1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十四年二月十九日（木曜日）
午前十時二十七分開議
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議事日程 第十五號 大正十四年二月十九日
午前十時開議
第一 大正十四年度歳入歳出總豫算案竝大正十四年度各特別會計歳入歳出豫算案審査期限を定むるの件
第二 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件審査期限を定むるの件
第三 一年現役小學校教員俸給費國庫負擔法廢止法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第四 教育改善及農村振興基金特別會計法案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第五 公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第六 朝鮮鐵道用品資金會計法案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第七 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第八 裁判所構成法中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
第九 遠洋漁業奬勵法中改正法律案（政府提出衆議院送付） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨十八日豫算委員長ヨリ橋本辰二郞君ヲ第一分科擔當委員ニ選定シタル旨
ノ報告書ヲ提出セリ
同日會計檢査院法中改正法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
委員長侯爵松平康莊君副委員長橫山章君
同日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第五囘報告書
本日第四部ニ於テ決算委員橋本辰二郞君ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果原
保太郎君當選セリ
###平山喜発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、議事日程第一、大
正十四年度歲入歲出總豫算案竝大正十四年度各特別會計歲入歲出豫算案審査
期限ヲ定ムルノ件、第二、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル
件審査期限ヲ定ムルノ件、是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ノ發言ヲ許シマ
ス、藤山雷太君
〔藤山雷太君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=2
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003・藤山雷太
○藤山雷太君 私ハ今日ハ此豫算ノ實行監督ノ制度ヲ是非設立スルノ必要ヲ
感ジテ居リマスル、其點ニ付キマシテ總理大臣竝ニ大藏大臣ノ御意見ヲ承ッテ
見タイト考ヘマス、私ハ此問題ニ對シマシテハ、昨年ノ臨時議會ノ際ニ、豫
算委員會ニ於テ質問ヲ致シマシタ、其後ノ實行ノ經過ハ如何ニナッテ居ラウ
カト云フコトヲ御尋ネ致シタイト考ヘルノデアリマス、私ハ豫算委員會ニ於
テ、今囘ノ行政財政ノ整理ハ非常ニ必要デアル、併ナガラ是ト關聯イタシマ
シテ、此豫算ノ事前監督ノ方法ヲ設ケナケレバイカナイト考ヘルノデアル、卽
チ豫算ノ濫費ヲ防イデ支出ノ經濟的ナラシムルコトガ、此場合ニ最モ必要ヂ
ヤナイカト云フコトヲ述ベタノデアリマス、蓋シ此豫算ノ決定ニ當リマシテ
ハ帝國議會ノ協賛ヲ必要ト致シテアリマスル、併ナガラ一タビ帝國議會ノ
協贊ヲ經マシテ、各省ノ手ニ此豫算ガ渡リマスルト、何等有效ナル監督ノ機
關モ無ク、又檢査モ十分ニ行ハレテ居ナイヤウニ考ヘルノデアリマス、成程、
今日會計檢査院ノ制度ハアリマスルケレドモ、其會計檢査院ノ檢査ハ事後ノ
監督ニアリマシテ、其事柄ハ濟ンデ仕舞ッタ後ニ其支出ヲ檢査スルト云フコ
トニナッテ居リマス、從テ其支出ガ果シテ正當ヲ得ナカッタト申シマシテモ、ソ
レハ唯其非違ヲ糺彈イタシマスルニ止マリマシテ、其時ハ既ニ其事柄ハ結了
イタシテ居リマス、殊ニ屢〓内閣ガ更ハルヤウナ場合ニ於キマシテハ、其問題
ハ既ニ前內閣ノ問題デアル、或ハ前々內閣ハ問題デアルト云フコトニナリマ
シテ、何等之ニ對シテ十分ナ責任ヲ問フ途ガ無イヤウナ次第デアルト思ヒマ
スル、私ハ、ソレ故ニ、豫算ノ實行ヲシテ十分經濟的ナラシメ、眞ニ緊縮節
約ノ趣旨ニ合致セシムル爲ニハドウシテモ此豫算ノ實行ノ場合、卽チ事前
ノ監督ト云フ機關ガ最モ必要ヂヤナイカト云フコトヲ御尋ヲ申シタノデアリ
Wvb、然ルニ此場合、加藤首相ハ其質問ニ對シマシテ、同感デアル、贊成デ
アル、ドウシテモ其事柄ハ必要ト考ヘルカラ、會計檢査院ヲシテ之ニ當ラシ
ムルカ、或ハ他ノ機關ヲ設置スルカ、十分調査ヲスル積リデアルト云フ御答
ヲ得マシテ、私ハ非常ニ滿足ヲ致シテ居リマス、併ナガラ今日マデノ經過ハ
如何ニナッテ居リマスルカ、果シテサウ云フ機關ヲ、此議會ニモ提出シテ、法
律案カ何カデ御拵ヘニナル運ビニナッテ居リマスルカ、其點ヲ承リタイト考
ヘマス、今囘ノ一體財政整理ハ、私ハ非常ニ大藏大臣ハ勉强ナサッタト云フ
コトハ認メマスルガ、其結果ハ甚ダ不十分デアル、不徹底デアルト云フコト
ハ申上ゲテ宜カラウト存ジマス、十六億圓ノ前年ノ豫算ヲ今年十五億圓內外
ニ減ジタ、併ナガラ今後追加豫算トシテ······此點ハ又政府ガ來年度ニ於テ支
出ノ殆ド豫約的ノ御話ヲ承リマスルト、ナカ〓〓豫算ハ是ヨリ膨脹スルニ相
違ナイト考ヘラレマスル、其結果ハ恐ラクハ十六億圓以上ニ達スルダラウト
思ヒマス、斯カル多額ノ負擔ヲ國民ハ受ケテ、サウシテ納稅ノ義務ヲ正當ニ
支出シテ居ルト云フコトハ、餘程困難ナ事ダラウト思ヒマス、ソレ故ニ財政
整理ハ單ニ豫算面ノ金額ヲ唯緊縮スルバカリヂヤナク、其緊縮セラレタ豫算
ノ實行ヲシテ有效ニ且ツ其支出ハ經濟的ナラムコトハ、此場合緊要ナリト考
ヘマス、然ルニ豫算ノ實行ニ付キマシテ、從來遺憾ナル點ガ甚ダ多イノデ
アリマス、卽チ一面、豫算ノ收入ヲ圖ル場合ニ於キマシテ、苛歛誅求、ト言フコ
トハ酷デアルカハ知リマセヌガ、査定ヲ要スル徵稅ノ問題ニナリマスルト頗
ル峻嚴ニ取立テマス、而シテ其租稅ハ少クトモ豫算額以上ニ取立テナケレバ
ナラヌト云フコトヲ努メテ居ルヤウニ見エマス、而シテソレハ自然增收デア
ル、決シテ苛歛誅求ニ起ッタ增收ヂヤナクシテ、自然增收デアルト云フヤウナ
名ガ付イテアリマス、而シテ甚シキニ至ッテハ豫算以上ノ徵稅ヲシ能フ所ノ
收稅吏員ニ向ッテハ、非常ナ能吏トシテ之ヲ賞セラルヽト云フヤウナ形ガアル
ヤウニ見エマスル又他面支出ノ側ヲ見テ見マスレバ、豫算面金額ヲ是非ト
モ其年度ニ使フコトヲ普通ノヤウニ考ヘラレテ居ルヤウニ考ヘマス、ソレ故
ニ今日ハ随分豫算ノ濫費ガ行ハレテ居ヤシナイカト考ヘマス、私ハ今日此官
吏ノ俸給ト云フモノハ物價ニ比較シマシテ非常ニ安イ、低イト私ハ考ヘル、
上ハ總理大臣ヨリ、下ハ小使ノ末ニ至リマスマデ、今日ノ物價ノ割合カラ見
マシテ、其受ケラルヽ所ノ報酬、卽チ給料ト云フモノハ、私ハ甚ダ低イト思
フ、一朝之ヲ民間ノ事業家、又ハ政府ノ特別ノ會社、或ハ特別銀行ナドノ重
役其他ノ人ト比較シテ見マスト、非常ニ其受クル所ノ報酬ハ低イヤウニ思ヒ
マスル、從テ私ハ其官界ニ集マル人ハ、今後ハ能率ノ低イ人ガ集マリハシナ
イカト考ヘマス、其點カラ考ヘマシテ、私ナドハ此財政ヲ緊縮スルト云フヤ
ウナ場合ニ於テハ、官吏ヲシテ緊張ノ精神ヲ持タシムル爲ニ、其給料ノ如キ
ハ十分ニ是ハ優遇シテ、自己ノ生活ヲ支ヘテ、サウシテ十分ニ國家ノ公務ニ
服スルダケノ給料ヲ與ヘナケレバナラヌト考ヘル、其點カラ考ヘマスルト、
私ハ今後モ能率ヲ增進セシメヤウトスレバ、其與フル所ノ官吏ノ俸給ハ尙
ホ此物價ニ比較シ、民間其他特殊銀行ナドノ比較ヲ取ッテ、相當給料ヲ上ゲナ
ケレバ、緊張シタ能力ヲ出サセルコトハ出來ナイモノデアラウト考ヘルノデ
アリマス、然ルニ過日、總理大臣ハ人ノ淘汰ハ是デ打切ル積リデアルト云フヤ
ウナ御話デアリマシタガ、私ハソノ人ヲ淘汰スル、ト云フコトハ語弊ガア
ルヤウデアリマスガ、仕事ヲ、五人ノ仕事ヲ三人ニ分ッテ與ヘル時分ニハ、五
人ニ與ヘル給料ヲ三人ニ與ヘテモ私ハ差支ナイ、給料ヲ減額スル必要ハナイ
ト思フ、サウシナケレバ實際立派ナ人ガ官界ニ集マッテ能率ヲ發揮スルコト
ガ出來ナイヤウニ思フノデアリマス、故ニ私ハ今後政府ニ於テモ、人ヲ減ズ
ルト云フコトハ十分ニ御斷行ニナッテ、其給料ハ十分ニ一ツ支給スル途ヲ御執
リニナラナケレバ、能率ヲ增シ事務ヲ簡捷ニシ、而シテ十分ナ成績ヲ擧ゲル
コトハ出來ナイヤウニ考ヘマス、今日ノ情勢デ見マスルト、人ヲ多數御減ラ
シニナリマシタガ、殘ッタ人ハ何等、仕事ガ加ハッタノミデ其受クル所ハ同ジ
報酬デアル、是ハ人間自然ノ衷情トシテ、十分ナ緊張ヲ缺クト云フコトハ巳
ムヲ得ナイモノデアラウカト、私ハ考ヘルノデアリマス、ソレ故、一面、十分ニ
此豫算ノ實行ヲ嚴密ニシテ、サウシテ旅費ヲ以テ給料ノ低キヲ補ッテ見タリ、
其他支出ノ適正ヲ缺ク方法ヲ以テ給料ノ少イ等ヲ補助シテヤルト云フヤウナ
方法ヲ避ケテ、給料ノ如キハ、卽チ物價ニ順應シタル給料ヲ以テ俸給ヲ定メル
ト云フコトガ、今日最モ必要デハナイカト考ヘマス、ソレ故、旅費ノ豫算ガ殘
レバ年末ニナリマスルト、其費用ヲ支出スル爲ニ、無暗ニ官吏ヲ出張サセル
ト云フヤウナコトガアルヤウニ世間ニ傳ヘラレルノデアリマス、又年末ニナ
リマシテ俸給ガ豫算額ヨリ殘レバ、其金ヲ賞與金トシテ出スト云フヤウナコ
トモ聞キマシタガ、是等ハ卽チ豫算ノ濫出ヂヤナイカト私ハ考ヘル、一 コ. .
給料ヲ增加スルト云フ方針ヲ執ルト同時ニ、此豫算ノ支出ニ對シテハ嚴正ニ
ヤラナケレバナラヌコトト考ヘルノデアリマス、併ナガラ斯ウ云フコトニナ
リマスルノハ、卽チ此豫算ノ分割競爭ノ結果デハナイカト考ヘルノデアリマ
ス、各省共ニ大藏省デ豫算ヲ取ル時ニハ非常ニ色〓交涉ヲ重ネテ御取リニナ
リマス、其御取リニナッタ豫算ニ剰餘ガ生ズレバ再ビ之ヲ大藏省ニ返サナケ
レバナラヌ、其場合ハ亦翌年モ同ジ豫算額ヲ要求スルト云フコトガ出來ナイ
ト云フヤウナ考ヲ有チマシテ、其豫算ノ全部ハ其年度內ニドウ云フ方法デモ
使ハナケレバナラヌト云フ一ツノ考ガ本トナッテ、斯ウ云フヤウナコトガ起ツ
テ來ヤシマイカト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ故、此豫算ノ實行ヲ適
正ナラシメテ、濫費浪費ヲ防グ爲ニハ、ドウシテモ其實行ノ前ニ、事前監督
ト云フ機關ヲ用ユルト云フコトガ、最モ必要デハナイカト考ヘテ居ルノデア
リマス、最近私ヲシテ豫算事前監督ノ最モ必要ヲ感ゼシメタノハ、卽チ朝鮮
國有鐵道成鏡道線施行ノ問題デアルノデ、承リマスレバ、十四年度ノ豫算ヲ
見マスルト、咸鏡道線ノ建設費トシテ五百四十萬圓ヲ要求シタ、其內三百四
十萬圓ハ大正十三年度ニ於テ既ニ施行濟ニナッテ居ルト云フコトデアリマス、
若シ果シテサウデアリマスレバ、是ハ豫算ナキニ拘ラズ、工事ヲ施行シテ、其
工費ヲ支出シテ、又前年度ニ於テ支出シタモノヲ翌年度ノ建設費トシテ要求
スルコトニナルノデアリマスカラ、是ハ實際ニ於テハ已ムヲ得ナイ事柄デアッ
テ、サウシナケレバナラヌカモ知レマセヌ、併ナガラ斯ノ如キハ此豫算ト云フ
モノヲ以テ仕事ヲスルト云フ豫算ノ實行ガ放漫濫費ニ流レルニ止ラズ、私ハ
豫算制度ヲ是ハ破壞スルヤウナ處置ヂヤナイカト云フヤウニ考ヘルノデアリ
やゞ、之ヲ事後ニ於テ糺彈イタシテモ、モウ支出濟トナッテ施行ハ終ッテ居ル
コトデアリマスルカラ、何トモシヨウガナイ、而シテ其責任ヲ問ハムトスル
場合ニ於テハ是ハ前內閣ノ責任デアル、或ハ前々內閣ノ責任デアルト云フヤ
ウナコトデ、詰リ何等ノ效果ヲ生ジナイノデアリマス、斯ウ云フコトハ卽チ此
事前監督ノ制度ガ十分ニ行ハレナイ結果ヂヤナイカト考ヘマスルノデアリマ
ス、我國ニ於テハ、此通リ豫算ノ實行ヲ監督シナイデ其儘ニナッテ居リマスル
ガ、海外諸國ノ實際ヲ見マスルト、私ハ英國ヲ初トシテ伊太利、白耳義、佛
蘭西デモ、和蘭デモ皆會計事前監督ノ機關ト云フモノガアッテ、嚴重ニ事前
ノ監査ヲ行ッテ、決算ノ檢査ト相俟ッテ、豫算實行ノ適正ヲ期シテ居ルノデア
リマス、私ガ申スマデモアリマセヌガ、英國ニ於テハ二段ノ事前監督制度ガ
採用サレテ居リマス、卽チ第一段トシテ支出ノ原因タルベキ行爲ノ審查ヲヤ
ルノデアリマス、第二段ハ實際ニ於テ支拂ガ適正ニ行ハレテ居ルカト云フコ
トノ審査ヲヤルノデアリヤス、總テ支出ノ原因トナルベキ行政行爲ハ大藏大
臣ヲ中心トスル大藏委員ノ審査ヲ受ケルト云フコトニナリマシテ、之ヲ通過
シタ後、支拂請求ヲナス場合ニ、會計檢査院ノ卽チ審査ヲ必要トスルト云フ
コトニナッテ居リマシテ、假令豫算ニ計上セラレタ金額ト雖モ、僅ナ金額ト
雖モ、其手數ヲ經ナケレバ支出ガ出來ナイコトニナッテ居リマス、又伊太
利ニ於テハ會計檢査院ヲシテ矢張リ二重ノ事前監督法ヲ行ハセテ居リマス、
其他、佛蘭西、白耳義、和蘭、制度ハ多少違ヒマスケレドモ、何レモ豫算
ノ實行ノ上ニ於テハ相當ノ監督機關ヲ用キテ居ルヤウニ考ヘルノデアリマ
ス、我國ノ如キ一タビ豫算ガ議會ノ協賛ヲ經タ後ハ各省ノ自由ニ放任シ
テ、勝手ニ支拂ヲ行ハセテ顧ミナイヤウナ例ハ、殆ド他ニ私ハ存シナイヤウ
ニ考ヘル、私ハ我國ニ於テ豫算實行ガ動〓モスレバ放漫ニ流レ、支出濫費ガ行
ハレマスル傾向ノアルノハ、一ツハ此制度ノ無イ罪デハナイカト考ヘルノデ
アリマス、制度ノ不備缺陷、卽チ事前監督機關ノ存セザル爲デアルト私ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、事情ハ右ノ如クデアリマスルガ、米國ニ於キマシテ
ハ尙ホ一層此豫算ガ實際ニ最モ經濟的ニ行ハレルヤウナ方法ガ採ラレテ居
ルノデアリマス、「ゼネラルドース」氏ガ豫算局長トナッテ、財政ノ整理ニ銳意
努力イタシタト云フコトハ、皆是ハ承知シテ居ルコトデアリマスルガ、其米國
ノ歲出豫算ヲ調ベテ見マスルト、千九百二十一年ニハ米國ノ豫算總支出ト云
フモノハ四十四億七千萬弗デアッタノデアリマス、四十四億七千萬弗ヲ豫算
局長タル「ドース」氏ハ三十九億九千萬弗ニ豫算ヲ減ジテ居リマス、卽チ五億
弗ヲ減ジテ居ル、然ルニ其當時ノ歲計現計ヲ見テ見マスルト、三十三億六千
萬弗、卽チ實行支出ノ上ニ於テ六億三千萬弗ヲ減ジテ居リマス、卽チ千九百
二十二年ハ豫算デ五億減ジ、實行豫算デ六億ヲ減ジテ、亞米利加ノ總豫算ノ
中カラ前年度ニ比シテ十一億弗幾ラデゴザイマスカラ日本ノ二十五億萬圓バ
カリノ節減ヲヤッテ居リマス、ソレカラ千九百二十三年ニ於テ豫算ガ三十五
億弗ニ對シマシテ、歲計ハ三十二億九千萬弗、卽チ此實行豫算ニ於キマシテ
二億一千萬弗ヲ節約イタシテ居ルノデアリマス、ソレカラ千九百二十四年ニ
ハ段々減ッテ居リマスケレドモ、尙ホ五千八百萬弗ヲ節約イタシテ居リマス、
斯ウ云フ風ニ漸次ニ此實行豫算ヲ十分ニ監督シ、又經濟的ニ支出シタ爲ニ、非
常ニ亞米利加ハ政府ノ豫算ヲ減ズルコトガ出來テ居ルノデアリマス、併シ此
「ドース」氏ガ前述ノ如ク歲出豫算額ヲ減ズルコトガ出來タト云フノハ、私
他ニ一ツノ理由ガアル、卽チ此豫算實行ノ統一機關ヲ設ケテ居ルコトデアリ
ハシナイカト考ヘテ居リマス、此處ニ米國ニ於ケル該制度ヲ詳シク述ベル必
要ハゴザイマセヌガ、其效果ノ多大ナルコトハ當局諸公ノ十分ナル考慮ヲ煩
ハシタイト考ヘル、卽チ此豫算實行統一機關トシテ、聯邦購買局ト云フモノ
ヲ設ケテ居ル、ソレカラ又聯邦拂下局ヲ設ケテ居リマス、聯邦運輸局ヲ設ケ
テ居リマス、契約及整理局ヲ設ケテ居リマス、地方協調局ヲ設ケテ居リマ
ス、サウシテ政府ノ要品ハ共同シテ、統一シテ買入レル、總テノ物ヲ一〓ニ
集メテ買入レル、拂下品モ總テ同樣ニ統一シテ拂下ゲテ居ル、又其物ヲ運送
シマスル輸送機關モ是ハ一シニ纒メテ一〓ニ運送シテ持ッテ來ルト云フヤウ
ナコトデ、總テ實行スル場合ニ不經濟ヲ除イテ、サウシテ能率增進ヲシテ居
リマス、其統一機關ハ大統領ノ直轄ノ豫算局長ノ監督ノ下ニ立ッテヤッテ居リ
WvS,卽チ豫算局長ガ各省ノ品物ヲ買フ物モ拂下ゲル物モ、其他ノ物モ一〓
ニ集メテ之ヲヤッテ居ルト云フコトニナッテ居リマスカラ、不正非違ヲ防止ス
ルコトモ十分ニ出來、又ソレヲ監督シテ、サウシテ其檢查ヲシマスルノニ
モ、非常ナ便利ニナッテ居ルノデアリマス、而シテ此機關ヲ設クル爲ニ僅ニ十
萬弗位ノ費用ヲ掛ケテ居ル、各省ニアリマスル所ノ購買係或ハ拂下ヲスル役
人ヲ卽チ中央ノ豫算部ニ集メテ、其仕事ヲサセルト云フコトニナッテ居リマ
スカラ、其費用ハ餘リ餘計ニ掛カッテ居ラナイ、斯ウ云フコトニナッテ居リマ
ス、私ハ我ガ帝國ノ經濟モ十六億以上ニナッテ居リマシテ、各省ニ於テ品物ヲ
買フコトモ、或ハ拂下ゲルコトモ、其他銘々勝手ニオヤリナサルノヲ、之ヲ
統一シテ購買ヲシ、拂下ヲシタナラバ、非常ニ經濟的ニ行ハレハシナイカト
考ヘルノデアリマス、政府ハ果シテサウ云フコトモヤル御考デ、此監督機關
竝ニ豫算ヲ經濟的ニ行フ方法ヲ御考究ニナッテ居リマスカ、其點ヲ御尋ネ申
上ゲタイト考ヘルノデアリマス、御承知ノ通リ我國ノ財界ハ實ニ萎靡不振、
產業モ實ニヒドイ有樣デアリマス、デ、此場合ニ於テ國民ノ膏血ヲ絞ッテ徵稅
サレタ所ノ此國費ト云フモノハ一厘一毛ノ微ト雖モ、濫費ヲシナイヤウニシ
テ貰ヒタイト考ヘルノデアリマス、眞ニ國家ノ存立發展ノ爲ニ、又國民ノ福利
增進ノ爲ニ、有效ニ且ツ經濟的ニ此國費ハ使用サレテ居ルコトノ保障ヲ得ナ
ケレバナラヌト私ハ考ヘルノデアリマス、此意味カラシマシテ、會計事前ノ監
督檢査ノ確立ト云フコトガ、此場合ニ最モ必要デナイカト私ハ考ヘマス、財政
整理ハ現内閣ノ標榜デアリマシテ、國民ハ之ニ共鳴ヲ致シテ居リマス、ソレハ
卽チ負擔ノ輕減ヲ切望スル爲デアラウト私ハ考ヘテ居ル、從テ財政整理ノ前
途ハ尙ホ遼遠デ、其徹底的ヲ期スル上ヨリ申上ゲマシテモ、此豫算ノ實行、ソ
レカラ事前ノ檢査ト云フモノハ極メテ重要ナルモノト考ヘマス、現內閣ハ又
綱紀ノ肅正ト云フコトヲ第三ノ政綱中ニ御揭ゲニナッテ居リマスルガ、此綱紀
肅正ト云フコトヲ圖ル上カラモ此制度ノ確立ト云フコトハ最モ必要ヂヤナイ
カト考ヘマス、ドウカ速ニ此制度ノ確立ヲ希望シ、又昨年、私ガ御尋ネ申シマ
シテ以來、此問題ハ如何ニ御取扱ニナッテ、此議會ニハ其問題ノ解決ヲ御努
メニナルデアラウト云フコトヲ、總理大臣竝ニ大藏大臣ニ御尋ネシタ次第デ
アリマス、尙ホ私ハ此問題トハ少シ離レタ問題デアリマスガ、外務大臣ニ一
應御尋ヲ致シタイト考ヘマスルノハ、本月八日ニ起リマシタ上海ノ紡績會社
ニ起ッタ暴動······寧ロ「ストライキ」ヂヤナイ、暴動ト云フ情勢ニマデ陷ッテ居
リマスガ、私ガ昨今接手シタ情報ニ依リマスルト、是ハ非常ニ甚大ナル問題
ヂヤナイカト考ヘテ居ルノデアリマス、此儘デ打チヤッテ置ケバ何時終熄スル
カモ知レマセズ、又其寧ロ暴動的ノ「ストライキ」ノ因ッテ生ジタ原因ハ那ノ
點ニ在ルカ、又我ガ外務省ハ此問題ヲ如何ニ現在御取扱ニナリ、御調査ニナッ
テ居リマスカ、御尋ヲ致シタイト考ヘマス、是ハ私ハ前ニモ申上ゲマシタ通
リ、我〓ハ海外企業ト云フコトハ今後最モ必要ナル、我〓ノ努ムベキ仕事ダ
ト考ヘル、デ、海外事業トシテハ現在ニ於キマシテハ、支那ト南洋方面ニ我
我同胞ガヤッテ居ルノニ過ギナイノデアリマス、其海外企業デ最モ大事ナル紡
績事業······上海ニ於ケル紡績事業ガ斯ウ云フ風ナコトデ屢〓迷惑ヲ受ケルヤ
ウナコトニナリマスルト、邦人ノ海外企業ノ精神ノ上ニ非常ナ打擊ヲ與へ、
將來如何ナルコトニナラウカト心配イタシマスノデアリマス、此點ニ付キ
マシテ外務大臣ハ情報ヲ十分御受取リニナッテ居ルコトト存ジマスカラ、
此暴動的「ストライキ」ノ原因、竝ニ今後ドウ云フ御考ヲ以テナサレルカ、
私ハ是ハ我〓ノ海外企業ノ精神ノ上ニ非常ナル打擊ヲ與ヘルモノト考ヘマ
ス、屢、斯ウ云フコトガ起リマスノハ甚ダ遺憾ニ考ヘマスカラ、此點ヲ外務
大臣ニ御尋ネ致シマス
〔國務大臣子爵加藤高明君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=3
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004・加藤高明
○國務大臣(子爵加藤高明君) 唯今、御尋ノ會計ノ事前監督ト申スコトハ至
極宜シカラウト云フコトヲ昨年モ申上ゲタノデアリマスガ、是ノ方法ハ可ナ
リムヅカシイノデアリマス、外國ノ例ナドヲ藤山君ハ御引用ニナリマシタガ、
政府ニ於テモ相當ナル材料モ持ッテ居リマスガ、是マデ嘗テ我國ニ於テハ無
イコトデアリマスルカラ、斯ノ如キ新制ヲ設ケルコトニ付テノ手數、費用、效
果等ニ付テハ深ク考慮ヲ下サナケレバナラヌ次第デアリマス、政府ニ於キマ
シテハ委員ヲ設ケテ唯今取調中デアリマス、併シ其委員カラマダ調查ノ結果
ニ對シテ報〓ヲ得マセヌカラ、今日如何ナル程度マデ調査ガ行ッテ居ルカト
云フコトヲ當席カラ申上ゲルコトハ出來ナイノデアリマス、今期議會ニ於テ
斯ノ如キ案ガ提出サレルヤ否ヤト云フ御尋デアリマシタガ未ダ提出スルヤ
否ヤト云フコトモ右ノ樣ナ次第デ一向極マッテ居リマセヌシ、從テ今期議會
ニ提出スルト云フコトモ無論申上ゲラレナイノデアリマスガ、恐ラク今期議
會ニハ提出ニハナリマスマイト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、其他ノ事ニ關
シテ色〓御述べニナリマシタガ、主タルコトハ事前ノ監督ニ付テノ政府ノ考
ハドウカ、又調査デモシテ居ルナラバドウ云フ經過ニナッテ居ルカト云フ
事ガ主要デアッタト思ヒマスカラ、ソレダケノコトヲ御答ヘ申上ゲマス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=4
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005・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 會計ノ事前監督ノコトニ付テ、其後ノ經過ヲ御尋
ネニナリマシタ、而シテ會計ノ事前監督ヲ速ニ實行スル必要ヲ證明セラル
ガ爲ニ、幾多ノ事例ヲ御引キニナリマシテ、藤山君ハ其事例ヲ悉ク政府ノ濫
費デアルト云フヤウニ御話ガアリマシタ、斯ノ如キ濫費ガアル故ニ、速ニ會
計ノ事前監督ヲ行フノ制度ヲ設ケナケレバナラヌト云フ御趣意デアッタヤウ
デアリマス、事前監督ノ其後ノ經過ニ付キマシテハ、唯今、總理大臣ヨリ答
辯ヲサレマシタ通リデアリマシテ、今日ハ委員ヲ設ケテ調査中デアリマスル
ガ、マダ其委員ニ於テハ成案ヲ得マセヌノデ報告ニ接シテ居リマセヌ、事前
監督ト云フコトハ、果シテ今日ノ我國ノ行政ノ組織ニ於テ可能デアルヤ否
や。又可能ナリトシタ所デ、ソレガ適當ナリヤ否ヤ、其事前ノ監督ヲ行フベ
キ時期ハ何時ガ宜シイカ、又政府ガ或ハ命令ヲ發シ、或ハ契約ヲ締結スル時
ガ宜シイカ、若クハ命令契約ノ時期ニアラズシテ、支拂命令ヲ發スル時期ガ
適當デアルカト云フコトモ、一ツノ調査スベキ問題デアラウト思ヒマス、又
其事前監督ヲ行フ所ノ機關ハ何ガ宜シイカ、今日ノ會計檢査院ガ宜シイカ
或ハ會計檢査院以外ニ政府ノ行政部內ニ於テ何カ獨立ノ機關ヲ設クルガ宜
シイカ、其獨立ノ機關ヲ設ケル場合ニ於テ、其仕事ニ從事スベキ所ノ官吏ノ
身分ハ、之ヲ如何ニスベキヤト云フ如キコトハ、何レモ唯今、委員會ニ於テ調
查シテ居ル事項デアリマス、又唯今御述べニナリマシタ通リ、外國ニ於テ事
前監督ノ例ガアリマス、アリマスガ、其外國ニ於ケル所ノ事前監督ノ成績ハ
如何、其事前監督ヲ行フガ爲ニ各行政官廳ノ責任觀念ニ及ボス影響ハドウデ
アルカト云フ如キコトモ、今日ノ所デハマダ詳細ニ分ッテ居リマセス、從テ是
等各般ノ事項ニ亙ッテ調査ヲ致ス必要ガアリマス、唯今調査中デアルコトハ
申上ゲタ通リデアリマス、事前監督ヲ必要トスル理由ニ付キマシテ種々ノ事
柄ヲ御述べニナリマシタ、是ハ藤山君ガ一ツノ例トシテ御擧ゲニナリマシタ
カラ、ソレニ對シテ一々御答ヲ致ス必要ハ或ハ無イカモ知レマセヌ、併ナガ
ラ其事柄ガ多少事實ニ相違ヲ致シテ居ルト認ムル點ガアリマスニ依ッテ、其點
ニノミ付テ、私ハ政府ノ所見ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、又申上ゲルコ
トガ此場合必要デアルト考ヘマス、第一ニ御述ベニナリマシタノハ此度ノ
行政整理ノ成績ニ付テ、之ヲ不徹底ナリト論斷ヲサレマシタ、ソレハ御意見
デアリマスカラ、之ニ對シテ私ハ何等ノコトヲ申上ゲマセヌ、唯十四年度ノ
總豫算ハ十五億二千四百萬圓デアルケレドモ、マダ追加豫算ガ出ル筈ニ依ッ
テ、彼レ此レ合計ヲスルト云フト大正十四年度ノ豫算ハ恐ラクハ十六億圓
以上ニ達スルデアラウト云フコトヲ申サレマシタガ、是ハ明カニ事實トハ違
ッテ居マス、總豫算ハ十五億二千四百萬圓デアリマシテ、追加豫算ハ唯今調
査中デアリマスカラ、果シテドレ位ノ金額ニ達スルカト云フコトハ、唯今責
任ヲ以テハッキリトハ申上ゲラレヌケレドモ、十六億圓ト云フ如キ大數ニ達ス
ルコトハ決シテアリマセヌ、ソレカラ苛斂誅求ヲ行フ、稅務署ノ官吏ガ豫算
以上ノ徵稅ヲスル、其豫算以上ニ多クノ稅金ヲ取ル者ヲ能吏ト稱シテ之ヲ稱
讚ヲスルト云フ如キ意味ノ御話ガアリマシタガ、政府ハ左樣ナルコトハ決シ
テナイト思ヒマス、豫算ハ卽チ豫算デアリマスルガ、其豫算ニ擧ゲタル所ノ
稅額以上ノモノヲ徵稅ヲシナケレバナラヌト云フ理由ハ少シモアリマセヌ、
サウ云フ必要モ決シテアリマセヌ、又豫算ニ揭ゲテアリマス所ノ金額デモ、
實際ノ事情ノ爲ニ、豫算ダケノ金額ガ取レナイト云フ場合ニ於テハ、强ヒテ
豫算ニ達セシムルガ爲ニ、所謂苛斂誅求ヲ行フト云フガ如キ考ハ少シモ有ッ
テ居リマセヌ、其次ニハ官吏ノ賞與、是ハ國帑ノ濫費デアルト云フ如キ御意見
デアッタヤウデアリマス、俸給ガ餘ッタガ故ニ、其餘ッタモノハドウシテモ使
ハナケレバナラヌ、ソレガ卽チ官吏ノ賞與トナッテ現ハレル、ト云フ如キ意味
ヲ以テ御話シニナリマシタナラバ、ソレハ明カニ事實ニ違ッテ居リマス、官吏
ノ賞與ハ俸給ノ殘額カラ支給ヲ致シマスケレドモ、此官吏ノ賞與ナルモノハ
其人〓ノ勤勞ノ程度ニ依リマシテ、種々ナル所ノ階級ヲ設ケテアリマス、格
別ニ勉勵シタ者ニ對シマシテハ、相當ノ賞與ヲ致シマスケレドモ、其勤勞ノ
程度ニ依ッテ、絕對ニ賞與ヲ出サナイモノモアリマス、要スルニ此官吏ノ賞
與ハ其人ノ勤勞ノ程度ニ比例シテ支給スルモノデアリマシテ、俸給ガ餘ッタ
故ヲ以テ支給シテ居ルノデハアリマセヌ、又豫算ニ取ッテアル所ノ總テノ費
目ガ、各省割據主義ノ爲ニ殘ラズ使ハレテシマフト云フ如ク御考ヘニナッテ居
ルカモ知レマセヌガ、サウ云フコトハアリマセヌ、ソレハ每年度ノ決算ヲ御覽
ニナリマスレバ、歲入ニ於テ豫算ニ超過シタルモノガ剩餘金ニナリ、歳出ニ
於テ不用ニ歸シタルモノガ事實歳出ノ方面ニ於ケル剰餘金トナリマス、剩餘
金ハ歲入ノ方面カラモ歲出ノ方面カラモ兩方カラ出テ來マス、從テ歲出豫算
ハ殘ラズ之ヲ使ッテシマフト云フガ如キ間違ッタル考ハ今日有ッテ居リマセヌ、
ソレカラ國費ヲ濫費スル例トシテ、朝鮮ノ成鏡線ノコトヲ御擧ゲニナリマシ
タ、此事柄ハ政府ノ見ル所ニ依リマスレバ、決シテ國帑ノ濫費デモ何デモナ
イノデアリマス御承知ノ通リ咸鏡線ハ數年ニ亙ル所ノ繼續費デアリマシ
テ、既ニ過去ニ於テ議會ノ協贊ヲ經テ居リマス、而シテ是ガ建設ノ工事ハ
朝鮮總督府ヨリ致シマシテ、滿鐵會社ニ委託シテアリマス、其委託ハ無論數
年ニ亙ッテ居リマス、其委託ヲ受ケテ建設工事ヲ致シテ居リマス所ノ滿鐵會社
ガ、工事ノ都合ニ依ッテ偶〓十四年度ノ豫定計畫ニ屬スルモノヲ十三年度ノ內
ニ一部工事ヲ進捗セシメタト云フダケデアリマス、併ナガラ元來、其工事ニ對
スル所ノ經費ハ、大正十四年度ノ年割額ニ屬スルモノデアリマスガ故ニ、十三
年度ニ於テ之ヲ支出ヲ致シタコトハナイノデアリマス、從テ是ハ濫費デモ何
デモアリマセヌ、若シ濫費ノ例トシテ、此成鏡線ノ問題ヲ御考ヘニナッテ居ル
ナラバ、ソレハ明カニ御考違ヒデアラウト思ヒマス、其次ニハ米國財政整理
ノ實例ヲ御擧ゲニナリマシテ、或ハ營繕ノ工事或ハ用度ノ如キモノヲ、中央
ニ於テ一ツノ官廳ヲ設ケテ總テ統一シテ、建築ヲヤリ、物品ノ購買ヲ行ッテ
居ルガ爲ニ、大分節約ニナッテ居ルト云フ如キ御話ガアリマシタ、此度十四
年度ノ豫算ノ編成ニ當リマシテモ、其事ニ付テハ深ク考慮ヲ拂ヒマシテ、出
來得ベクンバ、今日ノ政府ノ營繕工事、竝ニ重立ッタ所ノ用度品ノ購買ニ付
テハ、中央ニ一部局ヲ設ケテ之ヲ統一ヲシタイト云フ考ヲ以テ、段々研究イ
タシマシタガ、是ハ新シイ所ノ試ミデアリマスルガ故ニ、一擧ニシテ直チニ
其理想ヲ達スルコトハ困難デアラウト云フ考ヲ以チマステ、先ヅ以テ大藏省
ニ於テ營繕管財局ナル外局ヲ設ケマシテ、其外局ニ於テ東京府ト神奈川縣ト
ニ於テ行ハルヽ所ノ各種ノ營繕工事、大藏省ノ所管ニ付テハ、全國ニ亙ル所
ノ營繕工事、是ダケノモノヲ從來ハ各省ニ於テ銘々行ッテ居リマシタモノヲ、
此度ハ營繕管財局ニ於テ取纒メテ、其營繕工事ヲ行フト云フコトヲ決定イタ
シマシテ、之ヲ此度ノ豫算ニ現ハシテ居ル次第デアリマス、營繕工事ト申シ
マシテモ、大小ニ拘ラズ、苟クモ營繕工事デアル以上ハ如何ナル小サイ工事デ
モ、又陸海軍ノ機密ニ屬スル工事デモ、或ハ小破修繕ニ屬スル工事デモ、總
テ營繕管財局ニ於テヤルト云フ譯デハアリマセヌ、ソレニハ多少ノ例外ハア
リマスケレドモ、原則トシテ先ヅ大體總テノ工事ヲ此中央ノ營繕管財局ニ於
テ行フコトニ豫算ヲ編成イタシテアルノデアリマス、用度ノコトニ付テモ段
段研究イタシマシタガ、先ヅ營繕ノ工事カラ始メテ其成績ヲ見タ上ニ、物品
ノ購買ヲモ此營繕管財局ニ纒メテヤルト云フコトハ後日ノ詮議ニ致シテモ、
敢テ遲クハアルマイト云フコトデ、此用度ノ方面ハ後廻シニ致シテアリマ
ス、大體、藤山君ガ事前監督ヲ必要ナリトスル論據ニ對シマシテ、其事實ガ
或ハ間違ッテ居リハセヌカ、又政府ニ於テモ既ニ行ッテ居ルト云フコトヲ考ヘ
マシタ結果、此際、說明ヲ申上ゲル必要ガアルト思ヒマシタ點ノミニ付テ、
〓略ノ說明ヲ申上ゲタ次第デアリマス
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君演壇ニ登ル」発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=5
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006・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 上海ノ紡績工場ニ於ケル「ストライキ」ノ問
題ニ付キマシテ、藤山君ヨリノ御質問ニ御答辯ヲ申上ゲマス、私ガ大體記憶
イタシテ居リマス所ニ依リマスレバ、上海及上海附近ニ於テ日本人其他各國
人ノ經營イタシテ居ル紡績工場ハ〓數約九十何萬錘ト云フモノヲ運轉イタシ
テ居ルヤウニ記憶イタシテ居リマス、其中ノ六十何萬錘ト云フモノガ日本人
ノ經營ニ係ッテ居ルモノデアリマシテ、從テ此「ストライキ」ノ問題ナルモノ
ハ極メテ我〓ノ重要視イタシテ居ル問題デアリマス、唯今、藤山君ノ御話ニナ
リマシタ如ク、本月ノ八日、内外棉絲會社ノ工場ニ於キマシテ突然職工ガ、確
カ職工ノ解備ノコトカラ同盟罷工ヲ起シマシテ、是ガ段々ト外ノ日本人ノ經
營イタシテ居ル工場ニ蔓延イタシマシテ、確カ日本人ガ現ニ經營シテ居ル工
場ノ數ハ十カ十一カアリマスガ、其中ノ七箇所マデ蔓延イタシテ來タノデア
リマス、而シテ段々此同盟罷工ガ暴動ノ性質ヲ有スルニ至リマシタ、日本人ノ
中デモ傷害ヲ受ケル、身體ノ危害ヲ受ケル者モ生ズルニ至ッタコトハ、誠ニ遺
憾千萬ノ話デアリマス、彼等ハ或ハ賃銀ノ引上ゲトカ、待遇ノ改善トカヲ叫ン
デ居リマスルケレドモ、日本ノ職工ヲ使用シテ居ル賃銀ハ、決シテ其他ノ工
場デ使用シテ居ル職工ノ賃銀ヨリ廉イ譯デハアリマセヌ、待遇ノ如キハ極メ
テ良イノデアリマス、從テ是等ノ口實ハ何等ノ意味ヲ成サヌノデアリマス、
彼等ガ振リ撒イテ居リマスル宣傳ノ「ビラ」ヲ見マスルト云フト、最初ハ東
洋ノ資本家ガ勞働者ヲ虐使スルト云フヤウナコトガ書イテアリマシタル所
ガ、其東洋ノ運ト云フ字ダケヲ除イテ、削ッテ、「ビラ」ヲ振リ撒イタノ
デアリマス、從テ今日ニ於キマシテハ日本ダケデハナイ、外國人全體ノ資本
家ガ支那人勞働者ヲ虐使スル、斯ウ云フ風ナ口實ヲ持ツニ至ッタノデアリマ
スルカラ、此問題ハ大ニ致シマスルト云フト、日本ノ紡績工場ダケデハナイ、
外國人ノ經營シテ居ル紡績工場ニマデモ波及イタス問題デアリマスカラ、列
國共ニ此問題ノ成行ニハ深ク注意ヲ拂ヒマシテ、出來ルダケ共ニ防止ノ手段
ヲ執ッテ居ルノデアリマス、日本ノ關スル限リハ、若シ是等ノ暴動ガ益〓ヒド
クナルト云フ風ナコトガアッテ、日本人ノ生命財產ニ危害ヲ及ボスヤウナコ
トニ相成ッテハナリマセヌカラ、之ニ對シマシテハ適當ナル保護ノ手段ヲ執
リツヽアリマス、又地方官憲ニ對シマシテモ、尙ホ北京ノ官憲ニ對シマシテ
モ、深甚ナル注意ヲ促シタノデアリマス、地方官憲ノ關シマスル限リハ、是
モ今日ノ情況ニ於キマシテハ出來ルダケノ警戒ヲ加ヘテ居ルヤウデアリマ
ス、又暴動ノ起リマシタ場所ハ上海ノ居留地デハアリマセヌケレドモ、上海
ノ居留地ノ工部局ニ於キマシテモ此問題ノ進行ニ注意ヲ拂ヒマシテ、今日ハ
警察官ヲ派遣シテ警戒ヲ致シテ居リマス、暴動ノ原因ニ至リマシテハ、先刻
申シマシタル通リ、彼等ハ賃銀ノ値上ゲトカ待遇ノ改善トカ云フコトヲ叫ン
デ居リマスルケレドモ、是ハ全ク意味ガナイノデアリマシテ、其宣傳「ビラ」
ヨリ見マスレバ、何カ他ニ意味ガアルヤウニ見エマス、是等ノ事情ニ付キマシ
テハ多少我〓モ見當ハ有ッテ居ルノデアリマスルガ、今日ハ將來ノ取締ノ爲
ニ、我〓ガ今日付ケテ居リマスル見當、原因ニ付テハ······見當ヲ今日ハ暫ク
玆デ明言イタスコトハ差控ヘル方ガ宜シカラウト存ジマス、何レニ致シマシ
テモ我〓ハ此問題ノ進行ニ關シテハ深甚ナル注意ヲ拂ヒ、出來ルダケノ保護
ノ手段ハ執ッテ居ルト云フコトダケヲ玆ニ御答辯申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=6
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007・藤山雷太
○藤山雷太君 今事前監督ノ問題ニ付キマシテハ、總理大臣ハ兔ニ角調査ヲ
シテ、相當ノ處置ヲ執ルト云フ御答デアリマス、成ルタケ速ニサウ云フ方法
ヲ御講ジ下サルコトヲ深ク希望イタシマス、大藏大臣ノ御答辯中ニ、朝鮮ノ鐵
道ノ問題ニ付テ私ガ述べマシタ場合ニ、是ハ濫費ノ證據トシテ擧ゲタヤウニ
御話デアリマシタガ、ソレハ大藏大臣ノ或ハ御聽違デナカラウカト考ヘマス、
私ハ此咸鏡鐵道ノ建設費ハ繼續費デ出テ居リマスノデ、能ク承知シテ居リマ
スガ、必要ナ設備ト考ヘテ居リマス、唯其支出ノ方法ガ、若シ事前監督ガ能
ク行ハレテ居リマシタラバ、已ムヲ得ザル處置トシテ今日此豫算ニ計上シテ
アリマスモノガ、正當ニ出ス機會ガアッタデアラウト云フコトヲ考ヘルノデ
アリマス、建設費ノ支出ノコトハ、既ニ是ハ繼續費デ、此鐵道ノ必要ヲ認メ
テ居リマスカラ、其點ニ付テハ濫費ト云フコトハ私ハ一切考ヘナイノデアリ
やくろ、併ナガラ唯、是ガ事前ニサウ云フコトヲシテ居ラレタナラバ、モット
適正ナ方法ヲ以テ支出シ得タデハナイカト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、
卽チ私ハ今日ノ會計檢査院ノ事後ノ檢査ト云フモノハ餘リ用ヲ爲サナイ、寧
ロモウ少シ早クサウ云フ事ヲ調査スル機關ガアッタ方ガ、卽チ豫算ノ適正ナ
ル實行ガ出來ハシナイカト云フコトノ例證ニ擧ゲタニ過ギナイノデアリマ
ス、其他ノ問題ニ付キマシテハ、大藏大臣ハ決シテ苛斂誅求ノヤウナ事ハシ
テ居ナイ、私モ苛斂誅求ガ行ハレテ居ルトハ存ジマセヌガ、併ナガラ免ニ角、
此徵稅ノ上ニ於テ負擔ノ重イノニ國民ハ苦シンデ居ル場合デアリマスカラ、
成ルタケ徴稅ニ付テハ御注意下サレムコトヲ希望イタシマス、併シ大藏大臣
ハ我〓ハサウ云フコトハ將來シナイ、又今マデモ無カッタト云フコトデアリ
マスカラ、其點ニ付テハ十分ニ私ハ滿足ヲ致シマス、是デ私ハ··
〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=7
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008・志水小一郎
○志水小一郞君 總理大臣ニ御尋ヲ致シマス、貴族院令ノ改革ニ付テデアリ
T-3私ノ御尋ハ稍〓皮肉ノヤウニモ聞エマスガ、決シテ好ンデ皮肉ヲ言
フノデハアリマセヌ、又先日爲サレマシタ永田秀次郞君ノ御尋ノヤウナ所モ
アリマスガ、大キニ趣ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、質問ノ進行ニ依ッテ御
承知ヲ願ヒタウゴザイマス、先ヅ御尋ネ致シタイノハ總理大臣ハ一面政黨ノ
首領デアラセラレマス、就テハ政黨又ハ之ト行動ヲ共ニスル所ノ政府與黨ノ
行動ニ付テモ亦事柄ニ依ッテハ無論責任ヲ負ハルヽ御覺悟デアリマセウカ、其
責任ト申スノハ廣イ意義ノ責任ノ意義デアリマス、政治道德ナド通常申シマ
ス、其ノ範圍內ニ付テ申スノデアリマス、他人ノ行爲ニ依ッテ得ル所アルモノ
ハ失フ所モアルノハ當然デアルト考ヘテ居リマス、如何デゴザイマセウカ、現
內閣ニハ他ニモ政黨ヲ提ゲタル狀態ニテ御入閣ニナリ居ル方〓モアラセラル
ルノデアリマス、此方〓ニ付テモ亦同樣ノ疑問ガアリマス、是ガ第一問デアリ
マス、此樣ナ御尋ガ十項バカリアリマスガ、何卒御記憶ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、御記憶ニ難ケレバ幾度デモ宜シウゴザイマス、反覆シテ申上ゲマス、作
日デアリマシタカ、池田男ト首相トノ間ニ繰返サレタルガ如キ御問答中ニハ
少シク不可解ナ點モ有リマス、併ナガラ態ト御尋ネ致シマセヌ、次ニ貴族院令
改革ニ付テ、是マデ永イ年月ノ間ニハ時ニ其問題モ起ラザリシニモアラズト
雖モ、其聲ノ突然ニ高クナリマシタルノハ〓浦內閣ノ組閣成リタル時、卽チ
政友、革新、憲政ノ三派ガ所謂護憲運動ナルモノヲ起シマシタル時ニアルト
云フコト、及ビ其運動ガ最初專ラ〓浦內閣ノ倒壞ヲ主張シ、〓浦內閣ノ倒ル
ルヤ、次デ憲政常道、卽チ憲政ヲ常道ニ復サネバナラヌト主張シテ、次デ貴
族院令改正ノ聲ガ起リ且ツ益〓喧囂トナリマシテ、遂ニ今日マデニ至レル事
實ハ、首相モ亦御認メニ相成ルノデアリマセウカ、是ガ第二問デアリマス、
首相ハ嘗テ何某カノ問ニ對シテ、自分ハ嘗テ護憲運動ナドト言ヒタルコトハ
ナシ、ソレハ新聞紙ガ言ヒタルコトダ、斯ウ云ハムガ如キコトヲ仰シヤッタ
ヤウニ記憶シテ居リマス、或ハ事實サウカモ知レマセヌ、運動ノ名稱ハ何デ
モ宜シウゴザイマス、唯今申上ゲタヤウナ事實ヲ御認メニ相成ルノデアリマ
セウカドウカ、ソレヲ伺ヒタイノデアリマス、次ニ我〓ハ固ヨリ政黨ヲ忌
ムモノデハアリマセヌ、否、政黨ハ憲法政治ヲ行フ通常ノ手段、從テ政黨ハ
憲法政治ノ副產物ト云ハムガ如キモノト心得テ居ルノデアリマス、故ニ只管
其發展向上ヲ祈ルモノデアリマス、サリナガラ帝國憲法ノ政黨ニ於ケルノハ
明カニ之ヲ認ムルノデハナイ、又固ヨリ之ヲ否認スルノデモナイ、要スルニ
內閣ノ組織ニ政黨ヲ基礎トスルヤ、必シモ政黨ヲ基礎トセザルヤハ、政治問
題ニ屬シテ憲法問題ニ屬シナイト心得テ居リマスガ、首相モ亦其御意見デア
リマセウカ、是ガ第三問デアリマス、次ハ御信任ニ依ッテ内閣ノ組織ヲ命ゼ
ラレタル人ハ如何ナル人〓ヲ以テ內閣ヲ組織シマセウト、ソレハ自己ノ覺悟
ト責任デアッテ、憲法問題トハ相關セズ、故ニ政黨員ヲ以テ組織スルモ、非政
黨員ヲ以テ組織スルモ、兩者ヲ混淆シテ組織スルモ、亦閣員ノ多數ヲ衆議院ニ
採ルモ、又ハ貴族院ニ採ルモ、何等妨ゲアルコトデハナイ、從テ是亦憲法ト相
關セズ、寧ロ憲法モ亦過度期ニアッテハ、是等ノ事柄アルベキコトヲ豫想シテ
居ルデアラウ、斯ウ心得テ居リマスガ、首相ノ其所見ハ如何デアリマセウカ
之ヲ第四問ト致シマス、次ハ今日ニ於テ內閣ヲ組織スルニ當リ何人ト雖モ政
黨ニ其基礎ヲ置クコトヲ得策トセザル者ハアルマイト思ヒマス、而モ尙ホ比
較的頻繁ニ所謂超然內閣、中間内閣等組織セラヽ所以ノモノハ何デアリマセ
ウカ、要スルニ政黨ノ力ガ未ダ以テ獨力鞏固ノ內閣ヲ造ルニ足ラザルガ爲デ
ハアリマスマイカ、制度ノ如何ニハ何等關係ガ無イト思ッテ居リマスガ、首相
ノ御考ハ如何デゴザイマセウカ、是ガ第五問デアリマス、斯ノ如ク考ヘ來
レバ、加藤友三郞內閣モ、山本內閣モ將タ〓浦內閣モ、其內容ニコソ相違ハ
有レ、其組閣ノ經緯、形式ニハ何等異ナルモノアルコトガ無イ、從テ是亦憲
法問題ト相關セザルヤウ思ハレマス、首相ノ御考ハ如何デアリマセウカ、是
ガ第六問デアリマス、次ハ政黨ノ行動ニ付テデアリマス、是ハ或ハ問題外デ
アルト仰セラルヽカモ知レマセヌ、ダガ、サウデアリマセヌ、暫ク御聽キヲ
願ヒタイノデアリマス、數十年間終始一貫國事ニ盡瘁セラルヽノハ各政黨皆
同樣ト思ヒマス、中ニモ政友會ノ如キハ黨勢頻ニ加ハリ遂ニ二百八十ト申ス
優勢ト成リ、順境ト共ニ主張モ亦愈〓穩健トナリ、世間モ亦漸ク其前途ニ望
ヲ囑シツヽアッタノデアリマス、ソレカラ其首領卽チ原敬君ハ、所謂政界ノ
縱斷策ナルモノヲ講ゼラレマシテ、舉黨之ニ滿足シテ居ッタヤウデアリマス、
折カラ不幸ニシテ一朝原君ニ兇變ガアリマスヤ、其屍未ダ冷カナルニ遑アラ
ズ內訌忽チ起リ、遂ニ分離ノ已ムヲ得ザルニ至リタルノミナラズ、原君ガ貴
族院ニ政友トシタル人〓ニ對シテ、之ヲ敵視シ之ニ對シテ戰ヲ挑ムガ如キ感
ガアルノデアル、サウ云フ風ニ見エルノデアル、單リ政黨ノ盛衰甚シキモノ
ガ有ルノミナラズ、其主張ニモ亦著シキ變動ヲ來シタヤウニ思ハレルノデア
リマス、此事ハ貴族院令ノ改革ニ關係ナキガ如キモ、サウデナイノデアリマ
ス、其動機ニ重大ノ關係ガアルノデアリマス、動機ノ如何ハ改革其モノノ當
否ヲ判ズルニ重要ノ關係ガ有リマス、唯今申上ゲタ事實ヲ首相モ亦御認メニ
相成ルノデアリマセウカ、之ニ關スル御所見如何デアリマセウカ、此處ニ高
橋農相モ居ラッシヤルノデアリマスカラ、御都合ニ依ッテハ高橋農相カラ伺ッ
テモ宜シウゴザイマス、次ハ改革ノ順序方法デアリマス、我〓ハ貴族院令ノ
立法理由ヲ研究スレバスル程、殆ド其改革ノ必要アル所以ノ理由ヲ知ルニ苦
シムノデアリマス必要ガ無イト云フ斷言ハ未ダ致シマセヌ、況ヤ輿論ナリ、
時勢ノ急務ナリトシテ、一氣呵成ニ改革ヲ急ガルヽノ必要オヤデアリマス、假
ニ何程カ變改ヲ可トスルモノ有リトスルモ、歲月ノ移ルヲ厭ハズ、愼重ノ上
ニモ愼重審議ヲ盡スベキモノト信ズルノデアリマス、然ルニ首相ガ初メハ善
處云々ト稱シテ、人ヲシテ首相モ亦蓋シ改革ノ意ハ無イノデアラウ、斯ウ信ゼ
シメタノニ拘ラズ、急轉直下ト云ハムガ如ク、大ニ其改革ヲ急ガルヽコトト
ナリマシタル理由ハ如何デアリマセウカ、是ハ第八問デアリマス、次ハ案ノ
內容ニ付テデアリマス、我〓モ亦官文書、殊ニ未確定ノ法案ノ祕密ヲ要スル
コトハ能ク承知シテ居ルノデアリマス、併シソレハ文書ノ性質ニ依ルモノデ
アリマシテ、性質ニ依ッテハ其未確定ノ狀ヲ以テ公表シ、以テ學者ヤ識者ノ批
評ヲ徵シタルモノモ其例ニ乏シカラヌノデアリマス、假ニ世ニ公表スルコト
ハ然ルベカラズトスルモ、貴族院令第十三條ノ有ル限リ、貴族院ノ承諾ヲ得
ルニアラザレバ、貴族院令ヲ改革スルコトヲ得ヌノデアリマス、得ナイノデア
リマス、又政府ガ圓滿ニ改革ノ目的ヲ遂ゲムトセラルヽ上ニ於テモ未確定ノ
儘貴族院ニ內交渉ヲセラルヽガ如キハ寧ロ當然ノ事ト思フノデアリマス、
政府ノ措置コヽニ出デズ、人ヲシテ大ニ壓迫ヲ加ヘラルヽカノ如キ感ヲ起サ
シムル、是ハ如何ナル理由デアリマウセカ、本件ハ我ガ貴族院史、貴族院ノ
歷史······歷史ニ重大ノ事件デアルノデアリマシテ、改革案ノ內容如何ニ依リ
マシテハ今後政府ト本院トノ間ニ一大論爭、論戰ガ勃發スルカモ知レマセヌ、
之ヲ兵家ノ言葉デ申シマスルト本戰トデモ申シマセウ、サスレバ我〓ガ質問
ヲ致シ、質問戰ヲスルノハ卽チ前衞戰デアリマス、正々堂々、極メテ公明正
大ニ事ヲ了スル上ニ於テモ本院ニ未確定ノマヽ改革案ヲ送付セラレマシテ、
各員ニ豫メ研究セシメ置カルヽコトハ、如何デゴザイマセウカ、其必要ハ有リ
マスマイカ、之ヲ第九問ト致シマス、最後ニ御尋ネ致シ置キタイノハ、改革
案ガ若シヤ本院ニ於テ否決セラルヽト云フコトニナッタラ如何デアリマセウ、
假令否決セラレザルモ、政府ガ民意ナリ時勢ノ要求ナリトシテ、大早急ニ作
ラレル所ノ其改革案ガ、極メテ微温的且ツ極メテ不徹底的ニシテ識者ノ期待
ニ似モ寄ラヌト云フヤウナモノデアリマシタナラバ、如何デアリマセウカ、政
府ハ爲ニ大ニ識者ノ非難ヲ招カルヽト云フコトニナリマシタナラバ如何デア
リマセウ、之ニ付テ政府ノ御決心ヲ承ッテ置キタイノデアリマス、之ヲ第十問
ト致シマス、デ、是マデノ例ニ依レバ首相ハ何程、多量ナ重要ナ問題デモ免
角之ヲ綜合包括シテ簡單ナ御答ヲナサルノデアリマス、サウシテ質問者ヲシ
テ失望ニ堪ヘザラシムルヤウナコトガ甚ダ多イノデアリマス、私ハ決シテ其
御答ニ依ッテ此席ニ於テソレヲ追究シテ論爭スルト云フヤウナ考ハ無イノデ
アリマス、他ニ目的ガ有ル、私ノ述ベマシタコトモ明カニ速記錄ニ遺ッテ居リ
きくる。御答モ亦明カニ速記錄ニ遺ッテ居ナケレバナラヌ、ソレデ私ノ御尋ネ致
シマス所ノ十問ニ對シテドウ云フ御答ガアルカト云フコトヲ確メテ置ク、ソ
レガ私ノ目的デアリマス、決シテ此席ニ於テ徒ラニ時間ヲ費シテ追究論爭ス
ルヤウナコトハ致シマセヌ、ドウカ私ノ申上ゲタ所ノ趣旨ニ依ッテ短クトモ
宜シウゴザイマス、極ク眞率率直ナル、極メテ御深切ナル御答ヲ希望イタシ
マス
〔國務大臣子爵加藤高明君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=8
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009・加藤高明
○國務大臣(子爵加藤高明君) 唯今、志水小一郞君ヨリ一二三四ト云フ箇條
ヲ擧ゲテ御問ニナリマシタガ、甚ダ斯ウ云フ事ヲ申シテ善イカ惡イカ存ジマ
セヌガ、御趣意ガ能ク私ニ了解シナイ所モアッタノデアリマス、御註文ノ通リ
何レ速記錄ヲ見マシテ必要ナラバ御答ヘ致シマセウガ、或ハ又斯ノ如キ色〓
込入ッタ事ハ書面ノ御問デモ御出シ下サッタ方ガ便利カモ知レマセヌ、極メテ
志水君ニハ不十分ナ御答ホカ出來ヌト思ヒマス、其事ヲ前以テ御斷リ申上ゲ
テ置キマス、私ガ行屆カヌノデアリマスカ、能ク分ラヌ所ガ澤山アッタ、唯
其中ニ斯ウ云フ御趣意デアッタカト思ハレタ事ダケヲ御答へ申上ゲマス、政
黨ノ行動ニ對シテ私ハ責任ヲ負フヤ否ヤト云フ事ガ第一問デアッタカト思ヒ
R-Y.私ハ或政黨ノ首領デアリマスカラ、政黨ノ行動ニ對シテハ私ノ議ニ與
ッタ事ナラ勿論責任ヲ負ヒマス、但シ政黨員ノ個々ノ人〓ノ言論ニ對シテ私
ガ知ラヌ間ニ起ッタ事ニ一々責任ヲ負フ譯ニイカヌト云フ事ダケ申上ゲテ置
キマス、ソレカラ第二ハ護憲運動ナルモノヲ認メルヤ否ヤト云フヤウナ御尋
デアッタカト思ヒマス、此處ガドウモ御趣意ガ能ク分リマヌデシタ、護憲
運動ト云フ事ハ果シテ如何ナル事デアルカ、私ハ〓浦內閣組織當時ノ有樣ヲ
見マシテ甚ダ宜シクナイト云フコトハ確ニ考ヘタノデアリマス、從テ民意ニ
基カナイ內閣ガ國ヲ治ムルノニ適當デナイト云フコトノ確信モ持ッテ居リマ
シタ、從テ世上ニ於テモ屢〓其通リノ言論ハ致シマシタガ、所謂護憲運動ト
云フヤウナ形デスルコトハ私ハ責任ハ餘リ無イノデ、自然ニサウ云フ風ニナツ
タ譯デアリマセウカ、從テ前ノ議會ニ於キマシテモ其御尋ニ對シテハ......ド
ナタカラカ御尋ガ一二度アリマシタガ、護憲運動ト云フコトハ別ニ加藤ガ發
企人デモナケレバ······ト云フコトヲ申シマシタ、私ハ、私ノ行動ハ確ニ致シタ
ノデアリマス、ソレガ偶〓所謂護憲運動ト云フモノト一致スル所ガアッタカモ
知レマセヌ、ソレカラ第三ノ御尋ハサッパリ私ニ分ラナカッタ、第四ノ御尋ハ
内閣組織ノ權能ト云フヤウナコトヲ御尋ニナッタカト思ヒマス、內閣員ハ悉ク
政黨員デ無クテハナラヌト云フコトヲ思ッテ居ルヤ否ヤト云フヤウナ御尋デ
アッタカト思ヒマス、果シテ右ノ如キ御趣意デアッタトスレバ、政黨員デナクテ
ハ內閣員ニ成レヌト云フコトハ無論私考ヘテ居リマセヌ、但シ是ハ一ニ內閣
組織ヲ御命ジニナルコトハ陛下ノ大權ニ屬スル所デアリマスノデ、民意ニ
基イタ者ガ偶〓大命ヲ拜スルコトニナレバ極メテ便利デ有ラウト云フ考ヲ持ッ
テ居リマスルガ、政黨員デナケレバ、陛下ガ御親任ニナルコトハ出來ナイ
ト云フヤウナコトヲ臣子ノ分トシテ決シテ申スコトデモナシ、又實際サウ云
フコトモ考ヘテ居リマセヌ、此度偶〓如何ナル思召カ不肖ヲ召サレテ、內閣組
織ヲ命ゼラレタノデアリマス、此度デハアリマセヌ昨年ハ······ソレガ偶〓加
藤ト云フ者ガ憲政會ノ總裁デアルト云フコトハ御上ニ於テモ御承知デアッタ
コトト拜察スルノデアリマスガ、憲政會ノ總裁タル加藤ニ內閣ヲ組織セシメ
ルト云フ肩書ガ附イテノ御命令デハ無カッタノデアリマス、其以上ノ御上ノ
思召ヲ推測シテ、彼レ此レ申上ゲル必要ハ無カラウト思フノデアリマス、又サ
ウ云フコトハ、畏レ多イコトデ出來マセヌ、ソレカラ第八問······五、六、七ト、
是ガドウモ能ク分リマセヌ、如何ナル御趣意デアルカ······ソレカラ第八、貴
族院令改正ノ必要ナシト云フコトヲ以テ御述べニナリマシタ、是ハ私ト全ク
見解ガ違フノデアリマス、昨年ノ議會ニ於テ善處云々ト云フコトヲ申上ゲマ
シタ、ソレガ俄ニ改正ヲ出スノハドウ云フコトカト云フ御言葉ニ聞エマシタ、
成程、善處ト云フ字ヲ使ヒマシタガ、善處ト云フコトハ、改革ヲシナイト云フ
コトデハ決シテナイ、能ク考ヘテ相當ノ處分ヲ致サウト云フコトガ善處デア
リマシテ、善處ト云フ言葉ヲ用井タカラ、改正ト云フ事ヲ一切シナイト云フ
コトノ意味デアルト御解シニナッタラ、解シタ人ノ間違デアルト思フヨリ仕
方ガナイ、今日ハ此中ニモ屢〓御尋ニ對シテ御答ヘ申シタ通リ、議院內ノ議
論ヲ顧ミテモ、世上ノ民心ノ趨向、輿論ノ傾向等ニ鑑ミテモ、相當ノ改善ヲ
爲スコトガ國ノタメ、又貴族院ノ爲ニモ宜カラウ、斯ウ云フコトヲ、志水君
トハ意見ガ違フデアリマセウガ、私ハ考ヘテ居ル、政府ハ考ヘテ居ル、ソレ
故ニ近日改正ノ案ヲ出シタイト云フ希望ヲ以テ今精々其手續ヲ執ッテ居リマ
ス、第九ノ御尋、內容ノ事ニ付テノ御尋デアリマス、是ハ屢〓旣ニ御尋ノアッ
タコトデハアリマスルガ、何レ私共ノ希望ノ通リニ參リマスレバ、極メテ近キ
將來ニ於テ案ノ全部ガ諸君ノ前ニ出サレルコトデアラウト思ヒマスカラ、其
時御覽ヲ願ヒタイノデ、唯今ハ御話シ出來ヌコトヲ遺憾ト致シマス、ソレカ
ライキナリ案トシテ貴族院ヘ出サズニ內交涉ヲ何故シナイカト云フヤウナ御
尋デアリマスガ、ドウシテ致シマスカ、內交涉ヲ數百人ノ御方〓ニ對シテ一
一御話シ申上ゲテ、斯ウ云フ案ヲ出シテ善カラウカ惡カラウカト云フコトハ
嘗テ是マデシタコトモナシ、私サウ云フコトハ出來ナイト思フ、案ヲ出シテ貴
族院諸公ノ御說ヲ伺フト云フコトハ、是ハ豫テ憲法ニ於テ定マッタルコトデ、
其手續ヲ執ルノデアリマスカラ、其案ヲ出ス前ニ內々ニ交涉シサウナモノダ、
サウ云フ御苦情デアリマスカ何デアリマスカ、私ハ少々致シ兼ネルノデアリ
ママ、案ヲ出シマシタ時ニ、卽チ諸公ト相談ヲスル時デアリマスルカラ、御
遠慮ナク反對ナリ修正ナリ、意見ヲ御出シニナルコトヲ希望スルノデアリマ
ス、一人カ二人ノ御方ナラ、ドウデモ出來マセウガ、數百人ノ御方〓ニ御諒
解ヲ豫メ得テ、出シテ宜シイカ、出スナラ斯ウ云フ案ヲ出サウカ、サウシテ
異議ナシト云フコトナラ出シタ以上議スルコトモ何モナイ、斯ウ話ニナリマ
スカラ、サウ云フ御註文ハ少シ無理カト思フ、ソレカラ否決ノ場合ニハドウス
ルカ、先日カラモ斯ウ云フ御尋ガアリマシタガ、否決ト云フコトハ無カラウ
ト思フ、私ハ國家ノ爲ニ此案ガ必要ナリト云フ考ヲ以テ提出イタシマスカラ、
諸公モ定メテ御同意下サルコトト存ジテ居ル、否決ノ場合ハドウスルカト云
フヤウナコトハ豫メ考へル必要ハ無イノデアリマシテ、一向考ヘテ居リマセ
ヌ、必ズ諸公ノ御贊成下サルコトト期待イタシテ居ル次第デアリマス、甚ダ
不十分ト云フ御考モアリマウガ、此點ハ隨分複雜デアリマシタカラ、最早質
問應答ノ形ノミデモ、少シ出來ヌコトカモ知レマセヌガ、或ハ御書キニナッタ
モノデモアリマスレバ、拜見イタシマシテ御答へ申上ゲテモ宜シウゴザイマ
ス、今日ハ是デ止メテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=9
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010・志水小一郎
○志水小一郞君 私ハ先刻述べマシタ如ク、首相ノ御答ニ對シマシテ追究ニ
追究ヲ重ネテ論爭スルヤウナコトヲ致サヌ覺悟デアリマス、私ノ目的ハソレ
デアリマセヌ、併シ分ラヌト仰シヤルノデスカラ、御分リニナラヌ點ダケヲ
簡單ニ申上ゲマセウ、第二ガ分ラヌト仰ッシヤッタ、第二ハ、私ノ御尋ハ斯ウ
デアリマス、貴族院令ノ改革ニ付テハ是マデ永イ年月ノ間ニ、頓ニ······其間
ニ問題ガ起ッタンデアリマセウ、併シ其聲ノ頓ニ高クナリマシタノハ〓浦内
閣ノ組閣サレタル時デハアリマセヌ、其時ト申シマスルノハ、卽チ政友、革
新憲政ノ三派ガ所謂護憲運動ナルモノヲ起シタ時ノコトヲ言フノデアリマ
ス、サウシテ其運動ハ最初ニハ〓浦内閣ノ崩壞ヲ主張イタシマシテ、〓浦內閣
ガ倒壞スルヤ憲政ヲ常道ニ復サナケレバナラヌ、斯ウ云フコトヲ唱ヘマシテ、
次デ貴族院改革論ガ起リマシテ段々喧シクナッタ、斯ウ云フ事實、私ハ斯ウ云
フ事實ヲ認メテ居リマスガ、首相モ亦此事實ヲ御認メニナルコトデアリマセ
ウカドウカ、斯ウ云フコトヲ御尋ネスルノガ第二デアリマス、ソレカラ第五、
六、七ガ分ラヌト仰シヤイマスカラ是モ簡單ニ申上ゲマス、第五ハ今日ニ
於テハ內閣ヲ組織スルニ當リ、何人ト雖モ政黨ニ其基礎ヲ置クコトヲ得策ト
セザル者ハアリマスマイ、而モ尙ホ比較的頻繁ニ超然內閣、中間内閣ト云ハ
ムガ如キモノガ出來マスルノハ、ドウ云フ理由デアリマセウカ、要スルニ政
黨ノ力ガ未ダ以テ獨力鞏固ノ内閣ヲ造ルニ足ラザルガ爲デハアリマスマイ
カ、政黨ノ如何ニハ何等關係ハ無イノデハアリマスマイカ、斯ウ御尋ネ致シ
タノガ第五問デアリマス、ドウカ能ク御記憶ヲ願ヒマス第六問、斯ノ如ク考
ヘ來リマシタナラバ、加藤友三郞內閣モ、山本內閣モ、〓浦內閣モ其內容ニ
コソ多少ノ相違ハ有レ、組閣ノ經由形式ニ於テハ何等違ッタモノハ無イノデ
ハアリマセヌカ、何等違ッタモノガ無イト仰シャルナラバ、憲法問題トハ少
シモ關係ハ無イノデハアリマセヌカ、是ハドウ首相ハ御覽ニナッテ居ルカ、
是ガ第六問題デアリマス、ソレカラ第七問題、第七問題ハ政黨ノ行動ヲ申シ
タノデアリマス、外ノ事ハ申スニ及バヌ、政友會ノ如キモノハ多年盡力ノ結
果、黨勢日々加ハッテ二百八十ト云フ優勢ナ政黨トナラレタ、順境ト共ニ主張
モ亦益〓穩健トナッテ來タ、世間モ亦漸ク望ヲ屬シテ居ッタ、其際、首領原君ハ
政界ノ縱斷策ト云フコトヲ講ゼラレタ、ソレニ付テハ擧黨滿足シテ居ッタノ
デアリマス、所ガ一旦、原君ニ凶變ガ有ルヤ忽チ其有望ナ政黨ハ分立シテシ
マッタ、政黨其モノニ非常ナ盛衰ヲ見タルノミナラズ、主張ニモ亦非常ナ變動
ヲ來シタノデアリマスガ、別言スレバ政界縱斷策云々トハ貴族院ノ或部分
トドンナ事ガアッタカ存ジマセヌケレドモ、協調サレテ居ッタンデアリマス、
ソレカラ之ニ對シテ特權階級ダトカ、何トカ云フコトヲ云ウテ戰ヲ挑マレタ
ンデアリマス、ソレヲ私ハ指シテ申スノデアリマス、原君ガ亡クナルヤ否ヤ、
政黨其モノニ斯ウ云フ氣ノ毒ナ狀態ヲ來シタノミナラズ、政黨ノ主義主張
ニモ變動ヲ來シタノデハアリマセヌカ、之ヲドウ御覽ニナリマスカ、斯ウ御
尋ネシタノデアリマス、五六、七ハソレダケ、ソレニ付テ御答ガアリマス
レバ簡單ナ御答デ滿足イタシマス、私ノ述ベマシタコトハ速記錄ニ遺リマ
ス首相ノ御答ヘナサルコトモ速記錄ニ遺リマス、之ニドウ云フ關係ガ出來
マセウカ、世間ノ人ハ能ク注意シテ見テ居リマス、私ハ決シテ何モ辯ヲ弄ス
ル者デモ何デモナイ、頗ル是ハ重要ナ事ト思ヒマスルニ依ッテ、私ニ對シテ
首相ノ御答ヲ速記錄ニ遺シテ置ケバ、今日ノ首相ノ御答モ分ラヌケレバ、ソ
レニ依ッテ能ク研究イタシ、世間ノ人モ必ズ注目イタスノデアリマス
〔國務大臣子爵加藤高明君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=10
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011・加藤高明
○國務大臣(子爵加藤高明君) 誠ニ恐縮デアリマスガ、相變ラズ分ラヌ、第
二問ハ是レ〓〓ノ事實アリト認ムルヤ否ヤト云フコトデアリマスガ、モウ是
ハ大分舊イ話デアリマスカラ、事實ヲ認メルヤ否ヤト云フコトハ銘々ノ見ル
所ニシテ置イタラ宜カラウト思フ、此現在起ッテ居ル所ノ問題ニ關係ノ有ル
事デアレバ、政府トシテ御答ヘ致シマスルガ、過去ノ歷史上ノ事實ニ付テ斯
ウトカアヽトカ論爭ヲスル必要ハ私ハ無イカト考ヘル、ソレカラ第五問ハ斯
ウ云フ事ガ分ラヌカト云フ御尋デシタガ、相變ラズ分ラヌ、政黨ノ······中間
內閣ナゾ出來ルノハ政黨ノ力ガ弱イノヂヤナイカ、斯ウ云フ樣ノ御言葉ダケ
耳ニ殘ッテ居リマスガ、ソレハ種々ノ事實ニ依ッテ過去ノ內閣モ色〓出來マシ
タガ、其話ヲ申上レバ大分時間ガ長クナリマスシ、又人ノ見ル所ニ依ッテ違
ヒマスカラ、是亦强ヒテ今日政府ニ御尋ネニナラヌデモ、過去ノ內閣ガドウ
シテ成立ッタト云フコトハ、知ッテル人ハ知ッテ居リマスカラ、私モ知ッテ居ル
積リデアリマスガ、貴族院ノ問答ノ題材トシテハ餘リ適當デナイト思ヒマス、
ソレカラ第六ノ······是モ分ラヌ、加藤友三郞內閣トカ屢〓聽エマシタガ、此
內閣ガドウナッタノヤラ、前ノ御尋トドウ云フ關係ガアリマスカ、私ニハ了
解シナイ、ソレカラ第七ハ政友會ノ行動ニ付テノ御尋デアリマスガ、私モ不
肖ナガラ内閣總理大臣ト致シテ、政友會ノ行動ヲ此場所ニ於テ批評スルト云
フコトハ避ケタイノデアリマス、又農商務大臣トシテ政友會ノ御方モ御居デ
ニナリマスガ、是ハ政府ニ對シテノ御尋デアリマセウカラ、個々ノ人ニ御尋
ネニナレバ又別ノ席モアリマセウシ、又機會モアリマセウカラ、政府ニ對シ
テノ御尋ナラバ、私カラ御答ヘ申サヌノミナラズ、高橋君モ御答ヘナカラウ
ト思フ、此邊デ措キタイ速記錄云々ト云フコトモアリマシタガ、是ハ見ル
人モ澤山アリマセウガ、見ヌ人モ隨分アリマセウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=11
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012・志水小一郎
○志水小一郞君 私ハ總理大臣ノ御答ヲ以テ滿足イタシマス、蓋シ速記錄ヲ
懇ロニ見ル人ノ皆ハ滿足ヲ致スマイト思ウテ、其意味ニ於テ申上ゲマス、ソ
レカラ此議場ニ於ケル問答トシテ好マシカラヌト仰シヤルノデスケレドモ、
私ハサウハ思ハヌ、私ハ、ソレハ御前ノ意見ダト仰シヤレバソレデ宜イ、
私ノ意見デアリマス、何モ其制度ノ如何トハ關係ハナイト、兎角、中間內閣
トカ、超然內閣ナゾト云フモノガ、政黨トシテ甚ダ好マシカラヌモノガ屢〓、
現出スル、今後モ屢〓現出スルダラウト私ハ思フ、是ハ要スルニ政黨ノ力デ
アルト斯ウ思ヒマスカラ、首相ハサウハ思ヒナサラヌデゴザイマセウ、サウ
云フ問題ハ此議場ニ於テスルノハ好マシカラヌト仰シヤルナラバ、ソレデ宜
シイ、ソレデ私ハ是デモウ止メマス、滿足イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲ致シマシテ、午後ハ一時三十分ヨリ開會イ
タシマス
午後零時十五分休憩
冀皇重
午後一時四十九分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
本日決算委員長ヨリ原保太郞君ヲ第三分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報告
書ヲ提出セリ
豊東赤平山支発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、通〓ニ依リマシテ
鎌田榮吉君ニ發言ヲ許シマス
〔鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=15
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016・鎌田榮吉
○鎌田榮吉君 唯今、議長ヨリ發言ヲ御許シ下サイマシテ、私ハ主トシテ、
文政問題ニ付テ質問ヲ致シタイノデアリマス、ソレニ付キマシテハ總理大
臣、大藏大臣、內務大臣、農商務大臣、文部大臣、此諸大臣ニ御出席ヲ願ヒ
マシテ、ソレゾレ御指導ヲ仰グ考デアリマス、總理大臣、內務大臣ハ據所ナ
キ御用ノ爲ニ、コレヘ御臨席ニナリマセヌ、從テ私ノ質問ハ、少シク形ニ於
テ變化ヲ來スヤウナ譯デ、併ナガラ唯〓御出席ニナリマシタ所ノ各大臣ノ
御答辯ヲ煩ハシ得ルダケノコトヲ質問イタシタイト思ヒマス、最初ニ大藏大
臣ニ向ッテ伺ヒタイコトハ、今囘ハ政府ハ行政財政ノ整理ヲ決行イタサレマシ
テ、其結果種々ノ整理ヲ見タ譯デアリマスガ、併ナガラ私ノ考デハ、此通貨ノ
始末ガ眞ニ付カナイ以上ハ、財政ノ整理、從テ行政ノ整理モ出來ナイ譯デアリ
Tv.是ハ大藏大臣モ豫テ在野當時カラ御主張ニナリマシテ、必ズ御就職ノ
上ハ、何等カノ施設ヲナサレルデアラウ、斯樣ニ考ヘテ居リマシタガ、大藏
大臣ノ御就職後ノ御辯明ニ依リマスト云フト、最初此說ヲ主張シタ時ハ、卽
チ先ヅ圓モ四十七八弗ノ相場デアッタ所、今日ハ四十弗内外ノ見當ニナッタカ
ラ、斯ノ如キ大イナル相違ノアル時ニ輸出禁止ヲ解除スルト云フコトハ非
常ニ經濟界ノ攪亂ヲ起ス、故ニ先ヅ時機ヲ見テ之ヲ行フノデアル、主義ニ於
テハ禁輸ヲ解除スル、解禁論デアル、斯ウ云フコトヲ伺ッテ居ルノデアリマ
ス、私ハソレヲ決シテ前ノ御說ガ變ハッテ、卽チ所謂改論變說デアルトカ何ト
カ言ッテ、之ヲ決シテ私ハ咎メルノデハナイ、成ルベク國家ノ爲ニ是ナリト
信ゼラルヽ所ニ依ッテ御進ミ下サッタナラバ、ソレデ結構デアル、併ナガラサ
ウ云フ主義ヲ有ッテ居ラレ、而シテ之ヲ時機ヲ見テ御決行ニナリマスナラバ、
何等カノ方法ヲ立テヽ漸次ニ、之ヲ一時ニ行ハナケレバ、漸次ニ之ヲ行フト
カ何トカ云フコトヲ致サレタイノデアリマス、然ラザレバ段々ニ此圓ノ位ガ
下ガリマスト云フト、卽チ購買力ガ減却サレテ十五億ノ豫算ヲ御立テニナッテ
モ、購買力ニ於テハ十二億ノ購買力シカナイノデアリマス、是ガ復タ下ガルト
云フト十五億ガ十億ノ價値シカ無イコトニナル、是デハイツマデ經ッテモ、眞
ノ財政整理ト云フモノハ出來ナイノデアリマス、其基礎根本タル所ノ通貨ニ
於テ、十分ナル御施設ガ無ケレバナラヌト、斯樣ナ考デアリマス、要スルニ今
日ノ所デハ、全ク不換紙幣ノ狀態ニ在ルノデアリマス、法律ニ於テハ何時ニ
於テモ引換ヘルト云フコトニナッテ居リマスケレドモ、ソレヲ事實ニ於テ引
換ヘナイト云フ政策ヲ執ッテ居ラレマス、併ナガラ其政策ガ眞ニ效果ヲ奏ス
ルヤ否ヤト云フコトハ、頗ル疑問ヲ有シテ居ルノデアリマス、如何トナレバデ
ス、貨幣ノ地金ノ價ハ六圓五十錢デ、而シテ刻印ヲ打タレタル貨幣ハ五圓ノ
位ニアルノデアリマスカラ、何等カノ方法ヲ以テ、是ガ段々ニ引出サレ、段
段ニ賣出サレルト云フコトハ、全ク是ハ如何ニ嚴重ニシテモ止メルコトハ出
來ナイ、今日ハ隨分、引換ヘルト云フコトハ餘程ノ理由ガ無ケレバ引換ヘラ
レナイ、併ナガラ折〓私ノ耳ニスル所ニ依リマスト云フト過日モ隨分澤山
ノ引換ヲ要求サレ、遂ニ萬ヲ以テ數フル所ノ金貨ヲ引換ヘラレタ、直チニソ
レヲ市場ニ賣拂ッテ莫大ナル利益ヲ得タ者ガアルト云フコトヲ私ハ聞及ンデ
居ルノデアリマス、是ハ有リサウナコトナンデス、ドウシテモ之ヲ防グト云
フコトハ如何ニ政府、日本銀行ガ努力セラレテモ、是ハ水ノ漏ルヽヲ防ギ得
ザル如ク防ギ得ナイモノデアル、サウシテ見レバ金貨ハ失ハザラムトシテ常
ニ失ヒツヽアルノデアリマス、一時ニ失ハザルモノガ始終漏洩······漏レルコ
トニ依ッテ失フト云フコトハ、ドウシテモ免レ得ナイコトデアル、故ニ之ヲ
速急ニヤレバ經濟ヲ攪亂シテ弊害ガアルナラバ、何トカシテ漸次ニ之ヲ行フ
······行フナラバ一日モ早ク之ヲ行フト云フコトニ方針ヲ定メラレタナラバ如
何デアラウカ、必ズ此點ニ付テハ確タル御抱負ノアルコトト思ヒマスカラ、
ソレヲ私ハ伺フノデアリマス、併ナガラ私ハソレヲ決シテ主トシテ伺フノデ
ハナイ、之ニ關聯シテ伺ヒタイノハ、卽チ此ノ行政財政ノ整理ヲ決行スル
ト云フコトハデス、所謂無用ノ費用ヲ省イテ有用ノ費途ニ向ケルト云フコト
ガ目的デナケレバナラヌ、唯國家ハ財政ガ窮迫シタカラ儉約スレバ宜シイ、
公債ノ募集ヲ成ルベク減ズレバ宜シイ、吏員ヲ淘汰スレバ宜シイト云フダケ
ガ、行政財政ノ根本的整理デハナイ、併ナガラ此根本整理ニ付キマシテハ、
過日來モ高橋琢也君等カラシテ御說ガアリマシテ、今日ノ如キ繁文縟禮、又
維新後其儘ノ總テ官吏ノ事務ノ執リ方ト云フヤウナ······所謂會議ニハ三十、
五十ノ定員ガ坐ルト云フヤウナ方法ヲ改メタラドウカト云フヤウナ御說モア
リマシタ、是モ卽時ニハ出來ナイガ追〓ヤルト云フ御話ガアリマシテ、是モ
御尤ナコトト私ハ思フノデアル、併ナガラ要スルニ行政財政ノ整理ヲ行フコ
トハ、何等カ新シク施設ヲスルト云フコトデナケレバ意味ヲ成サナイノデア
ル、唯儉約ヲシタト云フコトダケデハ何ノ意味モ成サナイ、ソレハ政治ト云
フモノデナイ、所謂出ヅルヲ量ッテ入ルヲ爲スノガ國家ノ財政ノ方針デアリ
マスカラシテ、ソコデ必要ガアレバ增稅モ已ムヲ得ナイ、又公債募集モ已ム
ヲ得ナイ、併ナガラ徒ナニ公債ヲ募集シ、徒ラニ增稅ハ無論出來マセヌケレド
モ、國家ノ進運ニ伴フ施設ヲスル所ガナケレバ何等ノ效ヲナサナイト云フコ
トハ申ス迄モナイ、ソコデ此文政ト云フコトガ、是ガ今日最モ大切ナコトデ
アル、卽チ最モ此輿論ノ請求スル所ハ、第一ニ義務〓育費國庫負擔額ノ增加
ト云フコトヲ頻ニ要求サレテ居ルノデアリマス、私ハ常ニ此事ハ念頭ニ置キ
マシテ、必ズ今囘ハ豫算ニ多少ノ此費額ガ計上セラレテ居ルノデアラウト云
フコトヲ窃ニ待設ケマシタ所ガ、何ゾ圖ラム、豫算案ガ提出セラレテ見ルト
云フト一錢一厘ノ計上モナイ、私ノ失望ハ無論ノコト天下萬衆何人カ失
望セザラム、實ニ驚入ッタ譯デアル、是ハ豫テ臨時〓育會議ニ於テ建議セラ
レマシテ、〓員給ノ半額ニ達スル迄成ルベク速ニ負擔額ヲ增加セヨト云フコ
トガ政府ニ建議ニナッテ、歷代ノ內閣此方針ヲ追ウテ、最初寺內內閣ニ於テ
一千萬圓ヲ計上シ、加藤友三郞內閣ニ於テ三千萬圓增額シテ之ヲ四千萬圓ト
シ、而シテ其後內閣頻々更迭イタシテ今囘ノ内閣ニナリマシタ所、此內閣ハ
常ニ總理大臣モ仰セノ如クニ、衆議院ニハ多數ノ與黨ヲ率ヰ、亦貴族院モ此政
策宜シキヲ得レバ、貴族院滿場擧ッテ政府ヲ支持スルニ違ヒナイ、此政府ニ
於テ何ヲ苦シンデ負擔額ノ增額ヲナサナイノデアルカ、甚ダ之ヲ解スルニ苦
シムノデアル、果シテ是ガ輿論ノ要求デアッタ證據ニハ、現ニ政府ノ與黨ガ
之ヲ請求シ、又在野黨ガ之ヲ請求シテ遂ニ政府ハ大正十五年度ニ於テ二千萬
圓ノ增額ヲナスコトニ努力スルト云フコトヲ聲明セラレタノデアル、此聲明
ハ私ハ尙ホ無キニ優ルト思ヒマスケレドモ、ソレハ何故十四年度カラシテ之
ヲ爲サナイノカ、十五年度ト云フマダ來ナイ年ガ勘定ガ出來ルナラバ、來テ
居ル十四年度ハ勘定ガ出來サウナモノデアル、若シ十四年度ニ出來ナイモノ
ナラバ十五年度ニ出來ル筈ガナイ、十四年度ト十五年度ト何等違ッタコト
ハナイ、或ハ圓ノ價格ガ此上、下落シタナラバ、十五年度ハ十四年ヨリ一層出
來ナイコトニナリハシナイカ、斯樣ニ思フノデアル、併ナガラ政府ガ此財政
ノ整理ヲ決行シ、又爲替ノ恢復ノコトニ御努力ニナリマシタナラバ、此憂モ
未然ニ防グコトガ出來ヤウト思ヒマスカラ、敢テ是ガ何レガ善イカトカ惡イ
トカ申スノデハアリマセヌガ、唯茲ニ大藏大臣ニ向ッテ必ズ十五年度ニハ二千
萬圓ヲ增額スルコトニ努力スルト云フコトヲ明白ニ······繰返サレテデモ、私
ハ明白ニ聲明セラルヽコトヲ希望スルノデアリマスガ、出來ルナラバ十四年
度カラシテ其半額ト雖モ、之ヲ御計上ニナルコトニ改メラレルト云フコトガ
決シテ今日ト雖モ遲クナイノデアル、而シテ此文政問題ニ於キマシテ最モ大
切ナ事ハ何デアリマスカト云フト、卽チ義務〓育年限延長ト云フコトデアル、
此義務〓育年限延長モ、是モ臨時〓育會議ニ於テハ時期尙早シト雖モ漸次
之ヲ時ノ宜シキニ從ッテ行フベシト云フコトニナッテ參リマシタ、所ガ卽チ第
四十六議會ニ於キマシテ國庫負擔額ヲ三千萬圓增額ヲスル、其附帶決議トシ
テ政府ハ速ニ義務〓育年限ノ延長ヲ行フベシト云フコトガ當院ノ附帶決議ト
ナッテ居ル、其後、歷代ノ内閣ハ當院ノ決議ヲ尊重セラレテ、第一、加藤友三郞
內閣ニ於テハ直チニ義務〓育年限延長ノ案ヲ立テムトシタ、而シテ其施設進
マザルニ既ニ內閣ハ倒レ、次ノ內閣、山本內閣ハ其時機ヲ得ルニ至ラズシテ內
閣ガ倒壞シ、〓浦內閣ノ時ニハ直チニ此案ヲ提出セラレタノデアル、其案ノ內
容ト費用ノ額等ニ付テハ皆ソレゾレ相違ハ有リマスケレドモ、當院ノ決議ヲ
重ンジテ義務年限ヲ延長スルト云フコトニ皆努力セラレテ居ルノデアル、斯
ノ如キ經歷ヲ有ッテ居ル所ノ此案件ガ、今日ノ內閣ノ如キ多數ノ與黨ヲ率ヰ、
殆ド從來ニナキ所ノ大勢力ヲ有ッテ、思フ所爲シ得ザルナシト云フ此內閣ニシ
テ、義務年限延長ヲ一向計畫サレナイノデアル、冷淡極マルノデアル、是ハ
何タルコトデアリマス、第一、國庫負擔額ノ增額ト云フコトヲ爲サレズ、漸ク
强制セラレテ來年度カラ成ルベクヤルヤウニ努力シヤウト云フコトニナッタ、
而シテ此來年ト云フモノノコトヲ今日カラ之ヲ豫言スル、豫算ノ金額ト云フ
最モ現實的ノコトヲ豫言シ得ルナラバ、又此義務年限延長ト云フコトモ略計
畫ヲ定メテ、斯ウ云フ順序ニシラヤル積リデアル、一時ニヤレナケレバ漸次ニ
ヤル、何トカ云フ所ノ全體方針ト云フモノガ決マラナケレバナラス、今囘加
藤内閣ハ貴族院改革、又普選案ノ實行、殆ド立憲制度施行以來未ダ嘗テ無キ
所ノ大改革、我ガ立憲政治上ニ於テ一ノ時代ヲ劃スベキ所ノ大政策ヲ持ッテ立
タレタ、斯ノ如キ大政策ノ善シ惡シハ人〓ニ依ッテ說ハ變ハリマスガ、免ニ角、
偉大ナルモノニ違ヒナイ、此偉大ナル政策ヲ實行スベキ內閣ガ其最後ニアル
ベキ所ノ······其根本タルベキ所ノ〓育ノ大方針ト云フモノヲ少シモ定メラレ
ナイ、大方針ハ旣ニ定マッテ居ッテモ、其大方針ノ要求スル所ニ向ッテ施設ヲ爲
サレナイト云フコトハ如何ナル譯デアルカ、是レ甚ダ私ハ怪訝ニ堪ヘナイ譯
デアル、殊ニ岡田文相ハ常ニ此事ヲ在野當時カラ御主張ニナッテ居ル、卽チ國
庫金增額ノ計畫アル每ニ成ルベク積極的施設ヲシナケレバ其效ガ無イヂヤナ
イカト云フコトハ當席ニ於テモ頻々御主張ニナリ、痛切ニ御心配ニナッテ
居ルコトハ、私常ニ尊敬ヲ拂ッテ伺ッテ居ル所デアリマスカラ、岡田君自ラガ
文相ノ席ニ就カレタナラバ、直チニ此事ヲ御決行ニナルダラウト云フコトヲ
期待イタシテ居ッタ、其期待ガ裏切ラレテ今日何等ノ施設ト云フモノヲ、此豫
算面上ニ於テ見ルコトノ出來ナイト云フコトハ、ドウ云フ譯デアリマスカ、
甚ダドウモ是ハ遺憾ニ堪ヘナイコトデアル、尤モ師範學校改善、師範〓育改
善、之ヲ先ヅ第一ニ行ハレ、而シテ漸次此〓員ノ充實ヲ俟ッテ、而シテ是ハ
行フガ順デアラウ、斯樣ニ仰セラレテ居マスカラシテ、義務〓育年限延長ヲ
否定セラレルノデナイト云フコトハ分ッテ居ル、必ズ之ヲ肯定セラレテ居ル
ニハ違ヒアリマセヌケレドモ、併ナガラ如何ニモ氣ノ長イ話、先ヅ師範學校
···〓員ヲ充實スル、ソレカラヤル、成程、〓員ガ無ケレバ出來マセヌ、金ガ
無ケレバ出來マセヌ、併ナガラ漸次ニ其方針ニ從ッテ何等カノ施設ヲ爲サレ
テ、大體ニ於テ〓育界ハ無論ノコト、全體ノ社會ニ向ッテ、政府ノ抱負ヲ示サ
レルト云フコトガ、私ハ最モ今日必要ノコトデナイカト思フ、然ルニ今日マ
デ何等ノ之ニ付テノ御聲明ガ無イノミナラズ、義務年限延長ハ行フコトハ行
フ、何時カラ行フカ分ラナイ、時期ハ分ラナイト云フコトヲ過日、成〓君ノ
御質問ニ對シテモ御答ヘニナッテ居リマシテ、頗ル心細イ感ジヲ致シテ居リ
マシタ、此心細イ感ジヲ持ツコトハ天下一般ノ感ジデアル、此義務年限延長
ト云フコトガ、是ガ最初ハ或ハ〓育者ガ主トシテ之ヲ〓望シタヤウデアリマ
ス、アレハ〓育家ノ主モニ言フコトデアル、或ハ又極ク抽象的ニ日本モ一等
國ニナッタ以上ハ他ノ歐米ノ大國ト同ジヤウニ、少クモ八年ノ義務〓育ト云
フモノヲ行ハナケレバナラヌデアルト云フヤウナ、寧ロ是ハ道理ニ於テハ頗
ル宜シイケレドモ、寧ロ抽象的ノ議論デアッタカノヤウニ思フノデアリマス、
併シ今日ハサウデナイ、今日ハ政治上、社會上、又此產業上等カラシテ義務
年限ノ延長ト云フ事ヲ非常ニ切望シテ居ルト云フコトハ確カナ話デアル、第
一、私ハ總理大臣及內務大臣ニモ御列席ノ上デ申上ゲタイト思ヒマシタガ、文
部大臣ダケデモ宜シイノデアリマス、第一、今日最モ我〓ノ憂トシテ居ル所ハ
何デアリマセウ、世間デ謂フ所ノ思想動搖デアリマス、其思想動搖トカ、思
想惡化トカ云フ抽象的ノ事ヨリモ、第一、赤化運動ト云フモノガ益-熾烈ニナッ
テ來タノデアル、非常ニ恐ロシイコトデアル、今後私ハ一層此事ガ勢ヲ以テ
進ンデ來ルダラウト思フノデアリマス、是デアリマス、之ヲ如何ニシテ防止
セラルヽ積リデアルカ、隨分世間ニハ赤化防止團トカ、或ハ其他思想善導ト
云フ色〓ノ事ガ有リマスルケレドモ、何レモ抽象的ノ事デアリマシテ眞ニ之
ニ當ルベキ施設ト云フモノヲ致サムケレバ效ハ無イノデアリマス、今此赤化
運動ト云フ事ハ、第一最初ニハ歐米諸國ニ向ッテ非常ニ試ミラレタノデアリマ
スガ、歐羅巴ニ向ッテハ案外其效果ハ無イノデアリマス、歐羅巴ハ東洋ヨリ
モ非常ニ民衆的デアルニモ拘ラズ、非常ニ「デモクラティック」デアルニモ拘ラ
ズ、ソレ程ノ效果ト云フモノハ無イノミナラズ、今日ハ餘程、反動的ノ時期ニ
入ッテ居ルノデアリマス、殊ニ英國ノ如キハ斯ウ云フ事ガ行ハレサウナ形勢
マデ見エタガ、ナカ〓〓行ハレヌ、英國ハ隨分此勞働内閣ノ成立ニマデモ至ッ
テ、勞働內閣ヲ支持スル、國民ノ多數ガ勞働內閣ヲ歡迎スルト云フ時モ有リ
マシタケレドモ、此勞働內閣ナルモノガ、或程度ヲ超エテ、稍〓此所謂「ポル
シェヴィキ」ノ、赤化的ノ傾向ヲ帶ビルト云ッテ國民ハ直チニ此內閣ヲ倒壞セ
シメテ、又保守黨内閣ニ戾ッテ居ルト云フノガ今日ノ現狀デアリマス、何ガ
故ニ斯ノ如キ所謂赤化防止ヲ爲スカト言ヘバ、英國ハ〓養ヲ尊ンデ居ル、形
式的ノ小學校〓育ハ日本ノ方ガ進ンデ居ルカ知レマセヌガ、眞ノ〓養ト云フ
モノハ、確ニ英人ハ〓養ノ念ヲ備ヘテ居ル、殊ニ自尊自重ノ念ヲ英人ガ有ッ
テ居ル、此自重心ノ盛ンナ英人ニ向ッテ赤化運動ヲシテモ效果ハ無イ、獨逸
ニ於テモ效果ハ無ク、佛蘭西ニ於テモ效果ハ無イ、伊太利ノ如キハ最モ反動
的ノ時期ニナッテ居ル、ソコデ此赤化運動ト云フ事ハ露西亞ニ於テハ非常ニ
努力ヲ致シテ居リマスガ、ドウモ西歐羅巴等ニ向ッテハ、ソレ程ノ效果ハ無イ
カラシテ、是ハ亞細亞ニ向ッテ大イニヤラナケレバナラヌ、卽チ支那ノ如キ
小學〓育ノ不完備ナ所ニ向ッテ進ムノガ最モ效果ガ有ルト云フ兆ガ見エル、
益〓東邦ニ向ッテ此赤化運動ト云フモノヲ進メテ來テ居ルト云フコトハ事實デ
アリマス、之ヲ卽チ防止スルト云フコトガ國民〓育ヲ引上ゲ、國民ヲシテ常
識ヲ備へ、國氏ヲシテ自重ノ心ヲ養ハシメ、而シテ所謂附和雷同ノ傾向ト云
フモノヲ持タセナイヤウニスルト云フコトガ、卽チ我ハ我ノ信ズル所アリ、
何ゾ他ニ雷同セムヤ、何ゾ他ノ煽動ニ乘ラムヤト云フコトノ、卽チ抱負ト云
フモノヲ國民ニ持タセルト云フコトガ、何ヨリモ鞏固ナル所ノ是ガ方針デア
ル、是ハ思想ノコトハ砲疊ヲ築イテモ防グコトハ出來ヌ、鐵條網ヲ張ッテモ
這入ッテ來マス、之ヲ防グニハ國民ノ〓育ヨリ外ハナイ、卽チ義務年限ヲ延
長イタシテ、卽チ今日ノ十二歲以上十三四歲ト云フ位マデノ〓養ヲ施サナケ
レバ、何等ノ事ハ分ラナイノデアル、十二歲以下ノ〓育モ大切デアリマス
ケレドモ、稍〓此意義ヲ解シ、社會ノ事、政治ノ事等ヲ解スルト云フニハ十二
歲以下デハ到底出來ナイコトデアリマスカラ、一般國民ニソレ等ノ常識ヲ有
タシメルガ爲ニハ其施設ト云フモノヲ速ニシナケレバナラヌ、是ハ一日ヲ爭
フ譯デアル、況ヤ此政治上種々ナ新シイ施設ヲセラレルト云フコトデアレ
バ、内治上ニ於テモ是ガ必要ナコト、旣ニ陪審法ト云フモノガ施行セラレ、
又選擧法ヲ擴張セラレ、其他ノ種々ノ大施設ヲ爲サルヽノニ、其背景トナ
リ、其根本トナルベキノ〓育ノ施設ト云フモノニ付テハ更ニ手ヲ染メナイト
云フコトハ私ハ頗ル怪シムベキコトデアルト思フ、ドウ云フ全體信ズル所ア
ラレテ斯ノ如キ緩漫ナコトヲ爲サレテ居ルカト云フコトハ、私ハ文部大臣ニ
向ッテ伺ッテ見タイ、文部大臣ノミナラズ其他ノ各大臣ニモソレゾレ伺ヒタイ
ト思ウテ居ル、卽チ今日ハ內務大臣モ御缺席ニナッテ居リマスガ、他日又內務
上ノ事ニ付テ勞働條件ト云フモノヲ改正セラレ、色〓ノ勞働上ノ法規ヲ設ケ
ラレ、之ヲ〓育ノ延長ナクシテ、是等ノ事ガ效果ヲ奏シ得ルカドウカト云フコ
トハ、頗ル疑ヲ懷イテ居ルノデアル、又農商務大臣ハ御出席ニナッテ居リマ
スルガ、農商務大臣ノ御說ニ私ハ非常ニ敬服シタコトガアル、ソレハ昨日デ
アッタ、昨日、佐藤友右衞門君ノ質問ニ對シテ農商務大臣ハ答辯セラレテ、此
農村振興ト云フ事ハ唯負擔ヲ輕減スルト云フコトダケデハイカヌ、積極的ニ
能率ヲ進メ收穫ヲ增ス所ノ計畫ヲシナケレバナラヌ、是ハ〓育其他ノ事ニモ
依ラナケレバナラヌ、斯ウ云フコトヲ御答辯ニナッタノハ頗ル私ハ敬服スル
ノデアル、ドウシテモサウナケレバナラヌ、今日、產業上ニ於テ能率ヲ進メ、
收穫ヲ增スト云フ必要ハ非常ニ起ッテ居ル、佐藤君ノ言ハレル負擔ノ輕減ハ
無論必要ナ事デアリマスケレドモ、一方ニ於テ能率ヲ進メ收穫ヲ增加スルト
云フコトノ施設ヲ著々トシテ農商務省ハ爲サレヌケレバナラヌト私ハ考へ
ル、然ルニ此施設、例ヘバ農商務省ガ此模範ヲ示シテモ國民タル者ガソレヲ
理解シテ、之ヲ實行スルニ當ッテ、ソレダケノ〓養ガ有ルカドウカト云フト
私ハ確ニ缺ケテ居ルト思フ、例ヘバ農村ノコトニ致シマシテモ、肥料ノコト、
土壤ノコト、其他色〓植物ニ關係スル所ノコトニ付テ、何等カノ施設ヲシヤウ
ト言ッテ農會ニ於テ種々研究ヲサレ、又當局ノ官廳ニ於テモ、ソレゾレ世話ヲ
サレテモ、之ヲ受入レル所ノ國民ニ於テ、ソレダケノ素養ガ無ケレバ何等ノ
效果ヲ奏シナイ、肥料ハ何ダ、土壤ハ何ダ、之ヲ學理的ニヤラナケレバ到底今
日ノ農業ヲ振興セシムルコトハ出來ナイノデアリマスケレドモ、國民ガ今日
ノ程度ノ〓養デハ到底出來ナイノデアル、然ルニ能ク此義務年限延長ニ反對
スル人ハ隨分是ハ古イ考カラ起ルノデアリマセウケレドモ、イヤ是ハ農民ダ
ノ漁民ダノト云フモノハ〓育ナンドハ要リハシナイ、唯働イテ居リサヘスレ
バ宜イ、マヅイ物ヲ食ッテ働イテ居リサヘスレバ宜イト、云フヤウナコトヲ、今
日ハマサカサウ云フ頭ノ人モ有リマセヌケレドモ、サウ云フコトヲ能ク言ハ
レタモノデアル、所ガ農民漁民ホド或程度ノ〓育ヲ必要トスルモノハ無イノ
デアリマス、例ヘバ或人ノ最モ〓育ヲスル必要ナシトスル所ノ、或ハ又延長ノ
〓育ノ必要ナシトスル所ノ漁民ノ如キモノハ、最モ今日ハ是ガ無クテハ到底
業務ヲ營ムコトガ出來ナイト云フコトノ程度ニ達シテ居ル、如何トナレバ今
日ハ往日ノ如ク唯海岸ニ於テ小サナ漁船デ以テ魚ヲ捕ッテ、是ハ一例デアリマ
スガ、捕ッテ居ッテ、ソレデ以テ生活ガ出來ルカト云フト決シテ出來ヤシナイ、
矢張リ隨分大キナ船、又發動機ヲ裝置シテ遠洋ニ行ッテ漁業ヲシナケレバナラ
ス、或ハ追〓無線電信トカ無線電話ト云フヤウナモノモ利用シテ、又飛行機ナ
ドモ現ニ利用シテ居ル所ガアル、魚ノ在リカヲ飛行機デ以テ上カラ見レバ直
グ分ル、ソレヲ無線電信ナリ無線電話ナリニ依ッテ報知スレバ、漁船ハ其處ニ
行ッテ漁獲ヲスル、非常ニ收獲ガ多イノデアル、斯ノ如キ學理的應用ノ下ニ漁
撈ヲスル者ガ一方ニアッテ見タナラバ、以前ノ如キ僅ニ小サナ漁船デ以テ網ヲ
下ロシ釣ヲ垂レルト云フヤウナモノデハ到底競爭ハ出來ナイ、斯ノ如キ漁民
ハ滅亡スル外仕方ガナイ、如何ナル事ガ必要デ有ルカト云フト、先ツ今日デ
申シテ見マスレバ高等小學、少クモ高等小學程度ノ理化的知識ト云フモノガ
無ケレバ是ハ出來ナイコトデアル、併ナガラ高等小學ト云フモノハ今日ハ
義務デナイデ、町村ノ義務ニナッテ居リマセヌカラ、貧弱ナル町村ハ之ヲ施
設ヲシナイ、從テ其町村民ト云フモノハ頗ル不幸ナル地位ニ陷ッテ社會ノ落
伍者トナリ劣弱者トナル所ノ外ハナイノデアル、之ヲ何ニ依ッテ救濟スルカ
ト云ヘバ卽チ義務年限ヲ延長シテ、之ヲ義務トシテ是ダケノ〓育ト云フモノ
ヲ課シ、少クモ十三歲カラ十四歲ノ稍〓事理ヲ解スルニ至ルマデ〓育ヲ繼續
スルコトニ依ッテ、初メテ是等ノ能力ヲ備ヘルコトガ出來ルト云フコトハ明
カデアル、其他商業上又ハ一切ノ產業上ニ於テ或程度、卽チ今日以上ノ、卽
チ延長セラレタル〓育ト云フモノヲ受ケズシテ、今ノ此文化ノ進ミ行ク社會
ニ國民トシテ立ッテ國民タルノ義務ヲ盡シ、又個人トシテ其產業ヲ營ンデ社
會ニ貢獻スルト云フコトハ、是ハ不可能デアラウト考ヘル、卽チ農商務大臣
ノ昨日ノ佐藤君ニ對シテノ御答辯モ矢張リソレ等ノ意味ヲ含蓄シテ居ルモノ
ト私ハ考ヘル、然ラバ此事ハ唯〓育ダカラ文部大臣ガスルダラウト云フダケ
デハ、是ハ出來ハシナイ、農商務大臣ガ產業ノ上カラシテ成ルベク此〓育ノ
要求ト云フモノヲ充タシ、內務大臣ハ其他內治上ノ關係カラシテ之ヲ益〓要求
セラレ、總理大臣之ヲ統轄シテ、卽チ今囘政治壇上ニ大問題ヲ提ゲテ、此政
治ヲ釐革シヤウト云フ此大抱負ヲ裏書キスル所ノ〓育ノ施設ト云フモノガ無
ケレバナラヌ、其〓育ノ施設ハ多々アリマスケレドモ、國民ノ〓育ヲ今日ノ
程度ニ適應セシムベキ點マデ之ヲ引上ゲルト云フ所ノ施設ト云フモノガ無ケ
レバナラヌ、今日直チニ行フコトハ出來ナイ事情ガ有ルナラバ之ヲ漸次ニ
行ッテデモ、或時期ニ達シテ此理想ニ達スル、理想ト申ス程ノ事デハアリマセ
ヌケレドモ、或程度マデ達シ得ルト云フコトノ方針ガ定マッテ居ラナケレバ、
唯暗夜ニ燈無クシテ道ヲ步クガ如キ國民ハ狀態ニ居ルノデス、ソコデ或ハ師
範學校改善等ノ事モ、是モ種々御考ノ有ルコトデアッテ、爲サレタコトデ有
リマセウケレドモ、私ハ是等ノ事ハ洵ニ小問題デ、必要ナコトデ有ルケレ
ドモ、ソンナニ大騷ギヲシナクテモ、出來ルコトナンダ、現ニ岡田君ガ文政審
議會ノ會員デアラレタ時モ、矢張リ此義務年限延長ト云フ事ニ付テハ頻ニ
御心配ニナッタノデアル、必シモ師範學校カラヤラナケレバ出來ナイト云フ
御說デハナカッタ、ソレカラ此世間デ謂フ軍事〓育ト云フモノモ、卽チ是モ
デス、岡田君ガ說明セラレテ、軍事〓育ナント云フモノハ大シタモノデナ
イ、是ハ十九年以來ヤッテ居ル所ノ兵式〓練デ、此兵式〓練ト云フモノハ、是
ハ體操科ノ一部デアル、體操科ノ一部ヲ少シク有效ニシヤウト云ウテ、刷新
ヲシタノデアッテ、サウ大シタコトデハナイ、文相自ラ言ハレルノデアリマ
スカラ、之ヲ〓育上ノ大施設ト看做サレナイト云フコトハ、文相自ラ言明セ
ラレテ居ル、サウシテ見レバ、我〓ノ期待スル所ノ最モ〓育上ニ抱負ヲ有セ
ラレテ居ル岡田文相ガ其局ニ當ラレテ、尙ホ之ヲ何等ノ玆ニ抱負ヲ行フコト
ガ出來ナイト云フコトハ、主トシテ財政上ノ都合ニアルコトデアリマセウ、
此財政整理ト云フコトガ、私ガ申スガ如クニ、無用ノ費用ヲ省イテ、有用ノ
事ニ向ッテ進ムノガ眞ノ財政整理ノ意義デアル、行政整理ノ意義デアル、唯
公債ノ募集ヲ縮メテ、租稅ノ成ルダケ必要ノ起ラヌヤウニシヤウト云フダケ
デハ、是ハ國民ハ滿足スルコトハ出來ナイノデ、其罪決シテ今日ノ當局者ニ
在ル譯デアリマスマイ、事情ガ然ラシメタノデアリマスケレドモ、其事情ヲ
蹴破ッテ、今日ハ其施設ヲ爲サレヌケレバナラヌ時デアル、是ハ私ハ他日マ
タ豫算總會等ニ於キマシテ總理大臣、內務大臣、司法大臣等ニモ伺ヒタイコ
トガ多々アリマスケレドモ、今日御出席ニナリマシタ所ノ各大臣ニ關シタダ
ケノ質問ヲ此處ニ提出シテ、ソレゾレ御辯明ヲ願ヒタイト考ヘル、私ノ質問
ハ是ダケデアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=16
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017・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 唯今、鎌田君ハ行政整理ト關聯セシメテ、通貨問
題ニ付テ先ヅ以テ御質問ガアリマシタ、私ニ對スル御質問ノ要點ハ義務〓育
費ノ增額問題デアッタヤウデアリマスガ、其前提トシテ通貨問題ニ付テ御質問
ガアリマシタニ依ッテ、先ヅ其點ヨリ大體御答ヲ致サウト思ヒマス、如何ニ
モ鎌田君ガ御指摘ニナリマシタ通リ、我國ノ圓ノ價値ガ米貨ヨリハ餘程下落
ヲシテ居ルト云フコトハ最モ憂慮スベキ事柄デアリマス、然ラバ圓ノ價値ノ
下落ヲ致シテ居ル所ノ其原因如何ト申シマスレバ、是ハ由來ガ隨分久シイノ
デアリマス、一朝一夕ノ故デハアリマセヌガ、其主タル原因ハ一昨年ノ九月
ニ於ケル所ノ大震災ニアッタコトハ、是ハ天下ノ等シク認ムル所デアリマス、
然ラバ如何ニシテ此圓ノ價格ヲ囘復スベキヤト云フ問題ニナリマス、二·四〇·
シテ申シマスレバ、國際貸借ノ改善ニ依ルノ外ニハ、圓ノ價値ヲ囘復スルノ
途ガ無イト思ヒマス、然ラバ外國貿易ヲ始メト致シ國際貸借ノ關係ヲ改善ス
ルニハ、如何ナル方法ヲ用フベキヤ、此問題ハ隨分重要デアリ、且ツ同時ニ
複雜ナル問題デアリマス、從テ斯ノ如キ重要問題ヲ解決スルニ當ッテ、單リ
政府ノミノ手ニ依ッテ行ヘルベキモノデアリマセヌ、是ハ國民モ亦同時ニ全
力ヲ擧ゲテ、此重要問題ノ解決ニ努力ヲ致サナケレバナラヌ今日ノ情況デア
リマス、卽チ官民一致ノ大努力ヲ要スルノデアリマス、然ラバ政府トシテハ、
如何ナル事ヲ致シタカ、又是カラドウ云フ事ヲスルカト云フ御質問デアリマ
スガ、政府ト致シマシテハ、此問題ノ解決ノ爲ノミデハアリマセヌガ、他ノ
目的モ持ッテ居リマスケレドモ、同時ニ國際貸借ノ改善ニモ資スル所アルベ
シトシテ施設イタシマシタ所ノ、第一著ノ事柄ハ、卽チ行政整理デアリマス、
殊ニ財政ノ緊縮デアリマス、其中デモ公債政策ノ改善デアリマス、政府ガ自
ラ消費スル所ノ物資竝ニ自ラ需要スル所ノ勞力ト云フモノヲ出來得ル限リ增
加スルコトヲ防ギ、且ツ出來得ベクンバ、是マデ需要シテ居ッタ所ノ物資勞
力ニ對シテ、其需要ヲ節減スルコトヲ努ムル爲ニ、此度ノ財政ノ整理ヲヤッ
タノデアリマス、殊ニ公債政策ノ改善、卽チ公債ノ募集ヲ極力減少イタシ、
尙ホ一般市場ニ公募スルコトヲ避ケルト云フ方針ヲ執リマシタ所以ノモノ
ハ是マデノ公債政策ノ結果トシテ、民間ノ事業資金ヲ奪ヒ、延イテ財界ノ
整理ヲ妨ゲ、經濟產業各方面ニ及ボシテ居リマシタ所ノ惡影響ヲ出來得ル限
リ之ヲ輕減セムコトヲ努メタ爲デアリマス、其結果トシテ程度ノ多少ハ兔ニ
角。相當ノ財界ノ各方面ニ對シテ良好ナル影響ヲ及ボスデアラウト云フコト
ヲ希望ヲ致シ、且ツ期待ヲ致シテ居ル次第デアリマス、財界、經濟界、產業
界ノ各方面ニ向ッテ良好ナル影響ヲ及ボシマスナラバ、ソレガ軈テ國際貸借
ノ改善ニ資スル所以デアリマス、從テ圓價ノ囘復ニ資スル所以デアルト確信
ヲ致シテ居リマス、政府ガ圓價ノ囘復ノ爲ニ、如何ナル施設ヲ爲シタリヤト
云フ御質問デアルナラバ、私ハ先ヅ第一ニ此財政ノ整理緊縮ヲ以テ御答ヘス
ルノデアリマス、其次ニ直接ニ爲替ニ對シテ政府ガ行ッタ所ノ對策ハ、見に
十四日ノ演說ノ際ニモ申上ゲマシタ通リ、爲替相場ガ段々低落ヲ致シ、單リ
低落ヲスルノミナラズ、ソレガ安定ヲ失ッテ居ルト云フコトハ國家ノ爲ニ誠
ニ憂フベキ現象デアリマシテ、其事ハ今日ノ經濟界ノ難問題デアリマス所ノ、
或ハ貿易、或ハ金利、或ハ物價、其他諸般ノ經濟上ノ問題ニ對シテ、誠ニ容
易ナラザル所ノ惡影響ヲ及ボスモノデアルト考へマシタ爲ニ、爲替相場ノ崩
落ヲ防ギ、其安定ヲ期シマスルガ爲ニ、政府ハ適切有效ナル對策ヲ講ズルコ
トヲ昨年ノ暮ニ決定ヲ致シマシタ、十一月ノ下旬デアッタト記憶イタシマス
ルガ、之ヲ一般ニ向ッテ聲明ヲシタノデアリマス、其聲明ノ趣旨ハ積極的
ニ人爲ヲ以テ今日ノ如ク崩落ヲシテ居ル所ノ爲替相場ヲ釣上ゲルト云フ趣旨
デハアリマセヌ、寧ロ消極的ニ是レ以上ノ相場ノ下落ヲ防ギ、ソレト同時ニ相
場ノ安定ヲ期スルト云フニアッタノデアリマス、其目的ヲ達スルガ爲ニ、然
ラバ如何ナル事ヲ政府ガスルカト申シマスレバ、是ハ必要ニ應ジテ外國ニ持ッ
テ居リマスル所ノ我國ノ正貨ヲ拂下ゲルコトモスル、又更ニ必要ニ應ジテハ
政府竝ニ日本銀行ガ內地ニ保有イシテ居リマスル所ノ正貨ヲモ現送スルコト
スラ辭シナイ、サウ云フコトヲ發表聲明セラレタノデアル、其聲明ノ結果竝ニ
其他ノ原因モアッタデアリマセウガ、爾來、爲替相場ハ低イナガラ安定ヲ致シ、
三十八弗二分ノ一ノ相場ヲ御承知ノ通リ長イ間、持續ヲ致シ、最近ニ至ッテハ
稍、騰貴イタシマシテ三十九弗ニナッテ居ルト云フノガ今日ノ現狀デアリマ
ス、然ラバ何故、政府ハ更ニ進ンデ積極的爲替相場ヲ釣上ゲルト云フ對策ヲ講
ジナイカ、ト云フ御疑ガ起ルカモ知レヌト考ヘマスガ、是ハ餘程考慮スベキ
問題デアリマス、從來······ドノ内閣ト云フコトハ申シマセヌケレドモ、爲替
相場ヲ積極的ニ釣上ゲルガ爲ニ正貨ノ拂下ヲ行ッタ歷史ハ、屢〓我〓ハ見聞ヲ
シテ居リマスルガ、而モ其ヤリ方ハ〓ネ失敗ニ終ッテ居ル、何トナレバ爲
替相場ノ囘復ト云フコトハ、初メニ申上ゲマシタヤウニ、國際貸借ノ改善ニ
俟タナケレバナラヌ、其國際貨借ガ改善サレズ、貿易ノ大逆調ガ繼續シテ居ル
ニモ拘ラズ、强ヒテ正貨ノ拂下ゲニ依ッテ爲替相場ノ釣上ゲヲ策セムトスル
時ハ、一時ハ多少ノ效果ガ無キニシモアテズデアリマスケレドモ、其效果タル
や、決シテ永續スルモノデアリマセヌ、從テ恰モ注射ヲスルト同樣ニ、其注
射藥ノ效果ガ薄ラギマスレバ、直チニ爲替相場ハ元ノ如クニ低落ヲ致ス、是ハ
從來ノ經驗ノ證スル所デアリマスカラ、此內閣ニ於テハ左樣ナ事ハ致サナイ
積リデアリマス、然ラバ爲替相場ヲ囘復イタシ圓價ノ囘復ヲ圖ルノ根本策ハ
如何、是ハ極メテ平凡デアリマスケレドモ、同時ニ重要ナル所ノ根本策デア
リマスル、卽チ初メニ申シマシタ所ノ官民一致ノ努力ニ依リマシテ、成ルベ
ク輸入ヲ抑へ、輸出ヲ奬メ、ソレニ依ッテ貿易ノ逆調ヲ緩和イタシ、其他國
際貸借ノ關係ト相俟ッテ圓價ノ囘復ヲ圖ル、爲替相場ノ囘復ヲ圖ルト云フ外
ニ執ルベキノ途ガ無イデアラウト思ヒマス、然ラハ如何ニシテ輸入ヲ抑制ス
ルカ、如何ニシテ輸出奬勵ヲスルカト云フコトハ、是ハ洵ニムヅカシイ問題
デアリマシテ、一朝一夕ニ唯一ツノ手段、ソレノミニ依ッテ此大目的ヲ達ス
ルコトハ出來ナイト思ヒマス、是ハ政府ト云ハズ、國民全體ガ、十分ニ目下
ノ經濟界ノ眞相ニ付テ了解自覺ヲ致シ、ソレニ依ッテ冗費ノ節約、勤儉力行
ニ努メマシテ、成ルベク必要デナイ所ノ外國品ハ之ヲ購買シナイヤウニ、又
出來得ル限リノ手段方法ニ依ッテ或ハ資本ノ蓄積、或ハ事業ノ合同、大量生
產、機械ノ應用、勞働能率ノ增進ト云フ如キ、種々ナル手段方法ニ依リマシ
テ、生產費ノ低減ヲ圖リ、サウシテ内國品ノ聲價ヲ高メ、海外ノ販路ヲ擴張
シ、ソレニ依ッテ貿易ノ逆調ヲ緩和スルト云フ外ニ執ルベキ途ハ無イト思ヒ
マス、其大目的ノ爲カラ申シマスレバ、或ハ貧弱デアルト云フ御非難ガアル
カモ知レマセヌケレドモ、大正十四年度ノ豫算ニ計上イタシテ御協賛ヲ求メ
テ居リマス事項ノ中ニ、農商務省ノ所管デアリマスケレドモ、重要輸出品共
同組合、或ハ輸出組合ト云フ如キモノヲ法律ヲ以テ設ケマシテ、サウシテ輸
出ノ奬勵ヲ圖ル必要ノ場合ニ於キマシテハ、爲替資金上ノ便宜ヲモ與ヘルト
云フ考ヲ有ッテ居リマス、是ハ一ツノ例ヲ擧ゲタニ過ギマセヌケレドモ、其
他輸入ノ抑制、輸出ノ奬勵ニ向ッテハ、常ニ怠ラズ政府ハ調査研究ヲ致シテ居
リマスカラ、其研究ノ案ノ成ルニ從ヒマシテ、十分ナル所ノ施設ヲ致シタイ
ト考ヘテ居リマス、其次ニハ行政整理ノ目的ハ無用ヲ節シテ有用ヲ起スニア
リ、斯樣ニ仰セラレマシタガ、如何ニモ其通リ、全然御同感デアリマス、併ナ
ガラ其事柄ヲ最近ノ我國ノ財政ノ狀態ニ適應セムトスルナラバ、非常ナル困
難ニ遭遇スルヲ發見スルノデアリマス、何故ト申シマスレバ、我國ノ財政ハ
一時ハ隨分膨脹ヲ致シマシタ、或ハ放漫ト云フ謗リヲ受ケタコトモアリマス
ルガ、最近ニ至リマシテ屢〓行政財政ノ整理ガ行ハレテ居ルノデアリマス、其
結果トシテ各省ノ經費ノ內容ヲ調查イタシテ見マスルト云フト、最早殆ド無
用ト目スベキモノハ無イノデアリマス、絕對トハ申シマセヌガ極メテ少イノ
デアリマス、ソレ故ニ無用ノモノダケヲ節スルト云フヤリ方デ行キマスレバ、
行政整理、財政整理ニ依ッテ節約シ得ベキ所ノ金額ト云フモノハ幾何モ有リマ
セヌ、ソコデ此度ノ豫算ヲ編成スル時ニ如何ナル方針ニ依ッテ行政、財政ノ
整理ヲ致シタカト申シマスレバ、假令有用ナモノト認ムルモノデアリマシテ
モ、其程度ガ稍、不急ニ屬スルト考ヘマシタモノハ、已ムコトヲ得ズシテ之ヲ
削除イタシタノデアリマス、サウシテ比較的ニ有用ノ程度ノ高イモノヲ殘シ、
比較的ニ有用ノ程度ノ低イモノハ之ヲ削除イタシ、ソレニ依ッテ一億五千二
百萬圓ノ整理節約ヲ一般會計ニ於テ行ッタノデアリマス、其ヤリ方ニ對シマ
シテ隨分是ハ無理デアル、斯ノ如キヤリ方ト云フモノハ隨分無理ナ數字デア
ルト云フ批評ヲ受ケタモノモアリマス、ソレ位ノ程度ニ於テ整理ヲ致サナケ
レバ、迚モ一億以上ノ整理ハ出來ルモノデアリマセヌ、大體、今日ノ財政ノ狀
態ハ行政財政ノ整理ヲ致シ、ソレニ依ッテ或程度ノ剩餘金ヲ拵ヘル、或ハ一
億圓、或ハ一億五千萬圓ト云フ如キ金ヲ餘シテ、サテ其餘ッタ金ト云フモノヲ
ドノ方面ニドウ使フカト云フコトヲ考ヘテ居ルコトノ出來ルヤウナ悠長ナ財
政デハアリマセヌ、ソレダケノ財政ノ整理ヲ行フノハ、ソレヲ行ハナケレバ到
底十四年度ノ豫算編成ガ出來ナイ、歲入歳出ノ均衡ヲ保ツコトガ出來ナイ、
此行政整理ヲヤラズニ豫算ヲ編成セムトスルナラバ、何ト致シマシテモ募集
ノ出來ナイ公債ヲ大イニ募集スルト云フ計畫ヲ立テマスルカ、然ラズンバ今
日旣ニ負擔ノ重イ所ノ此國民ノ負擔ノ上ニ向ッテ、更ニ相當ノ巨額ノ增稅ヲ
行フニアラズンバ、大正十四年度ノ豫算ノ編成ハ出來ナイ、從テ將來ニ亙ル
所ノ財政計畫ノ立テヤウガ無イト云フ情況ニ立ッテ居ッタノデアリマス、ソレ
故ニ行政財政ノ整理ニ依ッテ餘ッタ金ヲドウ使フカト云フニアラズシテ、歲入
歲出ノ均衡ヲ保ツガ爲ニハドウシテモ是ダケノ整理ヲ行ハナケレバナラヌト
云フノガ、目下ノ財政ノ眞相デアリマス、ソレ故ニ、十四年度ノ豫算編成ヲ
致シマシテ御協賛ヲ求メ、豫算案ヲ御覽ニナリマシテ、如何ニモ是ハ新規事
業ガ少イ、刻下有用緊切ナル所ノ事業ノ施設ガ、此豫算面ノ上ニ多ク現ハレテ
居ナイト云フ感ジヲ御持チニナルコトハ、是ハ洵ニ己ムヲ得ナイ數デアリマ
ス、政府ト致シマシテモ、積極的ニ國利民福ヲ增進スルガ爲ニ、新ニ施設ヲ
スル方ガ宜シイト考ヘタ仕事ハ澤山アリマス、ソレヲ一々豫算ニ計上シタイ
コトハ山〓デアリマスケレドモ、ソレヲ行フダケノ餘裕ガ今日ノ財政ニハ有
リマセヌ、ソレ故結果カラ見マスレバ、新規事業トシテ見ルベキモノガ餘リ
澤山デアリマセヌ、アリマセヌガ、一ニ財源ニ乏シイト云フ目下ノ財政ノ情
況ガ之ヲ然ラシメタ爲デアリマス、茲ニ於テ鎌田君ノ御質問ノ要點タル所ノ
〓育費ノ問題ニ移リマスガ、小學校ノ〓員ノ俸給ノ國庫負擔ノ增加ト云フ事
ハ、御說ノ通リ國論一致ノ要求ト看做シテ差支ハアリマセヌ、私自身ニ於テモ
豫テ熱心ナル主唱者デアッタノデアリマス、自分デモ之ヲ〓心ニ主張イタシ、
國論一致ノ要求ト認メテ居ッタモノヲ、何故ニ計上スルコトガ出來ナカッタノ
デアルカ、ソレハ唯今申シマシタ財政ノ狀態カラ來ルノデアリマス、此增額
ヲ假令一千萬圓デモ二千萬圓デモ、十四年度ノ豫算ニ於テ實現ヲシタイト思ッ
タガ爲ニ、政府ハ相當ノ苦心ヲ致シマシタ、如何ニセム、財政ノ事情、之ヲ
許シマセヌ、玆ニ於テ十四年度ニ於テ財政ノ都合上、之ヲ實現スルコトガ出
來ナカッタケレドモ、大正十五年度ノ豫算ヲ編成スル時ニ當リマシテハ、財
政ノ情況ニ照シ、是ガ實現ニ向ッテ最善ノ努力ヲスルト云フコトヲ衆議院ニ
於テモ議員ノ質問ニ對シテ答辯ヲシタ次第デアリマス、然ラバ其〓育費ノ增
額ノ實現ニ向ッテ努力ヲスルト言ッタ努力ノ目標ハ幾ラデアルカト云フ質問ガ
アリマシタカラ、ソレハ二千萬圓ヲ目標トシテ最善ノ努力ヲスルト云フ答辯
ヲ致シテ置キマシタ、此席ニ於テモ繰返シテ其事ヲ私ハ言明イタシマス、然ラ
バ鎌田君ノ御話ニアリマシタ大正十五年度ニ於テ二千萬圓ノ增額ノ爲ニ最善
ノ努力ヲスルト云フナラバ、卽チ大正十四年度ニ於テ、ナゼ、ソレガ出來ナカッ
タノデアルカ、十五年度カラ出來ルモノデアルナラバ十四年度カラモ出來ル
筈デハナイカ、十四年度ニ出來ナケレバ十五年度カラモ出來ル譯ガナイ、斯
ウ云フ意味ノ御話ガアリマシタガ、私ハ左樣ニ考ヘマセヌ、十五年度ニ是ガ
實現ニ向ッテ最善ノ努力ヲスルト云フコトヲ申シマシタノハ、是マデノ實蹟
ニ依リマシテ、歲入ハ年々增加ヲ致シマスル傾向ヲ持ッテ居リマス、其從來ノ
實蹟ヲ考ヘマスト云フト、大正十五年度ニ於テハ十四年度ノ歲入豫算ニ計
上シテアルモノヨリモ若干ノ增加ヲスルモノデアルト云フコトヲ推測スル
コトガ出來ルノデアリマス、其推測ニ基イテ〓育費ノ增額ニ向ッテ最善ノ
努力ヲスルト云フコトヲ申シタノデアリマス、併ナガラ是ハ十五年度ノコト
デアリマス、將來ニ亙ル所ノ推測デアリマス、今日ニ於ケル所ノ現實ノ事實
デハアリマセヌ、ソレ故ニ十五年度ニ於テハ是ガ實現ノ爲ニ努力ヲスルケレ
ドモ、十四年度ニ於テハマダ、是ガ現實ニ具體化サレタ事柄デハナイ、其具
體化サレタ事柄デナイモノニ向ッテ諸君ノ前ニ豫算ヲ編成シテ要求スルト云
フ譯ニハ參リマセヌ、是ガ卽チ十四年度ニ於テ之ヲ實現スルコトノ出來ナカッ
タ所以デアリマス、今日ノ財政狀態ニ於テハ十四年度ニ於テハ千萬若クハ二
千萬ト云フ新ナル恒久財源ヲ發見スルコトハ出來マセヌ、十五年度ニ於テハ
旣往ノ實蹟ニ鑑ミ、十四年度ガ斯ウ云フ歲入ノ情況デアルナラバ、經濟狀態
ニ異常ナル變化ノナイ限リハ、十五年度ニ於テハ相當ノ增收アルベシト云フ
コトハ、凡ソ常識ヲ以テ推測スルコトガ出來ルノデアリマス、其推測ニ基イ
テ最善ノ努力ヲスル、併シ是ハ推測デアッテ今日ノ現實デハナイカラ、十四
年度カラハ出來ナイ、斯ウ云フノデアリマス、然ラバ既往ノ實蹟ニ依レバ十
五年度ニ於テ相當ノ增額ヲスル、歲入ガ增加スルト云フコトハ如何ナル實蹟
デアルカト云フ御疑念ガ起ルデアラウト思フ、御承知ノ通リ震災ノ結果、大
正十二年度竝ニ十三年度ニ於テハ歲入ガ急激ニ減少ヲ致シマシタ、併ナガラ
此震災ノ創痍ガ癒エルニ從ッテ、震災ノ爲ニ一時減少シタル所ノ歲入ハ漸次
復舊ヲ致シテ、少クトモ震災前ノ歲入ニハ戾ルベキ筈デアリマス、然ラバ震
災ノ租稅ノ收入ハ幾ラデアッタカト申シマスレバ、是ハ大正十一年度ノ決算
額ヲ捉ヘル外ニハナイ、其大正十一年度ノ租稅ノ收入ノ決算額ハ八億九千六
百萬デアリマス、所ガソレニ對シテ大正十四年度ノ租稅ノ豫算額ハ七億九千
五百萬圓、一億百萬圓ダケ、マダ大正十一年度ノ決算額ニ對シテ減少シタル
豫算ヲ組ンデアルノデアリマス、尤モ其一億百萬ノ內、御承知ノ通リ大正十
二年度ニ於テ營業稅其他ニ於テ二千萬圓ノ減稅ヲ行ッタ、其二千萬ヲ差引キ
マシテモマダ八千萬圓バカリノ餘地ガアル、其餘地ニ向ッテ大正十五年度
一年ダケニ於テ一擧ニシテ囘復シ得ルヤ否ヤト云フコトハ多少ノ疑問ガアリ
マスケレドモ、少クトモ其標準ニ向ッテ、卽チ八千萬圓ノ餘地ニ向ッテ歲入ガ
囘復スベキ趨勢ニアルト云フコトハ、是ハ何人モ考ヘ得ル事柄デアリマス、
イマ一ツニハ昨年ノ特別議會ニ於テ此內閣ノ組ンダ追加豫算ニ於キマシテ、
租稅ノ收入ニ於テ、不成立豫算ニ對シテ新ニ五千萬圓ノ增加ヲ計上イタシテ、
御協賛ヲ得タノデアリマス、ソレハ大正十三年度ノ實行豫算デアリマスルガ、
其實行豫算ガ年度開始以來今日ニ至ルマデノ實蹟カラ判斷イタシマスルト云
フト、不成立豫算ニ對シテ五千萬增シマシタモノニ對シテ、實際ノ收入額ハ
多少ノ增收ヲ〓ゲルト云フ見込ガ立ッテ居リマス、其程度ハ無論年度閉鎖前
デアリマスカラ明確ニ御話ヲスルコトハ出來マセヌガ、少クトモ豫算額ニ對
シテ多少ノ增收ハアルヤウデアリマス、而シテ十三年度ノ豫算ニ對シテ此十
四年度ノ租稅ノ收入豫算額ハ三千二百萬ノ增額ヲ計上イタシテアリマス、是
ダケノモノモ無論私ハ實收ガアルモノト信ジテ豫算ヲ組ンデアリマス、此勢
ヲ以テ行キマスレバ、十五年度ニ於テ豫算ノ編成時ニ當ッテ、其租稅ノ收入
其他官業收入ニ於テ相當ナル所ノ增收ヲ期シ得ルデアラウト推測ヲスルノデ
アリマス、更ニ第三ノ根據ト致シマシテハ、此度ノ政府ノ豫算ノ編成ノ方針、
卽チ緊縮節約ノ豫算ヲ組ンダト云フコトノ爲ニ、經濟界ニ向ッテ良好ナル影
響ヲ與ヘマシテ、其結果、十五年度ニ於テハ財界モ多少囘復スルデアラウ、
從テ國民ノ納稅力モ多少囘復ヲスルデアラウト云フ期待ヲ持ッテ居リマス、
斯ノ如キ根據ニ基イテ、大正十五年度ノ豫算編成ノ當時ニ於テハ、財政ノ情
況ニ照シテ、〓育費ノ增額ノ實現ノ爲ニ最善ノ努力ヲスルト云フコトヲ聲明
ヲ致シタ次第デアリマス、大體御答へ致シマス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=17
-
018・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今、鎌田君カラ私ニ對シテ御質問ニナリマシタ
點ハ、其御質問ノ點ハ極メテ簡單ニ御答ガ出來ルト思フノデアリマスガ、其
前提ニ於テ、鎌田君ハ丁寧懇切ニ〓育ノ極メテ重大デアルト云フコトヲ御陳
述ニナッタノデアリマス、或ハ思想問題ノ善導ト云ヒ、赤化ノ防止ト云ヒ、
或ハ又農村振興ト云ヒ、其他諸工業、產業ノ發達、皆其本ハ國民ノ智德ノ進
步ニ待タヌケレバナラヌノデアルト云フ點ニ付テ、丁寧懇切ニ御述ベニナッ
タノデアリマス、此點ニ付キマシテハ恐ラク何人モ異議ノナイコトデアルト
思フノデアリマス、斯ク申ス私ナドハ最モ鎌田君ト意見ヲ同ウスル者デアリ
やき、然ラバ斯ノ如ク〓育ガ大切デアルノニ、此議會ニ於テ普通選擧ノ法律
モ實施セムトシ、其他各般ノ大問題ヲ解決セムトスルニ當ッテ、〓育ノ上ニ
於テ何等施設スル所ノ無イノハ如何ナル譯デアルカト云フコトニ歸著スルヤ
ウデアリマス、殊ニ此義務〓育ノ延長ヲヤラヌト云フコトハ、如何ナル譯デ
アルカ、是ガ鎌田君ノ御尋ノ要點デアルト理解イタシタノデアリマス、私
此前段ニ付キマシテハ鎌田君ト全然同感デゴザイマスケレドモ、併シ此〓育
年限延長ノコトニ付キマシテハ、稍〓鎌田君ト意見ヲ異ニシテ居ル點ガ有ル
ノデアリマス、私ハ是ハ今日初メテ申ス譯デナイ、文政審議會云々ト云フコト
モ鎌田君モ御述べニナリマシタガ、私ハ文政審議會ノ席ニ於テモ、之ヲ述ベテ
居ル、義務〓育年限延長ト云フ事ニハ、ドウシテモ二ツノ條件ト云フモノガ
先立タナケレバナラヌ、第一ノ條件ハ何デアルカト申シマスルト、此〓員ノ
準備デアリマス、今日ノ現在ニ於キマシテ、〓員ノ配置ト云フモノハ甚ダ不
十分デアリマシテ、本科正〓員ノ資格ヲ有スル者ハ僅ニ全數ノ半分少シ餘ニ
上ボッテ居ルニ過ギナイト云フ樣ナ譯デ、全然、無資格ノ〓員モ隨分少ク無イ
ノデアリマス、ドウシテモ此義務〓育年限ヲ延長イタシマスルニハ、此〓員
ノ養成ト云フコトヲ先決問題ト致サナケレバナラヌ、若シ此養成ヲ怠リマシ
テ、唯義務育年限延長ヲ致シマシタナラバ、其〓員ハ何レノ所カラ傭ヒ來ル
デアリマシセウカ、幸ニシテ其數ヲ充タスコトハ出來モシマセウト思ヒマス
ケレドモ、併ナガラ極メテ不完全ナ〓員ヲシテ學級ヲ擔任セシメマシタナラ
バ、是デハ決シテ〓育ノ效果ヲ見ル譯ニ行カナイ、〓育ト申スモノハ必ズ良〓
員ガ居ッテ生徒ヲ〓育スルト云フコトニ依ッテ、其效果ヲ期スルコトガ出來ル
ノデ、唯有合セニ其處ラニ居ル所ノ人ヲ傭ヒ來ッテ〓員ニ致シマシタ所ガ、
是デハ決シテ義務〓育年限ノ延長ヲ致シマシテモ、其效果ヲ見ルコトハ出來
ナイノミナラズ、或ハ場合ニ依リマシテハ却ッテ人ノ子ヲ害フヤウナ結果ガ
起ラヌトモ限ラヌ、故ニ〓員ノ養成ト云フ事ガ義務〓育年限延長ノ先決問題
デアルト思フノデアリマス、イマ一ツノ問題ハ此市町村ノ負擔ノ問題デアリ
やくろ、今日市町村ノ負擔ハ隨分窮迫ヲ致シテ居ルト云フコトハ一般ニ認メラ
レテ居ル事柄デアリマス、此窮迫ヲ致シテ居リマスル市町村ニ向ッテ、義務
〓育ノ年限延長ヲ命ジマシタトキニハ、ドウ云フ結果ニナリマセウカ、市町
村ハ彌〓困難ヲ重ネテ參ル、デ、市町村ノ困難ヲ重ネルコトハ、〓育ノ大切
ナルニ顧ミテ尙ホ之ヲ忍ブベシト致シマシテモ、斯樣ナル困難ナ場合ニ於キ
マシテ〓育ヲ施シマシタトキニハ、其〓育ハ必ズ結果ガ宜シクナイ、ソレハ
ドウ云フ譯デアルカト申シマスルト、現ニ今日ニ於テモ動モスルト其弊ヲ見
ルノデアリマスガ、市町村ニ於テハ財政困難ナ爲ニ動モスルト良〓員ヲ驅逐
スルノ傾ガアルノデアリマス、成ルベク薄給ノ〓員ヲ傭ヒタイト云フヤウナ
コトカラ致シマシテ、良〓員ヲ排斥セムトスルガ如キ傾向ガ有ルノデ、今日
ノ場合ニ於テ義務〓育ノ年限延長ヲ實行イタシマシタナラバ、是等ノ弊害ガ
益〓盛ンニナッテ參リマシテ、町村ノ〓育ノ上ニ於テ少カラズ惡影響ヲ及ボス
モノト思フノデアリマス、ソレ故ニ私ハ十四年度ノ豫算ニ於キマシテ此義務
〓育年限延長ソノモノハ著手ヲ致サヌノデアリマス、鎌田君ハ計畫ヲ立テテ
向ウ所ヲ知ラシメタナラバ宜シイデアラウト云フ御趣意ノ御陳述ガアッタ
ヤウニ思ヒマスガ、是ハ計畫ヲ立テルコトハ容易デゴザイマスルケレドモ、
併シ實行シ得ル計畫デナケレバ、何モナラヌノデアリマス、徒ニ其計畫ヲ
作リマシタ所ガ、效ノ無イモノデアル、ソレ故ニ當局者ト致シマシテハ、左
樣ナ計畫ヲ立テルコトノ代リニ、先ヅ此義務〓育年限延長ノ準備ト致シマシ
テ、〓員ノ養成ヲ圖ルト云フ事ニ全力ヲ用ヰタノデアリマス、此點ニ付テハ
何等施設ヲスルコトガ無イト云フヤウナ鎌田君ハ、御非難ガアッタノデアリ
マスルケレドモ、師範〓育ノ大擴張、大發展ト云フコトハ、決シテ是ハ〓育
ノ上カラ見マシテ、平易ナ事デハナイト思フノデアリマス此計畫ガ實現イ
タシマシタナラバ、今日ヨリハ餘程良〓員ガ輩出スルコトニナリマス、又數
ニ於キマシテモ今日ヨリハ餘程增加ヲ致シテ參ルト云フコトニナルノデアリ
Myb.デ、斯樣ニ致シテ準備ヲ整ヘマシテ、而シテ後ニ義務〓育年限ノ延長
ヲ圖ル積リデアリマス、併シ義務〓育年限ヲ延長ヲ致シマシテ、强制的ニ年
限ヲ延長イタシマセヌデモ、高等小學ノ奬勵ヲ圖リマシテ、成ルベク多數ノ
生徒ヲ之ニ收容スルヤウニ努メテ參リマシタナラバ、規定ノ上ニ於テ强制ヲ
致シマセヌデモ、自然、此義務〓育年限ノ延長ト同樣ノ結果ニ著々トシテ到達
ハ致シテ居ル、唯今此處ニ數字ヲ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、別段奬勵ハ
致シマセヌデモ、今日ノ普通ノ狀態ニ於キマシテモ、高等小學ノ生徒ト云フ
モノハ日〓ニ殖エテ参ッテ居ルノデアリマス、數年ノ後ニハ、强ヒテ强制ヲ
致サヌデモ、過半ハ八年ノ〓育ヲサレルト云フコトニナリ行クノデアリマス、
ソレ故ニ私ハ思フノデアリマス、强制ト云フコトヨリハ一方ニ於テ〓員ノ養
成ニ努メテ準備ヲ爲スト同時ニ、高等小學ノ奬勵ヲ圖リマシテ、事實上ニ於
テハ〓育ヲ受ケル年限ヲ延長スルヤウニ努メタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルヤウナ
次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通告者ハ終リマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=19
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020・林博太郎
○伯爵林博太郞君 唯今、議題ニナッテ居リマスル大正十四年度總豫算案竝
各特別會計豫算及豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、右ノ
審査期限ヲ、本日ヨリ二十一日間、卽チ三月十一日マデニ致スト云フ動議ヲ
提出イタシマス、ドウゾ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=20
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021・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 林伯爵ノ豫算審查期限ニ關スル動議ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス
重市立南発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法
廢止法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、文部大臣岡田良平君
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法廢止法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法ハ之ヲ廢止ス
附則
本法ハ大正十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=24
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025・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今、上程イタサレマシタ一年現役小學校〓員俸
給費國庫負擔法廢止法律案提出ノ理由ヲ陳述イタシマス、從來、師範學校ヲ卒
業イタシマシタ者ハ、一年現役ニ從事ヲ致シマシテ、一年間入營ヲ致シマシ
テ、其間俸給ノ八割ヲ受取ッタノデアリマス、其俸給ノ八割ハ國庫ヨリ之ヲ給
與イタスト云フコトニ相成ッテ居ッタノデアリマスガ、今囘、整理ノ結果、此一
年現役ノ期限ヲ五箇月ニ短縮スルト云フコトニ致シマシタノデ、最早、此俸給
ノ支給スルコトヲ要セヌト云フコトニ相成リマシタノデ、此法律ヲ廢止イタ
サムトスルノデアリマス、此廢止ヲ致シマスル理由ハ、五箇月ニ入營期限ガ
相成リマスレバ、他ノ一年志願兵等ニ對スル權衡ノ上カラ見マシテモ全然、官
費ヲ以テ入營ヲ致シマシテ、其上ニ給與マデ受取リマシテ、尙ホ之ニ加フル
ニ俸給ヲ受取ルト云フノハ、他トノ權衡甚ダ宜シキヲ得ヌト云フ考カラ、之
ヲ廢サウトスルノデアリマス、此師範學校卒業間際ノ者ハ妻子ヲ扶養スルノ
責任モゴザイマセヌシ、恰モ師範學校ノ修業年限五箇月延長サレタト、殆ド
同ジヤウナ結果デ有ルカラ、假令此間、俸給ヲ受ケマセヌデモ、此師範學校
卒業生ニ於テ甚シキ苦痛ハ無イト、斯樣ニ認メマシタ次第デアリマス
〔澤柳政太郞君發言ノ許可ヲ求ム]発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓ニ依リマシテ成〓君ニ發言ヲ許シマス
〔成〓信愛君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=26
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027・成清信愛
○成〓信愛君 唯今、岡田文部大臣ノ御說明ニナリマシタ一年現役小學校〓
員俸給費國庫負擔法廢止法律案ニ付キマシテ、曩ニ〓育界ニ於ケル權威アル
澤柳氏ノ數時間ニ亙ル御質疑ノ御演說ト、之ニ對スル陸軍大臣竝ニ文部大臣
ノ御答辯ニ依リマシテ、此法律案ニ對シ、何レ本員ノ賛否ノ態度ヲ決定スル
上ニ十分ナル資料ヲ得マシタノテ、茲ニ重ネテ色〓ナ質疑ヲ爲ス必要ナキヤ
ウニ思ハレマスガ、併ナガラ今日マデノ文部大臣ノ御答辯ニ依リマスレバ、
如何ニモ國民〓育ニ關スル諸問題ニ付キマシテ、餘リニ輕ク取扱ヒニナルヤ
ウニ思ハレマスノデ、至極簡單ニ一二ノ問題ニ付キマシテ質疑ヲ致シマシ
テ、文部大臣ノ御答辯ヲ煩ハス次第デアリマス、此廢止法律案ノ提出セラレ
タル根本ノ理由ハ、眞ニ年限短縮ノ必要上生レタルモノデアラズシテ、現內
閣ノ一枚看板トモ見ルベキ財政緊縮ノ目的タル國費ノ捻出ヲナスガ爲ニ、犧
牲的ニ已ムコトヲ得ズ此法律案ヲ御提出ニナッタノデアルカ、又ハ今囘現役
將校ヲ〓官トシ、軍事〓育ノ實施ノ結果トシマシテ、靑少年ニ軍事訓練ガ、
文部大臣ノ御意見ノ如ク學生ニ徹底シ得ルガ爲ニ、師範學校卒業生ハ一年現
役ノ必要ナシトノ理由ニ依リマシテ本案ノ提出ヲ見タノデアリマスカ、若シ
前段ノ理由タル財政緊縮ノ結果ト致シマシテ、此法律案ガ生レマシタトスレ
バ甚ダ遺憾デハアリマスガ仕方ガナイトシマシテ、若シ後段ノ理由ニ依リ
マシテ廢止サレタト云フコトハ、洵ニ不合理ナモノデハナイカ、此點ニ付キ
マシテ御答辯ヲ願ヒタイ、次ニ現内閣ハ、刻下帝國ノ最モ急務タル、而モ全
國民ノ〓望セル義務〓育費國庫負擔ノ增額モナサズ、又玆ニ國民〓育上直接
深キ關係ヲ有シマスル小學校〓員優遇ノ一端トモ申スベキ一年現役小學校
〓員俸給費國庫負擔法、此法ヲ廢止スル法律案ヲ提出シテ、而シテ此僅少ナ
ル小學校〓員優遇費ヲ削減シ、一方遞信省管內ニ於キマシテハ、從業員ノ優
遇費トシテ多大ナル支出ヲ爲サルト云フコトデアリマスガ、甚シキ不公平ナ
ルコトデハナイノカ、之ニ依ッテ全國小學校〓員ノ精神ニ及ボス結果如何、文
部大臣ノ御所見ヲ承リタイノデアリマス、師範學校ノ卒業生ハ、以前ニ於
キマシテハ、御承知ノ通リ六週間現役制度ガ可ナリ長ク實行セラレタモノデ
アリマス、從テ今囘軍事〓育實施ノ結果、文部大臣ノ御說ノ如ク、學生ニ對
シテ兵式訓練ガ十分ニ徹底シ得ルモノトシマシタナラバ、師範學校ノ卒業生
ハ五箇月現役ノ必要ハナイ、寧ロ一步進ンデ從前ノ如ク六週間現役制度ニ在
營期限ヲ短縮シ得ルモノニアラザルカ、此點ニ付テ御答辯ヲ願ヒマス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=27
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028・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今御尋ガ三點デゴザイマス、第一ハ此師範學
校卒業生ニ對スル所ノ國庫支出金ヲ廢止スルト云フコトハ行政整理ノ爲ニ國
費ヲ捻出スル目的ノ爲ニ、已ムヲ得ズ實行シタノデアルカ、乃至ハ此靑少年
訓練デ能ク行屆クコトニ成リマシタ其結果トシテ之ヲ短縮シ、從テ國庫ノ支
出金ヲ廢止スルト云フコトニスルモノデアルカ斯ウ云フコトデアッタヤウ
デアリマス、是ハ雙方デアルト御了解ヲ下スッテ宜シイノデアリマス、行政整
理ト云フコトニ付キマシテハ、從來屢〓之ヲ實行イタスノデアリマスガ、動モ
スルト云フト是ガ復舊イタシテ來マス、數年ノ後ニハ復タ元ニ戾ルト云フ
コトガ、是マデ屢〓例ヲ見ルノデアリマスガ、是ハ何故デアルカ、詰リ仕事
ノ改善ヲ圖リマセヌデ、唯機關ダケノ縮小ヲヤリマシテ、一ツ機關ヲ以テ仕
事ハ同樣ナコトヲ繼續スル爲ニ、斯樣ナル結果ガ生ズルノデアリマス、今囘
ノ規定ニ於キマシテハ、努メテ斯樣ナル弊ヲ避ケテ、殊ニ師範學校ノ關係ニ
於キマシテハ、之ヲ避ケルノデアリマス、唯百萬圓ヲ削減イタスト申シテ
モ、唯削減イタスノデハナイノデ、卽チ削減スルガ爲ニハ此師範學校ニ於ケ
ル所ノ靑少年ノ訓練、現役將校ヲ用ヰマシテ、兵式操練ノ改善ヲ圖ッテ參リマ
シテ、其結果一年ノ在營ヲ致シマセヌデモ、五箇月デモ宜イ、斯ウ云フ見込ヲ
付ケマシテ、在營年限ヲ短縮イタスノデアリマス、旣ニ之ヲ五箇月ニ短縮ス
ルトキハ、是マデニ對スル俸給ノ八割ヲ支給スルト云フ事ハ、是ハ餘リ他ト
ノ權衡ヲ失スルト云フコトニナリマスルカラ、俸給ノ支給ト云フ事ハ停止ス
ルト云フコトニ致シタノデアリマス、ソレカラ第二ノ御尋ハ政府ハ義務〓育
費國庫負擔額ヲモ增額セズ、又斯ノ如ク〓員優遇ノ費用デアッタモノヲ削減
スル、遞信省現業員ノ如キハ、少カラズ費用ヲ出シテ之ヲ優遇スルニ拘ラズ
斯樣ナル事ヲシテ、〓員ノ精神上ニ於ケル結果如何、斯ウ云フ御尋デアッタ
ノデアリマス、是ハ精神上ニ於キマシテハ、私ハ決シテ師範學校卒業生ハ不
滿ヲ感ズルモノデハナイト信ジマス、何トナレバ從來一年入營ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、然ルニ今囘ノ改正ニ依リマシテ、是ガ五箇月ニ短縮セラレル
ノデアリマス、他ノ者ハ皆一年志願兵、自費ヲ以チマシテ一年間入營ヲ致サ
ナケレバナラヌノニ拘ラズ、此師範學校卒業生ハ全然官費ニ依リ、オマケニ
假令金額ハ少クアリマシテモ、給與マデ受ケテ居リマシテ、サウシテ僅カ五
箇月間デ退營スルコトガ出來ルノデアリマスカラ、是ハ餘程特別ノ優遇ト見
テ宜シイト思フ、是ハ小學校〓員ハ精神上ニ於テ決シテ自分達ガ虐待ヲ受ケ
ルトカ何トカ云フヤウナ感ジハ、之ヲ起サヌダラウト信ズルノデアリマス、尙
ホ此上ニモ俸給ガ貰ヒタイト云フコトハ、餘リ是ハ多キヲ望ミ過ギルコトニ
ナリハ致サヌカト思フノデアリマス、ソレカラ次ノ御尋ハ、以前ハ六週間現
役デアッタノデアルカラ、此五箇月ノ入營ト云フコトモ、或ハ其必要ガ無イデ
ハナイガ、寧ロ五箇月ヲ前ノ六週間現役ニ復舊スルコトガ出來ヌカト云フ御
尋デアリマス、是ハ六週間現役ト云フコトハ多年實行シテ居リマスガ、其成
蹟ガ甚ダ良クナイト云フコトガ證據立テラレタノデアリマス、入營イタシマ
シタ初メノ五六週間ト云フモノハ、今マデノ境遇ト非常ニ違ヒマスルカラ、
入營イタシタ者ガ非常ニ是マデノ境遇ト違フ所カラ、或ハ窮屈ニ感ジ、苦痛
ヲ感ズルト云フヤウナコトニナル、是ハ六週間、七週間ト段々延ビテ參リマ
スニ從ッテ、初メテ此兵營ノ生活ニ慣レテ、却テ此規律正シイ兵營ノ生活ガ
喜バレルト云フコトニナルノデアリマス、ケレドモ此六週間現役ニ於キマシ
テハマダ其慣レナイ先キ、唯苦痛ニ感ジテ居ル場合ニ退營サシテシマフ
ノデアリマスカラ、入營中ニ餘リ兵營ト云フモノニ對シテ好イ感ジヲ持タヌ
ト云フ結果ガアルノデアリマス、ソレ故ニ六週間現役ト云フモノハ甚ダ成蹟
ガ宜シクナイト云フコトニ、結論サレマスノデアリマス、故ニ之ヲ一年ニ延
長イタシタノデアリマス、併シ此靑少年訓練ノコトガ、尙ホ一層能ク行屆キ
マシテ、殊ニ師範學校デ、體操ノ時間ナドモ、他ノ學校ヨリハ多ク致シテア
ルノデアリマスカラ、現役將校ノ力ニ依リマシテ、十分ニ效果ヲ擧ゲ得ルニ
至リマシタナラバ、此五箇月ヲ更ニ一箇月クラヰ短縮シ得ルカト云フ望ハ有ツ
テ居ルノデアリマス、併シ是ハ實際ニヤッテ見マセヌケレバ、マダ是モ斷言ス
ルコトハ出來マセヌデアリマスガ、免ニ角ソレ以下ニ短縮スルト云フコト
ハソレハ宜シクアルマイト感ジテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ通〓者ガゴザイマセヌ、澤柳君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=29
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030・澤柳政太郎
○澤柳政太郞君 簡單デアリマスカラ、此席カラ致シタイ······此法案ガ衆
議院ニ上程セラレタ時ニ、文部大臣ハ、師範學校ヲ卒業シタル者ハ、直チニ
兵役ニ就イテ、卽チ五箇月ノ在營期ヲ終ッタ後ニ小學校〓員ニ任命スル積リ
デアルト云フコトヲ御話ニナッタノデアリマスルガ、ソレニ付キマシテ世間
ニハ幾多ノ非難ガ起ッテ、サウナレバ身體ガ薄弱ノ爲ニ召集サレナカッタ者
ガ。卒業ノ翌日ヨリ就職シテ、或ハ恩給ノ年限デアルトカ、年功加俸年限等ニ
加算サレルコトニナルガ、此兵役ニ就ク者ニ於テハ此不幸ヲ見テ、甚ダ不公
平デアルト云フヤウナ議論ガ出テ來テ、私ノ手許ナドニモ其最初ノ御言明ヲ
基礎トシテ、反對ノ意見ナドヲ印刷シテ寄越シタ者ガアルノデアリマスルガ、
其後承リマスレバサウハシナイ、矢張リ師範學校ヲ卒業シタナラバ、直チニ
小學校〓員ニ任命シ、サウシテ在役イタスノデアルト云フコトニ、御訂正
ニナッタヤウニ承ルノデアリマスガ、果シテ左樣デアルカドウカヲ、ハッキリ
承知イタシタイト思フノデアリマス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=30
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031・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今、御陳述ノ前段ノ理窟ニ付キマシテハ、私
少シク疑ヲ存スルノデアリマス、身體ガ薄弱デ兵役ヲ免レタ者ノ方ガ却テ利
益ニナル、ソレダカラ不公平ダト、斯ウ云フ論デアリマス、是ハ一年志願兵
ニ致シマシテモ、或ハ二年現役ニ致シマシテモ、身體ノ薄弱ナ者ハ兵役ヲ免
ルヽノデアリマス、見樣ニ依ッテ此方ガ得ヲスル、身體ノ强壯ノ者ガ損ヲスル、
斯ウ云フ見樣ガ出來ルカモ知レマセヌ、併ナガラ何人モ身體ノ薄弱ニシテ兵
役ヲ免ルルコトヲ希望スル者ハナイノデアリマス、何レモ身體ガ强壯デアッ
テ、兵役ヲ勤メ得ルト云フコトヲ皆光榮ト致スノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ身體薄弱ノ爲ニ起ル不公平ト云フコトハ、是ハ私ハ議論ニナラヌト思
フノデアリマス、併シ此小學校〓員ノ任命ノ時期ニ付キマシテハ當初私ハ
學校ヲ卒業スルト、直チニ入營セシメマシテ、退營ノ後ニソレゾレ指定ヲ致
スト云フコトヲ申シタノデアリマス、然ルニ衆議院ノ委員會ニ於キマシテ、
段々各委員ノ希望等モ出マシタノデ、當局者ニ於キマシテハ篤ト〓究モ致
シ、打合セヲ致シマシタ結果、是ハ改メタノデアリマス、卽チ師範學校ヲ卒
業スレバ、直チニ之ヲ〓員ニ任命イタシマス、〓員ノ肩書ヲ持ッテ兵營ニ這
入ル、斯ウ云フコトニ致ス積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=31
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032・澤柳政太郎
○澤柳政太郞君 ハッキリ御答ヲ得マシテ大變ニ滿足ヲ致シマス、サウ致シ
マスルト師範學校ヲ卒業シタル者ハ、直チニ市町村立小學校ニ任命サレルノ
デアリマス、官吏デアレ、準官吏デアレ、若クハ公吏デアレ、其任命ヲ受ケ
マシタナラバ、謂ハバ俸給ヲ受ケル權利ガソコニ生ズルト思フノデアリマ
ス、俸給ノ辭令ハ任命ノ辭令ト共ニ直チニ下付サレルノデアラウト思フノデ
アリマス、是ガ爲ニハ此在營中、俸給ヲ支給セヌト云フコトデアリマシタナラ
バ、特別ノ法令ヲ御設ケニナッテ、一年現役兵デ在營スル者ハ在營期間ノ間、
俸給ノ支給ノ停止スルト云フヤウナ法令ヲ、特別ニ御制定ニナルヨリ外ニ仕
方ガナイカト思フノデアリマス、私ハ在職者ト云フ者ハ俸給ヲ受クルノハ當
然ノ事デアル、休職中ニ於キマシテモ、官吏ニ於テモ小學校〓員ニ於キマシテ
モ、俸給ノ幾部分ヲ支給シテ居ルノデアリマス、小學校ノ〓員ニ付キマシテ
モ、施行規則ノ五十三條ニ、休職者ニハ其休職中ハ俸給ノ三分ノ一ヲ支給ス
トアルノデアリマス、ノミナラズ、此一年現役兵ノ俸給ヲ受ケテ居ルノハ、
ドウ云フ條規ニ依ッテ受ケテ居ルノカ、當然受ケルノデアリマス、ソレ故ニ
施行規則ノ中ニ於テハ、市町村立小學校正〓員ニシテ徵兵令第十四條ノ規定
ニ依ッテ一年現役兵トシテ服役スル者ハ其服役中、當分俸給ノ十分ノ二ヲ減ズ
ル、俸給ノ八割ヲ給スルトハ書イテナイノデアリマス、俸給ノ全額ヲ受クル
ノガ當然デアルケレドモ、在役中ニハ陸軍給與令ニ依ル給與モア
ルカラシテ、其十分ノ二ヲ減ズルト云フコトガ本則トシテ書イテアルノデア
リマス、抑〓今上程セラレマシタ此案ハ、卽チ茲ニアルガ如クニ一年現役小
學校〓員俸給費國庫負擔法デアリマス、小學校ノ俸給ト云フモノハ市町村ガ
之ヲ負擔スルト云フコトガ現在ノ原則デアルノデアリマス、故ニ斯カル〓育
費國庫負擔法ニ於キマシテモ、國庫ガ負擔スル所ノ金ハ〓員ノ俸給ニ充テル
トシテアリマスゲレドモ、此金ト云フモノハ國庫ヨリ市町村ニ交付スルノデ
アリマス、市町村ガ小學校ノ〓員ノ俸給ヲ支辨イタシテ居ルノデアリマス、
デ此國庫負擔法ニ於キマシテモ、國庫ハ此金額ヲ市町村ニ交付スルノデア
リマス、唯市町村ガ小學校ノ〓員ニ給スル所ノ俸給ヲ自分ノ經濟ヨリ······
分ノ經濟ニハ是ハナリマスルケレドモ、町村費ヨリ出スニ及バナイ、ソレニ
相當スル金額ハ國庫ヨリ交付サレルト云フコトデアルノデアリマス、是ハ私
ハ當然ノコトデアラウト思フノデアリマスルガ、議論ニ涉リマスカラ、先刻
此演壇ニ御述べニナッタコトニ付テハ、討論ノ場合ニ申シタイト思フノデア
リマスガ、免ニ角、俸給ヲ支給セヌト云フコトデアリマシタナラバ、特別ナル
法令ヲ出シテ、此一年現役兵ハ小學校〓員ニ在職シテ居ルモノデアル、原則
トシテ俸給ヲ支給スベキデアルケレドモ、在營中ハ俸給ヲ支給シナイト云フ
特別令ヲ御制定ニナラナケレバ出來ナイコトト思フノデアリマス、斯ノ如キ
特別ナル規定ヲ、小學校〓員ノ職務ヲ完全ニ盡スガ爲ニ、五箇月ノ間在役ス
ルコトヲ要スルト云フ其事ノ爲ニ、斯カル俸給支給ニ關スル·····殆ド外ニハ
例ガ無イト思フノデアリマスルガ、サウ云フヤウナ特別令ヲ設ケルト云フコ
トガ果シテ如何ナル影響ヲ及ボスモノデアルカ、是等ニ付テハ今論ジマセヌ
ケレドモガ、サウ云フヤウナ特別令ヲ外ニ御制定ニナル御考デアリマスカ、
ソレヨリ外ニ仕方ガナカラウト思フノデアリマス、若シ此法令ガ大正十年ニ
出ナカッタナラバ、俸給金額ハ市町村ガ負擔スル、是ハ市町村ガ負擔シナイ
デ、國庫ガ負擔シテヤルゾト云フ法令デアリマシテ、此法令ニ依ッテ小學校
〓員ガ俸給ノ全額若クハ八割ヲ支給セラレタノデハナイノデアリマス、俸給
ヲ小學校〓員ガ得ルト云フコトハ一般ノ原則ト云フカ、通則ト云フカ、私ハ
其名ヲ知リマセヌケレドモ、當然得ル譯デアリマス、ソレ故ニ唯今申シタ如
クニ八割ヲ給ストシテナイ、十分ノ二ヲ減ズルトシテアルノデアリマスカ
ラ、今廢止セムトシテ提出セラレタ所ノ此法案ハ、國庫ガ其費用ヲ負擔シテ
町村ニ交付スルゾト云フ內容ノ法案デアルノデアリマスガ、其點ニ付テ當局
ノ御所見ヲ承リタイト思フノデアリマス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=32
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033・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今ハ色〓御尋デアリマシタガ、無論是ハ俸給ノ
規定ヲ改正スルノデアリマス、俸給ト云フモノハ必ズ全額ヲ支給セニャナラ
ヌト云フ理窟ハナイ、休職ノ時ハ三分ノ一ヲ支給スルトカ、或ハ或場合ニハ
俸給ヲ支給セズト云フヤウナコトハ、他ニ幾ラモ例ガアルノデアリマス、是
ハ一向不思議ハナイノデスガ、何レサウ云フ規定ハ設ケナクチヤナリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
一年現役小學校〓員俸給費國庫負擔法廢止法律案特別委員
伯爵松木宗隆君大久保利武君福原錄二郞君
なるぞ
男爵南岩倉具威君男爵千秋季隆君澤柳政太郞君
南弘君永田秀次郞君馬場鍈一君
웃기嘉〓発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、〓育改善及農村振興基金特別會計法
案内政府提出、衆議院送付、第一讀會
〓育改善及農村振興基金特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
〓育改善及農村振興基金特別會計法
第一條〓育改善及農村振興基金ヲ置キ其ノ歲入歲出ハ一般ノ會計ト區分
シ特別會計ヲ設置ス
第二條造幣局資金ノ内一億三千萬圓ハ之ヲ本基金ニ繰入ルヘシ
第三條本基金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ師範〓育ノ改善及農村產業ノ振興
ニ必要ナル費途ニ之ヲ使用ス
第四條第二條ノ規定ニ依リ繰入レタル金額ハ本基金ノ元資金トシ之ヲ費
消スルコトヲ得ス
第五條本基金ハ國債ヲ以テ之ヲ保有シ又ハ大藏省預金部ニ預入レ其ノ利
殖金ハ之ヲ基金ニ編入スヘシ
第六條本基金ヲ使用セムトスルトキハ其ノ金額ヲ一般ノ歲入ニ組入レ一
般ノ歲出トシテ拂出スヘシ
第七條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第八條本基金ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ之ヲ翌年度ニ繰越シ
使用スルコトヲ得
附則
本法ハ大正十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=35
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036・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 玆ニ議題トナリマシタ〓育改善及農村振興基金特
別會計法ニ付テ大體ノ說明ヲ申上ゲマス、造幣局ノ特別會計ニ於ケル益金ハ、
大正十三年度末ニ於テ約一億八千餘萬圓ニ上ボル見込デアリマス、其中、約五
千餘萬圓ハ同會計ノ資金トシテ保留スルコトヲ要スル額デアリマシテ、之ヲ
差引キ一億三千萬圓ハ他ノ費途ニ使用スルコトヲ得ベキ金額デアリマス、元
來、此餘裕金ハ補助貨幣ノ改鑄ニ依ッテ生ジタルモノデアリマシテ、斯ノ如キ
餘裕金ハ其出來マシタ所ノ原因ニ鑑ミマシテ、成ルベク之ヲ一般ノ經費ニ使
ヒマセヌデ、特別基金トシテ保留スルヲ以テ最モ妥當ノ措置デアルト考ヘマ
ス、而シテ該基金ハ之ヲ有利ニ運用イタシマシテ、其利殖金ハ各種ノ必要ナル
施設ノ中、特ニ緊急ニシテ且ツ普遍的ナル師範〓育ノ改善及農村ノ振興ニ要
スル費途ニ充用イタシマシタナラバ、最モ時宜ニ適ヒ、且ツ本基金ヲ最モ能
ク活用スル所以デアルト認メマシテ、本特別會計法案ヲ提出イタシマシタ次
第デアリマス、何卒御審議ノ上、速ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
〓育改善及農村振興基金特別會計法案特別委員
子爵前田利定君犬塜勝太郞君荒川義太郞君
男爵藤村義朗君阪本彭之助君高田早苗君
志村源太郞君宮田光雄君山田歛君
山古市山桌上〓発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、公立學校職員年功加俸國庫補助法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、岡田文部大臣
公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
公立學校職員年功加俸國庫補助法中左ノ通改正ス
第一條中「公立ノ中學校、高等女學校及實業學校」ヲ「公立ノ高等學校尋常
科中學校、高等女學校、實業學校、盲學校、聾啞學校及實業補習學校〓
員養成所」三五人
附則
本法ハ大正十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=38
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039・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 現行ノ公立學校職員ノ年功加俸國庫補助法ニ依リ
マスレバ、公立ノ高等學校尋常科ノ〓員、公立ノ盲學校聾啞學校職員及公立
實業補習學校〓員養成所〓員ニハ年功加俸ヲ支給イタサザルコトニ相成ッテ
居ルノデアリマス、然ルニ是等ノ者ニモ他ノ中等諸學校ト同樣ニ年功加俸ヲ
支給スルノ必要ガアリマスルノデ、別ニ之ニ要スル豫算ヲ要求イタシテ居ル
ノデアリマス、從テ之ニ伴ヒマシテ此改正法律案ヲ提出イタシタ次第デアリ
やく、る何卒御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ日程第三ノ特別委員ニ付託イタシマス
皇帝心홍!五十六発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ガ無ケレバ日程第六、第七ハ一括シテ議題
ト致シ、說明ヲ煩ハシマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、朝鮮鐵道用品資金會計法案、第七、朝
鮮私設鐵道補助法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
朝鮮鐵道用品資金會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕
朝鮮鐵道用品資金會計法
第一條鐵道用品ヲ購入貯藏及製作修理シ朝鮮鐵道ノ運輸營業及建設事業
ノ需用ニ應スル爲朝鮮鐵道用品資金ヲ置キ特別ノ會計ヲ立テシム
第二條朝鮮鐵道用品資金ハ大正十四年四月一日ニ於テ朝鮮總督府ノ保管
ニ歸スル元朝鮮鐵道用品資金ノ額ニ相當スル鐵道用品ノ貯蓄材料ヲ以テ
之ニ充テ尙朝鮮總督府特別會計ヨリ漸次繰入レテ三百萬圓トス
第三條本會計ハ鐵道用品ノ賣拂代及修理代竝附屬雜收入ヲ以テ歲入トシ
鐵道用品ノ購入代、製作費、改製費及修理費竝附屬諸費ヲ以テ歲出トス
第四條本會計ノ決算上生シタル過剰金ハ之ヲ同年度朝鮮總督府特別會計
ノ歲入ニ繰入ルヘシ
第五條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第六條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條本會計ノ經營ニ妨ナキ限リ一般ノ需用ニ應シ機械其ノ他ノ物品ノ
製作修理ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ本會計ニ屬スル用品ヲ以テ其ノ材料ニ充ツルコトヲ
得
附則
本法ハ大正十四年度ヨリ之ヲ施行ス
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第五條中「三百萬圓」ヲ「四百五十萬圓」二郎丸
附則
本法ハ大正十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=42
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043・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 初メノ日程ニ付キマシテ私ヨリ說明ヲ申上ゲマ
ス、朝鮮官設鐵道ノ建設改良保存及運輸竝ニ其附帶ノ業務ハ、最初、朝鮮總督
ガ管理經營イタシテ居リマシタガ、大正六年七月三十一日以降ハ其經營ヲ南
滿洲鐵道株式會社ニ委託シテ居ルノデアリマス、然ルニ朝鮮ノ官設鐵道ノ經
營ハ朝鮮ニ於ケル施設ノ方針カラ考察シマシテ、再ビ朝鮮總督府ニ於テ直接
之ニ當ルコトニ致シタイト考ヘマス、恰モ南滿洲鐵道株式會社トノ委託經營
ニ關スル細目協定モ大正十四年度カラ是ガ更改ヲ要スルコトニナッテ居リマ
スノデ、大正十四年三月三十一日限リ是ガ委託ヲ解除シテ、其經營ヲ朝鮮總督
府ニ復歸セシメタイト思ヒマス、然ルニ元來、鐵道ノ運輸營業及建設事業ヲ營
ムニ付キマシテハ、材料等ノ需要モ巨額ニ上ボリマス爲ニ、他ノ國有鐵道經
營ノ場合ニ於ケルト同樣、鐵道用品ノ購入、貯藏及製作、修理ヲ爲スタメ特
別ノ資金ヲ補充シ、其歲入歲出ヲ特別ニ經理スルコトハ、最モ經濟的デアル
ト同時ニ、此種事業經營上、必要ナルコトト存ズルノデアリマス、依テ本案
ヲ提出シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希
望イタシマス
〔政府委員濱田恒之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=43
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044・濱田恒之助
○政府委員(濱田恒之助君) 第七日程ノ朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案ノ
提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、朝鮮ニ於ケル產業ノ開發、交通ノ改良ノ爲
ニ私設鐵道ノ延長、補給ノ必要ナル事ハ申上ゲル迄モナイト存ジマス、ソレ
ニ付キマシテ從來、朝鮮總督ニ於キマシテハ此補助法ニ依リマシテ私設鐵道
ノ延長ヲ補助助成シ來ッタノデゴザイマス、然ルニ此補助法ニハ其補助額ニ
制限ガ有リマス、卽チ每年ノ補助總額ハ三百萬圓ヲ超過スルコトヲ得ナイコ
トニナッテ居リマスノデゴザイマス、然ルニ段々私設鐵道ガ延長シテ來マシ
タ結果、今日ニ於キマシテハ最早其餘裕ガ無クナッタノデゴザイマス、將來
更ニ是等ノ延長ハ洵ニ好マシイ事デゴザイマスカラ、其場合ニ處セムガ爲ニ
三百萬圓ノ制限ヲ四百五十萬圓ト改正ヲ致シテ將來ノ施設ニ備ヘヤウト致ス
ノデゴザイマス、右樣ナ次第デゴザイマスカラ御審議ノ上ニ速ニ御協賛アラ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今說明セラレマシタ兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ書
記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
朝鮮鐵道用品資金會計法案外一件特別委員
伯爵酒井忠正君男爵山根武亮君平井晴二郞君
內田嘉吉君男爵藤堂高成君室田義文君
佐竹三吾君土田萬助君田中〓文君
WEII熹날発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、裁判所構成法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會
裁判所構成法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第十四條中「五百圓」ヲ「千圓」ご依頼、
第七十一條ノ二中「司法省參事官」ヲ「司法書記官」三四五
第七十七條削除
第七十九條中「及第七十七條」ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前裁判所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ管轄ニ關スル從前ノ規定ヲ適
用ス但シ本法ニ依リ其ノ裁判所ノ管轄ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
判事又ハ檢事タル資格ヲ有スル司法省參事官ノ本法施行前ニ於ケル在職ハ
裁判所構成法第六十九條乃至第七十一條ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ判事ノ
在職ト看做ス
〔國務大臣小川平吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=46
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047・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 裁判所構成法中改正法律案ノ提出ノ理由ヲ說明イ
タシマス、本改正案ノ第一ハ區裁判所ニ於ケル民事ノ裁判ノ權限ヲ擴張イタ
シマシテ、現今、訴訟物ノ價格五百圓迄トアルヲ千圓迄ニ上ボシタイト云フノ
ガ第一デアリマス此訴訟物ノ價格ハ當初、區裁所ノ權限ニ二百圓迄トアリ
マシタノヲ大正二年ニ現行法ノ如ク五百圓ト改正イタシマシタ、其後、時勢ノ
變遷ニ伴ヒマシテ今日ハ最早千圓迄ノ裁判ノ權限ヲ與ヘルノハ、事務ノ簡㨗
ノ爲ニモ、又一般ノ人民ノ便利ノ爲ニモ、必要デアルト考ヘマシテ、卽チ本
案ヲ提出シタ次第デアリマス、次ハ控訴院、大審院ノ判檢事任用ニ關スル規
程ノ中、司法省參事官トアリマシタノヲ、參事官ガ廢止セラレテ書記官ト相
成リマシタル結果、之ヲ改メテ卽チ書記官ト致シマスノガ本案デゴザイマス、
其次ニハ恩給法改正ノ結果、第七十七條ガ不用ニ相成リマシタカラ之ヲ削除
シタイト云フノガ本案ノ趣意デアリマス、何卒御審議ノ上、協賛ヲ與ヘラレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
裁判所構成法中改正法律案特別委員
伯爵勸修寺經雄君子爵秋元春朝君子爵板倉勝憲君
河村讓三郞君男爵岩倉道倶君男爵二條正麿君
安立綱之君西久保弘道君大村彥太郞君
青木南市発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、遠洋漁業奬勵法中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十四年二月十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
遠洋漁業奬勵法中左ノ通改正ス
第三條但書ヲ削ル
第五條主務大臣ハ遠洋漁船檢査規程ニ定ムル構造ニ適合シタル日本船舶
ヲ新造シ又ハ日本船舶ニ新造ノ機關、副漁具ヲ据附ヶ若ハ新造ノ保藏設
備。無線電信裝置、無線電話裝置ヲ施設シタル船舶所有者ニ對シ左ノ區
別ニ從ヒ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ得但シ計畫總噸數六十噸以上ノ船
舶ニ在リテハ第一號乃至第三號ノ規定ニ拘ラス其ノ船體、機關及屬具ノ
評價額ノ十分ノ二以內ノ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ得
-船體總噸數每一噸鋼製六十圓以內
木製四十五圓以內
二蒸汽機關實馬力每一馬力二十二圓以内
三發動機關純馬力每一馬力四十圓以内
四保藏設備、無線電信裝置又ハ無線電話裝置評價額ノ十分ノ三以內
五副漁具評價額十分ノ三以内
主務大臣ハ漁船ノ改良ニ關シ適當ト認メタル設計ニ依リ日本船舶ヲ新造
シ又ハ改造シタル船舶所有者ニ對シ其ノ船舶新造費又ハ改造費ノ三分ノ
一以内ノ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ得
前項ノ船舶新造費又ハ改造費ハ保藏設備、無線電信裝置、無線電話裝置
及副漁具ノ新造費又ハ改造費ヲ包含ス
同一ノ船舶ニ付第一項及第二項ノ漁船奬勵金ヲ併セ下付スルコトヲ得ス
第六條第一項ヲ削ル
第十一條第一項但書ヲ削リ同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
主務大臣ハ必要ト認メタル場合ニ於テ第一條ニ依ル豫算定額中ヨリ公共
團體其ノ他ノ營利ヲ目的トセサル法人ニ對シ遠洋漁船船員ノ養成又ハ遠
洋漁業者若ハ海外出漁者ノ利益增進ノ爲必要ナル費用ノ全部又ハ一部ヲ
下付スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=49
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050・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 本案提出ノ理由ニ付キマシテ簡單ニ說明ヲ致シマ
ス、現行ノ遠洋漁業奬勵法ニ於キマシテハ主モニ噸數六十噸以下ノ漁船ノ建
造ニ對シマシテ奬勵ヲ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ今後ハ水產物ノ生產
增加ヲ圖リマス爲ニハ、尙ホ遠ク未開ノ漁場ヲモ開發スル必要ガアリマス、
從テ從來ノ船ヨリモ大キナ大型ノ漁船ノ建造ヲ奬勵シテ行カネバナリマセ
ヌ、同時ニ今後益〓遠洋出漁ヲ奬勵イタシマスル目的ヲ以チマシテ、十四年
度ノ豫算ニ於テハ其奬勵費ヲ增加シテ、十三萬九千五百五十圓ヲ大型汽船ノ
奬勵費トシテ計上シテアリマス、之ニ依リマシテ本法ニ改正ヲ加フル必要ヲ
生ジタノデアリマス、同時ニ此機會ニ於テ從來ノ實蹟ニ鑑ミテ、不便ト感ズ
ル點ヲ併セテ改正ヲ致シタイト云フ趣意デゴザイマス、御審議ノ上、御協賛
アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔成瀨書記官朗讀〕
遠洋漁業奬勵法中改正法律案特別委員
伯爵松平賴壽君服部一三君子爵曾我祐邦君
小松謙次郞君上山滿之進君男爵伊藤文吉君
村野常右衞門君中村圓一郞君小川貞一君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 報告ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
本日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ本院ノ議決ニ同意シ奏
上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
海上衝突豫防法中改正法律案
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
米穀法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 次會ハ來ル二十三日午前十時ヨリ開會イタシマ
ス議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシ
マス
午後三時五十四分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005003242X01519250219&spkNum=53
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