1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十三年七月十五日（火曜日）午後一時十四分開議
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議事日程 第十號
大正十三年七月十五日
午後一時開議
質問
一 農村救濟政策に關する質問（三輪市太郎君外六名提出）
二 國民思想に關する質問（原惣兵衞君外一名提出）
三 漁港施設及水産業保護奬勵に關する質問（秋田寅之介君提出）
四 外交財政産業に關する質問（中村嘉壽君提出）
五 經濟革新に關する質問（竹内友治郎君提出）
六 自作農維持創定に關する質問（堤康次郎君提出）
七 議員の特權に關する質問（横山勝太郎君外一名提出）
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第一 議員田淵豐吉君懲罰事犯の件（委員長報告）
第二 鑛業法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 所得税法中改正法律案（菊池謙二郎君提出） 第一讀會
第五 農村振興に關する建議案（床次竹二郎君外十七名提出）
第六 農村振興に關する建議案（東武君外十六名提出）
第七 部落有林野統一緩和に關する建議案（土井權大君提出）
第八 小麥及小麥粉輸入税税率引上に關する建議案（土井權大君提出）
第九 國有林野所在府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案（八田宗吉君外二名提出）
第十 飛行事業擴張に關する建議案（長岡外史君提出）
第十一 澁川長野原間鐵道速成に關する建議案（木檜三四郎君提出）
第十二 遠信鐵道速成に關する建議案（樋口秀雄君外三名提出）
第十三 遠信鐵道速成に關する建議案（倉元要一君外二名提出）
第十四 金鵄勳章年金増額に關する建議案（熊谷直太君外三名提出）
第十五 用排水幹線改良事業費國庫補助に關する建議案（加藤知正君外七名提出）
第十六 用排水幹線改良事業費補助金に關する建議案（建部遯吾君提出）
第十七 義務教育費國庫負擔増額に關する建議案（元田肇君外十六名提出）
第十八 水産助成に關する建議案（元田肇君外十六名提出）
第十九 府縣税戸數割規則改正に關する建議案（藤田胸太郎君提出）
第二十 花巻釜石間鐵道開通に關する建議案（志賀和多利君外二名提出）
第二十一 大阪和歌山間鐵道敷設に關する建議案（山口義一君外一名提出）
第二十二 地震研究の特殊機關設立に關する建議案（田中善立君外四名提出）
第二十三 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する建議案（中野寅吉君提出）
第二十四 私有林野造林國庫補助に關する建議案（村山喜一郎君提出）
第二十五 農村副業奬勵に關する建議案（隅田豐吉君外二名提出）
第二十六 私學復興に關する建議案（山下谷次君提出）
第二十七 大學令中改正に關する建議案（山下谷次君提出）
第二十八 私立學校令中改正に關する建議案（山下谷次君提出）
第二十九 高等學校令中改正に關する建議案（山下谷次君提出）
第三十 東京港修築及京濱運河開鑿促進に關する建議案（若尾幾太郎君外二名提出）
第三十一 京濱運河開鑿促進に關する建議案（平沼亮三君外二名提出）
第三十二 東京灣築港速成に關する建議案（太田信治郎君外九名提出）
第三十三 蠶絲業の根本政策に關する建議案（武藤金吉君提出）
第三十四 小學校教員俸給國庫支辨に關する建議案（増田義一君提出）
第三十五 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案（佐々木春作君外三名提出）
第三十六 名古屋に綜合大學設置に關する建議案（服部英明君外五名提出）
第三十七 蠶絲局設置に關する建議案（加藤知正君外四名提出）
第三十八 小樽港鐵道省第二期工事速成に關する建議案（山本厚三君外六名提出） （委員長報告）
第三十九 小樽港海陸聯絡設備完成に關する建議案（山本厚三君外六名提出） （委員長報告）
第四十 越中島線鐵道速成に關する建議案（太田信治郎君提出） （委員長報告）
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001・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 諸般ノ報告ガア
リマス
〔書記官朗讀〕
-去十三日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
鑛業法中改正法律案
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
贅澤品等ノ輸入稅ニ關スル法律案ニ對ス
ル修正案
提出者前野芳造君
(以上七月十二日提出)
農村振興調査會議設置ニ關スル建議案
提出者猪野毛利榮君
北海道土功組合事業助成ニ關スル建議
案
提出者
黑住成章君東武君
松實喜代太君岡田伊太郞君
(以上七月十二日提出)
肥前山口附近練早間鐵道速成ニ關スル建
議案
提出者
西英太郞君橋本喜造君
中野實君福田五郞君
加藤十四郞君
佐賀矢部川間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
加藤十四郞君橋本喜造君
西英太郞君中野實君
福田五郞君
肥前國鐵道三線速成ニ關スル建議案
提出者
川原茂輔君則元由庸君
富田愿之助君田口文治君
志波安一郞君森肇君
北海道拓殖速進ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君山本厚三君
神部爲藏君淺川浩君
手代木隆吉君澤田利吉君
根室港修築工事ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君澤田利吉君
千代木隆吉君神部爲藏君
山本厚三君
帝國在〓軍人會國庫補助ニ關スル建議案
提出者
倉元要一君高見之通君
用排水幹線改良事業費國庫補助增額竝補
助範圍擴張ニ關スル建議案
提出者倉元要一君
(以上七月十四日提出)
議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
縣稅戶數割賦課ニ關スル質問主意書
提出者高田耘平君
(以上七月十四日提出)
一去十三日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ議案ニ對シ承諾スルコトヲ議決シタ
ル旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
大正十三年勅令第二十一號
去十三日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ
受領セリ
震災被害地ノ地租免除等ニ關スル法律案
(政府提出)
大學特別會計法中改正法律案(政府提出)
大正八年法律第十二號中改正法律案(政
府提出)
古社寺保存金ノ臨時支出ニ關スル法律案
(政府提出)
小作調停法案(政府提出)
砂防法中改正法律案(政府提出)
震災ニ因リ地租ヲ免除セラルル者ノ法令
上ノ納稅資格要件ニ關スル法律案(政府
提出)
昨十四日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ
如シ
衆議院議員今里準太郞君提出外交方針ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員柏田忠一君提出滿蒙問題竝對
支外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員佐藤富十郞君提出政府經營ニ
係ル森林伐採ニ關スル質問ニ對スル各辯
書
外交方針ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月三日
提出者今里準太郞
賛成著畔田明
外二十九名
外交方針ニ關スル質問主意書
人種平等主義ニ關シ日本政府ノ採レ
ル努力ノ經過竝今後ノ方針如何
二米國以外ノ日本移民地ニ於テ日本移
民ヲ永遠ニ安住セシムル具體的方針如
何
三日支親善ノ具體策トシテ日支間ノ條
約一部ノ改廢乃至日支同盟ノ意ナキ乎
右及質問候也
大正十三年七月八日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員今里準太郞君提出外交方針ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員今里準太郞君提出外交方針
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一人種平等主義ハ政府ニ於テ巴里會議ニ提
出シ不幸ニシテ規約中ニ之カ挿入ヲ見
ルニ至ラサリシト雖モ之カ提出ヲ後日
ニ留保シ其後間催セル「バルセロナ」交
通會議、「ローザンヌ」會議等ノ國際會
議ニ於テモ機會アル每ニ適當ナル形式
ノ下ニ之カ實際上ノ適用ヲ主張シ來リ
其目的ヲ達セル點モ尠少ナラス
一移民ヲシテ外國ニ安住セシムルノ方針ト
シテハ先ツ移民自身ヲシテ定住ノ意思ヲ
涵養セシムルト同時ニ其子孫〓育、衞
生ノ增進ヲ便ニシ移民ノ生活上ニ不安
ナカラシムルコト必要ナルカ就中最モ
重要ナルハ移住國ヨリ法制上社會上ノ
迫害ヲ受クル虞ナカラシムルコトニ存
シ之ガ爲メニハ移民ノ精神ヲ向上シ移
住國ノ人情風俗ニ融和同化スルコトヲ
容易ナラシメ且移住地ニ於ケル投資ヲ
獎勵シ其國民ト共存共榮スルノ覺悟ヲ
以テ進マシメサルヘカラス政府ハ以上
ノ方針ニ基テ必要ノ措置ヲ執ル考ナリ
一政府ハ益々日支親善ノ增進ニ努ムヘキ
モ之カ爲兩國間ニ同盟ヲ締結セムトスル
カ如キ意圖ヲ有セス日支條約一部ノ改
廢ニ關スル質問ニ至リテハ此際何等ノ答辯
ヲ爲スハ大局ノ利益ニ反スルモノト思考ス
右及答辯候也
大正十三年七月十四日
外務大臣男爵幣原喜重郞
滿蒙問題竝對支外交ニ關スル質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月五日
提出者柏田忠一
贊成者高見之通
外三十四名
滿蒙問題竝對更外交ニ關スル質問主意
書
犬養遞信大臣ニ左ノ質問ヲ爲ス
大臣ハ滿蒙問題ニ關シテハ頗ル强硬ナ
ル所見ヲ持セラレ嘗テ本院ニ於テ臥
榻ノ傍他人ノ鼾聲ヲ許サス」ト主張サレ
タルカ華府會議ニ於テ米國全權「ヒユ
ーズ」氏ハ日本ノ滿蒙土地商租其ノ他
ノ權ニ對シ最惠國條款ニ基キ均霑スヘ
シド宣明セリ大臣ハ尙之ヲ默認スル意
思ナリヤ
二幣原外務大臣ニ左ノ質問ヲ爲ス
イ支那ト大使交換ノ意心ナキヤ
ロ對支治外法權撤廢ノ意思ナキヤ
ハ在支邦人義務〓育ニ對シ補助金交
付ノ意思ナキヤ
ニ支那初等〓育用〓科書中ヨリ排日
的文句刪除ニ付支那當局ニ交涉開始
ノ意思ナキヤ
ホ退支命令ニ關スル明治二十九年四
月ノ法律第八十號ヲ廢止スルノ意思
ナキヤ
右及質問候也
追テ本質問ニ對シテハ來ル七月八日議
場ニ於テ御答辯アリタシ
大正十三年七月十四日
內閣總理大臣子宮加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員柏田忠一君提出滿蒙問題竝對
支外交ニ關スル質問ニ對シ別紙各辯書差
進候
〔別紙
衆議院議院柏田忠一君提出滿蒙問題竝
對支外交ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-滿蒙問題ニ關シ質問ノ如キ意見ヲ陳
述シタルコトナシ
二(イ)日支間ニ大使ヲ交換スルコトハ
目下政府ニ於テ考慮中ナリ
(ロ)支那ノ治外法權敬廢ノ希望ニ對
シテハ政府ハ友好的精神ヲ以テ之ヲ
迎フルモノニシテ華府會議決議ノ次
第モアリ政府ハ支那カ速ニ司法制度
ヲ改善シ外國ノ信賴ヲ博シ右撤廢實
現ヲ見ルニ至ラムコトヲ希望スルモ
ノナリ
(ハ)政府ハ國民ノ海外發展上在外兒
童〓育完備ノ必要ヲ認メ從來補助ヲ
與へ來レリ然ルニ在留民ノ負擔力ヲ
以テシテハ逐年就學兒童ノ增加ニ伴
ヒ〓育費ノ膨脹ニ應スル能ハサルヲ
以テ今後モ財政ノ許ス限リ補助ノ增
額ヲナシ以テ在外兒童ノ〓育上遺憾
ナキヲ期セントス
(ニ)支那ニ於ケル小學校中等學校用
〓科書中排日的文句アルコトヲ發見
セル場合ハ其都度支那當局ニ對シ之
カ削除方ヲ交涉シ來レルカ今後ニ於
テモ引續キ機宜ノ措置ヲ執ルヘシ
(ホ)政府ハ支那在留邦人取締ノ必要
上明治二十九年法律第八十號ヲ廢止
スルノ意思ナシ但シ之モ運用ニ付テ
ハ常ニ愼重ノ考慮ヲ加ヘツヽアリ
右及答辯候也
大正十三年七月十四日
遞信大臣犬養毅
外務大臣男爵幣原喜重郞
政府經營ニ係ル森林伐採ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月五日
提出者佐藤富十郞
賛成者大島要三
外三十一名
政府經營ニ係ル森林伐採ニ關スル質問
主意書
政府ノ經營ニ係ル伐採事業ハ國庫ノ收入
不確實ニシテ且材木業者ト競爭スルノ情
況ニ在リ政府ハ尙繼續的ニ經營セムトス
ルヤ否政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十三年七月十四日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員佐藤富十郞君提出政府經營ニ
係ル森林伐採ニ關スル質問ニ對シ別紙答
辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員佐藤富十郎君提出政府經營
ニ係ル森林伐採ニ關スル質問答辯書
政府ノ行フ森林伐採事業ハ國有林野ノ經
營上植伐ノ均衡ト更新ノ確實ヲ期スル上
ニ於テ必要ナル事業ニ屬シ將來モ之ヲ施
行スルノ要アリトス
右及答辯候也
大正十三年七月十四日
農商務大臣高橋是〓
一今十五日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ
如シ
衆議院議員三輪市太郞君外六名提出農村
救濟政策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員原惣兵衞君外一名堤出國民思
想ニ關スル質問ニ對スル各辯書
衆議院議員秋田寅之介君提出漁港施設及
水產業保護奬勵ニ關スル質問ニ對スル答
婦書
衆議院議員中村嘉壽君提出外交財政產業
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院と員堤康次郞君提出自作農維持創
定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
農村救濟政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月三日
提出者三輪市太郞
外六人
賛成者元田肇
外三十四人
農村救済政策ニ關スル質問主意書
農村ノ疲弊困憊ハ其ノ極ニ達シ國家ノ前
途憂慮スヘキモノト信ス之カ救濟政策ヲ
行フハ焦眉ノ急ナルニモ拘ラス現政府ノ
施政方針中何等之ニ言及セス尙議場ニ於
ケル政府當局ノ之ニ關スル答辯ハ諒解ス
ルニ苦シムモノ多多アリ之ヲ明瞭ナラシ
メムカ爲政府ノ所信ヲ質サムトス
右及質問候也
大正十三年七月十五日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員三輪市太郞君外六名提出農村
救済政策ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員三輪市太郞君外六名提出農
村救濟政策ニ關スル質問ニ對スル答婦書
政府ハ農村振興ノ必要ヲ認ムルカ故ニ財
政ノ許ス限リ之カ爲ニ施設スル所アラム
トス
右及答辯候也
大正十三年七月十五日
農商務大臣高橋是〓
國民思想ニ關スル質間主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月四日
提出者原惣兵衞
外一人
賛成者元田肇
外三十八人
國民思想ニ關スル質問主意書
現內閣ノ施政方針演說ニ於テモ亦議場ニ
於ケル政府當局ノ之ニ對スル各〓ニ於テ
モ左記ノ問題ニ就キ何等言及セス依リテ
政府ノ所信ヲ明白ニ質サムトス
一國民思想ノ根本的對策
一現在ニ於ケル非國家主義者ノ狀況及之
ニ對スル取締方法
一普選ト國民思想ノ關係及其ノ施行後ニ
於テ豫想サルル新政黨ノ主義的傾向ニ
對スル政府ノ所見
右及質問候也
大正十三年七月十五日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員原惣兵衞君外一名提出國民思
想ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員原惣兵衞君外一名提出國民
思想ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一國民思想ノ根本的對策
政府ハ聖旨ヲ奉體シテ益々〓育ノ改善
振興ヲ圖リ特ニ國民道德ノ涵養ニ努ム
ルト共ニ社會的〓化施設ノ助成ニ留意
シ健全ナル思想ノ涌資ヲ期シツツアリ
尙不健全ナル思想ノ發生ハ社會事情ノ
時勢ノ要求ニ副ハサルモノアルニ基ク
所尠カラス歷代ノ政府ハ此點ニ鑑ミ社
會政策的立法竝行政ノ手段ヲ講シ來リ
シト雖尙施設ヲ必要トスル項少カラス
ト認ム仍テ政府ハ緩急ヲ圖リ適宜其ノ
實現ヲ計ラムトス
一現在ニ於ケル非國家主義者ノ狀況及之
ニ對スル取締方法
本項ニ對シ答辯ヲ爲スコトハ取締上支
障ヲ生スルモノト認ム
一普選ト國民思想ノ關係及其施行後ニ於
テ豫想サルル新政黨ノ主義的傾向ニ對
スル政府ノ所見
國民輿論ノ歸趨ニ順應スル爲普通選舉
ヲ實施スルコトハ國民ノ思想ニ良好ナ
ル影響アルモノト認ム其施行後ニ於ケ
ル新政黨ニ關シテハ今俄カニ之ヲ豫斷
スルコト能ハス
右及答〓候也
大正十三年七月十三日
內務大臣若槻禮次郞
文部大臣岡田良平
漁港施設及水產業保護奬勵ニ關スル質
問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月四日
提出者秋田寅之介
賛成者長岡外史
外三十三人
漁港施設及水產業保護獎勵ニ關スル質
問主意書
漁港施設及水產業保護獎勵ニ關スル政府
ノ一定方針如何
右及質問候也
大正十三年七月十五日
內閣總理大臣子宮加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員秋田寅之介君提出漁港施設及
水產業保護奬勵ニ間スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員秋田寅之介君提出漁港施設
及水產業保護奬勵ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
漁港ノ施設ニ關シテハ之カ修築奬勵ヲ大
正七年度ヨリ實施シ旣ニ國庫補助ヲ指令
セルモノ十五箇所ヲ算スト雖漁港ハ漁業
ノ基礎的施設ニ屬シ全國沿岸ニ亙リ之カ
配備ヲ完成スルニ非サレハ其ノ目的ヲ達
成シ難キモノアルヲ以テ政府ハ每年財政
許容ノ範圍ニ於テ其ノ修築獎勵ヲ遂行セ
ムトス又水產業ノ保護奬勵ニ關シテハ政
府ハ常ニ留意ヲ怠ラスト雖斯業ハ吾國ニ
於テハ主要產業ノ一ナルヲ以テ今後益必
要適切ナル施設ヲ講シ以テ之カ振興ヲ期
セムトス
右及答辯候也
大正十三年七月十五日
農商務大臣霧是〓
內務大臣若槻禮次郞
外交財政產業ニ關スル質問主意書
右成規ニ抹リ提出候也
大正十三年七月四日
提出者中村嘉壽
賛成者元田肇
外三十五人
外交財政產業ニ關スル質問主意書
一米國ハ最近新移民法ヲ實施シ我カ國民
ニ對シテ差別的待遇ヲ爲セリ我カ政府
ハ之ニ對シ如何ナル政策アリヤ
一政府ハ年年增加スル過剩人口ノ處分ニ
付何等カノ政策アリヤ
一政府ハ北樺太ノ撤兵ヲ如何ニセムトス
ルヤ
一輓近銀行支店出張所派出所ノ新設頻頻
タリ政府ノ之カ取締方針如何
一近來人造絹絲ノ業頓ニ發達シ我カ產業
及貿易ヲ脅威シツツアリ政府ノ對策如
何
一監督ノ地位ニアル官吏カ被監督者ノ地
位ヲ兼ヌルハ綱紀小正ヲ濫ルモノト信
ス政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十三年七月十五日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員中村嘉壽君提出外交財政產業
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員中村嘉壽君提出外交財政產
業ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一新移民法ニ對スル我カ政府ノ對策トシ
テハ既ニ七月一日本大臣ノ議會ニ於ケ
ル演說中ニモ述ヘタル如ク政府ハ我カ
抗議ヲ維持シ本問題ノ圓滿ナル解決ノ
爲メ及フ限リ努力スルモノニシテ如何
ナル時機ニ於テ如何ナル方法ヲ以テ右
解決ヲ圖ルヘキヤノ具體的問題ニ至リ
テハ未タ公表ヲナシ得ルノ時期ニ達セ
ス
一政府ハ產業ノ振興ヲ圖リテ職業ノ機會
ヲ擴ムルト共ニ一面國ノ内外ヲ通シテ
移植民ノ奬勵保護ニ努メ以テ國民生活
ノ安定ヲ圖ラムコトヲ期ス
一政府ハ北樺太ヨリ撤兵シ得ル時期ノ成
ルヘク速ニ到來セムコトヲ希望スルモ
ノニシテ目下繼續中ナル日露交涉ノ成
行ニ應シ之ヲ處理セムトス
一銀行ノ支店設置ニ付テハ銀行條例及貯
蓄銀行法ノ規定ニ依リ主務大臣ノ認可
ヲ要スルヲ以テ其ノ認可申請アリタル
場合ハ支店設置地方ノ經濟狀況支店設
置銀行ノ營業狀態等ニ付最近益、嚴密
ナル調査ヲ爲シ之カ濫設ヲ防クノ方針
ヲ以テ處理シ居レリ銀行ノ出張所派出
所ノ設置ニ付テハ銀行條例及貯蓄銀行
法ニハ認可ヲ要スル旨ノ規定ナキヲ以
テ之ヲ制限スルコト困難ナルモ往々出
張所等ノ名ノ下ニ支店ノ實質ヲ有スル
營業所ヲ設クルモノアリ之等ニ付テ嚴
重ナル取締ヲ爲スハ勿論一般出張所派
出所等ノ濫設ノ防止ニ付テモ常ニ之カ
注意ヲ怠ラス
一人造絹絲ハ之ヲ生絲ニ比スレハ幾多品
質上ノ缺點アリ且其ノ用途モ自カラ異
ナルモノアリト雖モ最近ニ於テ異常ノ
發達ヲ遂ケ其產額ハ生絲ノ約八割ニ達
シ品質亦著々改良セラレツツアリ其價
格モ生絲ノ三割乃至四割ノ間ニ在リ且
生絲ノ如ク著シキ變動ナキヲ以テ勢ヒ
歐米機業者ノ需要ヲ增加スルノ傾向ア
リ依テ我生絲ノ品位ヲ向上シテ一層其
ノ特性ヲ發揮シ生產費ノ低減ヲ圖リ價
格ノ甚シキ騰貴ヲ防止スル等諸般ノ對
策ヲ講スルノ必要アリト認ム
一監督ノ地位ニ在ル官吏カ被監督者ノ地
位ヲ兼ヌルコトハ之ヲ避クルノ方針ヲ
執リツツアリ
右及答辯候也
大正十三年七月十五日
內閣總理大臣子爵加藤高明
農商務大臣高橋是〓
陸軍大臣宇垣成
海軍大臣財部彪
外務大臣男爵幣原喜重郞
內務大臣若槻禮次郞
大藏大臣濱口雄幸
自作農維持創定ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月五日
提出者堤康次郞
賛成者福田五郞
外二十九人
自作農維持創定ニ關スル質問主意書
自作農維持創定ハ目下ノ急務ナリト認ム
政府ハ本問題ニ關シ如何ナル成案ヲ有ス
ルヤ
右及質問候也
大正十三年七月十五日
内閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員堤康次郞君提出自作農維持創
定ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員堤康次郞君提出自作農維持
創定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
政府ハ自作農維持創定ニ關シ從來種々調
査ヲ行ヒ且小作制度調査會ニ諮問スル所
アリタリ而カモ其ノ計畫規模等ニ關シ尚
考究ヲ要スルモノアルカ故ニ目下調査中
ナリ
右及答辯候也
大正十三年七月十五日
農商務大臣高橋是〓
一昨十四日委員長理事互選ノ結果左ノ如シ
衆議院議員選擧法中改正法律案委員
委員長關和知君
理事
石井謹吾君工藤十三雄君
松本君平君
一昨十四日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第四部選出
懲罰委員廣岡宇一郞君(原惣兵衞君
補闕)
第五部選出
懲罰委員〓水市太郞君(梅田寛一君
補闘)
第六部選出
懲罰委員井坂豊光君(森田政義君補
闘
第七部選出
懲罰委員牧野良三君(柏田忠一君補
闕)
成田榮信君(上原好雄君補
關)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ掲載ス〕
一去十二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
衆議院議員選舉法中改正法律案
關和知君永井柳太郞君
三橋四郞次君中野正剛君
粟山博君齋藤隆夫君
廣岡宇一郞君工藤十三雄君
大園榮三郎君吉良元夫君
佐藤重遠君岩崎幸治郞君
石井謹吾君熊谷直太君
吉田眞策君西岡竹次郞君
兒玉右二君松本君平君
一去十二日委員長及理事互遠ノ結果左ノ如
藥品營業竝藥品取扱規則第四十六條第
項ノ適用ニ園スル法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
委員長小西和君
理事傍士定次君
營業稅法廢止法律案(森田金藏君提出)
委員
委員長山口義一君
理事廣瀨德藏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=1
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002・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、語問事項ガアリマス、第四部選出
懲罰委員齋藤隆夫君、第七部選出請願委員
淺川浩君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマ
シタ、許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=2
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003・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナケレバ
許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧
ヲ行ヒ御屆アランコトヲ望ミマス、本日ノ
日程ニ揭ゲタル質問一ヨリ四マデ、及ビ六
ハ政府ヨリ答辯書ヲ受領致シテ居リマスカ
ラ日程ヨリ之ヲ省キマス、質問第五、經濟革
新ニ關スル質問、竹內友治郞君
五經濟革新ニ關スル質問(竹內友治郞
君提出)
經濟革新ニ關スル賞問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月五日
提出者竹内友治郞
賛成者山本条太郞
外三十二人
經濟革新ニ關スル質問主意書
現下ノ我カ經濟界ハ國難トモ看ルヘキ事
態ニシテ之ニ對應スル根本方策ノ樹立ハ
刻下ノ急務ナリト信スルヲ以テ左ノ諸點
ニ就キ政府ノ所信ヲ問フ
物價勞銀ノ引下ニ就テ
行政財政整理ニ就テ
綱紀ノ肅正特ニ民間ノ綱紀肅正ニ就テ
一社會習慣ノ改造ニ就テ
右及質問候也
〔竹内友治郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=3
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004・竹内友治郎
○竹內友治郞君 私ハ曩ニ成規ノ賛成ヲ得
テ經濟革新ニ關スル質問書ヲ提出シテアリ
マス、玆ニ其趣旨ヲ敷衍シテ陳述致シタイ
ト思ヒマスルノデ、暫ク〓聽ヲ乞ヒマス、
我ガ今日ノ容易ナラザル經濟狀態ニ對シマ
シテ、諸君ト共ニ私ハ深ク憂ヲ懷ク一人デ
ゴザリマス、幸ニ政府ガ非常ナル熱心ヲ以
テ是ガ解決ニ御盡力ニナルト云フコトハ、
誠ニ心强ク存ズル所デゴザリマス、隨テ是
ガ解決ノ實行ノ政策ハ、定メテ著々トシテ
實行サレルコトヽ信ズルノデゴザリマスル
ガ、私ハ之ヲ憂フルノ一人ト致シマシテ、
此重大問題ニ對シテ聊カ感フ所ガアルソデ
ゴザリマスルト同時ニ、內閣諸公ハ臺閣ノ
高キニ居ラルヽ所カラ、或ハ民情ノ暢達セ
ザルモノ是ナシト限ラヌ懸念ガアリマスル
所カラ、玆ニ卑見ヲ陳述致シマス次第デア
リマス、此臨時機會ノ劈頭ニ於キマシテ、大
藏大臣カラ財政經濟ニ對スル政府ノ御方針
ヲ御加シニナッテ居リマス、其御方針ノ中デ
現在ノ此經濟狀態ハ非常ニ難局デアルト云
フコトヲ先ヅ以テ御認ニナリ、次デ之ニ對
スル救濟ノ根本方針ト致サレマシテ、政府
國民ヲ通ジテ消費ノ一大節約ヲ斷行スル、
ソレニハ現在ノ此輕佻奢侈ノ民風ヲ一變致
シマシテ克己節約、勤儉力行ヲ推奨スル、ソ
レニ依ノテ現在ノ經濟界ノ難問題タル物價、
產業、國際貸借ノ難問題ハ何レモ解決ガ出
來ルト信ズルト云フ御趣意デゴザリマシ
ク、此御趣意ニ對シマシテ私ハ衷心カラ贊
意ヲ表スル者デハゴザリマス、所デ私ノ感
ヒマスル點ハ此御趣意ヲ徹底スルニ付テ
ノ眼目、實ニ此勤儉力行ニ民風ヲ一變スル
コトガ出來ルカ否ヤト云フコトニ係ルト
思フノデアルッ而シテ此勤儉力行ハ如何ニ
シテ靡然トシテ大勢ヲ此處ニ到著サセルカ
ト云フコトノ實際的政策ガナケレバナラヌ
ト思フノデゴサリマス、之ニ對シテ大藏大
臣ハ其實際政策ノ片鮮ヲ御市シニナッテ居
ルノデアリマスル、卽チ本員ガ既ニ協貴致
シマシタル、所ノ贅澤品ニ關スル關稅引上
法案、復興貯蓄債劵法案ガ卽チソレデアリ
マシテ其他將來ニ涉シテ政府ノ財政及行
政ヲ徹底的ニ整理サレルト云フ御決心、更
ニ之ニ續イテ統制アル節約ノ一大宣傳ヲ爲
サルト云フコトガ聲明サレテ居ルノデゴザ
リマスル、是等ノ實際政策ガ國民ニ向ヲテ
勤儉力行ヲ奬ムル上ニ於テ相當ノ效果ガア
ルト云フコトハ、私モ信ズルノデアリマス
ルガ、果シテソレガ現在ノ此靡然タル人心
ノ頽敗ノ狀態ヲ一變スルマデニ、十分力ア
リヤ否ヤト云フコトニ付テ私ハ疑ヲ懷ク者
デアリマス、現在ノ此人心ノ頽敗シ切ッテ居
ル享築的利那主義ノ權化トモ見ルベキ此大
勢ハ、如何ニモ傷マシイノデゴザリマスル
ケレドモ、矢張兎ニ角是ガ大勢デアル、此大
勢ガ斯ノ如ク今日馴鉸サレタト云フコトハ
自ラ相當ノ復雜ナル原因ガアッテ然ルノデゴ
ザリマスルカラ、單ニ僅カバカリノ方法ヲ以テ
此大勢ヲ一變スルト云フコトハ非常ニ至
難ナ事デアリハシナイカト云フコトヲ私ハ
懸念スルノデアリマス、一體現在此國民ノ
大多數ハ我ガ經濟狀態ガ爾ク行語シテ居
ルト云フコトヲ恐ラク感ジテ居ラナイ、唯
〓各個人ガ自分ノ生活ナリ營業ナリノ狹イ
環境ニ於キマシテ、物價ノ騰貢或ハ商賣ノ
賣行ノ宜シカラザルト云フ、卽チ不景氣ヲ
喞ツト云フコトハゴザリマセウケレドモ、
其中ニハ-其内ニハ何トカナルデアラウ
ト云フ位ノ氣分デ居リハシナイカト思ハル
ルノデアリマス、殊ニ甚シイノニナルト
随分有力ナル企業家連中、相當ナル知識ヲ
備ヘタル人、其連中ノ中ニ於テモ暫ク遣繰
算段シテ當分ヲ凌グナラバ、自ラ好景氣ガ
轉回シ來ルモノ位ニ考ヘテ居ラヌト限ラナ
イ随テ大藏大臣ガ希望セラルヽガ如キ根
本的ノ勤儉力行ト云フ、本當ノ奧底ノ觀念
ニ到若スルヤ否ヤト云フコトガ中々懸念サ
レルノデアリマス、殊ニ我ガ明治維新以來
ノ經濟史ハ、サウ云フ何カノ風ノ吹廻シデ
好イ景(ねガ來ルダラウト云フコトノ自信ヲ
附ケサセルヤウニ出來テ居ル、少クトモ十
年置キ位ニ圖ラズモ好景氣ヲ買ヒ得タノデ
アリマス、卽チ明治二十七八年、續イテ三
十七八年、ソレカラ最近ノ歐洲大戰ノ際ニ
於ケル好景氣ガソレデアリマシテ、此何レ
モ其數年前ニ於テ不景氣ノ谷底ニ陷,テ困
リ拔イタ舉句ニ、圖ラズモ贏得夕所ノ好景
氣デアル而モ此好景氣ハ所謂勤儉力行ノ
末デ贏得タルモノデハナイノデアリマス、
斯ウ云フ經驗ニ耽シテ居ル現在ノ國民ガ、此
度ニ限シテ本當ニ根本的ニ儉勤力行デナケ
レバナラヌト云フコトヲ容易ク理解スルコ
トヲ望ムト云フコトハ頗ル無理ナ註文デ
ハナイカト思フノデアリマス殊ニ此勞働
階級ノ如キニ至リマシテハ、今日物價ノ高
イニハ喞ノテ居ルケレドモ、之ニ對スル勞銀
ガ高イ所カラ内心ハ餘程北叟笑ンデ居リハ
シナイカト思フ、随テ其生活振ヲ客觀シテ
輕佻倉侈デアルト云ウテ見マシタ所ガ、當
人等ハサウ信ジナイ、却テ生活ノ向上ナリ
ト空嘯イテ居ルカモ知レヌノデアリマス、
其悟ラザルノ甚シキニ至ッテハ、詰リ其意味
ニ於テ民衆ノ多クハ一種ノ道樂息子ニ外ナ
ラヌ、之ニ對シテ此道樂息子ガ親兄弟ノ深
切極マル所ノ意見ヲ空嘯イテ聽カナイデア
ラウト思ヒマス、唯〓其息子ヲシテ目醒メシ
メル所ノ最後ノ動機ハ所謂無イガ意見ノ總
仕舞デ、金ニ詰ッテ何トモ途ノ付カナイ時ニ
於テノミ始メテ目醒メルノデハナイノデ
アリマセウカ、是ト同樣ノ理窟デ、今ノ民
衆モ背ニ腹ハ替ヘラレナイト云フ所ノ勢已
ムヲ得ザル境遇ニ到著スルニ非ズンバ、恐
ラク勤儉力行ニ目醒メルコトハ難クハナイ
カト私ハ考ヘマス、ソコデ政府ガ執ラレン
トスル所ノ諸ミノ實行政策、固ヨリ可ナリデ
ゴザリマスケレドモ、更ニ一步通ンデ本當
ニ此民衆ヲ目醒メシメルベク玆ニ最モ痛
切ナル一大政策ヲ斷行スルノ必要ガアリハ
セナイカト云フコトヲ私ハ考ヘルノデゴザ
リマス、ソレハ卽チ物價勞銀ノ引下ヲ實現
スル所ノ大英斷ニ出デルノ外ニナイデハナイ
カト云フコトヲ私ハ考ヘマス、尤モ大藏大
臣モ物價勞銀ノ引下ヲ必要トスルト云フコ
トヲ御認ニナッテ居ルコトハ、數次ノ御聲明
こニ於テ略〓之ヲ窺フコトガ出來ルノデアリ
マスルガ、私ノ考トソコニ少シク距離ガア
ルヤウニ私ハ感フノデアリマス、大臣ハ勒儉
力行ニ依リマシテ物價勞銀ノ引下ヲ求メヤ
ウトスルシ、私ハ物價勞銀ノ引下ニ依シテ勤
儉力行ニ導カウト斯ウ云フ順序〓倒ノ差
異ガソコニ存スルノデアリマス、曩ニ豫算委
員總會ニ於キマシテ大藏大臣對山本条太郞
君ノ經濟振興ニ關スル應答ガゴザリマシタ、
是ハ此議會ニ於ケル最モ光彩アル頁ノ一ツ
ト私ハ信ジマス而シテ其應答ハ實ニ委曲
精細ヲ極メテ居ルノデアリマスガ、私ハ其
中ニ於テ物價勞銀引下ニ關スル廉ハ殆ド
一ツモ見出スコトノ出來ナイト云フコトモ
亦私ガ此感ヲ深クスル事情ノ一ツデアルノ
デゴザリマス、尙ホ又勤儉力行ノ問題ヲ離
レマシテ、私ハ此物價勞銀引下ヲ特ニ今日
ノ急務トスルノ事情ガ別ニ存スルト信ズル
者デアリマス、ソレハ最近政界ノ具體的問
題ト化シ來リツヽアル所ノ米價調節ノ問題
デアリマス、農村ノ振興上到底閑却スルコ
トノ出來ナイ此米價調節ノ問題是ガ物價勞
銀引下ノ政策ガ決行セラルヽ時ニ於テハ
極メテ容易ク是ガ解決ノ出來ル問題デアル、
若シ之ニ反シテ物價勞銀ガ騰貴シテ居ルコ
1、今日ノ如キ狀態ニ於キマシテハ外に
其騰貴原因ガ-是ハ原因多端デゴザリマ
スルガ、其重要ナル原因ノ一ツト致シマシ
テ、金輪出ノ禁ヲ維持スルト云フコトガ、卽
チ物價騰貴ノ重要原因デアル、今日ニ於キマ
ンアハ米價調節ノ問題ヲ解決スルコトハ
非常ニ困難ニナッテ來ルコトヲ免レスノデ
ス、責任アル政府當局ト致サレマシテ、今
日直ニ此金輸出ノ禁ヲ解クコトノ出來ナイ
ト云フ事情ハ私ハ是ヲ完ニ諒ト致シマス
ル、然レドモ茲ニ考フベキコトハ金ノ輸
出ヲ禁ズルコトニ依リマシテ國民ガ其弊ヲ
被ル上ニ於テ、地方ニ依ノテ、職業ニ依ッテ、
ソレガ甚ダ區々マチ〓〓デアルト云フ一點
デアリマス、私ノ論旨ニ必要ナル點ダケヲ
卑ゲルト云フト斯ウナリマス、金輸出禁止
ノ弊ヲ受ケルコトノ最モ輕イモノハ都會デ
アリマシテ、最モ其弊ヲ被ルモノハ農村デ
アリマス、是ハ賢明ナル諸君ノ既ニ御永知
ノ如クニ、農村ノ生產品ハ直ニ生活ノ必需
品ト云フコトニ相成ル所カラ、其數量ヲ內
外ノ市場ニ於テ必ズ調節シナケレバナラヌ
ト云フ結果トシテ、如何ニ諸雜貨、勞銀ガ
高ノナシテモ、此米價若クハ麥ノ値段ヲ上ゲ
ルコトハ出來ナイ、之ニ反シテ都會ニ於テ
ハ其生產品タル若クハ商賣品タル諸雜貨ハ
一時ノ彌縫的手段デハアルケレドモ、已
ムヲ得ズンバ値段ヲ上ゲテ之ヲ解決スルコ
トガ出來ルノデゴザリマス、斯ウ云フ事情
ノ下ニ金輸出ノ禁止ト云フコトハ、農村ヲ
苦メテ都會ニ樂ヲサセルト云フ結果ヲ惹起
ス憾ガアルノデゴザリマスルソレデ大藏
大臣ガ示サレタルガ如ク金輸出ノ禁止ヲ解
クト云フコトガ、商工業ノ或ル部分ヲ破壞
シ、全局ノ經濟ヲ紊リ、延イテ農村モ其累ヲ
被ルト云フコトモ、一ツノ間違ナキ見解デ
ゴザリマスルケレドモ、是ト同時ニ金輸出
ヲ禁止スルコトニ依シテ、農村ノ利益ヲ或ル
程度ニ依牲ニ供シテ、都會ノ商工業ガ小康
ヲ貪ルト云フコトモ一ツノ理窟ガアルノデ
ゴザリマス、畢竟スルニ大藏大臣ガ旣ニ聲
明セラレテアル通リニ、金貨本位國ニ於キマ
シノ勢ヒ已ムヲ得ス事デハアルケレドモ、
土臺金ノ輸出ヲ禁止スルコトガ無理ノ制度
デアル、此無理ノ制度ガ更ニ又他ノ無理ヲ
生ミマシテ、今日此農村ノ救濟ノ上ニ於テ、
米價調節ヲ否デモ應デモヤラナケレバナラ
スト云フ、複雜ナル問題ヲ生ズル所以デア
ルト私ハ思フノデゴザリマス、農民ノミ獨
リ此末果テシナク犠牲ニナルト云フコトハ
到底甘ンズル筈ガナイノデゴザリマス、ソ
レデ私ハ强テ此際金輪出ノ解禁ヲ固執スル
譯デハゴザリマセヌ、唯、何カノ方法ニ依リ
マシテ物價、勞銀ヲ引下ゲル所ノ對策ヲ斷
行スルコトガ、我ガ經濟界ニ對シテ非常ニ
必要デナイカト云フコトヲ考ヘテ居ルノデ
ゴザリマス、何レノ途ヲ採ルト致シマシテ
モ、此物價、勞銀ヲ引下ゲルト云フコトハ、
種々ナル方面ニ一時惱ミヲ起ス、卽チ個人的
利害ガ錯綜シテ居ル問題デアリマスルカラ、
必ズ苦情百出致シマシテ、弱キ政府デハ到
底之ヲ斷行スルコトガ出來ナイ、現內閣ノ
如キ極メテ有力ナル內閣ニシテ始メテ爲シ
得ル事業デアルト私ハ確信スル、今日我ガ
經濟界ノ大革新ヲ斷行シナケレバ-此機
運ニ際シテ此內閣ノ生レタト云フコトハ
實ニ偶然デナイト思フノデアリマス、或ル
意味カラ云フト天ノ使節ヲ擔ウテ生レタモ
ノダト云ウテモ宜シイト思フ、私ハ明治ノ
經濟史ヲ総イテ考ヘマスルノデアリマス、
明治ノ初期ニ於テ西南戰爭ニ依ル不換紙幣
ノ濫發ニ苦ンダ擧句、其整理ヲ時ノ當局タ
ル松方公ガ死ヲ決シテ斷行シタト云フコト
ハ顯著ナル事實ノ一ツデアル、此斷行ナカ
リセバ、或ハ明治ノ時代ヲ偉大ナラシメタ
ル日〓戰爭モ出來ナカッタカモ知ラヌ、此財
政經濟上ノ松方公ノ功績ヲ認メテ、本院ハ
曩ニ其國葬豫算ヲ可決シタト云フコトハ
私ハ此際ニ於テ、深長ナル意味ヲ持シテ居
ルト思フノデアリマス(「簡單々々」ト呼
フ者アリ)暫ク御靜聽ヲ乞ヒタイモノデ
アリマス、此松方公ノ功勞ヲ認メタル政府
及議會ハ、松方公ノ當時ヨリモ更ニ複雜困
難ナル此經濟界ヲ救濟スルニ對シテ、松方公
以上ノ決心ヲ持シテ當然大英斷ヲ下サルベ
キモノデアルト云フコトヲ私ハ信ジタイノ
デアリマス、ソレデゴザリマスルカラ、私
ハ物價勞銀引下ト云フ問題ガ、非常ニ困難
デアリト信ジツヽ切ニ此內閣ニ向ッテ此
點ヲ御伺スル次第デアルノデゴザリマス、
但シ私ハ其物價労銀引下ノ具體的對策ヲ、
此際直ニ御各ヲ願フト云フ考ハナイ、斯ノ如
キ複雑多端ナル利害關係ノ重大ナル困難ノ
問題ヲ、如何ナル偉材ガ局ニ當ルトシテモ、
右カラ左ニ成案ガ出來ル筈ガナイ、ドウゾ
政府ハ十分ニ御調査御熟慮ニナッテ、具體
的ノ成案若クハ綱領ヲ、大藏大臣ノ所謂片
鱗ノ小出シデナク「コンクリート」ノモノ
トシテ御〓シヲ願ヒタイト思フノデアリマ
ス、デ今日私ガ御答ヲ欲スル點ハ此物價
分銀引下ノコトヲ今日ノ最大急務ト御認メ
ニナルヤ否ヤ、之ヲ御認メニナルトスレ
バ遲クモ來ル十四年度豫算編成ニ際シマ
シテ、其綱領ヲ天下ニ公ニセラレンコトヲ
今日御聲明下サルコトガ出來ルヤ否ヤト云
フ點デアリマス(「簡單」「簡單」ト呼フ者ア
リン御迷惑デアリマスガマダ今一ツ二ツア
リマス、次ニハ矢張此經濟ヲ革新スルニ喫
緊ノ關係ヲ有スル問題トシテ、社會習慣改
造ノコトニ付テ御尋ヲ致シタイト思フノデ
アリマス、是ハ濱口藏相も提唱サレル勤儉
力行ノ美風ヲ興スト云フ上ニモ、重大ナル
關係ヲ有スル問題ト自分ハ考ヘテ居ル、私
ノ信スル所ニ依レバ、今日ノ經濟界ノ行詰
リハ單ニ最近ニ於ケル歐羅巴大戰後ニ於
ケル非常ナル好景氣ニ依ノテ、人心頽廢シ
夕爲メダトバカリ决シテ云フベキモノデハ
ナイト思フノデアリマス、是ハモット更ニ
深イ々々所ニ其原因ガ存シテ居ルノデ極
ク手近ニ申スナラバ明治維新以來我國ノ
產業組織ノ上ニ拭フベカラザル缺陷ガ固若
シテ店ル所カラ、今日ノ經濟界ノ行詰リガ
實現シタト私ハ考フベキモノト思フノデア
リマス、ソレデ本當ニ今日ノ經濟ヲ根本的ニ
改造スルト云フ以上ハ、此社會習慣ノ惡イ
所マデ改造シテ掛ラナケレバ、木當ノ改造
ハ出來ナイ、(發言スル者アリ)甚ダ御氣ノ
毒デスガ暫ク御〓〓ヲ願ヒタイノデアリマ
スソコデ然ラバ如何ナル點ガ社會習慣ノ
上ニ惡イカト云フコトヲ簡單ニ中上ゲマス
ト云フト、現ニ大赦大臣モ申シテ居ラルヽ
所ノ資本ヲ蓄積スル問題、是ガ極メテ重大
ナル問題デアルニ拘ラズ、〓テ我ガ社會習
慣ハ出來ルダケ-其貯蓄ノ出來ナイヤウ
ナ仕組ニ出來上シテ居ル、諸ミノ社會習慣
ハ出來ルダケ贅費ヲ投ズルニ非ズンバ、世
ノ中ニ處シテ行クコトガ出來ナイヤウナ仕
組ニナッテ居ルノデアリマス、是ガ卽チ貯
蓄ヲ十分ニ發達サセルコトノ出來ナイ最大
原因デアル此事情ハ地方へ行キマシテモ
都會ニ於テモ、上流社會モ下流社會モ、其社
會習慣ノ爲ニ無益ノ經済的消費ヲ餘儀ナク
スルト云フ事情ガ到ル處ニ見受ケラレルノ
デアリマス、何故社會的習慣ガ斯ノ如ク甚
シク國民ニ向シテ不經濟的消費ヲ餘儀ナク
スルカト云フコトハ、結局其社會習慣ヲ形
造ル所ノ國民思想、殊ニ根本タル國民道德
ノ何所カニ一ツノ深イ缺陷ヲ持シテ居ルモ
ノデアルト私ハ信ズルノデアリマス、然ラ
バ其缺陷ハ何デアルカ、之ヲ詳說致シマス
コトハ極メテ御迷惑ト存ジマスカラ、出來
ルダケ簡單ニ其要領ヲ中上ゲタイト考ヘマ
ス、私ノ信ズル所ニ依レバ、我ガ國民道德
ハ何人モ認ムル一大特長タル忠君愛國ハ至
極結構デゴデリマスガ、他面ニ於テ富ノ道
德的價値ヲ認メナイト云フコトデゴザリマ
ス、之ニ伴ノフ人間ノ働キ其モノニ對シテ、
道德的價値ヲ認メナイト云フコトデゴザリ
マリ、是ガ卽チ我ガ道德ヲシテ現代ニ相應
ハシカラザル社會習慣ヲ形造ルニ至ラシメ
夕最大原因ダト私ハ考ヘル然ラバ如何ニ
シテサウ云フ事ガ出來上ノタカト云フ其由
來ヲ申シマスト云フト、各位御承知ノ如ク、
東洋ノ倫理觀ト云フモノハ慾ヲ抑ヘルト云
フコトニ基礎ヲ置イテ居リマス、總テノ人
間ノ慾ト云フモノハ、悉ク人間ノ道德性ヲ破
壞スルモノデアルト云フ制慾主義ノ立場ニ
東洋ノ倫理觀ハ立シテ居ル、此倫理觀ハ人
間ノ當然ノ本能ヲ否定スルト云フ所カラ、
哲理トシテ當然一種ノ無理ヲ含ンデ居ルノ
デゴザリマスガ、兎ニ角斯ノ如クシテ東洋
ノ倫理觀ハ出來テ居ル、然ルニ此倫理觀ガ我
ガ國民道德ヲ大成致シマシタル德川三百年
間ニ於テ、輪ニ輪ヲ掛ケテ高調ヲサレタノ
デアリマス、ソレハ國民道德ヲ完全ニ築キ
上ゲルガ爲ニ高調サレタノデナクテ、德川
幕府自己ノ政策ノ爲ニ高調シタノデアリマ
ス即チ當時ノ天下ヲ治平ナラシムルノ要
道ハ實ニ幕府ヲ維持スルト云フ所デゴザリ
マスル所カラ、天下ヲ擧ゲテ貧之ニシ、幕
府獨リ富ヲ握ルト云フコトガ政策デアッタ、
此政策ニ對應スペク制慾主義ノ道德ヲ飽ク
マデモ高調シタノデアリマス、ソレデ此點
ハ德川百箇條ヲ御覽ニナレバ明カデゴザリ
マスガ、百姓ハ死ナナイ程度ニシテ食ハセ
ロト云フコトガ明ニ書イテアリマヌ、是ニ
於テカ財ハ決シテ重ンズヘカラズ、人間ハ
必ラズ貧ニ安ンズルモノダト云フコトヲ〓
ヘラレ來タノデアリマス、富ハ汚ナイ、貧
乏ハ〓イト云フ、卽チ濁福〓貧ト云フ言葉
ガ此時ニ出來テ居ル、此極端ニマデ到達シ
テ富ト云フモノヽ價値ヲ道德上全ク否定シ
去ッタノデアリマス、是デ德川時代ハサシ
モ實際ニ於テ差支ナカンタ、何トナレバ當
時ノ社會ヲ支配スル所ノ武士階級ト云フモ
ノハ悉ク家祿ニ生キテ居ル人デアル、卽
チ其主人ガマサカノ場合ニ君公ノ馬前ニ一
身ヲ捧ゲル覺悟サヘアレバ家族ハ子々孫
々ニ至ルマデ繁昌此上ナシデアリマス、錢
金ノ事ヲ一ツモ考ヘル必要ハナカッタ斯
ウ云フ狀態デアルカラ、頭カラ富ハ卑シイ
モノト斤ケ去ッテ、少シモ實際生活ニ差支
ナカッタノデアリマス、ソレデ是ハ詰リ德
川三百年ノ間ニ於テ、我ガ國民道德ハ富ヲ
除外シテノ道德ヲ打立テタノデアリマス、
之ヲ比喩的ニ申シマスレバ熱ヲ去ルベク、
而シテ魚ノ新鮮ヲ維持スベク努メタル氷詰
道德ト云フコトヲ言フコトガ出來ル、其代
リ一旦熱ガ取レタガ最期、卽チ氷ヲ取去レ
バ忽チ其魚ハ腐ルガ如クニ、當時ノ武士階
級ガ何カノ機會デ富ニ觸レル場合ガアレ
バ、却テ其人ノ腐敗力ハ强カナノタノデア
リマス、詰リ富ニ對スル-富ノ毒素ニ對
スル抵抗ガ訓練シフナイカラデアル、是デ
德川三百年ハ宜シカンダケレドモ、吾々ハ
明治ノ時代ニ突進シテ新時代ニ入シテ來夕、
其新時代ハ德用時代ト違フテ飽マデモ實際
ノ必要上、富ヲ求メナケレバナラヌ時代ニ
到著シタノデアリマス、而シテ吾々ノ頭ヲ
支配スル所ノ道德ハ、マダ〓〓富ヲ蔑視ス
ル所ノ道德分支配シテ居ルノデアリマス、
卽チ道德觀ト實際觀トガ牴觸シテ居ルノデ
アリマス、此點ニ付テ明治ノ初メニマダ
〓世ノ中ガ舊時代ノ思想デ、算盤ヲ手ニ
スルノモ汚イト云フ時代ニ當ッテ、時ノ第
一人者タル福澤諭吉先生ガ敢然トシテ富ヲ
求メ口、金ヲ求メロト云フコトヲ、子弟ニ
向シテ天下ニ向ッテ唱道シタコトハ一大卓見
デアル、然レドモ此福澤先生モ國民ノ頭ニ
富ヲ否定スルノ道德、富ニ對シテ抵抗力ノ
乏シイ國民デアルト云フ點ハ遂ニ閑却サレ
タノデハナイカト云フ疑ガアルノデアリマ
スソレデ是ガ實際上ニ於ケル結果ハ如何
相成ルカト云フト、從來道德的ニ飽マデ慾
ヲ禁ジナケレバナラヌ國民ガ、必要ノ際ニ
ハ飽マデモ慾ヲカヽナケレバナラヌト云フ
狀態ニナッテ來夕所カラ、其慾ヲ遂ゲ富ヲ
求メル手段ノ上ニ於テ、生活ノ消費ヲ節約
スルトカ、生產ノ費用ヲ儉約スルトカ云
フ、極メテ骨ノ折レル力向ニ向ハズシテ、
出來ルダケ最少ノ努力デ最大ノ效果ヲ求メ
ント欲スル所謂奇道方法ヲ以テ產業ヲ營
ムト云フ傾向ニ却テ向タノデアリマス之
ガ爲ニ產業ノ當然ノ基礎條件タル穩健着實ト
云フ分子ハ遂ニ少クナ,テ來夕所ノ我ガ產業
ハ畸形的發逹ヲ遂ゲタノデハナイカト思
フノデアリマス而シテ生活ノ上カラ云ヒ
マスト云フト、今マデ慾ヲ禁ゼラレ夕國民
ガ、今度ハ慾カラ解放サレ夕形ニナリマス
カラ、其極點ニ走シフ今日ノ如キ人心頽敗
ノ狀況ニモ、直ニ一足飛ニ到着シ得ル素
質ヲ持ッテ居ルノデアリマス、此點ガ改マラ
ザル限リニ於キマシテハ、私ノ信ズル所ニ
依レバ、木當ニ現〓ニニ應應ハシイ健全ナル
文明的ノ產業ガ起シテ來ナイノハ當然デア
ルソレガ卽チ今日ノ產業ノ行詰リヲ來シ
タモノト私ハ信ズルノデアリマス、現ニ諸
君ハ此忠君愛國ト云フ我ガ國民道德ノ特色
ガ、ドノ位我ガ政治社會ヲ組織スル上ニ於
テ非常ナル效力ガアルカト云フコトハ必
ズ認メラレテ居ルニ相違ナイ之ヲ認メル
以上ハ富ノ道德的價値ヲ否定スルト云フコ
トガ、如何ニ今日ノ產業組織ニ惡影響ヲ及
ボシテ居ルカト云フコトモ、亦當然認メナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス(「簡單ニ
オヤリナサイ誰モ聽キマセヌヨ」ト呼フ者ア
リ)御聽ニナラヌノハ致方ガアリマセヌ(「簡
單簡單」ト呼フ者アリ)ソコデ私ハ此經濟的
缺陷ヲ改良スル上ニ於キマシテ、文部當局
ハ如何ニ〓育上ニ付テ經濟振興上御考ニナッ
テ居ルデアラウカト云フコトヲ伺ヒタイノ
デゴザリマス(發言スル者アリ)今少シ御〓聽
ヲ乞ヒマス、-次ニ私ハ綱紀肅正、殊ニ民
間ノ綱紀〓正ニ付テ一言致シタイト思フノ
デゴザリマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)是
ハ極メテ簡單ニ申上ゲマスゝ既ニ前段ニ中
述ベマシタ通リニ、富ニ對スル道德的價値
ヲ否定スルト云フ所ニ民間、殊ニ實業ニ從
事スル一切ノ方々ノ精神ナリ、其生活ナリ
ノ上ニ於テ、頗ル大ナル缺陷ガ包藏セラレ
テ居ルト云フコトヲ思ハザルヲ得ヌノデア
リマス、随テ此綱紀〓正ト云フ問題ハ、統治
機關タル官邊ニ向シテ要求スル以上ニ、民間
ニ向シテ更ニ强ク要求シナケレバナラヌデ
ナイカト思フノデアリマス、總理大臣ハ旣
ニ綱紀〓正ノ事ヲ聲明サレテ居ルノデゴザ
リマスルガ、此言葉ガ普通ノ意味ニ於テ遂
ニ官邊ニ限ラレル傾向ガアルノデゴザリマ
スルカラ、私ハ民間ノ綱紀肅正ニ向シテモ、
政府ハ果シテ十分ニ手ヲ下サレル御考デ
アルヤ否ヤト云フコトヲ御尋致シタイノデ
ゴザリマス(「民間ノ綱紀出正トハドウ云フ
事デスカ」ト呼フ者アリ)然ラバ詳細ニ說明
致シマセウ(笑聲起リ「モウ宜イ、モウ宜イ」
ト呼フ者アリ)御敬囘ニナリマスカ-最
後ニ行政財政ノ整理ニ付テ一言致シマス、
行政財政ノ整理ニ付テハ、旣ニ政府之ヲ聲
明サレテ居ルノデゴザリマスルガ、私ハ其
程度ニ對シテ一ツ疑ヲ持ツノデゴザリマス、
私ハ現在ノ日本ノ行政狀態ト云フモノハ、
制度トシテ國力以上ニ發展シ過ギテ居ルト
信ズルノデアリマス、其此ニ到著シタ所以
ノモノハ官民相率キテ協力シテ、行政機
關ヲ斯ノ如ク膨脹サシタモノデナイカト思
フノデアリマス、行政機關ガ斯ノ如ク國力
不相應ニ膨脹シタ以上、之ヲ整理シ刷新ス
ルト云フニ付キマシテハ、姑息的ニ官制ノ
第一條、第二條ヲ拈クル位ノコトデ到底是
ハ改良出來ナイ、根本的ニ組織ヲ改メル程
ノ決心ガナケレバ此行政整理ト云フモノ
ハ私ハ出來ナイト思フ、一ツ例ヲ申上ゲマ
スルト云フト、曩ニ西園寺內閣ニ際シテ鐵
道國有ト云フ大事業ヲ斷行セラレタ、之ヲ
斷行シタ西園寺公ノ御考ハ、必ズ是ハ國家
ノ大策デアルト御信ジニナノテヤノタニ相違
ナイ、然レドモ其當時西園寺公ノ下僚ニ働
イテ居ッタ所謂官僚ノ中ニハ、丁度好イ機會
デアル、由テ以テ大ニ行政機關ヲ擴張シ、人
員ヲ殖ヤシテ、威福ヲ張ルニ都合ノ好イ機
會デアルト云フ位ノ考ヲ、恐ラク持ヲテ居ク
夕人ガ無カッタト言ヘナイノデアリマス、總
テ斯ウ云フ狀況デアリマシテ、今日マデノ
成行ト云フモノハ、出來ルダケ役所ノ機關
ヲ大キクシテ仕事ヲ殖ヤシテ、サウシテ威
福ヲ張ルト云フコトガエライ人デアリヤ
リ手デアリ、又一般ノ民間モ之ヲ認メテ大
ナル手腕家トシタ傾向ガアッタノデアリマ
ス、且又明治二十年以來ノ制度ノ改革ノ結果
デハゴザリマスルガ、法治主義ガ万遍ナク行
渡リ過ギマシテ、詳細ヲ極メ過ギマシテ、一カ
ラ十マデ規則ヅクメデアルカラ、其結果ト
シテ其規則運用ノ爲ニ、ドウシテモ行政機
關ハ膨脹シナイ譯ニ行カナイ、又自治體ノ
カヲ十分認識シナイ、自治體自ラモ自己ノ
權威ヲ認メナイト云フ所カラ、當然自治體
デヤッテ濟ムベキ仕事ヲ、悉ク擧ゲテ國家ガ
干涉スルト云フ風ナ傾向モ非常ニ强イノデ
アリマス、又一ツハ明治ノ初メニ於テ、當
時出來ルダケ早ク文明ヲ進步サセヤウト云
フ所カラ、個人的ノ所謂苗ヲ助ケテ長ゼシ
メルト云フ風ナ傾向ヲ以チマシテ、一カラ十
マデ民業ヲ官ガ世話ヲ燒クト云フ習慣ガ今
日マデ繼續シ來ッタト云フコトガ、是亦行政
機關ヲ非常ニ膨脹セシメ夕所以デアル是
等ノ諸弊ヲ擧ゲテ根絕スル程ノ決心ナカリ
セバ、決シテ此行政整理ヲ根本的ニ、徹底的
ニ行フコトハ出來ナイト思フノデゴザリ
マス、ソレデ現閣ハ此意味ニ於テ行政整理
ヲ爲サルモノデアルカト云フコトヲ御何シ
タイノデゴザリマス(「簡單々々」ト呼フ者
アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=4
-
005・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=5
-
006・竹内友治郎
○竹内友治郞君(續) 大體私ハ之ヲ以テ略、
私ノ要旨ヲ終リマシタ、是マデ諸君ノ御
〓聽ヲ深ク感謝スル次第デゴザリマス(拍
手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=6
-
007・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質問第七、橫山
勝太郞君
七議員ノ特權ニ關スル質問(横山勝
太郞君外一名提出)
議員ノ特權ニ関スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十三年七月七日
提出者橫山勝太郞
外一名
賛成者石川安次郞
外三十三名
議員ノ特權ニ關スル質問主意書
憲法第五十三條ニ依レハ議員ノ特權ニ關
シ「兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ內亂外
患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾
ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ」ト規定
セリ然ルニ第四十九囘議會召集前ヨリ拘
禁セラレタル衆議院議員ヲ未タ釋放セサ
ルハ議員ノ特權ヲ無視シタルモノナリト
認ム政府ノ所見如何
右及質問候也発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=7
-
008・横山勝太郎
○横山勝太郞君 登壇前ニ一言確メテ置キ
タイ事ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=8
-
009・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=9
-
010・横山勝太郎
○横山勝太郎君 此特別議會ノ召集ノ際ニ
刑事ノ事案ニ關係ヲ致シテ召集ニ應ズルコ
ト能ハザリシ議員ガ、幾人アルカト云フコ
トヲ御聽シタイ、尙ホ是等ノ關係ニ依シテ召
集ニ應ズルコト能ハザリシ議員諸君ニ對シ
テ、議長ハ議院法第九十九條ニ規定シテア
リマス所ノ招狀ノ手續ヲ爲シタルコトアリ
ヤ否ヤ、此二點ヲ一應水ッテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=10
-
011・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御答致シマス、
現在召集ニ應ゼザル議員ハ多木久米次郞君
一人デアリマス、其理由ハ御病氣デアリマ
ス、第二ノ御質問ノ點ニ付テハ何等手續ヲ
致シテ居リマセヌ、此段御答致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=11
-
012・横山勝太郎
○橫山勝太郎君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=12
-
013・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 横山勝太郞君
〔横山勝太郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=13
-
014・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 本員ハ議員ノ特權ニ關ス
ル事項ニ付キマシテ聊カ質問ヲ試ミタイ
モノデゴザイマスルガ、本員ガ此質問書ヲ
提出致シマスル當時ニ於キマシテハ未ダ
召集ニ應ズルコト能ハザリシ議員ガアッタ
ノデアリマス、固ヨリ議員ガ召集ニ應ズル
コトガ出來ルカ出來ナイカト云フコトハ
議員ノ特權ノ中デ最モ重大ナル身體ノ自由
ニ關スル事項デアリマシテ、輕々ニ默過ス
ルコトノ出來ナイ事柄デアリマス、併ナガ
ラ本日承ル所ニ依リマスレバ、其召集ニ應
ズルコト能ハザリシ一人ノ議員ノ御方モ、
本日漸ク當席ニ御出席ニナルコトノ運ビニ
ナッタサウデアリマスルカラ、私ハ此質問ヲ
極メテ簡單ニ致シテ置キマシテ、將來ノ爲
ニ司法當局ノ意見ヲ承ッテ置キタイト考ヘル
ノデアリマス質問ノ事項ヲ申上グル前ニ
當ノテ、一言申上ゲテ置カナケレバナラヌ事
ハ此質問ヲ提出致シマシタ當時、吾々ト
同志ノ間ニ於キマシテハ事最モ重大ナル
事項デアリマスルガ故ニ、之ヲ緊急質問ノ
形式ニ於テ、全院ノ御承諾ヲ得テ至急ニ質
問ヲ致シタイイ云フ意兄モアッタノデアリ
マス、併ナガラ刑事ノ嫌疑ヲ受ケラレテ、司
法裁判所ニ繫屬致シテ居ル關係ニ付テ、立
法府カラ或ル態度ヲ執ルト云フヤウナコト
ハ或ハ司法部ヲ壓迫スルモノニ非ズヤト
ノ疑惑ヲ招イテハ、洵ニ吾々ノ不本意トス
ル所デアリマスルガ爲ニ、其事柄ヲ遠慮致
シタノデアリマス、然レドモ吾々立法府ニ
居リマスル所ノ者ハ吾々立法府ノ權利ヲ
尊重スルト同時ニ、決シテ行政司法ノ權利
ニ對シテ不當ナル干涉壓迫ヲ爲スト云フヤ
ウナ意見ハ毫モ無イ者デアルト云フコトヲ、
一言致シテ置キタイノデアリマス、此問題
ニ關シテハ第二憲法ノ解釋ニ付テ、司法當
局ノ意見ヲ承リタイト思ヒマス、憲法第五
十三條ハ、會期中ニ於テ其院ノ許諾ナクシ
テ議員ハ逮捕セラルルコトナシトノ特權ヲ
認メテ居リマス、此特權タルヤ議員ノ言論
ノ自由ト共ニ、立法府ニ籍ヲ持ッテ居リマス
ル吾々議員ノ身體ニ關スル最モ重大ナル保
障デアリ、殊權デアルト云フコトハ中スマ
デモナイノデアリマス、然ラバ此憲法第五
十三條ノ所謂會期中ト云フコトハ如何ナ
ル意味ヲ持ッテ居ルノデアルカト云フ事柄
ガ質問ノ要點デアリマス、議會ヲ召集セラ
レテ、既ニ開院式ヲ了ッテ適法ニ議會ガ開會
セラレテ居リマスル以上ハ所謂會期中デ
アルト云フコトニ該當致シマスルカラシテ、
議員ノ身體ノ逮捕ノ出來ナイト云フコトハ
寸毫ノ疑ヲ容レナイノデアリマス、唯〓問
題トナルノハ所謂召集前ニ或嫌疑ノ下ニ、
被疑者トシテ若クハ被告人トシテ司法裁判
所ニ拘禁ヲセラレテ居ルト云フ人ニ對シテ、
議會召集ト同時ニ憲法第五十三條ノ規定ニ
依シテ、之ヲ釋放スルコトヲ要スルヤ否ヤ、
固ヨリ憲法第五十三條ノ明文ヲ一讀致シマ
スレバ會期中議員ハ其ノ院ノ許諾ナク
シテ逮捕セラルルコトナシトアルノデア
リマスカラシテ、會期ノ以前ヨリ既ニ身
體ノ自由ヲ失ヒ、逮捕ト云フ狀態ニ在ッタ所
ノ者ハ此憲法ノ條章ニ違背スルコトハナ
イト云フ一ノ說ヲ唱フル者ガアリマス、然
レドモ法文ノ解釋論トシテ、吾々此點ニ付
テ多大ノ疑惑ヲ懷クノミナラズ、寧口此憲
法ノ條章ノ精神ハ、會期中ニ其院ノ許諾ナク
シテ逮捕スルコトガ出來ナイ所ノモノデア
ルナラバ、會期ノ數日前若クハ數十日前ヨリ
逮捕スルト云フコトモ、憲法第五十三條ノ
明文ノ明ニ否定スル所デアルト考ヘラレマ
ス、卽チ會期中逮捕スルコトヲ得ズト致
シマスルナラバ、假ニ其議會ガ會期三週
間若クハ一箇月ト云フヤウナ期限デアツ
タド致シマス、此憲法第五十三條ノ法文ノ
正面カラ申シマスレバ、少クトモ其會期ノ
間ハ絕對ニ逮捕ヲ爲シ、議員ノ身體ノ自由
ヲ奮フコトハ出來ナイコトハ明瞭デアリマ
ス、然レドモ議會ノ召集前僅ニ一日若クハ
二日若クハ三日ト云フガ如キ、極メテ接近
シタル時期ニ當ッテ其議員ヲ逮捕スルト云
フコトガアッタト致シマスルナラバ、憲法第
五十三條ノ明文ノ精神ニ反スルノミナラ
ズ實際ノ事情カラ考察致シマスルナラバ、
憲法第五十三條ハ少クトモ會期ダケハ議員
ノ身體ニ對シテ自由ノ保障ヲ與ヘテ居ルノ
デアル、之ヲ一日二日若クハ三日以前ニ建
捕スルコトヲ許スナラバ、會期以上ノ期間
議員ノ身體ノ自由ヲ奪フト云フコトノ結果
ニ相成ルト思料致シマス、此憲法第五十三
條ノ規定ハ突然我ガ帝國憲法ノ明文ノ上
ニ規定セラレタルモノニ非ズシテ、議會政
治ヲ行フ所ノ先進國ニ於テハ相當ナル沿革
ヲ持ッテ居ルノデアリマス、卽チ政爭ノ激甚
ナル場合ニ於テ政權ヲ持ッテ居ル黨派ガ、會
期ノ切迫シタル一日若クハ二日ト云フヤウ
ナ場合ニ反對黨ノ議員ヲ拘束致シテ、サウ
シテ議員ノ身體ノ自由ニ妨害ヲ與ヘルト云
フヤウナコトヲ憂慮シテ作リタル立法ニ基
キ、我ガ帝國ノ憲法ニ於キマシテモ此明
文ヲ揭ゲタノデアリマス卽チ吾々ノ常識
上ヨリ之ヲ判斷致シマシテモ、會期中ニ逮
捕スルコトガ出來ナイト云フコトデアルナ
ラバ、其一日若クハ二日或ハ一週間ト云フ
ヤウナ場合ニ、之ヲ逮捕スルコトノ惡イト
云フコトハ自ラ判斷ガ出來ルト思料致シマ
ス、幸ニ我ガ議會政治ノ運用ニ於キマシテ
ハ、未ダ先進國ニ於テ憂慮シタル事柄、若クハ
憲法ノ起草者ノ憂慮致シテ居ルヤウナ事柄
ハ未ダ經驗ハ致シテ居リマセヌケレドモガ、
憲法第五十三條ノ律意ノ在ル所ハ、私ハ左
樣ニ之ヲ解釋シテ然ルベキモノト考ヘテ居
リマス、此故ニ議院法第二條ニ於キマシテハ
「議員ハ召集ノ勅諭ニ指定シタル期日ニ於
テ各議院ノ會堂ニ集會スヘシ」斯樣ニ規
定致シテ居リマス、固ヨリ憲法ト議院法トノ
關係ニ付キマシテハ此場合ニ於テ詳論ス
ル必要ハ認メマセヌ、憲法ト云フ基本法規
ノ下ニ作ラレタル議院法デアリマスカラ、
議院法其モノヲ以テ直ニ憲法ノ明文ヲ解釋
スルト云フコトハ固ヨリ之ヲ避ケナケレバ
ナリマセヌ、然レドモ憲法ハ第五十三條ニ
於テ、議員ノ身體ノ自由ヲ保障シ、而シテ
憲法附屬ノ大法タル議院法ニ於テハ、其第
三條ニ於テ召集ノ勅諭ニ指定シタル日時
ニ、必ズ一定ノ場所ニ集會スルコトヲ要ス
ルト云フ明文ヲ設ケテ居リマス、而シテ此
議院法第二條ノ規定ニ於テハ何等ノ例外ヲ認
メデ居リマセヌ、固ヨリ憲法第五十三條其
モノガ認メテ居リマスル所ノ現行犯罪、或
ハ内亂外患罪ノ如キモノニ對シテハ、憲法ノ
明文上逮捕シテ差支ナイト云フコトハ分リ
マスケレドモガ、其他ノ犯罪ニ付テハ憲法ノ
明文上何等規定ヲ致シテ居リマセヌカラ、
憲法ト同時ニ成立致シマシタル議院法第二
條ニ於テ、若シモ召集以前ニ於テ逮捕ヲ致
シテモ差支ナイ議員ノ身體ノ自由ヲ保障ス
ルノ必要ガナイト云フ意味ヲ認メテ居ッタ
モノト致シマスルナラバ、此議院法ニ於テ
其意味ノ規定ヲ設ケ又所ノ理由ハ無イノデ
アリマス、卽チ議院法ハ何等ノ條件ヲ附セ
ズシテ、各議院ノ議員ハ勅諭ノ指定シタル
期日ニ、必ズ其院ノ會堂ニ集會セヨト云フ
コトヲ命ジテ居ル點カラ申シマシテモ、憲
法第五十三條ノ律意ハ自ラ明瞭デアラウト
私ハ考ヘマス、ノミナラズ、憲法第五十三條
ノ規定ニ對シテ、會期前ニ逮捕セラレタル
議員ヲ議會ノ召集ニ當,テ之ヲ解放スルコ
トヲ必要トスルカ、或ハ必要トシナイカト
云フ積極消極ノ說ニ對シテハ、各〓學者ノ定
說ノアルト云フコトモ、賢明ナル諸君ノ御
諒解ノ通リデアリマスカラ、私ハ爰ニ述ベ
マセヌガ、兎ニ角一派ノ學者ハ斯ノ如キ場
合ニ於テ之ヲ逮捕スルコトハ不當デアルト
斯樣ニ解釋ヲ致シテ居ルノデアリマス、又
先刻ヨリ申シマスルナラバ第一期ノ議會
ニ於キマシテ、東京府選出ノ某議員ガ、恰
モ召集ノ際ニ逮捕セラレテ居リタル事例ア
リ、其場合ニ當衆議院ニ於テハ一議員ヨリ
動議ニ提出致シマシテ、假令召集前ニ逮捕
セラレタル者ト雖モ、既ニ議會ガ召集セラ
レテ憲法第五十三條ノ會期ト云フコトニ當
ル以上ハ、直ニ之ヲ解放スベキモノデアル
ト云フコトヲ院議ヲ以テ決定致シテ居ルト
云フ先例ガアリマス、固ヨリ此先例ニ對シ
テハ司法大臣ヨリ之ヲ承服シ難イト云フ
意味ノ通牒ヲ爲シテ居ルコトモ事實デアリ
マス、併ナガラ司法部ガ獨立ヲ致シテ居ル
ト同時ニ、我ガ立法部モ獨立ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、其獨立致シテ居ル所ノ立法
部ノ先例ニ依レバ召集前ニ違捕シタル議
員モ、召集ヲセラレタル以上ハ直ニ釋放ス
ベキモノデアルト云フコトノ決議ヲ致シテ
居ル以上ハ、此先例ト云フモノハ、我ガ議院
ニ於テハ勿論之ヲ尊重スルノ義務ガアルト
私ハ考ヘテ居リマス、同時ニ司法當局モ此
立法部ノ先例ニ對シテハ、多大ナル敬意ヲ
拂フベキ必要ガアルト私ハ思料致シマス、
司法當局ニ向ッデ此先例ニ降伏セヨトハ申
シマセヌケレドモ、此先例ノ由ッテ來ル法律
上ノ解釋、法律ノ精神ノ在ル所ヲ考慮致サ
シテ、此先例ニ對シテハ大ナル敬意ヲ表セ
ラルベキモノデアルト私ハ考ヘテ居ル、更
ニ進ンデ法律上ノ解釋ハ姑ク別問題ト致シ
マシテ、憲法ノ精神ハ那邊ニ在ルカト云フ
コトニ付テ、私ハ一言致シテ置キタイト思
ヒマス、其第一ハ憲法義解ノ說明スル所ニ依
レバ「兩議院ハ立法ノ大事ヲ參賛ス、故ニ會
期ノ間議員ニ與フルニ例外特權ヲ以テシ議
員ヲシテ不覊ノ體面ヲ有チ其ノ重要ノ職務ヲ
盡スコトヲ得セシメムトス」ト此憲法義解
ニ說明致シテ居リマスル所ハ憲法第五十二
條ニ於テ議員ノ言論ノ自由ヲ認メ、第五十
三條ニ於テ議員ノ身體ノ自由ヲ保障致シテ
居ル其ノ根據ハ議員個人ノ私權ヲ保護ス
ルニ非ズシテ、議員ノ特權ヲ認ムルコトニ
依クテ、貴衆兩院ノ面目ト、其重要ナル職務
ヲ完全ニ執行セシメテ、而シテ一面ニ於テ
ハ行政、若クハ司法部ノ壓迫干涉ヲ排斥セ
ント致シタルモノデアルト云フコトガ、私
ハ明瞭デアルト考へマス、第二一議院ニ議
席ヲ持クテ居リマスル所ノ者ヲ司法官憲ガ
逮捕スルト云フコトハ一選擧區ニ於ケル
十万、或ハ十五万ト云フ多數ノ人〓ノ代表
發言ノ權利ヲ、此議會ニ於テ奪フト一云フ結
果ヲ生ズルト私ハ考ヘル、憲法政治ノ精神
ハ全國民ヲ擧ゲテ、公選ニ依クテ選出サラレ
タル議員ニ依シテ、此衆議院ノ壇上ニ於テ發
言ノ機會ヲ得ル、又發言ノ機會ヲ得セシム
ルト云フ事柄デアルト信ズル(「簡單々々」)
然ルニ憲法第五十三條ノ明文ニ多少ノ疑義
ニ涉ル點ガアルト致シマシテモゝ一選擧區
ノ住民十万乃至十五万人ト云フ多數ノ人ノ
代表發言ノ權利ヲ奪フノ結果ヲ生ズルト云
フコトハ此憲法ノ法文ノ解釋上大ニ考慮
セザルベカラザル事項デアルト私ハ考ヘマ
ス第三憲法政治ノ根本義ノ所謂三權ノ分
立ニ在ルト吾々ハ信ジテ居リマス、卽チ立
法、行政、司法、此三權ガ各、法律上ノ權域
ヲ持ッテ、互ニ他ノ權能ニ對シテ不當ナル干
渉ヲ爲シ、或ハ壓迫ヲ爲サナイト云フコト
ガ是ハ重大ナル事項デアルト考ヘマス、然
ルニ帝國議會ガ召集セラレテ、其中ノ議員ノ
一人若クハ數人ノ者ガ、立法部ト獨立ヲ致
シテ居ル所ノ司法部ノ權力ニ依ッテ逮捕監
禁セラレテアルト云フ事柄ハ司法ノ權力
ヲ以テ立法部ノ權力ヲ壓迫致シタモノデア
ルト云フノ考ガ國民ノ間ニ起ルコトハ、私
ハ已ムス得ヌト考ヘル(拍手)斯ノ如キ疑惑
ヲ起サシメルト云フ事柄ハ三權分立ノ精
神ニ照シテ私ハ不當デアルト考ヘマス、斯
樣ナル見地ヨリ致シマシテ、卽チ法文ノ解
釋上、又先例上、又法律ノ精神上、今回ノ
如キ特別議會ノ召集セラレマシタ以上ハ、
其前ニ當ッテ司法部ノ權力ヲ以テ逮捕致シ
テ居ッタ所ノ者ハ、之ヲ卽時ニ釋放スル事柄
ガ私ハ立憲的デアリ、又憲法ノ明文ノ要求
スル所デアルト斯樣ニ信ズル者デアル拍
手)而シテ此機會ニ於テ一言致シテ置キタ
イト思ヒマス事ハ、前内閣ノ時代ニ於テ總
選擧ガ行ハレマシタ、此總選擧ニ當ノテ前内
閣ガ如何ナル干涉ヲ爲シタカト云フコトニ
付テハ吾々同志ノ間ニ於テ相當ナル調査
ガ進メラレテアリマス、唯〓此總選舉ニ對ス
ル司法部ノ行動ニ對シテハゝ此席ニ於テ一
言意見ヲ述ベテ置クコトノ必要ガアルト私
ハ思料致シマス、卽チ今回ノ總選擧ニ當ッテ
選擧法違反ノ事犯ガ起リシ場合ニ、司法部、
殊ニ檢事局ハ如何ナル能度ヲ執ッタカト申
セバ裁判所ニ向ッテ起訴シタル事案ガ、果
シテ起訴ニ相當スルモノガアルカドウカト
云フコトニ付テモ、吾々ハ多少ノ意見ヲ持っ
テ居ル者デアリマスルガ、併シ是ハ檢察官其
人ノ鑑識ニ屬スル事項ナリトシテ、此席ニ於
テハ敢テ之ヲ論究致シマセヌ、然レドモ有罪
ヲ有罪トシテ檢擧シタル後ニ於ケル檢事局
ノ態度ハ、甚ダ不可思議千萬ナルモノガアリ
や、 、例ヘバ申セバ一審デ無罪ノ判決ヲ受
ケタ者ニ對シテ直ニ控訴スル控訴ニ於テ
無罪ニナッタ者ニ對シテ直ニ上告ヲスル
又一審ニ於テ無罪ノ裁判ヲ受ケタ者ニ對シ
テモ直ニ控訴ヲスル、控訴ニ於テ無罪ノ判
決ヲ受ケタ者ニモ直ニ土告スル、何所マデ
モ檢事局ガ自己ノ所信ヲ貫カシガ爲ニ、執
拗ニモ上訴ノ手段方法ヲ以テ、之ガ有罪ノ
解決ヲ見ナケレバ巳マヌト云フ態度ヲ執ツ
テ居ルノハ甚ダ不可思議千万デアル固ヨ
リ刑事訴訟法ノ解釋等ヨリスレバ、檢事ガ
控訴、上告、決シテ法律ニ背イテ居ルトハ
申シマセヌ、併ナガラ玆ニ多數ノ御列席ノ
諸君ガ、采シテ斯ノ如ク執拗ナル態度ヲ執ノ
夕先例ヲ何時ノ總選擧ニ御經驗ニナリマ
シタカ、サウ云フ經驗ハ斷ジ、テアリマセ
又、苟モ事實裁判官ガ事實證據ノ審査ノ結
果無罪ヲ言渡シタル場合ニ於テ、國家ヲ代
表スル檢事局ガ何所マデモ之ヲ有罪トシテ
ノ解決ヲ見ナタレバ止マヌト云フ態度ヲ執
ルト云フコトハ私ハ刑事政策上カラ申シ
マシテモ、甚ダ宜クナイト確信ヲ致シテ居
ル又是マデノ例カラ申シマシテモ左樣ナ
事ハ無イノデアル、今囘我國ノ司法、特ニ檢
事局カ常ニ公平ヲ以テ目セラレテ居リ、其
態度ハ極メテ嚴明ナルコトヲ以テ國民ノ信
賴ヲ受ケテ居ルニモ拘ラズ、今回ノ選擧ニ
限ッテ斯ノ如キ辛辣ナル態度ヲ執ルコトハ
此檢事局ノ背後ニ何者カノ大ナル勢力ガア
リマシテ、斯ノ如キ現象ヲ生ジタモノデア
ルト私ハ斷言スルノデアル、(拍手)吾々ハ
諸君ト共ニ憲法ヲ擁護セネバナリマセヌ、
而シテ憲法ノ精神ノ在ル所ヲ尊重致シテ、
憲法政治ノ最モ圓滿ニ行ハルヽコトヲ希望
スル者デアリマス、是ト同時ニ裁判官檢事
モ共ニ是レ我國ノ法律デアリ、我國ノ根本
法規デアル所ノ憲法ヲ擁護スルコトハ、吾
々ト同一ノ責任デアルト云フコトヲ吾々ハ
考ヘテ居リマス、然ルニ、議會ガ召集ヲセ
ラレテ既ニ會期ハ目睫ノ間ニ迫ッテ居ル、
殊ニ開會セラレタル議會ガ旣ニ三分ノ二以
上ノ會期ヲ經過シ、將ニ其會期ヲ終ラント
スルニ當ッテ、尙ホ依然トシテ憲法上身體
ノ保障ヲ持ッテ居ル所ノ議員ノ特權ヲ奪ク
テ、イツマデモ監獄署ニ之ヲ拘禁致シテ置
クト云フコトハ憲政ノ破壞デアリ、憲法
精神ノ蹂躪デアルト私ハ斷言シテ憚ラヌノ
デアリマス(拍手)或ル議員ニ對シテハ御承
知ノ如ク召集日ノ一日前ニ當シテ漸ク保釋
ヲ許シテ居ル、或ル議員ニ對シテハ十幾日
ノ會期ガ濟ンデカラ始メテ保釋ヲ許シテ居
ル、或ル一派ノ議員ニ對シテハ今日漸ク之
ヲ釋放シタト云フ有樣デアル、吾々ハ冒頭ニ
於テ申上ゲマシタル通リ、決シテ立法部ノ
權力ヲ以テ、司法部ノ權能ヲ壓迫セヨトハ
申サナイノデアル、抑〓之ヲ先例ニ徵シ、
之ヲ今回ノ檢事局ノ態度ニ照シテ攻究致シ
マスナラバ吾々ハ司法部ノ行動ニ對シ
テ、多大ノ疑惑ヲ挾マザルヲ得ナイコトヲ
此席ニ於テ斷言スルノデアリマス、ドウカ
此意味ニ於テ司法大臣ハ是等ノ疑惑ヲ解ク
爲ニ、憲法精神ヲ明ニシ、且ツ將來ニ於
テ、司法部ノ力ヲ以テ、立法部ノ議員ノ特
こ
權ヲ蹂躪スルガ如キ非立憲ナル行動ヲ無カ
ラシムル爲ニ、丁寧ナル辯解ヲ得タイト云
フコトヲ此席ニ於テ聲明ヲ致シテ置キマス
(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=14
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015・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 司法大臣橫田千
之助君
〔國務大臣横田千之助君登壇、拍手起
ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=15
-
016・横田千之助
○國務大臣(横田千之助君) 憲法五十三條
ノ議員ノ特權ニ對スル御質問ハ、立法府ノ
問題トシテ重大ナ事デアリマスカラ、親シ
ク玆ニ御答ヲ致シマス、政府ノ見ル所デ
ハ會期中ニ非ズンバ、無論議會ノ許諾ヲ
受ケズシテ逮捕スルコトガ出來ルト考ヘテ
居リマス、而シテ會期以前ニ逮捕シタル議
員ニ對シテハ會期始ッテ以後ト雖モ、司
法權ノ發動ノ必要上已ムヲ得ナイ場合ニ於
テハ、之ヲ繼續スルモ差支ナキモノト判斷
シテ居リマス、文字ノ上カラ解釋スレバ勿
論デアリマスガ、五十三條ニ議員ノ逮捕ト
云フ-今日ハ刑事訴訟法ニモ逮捕ト云フ
文字ハ餘リ用キラレマセヌガ、當時ノ治罪
法、前ノ刑事訴訟法ニアル建捕ト云フ言葉
ハ言フマデモナク自由ヲ拘束スルコトデ
アル、自由ノ拘束ヲスルコトデアリマス
カラ、既ニ自由ヲ奪ハレタ人ニ對シテ特ニ
議會ノ承諾ヲ求ムルト云フコトハ、此所デ
ハ必要トシテ居ラヌノデアル、且ツ外國ノ
憲法ナドニ於テモ國ハ忘レマシタガ、特ニ
今横山君ノ御質問ノヤウナ場合ニ於テ
ハ議院意思ノ表明ガアレバ、卽チ議會多
數ノ意思ガ會期始ッテ以後ニ、其以前ニ逮
捕サレタル人ノ釋放ヲ求ムルト云フ意思ガ
アル場合ニハ釋放スルト云フ規定ノアル
憲法ガアリマス、帝國憲法ニ之レ無キヲ見
レバ、帝國憲法ハ此場合ヲ想像シテ居ラヌ
ノデアル沿革上ノ理由ニ付キマシテハ横
山君ノ御說ヲ承リマシタガ、從來ノ帝國ノ
政情ハ斯ノ如キ下劣ノ狀態ヲ見ナカ呉
且ツ想像シナカッタ、是ガ卽チ議員ノ逮捕
ト云フコトニ付テ、會期中ニ局限サレタル
憲法ガ生レ出夕所以ダラウト考ヘルノデア
リマス、特ニ又實例ノ上カラ申上ゲマスル
ト云フト、第一議會ノ實例ハ橫山君ノ言ハ
レタル通リ、幾多其間ニ例ガアリマス、近
キ例ニ於テハ四十四議會、遡ッテ第四十囘
議會、此議會ニモ斯ウ云フ實例ガアリマシ
テ、一二ノ方ハ會期中全部御出席ガ無カッタ
ノデアリマスルガ、未ダ曾テ斯ウ云フ問題
ガ提起サレズ、議院ハ司法部ノ此解釋ヲ認
メラレタモノトシテ、吾々ハ思料シテ居ル
ノデアリマス、精神的方面カラノ御話ガア
リマシタ-精神解釋、此點カラ考ヘマシ
テモ無論立法權ヲ尊重致シマスガ、司法權モ
大切ナモノデアリマスカラ、此調和ヲ取
ル上ニ於テハ丁度此會期中ダケニ於テ、是
ダケノ特權ヲ議員ニ與へルト云フコトガ適
當デハナカラウカト考ヘルノデアリマス、
吾々ハ司法當局ト致シマシテ、立法府ヲ尊
重スル上カラシテ、司法大臣トシテ司法行
政權ノ監督ノ働デ出來得ル事ダケハ致シマ
ス、有ユル方法ニ依シテ議員ノ權力ヲ尊重
シ、此職務遂行ニ妨害ナカラシムルヤウニ
最善ヲ盡スコトハ無論覺悟デアリマスガ、
憲法上ノ解釋ト致シマシナハ、遺憾ナガラ
横山君ノ御質問ノ趣意ニ副フコトガ出來ヌ
ト云フコトヲ此機會ニ言明致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=16
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017・横山勝太郎
○横山勝太郞君 唯と一言致シタイ事ガア
リマスカラ、此席カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=17
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018・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 了承致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=18
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019・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 只今司法大臣ノ御答辯ハ
甚ダ不滿ノ點ガ多イノデアリマスガ、併シ
議論ニ涉ル事ハ之ヲ避ケタイト思ヒマス、
唯〓本員ノ聽カントシタ一ノ事項トシテ、先
例ヲ重ンジテ貰ヒタイト云フコトヲ詳細ニ
述ベテ置キマス、卽チ第一期ノ議會ニ於
テ、此議場ニ於テ此質問ノ問題トナッテ居
ルガ如キ場合ニ對シテハ、之ヲ釋放セラレ
ルモノナリトノ決議ヲ致シテ居リマス、而
シテ此先例ハ決シテ今日マデ變更セラレテ
居リマセヌ、今日ニ至ルマデ中間ノ議會ニ
於テ、或ハ何等動議ヲ起スコトナクシテ經
過致シテ居ルト云フコトハ、或ハ司法大臣
說明ノ通リデアルカ知リマセヌ、ソレアル
ガ爲メ第一期ノ議會ニ於テ作ラレタ先例ト
云フモノハ依然トシテ私ハ活キテ居ルト
考ヘマス、此先例ヲドウ爲サルカ、第二ニハ
只今最後ノ御答辯ニ依レバ、司法行政ノ手
段ニ依ッテ出來ルダケノ事ハ致スト云フコ
トノ聲明ヲ得マシテ、本員ハ甚ダ之ニ對シ
テ滿足スル者デアリマス、併ナガラ今囘ノ
此特別議會デ召集セラレタル後ニ於ケル、
司法大臣ノ御執リニナリマシタ所謂行政的
手段ナルモノニ對シテハ、全然私ハ賛同ス
ルコトガ出來ナイト云フコトハ洵ニ遺憾デ
アリマス、卽チ會期ノ殆ド終ラントスル今
日ニ至ルマデ其儘ニ抛擲シテアッタト云フ
コトハ憲法或ハ法規ノ解釋上、司法大臣
ノ御話ノ通リ違法デナイカハ知リマセヌ
ガ、立法府ノ面目ノ爲ニ、議員ノ特權ノ爲
ニ甚ダ遺憾千万デアリマスカラ、今後ニ於
キマシテハ、只今御聲明ノ通リ適當ナ手段
ヲ執ラレンコトヲ切ニ希望スル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=19
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020・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 司法大臣橫田千
之助君
〔國務大臣橫田千之助君登壇、拍手起
ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=20
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021・横田千之助
○國務大臣(横田千之助君) 再ビ御答致シ
マス、第一囘ノ議會ニ於テ斯樣ナル事ガアソ
テ、之ニ議決ノ先例ガアルト云フ仰セデ
アリマスガ、是ハ既ニ政府ノ憲法上ノ解釋
ガ先刻私ガ申上ゲタ通リデアルト致シマス
レバ、此解釋ニ副ハザル所ノ先例ニ對シテ
ハ、政府ハ聽從スルコトハ出來ヌノデアリ
マス、後段御希望ノ點ハ愼ンデ了承致シマ
ス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=21
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022・作間耕逸
○作間耕逸君 議員ノ質問ニ對シ政府ヨリ
答辯書ヲ受領シタル分ノ意見ノ陳述ハ前
囘理由書ノ分共總テ後廻シト爲シ、直二日
程ノ議事ニ移ランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=22
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023・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、左樣ニ決シマス
日程第一、議員田淵豊吉君懲罰事犯ノ件ヲ
議題ト致シマス
第議員田淵豐吉君懲罰事犯ノ件
(委員長報告)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=23
-
024・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 懲罰事件ノ議事
ハ祕密會ナルニ依リ、傍聽人ノ退場ヲ命ジ
マス
〔午後二時五十五分祕密會ニ入ル〕
〔午後四時二十八分祕密會ヲ終ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=24
-
025・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ヨリ會議ヲ公
開致シトス、傍聽人ヲ入場セシメマス、田
淵豐吉君ノ入場ヲ許可致シマス-中野寅
吉君ノ入場ヲ許可致シマス、祕密會議ノ結
果ヲ報告致シマス、祕密會ニ於テ議員田淵
豊吉君懲罰事犯ノ件ヲ議決致シマシタ、卽
チ田淵豐吉君ノ懲罰事犯ノ件ハ謝辭ヲ朗讀
セシムルコトニ決シマシタ、田淵豊吉君ノ
朗讀ヲ命ジマス田淵君登壇
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=25
-
026・田淵豐吉
○田淵豊吉君 私ニ今衆議院カラ斯ウームフ
文句デ讀メト云フコトデアル、其文句ハデ
スネ「本員カ大正十三年七月五日ノ本會議
ニ於テ議長ヲ罵詈スル言辭ヲ爲シタルハ議
院ノ體面ヲ汚シタルモノニシテ議員ノ職分
ニ顧ミ慚愧ノ至リニ堪ヘス謹テ誠意ヲ以テ
玆ニ陳謝ス」ト云フ文句ダ、實ニ私ハデスナ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=26
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027・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 田淵君、田淵君
〔議場騒然〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=27
-
028・田淵豐吉
○田淵豐吉君 實ニ私ハ怪誘ニ堪ヘナイ、
是ハ斷然トシテ諸君ニ御返シスル、僕ヲ喚
問モセズ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=28
-
029・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 田淵君、田淵君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=29
-
030・田淵豐吉
○田淵豊吉君 諸君ハ多數デ決シテモ、議
長ニ突カレテ非常ナ傷害ヲ受ケタル爲ニ、
僕ハ議長ハ厚顏無耻ノ議長デアルト言ウタ
ノガ何ガ不都合デアルカ、諸君ガ院議ヲ以
テ之ヲ決シテモ、私ハ此院議ニハ斷然反對
スル者デアリマス
〔「議長」「議長」ト呼フ者アリ、議場騷
越発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=30
-
031・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス
-祕密會議中ノ件ヲ御報告致シマス、上埜
安太郞君外一名ヨリ、中野寅吉君ヲ懲罰委
員ニ付スルノ動議ガ提出サレマシタ、又工
藤鐵男君ヨリ、原惣兵衞君ヲ懲罰委員ニ付
スルノ動議ガ提出サレマシタ、孰レモ此兩案
ハ畄保スルコトニ致シマシタ、御報告致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=31
-
032・志賀和多利
○志賀和多利君 議長、議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=32
-
033・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 志賀君何デス
カ(議場騒然)議事進行ニ關シテ發言ノ要求
ガアリマズ、此場合許可致シマス、東幸治
君
〔東幸治君登壇〕
〔「議長」「議長」「院議ハ咏躪サレテ居ル
ヂヤナイカ」「議長議場ヲ整理セヨ」其
他發言者多ク議場騒然〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=33
-
034・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス
-静粛ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=34
-
035・東幸治
○東幸治君 諸君、私ハ議事ノ進行ニ付テ
一言意見ヲ(議場騒然)私ハ過グル解散
サレマシタ所ノ議會ニ初メテ出席シタ者デ
アリマスガ、當時議場ノ光景ハ旣ニ御永知
ノ如クデゴザイマシテ、此演壇ニ於テ行ハ
レマシタ所ノモノハ暴力ヲ用ヒ、腕力ヲ用
ヒ、サウシテ此議場ヲ非常ナ混亂ニ陷ラシ
タノデアリマス(議場騷然)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=35
-
036・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=36
-
037・東幸治
○東幸治君(續) 當時私ガ感ジマシタ所ノ
モノハ何デアルカト申シマスレバ、議會ト
云フモノハ腕力ト暴カト····(議場騒然)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=37
-
038・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜甫ニ願ヒマス
-靜肅ニ願ヒマス-只今田淵豊吉君ハ
院議ヲ無視シ(發言スル者多ク議場騒然)靜
〓ニ願ヒマス-静〓ニ願ヒマス-只今
田淵豐吉君ハ(「ソレハ別問題ダ」「發言中ダ」
ト呼フ者アリ)謝辭ヲ朗讀スルニ方ッテ誠ヲ
缺キ、院議ヲ無視シタル行動ヲ執ッテ居リマ
スルカラ、此場合田淵君ヲ徵當罰ニ付シマス
(拍手起ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=38
-
039・東幸治
○東幸治君(續) 諸君、私ノ信ズル所ニ依
リマスレバ(議場騒然)私ノ信ズル所ニ依リ
マスレバ、議員ガ各〓其言動ヲ慎ミ、以テ議
會ノ品位ヲ保持シ、向上シ、而シテ國民ノ
信望ヲ議會ニ繫ギ、サウシテ此國民ヲシテ
安ンジテ自己ノ政治ヲ議會ニ託セシムルト
云フコトニ努力スルト云フコトガ、憲政ヲ
擁護シ、政黨内閣ノ發達完成ヲ圖ル所以デ
アルト私ハ信ズルノデアリマス、然ルニ口
ニ憲政ノ擁護ヲ唱ヘ、政黨內閣ノ確立ヲ標榜
スル諸君ガ-殊ニ憲政會ノ諸君ガ昨今爲
シツヽアル所ノ行動ハ果シテドウデアルカ
(「議事進行デハナイ」ト呼ヒ、其他發言者多
シ)曩ニハ憲政會ノ某有力者ガ、無援孤立ノ
境涯ニ在ル所ノ田淵君ヲ毆打シ、而モ其問
題ヲ此壇上ニ於テ得々トシテ辯ジ、又先日
ハ武藤山治君ノ其演說ヲ聽カズシテ、片言
隻話ヲ捉ヘテ之ヲ懲罰ニ付スルト云フガ如
キコトハ院內ニ於ケル言論ノ自由ヲ束縛
シ、之ヲ迫害シ、之ヲ奪取スルモノデアル
ト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)諸君、斯
ノ如キハ果シテ此議會ノ品位ヲ向上スル所
以デゴザイマスカ、果シテ國民ノ信望ヲ議
會ニ繫グ所以デゴザイマセウカ、果シテ政
黨政治ヲ口ニ言フ所ノ議員ノ爲ス所デゴザ
イマセウカ(「何ガ議事ノ進行ダ」ト呼フ者
アリ)之ガ爲ニ議事ノ進行カ妨ゲラレテ居
リマス、然ルニ政友會ノ諸君ハ、嘗テ吾々
ト苦樂ヲ共ニ致シタ穏健ナル御人物ガ多イ
爲ニ、今期議會ニ於テハ其能慶洵ニ誠意ノ
在ルモノガアリマス、然ルニ憲政會ノ諸君
ハ其在野ノ當時如何ナル事ヲ爲シタカ人気
事進行ニ何ノ關係アルカ」其他發言者多シ)
或者ハ卓ヲ叩キ、或者ハ足ヲ踏鳴シ、或者
ハ動物ノ聲ヲ爲シテ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=39
-
040・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 東君-東君注
意致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=40
-
041・東幸治
○束幸治君(續) サウシテ己レ一タビ其地
位ニ就クヤ、曩ニ人ヲ貴メタ所ヲ以テ今自
ラ之ヲ行ハントスル者ハ何人デアルカ拍
手)是等ノ事モ此議事ノ進行ヲ妨ゲ、議會
ノ能率ヲ增進シナイ所ノ大ナル原因デアル
ト私ハ思フノデアリマス、殊ニ-殊ニ本
日ノ懲罰事犯ノ議事ノ進行中ニ於ケル或人
ノ行動ノ如キハ果シテ如何デアルカ、私
ハ議會解散當日初メテ議場ニ列シタ者デゴ
ザイマスルガ、其議場ノ光景タルヤ暴力ト
腕力、或者ハ「フラスコ」ヲ投ゲ、或者ハ大
臣ノ草稿ヲ引裂イテ之ヲ投付ケ(議場騒然)
斯樣ナ亂暴狼藉ヲ働イタノデアリマスルガ、
果シテ今日再ビ之ニ類似ノ事件ヲ見タト云
フコトハ、議事進行ノ爲ニ甚ダ遺憾ト感ズ
ルノデアリマス(拍手)殊ニ私ガ遺憾ニ堪ヘ
マセヌノハ、與黨ノ諸君ガ少數黨ノ有スル
唯一ノ武器デアル所ノ言論ノ自由ヲ壓迫ス
ルト云フコトデアル(「何ガ壓迫ダ」ト呼ヒ
議場騒然)證據ガアル-證據ガアル(「何
ノ證據ガアル」ト呼フ者アリ)本日ノ議事日
程ヲ見マスルト此日程ノ中ニ七名ヨリ質
問ガ提出致サレテ居ルノデアリマス、然ル
ニ此壇上ニ於テ其質問ヲ許サレタル者ハ
政府ノ與黨タル所ノ横山勝太郞君、竹內友
治郞君ノ二君ニ過ギナイノデアリマス、然
ルニ我黨ヨリハ三輪市太郞君ヨリ農村救濟
政策ニ關スル質問、原惣兵衞君ヨリ國民思
想ニ關スル質問、中村嘉壽君ヨリ外交財政
產業ニ關スル質問ハ出テ居ルノデアリマス、
私ノ承ル所ニ依リマスレバ、原則ト致シマ
シテ質問者ハ此壇上ニ於テ之ヲ爲シ、政府
當局亦此壇上ニ於テ之ニ各フルト云フノガ
原則デアルト承ッテ居リマス(發言スル者多
シ)諸君ガ然ラバ何故ニ此火曜日ヲ以テ質
問日ト定メタノデアルカ、議員ヲシテ自由
ニ此壇上ニ質問ヲ爲サシメ、政府當局者ヲ
シテ此壇上ニ於テ之ニ各辯ヲ與ヘル爲ニ、
特ニ火曜日ヲ以テ質問日下定メテアルノデ
ハアリマセヌカ(發言スル者多シ)然ルニ拘
ラズ斯樣ナ事ヲ爲サルト云フコトハ或ル程
度-或ル程度ニ在野黨ノ言論ヲ制限スル
モノデアルト私ハ考ヘルノデアリマス(拍
手)若シ-若シ議長ニシテ議員ガ其言動
ヲ愼ミ、議會ノ品位ヲ向上シ、國民ノ信念
ヲ議會ニ繫グト云フコトニ御同感デゴザイ
マスナラバ、是等ノ人々ニ付十分ナル警告
ヲ與ヘテ貰ヒタイノデアリマス(發言スル
者多シ)若シ之ガ爲ニ國務ガ澁滯シ、議事ノ
進行ガ圓滑ニ參ラズシテ、サウシテ議會ノ
能率ガ舉ガラナイト云フコトニナリマスナラ
バ此責任ハ憲政會諸君及其他ノ與黨ガ負
フベキモノナリト私ハ信ズルノデアリマス、
之ニ就キ議長ノ御意見ヲ承リタイ(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=41
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042・横山勝太郎
○横山勝太郞君 議長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=42
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043・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 橫山君何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=43
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044・横山勝太郎
○横山勝太郞君 田淵豊吉君ニ對スル懲罰
事犯ニ付テ、直ニ是ヨリ委員會ヲ開キタウ
ゴサイマス、御許可ヲ求メマス(「賛成」ト
呼ブ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=44
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045・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=45
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046・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 懲罰委員ノ方ハ懲罰委員
室ニ御集リヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=46
-
047・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 只今東君ヨリ議
事進行ニ關シ議長ニ御質問ガアリマシタカ
ラ、御答ヲ致シマス
〔「謹聽」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=47
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048・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 何デスカ
〔「謹聽」ト呼フ者アリ笑聲〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=48
-
049・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 東君ハ議員諸君
ヨリ提出サレタル質問書ニ對シテ、政府カラ
答辯畫ノ參ッタモノガアリ、又答辯書ノ來ラ
ザルモノニハ、大臣自ラ出テ之ニ說明ヲ與ヘ
ル、其說明ヲ與ヘタノハ單リ與黨ノ議員ノ
ミデアル他ノ者ニハ答辯書ヲ送ッテ居ル
コトハ如何ニモ是ガ偏頗デアルト云フノ
御意見デアッタヤウニ思ヒマスル、議員ノ質
問書ニ對スル政府ノ答辯ニ關シテ、議長ハ
此間何等ノ偏頗ノ處置ハ致シテ居リマセヌ
(拍手)適當ノ處置ヲ執ノテ居ルノデアリマ
ス而シテ辯明書ノ參リマシタル其議員ノ
諸君ノ意見陳述ハ、諸君ノ同意ヲ得マシテ、
議事日程ノ終了後ニ於テ悉ク之ヲ發言ノ順
序ニ依ノテ許可スルコトニ致シテアリマス
(拍毛)此段御答ヲ致シマス、(拍手)日程第
二、鑛業法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
やく、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス
第二鑛業法中改正法律案(政府提出
貴族院送付)第一讀會
鑛業法中改正法律案
鑛業法中左ノ通改正ス
第八十條鑄業權者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ鑛夫カ業務上負傷シ疾病ニ罹リ又
ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ
遺族若ハ本人ノ死亡當時其ノ收入ニ依
リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員池田宏君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=49
-
050・池田宏
○政府委員(池田宏君) 只今上程ニナリマ
シタ鎬業法中改正案ノ事ニ付キマシテ、提
案ノ理由ヲ說明申上ゲマス、本案ハ鑛業法
中坑夫ノ業務上負傷致シマシタリ、或ハ疾
病ニ罹リ、若クハ死亡致シマシタ場合ニ於
キマシテ、鑛業権者ガ坑夫ニ對スル扶助ニ
關スル規定ヲ改正致サウト云フノデアリマ
ス、鑛業權者ガ坑夫ヲ扶助致シマスル規定
ニ於キマシテハ丁度現行法ト同ジヤウナ
規定ガ工場法ノ中ニモアッタノデアリマス
ルガ、昨年ノ議會ニ御協賛ヲ經マシテ、T
度今回改正ヲ致サウトシテ提案ヲ致シテ居
リマスルガ如クニ、工場法ソトキト同ジ規
定ガ改正ヲ致サレテ居リマスルノデ、是ト
權衡ヲ取リマシテ、全ク工場勞働者ト同ジ
關係ニ在リマスル坑夫ニ對スル扶助ノ事デ
アリマスルカラ、工場ノ勞働者ト鑛業ノ勞
働者トノ問ノ権衡ヲ保チマシテ、同ジヤウ
ニ改正ヲ致シタイト云フノ趣旨デアリマ
ス又扶助ア原因ニ關シマスル現行ノ制限
ニ改正ヲ致シ、又扶助ヲ受クベキ者ノ範圍
ヲ擴張致シマシテ、勞働者保護ノ實ヲ擧グ
ルニ努メタイト云フ趣旨デアリマス、何卒
御審議ノ上速ニ御協賛ヲ給ハランコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=50
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051・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第三、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第三右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
§ノ選舉発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=51
-
052・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ委員ノ數ヲ九名ト
シ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=52
-
053・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作問君ノ動議ニ
御異議ハアリマセヌカ
〔「特成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=53
-
054・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御塁議ナシト認メマス、其通リニ決シマ
ス-御諮リ致ス事ガアリマス、第一部選
出懲罰委員〓瀨一郎君、右常任委員辭任
ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=54
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055・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ガナケレ
バ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選
舉ヲ行ヒ、議長ニ屆出アランコトヲ望ミマス
-日程第四、所得稅法中改正法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許
シマス、提出者菊池謙二郞君
第四所得稅法中改正法律案(菊池謙
二郞君提出)第一語會
所得稅法中改正法律案
所得稅法中左ノ通改正ス
第十六條第一項中「不具癖疾者」ノ下ニ「又
ハ中學程度以上ノ學校在學者」ヲ加へ、同
項第一號乃至第三號ヲ左ノ如ク改ム
所得千圓以下ナルトキ
年齡十八歳未滿若ハ六十歲以上ノ
者又ハ不具療疾者一人ニ付百圓
中學程度以上ノ學校在學者
一人ニ付二百圓
二所得二千圓以下ナルトキ
同一人ニ付七十圓
同一人ニ付百五十圓
三所得三千國以下ナルトキ
同一人ニ付五十圓
同一人ニ付百圓
〔菊池謙二郞君登壇、拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=55
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056・菊池謙二郎
○菊池謙二郞君 只今上程サレマシタ所得
稅法中改正法律案ノ提出理由ハ極メテ簡單
デゴザイマス、御承知ノ通リ近時少年、靑年
ガ優越觀念ヨリ、或ハ向學心ヨリシマシテ
中學校、若クハ是ト同等ノ學校竝ニソレ以
上ノ學校へ入學スルコト非常ニ多クナリマ
シタ、此趨勢ハ抑ヘントシテモ抑ヘルコト
ガ出來マセズ、又舊來日本ノ風トシマシテ、
向學ノ子弟ニ衣食ヲ節シテモ之ニ學資ヲ給
助スルト云フコトガ美風デアリマス、然ルニ
目下物價ガ非常ニ高クアリマシテ、又之ニ
要スル學資モ非常ニ多イノデアリマス、假
令物價ノ低廉ナル地方ニ於キマシテモ、中
學生ノ學資ト云フモソガ、約平均三十圓內
外デアリマス、父兄ノ負擔ト云フモノハ決
シテ輕クナイノデアリマスカラシテ、ドウ
ガ其負擔ヲ輕減シタイト云フヤウナ希望カ
ラ、所得稅法第十六條ニ改正ヲ加ヘマシテ、
千圓以下ノ所得ニ對シマシテ、若シ本人竝
ニ子弟ガ中學以上ノ學校ニ入學スル者ガア
リマシタトキハ、一人ニ付テ二百圓、二子
圓以下ノ所得者ニ對シマシテハ同ジウ百五
十圓、三千圓以下ノ所得者ニ對シマシテハ
同ジク百圓ト云フ額ヲ控除シマシテ、所得
稅ヲ或ハ免ジ、或ハ輕減スルト云フコトニ
シタイト云フ目的デアリマス、御承知ノ通
リ所得稅ノ中ニハ委託生ト留學生トカ云フ
者ノ學資金ハ、所得額ヨリ業ニ既ニ控除サレ
ルコトニチッテ居リマス、此權衡カラ見マシ
テモ、本案ヲ提出スルノハ實際ノ上ニ於テ、
今申ス通リ權衡ノ上ニ於テモ最モ理由ノア
ルコトヽ考ヘルノデアリマス、ドウカ諸君
ノ御賛成ヲ得マシテ成立スルヤウニ御願致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=56
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057・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ議員森田金藏君提
出、營業稅法廢止法律案ノ委員ニ併セ付記
セラレタイ、尙ホ同時ニ其委員ノ數ヲ特ニ
十八名ニ增加セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=57
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058・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
異議アリマセヌヌ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=58
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059・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、左樣ニ決シマス、日程第五農村
振興ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、提
出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、川原茂輔君
第五農村振興ニ關スル建議案(床次
付二郞君外十七名提出)
農村振興ニ關スル建議案
農村振興ニ關スル建議
農村ノ興廢ハ國運ノ消長ニ關スル最大ナ
ルモノアリ然ルニ今ヤ疲弊其ノ極ニ達セ
リ國家ノ爲洵ニ深憂ニ堪ヘス本院ハ曩ニ
農村振與ノ建議ヲ爲シ切ニ其ノ對應施設
ヲ望ミタルニ現内閣施政ノ方針中一言ノ
農村ニ及フナシ政府ハ速ニ適當ノ對策ヲ
樹テ之カ振興ノ實ヲ承クヘシ
右建議ス
〔川原茂輔君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=59
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060・川原茂輔
○川原茂輔君 諸君、私共同志ガ提出致シ
マシタ農村振興ニ關スル建議案ノ說明ヲ申
上ゲタイト存ジマス、本問題ニ對シマシテ
ハ曩ニ内閣ノ施政方針ニ關スル質問ノ場
合ニ於テ、又豫算討議ノ場合ニ於テ、其他
裁多ノ場合ニ於テモ、此農村振興ノ必要ニ
シテ缺クベカラザル所ノ應答及辯論ハ凡ソ
盡シテ居ルノデアリマス、特ニ說明ヲ申上
ゲル事モアリマセヌケレドモ大體ニ於テ
二三ノ點ニ付テ提案ノ理由ヲ說明シテ、諸君
ノ御賛同ヲ願ヒタイト存ジマス、明治維新以
來競多ノ問題ニ對シマシテハ、或ハ保護糞勸
ヲ爲シ、若クハ多大ノ國帑ヲ費シテ以テ、其
事業ノ進展ヲ圖リマシタコトハ多々アルノ
デアリマス、而シテ特ニ此農村ノ問題ニ
對シマシテハ、遺憾ナガラ他ノ諸問題ト比
較スレバ甚ダ冷淡デアッタト云フコトハ事實
デアル、近頃或ル搏士ノ說ナゾニ依リマス
レバ今ヨリ二十五年ノ後、卽チ大正三十
八年頃ニ至レバ、從來ノ生產者ノ比較ヨリ
シテ段々生活上ノ問題ニ移リマシテ、今六
十万石乃至七十万石アレバ國民ノ生活ニ必
要ナル數字デアリマスケレドモ、此在來ノ
增加ノ率ヨリシテ三十七八年ノ頃ヲ論ズレ
一億万石ト云フ米ヲ作ヲナケレバナラ
ヌト云フ議論モアルノデアリマス、然ラバ
如何ニシテ國民ノ生活ノ安定ヲ維持セシメ
ルカト云フコトハ今ヨリ大ニ國家ノ問題
ドシテ討究ヲセナケレバナラヌコトヽ存ズ
ルノデアリマス、口ヲ開ケバ農村ハ疲弊ノ
極點ニ達シテ居ル、之ヲ救濟スルコトガ必
要ナリト云フコトハ何人モ論ズル所、而シ
テ今日ノ農村ノ實際ヲ調ベマスレバ、口先
バカリノ宣傳デ以テ、農家ノ疲弊ヲ醫スル
コトバ出來ナイノデアリマス、故ニ繪ニ描
イタル美酒佳肴ヲ以テ、農村生活ノ安定ヲ
期スルコトハ出來ナイノデアリマス、卽チ
實際ニ之ヲ行ヒ、而シテ眞ニ農村ノ疲弊ヲ
救濟セナケレバナラヌノデアリマス農務
省ノ獨立ノ如キハ數年來ノ懸案デアル、又
農家ノ副業ヲ奬勵スルト云フコトモ是モ年
來ノ懸案トシテ、之ヲ實行シナケレバナラ
ヌコトハ當然デアリマス、今ヤ農家ノ副業中
ニ於テモ特ニ乳牛ノ如キハ、年々歲々增加ノ
一方ニ傾イテ居ルノデアル、然ルニ此間ノ
關稅改正案ノ如キハ卽チ農家ノ副業タル
乳牛ノ奬勵ノ一大頓挫ヲ與ヘル結論ヲ呈ス
ルナドト云フコトハ、所謂繪ニ描イタル美
酒佳肴、口先バカリノ宣傳デ、眞ニ農家ノ
疲レ切ッタル此現狀ヲ救濟スルノ意思アリ
ヤヲ疑フノ已ムヲ得ザルニ至ノタノハ遺
憾トスルノデアリマス、曩ニモ申上ゲ、又
此本案ノ說明中ニモ書イテアリマスル通
リ、現內閣ノ施政ノ方針ノ中ニ於テ、一言
ノ此事ニ及バザリシハ甚ダ遺憾千万デアル、
又此建議案ハ卽チ七月二日ニ提出シタノデ
アリマス、然ルニ延ビ々々ニナッテ、今日ノ
最早會期剰ス所三日ノ今日マデ付議セラレ
ヌデ來ラレタト云フコトハ、卽チ進行ヲ圖ル
所ノ與黨諸君ノ責任トシテ、斯カル遷延ヲ
シテ此問題ノ實現ヲ遲カラシメタコトハ、
政府トシテ卽チ與黨諸君トシテ負ハナケレ
バナラヌノデアル、若シ諸君ニシテ眞ニ意
思アレバ、既ニ是マデノ中ニ屢〓機會ハ到來
シタノデアル、是ハ議長トシテ其處置ノ不
當ヲ遺憾トシ、與黨諸君ガ此問題ニ冷談ナ
ルコトヲ遺憾トスルノデアル、今日ノ問題
ハ卽チ國家ノ問題トシテ、是ヨリ大事ナ問
題ハ無イ、之ニ向シテ眞ニ熱烈ニ此問題ノ
進展ヲ圖ラントスルモノハ卽チ我黨ガ魁
ヲシテヤッテ行カナケレバナラヌノデアリ
やっ、滿場一致トハ行クマイガ、セメテ過
半數ノ賛成ヲ得テ(此時私語スル者多シ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=60
-
061・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 靜肅ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=61
-
062・川原茂輔
○川原茂輔君(續) 本案ノ通過ニ努力セラ
レンコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=62
-
063・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 本案ニ對シテ、
賛成演說ノ通告ガアリマス、浦野謙朗
君
〔浦野謙朗君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=63
-
064・浦野謙朗
○浦野謙朗君 私ハ本建議案ニ對シマシ
テ、賛成ノ意見ヲ努メテ簡單ニ附加ヘタイ
ト思ヒマス、我國ハ古來農業ヲ以テ立國ノ
大本ト致シマシテ居リマスコトハ、今更私
共ガ喋々ヲ要セザルコトデアリマスガ、農
業ハ有ユル總テノ產業ノ基礎デアリマシ
テ、國家經濟ノ原動力デアルト思ヒマス、故
ニ其消長ハ直ニ國家ノ隆替ニ關スルモノデ
アリマス、農業ノ發達ニ伴ヒマシテ、商工
業ノ隆盛ヲ促シ、此雙者ガ相對時シテ、立國
ノ鞏固ヲ確立スルト云フコトガ、最モ適當
ナル國是デアラウト考ヘマス、殊ニ農業ハ
國民食糧ノ供給者タル重大ナル任務ヲ持。シ
テ居リマス、食糧ヲ白給シ得ザル國民、食
糧供給ノ獨立ヲ爲シ得ザル國家程危險ナル
モノハ無イカト存ジマス、彼ノ歐洲ノ大戰
亂ニ於テ、獨逸國ノ全敗ヲ御覽ナサイ、又
其食糧ノ大部分ヲ國外カラ供給シテ居シタ
所ノ英國ガ中途自給策ニ焦慮致シマシタノ
ヲ見マシテモ、實ニ明白ナル事實デアリマ
ス、飜テ我國ノ主要食糧タル米ノ產額ヲ見
マスルニ、年々三百万石乃至五百万石ノ不
足ヲ告ゲテ居ルノデアリマス、然ルニ其價
格ハ依然トシテ低位ニ在リマシテ、農家經
濟ノ收支ヲ償フコトガ出來マセヌ爲ニ日一日
農村ハ不振、農村荒廢ノ聲ヲ高クシテ居ル
ノデアリマセヌカ、農家ハ難儀ヲシテ米ヲ
作リ、而シテ財產ヲ減ラシ、負債ヲ增スト
云フ今日ノ狀態デアリマス、近來農民ガ豐
年ヲ呪フト云フヤウナ現象ヲ呈シマスノ
ハ國家ノ爲ニ由々シキ大事デアラウト考
ヘマス、諸君、農村ノ狀態ハ十年一日ノ如
ク何等ノ發展ヲ見ザルノミナラズ、却テ衰
亡ニ走リツヽアルノデアリマス、然ルニ都
市ノ膨脹ハ如何、商工業ノ發達ト共ニ、文
化的施設ハ獨リ都市ニ於テ行ハルヽガ故
ニ、農村ノ子弟モ都市ノ物質的文明ニ誘ハレ
テ、年々農村ヲ棄テヽ都市ニ走ル者ノ多キ
傾キヲ漸次增加致シマシテ、農村ハ愈〓荒荒
廢スルノデアリマス、私ガ十年前ニ斯樣ナ
ル俗謠ヲ聞イタコトガアリマス、「田舎見ル
ナラ今出テ見ヤレ、今ニ野トナリ山トナル」
ト云フ俗謠ヲ聞イタコトガアリマス、ソレ
ガ今日實現シテ居ルノデアリマス、彼ノ美
田ガ草原トナリ、或ハ山林トナリツヽアル
ノデアリマス、今ニ於テ、是ガ根本救濟策
ヲ施サナカッタナラバ、遂ニハ國家ヲ危殆
ニ導クモノデアラウト信ジマス、現農商務
大臣高橋氏ハ曾テ農務省ノ獨立ヲ言明
シ、食糧ノ自給ヲシタイト申サレタヤウニ
聞イテ居リマス、又過般ノ總選擧ニ於キマ
シテ、何レノ黨派タルヲ問ハズ、農村ニ關
係ノアル代議士諸君ハ、其主義政見ヲ發表
スルニ當リマシテ、農村振興策ノ急ナルコ
トヲ發表サレテ、選舉區ニ誓ハレタコトヽ信
ジテ居リマス、而シテ今回有力ト稱スル聯
立內閣ガ出來、(^亂中元總理大臣高橋氏ハ主
義ノ爲ニ私情ヲ拾テヽ農相ノ椅子ニ甘ンゼ
ラレタト云フコトヲ聞キマシタル吾々農民
ハ、願ル敬意ヲ以テ-農村ノ爲ニ多大ナ
ル期待ヲ以テ臨ンダノデアリマス、然ルニ
特別議會ノ劈頭ニ於テ施設ノ方針中ニ、
言モ農村振興ニ及バナカッタト云フコトハ
吾人其意外ニ驚カザルヲ得ナイノデアリマ
ス、今日疲弊困憊其極ニ逹シテ居ル農村、
而モ國家社會上ニ、宗〓上ニ、〓育上ニ
モ、將夕財政ノ上ニモ、重大ナル關係ヲ有
スル此農村問題ニ一言モ及バナカッタト云
フコトハ、洵ニ長大咲息ヲ禁ズル能ハザル
者デアリマス、諸君、大震火災復興ノ費用
ハ實ニ十數億圓ヲ計上サレテ、御互ハソレ
ヲ協賛シタノデアリマス、固ヨリ帝都竝ニ
國家ノ重大ナル諸機關ノ復興ヲ計ル費用デ
アリマスガ故ニ、國民ハ忍ンデ之ニ服從ス
ル者デアリマス、恰モ急性病タル震災ノ復
興ハ之ヲ救濟シ、慢性病タル農村復興ハ
之ヲ拾テヽ顧ミザルト云フガ如キハ、國家
ノ爲ニ實ニ重大ナル事デアリマス、之ヲ速
ニ是ガ救濟策ヲ講ゼラレントスル此建議案
ニ對シテ、東心ヨリ贊成ノ意ヲ表スル所以
デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=64
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065・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ議長指名、特二二十
七名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=65
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066・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=66
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067・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、作間君ノ動議ノ如ク決シマシタ、日
程第六、農村振興ニ關スル建議案ヲ議題ト
致シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、提
出者東武君-東君ハ取消シマス、高田耘
平君
第六農村振興ニ關スル建議案
(東武君外十六名提出)
農村振興ニ關スル建議案
農村振興ニ關スル建議
今ヤ農村ハ疲弊困憊ノ極ニ達シ各種ノ社
會問題惹起シツツ有リ此ノ際ニ當リ適當
ナル方策ヲ講スルニ非サレハ遂ニ農村ハ
滅亡シ國家ノ基礎ヲ危フスルニ到ルヤ必
セリ仍テ政府ハ這般ノ事情ニ鑑ミ速ニ左
ノ各項ノ實現ヲ圖リ以テ國本ノ培養ニ勉
ムヘシ
-農務省ノ獨立
二農家負擔ノ輕減
三米穀法及關稅定率法ノ改正
四自作農ノ維持及創定
五農業金融ノ充實
六農業倉庫ノ普及及充實
七農業〓育ノ改善
八義務〓育費國庫貞擔ノ增額
右建議ス
〔「簡單々々」ト呼フ者アリ〕
〔高田耘平君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=67
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068・高田耘平
○高田耘平君 只今演壇ニ登ラナイ中ニ簡
單ト云フ御話ガアリマシタガ、決シテ簡單
ニハヤリマセヌ、緩クリヤリマス、只今農
村振興ノ建議案ノ說明ガ、政友本黨ヲ代表
シテ川原茂輔君ヨリ此演壇ニ於テ述ベラレ
マシタガ、如何ニモ簡單ナル御說明デゴザ
イマス、勿論問題ハ非常ナル重大問題デゴ
ザイマシテ、其振興ノ必要ナル理由等ニ付
キマシテハ、大抵盡サレテ居ルコトヽ存ジ
やっ、世間或ハ農村振興ノ問題ヲ以テ、唯〓
議員ガ選擧ノ時ニ之ヲ選舉民ニ手形トシテ
發行シタノデアルカラ、建議案ヲ出スノデア
ル、議場ニ於テ熱心ニ之ヲ主張スルノデアル
トノ誤解ヲ懷ク人モアルヤウニ思フノデア
リマス、而シテ又過般ノ施政方針ニ對スル
演說ニ對シテモ、又豫算總會ノ時ニ於テモ、
政友本黨ノ諸君ヨリ熱心ナル質問ガアリマ
シタガ、其質問ノ内容ヲ拜見スルト、何レ
モ半バ彈劾的ノ言葉デアリマシテ、何故ニ
現在ノ農村ヲ振興シナケレバナラヌカト云
フ事ニ付テハ一言モ御話ガ無イヤウニ私
ハ思フノデアリマス(拍手)本日ハ川原總務
ニ依ッテ其理由ガ判然ト聲明サレルカト豫
期シテ居リマシタル所ガ、矢張極メテ簡單
ナモノデ、何故ニ振興シナケレバナラヌカ
ト云フコトニ付テ、一言モ御詁ニナッテ居ラ
ヌコトヲ遺憾トスルノデアリマス、(私語ス
ル者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=68
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069・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 私語ヲ禁ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=69
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070・高田耘平
○高田耘平君(續) 勿論問題ハ急要デアル、
內容ヲ言ハズトモ宜シイカモ知レヌケレド
モ、私ハ其內容ヲ詳シク申上ゲルト云フコ
トガ、何ヨリモ適當ナル事デアルト固ク信
ズルノデゴザイマス、唯、z政府ガ何故ヤラヌ、
オ前ハ何故ヤラヌト云フ彈劾的ニ御詰スル
ダケデハ徹底シナイノデアリマス、故ニ私
ハ其何故ニ振興シナケレバナラヌト云フコ
トニ付キマシテノ、大要ヲ中上ゲテ見タイ
卜思フノデアリマス、農村ノ問題ノ我國ニ
重要ナル問題デアルコトハ申上ゲルマデモ
ナイ、随テ大正七年以後農村問題ノ解決ト
シテ制定サレタル所ノ二ツノ法律ガアルノ
デアリマス、其一ツハ大正七年、所謂米暴
動ノ後ヲ承ケテ、時ノ原内閣ガ制定シタル
所ノ開坐助成法デアリマス所謂耕地ノ大
擴張ヲ爲スノ案デゴザイマシタ、併ナガラ
此法律ハ現在ノ所ニ於キマシテ其豫期ヲ裏
切ラレマシテ、我國ノ耕地ハ米麥ソ耕作反
別ハ大正三年ト大正十二年トヲ比較スルト
云フト二十万町步耕作反別ガ減少シタノ
デゴザイマス、故ニ開墾助成法案ハ其目的
ハ極メテ結構ナモノデアッタケレドモ、大正
九年以後未償其他ノ生產物ガ非常ニ下落シ
夕結果ノ爲ニ、殊ニ小麥ノ大下落ノ爲ニ、米
麥ニ對スル我ガ耕地ノ面積ハ十年間ニ二十
万町歩ヲ減少シタト云フコトハ統計上爭
フベカラザル事實デアリマス、又大正十
年ニ大正九年ノ所謂經濟界ノ反動時期ノ後
ヲ承ケテ、米價ガ非常ニ下落シタガ故ニ、之
ヲ何等カノ方法ヲ以テ救濟シナケレバナラ
スト云フ理由ニ依ノテ、所謂米穀法ガ制定セ
ラレタノデゴザイマス、併ナガラ此米穀法
モ單ニ數量ノ調節ニノミ利害ヲ置イタ立法
デアルガ故ニ、加之既ニ農商務當局ガ常ニ
其連用ヲ消費者本位ノ上ニ置キ、フレガ爲
ニ米穀法ガ施行サレ夕爲ニ、生產者タル農
民ハ却テ不利益ナル狀態ニ陷ノテ居ルコト
ハ現在ノ我國農界ノ事情ヲ知ル人ノ總テ
一致シタル結論デアルト思フ、其結果ト致
シマシテ、此二ツノ立法ブ世界戦爭後農村問
題ノ解決ノ一端トシテ割定セラレタル法律
ト致シマシテ極メテ結構ナモノデハアル
ケレドモ、其結果ハ豫期ヲ裏切ラレタコト
ヲ私ハ遣憾トスルノデアリマス、故ニ私共
ハ何トカシテ本問題ノ解決ノ爲メ適當ナル
施設ヲ爲サナケレバナラヌト存ジ、玆ニ政
府ニ向ノテ數項ヲ揭ゲテ之ガ實行ヲ要求ス
ル所以デアリマス、吾々ノ揭ゲタル問題ノ
大部分ハ、帝國經濟會議ニ於テ決議致シタ
モノ、又農政協會ノ決議ノ中ノ主ナルモノ
ヲ採ッタノデアリマス、而シテ吾々ガ揭ゲタ
ル項目以外ニ於テ、我國ノ輸出品ノ大宗夕
ル養蠶問題、或ハ副業奬勵ノ問題、更ニ進
ンデハ林業ノ發達ノ問題等多々ゴザイマス
ケレドモ、吾々ハ其施行シタル政策ノ範圍
ガ極メテ廣汎ニシテ、而シテ其結果ガ直接
國民-農民ノ利益ニ重大ナル關係アルモ
ノニ就テノミヲ數項揭ゲタンデアリマス、
決シテ養蠶ノ問題、林業ノ問題、副業奬勵ノ
問題ヲ等閑ニシタルモノニ非ズト云フコト
ヲ御了承ヲ願ヒタイノデアリマス、偖テ農
村ノ疲弊、ドウ云フ事ガ此農村ノ疲弊デア
ルカ、是ハ農村ノ人ハ十分知ッテ居ルノデア
ルガ、都會ノ人ハ知ラヌ人ガ多イカト思ヒ
マスカラ、ソレヲ簡單ニ申上ゲタイト思フ、
第一我國ノ總戶數ニ對シテ、農家ノ戶數ガ
割合ニ減シテ居ルノデゴザイマス、卽チ總戶
數ノ曾加ニ對シテ割合ニ農家ノ戶數ガ增加
シナイト云フコトガ一ツノ事由デアリマス、
殊ニ自作農ガ年々滅ル一箇年ニ約一万二
千戶宛ノ比例ヲ以テ自作農ガ減シテ居ルノ
デゴザイマス、第三ニハ農民ノ負擔、否、農
民ノ土地ヲ抵當トシタル所ノ債務ノ年々增
加スルコトデゴザイマス、其增加ノ程度ヲ
調ペテ見ルト云フト、勿論是ハ勸業銀行ニ
於テ調ベタモノデアッテ、其全部ガ農業者ノ
債務デハナイノデアルケレドモ、大體ニ於
テ先ヅ以テ農業者ノ債務ト見ルコトガ出來
ルノデアリマス、大正四年度ニ於テ其額ガ
十四億万圓デアックノガ大正十一年度ノ終
リニ於テハ三十六億万圓トナンテ居ル、大正
九年度、十年度、十一年度ト年々五六億万
圓宛ノ比例ヲ以テ債務ノ增加スル割合ヲ見
ルト云フト更ニ大正十二年ニ於テハ恐
ラク四十二三億圓ニ達シテ居ルコト
思フノデアリマス、斯ノ如ク農家負債
ノ增加ト云フ事柄ハト極メテ農村ニ對シテ
容易ナラザル問題デアルト思フノデアリマ
ス、更ニモウ一ツハ前申上ゲマシタ通リ、
米麥ノ耕作反別ノ減少ト云フコトデアリマ
ス卽チ大正三年ト大正十二年トヲ比較ヲ
スルト云フト、此十箇年間ニ於テ米ノ耕作
反別ハ十万町步增シマシタガ、麥類ノ耕作
反別ハ三十万町歩ヲ減ジタノデゴザイマス、
差引米麥ノ耕作反別ニ於テ、十箇年間ニ二
十万町步ヲ減少シタト云フ事柄ハ、是亦容
易ニ見遁スベカラザル事デアルト思ヒマ
ス、此統計ハ農商務省ノ發表シタモノデゴ
ザイマス、一點モ誤ガ無イノデゴザイマス、
更ニ又田畑ノ價格ノ非常ニ下落セシコト、
小作爭議ノ各所ニ頻發スルコト、又農業者
ノ子弟ガ其職ヲ厭ァテ都市ニ集マリ、商工業
勞働者トナル者ガ、農業者ノ子弟ノミナラ
ズ、村落ニ在ル相當有力ナル農家ガ、全部
其財產ヲ賣拂シテ都市ニ集中スルト云フ現
象モ明ニ現レテ居ルノデアリマス、之ガ爲
ニ起ル問題ハ、所謂農民ガ一般ニ農業ヲ嫌
フ、喜ンデ其職ニ從事シナイ半面ニ於テ、政
府ニ對シテ政府ノ政策ノ甚ダ農民ニ對シテ
冷淡ナルコトニ對シ、怨嗟ノ念ヲ絕タザル
ト云フ狀況ニ在ルノデゴザイマス、斯ル實
狀ヲ呈シタル其根本ノ理由ハ何デアルカト
云ヘバ農業ト云フモノガ所謂收支均衡ヲ
得ルコトノ出來ナイ產業ニ相成ッタカラデ
アル、卽チ米ヲ耕作スレバ損ヲスル、麥ヲ
作レバ尙ホ損ヲスル、繭ヲ取シテ見テ一年位
ハ好イコトモアッタガ、多クノ場合ニ於テハ
損デアル、斯ウ云フコトガ大體ニ於キマシ
テ-其他ノ事由モゴザイマセウケレド
モ、大體ニ於テ農民ガ其職ヲ厭フト云フコ
トニナンテ、生活ノ安定ヲ得ナイコトニ陷ノ
夕原因デアリマス、或ハソンナ事ハ又委員
會デ述ベロト御シヤルカ知レマセヌガ、私
ハ此所デ申上ゲマス、今玆ニ大正十一年ノ
田一段步當リノ生產費及石當リノ生產費ヲ
調ベテ見ルト云フト是ハ全國二十府縣ノ
米ノ生産地ニ就テ帝國農會ガ調査シタル結
果デアリマス、卽チ段當リノ米ノ生產費ハ
自作農ニ於テハ百圓九十五錢、自作農兼小
作農ニ於テハ九十九圓十八錢、小作農ハ九
十四圓七十錢、更ニ之ヲ一石當リニスル
ト生產費ハ自作農ガ平均三十七圓二十六
錢自作兼小作農ノ平均ガ三十六圓三十
二錢、純然タル小作農ノ一石ノ生產費ガ
三十四圓二十一錢斯ウ云フ計數ガ出ルノ
デゴサイマス、然ルニ上記二十府縣エ於ケ
ル所ノ玄米一石ノ平均價額ハ如何ト調べ
テ見ルト、二十九圓三十五銭デアル即チ
生產費ヲ米ノ最低價格ト見マスレバ、其自
作農ニ於キマシテハ一石ニ付テ七圓九十一
錢自作兼小作農ニ付テハ一石ニ付テ六圓
九十七錢、小作農ニ付テハ一石ニ付テ四圓
八十六錢ト云フ缺損ヲ來スノデゴザイマ
ス、斯カル-是ハ米ニ付テノコトデアル
ケレドモ、若シ大麥、小麥ニ付キマシテノ
詳シキ計算ヲ致シマシタナラバ、是レ以上
非常ニ損害ガ-損害トハ申シマセヌガ、
損ヲスルコトヽ思フノデゴザイマス、諸君、
都市生活ト農村生活トノ比較ニ於キマシテ、
都市生活ヲ人間ガ厭フコトハ、是ハ自然ノ
情デアルト思フ、併ナガラ農村生活ト云フ
モノハ都市生活程便宜ヲ得ルコトモ出來ズ、
娛樂機關モ無ク、極メテ不自由千万ナモノ
デアルケレドモ、生活ノ安定ト云フモノハ
比較的ヘ日、デハ農民ニアッタノデアリマ
ス、所ガ世界戰爭以後、殊ニ大正九年以後
ノ經濟界ノ變動ノ結果ハ只今中上ゲマシ
夕通リニ米ヲ作レバ損ヲスル、麥ヲ作レバ
損ヲスル、繭ヲ取レバ損ヲスルト云フコト
ニナッタ結果、農村生活ト云フモノガ極メテ
安定ヲ得ザル產業ニ相成シタト云フ事柄ハ
是ハ由々シキ大事デゴザイマシテ、卽チ農
村疲弊ノ根源ガソコニ生ズルコトヲ私ハ非
常ニ憂フル者デアリマス(拍手)然ラバ何故
斯樣ニ算盤ガ採レナクナノタカト云フコト
ヲ私玆ニ申上ゲナケレバナラスノデゴザイ
マス、其理由ハ色々アルト思ヒマスケレド
モ、先ヅ主ナルモノヲ申上ゲマスルト云フ
ト、斯ウ云フ事ガ現レテ居ルノデゴザイマ
ス、是ハ勸業銀行ノ調査デゴザイマス、大
正二年ノ卽ヲ世界戦爭當時ト其後ヲ通ジテ
ノ農產物ノ價格ト、其他ノ日用必需品ノ價
格ト云フモノヲ調ベテ見ルト云フト、割合
ニ米ノ價、其他農產物ノ價格ト云フモノガ
割安ニナッテ居ルノデゴザイマス、其數字ハ
ドウ云フ風ニ現レテ居ルカト云ヘバ之ヲ
先ツ東京ニ於ケル有ユル品物ノ物價指數ヨ
リ割出シタモノニ依シテ見レバ、米ノ購買力
ニ付テ申上ゲレバ、大正三年ニ百デアリシ
米ノ購買力ハ、大正四年ヨリ大正十一年マ
デ通ジテ此八箇年間ニ減少シテ八十五ニ下
落シテ居ルノデゴザイマス、繭ニ付アモ、其
通リ、大正三年ヲ百ト致シマスレバ、其後
大正四年ヨリ大正十一年マデ通ジテ八年間
ノ繭ノ購買力ハ、八十五ニ相成ッテ居ル更
ニ農產物ノ全體ノ購買力ヲ調ベテ見ルト云
フト、大正三年ノ購買力ガ百ト致シマスレ
其後八年間通ジテノ購買力ハ八十九デ
ゴザイマス、斯ノ如ク外ノ物價ノ騰貴率ニ
對シ、米麥其他農產物ノ價格フ騰貫率ト云
フモノハ伴ハナイト云フ事柄ハ、是ハ數字
上ニ現レタルコトデゴザイマス、此事實卽
チ外ノ日用必需品ノ價格ト農產物ノ價格ト
ガ、比例シナイ狀態ニ陷ッタト云フコトガ、
是ハ農家ノ經濟ガ收支均衡ヲ得ルコトノ出
來ナイ一ツノ理由デアルト思フ、更ニモウ
一ツハ勞働賃銀ト農產物ノ價格ノ事デゴザ
イマス、大正三年ノ男子ノ勞働賃銀ヲ百ト
假定致シマスレバ、大正十一年ノ男子ノ勞
働賃銀ハ三百デアリマス卽チ三倍デアリ
マス、女子ノ勞働賃銀ハ、大正三年ヲ百ト
致シマスレバ、大止十一年ハ三百五十デゴ
ザイマス、卽チ男女通ジテノ大正三年ト大
正十一年トノ勞銀ノ比較ヲスルト云フト、
三倍二分五厘デアル是ハ農業勞働者ニ付
テノ調査デゴザイマス、然ラバ農產物ノ價
格ガドウナッタカト云フコトヲ調ベテ見ル
ト云フト、大正三年ノ農產物ノ價格ヲ百ト
云フ指數デ示セバ大正十一年ノ農產物ノ
價格ハ二百十九デアリマス、即チ勞働賃銀
ハ男女通ジテ三倍二分五厘ニナノタケレド
モ重要ナル農產物ノ價格ハ二倍一分九厘
デアルト云フコトデゴザイマス、此點ガ又
農業ト云フモノガ、收支均衡ヲ得ルコトノ
出來ナイ產業ニ相成タト云フコトヲ立證
スルモノデアラウト思フ、更ニ又負擔ノ方
面ヨリ考ヘルト云フト、國稅タル地租ニ於
キマシテハ勿論增加致シマセヌ、併ナガラ
地方稅ノ激增シタルコトハ、或ハ農村ノ或
ルモノハ地方稅其他ヲ通ジテ二倍半トナリ、
甚シキハ三倍半ニナッテ居ルモノガアルト
思フノデアリマス、卽チ負擔ノ增加ト勞働
賃銀ノ增加、而シテ農產物ノ價格之ニ件ハ
ズ、更ニ日用必要ナル所ノ品物ト農產物ノ
價格ト云フモノヽ〓ハナイト云フ此エツノ
理由ガ、所謂農家經濟ヲシテ收支均衡ヲ得
セシメザル根源デアルト私ハ思フノデアリ
マス、然ラバ何故斯樣ニ相成ッタカ、大正
三年ヲ百ト致シマシテ、其後迪ジテ八年間
日用品ト農產物トノ比較ガ、何故割安ニナッ
タカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌト
思フノデアリマス、之ヲ斯ウ云フ風ニ申上
ゲルコトガ大シタ過ハ無イト私思フノデア
ル、勿論日用必需品其總テニ付テ、此處デ
論斷スル譯デハアリマセヌガ、先ヅ酒ト煙
草ニ付テ中上ゲテ見マセウ、是ハ所謂財政
上ノ結果ヨリ此ニ至ッタモノデアルト思フ
ノデアリマス、卽チ大正七八年ノ如キ、米
一石四十圓ノ時モ或ハ二十五圓ニナッタ時
モ、煙草ノ價ハ同ジデアリマス、故ニ米一
升デ大正七八年ニハ或ル煙草二ツ買へタモ
ノガ、米ガ下落シタ結果ハ、所謂其半分ノ
煙草シカ買フコトガ出來ナイ狀態ニナノタ
ノデアリマス、故ニ此米ト煙草ノ比較ニ付
テハ此問題ニ付テハ大正七八年ヨリハ
現在ノ米ノ購買力ガ半分ニナノタト云フコ
トニ言ヘル、卽チ此煙草ガ政府專賣ニアラ
ズ、普通ノ產業デアリマシタナラバ、大正
七八年頃ハ上ッタカ知リマセヌ、一層上シ
タカモ知ラヌ、現在外ノ物償ノ下ッタ場合、
今日以上煙草ノ價格ガ下ラナケレバナラ
又、是ハ國ノ財政上ノ政策ノ上ニ於キマシ
テ、煙草ニ依テ、一億數千万圓ノ金ヲ得ナ
ケレバナラヌト云フ爲ニ、如何ニ米穀ノ伯
段ガ下落シテモ、煙草ノ値段ヲ下ゲナイノ
デゴザイマス、卽チ此財政上ノ結果ト致シ
マシテ、煙草ニ對スル米ノ購買力ガ殆ド半
額近イモノデアル、酒ニ付キマシテモ是ト
同一ナル理由ガアルノデゴザイマス、酒モ
米ガ下リ、勞働賃銀ガ下レバ、其割合ニ下
ラナケレバナラヌノデアル、ケレドモ、其
割合ニ下ラヌノハ何デアルカ、一石ニ付テ
三十何圓ト云フ稅金ヲ取ラレナケレバナラ
ヌ、酒ノ原料タル米ガ暴落シテモ、酒ハ決
シテ其割合ニ下ラヌ、此二ツノモノ、酒ト
煙草ニ對スル國民ノ消費如何ト顧ミマス
ト約十二億万圓ニ逹シテ居ルト存ジマ
ス、更ニ又織物ノ原料夕ル綿絲及肥料、砂糖
等ニ付テ、ドウ云フ圓係ニ相成ッテ居ルカ
ト申シマスト、是等ノ重要ナル物、殊ニ肥
料ノ如キ物ニ付テハ、農業ノ必需品デア
ル、ソコデ是等ノ品物ガ割合ニ下ラス、何
故下ラヌカト云フト、例ヘバ綿絲ヲ產出ス
ル紡績會社ガドウ云フ事ヲスルカ、若シ綿
絲ノ下落ニ依テ非常ニ會社ガ損害ヲ被ラン
トスル虞ノアル場合ニ於テハ綿絲ヲ製造
スル會社ハ、價格ノ協定ヲ爲シ、或ハ生產
ノ制限ヲ爲シテ、利益ヲ保護シテ居ルコト
ハ事實デアラウト思ヒマス、私ハ又肥料ニ
付テモ、完全ニ價格ノ協定或ハ生產ノ制限
ハ出來マセヌガ、肥料製造業者ハ度々是等ノ
決議ヲ爲スコトモ事實デアリマス、又砂糖
等ニ付キマシテモ、價格ノ協定等ヲ爲シ
テ、成ベク價格ノ暴落ヲ防グ事實ガアルノ
デアリマス、卽チ農民ニ最モ必要ナル肥料
及木綿織物ノ原料タル綿絲、砂糖ト云フャ
ウナ重要ナル必需品ハ、是等ヲ製造スル所
ノ會社ノ所謂協議ニ依シテ、生產ノ制限ヲ
爲シ、或ハ價格ノ協定ヲ爲シ、賣止メラ爲
ス故ニ、是等ノ品物ガ經濟界ノ單純ナル事
情ヨリスレバ、モウ少シ下ラヌケレバ
ナラヌモノガ下ラヌト私ハ思フノデアリマ
ス(拍手)卽チ此酒、煙草、織物、肥料、砂
糖是等ノ重要ナル物ノ國民ノ消費ガ如何
ト顧ミレバ、約三十億圓ニ達シテ居ル、此
物ハ前申上ゲマシタル通リ、財政上ノ理由
及之ヲ製造スル會社ガ、自分ノ利益ヲ圖ル
爲ニ、生產制限及價格ノ協定ヲ爲ス爲ニ、
比較的價格ヲ維持スルコトガ出來ルケレド
モ、併ナガラ農業者ノ產出スル米及麥繭等
ニ於キマシテハ、到底是等ノ事ヲ爲シテ之
ニ對抗スルコトガ出來ナイノデアリマス、卽チ
日用必需品ハ價格ハ下ラヌデモ、米穀ノ價
格ハ割安ニナルト云フ結果ハ、此ニ在ルト
私ハ思フノデアリマス、ソコデサウ申上
ゲマスト、此酒ト云ヒ、煙草ト云ヒ、其
他織物ト云ヒ、砂糖ト云ヒ、勿論是ハ農
民ニバカリ必要ナル物デナイ、如何ナル
人モ必要ナル品物デアリマス、故ニ只今ノ
重要ナル品物ノ價格ノ維持ヲセラルヽ事
柄ニ付テハ、其打撃ハ無論農民バカリデナ
〃、一般國民ノ受クル所ハ明カデアルケレ
ドモ、ソコデ俸給衣〓者及勞働者ハドウナッ
テ居ルカト云ヘバ、体給衣〓者ハ大體ニ於
テ、既ニ物價ノ騰貢シタル狀態ニ應ジテ、
俸給ノ引上ヲ爲シ、衣〓ニ決シテ困ラナ
イノデゴザイマス、又勞働者モ相當ニ賃銀
ガ引上ッテアルカラシテ、日用必需品ガ
上シテ居ッテモ、生活ニ困ラナイノデゴザイ
マス、然ラバ一般商工業者ハドウカト云フ
ト絕對的トハ申上ゲマセヌガ、大體ニ於
テ其一家ノ支出ノ物價ノ騰貴ニ依シテ增加シ
タル其額ヲ、之ヲ自分ノ產出スルロ物、或
ハ販賣スル物品ニ轉嫁シ易イ營業狀態ニ相
成シテ居ルノデアリマスカラシテ、物價ノ
騰貴ニ依シテ自分ノ家ノ生計費ガ上レバ、
ソレダケ全部トハ申上兼ネマスケレドモ、
兎ニ角自分ノ產出スル品物、或ハ賣出ス品
物ニ對シテ、其生計費ノ曾額シタダケトハ
言ヒマセヌケレドモ、尠ナクトモ轉嫁スル
コトノ自由ガアルノデゴザイマス、所ガ農
業者ハ直接ニ到底此必要品ガ暴騰シタカ
ラ、ソレガ爲ニ一家ノ生計費ガ增加シタト
雖モ、之ヲ產出スル所ノ賣物ニ轉嫁スルコ
トノ出來ナイ狀態ニ在ルコトハ明カデ、卽
チ日用必需品ノ騰貴ニ依テ受クル所ノ生
活ノ壓迫ハ勿論國氏全般ノ受クル所デア
ルケレドモ、然レドモ其中ニ農民ガ最モ困
難ナル狀態ニ陷レラルヽ慘境ニ在ルト云フ
コトモ、是亦決シテ詐ラザル所ノ告白デア
ルト私ハ思フノデアリマス、加之前モ申上
ゲマシタ通リ、米穀法ノ運用ガ極テ消費者
本位ニ運用サレルノデアル、卽チドウ云フ
コトデサウ云フ話ヲスルカト言ヘバ大正
九年ニハ日本米ヨリ優良ナル所ノ加州米ガ
ドンし〓這入ッテ來夕、全體米ニ對スル我
國ノ關稅ハ、日本米ヨリモ非常ニ品質ノ劣ッ
タル所ノ外國米ヲ基礎ニシテ作ッタル所ノ
關稅デアル、然ルニ日本米以上ニ優良ナル
米ガドン〓〓這八ッテ來テ、此米ニ對シテ
關稅ヲ引上ゲルコトヲ行ハナカッタノデア
ル又本年ノ如キモサウデアル、昨年ノ米
ハ收穫ガ不足デアッタノデアルカラシテ、
或程度エ價格ノ昂上ヲ來スト云フコトハ當
然デアル、所ガ政府當局ハ米ノ數量ガ不足
ヲ生ズルトノ斷定ヨリ、本年一月以來頻ニ
米ノ輸入ヲ企テ、或ハ既ニ三四十万石ノ米
ノ輸入ヲ敢テ致シタノデアル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=70
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071・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 時間ヲ延長致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=71
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072・高田耘平
○高田耘平君(續) ソレノミナラズ現在ノ
米穀法ノ缺點ハ、卽チ數量ニ餘剩ガアル場
合ニ於テハ、政府ハ之ヲ民間ヨリ買上ゲル、
成程結構デアル買上ゲル米穀ハ一定ノ所
ニ貯藏シテ置クカラ、何等內地米ノ數量ニ
ハ增減ガナイノデアル、隨テ價格ニ影響
スルコトガ殆ドナイ、所ガ足リナイ場合ニ
ハドウスルカト云フト、足リナイ場合ニ於テ
ハ、米穀法ノ働ニ依シテ、政府ハ勝手ニ米ヲ持ノ
テ來ル、勝手ニ米ヲ持ノテ來ルノデアルカ
ラ、詰リ內地ニ米ガ殖エルノデアリマス、
餘剩ノアッタ場合ニ政府ガ民間ノ米ヲ買上
ゲルコトハ其數量ガ國內ニ於テ殖エルノ
デナイカラ、何等價格ニ影響ハナイガ、足
リナイ場合ニ於テ政府ガ外國カラ買上ゲル、
五十万石買上ゲルトカ、三十万石買上ゲル
トカスルト、買ッタダケハソレ丈ケ内地ニ米
ガ殖エル譯デアルカラシテ、ソレガ爲ニ直
ニ價格ノ下落ヲ來タスト云フコトハ明カデ
アル、私ハ現在ノ我國ノ米穀ノ價格ハ今
申上ゲマシタ狀態ニ依ッテ存シテ居ルト思
フノデアリマス、卽チ米穀法ノ運用ト云フ
モノハ、ソレ自身ニ於テ既ニ消費者本位ニ
運用サレ易ク、加之農商務當局ハ是カラ
ハドウカ知リマセヌガ、今マデハ消費者ハ
ドウモ恐ロシイ、大正七年ノヤウナ米暴動
ガ起ルト、農商務省ノ役人ナドハ農商務
省ニデモ勞働者ニ押込マレテハ堪ラヌト云
フコトヲ、農商務大臣及農務局長等ガ常ニ
杞憂ノ念ヲ懷イテ居ルヤウニ思フ、故ニ米
ガ少シ上ガルト、又米騒動ト云シテ騷出ス、
又新聞記者モ直グ之ニ經言應シテ、米ガ上ッテ
米暴動ガ明日ニモ起リサウニ書出ス、農商
務當局ハ直ニ慄上ノテ、何トカシナケレバナ
ラヌト云ッテ大騒ヲスル、所ガ米ノ値段ハ
下ッテモ、農民ハ東京ニ居ラナイ、田舎ニ居ッ
テ、蔭ニ於テ政府ニ對シテ間接ニ怨ヲ有ノテノ
居ルケレドモ、農業者ハ米ノ下落ノ爲ニ暴
動ヲ起スト云フヤウナル事ハ先以テ今日ハ
無イカラシテ、今後モ尙ホ無イモノト思ノ
テ、米ノ下ルコトハ平氣デアルケレドモ、米
ガ少シデモ上ルト云フト、農商務當局ハ大
騷ヲスル、是亦農商務當局トシテ已ムヲ得
ナイノカモ知ラヌト思フノデゴザイマスル
ケレドモ、此所謂消費者ノ暴動ヲ恐レル、農
業者ハ暴動ヲ敢テシナイト云フコトノ見地
カラ、卽チ米穀法ヲ生產者ニ不利ニ運用ス
ルト云フコトニ立到ッタノデアルト、私ハ思
フノデアリマス、卽チ前申上ゲマシタル所
ノ財政上ト經済上トノ理由ニ依ノテ、更ニ又
米穀法ノ運用ガ寧ロ消費者ノ利益ヲ保護ス
ル上ニ於テ運用サレルト云ヲ此二ツノ事柄
ガ、所謂前中上ゲマシタ通リ、農產物ノ價
格ガ他ノ物價ニ比シテ割安デアルト云フ狀
態ヲ呈シタモノデアルト私ハ思フノデアリ
そう、以上ノ二ツノ理由ガ農民ノ經濟ヲシ
テ行キ立ツコトヲ得セシメナクナッタモノ
デアルカラシテ、ドウシタラ宜シイカト云
フコトヲ吾々考ヘナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、ソレガ爲ニハ第一ニ吾々ハ米
穀法ヲ改正シタイト思フノデアリマス、米
穀法ヲ改正シテ、現在ノ如ク數量ノ調節ヲ
爲スノミナラズシテ、大體ニ於テ生產費ヲ
基礎トシテ價格ノ調節ヲ爲スト云フ意味ニ
於テ、米穀法ヲ改正スルコトガ、最モ此場
合ニ於テ必要ナルコトデアルト思フ(「簡單」
ト呼ヒ其他發言スル者アリ)簡單トハ行キ
マセヌ、言ヘバ言フ程ナンボデモヤル、是
ハ簡單ニハ行キマセヌヨ、卽チ米價ヲ下落
セシメズシテ、日用ノ必需品ノ價格ヲ低落
セシメテ、而シテ農家經濟ヲシテ收支均衡
ヲ得セシメルト云フコトガ、若シ出來レバ
是ハ結構デアルト私ハ思フ、併ナガラ此政
策ハ直ニ行フコトハ不可能デアッテ、若シ此
政策ヲ直ニ行フコトニ相成レバ、是ハ非常
ナル所ノ事態ヲ我國ノ經濟界ニ起スト思フ
ノデアリマス、故ニ吾々ハドウシテモ若シ
日用必需品ノ價格ヲ下落セシムルト云フ政
策ノ實行ガ出來ナイトスレバ、尠クトモ關
稅ノ働ニ依シテ、或ハ米穀法ノ改正ノ働ニ依っ
テ、米穀ノ價ヲシテ他ノ日用必需品ノ價格
ト竝行ヲ得セシムル、ソレダケノ價格ニ米
價ヲ引上ゲルト云フコトノ政策ヲ、吾々ハ
政府ニ向ッテ要求スルノデゴザイマス、殊ニ
小麥ニ付テ甚シキモノガアリマス、併ナガ
ラ此小麥ノ問題ハ、土井君ガ關稅改正ニ關
スル建議案ヲ御出シニナルヤウデアリマス
カラシテ、特種ノ理由ガ小麥ニ付テアリマ
スルケレドモ、此事ハ私中上ゲマセヌ、第
二ニハ負擔ノ輕減ノ問題デゴザイマス、卽
チ國稅地方稅ヲ通ジテ負擔ノ輕減ヲ爲スベ
キ必要アリト思ヒマス、尙又間接デハアリ
ママ、間接ニハ國民ノ〓育ニ關係ノアルコ
トデゴザイマスケレドモ、農村ノ最モ負擔
ノ重キニ苦シムト云フ點ハ何デアルカト云
べ、國民〓育ニ關スル所ノ支出デアリマ
スカラ、義務〓育費ニ對スル國庫負擔額ヲ、
今日ノ四千万圓以上ニ更ニ增額ヲ要求スル
次第デアリマス、尙又此處デ申上ゲナケレバ
ナラヌ事ハ、農業者ト商業者工業者トノ負
擔ノ不公平ナル事デゴザイマス、卽チ商業
者工業者ニ比シテ、農業者ガ國稅ニ對シ、或
ハ地方稅ニ對シテ重キ負擔ヲ負ウテ居ルト
居ルト云フコトデゴザイマス、ソレハドウ
云フ風ニ數字ニ現ハレテ居ルカト云ヘバ、
大藏省ガ色々ノ方面ヨリ調ベマシタモノヲ
平均シテ見ルト、農業者ノ收益百圓ニ對シ
テ其公課ハ十圓六十七錢デアル、所ガ物品
販賣業者ハ收益百圓ニ對シテ九圓二十錢、製
造業者卽チ工業者ハ收益百圓ニ對シテ其負
擔ガ六圓八十二錢ト云フコトニ相成ッテ居
リマシテ、農業者ト商業者、工業者トノ間
ニ於キマシテ、非常ニ負擔ノ不公平ガアル
ノデアル、卽チ農民ガ、最モ重キ負擔ニ任ジ
テ居ルト云フ事柄ハ、是ハ大藏省ノ統計ガ
明ニ示シテ居ルノデゴザイマス、故ニ吾々
ガ農民ノ負擔ヲ輕減スルト云フ意味ハ、決
シテ一面農民ソレ自身ノ利益ヲ計ルト云フ
意味ノミニアラズシテ、國民ヲシテ負擔ノ
權衡ヲ得セシムルト云フコトニ對シテ、最
モ必要ナル政策デアルト信ズルノデアリマ
ス、更ニ又所得稅法ノ如キモノニ付キマシ
テモ、非常ニ不公平ノ點ガアルノデゴザイ
マス、故ニ所得税法ニ付キマシテハ、之ニ
改正ヲ加ヘテ、所謂資本ニ對スル配當金二
對シテ四割ヲ控除スルト云フ意味ニ於テ、
農業者ニ對シテモ、普通ノ商工業者ニ對シ
テモ、同一ノ控除額ヲ設クルト云フコトモ、
是亦負擔ノ均衡ヲ得セシムル政策デアルト
思ヒマス、次ニハ自作農維持創定ノ問題、是
ハ政友本黨ノ方々ヨリモ度々御話ガアリマ
シテ、私モ是ニハ無論賛成スルノデアリマ
ス、元來小作爭議ト云フモノヽ根源ハ、言
フマデモナク、大體ニ於テ經驗的ノ間題ガ
其主タルモノデアル、故ニ若シ政府ノ政策
ニ依テ、農業ヲシテ收支均衡ヲ得ル產業タ
ラシムレバ、小作問題ハ自然ニ解決スルト
信ジマス、サリナガラ其根本的ノ解決ト申
シマスレバ、トウシテモ小作人ト言フモノ
ヲ無クスル方ガ宜イ、小作地ヲ無クスル方
ガ宜イ、卽チ農民ト云フモノハ自分ノ土
地ヲ自分デ耕作スベキモノデアル、全部自
作農トスルト云フコトガ、農業革新ノ大根
本政策デアルト私ハ思フノデアリマス、此
問題ガ解決サレヽバ、小作爭議ノ問題ハ
起ラナイノデアリマス、加之全部ヲ自
作農ニスルト云フコトハ、小作爭議ノ解決
ノ爲ノミナラズ、我國ノ食糧問題ノ解決ニ
モ非常ニ重大ナル力ガアル、何トナレバ同
ジ反別ヲ耕作シテモ、地主ノ土地ヲ小作人
ガ耕作スル場合ノ所得ト、自分ノ土地ヲ自
分デ耕作スル場合ノ所得トハ、其同一ノ反
別ヨリ得ル所得ニ於テ、少クトモ一割乃至
二割ノ增加ガアルノデゴザイマスカラ、自
作農ヲ維持シ或ハ創定スルト云フコトハ、
其問題ニ付テノミナラズ、食糧ヲ豊富ニス
ルト云フコトノ方法ノ一端ニ相成ルト私ハ
確ク信ズルノデアリマス、ソコデ〓浦內閣
ハ貨幣改鑄益金ノ利子ニ依テ、二百万圓ヲ
四年間支出スル、而シテ非常ニ長期ノ間ニ
於テ年三分五厘ノ金ヲ貸スト云フ案ヲ立テ
タノデアリマス、而シテ五年目ヨリハ五百
圓ヅヽ、百六十年カ百七十年經テバ其償還
ノ目的ヲ達スルト云フ案ノヤウニ記憶シテ
居ル、是ハ姑息ノ案デアル、極メテ姑息ノ
案デアル、國家百年ノ長計デハナクシテ、國
家二百年ノ長計トデモ言フベキデアリマ
ス、兎ニ角〓〓內閣ノ立テタ此案ハ立派ナ
モノデアル、非常二立派ナモノデアル、併
ナガラ姑息ノ案デアル、サリナガラ如何ニ
姑息ノ案デモ無キニハ優ルト思フ、自作農
ヲ創定スル爲ニ、小作人ニ對シテ國家ガ之
ヲ保護スル爲ニ、極メテ長期ノ安利ノ金ヲ
貸スト云フ事柄ソレ自身ハ、假令其金額ハ
少ナクトモ、今ノ農民ニ對シテ、大體ニ於
テ好感ヲ與ヘルト思フ、先程ノ何方カノ快
感程ニハナラナイカ知レマセヌガ、確ニ好
感ヲ與ヘルト思フ、故ニ私ハ小作制度調査
會ニ於テ、甚ダ姑息ノ案ダケレドモ、無キ
ニ優ルト云フコトデ同意シタノデアル、所
ガ現内閣ニ至ッテ、此政策ヲ今度ノ議會ニ出
サナカツタ、是ハ出サナイト云フ意味デハナ
イ、極メテ姑息不徹底ノモノデアルカラ、斯
ウ云フ姑息不徹底ノモノヲ出スヨリモ、徹
底的ニ效果ノ十分現ハレルモノヲ實行スル
ト云フ意味ニ於テ、農商務大臣ガ御辯明ニ
ナッテ居ル、吾々ハ自作農ノ維持創定ト云フ
コトハ、飽マデモ必要ノモノトスルガ故ニ、
吾々ハ吾々ノ力ヲ以テ內閣諸公ヲ動カシ
テ、此問題ヲ解決シナケレバナラヌト信ズ
ルノデアリマス、(「ヤレ〓〓」「大ニヤレ」ト
呼フ者アリ)ヤカマシイ-更ニ農村ノ土
地ヲ耕作スル所ノ借金ハ、非常ニ增大シテ
居リマシテ、大正十二年度ニ於テ四十二億
万圓カニ達シテ居ルト見ラレマスガ故ニ、
其利子ヲ一割二分ト假定シ致シマシテモ、
約五億万圓ノ利子ヲ拂ハナケレバナラヌノ
デアリマス、前申上ゲマシタ通リ、米ヲ作
リ麥ヲ作リ繭ヲ造シテモ、到底利益ガ無イノ
ミナラズ、大缺損ヲ來スト云フ今ノ時代ニ
於キマシテ、果シテ農民ガ此四十二億ニ對
スル利子ヲ支拂ヒ得ルヤ否ヤト云フコト
ハ是ハ餘程吾々ガ心配シナケレバナラヌ
コトデアルト思フノデアリマス、故ニ政府
ハ如何ナル方法ヲ執ッテナリトモ、此農民ノ
負ッテ居ル所ノ大ナル負債ニ對シテ、低利ノ
資金ヲ與フルヤウニスルコトヲ吾々ハ要望
スル者デアリマス、其次ハ農業〓育ノ問題、
是ハ現在ノ展村ノ子弟ガ農村ヲ厭フト云フ
風習ハ前申上ゲマシタ經濟的理由ニ其出
發點ガアルノデアリマスケレドモ、併ナガ
ラ現在ノ普通〓育ガ、大體ニ於テ農民ヲシ
テ農業ヲ嫌フ意味ニ於テ、卽チ〓育ソレ自
身ガ農業ト云フ業體ニ對シ、極メテ質實剛
健ナル氣風ヲ以テ進ム所ノ農業ニ從事セシ
ムルト云フコトニ付テノ〓育ヲ缺イテ居ル
ト思フノデアリマス、故ニ吾々ハ小學〓育
ニ於キマシテモ、此點ニ付キマシテ道德〓
育ノ點ニ於テ、非常ニ力强ク小學校ノ兒童
ニハ此點ニ付テ〓育ヲ施シタイト思フノデ
アリマス、更ニ又小學校ニ於キマシテモ、
現在以上ニ農業ノ知識ヲ與ヘナケレバナラ
又、又農學校等ニ付キマシテモ、其〓育ヲ
成ベク實科的ニシテ、卒業者ハ好ンデ直接
自分ガ農業ニ從事セシメルヤウニ振向ケナ
ケレバナラヌト思フノデゴザイマス、最後
ハ農務省ノ獨立ノ問題デアル、吾々ハ農務
省ノ獨立ヲ主張スル者デアル、併ナガラ唯、こ
現在ノ農商務省ヲ二ツニ分ツト云フコトハ、
意義ガナイト思フノデアリマス、(拍手)吾
吾ガ農務省ノ獨立ヲ要求スル理由ハ、第
ニ此食糧問題ノ解決、衣服問題ノ解決、住宅
問題ノ解決ノ根本ヲ定メナケレバナラヌ、
先程川原君カラ御話ノ通リニ、今二十五年
間過ギルト米ハ一億万石ニナル、三千万石
足リナクナル、之ヲドウスルカト云フ事ヲ
解決シナケレバナラヌ、又色ミナ問題ニ付
テモ、御承知ノ通リ綿絲モナク、羊毛モナク、
今農商務省ハ羊毛ノ試驗ヲヤッテ居ルヤウ
デスケレドモ、旨ク行カナイダラウト私ハ
思フ、更ニ又住宅問題ニ付テモ、材木ハド
ウデアル、昨年ノ大震火災ガナクテモ、最
近數年間年々數千万圓ノ材木ヲ外カラ輸入
シナケレバナラヌ狀態デアル、卽チ吾々ノ
衣食住ノ此三者ト云フモノハ、衣類ハ無ク、
住宅ノ材料タル材木モ無イ、食糧モ段々不
足シテ、之ヲ外國ヨリ買入レナケレバナラ
ヌト云フ狀態デアレバ、此國民ノ衣食住ノ
三ツニ重大ナル關係ガアル、加之現在ハ農
村ガ前申上ゲマシタ通リニ非常ニ困難ナル
狀態ニアルノデアリマスカラシテ、此困難
ノ狀態ヲ恢復シ、食糧問題、衣料問題、住
宅問題ノ根本ヲ解決スルノニハドウシテ
モ是ガ爲ニ特別ナル一省ヲ設ケテ、一意專
心此問題ノ解決ニ資セシメルト云フ事柄
ハドウシテモ國家ノ爲サナケレバナラヌ
所ノ最大急務デアラウト私ハ思フノデアリ
マス(拍手)私ハ只今マデ極メテ簡單ニ數項
ニ付キマシテ其說明ヲ申上ゲマシタノデア
リマス、更ニ私ハ此場合農民トシテノ所謂
怨嗟ノ念ヲ絕タナイ、ドウ云フ點ニ付テ農民
ガ政府ニ對シテ不平ヲ持テテラレルカト
云フ不平ノ一端ヲ申上ゲテ見タイト思フノ
デアリマス、第一ハ政費ノ分配問題ニ付テ
デアリマス、大正十三年度ノ實行豫算ヲ見
ルト、其總額ハ十三億四千万圓デアル、其十三
億四千万圓ハ、如何ニ贔屓目ニ見テモドウ見
テモ、此普通農業卽チ米麥ヲ產出スル農業ノ
爲ニ、國家ガ直接ニ支出シテ居ル金ハ五百万
圓ニ達シマセヌ、其内開墾奬勵費ノ二百三十
万圓ヲ引クト僅ニ二百七十万圓ガ、農業獎
勵ノ爲ニ國家ガ支出シテ居ル金デゴザイマ
ス、卽チ總歲出十三億四千万圓ノ千分ノ三、
七デアル、何タル待遇デゴザイマセウ、
ソレモ農村ノ困ラナイ時デアレバ、食糧ガ
澤山ニアルノデアルナラバ吾々ノ衣類ガ
十分アルノデアルナラバ、材木ヲ外カラ買
ハナイデ濟ムノデアルナラバ宜シイガ、食
物ガ足リナイト云フ狀態ニ於キマシテ、農
業ノ爲ニ僅カ千分ノ一一·七ノ支出シカシナ
イト云フ事ハ是レ果シテ農民ニ忠實デア
ルヤ否ヤト云フ事ヲ考ヘナケレバナラヌ
(拍手)然ルニ半面他ノ豫算ヲ見ルト云フ
ト航海奬勵費ニ對シテ六百七十万圓、吾
々ハ航海獎勵費ニ對シテ六百七十万圓出ス
ノガ惡イトハ言ハヌ、言ハヌケレドモ航海
獎勵費ニ對シテ六百七十万圓國家ガ出ス必
要ガアルナラバ、國民ノ大多數ニ極メテ重
大ナル利害關係アル農業振興ニ對シテ、
何故ソレ以上ノ金ヲ支出シナイカト云フコ
トヲ私ハ怪シムノデアリマス、全農民ハ斯
ノ如キ怪ミヲ持シテ居ルト云フコトヲ申上
ゲルノデゴゲイマス、更ニ又市ノ水道費ニ
對シテ二百万圓支出シテ居ル、吾々ハ是モ
結構デアルト思フ、成程良イ水ハ飮マナケ
レバナラヌ、衞生上必要デアル、併ナガラ
市ノ水道補助ノ爲ニ三百万圓出スナラバ、
何故一般ノ普通農業ヲ奬勵スル爲ニ、僅カ
五百万圓許リノ金ヲ出シテ置クノデゴザイ
マセウト言ヒタイ、更ニ又港灣改良ノ爲七
百万圓ヲ年々出シテ居ル、成程港灣改良モ
必要デアル、船著ヲ良クスルト云フ事ハ必
要デアル、併ナガラ港灣改良以上ニ、全農
民ニ對シテ農村振興ノ爲ニ、是以上ヲ支出
シナケレバナラヌト私ハ要求スルノデアリ
やっ、又植民地ニ對スル大正十三年度ノ支
出ヲ見ルト云フト、樺太ニ對シテ百万圓支
ヲ出シ、關東州ニ對シテ四百万圓支出ヲ爲
シ、朝鮮ニ對シテ千五百万圓ノ支出ヲ爲
シ、南洋洲ニ對シテ二百九十万圓ノ支出ヲ
ジ、合セテ二千二百九十万圓デアル、前申
上ゲマシタ通リ、普通農業英勵ニ對スル図
家ノ支出パ開墾変勵費ヲ合セテモ僅ニ五
百万圓デアル、樺太ニ對スル百万圓、關東
州ニ對スル四百万圓ト其額ガ同ジデゴザイ
マス、成程經太〓發七必要デアル、園東州
開發モ必要デアラウト思フ、併ナガラ全國
六千七百万人中、絕對多數ヲ占メル所ノ農
民ガ、今ヤ疲弊困憊ノ狀態ニアル場合ニ於
テ、吾々ハ朝鮮ニ千五百万圓ヲ支出シ、南
洋洲ニ對シ二百九十万圓ヲ支出スルヨリ
モ、斯ル費用ヲ削除シテモ、或ル程度マデ
輕減シテモ、農村振興ノ爲ニ政府ガ金ヲ出
スト云フコトガ、全農民ニ對スル國家ノ相
當ナル待遇ナリト思フ(拍手)更ニ又金融問
題ニ付テハ、農民多數ハ斯ウ云フコトヲ考
ヘテ居ル、郵便貯金ハ決シテ都市ノ人バカ
リガ出シテ居ル金デハナイ、到ル所ノ村落
ノ人々ガ郵便貯金ヲ蓄ヘテ居ル、然ルニ此
郵便貯金ノ殆ド大部分ガ、商工業者及都市
方面ニ於テ流用サレテ、之ヲ多ク出シテ居
ル所ノ農民ニ向ッテ流通サレナイト云フコ
トニ付テ、政府ハ何故ニ都市商工業者ニ對
シテ此支出ヲ爲シテ、農村ニ對シテ支出ヲ
爲サナイノデアルカト云フコトノ怨嗟ノ聲
ヲ放クテ居ルノデゴザイマス、(拍手)百ノ一
又政府ハ、米ノ調節ト云フ事ニ付テ、現在
マデノ政府ハ-現在マデノ政府ハト敢テ
言ヒマス、米ノ相場ノ抑制ニ付キマシテ、
有ユル方法ヲ執リ、少シ高クナルト直グ外
米ヲ輸入スル、併ナガラ他ノ商工業者ガ暴
利ヲ貪シタ事ニ付テハ、餘リ干涉シナイヤ
ウデアリマス、現在ハドウカ知リマセヌ
ガ、大正七八年ノ交、其後トモ非常ニ商工
業者ノ繁目ヲ極メタ場合ニ於キマシテハ、
十割二十割ノ配當ヲ敢テシタル所ノ會社ガ
諸所方々ニアッタノデアリマスガ、其時ノ
政府、其後ノ政府デ、是等ノ暴利ヲ貧シタ
ル商工業者ニ對シテ、何等ノ制裁ヲ與ヘタ
コトヲ聞カナイノデアリマス、此點ニ付キ
マシテ、全農民ハ非常ニ虐待サレテ居ルト
稱スルガ、何故ニ政府ハ商工業者ニ對シテ
暴利仝ヲ以テ之ヲ抑制セズシテ、少シバカ
リ米ガ騰ノテ農村ノ景氣ガ好クナルト、米ノ
値ヲ引下ゲル政策ヲ執。タカト云フコトニ
付テ、非常ニ怨嗟ノ聲ヲ持クテ居ルト云フ
コトヲ御承知ヲ願ヒタイノデアル、更ニ又
帝都復興ノ問題ニ付テモサウデアル、帝都復
興ハ必要デアル、勿論必要デナケレバナラ
ヌカラ吾々ハ協資ヲ與ヘルノデアルケレド
モ、帝都復興下同時ニ農村ノ復興ヲシナケ
レバ帝都復興ハ到底完全ナル働ヲ爲スコ
トハ出來ナイノデアル(拍手)故ニ吾々ハ帝
都復興ニ喜ンデ同意スルト同時ニ、農村ノ
振興ト云フ言葉以上ニ、寧口農村ノ復興ニ
付テモ、政府ガ之ニ對シテ最善ノ努力ヲ致
サレンコトヲ望ム者デゴザイマス(拍手)耕
地ノ改良トカ、或ハ擴張トカ云フコトヲ爲
シテ收穫ノ增加ヲ爲スコト、或ハ農具ノ改
良ヲ爲シテ生產費ノ減少ヲ爲スコト、種苗
ノ改良、耕耘ノ方法改春等ニ依リマシテ收穫
ノ增加ヲ圖ルト云フ、卽チ普通ノ農業奬勵
ニ屬スル事ハ是レ勿論農政當局者モ其任
ニ當リ、農業當事者モ其事ニ努メナケレバ
ナラヌコトデアルケレドモ、米ヲ作レバ損
ヲスル、麥ヲ作レバ損ヲスル、繭ヲ取レバ
損ヲスルト云フ今日ノ經濟狀態ニ於キマシ
テハ、如何ナル積極的ノ普通農業ニ向ッテ
ノ奬勵方法ヲ執ッテモ、決シテ是ガ實行出
來ナイト云フコトヲ、政府當局者ニ承知シ
テ戴キタイノデアリマス、此際私ハ米ノ價格
ニ付テノ私ノ見ル所ヲ御參考ノ爲ニ申上ゲ
テ見タイト思フ、米ハ勿論國民ノ必要ナル
食糧デゴザイマスカラシテ、吾々ハ成ベク
優良ナル米ヲ多額ニ產スルコトヲ望マナケ
レバナラヌノデアル、併ナガラ米ニ對スル生
活戸ノ圓係ガ、生活向上ノ結果、非常ニ昔ヨリ
違ノテ居ルト云フコトハ、是レ爲政者ノ此
點ニ頭ヲ置カナケレバナラヌコトデアルト
思フノデアリマス、昔ハ米ト云フ物ハ非常
ニ其一家ノ生計費ニ於テ重キヲ占メテ居ン
タノデアル、所ガ現在ハ主タル物デハアル
ケレドモ、左程重キヲ爲ス物デハナイノデ
アリマス、且又米ガ上ルト外ノ物價ガ上ル
ト云フコトヲ能ク言フ、所ガ事實ハンレヲ
裏切ッテ居ル、卽チ大正三年カラ大正八年マ
デ、先以テ物價ハズット上ッタ、其上ッタ經過
ヲ見ルト、米ノ値段ガ上フテ外ノ日常必需品
ガ上ッタノデハアリマセヌ、統計ヲ見レバ明
ニ外ノ日常必需品ガ上ッテ、而シテ米ノ相場
ガ之ニ續イテ上シタト云フコトハ統計ノ示
ス所デアリマス、卽チ大正九年以後ノ反動
期ヨリ今日ニ至ルマデ、米ノ價格ハ非常ニ
下タガ、他ノ日常必需品ノ價格ハ其割ニ下
ラヌト云フコ4ハ是モ現實デアル、然ラバ
米ノ値段ガ上レバ他ノ物價ガ上ルト云フコ
トハ間違ッタ考デアルト私ハ思フ、ンレハサ
ナラナケレバナラス所ノ理由ガアルノデゴ
ザイマス、何トナレバ米ノ値段ト云フモノ
ハ、今日ノ向上シタル生活ニ於キマシテハ
生活費ノ極メテ一部デアルガラデアリマス
前申ンマシタ通リ織物、酒醤油、煙草、砂
糖、此五種ノ全國ノ消費里ヲ大體大藏當局
ニ就テ調ベテ見ルト云フト、約三十億万圓
デアル-約三十億万圓デアル、所ガ米ノ
三箇年間ノ消費額ヲ調ベテ見ルト云フト、
一石三十二圓許リニ見テ約二十億万圓許リ
デアル、卽チ織物、酒、醤油、煙草、砂糖ノ
此五種ニ對シテ國氏ガ支出スル金ヨリモ、
米ニ對シテ支出スル金ガ少イノデアリマス、
十億万圓ノ差ガアルノデゴザイマス、斯ル
ガ故ニ体給衣食者デモ、勞働者デモ、是等
ノ家庭ニ於テモ、米ニ對スル支出ト云フモ
ノハ總家計費ノ僅少ナル部分ニ相成ッテ居
リマシテ、寧口吾々ノ見ル所デハ、米二對
スル支出ヨリモ酒、煙草、其他贅澤品ニ對
スル支出ノ方ガ多イ家庭ガアルト云フ事柄
ハ勞働者ニ於テモ、或ハ俸給生活者ニ於
テモ見ラルヽ次第デアルト思フノデアリマ
ス、然ルニ斯ノ如ク米ト云フモノハ現在ノ
生活ニ於キマシテモ、成程生活必要品トシ
テ必要ナル物デハアルケレドモ、米ソレ自
體ノ價格ト云フモノハ、直接ニ國民ノ生活
費ニハ大シタ影響ガ無イト云フコトハ、是
ハ非常ニ告ヨリ變ヲタ現象デアルト思フ、昔
ハ支出ノ少ナイコトヲ煙草錢ト言シタ、是ハ
極メテ煙草ガ安カッタカラデアル、今ハ米錢
ト云フコトヲ言フヤウニナッテ來タ、米錢ト
言フ、煙草錢ヨリモ米錢ノ少イ家庭ガ幾ラ
モアルヤウニナッタコトハ事實デアル、故ニ
米ト云フモノハ必要ナ物デアルケレドモ、
是ハ昔ノヤウニ米ト云フモノガ非常ニ生活
費ノ大部分ヲ占ムルモノデアルトシテ、米
ヲ扱フト云フ事柄ハ間違ッタ觀念デアルト
私ハ思フノデアリマス(拍手)此間違ノ夕觀
念ガ卽チ今日ノ米價調節ニ相成ノテ、農民ガ
直グ苦シメラレル理由デアルト云フコトヲ
私ハ固ク信ズル者デアリマス、斯樣ニ私ハ
政府ニ向ッテ色々ノ要求ヲ致シマスルケレ
ドモ、併ナガラ吾々ハ決シテ政府ノ力ニ依ッ
テノミ此農村ノ救濟ヲ叫プト云フコトハ無
理デアルト思フ、農民ソレ自身モ經濟的ニ
自覺シテ、其生活ニ付キマシテモ極メテ質
實剛健ニ立返リ、更ニ又勞働能率ヲ增加シ
ナケレバナラヌト田心フノデゴザイマス、吾
吾ハ決シテ政府ニ向、ノテ農村振興ノミヲ叫
ンデ、現在ノ農民ニ經濟的缺陷ガ無イト言
フノデハアリマセヌ、ドウ致シマシテモ政
府ニ向シテ農村ノ枚濟ヲ要求スルト同時ニ、
全農民ハ其全能力ヲ發揮シテ其勤勞ニ努メ、
其生活ヲ質素堅實ニシナケレバナラヌト固
ク信ズルノデゴザイマス(拍手)私ハ信ジマ
ス、農村ハ我國ノ基礎デアリマス、而シテ
農民ハ我國ノ絕對多數デアリマス、故ニ能
ク此農村問題ニ付テ理解ヲ持チ、現在ノ疲
弊困態シタル所ノ農村ニ付テ相當ナル農業
政策ヲ執ル所ノ政府ハ、必ズ長持スルト思
ヒマス、政黨ハ必ズ繁昌スルト思ヒマス、
(拍手)吾々ハ政府當局ガ、此吾々議員一致
ノ決議ト略、と同樣ナル所ノ建議案ニ對シテ
相當ナル考慮ヲ拂ハレテ、來ル議會ニ於テ
農村振興ノ問題ニ付テ最善ノ努力ヲ致サレ
ンコトヲ、此席ヨリ要望致ス者デアリマス
(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=72
-
073・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス、堤康次郞君
〔堤康次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=73
-
074・堤康次郎
○堤康次郞君 只今高田君カラ農村振興ノ
建議案ニ付キマシテ、簡單デナク理由ヲ承
リマシタ、議論ハ至極御尤デ賛成ヲ致シマ
スルガ、議論ダケデハドウモ物足リナイ倍
イ事ニハ高田君ガ憲政會ヲ代表シテ農商務
大臣ニデモナッテ、下サッタナラバ、更ニ大ニ
結構デアルト思フノデアリマス、要スルニ
今日ハ最早議論ノ時代ハ旣ニ過去ッテ實行
ノ時代ニ這人ッテ居ルノデアリマス、由來建
議案ハ一名御土產議案ト云ノテ、實行不能ノ
人氣取ニ了ルコトガ多イノデアリマス、苟
モ議會カラ提出シタル建議案ガ、斯ノ如ク
有名無實ニ了ルト云フコトハ、寔ニ宜クナ
イ事デアリマシテ、將來議會ハ無暗ニ建議
案ヲ提出スルコトヲ愼マナケレバナラナイ
シ、政府ハ又議會カラ提出シタル建議案ニ
對シテ、之ヲ實行スルニ十分ノ努力ヲシナ
ケレバナラナイ、兩々相俟クテ建議案ヲシ
テ權威アルモノニシナケレバナラナイノデ
アリマス、要スルニ私ハ(「ソレガ質問カ」
ト呼ヒ發言者多シ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=74
-
075・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=75
-
076・堤康次郎
○堤康次郞君(繪) 私ハ議論ノ内容デナク
シテ、此建議案ヲ實行スル點ニ於テ、ドノ位
提案者ハ眞劍ノ力ヲ御注ギニナルカト云フ
コトヲ何ヒタイノデアリマス、折角ノ建議
案モ有名無實ニナッテハ何ニモナラナイノ
デ、私ハ此建議案ヲ出サレ夕提案者ハ、ド
ノ位ノ眞劍ノ力ヲ以テオヤリニナルカ、ソ
レヲ伺ヒタイ、故ニ若シ政府ガ此建議案ノ
大體ヲ有名無實ノ有耶無耶ニ葬ルヤウナコ
トガアッタナラバ、其場合ニハドウ爲サル
カ、ソレデモ矢張盲從ヲセラレルカ、若シ
左樣ナ事ガアッタナラバ-由來農村問題
ハ選擧ノ度每ニ政界ノ御題目トシテ頻ニ宣
傳セラレルガ、選擧ガ濟ムト段々忘レテシ
マフ、忘レナイバカリニ、唯〓此建議案ヲ出こ
シテ御茶ヲ濁スモノデアルト言ハレテモ仕
方ガアリマスマイ、サモナクシテ政府ガ大
部分之ヲ實行シナイトキニハ先程高田君
ハ力ヲ用キルト言ハレマシタガ、カヲ以テ
內閣ニ反對ナサレルカ、力ヲ以テ不信任ノ決
議案デモ御出シニナリマスカ、若シ左樣ナ
眞劍味ガ無カッタナラバ、此建議案ハ有名無
實ニ了ノテシマフノデアル、要スルニ私ハ此
提案者ノ中デ特ニ政府ニ好意ヲ有スル憲政
印、政友會、革新倶樂部ノ方々ガ、此建議
案ノ大部分ヲ政府ガ實行シナイトキニハ、
ソレデモ盲從セラレルカ、或ハ反對セラレ
ルカ、要スルニ此建議案ニハドノ位ノ眞劒
味ガ這人シテ居ルカト云フコトヲ、特ニ三派
ノ方ニ御伺致シタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=76
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077・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高田耘平君
〔高田耘平君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=77
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078・高田耘平
○高田耘平君 只今ノ堤君ノ質問ニ御答致
シマス、誤解ガアルヤウデアリマスカラ、其
誤解ヲ先以テ解キタイノデアリマス、只今
堤君ハ私ノ說明シタ事ヲ、憲政會ノ建議案
デアルヤウニ御話ニナリマシタガ、サウデ
ハナイ、政友本黨ヲ除ク與黨三派全部ノ建
議案デアリマス(拍手)而シテ何故政友本黨
ヲ除イタカト云フコトニ付テ此際中上ゲテ
見タイ、實ハ先程川原君ハ、此建議案ハ七
月二日ニ出シタモノデアルト言ハレル、成
程出シマシタ、所ガデス、政友本黨ヲ除ク
各派モ議會開會ニナリマスト、直グ農村振
興ノ建議案ヲ出シタイト云フ話デアッタ、所
ガ御承知ノ通リ農政〓究會ト云フ、政黨政
派ヲ離レタ所謂特殊ノ圍體ノアルコトハ御
承知ノ筈デアル、吾々及政友會、其他各派
ノ幹部ガ農村振興ニ關スル建議案ヲ出スト
云フコトノ御話ガ吾々ニアリマシタケレド
モ、免ニ角成ベク出來ルコトナラバ政黨政
派ヲ離レテ、農政研究會ガ主トナッテ、衆議
院議員一致ア賛成ヲ得テ一ツノ建議案ニシ
タイト云フ考ヘヲ持ッテ居リマシタカラ、吾
吾ハ幹部ノ建議案ヲ開會當時ニ出スト云フ
コトヲ差控ヘサセテ居タノデアリマス、而
シテ御承知ノ通リ政友本黨ノ人モ御出ニナ
リマシテ-全部デハアリマセヌ、或人ガ
御出ニナリマシア、成ベク一緒ニヤラウト
云フコトノ協定モ出來テ居ッタノデアリマ
ス、所ガ何故カ突如トシテ、政友本黨ノ方
カラ建議案ガ出タノデアリマスケレドモ、
決シテ吾々ハ此建議案ニ付テ等閑ニシタモ
ノデハナイト云フコトヲ茲ニ表明スル次第
デアリマス、尙ホ堤君ノ御質問ノ(發言ス
ル者多シ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=78
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079・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=79
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080・高田耘平
○高田耘平君(續) 尙ホ堤君ノ御質問ニ御
答シマス、眞劍ニヤルカドウカト云フコト
ノヤウデアル、無論眞劍ニヤリマス、併ナ
ガラ政治ハ農村振興バカリデハナイト云フ
コトヲ御承知ヲ願ヒタイ、農村振興問題ガ
出來ナケレバドウスルカ、ソンナ事ガ御答
出來マスカ、眞劍ニ吾々ハ政府ヲ鞭撻シテ
ヤラナケレバナラヌケレドモ、其事ノ出來
ル出來ナイニ依シテ、ドウ斯ウナドト云フコ
トハ此所デ說明スル限リニアラズ、全然吾
吾ノ自由意思デアリマス(發言スル者アリ)
吾々ハ吳々モ申上ゲマス、吾々ハ此建議案
ヲ出シテ、政府ニ向ッテ此建議案ノ趣旨ヲ實
行セシムベク、最善ノ努力ヲ拂フト云フコ
トハ玆ニ申上ゲマス、併ナガラソレガ出來
ナカッタラドウスル、出來ナカッタラドウス
ルト言ハレテモ、此所デ御答スル必要ハナ
イ(發言者多シ)ドウスル斯ウスルハ己ノ自
由デアル、汝等ノ問フ所ニアラズ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=80
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081・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ日程第五ノ農村振興
ニ關スル建議案ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=81
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082・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、左樣ニ決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=82
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083・作間耕逸
○作間耕逸君 議事日程變更ニ關スル緊急
動議ヲ提出致シマス、卽チ議員田淵豐吉君
懲罰事犯ノ件ヲ、此際特ニ上程シテ議題ト
シ、懲罰委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進
ノ、尙ホ本日ノ議事ハ此徴當割事犯ノ件ニ止
メ、殘餘ノ日程ニ對シテハ總テ延期セラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=83
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084・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=84
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085・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ、日程ヲ
變更シ議員田淵豐吉君懲割事犯ノ會議ヲ開
キマス、懲罰事犯ノ議事ハ秘密會ナルニ依
リ、傍聽人ノ退場ヲ命ジマス-田淵豐吉
君ノ退席ヲ求メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=85
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086・田淵豐吉
○田淵豐吉君 一身上ノ辯明ヲ致シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=86
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087・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 辯明ハ許シマセ
ヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=87
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088・田淵豐吉
○田淵豊吉君 ドウ云フ譯デ許サヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=88
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089・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 退場ヲ命ジマス
田淵豐吉君懲罰事犯ノ件(委員長報告)
〔午後六時三十九分祕密會ニ入ル〕
〔午後六時四十六分祕密會ヲ終ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=89
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090・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ヨリ議事ヲ公
開致シマス、傍聽人ノ入場ヲ許シマス、田
淵君ノ入場ヲ許シマス-祕密會ノ結果ヲ
報告致シマス、祕密會ニ於テ田淵豐吉君懲
罰事犯ノ件ヲ議決致シマシタ、仍テ其議決
ニ基イテ宣告致シマス-議員田淵豐吉君
ニ對シ、議院法第九十六條第一項第三號ニ
依リ、四日間ノ出席停止ヲ命ズー次回ノ
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會
午後六時四十八分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=004913242X01119240715&spkNum=90
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