテモ實ニ僅ナ「バラック」ノ資金ヲ得ルニ過ギナイ、商賣ヲスルニモタダハ
出來ナイ、商品モ仕入レナケレバナラヌ、倉庫モ建テナケレバナラヌ、斯ウ
云フ問題ニ付テ、實際今日ノ經濟機關デハ斯ウ云フ中流ノ市民ヲ救濟スル途
ハ無イノデアル、御承知ノ通リ株式取引所ハ燒ケテ仕舞ッタ、株式取所引ハ
數箇月ノ間己ムヲ得ズ休業スルノ悲境ニ陷ッタ、併ナガラ株式取引所ハ仲買
人百人ニ相當ノ資金ヲ貸與スル方法ヲ執ッタノデアル、百人各自ニ卽チ產業
資金ヲ供給シテ居ル、此點ハ大藏大臣ニモ能ク話ヲシマシテヤッタ、ソレデ今
日株式取引所ハ開クコトガ出來タノデアリマス、アノ儘ニ放任シテ置イタナ
ラバ、今日ニ至ッテモ恐ラク株式取引所ハ開ケナカッタカモ知レヌト私ハ考ヘ
ル、其通リ、今深川ノ正米問屋ト云フモノハ殆ド全滅シテ居ル、深川ノ材木
問屋ト云フモノモ殆ド全滅シテ居ル、是等ニ金融ヲ與ヘル方法ハドウデアル
カ、大藏大臣ハ言ハレルデセウ、今マデノ從來得意ノ銀行モアル、其途ヲ通
ジテ政府ハ一億圓ノ金ヲ貸スヤウナ方法ヲ執ッテ居ル、サウ言ハレルデセウ、
併ナガラ事實ハ、ソレハ何等ノ效ヲモ奏シテ居ナイ、深川ノ廻米問屋、卽チ
各自ニ全國ノ米ヲ買ッテサウシテ深川ノ自分等ノ倉庫ニ入レテ、其倉庫證
劵ヲ以テ金融ヲ圖ラナケレバナラヌ、然ルニ其倉庫ハ燒ケテ仕舞ッタ、自分
ノ財產ハ燒失シタ、ソコデ今日ノ廻米問屋モ其資金ハ非常ニ缺乏シテ居ル、之
ヲ銀行ニ仰ガムトスルカ、銀行ハ無擔保デ何等ノナニガ無イ者ニハ、ナカ〓〓
金融業者其人達ノ自ラノ自衞ノ爲ニ、トウシテモタダ貸スコトハ出來ナイ、斯
ウ云フ場合ニハ矢張リ廻米問屋ナラ廻米問屋ノ組合ヲ作ッテ、之ニ資金ヲ供
給スル途ヲ各銀行ヲシテヤラセル方法ガナゼ出來ナイノカ、其方法ハ色〓ア
リマセウ、下手ニヤレバ弊害モ生ズルデアラウ、併ナガラ決シテ弊害バカリデ
ハナイ、巧クヤレバ是モ行ケルト私ハ考ヘル、深川ノ材木問屋モ同ジコトデア
ル、今材木ヲ各地カラ持ッテ來ルモノハ何カト言ヘバ、卽チ大キナ會社デアル、
是等ノ資金ヲ他ニ仰グ必要ノ無イ人ハドシ〓〓持ッテ來テ居ル、併ナガラ現
在ノ深川デ材木問屋ヲシテ居ル人ハ今マデノ商賣ハ休ンデ仕舞ハナケレバナ
ラヌト云フ形デアル、斯ウ云フモノモ是等ノ組合ヲ作リ、相當ノ信用ノ方法
ヲ立テ、之ニ商賣ヲサセルト云フコトハ、ドウシテモ今日ハシナケレバイケ
ナイト思フ、斯ウ云フ中堅ニナル、國民ノ中堅ニナル卽チ商賣人ハ非常ナ金
持デハナイ、併ナガラ實際日本ノ商賣ノ機關ハ誰ニ依ッテ行ハレテ居ッタカ
ト云ヘバ、サウ云フ卽チ忠實ナ、中堅ニナル人ガ相集ッテ此東京市ノ商賣ハ
出來テ居ッタ、卽チ是ガ實際デアル、併ナガラ此力ノ有ル實際ノ商賣人ハ手ヲ
拱イテ、サウシテ政府ノ手ニ依ッテ材木ヲ買ヒ、或ハ大キナ會社ノ手ニ依ッテ
仕事ヲスルト云フヤウナ情勢ニ今日ハアルト思フ、ドウシテモサウ云フ實際
ノ商賣人ヲ救濟シテ、サウシテ之ニ相當ノ資金ヲ供給スルノ途ヲ立テナケレ
バ駄目ダト私ハ思フ、サウ云フ卽チ生產的ノ、現實ノ、今ノ目前ノ商賣ヲ復
興セシムル方法ヲ一ツ政府ハ十分ニ御考慮ヲ下サラナケレバイカヌト私ハ思
フ、其方法ヲ政府ハドウ付ケテ居ラレルカ、銀行屋ニ一億ノ再割引ヲ許シタ、
ソレデ總テノ商賣人ガ自分等ノ平生ノ取引銀行ト云フモノヲ通ジテ十分ナ活
動ガ出來ルト御考ヘニナレバ、ソレハ間違ダト私ハ信ズル、銀行屋自身ガ迚モ
今日ハサウ云フ金ヲ進ンデ貸スト云フ場合デナイ、又非常ナマダ不安ニ打タ
レテ居ル、僅ニ二月前マデハ「モラトリアム」デ、支拂ヲ停止シテ居ッタ狀態デ
アッタ、ソレガ漸ク解カレタ今日ニ於テ自ラ自分ノ金ヲ以テ各產業者ニ資金ヲ
供給スルナドト云フコトハ、言フベクシテ行ハレヌ事柄デアル、此銀行者ノ所
謂非常ナ自衞ノ爲ニ、又「シヨック」ノ爲ニ自ラ營業ノ資金ヲ活用スルコトノ
出來ナイ狀態ニアル、今日金融ガ緩漫デアルト云フコトハ何デアルカト云ヘ
バ、貸サナイカラ緩漫デアル、利用サレナイカラ緩漫デアル、是等ヲ利用サ
セル方法ハ、各銀行ヲシテ能ク共同一致サセ、サウシテ國家ガ之ニドウ云フ
風ニカシテ貸セバ必シモ危險デハナイ、商賣人ハ借リタ金ヲ引ッ掛ケヤウト
云フヤウナ考ヲ持ッテ居ル者ハ恐ラクナイ、ドウカシテ自分ガ商賣ヲシテ自
ラノ信用ヲ高メテ、益〓商賣ヲ盛ンニシナケレバナラヌト考ヘテ居ル、方法
ヲ以テ之ニ臨メバ決シテムヅカシイコトハナイト私ハ考ヘル、其他有ラユ
ル方法、東京實業組合ト云フモノハ三萬何千人ノモノガ卽チ此度ノ震災デ燒
ケテ仕舞只、ソレナゾハ皆中流ノ國民デ、東京ノ商賣ハ其人達ニ依ッテ成
立ッテ居ル、斯ウ云フ人達ニ營業資金ヲ供給スル途ト云フモノハ、今僅カニ
興業銀行、勸業銀行デ千萬圓カ千五百萬圓出シテ、サウシテ日本、東京ノ商
工業ノ復興ガ近キ將來ニ出來ルノナンノト云フ御考ガ若シ有リトスレバ、ソ
レハ間違ダト私ハ思フ、此點ニ付テ私ハ現實ニモウ少シ御心配下サラナケレ
バイクマイト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、而シテ將來ノコトニナリマス
ルト、私ハ東京ト云フモノハ消費地ト論ズル人ガアリマスケレドモ、消費地
デハナイ、生產地デナケレバナラヌ、ドウシテモサウ信ズル所デアル御承
知ノ如ク世界ノ都市ハ皆集中サレテ居ル、此集中、都會ニ集中スル利害ト云
フコトノ問題ハ別問題デアリマスガ、併ナガラモウ人文益〓進ンデ來ルニ付
テ都會集中ト云フコトハ勢ヒノ免レヌ所デアル、旣ニ紐育ノ如キハ今日デハ
六百萬ノ人口ヲ有シテ居ル、英吉利モ大倫敦トシテ八百萬ノ人口ヲ有スル、
東京市モ私ハ將來必ズ、今ハ二百五十萬トカ三百萬トカ云ッテ居リマスガ、若
シ大東京市ヲ構成シタナラバ五百萬位ノ人口ニナルダラウ、其都會ニ集中ス
ル利害ハ暫ク措イテ、此集ッタ人ヲドウシテ養ウテ行クカト云ヘバ是ハ產業
ヲ復興シ、工業ヲ興スヨリ外ニ方法ハナイト考ヘル、工業ハドコニ出來ルカト
云ヘバ、深川本所方面、アレハ工場地トシテ計畫ナサル、又我〓ガ東京市ヲ產
業地トシテ計畫スルト云フ爲ニ非常ニ必要デアル、決シテ消費地デ甘ンジテ
置クベキ場所デナイ、ドウシテモ生產地トシテ工業地トシテ東京市ハ發達セ
シメナケバナラヌ、併ナガラ生產地トシテ發達セシメル要素ハ何カト云ヘバ、
生產ヲ安ク造ルコトガ出來ナケレバ、是ハ產業地トシテ發達シナイノデス、
產業地トシテ發達スルニハ製品ヲ安ク造ッテ、良イ物ヲ世界ニ供給スルト云
フ途ヲ開カナケレバナラヌ、然ルニ今深川、本所、アヽ云フ所デ、私モ工場ヲ
持ッテ居リマスルガ、非常ナ不便デアル、迚モアヽ云フ所ニ工場ヲ造ッテ世界ニ
生產ノ販路ヲ爭フト云フコトハムヅカシイ、內地同士ヤルナラバ宜シイ、併シ
內地同士デハ是ハ何等國家ノ爲ニハ利益デナイト思フ、我〓ハ廣クドウシテ
モ海外貿易ト云フコトニ力ヲ竭サナケレバナラヌ、然ラバ各國ト競爭シテ出
來ルダケノ安イ品物ヲ造ラウト云フノニハ今ノアンナ設備デハ迚モ駄目デ
ス、運河モ造ラナケバナラヌ、東京灣ニモ船ガ來ルヤウニシナケレバナラヌ、
海陸ノ設備モシナケレバナラヌ、併シ是ハ一朝ニシテ出來ルモノヂヤナイ、
私ハ決シテ三年ヤ五年ノ計畫トシテ政府ガ御ヤリニナル必要ハナイト思フ、
併ナガラ幸ヒ、トハ申シマセヌ、甚ダ不幸デアリマスガ、今ハ東京市ハ燒野ト
ナッテ居ル、此場合ニ於テ相當ナ大計畫ヲ作ッテ、サウシテ之ヲ五年トカ七年
トカ、サウ云フ短イコトヂヤナク、我〓國家ハ永久デアル、我〓ノ帝都ハ永
久デナケレバナラヌ、ソレニ三年トカ五年ト云フ短クテ其僅ノ間ノ財政計畫
ニ依ッテヤラウト云フ御考ヲナサルカラ實ニ我〓ノ滿足スルコトガ出來ナイ
此復興事業ガ起ッテ來ハシナイカト思フ、現ニ帝都復興院デ御出シニナッタ計
畫モ大變ニヘヅラレ、私ハ評議委員會トシテ一面ニハ出テ居リマスガ、其時
ニ出テ居ルモノヨリハ運河バカリデモ大變削ラレテ居ル、併ナガラ此運河ヲ
聯絡シテ將來ニヤルト云フコトハ若シ帝國ノ首都タル東京ヲ產業地トシテ、
生產地トシテ將來ニ立タシメヤウトスルニハ是非一必要ナコトデアル、併ナ
ガラ我〓ハ三年ノ間ニ之ヲ御ヤリナサイ、五年ノ間ニ御ヤリナサイトハ言ハ
ス、併シチャント是ハ將來ニ是カラ是マデハ運河ヲ造ル場所デアルト云フコ
トヲ何故市民ニモ國民ニモチャント明ニ御示シニナラヌカ、若シ此度ノ計畫デ
運河敷地トシテ計畫サレタ所ヲ防火地帶ニ入レラレ、サウシテ永久的建設ヲ
造ッテ、又數年ノ後、是ハ運河開鑿ヲスルカラ御前ハ壞ハサナケレバナラヌ
ト云フヤウナコトヲサレテハ非常ニ迷惑デアリ、又非常ニ國家ノ損失デアル
ト私ハ考ヘマス、サウ云フ所ハ此處ハ今ハ出來ナイガ五年十年ニハ此川ト此
運河トヲ繫グ場所ダト云フコトヲチャント地域ヲ示シテ······三年ヤ五年ノ短
イ年限デ吾〓帝國ノ首都ヲ構成スル必要ハナイト考ヘル、私ハアヽ云フコト
モチャント大體ノ計畫ヲ立テテ、日本ノ經濟ノ狀態ガ三年五年デハ今ノ私ハ
計畫デモ恐ラクハ出來ナイダラウト信ズル、或ハ繰延ベナケレバナラヌ必要
ガ生ジテ來ルダラウ、七年ニ御計畫ニナッタノヲ今度五年ニ御約メニナッタ、
五年デハアノ計畫モ私ハ恐ラク出來マイ、兎ニ角、大體ノ計畫ヲ御示シ下サッ
テ、町幅ニシマシテモ早ク決メテ據ルベキ所ヲチャント早ク、モウドンナ家
デモ本建築ヲ許サナケレバナラヌ、斯ウ思フ、本建築ヲ許サナイデ道幅モ何
時決マルカ分ラヌト云フヤウナコトデハ困ル、卽チ今度地區區劃整理ヲ實行
シヤウト云フコトデアル、市民ハ元來政府ノ力ヲ俟タズシテ自ラ地區ノ改正
ヲ行ハウト云フ念ガ盛ンデアル、唯今日ノ燒跡、今日ノ市ノ狀態デ非常ニ
苦シンデ各自自ラ進ンデヤルト云フコトハ出來ナイト云フ狀態デアリマスカ
ラ、五年三年ノ間ニ之ヲヤラウト云フコトハ非常ナ小サナ計畫ニ陷ルト私ハ
信ズル、又サウシナケレバ國家ノ財政ヲ奈何セムト云フ問題ガ起ルダラウト
思フデス、私等ハ國家ノ財政ノ上カラ必ズ是ハ俄ニ厖大ナル豫算ヲ以テ、此
帝國ノ首都トハ申シナガラヤルト云フコトハ、今日ノ情勢ガ許サナイ、併ナ
ガラ長イ間ニ一ツ之ヲ造ル方法ヲ是非立ッテ貰ヒタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲ致シマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタ
シマス
午前十一時五十八分休憩
午後一時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、玆ニ御諮リヲ致シ
タイコトガゴザイマス、本會期中、特別委員會竝ニ常任委員會ニ退席ノ要求
ガゴザイマシタナラバ、一々議場ニ諮ラズニ、議長ニ於テ差支ナイト認メマ
シタ場合ハ許シタイト考ヘマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、藤山雷太君ノ登壇ヲ望ミ
マス
〔藤山雷太君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=40
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041・藤山雷太
○藤山雷太君 私ハ午前中、此產業復興ニ對スルコトニ付テ述ベマシタ、產
業復興ニ對シマシテハ、直チニ現實ニ行フベキモノト、將來ヲ期シテヤラナ
ケレバナラヌモノトアルト考ヘマス、其現實ニヤル方法トシテ、私ハ政府ノ
施設ハマダ十分デナイ、此模樣デハ實際ニ今日ノ帝都ノ復興ハ期シ難イモノ
デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、其點ニ付キマシテ、私ハ午前中ニ大體申
上ゲマシタノハ、卽チ商工業ノ中樞ニ居ル實際ノ商賣人、其人達ガ家ハ燒カ
レ、倉ハ燒カレ、商品ハ燒カレテ、殆ド今日デハ漸ク「バラック」ヲ建テテヤッ
テ居ル、斯ウ云フ人達ガ是カラ復興ヲシテ行クト云フニハ、ドウシテモ資金
ノ供給ヲ相當ニヤラナケレバナラヌ、ソレヲ單ニ今日ノ現在ノ金融業者、銀
行家ニ任セテ置イテ、完全ニ此復興ガ出來ヤウカト云フ問題ニ付テ、私ハ非
常ニ遺憾ニ考ヘテ居リマス、勿論、現在何等ノ財產モ無イ人ニ、此金融業者ニ
直チニ金ヲ貸セト云フコトハ無理ナ注文デアル、故ニ是ニハ方法ヲ立テナク
レバナラヌ、私ハ方法ヲ立テテ貸付ケマシタナラバ、必ズ其商賣ハ復興スル
機運ヲ有ッテ居ル、非常ニ人心ハ緊張シテ居ル、何トシテモ從來ノ如ク昔ノ
暖簾ヲ囘復シタイト云フ希望ヲ有ッテ居ル、併ナガラ是ガ單リ今マデノ得意
ノ銀行ニ行ッテモ金ヲ貸サナイ、又銀行方面カラ言ッテ見マスト、自衞ノ必要
ガアル、ドウシテモソレハ出來ナイト云フ狀態デアリマスカラ、實業組合ナ
リ、或ハ產業組合ナリ、其他有ラユル此國家ハ機關ヲ有ッテ居ラレル、今十
デニ既ニ養成セラレタモノモアル、サウ云フモノト金融業者ト相密接ノ關係
ヲ付ケラレテ、サウシテ相當ノ資金ヲ供給シテヤルト云フ方法ヲ御付ケニナ
ラナケレバ、私ハ現在ノ今日ノ帝都ノ復興ト云フコトニ非常ナ差支ヲ生ズル
ト云フコトヲ深ク、實際私ハ接觸シテ居ル身分トシテ深ク其點ヲ感ジテ居ル
一人デアリマス、此點ニ付テ政府ハ是非一ツ其金融方法ニ付テ、モウ少シ啻ニ
東京市トハ言ヒマセヌ、橫濱市トハ言ヒマセヌ、卽チ帝都ノ復興ニ對シテ全
國ハ活躍シナケレバナラヌ、此場合ニ產業資金ヲ十分ニ供給シテヤッテ、サウ
シテ此災害ヲ十分ニ囘復スル途ヲ、モウ少シ是ハ考究シナケレバ駄目デアラ
ウト私ハ考ヘル、此點ニ付テ政府ノ施設、又將來ノ施設セムトスル所以ヲ私
ハ聞イテ見タイト考ヘルノデアリマス、次ニハ將來、我國ヲシテ產業的發達
ヲセシメ、殊ニ東京市ヲ消費地デナクシテ、生產地トシテ產業ヲ興サスルト
云フコトニナリマスルニハ、十分ナル其設備ヲ今日ヨリシテ置カナケレバナ
ラヌト考ヘルノデアリマス、我〓ハ此度ノ災害ガ無クトモ、日本ノ今日ノ現
狀ハ如何、到底私ハ此外國ニ商品ヲヤッテ、外國ト競爭シテ、果シテ行ケル
カト云フコトヲ疑ッテ居ル一人デアリマス、我〓ガ常ニ誇リトシテ居マシタ
所ノ人心ハ益〓頽廢シツツアル、惡化シツツアル、而シテ勞働問題ハ益〓激シ
クナリツツアル、而シテ物價ハ益〓騰貴シテ、人心ハ非常ニ安ンジナイ、而シ
テ有ラユル方面ニ於テ此經濟機關ノ不備ト云フモノハ甚シイモノデアル、海
陸ノ聯絡ガ如何ニ取レテ居ルカ、又全國ノ鐵道ノ運輸ノ情勢ハドウデアルカ
ト云フコトヲ考ヘテ見マスト云フト、此震災ガ無クトモ我〓ハ一大奮發ヲシ
ナケレバナラヌ、非常ナ〓心ヲ以テ國家ノ責任ヲ擔ハナケレバナラヌ時代デ
アリマス、然ルニ今度帝都復興ノ跡ヲ見マスト、東京市ヲシテ產業政策ノ中
心トシテ產業ヲ興起セシメルト云フ方法ニ何ガ計畫サレテ居ルカ、運河ト云
フモノガ澤山造ラレテ居リマス、私ハ澤山ト申シマスルガ、併シソレハ甚ダ
計畫ハ小サイ、併シ小サイガ、兎ニ角計畫ガ出來テ、我〓ハ評議會ニ於テモ
見マシタ所ガ、ソレハ何時ノ間ニカ消エ去ッテ仕舞ッタ、デ私ハ今日ノ財政ノ
狀態ニ於テ直チニ運河ヲ全部三年五年ニ造ラウト云フコトヲ政府ニ要求シタ
クハナイノデアリマス、我〓ハ財政ト順應シテ其計畫ヲ立テナケレバナラヌ
ト云フコトヲ最モ痛切ニ感ズル者デアリマス、併ナガラ將來ノ日本ハ決シテ
今日ノ位置ニ我〓ハ安ンジテ居ルト云フコトハ、ドウシテモ出來ナイノデア
ル、卽チ所謂世界ノ一等國ニ列シテ世界ト共ニ立タナケレバナラヌ國民デア
ルト云フ自負ダケハ兎ニ角有タナケレバナラヌ國民デアルト考ヘテ居リマ
ス、併ナガラ將來斯ウ云フ計畫デ進ムト云フ大綱ダケハ斯ウ云フ場合ニ定メ
テ置カナケレバナラヌ、私ハ運河ノ如キモ、是ハ將來斯ウ聯絡ヲ付ケルモノデ
アル、斯ウシテ此河ノ運輸ヲ助ケルノデアル、斯ウ云フコトハ必シモデス今
日、此三年五年ノ間ニ其計畫ヲ實行シナクトモ、將來ノ計畫ヲ定メテ置ケバ
デス、我〓市民モ、或ハ國民モ、其決心ヲ以テ進ム、何ヲスルノカ分ラヌデ
ハ我〓ハ迷ハナケレバナラヌ、現ニ今日市民ガ一番困ッテ居ルノハ、此路ハ
ドウナルカ、我〓ガ家ヲ造ラウト言ヘバドウシタラ宜カラウト云フコトヲ迷ツ
テ居ル、立派ナ建築ヲスル人モ建築ハ出來ナイ、ドウナルカ分ラナイ、早ク
大體ノ方法ヲ決シテ、斯ウ云フ風ニシテヤル、併ナガラ實行ハ他日ニ讓ッテ
差支ナイト私ハ考ヘテ居ル、若シ此運河ヲ造ル場所ニ耐火ノ煉瓦ヲ以テ、サウ
シテチヤント建設物ヲ建テテ、サウシテ非常ナ是ハ不便デアッタカラト云ッテ
三年五年ノ後ニ之ヲ壞ハスヤウナコトガアレバ、是ハ非常ニ國民ニ不便ヲ與
ヘルモノデアルト私ハ考ヘテ居ル、デ今日ノ政府ノ計畫ハ何故ニ三年、五年、
初メハ七年デアッタガ、今度ハ五年ニ縮ンデ居リマス、五年ノ間ニダケヤルベ
キモノヲ示スガ、我〓ハサウ云フコトヂヤ甘ンジヌ計畫ハ大ナルヲ要スル、
而シテ之ヲ實行スルニハ歲月ヲ要シテ差支ナイト考ヘル、其場合ニ於テハ國
民モ、市民モ、其心得ヲ以テ進ムノデアル、此處ハ三年五年ノ後ニ運河ガ出來
ル場所デアル、ソレナラバ此處ニ工場ヲ建テテ置ケバ便利デアル、商館ヲ造ツ
テ置ケバ便利デアル、此建築ヲスルト云フコトハ各自ノ判斷ニ於テ出來ルコ
トデアル、而シテ此度、遺憾ニ考ヘテ居リマスノハ、所謂將來ノ計畫ト雖モ
今カラ直チニヤラナケレバナラヌ、所謂物ヲ廉クスル爲ニハ、ドウシテモモ
ウ少シ東京灣ヲ浚ッテ、サウシテ此船ヲ東京灣ヘ持ッテ來ナケレバナラヌ、此
計畫ハ三千五百萬圓バカリデ出來テ居マシタガ、之ヲ切リ離シテ通常議會ニ
廻スト云フ御說ガアリマスガ、併ナガラ私ハ是ハ生產的復興ニ直チニ必要ナ
ルモノデアリハシナイカト思フ、若シ之ヲ通常議會ニシテ普通政務トスルナ
ラバ、ソレハ東京バガリヂヤナイ、神戶ノ築港モアリマセウ、或ハ門司ノ築港
モアリマセウ、全國到ル處、運河ヲ造リタイ希望モアラウガ、是ハソレト同一
ノモノデハナイト我〓ハ考ヘテ居ル、東京築港ハ卽チ現在ノ東京市ヲ復興サ
スル爲ニ、而シテ最モ廉イ、「チープ」ニ之ヲ造ル爲ニ必要ナモノデアラウト
私ナドハ考ヘテ居ル、是モ切リ離シテヤルト云フコトニナリマスルト、是ハ通
常問題トシテ政府ハ考ヘラレテ居ルノデ、復興ニハ必要ナ事業ヂヤナイト考
ヘラレタモノヂヤナイカト云フ考ガ致シマス、是モ聞イテ見タイ、併ナガラ是
モ必シモ東京灣築港ヲ二十五尺ノ深サニ掘ッテ、斯ウ云フ風ニスルト云フヤ
ウナコトヲ三年五年デヤラナクテモ宜イ、漸次ニ進ム、現在ノ芝浦ニ船ヲ持ツ
テ來テ居ルモノヲ、モウ少シ便利ニ芝浦ニ荷揚ゲヲスルコトガ出來ルコトヲ
やつつモ卽チ現時ノ情勢ニ應ズルコトガ出來ル、今現在ノ芝浦ニ多數ノ物資
ヲ持ッテ來テ、或ハ外國カラ材木ナリ其他ノ物ヲ持ッテ來テ居ル、今日現在
ニ······私ハ帝國「ホテル」ニ行ッテ見マシタガ、其帝國「ホテル」ニ來テ居ル
「ポートランド」ノ商業會議所ノ人達ハ、日本ノ今度ノ震災ニ付テ材木ヲ寄附
シテ居ル、併シ今ノ情勢デハ持ッテ來ルコトハ出來ナイ、グヅ〓〓シテ居レバ
彼處デ腐ルカ知ラナイ、材木ヲ日本ノ救護局ニ寄附シナガラ持ッテ來ルコト
ヲ躊躇シテ居ル、帝都ノ復興計畫ヲスルコトハムヅカシイ、モウ少シ實際的
デナケレバナラヌ、モウ少シ現實的デナケレバナラヌト考ヘテ居ル、ソレヲ
單ニ東京灣築港トカ云フ、普通政務、普通ノコトトシテ、此復興計畫ヨリ御
離シニナレバ、私ハ卽チ政府ハソレダケ復興ニ必要ナルモノト見ラレヌト云
フコトニナリハセヌカト思フ、是モドウ云フ御趣旨デアリマスカ、一ツ御尋
ヲシタイト考ヘルノデアリマス、又東京デ產業ヲ主トシテヤリマスルニハ
深川、本所ノ方面ノ如キハ成ルダケ早ク此計畫ノ〓要ヲ市民ニ示シテ、成程、
議會ニ諮ラナケレバイカヌカ知ラヌガ、併ナガラ政府ノ意思ハ發表シテ差支
ナイ、サウスルト普通ノ常識ヲ以テ判斷スルコトガ出來ル、是ハ恐ラクハ議院
モ通過スルダラウ、政府ハ斯ウ云フ之ニ對スル決心ヲ持ッテ居ラレルコトナ
ラバ、今ハ市民ハ潰レタ工場ヲ復舊セシメル爲ニモ、旣ニ皆迷ヒツツアルト
云フ實際ノ狀態デアルカラ、早ク私ハ斯ウ云フコトニ對シテハ、政府モ、モ
ウ少シ現實的ニ御注意ニナラナケレバイカヌト思フ、又人心ノ上ニ於テモ、
今ニ灰燼ガアノ儘ニナッテ居ル、是ハ東京市ニヤラセルノデアル、斯ウ云フコ
トデアリマス、併シ東京市デモ其權限ハドチラデモ宜シイ、イツマデモ片付
カナイト云フ事實ハ、我〓ハ市民トシテ又國民トシテ恐ラク困ルデアラウト
思フ、人心ヲ復興セシムベキ途デナイ、人心ヲ荒ラス途デアル、イツマデモ火
事ノ中ニ置イテアル、卽チ頭ヲ惡クスル、精神ノ復興ドコロデナイ、精神ヲ
荒マセル途デナイカト考ヘル、是等ハ早ク御ヤリニナラナケレバナラヌ、若シ
市ガヤルナラバ、市ヲ十分御監督ナサルガ宜シイ、サウシテ今日ノ場合ニ於
テハサウ云フ問題ニ付テ實際的デアルコトヲ私ハ非常ニ希望スル、ドウカ復
興院ナリ或ハ內務省ナリ、相當、途ヲ御講ジ下サルコトヲ希望シタイト思フ、
東京市區改正ニ至リマシテハ私ハ同ジ理由ヲ持ッテ居ル、此道幅ノ如キモノ
ハ必シモチャント技術家、實際家ガ集マッテ相當ニ研究シテ決メタモノヲ、或
人、或力ノ忠告ニ依ッテ變更スル必要ハナイ、是ハ又其人達ノ意思デアルマ
イト思フ、詰リ財政問題デアル、三年五年デ道幅ヲ拵ヘルニ千圓モスルヤウ
ナ土地ヲ買フト云フコトハ今日ノ經濟、國家ノ經濟デ堪ヘナイヂヤナイカト
云フ議論モアルデアラウト思フ、併ナガラ一面ニハ區劃整理ヲヤル、區劃整
理ニハ此市民ノ德義心ニ訴ヘテ、サウシテ十分ニ將來ノ便利ガ開ヶ將來ノ發
展ヲ期セラルル上ニ於テハ、決シテ市民ハソンナニ、ケチナ市民ヂヤナイト
私ハ考ヘテ居ル、又道ヲ造ルノニ、今日ハ泥田ノヤウナ道デアル、ソレヲ紐育
ノ如ク、倫敦ノ如ク、僅ニ一立方尺ニモ何百圓ト云フ金ヲ掛ケテ、鋪修ヲシ
テ實ニ立派ナ道ヲ造ルト云フヤウナコトハ今日必要ハナイト思フ、ソレハ出
來レバ宜シイ、併ナガラ國家ノ財政ガ許サヌ、併シ道幅ハ取ッラ置カナケレ
バナラヌ、道幅ヲ狭バメテ置イテ、サウシテ之ニ建築ヲサセテ、サシテ是ハ十
年アトニナッテ、狭クナッタカラト云ッテ改築サセルト云フコトハ困ル、私ナド
ハ鋪修工事ノ費用ハ、場合ニ依ッテハ市民ノ德義心ニ訴ヘテモ出來ル方法ハ
幾ラモアル、道幅ノ如キハ相當ニ技術家、實地家ガ集マッテ、是ガ適當ト信ジタ
モノハ、サウシテ置カナケレバイクマイト思フ、御承知ノ如ク亞米利加ハ現在
ニ於テ一億ニ足ラヌ人口デアリマス、而シテ自動車ノ數ハ一千七百萬臺ヲ現
實ニ今亞米利加ハ持ッテ居ル、殆ド五人ニ一臺バカリノ自動車ヲ持ッテ居ル、私
ハ日本ノ全體ガ幾ラニナッテ居ルカ知リマセヌガ、東京ノ市ニ一萬ニ足ラヌデ
アラウト思フ、一千七百萬臺ノ亞米利加ノ富ハ我〓ヨリ以上ニ富ガ高イト云
フコトヲ證シテ居リマス、併ナガラ日本モ二十年三十年後ニナッテ此自動車
ガ五萬ヤ十萬臺ハ東京市ニナケレバナラヌ時代ハ近ク來ルデアラウト思フ、
又サウデナケレバ「エフィシェンシー」······能率ガ擧ラヌ、亞米利加ノ人達ガ勞
動者マデ自働車ヲ持ッテ居ル、而シテアノ「フォード」ノ自動車ハ亞米利加デ
幾ラデ買ヘテ居ル、卽チ三百弗デ、日本ノ六百圓、妻君デモ勞働者デモ「ハ
ンドル」ヲ執ッテ廻シテ居ル、サウシテ「フォード」|自身ハ百五十弗マデニ必
ズスル決心ヲ以テ製造ヲシテ居ルト云フコトヲ私ニハ明言ヲシマシタ、百五
十弗ト云ヒマスト、日本ノ金ノ三百圓、而シテ是ガ信用制度ヲ以テ一遍ニ拂
ハナイデ、貸ス途ヲ亞米利加ハ開イテ居ル、私モ此勢ヒハ日本ニモ來ルダラ
ウト思フ、現ニ亞米利加ノ「フーバー」ハ一千七百萬臺ノ爲ニ紐育ノ市中ハ今
殆ド困ッテ居ル、マルデ步イテ行ッタ方ガ早クナル、斯ウ言ッテ居リマスルガ、
日本ニモサウ云フ時代ガ來ル時ヲ待タナケレバナラヌ、又我〓ハ其覺悟ヲ持
タナケレバナラヌ國民ト思フ、今日ニ於テハ相當ニ道幅ハ決メテ置イテ之ヲ
鋪修スル、之ヲドウスルト云フ其事ハ所謂現下ノ經濟ノ狀態ニ於テ私ハ適應
スベキモノデアルト思フ、必シモ五年ニ之ヲ計畫スルト云フヤウナコトハ
今ノ財政ノ上ニ於テハ今ノ計畫モ實行サルルヤ否ヤト云フコトヲ私ハ疑フ、
寧ロ是ハモウ少シ長クシテ相當ニ計畫ヲ御立テニナル方ガ宜ウハナイカト思
フ、其他公園ニシマシテモ、或ハ飛行場ノ建設ニシマシテモ、我〓ハ現在ニ
生キルバカリデナイ、將來ニ生キナケレバナラヌ帝都ヲ持ッテ居ルト考ヘテ
居ル、併ナガラ其產業ヲ盛ンニシテ國ヲ富マシテ、ソレダケノ力ノ有ル國民
ニナル方法トシテハモウ少シ堅實ニ之ヲヤラナケレバナラヌ、サウ云フ風
ノコトヲ考ヘテ見マスルトドウシテモ是ハモウ少シ政府ハ御考ヘ下サッテ、
復興院ニ於テモ御考ヘ下サッテ、ソレ等ノ道幅、運河、現實ニ私ハ金ヲ出シ
テ御ヤリナサイト云フコトヲ申上ゲルノデナク、將來ノ計畫ヲチャント拵ヘ
テ、是ハ經濟復興ヲ待タナケレバナラヌ、產業復興ヲ待タナケレバナラス、
其爲ニハ將來ハ斯ウナルモノデアルト云フ、卽チ燈明ヲツケテ置カナケレバ、
私ハイカスト思フ、ソレデナケレバ日本ノ產業ノ十分ナル發達、東京ヲシテ
產業的都市トシテ世界ニ雄飛スルト云フコトハ思モ寄ラヌコトデアルト私ハ
考ヘル、要スルニ私ハ今日ノ場合ハ震災火災ノ此天災ガ無クトモ日本國民ト
云フモノハ、餘程ノ是ハ緊張シタル精神ヲ持ッテ行カナケレバナラヌ時代ニ、
斯ウ云フコトガアリマシタカラ、先ヅ第一ニ人心作興ノ方法トシテ御詔勅ヲ
奉體シテ何カ形ニ現ハレル豫算ヲ一ツ要求シタイト云フ私ハ希望ヲ持ッテ居
ル、卽チ宗〓的方法トシテ寺院ガ五百何十軒モ燒ケテ居ル、今ノ儘デ舊ノ通
リニ建テテ葬式其他ノ役ダケヲサスダケノ儘ニ打チヤッテ置クト云フコトハ
非常ナ惡イコトダラウト思フ、サウデナクテモ寺ナドハ潰レテ仕舞フ、私ハ併
スベキモノハ併セ、サウシテ之ヲ民衆〓化ノ本當ニ力アルモノニ作リ立テル、
又僧侶ト雖モサウ云フ決心ヲ今日ハ持ッテ居ラレルデアラウト思フ、ソレデ
ナケレバ若シ人心ガ今ノヤウニ思想上ニ惡化ヲ來タシマシタナラバ、是カラ
何百萬ト云フ大都市ニナル東京市ハ產業政策ヲ遂行スル上ニ於テモ、非常ニ
憂ヒヲ來タスデアラウト思フ、產業ノ要素ハ資本ト勞働ニアル、資本家ノ愼
シムベキコト、又今日マデニ考ヘテ居ルコトハ棄テナケレバナラヌト同時ニ、
日本ヲシテ勞働ト云フモノト資本ト云フモノトヲ能ク協調セシムルノ途ハ、
今日ノ場合ニ於テ政府ハ能ク之ヲ指導シテ行カナケレバナラヌト思ヒマス、
ソレハ卽チ社會〓育、卽チ宗〓〓育ヲ人心ノ上ニモウ少シ信念ヲ持タセテ、
國家ノ上ニ皆熱心ニ考ヘルヤウニ導カナケレバナラヌト思フ、其方法トシテ
私ハ豫算面ニ何モ出テ居ラヌ、宗〓的ニモ社會〓育的ニモ、文部省ハ文部省ノ
主管トシテ色〓ノ御計畫モアリマセウガ、此事ヲ御ヤリニナリマシテ、大〓ア
チラデハ工場ノ中デモ皆禮拜所ヲ持ッテ居ル、サウシテ日曜ニハ休ム、學校
デモ御承知ノ通リ禮拜所ガアル、御寺ニ詣ッテ歸リガケニ泥棒ヲスル者ハナ
1、御宮ニ詣ッテ惡イ考ヲ持ッテ來ル者ハナイ、神社佛閣、數千年ノ歷史ヲ持ヲ
テ居ル日本ガ、此〓化機關ヲ更ニ斯ウ云フ場合ニ於テ、モ少シ御世話下サル
ト云フト語弊ガアルカ知レマセヌガ、何トカナサル途ヲ講ジナケレバ、私ハ
此人心ノ作興ヲ畫スル所以デナイト思フ、私ハ是ハ一ツ是非政府ハサウ云フ
方法ヲ御付ケナサラナケレバナラヌト思フ、然ラバ社會〓育ト云フヤウナコ
トモアリマスカラ、サウ云フコトヲ相當ニ補助金デモ出シテ、サウシテ少シ
全國ヲ廻ッテ人心ノ振興ニ關スル講演ヲ開キ、或ハ宗〓家ガ擧ッテ此人心ノ緊
張シテ、所謂天譴ヲ受ケタ我〓國民トシテ益〓奮鬪スルト云フコトヲ、國民
全體ガ今日ヤラナケレバ形ノ上ノ計畫ハ幾ラアッテモ駄目ダト思フ、況ヤ
陛下モ御詔勅ヲ下サレ、總理大臣モ其御趣意デ御ヤリニナル、言葉バカリデハ
是ハイケマセヌカラ、事實實際ニ形ノ上ニ、モウ少シ御現ハシ下サルコトヲ
希望イタシタイト思フ、ソレカラ今ノ產業復興ニ付キマシテハ、實際ノ狀態
ヲ能ク御調ベニナッテ、中產階級、眞ニ此商賣ノ中心トナッテ居ル人達ニ產業
資金ヲ融通スル途ヲ組合ナリ或ハ其他色〓ノ方法ヲ以テ御企テ下サルコトヲ
希望スル、サウ云フコトヲヤル御積リデアリマスカヲ一ツ御尋イタシタイト
思ヒマス、ソレカラ將來ノ產業政策ヲ實行スル上ニ於テハ、兎ニ角此復興事
業ハ大局ノ上カラ、モウ少シ計畫ダケヲ御立テニナッテ、實行ハ必シモ五年間
ト云フ期限ヲ御定メニナラナイデ、財政狀態ノ許ス限リニ於テ、モ少シ永遠
ノ御計畫ヲ御立テ下サルコトヲ希望シタイト思フ、此點ニ對シテ總理大臣初
メ皆サンノ御考ヲ願ヒ、御意忠ノ在ル所ヲ御聽キシタイト思フ
〔拍手起ル〕
〔國務大臣伯爵山本權兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=41
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042・山本權兵衞
○國務大臣(伯爵山本權兵衞君) 諸君、唯今藤山雷太君ヨリ午前午後ニ續キ
マシテ御質問ガゴザイマシタガ、之ニ對シマシテ大要ヲ御答ヲ致シタイト存
ジマス、抑〓帝都復興ノ計畫ハ獨リ物質的ニ止マルニアラズシテ、精神的作
興ヲ加味シナケレバナラヌト云フコトニ對シマシテ、日露戰役ニ至ルマデノ
萬般ニ對スル所ノ御希望ニ於キマシテハ感ヲ同ジウスル者デアリマス、固ヨ
リ今囘ノ復興計畫ニ關シマシテハ目前ノ急ニ應ズルト共ニ長イ時日ノ餘裕ヲ
求メルコトガ出來マセヌ故ニ、抑〓初ニハ七箇年ノ計畫ニ致シマシテ、京濱
間ノ運河及港灣等ノ築設ヲ爲ス計畫デハゴザイマシタ、然レドモ實際ノ有
樣ヲ見マスルト云フト、此問題ハ此帝都復興ノ計畫ト不可分ノモノト最初考
ヘテ居リマシタナレドモ、此問題ノ如キハ必シモ六七年ノ間ニ完備セザル
モ、尙ホ將來ノ隆盛ヲ期スル爲ニ、目下ノ焦眉ニ應ズルコトノ急ナルモノヨ
リシテ、之ヲ後ニ送ッテハ如何ト云フ議論ガ起リマシテ、尙ホ考慮ノ末、之
ヲ切リ離シテ後ニ讓ルコトニ相成リマシタノデアリマス、固ヨリ藤山君ノ御
趣意ハ帝都復興ノ如キハ決シテ短日月ニ於テ爲スニアラズシテ、長イ日月ノ
間ニ大體計畫ヲ成シテ、サウシテ急グベキモノヲ先ニシテ宜シイト云フ御議
論ノヤウニ承ハリマシタガ、此帝都復興ノ如キハ爲シ得ルダケ速ニ復興スベ
キハ復興イタシ、復舊スベキハ復舊イタシテ、民心ヲ安ラカニシテ、五十年間
鍛ヘ上ゲタル所ノ總テノ機關ヲ舊ニ復シ、產業工業ニ對シマシテモ、相當ノ
働キヲ爲スニアラザレバ、到底前途ニ對スル所ノ目的ヲ完成シ能ハナイト云
フ見地ヨリ七箇年ヲ五箇年ニ短縮イタシマシタ次第デゴザイマス、又此御說
ノ如ク、長イ時日ヲ此間ニ挾ムト云フコトハ如何ナモノデアリマスカ、凡ソ
將來ノ計畫ヲ爲シマスルニ必シモ大體計畫ヲ爲シテ、ソレニ對シテ第一期第
二期ト云フ計畫ハ國力ノ許ス範圍ニ於テ、當ニ種々ノ計畫ヲ實行イタシタル
歷史ハ多々ゴザイマス、ナカ〓〓今囘ノ事ノ如キモ、帝都復興ノ問題ノ範圍
ニ限ラレタルモノノ外、或ハ將來ニ於キマシテ是ガ附屬ト致シマシテ、色〓
ナ方面ニ特設スルコトモゴザイマセウト信ジマス、サリナガラ今マデ帝都復
興ニ對スル所ノ大體義ニ於キマシテ政府ガ計算イタシマシタルモノハ爲シ得
ルダケノ全力ヲ盡シマシテ、五箇年ニ於テ是ガ終結ヲ告ゲタイト存ジマス、
サリナガラ天災地變ノ爲ニ人力ノ及バザルコトガ出來マシタト致シマシタナ
ラバ、是亦已ムヲ得ヌコトデゴザイマス、而シテ精神作興上ニ關シテノ御意
見ハ至極御同感デアリマスルガ、政府ハ言葉ノ上、卽チ訓示其他ノ手段方法
ニ於テ及ブダケノ希望ヲ述ベテ居リマス、而シテ他方面ニ於キマシテハ、所
謂吏僚ヲ督シマシテ忠誠以テ職ニ當リ十分綱紀ヲ振肅イタシ、〓育上ニ對シ
テモソレ〓〓相當ナ手段ヲ施シツツゴザイマス、又宗〓ハ固ヨリ其他各團體
其他ノ有力ナル機關ニ對シマシテモ共ニ是等ニ向ウテ極力一致セラレムコト
ヲ切ニ希望イタシ、尙ホ將來ニ向ッテ十分ニ努力ヲ致ス積リデゴザイマス、
是ハ單リ政府ノコトノミナラズ、皆賢明ナル諸君ノ〓ニ俟ツコトガ多カラウ
ト存ジマス、產業其他工業政策上ニ付テ實質的今日ノ場合ニ處シ緩急アルベ
シト云フ御說ガアリマシタガ、至極サウ云フコトガアラウト存ジマス、之ニ
對シマシテハ大藏大臣其他ノ同僚カラ亦御說明ヲ致スコトト存ジマス、大體
ニ於キマシテ一言御答ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 上山滿之進君ノ質疑ヲ先刻國務大臣ノ出席セラレ
ザルタメ留保シテ置キマシタガ、唯今議長ノ承ハル所ニ依リマスレバ、國務大
臣ノ出席ノ有無ニ拘ラズ質疑ヲ繼續セラレタイト云フ御希望ガアル趣デゴザ
イマス、ソレ故ニ午前ニ坂本男爵ニ一度質疑ヲ許シマシタガ、此際坂本男爵
ニ御相談ヲ致シマス、唯今ノ次第デゴザイマスカラ、上山君ノ方ガ通告順ガ
早ウゴザイマスカラ、上山君ニ許シマシテ、上山君ノ質疑ガ終リマシタナラ
バ坂本男爵ニ御許シヲ申上ゲタイト存ジマス、ソレデ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=43
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044・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 上山君ノ登壇ヲ望ミマス
〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=45
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046・上山滿之進
○上山滿之進君 私ノ質問ハ今一箇條殘、テ居リマス、午前ニハ御聽キノ通
リナ譯デ暫ク見合シテ置キマシタガ、何分、國務大臣ハ衆議院ノ方ノ關係デ非
常ニ御忙シイヤウデ、何時御出席ヲ見ルカ測リ知ラレナイヤウニ存ジマスノ
デ、兎モ角モ質問ノ趣意ダケ述ベテ置クコトニ致シマス、私ノ最後ノ質問ハ
「政府ハ被保險者見舞金支拂援助ノ資金ヲ轉ジテ一般罹災者救濟ニ充當スル
コトヲ可トセザルカ」ト云フコトガ質問ノ要領デアリマス、先日來、每々登
壇イタシマシテ、數項ニ分ッテ皆樣ノ御耳ニ達シマシタ通リニ、此度ノ火災
保險ニ關スル政府ノ計畫ニ付テハ多大ノ疑問ガアリマス、マダ政府ノ御答辯
ハ得マセヌガ、或ハ我〓ノ滿足スル御答ヲ得ルコトガ出來ナイカト云フコト
ヲ今カラ虞レテ居ル次第デアリマス、斯ノ如キ計畫ヲ强ヒテ遂行スルト云フ
コトハ如何ナモノデアラウカ、私ノ御尋ネシタ點ニ付テ明快ナ、而シテ我〓
ノ安堵スル御答辯ヲ得タナラバ別トシテ、若シ然ラザレバ、斯ル計畫ハ何ト
カ之ヲ方向ヲ變ヘテ適當ナ途ヲ求メルノガ、此場合、國家民生ノ爲ニ最モ深切
ニ考ヘル所以デアラウト私思フノデアリマス、第一ニ先日詳細ニ申上ゲマシ
タ通リニ、如何ニモ此度ノ計畫ハ偏頗不公平ノヤウニ思ハレル、三十五萬餘人
ノ罹災者ノ中デ五萬人カ十萬人カ存ジマセヌガ、其僅ノ部分ノ被保險者ダケ
ニ御金ヲ吳レル、アトノモノハ毛頭顧ミナイ、頗ル不公平ニ考ヘラレルノデ
アリマス、斯ノ如キコトヲ何故斷行シナケレバナラヌカ、又一〓ニ被保險者
ト申シマスケレドモ、被保險者ノ中ニモ色〓アッテ數十百萬ノ保險ヲ掛ケテ
居ル者モアレバ、僅ニ一一百圓カ三百圓ノ保險シカ掛ケテ居ラナイ者モアル、
而シテ二十六社ノ實際ヲ統計シテ見マスルト此保險契約ノ件數ノ中デ百分
ノ九十五、殆ド全部ト申シテ宜シイ、ソレハ一萬圓ヲ超過シタ保險デアル、
僅ニ百分ノ五ガ一萬圓以下ノ保險デアル、而シテ其金高ハドウカト申スト、
僅ニ百分ノ五デアル、一萬圓以下ノモノハ金ノ方デ申シマスルト、百分ノ四
十七ニ止マル、半バニ足リナイ、之ニ反シテ······チヨット唯今間違ヒマシタ、
逆ニナリマシタ、僅ニ百分ノ五ニ過ギナイ件數、ソレ等ニ對スル金高ハ百分
ノ五十三、半分以上デアリマス、之ニ反シテ殆ド全部トモ申スベキ百分ノ九
十五ノ件數ノ金ハ半バニ足リナイ、百分ノ四十七、斯ウ云フコトニナッテ居
ル、保險契約ノ義務ヲ履行スル場合デアレバ、澤山ノ契約ヲシテ居ル者ニ澤
山ノ金ヲ拂フノハ勿論當然デアル、何等ノ疑フベキ點ハアリマセヌケレドモ、
此度ノハ保險契約義務履行ニアラズシテ、見舞金ヲ出ス、御得意ニ對シテ誠
ニ御氣ノ毒デゴザイマスカラ菓子折ノ代リニ差上ゲマス、ト云フ意味ノ一割
デアリマス、斯ル以上ハ宜シク人情ニ訴ヘテスベキコトデ、小サイ保險ヲ掛
ケタ比較的貧乏ナ人ニハ割合ニ多クヤッテモ、比較的大キイ保險ヲ掛ケタ富
裕ナ人ニハサウシナイデモ、或ハ一切菓子折ヲ持タナイデ、言葉或ハ手紙
デ見舞ヲ言ッテモ、其方ガ上品デ、而シテ其見舞ノ目的ヲ、眞意ヲ達スル所
以デアルト思フ、然ルニ事實ハ全ク之ニ反シテ居ル、是モ保險會社ガ自分獨
リデスルコトナラ何モ我〓ガ保險會社ノヤリ口ニ立入ツテ御世話ヲ燒ク必要
ハ毛頭アリマセヌ、唯我〓ノ困ルコトハ此見舞金ナルモノハ國家ガ之ヲ援助
ジ、而カモ其金額ヲ安イ利子デ、又非常ニ長イ年期デ貸付ケルト云フノデア
リマス、事實ニ於テハ國家ガ見舞金ヲ被保險者ニヤルト同ジデアル、斯ルコ
トヲ我〓ハ空漠ニ見道スコトハ出來ヌト思フノデアリマス、尙ホ又當初、此保
險金支拂ト申シマスカ、見舞金支拂ト申シマスカ、保險會社ガ計畫シ、政府
ガ之ヲ〓心ニ援助シタ當初ノ目的ハ經濟復興ニアッタノデアリマス、唯一デ
ハナカッタカモ知レマセヌガ、併シ經濟復興ガ其當時ハ最モ大キナ目的デアッ
タコトハ事實ノ上デ爭へナイコトデアル、保險金ヲ返シテヤレバ燒ケ出サレ
タ者ガ復活スル、復興スル、其資金ヲ與ヘルノデアルト云フコトガ其趣意デ
アッタノデアリマス、是ハ皆樣モ能ク御承知ノ所デアル、然ルニ今日ハ如何
デアルカ、僅ニ保險金ハ一割ヲ見舞金ニ吳レルト云フコトニナッタ、是ガ全額
ナラバ無論ダガ、全額デナクトモ五割七割ト云フ金額デアルナラバ、其ヤリ
方ノ公平トカ、不公平トカ、偏頗トカ云フコトハ姑ク措キマシテ、經濟復興
ノ意義ニ於テ確ニ相當ナル成績ヲ擧ゲルノデアリマシタ、併ナガラソレガ僅
ニ一割トアッテハ實ニ殆ド何ニモナラナイ、現ニ承ハル所ニ依レバ三越ダカ、
白木屋ダカガ百五十萬圓、二百萬圓ノ保險ヲ附ケテ居ッタサウデアリマス、
是ガ今十五萬圓ヤ、二十萬圓貰ッテ何ノ三越、白木屋ガ復興ノ手傳ニナリマ
セウ、又五百圓千圓掛ケタ人ガ五十圓、百圓貰ッテ何ノソレガ復興ノ手傳ニ
ナルデアリマセウ、無イヨリハ結構デアリマスケレドモ、當初ノ目的ニハ全
ク無關係ノコトニナリ終ッタノデアリマス、ソンナ金ヲ今貰ッテ何ニナルカ
ト云フコトハ小遣錢ガ殖エルト云フ位ニ止マル、勿論多數ノ人ノ間デアリマ
スカラ是ハ色〓ナ例外モアリマセウ、ソレハ認メマスガ、大體カラ申セバ小
遣錢ノ殖エルト云フコト以上ノ效果ハ私ニハナイト思ハレル、是デモ矢張リ
此見舞金一割支拂ノ爲ニ國庫ハ多大ノ負擔ヲセナケレバナラヌノデアリマ
ス、一人一人ニ取ッテ見レバ斯ノ如キ僅ナ金デアリマスケレドモ、積リ積レ
バ政府ノ提案ノ如ク一億八千萬圓ト云フコトニナッテ、一口ニ一億八千萬圓
ト申セバ誠ニ簡單デゴザイマスガ、實ハ申スマデモナク非常ニ大キナ金デ、
大正十三年度ニ於テ政府ガ三億カ五億、公債ヲ募ラニヤナラヌ、此公債ヲ如何
ニシテ募リ得ルカト云フコトハ、現ニ今日既ニ財政當局ガ寢食ヲ忘レテ畫
策ニ頭ヲ惱マシテ居ラレル筈デアル、此時ニ當ッテ斯ノ如キ國家ノ誠ニ少カ
ラヌ一億八千萬圓ノ金ヲ支出スルト云フコトハ、實ニ諒解ニ苦シム點デアリ
やっ、其一億八千萬圓出スト云フノニ、ドノクラキ損ヲ一體國庫ガスルノデ
アリマセウカ、其金ハ貸スノデアリマスカラ、勿論返ッテ參リやっ、而カモ
二分ノ利子ガ附イテ返ッテ參リマス、ケレドモ二分ト云フ利子ハ經濟界ノ現
實ニ於テハ夢ニモ見ラレナイ小額ナモノデアル、最モ確實ナリト稱セラルル
公債ガ現ニ年ニ七分ノ利廻リデ······正確ニ申セバ六分八厘トカ九厘トカ申ス
ノデアリマスガ、大體七分、是デ今後公債ヲ新ニ募集スル場合、尙ホソレヨ
リ利廻リハ高クナラウ、七分以上ニナルコトハ、是ハモウ鏡ニ懸ケテ見ルガ
如ク明カデアリマス、大體カラ推シテ七分ト二分ノ間ニハ五分ノ利開キガア
ル、一億八千萬圓ノ五分ノ利子ハ幾ラニナリマスカ、一年九百萬圓、据置期
間ガ三年カ五年カ存ジマセヌガ、其間ニ國庫ハ九百萬圓以上一千萬圓近イ負
擔ヲシナケレバナラヌ、又償還開始以後ニ於テハ年々元金ガ減リマス、三十年
デアッタナラバ六百萬圓ヅツ減ル、五十年デアッタナラバ三百六十萬圓ヅツ減
ツテ來ル、ソレガ減ルニ從ッテ國庫ノ負擔ハ少クナリマスガ、ソレハ三百萬圓
トカ五百萬圓トカ僅ナ金ガボツボツ減ッテ來ルノデアリマスカラ、國庫ノ負
擔ハ漸次減少スルコトハ事實デアリマスガ、其減少ノ仕方ノ歩ミハ非常ニ緩
〓 〓之ヲ五十年末ニナリマスト利ニ利ヲ積レバ別トシテ、其先キノ利ヲ積
ラナイデ、之ヲ國家ガ年々負擔シタ金ノ其元ダケヲ計算イタシマシテモ一億
五六千萬ニナル、若シ償還期間ガ五十年デアリマスレバ二億ニモ、モット上
ニモナルト思フ、斯ノ如キ多大ノ負擔ヲ國庫ハシナケレバナラヌ、國民ノ膏
血ヨリ之ヲ出サナケレバナラヌ、而シテソレガ何人ヲ利スルカト云フト、今
日現ニ大火災ニ罹ッテ保險ヲ掛ケテ居ルモノニ、誠ニ不徹底ナ、僅カナ金ヲ御
賽錢カノヤウニバラ撒イテヤルト云フコトニ歸著スルノデアリマス、是ハ極
メテ確實ナ事實デアリマスカラ、私ノ意見ノ當否ハ是ハ御判斷ニ委セマスト
シテ、厚カマシイ次第デゴザイマスガ事實ダケハドウゾ御信用下サルヤウニ
願ヒマス、斯ノ如クシテ保險會社ハドウデアルカト申シマスト、保險會社ハ
必ズ今後保險料ノ引上ゲヲ致シマス、是ハ政府へ對シテ認可ノ申請ト申シマ
スカ、或ハ諒解ヲ求メタト申シマスカ、旣ニ申出テ居ルコトデアリ、又現ニ
今日ドレダケノ會社デアルカ存ジマセヌガ、保險料ヲ上ゲテ居ル會社ガアル、
「バラック」ニ對シテデハアリマセヌ、從來ノ保險ヲ繼續ナガラ其保險料ヲ上
ゲテ居ルノガアリマス、諸君ノ中ニモ近頃保險ヲ御掛ケニナッタナラバ、其
上ゲラレタ保險料ヲ御拂ヒニナッテ居ル方ガアルダラウト思フ、今後ハ更ニ
之ヲ上ゲルコトハ勿論デアッテ、而シテ保險會社ノ關係者ハ無論上ゲルノデ
アル、上ゲナケリヤ是ガ拂ッテ行ケナイト、斯ウ考ヘテ居ル、是ハサモアル
ベキコトデアル、ソレハ何割上ゲマスカ存ジマセヌガ、今デハ三割ト申シテ
居リマスガ、保險會社ガ餘リヒドイト思ッテ二割引上ゲタト致シマスト、ド
ウ云フ風ニナリマセウ、大正十一年ノ正味保險料ハ六千······殆ド三百萬圓デ
アリマス······先ヅ二百萬圓、六千二百萬圓トナル、此二割上ゲマスト千二百
四十萬圓ト云フノガ增加收入ニナル、而シテ一億八千萬圓ノ利子ト元金ヲ拂
ハナケレバナリマセヌ、据置期限ハ元金ハ拂ヒマセヌ、利子ダケ拂ッテ差引
八百八十萬圓バカリノ純益ヲ得ルコトニナル、据置期間ガ過ギマスト元金ヲ
拂ハナケレバナラヌ、是ハ据置期間ガ三十年カ五十年カニ依ッテ大變ナ相違デ
アリマスガ、假リニ三十年ト致シマスト六百萬圓ノ元金、ソレニ利子ヲ加ヘ
テ、ソレヲ千二百四十萬圓カラ差引キマスカラ、是モ矢張リ二百八十萬圓バ
カリノ純益ヲ保險會社ガ得ルコトニナル、其以後ハ年々此純益ガ殖ヱテ來
ル、ソレニ元金ヲ戾シマスカラ、段々戾シマスカラ、利子ガ減ッテ參リマス
カラ、純益ガ殖ヱテ來ル、斯ウ云フ計算ニナル、要スルニ此度ノ仕事ハ國庫
ガ非常ナ負擔ヲシテ、サウシテ見舞金ヲ貰フ人ニハ僅バカリノモノガ······、
是ハワザト僅バカリノモノヲ撒ク譯デハアリマセヌ、人數ガ多イ爲ニ撒イタ
モノハ僅バカリニナッテ仕舞ッテ、大シテ利益ハナク而シテ保險料ニ對スル
政府ノ態度次第デハ、保險會社ハ結局コノ爲ニ利益ヲスルコトニナルノデア
リマス、政府ハ勿論之ニ對シテ相當ナ監督ヲスルコトデアラウト思ヒマスケ
レドモ、今日ノ情勢カラ言ヘバ、保險會社ノ要求ヲ無下ニ拒絕スルコトハ、
政府ノ立場トシテ非常ニ困難デアルト云フ事實ハ詳シク申スマデモナク、皆
樣ノ能ク御了承下サルコトデアラウト思フ、結局斯ノ如キ始末ニナルデアラ
ウト思ハレルノデアリマス、而シテ先日モ申上ゲマシタ通リニ、誠ニ困ッタ
コトニハ此問題ガ斷行セラレマスト、被保險者以外ノ罹災民ガ其儘デハ到底
收マリヤウハナイ、其結果ドウ云フコトガ起ルカト云フコトヲ深ク憂慮セザ
ルヲ得ヌノデアリマス、此問題ハ斯ノ如キ性質ヲ持ッテ居ルモノデアリマス、
政府トシテハ可ナリ深イ行懸リヲ此問題ニ作ッテ居ラレル、政府ノ態度ニ付
テ批評スベキ筋ハ澤山アリマスガ、此場合申シマセヌ、兎モ角モ行懸リノ出
來テ居ルコトダケハ確カデアリマス、今コノ問題ヲ形ヲ變ヘルトカ、廢メル
トカ云フコトハ政府トシテハ誠ニ御困リデアラウト思ヒマス、ケレドモ昔カ
ラ申シ來ッタ通リニ、過ッテ改ムルニ憚ルコト勿レト云フコト、是ハ千載不磨
ノ金言デアッテ、我〓ノ造次〓沛モ忘ルルコトノ出來ナイ······忘レテナラナ
イ事柄デアル、過ッテ改ムレバソコニ其人ノ誠ニ崇高ナル人格ガ現レル
ノデアリマス、私ハ望ムラクハ首相閣下、閣僚諸公ガ誠心誠意ヲ以テ此國
政ニ當ッテ居ラレル場合ニ於テ、此勇氣ヲ發揮セラレムコトヲ切ニ望ムノデ
アリマス、又我〓議員トシテハ斯ノ如キモノヲ此儘デスラ〓〓ト云フ譯ニ
ハドウモ何ト考ヘテモ、幾ラ思ヒ返シテモ、サウハ參ラヌト思フノデアリ
やく、ソコデ私ハ政府ニ伺ヒタイノハ、誠ニ行懸リ上ハ御氣ノ毒ト思ヒマス
ケレドモ、大勇猛心ヲ發揮セラレテ此計畫ヲ少シ御見合セニナッテ、折角之
ニ充當シヤウトスル金ヲモウ少シ······デナク、大イニ有效ナ方向ニ御向ケニ
ナル譯ニハ參リマセヌカ、卽チ單ニ被保險者ヲ利スルノミナラズ、一般ノ羅
災者ニ對シテ此恩惠ガ均霑スルヤウナ方法ヲ御執リニナッテハ如何デアリマ
セウ、サウナリマスト先刻來私ノ述ベマシタ點ハ全ク總テ消滅シテ來ルノデ
アリマス、サウシテ一般ノ罹災者ガ國恩ニ感泣スルノハ申スマデモナク、一
害無クシテ百利アルコトデアルト思フ、新聞ナドデ見マスト、方法ガアレバ
示シタラ宜カラウト云フヤウナ風ノ談話ラシイモノガ見エテ居リマス、遺憾
ナガラ我〓ハ立案ノ權限ヲ持チマセヌノデ、サウ云フ譯ニ參リマセヌ、是ハ
政府デ御考ヘニナレバ如何ヤウナ方法モ幾ラデモアルコトト思ヒマス、併
ナガラ萬一、名案ガ發見セラレナケレバ現ニ低利資金······低利資金デアリマ
セヌ、現ニ預金部ノ金ヲ以テ勸業銀行、興業銀行、ニ融通シテ、而シテ一般ノ
工業者、農業者、其他ノ必要ニ應ジテ居ル、是ガ預金部ガ今涸渴シテ居リマシ
テ、誠ニ金ノ融通ヲスル高ガ少イ、サウシテ其利率モ決シテ低利デハアリマ
セヌ、外ノ機會ニ於テ當局ニ伺ヒマシタガ、ハッキリシタ數字ハ能ク分リ
マセヌガ色〓ニナッテ居ルサウデ、五分五厘トカ六分トカ云フヤウナノガ
マア一番多イラシイ、ソレヲ特設銀行ハ八分五厘デ貸シテ居ルノデアリマ
ス大體、資金ガ非常ニ缺乏シテ居ッテ利率ガ大變高イ、若シ今此保險ノ見
舞金ノ爲ニ支出セムトスル一億八千萬圓ヲ以テ之ニ充當イタシマシタナラ
バ、資金ハ勿論豐富ニナリ、利率モ無論下ゲラレル、而シテ其恩惠ハ一般ノ
罹災者ニ及ブノデアリマス、若シ其金ガ足リナケレバ、サウ云フ目的ニ向ツ
テコソ玆ニ五千萬トカ一億トカ二億トカ云フモノヲ此上ニ國庫ガ支出スルコ
トニ對シテ、私ハ國民ハ寸毫モ異議ヲ挾ムモノデハナイト思フノデアリマ
ス、是ハ私ノ申上ゲル例デアリマス、政府ニ對スル質問ハ何トカ之ヲ轉ジテ
一般ノ罹災者ニ及ブヤウニハナリマセヌカト云フノデアリマス、一般罹災者
ト云フ中、私ハ資產ノ薄イ人ヲ主トシテ目的ニシテ貰ヒタイト思フノデアリ
マス、資產ノ多イ人ハ是モ非常ナル打擊ヲ蒙リマシタケレドモ、何ト云ッテ
モ所謂大川ニ水絕エズ、相應ノ信用モアリマス、財產モ勿論殘ッテ居リマス、
又日本銀行其外特設銀行カラ融通シテ貰フ便宜モ非常ニ多イ、サウ云フ人ハ
誰モ苦ンデ居ル中デ比較的樂ナ人デアル以上、ソレハ一般ノ爲ニ我慢シテ貰
ハナケレバナラヌ、手モ足モ出ナイ資產ノ薄イ者ニ對シテハ、斯ウ云フ場合
ニハ其罹災ニ依ル慘害ヲ救ッテヤルト云フコトガ、是コソ國家ノ任務デアル
ト私ハ深ク信ズル者デアリマス、私ノ質問ハ是デ終局イタシマシタ、マダ第
一問以外ニ對シテハ一切政府ノ答辯ヲ戴イテ居リマセヌ、政府ノ御忙シイコ
トハ萬々承知シテ居リマスカラ、何等不滿ノ念ハ懷キマセヌガ、質問者トシ
テハ、ドウゾ一日モ速ニ御答辯ヲ戴キタイト思セマスノデ、議長ニ於テ宜シ
ク御計ヒヲ願ヒマス最後ニ數日ニ亙リマシテ長〓ト色〓ナコトヲ申上ゲマ
シタ、之ヲ御聽キ下サイマシタ諸君ノ寬厚ナル御襟度ニ對シテ玆ニ感謝ノ意
ヲ表シマス
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=46
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047・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 帝都復興ニ關シマシテ各方面ニ亙リマシテ同僚諸君ヨリ
種々ノ御質問、御意見ヲ拜聽シタノデアリマス
〔副議長侯爵黑田長成君議長席ニ著ク〕
帝都ノ防備問題ニ付キマシテハ未ダ一言之ニ觸レル所ガゴザイマセヌカラ、
私ハ帝都復興問題ノ一般ニ關スルト同時ニ此防備問題ニ付テ當局ノ御所見ヲ
拜聽イタシタイト考ヘマス、帝都復興ヲ策スルニ當リマシテ、先ヅ以テ考慮
ニ上ボラナケレバナラナイコトハ、此帝都ノ防禦問題デアリマス、卽チ帝都ノ
空中攻擊ニ對スル所ノ防禦ヲ如何ニスベキカト云フ問題デアリマス、之ヲ旣
往ノ經驗ニ徵シ、又學者ノ說ヲ綜合イタシマシテモ、今囘ノ如キ大震災ハ之
ヲ今後二十年若クハ三十年ニ致シマシテ再ビスルガ如キコトハ無イト云フコ
トハ殆ド說ノ一致スル所デアリマス、然ルニ此世界ノ平和ハ如何デアリマ
セウカ、彼ノ平和論者ノ隨喜渴仰イタシマス所ノ華盛頓條約ヲ以テ致シマシ
テモ、今後僅ニ十年若クハ十五年ヲ保障スルニ過ギナイノデアリマス、今後
一朝不幸ニシテ我國ガ他國ト隙ヲ開クニ當リマシテハ、此帝都ハ咄嗟ニシテ
敵ノ飛行機ノ空中攻擊ニ暴露シナケレバナラヌ狀態デアラウト思ヒマス、此
時ニ當リマシテハ空中ヨリノ爆彈又ハ毒瓦斯ノ雨下ノ巷トナリマシテ、帝都
百萬ノ人家ハ一夜ニシテ人畜ヲ擧ゲテ殆ド一木一草モ無イ所ノ悲慘ノ境遇ニ
陷ルデアラウト存ジマス、今囘ノ大震災ハ慘ハ慘デアリマスルケレドモ、此戰
だ、
時非常ノ際ニ當リマシテ、地ニハ兵燹アリ、天ニハ爆彈ノ雨下スルアルガ如
き、帝都數百萬ノ市民ノ慘狀ト云フモノハ實ニ想像スルダニ尙ホ肌ニ粟ヲ生
ズルノデアリマス、或ハ斯樣ナ爆彈ノ攻擊ノ如キコトハ國際條規ニ於テ制限
ヲ見ルガ如キコトヲ說ク者モアリマセウ、現ニ今春「ブルッセル」府ノ會議ニ
於キマシテ、各國ノ代表者ノ間ニハ之ニ關スル所ノ會議ガ開カレマシテ、一
ノ成案ヲ得マシテ、是等ノ各國ノ間ニ近キ將來ニ於テ國際間ニ認識サレル場
合モアラウト存ジマスルガ、併ナガラ斯樣ナ國際條規ガ戰時ニ於テ殆ド死文
ニ屬スルコトニナリマスコトハ、之ヲ最近ノ歐洲ノ大戰ニ徵シマシテ誠ニ明
白ナコトデアリマス、既往ガ既ニ斯樣デアリマスルトスレバ、將來ニ於テモ
亦是ガ絕無ト云フコトハ出來ヌデアラウト存ジマス、然ラバ之ニ對スル所ノ
方策ハ如何ニ致シテ宜シイノデアリマセウカ、我ガ海上權ニシテ優勢デアリ
トスルナラバ、或ハ敵ノ航空母艦ガ行動半徑ニ入ルニ先立ッテ之ヲ擊滅スル
コトモ出來マセウ、又ハ敵ノ艦隊ガ我ガ近海ニ在ル所ノ島嶼ヲ占領シ、之
ニ據ッテ帝都ヲ脅威スル所ノ方策ヲ防止スルコトモ甚ダ容易イノデアリマ
セウガ、旣ニ華盛頓會議ニ於キマシテ、英米ノ六割ニ制限サレマシタ所ノ此
海上權ヲ以テ致シテハ之ニ應ズルコトモ甚ダ覺束ナイ狀態デアルノデアリマ
ス、玆ニ於キマシテ帝都ノ防禦ト申シマスルノハ、帝都ノ空中ニ於テ之ヲ邀
擊シ、之ヲ擊滅スル外ニ手段ガ無イト云フコトニナルノデアリマス、然ラバ
今囘ノ帝都復興ノ計畫ニ於キマシテ、此空中攻擊ニ對シマスル所ノ施設トシ
テ何物ヲ計畫サレタノデアリマセウカ、彼ノ宮城ヲ中心ト致シマシテ帝都ヲ
二重、三重ニモ廻ラス事ノ必要ヲ說キマスル所ノ彼ノ環狀道路ト云フモノ
ハ、何レノ所ニ之ヲ見出スコトガ出來ルデアリマセウ、又此環狀道路ヲ連接イ
タシマスル所ノ所謂放射線道路ナルモノハ果シテ適當ノ幅員ヲ有ッテ居ルノ
デアリマセウカ、帝都復興院ノ審議會アタリニ於テ街衢ノ幅ガ削減サレタコ
トヲ承知シテ居リマスルトキハ是等ノコトモ甚ダ懸念サレルノデアリマス、
又帝都ノ防禦ニ必要ナル所ノ敵ノ飛行機ヲ監視イタシマスル所ノ監視樓、又
ハ遠ク飛行機ノ襲來ヲ其爆音ニ依ッテ機械ヲ以テ之ヲ聽取イタシマシテ、之ヲ
各方面ニ通知ヲ致シ、又ハ市民ニ警報ヲ傳ヘマス此聽音所ト云フモノモ必要
デアリマセウ、又探海燈ヲ以テ飛行機ヲ照シマシテ、之ヲ攻射砲ヲ以テ射擊
イタシマス所ノ此探照燈ヲ据付ケル所モ必要デアリマセウ、又各方面ニ是等
ノ警報ヲ傳ヘル所ノ通信所モ必要デアリマセウガ、是等ハ帝都ノ內外ニ於テ
適當ノ場所ニ相當ノ廣場ヲ見出シテ相當ノ設備ヲスルト云フコトガ必要ニ
ナッテ參ルノデアリマス、是等ノ廣場ノ建設ニ付テハ如何ナル準備ガ帝都復
興計畫ニ見出サレルデアリマセウカ、又市民ノ生命ヲ保護スルニ必要ト致シ
マス所ノ地下室ノ如キモノハ如何デアリマセウカ、又一般ノ通信機關、卽チ
電信電話又ハ瓦斯水道ノ如キ、總テ地上ニ暴露イタシテ居ルモノハ皆敵ノ攻
擊ノ目標ニナルノデアリマスカラ、是等ノコトモ相當ニ防禦スル所ノ考慮ト
云フモノガナケレバナラヌト思ヒマス、又文化的事業ハ勿論、是等ノ非常ノ
際ニ最モ必要トスル所ノ飛行場ノ設ケハドウデアリマセウカ、一旦審議會、
否ナ協議會ニ於キマシテ問題トナリ、委員會ノ決議ヲ經マシタ所ノ此隅田川
河口ニ於ケル所ノ飛行場ノ如キハ遂ニ最終ノ協議會ニ於テ否決サレタト云フ
コトヲ聞クノハ誠ニ遺憾トスル所デアリマス、勿論限リアル所ノ財產ヲ以
テ是等限リナキ要求ニ應ズルト云フコトハ、勿論困難デアルト云フコトガ
アリマセウ、然ラバ何故ニ是等ノ困難ヲ緩和スル爲ニ計畫ヲ延長サレテ、其
按排ニ依ッテ財政計畫ヲ御立テニナルヤウニ御考ヘニナラヌノデアリマセウ
カ、五箇年ニ五億ヲ支出スルヨリモ七箇年ニ六億ヲ支出スルコトハ易ク、十
箇年ニ八億ヲ支出スルコトハ更ニ易イノデハアリマセヌカ、今囘ノ大震火災
ハ人生稀ニ見ル所ノ悲慘ノコトデアリマスルガ、此悲ムベキ大災中ニ我〓
ガセメテモノ慰藉ト致シマスモノハ、此灰燼ノ中ヨリ我ガ帝都ガ復興スルト
云フコトノ一事デアリマス、若シ此機會ヲ捉フルニトナクシテ、此計畫ガ
姑息ニシテ終ルト云フコトガアリマシタナラバ、啻ニ此悲シムベキ貴重ナ
ル所ノ經驗ヲ水泡ニ歸スルノミナラズ、悔ヲ後昆ニ貽サムコトヲ恐ルルノ
デアリマス、私ハ便宜上、質問ノ趣意ヲ以下三點ニ括約イタシマシテ、當
局ノ御所見ヲ伺ヒタイ積リデアリマス、其第一「帝都復興計畫ハ啻ニ今囘燒
失ノ區域ニ止マラス帝都ノ全部ヲ以テ其計畫ノ對象トナスコトハ都市計晝
ノ統一ヲ圖ル爲ニ最モ必要ナリト認ム、當局ノ所見果シテ如何」、今囘ノ復
興計畫ハ殆ド燒失區域ニ限ラルルノデアリマシテ、此燒失以外、卽チ山ノ
手方面ノ如キモノハ全ク此計畫以外ニ置カレタ狀態デアリマス、然ラバ此山
ノ手方面ノ計畫以外ニ置カレマシタ所ノ此區域ノ計畫ト云フモノハ如何ニ
ナルソデアリマセウカ、恐ラクハ是ハ固有ノ都市計畫ニ委セルト云フコトニ
ナルデアリマセウト存ジマスルガ、果シテ左樣ナコトデアリマシタナラバ、
今後此復興院ノ計畫スル所ノ帝都復興ト將來ノ此都市計畫トガ果シテ是ガシ
ツクリ出合フデアリマセウカ、時ヲ異ニシ、人ヲ異ニシ、機關ヲ異ニスル所
ノ是等ノ計畫ガ將來シックリ合ウテ其接合ガ出來ヤウト云フコトハ殆ド想像
スルコトガ出來ナイノデアリマスカラ、或ハ恐ル、斯樣ナ計畫ハ木ニ竹ヲ接
グヤウナコトニナリハセヌカト云フコトデアリマス、元來、帝都ノ全部ノ計
畫ヲ見ズシテ其一部ヲ完成スルト云フコトハ、是ハ出發點ニ於テ誤ッテ居リ
ハシナイカト思フノデアリマス、故ニ帝都ノ計畫ハ此際ニ全部ヲ計畫ノ對象
トサレマシテ、此際、一擧ニ復興院ニ於テ計畫ヲ遂ゲラレルコトガ、此帝都
ノ計晝ヲ完全ニスル所以デアラウト存ジマス、故ニ此第一問ヲ設ケタ次第デ
アリマス、質問ノ第二「財政上必要ナラバ縱シ其年限ハ是ヲ延長スルトモ此機
ヲ逸スルコトナク理想的帝都復興ヲ作成スルヲ以テ帝都百年ノ長計ニ適フ所
以ナリト思考ス當局ノ所見果シテ如何」、仄カニ承ハル所ニ依リマスト、當初、
帝都復興院ニ於テ計畫サレタモノハ稍今日ノモノヨリハ理想ニ近キモノデア
ッタト云フコトデアリマス、然ルニソレガ財政上ノ關係ヨリ致シマシテ段々
縮小サレテ今日ノ此計畫ニナッタノデアリマス、是ハ恐ラク財政上ニ基因シ
タモノト思ヒマスルガ、果シテ然ルナラバ、何モ是ハ五年トカ六年トカ云フ
ヤウナ短時日ニ之ヲ完成スルト云フコトノ必要ハナイ、財政上必要デアルナ
ラバ、何故ニ繼續年限ヲ繰延ベテ其緩和ヲ圖ラヌノデアリマセウカ、勿論、
此帝都復興計畫中ニハ其急ヲ要スルモノト、其然ラザルモノトガアリマセウ
ト思ヒマス、所謂、道路ノコトトカ、或ハ土地ノ區劃整理ノ如キモノハ、是ハ急
ヲ要スルデアリマセウガ、其他ノモノニ至リマシテハ公園ノ如キ、又ハ高速
鐵道ノ街路ノ如キ、殊ニ燒失區域ノ以外ニ置イタ所ノ是等ノ街路ハ、何モ此五
年六年ノ間ニソレヲ決定シ、ソレヲ實施シナケレバナラヌト云フコトデハア
リマセヌカラ、此今日ノ帝都ニ於テ如何ニ人民ガ此交通ニ苦シンデ居ルカト
云フ實情ヲ顧ミラレタナラバ、啻ニ燒失ノ區域ノミナラズ、燒失以外ニ亙ル所
ノ此高速度鐵道ヲ敷ク所ノ街路ノ計畫ト云フモノヲ今日急ヲ要スル所ノ此燒
失區域以外ニ於テ此計畫ヲ五六年以內ニ進メラレルト云フコトハ、何等差支
ナイデハアリマセヌカ、假ニ斯樣ナ方法ニ依リマシテ、今囘ノ燒失區域ヲ第
一期トスルナラバ、其第二期、第三期ノ如キハ之ヲ十年、二十年ノ先ニ延バ
シマシテモ何等差支ハナイ、彼ノ「ケルン」ノ「カセドラル」トシテ名高イ所ノ
一宇ノ寺院デサヘ四五十年ニ完成ヲ告ゲタト云フノデアリマス、又巴里ニ於
キマシテモ街衢ノ美麗ヲ以テ誇ル所ノ卽チ「ブルヴール·オースマン」ノ街衢
ノ名ヲ以テ其姓名ヲ不朽ナラシメタ所ノ「オースマン」市長ノ改築ニ係ル所ノ
巴里ノ街衢ハ、現ニ四十四年ヲ費シタト云フデハアリマセヌカ、帝都復興ハ
必シモ五年六年ヲ限ル必要ハナイ、帝都ハ永久ニ復興セネバナラヌ、又永久
ニ帝都ノ面目ヲ保タネバナラヌ、大詔煥發サレテ御聖旨ノ在ル所モ亦是ニ外
ナラヌト存ジマス、是レ先ヅ此第二問ヲ發スル所以デアリマス、第三、「帝都復
興ニ當ッテ帝都復興院ハ將來帝都空中防禦ニ備ヘムガ爲ニ道路、廣場、地下
室、飛行場、水道、瓦斯其他通信機關等ノ施設ニ對シ如何ナル計畫ヲ有スル
ヤ」是ハ別ニ說明ヲ加へル迄モゴザイマセヌ、唯本員ノ御尋ネ致シタイト存
ジマスルノハ、事ノ軍事上ニ亙ルモノデハアリマセヌ、此帝都防禦ヲ軍事的
ニ將來旋設スルニ於テ之ニ要スル所ノ街路デアルトカ、廣場デアルトカ、又
ハ消極的防禦ト致シマシテハ通信機關ノ如キ、水道瓦斯ノ如キ、空中攻擊
ニ暴露イタシマスル所ノモノヲ、豫メ帝都復興ヲ策スルニ當ッテ如何ニ是ハ
防禦ナサルト云フ御考デアリマセウカト云フ、其計畫ノ存スル所ヲ伺ッテ見タ
イノデアリマス、東京ハ一天萬乘ノ君ノ宮居ノアル所デアリマス、又市民二
百餘萬ノ生命財產ヲ託スル所デアリマス、此帝都ノ防禦計畫ハ最モ愼重ニ考
慮ヲ要スルノデアリマスカラ、私ハ玆ニ帝都復興ニ當ル所ノ當局ノ御所見ヲ
拜聽スルコトノ必要ヲ認メテ、此質問ヲ提起シタ所以デアリマス
〔政府委員子爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=47
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048・後藤新平
○政府委員(子爵後藤新平君) 唯今、坂本男爵ヨリ御質問ガアリ、且ツ此質
問ノ要領ヲ御認メニナッテ此所ニ御殘シニナリマシタ、其當初ノ御質問ノ總
論トモ申スベキモノハ、是マデノ各方面ノ質疑ノ中ニマダ述べラレテナイ所
ノ防禦問題、是ガ大切デアルト云フコトデアリマシテ、一々其關係ノ點ヲ擧
ゲラレタノデアリマス、此事ニ付キマシテハ、評議員會ニ於テモ亦參與員會
ニ於テモ、御說ガアリマシタ、然ルニ其防禦ノ方法トシテハ、軍事的施設ノ
外ニ、市ノ都市ノ計畫トシテハ先ヅ建築物ニ對スルノ用意、次ハ地下鐵道ニ依
ルコト、其他ハ環狀線、唯今御說ノアリマシタ點デアリマス、此環狀線ハ唯
今ノ燒跡ニ對シマシテハ、其防禦的ノ施設トシテ環狀線ヲ設ケズシテ、交通
上ノ必要トシテ環狀線ヲ設ケルト云フ意味ニ相成ッテ居リマス、是ダケ申上
ゲマス、次ニ第一問トシテハ何故、燒失區域ニ止マッタカ、帝都ノ全部ヲ以
テ計畫ノ對象トスル義デハナイカ、サウシテ都市計畫ノ統一ヲ圖ルヲ最モ必
要ナリト認ムトアリマスガ、誠ニ御說ノ通リデアリマシテ、何等之ニ對シテ
異見ハナイノデアリマスガ、併ナガラ經費ノ點ヨリシテ御察シノ如ク、先ヅ
此土地整理ヲ致サネバナラヌト云フコトニナリマシテ、多クノ人ハ先ヅ昔ノ
市街ノ所ニ復舊ヲシテ、稍〓其新生活ノ發展ヲ俟ッテ復興ヲ圖ルコト遲カラ
ズト云ッテ居ルノデアリマスガ、若シ然リトセバ、此舊道路ニ對シテ建設シ
タ所ノモノハ、其投ズル所ノ價ヲ損スルコトハ勿論將來ニ禍ヲ再ビスルノ
ミナラズ、諸多ノ失計ニ陷ルト云フコトハ火ヲ賭ルヨリ明カナルガ爲ニ、眼
前ノ市民ニ對スル仁ヲ賣リ、而シテ永久ノ不仁ヲ來タス、斯ウ云フコトハ政
府トシテ忍ビザル所デアリマスカラ、此復興計畫ニ依ッテ、ソレ等ノ障碍禍根
ヲ除クコトニ力ヲ致サネバナラヌ、然ル爲ニハ何ガ一番必要デアルカト云ヘ
バ、此都市ノ計畫タルベキ街路又ハ市內ノ「カナル」斯ウ云フモノガ最モ必
要、ソレニ次グニ公園廣場ノ如キモノヲ以テシテ震災火災ヲ免レシムルコト
ハ勿論、平生ノ經濟、衛生上ノ福利ヲ增進スルヤウニシナケレバナラヌト、
斯ウ云フコトニナッテ、其基礎ノ第一著ガ燒失區域ニ止マリマシタ譯デアリ
マス、第一問ハ要スルニ當局ノ意見トシテハ、何等意見ノ相違ハナイ、唯、
第二問トシテ御尋ニナリマシタヤウニ、財政上カラ限ラレタト云フコトハ明
カデアリマス、加之、此全體ノ帝都ノ復興ト云フコトノ計畫ガアッタヤウデ
アルト云フ御尋ガアリマシタ、其通リデゴザイマス、之ニ對シテハ御覽ニ入
レルコトモ出來ルヤウニナッテ居リマス、併シ半バニシテ他ニ財政ノ制限ノ
爲ニ妨ゲラレマシテ、完成セザル點モアリマスガ、其規模ニ於テハ御參考ニ
貴覧ニ供スルコトモ出來ルダケニナッテ居リマス、又第二問ノ要點トシテ、財
政上ノ必要アラバ年限ヲ延長スルコトモ亦可ナリ、此機ヲ失スルコトナク、理
想的ノ帝都復興ヲ策定スルコトヲ以テ帝都百年ノ長計ニ副フ所以ナリト考ヘ
ルト云フ御質問ガアリマスルガ、是モ全然何等異見ノナイ所デゴザイマス、
然ラバ何故ニ之ヲ其通リ實行セヌカ、斯ウ云フ御質問ガアリマセウト思ヒマ
スガ、此五箇年間ニ急務トシテセネバナラヌ所ノモノヲ提案イタシタノデア
リマシテ、之ニ依テ將來ノ大計畫ヲ妨ゲルコトハナイト云フコトダケヲ申上
グテ置キマス、坂本男爵ノ御質問デハ、斯ウ云フコトヲシタナラバ後ノ妨ゲニ
ナルデハナイカト云フ御尋、其點ハ考慮ヲ致シマシテ年所ヲ歷ルニ從ッテ、又
財力ノ······自治體ノ發達ニ依リ、國ノ發展ト共ニ、之ヲ完成スルト云フ時ハ
如何ト云フコトハ顧ミテ居リマス、或ハ此點ニ付テ尙ホ闕點ガアルカモ知レ
マセヌガ、之ヲ近ク當議場ニモ提案イタシマシテ御意見ヲ請フノデアリマ
ス、其時ニ當ッテ尙ホ又御考究ヲ願ヒ、當局ノ所見ヲ申述ベルコトニ致シマ
セウト考ヘルノデアリマス、大體ノ所ハ少シモ異ッタル意見ヲ以テ申上ゲル
所ハナイ、唯年限ヲ延バシテ計畫ヲスルト云フコトモ、今玆ニ數字ヲ計上シ
テナキノミナラズ、之ヲ將來ノ發展ニ俟ツト云フコトニ付テハ、坂本男爵ト
同ジ意見ヲ有ッテ此計畫ヲ致シテアリマスルト云フコトヲ玆ニ聲明イタシテ
置キマス、次ニ第三ノ御質問デアリマスガ、帝都復興ニ方ッテ、帝都復興院ハ
將來帝都ノ空中防禦ニ副ハシメムガ爲ニ、道路、廣場、地下室、飛行場、水
道、瓦斯其他通信機關ノ施設ニ對シテ、如何ナル計畫ヲ有スルヤト云フコト
ノ御尋デアリマス、此御尋モ御尤モナコトデアリマシテ、帝都復興院ニ於テ
ハ此計畫ニ付テ頗ル苦心モ致シ、又調査モ致シテ居リマス、唯空中防禦ノ一
部ニ至リマシテハ是ハ環狀線ノ御話ガ、サッキアリマシタガ此環狀線ト
云フコトニ付キマシテハ、現在ノ東京府ノ計畫シテアリマス所ノ環狀線、ソ
レヨリ尙ホ遠キ所ノ環狀線、卽チ大東京市ニ於ケル環狀道路、之ニ副フベキ
所ノ放射線、是等ノモノハ考慮シテアリマス、併シ此度ハ冐頭ニ申上ゲマシ
タヤウニ、燒失區域ト云フコトカラ之ヲ除イテアルノデアリマスガ、此事ニ
付テハ注意ヲ致シ、又地下埋設物ト云フコトニ付テモ、最初ハ之ヲ考慮シテ
居ッタノデアリマスガ、之ヲ全部ニナスト云フコトハ餘程經費モ掛リマスカ
ラ、其理設物ノ施設ガ出來ルヤウニ街路ヲ取ッテ置ク、斯ウ云フコトニナリ
マシテ、總テノ通信機關ナドガ萬一、飛行機襲擊等ノ爲ニ害ヲ被ルコトノナ
イヤウニト云フコトハ考慮イタシマシタガ、此施設ハ先ヅ他日ニ讓ラネバナ
ラヌト云フ考ニナリマシタノデアリマス、先刻、此飛行機襲擊ニ對シテハ
地下線、地下鐵道、又ハ建築ト申上ゲテ置キマシタガ、此御質問ノ中ニ地下室
トアリマス所ノモノガ、卽チ其建築ヲ意味シテ居ル所ノモノデアリマス、斯
樣ニ考ヘテ宜カラウト思フノデアリマス、勿論、先刻申上ゲマシタ建築ト申
スノハ地下室ノ意味ハ其中ニ含ンデ居ルノデアリマス、飛行場ノコトニ付キ
マシテハ東京築港ノ場合ニ於キマシテハ、十萬坪餘ノ飛行場ノ土地ニ適
當ナルモノ等モ考ヘテ居リマス、唯此度ソコニ計上シテナイダケノコトデア
リマス、廣場、道路、水道、瓦斯等ノコトニ付テモ、御尋ガアリマシタガ
水道ハ市ノ計畫ニ於テ既ニ三百萬人ニ供給スベキ計畫ガ出來テ居リマス、卽
チ第二期、第三期ノ計畫デ成ルヤウニナッテ居リマシテ、最近ニ於テハ都下
ニ於テ高壓鐵管ヲ用ヰルヤウニナリマシテ、地震等ニ於テモ容易ニ水道ノ杜
絕スルコトノナイヤウニ致シタイト云フ計畫モ致シテ居ルノデアリマス、瓦
斯管ノ如キニ至リマシテハ、是モ皆高壓ノ瓦斯管ヲ用ヰテ居リマセヌカラシ
テ······一部用ヰタ所ハアリマスガ、是ガ爲ニ甚ダ不完全デアリマスガ、此瓦
斯ノコトト電氣ノコトニ付テハ、別ニ計畫モアルノデアリマスガ、唯今玆ニ
ハ申述ベマセヌ、唯此點ニ付テハ注意ヲ拂ッテ居ルノデアリマス、要スルニ
御注意ノ點ニ付テハ何等異論ガナイ、大體ニ於テ御質問ノヤウナ意味ヲ含ン
デ、サウシテ計畫ヲ致シタ次第デアリマス、若シ玆ニ提案イタマシタ時ノ心
持ハ、氣持ハ、サウデアッテモ、手足ハサウ行カヌヂヤナカッタカト云フ〓ヲ
受ケルノ日モアルカモ知レマセヌガ、大體是ダケ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=48
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049・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 唯今、後藤總裁カラ御答辯ヲ得マシタ第一問、第二問ニ
對シマシテハ、本員ト所見ヲ同ジウスルト云フコトデアリマシタガ、唯如何
ニ之ヲ實行スベキカト云フ此手段方法ニ至リマシテハ、私ハ此際、年月ヲ延
長イタシマシテモ、此際ニ計畫ヲシナケレバナラヌモノト、然ラザルモノト、
此相違ニナラウト思ヒマス、是ハ意見ノ相違デアリマスカラ、暫ク保留イタ
シテ置キマスガ、第三問ノ環狀道路ノ點デアリマスガ、御說明ニ依リマスト、
所謂環狀線ナルモノハ東京市中ニ亙ル所ノモノハ計畫ニナッテ居ル、考慮
サレテ居ル、唯燒跡ニ殘ル所ノ環狀線ハ、是ハ普通ノ道路、卽チ普通ノ環狀
線ガアルト云フ御話デアリマスガ、飛行機ノ防備ニ要シマスル所ノ所謂環狀
線ト云フモノハ、所謂一條、二條若クハ三條ノ環狀線ヲ要スルノデアリマス
カラ、此專門的研究ニ依リマスト第一線、第二線ハ矢張リ此市内、卽チ燒
失區域內ノ燒跡ノ灰ノ中ニ其環狀線ガ見當ラナケレバナラヌモノデアリマス
ルガ、果シテ御說明ノ燒失區域ニ畫カレタル所ノ環狀線ナルモノハ、空中攻
擊ニ對スル所ノ此環狀線ニ合スルノデアリマセウカ、或ハ其環狀線ナルモノ
ハ、別ニ此燒跡ノ中ニハ見出サナイト云フコトデアリマセウカ、其邊ヲ一應
御說明ヲ願ヒマス
〔政府委員子爵後藤新平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=49
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050・後藤新平
○政府委員(子爵後藤新平君) 唯今ノ燒失區域內ニ於ケル街路ハ空中攻擊ヲ
防グ環狀線トシテハ計畫ヲ致シテゴザイマセヌ、又之ニ對シテハ考究モ致シ
マシタガ、此際ハ左樣ナ計畫ヲセヌト云フコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=50
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051・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 是ニテ去ル十三日ノ國務大臣ノ演說ニ對スル質
疑通告者ノ御質疑ハ終了イタシマシタ、國務大臣答辯未了ノ分ハ此次ノ會議
3つてみたいな
ニ於テナサルルコトト信ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=51
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052・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ入リマス、日程第一、
大正十二年勅令第四百十二號承諾ヲ求ムル件、會議、竹內農商務次官
大正十二年勅令第四百十二號
右帝國憲法第八條第二項ニ依リ承諾ヲ求ムル爲
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正十二年十二月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
內務大臣子爵後藤新平
文部大臣岡野敬次郞
海軍大臣財部彪
陸軍大臣男爵田中義一
農商務大臣男爵田健治郞
遞信大臣犬養毅
司法臣平沼騏一郞
鐵道大大
臣山之内一次
大藏大臣井上凖之助
外務大臣男爵伊集院彥吉
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項
ニ依リ震災地ノ行政廳ノ權限ニ屬スル處分ニ基ク權利利益ノ存續期間等ニ
關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十二年九月十二日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
兼外務大臣
內務大臣子爵後藤新平
文部大臣岡野敬次郞
海軍大臣財部彪
陸軍大臣男爵田中義一
農商務大臣男爵田健治郞
遞信大臣犬養毅
司法大臣平沼騏一郞
鐵道大臣山之內一次
大藏大臣井上準之助
勅令第四百十二號
震災地ノ行政廳ノ權限ニ屬スル處分(大正十二年九月一日以前ニ爲シタル
モノ)ニ基ク權利利益ノ存續期間ニシテ大正十二年九月一日ヨリ大正十三
年三月三十日迄ノ間ニ滿了スヘキモノハ之ヲ大正十三年三月三十一日ニ滿
了スルモノト看做ス但シ本令ノ施行前又ハ施行後法令ニ依リ其ノ權利利益
ノ消滅スヘキ旨ノ指令、其ノ更新ヲ許ササル旨ノ指令其ノ他其ノ存續期間
ノ滿了ニ關スル特別ノ指令アリタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リ延長セラレタル期間ハ行政處分ニ依リ之ヲ短縮スルコト
ヲ得
震災ノ爲大正十二年九月一日ヨリ同年十月三十日迄ノ間ニ行政廳ニ對シテ
爲スヘキ出願、請求其ノ他ノ手續ヲ懈怠シタル場合ニ於テ大正十二年十月
三十一日迄ニ其ノ手續アリタルトキハ當該行政廳ハ其ノ懈怠ノ結果ヲ免レ
シムルコトヲ得
震災ノ影響ニ因リ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ期限ハ之ヲ
延期スルコトヲ得
第一項ノ震災地ノ行政廳及權利利益竝前四項ノ規定ノ施行ニ必要ナル規定
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員竹內友次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=52
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053・竹内友治郎
○政府委員(竹內友次郞君) 唯今、議題ニ上ポリマシタル案件ニ付キマシテ
簡單ニ提案ノ理由ヲ說明イタシマス、提案理由書ニモ簡單ニ申述ベテゴザイ
マスルガ、震災ニ因リマシテ此震災地ニ於ケル行政廳ノ權限デ行政處分カラ
生ズル權利利益ニ付キマシテ關係書類等ノ燒失シタモノ少カラズアリマス所
カラ、而カモ何時震災後ニ於テ其權利ガ消滅スルカモ知ラヌト云フ狀態デア
ルニ拘ラズ、直チニ適法ナル手續ヲ盡シテ之ヲ繼續スルコトガ出來ナイト云
フ風ナ巳ムヲ得ザル事情ニ立至ッタノデゴザイマスカラ、是ガ救濟上或ル限度
ニ於テ此期間ヲ延長シテ認メルト云フコトノ是非必要ナル狀況ニ到達イタシ
マシタ所カラ之ヲ救濟スルガ爲ニ、本年勅令第四百十二號ノ公布ヲ見タ次第
デゴザイマス、大體斯ウ云フ狀況ノ爲ニ此勅令ヲ公布スルニ至リマシタ次第
ハ實ニ巳ムヲ得ザル狀况デゴザイマシテ、又將來ニ亙リマシテモ當分ハ此儘
存續スルノ必要アリト政府ハ認メル次第デゴザイマス、何卒愼重御審議ノ上、
御承認ヲ賜ハラムコトヲ切ニ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=53
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054・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第一ノ件ハ大正十二年勅令第四百九號承諾
ヲ求ムル件外一件特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=54
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055・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第二及第三ノ件ハ一括シテ委員長ノ說明ヲ
煩ハシマシテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=55
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056・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=56
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057・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第二、大正十二年勅令第四百九號承諾ヲ求
ムル件、第三、大正十二年勅令第四百三號承諾ヲ求ムル件、會議、委員長報
〓、副島伯爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
大正十二年勅令第四百九號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年十二月十五日
右特別委員長
伯爵副島道正
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十二年勅令第四百三號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年十二月十五日
右特別委員長
伯爵副島道正
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵副島道正君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=57
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058・副島道正
○伯爵副島道正君 大正十二年勅令第四百九號、大正十二年勅令第四百三號
ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ報告申上ゲマス、本委員會ハ一昨十五日開
會イタシマシタ、先ヅ正副委員長ノ互選ヲ行ヒマシテ、續イテ會議ニ入リマ
シタ、政府ノ說明ヲ求メ、質問ノ後ニ討議ニ移ッテ遂ニ滿場一致ヲ以テ承諾
ヲ與ヘルト云フコトニ可決イタシマシタ、先ヅ第一ニ四百九號ニ付テ經過ヲ
申シマスルト、四百九號ニ付テ政府委員ノ說明サルル所ニ依リマスルト、東
京府、神奈川縣、靜岡縣、埼玉縣竝ニ千葉縣ニ於テ府縣會議員ノ選擧ヲ行
フコトガ震災ノ結果、不可能ニ陷ッタ、又名簿ノ調製ヲ命ズルト云フコト
モ、期日ヲ命ズルト云フコトモ、不可能ノ結果ニ陷ッタ、若シ强ヒテアノ際
ニ於テ之ヲ斷行スルト云フコトニナリマスレバ、色〓面倒ガアル、卽チ當時
ニ於テハ震災善後處分ト云フモノガ最モ大事デアル、ソレニモ缺陷ヲ生ズル
ヤウニナルカモ知レヌノデ、故ニ之ヲ當分延バスト云フ必要ガアッテ、卽チ
此勅令ヲ仰イダ次第デアル、又殊ニ此選擧權ノ有無ニ付テモ色〓爭議ガ續出
スルヤウナ虞モアッタノデアル、尙更ラ是ハ延バス必要ガアルト云フ風ニ考
ヘラレタヤウデアリマス、而シテ爾來、此期日ニ付テハ或ハ靜岡縣、埼玉縣
竝ニ千葉縣ニ於テハソレノ〓期日ヲ定メ、選擧期日又名簿調製ノ期日ヲ定メ
タノデアリマスガ、東京府竝ニ神奈川縣ニ於テハ震災ノ結果ガ非常ニ大ナリ
シタメ、期日ヲ定メルコトノ運ビニ今日マダナッテ居ラヌノデアリマス、故
ニ此一府一縣ニ於テハ當分之ヲ延バス必要ガアル、卽チ茲ニ承諾ヲ求メル次
第デアルト云フ政府ノ說明デゴザイマス、之ニ對シテ一二質問ガゴザイマシ
ク、第一ガ選擧期日ハ何時頃······東京府竝ニ神奈川縣ニ於テ何時頃ニナルデ
アラウカト云フ質問デアリマス、ソレニ對シテ政府委員ハ今日マダソレニ對
シテ確答スル運ビニハナァテ居ラヌ、ソレカラ又斯ウ云フ質問モゴザイマシ
タ、任期滿了ノ府縣會議員ガ長ク其職ニ居ルト云フコトハ餘リ面白クナイコ
トデアル、成ルベク早ク其選擧ノ期日ヲ定メ又名簿調製ノ期日ヲ定メルヤウ
ニ、此東京府竝ニ神奈川縣ニ於テスルヤウニ政府ノ盡力ヲ仰グト云フ希望ガ
アリマシタ、ソレニ對シテ政府委員ノ說明ニ依リマスルト、政府ニ於テモ同
感デ、卽チ東京府竝ニ神奈川縣ニ交涉シテ居ルノデアルト云フ答辯デゴザイ
マス、又此期日ガ東京府竝ニ神奈川縣ニ於テ決定シナイノハ一體ドウ云フ譯
デアルカ、卽チ名簿ガ燒失シタノガ原因デアルカト云フ質問ガアリマシタ、
なる
之ニ對シテ政府委員ハソレガ卽チ主ナル原因デ、又新ニ名簿ヲ調製スルト云
フコトハナカ〓〓至難ノコトデアルト云フ答辯ガゴザイマシタ、質問ガ終リ
マシテカラ討議ニ移リマシテ、何等ノ意見モナク滿場一致ヲ以テ承諾ヲ與ヘ
ルト云フコトニナリマシタ、續イテ四百三號ニ付テ御報〓ヲ申上ゲマス、是
ハ震災後社會ノ狀態ニ鑑ミテ、丁度人心不安ノ時デアリマシタカラ、治安ヲ
維持スル上ニ於テ此勅令發布ヲ政府ニ於テハ必要トサレタノデゴザイマス、
併ナガラ其適用ニ於テハ萬遺憾ナキヲ期シテ誤リナイヤウニ能ク注意ヲ拂ッ
タノデアル、幸ニシテ今日此勅令ニ觸レタ所ノ件數ハ、極メテ僅カデアル、
從テ此勅令ノ效果ト云フモノハ、非常ニ大ナルモノデアッタノデアル、併ナガ
ラ今日マダ、ソレヲ廢止スルト云フ程マデニ人心ガ安定シテ居ルト云フコト
ハ言ヘナイノデアル、故ニ當分之ヲ繼續シタイト云フ政府ノ希望デゴザイマ
ス、之ニ對シテ二三ノ質問ガゴザイマシタ、第一ニ本令ニ觸レタル所ノ犯罪
ノ數ハドレ位ノモノデアル、政府ハ之ニ答ヘテ曰ク約十件デアル、ソレカラ
シテ其次ハ流言蜚語ガ震災後非常ニ盛ンデアッタガ、是ノ出タ所ハ何處デア
ルカ、ト云フ風ナ件等ニ付テノ質問ガアリマシタ、政府ニ於テハ固ヨリ確タ
ル答ヲスルコトハ出來ナイ、凡ソアヽ云フ風ナ大震災後ニ於テハ人心恟々タ
ル時デアルカラシテ、罹災ノ事ニ因由シテ色〓流言蜚語ガ行ハレ、之ニ信ヲ
置ク者ガ非常ニ多イト云フ風ニナルノハ非常ニ遺憾デアル、又一議員ハ本令
ニ觸ルル犯罪ト、又刑法ニ觸ルル犯罪ト同一ノ場合ニハ何方ニ於テ處分セラ
レルノデアルカト云フヤウナ質問モアッタヤウニ記億シテ居ルガ、政府委員ハ
勅令ノ繼續スル間ハ固ヨリ之ニ依ッテサレルノデアルト云フ答辯デゴザイマ
シタ、ソレカラ又刑法ノ〓唆ト云フコトト勅令ノ煽動ト云フ意味ニ付テ質
問モアリマシタ、政府委員ハ煽動ト云フ方ノ意味ヲ廣義ニ解釋サレ、卽チ煽
動ト云ヘバ、一口ニ言フト、普通ニ謂フ、オダテト云フヤウナコトモ含マレ
テ居ルト云フ答辯ガアリマシタ、ソレカラ又本勅令ヲ永ク存續スルト云フ理
由ハ何處ニ存シテ居ルノデアル、今日人心ハ大分安定シテ居ルノデアル、然
ルニ之ヲ今日マダ繼續スル必要ガアルカト云フ風ナ質問ガアリマシタ、之ニ
對シテ政府委員ハ、成程、人心ハ大イニ安定シタヤウデアル、併ナガラマダ
多少不安ノ點モアルノデアル、若シ之ヲ今日廢止スルト云フコトニナレバ、
或ハ再ビ不安ノ念ヲ惹キ起スヤウナ事ガ無イトモ限ラヌノデアル、故ニ當分
之ヲ存續シタイノデアル、又本令ニ觸レテ來タル所ノ犯罪、今觸レテ居ル者
ガ有ルノデアル、若シ此勅令ヲ廢止スルコトニナレバ、卽チ是等ノ事件ト云
フモノハ無罪ニナル虞ガアル、サウスルト誠ニ由々シキ事デアル、是ハ當分
存續スル必要ガアルト思フ、政府ニ於テハ永久存續スル考ハナイノデアル、
卽チ震災氣分ガ繼續シテ居ル間デアル、人心ガ眞ニ安定ニ歸シタ後ニハ斯ノ
如キモノハ存續スル必要ハナイノデアルト云フ風ナ答辯ガアッタノデゴザイ
マス、其外或ハ刑量等ニ付キ或ハ朝鮮人ノ犯罪等ニ付テ質問モアリマシタ、
最後ニ委員ガ、要スルニ此震災前ニ於テハ本勅令ニ觸レルヤウナ犯罪モ大分
有ッタヤウニ聞イテ居ッタガ、當時政府ハ是ガ無カッタ故ニ是等ノ犯罪ハ多カッ
タガ、震災後ニ於テハ僅ニ件數ガ十件ト云ヘバ甚ダ少イノデアル要スル
ニ斯ノ如キ武器ヲ政府ハ持ッテ居ル爲ニ、犯罪ハ少イノデアッタラウ、要ス
ルニ此勅令ノ效果ガ現レタト云フ譯デアルカト云フ質問ガアリマシタ、ソレ
ニ對シテ政府委員ハ實ニ其通リデアルト云フ御答デアリマス、討議ニ這入リ
マシテ一委員カラ實ニ此勅令ヲ繼續スルコトハ必要デアル、卽チ繼續セムコ
トヲ希望スル、異議ハナイト云フ意見ガ出マシテ、滿場一致ヲ以テ、是亦承
諾ヲ與フルコトニナリマシタ、右報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=58
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059・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 唯今、委員長ノ報告ハ便宜上、兩件ヲ束ネテ述
ベラレマシタガ、先ヅ日程第二ノ件ヲ議題ニ供シマス、通〓ニ依リ質疑ヲ許
シマス、花井卓藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=59
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060・花井卓藏
○花井卓藏君 震災ノ爲ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=60
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061・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 花井君ニ申上ゲマスガ、願ハクバ登壇アラムコ
トヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=61
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062・花井卓藏
○花井卓藏君 極メテ短クゴザイマスカラ、此席上デ御質問ヲ申シタイト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=62
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063・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 簡單ナレバ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=63
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064・花井卓藏
○花井卓藏君 震災ノ初ニ發セラレタ緊急勅令ニハ幾件アル、其數ヲ伺ヒタ
イ、內、提出セズト決定セラレタルモノ幾件アリヤ、其數ヲ承ハリタイ、是ガ
第一デアリマス、今囘貴衆兩院ニ提出セラレタル緊急勅令ヲ近ク之ヲ廢止ス
ル緊急勅令ヲ發スベキ見込ノ件ガ如何程アルカ、之ヲ承ハリタイ、或ハ難問デ
アルカ存ジマセヌガ、御答出來ヤウト考ヘマス、是ガ第二デアリマス、第三
點ハ特ニ緊急勅令ニ關スル新シキ事例ニ關スルコトデゴザイマスルガ故ニ、
參考ノ爲ニ承ハリ置キタイノデアル、緊急勅令ハ從來公法ニ屬スルモノ、卽チ
憲法若クハ憲法附屬法、或ハ刑法或ハ行政法、是等ニ關スル事項、又ハ軍事
ニ關スル事項ニ付テ發セラレタルモノ最モ其多キヲ占メ、或ハソレ以外ニハ
ナイト私ハ信ジテ居リマス、私法ニ關スル事項、卽チ商法、民法ニ關スル事
項例ヘバ委員長ノ御報告ニ相成リマシタル勅令第四百七十一號及第四百七
十五號ノ如キモノハ從來未ダ曾テ緊急勅令トシテ發セラレタル先例ハナイヤ
ウニ覺エテ居リマスルガ、先例アリヤ否ヤ、之ヲ承ハリタイ、第四點トシテ御
尋イタシマスル件ハ、政府ハ提出セズト明言セラレタル緊急勅令中、戒嚴令
ヲ施行スルノ件ト申スノガアリマス、私ハ戒嚴令ノ改正ヲナスベキ政府ハ意
見ヲ有シテ居ラナイノデアルカ、ドウカ之ヲ承ハリタイ、合圍地境若クハ臨戰
地境ノ場合ハ姑ク措キマシテ、戒嚴地境ニ付テハ此處ニ戒嚴令モ持ッテ居リ
マスルガ、規定上、適用上、不明ナル點ガ甚ダ多イノデアル、合圍地境、臨
戰地境ハ全然國家兵權ノ作用、卽チ軍事作用ニ於テノミデゴザイマスルケレ
ドモ、單ナル戒嚴地、卽チ合圍地境ヲ外ニシテノ戒嚴地ト臨戰地境ヲ外ニシ
テノ戒嚴地ト、單ナル戒嚴地境ト云フコトニ相成リマスルト、文武兩道トデ
モ申スベキカ、一面ニ於テハ單ナル行政權モアリ、一面ニ於テハ兵權モアル、
卽チ軍事動作ニ俟ツベキモノモアル、兵權行政權ノ共同關係ニアルノデアリ
マス、ソレ故ニ動モスレバ兵權ト行政權トノ衝突ヲ來タス虞ガアル、例ヘバ憲
兵ト警察官トノ見解ノ相違ガ實ニ重大ナル事件ヲ惹起シテ居ルカト存ジテ居
リマス、此規定ノ上ニ於テ、適用ノ上ニ於テ戒嚴ノ實ヲ完全ニ行使スルコト
ニ妨ゲノアル現行法、之ヲ改正スルノ意アルカト云フノデアル、憲法第十四
條ニハ「天皇ハ戒嚴ヲ宣〓ス、戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」ト
規定セラレテアリマス、戒嚴令ハ明治十五年ノ布告デアリマス、憲法制定前
十數年ノ昔ニ屬シテ居ルノデアリマス、今日ヨリ見マスレバ、四十年ノ昔ニ
屬シテ居ルノデアリマス、此機會ニ於キマシテ本員ガ此問ヲ致シマスル所以
ハ緊急勅令ハ其提出ト否トニ拘ラズ議院自ラ審査ノ權ヲ有スレバ宜シイデ
ハナイカト云フ政府ノ御答ガアッタ、御承知ノ如ク震災ニ伴ウテ行政權ト兵
權トノ間ニ一ノ溝渠ノ畫カレタト云フガ如キコトハ、事實ノ眞否ハ姑ク措
キマシテ、本員等ノ常ニ耳ニ致シテ居ル所デゴザイマシテ、不肖等ノ唯歎息
イタシテ居ル所デアルノデアリマス、玆ニ於テ兵權行政權ノ共同運用ノ上ニ
於テ國家ノ使命ヲ完全ニ遂行スル途ニ於テ、之ヲ改正スルノ急務アリト信ズ
ルガ故ニ此問ヲナスノデアリマス、以上四件ニ關シマシテ責任アル答辯ヲ煩
ハシタイノデアリマス
〔政府委員松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=64
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065・松本烝治
○政府委員(松本烝治君) 唯今ノ御質問ニ簡單ニ御答ヲ致シマス、第一ノ御
質問ハ今囘議會ニ提出スル所ノ緊急勅令ハ幾ツアリ、又提出セザルモノガ幾
ツアルト云フ御問ト思ヒマスガ、緊急勅令ト致シマシテハ十五全部デアリマ
スル中、議會ニ提出セザルモノガ三ツアリマスルコトハ先日申述べタ通リデ
ゴザイマス、其結果、議會ニ提出サレマスモノハ十二ト記憶イタシテ居リマ
ス、尙ホ其外ニ財政上ノ緊急處分ノ勅令ハゴザイマスガ、是ハソレノミニ關
シマスルモノハ省イテ數ヘタノデゴザイマス、第二ノ御問ハ今囘提出ヲシテ
居リマスル緊急勅令中ニ近日廢止スベキモノガアルカ、ドウカト云フコトダツ
タカト伺ヒマス、各個ノ緊急勅令ニ付キマシテ今後ノ事情ニ依リマシテ或ハ
廢止ヲ必要トスルモノヲ生ズルカモ知レヌト思ヒマスガ、此點ニ付キマシテ
ハ一〓ニ御答ハ出來兼ネマスガ、唯非常徵發令ニ至リマシテハ主トシテ殘務
ノ終了ノ爲ニ將來ノ効力ノ持續ヲ要スルノデゴザイマスカラ、是ハ殘務ガ終
了イタシマシタ時ニハ之ヲ廢止スルコトニナラウカト思ッテ居リマス、其他
ノ緊急勅令ニ付キマシテハ各個ノモノニ付テノ御質問アラバ兎モ角、一般的
ニハ御答ヲ致シ兼ネマス、第三ノ御質問ハ從來ノ緊急勅令中ニ私法關係ノモ
ノガアルカドウカト云フ御質問ダッタカト思ヒマスルガ、左樣デアリマシ
タラウト思ヒマス、是ハ十分ニ調査ヲ致シマシタ上尙ホ或ハ改メテ御答ヲス
ルカモ知レマセヌガ、一覽イタシマシタ所デハ餘リ例ガナイヤウニ考ヘテ居
リマス、左樣御承知ヲ願ヒマス、第四ノ御質問ハ、戒嚴令ヲ改正スル意見ガ政
府ニアルカドウカト云フコトダッタラウト思ヒマスル、戒嚴令ノ甚ダ古イモ
ンデアルト云フコトハ御承知ノ通リデアリマス、從ッテ或ル規定中、多少ノ不
完全ナル所モアラウカト思ヒマスルガ、政府ト致シマシテ、之ヲ改正スルト
云フ意見ヲ定メマシテ調査ヲ始メタト云フヤウナコトハマダ無イノデコザイ
ママ、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=65
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066・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第二ノ件ニ付キマシテ發言ノ通〓ガゴザイ
やく、發言ヲ許サウト思ヒマス、花井卓藏君
〔花井卓藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=66
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067・花井卓藏
○花井卓藏君 私ハ政府ガ非常時ニ際シマシテ法律ニ代ルベキ非常命令ヲ發
セラレ、公共ノ安全ヲ保ツガ爲ニ、又其災厄ヲ豫防救濟スルガ爲ニ幾多ノ緊
急勅令ヲ發セラレタルコトニ對シマシテ之ヲ諒トシ、寧ロ之ヲ多トシ、憲法
第八條ノ要件ニ適合セルコトヲ認メマシテ其責任ヲ解除スル理由ノ下ニ承諾
ヲ與ヘタイノデアリマス、而シテ今尙ホ人心安定ニ歸セズ、私ハ最モ憐レナ
ル罹災者ノ一人デゴザイマスルガ、試ニ夜陰東京市街ヲ來往イタシマシタナ
ラバ、實ニ陰森ノ氣ハ人ヲ襲フノ〓ガアルノデアリマス、決シテ復興ノ氣分
ガ充チ滿チテ居ルト云フヤウナ狀態デハナイノデゴザイマス、非常時ノ延長
ノ心得ヲ以テ公共ノ安全ヲ保ツノ要ハ益〓切ナルモノアリト感ジテ居ルノデ
アリマス、卽チ將來ニ向ッテ尙且ツ此勅令ノ効力ヲ持續スルノ必要アルコト
ヲ認ムルノデアリマス、此理由ニ於テモ承諾ヲ與ヘタイト存ズルノデアリマ
ス、承諾ヲ與フルノ理由ハ斯ノ如ク責仕ノ解除、効力ノ持續、此二ツニアル
ノデゴサリマスルケレドモ、私ハ最モ强キ意味ニ於キマシテ責任解除ノ見地
ヨリ承諾ヲ與ヘタイノデアリマス、憲法第八條ヲ以テ政治上、大臣問責ノ規定
ナリト解スルヲ相當ナリト認ムル者デアリマス、然ルニ政府提案ノ理由ヲ見
マスルト、此勅令ハ將來尙ホ其効力ヲ有セシムルノ必要アリ、依テ帝國憲法
第八條第二項ノ命ズル所ニ從ヒ帝國議會ノ承諾ヲ求ムル爲玆ニ之ヲ提出ス、
斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマス、其用例ハ何レノ:時ヨリ始ッタノカ
存ジマセヌガ、勿論有ルノデアリマス、併ナガラ能ク注意シテ此文章ヲ味ツ
テ見マスルト、將來効力ヲ有セシメルノ必要アリ故ニ提出ス、斯ウナルノデ
アリマス、然ラバ將來効力ヲ有セシムルノ必要ナシ、故ニ提出セズト云フ結
論ニ相成ラナケレバナラヌノデアリマス、私ハ此理由ニ對シテ多大ノ疑ヲ多
年抱イテ居ルノデアリマス、帝國議會ハ議會ノ有スル當然ノ權利トシテ大臣
問責ノ根本則ニ立脚イタシマシテ、審査ノ權ヲ行ヒ監督ノ權ヲ行ヒ得ベキコ
トヲ認メナケレバナラヌコトデアラウト思フノデアリマス、憲法第八條第一
項ニハ「天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由
リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルベキ勅令ヲ發ス」斯ノ如クニ規定セ
ラレテゴザリマシテ、其第二項ニ於キマシテ「此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國
議會ニ提出スベシ」、斯樣ニ規定セラレテアルノデアリマス、全ク絕對的ノ規
定デアリマス、將來効力ヲ有セシムルノ必要アル場合ノミニ限リ提出スベシ
トハ書イテナイノデアリマス、必ズ提出スベシト書イテアルノデアリマス、
況ヤ其必要ナキトキハ之ヲ議會ニ提出スルコトヲナサズ、恣ニ之ヲ廢止ス
ルノ緊急勅令ヲ發シ、是亦議會ノ審査ヲ求ムルコトヲ爲サズ、全ク立法府ト
沒交涉タラシムルガ如キ規定ハ憲法ノ條章ニ於テハ發見スルコトハ出來ナイ
ノデアリマスヽ此勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スベシ、必ズ提出セ
ザルベカラザルノ規定デアリマス、之ヲ憲法ノ精神解釋ニ求メマスレバ能ク
解ルノデアリマス、憲法第五條ニ「天皇ハ帝國議會ノ協賛ヲ以テ立法權ヲ行
フ」ト規定サレテアリマス、憲法第五條ノ規定、唯今朗讀イタシマシタル規
定、之ヲ更ニ第六條ノ規定、第三十七條ノ規定ニ照シ合ハセテ味ハッテ見マス
レバ、憲法ノ精神ハ極メテ能ク解ルノデアリマス、立法權竝ニ法律ノ本質ガ
此三條ニ依リテ明カニ規定サレテアルノデアリマス、不可分關係ニ於テ、第五
條、第六條、第三十七條ヲ讀ムヲ要ス、立法權ト云ヒ、法律ト云ヒ、何レモ
天皇ノ意思ト議會ノ意思トノ結晶ニ成ルモノデアリマス、緊急勅令ハ或場合
ニ於キマシテ議會閉會中、政府ガ一時的ニ假リノ法律ヲ作リ、變例的ニ立法
權ヲ行フノデアリマスルガ故ニ、議會ノ承諾ヲ經ズシテ自ラ隨意ニ改廢スル
ノ自由ハアルベキ道理ノモノデナイト固ク信ズルモノデアリマス、政府ハ天
皇、議會以上ニ立法權ニ關シマシテ優越ナル權能ヲ有シテ居ルノデハゴザリ
マセヌ、是ハ憲法ノ法理論バカリヨリ立論ヲ致サイデモ單ナル政治論ト致シ
マシテモ心得ベキコトデハナイカト信ズルノデアリマシテ、抑〓立法權ノ行
使ハ常ニ必ズ議會ノ協贊ニ俟タネバナラヌト云フコトハ申ス迄モナキコトデ
ゴザイマス、唯非常時ニ於キマシテ天災地變或ハ戰亂其他ノ災害アル場合
ニ限リマシテ、公共ノ安全ヲ保ツノ必要上、災厄ヲ豫防救濟スルノ必要上、
國家自ラ國家ヲ守リ、又ハ國家其國民ヲ保護スル上ニ於キマシテ、議會ノ閉
會中、法律ニ代ハルベキ勅令ヲ發スルノ除外例ヲ許シタルニ過ギナイノデ、
立法協賛ノ權ハ憲法ノ議會ニ授ケタル重大ナル權利デアリマス、緊急勅令ハ
或場合ニ於キマシテ政府責ヲ取リテ、議會ノ有スル立法權ヲ代リテ行フ所ノ
モノデアリマス、卽チ議會開クルノ曉ニ於テハ、之ヲ議會ニ提出シテ承諾ヲ
求ムルハ立法權帝國議會ニ在リト云フ一語ヲ味ヘバ、極メテ能ク解リ得ルノ
デアリマス、甚ダ朗讀ヲ致スト云フコトハ御迷惑デアラウト存ジマスルガ、
論旨ヲ强ク證明スルガ爲ニ、短ク伊藤公ノ憲法義解ノ一齣ヲ朗讀イタシテ見
タイト思ヒマス、第八條ノ說明トシテ斯樣ニ認メラレテ居リマス、「第五條ニ
於テ立法權ノ行用ハ議會ノ協賛ヲ經ト云ヘルハ其常ヲ示スナリ、本條」是ハ
八條デアリマス、「本條ニ勅令ヲ以テ法律ニ代フルコトヲ許スハ緊急時機ノ爲
ニ除外例ヲ示スナリ是ヲ緊急命令ノ權トス、抑〓緊急命令ノ權ハ憲法ノ許ス
所ニシテ又憲法ノ尤モ濫用ヲ戒ムル所ナリ憲法ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ災
厄ヲ避クル爲ノ緊急ナル必要ニ限リ此特權ヲ用キルコトヲ許シ而シテ利益ヲ
保護シ幸福ヲ增進スルノ通常ノ理由ニ因リ之ヲ濫用スルコトヲ許サス、故
緊急命令ハ其ノ之ヲ發スルニ當テ本條ニ準據スルコトヲ宣告スルヲ式トスヘ
キナリ若政府ニシテ此特權ニ託シ容易ニ議會ノ公議ヲ囘避スルノ方便トシテ
又以テ容易ニ既定ノ法律ヲ破壞スルニ至ルコトアラハ憲法ノ條規ハ又空文ニ
歸シ一モ臣民ノ爲ニ保障ヲ爲スコト能ハサラムトス故ニ本條ハ又議會ヲ以テ
此特權ノ監督者タラシメ緊急命令ヲ事後ニ檢査シテ之ヲ承諾セシムヘキコト
ヲ定メタリ」議會ヲ以テ此特權ノ監督者タラシメ緊急命令ヲ事後ニ於テ檢査
シ之ヲ承諾スベキコトヲ定メタリ、斯樣ニ書イテアリマス、第八條第二項ノ絕
對規定デアルト云フコトヲ述ベラレテ居リマス、將來ニ効力ヲ有セシムル必
要アラバ提出スベシト云フガ如キコトハ申サレテ居ラヌノデアリマス、更ニ
此問題ニ對スル責任論ガ述ベラレテ居リマス曰ク「此勅令ニシテ政府若次ノ
會期ニ於テ之ヲ議會ニ提出セサルトキ或ハ議會其承諾ヲ拒ムノ後政府ニ於テ
仍廢止ノ令ヲ發セサルトキハ如何、曰政府ハ憲法違反ノ責ヲ負フヘキナリ」
ト斯樣ニ明瞭ニ述べラレテアリマス、此勅令ニシテ政府若シ次ノ會期ニ於テ
議會ニ提出セザルトキハ如何、答ヘテ曰ク政府ハ憲法違反ノ責ヲ負フベキナ
リ、明瞭ニ伊藤公ノ憲法義解ニハ認メラレテアリマス、理義至ッテ明白デア
リマス、伊藤公ハ憲法ノ法理論ヲ爲ス上ニ於テハ憲法ノ起草者デアルト云フ
コトヲ我〓ハ記憶ヒムケレバナラヌ、又伊藤公ハ政治論ヲ爲ス場合ニ於テハ
我モ人モ許シタ所ノ大政治家デアリシコトヲ記憶セネバナラヌノデアル、憲
法ノ精神ヲ窺フニ於キマシテ、ヨリ以上ノ權威ハアルマイカト私ハ存ジテ居
ルノデアル、曾テ當院ニ席ヲ有セラレマシタル一木博士モ憲法學者ニシテ又
政治家デアル、其所見異ルナシデアリマス、憲法第八條ハ唯今申述ベ、且ツ
之ヲ證明イタシマシタル通リ憲法第五條ノ除外例デアリマス、帝國議會ノ有
スル立法協賛ノ權ハ正則デアル、而シテ常道デアリマス、政府ノ或場合ニ有
スル法律ニ代ルベキ緊急勅令ヲ發布スルノ權ハ變則デアリマス、常道デナイ
ノデアル、議會ガ此際、除外例······第五條ノ除外例、卽チ變則的立法行爲ヲ
事後ニ於テ審査シ、或ハ承諾ヲ與ヘ、或ハ承諾ヲ與ヘザル決定ヲ爲スコトハ
當然ノ權利、憲法ノ議會ニ授ケタル所ノ重大ナル權利ナリト信ジテ居リマス、
故ニ政府自ラ進ンデ之ヲ提出シテ承諾ヲ求ムル所以ハ、主トシテ責任ノ解除
ヲ求ムル所以ナリト解釋スルヲ以テ憲法ノ條規ニ適フモノト信ジマス、理由
書ノ要領ハ先程申上ゲマシタ通リデゴザイマスルガ、憲法ハ其精神的解釋ト
シテ、其理論解釋トシテ、自ラナル責任解除ヲ求ムル趣旨ヲ示シテ居ルノデ
アリマス先日ノ會議ニ於キマシテ質問ヲ致シマシタル所、反對論モ强イ根
據ガアルコトヲ申サレマシタ、私ハ後レテ參リマシテ詳細ナル御答ヲ得ルノ
機會ヲ得ナカッタノデアリマス、退イテ速記錄ヲ見マスレバ、何モ强イ理由
ノアルコトヲ私ニハ見出スコトガ出來ナカッタノデアリマス、反對論者ト雖
モ、之ヲ議會ニ提出シテ責任ノ解除ヲ求ムルト云フコトガ憲法違反デアルト
マデ强イ論ヲ爲スモノハ一人モナイノデアリマス、此問題ハ政府一タビ誤リ
タルガ爲ニ、累ヲ憲法史上ニ貽スモノナリトマデ本員ハ信ジテ居リマスケレ
ドモ、ソレハ先ヅ姑ク措キマシテ、政府ガ此問題ニ關シテ一方ナラザル苦シ
ミヲ爲シタト云フコトハ此問題起ル每ニ政府ガ或ハ答辯ヲ避ケムトシ、或ハ
答辯ノ核心ニ觸レザラムコトニ努メタル事實ハ、是ハ申スマデモナク諸君ノ
御了承ノ通リデアリマス、會期前一日ニ答辯ヲ爲シタルコトガアル、以テ再
質問ヲ遮ッタト云フ事實モアル、或ハ答辯ヲナサズシテ會期ノ終了ヲ〓ゲタ
ト云フ時モアル、强イ理由ガアル、先例ニ基クガ至當デアル、斯樣ニ輕々ニ
申サレマシタガ、併ナガラ日本ノ憲法史上ニ於テ議會史上ニ於キマシテハ其
樣ニ申サレル程ノ迹ハ殘シテ居ラヌノデアル、相當ニ苦シンデ居ル、否、非常
ニ苦シンデ居ルノデアル、改メテ申シマス、政府ハ名ヲ緊急勅令ニ藉リテ帝
國議會ノ協賛ニ依ラズシテ、自ラ獨立シテ立法行爲ヲ爲シ得ベキ權能ハ斷ジ
テナイノデアリマス、議會ヲ眼中ニ置カザル政府權力ノ立法行爲ナルモノハ
ナイノデアリマス、而シテ其將來ニ於ケル効力ノ持續如何ヲ政府ノ自由裁量
ト爲シテ、政府ノ見ル所ニ委セテ、之ヲ提出スル、之ヲ提出セズト云フ取捨權
ヲ政府ガ有スル規定ハ憲法ニハ無イノデアリマス、有リ得ベキ筈ガナイノデ
アリマス、第二項ハ次ノ會期ニ提出スベシ、絕對的ノ規定デアル、理由書ノ
要領カラガ私ハ憲法ノ理義ヲ沒却イタシテ居ルモノト信ズルノデアリマス、
私ハ此機會ニ於テ更ニ一言ヲ添ヘテ置キタイト思ヒマス、立憲的政治家ハ憲
法ニ對スル德義的責任ノ輕カラザルコトヲ思ハナケレバナラヌト思フノデア
リマス、條規ノ有無ニ拘ラズ、當然議會ノ有スル權能ヲ時ノ必要上、場合ノ
必要上、自ラ代リテ行使シタル以上ハ進ンデ議會ニ其批判ヲ求ムル、其審査
ヲ受クル、此覺悟ト責任觀ハ規定ノ有無ニ拘ラズ有ツベキガ立憲五政治家ノ
憲法ニ對スル德義的觀念デハアルマイカト思フノデアリマス、況ヤ之ヲ憲法
ノ法文ニ依ッテ見ルモ、之ヲ憲法ノ精神解釋ニ求ムルモ、之ヲ憲法起草者ノ意
見ニ徵スルモ、一點疑ナキコトデアリマス、昔一派ノ學者ガアリマシテ今モ流
ヲ汲ム者ガアリマス、先例ノ源ハ此處ニアルノデアル、而シテ此先例ト名ヅケ
ラルル所ノモノハ抑〓何レノ時ニ於テ起リタルモノデアルカト、之ヲ調ベテ
見マスルト、議會開カレテ四年目卽チ明治二十七年デアリマス、「新聞雜誌及
其ノ他ノ出版物ニ關スル件、」是ガ先例ノ元祖デアリマス、議會開カレテ僅ニ
四年、憲法問題ノ議會ニ於テ寧ロ閑却セラレシ時代ト申シテモ宜シイ時ニ係ッ
テ居ルノデアリマス、而シテ二十九年、三十二年、三十八年、三十九年、何
等ノ進境ヲ見ルコトナクシテ、先例ノ蔭ニ隱レテ今日ニ及ビタル歴史ヲ有ッテ
居リマス、併ナガラ是ガ唯一ノ先例カト申セバ、サウデハナイノデアリマス、
時ニ或ハ大臣問責ノ根本則ニ基キマシテ責任解除ノ主義ヲ以テ承諾ヲ與ヘ、
而シテ之ヲ了シタル政府モアッタノデアリマス、明治三十七年勅令第百七十
號······百七十七號「外國ニ於テノミ流通スル硬貨、紙幣、銀行劵、帝國官府
發行ノ證劵ノ僞造變造ニ關スル件」、同年勅令第二百二十五號「俘虜ノ處罰ニ
關スル件」明治四十三年勅令第三百二十四號「朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ關ス
ル件」、此三種ノ緊急勅令ニ關シマシテハ、政府ハ議會ガ責任解除ノ主義ニ於
テ承諾ヲ與ヘタルニ滿足ヲ致シテ居ルノデアリマス、而シテ將來尙ホ効力ヲ
持續スルノ必要アルコトヲ認メタノデゴザイマスルケレドモ、立法ノ常道、
立法ノ正則ト云フモノハ重ンゼネバナラヌト云フノデ、衆議院提出ニ係ル同
一內容ヲ有スル法律ニ同意ヲ表シマシテ、此緊急勅令ハ之ヲ廢止シタノデア
リマス、此法律案ニハ貴族院ニ於テモ贊成セラレテ居ルノデアリマス、明治
三十八年法律第六十六號、同年法律第三十八號、明治四十四年法律第三十號、
又往年衆議院ニ於キマシテ滿場一致ヲ以テ緊急勅令提出ノ院議ヲ決シタル事
例モアリマス、是ハ責任解除主義ノ精神ヲ能ク政府ガ酌ミ取ッタト云フコト
ヲ例證スル所ノ誠ニ生キタル證據ト申シテモ宜シイノデアリマス、立法協賛
ノ權ハ議會ノ有スル重大ナル權利デアルト云フコトハ繰返シテ申上ゲル必要
ハゴザイマセヌ、立法上政府權力ノ偏重ト云フコトヲ認ムルコトハ、私ハ一
ツノ憲法政治ノ破壞ト申シテモ穩健ヲ缺ク言葉トハ思ハヌノデアリマス、伊
藤公ノ申サルル通リ、議會ハ緊急勅令ニ付キマシテハ事後ニ於テ嚴重ナル審
査ヲ遂ゲ、而シテ其監督者タル任務ヲ果サネバナラヌモノト信ズルノデアリ
マス、故ニ本員ハ結論ニ於テ此勅令ニ承諾ヲ與フルノデゴザリマスルケレド
モ、委員會ニ於テ委員諸君ガ最モ鄭重ナル審査ヲ遂ゲラレテ、憲法ノ要求ス
ル條件ヲ充シタルコトヲ認メラレテ、玆ニ御報告ニ相成ッタコトデゴザイマ
スルカラシテ、之ニ信賴イタシマシテ政府ノ執リタル除外例ノ立法行爲ヲ爲
シタル特權ニ對シテ、其特權ヲ行使シタルコトニ對シテ、其責任ヲ解除スル、
且ツ將來ニ向ッテ効力持續ノ必要アルガ故ニ問題ノ勅令ニ承諾ヲ致スト云フ
コトノ意思ヲ明カニ致シタイノデアリマス、私ハ此機會ニ於テ政府ハ從來用
ヰ來ラレタル提出理由ニ關スル用例、文例ト云フモノヲ改メラルル必要ハア
リハシナイカト云フコトヲ申添ヘテ置キマス、終リニ臨ミマシテ一言イタシ
マス、議會ガ開カレマシテ以來、憲法第八條ニ基イテ緊急勅令ヲ發セラレタル
モノハ明治二十四年ヨリ大正十年ニ至リマスルマデニ五十件アリマス、三
十幾年間ニ五十件アリマス、內、、議會ノ承諾ヲ得ルガ爲ニ提出セラレタルモノ
ガ四十件アリマス、承諾ヲ得タルモノモアリマス、得ザルモノモアリマス、
或ハ議會解散等ノ爲ニ承諾ヲ得ルニ至ラナカッタモノモアリマス、承諾ヲ得
ザリシモノ、承諾ヲ得ルニ至ラザリシモノハ總テ將來ニ向ッテ効力ヲ失フベ
キコトヲ公布セラレマシタ、而シテ其承諾ヲ與ヘタル理由ニ至リマシテハ提
出ノ理由トハ全ク反對デゴザイマシテ、議會ハ就中、衆議院ハ其總テノ場合
ニ於テ一面ニ於テ責任ノ解除ヲ意味シ、一面ニ於テ將來ニ向ッテ、効力ヲ持
續スベキコトノ必要ヲ意味イタシテ居ルノデアリマス、而シテ五十件中、四
十件提出セラレ、殘リノ十件ハ議會ニ提出セラレナイ、卽チ承諾ヲ求メザル
モノニ係ルノデアリマス、所謂緊急勅令ヲ以テ緊急勅令ヲ廢止シタル本勅令
及其廢止勅令ガ此十件ノ中ニアルノデアリマス、此十件ト唯今政府ニ質問イ
タシマシタル通リ、其答ノ通リ戒嚴令施行ニ關スル緊急勅令、之ヲ廢止スル
ノ緊急勅令外一件ガ議會ニ提出セラレズシテ、卽チ議會ノ審査ヲ求メラレザ
リシ所ノモノニ係ルノデアリマス、而シテ之ヲ提出セザル理由ヲ問ヘバ、曰
ク先例アリ、强キ論據アリト、斯ウ申スノデアリマス、然レドモ先例ハ二ツ
アル、卽チ先程說明イタシマシタル通リ二ツアル、政府者ノ見ル先例モアレ
パ、本員ノ解スル先例モアル、强キ論據、强キ論據ハ如何ナル論據デアルカ、其
論據ハ本員承ハル機會ヲ得ズ、速記錄ニ依リマシテモ、强キ論據トナルモノ
ハ發見スルコトヲ得ナイノデアリマス、先例ハ明治二十七年ガ初マリ、反對ノ
理論的根據ハ憲法ノ解釋ニ求メテ之ヲ得ベカラズ、斯ノ如キ理論關係ハ姑ク
措キマシテ、政治論トシテ尙且ツ之ヲ固守スル、私ハ政府ノ態度ニ甚シキ遺
憾ヲ禁ズル能ハザルモノデアリマス、法制局長官ハ、凡ソ政府ハ施政百般ノ
コトニ付テ責任ヲ負フ、故ニ之ヲ提出セズト雖モ上奏ノ途アルニアラズヤ、
決議ノ途アルニアラズヤ、之ニ依ヲテ責任ヲ問フノ方法ハ盡サレテ居ルデハナ
イカ、斯樣ニ申サレタヤウニ覺エテ居リマス、然レドモ是ハ單ナル行政監督
ノ權ヲ議會ハ行フノトハ違フノデ、憲法第五條、第六條、第三十七條ヲ合セテ
解釋ヲ致シマシタナラバ、天皇ノ意思ト議會ノ意思トノ結晶ガ卽チ立法權ニ
ナルノデアリマスカラ、純然タル憲法ノ條規ニ待ツベキモノ、憲法ノ條規ニ
基イテ責任ヲ問フベキモノアルハ一點モ疑ハ無イノデアル、憲法ヲ外ニシテ
憲法範圍外ノ問題ナリトシテ、單ナル行政事項ト同ジヤウニ心得テ其非違ヲ
糾スニ於テ上奏ノ途アリ、決議ノ途アリト言ハルルニ至リマシテハ、餘リニ
此問題ヲ輕視セラレテ居ルノデハアルマイカ、換言スレバ、議會ノ有スル立
法協賛ノ權ヲ輕ク見ラレテ居ルノデハアルマイカト本員ハ痛切ニ感ズルノデ
アリマス、憲法ハ提出セヨト命ジテ居リマス、承諾ヲ求メヨト命ジテ居リマ
ス、其取捨ヲ政府ノ自由ニハ委シテ居リマセヌ、議會ハ其勅令ヲ目的物トシ
テ審査ヲ遂ゲ、諾否ヲ決スルノ權利ヲ有ッテ居ルノデアリマス、審査スベキ
目的物ハ其提出ヲ拒ンデ、其目的物ノ審査ハ吾之ヲ提出セズト雖モ汝自カラ
之ヲ爲セ、汝自カラ責任ヲ問ヘ、吾關セズ焉、斯ウ云フ主義デ緊急勅令ニ對
スル反對ノ强イ論據ナリト申サルルコトデゴザリマシタナラバ、私ハ遺憾ナ
ガラ之ヲ强イト申サルルガ、其强イト云フ言葉ノ中ニ極メテ弱イ意味ヲ自ラ
言明セラルルモノデアラウト味ッテ解シタイヤウナ心持ガ致シマス、殊ニ斯
ノ如キノ說明ハ議會ニ於テ稀ニ聞ク所······ト云フ言葉デハ徹底イタシマセヌ
ノデ、未ダ曾テ聞カザル所ノ言ナリトマデ私ハ申シテ見タイヤウナ氣持モ致
スノデゴザイマス、私ハ甚ダ惜ムノデアル、戒嚴令施行ニ關スル件ノ如キニ
至リマシテハ、誠ニ當時ノ情勢トシテ宜シキヲ得タルモノデアリマシテ、之
ニ依リマシテ、帝都ノ安定ト云フモノハ保チ得ラレタノデアリマス、而シテ
又之ヲ廢止セラレシ場合ニ於キマシテハ、家宅ノ搜索ノ件ヲ自由ニ行フ、或
ハ言論文章ノ自由ヲ濫ニ壓迫スル、今ハ其時ニアラズト云フノ場合ニ際會シ
タルガ之ヲ廢止セラレタ、是モ廢止ノ理由ハアルノデアリマス、帝國議會ハ
此本勅令廢止勅令、孰レモ歡迎シテ其責任ヲ解除スベキコトヲ一點疑ヒアル
ベカラズト信ズルノデアリマス、然ルニ是ハ政治論トシテハ或ハ提出スベキ
ガ相當デアッタカ知ラナイガ、法理論トシテハ提出スルヲ要シナイト云フノ
デ、政治家ガ憲法的、德義的責任ノ觀念ノ理論ニ隱レテ、政治ノ方面ニ重キ
ヲ置カレナイト云フコトニ見マシテモ私ハ遺憾禁ズベカラザルモノガアリマ
ス、況ヤ質問ノ際ニモ申述ベタル如ク、勿論、今ノ政府ト申スノデハゴザイマ
セヌ、今日マデノ政府ト申スノデハゴザイマセヌガ、緊急勅令濫發ノ傾向ト
云フモノガ盛ンニ相成リマシテ、議院ニ於テ否決セラレタル所ノ法律ハ四月
一日ヲ以テ緊急勅令ヲ發スル、而シテ十二月二十五日議會ノ召集セラレル前
ニ於テハ直チニ之ヲ廢止スル、而シテ議會ニ之ヲ提出シナイ、審査ヲ求メ
ナイ、承諾ヲ得ナイト云フ流風ニシテ起リ來リマシタナラバ、私ハ由々シキ
大事ナリト申サヌケレバナラヌノデアリマス、斯ノ如キコトハ萬無イコトデ
アラウト存ジマスルガ、憲法ノ條章ヲ完全ニ永久ニ疑義ノナイヤウニ、運用
ノ上ニ於テ立憲的ナラシムルヤウニ先例ヲ作ルコトニシタイト云フノガ最モ
必要ノコトデハアルマイカト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、私ハ今次ノ事變
ニ際シマシテ政府ガ變例的立法行爲ヲ執リタル、其特權行使ニ付キマシテハ
相當ナル理由ノアルモノデアッテ、故ニ承諾ヲ與ヘテ其責任ヲ解除スルノデア
ル、此意思ヲ表明イタシマシテ、問題ニ相成ッテ居リマス所ノ幾多ノ勅令ニ
贊意ヲ表スルモノデアリマス
〔政府委員松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=67
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068・松本烝治
○政府委員(松本烝治君) 唯今、花井君カラ滔々數萬言ノ御議論ガゴザイマ
シタ、私ハ之ニ對シテ駁論ヲシヤウトハ思ヒマセヌ、若シ之ヲ學說ノ討論ト致
シマシテハ、日ヲ重ネテモ果テシナイダラウト思ヒマス、此議場ヲ以テ學說
ノ討論場トスルダケノ考ハ毫モゴザイマセヌ、唯二ツノ事實ダケヲ申述べマ
ス、一ツハ花井君ガ擧ゲラレマシタ緊急勅令ヲ議會ニ提出セズト云フ最初ノ
俑ヲ作ッタ者、卽チ明治二十七年ノ勅令第三十四號及同年ノ勅令第百六十七
號ノ不提出ト云フコトニ起リマシタ、私ノ記憶ニシテ誤ラザレバ伊藤內閣ノ
時デアッタカト思ヒマス、憲法義解ノ著述ハ恐ラク其前デアッタカト思ヒマ
ろ、惟フニ憲法義解ノ著述後ニ於カレマシテ、十分考慮セラレタ結果、說ヲ
變ゼラレタノデハナイカト考ヘマス、併シ私ハ之ニ付キマシテ、唯單純ナル
記憶デ伊藤內閣デアルト思フダケデゴザイマス、若シ誤リガアリマシタナラ
バ其罪ヲ謝スル外ナイノデアリマス、併シ氣付キマシタカラ一言イタシマス、
今一ツハ花井君ハ第二十六議會ニ於ケル衆議院ノ決議ナルモノヲ擧ゲテ一ツ
ノ先例トシテ御話ニナッタカト思ヒマスルガ、是ハ今囘ノ場合トハ全ク異ル
ノデアリマス、法律ヲ廢止シタ所ノ緊急勅令ヲ議會ニ提出セザリシ場合ニ於
テ之ヲ提出スベシト決議シタノデアリマス、當時ノ提案者鳩山和夫氏ノ演說
ヲ讀ミマスルト、其意味タル法律ヲ廢止シタル所ノ緊急勅令ハ、若シ議會ノ
承諾ヲ得ナイ場合ニ於テハ法律ハ復活ノ效ヲ生ズルノデアル、卽チ此緊急勅
令タルヤ、將來ニ効力ヲ保續スルタメ承諾ヲ要スルモノデアル、故ニ之ヲ議
會ニ提出シナケレバナラヌト云フヤウニ述ベラレテ居ルノデアリマス、必要
アレバ其演說ハ朗讀シテ宜シイ當時ノ材料ヲ持ッテ居リマスガ、是ハ空シク
時間ヲ空費スルノデアリマスカラ私ハ之ヲ省キマス、併シ其意味ハ極メテ明
カニナッテ居リマス、唯花井君ハ當時贊成演說ヲ致サレテ居リマス、賛成演
說者タル花井君ノ御趣旨ハ唯〓御述べニナッタヤウデアルカモ存ジマセヌガ、
又サウ考ヘテ御述べニナッタカモ知レマセヌガ、其決議タルヤ、其趣旨ハ提案
者ノ演說ニ基イタモノダラウト考ヘテ居リマス、今囘ノ場合トハ全然場合ヲ
異ニスルノデアリマス、此二ツノ事實ダケヲ申上ゲテ置キマス
〔花井卓藏君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=68
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069・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 花井君ニ御尋ネシマスガ、ドウ云フコトニ付テ
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=69
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070・花井卓藏
○花井卓藏君 事實ヲ說明イタシタイト思ヒマス、唯今、政府委員ノ御說明
ニナリマシタル點ニ付キマシテ再ビ演說ヲナスノデハゴザイマセヌ、衆議院
ニ於ケル事實ヲ明カニ致シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=70
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071・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 花井君ニ申上ゲマスガ、御承知ノ通リ本院規則
第九十四條ニ「發言二囘ニ及フコトヲ得ス但シ質疑應答又ハ注意ノ喚起ハ此
ノ限ニ在ラス」ト云フコトガアリマスカラ、此範圍內デ御尋ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=71
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072・花井卓藏
○花井卓藏君 其意味デ陳述イタス積リデアリマス、唯今松本君ノ御引例ニ
ナリマシタ衆議院ノ決議ハ松本君ノ申サルル通リデアリマス、緊急勅令ヲ以
テ法律ヲ廢止シタル所ノモノニ對スル決議案デアリマス、本員ノ見ル所デハ
緊急勅令ヲ以テ法律ヲ廢止スルノモ、緊急勅令ヲ以テ緊急勅令ヲ廢止スルノ
モ、理論的實際的見地ノ上ニ立チマシテハ價値ハ同ジデアル、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、當時本員ノ爲セシ演說ヲ能ク御味ヒ下サイマシタナラバ
分ルデアラウト思ヒマス、法律ヲ······緊急勅令ヲ以テ法律ヲ廢止スルト云フ
コトト、緊急勅令ヲ以テ法律ニ代ルベキ假リノ法律ヲ作ッタト云フコトト、觀
念ノ價値ニ於テハ、價値ニ何等ノ變ルベキデナイト云フコトヲ御諒承ヲ得タ
イト思フ、而シテ學理的ノ討論トスレバ言フベキコト多シト申サレマシタケ
レドモ、本員ハ憲法ノ條規ヨリモ議論ヲナシ、且又單ナル政治的見地ヨリモ議
論ヲナシタノデアリマシテ、之ヲ以テ單ナル學術上ノ問題ナリトスルガ如キ
閑事業トハ心得テ居ラヌノデアル、是等ノ點ニ付キマシテ若シ松本君ニシテ
御了解ヲナサッタナラバ、更ニ一段ノ說明ガアルベキ筈デアラウト思フノデア
リマス、貴族院規則ニ基キマシテ此邊ノ注意ノ喚起ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=72
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073・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 唯今議題ニ供シテ居リマスノハ日程ノ第二デア
リマス、先ヅ日程ノ第二ニ付テ採決ヲ致シマス、大正十二年勅令第四百九號
ニ對シマシテ承諾ヲ與へテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=73
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074・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=74
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075・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 次ニ日程第三ヲ問題ニ供シマス、大正十二年勅
令第四百三號ニ對シマシテ承諾ヲ與ヘテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=75
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076・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス
元発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=76
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077・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第四、第五ハ束ネテ委員長ノ報告ヲ煩ハシ
テ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=77
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078・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=78
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079・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 日程第四、大正十二年勅令第四百七十一號承諾
ヲ求ムル件、第五、大正十二年勅令第四百七十五號承諧ヲ求ムル件、會議、
委員長報告、松浦伯爵
大正十二年勅令第四百七十一號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年十二月十五日
右特別委員長
伯爵松浦厚
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十二年勅令第四百七十五號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十二年十二月十五日
右特別委員長
伯爵松浦厚
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵松浦厚君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=79
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080・松浦厚
○伯爵松浦厚君 大正十二年勅令第四百七十一號竝ニ大正十二年勅令第四百
七十五號、之ヲ含メテ委員會ニ付キマシテノ經過、會議ノ結果ヲ御報告イタシ
や 、去ヌル十五日ニ正副委員長ノ選擧ヲ終リマシテ、政府委員ノ說明ヲ請
ヒ、政府委員ニ向ヒマシテ委員ハ質問ヲシ討議ヲ致シマシタ、愼重審議ヲ
重ネマシテ、此兩案共ニ承諾ヲ與フルモノト可決イタシマシタ次第デアリマ
ス、抑〓此勅令第四百七十一號ハ、卽チ此度ノ震災ニ因リマシテ、株主名簿
ヲ失ヒマシタル會社ニ付キマシテ、株主總會ヲ招集スルト云フコトニ關シマ
スコトガ供題トナリマシタニ依リマシテ、其必要上、此勅令ヲ公布イタシタ
次第デアリマス、各會社ノ株主總會ハ、御承知ノ如ク大〓十一月、十二月ノ
交ニアリマスノデアリマスケレドモ、此度ハ斯ノ如キ大震災、大火災ガコザ
イマシタ結果、此株主モ······速ニ株主總會ヲ開カナケレバナラヌ會社モアル
ダラウト思ヒマスガ故ニ、此便宜上、斯ノ如キ此勅令ノ發セラレタ譯デアリ
〒一、此株主總會ヲ開キマスコトニ付キマシテハ、結果色〓之ニ關係ヲ致ス
コトガアルデアラウ、併ナガラ此度ノ勅令ト云フモノハ、卽チ其處マデ深入
リシテ此株主總會ヲ開クト云フコトヲ許シタ譯デハナイ、唯此度ノ震災ノ結
果、名簿ヲ失ッテ居ルニ付テハ無記名ノモノトシテ之ヲ公〓シテ、廣ク總會
ニ於テ、此事ヲ圓滿妥協ノ上ニ計ラウト云フダケデ、此法律ノ上ニ於キマシ
テハ、其總會ノ以外ニ付テ廣キ權威ヲ有ッテ居ル譯デハナイノデアル、斯ウ
云フ說明デゴザイマシタ、ソレカラ致シマシテ此質問應答ノ上ニ二三申上ゲ
タイト考ヘマスガ、卽テ此震災ノ結果、名簿ノ燒ケタ所ノモノハ凡ソドレ位
ノ會社ガアルカト云フ質問ガゴザイマシタ、東京橫濱ニ亙リマシテ、凡ソ百
社バカリアルダラウト云フコトデゴザイマシタ、ソレカラ今度ノ所謂此法律
ヲ發布イタスコトニ付キマシテハ、卽チ商法ノ關係デアリマシテ、卽チ第百
五十六條、百六十一條、百六十三條、二百條、二百十三條等ノ關係ガゴザイ
マスカラ、ドウシテモ此度此勅令ヲ公布イタサヌ以上ニハ、此無記名ニ對ス
ル所ノ總會ヲ開クコトガ出來ナイト云フ譯デ、ココニ參ッタ次第デアルト云
フコトデゴザイマシタ、ソレカラ質問ノ中ニ、又若シヤ此無記名ノ公告ヲシ
タ上デ、或ハ會社ニハ其無記名ノ帳簿ガ······記名ノ帳簿ガ無イニシテモ、株
主タル者ガ記名ノ證書等ノモノヲ持ッテ居ッタナラバ、ドウデアルカト云フヤ
ウナ質問ガゴザイマシタ、是ハ一タビ此無記名トシテ公告シタ以上ハ、其株
主ガ證書アルト無キトニ拘ラズ、同ジク無記名者ト考ヘテ總會ニ出席シタ上
デ之ヲ明カニスレバ宜シイノデ、再ビソレニ記名者トシテ取扱フ必要ハナイ
ト云フ、斯ウ云フコトデゴザイマシタ、斯ノ如ク委員ノ質疑竝ニ政府委員ノ御
說明ノ出マシタ上ニ、皆愼重審議之ヲ應答イタシマシタ結果、滿場一致デ此
案ハ承諾ヲ與ヘテ可ナルモノダト云フコトニナリマシタ次第デアリマス、第
二ノ卽チ第四百七十五號、是ハ卽チ破產法ニ付テノ關係デゴザイマシテ、政
府ノ理由書ニモゴザイマス通リ、震災ノ影響ニ依リマシテ、債務超過ヲ來シ
タル法人ニ對シテ、破產ノ宣告ヲ爲ス必要ガアル、ソレハ卽チ民法ノ第七十
條商法百七十四條、破產法ノ第百二十七條、森林組合令ノ第三十六條等ニ
依リマシテ、此規定ヲ致サレテ居ル、然ルニ御承知ノ通リ、此度ハ此震災ノ
アリマシタ結果、實際ノ財產ハ破產法ノ例ニ依ッテ、宣告サレルベキモノデアッ
テモ、卽チ其財產ハ積極的ニ消滅イタシテモ、消極的ニモ之ヲ辨償スルノ力
ノナイモノハ、卽チ此條文ニアル通リ、直チニ破產ノ宣告ヲ爲シ得ルコトガ
出來ル、併ナガラ消極的ニモ、信用上若クハ力ノ上等ニ於テ辨償シ得ル能力
アリト認ムルモノハ、成ルタケ此大震火災ノ際デアレバ、經濟上其他ノ關係
デ、斯ノ如キ法人ハ之ヲ助ケテ置ク必要アリト云フ所ノ見地カラ致シマシテ、
此法律ノ······勅令ヲ以テ保護サレタル次第デゴザイマス、無論、二箇年以上
之ヲ繼續サレルモノデアリマシテ、其以上ニ於テ其効力ノ現ハレヌ時ニハ、
更ニ現行法ニ依ッテ、之ヲ處置サレルト云フコトデアリマシタ、是モ愼重審議
ヲ重ネタ結果、之ニ承諾ヲ與ヘテ可ナリト云フコトヲ滿場一致可決シタ次第
デアリマス、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=80
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081・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 此兩件ヲ束ネマシテ議題ト致シ、且ツ採決ヲ致
シテ御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=81
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082・黒田長成
○副議長(候爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス、別ニ御發言モナイト認
メマスカラ、採決ヲ致シマス、兩件ニ對シ承諾ヲ與ヘテ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=82
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083・黒田長成
○副議長(侯爵黑田長成君) 御異議ナイト認メマス、明後十九日午前十時ヨ
リ開會イタシマス、議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御報告ニ及ビマス、本日ハ是
ニテ散會イタシマス
午後四時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004703242X00519231217&spkNum=83
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