第50回帝国議会　貴族院　本会議　第28号　大正14年3月24日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　大正十四年三月二十四日（火曜日）
  　　　　午前十時十七分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　議事日程　第二十八號　大正十四年三月二十四日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　大正十四年度歳入歳出總豫算案竝大正十四年度各特別會計歳入歳出豫算案　會議（委員長報告）
  　　第二　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件　　　　　　　　會議（委員長報告）
  　　第三　大正十四年度歳入歳出總豫算追加案（第一號）　　　　　　　　　　會議（委員長報告）
  　　第四　大正十四年度各特別會計歳入歳出豫算追加案（特第一號）　　　　　會議（委員長報告）
  　　第五　豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件（追第二號）　　會議（委員長報告）
  　　第六　大正十四年度歳入歳出總豫算追加案（第二號）　　　　　　　　　　會議（委員長報告）
  　　第七　大正十四年度歳入歳出總豫算追加案（第三號）　　　　　　　　　　會議（委員長報告）
  　　第八　大正十四年度特別會計歳入歳出豫算追加案（特第二號）　　　　　　會議（委員長報告）
  　　第九　大正十二年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十　大正十二年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十一　大正十三年二月及三月中豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十二　大正十三年三月中特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十三　大正十三年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十四　大正十三年度豫備金外に於て豫算外支出の件（承認を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十五　大正十三年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十六　大正十三年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議（委員長報告）
  　　第十七　陸海軍の政務次官及參與官に軍刑法の一部を適用せさる法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十八　米穀法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十九　米穀需給調節特別會計法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十　關東州の生産に係る物品の輸入税免除に關する法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十一　中国鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈株式會社所屬軌道の經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十二　道府縣會、市會及勅令を以て指定したる議會の議員選擧に關し衆議院議員選擧法中一部の規定準用に關する法律案（衆議院提出）　第一讀會
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
  〔小林書記官朗讀〕
  去ル二十日薩哈嗹州派遣軍司令官ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  貴院ノ鄭重ナル決議ニ接シ感銘ノ至リニ不堪玆ニ麾下一同ヲ代表シ深厚
  ナル謝意ヲ表ス右可然御披露ヲ乞フ
  同日三矢臨時海軍防備隊司令ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  貴族院ノ懇篤ナル感謝ノ辭ヲ辱ウシ感佩ノ至ニ堪ヘス玆ニ部下一同ヲ代
  表シ深甚ナル謝意ヲ表ス
  同日橫須賀鎭守府司令長官ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  北樺太撤兵ニ際シ院議ニ依ル懇篤ナル謝電ヲ忝ウシ感謝ニ堪ヘス北樺太
  方面派遣艦船ヲ代表シ謹ミテ謝意ヲ表ス
  同日吳鎮守府司令長官ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  薩哈嗹州方面ノ撤兵ニ際シ貴族院ハ北樺太方面派遣艦船ノ勞苦ヲ多トセ
  ラレ感謝ノ決議ヲナサレタルニ對シ茲ニ部下派遣艦船乘員一同ヲ代表シ
  謹テ謝意ヲ表ス
  同日佐世保鎭守府司令長官ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  薩哈嗹州派遣臨時海軍防備隊及北樺太方面派遣艦船乘員ニ對スル貴院ノ
  御懇篤ナル決議ニ對シ右ニ關係セル部下一同ヲ代表シ謹ミテ謝意ヲ表
  ス
  同日大湊要港部司令官ヨリ左ノ謝電ヲ受領セリ
  撤兵ニ際シ貴族院ノ懇篤ナル感謝ノ辭ヲ辱ウシ感佩ノ至ニ堪ヘス玆ニ北
  樺太方面派遣ノ部下艦船乘員一同ヲ代表シ深甚ナル謝意ヲ表ス
  昨二十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可
  決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  大正十三年度歲入歳出總豫算追加案(第一號)
  大正十三年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
  公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案
  長州鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
  鐵板ノ輸入稅ニ關スル法律案
  漁業財團抵當法案
  登錄稅法中改正法律案
  印紙稅法中改正法律案
  行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行ニ
  關スル法律案
  大正三年臨時事件ニ關スル臨時軍事費特別會計ノ終結ニ關スル法律案
  同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  震災被害地ノ營業稅免除ニ關スル法律案外一件特別委員會
  委員長荒井賢太郞君副委員長大谷嘉兵衞君
  所得稅法中改正法律案外二件特別委員會
  委員長子爵西大路吉光君副委員長玉利喜造君
  家祿引直處分法案特別委員會
  委員長嘉納治五郞君副委員長阪本彭之助君
  新聞紙法中改正法律案特別委員會
  委員長侯爵佐佐木行忠君副委員長男爵辻太郞君
  同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
  大正十四年度歲入歲出總豫算案修正報告書
  大正十四年度各特別會計歲入歲出豫算、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契
  約ヲ爲スヲ要スル件可決報告書
  大正十四年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)、大正十四年度各特別會
  計歲入歲出豫算追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ
  爲スヲ要スル件(追第二號)、大正十四年度歲入歳出總豫算追加案(第二
  號)、大正十四年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)、大正十四年度特別
  會計歲入歲出豫算追加案(特第二號)可決報告書
  陸海軍ノ政務次官及參與官ニ軍刑法ノ一部ヲ適用セサル法律案可決報告
  書
  米穀法中改正法律案可決報告書
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案可決報告書
  大正十二年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)、大正十二年度特別
  會計第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)、大正十三年二月及三月中豫
  備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)、大正十三年
  三月中特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ム
  ル件)、大正十三年度第二豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)、大正十三年
  度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件(承詰ヲ求ムル件)、大正十三年度特別
  會計第二豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)、大正十三年度特別會計豫備
  金外ニ於テ豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)可決報告書
  關東州ノ生產ニ係ル物品ノ輸入稅免除ニ關スル法律案可決報〓書
  中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈株式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ對
  スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案可決報告書
  同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
  道府縣會、市會及勅令ヲ以テ指定シタル議會ノ議員選擧ニ關シ衆議院議
  員選擧法中一部ノ規定準用ニ關スル法律案
  同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ヲ同院ニ於テ可決シ奏上
  セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  外國人土地法案
  同日可決シタル議員男爵土屋光金君ニ對スル弔辭ハ卽日之ヲ贈レリ
  山西小山三平山東

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、大正十
  四年度歲入歲出總豫算案竝大正十四年度各特別會計歲入歲出豫算案、第二、
  豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、第三、大正十四年
  度歲入歳出總豫算追加案、第一號、第四、大正十四年度各特別會計歲
  入歲出豫算追加案、特第一號、第五、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲
  スヲ要スル件、追第二號、第六、大正十四年度歲入歲出總豫算追加案、第二
  號第七、大正十四年度歲入歲出總豫算追加案、第三號、第八、大正十四年
  度特別會計歲入歲出豫算追加案、特第二號、會議、委員長報告、豫算委員長
  林伯爵
  一大正十四年度歲入歲出總豫算案
  右衆議院ヨリ送付シタル案ヲ審查シ別册ノ通修正セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  豫算委員長伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  (豫算委員ノ修正ニ係ル部分ヲ印刷シ其ノ他ハ之ヲ)
  略ス小字ハ修正文、ハ同削除ノ符號ナリ
  (ソ)一五頁
  拾五億貳千參百四拾貳萬八千參百貳
  第一條大正一四年度歲入嚴出經額ヲ各拾五に或十四百參拾九共九千貳
  拾八圓
  拾八圓ト定ム其ノ款項ノ金額ハ別册甲號歲入歳出豫算ニ據ルヘシ
  (ソ)二〇頁
  五、五二九、三〇〇
  第六款〓育改善及農村振興基金特別會計ヨリ繰入六、五〇〇○○〇
  五、五二九、三〇〇
  第一項〓育改善及農村振興基金特別會計ヨリ繰入六、五〇〇〇
  二九九、三二一、三一八
  歲入經常部合計三〇〇、二九二、〇一八
  (ソ)二二頁
  五二三、四二八、三二八
  歲入總計一、五二四、三九九、〇二八
  (ソ)四〇頁
  四五、三六二、三七八
  第五款普通〓育費四六、三三三、〇七八
  三、〇二九、三〇〇
  第三項師範〓育費補助四、〇〇○〇
  (ソ)四二頁
  七九、七五一、六三八
  文部省所管合計八〇、七二二、三三八
  (ソ)四八頁
  〇一〇、四一三、〇九六
  歲出經常部合計。三八三、七九六
  (ソ)八七頁
  五二三、四二八、三二八
  歲出總計、五二四、三九九、〇二八
  一大正十四年度各特別會計歳入歲出豫算案
  一豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件
  右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
  ノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  豫算委員長伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  一大正十四年度歲入歲出總豫算追加案(第一號)
  一大正十四年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
  -豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第二號)
  大正十四年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)
  大正十四年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)
  一大正十四年度特別會計歲入歲出豫算追加案(特第二號)
  右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審査シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
  ノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  豫算委員長伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

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• 003・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　唯今、日程ニ上ボリマシタ大正十四年度豫算案全部竝ニ
  大正十四年度豫算追加案全部、卽チ第一號、特第一號、追第二號、第二號、第三
  號特第二號等デアリマス、御承知ノ如ク、此總豫算ハ二月十四日本會議ニ
  上程ニ相成リマシテ、二月十九日ニ委員會付託ニ相成ッテ、二十一日ヨリ質
  問ニ移ッタ譯デアリマス、而シテ其審査期限ハ初メ三月十一日迄デアリマシ
  タル所、今囘ノ豫算ト云フモノハ行政財政ノ整理其他非常ニ複雜ナル問題ガ
  伏在シテ居リマシタノデ、色〓考慮調査ヲ要スル爲ニ、三月十六日マデ延長
  ヲ致シマシタ、又更ニ二月二十日マデ、又更ニ三月二十三日マデ延期イタシ
  マシテ、愼重ニ審議イタシマシタ、是ハ諸君ノ旣ニ知ラレテ居ル通リデアリ
  ママト。少シク無味枯燥デハアリマスルケレドモ、簡單ニ、政府ガ提出シマシ
  タ所ノ豫算ニ付キマシテ、其梗〓ヲ述ベテ置カウト思フノデアリマス、薄弱ナ
  ル財政ノ基礎ヲ目下立直スト云フ急務ニ迫ッタノデアッテ、我ガ帝國ノ財政ハ
  今日二ツノ岐路ニ立ッテ居ル、卽チ增稅ニ依ッテ此難局ヲ切拔ケルベキデアル
  カ、或ハ整理ニ依ッテ緊締シテ以テ財界ノ基礎ヲ鞏固ナラシムベキデアルカ、
  此二途ノ中、一ツヲ擇ブベキ時ニ當ッタノデアル、デ、此際增稅ヲ爲スガ如
  キハ惡影響ヲ財界ニ及ボスト云フコトハ明瞭デアルカラ、此途ヲ執ル譯ニ行
  カナイ、此故ニ政府ハ整理ノ方針ヲ執ッタノデアルト云フ前提ノ下ニ、豫算
  ヲ說明シテ居ルノデアリマス、此總豫算ニ付キマシテ、簡單ニ申シマスレ
  バ歲入歲出各〓十五億二千四百萬圓デアリマス、此歲入ニ付テ申シマスル
  ト經常部ニ於テ十三億、是ハ前年度ノ實行豫算ニ比較イタシマスルト、三
  千五百萬圓增加ニナッテ居リマス、臨時部ニ於テハ二億二千四百萬圓、之ヲ
  前年度ノ實行豫算ニ比較イタシマスト、一億二千六百萬圓減ニナッテ居リマ
  ス、卽チ前年度ニ比シマシテ、經常部臨時部相通ジテ九千一百萬圓ノ減トナ
  ッテ居ル譯デアリマス、其內譯ハ唯今申上ゲル必要ハナイト思ヒマス、歲出ニ
  於キマシテハ經常部十億一千一百萬圓、臨時部五億一千三百萬圓ト云フコト
  ニ相成ッテ居リマス、デ、是ハ前年度ノ實行豫算ト比較シマスルト云フト、
  經常部ニ於テ四千三百萬圓、臨時部ニ於テ凡ソ四千七百萬圓減ニ相成ッテ居
  リマス、是ハ經常臨時部ニ於テ合計九千一百萬圓減ト云フコトニ相成ッテ居
  リマス、是ハ既定計畫ノ增加額八千九百萬圓、新規增加額ヲ入レマシテ二億
  三百萬圓ト云フモノガ增加ニナッテ居リマス、次ニ整理節減額一億五千二百
  萬圓、之ニ既定計畫ノ減少額其他ヲ加ヘマシテ、二億九千四百萬圓ノ減少ニ
  ナッテ居リマス、サウ云フ內譯ニ相成ッテ居ル次第デアリマス、次ニ此公債ノ
  新規發行額ハ一億五千萬圓ニ止マッテ居リマス、而モ是ハ預金部ニ引受ケニ
  相成リ、且ツ郵便局賣出シノ方法ニ之ヲ求メマシテ、一般市場ニ之ヲ公募シ
  ナイト云フコトニ相成ッテ居リマス、次ハ特別會計ノ方面ヲ述ベテ見マスト
  云フト、在外帝國專管居留地、朝鮮醫院及濟生院、次ニ陸軍營繕費補充資金
  ノ廢止デアリマス、此三ツノ特別會計ノ廢止、又帝國大學ノ四特別會計ヲ合
  併シマシテ、一特別會計トシタコトデアリマス、造幣局資金ノ內一億三千萬
  圓ヲ以テ〓育改善農村振興ノ基金ヲ設ケマシテ其利益六百五十萬圓ノ財源ヲ
  得ルコトニナリ、其内四百萬圓ハ師範〓育改善、二百五十萬圓ハ農村產業ノ
  振興ニ充テルト云フコトニナッテ居リマス、又預金部ノ資金運用ヲ公明正大
  ナラシムル目的ヲ以テ、此從來ノ預金利子特別會計ヲ廢止イタシマシテ、新
  ニ大藏省預金部特別會計ヲ設ケ、且ツ委員會ヲ置イテ運用ノ諮問ヲナスト云
  フヤウナコトモアリマス、其外ニ於キマシテハ、陸軍軍備整理、兵器ノ改
  良靑少年訓練ノ一部實施等ガ計上サレテアルノデアリマス、次ニ大正十四
  年度追加豫算案全部ニ付キマシテ一言イタシタイト思ヒマス、是ハ歲入歲出
  各〓二千六百零五萬三千三十圓ニナッテ居リマス、第一ニハ日露國交ノ恢復ノ
  結果、莫斯科ニ大使館ヲ置カナケレバナラス、其外、諸所ニ領事館ヲ置カナケ
  レバナラヌ所ノ經費ガ約百二十萬圓計上シテアリマス、第二ニハ行政整理ノ
  結果デアリマシテ、退職特別賜金ノ總額四千三百餘萬圓、其內、甲、此公債
  ニ依ルモノ四千零四十萬圓、殘リ現金ノ支給ガ二百九十萬圓要求シテアリマ
  ス、乙此退職者ノ年金恩給六百萬圓、一時恩給四百萬圓ノ中デ十四年度ハ
  其半額ノ二百萬圓デアリマス、丙。退職者ニ支給スル公債ノ利子其他ニ於キ
  マシテ二百四十萬圓要求シテ政府ハ居リマス、第三、海外在勤俸臨時加給等
  ニ於テ六十五萬圓要求シテアリマス、第四ハ薩哈嗹ノ駐屯軍撤退ニ依ッテ生
  ズル所ノ諸經費、陸海軍ヲ合セテ五百零七萬圓アリマス、第五ニハ信濃川改
  修工事中ノ地辷リ其他ノ追加四十二萬一千圓等デアリマシテ、ソレガ主モナ
  モノデアリマスルガ、其他各號ノ豫算ノ追加ニ付テノコトニ付キマシテハ、
  速記錄等ニモアリマスコトデスカラ、之ヲ省略イタシマス、豫算委員會ニ於
  ケル質問ノ情況ヲ簡單ニ申シテ見マスト云フト、第一ニハ皇室費ニ付テノ質
  問ガゴザイマシタ、是ハ衆議院ニモアリマシタト略〓大體同樣ノ意味デアリ
  やく、第二ニハ所謂普選竝ニ貴革問題ニ付テノ質問應答ガゴザイマシタ、第
  三ニハ財政經濟、統計、其地豫算ニ付テノ問題ガ大分質問應答ガアッタノデ
  アリマス、玆ニ注目スベキ一點ハ、今囘政府ガ一般特別兩者ヲ通ジマシテ二
  億五千六百萬圓整理ヲシタト云フコトヲ言ッテ居ルガ、其中ニ重複シタモノ
  ハナイカト云フ質問ガ出タノデアリマス、結局其內八百九十萬圓ト云フモノ
  ハ重複シテ居ルト云フコトガ明カニナリマシテ、政府ハ之ニ承認ヲ與ヘテ居
  ルノデアリマス、ダカラシテ實際整理額ハ二億四千七百萬圓ト相成ル譯デア
  リマス、尤モ政府ハ此重複ト云フモノハ豫算ニ之ヲ記錄スル上ニ於テ是ハ已
  ムヲ得ナイコトデアル、非常ニ是ハ複雜ナルモノデアッテ、已ムヲ得ズ斯ノ
  如キ重複シタ形ニナッテ居ルンデアルト云フコトデアリマス、其他財政ニ付
  テハ是ハナカ〓〓多クノ質問應答ガアリマシタガ、悉ク省略ヲ致シマス、第
  四ニハ國防ニ付キマシテ重要ナル質問應答ガアリマシタ、又航空部隊其他ニ
  付テモ、兵器ノ改良其他ニ付テモ、色〓質問應答ガアリマシタ、第五ニハ產
  業ニ付キマシテ種々質問ガアリマシタ、第六ニハ內政、是ニハ先ヅ思想問題、
  今日人心ガ荒怠シテ居ル、此ノ荒怠シテ居ルト云フコトニ付テノ原因ハ何デ
  アル、竝ニ之ニ對スル政策ハ如何ニスベキデアル、〓育ハ如何ニスベキデア
  ル等ノ問題ガ起ッタノデアリマス、又水平社其他ノ問題ニ付テモ色〓誤解ノ
  ナイヤウニシタイト云フコトニ付テ質問應答ガアリマシタ、第七ニハ此農村
  振興、農林省等ニ付テ質問應答ガアッタ、農村ハ今日漸次疲弊シツヽアル、小
  作竝ニ地主問題モ起ッテ居ルシ、又地方ノ若イ者ハ兔角、大都會へ集中セムト
  スル傾向ガアル、是等ノ原因ニ付テ研究ヲシテ、而シテ此農村ノ振興ヲ圖ラ
  ナケレバナラヌト云フ所ノ質問應答ガアッタノデアリマス、第八ニハ文政、是
  モ相當ニ澤山ノ質問應答ガアリマシタ、例ヘバ高等師範ノ附屬トシテアル中
  學校ニ七年制ノモノヲ置イタラドウデアラウトカ、靑少年訓練ニ對シテハ陸
  軍ダケノ問題デハナイ、文政ニ於テモ大ニ考慮シナケレバナラヌト云フヤウ
  ナ質問應答ガアッタ、大學ノ監督デアルトカ、或ハ師範大學ノコトデアルト
  カ云フヤウナコトニ付キマシテ質問應答ガアリマシタ、又第九ニハ鐵道、第
  十ニハ外交、海外植民ニ付テノ色〓ノ質問應答モアリマシタ、例ヘバ日露國
  交ガ恢復シタノデアルガ、西比利亞ヘ果シテ日本人ガ自由ニ渡航シテ、自由
  ニ產業ヲ營ムコトガ出來ルカドウカト云フヤウナ疑點ニ付テモ、質問應答ガ
  アッタノデアリマス、其外ニ質問モアリマシタガ、今日會期切迫ノ際デモア
  リマスルカラシテ、是等ノ質問應答ノ情況ハ悉ク之ヲ速記ニ讓シテ置キマス、
  要スルニ三月九日ニ豫算諸案ハ各分科ニ付託イタスコトニナッタ次第デアリ
  Wv.8三月二十日竝ニ昨日ニ亙リマシテ、各分科ノ報告ヲ煩ハシタ次第デア
  リマス、而シテ昨二十三日午後七時半頃ニ委員會ヲ開會イタシマシタ、コ
  デ先ヅ第三、第六分科ノ報告ヲ終ハリマシテ、サウシテ討論ニ這入ッタ次第デ
  アリマス、デ、今囘ノ豫算審查ノ重要問題ガ二ツアリマスルガ、ソレハ第三
  分科ニ屬スル師範〓育問題、第六分科ニ屬スル鐵道問題デアリマス、審查期
  限ノ延長サレマシタノモ、結局、此重大ナル問題ノ爲デアリマスルカラ、少シ
  ク此際御〓聽ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、先ヅ第三分科ノ師範〓育問
  題ヨリ御話ヲ致シマス、デ、是ハ政府原案ニ依リマスルト云フト、第一部ニ
  百六十九學級、第二部ニ五十六學級、專攻科ニ二百一學級ヲ增加スルノデア
  リマス、結局、總計四百二十六學級ヲ增加スルノデアリマス、デ元來、小學校
  ニ於キマシテ高等小學三年ヲ置イテ居ル所ノモノハ極メテ少イノデアル又
  高等小學校ノ第二學年ヲ卒業シテ而シテ師範學校ニ入ル者ニシマシテモ、
  年ノ準備ヲシテ入學シナクレバナラヌト云フ不便ガアル、故ニコヽニ其橋渡
  シヲシナケレバナラヌ、從テ下ニ一箇年ヲ加ヘルト云フコトニ相成ルノデア
  リマス、二部卽チ中等學校ヲ卒業シテ一箇年ノ間修業ヲシテ小學校ノ〓員ニ
  ナルト云フ途ノ方面、此第二部ト云フモノニ加フルニ五十六學級、而シテ目下
  必要ナル〓員ノ供給ニ便ナラシメヤウトシタノデアリマス、御承知ノ如ク是
  ハ農村ノ產業振興、師範〓育改善ノ法律案ニモアリマシタ······基金ノ法律案
  ニモアリマシタ通リニ、貨幣ノ鑄造益金ノ中ノ一億三千萬圓ヲ基金ト致シマ
  テ、此基金ノ五分ノ利子六百五十萬圓ノ中デ、四百萬圓ヲ師範〓育ニ支出ス
  ル、斯ウ云フコトニ相成ッテ居リマス、此計畫ニ依ルト大正十四年度竝ニ十
  五年度ニ於テ之ヲ完成シマシテ、十六年度以降ニ於テハ此四百萬圓ハ年々經
  常費ニ使ヒ得ルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、而シテ大正十六年
  完成ノ曉ニ於テハ、本科正〓員ハ約二千人ヅツモ出ルコトニナル次第デアリ
  やくろ、然ルニ第三分科ニ於キマシテハ、是ノ修正案ガ出タ次第デアリマス、
  デ、其修正案ヲ申シマスルト云フト、師範〓育費補助、經常部第五款、第三項四
  百萬圓、之ヲ三百二萬九千三百圓ニ修正シ、其結果、第五款、普通〓育費四千
  六百三十三萬三千七十八圓ヲ、四千五百三十六萬一一千三百七十八圓ニ、文部省
  所管合計八千七十二萬二千三百三十八圓ヲ七千九百七十五萬一千六百三十八
  圓ニ改メルト云フ修正デアリマス、之ヲ說明シマスルト云フト、第二部ニ五十
  六學級ヲ造ッテ、且ツ之ニ寄宿舍ヲ含ムコトニ致シタイ、經常費五十五萬五千
  六百圓、臨時費ガ百八十五萬三千六百圓、計二百四十萬九千二百圓ニ相成リマ
  ス、ソレハ第二部デアリマスガ、專攻科ニ於キマシテハ二百一學級、是ハ一部
  二部共ニ專攻科ハ設クルノデアリマスガ、是ハ原案ノ通リ整理ノ額ヲ積リマ
  シテ、六十二萬百圓デアリマス、全部ヲ以テ三百零二萬九千三百圓ト相成ル次
  第デアリマス、政府ノ原案ハ四百萬圓デアリマスカラシテ、其差ハ卽チ九十七
  萬七百圓ヲ減ズルト云フコトニ相成ル次第デアリマス、デ、本案ノ主義ト致シ
  マシテハ、第一部卽チ小學校ヨリ連絡シテ居ル所ノ第一部ト云フモノト、中學
  卒業ヨリ連絡シテ居ル所ノ第二部、此兩者ノ〓育上ノ優劣ハ論ジナイノデア
  ル、今日〓育上ニ於テ、最モ必要ヲ感ズル所以ノモノハ、〓員ノ補給ニ在ル、
  此〓員ノ補給ガ十分ニ行カナケレバ、軈テ義務〓育ノ延長モ出來ナイノデア
  ル、其故ニ先ヅ〓員ノ補充ヲ本年ノ······今囘ノ豫算ニ於テ重ク見ナケレバナ
  ラヌノデアル、其方ヲ考ヘナケレバナラナイノデアル、ト云フ意味ニ於キマシ
  テ、此修正案ガ出タノデアリマス、政府ハ之ニ對シマシテ不贊成ノ意ヲ表サレ
  テ居リマス、〓育ト云フモノハ、實質ガ貴イノデアル、形式ノミヲ以テ論ズル
  モノデナイノデアル、此原案ヲ作成シマスル上ニ於テハ、政府ハ考慮ニ考慮ヲ
  重ネタノデアリマス、而モ文政審議會ニ於テ十分ニ之ヲ練ッテ貰ッタ案デアッ
  テ、一朝一夕ニ作リ上ゲタモノデナイノデアル、而モ此修正案ヲ見ルト云フ
  ト、二部ニ重キヲ置イテ居ルガ如ク見エルノデアル、文部省ノ原案ニ於キマシ
  テハ、一部ニドコ迄モ重キヲ置クノデアル、是ハ卽チ〓育的訓練ヲ爲ス上ニ於
  テハ必要ナルモノデアルト考ヘル、又天下ノ輿論モ此方面ニ傾イテ居ルト信
  ズルノデアルト云フコトデアリマス、又贊成者ノ意見モ······原案贊成意見ハ
  其通リデ、大體ニ於テ動カナイト思ヒマス、修正案ニ賛成シタ方面ノ意見ヲ申
  シマスルト云フト、是ハ大體ニ於テ、質ノ問題ヲ問ハズシテ、是ハ量ノ問題カ
  ラ來テ居ル、所謂、〓員ノ數ヲ增進スル、斯ウ云フ方面ニ問題ガ來テ居ルノデ
  アリマス、而シテ多數ノ〓員ヲ養成シテ、義務〓育延長其他ノ此政策ニ之ヲ用
  ユルノデアル、斯ウ云フ論者ガ多カッタノデゴザイマス、是ハサウ云フ意味
  ニ於キマシテ、玆ニ兩者ノ說明ヲ致シテ置キマス、ソレカラ此第六分科、鐵
  道問題、是モ亦ナカ〓〓重大ナ問題デアリマス、元來、鐵道ノ方面ニ於キマ
  シテハ、改良ハ益金ニ依ッテ行ッテ行キ、建設ハ公債ニ依ッテ行ッテ行クト云フ
  ノガ、從來ノ因襲的ノコトデアリマシタ、大正十四年度ノ如キハ、初メハ此
  建設ニ九千萬圓ノ公債ヲ募ル豫定デアッタノデアリマス、然ルニ財政行政整
  理ト云フコトヲ內閣ガ標榜スルコトニナッタ爲ニ、一朝ニシテ公債額ハ一千五
  百萬圓トナッテシマッタ、デ、鐵道當局ノ苦心ト云フコトニ付キマシテハ、是ハ
  誠ニ同情ニ値スベキコトデアリマセウ、鐵道省ニ於テハ、此際已ムヲ得ナイカ
  ラシテ建設ノ方ハ打切ラウト考ヘタノデアリマスガ、何分著手中ノ十四年度
  ノ工事請負額ガ三千三百萬圓アリマス、是ハドウシテモヤラナケレバナラ
  ヌ、之ニ責メラレタ結果、是ガ益金ノ方カラ、其差額ヲ補フト云フコトニシ
  タノデアリマス、然ルニ政府與黨三派ニ於テハ、建設ハ是ハ打切ッテハイカ
  ヌト云フ意味デ千三百萬圓增額サシタノデアル、都合合セテ四千六百萬圓ノ
  金額ノ分配法ガ問題ト相成ル次第デアリマス、デ、計畫ガ大分違ッテ來タ爲
  ニ、鐵道省デハ是ガ彌縫策ト致シマシテ、或ハ新線ノ著手年度ヲ繰下ゲ新舊
  線路ノ中カラ、或年度ニ於テハ一般繼續工事ヲ打切リ、甚シキハ二年乃至五
  年間ノ間隔ヲ置イタ中斷ヲシタノデアリマス、デ、新シイ線路ノ二十八線
  ノ中、僅ニ八線ノミヲ工事著手ノ豫算ヲ立テヽ百二十萬圓ト云フモノガ計上
  サレテアル、元來、新線ヲ著手スルト云フコトニ付テノ年度ヲ、自由ニ勝手
  ニ種々ニ按排スルト云フコトヲシタ譯ハ、甚ダ是ハ穩當デナイコトデアルト
  考ヘルノデアリマス、鐵道敷設法第四條ニ明瞭ニ次ノ如キ規定ガアルノデア
  リマス、「豫定鐵道線路ヲ變更シ又ハ豫定鐵道線路中新ニ工事ニ著手スルモ
  ノヲ定ムルトキハ鐵道會議ノ諮詢ヲ經ヘシ」斯ウ云フ規定ガ現存シテ居ルノ
  デアリマス、彼ノ新線二十八線ノ如キ、新敷設法ニ依リマシテ鐵道會議ニ諮詢
  シテ、其著手年度ヲ、是ハ明確ニ定メタモノデアル、然ルニ此新線ノ著手年
  度ヲ鐵道會議ニ付セズシテ、恣ニ變更スルト云フコトハ、是ハ鐵道敷設法第
  四條ノ精神ニ反スルト云フ論ガ出タノデアリマス、デ、新線著手ノ標準ヲ、
  改良費施設ノ標準ト同一視スルト云フコトハ、是ハ國家ノ交通政策ヲ理解シ
  ナイモノデアル、鐵道會議ノアル理由トシテハ、是ハ各政黨ノ黨略ニ超然タ
  ルベキモノデアッテ、鐵道ノ如キモノヲ定ムル際ニハ、衆智ヲ集メテ、サウ
  シテ各般ノ事情ヲ綜合シテ、而シテ後、選擇ヲ誤ラザルヤウニ努メナケレバナ
  ラナイノデアル、決シテ是ガ選擇ニ際シテハ、營業本位デアルト云フヤウナ
  コトハ有ルベキ筈ガナイノデアルト云フ非難ガ第一點デアリマス、第二ニハ
  財政上ノ都合デアルト言ヒマシテ、二年乃至五年間中斷ヲスルト云フコト
  而モ其中斷ヲシタ所ノ中ニ、二ツノ全ク違ッテ居ル所ノ繼續工事ヲ、一繼續
  費トシテ取扱ッタト云フコトハ、是ハ憲法及會計法ノ所謂繼續費ノ定義ニ違ツ
  タモノデアル、之ヲ鐵道省ノミナラズ、大藏省ガ認ムルト云フノハ、誠ニ驚
  キ入ッタ次第デアル、第三ニハ建設費ト改良費トノ權衡ヲ失セルコトデアル、
  建設費ノ方デ申シマスルト云フト大正二十二年度ニ著手スルモノモ計上シ
  テアル、然ルニ之ヲ大正二十年度マデ、其總額ヲ四千六百萬圓ニ限定ヲシテ
  シマッタ、改良費デ申シマスルト云フト、大正十三年度マデニ著手シテ居ル
  モノヲ二十年度限リ打切ッテ居ルト云フコトガアルノデアリマス、少シク先
  キ程申シマシタ敷設法ニ付キマシテノ要旨ヲ、少シク加ヘテ置キタイト思フ
  ノデアリマス、此敷設法第四條ニ付キマシテ、政府ノ說明ガアリマス、此第
  四條ハ、是ハ新ニ工事ニ著手スルモノヲ定メル時ハ、鐵道會議ニ依ルノデア
  ル、今囘ノ線路ハ鐵道會議ノ諮詢ヲ經タモノバカリデアルノデアルカラシ
  テ、卽チ工事ニ著手スベキ線ノ決定ト云フコトガ精神デアルカラ、著手期限
  ヲ二三ニシテモ、決シテ違法デナイト云フ答辯デアリマス、又之ニ對スル所ノ
  反對論ノ最モ主モナル所ヲ申シマスルト云フト、此二十八線著手ノ諮問案ニ
  ハデス、斯ウ云フコトニナッテ居ル、「大正十二年度及大正十三年度ニ著手ス
  ル豫定ノ鐵道線路左ノ如シ」トアッテ、其著手ノ年度、其著手ノ線路ガ、順
  序ヲ逐ウテ諮詢ノ要目トナッテ極マッテ居ルノデアル、大臣ガ之ヲ以テ舊法ノ
  卽チ舊敷設法ノ第一期線ノ繰上ト同樣ニ見テ、各種ノ工事著手期限ハ、鐵道
  大臣ノ自由裁量デアルト云フ風ニ考ヘラレタノハ、是ハ間違デアル、此故ニ
  大臣ハ國家財政ノ情況ニ鑑ミテ、之ヲ數年ヲ期シテ著手シナケレバナラナイ
  コトトナッテ居ルノデアル、ダガ目下此財政ノ情況ニ於テハ、此通リ行カナ
  イノデアルカラ、如何ナル線路カラシテ工事ニ著手シテ宜イノデアルカト云
  フコトヲ鐵道會議ニ付議シナケレバナラナイノデアル、斯ウ云フ意見デアル
  ノデアリマス、又十七年以降ニ於キマシテハ、公債財源ト云ヒ、鐵道益金ナ
  ゾガ、多少餘裕アルヤウニ相成ルノデアル、殊ニ此建設費ヲ限定シテシマウ
  ト云フヤウナコトハ、是ハ甚ダ輕率ナ次第デアッテ、是ガ爲ニ不都合ヲ生ジテ
  來タノデアル、卽チ繼續費中斷トナッテ、玆ニ惡例ヲ殘スコトニナッタノデア
  ル、此點ハ豫算編成上ニ大イニ注意シナケレバナラヌ點デアルカト思フノ
  ニ、其點ニ考慮ガ涉ラナカッタカト云フヤウナコトデアリマス、第二ニハ此
  改良費ニ付テ論戰ガアッタ、是ガ又非常ナル困難ナ問題、建設費ト改良費ト
  ノ關係ガ、ドウモ不健全デアル、從テ今度ノ此豫算計畫ニドウモ不統一ヲ來
  シタヤウニ見エルノデアル、デ、繰下ゲル所ノ既定年割額ガ、初メニ大變少
  ク見積ッテアル、初メノ中ハ極メテ少額ニ計上シテアッテ、段々終ヒニナッテ
  來ルト、迚モ實施スルコトノ出來ナイ巨額ガ見積ッテアル、又二十年度以後
  ノ年割ヲ示スベキモノヲ、二十年度ニ止メテ、中斷シテ居ルモノモアル、斯
  ノ如キ折角ノ整理ト云フコトガ、兔角、不整理不確實トナッタ點ガアル、其外
  此改良費ニ於テノ費目ノ流用ノ弊ハ、從來ニ於テモナカ〓〓アッタノデアル
  ガ、是等ノ點ハ將來ニ及バナイヤウニ、十五年度ノ豫算ノ編成ニ十分ニ考慮
  ヲ加ヘナケレバナラヌモノト信ズルト云フヤウナ意見ガ出マシタ、ソレカラ
  信濃川水力電氣ニ付キマシテ、又困難ナル問題ガ起ッタノデアリマス、デ
  此信濃川ノ水力ハ大正十年來準備費三百七十三萬圓ヲ支出シテ居リマシテ、
  目下新潟縣ニ於キマシテ實施設計ノ承認ヲ得ル手續中デアルト云フコトデア
  ル、デ、是ハ若シ工事ヲ著手シテ居レバ、大正十八年度ニハモウ出來上ッテ
  シマフ、然ルニ政府ハ今年度ニ於テハ之ヲ中斷シテ計上シテ居ラナイ、而モ火
  力發電ノ方ハ二千一百萬圓ト云フ繼續費ヲ以テ、本年度ニ於テ十萬圓ト云フ
  頭ヲ突込ンデ進ミ居ルノデアル、水力ノ方面ニ於テハ折角出來上ガリ掛ッテ
  居ルモノヲ手ヲ著ケナイ、又玆ニ火力ノ發電所ヲ計畫スルト云フヤウナコト
  ヲシテ居ル、之ニ付テ詳細ナル論議ガアッタノデアリマス、新潟縣ニ於キマ
  シテハ鐵道省ノ計畫シテ居ル所ノ水力電氣ノ發電ノ場所ノ上流ニ於テ更ニ此
  信越電力株式會社ト云フモノガ調整池ヲ造ラウト云フコトデ、新潟縣ニ手續
  ヲ······承認ノ手續ヲシテ居ルト云フコトニナッテ居ル、デ、新潟縣ニ於テハ、
  鐵道省ガ果シテ水力ヲヤルノダカ、ヤラナイノダカ分ラナイ、又此株式會社
  ニ調整池ヲ許スコトニナルト云フト、鐵道省ノ方ニ水ガ行カナクナリ、此中
  間ニ立ッテ甚ダ困ッテ居ルト云フヤウナ情況ニアルノダト云フコトモ聞イテ居
  ル、勿論、此火力ト云フモノハ必要ナモノデアル、水力ニ於テ水ガ涸レタ場合
  ニハ火力デ補ハナケレバ、電氣ノ供給ハ出來ナイノデアルカラ、是ハ勿論、必
  要ナルコトデアル、併ナガラ一方、水力ガ十八年度ニ完成スルト云フコトニナ
  レバ六萬「キロ」ノ火力ヲ又更ニ計畫スルニ及バナイ、ダカラシテ此十五年
  度ノ豫算編成ニ當ッテ、水力ト火力ノ關係ヲ適當ニ按排シテ計畫ヲ立テルト
  云フコトガ、玆ニ必要トナッテ來タト云フ論ガ出タノデアリマシテ、是ハ誠
  ニ有力ナル議論デアルト考ヘルノデアリマス、此鐵道ニ關スル所ノ論議ノ大
  體ハ右ニ止メテ置キマス、玆ニ決議ガ出タノデアリマス、デ、鐵道大臣ガ承認
  ヲシタト云フコトデアリマスルカラ、茲ニ朗讀ヲ致シマス
  第一、大正十四年度以降ノ建設計畫ヲ改定スルニ當リ之ヲ鐵道會議ニ付議
  セサリシハ穩當ヲ缺クモノト認ム依テ大正十五年度以降ノ建設ニ付テハ財
  政ノ狀況ニ鑑ミ適切ナル計畫ヲ定メ鐵道會議ニ諮詢シテ次ノ帝國議會ニ提
  出スヘシ
  第二、信濃川水力發電工事ハ速ニ調査ヲ遂ケ急速其完成ヲ計ルヘシ、依テ
  六萬「キロ」ノ火力發電計畫ハ更ニ調査〓究ノ上適當ナル計畫ヲ定メ次ノ
  帝國議會ニ提出スヘシ
  是ガ卽チ提議デアリマス、次ニ討論ニ移リ······質問ヲ終ヘテ討論ニ移リマシ
  タ、討論ニ移リマシテ、其ノ討論ニ付キマシテノ內容ハ最早申上ゲマセヌガ、
  其結果、斯ウ云フ風ニナッタノデアリマス、先ヅ第三分科ノ修正案ニ付テ決
  ヲ採リマシタル所、多數デ以テ此修正案ガ可決ニ相成リマシテ、次ニ他ノ豫算
  案ニ付テ採決シマシタル所、是ハ原案ノ通リ可決ニ相成ッタ次第デアリマス、
  此豫算案ニ付キマシテハ、希望決議ト云フモノガ分科カラ出マシテ、主査ヨ
  リ報〓ガアリマシテ、之ヲ總會ニ於テ可決イタシテ私ヨリ本會議ニ報告スベ
  シト云フモノガ二三アリマス、之ヲ總會ニ於テ諮リマシタル所、全部可決ニ
  相成リマシタノデアリマスカラシテ、之ヲ玆ニ朗讀イタシマス
  豫算委員第一分科會希望決議
  男爵阪谷芳郞君提出
  土地增價稅ヲ地方ニ於テ課セムトスルモノアリ右ハ土地制度上其ノ他重要
  ノ關係アルヲ以テ法律ヲ制定シ其ノ根本ノ規定ヲ設クルノ必要アリト認ム
  ルニ付次期ノ議會ニ政府ヨリ右ニ關スル法律案ヲ提出セラレムコトヲ望ム
  馬場鍈一君提出
  議院建築ノ事業ハ財政ノ容ス限リ其竣工年度ヲ繰上ヶ成ルヘク速ニ之カ完
  成ヲ期セラレムコトヲ望ム
  豫算委員第五分科會希望決議
  男爵〓誠之助君提出
  世界現今ノ趨勢ニ鑑ミ又我國國防ノ充實ニ資セムカ爲メ政府ハ民間航空事
  業ノ助成促進ニ關シ適當ナル施設ヲ整ヘ速ニ之カ實行ヲ期セラレムコトヲ
  希望ス
  行政機關ノ統一ニ關スル件
  道家齊君提出
  從來我國ノ行政機關中ニハ相當ノ統一連絡ヲ缺如セルモノアリテ爲ニ事務
  ノ敏捷能率ノ增進ヲ妨クルコト多ク加之其ノ結果延イテ一般經費ヲ膨脹セ
  シメ居ル點モ尠ナカラサルヲ認ム因テ來年度ヨリ一切ノ因襲的事情ヲ排除
  シ行政機關就中產業行政機關ノ統一連絡ヲ圖ラレムコトヲ望ム
  豫算委員第六分科會希望決議
  佐竹三吾君提出
  私設鐵道ノ發達普及ヲ圖ルハ朝鮮開發ノ爲メ極メテ緊要ナリ而シテ現行法
  ニ依ル補助ノ方法ヲ以テシテハ豫期ノ目的ヲ達スルコト困難ナリト認メラ
  ルヽヲ以テ政府ハ更ニ調査ノ上適切ナル方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
  是ガ希望決議デアリマシテ、總會ヲ通リマシテ唯今······通ッタト云フコトヲ
  唯今御報告イタス次第デアリマス、次ニ大正十四年度追加案ノ諸案ニ付キマ
  シテ討議採決ヲ致シマシタ所、是ハ全部原案ノ通リ可決ニ相成ッタ次第デゴ
  ザイマス、右卽チ大正十四年度ノ豫算案全部竝ニ同年度ノ追加案全部ニ付キ
  マシテノ豫算委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告ニ及ビマシタ
  〔男爵中川良長君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/3

  ---

• 004・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　中川男爵ハドウ云フコトデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/4

  ---

• 005・中川良長

  ○男爵中川良長君　師範〓育修正案ニ付キマシテ委員長ニ質問ヲ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/5

  ---

• 006・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　チヨット御待チヲ願ヒマス、唯今、林豫算委員長ハ
  日程第一ヨリ第八マデ豫算案ノ委員會ノ經過結果ヲ報〓セラレマシタガ、唯
  今問題ト致シマスノハ、日程第一ノ豫算案ノミト御承知ヲ請ヒマス、中川男
  爵今ノハ政府ニ對スル質問デアリマスカ、委員長ニ對スル質問デアリマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/6

  ---

• 007・中川良長

  ○男爵中川良長君　委員長ニ對スル質問デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/7

  ---

• 008・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御申述ベヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/8

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• 009・中川良長

  ○男爵中川良長君　登壇ヲ致シテ宜シウゴザイマスカ····
  〔男爵中川良長君演壇ニ登ル〕
  〔男爵阪谷芳郞君「本員ハ質問通〓ヲ致シタ積リデゴザイマシタガ」
  ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/9

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• 010・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　阪谷男爵ハ御通〓デナイト云フコトニ承知シテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/10

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• 011・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　通〓ノ積リデアリマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/11

  ---

• 012・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　中川男爵ガ濟ミマシテカラ願ヒマセウ、ソレデ宜
  シウゴザイマセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/12

  ---

• 013・中川良長

  ○男爵中川良長君　私ハ唯今、林委員長ノ報告中、師範〓育費中ヨリ九十七
  萬餘圓ヲ削除スルト云フコトニ付キマシテノ說明ニ付キマシテ、マダ十分理
  解ヲ致サナイ點ガゴザリマスルノデ、其論議ノアリマシタル條項ヲバ簡單ニ
  二三點ニ付テ伺ヒタイト思フノデアリマス、此〓育費ハ申ス迄モナク専門該
  博ナル知識ヲ集メタル所ノ文政審議會ノ決議ヲ經テ、而モ國民代表タル所ノ
  衆議院ノ絕對多數ヲ以テ通過セラレタル所ノ案デアルノデアリマス、重大ナ
  ル根本趣旨ニ於キマシテ差違ガアリマスルナラバ、之ニ對シテ削除修正、固ヨ
  リ異論ノナイコトデアラウト考ヘルノデアリマスルガ、根本趣旨ヲ同ジウ致
  シテ置キナガラ、唯改善ノ手段方法ノ上ニ於キマシテノ異論ガアルト云フコ
  トニ於テ、是ガ削除ヲセラレタト云フコトニ付キマシテヤ、我輩ハ甚ダ其枝
  葉末節ノ爭ヒタルコトヲバ慨カナケレバナラヌノデゴザイマス、而シテ是ガ
  結果、政局ニ於ケル所ノ重大ナル影響ヲモ起スニアラズヤト云フコトモ有リ
  得ルコトデアルコトモ想像シナケレバナラヌニ至リマシテヤ、實ニ此削除ト
  云フモノハ愼重、愼重、更ニ考慮、考慮ヲ費シテ、貴族院ノ權威ノ爲ニ、名
  譽ノ爲ニ、重大ナル態度ヲ以テ爲サナケレバナラヌト云フコトヲバ痛切ニ感
  ジマスルノ餘リ、左ノ點ニ付キマシテ委員會ノ情況ヲ伺ヒタイト思フノデゴ
  ザリマス、或ハ委員會ノ詳細ニ付キマシテ、豫算委員長ガ若シ詳シク御承知
  ノナイ點ガゴザイマスルナラバ第三分科ノ主査ヨリ承リマシテモ、其事情サ
  へ明瞭イタシマスレバ本員ハ滿足ヲ致シマスルノデゴザリマス、第一ニ伺ヒ
  タイノハ、此九十七萬餘圓ヲ削除イタシマシタル結果、政局ニ不安ヲ來スト
  云フコトニ付テノ、御論議ガ無カッタノデアルカドウカト云フコトヲ第一ニ
  伺ヒタイ、今日ハ申ス迄モナク、一昨年、加藤內閣ノ時ニ加藤總理病歿サレマ
  シテカラ今日マデ、一トシテ內閣ノ安定シタルコトノナイコトデアルコトハ
  申ス迄モナイノデアリマス、世ハ駸々トシテ進ンデ行ク、此秋ニ方リマシテ、
  内閣ガ玆ニ確定ヲ致シテ、而シテ此國家ノ大策ヲ斷行スルコトデナカッタナ
  ラバ、立憲ノ發達モ國民幸福ノ進展モ妨ゲラレルト云フコトハ、諸君ト共ニ
  痛切ニ憂慮イタサネバナラヌ點デアルノデアリマス、貴族院ガ豫算ニ對シテ
  審議ヲ致シマスルコトハ、衆議院ト憲法上ニ於テモ制度ノ上ニ於テモ對等デ
  アルコトハ申ス迄モナイコトデゴザリマスルガ、此對等デアルガ故ニ之ヲ誤
  マッテ濫用イタシマシタナラバ其結果恐ルベキコトハ言フ迄モナイノデアリ
  やゝろ故ニ衆議院ノ議決ニ於キマシテ重大ナル過失ガアルカ、或ハ重大ナル
  政策ニ對シテ甚シキ失當アル場合ニ於テハ格別、衆議院ノ院議ト云フモノニ
  付テハ、此豫算案ニ於キマシテハ、特ニ重大ナル尊重ノ意思ヲ拂ハネバナ
  ラヌト云フコトハ、是レ貴族院成立ノ當然ノ歸結ト信ズルノデゴザイマス、
  若シ之ヲ誤リマシタナラバ、玆ニ政局ニ大ナル不安ヲ來スト云フ所ノ結果
  トナル、貴族院ニハ解散ノ無イト云フ點ヲモ考慮シナケレバナラヌノデアリ
  マスガ、是等ノ點ニ付テ御考ヘニナッタノデアルカ、是等ノ點ヲ考ヘテ論議
  ガアッタノデアルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアル、第二ニ伺ヒタイノハ、
  貴族院ノ特權濫用ノ結果、如何ナル事態ヲ起スカト云フコトニ付テノ論議ガ
  無カッタノデアルカト云フコトヲ伺ヒタイ、貴族院ニハ解散ガ無イコトハ申
  ス迄モナイノデゴザリマス、解散ノ無イト云フコトハ、貴族院ガ衆議院ノ院
  議ヲ冷靜ニ而モ愼重ニ、時代ノ推移ト社會ノ進運ニ向ッテ權威アル所ノ判斷
  ヲナシテ、玆ニ所謂感情ノ反射一時ノ偏向ト云フコトハ貴族院ニハ絕對ナイ
  モノトシテ、卽チ議員ノ人格ヲ尊重シ、而シテ玆ニ解散ノ規定ヲ置カレテ居
  ラナイト云フコトハ、是レ實ニ貴族院ノ名譽デアリ權威デアルト信ズルノデ
  アリマス、然ルニ此解散ノ無イコトヲバ賴ミニ致シマシテ、茲ニ如何ナル所
  ノ權威ヲモ振ッテ、玆ニ豫算案ニ手ヲ著ケルト云フヤウナコトガアリマシタ
  時ニ、此貴族院ニ向ッテハ何等ノ制裁ガナイノデアル、衆議院ガ如何ニ團結
  シヤウガ、政府ガ如何ナル途ニ進マウガ、國民ガ玆ニ團結シヤウガ、合法的
  ニ於テハ之ヲ如何トモスルコトガ出來ナイト云フコトハ、深ク重大ナル意義
  ガアリ、之ヲ誤テバ玆ニ恐ルベキ所ノ重大ナル結果アルコトヲ常ニ常ニ考ヘ
  ナケレバナラヌト信ジテ居ルノデゴザイマス、凡ソ權力ノアル所ニハ制裁ガ
  アリマス、君主ニ於キマシテモ權力ノ制裁力ノナイ所ニ於テ、橫暴專恣ナル
  コトガアリマシタナラバ、過去ノ歷史ニ於テ是等ノ暴君ハ制裁力ノナイ結果
  ハ國民ハ制裁ヲシテ居ル、國民ガ此暴君ニ當ッテ居ル、制裁ノ結果ハ國家
  ノ紛亂、社會ノ動亂トナッテ現ハレテ居ルコトハ諸君ト共ニ歷史ニ新ナル
  所デアリマス、今ヤ貴族院ガ解散ノナイ所ノ此城ニ立籠ッテ、卽チ茲ニ制裁
  力ノナイ所ノ城ニ立籠リマシテ、玆ニ權力ヲ誤ッテ濫用スルト云フヤウナコ
  トガアリマシタナラバ、合法的ノ制裁ノナイ結果ハ隱忍、隱忍、更ニ隱忍ノ
  結果ハ、國民ガ已ムヲ得ズ、力ヲ以テ之ニ制裁ヲ加ベルト云フコトハ、眞ニ國
  家ノ爲ニ憂フベシデ、又來ル所ノ當然ノ歸結ヂヤナクチヤナラヌト云フコト
  ヲ悲シムノデアリマス、卽チ力ヲ以テスル、暴力ヲ以テ貴族院ガ橫暴ヲヤラ
  レル所ノ若シ結果ガアリト致シマシタナラバ、此國民ガ立ッタル結果ハ動亂
  慘劇、慘劇更ニ大ナル慘劇トシテ社會ノ紛糾ヲ來スト云フコトハ、實ニ今
  日深ク貴族院ニ席ヲ置キマスル所ノ不肖ノ憂ト致シ、更ニ憂ト致シテ已マナ
  イ次第デアルノデアリマス、此秋ニ方リマシテ、此豫算ニ向ッテ九十餘萬圓
  ノ削除ヲスルコトニ付テ、斯カル所ノ特權、橫暴ナル所ノ聲ニ依ッテ社會ノ
  紛糾ヲ來ス虞レモアリト云フヤウナル議論ガアルノデアルカ否ヤト云フコ
  トヲ伺ヒタイ、第三ニ伺ヒタイノハ此削除ヲ致シマシタル結果、國民ノ要望
  スル貴族院改革竝ニ普選ニ及ボス影響ニ付テノ御議論ハ無カッタノデアルカ
  ト云フコトヲ伺ヒタイ、此豫算削除ノ結果ハ當然衆議院トノ協議會ニ向フト
  云フ順序デアラウト信ズルノデゴザイマス、此時ニ衆議院ニ於ケル所ノ態度
  如何ニ依リマシテハ、茲ニ政局ノ紛糾ヲ來シ、大ナル紛亂ノ下ニ行クト云
  フコトモ前々申述ベタル如キ狀態デアル、此九十七萬圓ヲ削除シタ爲ニ、茲
  ニ斯カル紛糾ヲ來シタル結果ハ、多年國民ガ要望、熱望、渴望ノ域ニ達シ
  タル所ノ普選案スラ葬リ去ラレナケレバナラヌノデアル、況ヤ共ニ〓望スル
  所ノ貴族院改革、此輿論高調ノ改革ヲモ玆ニ葬リ去ラナケレバナラヌト云フ
  所ノ結果ガ起ッテ來ルノデアリマス、斯ノ如キ狀態ニ致シマスナラバ、是レ
  九十七萬圓削除ノ結果、國民ノ要望セル貴族院改革、普選斷行ト云フモノハ、
  玆ニ葬リ去ラレルト云フコトハ卽チ貴族院ガ國民ノ要望ヲ阻止シ、國民ニ
  向ッテ戰ヲ宣シ、憲政發達ヲ害シ、社會平和ヲ紊ス所ノ責任ヲ負ハナケレバ
  ナラヌト信ズルノデアリマス、是レ實ニ、是レ豫算案九十七萬圓ノ影響スル
  所ハ實ニ、此國民ノ渴望ト憲政發達ヲ阻礙スル所ノ大ナル結果ヲモ起スニア
  ラズヤト云フコトヲ考ヘマシタナラバ、此貴族院ノ態度ト云フモノハ、此二
  大法案ヲバ完成スル所ノ大精神ニ鑑ミテモ、斯カル末節ニ向ッテハ手ヲ觸レ
  ズシテ、而シテ此國民ノ要望ト手ヲ握ッテ憲政發達ニ向フコトハ、貴族院議
  員トシテ、卽チ制裁力ナキ所ノ域ニ立ッテ居ル所ノ貴族院トシテノ當然ノ職
  務デアル、當然ノ義務デアルト信ズルノデアリマスルガ、若シ是レ一步ヲ誤
  リマスルナラバ、此國民渴望ヲ妨ゲル所ノ力ハ、此貴族院ヲ呪フ所ノ勢トナ
  リ、貴族竝ニ國民トノ階級闘爭ヲ起シ、貴族院ト國民トノ對抗ヲバ······對抗、
  爭ヲ起シテ玆ニ社會ハ一步一步、更ニ一歩、危險ナル狀態ニ立至ルト云フコ
  トハ實ニ火ヲ睹ルヨリモ明カデアル、或ハ目今直チニ起ラズト雖モ、其精神
  ニ刻ム所ノ怨嗟ノ聲ト云フモノハ是レ起ルト······起ルト思ハザル時ニ於テ起
  ルト云フコトガ、社會ノ爲ニ國家安寧ノ秩序ノ上ニ非常ニ慨ハシイ次第ニ感
  ズルノデアリマスルガ、是等ノ點ニ付テ私ハ枝葉末節ニ付キマシテハ修正ヲ
  スル必要ナシ、寧ロ貴族院改革、普選案ニ向ッテハ斷々乎トシテ貴族院ガ要
  望ト手ヲ握ッテ玆ニ國民ヲ相信ジ、國民ヲ信ジ、國民ヲ信ジテ、而シテ玆ニ
  協力同心シテ、此對外重要ナ東洋ニ於ケル我ガ帝國ヲバ〓結ノ中ニ光輝アラ
  シメナケレバナラヌト考ヘテ居ルノデゴザイマスルガ、斯樣ナル點ニ付キマ
  シテ、普選、貴革ニ影響ヲ及ボスト云フコトニ付テ深刻ニ憂ヘラレタル論議
  ナキカト云フコトニ付テ伺ヒタイノデアリマス

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• 014・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　唯今、中川男爵ヨリ名ヲ豫算委員長ニ質問スルト云フコ
  トニ藉ラレテ何カ御抱負ヲ述ベラレタヤウニ感ジマスガ、免ニ角、豫算委員
  長ヘノ御質問ト云フコトデアリマスルカラ一應私ヨリ義務トシテ御答辯ヲ致
  シマス、第一ノ御質問ハ是ハ二ツアッタヤウニ私ハ感ジマスカラ、寧ロ二ツ
  ニ分ケタ方ガ宜カラウト思フ、文政審議會ト云フ權威アルモノガ設置シテアッ
  テ、而モソレヲ經過シテ來タモノヲ豫算委員會ノ第三分科會ガ碌ニ論議モシ
  ナイデ之ヲ修正シタト云フコトハ不都合デハナイカト云フ御質問ガアリマシ
  タ、是ハ私ハ不都合デナイト思フノデアリマス、文政審議會ハ貴族院デハナ
  イノデアリマシテ、文政審議會ニ諮詢シタ結果、如何ト云フコトハ、貴族院
  第三分科トシテ直接ニ關係ハ無イト考ヘルノデアリマス、勿論、文政審議會
  ノ決議ハ重ンズルニ違ヒナイ、而モ之ヲ發案サレタル第三分科ノ一員ハ文政
  審議會ノ議員デアリマス、故ニ文政審議會ニ於テ而モ意見モ述ベラレ、而モ
  之ニ列座シテ居リマシタ所ノ一員ガ提議サレタノデアリマシテ、此點カラ見
  マスレバ文政審議會ヲ經タ所ノモノノ案ガ、突如トシ修正說トナッテ現レタ
  ト云フコトハ私ハ考ヘテ居リマセヌ、第一問中ノ第二ノ質問ハ斯ノ如ク九十
  七萬圓ヲ削除スルト云フヤウナコトヲシタ結果ガ政局ニ不安ヲ來スノ虞レ
  ナキヤト云フ御質問デアリマス、政局ト言ハレタノハ内閣ヲ意味スルノデア
  リマスカ、我ガ日本ノ全體ノ政治ト云フコトヲ意味スルノデアリマスカ、不
  明デアリマスルガ、マア之ヲ內閣ノ不安トデモ考ヘタ方ガ質問者ノ御意思デ
  ナカラウカト思フノデアリマスガ、豫算委員ハ我ガ日本帝國ノ貴族院議員デ
  アッテ、豫算委員トナラレタ所ノ方〓ニ於テハ一人トシテ政局ノ不安ヲ來ス
  ト云フ意味ヲ以テ論議スル方ハナイト私ハ考ヘマス、第二ノ御質問ハ貴族院
  ノ特權濫用ノ結果、如何ナル事態ガ起ルカト云フコトハ考ヘナカッタノデア
  ルカ、又之ニ付テハ論議ハ無カッタノデアルカ······貴族院議員ハ決シテ貴族
  院ノ特權ヲ濫用シテハナラナイシ、又濫用シテ居ル者ハ一人モナイト考ヘテ
  居リマス、從テ如何ナル事態ガ起ルヤ否ヤト云フヤウナコトニ付テ第三分科
  ニ於テ論議サレタコトハナイノデアリマス、第三ノ御質問ハ九十七萬圓削除
  ノ結果、國民ガ要望スル所ノ貴革案竝ニ所謂普選案ニ及ボス所ノ影響ハ如何
  ナルモノデアルカト云フコトヲ考ヘズニヤッタノデアルカト云フ御質問ノヤ
  ウデアリマス、唯〓ハ豫算ノ審議ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、私ガ考フル所
  ニ依レバ、所謂普選案、貴革案ガ上程サレテ居ルノデナイト考ヘマス、又貴
  族院ハ此九十七萬圓ノ削除ノミニ止マラズ、如何ナル法律案、如何ナルモノニ
  向ッテモ公平ニ削除スベキモノハ削除シ、修正スベキモノハ修正スルコソ國
  民ノ輿望ニ副フモノト考ヘルノデアリマス、徒ラニ民論ニ迎合スルコトガ、
  卽チ盲從スルコトガ貴族院ノ體面ヲ維持スル所以デアルトハ、本員ハ少ク
  トモ考ヘナイノデアリマス、恐ラク豫算委員諸君ハ悉ク私ト意見ヲ共ニスル
  コトト考ヘテ居ル次第デアリマス、以上、三問ニ付テ簡單ニ御答ヲ致シテ置
  キマス
  〔男爵中川良長君發言ノ許可ヲ求ム〕
  〔阪本釤之助君「私ハ唯今ノ御答ニ付テ訂正ヲ願ヒタイ、チヨット御
  許シヲ······」ト述フ〕

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• 015・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　今中川男爵ガ質疑ノ續ヲ要求セラレテ居ルヤウデ
  アリマスカラ、中川男爵ノ發言ガ濟ンデカラ願ヒタイ

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• 016・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　其御繼續ニナルニ付テ、唯今ノ御答ハ間違ッテ居リマスカ
  ラ、中川君ガ御尋ネニナルノニ······

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• 017・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　中川男爵ニ御許シヲ致サウト思ヒマシタガ、訂正
  トカ云フ意味ノ御希望ガアルヤウデアリマスカラ、阪本君ニ發言ヲ許シマ
  ス

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• 018・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　唯今、御答辯ニナリマシタ中ニ本員ノ關係ノコトガアリマ
  スカラ一應申上ゲテ置キマスガ、昨日ノ第三分科ノ速記錄ガマダ出來テ居リ
  マセヌデアリマセウガ、若シ出來テ居レバ、ソレヲ御覽下サルノガ一番早道ト
  考ヘマスガ、或ハ出來テ居ラヌカモ知レマセヌカラ、私ハ申述べマス、唯今、
  中川男爵ノ御尋ニナッタヤウナコトハ、私ガ尋ネテ居ル、此十六億ト云フ大豫
  算ニ對シテ僅々九十餘萬圓ノ削減ヲ行ッテ、其結果ハ政局ノ紛騷ヲ來シ、誠
  ニ重大ナル問題デアルノデアルガ、隨分是マデ數億數千圓ノ、見樣ニ依ッテ
  ハ何等カ修正デモ加ヘタ方ガ宜クハナイカト思フノモ、大抵ハ通シテ居ルコ
  トニナッテ居ルノニ、斯ノ如キ問題ニ付テ此大豫算ノ中カラ僅ニ九十餘萬圓
  ヲ削ッテ、唯今丁度中川君ノ憂ヘラレタヤウナ結果ヲ來スト云フコトハ甚
  ダ憂フベキコトデハナイカ、發議者タル鎌田榮吉君ハ之ニ思及ボサレナカッ
  タカ、內ニ省ミテ忸怩タル所ガナイカ、斯樣ナコトヲ御尋ネシタノデアリマ
  ス、所ガソレ等ニ付テハ何等懸念ハセヌト云フヤウナ意味ノ御答ガアッタト
  思ヒマス、是ハ第三分科ノ主査タル野村子爵カラ御報告ニナルノガ或ハ當然
  カモ知レマセヌガ、私カラ一言申上ゲテ置キマスガ、此事ハ主査タル野村子
  爵ハ親シク御聽キニナッタコトハ勿論、其席ニ在ッタ各委員ハ皆御承知ニナッ
  テ居ルコトデアリマスカラ、或ハ主査ノ御報告ガ總會ニ於テハアリマセヌデ
  シタカ存ジマセヌガ、左樣ナ細カイコトデ一々御述べニナルモノデモアリマ
  セヌカラ、或ハ林委員長ハ御承知ナイモノヲ御斷言ニナルノハ如何カト思ヒ
  マイク。全ク有ッタノデアリマス、第三分科會ニ於テ其事ハ私ガ質問イタシテ
  居ルノデアリマス、是ダケ御訂正ト申シマスカ、何ト申シマスカ、取扱ハ然
  ルベク願ヒタイト思ヒマスガ、事實ダケヲ申上ゲテ置キマス

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• 019・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　主査ヨリ答辯サレル前ニ私ヨリ答辯ヲ一應致シテ置キタ
  イト思ヒマス、私ハ豫算委員會ニ於テ斯ノ如ク感ズル、又斯ノ如キ意思デア
  ルト云フコトヲ唯今申述ベタノデアリマシテ、分科會ニ於ケル詳細ナル質問
  ニ至ッテハ、是ハ主査ガ御存ジノ次第デアリマスカラ、私ハ比豫算委員ノ總
  會ノ點ニ付キマシテ責任ヲ有ッテ居ル次第デアリマスカラ、其點ハ、若シサ
  ウ云フコトガ有ッタヤウデアルナラバ、主査ヨリ一ツ御補足ヲ願ヒタイト思
  フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/19

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• 020・野村益三

  ○子爵野村益三君　實ハ唯今、中川男爵ヨリ豫算委員長ノ答辯ヲ求メラレマ
  シテ、尙ホ主査ニ向ッテモ御要求ガアッタノデアリマス、唯今、委員長ガ申サレ
  マシタ如ク、委員長ノ御答ハ主トシテ、豫算委員會ニ於ケル經過ヲ御答ニナ
  ルノガ至當デアッテ、又最モ其當ヲ得タモノト考ヘルノデアリマス、阪本君
  カラ御話ニナリマシタコトハ第三分科デハ實ハ有ッタノデアリマス、先刻ノ
  中川男爵ノ御希望ノ如ク委員長カラ御報告ガアッテ、サウシテ主査タル私ガ之
  ニ向ッテ更ニ御答ヲシヤウト思ッテ居ル刹那デアッタノデアリマス、唯今ノ委
  員長ノ答辯モ私ハ極ク相當ノコトト考ヘルノデアリマス、取敢ズ私ガ補足ヲ
  致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/20

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• 021・中川良長

  ○男爵中川良長君　先刻、林委員長ノ御答辯中ニ······是ハ討論デハゴザイマ
  セヌカラ簡單ニ、私ノ話シタコトヲ誤ッテ御考ヘニナッテ居ル點ガアリマスル
  カラ、ソレヲ申上ゲテ置イタ方ガ便宜デアルカト思ヒマス、文政審議會ニ懸ケ
  タモノヲ、貴族院ニ於テ改革、變革スルノハ惡イヤウニ中川ハ質問ヲシタト
  云フ御話デアリマスルガ、文政審議會ト衆議院トヲ切離シタノニアラズシテ、
  文政審議會ニ於テ可決シタモノヲ衆議院ニ於テ更ニ之ヲ大多數ヲ以テ議シタ
  不可分ノ關係ヲ御話シタノデアリマス、單純ニ文政審議會ニ懸ケタモノヲ貴
  族院議員ニ相談ガアッタナラバ、是ハ御自由ナコトハ私ガ論ズル迄モナイコ
  トデアル、是ハ御論議ヲナサルニ御分ケニナルコトガ甚ダ御便宜デアッタラ
  ウト考ヘマス、左樣ナ單純ナコトヲ不肖ト雖モ議論ノ根據ト致シタノデハア
  リマセヌコトハ、速記錄ヲ更ニ御覽下サレバ愈〓明白ニシマスルガ、是ハ誤ッ
  テ······御聽違ヒト考ヘマシテ、訂正セラレルコトヲ希望シテ置キマス、ソレ
  カラ私ノ質問ニ對シテ······他ノ質問ニ對シテ、委員長ノ御答ヲ求メル點ガアッ
  テ、委員長ノ御答ノミニ於テハ、實ハ貴族院ノ權威ニ關ハルコトト思ヒマシ
  テ、直チニ質問ヲ致サウト致シタノデアリマス、所ガ阪本君ガ御立チニナリ
  マシテ、既ニ貴族院ノ委員會ニ於テモ、此權力濫用ノ結果ノ恐ルベキコト、
  政界不安ヲ來スコトニ付テ憂フルコト、其他深ク其點ニ付キマシテ、十分
  御論議ノアッタト云フコトヲバ明瞭ニ承リマシテ、是デコソ我ガ貴族院ノ權
  威ガ立ッタト云フコトニ於テ、私ハ安心ヲ致シタノデアリマス、左樣ナ議論
  ガアッタニモ拘ラズ、僅カ一票ノ差ニ於テ原案ガ修正セラレタト云フコトハ、
  是レ實ニ返ス〓〓モ殘念ニ思フノデアリマスガ、此本會議ノ情勢ガ、國家ノ
  大局ヨリシテ、修正案ニ反對ノ決ガ採ラレタナラバ、實ニ國民ト共ニ手ヲ握ッ
  ラ喜ブ所ノ次第デアラウト信ズルノデアリマス、是デ私ノ質疑ハ終ハリマス

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• 022・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　阪谷男爵
  〔伯爵林博太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/22

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• 023・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　林伯爵ハ何カ······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/23

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• 024・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　唯今、中川男爵ヨリ訂正ト云フコトノ御註文ガアッタヤウ
  デアリマスカラ、一應辯解イタシタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/24

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• 025・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　今阪谷男爵ヲ御呼ビ申シマシタカラ、阪谷男爵ガ
  濟ミマシテカラ願ヒマス
  〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/25

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• 026・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　本員ノ質問ハ委員長ヘノ質問デゴザイマスケレドモ、或
  ハ第三分科ノ主査カラ御答ヘ下サイマシテモ、ドチラデモ宜シウゴザイマス、
  文部省所管ノ師範〓育費中九十七萬餘圓ヲ削除スルト云フコトニ付キマシテ
  ハ、是ハ申ス迄モナク、極メテ重要ナ問題デゴザイマス、第三分科會ノ模樣
  ヲ見マスト、當局文部大臣ハ絕對ニ反對デアルト云フ一言ヲ殘シテ席ヲ起タ
  レタ、卽チ政府ガ此削除ニハ絕對ニ反對ヲ表シテ居ルノデアリマス、申ス迄モ
  ナク、豫算ノ審議權ニ付キマシテハ、憲法上、餘程政府ニ責任ヲ持タシテアル
  ノデ、議院ノ方カラシテ新ニ發議ヲ致シ、若クハ增額スルト云フコトハ無イ
  コトニナッテ居リマス、是ハ憲法政治ノ弊ト致シマシテ、兔角、議院ガ自分等
  ノ都合ノ好イコトノ爲ニ、政府ニ向ッテ種々ノ費用ヲ要求スル、サウナッテハ
  國政甚ダ紊亂ヲ來スノ虞レガアリマスカラシテ、政府ガ豫算ニ付テハ全然責
  任ヲ持ッテ居ル、ソレ故ニ經費ヲ增サムトスルトキニハ建議案ノ外ハナイノ
  デアリマス、建議案ニ依ッテ政府ニ豫メ希望ヲ述ベルノ外ハナイノデアリマ
  ス、然ルニ此削除セラレタル理由ニ付キマシテハ、聊カ明瞭ナラヌ所ガアル
  ノデアリマス、本員ハ昨日ノ午後三時カラ九時半頃マデ、分科會又豫算委員
  總會ニ力メテ出席イタシテ居リマシタケレドモ、矢張リ分ラヌ、本員ニ分ラ
  ヌノデアリマスカラ、是等ノ席ニ御出ニナラヌ御方ニハ尙ホ分ラヌダラウト
  思フ、故ニ討論ニ入リマス前ニ、如何ナル理由ヲ以テ之ヲ削除シタカト云フ
  コトヲ明瞭ニシテ置カヌト、唯今、中川男爵ノ御質問ノ如クニ、啻ニ貴族院ガ
  國民ノ怨府トナルバカリデハナイ、若シ是ガ豫算不成立トモナリマシタ場合
  ニ·、實業界ニ於テ容易ナラヌ變動ガ來ル、今日ハ爲替ノ相場モ稍〓復復
  ムトシ、金利モ稍〓低下セムトシテ、實業界ガ稍〓安定ノ〓ニ就カムトスル如
  キ情況ノ下ニアル、此際ニ豫算不成立······而モ餘リ重要ナラザル問題ニ付テ
  豫算不成立トナッタ場合ニハ、是ハ國民ノ怨府トナルニ加ヘテ、日本ノ經濟
  上ノ混亂ト云フコトヲ豫期シナケレバナラヌ、ソレ故ニ本員ハ若シ之ヲ貴族
  院ガ削除スルナラバ、其理由ヲ明瞭ニ致シマシテ、國民ニモ宜シク徹底セシ
  メ、衆議院ニハ勿論能ク徹底スルヤウニ致シテ置カナケレバナラヌ、然ルニ
  甚ダ此削除ノ理由ガ明瞭ヲ缺イテ居リマス、第一ニ之ヲ修正セムトスル人
  モ、〓育費ニ金ヲタント使フコトハ毫モ異議ハナイ、望ムラクハ四百萬圓ノ
  利息バカリデナシニ、元金ヲモ使ッテモ宜イ、又一部ト云フコトモ結構デア
  ル、二部ト云フコトモ結構デアルト云フノガ、此削除ヲ主張スル人ノ論ナン
  デス、ソレ故ニ、サウデアッテ見レバ、四百萬圓ヲ何ノ爲ニ削除シタノカト云
  フ理由ガ、甚ダ明瞭ヲ缺クノデアリマス、然ルニ段々豫算委員會トカ、或
  分科會ノ議論ヲ聽イテ見マスト、文部大臣ノ主張セラレルコトハイケナイ、
  デ、新ニ第二部ノ學生ノ爲ニ寄宿舍ヲ造ル費用ヲ是非認メテ貰ヒタイ、斯ウ
  云フヤウナ說明デアリマスカラ、サウシテ見ルト、新ナル要求ヲ議院ガ發議シ
  タヤウニ思ハレルノデアル、新ナル要求ヲ議院ガ發議スルト云フコトハ、豫
  算ノ修正權ニ付テ問題ヲ惹起ス、此豫算ノ修正權ニ付テノ問題ハ、互ニ遠慮
  シテ起サヌ方ガ宜イ、貴族院モ衆議院モ修正權ヲ自分ニ持ッテ居ルト思フ方
  ガ宜イガ、不幸ニシテ問題ガ起ッテ、右トカ左トカニ決スルト云フコトハ、
  ドッチニ取ッテモ兩者ノ爲ニ面白クナイノデスカラ、成ルベク此修正權ニ付テ
  疑ノアル問題ハ遠慮シテ、皆ガソレハ自分ノ方ニ權利アリト、斯ウ思ウテ居
  ル方ガ宜イ、反對ニ決議セラレルト云フト、却テソレガ爲ニ權限ヲ縮小セラ
  レテ、重要ナル場合ニ却テ將來困ルコトガアル、デ、ソレ故ニ若シ此問題ニ
  付テ豫算修正權ノ論議ガ起リマシタ場合ニハ、ドウモ貴族院ノ方ガ甚ダ不利
  ナ地位ニ立ツヤウニ、本員ハ思フノデアリマス、其點ヲ昨晩モ確メタノデア
  リマスケレドモ、第三分科ノ主査ノ御說明ガ、本員ニハ能ク分ラヌカッタ、
  此點ハ第三分科ノ主査カラ能ク御說明ヲ更ニ得テ置キタイ、若クハ委員長カ
  ラ得テ置キタイノラアリマス、又款項ハ唯師範〓育費補助トアリマスノデス
  カラ、其內容ト云フモノハ政府ノ豫定經費要求書ニ依ルノ外ハナイ、豫定經
  費要求書ト云フモノニ付テ彼レ此レ議論ガアレバ、ソレハ唯其議院ノ方ノ希
  望ニ過ギヌノデアリマス、デ、此上カラ九十七萬圓ヲ削リマシテモ、矢張リ
  豫定經費要求書ハ生キテ居ルノデアリマス、若シ豫定經費要求書ガ生キテ居
  ラヌトスルナラバ、議院ノ方デ新ナル豫定經費要求書ヲ作ッタコトニナル、
  ソレハ出來ナイ、ソレ故ニ修正論者ガ彼レ此レ註文ヲシテ、ソコヘ計畫ヲ竝
  ベテ見タ所ガ、ソレハ矢張リ師範〓育費補助ト云フ大イナル款項ノ中ニ含マ
  レテ居ッテ、單ニ參考ニ過ギヌノデアル、況ヤ昨日ノ決議デ見レバ、其修正
  論者ハ簡單ニ口デ述ベラレタダケデアッテ、何モ外ニハ書イタモノモ何ニモ
  配付セラレタ譯デハナイ、能ク聽イタ人モアリ、聽カヌ人モアルト云フノデ
  アリマスカラ、至ッテ此修正ノ趣旨ガ不明瞭ニナッテ來タノデアリマス、如何
  トナレバ四百萬圓カラ九十七萬圓ヲ引キマシテモ、矢張リ政府ハ豫定經費要
  求書ノ目的ニ之ヲ使用スル場合、單ニ金ガ少クナッタト云フダケニナル、ソ
  レヨリモ四百萬圓ヲ使ッテ〓育ノ改善ヲヤッタ方ガ宜イト云フコトニナルノデ
  アリマスカラ、ドウモ意味ガ能ク分ラナイ、若シ四百萬圓ガ多過ギルカラ九
  十七萬減ジタノデアル、或ハ師範〓育費ノ實施ハモウ年度ノ末デアルカラ來
  年度ノ半カラスルガ宜カラウ、ソレニ今四百萬圓ハ要ラヌ、斯ウ云フ譯デ九
  十七萬圓ヲ減ジタト云フノナラバ、誠ニ明瞭デアル、少シモ豫算ノ修正權ニ
  觸レルノデハナイノデアル、今本員ノ尋ネムト欲スル所ハ、今此重大ナル決
  議ヲ爲スニ當ッテハ豫メ知ッテ置カナケレバナラヌ點デアラウト思フ、ソレガ
  甚ダ明瞭デナイ、本員モ昨日問ヒマシタガ御答ガ明瞭デナカッタ、本員ハ修
  正ニ反對シタ、反對シタケレドモ少數デ潰レタ、斯ウ云フ譯デアッテ、或ハ
  又此議場ニ於テ本員ハ反對シナケレバナラヌカト思ヒマス、此本員ノ論ガ明
  瞭ニ答ヘラレルナラバ、モウ問フ必要ハナイカモ知レヌ、反對スル人モ無ク
  ナルカモ知レヌ、或ハ又諸君ニ於テモ修正ト云フモノヲ葬ッテシマフカモ知
  レナイ、ドウゾ今ノ削除ニナリマシタ趣旨ヲ明瞭ニ一ツ御答ヲ願ヒタイ

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• 027・野村益三

  ○子爵野村益三君　私ヨリ御答ヲ致シタイト思ヒマス、阪谷男爵···
  〔「演壇ニ」「登壇登壇」ト呼フ者アリ〕
  簡單デアリマスカラ此席デ······昨晩モ豫算委員會ニ於テ同ジ御質問ガアッタ
  ノデアリマス、主査ガ責任ヲ以テ御答ヲ致シタコトハ是モ先刻仰セラレタ如
  ク、阪谷男爵ノ親シク御聽キニナリマシタ通リデアリマス、而シテ再ビ玆デ私
  ガ責任ヲ以テ御答ヲスルト申セバ、矢張リ昨晩御答へ申シタ範圍ヲ出ヅルコ
  トハ出來マイト思フノデアリマス、其點ニ付キマシテハ私モ多少ノ遺憾ガア
  リマスガ、左樣ニ御諒承ヲ願ヒタイ、尙ホ是ヨリ私ガ申シマスレバ私一個ノ
  意見ニナルノデアリマス、ソレハ主査タル私トシテ避ケルノガ穩當デアラウ、
  斯ウ考ヘマスカラ、尙ホ御質問ノ廉〓ハ修正案ノ提出者ニ御聽キヲ煩ハシタ
  方ガ宜クハナイカト思ヒマス、尙ホ先刻ノ御尋ハ或ハ好意的御尋トモ了解イ
  タシマスガ、御不審ノ廉〓ハ是カラ更ニ贊否兩論者ガ各〓熱誠ヲ以テ論議セ
  ラレヽ其中ニ自ラ了解スル所モアラウカト私ハ思フノデアリマス、左樣ニ御
  了承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/27

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• 028・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　本員ハ能ク分リマセヌガ、答ヲセヌト云フノデハ仕方ガ
  アリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/28

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• 029・山脇玄

  ○山脇玄君　ドウモ私モ一向分リマセヌガ、斯ウ云フ重大問題ヲ議決スルニ
  當リマシテハ、其審査ニ當リタル人ガ、一應其結果ヲ分ルヤウニ御報〓ガナ
  ケレバナラヌ、甚ダ我〓共ハソレガ無ケレバ困ルノデアリマス、ドナタカラ
  デモ宜イ、何ノ爲ニ削ッタト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/29

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• 030・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　御許シガアリマスレバ私ヨリ一應··
  〔「ソレヂヤ演壇ニ」ト呼フ者アリ〕
  〔鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕

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• 031・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　此師範學校改善費ノ修正ヲ提出イタシマシタノハ私デゴザイ
  やじ、而シテ九十七萬七百圓ヲ削除スル中ニ付キマシテ、一部ノ下ヘ一年延
  バスコトヲ之ヲ止メルコトニナリマス、而シテ第二部ノ五十六學級ニ向ッテ
  寄宿舍ヲ建ツルト云フコトニ致シマシタガ、是ガ百八十何萬ト云フモノヲ要
  スルノデ、此事ニ付テ阪谷君ガ御質疑ガアルノデアリマシテ、是ハ寄宿舍ト
  云フコトハ原案ニハ無イノデアル、然ルニソレヲ此修正案ハ行フト云フコト
  ニナレバ、是ハ卽チ發議權ヲ侵スコトニナリハシナイカ、發議ハ政府ノミ之
  ヲ爲シテ、議院ハ之ヲ爲スコトヲ得ナイノデアル、然ルニ政府ノ計畫ニ無イ
  所ノ寄宿舎建設ト云フコトヲ提案スルコトハ、發議權ノ侵害ニナルト云フ疑
  ガアル、故ニ兩院協議會ガ若シ開カルヽヤウナ場合、此點ヲ十分明カニシナ
  ケレバ相成ラヌ、從テ我〓モ贊否ヲ決スル上ニ於テ非常ニ迷フ所ガアル、是
  ハ至極御尤ナ、注意周到ナ阪谷君ノ御質問トシテ、私ハ敬服イタシテ居ル、
  此事ニ付テ私共豫テ研究シテ居リマシテ、決シテサウ云フ憂ハナイ、御懸念
  ニ及バナイト云フコトヲ申上ゲナケレバナラヌ、ソレハ今野村子爵カラ述べ
  ラレタト同ジコトデアリマスケレドモ、尙ホ補足シテ申上ゲマスレバ、是ハ
  師範學校改善費ト云フノハ府縣ニ向ッテ補助ヲスルノデアル、而シテ其計畫
  ハ府縣ガ爲スノデアル、府縣ニ向ッテ補助ヲ與ヘルニ當ッテ如何ナル目安ニ依ツ
  テ之ヲ與ヘルカ、又如何ナル方面ニ向ッテ改善策ヲ行フカト云ヘバ、卽チ寄
  宿舍ノ建設モ其一ツデアラネバナラヌト云フコトヲ、此修正案ハ意味スルノ
  デアリマスカラシテ、文部省ガ直接ニ此金ヲ以テ寄宿舍ヲ建テ、此金ヲ以テ
  〓室ヲ建テルト云フノデハナイノデアリマス、全ク府縣ニ向ッテ補助ヲ與ヘ
  ル、其補助ノ目安、詰リ補助スベキ項目ト云フモノニ、是非寄宿舍ト云フモ
  ノヲ建テルト云フコトヲ意味シテ居ル譯デアリマス、ソレガ何等發議權ト云
  フモノヲ侵スト云フコトニナラヌト云フコトヲ確信スル次第デアリマス、是
  ダケノコトヲ御答ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/31

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• 032・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通告順ニ依リマシテ討論ヲ許サウト存ジマ
  スガ、十二時ニ相成リマシタカラ休憩ヲ致シマシテ、午後ハ一時三十分ヨリ
  開會イタシマス
  午後零時一分休憩
  불교하는小心事
  午後一時五十一分開會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/32

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• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、通告順ニ依リマシ
  テ討論ヲ許シマス、西久保弘道君
  〔西久保弘道君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/33

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• 034・西久保弘道

  ○西久保弘道君　私ハ修正意見ニ反對シテ、原案ニ贊成スル者デアリマス、
  第一ノ理由ト致シマシテハ豫算ニ付キマシテ衆議院ハ先議權ヲ有シテ居ルノ
  デアリマス、貴族院ガ其決議ニ對シテ修正ヲ加ヘルト云フコトハ、容易ナ場
  合ニ爲スベキ事デハナイ、餘程重大ナ事デナケレバ爲スコトハ出來ナイノデ
  アル、或程度マデハ此衆議院ノ決議ト云フコトヲ尊重セナケレバナラナイモ
  ノデアル、是ハ何人デモデス、異議ノナイモノダラウト思フノデス、デ、ド
  ウ云フ風ニ、然ラバ我ガ貴族院ハ衆議院ノ決議ニ對シテ修正ヲスルコトノ出
  來ルカト云フノニ、ソレハ貴族院ノ使命ヲ果ス爲ニ、所謂二院制度ノ妙味ヲ
  發揮スル場合ニノミ限ルモノダラウト私ハ思フノデス、唯私ガ思フノミナラ
  ズ是ガ一點ノ疑ヒナイ所ダラウト私ハ思フノデアリマス、ドウ云フ場合デア
  ルカト云ヘバ、衆議院ガ勢ヒニ驅ラレ、我儘ヲシ、多數ニ乘ジテ跋扈ヲスル、
  サウ云フ場合ニ豫算ノ上ニ其橫暴我儘ノ結果ガ現ハレタ時分ニ、其我儘ヲ制
  止シ、橫暴ヲ抑ヘル爲ニ、我ガ貴族院ハ斷乎トシテデス、國家ノ爲ニ斯ノ如
  キモノハ削除ヲシ、又ハ修正ヲスルト云フコトガ本當ノコトダラウト私ハ思
  フノデス、ソレ以外ニ濫ニ此修正權ヲ我ガ貴族院ハ弄ブコトハ出來ヌコトダ
  ラウト私ハ思フノデス、デ、今問題ニナッテ居リマスル所ノモノハ何デアル
  カト云フノニ、師範〓育ノ改善、此內容ニ付テハ後トデ〓育家ノ人〓ガ十分
  之ニ付テ意見ヲ述ベラレル筈デアリマスカラ、私ハ內容ニハ觸レマセヌ、併
  ナガラ是ハ先刻カラ度〓話ニ上ボッテ居リマスガ、文政審議會ニ懸ケラレテ
  殆ド滿場一致ノ意見ヲ採用サレ、サウシテ是ハデス、啻ニ文政審議會ノミナ
  ラズ、〓育家ハ一般ニ之ヲ認メテ居ル、文部省ノ屬僚モ之ヲ認メテ居ル、何
  モ文部大臣ガ洋行歸リデ、何カ何處カ外國ニアルカラ、新規ナコトデアルカ
  ラト云ウテ、獨得ニ大臣ガ之ヲ計上シタモノヂヤナイノデアル、謂ハヾ平凡
  ナル案デアル、何モ珍ラシイ問題デモ何ンデモナイ、デ、鎌田君ハ大變之ニ
  色〓ノ意見ヲ言ハレテ、詰リ修正ヲ出サレマシタガ、若シデス、鎌田君ガ今
  日文部大臣デアラレタラバ、同ジク此案ヲ出シテ居ラレテ、之ヲ頻ニ維持サ
  レルダラウト思フ、大シタ問題ヂヤナイ、當リ前ノコトデアル、文部大臣獨
  得ナ案ヂヤナイ、是ハ文部省ノ案ト云ッテモ宜イ、大臣ガ更ッテモ、是ハ變ハ
  ルモノヂヤナイ、サウシテ衆議院ハ之ヲ可決シテ本院ニ送ッタノデアル、何
  等制止スベキノ我儘、抑ヘベキノ橫暴ナント云フモノハ、何等無イノデス、
  平凡ナル〓育ノ案ナンダ、師範〓育ノ改善ヲスルト云フ、實ニ平凡ナル案デア
  ル、我ガ貴族院ハ何ヲ苦シンデデス、斯ノ如キモノニ對シテ一體修正ヲスル
  ンデアルカ、一體自分ノ本分ヲ辨ヘザルコトデアラウト、私ハ思フノデス、
  今日、貴族院改革ト云フモノガ非常ニ世間ノ問題ニナッテ居リマス、斯ノ如キ
  要ラザル事ニ······要ラザル事ニ手ヲ著ケルト云フヤウナコトハデス、貴族院
  ヲ改革セネバナラヌト云フコトニ對シテ、地球大ノ印ヲ捺シテ裏書キスルニ
  アラズシテ何ゾヤ
  〔〔ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕
  第二ニハ、此修正ニ付テノ前後ノ經緯ガ私ハ甚ダ氣ニ入ラナイ、單純ナル修
  正デハナイノデアル、少シ御迷惑ナガラ三分科ノ委員會ノ經過ニ付テ少シ御
  話ヲシタイト思フノデアリマス、私ハ三分科、卽チ〓育ノ含マレテ居ル分科ノ
  委員ノ一人デアリマスガ、分科會ニ移サレテカラ、質問應答ガ終ハリマシテ、
  愈〓決議ト云フ段取リニナリマシテ、一向、會ヲ開カレナイ、イツ會ヲ開カレ
  ルカ、一ツモ分ラナイ、其間ニ審査期限ノ延長ガ三囘モ續キマシタ、偶ニハ
  イツ會ヲ開クト云フコトガアリマシタガ、私ハ鴻ノ臺カラ馳セ參ジテ參リマ
  スト、イツモ流會、甚ダドウモ不審デモアリ、不愉快デモアッタノデアル、
  何ノ爲ニ斯ウ云フ風ニ一向、會ヲ······分科會ヲ開カレナイカ、又開イテモ是ガ
  人ガ集マラナイ、集マラヌガ、或ハ集マッテモデス、ドウモ是ハ延バサニヤナ
  ラヌト云フヤウナコトデ、一向ドウ云フコトカ、我〓ニハチヨットモ分ラヌ、殊
  ニ少數黨ノ······少數會員ノ陣笠デアル我〓ガ何ニモ一ツモ分ラナイ、五里霧
  中ニ徘徊シテ居ル、サウシテ漸ク······時日ガ澤山アリマシタガ、漸ク昨日ニ至
  リマシテ、午前十時ニ開クト云フコトニナッテ居ル、十時ニ行ッテ見テモ誰モ居
  ナイ、揭示場ヲ見マスト云フト、午後一時ト云フコトデアル、午後一時ニ行ッ
  テ見ルト、一人カ二人シカ居ナイ、ドウシタコトカト思ッテ揭示場ヲ見ルト、午
  後三時ト云フコトデス、三時ニ行ッテモ、マグ開カレナイ、四時半過ギニ漸ク
  開カレタ、デ、斯ウ云フ風ノ實ハ有樣デアッタ、ソレデモデス、我〓ハ免ニ角、
  風ノ便リニ聞ケバ······多數黨ノ······多數會派ノ人ト政府トノ間ニ一種ノ相談
  ガアルト云フコトデアリマスルカラ、私ナド不愉快デハアリマシタケレドモ、
  一面デス、今日普選問題モアル、貴革ノ問題モアル、重大問題ヲ控ヘテ居ル今
  日ニ、僅ナコトデ政府ト我ガ貴族院ト衝突スルト云フコトモ面白クナイ、出來
  ルナラバ相談ガ纒レバ此上ナイト云フコトデ、一面ハ不愉快デモアリナガラ、
  一面ハ又一縷ノ望ヲ屬シテ我慢ヲシテ居ッタノデス、所ガ驚イタノニハ、愈〓會
  ヲ開キマス、私ナドガ承ッテ居ル所ニ依リマスト、相談ガ大變ニウマク纒ッテ、
  主義······師範〓育ニ對スル主義計畫ハ政府ノ······政府ノ考へ通リデアル、唯、
  金ヲ百萬圓ニ足ラヌ所ヲ削ルト云ウテ政府モ同意シタト云フコトヲ聞イテ、
  是ナラマア宜カラウト思ッテ、我〓同志ノ者ハモウ質問ナドモ止メヤウ、意
  見モ言フマイ、大問題ノ前ノ小問題デアルカラ我慢シテ、一瀉千里デ通過サ
  セヤウト言ウテ相談ヲシテ置イタ、所ガ愈〓會ヲ開イタ所ガ、委員ノ一人ノ
  鎌田君カラ修正意見ガ出マシタ、其意見ハデス、政府ノ師範〓育ニ於ケル···
  ···師範改善ニ於ケル所ノ主義計畫ヲ是認スルヂヤナクテ、ソレヲ打壞ハスト
  云フヤウナ內容ノコトヲ言ハレタノデ、ソレデ如何ニモ我〓ハ不思議デアル、
  我〓ハ今マデ我慢ニ我慢ヲシテ、或時ハ斯ウ云フコトガアリマシタ、私ハ待ツ
  テ居ッテモ誰モ來ナイカラ實ニ人ヲオモチャニシテ居ルト云ッテ私ハ憤慨シマ
  シタラ、同僚ノ一人曰ク、イヤ、オモチャニナラマダ宜イガ、我〓ヲ何ト云
  フカ······オモチャナラマダ宜イガ、マルデ認メナイ、無視シテ居ル、我〓ノ、
  サウダ、存在ヲ認メナイ······オモチャニサレテモ、存在ヲ認メラレヌデモ、
  我慢シテ、ウマク行クナラバ、ソレデモ宜イト思ッテ我慢シタノニ、鎌田君
  ノ修正意見ヲ聽イテ實ニ驚イタ、ソレデ同僚ノ田所君カラ文部大臣ニ質問シ
  タノデス、アレデ宜シイノデスカ、政府ノ主義計畫ヲ認メナイヤウナ修正ノ
  案デ、アレデ宜イカ、サウシタラ文部大臣ハ此所ニ居ラレマスガ、イヤ實ニ意
  外デアル、斯ノ如キコトヲ聞カウト思ハナカッタ、ソレデ實ハ我〓同志ノ
  者ハデス、質問ヲ出來ルダケシテ、····分ラヌカラセザルヲ得ナイ、意見モ
  述べ、ソレデ實ハ昨晩アンナニ遲クマデ皆サンニ御迷惑ヲ掛ケタノデアリマ
  ス、併シサウナラザルヲ得ナイノデアリマス、ソレデ私ハ或派ノ人ハ政府ト
  ·····我〓ハオモチャニサレ、存在ヲ認メラレヌ程度ニサレテ居リナガラ、政
  府ト或派ノ人ト妥協シテ、政府ト相談ヲシテ妥協點ヲ見出シタト云フノニ、
  ソコノ席ニ來テ文部大臣ハ、更ニ意外ダト言ハレタ、サウスルト是ハドウ云
  フコトデスカ、一體、噓僞リヲ或派ノ人ガ我〓ヲオモチャニシ、存在ヲ認メナ
  イ程度ニ數十日間、政府ト交渉シテ居リナガラ、其交涉ノ結果ペテンニ掛ケ
  ルカ、裏切リヲシタト云フヤウナコトト云フモノハ、一體ドウ云フモノデア
  ルカ、或派ノ不義不信ハ決シテ或派ノ不義不信ヂャナイ、貴族院ノ詰リ不義
  不信トナルノデアル、デ我〓ハオモチャニサレテモ、存在ヲ認メラレヌデ
  モ、尙ホ忍ンデ居リマス、ケレドモ我ガ貴族院ガ天下カラ、世間カラ貴族院ガ
  不義不信ノモノダト言ハレタラ、我〓ハ斷ジテ忍ブコトハ出來ヌノデアル、
  此修正ハ、サウ云フ不義不信ノ經緯ノ間ニ此修正ハ成立ッタノデアル、此點
  ニ於テハ私ハ斷ジテ斯ノ如キ修正ニ應ズルコトハ出來ナイ···
  〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕
  併ナガラ若シアノ修正ガサウ云フ譯デハナイ、實ハ自分ノ希望ヲ言ウタノデ
  アル、或範圍內デ政府ノ主義政策ハ······主義計畫ハヤッテモ宜イノダト云フ
  御考ナラ、私ハ今日ノ大問題ヲ控ヘテ居ル政府カラ云ウテモ、貴族院カラ云
  ウテモ、斯ノ如キ、チッポケナ問題ニ沒頭スル場合デハナイ、ソレハ私ハ雙手ヲ
  擧ゲテ、若シソレナラ贊成スルコトヲ私ハ辭セナイ一人デアルノデス、以上
  ノ理由ヲ以テ私ハ修正說ニ反對ヲ致ス考デアリマス
  〔澤柳政太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/34

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• 035・澤柳政太郎

  ○澤柳政太郞君　本員ハ修正意見ニ贊成ノ意見ヲ陳述イタシタイト思フノデ
  アリマス、一旦、衆議院ニ於テ可決シタル所ノモノニ對シテ、貴族院トシテ十
  分ニ尊重ヲ致サナケレバナラヌコトハ、他ノ法律ニ於テモ同樣ナコトデアル
  ノデアリマス、殊ニ豫算ニ對シマシテハ唯今、西久保君ノ仰セラレタ如ク、貴
  族院ニ於テハ非常ナル場合ニ於テノ外、之ニ向ッテ修正ヲ加フルコトノ無カル
  ベキ點ニ於テハ、全然、西久保君ト私ハ同感デアルノデアリマス、憲法正條ノ
  下ニ於テ衆議院ハ豫算ニ對シテ先議權ヲ有ッテ居ルバカリデアリマスルケレ
  ドモ、私ハ其正條ニ拘泥シマシテ、貴族院ハ豫算ニ對シテ衆議院ト唯、先議權
  一點ヲ除イテノミ同樣ノ權能ヲ有ッテ居ルトハ、實質上ニ於テ私ハ信ジナイノ
  デアリマス、從テ斯ノ如キコトハ曾テ申シテ居ル所デモアルノデアリマス、今
  此豫算ノ修正案ニ贊成セムトスル、其當時ニ於テモ此意見ヲ變ヘル者デハナ
  イノデアリマス、將來ニ向ッテモ、唯今申上ゲル所ノ意見ヲ變更セムトスル者
  デハ決シテナイノデアリマス、併ナガラ不幸ニシテ玆ニ一旦衆議院ニ於テ可
  決シタル所ノモノニ對シテモ、我〓貴族院トシテ相當ノ修正ヲ爲スノ已ムヲ
  得ザル機會ニ到達シタコトハ、甚ダ遺憾ニ思フ次第デアルノデアリマス、元
  來、何故ニ斯ノ如キ問題ニ到達シタノデアルカ、私ハ單ニ之ヲ豫算ノ問題トノ
  ミ見ルコトハ出來ナイト思フノデアリマス、近年〓育ニ關シマシテハ、當院
  ニ於テハ勿論、又衆議院ニ於テモ非常ニ論議ガ多クナッテ參ッタノデアリマス、
  併ナガラ議會トシテ〓育ニ關シマシタナラバ、如何ナル機會ニ於テ其意思ヲ
  陳述スルコトガ出來ルノデアリマセウ、此豫算ニ關スル機會ノ外ニ於テハ、
  多クハ建議ノ······建議案ノ形ニ於テノミ、〓育ニ關シテ議スル機會ヲ我〓ハ
  持ッテ居ルノニ過ギナイノデアリマス、ソレ故ニ衆議院ニ於テ、本年度ノ如
  キ、〓育ニ關スル所ノ建議案ガ實ニ數フルコトノ出來ヌ程ニナッテ居ルノデア
  リマス、ソレハ何故デアルカ、〓育ニ關シテ當然、此議會ノ審議ニ委セラレベ
  キモノハ從來ノ慣例ニ於テ、立前ト申シマセウカ、極メテ僅カナル場合ニ限
  ラレテ居ルノデアリマス、而モ其〓育ニ關スル所ノモノト申シテモ、多クハ此
  經營ニ關シタ法律案ガ玆ニ現ハレテ來ルノニ過ギナイノデアリマス、〓育ノ
  根本主義ヲ定ムル所ノ法規ニ於テ、卽チ大學令ト云ヒ、中學校令ト云ヒ、小學
  校令ト云ヒ、悉ク命令ヲ以テ規定サレテ居リマシテ法律ノ規定ニハ依ラナイ
  ノデアリマス、苟モ議會ヲ開イテ國民ト共ニ國政ヲ審議スル國ニ於キマシテ、
  此〓育上ノ根本主義、精神ガ命令ニ依ッテ規定セラレテ、法律ニ依ッテ規定
  セラレナイ國ガドコニアリマスカ、私ハ一モ無イト申シタイト思フノデアリ
  マン、ソレ故ニ明治二十三年ニ議會ガ開カレル際ニ於テ、文部省トシテハ此
  將ニ開カレムトスル議會ニ對シテ不安ヲ感ジマシテ、若シ他ノ外國ニ於ケル
  ガ如ク、〓育ニ關スルコトガ法律ヲ以テ規定セラルヽト云フコトデアッタ
  ナラバ、如何ナル憂慮スベキ結果ヲ生ズルカモ知レヌト云フコトデ、當時
  又民間ニ於テモ、議會ガ開カレタ以上ハ、〓育ノ根本法規ハ法律ヲ以テ
  規定スベシト云フ議ガアッタノデアリマスルカラ、文部省トシテハ當時勿論、
  〓育ノ爲ニ考ヘタノデアリマスルシ、或ハ當時ニ於テハ命令ヲ以テスル必要
  ガアッタカモ知レマセヌケレドモ、頻ニ此議會ガ〓育ニ關シテ容喙スルト申
  シマスルカ、ソレヲ審議スルコトニ關シテ豫防線ヲ張ッタコトガ有ルノデア
  リマス、當時私ハ大學ヲ出マシテ、文部省ノ小役人ト致シマシテ、サウ云フ
  ヤウナコトニ關シテ、命ヲ受ケテ色〓ノ調査モシ、又書キ物モ致シタコトモ
  有ルノデアリマス、然ルニ不思議ナコトニ、サウ云フヤウナ議論ハ議會開會ノ
  後、二三年ノ間ハ有ッタノデアリマスルケレドモ、其後ハ習ヒ性ト爲ッタト申
  シマセウカ、今日ニ於テハ別ニ其議論モ出デナイノデアリマス、私ハ二十三
  年ノ當時ニ於テハ、或ハ命令ヲ以テ規定スルノ必要ガアッタカト感ズルノデ
  アリマスルケレドモ、今日ニ於テ〓育ニ關スル重ナル事柄ハ、法律ヲ以テ規
  定スベキモノデハナイカ、サウ云フヤウナ議論ガ行ハレナケレバナラヌデア
  ラウト云フコトヲ、此數年來感ジテ居ルノデアリマス、政府ニ於テモ〓育ノ
  コトハ大切ナルガ故ニ、〓育ニ關スル所ノ勅令ハ總テ樞密院ニ御諮詢ニナル
  コトニナッテ居ルノデアリマス、斯ノ如ク鄭重ニ審議セラレルコトハ、最モ
  必要ナルコトデアリマスルケレドモ、〓育ノコトハ、國民ノ全體ノ實際生活
  ニ關係イタシテ居ルコトデアリマシテ、如何ナルモノモ、直接間接ニ〓育ニ
  關係ヲ有セザルモノハ無イノデアリマスルカラ、此〓育ノコトハ樞密院ニ諮
  問サレルハ、勿論ト致シマシテモ、議會ニ於テモ、之ヲ審議シ、決議スルコ
  トニナラナケレバナラヌコトデアラウト考ヘル次第デアルノデアリマス、ソ
  レ故ニ私ハ其見地ヨリシテ、此兩三年來、衆議院ノ諸君ニモ、其意見ヲ陳述イ
  タシテ居ルノデアリマス、一昨年ノ暮ト思ヒマシタケレドモ憲政會ノ、此
  間亡クナラレタ關和知君カラ、何カ一ツ論文ヲ、「憲政」ナル、憲政會ノ機關
  雜誌ニ投書シロト云フコトヲ求メラレマシタノデ、私ハ其問題ヲ述べマシ
  テ、「憲政」ニ投書ヲ致シタコトガアル、幸ニ其コトハ、沒書ニナラズシテ、
  憲政會ノ機關雜誌、「憲政」ニ載セラレテアルノデアリマスガ、私ノ申ス所甚
  ダ微力ナル爲デアリマスカ、一年有餘ヲ經タ今日、餘リ反響ノナイノヲ遺憾
  トシテ居ルノデアリマス、免ニ角、現狀ニ於テハ〓育論ハ、兩院ニ於テ盛ニ
  議セラレルニ拘ラズ、之ヲ議スベキ適當ノ機會ヲ得ナイト云フ、實際ノ情況
  ニアルノデアリマス、唯今、問題トナッテ居リマスル所ノ豫算ニ、文部省所
  管ノ豫算ニ於ケル所ノ師範〓育費ニ關スル所ノ修正ノ如キモ、ソレ故ニ寧ロ
  豫算問題、來年度ニ於ケル歲入歲出ノ計算上ノ問題ト申スヨリハ、寧ロ其根
  柢ハ〓育論ニアルコトト思フノデアリマス、抑〓我國ノ〓育ト云フモノハ、
  近年大イナル進步發達ヲ遂ゲテ居ルノデアリマスルガ、不思議ニモ〓育ノ根
  柢ヲ爲スト常ニ稱ヘラレテ居ル所ノ師範〓育ニ付キマシテハ、數十年ノ間、
  殆ド何等ノ修正改革ヲ見ズシテ、今日ニ至ッテ居ルノデアリマス、師範〓育
  ノ基礎ハ、是ハ明治十八年、森文部大臣ノ時ニ其基礎ガ置カレテ以來、今日
  マデ殆ド何等目立ッタ改正ガナイト申シテ宜イト思フノデアリマス、數年前
  ニ師範〓育ノ中ノ、上級ノ、一般高等師範學校ニ關シマシテハ、昇格問題ナ
  ルモノガ起リマシテ、ソコニ一段ノ進步ヲ劃シテ居ルカト思フノデアリマス
  ルガ、今日問題トナッテ居リマスル所ノ府縣ノ師範學校ニ關シマシテハ、明
  治十八年森文部大臣ノ基礎ヲ置カレテ以來、今日マデ殆ド何等ノ改良ヲ見ズ
  シテ玆ニ至ッテ居ルト申シテ宜シイノデアリマス、其間ニ於テ小學〓育ハ非
  常ニ發達ヲナシテ居ルノデアリマス、當時ハ簡易小學ナルモノガアリマシ
  テ、僅カ一年六箇月ヲ以テシテ、尙ホ其當時ニ於ケル義務〓育ヲ終ハッタト認
  メラレタノデアリマス、小學校ノ多クハ三年若クハ四年ノ尋常小學校デアッ
  タノデアリマス、高等小學校ノ如キニ至ッテハ、實ニ寥々タルモノデアリマ
  シテ、殆ド一郡ニ一校ヲ設クル位ノコトデアッタノデアリマス、然ルニ三十
  二年ニハ簡易小學ハ無クナリ、尋常小學ナルモノハ悉ク四年ニナリマシテ、三
  年ノ小學校モ無クナッテシマッタノデアリマス、又其當時ニ於テハ高等小學ナ
  ルモノガ所在ニ勃興ヲ致シマシテ、中〓多數ニナッタノデアリマス、更ニ四
  十一年ニ至リマシテハ、義務年限ガ延長セラレテ六年ニナリ、又高等小學、
  卽チ最初ヨリ數ヘマスレバ第七年、第八年ニ當ル所ノ、其〓育ト云フモノガ
  所在ニ非常ニ盛ニナッテ參ッタノデアリマス、今日ハ義務〓育ヲ延長セズト雖
  モ、六年ノ尋常小學校ヲ卒業イタシマシタ者ハ、六七割ハ此高等小學校ヘ進
  入スルヤウナ工合ニ、小學ノ上級ノ學級ト云フモノハ、斯ノ如ク增加シテ參
  ッテ來タノデアリマス、ソレニ拘ラズ師範〓育ナルモノハ、明治十八年當時
  ノ舊態ヲ守ッテ居ルト云フコトデアルノデアリマス、當局者ガ遲レ馳セナガ
  ラ師範〓育改善ノコトニ付テ著手セラレタ、其點ニ付テハ私ハ多大ノ敬意ヲ
  表スルモノデアルノデアリマス、又民間ニ於キマシテモ、師範〓育ノ改善ニ
  關シマシテハ數年來盛ニ意見ガ起リマシテ、各種ノ〓體ニ於テ、如何ニ師範
  〓育ヲ改善スベキカト云フ所ノ論ガ起ッテ參ッタノデアリマス、一昨年ノ暮、
  昨年ノ春頃ニナリマシテ、其改善ノ意見ガ······ソレ等ノ專門ノ諸團體ニ依ッ
  テノ改善意見ガ、殆ド時ヲ同ウシテ現ハルヽニ至ッタノデアリマス、勿論其
  案ガ完全無缺ノモノデアルトハ云ヘナイカモ知レマセヌガ、免ニ角、民間ニ
  於テモ各種ノ〓育團體ニ於テ、其問題ヲ調査研究シマシタ其結果ガ、昨年ノ
  春、或ハ一昨年ノ幕頃ニ、卽チ歸一スル所ヲ發見シタト申シテ宜シイノデア
  リマス、如何ナル〓體デアルカト申シマスレバ、文部大臣ノ任命シ、文部大
  臣ノ監督ノ下ニ立ッテ居ル所ノ百有餘ノ師範學校ヲ以テ組織シテ居ル所ノ、全
  國師範學校長會ナルモノハ、當面ノ問題デアル、是等ノ人〓ノ直接關係シテ
  居ル所ノ問題デアリマスルカラ、此協會ニ於ラハ三四年ノ歲月ヲ費シテ、サ
  ウシテ師範〓育改善ノ案ヲ立テタノデアリマス、ソレガ多分······確カ一昨年
  ノ暮或ハ昨年ノ春頃ニ成案ヲ得タノデアリマス、其他高等普通〓育ノ本山ト
  モ言ハレル所ノ高等師範學校、其卒業生ヲ以テ組織シテ居ル所ノ茗溪會ナル
  多數ノ有力ナル〓育者ヲ包含イタシテ居ル所ノ團體、此團體ニ於テ師範〓育
  改善案ヲ調査研究ヲ致シタノデアリマス、所謂茗溪會案ナルモノモ茲ニ在ル
  ノデアリマス、更ニ全國師範學校同窻會、全國ノ師範學校ヲ卒業シテ、現
  小學〓育ニ從事イタシテ居ル所ノ者、ソレ等ノ······是ハ數萬ノ會員ヲ包含イ
  タシテ居ルノデアリマスガ、斯ノ如キ〓育團體ニ於テ、此問題ヲ調査シタモ
  ノガアルノデアリマス、全國師範學校同窻會案ナルモノデアリマス、其他、
  單ニ〓育者バカリデナク、〓育ニ理解アル、同情アル者ヲ以テ組織イタシテ
  居ル所ノ帝國〓育會ニ於テモ、此問題ニ關シマシテ調査研究ヲ遂ゲタモノガ
  アルノデアリマス、是等ノ諸團體ニ於テ調査シ、所謂成案ヲ得タルモノハ
  必シモ皆同一デハナイノデアリマス、多少ノ相違ハアリマスケレドモ、大體
  ニ於テ大同小異デアッタト申シテ宜イト思フノデアリマス、之ヲ一言ニシテ
  申シマシタナラバ、所謂玆ニ問題ニナリマシタ所ノ、現在ノ師範學校ニ一部
  二部ナルモノガアリマスガ、二部ヲ本體トシテ、サウシテ行ク〓〓一部ト
  云フモノヲ段々無クナシテシマハウト云フコトニ致サウト云フ案デアルノデ
  アリマス、二部ト云フモノハ極メテ最近ニ設置セラレタル所ノモノデアリマ
  ス、或ハ制度ノ上カラ申シタナラバ、先刻、森文部大臣ノ師範制度ノ基礎ヲ
  置カレテ以來、殆ド變ハリガナイト申シマシタケレドモ、明治四十年ト記憶イ
  タシマスガ、其時ニ此二部ナルモノヲ設置ヲ致シタノデアリマス、二部ガ設
  置セラレテカラ今日ニ至ルマデ、マダ二十年ヲ經過イタサナイノデアリマス
  ルゼ、最初ハ二部ノ生徒ヲ得ルコトモ甚ダ困難デアッタノデアリマスガ、
  方ニ於テ中學校、高等女學校ノ增設ニ伴ヒマシテ、近年ハ非常ニ二部ノ生徒
  ヲ得ルコトガ容易ニナッテ參ッタノデアリマス、今囘ノ文部省ノ計畫ニ依リマ
  シテモ、新ニ二部ヲ增加スルコトニナリマスガ其通リニ實行セラレル時ニ
  ハ、是カラ後ニ師範學校ヨリ出ル所ノ卒業生ノ數ハ、一部モ二部モ殆ド同數
  ヲ出スコトニナリマス、生徒ノ上カラ申シマシタナラバ、一部ガ本體デア
  ル二部ガ從屬的デアルナドト云フ問題ハ、最早起ラヌ位ノ時代ニナッテ居
  ルノデアリマス、免ニ角、二部ナルモノハ極メテ近年ノ設置ニ拘ラズ、大イ
  ナル發展ヲ遂ゲタルガ爲ニ、唯今申上ゲマシタ各種ノ〓育〓體ノ調査案ナル
  モノハ、卽チ二部ヲ將來ハ本體トシテ、サウシテ一部ヲ、今日直チニ廢止ス
  ルコトハ出來ナイケレドモ、之ヲ漸次廢シ得ル時期ノ一日モ速カニナラムコ
  トヲ期スルト云フ趣意ヲ以テ、是等ノ案ガ出來テ居ルノデアリマス、二部ヲ本
  體トシテ、或ハ之ヲ三年トスベシト云フ論ガアルノデアリマス、或ハ當分ノ
  內、二年ヲ以テシナケレバナラヌ、三年案ハ······卽チ全國師範學校長協會ノ
  案ハ三年案デアルノデアリマス、茗溪會ノ案、帝國〓育會ノ案、全國師範學
  校同窓會ノ案等ハ何レモ二年案デアルノデアリマス、斯ノ如クニ師範〓育ニ
  關シマシテハ、政府ガ著手スル以前ニ於テ、民間ノ諸團體ハ必要ニ迫ラレマ
  シテ、各種ノ調査ヲ遂ゲタ案ガアルノデアリマス、先刻、西久保君ハ此文部
  省ノ原案ナルモノハ、文政審議會ヲ通過シタノミナラズ、〓育社會ガ總テ同
  意デアルト云フコトヲ言ハレタノデアリマスガ、西久保君ガ此誤リヲナサレ
  タコトニ付テハ、私ハ決シテ御咎メヲシナイノデアリマスルガ、事實ハサウ
  云フヤウナ次第デアルノデアリマス、然ルニ今囘ノ文部省ノ······文部大臣ノ
  案ナルモノハ、是等ノ民間ノ諸團體、而モ〓育社會ノ······直接其〓育ニ關與
  イタシテ居ル所ノ人〓ノ案ヲモ無視シ、蓋シ文部大臣ハ之ニ敬稱ヲ附シ、是
  等ノ案ハ理想案デアルト云フコトヲ再々言ハレテ居ルノデアリマス、理想案
  ハ理想ニシテ今實行スルコトガ出來ナイノデアル、實行スル所ノ案ハ卽チ此
  提案シタル所ノモノデアルト稱セラレルノデアリマス、若シ是等ノ案ガ···
  ···民間〓育ノ諸團體ノ調査シタルモノガ理想案デアルナラバ、成程、之ヲ今
  日卽刻實行スルト云フコトハ出來ヌニ致シマシテモ、一步二歩近ヅク所ノモ
  ノデナケレバ、改善ヲ施シタト云フコトハ出來ナカルベキ筈ノモノデアラウ
  ト思フノデアリマス、然ルニ今修正案ニ依ッテ認メラレナイ所ノ······削除サ
  レタト申シマスカ、削除サレタル所ノモノハ、卽チ文部大臣自ラ稱シテ理想
  案ト云フ其理想ヨリ一步デアルカ、數步デアルカ距ッタノデアリマス、ソレ
  ヨリ退イタ所ノ案デアルノデアリマス、確ニ文政審議會ナルモノハ通過イタ
  シタニ相違ナイノデアリマスケレドモ、元來、日本ニ於テハ〓育者ガ微力ナ
  爲デアリマスルカ、専門ノ〓育者ノ聲ト云フモノハ、多クハ世ノ政治家デアル
  トカ、或ハ地位ノ高イ所ニアル者ノ耳ニハ達シナイ嫌ガ甚ダアルノデアリマ
  スルガ、此文政審議會ニ於テモ、是等ノ實際〓育家ノ意見ハ餘リ傾聽ヲセラレ
  ナカッタノハ甚ダ遺憾デアルノデアリマス、文政審議會ナル各方面ノ人ヲ集
  メ、而シテ之ヲ決議シタル所ノモノガ、〓育上ノ最高ノ決定ノ機關デアルナ
  ラバ、何モ申スコトハ無イノデアリマスルガ、如何ニ文政審議會ニ於テ決議
  イタサレマシテモ、私ハ此案ニ對シテハ寧ロ長イ間、僅カ一日若クハ數日ノ
  間ニ案ヲ提出セラレ、サウシテ決議ヲ致シタ所ノ其機關ノ決議ヨリハ、民間
  〓育〓體ノ審議調査ニ重キヲ置カムトスル所ノモノデアルノデアリマス、ノ
  ミナラズ、如何ナル國ニ於テモ我國ノ師範〓育ノヤウナ制度ヲ執ッテ居ル所
  ガアルカ、師範〓育ニ關シマシテハ今日世界ヲ通ジテ我〓ノ殆ド理解セヌ程
  ノ一大革新革命ヲ行ヒツヽアルノデアリマス、小學校ノ〓員ヲ養成スル爲ニ
  ハ、其養成ノ程度ト云フモノハ大學ノ程度ニ於テシナケレバナラナイト云フ
  コトガ、歐米ノ諸國ニ主義トシテ主張セラレルバカリデナク、實際ニ於テ實
  行セラレムトシツヽアルノデアリマス、獨逸ノ師範〓育ノ如キ、日本ノ師範
  學校ニ較ベマシタナラバ、殆ド比較ニナラヌホド高イモノデアリ、又非常ニ
  成功イタシモノデアリマスケレドモ、今日ノ獨逸共和國ハ此成功シタル師範
  學校ヲ全廢イタシマシテ、小學〓員ノ養成ハ大學ノ程度ニ於テスベシ、「ホ
  エーヘーレー·シューレ」程度ニ於テ獨逸聯邦ヲ通ジテ爲スベシト云フコトヲ
  獨逸共和國ノ憲法ニ規定ヲ致シテ居ルノデアリマス、免ニ角、今著々非常ノ
  成功ヲ收メタ師範學校ヲ廢止シテ、而シテ此高イ師範〓育ヲ施サムト致シツ
  ツアルノデアリマス、太平洋ノアナタノ米國ニ於キマシテモ師範學校ナルモ
  ノヲ昇格シテ大學ト致シテ居ルノデアリマス、是ハ確ニ昇格ト云フコトガ出
  來ヤウト思フノデアリマス、米國ノ師範學校ナルモノハ我國ノ師範學校ニ較
  ベマシタナラバ遙ニ高イ程度ノモノデアリマス、八年ノ小學ヲ終リ、四箇年
  ノ中學ヲ卒リ、其者ヲ收容ヲ致シマシテ、二箇年ノ〓育ヲ施ス所ノモノヲ米
  國ニ於テハ師範學校ト稱ヘ、「ノーマルスクール」ト稱ヘテ居ッタノデアリマ
  スルガ、此二箇年ノ課程ヲ延長イタシマシテ、八年トシ、名前モ師範大學、
  「ティーチャースカレヂ」ト云フ名前ニ續々昇格イタシツヽアルノデアリマス、
  我國ト不幸ニシテ屢、問題ヲ釀ス所ノ加州ニハ、「カリフォルニア」ニハ六校
  ノ州立師範學校ガ有リマシタガ、一昨々年悉ク之ヲ昇格セシメマシテ師範大
  學ト致シテ居ルノデアリマス、英國ノ如キハ御承知ノ通リニ統一的ノ制度ヲ
  嫌フ國デアリマスカラ、何レノ國ヨリモ先ンジテ大學程度ニ於テ小學校〓員
  ヲ養成スル機關ヲ有ッテ居リマス、ソレヨリ程度ノ低イ所ノモノモアリ、又
  我國ノ師範學校ニ類似シタモノ、若クハ我國ノ師範學校ヨリモ程度ガ低イト
  思ハレル所ノモノモ、卽チ二種三種四種ノ種類ニ亙リマシテ師範〓育ノ機關
  ヲ設ケテ居ッタモノデアルノデアリマス、現在モ其制度ハアリマス、ケレドモ
  事實ニ就テ見マスレバ、簡易ナル〓育ヲ受ケテ小學〓員ニナル者ハ漸次其數
  ヲ減ジマシテ、高等ノ〓育、ヨリ完全ナル〓育ヲ受ケテ、以テ小學〓育ニ從
  事セムトスル者ガ、段々ニ增加イタシテ居ルヤウナ情況デアルノデアリマ
  ス英吉利ハ恐ラクハ現在ノ此劃一的ナラザル所ノ師範〓育ノ制度ヲ將來ニ
  モ維持スルデアリマセウ、ケレドモ近イ內ニハ其最モ簡易ナル師範〓育ノ機
  關ト云フモノハ、事實上消滅スルニ至リマシテ、高イ程度ノ師範學校ナルモ
  ノガ更ニ發展スルニ至ルデアラウト考ヘルノデアリマス、思想ノ善導ノ上カ
  ラ申シマシテモ、又國民精神ノ作興ノ上カラ考ヘマシテモ、或ハ產業ノ發達
  ノ上カラ考ヘ、國防ノ充實ノ上カラ考ヘマシテモ、其基礎ハ國民〓育、小學
  〓育ノ改善ヲ主トシナケレバナラヌト云フコトハ、今日ニ於テ殆ド主義トシ
  テ何人モ疑ヲ挾マナイ所デアラウト思フノデアリマス、是ガ爲ニ今囘當局者
  モ師範〓育改善ノ擧ヲ企テラレタコトデアラウト思フノデアリマス、併ナガ
  ラ今日、當局ノ案ニ依ル所ノ師範〓育ノ改善トシテ認メルコトノ出來ル所ノ
  モノハ、卽チ修正案ニ於テモ何等觸ルヽ所ノナイ所ノ專攻科ヲ新設スルト云
  フコトハ、是ハ確ニ一步、師範〓育ヲ改善スル實ヲ擧ゲ得ルト思フノデアリ
  マス、從來ノ師範學校ノ卒業ヲ以テ滿足セズ、其上ニ專攻科ナルモノヲ置イ
  テ、悉クノ生徒ヲソコニ收容スルノデハアリマセヌケレドモ、之ニ入學志願ス
  ル所ノ者ヲ收容シ、一年ノ問、更ニ精深ナル程度ニ於テ〓育ヲ施サウト云フ
  ノデアリマスカラ、是ハ幾分ノ師範〓育ノ改善ニナラウト思フノデアリマス、
  當局者ハ更ニ程度ヲ高ムルコトノミニ依ッテ改善ヲスルコトハ出來ナイノデ
  アル、師範學校ニ這入ル所ノ者ノ素質ヲ良クシナケレバナラヌノデアル、此
  素質ヲ良クスルガ爲ニハ高等小學二年ト師範學校トノ連絡ヲ滑カナラシメナ
  ケレバナラヌノデアル、現在ハソコニ一年ノ間隔ガアルノデアリマス、確
  其通リデアルノデアリマス、當局ノ案ニ依リマスレバ、可ナリ尠カラザル費
  用ヲ投ジマシテ、此高等小學二年トノ聯絡ヲ滑カナラシメヤウトスルノデア
  リマス、机ノ上デ考ヘマシタナラバ、成程、ソレハ一ツノ改良案ノ如クニモ
  考ヘラレルノデアリマスケレドモ、師範學校ハ世間幾多ノ非難アルニ拘ラズ、
  我ガ〓育ノ進步普及ニ對シテハ沒スベカラザル功ヲ有ッテ、效果ヲ奏シテ居
  ルモノデアリマスガ、師範學校ニ對スル所ノ多年ノ非難ハ師範學校ニ於テ養
  成スル所ノ者ハ、一種ノ鑄型ニ嵌ッタ〓員ガ出來ルノデアル、一種ノ師範氣
  質ナルモノヲ、好マシカラザル所ノ資質ヲ有ッタ所ノ者ヲ養成スルノデアル
  ト云フ······形式ニ囚ハレ、小節ニ拘泥スル所ノ、誠ニ伸ビ〓〓シナイ、イヂケ
  タ〓育者ヲ造ルト云フコトガ、師範〓育ニ對スル所ノ、二三十年間ニ亙ル所ノ
  非難デアルノデアリマス、如何ナル師範學校長モ······師範學校ノ〓育者モ、
  斯ノ如キ人ヲ養成シヤウト致シテ居ル者ハ無イノデアリマス、其非難トスル
  所ニ多少反省スベキ所ノモノガ有リマスカラ、常ニ是ガ改善ニ努メテ居ルノ
  デアリマスケレドモ、今日ニ至リマシテ、尙ホ依然トシテ其弊ヲ脫スルコト
  ガ出來ナイノデアリマス、ソレハ何故デアルカト云フト、今日、文部當局ガ
  非常ニ力ヲ注ガルヽ所ノ第一部ノ生徒ハ、謂ハヾ、幼少ナル······一生ノ仕事
  ヲ選擇スベキ適當ノ年齡ニ達セヌ者ヲ師範學校ニ這入レ、此學校ニ這入ッタ
  ナラバ、比較的學費少クシテ數年ノ〓育ヲ受ケルコトガ出來ルノデアルト云
  フ門戶ヲ開イテ、師範學校ニ這入ッタモノデアルノデアリマス、ソレ故ニ師
  範學校ニ這入リマシテ、二三年ナラズシテ、自分ハ其一生ノ方向ノ選定ヲ誤
  ッタト云フコトヲ悔ユル者ガ實ニ少クナイノデアリマス、若シ悔ヒザル者ガ
  アッタト致シマシタナラバ、ソレハ甚ダ少數デアルト、私ハ斷言スルコトガ
  出來ルト思ヒマス、悔ユルト雖モ、實ニ少シト雖モ、幾分ノ學費ヲ補助サレ
  テ居ルノデアリマスカラ、之ヲ濫ニ脫シテ他ノ社會ニ去ルト云フコトハ出來
  ナイノデアル、玆ニ於テ卒業スル時期ヲ待チ、盡クルノヲ待ッテ、他ノ社會
  ニ投ゼムトスルノハマダ宜イノデアリマスケレドモ、服務年限ノ中ニ於テモ
  種々ノ理由ヲ考ヘマシテ、種々ノ事故ヲ作ッテ、サウシテ服務年限中ニモ他
  ノ社會ニ去ラムトスル者ハ實ニ少クナイノデアリマス、其意思ニアラズシ
  テ、强ヒテ之ヲ〓育者ニ養成シヤウト致シテ居ルノデアリマス、玆ニ於テ世
  間ニ此二三十年ニ亙ッテ絕エザル所ノ非難ノ起ルト云フコトモ無理カラヌコ
  トデアルト申シテ宜イト思フノデアリマス、昨日、分科會ノ主査ノ御報告ニ
  依リマスルト、年々〓育社會ヲ脫スル所ノ者、資格ノ有ル小學校〓員ガ一年
  ニ一萬人モアルト云フ御話デアリマス、私ノ調査シタ所モサウデアルノデア
  リマス、斯ノ如ク多數ノ者ガ〓育社會ヲ去ルノデアリマス、而シテ主査ノ報
  告ニ依リマスレバ、ソノ去ル所ノ者ハ多クハ二部ヲ卒業シタ者デアルヤウナ
  御報告デアッタノデアリマスルガ、恐ラクハ、當局者モ其材料ヲ御與ヘニナッ
  タノデハナイト思フノデアリマス、此點ニ付テ私ハ豫算委員會ニ於テモ御質
  問ヲ致シタノデアリマスルガ、當局者ハ今調査セラレテ居ルト云フコトデア
  リマスルガ、ソレニ關シテ的確ナル事實ヲ與ヘラルヽ材料ヲ持タレヌ、ト云
  フ御明答ヲ與ヘラレテ居ルノデアリマス、私ノ極メテ不完全ナ二三ノ學校ニ
  就テ調ベタ所ニ依ッテ見マスレバ、寧ロ此〓育社會ヲ去ッテ、他ノ業務ニ轉ゼ
  ムトスル所ノ者ハ、一〇、不思議ニモ一部ノ出身者ニ多クシテ、二部ノ出身
  者ニ少イト云フコトデアルノデアリマス、不思議ノヤウデハアリマスルガ、
  能ク考ヘテ見マスレバ、必シモ不思議デハナイノデアル、旣ニ中學ヲ卒業シ
  テ相當ノ年齡ニ達シ、思慮分別モ出來タ者ガ、世ノ經驗モ多少ハ積ンダ者ガ、
  自分ノ方向ヲ定ムルニ當ッテ、小學〓育ヲ以テ身ヲ立テヤウト云フ考ヲ起シ
  タ所ノ者ガ、卽チ二部ニ入ッテ行クノデアリマス、サレバ二部ハ唯、師範學
  校ニ在學スルコト一年、其服務年限モ二年ニ過ギナイノデアリマス、一部分
  現在ニ於テ七年ノ服務年限ヲ有ッテ居ル、此間ハ必ズ小學校〓員ノ職ニアラ
  ネバナラヌト云フ、服務年限ト云フモノガアルノデアリマシテ、數理ノ上カ
  ラ言ッタナラバ、此服務年限ヲ終ハッテ、他ノ社會ニ去ルトシタナラバ、二部
  ニ多クナケレバナラヌノデアリマスガ、私ハ是ハ全國ニ涉ッテノ調査デナイ
  ト云フコトヲ繰返シテ申シマスルガ、二三ノ調査ニ依ッテ見マスレバ、二部
  ニ少クシテ、一部ニ多イ、是ハ唯今申シマシタ理由ニ依ッテ、サモアルベキ
  コトデアルト云フコトハ了解出來ルコトデアラウト思フノデアリマス、斯カ
  ル次第デアリマスルカラシテ、將來、師範〓育ヲ改善スルト云フ如キ法案ヲ
  立テルニ至リマシタナラバ、ドウシテモ此點ニ著眼ヲ致サナケレバナラヌト
  思フノデアリマス、然ルニ中學校ヲ終ハッタ者ヲ收容シテ、現在ハ一年デア
  リマスルケレドモ、之ヲ二年ニスル、三年ニスレバ、尙更デアリマスルガ、
  左樣ニシタ時ニハ此卒業生ヲ待遇スルノニ、今日ヨリモ、ヨリ優レタル所ノ
  待遇ヲ與ヘナケレバナラヌ、是ハ我ガ町村ノ資力ノ到底堪ヘナイ所デアルト
  云フノガ、當局者ノ理想案ト認メラレツヽアル此案ニ依ルコトヲ躊躇セラル
  ル所ノ唯一ノ重大ナル理由デアルノデアリマス、御尤モトモ考ヘラルヽノデ
  アリマスケレドモ、今日、折角養成ヲ致シマシテモ、年々一萬人カラノ有資
  格ノ〓員ガドシ〓〓〓育社會ヲ去ッテ、他ノ何等〓養ヲ受ケナイ所ノ新ナ職
  業ニ轉ゼムト致シテ居ルノデアリマス、之ヲ救濟スルガ爲ニハ相當ノ方法ヲ
  講ジナケレバナラヌノデアル、當局ハ之ニ對シテ相當ノ俸給ヲ與ヘヤウトス
  ルコトハ、現在ノ市町村ノ財政狀態ニ於テハ決シテ堪ヘル所デナイト云フコ
  トヲ言ハレテ居ルノデアリマス、成程、今日ノ方法ヲ以テ致シタナラバ、サ
  ウデアルカモ知レナイ、併ナガラ假令、町村ニ於テハ大體ソノ資力ガ無イト
  致シマシテモ、俸給支給ノ仕方ニ付テ考慮ヲ運ラスコトガ出來マシタナラ
  バ、或ハ現在ノ俸給ヲ以テシテ、現在ノ金額ヲ以テシテ、相當ニ優遇スル途
  必シモ無キニシモアラズト思フノデアリマス、衆議院議員ノ建部君ハ過日、
  建議案ヲ此點ニ付テ出サレテ居ルノデアリマス、建部君ノ〓員俸給ニ關スル
  所ノ意見ハ、建部君ガ大學〓授デアッタ時ニ長イ論文ヲ出サレテ、既ニ世間
  ニ發表ヲセラレテ居ルノデアリマス、建部君ノ案必シモ完全ナモノデハナイ
  ノデアリマスルケレドモ、是モ一ツノ案デアルノデアリマス、十五年度ニ於
  テハ義務〓育費ノ國庫負擔額ト云フモノモ增額セラレテ六千萬圓ニナリ、小
  學校〓員給ノ約半額ヲ國庫ヨリ支辨スルコトニナルノデアリマスルカラ、其
  際ニ於テ〓員俸給ノ金庫ナルモノヲ大キクシテ、サウシテ其中ニ於テ按排ヲ
  致シマシタナラバ、或ハ一億二千萬圓ノ俸給額ヲ以テシテ、隨分優遇ノ途ヲ
  開クコトハ出來得ナイコトデハナイデアラウト、斯ウ思フノデアリマス、況
  ヤ二部ヲ現在ノ一年ヲ二年トシテ優秀ナル卒業生ヲ出ス、是ガ爲ニハ相當ニ
  報酬ヲ厚クシナケレバナラナイト致シマシタ所デ、全國十七八萬ノ〓育者ガ
  俄ニ一變シテ二部卒業者ニナル譯デモナイノデアル、二部ノ卒業生ト云フモ
  ノハ年々······二箇年ニナラウト三年ニナラウト、〓育社會ニ出ルヤウナ者ハ
  決シテ多クナイト言ヘバ多クナイノデアリマシテ、數ヲ以テシタナラバ四五
  千ニ過ギナイノデアル、段々增加スルニ致シマシテモ六七千ニ過ギナイノデ
  アリマスルカラ、是等優秀ノ〓育ヲ受ケタル者ニ對シテハ相當ノ待遇ヲスル
  ト云フヤウナコトハ、少シモ考ヘマシタナラバ決シテ出來得ナイコトデハナ
  イノデアル、ソレノミナラズ先刻申シマシタ折角養成シタ所ノ資格ノ有ル〓
  員ガ年々一萬人モ他ノ社會ニ拔ケ出テシマウト云フノデアリマスルカラ、其
  點カラ考ヘマシテモ〓員ニ對スル所ノ待遇ハ大イニ考ヘナケレバナラナイノ
  デ、是ト此師範〓育改善ト相俟ッテ致シマシタナラバ、當局者ノ憂フル所ノ
  今日ノ町村ノ財政ニ於テハ是レ以上到底出來ナイト云フコトニ限ラヌト思フ
  ノデアリマス、免ニ角、修正案ハ、從來非難ノ少クナカッタ、更ニ其非難ヲ
  大キクスルヤウナ、下ニ向ッテ年限ヲ延長スル、其必要ヲ認メナイト云フ所
  ノ案デアリマスルカラ、私ハ滿腔ノ贊成ヲ表スル者デアルノデアリマス、私
  ハ斷言イタシマス、此修正案ニ贊成スル所ノ者ハ、全國ノ小學〓育ニ從事ス
  ル所ノ、全國ノ師範〓育ニ從事スル所ノ者ハ、皆擧ッテ贊成スルモノデアル
  ト云フコトヲ斷言スルニ憚ラナイ所ノ者デアルノデアリマス、今囘ノ案ハ修
  正案ニ依ッテ一大缺點ヲ補フコトガ出來タト思フノデアリマス、ソコガ議論
  ヲ惹起シタ事ニナルノデアリマスルガ、一部ノ費用ヲ削除スル結果トシテ折
  角基金ヲ設定シ〓育改善ノ爲ニ振リ向ケラレタ所ノ四百萬圓、此四百萬圓ノ
  中ニ少ナカラザル部分ガ不要ニナルノデアル、之ヲ最モ有效ニ使用セムト云
  フコトヲ修正案提出者ハ考ヘラレテ、寄宿舍ヲ設ケタナラバ宜カラウト云フ
  コトヲ提案セラレタノデアル、然ルニ元〓當局者ノ此提案······豫算案ニハナ
  イノデアリマス、其豫算案ニ要求シナイ所ノモノヲ·······豫算案デハナイ、此
  豫算ヲ作ッタ所ノ其基礎ニ於テモ寄宿舍ナルモノハ無イノデアル、之ヲ要求
  スルト云フコトハ政府ノ發案權ヲ侵ス憂ガアルト云フノガ、此問題ヲ起シテ
  居ルノデアリマス、併ナガラ此師範〓育改善案ノ來歷ヲ考ヘテ見マスルト云
  フト、是ハ周知ノ事實デアリマスルガ、文部ノ提案ニ依ッテハ經常費トシテ
  四百萬圓ヲ要求シ、臨時費トシテ一千五百萬圓ヲ要求サレタノデアリマス、
  然ルニ財政緊縮ノ際ニ於テ一千五百萬圓ノ支出ヲ一般會計ヨリ爲スコトハ出
  來ナイト云フノデ、棒ヲ引カレタノデアリマス、一千五百萬圓ノ中ニ於テハ
  設備ノ上ニ於テ現在ヨリモ······此豫算ニアルヨリモ完全ト云フコトヲ期セラ
  レタノデアリマス、寄宿舍ノ如キモ勿論要求ヲセラレテ居ッタモノデアルト
  思フノデアリマス、一千五百萬圓ノ臨時費ガ全部棒ヲ引カレタ、玆ニ於テ當局
  者ハ大イニ考ヘナケレバナラヌノデアリマスルガ、當局者ハ四百萬圓ノ中カ
  ラシテ、十四年度十五年度ニ亙リマシテ二百何十萬圓ノ臨時費ヲ捻出イタシ
  マシテ、僅ニ〓室ヲ新設スルノト、實驗ノ設備費若干ヲ認メルト云フコトニ
  致シタノデアリマス、是ハ據所ナイ窮策ト云ヘバ窮策デアリマスルケレド
  モ、決シテ完全ナル案デハナイノデアル、師範學校ト云フモノハ大體ニ於テ
  寄宿ヲ本體ト致シテ居ルノデアリマス、一部ノ生徒ニ致シマシテモ、遺憾ナ
  ガラ其家庭ニ於キマシテハ或ハ十分ノ訓育ヲ施スコトガ出來ナイト云フ憂モ
  アルノデアリマス、ソレノミナラズ悉ク家庭ヨリ通學スルコトヲ得ザル者ガ
  多イノデアリマシテ、故ニ大體之ヲ寄宿ニ收容イタスノデアリマス、二部ノ如
  キハ殊ニ一年デ〓育者ノ資格、完全ナル〓育者ノ資格ヲ與ヘルノデアリマス
  カラ、二部ノ如キハ成ルベク之ヲ寄宿舍ニ收容ヲ致サナケレバナラスノデア
  リマス、當局者モ當初ノ考ニ於テハ、ソレヲ十分ニ考慮サレタノデアリマス
  ケレドモ、不幸ニシテ一千五百萬圓ノ要求ガ全部削減セラレタルガ爲ニ、ソ
  レヲ割愛セラレタノデアリマスルガ、此割愛タルヤ、師範〓育ノ效果ノ上ニ
  甚グ面白カラザル結果ヲ生ズルコトニナラウト思フノデゴザイマス、一部、
  費用ヲ削減シタル結果トシテ、此有用ナル他ノ費用ニ向ッテ之ヲ充當スルコ
  トガ出來ルコトニナッタノデアリマス、併ナガラ此百何十萬圓ト云フモノヲ
  以テ、提案者ハ寄宿舍ノ建設ニ充ツルノガ適當デアルト云フコトヲ御說明ニ
  ナッタノデアリマスルケレドモ、是ハ豫算面ノ上ニ於テ三百餘萬圓ノ中ノ百
  八十萬圓ハ寄宿舍建設費トハナッテ居ラヌノデアリマス、當局者ガ議院ノ議
  決シタル所ノ豫算ハ唯師範〓育改善費三百餘萬圓デアル、項ニ於テモサウデ
  アル、目ニ於テモサウデアル、故ニ如何ナル趣意ヲ以テシテモ自分ハ自分ノ
  欲スル儘ニ此三百餘萬圓ヲ使フト云フコトデアルナラバ、ソレハ出來ナイコ
  トモナイト思フノデアリマス、併ナガラ文部大臣ハ政治上ノ德義ヲ大イニ重
  ゼラレマシテ、最初、西久保君ノ〓歎セラレタルガ如ク、是ハ私モ同樣ニ〓歎
  ヲ致シテ居ッタノデアリマスルガ、或人ト政府者トノ間ニ交渉ニ日ヲ重ネテ、
  其間ニ如何ナル行違ヒガアッタコトデアリマスルカ、文部大臣ハ唯豫算ノ四
  百萬圓ノ中カラシテ九十七萬餘圓ヲ減ズルコトデアルト云フヤウニ考ヘラレ
  テ、一旦ハ同意ヲセラレタト云フヤウニ承ッテ居ルノデアリマス、然ルニ提
  案者ハ此九十七萬圓ヲ減ジタル基礎理由ハ、卽チ一部ノ費用ヲ否認シテ、而
  シテ其ノ內ニハ嘗テハ、當局者ガ大藏省ニ〓算トシテ要求シタル所ノ寄宿舍
  一部ノ費用ヲ含ンデ居ルト云フコトヲ說明セラレタニ付テ、意外ノ感ヲ生
  ゼラレタト云フコトデアルノデアリマス、法律上ヨリ申シマシタナラバ、此
  決定シタル豫算ニ於テ或ハ當局者ガ思フ存分ニ其範圍內デ使フ、款項目ノ示
  ス所ニ依ッテ使ハレルコトハ、自由デアラウト思フノデアリマス、ケレドモ
  斯ノ如キ趣意ヲ以テ削減シタル所ノモノデアルト云フモノデアリマシタナラ
  バ、當局者トシテ之ヲ尊重セラルヽノハ當然ノコトデアラウト思フノデアリ
  チョ,然ルニ岡田君ハ誠ニ正直デ、サウ云フ趣意デアッタナラバ贊成スルコ
  トガ出來ナイト言ハレタノデアリマス、私ハ斯ノ如キ正直ナル言明ヲ得タル
  コトヲ甚ダ喜ブ者デアルノデアリマス、ガ玆ニ至ルマデノ經過ニ付キマシテ
  ハ、私ハ全然其點ニ於テモ西久保君ト感ヲ同ジウスル者デアルノデアリマス、
  私ノ聞キマシタ所ニ依ルト云フト西久保君ハ我〓ノ存在ハ無視サレテ居ル
  ト云フコトヲ言ハレタノデアリマスガ、或議員ガ警句ヲ吐カレタ、現在ノ研究
  會員ニ非ザル者、交友倶樂部員ニ非ザル者ハ貴族院議員ニ非ザルナリト云フ
  警句ヲ吐カレタノデアルノデアリマスガ、私モ卽チ名ハ貴族院議員ニシテ何
  等其實ナキモノノ一人デアルトシテ一種ノ憤〓モ致シ、又悲哀モ感ジテ居ル
  所ノ者デアリマス、斯ノ如キコトハ有力ナル會派ニ於テ十分ノ反省ヲ望ムコ
  トハ、私ハ西久保君ト少シモ讓ラナイ所ノモノデアルノデアリマス、併ナガ
  ラ是ハ相手ナクシテ斯ノ如キコトハ出來ナイノデアル、何ヲ相手ト致シタノ
  デアリマスカ、政府ヲ相手トシテ······何々會派ノ議員、會員ニ非ザル者ハ貴
  族院議員ニ非ザルナリト云フヤウナ警句ヲ吐カシメタノデアリマス、ソレハ
  卽チ政府デアル、而シテ私ヲシテ言ハシメタナラバ、政府ノ眼中ニハ某會派
  アルノミデアリマシテ、某倶樂部モナカッタコトデアラウト思フノデアリマ
  スガ、斯ノ如キ經緯ヲ經テ玆ニ至ッタコトハ、私ハ甚ダ遺憾デアリマスルガ、
  岡田君ガ、男ラシク、或ハ贊成シ、或ハ贊成スルコトガ出來ナイト言ハレタ
  コトハ、遲レタリト雖モ尙ホ之ヲ多トスルモノデアルノデアリマス、願ハクハ
  政治上ニ於テ妥協互讓ハ勿論ノコトデアルノデアリマスガ、其妥協ハ此議政
  壇上ニ於テシ、少クモ委員會ニ於テ、相互ニ於テ其赤誠ヲ披瀝シ、茲ニ於テ讓
  ルベキハ讓ルト云フヤウニアリタイト思フノデアリマス、暮夜、人少ナキ所ニ
  於テ喃々私語スルガ如キハ、實ニ我ガ政治ノ爲ニ私ハ遺憾ニ堪ヘナイコトト
  思フノデアリマス、此問題ハ甚ダ輕易ナルガ如クニシテ、私ハ、昨日第三分
  科ノ主査ガ豫算委員會ニ於テ御報告ニナリマシタ師範〓育ト云フ日蔭者ガ、
  隅ノ方ニ閑却サレテ居ッタ所ノ問題ガ、兔ニ角、今囘世上ノ耳目ヲ惹クヤウ
  ニナッタコトハ、〓育ノ爲ニ、師範〓育ノ爲ニ甚ダ喜ブ所デアルト云フコト
  ヲ言ハレタノデアリマスガ、私モ誠ニ其通リデアルト思フノデアリマス、或
  人ハ十六億ノ豫算ヲ議スルニ當ッテ九十何萬圓ヲ云々スルノハ、其時機ニ非
  ラズト云フコト言ハレテ居ルノデアリマス、我國ニ於テハ政治ノ方ヘハ大言
  壯語スルコトノ如クニ考ヘラレテ居ルノデアリマスルガ、政治ハモウ少シ國
  民ノ實生活ニ卽シタモノデナケレバナラヌト云フコトヲ私ハ信ズル者デアル
  ノデアリマス、昨年ノ英吉利ノ總選擧ヲ囘顧シテ見マスレバ、統一黨ニ於テ
  モ、或ハ勞働黨ニ於テモ、或ハ自由黨ニ於テモ其宣言スル所ノモノヲ見マ
  スルト云フト、或ハ「パン」一斤ノ値段十二錢ヲ十錢ニスルノデアルト云フヤ
  ウナコトガ、最モ重大ナル問題トシテ議セラレテ居ッタノデアリマス、手下
  レテ居ッタノデアリマス、〓育ニ關シマシテハ日本デ申シマシタナラバ、ソ
  レハ小學校ノ先生ノ云フヤウナコトダト云フコトガ、勞働黨ノ總理ノ「ボー
  ルドウイン」ノ口ヲ衝イテ出テ居ル、或ハ統一黨ノ「マグドナルド」ノ言ヲ次
  イデモ出テ居ルノデアリマス、何レノ黨派ニ於テモ小學校ノ一組ノ大キサハ
  大キ過ギルノデアル、之ヲ小サクシナケレバナラナイト云フコトヲ、英國ノ大
  政治家ハ言ッテ居ラレル次第デアリマス、九十七萬圓ノ金、十六億ノ總豫算ノ
  總額ニ比ベマシタナラバ甚ダ僅カナルモノデアルカモ知レマセセヌケレド
  モ、是ハ我國ノ師範〓育ノ大ニ立直スヤ否ト云フコトニ重大ナル關係ヲ持ツ
  テ居ルモノデアルト信ズルノデアリマス、私ハ雙手ヲ擧ゲマシテ此意見ニ贊
  成ヲセムトスル所ノ者デアルノデアリマス、而シテ或人ハ此爲ニ或ハ政治上
  面白カラザル所ノ政變ヲモ來スデハナイカト云フコトヲ杞憂サレタ人ガアル
  ノデアリマスガ、此時代ノ趨勢、社會ノ進運ヲ達觀ヲシテ、而シテ普選案ヲ
  提出セラタル所ノ現內閣ニ對シテ、斯ノ如キ言ヲ發スル者ハ現內閣ヲ侮辱ス
  ル所ノモノデアッテ、達觀セラレル所ノ内閣ハ決シテ此爲ニ此豫算案ヲ不成
  立ニ終ラシメ、又政變ヲ來スト云フヤウナコトハ、私ハ斷然ナイト言フコト
  ヲ信ズルモノデアルノデアリマス
  〔拍手起ル〕
  〔田所美治君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/35

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• 036・田所美治

  ○田所美治君　私ハ政府ノ原案ニ贊成ヲ表シ委員長ノ今朝ノ報告ノ修正ニ反
  對ヲスルモノデアルノデアリマス、ソレニ先ダチマシテ一言、今朝、阪谷男爵
  カラ御質問ノアリマシタ發案權ノ關係ニ付テ、私ノ信ジテ居ル所ヲ申上ゲテ
  〔副議長候爵蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕
  置カウト信ズルノデアリマス、私ハ豫算委員會ノ當初カラ此一部二部ノ問題
  ニ付キマシテハ、ナカ〓〓議論ガアリマシテ、遂ニ今日ノ經過ニ及ンダノデア
  リマスガ、其間ニ當リマシテ、今朝、阪谷男爵カラ御問ヒニナッタ斯ウ云フ
  疑ガ必ズ他日生ズルデアラウト云フ考カラ當局ニ伺ヒマシテ、質問ヲ致シタ
  ノデアリマス、卽チ豫算ハ普通〓育費ト云フ一款デ出テ居リマシテ、第五款
  ニ普通〓育費ト云フ款デ出テ居リマシテ、其項ト致シマシテ第三項ニ師範〓
  育費補助、其又一目ニ師範〓育費補助、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリ
  マス一款デ、一項デ、一目ニナッテ居ル、其內容ニ付テハ何等指示サレテ居
  ラヌノデアリマス、而シテ今朝來、議論ノアリマシタ一部二部ノ區別ニ付キマ
  シテハ當局ガ委員ニ配布ヲ致シテ居リマスル師範〓育改善ニ關スル參考書ト
  云フ鐵筆版デ刷ッタモノガアルノデアリマス、其備考ニ於キマシテ第一部ガ
  何學級、第二部ガ何學級、而シテソレノ臨時費ハナンボ、又之ニ要スル經常
  費ハナンボ、斯ウ云フコトニナッテ參考書ニ現ハレテ居ルノデアリマス、一
  部二部ノ優劣長短ニ付キマシテハ、〓育者界······唯今、澤柳君カラ諸君ト共
  ニ承リマシタヤウニ、ナカ〓〓議論ノアル事柄ナノデアリマス、果セル哉、此
  議會ニ於テモ豫算審議ノ場合ニ其考ガ〓育者ノ間ニ起ッテ參リマシテ、或
  澤柳君、或ハ嘉納君、鎌田君其他カラ此一部二部ノ優劣論ガ起ッテ參ッタノデ
  ゴザイマスガ、私ハソコニ對シマシテ當局ニ對シテ御尋ヲ致シタノハ、此一
  部何學級、二部何學級トアルノモ、此度補助ヲ爲ス唯目安ニ過ギナイノデ、從
  來ハ御承知ノ通リ、師範〓育ハ全ク地方ノ、府縣ノ費用デヤッテ居ルノデアリ
  やく、國庫ガ師範〓育費ニ對シテ補助シテ居リマスルノハ師範學校長ノ俸給
  十萬カ二十萬位ノモノニ止マッテ、アト千數百萬圓ノ師範〓育ニ要スル費用
  ハ全部地方費ガ負擔シテ居ルノデアル、ソレ故、此補助ヲ四百萬圓、唯今先
  キニ申上ゲマシタヤウナ一款、一四、一目ト云フコトデ其內容ハ何ニモ記サ
  レヌ豫算ノ形式ニナッテ居ル場合ニ於テハ、實際地方ニ於テ施設スル場合ニ
  ハ、此一部ガ何學級ニナラウガ、二部ガ何學級ニナラウガ、當局ノ補助スル目
  安希望ト云フモノヲ意味スルダケノコトデアッテ、實際ニ於テ地方ガ施設ス
  ル場合ニハ、是ハ伸縮、寬嚴或ハ一部ノ學級ヲ百六十九學級トアリマスガ、
  之ヲ百五十學級ニシテモ、二部ガ五十六學級トアルノヲ七十學級、八十學級
  ニシテモ一向差支ヘナイヂヤナイカ、從來、今日ヤッテ居リマスノハ卽チ地
  方費ガ全部負擔イタシマシテ、地方長官ノ任意ニ依ッテヤッテ居ル、卽チ其土
  地ノ狀態ニ應ジテ最モ適切ナリト信ズル〓育方法ヲ採ッテ居ルノデアリマス、
  其問ヲ當局ニ對シテ致シマシタ所ガ、然リ、質問者ノ考ノ通リデアル、卽チ
  是ハ單ニ目安ニ過ギナイノデアル、唯當局ノ補助スル、補助シテ後ニ實際地
  方ニ於テ施設スル場合ニ於テノ希望、考ニ外ナラヌ、斯ウ云フ意味ニ了解ヲ
  致シタノデアリマス、所ガ昨朝來、新聞紙等ニ依リマシテ、是ガ大問題ニナッテ
  居ル、或ハ一部ノ主義主張ヲ打破シテシマッテ、二部ダケヲ尊重スルノ意味デ
  修正ガ出來テ居リハシナイカ、當局モ之ニ對シテ同意ヲ表スルコトガ出來ヌ、
  又之ヲ修正シタ人ノ論カラ言ッテモ其通リサスノデアル、斯ウ云フ意味ノヤ
  ウニ聞エルヤウニ說明ガアッタノデアリマス、玆ニ於テカ紛糾ヲ重ネテ、當
  局政府ニ於テモ主義主張ヲ曲ゲラレルコトハイヤトシ、又提案者ニ於テハ一
  步モ·······亦希望ヲ滿足スルヤウニ、一部ヲ削ッテ、サウシテ二部ヲ認メタ、是亦
  標準ニ外ナラヌ、其目安通リニ實行シテ貰ヒタイ、斯ウ云フ風ノ主張ト相戰ヒ
  マシテ、遂ニ先程來、御聽キノ通リ、朝ノ會議ガ晝ニ及ビ、晝ガ三時ニナリ、四
  時ニナッタヤウナ經過デアラウト思フノデアリマス、私ハソレ故、先ヅ第一、此
  提案者ニ向ッテ昨日質問ヲ致シマシテ、提案ノ理由ヲ質問ヲ致シマシタ所ガ、
  提案者ハ御承知ノ通リニ、嘗テハ文部大臣モヤラレテ居リマシタ鎌田君デアッ
  タノデアリマス、鎌田君ハ第一部ノ方ハ尙ホ其制度ニ付テ研究考慮ヲ要スル
  モノガアル、一箇年之ヲ延期シテ來年尙ホ當局ニ於テハ〓究調查ノ上ニ出直
  シテ豫算ヲ請求シテ貰ヒタイ、二部ニ付テハ原案ヲ認メル、尙ホ其二部ノ訓
  練訓育ノ部面ヲ改善スルガ爲ニ、卽チ今朝來ノ發案權ノ問題ガアリマシタ
  寄宿舍ヲ造ッテヤル、是ガ爲ニ五十何萬圓ヲ卽チ加ヘル、削除シタモノカラ
  云ヘバソレダケヲ又足ス、而シテ專攻科ハ原案ヲ認メル、斯ウ云フコトニ修
  正シタイ、ソレニ付キマシテ私ハ〓育者デアラレ文部大臣モヤラレ、此師範
  〓育ニ付テハ國民〓育ノ源泉トシテ御在職中ニモ深ク考慮セラレタ方デアリ
  マスカラ、此點ニ向ヒマシテ數多質問ヲ致シ、何故ニ、第一部ニ付テ研究考
  慮ヲ要スルナラバ〓究考慮ハシテモ宜シイガ、今年一部ノ改善ノ爲ニ出シテ
  居ル費用ヲ削ル必要ハナイデハナイカ、斯ウ云フ意味デ制度ニ關シ御尋ヲ致
  シ、一面又當局ニ對シマシテ、若シ斯ウ云フ意味デ此豫算ガ減少ヲ來スナラ
  バ、其時ニハ自分ノ考デハ地方費ガヤル、地方費ト申シテ町村費デハナイノ
  デ、府縣費ガヤルノデアルカラシテ、府縣費ガ此今度ノ一部ノ年限延長卽チ
  豫備科ヲ一箇年第一學年トスル制度ヲ勅令ニ於テ定メタ場合ニ於テハ、補助
  費ガ若シ萬一削減セラルヽ場合ニ於テハ其制度ノ實施上ニ何等差支ナイト思
  フ、地方費デ之ヲヤッテ行ク、斯ウ云フ結果ニナル、地方費ノ負擔ヲ增スト
  云フコトノ結果ニ付テハ、甚ダ殘念ナコトデアリマスケレドモ、制度ヲ實施
  スルニ付テハ何等支障ハナイ、卽チ是ハ參考書······全ク參考書デアッテ、元〓
  其參考書ノ備考ハ、當局ノ望ム所ノ希望ヲ表ハシタモノデアル、又之ヲ削ラ
  ムトスル者モ、削ラムトスル修正案モ全クソレニ外ナラヌ、之ヲ削ル一ツノ
  目安ニシタノデアル、果セル哉、今朝鎌田君ノ此發案權ノ問題ニ對スル御答
  二、其意味ヲ御答ヘニナッタノデアリマス、卽チ寄宿舍ヲ、原案ニ目安ノ無
  あいね
  イモノヲ加ヘルト云フコトハ、一向何等差支ナイ、ソレハ唯參考書デアル
  カラ、參考書ノ中ヲ少々增減ヲ致スモ、發案權ヲ侵害シ新ニ議院ノ方デ發案
  スルコトニハナラナイ考デアル、斯ウ云フ御答ガアッタノデアリマス、ソレ
  故私ハ尙ホ疑ヲ質サウト致シマシタガ、明瞭ニサウ御答ニナリマシタカラ
  卽チ昨日來、昨朝來、新聞紙等デ見テ居リマシタシ、又昨日一日ノ色〓ノ紛
  糾ヲ致シテ居ッタ一部ノ要求ヲ、政府ノ計畫ヲ打破シテ二部ダケヲ認メタル
  モノデアルト云フコトハ、此豫算ノ議決ノ權限カラ申シマスルト、何レモ影
  響ハ無イコトデアラウト思フノデアリマス、固ヨリ私ハ修正案ニ反對デアリ
  マシテ、一部ニ對スル費用九十七萬圓程ヲ、此〓育振興ノ急務ナル時ニ方ッ
  テ削減スルト云フコトニ付テハ、意味モ全ク無イコトデアッテ、絕對ニ反對
  ヲ致スノデアリマスガ、事柄ハデス、事柄ノ性質ハ全ク此參考書ノ備考ニ載ッ
  テ居ルコトデアルノデアリマス、政府ノ當局モ曾テ私ノ質問ニ對シテ然答ヘ、
  今朝モ提案者ノ、我〓一同ガ聽キマシタ通リノ答デアルノデアリマスカラ、
  是ハ萬々一、此金額ガ削減セラレマス場合ニ於テモ、當局ハ此目安ノ一ツニ對
  シテ削減ヲセラレタト云フコトデアリマシテ、實施上ニ付テハ地方ガ費用ヲ
  負擔イタシマスナラバ、是ハ又別ノ問題デアリマスガ、地方ガ卽チ從來ノ通
  リ師範〓育費ヲ負擔スルト云フコトニナリマスレバ、當局ノ考ノ通リニ實行
  ガ出來ル、斯ウ了解ヲ致スノデアリマス、ソレヲ前提ト致シマシテ、此點ニ
  付キマシテハ、唯今、澤柳君ガ矢張リ同ジ意見デ、唯文部大臣ガ最高ノ德義
  ノ上カラ絕對ニ反對スルト云フコトデ、卽チ憤然トシテ立去ラレタノデアル
  ガ、併ナガラ豫算ノ款項目ノ議決ノ權限ニ付テハ一向差支ナイコトデアルカ
  ラ、修正案ニ贊成デアル、ソコガ私違フノデアリマスルガ、其點ニ付テ澤柳
  君ノ了解ト私トハ毫モ違ハヌト、斯ウ云フコトヲ前提ニ申上ゲテ置カウト思
  フノデアリマス、唯〓、澤柳君カラ長イ御話ヲ承リマシテ、師範〓育ハ各所
  ニ議論ガアッタ、今日ニ於テ中等〓育ヲ基礎ニシテ之ニ若干年間、二年若ク
  ハ三年ト云フコトデアリマスガ、其修養ヲ加ヘテ、恰モ外國ノ多數ガ今日理
  想ト致シ、又或モノハ實行ヲ致シテ居リマスヤウナ、大學〓育トカ專門〓育
  トカデ小學校〓員ヲ養成スル、ソレガ理想デナクチヤナラヌ、尤モ是ハ直チ
  ニ行フコトハ出來ナイケレデモ、將來ニ於テハサウナクテハナラナイ、又近
  イ將來ニ於テモ豫期サレテ居ルコトデアラウト存ジマスガ、長〓〓育論ヲ承ッ
  タノデ、私ハ之ヲ二度承ルノデアリマス、先般、文政審議會ノ席上ニ於キマ
  シテ卽チ當局ガ時〓言ハレマシタガ、文政審議會デ一名ノ反對ノ外全部ノ同
  意ヲ得タト云フコトデアリマス、其一名ガ卽チ澤柳君デアッタノデアリマス、
  澤柳君ハ御承知ノ通リ多年師範〓育、普通〓育ノコトニ付キマシテハ深キ經
  驗ヲ有セラレテ居ッテ、先程モ師範學校ノ改正ハ誠ニ遲々トシテ進マヌト云フ
  コトヲ云ハレマシタケレドモ、私ハ反對ニ考ヘテ居リマシテ、師範〓育ノコ
  トノ進歩モ澤柳君ノ多年ノ盡力ニ負フ所ガ甚ダ多イト思フノデアリマス、自
  ラ長ク普通〓育ノ局ニ當ッテ、師範制度ノコトニ付テハ最モ精通セラレテ居
  ルノデアリマス、サウシテ唯今ノヤウナ進ンダ理想的ノ考ヲ玆ニ持タレルト
  云フコトニ付テハ又最モ敬服ヲ致ス所ナンデアリマス、サリナガラデス、此
  案ハ遂ニ審議討論ノ後ニ容レマセズシテ、其理由ハソレハ誠ニ望ム所デアル、
  望ム所デアルガ
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  併シ今日ノ狀態ニ於テ殊ニ市町村ノ經濟ガ許サナイ、專門學校程度ヲ卒業シ
  タ者ニハ、如何ニ少クトモ今日ノ小學校〓員ヨリハ多額ノ俸給ヲ與ヘナクチ
  ヤナラヌ、今日市町村ノ經費ハ人口ノ增加ト共ニ、學齡兒童ノ增加ト共ニ、
  年々二十萬圓三十萬圓增シテ行キ居ル、サウ云フ場合ニ、マダ無資格〓員モ二
  萬モ三萬モ居ル、准〓員モマダ三萬モ四萬モ居ル、本當ノ正〓員ハ四分ノ三ニ
  モ足ラヌヤウナ程度ノ場合ニ、此理想ヲ歐羅巴亞米利加等デ或ルモノハ實現
  ヲ致シ、或ルモノハマダ理想ニ持ッテ居ルノデアリマスガ、ソレヲ實施スル
  コトハ、所謂當局ハ之ヲ理想論デアル、サウ云フ意味カラ多クノ者ガ之ニ贊
  同スルコトガ出來マセヌノデ、遂ニ五十人ノ會員中ノ四十九名······或ハ缺席
  者ガアッタカ存ジマセヌガ、澤柳君ヲ除クノ外ハ、卽チ文部當局ノ出シマシ
  タ師範〓育制度ト云フモノニ贊成ヲシテ、マア改善ト名ヅケル案ガ一ツ出來
  タノデス、私ガ申上ゲル迄モナイコトデアラウト思フノデアリマス、其改善
  ノ内容ハト申シマスト云フト、全ク現狀ノ殆ド儘トモ云ヘルノデアリマス、第
  一部ト申シマスルト、小學校カラ聯絡ヲ保チマシテ豫備科ニ這入ル、現在ハ高
  等小學ノ二年カラ豫備科ヲ一年經マシテ、ソレデ後ト四年ヤル、斯ウ云フ制度
  ニナッテ居ルノデアリマスガ、其豫備科ハ地方經濟ノ都合ニ依ッテ之ヲ設ケザ
  ルコトヲ得ル、卽チ其場合ニ於テハ一年節約ヲスルコトニナリマスカラ、三年
  ヲ卒業シタ者ヲ入レル、然ルニ其三年ノ程度ノ高等小學ハ地方ニ今日段々減
  少ヲシテ參リマシテ、五六百位シカナイダラウト思ヒマス、其中カラ採ルト
  云フコトハ至難デアル、斯ウ云フガ爲ニ二年ノ卒業生ガ他ノ場所デ或ハ自學
  自修ヲ爲シテ、三年ノ卒業生ト共ニ受驗ヲ致シ入學ヲスル、卽チ小學校トノ
  聯絡ハ豫備科デ取ッテ居リマスルガ、豫備科ノ置イテ居ラヌ所ニ向ッテハ、聯
  絡ガ圓滿ニ行ハレテ居ラヌ、之ヲ救濟シ補成セムガ爲ニ、文部大臣ガ豫備科
  ノ制度ヲ廢メマシテ、其名ヲ廢メマシテ、或ハ實ニ付テモ改善ヲ加フル所ガ
  アッタノデアリマセウガ、本科ニ致シマシテ、豫備科ヲ名ヲ改名シマシテ、
  本科ノ第一學年トシタ、サウシテ四年程度ニ豫備科ヲ加ヘタ五年ト云フモノ
  ヲ一年カラ五年生迄ヲ置クト云フコトニシタノデアリマス、容積ニ於テハ
  少シモ變ハッテ居ラヌ、矢張リ豫備科ヲ加ヘレバ現在モ五年デアルノデアリマ
  ス、唯地方經費ノ都合上カラ宜イコトデアルケレドモ、亦政府モ希望シテ
  居ルケレドモ、ソレハ從來ノ通リ、高等小學三年カラ採ル、サウシテ四年制
  ト豫備科デ間ニ合シテ行ク、斯ウ云フコトヲ言ッテ居ッタノデアリマス、此點
  ニ關シテ改善ヲ加ヘルト云フコトガ、卽チ小學校トノ聯絡ヲ密接ニシ、又多
  數ノ者カラ良キ生徒ガ採レル、ソレヲ高等小學二年ヲ出テ途中デブラツイテ、
  一年二年三年ト自學自修ト云フコトヲ始メテ、長キ歲月ヲ徒消シテ師範學校
  ニ這入ッテ來ルト云フ者ヲ、是ガ爲ニ救濟シテヤラウ、斯ウ云フノニ外ナラ
  ヌノデアリマス、之ヲ澤柳君ハ、先程歐米ノ大勢ニ照ラスト、或ハ將來、我國
  ノ義務年限ガ八年ニナッタ場合ノ理想等カラ考ヘマスト云フト、誠ニ遠ザカッ
  タルモノデアリマシテ、制度ノ改革ト云フコトニ······改變ト云フコトニ付キ
  マシテハ、其實殆ド無イト申上ゲテ宜イノデアリマス、卽チ現狀ヲ·····現狀
  ノ儘ニ改善ヲ加ヘテ行ク、然ルニ、ソレニ付テハ豫備科ヲ悉ク置カセナケレバ
  ナラヌ、言葉ヲ換ヘテ言フナラバ、今度ノ一年制ト云フモノガ五年制度ノ一部
  ニナッテ出來ル譯デアリマスカラ、之ニ對シテ地方費ノ負擔ガ增スト、是マ
  デ地方費ガ負擔出來ヌト云フコトノ爲ニ、或ハ其他ノ事情ノ爲ニ、附設ヲ致
  シテ居リマセナカッタモノヲ、强制シテ一年トシテ全部ニ置クト、是ガ卽チ一
  ツノ改善デアル、全部ノ改善デハナカラウト思フノデアリマスガ、サウ云フ提
  案ノ考ノ下ニ、此一部學級ニ對シテ〓室ヲ建築シ、卽チ四年デアッタモノガ
  一年殖エルノデアリマスカラ、今豫備科ヲ置イテ居ル所ハ殖エマセヌノデア
  リマスガ、置カヌ所ノ、凡ソ百ノ中デモ、七、八十ダラウト思フノデアリマ
  スガ、八十校バガリノ所ニハ、〓室ヲ建築シナケレバナラヌ、此費用ニ對シ
  テ百五十萬圓程デアリマスカ、ソレヲ補助シテヤル、之ヲ目安ニ立テヽ組ン
  ダモノナノデアリマス、ソレ故ニ他日、〓育制度ヲ改善シ、或ハ澤柳君ノ理想
  ノ如キモノニ近ヅクト、斯ウ云フノニ付キマシテハ、此施設ヲ今イタサスト
  云フコトニ付テハ、何等交涉ノ無イコトデアルノデアリマス、一步デモ、改
  善ノ步ヲ進メルト云フ意味ニハナリマセウガ、少シモ······他日或ハ中學校ヲ
  基礎トシタ專門程度ノ師範學校ヲ造ル場合ニ、是ハ近キ將來ニハ來マスマイ
  ガ、ナカ〓〓費用ノ要ルコトデアリマスカラ、唯〓ノ小學校〓員ノ俸給スラ
  御承知ノ通リ、來年ハ二千萬圓ドウシテモ增加ヲシテ貰ハナケレバイカヌ、
  サウセナケレバ現在ノ〓員ノ俸給半額ニモマダ達セヌ、然ルニ人口ノ增加、
  學級ノ增加ハ年々著シイモノデアリマス場合ニ、此理想ハ無論近キ將來ニハ
  ナカ〓〓困難デアラウト思フ、殘念ナガラ困難デアラウト思ウノデアリマス、
  玆ニ於テカ、一面ニ於テ義務〓育ノ延長ヲ策スル準備トシマシテ、當局ハ專攻
  部ナルモノヲ置イテ居ルヤウデアリマス、專攻部ハ卽チ現在ノ師範學校ヲ出
  マシタ者ガ尙ホ一箇年ヤル、斯ウ云フコトデ、其學力ヲ增進シテ、他日八年
  制ノ兒童ヲモ〓育ガ出來ルト、斯ウ云フ準備ヲ執ッタノデアリマスガ、蓋シ
  其理想カラ見レバ······澤柳君ノ理想カラ見レバ尙ホ甚ダ遠ザカルコト著シイ
  モノナノデアリマス、斯ウ云フコトヲ一面ニ任意ノ制度トシマシテ、卽チ卒
  業生ノ中デ任意ニ尙ホ······尙ホ向上ヲ期スル者ニ對シテ專攻科ノ入學ヲ許
  ス、ソコデ修養ヲセシムル、斯ウ云フ案ヲ採ッタノデアリマス、何モ大シタ
  是ハ問題デナイ、卽チ現在ノ豫備科ヲ置クト云フコトガ二年制ノ高等小學校
  ニ聯絡ヲ密接ニ保チ、其理想ガ制度ノ通リ行ッテ居ラヌ、ソレヲ全國ニ實施
  スル、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、ソレニ外ナラヌノデアリマス、提案者ノ鎌田君
  ガ一箇年考究考慮ヲ加へテ來年、制度ノ改善ヲ持出セト云フ、サウ云フ問題ヂ
  ヤナイノデアリマス、勿論、制度ノ改善考慮ハ不斷ニ考究ヲシナケレバナラヌ
  コトデアリマセウガ、現世ニ於テ、又現在ノ事情ニ照ラシテ、〓員ノ供給增
  加ヲ圖リ、又一面デハ其質ヲ改善スルノ最モ急務ナル今日ニ當リマシテ、
  面デハ義務〓育ノ延長ヲ策スル、サウ云フ時分ニ一步デモ學力ヲ進メテ行カ
  ウト、斯ウ云フ廣ク大キク考ヘマシタナラバ、此案ト云フモノハマア當然ノ
  案デ、我〓ノ方カラ是ハ政府ニ迫ラナケレバナラヌ案デアラウト思フノデア
  リマス、幸ニ財政ノ融通ガ付イテ、貨弊鑄造利益金カラ、農村振興費ト共ニ、
  此師範〓育ニ對シテ、此財政整理ノ今日ニ於テ、四百萬ヲ取ラレテ、サウシ
  テ今一步進メルダケノ改良案ノ實施ヲ地方ニ促スコトガ出來ルヤウニナッタ
  ノデアリマス、其意味ニ於テ、卽チ當局ハ、說明ヲ致シマシテ、師範〓育ノ
  內容ヲ改善シテ優良〓員ヲ供給シ兼テ其不足ヲ補充スルニ足ルベキ施設ヲ講
  ズルハ義務年限延長ノ前提トシテモ極メテ必要ノコトナルヲ以テ經費四百萬
  圓ヲ云々、ト斯ウ云フヤウニ、一面ニ於テハ一步ナリトモ內容ノ改善ヲ致シ、
  一面ニ〓員ノ增加供給ヲ圖ッテ行ク、サウシテ他日、成ルベク近イ將來ニ於
  テ、義務〓育年限延長、若クハ補習〓育ヲ義務トスル、サウシテ今日ノ時勢
  ニ順應セシメルヤウナ方針ヲ採ル、斯ウ云フコトデアルノデアリマスカラ、
  質ト量ト誠ニ十分デハアリマスマイケレドモ、小學〓員ノ養成ニ對シテ、
  若干國庫ガ補助シテ、サウシテ地方ノ施設ヲ全カラシメルニ近ヅカシメルト
  云フ原案デアルノデアリマス、文部大臣ヲヤラレ、或ハ多年文部省ニ御在任
  ニナッタ鎌田君ヤ、澤柳君カラ此案ニ對シテ反對ヲサレ、修正ガ最モ宜イノ
  デアル、修正ハ全國ノ學校ノ共ニ喜ブ、斯ウ云フ御話ヲ承ルニ至ッテ、私
  實ニ意外ノ感ガ致スノデアリマス、元來、一部ガ本體デアリ、二部ガ從體デア
  ルト云フコトニ付テハ、過日來度〓質問應答ヲ重ネマシタコトデアリマスノ
  デアリマスガ、澤柳君ハ、先程カラ師範學校長會議、或ハ茗溪會或ハ、諸種
  ノ團體ニ於テハ此立案ヲ希望シ、決議ヲ致シテ居ル、然ルニ當局ハ其コトヲ
  容レヌ、サウシテ獨斷ニ提案ヲ致シテ文政審議會ノ決議ヲ經テ實施スルノデ
  アル、斯ウ云フ御話デアリマシタガ、由來、御承知ノ如ク、〓育ノ議論ハ殊ニ多
  イモノデアリマシテ、識者ノ間ニナカ〓〓纏ラヌノデアリマス、此議員ノ中ニ
  モ、〓育家ガ數名御居デノヤウニ存ジマスルガ、各自皆異ッタ御意見ガアル、
  嘉納君ハ嘉納君ノ御意見、澤柳君ハ澤柳君ノ御意見、當局ノ岡田君モ又議員ノ
  一人デアラレマスガ、是亦違ッタ意見ヲ持ッテ居ル、サウ云フコトノ爲ニ、此〓
  育ノ施設振興ノ遲レタリシ經過ハ我〓申上ゲルマデモナイ御熟知ノ所ナンデ
  アリマス、嘗テハ學制問題ト申シテ、何デモナイ問題ガ紛糾ニ紛糾ヲ致シテ、
  二十年間結ンデ解ケナカッタ、ソレガ爲ニ高等學校ナルモノハ、宙ブラリン
  ニナッテ、昔ノ通リ一校モ殖エズ、希望者ガ多數アルニ拘ラズ、五校、六校、
  八校位デ、二十年間維持イタシテ居ッタ、所謂學制問題ガ當議院ニ於テモ、年
  年問題ニナッタノデアリマスガ、而モ出來ナカッタノデ、漸ク臨時〓育會議ナ
  ル特別ノ審議機關ガ出來マシテ解決イタシタノデアリマス、今此問題ハ、文
  政審議會ナルモノガ······特設ノ機關ノ殆ド滿場ノ決議ヲ得テ居ルノデアリマ
  ス、可決ヲ得テ居ルノデアリマス、澤柳君一人ノ反對デ、アトハ其特別
  ノ機關ガ殆ド全會一致デ決議ヲ致シテ居ル、ソレモ最近、今年ノ一月
  デアルノデアリマス、サウシテ此四月カラ先ニ申上ゲタ內容デ實施ヲ
  致サムトスル所ナノヲ、又此議會デ豫算審議ノ際ニ制度論ヲ持チ出シ
  テ、〓育制度ノ議論······私論ヲ茲デ鬪ハスコトニナリマシタナラバ、
  〓育ニ關スル新シイ事ハ一ツモ出來ナイト云フコトニナリハシマイカト思フ
  ノデアリマス
  〔「其通リト」呼フ者アリ〕
  文政審議會ナルモノノ決議モ、勿論、澤柳君ノ如キ經驗家カラ見レバ誤レル
  所モアリマセウ、缺漏ハアッタカモ存ジマセヌガ、ソコデ十分ニ審議ヲ致
  シマシテ、此豫算トノ關係モアリマスニ依ッテ、愼重審議ノ上ニ勉强シタ結
  果、唯今申上ゲタヤウニナッテ居ル、若シ夫レ師範〓育ノ改善ニ付キマシテ
  ハ、歐米ノ先例モアリ、十分ニ尙ホ調査スル必要ガアリマセウ、又近キ將來
  ニ、鎌田君······提案者ノ御希望ノ通リ來年ニモ改メテ宜イカモ知レマセヌガ、
  今日ノ原案ニ基ク改正案ハ大シタ改良ヂヤナイ、豫備科ヲ唯一年ト名ツケ
  タダケデ、サウシテ皆各縣ニ置カセル、サウシテ小學校トノ聯絡ヲ宜クスル、
  其間ニ實質モ宜クナッテ行クダラウ、是ハヤッテ見ナケレバ分リマスマイガ、
  サウ云フ意味デアルノデアリマスカラ、是ハ······今ヤ衆議院ノ決議モ經マシ
  テ、サウシテ色〓ノ重大問題ガ尙ホ今明日ニ橫ハッテ居ル際ニ、此進行ヲ
  步デモ阻止スルト云フコトニナルノ結果ニ外ナラヌノデアリマス、サウ云フ
  考ノ下ニ九十萬圓ヲ削ルト云フコトハ、帝國議會殊ニ貴族院ガデス、近年〓
  育ノ振興、〓育費ニ對シテハ何等手ヲ著ケヌノミナラズ、政府ノ當局ニ對シ
  テ此增額ヲ迫リ、振興ヲ迫ッテ居ルコトハ年々ノコトデアリマス、サウ云フ
  場合ニ於キマシテ、今申上ゲマスルヤウナ内容ノ考ニ基キマシタ其補助費ヲ、
  殊更九十萬圓削リマシテ、其結果ハデス、其結果ハ地方費ノ負擔ニナル、若
  シ是ガ成立ッテ參リマシタナラバ、地方費······折角殘ッテ居ル、折角四百萬圓
  取レテワザト殘シタ其金ハ、國庫ニ唯積マレテ居ルダケデアッテ、此財政ノ
  窮迫トモ申セマスマイガ、府縣費ノ增額、之ニ對シテ國家ト同ジヤウナ行政
  整理、財政ノ整理ヲ、昨年カラ又今年來年ニ掛ケテヤラナケレバナラヌト云
  フ時ニ、之ヲ貴族院ガ削ッタ爲ニ、制度ノ改善ハ行ハレヌ、是ハ補助費デア
  リマスカラ、補助費ガナケレバ當然本體ノ府縣ガ負ハナケレバナラヌ、卽チ
  百萬圓近イモノガ、府縣ノ負擔ガ增ス、斯ウ云フ結果ニナルダケノコトデア
  ラウト思ヒマス、ソレハ當局ハ之ヲ削リマシタ所ガ、前ニ申シマシタ通リ、
  豫算ノ項目ニハ何モ關係ガナイ、此蒟蒻版ノ參考書ノ備考ニアル唯當局ノ希
  望ナンデアリマス、又修正者モ······修正案ノ提議者モ此希望ノ目安ニ付テ
  言ハレタコトデアリマス、其結果ガ、修正案ガ通ルト致シマスレバ、當局ハ
  卽チ師範〓育令ヲ改正シテ、豫備科ヲ一年ト名ヅケテ置ク、卽チ文政審議會
  ノ決議ヲ重ンジ······是ハ又重ンジナケレバ文政審議會ガ承知ヲ致シマスマ
  1、四月カラ實施スルト云フコトハ殆ド滿場一致デ出テ居ル、國家ノ公設團
  體デアル、特別ノ重要ナ機關ニナッテ居ル、私設ノ數多ノ茗溪會トカ色〓名
  前ヲ擧ゲラマシタケレドモ、ソレ等トハ全ク違フ、ソコデ可決ヲ致シタコト
  ハ、當局ハ之ヲ遵奉シテ、其意味ヲ承ケテ實施シナケレバナラヌ、又實施ガ
  出來ルノデアリマス、補助費ガナクトモ實施ガ出來ル······補助費ノ三百萬圓
  程ヤレバ、貰ハヌヨリ宜イノデアリマスカラ、地方費モ、二部ヲ增加シ、專
  攻科ヲ置カレテ、其方ニ多少ノ負擔ヲシテモ、其負擔ハ百萬圓デアリマス、サ
  ウシテ一方デハ、尙ホ此制度ヲ考究シテ來イ、考慮シテ來イ、來年出直シテ
  來イ、斯ウ云フコトダケデハ、〓育ノ振興ヲ一步デモ阻止スル、斯ウ云フコ
  トノ結果ニナルヨリ外ハナイ、私ハ斯ノ如キ考ヲ持チマシテ、希ハクハ提案
  者モ修正案ニ付テ御反省ヲ願ッテ、御撤囘ヲ願ヒ、滿場一致デ、衆議院可決
  通リ四百萬圓ノ御可決ヲ願ヒタウ存ジマス、簡單ニ······
  〔拍手起ル〕
  〔鎌田榮吉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/36

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• 037・鎌田榮吉

  ○鎌田榮吉君　私ハ委員長ノ報告ニ贊成ヲ致シマス者デアリマス、其理由ヲ
  簡單ニ述ベタイ、最早贊成演說ト致シマシテハ澤柳博士ノ詳細ナル御辯明ガ
  アリマシテ、大抵、此各項ニ關スルコトハ盡サレテ居ルヤウデアリマス、成ル
  ベク重複ニナル部分ハ省キマシテ、申上ゲヤウト思ヒマス、此修正案ヲ提出
  イタシマシタニ付テハ、先刻來、最モ重大ナル結果ヲ惹起スデアラウト云フ御
  懸念ノ御演說モアリマシタ、是ハ貴族院トシテ容易ニ豫算ニ手ヲ著クベキモ
  ノデナイ、若シ之ヲ爲シタナラバ容易ナラヌ結果ヲ惹起スデアラウ、其責任
  ヲ貴族院ガ負ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ御論ガアリマシタ、成程、大キク言
  ヘバサウ云フコトデアル、併ナガラ實際ハ私ハ決シテサウ云フモノデハナカ
  ラウト思フ、現ニ文部大臣ハ豫算ニ手ヲ著ケルコトヲ承認シテ居ラレルノデ
  アリマス、文部大臣チヤナイ、政府ガ承認シテ居ルト私ハ見テ居ル、如何トナ
  レバ、最初、此九十七萬圓ヲ削ルト云フコトハ、隨分交渉ガアルヤウデアリマ
  ス、金ヲ削ルダケハ宜シイ、併ナガラ苟モ主義ノ問題ニ付テハ賛成ハ出來ナ
  イカラ絕對ニ反對スル、文部大臣ハ昨夕、第三分科會ニ御出席ニナリマシテ、
  自分ハ提出者ノ說明ヲ聽イテ意外ニ思フ、是マデハ唯九十七萬圓ノ金ヲ削ル、
  斯ウ云フコトデアル、成程、削ラレルコトハ少々困ルケレドモ、何トカソレハ
  遣繰リモ付クダラウカラ、ソレナラバ先ヅ此際、ソレヲ贊成シヤウト思ッテ參ツ
  タ所ガ、何ゾ圖ラム、其内容計畫ヲ、提出者ハ變更セムトシテ居ル、是ハ自分
  ノ主義ニ關係スルカラ、苟モ主義ニ反シテマデ贊成スル譯ニ行カヌ、故ニ自
  分ハ絕對反對デアルト言ッテ席ヲ蹴立ッテ、御立チニナッノタデアリマス、併
  シ私ハ岡田君ハ固クナリ過ギタト思フ、ソンナニ大キナコトデハナイ、金ノ
  大小ハ私ハ申サヌ、併ナガラ其岡田サンハ十分之ヲ全部御容認ニナッテ、政府
  モ亦之ヲ十分善處セラレテ然ルベキ問題デアルト、斯樣ニ考ヘル、其所以ヲ
  申セバデス、此私ハ主義ヲ決シテ攻擊スルノデハナイノデアリマス、第一部
  ニ於ケル下ヘ一年延バスト云フコトヲ暫ク見合セヲ願ヒタイ、又第二部ノ寄
  宿舍ガナクテハ······豫ネテ文部大臣モ二部ノ者ハ兔角規律ガナクテイカヌト
  カ、或ハ〓育ノ技術ニ於テ缺クル所ガアルトカ、訓育ニ於テ缺クル所ガアル
  トカト云フコトヲ始終御憂慮ニナッテ居リマシタカラ、其點ヲ改善スルガ爲
  ニハ此寄宿舍ニ入レテ、サウシテ十分ニ訓育ヲ加ヘ、又〓師タル所ノ十分
  ナル品性ヲ陶冶シナケレバナラヌ、ソレヲ唯飼放シニシテ、下宿屋カラ通フ
  トカ何トカ云フヤウナコトデハ甚ダ是ハ心配ダカラ、卽チ此方ニ百五十何萬
  圓ノ金ヲ使ッテ、サウシテ一部ノ方ニ於テハ二百五十三萬圓ノ金ヲ削ッタナラ
  バ彼レ此レ相控除シテ九十七萬圓ノ金ハ殘ル、是ハ決シテ金ヲ出シ澁ッテ之ヲ
  削ルノデハナクテ、其彼レ此レ相調節シタ結果、此金ガ殘ルノデアル、而シテ
  其金ト云フモノハ、一度得タモノヲ再ビ得ルコトガ出來ナイヤウニナルトカ、
  〓育ノ爲ニ其資源ヲ失フカト云ヘバ決シテサウデナイ、特別會計ノ卽チ基金
  ニ是ガ繰入レラレルノデアル、特別會計ノ一億三千萬圓ノ利子ガ六百五十萬
  圓、其內、四百萬圓ト云フモノヲ師範〓育改善ノ方ニ廻サレタ、ソレヲ卽チ元
  へ戾スト云フ譯デアリマスカラ、卽チ又之ヲ來年度ニ於テ使フト云フコトハ
  宜シイ、サウシテ見レバ主義ニ於テモ違ハナイノデアル、金ヲ削ルコトヲ容
  認シテ宜シイ、主義ニ於テドウシテモ同意ガ出來ナイト云フ御說デアリマシ
  タケレドモ、主義モ別ニサウ大シタ違イハナイノデアル、主義ニ於テ違ハズ、
  又金ニ於テ差支ナケレバ、之ヲ丸呑ミニシテシマッテモ、チヨットモ文部大臣
  ノ面目ニハ關ハラナイノデアル、ソレヲ一シ御逹觀ニナッタナラバ、此案ニ
  ハ忽チ私ハ御贊成下サルデアラウ、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、ケレドモ今
  日マデマダ其報ニ接シナイノデアル、ソコデ折角御計畫ニナッタ一年ヲ下ヘ
  延バスト云フコトヲ、何故ニ御考慮ヲ願ッテ一年ノ間御延バシヲ願フカト云フ
  ノニ、是ハ餘程重大ナコトデアル、此事ハ先刻來、僅カ一年ヲ下ヘ延バスノヂ
  ヤトカ、高等小學二學ヘ繫グノヂヤト云フヤウナコトデ、頗ル輕易ナコトヲ私
  ガ阻止スルト云フヤウニ、田所君其他御述べニナリマシタケレドモ、是ハ非
  常ニ、一度ヤリマスト容易ナラヌ結果ヲ生ズル爲ニ、一度行フトナレバ百年
  モ續ケル考デナケレバナラズ、又之ヲチヨットヤッテ惡ケレバ直スト云フヤウ
  ナコトハ容易ニ出來ヌコトデアル、學校ノコトハ諸君モ御承知ノ通リ頭ヲ繼
  グト云フコトハソレ程デナイガ、足ヲ繼グト云フコトハ大變デアル將來宜ケ
  レバ宜イ結果ヲ殘シマスケレドモ、惡ケレバ隨分厄介ナモノデアル、ソレデ
  アルカラシテ是ハ十分御考ヲ願ハナケレバナラヌ、斯樣ニ申スノデアリマス、
  其所以ヲ申シマスト云フト、私モ決シテ素人考デ之ヲ輕〓シク此案ヲ出シタ
  譯デハナイノデ、第一、此金ト云フノハ所謂〓育改善資金ト云フ、最初ノ案
  ニハ〓育改善資金デ師範學校ノ〓育ヲ改善スルト、斯樣ニ法律ノ趣旨ガ出來
  テ居リマシタノヲ、之ヲ修正セラレマシテ、唯〓育改善ト、斯ウ云フコトニ
  ナッタノデアリマス、然ラバ此全部ノ金額ヲ師範學校ノコトノミニ使フトハ
  限ラナイ、隨分〓育上ノ種々ナ施設スベキコトガアルノデアリマス、例ヘバ
  甚ダ畏レ多イコトデアリマスガ、東宮御成婚ノ際ニ當リマシテ、其御記念トシ
  テ一百萬圓ノ御内帑ヲ下賜セラレマシタ、是ハ卽チ貧民〓育ノ爲ニ下賜ニナッ
  タノデアリマス、貧民ニシテ所謂義務〓育ヲ受クルコトノ出來ナイ者ガ數十
  萬ヲ算ヘテ居ルノデアル、然ルニ明治五年ノ學制頒布ノ際ニ仰セ出サレタノ
  ニハ、邑ニ不學ノ徒ナク家ニ不學ノ人ナカラシメム、ト云フコトノ、誠ニ優渥
  ナル御言葉ヲ賜ハッテ居ルノデアリマス、蓋シ今日ニ至ッテモ尙ホ數十萬ノ所
  謂此不學ノ徒ノアルト云フコトヲ痛ク御憂慮ニナリマシテ、斯ノ如キ優渥ナ
  ル御思召ヲ我ガ〓育界ハ蒙ッタヤウナ譯デアル、例ヘバソレ等ノコトモ第一
  考ヘナケレバナラヌ、併ナガラ私ハ今之ヲ必シモ主張スル譯デハナイノデ、
  當局者ノ種々御考ニ依ッテ御施設ニナッテ宜シイノデアリマスケレドモ······其
  他種々ノコトガアリマス、私ガ申ス迄モナク〓育上施設スベキコトガ澤山ア
  ル、而シテ資金ノナイ爲ニ止マッテ居ルコトガ澤山アル、今囘ハ師範學校ニ
  四百萬圓ヲ使フト云フコトハ至極宜シイト思フ、若シ五百萬圓ナラバ五百萬
  圓使ヒタイ、サウシテ之ヲ使フニ當ッテハ先ヅ或事ハ一時、例ヘバ臨時費ヲ支
  給スルトカ、又ハ一時之ヲ補助シタナラバ、他日ハ地方ノ獨力ニ依ッテ之ヲ經
  營スルコトガ出來ルト云フナラバ、一時ノコトトシテ宜シイ、又或事ハ永久
  ニ補助シテ宜シイ、所ガ一年ヲ下へ延バスト云フコトニナリマスト云フト、
  種々ノコトヲ玆ニ考ヘナケレバナラヌ、之ヲ若シ何等カノ事情ニ依ッテ此補
  助ヲ止メル、例ヘバ此特別基金一億三千萬圓ヲ元資ヲ使ハズシテ利息ダケ使ツ
  テ居ルト云フコトハ何故デアルカト云フコトヲ大藏大臣ニ質問イタシタ時
  ニ、是ハ自分ハ國家有事ノ際ニ當ッテ必シモ戰爭トハ申サヌケレドモ、或場
  合ヲ想像シテ見ルト云フト、一億二億ノ金ハ直グ無ケレバナラヌコトデアル、
  然ルニ之ヲ公債ニ募ルト云ッテモ、ナカ〓〓半月ヤ一月デハ募レナイ、然ラバ
  相當ノ多額ノ金ノアルコソ幸ヒ、之ヲ或時ノ爲ニ取ッテ置カナケレバナラヌ、
  ソレデアルカラ資金ヲ使フコトハイケナイト云ハレタ、此金ト云フモノハ何
  等國家ノ有事ノ際ニ於テハ使ハレテシマウ金デアル、現ニ日〓戰爭ノ時、支那
  カラ取ッタ償金ノ中ノ一部一千萬圓ト云フモノヲ〓育ノ基金トシテ政府ガ之
  ヲ特別ニ置カレタケレドモ、日露戰爭ガ起ルト云フト此一千萬圓ハ無クナッ
  テシマッタ、其先ヅ利息ニ相當スルモノヲ之ヲ支給シヤウト云フコトニナッタ
  ガ、ソレモ岡田文部大臣ノ時ニ、今囘止メテシマッタ、サウスルト此金ト云
  フモノハ永久ノモノデナイカモ知レナイ、若シ下ヘ延バス所ノ一年ト云フモ
  ノヲ多額ノ金ヲ使ヒマシテ之ヲ施設シタナラバ、是等ノ場合ニ於テ此基金ヲ
  處分シテシマッタ場合、地方ノ負擔ニナルト云フコトハ明カノ話デアル、地
  方ハ其多額ノ負擔ヲ忽チニ受ケナケレバナラヌ、サウシテ見レバ地方ノ負擔
  ニ堪ヘナイ縣ハ廢メテシマウ、堪ヘル縣ハ其重荷ヲ背負ハナケレバナラヌト
  云フコトハ眼前ニ見ヱテ居ル、之ヲ思ハズシテ私ガ何カ意地惡ク之ヲ阻止ス
  ルト云フヤウニ御考ヘニナルト云フコトハ、是ハ大變ノ間違ノ話デアル、ソ
  レカラ是ハ資金ノコトデアリマス、若シ又之ヲ廢メルト云フコトガ起ッタ時
  ニ、學校ノ或級ヲ廢メルトカ、學校ヲ廢メルトカ云フコトハ、ナカ〓〓出來ナ
  イコトデアル、例ヘバ工科學堂ヲ廢メルト云フ時ニハアノ通リノ騷ニナル、是
  ハ學校全部ヲ廢メルノデアリマス、又學級ヲ廢メル、或科ヲ廢スルト云フコ
  トハ、非常ニ騒動ニナルト云フコトハ隨分是ハ學界ニ於テ常ニ諸君ノ聞見セ
  ラレテ居ル所デアル、土臺、其騷動ガナクテモ、其募集ヲ差止メテ、サウシテ
  是マデアル所ノモノヲ卒業スルマデハ半端ノモノヲ始終送ッテ行ク、サウ云
  フ學校ニナルト云フト、段々人ガ減リ〓〓シテ、終ヒニハ三人五人ノ爲ニ學級
  ヲ組ンデ置カナケレバナラヌト云フコトガ、隨分此學校ニハアルコトデアル、
  ソレハ師範學校ハ給費デアリマスカラ、サウマデ減ルコトハアリマスマイケ
  レドモ、矢張リ斯ウ云フコトハ豫メ考ヘテ置カナクチヤナラヌ、ソレカラ今
  豫科ヲ置イテ居ル、高等小學二年ヨリ續クコトガ出來ナイカラ、三年修業ノ
  者ハソレ程ナイ、從テ豫科ヲ置イテ、豫科ト云フ下駄ヲ履イテ漸ク是ガ問ニ
  合ッテ居ル、此豫科ト云フモノヲ置クト同ジコトデアル、豫科ヲ本科一年生
  ト云フ名前デ以テ、或ル縣〓デ豫科ヲ置イテ居ルノデアルカラ何デモナイコ
  トデアル、斯ウ云フ風ニ田所君ハ仰シヤルノデアリマスケレドモ、是ガデス、
  實際豫科ト云フモノハドウ云フ結果ニナッテ居ルカト云フコトヲ御調べニナッ
  タノデアリマセウカ、豫科ノナイ所ハ、試驗デ採ルノデアッテ、試驗デ以テ
  二年卒業ノモノヲ試驗デ採ルノデス、ソレカラ豫科ヲ置イテ居ル所ハ二年ヲ
  卒業シタモノハ當然ノ權利トシテ採ルノデス、多ケレバ選拔試驗モシマセウ
  ガ、所ガ其結果ハドウデアリマセウカ、比較對照シタナラバドウデアルカ、
  豫科カラ出タ所ノモノ必シモ良クナイ、矢張リ二年卒業ノモノヲ選拔シテ
  試驗デ採ッタ方ガ成績ガ宜シイノデアル、態〓一年ノ豫科ト云フモノヲ設ケタ
  所ノ成績ト云フモノハ頗ル劣惡デアルト云フコトハ、是ハ師範〓育ニ經驗ノ
  アル所ノ老練ナル〓育家カラ常ニ聞ク所デアル、全部ハサウデナイカモ知レ
  ヌケレドモ、一部ハ確ニサウ云フ場合ガアルノデアル、ソレカラ試驗ヲシテ
  採ルト云フコト······二年ヲ卒業シテ、サウシテフラ〓〓遊ンデ居ッタ者ヲ試
  驗デ以テ搔キ集メルト宜シクナイ素質ノ惡イモノガ這入ッテ來ル、成程サウ
  云フ場合モアリマス、併ナガラ此試驗デ採ルト云フコトハ決シテ結果ハ惡ク
  ハナイノデアリマス、殊ニ此財界ノ好景氣ノ時ハ師範學校ニ這入ルヨリハ米
  屋ノ小僧ニ行ッタ方ガ宜イ、或ハ何處カノ會社ノ給仕ニナッタ方ガ宜イト云フ
  コトデ、斯ウ云フ學校ニ這入ッテ來ナイ、所ガ此節ハドウデセウ、ソレガ師
  範學校ノ內ニ蝟集シテ居ル、其中カラ選リ取リ、見取リ、勝手ノモノヲ採ル
  ノデアリマスカラシテ、非常ニ存外良イ人ヲ學校ニ收容スルコトニナッテ居
  ルノデアル、ソコデ此師範學校長トカ、或ハ澤柳君ノ仰シヤッタ所ノ〓育諸
  團體、皆經驗ノアル人、皆老練ナル〓育家デアル、數十年ノ苦心ヲ嘗メテ來
  タ所ノ此諸先生ノ說ニ徵シテモ、今日下ニ延ベルト云フコトヲ行フト云フコ
  トハ、實ニ奇怪千萬ノコトデアル、斯ノ如キコトハ頗ル時勢後レノ古イ考カ
  ラ起ッテ居ル、併ナガラ文政審議會デ之ヲ議決シタカラ是非ヤラナケレバナ
  ラヌ、斯ウ云フ御說ヲ御唱ヘニナル、私モ文政審議會ノ一員デアリマス、又
  文政審議會ノ權威ト云フモノハ十分ニ尊重シテ居ルノデアル、權威アル所ノ
  機關ヲ設ケルト云フコトガ、貴族院ノ建議トナリ、其結果、設ケラレタモ
  ノガ文政審議會デアリマス、是ハ大體ノ上カラ〓育ノ事ヲ見ル、是等ノ
  卽チ會員トナッテ居ル方ハドウ云フ方デアル、例ヘバ前國務大臣デアル、
  或ハ現樞密院顧問官デアル、或ハ各省ノ現任次官デアルトカ、其他〓
  育界ノ泰斗ヲ以テ充タシテ居ル、實業界ノ泰斗ヲ以テ充タシテ居ル、
  又軍人諸君モアレバ議員諸君モアル、皆大體ノ上カラ〓育ヲ見ルコト
  ニ於テハ、蓋シ此世間ノ〓育家ナルモノヨリモ一頭地ヲ拔イテ居ルト云
  フコトハ確ニ見テ居ル、併ナガラ師範學校ノ此一年ヲ拵ヘヤウトカ、或ハ高
  等小學二年カラ續クガ宜イカ、豫科ヲ置クガ宜イカ、三年ガ宜イトカ、サウ
  云フコトニ至ッテハ餘リ知識ノ無イ諸君ガヤッテ居ル、サウ云フ知識ノ有ル方
  ハ餘リ國務大臣ニナッテ居リマセヌ、樞密顧問官ニナッテ居ラナイ、ケレドモ
  國家ノ大體ノ上カラシテ達觀セラレテ、サウシテ〓育ノ施設ヲスルト云フコ
  トハ、是等權威アル所ノ、ソレ等有力ナル、又逹見アル所ノ諸君ニ依ッテ組織セ
  ラレタ文政審議會ト云フモノハ、非常ナル私ハ權威アル所ノ機關トシテ、之
  ヲ尊重スルノデアル、故ニ私ガ此提出イタシタ所ノ修正案ニ於テモ、文政審
  議會ノ決議ニナッタコトハ成ルベク之ヲ削ルマイト云フコトデ以テ、第一、
  二部ノ學級增加、又ハ一部ニ最モ有益ナル所ノ專攻科、二部ニ有益ナル所ノ
  專攻科、此專攻科·····二部ト一部ニ共通スル所ノ專攻科、又ハ二部ノ學級增
  加卽チ今日ノ〓育界ノ〓員缺乏ヲ補フ所ノ爲ニハ、最モ良イ所ノ方法デア
  ル二部ノ增學級ト云フヤウナコトヲ、皆私ハ是認シテ、之ヲ修正案ニ加ヘテ
  居ルノデアル、唯惜ムラクハ此一番下ノ一年ヲ延長スルコトダケガ、ドウシ
  テモ唯今申上ゲタ所ノ理由ニ依ッテ、少シク御考慮ヲ願ヒタイ、又出來ルナ
  ラバ此次ノ議會迄ニ之ヲ御延バシヲ願ッテ、若シ是レ以上ノ方法ガアレバ其
  方法ニ依ルカ、又ソレ等ノ方法ヲ一切採ラヌト云フコトノ決心ガツイタナラ
  バ、ソレニ依ッテ施設ヲシテ行クト云フ、種々ノ茲ニ考慮ノ餘地ガアル、併
  ナガラ文部大臣ハ其點ニ付テ非常ニ御熱心デアリマシテ、豫テ是非是ヨリ外
  ノ途ガナイト、斯樣ニ確信セラレテ居ルノデアリマス、併ナガラ國家ノ〓育
  ハ文部大臣一人ノ考ヲ以テ之ヲ決メルト云フコトハ、頗ル危險ナコトデアル、
  成ルベク多數ノ人ノ說ヲ聽ク、成ルベク諸外國ノ例モ參照シテ、サウシテ十
  分ニ〓究ニ研究ヲ重ネテ、サウシテ之ヲ實行セラルヽト云フコトハ、國家ノ
  〓育ノ爲ニハ最モ大切ナ事デアリマス、斯ノ如キ理由ニ依リマシテ私ハ此修
  正案ヲ贊成スル次第デアリマス、ドウカ此點ニ付キマシテ十分ナ御了解ガ願
  ヒタイ、若シ尙ホ疑ハシイ點ガアレバ、私ハ卽チ修正案ノ提出者デアリマス
  カラシテ、其質疑ニ向ッテ御答辯ヲ致スコトヲ辭サナイノデアリマス、而シ
  テ先刻、阪谷男爵ノ御懸念ニナリマシタ師範學校〓育費ニ向ッテ原案ニ無イ
  所ノ案ヲ玆ニ加ヘテ、卽チ寄宿舍ヲ建設スルト云フコトハ、少シク疑ハシイ
  ト云フ、發案權ヲ侵害スル虞レガアルト云フコトハ、先刻私ガ一通リ御答辯申
  上ゲマシタ、併シ其時ハ書類ガアリマセヌカラ、唯今此處デ申上ゲマスルガ、
  是ハモウ先刻、田所君ノ仰セラレタ如ク、第五款ノ三項ノ第一目師範〓育費補
  助四百萬圓トアッテ、其外ニ何モ無イ、全ク其理由、四百萬圓ハ何故ニ要ス
  ルカト云フ理由ニ過キナイノデアリマスカラ、其理由ガ寄宿舍ト云フモノヲ
  造ル第一部ハ造ラナイト云フコトノ爲ニ玆ニ金ガ減ッテ來テ三百餘萬圓ノ
  金ガ要ルト云フコトニナッテ居ルノデアリマスカラシテ、是ハ決シテ發案權
  云々ト云フコトニ少シモ關係ナイ、サウ云フ文字ハ豫算面ニハナイ、豫算ノ
  變更ニハナラナイ、此點ハ十分各位ニ於カレマシテモ、御懸念ノナイヤウニ
  願ヒタイト思フノデアリマス、私ノ申スコトハ、大體、此修正案ノ趣意ト云フ
  モノハ是ヨリ外ニナイノデアリマス、私ハ決シテ深遠ナル事ヤ、遠イ事、或ハ
  深イ事ヲ申スノデハナイ、目下ノ此案ヲ決議スルニ當ッテ、此一點ダケハド
  ウカ御考ヲ願ヒタイト云フコトヲ、切ニ當局ニ向ッテ懇望シテ居ル譯デアリ
  やっくる願ハクバ政府モ十分ナル雅量ヲ以テ之ヲ容認セラレ、最初ニ申シマシ
  タガ如ク、金ノ點ナラ宜シイ、金ノ點ヨリ外ニナイ、此豫算ヲ見ルト師範學
  校費補助四百萬圓、是ガ三百萬圓ニナルト云フコトハ、政府ニ於テ少シモ御
  構ヒナイコトナンデ、手續サヘ經レバ宜シイ、ソレカラシテ文部大臣ハ主義
  ガ違フカラシテ同意ハ出來ナイ、主義ハ少シモ違ハナイ、理由、施設ニ於テ
  少シク變更ヲ來シタ、ソレハ卽チ文部大臣ノ主義ヲ徹底スル上ニ於テモ、
  此施設ノ變更ハ必要デアル、我〓ノ考ヲ徹底スル上ニ於テモ、此變更ハ必要
  デアルノデアリマスカラ、何モ政府ト我〓ノ間ニ違ッタコトハナイデス、是
  ガ非常ナ政局ノ動搖ヲ來ストカ、衆議院貴族院ノ間ニ扞格ヲ生ズルトカ、サ
  ウ云フコトハ毛頭ナイト、私ハ頗ル樂觀シテ居ル次第デアリマスガ、併ナガ
  ラ樂觀ノ方ガ私ハ道理アルト斯樣ニ考ヘテ居ル、ドウカ政局ヲ十分ニ圓滑ニ、
  所謂善處セラレムコトヲ總理大臣ニ向ッテ希望スル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/37

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• 038・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　討論終結ノ動議ヲ提出イタシマス、何卒御贊成ヲ請ヒ
  マス
  〔「賛成」又「賛成デハアリマセヌ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/38

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• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終結ノ動議ハ二十名ノ贊成者ヲ要シマス
  〔「賛成ト」呼フ者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/39

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• 040・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終結ノ西大路子爵ノ動議ニハ定規ノ賛成者ガ
  アッタト認メマス、規則ニ依リマシテ討論ヲ用ヰズ採決イタシマス、西大路
  子爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/40

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• 041・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス、本院規則第百十八條ニ依リマ
  シテ、採決ハ記名投票ヲ以テ致シマス、······暫ク御靜肅ニ願ヒマス、議題ト
  致シマスノハ豫算委員長ノ報告ニ係ル修正案ヲ議題ト致シマスカラ、左樣御
  承知ヲ願ヒマス、本院規則第百十九條ニ依リマシテ、問題ヲ可トスル議員、卽
  チ修正案ヲ可トスル議員ハ白色票、問題ヲ否トスル議員、卽チ修正案ニ反對ノ
  諸君ハ靑色票ヲ、投票凾ニ御投入ヲ請ヒマス、本日ハ演壇ニ御出デヲ願ヒマ
  シテ御投票ヲ願ヒマス、而シテ議員諸君ノ氏名ハ書記官ヲシテ點呼イタサセ
  マセヌカラ、御著席順ニ於テ御登壇ヲ請ヒマス、松方公爵ヨリ御登壇ヲ願ヒ
  マス
  〔投票執行〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/41

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• 042・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　投票漏レハゴザイマセヌカ······投票漏レナイト認
  メマス、是ヨリ開票イタシマシテ書記官ヲシテ計算ヲ致サセマス
  〔書記官投票ヲ計算ス〕
  〔參照〕
  贊成百六十七名
  反對九十七名
  贊成者氏名
  侯爵蜂須賀正韶君侯爵四條隆愛君子爵伏原宣足君
  伯爵松木宗隆君伯爵中川久任君伯爵林博太郞君
  伯爵松平賴壽君伯爵溝口直亮君伯爵勸修寺經雄君
  伯爵小笠原長幹君伯爵堀田正恒君伯爵大原重明君
  伯爵酒井忠正君子爵唐橋在正君子爵靑山幸宜君
  子爵土方雄志君子爵大宮以季君子爵京極高德君
  子爵山口弘達君子爵高倉永則君子爵藤谷爲寬君
  子爵樋口誠康君子傳稻垣太祥君子爵毛利高範君
  子爵松平直平君子爵松平直德君子爵靑木信光君
  子爵冷泉爲勇君子爵牧野忠篤君子爵酒井忠亮君
  子爵永井尙敏君子爵伊集院兼知君子爵堀河護麿君
  子爵五辻治仲君子爵井上匡四郞君子爵細川立興君
  子爵前田利定君子爵櫛笥隆督君子爵森〓君
  子爵西大路吉光君子爵五條爲功君子爵柳生俊久君
  子爵京極高備君子爵大河內正敏君子爵今城定政君
  子爵水野直君子爵吉田〓風君子爵大給近孝君
  子爵本多忠鋒君子爵豐岡圭資君子爵 藪篤麿君
  子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君子爵片桐貞央君
  子爵大河內輝耕君子爵松平乘長君子爵堤雄長君
  子爵白川資長君子爵野村益三君子爵池田政時君
  子爵丹羽長德君子爵米津政賢君子爵〓岡長言君
  子爵八條隆正君子爵立花種忠君子爵伊東二郞丸君
  子爵新庄直知君子爵曾我祐邦君子爵秋田重季君
  子爵渡邊千冬君子爵牧野一成君子爵戶澤正己君
  子爵渡邊七郞君子爵秋元春朝君子爵西尾忠方君
  子爵裏松友光君子爵大浦兼一君子爵蒔田廣城君
  子爵竹屋春光君子爵板倉勝憲君子爵米倉昌達君
  大山綱昌君男爵北里柴三郞君大久保利武君
  男爵村上敬次郞君岡野敬次郞君男爵山本達雄君
  水上長次郞君富谷 は太郞君佐藤三吉君
  玉利喜造君水野鍊太郞君寺田榮君
  男爵名和長憲君鈴木喜三郞君男爵高千穗宣麿君
  和田彥次郞君河村讓三郞君小松謙次郞君
  岡喜七郞君土方寧君荒井賢太郞君
  男爵南岩倉具威君男爵平野長祥君男爵山内豐政君
  志水小一郞君笠井信一君神野勝之助君
  若林賚藏君男爵若王子文健君勝田主計君
  男爵德川厚君男爵眞田幸世君男爵永山武敏君
  男爵黑川幹太郞君男爵長松篤業君男爵島津長丸君
  男爵福原俊丸君男爵安藤直雄君男爵今園國貞君
  男爵郷誠之助君男爵藤堂高成君男爵池田長康君
  鮫島武之助君石渡敏一君澤柳政太郞君
  福永吉之助君橋本圭三郞君山之內一次君
  中村純九郞君南弘君鎌田榮吉君
  杉田定一君志村源太郞君室田義文君
  安樂兼道君馬場鍈一君湯地幸平君
  宮田光雄君佐竹三吾君小池靖一君
  馬越恭平君藤山雷太君山田斂君
  佐藤傳兵衞君藤武喜助君桑原善吉君
  山内佐五兵衞君三田義正君竹村與右衞門君
  鎌田勝太郞君犬上慶五郞君金杉英五郞君
  岡本榮吉君二階堂三郞左衞門君中村圓一郞君
  藤本閑作君高橋源次郞君阿部秀逸君
  花井卓藏君近岡理三郞君田中〓文君
  平尾喜三郞君横山章君三木與吉郞君
  溝手保太郞君成〓信愛君
  反對者氏名
  公爵松方巖君侯爵鍋島直映君候爵德川圀順君
  侯爵德川義親君侯爵細川護立君侯爵大隈信常君
  侯爵佐佐木行忠君男爵野村素介君山脇玄君
  男爵木越安綱君服部一三君男爵加藤定吉君
  男爵大井成元君淺田德則君男爵山根武亮君
  櫻井錠二君大島健一君嘉納治五郞君
  北條時敬君石原健三君男爵宇佐川一正君
  男爵田健治郞君渡邊暢君男爵坂本俊篤君
  男爵松井慶四郞君男爵西紳六郞君荒川義太郞君
  石塜英藏君內田嘉吉君男爵阪谷芳郞君
  男爵山内長人君福原鐐二郞君男爵新田忠純君
  中村是公君上山滿之進君男爵鍋島直明君
  男爵斯波忠三郞君男爵船越光之丞君男爵千秋季隆君
  男爵北河原公平君男爵北大路實信君男爵安場末喜君
  男爵中島久萬吉君男爵神山郡昭君男爵楠本正敏君
  男爵大鳥富士太郞君男爵黑田長和君男爵藤村義朗君
  男爵二條正麿君男爵小畑大太郞君男爵野田龜喜君
  男爵東郷安君男爵伊藤文吉君男爵中川良長君
  男爵辻太郞君男爵松岡均平君男爵矢吹省三君
  男爵周布兼道君男爵寺島敏三君男爵高崎弓彥君
  男爵藤田平太郞君男爵安川敬一郞君男爵伊江朝助君
  男爵高木喜寬君男爵稻田昌植君石井省一郞君
  仁尾惟茂君阪本釤之助君倉知鐵吉君
  高田早苗君井上準之助君松本烝治君
  二上兵治君川上親晴君菅原通敬君
  伊澤多喜男君田所美治君西久保弘道君
  岡田文次君永田秀次郞君德富猪一郞君
  大谷嘉兵衞君樺山資英君片岡直輝君
  佐藤友右衞門君御木本幸吉君村野常右衞門君
  今井五介君矢口長右衞門君橋本辰二郞君
  小林八右衞門君西川甚五郞君勝田銀次郞君
  高橋隆一君富永猿雄君靑木才次郞君
  小川貞一君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/42

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　記名投票ノ結果ヲ御報告ニ及ビマス、白色票ヲ投
  ジタル者、卽チ修正案ヲ可トスル者百六十七、靑色票ヲ投ジタル者、卽チ修
  正案ヲ否トスル者九十七、故ニ修正案ハ可決セラレマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/43

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• 044・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ニ議題ニ供シマスノハ修正セラレマシタ外ノ總
  豫算ヲ問題ニ供スト御承知ヲ請ヒマス、原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/44

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• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/45

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• 046・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ハ大正十四年度各特別會計歲入歲出豫算案全部
  ヲ議題ト致シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/46

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• 047・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/47

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• 048・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ハ日程第二ヨリ第五マデノ豫算案全部ヲ問題ニ
  供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/48

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• 049・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/49

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• 050・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　玆ニ御諮リヲ致シタイコトハ日程第六ヨリ第八マ
  デノ追加豫算ハ日下本院ノ委員會ニ於テ審查中ナル貴族院令中改正案、同盟
  及聯合國ト獨逸國及其ノ同盟國トノ戰爭ニ因リ損害ヲ被リタル帝國臣民ノ救
  恤ニ關スル法律案ト關係アルヲ以テ、本案ハ此決議ヲ見合セタク考ヘマス、
  御異議ハゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/50

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• 051・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  山東京市永正点

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/51

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• 052・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　次ハ日程第九ヨリ第十六マデ承諾ヲ求ムル件、會
  議委員長報告、淺田德則君
  大正十二年度第一豫備金支出ノ件
  大正十二年度特別會計第一豫備金支出ノ件
  大正十三年二月及三月中豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件
  大正十三年三月中特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件
  大正十三年度第二豫備金支出ノ件
  大正十三年度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  大正十三年度特別會計第二豫備金支出ノ件
  大正十三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  淺田德則
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔淺田德則君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/52

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• 053・淺田徳則

  ○淺田德則君　唯今、議題ニ供セラレタル大正十二年度第一豫備金支出ノ件
  外七件、之ニ關シマスル審査ノ結果ヲ御報告中上ゲマス、先ヅ日程ノ第九カラ
  申上ゲマス、大正十二年度第一豫備金支出ノ件、此總額ハ六百萬圓デアリマ
  シテ、其主モナルモノハ國際聯盟事務局費ノ分擔金、傳染病豫防費ノ補助、市
  町村交付金、刑務所ノ收容費、染料其他ノ奬勵費ノ費額デアリマス、其次ノ
  第十、其主モナルモノハ大藏省ノ專賣局賠償及購買費、金額ハ以下省略イタシ
  TV,朝鮮總督府ノ傳染病豫防費、臺灣總督府ニ於ケル裁判及登記諸費、其
  他關東、樺太、南洋、陸軍、文部、遞信省、鐵道省等ノ支出デアリマス、次
  ニ第十一ノ大正十三年二月及三月中ノ豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出
  ノ件、是ハ御承知ノ通リ同年一月ニ帝國議會ノ解散ノ結果、同年二月及三月
  中ニ一般會計ノ豫算ニ於キマシテ、歲計剰餘金及公債金ノ繰入ヲ以チマシテ
  豫算ノ超過及豫算外ノ支出ヲ爲シタルモノ、其主モナルモノハ外務省所管ノ
  電信料、警察費連帶支辨金、復興局ノ經費、軍事費ノ補足、衆議院議員ノ臨時
  ちょ
  總選擧檢察費、震災ニ因ル貸付金及復興事業費、其他ノ補助費等デアリマ
  ス、第十二ノ日程ノ大正十三年三月中ノ特別會計ノ豫備金外ニ於テ豫算超過
  及豫算外支出ノ件デアリマス、其主モナルモノハ大藏省ノ所管デアリマシテ、
  公債金ノ特別會計ノ歲入ヲ以テ豫算超過ノ支出ヲ爲シタルモノ、朝鮮總督府
  ノ特別會計ニ於キマシテ第二豫備金ヲ以テ豫算拂切リトナリタルモノニ付テ
  豫備金外ニ於テ剰餘金ヲ以テ支出シタルモノデアリマス、其他樺太廳ノ特別
  會計第二豫備金ヲ以テ拂切ッタルモノ、其外ニ於テ剰餘金ヲ以テ豫算外ノ支
  出ヲ爲シタルモノ、遞信省所管ノ簡易生命保險、是ノ不足ヲシタルモノヲ、
  是亦歲入ヲ以テ豫算ノ超過ヲ支出シタルモノ、鐵道省ノ所管、次ニ第十三ノ
  第二豫備金ノ支出ノ件、是ハ國際阿片會議ノ參加費、横濱港ノ復興費、臨時
  警察費、主力艦隊ノ解體費、其他各省ニ亙ル所ノ震災火災風水害等ニ因ル復興
  費デアリマス、第十四ガ豫備金外豫算外支出ノ件、是ハ一般會計第二豫備金
  ノ拂切リニナリタルモノニ付テ、追加豫算ノ成立ヲ待ツコト能ハザル爲ニ、政
  府ハ歲計剩餘金ヲ以テ豫算外ノ支出ヲナシタモノデアリマス、其主モナルモ
  ノハ國際勞働會議ノ參列費、潜水艦ノ救難費、大學及學校圖書館費ノ補足、
  保險會社ノ出捐助成費、米國渡航ノ援助費、其他各省ノ所管ニアル職工解傭
  特別手當、震災、風水害ニ關スル復興費、是ハ可ナリ費額ガ多クアリマスカ
  ラシテ、費額ヲ申シマス、九千百四十七萬四千八百二圓デアリマス、第十
  五、大正十三年度特別會計第二豫備金支出ノ件、其主モナルモノハ、朝鮮總督
  府ノ特別會計、關東、樺太、南洋、各廳ノ特別會計、外ニ文部省ノ所管ニ於
  テノ各特別費デアリマスガ、費目ノ詳シイコトハ略シマス、次ニ第十六、大正
  十三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件、主モナルモノガ朝鮮總督
  府ノ特別會計ノ第二豫備金、豫算拂切リトナリタルニ付テ、豫備金外ニ於テ
  其歲計剩餘金ヲ以テ豫算外ノ支出ヲナシタルモノ、次ニ文部省ノ所管ノ東北
  大學、九州大學、豫算外支出ヲナシタルモノ、其他關東廳、樺太廳、是ハ省
  略イタシマス、以上八件デアリマシテ、委員會ニ於キマシテハ、種々質問ガ
  アリマシテ、政府委員ヨリ相當之ニ答辯ヲ得マシタノデアリマス、何分此八
  件ニ亙リマシタ書類ハ頗ル浩瀚ノモノデアリマシテ、一々此質問應答ノコト
  ヲ茲ニ御報〓ヲ致スコトハ煩雜ニ涉リマス故ニ、是ハ速記錄ニ依ッテ御覽ヲ
  願ヒタイト思ヒマス、斯ク致シマシテ討論ニ入リマシタ、何レモ御承知ノ如
  ク第一豫備金第二豫備金トモ、何レモ己ムヲ得ナイ支出デアリマシテ、其他
  豫算外ニ支出イタシタモノモ、是以テ何レモ補充セザルベカラザル費途ニ屬
  シマス、滿場一致ヲ以チマシテ承諾ヲ與フベキモノト決議イタシマシタ、此
  段御報〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今、淺田委員長ノ報〓セラレマシタ各案ニ承諾
  ヲ與ヘルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/54

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• 055・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  市平方새

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/55

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• 056・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十七、陸海軍ノ政務次官及參與官ニ軍刑法
  ノ一部ヲ適用セサル法律案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長報告、溝口伯
  爵
  陸海軍ノ政務次官及參與官ニ軍刑法ノ一部ヲ適用セサル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  伯爵溝口直亮
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/56

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• 057・溝口直亮

  ○伯爵溝口直亮君　唯今、上程ニナリマシタ法律案ノ特別委員會ニ於ケル經
  過及結果ヲ御報告申上ゲマス、特別委員會ハ都合六囘開キマシテ、國務大臣竝
  ニ政府委員ニ對シマシテ、詳細ニ質問ヲ致シ、愼重ニ審議イタシマシタ、此
  案ハ陸軍刑法第百三條竝海軍刑法第百四條ノ規定ヲ陸海軍ノ政務次官及參與
  官ニ適用セズト云フノデアリマシテ、其趣旨ハ政府ノ說明スル所ニ依リマス
  ト、政務次官及參與官ハ政治家カラシテ之ヲ任用シテ、政務ニ參畫シ、又ハ參
  與スル者デアッテ、本來ノ性質上、他ノ陸海軍軍屬ト全然異ナル所ガアルカラ
  シテ、政治ニ關シ上書、建白、請願ヲナシ、又ハ演說、文書ヲ以テ意見ヲ公
  ケニスルト云フコトヲ禁止スル、唯今申上ゲマシタ所ノ軍刑法ノ箇條ヲ適用
  スルノ必要ヲ認メナイ、從テ此必要ヲ認メナイナラバ、法律ヲ以テ的確ニ之
  ヲ適用セザルコトヲ定メルノガ、他ノ疑惑ヲ防止シ、陸海軍ノ紀律ヲ保ツ上
  ニモ緊要デアルト云フノデ、此法案ガ設ケラレタト云フ說明デゴザイマス、本
  案ニ關スル質問ハ相當詳シク發セラレマシテ、數囘ニ亙リマシタ、其詳細ハ本
  日此席ニ於テ述ベルコトヲ略シマス、速記錄ヲ御覽下サレバ詳細ニ御分リニ
  ナルコトト存ジマス、唯主モナル點ダケ御紹介申上ゲマス、其質問ノ第一
  ハ、政務官ノ政治ニ關スル意見ヲ公ケニスルト云フコトハ、政治上當然認メ
  ル、從テ態〓此法律ヲ設ケズトモ、解釋デ差支ナイデハナイカト云フ、此意
  見デアリマス、是ハ普通刑法ノ總則ガ軍刑法ノ總則ニナッテ居リマシテ、現
  行制度ニ於テ刑法第三十五條ノ規定ハ之ヲ適用スレバ、卽チ「法令又ハ正當
  ノ業務ニ因リ爲シタル行爲ハ之ヲ罰セス」トアリマスカラシテ、此規定ノ解
  釋ニ依ッテ、政務官ガ軍刑法デ止メテアル所ノ政治的行動ヲシテモ、罰セラ
  レズニ濟ムデハナイカト云フノデゴザイマス、此點ニ付テハ司法省ノ政府委
  員ノ意見ヲ徵シマシタノデゴザイマスガ、其意見ニ依リマスト、第三十五條
  ノ解釋ハ、例ヘバ貴衆兩院議員ニ付テ申シマスレバ、議會開會中院內ニ於ケ
  ル行動ハ、之ニ該當スルモノデアッテ、政務官ガ議員デアッテモ、此院內ニ於
  ケル政治的行動ハ罰セラレナイモノデアリマスクレドモ、院外ニ於ケル行動
  マデモ、刑法第三十五條ノ解釋ニ依ッテ、全然之ヲ罰シナイト云フ解釋ハム
  ヅカシイト云フ答辯ガゴザイマシタ、ソレカラモウ一ツハ今日ニ於テ起訴、
  不起訴ヲ決スルニハ便宜主義ニ依ルノデアル、是ハ決シテ從來ノ法定主義ヲ
  餘リ用ヰラレナクナッテ來テアルノデアルカラシテ、政務官ノ政治的ノ行動
  ニシテモ、檢察官ハ之ヲ起訴スルガ如キコトハ無イデアラウ、然ラバ別ニ法
  律ヲ設ケナイデモ宜イデハナイカト云フ問デゴザイマシタ、之ニ關スル所ノ
  司法省ノ政府委員ノ御意見ハ、成程、今日ニ於テハ便宜主義ヲ採リツヽアル
  ノデアルカラシテ、廣ク解釋ヲ採ルコトモ出來ルノデアルガ、陸海軍刑法ト
  云フノハ軍ノ紀律ヲ維持スル爲ニ普通刑法ト特別ニ設ケラレマシテ、是ハ頗
  ル嚴肅ナモノデアルカラシテ、必シモ廣義ニ解釋シテ起訴不起訴ト云フコ
  トヲ決スルコトハ出來マイト云フ御答辯デゴザイマシタ、其次ノ御質問、是
  ハ政府ハ軍紀維持上、此法律ヲ設ケル必要ガアルト云フノデアルガ、此法律
  ヲ設ケル爲ニ却テ紀律ヲ紊ス虞レガアリハスマイカ、政務官ハ政治上ノ行動
  ヲ自由ニスルコトガ出來ル、然ルニ他ノ軍屬ハ是ハ出來ナイ、サウスルト他ノ
  軍屬ガソレニ對シテ不平ヲ懷キ、若クハ羨望ノ結果、軍紀ノ上ニ禍ヲ及ポス
  ト云フ虞レハナイカト云フ御質問デゴザイマス、政府ノ御意見ハ、政務官ハ
  性質上他ノ軍屬ト全然異ナッテ居ル者デアル、ダカラ之ヲ明カニシテ置ク方
  ガ軍紀維持上却テ必要デアッテ、軍刑法ニ違背スルコトヲ默認シテ問ハナイ
  ト云フノガ、却テ疑惑ヲ起シテ紀律ヲ紊ス虞レガアリハスマイカ、サウ云フ
  御答辯デゴザイマシタ、其次ニ起リマシタ御質問ハ大隈內閣ノ時ニ參政官、
  副參政官ノ制ガ設ケラレ、尙ホ原內閣ニハ勅任參事官ト云フモノガアリマシ
  タ、是等ハ皆政務官ノ性質デアッタ、然ルニ是等ノ人〓ガ職ニ就テ居ル時代
  ニハ軍刑法ガ其儘アッテ、別ニ此條文ニ依ッテ罰セラレタト云フコトハ無カッ
  タ、然ラバ是等ハ一ツノ慣行ニナッテ居ルカラ、此慣行ヲ重ンジテ行ッタナラ
  バ、別ニ法律ヲ設ケル必要ガ無イデハナカラウカ、之ニ對シテ政府ノ御答辯
  ハ、陸軍ノ參政官、副參政官ハ豫後備ノ軍人ガ任命サレテ居リマシテ、又陸海
  軍ノ勅任參事官ト云フモノハ何レモ貴族院議員カラ任命サレテ居リマシタカ
  ラシテ、實際上、餘リ問題ニナラナカッタ、海軍ノ參政官、副參政官ハ政黨出身
  ノ方デゴザイマシタガ、是等ノ方〓ハ實際演說モ殆ド爲サラナカッタ此刑法ノ
  其條項ノ爲ニ非常ニ謹愼シテ居ラレテ、刑法ニ觸レルヤウナコトハ一切爲サ
  ラナカッタ爲ニ、事ガ起ラナカッタノデアル、ソレダカラ之ヲ以テ事例トスルコ
  トハ出來ナイト云フ答デゴザイマシタ、尙ホ特別委員タル花井博士カラシテ、
  本會議デ質間サレタ引續トシテ、統帥權ノ問題ニ付テ御質問ガゴザイマシタ、
  之ニ對シテ政府ノ御答ガゴザイマシタ、此問答ハ頗ル重要ナコトト考ヘマ
  スカラシテ、其質問應答ハ全部朗讀イタサウト存ジマス、ソレハ「第一問憲法
  第五十五條ニ於ケル國務各大臣ノ輔弼ノ責任ハ、憲法發布ノ勅語及內閣官制
  ノ詔勅ニ鑑ミ、國務全體ニ關スルモノト認ム、從テ第十一條ニ於ケル統帥大權
  ヲ除外シタルモノニ非スト信ス、政府ノ所見如何、答、憲法第十一條ノ統帥大
  權ハ、憲法第五十五條ニ於ケル國務各大臣輔弼ノ責任ノ範圍ヨリハ除外セラ
  ルルモノト考フ、尤モ統帥ニ關スル事項ニ國務各大臣輔弼ノ責ニ當ルヘキ事
  項ト緊密ノ關係ヲ有スルモノモアルヲ以テ、其國務ニ關スル範圍ニ於テハ、國
  務各大臣ハ之ニ參畫シ、輔弼ノ責ニ任ス、第二問、內閣官制第七條及其系統ヲ
  同ウスル官制又ハ軍令ハ之ヲ改廢スヘキモノト信ス、政府ノ所見如何、答、內
  閣官制第七條及其系統ヲ同ウスル官制又ハ軍令ヲ改廢スルノ要無シト認ム、
  第三問、憲法第一條ノ統帥大權中ニ、第十二條ノ編制大權モ包含スルヤ否ヤ、
  答、政府ハ憲法第十一條ノ統帥大權ハ所謂帷幄ノ大權ニシテ、第十二條ノ大權
  ヲ包含セスト解ス、尤モ第十二條大權ハ第十一條大權ト密接ノ關係ヲ有スル
  ヲ以テ、其ノ行使ノ上ニ於テハ、第十一條大權ノ作用ヲ受クルモノアリ、第四
  問、文官ノ軍務大臣兼攝ヲ現政府ハ現行制度ノ上ニ於テ適當ト認ムルヤ否ヤ、
  答、政府ハ陸海軍大臣以外ノ大臣カ臨時陸海軍大臣ノ事務ヲ管理スルコトノ
  當否ハ實際ノ場合ニ方リテ之ヲ決スルヲ適當ナリト認ム、第五問、內閣官制第
  五條ニ謂フ國際條件中ニハ宣戰等ノ事項ヲ含ムヤ否ヤ、答、政府ハ内閣官制第
  五條第一項第二號ノ重要ナル國際條件中ニハ宣戰ノ如キ大事ヲ包含スルモノ
  ト解ス、第六問、陸海軍省官制中、政務次官、參與官ノ職務權限ニ就キ、軍機ト
  謂ヘル文字ノ意義如何、答政府ハ軍機ノ意義ハ軍ノ統帥ニ關スル機務ヲ指
  稱スルモノト解ス」、以上ノ如キ御答ガゴザイマシタ、此事ハ閣議ニ依リマ
  シテ内閣ガ責任ヲ以テ答辯セラレマシタモノト確認サレマシタ、之ニ關シテ
  一委員ハ此答辯ニ依レバ統帥權ト軍ノ編制權トヲ混同シ、却テ兩權ノ分岐ヲ
  紊ルノ虞レアルモノト認ムルガ如何デアルカ、又軍令第一號ノ憲法上ノ根據
  ハ如何デアルカト云フ御質問ガゴザイマシタ斯ノ如クニ多岐ニ亙リマシタ種
  種ナル御質問ガアリ、ソレニ對シテ答辯ノゴザイマシタ後ニ、討論ニ入リマ
  シタ、賛否兩論ニ分カレマシタ、先ヅ反對論ノ大要ヲ御紹介イタシマスト、
  大體ニ於テ反對論ノ根據ガ二ツゴザイマス、全然、是ハ私ハ違ッタモノト解
  釋イタシマス、第一ノ反對論トシテハ、政務次官及參與官ニ無制限ニ軍刑法
  ノ除外ヲ設ケテ自由ニ行動セシムルコトハ、現行ノ軍令ニ反スルモノデア
  ル、從テ軍屬トシテ是等ノ政務官モ除外スルコトナク、紀律ニ服從セシメナ
  ケレバナラナイ、從テ本法制定ハ絕對ニ不可デアル、斯ウ云フ御意見ガ一方
  ニ於テ出テ居リマス、ソレカラ又他ニ於テハ、本案ハ從來ノ慣習、刑法第三
  十五條ノ運用ニ依ッテ解決セラルベキモノデアッテ、且ツ立法ノ體裁トシテ
  モ、犯罪ヲ免許スルト云フガ如キ法律ハ其當ヲ得ナイ、又實際論カラシテ言
  フモ、ドウモ之ヲ設クルガ爲ニ政務官以外ノ軍人軍屬ヲシテ不快ニ感ゼシム
  ル嫌ガアル、是デアルカラ本法律ノ制定ニハ反對デアルト云フ、此二ツノ論
  ガ、論據ハ別デゴザイマスガ、反對論ノ主モナル點ダト存ジマス、尙ホ此他
  ニ討論ニ於テ斯ウ云フ說ガ出タ、ソレハ統帥權ヲ重要ナル國務トシテ輔弼ノ
  責ヲ內閣全體ニアルモノトシ、從テ內閣官制第十七條ヲ改正シ、政務官ノ大
  臣輔佐ノ範圍ヲ擴充スルコトヲ急務ナリト云フ御意見デ、之ニ對スル憲法發
  布及內閣官制ノ勅語等ヲ引用サレマシテ力說サレマシタ、モウ一ツハ軍刑法
  ノ處罰規定ヲ廢シテ之ヲ規律罰ニ讓ル、サウシタナラバ法律ノ制定ニハ及ブ
  マイ、斯ウ云フヤウナ多種、色〓ノ御意見ガ出マシタ、斯ノ如クシテ贊否種
  種ノ御意見ガ出マシタガ、結局、本案ハ可決スベキモノナリト決議イタシマ
  シタ、右御報告申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/57

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• 058・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通告順ニ依リマシテ討論ヲ許シマス、志水
  小一郞君
  〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/58

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• 059・志水小一郎

  ○志水小一郞君　本員ハ本案ニ贊成ヲセナイ、卽チ本案ヲ不可トスル一人デ
  アリマス、本案ハ法律問題トシテハ極メテ簡單極メテ明白ナモノデアリマ
  ス、併ナガラ特殊ノ事柄デアッテ人ノ餘リ耳ニ熟サナイヤウナ事ガ多イノ
  デアリマス、ソレガ爲ニ稍、複雜ノ問題ノヤウニ聞エマスガ、其實、唯今申
  上ゲタ如ク、法律論トシテハ極メテ簡單明白ナモノデアリマス、而シテ本員
  ノ本案ヲ不可トスル理由ハ陸海軍刑法ノ當該法條ト及軍屬ノ何者タルコト、
  竝ニ軍屬ノ犯罪ニ關スル我ガ陸海軍制度ノ要旨ヲ述ブルニアラザレバ能ク分
  ラヌノデアリマス、故ニ其要旨ヲ極メテ簡單ニ述ベヤウト思ヒマス、陸海軍
  刑法ノ當該法條、卽チ陸軍刑法第百三條、海軍刑法第百四條デアリマス、而
  シテ其法文ニハ何トアルカト申シマスルト、曰ク「政治ニ關シ上書、建白其
  ノ他請願ヲ爲シ又ハ演說若ハ文書ヲ以テ意見ヲ公ニシタル者ハ三年以下ノ禁
  錮ニ處ス」是ガ法文デアルノデアリマス、何人モ常識ヲ以テ此法文ヲ一讀イ
  タシタナラバ、政治上ノ意見ヲ發表スルコトデアルニ止マル、如何ナル必要
  ガアッテ之ヲ陸海軍刑法ト云フ刑罰法ニ揭ゲルノデアラウカ、ドウシテ其必
  要ガアルデアラウカ、是ハ免ニ角常識ヲ以テ讀過イタシマスト、疑ヲ起スコ
  トデアルノデ、寧口尤モナコトデアル、デ、此疑問ハ明治十四年、卽チ舊陸海
  軍刑法ノ編成セラレマシタ時ヲ初メトシテ、其後、立法ノ當時、每度ナガラ
  起ッタ問題デアリマス、起ッタ議論デアリマス、併ナガラ軍人ガ政治ニ關與ス
  ルト云フコトハ危險デアルト云フコトハ、何人モ異議ハ無イカト思フノデ、
  依テ軍人ヲシテ政治ニ關與セシメザルノ良風ヲ養成スルノ必要上、此法條
  ガ設ケラレタノデアリマス、又毎度改正ノ度每ニ矢張リ引續キ設ケラレテ、
  サウシテ時勢ノ推移ト共ニ此必要ハ寧ロ益認認ラレテ居ルノデアリマス、是
  ガ今尙ホ此法條ノ存スル所以デアリマス、次ニ軍屬ノ何者タルコトヲ御紹介
  スル必要ガアル、軍屬トハ何者ゾ、曰ク陸海軍ノ文官、同待遇者竝ニ宣誓ヲ
  以テ陸海軍ニ從事スル、是ガ軍屬ノ定義デアリマス、軍屬ト申シマスト、明
  治ノ初年カラ言ヒ傳ヘタコトデアリマスガ、極ク手短ニ申シマスレバ、軍屬
  トハ軍人ト共ニ軍ノ規律ニ服從シ、軍裁判ニ服從スル者ノ意義ナリト斯ウ言
  ヘルノデアリマス、明治ノ初年カラ此意義ニ用ヰラレテ居ル、而シテ此軍制
  ハ今尙ホ依然トシテ維持セラレ、必要ナリトサレテ居ルノデアリマス、故ニ
  陸海軍刑法及陸海軍軍制ヲ廢止スレバ格別デアリマス、之ヲ廢止セザル限リ
  今般新ニ設ケラレマシタ所ノ政務次官、參與官ノ如キモ又當然軍屬デアリマ
  スカラシテ、此制度ノ下ニ職務ニ服行シナケレバナラヌノデアリマス、然ル
  ニ本法案ノ要旨ハ次ノ通リデアリマス、政務次官ノ職務ハ大臣ヲ輔ケ政務ニ
  參畫シ、帝國議會トノ交渉事項ヲ掌理スルニアリ、是ガ政務次官ノ職務、又
  參與官ノ職務ハ、大臣ノ命ヲ受ケ議會等ノ交涉事項、其他ノ政務ニ參與スル
  ニアリデアリマス、ソコデ政府ノ主張ハ斯ノ如キ性質ノ職官デアルガ爲ニ、
  演說ヲ以テ政治ニ關スル意見ヲ發表スルノハ當然ノコトデアル、然ル
  ニ法ノ明文ヲ以テ之ヲ牽束スルノハ失當デアル、斯ウ云フ趣旨デアリマス、故
  ニ此二官ニハ陸海軍刑法ノ當該法條ヲ除外セナクテハナラヌ、之ヲ除外スル
  ニ付テハ職務ニ服行スル場合ダケヲ除外シタンデハ慊ラナイ、職務ニ服行ス
  ル以外ノ場合、卽チ職務ノ內外ヲ問ハズ、陸海軍ノ刑法ノ當該法條ヲ除外シ
  ナケレバナラヌト、斯ウ言ハルヽノデアリマス、ソレハ其政府ノ主張ノ起ル
  所以ハ、政務次官、參與官ノ職務ガ、唯今申上ゲマシタ通リノコトデアルノ
  ミナラズ、此二官ハ政黨出身ノ人デアル、政黨ニ名籍ヲ貫イテ居ル人デアル、
  旁、法律ヲ以テ言論ヲ拘束スルト云ハムガ如キコトハ情ヲ得ヌノデアル、或ハ
  此二官ヲシテ十分ニ其職務上ノ能力ヲ發揮セシムルガ爲ニモ、言論ヲ拘束ス
  ル如キコトハ能クナイト、斯ウ言ハレルノデアリマス、此趣旨ハ此二官ノ職
  務ノ性質ニ考へ及ビ、其政務官デアル性質ニ鑑ミマスレバ、一應尤モノヤウ
  ニモ聞エルノデアリマス、所ガ、サウ簡單ニハ參ラヌノデアリマス、其次第
  ヲ手短ニ述ベタイト思ヒマス、若シ此二官ニ限リ職務ノ內外ヲ問ハズ、全然
  無制限ニ陸海軍刑法ヲ除外イタシマシテ、上書建白ヲ爲ス可ナリ、講談論說
  ヲ爲ス可ナリ、將タ新聞紙ニ對シテ投書ヲ爲スモ亦可ナリ··
  〔副議長候爵蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕
  斯ウ云フ風ニ致シマシタナラバ、如何デアリマセウカ、種々ノ不都合ガ假想
  シ得ラレルノデアリマス、是ハ一々假想ノ事例ヲ述ベマスト長クナリマスカ
  ラシテ、此クラヰニ留メテ置キマスガ一例ヲ擧ゲテ申シマスト云フト、此兩
  官ノ爲ス所ノ講談論說ガ多クノ軍人、就中、下士卒ヲ動カシテ、延イテ軍ノ整
  肅ニ影響スルト云ハムガ如キコトハ、決シテ𣏌憂デハナイト思ハレマス、凡
  ソ資格アリ〓育アル人ニハ斯カル心配ハ無用デアル、此類ノ人ハ脫線的ノ行
  動ハ斷ジテシナイト云ハムガ如キコトモ每度承ルノデアリマス、併ナガラ刑
  罰ヲ設ケル立法ノ理由トハナラヌノデアリマス、斷ジテナラヌノデアリマ
  ス、況ヤ此言論ニ關シテ失策ヲ爲シ脫線的ノ行爲ヲ爲スト云フ人ハ、ドウ云
  フ人ニ多イカト申シマスト、兔角、政客ニシテ主義アリ主張アリ折ニ觸レテ之
  ヲ發表セムトスル人ニ多イノデアリマス、是ハ蔽フベカラザル事實デアリマ
  ス、又專ラ軍事上ノ見地カラ慮ッテ置カナケレバナラヌコトガアリマス、ソ
  レハ等シク軍紀ニ服從スル義務アル他ノ軍屬トノ均衡デアリママス、例ヘバ
  此政務次官、參與官ト云フ人〓ハ議員ノ候補トナリテ、選擧區ニ選擧ヲ爭フ、
  此場合ニ當ッテ自由ニ政談演說ガ出來ル、之ニ反シテ等シク候補者トナッテ選
  擧區ニ選擧ヲ爭ハムト欲スル所ノ他ノ軍屬ハ一切口ヲ箝セラレテ政見ヲ發表
  スルニ由ナシト云フコトニナリマシタナラバ、如何デアリマセウカ、嫉視反
  目ト云フコトガ無キヲ得ルノデアリマセウカ、所謂、沙上ノ偶語ト云ハムガ如
  キコトガ無キヲ得ルノデアリマセウカ、是ハ決シテ𣏌憂デハナイト思フノ
  デ、要スルニ、假令、政務官タリト雖モ其職ヲ陸海軍ニ奉ジテ、日夜、軍人ト
  相伍シテ職務ニ服行スベキ人〓ハ
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  全然、無制限ニ言論ノ自由ヲ付與スルト云フコトハ出來ナイノデアリマス、
  ソレニモ拘ラズ、强ヒテ言論ノ自由ヲ付與スルト云フコトニナリマスレバ、
  取リモ直サズ、明治初年以來ノ軍制ノ根本主義ヲ覆シ、軍刑法ノ精神ニ違背ス
  ルト云フコトニ正シクナルノデアリマス、サスレバ、一定ノ制限ヲ設ケラレ
  テ宜シキヤ、斯ウ云フ問題ニナリマスルノデアリマスガ、制限ヲ設ケレバ宜
  シイ斯ウ云フ問題ニナルノデアリマス、サスレバ、其制限ハ何デアルカト
  申シマスレバ、卽チ職務ノ限界、又ハ其範圍內、斯ウスルヨリ外ハナイノデ
  アリマス、此兩官ノ職務ハ比較的廣汎デアリマス、故ニ其範圍內ニ於テ言論
  ノ自由ヲ與ヘラレル十分活動ノ餘地ガアルノデアリマス、畢竟、大隈內閣時代
  ノ參政官、副參政官ニ付テハ嘗テ何等ノ故障アリタルコトモ本員等ハ聞カナ
  イノデアリマス、本員ハ頗ル其方ニ密接シタ職務ニ多年服シテ居リマシタガ、
  ドウニモ陸軍刑法ヤ、海軍刑法ヲイヂラナクテハイカヌト云フ感ジハ一遍モ
  起シタコトハナイノデアリマス、職務ノ範圍內ニ於テハ言論ノ自由ヲ得テ、
  其範圍內ニ於テハ言論ヲ以テ活動スルコトガ出來ルト云フコトハ、決シテ政
  務次官、參與官バカリデハナイノデアリマス、他ノ軍屬ハ素ヨリ純粹ナ軍人、
  現役軍人ト雖モ亦然リデアリマス、上書建白モ時アッテハ出來、時アッテハ演
  說モ出來ル、是ハ疑ナイコトデアリマス、職務ノ範圍內ニ於テ職務ト密接分
  離スベカラザルコトニ於テ政談演說ヲスルコトハ、ドウシテ無罪デアルカト
  云フコトニナリマスト、是ハ申ス迄モナク、刑法第三十五條ノ法文ニハ「法
  令又ハ正當ノ業務ニ因リ爲シタル行爲ハ之ヲ罰セス」ト云フ規定ガアリマス
  ガ、此規定ハ普通刑法ノ總則デアルト同時ニ陸海軍刑法ノ總則デアリマス、
  ソレデ軍人軍屬ノ犯罪ヲ解釋スル上ニハ何時デモ此刑法第三十五條ガ冠セラ
  レルノデ、之ヲ冠シテ解釋セヌケレバナラヌ、外形ハ恰モ犯罪ノ如ヰモノガ
  アルケレドモ、犯罪ノ要素ヲ缺クガ爲ニ無罪ト云フノガ原則デアリマシテ、
  陸海軍刑法ノ犯罪ニ付テモ亦同樣デアリマス、以上申シマスルガ如キ次第デ
  アリマスカラ、此兩官ノ爲ニ全然、無制限ニ陸海軍刑法ヲ抹殺スルト云フコ
  トニハイカヌノデアリマス、其事ハ到底ナシ得ザルコトデアリマス、サリナ
  ガラ我〓ハ決シテ峻刑酷罰ヲ以テ政務次官ヤ參與官ノ言論ヲ俟タムトスルノ
  デハナイノデアリマス、否、爲シ得ル限リハ十分廣キ範圍內ニ於テ之ニ言論
  ノ自由ヲ與ヘムトスルノデアリマス、是ガ爲ニハ別ニ立法モ何モ要ラヌノデ
  アリマス、現狀ノ儘デ宜シイノデス、若シ强ヒテ立法ヲセムト欲セバ、政務
  官タル陸海軍大臣ノ爲ニモ立法セナクチヤナラヌノデアリマス、陸海軍大臣
  ハ今ヤ現役陸海軍將官デアリマス、政務次官、參與官ノ爲ニ立法ノ必要ガ有
  レバ、陸海軍大臣ノ爲ニモ必要ガ均シクアルノデアリマス、按ズルニ、此法
  案ノ目的ヲ達セムトスルニハ三ツノ方法ガアル、第一ハ現狀ノ儘トシテ置ク
  ノデアリマス、何等立法ヲ要セヌノデアリマス、何等立法ヲ爲サズシテ政府ノ
  必要トセラルヽ所ノ事柄ハ正シク滿サルヽノデアリマス、是ガ極メテ得策、
  極メテ安全ノ方法デアルノデアリマス、第二ハ本法案ノ如キ無條件無制限ニ
  此次官ノ爲ニ陸海軍刑法ノ法條ヲ抹殺スルノデアリマス、其不可ナルコト、
  サウ云フコトヲ實行シタナラバ、種々ノ不都合ガアルト云フコトハ唯〓簡略
  ニ申上ゲマシタカラ改メテ申シマセヌ、第三ハ立法ヲ爲シ、條件ヲ附シテ此二
  官ニ言論ノ自由ヲ與ヘルコトデアリマス、是ハ爲シ得レバ誠ニ宜シイコトデ
  アリマス、所ガ、如何ニセム、斯カル法文、斯カル條件ハ設クルコトヲ得ナイノ
  デアリマス、是ハ本員等ハ在職中屢〓試ミタノデアリマスケレトモ出來マセ
  ヌノデ、强ヒテ設ケマスルト疑問百出、容易ニ實行ガ出來マセヌノデアリマ
  ス、以上ノ如ク考ヘ來レバ、政府ハ何ヲ苦ンデ本案ノ如キ立法ヲ爲サルヽノ
  デアラウ、必要モ無イノニ······斯ウ云フ疑ガ頻ニ起ルノデアリマス、以上、
  本員ノ本法案ヲ不可トシ之ニ贊成セザル所以ノ要旨ハ申上ゲ盡シタカト存ジ
  マスガ、尙ホ終リニ臨ンデ一言申上ゲテ置キタイノハ、陸海軍軍法會議法、卽
  チ現行法ハ其舊法タル陸海軍治罪法ト違ヒマシテ、犯罪事件ノ起訴、不起訴
  ニ付テハ學者ノ所謂便宜主義ヲ採リマシテ、法定主義ハ採ラヌノデス、法定
  主義ト申シマスレバ、卽チ我ガ陸海軍治罪法ノ規定ノ如キモノデ、犯罪事件
  ガアッタナラバ、必ズ司法處分ヲシロト云フコトヲ法律デ命ジテ居ルノデア
  ル、サウ云フコトハ現行法デハ命ジテナイノデ、命ジテナイト云フノハ、詮
  議ニ詮議ヲ盡シマシテ、サウ云フコトニ致シタノデアリマス、是ハ御承知ノ
  通リ、何處ニデモ普通ノ刑事訴訟法ニモ此二ツノ主義ハアルノデアリマス、
  我ガ軍法會議法案ヲ編ムニ付テハ、此事ハ詮議ニ詮議ヲ盡シテ斯ウ致シマシ
  タ、ト云フノハ、犯罪ノ輕微ナルモノニ付テハ、申ス迄モナク、比較的重激
  ナルモノト雖モ裁判沙汰ニスルト云フコトガ必シモ宜シキコトデナイ、卽チ
  軍ニアッテハ軍ノ靜肅安寧ヲ維持スルト云フコトガ主タル目的デアリマス、
  司法處分ノ······其主タル目的ヲ達スル上ニモ犯罪ハ悉ク裁判沙汰ニシナクチ
  ヤナラヌカト云ッテ聞クト、サウハ肯定ガ出來ヌノデアリマス、ソレデ現行
  法デハ便宜主義ヲ採リマシテ、其起訴、不起訴ヲ決スルニハ、軍法會議ノ長官、
  卽チ多數ノ軍人ヲ提ゲテ居ル所ノ司令官ノ見込ニ一任スルト云フコトニナッ
  テ出來タノデアリマス、ソレハ頗ル立法ノ理由ガアリマスノデアッテ、其司
  令官ト云フモノハ所謂、軍紀ノ保持ニ付テハ全責任ヲ帶ビテ居ル人デアル、
  其全責住ヲ帶ビテ居ル所ノ司合官、卽チ天皇直屬ノ司令官デアリマス、其人
  ヲ疑フ必要ハ無イ、疑フハ不當デアル、犯罪事件ヲ處分スルノニ、或ハ裁判
  沙汰ニシ、或ハ裁判沙汰ニセヌト云フノハ其人ノ責任、其人ノ考ニ任スル、
  斯ウ致シタノデアリマス、從テ問題ノ政務次官、參與官ナル人ガ職務ノ範團
  內ニ於テ言論ヲ事トスルコトバカリヲ以テ滿足セズシテ、或ハ職務ノ範域ヲ
  出入シ、或ハ職務ト全然相關セズシテ政談演說ヲヤルト云フヤウナコトモ、
  是ハ假想シ得ベシデアリマス、併ナガラ犯罪ハ必シモ司法處分ニスルト云フ
  方針ヲ採ラヌノデアリマスカラ、其法律ヲ設ケタイナドト云フヤウナ考カラ
  申シマスルト云フト、軍紀ニモ左程害ガナイ、政黨出身ノ政務官、參與官ガ
  少シク脫線的ニ演說ヲシタ、ソレヲ司令官ガ檢察官ニ命ジテ、是非訴追ヲセ
  ロナドト云フコトハ斷ジテナカラウト思フノデアリマス、ソレデ舊法時代ニ
  スラ參政官、副參政官ノ爲ニ陸海軍刑法ヲ抹殺スルト云ハムガ如キ必要ハ更
  ニ感ゼナカッタ、マシテ況ヤ、今日ノヤウニ頗ル訴追ノ方針ニ付テモ進步シ
  タ制度ヲ採リマシテ、ソレヲ實行シツヽアル今日ニ於テ、サウ云フ心配ハ先ヅ
  斷ジテ無カラウト思フノデアリマス、要スルニ、法律ニ照シテハドウシテモ
  說明ノ出來ナイヤウナ法律ヲ作リ、サスレバ必要ガ存スルカト言ッテ來ルト、
  必要ハ更ニ無イ、何ヲ苦シンデ斯ウ云フ法律ヲ政府ハ作ラレムトスルノデア
  ルカ、如何ニモ了解ニ苦シムノデアリマス、是ハ本員ノ本法案ニ反對スル所
  以デアリマス

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• 060・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　山脇玄君
  [山脇玄君演壇ニ登ル]

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• 061・山脇玄

  ○山脇玄君　不肖ハ別ニ此壇ニ登ッテ今、彼レ此レ申ス必要ハナイノデアリマ
  さま
  ミ
  スガ、委員ノ末席ヲ汚シマシタ關係上カラ極ク簡單ニ一言諸君ニ申上ゲテ置
  キタイ、アナタ方ニ申上ゲタイノハ、唯〓、前質問者ノ其道ニ詳シイ法律論ヤ、
  先刻、委員長ガ御報告ニナッタ花井君ノ憲法論ナドヲ持出スコトハ私ハ出來
  ナイノデアリマス、デ、委員長報告ノ花井君ノ統帥權ト國務大臣ノ責任問題、
  是ハナカ〓〓御歷代ノ內閣デ研究サレテモ、マダ結論ニ達シテ居ラナイ問題
  デアリマス、ムヅカシイ問題デアル、我〓共モ實ハ憲法論ハ花井君ニ同意ナノ
  デス、國務大臣デアル以上ハ總テ其政務ニ付テ責任ヲ負フト云フコトハ論ヲ
  俟タナイト思フノデアリマス、所ガ、日本ノ習慣ニ依ッテ陸海軍ト云フモノ
  ハ別世界ヲナシテ居ッタノガ是マデノ習慣デアルカラ、陸海軍大臣以外ノ大
  臣ハ陸海軍統帥權ニ付テハ責任ヲ負ハナイト云フコトニナッテ居ル、是ハド
  ウモ仕方ガナイ、習慣ト云フモノハ容易ニ廢メルコトノ出來ナイモノデアリ
  マスカラ仕方ガナイ、私ハ憲法論ニナルト云フト花井君ト全ク同說デアリマ
  ス、ケレドモ、是ハ非常ナムヅカシイ問題デ、ナカ〓〓此小サイ、陸海軍ノ政
  務官ニ關スル小サイ委員會デ決スベキ問題デナイト私ハ決心シテ、其問題ニ
  ハ觸レナイ、ソレガ唯〓、志水君ノ述べラレタノハ是ハ其道ニ詳シイ法律論
  デアリマス、私共ハドウモソレニ喙ヲ容レルコトハ出來マセヌ、ケレドモ、
  私ハ極ク憲法論、法律論ヲ離レテ諸君ニ訴ヘタイノデアリマス、段々、志水
  君ノ御說ヲ聽イテ見ルト云フト、此法律ハ要ラナイ、無用デアル、成程、是
  ハ今ノ刑法其他ノ法律ヲ解釋シタラ要ラヌカモ知レマセヌ、ケレドモ、私共
  ガ當局者ニ、陸海軍大臣ニ質問シテ見ルト云フト、ドウモ現行法デハ取締ガ
  出來ナイ、取締ガ出來ナイト云フノハ卽チ政務次官ヲ保護スルコトガ出來ヌ、
  ソレハサウデセウ、人間ガ理智的ニ始終働クモノデアッタナラバ、ソンナ法
  律ハ要ラナイト思フ、ケレドモ、兔角、感情······殊ニ政治問題ニナルト云フ
  ト感情ガ加ハッテ來ルカラ、マアチヨット一言ニ申シマスト云フト、政務次官
  ト云フ者ハ政黨員デアリマス、是ハ申ス迄モナイ、サウシテ又政黨員ヲ用ヰ
  ネバ當局者ハ役ニ立タヌト仰シヤルノデアリマスカラ、政黨員ガ政務次官ニ
  成ルト云フコトニナル、ソコデ私ハ元來、政務次官ニハ極ク反對デアリマス、
  政務次官ナドト云フモノハ必要ガ無イ、ケレドモ、制度ガ設ケラレタ以上ハ仕
  方ガナイ、ソコデ政黨員ガ政務次官ニ成ルト云フコトニナレバ、ドウシテモ
  此議員ト云フ職務ヲ盡ス上ニ於テ言論ノ自由ト云フモノハ與ヘテ置カネバナ
  ラヌト思フノデアリマス、若シ言論ノ自由ヲ束縛サレルヤウナ場合ニナレバ、
  誰モ政黨員ガ政務次官ニ成ルモノハ無イ、ソレデハ困ル、折角、制度ヲ設ケ
  テモ次官ニ成ル人ガ無イデハ行ハレヌト云フコトニナルカラ、ソレハイカヌ、
  サウ云フ見地カラ、私ハ人間ハ理智的ニバカリ行動スルモノデナイ、感情的
  ニ行動スルカラ政黨員ガ候補ヲ爭フト云フヤウナ場合ニ演說ヲスルトカ、或
  ハ議會閉會後ニ其故〓ニ歸ッテ報告スルトカト云フヤウナ場合ニハ、ドウシ
  テモソレハ脫線的ノモノガ出テ來ルト云フコトハ免レナイト私ハ思フ、私ハ
  經驗ガ有リマセヌガ、議院內ヲ御覽ナサイ、サウデセウ、ドウシテモ是ハ脫
  線的ノ行爲ニナル、議院內ニ於テハ許サレテ居ル、今、志水君ハ其職務內ノ
  コトハ宜シイガ職務外ニアッテト、斯ウ云フ御論、是ハ御尤モナ議論デアル、
  私ハ感服スル、ケレドモ、ソコハ人間デス、ドウシテモ矢張リ政談演說デモ
  ヤレバ多クハ脫線ト云フコトハ免レナイ、其脫線ヲ刑法ニ觸レナイヤウニシ
  テヤラウト云フコトハ、理窟ノ問題トシテハソレハイケナイ、ケレドモ、今
  日ノ事情、殊ニ政治ナドト云フモノハ感情ニ餘程支配サレルモノデアルカラ、
  私ハサウ云フ簡單ナ理由デ、折角、當局者ガ政黨員ヲ用ヰネバ效能ハ無イカ
  ラ用ヰタト云フコトニナレバ、ソレナラバ用ヰタ人ノ言論ト云フモノハ成ル
  ベク自由ニシテヤッテ宜シイト云フコトハ是ハ實際論トシテ、憲法論ヤソン
  ナコトハ申シマセヌ、私ハソンナ事ヲ研究スルコトハ出來ナイ、私共ハサウ
  云フ論デス、ドウカ、アナタ方モムヅカシイ法律論ヤ憲法論ヲ離レテ實際論ト
  シテ一ツ御考慮ヲ願ヒタイト云フノガ私ノ微衷デ、是モ委員ニ加ハッテ居ラ
  ネバソンナ事ヲ言フ必要ハ無イガ、委員中ニ加ハッテ段々議論ヲ聽イテ見
  ルト、段々ムヅカシイ事ガアル、是ハ質問シテ見テモ委員長報告ノ通リ曖昧
  デス、場合ニ依ッテハ國務大臣ガ代理スル、必要ニ應ジテハ代理スル、チット
  モ分ラヌ、必要ニ應ジテ代理ガ出來ルナラバ何時デモ代理ガ出來ルト云フ答
  辯ニハ感服イタシタ、今日ソンナコトヲ論ジテ居ル場合デハナイ、ノミナラ
  ズ、此問題ハナカ〓〓是カラ數代ノ內閣ガ解決セラレルカ、ドウカモ、ムヅ
  カシイ問題デ、是ハモウ學者ナドノ論モ、種々雜多、頭ヲ突込ンデモ分リハ
  シナイカラ、私ハ頭ヲ突込ミマセヌガ、色〓問題ガアリマスカラ、サウ云フ
  問題ヲ小サナ委員會デヤルノハ無理デアル、ソレハ打切ッテ、私ハ極ク簡單
  ナ理由デ贊成シタ、諸君モドウカ、斯ウ云フ極ク、實際問題トシテ御一考ヲ
  願ヒタイ

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• 062・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　花井卓藏君

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• 063・花井卓藏

  ○花井卓藏君　私ハ演說ノ通〓ヲ致シテ置キマシタガ、委員長ノ御紹介ニ依
  リマシテ、論旨ノ大要ハ盡サレテ居ルヤウニ感ジマス、尙ホ又此前ノ會議ノ
  際ニ於キマシテ、質問應答ヲ重ネマシタル點ニ於キマシテモ、論旨ノアル所
  ハ大體、御諒承ヲ得ラルベキコトト信ズルノデアリマス、殊ニ會期切迫、
  重要問題ガ尙ホ後ニ相當ニ殘ッテ居ルヤウデゴザイマスカラシテ、此際、壇
  ニ登ッテ演說ヲ致スコトハ致シマセヌ、政務官ノ刑法除外ノ法律、換言スレ
  バ犯罪ヲ免許スルト云フ法律デアリマシテ、勢ヒ政務官ノ職務權限ト云フ
  コトニ觸レザルヲ得ナイノデアリマス、政務官ノ職務權限ニ觸レムト欲スレ
  バ、大臣ヲ補佐スルノ職務ヲ擔フモノデアリマスカラ、陸軍大臣、海軍大臣
  ノ有スル所ノ職務ニ及バザルヲ得ナイノデアル、玆ニ於テ統帥權論起リ、編制
  權論起ラザルヲ得ナイノデアリマス、離ラスベキ性質ノモノデナイノデアリ
  マス、併ナガラ此點ニ付キマシテモ、政府ハ特ニ閣議ヲ開イテ答辯ヲ與ヘラレ
  タノデアリマス、此重要ナル憲法問題ニ關シテ政府ノ答ヘラレル所ガ、實ハ
  愈〓以テ憲法十一條、十二條ノ分岐ヲ紊ル虞レヲ貽スノデアリマス、前段ニ於
  テ本員ノ質問ヲ認メ、後段ニ於テ認メザルガ如ク認ムルガ如キコトニ相成ツ
  テ居ルノデアリマス、深ク苦衷ヲ諒トスルノデアル、併ナガラ之ヲ機會ニ統
  帥權、編制權ノ區別ヲ爲サネバナラヌト云フコト、統帥權ニ伴フ補弼ノ責任
  ハ內閣全體ニ於テ擔ハネバナラヌト云フコトノ觀念ハ、恐ラクハ、一般國民
  ノ頭ニ强ク印象セラレタコトデアラウト思フノデアリマス、本案ニ必然伴フ
  所ノ問題、程度ニ於テ滿足セズト雖モ、其一段階ヲ作リタルコトニ於テ、聊カ
  滿足ノ意ヲ表スル次第デアリマス、本案ハ委員長御紹介下サイマシタル反對
  意見ノ通リ、一ツモ二讀會ニ移スベキ理由ハ無イノデアリマス、大イニ反對
  ノ意思ヲ表明イタシタイノデアリマスガ、先程申上ゲマスルヤウナ次第デゴ
  ザイマスルカラ、特ニ壇ニ登ルコトヲ避ケマシテ演說ノ趣旨ヲ申シ置クコト
  ニ致シマス
  〔黑岡帶刀君「私ハ贊否ヲ決スル前ニ當局者ニ······」ト述フ〕

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• 064・徳川家達

  ○議長(公爵德川家逹君)　黑岡君ハ何デスカ

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• 065・黒岡帶刀

  ○黑岡帶刀君　私ハ陸軍大臣及海軍大臣ニ少シ伺ヒタイ、今、討論カ質問カ
  分リマセヌガ···

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• 066・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今、通告順ニ依リマシテ發言ヲ許シテ居リマス
  カラ、矢口君ニ是カラ許サウト思ヒマス、矢口君ノ御演說ガ終リマシタナラ
  ベ、黑岡君ニ質疑ヲ許サウト思ヒマス、矢口長右衞門君
  〔矢口長右衞門君演壇ニ登ル〕
  〔「簡明ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕

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• 067・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　何デゴザイマスカ
  〔「簡明ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕

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• 068・矢口長右衞門

  ○矢口長右衞門君　「オヴコース」······、唯今、前ノ論者ガ自席ヨリ辯ゼラレ
  マシタカラ、本案ニ致シマスルト、私モ簡單ヲ主ト致シマシテ、自席ヨリス
  ルノガ順序カモ知レマセヌ、私ハ假令簡單ナル問題デモ、成ルベク此壇上ニ
  アッテ、努メテ明瞭ニ各員ニ徹底スルノガ當ヲ得タルモノト信ジマスルガ故
  ニ、玆ニ演壇ニ立ッタノデゴザイマス、此問題ハ深ク討究イタシマスレバ、
  幾多ノ疑問ガ起リ、實ニ先カラ先ト云フヤウニ、種々ノ問題ハ勿論、是ハ起
  ルノデアルケレドモ、斯ウ云フコトニナリマスト、此問題ハ常識ト云フモノ
  ヲ以テ判斷スレバ、左程正鵠ヲ失ハナイモノト本員ハ信ズルノデゴザイマス、
  前ノ論者ノ如キハ、如何ナル必要ガアッテ斯カル問題ヲ、斯カル法ヲ出スカ
  ト云フコトデゴザイマスガ、若シ之ヲ置イテ如何ナル不便ガアルカ、如何ナ
  ル害ガアルカト云フコトヲバ私ハ反問ヲ致シタイノデアリマス、若シ此問題
  ニシテ、此制定ガゴザイマセヌケレバ、參與官ナリ政務次官ナルモノヲシテ
  始終十分ノ働キヲサセルコトガ出來ナイ、何事ニ付テモ、是ハ軍紀ニ關スル
  トカ、是ハ政治ニ關スル事ダト云ウテ、一々顧慮スルヤウナコトガアッテハ、
  其人ヲシテ十分ニ働カセルト云フコトハ、是ハ必ズ出來マセヌ、カルガ故ニ
  明カニ、玆ニ此事ヲバ、明瞭シテ置クコトハ、其事柄ヲシテ、總テノ分界ヲ
  明カニシ、何等ノ行動······何等、質問ニ疑義ノ挾ラヌコトニナル、私ハ之ヲ
  以テ斯ウ云フモノヲ置クノガ正當ナリ、斯ウ私ハ深ク信ズルノデアリマス、
  又皆サンモ御承知デゴザイマセウガ、大隈內閣ノ時代ニ在ッテ、參政官ナル
  モノガアリマシタガ、矢張リソレト同一ノ趣旨デアル、其時分ニ於テ、最早
  各人ノ頭ハ是ハ除外スベキモノデアル、殆ド斯ウ一般ガサウ頭ニ泌ミテ居ル
  ノデアル、ダカラ斯カル其不文ノコトヲバ玆ニ文章ニ表ハシテ明カニシタダ
  ケノモノデアル、斯ウ私ハ解釋シテ宜カラウト思フ、ダカラ此條項ヲ玆ニ明
  カニシテ置クノハ、最モ其當ヲ得タルモノナリ、斯樣ニ信ジマスルガ故ニ茲
  ニ此一言ヲ申上ゲテ置キマス次第デアリマス

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• 069・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ニテ通告者ハ終リマシタ

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• 070・黒岡帶刀

  ○黑岡帶刀君　私ハ質問ガアリマスカラ······成ルベク大臣カラ御答辯ガ願ヒ
  タイト思ヒマスガ(聽取シ難シ)大隈內閣ハ十餘年モ前ノコトニナリマスカ
  ラ、今ハモウ既ニ時勢ガ違ッテ居リマス、何故カナラバ卽チ日露條約モ締結
  サレヽ赤化運動ナドモ追〓ト取締リノ必要ガアルヤウデアル、又今度ハ普通
  選擧ト云フモノガ行ハレムトシテ居ル(聽取シ難シ)十年前ノ時代トハ少シ
  ク違フヤウニ考ヘルノデアリマス(聽取シ難シ)但シ此政務官ハソレ以上ニ
  ハ及バナイモノデアル、ソレデ此取締法ヲ··

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• 071・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　黑岡君モウ少シ大聲デ御述ベヲ願ヒタウゴザイマ
  ス

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• 072・黒岡帶刀

  ○黑岡帶刀君　ハイ〓〓······今ノナリニ放任シテ置クト他ノ下士卒等ガ之ニ
  傚ッテ萬一政談演說ヲスルト困ル、ソレデ卽チ政務官ヲ除外スルト云フコト
  ヲ此法律ヲ以テ明カニシマシテ、決シテ政務官ニ傚ッテハイケナイ、今日ハ
  危險思想ガ這入ッテ來テ居ルカラ嚴重ニ取締ヲシナケレバナラヌ(聽取シ難
  シ)政務官ノ擧動ニ對シテハ政務官ハ卽チ政黨ニ這入ッテ居ル人デアル、代
  議士カラ出タ人デアルカラ選擧區ニ行ッテ自分ノ意思ヲ發表スル必要ガアル
  カラ除外シテ、他ノ人ニハサウ云フコトノ制限ヲスルノデ、ソコデ之ニ傚ッ
  テハイケナイト云フコトヲ一般ニ示ス爲ニ、其事ヲ明カニシテ置クト云フコ
  トニ、大體委員會等ニ於テ承ッテ居ッタノデアリマス、ソレカラ刑法三十五條
  ノ適用ト云フコトニ付テハ海軍省ノ當局者ニモ司法省ノ當局者ニモ伺ッタガ、
  ソレハ到底出來ナイト云フコトデ此法律ヲ適用スルノデアルト云フコトニ、
  私ハ伺ッタガ、併ナガラ實際(聽取シ難シ)サウ云フ法律ノ適用デアルカド
  ウカ、是ハ或ハ司法省ノ政府委員カラデモ宜シウゴザイマス、尙ホ御聲明ヲ
  願ヒタイ、ドウゾ御答辯ヲ願ヒマス
  [國務大臣財部彪君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/72

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• 073・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　唯今、黑岡サンノ御尋ノ要旨ハ、私カラモ委員會ニ於
  キマシテモ、又本議場ニ於テモ既ニ申上ゲタコトモアル、斯ウ思ッテ居リマ
  スルガ、大體ニ於テ全ク御同感デアル、段々反對者ノ御演說ノ中ニハ刑法三
  十五條ノ規定ニモアリ、又現在用ヰテ居リマス所ノ陸海軍ノ軍法會議ノ法ハ
  便宜主義ニ出デタルモノデアルカラ斯ノ如キ除外法ヲ設ケナイデモ、政務官
  參與官等ハ處罰サルヽ如キ虞レハナイ、ソレダカラ之ヲ必要トセナイデハナ
  イカト云フ御議論モ屢、承リマスケレドモ、元來、今囘ノ此除外法ヲ設ケタ
  イト云フ趣意ハ、成程、此政務官參與官ノ處罰ヲ免レシムルト云フコトモ一
  ツノ目的デゴザイマスケレドモ、ソレト同時ニ丁度今黑岡君ノ御話ノアリマ
  シタ通リ、此法ヲ設ケテ置カヌト云フト、政務官參與官等ガ政談演說ヲ致シ、
  又ハ政見ノ發表ナドヲ致スコトヲ默過シテ居リマスル其事柄ヲバ、餘リ常識
  又ハ世間ノ事ノ分リマセヌ所ノ下士官ヤ兵卒、又ハ下級ノ軍屬ノ者共ガソレ
  ヲ取違ヘマシテ、上ノ人ハ斯ノ如ク政談ヤ何カヤルヂヤナイカ、我〓モヤッ
  テ差支ナイヂヤナイカ、然ルニ我〓ガヤルト是ハヤカマシイコトヲ所屬ノ人
  ハ言フ、甚ダ是ハ不都合ヂヤナイカト云フヤウナコトヲ聽クコトヲ恐レルノ
  デアリマス、ソレデ此法ヲ設ケマシテ、ソコノ所ヲ明カニ致シテ置キマシテ、
  今日政務官參與官ノ設ケラレマシタコトハ現實ノ問題デゴザイマスカラ、之
  ヲ設ケラレマシタ其事ガ偶偶然ニモ軍紀風紀ヲ幾分ナリトモ弛緩セシメ、
  之ニ障礙ヲ及ボス如キコトガアッテハ甚ダ遺憾千萬ノ事デアリマスルカラ、
  此法ハ是非御協賛ヲ得テ成立ノ運ビニ至ラムコトヲ切ニ希望イタシテ居ルノ
  デアリマス、此機會ニ臨ミマシテ更ニ各位ノ御協賛ヲ御願ヒスル次第デアリ
  マス

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• 074・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クベシトス
  ル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/74

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• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　數ガ不明デゴザイマスカラ、一應御著席ヲ請ヒマ
  ス、二讀會ヲ開クベカラズトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

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• 076・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　二讀會ヲ開クベカラズトスル方ガ多數ト認メマ
  ス、本案ハ否決セラレマシタ
  〔拍手起ル〕
  Wanti桌小賣

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• 077・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十八、米穀法中改正法律案、日程第十九、
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ
  績委員長報君、荒井賢太郞君
  米穀法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  荒井賢太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  荒井賢太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔荒井賢太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/77

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• 078・荒井賢太郎

  ○荒井賢太郞君　兩案ノ特別委員會ニ於ケル經過竝ニ結果ノ御報告ヲ申上ゲ
  やす、本案ハ現行法ニ「米穀ノ需給ヲ調節スル爲」云々トアリマスルノヲ「米
  穀ノ數量又ハ市價ヲ調節スル爲」云々ト改正ヲ致サムトスルノデアリマス、
  其理由ハ當局ノ說明ニ依リマスト、我ガ國民ノ主要食糧品タル米穀、又我ガ國
  民ノ大多數ヲ占ムル所ノ農家ノ主要生產品タル米穀、此米穀ノ市價ノ變動ガ
  甚シイト云フコトハ雙方ノ爲ニ利益デナイ、卽チ此米穀ノ市價ノ變動ヲ成ル
  ベク少クシ、一年ヲ通ジテ成ルベク市價ノ平準ヲ保タシムルト云フコトハ、
  國民ノ生活上ニ安定ヲ與フルト云フ點カラ申シマシテモ、又農家ノ經濟ヲ健
  實ニスルト云フ點カラ申シマシテモ、極メテ緊切ノコトト思フ、然ルニ現行
  法ニ於キマシテハ數量ノ調節ヲスルト云フコトデアリマシテ、其結果、米價
  ノ調節ヲ來ス譯デハアルガ、併ナガラ此市價ノ變動、例ヘバ端境期ニナルト云
  フト、其年ノ作柄ノ豫想ノ上ニ思惑ヲ試ミテカラニ米價ニ暴騰暴落ヲ來ス、
  斯樣ナ場合ニ於テ市價ノ變動ヲ緩和スルト云フ方法ニ缺ケテ居ルヤウニ思
  フ、ソレ故ニ此點ニ付テ市價ノ變動ヲ緩和シ、成ルベク市價ノ値幅ヲ狹クス
  ルト云フ爲ニ、今囘、此改正案ヲ提出シタ次第デアル、斯ウ云フノガ當局ノ
  御說明デアリマスル、兩案トモ同樣ノ趣旨ニ依ッテ改正ノ條文ガ出來テ居ル、
  デ。誠ニ改正案ノ條文ハ簡單デアリマスルガ、其影響スル所ハ頗ル大ナルモ
  ノガアルト認メマシテ、委員會ハ前後數囘ニ亙ッテ開會ヲ致シマシテ、而シテ
  當局者トノ間ニ質問應答ヲ重ネマシテ、又懇談ヲ致シマシテ、又此事ニ付テ
  特別ノ知識ヲ有セラルヽ所ノ委員外ノ議員ノ御方ノ御意見ヲ聽キマシテ、サ
  ウ致シマシテ審議ヲ重ネマシタ、其質問應答ニ現ハレマシタ事項ハ數多アリ
  マシテ、玆ニ一々之ヲ列擧スルト云フコトハ煩ヲ避ケマシテ、唯主要ナル項
  目ダケヲ擧ゲマスト云フト、米ノ專賣ニ關スル問答、酒造米ノ石數ニ關スル
  問答、販賣制度ノ改善ニ關スル問答、又數量、取締ノ方法ニ付テノ問答、ソレ
  カラ市價ノ平準ト云フコトハ何ヲ以テ平準トスルカト云フヤウナ問答、是等
  ニ對シテ數多ノ問答ガアリマシタ、併シ是等ノコトハ旣ニ速記錄ニ登載セラ
  レテアリマス、御手許ニ廻付シテアルト存ジマスルカラ玆ニハ悉ク之ヲ省略
  イタシマシテ、唯昨日最終ノ特別委員會ヲ開キマシタ節ニ、委員中ヨリ質
  問ガ出マシテ、其質問ノ要旨ハ本案ノ目的ハ人爲ニ依ッテ生ズル所ノ米穀ノ
  市價ノ激變ヲ防ギ、成ルベク其平準ヲ得セシムルト云フコトニアルノデアル
  ト考ヘマスト、デ、之ヲ外ニシマシテ單ニ米價ヲ引上ゲル、又ハ米價ヲ引下
  ゲルトカ、斯ウ云フ意味ハ本案ニ無イモノト思ヒマス、デ、詰リ本案ハ市價
  ノ平準ヲ成ルベク保タセタイ、暴騰暴落ノ場合ニ之ヲ緩和シテ行ッテ、一年
  ヲ通ジテ成ルベク市價ノ平準ヲ保タセタイト云フノガ本案ノ趣意デアル、デ、
  米價ガ生產費其他ニ對シテ安過ギルカラ、ソレヲ高メル、又ハ生活上ノ食糧
  品トシテ高過ギルカラ之ヲ低メル、斯ウ云フヤウナコトハ是ハ別問題デ、本
  案ハソレヲ致サウト云フ趣意デハナイト思ヒマス、併ナガラ世間ニハ市價ノ
  調節ト云フコトニ付テハ、往々疑念疑義ヲ懷イテ居ル者モアリマスルカラシ
  テ、此點ニ對シテ當局大臣ノ明確ナル御答辯ヲ求メタイ、改メテ求メタイ、
  斯ウ云フ趣意ノ御質問ガ出マシタ、之ニ對シマシテ當局大臣ハ、御尋ノ通リ
  デアリマス、デ、米價ハ經濟上需給ノ關係ニ依リ自然ニ定マルベキ所ニ定マ
  ルノデアル、デ、本案ハ決シテ之ヲ動カスト云フヤウナ考ハ有ッテ居ラナイ
  ノデゴザリマス、ソレデ又人爲ヲ以テ之ヲ左右スルト云フヤウナコトハ出
  來ナイコトト思ヒマス、唯、本案ノ目的トスル所ハ、斯樣ニ經濟上、需給ノ關
  係ニ依ッテ自然ニ落チ著クベキ所ニ落チ著クベク、米價ガ人爲ニ依リ卽チ投
  機思惑等ニ依ッテカラニ、不自然ノ價ヲ生ズルコトガアル、卽チ不自然ニ暴騰
  暴落ヲ來ス、斯ウ云フコトガアルノデアッテ、斯カル事ト云フモノハ消費者
  ニ對シテモ、又生產者ニ對シテモ不利益デアルカラ、斯樣ナ暴騰暴落ヲ防ギ
  成ルベク市價ヲシテ平準ヲ得セシメタイト云フコトガ本案ノ目的デアリマ
  ス、斯ウ云フ御答ガアリマシタ、ソコデ委員會ハ······斯ウ云フ趣旨ノ御答ガ
  アリマシタ、ソコデ委員會ハ討論ニ移リマシテ、一委員カラ本案ニ對シテ贊
  成ノ御意見ヲ述ベラレマシタ、卽チ本案ハ米穀ノ市價ノ暴騰暴落ヲ防ギ成ル
  ベク平準ヲ得セシメタイト云フ御趣旨デアルカラ、極メテ適當ナモノト思フ
  カラ贊成ヲ表シマス、併ナガラ同時ニ是ガ運用ト云フコトニ付テハ十分ノ注
  意ヲ要スルト思ヒマス、若シ其市價ノ調節ノ方法ガ其宜シキヲ得ナイト云フ
  コトニナルト云フト、却テ市價ヲ······市場ヲ攪亂スルト云フ結果ニ陷リハシ
  ナイカト云フ虞レヲ懷イテ居ル、ソレ故ニ政府當局ニ於テ之ヲ實行ナサルト
  云フ場合ニ於テハ十分ニ愼重ナル御注意ヲ御取リ下サレテ、或ハ權威アル機
  關ニ御諮リヲ爲サレ、其他愼重ナル注意ヲ以テ實行ニ當ラレムコトヲ望ム次
  第デアル、其意味ニ於テ左ノ希望ヲ述ベルト云フコトデ希望ヲ述ベラレマシ
  タ、其希望ハ玆ニ朗讀ヲ致シマス
  米穀ノ市價ヲ調節スルニ當リ若シ其ノ方法宜シキヲ得サルトキハ却テ市場
  ヲ攪亂スルノ虞ナシトセス依テ政府ハ之カ實行ニ際シ十分愼重ナル注意ヲ
  取ラレムコトヲ望ム
  斯樣ナ希望條件ヲ出サレマシテ、本案ニ贊成ノ意見ヲ述べラレマシタ、デ、
  採決ヲ致シマシタ所ガ、全會一致ヲ以テ希望決議ト併セテ本案ヲ可決ニナリ
  マシタ、兩案トモ可決ニナリマシタ、此段御報告ヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/78

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• 079・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　唯今、荒井特別委員長ノ報〓セラレマシタ兩案ノ
  第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  〔山脇玄君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/79

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• 080・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　山脇君ハドウ云フコトデスカ
  〔子爵八條隆正君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/80

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• 081・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　山脇君ニ今御發言ヲ許シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/81

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• 082・山脇玄

  ○山脇玄君　私ハモウ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/82

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• 083・八條隆正

  ○子爵八條隆正君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/83

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• 084・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/84

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• 085・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開クト云フ八條子爵ノ動
  議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
  起立者多數

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/85

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• 086・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマス
  Won小冬青〓

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/86

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• 087・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/87

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• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/88

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• 089・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/89

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• 090・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/90

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• 091・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/91

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• 092・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  山本小学喜小山嘉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/92

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• 093・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　兩案共ニ第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
  〓〓〓

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/93

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• 094・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  MORT豆香斋

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/94

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• 095・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二十、關東州ノ生產ニ係ル物品ノ輸入稅免
  除ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、松
  平直平君
  關東州ノ生產ニ係ル物品ノ輸入稅免除ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  子爵松平直平
  貴族院議長公爵德川家逹殿
  〔子爵松平直平君演壇ニ登ル]

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/95

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• 096・松平直平

  ○子爵松平直平君　唯今、上程セラレマシタ關東州ノ生產ニ係ル物品ノ輸入
  稅免除ニ關スル法律案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、本
  案ハ政府ノ說明ニ依リマスルト云フト、關東州ノ產業ハ目下漸次發展ハシテ
  參ッテ居リマスルケレドモ、今後尙ホ一層之ガ發展ヲ期スルコトハ、國策上肝
  要ノコトデアルコトハ申ス迄モナイ、然ルニ關東州ハ帝國ノ租借地トナリマ
  シテカラ二十餘年ニモ相成リマスルケレドモ、其關稅ノコトニ付テハ殆ト外
  國ノ取扱ヲ受ケテ居ルヤウナコトデ、從テ同州ヨリ生產シタ物品ニハ關稅ヲ
  從來課セラレテ居ルノデアリマスル、今囘、政府ニ於テハ關稅上、特別ノ制度
  ヲ採用イタシ、此法律案ニアリマスル生果外三十種ノ物品ニ付キマシテハ、之
  ヲ免稅シ、内地トノ經濟關係ヲ益〓密密ナラシメ、關東州內ノ產業發展ニ資ス
  ルト同時ニ、內地ニ於ケル是等ノ物資ノ供給ヲ滑カニスルト云フコトデアリ
  TV·8ソレデ本案ニ揭ゲテアル物品ノ大要ヲ區別イタシマスルト、三ツニナ
  リマスノデ、關東州原產ノ食糧品又ハ原料品、第二ガ關東州內ノ原料品ヲ以
  テ製造シタルモノ、第三ガ主トシテ滿蒙ノ無稅原料品ヲ以シ製造シタル物品、
  此三ツニ分ツコトガ出來マス、關東州內ニ生產スル食糧品ヤ原料品及州內ノ
  原料品ヲ以テ製造シタ品物ハ之ヲ內地ニ輸入スルコトニ相成リマスレバ、從
  テ關東州ノ事業家ハソレダケ廣ク販路ヲ有スルコトニ相成リマスルノデ、彼
  地ニ於ケル產業開發ニ資スルコトハ申ス迄モナイコトト存ジマス、次ニ關
  東州外ノ原料ヲ以テ製造シタル物品ニ於テハ、此特別ナル制度ニ依リマシテ
  關東州內ノ工業ヲ發展セシメル場合ニハ、ソレガ爲ニ內地ノ產業ニ脅威ヲ與
  ヘルト云フコトガナイトモ限リマセヌノデ、此法案ニ列記シテアル各品目ノ
  選定ニ付テハ特ニ政府ハ注意ヲ拂ッタト云フコトデアリマス、又州外ヨリ無
  稅ニテ關東州ニ這入ッテ參ッテ、加工製造セラレタル物品ニ付テハ、政府ハ特
  ニ嚴密ナル選定ヲシテ、是等ノ原料ガ內地ニ輸入セラレテモ又無稅デアルモ
  ノノミヲ玆ニ列記シタノデアリマス、而シテ內地ト關東州ニ於ケル是等ノ種
  種ノ產業ニ於テ、權衡ヲ失セザルヤウニ致シタノデアルサウデアリマス、從
  テ此法案ニ列記シテアル生果外三十種ノ品物ハ、內地ニ於ケル此種ノ產業ニ
  惡影響ヲ與ヘルコトナク、輸入稅ノ免稅ニ依リマシテ、內地工業ノ原料品ノ
  供給ヲ益〓潤澤ニ致シ、生活必需品ヲ供給スルコトガ出來マスコトニ相成リマ
  シテ、又一面ニ於キマシテハ、關東州ノ產業ヲ大ニ刺戟スルノ效果ヲ齎スト
  云フコトデアルノデアリマス、是ガ此案ノ大體ノ趣旨デアリマス、之ニ對シ
  テ細カナ質問モゴザイマシタガ、一々之ヲ申上ゲルノ煩累ヲ避ケマシテ、其中
  ノ主モナル二三ノモノヲ申上ゲマスレバ、衆議院ニ於テ附帶決議ガアルガ、此
  附帶決議ニ付テ政府ノ意向ハ如何デアルカト云フ問題デアリマス、御參考ノ
  爲ニ其附帶決議ノ〓略ヲ申上ゲマスレバ、關東州ノ生產ニ係ル物品ノ輸入稅
  免除ニ關スル法律案ノ中ニ硬化油ヲ追加スルコト、ソレカラ一般關稅ノ改正
  ト同時ニ「グリセリン」ニ對シ從來ノ稅率ヲ引上ゲ從價三割以上、牛脂
  ニ對シ從價一割以上ヲ課稅スルコト、是ガ附帶決議デゴザイマス、政府當局
  ノから、「グリセリン」ニ付テハ、一般關稅改正ノ際ニ考慮スル考デアル、牛脂
  ニ付テハ直チニ取計フコトハ出來ヌケレドモ、考究スル積リデアルト云フコ
  トデアリマシタ、硬化油モ亦同ジク一般改正ノ時ニ考慮スルト云フコトデア
  リマシタ、又委員ノ一人ヨリ斯ウ云フ問ガアリマシタ、物品ノ輸入稅免除ト
  云フコトハ相當ノ理由ニ依ッテ之ヲ爲スコトハ、別段異論ハナイケレドモ、本
  案中ニハ未成品ノモノガアル、之ニ對シテモ免稅ヲスルノハ如何デアルカト
  云フ問デアリマシタ、之ニ對シテ政府當局ハ政府ニ於テモ相當ノ考慮ヲ致シ、
  又研究ヲ遂ゲタノデアルガ、內地ノ產業ニ對シテ影響ナイモノト云フ確信ヲ
  以テ玆ニ揭ゲタノデアルト云フ答デアリマシタ、又一ツノ質問ハ、生果ニ付
  テ昨年贅澤品トシテ課稅セラレタモノヲ、今囘ノ法案ニハ之ヲ免稅スルト云
  フコトハ如何ナ趣意デアルカト云フ質問モアリマシタ、政府當局ノ答ハ、贅
  澤品ノ生果ト云フノハ、主トシテ海外ヨリノ輸入ヲ防グ爲ノモノデアッテ、
  關東州トハ其事情ヲ異ニスル、關東州ハ內地ト同樣ノ經濟關係ヲ有スルガ故
  ニ、贅澤品トシテ取扱フノ必要ハナイト思フト云フ答辯デアリマシタ、其他
  各項目ニ付テ細カナ質問ガアリマシタケレドモ、是ハ省略ヲ致シマス、討論
  ニ入リマシタ所、別段ニ意見モ出マセヌデアリマシタガ、委員ノ一人ヨリ、今
  日ノ場合適當ノ案トハ認メルケレドモ、此案ガ實施サレタ上ハ、是等ノ品物
  ハ關東州ノ生產ノ物ニ限ル關係カラシテ、其取締ハ最モ嚴重ニセラレタイト
  云フ希望ヲ申述ベラレマシタ、其他、何等異議ナク、本案ハ全會一致ヲ以テ可
  決セラレマシタ、右御報告ヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/96

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• 097・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/97

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• 098・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/98

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• 099・櫛笥隆督

  ○子爵櫛笥隆督君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/99

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• 100・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/100

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• 101・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/101

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• 102・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  五十五호우가훑

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/102

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• 103・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/103

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• 104・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/104

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• 105・櫛笥隆督

  ○子爵櫛笥隆督君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/105

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• 106・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/106

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• 107・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/107

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• 108・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  桌面八重点

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/108

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• 109・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/109

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• 110・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  童黄山東

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/110

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• 111・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二十一、中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京
  電燈株式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律
  案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、新庄子爵
  中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈株式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ對
  スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  大正十四年三月二十三日
  右特別委員長
  子爵新庄直知
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔子爵新庄直知君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/111

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• 112・新庄直知

  ○子爵新庄直知君　唯今、議題ニナリマシタル案ハ、中國鐵道ガ伯備線ノ開通
  ニ伴ヒマシテ、全線五十哩三分ノ中、一哩七分ヲ經營廢止ヲ致シマシタノト、
  尙ホ東京電燈株式會社ノ澁川沼田間ノ十二哩八分ノ軌道ノ經營ヲ廢止イタシ
  マシタノニ付テ、政府ハ之ニ對シテ法規ニ依ッテ補償ヲ與ヘルト云フ案デゴ
  ザイマス、委員會ニ於キマシテハ、此案ニ對シテ何等質問モナク、直チニ討
  議ニ入リマシテ全會一致ヲ以テ可決イタシマシタ、此段御報〓イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/112

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• 113・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/113

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• 114・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/114

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• 115・櫛笥隆督

  ○子爵櫛笥隆督君　直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/115

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• 116・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/116

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• 117・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/117

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• 118・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  보호가亮

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/118

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• 119・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　全部ヲ問題ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/119

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• 120・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/120

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• 121・櫛笥隆督

  ○子爵櫛笥隆督君　直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/121

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• 122・大山綱昌

  ○大山綱昌君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/122

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• 123・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/123

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• 124・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  山东小心木山古爪n

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/124

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• 125・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/125

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• 126・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  山古市北市风心事

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/126

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• 127・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第二十二、道府縣會、市會及勅令ヲ以テ指定
  シタル議會ノ議員選擧ニ關シ衆議院議員選擧法中一部ノ規定準用ニ關スル法
  律案、衆議院提出、第一讀會
  道府縣會、市會及勅令ヲ以テ指定シタル議會ノ議員選擧ニ關シ衆議院議
  員選擧法中一部ノ規定準用ニ關スル法律案
  右本院提出案及送付候也
  大正十四年三月二十三日
  衆議院議長粕谷義三
  貴族院議長公爵德川家達殿
  北海道會、府縣會、市會及勅令ヲ以テ指定シタル議會ノ議員選擧ニ關シテ
  ハ大正十四年ノ改正ニ係ル衆議院議員選擧法第九十一條、第九十二條、第
  九十八條、第百條及第十二章ノ規定ヲ準用ス
  附則
  本法ハ大正十四年四月二十日以後ニ於テ行フ總選擧ヨリ之ヲ施行ス
  本法施行ノ際大正十四年ノ改正ニ係ル衆議院議員選擧法未タ施行セラレサ
  ル場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付テハ同法ハ既ニ施行セラレタルモノト看做
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/127

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• 128・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ハ衆議院議員選擧法改正法律案ノ特別委員ニ
  付託イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/005003242X02819250324/128

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• 129・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　明二十五日ハ午前十時ヨリ開會イタシマス、議事
  日程ハ決定次第、本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタ
  シマス
  午後六時三十一分散會

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