1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十四年二月七日(土曜日)午後一時十四分開議
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議事日程 第十號
大正十四年二月七日
午後一時開議
第一 米穀法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 決議案(鐵道の既定計畫遂行の件)(元田肇君外十六名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=0
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
(以上二月五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
入學難緩和ニ關スル建議案
提出者
荒川五郞君内ケ崎作三郞君
建部遯吾君山枡儀重君
土生彰君
支那語〓育施設普及ニ關スル建議案
提出者
丸山浪彌君柏田忠一君
野岩羽鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
八田宗吉君榊原經武君
西方利馬君
柳津小出間及只見古町間鐵道速成ニ關ス
ル建議案
提出者八田宗吉君
衆議院議事速記錄第十一號
湖南鐵道建設ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
左澤荒砥間鐵道速成二關スル建議案
提出者
西方利馬君西澤定吉君
熊谷直太君佐々木春作君
齋藤金吾君高橋熊次郞君
八戶久慈間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
柏田忠一君井手繁三郞君
高等師範學校設置ニ關スル建議案
提出者柏田忠一君
(以上二月五日提出)
決議案(金輪出解禁ノ件)
提出者
武藤山治君層田義一君
吉植庄一郞君松田源治君
櫻內幸雄君
(以上二月六日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
山縣伊三郞公一行佛領印度支那派遣ノ件
ニ關スル質問主意書
提出者森田金藏君
(以上二月五日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
茲ニ揭載ス〕
一去三日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如
シ
衆議院議員馬場義興君提出經濟外交ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
經濟外交ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年一月二十二日
提出者馬場義興
贊成者林田龜太郞
外二十九名
經濟外交ニ關スル質問主意書
一我カ經濟國難ノ根本原因竝是カ對策ニ
付政府ノ所見如何
一現行支那輸入關稅ハ通商上ノ我カ特殊
利益ヲ危殆ニ陷ラシメツツアリ政府ハ
此ノ事實ヲ認ムルヤ
一華府會議ニ基キ近ク開催ヲ見ルヘキ支
那特別關稅會議ニ對スル政府ノ方針如
何
一日支親善ノ眞意張ニ付政府ノ所見如何
一我カ外交官ノ經濟的素養不十分ナル憾
アリ政府ハ是ヲ改善スル意ナキヤ
右及質問候也
大正十四年二月三日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員馬場義興君提出經濟外交ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員馬場義興君提出經濟外交ニ
關スル質問主意書ニ對スル答辯書
一我國現下ノ經濟上ノ困難ハ主トシテ震
災ニ基ク復興復舊材料等ノ輸入ニ因ル
對外貿易ノ逆調竝戰後ニ於ケル世界的
一般經濟不況ノ影響ヲ受ヶ居ルニ因ル
モノト認メラルル處政府ニ於テハ之カ
對策トシテ財政ノ整理緊縮、國內產業
ノ奬勵、輸出貿易ノ振興及海外ニ於ケ
ル邦人ノ經濟的發展ヲ助長スルカ爲最
善ノ努力ヲ爲シツツアリ
一現行支那輸入關稅ハ其ノ稅率左迄高力
ラサルヲ以テ政府ニ於テハ帝國ノ對支
貿易カ現行支那輸入關稅ノ下ニ於テ特
ニ不利益ノ地位ニ在ルモノトハ認メ居ラス
一政府ハ追テ開催ヲ見ルヘキ支那關稅特
別會議ニ於テハ條約ノ定ムル所ニ從ヒ
各國ト協調ヲ保チ華府會議ニ於テ定メ
ラレタル趣旨ノ下ニ同國ニ於ケル關稅
改訂ヲ認ムルト共ニ右改訂ノ爲帝國ノ
對支貿易カ蒙ルコトアルヘキ打撃ヲ緩
和スルニ必要ナル措置ヲ講セシメ度キ
意嚮ナリ
一政府ハ日支兩國互ニ其合理的立場ヲ尊
重シ國民的諒解ノ基礎ノ下ニ精神的文
化的乃至經濟的ノ提携協力ヲ圖ルコト
ヲ以テ兩國親善ノ要諦ト認ム
一政府ハ外交官ノ養成ニ對シ經濟的素養
ノ方面ニ付テモ常ニ十分ノ注意ヲ拂ヒ
必要ニ應シ之カ改善ニ努ムル意向ナリ
右及答辯候也
大正十四年一月二十九日
農商務大臣高橋是〓
外務大臣男爵幣原喜重郞
大藏大臣濱口雄幸
去五日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
輸出組合法案(政府提出)外一件委員
高木益太郎君大濱忠三郞君
一柳仲次郞君飯塚春太郞君
佐竹庄七君松井郡治君
荒井建三君前田房之助君
金光庸夫君津崎尙武君
吉村伊助君田中定吉君
山口義一君加藤知正君
濱口吉兵衞君堤〓六君
武藤嘉門君土井權大君
一昨六日常任委員補開選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出
豫算委員宮島幹之助君(松山兼三郞
君補闕)
第二部選出
豫算委員杉宜陳君(石坂豊一君補
國)
第三部選出
〓算委員中野猪之助君(中野實君補
關
第三部選出
懲罰委員鳩山一郞君(〓水長〓君補
問
第五部選出
豫算委員中村嘉壽君(柏田忠一君補
團
第六部選出
懲罰委員今里準太郞君(平井光三郞
君補關)
第八部選出
豫算委員禱苗代君(熊谷五右衞門君
補闕)
一昨六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
輸出組合法案(政府提出)外一件
委員長高木益太郞君
理事
山口義一君堤〓六君
土井權大君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諮問事項ガゴザイマス、第一部選出豫
算委員、宮島幹之助君、第九部選出豫算委
員奧野小四郞君、第四部選出懲罰委員升下
茂十郞君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマ
シタ、許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=2
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003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、許可致シマス、仍テ其部ノ諸君ハ速ニ
補關選舉ヲ行ヒ屆出アランコトヲ望ミマ
ス-尙ホ御諮リ致シマス、永井作次君病
氣ニ付、二月七日ヨリ二月十四日マデ請暇
ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=3
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004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ許可致シマス-諸君既ニ御承知
ノ事トハ存ジマスガ、本院議員司法大臣横
田千之助君ハ、去ル五日薨去セラレ、洵ニ痛
惜哀悼ノ至ニ堪ヘナイノデアリマス、此段御
報告ヲ申上ゲマス-尙ホ此件ニ關シマシ
テ竹原樸一君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマ
ス、之ヲ許シマス-竹原樸一君
〔竹原樸一君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=4
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005・竹原樸一
○竹原樸一君 只今議長ヨリ御報告ニナリ
マシタ故衆議院議員司法大臣橫田千之助君
ニ對シ、院議ヲ以テ弔詞ヲ贈ルコトヽシ、
其起草ハ總テ議長ニ一任スルコトノ動議ヲ
茲ニ提出致シマス、此際私ハ年長者ノ廉ヲ
以チマシテ、諸君ノ御許ヲ得テ議員一同ヲ
代表シ、哀悼ノ言葉ヲ述ベタイト存ジマス、
甚ダ借越デハアリマスルガ、幸ニ御同意ヲ
賜ハランコトヲ請ヒマス(拍手起ル)故橫田
君ハ明治四十五年議員ニ當選セラレ、爾來
引續キ其任ニ居ラレマシテ、曩ニ原內閣ノ
下ニ法制局長官ニ任ゼラレ、昨年六月現内
閣成立ニ際シ、司法大臣ノ要職ニ就カレ、輔
弼ノ重任ニ當ラレマシタ、同君ハ尙ホ春秋
ニ富ミ前途極メテ有望ノ政治家デアリマ
シタ、然ルニ數日前圖ラズモ病氣ニ罹ラレ、
去ル五日俄ニ薨去セラレマシタルコトハ、
實ニ國家ノ爲メ哀悼ノ至ニ堪ヘザル次第デ
ゴザイマス(拍手)玆ニ謹ンデ此動議ヲ提出
シ、併セテ此尊敬スベキ故人ニ對シテ哀悼
ノ意ヲ表シマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=5
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006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ竹原君ノ御述
ニナリマシタ動議ニ對シテ、御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=6
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007・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、議長ニ御一任ニナリマシタ弔詞ハ、議
長ノ手許ニ起草致シマシタモノガゴザイマ
スカラ、玆ニ之ヲ朗讀致シマス
衆議院ハ多年憲政ノ爲ニ盡瘁セラレタル
議員司法大臣從三位勳一等橫田千之助君
ノ薨去ヲ哀悼シ恭ク弔詞ヲ呈ス
此案ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=7
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008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 滿場一致ヲ以テ可決
致サレマシタ(拍手起ル)田淵豐吉君ヨリ議
事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレテ居リマ
ス、之ヲ許シマス
〔田淵豊〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=8
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009・田淵豐吉
○田淵豊吉君 諸君、私ハ諸君ノ前二立ッ
テ、幾分カ諸君ニ關係ガアル-幾分デハ
ナイ、大ニ關係ガアルノデスガ、私ノ質問
モソレニ付テ大ニ關係ガアルト思ヒマス、
議事進行ニ付テ主ニ議長ニ對シテ御尋致シ
タイ、私ハ寡聞デハゴザイマスガ、去ル二月
三日ノ此議場ノ件ニ付キマシテ議長ニモ御
尋ヲ致シタイ、諸君ニモ亦申シタイ點ガア
ルカラ玆ニ起シテ、失禮デハゴザイマスガ、
暫クノ間御〓聽ヲ願ヒタイ、此立法權ト司法
權ノ問題、或ハ立法權ト行政權トノ問題ニ
於テ、或ハ「クロムウエル」ノ連中ガ議長ヤ
議員ヲ捉ヘテ議場ヲ退場セシメ、或ハ「カト
リック」ヲ壓迫シタ爲ニ、十一月五日ニ、「ガ
イフオクス」ガ兩院議員ノ集シテ居ル日ニ
英國議會ノ下へ爆火藥ヲ詰メテ爆發セシメ
ヤウトシテ發見サレテ引ノ括ラレタ、英國
ノ議會ハ非常ニ大ナル歷史ヲ持シテ居ル、日
本デモ是カラ色ミナ事ガ起ルダラウト思フ
起ルコトハ希望シマセヌケレドモ、吾々
ノ力デ成ベク之ヲ防ギ、成ベクサウ云フヤ
ウナ手續ヲ省イテ、圓滿ニヤリタイト云フ
ノガ私ノ此所ニ立ッ夕所以デアリマス、洪牙
利ノ議會アタリデハ「ピストル」ノ彈ガ飛ブ、
危ナクテ仕方ガナイ、私ハ斯ウ云フコトヲ
成ベク人間ノ智惠ヲ以テ、人間ノ道德ヲ以
テ止メタイト思フ、仕方ガナケレバ懲罰ト
カ色ニナ方法ガアルダラウト思フ、私ハ其
前提ニ於キマシテ、今日居ラレヌヤウデス
ガ、加藤高明君ノ態度ニ付テ議長ノ御考ヲ
聞キタイ、ソレハ去ル二月三日ノ議場ニ於
キマシテ、〓育費問題ガ此議場ニ出タ時
ニ、私等ノ方ノ菊池君ガ之ニ就テ御尋シタ、
加藤サンガ此所へ來夕所ガ御默リナサイト
云フヤウナコトカラ-是モ一ノ小サイ導
火線-小サイ導火線ガ大ナル結果ヲ生ム
ノデアリマス、小サイ事ガ大ナル導火線ニ
ナッテ居ル、普佛戰爭ガ「ビスマーク」ノ一本ノ
「エムス」ノ手紙ニ依ッテ起シテ居ルト云フ人
モアル非常ニ危ナイ點ガアルカラ注意シナ
ケレバナラヌ、殊ニ總理ノ如キ人ハサウデ
アル、此加藤總理ノ態度ニ付テ御默リナサ
イ、是ハ小サイ事デアル、併シ答辯ヲ國民
ノ前ニ-此神聖ナル議場ノ前ニヤルノデ
アル、私ハ加藤總理ニ「ピストル」ガ飛ン
デ、彈丸ガ飛ンデ來テモ、其所ニ居レト云
フノデハナイ、「ルーズ『ヴエルト」ガ演說
中「ピストル」ノ彈ガ飛ンデ來テモ、泰然ト
シテ演說ヲ續ケタト云フコトヲ嘘カホンマ
カ知ラヌケレドモ新聞ニ傳ハッテ居ル、加
藤君ハ此重大問題ニ付テ、少シ彌次ラレタ
カラト云シテ直グ其答辯ヲ中止シテ降リル
ト云フコトハ、一體ドウ云フ譯デアルカ、
斯ウ云フヤウナ答辯ノ不深切ナ事デハイカ
又、殊ニ理由ト云フモノガ明ニナッテ居ラ
又、ソレハ何ヲ言フカト云フト、遺憾ナガ
ラ出來ナイカラト云フコトヲ言ハレテ居
ル殘念ナガラ本年度ハ實行ガ出來ナイト
言フ、已ムヲ得ナイカラ計上シナカッタト
言ッテ已ムヲ得ナイ理由ヲ明ニセズ、少シ
モ其理由ガ付イテ居ナイ、然ラバ之ニ就テ
深切丁寧ニ國民ニ徹底スルヤウニ、最モ大
ナル所ノ職責ヲ持シテ居ル所ノ大臣ガヤラ
ナケレバナラヌ、然ルニ一時議場ノ一角カ
ラ彌次ッタカラト云ッテ、暴行モ何モ加ヘヌ
ノニ、直グ降ッテシマフト云フコトハ議
長ハ之ヲ如何ニ思ハレル若シ不都合ナリ
ト云フナラバ、之ヲ總理大臣ニ十分御注意
ヲ煩シタイト思フノデアリマス、ソレガ第
ノ質問、總理大臣デモ議場ニ入ッタナラ
バ吾々ノ規則ニ從ハナケレバナラヌ、第二
ノ點ハ私ハ議事進行ト云フ所ノ定義ガ吾
吾ニ十分徹底シテ居ナイト思フ、一體政治
家其者ハ此議事進行ニ付テ唯〓ソレダケ言ノ
テ、一言デモ他ノ事ヲ言ヘバ惡イノカ、註
釋ヲ用ヰル場合ニ直グソレガ議事進行ニア
ラズトシテ、最モ狹義ノ解釋ヲ取ラレタノ
ハ議長ノ失策デハナイカト思フ、政治ト云
フモノハサウ云フモノデハナイ、議政壇上
ニ於テ-、休憩ニ次グニ休憩ヲ以テ數時
間ヲ費シテ居ル、猪野毛ノヤッタノハ僅カ十
分カ十五分、時間ノ上ニ於テ大ナル關係ハ
ナイ、然ルニモ-皆其時ノ事ヲ言ウテ
居ルニ拘ラズ、隨分ヤカマシク言ッテ居ラレ
タラシイ、私ハ丁度居ナカ。ッタガ、幾分私
ハ此點ニ付テ議長ニ聽キタイノデアリマス
ガ、速記錄ヲ讀ミマセウ、議長ガ「諸君、
猪野毛君ノ發言ハ····」ト來テ居ル、猪野
毛利榮君ハ「加藤高明君ハ····」ト言ッテ居
ル、其時ニ私ガ間ノ言葉ヲ入レマスト、又
加藤君ノ政策ヲ攻撃スルモンダト見タノダ
ラウ、サウヂヤナイ、サウ云フヤウニ御默
リナサイトカ何トカ言フノハ、態度ガ惡イ
ト云フコトヲ言ハウトシタノデス、私ノ議
事進行ガ若シ惡クナケレバ、先生ノ議事進
行モ惡クナカッタ筈ダ、議長ハ感違ヒヲシ
テ、頭ガ少シドウカシテ居ルンヂヤナイカ
ト思フ、議長ニ對シテ失禮ナ言デハアルガ
サウ思フ、何カ少數カラ出テ來ルト僻目デ
見テ、蚤デモ捻リ潰スヤウニ見テ居ル、ソ
レカラ議長粕谷義三君ハ「猪野毛君-猪
野毛君」ト言フコトヲ連呼シテ居ル、猪野毛
君ハ「吾々ハデスナ、吾々ハ」斯ウヤソ
テ居ル、議長ハ「猪野毛君ノ發言ハ議事進行
ト認メマセヌ」ト言ッテ居ル、議事進行ト認
メナイデ內容如何ガ少シモ分ラヌヂヤナイ
カ、然ルニ之ヲ議長ガ言ッタノデアルカラ
惡イト云フヤウナコトヲ言フノハ三百代
言的ノ論デアル、其內容ヲ精査セズ、「加藤
君ガ」ト言ッテ、其後デ何ヲ言ウカ分ラヌノ
ニ差止メタノハドウ云フ譯デアルカ、サウ
云フ風ナ事ハ分ラヌ、其一頁ニスラモ出テ
居ナイ、ソレカラ第二ニハ「發言ヲ差止メ
マス」ト來テ居ル、ンコデ猪野毛君ハ「加
藤君自身ガ」-猪野毛君ハ此處デ聽イテ
居ナイ、「加藤君自身ガ責任ヲ負ハナケレ
バナラヌ」ト云フコトヲ言ッタ時ニ又「發言ヲ
差止メマス」ト來テ居ル、ソコデ猪野毛君
ハ「諸君-諸君-本員ハ發言ヲ差止メ
ラレマシタカラ····」ト言ウテ、降壇ノ意
思ガアルト云フコトハ明々白々ナル事實デ
アルト思フ、一度ハ從順デナカッタケレド
モ、二度目ニヤメレバソレデ宜イデハナイ
カ、ソコニ藉スニ二三分間ノ時間ヲ以テス
レバ必ズ降リルノデアル、ソコデ私ハ猪
野毛君ハドウデアルカト云フコトヲ聞キ
マスト、負傷シタ猪野毛君曰ク、私ハ議
長ニ發言ヲ止メラレマシタカラ是レデ止メ
マスガ、一人ノ猪野毛ノ聲ハ葬ラレルケレ
ドモ、正義ノ聲ハ決シテ葬ラレヌト云フコ
トヲ言ンチ降リル積リデアッタガ(「ソレガ惡
イノダ」ト呼ヒ發言者多シ)マア御聽キナサ
イ、ソンナ三百代言的ナコトヲ言ヒナサル
+、君ニ聞イテ居ルノデハナイ、議長ニ聞
イテ居ルノダ、ソレデアリマスカラモウ其
時ニ守衞ガ來タ-懲割ト云フコトヲ聞カ
ナカッタ、退場ヲ命ズト云フコトハ聽カナ
カッタ、分ラナカシタカラ-ソレデ守衞ガ
來テ暴力ヲ以テヤルカラ、サウシナクテモ
降リルト言ウタノダサウデス、ソレガ諸君
ニチットモ徹底シテ居ナイ、猪野毛ガサモ惡
イ者ノヤウニ見ラレテ居ルト云フコトハ
猪野毛ニ失言ノアル點モアルカモ知レマセ
ヌケレドモ、諸君ガ人ヲ責ムルニ酷デアツ
テ、自己ニハ非常ニ私ハ寬大デアルト云フ
コトヲ思フノデアリマス、ソレハ速記錄ニ
明ニ書イテアル、議長ハ議事進行ト云フコ
トニ付テ、サウ狹義ニ解釋シテヤル積リデ
アルカドウカ、成ベク是ハ廣義ニ解釋シテ、
騒動ノ起ラナイヤウニ、十分ニ辯論ヲ重ン
ズルト云フコトガ議長ノ大ナル職貴デハナ
イカト思フ、議長獨リガ後デ言ウテシマ
フ、サウ云フコトハ專制的デアッテ宜クナ
イ、若シ是ガ仕方ガナイノデアッタラ嚴命
ヲ下スガ宜イ、サウデハナイ、餘リヤリ
過ギタ、是ガ抑〓數人ノ人ガ負傷ヲシテ、
大ナル波瀾ヲ捲起シタノハ、議長ガ少シ
二三分ノ間猪野毛君ノ爲ニ寛容デナカツ
タカラ、大ナル此問題ガ起ッタノデアルト信
ズルノデアル、議長ハドウデアルカ、其
以前ニ本黨ノ諸君ガ此處へ來テ、サウシテ
二十分間モ押合ノテモ、議長ハモウ採決ヲシ
テ居リナガラ何等之ヲ制スルコトガ出來ナ
イ、退場ヲ命ゼズシテ約二十分モ押步イテ居
ルノニ、何等退場ヲ命ジルノ方法ヲシナカツ
タト云フノハドウ云フ譯デアルカ、一方ニ寬
ニシテ一方ニ酷デアルノハドウ云フ譯デア
ルカ、議長ニ聽キタイ、第三ノ點ニ付テ聽
キタイ、猪野毛君ガ此處デ爭ガ起ッタカラ
一人デ降壇シタサウデス、隣リノ席ノ町野
君ノ話ヲ聞クト、猪野毛ハ決シテ退場ヲ命
ゼラレタト云フコトヲ知ラナカッタヤウデ
アル、又私モサウデアッタ、ト語ラレテ居
ル、又武藤君其他ノ人々モ、議場ニ徹底シ
テナカッタト云フ話デアル(「休憩シタカラ
サウナッタノダ」ト呼フ者アリ)マア聽イテ
下サイ-ンコデ猪野毛君ハ著席シタ、其
處へ多クノ人ガ來テ大分頭ヲ叩イタリ、ヒ
ドイ事ヲシタト云フコトデアリマス、故ニ
私ハ議長ニ聽キタイノハ、猪野毛君ニ對シテ
退場ヲ命ジタナラバダ、其退場ノ命令ガ不
十分デアッテ實行サレナイ時ニ方ッテ、直グ
暴行者ガ來テ、叩カレタ時ニ、是ニ堪ラヌ
ト云ッテ休憩ヲ宣シタモノデナイカト私ハ
思フ、議長ハ猪野毛君一人ヲ退場命令ヲ
エ、實行シナイト云フコトハドウ云フコト
デアルカ、退場命令ヲ實行シナイ內ニ休憩
スルコトハ、如何ニモ無責任ノ行爲デハナ
イカト思フ、故ニ一般法理論カラ解釋スレ
バ退場命令ヲサレテナイ問ニ、此議事ガ
尙ホ進行シテ居ルト思ハレテモ仕方ガナイ
ノデアリマス、此點ハ如何(「何ガ議論カ分
ルカ」「ソレハ誤シテ居ル」「知ラナイノナラ
止メ給ヘ」ト呼フ者アリ)分ッテ居ル、待チ
給へ-諸君、第四ニ於テ私ハ聽キタイ、
議員猪野毛利榮君ノ投票ニ付キ、猪野毛利
榮君ノ加害者ヲ懲罰シヤツト本黨ガシタラ
シイノデアリマス、其時ニ其反對ノ投票ノ
爲ニ犬養毅君及濱口雄幸君ハ壇カラ降リ
テサウシテ議員席ニ著イテ、投票ナサッタ
ト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、ソレハ事
實デアルカドウカ、若シ事實デアルトスレ
バ綱紀肅正ヲ叫フ所ノ濱口君ガ、斯ウ云
フヤウナ暴行ガ惡クナイト云フヤウナ投票
ヲヤッタト云フコトハ綱紀粛正ガ徹底セ
ナイデハナイカト云フコトヲ私ハ疑フノデ
アル、ソレカラ議長ニ聽キタイガ、テク
言論ハ壓迫スルケレドモ、暴行者ニ向ッテ
ハ果シテ取締ヲ爲サッタカドウカ、議場ノ
ミナラズ議員ニ對スル警察權ト云フモノハ
アナタガ持ッテ居ルノデアル、如何ニ之ヲ取
締リナサッタカト云フコトヲ聽キタイ、更
ニ若シ取調ベタト云フナラバ、其結果ハ如
何デアルカト云フコトヲ聽キタイ、第五ニ
於テ私ハ、諸君、是ハ重大ナル問題デアル、
議員ガ暴行シタヤウナ場合ニ守衞ガ出タ、
此守衞ハ官吏デアレテ議長ノ指揮ノ下ニ在
ル、之ニ暴行ヲ加ヘタ場合ニハドウスル
カ、議員ガ其所ニ於テ暴行ヲ加ヘタ時ニド
ウスルカ、是ハ檢事局ノ發動トナルノデア
ルカドウカ、若モ檢事局ノ發動トナッタラ
宜イト思フノカドウカ、議長ニ聽キタイ、
若シ儉事局ノ發動ニ依シテ是ガ普通ノ司法
裁判ニ移サレルト云フコトハ議長ノ望ム
所デアルカ望マヌ所デアルカ、其結果如何
ト云フコトヲ聽キタイノデアリマス、今ノ
ミナラズ、後來ニ於テモ、ソレカラ第二ニ
於テハ若シソレガ前ノ仕來リ、及日本ノ今
曰ノ狀態カラ見テ、勿論司法權ガ立法府ニ
入ッテ來ルト云フコトガ惡イトスルナラ
バ、如何ナル自治作用ヲ以テ之ニ臨マント
スルカ之ヲ聽キタイ、其自治作用ト云フモ
ノハ如何ナル方面ニ依テ、或ハ規則ニ想フ
ルカ、或ハ道德ニ愬フルカ、如何ナル手段
ニ依テスルカト云フコトヲ議長ニ聽キタ
イ、更ニ休憩スルトカ何トカ云フ事デナ
ク、議院構內ニ於ケル問題ヲ懲罰事犯ニ掛
ケルト云フ事ニスルカ、或ハ進ンデ此議場
ノ出來事デアッタ暴行事件ノ如キ、殊ニ懲
罰事犯ハ公開シテ之ヲ明ニ國民ノ前ニ想へ
ルト云フヤウナ方法モ一ノ方法デアルト思
フガ、議長ハ如何ナル方法ニ依ノテ自治作
用ヲ完全ニ行フコトガ出來ルカト云フコト
ハ是ハ世界ノ立憲史上ニ於ケル大問題デ
アルト云フコトヲ思フノデアリマス、故一
現在ノヤウナ頻々ト起ル所ノ狀態ニ付テ、
議長ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ルカト云フコ
トヲ聽キタイ、第六ニハ是ハ甚ダ私トシテ
モ言難イノデゴザイマスケレドモ、新聞ニ
依リマスレバ議長ハ其職責ノ重大ナルコト
ヲ重ンジテ、責務ノ重大ナルコトヲ思ハレ
テ、辭職ヲ思立ッテ之ヲ話シタト云フコト
ガ新間ニ、間違ノテ居ルカモ知レマセヌガ
出テ居ル、所ガ政友會ノ總務ガ之ヲ止メタ
ト云フコトガ出テ居ル(「嘘ダ」ト呼フ者
アリ)嘘デアレバソレデ宜シイ、是ガ果シ
テ議長ガサウ云フ事ヲ爲サッタカドウカ、
ソレヲ聽キタイ、議長ガ自己ノ指揮ノ下ニ
在ル守衞二名マデ毆ラレ、サウシテ非常ナ
ル所ノ憤慨ノ念ヲ守衞ガ持ッテ居ルト云フ
事デアル、其守衞ノ身體ハ日本帝國ノ國民
デアル、臣民デアル、以上ハ是モ保護シナ
ケレバナラマ、重大ナル責任ヲ持ッテ居
ル、ドウ云フ所ノ力ニ依ッテ守衞ヲ保護ス
ルコトガ出來ルカドウカト云フコトヲ聽キ
タイ、第二ニハ守衞二名竝ニ議員一名負傷
者トシテ出シ、本會議ヲ數回休憩ヲ重ネ
タ、サウ云フ狀態ニ於テ、サウシテ三名モ
此議會ニ於テ相當大キナ所ノ負傷ヲ負ハシ
タト云フコトハ議長ノ職貴ト感ゼザルヤ
如何、又議長ハ今後議長ノ職責ヲ完ウスル
上ニ於テ、果シテ自信アリヤ如何ト云フヤ
ウナ點ニ付テ、議長ニ問ウテ此壇ヲ降ル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=9
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010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今田淵君ヨリ頗ル
多岐ニ亙ル所ノ、御尋ガゴザイマシタ、或ハ
御答ガ漏レルモノガアルカモ分ラヌノデア
リマスガ(田淵豐吉君「漏レタラ聽イテ下サ
レバ言ヒマスカラ」ト呼フ)第一ハ去ル三日
ノ議場ニ於ケル加藤首相ノ態度ニ關シテ、
議長ノ意見ヲ求メラレテ居ルノデアリマ
ス、國務大臣ノ議會ニ於キマスル所ノ答辯
ハ、申スマデモナク力メテ深切丁寧ナラン
コトヲ議長ハ望ムノデアリマス、當日加藤
首相ノ態度如何ト云フコトニ付キマシテ
私ガ申上ゲルマデモナイノデアリマシ
テ、加藤首相ノ答辯ハ、アレニ於テ盡キテ
居クタト私ハ思フノデアリマス(拍手「ノウ
ノウ」)ソレカラ議事進行ノ範圍ヲ議長ハ餘
リ狹義ニ解釋ヲシテ居ルノデハナイカ、斯
ウ云フ御尋ノヤウデアリマス、從來此議事
進行ノ名ニ於テ或ル問題ニ對シテ意見ヲ述
ペラレ、或ハ討論ニ涉ルガ如キ傾ノアリマ
スルコトハ、議長ノ最モ遺憾トスル所デア
リマス(ヒヤ〓〓)固ヨリ議員諸君ノ言論ハ
自由デゴザイマス、諸君ノ御意見ハ何等カ
ノ方法ニ於テ之ヲ議場ニ御述ニナル機會ガ
アルノデアリマス、必シモ議事進行ノ名ノ
ミニ依ッテ其意見ヲ御述ニナラヌデモ宜カ
ラウト思フノデアリマス(ヒヤ〓〓)而シテ
議事進行ノ名ニ於テ色とナル事ヲ御述ニナ
リマスルコトハ、決シテ議事ノ進行デハナ
イノデアリマヌ(拍手)却テ議事ノ妨害ニナ
ルノデアリマス、故ニ議長ハ此議事進行ト
云フモノハ、力メテ之ヲ狹義ニ解釋ヲ致シ
タイト思フノデアリマス(拍手)第三ハ猪野
毛君ノ事ニ付テノ御尋デアッタヤウデアリ
マスルガ、此事ニ付テハ一昨日ノ議場ニ於
キマシテ、伊坂君ヨリノ御尋ガゴザイマシ
タノデ、大體之ニ對シテ御答ヲ致シテ置イ
タト思ヒマス、之ニ依シテ御承知ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、ソレカラ其當日ノ議場ニ於キマ
シテ、本黨ノ諸君ガ多數此壇上ニ登ラレタ
ト云フコトニ付テ、何故ニ議長ハ直ニ之ヲ
處分シナカッタカト云フコトデアリマス、
洵ニ斯ノ如キ事ノ出來マシタコトハ議長
ニ於テモ之ヲ遺憾ト致スノデアリマスルガ、
斯ル場合ニ於キマシテ直ニ-多數此演壇
ニ登ラレマシタ時ニ於テ、一々之ニ對シテ
處分ヲ致シマスルコトハ、議長ノ頗ル困難
トスル所デアリマス、ソレカラ猪野毛君ニ
退場命令ヲ執行シテ、ソレヲ遂行スルコト
ノ出來ナカッタコトハドウデアルカ、斯ウ云
フ御尋ノヤウデアリマシタガ(田淵豊吉君
「休憩中ノコトダ」「休憩中トハ如何」ト呼ヒ
「默レ」ト呼フ者アリ)退場命令ヲシテ休憩
ヲシタノハドウ云フ譯カト云フ御尋ノヤウ
デアリマス、是ハ當日ノ議場ノ光景ハ田
淵君モ御承知ノ通リデアリマス(田淵豐吉
君「知ラナイ何モ知ラナイノデアル」ト呼
フ)知ラナケレバ洵ニ已ムヲ得ナイノデア
リマスルガ、議長ハ田淵君ニ對シテ退場命
令ヲ致シマシタ(「田淵デハナイヨ」ト呼フ
者アリ笑聲起ル)猪野毛君ニ-猪野毛君
ハ此命令ニ抵抗セラレマシタ、此〓野毛君
ノ態度ニ對シテ、議場ガ非常ニ混雜ヲ惹起
シタノデアリマシテ、其混雜ノ爲ニ、議場
ハ已ムヲ得ズ休憩ヲ致シタ次第デアリマス
(「ヒヤ〓〓」拍手)シレカラ當日ノ此暴行者
ヲ取調ヲシタカト云フコトデアリマス、之
ニ對シマシテハ-或ル諸君ニ對シマシ
テ、旣ニ議長ニ於テハ其處置ヲ執リマシテ
ゴザイマス、併ナガラ尙ホマダ其取調ニ付
テハ守衞ヨリノ-守衞長カラノ報告モア
リマシテ相當ニ調査モ致シテゴザイマス、
最後ノ議長ガ云々ト云フコトガゴザイマシ
タガ、是ハ此所ニ御答ヲスル限リデナイノ
デゴザイマス、此段御答辯ヲ致シテ置キマ
ス(拍手)
〔田淵豐吉君「議長々々檢事局ノ關係ハ
ドウシマシタ」ト呼ヒ「無用々々」「妨害
スルナ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=10
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011・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 尙ホ答辯ノ漏レタモ
ノガアルサウデゴザイマス、ソレハ議員諸
君ノ間ニ起ッタ事柄ニ付テ議長ハドウスル
カト云フコトデアリマス(田淵豐吉君「檢事
局トノ關係ヲ知リタイ」ト呼フ)、議員諸君
ノ間ニ起リマシタ事ハ、成ベク議員諸君ノ
間ニ於テ是ガ解決ヲ願ヒタイト云フ所ノ希
望デアリマス是ダケノコトヲ御答へ致シ
テ置キマス(拍手)
〔田淵豐吉君「第五ノ答辯ガ無イ」ト呼
フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=11
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012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス、日程第一、未穀法中改正法律案、日程
第二、米穀需給調節特別會計法中改正法律
案、是ハ同一ノ議案デアリマスカラ、一括
議題トナスニ御異議ハアリマセヌガ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=12
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013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一米穀法中改正法律案、
日程第二、米穀需給調節特別會計法中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-三土政府
委員
第米穀法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
未穀法中改正法律案
米穀法中左ノ通改正ス
第一條及第二條中「米穀ノ需給」ヲ「米穀
ノ數量又ハ市價」ニ改ム
第四條中「米穀需給調節上」ヲ「未穀ノ數
量又ハ市價調節上」ニ改ム
附則
本法ハ大正十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
第二米穀需給調節特別會計法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正ス」
第一條中「米穀需給」ヲ「米穀ノ數量又ハ
市價」ニ改ム
附則
本法ハ大正十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=13
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014・三土忠造
○政府委員(三土忠造君) 只今上程サレマ
シタル米穀法中改正法律案、竝ニ米穀需給
調節特別會計法中改正法律案、此二案ニ關
シマシテ、提案ノ理由ヲ極メテ簡單ニ申述
ベタイト考ヘマス、現行米穀法ニ依リマス
レバ、政府ハ米穀ノ賣買ヲ行ヒ、又ハ關稅
ノ增滅免除ヲ爲スコトニ依リマシテ、主ト
シテ米穀數量ノ過不足ノ緩和ニ努メルコト
ガ出來ルコトニナッテ居ルノデアリマス、
固ヨリ之ヲ以テ或ル程度マデ米價調節ニ資
スルコトハ出來マスルケレドモ、直接米穀
市價ノ變動ノ緩和ニ盡スコトガ十分デナイ
憾ミガアルノデアリマス、仍テ今回之ヲ改
正致シマシテ、數量ノミナラズ、市價ノ調
節ニモ努メ得ル旨ヲ明ニ致シマシテ、此法
律ノ運用ヲ圓滑ニ致シ、由テ以テ國民生活
ノ安定ニ資セントスル趣旨デ以テ、本案ヲ
提案致シタノデアリマス、又米穀需給調節
特別會計法中改正法律案ハ此米穀法ノ改正
ニ伴ヒマシテ、同ジ趣旨ニ依シテ改正ヲス
ル必要ガ起ッタノデアリマス、何卒御審議ノ
上御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=14
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015・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ質疑
ノ通告ガアリマス、其發言ヲ許シマス-
多木久米次郞君
〔多木久米次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=15
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016・多木久米次郎
○多木久米次郞君 此米穀法改正法律案ニ
付テ一寸政府ニ伺ヒタイ、此米穀法ニ付キ
マシテハ元來吾々ノ希望、又當時其米穀
法ノ制定サレタノハ原內閣ノ當時デアリマ
ス、原總理大臣ハ米ノ相當價格ヲ維持サス
所ノ趣旨ニ依ヶテ提出セラレタ所ノ法律ナ
ルニ拘ラズ、所謂法ハ死物デアリマス、之
ヲ活用宜シキヲ得ルト得ナイトニ大關係ガ
アル次第デアリマス、然ルニ多クハ此法案
ニ依シテ生產ヲ減ジ、農民ヲ苦シメル關係ア
ルコトハ洵ニ遺憾千萬デアリマス、諸君ガ
御同感ト存ジマス、況シテヤ價格ヲ維持シ
調節ヲ圖リタイト云フ、政府ノ調節ハ兎角
農家ノ米ヲ安クシタイト云フ方ノ調節デア
リマシテ、相當ニ維持スル所ノ結果ヲ見ナ
イト云フコトハ洵ニ遺憾千萬デアル、現ニ
一月二十六日ヨリ八月三十一日マデ、政府
ハ此外米ノ輸入關稅法ヲ廢サレマシタ、而
シテ一方ニハ二十六万石カラ米ヲ買フト云
フ所ノ事柄ガ新聞ニ出テ居リマスガ、此外
米ノ安イト云フコトハ皆樣御承知ノ通リ、
現ニ白米デアクテ僅ニ二十五圓、而モ本年
運賃ガ非常ニ安イ爲ニ、購入ノ上ニ於キマ
シテハ非常ナ便利ヲ得タ、四十錢ノ米、五
十錢ノ米、決シテ高イト云フコトハ恐ラク
天下滅多ニアルマイ、此買フ所ノモノハ却
テ米ノ價ノ相當スル所ヲ歡迎スル所デアリ
やっ、然ルニ此外米ノ關稅ヲ廢サレタ爲
ニ、帝國ノ利益トナルカト云ヘバ關稅ガ
下ッタミケ却テ產地ニ於テ價格ヲ高クサレ
テ、サウシテ關稅ヲ取ラナイダケガ損ト云
フ結果ニナル次第デアリマス、元來政府ハ
此農民ガ羊ノ如ク豚ノ如ク、踏ンデモ蹴ッ
テモ殆ド抵抗力ノナイ曲唇氏デアリマス、而
モ此議員ノ多クハ此農民カラ選出セラレタ
ニ拘ラズ、農家ノ保護ニ付キマシテハ多ク
ハ政府ノ方針ニ蹂躪サレテ、之ヲ農家ノ爲
ニ利益ニ解釋シ、應用スル方ガ、甚ダ少イ
ガ如キ感ガアルト云フコトハ〓私ハ洵ニ帝
國產業ノ爲ニ遺憾ニ堪ヘヌ次第デアリマ
ス、況ヤ今日ハ財政上ガ御本知ノ次第デ、
輸入ガ益、2增加致シマス、食糧ノ缺乏、衣服
スラモ無イ國デアル若モ農業ガ減ジタ場
合ハ如何ナル事デアルカ、政府ハ兎角社會
政策トカ國民ノ生活ノ安定ト云フ美名ニ
藉ッテ、サウシテ農民ヲ蹂躪ナサル、農民ノ
利益ヲ殺グ所ノ手段方法バカリヲ御講ジニ
ナルト云フコトハ皆樣ガ御承知ノ次第デ
アリマス、農民ガ此米ヲ作リ、而モソレガ
農村ノ疲弊困憊シテ居ルト云フコトハ御承
知ノ通リ、殊ニ昨年ノ如キハ數十年來見ナ
イ所ノ非常ナ旱魃デアリマス、多少米モ滅
ジテ、サウシテ困ッテ居ル次第デアリマス、
然ルニモ拘ラズ關稅ヲ撤廢サレタ以來ハ、米
ハ日一日ト下リマシテ、今ヤ二三圓モ下ル狀
態デアリマス、米ガ一石ニ二三圓下ル狀態ニ
ナレバ、一億八千万ト云フ損害ガアッテ、米
ヲ賣テテ分ガ生活スルノミナラズ、重大ナ
ル納稅ノ義務ヲ此米ニ依シテ盡ス所ノ此農
民デアリマス、然ルニモ拘ラズ此米ノ關稅
ヲ安クシテ-無クシテ而モ此米ハ內地ノ
米ヲ買フカト思ヘバ、ソレハ投賣拾賣リヲ
シテ、甚シキハ白米ニマデシテ御賣リナサ
ルヤウナ實驗スラアッタ位デアリマス、元
來此關稅ヲモット高メテ、サウシテ英國ヲ
除イタ外、關稅ノ三割以上ノ從價稅ヲ課シ
テ農產ノ保護ヲシテ居ルソレハ何レノ文
明國デモ皆出來テ居ル次第デアル、然ルニ
モ拘ラズ僅ニ米ガ五圓ヤ六圓ノ時ニ、十六
貫ニ付テ一圓ノ關稅ヲ課ケタモノガ、今ヤ米
ハ勞力ト云ヒ、其他農產ノ原料、物資ノ爲
ニ非常ナル好時期ニナッタニ拘ラズ、矢張
一圓ヨリ課ケテ居ラヌ、而モ是ガ全廢サレ
マシテ、サウシテ外米ハ入リ次第ト云フ狀
態デアリマス、洵ニドウモ困ッタ次第デアリ
マっ、殊ニ此政府ハ都會アルコトヲ知ッテ
農村アルコトヲ知ラヌ、各政黨モ農村振興
ト云フコトヲ看板ニ掛ケテ居リマスガ、全
ク是ガ實際ニ於キマシテハ石川五右衞門ノ
念佛同樣ノ狀態デアリマス、斯ル狀態ニ拘
ラズ、ドノ黨派モドノ黨派モ、一人ノ質問
モ起シテ吳レヌト云フコトハ私ハ遺憾ニ堪
ヘマセヌ、現ニ織物稅ノ如キハ英國トノ協
約ノ期限ガ過ギテ、現ニ二割卜云フヤウナ
莫大ナ〓稅ガアルニモ拘ラズ、マダ更ニ政
府ハ上ゲル意思デアリマス、紡績屋ノ繁昌
ト云フモノハ世界的ニ繁昌シテ居リマス、
原料ヲ買フ上ニ於キマシテモ、運賃ノ上ニ
於キマシテモ、保險ノ上ニ於キマシテモ、
又加工ノ上ニ於キマシテモ、外國產ト竝行
スペキ餘地ガアルニ拘ラズ、此二割ノ關稅
ヲ又減ラサントシテ居ル、而モ地方ノ負擔
ト云フモノハ益〓多ク、サウシテ政府ガ行
政整理ヲ爲サルト云フコトモ結構デアリマ
スガ-洵ニ結構デアル、ドノ政府ヨリモ
熱心サレタコトハ感謝ヲシマスガ、其行政
整理ハドウデアルカ、地方ノ川ヤラ港ヤラ、
道ヤラ、學校、有ユル文化的ノ仕事ニ對シテ
大ナル斧鉞ヲ加ヘテ、サウシテ地方ニ失業
者ヲ起シタ、東京ノ復興ノ如キ、又復舊ノ
如キ、豫算ノ二割ニ殆ド近イ莫大ナル費用
ヲ、東京ハ自治區ナルニモ拘ラズ是亦國ノ
力-財政裕カデアッテモ自治區ハ自治區
デ補助スルトモ、是ヲ國ガ無限責任ヲ擔フ
ト云フコトハ全ク不條理極マル、而シテ地
方ニ至ッテ更ニ文化的ノ仕事ヲセヌノミナ
ラズ、或ハ縮少シ、若クハ又地方ノ財源、稅
金ノ親トモ云フベキ米、負擔ヲ凌グ重大ナル
米、此關稅ヲ取ルト云フヤウナコトハ無策
ナ話デアル、現ニ此政府ハ貿易ノ繁昌、國
富ノ增進ヲ圖ラントシテ、而シテ其ヤル所
ノ根基ト云フモノハ益增徵セントスル關
稅ヲ無視シ、鷄卵ノ如キモノナドハ一千何百
万モ輸入ガアッテ、地方ニ於テ兎ニ角困シテ
居ル、此結果ガドウデアルカト云ヘバ國
民ノ生活ト云フモノハ決シテ容易イモノデ
ハナクシテ、自國ノ食糧ガ缺乏スル一方デ
アル、殊ニ家畜ノ如キニ至ッテ、何ノ施設モ
ナク、全ク天與ノ富源マデモ無視シテ、サ
ウシテ之ヲ食糧ノ缺乏ニ補フ所ガナイ、
實ニ遺憾千萬デアリマス、御承知ノ通リ
英國ノヤウナ商賣ガ盛デ、世界デ大ナル
領土ヲ持ッテ居ルニ拘ラズ、戰爭ノ苦シイ
經驗ニ依ッテ一億二千万圓ノ大ナル保護ヲ
シテ、サウシテ小麥ノ增殖ヲ圖リ、ノミナ
ラズ肉、鷄卵、其他ニ至ルマデ成ベク自國
ノ生產ヲ以テ充テヤウトスル計畫ヲ立テヽ
居ル、然ルニ日本ハ御承知ノ通リ天產物ニ
乏イ、石油ノ如キハ有ルカ無イカ分ラヌ
位鐵ノ如キハ一塊モナイ、山ニハ伐出ス
木モナイト云フコトハ皆サン御承知ノ通リ
デアリマス、然ルニモ拘ラズ、農業ト云フモ
ノハドウデアル、農業ト云フモノハ大事デ
アルカ大事デナイカ、國民ノ七割八割ノ多
數ヲ占メテ居ル農業、之ヲ滅セバ社會問題
トシテ大キナコトニナル、農民ガ羊ノ如ク
兎ノ如ク柔順ナルガ爲メ、斯ル無法ナル國
策ヲ執ラレルト云フコトハ如何ナモノデア
リマセウカ、洵ニ私ハ遺憾ニ堪ヘナイ次第
デアリマス、而カモ政府ハ價ノ調節ト云フ
文字ニ名ヲ藉リテ、更ニ又農民ヲ苦メル所
ノ手段ヲ御用ヰニナルノデアリマスカ、ド
ウデアリマスカ、現ニ可憐ナル農家ニ對シテ
ハ農產物收用令ト云フヤウナ非立憲ノモノ
モ存在シテ居ルノデアリマスガ、是モ何時
實行ナサルカ分ラヌ、人間ハ衣服ノミデ生
キテ居ルモノデハナイ、況ヤ今日一般ノ生
活ノ上カラ申シマスレバ、往昔トハ違ッテ、
生活ノ上カラ云ヘバ僅ニ一割カ二割ニ足ラ
ナイ所ノモノデアル、身ニ纏フ所ノ木綿織
物ニ致シマシテモ、毛織物ニ致シマシテ
モ、其他色ミノ物ニ隨分重大ナル保護ヲ加
ヘテ居ル、銀行ガ破產ヲスルトカ、何トカ
云フト、國家ハ無限ノ金ヲ以テ救濟スル、
或ハ都會ニ水道ヲ拵ヘル、下水ヲ拵ヘル、
或ハ市場ヲ拵ヘルト云フヤウナ時ニハ何
千万圓モノ金ヲズン〓〓出スガ、地方ノ爲
ニハ僅カ二千万圓-此大キナ歲計ノ上カ
ラ見レバ僅ニ二千万圓位ノ〓育費サヘモ今
年ハ斷ジテ財源ガ無イト云フ、若シ今少シ
東京ノ復興、若クハ復舊ノ方ヲ減シテ下サ
ルナラバ、二千万圓ヤソコ等ノ金ハ直グニ
出テ來ル、全ク都會アルヲ知ッテ農村アル
ヲ知ラナイ、農村ヲ無視サレタ所ノ政府ノ
行動デナクテ何デアリマセウ(「脫線々々」
ト呼フ者アリ)脫線デハアリマセヌ、國民
ヲ代表シテ來テ居ル諸君ガ、若シ職責ヲ重
ンジ、道德ヲ重ンジタナラバ吾々ノ意見
ニハ大ニ贊成ヲシナケレバナラヌ、脫線ト
ハ何ノコトデアルカ、良心ヲ棚上ゲニシテ
置イテ、唯〓政府案ノ缺點ノ在ル所ヲ質問
スルト、諸君等ハ直グニ御騒ギニナル、私
ハドノ政府ニモ味方デナイシ、ドノ政府ニ
モ敵デナイ、諸君ハ吾々ノ敬愛スル政友ト考
ヘテ居ル、私ノ眼中ニハ味方モナ·ケレバ敵
モナイ、唯〓公平、公明正大、是ガ拙者ノ主
義デアル、少シハ良心ニ考ヘテ靜ニ聽イテ
貰ヒタイノデアリマス-デ政府ハ此問題
ニ付テドウ云フ風ノ獎勵ヲ爲サルデアラウ
カ、從來ノ如ク唯、農民ヲ壓迫スル如キ國
策ヲ施スト云フコトデアッタナラバ、結局國
ヲ滅ス本トナルト思フ、米ガ五百万石モ千万
石モ足ラヌト云フコトハ、外國貿易ニ大關
係ガゴザイマス、一段步ニ付テ二斗三斗ノ
收穫ガ多イト少イトデハ三百十万町步デ
ハ直ニ八百万石千万石ト云フ收穫ニ關係ス
ル、此貧乏國ノ日本ノ今日ノ狀態ニ於テ、
常ニ輸入超過ヲ續ケテ居ル、現ニ續々輸入
超過ノ狀態デアル、而シテ又米ノ關稅ヲ撤
廢シ、自國ノ農產ヲ壓迫シテ、而モ外國ノ
農產ヲ獎勵スルヤウナ政策デハアリマセヌ
カ、政府ハ何ノ必要ガアッテ之ヲ撤廢スル
ノデアルカ、其意ノ在ル所ヲ伺ヒタイ、都
會ノミガ大事デ農村ハ大事デナイノカ、又
他國ノ農民ガ大事デ自國ノ農民ハ大事デナ
イノカ、其眞實ナル御考ヲ承リタイ、御承
知ノ通リ人間ガ殖エテ食糧ガ足ラナクナ
ル今日ニ於テハ、自給ノ政策ヲ立テナケ
レバナラヌコトハ明デテル、況ヤ今日ノ六
千万ノ人間ハ、旣往ノ實驗カラ考へテ見マ
スト、益、殖エル一方デ『アルカラ、〓隨テ食
糧ガ足ラナクナル、政府ハ之ニ對シテ何等
カノ御考ガアルカ【ドウカ、斯ル未熟ナ政
策ヲ執ッテ農民ヲ壓迫シ、地方ノ財源ヲ枯
渴サセテ都會バカリ飾リ立テヽ居ル、國力
及民力ヲ考ヘテヤッテ居ルノデアルカ、〓育
費ノ如キモ、問題ハ違フヤウデアリマスガ、
併シ地方ノ負擔等ニ至リマシテハ重大ナル
問題デアル、是等モ唯、地方アルコトヲ知
ラズ、民力モ國力モ考ヘズ、無暗ニ〓員ニ
月給ヲヤッタ結果デアル、故ニ是ハ當然補助
シナケレバナラヌコトデアル、都會デハ幾
億万ノ金ヲ濫費シツヽアリ、サウシテ地方
ヲ兒棄テヽ居ル、若シ諸君ガ選擧民ニ對シ
テ今少シ責任ヲ感ゼラレルナラバ吾々ノ
正當ナル質問ニ對シテ妨害スル理由ハナイ
ノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 三土政務次官
〔政府委員三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=17
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018・三土忠造
○政府委員(三土忠造君) 只今多木君ノ御
質問ニ對シテ努メテ傾聽致シタノデアリマ
スガ、議場稍〓騒ガシイ爲デアリマセウカ、十
分聽取レマセナンダノデアリマス、唯、所々
間ヘマシタ所ヲ接ギ合セテ考ヘテ見マスル
ト云フト、要スルニ御趣旨ノ在ル所ハ、政府
ノ政策ガ農民ヲ壓迫スルコトガ多イデハナ
イカト云フヤウナ事デアリマスガ、是ハ私
共ノ考フル所デハ以テノ外デアリマス、正
反對デアリマス、殊ニ關稅ヲ昨今撤廢致シ、
只サヘ農民ガ生活ヲ脅威サレテ居ル際ニ關
稅ヲ撤廢スルト云フコトハ、農民壓迫ノ政
策デハナイカ、斯ウ云フ御質問デアッタヤ
ウニ思ヒマス、御承知ノ通リ米穀法ノ運用
ハ生產者ト消費者トノ兩方面ノ安定ヲ圖
ルノガ目的デアリマス、昨年ノ作枘カラ本
年ノ端境期マデノ米ノ配給關係ヲ見マスト
云フト、約五百万石近クノ不足ヲ生ズル計
算ナノデアリマス、五百万石近クノ不足ヲ
生ジマス場合ニ於キマシテハ是マデ何時
モ關稅ノ敬廢ヲ行シテ居ルノデアリマス、
故ニ或ル方面ヨリ致シマシテハ此作柄ノ
狀況ヲ推定致シマシテ、昨年ノ十月頃カラ
シテ最早關稅敬廢ノ要求ガアッタノデアリ
マスケレドモ、吾々ハ成ベク農家ノ經濟狀
態等ヲ考慮致シマシテ、出來ルダケ關稅撤
廢ノ時期ヲ遲ラシマシテ、漸ク先達テ公表
致シタヤウナ次第デアリマス、卽チ關稅ヲ
撤廢スル時期トシテハ最モ遲ラシタ次第デ
アリマシテ、此時期ヨリ遲レマスト云フ
十、外米ノ買人ニ對シテ非常ナ支障ヲ生ズ
ルノデアリマス、御承知ノ通リ外米ノ出盛
期ハ二月、三月、四月ト云フヤウナ時デア
リマスカラ、此出廻期ノ始マリマス際ニ於
テ、撤廢スルナラバシナケレバナラヌノデ
アリマス、唯。撤廢スルガ善イカ惡イカト
云フ問題デアリマスガ、前申ス通リ五百万
石近クノ不足ヲ生ジマシタ場合ニ於テハ
撤廢スルコトガ何時モノ例デアリマス、何
故ナラバ米價ハ今日出廻期ニ於キマシテ、
卽チ我國內地ノ出廻期ニ於キマシテ四十圓
近クノ價格ヲ保ッテ居ルノデアリマス、而
シテ一面ニ於テ五百万石近クノ不足ヲ生ジ
テ居ルト云フ見込デアリマスカラ、今ノ中
ニ用心ヲ致シマシテ、成ベク外米ヲ輸入セ
シメテ、國民ニ外米ヲ消費セシメ、若クハ
代用食ヲ消費セシメマシテ、出來ルダケ內
地產米ノ節約ヲ圖リマシテ、サウシテ端境
期ニ於テ、非常ナ高イ價格モ示サズ、國民
全體ガ安定シ得ラレルヤウナ方策ヲ講ズル
コトハ、政府當然ノ責任ト考へルノデアリ
マイ、斯樣ナ見地ヨリ致シマシテ、關稅ノ
撤廢ヲギリ〓〓結着マデ引延シテ斷行致シ
タノデアリマスガ、是ガ爲ニ內地ノ米價ノ
變動ヲ來シハセヌカト云フコトヲ心配致シ
マシタカラ、一面ニ於テ政府ハ持米ノ賣下
ヲ一月末日ヲ以テ一時停止スルコトヲ告示
致シマシテ、同時ニ又二十六万石ノ昨年賣
下ゲマシタ米ノ身代米ノ買付ヲ告示致シ
マシテ、此三ツヲ同時ニ發表致シマシタ爲
ニ、幸ニ束京、大阪等ノ市場ニ於テ變動ガ無
カッタノデアリマシテ、各方面共好評ヲ博
シテ居ルノデアリマス、政府ノ方針ハ農民
ヲ壓迫スルノデハナク、寧ロ農村振興ニ付
テハ非常ニ力ヲ用ヰテ居ルノデアリマスカ
ラ、此段御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=18
-
019・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ノ質疑ノ通告ガア
リマス、吉植庄一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=19
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020・多木久米次郎
○多木久米次郞君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=20
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021・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 旣ニ吉植君ニ發言ヲ
許シマシタカラ次ニ願ヒマス
〔吉植庄一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=21
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022・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 此法案ニ對シテ四五箇所
疑ノ點ガアリマスカラ、政府ノ御答ヲ得タ
イト思フノデアリマス、元來此案ハ多年民
間ニ於テ要望セラレタ所ノモノデアリマ
スソレヲ今囘其一部ヲ政府ガ採用シテ玆
ニ御提案ニナッタ、然ルニ簡單ニ唯、數量ノ
調節トナッテ居シタ本文ニ「市價」ノ二字ヲ加
ヘタニ過ギナイノデアッテ、其他ニハ何等ノ
改善ヲ加ヘテ居ラヌガ爲ニ、單ニ此文字ダ
ケニ依シテ改正ノ目的ガ遂ゲラレルカドウ
カト云フ疑ヲ第一ニ持ノテ居ルノデアリマ
ス、今一ツハ市價ノ調節ト云フ此文字ハ、
原內閣當時ニ於テ之ヲ立案シテ議會ニ提案
シ、衆議院ハ之ヲ通過致シタガ、貴族院ニ
於テ價格ノ調節ト云フコトハ頗ル重大ナル
問題トシテ取扱ハレテ、遂ニ價格ノ調節ト
云フ此「價格」ノ二字ヲ削ラレタヤウニ記憶
致シテ居ルノデアリマス、然ルニ今回御提
案ニナッタノハ、價格ト云フ字ガ市價ト云
フ字ニ變シテ居リマスガ、意味ハ同ジ事デ
アル、唯〓同一ナル意味ニ於テ簡單ニ之ヲ
持出シタ時ニ於テ、貴族院ガ之ヲ如何ニ扱
フカト云フコトハ極メテ重大ナル關係ヲ
有スルモノト思フノデアリマス、隨テ本案
ノ疑點ニ對シテ、政府ハ喜ンデ吾々ノ質問
ニ對シテ、御明答ヲ與ヘラルヽデアラウト
信ジマス、御尋申スコトハ五ツアリマス、
第一ノ御尋ハ市價ト云フ二字ハ加ヘテ居ル
ガ、依然トシテ買上ノ方ニ於テハ時價ニ依
ルト云フ現行法ハ存シテ居ルノデアリマ
ス、サウ致シマスルト、時價ニ依ル買上ノ
實例ヲ是マデノ經路ニ依ッテ調ベテ見マス
ルト、常ニ政府ガ買ハントスル所ノ石數ニ
達シナイノデアリマス、例ヘバ時價三十圓
ノ時ニ三十圓デ買上ゲルト、三十万石ヲ買
上ゲル時ニナリマスルト、僅ニ三分ノ一乃
至四分ノ一ノ程度ヨリ外ニハ買上ヲ希望ス
ル者ハナクナルノデアリマス、是ガ爲ニ政
府ガ豫定ノ石數ヲ發表致シテ、時價デ買上
ゲント致シテモ、常ニ其數量ニ達シナカッタ
實例ヲ吾々ハ見テ居ルノデアリマス、農民
ノ生產者カラ申シマスレバ、時價デ買上ゲ
ルト云フナラバ、必シモ政府ノ手ニ依ラ
ズトモ一般ノ市場ニ於テ時價ナレバ賣買
ハセラレテ居ルノデアルカラ、必シモ政府
ノ力ニ依ルノ必要ハ無イノデアル、此故ニ
實際法律ヲ施行スル上ニ於テハ、其目的ヲ
常ニ達シテ居ラナイノデアル、時價デ買上
ゲルト云フコトデアッテ、是マデノ數量ヲ
調節スルト云フ法律ノ解釋ニ依ノテ、其範
圍ニ於テ爲シタ所ノ其買上ニ於テモ、時價
ニ影響ヲ及ボスコトハ甚ダ少イノデアリ
ひっ、況ヤ此市價ト云フ二字ヲ加ヘテ價格
ノ調節ヲ試ミント致シテモ、此時價デ買上
ゲナケレバナラヌト云フ法文ガ存シテ居レ
パ、政府ガ或ル豫定ノ價格、是デハ高過ギ
ル、是デハ安過ギルト云フ標準ハ何ヲ以テ
標準ト爲サルノデアルカ、時價ヲ以テ買上
ゲナケレバナラヌト云フコトデアレバ、假
ニ其標準ヲ持ッタトシテモ-、政府意中
ノ豫定ノ價格ヲ持ッタトシテモ、法律ノ明
文ハ時價ニ依シテ買ハナケレバナラヌト云
フコトニナッテ居レバ、如何ニシテ此調節
ガ出來ルノデアリマスカ是ハ市價ノ調
賀卽チ高過ギル時分ニハ之ヲ安クシ、安
過ギル時ニハ之ヲ高クスル、是デナケレバ
調節ハ出來ナイ、現行法ノ如ク數量ノ調節
ト云フダケノ法文デアルナラバ、數量ノ不
足ヲ補ヒ、餘ッターモノヲ調節スルト云フ極
度ニ於テ爲スガ故ニ、政府ハ仕易イノデア
ル價格ノ調節ト云フコトニナッテハ、何等
カノ標準ナシニ價格ノ調節ハ出來ナイ、何
ヲ標準トシテ政府ハ價格ヲ調節セントスル
ノデアリマスカ、是ガ吾々ノ最モ疑ヲ存ス
ル點デアッテ、若シ政府ニ一定ノ標準ナク、
時價ニ依ッテ-何時マデモ時價デ買ハナ
ケレバナラヌト云フコトデアレバ、其米ヲ
際限ナク買ッテ居ラナケレバナラヌト云フ
コトニナル、然ルニ其時價ニ依ッテハ生產
者ハ賣ルノヲ賣ラナイト云フコトニナル、
過去ノ實例ニ於テモ豫定數ニハ必ズ達シテ
居ラヌノデアル、僅カ三十万石カ五十万石
ノ米スラモ豫定ノ如ク買上ゲルコトノ出來
ナイノハ、此時價ニ依ルベシト云フ此現行
ノ法文ノ存在スルガ爲デアル、之ヲ存シテ
置イテ、單ニ市價ノ調節ト云フ法律ノ文字
ヲ人レテモ、如何ナル運用ニ依ッテ此市價
ヲ調節スルカト云フコトハ大ナル疑點ヲ存
スルノデアリマス、此點ニ對シテ政府ハ何
ヲ標準トスルノデアルカ、何ヲ標準トシテ
買ヒ、又賣ルノデアルカ、同時ニ時價ニ依
ルベシト云フ現行法ニ依テ、之ヲ運用スル
ト云フノハ、如何ナル方法ニ依ッテ如何ニ之
ヲ運用セントスルノデアルカ、此點ヲ極メ
テ分リ易イヤウニ御說明ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、ソレカラ第二ハ從來ノ調節
資金ナルモノハ單ニ數量ノ調節ト云フコ
トヲ目的トシタル單一ノ目的デアル、此單
一ノ目的ノ爲ニモ數千万圓ノ運用資金ガ要
ルノデアッタ、然ルニ今回此法律ヲ御提案
ニナッテモ運用資金ノ增額、若クハ其他ニ
付テ何等ノ御說明モ御提案モナイ、シテ見
ルト數量ノ調節スラモ數千万圓ノ巨額ノ資
金ヲ要シテ居ッタノニ、更ニ市價ノ調節ト云
フ極メテ重大ナル、國民生活ニ一步ヲ誤レ
バ非常ナ波瀾ヲ惹起スベキ所ノ市價ノ調節
ト云フ此文字ヲ入レテ置イテ、此資金關係
ニ於テ何等考慮スル所ナクシテハ一石二
鳥ヲ得ントスル御考デアラウケレドモ、左
樣ニ容易ニハ出來ナイモノデアラウト私ハ
考ヘル、此市價ノ調節ハ數量ノ調節ヨリモ
五倍、十倍、百倍ノ困難ガアルモノデアラ
ウト吾々ハ考ヘルノデアル、場合ニ依レバ
全國ノ商人ヲ向フニ廻シテ、政府ノ意ノ儘
ニ此市價ヲ釣上ゲ、若クハ下ゲントスル政
策ヲ實行スルノデアルカラ、種々ナル方
法モ必要デアラウガ、特ニ豐富ナル資金
ト云フモノ、後援ガナケレバ、是ハ實行
ガ出來ナイ、不可能ニ陷ル、偶〓僅ナ事デ
以テ手ヲ著ケレバ、徒ニ市場ノ紛淆ヲ招
キ、市價ニ非常ナ不安ヲ與ヘテ、害ヲ貽ス
ダケデアッテ、其效ヲ擧ゲルコトハ出來ナ
イダラウト私等ハ懸念スルノデアル、之ヲ
爲サントスレバ、少クトモ徹底的ニ或ル程
度ノ米ハ價ヲ政府ノ豫定スル價格ニ依ッテ
買上ゲテ、サウシテ政府ノ豫期スル所ノ程
度ニ持ッテ行クマデノ力ヲ加ヘナケレバナ
ラヌ、單ニ法文ノ上ニ於テノミ市價ヲ調節
スルトシテモ、其準備、其用意ト云フモノ
ニ付テ甚ダ缺ケテ居ルヤウニ考ヘラレマス
カラ、此點ニ對シテ政府ハ更ニ大ナル資金
ヲ御用意ニナルノデアリマスカ、現在ノ如
キ資金デ以テ數量及新ニ附加ヘラレタル市
價ノ調節ヲ完ウシ得ルト思召ニナルナラ
バ、其理由ヲ明細ニ御說明アランコトヲ冀
フノデアリマス、次ハ豫テ帝國農會、其他
全國農民ノ側ニ於テ屢、〓究セラレ、論議
セラレ、又衆議院ニ於テモ多年論議セラレ
夕問題ハ、公定價格ノ設定ト云フコトデア
ル、政府ガ假ニ米穀調節ノ意思アリ、又之
ニ相當ナ方法ヲ執ラントシテモ、第一ニ困
難ヲ感ズル點ハ如何ナル價格ガ適當デアツ
テ、如何ナル價格ガ不適當デアルカト云フ、
此標準點ヲ見出スコトノ最大困難ヲ感ジテ
居ルノデアリマス、何人モ之ニ對シテハ非
常ナル困難ヲ感スルノデアリマス、此標準
ヲ持タズシテ、徒ニ價格ノ調節ト云フヤウ
ナコトヲ始メレバ、偶、重大ナル波瀾ヲ捲
起シ、損書ノミ殘シテ何等ノ效果ヲ生ジナ
イノデアリマス、然ルニ此公定價格ヲ定ム
ベシト云フ帝國農會、其他ノ要望ハ今回
政府ハ何等考慮ノ中ニ置カレナカンタモノ
ト見エル、本法改正ノ場合ニ於テ、眞ニ米
價ノ調節ヲ徹底的ニ行ハントスルナラバ、
少クトモ時價ヲ以テ買上グベシト云フ條
文ヲ除キ、又公定價格ヲ決メル、或ハ政府
ノ豫定價格ヲ何ニ依ッテ定メルカト云フ標
準ヲ定メテ、此基礎ニ依シテ實行ヲスルト
云フコトニシナケレバナラヌ、單ニ言葉ダ
ケニ依ッテ、法律ノ文句ダケデ以テ此效力
ヲ擧ゲルコトハ、蓋シ至難ナリト吾々ハ思
フ、之ニ對シテ政府ハ何故ニ此公定價格ヲ決
メル、若クハ豫定價格ヲ決メルト云フコト
ニ付テノ方法ヲ法文ノ中ニ加ヘルコトヲシ
ナカッタノデアリマスカ、是等ヲ除イテ、
之ヲ安全ニ行ヒ得ルト云フナラバ、其理由
ヲ詳細ニ徹底的ニ御說明アランコトヲ冀フ
ノデアリマス、最後ニ劈頭ニ申上ゲマシタ
通リ、此問題ハ一面ニ於テハ、農村振興ノ
例カラハ適當ナル米價ノ昂騰ヲ希望シ、社
會政策的ノ見地ヨリシテ、一般消費者ハ成
八ハ、低廉ナル食物ヲ要求スル、生產費
ノ兩方面ニ於テハ反對ノ希望ヲ持シテ居ル
ノデアリマス、之ヲ調節スルト云フコトデ
アリマスカラ、米價ノ調節ナルモノハ單純
ニ經濟關係ノミナラズシテ、一面ニ於テ我
國ノ食糧自給ノ問題ニ對シテ深キ考慮ヲ拂
ハナケレバナラヌト共ニ、一面ニ於テ社會
政策的ノ見地ニ於テ、此低廉ト云フコトヲ
考ヘナケレバナラナイ、此矛盾シタル二ツ
ノ目的ヲ調和シテ行クト云フノデアリマス
ルカラ、先年此價格ノ調節ノ文字ニ付テ
ハ貴族院ニ於テ非常ナル論難攻撃ヲ受ケ
テ削除セラレタノデアリマス、其削除セラ
レタコトノ可否ヲ吾々ハ今言フノデナイ
ガ、此歴史アリ、此貴族院ニ於ケル反對ノ
爲ニ削除セラレタト云フ苦キ經驗ヲ嘗メデ
居ル此法律、之ヲ再ビ玆ニ政府ガ御提案ニ
ナルニ付テハ、貴族院ハ必ズ喜ンデ政府案
ニ贊成シテ、再ビ元ノ如キ、往年蒙リタル
ガ如キ所ノ非難ヲ受ケテ、途中ニ於テ此
案ガ潰レルヤウナ虞ハナシト御確信ガ付イ
タノデアリマセウト存ジマスガ、之ニ就テ
ハ吾こ本案ヲ審查シ、或ハ賛否ヲ表スルニ
付テ、兩院ノ協賛ニ依ッテ成立ツベキ此法
律案デアルガ、政府ハ之ニ對シテ貴族院ト
ハ相當ナ諒解ノ下ニ御出シニナッタモノデ
アルカ、或ハ最早貴族院ハ與シ易シトシテ
之ヲ御出シニナッタノデアルカ、此點ニ付テ
ハ御深切ナル御答ヲ得タイト存ズルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=22
-
023・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋農商務大臣
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=23
-
024・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 吉植君ノ第一ノ
御尋ハ、今度ノ改正ニ「市價」ト云フ文字ヲ
用キテアル、而シテ尙ホ從來カラ法律ノ中
ニ在ル「時價」ト云フコトヲ其儘ニ存シテア
ル、是ハ同ジヤウナ意味デアラウ、一ケニ
於テハ時價デ買フト云フコトニナッテ居ル、
ソコデ何ヲ標準トスルノカ、斯ウ云フ御尋
デアリマス、少シク根本ニ於テ吉植君ト政
府當局トノ考ガ違フ點ガアルヤウニ私ハ考
ヘル當初此米穀法ヲ設定シタル時分ニ
ハ是ハ先ヅ始メテノ試ミデアル、其時分
ニハ或ハ政府ニ於テ最低最高ノ米價ヲ公定
シテ、殆ド政府ノ專賣事業ノ如クニ之ヲ扱
ハネバナラヌト云フ論モ中ニ强カッタノデ
アリマス、然ルニ此公定相場ヲ決メルト云
フ手段方法ニ至ッテハ、何人モ是ナラバ洵
ニ結構ダト云フ方法ヲ見出スコトガ出來ナ
イ、方法ガナイノデアル、其當事ニ於キマ
シテハ愈〓以テ『政府ガ最低最高ノ價格ヲ
決スル必要ガアッテ、之ヲ行ハウトスルナラ
先以テ其準備トシテ各府縣ニ農政委員
若クハ農事委員ト云フヤウナモノヲ組織シ
テ、之ニ依シテ各府縣ノ或ハ米穀ヲ作ル所
ノ生產費用、又消費ノ高、殘存米ノ高、生
產高、每年ノ作枘等ヲ詳細ニ知リ得ル所ノ
統計ヲ作ル機關ガナケレバ、最高最低ノ價
格ヲ公定スルト云フコトハ到底出來ナイ、
又其機關ガ出來タ所デ、是ハ容易ナ仕事デ
ナイ、言フベクシテ行ハレナイト云フコト
デ、其說ハ實行ガ出來ナカタ、兎ニ角數量
ノ調節ニ依ッテ、米價ノ餘リニ暴騰暴落スル
ト云フ弊ヲ除クト云フコトノ試ミニ、此法
律ヲ設ケラレタ、爾來之ヲ實行シテノ經驗
ニ依リマスト云フト、數量ノ調節ノミニ捉
ハレテハ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ、政
府ガ此相場ハ高イカラ之ヲ安クシヤウト、
是ハ安イカラ之ヲ高クシヤウト云ウテ、政府
ガ米ノ上ゲ下ゲヲ積極的ニ行ハウトスルコト
ハ、是ハ政府ノ力ニ於テモ出來ナイ、最モ一
般ノ消費者ヲシテ不安ノ念ヲ起サシムルノ
ハ、此重要ナル米價ノ安定ヲ得ナイノガ一
番一般國民ノ困ル點デアル、數量ノ調節ノ
ミデハ此米價ノ暴騰暴落ト云フ變動ヲ防グ
ニ足リナイ、ドウシテモ矢張市價ト云フコ
トニ考慮ヲ如ヘテ、或ハ政府ガ米ヲ賣ヲタ
リ買ッタリ、或ハ關稅ヲ廢シタリ、或ハ復
シタリスル、此方法ヲ行フニハ矢張市價ト
云フコトニモ考ヲ凝ラシテ、サウシテ米價
ノ變動ヲ防グト云フコトニシナケレバイカ
又、從來市價ト云フ文字ガ入ラナクトモ、
數量調節ト云フ意味ニ於テ米ノ賣買ヲ行ッ
テモ、自ラ市價ノ調節ニモンレハナッテ居ッ
タノデアル、併ナガラ世ノ中ニハ政府ノサ
ウ云フ意思ヲ以テヤッテ居ルト云フコトガ、
十分ニ實際ノ事ガ分ラヌノデ、唯〓政府ハ
數量ノミニ重キヲ置イテ、價ノ變動ハ問ハ
ヌノダト云フヤウナ疑ヲ起ス者ガ澤山アル
ノデアリマス、寧口法文ノ上ニサウ云フ疑
ヲ存シテ置クコトハ宜シクナイカラシテ、
今日改正ヲシテ「市價」ト云フ文字ヲ入レタ
譯デアリマス、ソレカラ第二ノ御尋ハ、愈〓
市價ヲ調節スルト云フナラバ其資金ガ
從來ノ如キ六、七千万圓ノ資金デハ固ヨリ
足リナカラウ、愈。米が下ッタ時分ニ之ヲ適
當ナ所ニ引戾サウト云フノニハ、賣手ガア
レバアルダケ皆買フダケノ力ガナケレバナ
ラヌ、ソレ等ノ資金ノ方ニハ一向考慮ヲ加
ヘテ居ラヌ、斯ウ云フコトデアル、是ハ第
一問ノ理由デ既ニ御分リダラウト思フガ、
農商務省ガ米ヲ買フ時ニハ、吉植君ハ必ズ
時價デ買フ、斯ウ云フヤウニ解釋サレテ居
ルガ、法文ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ムト云
フコトデアル、時價ニ準據シテ之ヲ定ムト
云フコトハ、其時ノ米ガ例ヘバ安イカラ買
入レルト云フ場合ニハ、將來ノ市場ノ趨勢、
過去ノ米價ノ變動等ヲ考慮シテ、サウシテ
定メルノガ、卽チ時價ニ準據シテ之ヲ定メ
ルト云フコトニナッテ居ルノデアル(拍手)
又政府ガ米ヲ買フ、或ハ賣ルト云フコトハ
必ズ之ヲ高クシヤウ、之ヲ安クシヤウト云
フノガ第一ノ目的デハナイ、是ヨリ高クシ
やさ、將來是ヨリ米價ノ高クナルコトハ一
般社會ノ迷惑ニナルコトダシ、又餘リニ米
ガ高過ギル是ヨリ高クシタクナイト云フ
時分ニ政府ガ米ヲ賣ルノガ、卽チ是ヨリ上
ラントスル勢ヲ抑ヘルノデアル(ヒヤ〓〓)
又安クナル時モ其通リデアル、是ヨリ安ク
ナッテハ農家ガ到底米作ヲシテモ引合ハナ
イヤウニナルカラ、是ヨリ安クナッテハ又
社會ノ爲ニ宜シクナイト云フ時分ニ、其下
ルコトヲ止メル爲ニ買入レルノデアル防
グノデアル、上ラントスルモノヲ抑ヘ、下
ラントスルモノヲ防グ、卽チ關稅ノ〓的モ
矢張ソコニアルノデアル、第三ニ農會其他
カラシテ要求シテ居ル、何故米價ヲ公ニ定
メナイカ、米價ノ公定相場ヲ定メズシテ徒
ニ政府ガ米ノ賣買ヲ爲スト云フヤウナコト
ハ却テ社會ニ不安ノ念ヲ懐カシメル、何
等役ニ立タヌト云フヤウナ御話ダガ、只今
マデ說明ヲシタル趣意ヲ能ク〓味セラレタ
ナラバ、決シテ此米穀法ガ徒法デハナイト
云フコトハ御了解ニナルダラウト思フ、公
定相場ノ定メ難イト云フコトハ前ニ申シタ
通リ、如何ナル標準ニ依ルカト云ヘバ、此
標準ヲ定メル所ノ機關ガ全國普ク出來
テ-ソレデスラモ尙ホムヅカシイモノデ
アル、卽チ之ヲ十分ニヤラウト思ヘバ、遂ニ
ハ政府ガ米穀ノ專賣ヲシナケレバナラス、
併シ是ハ最後ノ手段デ、最モ嫌フ手段デア
ル、併シ國民ノ生活上ドウシテモ政府ガ立
入ッテ專賣ヲシナケレバナラヌト云フ時期
ガ來リ、其事情ガ來レバ、是ハ政府ハ考慮
シナケレバナラヌ、併シ今日ノ所デハマダ
米ノ專賣ヲセネバナラヌト云フヤウニ事情
ガ切迫シテハ居ラヌノデアリマス、旣ニ米
ノ專賣ヲシナイト云フ以上ハ、政府ガ米ノ
價ヲ公定スルノ必要ハ今日ナイノデアル、
又米ノ價ヲ公定シテ政府ガ專賣ヲ行ハナイ
ト云フコトニナレバ、寧口是ハ農業ノ上ニ
於テ競爭ノ念慮ガ乏クナリ、米ノ改良、
生產費ノ低減ヲ圖ル、サウ云フヤウナ方面
ニ努力スルコトガナクナッテ行クノデアリ
マスカラ、是ハ容易ニ公定相場ト云フモノ
ヲ定メルコトハ出來ナイ、一方ニ於テハ何
所マデモ農家自ラヲシテ勞力ニ代ユルニ機
械ヲ以テスル、肥料關係、其他機械ヲ用ヰ
テ勞力ヲ省イテ、成ベク此農產物ノ生產費
ヲ低下スルト云フコトヲ、自ラ農家ヲシテ
努メシムルヤウニシ、指導スルト云フ考デ
アル、第四ニハ貴族院ガ先年此法案ノ出タ
時分ニ、價格ノ調節ト云フコトニ付テ大ニ
反對ガアッテ、遂ニ削ラレタヤウダト云フ
御話ダガ、私モ或ハソンナ事ガアッタヤウ
ニモ覺エテ居ル然ルニ此法案ガ今日出テ
市價ト云フコトガ這八ルト先年ノ價格ト
同ジヤウナ譯ニナッテ、貴族院ニ於テ大反
對ヲ受ケルデアラウガ、政府ハソレトモ豫
メ此點ニ付テ貴族院ノ諒解ヲ得テ居ルノカ
ト云フ御尋デアルガ、斷ジテワンナ事ハナ
イ、政府ガ信ジテ以テ必要ナリトスル、サ
ウシテ提出スル所ノ法案ニ付テ、何デモカ
ンデモ豫メ〓デ諒解ヲ求メテ、滑ニ通過ス
ルト云フヤウナコトハ圖ラヌノデアリマ
ス(拍手)是ハ貴族院ニ出テ、貴族院ニ於テ
異論ガアリ、非難ガアルナラバ、政府ハソ
レ相當ニ其時ニ諒解ヲ求メルノデアッテ、豫
メ求メテハ居リマセヌ、是ダケ御答シテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=24
-
025・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 只今ノ御答ニ依シテ政府
ノ米穀調節問題ニ對スル御意見ノ在ル所ハ
略
〔「聞エヌ」「分ラヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=25
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026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御尋デアリマスレバ
登壇ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=26
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027・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 簡單デアリマス
〔「分ラヌ分ラヌ」「登壇々々」ト呼フ者
アリ〕
(吉植庄一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=27
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028・吉植庄一郎
○吉植庄一郎君 只今、農商務大臣ノ御答
ヲ承リマスルト、政府ノ米ノ調節ニ對スル
大體ノ程度ガ分ッタ、多年國民ノ要望シテ居
ル米價調節ノ問題ニ對シテハ、從來ノ內閣
ガ執ッテ居ル方針ト何等變リガナイト云フ
コトガ明ニナッタ(拍手)卽チ此市價ノ調節
ト云フ文字ハ加ヘタガ、從來モ數量ノ調節
ト云フモノト同時ニ市價ノ調節モシテ居ッ
タノデアル、唯〓之ニ對シテ法文ノ上ニ市價
ノ調節ト云フコトガ這人ッテ居ラヌノデ、動
モスレバ疑義ガ生ジテ彼此スルカラシテ、
今マデモヤッテ居ッタノヲ唯〓法文ニ之ヲ書
イタニ過ギナイト云フコトデアリマシテ、
卽チ資金關係ニ於テモ從前ノ資金ニ何等ノ
增減ヲ加ヘズ、其他ノ時價ヲ以テ買上グベ
シト云フ點ニ付テモ、何等考慮ヲ加ヘズ、
公定價格ノ點ニ付テモ考慮ヲ加ヘズシテ、
從前ノ通リノ法律ニ唯、疑義ガアルカラ玆
ニ「市價」ト云フ文字ヲ入レタト云フコトニ
御說明ニナッタノデ、私ハ滿足ヲ致シマス、
吾々ハ此點ニ付テハ多年天下ノ希望シテ居
ルノハ左樣ナ姑息不徹底ナモノニアラズ
シテ、根本的ニ此問題ヲ解決セントスルコ
トハ(拍手)獨リ全國農村ノ要求ノミナラ
ズ、消費者一般モ熱烈ニ此問題ノ根本的解
決ヲ希望シテ居ルモノト吾々ハ思ッテ居ル
(拍手)然ルニ此問題ニ對スル現内閣ハ、斯
ノ如キ姑息ノ方法ニ依ッテ、一時ヲ糊塗セン
トスルノハ頗ル遺憾ニ堪ヘナイノデアリマ
ス(拍手)此以外ハ委員會ニ於テ更ニ質問應
答ヲ重ネテ、吾々ハ之ニ對スル意見ヲ發表
スル積リデアリマスカラ、質問ハ之ニ止メ
テ-政府ガ此程度デアルト云フコトヲ明
ニシタコトニ對シテ滿足致シテ、私ハ之ニ
止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=28
-
029・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=29
-
030・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋農商務大臣
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=30
-
031・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 從來ノ政府ガ
行ッタ所ト何等變リガナイト云フコトデア
ル、大體ニ於テ變リガナイト言得ルノデア
ル、併ナガラ數量ノ調節ト云フコドガ主ト
ナッテ居リマスカラシテ、其數量ノ調節ヲ爲
ス上ニ於テ市價ト云フコトニ重キヲ置カナ
カッタト云フ憾ガアッタ、ソレ故ニ今日此市
價ト云フコトヲ入レテ、サウシテ此調節ヲ
行フコトヲ、將來文字ニ拘泥シ行政官ノ更
ル度ニ其方針ノ變ラヌヤウニ明ニシタノデ
アル(拍手)ソレカラ先刻吉植君ハ貴族院ニ
於テ反對ヲ受ケテ價格ト云フ文字ヲ削ラレ
タト云フヤウニ御演說ニナッタ、私モ或ハサ
ウデアッタカト思シテ、御答ヲシタノダガ、
只今聽キマスト云フト、貴族院ニ於テ其問
題ハナクシテ、貴族院ハ政府提出ノ通リデ
賛成セラレタノデアリマスカラ、是ハ一寸
御答ヲシテ置ク発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=31
-
032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第三、右兩案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シ
マス
第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=32
-
033・作間耕逸
○作間耕逸君 兩案ヲ一括シテ、委員ノ數
ヲ特ニ十八名トシ、議長ニ於テ指名セラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=33
-
034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=34
-
035・作間耕逸
○作間耕逸君 議事日程變更ニ關スル緊急
動議ヲ提出致シマス、卽チ政府提出預金部
預金法案、同政府提出大藏省預金部特別會
計法案及同政府提出臨時國庫證券收入金特
別會計法廢止法律案ヲ此際特ニ上程シテ、
一括議題トナシ、其第一讀會ノ續ヲ開カレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=35
-
036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=36
-
037・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、預金部
預金法案、大藏省預金部特別會計法案、臨
時國庫證劵收入金特別會計法廢止法律案、
右三案ハ同一委員ニ付託シタ議案デアリマ
スカラ、一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス
預金部預金法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一預金部預金法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月七日
預金部預金法案委員長
武內作平
衆議院議長粕谷義三殿
大藏省預金部特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一大藏省預金部特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月七日
大藏省預金部特別
會計法案委員長
武內作平
衆議院議長粕谷義三股
臨時國庫證券收入金特別會計法廢止法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一臨時國庫證券收入金特別會計法廢止法
律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年二月七日
臨時國庫證劵收入金特別
會計法廢止法律案委員長
武內作平
衆議院議長粕谷義三殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=37
-
038・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 委員長ノ報告ヲ許シ
マス-委員長武內作平君
〔武內作平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=38
-
039・武内作平
○武內作平君 預金部預金法案、大藏省預
金部特別會計法案ノ委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告致シマス、委員會ニ於キマシテハ
連日ニ亙リマシテ慎重審議ヲ致シマシタ
ガ、此場合決議ニ直接ノ關係アル事項ニ限
リ極ク簡單ニ御報告ヲ致ス積リデアリマ
ス、預金部ノ預金ハ現在ニ於キマシテ約十
六億万圓程ニ上ッテ居ルノデアリマス其
中ノ最モ多額ヲ占メテ居リマスノハ郵便
貯金デアリマシテ十一億七千七百三十五万
六千圓デアリマス、其外ニ此法律命令ニ依
リマス預金ヲ合算致シマシテ、十三億七千
六百六十六万二千四百四十六圓ノ多キニ達
シテ居リマスガ、尙ホ其他ニ積立金ト假受
金トモ申スベキ金額ガゴザイマシテ、ソレ
ヲ合算致シマスト約十六億ニ近イモノニ
ナッテ居リマス、特ニ注意ヲ要シマスコトハ
此金ノ大部分ガ多數國民ノ心血ヲ注イダ所
謂貯蓄金デアルト云フコトデアリマス、是
等ノ多數ノ金ガ如何ナル方面ニ於テ運用サ
レテ居ルカト申シマスト、國債證劵ニ運用
サレテアリマスモノガ一億四千七百万圓許
リアリマス、サウシテ一般會計及特別會計
ニ貸付ケテアル金額ガ一億六千二百六十万
圓デアリマス、サウシテ地方ノ資金ニナツ
テ居リマスモノガ四億一一千三百二十万圓、
事業資金ニナッテ居リマスモノガ、一億八千
五百四十万圓、海外事業資金ニナッテ居リマ
スモノガ一億五千二百万圓デアリマス、其外
ニ在外預金ガ二億二千八百六十万圓、當座
預金ガ一億千二百万圓デアリマス、尙ホ小
口ノモノガ四千八百万圓アリマシテ、合計
十五億五千八百九十万圓ト云フモノガ預金
部ノ預金ノ運用シテ居ルロ別デアリマス、
之ニ依テ見マスト、此預金部ノ預金ハ一ニ
ハ國家ノ財政政策ノ重要ナル機關トモナッ
テ居リマス、又農村振興或ハ產業開發ト云
フヤウナ事ニモ缺クベカラザル機關ニナッ
テ居ルノデアリマス、サウ云フヤウナ重要
ナル所ノ關係ニ在ル、此實庫デアル大資金
ガドウ云フ方法ニ依ッテ運用サレテ居ルカ
ト申シマスト、玆ニ遺憾ガ甚ダ少クナカツ
タノデアリマス、預金規則ニ依リマスト、
大藏卿ハ預金ヲ保管シテ利殖ヲ圖ルト云フ
規定ガアリマスガ、其外ハ總テノ事ヲ大藏
卿限リデ之ヲ決行スルコトニナッテ居ル、
所謂大藏卿ガ獨斷専行ヲシテ宜シイト云フ
コトニナッテ居ルノデアリマス、デアリマ
スカラシテ、是程大切ナル基金、是程大切
ナル關係ヲ持シテ居ル所ノ資金ガ、如何ニ
運用サレテ居ルカト云フコトガ、殆ド國民
ニ明白デナカッタ、又獨斷專行ヲ致スノデア
リマスカラ、其運用ノ中ニハ往々機宜ヲ失
シタモノモ少クナカッタト存ジラレルノデ
アリマス、委員會ニ於キマシテモ屢、委員と
ノ議論ノ中ニモ現ハレマシタガ、所謂世間
カラハ是ハ伏魔殿デアルトカ、或ハ預金ノ
所在ガ不鮮明デアルトカ云フヤウナ風ナ非
難ヲ受ケタノデス、所ガ今囘此提案ヲサレ
マシタ所ノ預金部法案ハ是等ノ多年ノ國
民ノ期待、又議院ニ於テモ屢、論議サレマ
シタ所ノ希望ヲ達スルコトノ-達成スル
コトノ爲ニ預金ノ運用ニ付キマシテ、從來
ノ獨斷專行ヲ止メマシテ、此預金部資金運
用委員會ニ諮詢ヲシテ、サウシテ總テノ事
ヲ決定スルト云フコトニ規定ヲ爲シタノデ
ス、尙ホ此運用ノ目的ニ付キマシテモ、有
利且ツ確實ナル方法ヲ以テ國家公共ノ利益
ノ爲ニ、之ヲ運用スルト云フ規定ヲ致シタ
ノデアリマス、之ニ關聯ヲ致シマシテ、此
特別會計法案ノ中ニ於キマシテ、此特別會
計法案ハ從前モ矢張存在ハ致シタノデア
リマスルケレドモ、餘程其規定ハ不完全デ
アリマシタガ、矢張今囘ノ分ニハ其第六條
ニ於キマシテ、政府ハ每年本會計ノ歲入歲
出豫算ヲ調製シテ、歲入歳出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スル、斯ウ云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ
シテ、一面ニ於キマシテ預金ノ收支或ハ運
用ニ付テハ每年帝國議會ノ承認ヲ求メル
ト同時ニ、一方ニ於キマシテハ大藏大臣ガ
獨斷專門ヲ爲サズ、預金部運用委員ニ諮詢
シテ、之ヲ決行スル、斯ウ云フ事ニナッタ
ノデアリマスルカラ、從來ノ如キ祕密、不
公明ト云フヤウナコトガ、全ク打消サルヽ
事ニナルノデアリマス、此運用委員會ノ事
ニ付キマシテハ、本案ニ於キマシテハ其組
織ハ勅令ニ讓ル、運用委員會ノ組織權限及
資金ノ運用ニ關スル規定ハ之ヲ勅令ヲ以テ
定ム、要スルニ勅令ニ譲シテアルノデアリ
マスガ、政府ハ未定稿トシテ出シテアリマ
スガ、委員會ニ對シ勅令案ヲ提示致シマシ
ク、其勅令案ニ依リマスルト云フト、運用
委員ハ、員數ハ十名乃至十五名ニシテ、高
等官ノ中ヨリ半數、其他ハ民間カラ選任ヲ
スル、推薦ヲスル、其中デ矢張貴衆兩院議
員モ加ハルンデアル、斯ウ云フ說明ガ附加
ザレテアッタノデス、此點ニ對シマシテハ
委員問ニ於キマシテモ尙ホ一層此組織權限
等ノ事ヲ法律ニ規定シタイト云フ說、若ク
ハ勅令ニ讓ルニシテモ尙ホ一層保證ヲ取ノ
テ置キタイト云フヤウナ意見ガアリマシタ
ケレドモ、多數ハ其說ニハ贊成シマセヌデ
シタ、右樣ナ次第デアリマスカラ、本案ヲ
採決スルニ當リマシテハ各派ノ代表者何
レモ滿腔ノ熱誠ヲ以チマシテ、最モ機宜ニ
適シタル立法デアル、或ハ是ハ全ク民衆的
立法デアル、或ハ伏魔殿ヲ始メテ打破スル
コトガ出來ルノデアルト云フヤウナ、熱心
ナル所ノ賛同ノ言葉ヲ以テ、滿場一致ヲ以テ
本案ニ贊成ヲサレタノデアリマス、之ヲ賛
成セラルヽト同時ニ、若尾委員ヨリ希望事
項ノ御提案ガアリマシタ、一寸此所デ朗讀
ヲ致シマス一、政府ハ内外事業資金ノ整理
ニ努メ運用資金ノ充實ヲ圖ルヘシ、二、政
府ハ地方資金融通ノ途ヲ擴張シ以テ產業ノ
開發竝ニ社會事業ノ助成ニ資スヘシ三、政
府ハ運用委員會ノ機能ヲ發揮セシムル爲メ
委員ノ選任ニ付キ特ニ留意スヘシ」此御意見
ガ提案ヲサレマシテ、第一ハ滿場一致ヲ以テ
可決致シマシタ、第二、第三ハ多數ヲ以テ
是ガ可決致シタノデアリマス、其他ニ石原
君ヨリモ希望事項ノ御提案ガアリマシタ
ガ、是ハ少數ニ依シテ否決サレタノデアリ
甲人、右樣ノ次第デアリマシテ、預金部預
金法案、竝ニ預金部特別會計法案トモ滿場
一致ヲ以テ可決シタノデアリマスカラ、ド
ウゾ此報告通リニ御協賛アランコトヲ切望
致シマス、次ニ臨時國庫證劵收入金特別會
計法廢止法律案ニ付テ委員會ノ經過結果ヲ
報告致シマス、本案ニ付キマシテハ現內閣
ノ財政計畫ノ一部トシテ大藏大臣ヨリ屢〓
說明サレテ居ッタ所デアリマシテ、委員會
ニ於キマシテモ格別ノ質問應答モアリマセ
又、唯。特ニ注意シテ〓究サレマシタ事項
ハ此特別會計ヲ廢スルコトガ、對支對露
ノ貸金ノ囘收ノ障害トハナラヌカト云フヤ
ウナ意見ガアリマシタガ、政府ニ於キマシ
テハ唯、會計ノ形式ニ關スル變更デアルカ
ラ、決シテ左樣ナ憂ハナイ、又此金ハ絕對
ニ取レナイノデハナイ、或ハ取レルノデア
ルカト云フヤウナ質問應答ガアリマシタ
ガ、政府ニ於キマシテハ此對支借款ト對露
借款トヲ同一ニ論ズルコトハ出來ナイガ、又
必シモ是ガ取レヌモノトハ信ジテ居ラヌ、
斯ウ云フ答辯デアリマシタ、デ滿場一致ヲ
以テ本案モ可決致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、此發言ヲ許シマスー-田中讓君
〔田中讓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=40
-
041・田中讓
○田中讓君 預金部預金法案ニ關スル質疑、
私ハ本案ニ付テ聊カ質疑ノ點ヲ述ベマシ
テ、大藏當局者ノ御說明ヲ御願シタイト存
ジマス、第一ニハ濱口藏相ガ旣ニ預金部資
金運用方法改正ノ必要ヲ認メラレナガラ、
何ガ故ニ其運用範圍ヲ本法案ノ中ニ一層明
確ニ、且ツ具體的ニ規定セラレナイノデアリ
マスカ、此點ヲ御伺致シタイノデアリマス、
諸君、英國ニ於テハ郵便貯金運用ノ範圍ハ
法律ヲ以テ、公債又ハ議會ガ元利支拂ヲ保
障シタル債劵ニ限ルト規定シテアリマス、
然ルニ今囘ノ法律案ニ依リマスレバ、預金
部資金運用委員會ノ組織權限、及預金部資
金ノ運用ニ關シテハ、之ヲ勅令ニ讓ルトナッ
テ居リマス、而シテ預金部ノ資金運用ノ不
確實ニ流レナイト云フ確乎タル保障ヲ與ヘ
テ居ナイノデアリマス、是ハ本員ノ此運用
ノ範圍ヲ公債其他政府ガ元利支拂ヲ保障シ
タル債券ニ限ルト法律ニ依ッテ規定スベキ
モノデアルト考ヘルノデアリマス、濱口藏
相ハ斯ノ如キ法案ガ果シテ預金部資金運用
ヲ確實ニシ、放漫ニ流レナイモノト御考ニ
ナッテ居ルノデゴザイマセウカ、一應御伺シ
タイノデアリマス、第二ト致シマシテ御伺
致シタイノハ、郵便貯金ノ利子ノ問題デア
リマス、郵便貯金ノ利子ハ預入レタ月ト引
出ス月トヲ無利子ト致シ、四步八厘ノ低利デ
アリマス、デアリマスカラ實際ノ利廻ハ遙
ニ其以下ニ在リマス、英米兩國ニ於ケル郵
便貯金ノ利子ハ定期預金ノ利子ト略〓同率
デアリマス、我國ノ定期預金ノ利子ハ六步
乃至六步五厘デアリマス、公債證書ハ六步
七八厘ノ利廻ニナッテ居リマス、然ラバ何故
ニ郵便貯金ノ利子ヲ定期預金ノ利子ニ近キ
六步位ニセラレナイノデアルカ、又之ヲ六
步位ニ引上ゲル御意思ハアリマセヌカ、御
承知ノ如ク郵便貯金ハ中產以下ノ人、、ノ貯
金ノ利子ヲ四步何厘ト云フ低率ニ定メテ置
イテ之ヲ國民一部ノ爲ニ、種々ノ目的ノ爲
ニ低利資金ノ貸出ト云フコトハ社會正義ノ
上ニ於テ最モ公平ナル處置ト御考ニナッテ
居ラレマスカ、是等ノ點ニ付キマシテ大
藏當局ノ御意見ヲ御伺致シタイノデアリマ
ス
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=41
-
042・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 只今ノ田中君ノ
御質問ニ御答ヲ致シマス、第一ノ御質問ハ、
預金部ノ資金ノ運用ノ範圍ヲ何故ニ勅令ニ
讓リ、法律ヲ以テ規定シナイノデアルカ、
之ヲ勅令ニ讓ルト云フコトハ運用ノ確實ヲ
期スル所以デナイト思フガ如何デアルト云
フ御質問デアリマシタ、此運用ノ範圍、竝
ニ運用ノ主義ニ付キマシテハ既ニ政府提出
ノ法律案ニ明記致シテアリマス、卽チ其目
的ハ國家公共ノ利益ノ爲而シテ之ヲ制限
スルニ有利確實、是ダケノ條文ガ法律ニ明
記シテアリマスル以上ハ、其殘餘ハ之ヲ勅
令ニ讓リマシテモ、毫モ差支ハナイト政府
ハ考ヘマス(拍手)第二ハ郵便貯金ノ利子ヲ
何故引上ゲナイカト云フ御議論デアリマシ
ク、是ハ銀行ノ當座預金ナドト比較ヲ取ラ
レテ、現在ノ郵便貯金ノ利子ガ低キニ過ギ
ルト云フ御意見ノヤウニ伺シタノデアリマ
ス、斯ノ如キ御意見ハ屢、承ハル所ノ御議
論デアリマスルガ、政府ハ今日ニ於テ郵便
貯金ノ利子ヲ引上ゲルト云フ考ハ持テ居リ
マセヌ、若シ郵便貯金ノ利子ヲ引上ゲマス
ト云フト、預金部ノ資金ヲ國家公共ノ利益
ノ爲ニ十分ニ利用スルト云フ目的ト相反ス
ルノデアリマス、卽チ郵便貯金ノ利子ガ上
リマスレバ、ソレダケ預金部カラ融通セラ
レル所ノ低利資金ノ利子ガ上ルノデアリマ
ス、此間ニ於キマシテ、預金部ハ餘リ多ク
ノ利益ハ取ッテ居リマセヌ、隨テ其資金ノ元
ニナリマス所ノ郵便貯金ニ向ッテ利子ノ引
上ゲヲ致シマシタナラバ、勢ヒ預金部ノ貸
付ノ利子ヲ引上ゲザルヲ得ナイノデアリマ
ス、此事ハ決シテ國家公共ノ利益ニ合致ス
ルモノデアルト考ヘナイノデアリマス、ソ
レ故ニ郵便貯金ノ利子ハ引上ゲナイ方ガ得
策デアルト云フ考ヲ持ンテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=42
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043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 中村嘉壽君ヨリ本案
ニ對スル附帶ノ決議ガ提出サレテ居リマ
ス、此場合趣旨辯明ヲ許シマス、中村嘉壽
君
〔中村嘉壽君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=43
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044・中村嘉壽
○中村嘉壽君 私ハ只今委員長カラ御報告
ニナリマシタ預金部預金法案、竝ニ大藏省
預金部特別會計法案ニ對シマシテ、附帶決
議ヲ動議トシテ出スモノデゴザイマスル
ガ、此動議ヲ出シマスル前ニ少シバカリ其
理由趣旨ヲバ申上ゲテ見タイト思フノデア
リマス、御水知ノ通リ只今委員長ノ御話モ
アリマシタヤウニ、現在大藏省ノ預金部ニ
於キマシテハ、約十五六億圓ノ大金ヲバ擁
シテ居リマシテ、是ハ恰モ一ツノ銀行ト同
ジヤウナ仕事ヲシテ居ルノデゴザイマスガ、
而モ資本金ヲ要セズシテ、國家ノ歳入ト殆
ド同額ニ相當スル所ノ金ヲ動カシテ居リマ
スケレドモ、此動カス方法ニ於テ過去ノ形
跡ヲ見マスルト云フト、頗ル疑惑ヲ持タセ
ル點ガ澤山アルヤウニ考ヘルノデゴザイマ
ス、故ニ或ル意味ニ於キマシテ、此大藏省
ノ預金部ハ恰モ一種ノ伏魔殿ノ如ク考ヘラ
レテ居ッタノデゴザイマスルガ、本期議會
ニ於キマシテ政府ガ此預金部ヲ改正シヤ
ウト云フヤウナ御考カラシテ、斯ノ如キ法
案ヲ御出シニナリマシタコトハ、洵ニ私共
欣幸ノ至ニ存ズル次第デゴザイマス、デ唯、こ
斯ウ云フヤウナ法案ニ依リマシテ、一步進
ンダ所ノ改善ハ出來マスルケレドモ、マダ
足ラナイ所ガアルト考ヘルノデゴザイマ
ス、現在ノ狀態ヲ見テ見マスト云フト、此
預金部ニゴザイマスル十五六億圓ノ此金
ガ、多クハ地方カラ集クテ來テ居ル、其地
方カラ集フテ來テ居ル所ノ數字ヲ正確ニ調
査シタイト云フノデ、材料ヲ御願致シマシ
タケレドモ、餘リ正確ナ數字ヲ得ラレナ
カッタ、又之ヲ正確ニ致スニハ困難デモゴザ
イマセウガ、其數字ダケハ略、分リマシタ
ケレドモ、更ニ私共ハ此地方カラ集メラレ
夕所ノ金ノ幾部分ガ地方ニ還元サレテ居ル
カト云フコトヲ御尋シタノデゴザイマス、
之ニ對シマシテハ、政府委員ハ私共ニ此材
料ヲ提供スルコトハ約束ニナリマシタケレ
ドモ、一向何故カ其要領ヲ得夕所ノ材料ガ
集ッテ居リマセヌ、併ナガラ私共ノ推斷スル
所ニ依リマスト、昨年ノ三月末日ノ現在ニ於
キマシテ、預金部ノ金ガ十五億五千八百九
十万圓ト云フモノガゴザイマスガ、此中四億
二千三百二十万圓、卽チ二割七歩ト云フモ
ノガ、此地方ニ還元サレテ居ルカノ如キ數
字ヲ出サレタノデゴザイマス、併ナガラ此
數字ヲ仔細ニ點檢シテ見マスルト云フト、
普通低利資金ノ方ニ一億七千三百三十四万
三千圓、ソレカラ災害復舊資金ト云フ方ニ
六千六百八十五万九千圓、社會事業資金ト
云フ方ニ五千八百三十六万四千圓、震災復
舊費ト云フ方ニ一億二千四百五十七万九千
圓是ダケノ數字ガ計上セラレテゴザイマ
スルガ、此數字ノ中ノ第一震災復舊費ニ充
テラレテアリマス所ノ一億二千四百五十七
万九千圓ト云フモノガ、私ハ是ガ決シテ地
方ニ放資サレタモノト云フコトヲ認メルコ
トガ出來ナイノデゴザイマス、ソレカラ更
ニ又普通低利資金ト云フ方モ、ソレカラ社
會事業資金ト云フ此二ツノ數字モ、決シテ全
部ガ此地方ニ還元サレタト云フコトヲ認メ
ルコトガ出來ヌノデゴザイマス、僅ニ災害
復舊資金ト云フ六千六百八十五万九千圓ト
云フモノヲ、是スラモ全部地方ニ還兀サレ
タト云フコトハ認メルコトガ出來マセヌ、
ケレドモ稍〓是ハ正確ニ近イモノト致シテ
考ヘマスルト云フト、本當ニ吾々ガ推算シ
テ得タ所ノ數字ハ約一億八千二三百万圓ト
云フモノガ地方ニ還元サレタカノ如ク考へ
ルノデアリマス、此數字ヲ預金部ノ全額ニ
比較シテ見マスルト云フト、僅ニ一割二
分、ソレカラ郵便貯金ノ總額ハ十一億二千
四百万圓ト思ヒマスルガ、ソレニ對シテハ
僅ニ一割六分强ニシカ相當シナイノデアリ
さく、斯ウ云フヤウナ僅ノ金シカ地方ニ還
元サレテ居ラナイ、此狀態カラ見マスルト
云フト、安イ僅ニ四分八厘ノ利息ヲ以テ地
方カラ集メタ所ノ金ヲバ、多クハ中央及都
會ノ地ニ融通サレルト云フコトニナリマス
ルト云フト、地方ハ洵ニ資金ノ枯渴シテ行
クト云フ狀態デアルノデアリマス、獨リ此
郵便貯金ノミナラズ、現在日本ノ狀態ヲ見
マスルト云フト、有ユル銀行及保險會社ハ
債劵ニ依リ、或ハ又勸業債劵トカ、農工債
劵トカ、國庫債劵トカ云フ形ニ依リマシテ、
地方ノ資金ハ殆ドスツカラカンニ吸收サレ
テ居ルノデアリマス、其上ニ郵便貯金ノ形
ニ於テ、或ハ又簡易保險ト云フ形ニ於テ澤
山ノ金ガ吸收サレテ行クノデアリマスカ
ラ、面シテ是ハ一向還元サレルコトナクシ
テ使ハレテ居ルノデゴザイマスルカラ、如
何ニ致シマシテモ地方ニ資金ガ潤澤ドコロ
デハナイ、殆ド廻ルコトガ出來ナイコトニ
ナッテ居ル、日本ノ地方-卽チ常ニ口ヲ開
ケバ何レノ黨派モ農村振興ト云フコトヲ唱
ヘテ居リマスガ、此農村振興ノ問題ハ抑、
此所ニ出テ來ルモノト私共ハ思フノデゴザ
イマス、勿論是ダケノ資金ガ私ハ全部地方
カラ集ッタモノヲバ、全部地方ニ還元シロト
云フコトハ無理カモ知レヌト思ヒマス、何
トナレバ有利ニ扱フ人デアッテ、能力ガアツ
テ仕事ガ良クテ、サウシテ資産ノ無イ人ニ
資金ノ有ル人カラ持ッテ來テ廻スト云フコ
トガ卽チ銀行ノ原則デモアレバ、又有無相
通ズル原則デモゴザイマスカラ、決シテ地
方デ集メマシタ所ノ全部ヲ地方ニ還元シロ
ト云フコトハ申シマセヌケレドモ、我ガ日
本ノ狀態カラ見マスルト云フト、凡ソ七割
カ八割ト云フモノハ卽チ農村カラ形作ラレ
テ居ルノデゴザイマス、昔カラ申シマスヤ
ウニ、我國ハ農ヲ以テ本トスルト云フコト
ハ私ガ申上ゲルマデモナク、誰モ皆知ッテ
居ル所デアル、然ルニモ拘ラズ、此農村ト
カ漁村ト云フヤウナ地方ヲ顧ミナイデ居ル
ト云フコトガ、抑〓從來ノ爲政家ガ間違シ
テ居ッタノデハナイカト思フノデゴザイマ
ス、私共ハ色ミナル國こヲ經廻ノテ見マシ
テ、色ミナル地方ノ狀態ヲ見マスルト云フ
1、我國ノ如ク都會ノ地ガ良クシテ、地方
ガ疲弊シテ居ルノヲ見タコトガ無イノデゴ
ザイマス、歐羅巴ノミナラズ、其他各國ニ
於キマシテ日本ノ如キ所ハ無イト私ハ考へ
テ居リマスルガ、是デハ遂ニ我國ハ手足ノ
血管ニ血ガ通ハズ、頭ダケガ大キクナッチ、
活動ノ出來ナイヤウナ不健全ナル身體ニナ
ルト云フコトニ陷ルノデアリマス、故ニ私
共ガ考ヘマスルト國ノ政治ヲ執ル所ノ人
ハ宜シク國ノ事情ニ鑑ミマシテ、其遠近
ヲ問ハズ、其又何レヲ問ハズシテ、平均ニ
平等ナル政治ヲ布クト云フコトガ、卽チ其
根本方針デナケレバナラヌト思ヒマス、單
リ都會ノミヲ良クシテ地方ヲ惡クスルト云
フヤウナ傾向ガアルナラバ、遂ニ吾々ノ手
足ハ枯レテ往ク結果ニナルノデアリマスカ
ラ、私ハ政治家ハ宜シク地方ト云フモノヲ
考ヘテ、洋ヲ隔テタル孤島ニ在ルト、或ハ
輦糓ノ下ニ在ルトヲ問ハズ、出來得ベクン
バ平均ナル所ノ文化ノ恩澤ニ浴セシムルコ
トヲ努メナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、蓋シ我ガ皇室ノ思召モ亦其所ニ御在リ
ニナルニ違ヒナイト思フノデアリマス、白王室
ノ御稜威ハ卽チ國ノ何レヲ問ハズシテ平等
ニ涉ラナケレバナラヌ、普及サレナケレバナ
ラヌ、恰モ太陽ガ國ノ隅〓、洋ノ彼方ニ至ル
マデ過不及ナク平等ニ光線ヲ與ヘルガ如ク、
政治モ正ニ斯ノ如クナケレバナラヌモノデ
アルト私共ハ思フノデアリマス、恐クハ此意
見ニ付キマシテハ、皆サン方ハ少シモ御不同
意ハナイデアラウト思フノデアリマスガ、今
日ノ如キ事情ヲ見マスレバ、正ニ我國ノ政治
ハ之ニ反シタル方向ニ向ッテ居ルヤウニ思フ
ノデアリマス、私共ハ此意味ニ於キマシテ、
此低利資全ヲバ地方ニ還元スル方法ヲ講ジ
テ戴キタイト思フノデゴザイマス、ソレカ
ラ私共ハ此意味ニ於キマシテ、此案ニ對シ
マシテハ大體ニ於テ贊成デハゴザイマスケ
レドモ、玆ニ附帶決議ヲ緊急動議トシテ提
出スル次第デゴザイマスガ、附帶決議ハ第
一ニ預金部資金トシテ受入レタル郵便貯金
ノ總額ノ二分ノ一ヲ下ラザル金額ヲ地方資
金ノ運用ニ充當スベシ、ソレカラ第二ニ預
金部資金運用委員會ノ委員中ニ農村代表者
若干名ヲ加フヘシト云フ、此二項ヲ加ヘタ
イト思フノデアリマス、此理由ハ明治四十
二年三月二日桂内閣ノ當時、我黨ノ先輩吉
植君カラ質問ヲ爲サイマシタニ付キマシ
テ、其當時ハ郵便貯金ガ一億六百万圓ゴザ
イマシタ時デアリマスガ、其當時ノ內
務大臣平田氏トノ應答ニ於キマシチ、是
カラ增加スル所ノ資金ノ四分ノ一カラ二
分ノ一ヲバ、地方ニ還元スルヤウナ御約
束ガ出來テ居ルカノヤウニ思フノデゴザ
イマス、而シテ其當時ハ時ノ內務大臣、大
藏大臣、遞信大臣ガ協定致サレマシテ、地
方長官ニモ此事ガ通牒シテアルト云フコト
デゴザイマスガ、其後ニ至リマシテモ一向
其實ガ擧ッテ居ラナイノデゴザイマス、其
實ガ擧ラズシテ、今日委員長カラ御報告ニ
ナリマシタヤウニ預金部ノ資金ガ甚ダ面白
クナイ方面ニ流用サレテ居ル、ソレ故ニ吾
吾ハ單ナル約束デハイケナイ、單ニ政府ガ
言明スルトカ云フヤウナコトデハイケナ
イ、此點ニ於キマシテ色こナ議論ガゴザイ
マシタ、之ニ對シマシテハ政府ガ適當ナル
方法ニ依ッテ、過不及ナク還元スル方法ヲ
講ズルト云フヤウナ御辯明モゴザイマシタ
ケレドモ、是デハ私共ハ滿足ハ出來ナイノ
デアル、何トナレバ過去ニ於キマシテモ斯
ノ如キ事實ガアルニモ拘ラズ-最近ニ第
四十六議會ニ於テモ更ニ政府ハ斯ノ如キ事
ヲ繰返サレヲ居ルニモ拘ラズ、サウ云フコ
トヲ實行シテ居リマセヌノデゴザイマスカ
ラ、是ハ一ツノ法律ニスルカ、或ハ外ノ方
法ニ依リマシテ、斯ノ如キ制限ヲ〓ヘテ置
ク必要ガアルト思フノデゴザイマス、唯と
斯ウ云フヤウナ法案ガ出來タカラト云ッテ、
決シテ滿足スルコトハ出來ナイ、此政府ヲ
バ御援助ナサッテ居ラッシヤル所ノ各派ノ方
方ノ時代ニ於テハ、或ハソレデ濟ムカモ知
レナイ、或ハ現内閣ノ濱口藏相ニ於キマシ
テハ、之ヲ實行サレルカモ知レマセヌガ、
併ナガラ此内閣ガ永久ニ續クモノデモナケ
シバ、又皆サン方ガ何時マデモ之ヲバ支持
サレル譯デハナイト私ハ思フノデゴザイマ
スルカラ、何レノ時代ニ於キマシテモ斯ノ
如キ明文ニ依ッテ、明瞭ナル版木ヲ拵ヘテ置
クコトガ卽チ適當デアラウト思フノデゴザ
イマス(拍手)是ガ不必要デアルト云フコト
ハ、或ハ有ユル法律ガ不必要デアルト云フ
ト同ジ事デハナイカト思フノデゴザイマ
ス、諸君、富ノ平均ヲ得ルコト、富ノ分配
ト云フコトニ付キマシテハ私ガ申上ゲルマ
デモナク、最モ爲政家ガ注意ヲ拂ハナケ
レバナラヌノデアルト思フノデゴザイマ
ス、富ノ分配ガ過不及ナク行ッテ居リマス
ルナラバ、吾々ノ國ニ於キマシテ斯ノ如キ
色ミナ騷擾モ起ラズ、又ハ色〓ナ紛議モ起
ラナイノデゴザイマス、玆ニ社會問題ガ起
リ、勞働爭議ガ起リ、或ハ又色こナ議論紛
擾ガ起ルト云フコトハ、蓋シ富ノ分配ガ能
ク行カナイト云フコトニ歸著スルト私ハ思
フノデゴザイマス、昔ノ哲學者デアリ、經濟
學者ノ大宗デアル所ノ「アダムスミス」ニ致
シマシテモ、「ジヨンスチユアートミル」ニ
致シマシテモ、彼等ガ常ニ〓究シタ點ハ是
デアル、恐クハ諸君ト致シマシテ此點ニ付
テ頗ル注意サレ、〓究サレルノデアラウト
思フノデゴザイマスルガ、之ヲ〓究シ之ヲ
論議致シマシテモ、實行ノ上ニ現レナイト
スルナラバ、何等ノ役ヲ爲サナイノデアル
(拍手)私共ハ皆様方ガ恐ラク之ヲ實行ニ見
ルト云フコトニ付テ御異論ハナイデアラウ
カト思フノデゴザイマス、併ナガラ吾々ノ
ヤウナ地方ニ地盤ヲ有シテ居リマスル所
1、所謂百姓議員ト、ソレカラ現内閣ノ中
堅ヲ爲シテ居ラレル所ノ憲政會ノ諸君ノ如
〃中央ニ地盤ヲ特ッテ居ラルヽ方トハソ
コニ見解ノ相違ガアルカモ知レマセヌ、見
解ノ相違ガアルカモ知レマセヌガ、此委員
會ニ於キマシテ、皆樣方モ亦政友會ノ諸子
モ、吾々ノ此附帶決議ト類似シタ所ノ御考
ハ特ッテ居ラルヽノデゴザイマス、唯〓此こ
政府ヲ支持セナケレバナラヌト云フ因緣ノ
爲ニ、自ラ思フ所ヲ實行スル能ハズシテ、
ツコニ幾ラカノ讓步ガシテアル(拍手)、卽
チソレガイカヌ點デアルト私共ハ思フノデ
ゴサイマスガ、此中央、或ハ又都會ニ地盤
ヲ有シテ居ラレマス所ノ憲政會ノ諸子モ、
恐クハ地方ノ事情ヲ御覽ニナリマシタナラ
パ、必ズヤ皆樣方ハ私共ノ此動議ニ御賛成
デアラウト思フノデゴザイマスル、何トナ
レバ憲政會ノ諸子ハ常ニ民衆政府ヲ高調シ
テ居ラレマスシ、殊ニ地方ノ事ハ御承知ナ
イカラデモアルガ、若シ知ラレタナラバ必
ズヤ之ニ御賛成ガアルニ違ヒナイト私ハ思
フノデゴザイマス、諸君、私共ハ徒ニ此議
場ニ參リマシテ喋ルノガ目的デハナイ、眞
ニ國家ノ事ヲ愼重審議シタイト云フノガ希
望デアッテ、此處ニ參ルノデアリマス
〔拍手發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=44
-
045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=45
-
046・中村嘉壽
○中村嘉壽君(續) 諸君、地方ノ狀態ヲバ
能ク觀ルト云フコトハ吾々ガ最モ緊急ナ
ル事デアラウト思ヒマス、諸君、諸君ハ地
方ニ資金ガ廻ッテ居ナイト云フコトハ確ニ
御認メニナッテ居ルノデアル、吾々爲政家ハ
何トシテ-政治家ハ何トシテ地方ニ圓滑
ナル資全ノ融通ノ途ヲ講ズルカト云フコト
ヲ努メナケレバナラヌノデアリマス、民ノ
竈ヲ思フ人ハ單ニ仁德天皇ノミデハゴザイ
マセヌ(拍手)其後ノ陛下方ニ於テモ(「脫線
脫線」ト呼フ者アリ)總テノ天皇樣方モ矢
張、民ノ竈ヲ考ヘテ居ラルヽノデアリマス、
吾々ハ又國民ノ付託ヲ負ウテ此事ヲ〓究ス
ベク此所ニ出テ居ルノデゴザイマスルガ、
皆樣方モ之ヲ人事デナイト御考ニナリマシ
テ、吾々ノ此緊急動議ニ御賛成ヲ下サラン
コトヲ切ニ希望スル次第デゴザイマス拍
き)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=46
-
047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 附帶決議ニ對シマシ
テ賛否ノ通告ガアリマス、其發言ヲ許シマ
ス、若尾幾太郞君
〔若尾幾太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=47
-
048・若尾幾太郎
○若尾幾太郞君 大變席ガ遠クニ居リマシ
テ、聽エナイ所ガアリマシタノデ一寸失禮
致シマシタ、中村君ノ御提案ニナリマシタ
一二ノ案ハ、私ガ提案ヲ致シマシタル所ノ
二三ニ當ルカノヤウニ思ヒマス、只今之ヲ
更ニ私カラ自分ノ提案致シマシタモノ、又
預金部預金法、政府提出案ノ委員長カラ御
報告ニナリマシタモノヲ繰返シマシテ玆ニ
一讀致シマス「政府ハ地方資金融通ノ途ヲ
擴張シ以テ產業ノ開發竝ニ社會事業ノ助成
ニ資スヘシ」次ガ「政府ハ運用委員會ノ機能
ヲ發揮セシメムカ爲委員ノ選任ニ付特ニ留
意スヘシ」斯ウ云フコトデアリマス、中村
君ノ動議トシテ御出シニナリマシタルモノ
ハ「預金部預金トシテ繰入レタル郵便貯金
ノ總額ノ二分ノ一ヲ下ラサル金額ヲ地方資
金ノ運用ニ充當スヘシ」次ガ「預金部資金運
用委員會委員中ニ農村代表者若干名ヲ加フ
ルコト」斯ウ云フノデアリマス、縷々此動
議ニ對スル御提案ノ理由ニ付テ御話ガゴザ
イマシタガ、自分ト致シマシテハ前二申
上ゲマシタ所ノ地方資金融通ノ此額ニ付テ
デゴザイマス、是ハ額ヲ限定致シマスト云
フコトハ、運用上種々ナ不便ガアルノデハ
ナイカト思ハレルノデアリマス(拍手)尙ホ
一ハ此何ガシカヲ吾々ニ融通セヨト云フコ
トハ信任セル所ノ吾々ノ政府ニ對シテ一
ノ强要ニナルコトヽ思ハレマス(拍手)此點
ヨリシテモ私ハ之ニ反對スル譯デアルノデ
ス、其次ニ預金部資金連用委員會委員中ニ
農村代表者若十名ヲ加フルコト、斯ウ云フ
ヤウナ工合ニ具體的ニ御述ニナッテ居リマス
ガ、別段農村代表者ヲ入レナイト云フコトハ
未ダ政府カラ御〓シガナイノデアリマス、
若シ農村代表者若干名ヲ人レロト云フコト
ガ、具體的ニ列擧的ニ言ハレマスナラバ、
又一方ニ於テハ商工業者ノ若干名ヲ入レナ
ケレバナラヌト云フコトガ起ッテ來ル、俗ニ
申シマス鼬ゴツコノヤウサ事ガ起ッテ來ル、
是等ハ寧ロ大キク卽チ私ノ申シマシタル如
ク、初ノモノハ政府ハ地方資金融通ノ途ヲ
擴張シ、以テ產業ノ開發竝ニ社會事業ノ助
成ニ供スベシ、尙ホ其次ハ、政府ハ運用委員
會ノ機能ヲ發揮セシメンガ爲メ、委員ノ選
任ニ付特ニ留意スベシ、此委員會ノ機能ヲ
發揮セシムルガ爲ニ制限ヲ加ヘザルコトガ
宜カラウト思フ、又之ニ其遠任ニ付テハ特
ニ留意スベシト云フ、特ニト云フコトヲ言ツ
テ居ル、然ラバ此預金法案ヲ御提出ニナリ
マシタケレドモ、先程ドナタカヾ-ドナ
カト云フト、又其失言ヲ取消セナドト言ハ
レマスカラ、是ハ取消シマス、中村君ガ謂
ハレマシタ所ノ伏魔殿トカ何トカ言ハレマ
シタガ、此政府ニ於テ公開シテ、今朝ノ如
キハ新聞紙ニ於テ國民諸君ニ見セテ居ル、
斯ノ如キ信任スベキ內閣ニ對シテ、何等ノ
1制限ヲ附スルナジハ是ハ少シ僣越デアル
ト思フ(拍手)サレバ諸君ニ於テハ我輩ノ提
案通リ、滿場一致ヲ以テ御可決アランコト
ヲ望ムノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=48
-
049・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ニ小川郷太郎君
〔小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=49
-
050・小川郷太郎
○小川〓太郞君 私ハ只今問題ニナッテ居
リマス附帶決議ニ賛成スル者デアリマス
〔「ドッチニ賛成スルノカ」ト呼フ者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=50
-
051・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=51
-
052・小川郷太郎
○小川〓太郞君(續) 只今若尾君ノ御演說
ノ中ニ、現内閣ヲ信任シテ居ルカラシテ、
斯ノ如キ注文ヲスルノハ、政府ヲ强要スル
モノデアルカライケナイト云フコトガアリ
マシタガ、私ハ此法律ハ單ニ現內閣ノ爲ニ
作ッテ居ルノデナイト思ヒマス(拍手)是ハ
現內閣ガ倒レタ後ニ於テモ、歷代ノ內閣ニ
於テ威力ヲ持ツモノデアルト思フノデアリ
マス(拍手)私ノ論議ハ其見地カラ立ッテ居
ルノデアリマス、私ハ第一此預金部資金ノ
運用ニ付キマシテ、從來世間ノ問題ニナッ
テ居ッタモノガ、凡ソ三ツアルト思ヒマス、
其第一ハ此預金部ニ集ノテ來マス所ノ巨額
ノ資金ヲ、政府ガ動モスレバ財政遣繰ノ道
具ニ使フ、是ハ從來ノ非難ノ一ツデアリマ
ス、第二ハ此預金部ノ資金ヲ事業資金、或
ハ海外事業資金ト云フヤウナ名ノ下ニ、所
謂不良貸付トシテ図牧ノ出來ナイヤウナモ
ノガアルト云フコトニ付テ非難ガアッタノ
デアリマス、ソレカラ第三ハ農村カラ出タ
所ノ郵便貯金ヲ多數持ッテ居リナガラ、之
ヲ農村ニ還スコトガ少イト、斯ウ云フコト
デアルト思フノデアリマス、デ今回預金部
預金法律案ト云フモノガ提出サレ、大藏省
預金部特別會計法律案モ一緒ニ提出サレマ
シタノハ、畢竟從來ノ此非難ヲ根本的カラ
矯メテ行カウト、斯ウ云フ所ノ精神ガアル
ト思フノデアリマス、ソレガ故ニ此法律案
ガ法律トナッテ實行セラルヽ時分ニ、此弊
ガ無クナッタラ、是ハ成功デアリマス、ソコ
デ吾々ガ此法律案ノ改正ヲ企テル時ニ當リ
マシテ、斯ウ云フ弊害ヲ無クスルト云フコ
トヲ考ヘテ行カナケレバナラナイノデアリ
やべ、所ガ今ノ狀態カラ見マスレバ、之ニ
就テ不安ノ念ガ起シテ來ルノデアリマス、
第一番ニ此所デ問題ニナリマスノハ農村ノ
方ニ廻ル所ノ金ノ少イト云フコトデアリマ
ス、是ハ殆ド天下ノ輿論デアリマシテ、殆
ド議論ヲ要セナイト思ヒマス、只今中村君
カラ色ミノ說明ガアリマシタガ、初メニ元
サレテ居リマス所ニ依リマシテモ、地方資
金トシテ廻サレタ所ノモノハ、現在ニ於キ
マシテ四億二千三百万圓デアッテ、百分比例
デ二十七「パーセント」ニナッテ居リマスガ
併シ私ハンレニ付テ少シ違クタ區別ヲシテ
見タイト思ヒマスガ、震災復舊費、社會事
業資金、是ハ共ニ都會ノ方ニ融通セラレタ
金デアルト思フノデアリマス、眞ニ農村ノ
方ニ還シテ居ル所ノ金ト云フモノハ、普通低
利資金、災害復舊費、此中ニモ勿論都會ニ
這入ッテ居ルモノガアリマスルが、之ヲ還
ス上カラ見レバ大體農村ニ還ル金トシマシ
タナラバ、ソレハ二億四千万圓程ニナリマ
シテ、預金部カラ致シマシテハ僅ニ二割程
ノモノガ-預金部-郵便時金カラ見マ
シテハ二割ノモノデアリマス、所ガ單ニ農
業家ト致シマシテモ郵便貯金ニ預ケテ居ル
所ノモノハ政府ノ提出セラレマシタ材料
ニ依リマシテモ、三割三分、漁業家ヲ加ヘ
タラバ三割五分デアリマス、是ハ明ニ農村
カラ出夕所ノ金ガ農村ニ多數還ノテ居ナイ
ト云フ證據デアリマス、デ私ハ是ニ於テカ
此法律案ヲ定メルニ當リマシテ、大體ノ原
則ト云フモノヲ定メラレタイト思フノデア
リマス、卽チ農村カラ出タ所ノ資金ト云フ
モノハ、大體ニ於テ之ヲ農村ニ還ス、全部
還セトハ言ヒマセヌガ、ソコニ大體ノ一ツ
ノ方針ヲ立テルコトガ必要デアルト思フノ
デアリマス、斯ウ云フ方針ヲ立テルコトガ
卽チ立法事業デアル、私ハ此法律ニシテ、
サウ云フヤウナ方針ヲ定メルコトヲ要求シ
タイト思ヒマシタケレドモ、大體ニ委員會
デハソレハムヅカシイト見マシタノデ、是
ハ勅令ニ讓ッテアリマスカラ、願クハ勅令
ヲ定メラレル時ニ當ッテ、此大方針ト云フ
モノガ、勅令ノ中ニ規定セラレンコトヲ望
ムノデアリマス、ソレガ今中村君ノ案トシ
テ具體的ニ郵便貯金ノ中ノ約半分-約半
分ヂヤアリマセヌ、二分ノ一ニ足ラザル所
ノ資金ヲ地方資金トシテ廻スト、斯ウ云フ
註文ハ是ハ大體此資金ニ依ル方針ヲ示スノ
デアリマス、大體半分ト云フ所ニ目安ヲ置
イテ、此大方針ニ付キマシテ私ハ賛成シヤ
ウト思フノデアリマス、若シ斯ウ云フヤウ
ナ事ガ書イテナイト云フト、ドウナルカト
云フト、私ハ今日マデノヤリ方ト同ジヤウ
ナ事ニナリヤスマイカト思フノデアリマス、
ソコデ此商工業者ノ方面カラ之ヲ議スル
ト云フコトモ必要デアリマセウケレドモ
從來ノ歷史カラ見マスト云フト、資金ノ運
用セラレテ居ルモノガ、動モスレバ商工業
者、及財政ノ融通ノ方ニナッテ居ルノデア
リマスカラシテ、此方ノ心配ハ少イ、心配ノ
アル所ハ農村ノ方ニ金ガ行カヌト云フコト
デアリマス、是ガ故ニ農村ニ行クヤウナ保障
ヲ玆ニ定メテ置クコトガ必要デアリマス、是
レ卽チ此決議案ニ付キマシテ、私ガ賛成シ
夕所以デアリマス、尙ホ私ハ之ニ就テ一ツ斯
ウ云フ所ノ註文ヲシテ置カナケレバナラヌ
ト云フ必要ガアルト思ヒマス、其一ハ財政上
ノ遣繰リト云フコトデアリマス、財政上ノ遣
繰ト云フコトハ、私ハ大變ナ弊害ヲ來スモ
ノデアルト思フノデアリマス、或ル意味ニ
於キマシテ預金部ガ國債證劵ヲ持ッテ居ル
ト云フコトハ、ソレ自身惡イトハ申シマセ
又、併ナガランレニモ程度ガアルト思フノ
デアリマス、現在ノ運用ヲ見マスルト、國
債證劵ハ二億四千七百九十万圓デアリマシ
テ、ソレガ十六「パーセント」ヲ占メテ居
リマス、所ガ其外ノ一般會計及特別會計ノ
貸付金、是ハ公債ヲ募ラヌダケデアリマシ
テ、事實ハ公債ニ準ズベキモノデアリマ
ス、財政ノ遣繰ニ使クタモノデアリマス、
其額ガ一億六千二百六十万圓デアリマシ
テ、是ガ十「パーセント」ヲ占メテ居リマ
ス、故ニ政府ノ財政ノ遣繰ノ爲ニ預金部ノ
金ヲ使シテ居ルモノハ四億一千万圓デアッテ
「パーセンテージ」デ云ヘバ二十六「パーセ
ント」ヲ占メチ居ルト言ハナケレバナラヌ
ノデアリマス、所デ斯ウ云フ風ナ財政造繰
ニ今後使ハヌト云フコトデアルナラバ宜シ
イガ、私ノ今日ノ杞憂ハサウデハナイノ
デアリマシテ、現ニ現内閣ハ一體ドウ云フコ
トヲ言ッテ居ラルヽカト申シマスレバ、其政
綱ノ第一ト致シマシテ、財政整理ニ關係シ
マシテ民間ノ經濟ヲ歴迫シナイト云フ大方
針ノ下ニ、公債ヲ金融市場カラ募ラヌ、之
ニ反シテ預金部ニ引受ケシムルト云フノデ
アリマス、其預金部ニ引受シムルト云フコ
トハ、財政政策カラ來テ居リマセウガ、預
金部ヲ壓スルト云フコトハ同ジ事デアリマ
シテ、是ハドウナルカト申シマスレバ、此二
億四千七百九十万圓ノ國債證劵ノ外ニ、尙
ホ國債證劵ガ非常ニ殖エルト見ナケレバナ
リマセヌ、濱口藏相ガ嘗テ聲明セラレマシ
夕通リニ、大正十三年度ニ於キマシテ一億
五千万圓ノ金ヲ預金部ニ引受ケシムルト云
ブコトデアリマス、所ガ其後二千万圓程ハ
公債募集ノ額ヲ少クシタト云フコトデアリ
マスカラシテ、畢竟一億三千万圓ノモノヲ
預金部ニ引受ケシムルト云プコトニナルノ
デアラウト思ヒマス、所ガ此二億四千七百
万圓ノ中ニ、十三年度ニ政府ガ預金部ニ引
受ケシムル額ガアリヤ否ヤヲ聞キマスル
ト、早速次官ハ是ハマダ含ンデ店ナイト云
フコトデアリマス、然ラバ玆ニ一億三千万
圓ト云フモノハ此預金部ノ國債證劵ノ募集
額ニ加シテ來ナケレバナラヌ、更ニ大正十
四年度ノ財政政策ノ結果トシテ現レテ來ル
モノハ五千万圓程ノ公債ヲ引受シムル、
更ニ一千五百万圓ト云フモノハ餘力ガ出來
テ來タカラ、六千五百万圓マデノモノヲ預
金部ニ引受シムルト云フ御方針デアルト聞
クノデアリマス、サウ致シマスルト國債ノ
償還ハ多少アルカモ知レマセヌガ、大體約
六億圓前後ノモノガ國債證劵トナッテ現レ
テ來ルト思フノデアリマス、サウ致シマス
ルト、約四割ノモノハ政府ノ遣繰ノモノデ、
政府ノ財政遣繰ノ爲ニ預金部ノ金ノ四割ト
云フモノヲ財政ノ方ニ取シテシマフト云
フコトニナルノデアラウト思ヒマス、サウ
云フ風ニナッテ來マシタナラバ、如何ニ政府
ガ此預金部ノ預金ヲ適切公正ニ運用シヤウ
ト云ヒマシチモ、農村ノ方ニ廻ル所ノ金ト
云フモノハドウシテモ少クナルト思フノデ
アリマス(拍手起ル)之ヲ吾ニハ憂ヘルノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ法規ノ上
ニ於テ、法律デナケレバ勅令ニ於テモ、少
クトモ是ダケノ範圍ハ農村ニ還スモノデア
ルト云フ、最小限度ヲ示ス必要ガアルト
思フノデアリマス(拍手)尙ホ最後ニ此運用
委員會ニ農業者ノ代表者ヲ加ヘルト云フコ
トノ必要ガアルコトハ、私ハ委員會カラ述
ベテ居リマス、是ハ今ノヤウナコトカラ考
ヘテ見マシテモ、運用委員會ノ意見ヲ聞イ
テ、詰リソレヲ諮問シテ決定スルトハ言ヒ
マスモノヽ大藏大臣ガ大體ノ計畫ヲ定メ
テ之ニ臨ムノデアリマスカラシテ、今ノヤ
ウナ財政政策ヲ執ル所ノ內閣ニ於キマシテ
イノ一番ニ公債ヲ引受ケシムルト云フ
コトニナルノデアリマスカラ、其大方針ニ
付キマシテ運用委員會ト云フモノハ之ヲ爭
フコトハ出來ナイノデアリマス、卽チ是ハ
大藏大臣ノ言フ通リ、聽クヨリ仕方ガナイノ
デアリマス、其組織ガサウナッテ居ル、其委
員ノ中ノ半分ハ官吏デアル、半分ハ學識經
驗アル人ト云ヒマスケレドモ、中ニ貴族院、
衆議院ノ議員モアリマスカラ、ドウシテモ
過半數ハ政府ノ言フ通リニナルノデアリマ
スサウシマスト政府ノ財政ノ遣繰リノ爲
ニ金ヲ使ヒ、剩ス所幾何モナイト云フノデ
アレバ、是ハ農村ニ廻ル金ガ少クナッテ、之
ヲ爭フ者ハナイノデアリマス(拍手)之ヲ爭
フ爲ニ少クトモ多數ハ制セナイニ致シマシ
テモ、農村代表ノ委員ヲ若干名加ヘテ置キ
マスト云フト、是ガ多少調和サレルト思フ
ノデアリマス(拍手)私等ガ農村代表ノ委員
ヲ少クトモ若干名加ヘヤウト云フノハ此趣
旨デアリマス、商工業ノ人ヲ加ヘナケレバ
ナラスト云フ論モ起リハセヌカト申シマス
ケレドモ、ソレハ商工業者ノ方ノ代表者ハ
優越デアリマス、現ニ簡易生命保險積立金
ノ運用委員會ノ組織ヲ聞イテ見マスト、委
員會デ政府委員ノ聲明デアリマスガ、學者
ノ外ニ特殊銀行ノ總裁ガ之ニ當ラレテ居リ
やっ、其數ハ官吏ノ數ヨリモ民間ノ委員ノ
數ノ方ガ多イヤウデアリマス、然ルニモ拘
ラズ世間之ヲ評シテ、是ハ有名無實デアル
ト云シテ居ルノデアリマス、然ルニ今囘ノ預
金部資金ノ運用委員會ニ於キマシテハ、官
吏側ト民間側ハ半分々々デアリマス、サ
ウ云フ風ニ致シマシテハ此簡易生命保險ノ
積立金ノ運用委員會ヨリモ、モット政府ノ
意向ガ通リ易ク出來テ居ルノデアリマス、
ソコデ私ハ此際ニ於キマシテ農民ノ利益
ヲ代表スル所ノ代表者ガ、ドウシテモ加ッテ
居ナケレバナラヌト思フノデアリマス、之
ニ依ッテ初メテ農村カラ出夕金ガ農村ニ還
ルト云フ所ノ方針ヲ、多少タリトモ實現ス
ルコトガ出來ルト思フノデアリマス、私等
ノ爭フ事ハ農村カラ出タ所ノ全ガ大體ニ於
テ農村ニ還ルト云フ根本精神ヲ認ムルヤ否
ヤ、此根本精神ヲ認ムル時ハ只今ノ附帶決
議ニ贊成セザルヲ得ナイト思フノデアリ
やっ、私ノ贊成致シマシタノハ斯ノ如キ趣
旨デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=52
-
053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 早速政務次官
〔政府委員早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=53
-
054・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 私ハ別ニ討論ヲ
致ス譯デハナイノデアリマスガ、只今ノ小
川君ノ御陳述ニ依リマスト、如何ニモ世上
ノ疑ヲ招クト云フ嫌ガアルノデアリマスカ
ラ、一言簡單ニ辯明ヲ致シテ置キタイノデ
アリマス、小川君ハ政府ハ預金法案ヲ提出
シテ、何デモ是カラ後モ政府ハ唯〓財政ノ
遣繰ノ爲ニ之ヲ利用スルモノヽ如ク、獨斷
的ニ只今數字等ノ御陳述ガアッタノデアリ
マスガ、政府ガ此度此預金部ノ預金法案ヲ
提出シマシタル理由ハ、前日ノ本會議ニ於
テモ申述べマシタル如ク、預金部ノ改善ヲ
行ヒ、從來世上カラ色と非難ヲ受ケテ來タ
預金部ノコトデアリマスカラ、我ガ政府ハ
此改善ヲ行フト云フコトヲ目的トシテ、此
法律案ヲ提出スルニ至ッタノデアリマス、
將來ニ於テ十分改善ノ目的ヲ達成スベク進
ンデ行カナケレバナラヌト云フコトハ、現
ニ委員會等ニ於テモ私カラ屢〓之ヲ繰返シ
テ申述ベタノデアル、唯小川君ノ陳述ニ
依ルト、政府ガ財政ノ遣繰ヲシテ、無暗ニ
公債ヲ預金部ニ引受ケサスト云フ計畫ヲ立
テヽ居ルト云フコトニ付テノ御非難デアリ
マシテ、現內閣ノ計畫ト雖モ、預金部ガ公
債ヲ引受ケルト云フコトノ總テヲ否認ハ致
シマセヌケレドモ、預金部トシテ此公債ヲ
引受ケル爲ニ、預金部ノ内容ヲ紊スト云フ
ガ如キ計畫ヲ樹ツルコトハ斷ジテナク、現
在ニ於キマシテ、國債證劵ヲ預金部ガ持,
テ居リマスノハ二億四千七百万圓、是ハ丁
度百分比例ニ致シテ百分ノ十六ニ當ルト云
フコトハ只今小川君ノ述べラレタ通リデ
アリマス、更ニ小川君ハ之ニ加フルニ一般
會計竝ニ特別會計ノ貸付金ヲモ合算シテ御
計算ニナルカラ、大變ニ國債ノ引受額ガ多
イヤウナ數字ニ見エルノデアリマス、而シ
テ大正十三年度ニ於テ預金部ガ引受ケナケ
レバナラヌ公債ハ、是ハ確ニ一億三千万圓
アルノデアリマス、唯〓一億三千万圓ト云
フ數字ヲ此上ニ加ヘテ御計算ニナルケレド
モ、一億三千万圓ノ公債ハ引受ケルケレド
モ、公債ニ於テ償還スベキモノガ四千二百
万圓アル、此事ハ小川君ハ御述ニナラヌ、
而シテ又十四年度ニ於テハ六千五百万圓ノ
公債ヲ引受ケルト云フ計畫ニハナッテ居ルノ
デアリマスガ、併ナガラ十四年度ニ至レバ
更ニ囘收セラルベキモノガアル、預金ノ資
金トシテ囘收セラルベキモノガアル、又郵
便貯金ノ增加ト云フコトモ見込ムコトモ出
來ルノデアリマスカラ、是ガ直ニ此財政ノ
遣繰トシテ預金部ニ對スル壓迫トナルトハ
政府ハ考ヘテ居ラヌノデアリマス、六億以
上ノ公債ヲ引受ケルト言ハレタ小川君ノ數
字ハ、私ガ申ス數字トハ間違シテ居ルノデ
アリマスカラ、此點ダケハ誤ヲ正シテ置キ
タイト思ウテ、私ハ玆ニ一言スル所以デア
ル(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=54
-
055・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 他ニ發議ノ通告モア
リマセヌ、仍テ討論ハ終結サレマシタ、此
附帶決議ハ先決問題トシテ採決ヲ致シマ
ス、此決議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=55
-
056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立者少數デアリマ
ス、附帶決議ハ否決サレマシタ、仍テ本案
ニ付テ採決致シマス、先ヅ(此時發言スル
者多シ)靜ニ御聽キ下サイ、先ヅ預金部預
金法案及大藏省預金部特別會計法案、此兩
案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマ
ズ-二讀會ヲ開クニ御異議アリマセスカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=56
-
057・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案トモ第二讀會ヲ開クコトニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=57
-
058・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ兩案ノ二讀會ヲ開カレ
ンコトヲ望ミマス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=58
-
059・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ直ニ兩案ノ二讀
會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
預金部預金法案第二讀會
大藏省預金部特別會計法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=59
-
060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 兩案共委員長ノ報告
ニ付テ採決ヲ致シマス、委員長ノ報告ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=60
-
061・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案共委員長報告ノ通リ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=61
-
062・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ兩案ノ第三讀會ヲ開
キ、第二讀會議決ノ通リ、兩案共委員長報
告通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=62
-
063・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ兩案共三讀會
ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
預金部預金法案第三讀會
大藏省預金部特別會計法案第三請會
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=63
-
064・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案共第二讀會議決ノ通リ可決確
定セラレマシタ(拍手)次ニ臨時國庫證劵收
入金特別會計法廢止法律案ニ付テ採決致シ
やっ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=64
-
065・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=65
-
066・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=66
-
067・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=67
-
068・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
臨時國庫證券收入全特別會計法廢止法
律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=68
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069・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ
通リ可決確定セラレマシタ(拍手)、次ニハ
日程第四、決議案、鐵道ノ既定計畫遂行ノ
件、元田肇君外十六名提出ニ係ルモノデア
リマス、本案ヲ議題ト致シマスー、木下
謙次郞君
第四決議案(鐵道ノ既定計畫遂行ノ
件)(元田肇君外十六名提出)
決議案
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年一月十九日
提出者元田肇
外十六人
決議
政府ハ鐵道建設既定計畫ヲ遂行スヘシ
右決議ス
〔木下謙次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=69
-
070・木下謙次郎
○木下謙次郞君 現政府ハ行政財政整理ノ
名ノ下ニ、鐵道既定計畫ヲ破壞セントスル
モノガアリマスノデ、是ニハ本員等ハ賛成
スルコトノ出來ナイ次第デアリマス爲ニ、
玆ニ本決議案ヲ提出スルノ已ムヲ得ザル次
第ニ相成ッタノデアリマス、鐵道ノ既定計畫
ト申シマスコトハ、加藤友三郞內閣時代ニ
立案セラレマシテ、一定年度ニ於ケル鐵道
ノ建設ヲ主ト致シテ居ル方針デアッテ、〓
浦内閣ノ實行豫算トシテ數字ノ上ニ現レマ
シタル大正十四年度ノ割當ハ、建設費ニ於
テ七千三百万圓、改良費ニ於テ一億三千万
圓デアルノデアリマスガ、併シ我國ノ鐵道
計畫ハ、單純ナル金額竝ニ年度ノミノ數字
以外ニ、特別ナル意味ヲ持ノテ居ルト云フ
點ニ付テ、私ハ一言ノ說明ヲ費スコトノ御
許シヲ願ヒタイト考へルノデアリマス、諸
君、我國鐵道ノ始メハ皆樣御承知ノ通リ京
濱間ノ鐵道ノ開通、明治五年ニ於ケル其開
通式ノ執行ヲ以テ始メノモノト致シテ居リ
マスコトハ御承知ノ通リデアリマスガ、其
際ニ當シテ明治天皇陛下ハ親臨サレマシ
テ、玆ニ開通ノ式ヲ擧ゲサセラレ、其當時
賜ッタル詔勅ニ、庶民ノ便利幸福ノ爲ニ帝
國全土ニ鐵道ヲ蔓布敷設スルト云フ詔勅ヲ
賜シタノデアリマス、而モ此詔勅ハ炳トシテ
日星ノ如ク我ガ帝國鐵道ノ五十年間ノ歷史
ヲ照シテ居ルノデアリマス、而シテ此大御
心ノ趣旨ガ明治二十五年ニ於ケル鐵道ノ敷
設法トナリ、又明治四十年ニ於ケル帝國鐵
道ノ國有法案ト相成リ、降ッテ大正九年、
十年ニ於ケル敷設法ノ改正、竝ニ我ガ帝國
鐵道綱ノ成立ト相成シタルモノデアルノデ
アリマス、而シテ此鐵道網ナルモノヽ目的
トスル所ハ、全國ニ六千三百哩ノ新ナル線
路ヲ選定シ、之ヲ法律ニ依シテ決定シ、鐵
道綱成立當時ヨリ向フ二十年間ヲ以テ此事
業ヲ完成スルト云フコトガ目標ニ相成シテ
居ッタノデアリマスルガ、其當時此鐵道網
ニ付テモ種々ノ反對論ガアッタ、或ハ無謀ノ
計畫デアルトカ、或ハ餘リニ突飛ナ計畫デ
アルトカ云フヤウナ反對論ガアッタノデア
リマスガ、併シ我ガ帝國ノ鐵道ノ狀況ト、
歐羅巴先進國ニ於ケル鐵道ノ狀況トヲ比較
スレバ、甚ダ烏滸ガマシイコトヲ申上ゲマ
スルガ、統計ヲ引用スルコトヲ暫ク御許シ
ヲ願ヒタイト思フノハ、英國ハ人口一万ニ
付テ鐵道ノ敷設ハ五哩二分ノ割合ニ相成ッ
テ居リ、獨逸ハ英國ヨリモ少シ多イ統計ニ
相成シテ居ル、佛蘭西ハ人口一万ニ付テ八哩
ノ割合ニ相成シテ居リ、亞米利加ニ至ッテハ
人口一万ニ對シテ二十四哩ノ割合ニ相成シ
テ居ル、先進國ノ中ニ於テ鐵道ガ最モ低級
デアルモノハ伊太利デアリマスルガ、其伊
太利ニ於テモ人口一万ニ對シテ三哩二分ノ
割合ニナッテ居リマスガ、帝國ノ狀況ハドウ
デアルカト云フニ、人口一万ニ對シ僅ニ一
哩半、伊太利ノ半バニモ及バヌト云フ程ノ
狀況デアルノデアリマス、是ニ至ッテ鐵道網
ノ目的トスル如ク六千三百哩ノ新線路ヲ完
成シ、之ニ其當時マデ完成致シテ居リマ
スル所ノ一万四千哩ノ既成鐵道ヲ加へ、日
本全國初メテ玆ニ二万哩ノ鐵道ガ蔓布サレ
ル譯ニナルノデアリマスカラ、日本ノ全土ノ
二万哩ノ鐵道ヲ以テ日本ノ人口ニ割當テヽ
見レバ、如何ニモ人口一万ニ對シテ三哩半
ト云フ數字ヲ示スノデアリマスカラ、今後
二十年間經ッテ初メテ伊太利ノ鐵道ト同ジ
度合マデ進ミ得ルト云フコトガ、此鐵道網
ノ目的デアリマスカラ、此鐵道網ノ目的ニ
對シ、或ハ過大ニ失スルトカ、或ハ突飛ニ
失スルトカ云フ如キハ、洵ニ取ルニ足ラザ
ル議論デアッテ、實際ノ狀況ヨリ云ヘバ此
鐵道網ハ極メテ貧弱ナル計畫デアルト謂ハ
ナケレバナラヌト私ハ考ヘテ居ルノデアリ
マス(拍手)併ナガラ吾々ハ國力ノ狀況、國
ノ財政ノ狀況ニ考慮ヲシナケレバナラヌノ
デアリマスルカラ甚ダ不滿足デハアリマス
ルガ、此貧弱ナル計畫ノ下ニ官民共同一致
シテ此事業ノ遂行ニ努メ來ッタコトハ諸君
御承知ノ通リデアル、而モ帝國今日ノ文化
竝ニ國運ノ伸張ガ、此鐵道ノ進步ニ負フ所
少カラザルモノアルコトハ諸君ノ認識サレ
テ居ル通リデアリマス、隨テ今日議題ニ
ナッテ居リマスル所ノ鐵道ノ既定計畫ハ
單純ナル金額ト數字ノ問題ニアラズシテ、
或ル意味カラ云ヘバ維新以來ノ皇謨ヲ受ケ
タル所ノ我ガ帝國ノ國策、國是ト言ッテ宜
シイモノデアルト私ハ信ズルノデアリマス
(拍手)果シテ鐵道ノ此計畫ガ我帝國ノ國策
國是デアルナラバ、區々タル行政整理-
財政整理ノ名義ニ於テ此基礎ヲ動カス如キ
ハ、吾々ハ斷ジテ贊成スルコトノ出來ナイ
所デアリマス(拍手)既ニ前申上ゲマシタ如
ク鐵道ノ計畫ガ帝國ノ國是デアリ、且又是
ガ生產事業トシテ我ガ帝國ノ發展ガ此事業
ノ成否ニ俟ツモノアルヲ知ル以上ハ、吾々
ハ此事業ノ財源ハ公債ニ求メテモ少シモ差
支ハナイト云フ考ヲ持ッテ居ル者デアリマ
ス、現政府ハ公債非募集主義ト云フコトヲ
唱ヘテ居ラレマシタガ、仙石鐵道大臣ハ曾
テ建設費ノ三千三百万圓ヲ發表シ、與黨諸
君ノ强要ニ依ッテ他愛ナク四千六百万圓ニ
更ヘタ、ノミナラズ其内ノ千五百万圓ト云
フモノハ公債ヨリ募集シテ、財源ヲ取ッテ
居ルト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマス
カラ、現内閣ノ公債非募集主義ナルモノ
ハ、既ニ破レテ居ルト言ウテ宜シイノデア
ル(拍手起ル)公債非募集主義ガ旣ニ破レテ
居ル以上ハ千五百万圓ヲ公債ニ取ルトスル
ナラバ、百尺竿頭一歩ヲ進メテ一一千万圓、
三千万圓ノ財源ヲ公債ニ取ッテ、此事業ノ遂
行ニ努メルト云フコトハ少シモ支ノナイ
コトデアラウト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス(拍手)併ナガラ若シ政府ガ何等カノ御都
合ニ依テ公債ニ財源ヲ求メルコトガ絕對ニ
御困リニナルト云フ事情ガアルナラバ、必
シモ公債ニ財源ヲ求メナイデモ既定計畫ノ
遂行ニハ財源ヲ得ルコトハ格別困難ナ事ハ
ナイト私ハ考ヘテ居ル、何ニ由テ此財源ヲ
得ルカト云フニ、本年ノ鐵道省ノ豫算ニ現
レタル改良建設ノ偏重偏輕ノ豫算ノ根本ヲ
立直シテ、改良費ニ多分ヲ取フテ居ル、或ル
言葉ヲ以テスレバ無益ナル費用ヲ取シテ居
ルモノヲ以テ建設ニ差向クレバ、建設ノ目
的ヲ達シ、本案ノ趣意ヲ貫徹スルコトハ、
甚ダ容易デアリト云フコトヲ私ハ考ヘテ居
ル
〔拍手起リ發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=70
-
071・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=71
-
072・木下謙次郎
○木下謙次郞君(續) 只今改良費ト建設費
ノ偏重偏輕ト云フ言葉ニ對シテ反對ガアリ
マシタヤウデアリマスガ、併シ是ハ數字ノ
上ニ明ニナッテ居ル、數字ノ上ニ明ニナッテ居
リマスト云フコトハ、本年ノ豫算ノ建設費
ガ四千六百万圓、改良費ガ一億四千七百万
圓トナッテ居リマスルガ、〓浦內閣ノ實行豫
算トシテ曩ニ私ガ諸君ニ申上ゲマシタ數字
ニ比較スレバ、建設費ニ於テ約二千七百万
圓ヲ減ジテ居ル、此費用ヲ減ジタ爲、四十
四線ノ中二十九線ト云フ鐵道ノ線路ヲ犠牲
ニ致シテ居ルノデアリマス、然ラバ改良費
ハドウデアルカト云フニ、建設費ハ二千七
百万圓ヲ減ジテ居ル所ニ、改良費ハ却テ千
七百万圓ヲ增額ヲ致シテ居ルノデアリマス、
而モ改良費ハ千七百万圓ヲ增額シテ居ルノ
ミナラズ、豫算ヲ見ルニ二十年度マデニ六
千二百万圓增加スルコトノ豫算ノ立テ方ニ
相成シテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ多額ノ
金額ガ改良費ニ加ハルノミナラズ、鐵道省
ノ鐵道會計ニ依テ見マスルニ、鐵道省ガ每
年使ヒマスル所ノ營業費ハ四億圓デアリマ
ス、其四億圓ノ四分ノ一、一億万圓ト云フ
モノハ、是ハ事業費ト云フ名目ノ下ニ改良
費ノ中ニ使ハレテ居ルノデアリマス、事業
費ノ一億圓ハ改良費ニ使ハレテ居ルノミナ
ラズ、鐵道會計ヲ見レバ其外ニ補充費ト
云フ費目ガアリマスガ、此費目ハ年々九百
万圓カラ一千万圓ヲ支出シテ居ルノデアリ
マスガ、之ヲ鐵道省内デハ小改良費下稱シ
テ居ル、是モ同ジク改良費ニ使ハレテ居ル
ノデアリマスカラ、總テ是等ノ數字ヲ積算
スレバ、改良費ト云フモノハ洵ニ莫大ナル
金額ニ上ルコトヲ私ハ申上ゲテ置キタイノ
デアリマス(拍手)本來既定計畫遂行ノ精神
ヨリ云ヘバ、吾々今日ノ帝國ノ事情ヨリ顧
ミテ、建設ヲ主ニシテ改良ハ從タルモノデ
ナクテハナラヌト考ヘテ居ルノデアリマス
ガ、今此豫算ノ立テ方ニ依レバ、改良ガ主
デアッテ建設ハ從デアル、改良ヲ主ニシテ建
設ヲ從ニスルト云フコトハ、洵ニ鐵道ノ政
策ノ上カラ云ヘバ本末輕重ヲ誤ッテ居ルモ
ノト私ハ斷言致スニ憚ラヌノデアリマス
(拍手)斯ノ如ク改良費ニ主力ヲ注イデ、改
良費ニ豫算ノ多額ノ金ヲ取リマス爲ニ、仙
石鐵道大臣ハ有ユル機會ニ於テ、改良ニ多
額ノ金ヲ使ハナケレバ帝國ノ鐵道ハ危險デ
アルト云フコトヲ唱ヘテ居ル、豫算委員會
ニ於テモ無遠慮ニ此言葉ヲ放言シテ居ルノ
デアリマスガ成程脫線或ハ衝突ニ依シテ人
命ヲ落ス者ガ年々少カラヌノデアリマスガ、
其原因ヲ調ベテ見レバ、多クハ從業員ノ怠
慢ノ結果デアッテ、改良費ノ不足ノ結果斯ノ
如キ災難ヲ招イタト云フ場合ハ殆ド無イノ
デアリマス(拍手)言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、此
損害ハ鐵道大臣ノ監督不行屆ノ責任デアツ
テ、何モ改良費ノ不足ニ關係シタ事ハ無イ
ト考ヘル、斯ノ如キ事ヲ當局大臣タル者ガ
濫リニ放言シテ憚ラザルモノハ、私ハ甚ダ
無禮ナ言葉カハ存ジマセヌガ、改良費ヲ澤
山取ル爲ニ國民ヲ呵喝シテ居ルモノト考へ
ルノデアリマス(拍手)斯ノ如キコトハ當局
大臣ノ言トシテ甚ダ不穩當ト考ヘマス、且
ツ仙石鐵道大臣ノ豫算ノ編成方法ヲ見レ
バ、前ニ申上ゲマシタ如ク多額ノ改良費ヲ
取リナガラ、而モ危險防止ト名ヅケラル
方面ノ金ノ支出ハ、前年度ヨリ少クナッテ
居ルノデアリマス(ヒヤ〓〓)斯ノ如キ方面
ハ前年度ヨリ少クナッテ居ルコトハ、玆ニ
仙石鐵道大臣ノ誠意ノ缺ケテ居ルト云フ半
面ヲ明ニ曝ケ出シナガラ、一面多額ノ改良
費ハ主ニ何ニ使ハレテ居ルカト云ヘバ、先
ヅ改良費ノ使ハレテ居ル-主ナル部分
ハ、複線ガ甚ダ多イ、其次ニハ複々線ガ多
イ、其次ニハ主ニ金ヲ都會ニ集中シテ、海
陸連絡臨港鐵道ト稱シテ、吾々カラ見レ
バ洵ニ無益幣澤ナ事ニ費用ヲ澤山使ッテ居
ル(拍手)其次ニハ「ステーシヨン」ノ改築ガ
多イ、無益ノ改築ガ多イ、或ハ「ステーシ
ヨン」ノ移轉ガ多イ、現ニ一例デアリマス
ルガ、橫濱ノ「ステーシヨン」ノ如キハ諸君
御承知デアリマスルガ、嘗テ横濱ハ都合ガ
惡イカラト云フノデ、一度平沼ニ移シタコ
トガアリマス、年ナラズシテ平沼デハマダ
都合ガ惡イカラト云ッテ、現在ノ橫濱ニ引戾
シテアルノデアリマスガ、仙石鐵道大臣ハ
又橫濱デハ氣ニ喰ハナイカラト云フノデ、
今度ハ平沼ト反對ノ方角ノ東神奈川方面ニ
此「ステーシヨン」ヲ移サウト云フ計畫ヲ致
シテ居ルノデアリマスルガ、「ステーシヨ
ン」ノ移轉ト人命ノ危險ト何所ニ關係ガア
リマスカ(拍手「ヒヤ〓〓」)斯樣ナ無益ナ
事ニ金ヲ使フトスルナラバ、假令何億圓ノ
金ヲ議會ガ承認スルトスルモ、此金ハ總テ
死金デアリマス(拍手)私ハ斯ノ如キ無用贅
澤ナル金ヲ取シテ、ドウカ國家ノ爲ニ之ヲ建
設ノ費用ニ充テタイト云フコトガ私ノ希望
ノ一點デアリマス、(拍手、發言スル者多
シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=72
-
073・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 生方君ニ注意致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=73
-
074・木下謙次郎
○木下謙次郞君(續) 尙ホ是レ以上ニ驚ク
ベキ事ハ豫算ニ增額サレテ居ル六千二百
万圓ト云フ數字ヲ示ス金額デアリマスル
ガ、其內容ヲ調ベテ見レバ、主トシテ電氣
ニ關スル費用、其次ハ信濃川ノ鐵道省直營
ノ工事ヲ中止シタル爲メ、其代用トシテ、
新ニ東京附近ニ火力ノ發電所ヲ起ス工事ノ費
用デアルノデアリマス、此數字ハ六千二百
万圓ト云フ數字ニ上ッテ居ルノデアリマス、
諸君、先般來新聞ニハ鐵道省ガ電力ノ購入
ニ態と値上ヲスルト云フ記事ガアル、或ヘ
信濃川ノ發電所ノ工事ノ中止ハ、仙石鐵道
大臣ト特別ナル關係ノアル某私立會社ノ利
益ヲ圖シテ居ルモノデアルト云フ世上ノ風
說モアル(拍手)私ハ總テ之ヲ信用スル者デ
ハアリマセヌガ、茲ニ突如トシテ六千二百
万圓ト云フ數字ガ豫算ニ現レマシタ以上
ハ世間ガ之ヲ疑惑ノ中心トシテ眺メルコ
トハ無理カラヌコトデアルノデアリマス
(拍手)私ハ昨日ノ豫算委員分科會ニ傍聽ヲ
致シマシタガ、我黨ノ委員井出繁三郞君ニ
依テ、信濃川ノ發電工事ノ中止ノ理由ヲ質
問ヲ致サレマシタ、其仙石鐵道大臣ノ答辯
ヲ茲ニ御紹介シヤウト思フノデアリマスル
ガ、鐵道大臣ハドウ云フ各辯ヲシタカト云
ヘ ハ實ニ私ノ驚人ッタコトハ、水力電氣
ハ其效用ニ付テ自分ハ信用シナイ、是ガ中
止ノ理由デアル、殊ニ送電線ノ如キハ甚ダ
危險ノ意味ヲ含ンデ居ルノデアルカラ、容
易ニ水力電氣ノ如キ工事ヲ進行スル譯ニハ
行カヌ、白分ハ其效用ニ付テ信用シナイ、
實ニ驚イタ、仙石君ハ鐵道大臣ニ就任スル
以前ハ、猪苗代ノ水力電氣ノ社長デアル、
其經營者デアル、而モ猪苗代カラ東京マデ
遠距離ノ送電線ニ成功シタト云フコトデ、仙
石君ハ水力電氣界ノ「オーソリチー」トナッ
テ居ルノデアリマス、甚ダ失禮デハアルカ
モ知レヌガ、電氣ノ經營者トシテハ日本ニ
有數ナ成功者デアル、又鐵道大臣就任前マ
デハ水力電氣ノ有數ナル信者デアッタノデ
アリマスルガ、一タビ鐵道大臣ニナッテ、今
度ハ、水力電氣ハ甚ダ危險デ不信用デアル
ト云フ言葉ハ、如何ニモ君子豹變ノ手際ノ餘
リ立派ナコトニ私ハ甚ダ驚クノデアリマス
(拍手)ソコデ井出君ヨリ段々追詰メラレタ
結果ハドウデアルカト云フニ、實ニ益〓大
臣ノ答辯ハ驚クベキコトニナッタ、トンネム
フコトヲ言フカト云フニ、イヤ信濃川ノ發
電工事ハヤリタイノデハアルガ、今日本デ
之ヲ擔當シテ成功サセ得ル技師ガ居ナイノ
ダ、學術ノ上ニ於テモ經驗ノ上ニ於テモ、
日本ニハ斯樣ナ技師ガ無イノデアルカラ、
當分是ハ延期スルヨリ外仕方ガナイト斯ウ
云フ、仙石サンハ猪苗代ノ水力電氣デハア
ノ通リ成功シテ居ルデハナイカ、アレニ比
ベテ見レバ信濃川ノ發電工事ナドハ何デモ
ナイコトデアル、ノミナラズ信越電力ナル
一私立會社ハ同一地點ニ於テ、同一ナル工
事ニ依シテ工事ヲ進メテ居ルデハナイカ、
一私立會社ガ優ニ成シ遂ゲツヽアルモノ
ヲ、政府ノ力ヲ以テ之ヲ成シ遂ゲルコトガ
出來ヌト云フヤウナ話ハ、誰ガ其答辯ニ誠
意ヲ置ク者ガアルデアリマセツカ(拍手)玆
ニ至ッテ井出君ノ追窮ニ依ヲテ、議論ハ益〓
シドロモドロニナラザルヲ得ナイ結果ニ相
成シテ、究極ノ答辯ハドウナッタカト云ヘバ、
結局ハ信濃川モ之ヲ抛棄スルノデハナク、
結局ハヤル積リデアル、ソコデ井出君ハ結
局ヤル積リデアルナラバ火力ノ發電所ハ要
ラヌノデハナイカ、信濃川ノ工事ヲ急イダ
ラ宜イデハナイカ、火力ノ發電所ハ二重ニ
ナルデハナイカ、仙石大臣ハ答ヘテ曰ク、
イヤ火力ハ信濃川ノ補充機關ニ使フ爲ニ折
角設計ヲ致シテ居ル、斯ウ言フ(拍手)諸君、
諸君主力ノ機關ヲ中止シテ、後廻シニシ
テ、補充機關ヲ先ニ若手ヲスルト云フヤウ
ナコトガ世ノ中ニアルデアリマセウカ(拍
手)實ニ昨日ノ豫算委員會ニ於ケル狀況ヲ
見レバ、私ハ仙石君ガ誠意ヲ以テ眞面目ニ
答辯ノ任ニ當ッテ居ルカドウカト云フコト
ニ、深イ疑ヲ持シテ居ル次第デアルノデア
リマスルガ、サリナガラ私ハ仙石君ガ斯ノ
如キシドロモドロノ答辯ヲシタニモ拘ラ
ズ、私ハ仙石君ノ頭ノ惡イ結果斯ウシドロ
モドロニナッタモノトハ考ヘテ居ラナイ、
何等カ內部ニ言フベカラザル事情ガ伏在致
シテ居ル爲ニ、斯ノ如キ現象ヲ呈シタノデ
ハナイカト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
ドウカ、-ドウカ、(「怪イゾ」ト呼フ者
アリ)ドウカ吾々ノ見ル所デハ、斯ノ如キ
無益着澤ナ費用ニ貴重ノ金ヲ使フヨリモ、
寧ロ國民ノ熱望致シテ居リマスル建設方面
ニ此金ヲ使用スルコトニシタナラバ、國家
ノ進運ヲ助ケルト同時ニ、仙石君ノ身邊ニ
絡ノテ居ル其浮雲ノ疑惑モ一掃ガ出來ルダ
ラウト思フカラ(拍手)ドウカ仙石君ハ反省
セラレテ此費用ダケデモ鐵道建設ノ方ニ
是非御廻シアランコトヲ切望致ス次第デア
リマス、最後ニ一言附加ヘテ置キマスル事
ハ、鐵道ガ國家ノ文化ノ先驅デアリ、又國
運ノ伸張ガ鐵道事業ノ進行ニ深イ關係ヲ
持ツモノデアルコトハ、是ハ皆サン御水知
ノ通リデアノテ、私ヨリ改メテ申上ゲル迄
モナイコトデアリマスルガ、歐羅巴ノ事ヲ
持出シテ御叱リニ相成ルカモ知レマセヌ
ガ、結論デアリマスカラ御許ヲ願ヒマス、
近來歐羅巴〕ノ識者ノ間ニ於テ、社會ノ最モ
要務トスベキ當面ノ急務ハ有ユルモノヲ棄
テヽモ農村ヲ都會化シ、農村ノ生活ヲ都會
ノ生活ト變リナキ便宜ヲ與ヘルマデニ引上
ゲルコトガ、社會ノ急務中ノ急務デアルト
云フ議論ガ甚ダヤカマシイノデアリマス、
(拍手)而シテ農村ヲ都會化シ、都會ノ文化
ヲ村落ニ移スト云フコトハ、如何ニスルモ
鐵道建設ノ力ニ俟タナケレバナラヌト云フ
コトヲ歐羅巴ノ識者ガ折角言ウテ居ルノデ
アリマス、歐羅巴ノ今日ノ狀況ハ前ニモ申
上ゲマシタ如ク、實ハ鐵道ガ行渡リ過ギテ
居シテ、其爲ニ鐵道自身ノ經濟ガ甚ダ付キ
惡イ位ナ狀況ニ相成シテ居ル、鐵道學者ハ歐
羅巴ハ餘リニ鐵道ヲ濫費シ過ギタ結果デア
ルト言ウテ居ルノデアリマス、ソレニモ拘
ラズ斯ノ如キ議論ガ行ハレルト云フコトハ、
農村ヲ都會化スルト云フコトノ目的ニ向ッ
テ、歐洲ノ識者ガ如何ニ心ヲ勞シテ居ルカ
ト云フコトノ一ツノ證據デアルト私ハ考へ
マスルガ、我ガ帝國ハ歐洲ト事情ヲ異ニ致
シテ居リマシテ、マダ鐵道ガ中々普及致シ
テ居ラヌ、鐵道普及ハ今日ノ急務デアルノ
ミナラズ、農村ノ疲弊ハ當今其極ニ達シ、
農村振興ノ聲ハ國論ト相成ッテ居ルノデア
リマスカラ、鐵道ヲ建設シテ農村振興ノ意
味ヲ緩和スルコトモ、是モ或ル意味ニ於テ
ハ此鐵道ノ既成計畫ヲ遂行スル上ニ於テ、
大ナル異議ノアルコトデハナイト私ハ確
信ヲ致シテ居リマス(拍手)三派ノ諸君ニ於
テハ、無論鐵道ノ計畫ノ遂行ニ御異議ガ無
イコトハ當テ仙石大臣ガ三千三百万圓說ヲ
發表致シタ時分ニ、三派ノ諸君ガ之ヲ四千
六百万圓ニ變更サシタ、其諸君ノ御働ハ私
ハ多シトシテ感謝スル所デアリマスガ、併
シ四千六百万圓ニナッタ事ヲ諸君ガ滿足ヲ
致シテ居ル譯デハナイノデアリマス、特別
ノ事情ノ爲ニ唯、我慢ヲ爲サレテ居ルノミ
デアッテ、實ハ御滿足ノ結果デハナイノデ
アリマスカラ、私ハ玆ニ本決議案ヲ提出致
シマシテ、ドウカ皆樣方ガ黨派ニ關係ナク
超越シテ、我ガ國力ノ發展、文化ノ先驅ノ爲
ニ此決議案ヲ滿場ノ御同意ヲ得テ、滿場一
致此議場ヲ通過致シマスルヤウニ諸君ノ御
反省ヲ御願ヒスル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=74
-
075・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス田淵豐士口君
〔田淵豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=75
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076・田淵豐吉
○田淵豊吉君 諸君私ハ餘リ鐵道ノコトハ
知ラヌノデス、極ク素人デアリマスガ、ドウ
カ相當ニ重大ナル問題デスカラ暫クノ間御〓
聽ヲ願ヒタイ、大臣ガ居リマスカ、アア鐵道
ノ人ガ居ル居ル、是ハ議事進行デナイカラ
少シ外ノコトヲ言ハシテ貫フト都合ガ宜シ
イ、宜シイデスガドウモ私ハ斯ウ思フ、是
マデハ封建時代デアッタ、日本ガ統一サレ
テ、ソレカラ世界的ニナッテ來夕、此三ツ
ヲ見ナケレバナラヌ、所ガ國際會議ガ起ッ
テ居リマス所ガ日本ダケデモ分リハシナ
イ、統一ガナイ、ソレデ國際會議ニ出テモ
何ニナル、サウ云フノガ多イ、內閣デモサ
ウダ、皆チリ〓〓バラ〓〓デアル、少シモ
統一ガナイ、元田君デモ大木君デモ、經濟
ノコトハ能ク知ラヌ、元田君ハ法律家デ經
濟ノコトハ知ラヌ、仙石サンデモサウデア
リマス、鐵道ノ大工ノコトハ知ッテ居ルガ、
經濟ト云フ大キナ頭ガナイカライカヌ、政
友會デモサウデセウ、政友會デモ〓育ノコ
トハ人ヲ造ル、交通ハ物資ノナニガヤル、
物資ヲ交換シテ自由自在ニヤルト云フコト
ニナッテ居ル、ソレデ日本ハ段々是ハ改良
ト云フコトニモ關係ガアリマスガ、世界道
ト云フモノヲ造ラナケレバナラヌ、世界ノ
日本デアリマスカラ、世界ト云フモノト日
本トノ間ノ交涉點ヲ取ラナケレバナラヌ、
詰リ經濟ノ根本ト申シマセウカ、何ト申シ
マセウカ、今日ニ於テハ交通運輸通信ト云
フコトハ經濟ノ殆ド中樞ヲ成シテ居ルノデ
アル、支那ガ金貨本位ヲ採用出來マセヌノ
ハ民度ノ低イノト、鐵道ガ完成シテ居ナイ
カラ金貨ノ輸送ニ於テモ困ル、ソレデ金貨
本位ヲ採用スルコトガ出來ナイ、日本デモ
都會ト田舍ト金利關係ガ違フト云フ、總テ
ノ點ニ於テ私ハ經濟ニ大ナル關係ガアルト
思フ、ソレカラ總テノ統合シタ頭ヲ大臣ガ
持ッテ居ナイ、今囘デモサウデス、局長ア
タリハ建設ヲヤリタイガ、仙石サン一人デ
改良シヤウト云フ、仙石サン一人ガ政黨ヲ
引廻シテ、局長ナドヲ引廻シテ、一人ノ頭
デヤッテ居ル、又此處ニ座シテ居ル人、濱口
サンハ頭ガ堅イカラ金ヲ出サヌ、仙石サン
モ困シテ居ッタ、是ハ仙石サン一ツノ頭デ拵
ヘタ案ナノダ、外ノ者ハ知ラナイ、是ハ餘
談デハナイケレドモ、重要ナコトデスケレ
ドモ、又本問題トハ關係ガアルケレドモ、
比較的薄イカモ知レヌ、併シ相當ニアルト
思フ、私ノ言ント欲スル所、政府ニ聽カン
ト欲スル所ハ、此經濟ト云フモノハ御存知
ノ通リ、生產ト云フモノト此分配論ガ世界
ノ大問題ニナッテ居ル、生產論ハ幾何カ閑
却サレテ、分配論ガ世界ノ大問題トナッテ
居ル、サウシテ生產論ニ於テハ生產ノ「オ
ルガニゼーシヨン」、生產ノ機關ノ改造ト云
フモノガ生產論ニ於テ最モ重大ナル關係ヲ
持シテ來テ居ルノデアリマス、サウシテ最
モ必要ナル分配論、或ハ社會政策ト云ヒ、
或ハ社會主義ト云ヒ、共產主義ト云ヒ、此
世界ノ大勢ハ則チ生產ノ方法、及ビ殊ニ分
配ノ點ニ於テ、非常ニ唯物觀ヲ主張スル「マ
ルクス」ノ影響ヲ受ケテ、ソレニ非常ニ集
中シテ居ルト云フ狀態、由來人間ハ物質的
ノ事ガ多イ、故ニ人權ノ發達交通ノ發達ト
共ニ、益〓ヒドクナルト思フ、然ルニ現內
閣ノ狀態ヲ見マスト、現內閣ノ加藤高明ト
云フ人ヂヤトカ、或ハ又仙石君デモ、元、
(「餘計ナ事ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)餘計デ
ハナイ、加藤高明君トカ、仙石君ハ元ハ鐵
道ノ私營主義ヲ唱ヘタ人達デアル、營利主
義デアル、成ベク鐵道カラ金ヲ多ク取ラ
ウト云フ營利主義デアル、此營利主義ガ今
日モ拔ケナイデ-西園寺サンカ知ラヌ
ガ、政友會ノ連中ガ國營主義デナケレバナ
ラヌト云フ、故ニ私營主義ノ憲政會ト國營
主義ノ政友會ト云フモノハ兩々相容レナイ
所ノ主張ヲ持ッテ居ルコトハ固ヨリ明デア
ル、然ルニ今ノ仙石君アタリガ矢張今回ヤッ
テ居ルノハ中央集權的デアル、保守的デア
ル商工的デアッテ、地方的デナク、農村的
デナイト云フノデアリマス、是ガ重大ナル
所ノ岐レ目ニナッテ居ル、私營主義デアリ
て 、改良ト雖モ「インテンシブエキスチ
ンシヨン」トモ云ハレマセウ、卽チ集約的ノ
建設デアリマシテ、卽チ一ツノ「エキステ
シヨン」デアル、卽チ一種ノ建設延長デア
ル、ケレドモ都市ニ集中シテ居ルノデアリ
マス、或ハ車輛ノ改良トカ、或ハ電化政策
トカ、或ハ鐵道ノ「レール」ヲ複線ニスルト
カ、或ハ停車場ヲ直ストカ、橋ヲ直ストカ、
名古屋アタリノ人ハ怒ラルルカモ知レナイ
ガ、名古屋邊リデハ若シ鐵道停車場ヲ旨ク
シテ吳レナケレバ、脫黨シテモ名古屋ノ改
築ヲヤラウト言ッタコトヲ聞イテ居ル、大
阪モサウデアル、大阪ノ新聞デ提燈ヲ持
ツ、東京モ金ヲ取シテ居ル、殆ド震災後燒
太リスルヤウニナルマデ取ッテ居ル、都市ハ
皆非常ニ良イ、都市集中主義カラ割出シテ
東京、名古屋、大阪ノミナラズ全國ニ既成
線ナドニモ及ンデ居ル、之ヲ或ル點カラ言
ヘバ集中主義、營利主義、「コムビネーシヨ
ン」デアリマス、又一方政友會ハ黨勢擴張
ノ爲ニ成ベク地方ニ鐵道ヲ架ケルト云フコ
トヲヤッタデハナイカ、所ガ憲政會ハドウ
カト云フト、矢張都市ノ議員ガ多イカラ、
議員ノ取レナイ所ノ何所ニ持ッチ行ッテモ政
友會ニ取ラレテシマフカラ、小サク固マッ
夕所、黨勢ノ擴張ヲヤラウト云フノガ憲政
會ノ肚デアラウト思フ、(「ソレガ何ダ」ト呼
フ者アリ)マア聽キ給へ、速記錄ヲ讀ンダ
ラ能ク分ルカラ-此集中主義的營利主義
ト國營主義トハ違シテ來ルコトハ、政友會
ノ諸君ニ明瞭ニ分ッテ居ル、私ハ斯ウ云フ
ヤウニ思フノデゴザイマス、鐵道ト云フモ
ノハ、國ガ立法權、司法權、行政權ヲ持シテ
居ッテ、統治權ノ大ナルモノガアル以上ハ、司
法ノ上ニ於テモ、通信ノ上ニ於テモ、郵便物
ヲ送ッタリスルモノ、又軍備ノ上ニ於テモ、
或ハ經濟ノ上ニ於テモ、〓育ノ上ニ於テモ、
此日本帝國ト云フモノハ一ツノ統一シタ所
ノ有機體ノヤウナモノデナケレバナラヌ、
故ニ各地方ニ向ッテモ矢張鐵道ヲ架ケテ、
サウシテ是等ノ行政機關ノ活動、司法機關
ノ活動、軍備機關ノ活動ヲシテ完全ニセシ
メナケレバイカヌト思フノデアリマス、是
ハ小サイ問題デナイト私ハ固ク信ズル、1
ミナラズ此大ナル所ノ經濟網ト云フモノヲ
張ッテ、成ペク安ク、成ベク早ク其物ヲ連
絡スルト云フコトニナルト、或ハ魚デモ、
或ハ材木デモ、或ハ肥料デモ其他諸々ノ物
資ヲ運搬スルニ付テ非常ニ安イ、又金利モ
安クナルト云フ狀態デアリマス、今日總テ
ノモノヲ都會ニ集中シテ、都會ガ段々集中
シテ、其弊ニ堪エナイト云フ狀態デアリマ
ス、是ハ「ノルマール」普遍的ニ正當ニ集ッ
テ來ルナラ、宜イケレドモ、色こナモノガ
澤山集"テ來テ、社會政。策ト云フコトデ金
ガ要ルト云フコトニナル、農村振興ニ付テ
モ農務局ナドハ與リ知ラヌ、鐵道ノ改良ト
建設ガ如何ナル關係ガアルカヲ知ラナイ、
唯仙石サンハ大工サンノヤウニ鐵道ヲ知ッ
テ經濟ヲ知ラヌ、經濟ヲ知ッテ財政及日本
ノ生命ヲ知ラナイ人ガヤッテ居ルカラ、其
人ノ拵ヘタ案ハ見ナクテモ分ッテ居ル位ノ
モノデアル、彼ノ露國鐵道ハ極東ノ大政策
ヲヤル爲ニ西伯利マデ佛蘭西ノ金ヲ借ッテ
來テハ佛蘭西ハ後デ困ッタガ、非常ナル所
ノ大計畫ヲヤッタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=76
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077・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田淵君御注意致シマ
ス、成ベク質問ノ要領ヲ御述べ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=77
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078・田淵豐吉
○田淵豐吉君(續) 故ニ鐵道ノ政策ヲヤル
上ニ於テ私ハ非常ニ今ノ內閣ハ間違シテ居
ルト思フガ、間違ッテ居ナイカドウカ、私
カラ言ヘバ改良費ト云フノハ、卽チ既ニ敷
イタ所ニ以テ行ッテ、又鐵道ヲ架ケルト云フ
コトハ、百圓ヤッタ人ニハ百圓ヤルガ、マダ
約束シテ居ルガ百圓ヤラナイ人ニハ、百圓
ヤラナイデ、延バシテ置クト云フヤウナ案デ
アル、是ハ先ニ言ウタ所ノ分配論ノ上カラ
非常ナ所ノ不公平ヲ來ス、サウシテ全身ノ
大ナル活動ガ出來ナイノハドウデアルカ、
其一例ニ小サイ例ヲ引クト「パス」ノ問題卽
チ無賃乘車劵問題ガサウデアル、「パス」ハ
前鐵道大臣トカ、或ハ新聞記者アタリニハ
社ヘ二三枚ヅヽ配ッテ居ルラシイ、然ルニ
警察トカ國家ノ活動ノ源泉機關デアル立法
部ノ議員ニ與ヘヌト云フコトハドウデアル、
取上ゲルト云フコトハドウデアルカ、(「ヒ
ヤヒヤ」)諸君實ニ怪シカラヌ、是ハ先ニ
言ウタ營利主義カラ來テ居ル、個人主義的
カラ來テ居ル、諸君鐵道從業員ハドウデア
ルカ、從業員ノ家族ハ能ク知リマセヌガ、
約十六万人アルト云フ、十六万人ノ人ニ一
人ノ從業員ニ付キ三人ヲ限リ十五日分二回
與ヘテ居ル、卽チ年ニ一人ニ付キ九十人分
與ヘテ居ルカラ、之ニ十六万ヲ乘ケレバ非
常ナ多數ノ人ニ、鐵道ハ年ニ二等ヤ三等ヲ
與ヘテ居ルノデアル、是ハ寧口是等ノ人ニ
ハ金ヲ與ヘテ少シデモ給與ヲ增シテヤル
「パス」ヲ與ヘテ必要ノナイ所ヲ見物スルヨ
リハ給料ヲ增スノ方ガ宜イト思フ、然ルニ
從業員ハ兎モ角其家族ニ與ヘテ居ル、是一
本當デアルカ、若シ本當デアレバ斯樣ナ人
ニ與ヘルヨリハ寧ロ國家ノ現業員デアル警
察官或ハ立法部ニ向ッテ、之ヲ與ヘテ自由自
在ニ政府ヲ監督スルニ便ニスルガ宜イ、サ
ウシテ遺利ヲ開發スルニ便宜ヲ與ヘルガ宜
イ、然ルニ政府ハ成ベク監督サレタクナ
イ、ソレデ鐵道從業員家族ニハ與ヘテ、サ
ウ云ウコトヲシテ居ルノハ如何ニモ鐵道自
身ガ何ヲヤラウトモ外ノ者」ハ默シテ居ロト
云フ主義デアッテ、盲目ナル人ニハ出來ルカ
知ランケレドモ、明晰ナル所ノ國家的觀念
ヲ有シテ居ル人ニハ到底斯ウ云フ大臣デハ
却〓鐵道ハ敷カレヌト云フコトハ分ッテ居
ル、故ニ「パス」ヲ出スナラバ宜イ、若シ出
サネバ吾々ハ法律案トシテ取ッテ見セルツ
モリデアル、英國デモ二三年前デシタカ議員
ニ鐵道乘車賃ヲ與ヘルヤウニナッテ居ル、獨
逸デモ聞ク所ニ依ルト新憲法ニ於テ議員ニ
「パス」ヲ與ヘテ居ルト云フコトデアル、(「質
問ノ要旨ヲ言へ」ト呼フ者アリ)故ニ斯ウ云
フ點ニ於テモ若シ從業員ガ金ガ要レバ從業
員ニ幾分金ヲ增シテヤレバ宜イ、サウ云フ
餘計ナコトヲシテ本末輕重ヲ誤シテ居ル
小サイ事柄ガ即チ鐵道計畫ニ現ハレテ來テ
居ルト云フコトヲ、私固ク信ジテ疑ハナイ
ノデアリマス、第二點トシテ聽キタイノハ
法律デ、地方民ガモウ既ニ架ルモノト思ッ
テ居ッテ、待チニ待ッテ居ルモノヲ、又延バ
スト言フコトハ、其地方ノ人〓ガ思シテ居
ル所ノ商賣ノ思感トカ其他色ニノ點ニ於テ
齟齬ヲ來シテ居ルモノガアル、心ノ痛ミヲ
感ジテ居ル、色ミノ請願人ガ請願シテ來ル
ノニ隨分全ガ要ッテ居ル、私共ノ所デモ或ル
町ナドハ請願ノ爲ニ金ガ入リ過ギテ困ッテ
居ル所ガアル、是ハ政友會ノ諸君ノ罪ノ一
斑デアル、サウ云フヤウナコトヲシテ鐵道
計畫ヲヤルガ爲ニ地方民ガ迷惑ヲ蒙ッテ居
ル、一旦國家ガ法律デヤルト云フコトヲ定
メタ以上ハ萬難ヲ排シテヤッタラドウカト思
フノデアル然ルニ諸君一方ニ於テハ此改良
費ノ總額ニ於テ-間違フカモ知レヌガ間
違ッタラ直シテ下サイ、六億一千六百万圓
ノモノガ、七億二千四百万圓、約一億八百
万圓ヲ增シテ居ル、建設費デハ五億三千六
百万圓ヲ五億五千五百万圓ニシテ、約一千
九百万圓シカ增シテ居ラス、一方ニ於テハ
一億八百万圓ヲ增シ、一方ハ千九百万圓シ
カ增シテ居ラヌ奇現象ヲ呈シテ居ル、是一
何故デアルカ、色ニノ關係モアリマセウ
ガ、斯ウ云フヤウナ偏頗ナル所ノ政策ヲヤ
レバ吾ミハ思想ノ惡化ヲ來スト固ク信ジ
テ居ルノデアル、既ニ來シテ居ル-事實
デアル、次ニ私ハ此改良ガ必シモ改良ニ據
ラナケレバ、先ノ人ガ言フタヤウニ今直グ
人ガ落ツコチテ死ヌト云フ譯ノモノデナ
イ、故ニ地方ノ鐵道ヲ敷イテ後ニ、廣軌ナ
リ何ナリヲヤルト云フコトヲヤノテモ宜イ
ト云フ議論モ附クノデ、是ハ大分極端デア
ルケレドモ、サウ云フ議論モ附キマセウ、
仙石サンガサウ云フ所ニ掛シテ來ルト斯ウ
云フ議論モ附ク、故ニ必シモ鐵道ノ改良ヲ
シナケレバ日本ガ引繰リ返ル譯デナイ、故
ニ此點ハ非常ニ考慮シナケレバナラヌ、仙
石サンノ頭デハドウシテモ斯ウ云フヤウニ
センケレバ營利主義ニ行カヌト云フ考カラ
ヤラレタノデアラウガ、少シヤリ過ギデハ
ナイカト思フ、十四年度ニシマシテモ、
片ッ方ノ改良費ハ引カナイデ、片ッ方ノ建設
ハ九千万圓ノヲ四千六百万圓ニ殆ド半額ニ
マデ減ジテ居ル、ソンナ馬鹿ナ話ハナイ、
出來ナケレバ兩方デ減シタラ宜イヂヤナイ
カ、私ハ公債政策デ公債ヲ募ッテヤレト云
フ岩崎動君ハ、七千万圓ハ取ッテ見セルト
言ッタガ、ヨウ取ラヌヂヤナイカ、四千六
百万圓シカ取ラヌ、併シ政友會ハ仙石サン
ヲ虐メテ居ル、非募債政策デアルカラ困ル、
幾分金デモ借リテ吳レタラ宜カラウ、サウ
シテヤリタイト言ッテ憲政會ノ非募債政策
ノ後ロニ乘ッタカラ、仙石ガ行キツ戾リツ
シテ居ル、ソレデ仙石サンハ大藏省ヘ行キ
マスト言ッテ、大藏省ヘ行ッテモ最初僅二八
百万圓シカ借リテ來ナイ(「何ダカ分ラヌ」
ト呼フ者アリ)後トデ速記錄ヲ讀ンデ見給
ヘ、-サウ云フヤウナ問題デ非常ニ此改
良偏重ノ嫌ガアルト云フコトハ私ハ宜クナ
イト思フ、(發言者多ク笑聲起ル)諸君ガガア
ガア言フカラ忘レテシマフ(笑聲起ル)第三
ニ今度出シタ所ノ改訂ノ案ガ二十四年度ニ
ナッテ完成サレルト言ウテ居リマスガ、私
ハ鐵道ノ事ハ能ク知ラヌケレドモ、多分-
多分ヂヤナイ恐クハ二十四年度ニハ完成ス
マイト云フコトヲ、是ハ私ノ最モ强イ議
論此點ニ付テ的確ナル所ノ御答辯ヲ願ヒ
タイ、ソレハドウ云フ譯デアルカト云フト
此處ニモアリマスガ、(發言スル者多シ)マア
聽キ給へ、ヤカマシク言ハヌト-此點ニ
付テ私ハ先ニ總額ヲ言ヒマシタガ、各目ノ
點ニ付テ言ヒマスト大分同ジヤウナモノガ
アル、曩ノ計畫ト〓ノ計畫トハ大分違ッテ
少シバカリ增シテ居ルト云フ點ハアリマス、
ソレカラ此新見三次間ノ鐵道ハ私ガ間違カ
知リマセヌガ、一千三百万圓ヲ曩ニ計上シ
テ居ルノヲ今回ハ九百万圓デアル、約四百
万圓減ジテ居ル、卽チ三割方減ジテ居ルト
云フコトデアル、是ハ果シテ其線ノ測量ガ
間違シテ居ッタカ、外ノ點ニ於テ違フカ知レ
マセヌガ、物價ハ一〓デアルノニ何故此線
ダケ三割引イテ居ルカ、又サウシテ盛岡、
山田線等ハ千九百八十万圓ノモノガ、千八
百八十万圓ニナッテ五分ノ割引ヲシテ居ル
狀態デアル、更ニ私等ノ選擧區デアルカラ
能ク知ッテ居リマスガ、此紀勢線ハ二十四年
度ノ完成ニナッテ居ルケレドモ、約三割減
ニナッテ居ル、外ノモノハ長岡、高崎間ハ
ドウ云フ譯カ知リマセヌガ二百五十万圓ト
云フモノヲ八百万圓增シテ千二百万圓ニシ
テ居ル、此數字ハ間違デナイカ知ラヌト思
フガ、是ニハ何カ重大ナコトガアルノデア
リマセウ、其他ノ點ニ付テ池田山田間ノモ
ノハ矢張少シ增シテ居ルト云フヤウナコト
ニナッテ居ル、サウシテ伯備線此線ハ四百四
十万圓ガ八百十万圓、約二倍ニナッテ居リ
やっ、片ノ方ハ少シ層シテ居ルガ、片ッ方
ノモノハ少シ減シテ居ルト云フコトデ、總
額ニ於テハ少シシカ違ハヌト云フコトデ
アル、試ニ私ガ聞イタ所ニ依リマスルト、
私ハ能ク知シテ居ルガ、私等ノ紀州ヲ貫通
シテ居ル所ノ二百四哩ノ此鐵道ハドレダケ
金ヲ投ジテ居ルカト云ウト、大正十三年度
ノ十月マデニ九百万圓出シテ居ル、ソレカ
ラ後約三千二百万圓、合計四千万圓デ、ド
ウシテ諸君出來マセウカ、必ズヤ是ハ一哩
平均三十万圓掛ッテ、少クトモ六千万圓ハ
掛ル筈デアラウト思フ、物價ノ高低モアラ
ウケレドモ、大體今日ハサウ見ラレルト思
フノデアリマス、果シテ是ガ四千万圓デ出
來ルカドウカト云フコトヲ仙石サンニ御尋
シタイ、是ハ一體仙石君ノミナラズ、總テ
ノ人ガ嘘パパヲ書イタモノデハナイカト
思フ、今八田君ニ聞クト曩ノ原案ト云フモノ
ハ大正八年ノ時ノ物價デアッテ、約二割方
其時ノ方ガ高クテ、今ノ方ガ安クナッテ居
ル、故ニ安イノハ當リ前デアリマスガ、今
日勸業銀行カラ指數ヲ取寄セテ調ベタガ、
其指數ダケデハ分ラヌカ知ラヌガ、八年ト
今トハ一割二歩五厘下ッテ居ルノヂアリマ
ス、併シ又三土農商務次官ハ議會デ八年ト
今日トハ一圓何十錢ノ勞銀ガ二圓何十錢ニ
變シテ居ルト言ッテ居ッタト人カラ間イタ、
大體カラ言ヘバ安クナッテ居ナイ、寧口私
ハ其時モ更ニ他ノコトヲ見積ッテヤラナケ
レバナラヌ、此「ライン」デアル、然ルニ其
額ヨリモ更ニ尙ホ三割モ少ナイト云フ今
ノ物價モ安クナイノデアリマス、其安クナ
イ物價デ三割ト云フモノヲ減ジテ、果シテ
出來マセウカドウデアリマセウカ、私ハ他
ノ線ハ能ク知リマセヌガ、此他ノ線モ是デ
果シテ出來マセウカ、又全國ノ線ガ果シテ
是デ出來マセウカドウカト云フコトヲ御
尋シタイノデアリマス、其證據ト言ッテハ
ヲカシイガ、私ハ岐阜建設事務所ニ行キマ
シタ、サウシテ其處ノ相當ノ役人ニ會ッタ
ノデアリマス、サウシタラ年々二百万圓宛
兩方カラ出シテ、卽チ四百万圓位出シテヤ
レバ、十三年度ノ春ノ計算ニ於キマシテハ
大正二十八年度ニ完成スル見込デアルト云
フコトヲ言ッタ、詰リ岐阜建護事務所ノ役
人ガ誤リデアルヤ如何、仙石サンガ遠クニ
居ッテ知ッテ居ラヌノカドウカト云フコト
ヲ聞キタイ、現ニサウ言ッテ居ルノデア
ル、又或ル有力ナ者モ紀勢鐵道ハ二十四年
度迄ニハ出來マイト言ッテ居ル、コンナ小
サイ金デドウシテ出來マセウカ、四千万圓
ト云フモノハ大キイ方デ-年度割ヲ見ル
ト三千九百万圓ト云フノハ大キイ額ニナッ
テ居ッテ、十四年度ニ於テハ百三十万圓十
五年度二百二十万圓、十六年度百八十万圓、
十七年度二百六十万圓、コンナ小サイ金デ
ドウシテ出來マセウカ、斯ウ云フ出來ナイ
所ノ案ヲ出シテ諸君ヲ欺イテ居ルモノデア
ルト云フコトヲ私ハ固ク信ズルノデアル、
諸君、是ハ重大ナル所ノ問題デアル、政府
ハ斯ノ如キ不眞面目ナル案ヲ出シテ、此位
ノ金デ地方民ヲ釣ル爲ニ此原案ヲ拵ヘタモ
ノデハナイカ、是ハ提出者ノ人ニモ聞キタ
イ、諸君ハ果シテ此原案ニ依シテ出來ルモ
ノデアルト信ジテ居ラレルカ、ソレヲ聽キタ
イ、今ノ内閣ヤ之ヲ支ヘル所ノ人と明ニ是
ガ出來ルカ出來マイカト言フコトヲ十分ニ
踏査シタノデハナイト思フ、吾々ハ金モナ
ケレバ書記モナイ、何モ十分ニ調ベルコト
ハ出來ナイガ、併ナガラ吾々ノ見解デハ到
底出來ナイデアラウト云フコトヲ信ズル、
況ヤ諸君ハチヤランポランナモノヲ以テ遲
イトカ早イトカ云フコトヲ言フノハ、是ハ殆
ド「ノンセンス」デアルト云ヘル、此中ニハ
出來ルモノモアリマセウケレドモ、出來ヌ
モノモ多イ、元田君モ鐵道ハ一年ヤ二年ハ
既定ヨリハ大抵後レルト云ハレタ事ガアリ
マシタ、是迄政友會ハ地方民ヲ釣シテ居フタ
ノデアルカラ、嘘バカリ言ッテ黨勢擴張ヲ
ヤッテ居ッタノデアル、斯ウ云フ狀態デハ日
本ノ人民ハ惡化スルバカリデアル、モウ少
シ正確ナ綿密ナ案ヲ出シテ貰ヒタイ、十分
ニ調査モセズシテ斯ウ云フ案ヲ出シタト云
フコトハ、私ハ間違デアルト思ヒマスガ、
不幸ニシテ後ニ私ノ言ガ當ルノデハナイカ
知ラヌト云フコトヲ虞レルノデアリマス、
故ニ諸君ハ此既定ノ計畫ヲ一日モ早クスル
ナラバ、公債ニ依ルカ何トカシテ既定ノ地
方鐵道ヲ完成シナケレバナラヌ、私ハ二十
四年ニ完成スル案ニハ反對デアル、モント
早イ案ニ贊成デアリマス、併シ此原案モ怪
シイ、況ヤ二十四年ノ此案ニ於テハウント
減ジテ居ルカラ出來ナイト思フガ、ソレヲ
仙石サンニ聽キタイ、又靑木次官ニモ聽キ
タイ、目ト云フモノハ此方ノ都合デ何方ニ
デモ延ベ繰リガ出來ルト云フヤウナ事ヲ言
ハレルノハ、三文政治家ノ言フ事デアル、
本當ノ官吏、本當ノ政治家ノ言フコトデハ
ナイ、款項ノ流用ハ容サヌケレドモ、目ノ
流用ヲ容シテ居ルト云フノハ、其工事ガ出
來ナイ場合ニ後ノ年ニ其ノ金額ヲ戾ス必要
ガアルノデ、勝手ニ目ノ金ヲ減ズルノハ不可
デアル、此神聖ナル議場ニ於テ目ヲ出シ、金
額ヲ明示スル必要ハナイ、既ニ其年度割ヲ
出シタ以上ハ、之ヲ十分確實ニシテ置クト
云フコトハ人心ヲ安ンジ、經濟ヲ安ンズル
ト云フコトハ、是ハ大ナル目的デハナイカ
ト思フ、此點モ大ニ注意シナケレバナラ
ヌ、ソレヲ仙石君ガ一人デ切廻スト云フコ
トハイケナイト思フ、ソレカラ是ハ毒舌ニ
ナルカ知レマセヌガ、本黨ノ提案者ニ對シ
テモ政府ノ計畫ノ二十四年デ果シテ出來ル
ト思ッテ、斯ウ云フ事ヲ御出シニナッタノデ
アルカ、聽キタイ、何故ナレバ現政府ト諸
君ノ議論ノ根柢ヲ明カニシテ置キタイト云
フコトガ一ツト、一ツハ若モ〓浦内閣ガ潰
レナンダナラ〓浦サンノ案デモ大體同ジデ
アリマスガ、紀勢鐵道ノ如キ三年繰延ノ此
案ニ諸君ハ賛成シタノデハナカッタラウカ、
如何ニト云フニ、政友會ハ憲政會ニヒコ
摺ラレテ居ルデハナイカ、若シ〓浦內閣ガ
續イテ居ッタナラバ、此案ヲ出シテモブウ
ブウヤカマシク言ハナンダト思フ、若シ諸
君ガ合同サレテ内閣ヲ組織シタナラバ、合
同ハ宜イガ片ッ方ハ公債ニ依ル、片ッ方ハ公
債ニ依ラヌト云フコトニナレバ大問題ガ
起シテ來ヤシナイカ、貴族院ノ改革ト云ヒ、
普選ト、云ヒ、兩々相對シテ主義ニ向ッテハ
違フケレドモ、政策ハ一致シテ居ルト云ヒ
ナガラ政策モ異ルト一ムフ現象ヲ呈スルカ
ラ、ソコニ於テ諸君ハ大ニ考ヘナケレバナ
ラヌ、是ハ要ラヌヤウナ事デアリマスケレ
ドモ、政治上ノ重大問題デアリマスカラ、
一寸聽イタノデアリマス、大分多岐ニ亙リ
マシタケレドモ、出來ルダケノ答辯ヲ政府
ニ煩シ、又提案者ニモ幾分力答辯ヲ望ムノ
デアリマス
〔國務大臣仙石貢君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=78
-
079・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 只今田淵君ノ御質
問ニ對シテ御答致シマスガ、多クハ御議論
デアリマシテ、私ガ答辯スル程ナ要領ハナ
イト思ヒマスガ、併シ玆ニ三點アル、ッ
ハ今日ノ鐵道ヲ經營スルニ經濟的方針ヲ以
テヤッテ居ルヤ否ヤト云フコトガ第一點、
是ハ勿論ノ事デ、國有鐵道ハ單ニ經濟バカ
リデハイカヌ、他ニ種〓ノ方面ニ於テ考慮
スル事ガアリマスルガ、主トシテ經濟ハ尊
重スル、不經濟ノ線路ハ成ベク後廻シニス
ル、經濟ニ役立ツトカ竝ニ又便宜-一〓
ニ收入ハ擧ラナイデモ非常ナ便宜ヲ致ス線
路ガアル、サウ云フノハ矢張ヤルノデアリ
やっ、故ニ單ニ收入バカリデナシニ、地方
ノ便宜モ圖ッテ之ヲ考慮シテ居ルノデアリ
さく、是ガ卽チ今日鐵道ヲ選定スル方針デ
アリマス、次ニ「パス」ノ問題、是ハ社會ノ
人ニモ相當ノ滿足ヲ與ヘル爲ニ、或ル方面
ニハ與ヘテ居リマス、是モ事實デゴザイマ
ス、又第三ニ諸種ノ計算ガ色こニナッテ居
ルガ、是デハ出來ナイデアラウト云フ御
質問デアリマスガ、是ハ前豫算ト現今ノ豫
算トハ多少違クテ居リマス、何故違フト云
フト、物價騰貴ノ時代ノ豫算ト、今日ノ豫
算トハ大ニ違フ所モアル、又多少ノ流用モ
シテ居リマシタノデ、色〓各線ニ就テノ不
十分ナル點ガアリマシテ、今囘更ニ十分ナ
ル調査ヲ致シマシテ、相當ナル金額ニ積ッ
テ居リマスカラ、是ハ確ニ出來ルト云フコ
トヲ私ハ斷言致シマス(田淵豐吉君「二十四
年度ニ完成シマスカ」ト呼フ)二十四年度ニ
完成シマス(田淵豐吉君「ドーシテ出來マ
ス」ト呼フ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=79
-
080・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依フテ發言ヲ許シマス-山
道襄一君
〔山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=80
-
081・山道襄一
○山道襄一君 私ハ只今議題ニナッテ居リ
マスル決議案ニ對シテ、反對ノ意思表示ヲ
致シタイノデアリマス、此提案ヲ最初拜見
致シマシタトキニ、其趣意書ノ中ニ記サレ
テアリマスル文句中ニ、現内閣ノ鐵道計畫
ハ、改良ニ偏重シ、建設ニ偏輕シ、我ガ鐵
道計畫ヲ根本ヨリ破壞スルモノニ外ナラズ
ド云フ一句ガアッタノデアリマス、洵ニ國
家ノ大政策ニ屬シマスル交通政策ノ根幹ト
モ申スベキ所ノ鐵道政策ノ根本ヲ破壊致ス
ト云フコトニナリマスレバ、由々敷一大事
デアルコトハ何人モ其耳朶ニ觸ルヽ言デア
ラウト思ヒマス、今日定メシ鐵道ニ對シマ
シテハ、最モ多クノ經驗ヲ有シテ居ラレル
方〓ノ御集リニナァテ居リマスル此政友本
黨ノ御方ミデアリマスルカラ、定メシ根本
計畫ノ破壞ト云フ重大問題ニ付テハ、十分
ナル御意見ヲ御聞セ下サル事デアラウト、
今日ハ謹ンデ御待シテ居フタノデアリマス、
先刻木下サンノ御演說ヲ拜聽スルニ當リマ
ノチ、洵ニ申シ難イ言葉デゴザイマスル
多大ノ失望ヲ禁ジ得ナカッタノデアリ
ス(拍手)木下サンノ御演說要旨ハ、何レ
ニ在ルカト申シマスレバ、世界ニ於ケル所
ノ列國ノ例ヲ御引キニナリマシテ、是等ヨ
リ鐵道ノ敷設ノ哩數ガ少イトカ、殊ニ特別
ニ伊太利ノ例ヲ御引キニナリマシテ、此國
ニマデ劣ッテ居ルト云フ御議論カラ、更ニ
進ミマシテハ、建設論ヲ盛ニ高調ナサレタ
ケレドモ、一向ニ改良ノ問題ニ對シテ、特
ニ鐵道ト致シマシテハ、重大ナル使命ヲ帶
ピテ居リマスル此改良ノ問題ニ對シテハ、
何等ノ御言及ナカリシ事ヲ私ハ遺憾トスル
ノデアリマス(拍手)殊ニ建主改從ナルモノ
ハ、鐵道政策ノ根本主義デアルト云ブコト
ヲ御斷定ナサルニ至ッテハ、如何ニモ鐵道
ニ對スル御造詣ノ深キ木下氏ノ言葉トシテ
ハ、私ハ受取ルコトハ出來ナカッタノデア
リマス(拍手)或ハ進ンデ停車場ノ擴張問題
ニ論及セラレマシタガ、唯〓.一部ニ局限セ
ラレタル問題デアッテ、殊ニ最後ニ於テハ、
最モ力ヲ籠メテ御話ニナリマシタノハ、信
濃川ノ水力電氣問題ニ止タノデアリマス、
洵ニ此一事ニ依ッテ、鐵道計畫ノ根本ガ破
壞セラルヽト云フガ如キ御議論ヲ御立テニ
ナルト云フコトハ、如何ニモ私ハ其御心持
ニ對シテ何ダカ慊ラヌ所ノ感ヲ起スノデア
リマス(拍手)若シ私ヲシテ非常ナ皮肉ナ言
葉、變ナ言葉ヲ以テ木下サンノ御詰ノ言葉
ヲ拜借シテ申スナラバ、此問題ヲ言ヒタイ
ガ爲ニ、實ハ鐵道ノ根本ヲ破壊スルト云フ
コトヲ仰シヤッタノデハナイカト思フノデ
アリマス、今之ニ對シテ、私ハ一々其箇條
箇條ニ辯明ヲ致シマスル事ヨリ、先ヅ大體
ノ議論ヲ致シタイノデアリマスルカラ、其
大體ノ議論ノ中ニ含メマシテ、以上ノ御議
論ニ對シテ私ノ所見ヲ申述ベテ見タイト思
ヒマス、凡ソ事業ヲ國有ト致シ、官營ト致
シマスニ當ノテハ、言ウマデモナク公益ヲ
目的トシテ居ルコトハ、私ガ玆ニ喋々スル
マデモナイノデアリマス、其公益ト一口ニ
申シマスルガ、公益ナルモノニ行政上ノ目
的ニ出デマスル公益ガアリ、財政經濟ニ基
ク公益ガアリ、更ニ國防ニ基ク所ノ公益ガ
アルノデアリマス、言フマデモナク一般ノ
文化ノ普及ヲ圖リ、政治上ノ施設ヲシテ全
國ニ普ネカラシムルト云フヤウナコトハ、
是ハ行政上必要ナル公益デアリマス、又獨
占事業ノ如キモノニ對シテ、其特種ノ國民
ガ、有利ナル事業ノ利益ヲ〓斷致スト云フ
ガ如キコトノ弊ヲ防ギ、是等ノ間ニ於テ國
民ノ負擔致シマス租稅ノ均衡ヲ保チ、負擔
ノ均衡ヲ保チ、負擔ノ公平ヲ保タシムルト
云フコトハ、是亦必要ナ事柄デアル、是ガ
卽チ財政經濟上ノ見地ヨリ來ル公益デアリ
やっと、更ニ國防ノ如キモノハ祕密ヲ尊ビ、
統一ヲ尊ビ、迅速ヲ要スルト云フヤウナコ
トニ依ッテ、事業ヲ國營ニ移シ官營ニ移ス、
卽チ帝國ノ鐵道ガ國有ニセラレタ精神ハ、
是等幾多ノ公益ノ理由ニ基イテ鐵道國有ガ
起リ來シタコトハ、玆ニ私ガ重ネテ申ス迄
モナイコトデアリマス、而モ之ニ對シテ世
ノ中ニハ甚ダ誤解ヲ致サレ、此中ノ唯、ミ
ノ公益ヲ以テ全部ノ公益デアル如ク誤解サ
レテ居ル方ガ時ミアル、現ニ鐵道ノ如キニ
對シテ、鐵道國有ノ根本精神ガ公益ニ在ル
ト云フ所以ヲ以テ、唯〓鐵道路線ヲ全國ニ
普及セシメルト云フ、所謂建設ノミガ唯一
ノ公益デアッテ、既成ノ線路ニ對シテ、所謂
輸送ニ對スル保安、輸送ニ對スル安全、斯
ノ如キコトノ圓滑ヲ圖ルト云フ如キコト
ハ、何等公益ニアラズシテ、唯〓鐵道ノ建
設ノミガ公安、公益ガアルト云フ如ギ誤ッ
タル見解ヲ持ッテ居ル人ガ澤山アルノデア
リマス、或ハ今日仰セラレマシタ鐵道ノ根
本方針ハ建主改從デナケレバナラヌト云フ
御議論ハ詰リ斯樣ナ謬見カラ來ッテ居ル
モノデアルト、私ハ斷定致スノデアリマス
(拍手)鐵道ノ仕事ハ言フ迄モナク極メテ多
岐デアリマス、吾々政治ノ立場カラ見マス
ト、建設ト改良トハ鐵道ノ主要ナル事業デ
アリマス、此鐵道ノ建設ノ主要ナル事業ハ、
今申ス如ク建設ハ公益ヲ圖ルモノデアッテ、
改良ハ唯、利益ヲ圖ルモノデアルト云フコ
トハナイ、鐵道線路ハ全國ノ津ニ浦ミマデ普
及シマスコトハ勿論必要ナ事デアリマスケ
レドモ、利益ヲ圖ルモノデアルト云フガ如
キコトヲ重ネテ申シマスルノハ、根本ノ所
謂錯誤デアリマス、更ニ又吾々ハ之ニ對シ
テ所謂輸送ノ圓滑ヲ圖ルト云フコトニ十分
ナルカヲ盡ス、是ガ卽チ私ハ鐵道ノ公益ノ
目的ヲ達スルモノデアルト信ジマス、元來
此鐵道ノ建設ナルモノハ二樣ノ動機ヨリ起
ル場合ガ多イノデアリマス、一ツハ現在ニ
於テ利益ハ少シモナイケレドモ、併ナガラ此
鐵道ヲ敷設スルナラバ、之ニ依ッテ文化ノ發
展ヲ促スコトガ出來ル、文化ノ普及ヲ圖ルコ
トガ出來ル、之ニ依テ經濟上ノ實力ヲ培養
スルコトガ出來ル、地方ニ於ケル無價値ナ
ルモノヲ有價値ナラシムルコトガ出來ル、
爲ニ之ニ依ッテ鐵道ヲ敷設スル場合ガゴザ
イマス、更ニ之ニ依リマシテ恰モ鐵道ヲ敷
設シマスルニ當シテ、既ニ文化ガ十分發達ヲ
致シ、經濟上ノ實力ガ發達ヲ致シテ、如何ニ
モ此所ニ鐵道ノ建設ヲ必要トスルト云フ結
果ヨリ起シテ建設スルト云フ二ツガアルノ
デアリマス、卽チ例ヘテ申シマスレバ帝
國ニ於ケル北海道ノ鐵道、或ハ亞米利加ニ
於ケル初期ノ鐵道ノ如キハ、卽チ前者ヲ
意味シテ居ル所ノ建設デアリマス、此東京
横濱間ノ鐵道、或ハ歐羅巴諸國ニ於ケル鐡
道ハ、後者ノ理由ニ於テ起,夕建設デアリ
マス、此二樣ノ建設方法ガアルト同樣ニ、改
良事業ニ於キマシテモ一一樣ノ意味ヲ持タナ
ケレバナラヌ、卽チ一ツハ旣ニ將來ニ非常ナ
ル輸送ノ繁忙ヲ極メル、最モ繁忙ヲ極メ或ハ
非常ナル危險ノ脅威ヲ受ケルト云フ場合、
最モ不完全ノ狀態ニ在ルト云フ場合ニ、豫
メ圖シテ改良ニ盡スコトガアリマス、尙ホ
一ツハ既定ノ線路ニシテ十分ナル所ノ必要
ヲ感ジテ、是ニ於テ所謂之ヲ圓滑ナラシム
ル爲ニ改良事業ヲ行フト云フコトガアルノ
デアリマス、此二ツノ所謂建設ト云ヒ改
良ト云ヒ、何レモ二ツノ理由ノ下ニ行ハレ
やく、是レ何レモ皆公益ノ目的ヨリ來テ居
ルコトハ私ガ玆ニ申スマデモナイ、然ラ
バ是ガ卽チ何レモ公益デアルナラバ、其
何レヲ從トシ何レヲ主トスルカト云フガ如
キハ、絕對的ノ問題ニアラズシテ、其時ノ
場合、其國ノ事情ニ依リマシテ時ニ改良ヲ
主トスルコトガアリ、時ニ建設ヲ主トスル
コトガアル、其所謂斯ノ如キモノヲ原則的
ニ改主建從、建主改從ト云フコトヲ言ハレ
ルノハ、鐵道ニ通ジテ居ルト稱シテ居リナ
ガラ、鐵道ノ經濟問題ニ通ゼザルモノデア
ルト思フノデアリマス、世ノ中ニハ鐵道建
設ガ主デアルト稱シテ何等改良ニ顯ミル所
ナクシテ、徒ニ此建設ノミヲ爲シテ、爲ニ
所謂輸送ノ圓滿ヲ缺キ、輸送上ノ不安、脅
威ヲ感ゼシムルヤウナコトヲ致シテ、所謂
建設費ヲ濫費スルガ如キ者ガアリマスナラ
バ、是ハ鐵道ノ精神ハ公益ニ在ルト云フコ
トニ名ヲ藉シテ、實ハ鐵道ノ發達ヲ大ニ阻害
スルト云フコトヲ私ハ斷言スルノデリマ
ス、現在ノ鐵道ノ哩數ハ、或ハ百平方里ト
カ十平方里トカ、面積率或ハ人口率ニ對シ
マス所ノ鐵道ノ哩數ヲ計算致シマスレバ遺
憾ナガラ日本帝國ハ木下君ノ御演說ノ通リ、
世界ノ有數ノ國ニ於テハ最劣等ノ地位ニ
在ルノデアリマス、併ナガラ此最下ニ在ル
ノ故ヲ以テ、直チニ鐵道政策ノ是非ヲ判斷
スルト云フガ如キコトハ、鐵道ノ沿革ヲ知
ラザル人ノ言フコトデアリマス、國ノ經濟
財政ノ事情ヲ知ラザル人デアル、國ノ地位
ト云フモノガ如何ナルモノデアルカト云フ
コトヲ知ラザル者ガ言フコトデアルト思フ
ノデアリマス、殊ニ伊太利ノ例ヲ御引キニ
ナリマシタガ、非常ニ世界ノ知識ニ堪能ナ
ル木下君ト致シマシテ、驚クベキ御引例デ
アルト思ヒマス、伊太利ニ於ケル鐵道ハ如
何ニモ日本ノ今日ヨリ澤山ノ哩數ヲ持ッテ
居リマス、今日伊太利ガ數年或ハ十數年ニ
於テ非常ナル財政上ノ危急ヲ訴ヘルノハ何
ガ故デアルカト云フト、伊太利ノ政府ガ一
時非常ナル事業ニ對スル補助政策ヲ執リ、
特ニ鐵道ニ對シテハ極端ナル補助政策ヲ執
リマシタ結果、其私設鐵道ガ濫設セラレ
テ、ソレニ苦ンデ一時ハ國家ノ財政狀態ガ
非常ニ紊亂シタ、是ハ主トシテ鐵道ニ在ル
ト云フコトハ何人モ承知シテ居ルノデアリ
マス、吾々ハ如何ニ鐵道ガ必要ナリト雖
モ、今日伊太利ノ眞似ヲシテ、以テ今日ノ
日本ノ財界ヲ紊スト云フコトハ斷ジテ忍
ブベキ事デナイト云フコトヲ極言致シマ
ス、若シ私ノ言葉ガ誤ッテ居リマスナラバ、
次ノ壇上ニ立タレル御方ガ正シク私ノ言論
ヲ駁シテ下サルコトヲ御願致シテ置キマ
ス、殊ニ現内閣ノ執リマシ夕所ノ此大正十
四年度ニ現レマシタ豫算、竝ニ其以後ニ於
キマスル所ノ繼續計畫ニ對シマシテ、建設
費ノ甚ダ少ナキ既定計畫ヲ變革セラレタコ
トヲ痛論サレマシタケレドモ、私共ハ皆サ
ンノ御諒解ヲ得タイト思フノデアリマス、
國家ノ經濟財政ノ狀態ニ於キマシテハ、特
ニ必要ナル所ノ國防計畫ヲスラ變更シナケ
レバナラヌ場合ガアルノデアリマス、國防
計畫スラ之ヲ變更シナケレバナラヌ、直接
人命ニ危害ヲ及ボス所ノ治水ノ問題ニ對シ
テモ之ヲ變更シナケレバナラヌコトガア
ル、水道ノ問題デモ同樣デアリマス、道路
港灣ニ於テモ之ヲ改メナケレバナラヌ事情
ガアリマス、現ニ日本ノ今日ハ其事情ニ迫
ラレテ居ル時デアリマス、此直接生命財產
ニ關係アル治水事業、國家ノ存立ニ大ナル
影響ヲ及ボスガ如キ國防計畫、ソレ等ニ對
シテモ相當ナル考慮ヲ拂ハナケレバナラス
時ニ、此鐵道計畫ニ對シテハ一一十餘年ニ亙
リマスル間デ僅ニ二年、五六千万圓ノ中デ
僅ニ千万圓、二千万圓ノ金額ヲ減ジタガ爲
ニ、ソレニ依テ所謂根本ガ破壞サレルト云
フコトハ餘リ早計ナル議論ト思ハザルヲ得
ナイノデアリマス、殊ニ此問題ニ對シテハ
僅ニ二年ノ緊縮デアリマス、僅ニ二年ノ繰
延デアリマス、斯ノ如キ問題ニ對シテハ
私ハ根本ノ計畫ヲ誤ルト云フガ如キコトハ
斷ジテ承認出來ナイ、是ダケノ事柄ニ於テ
御了知ヲ願ヒタイト思フノデアリマスガ、
更ニ今日ノ日本帝國ノ鐵道ノ改良ノ計畫ガ
如何樣ニナッテ居ルカト云フコトヲ、暫ク
諸君ニ聽取シテ願ヒタイト思フノデアリマ
ス、今日鐵道ヲ論議スル者ハ、建設ヲ論ズ
ルト同時ニ改良ヲ論ズルガ當然デアラウト
思フノデアリマス、改良計畫ヲ論ジテ建設
ヲ論ゼザル者ハナイ、建設ヲ論ジテ改良ヲ
論ゼザル者ハ、建設ヲ論ズルコトハ斷ジテ
爲シ得タト云フコトハ出來ナイノデアリマ
ス、私ハ是ヨリ暫ク改良事業ニ付テ申述ベタ
イノデアリマス、餘程時間ガ迫ノテ居リマス
カラ、僅ニ一、二ノ例ヲ擧ゲチ申上ゲタイ、
今日ノ改良計畫ニ對シマシテハ、根本ヨリ
之ヲ改メナケレバナラヌ必要ニ差迫ッテ居
ルト私ハ考ヘテ居リマス、寧口此點ニ於テ
私ハ現内閣ノ爲サル所ガ、改良ニ對シテ爲
ス力足ラザル所ガ大ニアルト云フコトヲ憾
マザルヲ得ヌノデアリマス、私ハ議論ヲ拔
キニ致シマシテ、明治四十一年カラ大正
二年ニ至リマスマデノ間ニ出テ來マシタル
帝國ノ旅客及貨物ニ對シマスル數字ヲ基礎
トシテ、鐵道省當局者ガ調上ゲラレタル所
ノ豫想表ハ如何ニナッテ居ルカト申シマス
レバ、此表ハ速記ニ載スコトヲ御許シヲ願ン
テ一、二申上ゲタイト思フ、其鐵道省ノ調査
ニ依リマシテ、明治四十一年ヨリ大正二年
ニ至リマスマデノ實際數ヲ基礎トシテ將來
ヲ測リ出シマシタ數ニ依リマシテ、先ヅ幹
線デアリマスル東海鐵道ニ就テ申上ゲマス
レバ、一哩通過シマシタ人員ハ大正九年ハ
三百万人ニ上リ、大正十二年ハ三百二十八
万人ニ上リ、大正二十五年ニハ四百三十一
万九千ニ上リ、大正三十二年ニハ四百八十
七万九千ニ上ル數字ガ出タ、更ニ明治四十
一年ヨリ大正五年マデノ實際數ヲ基礎トシ
テ、政友本黨ノ領袖デ在ラレマスル元田サ
ンガ鐵道大臣ニ御就任ニナリマシタ時ニ調
上ゲマシ、ダ數ハ大正五年ノ數ヲ裏切ッテ
遙ニ超過シテ、大正五年ニハ四百十九万
人大正十九年ニハ四百四十六万人、大正
三十二年ニハ六百三十一万六千人、是ダ
ケノ數ガ一哩通過デアルコトヲ元田サン
ノ鐵道大臣ニ御成リニナッタ年ノ鐵道
省ノ計畫ハ、此數デ改良ナドヲ割出
サレテアリマス、然ルニ諸君、昨年ノ
暮ニ調ベマシタ所ノ實際數ハ、幾許ノ人間
ガ此一哩通過ノ人員トナッテ居リマスカ、
是ハ實際數デアリマス、豫定數ニアラズ實
際數デアリマス、大正九年ニ於キマシテハ
五百九十二万八千人、大正十年ニ於キマシ
テハ六百三十五万九千人、大正十一年ニ於
キマシテハ七百七万七千人、大正十二年ニ於
キマシテハ七百五十五万一千人ト云フ多數
ガ通過シテ居リマス、此數ハ殆ド元田サン
ノ大臣ニ御成リニナリマシタ年、大正三十
二年ニ通過スルデアラウト言ハレマシタ數
ハ既ニ大正十年ニ此數ニ到著致シテ居ルノ
デアリマス、二十二年前ニ此數ニ到著致シ
テ居ルノデアリマス、更ニ天正十二年ノ七
百五十五万一千人ト云フ數ニ至リマシテ
ハ鐵道省ガ二、三十年後ニモ想像セザリ
シ所ノ多數ノ人間ガ一昨年ノ暮ニ通過致シ
テ居ルノデアリマス、貨物ニ於キマシテモ
同樣デアリマス、此數ハ申上ゲマセヌガ、
貨物ニ於キマシテモ殆ド大正十一年ノ末ニ
於テ、元田サンガ當時御計算ニナリマシタ
大正三十二年ニ三百七十四万七千噸ニ達ス
ルデアラウト御想像ナサッタコトハ旣
大正十一年ノ暮ニ於テ三百七十一万五千噸
ト云フヤウナ大シタ貨物ノ輸送數ヲ示シテ
居ルノデアリマス、之ニ依ッテ見テモ、二
十二年先ニ於テ來ルデアラウト云ッタ所ノ
多數ノ旅客、多數ノ貨物ノ輸送ガ、既ニ大
正十二年ニ來シテ居ルノデアリマス、更ノ
之ヲ輸送ノ數ニ依クテ調ベテ見マスレバ、
若シ是マデノ實際數ヲ擧ゲタルコトニ依ツ
テ、大正三年ヨリ大正十一年ニ至リマスル
實際數ヲ計算致シマス時ニハ、其時ニハ大
正十四年卽チ本年度ノ終リデアリマス、本
年度ノ終リニ於キマシテハ人員ニ於テ八
百九十六万六千人、貨物ニ於テ四百九十五
万四千噸ト云フ大ソレタル所ノ此貨物ヲ運
バナケレバナラズ人間ヲ運バナケレバナラ
ヌ所ノ狀態ニ至ッテ居リマス、今日鐵道省
ノ改良ノ第一期ノ改良計畫ハ、大正十六年
ニ終ルト言ウテ居ラレマスガ、此大正十六
年ニドレダケノ乘客ニナルカト云ウト、今
日ノ輸送數カラ見マシテスラ一哩千万人通
過シ、貨物ニ於テ五百五十万噸通過シテ居ル
ノデアリマス、斯ノ如キ所ノ多數ハ未ダ會
テ-鐵道院總裁ヲシテ居ラレマシタ床次
サン、或ハ鐵道大臣ヲシテ居ラレマシタ元
田サンモ、未ダ會テ御想像ナサレタコトノ
ナイ、ソレニ二倍シ三倍スルト云フ大ソレ
夕重大ナ問題ヲ惹起シテ居ルノデアリマ
ス、斯ノ如キ此大ナル貨物、此大ナル旅客
ニ對シテ、其輸送ヲ滑ニシ、其輸送ヲ安全
ナラシムル計畫ヲ立テルト云フコトガ、公
益ニアラズシテ利益ヲ圖ルト云フ理論ハ何
所カラ出テ來ルカヲ私ハ承リタイノデアリ
マス(拍手)卽チ之ニ依ッテ今日改良ノ最モ
大事デアル其事ガ明ニ證據立テラレテアル
コトヲ私ハ申スノデアリマス、改良論ヲ仰
シヤラナカッタカラ、ソレヲ申スノデアリ
さく、ノミナラズ從來ノ改良費ナルモノヲ
金額ニ依シテ仰シヤルカ知リマセヌガ、從
來トモ改良費ガ建設費ヨリ多イコトハ是
ハ永年爲シ來ッタ事柄デアッテ、今日ノ內閣
ガ單リ建設費ヲ少クシテ、改良費ヲ多クシ
タト云フコトハ斷ジテ無イノデアリマス、
斯樣ナ所ノ事柄ノ貨物、人員ヲ如何ニシテ
之ヲ救濟ナサル積リデアリマスカ、斯ノ如
キモノハ東海道ノ線路ダケデモアル、尙且ツ
山陽線ニモアル、斯ノ如キ旅客アリ、斯ノ
如キ貨物ガアルモノヲ棄テヽ置イテ、面シ
テ尙且ツ諸君ハ支線ヨリドン〓〓貨物ガ出
ルヤウ、ドン〓〓旅客ガ出ルヤウ、支線ノ
培養、支線ノ建設ニ力ヲ盡スコトガ所謂忠
實ナル鐵道建設論者デアリマスカ、私ハ聽
イテ見タイノデアリマス(拍手)私共ノ考カ
ラ致シマスレバ、此事柄ヲ調和致サナケレ
バナラヌ、建設ハ勿論必要デアリマスケレ
ドモ-建設ハ不必要トハ申シマセヌ、建
設モ必要デアリマスケレドモ、當面ニ差迫,
テ居ル問題ヲ如何ニシテ解決スルカト云フ
コトノ是ガ吾々ハ非常ニ必要ナ事デアル、
殊ニ今日行詰ッテ居ル所ノ此狀態ヲ打開シ
マスノニハ如何ニ致スカト云ヒマスナラ
バ之ヲ致シマスコトハ言フマデモナク此
中央都市附近ニ於キマスル郊外、之ヲ電化
ニ依リマシテ、電車ノ運轉ニ俟タナケレバ
此目的ヲ達スルコトハ出來マセヌ、此郊外
ノ運轉ニ對シテ火力ヲ用ヰ、機關車ヲ以テ
致シマシテハ斷ジテ此附近郊外ノ輸送ハ出
來ルモノデハナイノデアリマス、必ズ之ヲ
致サナケレバナラヌ、更ニ遠距離ニ致シマ
スレバ、車輛ノ增發ヲシナケレバナリマス
そう、更ニ强力ナル機關車ヲ用ヰナケレバ
ナリマスマイ、此客車ヲ增發致シ、而シテ
强力ナル機關車ヲ用ヰマスナラバ、之ニ伴
フ停車場ヲ改良セザレバ、此增設サレタル
客車、此重キ機關車ハ如何トモスルコトガ
出來ナイカラ、之ニ依クテ停車場ノ改築ノ
必要ガ當然起ッテ來ルノデアリマス、此擴張
ガ起リマス同樣ナ意味ニ於テ、橋梁ノ改築
ヲ行ハナケレバナリマセヌ、同樣ナ意味ニ
於テ隧道ノ改造ヲ行ハナケレバナリマセヌ、
更ニ之ニ依リマシテ複線、複々線ノ設備ヲ
シナケレバナリマセヌ、而モ亦人命ヲ顧慮
スル上ニ於キマシテ、或自動連結機ノ
如キモノモ必要ト致スコトガゴザイマセ
ウ、斯ノ如キ事ヲ致スニ當リマシテ最モ多
クノ金ヲ要シマス、是ガ卽チ今日豫算ニ上ッ
テ居ル改良費デアル、僅ニ一部デアル、今
私ガ申上ゲタル數字ニ依シテ見マスレバ、今
日鐵道當局ガ計上シテ居ル改良費ナルモノ
ハ實ニ是等ヲ緩和スルニハ何等用ヲ爲サ
ザルモノデアルト言ッテモ差支ナイ位ノ程
度ノモノデアルノデアリマス、元來斯樣ナ狀
態ニ陷ッタル理由ハ申スマデモナイ事デア
リマスガ、歷代ノ當局ガ改良ヲ〓却致シテ
唯、徒ニ建設ノミニ熱中致シ、更ニ支線ノ開
設ノミニ全力ヲ擧ゲタル結果、此結果本線
ニ斯ノ如キ所ノ不便ヲ感ゼシメ、斯ノ如キ
滯貨滯客ヲ誘致スルコトニ相成ッタノデア
リマス、是ガ卽チ幹線ノ改良ヲ必要トスル
所以デアリマス、幹線ノ改良ハ卽チ地方ノ
開發デアリマス、地方ニ幾ラ物資ガ出テ來
マシテモ、地方デ生產シマス所ノ物資ハ地
方ニ依シテ消化サレルモノデハゴザイマセ
ヌ、地方ニ生產サレマス所ノ其物資ハ、此中
央都市ニ-大都市ニ向テ之ヲ運ブコト
ニ依ッテ初メテ地方ハ潤フノデアリマス、
中央ノ幹線ヲ直スト云フコトハ、是ガ卽チ
地方ノ發達ヲ促ス所以デアリマス、鐵道ヲ
造ルコトハ恰モ溜池ヲ造ル如ク、一本宛ノ
線路デアルト思フノハ大ソレタ間違デア
ル、鐵道ハ恰モ吾々ノ體ト同ジコトデ、中
樞神經ガ通シテ居ッテ吾々ノ手ハ動キ、吾々
ノロハ動キ、吾々ノ足ハ動ク、腕一本、足
一本、手ガ一本アルト云フヤウナ鐵道
ハ左樣ナ斷絕的ナモノデハナイノデアリマ
ス地方デ溜池ヲ造ルヤウナ考デ鐵道ノ建
設ヲ致シテ、鐵道ヲ地方ニ造リサヘスレ
バ、ソレニ依ッテ文化ハ進展サレ、ソレニ
依ッテ地方ノ產業ガ開發サレ、農村ノ振興
ヲ圖レルト云フコトハ是ハ子供驅シノ議
論デアルト私ハ思フノデアリマス」(拍手)更
ニ私ガ御伺致シタイコトハ建主改從ト言
ハレマスル、建設ニ偏重致シ、改良ニ偏輕
致シテ居ルト言ハレマスコトハ如何ナル理
由デ仰シヤルカト云フニ、若シ建設ノ費用
ガ少クシテ、改良ノ費用ガ多イト仰シヤル
ナラバ、諸君、願クハ後ニ於テ此表ヲ一覽
下サレタイ、此大正ノ時代ニナッテカラ假
ニ申シマセウ、十三年間ニ於テ何年ノ年ニ
果シテ建設ノ費用ガ改良ノ費用ヨリ多カソ
夕年ガアリマスガ、一年デモアリマセヌ、
大正ノ時代ニ於テ左樣ナ年ハ一年モゴザイ
マセヌ、大正元年ヨリ大正十三年ニ至ルマ
デヲ玆ニ申上ゲマスルガ、年々改良費ノ方
ガ建設費ヨリ多イノデアリマスガ、特ニ大
正四年ハ約二倍ニナッテ居ル、大正五年モ
二倍ニナッテ居ル、大正六年モ二倍、大正七
年ニハ改良費ハ建設費ノ七倍ニ上ッテ居リ
マス、更ニ大正八年ノ改良費ハ建設費ノ三
倍ニ上ッテ居ル、十年ニ於テハ二倍、十一
年ニ於テ二倍、十三年ニ於テモ二倍、而モ
此大正八年ハ御承知ノ通リニ床次サンガ鐵
道院總裁ヲシテ居ラレタ時デアリマス其年
ニ於テ床次サンガ御作リニナリマシタモノ
ハ-今私ガ中上ゲルノハ決算表デアリマ
スガ、豫算表ヲ見マスレバ-當時ノ議會
ニ於テ御說明ニナッタ石丸次官ノ說明サレ
マシタ豫算表ヲ見マスレバ、大正八年床次
サンガ鐵道院總裁ニナラレマシタ時ニ、其
時ニ建設費ハ僅ニ三千万圓デ、當時ノ改良
費ハ九千五百四十一万餘圓ニ上ッテ居ルデ
ハアリマセヌカ、改良費ガ三倍以上ニ上ン
テ居ル、大正ノ時代ニナリマシテカラ今日
マデ十三年ノ間ニ、此大正八年ヨリ以上
ニ-是ヨリ以上ニ改良費ガ建設費ノ三倍
强ニ上ッタコトハ未ダ會テ無イノデアリマ
ス大正十四年度ノ豫算デモ斯ノ如キ不權
衡ナ狀態ニハナッテ居リマセヌ、詰リ私ハ
ソコデ申スノデアル、改良費ハ必要デア
ル、然ラバ何ガ爲ニ諸君ガ此改良ノ金ガ建
設ノ金ヨリ多イガ故ニ、鐵道政策ノ根本ヲ
破壞スルトハ、何ニ依シテ左樣ナコトガ出
テ來ルノデアリマスカ(拍手)是ハ私ノ議論
デハアリマセヌ、實際數字ガ元シテ居ル所
ノ議論デアリマス(拍手)然ラバ之ニ依ッテ
改主建從ノ議論ハ成立シテ居リマセヌ、改良
ニ偏重シ、建設ニ偏輕シタト云フ議論ハ、
此一事ニ依ッテ消滅シ去。タノデアリマス、
然ラバ諸君ガ仰セラルヽニハ、或ハ十四年
度ノ豫算ノ中ニ於テ、鐵道建設ノ公債或ハ
借入金ガ少ナイト云フコトヲ仰シヤルノデ
ナカラウカト思ヒマスルガ、此點ニ付テ私
ハ御一考ヲ求メナケレバナリマセヌ、今日
ノ狀態ニ於キマシテ、財政整理ハ卽チ公債
ノ整理デアル位ノコトハ如何ナル人モ承
知ヲ致シテ居ルノミナラズ、現下ノ狀態ニ
於テ-財政ノ狀態ニ於テ經濟ノ事情ガ此
公債ノ多額ノ募集ヲ許サヾルコトハ、何人
モ今日御了知ノ事デアリマセウ、戰後ノ事
ニ付テハ大藏大臣ガ後度カ此事ヲ說明シテ
居ラレマスカラ、玆ニ繰返ス必要ハ毛頭ナ
イノデアリマス、併シ此中ノ此苦シイ中カ
ラデモ、尙且ツ千五百万圓ト云フ公債ハ建
設費ニ廻サレテ居ルデハアリマセヌカ、此
一事ヲ以テ見テモ、如何ニ建設ヲ無視シテ
居ラヌカガ明デアリマス、殊ニ政友本黨ノ
諸君ガ最モ御信賴ナサレタ所ノ嘗テノ鐵道
大臣ノ一人ハ、鐵道ノ益金ハ全部之ヲ改良
ニ充ツペキモノデアッテ、鐵道ノ建設ハ全部
之ヲ公債ニ依ルベキモノデアルト言ウテ、
如何ニモ原則的カノ如キ發言ヲシタコトモ
アルコトハ御永知デアリマセウ、若シ斯樣
ナ大臣ガ今日任ニ在ッタナラバ、此行詰ッタ
財政狀態ニ於テハ到底今日ハ公債ノ募集ガ
出來ナイトナレバ、建設ハ今日ニ於キマシ
テ大行詰リヲシナケレバナラヌ狀態ニ陷ル
ノデアリマス、而モ現仙石氏ハ斯ノ如キ事
ヲ致シテハ、ソレデハ洵ニ相成ラヌ、鐵道
ノ目的ニ反スルト云フ故ヲ以テ、既ニ三千
五百万圓ト云フ益金ノ中ヨリ三千百万圓
ノ多額ノ金ヲ割イテ之ヲ建設ニ廻シテ居ル
デハアリマセヌカ、諸君、未ダ嘗テ今日マ
デ鐵道益金ノ中ニ於テ一一千万圓以上ノ金ヲ
以テ此建設費ニ廻シタ大臣ガ一人デモ居リ
マセウカ、僅ニ一昨々年ノ一年ニ四百万圓
許リノ益金ヲ廻シタバカリデアッテ、外ニ於
テハ兎ニ角昨年ト今年、而モ今年ニ三千百万
圓ト云フ金ヲ此建設費ニ廻シテ居ル一事ヲ
以テシテモ、現内閣ガ如何ニ鐵道建設ニ苦
心ヲシテ居ルカハ明ナル事實デハゴザイマ
寧口斯ノ如キ問題ハ、
テ見マスレバ、
ヲ責メルヨリモ、
表
年
累
費
每年度建設改良
(四十二年度以降)
セヌカ(拍手)私共ヨリ申シマスルナラバ、
斯ノ如キ事ヨリ考へ
此最モ改良ニ-突破的ニ
所謂根本ヨリ立直サナケレバナラヌ程ナ大
ナル改良〓ヲ要スル今日ニ於テ、寧口現内
閣ノ執ッテ居リマスル改良ハ姑息ニ過ギル
ト吾々ハ言ヒタイ位デアッテ、諸君ハ現內閣
諸君ハ現内閣ノ鐵道政策
ニ全然一致シテ居ラレル者デアルト云フコ
トヲ明ニ證據立テ居ルト思ヒマス、殊ニ私
ヨリ申上ゲル譯ノモノデハアリマセヌガ、
信濃川ノ水力電氣ノ問題ニ付テハ能ク政友
本黨ノ元田サンガ御承知ノ通リデアリマス、
大正十三年マデニ於テ一一千七百万圓ノ金ガ
使ハレテナケレバナラヌ筈ノ豫算ガ、僅ニ
四百万圓足ラズノ金ヲ使ッタ限リデアリマ
額円
良2,591,407
31,017,76422,230,48620,073,15121,578,87327,617,61454,820,951
22.
改金
對合.48.45.4232303124
費
合計ニスル割
p
額,233,1369,601,2149,048,518
設18,686,24016,301,37412,370,12816,924,542
28
建金
算)〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
度
ククタクク〃ククク〃〃
(決〓〓〓〓(て(((
123456789
年
ス、後ノ金ハ何處ニ行ッテ居リマスカ、誰
ガ左樣ナ事ヲ致シタノデアリマスカ、斯ノ
如キ事ヲ仙石鐵道大臣ガ致シマシタカ、諸
君ハ自ラ自分ノ胸ニ手ヲ置イテ、而シテ能
ク之ヲ御考ナサルガ宜シイ、而モ鐵道大臣
ハ此仕事ハシナイト云フノデハナイ、大二
考慮ヲ致シテ-考慮ヲ致シテ以テ、大正
十六年ヨリ更ニ此計畫ヲ立テルト云フコト
ヲ明言致シテ居ル以上ハ、之ヲ責メラレル
諸君ハ私ハ不可解千萬デアルト云フコト
ヲ言ハザルヲ得ナイ、以上申上ゲタコトニ
依リマシテ、大體私ノ議論ハ盡キテ居ッテ、
今日ノ建設ニ偏輕シテ改良ニ偏重シタト云
フコトノ此現內閣ニ對スル非難ハ、何等取
ルニ足ラザル議論デアルコトヲ玆ニ宣言ヲ
致シテ降壇スルノデアリマス(拍手)
104,230,859108,167,265124,831,153138,512,731121,013,037134,948,189147,893,000160,406,000170,526,000
253532353027244.2221
35,335,02559,027,24558,297,20468,044,79864,496,32058,239,05746,000,00046,000,00046,000,000
算)))
〃〃〃
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10111213141516
員
人
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通
均
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哩
一
業
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線
幹
道
海
東
調至
年度
三年
三大正十一年度最小自乘法
十
正
正大
大自
調
年
九明治四十一年度至大正五年度最小自乘法
正
大自
調至
度
年
五大正二年度最小自乘法
自明治二十三年
正
大
年算
三精
十月
正二
大十
載績
記
表
圖實
度
年
哩
哩
4,190,000
哩
2,880,0002,960,0003,040,000
哩
5,507,0005,928,000
哩
2,576,0002,463,0002,452,0002,793,0003,007,0003,856,0004,522,0004,903,0005,882,000
元23456789
7.729,000
4,282,0004,375,0004,467,000
3,120,0003,200,0003,280,000
6,359,0007,077,0007,551,000
6,341,000
101112
8,348,0008,966,0009,585,00010,204.00010,823,00011,442,000
4,560,0004,652,0004,744,0004,837,0004,929,0005,022,0005,114,0005,206,0005,298,0005,391,0005,483,0004,576,0005,668,000
3,360,0003,440,0003,520,0003,600,0003,680,0003,759,0003,839,0003,919,0003,999,0004,079,0004,159,0004,239,0004,319,000
13141516171819202122232425
5,761,0005,853,000
4,399,0004,479,000
2627
5,945,0006,038,0006,131,0006,224,0006,316,000
4,559,0004,639,0004,719,0004,799,0004,879,000
2829303132
數
屯
過
通
均
平
哩
一
業
營
線
幹
道
海
東
調至法
度自乘
年
年小
三最
三
十
正
正大大正十一年度
大自
調至法
度乘
年自
九
自明治四十一年大正五年度最小
正
大
調
九年度至大小自乘法
年
五
二十年度最
正治
明二
大自正
年算
三精
十月
正二
大十
載績
記
表
圖實
年度
哩
4,392,0004,673,0004,954,0005,235,0005,516,0005,797.0006,078,00(
哩
2,561,0002,630,0002,700,0002,770,0002,840,0002,910,0002,979,0003,049,0003,119,0003,189,0003,259,0003,328,0003,398,0003,468,0003,538,0003,608,0003,677,0003,747,000
哩
2,296,0002,379,0002,461,0002,544,0002,626,0002,709,0002,792,0002,874,0002,957,0003,040,0003,122,0003,205,0003,288,0003,370,0003,453,0003,536,0003,618,0003,701,0003784,0003,866,0003,949,000
哩
3996,0003478.0003,432,0003,715,0003,365,000
哩
1,508,0001,617.0001,5200001,774,0002,4000003,0540003,52400036500003,303,0003,365,000
元234567891011121314151617181920212223242526272829303132発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=81
-
082・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 定刻ニ近ヅキマシタ
カラ時間ヲ延長致シマス-大石大君
〔大石大君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=82
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083・大石大
○大石大君 諸君、私ハ只今議題ニナッテ居
リマスル決議案ニ對シ、贊成ノ意思ヲ表明
スル者デアリマス、只今山道君ハ冐頭ニ於
キマシテ木下君ハ其計畫ヲ明ニシナイト云
フコトヲ申サレマシタ、吾々ハ既定計畫ノ
遂行ヲ期スル者デゴザイマシテ、玆ニ更ニ)
其計畫ヲ明ニスル必要ハナイノデアリマス
(拍手「出來ナイノダラウ」ト呼フ者アリ)又
憲政會ノ諸君ハ、從來鐵道速成ニ關シマシテ
屢、本議會ニ建議案ヲ提出セラレタノデアリ
マく、然ルニモ拘ラズ今日此決議案ニ反對
スルト云フノハ、其政治的良心ヲ疑ハザル
ヲ得ナイノデアリマス(拍手)更ニ伊太利ノ
現狀ガ鐵道ノ爲ニ政局ガ頗ル困難ニナッタ
ト申サレマシタ、是ハ全ク伊太利ノ政局ヲ
理解セザル所ノ暴論デアリマス、更ニ歷代
ノ內閣ガ改良ヲ怠リ、ソレガ爲ニ或ハ運輸
能力ノ增進ヲ阻害シ、或ハ線路ノ危險ヲ來
シタト論ズル傍ラ、歴代ノ內閣ニ於テ建設
費ヨリモ改良費ニ數倍使ッテ居ルト云フコ
トヲ、此所ニ表ヲ擧ゲテ說明セラレタノデ
アリマス、其矛盾撞著殆ド駁擊スル程ノ價
値ガ無イノデアリマス、更ニ地方ノ生產物
ハ之ヲ地方ニ依シテ消化セズ、之ヲ都會ニ
輸送スルト云フコトヲ申サレマシタガ、此
御議論ハ、卽チ決議案ニ贊成スル所ノ議論
デアリマス、殆ド山道君ノ御議論ニ對シテ
ハ、私ハ是レ以上駁撃スル所ノ價値ヲ認メヌ
ノデアリマス、諸君、政府ハ行政財政ノ整理
ノ名ノ下ニ、鐵道財源ニ對シマシテ公債資
源ヲ縮小シ、鐵道益金ノ收入ヲ過大ニ見積
リマシテ、其資源ヲ多ク鐵道ノ益金ニ求メ
タノデアリマス、而シテ其財源ヲ改良竝ニ
建設ニ割當テルニ際シ、從來ノ既定計畫ヲ
無視シ、曩ニ吾々ガ此議會ニ於テ協賛ヲ與
ヘマシタ所ノ精神ニ反シ、建設工事ノ施
行、或ハ其完成年度ニ變改ヲ加へ此計畫
ノ根本ニ一ツノ變改ヲ加ヘタノデアリマ
ス、而シテ〓後三年間ニ於ケル所ノ改良費
ヲ次第ニ增額シ、後年度ニ於ケル改良費濫
費ノ禍源ヲ藏シテ居ルノデアリマス、其鐵
道ノ經營、其鐵道ノ政策ハ少シモ國民經濟
ヲ基調トセズ、全ク鐵道專門技術家ノ專恣
放縱ニ用キルノ憂ヲ見ルモノデアリマス、
吾々ハ此憂ヲ除キ眞ニ國利民福ヲ企圖セン
トスルガ爲ニ、加藤友三郎内閣ニ依ッテ計畫
セラレタコトヲ根據トシ、更ニ〓浦內閣ニ
依ッテ改訂セラレタ所ノ此計畫遂行ヲ求ム
ルモノデアリマス、遂行ノ要望ニ對シマシ
テハ、與黨ノ諸君ニ於キマシテモ御異存ノ
ナイコトデアリマス、殊ニ政友會ノ諸君ハ
鐵道建設ノ急ナルコトヲ强ク主張致サレマ
シテ、濱口藏相ヲシテ千三百万圓ノ無イ袖
ヲ振ラシメタコトハ、吾々大ニ之ヲ多トシ
テ居ル者デアリマス、サリナガラ一足ト云
フ所ニ於テ他派トノ協調ニ急ニシテ、四千
六百万圓ニ御滿足ニナッタコトハ、從來ノ
御主張ニ對シ洵ニ遺憾トスル者デアリマ
ス、山道君ハ改良ノ極メテ急ナルコトヲ語
ラレタノデアリマス、私ハ此內閣ノ提出セ
ラレマシタ所ノ豫算ノ內容ヲ伺ヒマシテ、
非常ニ其豫算面ニ於キマシテ建設ヲ輕ンジ、
改良ニ重キヲ置イテ居ルト云フコトヲ數字
ヲ以テ申上ゲタイノデアリマス、今試ニ大
正十四年度ヨリ十六年度ニ至リマス所ノ三
年間ニ於ケル〓浦内閣ノ建設豫定額ト、現
內閣ノ建設豫定額トヲ比較シテ見マスルナ
ラバ、現內閣ハ〓浦内閣ヨリ其建設費ニ於
テ七千四百万圓ヲ減ジテ居リマス(「減ジタ
ガドウシタ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=83
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084・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 生方君ニ注意シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=84
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085・大石大
○大石大君(續) 改良費ニ於キマシテハ是
ト反比例致シマシテ、五千六百万圓ヲ增加
致シテ居リマス、此五千六百万圓ノ增加致
シテ居リマスモノヲ、公平ニ之ヲ建設費ニ
割當テマスルナラバ、既定計畫ハ容易ニ出
來ルノヂアリマス(拍手)此鐵道計畫、此鐵
道ノ財政計畫ヲ稱シテ卽チ仙石鐵相ガ建從
改主、建設ヲ輕ンジ改良ニ偏重シタト云フ
ノデアリマス、仙石鐡相ハ此建設費增額ノ
理由ト致シマシテハ、建設費ニ多少ノ金ヲ
取リ-建設費ニ僅ニ四千六百万圓ヲ割當
テ、現在ノ鐵道ヲ大ニ改良スル必要ガアル
ト云フコトヲ强ク論ゼラレテ居リマス、其
理由ト致シマスル所ハ、第一ニ現在ノ我國
ノ鐵道ガ輸送ノ上ニ於キマシテ頗ル危險デ
アルト云フコト、第二ハ其輸送能力ヲ增進
シナケレバナラヌコトヲ申シテ居リマス、
然ルニ此危險、如何ナル危險ガアルカト云
フト、豫算委員會ニ於ケル吾々ノ質問ニ對
シマシテ答ヘラレル所ノ要領ハ、常ニ改良
ト何等關係ノ無イ事柄ガ多イノデアリマ
ス、去ル二日ノ豫算委員會ニ於キマシテモ
私共ノ同僚牧野、大園兩君ノ御問ニ對シマ
シテ、危險ノ事例ト致シマシテ、列車衝
突、或ハ車軸ノ折断ノ類ヲ列舉シタノデア
リマス、諸君、列車ノ衝突ハ何等改良ト關
係ハアリマセヌ、車軸ノ折斷、是亦改良ト
何等關係ガアリマセヌ、是等ハ要スルニ現
業員ノ不注意ヨリ生ズルモノデアリマス、
其他危險ナル點ニ付キマシテ詳細ニ具體的
ニ說明ヲ私ヨリモ致シマシタケレドモガ、
此適切ナル事例ヲ御元ニナラヌノデアリマ
ス更ニ其說明ニ於キマシテ危險ナル要點
ヲ御示ニナラサルノミナラズ、其豫算ニ付
テ見テ見マシテモ、最モ危險防止上必要ト
認メマス所ノ線路ノ改良費ニ至リマシテ
ハ今後三年間僅ニ百四十万圓ガ既定計畫
ヨリ增シテ居ルニ過ギナイノデアリマス、
僅カ百四十万圓ノ金ヲ以テ鐵相ノ所謂危險
ガ防止サレルデアリマセウカ、又運輸能力
增進ノ上ニ於キマシテ、極メテ大切ナル所
ノ線路ノ層設費ハ、今後三年間ニ於キマシ
テ千三百万圓ヲ減ジテ居リマス、口ニハ運
輸能力增進ノ必要上改良ノ必要アリトカ、
或ハ其線路ノ危險ナリト云ヒ、併ナガラ豫
算ノ上ニ見マシタナラバ、何等施設ノナキ
ノミナラズ、却テ其費用ヲ減ジテ居ルコト
ハ顯著ナル事實デアリマス、仙石鐵相ハ改
良費ヲ多ク要求センガ爲ニ、此運輸上危險
ナリト云フ技術的ノ言葉ヲ楯ト致シマシ
テ、サウシテ此建設ノ急ヲ唱ヘル所ノ國民
ノ聲ニ隱レントシテ居ルモノデアリマス、
更ニ考ヘマス、此危險ノ防止ノ急務ナルヲ
唱ヘルニ當リマシテ種々ノ改良ノコトヲ申
サレマシタノデアリマスルガ、此改良費ノ
中デ先刻申上ゲマシタ通リ、危險防止、運
輸能力增進ニ對シマスル豫算ハ減額ヲシテ
居ル、此改良費ノ中デ最モ多ク取ッテ居リ
マスルモノハ、先刻木下君ヨリ申述ベマシ
夕電氣費用デアリマス、是ニ於テ考ヘマス
ノニ、危險々々ト云フコトヲ申シマス、危
險々々ト國民ヲ恐怖セシメテ、而シテ窃ニ
改良費ヲ多ク取リ、サウシテ其中ニ多クノ
電氣費ヲ取ラントスル一ツノ魂膽デアラウ
ト考ヘマス、而シテ此電氣費ハ如何ナル方
面ニ使ハレテ居ルカト云ヒマスルノニ、多ク
ハ東京竝ニ近郊ノ鐵道ノ電化設備ノ費用、
火力發電所ノ費用デアリマス、固ヨリ鐵道
ノ電化ハ世界ノ大勢デアリマス、運輸ノ能
力增進上、極メテ必要ナ事デアリマス、併
ナガラ、此電化ニ於キマシテモ、又豫算ノ
上ニ於キマシテ非常ナル矛盾ヲ發見シタノ
デアリマス、其譯ハ仙石鐵相ハ運輸能力ノ
層進ノ必要ノ事例トシテ、或ハ危險ノ事例
ト致シマシテ、東海道線ヲ何時モ舉ゲテ居
ルノデアリマス、東海道線ハ其橋業或ハ
「レール」、或ハ其他線路ニ於テモ種々危險
ガアル、或ハ橋梁ノ如キハ其安全率ヲ超過
シテ居ルト云フコトヲ言ハレテ居ル、又運
輸ノ數量ニ於キマシテモ最モ東海道線ガ多
イノデアル、殊ニ東海道ハ一ノ國際交通機
關ナルガ故ニ、是ハ最モ早ク改良シナケレ
バナラヌト云フコトヲ唱ヘテ居ルノデアリ
マスガ、十四年度ノ豫算ニ於キマシテ多數
ノ改良費ヲ取リ、而モ此改良費ノ中デ多數
ノ電氣費ヲ取リナガラ、此東海道ノ電化設
備ヲ十七年度マデ延期致シテ居ルノデアリ
さく、若シ之ヲ延期セズシテ電化計畫ヲ遂
行致シマスナラバ「レール」ノ取換、或ハ橋
梁ノ補强、枕木ノ取換等ヲ要セズ、改良費
ハ非常ニ減ゼラレルノデアリマス、併ナガ
ラ之ヲ十七年度マデ延期シマシタガ爲ニ、
十七年度マデノ間ニ多數ノ改良費ヲ使ハナ
ケレバナリマセヌ、而シテ十七年度ヨリ二
十年度マデノ間ニ於キマシテ電化ヲ致シマ
スカラ、此改良費ト此電化ノ費用トハ明ニ
資本ノ二重投下デアリマス、資本ノ二重投
下ハ我國ノ鐵道經濟ニ非常ナル損害ヲ與ヘ
ルモノデアリマス、仙石鐵相ハ去ル二日ノ
豫算委員會ニ於キマシテ、我國ノ電氣事業
ニ付キマシテ一ツノ御話ガアリマシタ、ソ
レハ長ク外國ニ居ッタ人ノ話ヲ援用致シ
マシテ、吾々ニ答辯ヲ致サレマシタ、外國
ニ於テハ電氣ハ停電スルコトハナイ、一年
中殆ド電氣ノ停電スルコトハ無イノデア
ル併ナガラ我國ハ常ニ電氣ガ停電ヲシ
テ、電燈ガ消エル、殆ド停電ト云フコトガ
原則デアッテ、電氣ノ點イテ居ルノガ變則
デアルト云フコトヲ申サレタノデアリマ
ス、斯ノ如ク···
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
我國ノ電氣事業ガ其素質劣惡ニシテ、賴ム
ニ足ラナイト致シマスルナラバ、此鐵道ノ
電化ヲ致シマス前ニ於テ、先ツ鐵道省自ラ
發電所ヲ拵ヘ、自給自足ノ途ヲ圖ラヌケレ
バナラヌノデアリマス、此電氣事業ノ素質
劣惡ニナルコトヲ攻擊シテ置イテ、一面鐵
道省ノ使用致シマスル所ノ電氣ヲ民業會社
ニ之ヲ求ムルト云フコトハ、御自分ノ
御主張ヲ自ラ裏切ラルヽモノデアリマス、
此電氣事業ニ於キマシテ最モ急速ニ工事ヲ
進メンケレバナラヌノハ、信濃川ノ水力電
氣デアリマス、ドウシテモ此電氣費用
ヲ澤山取リ、鐵道ヲ電化致シマスニ付キマ
シテハ鐵道省自ラ發電所ヲ有センケレバナ
ラヌコトハ當然ノ事デアル、此點ニ於テ先
ヅ信濃川水力ノ工事ヲ進行センケレバナラ
ヌコトハ當然デアル、之ヲ繰延ベ之ヲ打切
ラントスルコトハ是レ一大矛盾デアリマ
ス、信濃川水力ハ十六年度ニ竣工致スベキ
計畫ガ出來テ居ッタノデアリマス、而シテ
其電力數ハ約七万「キロ」發電スルコトニ
ナッテ居リマス、所ガ此工事ヲ十七年度ヨ
リ二十年度迄ノ間ニ繼續事業トスベク繰延
ヲセラレタノデアリマス、而シテ鐵道省ノ
現在要シマス所ノ電カト、又十四年度ヨリ
電化致シマシテ『之ニ要シマスル所ノ電力
ハ是皆東京電燈ヨリ供給ヲ受ケテ居ルノ
デアリマス、此東京電燈ヨリ供給ヲ受ケテ
居リマス所ノ一「キロワット」ノ値段ハ二錢
八厘ト聽イテ居リマス、信濃川水力ノ設計
計畫ハ東京ニ於テ一「キロ」二錢デ使用セラ
レル計畫ニナッテ居リマス、左樣致シマス
レバ、玆ニ一「キロ」ニ對シテ八厘ノ差ガ出
テ來ルノデアリマス、而シテ現在鐵道省ニ
要シテ居リマス所ノ電力ノ一年ノ積算數ハ
約二億五千万「キロ」デアリマス、「一キロ」
八厘ヲ二億五千万倍シマスレバ約二百万圓
ト云フ金ガ玆ニ出テ來ル、之ヲ四箇年繰延
ベタノデアリマスカラ、更ニ四倍致シマス
レバ八百万圓ノ金ガ玆ニ出テ來ル、更ニ東
京電燈會社ハ鐵道省ノ使用數量ガ多クナル
ニ反比例致シマシテ、約五厘ノ値上ゲヲシ
ナケレバナラヌト云フコトヲ聞イテ居リマ
ス、更ニ此五厘ノ値上ヲスルコトニナリマ
シタナラバ、是亦一年百二十五万圓ノ金ト
ナルノデアリマス之ヲ四箇年間ト致シマス
レバ、五百万圓トナリ、合セマシテ千三百
万圓ト云フ金ヲ束京電燈會社ニ利益セシム
ルコトニナルノデアリマス、東京電燈會社
ノ利益ハ卽チ鐵道省ニソレダケノ損害トナ
ルノデアリマス、更ニ此信濃川水力ノ上流
ニ於キマシテ、信越電氣ガ六万「キロ」餘ノ
權利ヲ持シテ居ルノデアリマス、而シテ此
信越電氣ト云フモノハ東京電燈會社ガ大半
ノ株ヲ有シテ居ルノデアリマス、此信越電
氣會社ノ取入レロト-放水口ト鐵道省ノ
取入レロトガ頗ル利害ガ錯綜致シマシテ、
從來紛糾ヲ來シテ居ルノデアリマス、是迄
色ミノ協調妥協ヲ圖ラレタコトデアリマス
ケレドモガ、今尙ホ是ガ纏シテ居ラナイ、
今鐵道省ガ此工事ヲ繰延ト致スナラバー
工事ヲセヌト致シマスナラバ、信越電氣ハ
得タリ賢シト工事ヲ進メマシテ、遂ニハ鐵
道省ノ水利權ガ信越電氣ニ其活殺ヲ自由ニ
セラルヽト云フ結果ヲ見ヤシナイカト云フ
コトヲ一般ニ憂ヘテ居ルノデアリマス、私
ハ此關係ヨリ致シマシテ、今此水力電氣ノ
工事ヲ繰延ベタナラバ、必ズヤ鐵道省ハ此
水利權ヲ失ウカ、然ラザレバ遂ニ權利ヲ譲
渡スルノ外ハナイ窮境ニ立至ルモノト信ズ
ルノデアリマス、線路ノ危險ト云ヒ、運輸
能力ノ增進ト云フ名ノ下ニ澤山ノ改良費ヲ
要求致シマシテ、而シテ建設ヲ閑却シ、其
間ニ依テ得ル所ノ豫算ノ大半ハ此電氣事
業ニ多ク投ズルノデアリマス、此東京近傍
ノ電化事業ニ使フノデアリマス、是ニ於
テ-私共ハ決シテ信ゼヌノデアリマス、
併ナガラ世ノ中ニハ此東京電燈會社ノ多ク
ノ株ヲ三菱ガ有シテ居ルト云フコトデアリ
やっ、斯ル關係ヨリ致シマシテ、世ノ中ノ
人ハ、或ハ此間ニ一ツノ政治的罪惡ガ潜ミ
ハシナイカト云フコトヲ疑ッテ居ルノデア
リマス、加藤內閣ハ綱紀甫正ヲ專賣ト致シ
テ居ル所デアリマシテ、鐵相ハ吾々同〓ノ
先輩デアリマス、此改良費ヲ建設費ニ振向ケ
ル、而シテ建設ノ既定計畫ヲ進メマスナラ
バ、國家國民ノ利益ハ申スマデモナイコト
デアリマス、若シ政府ガ義務〓育費ノ國庫
負擔增額ト共ニ天下六千万ノ國民ガ熱望致
シテ居リマス所ノ、此鐵道建段ノ既定計畫
ニ此改良費ノ資金ヲ振向ケラレルナラバ、
一面ニ於テ電氣事業ノ問題ニ對シマスル世
ノ中ノ誤解モ解ケ、綱紀內閣ヲ專賣トセラ
レマス所ノ加藤內閣ノ爲ニモ名譽ト信ズル
ノデアリマス、ドウカ此意味ニ於キマシテ
政府ハ五千六百万圓ノ改良費ヲ削ッテ、而
シテ之ヲ建設費ニ廻シ、建設ニ對シマス所
ノ既定計畫ヲ進メラレンコトヲ希望致シマ
ス、而シテ從來ノ主張ニ鑑ミ、此決議案ニ
賛成セラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=85
-
086・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 前田米藏君
〔前田米藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=86
-
087・前田米藏
○前田米藏君 諸君、私ハ只今議題ニナッ
テ居リマス決議案ニ對シマシテハ、反對ヲ
致ス者デアリマス、反對ノ理由ハ山道君ガ
旣ニ詳細ニ論ゼラレマシタガ故ニ、私ハ吾々
ノ立場ヲ玆ニ明ニ致シタイト思フノデアリ
マス、固ヨリ吾々ハ多年鐵道建設ヲ主張シ、
新線ノ敷設ハ文化ノ普及ノ爲ニモ、地方開
發ノ爲ニモ必要ナル事ヲ主張シ來ッタノデ
アリマス、又只今モ尙ホ左樣ニ信ジツヽア
ルノデアリマス、併ナガラ諸君、昨年ノ秋
豫算閣議ノ開カルヽ頃ニ相成リマシテ、鐵
道省案ナリトシテ、建設費ハ三千三百万圓
デアリ、新線ハ打切ルノデアル、十四年度
ニ於テハ一本ノ新線モヤラナイノデアルト
云フコトガ世間ニ傳ハリマシタ、而シテ又
ソレガ信ズベキ所ノ風說ナルコトヲ吾々ハ
信ジタノデアリマス、是ニ於テ我黨ニ於キ
マシテハ、幹部モ有志代議士モ奮起シテ、
吾々多年ノ主張ノ實現ニ努メタノデアリマ
ス、卽チ改良ノ必要ナルコト固ヨリ論ヲ俟
タヌノデアル、併ナガラ建設ノ必要モ亦大
ナルモノガアルノデアル、是ニ於テカ改良
建設共ニ進ムコトガ鐵道國有ノ本旨ニ副フ
モノデアルト吾々ハ信ジテ居ルノデアリマ
ス、是ニ於テカ吾々ハ吾々ノ主張ヲ貫徹セ
ンガ爲ニ、憲政會及革新ノ幹部ニ諒解ヲ求
ノ、政府ニ交涉スルコトニ相成シタノデア
リマス、政府ニ交涉致スコト約一箇月、日
夜交涉ニ交涉ヲ重ネタコトハ諸君モ御承知
ノ通リデアリマス、其結果ハドウデアルカ、
三千三百万圓ハ四千六百万圓トナリ、又主
義ニ於テ新線ヲ造ルト云フコトハ絕對ニ無
イケレドモ、新線敷設ハヤルト云フコトニ
相成シタノデアル(拍手)又將來經濟界ノ事
情ニ於テ公債公募ノ時機ガ來タナラバ、公
債ヲ公募シテソレヲ建設費ニ廻スト云フコ
トモ政府ガ言明致シタノデアリマス、其結
果ニ依シテ今日ノ議會ニ提出セラレテ居ル
ガ如クニ四千六百万圓ニ增加シタ、斯ノ如
クニシテ新ニ大正十四年度ヨリ十五年ノ新
線ハ計上セラレ、又土工契約ニ依ッテ土工
ガ完成致シマシテモ鐵道ノ列車ガ動カナイ
所ノモノガ二百哩モアル、其多數ノモノガ
運轉スルト云フコトニ相成ッタコトハ實ニ
友黨諸君ノ諒解ト、閣僚諸君ノ御配慮ガアツ
タコトデアリマスケレドモ、主トシテ-
主トシテ我ガ政友會ノ努力デアルコトハ天
下公知ノ事實デアル(拍手)
〔「憲政會ハドウシタ」「默レ」ト呼フ者
アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=87
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088・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=88
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089・前田米藏
○前田米藏君(續) 諸君靜ニ聽キ給ヘ、吾
吾ハ聯合內閣ヲ支持スル一人デアリマス、
聯合內閣ヲ支持スル者ト致シマシテハ、自
分ノ主張ガ或ル程度マデ通リマシタナラ
バ、多少ノ我慢ヲスルト云フコトハ已ムヲ
得ザルコトデアル、主張ノ全部ガ通ラナケ
レバ我慢ガ出來ナイト云フコトデハ、初メ
ヨリ聯合內閣ハ出來ナイノデアル、卽チ吾
吾ハ聯合內閣ヲ組織シテ居ル一人ト致シマ
シテハ、鐵道問題以外ニ於テモ或ハ衆議院
議員選擧法、或ハ貴族院ノ改革、行政財政
ノ整理等國家ノ爲ニナスベキ事ハ多々アル
ノデアル、此時ニ當シテ吾々ハ或ル程度マ
デ其主張ノ認メラタルヲ諒トシテ、多少ノ
我慢ヲスルト云フコトハ蓋シ國家ニ盡ス所
以デアリマス(拍手)聯合內閣ニ付テ云々ト
只今言ハレル人ガアリマスケレドモ、聯合
内閣ノ本質論ニ至リマシテハ、他日批評ノ時
機ガアリマセウ、私ハ唯、、諸君ニ單ニ一言ヲ
呈シテ置キタイ、卽チ中央ニ於テモ地方ニ
於テモ、政界ノ中心勢力タリシ此政友會ノ
絕體過半ヲ破クテ、聯立内閣ヲ成立セシメ
ルノ機運ヲ作リシ責任ハ、諸君ノ多大ナル
責ヲ負ハナケレバナラヌノデアル、又諸君
ノ出サレタ所ノ決議案ヲ見マスルト云フ
ト(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=89
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090・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=90
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091・前田米藏
○前田米藏君(續) 決議案ヲ見マスルト云
フト、決議案ニ於キマシテハ卽チ既定計畫
ノ完成トナッテ居ルノデアリマスガ、只今
御演說ヲ永リマスト云フト、其點ハ頗ル不
明ナノデアル、〓浦內閣ノ改訂豫算ト云フ
ガ如クニモ論ゼラレタノデアリマシタ、此
點ハ如何ナモノデアリマセウカ、若シ改訂
豫算ヲ論ジラレルナラバ、改訂豫算ハ卽チ
豫算ノ不成立ニ依リマシテ、改訂豫算ナル
モノハ存在セナイノデアル、又既定計畫ナ
ルモノハ何デアルカト云ヘバ、卽チ震災前
ニ立テラレタル計畫ガ卽チ規定計畫デア
ル、金額ハ九千万圓デアル、此九千万圓デ
果シテ既定計畫ヲ遂行セヨト云フ諸君ノ論
旨デアルナラバ、諸君ハ震災後ニ於テ山本
內閣ニ於テモ、又諸君ガ分裂ヲ賭シテマデ
支持シタ所ノ〓浦內閣ハ、此既定計畫ヲ變
更シテ改訂豫算ヲ出シタノデハナイカ拍
手)獨リ仙石大臣タラズトモ今日ニ於テ、
卽チ震災前ノ九千万圓案ノ既定計畫ヲ遂行
スルト云フコトハ、蓋シ至難ナ事デアルコ
トハ諸君モ御水知ノ通リデアル、諸君ハ其
點ニ於テ既定計畫ト〓浦內閣ノ改訂豫算ト
ノ或ハ間違デナカッタカト思フノデアリマ
ス、ケレドモ此決議案ニ依ッテ見マスレバ、
明ニ既定計畫ト書イテアリマスガ故ニ、其
點ニ於テ諸君ノ主張ノ無理デアルト云フコ
トヲ一言致シタイノデアリマス(拍手)又諸
君ガ眞ニ鐵道計畫ニ熱心デアルナラバ、今
日諸君ガ此決議案ヲ出シテ主張セラルヽ如
ク御熱心デアルナラバ、昨年ノ秋、實ニ吾
吾ガ日夜辛苦致シタル時ニ於テ、國家ノ爲
ニ假令黨ハ違フト雖モ諸君ハ國民ノ輿論ヲ
喚起シ、吾々ニ聲援シ、政府ニ迫ッタナラ
バ、或ハ今日以上ノ豫算ノ結果ヲ得タカモ
知レマセスケレドモ(拍手)其時ハ冷然トシ
テ冷カニ眺メテ居ッテ、今日此時ニ當シテ斯
ノ如キ決議案ヲ出スニ至ッテハ、諸君ノ眞
面目サガ判斷セラレヌノデアル、私ハ以上
ノ理由ニ依リマシテ、此決議案ニハ多年御
愛顧ヲ蒙リ、御同情ヲ得タ友人ノ多イ本黨
案デアリマスケレドモ、殘念ナガラ反對ヲ
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=91
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092・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 藏園三四郞君
〔藏園三四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=92
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093・藏園三四郎
○藏園三四郞君 私ハ現內閣ノ鐵道繰延ニ
反對ヲ致シマシテ、此鐵道既定計畫ノ建議
案ニ贊成ノ意ヲ表シタイト思ヒマス(「建議
案ヂヤナイ」ト呼フ者アリ)決議案デアリマ
ス、元來鐵道ハ從來執來リマシタ所ノ鐵道
交通政策ニ一大變化ヲ來シテ居ルノデアリ
そう、諸君、從來鐵道政策ハ交通政策デア
ルト云フコトヲ言來,タノデアリマスルガ
今日ハ近代ノ鐵道政策ニ至リマシテハ其精
神ヲ擴張致シマシテ、從來ノ交通政策トハ
全ク異ノタル見地ニ立ッテ居ルノデアリマ
ス、卽チ之ニ依リマシテ或ハ文化ノ向上ヲ
圖リ、或ハ地方ノ開發ヲ圖リ、或ハ物資ノ
供給、物價ノ調節ヲ圖リ、以テ國運ノ進展
ヲ圖ル所ノ最モ行政上ノ重大ナル性質ヲ有
スルモノデアリマス(拍手)是ニ於キマシテ
吾々同志ハ多年鐵道ノ普及速成ヲ主張致シ
マシテ、是ガ遂行ニ全力ヲ注イデ參シテ居
ルノデアリマス、政及會ノ原總裁ガ此鐵道
問題ノ爲ニハ殆ド心血ヲ搾ラレタルコト
ハ吾々ノ今日尙ホ忘レザル所ノモノデア
リマス、然ルニ當時憲政會ノ諸君ハ、政友
會總裁タル原氏ノ此鐵道政策ヲバ、單ニ黨
勢擴張ノ具デアルト誹リ、或ハ之ヲ攻撃致
シテ來タノデアリマス、詰リ原前總裁ガ東
京驛頭ニ鐵血ヲ流シマシタコトハ畢竟ス
ルニ此鐵道問題ノ貴キ犧牲デアッタト思フ
ノデアリマス(「ノウ〓〓」拍手)然ルニ拘ラ
ス、政友會諸君ハ何ノ都合アッテカ多年
首唱シ來ッタ所ノ此鐵道問題、而モ自己ノ
師父トシテ仰ギ來ッタ所ノ、其總裁ガ貴キ犧
牲ヲ拂ハレタル所ノ此問題ニ對シテ、朝
ニシテ手ヲ飜スガ如キ反對ヲスルノハ何事
デアリマスカ、只今前田君ハ所謂仙石首相
ノ計畫セラレタル三千三百万圓仙石鐵相ノ
三千三百万圓案ニ非常ナル努力ヲ拂ッテ一
千三百万圓ヲ增加セシメタノハ、一ニ政友
會ノ努力デアルト誇ラレタノデアル、(「其
通リ」ト呼フ者アリ)然ルニ諸君、或ハソレ
モアッタデアリマセウ、所ガ諸君ノ最モ努力
ヲ拂ハレタ所ノ其一千三百万圓ハ果シテ何
ニ之ヲ使用セラレテ居リマスルカ、諸君ハ
ソレガ爲ニ新線ヲ計上スルコトガ出來タト
誇リマスケレドモ、何ゾ計ラン一千三百万
圓ハ僅ニ新線ノ爲ニ二百万圓ヲ使用スルニ
過ギナイノテアリマス、其他ハ悉ク漁夫ノ
利ヲ占メラレタノデアリマス、諸君、私
此鐵道繰延ニハ大反對ヲスル者デアルガ、
其二三ノ理由ヲ玆ニ述ベテ見タイト思ヒマ
ス、第一ニ此國有鐵道ノ特別ナル性質ニ鑑
ミテ私共ハ反對セザルヲ得ヌノデアル、元
來鐵道ハ國家活動ノ大動脈デアルコトハ申
スマデモナイノデアル、而シテ此大動脈タ
ル所ノ鐵道ノ機能ヲ十分ニ發揮セシメ、又
十分ニ其效果ヲ擧ゲシメントスルニハ、ド
ウシテモ之ヲ統一スルコトガ最モ必要デア
リマス、是卽チ國家ガ之ヲ統一ヲ致シマシ
テ國有鐵道ノ生ジタル所以デアリマス、諸
君、而シテ此統一計畫ヲ實行致シマスルニ
ハドウシテモ豫メ其鐵道綱ヲ構成スル所
ノ線路ヲ豫定シテ、サウシテ鐵道計畫ナル
百年ノ長計ヲ計畫セナケレバナラヌノデア
リマス、是ニ於キマシテ高橋內閣ノ當時、
我黨ノ長老タル所ノ元田氏ガ鐵道大臣タル
當時ニ於キマシテ、萬難ヲ排シテ鐵道敷設
法ナルモノヲ制定致シマシタコトハ、諸君
ノ今尙ホ耳目ニ新タナル所デアリマス、諸
君、而シテ此鐵道敷設法ニ於キマシテ百四十
九線ト云フ豫定線ヲ定メタノデアリマス、此
百四十九線ガ卽チ我國ノ將來ノ鐵道網ヲ構
成スル所ノ根本デアルノデアリマス、而シ
テ諸君、既ニ鐵道ガ國有鐵道トナリサウシ
テ玆ニ鐵道網ヲ構成スル所ノ敷設法ガ設定
サレマシタ以上ハ、鐵道ハ卽チ國家ノ獨占
ニ歸スルノデアル-國家ノ獨占デアリマ
ス、何人モ之ニ指スコトガ出來ナイ獨占的
事業ト相成クタノデアリマス、諸君、私ハ是
ニ於テ言ハントスルノデアリマス、此獨
占的事業ト云フモノハ、他ノ指スコトヲ許
サヌ性質デアル、然ラバ此獨占事業ヲ放棄
シ、若クハ之ヲ繰延ベ、若クハ之ヲ打切ル
ト云フヤウナ行爲ハ、之ハ國家的罪惡ト謂
ハナケレバナラヌト私ハ考ヘル、ソコデ又
第二ニハ此繼續豫算ノ性質上カラ私ハ之ヲ
バ繰延ベルト云フコトハ、甚ダ亂暴デアル
ト云フコトヲ申上ゲタイノデアリマス、諸
君、加藤友三郞內閣ノ當時ニ於キマシテ、
大木鐵道大臣ノ時ニ此鐵道敷設法ノ精神ニ
則リマシテ新線二十八線ヲ撰擇致シテ、之
ヲ卽チ帝國議會ニ提出シテ協賛ヲ經タノデ
アル、卽チ是ガ此鐵道計畫ノ本ヲ爲シテ居
ルモノデアリマス、諸君、豫算ハ申スマデ
モナク一年限リニ是ガ協賛ヲ經ベキモノデ
アルコトハ必然デアル、然レドモ此繼續費
ナルモノハ一定ノ期限ヲ限フテ、サウシテ之
ヲ協賛スルノデアリマスルカラ、此繼續豫
算ノ性質ハ一定ノ年限ヲ濫リニ變ヘルコト
ハ出來ナイ性質ヲ帶ビテ居ルモノテアリマ
ス、然ルニ現内閣ニ於キマシテハ其鐵道政
策ニ於キマシテ、從來ノ計畫ヲ二年、或ハ
三年ハ愚カ甚ダシキニ至ッテハ五年六年ノ
繰延ヲ斷行シテ居ルノデアリマス、諸君、
斯ノ如ク五年若クハ六年ト云フガ如キ長期
ノ繰延ハ殆ド之ハ打切リ同然ノモノデアツ
テ、繰延ト云フコトハ出來ナイモノデアル
ト私ハ斷言スル、現內閣ノ諸公ハ動モヌレ
バ二口目ニハ地震ヲ持出シ、或ハ震災ヲ口
一セラルヽノデアルガ、然ルニモ拘ラズ山
本内閣卽チ此震災ニ直面シタル所ノ山本內
閣デスラモ、現ニ建設費トシテハ十四年度
ニ於テ七千三百万圓ヲ計上シテ居ルノデア
リマス、然ルニ現内閣ハ如何デアルカト申
シマスレバ、大正十四年卽チ今年度ヨリ十
九年ニ至ル六箇年ノ間、四千六百万圓ツヽ
ヲ計上スルコトニ相成リマシテ、殆ド從來
ノ計畫ノ其半額ニモ過ギナイノデアリマ
ス、諸君此四千六百万圓ト云フコトガ、單
ニ今年度ニ止マルナラバ、或ハ是デ我慢ス
ルコトモ出來ルカモ知レヌ、併ナカラ諸君
ハ知ルヤ知ラズヤ、此十四年度カラ十九年
度ニ至ル所ノ六年問ノ間、四千六百万圓ト
云フ過少ナル建設費ヲ計上致シマシタルコ
トハ、私ハ到底之ニ忍ブコトハ出來ヌノデ
アリマス、能クモ政友會諸君ガ之ニ我慢ヲ
セラレタモノデアルト思フ、其雅量ノ宏大
ナルニ私ハ驚カザルヲ得ヌノデアリマス、
而シテ私ハ次ニ反對ノ理由ト致シマシテ
ハ、設法ノ精神ヨリ鑑ミマシテ二、三反
對ヲシテ見タイノデアリマス、諸君、敷設
法ヲ制定サレマシタルコトハ、年々內閣ノ
迭ル每ニ其鐵道政策ノ根本ヲ變更セラル
コトガ甚ダ國家ノ爲ニ憂慮スベキコトデア
ル、是ニ於キマシテ、卽チ鐵道ノ將來ニ於
ケル計畫ヲ確立致シマシテ、サウシテ法律
ヲ以テ此根本義ヲ樹立致シタコトハ諸君ノ
御承知ノ通リデアル、然ルニ現內閣ハ此敷
設法ノ精神ヲ無視致シマシテ、サウシテ斯
ノ如ク其計畫ニ大異動ヲ生ズルガ如キ變更
ヲ加ヘラレタコトハ吾々ハ是レ鐵道計畫
ノ根本ノ破壊ト言ウテ敢テ差支ハナイト思
フノデアリマス、只今私ガ此現內閣ノ設計
ノ一端ヲ見マスト云フト、實ニ私共ハ甚ダ
遺憾ニ堪ヘヌノデアリマス、先程申シマシ
タ通リニ、建設費トシテハ大正十四年ヨリ
十九年マデハ僅ニ四千六百万圓、而シテ二
十年カラ二十四年ニ至ル間ハ五千万圓、
或ハ六千万圓ト云フ尻上リニ段々高ク
ナッテ來テ居ルノデアル、諸君、此鐵道
建設ノ計畫ハ宜シク年度ヲ進ムルニ從。フ
テ其金額ガ減少シテ行カナケレバナラヌ、
何故カト申シマスルニ、此現在ノ計畫ハ現
在ノ計畫ニ止マルモノデアリマスカラ、此
殘リノ百二十一線ト云フモノヲ段々、卽チ
敷設法ニアルガ如クニ漸次之ヲ計畫ヲシテ
行カナケレバナラヌモノデアリマス、然ル
ニ現内閣ノ如ク段々其年度ヲ進ムルニ從,
テ段々向フガ高クナッテ來テ居ル、此年度尻
ニ於キマシテ其金額ガ增加スルコトハ卽
チ殘リノ百二十一線ノ計畫ヲ全ク阻碍スル
モノデアルト言ヒ得ルノデアリマス、デ斯
ノ如クニ此計畫ヲ見マスレバ、殆ド現在ノ
計畫タル所ノ二十八線ハ或ハ之ヲ設計ガ出
味ルカモ知レマセヌガ、殘リノ百二十一線ハ
將來全ク是ガ計畫ヲ見ルコトハ出來ナイ結
果ヲ見ルコトハ明デアリマス、吾々ノ卽チ
此既定計畫ノ遂行ヲ希望スル、卽チ既定計
畫ノ遂行ヲ要求スル所以ノモモハ單リ此現
在ノ計畫ニ止マラズシテ、後ニ殘ル所ノ鐵
道綱タル所ノ國家百年ノ大計ヲ講ジナケレ
バナラヌト云フニアルノデアリマス、然ル
ニ拘ラズ、現内閣ノ此計畫ニ依リマスレバ
ドン〓〓後ニ至ル從ッテ難境ニ接スルノデ
アリマスカラ、到底百年經ッテモ千年經ッテ
モ『此計畫ハ成就スルコトガ出來ナイノデ
アル、私ハ最後ニ一言申シテ見タイノデア
ル、元來此官業卜云フモノハ、私ハ時ヲ擇
ンデ行ハナケレバナラヌト云フ意見ヲ持ツ
テ居ル、時トハ何カト申シマスレバ、卽チ
此官業ヲ行ヒマスルニハ、宜シク不景氣ノ
時ニ行フベシ、景氣ノ最モ盛ナル時ニ官業
ヲ盛ニ行フニ於テハ民間ノ事業ヲ壓迫シ、
又勞銀ヲ吊上ゲテ、サウシテ高イ物價ヲ購
入シナケレバナラヌト云フ非常ナ不利益ヲ
持ッテ居ルモノデアリマス、然ルニ不最氣ニ
至リマシテ之ヲ實行致シマスル時ニ於テ
ハ其勞銀ノ如キ、又其物價ノ如キ、低廉
ニシテ之ヲ購入スルコトガ出來ル、而シテ
又一面ニハ失職者ヲ救濟スルコトモ出來、
一擧兩得デアルノデアリマス(拍手)宜シク
此國家タルモノガ事業ヲ起シマスルニハ、
此時ヲ最モ擇バナケレバナラヌ、今日ノ如
ク緊縮ニ緊縮ヲ重ネ、行政整理ニ整理ヲ積
ンデ、サウシテ失職者頻出ノ今日ニ於キマ
シテハ最モ此事業ヲ盛ニシ、最モ此既定ノ
計畫ヲ遂行スルニ其時ヲ得タルモノデアル
ト云フコトヲ私ハ確信スル者デアリマス
(拍手)要スルニ吾々ハ此現內閣ノ鐵道計畫
ハ全ク國家ノ根本方策タル所ノ鐵道計畫ヲ
破壞スルモノデアルコトヲ信ジ、玆ニ本決
議案ニ贊成ヲ致シマス所以デアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=93
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094・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 板野友造君
〔板野友造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=94
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095・板野友造
○板野友造君 本案ニ反對ヲ致シマス、反
對ノ理由ハ餘リ詳細ニ述ベル必要ガナイト
私ハ感ジテ居リマス、ダカラ極メテ簡單ニ
ヤリマス、此案ハ申スマデモナク政府ハ鐵
道建設既定計畫ヲ遂行スベシ、斯ウ云フコ
トデアル、サウシテ恐ロシイ理由ガ書イテ
アッテ、鐵道計畫ヲ根本ヨリ破壞スルヤウ
ナコトヲ現政府ガヤル、是ハ良クナイ、斯
ウ云フヤウナ理由ガ書イテアリマスルガ、
私兵ハ何ヲ指シテ斯樣ナ誇張、大袈裟ナコ
トヲ仰セニナルカ、謹ンデ提出者ノ說明ヲ
聽キタイノデアル(「ヒヤ〓〓拍手)御水知
ノ通リ豫算ニ示ス所ニ-鐵道計畫ガ豫算
ニ現レテ居ル所ニ依シテ見マスレバ、今マデ
大正二十二年ニ完成スベキモノトナッテ居ッ
タノヲ、二年繰延ベテ大正二十四年ニ全部
完成サセヤウト云フ、斯ウナッテ居ルダケ
デアル、ダカラ諸君ガ根本カラ破壞スルモ
ノデアルトカ何トカ大袈装ニ仰セニナリマ
スルガ、結局ハ此八十幾線ノ鐵道ニ付テ僅
ニ二年ヲ繰延ベルト云フダケデアル、此事
實ニ對シテ是ガ根本計畫ヲ破壊スルナド云
フコトハ誇張ノ言ナリト謂ッテ差支ナイノ
デアル(「ヒヤ〓〓」拍手)唯〓私大石君ノ御
演說デハ能ク分ラナカッタシ、只今ノ藏園
君ノモ傾聽致シマシタガ、ドウモ少シ分リ
惡イ、此點ハ木下君ノ御說明ニ依シテ、私木
下君ノ御說明ヲ憑據トシテ論評シテ見タ
イ、木下君ノ御說明ニ依レバ鐵道計畫ニ付
テ繰延ヲシタコトハアル、諸君ガ最モ信賴
ヲサレ、諸君ガ極力援ケントシ夕〓清內閣
ニ於テモ繰延ガアル斯ウ云フコトヲ述べ
ラレテ居ルノデアル、繰延ハ唯〓是ダケデハ
アリマセヌ、唯〓〓浦內閣ガヤッタダケデハ
ナイ、ヤラナケレバナラスヤウナ風ノ今マ
デノ計畫ニ出來テ居ル、ソレダカラ豈啻ニ
〓浦內閣ノミナラン、繰延ハ時とヤッテ
居ルノデアリマス、繰延ヲ以テ之ヲ鐵道計
畫ノ破壞デアルト云フナラバ、日本ノ鐵道
計畫ハ幾度根本的ニ破壞サレタカ分ラナイ
ト云フコトニナルノデアル(拍手)何故斯樣
ニナルカ、此際申シテ置キマセウ、吾々ガ
國民黨以來常ニ鐵道計畫ニ對シテ叫バザル
ヲ得ナカッタモノガ茲ニアル、露骨ニ申シ
マスレバ此鐵道ヲ政黨ガ喰物ニスルト云フ
コトガ今マデアッタノデアル(拍手)出來モ
シナイ初メカラ本當ニ實現ヲサスト云フコ
トノ眞實ナクシテ、徒ニ此處ニ鐵道ヲ引イ
テヤル、此處ニ鐵道ヲ引イテヤルト云フ、所
謂鐵道綱ノ如キモノヲ現シテ、以テ鐵道完
成シタルガ如キ歡迎ヲ買ヒ、サウシテ黨勢
ヲ擴張ヲスル、是デヤルノデアルカラ是等
ノ政黨ノヤル鐵道計畫ナルモノハ本當ニ鐵道
ヲ引クト云フ計畫デハナイ、黨勢擴張ノ計畫
デアル(「政友會ヲ叱レ」ト呼フ者アリ)何黨
トハ言ハナイ-何黨トハ言ハナイ、斯ウ云
フヤウナ事ヲヤッテ來タ政黨ガ随分アルノデ
アル、ソレデアルカラ唯、地図ノ上ニ幾線カ
ヲ畫キ、以テ恰モ鐵道カ此處ニ引カレルノ
デアル、建設サレルモノデアルト云フコト
ヲ思ハスレバソレデ目的ハ足リルノデア
ル、唯亦イ線ヲ地圖ニ引クコトニハ金ハ
要リマセヌ、斯ウ云フ事デ亂暴ナル鐵道
網ヲ作リヤッテ居ルガ爲ニ繰延ヲシナケレ
バナランコトニナッテ來ルノハ、鐵道ヲ以
テ黨勢擴張ノ具ニ供シタカラデアル(拍手)
デ斯ノ如キ事ハ-斯ノ如キ事ハドウ
シテモ之ヲ打切ラナケレバナラス、デ現内
闇ニ於テハ····(「政友會ヲ叱レ」ト呼フ者
アリ)何黨ナドヽハ吾ハ斷ジテ言ハヌ、斯
ノ如キ事ヲスル政黨ガアリ、政治家ガアッ
タト云フコトヲ言フダケデアル、斯樣ナ不
健全ナ、初メカラ不健全ナル不誠實ナル計
畫ガ立テラレテ居ッタト云フコトダケハ私
此際一言ヲ附シテ置キマス、是ハ多少支岐
ニ亙リマシタガ、木下君ノ本案ニ對スル御
說明ニ依リマスレバヽ色ミナ御議論ハアリ
マシタガ、外國ノ事ナドハ日本ノ財政ト關
係ガアリマセヌカラ、是ハ別ニ申シマセヌ、
唯斯ウ云フ御言葉ガアリマス、金額數字ノ
問題デハナクシテ國策國政ノ問題デアル、
此基礎ヲ動カスコトハ出來ナイ、斯ウ仰セ
ニナッタ、現內閣ノ鐵道計畫ハ基礎ヲ動力
ス程デハアリマセヌ、唯、今年繰延ベルダケ
デアルカラ此攻撃ハ當ラナイ、其次ニハ全
ガナケレバ公債ヲ以テヤッタラ宜イヂヤナ
イカト仰セニナリマシタ、是ハ私亂暴デア
ルト思フ、今マデ公債ニ依ッテヤッテ居ッタ
ノデアル、改良ハ益金ニ依リ、建設ハ公債
ニ依シテ居,ダノデアル、其通リデ押切ルコ
トガ出來ナイカラシテ、今マデニシテ常ニ
屢〓繰繰ベラレテ居ッタノデアル、今日ノ財
政ニ於テ更ニ之ヲ公債ニ依テ建設費ヲ支辨
スルト云フコトニナレバ、此公債政策ガ果
シテ成功スルト云フコトヲ論證サレザル限
リハ此議論ハ立チマセヌ(拍手起ル)鐵道ノ
現狀ヲ御覽ナサイ、御承知ノ如ク旣ニ目星
シイ處ニハズット出來テ居ル、是カラ後更
ニ鐵道ヲ殖スコトニナレバ利益ハ次第ニ薄
クナル、之ヲ今日公債ヲ募集シテドン〓〓
新シイモノヲ建設スルナドト云フ左樣ナ亂
暴ナコトハ斷ジテ出來マセヌ、ソレカラ又
改良ヲ先ニスベシト云フ御議論モアリマシ
タガ、是ハ既ニ山道君カラモ御話ニナッテ
居リマスカラ一切之ヲ省キマス、要スルニ
此決議案ノ理由ハ理由ヲ成シテ居ラヌ(拍
手)今日ニ於テハ鐵道ノ根本計畫ヲ破壞ス
ルモノデモナケレバ、唯"、二ニ二年ヲ繰延
ペテサウシテ此計畫ヲ遂行スルト云フノデ
アルカラ、何モ遂行ヲ更ニ迫ルノ決議ハ要
ラナイ譯ニナル、吾々ハ斯樣ナ意味デ餘リ
之ニ反對ノ理由ヲ述べル必要モアリマセ
又、提案ノ理由モ明デナイ程ナ本案ニ對シ
テハ是ダケデ結構デアラウト思フ、是ダケ
申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=95
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096・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 大園榮三郞君
〔大園榮三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=96
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097・大園榮三郎
○大園榮三郞君 最早賛否ノ議論モ餘程盡
キタヤウデアリマスルカラ、私ハ簡單ニ本問
題ニ付テ賛成ノ意見ヲ申上ゲタイト思ヒマ
ス、現内閣ノ國有鐵道ノ施設ニ關スル方針
ニ付テ國民ガ最モ知ラント欲スル重大ナル
點ハ三ツアルト思フノデアリマス、第一ハ
年々增加スル所ノ輸送ノ數量ニ對シテハ如
何ナル改良計畫ヲ立ツルヤ、第二ニハ國民
生活ニ關係ノ深キ所ノ運賃問題ヲ如何ニス
ベキヤ、第三ニハ只〓問問ニナッテ居ル所
ノ建設線ノ事柄デアルト思フノデアリマ
ス、此第一ノ既成線ノ改良ニ付テハ現政府
ノ提出シタル所ノ豫算ヲ見マスルト、大正
十四年度ニ於ケル所ノ改良費ハ一億二千二
百万圓デアリマス、之ヲ過去六年間、卽チ
大正八年以後ノ改良費ノ決算竝ニ決算見込
額ト比較シテ見マシタナラバ、其額ニ於テ
殆ド相違ハナイノデアル、然ルニ現鐵道省
當局者ハ從來ノ內閣ガ常ニ建設ニ重キヲ置
イテ改良ヲ等閑ニ付シタト云フコトヲ屢〓、
力說セラレルノデアリマス、併ナガラ數字
ガ明ニ之ヲ反證シテ居ルノデアリマス、只
今板野君ガ建設ハ各政黨政派ガ黨勢擴張ノ
爲ニ利用シテ斯ノ如ク厖大ナル計畫ヲ爲シ
タモノデアルト云フコトヲ言ハレマシタ
ガ、併ナガラ過日仙石鐵相ガ建設費三千三
百万圓ヲ計上シタル時ニ是ガ增加ヲ迫ッタ
ノハ憲政會ノ諸君モ然リ、政友會ノ諸君モ
然リ、又革新倶樂部ノ皆サンデハアリマセ
ヌカ(拍手)而シテ鐵道改良豫算ニ付テ仙石
鐵相ハ如何ナル獨得ノ計畫ヲ樹テラレタカ
ヲ吾々ハ委員會デ永ッタ、然ルニ之ニ對シ
テハ新規ノ何等ノ計畫ハナイ前當局ニ於テ
屢〓。査查シ、〓究シタル所ノモノヲ計上シ
タニ過ギナイト云フ御話デアル、併ナガラ
改良計畫ニ付テハ別段新規斬新ト認ムベキ
モノハナイ、次ニ第二ノ國民生活ニ關係ノ
深キ運賃問題ハドウデアル、目下我國ノ物
價ノ高イコトハ諸君ノ認ムル所デアル、之
ニ對シテ政府ノ對策ヲ問ヘバ、政府竝ニ國
民ノ消費節約ニ待ツ外ハナイト云フ御話デ
アル、而シテ鐵相ハ此運賃問題ニ付テ如何
ナル計畫ヲ有セラレルカト云ヘバ、是亦殆
ド何モナイノデアル、(〔簡單ニ願ヒマス」
「分ラヌ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=97
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098・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 暫ク御靜肅ニ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=98
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099・大園榮三郎
○大園榮三郞君(續) 戰後英國ニ於テ物價
問題ガ、ヤカマシク、是ガ引下ゲニ苦·心ス
ル際ニ於テ、鐵道會社ノ重役ハ、鐵道蓮賃
ハ物價其モノヲ引下ゲル爲ニハ重大ナル
影響ヲ爲スコトハナイカモ知ラヌ、併ナガ
ラ小善ト雖モ爲サミルニ如カズ、是ガ輿論
ノ要求ニ應ジテ此運賃ヲ低下シタ、現內閣
ニ於テハ此運賃ニ何等ノ考慮ヲ加ヘタ事ガ
無イノデアル、第三ノ未成線ノ建設ニ付テ
政府ノ爲ス所如何、先ヅ是ガ議論ノ前提ト
シテ現帝國ノ特別會計ノ狀態ハ如何デアル
カト云フコトヲ御承知ニナッテ居ルダラウ
ト思フノデアル、卽チ大正十二年度ニ於テ特
別會計ノ有スル資本ノ投下額ハ二十一億ニ
上ッテ居ルノデアリマス、而シテ大正十年、
十一年ニ於テ是ガ利廻ハ一割、零一厘ニ上〃
テ居ルノデアル、大震災ノ十二年度ニ於テ
モ投下資本ニ對シテ八分五厘ニ上ッテ居ル
ノデアル、又十三年ノ豫算竝ニ十四年度ノ
豫算ニ於テモ政府ハ其增收ヲ見テ、目下頗
ル不景氣デ商工業ノ沈衰ノ時代デアルニモ
拘ラズ、十三年度ニ於テハ何百万圓、或
十四年度ニ於テ三千何百万圓ト云フモノヲ
計上シテ居ルデアリマス、卽チ一時悲觀論
ヲ以テ眺メラレタ所ノ特別會計モ頗ル其成
績ガ宜シクテ、事實健實ナルモノトシテ前
途ハ洋々デアルト云フコトハ、仙石鐵相モ
認メラレタ所デアリマス(「分ラヌ」「簡單ニ
願ヒマス」ト呼フ者アリ)鐵相ノ特別會計ノ
基礎ガ斯ノ如ク〓固デアッテ、前途又憂フベ
キ所ガナイニ拘ラズ、政府ガ建設費ヲ計上ス
ルニ當ノテ、唯〓單純二一千五百万圓ダケヲ公
債ヨリ仰ギ支出スルト云フノハ、特別會計
ノ能力ヲ無視シ、特別會計ノ威力ヲ何等發
揮スル所ガナイ、斯ノ如キ豫算ハ鐵道省デ
造ッタ豫算ニ非ズシテ、大藏省主計局デ作ッ
夕豫算ト謂ハナケレバナラヌ(拍手)先程
此豫定計畫ト云フコトニ付テ疑ヲ存セラレ
マシタ、ソレニ付テハ木下君ガ先刻答ヘラ
レテ居ル、豫定計畫ト云フノハ卽チ加藤友
三郞內閣ニ於テ確定シタル計畫デアル、併
ナガラ、其後天災地變、卽チ大震災テ受ケ
テ我國ノ經濟界ガ一大變調ヲ來シタノダカ
ラ、之ニ對應スル爲ニ山本內閣、竝ニ〓浦
內閣ニ於テ計畫シタル所ヲ以テ、之ヲ標準
トシテ進メルト云フノニ何ノ不思議ガアル、
斯ノ如ク實際ノ事實ハ明白デアル、要スル
ニ政府ノ建設ニ對スル觀念ハ、餘リニ悲觀
的デアッテ、且又新規ノ開業線ニ對スル計
算ト云フモノハマルデ事實ト違シテ居ル、
是ハ豫算委員會ニ於テモ私共屢〓質問ヲシ
夕何等ノ根據ガナイ、生キタ實例ニ少シモ
適合シテ居ナイ所ノ數字ヲ根據トシテ居
ル、故ニ若シ現政府ニ於テ特別會計ノ威力
ヲ發揮シ、其能力ヲ十分振フダケノ計畫ヲ
樹テルナラバ、建設ノ前途ト云フモノハ、
何モ斯ノ如キ貧弱ナルモノヲ以テ甘ンズル
必要ハナイ、今ヤ現内閣ハ消極政策ヲ執ンテ
居ルガ、併ナガラ後日ヲ目的トスルナラバ
(「簡單々々」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=99
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100・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=100
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101・大園榮三郎
○大園榮三郞君(續) 將來鐵道建設ハ帝國
ノ鐵道特別會計ニ何等恐ルベキモノガナイ
ト云フコトヲ信ズルナラバ、斷乎トシテ此
既定計畫ニ向シテ進ムト云フコトハ少シモ
不思議トスルニ足ラヌ譯デアル、是卽チ本
案ニ賛成スル所以デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=101
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102・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ニテ討論ハ終
結致シマシタ、松田源治君外二十名ヨリ本
案ノ採決ハ記名投票ヲ以テセラレンコトノ
要求ガアリマシタ、仍テ記名投票ヲ以テ決
シマス、決議案ニ賛成ノ諸君ハ白票、反對
ノ諸君ハ靑票ヲオ持アランコトヲ希望致シ
マス、-閉鎖-氏名點呼ヲ行ヒマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=102
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103・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 投票漏ハアリマ
セヌカ-投票漏ハナイト認メマス-投
票函閉鎖-開匣--開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=103
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104・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 投票ノ結果ヲ書
記官長ヨリ報告セシメマス
〔中村書記官長朗讀〕
投票總數三百十六
可トスル者白票九十七
否トスル者靑票二百十九
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=104
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105・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ハ否決セラ
レマシタ
〔拍手起ル〕
〔參照〕
元田肇君外十六名提出決議案ヲ可トスル
議員ノ氏名左ノ如シ
井上虎治君井出繁三郞君
池田龜治君池田泰親君
石原正太郞君岩切重雄君
禱苗代君鳩山一郞君
原夫次郞君原田十衞君
原田藤次郞君本多貞次郞君
星廉平君床次竹二郞君
東〓實君千葉宮次郞君
陣軍吉君折原巳一郞君
小島善作君大園榮三郞君
大石大君大麻唯男君
奧野小四郞君川原茂輔君
川口義久君河崎〓君
加藤久米四郞君加藤鐐五郞君
柏田忠一君兼田秀雄君
海原〓平君金光庸夫君
神村吉郞君米原於蒐男君
吉植庄一郞君吉木陽君
吉松忠敬君高橋光威君
高木第四郞君高見之通君
丹下茂十郞君田中隆三君
田口文次君筒井民次郞君
津崎尙武君中村四郞兵衞君
中村啓次郞君中村嘉壽君
中林友信君長峰與一君
成田榮信君向井倭雄君
浦野謙朗君上原好雄君
則元由庸君野村治三郞君
熊谷五右衞門君藏園三四郞君
栗林五朝君八木逸郞君
前田房之助君前田兼寶君
牧野良三君松浦五兵衞君
松田源治君丸山浪彌君
福井甚三君小泉辰之助君
小橋一太君寺田市正君
櫻內幸雄君榊田〓兵衞君
佐藤重遠君木下謙次郞君
吉良元夫君岸本賀昌君
三輪市太郞君宮崎友太郞君
志波安一郞君〓水市太郞君
〓水長〓君島本信二君
廣岡宇一郞君平田民之助君
森田政義君元田肇君
井上孝哉君石坂豐一君
坂東幸太郞君堀田義次郞君
小川〓太郞君高鳥順作君
堤〓六君畔田明君
佐藤潤象君田淵豐吉君
湛增庸一君多木久米次郞君
元田肇君外十六名提出決議案ヲ否トスル
議員ノ氏名左ノ如シ
井本常作君石塚三郞君
石黑大太郞君飯塚春太郞君
原脩次郞君橋本喜造君
濱口雄幸君西英太郞君
戶田由美君中馬興丸君
大里廣次郞君大津淳一郞君
太田信治郞君小野重行君
岡本實太郞君岡部次郞君
奧村千藏君川崎克君
河波荒次郞君加藤政之助君
加藤鯛一君加藤六藏君
加藤十四郞君金澤安之助君
金田平兵衞君神谷彌平君
神田正雄君神部爲藏君
横山勝太郞君橫山金太郞君
横山一格君吉川吉郞兵衞君
吉原義雄君吉田磯吉君
賴母木桂吉君武富濟君
田中萬逸君田中武雄君
田中善立君高木益太郞君
高田耘平君高橋元四郞君
谷口宇右衞門君建部遯吾君
俵孫一君永井柳太郞君
中原德太郞君中谷貞賴君
中野寅吉君中野猪之助君
村上國吉君村上紋四郞君
生方大吉君內ケ崎作三郞君
宇田友四郞君野村嘉六君
黑田重兵衞君栗延敬太郞君
工藤鐵男君八並武治君
山枡儀重君山道襄一君
山田又司君山田助作君
山田道兄君山本厚三君
松本忠雄君町田忠治君
古屋慶隆君降旗元太郞君
藤澤幾之輔君藤井敬愼君
深井功君福田五郞君
小島證作君小寺謙吉君
小山松壽君小池仁郞君
木檜三四郞君河野味噌?
近藤重三郞君紺野九右衞門君
寺島權藏君手代木隆吉君
淺賀長兵衞君淺川浩君
阿由葉勝作君荒井野建三君
安達謙藏君蟻川五郞作君
作間耕逸君佐竹庄七君
佐藤實君佐藤球三郞君
齋藤隆夫君齋藤仁太郞君
齋藤金吾君柵瀨軍之佐君
澤田利吉君由谷義治君
三好榮次郞君宮崎松次郞君
箕浦勝人君下元鹿之助君
〓水留三郞君鹽田團平君
廣瀨德藏君平川松太郞君
平野光雄君樋口秀雄君
森田茂君關矢孫一君
關俊吉君杉浦武雄君
鈴木富士彌君菅原英伍君
磯部尙君岩崎幸治郞君
岩崎動君石井謹吾君
石井三郞君飯村五郞君
井上敬之助君伊澤平左衞門君
八田宗吉君秦豐助君
西澤定吉君西方利馬君
長田桃藏君大竹謙治君
岡崎邦輔君小川平吉君
小野義一君若尾幾太郞君
渡邊伍君渡邊祐策君
加藤知正君笠原忠造君
吉津度君竹内友治郞君
田邊七六君高井商二君
扁是〓君高橋熊次郞君
中島守利君中村巍君
中村〓造君武藤金吉君
內野辰次郞君野田俊作君
來栖七郞君熊谷巖君
熊谷直太君矢野鉉吉君
山本悌二郞君山口義一君
山口恒太郞君山內範造君
山下谷次君松本眞平君
松山常次郞君松實喜代太君
二木洵君古川〓君
木暮正一君小久保喜七君
神崎動君靑木精一君
靑柳郁次郞君亦間嘉之吉君
東武君安藤正純君
有馬賴寧君齋藤珪次君
榊原經武君佐々木文一君
佐々木春作君佐々木長治君
坂梨哲君木戶豐吉君
木村政次郞君志賀和多利君
的哲君廣瀨爲久君
望月圭介君瀨沼伊兵衞君
鈴木隆君菅原傳君
隅田豐吉君板野友造君
井上利八君林田龜太郞君
馬場義興君濱田國松君
西村丹治郞君富永孝太郞君
土井權大君大口喜六君
大內暢三君高島兵吉君
田崎信藏君植原悅二郞君
山本芳治君小橋藻三衞君
古島一雄君秋田〓君
賣藤眞三郞君〓瀨一郞君
關直彥君今里準太郞君
磯部保次君岡田忠彦君
岡田溫君若宮貞夫君
若尾璋八君長岡外史君
山本愼平君松山兼三郞君
平井光三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=105
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106・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ニテ日程ハ終
了致シマシタ、次回ノ日程ハ公報ヲ以テ御
通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマ
ス
午後七時二十七分散會
衆議院議事速記錄第十號中正誤
頁段行誤正
七一三瑞西瑞典
同同一同三三二六五八瑞瑞西西瑞典
同瑞典発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X01119250207&spkNum=106
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