1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十三年七月九日(水曜日)午後一時十八分開議
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議事日程 第七號
大正十三年七月九日
午後一時開議
第一 震災被害地の地租免除等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 震災に因り地租を免除せらるる者の法令上の納税資格要件に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 砂防法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 震災善後公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 大正十三年勅令第四十六號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第六 大正十三年勅令第二十一號(承諾を求むる件) (委員長報告)
第七 (第一號)大正十三年度歳入歳出總豫算追加案
第八 (第二號)大正十三年度歳入歳出追加總豫算追加案
第九 (特第一號)大正十三年度特別會計歳入歳出豫算追加案
第十 (追第一號)豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件
第十一(追第二號)豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=0
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔原田書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第四號)大正十三年度歲人歳出總豫算
衆議院議事速記錄第八號
追加案(以上七月八日提出)
高等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫算ノ
施行ニ關スル法律案
震災ニ因ル喪失無記名國債證劵ニ關スル
法律案
朝鮮銀行法中改正法律案
國籍法中改正法律案
戶籍法中改正法律案
(以上七月九日提出)
一今九日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
左ノ如シ
藥品營業竝藥品取扱規則第四十六條第一
項ノ適用ニ關スル法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第三號)大正十三年度歲人歲出總豫算追
加案ニ對スル修正案
提出者元田肇君
(特第二號)大正十三年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案ニ對スル修正案
提出者元田肇君
(以上七月九日提出)
東京灣修築及京濱運河開鑿促進ニ關スル
建議案
提出者
若尾幾太郞君宮崎三之助君
磯部尙君
蠶絲業ノ根本政策ニ關スル建議案
提出者武藤金吉君
小學校〓員俸給國庫支辨ニ關スル建議案
提出者增田義一君
帝國在〓軍人會國庫補助ニ關スル建議案
提出者
佐々木春作君八田宗吉君
吉津度君三善〓之君
名古屋ニ綜合大學設置ニ關スル建議案
提出者
服部英明君小山松壽君
田中善立君古屋慶隆君
武富濟君岡本實太郞君
京濱運河開鑿促進ニ關スル建議案
提出者
平沼亮三君大濱忠三郞君
小野重行君
蠶絲局設置ニ關スル建議案
提出者
加藤知正君若尾幾太郞君
隅田豊吉君下元鹿之助君
高橋熊次郞君
(以上七月八日提出)
東京灣築港速成ニ關スル建議案
提出者
太田信治郞君橫山勝太郞君
賴母木桂吉君作間耕逸君
三木武吉君小島證作君
淺賀長兵衞君中原德太郞君
八並武治君石川安次郞君
大阪臨港鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
廣瀨省德藏君武內作平君
沼田嘉一郞君板野友造君
筒井民次郞君前野芳造君
〓瀨一郎君吉津度君
山本芳治君
三新鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
横山金太郞君荒川五郞君
山道襄一君金田平兵衞君
河野曉君栗延敬太郞君
湯淺凡平君横山勝太郞君
(以上七月九日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
司法官吏ノ選擧干涉ニ關スル質問主意書
提出者高木益太郎君
宗〓法制定ニ關スル質問主意書
提出者倉元要一君
(以上七月八日提出)
滿蒙開發ニ關スル質問主意書
提出者兒玉右二君
(以上七月九日提出)
一今九日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通
牒ヲ受領セリ
國債整理基金特別會計法中改正法律案
外國船舶ノ所得稅免除ニ關スル法律案
大正十年度乃至大正十二年度ノ歲入歲出
ノ決算ノ特例ニ關スル法律案
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲玆
ニ揭載ス〕
一昨八日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
三一七近藤重三郞君
三一八木村小左衞門君
一今九日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
五八小野義一君
六九高鳥順作君
一昨八日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
復興貯蓄債劵法案
〓水留三郞君淺賀長兵衞君
加藤鯛一君紺野九右衞門君
川崎克君山田又司君
米原於蒐男君浦野謙朗君
八木逸郞君井出繁三郞君
東幸治君木暮正一君
藤澤萬九郞君佐々木長治君
竹内友治郞君岡田忠彥君
杉宜陳君高木正年君
贅澤品等ノ輸入稅ニ關スル法律案
加藤政之助君橋本喜造君
武內作平君小山松壽君
一柳仲次郞君飯塚春太郞君
太田信治郞君中馬興丸君
栗延敬太郞君平沼亮三君
吉植庄一郞君加藤鐐五郞君
井坂豐三君岩切重雄君
前田房之助君折原巳一郞君
松本眞平君堀切善兵衛君
山本条太郞君藤川〓助君
中村巍君坂梨哲君
石坂豐一君山口政二君
大口喜六君星島二郞君
馬場義興君
借地借家臨時處理法案外一件
森田茂君作間耕逸君
横山勝太郞君原夫次郞君
金光庸夫君〓水市太郞君
磯部尙君中島守利君
永田新之允君
一昨八日小樽港鐵道省第二期工事速成ニ關
スル建議案外二件委員近藤重三郞君辭任
ニ付其補闕トシテ俵孫一君ヲ、小作調停
法案委員田中萬逸君辭任ニ付其ノ補闕ト
シテ小西和君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セ
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、先ヅ御諮リ致スコトガアリマス、松實
喜代太君病氣ニ付、七月十日ヨリ七月十八
日マデ、右請暇ノ申出ガアリマス、許可ス
ルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=2
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003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス-尙ホ御諮リ致シ
ひく、第一部選出、懲罰委員星島二郞君常
任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=3
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004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ
補缺選擧ヲ行ヒ、議長マデ御報告アランコ
トヲ望ミマス-是ヨリ日程ニ入リマス、
日程第一、第二、及第六ハ同一委員ニ付託
シタ議案デアリマスカラ、一括議題ト爲ス
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=4
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005・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其通リ取計ヒマス-日程第一、
震災被害地ノ地租免除等ニ關スル法律案、
日程第二、震災ニ因リ地租ヲ免除セラルヽ
者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案
日程第六、大正十三年勅令第二十一號、承
諾ヲ求ムル件、右三案ヲ一括シチ議題ト爲
シ、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長磯
部尙君
第震災被害地ノ地租免除等ニ關ス
ル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
震災被害地ノ地租免除等ニ關スル法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
震災被害地ノ地租免除等
ニ關スル法律案委員長
磯部尙
衆議院議長粕谷義三殿
第二震災ニ因リ地租ヲ免除セラルル
者ノ法令上ノ納稅資格要件ニ關スル
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一震災ニ因リ地租ヲ免除セラルル者ノ法
令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
震災ニ因リ地租ヲ免除セラ
ルル者ノ法令上ノ納稅資格
要件ニ關スル法律案委員長
磯部尙
衆議院議長粕谷義三殿
第六大正十三年勅令第二十一號(承
諾ヲ求ムル件)(委員長報告)
報告書
大正十三年勅令第二十一號(震災被害
者ノ營業稅課稅標準等ニ關スル件)(承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
大正十三年七月八日
大正十三年勅令第二十一
號(震災被害者ノ營業稅
課稅標準等ニ關スル件)
(承諾ヲ求ムル件)委員長
磯部尙
衆議院議長粕谷義三殿
〔磯部尙君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=5
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006・磯部尚
○磯部尙君 只今議題トナリマシタ三案審
査ノ御付託ヲ受ケマシ夕委員會ハ、全員一
致ヲ以テ震災被害地ノ地租免除等ニ關スル
法律案竝ニ是ト主從ノ關係ヲ持ッテ居リマ
スル震災ニ因リ地租ヲ免除セラルヽ者ノ法
令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案、此二
案ハ原案通リ可決致シマシタ、而シテ震災
被害者ノ營業稅、課稅標準算定ノ特例等ニ
關スル勅令第二十一號ハ、承諾ヲ與フベキ
モノトシテ議決致シマシタ、大震火災後ニ
緊急勅令四百十號ヲ以チマシテ、大正十二
年分ノ第三種所得稅及營業稅ニ付キ被害ノ
狀況ニ應ジ、減免ノ規定ヲ設ケマシテ、尙
ホ大正十二年度ニ納付スベキ地租、所得稅、
營業稅、相續稅ニ付キ、徵收猶餘ヲ爲スヲ
得セシメタノデゴザイマスルケレドモ、地
租ニ付キマシテハ帝國議會ニ提出シテ協賛
ヲ求ムルモ、機宜ヲ失スルモノニアラズト
云フ理由ヲ以チマシテ、地租ニ關スル規定
ハ何モ無カッタノデアリマス、其後第四十八
議會ハ解散ニナリマシタノデ、只今申シマ
シタ勅令四百十號ノ趣旨ヲ體シテ卽チ只
今議題トナッテ居リマスル勅令二十一號ヲ
以テ大震火災ニ因リ營業ノ狀況激變シ、課
稅標準中著シク減損スペシト認メラルヽモ
ノアル時ニハ、大正十三年分ノ營業稅ニ限
リ豫算ヲ以テ其課稅標準ヲ算定スベキ旨、
竝ニ震災地ニ於テ大正十三年四月一日ヨリ
同年八月三十一日マデニ納付スベキ地租、
第一種所得稅、相續稅ニ付キ、徵收猶豫ヲ
爲スヲ得セシメタノデアリマス、八月三十
一日マデト期限ヲ定メマシタノハ、九月以
後ニ納期ノ來ル分ニ付テハ徴收猶豫ヲ與フ
可キヤ否ヤト云フコトハ其九月以前ニ開
カル可キ臨時議會、卽チ當議會ニ協賛ヲ求
ムルノガ條理ニ適シタルモノデアルト云フ
意味合ヲ以テ、斯樣ニ決メラレタノデアリマ
ス、只今懸案ニナッテ居リマスル地租免除法
案ノ提出セラレマシタノハ震災地現在ノ
經濟狀態ニ鑑ミマシテ、洵ニ當然過ギル程
當然ノ法律案デアルト考ヘルノデアリマス、
此法律ガ實施トナリマスル結果、免除額ハ
一年平均宅地租ニ於キマシテ二百二三十万
圓、田畑租ニ付テ八万四五千圓位デアラウ
ト云フ政府委員ノ御見込デアリマス、考慮
ス可テ問題ハ本案規定以外ノ其他ノ國稅ニ
對シテモ、若干期間減免ノ恩惠ニ均霑セシム
可キヤ否ヤト云フコトハ考慮ニ値スベキ
問題デアリマスルガ、政府委員ハ斷ジテ其
必要ヲ認メズト聲明セラレタノデアリマス、
此法律案實施ニ臨ミマシテハ或ハ法文中
著シク利用ヲ妨ゲラレタルヤ否ヤ、又五年
以內ニ於テ相當年限ヲ實況ニ應ジ定ムルニ
付キ、其認定權ハ稅務署長ノ權限ニ屬スルノ
デアリマス、施行令中ニ列擧主義ヲ設ケ大體
ノ標準ヲ規定シ、苟モ稅務署長ヲシテ偏頗
不公平ニ陷ルコトナカラシメ、世人ヲシテ
例ニ依シテ苛歛誅求ヲ爲スモノデアルマイ
カト疑ハシムル餘地ノ更ニ無イヤウニ、
詳密ナル規定ヲ設ケ、且ツ嚴重ナル訓示ヲ
出シテ、一般稅務官吏ヲ戒飭セラレタキ旨
委員ノ求メニ應ジマシテ、政府委員ハ成ベ
ク之ニ副フヤウニ致シタイト云フコトヲ答
ヘラレタノデアリマス、斯ノ如クニシテ初
メニ申上ゲマシタ如クニ法律案ハ之ヲ可
決シ、一勅令ハ承諾ヲ與フベキモノト議決
致シマシタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=6
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007・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別段發言ノ通告モア
リマセヌカラ直ニ採決ヲ致シマス、日程第一
及第二ハ法律案デアリマスカラ、先ヅ兩案
ニテ採決致シマス、日程第一、震災被害地
ノ地租免除等ニ關スル法律案、日程第二、震
災ニ因リ地租ヲ免除セラルヽ者ノ法令上ノ
納稅資格要件ニ關スル法律案、右兩案ノ第
二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=7
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008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=8
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009・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員長
報告ノ通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=9
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010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=10
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011・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
震災被害地ノ地租免除等ニ關スル法律
案第二讀會(確定議)
震災被害地ノ地租免除等ニ關スル法律
案外一件第二讀會(確定議)
震災ニ因リ地租ヲ免除セラルル者ノ法
令上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=11
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012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、兩案ト
モ委員長報告ノ通リ、可決確定セラレマシ
タ-次ハ日程第六、大正十三年勅へ-第二
十一號、(永諾ヲ求ムル件)ヲ議題ト致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=12
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013・作間耕逸
○作間耕逸君 本件ハ委員長報告ノ通リ、
承諾ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=13
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014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ本案ニハ承諾ヲ
與フルコトニ決シマシタ-次ニ日程第
三、砂防法中改正法律案、第一讀會ノ續ヲ
開キマス-委員長高橋元四郞君
第三砂防法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一砂防法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
砂防法中改正法律案委員長
高橋元四郞
衆議院議長粕谷義三殿
〔高橋元四郞君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=14
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015・高橋元四郎
○高橋元四郞君 只今議題トナッテ居リマ
ス日程第三、砂防法中改正法律案ノ委員會
ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、御付
託ニナリマシタ本案委員會ハ七日八日ト連
日ニ亙リマシテ開會致シマシテ、內務當局
者トノ間ニ數次ノ質問應各ヲ重ネマシテ、
原案ニ對シテハ全會一致之ヲ可決致シマシ
タノデアリマス、尙ホ多數ヲ以テ希望條件ヲ
附帶決議トシテ致シマシタ、其希望條件ハ
木案ノ對象タル相模川外四河川ト同一程度
以上ノ河川、例ヘバ常願寺川ノ如キニ對シ、
速ニ本法ヲ適用セラレンコトヲ希望ス、之
ヲ附帶ノ希望決議ト致シマシタガ、玆ニ常
願寺川ト云フコトヲ書キマシタノハ、例へ
バト云フ文字ニ對シテ明カデアリマスガ、
唯〓其例ニ引キマシ夕次第デアリマス、
體本案ノ現行法ハ砂防設備ニシテ他府縣ノ
利益ヲ保全スル爲ニ必要ナルカ、又ハ其利
害關係一府縣ニ止マラザル場合ニ於テノ
ミ從來主務大臣ガ之ヲ管理シ、其工事ヲ
施行シ、之ヲ維持シ來,タノデアリマスケレ
ドモ、今回改正ノ動機ハ震災ニ伴フ所ノ神
奈川縣ヲ始メトシテ、靜岡、山梨、東京府
ニ於ケル相模用外四河用ノ砂防ヲ必要トス
ル是ガ現行法改正ノ近因デアリマスケレ
ドモ此法律ヲ將來適用シテ、全國各地ニ於
ケル是ト同樣若クハソレ以上ノ河川ニ對シ
テ、當局者ハ案ヲ具シテ至急ニ此計畫ヲ樹テ
ラレルヤウニト云フコトヲ、委員會ノ多數
ガ要望致シマシタガ、政府ト致シマシテハ
勿論單行法ニ非ザル一般ノ法律ノ改正デア
リマスカラ、將來此法支ヲ適用シテ、全國各
府縣ニ於ケル所ノ同樣ノ河川ニ、此砂防ノ
設備ヲスルト云フコトハ其趣意ニハ異論ハ
ナイケレドモ、常ニ之ニ伴フ豫算ガナイト
云フコトニ對シテハ中々ニ之ヲ聲明スル
コトハ出來ナイ、全國各河川ノ水源地ニ對
シテハソレ〓〓砂防ニ必要ナル調査ハ殆
ド遂ゲテアルケレドモ、將來此經費縮小ノ
場合ニ於テ、多クノ場合內務省ニ於テ此土
木費ニ要スルモノヽ經費ノ節減ヲサレルト
云フコトガ、縮小整理ノ場合ノ一般ノ慣ハ
シデアルカラ、近キ將來ニ起ルベキ行政財
政ノ整理ニ依ッテ、更ニ又内務省ノ土木事
業ニ關係スル方面ノ經費ヲ縮小サレルト云
フ場合ガアリマシテハ、益〓此事業ノ遂行、
此希望ノ實現ガ困難デアルト云フコトヲ繰
返シ說明セラレタノデアリマスケレドモ、
委員會ノ多數ハ今囘ノ此砂防計畫ハ震災
ニ伴フ當面ノ急ヲ要スル問題デアルケレド
モ、此法支ヲ一般的ニ改正シタ以上ハ、將
來ドウシテモ各府縣ノ現在ノ砂防狀況ヲ調
查シテ、一ツハ水源ノ涵養、一ツハ森林ノ
保護、一ツハ治水政策ノ上カラモ是非之ヲ
遂行サレルヤウニト云フコトヲ要望致シマ
シテ、質問討論ヲ打切テ、原案ニ只今申上
ゲタヤウナ附帶希望ヲ附シテ、決議ヲ致シ
マシタヤウナ次第デアリマス、以上御報告
致シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=15
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016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=17
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018・作間耕逸
○作問耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通
リ可決アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=18
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019・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異謙ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ
開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
砂防法中改正法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=19
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020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告ノ通リ可決確定サレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=20
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021・作間耕逸
○作問耕逸君 議事日程ノ順序變更ニ關ス
ル緊急動議ヲ提出致シマス、卽チ日程第四
及第五ノ兩案ハ委員長ノ都合ニ依リ後廻
シト爲シ、日程第七以下ノ豫算安垂誠了後ニ
上程セラレンコトヲ卽エミマス、尙政府提出、
震災ニ因ル喪失無記名國債證劵ニ關スル法
律案、同ジク政府提出、高等諸學校震災復
舊諸費ニ屬スル豫算ノ施行ニ開スル法律
案、及同ジク政府提出、國籍法中改正法律
案、同ジク政府提出戶籍法中改正法律案ヲ、
此際特ニ逐次上程シテ議題ト爲シ、何レモ
政府ノ趣旨辯明ヲ求メ、續イテ其審議ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=21
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022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=22
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023・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマス、只今ノ動議
ノ如ク日程第四及第五ハ豫算審議ノ後ニ延
期致シマス、卽チ茲ニ日程變更ニ依リマシ
テ、先ヅ震災ニ因ル喪失無記名國債證劵ニ
關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、小野
政府委員
震災ニ因ル喪失無記名國債證劵ニ關ス
ル法律案(政府提出)第一語會
震災ニ因ル喪失無記名國債證劵ニ關ス
ル法律案
第一條大正十二年九月ノ震災ニ因リ減
失又ハ紛失シタル無記名國債證劵ニ對
シテハ本法ニ依リ新證劵ノ交付又ハ元
利金ノ支拂ヲ爲スコトヲ得
第二條震災ノ當時前條ノ證劵ヲ所有シ
又ハ占有シタル者ハ本法施行後三月內
ニ限リ喪失國債證劵審査會ニ其ノ所有
シ又ハ占有シタル證劵ノ滅失又ハ紛失
ニ付査定ヲ求ムルコトヲ得但シ證劵ノ
名稱不明ナルモノニ付テハ此ノ限ニ在
ラス
本法施行ノ際外國ニ居住スル者ニ付テ
ハ前項ノ期間ハ之ヲ六月トス
第三條證劵滅失ノ査定ヲ受ケタル者ニ
對シテハ政府ハ減失ヲ査定シタル證劵
ニ相當スル新證劵ヲ交付スルコトヲ得
證劵紛失ノ査定ヲ受ケタル者ニ對シテ
ハ政府ハ新證券ノ交付又ハ元利金ノ支
拂ニ因リテ生スルコトアルヘキ損失ヲ
塡補スル爲確實ナル擔保ヲ提供セシメ
又ハ保證人ヲ立テシメ紛失ヲ査定シタ
ル證劵ニ相當スル新證劵ヲ交付スルコ
トヲ得
前項ノ擔保及保證人ニ關シテハ勅令ノ
定ムル所ニ依ル
第一項及第二項ノ場合ニ於テ證劵ノ記
號不明ナルモノニ付テハ同一名稱ノ證
劵中適宜ノ記號ノモノヲ交付スルコト
ヲ得
第四條前條ノ規定ニ依リ新證劵ノ交付
ヲ爲スヘキ場合ニ於テ滅失又ハ紛失シ
タル證劵ノ償還期到來シタルトキハ政
府ハ新證券ノ交付ニ代ヘ元利金ノ支拂
ヲ爲ス
第五條紛失ノ査定ヲ受ケタル證劵ノ記
號又ハ番號不明ナル場合ニ於テ新證劵
ノ交付又ハ元利金ノ支拂ニ因リ政府ニ
損失ヲ生シタルトキハ同一名稱ノ新證
券ノ交付ヲ受ケ又ハ之ニ代へ元利金ノ
支拂ヲ受ケタル者ニシテ記號又ハ番號
不明ナル舊證劵ニ付紛失ノ査定ヲ受ケ
タルモノ新證劵ノ額面金額又ハ元金額
ニ按分シテ其ノ損失ヲ負擔ス
第六條滅失又ハ紛失シタル同一證劵ニ
付第二條ノ規定ニ依ル査定ノ請求二以
上アリタル場合ニ於テハ新證劵ノ交付
ハ請求者中震災ノ當時舊證劵ヲ占有ス
ヘキ權利アリタル者ニ之ヲ爲ス
滅失又ハ紛失シタル證劵ニ付存シタル
權利ハ新證券ニ付亦之ヲ行フコトヲ得
前二項ノ規定ハ第四條ノ元利金ニ付之
ヲ準用ス
第七條喪失國債證劵審査會ハ審査ノ爲
必要アリト認ムルトキハ證人又ハ鑑定
人ノ訊問其ノ他ノ證據調ヲ爲スコトヲ得
第八條喪失國債證劵審査會ハ審査ノ爲
必要アリト認ムルトキハ宣誓ヲ爲サシ
メタル上當事者ヲ訊問スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ宣誓ヲ爲シタル者虚
僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ三月以上十
年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者新證劵ノ交付又ハ
元利金ノ支拂ヲ受クル前喪失國債證劵
審査會ニ其ノ事實ヲ申出テタルトキハ
其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第九條喪失國債證劵審査會ハ第七條及
前條第一項ノ規定ニ依ル證據調ヲ裁判
所其ノ他ノ官廳ニ囑託スルコトヲ得
第十條喪失國債證劵審査會ノ組織及證
據調其ノ他審査ニ關シ必要ナル事項ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條第一條ノ證劵ニシテ震災ノ當
時政府ノ保管シタルモノニ付テハ第二
條乃至前條ノ規定ニ拘ラス勅令ノ定ム
ル所ニ依リ新證劵ノ交付又ハ元利金ノ
支拂ヲ爲スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員小野義一君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=23
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024・小野義一
○政府委員(小野義一君) 只今議題トナツ
テ居リマスル震尖ニ因ル喪失無記名國債證
劵ノ救濟ニ關スル法律案ニ付キマシテ其趣
旨ヲ辨明致シマス、現行國債ニ關スル法律
ニ依リマスルト云フト、無記名國債證劵ニ付
キマシテハ之ヲ滅失若クハ紛失致シタル
場合ニハ擔保ヲ提供セシメ若クハ保證人
ヲ立テシメテ、元金若クハ利子ノ支拂ヲ致
スコトニナッテ居ルノデアリマス、併シ代リ
證劵ハ-新證劵ハ一切交付シナイト云フ
定メニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ今囘
ノ震災ニ依リマシテ滅失若クハ紛失致シマ
シタル無記名國債證劵ハ、頗ル巨額ニ達シ
テ居ルモノト認メラレルノデアリマス、之
ヲ其儘救濟ヲセズニ置キマスト云フコト
ハ所有者ニ對シマシテ甚シク苦痛ヲ與ヘ
ルコトヽナルノミナラズ、又一面震災地ノ
經濟復興ヲ助成スルト云フ上ニ於テモ遺憾
ナシトシナイノデアリマス、故ニ政府ハ今
般此震災ニ因リマシテ、滅失紛失シタル國
債ニ對シマシテ、特別ノ救済方法ヲ講ズル、
斯ウ云フ法律案ヲ提出致シタ次第デアリマ
ス、何卒御審議ノ上、速ニ御協賛ヲ與ヘラ
レンコトヲ希望致シマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=24
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025・粕谷義三
○議長(議長粕谷義三君) 右議案ノ審査ヲ
付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付記スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=25
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026・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ委員ノ數ヲ九名トシ
議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=26
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027・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ-次ハ高等諸學校震災復舊諸費ニ
屬スル豫算ノ施行ニ開スル法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、岡田文部大臣
高等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫算
ノ施行ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
高等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫算
ノ施行ニ關スル法律案
大正十二年九月ノ震災ニ基ク復舊諸費ニ
シテ東京帝國大學、東京商科大學及千葉
醫科大學ニ關スルモノハ大學特別會計法
第一條ノ規定ニ拘ラス之ヲ一般會計ノ所
屬トス
東京帝國大學特別會計ノ資金中東京帝國
大學農學部及航空〓究所ノ用ニ供スル土
地及建造物竝學校及圖書館特別會計ノ資
金中東京女子高等師範學校及東京高等蠶
絲學校ノ用ニ供スル土地及建造物ニシテ
此等諸學校ノ震災復舊諸費ニ屬スル豫算
ノ施行ノ結果不用ニ歸スヘキモノハ當該
資金ヨリ之ヲ拂出スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣岡田良平君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=27
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028・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 昨年九月ノ大震
災ニ因リマシテ、東京帝國大學始メ震災地
ニ在ル高等〓育機關ハ、悉ク多大ノ損害ヲ
被クタノデアリマス、而シテ是等ノ諸學校ノ
復舊ハ、之ヲ一日モ忽ニスルコトノ出來ナイ
狀態ニ在リマス、之ニ要スル豫算ハ既ニ本
院ニ提出セラレテ居ルノデアリマス、是等
ノ豫算ハ之ヲ文部本省ニ於キマシテ、統
シテ施行スルコトガ便利デアリマスルシ、
又經濟上有利デアリマス、故ニ大學特別
會計法ニ對シマシテ、特例ヲ設ケントス
ルノデアリマス、又是等諸學校ハ都市計畫
施行ノ結果ト致シマシテ、舊位置ニ復舊スル
コトノ出來ナイノモアリマスシ、又從前カ
ラ移轉改築ノ機運ニ迫ラレテ居ルモノモア
リマス、爲ニ、他ノ場所へ之ヲ移轉シテ改
築致スノモアルノデアリマス、其結果不用
ニナル土地ガ出テ參ルノデアリマシテ、是
等ノ不用ニナッタ土地ハ、之ヲ處分スルヤウ
ニ致サナケレバナラヌノデアリマス、然ル
ニ現在ノ規定ニ依リマシテハ、之ヲ處分ス
ルノ途ガナイノデアリマスカラ、大學特別
會計法竝ニ學校及圖書館特別會計法ニ特例
ヲ設ケントスルノデゴザイマス、何卒御審
議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ御願ヒ致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=28
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029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=29
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030・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ委員ノ數ヲ九名ト爲
シ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマ
ス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=30
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031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス仍テ動議ノ如ク決シマ
シテ、次ノ國籍法中改正法律案、及戶籍法
中改正法律案、此兩案ハ相關聯セル議案デア
リマスカラ、一括議題ト致シタイト思ヒマ
ス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=31
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032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ國籍法中改正法律案、戶籍法中改
正法律案、右兩案ヲ一括シテ議題ト致シ、
其第一讀會ヲ開キマス-若槻內務大臣
國籍法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
國籍法中改正法律案
國籍法中左ノ通改正ス
第二十條ノ二勅令ヲ以テ指定スル外國
ニ於テ生マレタルニ因リテ其國ノ國籍
ヲ取得シタル日本人ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ日本ノ國籍ヲ留保スルノ意思ヲ
表示スルニ非サレハ其出生ノ時ニ遡リ
テ日本ノ國籍ヲ失フ
前項ノ規定ニ依リ日木ノ國籍ヲ留保シ
タル者又ハ前項ノ規定ニ依ル指定前其
指定セラレタル外國ニ於テ生マレタル
ニ因リテ其國ノ國籍ヲ取得シタル日本
人當該外國ノ國籍ヲ有シ且其國ニ住所
ヲ有スルトキハ其志望ニ依リ日本ノ國
籍ノ離脫ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ國籍ノ離脫ヲ爲シタ
ル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ
第二十條ノ三前條第一項ノ外國以外ノ
外國ニ於テ生マレタルニ因リテ其國ノ
國籍ヲ取得シタル日本人カ其國ニ住所
ヲ有スルトキハ內務大臣ノ許可ヲ得テ
日本ノ國籍ノ離脫ヲ爲スコトヲ得
前條第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ
國籍ノ離脫ヲ爲シタル者ニ之ヲ準用ス
第二十四條中「前六條」ヲ「第十九條、第二
十條及前三條」ニ、「前七條」ヲ「前八條」ニ
改ム
第二十六條中「第二十條、第二十條ノ二又
ハ第二十一條」ヲ「第二十條乃至第二十一
條」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
第二十七條ノ二國籍ノ離脱及回復ニ關
スル手續ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戶籍法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
戶籍法中改正法律案
戶籍法中左ノ通改正ス
第百五十一條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ國籍法第二十條ノ二又ハ第二十條
ノ三ノ規定ニ依ル國籍喪失者ニ付テハ
此限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣若槻禮次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=32
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033・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今問題ニナ
リマシタ法律案ハ、所謂二重國籍問題ヲ解
決シヤウト云フ案デアリマス、外國ニ於テ
生レター云フ故ヲ以テ、其國ノ國籍ヲ取得
致シマシタ日本人ガ、日本ノ國籍ヲ離脱ス
ルコトニ關シタ現行法ノ規定ハ、時代ノ進
運ニ適セナイ所ノモノガアリマス、過日植
原君ガ法律案ヲ提出サレマシタノモ亦此趣
意ニ係ルコトヽ思フノデアリマス、本案ハ
趣意ニ於テハ植原君ノ提出案ト同一ノ趣旨
カラ出テ居リマスケレドモ、規定ハ只今問
題ニナリマシタヤウニ規定スルノガ相當デ
アルト考ヘマシテ、本案ヲ提出致シタノデ
アリマス、尙ホ戶籍法中ノ改正案ハ、國籍
法ノ改正ニ伴ノタ當然ノ結果デアルノデア
リマスカラ、兩案トモ御審議ノ上、御協賛
ヲ與ヘラレンコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=33
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034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 右議案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=34
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035・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ議員植原悅二郞君外
二名提出、國籍法中改正法律案ノ委員ニ併
セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=35
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036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ-日程第七乃至十四ハ豫算案デア
リマスカラ、一括議題トナスニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=36
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037・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其通リ決シマス、日程第七、第
號大正十三年度歳入歲出總豫算追加案外
七案ヲ一括シテ委員長ノ報告ヲ求メマス、
算委員長片岡直溫君
第七(第一號)大正十三年度歲人歳出
總豫算追加案
報告書
一(第一號)大正十三年度歲人歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
第八(第二號)大正十三年度歲入歳出
總豫算追加案
報告書
(第二號)大正十三年度歲入歳出總豫算
迫加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
第九(特第一號)大正十三年度特別會
計歲入歳出豫算追加案
報告書
一(特第一號)大正十三年度特別會計歲人
歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
亡衆議院議長粕谷義三殿
第十(追第一號)豫算外國庫ノ負擔ト
ナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
報告書
-(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長和谷義三殿
第十一(追第二號)豫算外國庫ノ負擔
トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
報告書
一(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
第十二(第三號)大正十三年度歲入歲
出總豫算追加案
報告書
-(第三號)大正十三年度歲人歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
第十三(特第二號)大正十三年度各特
別會計歲入歲出豫算追加案
報告書
(特第二號)大正十三年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
第十四(追第三號)豫算外國庫ノ負擔ト
ナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
報告書
-(追第三號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
豫算委員長片岡直溫
衆議院議長粕谷義三殿
〔片岡直溫君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=37
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038・片岡直温
○片岡直溫若 私ハ豫算委員會ノ經過竝ニ
結果ヲ御報告致シマス、由來我國ノ豫算ハ
議會ガ解散ヲ致サレマスト、當年ノ豫算ハ
前年度ニ依ル慣例ニ相成テ居リマシテ、前
年度ニ依シテ實行豫算ヲ作ラレマス、而シテ
必要已ムヲ得ザルト云フ理由ニ依シテ更ニ
追加豫算ヲ請求セラレルト云フ次第デアリ
マシテ、是ガ爲ニ豫算ハ段々ニ膨脹シ來ノ
テ居ルヤウニ見受ケルノデアリマス、大正
十三年度ノ豫算ニ於キマシテモ、曩ニ〓浦
內閣ガ十四億九千万圓餘ノ豫算ヲ編成セラ
レ、然ルニ議會ガ解散ヲセラレマシタ爲
ニ實行豫算ヲ組立テラレ、其實行豫算ハ十
三億四千七百餘万圓ニナンテ居ルヤウデア
リマス、曩ニ豫算ヲ組デ協賛ヲ求メマシタ
時ノ豫算內ニモ、復興ニ關スル經費ガ約一
億一千万圓程アッタヤウニ見エマス、之ヲ除
イタモノト實行豫算ト比較シテ見ルト、實
行豫算ナルモノハ可ナリ大キナモノニナッ
テ居リマス、而シテ其豫算ニ尙ホ復興ト關
スル經費ガ一億近クアルヤウデアリマス、
而シテ今日前内閣ニ依テ追加豫算ヲ編成
セラレ前內閣ノ編成セラレタル所ノモノニ
二、三ノ訂正ヲ加ヘテ、一般ニ訂正ヲ加ヘル
時間ノ餘裕ナカリシ爲ニ之ヲ踏襲シタ、此理
由ニ依ノテ求メマシタ總額ハ二億六千七百
万圓餘ニ相成シテ居ルノデアリマス、斯ノ如
ク致シマシテ、實行豫算ト追加豫算トヲ合
計スレバ十六億一千万圓餘デアリマス實
ニ古今未會有ノ厖大ナ豫算ト申サナケレバ
ナラヌヤウニ相成ルノデアリマス、加之此
第一號追加豫算ナルモノハ四千四十万圓餘
ノ要求デゴザイマスガ、其實一億五百万圓
ヲ大正十七年マデ五箇年ノ間ニ求メラレル
而シテ十三年度ニ於テ四千四十万圓餘ヲ追
加要求サレテ居ルト云フ次第ニナッテ居リ
マリ、第二號案ノ如キ一億二千二百三十五
万六千六百七十五圓ガ十三年度ニ屬スルモ
ノデゴザイマスガ、其實七億五百九十万圓、
之ヲ大正二十二年マデ十箇年ニ支出スルト
云フコトニ相成シテ居リマシテ、其内一億二
千二百万餘ヲ大正十三年度ノ追加豫算トシ
テ求メマシタ、第三號案ハ一億二百九十七
万三百三十五圓、是ハ全ク震災ニ關係ノ無
イ各省ニ亙ッタ經費デアリマス、斯ノ如ク大
正十三年度ニ求メラレテ居ルモノハ二億六
千万圓餘デゴザイマスガ、後數年ニ繼續シ
テ來マスルノト、實行豫算其モノハ當議會
ニ於テノ審議ヲ經テ居ラヌ次第ノモノデゴ
ザイマスルカラ、今囘ノ豫算委員會ハ日數
ノ少イニ拘ズ、極メテ關聯スル所ガ廣ウゴ
ザイマシテ、之ガ爲ニ委員ハ兩日間午前午
後ニ通ジ、尙ホ其一日ハ午前九時ヨリ午後
六時過ギマデ審議ヲ繼續シ、G而シテ尙ホ二
日間ヲ分科會ニ移シマシテ、午前午後ニ亙ッ
テ日曜日マデモ潰シテ審議ヲ重ネタ次第デ
ゴザイマス、デ斯ノ如キ譯デゴザイマスル
カラ、委員會中ニ極メテ熱誠ナル質問應答
ガ繰返サレタノデアリマス、其質問應答ノ
中將來ニ關係スル所ノモノヲ引上ゲテ御紹
介ヲ致シ置キタイト存ズルノデアリマス、
此本案ニ對シテ直接ニ關係致ス所ノ質問ハ
收入豫算ノ中租稅五千四十八万八千九百五
十五圓ト云フモノハ、大正十一年竝ニ十二
年ノ實際ニ當篏メテ見テ、或ハ兄積リガ多
ウ過ギテ、其結果不足ヲ來ス虞ハナイカト
云フ質問ガ出タノデアリマス、極メテ此
事ハ大切ノ事柄ト思ウタノデゴザリマスル
ガ、之ニ對シテハ大藏大臣ハ、大正十一年
ノ租稅ノ收入ハ八億九千六百万圓トナッテ
居ル、十二年度ノ最近ノ實況ヨリシテ收人
見込ヲ立テヽ見ルト七億八千六百万圓ニ減
ジテ居ル、十三年度ハ更ニ之ハ減少スルモ
ノトシテ、サウシテ今囘豫算ニ組人レタ五
千四十万圓ヲ加ヘテ見テモ七億六千二百万
圓ニシカナラナイノデアル、加之是ハ各租
稅ノ課目每ニ亙ッテ震災後已ニ數月ヲ經過
シタ所ノ實際ニ基イテ、實行豫算ニ比較シ
テ其減ズベキモノヲ尙ホ減ズルト見テ、十
分據ドコロアル所ノモノニ依ッテ編成致シ
タノデアッテ、必ズ不足ヲ告グルナドト云フ
虞ハナイト、而シテソレヲ尙ホ確メルガ爲
ニ追加豫算ノ租稅ニ對スル說明書ヲモ交付
セラレタ次第デゴザイマスルカラ、此點ニ
對スル不安ノ念ハ取去ラレタコトデアラウ
ト思フノデゴザイマス、其他豫算ニ直接ノ
關係ナクシテ內閣其モノニ對シテ、今日ノ
内閣ハ曩ニ政見ヲ異ニシタ政黨ヲ打ノテ
一團トシテ居ルガ如キ內閣ニナッテ居ルカ
ラ、普通選擧ノ問題、或ハ社會問題、其他
重用ノ問題ノ上ニ統一ヲ缺クデアラウ、斯
ウ云フ〓念ヲ懷カレ夕質問ガ、餘程長ク繰
返サレタノデアリマスルガ、此事ニ關シテ
ハ本議場ニ於テモ總理大臣ヨリ說明モゴザ
イマシタト存ジマスルカラ、今私ハ多クヲ
繰返ス必要ハナイト存ジマスルガ、要ハ必
ズ統一致シタ所ノ重要ノ政策ヲ樹テヽ之
ヲ實行スルヤウニシテ御目ニ懸ケル、暫ク
見テ居シテ貰ヒタイト云フコトニ歸著致シ
タヤウニ存ズルノデアリマス、其他ハ貿易
ノ振張、輸入ノ防遏、或ハ農村ノ關係、農
務省ノ獨立、米穀法ノ運用ト云フガ如キコ
トニ亙テノ質問ガ繰返サレタノデゴザイ
マスルガ、農村ノ振興ニ關シテハ、金融ノ
コト、又振興方策等ニ付テモ政府ハ現在ニ
滿足スルニ非ズシテ、十分ノ考慮ヲ爲シツ
ツアルノミナラズ、今後ニ於テ行政、財政
ノ緊縮整理ト共ニ相當ノ政策ヲ樹ツルコト
勿論デアルガ、農村ノ金融ノ如キニ至シテハ、
是ハ主トシテ農村ノ組合ト云フモノガ出來
ナケレバ、卽チ金融ノ信用ト云フモノヲ拵
ヘナケレバ全融其モノハ付ク道理ハナイ、
信用其方法ヲ立テサヘスレバ現在ノ機關
ニ於テモ金融ノ途ハ付クノデアリマス、又
農務省ノ獨立ノ點ニ關シテハ、唯、農務省、商
務省ト、之ヲ今ノ農商務省ヲ二ツニ別ケテ、
役人ヲ二人拵ヘルト云フダケノコトデハ何
ニモナラナイ、卽チ農村振興ノコトヲ行ヒ
得ル方法ノ立ツタ時ニ於テ、之ヲ獨立セシム
ルノ必要ガアルデアラウ、其必要ノ生ズル
ヤウニ一日モ早クナルコトヲ期待シテ、是
ハ次ノ議會ニ成ベクサウ云フ風ニナッテ來
ルコトヲ望ンデ居ルト云フ農商務大臣ノ聲
明デアノタノデアリマス、又米穀法ニ關シテ
ハ、從來量ノ上ニノミ考慮ヲ加ヘ、價格ノ點
ニ對シテ閑却ヲシテ居ル、今日此米ノ價ノ
他ノ物價ニ比較シテ安キニ苦シンデ居ル狀
況ニ對シテハ、卽チ價格ノ點ニ對スル考慮ヲ
拂ノテ居ラヌ結果デアル、此米價ヲ相當ニ維
持スルト云フコトハ、米穀法運用ノ點ニ於
テ出來得ル事ヲシテナカッタノデアル、從來
スベキ事ヲセナカッタ爲ニサウナッテ居ルノ
デアル、今後ハ其スベキ事ヲ爲スコトニ依シ
テ、農村ノ幾分ノ救濟ヲシ得ルト信ズル、
斯ウ云フ趣旨ニ說明ヲサレタノデアリマス、
其他ノ諸問題ニ對シラハ今日マデ民間經濟
ニ相應シナイ所ノ財政ノ膨脹ガ繰返サレ、
是ガ爲ニ經濟界ハ常ニ壓迫ヲ受ケル、壓迫
ヲ受ケタガ爲ニ經濟界ノ整理ガ出來ナイ、
整理ガ出來ナイカラ安定ヲシナイ、安定ヲ
シナイカラ發展ヲシナイ、故ニ經濟界ノ自
然ノ發展ヲ促ス、爲ニハ、財政上ノ壓迫ヲ
取除クト云フコトガ最モ緊急ノ事柄デアル、
卽チ行政ノ整理竝ニ財政ノ一大整理ヲ致ス
ト云フ所ノ趣旨ハ此ニ在ルノデアル、然レ
ドモ此行政財政ノ整理其モノハ、民間經濟
界ヲシテ政府ノ意ノ在ル所、爲ス所、之ニ刺
戟セラルヽト同時ニ、之ト相呼應シテサウ
シテ勤儉力行ヲ促シ、貯蓄心ヲ增加シテ資
本ヲ增スト云フ方ニ向ハナケレバ、政府ノ
力ニノミ依シテ以テ此目的ヲ達スルコトハ
出來得ナイ、然レドモ財政經濟ノ緊縮整理
ヲスルト云フ事柄ダケデ、民間其モノガ必
ズ整理發達ノ效果ヲ擧ゲルト云フコトモ出
來得ナイカモ知レナイカラ、是ハ有ユル手段
方法ヲ取ル外ハナイノデアル、先以テ經濟
界ヲ壓迫スル所ノ最モ最大ナル所ノ公債募
集ノ如キモノヲ見合ス、次ニ貯蓄債劵ノ如
キ小額ナル割層附ノ方法ノモノヲ發行シ、
貯蓄心ヲ奬勵シ、又一面ニ奢侈ノ風ヲ矯正
スル爲ニ奢侈品ニ對スル關稅ノ引上ヲ行フ、
固ヨリ是等ハ之ニ依ッテ關稅ノ增收ヲ期ス
ルト云フ目的ハ更ニ持タスノデアル之ニ
依シテ財界ノ各方面ニ亙ル所ノ精神上ノ刺
戟トモナリ、緊縮トモナルコトヲ得レバ幸
ト思フニ過ギナイ、然レドモ此事ハ大正十
四年ヨリ實行ニ掛ル外ハナイノデアリマス、
サリナガラ十四年ノ豫算ヲ編成スルマデ此
儘ニシテ置クト云フ必要ハナイ、此豫算案
ガ通過スルト同時ニ、本案ニ對シ竝ニ實行
豫算ニ對シ、出來得ル限ノ整理緊縮ノ方針
ヲ實行致ス、斯ウ云フコトヲ屢〓繰返シテ
言明ヲサレタノデアリマス、卽チ二億六千
万餘ノ追加豫算ニ對シテ、豫算委員ノ意
思ノ決マリマシタ所ノモノハ此說明ニ信
賴スル所ノモノガ最モ大デアッタコトモ間
違ハナイト思フノデアリマス、又委員ノ一
人ヨリシテ、大正十七年マデハ公債募集ヲ
見合ハスト云フコトデアルガ、其後ニ於テ
ノ十億圓餘ノ此公債ニ對シ、其元利收支ヲ
如何ニスルカト云フ質問ニ對シマシテハ
是ハ今後殊ニ大正十四年度ノ豫算編成ニ當
テ十分ノ緊縮ヲ爲シテ、公債ヲ財源ニセナ
ケレバナラヌヤウナ部分ニ對シテモ、成
ク公債ヲ募ラズシテ以テ此緊縮シタ所ノモ
ノヲ以テ充當シ得ル方針ヲ執ル積リデアル、
併ナガラ此處ニ數字ヲ備ヘ、此際斯ク々々
ノ金額ヲ產ミ出スト云フコトヲ申ス機會マ
デニハ到達致サナイト云フ說明デアッタノ
デアリマス、其他御紹介ヲ致シテ置キタイ
ト存ジマスルコトハ海陸軍デアリマス、既
ニ陸軍ニ對シテハ、陸軍費ニ對シテハ先年
本會ニ於テ金額マデ決定シテ、緊縮ヲ要求
シタ次第モアルノデアリマスガ、其金額マ
デニハ無論達スルマデノ節約ヲスルカト云
フ趣旨ノ質問ニ對シテハ三千二百万圓バ
カリノモノハ先ニ節約シタガ、今後其當時
ノ決議ノ金額マデニ達スルヤ否ヤト云フコ
トハ豫言ハ出來ナイガ、兎ニ角陸軍トシテ
ハ從來兵數ノ上ニ重キヲ置イテ來タト云フ
コトハ宜クナイト云フコトヲ考ヘタ、今日ニ
於テハ或ハ航空機トカ、或ハ毒瓦斯ノ事ト
カ、種々ノ科學的軍器ノ發達ヲ爲シ來ル時
デアルガ故ニ、兵數ニ重キヲ置カズシテ斯
カル科學的發展ニ基ク所ノ器具ニ對シテ重
キヲ置ク方針ニ改メタイト考ヘルノミナラ
ス、陸軍大臣ハ今後內務大臣、文部大臣ト
モ交涉ヲ致シテ、成ベク義務〓育ノ上二一
大改善ヲ加へ靑少年ニ對シテ訓練ニ重キヲ
置イテ、新兵ガ入營ノ後多クノ日子ヲ在營
スルコトナク、之ヲ歸休セシムル、或ハ是ガ
爲ニモ常備兵ヲ減ズルト云フガ如キコトマ
デ行ケルカモ知レナイ、要スルニ義務〓育
ノ上ニ改善ヲ加ヘルト云フコトニ大ナル希
望ヲ持シテ居ル、此希望ハ内務大臣竝ニ文部
大臣ニ向シテ交渉ヲ進メテ、其目的ヲ達スル
ヤウニ致シタイト云フ說明ガアッタノデア
リマスガ(發言スル者アリ)彼處ニ何カ言葉
ヲ發セラレタ方ガアッタヤウデアリマスガ、
是ハ極メテ私ハ將來ニ取ッテノ我國ノ陸軍
費ノ上ニ重大ナ關係ヲ持ッテ來ルコトデア
ルト思ッテ居ル(拍手起ル)私ハ從來國民皆
兵主義ニナルコトヲ期待シテ居ル卽チ義
務〓育ノ發展ト云フコトノ爲ニ、常備兵ノ
上ニ於テノ費用ヲ幾分カ節減シ得ルト云フ
コトヲ平生考ヘテ居タノデアリマスガ、之
ヲ陸軍大臣ノ口ヨリ、吾々ノ口カラ求メズ
シテ發ラレルコトヽ云フモノハ、洵ニ私ハ
將來ノ上ニ一大望ミヲ屬スルコトデアルト
考ヘテ居リマス(拍手)又海軍ニ對シテモ海
軍大臣、尙ホ陸軍大臣ノ御言葉ニモアッタ
ノデアリマスガ、今囘一大緊縮整理ヲ告ゲ
ラレル以上ハ、海軍共ニ爲シ得ル限リノ節
約ヲ努ムル積リデアルト云フ言明ヲ得タノ
デアリマス、鐵道ニ對シテハ是モ將來ニ關
係ノアル事ト存ジマスカラ、一應申上ゲテ
置キマスガ、今囘ノ豫算ハ曩ニ決定シテ居
ル事項ニ對シテ何等ノ關係ヲ有シナイ、然
レドモ十年以前ト今日ト比較スルト、鐵道
ノ上ニハ一大缺陷ヲ見出シテ居ル、例ヘバ
乘客ニ對シテ、一車百人ニ對シテ先ニハ三
十人位ニ當シタモノデアルガ、今日ハ五十人
乃至八十人ニ達シテ居ル、而モ二回程運賃
ヲ引上ゲテ、言ハヾ乘客ニ對シテ設備ノ改
善ヲ加ヘズシテ賃金ヲ强要致シタト云フ如
キ議論モアル位デアリマス、故ニ今後此
大缺陷ニ對シテハ此儘デハイケヌノデアル
一大改善ヲ加ヘナケレバナラヌ、隨テ既定
ノモノニ對シテモ變更ヲセナケレバナラヌ
ト云フコトガ起ラウト思フ、斯ウ云フ說明
デアッタノデアリマス、以上質問應答ニ對ス
ルコトハ斯樣デゴザリマシテ、次ニ討論ニ
入ッテ採決ヲ致シマシタガ、採決ニ當シテ第
三號ノ追加豫算ニ對シテ、吉植庄一郞君ヨ
リ政務次官設置ニ關スル經費三万九千七百
七十八圓、及特第二號、鐵道ニ關スル方デ
アリマス、此經費四千三百三十三圓、之ヲ
削除スルト云フ動議ガ出タノデアリマス、
採決致シマシタ所少數デアリマシテ、否決
致シマシタ、其他ハ全部原案ノ通リ決定ヲ
見タノデアリマス、此原案ノ通リ決定ヲ致
シタ所ノモノヲ、豫算ノ式ニ當篏メテ見マ
スト、歳入ノ經常部ガ五千七百四十三万四
千四十八圓、臨時部デ二億八百二十九万七
千三十五圓、歲出ニ於テ經常部ガ七千三百
二十八万一千百二十九圓、臨時部ガ一億九
千二百四十四万九千九百五十四圓、斯樣ニ
相成ルノデアリマス斯ノ如クシテ悉ク原案
ヲ可決致シタノデアリマス、此他ニ警告ヲ
二ツバカリ提出サレタモノガゴザイマスガ、
是ハ少數デ成立チマセヌノト、本會ニ於テ
意見ヲ述ベルト云フ言葉デゴザイマシタカ
ラ、此處デ報告ヲ省略致シマス、以上ノ次
第デゴザイマスカラ、本議場ニ於テモ御賛
成アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=38
-
039・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 此際質議ヲ許シマス、
松田源治君、一寸御諮リ致シマス、熊谷直
太君ヨリ小作調停法ノ委員會ヲ開キタイト
云フコトデアリマスガ、是ハ許可シテ差支
ナイト思ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許スコトニ致シマス
〔松田源次君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=40
-
041・松田源治
○松田源治君 私ハ總理大臣ニ對シマシ
テ、政務次官設置ニ關スルコトニ就テ二ツ
ノ質疑ガ致シタイノデアル、ソレハ政務次
官ヲ新設スレバ事務次官ハ自由任用トスル
ノデアルカ、文官任用令中ノ一定ノ資格ヲ有
スル者ニ非ザレバ任用シナイ、卽チ資格任
用トスルノデアルカ、自由任用トスルノデ
アルカト云フコトヲ承リタイ、第二ニハ昨
日豫算總會ニ於キマシテ政友會ノ秦豐助君
ガ政務次官ニ贊成意見ト致シマシテ、今囘
ノ政務次官ハ大隈内閣ノ時ノ參政官トハ職
務權限ガ違ッテ居ルノデアル、大臣ト同ジヤ
ウナ事ヲサセルノデアルト云フコトヲ申シ
マシタガ、果シテサウデアルカドウカ、大
隈内閣ノ時分ノ官制ハ各省官制通則ニ依
リマスレバ「參政官ノ職務ハ大臣ヲ佐ヶ帝
國議會トノ交涉事項ヲ掌理ス」ト云フコト
ガアルノデアル、是レ以上ノ職務ヲスルト
ナルト事務次官ノ職務ヲ如何ナル程度ニ
分割スルノデアルカドウカ、又大隈內閣ガ
參政官ヲ設置シタ時分ニ、臨時代理大臣ノ臨
時代理ヲスル場合ニハ次官ガシテ居ル、卽
チ法律勅令ニ副署スルトカ、省務ヲ上奏ス
ルトカ、或ハ閣議ニ列スルトカ、省令ヲ發
スルトカ云フコトヲ除ク以外ハ大臣ノ事
務ヲ臨時ニ次官ニ代理サシテ居ッタノデア
ル、此代理ハ政務次官ニサセルノデアル
カ事務次官ニサセルノデアルカ、此事ハ旣
ニ豫算ヲ要求シテ居ルノデアリマスカラ、
行政整理トカ或ハ綱紀ノ肅正トカ云フヤウ
ナ三派ガ一致シテ居ナイト云フコトモナカ
ラウト思フ、一致シテ出シタ事デアリマス
カラ、官制ヲ改革シ、各省官制通則ヲ改正
スルニ就テ、如何ナル改正ヲ爲スノデアリ
マスカ、此點ニ向ッテ明瞭ナル議場ニ徹底
スルヤウニ御答辯ヲ願ヒタイ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=41
-
042・加藤高明
○國務大臣(子爵加藤高明君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤內閣總理大臣
〔國務大臣子爵加藤高明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=43
-
044・加藤高明
○國務大臣(子爵加藤高明君) 只今ノ御尋
ニ對シテ御答致シマス、事務次官ハ自由任
用ニスルヤ否ヤト云フ第一問デアッタト思
ヒマス、是ハ自由任用ニハ致サヌノデアリマ
ス矢張現行ノ任用令ニ依シテ採用スル積
リデ居リマス、ソレカラ秦君ノ御尋ニ對シ
テ私ノ答ヘタ事カラ、或ハ右ノ如キ疑ガ起ッ
タカモ知レマセヌガ、秦君ノ御希望ハ私ノ
解シタ所ニ依リマスト、現今ノ文官任用令
ニ對シテ多少ノ改正ヲ加ヘタラドウカト云
フ御意思デアッタト思フ、故ニ人材ヲ廣ク世
上ニ求メルコトハ固ヨリ異論ハナイ、行政
整理ノ際ニ十分ニ調査〓究致シテ、其結果
ニ依ッテ相當ノ處置ヲ執ルト云フコトヲ說明
致シタノデアリマスガ、是ハ事務次官ニ限ッ
夕事デハナイノデアリマス、事務次官ヲ自
由任用ニスル趣旨ヲ御答シタノデハナイト
斯樣ニ御承知ヲ願ヒタイ、ソレカラ大臣ニ
代ッテ云々ト云フコトハ何レ此豫算ガ帝國
議會ノ協賛ヲ得マシタナラバ、官制ヲ定メ
ルコトニ致シマスカラ、ソレニ依ッテ御承知
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=44
-
045・松田源治
○松田源治君 サウシマスルト官制ノ根據
ハ決マッテ居ナイト云フコトニ、承知シテ宜
シウゴザイマスカ、官制ハ今日具體的ニハ
決マッテ居ナイ、サウ云フコトニ承知シテ宜
シウゴザイマスカ(「答辯ノ必要ナシ」ト呼
フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=45
-
046・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 答辯ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=46
-
047・松田源治
○松田源治君 答辯ハナイノデスカ
〔「答辯ハ出來ナイノカ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=47
-
048・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 元田肇君ヨリ成規ノ
賛成ヲ得テ、第三號大正十三年度歲入歳出
總豫算追加案、及特第二號大正十三年度各
特別會計歳入歲出豫算追加案、此兩案ニ對
シテ修正案ガ提出サレテ居リマス、此修正
案ノ趣旨辯明ヲ許シマス-松田源治君
〔松田源治君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=48
-
049・松田源治
○松田源治君 私ハ玆ニ吾々同志ヲ代表致
シマシテ、豫算案ノ一般會計、特別會計ニ
對シマシテ政務次官ノ費用ヲ全部削除スル
ト云フ修正案ヲ出スノデアリマス、其理由
ハ第一ニ我國ニ於テハ政務事務ヲ區別スル
コトハ困難デアル、卽チ不可能デアル、大
臣ト雖モ天皇ヲ輔弼スル時ニ於テハ是ハ
政務官デアリマセウケレドモ、各省ニ行ッテ
行政長官トナッテ事務ヲ見ル時分ハ事務官
デアリマス、政務事務ノ區別ハ全然不可能
デアリマス、仍テ之ヲ政務事務ニ區別スル
ト云フコトハ出來ナイ事デアラウト思フノ
デアリマス、是ガ反對ノ第一デアリマス第
二ハ現內閣ハ事務官ト政務官トヲ區別致シ
マシテ、事務ノ恒久性ト繼續性ヲ保障スルゑゑ
ト云フコトデアリマスルガ、內閣ガ更迭致
シマシテ、反對メ內閣ガ出來夕場合ニ於テ
ハ此恒久性、繼續性ヲ保障スルト云フコ
トハ〓止ノ空論デアッテ、事實上不可能ニ昭
ルノデアリマス(拍手)現ニ植民地ニ於ケル
事務官ニ於キマシテ、現内閣ハ政務事務ノ
區列ヲスルト云フコトヲ政綱ノ一ツトシテ
〓リマヌルガ、植民地ニ於ケル官吏ガ或ハ
特殊會社ノ社長ト云フヤウナ者ガ辭職ヲ致
シマシタケレドモ、是ハ辭職シナケレバナ
ラヌヤウニ現内閣ガ壮向ケタデハアリマセ
炙カ、又議會聞會後ニ於テ事務官タル所ノ
稙民地ノ總督ヲ、或ハ更迭セントスルト云
フヤウナ事モ疑ハレテ居ルノデアリマシ
テ、内閣ガ更迭スル場合ニ於テ重要ノ官職
ヲ、설職務ノ繼續性ト恒久性ヲ保障スルト云
フコトハ粗上ノ空論デアリマシテ、是ガ實
現ハ出來ナイ事ト考へルノデアリマス、又
大臣ヲ佐ケテ重要ノ事務ニ從事シタル人
ガ、反對ノ內閣ガ出來レバ政治道德ノ上カ
ラ更迭スルト云フコトハ憲法政治ノ發逹
ニ於テ私ハ當然ナル事デアラウト思フ(拍
手)政務官ノ恒久性ト繼續性ヲ保障スルナ
ラバ政務官ヲ永久ニ其職務ニ置イテ居ッ
タナラバ役所ニ於テハ新陳代調ノ機能ヲ
失ヒマシテ、〓新ナル空氣ヲ注入スルコト
ハ出來ナイ、行政ハ活氣ヲ失シテ、長ク居ッタ
次官ハ官僚的ニ化石スルコトニナリハシナ
イカト私ハ考ヘルノデアリマス、職務ノ恒
久牲ト繼續性トハ次官ガ更リマシテモ、局
長以下ノ官吏ガアレバ其目的ヲ達セラルヽ
モノデアルト私ハ考ヘルノデアリマス、ソ
レカラ第三ハ却テ政務次官、事務次官ヲ二
人置クト云フコトハ、是ハ行政組織ノ紛更
ヲ來スモノデアルト考ヘルノデアル、職務
權限ニ於テ如何ニ定メルカ分リマセヌケレ
ドモ、現內閣ハ答辯致サヌノデアリマスガ、
如何ニ定メルノカ分リマセヌケレドモ、事
務次官ト政務次官ハ事務政務ノ區別ガ明
確ナラズシテ、其事件々々ニ付テ職權ニ付
テ衝突ヲ起シ、或ハ双方ガ干涉シテ、サウ
シテ行政組織ノ紛更ヲ來ス所ノ弊害ガ起ル
モノト私ハ考ヘルクデアリマス(拍手)ソレ
カラ第四ニハ此現内閣ハ行政整理ヲ根本的
ニスルト云フコトヲ政綱ノ一ニ致シテ居ル
ノデアル、然ルニ斯カル無用ノ官ヲ設ケテ
職務ノ權限ノ明カデナイ所ノ官職ヲ設ケタ
時分ニハ政務次官モ書類ヲ見、事務次官
モ書類ヲ見ル、ンレデドウシテ事務簡㨗ト
能率ヲ擧ダルコトガ出來マスカ、ソレダケ
事務ガ澁滯スル、而シテ冗官ヲ置ク結果冗
費ニナリマシテ、行政財政ノ根本的整理ヲ
スルト云フ所ノ政綱ニ反スル所ノ結果ヲ生
ズルト思ヒマス、又政務次官、事務次官ノ
區別ヲ爲スノハ、我ガ國情ニ適シナイモノ
ト考ヘルノデアル、フレハ憲法第五十四條
ニ依リマスレバ、國務大臣及政府委員ハ何
時タリトモ兩院ニ出テ發言ガ出來ルノデア
ルガ、此政務次官、事務次官ノ區別ヲ設ケ
テ兩官ヲ置イテ居ルノハ世界ニ英國以外
ニハアリマセヌ、加藤總理大臣ハ吳國ノ眞
似ヲスルノデハナイト言ヒマスルケレド
モ、英國以外ニハ無イ、英國ノ制度ヲ參考
ニシテ居ルノデアラウガ、ソレハ國情ガ違
フノデアル卽チ英國ニ於テハ私ガ質疑ノ
時ニ述ベマシタ通リ、英國ニ於テハ一年ノ
間國會ヲ開イテ居ル、國會次官-政務次
官トハ申シマセヌ--國會次官、事務次官
ヲ要シマスケレドモ、日本ノ議會ハ僅ニ三
箇月デゴザイマスカラ、事務次官ト政務次
官ヲ兩方置ク必要ハナイノデアル又英國
ニ於キマシテハ大臣ト雖モ議席ヲ有セズン
バ其議院ニ出ラレヌノデアルカラ、國會次
官ヲ設ケテ大臣ノ貴族院カラ出身シテ居ル
時分ニ、衆議院カラ次官ヲ採リ、衆議院カ
ラ大臣ガ出ラレテ居ル時分ニハ貴族院カラ
國會次官ヲ採シテ、其省ノ方針ヲ說明サセル
ト云フコトハ、是ハ英國ノ憲法政治ヲ運用
スルニ付テハ當然デアラウケレドモ、我國
ニ於テハ憲法五十四條デ、國務大臣、政府
委員ハ何時ニテモ兩院ニ出席シテ發言ガ出
來ルノデアリマスカラ、斯カル事ハ英國ノ
制度ノ眞似ヲスルコトハ島ガ鵝ノ眞似ヲス
ルモノデアッテ、溺レザラント欲スルモ溺レ
ザルヲ得ヌト云フコトニナルノデアリマス
(拍手)私ハ以上ノ理由ニ依リマシテ斯ル冗
官-無用ノ官、行政組織ヲ紛更スル官ヲ
新設スルト云フコトニハ憲政運用ノ上カ
ラ申シマシテモ、又事務ヲ執ル制度ノ上カ
ラ申シマシテモ、私ハ此制度ニ反對セザル
ヲ得ナイノデアリマス、是ハ政務次官ヲ新
設スル所ノ削除ノ理由デアリマスソレカ
ラ吾々ハ此外ノ豫算ヲ費賃スルニ當リマシ
テ、二ツノ警告ヲ現內閣ニ發シタイト思フ、
一ツハ農村振興ニ關スルコトデ、一ツハ帝
都復興計畫ニ關スルコトデアリマス、農村
振興ニ付キマシテハ、目下我國ノ現狀ニ於
テ實ニ重大ナ問題デアリマス、此院ニ於キ
マシテ屢〓内內ニ建議ヲ致シマシテ、農村振
興ノ政策ヲ樹立スルコトヲ促シタノデアリ
マス、然ルニ現内閣ハ內閣ノ施政ノ方針
上一言モ農村ニ及ンダコトガアリマセヌ、
吾々ハ現内閣ヲ反省セシメル爲ニ、現ニ建
議案ヲ提出致シテ居リマスガ、豫算案ヲ見
ルニ、一モ農村振興ニ關スル所ノ施設ガナ
イト云フコトハ國家ノ爲メ吾々ハ深憂ニ
堪ヘナイ次第デアリマス(拍手)其點ニ向シ
テ一ノ警告ヲ發シタイノデアリマス、警告
文ヲ朗讀致シマス「近時農村衰頽甚シク本
院ハ屢〓其振興對策ヲ建議セルニ拘ラス、現
內閣施政ノ方針演說中一語ノ之ニ及フナキ
ヲ遺憾トシ政府ノ反省ヲ促カサンカ爲重ネ
テ建議案ヲ提出シ置キタルカ政府ノ提出シ
タル豫算案中亦一モ農村振興ニ關スル計畫
アルヲ見ス、現內閣ノ農村ニ對スル態度寒
心ニ堪ヘス、玆ニ豫算ヲ討議スルニ方リ切
ニ現内閣ニ警告スルモノナリ」此警告文ヲ
發スルノデアリマス、又帝都復興計畫ト豫
算トハ權衡ヲ失シマシテ、移轉料ノ補償ハ
頗ル少額デアリマス、追加豫算デモ提出シ
ナケレバ此豫算ヲ遂行スルコトハ出來ナイ
ト云フコトヲ吾々ハ惧ルヽノデアリマス、
又區劃整理委員ニ重要ナル借家人ヲ加ヘテ
居ナイカラ、紛議ヲ醸シマシテ區割整理ノ
遂行ニハ頗ル困難ヲ生ズルコトヽ考ヘルノ
デアリマス、豫算委員會ニ於キマシテ、若
槻内務大臣ガ此豫算ノ範圍內ニ於キマシテ
責任ヲ以テ善處シテ、追加豫算ヲ出サヌト
云フ事デアリマスカラ、此言責ニ鑑ミマシ
テ、特ニ政府ハ深甚ノ注意ヲ拂ヒマシテ、遺
憾ノナカランコトヲ期シテ貰ヒタイト云フ
ノガ、警告文ノ趣意デアリマス、此警告文モ
朗讀致シマス「帝都復興計畫ト其豫算トハ
權衡ヲ失シ殊ニ移轉料補償金等ハ甚夕其當
ヲ得ス爲メニ豫算ニ巨額ノ不足ヲ生スルノ
虞アルノミナラス區劃敷正理地區內ノ利害關
係者多數ノ意思ニ重キヲ置カサルヲ以テ實
行不能ニ陷リ且ツ思想ニ惡影響ヲ惹起スル
憂ナシトセス若槻内務大臣カ必ス此豫算ノ
範圍內ニ於テ善處ストノ言貢ニ顧ミ茲ニ贊
意ヲ表スルト雖モ政府ハ特ニ深甚ノ注意ヲ
拂ヒ毫モ遺算ナカランコトヲ警告ス」此二
警告ヲ發シマシテ、政務次官設置以外ノ豫
算ニハ賛成スルノデアリマス、私ハ政務次
官ノ費用ヲ全部削除シ、及此警告ヲ爲ス所
ノ大要ヲ說明シタノデアリマスカラ、諸君
ノ御賛成ヲ望ミマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依シテ發言ヲ許シマス、町田忠
治君
〔町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=50
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051・町田忠治
○町田忠治君 簡單ニ本豫算賛成ノ趣意ヲ
一言シマスルニ付キマシテ、暫時諸君ノ御
〓聽ヲ煩ハシマス、前内閣ノ奏薦ニ依シテ召
集シ給ヒシ當臨時議會ヲバ、目睫ノ間ニ控
エテ現内閣ガ出來マシタ故ニ、已ムヲ得ズ
前內閣ノ作リシ豫算ヲ襲踏シテ、僅カ二三
ノ改訂ヲ行シテ此案ヲ出サレタコトニ對シ
マシテハ、私共ハ事情已ムヲ得ザリシモノ
トシテ之ヲ諒ト致シマス、本豫算ハ御承知
ノ如ク、本年度ニ於テ請求セラレマシタ金
高ハ特別會計ヲ除イテ二億六千万圓、特別
會計ヲ合セマシタ公債金額ニ於テ二億九千
万圓、甚ダ大ナリトハ申サレマセヌ、サレ
ド若シ此豫算ヲ吾々ガ協賛致シマスト同時
ニ、今後五箇年ニ亙ノテ少クトモ十三億ト云
フ頗ル、厖大ナル負擔ヲ國民ガ負フコトニ
相成リマスニ付テハ、吾々ハ出來ルダケ愼
重審議スルノ必要ガアリマス、而シテ只今
政友本黨ヲ代表セラレタル松田君ノ修正意
見ニ依リマシテモ、政務夫官ニ關スル數万
圓ノ金高ヲ削除スルノ外、全部之ニ同意ヲ
表サレタト云フ、此一事ニ徵シマシテモ此
豫算ハ刻下已ムヲ得ザル經費ニ依ッテ出テ
居ルト云フコトヲ、政友本黨ニ於テモ諒ト
セラレタコトヽ私ハ信ジマス(拍手)唯〓十
三億ニ上ル大豫算デアル爲ニ、吾々ハ此豫算
ヲ贊成スルニ付キマシテ一二希望ノ大要ヲ
申述ベル必要ガアリマスガ、其前ニ當ッテ只
今政友本黨ヲ代表サレテ松田君ノ修正意見
ヲ出サレマシタ點ニ一言致シテ置キタイト
思ヒマス、併セテ其二箇ノ警告ニ對シテモ
附言致シタイト思ヒマス、政務次官ヲ新設
シテ事務政務ノ區別ヲ明カニスルノ必要ハ、
私ガ今此處デ喋々中-述ベル必要ハアリマセ
ヌ、總理大臣ガ施政ノ方針ノ演說中ニ、國務
ノ公正及繼續性ヲ保障スル爲ニ、政務次官
ヲ置クノ必要アリト述ベラレタル此一言
ハ此處ニ千万言ヲ費スト同ジ效力ガアリ
マス、松田君ハ只今事務ノ繼續性ニ對シテノゑゑ
ミ論ゼラレタヤウデアリマスガ、吾々ガ事
務ノ繼續性ト同樣ニ必要ヲ思フノハ國務ノ
公正デアリマス、此公正ニ對シテハ政務ト
事務ノ區別ヲスル必要ガアルトシテ、私ハ只
今ノ松田君ノ修正意見ニ對シテハ之ヲ以テ
十分ナリト信ジマス、第二ニ警告ロシシテ現
ハサレタノハ農村振興ノ問題、及復興事業
ニ對シテ是レ以上ノ豫算ヲ出サナイト云フ
御警告デアリマス、農村振興ノ問題ハ國論
ノ一致スル所、何人モ異議アルコトヲ許シ
マセヌ、總總大臣ガ施政ノ方針ノ演說中ニ、
農村振興ニ對シテ言及セザリシ故ヲ以テ、
現内閣ハ全國多數ヲ占メテ居ル農村ニ對シ
テ冷淡ナル如ク論ゼラレマシタノハ、聊カ
其見解ヲ誤クテ居ルト思フ吾々ハ農村振興
ニ對シテハ種々ナル方案ヲ持ノテ居ル、種々
ナル、政策ヲ持ノテ居ル、併ナガラ之ヲ實現
スルニハ國費ノ增加、經費ノ伴フモノ多キ
ヲ遺憾トシマス、現ニ我ガ憲政會ハ現内閣
成立ノ後ノ大會ニ於キマシテ、政綱五箇條
ヲ發表シテ天下ニ聲明シタノデアリマス、
其主ナル政綱ノ一ハ農村振興デアッテ、當時
總裁トシテ此大會ニ臨マレタ現總理大臣モ、
我黨ノ政綱ニ於ケル農村振興ノ政網ニ對シ
テハ、滿腔ノ同情ヲ表セラレテ居ルコトガ
是デモ明カデアリマス(拍手起ル)又此度ノ
豫算ヲ御覧ナサイ-此度ノ豫昇ヲ御覧ナ
サイ、農村ニ園スル費目ハ少クアリマセヌ、
殊ニ大藏大臣ガ經濟復興公債トシテ二億萬
圓ノ發行ヲスルコトノ政策ヲ茲ニ元サレタ、
其一半ハ、地方產業、就中農村振興ニ用ユル
ト云フ趣意ヲ明カニサレタ一事ニ依シテモ、
現内閣ハ農村振興ニ對シテ深甚ナル注意ヲ
拂ノテ居ルト云フコトノ證據デアリマス(拍
手起ル)又復興貯蓄債劵二億ヲ除イテモ復興
關係ノ經費ト今後五箇年ニ亙シテ十三億
以上ヲ國民ハ負擔ヲ致シテ居リマス、是一
昨年九月ノ前古未曾有ノ大震災ニ對スル國
民一般ノ同情ノ致ス所デアリマスルガ故
ニ、當局者ハ此國民ノ誠意ヲ諒トシテ、此
豫算ノ範圍內ニ於テ既定ノ目的計畫ヲ完成
スルノ責任ガアルコトハ勿論デアリマス、
而シテ全國民ガ十三億ノ大豫算ヲ帝都復
興、震災救済ノ爲ニ吝マザリシノ故ヲ以テ、
地方農村ニ對シテ更ニ大ナル設備施設ヲ要
スルコトヲ當局トシテハ閑却セザランコト
ヲ吾々ハ確ク信ジテ居リマスルガ故ニ、暫ク
行政ノ整理、財政ノ整理ト相俟ノテ當局者ガ
具體的農村、興興ノ案ヲ提出スルマデ、當局者
ノ言明、及當局者ノ責任ニ之ヲ任セ、故ラニ茲
ニ恰モ不信任案ニ近キ警告ヲ附スルコトノ
必要ナイト信ジマス、更ニ吾々ハ此十三億
ニ達スル大豫算ニ對シテ全部協賛ヲ表スル
希望ノ一トシ、賛成スル理由ノ主ナル箇條
トシテ茲ニ一言致サナケレバ相成ラヌノ
ハ今年ノ實行豫算ニ對スル希望デアリマ
ス、諸君ガ御承知ノ通リ本年ノ豫算ハ曩ニ
委員長報告ノ如ク、大藏省發表ノ〓表ニ
依レバ十六億千万トアリマス、サリナガラ
將來吾々ノ協賛ヲ得ベクシテ既ニ支出セラ
レタル責任支出ノ金高九千万餘ヲ加ヘマス
ルト、大正十三年度ノ豫算ハ無慮十七億以
上ニ上ノテ居リマス、一年ノ豫算十七億ニ上
ルコトハ未ダ曾テアラザル所ノ大豫算デア
リマシテ、之ヲ昨年ノ豫算ニ比較シマスルト、
約二億三千万圓ヲ加ヘテ居リマス、昨年ノ豫
算ノ十四億七千万圓ノ豫算ニ比スレバ、十
七億ト云ヘル今年ノ豫算ハ二億三千万圓ヲ
增加シテ居リマス、勿論昨年ノ豫算ノ中ニ
ハ震災ニ屬スル經費一億七千万圓ヲ見積リ、
大正十三年度ノ豫算全部ニ於テハ三億五千
万圓ヲ計上シテアリマス、此震災關係ノ經
費ヲ除キマスルト、昨年ノ豫算ト今年ノ豫
算ハ稍、其計數ヲ同ジク致シマスルガ、總
理大臣ガ過日ノ施政演說ニ於テ聲明セラレ
タル如ク行政財政ヲ整理シ、公債ノ公募ヲ
避ケルト云フ此緊縮方針ヲ主ト致シ、更ニ大
「當當局者ガ之ヲ敷衍シテ政府及國民ノ一大
御約、消費ノ大節減ヲ標榜シタル此內閣ガ、
昨年ニ比シテ更ニ二億三千万圓ト云ヘル政
府ノ消費ガ殖エル、此大豫算ヲ如何ニ按排
スルカト云ヘバ、大藏當局、殊ニ總理大臣
ノ聲明セラレタル所ノ財政ノ緊縮ト云ヒ、
其主義方針ニ對シテ大正十三年度ノ實際ノ豫
算ハ、頗ル國民ノ消費ヲ促ス豫算ト相成ッテ
居ルノハ吾々ハ刻下已ムヲ得ザルト同時
ニ、甚ダ之ヲ遺憾ナリトスル所デアリマス、
故ニ吾々ハ斯カル經費ハ帝都復興震災救濟
ノ爲ニ、刻下已ムヲ得ズ支出シタモノト致
シテモ、本年ノ實行豫算ニ出來ルダケノ節
約ヲ加ヘテ、政府及國民消費節約ノ大精神
ヲ貫徹スルコトニ一步ヲ近ヅケルコトヲ切
ニ當局者ニ望ミマス、察スルニ本年ノ豫算
十七億ノ經費ヲ國家ガ之ヲ支拂ヒ致シマ
スルト、恐ラクハ經濟上ニ所謂中間景氣ヲ
生ズルノ虞ナシトハ致シマセヌ、斯カル事ハ
財政ヲ根柢的ニ整理スル趣意ニ於テ甚ダ遺
憾デアリマス、縱令刻下已ムヲ得ザル經費、
昨年ノ災害ガ遂ニ斯カル已ムヲ得ザル經
費ノ支出ヲ要スルニ至ッタトシマシテモ、十
七億ト云ヘル政府ノ消費ハ、事實ニ於テハ
消費ノ節約ニアラズシテ、政府消費ノ增加
デアリマスル此點ニ對シテ經濟社會ニ及
ボス影響ニ甚ダ憂フベキ事アルト思ヒマス
ルニ依フテ、重ネテ政府當局ハ此點ニ對シテ
十分ノ注意ヲセラレンコトヲ希望シマス、
又政府ノ誠意ヲ以テ國民ニ對スル節約ヲ奬
メ、其結果國民ノ自覺ニ依ッテ或ハ經濟的、
政府ヲ離レタ國民ノ消費ガ減ジ得ラレルカ
モ知レマセヌ、若シ俄ニ國民ノ消費ガ減ジ
夕場合アリト假定シ、此場合ニ於テ消費ノ節
約ハ一時生產ノ減退ヲ來シマス、政府ハ内ニ
節約シタル生產力ヲ外國ニ向シテ輸出スル
ノ政策ヲ講ズルニアラザレバ、消費ノ節約
ハ生產ノ退減トナリ、或ハ生產ノ方向轉換
トナッテ一時經濟界ニ混亂ヲ生ズル事ナシト
ハ言ハレマセヌ、現内閣ニハ幸ヒ財政ニ堪
能ナ閣員少カラズ、就中政友會總裁高橋君
ノ如キハ、國家財政ニ於テモ經驗アリ、民間
經濟ニ於テモ非常ナル經驗ヲ有シテ居ラル
ル方デアルカラ、斯カル點ニ對シテハ必ズ
經濟社會ノ混亂ヲ避クルコトニ對スル成案
ガアルコトヽ確ク信ジテ、暫ク政府ノヤル
コトニ任スルコトガ至當卜思ヒマス(拍手
起ル)最後ニ吾々ノ木案ヲ賛成スルコトニ
付キマシテ、最後ニ一言シタイノハ公債政
策ニ關スル件デアリマス、申スマデモナク
諸君ガ今日御協賛ニ際シテ居ル公債ハ、幸
ニ今年度分ニ於テノ二億九千万圓ハ、或ハ外
債ノ利用ニ依リ、預金部ノ利用ニ依リ、剩餘
金ノ利用ニ依リ、郵便局ノ募集ニ依ル利用
ニ依シテ、金融市場ヲ攪亂スル所ノ所謂公募
ヲ避ケラレタルコトヲ諒トスルモノデアリ
マスルト同時ニ、來年以後明治十七年ニ亙ッ
テ尙ホ七億ノ復興關係ノ豫算ガアルノデア
リマス(「明治十七年カ」ト呼フ者アリ)大正
十七年ノ誤リデアリマス-今後五箇年間
ニ亙フテ尙ホ七億ノ復興關係ノ公債ヲ募集
スルノ計畫ニナッテ居リマス、政府ガ財政ヲ
整理シ、行政ヲ刷新シテ、緊縮方針ヲ執ク
テ茲ニ國庫ノ歲入歳出ノ間ニ、此公債ニ代
ルベキ剩餘金ヲ得タナラバ頂上デアリマス
ガ、果シテ斯カル巨額ノ節約ヲ行政ノ上ニ
加ヘルコトガ出來ルカ否ヤハ、マダ之ヲ後
日ニ徵スルノ外ハアリマセヌ、何人ヲ局ニ當
ラシムルモ斯カル巨額ノ金額ヲ節約シテ、
切ノ公債ヲ募集セザル財政ヲ作リ出スコト
ハ頗ル困難ト私ハ想像致シマス、而シテ政府
ガ此方針ニ依ノテ今後財政ノ基礎ヲ鞏固ニ
シタ曉ニハ、民間金融、卽チ經濟市場ヲ壓迫
スルコトナクシテ、公債募集ノ時期ニ到ラ
ンコトヲ吾々ハ切望シテ居ルノデアリマ
ス、若シ公債募集ノ時期ガ到來シ、政府ガ
公債ヲ作ルコトガ、民間經濟社會ガ株式ヲ
增資シ、或ハ社債ニ依ノテ事業ヲ進メルト云
フコトヽ兩立セシムル場合ニ立至ッタナラ
バ、政府ハ政府ガ獨占スル事業ニ向シテハ
公債ヲ發行シテ其事業ヲ擴張スルコトハ當
然ト思ヒマス、現在ノ財界ニ對シテ政府ハ
非募債政策ヲ執ノテ市場ヲ壓迫セザルト
云フコトニ對シテハ、吾々ハ同感デアリマ
ス、併ナガラ現内閣モ又吾々モ、非募債主義
ヲ執ルナドヽ云フコトハ斷ジテアルベカラ
ザル事デアリマス現實ノ政策トシテハ公債
募集ヲ避ケルニ相違ナイガ、主義トシテ國
家ノ事業ニ對シテハ、民間經濟ノ壓迫ヲ避
ケ、公債ヲ募集スルノ便利ナ時ニ至ッテハ、
此國家事業ノ爲ニ公債ヲ募集スルト云フコ
トハ當然ノ事デアリマス、政策トシテハ今
曰ハ非募債政策ヲ執リ、主義トシテハ公債
募集ヲスルト云フコトニ對シテ、吾々ハ斯
樣ナ說ヲ持シテ居ル、當局者亦之ニ對シテ異
論ノ無イコトヽ堅ク信ジマス、其他產業政
策、金融政策、交通政策等、種々希望ハア
リマスルガ、此希望ハ他日適當ノ機會ニ於
テ申述ベルコトヽシ、本問題ニ於テ吾々ガ
實行豫算ニ對スル希望、公債政策ニ對スル
希望ヲ述ベテ、本案全部ヲ賛成スル理由ノ
一端ト致シマシテ此席ヲ降リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=51
-
052・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉植庄一郞君
〔吉植庄一郞君登壇、拍手起ル〕
(「總理大臣ハ何處へ行ッタ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=52
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053・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 吾々ハ松田君ノ提出セラ
レタル修正案ニ賛意ヲ表スル者デアリマス、
此修正ノ趣意ハ松田君ニ依シテ略ニ論ジ盡サこ
レテ居リマス、併ナガラ此問題ハ單ニ僅カ
ナル數字ノ問題デハアリマセヌ、現內閣ガ
今囘提出シタル所ノ豫算案ニ於テハ、其大
部分ハ〓浦內閣ノ立テ夕所ノモノヲ踏襲シ
タノデアッテ、現内閣ノ主義政綱ヲ現シタモ
ノハ先ヅ此豫算中ニ於テ政務次官設置ト
云フ、此一ツダケガ現ハレテ居ルノデアル、
アトハ皆全部踏襲ト言ッテ宜イノデアル故
ニ吾々ハ此內閣ガ前內閣ノ作ノタ豫算ヲ踏
襲シテ出ス場合ニ、特別ニ此豫算ダケヲ俄
ニ挿入シテ、政務次官設置ト云フコトヲ主
張シタノデアリマスカラシテ、之ニ對シテ
ハ現内閣ノ政策果シテ適當ナルヤ否ヤト云
フ根本ノ問題ニナルノデアリマス、又今一
ツ前內閣ガ此內閣ニ引繼イダ所ノ各豫算ノ
中ニ於テ、農務省獨立ノ問題ハ不幸ニシテ
現內閣ハ是ハ除外シタノデアリマス、卽チ
農務省獨立ノ豫算ハ之ヲ引離シテ、之ヲ捨
テヽシマッテ、之ニ代ユルニ政務次官設置ノ
案ヲ出シタノデアリマス、故ニ吾々ハ現内
閣ガ聲明シタル所ノ主義政策ノ當否ヲ論ゼ
ントスルニ當ノテハ、此小ナル問題ハ非常ナ
ル、重大ナル問題トナルノデアリマス、吾
々ハ法理論、或ハ此運用ノ如何ト云フコト
ニ付テハ、松田君ノ論ニ於テ盡キテ居リマ
スカラ、敢テ之ヲ再論スルノ必要ヲ認メナ
イ、唯〓現內閣ガ斯ノ如キ無用ノ官ヲ置キ
タルハ何故ナルカ、斯樣ナモノヲ置クニ至ッ
タ動機ヲ考ヘテ見タイノデアル、現內閣ハ
所謂三派護憲內閣デアシテ、初メノ時ニハ或
ハ貴族院ノ改革ヲ叫ビ、更始一新ヲ唱ヘテ、
非常ニ新シキ所ノ政治ヲ爲サントスルガ如
クニ天下ニ聲明サレタノデアル、偖テ内閣
ノ出來上ッタ所ヲ見ルト、彼等ガ特權階級ト
唱ヘテ居ッタ所ノ所謂貴族院ヨリ三人ノ閣
僚ヲ人レ、衆議院ヨリ僅ニ四人ノ閣僚ヲ採
リ、其他ハ皆官僚デアル、而シテ自由任用
ニ屬スル所ノ內閣書記官、法制局長官、警視
總監、警保局長ノ如キ諸官ハ、定メテ自由任
用ニ依シテ政黨ノ中ヨリ適材ヲ簡拔スルデ
アラウト吾々ハ天下國民ト共ニ期待シテ居
タ、然ルニ豫期ニ反シテ悉ク之ヲ官僚及貴族
院議員ヨリ採、〓テ居ルデハナイカ、而シテ更
ニ自由任用トナッテ居ル十人ノ次官中ニ於
テ、僅ニ三名ノ衆議院議員ヲ採用シタニ過
ギナイ、他ノ七名ハ悉ク官僚ヲ以テ之ニ充
テヽ居ルト云フコトハ、天下ガ殆ド驚イテ
居ル事實デアリマス(拍手)然ルノミナラズ
樞府ノ老人ヲ煩ハシテ滿鐵ノ總裁ト爲シ、
政黨ニ在ル所ノ有力ナル武富君ノ如キ人ヲ
樞府ニ推スルコトヲ敢テセズシテ、上院ノ
老人ニ賴ムト云フ如キ、斯樣ナ官僚ノ空氣、
官僚ノ氣分ガ此内閣ノ全部ニ横溢シテ居ル
ト云フコトハ爭フベカラザルコトデアル
(拍手)若シ眞ニ政務次官設置ノ必要ヲ認メ、
農務省獨立ノ緊急問題、國民ノ要求シテ居
ル此問題スラ後廻シニスル內閣ナラバ、取
故ヘズ自由任用ニナッテ居ル十人ノ次官ヲ
何故ニ悉ク黨人ヨリ採用シナカッタカ、人材
ナシト云フナラバ、更ニ任用令ヲ變ヘテモ
何處カラ持ノテ來ル積リデアルカ、其政黨員
ニ適材多士濟々ナリトスルナラバ、改正ヲ
俟ズシテ十人ノ次官ハ悉ク任用ガ出來夕筈
デアル、官制ヲ變ヘナケレバ出テ來ラレナ
イト云フヤウナ者デアルナラバ、吾々ハ何
ノ爲ニ之ヲ任用スルカト云フコトヲ疑ハザ
ルヲ得ヌノデアル、斯樣ナ人材簡拔ノ方法、
總テ官僚ノ餘孽ヲ捕へ來ノテ、面シテ現内閣
ノ中心ニ据ヘルニ至ンテハ、冠履〓倒倒甚
シト言ハナケレバナラヌ、法制ヲ如何ニ改
善シテモ、法律ノ條文ヲ如何ニ改メテモ、
之ヲ實行スル所ノ精神ノ働キ如何ニ依ッテ、
法律ハ殆ド其效力ヲ失フノデアル、如何ニ
官制ヲムヅカシク造ッテモ、此國民的內閣、
衆議院ヲ本位トシタ所ノ此設憲內閣ナリト
稱スルナラバ、當初ヨリ現内閣ハ三派ノ多
士濟々トシテ殆ド總テ悉ク大臣、次官ノ適
材タラザルハナイデハナイカ、是程ノ多數
ヲ持シテ居リナガラ、十人ノ次官ノ中ニ辛ウ
ジテ官僚カラ出テ、衆議院ニ近頃席ヲ置イ
タ所ノ一人ノ次官ヲ加ヘテ、僅ニ衆議院ヨ
リ三人シカ採レナイニ至ッテハ、吾々常識ヲ
以テ何ノ故タルヲ解スルニ苦ムノデアル、
斯樣ナ官僚氣分ノ横溢シテ居ル內閣ガ、小
理窟ヲ付ケテ官制ヲ弄クリ廻シテ見夕所ガ、
其爲ス所知ルベキノミ、之ニ依シテ出來上"
タモノハ却テ其醜態ヲ重ネルコトニナッテ、
事ニ依ルト之ガ爲ニ遂ニハ其黨派ノ中ヨリ
シテ、或ハ內閣ニ對スル不信任ノ空氣ガ此
問題ノ爲ニ勃發シハセヌカト云フコトヲ御
氣ノ毒ニ私ハ考ヘテ居ル、故ニ吾々ハ現内
閣ノ爲ニモ、斯樣ナ無益ナ無用ノ官ハ御廢
メニナルガ宜シイ、何ニモナラナイ、大隈
內閣ノ當時ニ於テ參政官、副參政官ヲ置イ
テ、事務ト政務トノ區別ヲ付ケタナドヽ申
シテ居シタケレドモ、其當時議會ニ於テ其參
政官中ニ議會ノ答辯ニ當リ得タル者幾人ア
リシヤ、無カッタデハナイカ、悉ク事務官ノ
指導ヲ受ケテ、曾テハ此事務官ナル者ハ娼
妓ノ徒デアル、朝ニハ甲ノ内閣ニ媚ヲ呈シ
タニハ乙ノ内閣ニ媚ヲ售ル、是レ娼婦ノ徒
デアルト尾崎咢堂君ハ嘲罵シタ、其事務官
ニ總テノ事ヲ〓ハッテ、參政官ノ諸君ハ惴々
爲トシテ其命ニ聽イテ居シタデハナイカ、此
苦キ經驗、苦キ體驗ヲ再ビ重ネントスルニ
至)テハ寧口吾々ハ其愚ヲ嗤ハザルヲ得ヌ
ノデアリマス、故ニ此問題ハ、或ハ僅カノ
獵官ヲ志ス所ノ少數ノ者カラハ迎ヘラレル
カ知ラヌガ、三派ノ友黨ノ諸君モ大體ニ於
テ僕ト同論デアルト云フコトヲ信ジテ居リ
マス(拍手)故ニ此問題ハ餘リ多ク論ズルノ
必要ハナイ、次ニ警告ノ事デアリマス、只
今尊敬スベキ町田君ガ現内閣擁設ト言ハウ
カ、鞭撻ト言ハウカ、或ハ杞憂ヲ拂ハレタト
申サウカ、頗ル賛成兼反對ノヤウナ、兩方
ノ意味ノ加ハッタ說明ガアンタ、此點ハ私ガ
此豫算ノ提起セラレタ日ニ於テ質問ヲ致シ
タコトヲ思ヒ出ス、三派ノ内閣、主義政策
ヲ異ニシ、互ニ主張ヲ鬪ハシテ居ッタ黨派
ノ諸君ガ、所謂設憲ト云フ一時的ノ問題ニ
苟合シテ〓〓內閣ヲ倒シ、其後ニ三派ハ玆
ニ急遽トシテ内閣ヲ造。タ、是ニ於テ先ヅ起
ル問題ハ三派ノ主義主張ヲ如何ニ統一シ、
如何ニ聯絡シテ、之ヲ政策ノ上ニ具體化ス
ルカト言フコトヲ、大ナル興味ヲ以テ見ル
ト云フコトヲ私ハ言シタ、果セル哉此杞憂ハ
著々トシテ事實ニ現ハレテ來テ、濱口大藏
大臣ノ財政緊縮ノ方針ト、高橋農商務大臣
ノ多年ノ傳統的ノ積極主義、先ヅ斯ウ云フモ
ノヽ間ニ於テ、如何ナル步ミ合ガ出來ルカ、
此主義主張ガ如何ニ調和ガ出來ルカ、或
農村問題ノ上ニ、或ハ貿易ノ輸入超過防止
ノ上ニ、其他各種ノ質問應答ニ依ノテ、茲ニ
到底兩立スベカラザル所ノ弱點ガ事實ノ上
ニ現ハレテ來タノミナラズ、三派與黨ノ間
ニ於テモ此豫算ニ對シテハ或ハ政務次官ノ
問題ニ對シ、政友會ノ考ヘテ居ル所ヲ昨日
秦君ニ依シテ豫算總會ニ辯明セラレタル趣
意ト、今日總理大臣ノ答ヘタル所ノ趣意ト
距離頗ル遠イノデアル、又濱口君ガ其
緊縮ノ方針ヲ論ジ、公債政策ノ改善ヲ論ズ
ルニ際シテ、町田君ハ今日ニ於テハ賛成、
ガ、他日公債ヲ募ルコトガ差支ナイト云フ
時ガ來タナラバ、大ニ募,テヤラナケレバイ
カスト云フ論モサレテ居ル、此財政政策ヲ
主張シ、非募債王義ヲ主張シテ、苦キ經驗ヲ
持ノテ居ル憲政會ノ諸君ハ、轉バヌ先ノ杖ノ
老婆心カモ知レナイガ、一方ニ於テ大藏大
臣ガ整理節約、公債政策ノ改善、卽チ我國
ノ財政ノ基礎ヲ鞏固ニスルコトガ今日ニ於
ケル最大ノ問題ナリト、渾身ノ力ヲ以テ此
問題ニ努力シ、且又一方ニ於テ種々ノ方法
ヲ執リ、今回ノ豫算及法律案トシテ現ハレ
タノハ、獨リ大藏大臣所管ノ問題ノミト言
テモ宜イ、現內閣員中今日主義ノ爲ニ其主
張ヲ貫徹シ努力シテ居ルノハ一濱口君アル
ノミト言ッテモ宜イ、是程力ヲ人レタ其主張
ニハ吾々ハ反對デアルガ、其主義主張ガ何
レニモセヨ、沖身ノ力ヲ以テ公債政策ノ改善
ニ努力シテ居ル間ニ、此豫算案ニ對シテ其與
黨ノ賛成演說ハ好イ加減ニシテ、公債ヲ早ク
募ル工夫ヲシナケレバイカヌゾト言ハン許
リノ狀態ヲ呈スルニ至ノ夕(拍手起ル)一種
內閣諸公ノ中ニ色々樣々アルノミナラズ、
政府ト與黨トノ間ニ、政府ヲ支持シナケレ
バナラヌ與黨トノ間ニ、斯ノ如キ意見ノ相
違アル所ヲ吾々ハ見出スコトヲ悲ムノデア
リマス(拍手起ル)農村振興ノ問題、或ハ輸
人超過ノ問題ニ對シテ、豫算總會ニ於テ繰
返サレル所ノ質問應答ハ片岡委員長ニ依ノ
テ御報告サレタガ、大分御〓告ハ事實ト云
フモノヲ離レタモノガ多イ、與黨ニ都合ノ
好イ點ダケヲ言ウテ、其痛イ所ノ點ヲ悉ク
除外サレテ居ル手際ニハ感服ヲ致ス、併ナ
ガラ吾々ハ此豫算總會ニ於テ政府ノ財政計
畫公債計畫、或ハ輸入防止ノ計畫、是等
ノ諸問題ニ對シテノ質問應谷ニ依ノア、濱口
君ガ一語半句モ農村振典ノ爲ニ財源ヲ提供
致サウト明言シタコトヲ聞イタ事ガナイ、
總理大臣加藤君ハ施政演說ニ於テ、此內閣
ハ國民ノ負擔ヲ輕減スルト云フガ如キ問題
ハ少シモ考ヘテ居ラナイ、大震火災ノ非常
ナル事變ノ爲ニ財源ヲ失ッタ今日ニ於テ、國
民負擔ノ輕減ニ付テ何物ヲモ考ヘテ居ナイ
ト云フコトヲ此壇上ニ於テ明言サレテ居
ル、又濱口君ハ啻ニ大正十三年度ニ於テ負
擔輕減ヲ爲シ能ハザルノミナラズ、十分ナ
ル財政行政ノ大整理ヲ斷行シ、國民ノ自覺
ヲ促シテ其勤儉力行ヲ進メ、上下心ヲ一ニ
シテ大整理節約ヲシテ生ミ出シタ、其結果ト
シテ出テ來夕所ノ金ヲ、之ヲ廢減稅、卽チ國
民ノ負擔輕減ニ用キル見込ハ少シモナイト
云フコトヲ斷然トシテ明言セラレテ居ルデ
ハナイカ(ノウ〓〓)是ハ私ノ質問ニ對シテ
濱口君ガ直接ニ各ヘタ所ノ言葉デアリマ
ス斯樣ナル廢减稅ノ爲ニハ一厘半錢モ出
スコトハ能ズト云フ財政計畫ヲ持ノテ居ル
當局者デアリ、而シテ之ニ裏書シテ居ル總
理大臣ヲ持シテ居ル此內閣ガ、ドウシテ何處
カラ金ヲ持ノテ來テ農村振興ノ資源ヲ得ン
ト欲スルノデアルカ、高橋農商務大臣ハ私
ノ質問ニ對シテ極メテ巧ミニ、極メテ晦澁
ニ其議論ヲ避ケラレテ居ル、例ヘバ米價問
題ニ對シテモ、或ハ輸人超過ノ問題ニ對シ
テモ、農務省獨立ノ問題ニ對シテモ、流石
ノ公平ナル片岡君ガ頗ル廻リ諄イ言葉ヲ以
テ農務省獨立問題ニ對スル意見ナリト云ウ
テ先刻報告セラレタガ、アレハ片岡君ノ發
明ニアラズシテ、高橋農相ノ直傳デアリマ
ス、高橋農相ガアノ通リ言ウテ居ル、自分ハ
單ニ此場合ニ農務省ヲ獨立シテ二ツノ省ヲ
分ケルト云フダケデハ意味ヲ成サヌ、但之
之ニ就イテハ考慮シテ成ベク出シタイ希望
ヲ持シテ居ル、此程度以上進マナイ、今出
シテアル現内閣ノ此豫算ノ中ニ含メテ出シ
夕所ノ豫算ヲ否認シテ、面シテ新ニ何ヲ爲
サントスルカト云フ具體ノ問題ニ付テハ
語シテ審カナラズ、雲烟縹渺トシテ捕捉スル
コトガ出來ナイノデアル、又米ノ調節ノ間
題ニ對シテモ同樣デアル、現行法ヲ前任ノ
大臣ハ實行シナカッタノデアル、故ニ現行法
ニ依ッテ米價ノ調節ガ出來ナイノデ、俺ガヤ
レバ立派ニヤンテ見セルト云フコトヲ言ハ
レル、併ナガラ現行法ニ依シテ米價ノ調節
ヲ爲ス能ハザルコトハ昨年衆議院ニ於テ各
派農村振興委員會デ、十數日ニ亙ノテ政府及
議員トノ間ニ〓鎖討論ヲ盡シ、到底現行法
ノ米穀法ニ依ノテハ我國ノ米價調節ハ斷ジ
テ爲シ能ハズト云フコトニ結論サレテ、而
シテ政府ニ對シテ此法律ノ改正及米價ノ調
節ヲ速ニ爲スベシト云フ決議ヲ、全會一致
ヲ以テ衆議院ハ通過致シテ居ルノデアル、
高橋農相ガ簡單ニ是ハ前任者ニ腕前ガナク
テ、其法律ヲ十分ニ行ハナイノデ、俺ハ腕
前ガアルカラ刀ヲ持夕ナクテモ斬レルト言
ハンバカリノ傲語ヲセラレルケレドモ、吾
々ハ左樣ナル簡單ナル一語ヲ以テ、國論タ
ル所ノ此問題ヲ讓·サスルコトハ出來ナイノ
デアリマス、又金利ノ問題、物價ノ問題、金
解禁ノ問題、是等ノ諸問題ハ、輸人超過ヲ
如何ニ調節スベキカト云フ問題トハ緊切離
ルベカラザル、密切離ルベカラザル關係ヲ
有シテ居ルコトハ私ガ言フマデモナイ、
濱口君ハ此輸入超過ノ問題ヲ現下ノ最モ重
大ナル問題ト見テ居ラレルコトニ付テハ敬
意ヲ拂フ、併ナガラ今回ノ豫算竝ニ豫算關
係以外ニ於テ、政府ガ續々ト出シテ來ル所
ノ諸法案ヲ見レバ、大藏大臣ハ現在我國ニ
於テ年額六億以上ニ激增シ來ノテ居ル輸入
超過ノ問題ニ、渾身ノ力ヲ加ヘテ解決ヲス
ルコソ、眞ニ我國ノ經濟財政變理ノ根本デ
アルト云フコトニ氣ガ付カナイコトヲ私ハ
惜ムノデアリマス、同君ガ公債政策ヲ云爲
シ、或ハ國民ノ勤儉白覺ヲ促スト云フガ如
キ、極メテ間接的ノ手段方法ニ依シテ政府
ノ財政整理、行政整理問題ヲ、整理節約是
等ニ依ッテ白然ト物價ガ下ルデアラウト言
ウテ居ル、自然ト物價ガ何年ニ下ルノデア
ルカ、而シテ何年經ッタラバ其樣ナ政治ヲ
ヤッテ、此非常ナル激增ノ形勢ニアル輸入超
過ヲ防遏スルコトガ出來ルノデアルカ、之
ヲ問ヘバ同君ハ曰ク、左樣ナ事ヲ問フコト
ハ吉植君ニ似合ハナイ事デハナイカト言ハ
レル、凡ン一國ノ政局ヲ擔當シテ、當面シ
タル此輸入超過ノ大問題ニ對シテ、解決ヲ
與ヘント欲スルナラバ、少クトモ政府者ハ
此方法ヲ實行シ、此政策ノ實現ニ依シテ、何
年ノ間ニハ凡ン半額位ノ輸入ガ止マルト
カ、或ハ斯ウ云フ方法ニ依テ輸出ヲ奬勵
シ、斯ノ如キ政策ニ依テテ出增進ヲ圖ル
ナラバ、凡ソ何年ノ間ニハ此位ノ程度ノ輪
出ハ出來得ルモノデアルト云フ、肯定的ノ
意見ヲ以テ臨マナケレバ、唯、徒ニ慢然ト
シテ國民ノ勤儉貯蓄ニ依賴シ、單ニ財政ノ
〓此理、行政ノ整理、若クハ公債政策ノ改善
ト云フガ如キ、極メテ緩慢ナル微溫的ナル
賴他主義ヲ政策ニ依ッテ、此問題ノ直接解決
ニ何年掛ルカト云フ事スラモ明言出來ナイ
ニ至ッテハ、私同君ノ爲ニ甚ダ其識見ヲ疑ハ
ザルヲ得ナイノデアリマス(拍手「ノウ〓〓」)
之ニ對シテ、豫テハ金融上ニ於テハ通貨收
縮論者デアリ、金利ヲ上ゲナケレバナラヌ
ト云フ論者デアリ、金解禁ノ最モ熱烈ナル
論者デアッタ所ノ濱口藏相ハ、何時ノ間ニカ
高橋農相ノ說ニカブレタノカ、妥協シタノ
カ、譲シタノカ、分フナイガ、此頃ハ金利モ下
ゲルコトヲ希望スルトニロテテル、金ノ解禁
ハ〓斷ジテ其時ニアラズト數日來突張ノテ
居ル、段々ト同君多年野ニ在タ時ノ主張
ガ、政友會ノ財政論、經濟論ニ段々調和ヲ
求メツヽアルヤウナ傾向アルコトハ吾々ハ
寧ロ喜、フノデアリマス、併ナガラ我等ノ十
年來天下ニ呼號シ來ノタ所ノ國民負擔ノ輕
減ニ付テハ、幾ラ財政ノ整理ヲシテモ一厘
モ出セナイト言シテ居ル、先刻陸軍及海軍ニ
大整理ガ出來得ルヤウナコトヲ片岡委員長
ニ依ッテ諸君ニ報告セラレタガ、假令ソレニ
依ッテドレダケノ整理節約ガ出來テモ、一厘
一毛モ減稅ニ之ヲ使フ金ガナイ、農村振興
ノ爲ニ費ス金ノ出途ヲ考ヘテ居ナイト云フ
ニ至ッテハ、唯〓政府ノ財政ノ爲ニ、政府ノ行
政整理ソレ自身ノ爲ノ整理デアッテ、其整理
節約ハ國家ニ向フテ殆ド積極的ニ何等ノ意
味ヲ持タヌト云フコトヲ斷言スルノデアリ
マス(拍手)吾々ハ斯ノ如キ問題ヲ列ベ來レ
バ頗ル多イノデアリマス、尙ホ又此内閣ハ
匆卒ノ際デアルカラシテ、主義政策ニ於テ
統一ガナイト云フコトヲ先刻私ガ言ウタ、
此主義政策ガ今回出サレタ所ノ諸法律案及
豫算案ノ中ニモ兄出スノデアル、先刻町田
君ノ論ゼラレタ通リ、本年ノ豫算及實行豫
算ニ於テ之ヲ合セルト約十七億、整理節約
行政整理ヲ旗印トシテ居ル所ノ此内閣ガ、
此問題ニ對シテ殆ド一指モ染メナイデ、前
內閣ノ豫算ヲ踏襲シタル其大膽、無謀ト言
ハウカ、吾々ハ一驚ヲ喫シテ居ル、故ニ帝
都復興ノ問題ニ付テモ嚴重ナル警告ヲ發ス
ルノ必要ヲ感ジテ居ル、何ヘバ一坪二二十
七圓五十錢ト云フガ如キ極メテ安イ所ノ移
轉料ヲ以テ、此區劃整理ガ果シテ遂行出來
ルヤ否ヤト云フコトハ、政治ノ實際問題ト
シテハ深ク疑ヲ持ツ所ノ問題デアリマス
(拍手)又此會テ3成シタ當時ノ豫算額二千
六百餘万圓ハ、其移轉スベキ人々ノ數ノ非常
ニ少イ時デアッタガ、今ヤ移轉スベキ所ノ家
屋ハ續々トシテ建立セラレテ、約三倍ニ上
ル所ノ移轉者ガアルヤウニナッタノデアル
カラ、其三分ノ一ノ移轉者ニ一坪二十七圓
五十錢ト云フ僅カナル金デシタ所ノ計晝
ガ、果シテ此豫算ノ範圍內デ實行出來ルカ
否ヤト云フコトハ大ナル疑問ヲ持ノテ居ルノ
デアリマス(拍手)若シ國家ニ財綽々トシ
テ餘地アッテ、足ラナケレバ何時デモ追加豫
算デ要求スレバ卽チ足ルト云フガ如キ、放
漫無責任ナルコトヲ敢テスルナラバ率知ラ
ズ、此豫算ノ範圍內ニ於テー-若槻君ガ昨
日豫算總會ニ於テ全貴任ヲ以テ此豫算ノ範
圍内デ遂行スルト斷言サレタ勇氣ニ向テ
多大ノ敬意ヲ表スルト同時ニ、與黨諸
君ハ非常ナル此責任ヲ共ニ負擔シテ、此帝
都復興ノ問題ニ對シテ、他日一錢一厘タリ
トモ追加豫算ヲ提出スルト云フヤウナコト
ガアリ、若クハ此問題ガ途中デ停頓シテ進
行スルコト能ハザルコトガアッタナラバ、諸
君ハ内相ト共ニ重大ナル責任ヲ負擔スル者
デアルト云フコトヲ警告致シテ置キマス
濱口藏相ハ殆ド一本槍ニ昨日マデモ今日マ
デモ、熱烈ニ整理節約-今日ノ國家ノ急
務ハ財政ノ基礎ヲ根本ニ鞏固ニスルニ在リ
ト云フコトヲ力說セラレタ、而シテ是ガ爲
ニ公債政策ノ改善ヲカ說セラレタ、併ナガ
ラ是ハ町田君モ怪シイト思フカラ逃ゲ途ヲ
張ッタノダラウト思フ、同君ノ議論ハ如何ニ
モ堂々デアル、其態度モ嚴肅デアル、而シ
テ如何ニモ論理的デアル併ナガラ是ハ極
メテ又學究的デアル、政治家的デナイ、卽
チ此公債政策ヲ論ズルニ當シテモ、吾々ハ成
ベク公債ハ募ラス、サウシテ財政ノ基礎ヲ
鞏固ニスルノダト云フガ、然ラバ大正十三年
度ニ於テ何ノ金ヲ以テ支辨スルカト云ヘ
バ、勝田前藏相ガ英國及亞米利加デ募ノタ
所ノ公債ノ中カラ、一億五百万圓ノ金ヲ以
テ、預金郎ノ金六千万圓ヲ以テ、郵便局ニ
於テ賣出シタル小額公債ノ金ヲ使シテ、之ニ
剩餘金ヲ以テ、名前ハ公債ト書イテナイト
云ンテモ、前ニ募シタ公債ト後カラ募ノ夕公債
ノ差ガアッテモ、公債タルニ於テ何ノ差ガア
ル(拍手)又郵便貯金其他ノ國民ノ貯蓄ノ
集ノタモノハ、一種ノ公債ト同樣ナモノデア
ル、故ニ他ニ財源ヲ求メテ-行政財政ノ整
理ニ依ッテ新タナル資本ヲ造ルト云フナラ別
デアルケレドモ、形ヲ變ヘタ所ノ色々ノ借
入金、國民カラノ借金ト云フモノハ、之ヲ
綜合シテ公債ト云フニ何ノ憚ル所ガアル、
然ラバ公債ヲ整理シテ成ベク募ラヌト云フ
ケレドモ、總テ募リツヽアルノデアル、況ヤ
大正十四年ノ後ニ於テハ濱口藏相スラモ
一文モ募ラヌトハ言ハナイ、言ヘナクナッテ
來夕、成ベク募ラヌ、然ラバ如何ナルモノ
ヲ募ルカ、緊急避クベカラザルモノヽ外ハ
募ラヌト言ッテ居ル、諸君、苟モ一國ノ公債
ヲ募ル場合ニ、緊急已ムヲ得ナイモノヽ外
公債ヲ募ル馬鹿者ガ何處ニアリマスカ、然
ラバ緊急已ムヲ得ザルモノハ是カラ公債政
とき策ヲ矢張相變ラズ繼續スルノデアルト云フ
コトニナル、何ノ公債整理デアルカ、何ノ
公債政策ノ改善ニナッテ居リマスカ、少シモ
公債政策ノ改善ニアラズシテ、他ノ言葉ヲ
以テ唯〓言フダケデアッテ、内容實質ニ於テ
ハ全ク此公債政策ナルモノハ現內閣ガ
標榜スルガ如キモノニアラズシテ、私ヲシ
テ端的ニ言ハシムレバ、羊頭ヲ揭ゲテ狗肉
ヲ賣ルノ類デアルト斷言スルノデアル拍
手)藏相ハ此輸入超過ノ趨勢ニ對シテ年額、
食料竝ニ農產品ノ輸入ト云フモノハ近來約
三億ニナッテ居ル、此年々增加シテ來マス食
料品及農產物ノ缺乏ト云フコトガ輸入超過
ノ大ナル原因ヲ爲シテ居ルト云フ、此前提
ニ向シテ藏相ガ承認セラルヽナラバ、此大輸
人超過ノ防止策トシテハ我國ノ農村ヲ振興セ
シメ、農產物ノ增加ニ依ルト云フコトハ、根
本ノ政策トシテ必要デハナイカト云フコト
ヲ、本議場ニ於テモ、又豫算委員會ニ於テ
モ屢〓繰返シタル質問デアル、然ルニ藏相ハ
曰ク、今日本ニ於テ此狹小ナル〓土ニ於
テ、農產ノ增加奬勵ト云フヤウナコトハ、言
易クシテ行ヒ甚ダ難シト云フ、然ラバ何ヲ
爲サント欲スルノデアルカ、大ニ輸出ヲ奬
勵シナケレバナラヌト言ハレタ、然ラバ輸
出奬勵ノ爲ニ現在ノ如キ金利狀態、勞働賃
銀ノ狀態、物價ノ問題ヲ改善セズシテ、何
ノ方法ニ依シテ政府ハ此輸出ヲ增加スルト
云フ政策ヲ立テヽ居ルカ、此質問ニ對シテ
ハ殆ド答フルコト能ハナイノデアル、斯ノ
如ク最モ財政經濟ニ通ズルト稱スル所ノ濱
口君、其標榜スル議論ヲ具體化スル政策ヲ
追窮スルニ至ッテハ常ニ言ヲ左右ニ記シテ
居ルノミナラズ、今回提出シタ所ノ法案ニ
對シテモ、同君ハ國民ノ貯蓄ヲ獎勵センガ
爲ニ復興債劵ナルモノヲ發行スルト言ハレ
ル、サウシテ國民ノ此零碎ナル金ヲ集メナ
ケレバナラヌト言ッテ居ルガ、其法案ヲ見レ
バ焉ゾ知ラン全國各地方ニ向ッテマデモ、此
復興貯蓄債劵ニ依ノテ色々ノ役人ヲ拵ヘテ、
奬勵ヲシテ集メヤウト云フノデアル、而シ
テ其金ヲ預金部デ使ハウト云フノデアル、
今日地方ニ於テハ既ニ先日モ申ス通リ、小
學校ノ〓員ニ給料ヲ拂ヘナイ村モアル、農
村ニ於テハ自分ノ土地ヲ政府ニ只デ獻納シ
タイト願ヒ出ル者ガアル、農村各地ニ於ケ
ル所ノ困憊ノ狀態ハ非常ナモノデアル、此
場合ニ玆ニ持ッテ行シテ小額債劵ヲ發行シ、國
民ノ貯蓄ヲ奬勵スルト稱シテ、五百倍、六
百倍ノ富籤同樣ナルモノヲ以テ、政府ガ主
トシテ之ヲ勸メルト云フニ至ッテハ、一面ニ
勤儉貯蓄ノ奬勵デアルガ、一面ニ於テ射倖
ノ奬勵デアル、右ノ手ニ取ッテ左ニ與ヘルト
云フノデアル、此政策ソレ自身ガ矛盾ヲ踏
ンデ居ルモノデアッテ、吾々ハ斯樣ナル、徒
ニ言美ニシテ其內容ニ至ッテハ常ニ「ブラ
スマイナス」ニナッテ居ルト云フヤウナ事ガ
多々アルコトヲ斷言スルノデアル、又昨日
出シタ所ノアノ輸入稅關稅ノ問題ハ如何デ
アリマス(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=54
-
055・吉植庄一郎
○吉植庄一郎君(續) 奢侈品ニ關稅ヲ課ケ
ルノデアルト大聲疾呼シテ、大藏大臣ハ此
國民ニ向ッテ精神的ノ宣傳ヲ爲スノデアル、
精神的ノ宣傳デアルト云ッテ之ヲヤリナガ
ラ、或人ノ質問ニ對シテ既ニ二元的、二ツ
ノ目的ヲ持ッテ居ルコトヲ言現ハシテ居ル
デハナイカ、一ツハ勤儉貯蓄ノ奬勵デアル、
一ツハ內國ニ於ケル所ノ產業ノ保護、卽チ
關稅政策ニ依ヶテ内國品ヲ保護スルト云フ
一ツノ議論ト、之ニ依ッテ奢侈品ヲ止メヤウ
ト云フ二元的ノ此主張ニ依シテヤッタト云フ
コトハ卽チ奢侈品等「等」ト云フ字ノ說明
ニ依ッテ濱口君ハ巧ミニ之ヲ說イテ居ッタデ
ハアリマセヌカ、卽チ現內閣デ最モ正直者、
最モ人格者デ通ッテ居ル所ノ濱口君スラモ、
其標榜スル所ノモノト、其爲シツヽアル所
ノ其表裏ヲ窺ヒ、又內容ヲ點檢スルニ於テ
常ニ斯ノ如キ矛盾撞着ガアルト云フコ
トヲ言ハナケレバナラスノデアル、斯ノ如
キ內閣ニ向ッテ警告ヲ發スルコトハ糠ニ釘
ヲ打ツヤウナモノデアッテ、格別ノ效能ハナ
イト吾々ハ信ジテ居ルケレドモ、併ナガラ
先ヅ來ルベキ議會マデ暫ク此命ヲ御預ケシ
テ置イテ、此內閣ガ到底此警告ニ向シテ實
行スルコト能ハズ、又其宣言シタ所ノ政策
ヲ實行スルコト能ハズシテ、閣內ニ於テ紛
擾ヲ起スノミナラズ、諸君トノ間ニモ大紛
擾ヲ起シテ、自ラ倒潰スルノ機運ニ達スル
コトヲ私ハ認メテ居ル、諸君-諸君ノ總
理大臣、竝ニ諸君ノ大藏大臣ハ農村振興ノ
.爲ニ、負擔輕減ノ爲ニ、一厘一毛ヲ出スコト
能ハズ、大正十四年度ニ至ッテモ尙ホ出スコ
ト能ハズト明言シテ居ルノニ、諸君ガ徒ニ
形式的ノ農村振興案ヲ提ゲテ建議案トナ
シ、哀訴歎願至ラザルナシ、其結果ハ遂ニ
諸君ト內閣トノ破裂ヲ以テ終ラズンバ何ヲ
以テスルカ、故ニ吾々ハ先ヅ是ダゲノ警告
ヲ與ヘテ、單リ政府ニ對スル警告ノミナラ
ズ、與黨諸君ニ對シテモ御注意ヲ與ヘテ置
キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=55
-
056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 東武君
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=56
-
057・東武
○東武君 只今上程ニナリマシタ大正十三
年度追加歳入歲出總豫算、之ニ對シテ松田
君ノ修正アリ、吉植君ノ高論卓說ヲ承ッタ
ノデアリマス、最モ私ハ吉植君ノ議論ニ敬
意ヲ表スル者デアリマスガ、併シ餘リニ議
論ガ多クシテ其實際ノ空疎ナルニ驚カザル
ヲ得ナイ、此豫算十三億万圓ノ中デ僅ニ四
万八千何百圓ヲ削ッテ、サウシテソレダケノ
モノニ向シテ斯ノ如キ大言壯語ヲスルト云
フコトハ、如何ニモ其言ガ多イ(「ソレハ御
互樣ダ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)諸君ノ
演說ハ〓聽シテ居ルノデアル、暫ク御〓聽
ヲ願ヒマス、此第一號豫算ト第二號豫算第
三號豫算ハ帝都復興ノ費用若クハ震災復舊
ニ關スル諸費、併セテ二億六千五百万圓デ
アル、此數字ヲ一々御紹介スルコトハ煩ニ
堪ヘマセヌカラ中上ゲヌガ、併シ此二億六
千万圓ノ數字ハ議論ニナルベキ所ノ貴目ハ
極メテ少ナイ、第ニ恩給增加ノ金ガ一千
万餘圓、國債整理基金ノ繰入ガ二千幾百万
圓ト云フ金ガ含マレテ居ル或ハ此新艦船ノ
維持費デアルトカ、或ハ高等學校ノ創設費
ト云フヤウナ金、或ハ災害土木費ノ補助費
ト云フヤウナ金、是等ニ向ッテハ多クノ修正
ヲ許サナイモノガ多イ、唯〓此內問題ニナ
ルベキモノハ政務官設置ノ費用、伏木港
ノ修築費、巢鴨刑務所ノ維持ニ團スル所ノ
擴張費、是等ノ數項目ニ過ギナイ、モウ一
ツアリマス、帝國經濟會議ノ費用ガ十五万
何千圓、是等ニ對シテハ御互ニ相當ニ自由
ニ修正ノ餘地ノアル費用デアル、其以外ノ
モノハ殆ド固定的ノ費用ト言ッテモ宜イ費
用デアル、餘リニ此大言壯語シテ此豫算
ニ於テ議論スル程ノ價ハナイ、唯〓、伏木港ノ
築港ノ如キモ最初此豫算ノ問題トシテ現ハ
七々、如何ニモ此追加豫算ノ形式トシテ此
緊急ぎムベカラザルモノヽ費用ノ中ニ、唯ミ
一ツ伏木築港五百万圓ト云フ費額ヲ加ヘテ
出シタト云フコトハ、如何ニモ此豫算編成
ノ體ヲ爲サナイ、是ハ諸君モ恐ラク同意デ
アラウ、故ニ吾々ハ之ニ削除修正ヲ試ミル
考デアリマシタガ、富局者ノ說明ヲ聽キ、又
地方民ノ必要ナル所ノ理由ヲ聰キマシテ、
大正十九年度マデハ地方ガ寄附致シ、之ニ
向ッテ國費ハ十九年マデハ一厘一毛モ支出
シナイ、ソレナラバ是ハ地方ノ要求ト致シ
マシテ港灣修築ハ極メテ必要ナ事デアル、
故ニ之ニ向ッテ此追加豫算ノ形式ガ惡イト
云フ爲ニ否決ヲスルト云フコトハ、北日本
ノ發展ノ上ニ大ナル支障ヲ生ズルト云フコ
トヲ認メタノデアリマス、又此帝國經濟會
議ノ費用、是ハ餘リ議論ヲスレバ諸君ガ妨
〓ヲ爲サルト思フケレドモ、此出發ニ於テ
既ニ是ハ不純ナモノデアル、〓浦內閣稅政
ノ一端ヲ此帝図經濟會議ニ於テ暴露シテ居
ルノデアル(拍手)即チ是ハ眞ニ帝國經濟ノ
爲ニ貢献セントスル立派ナ誠意ヲ以テ造ラ
レタルモノデハナイノデアル、唯〓此委員ノ
中ニハ人物ノ立派ナ者モアリ、又人格ノ崇
高ナル者モアリマスケレドモ、旣ニ此成立
ノ上ニ於テ偶、社會ノ人氣ヲ呼ンデ、選擧ニ
利用セントスル爲ニ設ケラレタノデアル、
故ニ本經費ハ富然否決スベキモノデアル、是
ハ恐ラク諸君ト雖モ之ニハ反對ハ致スマイ
ト思フ、併ナガラ之ニ對シテ吾々ハ修正否
決ヲ致スノデアリマシタガ、現內閣ガ之ヲ
支持シナイ、帝國經濟會議ハ內閣諸公ガ之
ヲ支持致サナイノデアル、是ハ行政整理ノ
時ニ高然斧鉞ヲ加ヘルモノデアルト信ズル
ガ、其時ニ於テ之ヲ使ハズニ置クナラバ、
是ハ不要額トシテ存スルノデアルカラ、國
家ノ收支ニ差障リナイト云フノデアル、此故
ニ吾々ハ三派聯立ノ、吾々ノ詰リ支持スル內
閣ニ信賴シテ、是ハ暫ク此當局者ニ信賴ヲ
シテ協賛ヲ與ヘルト云フノデアル(拍手)政
務次官ノ費用、是ハ卽チ一番ノ問題デアル、
諸君ガ大聲疾呼シテ論ズルノハ唯、是ダケ
デアル、是レ、以外ニハ豫算ノ上ノ數字ニ關
係スル議論ハ一ツモナイ、唯〓四万八千圓ノ
金ヲ-諸君ハヤカマシク言フガ(發言ス
ル者多シ)暫ク聽キ給へ、吾々ハ此松田君ノ
政務ト事務トノ區別ガ付キ難イト云フコト
ニ付テハ、勿論同論デアル、同論デアルガ
松田君ノ官制ノ上ニ於ケル所ノ議論ニハ、
私共ハ多少賛成致ス點ガアルノデアル、ア
ルノデアルガ諸君ハ此事務政務ノ區別ガ
付カスト云フコトガ一ツノ論據デアル、又
モウ一ツノ諭據ハ是ハ九官デアルト云フ第
一ニ政務ト事務トノ區別ガ付カヌト云フノ
デアルガ、是ハ付カヌノデハナイ、付ケナ
イノデアル官制ノ上ニ於テ付ケレバ立派ニ
付クノデアル、第二ノ冗官デアル、斯ウ云
ヲ無用ナ冗官ヲ置イテ、行政整理ニ詰リ無用
デアルト云フ標本ノ陳列ヲ遺スノハイカヌ
ト斯ウ云フノデアル、此第二ニハ私ノ賛成
ガ出來ナイ何故賛成ガ出來ヌカト云ヘバ、
我國ノ政治ハ如何ニモ沈滯ヲ極メテ居ル、
明治初年以來官僚ノ權化ナル所ノ山縣公ニ
依シテ、官僚政治ノ才城ヲ造ッテ以來、我國ノ政
治ハ新陳代謝ノ妙用ヲ缺イテ居ル、新陳代謝
ノ妙用ヲ缺イテ、恰モ流レザル池ノ水ノ如キ
モノデアル、此流レザル池ノ水ニハ必ズ子々
ヤ〓虫ガ湧クノデアル、源泉混々トシテ流
レ、潑溂トシテ流レテ居ル所ニ生氣ガアル
此生氣ヲ缺イテ居ルガ爲ニ、我國ノ政務ト
云フモノガ沈滯ヲ致スノデアル、ソレデア
ルカラシテ斯樣ナ場合ニハ假令黨派ノ如何
ニ拘ラズ、御互、政黨政治、國務政治ヲ主張ス
ル者ハ、多少ノ非難スル點ガアッテモ、朝ニ
一城ヲ拔キタニ一壘ヲ屠ルト云フ此觀念ノ
下ニ出發シナケレバナラヌト思フノデアル
(拍手起リ、發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=57
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058・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 原君ニ注意〓シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=58
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059・東武
○東武君(繪) 先ヅ聽キ給へ、私共ハ政務
官デアラウトモ、或ハ勅參デアラウトモ、大
隈內閣ノ參政官ノ如キデモ、政友會內閣ハ
反對ヲ致シタケレドモ、私共ハ個人ノ意見
トシテ不同意デアッタ、斯樣ナ場合ニハ必ズ
此官僚政治ト云フモノヲ打破スル爲ニ、民
間カラ人レル所ノ-横カラ人レル所ノ換
氣法ヲ付ケナケレバ活キタ政治ト云フモノ
ハ出來ナイ、吾々ハ英國ノ「マクドナルド」
ノ勞働内閣ナドヲ調歌スル者デハナイ、
歌スル者デハナイガ、此勞働内閣ナドニ於
キマシテハ、卽チ鶴嘴ヲ執ッテ「ハンマー」ヲ
執ッテ坑夫生活ヲ二十七年モ致シタ所ノ閣
僚ガアリ、又鐵道ノ掃除夫ヲ永クヤノテ居ツ
夕所ノ閣僚モ居リ、或ハ國璽尙書モ右ルノ
デアル、又鐵道ノ掃除ヲシタトカ、或ハ釜
焚キヲシタトカ、或ハ活版屋ノ職工トカミ
政局ニ當リ實際生活ニ當而シテ居ル、是ダ
カラ初メテ活キタ政治ガ出來タノデアル君
方ノヤウニ唯、官僚崇拜ガヤッタノデハ何時
マデ經ッテモ活キタ政治ハ出來ナイノデア
ル(拍十起リ發言者多シ)ヤカマシイ-ヤ
カマシイ-次ニ帝都復興ノ事業デス、吾
吾ハ昨年山本内閣ノ當時一億三千万圓餘ノ
金ヲ削シタ、削ッテ今年亦同ジ經費ノ要求ガ
アルノハ吾々ハ甚ダ不快ニ感ズル、不快ニ
感ジテ之ニ向ッテ大ナル修正ヲ加ヘル考ヲ
實ハ持ノテ居ッタ、然ルニ此內容ヲ段々ト調
ベテ見マスト、吾々ハ帝都復興事業ニ對シ
テ初メヨリ正面ニ是ガ不必要デアルト云フ
反對ハ一言モ言ッテ居ラナイ、唯〓此方法ニ
於テ十二間以上ノ道路ハ國家ガヤルガ、十
二間以下ノ道路ニ向シテマデモ國ガ直接工
事ヲ擔當シテ施行スルト云フコトハ宜クナ
イ、卽チ東京市ト云フ日本全國第一ノ模範
都市タル所ノ此帝都ヲ無視シテサウシテ
國家ガ此三間、四間ノ道路マデヲ之ヲ改築整
理ヲスルト云フコトハ、甚ダ自治體ヲ專崇
スル趣意デナク、其方法ニ付テ頗ル誤リデ
アルト云フコトヲ論ジタノデアッテ、當局
者-復興局-今ノ現政府ノ要求シタ此
豫算案ヲ見マスレバ、丁度私共ガ昨年言ノ夕
通リノモノヲ出シテ來タ(拍十)卽チ此主張
ニ依シテ自治體ニ向ンテ貸付ヲシテ二分ノ一ノ
補助ヲスルト云フ案ニナッテ來夕、是ガ爲ニ
東京市ト云フモノハ四千餘万圓、横濱市ハ四
百三十餘万圓ト云フ新ニ玆ニ義務ヲ負擔ス
ルト云フコトガ、卽チ吾々ノ去年ノ修正ト
違ノ夕-卽チ是ハ豫算ノ上ニ於テ東京市
ノ自治ヲ尊重スル上ニ於テ、又東京市民ガ
權利義務ノ上ニ於テ、當然是ハ負擔スベキ
所ノ貨付金デアル、此貸付金ヲ負擔シタト云
フコトニ依ノテ、昨年吾々ガ一億二千万圓修
正ヲシタト云フコトニ對シテ、全ク當局者
ガ吾々ノ民意ヲ容レテ此案ヲ出シタト云フ
コトニナッテ、院議ヲ無祝シタト云フノデナ
クシテ、寧ロ院議ヲ尊重シタト云フコトニ
ナッテ居ルノデアル(拍手)唯〓問題ハ金ガ
變ラヌト云フコトハ吾々ハ是ハ甚ダ殘〓デ
アル、質ハ變ラヌガ形ダケ變ヘテ來タ、是
ハ官僚ノ由來常套手段デアッテ、ダカラ吾々
ハ到底敵ハヌ、何カ理窟ヲ付ケテ取ルダケノ
モノハ取ラレルト云フコトニナル、是ハ吾
々ハ甚ダ遺憾ニ考ヘル、サウシテ復舊ノ諸
費、總テ今囘現レタ所ノ豫算ノ上ニ於テ此像
舊ノ諸費ヲ〓算ヲシテ見ル、寧口〓算等デ
ナク精算ヲシテ見マスト云フト、此金ハ非
常ニ大ナル、金ガアル、諸君ハ恐ラク此豫昇
ヲ繙イテ十分御承知デアラウガ、現在第一
第二、第三號ニ現レタ所ノ此國債ノ計畫、或
ハ總テノモノニ於キマシテ、此震災ニ關ス
ル復舊口係ノ諸費ヲ調ベテ見マスト、其總
額ハ實ニ十二億九千五百七十四万圓、約十
三億ニ達シテ居ル、此外ニ震災以來各省ニ
亙ノ夕所ノ、各省普通經費ニ依ル增額是ハ此
震災復舊ノ經費ニ關係ナク、各省ノ自由賄
ヒニ依ル經費ノ增額-或ハ責任支出ヲ致
シタモノモアル、例ヘバ一例ヲ言ウテ見ル
ト、内務省ニ於テ警察ヲ澤山使シタ、警視廳
デ非常ニ警察ヲ使ッタガ、此費用ハ此震災復
舊費ニハ一ツモ這人ッテ居ラヌ、或ハ官吏ノ
旅費ガ非常ニ要ッタ、是モチヨットモ這人ノテ
居ラヌ、各省ニ於テハ事務ハ荒廢シ、間接
ノ費用デナクシテ直接ニ此震災ノ爲ニ使"
タ所ノ金ハ少クナイト思フガ、是ハマダ私
ハ精算ヲ致シテ居リマセヌガ現ニ豫算ニ現
ハレタルモノガ、十三億同其外ノモノヲ合
セルト十四五億ニ達スルト思フ、此十四五
億ノ金ハ私ハ決シテ巨額トハ思ハナイ、是
デ此帝都復興ガ出來ルナラバ-初メニハ
三十億ト稱シ、或ハ二十億ト稱シ、或ハ七
億ト稱シ、八億ト稱シタノデアルガ、十五
億ニハドウシテモ達スルノデアル、デアル
カラ是ハ今日我ガ帝國ノ財政ノ上カラ一
大國難ニ遭遇シタノデアルカラ、此國難ヲ
突破スルニハ是ダケノ犧牲ハ國民ハ拂フ覺
悟ヲシナケレバナラヌ、決シテ帝都復興ノ
爲ニ此金ヲ拂ッタカラシテ國ガ亡ビルト云
フヤウナコトハ吾々ハ論ジナイケレドモ、玆
ニ廟堂ノ諸公ニ私共ガ特ニ注意ヲ致シタイ
點ハ我國ノ國力カラ見マシテ十五億ノ金
ハ一人當リ三十圓デアル、三十圓ヅヽハ五
千万ノ國民カラ悉ク搾取シテ、サウシテ東
京市ニ之ヲ持ッテ來ルノデアル、否デモ應デ
モ三十圓ハ日本ノ全國民ガ東京市ニ震災ノ
見舞ヲ出ス-詰リ搾取ヲサレタコトニナ
ルノデアル、我ガ帝國ノ國力ノ上ニ於テ十五
億ノ金ヲ今後數年間ニ帝都集中スルト云フ
コトニナッタナラバ、如何ニ言葉巧ミニ大藏
富局者ガ論ジテモ、財政富局者ガ如何ニ之ヲ
明快ニ論辯シテモ、公債ニ依ッテヤルノダカ
ラ一般施設、卽チ地方事業ニハ影響ヲシナ
イ、鐵道ニモ港灣ニモ影響ハシナイト言フ
ケレドモ、是ハ右ヲ行クモ左ヲ行クモ同ジ
事デアル、十五億ノ金ニ付テハ利子モ拂ハ
ナケレバナラヌ、償還モシナケレバナラヌ、
是ハ何處カラ持ッテ來ルカト云ヘバ、一般會
計ヲ財源トスルヨリ外ニ途ガナイ)サウス
ルト詰リドノヤウニシテモ拂フダケノモノハ
拂ハナケレバナラヌノデアルガ、此今日ノ
國力ニ於テ十五億圓餘ノ負擔ヲ吾々ガ負フ
ト云フコトハ、非常ニ大ナル犠牲デアルト、
吾々ハ考ヘテ居ル、此場合ニ於テ富局者ノ御
一考ヲ煩ハシタイ點ハ、今我ガ帝國ノ狀況
ヲ見マスレバ、各黨各派ヲ通ジテ實ニ農村
問題ハ殆ド行詰リヲ生ジテ、困應疲弊ノ極
ニ達シテ居ルト云ヒマスルガ、私ヲシテ言
ハシムレバ寧ロ困憊疲弊行詰リデナクシ
テ、奈落ノドン底ニ落込ム傾ガアル(「ヒヤ
ヒヤ」拍手)廟堂諸公ハ是等ニ對シテ連日豫
算總會其他ニ於テ耳ヲ藉シタコトデアラウ
ト思ヒマスルガ、併ナガラ廟堂諸公ハ眞ニ
農村ノ狀態ヲ知ラナイト私ハ思フ(拍手)何
故知ラナカラウカト云ヘバ、妙ナ話デアリ
マスルガ大阪ノ鴻ノ池ノ旦那ガ三條ノ大橋
デ乞食ヲ見テアレハ何ダト言ッタ、アレハ生
活出來ナイ乞食デアルト云フコトヲ聞イ
テ、幾ラ乞食デモ千兩箱ノ一ツ位アルダ
ラウト鴻ノ池ノ旦那ガ言ウタ(笑聲起ル)廟
堂ノ諸公ハ眞ニ農村ノ窮迫セル事情ト云フ
ゝモノハ體ヲヲテシテ居ラレヌカラ、恐ラク分
ルマイト思フ(拍手)況ヤ我國ノ農村問題
ガ、經濟問題カラ漸次惡化シテ思想問題ト
ナリ、社會問題トナッテ、將ニ我ガ國本ノ基
礎ヲ危ウセントスルヤウナ恐ルベキ狀態ヲ
現シテ居ル(「ヒヤ〓〓」拍手)吾々ハ不祥ナ
事ヲ申スノデハアリマセヌガ、古來革命ハ
-私ガ玆ニ革命ト云フノハ日本ニ於テハ更
始一新ノ意味ト御承知ヲ願ヒタイ、西洋ニ謂
フ所ノ革命ハ眞ノ革命デアリマスルガ-古
來革命ノ歷史或或動亂ノ歷史ヲ繙イテ見マス
ト云フト、土地ノ問題ニシナイデ革命ノ起ツ
タコトハナイ、都會ノ社會問題、勞働問題ト
云フモノハ重大デアルケレドモ、之ニ依シテ
ハ國家ハ亡ビナイケレドモ何レノ場合ニモ
土地フ以テ出發シタル所ニ於テ社會ノ根柢
ト云フモノハ破壞セラレルノデアル(ヒヤ
ヒヤ)部チ詳シイ事ヲ申上ゲル必要ハナイ
ガ、千七百八十九年ノ佛蘭西ノ革命ニ於テ
モ、上地ガ基デアル、又獨逸、墺地利ノ革
命モ矢張土地ヲ問題ニシテ起ッテ居ル、又最
モ著シイモノハ千九百十七年、最近露西亞ノ
革命ハ何デアルカ、露西亞ノ革命ハ卽チ勞
農政府ト云フモノヽ土地ヲ解放スルト云フ運
動ニ依シテ「ロマノフ」朝ト云フモノハ一朝
ニシテ亡ビタノデアル、卽チ國家ノ革命、動
亂ハ總テ土地ヲ以テ出發シテ居ル、我國ノ
古來カラノ歷史ヲ見マシテモ、大化ノ革新
ハ何デアルカ、大化ノ革新ハ卽チ土地制度
ノ問題デ、土地ヲ均分スルト云フ根本觀念
ニ出發シタルモノデアル、又鎌倉ニ於ケル
所ノ幕府ノ時ニハドウデアルカト云ヘバ、
莊園ヲ廢シテ莊園ノ土地ヲ取上ゲテ、實際
耕ス者ニヤルト云フ制度ヲ賴朝ガ樹立シタ
ト云フノガ根本トナッテ、武權制度-鎌倉
幕府ヲ開イタ、又建武中與ノ歷史ヲ見マシ
テモ、或ハ又最近維新ノ歴史ヲ見マシテモ
一番能ク分ル、私ハ大和ノ十津川ノ者デアリ
マスルガ、明治維新ノ一番最初ノ烽火ヲ揚
ゲタ所ハ、私ノ國ノ大和十津川ノ天誅租デ
アル、此天誅組ガ起ッタ時ニ、一番最初ニ代
官ヲ殺シテ高取城ヲ奪,タ(「ンレガ豫算ニ何
ノ関係ガアル」ト呼フ者アリ其他發言者多
シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=59
-
060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=60
-
061・東武
○東武君(續) 明治維新ノ當時ニ於テ、此
革命ノ烽火ヲ揚ゲタ第一ノ旗印ハ、土地ノ朝
廷ノ物デアル、サウシテ此土地ノ租稅ヲ廢シ
テ國民ノ負擔ヲ輕クスルト云フコトヲ標語
トシタノデアル、ソレカラ後ニ諸侯ノ額土
ノ奉還ト云フコトガ行ハレテ、此明治ノ維
新ト云フモノヲ形造"タモノデアル(拍手)
明治維新ヲ形造ッタモノハ卽チ領土未還デ
アル(發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=61
-
062・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜出ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=62
-
063・東武
○東武君(續) 之ニ依シテ見テモ土地問題
ヲ除外シテハ政治ノ問題モアリマセス、土
地-農村問題ヲ外ニシテ軍事ノ問題モア
リマセヌ、思想問題モ、〓育問題モ、悉ク
此農村ヲ根柢ニシテ出發シナケレバ國家
ハ保タナイノデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)私
ハ廟堂ノ請公ガ此點ニ付テ深ク留意シテ、
我ガ帝國ノ前途ヲ誤テザルコトヲ希望ス
ルノデアル(拍手)然ルニ此場合ニ現内閣諸
公ガ、農村問題ニ付テ何等觸レテ居ナイト
云フコトヲ政友本黨ノ諸公ハ屢〓言ハレル
ノデアル、ケレドモ是ハ諸君ノ言フノガ間
違ッテ。居ルト思フ、現內閣ハ六月十一日ニ大命
ヲ受ケテ僅ニ二週間ニシカナラヌ、此間ニ
何ガ出來ルカ、出來ヤウハナイ(拍手「ノー
〓〓」「サノキノ議論ヲ裏切ルヂヤナイカ」ト
呼フ者アリ)裏切ルノデハアリマセヌ-
故ニ吾々ハ玆ニ農村間題ト致シマシテ、爛
頭焦眉ノ急トシテ叫プ者ガ三ツアル、第一ハ
農民ノ負擔ノ過重ニ苦シム所ノ此負擔ノ輕
滅ガ題目ノ一ツデアル、第二ハ米價ヲ調節
シ之ヲ維持シテ、米麥ノ生產費ヲ償フト云
フコトガ一ツ、第三ニハ農務省ノ獨立ト云
レコトガ一ツ(拍手「ヒヤ〓〓」)此三ツハ卽
チ今日ノ農村ヲ救濟スル所ノ爛頭焦眉ノ急
デアル、之ニ對シテ吉植君ノ如キハ眞向ヨ
リサウ云フコトハチヨットモヤラナイ、嘘ダ、
斯ウ云フコトヲ言フ、現内閣ハ農村ニハ少
シモ及バナイ、是ハアナタ方ガ理想的ノ在
野黨デナイ、反對センガ爲ニ反對スルノデ
アリマス、政府ハ其證據ニハ豫算總會デモ、
或ハ本會デモ屢、此事ニ觸レテ居ル、而モ我
ガ農相高橋君ノ如キハ、多年米價調節ト此
問題ニ苦心シテ、農務省ノ獨立ノ如キハ高
橋總理自身自ラ聲明シ夕事實ガアル、必ズ
此次ノ四十九議會ニ行フト云フノデアル、
必ズヤルト言ウテ居ル(「脫線シタカ」ト呼
フ者アリ)馬鹿ナコトヲ言ッテ居ル、必ズ
ヤルト言ノテ居ル、必ズ行政整理ヲ以テ
ヤル、唯〓形式上ダケデハ何ニモナラ
ナイカラ名實ヤルト云フノデアル、米
價調節ハドウシテヤルカト云フト、米價
ハ今マデ數回ノ內閣ガロ里ニハ重キヲ置クケ
レドモ價格ハ一向構ハヌト言ッテ居ル、之ヲ
今度ノ高橋農相ハ議會ニ於テ量ノ調節バカ
リデハイカナイ、價格モ調節シナケレバナ
ラナイ、之ハ大ナル進步ト言ハナケレバナ
ラヌ、之ハ一進歩ト言ハナケレバナラヌ、
先ヅ諸君ハ人ヲ責メル前ニ自分ヲ責メルガ
宜シイ、諸君ハ負擔ノ輕減、地租委譲ト云
フコトヲヤカマシク言フ、吉植君ノ如キハ
最モ熱心ニ此議論ヲシテ居ルガ、諸君ノ
番後ニ絲ヲ引イテ居ル所ノ山本君ガ、是人
消極的ノ一點張、極メテ消極論者デアリマ
ス、米價調節ノ如キハ價格ニ於テハドウシ
テモヤレナナト云フコトハ誰ガ言ッタ、山本
農相ノ年來ノ持論デハナイカ、ゾンナ馬鹿
ナコトヲ言フモノデナイ、世間ガ笑フ、又
負擔ノ輕減租稅ヲ輕減シテ地租ノ委譲ヲシ
ナケレバナラヌト云フコトヲ吾々ガ言出シ
夕時ニ、誰ガ反對シタト思フ、君等ガ神樣
ト思シテ居ル元田肇君ガ反對シタデハナイ
カ、政務次官ヲ設置スルト云フコトニ付テハ、
官僚ノ床次君ガ同意シナイ諸君ハ人ヲ責メ
ル前ニ自ラ責メヨ、諸君ハ此内閣ニ政策ガ
ナイ、經綸ガナイト言ッテ諸君ハ議論スル
ケレドモ、諸君ニ經綸ヤ政策ハ要ル譯ハナ
イ、何故要ル譯ガナイカト云フ證據ヲ茲ニ
示サウ、〓浦ト云フモノハ六箇月在任シタ、
所ガ議會ヲ一ツモ召集セズ、議會ニ一ツノ
政策、政綱ヲ示サズ、議會ヲ召集シテ國民ニ
何ノ政策政綱ヲ示シタカ、〓浦內閣ハ政策
ハ何ガアッタカ、君方ハ之ヲ頻ニ言ッテ居ル
ガ、政策モナケレバ政綱モナク、闇カラ闇
ニ議會ヲ解散シテ、特權階級ノ足輕ヲ志願
シタデハナイカ、(此時「議長」「議長」ト呼ヒ
發言スル者多シ)默ノテ聞ケ、故ニ吾々ハ本
案ニハ贊成ノ意ヲ表シテ、暫ク當局者ノ經
綸ノ實況ヲ見テ、サウシテソレヲ明カニシ
テ、我カ內閣ニ信賴シテ、我ガ內閣ノ經綸
ヲ待ノテ暫ク此提案ニ賛成ヲ表スルモノデ
アリマス-只今議長ノ注意ニ依リマシテ
特權階級ノ足輕ヲ志願シタト云フコトダケ
ハ取消シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=63
-
064・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 中村啓次郞君
〔中村啓次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=64
-
065・中村啓次郎
○中村啓次郞君 諸君、現內閣ノ中心勢力
デアル憲政會系ノ內閣諸公ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=65
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066・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=66
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067・中村啓次郎
○中村啓次郞君(續) 在野黨時代ニ於テ、
財政緊縮政策ヲ高唱致シタルガ爲ニ、今日
ノ如キ財政ノ行詰リマシタル場合ニハ、平
素斯ノ如キ主張ヲ致シテ居リマスル者ニ之ヲ
整理シ之ヲ打開セシメルノ衝ニ當ラシメル
ト云フコトモ、亦妙デアルト考ヘルモノハ
世間甚ダ少クナイノデアリマス、此時會ニ
於テ、ソレ等平素ノ主張者ガ、偶〓臺閣ニ
立チマシテ、財政燮理ノ任ニ當ッタノデアリ
やっ、故ニ國民ハ此問題ノ實理ニ當リマシ
テ、其施設ノ當初ニ當リマシテハ定メテ大
ナル玆ニ平素ノ主張ヲ實現スルモノナリト
期待シテ居ッタノデアリマス、然ルニ此豫算
ヲ當議會ニ繫屬スルニ當リマシテ、前内閣
ノ實行豫算十三億四千万圓ヲ踏襲シ、其上
ニ追加豫算二億六千七百万圓ト云フモノヲ
繫屬セシメタノデアリマス、成程內閣組織
後日ハ極メテ淺イノデアリマスルガ故ニ、
十分是ハ酌量スルノ値アリト心得マスルガ
平素是等ノ點ニ付テハ十分ニ考慮ヲ御持チ
ニナリ、且ツ十分ノ機関ヲ有スル憲政會ノ
コトデアリマスルガ故ニ、國民ハ之ニ對シ
テ多大ノ希望ヲ繋イダト云フコトハ、必ズ
シモ無理デナイト思フノデアリマス、所ガ
前内閣ノ作製致シマシタル追加豫算ヨリ僅
ニ削リマシタルモノガ、司法警察官費、神
祇院費、農務省獨立費、是等ノ小額デアリマ
シテ、是等ノモノト雖モ、又近キ將來ニハ
其額ヲ增加致シマシテ必ズ議會ニ繫屬スル
モノデアラウト思フノデアリマス、故ニ此
內閣ノ〓浦內閣ノ實行豫算十三億四千万圓
及二億六千七百万圓ト云フ、先程ノ豫算委
員長ノ報告サレマシタル日本帝國空前ノ〓
大ナル豫算ヲ四十九議會ニ繫屬ヲ致スト云
フコトハ、是ハ爭フベカラザル事實デアリ
マッ、ソレデ本員ガ本會議ニ於キマシテ平
素財政ノ緊縮ヲ一枚看板トサレテ居リマス
ル諸公ガ、斯ル大キナル豫算ヲ議會ニ繫屬セえ
シメルト云フコトハ、如何ニモ國民ニ對シ
テキマリガ惡イ事デアリマセヌカト云フ同
情アル質問ニ對シマシテ、流石ニ大藏大臣
ハキマリノ惡カ。ッタモノト見エマシテ、〓浦
內閣ノ實行豫算ヲ踏襲シタル覺エナシト此
壇上ニ於テ明言シタノデアル、是ハ大藏大
臣ト致シマシテハ、甚ダ詭辯デアリマス凡
ソ十三年度ノ歲入ハ何ナリヤト問ヘバ、形
式ニ於テハ實行豫算「プラス」追加豫算デア
ル、實體ニ於テハ實行豫算「プラス」追加豫
算デナケレバナラナイノデアル、故ニ此二
億六千七百万圓ト云フ追加豫算ハ、取リモ
直サズ〓浦內閣ノ實行豫算十三億四千万圓
ニ追加致シテ來ルモノデアリマスカラ、假
令施行豫算ハ形式デアッテモ、實行豫算ヲ踏
襲シタル覺エナシト云フヤウナコトハソ
レハ單ナル理論デアリマシテ、實際ハ此帝國
議會ニ擊屬致シテ居ル豫算ハ、卽チ二億六
千七百万圓デアル、而シテ此吾々ノ負擔ス
可キ豫算ハ、實行豫算ノ十三億四千万圓ト
合シタル十六億一千万圓、是カラ將來擊屬
スル追加豫算ヲ加ヘマスルト云フト、十六
億二三千万圓ノ大豫算ヲ吾々ハ負擔シナケ
レバナラナイノデアリマス、此故ニ委員會
ニ於キマシテモ、數回ノ質問應答トナリマ
シテ、結局ハ現内閣ノ諸公モ是等ノ點ヲ認
メマシテ、此實行豫算モ施政ノ方針若クハ
財政計畫ノ演說ノ中ニハ、此實行豫算ニ對
シテ削滅ヲシ、或ハ繰延ベルト云フコトハ
言明シナカッタケレドモ、將來政務ノ運行ノ
上ニ於テ、必ズ節約ヲ加フベシト云フコト
ヲ申サレタノデアリマス、ソレカラ此公債
政策ニ於キマシテモ、公債打切リ或ハ公募
ノ打切リ、ナドト言ッテ洵ニ體裁ノ宜イ、耳
觸リノ宜イコトヲ申シテ居リマスガ、併ナ
ガラ是ハ豫算委員長モ申シマシタ通リ、前
內閣ニ於テ募集致シテアッタ所ノ外債ノ金
ガ此ニ在ル、ソレカラ將來郵便局小ロデ募
ル所ノ小口債劵ガアリ、預金部ニハ金ガア
ル、剰餘金ガアリ、要スルニ有ルニ委セテ
摑ミ出シテ、只今計畫ヲ立テタダケノ御話
デアリマシテ(ヒヤー~)調金ノ氣苦勞モ要
ラナケレバ、將來ノ財源ニ對スル何等ノ苦
勞ヲモ須ヰズシテ、有ルモノヲ摑ミ出シテ
財政デヤルト云フノデアッテ、其日暮シノ
財政計畫ト申シテ何等之ニ辯解ノ言葉ハ無
イノデアリマス、併ナガラ已ムヲ得ナイノ
デアラウケレドモ、實際有ルモノヲ掴ミ出
シテ計畫致シタル財政計畫デアルコトハ、是ハ
否認スルコトハ出來ナイノデアリマス、併
ナガラ私等ハ現下ノ時局ニ鑑ミマシテ、何
人ガ此衝ニ立ト雖モ、随分今日ハ內外多事
ニシテ、極メテ難局デアラウト思フノデア
ル、此難局ニ立ッテ政務ニ當ラレル諸公ノ
勞ヲ多トスルモノデアル、且ツ內閣諸公ハ、
殊ニ大藏大臣ハ、豫算委員會本會議等ニ於
ケル屢次ノ聲明ヲ、吾々ハ保證下致シマシ
テ、暫ク之ニ時日ニ藉サウスルノデアリマ
ス、所デ玆ニ斷然反省ヲ促サナケレバナラ
ナイモノハ、卽チ政務次官設置ノ計畫デアル
之ニ對スル豫算ノ要求デアリマス、是等ハ
何トシテモ現内閣トシテハ之ヲ撤囘シ、之
ヲ削除スル所ノ計ニ出デナケレバナラナイ
ノデアル、何ガ故ニ此政務次官ヲ設置スル
ノデアルカ、其理由ヲ吾々ハ聽カントスルノ
デアルガ(「未ダ分ラナイカ」「頭ガ惡イカラ
ダ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=67
-
068・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜走ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=68
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069・中村啓次郎
○中村啓次郞君(續) 加藤總理ニ依リマス
ト云フト、加藤總理ハ官職ニ政務官及恒久
官ノ區外ヲ明確ニシ、一ハ以テ國務ノ公正
及繼績性ヲ保障シ、一ハ以テ政務ノ進展ヲ
滑カニ致シマスノニハ、憲政ノ運用上必要
ナコトト認メマスト言シテ此計畫ヲ主張致
シ居ルノデアリマス、政務官及、恒久官、實
ニ變ナ區別デアル、政務官、恒久官、實ニ
變ナ區別デアリマスガ、併シナガラ是ハ事
務官ヲ恒久官ニシヤウト云フコトデアル、
事務官ヲ恒久官ニシテ、政務官ヲ內閣ノ更
送ト共ニ更迭セシメヤウト云フコトヲ言現
ハシタモノデアラウト思フノデアル、果シ
テ然ラバ是ハ私ハ全ク何等ノ理由無キ所ノ
施設デアラウト思フノデアリマス、事務次
官ノ内容ト更迭スル爲ニ、何等事務ノ澁滯
ヲ來スモノデハアリマセズ、又此事務次官ガ
内閣ト共ニ更迭致シマス爲ニ、何等此政務ノ
繼續性ヲ阻害スルト云フヤウナコトハ斷ジテ
ナイノデアル、政務ノ繼續性ハ局長以下ニ
於テ十分之ヲ保障スルコトガ出來ルノデア
リマスカラ、斯樣ナ事ヲ考ヘテ居ルコトハ
杞憂ニ過ギナイノデアル、政務次官ヲシテ
議會ニ答辯セシムルト云フガ如キコトハ、
是ハ議會ノ實際ヲ知ラナイ素人驅シノ事デ
アル、政務次官ヲシテ議會ノ答辯ニ與ラシ
ノ、政府ノ方針ヲ述ベサスト云フコトヲ申
ス如キハ、是ハ全ク議會ノ實際ヲ知ラザル
者ノ云フコトデアル、私ノ考ヘル所ニ依リ
マスト、私ハ此議會中ニ於テハ(「誰モ聽イ
テン居ラヌオ前サン計リダ」ト呼フ者アリ)靜
ニシロ此議會ニ於テハ大臣ト局長以下トデ
宜シイノデアル、大臣ト局長以下サヘアレ
バ、ソレデ議會ノ仕事ト云フモノハ全部出
來ル、是ハ政務次官ガ必要デアラザルノミ
ナラズ、現在ノ次官モ必要デナイノデアル、
議會ニ於テハ大臣ト局長以下トデ澤山デアツ
テ、大臣ト次官ト二人居ルト云フコトハ、
既ニ是ハ行政整理ヲシナケレバナラヌ點デ
アル、政務ノ大綱ハ只今ノ大臣ガ、1/10
ニ於テハ國務大臣デアルト同時ニ、一面ニ、
於テハ行政部長官デアルカラ、此行政部長
官デアル所ノ大臣ガ、國務ノ大綱ハ知ラ
ナイト云フコトハナイノデアル、遞信大臣犬
養先生デモ、自分ノ遞相タリシ當時、郵便切
手ニ糊ヲ著ケナカンタ郵便切手ヲ賣出シタコ
!、小サナ端書ヲ賣出シテ國民ニ迷惑ヲ掛
ケタコト、此等ノ事ハ御承知デアルト見エ
ミテ、屢〓委員會ニ於テ、アレハ宜シクナイカラ、
早ク糊ノ著クノヲ賣出スノダト云フコトヲ
申シテ居ル、一應ハ政務ト事務ヲ大臣ハ知ン
テ居ル、是レ以土ノ細カイ事ハ一桁飛越
エテ局長及事務官ニ聽イタ方ガ明瞭ニナルノ
デアル、是ハ矢張英吉利ノヤウニ、大臣ガ居
レバ次官ガ要ラナイ、次官ガ居レバ大臣ガ
要ラナイ、全ク無用ノ事デアル(發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=69
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070・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 靜出ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=70
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071・中村啓次郎
○中村啓次郞君(續) 之ヲ當議會ニ於テ
モ、小野義一サンヨリハ、或ル場合ニ於テ
ハ濱口大藏大臣ノ方ガ事務ニ精通ヲ致シテ
居ルノデアル、面シテ前內閣ニ於テモ、前
ノ水野內務大臣ハ、或ル場合ニ於テハ井上
次官ヨリモ川村次官ヨリモ、細カイ所ニ通
暁致シテ答辯ヲ與ヘタ事實モアルノデア
ル、故ニ此議會ニ於テハ、大臣ト局長以下
ノ者ガアレバ、議會ノ答辯ハ十分デアッテ、
現在ノ次官ガ居ルト云フコトサヘモ不必要
ナ事デアルカラ、政務次官ノ如キモノヲ
クルガ如キコトハ、全ク蛇足ヲ加ヘルモノ
ト謂ハナケレバナラヌ、此上ニ政務次官ト
云フガ如キ豪傑ヲ持ノテ來ルト云フコトニ
ナレバ、一段ト局長以下ノ事務官ヲ煩ハス
コトガ多クナッテ、事務ノ紛更ト事務ノ煩雜
ヲ招クコトニナルコトハ明カナノデアル、
尙ホ今一ツアナタ方ニ事實談トシテ、前ノ
參政官ノ設置サレシ當時ノ御話ヲ致シテ見
タイト思フ(「モウ宜イ簡單」ト呼フ者アリ)
或ル省ニ於テ是等ノ事ニ付テハ、國民ハ詳
細ニ其理由ヲ聽カント致シテ居ルノデア
ル、此賛否ニ付テハ、國民ハ何レノ說モ盡
サシメ、何レノ說モ盡シテ、其何レニ赴ク
ベキカハ、國民ノ齊シク聽カント欲スルモ
ノデアルノデアル「モウ宜イ簡單」ト呼フ
者アリ)或ル省ニ於テ、參政官モ局長モ局
長以下ノ者モ悉ク議會ニ行ッテシマッテ-
局長モ參政官モ悉ク議曾ニ行シテシマッテ、
サウシテボツネントシテアトニ留守致シテ
居ル者ハ、其當時ノ事務次官デアル所ノ總
務長官ダケ獨リポツネントシテ居ッタ、コン
ナ馬鹿々々シイコトハナイト言ッテ、辭表ヲ
提出シタ者ハ、其時ノ內務ノ總務長官久保
田政周君デアル、此實情ヲ知ラナケレバナ
ラヌ、卽チ參政官モ悉ク議會ニ行キ、事務官
モ悉ク議會ニ行キ、而シテ獨リ事務次官ガ
ポツネントシテ其省ヲ留守シタ、何タル奇
觀デアルカ、斯樣ナル事ヲ爲サシメズ、各〓
其事務ヲ敏速ニ運行スル所ノ策ヲ講ズルコ
トガ、是ガ卽チ行政整理ノ大眼目デナケレ
バナラヌノデアル、全ク政務次官ヲ置クガ
如キハ、百害アッテ一利ナキモノデアル、殊
ニ加藤首相ハ、政務官ト雖モ內閣ト共ニ更
迭スルノ要ナシト云フ議論ヲ持ッテ居ル人
デアル、是ハ此間松田源治君ガ陸軍中將宇
垣陸相ノ前内閣ノ國務大臣デアンテ、而シテ
〓清內閣ガ特權內閣ナリトシテ攻撃ヲ致シ
ク、其攻撃ヲ致シタ所ノ其反對黨ノ內閣ノ
閣員ニナッタト云フコトハ、之ニ對シテハ如
何ナル憲法上ノ考ヲ持シテ居ルカト云フ質
問ニ對シテ、加藤高明子ハ、宇垣陸相ハ-
宇垣中將ハ通材ノ人ダカラ之ヲ陛下
ニ推薦致シテ、留任ヲ請ウタノデアルト答
辯致シテ居ル、國務大臣ノ立場ハ、アナタ方
ハ只今政務次宮ヲ置クコトヲ主張致シテ居
ルヤウニ、國務大臣ノ立場ハ前內閣ノ主義
主張ノ上ニ立シテ、而シテ其內閣ヲ倒壞セシ
メナケレバナラナイト云フ憲法上ノ見地ヨ
リ起ノテ、倒閣ヲ努メタル所ノ其內閣、全ク主
義ノ異ル內閣ニ依然トシテ居ルト云フコト
ハ、恰モ朝ニ越路ノ客ヲ送リ、夕ニ筑紫ノ客
ヲ迎ウル所ノ賣笑婦ト同ジ立場デアル、斯
ノ如キ立場ニアルニ於テハ縱令適材デアツ
テモ、才幹技能ガ如何ニ長ジテ居ッテモ、ソ
レハ別問題デアル、私ハ宇垣君ノ其才幹其
技能ガ、一世ニ卓越致シテ居ルコトハ、私
ハ-實ハ私モ〓浦子爵ニ推薦致シタル一
人デアリマス、併ナガラ其才幹技能ト政治
上ノ德操トハ違フノデアル、政治上ノ節操
トハ甚ダ違フノデアル、政治上ノ節操ニ於
テ斯ノ如キ事ヲ容サナイノデアル、憲法運
用上ノ原則ニ於テハ、斯ノ如キ事ヲ容サナ
イノデアル、苟モ前內閣ノ閣臣トシテ、而シ
テ國務ニ參與シ、國務ノ機務ニ參與シタル
モノガ、ソレニ反對ナル内閣ニ籍ヲ置クコ
トハ、是ハ憲法運用ノ上ニ於テモ、憲政道德
ノ上ニ於テモ、斷ジテ容スベカラザルモノ
デアルト云フ解釋ヲ吾々ハ執ッテ居ルデア
ルガ、此點ニ付テハ加藤首相ハ全ク左樣ナ
事ヲヤッテモ宜シイト云フ考ヲ持シテ居ルノ
デアル、此政務官ノ國務官若クハ事務官ニ
對シテ、國務官事務官ハ必ズシモ一時的ノ
モノデナイ、又政務官ハ恒久的ノモノデア
ルト云フ、此解釋ニ於テハ、政務官ト雖モ必
ズシモ内閣ト共ニ更ル必要ハ無イノデアル
カラ、現内閣ノ次官ハ、現在ノ內閣ノ更迭ト
同時ニ更ラナクテモ宜イト云フ主張ノ上ニ
立ッテ居ルノデアリマス、其意味ヨリ言ヘバ、
政務次官設置ノ理由ハ全ク一貫シナイノデ
アル、ソレカラ加藤首相ハ事務官ノ恒久性ヲ
認メナイ人デアル、成程事務官ノ恒久性ヲ
認メルト云フコトハ言ヒ得ルノデアル-
言ヒ得ルコトデアルケレドモ、如何ニ事務
官ノ恒久性ヲ認メテモ、其內閣ノ首腦者ガ其
事務官ヲ動カサウト思テ之ニ壓迫ヲ加
フルナラバ、何等ノ保障ヲ維持スルコトガ
出來ナイノデアル、幾ラ此事務官ガ恒久的
ノモノデアルト云フコトガ言ヒ得テモ、其
實行ニ當ノテ權力ヲ持ッテ居ル所ノ上長官ガ
之ヲ動カスト云フナラパ-權力ヲ持シテ
居ル內閣諸公ガ之ヲ動カサント思フナラ
バ、朝飯前ニ動カシ得ルノデアル、現ニ近頃
此植民地ノ長官ハ悉ク事務官ナリト云フ此
斷定ハ、新ニ現內閣ノ下シタル所ノ定義デア
ル、然ルニ今日マデ數人ノ長官ノ更迭ヲ見、
今又將ニ更迭ヲ見ントスル此實事ヲ吾々
ハ見テ居ルノデアル、故ニ此事務官ヲ恒久的
ナラシムルト云フコトハ言ヒ得ルコトデアッ
テ、行ヒニ至ッテハ如何樣ニモ其恒久性ヲ傷
ケ得ルモノデアルト云フコトヲ言ハナケレ
バナラヌノデアル、今ヤ國民ノ奢侈ヲ戒
メントシテ、昨日ヲ以テ奢侈品ノ關稅ヲ創
設セントシテ居ルノデアル、苟モ天皇
ヲ輔弼シ、道德的ノ施設ヲ以テ國民ニ臨マ
ントスル者ハ、政府自ラ範ヲ國民ニ示サナ
ケレバナラナイノデアル、此秋ニ當ノテ內閣
組織後未ダ一紙半錢モ敕正理ニ依リ以テ國民
ニ寄與スル所ナク、一厘半錢モ國民ニ寄與
スル所ナクシテ、而シテ茲ニ斯ノ如キ冗官
ヲ設ケ、政府自ラ奢侈品ヲ陳列シテ國民ニ
臨ミ、斯ノ如キ冗官ノ費用ヲ要求シタト云
フコトハ、容スベカラザル事デアル(拍手)
現内閣ノ諸公ハ、其言ハ甚ダ壯デアルケレ
ドモ、其行ニ至ッテハ甚ダ怯デアルコトヲ國
民ガ冷笑スルノデアル、殊ニ本員ノ悲ム所
ハ斯ル冗官ノ費用ヲ衆議院ニ要求スルニ
當リマシテ、未ダ其基礎法デアル所ノ政務
次官官制ノ制定ヲ見ズシテ、其豫算ヲ要求
致シタルコトデアリマス、先程松田源次君
ノ質問ニ總理大臣ハ答フル能ハズ、未ダ政
務官々制ト云フモノガ出來テ居ナイノデア
ル、政務官々制ニ付テ一定ノ意見モ持ッテ
居ナイ、政務官ノ官制ガンレガ基礎トナッ
テ、其基礎ニ依,テ豫算ヲ要求スベキデア
ル、今日行政整理ヲ行ハントスル內閣ニ於
テハ、茲ニ豫算ガ通過シテモ、此基礎法デ
アル所ノ官制ガ出來ナカッタラ、衆議院ヲ通
過シテモ、確定シタル此豫算ハ全ク無駄ニ
ナルノデアル、卽チ要ラナイ金ニナルノデ
アル、要ラナイ金ニナッタ場合ニハ、此金ヲ
濫費スルト云フヤウナ事ヲナカラシメルコト
ガ、衆議院ニ基礎ヲ有スル所ノ政黨内閣ノ
責務デナケレバナラヌノデアル、恰モ官僚
內閣ノ是マデヤリ來ッタ如ク、基礎法モ未ダ
制定セズ、而シテ豫算ノミ此ニ要求スルガ
如キハ、斷ジテ許スベカラザル行動デアル
ノデアル(拍手)且ツ私ハ豫算ハ衆議院ヲ通
過シタル以上ハ、必ズ貴族院ヲシテ之ニ同
意セシメルト云フ筋合デナケレバナラナイ
ト思フノデアル、貴族院ヲシテ衆議院ノ說
ニ聽從セシメヤウト云フ其前ニ方ッテ、我衆
議院ハ極メテ「モデレート」ニシテ、衆議院
ニ於テ決議シタルモノハ、何等ノ遺憾ナク
貴族院ガ之ヲ受入レルト云フダケノ玆ニ精
査ヲ要シナケレバナラナイ、然ルニ斯ノ如
キ穴ダラケノ、斯ノ如キ無用ナル、百害アッ
テ一利ナキ案ヲ提ゲテ貴族院ニ臨ミ、衆議
院ノ多數ノ力ヲ以テ之ヲ無理押シニシヤウ
ト云フガ如キ事ヲ行フニ至シテハ、貴衆兩院
ノ圓滿ヲ害シ、帝國ノ國政ヲ阻害スルモノ
ナリト確信スルモノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=71
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072・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 板野友造君
〔板野友造君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=72
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073・板野友造
○板野友造君 追加豫算案ノ中デ、數字ニ
於テハ僅カニ政務次官ノ經費ニ關シテ爭ガ
アルダケニナッテ居ル、私ハ本豫算全部ニ對
シテ贊成ヲ致シマス、私ハ本豫算全部ニ對
スル賛成ヲスルニ至ッタ理由ト申スヨリハ、
賛成ヲスル代リニ政府ニ警告ヲスル、是ハ私
ガ此ニ上シタ目的ノ殆ド大部分デアル、政
務官ノ經費ノ如キハ區々タルモノデアルト
思ヒマス、後ニ一言ダケ致シマス、本期議會
ニ提出ヲセラレマシタ追加豫算、其總額ハ
二億六千五百餘万圓デゴザイマスガ、之ニ實
行豫算ヲ合セマスト、其額ハ政府ノ言ヘル
如ク十六億一千ヲ超エルコトニ相成ルト思
ヒマス、デ是ハ誰方カノ御言葉モアリマシ
タガ、斯ノ如ク十六億ヲ超ユル豫算ハ、我
國ニ於テハ未ダ嘗テ見ザル所デアリマス、
假ニ此十六億一千万ノ中カラ復興ニ關ス
ル經費全部ヲ除イテモ、尙ホ十三億五千万
ヲ超エルノデアリマス、財政行政ノ整理
緊縮ヲ要スル今日ニ於テ、斯ノ如キ〓大ナ
ル豫算ニ對シテハ、容易ニ協賛ヲ與フペキ
筈ノモノデハアリマセヌ、此問ニハ深ク攻
究ヲシナケレバナラヌ筈デアリマスルケレ
ドモ、實ハ此十六億幾ラト云フ總豫算中、實
行豫算ニ付テハ吾々ハ何等容喙ノ權利ガ
アリマセヌ、實行豫算ハ何等此議會ニ提案
サレテアリマセヌ、デアリマスカラ十六億
幾ラト云フ此厖大ナルモノヽ中、僅ニ追加
豫算ノ二億六千万幾ラニ付テノミ吾々ノ審
査權ガアルノデアリマス、而シテ此追加豫
算中、大體ニ於テ復興ハ避クベカラザルコ
トデアッテ、隨テ已ムヲ得ザル費用トシテ吾
吾ハ認メベキモノデアルト信ジマス、唯
政府ニ於テハ、宜シク我國刻下ノ現況ニ鑑
ミテ、此豫算ガ通過ヲ致シ、協賛ヲ得タト
致シマシテモ、十分ナル整理緊縮ヲ行テ、
國民ノ興望ニ副フ是ダケノコトハ政府ガ
努メナケレバナラヌ、心掛ケナケレバナラ
ヌモノデアルト私ハ信ジマス、デ幸ニ加藤
總理大臣ハ豫算ノ總會ニ於テ、吾々ノ同志六
口喜六君ノ質問ニ對シテ、行政財政ニ就テ根
本的整理ヲ行フト云フコトヲ斷言シタノデア
リマス、當時大口君ノ質問ハ斯ウ言ッタ、吾々
ハ同志ノ一人ガ入閣セルノ故ヲ以テ、必シモ
豫算ニ同意ヲスル者デハナイ、眞ニ政府ガ
吾々ノ多年唱フル所ノ財政行政ノ整理ヲヤ
ル、緊縮ヲヤルト云フコトデ、政策ガ一致
ヲスルナラバ援ケルガ、然ラザレバ反對ヲ
スル、斯ウ云フコトヲ質問シタ時ニ、總理
大臣ハ內閣ニ於テハ根本的ノ行政整理ヲス
ルト云フコトヲ斷言致シテ、吾々ノ多年ノ唱
道ト一致ヲスルコトニナッタ、此點ニ就キマ
シテハ、濱口大藏大臣モ、財政ニ就テ縱令
此豫算ニ協賛ヲ與へラレテモ、政府ハ出來
ルダケ節約緊縮ヲ行シテヤル、ダカラ安·心ヲ
シテ此豫算ニ協賛ヲ與ヘテ吳レト云フコト
ヲ言明サレテ居ルノデアリマスカラ、吾ガ
多年唱ヘタル行政財政ノ整理緊縮、此事ハ
現内閣ニ於テ斷行ノ出來ルモノデアル、吾々
ハ現内閣ヲ信ジ、內閣ノ言質ヲ得タト云フ
コトヲ滿足シテ、玆ニ本豫算ニ對シテ贊成
ヲスル者デアリマス、唯〓此際賛成ハ致シ
マスガ、政府ニ對シテ一應私共ノ所見ヲ述
ベテ置キタイ、吾々實ハ政府ノ聲明ヲ信ジ、政
府ニ期待ヲ置イテ此經費ニ承諾ヲ與ヘマス
モノヽ、我國刻下ノ現狀カラ見マスト、斯ノ
如キ經費ヲ以テ斯ノ如キ財政ヲ行フコトニ
付テ、極メテ吾々ハ憂ヲ懷ク者デアリマス、是
ハ私共詳シク申ス必要モアリマセヌ、唯.
順序トシテ一言ダケ申シテ置キマスガ、極
メテ憂フベキ經濟狀態ト考ヘル、今ノ貿易
關係ハ、御承知ノ通リ輸入超過デアリマス、
隨ッテ在外正貨ハ漸々ニ減シテ來テ、只〓デ
ハ幾ラニ相成シテ居リマスカ、正確ナ數字ハ
私共存ジマセヌガ、何レ多クハナカラウト
思フ、四億幾ラノモノデハナカラウカト私
ハ思フ、サウシテ爲替相場モ日々ニ下落ヲ
致シ、少シ持直シテハ來タモノヽ持直シタ
今日ニ於テモ、尙ホ且ツ四十一弗二分ノ一、
大藏大臣ノ言ヘル如ク、斯ウ云フ相場ヲ元
シテ居ルノデアル、ソレデ此儘ニ此貿易狀
態ヲ以テ進ンデ行ケバ、ドウ云フコトニ相
成ルカ、此貿易狀態ヲ以テ進メバ、更ニ外
債ヲ起スカ、或ハ常ニ問題ニサレル金ノ輸
出解禁ヲヤル、此二ツノ途ヲ採ルヨリ外途
ハナイト思ヒマス、ソレデ吾々ハ金ノ輸出
解禁、是ハ本筋ニ歸ル、本道ニ歸ルモノト
シテ、別ニ之ニ異論ヲ挾ム者デハアリマセ
スケレドモ、日本ノ今日ノ狀況ニ於テ、今
日ノ工業狀態ニ於テ、直ニ解禁ヲスルト云
フコトニハ反對ヲ致シマス、今日直ニ之ヲ
解禁ヲシタナラバ、ドン〓〓急速力ヲ以テ
流出スルデアリマセウ、ソレト同時ニ內地
ノ此正貨ガ流出スル結果、通貨ノ急激ナル
縮少ヲ見テ、經濟界ニ大變動ヲ來スコトハ
當然デアリマス、是ハ大藏大臣ノ至言ノ如
〃サウ云フ風デアリマスカラ、何トカシ
ナケレバ此狀態ヲ脫却スルコトハ出來ナ
イ、唯〓、徒ニ悲觀論ヲ唱ヘテ居ルダケデハ
仕方ガナイ、然ラバ如何ニシタナラバ宜イ
カ、ドウシタラ宜イカ、私共ハ此際ニ於テ
ハ宜シク此政治ノ局ニ當ル者、政府ニ於テ
極端ナル消費節約ヲ行ヒ、一面ニ於テ極端
ナル消費節約ヲ行フト同時ニ、他面ニ於テ
ハ我國ニ適應シタル產業ノ發達ヲ圖ラナケ
レバナラヌ、ノ卽チ吾々ガ國民黨以來多年唱
道致シマシタ產業立國策ヲ以テ臨ムノ外ハ
ナイト考ヘマス、卽チ常ニ諸君ガ口ニセラ
ルヽ農村ノ振興ハ勿論ヤラナケレバナラ
ヌガ、農村振興ヲヤルト同時ニ商工業ノ
振興ヲヤラナケレバナラス、一面ニ農村ノ
振興ヲ圖リ、他面ニ商工ノ振興ヲ圖リ、玆
ニ所謂產業立國ノ政策ヲ樹テヽ積極方針
ヲ以テ進ム、斯ウ云フコトニスルヨリ外ニ
此先處スル途ハナイト思ヒマス、或ハ此際
十六億幾ラト云フ豫算ガ成立致シ、此間豫
算ノ分科會ニ於テ-大藏ノ分科會ニ於テ
詳細ノ御說明ガアリマシタガ、例ノ〓浦內
閣ノ評判ノ外債ヲ募ッタ五億五千万圓-
五億四千九百万圓、彼ノ外外債ノ中デ、復興
費ニ使ハレルモノガ一億六千六百万圓程此
方ニ廻シテ使ハレルコトニナッテ居ルソウデ
ス、之ガ廻シテ來ルト、十六億ノ豫算ガ確立
スル、斯ウ云フコトニナリマスカラ、中間
景氣ヲ生ズルカモ知レナイ、之ガ出夕其後
ハ極メテ恐ルベキモノデ、由々敷狀態ヲ呈
スルモノデナイカト氣遣ハレル、私ハ斯ウ
云フ際デアリマスカラ、政府タルモノハ宜
シク深刻ナル注意ト、至大ナル覺悟ヲ以テ
此豫算ニ向ヒ、且ツ總テノ事ニ善處サレン
コトヲ望ミマス、要スルニ政府ハ財政經濟
竝ニ行政整理ニ關シテハ、大英斷ヲ以テ措
置スルモノデアルト云フコトヲ信ジテ、政
府ニ信任ヲ置イテ本豫算ノ全部ニ賀成致シ
マス(拍手起ル)政務官ノ如キハ實ハ見樣
デハドウデモ言へマス、松田君ノ仰シヤル
ヤウニ冗官トモ言ヘヤウ、是ハ見方デアル、
官僚主義カラ言ヘバ、政務官抔ト云フモノ
ハアリマセヌ、官僚内閣ニハ政務官ハアリ
マセヌ、政黨内閣ニハ政務官ハ附キモノデ、
現内閣ノ如ク政黨ヲ基礎トシテ政治ヲヤル
モノニハ、政務官ハ附キモノデアリマス、官
僚ヲ歡迎シ、官僚内閣ヲ本尊トスルモノニ
政務官ヲ置ク趣旨ハ分テヌ筈デス、斯
ンナモノハ彼此言フモノデハアリマセヌ、
各、內閣ヲ作ル人ニ依ッテ、人々ノ流儀ガアル
ノデアリマスカラ、政務官ヲ要ラスト云フ
人モアラウ、或ハ要ルト云フ流儀ノ人モア
ラウ、ソンナ吝ナ事ハ彼此言フ問題デナイ
ト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=73
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074・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 長峰與一君
〔長峰與一君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=74
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075・長峰與一
○長峰與一君 本員ハ松田源治君ノ意見ニ
賛成スル者デアリマス、總理大臣ノ施政ノ
演說ノ中ニハ、特ニ行政ノ整理、綱紀ノ肅
正ヲ唱ヘラレテ居ルノデアリマス、此見地
ヨリシテ、私ハ政務父官ナルモノハ此主義
ニ合政セザルモノトシテ、絕對ニ反對ヲ唱
ヘル者デアリマス、政友會諸君ハ豫テヨリ
農村ノ振興竝ニ農務省ノ獨立ヲ唱ヘテ居リ
マスガ、此際ハ此問題ヲ何等首相ノ演說ノ
中ニ加味セラルヽダケノ力ヲ有セラレナイ
ヤウニ思フノデアリマス、此事ハ高橋總裁ハ
豫テ小我ヲ拾テヽ大我ニ就クト言ハレマス
カ、私ハ今囘ハ政友會ノ諸君ハ、大我ヲ捨
テヽ小我ニ就レタル結果デアラウト思フ
ノデアリマス、政友會ノ爲ニ惜ムノデアリマス、
私ハ是非トモ農村ノ振興ノ爲ニ、今囘ノ豫算
ニ於テモ、農務省ノ獨立ハ是非決定サルベ
キモノデアルト信ジテ居ッタノデアリマス
ガ、茲ニ出デザルノハ所謂多年ノ主張ヲ
捨テヽ政友會ハ遂ニ憲政會ノ都市中心主
義ニ追隨サレタモノデアルト考ヘマス、
卽チ都市ノ主義ニセラレタル結果、皆御議
論ハ斯ノ如キ方ニ進ンデ居ルヤウデアリマ
ス、而シテ農村ノ振興ニ付テ、何等計畫ヲ
致サズシテ、而シテ衰頽セル農村ヨリ零細
ノ資本ト稱スルト雖モ、其巨額二億ニ達スル
資金ヲ茲ニ中央ニ募集致スト云フコトハ、
之ヲ以テ一面ニ於テハ農務省ノ獨立ヲ圖ラ
ズ、振興ヲ圖ラズ、更ニ此農村ノ廢頽ス
ルガ如キ資金ノ調達ヲスルガ如キハ洵
ニ矛盾シタル話デアリマス(拍手)而シテ
私ハ資本ヲ徴發スルト云フノデアリマ
ス普通ノ公債ナラバ、是ハ任意的ニ應募
スルノデアリマス、又小額ナリト雖モ、是
ハ任意ニ應募スルモノデアリマスケレド
モ、此小額ナルモノハ、二億万ノ半額一億
万圓ハ、殆ド空中ニ其公債ヲ失フノデアリ
マシテ、是ハ體裁ハ中々宜シイガ、實際ハ
資金ノ徵發ニナルノデアリマス、此農村ノ
振興ヲ度外視シタ政策デアリマスカラ、斯
ノ如キ國民ニ臥薪嘗膽的ノ事ヲ勸メテ置キ
ナガラ、而シテ又行政ノ基礎及財政ノ基礎
ハ國民ノ自覺ニ在リト大藏大臣ハ唱ヘテ居
ルニ拘ラズ、サウ云フコトヲ卽チ國民ニ臥
薪嘗膽的ノ決心ヲ御勸メニナッテ、而シテ冗
官タル政務次官ノ如キモノヲ置クト云フノ
ハ自己ノ聲明ノ矛盾ノ大ナルモノヲ見出
スモノデアリマス、此點ニ於キマシテ私ハ
絕對ニ反對ヲ致シマス(「簡單々々」ト呼フ
者アリ)簡單ト云フ話デアリマスカラ、私
ハ是ニテ絕對反對ノ意思ヲ表明シテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=75
-
076・作間耕逸
○作間耕逸君 討論終結ノ動議ヲ提出致シ
マス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=76
-
077・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ討論終結ノ
動議ニハ成規ノ賛成ガアルト認メマス、此
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=77
-
078・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ討論終結ニ決シマシタ、直ニ採決
ヲ致シマス、先ヅ修正ノアル豫算案、卽チ
第三號及特第二號ノ兩案ニ付テ採決致シマ
ス、此兩案ニ對シテハ、元田肇君ヨリ修正
ガ提出サレテ居リマス、其修正ノ要旨ハ第
三號ニ於テ各省ニ亙ル政務官設置費ノ削除
デアリマス、特第二號ノ鐵道省所管政務官
設置費ニ關スル經費ノ削除デアリマス、此
修正ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=78
-
079・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數、修正案ハ
否決サレマシタ、次ニハ右兩案ニ付キマシ
テ委員長ノ報告ニ付テ採決ヲ致シマス、委
員長ノ報告ニ贊成者ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=79
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080・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數、二案トモ
委員長報告ノ通り決シマシタ、他ノ六案ニ付
キマシテハ別ニ修正ガアリマセヌカラ一括
シテ委員長報告ニ付テ採決ヲ致シマス、委
員長報告ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=80
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081・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 宣告致シマス、兩案
共委員長ノ報告ノ通リ決シマシタ、是ニテ
全部可決確定致シマシ夕(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=81
-
082・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ先刻後廻シニ
ナッテ居リマシタ日程ニ戾リマス、日程第四
及第五ハ同一委員ニ付託シタ議案デアリマ
スカラ、一括シテ議題ト爲スニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=82
-
083・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ一括シテ議題ト致シマス、卽チ日
程第四、震災善後公債法中改正法律案、日
程第五、大正十三年勅令第四十六號承諾ヲ
求ムル件、右兩案ヲ一括シテ議題ト致シマ
ス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長賴母
木桂吉君
第四震災善後公債法中改正法律案
(政府提出)第一語會ノ續(委員長報
告)報告書
一震災善後公債法中改正法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月八日
震災善後公債法中改正法律案委
員長賴母木桂吉
衆議院議長粕谷義三殿
第五大正十三年勅令第四十六號(永
諾ヲ求ムル件)(委員長報告)
報告書
一大正十三年勅令第四十六號(震災善
後ニ關スル公債發行ノ件)(承諾ヲ求ム
ル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
大正十三年七月八日
大正十三年勅令第四十六
號(震災善後ニ關スル公
債發行ノ件)(承諾ヲ求ム
ん作委員長
賴母木桂吉
衆議院議長粕谷義三殿
〔賴母木桂吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=83
-
084・頼母木桂吉
○賴母木桂吉君 只今議題ニナッテ居リマ
スル震災善後公債法中改正法律案ノ委員會
ノ經過、竝ニ結果ヲ御報告致シマス、先刻決
定致シマシタ豫算ニ關聯ヲ致シマスル法案
デアリマシテ、此中ニ一億五百万圓ノ復興
費ニ關スル數字ガ現レテ居リマスルノデ、
此問題ガ主トシテ論議セラレ、重要ナ質問
應答ガアッタノデアリマス、而シテ其質問ノ
要項ヲ一括シテ申シマスレバ、區劃整理ニ
付テ色々議論ガアリ、而シテ不備十點モア
ルヤウニ考ヘラレル政府ハ此區劃整理
此儘遂行スル積リデアルカドウデアルカ、
一括シテ簡單ニ申上ゲマスレパソレデアリ
せっ、之ニ對シマシテ內務大臣ハ區劃整理
ハ無論實行スル積リデアル、併ナガラ選擧
セラレタル所ノ區劃整理委員ノ所謂諮問ヲ
經テ、此區劃整理委員ノ希望ニ依シテ、或ハ
不都合ナ點ガアルナラバ、之ニ向シテハ相當
ノ考慮ヲ拂フト云フ言明ガアッタノデアリ
マス、之ニ依リマシテ禾女員ハ滿足ヲ致シテ、
原案ヲ全會一致ヲ以テ賛成致シマシタ、ソ
レカラ併託ニ相成シテ居リマシタ、矢張公債
ノ事後承諾案デアリマス、是ハ甚ダ多額ノ
責任支出デアッテ、甚ダ遺憾デアルケレド
モ、併ナガラ其用途ハ公共自治團體ノ震災
後ニ於ケル窮乏ヲ救フ爲ニ、已ムヲ得ザル
ニ出デタモノデアッテ、是ハ甚ダ遺憾デハア
ルケレドモ、實際ニ於テハ之ヲ認メルヨリ
外ニ仕方ガアルマイト云フコトデ、是モ滿
場一致デ可決ニ相成シタノデアリマス、何卒
原案ヲ御承認下サルコトヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=84
-
085・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 先ヅ日程第四ニ付テ
採決致シマス、卽チ震災善後公債法中改正
法律案、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=85
-
086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=86
-
087・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案第二讀會ヲ開キ、
第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可
決アランコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=87
-
088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ付テ
御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
震災善後公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=88
-
089・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第三請會ヲ省略シテ、委員長
報告ノ通リ可決確定致シマシタ、次ニ日程
第五、大正十三年勅令第四十六號承諾ヲ求
ムル件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=89
-
090・作間耕逸
○作間耕逸君 本件ハ委員長報告ノ通リ承
諾ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=90
-
091・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=91
-
092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本件ハ承諾ヲ與フルニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=92
-
093・作間耕逸
○作間耕逸君 議事日程追加ニ關スル緊急
動議ヲ提出致シマス、卽チ政府提出朝鮮銀
行法中改正法律案、竝ニ同政府提出小作調
停法案ヲ此際特ニ逐次上程シテ議題ト爲
シ、前者ハ第一讀會ヲ開キ政府ノ趣旨辯明
ヲ求メ、後者ハ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員
長ノ報告ヲ求メ各〓其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=93
-
094・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=94
-
095・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、茲ニ朝鮮
銀行法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス
-濱口大藏大臣
朝鮮銀行法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
朝鮮銀行法中改正法律案
朝鮮銀行法中左ノ通改正ス
第二條、第九條、第十條、第十七條、第十
八條、第二十條乃至第二十二條、第二十五
條及第二十九條乃至第三十三條中「朝鮮
總督」ヲ「大藏大臣」ニ改ム
第三十四條中「朝鮮總督」ヲ「政府」ニ改ム
第三十七條ノ二本法中大藏大臣ノ職務
ニ屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
朝鮮總督ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣濱口雄幸君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=95
-
096・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸廿ロ) 朝鮮銀行ハ元ト
朝鮮ニ於ケル中央銀行トシテ特設セラレタ
モノデアリマスガ、同行ノ業務ハ取引關
係又ハ國運ノ進展ニ伴ヒマシテ、漸次朝鮮
總督府ノ管轄以外ノ地域ニ發展致シマシテ
今日ニ於テハ是等ノ地方ニ於キマシテハ、
店舗ノ數ニ於テモ取引ノ量ニ於テモ、遙 に
朝鮮内ニ於ケルモノヲ凌駕スルヤウニ相
成ッタノデアリマス、而シテ朝鮮銀行劵ハ關
東洲及南滿洲鐵道附屬地ニ於テ强制通用力
ヲ有シテ居リマシテ、且ツ滿蒙及西伯利亞
地方ニ於テ事實上巨額ノ流通ヲ爲シテ居ル
コト、朝鮮銀行ノ重要ナル業務ニシテ、内地
ニ於テ行ハレテ居ルモノガ益〓增加シツヽ
アルコト、及朝鮮銀行ハ兌換劵發行ノ銀行
デアリマスガ故ニ、一般金融上樞要ナル位
置ヲ占メテ居ルコト等ヨリ見マシテ、現行ノ
監督制度ハ其當ヲ得ナイト思ヒマス、加之
銀行ノ業務及財產ノ現狀ハ大ニ改善シナケ
レバナラナイ狀態ニ在リマスノデ、旁〓同
行ノ一般監督ハ、之ヲ大藏大臣ノ權限ニ屬
セシムルノガ妥當且ツ必要ト考ヘルノデアリ
ママ、現ニ朝鮮銀行ノ監督ヲ中央ニ移スベ
シトノ議ガ、議會ニ於テモ屢〓問題トナリマ
シタコトデアリマシテ、今日ハ適當ノ時機
ト存ジ、臺灣銀行ニ對スル取扱ニモ鑑ミ
マシテ、此際朝鮮銀行法ヲ改正シテ、之ガ
監督ヲ大藏大臣ノ管掌ニ移スコトノ法案ヲ
提出致シマシタ次第デアリマス、速ニ御協
賛アランコトヲ希望致シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=96
-
097・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 右議案ノ審査ヲ付託
スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=97
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098・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ委員ノ數ヲ九名ト
シ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=98
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099・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=99
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100・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-次ニハ
小作調停法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委
員長ノ報告ヲ求メマス-委員長熊谷直太
君
小作調停法案(政府提出)
第一諳會ノ續(委員長報告)
報告書
一小作調停法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十三年七月九日
小作調停法案委員長
熊谷直太
衆議院議長粕谷義三殿
〔熊谷直太君登壇、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=100
-
101・熊谷直太
○熊谷直太君 只今議題ニナッテ居リマス
ル小作調停法案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御
報告致シタイト思ヒマス、本案ハ御承知ノ
如ク目下ニ於キマシテ最モ重要ナル所ノ法
案ノ一ツデアリマス、此條項ハ一條ヨリ四
十九條ニ亙ッテ、他ニ二條ノ附則ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、本案ノ大體ノ趣旨ハ、此壇
上ヨリ高橋農商務大臣ガ皆サンニ申上ゲタ
通リデアリマス併シ之ニ附加ヘマシテ此調
停スル所ノ機關ガ如何ナルモノデアルカ、
調停ノ結果ハドウ云フ風ニナルカ、調停ヲ
補佐スル所ノモノニ小作官ト云フモノガア
ルガ、其小作官ノ性質ト云フモノハ如何ナ
ル性質ヲ帶ビテ居ルカ、如何ナル作用ヲ爲
スカト云フ諸點ニ付テ、御報告ヲ申上ゲル
ノハ相當デアラウト思ヒマス、併シ是ハ此
法文ヲ御覽ニナレバ大約分ル法文ニナッテ居
リマス、農事ニ熱心ナル所ノ諸君ニ向ヒマ
シテ、一々斯ウ云フ詳シイ說明ヲスルト云
フコトハ此暑サノ折柄却テ幼害ニ相成ルコ
トヽ考ヘマスルカラ、私ハ其重要ナル所ノ諸
點、卽チ委員會ニ現レマシタ所ノ、最モ耳ヲ
傾クルニ足ルノ諸點ニ付キマシテ御報告ヲ
致シタイト思フノデアリマス、當委員會ハ
二十七名ノ多數ヨリ出來チ居リマス、此委
員ノ諸君ガ此盛暑ニモ拘ラズ、最モ熱心ニ
各委員ガ有力ナル所ノ御質問ヲ下サレタノ
デアリマス、此御質問ハ此所ニチヤント控
ヘテ居リマシテ、是亦諸君ニ御報告ヲスレバ、
悉ク有益ナル所ノ御質問デアリマスルガ故
ニ、非常ニ爲ニナルコトト考ヘマスルケレ
ドモ、是ハ載セテ速記ニアリマスルカラシ
テ、委員會ノ速記錄ニ就テ御讀ミヲ願ヒタ
イノデアリマス、本案ハ先年提出セラレマシ
タ所ノ小作調停法案ニ比較シテ見マスルト
云フト、四ツノ點ニ付テ差異ガアルノデア
ル、其一ツハ區域ヲ制限シタト云フコト、卽
チ先年ノ小作調停法案ハ區域ハ制限シテ居
ラナカッタ、今度ノハ區域ヲ制限シテ居ルト
云フ點、ソレカラ先年ノハ手數料ヲ取ルト
云フコトニナッテ居リマスルガ、今年ノハ取
ラヌト云フ、又法文ノ順序ヲ變ヘマシテ、先
年ノ八條ヲ二條ニ持ッテ行キマシテ、其要領
ヲ得セシメタト云フ、事實上ノ勸解ト云フ
モノニ付キマシテハ、總テノ事ニ付テ先ヅ
勸解ヲ試ミルヤウニ致シマセヌデ、裁判所
ガ認メテ、因シテ以テ都合ノ好イト云フモノ
ニ付キマシテ勸解ヲ爲サシムルト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ諸點ニ
付テ變シテ居リマスルガ、委員會ニ於テ最モ
重要ナル所ノ質問デアリ、意義アル所ノ質問
デアルト云フ點ハ、第一ニ小作調停法案ハ母
法デハナイ、此母法タル所ノ小作法ト云フ
モノヲ先ヅ制定スベキガ順序デアル、此母
法ノ制定セザルノニ、手續法タル所ノ調停
法案ト云フモノガ出來ルト云フコトハ意義
ガ無イデハナイカト云フ質問ガアッタノデ
アリマス、之ニ對スル所ノ政府ノ答辯ハ、成
程小作法ト云フモノガ出來ナイノニ調停法
ガ出來ルト云フコトハ異ナヤウナモノデア
ルガ、小作法ヲ制定スルト云フコトハ中々
困難ノ事デアル、農事ノ狀態ト云フモノガ、
日本ノ各地域ニ依リマシテ非常ニ異シタ所
ノ狀態ニ在ルノデアル、之ヲ一纏メニシテ
法案ニ擧ゲルト云フコトハ一朝一夕ノ事デ
ハナイ、然ルニ飜シテ今日ノ狀勢ヲ見マスル
ト云フト、大正六年ニハ小作爭議ガ八十五
件許リノモノガ年々歲々其數ヲ增シマシテ、
大正十二年ニハ千九百七件ノ多數ニ上ッテ
居ル、斯ウ云フ風ニ多數ニ上ッテ居ル所ノ小
作爭議ト云フモノヲ其儘ニシテ置クト云フ
コトハ、是ハ容易カラヌ事デアルカラシテ
此調停法案ニ依リマシテ因シテ以テ此救
濟ノ途ヲ講ジナケレバナラスト云フ、故ニ
本案ヲ提出シタノデアルト云フ說明デアル
ノデアリマス、第二ニハ元來小作調停法案ナ
ルモノニ依レバ斯ウ云フ法案ヲ作リマスルト
云フト爭ノ無イ處ニモ爭ヲ惹起スル所ノ虞
ガアルノデアル、本案ガ制定シタル結果ニ
於テ、如何ナル影響ヲ及ボスモノデアルカ
ドウカニ付テ政府ハ考慮シタリヤ否ヤト云
フ所ノ質問デアリマス、之ニ對シマスル所
ノ政府委員ノ說明ハ、小作調停法案ガ出來夕
カラト云ウテ、決シテ小作爭議ト云フモノヲ
惹起スルモノデハナイ、小作爭議ガ頻々トシ
テ起リ來ル所ノモノハ他ノ原因ニ依ルモノ
デアル、或ハ小作組合ヲ利用シ、或ハ其他ノ
方法ニ依ッテ農民ヲ煽動スルヤウナコトガ
出來テ來ル、其結果ニ依ルモノデアリマ
シテ、小作調停制度其モノノ罪デナイコト
ハ明瞭デアルト云フ答辯デアッタノデアリ
やっ、ソレカラ本案ノ内容ニ一寸入リマス
ルガ、第二條ニハ「當事者不當ノ目的ヲ以テ
濫ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ
栽判所ハ其ノ中立ヲ却下スルコトヲ得」ト
云フ條項ガアルノデアリマス、之ニ付キマ
シテハ委員諸君ヨリ色々ノ質問ガアリマシ
テ、一層此條項ヲ取ッタ方ガ宜シイデハナイ
カト云フヤウナ御質問モアッタノデアリマ
ス、政府ハ之ニ對シマシテ第一一條ノ此制定
ノ目的ハ、其適用ノ範圍ト云フモノハ極メ
テ狹イノデアル、政府ハ此條項適用ニ付キ
マシテハ傾重ニ考慮シ、眞ニ調停ノ目的ヲ
以テ調停ヲ申出ナイ顯著ナル場合ニ於テノ
ミ却下スルモノデアルト云フコトデ此點ニ
對シマシテハ嚴格ナル政府委員ノ聲明モ
アッタ位デアリマス、ソレカラ小作官、小
作官ト云フモノガ出來マシタガ、此小作官
ノ性質ト云フモノハ如何ナルモノデアルカ
ト云フト、是マデハ兎角地方ノ理事官ト云
フヤウナ者ハ、大學ヲ卒ヘテ一二年ノ間縣
廳デ稽古ヲヤッタト云フヤウナ人達ガ理事
官ニナッテ居ル、ソレデハ小作爭議ノ問題ヲ
解決スルニハ足ラヌ、此小作官ナルモノハ
農事ニ付テ最モ經驗アル、地方ノ慣習ニ就
テ趣味ヲ持ノテ居ルト云フ者ノ中ヨリ特別
任用致シマシテ、因フテ以テ裁判所ノ意見ニ
對シマシテ參考ノ意見ヲ陳述シ、或ハ取調
ヲスルト云フヤウナ、裁判官ノ不足、調査委員
ノ不足ノ點ヲ補フノ働ヲ爲ス重要ナルモノデ
アルノデアリマス、此小作官ノ任命ニ付キマ
シテハ、委員諸君ヨリハ種々ナル希望モア
リマシタガ、政府ハ此任命ニ付キマシテハ、
成ベク委員諸君ノ希望ニ副フト云フコトノ
答辯ヲ得タノデアリマス、ソレカラ(「賛成シ
マスカラ簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)段々
サウ云フ御聲ガ出タコトデアラウト考ヘタ
カラ、最モ端折ノテ申上ゲテ居リマス、併ナ
ガラ此法案ハ實ニ重要ナル法案デアリマス
カラ暫時御〓聽ヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス、其他政友本黨ノ津崎君、憲政會ノ齋藤
君、革新倶樂部ノ湯淺君、政友會ノ堀切君、
中正倶樂部ノ山口君等ヨリ、此法ノ適用ニ
關シマシテ有力ナル所ノ希望ガアッタノデ
アリマス、ソレハ本制度ガ出來タカラ、此
法律案ガ通過シタカラト云ウテ、農村ノ振
興ト云フコトニ付テハ大ナル影響ガ無イ、
成ベク早ク此農村振興ニ付テハ徹底的ニ其
目的ヲ達スルヤウナ方法ヲ政府ニ於テ講ゼラ
レタイト云フ希望、大キク摑ンデ言ヘバサ
ウ云フ希望ガアッタノデアリマス、尙ホ此法
ノ適用ニ關シマシテハ、病源即チ小作爭議
ノ病源ガ何所ニ在ルカト云フコトヲ調停委
員會ニ於テハ看破シマシテ、其病源ヲ醫ス
ルヤウナ所ノ調停ヲ得ルコトニ盡力セシム
ルヤウニ働イテ貰ヒタイト云フコトノ希望
モアッタノデアリマス、其他澤山ノ希望ガア
リマシタガ、要シマスルニ本案ニ付キマシ
テハ、滿場一致ヲ以テ賛成ヲ得ラレタノデ
アリマス、願クハ本議場ニ於カレマシテモ、
滿場一致ヲ以テ本案ノ通過セラレンコトヲ
希望スルノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=101
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102・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 賛成演說ノ通告ガア
リマス、津崎尙武君
〔津崎尙武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=102
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103・津崎尚武
○津崎尙武君 小作調停法案ニ付キマシテ
只今委員長ヨリ簡單ニシテ明瞭ナル御報
告ガアリマシタ、吾々ハ本案ニ贊成スルノ
デアリマスガ、賛成スルニ付キマシテ茲ニ
本案ノ制定施行ニ關シマシテ、少シク希
望ヲ述ベテ置キタイト思フノデアリマス、
其第一ハ本來小作調停ナルモノハ、行政調
停タルベキ性質ノモノデアルト思フノデア
リマスガ、本案ニ於キマシテハ司法上ノ調
停ヲ主眼トシテ居ル、ソレデ此事ニ付キマ
シテ果シテ本案ヲ施行シタ結果、豫期ノ目
的ガ達スルコトガ出來ルカドウカト云フコ
トヲ疑フノデアリマスカラ、此施行ニ當リ
マシテハ其積リデ注意シテ戴キタイト思
フ、此點ニ付キマシテハ只今委員長カラ御
話ガアッタ通リデアリマスガ、何卒本法ノ施
行ニ當リマシテハ、割合ニ地方ノ農民ハ穩
ナモノデアリマシテ、栽判所ニ出頭シテナ
ド爭議ヲ殊ニ小作人自身カラ持出スト云フ
コトハムツカシイ事デアリマスカラ、此爭
議ヲ解決スルニ付キマシテ、成ベク行政廳
ヲ顧ミテ之ヲ利用スルト云フコトニ注意願ヒ
タイ點デアリマス、第二ガ小作制度ノ不備ノ
爲ニ爭議ガ起ル、ソレデ此母法タル小作法ヲ
制定シテ貰ヒタイト云フコトデアリマス
ガ、此小作法ノ制定ノ困難ナルコトハ只今
委員長カラ御述ニナシタ通リデアリマス、
ケレドモドウシテモ此病根ヲ直サナケレ
バ、此調停法ヲ行ッテモ根本的ニ治療スルコ
トガ出來ナイカラ、困難ナ事デアリマシテ
モ此小作法ノ制定ヲシテ戴キタイト云フ
コトデアリマス、第三ニハ自作農減少ト云
フコトガ爭議ノ一原因デアル、ソレデ努メテ
自作農ノ維持創設ヲシテ貰ヒタイト云フコ
トデアリマス、每年一万戶許リヅヽノ自作
農ガ減少ヲ來シテ居ル日本ノ現狀デアル、
之ニ付キマシテハ自作農ノ創設ト云フコト
ニ付テ、前内閣ニ於キマシテ相當ノ計畫ヲ
シテ居ラレタノヲ、現内閣ニ於キマシテ之
ヲ中止セラレタ形デアルノデアリマス、二
百万圓位ノ金デ自作農ノ創設ガ出來ナイト
云フヤウナ御意見モアッタヤウデアリマス
ケレドモ、之ヲ自作農創設ニ要スル資金、其
資金ノ利子ニ振充テヽ來マシタナラバ-
利子ノ補給ニ充テヽ來マシタナラバ、假令
二百万圓ノ金デアリマシテモ、每年遣方ニ
依リマシテハ一万町步位ノ創設ヲシテ行ク
コトガ決シテムツカシクナイト思フノデア
リマス、サウ云フ譯デアリマスカラ、ドウカ
此點ニ付キマシテ小作爭議ノ病根デアル此
病根ヲ直ス爲ニ、自作農創設ニ付キマシテハ
特ニ御注意ヲ願ヒタイト云フコトデアリマ
ス、第四ニ現在ノ農業經營ガ極メテ不利デ
アルコトハ、今日詳シキ事ハ申サヌデモ分ッ
テ居ルノデアリマスガ、此經營ノ不利ナル
爲ニ農家ノ收益ガ少ナイ、其爲ニ此爭議ノ
原因ヲ成スノデアリマスカラ、政府ハ此點
ニ顧ミラレテ、此原因ヲ除去スルト云フコ
トニ御盡シヲ願ヒタイ、以上四ツノ希望ヲ
述べマシテ、吾々ハ本案ハ大正六年以來特
ニ起リ來シテ居ル爭議ヲ解決スルニ付キマ
シテ、完全ナ法規デアルト認メルコトハ出
來マセヌケレドモ、有ルハ無キニ優ル、又此
運用ノ如何ニ依リマシテハ相當ノ效果モア
ラウト云フ意味ヲ以チマシテ、而シテ農村
ノ疲弊シタ今日ニ於キマシテ、其根本原因
ヲ直シテ行クト云フコトニ留意シテ戴キタ
イト云フコトヲ希望致シマシテ、本案ニ賛
成致スノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=103
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104・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=104
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105・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=105
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106・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ全院一致ヲ以テ可決確定アランコトヲ望
ミマス(拍手起ル)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=106
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107・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ
開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
小作調停法案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=107
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108・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三讀會ヲ省略シ、委員長報告ノ
通リ可決確定セラレマシタ(拍手起ル)是ニ
テ本日ノ日程ハ全部議了致シマシタ、次ノ
日程ハ追テ公報ヲ以テ御通知致シマス、今
日ハ是ニテ散會
午後五時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X00819240709&spkNum=108
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