1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十四年二月五日(木曜日)午後一時十九分開議
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議事日程 第九號
大正十四年二月五日
午後一時開議
第一 公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 輸出組合法案(政府提出) 第一讀會
第四 重要輸出品工業組合法案(政府提出) 第一讀會
第五 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 在外國帝國專管居留地特別會計法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 陸軍營繕費補充資金特別會計法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 大學特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 朝鮮醫院及濟生院特別會計法廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 所得税法中改正法律案(菊池謙二郎君提出) 第一讀會
第十一 商業會議所法中改正法律案(増田義一君提出) 第一讀會
第十二 教育の機會均等に關する建議案(山枡儀重君外二名提出)
第十三 獸醫師法の制定に關する建議案(服部英明君提出)
第十四 社會教育局設置に關する建議案(樋口秀雄君提出)
第十五 國定教科書の飜刻竝販賣の改善に關する建議案(樋口秀雄君提出)
第十六 大間々長野原間鐵道建設に關する建議案(清水留三郎君外四名提出)
第十七 航空行政中央統一機關設置に關する建議案(長岡外史君提出)
第十八 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(佐々木春作君外四名提出)
第十九 義務教育普及助成に關する建議案(山口政二君提出)
第二十 社會教育振興に關する建議案(青木精一君提出)
第二十一 男子用通常禮服に關する建議案(菊池謙二郎君提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=0
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
米穀法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
(以上二月五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案
提出者
原夫次郞君高見之通君
牧山耕藏君大麻唯男君
藏園三四郞君廣岡宇一郎君
(二月五日提出)
金鵄勳章年金令改正實施ニ關スル建議案
提出者上井權大君
京都市ニ國立音樂學校設置ニ關スル建議案
提出者森田茂君
滋賀縣ニ水產講習所設置ニ關スル建議案
提出者平井光三郞君
高等師範學校設置ニ關スル建議案
提出者
一柳仲次郞君淺川浩君
千代木隆吉君山本厚三君
神部爲藏君澤田利吉君
小池仁郞君
農村〓育改善ニ關スル建議案
提出者湛增庸一君
遠信鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
樋口秀雄君山本勝次君
戶田由美君永田善三郞君
國防會議設置ニ關スル建議案
提出者長岡外史君
鶴岡市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者齋藤眞三郞君
女子高等〓育ノ振興ニ關スル建議案
提出者內ヶ崎作三郞君
(以上二月三日提出)
拓殖省設置ニ關スル建議案
提出者
牧山耕藏君小橋一太君
木下謙次郞君鳩山一郞君
成田榮信君則元由庸君
高見之通君津崎尙武君
向井倭雄君藏園三四郞君
原夫次郞君栗林五朔君
東〓實君吉木陽君
山陰鐵道本線電化速成ニ關スル建議案
提出者
原夫次郞君平田民之助君
櫻內幸雄君吉木陽君
廣岡宇一郞君
出雲大社宍道湖及中海ヲ中心トスル國立
公園設置ニ關スル建議案
提出者
原夫次郞君平田民之助君
櫻內幸雄君
(以上二月五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
長尾原田間鐵道ニ關スル質問主意書提
出者加藤十四郞君
司法權運用竝司法事務能率增進ニ關スル
質問主意書
提出者黑住成章君
(以上二月三日提出)
一去三日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如
衆議院議員蟻川五郞作君提出陸軍軍備ノ
整理竝行政整理ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
陸軍軍備ノ整理竝行政整理ニ關スル質
問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年一月二十四日
提出者蟻川五郞作
贊成者橫山勝太郞
外三十四名
陸軍軍備ノ整理竝行政整理ニ關スル
質問主意書
-陸軍軍備ノ整理ニ就テハ師團數減少
ノ外他ニ適當ノ方法ナキヤ
二師團數ヲ減スルハ假ニ已ムヲ得スト
シテ砲兵ヲモ減スルハ果シテ機宜ニ
適シタルモノナルヤ
右及質問候也
大正十四年二月三日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員蟻川五郞作君提出陸軍軍備ノ
整理竝行政整理ニ關スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員蟻川五郞作君提出陸軍軍備
ノ整理竝行政整理ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
-今囘企圖セル新施設ノ整理ヲ見ル曉
ニ於テハ師團數ヲ減少スルモ國防上
支障ナク又其ノ他ノ方法ニ據ルコトハ
動員作戰ハ勿論經費捻出等ノ關係ニ於
テ適當ナラスト認メ今囘實施セントス
ル方法ヲ最良ト信シ之ヲ採用スルコト
トセリ
二步砲兵ノ比率ニ關シテハ最近戰役ノ
經驗ニ鑑ミ特ニ審議〓究セラレタル所
ニシテ歐米列强ハ相競フテ其ノ比率ヲ
高上センコトヲ努メアリテ我國軍ニ於
ケル該比率カ列强ニ比シ及ハサル狀態
ニ在ルハ爭フヘカラサル事實ナルモ元
來國軍ノ裝備ハ其ノ行動スヘキ舞臺ト
敵手トヲ考へ且戰時補給力等ヲモ考慮
シテ決定スヘキモノニシテ目下ノ狀勢
ニ於テハ我國軍砲兵ニ關シテ質ノ改良
ヲ行ヒ其數量ノ如キハ必スシモ歐米列
强軍ト同一ナラシメサルモ妨ナシト考
ヘ茲ニ内外四圍ノ狀勢ニ照シ國防上必
要ノ最小限度ヲ整備シ尙既定ノ繼績費
ノ運用ニ依リテ其他ノ改善ヲ金圖ス
右及答辯候也
大正十四年二月二日
陸軍大臣宇垣成
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去三日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
〓育改善及農村振興基金特別會計法案委
員
小西和君川崎安之助君
一柳仲次郞君神谷彌平君
蟻川五郞作君關俊吉君
小橋一太君丹下茂十郞君
志村〓右衛門君小泉辰之助君
折原巳一郞君齋藤珪次君
廣瀨爲久君木戶豐吉君
三善〓之君山崎達之輔君
山本愼平君星島二郞君
一昨四日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
〓育改善及農村振興基金特別會計法案
(政府提出)
委員長齋藤珪次君
理事
神谷彌平君山本愼平君
星島二郞君
一昨四日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第二部選出
豫算委員石坂豐一君(杉宜陳君補閥)
第四部選出
豫算委員松山常次郞君(宮本逸三君
補閱)
第五部選出
豫算委員柏田忠一君(大石大君補關)
第七部選出
豫算委員平田民之助君(牧野良三君
補闕)
第六部選出
徵對委員藏園三四郞君(麓純義君補
關
第七部選出
懲罰委員〓水市太郞君(浦野謙朗君
補闘)
一昨四日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク指定變更セリ
一一小林彌七君
二〇井上雅二君
六七嶋居哲君
一四四宇田友四郞君
三五〇佐竹庄七君
三七二高木益太郞君
三七三大城幸之一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諮問事項ガアリマス、第三部選出懲罰
委員〓水長〓君、第八部選出豫算委員熊谷
五右衞門君、右兩君ヨリ常任委員辭任ノ申
出ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマ
セスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=2
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003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可スルコトニ致シマス、其部ノ
諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ、御屆出アラン
コトヲ希望致シマス-議事ノ進行ニ關シ
テ發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス-町野武馬君
〔町野武馬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=3
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004・町野武馬
○町野武馬君 本議會ニ於テ度々議場ハ擾
亂ニ陷リマシテ、議長ノ掌裏ヲ離レ、殆ド
收拾スベカラザル狀態ニナリマシタコトガ
一再ニ止マリマセヌ、斯クシテ議事ノ進行
ヲ妨ゲルコトハ勿論、議場ノ神聖ヲ害シ、
且ツ由テ以テ國威ノ進展ヲ妨グルモノデア
ラウト考ヘルノデアリマス、其原因タルヤ
多々アリマセウケレドモ、議員ニシテ議事
ヲ妨害セント試ムル者、或ハ議場ニ於テ低
級ナル妨害ノ言葉ヲ發スル者、或ハ故ラ
ニ挑戰的態度、若クハ應答ヲ爲ス者ガアル
爲ニ、益〓此擾亂ヲ重ネル機會ヲ與ヘルモ
ノデアルト思ヒマス、ソレデ其他色こノ事
ハアリマセウケレドモ、議員自ラガ自重シ
テ、愼重ニ此議院ノ神聖ヲ保ツコトニ努メ
マスルナラバ、決シテ斯ノ如キ事ガ起ルベ
キ筈ノモノデナカラウト考ヘマス、國民モ
亦之ヲ希望シテ已マザルモノト考ヘマス、
殊ニ加藤總理大臣閣下ノ言葉、其態度ニ於
テ不遜ナル狀態ヲ現ハシ、若クハ御答辯ニ
深切ヲ缺クガ如キ言葉ノアリマスコトハ
甚ダ遺憾トスル所デゴザリマス、殊ニ之ヲ
要スルニ議長ガ己レニ與ヘラレタル所ノ職
權ヲ嚴格ニ實行ヲセラレナイ爲ニ、議場ガ
擾亂ニ陷ルコトガ再三デゴザイマス、ドウ
カ議長ハ議長御自身ニ於テ、公平ヲ保ツ爲
ニ非常ナ御努力ノアル所ハ、吾々黨派ニ關
係ナイ者ニ於テモ大ニ感謝ヲシテ居リマス
ルケレドモ、尙ホ一層嚴格ニ議長ニ與ヘラ
レタル所ノ職權ヲ峻嚴ニ御實行アランコト
ヲ切ニ希望致ス所デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=4
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005・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今町野君ヨリ議長
ニ對スル御注意ハ、謹デ諒承致シテ置キマ
ス、次ニ議事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレ
テ居リマス
〔鳩山一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=5
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006・鳩山一郎
○鳩山一郞君 私ハ一昨日ノ義務〓育費增
額ノ問題ニ付キマシテ、其議事中三箇ノ疑
問ヲ懷イタノデアリマス、私ノ懷キマシタ
疑問ハ、將來議事ヲ進行スル上ニ重大ナル
關係ヲ持ツモノト思ヒマスノデ、ドウカ議
長カラ御深切ナル御釋明ヲ御願致シタイノ
デアリマス、第一ノ疑問ハ高田耘平君ガ
將ニ討論ヲ終ラントスルニ先チマシテ、私
ハ提案ノ趣旨ノ說明ノ補足ヲ、書記官長竝
ニ議長ニ發言ノ通告ヲ致シタノデアリマ
ス、之ヲ何ガ故ニ御許シニナラナカッタノ
デアルカ、是ガ第一ノ疑問デアリマス、第
二ノ疑問ハ討論ヲ高田耘平君ガ終リマシ
テ、未ダ提案ニ付テ贊成者ガ討論ヲ致シマ
セヌ中ニ、議長が討論終結ノ動議ヲ御採決
ニナッタノデアリマス、此點ニ付テ何ガ故ニ
提案ノ賛成者ヲ御許シニナラナカッタノデ
アルカ、是ガ疑問ノ第二デアリマス、第三
ハ討論終結ノ動議ガ提出セラレマスト、直
ニ我黨ノ松田、中村、兩院內總務カラ委員
付託ノ動議ヲ提出スベク發言ヲ求メタノデ
アリマス、然ルニ議長ハ兩君孰レニ對シテ
モ發言ヲ許サナカンタノデアル、是ハ何故デ
アリマスカ、此三ツノ疑問ヲ懷イタノデア
リマス、第ノ疑問ハ高田耘平君ノ御演說
ハ速記錄ニ依リマスルト「私ハ此法律案ニ大
體ニ於テ反對ノ意見ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスガ、其反對ノ意見ヲ申上ゲル前ニ提案
者ノ說明ヲ煩シタイ點ガアルノデアリマス、
ソレハ只今提案者ヲ代表シテ元田肇君カ
ラ縷々御說明ガアリマシタガ、一言モ二千
万圓ノ財源ヲ何所ニ求メルカト云フコトニ
付テノ御話ガ無イノデアリマス」詰リ高田
君ハ提案者ニ對シテ說明ヲ求メラレテ居ル
ノデアリマス、而シテ先例ニ依テ見マスル
ト、提案ノ趣旨ノ說明ト云フモノハ、何時
ニテモ之ヲ補足シ得ルコトニナッテ居リマ
ス(拍手)豫テ鈴置倉次郞君ガ-委員長ノ
報告竝ニ少數意見ノ報告ガアリマシタ後
デモ、鈴置倉次郞君ニ提案ノ趣旨說明ヲ許サ
レタ場合ガアル元田肇君ハ高田君ガ言ハ
レルガ如クニ、財源ニ付テハ說明ヲ爲サラ
ナカッタノデアル、高田君ノ反對演說ノ骨子
ハ何所ニ在リヤト云ヘバ二千万圓ノ財源
ヲ示サミルト云フ點ニ在ッタノデアル、是ガ
攻撃ノ焦點デアッタノデアリマス、斯ル場
合ニ於キマシテハ提案者トシテ財源ノ何
所ニアリヤト云フコトヲ說明スベキガ當然
デアリマス、是ニ於テ私ハ高田君ノ演說ヲ
半バ聽キマシテ、書記官長竝ニ議長ニ對シ
テ、提案ノ趣旨說明ノ補足ハ何時ニテモ出
來ルト思ヒマスカラ、ドウカ高田君ノ演說
終了後御許シヲ願ヒタイト云フコトヲ申上
ゲタノデアリマス、而シテ田口書記官ハ田
中隆三君ノ發言通告ヲ認メテ吳レマシテ、
之ヲ書記官長ノ手許ニ提出ヲ致シタノデア
リマス、是ハ高田君ガ討論ヲ終局ナサル以
前ノ出來事デアル討論ガ終リマシテ、何
ガ故ニ議長ハ直ニ此提案ノ趣旨說明ヲ御許
シニナラナカッタノデアルカ、私解スルコ
トガ出來ナインデアル(拍手)憲政會ヲ代表
サレマシテ、高田君ハ明ニ提案者ノ說明ヲ
煩シタイコトガアル、憲政會ノ諸君ハ我黨
ニ對シテ說明ヲ求メラレテ居ルノデアリマ
ス、求メラレタ憲政會ノ諸君ガ其說明ヲ聽
カズシテ、直ニ討論終結ノ動議ヲ出サレル
ト云フコトハ丁度闇夜ニ人ヲ擲リ付ケマ
シテ、逃ゲタヤウナ弱虫ノヤリ方デアルト
考ヘマス、斯ノ如キ不法不當ノ-私ハ法
規先例ニモ違シテ居ルト思フカラ不法ト申
上ゲルノデアル、面シテ事實ニ於テモ如何
ニモ不都合ト思ヒマスガ、此不當不法ナル
所ノ議事ノ進行ノ仕方ガ將來ニ繼續致スト
キニハ、私ハ議會ノ爲ニ甚ダ遺憾デアルト
思フノデアリマス、是ガ故ニ此點ニ付テ議
長ノ御釋明ヲ煩シタイノデアリマス、第二
ノ問題ハ討論ニ這人リマシテ、反對ノ意見
ノ陳述ガアタノデアリマス、之ニ對シテ
賛成者ニ一言半句ノ辯明ヲスル機會ヲ與ヘ
ナカッタト云フノハ、如何ナル次第デアルカ
ト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス(拍手)
討論ト云フコトハ勿論何人モ承知シテ居リ
マス通リニ、賛成論アリ、反對論アリ、交互
議論ヲスルガ故ニ之ヲ討論卜云フノデアル
(拍手)反對者ノミノ議論ヲ以テシテハ、是ハ
討論ト云フコトハ出來マセヌ、討論ガナケ
レバ從ッテ討論終結ト云フコトモ出テ來ナ
イ筋合デアル(拍手)私ハ如何ナル理由ヲ以
テ議長ハ賛成者側ニ發言ヲ許サナカッタノ
デアルカ、此點ヲ承リタイ(拍手)今マデノ
先例ニ依リマスレバ、賛成者一人ヲ許シ、
若クハ反對者一人ヲ許シタ後計論終結ノ動
議ガ起ッタ事モアリマスガ、議長ノ計ラヒ
ニ依ノテ、賛成者アル場合ニ於テハ反對者
ノ討論ヲ許シ、反對者アル場合ニ於テハ贊
成者ノ討論ヲ許シタ先例ガアルノデアリマ
ス(拍手)而シテ議長ガ言ヲ許セバ、其後
ニ於テハ討論終結ノ動議ガ如何ニ先決問題
タリト雖モ、發言ヲ許シタ後ニ於キマシテ
ハ討論終結ノ動議ノ採否ヲ議場ニ問フコト
ハ出來ナイト云フコトニナッテ居ルノデア
ル、故ニ議長ガ討論終結ノ動議ガ假令アリ
マシテモ、議長ノ計ラヒニ依シテ賛成者側
ニ討論ヲ御許シニナルト云フコトハ議長
ノ職權デ出來テ、而シテ其後ニ於テ討論終
結ノ動議ヲ採決スルコトガ最モ至當デアラ
ウト思フ、何ガ故ニ議長ハ其擧ニ出ナカッ
タノカ、私ニ分ラナイノデアリマス、三木
武吉君ガ嘗テ樋口君外三名ノ提出ニナンタ
〓育振興ニ關スル建議案ニ付テ御述ニナッ
夕事ガアルノデアル議事進行ニ付テ發言
ガアルト云フコトデ三木君ガ發言ヲ求メラ
レマシテ、其中ニ斯ウ云フ事ガ書イテアリ
マス「既ニ我黨ヨリ提出致シマシタル〓育
促進ニ關スル建議案ハ多數ヲ以テ否决セラ
レマシタ、吾々國民〓育ノ上ニ於テ非常ニ
痛苦ヲ感ズルノデアリマス、元來現內閣、
原內閣ハ世人之ヲ稱シテ政黨內閣ト稱シテ
居ルノデアリマス、政友會及現在ノ閣僚諸
君モ亦自ラ立憲內閣ト稱シテ天下ニ呼號シ
テ居ルノデアル所謂立憲內閣、所謂政黨
內閣ノ神髄ハ國民ノ血論ヲ尊重シ、國民ノ
聲ヲ十分ニ徹底的ニ、此議論ニ現ハスコト
ガ其眞諦デアルト謂ハナケレバナラヌ、吾
吾ハ國民ノ眞ノ希望ヲ提ゲテ此議會ニ問フ
タノデアリマス、然ルニ、然ルニデス、現
內閣ノ人〓竝ニ其與黨ハ考慮中ナリト云フ
言葉ヲ藉リテ、遂ニ本案ヲ否決シ去ッタト
云フコトハ、返ス々々モ遺憾デアリマス、
遺憾デアリマスガ、諸君自身、自ラ省ミテ
又愧ズル所ガアラウト田心ヒマス」斯ウ云フ
コトヲ言ハレタトキニ、議場ガ少シ騒ガシ
クナリマシテ、議長カラ注意ガアリ、三木
君ハ更ニ進ンデ發言ヲ繼續サレマシテ「此
重大ナル案ヲ前例デ多ク見ザル態度ヲ以テ
卽決否決ヲ爲シタリト云フコトハ多數國
民ノ頗ル遺憾トスル所デアラウト思フ、啻
ニ、啻ニデス、卽決否決ヲ爲シタルノミナ
ラズ、僅ニ提案者ト贊成者一人ノ演說ノミ
ヲ許シテ、多數ヲ以テ其他ノ言論ヲ抑壓ス
ルト云フコトハ果シテ諸君ガ平素主張ス
ル立憲内閣、或ハ政黨內閣ト云フ面目ニ對
シテ恥ヅル所ナキヤト云フコトヲ吾々ハ怪
ムノデアル、吾々ハ諸君ニ對シテ斯ノ如キ
暴狀、斯ノ如キ横暴ヲ逞シウスル與黨諸君
ニ警告ヲ致シタイト思ヒマス」斯ウ云フ演
說ヲサレタノデアル、此場合ハ樋口秀雄君
ガ提案ノ趣旨說明ヲ長こシクオヤリニナリ
マシテ、又小久保君カラシテ之ニ對シテノ
質問ガアリ、政府ニ對シテノ質問ガアリマ
シテ、原内閣總理大臣ハ又詳細ニ此質問ニ
答辯ヲサレマシタ、ソコデ早速君カラ委員
會ニ移スベシト云フヤウナ御話ガアッテ、是
ガ否決ニナッテ討論ニ人タノデアル討論
ニ入リマシタ後ニ大津淳一郞君ガ賛成ノ意
見ヲ述ベラレ、サウシテ小久保喜七君ガ反
對ノ意見ヲ述ヘラレタ、趣旨辯明ヲシテ其
後ニ贊成、反對ノ兩論ガアッテ、而モ其間
ニハ原內閣總理大臣カラ詳細ナ說明ガアツ
タ今日加藤總理大臣ガ義務〓育費ノ問題
ニ對シテ、殆ド說明ニ値スル說明ノ無イノ
トハ雲泥ノ違ヒガアルノデアリマス(「ヒヤ
ヒヤ」拍手)其十分ナル說明ガアッ夕後ニ、
尙ホ賛成反對ノ兩論ヲ許シテ、サウシテ採
決ヲシタノデアル、ソレニ對シテスラデ
ス-ソレニ對シテスラ三木君ハ僅ニ提案
者ト、賛成者ト、反對者ノ一人ヅツヲ許シ
テ否決シタト云フコトハ、何等ノ暴狀、何
等ノ橫暴デアルカ、自ラ省ミヨト云フコト
ヲ其當時ノ與黨諸君ニ警告シタノデアル
(拍手)今日此問題ト只今ノ問題トヲ比較シ
マスルト、形ノ上ニ於キマシテモ一方ハ建
議案デアリ、今日ノ案ハ法律案デアル、其
大小輕重自ラ違シテ居ルノデアル、而モ義
務〓育費ノ問題ハ抽象的ノ議論ハ之ヲ避ケ
マシテモ、此議場ニ於テ、此議會ニ於テ國
民ノ輿論ノ聲デアルト云フコトハ何人モ疑
ハナイト私ハ思フノデアル、(拍手)三木君
ハ曾テ國民ノ聲-國民ノ聲ヲ徹底的ニ議
場ニ表明セシメナクテハナラヌト言ッタノ
デアル、ソレヲシナイノハ政黨內閣ト云フ
名目ニ對シテ耻ヅル所ナキヤト言ハレタ
(拍手)國民ノ啓ヲ-輿論ヲ此所ニ發表ヲ
セシメナカッタノハ先達テノ與黨諸君ノ行
動デアラウト私ハ思フノデアル(拍手)此與
黨諸君ハ護憲運動ト云フモノヲ起サレテ、
衆議院ヲシテ政治ノ中心勢力ニシヤウトサ
レタ方デアルノデアル、政治ノ中心勢力ニ
シヤウト御働キニナルコトニ付テハ私感
謝ヲ致スノデアリマスケレドモ、其議會ニ
於ケル行動ト云フモノハ、旗幟トサレル所
ノ中心運動トハ全然矛盾シテ居ルト云フコ
トヲ私ハ考ヘルノデアル(拍手)議長ハ-
議長ハ何ガ故ニ議長ノ職權ニ於テ、議長ノ
取計ヒニ於キマシテ贊成論者ニ御許シニナ
ラナカッタノデアルカ、之ヲ私ハ伺ヒタイノ
デアリマス、第三ニ私ノ懷イテ居リマス所
ノ疑問ハ討議終結ノ動議ガ提出セラレマ
スト、ソレニ續イテ松田、中村、兩總務カ
ラ發言ヲ求メテ委員付託ノ動議ヲ提出セン
トシタノデアル、委員付託ノ論ガ出マスレ
バ-動議ガ出マスレバ討論終結ノ動議ヲ
出シタ後ト雖モ、其採擇以前デアル場合ニ
於キマシテハ先決問題トシテ委員付託ノ
動議ヲ議場ニ問ハナクテハナラヌノデア
ル、然ルニ議長ハ其擧ニ出デズシテ、討論
終結ノ動議ガ出ルト、其前ニ求メテ居ル所
ノ發言ヲ許サレナカッタノハ如何ナル譯
デアルカ、之ヲ伺ヒタイ(拍手)早速君ガ矢
張其〓育作興ニ關スル建議案ニ於キマシテ
斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ルノデアル、「此
建議案ハ重大ナル建議案デアリマス、之ヲ
直ニ此所デ否決スルト云フコトハ甚ダ其意
ヲ得ナイノデアル、總テノ下ラヌ建議ト思
ハルヽヤウナモノデモ、從來委員會ニ於テ
政府ト折衝ヲスル、何所マデモ其審査ヲ遂
ゲルト云フコトガ長イ間ノ議會ノ慣例デア
リマス」ト云ノコトヲ早速君ガ述ベラレタ
ノデアル、下ラナイ建議案下思ハレルモノ
デモ委員會ニ付サレルノニ、何ガ故ニ此重
大ナ建議案ヲ委員會ニ付セヌカト云フコト
ヲ質問サレタノデアル、此案ト此間ノ案ト
ヲ比較ヲシマスレバ、矢張委員會ニ付スベ
キガ正當デアル(拍手)之ヲ委員會ニ付サン
トスル動機ヲ闇カラ闇ニ葬ヲテシマッタト云
フコトハ矢張議長ノ御取扱ノ仕方ガ餘リ
ニ····(「横暴々々」ト呼フ者アリ)餘リニ討
論終局ノ動議ニ重キヲ置カレテ、他ノ發言
ヲ顧ミラレザリシト云フ遺憾ガアラウト私
ハ思フノデアリマス、此點ニ付キマシテモ
亦議長ノ御釋明ヲ煩シマシテ、將來-將來
此議會ノ議事ノ進行ニ付テ重大ナル關係ガ
アリマスルカラ、此點ヲ伺ヒタイノデアリマス
(拍手)若シモ諸君ガ護憲運動ト云フコトヲ
爲サラナイノナラバ、平素ノ行動ニ依リマ
シテ何モ私意ニ分サナクテモ宜イノデアル
ケレドモ、餘リニアナタ方ガ立派ナ旗幟ヲ
翳シテ居ラレテ、其行動ガ全ク是ト氷炭相
容レザル所ノモノガアリマスルカラ、與黨
諸君ヨリモ一應ノ御辯明ヲ煩シタイト思フ
ノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=6
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007・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今····(此時私語
スル者アリ)靜肅ニ御聽ヲ願ヒマス、鳩山君
ヨリ議長ニ對シテ去ル三日ノ議事中ニ起リ
マシタ事ニ付テ、數多ノ質問ヲ發セラレマ
シタ、之ニ御答ヲ致シマス、第一ハ、何故ニ
彼ノ當時ニ於テ趣旨辯明ノ補足ヲ許サナ
カッタカト云フ御質問デアリマシタ、是ハ
御承知ノ通リ議長ハ其當時田中隆三君ヨリ
趣旨辯明ノ補足ヲシタイト云フ申出ヲ受領
シテ居リマシタ、其發言ヲ許サントスル刹
那作間君ヨリ討論終結ノ動議ガ提出セラ
レマシタ、議長ハ討論終結ノ動議ヲ以テ先
決問題ト考ヘテ居リマシタ爲ニ、此趣旨辯
明ヲ許スノ時ニアラズト考ヘテ採決ヲ致シ
夕次第デアリマス(拍手)併ナガラ此先例
ガ-此議長ノ考ガ果シテ誤ッテ居ルト云フ
コトデゴザイマスルナラバ、議長ハ無論之
ヲ改メルニ吝ナル者デハナイノデアリマス
(拍手)此點ニ付キマシテハ議長ハ尙ホ篤
ト先例其他等ヲ調べマシテ、考慮致ス考デ
アリマス、第二ニ何故ニ討論ヲ一人シカ許
サナイカ、此點ニ付キマシテモ亦前ト同ジ
事デアリマシテ、成程當日ノ討論ヲ、賛否
兩論ヲ十分ニ盡サレナイコトハ議長ニ於
テモ甚ダ遺憾ニ感ジマス、併ナガラ既ニ法
規ニ依ッテ討論終結ノ動議ガ提出セラレマ
シタ以上ハ一之ニ就テ採決致シマスルコト
ハ洵ニ已ムヲ得ナカッタノデアリマス、ソレ
カラ第三ニ何故ニ委員付託ノ動議ヲ出シテ
置イタノニ、之ヲ採決ヲシナカツタカ、如何ニ
モ委員付託ノ動議ト計論終結ノ動議トハ
委員付託ノ動議ガ先決問題デアリマス故ニ、
若シ是ガ同時ニ出マスレバ、議長ハ無論
委員付託ノ動議ヲ先以テ採決ヲ致シマス、
併ナガラ當日ハ討論終結ノ動議ニ付テ採決
ヲ宣告致シマシタ、其後ニ於テ此委員付託
ノ動議ガ議長ノ手許ニ出タノデアリマス
(拍手「ノウ〓〓」)斯ル次第デアリマシテ、
私ハ此點ニ於テ何等偏頗ノ處置ヲ致シタ考
ハ持ノテ居ラヌノデアリマス鳩山君ノ御述
ニナリマシタコトハ大體ニ於テ議長モ御
同感ニ考ヘテ居ルノデアリマス、將來十分
ニ是等ノ點ニ付テモ注意ヲ致ス考デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=7
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008・鳩山一郎
○鳩山一郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=8
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009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 鳩山一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=9
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010・鳩山一郎
○鳩山一郞君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ申上ゲタイト思ヒマス、御許シヲ願ヒマ
ス、只今議長ノ御釋明ニ依リマシテ、先例ヲ
御調べ下サッテ宜シキニ從フト云フヤウナ御
話ガアッタノデアリマス、洵ニ結構ナ御答
辯ト私ハ拜聽スルノデアリマス、一言申上
ゲテ置キタイノハ、先例ハ區々ニナッテ居ル
ノデアル、併ナガラ反對賛成ノ一方ノ發言
ヲ致シマシタ場合ニ、一方ダケガ終リマシ
タ時ニ討論終結ノ動議ガ起ッテ、而モ尙ホ
一方ノ發言ヲ許シタ例ガアリマス、先例ハ
私ノ主張シタニ一致スル所ノ先例ガアリマ
ス、尙ホ討論ト云フモノハ討論ヲシナイ中
ニハ言ヘナイノデアルカラ、討論前ニ討論
終結ノ動議ヲ出シタル場合ニ、其採決ヲ致
サナカッタ例ガ多々アルノデアリマス、而
モ之ニ反シタ先例ナシト私ハ言フノデナイ
ソレハ區々ニナッテ居ルケレドモ、併ナガ
ラドチラヲ議長トシテ取ルベキ途デアルカ
ト云ヘバ、賛成者一人、或ハ反對者一人ダ
ケノ意見ヲ以テ討論終結ヲ爲スト云フコト
ハ條理ニ反スルノデアル(拍手)條理ニ反
シタコトハ道理ニ合フ先例ガアル以上ハ
之ニ御從ヒニナッタ方ガ宜カラウト思ヒマ
ス、尙ホ委員付託ノ動議ハ討論終結ノ動議
ノ發言ヲ求メラレテ居ル間ニ、松田總務デ
モ中村總務デモ同時ニ之ヲ發言スルコトハ
出來ナイ、同時ニー委員付託ノ動議ト討
論終結ノ動議トガ同時ニ此議場ニ發言サレ
ルコトハ事實アリ得ベカラザル事デアリ
マス、一方ガ發言ヲシテ、討論終結ノ動議
ノ發言ガ濟メバ、直ニ委員付託ノ動議ヲ出
シタナラバ、之ヲ同時ト云フヨリ致方ガナ
イノデアル之ヲ同時トスルナラバ委員付
託說ヲ先ニ御採リニナラナケレバナラヌト
思ヒマシテ、私ハ先刻ノ發言ヲ致シタノデ
アリマス、是亦議長ニ於テ相當御考慮アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=10
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011・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸君-静粛ニ願ヒ
マス-去ヌル三日ノ本會議ニ於キマシテ、
圖ラズモ諸君ノ御承知ノ如ク、議場ノ混亂
ヲ來シマシクコトハ洵ニ遺憾ノ事デアリマ
ス、其際多數ノ諸君ガ演壇ニ登ラレマシタ
ニ付キマシテ、議長ハ再三降壇著席ヲ命ジ
マシタ、尙ホ降壇セラレマセヌノデ、守衞ヲ
シテ穩ニ御著席ヲ促シマシタ、然ルニ此守
衞ノ職務執行ニ對シマシテ妨害セラレマシ
夕方ガアルト認メマシタノデ、追テ其事實
ヲ調查ノ上相當ノ處置ヲ致スベキコトヲ宣
告ヲ致シテ置キマシタ、其調査ノ結果ニ於
キマシテ、甚ダ遺憾デハアリマスルガ、議長
ガ玆ニ議員吉良元夫君、同寺田市正君、同
原惣兵衞君、同中山貞雄君、同大石大君、
同佐藤重遠君、右六君ヲ懲罰委員ニ付シマ
ス(拍手)〓水市太郞君外諸君ヨリ懲罰動議
ヲ提出セラレマシタ、此發言ヲ許シマス
〔〓水市太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=11
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012・清水市太郎
○〓水市太郞君 諸君、私ハ懲罰ノ動議ヲ
提出致シマス、山口義一君、坂井大輔君、
中野寅吉君、右三君ハ去ル二月三日ノ議場
ニ於テ、議員猪野毛利榮君ヲ其坐席ニ到ン
テ毆打シ、仍テ數箇所ノ負傷ヲ爲サシメタ
ル者ナリ、森田茂君、三木武吉君、右兩君
ハ去ル二月三日ノ議場ニ於テ、騒擾ニ際シ
演壇ニ登リ、又ハ演壇ノ下ニ到リ、衆ヲ指
揮シテ議院ニ暴行ヲ起サセ、且ツ騷擾ヲ大
ナラシメ、議院ノ體面ヲ汚シタル者ナリ、
右ノ通リ懲罰ノ動議ヲ提出ニ及ビマス拍
き発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=12
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013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今〓水市太郞君ヨ
リ定規ノ賛成ヲ得テ山口義一君、坂井大輔
君、中野寅吉君、森田茂君、三木武吉君、
右五名ヲ懲罰委員ニ付スルノ動議ヲ提出セ
ラレマシタ(「反對」「反對」ト呼フ者アリ)此
動議ガ定規ノ賛成ガアルノデアリマス、之
ニ對シテ辯明ガアリマスルナラバ、各議員
ニ辯明ヲ許シマス
〔「反對一「必要ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=13
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014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス、懲
罰動議ハ直ニ採決ヲ致シマス、此動議ニ賛
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=14
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015・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 少數デアリマス
〔「異議アリ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=15
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016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ動議ニ對シテ
採決ノ結果、議長ハ少數ト認メマシテ之ヲ
宣告致シマシタ、然ルニソレニ對シテ異議
ノ申立ガアリマス、仍テ記名投票ヲ以テ之
ヲ採決致シマス-之ヨリ記名投票ヲ行ヒ
マス動議ニ贊成ノ諸君ハ白票デアリマ
ス、反對ノ諸君ハ靑票デアリマス-閉
鎖-氏名點呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票漏ハアリマセヌ
カ-投票漏ナシト認メマス-投票函閉
鎖-聞匣-開鎖-投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報告セシメマス
〔中村書記官長朗讀〕
投票総數三百三十五
可トスル者白票九十七
否トスル者靑票二百三十八
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=17
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018・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ結果ニ依リマ
シテ、〓水市太郞君ヨリ提出ノ懲罰ノ動議
ハ否決セラレマシタ
〔參照〕
〓水市太郞君外一名提出ノ動議ヲ可トス
ル議員ノ氏名左ノ如シ
井上虎治君井出繁三郞君
池田龜治君池田泰親君
伊坂秀五郞君岩切重雄君
禱苗代君鳩山一郞君
原惣兵衞君原夫次郞君
原田十衞君原田藤次郎君
本多貞次郞君星廉平君
堀喜幸君床次竹二郞君
東〓實君千葉宮次郞君
陣軍吉君沼田嘉一郞君
折原巳一郞君小野寅吉君
大園榮三郞君大石大君
大麻唯男君奧野小四郞君
川原茂輔君川口義久君
河崎〓君加藤鐐五郞君
柏田忠一君兼田秀雄君
海原〓平君金光庸夫君
神村吉郞君米原於蒐男君
吉村伊助君吉柏庄一郞君
吉木陽君高木第四郞君
高見之通君丹下茂十郞君
田中隆三君田口文次君
筒井民次郞君津崎尙武君
中村啓次郞君中村嘉壽君
中林友信君中山貞雄君
長峰與一君向井倭雄君
浦野謙朗君上原好雄君
上埜安太郞君則元由庸君
倉元要一君工藤十三雄君
熊谷五右衞門君藏園三四郞君
栗林五朔君八木逸郞君
前田房之助君前田兼寶君
牧山耕藏君牧野良三君
松浦五兵衞君松田源治君
丸山浪彌君小泉辰之助君
小橋一太君寺田市正君
櫻內幸雄君榊田〓兵衞君
木下謙次郞君吉良元夫君
岸本賀昌君宮崎友太郞君
志波安一郞君〓水市太郞君
〓水長〓君廣岡宇一郞君
平田民之助君森田政義君
元田肇君井上孝哉君
佐藤潤象君鷲野米太郞君
田中譲君武藤山治君
前野芳造君小林彌七君
古林喜代太君森田金藏君
多木久米次郞君町野武馬君
菊池謙二郞君
〓水市太郞君外一名提出ノ動議ヲ否トス
ル議員ノ氏名左ノ如シ
井本常作君石川安次郞君
石塚三郞君石黑大次郞君
飯塚春太郞君土生彭君
早速整爾君原脩次郞君
濱口雄幸君西英太郞君
戶田由美君戶澤民十郞君
中馬興丸君大里廣次郞君
大濱忠三郞君大津淳一郞君
大島要三君小野重行君
岡本實太郞君奧村千藏君
片岡直溫君川崎安之助君
川崎克君河波荒次郞君
加藤政之助君加藤鯛一君
加藤十四郞君金澤安之助君
金田平兵衞君神谷彌平君
神田正雄君神部爲藏君
横山勝太郞君橫山金太郞君
吉川吉郞兵衞君吉原義雄君
吉田磯吉君賴母木桂吉君
武內作平君武富濟君
田中武雄君高木益太郞君
高木正年君高田耘平君
高橋元四郞君谷口宇右衞門君
谷口源十郞君俵孫一君
永田善三郞君永井柳太郞君
中原德太郞君中谷貞賴君
中野正剛君中野猪之助君
村上國吉君村上紋四郞君
村山喜一郞君生方大吉君
內ケ崎作三郞君字田友四郞君
野村嘉六君黑田重兵衛君
工藤鐵男君山宮藤吉君
山枡儀重君山道襄一君
山田又司君山田助作君
山本勝次君山本厚三君
松井郡治君松本忠雄君
丸山五郞君町田忠治君
直言慶隆君藤澤幾之輔君
藤井敬慎君深井功君
福田五郞君小島證作君
小寺謙吉君小山松壽君
小西和君小池仁郞君
木檜三四郞君河野正義君
近藤重三郞君紺野九右衞門君
寺島權藏君手代木隆吉君
淺賀長兵衞君淺川浩君
荒井建三君荒川五郞君
安達謙藏君蟻川五郞作君
作間耕逸君佐竹庄七君
佐藤富十郞君佐藤實君
佐藤球三郞君齋藤太兵衞君
齋藤仁太郞君齋藤金吾君
澤田利吉君木村小左衞門君
由谷義治君三橋四郞次君
三好榮次郞君宮崎松次郞君
箕浦勝人君下元鹿之助君
〓水留三郞君信太儀右衞門君
鹽田團平君廣瀨德藏君
平川松太郞君平野光雄君
樋口秀雄君比佐昌平君
望月小太郞君粟山博君
關矢孫一君關俊吉君
杉浦武雄君鈴置倉次郞君
鈴木富士彌君菅原英伍君
菅村太事君磯部尙君
岩崎幸治郞君岩崎勳君
石井謹吾君飯村五郞君
井上敬之助君伊澤平左衞門君
八田宗吉君秦豊助君
西澤定吉君西方利馬君
長田桃藏君大竹謙治君
岡崎邦輔君小川平吉君
小野義一君若尾幾太郞君
渡邊伍君渡邊祐策君
加藤知正君笠原忠造君
河上哲太君吉津度君
吉田眞策君竹原樸一君
田邊七六君田中定吉君
高井商二君高山長幸君
高橋是〓君高橋熊次郞君
高木音藏君土屋〓三郞君
中島守利君中村巍君
中村〓造君來栖七郞君
熊谷巖君熊谷直太君
黑住成章君矢野鉉吉君
山本悌二郞君山本条太郞君
山口義一君山口恒太郞君
山內範造君山下谷次君
山崎達之輔君松本眞平君
松實喜代太君二木洵君
藤澤萬九郞君藤川〓助君
古川〓君木暮正一君
小久保喜七君神崎勳君
靑木精一君靑柳郁次郞君
赤間嘉之吉君東武君
齋藤珪次君榊原經武君
佐々木文一君佐々木春作君
坂井大輔君坂梨哲君
木戶豐吉君木村政次郞君
三善〓之君三土忠造君
志賀和多利君嶋居哲君
廣瀨爲久君瀨沼伊兵衞君
鈴木隆君菅原傳君
隅田豐吉君板野友造君
犬養毅君井上利八君
林田龜太郞君濱田國松君
西村丹治郞君富永孝太郞君
土井權大君土居通憲君
大口喜六君大内暢三君
高島兵吉君植原悅二郞君
山本芳治君小橋藻三衞君
古島一雄君秋田〓君
齋藤眞三郞君湯淺凡平君
關直彥君砂田重政君
磯部保次君坂東幸太郞君
本田義成君岡田溫君
若尾璋八君山口左一君
藤井忠兵衞君兒玉右二君
秋田寅之介君森〓昶君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=18
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019・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス、日程第一、公立學校職員年功加俸國庫
補助法中改正法律案第一語會ヲ開キマス
第公立學校職員年功加俸國庫補助
法中改正法律案(政府提出)第一讀會
公立學校職員年功加俸國庫補助法中改
正法律案
公立學校職員年功加俸國庫補助法中左ノ
通改正ス
第一條中「公立ノ中學校、高等女學校及
實業學校」ヲ「公立ノ高等學校尊常科、中
學校、高等女學校、實業學校、盲學校、
聾啞學校及實業補習學校〓員養成所」ニ
改ム
附則
本法ハ大正十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=19
-
020・砂田重政
○砂田重政君 只今ヨリ豫算委員會第四分
科會ヲ開キタイト思ヒマス、御許ヲ願ヒマ
ス-委員ノ諸君ハ第六委員室ニ御集リヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=20
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021・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 岡田文部大臣
〔國務大臣岡田良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=21
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022・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 只今議題ニナリ
マシタル公立學校職員年功加俸國庫補助法
中改正法律案提出ノ理由ヲ說明致シマス、
現行ノ公立學校職員年功加俸國庫補助法ニ
依リマスレバ、公立ノ高等學校尋常科ノ〓
員、公立ノ盲啞學校職員及公立實業補習學
校職員、〓員養成所職員ニハ年功加俸ヲ支
給致サヌコトニナッテ居ルノデアリマス、
然ルニ是等ノ者ニハ同ジク年功加俸ヲ支給
スルノ必要ガアリマスノデ、別ニ之ニ要ス
ル豫算ヲ要求致シテアリマス、ソレニ伴ッテ
此改正案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希
望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=22
-
023・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第二、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ニ致シ
マス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=23
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024・加藤政之助
○加藤政之助君 豫算第三分科會ヲ開キタ
イト思ヒマス-三分科ノ諸君ハ委員室へ
御集リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=24
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025・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ〓育改善及農村振興
基金特別會計法案ノ委員ニ併セテ付託セラ
レンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=25
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026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ-伊坂秀五郞君ヨリ議事ノ進行ニ
付テ發言ヲ求メラレマシタ、發言ヲ許シマ
ス、伊坂秀五郞君
〔伊坂秀五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=26
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027・伊坂秀五郎
○伊坂秀五郎君 議長ハ先刻吉良元夫君其
他數君ニ對シテ懲罰ノ御宣告ガアリマシタ、
而シテ私思フニ二月三日ノ議場ニ於キマシ
テ、猪野毛君ハ我國議會アッテ以來院內ニ
於テ曾テ無キ流血ノ慘禍ヲ受ケラレタ人デ
アリマス、然ルニ此流血ノ慘ヲ議長ハ眼下
ニ御覽ニナッテ、是等ノ事ニ付テ何等御取
調ガナク(拍手)而シテ之ヲ懲罰ニ付スルニ
攻究ヲ爲サラナイト云フコトハ吾々我國
議會政治ノ上ニ於テ甚ダ不祥ナル事柄デア
ラウト思フ(「嘘ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)決
シテ嘘デナイ、猪野毛君ハ現ニ流血ノ慘禍
ヲ被ッテ居ル(「休憩中ダ」「休憩中ダ」ト呼
フ者アリ)休憩中デハナイ、必シモ休憩中
デナイ、現ニ院內ニ於テ此事ガ起ッタノデ
アル(拍手)縱ンバ假令休憩ヲ宣スル其刹郡
ト雖モ(「刹那デハナイ」ト呼フ者アリ)場合
ニ依テハ大ニ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌ
ノデアル、吾々ハ此事ニ付テ議長ハ更ニ再
考セラレテ、能ク事柄ヲ御調査アッテ懲罰
ニ付セラレンコトヲ希望致シマス、(「駄目
ダ」「駄目ダ」「ソンナコトハ聽カヌ」ト呼フ
者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=27
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028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今伊坂君ヨリ、猪
野毛君ノ件ニ關シテ御希望ガアリマシタガ、
猪野毛君ハ諸君ノ御承知ノ如ク、議長ノ命
令ニ對シテ抗拒セラレマシタノデ、議長ハ
守衞ヲシテ退場セシムルコトニ取計ラヒマ
シタノデアリマス、當時議場ハ非常ナル所
ノ混亂ヲ致シマシタカラ、議長ハ休憩ヲ宣
告致シマシタ(「ヒヤ〓〓」拍手)猪野毛君ノ
事柄ハ恰モ其休憩中ニ起リマシタ(「ノウノ
ウ」「休憩中デハナイ」其他發言スル者多シ)
御静ニナサイ-靜肅ニナサイ-御聽キ
ナサイ-御聽キナサイ(「休憩中ダ」「嘘言
へ」其他發言スル者多シ)議長ハ-暫ク御
聽キナサイ-議長ハ休憩中ト認メマ
ス-靜肅ニナサイ、議長ハ伊坂君ヨリ·
(議場騒然)併ナガラ-默ッテ御聽キナサ
イ-默ッテ御聽キナサイ-暫クドウゾ
御聽キヲ願ヒマス、此事ニ關シマシテハ守
衞長ヨリ議長ニ對スル報告ガアリマス、何
レ猪野毛君ノ御出席ヲ待チマシテ、同君ニ
御間合セヲ致シタ上ニ考慮致ス考デアリマ
ス此事ヲ御答致シマス-次ハ日程第三
及第四ハ同種ノ議案デアリマスカラ、一括
議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=28
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029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、卽チ日程第三、輸出組合法案、日程第
四、重要輸出品工業組合法案、右兩案ノ第
一讀會ヲ開キマス、高橋農商務大臣
第三輸出組合法案(政府提出)
第一讀會
輸出組合法案
輸出組合法
第一條同一種類ノ重要輸出品ノ輸出ヲ
業トスル者又ハ同一市場ヲ目的トシテ
商品ノ輸出ヲ業トスル者ハ其ノ輸出貿
易ノ振興ヲ圖ル爲共同ノ施設ヲ爲ス目
的ヲ以テ輸出組合ヲ設立スルコトヲ得
前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定
ス
第二條輸出組合ハ法人トス
第三條輸出組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
組合員ノ取扱商品ノ委託輸出、輸
出ノ幹旋、保管、選別、包裝、荷造
其ノ他組合員ノ營業ニ關スル共同施
設
二組合員ノ營業上ノ弊害ヲ矯正スル
爲必要ナル取締又ハ事業經營ニ對ス
ル制限
三海外市場ノ調査、新販路ノ開拓其
ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナル
施設
第四條輸出組合ハ其ノ名稱中ニ輸出組
合ナル文字ヲ用フヘシ
輸出組合ニ非サルモノハ其ノ名稱中ニ
輸出組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ス
第五條同一又ハ重複スル地區ニ於テ二
個以上ノ同種ノ輸出組合ヲ設立スルコ
トヲ得ス但シ特別ノ事情アルトキハ此
ノ限ニ在ラス
第六條輸出組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
〓其ノ經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦スル
コトヲ得
第七條輸出組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課スルコ
トヲ得
第八條營業上ノ弊害ヲ矯正スル爲必要
ト認ムルトキハ主務大臣ハ輸出組合ニ
對シ必要ナル施設ヲ命スルコトヲ得
第九條營業上ノ弊害ヲ矯正スル爲特ニ
必要ト認ムルトキハ主務大臣ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ輸出組合ノ組合員ニ非
サル者ニシテ其ノ組合ノ地區內ニ於テ
組合員タル資格ヲ有スルモノヲシテ其
ノ組合ノ定ムル取締又ハ制限ニ依ラシ
ムルコトヲ得
第十條本法ニ依リ登記スヘキ事項ハ登
記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗
スルコトヲ得ス
第十一條本法ニ依リ登記スヘキ事項ハ其
ノ事實ノ生シタル後二週間內ニ之ヲ登
記スヘシ登記スヘキ事項ニシテ主務大
臣ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ
到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十二條輸出組合ヲ設立セムトスルト
キハ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ニ於テ
組合員タル資格ヲ有スル者ノ過半數ノ
同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ他
必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任シ主務
大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキト
雖特別ノ事由アル場合ニ於テハ主務大
臣ノ認可ヲ受ケ創立總會ヲ招集スルコ
トヲ得
第十三條創立總會ニ於ケル議決及役員
ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上ノ
同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第十四條設立同意者ハ創立總會ニ於テ
代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ
得但シ設立同意者ニ非サレハ代理人タ
ルコトヲ得ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ差出ス
ヘシ
第十五條輸出組合ノ定款ニハ左ノ事項
ヲ記載スヘシ
-目的
二名稱
三地區
四事務所ノ所在地
五組合員タル資格ニ關スル規定
六組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
七出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
八剩餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル
規定
九準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十組合員ノ権利義務ニ關スル規定
十一事業及其ノ執行ニ關スル規定
十二役員ニ關スル規定
十三會議ニ關スル規定
十四會計ニ關スル規定
十五存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定
メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第十六條輸出組合バ出資ノ第一囘ノ拂
込アリタル後二週間内ニ各事務所ノ所
在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スヘシ
登記スヘキ事項左ノ如シ
前條第一號乃至第三號第七號及第
十五號ニ揭ケタル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四設立認可ノ年月日
五理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ掲ケタル事項中ニ變更ヲ生シタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スヘシ但シ前項
第三號ニ揭ケタル事項ニ付テハ每事業
年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後
一月內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第十七條組合員ハ出資一口以上ヲ有ス
ヘシ
組合員ノ有スヘキ出資口數ハ五十口ヲ
超ユルコトヲ得ス但シ特別ノ事由アル
トキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ增加
スルコトヲ得
第十八條組合員ノ責任ハ第六條ノ規定
ニ依ル費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ限度
トス
第十九條組合員ハ總組合員ノ五分ノ一
以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事項
及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ
理事ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スル
コトヲ得
理事カ正當ノ理由ナクシテ前項ノ規定
ニ依ル請求アリタル後二週間內ニ總會
招集ノ手續ヲ爲ササルトキハ請求者ハ
主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコ
トヲ得
第二十條輸出組合ニハ理事及監事ヲ置
クヘシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員中ヨリ
之ヲ選任ス但シ組合設〓時時ノ理事及
監事ハ創立總會ニ於テ設立同意者ノ中
ヨリ之ヲ選任スヘシ
特別ノ事由アルトキハ理事ハ組合員又
ハ設立同意者ニ非サル者ヨリ之ヲ選任
スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ選
任ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第一項ノ規定ニ依ル役員ノ外定款ノ定
ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
第二十一條組合員ハ總會ニ於テ各一個
ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ
依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ一ヲ
超エサル範圍内ニ於テ出資口數ニ應シ
二個以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ
得
第二十二條經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦
スル輸出組合ニ在リテハ其ノ經費ノ收
支豫算及分賦收入方法ハ總會ノ議決ヲ
經ヘシ但シ組合設立當時ノ經費ノ收支
豫算及分賦收入方法ハ創立總會ニ於テ
之ヲ議決スヘシ
前項ノ總會ノ議決ハ總組合員ノ半數以
上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ
以テ之ヲ爲スヘシ但シ定款ニ別段ノ定
アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十三條組合員タル資格ヲ有スル者
輸出組合ニ加入セムトスルトキハ組合
ハ正當ノ理由ナクシテ加人ニ困難ナル
條件ヲ附シ又ハ其ノ加入ヲ拒ムコトヲ
得ス
第二十四條組合員ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ一定ノ期間前ニ豫告ヲ爲シ輸出組
合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ
終ニ於テ脫退スルコトヲ得
組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十五條檢査ヲ行フ輸出組合ニ在リ
テハ檢査員ヲ置クヘシ
檢査員ノ選任及解任ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クヘシ
第二十六條輸出組合ハ檢査員ノ服務ニ
關スル規程ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受
クヘシ
第二十七條主務大臣必要ト認ムルトキ
ハ檢査員ノ選任又ハ解任ヲ爲スコトヲ
得
第二十八條主務大臣必要ト認ムルトキ
ハ輸出組合ニ對シ經費ノ收支豫算、其
ノ分賦收入方法又ハ定款ノ變更ヲ命ス
ルコトヲ得
第二十九條設立ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
申請書ニハ定款及創立總會又ハ總會ノ
決議錄、出資ノ總口數ヲ證スル晝面、
出資ノ第一回ノ拂込アリタルコトヲ證
スル書面竝理事及監事ノ資格ヲ證スル
書面ヲ添附スヘシ
第三十條事務所ノ新設、移轉其ノ他登
記事項ノ變更ノ登記ハ理事又ハ〓算人
ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ但シ合併
又ハ出資一口ノ金額減少ニ因ル變更ノ
登記ハ理事及監事ノ全員ヨリ之ヲ爲ス
ヘシ
申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面
及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附
スヘシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル
申請人カ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要セス
出資一口ノ全額減少ノ登記申請書ニハ
前項ニ規定スル書面ノ外本法ニ依リ催
告ヲ爲シタルコト及異議ヲ述ヘタル債
權者アル場合ニ於テハ之ニ對シ辨濟ヲ
爲シ又ハ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル
書面ヲ添附スヘシ
第三十一條解散ノ登記ハ合併ニ因ル解
散ノ場合ニ於テハ解散シタルトキノ理
事及監事ノ全員、其ノ他ノ場合ニ於テハ
〓算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及
理事カ〓算人タラサル場合ニ於テハ申
請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
前條第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ
登記ノ申請ニ付之ヲ準用ス
輸出組合力命令ニ因リテ解散シタルト
キハ登記所ハ主務大臣ノ囑託ニ因リテ
登記ヲ爲スヘシ
第三十二條〓算結了ノ登記ハ〓算人ノ
申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
第三十三條民法第四十四條第一項、第
四十五條第二項第三項、第四十八條、
第五十條、第五十二條第一項、第五十三
條乃至第五十五條、第五十九條、第六十
條、第六十一條第一項、第六十二條、第
六十四條、第六十六條、第七十條、第七
十三條、第七十四條及第七十八條乃至
第八十一條、非訟事件手續法第百三十
八條、第百三十八條ノ二、第百四十一條
乃至第百五十一條ノ六、第百五十四條
乃至第百五十八條、第百六十五條、第百
七十五條、第百七十六條及第百七十八
條竝產業組合法第五條、、第六條、第十
條、第十一條第一項、第十二條、第十八
條乃至第二十二條、第二十四條、第二十
六條乃至第三十一條ノ二、第三十三條、
第三十四條ノ二第一項、第三十五條乃
至第三十七條、第三十九條乃至第四十
一條、第四十三條乃至第四十六條、第四
十八條、第五十一條乃至第五十七條、
第六十條乃至第六十一條、第六十二條
(第一項第四號ヲ除ク)、第六十三條第
一項、第六十三條ノ二乃至第六十五條、
第六十六條第一項、第六十七條、第七
十條乃至第七十三條ノ三、第七十四條
第一項、第七十四條ノ二第一項、第九十
六條第九十七條及第百四條ノ規定ハ
輸出組合ニ付之ヲ準用ス但シ民法第四
十五條第三項及第四十八條第一項中一
週間トアルハ之ヲ二週間トシ產業組合
法中地方長官又ハ監督官廳トアルハ之
ヲ主務大臣トス
第三十四條主務大臣ハ本法ニ依ル職權
ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第三十五條左ノ場合ニ於テハ輸出組合
ノ理事、監事又ハ〓算人ヲ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ク
ヘキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケサル
トキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
三行政官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申
立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
四本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報告
ヲ差出サス又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
他行政官廳ノ命令又ハ處分ニ從ハサ
ルトキ
五本法ニ依ル總會ノ招集ヲ怠リタル
トキ
六本法ニ依リ事務所ニ備置クヘキ書
類ヲ備ヘサルトキ、其ノ書類ニ記載
スヘキ事項ヲ記載セス若ハ不正ノ記
載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ理由ナ
クシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
七本法ニ違反シテ組合員ノ持分ヲ拂
戾シタルトキ
八本法ニ違反シテ組合カ組合員ノ持
分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之
ヲ受ケタルトキ
九木法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
セサルトキ
十本法ニ違反シテ出資一口ノ金額ヲ
減少シ又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルト
キ
十一本法ニ依ル公告ヲ爲スコトヲ怠
リ又ハ不正ノ公告ヲ爲シタルトキ
十二〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シ
テ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ
爲シタルトキ
十三法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金
ヲ處分シタルトキ
十四組合ノ目的ニ非サル營利事業ヲ
爲シタルトキ
第三十六條第九條ノ規定ニ依ル行政官
廳ノ命令ニ違反シタル者ハ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
第三十七條第四條第二項ノ規定ニ違反
シタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過料
二段、
第三十八條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
ニ付之ヲ準用ス
第三十九條輸出組合ノ證票若ハ檢査證
ヲ不正ニ使用シタル者、行使ノ目的ヲ
以テ證票若ハ檢査證ヲ僞造若ハ變造シ
タル者又ハ僞造若ハ變造ノ證票若ハ檢
査證ヲ使用シタル者ハ三年以下ノ懲役
又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條輸出組合ノ理事、監事若ハ〓
算人又ハ檢査員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ
收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルト
キハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ
行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササル
トキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追
徴ス
第四十一條前條第一項ニ掲ケタル者ニ
對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル
者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十二條第三十九條ニ掲ケタル罪ハ
刑法第三條ノ例二、第四十條ニ揭ケタ
ル罪ハ刑法第四條ノ例ニ從フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四重要輸出品工業組合法案(政府
提出)第一讀會
重要輸出品工業組合法案
重要輸出品工業組合法
第一條重要輸出品ノ製造ニ關スル工業
者ハ其ノ工業ノ改良發達ヲ圖ル爲共同
ノ施設ヲ爲ス目的ヲ以テ工業組合ヲ設
立スルコトヲ得但シ特別ノ事情アルト
キハ二種以上ノ工業者ヲ以テ之ヲ設立
スルコトヲ得
前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定
ス
第二條工業組合ハ法人トス
第三條工業組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
組合員ノ製品、其ノ原料若ハ材料
又ハ製造若ハ加工ノ設備ニ對スル檢
査其ノ他必要ナル取締又ハ事業經營
ニ對スル制限
二共同設備ノ設置其ノ他組合員ノ營
業ニ關スル共同施設
三組合員ノ營業ニ關スル指導、〓究、
調査其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必
要ナル施設組合ハ組合員ノ委託ニ依
リ其ノ製品ノ加工若ハ販賣又ハ組合
員ノ營業ニ必要ナル物ノ供給ヲ爲ス
コトヲ得
第四條工業組合ハ其ノ名稱中ニ工業組
合ナル文字ヲ用フヘシ
工業組合ニ非サルモノハ其ノ名稱中ニ
工業組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ス
第五條工業組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ其ノ經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦スル
コトヲ得
第六條工業組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課スルコ
トヲ得
第七條營業上ノ弊害ヲ矯正スル爲必要
ト認ムルトキハ行政官廳ハ工業組合ニ
對シ檢査其ノ他ノ施設ヲ命スルコトヲ
得
第八條營業上ノ弊害ヲ矯正スル爲特ニ
必要ト認ムルトキハ行政官廳ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ工業組合ノ組合員ニ非
サル者ニシテ其ノ組合ノ地區內ニ於テ
組合員タル資格ヲ有スルモノヲシテ其
ノ組合ノ定ムル取締又ハ制限ニ依ラシ
ムルコトヲ得
第九條工業組合又ハ其ノ組合員ハ其ノ
營業ニ關スル重要物產同業組合法ニ依
ル同業組合ニ加入セス又ハ之ヨリ脫退
スルコトヲ得
第十條本法ニ依リ登記スヘキ事項ハ登
記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗
スルコトヲ得ス
第十一條本法ニ依リ登記スヘキ事項ハ
其ノ事實ノ生シタル後二週間內ニ之ヲ
登記スヘシ
登記スヘキ事項ニシテ行政官廳ノ認可
ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十二條工業組合ヲ設立セムトスルト
キハ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ニ於テ
組合員タル資格ヲ有スル者ノ三分ノ二
以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款
其ノ他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任
シ行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ但シ組合
員タル資格ヲ有スル者ノ工業ノ種類二
以上アルトキハ各其ノ三分ノ二以上ノ
同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキト
雖特別ノ事由アル場合ニ於テハ行政官
廳ノ認司ヲ受ケ創立總會ヲ招集スルコ
トヲ得
第十三條創立總會ニ於ケル議決及役員
ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上ノ
同意ヲ以テ之ヲ爲ス但シ設立同意者ノ
工業ノ種類二以上アルトキハ各其ノ三
分ノ二以上ノ同意アルコトヲ要ス
第十四條設立同意者ハ創立總會ニ於テ
代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ
得但シ設立同意者ニ非サレハ代理人タ
ルコトヲ得ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ差出ス
ヘシ
第十五條工業組合ノ定款ニハ左ノ事項
ヲ記載スヘシ
-目的
二名稱
三地區
四事務所ノ所在地
五組合員タル資格ニ關スル規定
六組合員ノ加人及脫退ニ關スル規定
七出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
八剰餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル
規定
九準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十組合員ノ權利義務ニ關スル規定
十一事業及其ノ執行ニ關スル規定
十二役員ニ關スル規定
十三會議ニ關スル規定
十四會計ニ關スル規定
十五存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定
メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第十六條工業組合ハ出資ノ第一回ノ拂
込アリタル後二週間内ニ各事務所ノ所在
地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スヘシ
登記スヘキ事項左ノ如シ
前條第一號乃至第三號、第七號及
第十五號ニ揭ケタル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四設立認可ノ年月日
五理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ掲ケタル事項中ニ變更ヲ生シタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スヘシ但シ前項
第三號ニ揭ケタル事項ニ付テハ每事業
年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後
一月內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第十七條組合員ハ出資一口以上ヲ有ス
ヘシ
組合員ノ有スヘキ出資口數ハ五十口ヲ
超ユルコトヲ得ス但シ特別ノ事由アル
トキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ增加
スルコトヲ得
第十八條組合員ノ責任ハ第五條ノ規定
ニ依ル費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ限度
トス
第十九條組合員ハ總組合員ノ五分ノ一
以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事項
及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ
理事ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スル
コトヲ得
理事カ正當ノ理由ナクシテ前項ノ規定
ニ依ル請求アリタル後二週間内ニ總會
招集ノ手續ヲ爲ササルトキハ請求者ハ
行政官廳ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコ
トヲ得
第二十條工業組合ニハ理事及監事ヲ置
クヘシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員中ヨリ
之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ理事及
監事ハ創立總會ニ於テ設立同意者ノ中
ヨリ之ヲ選任スヘシ
特別ノ事由アルトキハ理事ハ組合員又ハ
設立同意者ニ非サル者ヨリ之ヲ選任ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ選任
ニ付行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第一項ノ規定ニ依ル役員ノ外定款ノ定
ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
第二十一條組合員ハ總會ニ於テ各一個
ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ
依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ一ヲ
超エサル範圍内ニ於テ出資口數ニ應シ
二個以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ
得
第二十二條經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦
スル工業組合ニ在リテハ其ノ經費ノ收
支豫算及分賦收入方法ハ總會ノ議決ヲ
經ヘシ但シ組合設立當時ノ經費ノ牧支
豫算及分賦收入方法ハ創立總會ニ於テ
之ヲ議決スヘシ
前項ノ總會ノ議決ハ總組合員ノ半數以
上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ
以テ之ヲ爲スヘシ但シ定款ニ別段ノ定
アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十三條組合員タル資格ヲ有スル者
工業組合ニ加入セムトスルトキハ組合
ハ正當ノ理由ナクシテ加入ニ困難ナル
條件ヲ附シ又ハ其ノ加人ヲ拒ムコトヲ
得ス
第二十四條組合員ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ一定ノ期間前ニ豫告ヲ爲シ工業組
合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ
終ニ於テ脫退スルコトヲ得
組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十五條檢査ヲ行フ工業組合ニ在リ
テハ檢査員ヲ置クヘシ
檢査員ノ選任及解任ハ行政官廳ノ認可
ヲ受クヘシ
第二十六條工業組合ハ檢査員ノ服務ニ
關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ認可ヲ受
クヘシ
第二十七條行政官廳必要ト認ムルトキ
ハ檢査員ノ選任又ハ解任ヲ爲スコトヲ
得
第二十八條行政官廳必要ト認ムルトキ
ハ工業組合ニ對シ經費ノ收支豫算、其
ノ分賦收入方法又ハ定款ノ變更ヲ命ス
ルコトヲ得
第二十九條工業組合聯合會ハ所屬ノ工
業組合及工業組合聯合會ノ共同ノ目的
ヲ達スル爲之ヲ設立スルコトヲ得
聯合會ハ工業組合又ハ工業組合聯合會
ヲ以テ之ヲ組織ス
聯合會ハ法人トス
第三十條工業組合聯合會ヲ設立セムト
スルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ所屬
ノ各組合及聯合會ニ於テ選任シタル創
立委員ヲ以テ創立委員會ヲ開キ定款其
ノ他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任シ
行政官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一條創立委員會ニ於ケル議決及
役員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分ノ二
以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第十四條ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準
用ス
第三十二條工業組合聯合會ノ理事及監
事ハ總會ニ於テ所屬ノ組合及聯合會ノ
理事又ハ監事ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ
聯合會設立當時ノ理事及監事ハ創立委
員會ニ於テ之ヲ選任スヘシ
特別ノ事由アルトキハ理事ハ所屬ノ組
合及聯合會ノ理事又ハ監事ニ非サル者
ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得此ノ場合ニ
於テハ其ノ選任ニ付行政官廳ノ認可ヲ
受クヘシ
第三十三條工業組合ニ關スル規定ハ第
三十八條ノ規定ニ依リ準用シタル產業
組合法第三十八條ノ二ノ規定ヲ除クノ
外工業組合聯合會ニ付之ヲ準用ス但シ
第三條中組合員トアルハ所屬ノ組合、
聯合會及組合員トス
第三十四條設立ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
申請書ニハ定款及創立總會、總會又ハ
創立委員會ノ決議錄、出資ノ總口數ヲ
證スル書面、出資ノ第一囘ノ拂込アリ
タルコトヲ證スル書面竝理事及監事ノ
資格ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
第三十五條事務所ノ新設、移轉其ノ他
登記事項ノ變更ノ登記ハ理事又ハ〓算
人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ但シ合
併又ハ出資一口ノ金額減少ニ因ル變更
ノ登記ハ理事及監事ノ全員ヨリ之ヲ爲
スヘシ
申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面
及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附
スヘシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル
申請人カ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要セス
出資一口ノ金額減少ノ登記申請書ニハ前
項ニ規定スル書面ノ外本法ニ依リ催告
ヲ爲シタルコト及異議ヲ述ヘタル債權
者アル場合ニ於テハ之ニ對シ辨濟ヲ爲
シ又ハ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル書
面ヲ添附スヘシ
第三十六條解散ノ登記ハ合併ニ因ル解
散ノ場合ニ於テハ解散シタルトキノ理
事及監事ノ全員、其ノ他ノ場合ニ於テ
ハ〓算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及
理事カ〓算人タラサル場合ニ於テハ申
請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
前條第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ
登記ノ申請ニ付之ヲ準用ス
工業組合カ命令ニ因リテ解散シタルト
キハ登記所ハ行政官廳ノ囑託ニ因リテ
登記ヲ爲スヘシ
第三十七條〓算結了ノ登記ハ〓算人ノ
申請ニ因リテ之ヲ爲スヘシ
第三十八條民法第四十四條第一項、第
四十五條第二項第三項、第四十八條、
第五十條、第五十二條第二項、第五十
三條乃至第五十五條、第五十九條、第
六十條、第六十一條第一項、第六十二
條、第六十四條、第六十六條、第七十
條第七十三條、第七十四條及第七十
八條乃至第八十一條、非訟事件手續法
第百三十八條、第百三十八條ノ二、第
百四十一條乃至第百五十一條ノ六、第
百五十四條乃至第百五十八條、第百六
十五條、第百七十五條、第百七十六條
及第百七十八條竝產業組合法第五條、
第六條、第十條、第十一條第一項、第
十二條、第十八條乃至第二十二條、第
二十四條、第二十六條乃至第三十一條
ノ二、第三十三條、第三十四條ノ二第
一項、第三十五條乃至第三十七條、第
三十八條ノ二乃至第四十一條、第四十
三條乃至第四十六條、第四十八條、第
五十一條乃至第五十七條、第六十條乃
至第六十一條、第六十二條(第一項第
四號ヲ除ク)、第六十三條第一項、第
六十三條ノ二乃至第六十五條、第六十
六條第一項、第六十七條、第七十條乃
至第七十三條ノ三、第七十四條第一項、
第七十四條ノ二第一項、第七十八條、
第九十六條、第九十七條及第百四條ノ
規定ハ工業組合ニ付之ヲ準用ス但シ民
法第四十五條第三項及第四十八條第一
項中一週間トアルハ之ヲ二週間トシ產
業組合法中主務大臣、地方長官又ハ監
督官廳トアルハ之ヲ行政官廳トス
第三十九條左ノ場合ニ於テハ工業組合
ノ理事、監事又ハ〓算人ヲ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ク
ヘキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケサル
トキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
三行政官廳又ハ總會若ハ總代會ニ對
シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽
シタルトキ
四本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報告
ヲ差出サス又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
他行政官廳ノ命令又ハ處分ニ從ノサ
ルトキ
五本法ニ依ル總會又ハ總代會ノ招集
ヲ怠リタルトキ
六本法ニ依リ事務所ニ備置クヘキ書
類ヲ備ヘサルトキ、其ノ書類ニ記載
スヘキ事項ヲ記載セス若ハ不正ノ記
載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ理由ナ
クシテ其ノ閲覽ヲ拒ミタルトキ
七本法ニ違反シテ組合員ノ持分ヲ拂
戾シタルトキ
八本法ニ違反シテ組合カ組合員ノ持
分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之
ヲ受ケタルトキ
九本法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
セサルトキ
十本法ニ違反シテ出資一口ノ金額ヲ
減少シ又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
十一本法ニ依ル公告ヲ爲スコトヲ怠
リ又ハ不正ノ公告ヲ爲シタルトキ
十二〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シ
テ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ
爲シタルトキ
十三法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金
ヲ處分シタルトキ
十四組合ノ目的ニ非サル營利事業ヲ
爲シタルトキ
第四十條第八條ノ規定ニ依ル行政官廳
ノ命令ニ違反シタル者ハ十圓以上五百
圓以下ノ過料ニ處ス
第四十一條第四條第二項ノ規定ニ違反
シタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過料
ニ處ス
第四十二條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料
ニ付之ヲ準用ス
第四十三條工業組合ノ證票若ハ檢査證
ヲ不正ニ使用シタル者、行使ノ目的ヲ
以テ證票若ハ檢査證ヲ僞造若ハ變造シ
タル者又ハ僞造若ハ變造ノ證票若ハ檢
査證ヲ使用シタル者ハ三年以下ノ懲役
又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十四條工業組合ノ理事、監事若ハ
〓算人又ハ檢査員其ノ職務ニ關シ賄賂
ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタル
トキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正
ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササ
ルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第四十五條前條第一項ニ掲ケタル者ニ
對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル
者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十六條第四十三條ニ揭ケタル罪ハ
刑法第三條ノ例ニ、第四十四條ニ掲ケ
タル罪ハ刑法第四條ノ例ニ從フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=29
-
030・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今議題トナリ
マシタル兩案ノ中、先以テ輸出組合法案ニ
付キマシテ簡單ニ說明ヲ致シマス、近來我
國ノ海外貿易ハ御承知ノ如ク輸出入ノ均衡
ヲ失ヒマシテ、年々上額ノ輸入超過ヲ繼續
致シテ居ル事情デアリマス、此輸入超過ヲ
防ギ我國ノ經濟ノ安定ヲ圖ルガ爲ニハ輸
出貿易ノ振興ヲ圖ルコトガ最モ急務デアリ
マス、然ルニ我ガ輸出貿易ノ現狀ヲ觀マス
ルニ、中小輸出業者ハ多數群立シテ居リマ
シテ、其間ニ秩序ト連絡トヲ缺イテ居リマ
ス爲ニ、互ニ無益ナル競爭ヲ致シマス、互
ニ同士打ヲ致シテ居リマス爲ニ、我ガ商人
ニ對シテモ又我ガ商品ニ對シテモ、海外ニ
於キマシテ其信用ト聲價トヲ失墜シテ居ル
ヤウナ次第デアリマス、又其群立シテ居ル
所ノ中小業者ガ、資金モ信用モ薄弱デアリ
マスルガ爲ニ、進ンデ積極的ノ活動ヲ爲ス
力ニ乏シクナッテ居ルノデアリマス、是等ハ
我國ノ輸出貿易ノ仲展ヲ妨グル最モ顯著ナ
ル缺陷デアリマス、是等ノ弊風ヲ矯正致
シ、是等ノ缺陷ヲ除去致シテ、輸出業者ノ
間ニ秩序ト統制トヲ與ヘマシテ、共存共榮
ノ精神ヲ陶冶スルコトハ最モ大切ナル方策
ト考ヘルノデアリマス、仍テ新ナ玆ニ輸出
業者ノ組合制度ヲ樹立致シマシテ、共同ノ
施設ニ依ッテ舊來ノ弊害ヲ芟除シ、進ンデ
ハ販路ノ開拓及擴張ニ當テマシテ、以テ輸
出貿易ノ振興ヲ期センガ爲ニ、玆ニ此本法
令ヲ制定セントスルノデアリマス、又此重
要輸出品工業組合法ハ、近來世界各國ノ工
業ノ趨勢ト申スノハ、申スマデモナク經營
ノ規模ヲ益〓大ニシマシテ、優良ニシテ整一
ナル製品ヲ多量ニ生產シテ、サウシテ世界
各國ノ市場ニ各、馳驅セントスルノ有樣デア
リマス、我國ニ於キマシテモ段々ト工業ハ
近時大工業ノ生產組織ニ移リ變リツヽアル
ノデアリマスケレドモ、其變革ノ行ハルヽ
洵ニ遲緩デアリマス、緩漫デアリマス、故
ニ其大部分ハ依然トシテ舊態ヲ襲踏致シテ
居リマシテ、薄資微力、不完全ノ設備ニ依ッ
テ群小ノ企業者ガ雜然トシテ分立シテ居ル
狀態デアリマス、其間連絡モ統一モナク、
徒ニ不必要ナル眼前ノ競爭ヲ事トシテ、製
品ノ整一或ハ其向上ヲ期スルト云フコトハ
無イノデアリマス、隨テ粗製濫造ノ弊ニ陷
リマス、以テ累ヲ一般輸出品工業ニ及ボス
狀態デアリマス、斯ノ如キ狀勢ヲ以テ、駿々
トシテ進ミマスル所ノ世界各國トノ海外市場
ニ於テ角逐スルト云フコトハ、思モ寄ラヌコ
トデアリマス、歐洲ノ大戰當時一時異常ナ發
達ヲ遂ゲタル我國ノ輪出品工業モ今日沈衰
致スノ甚シキ有樣ニナッテ居ルコトモ、是ハ
當然ノ事デアリマス、凡ン輸出貿易ノ刷新
振興ハ其生產ノ過程ニ遡リマシテ、輸出品
工業ノ改善發達ヲ期スルコトガ要諦デアリ
マン·、就中我國工業ノ根本的缺陷ト認ムベ
キアノ雑然タル企業組織ヲ整備シテ、各種
ノ工業ヲシテ各、適當ナル企業系體ヲ得セ
シメ、時勢ノ進運ニ適應セル組織經營ヲ爲
サシムルト云フコトガ、卽チ刻下喫緊ノ要
務デアリマス、仍テ是ガ方策トシテ重要輸
出品工業ニ關シテ新ニ組合制度ヲ樹立シ
テ、工業者ノ覺醒ヲ促シ、其共助共榮ノ精神
ニ依リマシテ、當業者相集ノテ製品ノ檢査
ヲ嚴重ニ行ハシメ、各種ノ共同ノ施設ヲ施
サシテ、組合員ノ事業經營ニ組織ト統制ト
ヲ與ヘマシテ、秩序アル合理的企業經營ニ
依シテ、其製品ノ改良統一ト生產能率ノ增進
トヲ國リ、粗製濫造ノ〓ヲ斐除シテ輸出工
業ノ基礎ヲ確立シ、以テ輸出貿易ノ振興ヲ期
センガ爲ニ、玆ニ本案ヲ提出シタルモノデ
ゴザイマス、右兩案ハ恰モ姉妹法ノ如キモ
ノデアリマス、審議ヲ遂ゲラレテ速ニ兩案
ニ對シテ協賛アランコトヲ望ム次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=30
-
031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 兩案ニ對シテハ質疑
ノ通告ガアリマス、順次之ヲ許シマス、牧
山耕藏君
〔牧山耕藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=31
-
032・牧山耕藏
○牧山耕藏君 輸出組合法案ニ付テ極ク簡
單ナ質問ヲ致シタイト思ヒマス、輸出組合
法ノ全文ヲ通讀致シテ見マシテモ、又只今
高橋農商務大臣ノ提案ノ御說明ヲ伺ヒマ
シテモ、此法案ノ使命ハ頗ル廣汎デアッテ、
又重大デアルノデアリマス、然ルニ此組合
ヲシテ十分ナル活動ヲ爲サシムル上ニ付キ
マシテハ、組合自體ノ資金ノミデハ甚ダ不
十分デハナイカト思フノデアリマスルガ、
政府ハ本法ガ成立ヲ致シマシタ上ニ於テ
ハ低利資金デモ御融通ニナル御考ガアル
ノデアリマセウカ、又此點ニ付キマシテ
ハ關係ノ大藏省等ニ對シテモ、既ニ御協議
ガ纏シテ居ルノデアリマスカ、又若シ低利
資金ヲ融通シテ、此組合ノ事業ヲ奬勵セシ
ムルト云フ御方針デアリマスルナラバ、其
程度ハ如何デアリマスカ、此資金關係ニ付
テ高橋農相竝ニ大藏大臣ノ御所信ヲ伺ヒタ
イト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=32
-
033・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋農商務大臣
〔國務大臣高橋是清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=33
-
034・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今牧山君ヨリ
ノ御尋ハ、此組合法ヲ設ケテモ低利資金ノ
貸出ヲシテヤラナケレバイケマイト云フ御
意見ノヤウデアリマス、又大藏省ト協議ガ
整ウテ居ルカト云フ御意見デアリマス、
般ノ金融ノコトニ付キマシテハ從來單獨經
營デ、小ナル資本ヲ以テ事業ヲ營シデ居ッタ
モノガ、是ハ今度ノ組合法ニ依リマシテ共
同ノ施設ヲ爲シ、共同ノ利益ヲ圖ルト云フ
モノニナリマスト、茲ニ團體ノ働キガ起シテ
來ルノデアリマスカラシテ、從來個々單獨
ニ經營シテ居ッタ場合ト違ッテ、其團結シタ
結合ノ力ト云フモノガ一ツノ信用ヲ起スヤ
ウニナル、随テ從來ヨリモ金融ヲ銀行カラ
シテ與ヘルノニモ容易クナル、借リルコト
モ容易クナル、信用モ高マル、是ガ一般的
ノ金融ニ對シテノ利益ノ起ル所デアリマス、
又此重要輸出品ノ檢査ヲ行ハシメ、左樣ニ
シテ組合ニ統制アリ規律アル所ノ働キノ下
ニ輸出ヲ爲スト云フ場合ニ於キマシテハ
爲替ノ上ニ於テ其全利、又其期限ニ付テハ
外國ノ競爭者ニ劣ラナイ程度ノ援助ヲ與ヘ
ルト云フコトデアリマス、是等ハ卽チ正金
銀行-主トシテ此輸出貿易ヲ將來奬勵ス
ルト云フ見込ノアル所デハ、現在デハ先ヅ
正金銀行、灣銀行等、爲替取扱ヲ爲シテ
居ル所ノ金主ニ多イノデアリマス、是等ニ
向シテ他ノ從來一般ニ取扱シタ程度ヨリモ低
利ナル融通ヲ爲ス、又期限モ其地方々々ニ
依ッテ輸入國ノ商習慣等ニ鑑ミ、相當期限
ノ所ニ付テモ斟酌スルト、斯ウ云フコトデ
アリマス、而シテ此點ニ付キマシテハ十分
大藏大臣ト協議ヲ遂ゲテ、大藏大臣モ此事
ニ付テハ大ニ同意ヲシテ、賛成ヲシテ居ル
譯デアリマス、是ダケ御答ヲシテ置キマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=34
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035・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 前田房之助君
〔前田房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=35
-
036・前田房之助
○前田房之助君 私ハ兩法案ニ付キマシテ
農商務大臣ニ御質問申上ゲタイト存ジマ
ス、御永知ノ如ク我國ハ目下經濟的國難ノ
時代デアルト云フコトハ申スマデモナイノ
デアリマス、此國難ヲ打開致シマシテ、財
政ノ基礎ヲ鞏固ニシテ、國民生活ノ安定ヲ
圖シテ國力ノ充實ヲ期シマスルノニハ海
外輸出ノ增進ヲ圖ルト云フコトニ付テ、根
本的ノ政策ヲ施ス必要アリト考ヘルノデア
リマス、然ラバ海外輸出增進ノ根本的ノ政
策ハ何カト中シマスルト、物價ヲ引下グル
ト云フコトガ根本的ノ政策デナカラウカト
思フノデアリマス、今日騰貴ニ騰貴ヲ重ネ
テ居リマス所ノ物價ヲ引下ゲテ、値段ニ依ツ
テ國際市場ニ於テ外國品ト競争ヲスルト云
フコトガ、我國ノ輸出貿易ヲシテ增進スル
所ノ根本義デナカラウカト思フノデアリマ
ス、然ルニ此兩法案ヲ見マスノニ、此輸出
貿易增進ノ根本義ニハ毫モ觸レテ居ラヌノ
デアリマス、輸出振興ノ根本義ニ毫モ觸ル
ルコトナクシテ、果シテ能ク輸出貿易ノ振
典ノ目的ガ達成セラレル御見込デアリマセ
ウカドウカ、此點ヲ御伺致シタイノデアリ
いっ、勿論此商人ノ〓結トカ、或ハ統一ト
云フコトハ必要ナル事項ニハ違ヒナイノデ
アリマスケレドモ、是ハ貿易自體ヨリ申シ
マスレバ、枝葉末節ノ問題デアリマス、其
根源ヲバ改ムルコトナクシテ單ニ手足ノミ
ヲバ活動サシマシテモ、決シテ其目的ヲ達
スルコトハ出來ナイト信ジテ居リマス、ソ
レカラ第二ニ御伺致シタイノハ、物價ヲ引
下グルト云フコトガ輪出貿易振興ノ根本義
デアリト致シマスルナラバ、政府ハ物價引
下ゲノ問題ニ付テ如何樣ナル政策ヲ有シテ
居ラレルノデアリマスルカ、此問題ハ屢、當
議場ニ論議セラレタノデアリマスケレドモ、
不幸ニシテ私共ハ十分未ダ政府ノ答辯ニ滿
足シ、且ツ諒解ヲ得ルコトガ出來ナイノデ
アリマス、ソレカラ第三ノ質問事項ハ、我
國ノ輸出製品ノ主ナルモノハ御承知ノ如ク
生絲ニ製絲、竝ニ之ニ依クテ造リマス所ノ
製品デアリマス、是等ヲ除キマスルト云フ
1、他ハ小口ノ種々雜多ナ粗製品デアリマ
ス、此粗製品ガ支那、南洋、或ハ印度方面
ニ於キマシテ、販路ノ擴張ヲ致シマシ夕所
ノ理由ヲ〓究致シテ見マスルト云フト、全
ク是等商品ノ値段ガ、外國ノ商品ノ値段ニ
比シマシテ非常ニ安カッタ爲デアル、然ル
ニ內地ノ物價ガ向上致シテ居リマスル結果
ト致シマシテ、目下ノ如ク爲替相場ガ暴落
ヲシテ、圓價ガ低落致シテ居ル場合ハ別ト
致シマシテモ、若シ一朝ニシテ爲替相場ガ
囘復ヲ致シテ、圓價ガ向上致シテ、我ガ商商
ノ海外ニ對スル所ノ價値ガ上ッタ場合ニ於
キマシテモ、今日歐米ノ製品ト競争シ得ル
見込ガアルカドウカト云フ點デアリマス、
私ハ憂ヘマス、今日ノヤウナ物價ガ高ク、
生產費ガ高イ、隨テ輸出費ノ割高デアル所
ノ商品ト、ソレヨリ割安デアル所ノ歐米ノ
商品トハ到底是等ノ國際市場ニ於テハ競
爭スルコトガ出來ナイト私ハ固ク信ジテ居
ルノデアリマス、是等ノ點ニ付テ農商務大
臣ノ明快ナル御答辯ヲ希望致シマス、ソレ
カラ第四ノ事項ハ本組合法ヲバ實施サレ
マシテモ三井トカ三菱トカ、或ハ鈴木ト云フ
ヤウナ大貿易商ハ、本組合ニ加人スルト云
フ所ノ御見込ヲ立テヽ居ラレルカドウカト
云フ點デアリマス、ソレカラ更ニ御尋致シ
タイノハ、此輸出ノ大部分ヲ占メテ居リマ
ス所ノ製絲工業デアリマスガ、是等ハ本組
合法實施ノ曉ニ於テハ、矢張工業組合ト認
ムルカドウカト云フ點デアリマス、ソレカ
ラ最後ニ御等致シタイノハ、是ハ此問題ニ
ハ聞接ノ問題デアリマスケレドモ、審議上
甚ダ必要デアルカラ御尋致シマス、外デハ
アリマセヌガ、先般兒玉正金銀行ノ頭取ガ
我國ノ輸入ト輸出ノ總額ノ差ハ約二億圓デ
アル、斯樣ナコトヲ聲明サレマシタニ對シ、
先般當議場ニ於テ武藤山治君ヨリ大藏大臣
ニ對シテ、此事實ヲ御水認ニナルカ否ヤト
云フ所ノ御尋ノアッタ時ニ、大藏大臣ハン
レハ兒玉君ノ勝手ノ議論デアッテ、自分ノ
關知スル所デナイト云フ放言ヲ爲スッタノ
デアル、ソレハ兎ニ角ト致シマシテ、然ラバ
政府當局ハ平素ノ我國ノ經濟狀態ニ於テ、
一箇年ノ輸入總額ト輸出總額トハドレ程ノ
差違ヲ生ズルト云フ御見込デアルノデアリ
マスカ、又更ニ御尋致シタイノハ若シ國
民ガ總動員ヲ致シテ輸入ノ防遏輸出ノ促進
ニ努メマシタナラバ、如何程ノ程度マデ此
輸入ト輸出ノ差違ヲ接近シ得ルト云フ御見
込デアルカ、此點ニ付テハ特ニ濱口大藏大
臣ノ御答ヲ得タイト思フノデアリマス、此
問題ハ單リ海外貿易振興ノ審議土必要デア
ルノミナラズ、金解禁ノ問題ニモ重大ナ
ル影響ガアルノデアリマスカラ、特ニ明
快ナル御答辯ヲ得タイト存ジマス、以上
私ノ質問デアリマス、ドウカ詳細ニ農商
務大臣、大藏大臣ノ御答辯ヲ希望致シマス
(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=36
-
037・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋農商務大臣
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=37
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038・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今前田君ノ御
質疑ノ第一ハ此組合法案ヲ設ケテモ是ガ
貿易刷新ノ根本政策デハナイ、何等根本政
策ニ觸レテ居ラヌ、根本政策ト云ヘバ卽チ
物價引下ガ根本政策デアルト云フ御意見、
成程物價ノ安イト云フコトハ確ニ何レノ國
ニシテモ、其國ノ製品ヲ他國ニ輸出スルノ
ニ大ナル便利ヲ與ヘルモノニハ違ヒナイ、
競爭スル上ニ於テ-併ナガラ我國ノ今日
ノ輸出品ノ狀態ハデス、各方面卽チ地方ニ
駐在シテ居ル所ノ領事、商務官、其他貿易上
ノ主ナル商店ナドノ經驗ニ徵シマシテモ、
我國カラ出マス所ノ品物ハ價ノ高イガ爲
ニ輸入地デ排斥スルト云フヨリハ寧ロ粗製
品ガ多イ、品物ガ揃ハナイ、又値段ガ常ニ
安定シテ居ラヌ、ソレ故ニ商賣ニナラヌト
云フ苦情ガ最モ多イノデアリマス、輸出貿
易ヲ盛ニスル政策ノ根本トシテハ、此病ヲ
癒スノガ卽チ根本政策ト考ヘルノデアル、
例ヘバ或ル種類ノ織物ノ如キモ、價ニ於テ
モ滿足シ、品質ニ付テモ滿足シテ、漸ク外
國人ノ嗜好ニ適シテ註文ガ殖エテ來マスト、
最初拵ヘタ者ハ資力モ少イ、製造ノ能力ガ
限リガアル、一〓ニ澤山ノ註文ヲ受ケテモ
出來ナイ、而シテ此仲介タル商人ハ元ノ造ッ
夕者ニハ據レナイカラシテ誰デモ構ハヌ、
見本ヲ出シテ之ヲ造ル者ニハ造ラセル、其
間ニ互ニ同士打ノ競爭ガ始ノテ、アレハ十圓
デ引受ケルガ私ナラ九圓デ引受ケルイヤ
私ハ八圓デ引受ケルト云フノデ段々品質ヲ
落シテ、終ニ是ガ海外ヘ行シテ日本ノ製品
ノ聲價ヲ落ス本ニナル、只今デモ尙ホサウ
云フ譯デ、品物ハ賣レズシテ倉庫ニ溜ッテ
居ルモノガ澤山アルノデアリマス、ソレ故
ニ物價ノ安イト云フコトハ最モ大切ニ考ヘ
テ居ル、大切ナ事デアリマスケレドモ、今
日輸出貿易ヲ振ヒ興サントスルナラバ、寧
口其根本ト認ムルモノハ品物ヲ大量ニ、整
一ニ製出サセル方法、手段、而シテ其價ノ
激變ノ無イヤウニスルト云フコトガ、我國
ノ商品ニ對シ、又商人ニ對シテ海外ノ信用
ヲ博スル所以ナリト考ヘルノデアリマス、
ソレカラ第二ニハ物價ノ引下政策ハドウ云
フ考ヲ持ッテ居ルカ、此物價論ハ洵ニ年中
絕エナイ論デアリマス、如何ニシテ物價ヲ
引下ゲルカ何カ政府ニ施スベキ特殊ノ政策
ガアルナラバ、ソレハ最モ妙デアリマス
ケレドモ如何ナル國ニ於テモ諸物價ノ引下
ヲ政府ノ力デ爲スト云フコトハ殆ド難イ事
デアル、故ニ抽象的ニ之ヲ申セバ、矢張物
價ト云フモノハ需要供給ノ釣合カラ起ルノ
デアルカラ、大ニ造リ、需要ガ增シテ、生
產ガ餘計出來レバ乃チ其物ハ安クナルノデ
アル近來亞米利加ニ於テモ
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
此點ニ於テハ大ニ注意シテ居ル、銀行ガ貸
出ス所ノ膨脹ノ割合ト、必要ナル品物ノ每
月產出スル所ノ割合ト、通貨ノ殖エテ行ク
割合ヨリモ、各重要品ノ產出セラルヽ所ノ
割合ガ多ケレバ之ヲ以テ健全ナル發達デナ
イ、斯ウ認ムルヤウニチッテ居ル、努ムル所
ハ多ク生產サスルト云フコトニ在ル、是一
單リ政府ノ政策バカリデハ出來ナイ、卽チ
從來カラ屢、政府當局ノ言ハルヽ通リ、官民
一致、擧國一致デ此問題ヲ解決スルニ非ザ
レバ出來ナイ、ソレデ物價ガ下ラナケレバ
我國カラ出ル物ノ重要ナルモノハ生絲及生絲
カラ成ル所ノ製品デアッテ、他ハ粗製品ダソ
レ故ニ物價ガ下ラナケレバ貿易ハ盛ニナラ
又、輸出ハ盛ニナラヌト云フ御意見ダケレ
ドモ、前申ス通リ必シモ生絲及其製品ノミ
ガ、我國ノ輸出貿易品トシテ重要視スベキ
モノト限ラレテ居ラヌ、今日デハ段々綿織
物、サウ云フ物モ、綿絲ノ輸出ガ減シテ、其織
物ノ輸出ガ漸次殖エテ行クト云フ傾向モ著
シイモノデアル、又「セルロイド」等ノ製品
モ多々アルノデス、何ゾ單リ生絲ノミナラ
ンヤ、無キ原料ハ他國ヨリ之ヲ輸入シ、之
ニ加工シテ我國ノ特長タル所ノ意匠ヲ施シ
テ海外ニ出セバ織物其他ノ製品ニ於テ望
ガアルモノハマダアルノデアル、是等モ今
單獨經營デ、各、個々別々ニ内輪デ競ノテ、
小サナ仕組デ造ッテ居ッテハ世界ノ市場ニ
出テ商品タル資格ヲ得ルコトハ出來ナイ、
ドウシテモ共同ノ働ニ依ッテ、多量ニ整一
ノ品物ヲ造ルヤウニ仕向ケナケレバ輸出貿
易ハ盛ニナラヌノデアル、此組合法ノ精神
ハ其所ニ在ルノデアル、第四ニハ大貿易
者大資力アル所ノ貿易者モ此組合ニ入
ルノカ、或ル部分ノ取扱ニ付テハ入ル必
要ガアルカモ知レヌ併シ察スルニ此大ナ
ル資力ノアル輸出貿易者ガ取次ヲスル、其
品物ヲ造ル者ガ此組合ニ人ル、是デ目的ハ
達スルノデアル、自ラ此組合ニ入ラナクテ
モ宜イ、自ラ造ルト云フナラバ此組合ニ入
ル必要モアリマセウ、或ハ其組合ガ-工
業ノ組合ガナイガ、自分自ラ良イモノヲ選
擇シテ輸出貿易ヲシナケレバナラヌト云フ
場合ニ於テハ、或ハ品物ニ依シテハ入ル必
要ガ起ルカ知レヌ、是ハ自由ニ任シテ宜イ
ノデアル、而モ此輸出組合ニ入ッタカラト
云ウテ、決シテソレガ爲ニ、營業稅トカ所
得稅ヲ免レルト云フヤウナ、ザウ云フ裏路
ヲ行ク餘地ハ此組合法ニハ無イノデアリマ
スカラ、是ハ自由デ宜カラウト思フ、ワレ
カラ製絲業者ヲ此組合ニ入レルカ、是ハ只
今申ス通リ生絲ナルモノハ我國輸出品ノ大
宗デアル、今度ノ豫算ニモアリマスル通リ
特殊ノ方法ニ依ッテ、是ハ是デ根本カラ一
ツ將來益〓外國ニ對シテ、製品ニ對シテモ
値ニ對シテモ、數量ニ對シテモ亦信用ヲ博
スルト云フ方面ニ向ッテ、之ヲ指導シテ行
ク考デアリマスカラシテ、必シモ今度ノ法
案ニ依ラシムルト云フ考ハナイ、最後ニ兒
玉正金銀行頭取ノ話ニ付テ、私ニモ幾分
御問ニナッタヤウナ風デアルガ、併ナガラ
是ハ主トシテ大藏大臣ニ御問ニナッタノデ
アリマセウ、私モ明治二十八年末ヨリ長ラ
ク正金銀行ニ入っテ、爲替ノ事ニハ長イ經驗
モアルノデ、正金銀行ノ取扱方モ凡ソ分ッ
テ居ル、正金銀行ノ頭取トシテノ意見ハ固
ヨリ吾々ハ尊重スルノデアル、併シ正金銀
行ノ頭取ノ意見ハ、矢張リ正金銀行ノ立場
カラ立テル所ノ意見デアリマス、正金銀行
ニシテ見レバ恐ラク今日ハ綿ノ輸入爲替ノ
半額ハ、モウ既ニ出合ヲ付ケテシマッテ居
ル、丁度今日ハソレデアルカラ、事實ニ於
テ輸入季節デアルノニ、金融上カラ云ヘバ
餘程出合ガ容易ニナッテ居ルカラシテ、爲
替相場ノ上カラ行クト輸入超過ガ盛ニアル
時ニ於テ、却テ爲替相場ガ-少シ我國ノ
相場ガ上リ氣味ガアルト云フヤウナ徵候ヲ
現ハス、是ハ前以テ銀行ガチヤント用意ス
ル、爲替デ綿ガドノ位入ル、五億ナラ五
億六億ナラ六億ノ綿ガ入ルト云フコトガ
分ッテ居ルカヲ、前ニ金ヲ用意シテアル、
半バハ今日ハ濟ンデ居ルカラ出合ガ-サ
ウ云フ特殊ノ立場ニ在ル所ノ銀行業者ノ意
見デアリマスカラ、此銀行業者ノ意見ハ其
立場ヲ能ク諒解シテ之ヲ見ナイト云フト
立場ヲ知ラヌデ見ルト云フト誤解ヲ起スコ
トモアルカモ知レヌ、正金銀行頭取ノ意見
ハ相當ニ吾々ハ重ク考へテ宜イモノデア
ル、併ナガラ此頭取ノ意見ハ矢張正金銀行
ノ立場ヲ主トシテノ意見デアルカラ、其積
リデ吾々ガ讀ンダリ聽イタリスレバ間違ガ
ナイト考ヘマス、隨テ唯、正金銀行ノ頭取
ノ意見ニ付テ、私ノ意見ヲ述ベタノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=38
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039・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 濱口大藏大臣
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=39
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040・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 前田君ノ御質問
ニ御答致シマスガ、貿易ノ入超額ニ付テ正
金銀行頭取ノ見込ニ對スル政府ノ觀察ハ、
只今農商務大臣ノ御述ニナッタ通リデアリ
ママ、然ラバ政府ハ我國ノ輪入貿易ガ凡ソ
ドレ位デアルカ、輸出貿易ガ果シテドレ位
デアルカ、差引入超額ハドレ位ニナルノデ
アラウト云フ見込ヲ持テ居ルカト云フ御質
問ニ對シマシテハ、是ハ遺憾ナガラ責任ヲ
以テ御答スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、纔ニ年ガ明ケマシテ二月ノ上旬ノ今日
ニ於テ、今年ノ貿易ガ如何樣ニ相成ルカト
云フコトハ、是ハ政府ト致シマシテハ到底
責任上何トモ申上ゲルコトノ出來ナイ點デ
アリマス、固ヨリ大藏省ニ於キマシテモ種々
ノ調査〓究ヲ致シテ居リマスケレドモ、
是ハ内部ノ見積デアリマシテ議會ニ於テ言
明スベキ材料ト致シマシテハ甚ダ薄弱デア
リマス、ソレカラ第二ノ御質問ノ官民一致
シテ大ニ努力ヲスルナラバ、我國ノ入超額
ハドレ位ニ減ズルデアラウカト云フ御質問
デアリマシタガ、是ハ努力ノ程度如何ニ依
リマスカラ、抽象的ニ申上ゲルコトハ困難
デアリマス、若シ我ガ國民ノ今日ノ經濟上
ノ難局ニ對スル自覺ガ甚ダ不十分デアッテ、
隨テ輸入抑制、輸出ノ奬勵ニ對スル所ノ努
力ガ足リマセヌトキニハ入超額ヲ大ニ減
ズルコトハ困難デアラウト思ヒマス、其反
對ニ國民ガ大ニ消費ヲ節約シ、動儉力行ニ
勵ミ、サウシテ輸入ノ抑制ニ努メ、又資本
ノ蓄積ヲ行ヒ、事業ノ合同ヲ行ヒ、能率ノ增
進、大量生產ノ發達ヲ圖リマシテ、大ニ輸出
ノ奬動ニ努力スルト云フコトデアリマシタ
ナラバ、此入超額ハ非常ニ減ズルデアラウ
ト思ヒマス、要スルニ此問題ハ官民一致ノ
努力ノ程度如何ニ依,テ岐レル所デアリマ
シテ、漠然ト國民ガ努力スレバドノ程度マ
デ入超ヲ減ジ得ルカト云フ御質問ニ對シマ
シテハ、遺憾ナガラ明確ナル答辯ヲ致スコ
トハ甚ダ困難デアリマス(拍手)
〔前田房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=40
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041・前田房之助
○前田房之助君 只今農商務大臣ハ物價ノ
問題モ必要デハアルガ、粗製濫造、此弊ヲ
矯メテ製品ヲ改善スルト云フコトガヨリ以
上必要デアル、斯ウ申サレタノデアリマス
ガ、私ハ粗製濫造ノ弊ヲ矯メルコトハ無論
必要デアリマスガ、矢張ドウシテモ割安ノ
品物ヲ送ラナケレバ、殊ニ日本ノ輸出商品
ノ大部分ハ今申上ゲタ如ク半開國ニ多ク出
テ居ルノデアリマス、ドウシテモ伯段ガ歐
米品ヨリ安クナケレバ競爭ニ打勝ツコトガ
出來ナイノデアリマス、デアリマスカラ
ドウシテモ割安ニスルト云フコトノ必要ヲ
感ズルノデアリマスガ、併ナガラ此點ニ付
テハ高橋農商務大臣モ否認ハナスッテ居ラ
ヌヤウデアリマス唯、物價問題ニ付テ是ハ
官民一致シテ其局ニ當ラナケレバ、ドウシ
テモ物價ノ調節ハ出來ヌト云フ御答辯デ
アッタノデアリマス、是ハ勿論一面ノ眞理デ
ハアリマセウケレドモ、現在我國ノ物價ガ
歐米諸國ニ取殘サレテ、單リ騰貴ニ騰貴ヲ
重ネテ居ル所ノ根本原因ハ何處ニ在ルカト
〓究致シマスルト、全ク實際ノ力以上ニ通
貨ガ膨脹シテ、サウシテ、又正貨モ膨脹シ
テ、其上ニ信用モ膨脹シテ居ルト云フコト
ハ今日物價ガ騰貴ニ騰貴ヲ重ネテ居ル所
ノ根本原因デアラウト私ハ信ジテ疑ヒマセ
又、然ラバ此物價ヲ引下ゲルニハドウ致シ
テモ通貨ヲ或ル程度マデ牧縮シ、又正貨ヲ
收縮致シマシテ、兌換劵ノ機能ヲ十分發揮
スルヤウニシナケレバ相成ラヌト考ヘマス
ソレニハ屢、當議場ニ於テ論議サレテ居ル
所ノ金解禁ヲ-金ノ輪出禁止ヲバ解除ス
ル或ル條件ノ下ニ金ノ輸出禁止ヲ解除ス
ルト云フコトガ、卽チ物價引下ゲノ根本政
策デアラウト私ハ考へテ居リマス、之ニ付
テ重ネテ高橋農商務大臣ノ御答辯ヲ願ヒマ
スルト共ニ、此金ノ解禁問題ハ今ヤ我國朝
野ノ大問題デアリマス、世論ノ囂々トシテ
其歸スル所ガナイノデアリマス、曾テ彼ノ
英國ノ前々首相「ポルドウヰン」氏ハ時ノ關
稅改正案ニ向ッテ議會ヲ解散致シタノデア
リマス、其當時ノ關稅改正ノ案ガ出夕英國
ト經濟狀態ヲ比較致シマシテ、我國ノ今ノ
金ノ輸出禁止ヲ解除スルヤ否ヤト云フ問題
ハヨリ以上ニ重大ナル問題デアラウト私
ハ考ヘテ居リマス、ンコデ此問題ガ國論ノ
歸趨ガ明瞭デアリマスル以上ハ、此重大ナ
ル問題ニ對シテ政府ハ議會ヲ解散シテ、サ
ウシテ國論ノ嚮フ所ヲバ見ラルヽ必要ガア
ルカドウカ斯ル勇氣ガアルカドウカ斯ウ云
フ點ニ付テ總理大臣ノ御答辯ヲ煩シタイノ
デアリマスガ、總理大臣ハ居ラレマセヌカ
ラ、代ッテ高橋農商務大臣ナリ、濱口大藏
大臣ノ明快ナル御答辯ヲ煩シマス
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=41
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042・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 前田君ハ何所迄
モ我國輸出貿易ノ不振ハ價ガ高イカラ價ニ
重キヲ置カレル、私モ價ノ安イコトヲ望ム
ノハ御同感デアリマスガ、玆ハ意見ノ相違
ニナルカモ知レヌ、延イテ此金ノ解禁問題
輸出禁止ヲ解カウト云フ、之サヘ解ケバ物
價引下ゲノ根本政策ナリト言ハレル、驚入ソ
タ御考へ、先ヅ第一好イ例ハ瑞西ノ金解禁
後ノ狀況ガ一番好イデス、彼處モ御永知ノ通
リ大戰爭ノ爲ニ一時外國カラ金ガ入ッテ來
タ、彼處ハ中立國デアル、交戰國ハ其國ノ
通貨ノ價ガ、貨幣ノ價ガ、如何ニナルカ分
ラヌ、先ヅ彼處へ持ッテ行ッテ置ケバ安心ダ
ト云フノデ、交戰國ノ金ノアル人達ハ早ク
ソレヲ爲替ニ組ンデ、瑞西ニ行ヲテ銀行ニ
預ケルト云フヤウナ譯、而シテ瑞西ニ段々
金ガサウ云フ風デ入ッテ來ル貿易ノ力デ
入ッテ來ルナラ是ハ安心デアリマス、然ル
ニ國ガ安泰ダカラト一云ッテ、他國ノ資本ガ
預リ金ニナッテ居ル爲ニ、一國ノ金準備ガ
其國ノ經濟上ノ必要以上ニ膨脹スレバ、矢
張是ハ害ニナッテ來タノデス、ノコデ金ノ
解禁ヲヤッテ見夕所ガドン〓〓引出サレテ、
先達テ最近ノ報告ヲ見マスルト十三億以上
ノ金ガ有ッタノガ、今日ハ三億臺ニナッテ、
若シ此儘棄テヽ置イタナラバ或ハ國內不換
紙幣ニナリハセヌカト言ッテ居ルサウデア
リマス、是ハ小サナ國ノ例、英國ハドウデ
アルカ、今年一杯デ金ノ輸出ヲ解禁スルト
云フコトニ努力シテ居ル、又倫敦市場ヲシ
テ世界ノ決濟地トシテ、戰爭以前ノ如クニ
アラシメタイト云ウテ努力シテ居ルノデア
ル、官民共ニ努力シテ居ル、又米國ノ資本
家モ初メハ倫敦ノ世界市場ト云フ勢力ヲ
失ッタニ乘ジテ、紐育ヲ以テ世界決濟ノ-
世界貿易決濟ノ要地トシヤウト云ノテ試ミタ
ガ矢張是ハ出來ナイ、ドウシテモ倫敦ノ市場
ト紐育ノ市場ト竝立ッテ行カナケレバ、
國ノ市場ヲ以テ世界ノ貿易其他ノ決濟ヲス
ルト云フコトハ不可能デアルト自覺シ
タ-不可能デハナイガ、却テ其國ノ禍ニナ
ルト云フコトヲ自覺シテ、頻ニ英吉利ノ財
界ノ恢復ヲ助ケ、一日モ早ク倫敦ノ爲替相
場ガ平時ニ復スルコトヲ希望シテ居ッタ、
倫敦ニ於テモ早ク戰爭前ノ世界ノ貿易ノ決
濟地ニナラントシテ努力致シテ居ル、而モ
英吉利ハドウデアルカ、我國ノヤウニ獨リ
貿易、或ハ移民ノ送金ナドニ依ル國デハナ
イ、數十億ノ金ヲ己ノ領土以外ニ放資シテ
アッテ、其資本ノ働キヨリ生ズル所ノ利得
モ尠カラザルモノデアルカラシテ、貿易以
外ニ他國及彼ノ領土内ニ於テー己レノ領
土内ニ於テ、植民地ニ於テ放資シタル所ノ
資本ノ生ミ出ス所ノ金ハ、悉ク是ハ本國ノ
輸出品ト同樣ノ結果ヲ齎ラシテ、對外決濟
ノ關係ニハ有力ナルモノデアル、ソレデモ
デス、英蘭銀行ハ戰爭中ハ政府紙幣ノ爲ニ稍、
通貨ノ價ヲ落シテ居ッタガ、英蘭銀行ハ依然
トシテ矢張兌換制度ヲ維持シテ居ルノデア
ル貿易モ段々恢復シテ來タカラシテ、今
年一杯ノ期限ヲ以テ金ノ輸出ヲ解禁シヤウ
ト云フ、是ハ上下ノ望ミデアル、資本家モ
望ミ、政府モ望ムノデアル、併シ單獨ニ出
來ナイ、彼ノ世界ノ到ル所ニ資本ヲ放資シ
テ、貿易以外ノ資本ノ生ズル利益、海運事
業ニ依シテ得ル所ノ利益ガアル國デスラ、
單獨デ出來ナイカラ、先達テ英蘭銀行ノ頭
取ガ-總裁ガ亞米利加ニ行ッテカラニ、亞
米利加ノ中央銀行ノ總裁其他金融界ノ巨頭
ト相談ヲシテ、諒解ヲ得タカ得ナイカハ私
ハハッキリト其眞相ハ分ラヌケレドモ、其
事實ハ確ニアルノデアル、併シ今日尙ホ以
テ決斷ガ出來ナイ、惧レル所ハ何カ解禁ヲ
一旦ヤッテ、外ヘ金ガ出テ內ノ金ガ減シタ時
分ニドウスルカ、耐ヘルカ耐ヘナイカ、サ
ウ云フ時ニナッタラドウスルカ、此心配ガ
マダ去ラナイ、殊ニ一旦其金ノ解禁ヲシ
マスト、唯〓其國ト關係國トノ間ノ貿易關
係ノミヂヤナイ、御水知ノ通リ此世界各
國ノ間ニ、爲替相場ノ上ニ於テ相場ヲスル
者ガ澤山アル、日本デモ既ニアル~殊ニ外
國銀行ガ日本ナドデ、或ル外國銀行ハ-
最モ此爲替ノ上ニ於テ動亂ヲ來タスノハ其
外國銀行ノ働キデアル、是ハ歐羅巴ニ於テ
モ其通リ、先達テ佛蘭西ガエライ目ニ遭ッ
タノモ此銀行ノ響キデアル、世界中爲替相
場ノ上ニ於テ相場ヲシテ居ル、此爲替相場
ノ働ニ依シテ實際ノ貿易以外ニ金ヲ取出サ
レルコトモアリ得ルコトデアル、金ノ解禁
ニ付テハ獨リ貿易ノ趨勢バカリ見テ定メル
譯ニハ行カナイ、之ヲ以テ物價引下ゲノ根
本政策ナリト考ヘルノハ以テノ外ダト私ハ
考ヘル、先達テカラシテ大藏大臣ガ金ノ解
禁ハ〓其時機ニアラズト言ハレテ居ルガ、
世間何ト言ハウト之ヲヤッタラ國ガ亡ビル、
大藏大臣ノ言ハレタ事ニハ何人モ同意ヲ表
シテ居ル、是ダケ御答ヲシテ置キマス拍
き+発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=42
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043・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 吉植庄一郞君
〔吉植庄一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=43
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044・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 只今議題ニナッテ居ル所ノ
問題ニ付テ主トシテ大藏大臣ニ伺ヒタイ高
橋農商務大臣ノ物價問題、金解禁等ノ問題
モ序ナガラ拜聽ヲスル機會ヲ得タコトハ甚
ダ欣幸ト致シマス、併シ色ミノ質問應答ヲ
聽イテ居リマシテモ、輸出貿易ノ奬勵ニ付
テ政府ガ組合法外一件ヲ御提案ニナッテ、人
爲ノ力ヲ之ニ加ヘナケレバナラヌト云フコ
トヲ看取セラレテ居ルト云フ一點ニ付テ
ハ敬意ヲ拂フ者デアリマス、同時ニ色と
ナ長イ御說明ガアッタガ、農商務大臣モ物價
ダケデ輸出ノ奬勵ニハナラヌト言ハレタガ、
物價ハ幾ラ高クテモ輸出ハ益。出ルト云フ
御論デハナイヤウデアル、矢張物價ハ安イ
方ガ輸出ニハ便利デアル、ノミナラズ出來
ルダケ安クシナケレバナラヌト云フ點ニ付
テハ御異論ハナカラウト思フ、ソコデ御尋
ヲスルノデアリマス、物價ハ幾ラ高クナッテ
モ一向差支ナイト云プ御論デアレバ、是ハ
又全ク根本ノ意見ノ相違デアリマスガ、サ
ウデハナカラウ、是ニ於テ現内閣ガ施政ノ
方針トシテ總理ガ御演說ニナリ、大藏大臣ガ
大藏省ノ方針ノ御演說中ニモ現在ノ物價騰
貴、之ニ對スル現内閣ノ物價政策ナルモノ
ヲ國民ガ明瞭ニ意識スルコトガ出來ナイノ
デアル、一方ニ於テ過般米及籾ノ關稅ヲ全
國農村ニ課スルニ於テハ寧口關稅ノ從量
稅ヲ從價稅ニ引直シテ貰ハナケレバ農村ノ
荒廢救フベカラズトシテ、帝國農會初メ全
國ノ農村ハ之ヲ絕叫シテ居ルノデアル、小
麥粉ノ輸入稅モ尙ホ之ヲ引上ゲナケレバナ
ラヌト云フ要求ヲシテ居ル場合ニ於テ、現
内閣ハ突如トシテ過般米穀ノ關稅ヲ免除ス
ル、而シテ昨年度ニ於ケル米ノ不足ヲ外米
輸入ニ依シテ塡補スル政策ヲ御執ニナッタノ
デアル、吾々ハ此問題ニ付テ今可否ヲ論ズ
ルノデハナイ、現內閣ハ少クモ國民生活ノ
脅威ハ物價騰貴ニ因ル、殊ニ食糧品ノ騰貴
ハ國民ノ生活ヲ脅威スルト云フ見地ニ立ッ
テ、此擧ヲ斷行シタモノデアラウト思フ、
然ラバ現内閣ノ物價問題ニ對シテ考ヘテ居
ルト云フコトダケハ是デ分ル、併シ四百
五十万石内外ノ米ノ輸入關稅ダケヲ以テ、
物價騰貴ノ全部ニハ影響ヲ及ボサナイノデ
アル、輸入ハ昨年度ニ於テ一一十四億六千万圓
ノ輸入デアル、是ガ大正十二年九月大震火
災以前ノ物價ト對照ヲ致シテ見レバ、既ニ
二割以上ノ騰貴ニ輸入品ハナッテ居ルノデ
アリマス、過般大藏大臣ハ、大正十二年十二
月ノ調ヲ基礎トシテ一割二分デアルト仰セ
ラレテ居ッタガ、吾々ノ調査スル所ニ依レ
バ、九月ト十二月ノ三箇月間ノ差ガアリマ
スガ、吾々ハ大正十二年大震火災ノ以前ノ
狀態ト比較シテ見ルコトガ一番正シキ標準
デアルト思フ、此標準ニ依レバ、物價ハ平
均ニ約二割ノ增加ヲ致シテ居ルト云フコト
ハ吾々ハ確乎タル材料ニ依リテ斷言スル
ヲ憚ラヌノデアル、此趨勢ハ獨リ輸入品ニ
於ヲ物價ノ騰貴ヲ來シタノミナラズ、今ヤ
輸出品ニ於テモ約一割七分ノ物價ノ騰貴ヲ致
シテ居リマス、是モ吾々ハ相當確乎タル材
料ニ依シテ斷言スルノデアリマス、一般ノ物
價ノ騰貴ガ二割以上ニ及ビ、輸出品モ亦輸
入品ノ物價騰貴ノ影響ヲ受ケテ、我ガ國內
ニ於ケル外國輸出品ハ一割七分ノ騰貴ヲ爲
シ、尙ホ漸次騰貴ノ狀勢ニ在ルノデアリマ
ス、此時ニ於テ農商務省所管ニ於テ、米麥
ノ-全國ノ農村ノ與論ニ反スルモ尙ホ物
價騰貴ヲ抑制シナケレバナラヌト云フ意味
ニ於テ-之ヲ解放シ、關稅ヲ一時停止ス
ルト云フコトニ爲サッテ居リナガラ、帝國政
府ノ財政經濟ノ中心タル大藏省ニ於テハ
如何ナル物價下落ノ施設ヲ爲サレテ居ルノ
デアルカ、吾々不幸ニシテ今日ニ至ルマ
デ、濱口君ガ行政財政ノ整理ニ依ッテ政府
ノ消費節約ヲ爲シ、國民ニ向ッテ勤儉貯蓄
ヲ勸ムルト云フ、此間接射擊ヲ唯一ノ材料
トシテ居ル以外ニ於テ、現内閣ガ何等ノ物
價政策ヲ持シテ居ルト云フコトヲ見出サヌ
ノデアリマス、故ニ過般此壇上ニ於テ武藤
山治君ハ、濱口君ノ御論ハ恰モ大病人ニ向ッ
テ衞生ノ講義ヲシテ居ルヤウナモノデアル
ト言ハレタ、洵ニ適論ナリト私共ハ傾聽致
シタノデアリマス、今日ノ物價ガ段々騰貴
ヲシテ國民ノ生活ヲ脅威シ、更ニ輸出品ニ
向ッテ其發達ヲ妨グベキ趨勢ニ在ルナラ
バ、内閣全體ガ同ジ方針ヲ以テ各方面トモ
活動ヲシナケレバナラヌ筈デアル、農商務
省ニ於テ一部ノ輸出組合法案ヲ拵ヘ、其他
ノコトニ於テ多少、輸出奬勵ノ便宜ヲ開イ
タトシテモ、輸出品ハ漸次物價騰貴ノ形勢
ニナッテ居ルナラバ、勿論高イカラノミデ
外國カラ輸入品ガ這入ルトハ言ハナイガ、
世界各國ヲ通ジテ輸出入品ハ物價ノ安イ處
ニ動クト云フコトハ、鐵案ニシテ動カス
ベカラザル原則デアリマス、此原則ハ
少クトモ除外スルコトハ出來ナイモノデア
ル故ニ是ト同ジ方針ヲ以テ大藏大臣モ働
カナケレバナラヌ筈デアルト思フ、是ニ於
テ吾々ガ此三派內閣、三頭三脚内閣デハ政
策ガ常ニ支離矛盾シテ、一定ノ政策ヲ行フ
能ハザルコトヲ懸念シマシテ、屢と警告シ
タノデアリマスガ、只今モ多年金解禁ノ問
題ヲ主張シテ居ッタ所ノ濱口大藏大臣ノ說
ト、只今此所デ承ッタ所ノ農商務大臣ノ說
ハ多年朝ト野ニ在ッテ相鬪"タ所ノ問題デ
アッテ兩極端ノ說デアル、物價問題ニ付テモ
通貨縮小ヲ以テ唯一ノ物價低落ノ原因トシ
テ、通貨ノ縮少、兌換ノ縮少ニ向ッテ極力
奮闘セラレタル濱口大藏大臣ト、當時ノ高
橋大藏大臣ハ、物價ト云フモノハ左樣ナ譯
ノモノデハナイト云フ高橋一流ノ物價論デ
常ニ抗爭シテ居ッタ、此人々ガ同ジ內閣ノ内
ニ居シテ物價政策ヲ論ジ、金輸出解禁ノ問
題ヲ協定スルニ當ッテハ、誰カガ降參シナケ
レバナラヌト云フコトハ明デアル、此內閣
ハ物價問題ニ對シテ、所謂會テハ放漫政策
ノ執行者ト濱口君ガ罵ッタ人ト、物價調節ハ
敢テ心配ハシナクトモ宜イト云フ人ト、是
非物價調節ハシナケレバナラス、而シテ通
貨縮小ヲシナケレバナラヌ、金ノ解禁ヲシ
ナケレバナラヌト論ジ夕人トガ廟堂ノ內ニ
同ジク立ッテ、此兼合ヒヲ如何ニ取ッテ往ク
カ、是ガ物價政策ニナッテ現レルノニ、現内
閣ハ外ノ問題ニ付テハ高調力說セラルルケ
レドモ、物價問題ニ至ッテハ僅ニ行政財政
ノ整理ト國民ノ消費節約ニ訴ヘ、單ニ聲ヲ
大ニシテ國民ガ自覺セヨトノミ言ハレル
ガ、政府ハ國民ニ自覺ヲ促ス前ニ、政府自
ラ自覺ヲシナケレバナラヌ、政府自ラ物價
問題ニ對スル方策ヲ立ツルニ當リ、三階カ
ラ目藥以上ノ詰ラナイ方法ヲ立テ、此大本
ニ向ッテ何等ノ對策ヲ講ジナイト云フコト
現内閣ハ國民ニ對シテ不深切是ヨリ大
ナルハシト思フ、此問題ヲ御出シニナッテ、
大藏大臣ハ之ニ對應スベク、此物價ヲ如何
ニ調節セラレントスルノデアルカ、過般來
度々繰返ヘサレタル政府ノ行政財政整理
ト、國民ニ對シテ消費節約ヲ强ユル以外ニ
何等ノ對策ヲ持タナイノデアリマスカ、持
タナイト云フナラバハッキリ現內閣ハ其以
外ニ物價政策ナシト御明言ナサルガ宜イ、
アルト云フナラバ如何ナル對策ヲ持ッテ居
ラルヽカ、唯〓僅ニ組合法ヲ拵ヘルト云フコ
トデナク、政府自ラ當然爲スベキ物價政策
ヲ爲サナケレバナラヌ責務ガアル、此點ニ
付テ現内閣ハ成算アルカ否ヤ、此問題ニ付
テ大藏大臣ガ國民ヲシテ安心ノ出來ルヤウ
ニ、政府ノ物價政策ガ何所ニ在ルノデアル
カ、物價ハ漸騰シツヽアルノデアル、輸入
品ノ二十四億ニ對シテ一一割三分ハ過日モ申
ス通リ五億五千万圓デアル、國民ガ一年間
ニ於テ五億五千万圓、一人十圓ニ近キ增加
稅ヲ現內閣ノ失政ノ爲ニ課セラレテ居ル、
是ハ多年負擔ノ輕減ヲ唱ヘ來タ夕所ノ現內
閣諸公ハ、斯樣ナル輸入超過ダケノ關係カ
ラシテモ五億五千万圓昨年ニ於テ增加シテ
居ル、本年度ニ於テモ或ハソレト同樣、若
クハソレニ近イモノヲ負擔セシメナケレバ
ナラヌト云フ場合ニ於テ、平然トシテ單ニ
行政整理ト國民ノ消費節約ニ依シテ之ヲ望
ムト云フコトハ如何ニモ自分ノ無能、無
經綸ヲ元シテ、其責任ヲ盡サヾルモノデ
アルト吾々ハ思フ、此點ニ付テ特ニ大藏大
臣ハ現内閣ノ物價政策ニ對シテ具體的ノ御
意見ヲ示サレンコトヲ望ムノデアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=44
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045・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 只今吉植君ヨリ
現內閣ノ物價政策ハ如何デアルカト云フ御
質問ガアリマシタ、ンレニ關聯ヲ致シテ私
ガ在野ノ時ニ唱へ來ッタ所ノ物價竝ニ金融
ニ關スル所ノ議論ニ論及ヲサレテ、此度政
府ガ行ッタ所ノ、行政財政ノ整理、竝ニ消費
節約ノ奬勵ヲ以テ間接的ナリトシテ、其效
果ヲ殆ド否認サルヽガ如キロ吻ヲ漏シ、而
シテ此物價問題ヲ徹底的ニ解決スルニハ
恰モ金ノ輸出解禁ノ外ニ途ハナイト云フ御
考ヲ以テ御質問ニナッタヤウニ承知ヲ致シ
タノデアリマス、之ニ就テ私ハ御答ヲ致サ
ウト思ヒマス、凡ン經財上ノ政策、例ヘバ
通貨ニ對スル政策ニシマシテモ、物價ニ對
スル政策ニ致シマシテモ、財政經濟上總テ
ノ政策ハ其時ノ宜シキニ從シテ之ヲ制シテ
行カナケレバナラヌコトハ申スマデモアリ
マセセヌ、吾々ガ戰後經濟界ノ最モ旺盛ナ
ル時ニ於テ物價問題ヲ論ジ、通貨ノ收縮ヲ
論ジタノハ抑、如何ナル故デアッタカ、其當
時ハ吉植君モ御承知ノ通リ、戰時カラ戰後
ニ亙ッテ輸出貿易ガ隆盛ヲ極メ、其結果
トシテ外國ノ金ガ盛ニ內地ニ這入ッテ來
タノデアリマス、金貨流入ノ結果ト致シ
マシテ内地ノ通貨ハ非常ニ膨脹致シ、
通貨膨脹ノ結果物價ガ騰貴ヲ致シタ、此
時ニ當ッテ物價ノ調節ヲ論ズル者、外國
カラ貿易出超ノ結果トシテ盛ニ內地ニ
這入ッテ來ル所ノ金貨ヲ內地ニ這入ラナイヤ
ウニ之ヲ外國ニ留メ、卽チ此金貨ヲ以テ海外
ノ事業若クハ外國ノ證劵ニ放資ヲ致シ、之
ニ依シ通貨ノ膨脹ヲ豫防スル、其外ニハ途ハ
ナカッタノデアリマス、ソレ故ニ其當時ニ於
テ私共ハ通貨ノ膨脹ヲ抑制スル手段ト致
シテ、盛ニ海外ノ放資竝ニ日本銀行ノ金利引
上ヲ主張シタコトハ、當時天下ノ齊シク認
ムル所、吉植君モ御記憶デアラウト思ヒマ
ス、然ルニ其當時ニ於テハ不幸ニ致シマシテ、
吾々ノ主張ハ實行サルヽニ至ラナカッタノ
デアリマス、其實行ガ出來ナクシテ、金貨
ハ盛ニ貿易ノ結果外國カラ這人シテ來テ、
ツレガ爲ニ內地ノ通貨ハ頻ニ膨脹ヲシタ、
其結果ガ國家ノ財政ノ膨脹トナッテ現ハレ、
國民ノ消費ノ膨脹トナンテ現レタ、事此ニ
至ッテハ外國カラ這入ッテ來ルコトヲ防ガナ
ケレバナラヌモノガ、其防禦ガ出來ズシテ、
內地ニ這入ッタ以上ハ、内地ニ於テ之ヲ使
フ人ガ消費節約スルノ外ニハナイノデアリ
マス、其當時吾々ハ斯樣ニ申シタコトデアッ
テ、凡ン通貨ノ膨脹セントスルニ當ッテ恰
モ之ヲ防グコトハ割合ニ容易デアル、然ル
ニ一タビ膨脹シタ所ノ通貨ハ收縮スルト云
フコトハ甚ダ困難ナル仕事デアル、卽チ巨
額ノ通貨ハ外國貿易ノ隆盛ノ結果トシテ六
千万國民ノ懷中ニ悉ク浸潤ヲ致シタノデア
リマス、政府ノ財政ノ中ニ悉ク浸潤ヲ致シ、
是ガ爲ニ公私ノ經濟ヲ非常ニ膨脹セシメタ
ノデアリマス(ヒヤ〓〓)ソレ故ニ大正十年
カラ十一年頃ニ於ケル所ノ吾々ノ物價調節
策ハ、斯ノ如ク膨脹致シタ所ノ公私ノ經濟
ヲ緊縮節約スルニ在リト云フコトヲ明ニ聲
明ヲ致シテ居ル、公私ノ經濟ヲ緊縮スルト
云フノハ、卽ヲ只今吉植君ガ間接的ナリト
シテ重キヲ置クレナカタケレドモ、吾々
ハ最モ重キヲ置イテ居リマスルノガ卽チ政
府ノ行政財政ノ整理デアリマス、卽チ國民
ノ消費ノ節約デアリマス、此二者ハ物價調
節問題ノ根本策デアルト政府ハ確信ヲ致シ
テ居ル(拍手)吉植君ハ行政財政ノ整理ノ效
果ガ、物價調節ノ爲ニハ極メテ間接的デア
ルト申サレマスルガ、仔細ニ此問題ヲ點檢致
シ、政府ノ財政ト民間ノ經濟トノ密接ナ
ル關係ヲ能ク御〓究ニナッタナラバ、行政
財政ノ整理ガ物價ノ調節ニ及ボス所ノ效果
ハ決シテ左樣ナル微溫的ノモノデナイト
云フコトヲ御諒解ニナルデアラウト思ヒマ
ス(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=45
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046・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=46
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047・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君)(續) 斯ノ如キ見
地ニ基イテ、此內閣ハ行政財政ノ整理緊縮
ヲ行ヒ、併セテ廣ク國民全體ニ向ッテ消費
ノ節約ヲ獎勵宣傳ヲ致シテ居ル所デアリマ
ス、之ヲ以テ物價調節ノ第一義ナリト考へ
テ居ルノデアリマス(拍手)然ラバ政府ハ其
以外ニ於テ別ニ他ニ具體的ノ物價政策ヲ
持ッテ居ラヌカト云フコトデアリマスルガ、
凡ソ今日ノ如クニ紛糾錯雜ヲ極メテ居ル所
ノ物價問題ニ向ッテ、之ヲ適當ニ解決スル所
ノ政策ト云フモノハ決シテ一ニシテ足ラヌ
ノデアリマス、斯ノ如キ政策ヲ行へバ物價
問題ニ多少ノ效果ハアルケレドモ、完全ナ
ル效果ハナイニ依ッテ是ハヤラヌ、或ハ斯
ウ云フ政策ヲ行ヘバ物價ハ幾分カ下ガルカ
モ知レヌケレドモ、其結果ハ十分デナイト
認メルニ依シテ、之ヲ實行スベキモノデナイ
ト云フ如キ考ヲ以テ、一ツノ政策ヲ捨テ、
二ツノ政策ヲ拾テルト云フ如キ、左樣ナル
潔癖ナル考ヲ以テヤッテ居ッタナラバ我國
ノ物價ノ調節ヲ期スルコトハ到底出來ナイ
ノデアリマス、卽チ如何ナル政策デアッテ
モ、如何ナル方策デアッテモ、是ガ多少ナ
リトモ物價問題ニ效果ガアルベシト認メタ
モノハ組織的ニ之ヲ實行スルト云フコト
デナケレバナラヌ、卽チ此度農商務省ヨリ
提案ヲ致シマシタ所ノ組合法案ノ如キモ其
一ツデアリマス、此問題ノミニ依シテ輸出
ヲ奬勵シ、貿易ヲ盛ニスルト云フ完全ナル
效果ヲ、此唯、一ツノ政策ニ依ッテ求ムル
コトハ無論困難デアリマセウ、併ナガラ斯
ノ如キ政策ハ常ニ之ヲ〓究ヲ致シ、常ニ之
ヲ調査ヲ致シ、其政策ヲ發見スルニ從ッテ
順ヲ逐ヒ組織的ニ之ヲ實行スルコトニ依シ
テ、初メテ物價ノ調節ニ貢獻スルコトガ出
來ルノデアリマス(拍手)只今吉植君ハ此兩
組合法ノ問題ハ農商務省カラ出シタモノデ
ハナイカ、物價問題ノ中心タル所ノ大藏省
ハ何ヲシテ居ルカト云フ御話デアリマシタ
ガ、凡ソ政府ノ爲ス所ノ政策ハ農商務省ノ
政策デアル、或ハ大藏省ノ政策デアルト云
フ如キ各別ノ政策ハアリマセヌ、總テ是レ
政府ノ政策デアリマス(拍手)殊ニ此兩組合
ノ成立ヲ致シマシタ後ニ於テハ、日本銀行
ヨリ先刻農商務大臣ガ說明ヲ致サレタ通
リ、相當低利ノ爲替資金ヲ供給スルト云フ
方策ハ今日〓究ヲ致シ、凡ン其議ガ熟シテ
居ル際デアリマス、例ヘバ輸出爲替ノ手形
ノ金利問題ノ如キ、又此手形ノ期限ノ問題
ノ如キ出來得ルダケ之ニ對シテ金融上ニ便
宜ヲ圖ルト云フコトハ、今日〓究ヲ致シ將
ニ實行セントシテ居ル事柄デアリマス、又
現內閣ハ御承知ノ通リ、爲替ノ安定維持ヲ
圖ルガ爲ニ、必要ナル場合ニ於テハ內外ニ
保有スル所ノ正貨ヲ利用スルコトヲ辭セナ
イト云フコトヲ旣ニ聲明ヲ致シテ居リマ
ス、其在外正貨ニ屬スルモノハ既ニ約一千
万圓近ク拂下ゲヲ實行シテ居ル、今後必要
ノ場合ニ於テハ在外正貨ヲ減少スルト云フ
コトハ決シテ躊躇スルモノデハナイ、斯ノ
如ク內外ニ持シテ居ル所ノ正貨ヲ拂下ゲ、
或ハ之ヲ減少スル場合ニ於テハ、其直接ノ
目的ハ爲替ノ調節ニ在ルコトハ勿論デアリ
マスケレドモ、其間接ノ效果ト致シマシ
テ、自ラ多少ノ通貨ノ收縮ヲ招キ、ンレニ
依フテ通貨政策ノ上カラ物價ノ調節ヲ期ス
ルコトガ出來ルデアラウト云フコトヲ、政
府ハ期待シテ居ルモノデアリマス、(拍手)
其他政府ノ物價政策ハ決シテ一ニシテ足ル
モノデハナイ、旣ニ之ヲ行ッタカラ他ハ行
ハヌデモ宜シイト云フモノデハアリマセ
又、總デ常ニ調査〓究ノ上デ、成案ヲ得ル
ニ從ッテ順次ニ之ヲ實行スルコトハ辭セナ
イト云フコトハ屢。聲明シテ居ル通リデア
リマス、尙ホ今後ニ於テモ是マデノ方針ノ
通リ、其案ノ出來次第之ヲ實行スル考デア
リマス、唯一言申シテ置キタイコトハ
吉植君ノ御質問ノ趣旨ハ明ニ金解禁ノ外ニ
ハ物價調節策無シト考ヘテ居ラレルノデア
リマセウ、サウ云フ御考ヲ以テ御質問ニ
ナッテ居ルモノト私ハ信ズル(「違ヒマス」
ト呼フ者アリ)此問題ニ付テハ農商務大臣
ガ說明セラレタ通リデアリマシテ、單ニ物
價調節ノ見地ノミカラ言ヒマスレバ金ノ解
禁問題、之ヲ實行致シマスレバ相當ノ效果
ガアルデアラウト思ヒマス、併ナガラ前回
ニモ或ル機會ニ於テ申上ゲマシタ通リ、總
テノ問題ヲ物價問題ノ見地ノミカラ判斷ス
ル譯ニハ參リマセヌ、物價問題ハ勿論國
民生活ノ重大ナ問題デアリマス、貿
易上ノ重大ナ問題デアリマスガ、其重大ナ
ル物價調節ノ問題ヲ解決スル爲ニ、玆ニ金
ノ輸出解禁ヲ致シマスルト、其金ノ輸出解
禁ヲ致シマシタコトガ國家經濟全般ニ及ボ
ス影響ト云フモノハ中ミ物價問題ノ比デ
ハナイト思フノデアリマス、此事ハ屢、申上
ゲテ置キマシタ通リ、殊ニ先刻吉植君ガ申
サレマシタ爲替ノ低落ノ爲ニ輸人品ハ何割
上ッテ居ル、爲替低落ノ其程度ニ從テ輸入
品ノ價格ハ上ッテ居ル、爲替ガ二割三分低
落ヲ致セバ輸入品ノ物價ガ二割三分上ッテ
居ルカノ如キ御議論デアリマシタガ、是ハ
必シモ左樣ニハ參ラヌト思ヒマス、例ヘバ
普通ノ狀態カラ申シマスレバ、爲替ガ二割
三分上レバ輸入品ノ價格ハ二割三分上ルベ
キ計算デハアリマセウケレドモ、是ハ日
本內地ニ於ケル所ノ消費ノ狀態ニ依ッテ爲
替ノ關係カラ上シテ來ル、其物價ノ騰貴ガ
其品物ノ製造地、仕出地タル所ノ例ヘバ亞
米利加ナラ亞米利加、英國ナラ英國ニ於テ
原價ヲ下ゲナケレバ日本デ賣レヌト云フ狀
態ニ陷ッタ場合ニ於テハ、外國カラノ輸入
品ハ必シモ爲替ノ下落シタト同一ノ割合ニ
於テ騰貴スルモノデハナイノデアリマス、
ソレカラ吉植君ハ輸出ロ四ノ騰貴ノ例ヲ擧ゲ
ラレマシテ、輸出ノ品物ハ一割七分ノ騰貴
デアルカラ、ソレダケ此爲替ノ低落ノ爲ニ、
恰モ輸出ノ障碍ヲ受ケテ居ルカノ如キ御議
論ト承リマシタガ、若シ左樣デアリマシタ
ナラバ、是ハ失禮ナガラ誤リデアラウト思
ヒマス、卽チ今日ノ如キ爲替相場ノ低落ト
云フコトガ、輸入ニ對シテハ大ナル抑制ト
ナリ、輸出ニ對シテハ大ナル獎勵トナッテ
居ルト云フコトハ、是ハ爭フベカラザル事
實デアリマス(拍手)或ル機會ニモ申上ゲマ
シタ如クニ、日本ノ商品、殊ニ綿製品ガ印
度ヲ越エ、紅海ヲ越エ、地中海ニ出テ、巴
爾幹半島ニマデ盛ニ販路ヲ擴張シテ居ルト
云フコトハ是ハ爲替低落ノ結果デアリマ
ス、私ハソレ故ニ爲替ノ低落ガ宜シイトハ
決シテ申シマセヌ、是ハ憂フベキ事柄デア
ルガ、幸カ不幸カ其結果ハ自ラ輸出ノ奬勵
ニナッテ居ルト云フ、其事實ダケヲ申スノ
デアリマス、卽チ爲替低落ノ結果物價ガ騰
貴致シタカラ輸出ガ妨ゲラレテ居ルト云フ
若シ御意見デアッタナラバ、失禮ナガラ其
御意見ハ誤リデアラウト云フコトヲ一言申
上ゲテ置キタイト思フノデアリマス(拍手)
要スルニ物價問題ト致シマシテハ物價騰貴
ノ原因ニ遡ッテ、其原因ニ向ッテ斧鉞ヲ加フ
ルノ外ニハナイノデアル、吾々ノ信ズル所
ニ依リマスレバ、近年ニ於ケル物價騰貴ノ
原因ハ前申シマシタ通リ、主トシテ公私經
濟ノ膨脹ニ依ル、此見地カラシテ物價騰貴
ノ原因タル政府ノ財政ニ向ッテ緊縮ヲ行ヒ、
又此騰貴ノ原因タル所ノ國民ノ消費ニ向,
テ節約ヲ行ハシムルト云フコトガ、卽チ根
本義デアルト云フコトヲ何所マデモ信ジテ
居ルト云フコトヲ此所ニ御答申シテ置キマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=47
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048・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 只今大藏大臣ノ御答ニ
依ッテ、現内閣ノ物價政策ナルモノハ相變
ラズ行政財政ノ整理ト國民ノ勤儉力行ニ俟
ツ以外ニハ千言萬語ヲ費シテモ無イヤウ
ニ-何等無イト云フコトヲ明カニシタコ
トヲ····(拍手)此以上ハ議論ニナリマス、
意見ノ相違デアリマスカラ、吾々ハ近キ將
來ニ於テ何レ金解禁問題ニ付テ決議案ヲ提
出スル機會ガアラウト思フ、其時ニ於テ藏
相ノ誤レル論議ヲ正シ、大ニ論爭ヲ試ミル
積リデアリマスカラ、是デ止メテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=48
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049・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 金光庸夫君
〔金光庸夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=49
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050・金光庸夫
○金光庸夫君 輸出組合法案竝ニ重要輸出
品ノ工業組合法案ハ、爲替對策ノ一部デア
ルト云フコトヲ御言明ニナリマシタガ、私
モ多分其御對策中ノ重要ナル政策デアラウ
ト存ジテ居ッタノデアリマス、然ルニ先程牧
山君ノ御質問ニ對スル農商務大臣ノ御答ニ依
リマスレバ、吾々ガ豫期シテ居クタ程ノ重要
ナル意味ニ非ズシテ、多少ノ效果ハアリ得ル
トシテモ、先ヅ銀行カラ借金ヲ爲スニ便利ダ
ト云フ位ノ程度ニ止マルヤウニ伺ヒマシタ
ノデ、多少失望致シマシタノデ、玆ニ改メテ御
質問ヲ致シタイト思フノデアリマス、此資金
ノ融通ガ正金銀行其他ノ營利會社ノ手ヲ經
テ貸附ケヲ致シマスト云フコトニナリマス
ト、ドウシテモ其營利ト云フコトガ先ニ立ツ
ノデアリマスカラ、自然警戒其度ヲ過ギテ其
效果ガ割合ニ少イノデアリマス、ソコデ私ハ
融資ノ點ニ就テ二三伺ノテ見タイト思フノ
デアリマス、是マデハ正金銀行ノ輸出資金
ニ對スル金利ガ割合ニ高クハナイカト思フ
ヤウナ點ガアッタノデアリマスガ、今囘ハ政
府ガ低利資金ヲ日本銀行ノ手ヲ經テ正金ヘ
御貸出ニナルトシマスレバ、ソレダケ正金
銀行ハ有利ナ立場ニナルノデアリマスカラ、
融資ニ付テ不當ノ利得ヲシナイヤウニ大藏
省ハ十分ノ御監督ヲ爲サルノデアリマスカ、
ソレヲ御伺致シマス、ンレカラ第二ニハ只今
申シタヤウニ營利銀行ハ警戒ガ過ギテ、常
ニ其貸出ヲ澁ルモノデアルカラ比較的效果
ガ少イ、又一面ニハ輸出組合ニシマシテモ、
割合ニ組合ハ經濟ガ小サイ、懷ロガ小サイノ
デアリマスカラ、若シ多額ノ輸出資金ガ必要
デアル場合ニハ、組合ハ其全責任ヲ負ハナケ
レバナラヌ關係上、是亦貸出シニ頗ル臆病
ナ場合ガ多イト思フ、金ヲ借リ受ケテ當業
者ニ貸ストカ、若クハ保證スルトカ、何レニ
シテモ全責任ヲ負ハネバナラヌノデ、必要
ナ場合デモ思切ッタ融資ヲスルノニハ不便
デハアルマイカト思フノデアリマス、其意
味カラシマシテ政府ハ寧ロ之ヲ直接ニ貸出
スト云フ方法ハナイノデアリマセウカ、若
シ直接ニ貸出スト云フコトガ手續上非常ニ
不便デアルトカ、或ハ何等カ特別ナ事情ガ
アッテ、ドウシテモ出來ナイト云フコトデア
ルナラバ、特殊ノ機關ヲ設クルト云フヤウ
ナコトニシマシテハドウデアリマセウカ、
例ヘバ中央金庫法ノ如キ特別ナ機關ヲ造,
テ大キナ經濟、懷ロノ大キイモノヲ造ッテ、
サウシテソレニ政府ガ低利且ツ長期ノ金ヲ
供給シテヤッテ之ニ自由ニヤラセル、サウ
シテ其特別機關ハ營利的ニヤルノデナク、
全ク公共的ニ犠牲的ノ精神ヲ持っテヤルノ
ハ恰モ英國ノ輸出信用局ニ於ケルガ如キ
態度ヲ持ッテヤッテ貰フ機關ヲ造ッタラ如何
デアラウカ、斯ウ云フコトヲ考へタノデア
リマス、ソレニ對シテ政府ハ如何ナル御考
ヲ持タレルカ、若シサウ云フ機關ガ必要デ
アルナラバ、ソレモ造ラウト云フカ、若ク
ハ此組合法ヲサウ云フ特別機關ノヤウナ働
キヲ爲サセルヤウニ、成ベク懷ロヲ大キ
クサシテ、卽チ大ナル組合ニサシテ、ソレ
ニ今申上ゲタヤウナ特別ナ方法ヲ以テ低利
長期ノ資金ヲ御供給ニナルト云フ御考ハナ
イノデアリマセウカ、モウ一ツハ直接ニ
貸出スト云フコトニナルト危險ガ伴フデハ
ナイカ、又特別機關中央金庫ノ如キ、或
英國ノ信用局ノ如キモノヲ拵ヘテ、ソレニ
政府ガ資金ヲ供給スルトシテモ、矢張危險
ガ伴フデハナイカ、其危險ハドウスルカト
云フ問題ガ起リマスガ、私ハ其所ガ一番大
切ナ所デアルト思フ、本案ノ如キ組合法ト
云フモノヲ造ッテモ、唯制度ノミデアリマ
シテ政府ハ何等經濟的ノ犧牲ヲ提供シタモ
ノデハナイ、又日本銀行ノ手ヲ經テ金ヲ貸
出シテモ、唯〓預金部ノ資金ヲ融通シタト
云フニ止ッテ、何等政府ハ犧牲ヲ提供シタ
ト云フコトハナイノデアリマスカラ、私
モウ一歩進ンデ犠牲ヲ提供シ、危險ヲ負擔
スルト云フ御覺悟ガ願ヒタイノデアリマ
ス、此危險ヲ負擔スルト云フ覺悟サヘアレ
バ、思ヒノ外效果ガアルト思フ、例ヘバ此前
帝蠶會社ノ場合ノ如キデモ、政府ハ危險ヲ
負擔スルト云フ覺悟ヲサレタ、然ルニ其結
果一文ノ損害モナク、犧牲モ要セズシテ此
覺悟ガアレダケ偉大ナ效果ヲ生ンダノデア
リマス、併ナガラソレハ時ト場合ニ依ッテハ
政府ノ損害ニナルコトモアリマスガ-ソ
レカラ又震災直後ニ於テモ所謂震災手形ニ
對シテ政府ハ一億圓程度ノ保證ヲシタ、日
本銀行ニ對シテ、保證ヲシタ、卽チ危險ノ
負擔ヲシテ犧牲ヲ御提供シタ意味ニナル、
吾々其當時ニ考ヘテ一億圓ノ危險ノ負擔ト
云フコトハ可ナリ大キナ大覺悟デアルト思
ヒマシタケレドモ、其結果其效果ノ偉大ナ
リシニ比シ、損害ハ極メテ微々タルモノデ
アリハセヌカト思フノデアリマス、此危險
ヲ負擔スルト云フ覺悟、犧牲ヲ提供スルト
云フ決心ガアリサヘスレバ實際ハ多額ノ
負擔ヲ爲サズシテ非常ナ效果ヲ擧ゲ得ルト
思フノデアリマス、又米國ノ如キ支那ニ對
シテ對支會社法ヲ設ケテ、稅金ノ免除マデモ
致シテ對支貿易ヲ奬勵致シテ居リマスコト
ハ御承知ノ通リデアリマス、又英國ノ如キデ
モ戰後ニ彼ノ歐洲大陸ノ經濟界不安ノ際、
之ニ物ヲ賣込ムト云フコトハ非常ニ危險デ
アルカラト云フノデ、御承知ノ通リ輸出信
用局ト云フモノヲ設ケテ、低利デ且ツ長期
ノ資金ヲ貸シテ賣掛危險ノ一部ノ負擔マデ
シテ歐洲大陸へノ輸出ヲ援助シタノデアリ
マス、其效果ハ非常ナモノデアッタト云フコト
ハ英國ノ財界ガ漸次恢復シ、對外爲替ノ
如キモ正貨輸送ノ方法ニ依ラズシテ殆ド平
價ニ復シ、特ニ金ノ解禁點ニ達セントシテ
居ルノヲ見テモ分ル次第デアリマス、所
ガ最近ニ至リマシテハ、我ガ對米爲替ノ暴
落スルニ伴ッテ、我ガ對英爲替モ非常ニ低
落シタノデアリマス、其結果東洋方面、殊
ニ印度方面ニ對スル輸出ガ非常ニ盛ニ
ナッテ、印度ニ日本ノ綿絲布其他ノ物ガ續
續輸出サレルヤウニナッタノデアリマスカ
ラ、印度ハ英本國カラノ輪出商品トノ競爭
市場トナッタノデアリマス、ンコデ英國ハ
是迄歐洲大陸ニ對シテヤッテ居クタ所ノ輸出
獎勵制度ヲ印度ニモ適用スルト云フコトニ
最近ナッタデアリマセヌカ、斯ノ如ク有ユ
ル犠牲ヲ提供シ危險ヲ負擔シテ、サウシテ
貿易獎勵法ヲ設ケテ居リマス、又支那ニ對シ
テモ貿易奬勵法ヲ設ケテ居ルコトモ御承知
ノ通リデアリマス、斯樣ナ有樣デアリマス
カラ、日本ガ唯、組合法ヲ拵ヘテ僅ノ資金ヲ
口本銀行ノ手ヲ經テ貸スト云フヤウナ從來
ノ「スタンプ」手形ノ燒直シヲ見タヤウナソ
ンナマドロコシイコトデハ迚モ英米ニ對
抗スルコトガ出來ヌト思フノデアリマス、
其意味ニ於テ特殊ノ機關ヲ設ケテ、政府
ハ或ル程度ノ犠牲ヲ提供シ、若クハ危險ヲ
負擔スル覺悟ヲ以テ、恰モ震災手形ニ對ス
ルヤウナ態度ヲ御執ニナッテハ如何デアラ
ウカト思フノデアリマス、所ガソレハ震災
ハ何百年ニ一度ノ非常ナ大悲慘事デアッタ
カラソレハ別物デナイカ、ソレト同一ニ律
セラレルモノデナイト云フ御意見モゴザイ
マセウガ此震災ハ比較的部分的ノモノデア
リマシタケレドモ、今日ノ爲替ノ對策ト云
フモノハソンナ部分的ナモノデハナイ、我
國ノ一般經濟界ノ根本ニ關スル大問題デア
リマス、ソレガ爲ニ先日來非常ナ論戰ガ行
ハレタ次第デアリマシテ、諸君モ御承知ノ
通リデアリマス、随テ之ヲ震災ト比較スル
ナラバ、寧ロ私ハ震災以上ト見テモ宜シイ
ト思フ、今一ツハ之ヲ社會問題ノ方面カラ
見テ戴キタイト思フ、ソレハ簡單ニ申上ゲ
マスガ、此輸出ト輸入ノ差ニ依シテ起ル所
ノ輸入超過ノ六億圓ト云フモノハ、直截簡
明ニ申シマスレバ、是ハ勞働ノ輸入デア
ル、随テ我ガ勞働界ヲ非常ニ脅威スルモノ
デアルト云フコトヲ申上ゲタイ-勞働ヲ
商品見タヤウニ申上ゲテハ如何カト存ジマ
スケレドモ、假ニ勞働ヲ價格ニ換算シテ見
マス-昨年度ニ於テ六億圓ノ輸入ガアッ
タト致シマスレバ〓算此七掛ノ四億二千
万圓位ノ勞銀ニ相當スル勞働ガ人ッテ來タ
ト看做スベキ理由ガアルノデアリマス、ソ
レハドゥ云フ計算カト申シマスレバ、多ク
ノ商品ハ皆勞働ヨリ生レテ居ル、斯ンナ器
具類ニ致シマシテモ何デモ、總テ勞銀ガ七
割位掛ッテ居ル、ソンナ馬鹿ナ事ガアル
カ、資本ノ利子モアリ、原料品モアルヂヤ
ナイカ、半分以上原料ヤ其他ヂヤナイカト
言ハレルカモ知レマセヌガ、例ヘバ機械ノ
製造ニシテモ原料トシテ澤山ノ鐵ヲ使ヒマ
スガ、其鐵ハ何カト云ヒマスト、鐵ハ所謂
勞働ニ依シテ得タ所ノ物デアリマス、其又
原料ハ鑛石ヂヤナイカト言ヒマスガ、其鑛
石モ矢張勞銀ガ大部分ヲ占メテ居ル、斯ノ
如ク段々煎ジ詰メテ見マスレバ、總テノ物
資ト云フモノハ其七割位ハ勞銀デアルノデ
アリマス、信用スベキ調査ニ依シテ見マス
レバ、大正十二年度ノ諸會社運轉資本金ニ
對スル利益ガ六分强デアルサウデアリマ
ス、卽チ資本ニ對シテハ六分カ七分ノ利益
シカナイ、其外稅金ト資本ノ利子ト、是ダ
ケノモノヲ〓算三割トシテ見ルト、アトノ
七割ト云フモノハ勞銀デアル、卽チ此計算
ニ依レバ六億圓ノ輸入超過ガアリマシタナ
ラバ、四億二千万圓ハ勞働ガ輸入サレタモ
ノデアル、若シ今日之ニ相當スル勞働者ガ
這入ッタトシタラ大變ナ社會問題デハアリ
マセヌカ、是ハ今日ノ如ク勞働問題ノヤカ
マシイ際實ニ由々シイ問題デアリマスカラ、
私ハ震災ト比ベテ見テ、今ノ爲替政策ナリ
其勞働問題ト云フヤウナ點カラ考ヘテ見
テ、寧ロ震災以上ノ重大事件デアルト思フ
ノデアリマス、此意味カラ致シマシテ此爲
替ヲ調節シ、此社會問題ヲ解決スル爲ニ
ハ輸出ノ奬勵ト云フコトガ最モ宜シイ、
輸入ヲ防遏スル爲ニハ關稅政策其他種々ノ
方法ガアリマシテ、是等ハ是非ヤッテ貰ハ
ナケレバナラヌコトデアリマスガ、程度ノ
如何ニ依リテハ多少ノ弊害ノ件フ場合ガ莫
キニシモ非ズデアリマスガ、輸出ノ奬勵ニ
於テハ何等ノ弊害ガ伴ハナイノデアリマ
ス、ソレデ今日爲替ノ對策總テノ經濟問題
ヲ解決スル第一ノ骨子ハ輸出ノ奬勵ニ在
ル、其輸出ノ奬勵ノ骨子ハ今申上ゲタヤウ
ナ組合法ニ依ルヨリモ、モウ少シクソレヲ
大キクシタ別途ノ機關、英國ノ輸出信用局
ニ於ケルガ如キ、モウ少シアレノ進歩シタ
機關ヲ造ッテ、ソレニ對シテ政府ハ徹底的
ニ經濟的御援助ニナリ、相當ノ犠牲ヲ御提
供ニナッテ、危險ヲ御負擔ニナル、斯ウ云
フ御覺悟ハナイカドウカ、其三點ヲ御伺シ
タイノデアリマス(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=50
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051・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 金光君ノ御問ハ、
第一ニハ此組合法ヲ以テ足レリトセズ、尙
ホ之ニ金融機關ヲ添ヘルカ、然ラザレバ政
府ガ低利資金ヲ直接貸スヤウナ方法ガアッタ
ラ宜カラウ、之ニ金融ガ伴ハナケレバ餘リ
效果ガ舉ラヌ、而シテ今日爲替ヲ取抜ッテ
居ル所ノ正金銀行ナリ、臺灣銀行ナリ、此
特殊銀行ナルモノハ金融ハスルケレドモ得
テ貸澁リヲスル、此貸澁リヲスルト云フモノ
ハ多少危險ヲ虞レテ貸澁リヲスルノデア
ル且ツ又其機關其モノガ營利ヲ目的ト
スルカラシテ、此組合法ニ添ヘルニ營利
ヲ目的トセサル大ナル金融機關、特殊
ノ金融機關ヲ設ケテ其危險ヲ負ウテ、十
分ニ安ク金ヲ貸スヤウニシタラ宜カラ
ウ、而シテ其例トシテ英吉利ノ信用局、
又大震火災ノ直後ニ政府ガ手形ニ對シテ
一億圓ノ保證ヲシタ、是ハ震災ノ一時ノ
出來事以上ニ輸入超過ハ外國ノ勞働ヲ輪入
スルノデアルカラ、尙ホ以上ニ重ク考ヘテ
輸出ノ增進ヲ圖ラネバナラヌト云フ御考デ
アル、成程一應伺シテ御尤ニ考ヘルガ、第一
此危險ト云フコトガ何カラ生ズルノデアル
カ、正金銀行ニシテモ、臺灣銀行ニシテモ、
外國ノ確實ナル銀行者カ其國ノ輸出商人ニ
對シテ、或ハ我國ノ輸出商人ニ對シテ銀行
ガ信用狀ヲ與ヘタル者ニ對シテハ正金銀
行ハ何等懸念ナク其輸出ヲスル商人ノ望ム
所ノ手形ノ全額ニ對シテ手形ヲ買取ッテヤ
ルノデアリマス、銀行ガ貸澁ルトカ云フヤ
ウナ非難ノアルノハ、畢竟ンコニ信用ガ確
實デナイカラデアルノデアル、此信用ノ確
實デナイト云フモノハ、先刻モ申ス通リ或ハ
我ガ商人ノ持出ス所ノ品物ガ整フデナイ、
或ハ荷受ヲスル所ノ外國ノ商人ノ身元ガ不
十分デアル、輸出スル人ノ資力ガ不十分デ
アル、或ハ往々ニシテ約束ニ違ッテ、見本
通リノ品物デナイカラシテ、是ハ荷受ヲシ
ナイト云フヤウナ場合ガ屢〓起ルノデア
ル、其主ナル原因ハ詰リ品質ノ揃ハザル點、
見本通リノ品物ガ出來ナイ點、或ハ荷造リガ
惡クテ途中デ損ジタ、サウ云フ苦情ガ多イ
ノデアル、左樣ナ缺陷ヲ補フコトガ卽チ根
本政策デアル、之ヲ補ハントスルガ爲ノ組
合法デアル、此缺陷ガ無クナッタナラバ、卽
チソコニ十分ナル信用ガ生ズルノデアルカ
ラシテ、丁度今日爲替銀行ガ外國銀行ノ信
用狀ヲ以テ我國ノ品物ヲ買ニ來ル者ニ對シ
テ與ヘルト同樣ナ、完全ナ信用ヲ以テ此手
形ヲ買取ルコトガ出來ルノデアル、又中ニ
ハ我國ノ爲替銀行ハ輸出商人ノ信用ノ程度
ニ依ッテ、十万圓ノ價格ノ物ヲ出スノニ、甲
ニハ十万圓全部金ヲ融通シテヤル、或者ニ
ハ八掛デアル、或者ハ六掛デアル、各違
1、此違フノモ畢竟矢張信用ノ程度ガ違フ
カラデアル、ソコデ單獨ノ經濟ニ屬セシメ
ズシテ、團體組織ノ經營ニ依ッテ此信用ヲ
高メ、品物ヲ揃ヘテ多量ニ造ラセルト云フ、
此組合法ノ精神ハソコニ在ル、今日是ガ爲
ニ若シ直接政府ガ低利ノ資金ヲ貸ス-震
災後ノ手形ニ對シテ政府ガ一億ノ危險ヲ負
ウテ居ル、其保證ヲシタノト同ジニヤッタ
ラ宜カラウ、サウハ行カナイ、アノ一億圓
ヲ政府ガ保證スルト云フノハ、一體誰ニ對
シテ保證シタノダ、日本銀行ニ對シテ保證
シタノデアル、日本銀行ガ損失ヲ生ジタ場
合ニ於テ、政府ハ一億マデハ日本銀行ニ對
シテ保證シテ、政府ガ負擔シテヤルト云フ
コトデアル、日本銀行ノ損失ハドウ云フ場
合ニ出來ルノデアル、此手形ヲ振出シタ人
ガ日本銀行ニ直接取引シテ居ルノデナイノ
デ、何レモ他ノ普通銀行ガ間ニ入ッテ居ル、
普通ノ銀行ガ破產ヲシタ時デナケレバ日本
銀行ノ損失ハ生ジナイノデアル、責任ハ主
ニ普通銀行ニ在ル、故ニ其手形ハ政府ガ一
億保證シタケレドモ、其保證ガ事實役ニ
立ッテ日本銀行デ一億ノ損失ヲ拂ハナケレ
バナラヌト云フ損失ガ生ジタラ、一時財界
ハ暗ニナル、幾多ノ銀行ガ破產シナケレバ
サウ云フ事ハ生ジナイ、故ニ各銀行モ矢張
ソコニ信用ノ程度ヲ量ルノデアルカラ、玉
石混同シテハ扱ハナイ、良イ手形ハ良イ手
形デ取扱シテ、惡イ手形ハ成ベク早ク整理ヲ
サシテ始末ヲシテ行クト云フヤウニ、銀行
自ラ其玉石ヲ區別シテ手形ヲ取扱ッテ、今
日整理ノ過程中ニ在ル-過渡中ニ在ル、
如何ニ政府ダカラト云ッテ損失ヲマルデ政
府ガ負擔シテヤルト云フ譯ニ行カナイ、相
當ニ信用ヲ確メ、各〓信用ヲ高メルト云フ
コトハ本人自身等ガ努メルヤウニ、專ラ
促シテ行カナケレバナラヌ、指導シナケレ
バナラヌノデ、政府ガ唯、信用局ノヤウナ
モノヲ造ッテズン〓〓融通シテヤッタラ宜カ
ラウト云ウタラ、何時マデ經ッタッテモ此商業
ノ道德ト云フモノハ進マナイ、貿易上ノ非
難ハ依然トシテ外國カラ受ケルノデ、其組
織ニ依ッテ改メテ行クノハ一ツノ主ナル仕
事デアル、ソレニ向ッテ今政府ハ施設セン
トスルノデアル、サウ云フ譯デ信用局ナ
ドモ英吉利アタリデハ餘リ效果ガ擧ッテ
居ラヌ、何故擧ラヌ、矢張信用デアル、ドン
ナモノデモ宜イ、外國ニ持ッテ行ケ、損シタ
ラ政府ガ償ッテヤルサウ云フ趣意デナイ、
矢張銀行ガ間ヘ入ッテ、丁度今申シタ日本
銀行ト手形振出人ノ間ニ普通銀行ガアッテ、
信用ヲ相當ニ調査シテ損失ノ生ジナイヤウ
ニヤッテ居ル、ソレト同ジ方法ナンダカラ、
餘リ是ハ役ニ立ッテ居ラヌ、併ナガラ一ツ
ノ奬勵ニハナル、斯ウ云フモノヲ今拵ヘタ
カラト云ッテ、質問者ノ言フガ如ク之ニ依ノ
テ貿易ガドン〓〓盛ニナルト云フ譯ニ行カ
ナイ、矢張本カラシテ養ハナケレバイカナ
イカラ、斯樣ナ組合法ヲ設ケテ其根本カラ病
ヲ除ク、缺陷ヲ補フト云フコトニシテ行カ
ナケレバナラヌ、ソレヲ政府ハ考ヘテ居ル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=51
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052・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第五、右各
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第五右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=52
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053・作間耕逸
○作間耕逸君 兩案ヲ一括シテ委員ノ數ヲ
特ニ十八名トシ議長ニ於テ指名セラレンコ
トヲ望ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=53
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054・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ其通リ決シマ
ス-日程第六乃至第九ハ、同一委員ニ付
託シタル議案ナルニ依リ、一括シテ議題ト
スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=54
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055・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第六、在外國帝國專管居
留地特別會計法廢止法律案、日程第七、陸
軍營繕費補充資金特別會計法廢止法律案、
日程第八、大學特別會計法中改正法律案、日
程第九、朝鮮醫院及濟生院特別會計法廢止
法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス、委員長笠原忠造君
第六在外國帝國專管居留地特別會計
法廢止法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一在外國帝國專管居留地特別會計法廢止
法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月二日
在外國帝國專管居留地特別
會計法廢止法律案委員長
笠原忠造
衆議院議長粕谷義三殿
第七陸軍營繕費補充資金特別會計法
廢止法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一陸軍營繕費補充資金特別會計法廢止法
律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月二日
陸軍營繕費補充資金特別
會計法廢止法律案委員長
等忠造
衆議院議長粕谷義三殿
第八大學特別會計法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一大學特別會計法中改正法律案(政府提
也
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月二日
大學特別會計法中
改正法律案委員長
笠原忠造
衆議院議長粕谷義三殿
第九朝鮮醫院及濟生院特別會計法廢
止法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一朝鮮醫院及濟生院特別會計法廢止法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月二日
朝鮮醫院及濟生院特別會
計法廢止法律案委員長
笠原忠造
衆議院議長粕谷義三殿
〔笠原忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=55
-
056・笠原忠造
○笠原忠造君 在外國帝國專管居留地特別
會計法廢止法律案外三件ノ委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ簡單ニ御報告申上ゲマス、本委員
會ハ前後三回ニ亙リマシテ愼重審議ヲ重ネ
マシタ、先ヅ在外國帝國專管居留地特別會
計法廢止法律案ヨリ御報告ヲ中上ゲマス、
此會計法ハ支那ニ於ケル我國ノ專管居留地
ニ於ケル事業ノ經營ヲ致ス爲ニ、明治三十
三年制定セラレタルモノデゴザイマシテ、
爾來支那ニ於キマシテ天津、蘇州、漢口ノ
三箇所ニ於テ我ガ專管居留地ニ於ケル土地
ノ買入、道路ノ築造、埋立、護岸工事ト云
フヤウナ事業ヲ經營シテ參シタノデゴザイ
マス、然ルニ此事業ノ大半ハ終了ヲ致シマ
シテ、唯〓僅二天津ノ護岸工事ガ殘ッテ居ル
ノミデアル、此護岸工事ハ天津ニ居ル居留
民團ニ直接經營サセル豫定ニナッテ居ルノ
デ、最早此法律ヲ存スル必要ガナイカラ廢
止シタイト云フ理由デゴザイマス、委員會
ニ於テハ質疑應答ヲ重ネマシタ所、會計法
ノ整理ニ伴フ當然ノ事デアッテ、相當ノ理
由アルモノトシテ、全會一致ヲ以テ可決致
シマシタ、次ニ陸軍營繕費補充資金特別會
計法廢止法律案ニ付キマシテ申上ゲマス、
此特別會計法ハ明治四十二年設定セラレタ
ルモノデアリマシテ、陸軍ノ保有スル土地
建物ヨリ生ズル所ノ收入其他附屬ノ雜收入
ヲ以テ一ノ資金ヲ作リマシテ、ソレニ依ッ
テ陸軍ノ土地建物ヲ利用スル所ノ費用、其
他營繕ノ費用ノ一部ニ補充シテ參ッタノデ
アルサウデゴザイマス、然ルニ斯ウ云フ資
金ヲ持ツモノハ唯〓獨リ陸軍ノミデアッテ、
他ノ省ニハ斯ウ云フ費用ガ無イノデアル、
他省ト較ペマシテ權衡ヲ得ナイト云フコト
ガ一ツ、又陸軍ニ於テモ今ハ斯ル費用ノ必
要ガ無イト云フコトガ一ツ、此理由ヲ以テ
整理ヲシタイト云フ理由デゴザイマス、委
員會ニ於テモ相當ノ理由アルモノトシテ、
全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、次ニ大學
特別會計法中改正法律案ニ付キマシテ申上
ゲマス、是ハ是マデ東京帝國大學及京都帝
國大學ノ豫算ハ法律ヲ以テ政府ノ支出金ノ
定額ヲ定メテアルノデアリマス、然ルニ從
來ノ經驗ニ依リマスト、年々此定額ニ異動
ヲ生ズルノデ、其度每ニ法律ヲ變更スルコ
トハ如何ニモ煩雜デアルト云フ點ヨリシテ、
年々豫算ヲ以テ定メタイト云フノガ一ノ理
由デアリマス、モウ一ツノ理由ハ東京帝國
大學其他ノ四大學ハ、各別ニ特別會計ヲ
持ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ今囘ハ之
ヲ整理シテ大學特別會計法ト云フモノニシ
タイト云フコトガ改正ノ二點デゴザイマ
ス、共ニ相當ノ理由アルモノトシマシテ、
委員會ハ全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、
次ニ朝鮮醫院及ビ済生院特別會計法廢止法
律案ニ付テ申上ゲマスガ、是ハ朝鮮ニ小鹿
島慈惠病院ト云フモノガアリマスルガ、其
外各地ニ在ル慈惠病院ヲ其地方ニ移管スル
ト共ニ、朝鮮總督府ノ病院及濟生院ノ特別
會計法ヲ廢シテ、總督府ノ一般會計ニ移ス
ト云フノデアリマス、是モ會計法整理ノ上
カラ當然ノ事ト認メマシテ、委員會ハ全會
一致ヲ以テ可決致シマシタ、以上御報告申
上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=56
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057・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 各案ノ第二讀會
ヲ開クコトヲ御諮リ致シマス
〔「第二讀會ヲ開クニ異議ナシ」ト呼フ
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=57
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058・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイモノ
ト認メマス、各案トモ二讀會ヲ開クコトニ
決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=58
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059・作間耕逸
○作間耕逸君 四案ヲ一括シテ直ニ第二讀
會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、何レモ委
員長ノ報告ノ通リ可決セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=59
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060・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=60
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061・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、直ニ第二讀會ヲ開キマス
在外國帝國專管居留地特別會計法廢止
法律案第二讀會(確定議)
陸軍營繕費補充資金特別會計法廢止法
律案第二讀會(確定議)
大學特別會計法中改正法律案
第二讀會(確定議)
朝鮮醫院及濟生院特別會計法廢止法律
案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=61
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062・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞若) 御異議ナイト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シ、四案トモ
委員長報告通リ可決碓定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=62
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063・作間耕逸
○作間耕逸君 議事日程變更ニ關スル緊急
動議ヲ提出致シマス、卽チ議員原惣兵衞
君、同牧山耕藏君ニ係ル懲罰事犯ノ件ヲ此
際直ニ上程シテ、一括議題トナシ、懲罰委
員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス、但シ猪野毛利榮君ニ係ル懲
罰事犯ノ件ハ、此際其審議ヲ留保セラレン
コトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=63
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064・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ハ
御異議ナイト認メマス、仍テ日程ハ變更サ
レマシタ-懲罰事犯ノ議事ハ秘密會ナル
ガ故ニ、傍聽人ノ退場ヲ命ジマヌ
議員原惣兵衞君牧山耕藏君懲罰事犯ノ件
〔午後四時二十七分祕密會ニ入ル〕
〔午後六時九分祕密會ヲ終ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=64
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065・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 祕密會ノ結果ヲ
報告致シマス、祕密會ニ於テハ議員原惣兵
衞君、同牧山耕藏君懲罰事犯ノ件ヲ議決致
シマシタ、仍テ此決議ニ基イテ宣告ヲ致シ
そう、議員原惣兵衞君ニ對シ、議院法第九
十六條第一項第三號ニ依リ、二週間ノ出席
停止ヲ命ジマス(拍手)、議員牧山耕藏君ニ
對シ、議院法第九十六條第一項第三號ニ依
リ、二週間ノ出席停止ヲ命ジマス
〔拍手起リ「横暴」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=65
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066・作間耕逸
○作間耕逸君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ
動議ヲ提出致シマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=66
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067・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=67
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068・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メテ其通リニ致シマス、諮問事項ガアリマ
ス、第一部選出豫算委員松山兼三郞君、
第二部選出豫算委員石坂豐一君、第三部選
出豫算委員中野實君、第五部選出豫算委員
柏田忠一君、第六部選出懲罰委員、平井光
三郞君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマシ
タ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=68
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069・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ
行ヒ、御屆アランコトヲ望ミマス、尙ホ重
ネテ諮問事項ガアリマス、中村貞吉君病氣
ニ付、二月五日ヨリ二月十八日マデ右請暇
ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=69
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070・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ許可致シマス、次囘ノ日程ハ
公報ヲ以テ御通知致シマス、今日ハ是ニテ
散會致シマス
午後六時十二分散會
衆議院議事速記錄第八號中正誤
頁段行誤正
一二五二議院法議院規則
衆議院議事速記錄第九號中正誤
頁段行誤正
一四三二四解禁解金
同四二六計畫經過
一四四一二四問題本問題
一八〇三二四君ノ提出ノ君提出ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01019250205&spkNum=70
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