1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十四年三月十日(火曜日)午後一時十九分開議
議事日程 第二十四號
大正十四年三月十日
午後一時開議
質問
一 港灣行政統一に關する質問(三善清之君提出)
二 煙害防止水源涵養に關する質問(武藤金吉君外一名提出)
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第一 漁業財團低當法案(政府提出) 第一讀會
第二 登録税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 印紙税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 長州鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈株式會社所屬軌道の經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 大正十二年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十二年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年二月及三月中豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年三月中特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年度豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第八 大正十三年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 治安警察法中改正法律案(山口政二君外二名提出) 第一讀會
第十一 恩給法中改正法律案(松實喜代太君外三名提出) 第一讀會
第十二 恩給法中改正法律案(淺川浩君外六名提出) 第一讀會
第十三 北海道農地特別處理法案(東武君外十一名提出) 第一讀會
第十四 家祿引直處分法案(隅田豐吉君外五名提出) 第一讀會
第十五 新聞紙法中改正法律案(頼母木桂吉君外五名提出) 第一讀會
第十六 染料關税撤廢に關する建議案(武藤金吉君外一名提出)
第十七 綿絲關税撤廢に關する建議案(武藤金吉君外一名提出)
第十八 綿絲輸入關税撤廢に關する建議案(關直彦君外一名提出)
第十九 綿絲輸入關税撤廢に關する建議案(飯塚春太郎君外一名提出)
第二十 關税改正促進に關する建議案(太田信治郎君外二名提出)
第二十一 蛋粉の關税定率法改正に關する建議案(平野光雄君外一名提出)
第二十二 煉乳粉乳輸入關税引上に關する建議案(小池仁郎君外十七名提出)
第二十三 女子高等教育の振興に關する建議案(内ヶ崎作三郎君提出)
第二十四 婦人參政に關する建議案(松本君平君提出)
第二十五 市制及町村制改正に關する建議案(高橋熊次郎君外四名提出)
第二十六 (特別報告第一三四號)舊龍野藩祿米不足分に關する請願 (委員長報告)
第二十七 (特別報告第一三七號)谷川神社創建の請願 (委員長報告)
第二十八 (特別報告第一三八號)福母村村社八旛宮昇格の請願 (委員長報告)
第二十九 (特別報告第一三九號)宮崎神宮別宮狹野神社分立竝昇格の請願 (委員長報告)
第三十 (特別報告第一四〇號)畜犬繋留、篏口竝野犬撲殺に關する請願 (委員長報告)
第三十一 (特別報告第一四二號)明治記念國立大公園設立の請願 (委員長報告)
第三十二 (特別報告第一四四號)石狩川に橋梁架設の請願 (委員長報告)
第三十三 (特別報告第一四七號)根室郡に種馬所設置の請願 (委員長報告)
第三十四 (特別報告第一四八號)和郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第三十五 (特別報告第一四九號)東下村波崎に特設電話開通の請願 (委員長報告)
第三十六 (特別報告第一五〇號)藤澤村に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十七 (特別報告第一五一號)神戸村に無集配三等郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十八 (特別報告第一五二號)中愛別三等郵便局設置の請願 (委員長報告)
第三十九 (特別報告第一五三號)中津井郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第四十 (特別報告第一五四號)朝鮮辯護士資格付與の請願 (委員長報告)
第四十一 (特別報告第一五五號)新十津川村に登記所新設の請願 (委員長報告)
第四十二 (特別報告第一五六號)常呂村に網走區裁判所出張所設置の請願 (委員長報告)
第四十三 (特別報告第一五七號)大間鐵道速成の請願 (委員長報告)
第四十四 (特別報告第一五八號)地下道開鑿の請願 (委員長報告)
第四十五 (特別報告第一五九號)邊別、美瑛驛間に停車場新設の請願 (委員長報告)
第四十六 (特別報告第一六二號)瀧内村大字古川所在鐵道跨線橋存置の請願 (委員長報告)
第四十七 (特別報告第一六三號)津山東町に停車場設置の請願 (委員長報告)
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001・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 諸般ノ報告ガア
リマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
漁業財團抵當法案
登錄稅法中改正法律案
印紙稅法中改正法律案
長州鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債
發行ニ關スル法律案
中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈株
式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル補償
ノ爲公債發行ニ關スル法律案
(以上三月七日提出)
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シ
タル者等ニ交付スル公債發行ニ關スル法
律案(以上三月九日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
醫師法中改正法律案
提出者
神部爲藏君山本厚三君
小池仁郞君手代木隆吉君
淺川浩君澤田利吉君
一柳仲次郞君
登錄稅法中改正法律案
提出者
猪野毛利榮君湛增庸一君
(以上三月七日提出)
大正十一年法律第六十號中改正法律案
提出者
增田義一君佐々木平次郞君
若尾璋八君堤〓六君
平井光三郞君
(以上三月九日提出)
日本勸業銀行法中改正法律案
提出者
砂田重政君横山勝太郞君
山口義一君
北海道拓殖銀行法中改正法律案
提出者
砂田重政君横山勝太郞君
山口義一君
農工銀行法中改正法律案
提出者
砂田重政君橫山勝太郞君
山口義一君
(以上三月十日提出)
國立公園調査ニ關スル建議案
提出者多木久米次郞君
北海道甜菜糖業補助法制定ニ關スル建議
案
提出者
小池仁郞君東武君
淺川浩君岡田伊太郞君
神部爲藏君眞在成章君
手代木隆吉君松實喜代太君
澤田利吉君山本厚三君
一柳仲次郞君
北陸ニ國立倉庫設置ニ關スル建議案
提出者
寺島權藏君荒井建三君
高見之通君
富山縣ニ鐵道局設置ニ關スル建議案
提出者
寺島權藏君高見之通君
魚津漁港兼避難港修築ニ關スル建議案
提出者寺島權藏君
防石鐵道買收決定ニ關スル建議案
提出者兒玉右二君
恩給法中〓育職員ニ關スル事項改正ニ關
スル建議案
提出者
加藤知正君荒川五郞君
土井權大君禮イ苗代君
北海道拓殖銀行資金充實ニ關スル建議案
提出者
松實喜代太君東武君
黑住成章君岡田伊太郞君
御料拂下地免租年期ニ關スル建議案
提出者
東武君岡田伊太郎君
黑住成章君松實喜代太君
鴛泊漁港修築ニ關スル建議案
提出者
淺川浩君澤田利吉君
一柳仲次郞君神部爲藏君
山本厚三君小池仁郞君
手代木隆吉君
高山富山間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
群嘉六君上埜安太郞君
石坂豐一君高見之通君
石原正太郞君寺島權藏君
荒井建三君
(以上三月七日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
賣國的行爲取締ニ關スル質問主意書
提出者建部遯吾君
米及籾ノ關稅ニ關スル再質問主意書
提出者多木久米次郞君
(以上三月七日提出)
思想善導ニ伴フ特殊機關設置ニ關スル質
問主意書
提出者秋田寅之介君
(以上三月九日提出)
一去七日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如
シ
衆議院議員柏田忠一君提出在上海邦人經
營諸紡績工場ニ於ケル同開業業ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員秋田寅之介君提出海事官增員
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
在上海邦人經營諸紡績工場ニ於ケル同
盟能業ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年二月二十六日
提出者柏田忠一
在上海邦人經營諸紡績工場ニ於ケル
同明龍業ニ關スル質問主意書
一本年二月初旬在上海ノ内外紡績株式
會社ニ勃發セル大同明罷業ト之レト
相呼應シテ我カ在上海諸紡績工場ニ
結發セル前代未間ノ大同盟能業ノ原
因結果ニ對シ政府ハ如何ナル所見ヲ
有スルヤ
二右ノ大同明能業ハ之ニ對スル根本對
策ヲ講スルニ非スムハ其ノ禍ヲ再ヒ
スルノ怖アリト信ス政府ハ如何ナル
對策ヲ講セムトスルヤ
三今回ノ大同盟罷業ニ對スル對策ノ如
何ニ依リテハ獨リ我カ對支紡績業ノ
ミナラス在支邦人ノ發展上容易ナラ
サル結果ヲ惹起スルモノト信ス政府
ハ此ノ點ニ就キ如何ナル手段ヲ以テ
善處セムトスルカ具體的御說明ヲ請
フ
右及質問候也
大正十四年三月七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員柏田忠一君提出在上海邦人經
營諸紡績工場ニ於ケル同明能業ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員柏田忠一君提出在上海邦人
經營諸紡績工場ニ於ケル同盟能業ニ關
スル質問主意書ニ對スル答辯書
-本年二月在上海邦人經營紡績工場ニ
發生セル同盟能業ハ單純ナル勞働爭
議ニ非スシテ外部ヨリノ煽動ニ基ク
疑アリ政府ハ右取締ニ關シ支那中央
竝地方官憲等ノ注意ヲ喚起スルト共
ニ邦人ノ生命財產保護ニ關シ必要ノ
措置ヲ講シタルカ幸ニシテ各工場共
既ニ操業ヲ再開セリ
二同盟能業ガ勞働爭議ニ關スル限リ政
府ハ當業者ニ必要ナル注意ヲ與ヘ勞
資協調ノ實ヲ擧ケシムルニ努力スヘ
シト雖勞働者以外ノ者カ勞働者ヲ粧
ヒ之ヲ煽動セルノ疑アル以上及フ限
リ事實ヲ搜索シ適當ノ對策ヲ講セン
トス今日ニ於テ右對策ヲ具體的ニ聲
明スルハ公共ノ利益ニ反スルモノト
認ム
三本件ニ關シテハ政府ハ質問ノ趣旨ト
所感ヲ同ウス之ニ處スルノ手段ニ至
リテハ前項答辯ヲ參照セラレムコト
ヲ望ム
右及答辯候也
大正十四年三月六日
外務大臣男爵幣原喜重郎
海事官增員ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年二月二十七日
提出者秋田寅之介
海事官僧員ニ關スル質問主意書
行政財政整理ノ爲メ冗員ガ淘汰セラルル
ノハ當然ダガ而シ一面國家トシテノ機能
ヲ十分發揮シ且國運ノ隆昌ヲ促進スル上
ニ於テ有ヨリ無ニ無ヨリ有ニ聲息相通ズ
ル策ヲ講ヅルコトモ亦ヨリ以上剴切ナル
整理要項デアラネバナラヌト考フルノア
リマス
我邦ニ於ケル船舶ノ管掌ハ各其ノ所屬ヲ
一定セラレ之ヲ擔任セル海事官ガ直接船
舶ノ檢査ヲ司リ實際ノ事務ヲ取扱シテ居
ラルルノデアル
私ノ玆ニ質問セントスル熊本遞信局海事
部下關出張所ノ管轄區域ハ下關市門司市
若松市八幡市其他山口福岡大分ノ三縣各
地ニ跨リ且船舶、船舶ト言ツテモ鐵船アリ
木船アリ西洋型日本型等千態萬狀デアル
ガ此等多數船舶異動隻數等ヨリ打算シ海
事官ノ定員ガ甚ダ少イノデアル
此ノ海事官ノ定員ハ何ノ標準ニ據リ決定
セラレタルモノカ不明デアルガ單ニ關門
若倉ノミニテモ所謂出船千艘入船千艘デ
古今名實共日本一デアリ附近又大小ノ船
飛、造船所數多アリ從ヲ新造船多ク之ガ
龍骨据付ケヨリ進水ニ至ル迄及機關部ノ
檢査、定期、特別檢査及海難衝突其ノ他
ノ事故頻出到底現在定員ノ海事官ノミヲ
以テシテハ船舶、造船業者ノ要望ニ副フ
能ハザルノミナラズ海事官トシテノ職責
ヲ盡ス上ニ於テモ甚ダ遺憾ノ點ガ多カラ
ウト想ハルルノデアル
船舶檢査ノ精粗ハ一朝有事ノ場合生命財
產ニ關係ヲ及ボスノミナラズ之ガ遲速奈
何ハ海運界造船界ニ多大ノ影響ヲ與へ延
イテ世界ノ通商貿易ニ尠カラザル波動ヲ
及ポスコトハ敢テ贅言ヲ俟タザル所デア
ル而モ法律ハ此等小數海事官ノ檢査ヲ經
ザレバ如何ナル大船巨舶ト雖モ猥リニ之
ヲ動カスコトヲ許サヌノデアル其ノ爲斯
業者ノ蒙ル打擊即チ營業收入ノ減少、滯
船料及其ノ他有形無形ノ損害ト苦痛トハ
到底擧ゲテ數フコトガ出來ナイノデアリ
マス
前述海事部下關出張所ノ如キ海(事官少數
ノ爲日曜祭日ノ區別ナク船渠、造船所及
船舶業漁業者カラ檢査ヲ迫ラレ休息ノ時
問モ無キ位繁劇ヲ極メテ居ルノデアル此
ノ事實カラ歸納シテ如何ニ海事部下關出
張所海事官ノ人員不足デアルト云フコト
ガ想像ニ難クナイノデアリマス
本員ハ國家經濟及通商貿易促進ノ上カラ
相當海事官ノ增員ヲ爲シ如上ノ缺陷ヲ補
ハルルコトハ假令財政整理ノ際トハ申シ
乍ラ少許國費ノ增加ヲ來スモ國家トシテ
得ル所ハ其ノ失フ所ニ百倍千倍スルモノ
ト確信スルノデアリマス
前述ノ意味ニ於テ左ノ各項ニ付政府ノ御
意見ヲ伺ヒタイノデアリマス
-政府ハ海事行政ノ實狀ニ鑑ミ其ノ機
能ヲ十分ナラシムル爲熊本遞信局海
事部下關出張所海事官ヲ增員シ事務
ノ簡㨗ト敏活ヲ圖ラルル御考ハアリ
マセンカ
二萬一海事官增員不可能トスレバ例へ
バ門司稅關ガ彦島ノ如キ船渠造船業
者ノ多數アル所ニ派出所ヲ設置シ特
ニ內外船舶ノ利便ヲ計リ居レル如ク海
事官ヲ此ノ地ニ駐在セシメ兩兩相俟
チ十二分ノ能率發揮ト斯業界ノ改善
啓發ニ資セラルルノ御考ハアリマセ
ンカ
三財政其ノ他ノ御都合上海事官增員ガ
不可能トスレバ請願巡査ノ制アル如
ク民間ニ於テ之ガ增員ニ要スル經費
ヲ寄附スレバ政府ハ此ノ國民ノ要望
ヲ許容セラルルデアリマセウカ
四稅關ガ日曜祭日又ハ開廳時間前後臨
時開廳ヲ爲シ聞廢料ヲ徴收シ居レル
如ク海事部ニ於テモ之ト同樣ノ方法
ニ依リ國家及國民ノ福利增進ヲ圖ラ
ルルノ御考ハアリマセンカ
五仄聞スル所ニ依レバ熊本遞信局長崎
海事部ヲ門司ニ移轉セラルルトノコ
トナルガ事實デアリマスカ果シテ事
實トスレバ其ノ實現ノ時期ヲ承リタ
イ又此ノ場合下關出張所ノ存廢乃至
權限擴縮ハ如何ヤウニナルノデアリ
マスカ
右及質問候也
大正十四年三月七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員秋田寅之介君提出海事官增員
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員秋田寅之介君提出海事官增
員ニ關スル質問ニ對スル答辯書
熊本遞信局海事部下關出張所ニハ現在相
當數ノ檢査官ヲ配置シ隨時管內各地ニモ
出張シテ常ニ檢査ノ完全ト迅速トヲ期ス
ルノミナラス必要ノ場合ニハ休暇日檢査
ヲモ執行スルコトトセルヲ以テ同地方面
ニ於ケル船舶儉查上支障ナシト認ム而シ
テ將來假リニ同地檢査官ノ增員ヲ必要ト
スルコトアリトスルモ船舶檢査ノ如キ
其性質上純然タル監督事務ニ從事スヘキ
官吏ニ要スル經費ヲ民間ノ寄附ニ俟ツカ
如キハ檢査ノ嚴正公平ヲ期スル上ニ於テ
頗ル考慮ヲ要スルコトト思考ス尙熊本遞
信局海事部ハ追テ門司ニ移轉セシムル豫
定ナルモ下關出張所ノ存廢ニ付テハ其ノ
際諸般ノ事情ヲ參酌シ決定スル見込ナ
リ
右及答辯候也
大正十四年三月六日
遞信大臣犬養毅
一今十日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如
衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓殖
政策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員武藤金吉君外一名提出煙害防
止水源涵養ニ關スル質問ニ對スル答辯書
北海道拓殖政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年二月七日
提出者松實喜代太
北海道拓殖政策ニ關スル質問主意書
北海道拓殖ノ促進ハ刻下帝國重要ノ國策
タル人口調節ト食糧充實ノ解決ニ資スル
ノ方策ナリ然ルニ近年移民頓ニ減退シ拓
殖ノ業遲遲トシテ進マス斯ノ如キ所以ノ
モノ畢竟拓殖事業ニ對スル政府ノ施設常
ニ姑息退嬰ニ失スルニ職由セスムハ非ス
拓殖ノ前途洵ニ寒心ニ堪ヘス加之既定計
畫ハ大正十五年ヲ以テ將ニ終了ヲ告ケム
トス宜シク此ノ時ニ方リ舊套ヲ攝脫シテ
新計畫ヲ樹立シ停頓セル拓殖ノ局面ヲ展
開シテ國家緊急ノ要求ニ策應セシムヘキ
ナリ
左記事項ハ拓殖促進上緊要缺クヘカラサ
ル施設ナリト信ス依テ之ニ對スル政府ノ
所見ヲ問フ
ー北海道廳官制ヲ改正シ長官ノ地位ヲ
昂上シ其ノ權限ヲ擴張シ以テ拓殖計
畫ニ對シ自由手腕ヲ發揮セシムルノ
意ナキヤ
二北海道ニ特別會計制度ヲ布キ拓殖促
進ヲ圖ルノ意ナキヤ
三若前項ノ特別制度ヲ布クヲ不可ナリ
トセハ北海道ニ於ケル國庫ノ收入
(鐵道其ノ他特別會計ニ屬スルモノ
ハ之ヲ除ク)ハ之ヲ全部拓殖費ノ資
源ニ充ツルノ意ナキヤ
四政府ハ北海道事業公債ヲ發行シ拓殖
費ノ資源ニ充テ其ノ促進ヲ圖ルノ意
ナキヤ
五政府ハ北海道大河川(二十六河川)ニ
對シ速ニ根本的治水計畫ヲ確立シ其
ノ實行ニ著手スルノ意ナキヤ
六政府ハ北海道ニ地代農地ノ制度ヲ實
施シ自作農ヲ創設スルノ意ナキヤ
七政府ハ北海道ニ於ケル灌漑溝幹支線
ヲ國費支辨ト爲シ土地開墾及改良事
業費ニ對シ開墾助成法ニ等シキ補助
ヲ與ヘ且既設土功組合改修工事ニ適
當ノ補助ヲ爲シ併セテ其ノ經營ニ苦
シム者ニ對シ救濟ノ途ヲ講スルノ意
ナキヤ
八政府ハ北海道ノ農業ヲシテ新生面ヲ
打開セシムヘク有畜農業ヲ奬勵スル
ノ意ナキヤ
九政府ハ北海道ニ於ケル漁港修築ノ方
策ヲ確立シ海田開發ノ促進ヲ圖ルノ
意ナキヤ
十政府ハ北海道移民招徠ニ對シ積極的
方策ヲ立ツルノ意ナキヤ
十一政府ハ北海道ニ於ケル銀行貯金保
險掛金等中央流入ノ弊ヲ矯メ併セテ
郵便貯金ハ之ヲ全部北海道ニ於テ低
利資金トシテ貸出ヲ爲サシムルノ意
ナキヤ
士一政府ハ北海道拓殖銀行法ヲ改正シ
其ノ機能ヲ擴張シ割會債劵發行ヲ許
シ貸出資金ヲ豐富ニシ且利率ヲ低下
セシムルノ意ナキヤ
十三政府ハ北海道ニ於ケル鐵道敷設法
ニ依ル豫定線ヲ府縣ノ夫レト分離シ
特別敷設法ヲ設定スルノ意ナキヤ
十四政府ノ北海道ニ於ケル遞信收益ハ
之ヲ全部北海道ノ通信機關改善竝擴
張ニ充ツルノ意ナキヤ
十五政府ハ北海道大學ニ法文理ノ各科
ヲ增置シ速ニ綜合大學ヲ完成スルト
共ニ高等學校及高等專門學校竝高等
師範學校ヲ新設スルノ意ナキヤ
十六政府ハ北海道ニ於ケル各官廳所屬
地ヲ整理シ其ノ不用ニ屬スル農耕通
地ハ速ニ之ヲ解放スルノ意ナキヤ
右及質問候也
大正十四年三月十日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓
殖政策ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
內務省閣書第四號
衆議院議員松實喜代太君提出ニ係ル北
海道拓殖政策ニ關スル質問答辯書
北海道廳官制ハ目下改正ノ意思ナシ
二現在ノ所北海道ニ特別會計制度ヲ設
クルノ意思ヲ有セス
三北海道ニ於ケル國庫ノ收入ハ各種ノ
關係ニ鑑ミ其全部ヲ擧ゲテ之ヲ拓殖
費ノ資源ニ充當スルノ意思ナシ
四政府ハ財界ノ現況ニ鑑ミ既定計畫ノ
公債支辨事業スラ之ヲ打切リ又ハ繰
延フルコトトシ且ツ緊急已ムヲ得サ
ルモノハ其ノ全部又ハ一部ヲ普通財
源ニ依リ遂行スルコトトナシ極力新
規公債發行額ノ減少ニ努メツヽアル
ヲ以テ現今ノ財政狀態ニ於テハ新ニ
北海道事業公債ヲ發行スルノ意ナシ
五北海道重要河川二十六ケ川ニ對シテ
ハ既ニ一應調査ヲ了セルモ其ノ全體
ニ亙ル所要工費ハ頗ル巨額ニ上ルヲ
以テ財政ノ許ス範圍エ於テ右河川中
拓殖上ニ至重ノ關係ヲ有シ且ツ急施
ヲ要スル河川ノ改修ヲ期スルコトト
シ漸次他ニ及ボス方針ノ下ニ事業ヲ
進メツヽアリ
六地代農地ノ制度ヲ實施シ自作農ヲ創
設スルニ付テハ之ニ件フニ各種ノ保
護施設ヲ以テスルニアラサレハ所期
ノ目的ヲ達成スル能ハサルヲ以テ目
下之カ方法等ニ關シ併セテ講究中ニ
在リ
七灌漑事業ニ對シテハ現ニ拓殖費ヲ以
テ幹線工事費ノ四割ヲ補助シツヽア
ルモ北海道ニ於ケル水田造成ノ實狀
ニ鑑ミ之カ助成ニ關スル方法ニ付テ
ハ相當考慮ヲ要スヘキモノアリト認
ム尙土地ノ開墾及改良事業ニ對スル
助成ニ關シテハ開墾助成法ノ如キ開
墾資金ニ對スル利子、補給ノ方法ニ
依ルヲ可トスルカ若ハ工費補助ノ方
法ニ依ルヲ適當トスルカハ大ニ考究
ヲ要ス既設土功組合ノ補助又ハ其ノ
經營ニ苦シム土功組合ニ對シ低利資
金ノ供給其ノ他償還年限ノ延長等ニ
依ル救濟ニ關シテハ目下考慮中ニ在
リ
八農業ノ合理的經營ヲ有スルカ爲有畜
農業組織ト爲スヲ必要ナリト認メ之
カ奬勵ニ努メ居ルモ尙適切ナル奬勵
方法ニ付銳意考究中ナリ
九漁港ニ關シテハ其ノ重要ト認ムルモ
ノニ付一應調査ヲ了セルモ之カ修築
ニ就テハ他ノ事業トノ緩急竝財源ノ
關係等ヲ考慮シ努メテ其實現ヲ期セ
ムトス
十移民ノ招徠ニ關シテハ汽車汽船賃ノ
割引移民世話所ノ開設及新植民地ニ
對スル醫師ノ配置特別〓授所ノ設置
等ノ外保護移住ノ實施竝ニ之等移民
ノ入地ニ便スル爲殖民軌道ノ敷設ヲ
圖リツヽアルモ、今後益進テ移住奬
勵ニ努メムコトヲ期ス
±-政府ハ北海道ニ於ケル銀行貯金ノ
中央ヘノ流入ニ付テハ成ル可ク之ヲ
避ケシムル方針ナリ
簡易保險積立金ノ運用ニ付テハ現ニ
資金還元ノ趣旨ニ依リ放資シ全然其
ノ弊ナシ又郵便貯金ニ付テハ之ヲ預
金部資金トシテ有利確實ナル方法ヲ
以テ國家公共ノ利益ノ爲ニ之ヲ運用
セムコトヲ期シ之カ爲公債地方債其
ノ他ノ債劵ノ引受ケ又ハ買入等ノ方
法ニ依リ運用シ居ル次第ニシテ郵便
貯金ノ全部ヲ其ノ地方貸出ニ使用ス
ルコトハ實行上困難ナリ然レトモ地
方低利資金ノ潤澤ヲ圖ルコトニ付テ
ハ常ニ最善ノ考慮ヲ拂ヒ今後ニ於テ
モ一層此ノ點ニ重キヲ措ク考ヘナリ
十二現在北海道拓殖銀行ハ北海道及樺
太ノ拓殖資金ノ供給ヲ目的トシテ長
期資金(不動產貸付)及短期資金普
通銀行業)ノ融通ニ汎ク應ジツヽア
リテ現行法上其ノ機能ノ發揮ヲ努力
セル今日ニ於テハ此上法律ノ改正ヲ
必要トセサルヘク又同行ニ割會金附
債劵ノ發行ヲ認ムルコトハ不可ナリ
ト信ス
十三鐵道敷設法中北海道ニ於ケル豫定
線ニ付テハ政府ハ府縣ニ於ケル夫ト
ハ全ク考慮ヲ異ニシ敷設實行計畫ニ
就テモ沿道住民若クハ物資ノ多寡ヲ
標準トセス專ラ地方拓殖ヲ以テ主眼
トシツヽアリ故ニ故ラニ法律ヲ別ニ
セサルモ拓殖ノ目的ヲ達スルニ支障
ナシ從テ特別ノ敷設法ヲ設クルノ必
要ヲ認メス
十四北海道ニ於ケル通信事業ノ收支ハ
其ノ收入ハ支出ヲ償フニ足ラサル現
狀ナルモ本道ニ於ケル通信機關改善
擴張ノ急務ナルヲ認メ收支ノ如何ニ
關セス豫算ノ許ス範圍内ニ於テ著々
實行ニ務メツヽアリ
十五北海道ニ於ケル高等〓育機關ノ施
設ニ關シテハ政府ハ財政ノ關係ト時
勢ノ進運トニ鑑ミ漸次之カ整備ヲ期
セントス
十六北海道ニ於ケル各官廳所屬地ノ整
理ニ關シテハ政府ハ銳意之カ促進ヲ
圖リ其ノ不要ニ屬スルモノハ速ニ之
ヲ解放シテ處分シツヽアリ其ノ農耕
通地ニ付テハ可成其ノ目的ニ副フ樣
處分ヲ爲ス見込ナリ國有財產調査會
モ亦國有財產整理促進ノ目的ヲ以テ
設置セラレタルモノニシテ常ニ之カ
整理ニ盡力シ居レリ
右及答辯候也
大正十四年三月九日
農商務大臣高橋是〓
遞信大臣犬養毅
內務大臣若槻禮次郞
文部大臣岡田良平
鐵道大臣仙貢
大藏大臣濱口雄幸
煙害防止水源涵養ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月二日
提出者
武藤金吉靑木精
煙害防止水源涵養ニ關スル質問主意
書
一栃木縣上都賀郡足尾銅山附近ニ其ノ水
源ヲ發シ群馬縣山田郡新田郡邑樂郡及
栃木縣西部一端ヲ灌漑スル渡良瀨川ハ逐
年其ノ流水量減退シ灌漑用水ノ不足ヲ
來スニ至レリ殊ニ大正十三年ノ大旱魃ニ
際シテハ果然未曾有ノ大渴水ヲ來シ早害
ノ慘禍ヲ被リ農村ノ死活問題トシテ今尙
人心恟々タルモノアリ渡良瀨川減水ノ原
因タルヤ主トシテ足尾銅山煙毒ノ爲其ノ
水源地域一帶ノ山林枯死荒頽ニ歸シタ
ルニ因ル政府ハ足尾銅山ニ於ケル鑛毒煙
毒除害命令ノ勵行ヲ怠レルモノニ非スヤ
一政府ハ足尾銅山煙毒除生命令ヲ勳行ス
ルト共ニ渡良瀨川水源涵養ノ爲其ノ水
源地域ニ於ケル於ケル荒廢セル山林ノ
保護復舊ノ方策ヲ實施シ且渡良瀨川上
流沿岸ノ砂防工事ヲ實施完成シ以テ其
ノ流域ニ於ケル農村ノ危機ヲ救濟スル
ノ最急務ナルヲ認メサルヤ
右及質問候也
大正十四年三月十日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三君
衆議院議員武藤金吉君外一名提出煙害防
止水源涵養ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進候
〔別紙〕
衆議院議員武藤金吉君外一名提出煙害
防止水源涵養ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
一政府ハ足尾銅山製煉所ヲ中心トスル
渡良瀨川水源地ノ荒頽ニ關シテハ之
カ除害設備トシテ從前鑛煙ノ中和或
ハ稀釋ヲ行ハシメタルカ更ニ除害上有
效ナル電氣收塵装置ヲ設置セシメ相當
ノ效果ヲ收メツツアリ猶除害設備ノ操
作ニ就テ常ニ監督ヲ懈ラス
一渡良瀨川水源涵養ニ關シテハ足尾銅山
ニ於テ諸種ノ扞止工事植樹ヲ行ヒ明治
四十三年ヨリ大正十二年ニ至ル期間ニ
之カ經費約四十七万圓ヲ支出セリ今後
引續キ此等ノ事項ヲ施行スル計畫ニシ
テ政府ハ常ニ其ノ施業ヲ監督シ勵行ヲ
圖レリ
國有林地ニ就テハ明治三十年以來政府
ニ於テ扞止工業ヲ施行シ其ノ施設費ト
シテ既ニ七十九万圓ヲ支出シ別ニ荒廢
地復舊事業費トシテ約一一万圓ヲ支出セ
リ今後ニ於テモ引續キ工事實施ノ豫定
ナリ
尙渡良瀨川上流沿岸ニ對シテハ砂防工
事施行ノ必要アリト認メ目下調査攻究
中ニ屬ス
右答辯候也
大正十四年三月十日
農商務大臣高橋是〓
內務大臣若槻禮次郞
一今十日內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令アリ
タル旨ノ通牒ヲ受領セリ
大藏省主稅局長黑田英雄
大藏省所管事務政府委員被仰付
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去七日栽判所構成法中改正法律委員畔田
明君辭任ニ付其ノ補闕トシテ杉宜陳君ヲ
明治三十二年法律第十七號中改正法律案
外三件委員永井作次君辭任ニ付其ノ補闕
トシテ佐藤重遠君ヲ〓育ノ機會均等ニ關
スル建議案委員中村四郞兵衞君辭任ニ付
其ノ補闕トシテ倉元要一君ヲ孰レモ議長
ニ於テ選定セリ
一昨九日〓育ノ機會均等ニ關スル建議案委員
浦野謙朗君、西方利馬君辭任ニ付其ノ補
關トシテ丹下茂十郞君、若尾幾太郞君ヲ
明治三十二年法律第七十號中改正法律案
外三件委員下元鹿之助君辭任ニ付其ノ補
關トシテ森田茂君ヲ孰レモ議長ニ於テ選
定セリ
一今十日常任委員補閣選擧ノ結果左ノ如シ
第五部選出
決算委員信太儀右衞門君(村山喜一
郞君補閱)
一昨九日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出
豫算委員石坂豐一君(佐々木平次
郞君補關)
第七部選出
豫算委員川口義久君(高木第四郞
君補闕)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=1
-
002・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、諮問事項ガアリマス、第九部選出請
願委員吉良元夫君、常任委員辭任ノ申出ガ
アリマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=2
-
003・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ
行ヒ、御屆出アランコトヲ希望致シマス、
議事進行ニ關シテ發言ノ通告ガアリマス
-田淵豐吉君
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=3
-
004・田淵豐吉
○田淵豐吉君 一寸簡單ニ十分間程-一
昨日副議長ノ〓ノ議長ニ議事進行ノ通告ヲ
シマシタガ、少シ皮肉デアッタノハ、私ノ不
在中ニ田淵君ト呼ンダサウデアリマス、私
ハ居ラナカッタ、少シ皮肉ノヤウニ思ヒマ
スガ、其他ノ事ニ付テハ今日一寸會ッタ
時ニ御辯解ガアリマシタカラ、私モ此處
デブウー〓言ハヌ方ガ適當デアルト思ヒマ
スカラ言ヒマセヌ、一寸其點ダケ責任ヲ明
ニスル爲ニ私言ウテ置キマス、ソレデ私ハ
小サイヤウニ諸君ハ思フカ知ラヌガ、重大
ナ事デアルト思ッテ、是ハドウシタラ宜イ
カ知リマセヌガ、先ヅ議事進行ニ付テ私ハ
述ベタイ、ソレハ表決ニ付テ一三ロシタイ、
サウシテ議長ノ御考ヲ聽キタイ、又議員諸
君ノ注意ヲ喚起シタイ、ソレハドウ云フコ
トヲ言フカト云フト、選擧ノ時ニハ大變エ
ライ騷ギヲシテ、三十日モ、四十日モ掛ノ
テ選擧シテ出テ來ル所ガ此閉鎖ト云フモノ
ガアッテ、吾々ガ過激政府案ニ反對質問シ
テ居ル、而シテ尙ホ其上ニ反對ノ討論ニ通
告モシテ居ッタ、所ガ途中デ打切ッタカラ、
議場ノ閉鎖ニ遭シテ僅々一一十秒間位後レテ
締出サレタヤウナ次第デ、入ラウト思ッテ
モ入レナイト云フコトニナリマシタ、サウ
スルト片方デハ田淵ハ反對ヲシテ居ナガラ
逃ゲタト云フコトニナッテ居ル、非常ナ誤
解ヲ招ク、又林田龜太郞君等モサウ云フヤ
ウナコトニナッテ居ル(「何故議席ニ居ラヌ」
「自分ガ居ラヌカラ惡イノダ」ト呼フ者ア
リ)聽イテ下ザイ、私ノ事ダケヲ言フノ
デナイ、君等ノ間違ッテ居ルコトガ分ルカ
ラ-ソコデ林田君モサウデス、投票ハ僅ニ
十八票デアルガ、少クトモ二十五六票アル
ラシイノデアッタ、サウ云フヤウナコトデ
唯、單ニ過激法案ダケデナイ、一年ニハ百人
以上締出サレテ居ルラシイ、之ヲ如何ニス
ベキカト云フノガ私ノ問題デアル、是ハ根
柢ハドウデアルカト云フト、議員ノ選擧ス
ル時ニハ非常ニエライ騷ギヲシテヤッテ來
ル、所ガ議會デ重要法案ニ投票スル時ニハ
一分遲イ一秒遲イト云フノデ締出シヲ喰フ
是ハドウ云フ譯デアルカ、此規則ト云フモ
ノヲ如何ニ改正スルカト云フコトガ私ハ重
大問題ト思フ、是ハ小サナ問題デナイ重大
ナ問題デアル、仍テ一寸述ベタイ、議院規
則ノ表決ノ部ニ第百二十四條「表決ノ際議
場ニ現在セサル議員ハ表決ニ加ハルコトヲ
得ス」議場ニ居ル者デナケレバ表決ニ加ハ
ルコトヲ得ズト云フコトニナッテ居ル、所ガ
外ノ選擧ニ於テハ其時ニ行ハナクテモ、其
日ノ何時カラ何時マデニ或ル一定ノ場所ニ
表決セイト云フコトニナッテ居ル、所ガ此
處ハ官僚式ニナッテ居ッテ百二十四條デサウ
ナッテ居ル、更ニ百三十條ニハ「點呼又ハ記
名若ハ無名投票ヲ行フトキハ議場ノ入口ヲ
閉鎖スヘシ」ト云フ規則ガアリマス、ソレデ
縛ラレテ居ルヤウナ次第デ、例ヘバ玆ニ記
名投票ヲ行フ旨ヲ宣言シテ、賛成ノ諸君ハ
白票、反對ノ諸君ハ靑票ト言ウテソレデ聞
鎖ト來マスカラ、約一二分ノ間ニ於テ閉鎖
サレテシマフト云フ狀態ニナッテ居ル、外ニ
居ル者ハ便所ニ行ッテ居ッチモ投票スルコト
ガ出來ナイト云フ實ニ官僚式ニナッテ居ル、
所ガ諸君ニ一考ヲ煩シタイノハ、例ヘバ玆
ニ此間ノ過激法案ノトキニモ私ハ再ビ反對
ノ討論ニモ立ツベキ者デアッテ、サウシテ
マダ三四人殘シテ居ルノデアル、ソレヲ與
黨諸君ガ有害ト思ッテ途中デ打切ッテシマ
7、現ニ私ガ其處ニ居シテモ何時何十分頃
ニ是ガシマフカト云フコトハ分ラナイノデ
アリマス、分ラナイカラ多數黨ノ政府ハ時
ニ横暴ヲシマスカラ、他ノ反對ノ議員ガ少
クナッタトキニ投票シマスト、斯ウ來マス
トドウデアルカ、又與黨ノ人ガ述ベテ居ッ
タ所ガ、其人ガ一時間モヤルヤウナ顏ヲシ
テ二十分位デ打切ッテ、反對議員ノ少イトキ
ニヤラレタラドウシマスカ、現ニ私ハ小泉サ
ンガ田淵ガ一寸議場ニ居ラヌノヲ知ッテ居フ
テ、ソレニモ拘ラズ議事進行ニ付テ許スト
言ハレタサウデアリマス、サウ云フヤウナ
調子デ以テヤラレタ曰ニハ選擧シテ來ル
時ニハ大騒ギヲシテ、此處デヤル時ニハ官
條式ニヤッテシマフト云フコトハ穏當ナ
事デハナカラウト思フ、成ベク此處ニ居ラ
ナクテモ、此議院ノ中ニ居ル人ミガ其投票
ヲナシ得ル時ヲ待ツトカ云フコトガ、私ハ
適當ナル憲政上ノ必要ナル事項デハナカラ
ウカト思フ、元ハ一寸人ノ名ガ違ウ、ダカ
ラ無效ダトカ、紙ガ薄カンタカラ無效ダト
カ何トカ言ッテ、非常ナ裁判沙汰ニナルヤ
ウナコトヲシテ諸君ガ出テ來テ居ル、然ル
ニ議場ニ於テハサウ云フヤウナ專制的ナ遣
方ヲヤッテ居ル、故ニ是ハ仕方ナケレバ仕
方ガナイケレドモ、玆ニ私ノ言ハント欲ス
ル所ハ、必シモ此議場ニ一時カラ六時、或
ハ九時マデノベツマダラニ居ラレルモノデ
ハナイ、他ニ議場カラ出ル必要モ多ク起ル
ノデアリマス、時々ハ出ル、殊ニ演說ヲシ
夕後ナンカ苦シイカラ退場スルコトガアル
ノデアリマス、故ニ此處ニ坐ッテ居ル人バ
カリガ議員デハナイ、少シ失禮ナコトヲ言
ヒマシタケレドモ、ソレハ事實デアル、ソ
コデ私ハ思フノニ、議長ハ此規則ヲ此儘ニ
置イテ置キマシテモ、尙ホベルヲ鳴ラシマ
シテ各室ニ通ズルヤウニシ、三分間位前ニ
此議院内ニ居ル者ニ知ラセルトカ、或ハ亦
イ「ランプ」ヲ點ケルトカ云フヤウナコトヲシ
テ議員ヲ此處ニ滿タシテ、成ルペク必要ナ
ル所ノ投票ヲヤラスト云フコトガ、最モ私
ハ必要デナカラウカト思フノデアル、故ニ
私ハ議長ガベルヲ鳴ラシ、三分間位前ニ知
ラセテ、其間ニ議員ガ集テ公正ニ投票ヲス
ルト云フコトガ矢張必要デアルト思フ中ニ
ハ一人デ一時間モ二時間モ演說ヲシテ居ル
人モアル、サウシテ何時打切ルカ分ラヌヤウ
ナコトニナッテ居ル(発言者多シ)默ッテ御聽
キナサイ、何時打切ルカ分ラヌノニ、其處ニ
居ナケレバ其權利ヲ失フト云フコトハ、立
憲政治ノ根本ニ反スルト思フ此事ハ外國ニ
モ其例ガアルト聞イテ居ル、是ハ何トカ改
正シテ、此議員ガ集リ得ルヤウニシテ、公正
ニ投票ガ出來ルヤウニスル、例ヘバ投決ヲ
起立ニ問フタ場合ニハ閉鎖シナイサウデア
リマス、起立ト云フコトハ重要ナル所ノ法
案デモ起立スルコトガ出來ルサウデス、必
シモ閉鎖シナケレバナラヌト云フコトモナ
カラウト思フ、投票ノ嚴正トカ何トカ、秩
序ノ點カラサウシタノデゴザイマセウケレ
ドモ、是ハ何トカシテ改良スルコトガ必要
デハナカラウカト思フ、諸君ガ普通選擧ニ
ナレバ出テ來ナイカモ知レヌガ、併シ此議
院規則ヲ拵ヘテ置イテ、慣例ヲ作ルト云フ
コトハ最モ必要ナ事デハナカラウカト思フ、
故ニベルヲ以テヤルトカ、或ハ何カ適當ナ
ル時間ヲ與ヘテ、十分ニ此國民ノ權利ヲ行
使セシムルヤウニシ夕方ガ、私ハ便宜デハ
ナカラウカ、又宜イデハナイカト云フコト
ヲ議長ノ御考ヲ聽イテ、サウシテ又諸君ノ
御考ヲ聽キタイ、尙ホ私ノ意見ガ徹底シナ
イカモ知レマセヌガ、改メテモウ一度來議
會ニデモヤルカモ知レマセヌケレドモ、今
日ハ諸君ノ御注意ヲ喚起シ、議長ノ之ニ對
スル御辯明ヲ聽イタ上デ來議會ニデモ之ニ
就テ述ベタイト思ヒマス、一寸私ノ意見ヲ
述ベマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=4
-
005・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 田淵君ニ御答ヲ
致シマス、投票ノ際、議場ノ入口ヲ閉鎖ス
ルコトハ田淵君ノ今御詰ノアッタ通リ、議
院規則第百三十條ガ之ヲ命ジテ居ルノデア
リマス、議長ト致シマシテハ現在此法規ニ
命ゼラレタル範圍ニ於テノミ職務ヲ取扱フ
外ニ策ハ無イト思フノデアリマス(ヒヤヒ
ヤ)而シテ田淵君ノ御希望ノ三分前ニ振鈴
セヨトカ、若クハ他ノ注意ヲシタラドウカ
ト云フコトハ、取モ直サズ便宜ヲ與ヘテハ
ドウカ、此規則以外ニ便宜ヲ與ヘテハドウ
カト云フヤウナ御質問ダト思ヒマスガ、議
長ト致シマシテハ、現在此法律ノ命ズル所
ニ依ッテ職務ヲ行フ外他ニ便宜ガ無イト思
ヒマス、但シ田淵君ニ規則ノ改正ニ付テノ
御希望アリト致シマスレバ、田淵君ハ相當
ノ手續ヲ取ラレンコトヲ希望スルノデアリ
マス(拍手)是ヨリ質問ニ入リマス、第一
港灣行政統一ニ關スル質問-三善〓之君
-港灣行政統一ニ關スル質問(三善
〓之君提出)
港灣行政統一ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月二日
提出者三善〓之
贊成者赤間嘉之吉
外三十人
港灣行政統一ニ關スル質問主意書
一通商貿易上ノ機關及其ノ行政事務ヲ統
一シテ英國ノ如クニ内閣直屬ノ下ニ港
灣行政廳ヲ特設シテ目下內務大藏兩省
其ノ他地方廳等分掌ノ制度ヲ改廢シ其
ノ便益ヲ企畫スルノ意思ナキヤ
一本邦ニ於テモ自由港制度ヲ設クルノ意
思ナキヤ
一内地及殖民地ノ鐵道新線ノ完成ニ從ヒ
交通網ノ變化ヲ來シ之カ連絡機關ニ供
スル港灣ノ修補又ハ新設ハ國策上政府
直轄國費ヲ以テ工事ヲ施行スルノ意思
ナキヤ
一河川法及道路法鐵道法等ノ法規ハ既ニ
具備セリ然ルニ我力邦未タ港灣法ノ制
定ナキハ行政上ノ一大缺陷ナリト認ム
之ニ對スル政府ノ所見如何
右及質問候也
〔三善〓之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=5
-
006・三善清之
○三善〓之君 政府ニ向フテ港灣行政ノ統一
ニ關シマシテ質問ヲ致スノデアリマス、先
ヅ第一ハ通商貿易上ノ機關及其行政事務ノ
統一ヲ、英國ノ如クニ內閣直屬ノ下ニ港灣
行政廳ヲ特設シテ、目下各省ニ分轄割據シ
テ居ル事務ヲ統一スルコトヲ便利ナリトシ
テ質問ヲ致スノデアリマス、第二ハ本邦ニ
於キマシテモ自由港ヲ一二箇所設置スルノ
必要ガアリハシナイカト斯樣ナ質問デアリ
やっ、第三ハ內地及植民地ノ鐵道網ガ次第
ニ擴張シマスルニ從ヒマシテ、交通網ガ變
化致シマス、其變化ニ從シテ是ガ縣絡機關
ニ供スル港灣ノ如キハ、政府直接ニ工事ヲ
爲シ、國費ヲ以テ爲スベキモノデアラウト
考ヘマス、此點ニ向シテ政府ノ答辯ヲ煩ハ
ス者デアリマス、第四ハ河川法、道路法、
鐵道法等ハ既ニ具備シテ居リマス、然ルニ
港灣法ノ未ダ具備シナイノハ、國家行政ノ
上ニ於テノ缺陷デアリマス、此點ヲ政府ニ
質問ヲ致スノデアリマス、由來我國ハ封建
時代ニ於キマシテ大船巨舶ノ船造ヲ禁ジ、
國民ノ海外通商貿易ヲ禁ジマシタ爲ニ、海
事思想ガ非常ニ遲レテ居リマスルノデ、ソ
レガ現在ノ港灣行政ノ上ニモ大ナル缺陷ヲ
來シテ居ルノデアリマス、此問題ニ付キマ
シテハ積年政府ニ於テモ〓究ヲ致シテ居リ
やっ、又民間ノ大ナル船舶業者及貿易業者
ニ依ッテ政府ニ建言モ行ハレテ居ルノデア
リマス、本員モ亦數年前ニ於キマシテ、政
府ニ向シテ建議ヲ致シマシタガ、未ダ實現
ヲ致サナイノデアリマス、仍テ本日此質問
ヲ提出シタ譯デアリマス、要スルニ港灣ハ
國家ノ港灣ト地方ノ港灣ガアリマス、國家
ノ港灣ハ國際上ノ機關デアル、國際上ノ通
商貿易ノ機關デアル、又國內ニ於ケル商業
經濟ノ大機關デアリマスカラ、其行政ガ現
在ニ於キマシテハ或ハ遞信省ニ或ハ農商務
省ニ、或ハ大藏省ニ、或ハ內務省二-殊
ニ内務省ニ屬スルモノハ多ク地方廳府縣知
事ノ職權ニ屬シテ居リマス、ソレガ爲ニ港
灣行政ノ統一ガ甚ダ複雑、甚ダ敏活ヲ缺イ
テ居リマス、出入船舶ガソレガ爲ニ平均八
時間位ノ外國船ガ時間ニ於テスラ損ヲ致
ス、斯樣ナ不經濟ノ現狀デアリマス、百
モ早ク此行政機關ノ統一ヲシナケレバ相成
ラヌ、隨テ大正十三年ニ於キマシテ此特別
委員ヲ置キマシテ、委員長ニ水野鍊太郞君
ガナリマシテ、政府ニ建議ヲ致シマシタ、
其建議ニ依リマスルト、只今申シマシタ各
省各個ニ分レテ居ル事務ヲ統一致シマシ
テ、一等港卽チ國ノ港灣ノ在ル所ニハ港灣
行政廳ヲ英國ノ如ク置キタイ、其處デ總テ
ノ事務ヲ纏メタイ、斯ウ云フ旣ニ建議ニナ
テ居リマス、ドウカ是ガ一日モ速ニ實現ヲ
シタイモノデアルト考ヘマス、御承知ノ如
ク只今ノ國家ノ港灣ト申シマスルモノハ横
消神戶、下ノ關、敦賀、之ヲ以テ國ノ港
灣トシテ居リマスケレドモ、其當時建議致
シマシタノニハ大阪、名古屋ノ如キモ加フ
テ居リマス、二等港灣トシテ國家ガ半額補
助、或ハ三分ノ一ノ補助ヲシテ居ルモノハ
十數箇所アル、是モ亦更ニ調査ノ上デ統一
シナケレバ相成ラヌト考ヘルノデアリマ
ス、是等ハ極メテ行政上必要ナ事デアリマ
スルカラ、政府ハ如何ナル所見ヲ持ッテ居
ルカ、此答辯ヲ御願シタイノデアリマス、
第二ノ自由港制度ハ世界ノ何レノ國ニモアル
ノデハアリマセヌガ、欧洲各國ニ於テハ既
ニ二三箇所アリマシテ、隨分或ル場合ニ於
テハ是ハ便利ナモノデアリマセウ、本邦ニ
於テモ一二箇所ハ設ケル方ガ、商業上或ハ
通商貿易上利益デアルト考ヘマス、政府ハ
如何ナル所見デアルカ、第三ノ問題ハ申ス
マデモナク、斯樣ナ所ハ幾ラモアル、段々
鐵道網ガ新ニ出來マシテ、隨テ海陸ノ連絡
ガ變ッテ參ル、然ルニ其地方ニ依ッテハ地方
費デ以テ半額補助ヲ得タ位デハ到底出來ナ
イト云フ場合ガ起ル、然レドモ今日マデ多
ク從來ノ成行ニ任セテ、多少迂廻シテ時間
ニ於テ一日位違ッテモ、現狀デウッチヤッテ
置クト云フ有樣デアル、斯樣ナ所ニ付テ
ハ港灣政策ノ上ニ於テ政府ハ注意ヲ拂,
テ、其改革ヲヤラナケレバナラヌコトデア
ルト考ヘマス、之ニ就テ政府ハ如何ナル所
見ガアルカ、第四ノ港灣法ハ既ニ政府ニ於
テハ案件ヲ附シテ草案ガ出來テ居ッタノデ
アリマス、然ルニ前年港灣調査會ナルモノ
ガアリマシテ、港灣調査會ハ多ク各省ノ官
吏、卽チ次官ノ如キ者ガ多ク之ニ委員デア
リマシタ、矢張從來ノ因襲ニ囚ハレテ各省
事務ノ割據スル弊害カラ、遂ニ纏ラナカツ
タト云フコトデアリマス、甚ダ國策上ニ於
テ遺憾デアリマス、巷灣法ガ出來マスレバ
自然一等港灣、二等港灣ト云フモノヽ區別
ガ出來ル卽チ道路ニ於テモ國道ノ中ニ於
テモ、國庫ガ全部負擔シテヤルベキ國道モ
アリ、或ハ國道ノ名ヲ存シテ居ッテモ今日
ハ縣道ニ劣ルヤウナモノモアル、一ノ法案
ヲ作シテ、議會ニ於テ通過シタ其法律ニ依シ
テ此統一ヲ圖ラナケレバイケナイ、現在ノ
儘ニ在リマシテハ既ニ十四五アリマスルモ
ノ半額ノ補助ヲ受ケテヤル港灣ノ如キモ
ノモ、何等國家ニ法規モ無イ、其地方ニ於
ケル或ハ政黨ノ關係上、其運動ノ威力アル
モノニ依シテ效ヲ奏スルト云フガ如キハ
國家ノ爲ニ甚ダ憂フベキ事デアリマス、卽
チ法規ヲ設ケテ是ガ統一ヲスルコトハ刻下
ノ急務デアルト考へマス、之ニ就キマシテ
ハ色と意見モアリマスケレドモ、質問ハ是
デ打切リマス
〔政府委員植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=6
-
007・植原悦二郎
○政府委員(植原悅二郞君) 三善君ノ御尋
ハ內務、大藏、鐵道、遞信、此四省ニ關係
スルコトデアリマスガ、遞信省所管ニ關ス
ル事ダケヲ御答致シテ置キタイト思ヒマ
ス、遞信省所管ニ關スルコトデ、海事部ト
航路標識管理所ヲ港湾行政統一ノ部分ニ入
レテハ如何カト云フ御趣意ト思ヒマス、御
承知ノ如ク燈臺ハ港灣バカリデゴザイマセ
又、日本ノ重要ナル岬ヤ其他船舶ノ航行ス
ル所ニ一般ニ在リマスノデ、港ノ在リマス
所ノ一二箇所ノ燈臺ノミヲ、港灣行政ノ統
一ノ中ニ入レテ管理致シマスコトニナリマ
シタナラバ、却テ航路標識ノ上カラ申シマ
スレバ不便デナカラウカト云フヤウニ考へ
テ居リマス、又海事部ノコトデアリマスガ、
是ハ船舶ノ檢査モ、亦船員ノ乘組モ、或
解雇ノ場合ヲ公認スルコトヲ致シテ居ルノ
デ、港ニ於ケル仕事ダケヲ掌ッテ居ルノデ
ナイ、船舶ガ何所ニ於キマシテモ、航行中
デアリマシテモ、碇泊中デアリマシテモ、如
何ナル場合ノコトデモ海事部デ之ヲ所管ス
ルコトニナッテ居リマスカラ、三善君ノ御
意見ノ如ク、是ガ實行出來マスカ出來マセ
又カ、頗ル疑問ト致シテ居ルノデアリマス
ガ、折角ノ御質問モゴザイマシタカラ、十
分ニ考慮致ス考デアリマス、其他ノ管掌ノ
事ハ多分書面ヲ以テ御答ニナルコトダラウ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=7
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008・三善清之
○三善〓之君 私ノ質問ハ主トシテ內務省
關係デアリマスガ、如何デゴザイマセウ
カ-ソレデハ他日ニ保留シテ置キマス、
詳シク書面ヲ以テ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=8
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009・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質問第二ハ政府
カラ答辯書ガ參クテ居リマスカラ、日程ヨ
リ之ヲ省キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=9
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010・作間耕逸
○作間耕逸君 質問者ノ意見ノ陳述ハ次ノ
機會ニ讓ラレテ、此際直ニ議案ノ日程ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=10
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011・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ其通リニ決シ
マス、日程第一乃至第三ハ關聯セル議案デ
アリマスカラ、一括議題ト爲スニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=11
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012・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第一、漁業財團抵當法
案、日程第二、登錄稅法中改正法律案、日
程第三、印紙稅法中改正法律案ヲ一括シテ
第一讀會ヲ開キマス、政府ノ趣旨辯明ヲ求
メマス-堀切政府委員
第漁業財團抵富法案(政府提出)
第一讀會
漁業財團抵當法案
漁業財團抵當法
第一條漁業權若ハ其ノ登錄シタル賃借
權ヲ有スル者、漁業ノ用ニ供スル登記
シタル船舶ヲ有スル者又ハ水產物ノ養
殖場ヲ有スル者ハ之ニ付抵當權ノ目的
ト爲ス爲漁業財團ヲ設クルコトヲ得
第二條漁業財團ハ左ニ揭クルモノニシ
テ同一人ニ屬スルモノノ全部又ハ一部
ヲ以テ之ヲ組成スルコトヲ得
漁業權又ハ其ノ登錄シタル賃借權
二船舶竝其ノ屬具及附屬設備
三土地及工作物
四地上權及土地若ハ水面ノ使用又ハ
引水若ハ排水ニ關スル權利
五漁具及副漁具
六桟械、器具其ノ他ノ附屬物
七物ノ賃借權
八工業所有權
前項ノ權利ニシテ其ノ移轉ニ付行政廳
ノ許可又ハ認可ヲ要スルモノニ付テハ
其ノ許可又ハ認可ヲ、賃借權ニ付テハ
賃貸人ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ之ヲ漁
業財團ニ屬セシムルコトヲ得ス
第三條漁業權又ハ其ノ登錄シタル賃借
權カ漁業財團ニ屬スル場合ニ於テハ抵
當權ハ其ノ漁場ニ定著シタル工作物ニ
及フ
船舶カ漁業財〓ニ屬スル場合ニ於テハ
抵當權ハ其ノ船舶ノ屬具ニ及フ
前二項ノ規定ハ設定行爲ニ別段ノ定ア
ルトキ又ハ民法第四百二十四條ノ規定
ニ依リ債權者カ債務者ノ行爲ヲ取消ス
コトヲ得ル場合ニハ之ヲ適用セス
第四條漁業權ニ付漁業財團ヲ設定シタ
ル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消アリ
タルトキハ其ノ處分ヲ爲シタル行政
官廳ハ直ニ之ヲ抵當權者ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ抵罹者ハ其ノ權
利ヲ實行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ抵當權ヲ實行セムト
スルトキハ抵當權者ハ第一項ノ通知ヲ
受ケタル日ヨリ六月內ニ其ノ手續ヲ爲
スヘシ
漁業權ハ前項ノ期間內又ハ抵當權實行
ノ終了ニ至ル迄抵當權實行ノ目的ノ範
圍內ニ於テ仍存續スルモノト看做ス
競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ漁
業免許ノ取消ハ其ノ效力ヲ生セサリシ
モノト看做ス
前四項ノ規定ハ水產物ノ蕃殖保護、船
舶ノ航行碇泊繫留、水底電線ノ敷設若
ハ國防其ノ他ノ軍事上必要アル場合、
公益上害アル場合又ハ錯誤ニ依リ漁業
ノ免許カ與ヘラレタル場合ニ於ケル漁
業免許ノ取消ニ關シテハ之ヲ適用セス
第五條前條第一項ノ規定ハ漁業權ノ登
錄シタル賃借權ニ付漁業財團ヲ設定シ
タル場合ニ於テ其ノ漁業免許ノ取消ア
リタル場合ニ之ヲ準用ス
第六條漁業財團ニ付テハ本法ニ規定ス
ルモノ及罰則ヲ除クノ外工場抵當法中
工場財團ニ關スル規定ヲ準用ス但シ工
場抵當法第十七條及第四十五條ノ規定
ノ準用ニ付テハ漁業權又ハ其ノ登錄シ
タル賃借權ハ其ノ漁場ニ最近キ沿岸ノ
屬スル市町村又ハ之ニ相當スル行政區
劃漁業ノ用ニ供スル登記シタル船舶
ハ其ノ船籍港ヲ以テ其ノ所在地ト看做
ス
附則
本法施行期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二登錄稅法中改正法律案(政府提
出第一讀會
登錄稅法中改正法律案
登錄稅法中左ノ通改正ス
第三條ノ五漁業財團登記薄ニ登記ヲ受
クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納
ムヘシ
抵當權ノ取得債權金額
千分ノ
二信託ノ登記債權金額千分ノ
三强制競賣、强制管理ノ申立
債權金額千分ノ一
四假差押、假處分債權金額
千分ノ一
五登記ノ更正、變更又ハ抹消
每一件金二圓
第十九條第一項第五號中「漁業組合又ハ
漁業組合聯合會」ヲ「漁業組合、漁業組合
聯合會、重要輸出品工業組合、重要輸出
品工業組合聯合會又ハ輸出組合」ニ、產
業組合法又ハ漁業法」ヲ「產業組合法、漁
業法、重要輸出品工業組合法又ハ輸出組
合法」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ各條別ニ之
ヲ定ム
第三印紙稅法中改正法律案(政府提
LB第一讀會
印紙稅法中改正法律案
印紙稅法中左ノ通改正ス
第四條第十號中「產業組合聯合會」ヲ產
業組合聯合會、重要輸出口工業組合、重要
輸出品工業組合聯合會又ハ輸出組合」ニ
改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=12
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013・堀切善兵衞
○政府委員(堀切善兵衞君) 漁業財團抵當
法案提出ノ理由ヲ說明致シマス從來我ガ
水產業ニ關シマスル金融ハ甚ダ圓滑ヲ缺イ
テ居リマス、水產業者ノ被ル不便不利ハ
甚ダ多カッタノデアリマス、是ガ改善ヲ圖
リマスルコトハ斯業ノ發展上誠ニ急務ト致
スノデアリマス、惟フニ水產金融ノ圓滑ヲ
缺キマスル其事由ハ多々アルペシト雖モ、
就中擔保物件ノ他ノ如キ產業ニ比ベマシテ
甚ダ貧弱ナルコト、其主要ナル一原因ト見
ラレルノデアリマス、仍テ成ベク其内容ヲ
充實セシメ、以テ漁業上ノ障碍ヲ除キ、其
輕減ヲ圖ルハ極メテ緊要ト考ヘマス、殊
漁業上ノ主要ナル擔保物件タル漁業權、漁
船及水產養殖場等ニ付テハ、其性質上是ト
離ルベカラザル諸設備、漁具、副漁具、漁
舟、其他ノ物件ト共ニ集團的財團トシテ玆
ニ初テ十分ナル價値ヲ認メルノデアリマ
ス、又單獨ニテハ擔保物件トシテ適當ナル
是等ノ漁具、副漁具、漁舟等ノ諸設備モ亦
斯ノ如クシテ、十分其擔保物件トシテノ價
値ヲ發揮スルコトガ出來ルノデアリマス、
仍テ之ヲ包括致シテ一箇ノ財團トシ、之ヲ
以テ抵當權ノ目的ト爲シ得ル途ヲ開クノガ
漁業金融改善上極テ必要ナル方策ナリト考
ヘマス、是レ本案ヲ提出シタ所以デアリマ
スカラ、何卒御協賛ヲ下サランコトヲ切望
スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=13
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014・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 早速政府委員
〔政府委員早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=14
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015・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 提案ノ理由ヲ簡
單ニ說明ヲ致シマス登錄稅法中改正法案、
此法案ノ内容ハ只今農商務省ノ政府委員カ
ラ說明ヲセラレマシタル漁業財團抵當法ノ
制定ニ伴ヒマシテ、登錄稅法中ノ工場財
剛又ハ工業財團等ノ登記ニ準ジテ、漁業
財團ノ登記ニ關スル規定ヲ設ケマスルノ
ト、又過日協贊ヲ得マシタル重要輸出品工
業組合法、及輸出組合法ニ於キマシテ、組
合及聯合會ノ設立事務所ノ施設、又ハ移轉
及解散等ノ場合ニハソレ〓〓登記ヲ爲ス
ベキコトヲ規定シテ居リマスガ、是等ノ登
記ニ付キマシテハ產業組合聯合會等ト同
樣ニ、登錄稅ヲ課セザルコトニ致シタイト
考ヘルノデアリマス、何卒御協賛アランコ
トヲ希望致シマス、次ニ印紙稅法中改正法
律案-是モ洵ニ簡單ナル法案デアリマシ
テ、是ハ過日御協賛ヲ得マシタル重要輸出
品工業組合法、及輸出組合法ノ制定ニ伴ヒ
マシテ、是等ノ組合及聯合會ノ發スル出資
證券ニ三錢ノ印紙稅ヲ課スルコトニ致シタ
イト考ヘルノデアリマス、何卒御審議ノ上
御協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=15
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016・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第一ニ對シ
質疑ノ通告ガアリマス、高草美代藏君
〔高草美代藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=16
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017・高草美代藏
○高草美代藏君 只今上程ニナリマシ夕漁
業財團抵當法ニ付キマシテハ、私ハ誠ニ結
構ナル案ト存ジマシテ、賛成ヲスル一人テ
アリマスガ、併シ此案ニ賛成ヲスルト同時
ニ私共玆ニ十分ニ御〓ヲスル事ガアルノデ
アリマス、私ハ頗ル簡單ニ御尋ヲ三四致シ
タイト考ヘルノデアリマス、御承知ノ通リ
ニ近來食糧問題ガ非常ニヤカマシクナリマ
シタガ、私ハドウ致シマシテモ日本人ノ主
要食物タル米ノ解決ヲ爲スト同時ニ、万
ニ於テハ水產物ノ解決ヲセナケレバナラヌ
ト云フ議論ヲ始終持ッテ居ル者デアリマス、
而シテ此水產物ハ皆樣モ御承知ノ通リニ、
其漁獲高ニ於テ、又其漁場ノ範圍ノ廣キ上
ニ於テ、或ハ又其榮養價値ノ高イ上カラ言
ヒマシテモ、或ハ又之ヲ海外ノ貿易ノ上カ
ラ言ヒマシテモ、實ニ我國產業中ノ重大ナ
ルモノト致サナケレバナラヌノデアリマ
ス、而シテ世界ニ於テ海國ト致シマシテハ、
西ニ英吉利アリ東ニ日本アリ、同ジヤウナ
海國デアリナガラ、一方英吉利ニ於テハ其
航海ノ實ニ旺ナル、其漁業ノ實ニ旺ナル
迚モ日本ノ類デハナイノデアリマスガ、我
ガ日本ハ水產國デアリナガラ、是ガ發逹ノ
遲々タル所以ヲ考ヘテ見マスルト、成程水
產物ハ陸上ノ物トハ違ヒマシテ、眼ニ見ル
コトガ中々困難デアリ、手ニ取ルコトガ極
メテ難事デアリマスルガ故ニ、隨テ調査〓
究ガ容易ナ事デアリマセヌ、是ガ實ハ水產
業ノ發達ヲ妨ゲル所以デアラウト思フノデ
アリマス、而シテ一方ニ於キマシテハ英
吉利ニハ御承知ノ通リニ諺ガアリマス、英
吉利國ハ浪ノ主デアル「卽チ英吉利國ハ波
濤ノ主デアル、波濤ノ主タル者ハ天下ニ主
タリ」此信念ヲ持チ、此考ヲ持ッテ之ヲ〓育
ニ施シ、之ヲ產業ニ應用シ、之ヲ色〓ノ事
ニ應用致シマシテ、實ニ斯ウ云フ信念ヲ以
テ總テノ水產ニ對シ、航海ニ對シ、水ノ上
ノ働ニ對シテ、非常ナ活動ヲ致シテ居ルト
云フコトガ、是ガ大體日本ト非常ニ違フ所
以ト私共考ヘテ居リマス、日本人ハ勇敢ダ
ト言ヒマス、成程勇敢ナ人モアリマス、併
ナガラ大抵ノ人ハ海ヲ恐レ、水ヲ恐レル國
民性ト云フコトハ-出來ヌカモ知レマセ
ヌケレドモ、確ニ其傾ハ私ハアルト思フノ
デアリマス、陸上ニ於テハ恰モ脫兎ノ如ク
活動スル人ヲ、之ヲ一タビ海上ニ伴レテ行
キマスト、恰モ處女ノ如キ狀態デアリマス、
是ガ餘程水產物-海ノ上ノ働ヲ阻碍ス
ル一ツノ惡イ癖ト言ヒマスカ何ト言ヒマス
カ、サウ云フコトガ原因ニナッテ居ラウ
ト思フ、水產ヲ發達シヤウトスルニハ要
シマスルニ〓育方面ト技術ノ方面ト、而シ
テ經濟的ノ方面ト、此總テノ方面カラ之ヲ
〓究スル要ガアルノデアリマス、成程〓育
ノ上カラ申シマスト、是ハ中々永遠ナル方
法デアリマスケレドモ、ドウシテモ是ハヤ
ラナケレバナラス仕事デアリマスガ、只今
一番行詰ノテ居ルノハ何カト云ヒマスト、卽
チ金融デアリマス、金融ガ一番行詰ッテ店
ルノデアリマス、ソレ故ニ吾々ハ先年同志
ト共ニ、水產業ニ對シ獨立シタル金融機關
ト致シマシテ、水產銀行ノ設立ノ提案致シ
マシテ、既ニ二度三度モ本院ヲ通過ヲ致シ
テ居ルノデアリマスガ、未ダ其實現ノ時機
ニ至ラヌト云フコトハ頗ル吾々共遺憾ト
致シテ居リマス、而シテ斯ノ如キ事ガ現在
ニ於テマデ出來ヌト云フコトニナリマスレ
已ムヲ得ヌ、今日提案ニナリマシ夕所
ノ此抵當法案ノ如キハ、是ハ頗ル一方カラ
言ヒマスト緊要ナ事ト存ジマスト同時ニ、
私共ハ玆ニ二三ノ質疑ヲ致シタイト考ヘマ
ス、第一此法案ガ成立致シマシタ曉ニ於キ
マシテハ、果シテ水產資金ノ圓滿ナル融通
ヲ圖ルコトガ出來ルヤ否ヤ、是ガ私ガ政府
ニ御尋スル第一條デアリマス、ソレカラ第二
ノ質問ト致シマシテハ水產資金ハ如何ナ
ル銀行ヲシテ之ニ當ラシムル御見込デアル
カドウカ、ソレカラ第三ト致シマシテハ
例ヘバ私ガ第二ニ於テ質問ヲ致シマシタ事
ヲ、特殊銀行タル勸業銀行ノ如キデ之ヲ行
ハシムルカ、或ハ又農工銀行ノ如キデ是ガ
融通ヲサセルカ、斯ウー云フコトニ御意思ガア
ルト假定ヲ致シマスルト、私ハソレニ付キマ
シテ段々此特殊銀行ノ中ノ勸業銀行ノ規定
ヲ調ベテ見マスルト、隨分水產業者ニ對シテ
金融ヲ圖ルト云フ條項ハ多々アリマス、ア
リマスルガ併シ今日マデハ實際ニ於テ之ヲ
應用シテ居ラヌ、之ヲ銀行ガ實行シテ居ラ
又、ソレ故ニ此法案ガ通過致シマシテ、斯
ノ如キ特殊銀行、或ハ農工銀行其他ニ取拔
ハサスコトニ假定ヲ致シマシテ、又是ト同
樣ナ所謂空文ニ失スルノデハナイカト云フ
私共杞憂ヲ懷クノデアリマスガ、此邊ニ付
テ政府ノ御意見ヲ伺ヒタイノデアリマス、
ソレカラ第四ノ質問ト致シマシテ、御承知ノ
通リニ農業者ニ對シテハ耕地整理組合ニ對
シマシテ、無擔保貸付ノ制度ガアリマシテ、
盛ニ政府ハ之ニ金ヲ融通致シテ居リマス、
然ルニ漁業組合ニ對シマシテハ、斯ノ如キ
事ハ今日マデハ無イノデアリマスガ、政府
ハ此農業者ノ所謂耕地整理組合ニ無擔保デ
貸付ケルト云フヤウナ事ト、同ジヤウナ意
味ニ於キマシテ、將來漁業組合ニ對シテモ
是ト同樣ノ實現ヲサスルト云フ御意思ガ果
シテ有ルカ無イカト云フコトヲ御尋シタイ
ノデアリマス、ソレカラ第五ト致シマシテ
ハ一體漁業組合ト云フモノハ法ノ規定ガ
極メテ寛屈千万デアリマス、ソレ故ニ其活
動ノ範圍ガ頗ル狹隘デアリマスルカラ、私
ハ此漁業組合ノ規定ヲシテ所謂產業化セシ
ノ、今少シ經濟化セシムルヤウニ改正ヲセ
ラルヽト云フ御意思ガ有ルカ無イカト云フ
コトヲ御尋シタイノデアリマス、同時ニ第六
ノ質問ト致シマシテ、只今ノ此提案ハ頗ル
結構ナ案デハアリマスルケレドモ、是ハ吾
吾ノ考カラ言ヒマスト、是ハ消極的ナ方法
デアリマスルガ故ニ、今少シ積極的ニ二三
度本院デ可決致シマシタル通リニ、水產銀
行所謂水產ノ専門ノ銀行ヲ、御立テニナル
將來御意思ガ有ルカ無イカト云フコトヲ御
伺シタイノデアリマス、以上質問ヲ致シマ
スルカラ、ドウカ銀行ニ關スル件ハ、幸一二
此處ニ大藏省ノ早速政務次官ガ御出席ニナツ
テ居リマスルカラシテ、ドウカ同次官カ
ラ御答ヲ願ヒタイト存ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=17
-
018・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 堀切政府委員
〔「議長」「議長」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=18
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019・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 堀切政府委員ニ
發言ヲ許シマシタ
〔政府委員堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=19
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020・堀切善兵衞
○政府委員(掘切善兵衞君) 只今高草君カ
ラノ御質問ニ御答申上ゲマスルガ、農商務
省關係ト致シマシテハ、金融ノ方ノ是ハ借
リル方ヲ主トシテ考慮致シテ居ルノデアリ
マス、卽チ此財團ヲ作ノテ、而シテ今マデ
擔保ニ供スルコトノ出來ナカッタモノモ、今
後ハ出來ルヤウニ致サセタイ、此趣意デア
リマス、而シテ果シテ之ニ大ニ融通ヲ図フ
テ吳レルカドウカ、此點ハ此特殊銀行其他
ノ銀行、金融業者ノ責任デアリマス、而シ
テ之ニ對シマシテハ只今御質問ノ如ク大
藏省ノ政府委員ヨリ御說明中上ゲルノガ本
筋ダラウト思ヒマスルノデ、私ハ深ク之ニ
對シテハ意見ヲ申上ゲマセメノデアリマ
ス、第一ニ資金ノ圓滿ナル授受ガ此法ニ依ッ
テ出來得ルカドウカ、從來甚ダ不圓滿デア
リマシタノガ、此抵當法ノ出來マスルニ依ッ
テヨリ圓滿ニ授受ガ出來ルダラウ、出來ル
ニ相違ナイト私共ハ確信シテ此法案ヲ出シ
夕次第デアリマス、又如何ナル銀行ガ融通
ヲスルカ、今日マデノ所專ラ融通ノ任ニ當シ
テ居リマシタノハ北海道拓殖銀行、農工銀
行等ガ、或ル程度マデ水產事業ニ對シ融通
ヲ致シテ居タノデアリマス、將來モ恐ラク
ハ左樣デハナイカト思フ、併ナガラ一般ノ
銀行或ハ私人ノ金融業者等モ、此財團法ガ
成立致シマシタル以上ハ、從來ヨリモヨリ
便利ニ金融ノ途ヲ圖シテ吳レルニ相違ナイ
ト信ズルノデアリマス、ソレカラ其次ノ特
殊銀行ニ對シテハ、勸業銀行法第十五條、
農工銀行法第七條等ニハ割增金附ニ依シ
テ得タル金ノ貸付範圍ヲ制限致シテ居ルノ
デアリマス、之ニ對シマシテ此漁業財〓抵
當法ノ成立ノ上、出來得ルナラバ、此制限
ヲ私共ハ擴張致シタイ考デアリマス、是
大藏當局トモ目下交涉中ニ屬スルノデアリ
やっ、其御意見等ハ矢張大藏省ノ政府委員
ヨリ御說明ヲ申上ゲル方ガ適當ナリト認メ
マス、漁業組合法ヲ改正スル意思ハナイカ
ドウカ、從來アリマシタ所ノ組合法ノ總テ
ノ關係ニ於テ、經濟界ノ進歩時代ノ推遷ニ
伴ヒマシテ、不備ノ點ハ漸次之ヲ改正致ス
ノガ當然デアラウト考ヘマス、漁業組合法
等ニ付テモ政府ハ愼重ニ考慮調査ヲ致シテ
居ルノデアリマス、無擔保貸付ハ如何デア
ルカ、是ハ第四ノ御質問デアリマシテ、此
財團法ニ依リマシテハ遺憾ナガラ未ダ無
擔保貸付ヲ認ムル程度ニ至ッテ居ナイノデ
アリマス、最後ノ水產銀行ノ件、是ハ左樣
ナモノガ出來レバ洵ニ結構ト思ヒマスケレ
ドモ、果シテ其成立ヲスルモノガアルヤ否
ヤ、之ヲ許スヤ否ヤ等ハ是亦大藏省所管
ニ屬スルノデアリマス、私ノ關係スル範圍
ニ於テ簡單ニ御答申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=20
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021・三善清之
○三善〓之君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=21
-
022・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 少シ御待チ下サ
イ、早速政府委員
〔政府委員早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=22
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023・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 御尋ニ御答致シ
せっ、此水產業ノ金融ト云フコトニ關シマ
シテハ、隨分久シイ問ノ問題トナッテ、當
局ニ於テモ相當ニ慎重ニ考慮ヲ費シテ居ル
ノデアリマス、今回此漁業財團ニ關スル法
案ガ提出ニナリマシタノモ、卽チ水產業者
ノ金融上ノ便宜ヲ圖ルト云フ目的カラ起ッ
タノデアリマシテ、政府モ之ニ依ノテ水產業
者ニ對スル金融ノ便宜ガ益〓加ハッテ行クト
云フコトヲ期待致シテ居ルノデアリマス、
唯水產業ノ性質上、今玆ニ特殊ノ銀行ヲ
設ケルカ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、
政府ハ未ダ具體的ノ考案ヲ持ノテ居リマセ
ヌ、今日マデノ經過ニ依リマスレバ、水產
銀行ナルモノヲ設ケルト云フヨリモ、現在
ニ在ル機關ヲ十分ニ利用セシムル方法ヲ講
ズルノガ急務デハナイカ、卽チ今回ノ此法
案ニ依リマシテ、相當便宜ヲ圖ルト云フコ
トニ相成リマスレバ、現存ノ特殊銀行ヲ利
用スルト云フコトニ付テ、相當ノ途ヲ開ク
コトガ出來ルデアラウト信ズルノデアリマ
ス、然ラバドウ云フ風ニヤルカト云フコト
ハ是カラ後ノ問題デアルノデアリマシテ、
特殊銀行ト水產業者ノ間ノ關係ガ密接ニナ
ルニ從ヒ、此金融上ノ便宜ヲ圖ルト云フコ
トニ付テハ相當ノ途ヲ開クト云フ必要ハ
アルノデアリマスケレドモ、政府ト致シマ
シテハ御尋ノ如ク、今水產銀行ナルモノヽ
如キ特殊ノ機關ヲ設ケルト云フ考ハ持ノテ
居ラヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=23
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024・三善清之
○三善〓之君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=24
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025・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 三善君、何デス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=25
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026・三善清之
○三善〓之君 本員ガ政府ニ質問致シマシ
タル港灣行政統一ノ問題ハ積年政府ニ於
テモ議論ヲシテ居ル問題デアル、國家通商
貿易上ニ於テ重大ナ問題デアリマス、此問題
ヲ政府ニ質問シテ、本日第一ノ日程ニ上シ
テ居ルニ拘ラズ、政府委員ガ出席ヲシナイ
ト云フコトハ、此質問ニ對シテ甚ダ不埓千
萬デアリマス、將來ニ對シテ政府ニ十分ニ
警告ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス、甚
ダ不都合デアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=26
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027・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第四、右三
案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第四右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=27
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028・井本常作
○井本常作君 各案ヲ一括シテ、委員ノ數
ヲ九名トシ、詠長ヨリ指名セラレンコト
ヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フモノアリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=28
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029・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマス-日程第五、第六ハ同一議案デア
リマスカラ、一括シテ議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=29
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030・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第五、長州鐵道株式會社
所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律
案、日程第六、中國鐵道株式會社所屬鐵道
及東京電燈株式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ
對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案ヲ
一括シテ、此第一讀會ヲ聞キ、政府ノ趣旨
辯明ヲ求メマス-俵政府委員
第五長州鐵道株式會社所屬鐵道買收
ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會
長州鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公
債發行ニ關スル法律案
長州鐵道株式會社所屬幡生小串間鐵道買
收ノ爲政府ハ該買收ニ必要ナル額ヲ限度
トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第六中國鐵道株式會社所屬鐵道及東
京電燈株式會社所屬軌道ノ經營廢止
ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル
法律案(政府提出)第一讀會
中國鐵道株式會社所屬鐵道及東京電燈
株式會社所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
中國鐵道株式會社所屬總社湛井間鐵道及
東京電燈株式會社所屬澁川沼田間軌道ノ
經營廢止ニ對スル補償ノ爲政府ハ該補償
ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スル
コトヲ得
〔政府委員俵孫一君登高伹〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=30
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031・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 長州鐵道株式會社
所歸幡生小串間鐵道買收ノ爲メ公債ヲ發行
スル件ヲ御說明申上ゲマス、長州鐵道株式
會社所屬幡生小串間ノ鐵道ハ、目下建設中
ノ國有鐵道萩線及長門線ニ相連ナリマシテ、
由陽山陰方面ニ於ケル重要ナル線路デアリ
マス、小串瀧部間ノ國有線ノ建設ニ伴ヒマ
シテ、買收シテ運輸ノ統一ヲ圖リマスル必
要ガアリマス、然ルニ長州鐵道ノ終點小串
ヲ起點トスル所ノ長州長門線ノ一部分小串
瀧部問ハ、愈〓本年ノ七月ニ完成開通スルノ
運ビニ至リマスノデ、玆ニ長州鐵道ヲ買收
スルノ必要ニ迫ッタノデアリマス、仍テ是ガ
買收費ニ充ツル爲ニ、公債ヲ發行スル所ノ
法律案ヲ提出致シマシタ次第デアルノデア
リマス、次ニ中國鐵道株式會社及東京電燈
株式會社所屬ノ鐵道軌道ノ補償ニ關スル件
ノ御說明ヲ申上ゲマス、中國鐵道株式會社
所屬總社湛井間ノ鐵道ハ、省線ノ倉敷、宍
粟間ノ運轉營業ノ開始ニ伴ヒマシテ、之ニ
接近竝行ノ關係ニ在ルノデアリマス、隨テ
此運轉營業ニ依シテ大ナル打撃ヲ受ケテ、
營業ヲ繼續スルコトハ能ハザルニ至ッタノ
デアリマス、又省線ノ澁川沼田間ノ運轉ヲ
開始致シマスニ伴ヒマシテ、又之ト竝行ノ
關係ニ在ル東京電燈會社所屬澁川沼田間ノ
軌道ヲ、前ト同ジ狀態ニ其營業ヲ開始スル
ノ已ムヲ得ザルニ至ッタノデアリマス、仍
テ法規ニ基キマシテ之ガ補償ヲ爲ス爲ニ、
公債發行ノ法律案ヲ提出致シマシタ次第デ
アリマス、ドウゾ御審議ノ上協賛ヲ與ヘラ
レンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=31
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032・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス-高草美代藏君
〔高草美代藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=32
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033・高草美代藏
○高草美代藏君 私ハ中國鐵道株式會社ニ
對シマシテ質問致シタイト考ヘルノデアリ
マス、頗ル簡單デアリマス、中國鐵道株式會
社ハ、備前ノ岡山市カラ作州津山ノ間ニ敷
設致シテアル鐵道デアリマシテ、御承知ノ通
リ津山ハ岡山縣ニ於テハ岡山市ニ亞グノ第
二ノ都會地デアリマシテ、此都會地ト都會地
ヲ通ジテ居ル鐵道デアリマスルガ故ニ、岡
山縣ニ取ッテモ極メテ重要ナル線デアリマ
ス同時ニ只今昔手致シテ居リマスル所ノ
政府ノ伯美線、三津線、因美線、斯ノ如キ
線ハ既ニ著手セラレテ居リマシテ、ザウシテ
最モ之ガ陰陽ヲ聯絡致シマスル重要ナル線
デアリマス、又近ク何レ著手ニナリマセウ
カ、津山姫路間ノ所謂姫津線モ亦近キ將來
ニ於テ出來ルノデアリマシテ、此外四國ノ
連絡モ之ニ關聯致シマスル極メテ重要ナル
鐵道デアリマスルガ故ニ、產業ノ上カラ言
ヒマシテモ必要デアリ、又殊ニ四國竝ニ山
陰山陽ヲ連絡致シマスカラシテ所謂軍事上
ノ關係カラ言ヒマシテモ頗ル重要ナル鐵道
デアリマス、此意味ニ於キマシテ、先年旣
ニ二回モ本院ニ於テ滿場一致デ可決ヲ致シ
マシテ、此中國鐵道ヲ政府ガ買收スルト云
フ所ノ案ガ可決セラレタノデアリマス、政
府ハ今日何故斯ノ如キ重要ニシテ、而モ本
院ニ於テ二回マデモ全會一致デ可決致シマ
シタルニモ拘ラス、此中國鐵道ノ全線ヲ買
收シナイノデアリマセウカ、尤モ買收スル
御意思ハアッテモ、財政其他ノ關係デ未ダ
其時機ニ達セヌト云フ御意思デアリマス
カ、此點ニ付キマシテ御尋シタイト思ヒマ
ス、ドウカ明確ナル御答辯ヲ煩シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=33
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034・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 俵政府委員
〔政府委員俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=34
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035・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今御話ノ中國鐵
道全線ニ亙ル所ノ買收ノ問題ハ、成程以前
ヨリ色と議會ノ問題ニナッテ居リマシタノ
デアリマスガ、是ハ目下直ニ其全線ノ買收
ヲスルト云フベキ、マダ時機ニ當局者ノ調
査ガ至ッテ居リマセヌ、只今此提案シマシ
タモノハ、省線ノ營業上其營業ヲ繼續スル
能ハザル所ノ、最モ已ムヲ得ザルモノダケ
ヲ買收スルト云フコトニシテ提案ヲ致シタ
ノデアリマスガ、其他ノ中國鐵道全線ノ問
題ニ付キマシテハ特ニ〓究ヲシタ上デ、將
來ニ於テ相當ノ考慮ヲ致ス外アリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=35
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036・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井出繁三郞君
〔井出繁三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=36
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037・井出繁三郎
○井出繁三郞君 私ハ極ク簡單ニ此九州鐵
道買收法案ニ付テ、政府當局ニ一二御尋ヲ
シテ見タイト思フノデゴザイマス、諸君モ
旣ニ御承知ノ如ク、此國有鐵道ノ當時除外
サレタ所ノ十五鐵道買收ノ事ニ付キマシテ
ハ、本院ニ於テ殆ド滿場一致ヲ以テ買收ス
ペシトノ建議案ガ可決サレタノハ、四十幾
議會デゴザイマシタカ既ニ諸君ノ御承知ノ
事ト存ジマス、殊ニ只今中國鐵道ノ事ニ付
キマシテ、高草君カラモ御詰ノアル通リ、
中國鐵道ヲ至急買收スルヤウニト單獨ノ建
議案モ可決セラレタノデゴザイマス、此十
五鐵道ノ中成田、中越ト云フモノハ其後ニ
買收セラレマシタカラ、殘ル所ノ十三鐵道
ガ今日未ダ買收セラレズニ居ル次第ヂゴザ
イマス、御承知ノ如ク本院ガ滿場一致ヲ以
テ可決セラレマシタ其建議案、ソレヲ除外
シタ所ノ長州鐵道、是ハ十三鐵道ニ這人,
テ居リマセヌ、其長州鐵道ヲ何故ニ今日買
收セネバナラヌカト云フコトハ是ハ一ツ
只今俵政府委員カラノ御說明ニ依ルト、長
州鐵道ノ終點カラ近ク國有鐵道が開業ヲス
ルニ付キマシテ、之ヲ連絡スル上ニ於テ之
ヲ買收セネバナラヌト云フ御說明デアッタ
ヤウニ思ヒマスガ、然ラバ此十三鐵道ノ中
ノ水戶鐵道、只今中上ゲタ中國鐵道、ソレ
カラモウ一ツ此十三鐵道以外デゴザイマス
ケレドモ陸奥鐵道、是等ハ全ク同一ノ狀態
ニ在ルノデゴザイマスカラ、今日長州鐵道
ヲ買收スルナラバ、同時ニ買收スル必要ガ
アラウト思ヒマス、デ今中上ゲタヤウニ、
長州鐵道ノ終點カラ近ク國有鐵道ガ開業ス
ト云フコトデ、之ヲ買收スル、或ハ又此國
有鐵道ノ建築材料デモ運搬スルト云フ必要
ガゴザイマスナラバ、益、同一狀態ニ在ル陸
奧鐵道、水戶鐵道、中國鐵道ト云フモノハ
今日之ヲ急速ニ買收セネバナラヌコトヽ信
ジマス、若シ又此直通運轉ガ出來ナイ、國
有鐵道ガ開業シテモ、長州鐵道ト直通運轉
ガ出來ナイト云フコトノ理由ヲ以テ之ヲ買
收スルト云フナラバ、之ヲ法規ノ命ズル所
ニ依ッテ、會社ヲシテ此改良工事ヲ施行セ
シムルト云フコトガ出來得ルノデアリマス
果シテ鐵道當局ガ會社ニ斯ノ如キ事ヲ交涉
シタカト云フコトヲ承リタイ、若シ又交涉
シナイト、云フナラバ、速ニ會社ニ交涉シテ、
會社ヲシテ此改良工事ヲ施行セシメテ、直
通運轉ヲ爲サシムルト云フコトガ最モ當ヲ
得タ話デハアルマイカ、而シテ少額ト雖モ
現政府ガ公債發行ト云フコトヲ非常ニ御嫌
デアルナラバ、假令百万圓二百万圓ノ少額
ノ公債デモ、斯ノ如ク不必要ナ場合ニ於テ
發行シテ、此鐵道ト云フモノヲ買收セネバ
ナラヌ必要ハ無イダラウト思フ、此點ニ對
シテ鐵道當局ニ明瞭ニ御答ヲ願ヒタウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=37
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038・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 俵政務次官
〔政府委員俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=38
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039・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 井出君ノ御尋ハ、
此際最モ重要ナル地方鐵道ヲ何故ニ買收シ
ナイカ、斯ウ云フ事デアリマスルガ、先刻
中國鐵道ノ買收ノ御尋ニ對シテ御答申シマ
シタ通リニ、此際一番ノ重要ナル地方鐵道
ヲ買收スル問題ハ、是ハ財源ノ關係上其他
ノ關係上篤ト考慮シテ、後日ニ於テ更ニ是
ガ考慮ヲ運ラスノ外ナイノデアリマス、然
ラバ何故ニ此長州鐵道ヲ買收シタカ、斯ウ
云フコトデアリマスルガ、是ハ先刻申シマ
シタ通リニ、此線ハ省線ト連絡シタ重要ナ
連絡線デアリマス、ノミナラズ只今モ井出
君ガ御話ノ通リニ、此長州鐵道ト云フ現在
ノ線路ノ狀態ガ甚ダ不完備デアリマス、其
不完備ノ例ヲ申シマスト云フト、例ヘバ軌
條ガ甚ダ小サイ、其他「ホーム」ノ高サガ非
常ニ低イ、斯ウ云フ風ナ關係カラシテ、省
線トノ直通運轉ガ出來マセヌノデアリマ
ス、ソレハ直通運轉ガ出來ヌデモ構ハヌデ
ハナイカト云フコトデアリマスルガ、直通
運轉ガ出來ヌトナリマスルト云フト、荷物
モ旅客モ悉ク其線ニ入ルト乘換ヘナケレバ
ナラヌト、斯ウ云フ不便ガアリマス、足足
旅客ノ不便ハ姑ク措キマシテ、貨物ノ點ニ
關シマスト、甚シク積換ノ失費ヲ要スルト
云フコトガ、其地方ノ經濟上甚ダ不便ニ陷
ルト云フコトニナッテ來ルノデアリマス、然
ラバ之ヲ會社ヲシテ改良セシメタラ宜イヂ
ヤナイカト云フコトデアリマスルガ是ハ若
シ會社ニ之ヲ今日改良ヲ命ズルト云フト、
命ズル途モ無論アリマス、アリマスガ、此
際會社ガ改良ヲシタ所ノ其金額ハ、後日更
ニ何レノ時カ之ヲ買收シナケレバナラヌ、
其買收スル際ニ於テ甚シク經濟上不利ニ陷
ルノデアリマス、ソレ故ニ寧ロ會社ニ命ジ
テ是ガ改良ニ當ラシムルヨリハ、國家自ラ
之ニ當ンテ、後日ノ買收費ノ甚ジキ不經濟
ニ陷ル前ニ、此際寧口買收シテ、之ニ對ス
ル所ノ方法ヲ執ッタ方ガ、鐵道經濟上有利
デアラウト云フ見地カラ、此際買收スルト
云フコトニ致シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=39
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040・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞若) 日程第七、右議
案ノ審查ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第七右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=40
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041・井本常作
○井本常作君 各案ヲ一括シテ、〓水留三
郞君外四名提出、大間々長野原間鐵道建設
ニ關スル建議案外十一件ノ委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=41
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042・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ、日程第八、大正十二年度豫備金
支出ノ件外七件ノ承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト
致シ、政府ノ趣旨辯明ヲ求メマス-早速
政府委員
大正十二年度第一豫備金
支出ノ件
大正十二年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
大正十三年二月及三月中
豫備金外ニ於テ豫算超過
及豫算外支出ノ件
大正十三年三月中特別會
計豫備金外ニ於テ豫算超
第八過及豫算外支出ノ件ムヲ承ル求諾
大正十三年度第二豫備金件
支出ノ件
大正十三年度豫備金外ニ
於テ豫算外支出ノ件
大正十三年度特別會計第
二豫備金支出ノ件
大正十三年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算外支出
ノ件
〔政府委員早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=42
-
043・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 大正十二年度ニ
於ケル一般會計第一豫備金支出、特別會計
第一豫備金支出、大正十三年二月及三月
中豫備金外支出、特別會計豫備金外支出、
大正十三年ニ於ケル一般會計第二豫備金及
豫備金外支出、特別會計第二豫備金及豫備
金外支出ニ關スル事後承諾ヲ求ムル爲メ、
玆ニ此案ヲ提出致シマシタルニ付キマシ
テ、其大體ノ說明ヲ致サウト思ヒマス、大正
十二年度一般會計第一豫備金ノ豫算額ハ六
百万圓デアリマシテ、大正十二年勅令第三
百十二號ニ依リ補充致シマシタル主ナル事
項ハ國際聯盟事務局費分擔金、傳染病豫防
費補助、市町村交付金、刑務所收容費、染料
及火藥爆發原料製造獎勵金等デアリマシ
テ、何レモ必要缺クベカラザル豫算ノ不足
ニ對シ充用シタルモノデアリマシテ、其總
額ハ六百万圓デアリマス、又朝鮮總督府其
他ノ特別會計ニ於キマシテモ、各〓其第一
豫備金ヲ以テ豫算超過ノ支出ヲ爲シタルモ
ノガアリマス、次ニ大正十三年一月三十一
日、第四十八帝國議會ガ解散ヲセラレマシ
タル結果、大正十二年度內ニ於キマシテ支
出ヲ要スル費途ニ對シ、政府ハ已ムヲ得ズ
同年二月及二月中一般會計ニ於テ、歲計剩
餘金及公債金ノ繰入ヲ以テ、豫算超過及豫
算外ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス、其
事項ノ主ナルモノハ外務省所管ノ電信料、
ソレカラ警察費、連帶支辨金、復興局經費
軍事費補足、衆議院議員臨時總選擧檢察費、
震災ニ因ル貸付金及復興事業費補助等デ
アリマシテ、其總額ハ三千百六十万四千八百
二十二圓デアリマス、特別會計ニ於キマシ
テモ、其歳計剩餘金或ハ歳人金ヲ以テ、豫
算超過及豫算外ノ支出ヲ爲シタルモノガア
リマス、大正十三年度ニ於ケル一般會計第
二豫備金ノ施行豫算額ハ八百万圓、追加豫
算額ハ三百万圓、合計千百万圓デアリマシ
テ、國際阿片會議參列費、横濱港復興費、
臨時警察費、主力艦解體諸費、其他各省所
管ニ亙ル震災、火災、風水害等ニ因ル廳舍、
官舍、其他ノ復舊費等ノ緊急已ムヲ得ザル
費途ニ對シ、豫算外ニ支出ヲ爲シタル總額
ハ千五十五万千三百十五圓デアリマズ、
般會計第二豫備金、施行豫算拂切リトナリ、
追加豫算ノ成立ヲ俟ツ能ハザルガ爲メ、政
府ハ已ムヲ得ズ歲計剩餘金ヲ以テ豫算外ノ
支出ヲ爲シタルモノガアリマス、其事項ノ
主ナルモノハ國際勞働會議參列費、第四十
三潜水艦救難費、大學及學校圖書館費其他
ノ補助保險會社出指助成金、米國渡航援助
費及各省所管ニ亙ル職工解備特別手當、
震災、火災、風水害ニ因ル復舊費等ガアリ
マシテ、其總額ハ九千百四十七万四千八百
二圓デアリマス、尙ホ右ノ外各特別會計ニ
於キマシテモ、第二豫備金及豫備金外ニ於
テ其歲計剩餘金、或ハ歲人金ヲ以テ豫算外
ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマスガ、玆ニ
ハ其說明ヲ省略致シマス、以上十分御審議
ノ上承諾ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=43
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044・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第九、右八
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第九右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=44
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045・井本常作
○井本常作君 本案ハ委員ノ數ヲ特ニ十八
名トシ、議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望
ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=45
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046・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=46
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047・作間耕逸
○作間耕逸君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=47
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048・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間耕逸君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=48
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049・作間耕逸
○作間耕逸君 議事日程變更ニ關スル緊急
動議ヲ提出致シマス、卽チ政府提出行政整
理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シタル者等
ニ交付スル公債發行ニ關スル法律案、竝ニ
同ジク政府提出、船舶無線電信施設法案ヲ
此際特ニ逐次上程シテ議題ト爲シ、前者ニ
付テハ其第一語會、後者ニ付テハ其第一讀
會ノ續ヲ各、開カレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=49
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050・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ日程ハ變更セ
ラレマシタ-行政整理又ハ軍備整理ニ際
シ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行
ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ、政府ノ
趣旨辯明ヲ求メマス-政府委員ガ今居リ
マセヌカラ是ハ一時後廻シニ致シマス、次
ニ船舶無線電信施設法案ノ第一讀會ノ續ヲ
開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長
砂田重政君
船舶無線電信施設法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一船舶無線電信施設法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年三月十日
船舶無線電信施設法案委員長
砂田重政
衆議院議長粕谷義三殿
〔砂田重政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=50
-
051・砂田重政
○砂田重政君 本案ハ船舶ニ無線電信ノ施
設ヲ命ズル法律案デアリマス、委員會ハ數
回之ヲ開會致シマシテ、最モ愼重ニ質問應
答ヲ重ネタノデアリマス、其質問應答ノ中
ニ於キマシテ、最モ重要ナル事實ノ一一三ノ
點ヲ御報告申シタイト思フノデアリマス、
卽チ此法律案ハ一面ニハ人道問題ノ上ニ於
テ、船舶乘組員及交通旅客ノ生命ノ安全ヲ
期シ、物質的ニハ船舶所有者及積載貨物ニ
對スル財產的危險ノ防止ヲ企ツルト云フ意
味ニ於テ提案ヲサレタモノデアリマスル
ガ、此法律ハ殆ド世界列國、獨逸ヲ除キマ
スルニ總テノ海運國ニ於テハ悉ク此案ヲ既
ニ實施致シテ居ルノデアリマス、獨リ我國
ニ此法律ノ實施無カリシ爲ニ、現ニ無線電
信ノ施設ヲ有スルモノスラ、日本ノ港ニ出
入ヲ致シマスル際ニハ、技術者ヲ下船セシ
ムルト云フガ如キモノガアッタノデアリマ
ス、殊ニ又近海ノ日本船舶ノ實狀ヲ見マス
1、年々歲々遭難ノ數ハ其數ヲ增シテ參リ
マシテ、現ニ大正十三年一月ヨリ十月迄ノ
期間ニ於キマシテ、船舶ノ遭難致シマシタ
モノ三十二隻、其中ニ於テ無線電信ノ設備
ヲ有シタルガ爲ニ救助セラレタルモノ十七
隻、無線電信ノ設備無キ爲メ救助不能ニ陷
リタルモノ十隻、無線電信ノ設備無キ爲メ今
日ニ至ルマデ其行方不明ニ歸シテ居ルモノ
ガ五隻ノ多數ニ上ッテ居ルノデアリマス、
斯樣ナ實狀ニ在リマスルガ故ニ、玆ニ此無
線電信施設ニ關スル法律案ヲ我國ニ實施セ
ントスルニ至ッタノデアリマスルガ、列國
ノ立法例中ニ於テ、此法律ハ佛蘭西ノ例ニ
則リマシテ、船員若クハ旅客五十人以上ヲ
搭載スルモノ及總噸數二千噸以上ノ船舶ニ
强制スルコトニ相成シテ居ルノデアリマス
ルガ、此原則ニ對シテ無線電信設備ヲ强制
セラルベキ船舶ノ範圍ヲ定メタヾケデアリマ
シテ、或ハ航海ノ目的、航路、船舶ノ狀
況又ハ其用途ノ如何ニ依リマシテ、必シ
モ無線電信ノ設備ヲ要シナイ場合ガアルノ
デアリマス、又其設備ヲ爲スコトノ不適當
ナルモノモアルノデアリマス、故ニ列國ノ
立法例ヲ按ジマシテ、又一面我國ノ航路及
航海、竝ニ船舶ノ實況ニ鑑ミマシテ、沿海
航路以下ハ航海ノ範圍ガ極メテ狭小デアリ
マス、又船舶ノ交通頻繁ナルガ故ニ、海難
ノ事故ガアリト致シマスルモ、之ヲ救濟ス
ルコトノ機會ガ容易デアリマスルガ故ニ、
是等ノ船舶ニ對シテハ、原則トシテ無線電
信ノ設備ヲ爲サシメザルコトヽ爲シ、又近
海航路ノ船舶デアリマシテ、五十人以上ノ
人員ヲ搭載スル船舶ト雖モ、事業上沿岸ノ
ミヲ航行スルニ止マルモノ、又ハ比較的小
形ノ船舶デアリマシテ、卽チ五百噸未滿ノ
船舶ニ對シテハ經濟上ノ事情モアリ、特ニ
設備スル必要ナク又設備スルコトノ適當
ナラヌモノガアリマスールガ故ニ、是等ノ
モノニ對シテハ遞信大臣ニ於テ別段ノ規
定ヲ設ケテ、之ニ施設ヲ命ゼザルコトニ相
成ッテ居ルノデアリマス、特ニ漁船ニ付キ
マシテハ、假令乘組員五十人以上ヲ乘船セ
シメルモノト雖モ、政府ニ於テハ之ヲ强制
セザル方針デアリ、殊ニ漁船ニ付テハ殆
ド大部分五百噸未滿ノ船舶デアルガ故ニ、
殆ド事實ニ於テ此無船電信ヲ强制スル場合
ハ無イト云フ答辯デアリマシテ、本法施行
ノ結果其適用ヲ受クベキ船舶ノ總數ハ八百
四十五艘デアリマスガ、其中ニ於テ既ニ設
備ヲ完成致シテ居リマスルモノガアリマス
ルガ故ニ實際ノ數ハ約三百般デアリマス、
併ナガラ此三百艘ノ船舶ニ無線電信ノ設備
ヲ命ジマスル上ニ於テハ新ニ供給ヲ必要
ト致シマスル通信從事者、一級免狀ヲ有ス
ル者、三百四十名ヲ要スルノデアリマス、
其他之ヲ補充スル爲メ、每年數百名ノ技術
者ヲ要スル見込デアリマスルガ故ニ、是等
ノ通信從事者ノ供給方ヲ十分ニ考慮スル意
味ニ於テ、本法ノ施行ハ公布後一年後ニ於
テ之ヲ實施スルト云フコトノ言明ヲ得タノ
デアリマス、固ヨリ此無線電信ヲ船舶ニ設
備スベキコトヲ本法ニ依ッテ定メルダケデ
アリマシテ、此無線電信ニ關シテハ無線
電信法ニ依ルベキコトハ議論ヲ俟タナイノ
デアリマス、尙ホ本法ハ內國船籍ノ船舶ハ
勿論、外國船籍ノ船舶、及朝鮮、關東廳ニ
籍ヲ有シマスル船舶ト雖モ、本法ノ實施セ
ラルヽ港ニ入港スル總テノ船ニ此規定ヲ强
要スルト云フ趣旨ニ於テ、明文ヲ設ケテ居
ル次第デゴザイマス、此意味ニ於テ委員ノ
諸君ノ質問應答ノ結果、總テ委員諸君ハ之
ヲ必要ナリト云フコトニ相成リマシテ、滿
場一致ヲ以ヲ通過致シタ次第デアリマス、
此段茲ニ御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=51
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052・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シ政府
ニ質疑ノ通告ガアリマス-內田信也君
〔內田信也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=52
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053・内田信也
○内田信也君 只今上程サレマシタル船舶
無線施設法ニ付キマシテハ啻ニ船舶業者
ノ關係タルニ止マリマセズ、一般海上旅行者
ノ人命ニ關スルコトデアリマスカラシテ、
特ニ茲ニ質疑ヲ敢テスル次第デゴザイマス、
只今委員長ノ御報告ニ依レバ、遠洋航路ハ
固ヨリ、殊ニ近海航路ニ於ケル船舶ノ遭難
ハ無線電信ノ設備が無カッタカラシテ、
非常ニ遭難ガ多カノタト云フ御說明デゴザ
イマシタ、固ヨリ無線電信ガ有ッタ方ガ宜
イカ、無カッタ方ガ宜イカト中シマスレバ、
ツ無線電信ノ設備ガ有ノタ方ガ過難ヲ免レル
一ツノ「チヤンス」モアリマス、又人命救助
ニ便利ナル點モ多々アリマス、併ナガラ遭
難ハ多クハ已ノ船ノ位置ガ濃霧又ハ暗夜ノ
爲ニ、自ラ位置ノ測定ヲ誤テ遭難スルコ
トガ多イノデアリマス、故ニ船舶ソレ自身
ニ無線電信ヲ設備スルト共ニ、海外ニ於テ
行ッテ居ル如ク、陸上ニ於ケル主ナル燈臺、
及海岸無線電信局ニ所謂「デレクシヨン、
フワインダー」ト申ス方向ヲ探知スル所ノ
機械、此方向探知機ヲ備へテ置イテ、暗夜
若クハ濃霧ノ爲ニ船舶ソレ自身ガ己ノ位置
ヲ測定スルコトガ不可能ニナッタ場合ニ於
キマシテハ、無線電信ヲ以テ海岸電信局若
クハ燈臺ニ、己ノ船ノ位置ハドノ邊ニ在ル
カ「才前ノ燈臺ト較ベテ何處ノ方向ニ在ル
カ」ト云フコトヲ知照シテ、而シテ無線電
信ニ依ッテ「オ前ノ船ハ北々西ノ何處其處ニ
在ルノダ」ト云フ通知ヲ受ケテ、茲ニ始メ
テ遭難ヲ未然ニ防グ次第デアリマス、故ニ
我國ノ近海ニ於ケル遭難ヲ減少セントスレ
バ啻ニ船舶ニ無線電信ヲ强要スルニ止メ
ズシテ、陸上ニ於テ此方向探知機ノ備ヲ增
加シ、否、日本デハマダ一ツモ此設備ガ無
イノデアリマス、此新シイ設備ヲスルト共
ニ、海岸ニ於ケル燈臺-卽チ燈臺ニ於キ
マシテモ、日本ハ世界中デ最モ燈臺ノ少ナ
イ國デアル、先刻モ我國ハ海上ニ於テ雄飛
スベシト云フ御話ガアリマシタガ、燈臺ガ英
國等ニ於テ海岸線五哩ニ對シテ一箇アルニ
拘ラズ、我國ニ於テハ五十哩ニ一箇ノ燈臺
ホカ無イノデアリマス、斯ノ如ク陸上ノ設
備卽チ方向探知機ノ備モナク、燈臺ハ世
界中最モ少ナイ設備ヲ以テシテ、船舶ニノ
ミ無線電信ヲ强要スルコトニ依ッテ、近海
ニ於ケル遭難ヲ減少スルト云フコトハ押
無線電信ノミニ依賴シ過ギヤシナイカト私
ハ思フノデアリマス、故ニ政府ハ吾々-
否、船舶業者ニ向,テ三百般-只今委員長
ノ御報告ニ依レバ、三百般ノ船ニ新設備ヲ
命ズルト云フコトデアリマスガ、一万圓掛ノ
テ是ガ三百万圓、又經常費モ三百圓宛トシ
テモ、一箇月ニ十万圓掛ル、而シテ陸上ニ
於ケル方向探知機ハ一ツガ僅ニ三千圓位ノ
モノデアル、卽チ無線電信ヲ設備スル一箇
月ノ經常費ニ依ッテ、日本ノ海岸ニ三十箇
所ノ方向探知機ノ設備ガ出來ルノデアル、
我國ニ於テハ仁川ニ一箇所アルノミデア
ル、故ニ政府ハ無線電信法ヲ船舶ニ强要ス
ル以上ハ此僅カノ金額ニ依シテ出來ル「ヂ
レクシヨン、フワインダー」ノ設備ヲ敢テス
ル御意思ナキヤ否ヤト云フコトガ第一ノ質
問デアリマス、ソレカラ第二、卽チ無線電
信ノ技手デアリマス、無線電信ノ技手ハ
御水知ノ通リ中學ヲ卒業スルカ卒業シナイ
カノ人ガ、僅ニ一箇年カ一箇年半電信協會
ニ於テ養成サレテ、是ガ最高學府タル東京
商船學校卒業生ノ殆ド倍額ノ給料ヲ取シテ
居ルノデアリマス、卽チ非常ニ人員ガ缺乏
シテ居ル、而モ諾威等ニ於テハ船舶經濟ヨ
リ算盤ヲ採クテ、卽チ運轉士、機關士等ニ此
無線電信技手ヲ兼任セシメテ居ル、我國ニ
於テモ此無線電信ニ依ル費用ヲ節約スルガ
爲ニ、今後商船學校ニ於テ運轉士若クハ機
關士ヲ養成スルニ當ッテ、五箇年半ノ課
程デアリマスカラシテ、此五箇年半ノ課程
中ニ於テ此位ノ養成ハ出來ルト思フ、卽チ
無線電信技子ノ養成ヲ今後商船學校ニ依賴
シテ、運轉竝ニ機關ノ技術ト共ニ〓究
セシムル御意思ハナイカト云フノガ第
二問デアリマス、ソレカラ施行期日ノ點デ
アリマスガ、只今委員長ノ報告デハ政府
ハ一箇年後ニ施行セシムル御意思ト御言明
ニナックサウデアリマスガ、只今マデ此無
線電信技手ハ非常ニ缺乏シ、漸ク昨今需要
供給ガ相一致シタヤウナ次第デ、殊ニドチ
ラカト申セバ粗製濫造ノ傾ガアッタノデア
リマス、仍テ政府ハ此無線電信技手ノ優秀
ナル者ヲ送ル爲ニ、且ツ殊ニ船舶界ハ不況
ノドン底ニ在ル今日デアリマス、且ツ船舶
ハ世界中ヲ航海シ、假令二千噸位ノ船デ
モ、印度等ニ長ラク航海シテ居ルモノモア
リマスカラ、一〓ニ無線電信ヲ何時々々マ
デニ附ケロト云フテモ、中々之ヲ附ケルコ
トガ出來ナイノデアリマス、現ニ東京ニ於
テ電話題信ト申シテモ、政府ガ御自身デオ
ヤリニナル電信電話デモ、中々容易ニ其設
備ガ出來チイコトニ政府自ラモ思ヲ運ラサ
レマシテ、之ニ對シテ二箇年位ノ餘裕ヲ以
テ完備スル御決心ハナイノデアリマスカ、
卽チ完備スルマデニ二箇年ノ餘裕ヲ與ヘル
御意思ハ無イノデアリマスカ、此三ツニ付
テ御答ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=53
-
054・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 犬養遞信大臣
〔國務大臣犬養教君登価也〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=54
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055・犬養毅
○國務大臣(犬養教君) 第一ノ御尋ノ方向
探知ノ設備デアリマス、是ハ遞信省ニ於キ
マシテモ全ウ御同感デアリマス、政府モ是
ハ設ケナケレバナラヌト思フ、ソレ故ニ財
政ノ許ス範圍ニ於テ、出來ルダケ早ク之ヲ
設ケタイト存ジテ居リマス、全ク御同感デ
ゴザイマス、ソレ故ニ第一ノ御問ニ對シマ
シテハ全ク内田君ト同ジ考デアリマス、遞
信省ハ成タケ早ク此設備ヲ、財政ノ許ス限
リ最モ急イデ之ヲ造リタイト存ジテ居リマ
ス、ソレカラ燈臺ノ事ヲ附ケテ御問デアリ
マシタガ、燈臺モ御承知ノ通リ實ニ不完全
デアル、每年遞信省ハ是ガ增加ノ計畫ヲ立
テマシテ度々計畫致シマシタガ、何時モ財
政逼迫ノ爲ニ延ビ々々ニナッテ居ルノデア
リマス、是モ財政ノ許ス限リ最モ早ク造リ
タイト考ヘテ居リマス、全ク是モ同感デア
リマス、第二ノ商船學校ヲ卒業スルマデニ
無線電信ノ技術ヲ〓ヘル、無論是デ出來上
リマシテ、遞信有ノ試驗ニ應ジテ合格スル
ダケノ者デアレバ、何時デモ是ハ許スノデ
アリマス、商船學校デモ矢張之ヲ〓ヘナケ
レバナラヌト云フコトニナノテ、ソレニ著
手スルサウデアリマスガ、勿論合格スル者
ガ段々出來テ參ラウト存ジマス、是モ合格
シサヘスレバ遞信省ハ其成タケ多イコト
ヲ希望致スノデアリマス、ソレカラ只今ノ
法案デハ御水知ノ通リ早クモ一箇年後ト
云フコトデアリマスガ、ソレヲ二箇年後マ
デニ延ベヌカト云フ御求メデアリマスガ、
是ハ尙ホ十分考慮致シマシテ、實際ニ支障
ノ無イ、差支ノ無イヤウニ出來ルダケノコ
トヲ考ヘテ見マス、是ダケヲ御答致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=55
-
056・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質疑ハ終了致シ
マシタ、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス、第二讀會ヲ開クニ御異議ハ
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=56
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057・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ガナイト
認メマス、依テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=57
-
058・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ第二讀會ヲ開キ、第三
讀會ヲ省略シテ委員長ノ報告ノ通リ可決セ
ラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=58
-
059・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ガナイト認メマス、依テ直ニ第二讀
會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
船舶無線電信施設法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=59
-
060・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 別ニ御發議モナ
イヤウデアリマス、第三讀會ヲ省略シテ委
員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ-先
刻後廻シニスルト宣告致シマシタル日程ヲ
議題ト致シ政府ノ趣旨辯明ヲ求メマス-
早速整爾君
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案(政府提出)第一讀會
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案
今囘ノ行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官
若ハ退職シタル者、体職ヲ命セラレタル
煮現役ヲ退カシメタル者、解職若ハ解
傭セラレタル者等ニ特別ノ賜金又ハ手當
トシテ交付スル爲政府ハ額面五千萬圓ヲ
限リ公債ヲ發行スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=60
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061・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 議題トナリマシ
タル行政整理又ハ軍備整理ニ際シ、退官
退職シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案ニ付キマシテ、簡單ニ說明ヲ致シ
ぜっ、、今囘政府ガ行政整理又ハ軍備整理ヲ
致シタニ付キマシテハ、短期間ニ多數ノ退
實、退職者ヲ生ズル次第デアリマス、而シ
テ今日一般經濟界不況ノ時機ニ際會致シマ
シテ、是等多數ノ人々ガ一時ニ其職ヲ去リ
マスニ付キマシテハ、之ニ適當ノ待遇ヲ與
ヘルコトノ必要ナルハ申スマデモナイコト
ト考ヘマシテ、先例ニモ鑑ミ、退官退職者
等ニ對シテソレ〓〓特別ノ賜金又ハ手當ヲ
支給スルコトニ計畫致シマシタ、此特別ノ
賜金又ハ手當ハ財政計畫上、其一部ヲ除ク
ノ外ハ公債ヲ以テ交付スルコトニ致シマシ
ク、之ヲ時價ニ依リ換算致シマスレバ總
額約五千万圓ノ公債ノ發行ヲ要スルコトヽ
ナルノデアリマス、仍テ此公債發行ニ關ス
ル法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希
望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=61
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062・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 右議案ノ審査ヲ
付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=62
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063・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ日〓第一乃至第三議
案ノ委員ニ、併セテ付託セラレンコトヲ望
ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=63
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064・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
ハ御異議ガナイト認メマス、仍テ動議ノ如
ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=64
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065・作間耕逸
○作間耕逸君 更ニ議事日程變史ニ關スル
緊急動議ヲ提出致シマス、卽ヂ日程第二十
六以下ノ請願特別報告ヲ此際特ニ繰上ゲア
一括シテ議題ト爲ン、委員長ノ報告ヲ求
人、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=65
-
066・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
ハ御異議ガ無イト認メマスハ仍テ日程ハ變
更セラレマシタ-日程第三十六乃至四十
七ハ請願特別報告ナルニ依リ、一括シテ議
題ト致シマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
長田桃藏君
第二十六(特別報告第一三四號)舊龍
野藩祿米不足分ニ關スル請願
(委員長報告)
第二十七(特別報告第一三七號)谷川
神社創建ノ請願(委員長報告)
第二十八(特別報告第一三八號)福母
村村社八旛宮昇格ノ請願
(委員長報告)
第二十九(特別報告第一三九號)宮崎
神宮別宮狹野神社分立以格格ノ請願
(委員長報告)
第三十(特別報告第一四〇號)畜犬繫
留、篏日竝野犬撲殺ニ關スル請願
(委員長報告)
第三十一(特別報告第一四二號)明治
記念國立大公園設立ノ請願
(委員長報告)
第三十二(特別報告第一四四號)石狩
川ニ橋梁架設ノ請願(委員長報告)
第三十三(特別報告第一四七號)根室
郡ニ種馬所設置ノ請願(委員長報告)
第三十四(特別報告第一四八號)和郵
便局ニ集配事務開始ノ請願
(委員長報告)
第三十五(特別報告第一四九號)東下
村波崎ニ特設電話開通ノ請願
(委員長報告)
第三十六(特別報告第一五〇號)藤澤
村ニ無集配郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第三十七(特別報告第一五一號)神戶
村ニ無集配三等郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第三十八(特別報告第一五二號)中愛
別三等郵便局設置ノ請願
(委員長報告)
第三十九(特別報告第一五三號)中津
井郵便局ニ集配事務開始ノ請願
(委員長報告)
第四十(特別報告第一五四號)朝鮮辯
護士資格付與ノ請願(委員長報告)
第四十一(特別報告第一五五號)新十
津川村ニ登記所新設ノ請願
(委員長報告)
第四十二(特別報告第一五六號)常呂
村ニ綱走區裁判所出張所設置ノ請願
(委員長報告)
第四十三(特別報告第一五七號)大間
鐵道速成ノ請願(委員長報告)
第四十四(特別報告第一五八號)地下
道開鑿ノ請願(委員長報告)
第四十五(特別報告第一五九號)邊
別美瑛驛間ニ停車場新設ノ請願
(委員長報告)
第四十六(特別報告第一六二號)瀧內
村大字古川所在鐵道跨線橋存置ノ請
願(委員長報告)
第四十七(特別報告第一六三號)津山
東町ニ停車場設置ノ請願
(委員長報告)
請願特別報告第一三四號
意見書
請願文書表第三八七號
舊龍野藩祿米不足分ニ關スル請願
兵庫縣揖保郡龍野町龍野ヌ二十五
番地森田桂藏外四名呈出(紹介議
員土井權大君)
右請願ノ要旨ハ兵庫縣揖保郡舊龍野藩ハ
大正八年四月秩祿ニ關スル法律發布ニ基
キ各藩ト同時ニ祿米不足分下賜相成度旨
大藏省ニ歎願中ナルモ出願以來七箇年ノ
今日未夕其ノ恩典ニ浴セス依テ舊龍野藩
祿米不足分ヲ速ニ下賜セラレタシト謂フ
ニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一三七號
意見書
請願文書表第四六五號
谷川神社創設ノ請願三重縣安濃郡
新町大字古河四百六十四番地商富
田謹三外二十二名呈出(紹介議員
小屋光雄君)
右請願ノ要旨ハ贈從四位谷川士〓大人ハ
寶永六年伊勢國安濃郡新町ニ生レ夙ニ垂
加神道ヲ究明シ國史國語ニ精通シタルヲ
以テ日本書紀通證和訓栞等ノ大著述ニ依
リテ一世ヲ裨益シタルノミナラス常ニ勤
王ノ志厚ク國體ヲ闡明シテ尊王ノ大義ヲ
高唱シ永ヘニ皇道ヲ恢宏セリ先年畏クモ
御贈位アリテ天恩枯骨ニ及フ然ルニ斯ル
大人ノ爲國家ハ未タ一祠ヲモ建立セス國
民崇敬ノ實ヲ擧ケサルハ甚夕遺憾トスル
所ナリ依テ政府ハ速ニ國幣ヲ供進シテ其
ノ靈ヲ祀セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一三八號
意見書
請願文書表第四九〇號
福母村村社八旛宮昇格ノ請願佐賀
縣杵島郡大町村大字福母二千百九
十五番地士族官吏中尾乙彥呈出
(紹介議員西英太郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ佐賀縣杵島郡大町村大字
福母村村社八施宮ハ景行天皇御自ラ筑紫
能襲ノ餘類タル肥前高來郡ノ土蜘蛛及肥
前杵島郡孃子山ノ八十女ヲ討平アラセラ
レタル御禮奠トシテ國常立尊始メ五神
ヲ歡祭アラセラレシヨリ由緒極メテ深ク
鎌倉幕府及鍋島藩府ノ崇敬社ト爲リ明治
維新ノ際村社ニ列セラレ以テ今日ニ及ヘ
リ而シテ同社ハ時價一万七千餘圓ニ該當
スル社產アリテ神職ノ俸給其ノ他祭典費
等ノ不足ヲ來スコトナキノ狀況ニ在ルヲ以
テ氏子ヲシテ益神威ヲ崇敬セシムル爲速
ニ〓社ニ昇格セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一三九號
意見書
請願文書表第五〇六號
宮崎神宮別宮狹野神社分立竝昇格ノ
請願宮崎縣西諸縣郡小林町長赤
木通茂外二十三名呈出(紹介議員
陣軍吉君外一名)
右請願ノ要旨ハ官幣大社宮崎神宮別宮狹
野神社ハ神武天皇御降誕ノ靈蹟ニシテ
宮崎縣西諸縣郡高原村ニ鎭座シ孝昭天
皇御宇ノ御造營ニ係リ歷代天皇ノ崇敬篤
ク明治六年縣社ニ列セラレタリト雖斯ノ
如キ由緒深キ御靈蹟モ僅ニ別宮トシテ縣
社ノ社格ニ過キサルハ御神靈ニ對シ誠ニ
恐懼ニ堪ヘサルトコロナルヲ以テ速ニ宮
崎神宮ヨリ分立セラレ更ニ官幣社ニ列セ
ラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四〇號
意見書
請願文書表第四五六號
畜犬繫留、篏口竝野犬撲殺ニ關スル
請願東京府豐多摩郡野方町上沼
袋二十五番地醫師吉植精逸外十四
名呈出(紹介議員吉植庄一郞君外
一名H
右請願ノ要旨ハ現在畜犬竝野犬ニ關スル
規則ハ全國統一的ノモノナク各府縣ニ於
テ區々ニ分レ其ノ取締極メテ不完全ナル
爲東京府ノ如キハ狂犬病ノ被害者日々十
數人ヲ算スルノ狀態ナリ然ルニ歐米諸國
ノ如キ其ノ取締極メテ嚴ナル爲殆ト狂犬
病等ノ被害者ヲ見ス依テ我ガ國ニ於テモ
畜犬ノ繫留篏口竝野犬撲殺ニ關シ速ニ適
當ナル取締方法ヲ講セラレタシト謂フニ
在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四二號
意見書
請願文書表第四九七號
明治記念國立大公園設立ノ請願長
岡市觀光院町九百七十五番地野本
巷八郞呈出(紹介議員山田又司君
外一名)
右請願ノ要旨ハ明治天皇ノ聖德鴻業ヲ
永遠ニ奉頌セムカ爲富士山ヲ中心トシ其
ノ周圍數十里ニ互レル山水ノ自然ヲ失ハ
サル範圍ニ於テ人工ヲ施シ以テ地上ノ最
大樂園タル明治記念國立大公園ヲ設立セ
ラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四四號
意見書
請願文書表第五三二號
石狩川ニ橋梁架設ノ請願北海道樺
戶郡月形村公吏植松適外二百二十
六名呈出(紹介議員松實喜代太君
外三名)
右請願ノ要旨ハ北海道樺戶郡月形村ハ石
待川ノ流域ニ在リテ農耕地二千五百二
十九町步各種生產年額八十万圓ヲ算シ今
後農耕地トシテ開拓スヘキモノ優ニ三千
町歩ヲ有スルモ交通不便ニシテ最寄函館
本線峯延驛ヘ四里石狩川ニ既設セラレタ
ル橋梁ハ上下共八里乃至九里ノ遠距離ニ
シテ物資ノ搬出ハ主トシテ渡船ニ依ルノ
他ナシ然ルニ當地住民ノ生活竝生產ニ要
スル物資ハ對岸トノ交通ニ據リ供給ノ目
的ヲ達スルノ他ナキ現狀ニ於テ渡船ニ依
ルハ徒ニ失費ヲ重ネ商機ヲ失、シ交通上ノ
危險亦名狀スヘカラサルモノ在リ斯テハ
國富ノ開拓地方產業)ノ發展ハ得テ望ムヘ
カラス依テ石狩川ニ前記月形村ト空知郡
沼貝村ヲ連絡スル橋梁ヲ架設シ以テ北海
道拓殖ノ促進ニ資セラレタシト謂フニ在
リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四七號
意見書
請願文書表第五一五號
根室郡ニ種馬所設置ノ請願北海道
根室郡根室町大字彌生町四丁目三
十一番地牧畜業中島義一外四百二
十九名呈出(紹介議員小池仁郞君)
右請願ノ要旨ハ北海道根室國ハ原野廣濶、
滋草豐富、夏凉冬暖實ニ天與ノ畜產地タル
條件ヲ具備ス然トモ曩ニ官設牧場ヲ拂下
ケ私營ニ委セラレタル爲當業者資力薄弱
ニシテ種畜ノ供給經營上所期ノ目的ヲ達
シ得サルニ至リタルハ獨リ根室國ノ根事
タルノミナラス本邦斯業ノ爲痛嘆ニ堪ヘ
サルトコロナリ依テ速ニ北海道根室郡ニ
國立種馬所ヲ設置セラレタシト謂フニ在
リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四八號
意見書
請願文書表第四四六號
和郵便局ニ集配事務開始ノ請願北
海道雨龍郡北龍村和農長江半右衞
門呈出(紹介議員松實喜代太君外
(2)
右請願ノ要旨ハ北海道雨龍郡北龍村和郵
便局ハ大正五年十一月設置セラレタルモ
未夕集配事務ノ取扱ナキ爲郵便物ハ留萠
線ヲ迂回シテ沼田驛ニ至リ北龍郡便局ヨ
リ遞送後始メテ配達セラレ妹背牛驛ヨリ
直送セラルルニ比スレハ二三日ノ遅著ト
ナリ今ヤ發展ノ途上ニアル和村民ノ忍ヒ
得サル所ナリ依テ速ニ前記和郵便局ニ集
配事務ヲ開始セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一四九號
意見書
請願文書表第四八〇號
東下村波崎ニ特設電話開通ノ請願
茨城縣鹿島郡東下村波崎漁業篠塚
安次良外百二十名呈出(紹介議員
內田信也君)
右請願ノ要旨ハ茨城縣鹿島郡東下村波崎
ハ縣下樞要ノ漁業地ニシテ其ノ年產額百
二十萬圓ニ達シ籐表ノ製造亦盛ニシテ年
產額百萬圓ヲ算ス然レトモ中央市場トノ
交通通信不便ナル爲時價ノ標準ヲ知ルコ
ト難ク同地魚類仲買業者及籐表業者ハ常
ニ對岸銚子町同業者ノ爲ニ機先ヲ制セラ
レ收利ノ大半ヲ壟斷セラルルハ該村ノ發
展上極メテ遺憾ナリ依テ速ニ同地ニ特設
電話ヲ開通セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五〇號
意見書
請願文書表第四八九號
藤澤村ニ無集配郵便局設置ノ請願
埼玉縣人間郡藤澤村大字下藤澤千
二十五番地農澤田甲吉外二十名呈
出(紹介議員山口政二君)
右請願ノ要旨ハ埼玉縣人間郡藤澤村ハ所
澤町、豐岡町ノ中間ニ位シ近ク停車場モ
新設セラレムトシ且織物及製茶業盛ナル
ノミナラス農產物ノ產額亦頓ニ增加シ
村勢ノ發展着シキモノアルニ拘ラス通信
機關ノ不備ナルハ誠ニ遺憾ナリ依テ前記
藤澤村ニ無集配郵便局ヲ設置セラレタシ
ト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五一號
意見書
請願文書表第五〇五號
神戶村ニ無集配三等郵便局設置ノ請
願三重縣飯南郡神戶村長大西利
一郞呈出(紹介議員安保庸三君)
右請願ノ要旨ハ三重縣飯南郡神戶村ハ近
時非常ニ發展シ隨テ人口ノ增加著シク諸
工業ノ勃興ト共ニ諸會社亦陸續トシテ建
設セラレ通信事務愈繁劇ヲ極ム然ルニ最
寄局タル松阪局移轉ノ結果村民ノ不便一
層甚シク郵便局新設ノ必要ヲ感スルコト
極メテ切ナルモノアリ依テ前記神戶村內
ニ無集配三等郵便局ヲ設置セラレタシト
謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五二號
意見書
請願文書表第五〇五號
中愛別三等郵便局設置ノ請願北海
道上川郡愛別村字中愛別十四線北
八番地農反橋信一外三十九名呈出
(紹介議員淺川浩君外六名)
右請願ノ要旨ハ北海道上川郡愛別村字中
愛別ハ開墾日尙淺キニ拘ラス人口ノ增加
著シク米穀ノ產額亦尠カラス殊ニ石北線
開通ト共ニ停車場設置セラレテヨリ交通
ノ便ヲ得テ地方物產ノ一大集散地ト爲レ
リ然ルニ未夕郵便局ノ設置ナク通信上ノ
不便甚大ニシテ之カ爲地方產業ノ發達ヲ
阻害スルコト亦尠カラサルハ洵ニ村民ノ
苦痛トスルトコロナリ依テ政府ハ速ニ前
記中愛別ニ三等郵便局ヲ設置セラレタシ
ト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五三號
意見書
請願文書表第五一三號
中津井郵便局ニ集配事務開始ノ請願
岡山縣上房郡中津井村長室壯次郞
外八名呈出(紹介議員西村丹治郞
考
右請願ノ要旨ハ岡山縣上房郡中津井地方
ハ近時產業交通〓育其ノ他百般ノ施設發
達シタルニ拘ラス郵便集配事務ハ未タ呰
部郵便局ノ〓管ニ屬スル爲通信上村民ノ
蒙ル不便不利甚大ナリ依テ中津井村、中
井村ヲ中津井郵便局ノ管轄ト爲シ速ニ同
局ニ集配事務ヲ開始セラレタシト謂フニ
在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五四號
意見書
請願文書表第五二〇號
朝鮮辯護士資格付與ノ請願朝鮮忠
〓南道公洲郡公洲面本町三百五十
四番地外山喜右衞門外一名呈出
(紹介議員岩崎勳君)
右請願ノ要旨ハ請願人等ハ朝鮮統監府施
政時代ヨリ十數年來引續キ一事件每ニ裁
判所ノ許可ヲ受ケ彼ノ理事官ノ許可ヲ受
ケタル訴訟代理業者ト均シク朝鮮ノ訴訟
事務ニ從事シ來レリ然ルニ訴訟代理業者
ニ對シテハ大正八年制令第十三號ヲ以テ
朝鮮辯護士資格ヲ付與セラレタルニ拘ラ
ス其ノ性行學力、實績ニ於テ何等後者ト
差等ナキ請願人等ニ對シ其ノ資格ヲ付與
セラレサルハ失當ノ處置ナリト信ス依テ
前記請願人等ニ對シテモ適當ナル方法ニ
依リ朝鮮辯護士資格ヲ付與セラレタク尙
願意ハ旣ニ衆議院ニ於テ數回採擇セラレ
タルモノナルカ故ニ速ニ之ヲ實現セラレ
タシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五五號
意見書
請願文書表第四六九號
新十津川村ニ登記所新設ノ請願北
海道樺戶郡新十津川村字下德富四
百二十三番地士族公吏澤渡兵一外
百三十四名呈出(紹介議員松實喜
代太君外一名)
右請願ノ要旨ハ北海道樺戶郡新十津川村
ハ石狩川ノ右岸ニ位シ東西十一里南北六
里人口一万三千九百餘ノ一大農村ニシテ
大正十二年度ニ於テ新十津川村ノ登記申
請ハ實ニ二千八百餘件ヲ算セリ然ルニ該
村ノ管轄區裁判所瀧川出張所ハ石狩川ヲ
隔テ一里半乃至九里半ノ遠距離ニシテ村
民ノ不便甚大ナリ依テ新十津川村ノ中央
部ニ岩見澤區裁判所新十津川出張所ヲ新
設セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五六號
意見書
請願文書表第四八七號
當呂村ニ綱走區裁判所出張所設置ノ
請願北海道常呂郡常呂村大字常
呂村東一線十七番地農葛西淺吉外
百名呈出(紹介議員小池仁郞君)
右請願ノ要旨ハ北海道常呂郡常呂村ハ農
耕地三千三百七十餘町步生產年額約七十
萬圓ニ及ヒ產業ノ前途益隆盛ニ嚮ヒツツ
アルモ交通不便ニシテ殊ニ冬季間ハ暴風
雪等ノ爲交通杜絕スルコトアリテ住民ノ
不便尠カラス加之新開地ノ特徴トシテ住
民ノ來往經濟的變調激シク登記事件ノ如
キ夥シキ多數ニ上リツツアルニ拘ラス所
管巻記所遠隔ナル爲地方民ノ不利甚大ナ
ルモノアリ依テ廳舍竝附屬建物ハ之ヲ寄
附スヘキニ付常呂村内ニ網走區裁判所出
張所ヲ設置シ以テ北海道開發ニ資セラレ
タシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五七號
意見書
請願文書表第四六三號
大間鐵道速成ノ請願靑森縣下北郡
田名部町大字田名部二百四番戶商
河野榮藏外五十六名呈出(紹介議
員小泉辰之助君)
右請願ノ要旨ハ靑森縣下北郡大間港ハ北
海道函館港ト僅ニ二十浬以內ノ近距離ニ
在リテ兩港ノ交通ヲ完全ナラシムルコト
ハ北海道本州間ノ連絡上最モ緊要ナルノ
ミナラス產業ノ振興竝國防上ノ見地ヨリ
モ亦必要缺クヘカラサルモノナリ依テ其
ノ目的ヲ達スル爲束北線田名部驛ヨリ大
間港ニ至ル鐵道豫定線ヲ速ニ敷設セラレ
タシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五八號
意見書
請願文書表第四六六號
地下道開鑿ノ請願神奈川縣足柄下
郡上府中村長神野作十郞外三名呈
出(紹介議員平川松太郞君外一名)
右請願ノ要旨ハ東海道線下曾我驛北方構
內ノ線路ヲ横斷スル村道ハ該停車場以西
數箇村ニ通スル主要ナル道路ナルモ大正
十一年五月下曾我驛新設ノ際地上ケノ爲
不地ヨリ約十五尺ノ高地トナリ一般通行
人ノ危險多ク且車馬ノ通行困難トナリ殊
ニ貨車ノ停車長時間ニ亙ル時ハ交通全ク
杜絕ノ狀態ニテ現在ハ辛ウシテ迂廻路ニ
依リ其ノ便ヲ完ウスルモ其ノ不便ナルコ
ト言ヲ俟タサルナリ依テ該驛北方構內ニ
地下道ヲ開鑿シ以テ地方民ノ便ニ備ヘラ
レタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一五九號
意見書
請願文書表第四六八號
邊別、美瑛驛間ニ停車場新設ノ請願
北海道上川郡神樂村西御料地字邊
別東一番通第三十七號農大西定吉
外九名呈出(紹介議員淺川浩君外
(そ)
右請願ノ要旨ハ石狩國上川郡神樂村御料
地ハ沿道物資ノ集散地トシテ近年產業著
シク發展シタルモ最寄停車場遠キ爲地方
民ノ不利不便甚大ナリ殊ニ附近ノ山林ニ
ハ木材、鑛物等ヲ無盡ニ藏スルモ空シク
放任スルノ現狀ナルハ實ニ遺憾ナリ依テ
之カ富源ヲ開發シ以テ產業ノ振興ヲ期セ
ムカ爲邊別、美瑛驛間ニ停車場ヲ新設セ
ラレタク尙停車場敷地建築費等ハ寄附ス
ヘキニ依リ速ニ之ヲ實現セラレタシト謂
フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一六二號
意見書
請願文書表第四九二號
瀧内村大字古川所在鐵道跨線橋存置
ノ請願靑森縣東津輕郡油川町長
西田源藏外九名呈出(紹介議員工
藤鐵男君)
右請願ノ要旨ハ靑森縣東津輕郡瀧內村大
字古川ハ舊松前道ノ要路ニ當リ現在東北
本線及奧羽鐵道ハ此ノ松前道ヲ橫斷スル
カ爲當局ニ於テハ其ノ橫斷點ニ踏切ヲ設
ケテ危險ヲ防止シ通行人馬ノ安全ヲ計ラ
レタリ爲ニ隣接町村ノ產業發展シ物資ノ
運搬益繁劇ヲ加フルニ至リ當局モ危險ヲ
慮リ縣道ヲ他ニ移シ同時ニ該踏切ハ廢止
セラレタリ是ニ於テ從來ノ踏切通行者ハ
新道迂廻ノ煩項ヲ厭ヒ時間ノ經濟上危險
ヲ顧ルノ遑ナク鐵道構內ヲ橫斷スル者續
出シ一層ノ危險ニ陷リ構內ノ取締不可能
ト爲リタリ故ニ鐵道當局モ大ニ鑑ミルト
コロアリ大正五年現在ノ跨線橋ヲ架シ交
通ノ安全ヲ計リタルヲ以テ關係沿道ハ八
箇年ヲ經過セル今日非常ナル發展ヲ遂ケ
タリ然ルニ今囘靑森驛操車「ヤード」新設
ノ關係上本跨線橋ハ廢止ノ運命ニ在リト
聞クモ上磯地方各町村卜靑森市トノ交通
ハ頗ル頻繁ヲ極メ新縣道一路ノミニ依ル
コト能ハス現在舊縣道及該跨線橋ニ依リ
僅ニ人馬ノ往來ヲ調節シ來リタルモ之カ
廢止セラレムカ人馬往來調節ノ機能ハ滅
却セラレ同地ヨリ靑森市ニ至ルニハ十二
三町迂廻ノ餘儀ナキニ至リ殊ニ冬季風雪
ノ場合又ハ暴風雨等ノ際ニハ其ノ困難ト
時間ノ浪費莫大ニシテ住民ノ不便ハ勿論
沿道民モ廢業ノ止ムナキニ至リ實ニ該地
方ノ死活問題タルヘシ依テ當局ニ於テ現
在ノ古川跨線橋ヲ存置セラレ以テ地方發
展ト交通圓滑トヲ期セラレタシト謂フニ
在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
請願特別報告第一六三號
意見書
請願文書表第五二二號
津山東町ニ停車場設置ノ請願岡山
縣苫田郡津山東町長千田勇外一名
呈出(紹介議員土居通憲君)
右請願ノ要旨ハ岡山縣苫田郡津山東町ハ
作備線津山驛ノ東部ニ接續シテ縣道ニ沿
ヒ交通ノ要衝ニ當リ近年人口ノ增加ニ伴
ヒ生產工業著シク發達シ停車場ノ新設セ
ラレムコトハ地方民ノ切望スルトコロナ
リ依テ因美線鳥取津山間鐡道工事ニ著手
セラルルトキハ前記津山東町ニ停車場ヲ
設置セラレタシト謂フニ在リ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
〔長田桃藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=66
-
067・長田桃藏
○長田桃藏君 只今一括議題トナリマシタ
請願特別報告二十二件、是ハ請願委員會ニ
於テ愼重審議致シマシ夕結果、全部採擇ス
ルコトニ決定ヲ致シマシタ、其委員會ノ內
容ハ例ニ依リマシテ委員會會議錄ニ讓リ、
玆ニ報告スルコトヲ省キマス、適當ナル御
審議ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=67
-
068・作間耕逸
○作間耕逸君 委員長報告ノ請願特別報告
ハ一括シテ共ニ採擇セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=68
-
069・小泉又次郎
○副議長(小呆又次郞君) 作間君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、仍チ一括致シテ
採擇致シマス、總テ委員長報告ノ通リ採擇
スルコトニ決シマシタ(拍手)日程第十、治
安警察法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ、
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提出者山
口政二君
第十治安警察法中改正法律案(山口
政二君外二名提出)第一讀會
治安警察法中改正法律案
治安警察法中左ノ通改正ス
第五條第五號ヲ削リ第六號ヲ第五號ニ第
七號ヲ第六號ニ改ム
〔山口政二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=69
-
070・山口政二
○山口政二君 只今議題トナッテ居リマス
ル治安警察法中改正法律案ニ付キマシテ、
是ガ提案ノ趣旨ヲ辯明致シマス提案ノ要旨
ハ極メテ簡單デアリマス、治安警察法
第五條第一項、卽ヲ政治上ノ結社ニ加
入スルコトノ出來ナイ者ノ中カラ女子
ヲ除キマシテ、女子ニ對シ政治結社加
入ノ自由ヲ得セシメタイト云フノデアリマ
ス、抑モ治安警察法中特ニ女子ニ關スル規
定ノ改正法律案ハ屢〓本院ニ提出セラレ
タノデアリマス、卽チ同法第五條第二項
中、女子ノ部分ヲ削リマシテ、女子ニ對シ
テ公衆ヲ會同スル政談集合ニ會同シ、若ハ
其發起人タルコトヲ得セシメタイト云フ趣
旨ノ改正案ハ遠ク第二十三議會ニ提案セ
ラレ、而モ本院ヲ通過致シテ居ルノデアリ
マイ、其後同趣旨ノ改正案ハ、第四十五議
會ニ於キマシテ遂ニ兩院ヲ通過シタノデア
リマス、試ニ第四十四議會ノ同案特別委員
長ノ報告ノ一節ヲ朗讀致シテ見マスルト云
フト、「治安警察法第五條第二項ノ一部ヲ削
除シテ、女子ヲシテ政談集會ニ會同シ、若
クハ其發起人タルコトヲ得セシムルハ要
スルニ今日女子ノ〓育ガ大ニ進步發達ヲ致
シマシテ、男子ト敢テ大ナル差異ガナイヤ
ウニ至ッタノデアル、隨テ又女子ニ對シテ
モ政治上ノ諒解ヲ得セシメルト云フコトハ
立憲治下ノ國民トシテ必要デアル、斯樣ナ
趣旨カラシテ此「女子及」ト云フ文字ヲ削ッ
テ、女子ニ對シテ開放ヲシヤウト云フ趣旨
デアルノデアリマス、卽チ此解禁ト申シマ
スノハ、女子ニ對シマスル政治的ノ一進步
ナリト云フコトハ明ニ申スコトガ出來ルノ
デゴザイマシテ、軈テ是ガ女子ニ對シテ參
政權ヲ認メマスル所ノ出發點ト相成ルモノ
デアリマス」ト斯ウ言ウテ居ルノデアリマ
ス、而シテ本案ト同一内容ヲ有スル議案ノ
本院ニ初メテ出マシタノハ第四十二議會ト
心得テ居リマス、爾來舊國民黨ノ諸君ハ
殆ド每議會ニ同一内容ノ議案ヲ本院ニ提出
シテ居ルノデアリマスルガ、不幸ニシテ未
ダ一回モ通過致サナカタノデアリマス、
其理由トスル所ハ只今引用シマシタ、
第四十四議會ノ委員長ノ報告ニ依ッテ見マ
スルト、大略斯ウ云フコトニナッテ居リマ
ス、卽チ「成程女子ノ〓育ハ今日大ニ進步發
達ヲシテ居ルニハ相違ナイ、併ナガラ未ダ
男子ト同一ノ取扱ヲ受クルマデニ進步シテ
居ルト認メルコトガ出來ナイ、加之女子ニ
對シテハ女子ノ本分ガシレ〓〓有ルノデア
ル、良妻賢母ト致シマシテ、家事ヲ料理シ
テ男子ヲシテ後顧ノ憂ナカラシムベキ天職
ト云フモノガ女子ニハ有ルノデアリマス、
徒ニ男子ト轡ヲ駢ベテ、政治上ニ狂奔スル
ト云フコトハ國家ノ幸福デモナイ、又一家
ノ利益ト云フコトモ出來ナイノデアル、隨
テ女子ガ今日政治上ノ結社ニ加入スルコト
ハマダ其時機デナカラウ」、ト言ウテ居ル
ノデアリマス、併ナガラ諸君、本案提案ノ
趣旨ハ女子ヲシテ政治上男子ト角逐セシメ
ルトカ、又ハ轡ヲ竝ベテ男子ト狂奔セシム
ルト云フヤウナモノデハアリマセヌ、苟モ
政治卽チ國民生活デアル以上、議會ノ豫算
案デアルトカ、又法律案デアルトカハ、總
テ是レ國民ノ竈ト密接ナル關係ガアルノデ
アリマスカラ、眞ニ賢母タリ良妻タルガ爲
ニハ徒ニ夫ヲ天ト仰ギ、·返ス々々モ背ク
ペカラズト云フダケデハ宜シクナイ、宜シ
ク進ンデ男子ト共ニ政治上ノ理解ヲ十分ニ
持ット云フコトデナケレバナラヌト信ジマ
ス(拍手)、尙ホ之ヲ女子本來ノ立場カラ考
ヘテ見マシテモ、或ハ女子ノ社會上ノ地位
ヲ高メルトカ、法律制度上ノ地位ヲ改善ス
ルトカ、或ハ又女子特有ノ社會問題、別シ
テ女子ノ勞働問題、職業問題ヲ解決スルト
カ、一轉シテ女子〓育問題ヲ攻究スル等、
女子自カラ眞劍ニ考ヘナケレバナラヌ幾多
ノ問題ガ山積シテ居ルノデアリマス、固ヨ
リ是等ノ問題ハ國家ノ施設ト男子ノ協力ト
ニ依ッテ解決スベキコトハ申スマデモナイ
ノデアリマスケレドモ、併ナガラ同時ニ女
子自ラノ政治的自覺ニ俟ツベキモノ甚ダ多
シト信ズルノデアリマス、左樣ナ譯デアリ
マスカラ、女子ニ對シテ政治結社加入ノ自
由ヲ認メシムルト云フコトハ、女子ヲシテ
濫ニ空理政談ニ耽ラシメルトカ、或ハ家事
ヲ忘レテ政界ニ狂奔セシムルト云フ爲デハ
ナクテ、寧口家庭ニ人ッテハ眞ニ賢母タリ
良妻タルガ爲ニ、又社會ニ出マシテハ堅實
ナ〓養アル婦人タル爲ニ、專ラ政治上ノ理
解ヲ得セシメヤウト云フ趣旨デアリマス、
今ヤ國民ノ多年望ンデ止マナカッタ普通選
擧法ノ實現モ近ク眼ノ前ニ在リマス、又既ニ
申上ゲマシタ通リ女子ニ對スル第一ノ門戶
ハ第四十五議會ニ於テ開カレタノデアリ
マイ、此時ニ方リマシテ女子ニ對シ、右樣
ノ趣旨ヲ以チマシテ第一一ノ門戶ヲ解放スル
ト云フコトハ恐ラクハ賢明ナル諸君ノ御
贊成ヲ吝マレザル所デアリマセウ、願ク
ハ諸君慎重御審議ヲ賜ハリマシテ、本案
ヲシテ是非トモ成立セシメマスヤウ御協賛
ヲ仰グ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=70
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071・井本常作
○井本常作君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=71
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072・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動機ハ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ、日程第十一及第十二ハ提出者ヨ
リ延期ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=72
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073・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ延期ヲ許可スルコトニ決シマ
シタ、日程第十三、北海道農地特別處理法
案ノ第一讀會ヲ開キ、提出者ノ趣旨辯明ヲ
許シマス-東武君
第十三北海道農地特別處理法案東
武君外十一名提出)第一讀會
北海道農地特別處理法案
北海道農地特別處理法
第一條北海道地方費ハ北海道拓殖ノ爲
自作農業者ヲ扶植シ土地ノ利用ヲ增進
スル目的ヲ以テ私人ノ所有スル土地ヲ
買收シ三十年以內ノ年賊支拂方法ニ依
リ之カ賣拂ヲ爲スコトヲ得
第二條本法ニ依リ買收スル土地ノ代金
ニ充ツル爲北海道地方費ハ總額一億萬
圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコトヲ得
前項公債ノ利率ハ年六分以内トス
第三條本條ニ依リ處理スヘキ土地ノ選
定買收價格土地ノ整理改良又ハ賣拂等
ハ農地特別處理委員會ニ付議シテ之ヲ
決定ス
農地特別處理委員會ニ關スル規程ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條本法ニ依リ賣拂ヲ爲ス土地ノ面
積ハ一戶十五町步以内トス
第五條本法ニ依ル土地ノ買受人ノ資格
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條土地ノ買受人力土地代金ノ一割
以上ノ金額ヲ支拂ヒタルトキハ其ノ所
有権ヲ取得ス但シ殘額支拂ノ擔保トシ
テ該土地ニ抵當權ヲ設定スヘシ
第七條土地ノ買受人カ買受條件ニ違反
シタルトキ又ハ破產ノ宣告ヲ受ケタル
トキハ直ニ土地ヲ返還セシメ又ハ土地
代金ノ殘額ヲ一時ニ支拂ハシムルコト
ヲ得
第八條土地買受人ハ買受代金ノ金額ヲ
支拂ヒタル後ニ非サレハ其ノ土地ヲ他
人ニ貸付又ハ讓渡スルコトヲ得ス但シ
行政廳ノ承認ヲ得タル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
第九條本法ニ依ル土地ノ買收及賣拂ニ
付テハ印紙稅及登錄稅ヲ免除ス
第十條政府ハ本法ニ依リ買收スル土地
代金ノ百分ノ五ニ相當スル金額ヲ每年
度豫算ノ定ムル所ニ依リ北海道地方費
ニ補給スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=73
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074・東武
○東武君 只今上程ニナリマシタ北海道農
地特別處理法案ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ
極メテ簡單ニ說明スル考デアリマス、併シ此問
題ハ議員提出ノ法律案ト致シマシテ、可ナ
リ重要ナ問題ト考ヘテ居ルノデアリマス
ガ、極ク簡單ニ申上ゲル積リデアリマス
ガ、十分間位ノ時間ハドウシテモ御願申サ
ナケレバ其趣旨ヲ述ベルコトガ出來ナイノ
デアリマス、此案ハ北海道農地處理法案ト
云フ極メテ妙ナ名前ニナッテ居リマスルガ、
一言ニシテ申シマスレバ、北海道ニ自作農
制ノ法案ヲ施行致シタイ、斯ウ云フ趣旨ニ
外ナラヌノデアリマス、而シテ此法案ハ四
十五議會以來我黨ノ議員ヨリシテ三回許リ
議院ニ提出致シマシテ、本院ハ可決ヲ致シ
テ居ル唯、名前ガ地代農地法-地代農
地法ト稱シタコトモアリマスルシ、或ハ自
作農創定ト稱シタコトモアルノデアリマス
ガ、今回提出シタル此特別處理法ト云フノ
ト異肢同體デアルノデアリマシテ、內容ハ
同ジクナッテ居ルノデアリマス、自作農ノ
維持創定ニ付キマシテハ我國ニ自作農ヲ創
定シヤウト云フコトハ、殆ド農界ヲ通ジテノ
識者間ニ於ケル確定的ノ議論デアル、議論
デアルガ、今日マデ未ダ曾テ我國ノ自作農
ノ創定案ヲ實行スル機運ニマダ到達シナイ
ト云フコトハ我ガ農業界ノ爲メ、農業社
會ノ爲ニ甚ダ遺憾ヲ禁ズル能ハザルモノガ
アルノデアリマス、我國ノ自作農ノ維持創
定ニ付キマシテハ、屢、學者或ハ論客ニ依。ツ
テ議論ヲサレテ居ルノデアリマスガ、我國
ノ自作農ハ近年遞減ヲ致シテ居ルコトハ諸
君御承知ノ通リデアリマス、大正元年ヨリ
大正九年マデノ間ニ、我國ノ自作農ノ減少
シタコトハ約九万戶ニ達シテ居ル年々一万
戶以上ノ自作農ト云フモノガ減少シ、其影
ヲ失ヒツヽアルト云フ事實デアルノデアリ
マで、是等ノ事實ハ之ヲ我國ノ社會的現象
トシテ如何ニ見ルカト云ヒマスレバ是一
吾々ハ國家ノ大患デアルト實ハ考ヘテ居ル
ノデアリマス、丁度大正元年ニハ「パーセ
ンテーヂ」カラ申シマスレバ三二四四デア
リマシタモノガ、大正九年ニハ三十「パー
セント」六八マデニ遞減致シテ居ルノデア
リマス、戶數ハ卽チ百七十万戶ノモノガ、
大正九年ニハ百六十八万戶トナッテ居ルト
云フヤウナ減少率ヲ示シテ居ルノデアリマ
ス、若シ私共ガ卒直ニ申シマスレバー
國家ノ大體ノ國策カラ申シマスレバ、
此我國ノ自作農制ト云フ、吾吾ガ今提案
シタ法案ヲ日本全國ニ行ヒタイト云フ考
ヲ持ッテ居ル、ケレドモ、此事ハ非常ナ
勇斷ヲ以チ、雄大ナル政策ヲ行フニ非ズン
バハ是ハ容易ニ行フコトハ出來ナイ、農
商務省ノ當局者ノ調査ニ依リマスレバ、
四十五億圓ノ金ヲ以テ、百六十五年間ニ日
本ノ全部ノ小作農ヲ無クスルト云フ調
査ガ出來テ居ルコトヲ吾々ハ承シテ居ルノ
デアル、是ハ諸君モ御存ジノ如ク、斯樣ナ
自作農創定ト云フ案ガ出來テモ、百年河〓
ト云ヒマスケレドモ、百年河〓以上ノ永遠
ヲ期サナケレバ此ノ理想ハ實現スルコトハ
出來ナイノデアリマス、ソコデ吾々ガ色々
考ヘタ結果ニ依リマシテ、兎ニ角日本ニ於
テ自作農ノ此創定ト云フコトハ、朝野ノ國
論ニナッテ居リマスガ、先ツ此前驅ト致シ
マシテ、之ヲ最モ行ヒ易イ所ノ北海道ニ之
ヲ行ヒタイ、斯樣ナ案ガ卽チ今回吾々ガ提
案シタル所ノ此特別處理法案ノ內容デアル
ノデアリマス、何故ニ北海道ニ此事ヲ行ヘ
バ實現シ易イカト申シマスルト、此自作農
創定ニ反對スル所ノ論者ハ、内地府縣デ之
ヲヤラウト致シマシテモ地價ガ高イ、田畑
ノ地價ガ高イカラシテ、ドウシテモ是ハ內
地府縣ニ行ナッテモ、小作人ガ年賦償還ノ
方法ニ依シテ之ヲ完全ニ所有權ヲ移轉ヲス
ルト云フコトニ付テハ、多大ノ負擔ガ重ク
ナルカラシテ出來ナイ、斯ウ云フノデアリ
マく、卽チ勸業銀行ナドノ調査ニ依リマス
ルト、內地ノ田ノ一段步ノ價ガ六百二十圓
畑ガ一段步ノ價ガ三百六十圓ト云フコト
ガ、是ガ普通ノ地價ニナッテ居ル、之ヲ國
家ガ買上ヲシテ分割ヲシテモ、小作人ハ到
底此小作料以上ノ負擔ヲシナケレバ出來ナ
イト云フノデ、是ハ到底不能デアル、斯樣
ナ議論ニ依シテ自作農制定ト云フモノニ反
對サレテ居ル、飜シテ北海道ハ如何カト考
ヘテ見マスルト北海道ノ田畑ハ勸業銀行
ノ調査ニ依リマスルト百二十圓、サウシテ
畑ハ三十圓デアル、又北海道ニハ非常ニ大
地主ガ多イノデアリマシテ、日本ノ五十町
步以上ノ大地積ノ所有者ガ總計三千二百二
十軒アルノデアリマスガ、其内ニ北海道ハ
約三分ノ一、卽チ一千六十軒ト云フモノハ
北海道ガ此大地積ヲ持,テ居ル所ノ大地主
ガ占有シテ居ルト云フ、斯樣ナ事實ニナツ
チ居ルノデアリマス、故ニ北海道ニ自作農
制ヲ布クト云フコトハサマデノ苦痛ガナ
クシテ、非常ナ自作農ニナル、小作者ノ負
擔ガ增加セズシテ、自ラ之ヲ自作農ニスル
コトガ出來ル見込ガ立ツクデアル、是ニ於
テ北海道ハ百二十万町步許リノ小作面積ガ
アリマスガ、此内ニデス、今農家ガ幾ラアル
カト申シマスルト十七万戶アル、十七万七
千三百五十戶ト云フモノニナッテ居リマス
ガ、是ガ小作人ト地主、大地積ヲ持ッテ居
ル地主ト小作人トドウ云フ比例ニナッテ居
ルカト申シマスルト、自作者ノ百分率ノ三
十七ト云フモノハ自作者デアッテ、アトハ
自作兼小作、純小作ガ六十二「バーセント」
卽チ約七割ノ小作人ガ北海道ノ地面ヲ耕作
シテ居ルト云フコトノ現狀ニナッテ居ルノ
デアリマス、北海道ニ移住ヲ奬勵シテー
國家ハ色々ノ保護特典ヲ與ヘテ北海道ニ移
住ヲ奬勵シテ、其行ッタ者ハ自分ノ墳墓ノ
地ヲ捨テヽ北海道ニ移テテク是ガ小作人
ニナルト云フコトハ加何ニシテモ社會狀
態トシテ甚ダ感服シナイ、此制度ノ誤シテ
居ルコトハ既往ノ大地主ヲ保護シ、或ハ家
族保護ニ依ノテ土地ノ占領ヲサシタト云フ
コトヲ、其制度ノ宜シカラザルト云フコト
ハ、今日カラ是ハ非難ヲスレバ相當ノ議論
ガアリスマケレドモ、非難ヲシテ見テモ是ハ
到底何ノ役ニモ立タナイ狀況デアルノデア
リマシテ、是ハ小作者ガ七割以上ヲ占メ
テ、此土地ノ非常ニ多イ所ニ於テ、七割
以上ノ小作人デ、サウシテ土地ニ安定ヲ
シ、土著シテ生產能力ヲ增加スルト云フコ
トハ、到底是ハ不能ナ事實デアル、故ニ吾
吾ハ北海道ノ此廣キ面積ニ於テ、墳墓ノ地
ヲ遠ク移住シタ所ノ農家ノ全體ガ、約七割
ハ小作人デアルト云フヤウナコトハ、圓ハ.
北方開發、北海道開發ノ眞ノ事情トシテ
ハ甚ダ不滿足ノ點ヲ免レヌモノト考ヘ
テ居ルノデアル、此自作農制ヲ北海道ニ行
クト云フコトハ、一見非常ナ理想或ハ空想
ノ如ク見エマステレドモ、決シテ吾々ハ左
樣ニハ考ヘテ居ラナイ、此事ニ付キマシテ
ハ人間ハ·-此故國ニ生レタ人間ハ何人ニ
チモ土地ヲ所有スル所ノ權利ヲ持ツト云フ
コトハ是ハ丁抹ノ偉入ガ既ニ此事ハ唱ヘ
テ居ッテ、此丁抹デハ獨立農ノ奬勵ト云フ
コトニ依リマシテ、今日ノ世界的ノ獨立農
業模範國ヲ作リ出シテ居ルノデアリマス、
又英國ノ農政學者ノ「アーサーヤング」ハ卽
チ所有権ハ如何ナル砂礫モ黃金ニ爲セルト
云フコトハ、是ハ千古ノ金言デアル、小作
人ニ於テ土地ヲ改良シ、或ハ開發シテ眞ニ
生產ノ能率ヲ上ゲルト云フコトハ、是ハ求
メルコトハ出來ナイ、デアルカラシテ此點
ニ於テ此所有權ヲ與ヘ、所有慾ヲ滿足セシ
ノ、又所有慾ノ滿足スルト同時ニ、其生產
ハ必ズ倍加シテ參ッテ、此食糧政策ノ上ニ於
テモ多大ノ貢獻ガアルト云フコトハ、是ハ
疑ナイ事實デアル、故ニ歐羅巴各國、亜米
利加大洲、其他ニ於キマシテモ世界全國ヲ
通ジテ、自作農制定ノ爲ニ國家ガ色ミノ保
護政策ヲ執ラヌ國ハ無イノデアル、英國ニ
於キマシテハ諸君御永知ノ通リ、英國ニ小
地主條例ト云フモノガアリマス、是等ニ付
テ矢張大キナ土地ヲ分利シテ、或ハ牧場デ
アルトカ、狩獵地デアルトカ、或ハ貴族ノ
所有地デアルト云フヤウナモノヲ開放シ
テ、サウシテ「スモールゼングアクト」卽チ
此小作條例ニ依シテ英國ガ此農業振興ヲ圖,
テ居ルト云フコトモ是モ事實デアル、又獨
逸ノ如キハ内國植民ト稱シテ、殆ド今ヨリ
五六百年前カラシテ此制度ヲ行シテ居ルノ
デアル、南獨逸カラ北獨逸ヲ開發シテ、內
國植民ト稱シテ之ヲ獨逸ガ多年ヤッテ成績
ヲ擧ゲテ居ッタ、此農業立國ノ基礎ヲ作シテ
居ルト云フコトモ、是モ顯著ナル事實デア
ル、又獨逸ノ是ハ私ハ能ク存ジマセヌガ、
「レンテンギユーター」ト稱シテ、地代農地
ト稱シテ古クカラ此法制ヲ行ッテ、土地ヲ
分割又讓與致シテ、サウシテ自作農制度ヲ
行ッテ居ル又亞米利加ノ如キ此大キナ面
積ヲ持ッテ、日本ノ十倍以上ノ大面積ヲ持シ
テ居ル所ノ亞米利加ニ於テスラ-一個ノ
單位ノ面積ハ、殆ド亞米利加ハ日本ト違ノ
テ、日本ハ一町一反歩デアルガ、亞米利加
ハ五十町以上ノ單位デアル、斯ウ云フ大キ
ナ面積ヲ持ッテ居ル亞米利加デスラ、是デ
モ矢張各州ニ於キマシテ自作農制定ノ上ニ
於テ國家ガ保護政策ヲ執リ、之ニ就テ種々
ナ法制ヲ以テ矢張今日行ヒツヽアル、又丁
抹ノ事ハ是ハ申スニ及バズ、丁抹ハ國ヲ擧
ゲテ、卽チ國家ノ國策ト致シテ、サウシテ
此自作農制定、所謂獨立ノ保護ニ付テハ徹
底的ニヤッテ居ル、此丁抹ハ國ヲ擧ゲテ國
帑ノ力ノアラン限リヲ擧ゲテ大地主ノ分割
ヲシ、サウシテ貴族或ハ其他ノ大面積ヲ分
割致シテ、サウシテ建築家屋或ハ土地ノ買
牧費ニ、日本ノ邦貨ニ致シマスルト二万圓
以上ノモノヲ、一個ノ單位ニ貸付ヲ致シ
テ、之ヲ自作農ニ引直シテ居ルト云フ、之
ニ依ッテ世界ニ丁抹ノ如ク農業ノ眞ニ發達
シタル國ハ無イト云フコトニナッテ居ルコ
トハ諸君御承知ノ通リデアル、又濠洲、
新西蘭、是等ノ方面デ斯樣ナ大キナ面積ヲ
持シテ、一方哩ニ僅ニ二十六七人シカナイ
ヤウナ所ニ於テスラモ、此制度ヲ行ヒツ
ツアル、日本ハ今農業ガ行詰ッタト稱スル
ガ、農業ノ行詰ッタ眞ノ原因ハ何處ニ在ル
カト言ヘバ或ハ企業ノ上ニ於テ一ツノ企
業ヲ個人ガ單位デヤッテモ、其利益ノ收支
ガ合ハスト云フノガ普通ノ狀態デアル、況
ヤ農業ハ收支ノ計算ガ合ハナイモノデア
ル其單位デヤッタ企業ニ對シテ、其利益
ヲ地主ト小作デ兩分ヲスルト云フノデアル
カラシテ、到底農業ノ計算ガ合フ譯ガナイ、
故ニ小作手議ガ起ッテ來ル、利益ヲ一人デ
取ッテモ尙ホ十分ニ收益ノ滿足ヲスルコト
ガ出來ナイ者ガ地主ニ半分ヤル、勞働スル
者ガ地主ニ他代利益ヲ拂ッテ行クノデアル
カラ、到底日本ノ如キ此島國、帶ノヤウナ
長イ火山國、土地ノ面積ノ少イ國デ立行ク
譯ハナイ、故ニ永遠ノ策トシテ種々ナル方
法ヲ講ジナケレバナラヌガ、差當リ此國策
トシテ自作農制定ノ案ヲ作ルコトハ、國家
ノ國本トシテ是ハ諸君ト共ニ大ニ〓究スル
價ガアルモノデアルト吾々考ヘテ居ル
ノデアル、故ニ吾々ハ、先ヅ取敢ヘズ北
海道ニ此自作農制定ノ方針ヲ立テ、サ
ウシテ著々日本ノ本州ニ於テモ之ヲ實現ヲ
致シタイ、世界各國ノ農業趨勢ヲ見マシテ
モ、斯樣ナル日本ノ如ク五年モ十年モ議論
ヲシテ議論倒レニナッテ居ル國ハ何處ニモ
無イ、各國皆行ッテ居ルノデアルカラ、我
國ニ於キマシテモ是等ノ點ニ付テハ政府當
局者モ、少シク達眼達識ニ依ッテ國策ヲ考
ヘル必要ガアルト吾々ハ考ヘテ居ル、又其
意味ニ於キマシチ我國ニ其自作農ノ制定ヲ
シテ、幾分デモ農業經濟ノ上ニ農業社會政
策ノ上ニ、農業文化ノ上ニ、勞働問題、人
口問題、食糧問題ト云フモノハ是ヨリ出發
シテ是等ノ解決ヲ見ナケレバナラヌコトヽ
考ヘテ居ルノデアル、故ニ吾々ハ此法案ヲ
提出シタノデアリマスガ、此北海道ノ農地、
所謂自作農制定ニ對シテハ、之ヲ國家ニ要
求シテモ-國家ガ之ヲ五千万圓乃至一億
万圓ノ金ヲ國家ニ出セト言ッテモ出シヤウ
ガナイ、故ニ主體ハ國家ニ要求セズシテ、
北海道ガ主體トナッテ是ハヤル案デアル、
北海道ガ主體トナッテドウ云フコトヲスルカ
ト云ヘバ、是ハ金ハ要シナイ唯、北海道ガ道
債ヲ起セバ-北海道ノ法人ニ依シテ道債
ヲ起ス、道ガ公債ヲ發行シテ、サウシテ地
主ノ不良土地、所謂未開ノ土地ヲ詰リ任意
ニ買收ヲ致シテ、サウシテ買收ニ應ジタ者
ニ對シテハ、詰リ此北海道債ヲ交付スルノ
デアルカラシテ、金ハ要ラナイ、何ニモ金
ハ要ラナイ、此案ハ一億万圓デ約三十万町
歩許リヲ開放スルト云フ案ニナッテ居ルノ
デアリマスガ、是ハ一億万圓デアッテモ、一億
万圓ヲ一年ヤ二年デヤルコトガ出來ナイ、
二十箇年ニ亙ッテ之ヲヤルト云フノデアル
カラシテ、年々五百万圓カ乃至三百万圓宛
ノ公債ヲ北海道ガ發行致シ、其發行シタ其
公債ヲ地主ニ渡シテヤッテ、サウシテ地主ハ
其公債ヲ受取ルト同時ニ利子ヲ受取ル、小
作人ハドウデアルカト云ヘバ、又一割ノ益
金ヲ出セバ速ニ抵當權ヲ設定スル所ノ權能
ヲ與ヘテ、サウシテ地主ハ小作人ニ所有權
ヲ渡シテシマフ、サウスルト紙ノ上ノ取引
ガ行ハレル、紙ノ上ノ取引デアッテ現金ヲ
要シナイ、唯〓北海道ガ公債ヲ募集スルコト
サヘ出來レバ此仕事ハ出來テ行クノデア
ル、唯、茲ニ吾々ガ此法案ヲ提出シタニ付
テ、國家ニ要求スル點ガ一ツアル、是ダケ
ノ事業ハ國家事業デアル、國家ガ當面ヤル
ベキモノヲ北海道ノ法人ガヤルノデアルカ
ラシテ、之ニ對スル公債ノ金額ニ付テ五分
ノ補給ヲシテ吳レ、斯ウ云フ案ニナッテ居
ル、五歩ノ補給ヲスレバドレダケノ金ガ要
ルカト申シマスト、是モ五步ノ補給デハ大
シタ金ハ要セナイ、唯、初年ニハ十万圓、ソ
レカラ十五万圓、二十万圓ト云フダケノモ
ノデアッテ、此發行價格ニ對シテモ五步ノ
國家ガ補給ヲ-補助ヲスルト云フコトガ、
詰リ國家ニ御厄介ニナルト云フ法案ニナッ
テ居リマスガ、詳シイ事ハ尙ホ委員會ニ於
テ提案者ヨリ說明ヲスル筈デアリマス、私
ハ大體ニ於テ此提案ノ理由ヲ說明スル譯デ
アリマスガ、滿場ノ諸君ニ於カセラレマシ
テモ、是ハ私ハ可ナリ重大ナ問題デ、我ガ
帝國ノ國策ノ上ニ重大ナル問題ト考ヘテ居
ルノデアル、全ク是ハ地主ノ保護デモナイ、
小作者ヲ救護シ、社會ヲ安定スルト云フ案
デアルト思ッテ提案シテ居ルノデアリマス、
昨年卽チ十三年度ノ貿易ハ、我國ハ六億四
千万圓ノ輸入超過ヲシテ居ル、六億四千万
圓ノ輸入超過ノ中デモ、何カ金額ガ多イカ
ト云ヘバ、食糧ノ缺乏デアル、私ノ調査シ
タ所ニ依ルト、此食糧ノ爲ニ海外ヨリ輸人
シタル所ノモノハ小麥ガ七千万圓、米及初
ガ七千八百万圓、豆類ガ六千万圓、鷄卵ガ
千五百十二万圓、砂糖ガ六千三百万圓、油
粕ガ一億二千万圓、罐詰、乳製品其他ノ食
糧品ガ約一千万圓、之ヲ合スルト三億四千
万圓ト云フモノヲ、我ガ帝國ハ海外ニ食糧
品ヲ仰イデ居ルノデアル、如何ニ輸出組合
ヲ設ケテモ、貿易振興ノ策ヲ樹テヤウト
シテモ、口舌ノ下ニ於テハ此輸出入ノ逆調
ヲ防グコトハ出來ナイ、國際ノ關係ヲ滑ニ
シテ、サウシテ我國ガ輸出超過ニナラナク
トモ、此國際貿易ノ平調ヲ保ツト云フコト
ニ付テハ、何ガ一番當面ノ急務デアルカト
云ヘバ、取リモ直サズ食糧ノ充實ト云フコ
トガ一番急務デアルコトハ是ハ申スマデモ
ナイ、是ハ議論ヲシテ徒ニ空論ヲシテモ國
家ヲ救ウコトハ出來ナイ、眞ニ國家ヲ憂フ
ル者ハ貿易ノ狀況ヲ見レバ明デアル、我
國ハ海外ヨリ三億圓以上ノ食糧品ヲ輸入シ
テ居ル、如何ニ百万遍議論ヲ鬪ハシテモ、
何等國家ニ貢獻スルコトハ出來ナイ、故ニ
吾々眞ニ國家ヲ憂フル者ハ此貿易ノ平調
ヲ滑ニシテ輸出入ノ平均ヲ取クテ、之ヲヤ
ルニハ一段步デモ一町步デモ耕作ヲ奬勵シ
テ、サウシテソレニ依ッテ農產物ヲ多ク生
產ヲスル方法ヲ講ズレバ、ソレダケ一鍬デ
モ國家ノ爲ニ貢獻ヲスルノデアル、ソレデ
ナケレバ此狀態ヲ見テ御互ニ肌ヲ寒カラシ
メザルコトハドウシテモ出來ナイノデア
ル、故ニ吾々ガ農業振興ヲ呌ビ、成ハ農地
整理ノコトヲ呌フト云フコトハ決シテ空論
デハナイ、國家ハ之ニ依ヶテ救濟スルヨリ外
ニ途ガ無イト信ジテ疑ハヌノデアリマス、
然ルニ當局者等ハ其日ノ政務ニ忙シイカ、
刹那主義、其日主義-ホンノ其日主義ニ
送ッテ、サウシテ國家ノ永遠ノ大策ト云フ
コトニ付テハ餘リニ多クノ考慮ヲ費シテ居
ラナイコトヲ、吾々ハ平素遺憾ニ田心ツテ居
リマスカラ、諸君ト共ニ此議會ニ於テ四百
六十人ノ代議士諸君ト共ニ、或ハ普選問題
モ必要デアル、又婦人參政權モ必要デアリ
マスケレドモ、國家ノ當面ノ急務ト致シマ
シテハ、是等ノ事ニ付テ少シ眼光ヲ輝カシ
テ、眼孔ヲ此點ニ注入シテ、サウシテ國家
永遠ノ經綸、大策ヲ樹立スルト云フコトハ
是ハ非常ニ必要ナ事ト考ヘテ居ル次第デア
リマス、一言以テ私ハ提案ノ理由ヲ述ベル
次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=74
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075・井本常作
○井本常作君 本案ハ議長指名、九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=75
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076・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマス-日程第十四、家祿引直處分法案
ノ第一讀會ヲ開キ、提出者ノ趣旨辯明ヲ許
シマス-提出者隅田豐吉君
第四十家祿引直處分法案(隅田豐吉
君外五名提出)第一讀會
家祿引直處分法案
家祿引直處分法
第一條明治二年藩政改革ノ爲減祿ヲ受
ケタル舊和歌山藩士族中同年十二月二
日ノ太政官布告ノ祿制率ヨリ多額ノ減
祿ヲ受ケタル者ハ祿制ノ率ニ引直シ其
ノ不足額ヲ明治三十年法律第五十號第
一條ニ準據シテ給與ス
第二條本法ノ給與ヲ受ケムトスル者ハ
本法施行ノ日ヨリ一年以內ニ其ノ理由
及證據ヲ具シ地方廳ヲ經由シテ大藏大
臣ニ願出ツヘシ
第三條本法ニ規定ナキモノハ明治三十
年法律第五十號ノ規定ヲ適用ス
〔岡田豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=76
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077・隅田豐吉
○隅田豐吉君 提案者ナ一人ト致シマシ
テ、本案提案ノ趣旨ヲ簡單ニ說明致シマ
ス、提案ノ要旨ハ明治二年一一月十五日ニ和
歌山藩ガ其藩政改革ニ當リマシテ、一大英
斷ヲ以テ士族ノ處分ヲ致シマシタ爲ニ、祿
制ノ大改革ヲ致シタノデアリマス、而モ其
祿制ノ改革ハ寧口苛酷峻嚴ト稱セラルヽ程
非常ニ減祿ヲ致シタノデアリマス、從來ノ
祿高ノ十分ノ一、甚シキハ二十分ノ一ニ減
祿致シタモノデアリマシテ、本案ハソレヲ
明治二年十二月二日朝廷ニ於テ旗本士族ノ
祿高ノ整理ヲ致シタ爲ニ祿制ヲ公布セラレ
タ、其太政官ノ布告千百四號ニ準據致シマ
シテ、引直シテ處分ヲ致シテ貰ヒタイト云
フ趣意ナノデアリマス、御永知ノ如ク、德
川幕府ガ倒レマシテ王政ガ復古シ、明治ノ
新政府ニナリマシタ當時ニ於テ、廟堂ニ於
ケル所ノ我ガ政治家ガ、何ニ心ヲ痛メ、頭
ヲ惱マシタカト中シマスルト、申スマデモ
ナク、各藩ノ藩政ノ改革乃至士族ノ處分デ
アッタノデアリマス、其當時ニ於キマシテ
ハ束北卽チ奧羽、北海道ニ於テハ戰塵ガ尙
ホ熄ンデ居リマセヌ、人心灼々甚ダ不安ノ
裡ニ國政ヲ執ッテ居ッタノデアリマス、ソコ
デ廟堂ニ於ケル所ノ大政治家、卽チ岩倉
令三條公ノ如キハ、如何ニシテ此王政復
古ノ實ヲ擧グル爲ニ藩政ノ大改革ヲ爲シ、
士族ノ處分ヲ致スベキカト云フコトヲ審議
セラレタ上ニ於テ、先以テ德川親藩ノ一タ
ル所ノ紀藩ニ命ジテ其大改革ヲ爲サシメ、
而シテ他藩ニ模範ヲ元サセヤウヂヤナイカ
ト云フコトニ端緒ヲ發シマシテンコニ廟議
ガ一決致シマシテ、慶應四年十二月二十九
日、卽ヲ明治元年十二月二十九日ニ朝廷ヨ
リ紀州侯ノ先代德川茂承侯ニ向テ叡旨ヲ
降シテ、貴藩ハ他藩ニ卒先シ、先ヅ藩政ノ
大改革ヲセヨト云フ嚴命ヲ下サレタノデア
リマス、其勅旨ヲ奉戴致シマシテ、紀藩ニ
於テハ大英斷ヲ以テ改革ニ著手シ、前ニ申
上ゲマス通リニ士族ノ大減祿ヲ致シタノミ
ナラズ、此士族ノ大減祿ヲ致シタルモノヲ
以テ玆ニ郡縣ノ制ヲ布キ、更ニ徵兵令ヲ布
キ、而シテ遠ク獨逸ヨリ士官ヲ聘傭致シマ
シヂ、今日ノ陸軍ノ兵制ヲ布イタノデアリ
やっ、左樣ニ致シマシテ尙ホ大砲二百門、
小銃二万挺ト云フモノヲ、其後ニ於テ陸軍
ニ献納致シタ事實モアルノデアリマス、斯
ノ如ク紀藩ハ大犧牲ヲ拂ッテ大改革ヲ爲シ
テ、ソレニ依リマシテ朝廷ニ於キマシテハ
他藩ニ命ジマシテ、卽チ明治二年六月二十
五日ニ他藩ノ改革ヲ爲サシメタ次第デアリ
マっ、其他藩ノ改革タルヤ、士族ノ處分ニ
付テハ減祿ハ二分ノ一乃至四分ノ一デアリ
マシテ、之ヲ紀藩ノ士族處分ニ比較致シマ
スト、非常ナル懸隔ガアッタモノデアリマ
ス、他藩ノ改革ハ區々デアリマシタガ、其
後ニ於キマシテ旗本士族ノ處分ヲスベク、
卽チ明治二十二年十二月二日ニ祿制ヲ布カ
レタモノデアリマス、其祿制ニ依リマシテ
モ、尙ホ紀藩トハ大懸隔ヲ有シテ居ルモノ
デアリマス、所デ其後ニ於キマシテ、明治
三十年ニ法律第五十號ヲ以テ-明治三年
九月十一日以後ニ於テノ家祿賞典祿ノ錯誤
處分ニ對シテハ、其明治三十年ノ法律第五
十號ヲ以テ救濟セラルヽト云フコトニ相
成ッタモノデアリマスルガ、併ナガラ紀藩
ガ大英断ヲ以テ、天下國家ノ爲ニ爲シタル
所ノ減祿ノ此改正ニ付キマシテハ明治三
十年ノ法律第五十號ハ、明治三年ノ太政官
布告ニ準據シナイト云フ意味ニ依ッテ、其
恩典ニ浴スルコトガ出來ナカッタ次第デア
リマス、然ルニ紀藩ノ大改革ニ付テハ前ニ
申上ゲマシタ通リ、國家ノ爲メ非常ニ犧牲
ヲ拂シテ居リマス次第デアリマスルガ故ニ、
此家祿ノ不公平ナル所ノ處置ニ對シテ引直
シテ貰ヒタイト云フ所ノ意見ハ明治三十
二年ヨリ三十三年ニ亙リマシテ本院ニ現レ
マシタ、而シテ三十三年ニハ本院ヲ通過致
シテ居ルノデアリマス、更ニ近ク第四十五
議會乃至第四十六議會ニ於キマシテハ此
法案ト一字一句モ相違ナキ所ノ法案ガ、滿
場一致ノ御可決ノ下ニ本院ヲ通過致シマシ
夕次第デアリマスルガ、遺憾ナガラ貴族院
ニ於テハ審議ノ餘日ガ無イト云フコトノ爲
ニ、握潰シノ運命ニ遭遇シテ居ル所ノ不幸
ナル法案デアルノデアリマス、幸ニ諸君ハ
第四十五議會乃至第四十六議會ニ於テモ通
過致シテ居ル法案デアリマスルガ故ニ、無
論御協賛ヲ願ハルヽコトヽ存ジマス次第
デアリマス、詳細ノ點ハ委員會ニ於テ申述
ベル次第デアリマスルガ、何卒御協賛ヲ只
管御願スル次第デアリマス、尙ホ本案ニ關
係致シテ居ル所ノ事ハ、色こ錯綜致シテ居
リマスガ爲ニ、此處ニ此關係ノ書類ヲ拔萃
ヲ致シテ居リマスガ、議長ノ許可ヲ得テ速
記錄ニ登載ヲ致シタイト存ジマスガ故ニ、
ドウカ御許シヲ願ッテ置キマス(拍手)
〔參照〕
紀藩祿制大改革
明治二年巳年二月十五日
一御國政大改革津田又太郞へ御委任ニ付
粗平均祿出法ニ准シ祿制改革セラル職
制改正モ連帶發布ト雖モ職制ノ部ニ分
記シ爰ニ省ク
御意書、(明治元年十二月二十九日
太政大臣)
天下ノ大勢一變シ門閥ニ不拘人才ヨ登庸
致府藩縣一治ノ制度相立候樣
天朝被仰出候付テハ御趣意謹テ奉體一
新更始自今後領地高二十分ノ一ヲ我等
暮シ方宛ト相定メ
朝廷ノ職務竝治民ニ付テノ用度之外ハ一
切右二十分ノ一ヲ以テ費用ニ供ス可シ就
テハ家中ノ者共ト別帳割ノ通無役高相定
文武ノ職ニ居ル者ハ別段定ノ通役高ヲ遣
ス可シ抑領地五十万石ハ勤王治民ノ爲メ
所賜ニシテ敢テ一人ノ私スヘキニアラサ
レハ其方共ニ於テモ受來ノ知行高ハ卽チ
我等ガ勤王治民ヲ佐クル爲メニテ敢テ私
スヘキ者ニアラサルノ理ヲ辨へ各其ノ職
分ヲ盡シ我等ト共ニ
天朝ノ御趣意ヲ遵奉可仕事
明治二年十二月二日(布)(太政官)第千
百四
一先般各藩大義名分ノ紊壞ヲ正シ海外諸
國ノ形勢ヲ察シ以テ其ノ封土ヲ奉還ス
依テ大イニ公論衆議ヲ被爲盡府藩縣一
途ノ政令ニ歸シ天下ト共ニ綱紀ヲ更張
被遊度御主意ニ付更ニ知藩事ニ被任随
テ家祿之制被爲定藩々ニ於テモ維新ノ
御政體ニ基キ追々改正可致就テハ中下
大夫士以下ノ稱被廢都テ士族及卒ト稱
シ祿制相被定候爾後各其地方官ニ於テ
可爲貫屬旨被仰出候條篤ト御主意ヲ奉
體シ銘々命ヲ守リ其職ヲ可盡候事
但知行所同上地被仰付總テ廩米ヲ以テ
賜候事
一大夫士以下之面々今般家祿御定相成候
ニ付テハ其家來共三代以上相恩ノ者ハ
相應ノ御扶助可被下候間姓名竝ニ從前
ノ祿扶持米等取調早々可申出事
但舊主ニ於テ扶持致シ候儀ハ可爲勝手
事
規則
一祿制二十一等ニ分チ士族ハ十八等ニ止
候事
但士族ノ元高十三石ニ滿タス卒ノ元高
八石ニ滿タサル者ハ是迄通ノ事
一元祿ハ現今被宛行候高ヲ以テ定候事
一舊來同心ノ輩ハ卒ト可稱事
一祿制ハ總テ現石高ヲ可稱事
一祿制當年ハ是迄之通來春ヨリ可減事
一祿ハ都而廩米ニテ賜候問其觸頭ニテ取
糺大藏省へ可申出事
祿制
現米
一元祿万石未滿九千石迄二百五十石
同九千石未滿八千石迄二百廿五石
同八千石未滿七千石迄二百石
同七千石未滿六千石迄百七十五石
同六千石未滿五千石迄百五十石
同五千石未滿四千石迄百三十五石
同四千石未滿三千石迄百二十石
同三千石未滿二千石迄百五石
同二千石未滿千五百石迄九十石
同千五百石未滿千石迄七十五石
同千石未滿八百石迄六十五石
同八百石未滿六百石迄五十五石
同六百石未滿四百石迄四十五石
同四百石未滿三百石迄三十五石
一同三百石未滿二百石迄二十八石
一同二百石未滿百五十石迄二十二石同四十石未滿三十石迄八石
同百五十石未滿百石迄十六石同三十石以下是迄ノ通
同百石未滿八十石迄十三石但免二ツ五分四拾五入ノ法ヲ以テ計ニ
同八十石未滿六十石迄十一石切リ上ゲ可申事
同六十石未滿四十石迄九石以上
明治二年十二月布告祿制ト舊和歌山藩減祿比較表但表中何石迄トアルハ前行未滿何
石迄ノコト但末段迄ハ此限ニ非ズ
元高知行免二ツ五分本藩知行免四ツニ引祿制減祿本藩減祿差額不足額
直シ高現米高現米高過額
一万石未滿九千石迄六千二百五十石未滿二百五十石自二百五十石ヨリ
五千六百二十五石迄至二百十九石○三十一石迄
八千石迄五千石迄二百二十五石二百石0二十五石
七千石迄四千三百七十五石迄二百石百七十五石八斗○二十四石二斗
六千石迄三千七百五十石迄百七十五石百五十石〇二十五石
五千石迄三千百二十五石迄百五十石百二十五石○二十五石
四千石迄二千五百石迄百三十五石百石〇三十五石
三千石迄千八百七十五石迄百二十石七十五石○四十五石
二千石迄千二百五十石迄百〇五石五十石○五十五石
千五百石迄九百三十七石五斗迄九十石三十七石五斗○五十二石五斗
千石迄六百二十五石迄七十五石二十五石〇五十石
八百石迄五百石迄六十五石二十石0四十五石
六百石迄三百七十五石迄五十五石二十石○三十五石
四百石迄二百五十石迄四十五石二十石0二十五石
百八十七石五斗迄
三百石迄切米百石ヨリ七十五二十五石二十石○十五石
石迄
二百石迄百二十五石迄二十八石二十石0
切米五十石迄八石
百五十石迄九十三石七斗迄二十二石二十石一石
切米三十七石五斗迄0
百石迄六十二石五斗迄十六石二十石
切米二十五石迄△四石
八十石迄五十石迄十三石十四石△石
切米二十石迄
以上十八等ヲ士族トス士族十三石以下是迄ノ通
六十石迄切米二十石未滿十一石十石未滿
十五石迄七石五斗〇三石五斗
四十石迄切米十五石未滿九石五石
十五石0四石
三十石迄切米、十石未滿八石四石
八石迄O四石
以上三等卒トス八石以下是迄ノ通
明治九年八月五日太政大臣三條實美
第百八號金祿公債證書發行條例
家祿賞典祿之義永世一代式ハ年限ヲ以テ第一條
給與有之候處期限ヲ改メ明治十年ヨリ別華士族及平民トモ各自ノ家祿賞典祿給與
紙條例之通公債證書ヲ以テ一時ニ下賜候ノ制限ヲ改メ一時ニ之ヲ下渡スルコトト
條此旨布告候事ナシ公債證書ヲ付與スベシ
明治九年八月五日一永世祿ノ者ヘハ
金祿元高賞典祿アル者ハ家祿ヲ合計シ
元高トス
年限
一万圓以上ヨリ千圓以上迄ヲ略ス
千圓未滿九百圓以上七箇年八分五厘
九百圓未滿八百圓以上八箇年分
七百圓以上八箇年二分五厘
六百圓以上八箇年半分
五百圓以上八箇年七分五厘
四百五十圓以上九箇年分
四百圓以上九箇年二分五厘
三百五十圓以上九箇年半分
三百圓以上九箇年七分五厘
二百五十圓以上十箇年分
二百圓以上十箇年六分五厘
百五十圓以上十箇年半分
百五十圓未滿百圓以上十一箇年分
右一箇年六分ノ利子ヲ給ス
百圓未滿七十圓以上十一箇年半分
七十圓未滿五十圓以上
十二箇年分
五十圓未滿四十圓以上
十二箇年半分
四十圓未滿三十圓以上
十三箇年分
三十圓未滿二十五圓以上
十三箇年半分
廿五圓禾滿以下十四箇年分
右一箇年七分ノ利子ヲ給ス
終身祿ノ分ハ右永世祿年限十分ノ五ヲ
給ス但利子ハ永世祿ノ割合ニ同ジ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=77
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078・井本常作
○井本常作君 本案ハ村山喜一郎君提出、
所得稅法中改正法律案外六件ノ委員ニ併セ
テ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=78
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079・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、仍テ其通リ決シ
マス-日程第十五、新聞紙法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キ、提出者ノ趣旨辯明ヲ
許シマス-石川安次郞君
第十五新聞紙法中改正法律案(賴母
木桂吉君外五名提出)第一讀會
新間紙法中改正法律案
新聞紙法中左ノ通改正ス
第二條第四號中「又ハ執行猶豫中」ヲ削ル
第四條第七號ヲ左ノ如ク改メ第八號ヲ削
リ第二項中「持主又ハ其ノ法定代理人ノ
連署シタル」ヲ削ル
七發行人ノ氏名年齡
第五條中「又ハ持主、編輯人、印刷人」及
但書ヲ削ル
第八條第一項中「若ハ編輯人」及「若ハ假
編輯人」、第二項中「及「編輯人」及「及假
編輯人」ヲ削ル
第九條中「編輯人ノ責任」ヲ「發行人ノ責
任」ニ改メ第一號ヲ削リ第二號ヲ第一號
ニ第三號ヲ第二號ニ改ム
第十條中「、編輯人、印刷人」ヲ削ル
第十五條中「又ハ編輯人」ヲ削ル
第十七條第一項ヲ左ノ如ク改メ第二項ヲ
削ル
新聞紙ニ揭載シタル事項ノ錯誤ニ付本
人又ハ直接關係者ヨリ正誤又ハ正誤書
辯駁書ノ揭載ヲ請求シタルトキハ其ノ
請求ヲ受ケタル後日刊新間紙ニ在リテ
ハ第五回迄ノ發行ニ於テ、日刊ニ非サ
ル新聞紙ニ在リテハ第一一回迄ノ發行ニ
於テ正誤シ又ハ正誤書辯駁書ヲ掲載ス
ルコトヲ要ス但シ其ノ正誤辯駁書長文
ニ亙ルトキ、其ノ要旨ヲ揭載スルコト
ヲ得正誤又ハ正誤書辯駁書ハ原記事ト
同一面ニ揭クルコトヲ要ス
第十七條ノ二發行人ハ左ノ場合ニ限リ
正誤又ハ正誤書辯駁書ノ掲載ヲ拒ムコ
トヲ得
-正誤カ却テ事實ニ反スル確證アル
トキ
二日刊新間紙カ同一事項ノ續報トシ
テ次ノ發行ニ於テ同一面ニ依リ明確
ニ正誤シタルトキ
三揭載ノ日ヨリ一年ヲ經過シタルトキ
第十九條新聞紙ハ豫審ノ終結決定前豫
審判事ノ爲シタル審問事項中當該判事
ノ差止メタル部分ヲ掲載スルコトヲ得
ス委託ニ依リ記事ノ掲載ヲ差止メタル
場合委託裁判所カ右差止ヲ解除シタ
ルトキハ受託裁判所カ解除ヲ爲ササ
ルトキト雖新聞紙ニ對シテ效力ヲ生ス
第二十條中「揭載スルコトヲ得ス」ノ下ニ
「但シ慣例ニ依リ支障ナキモノハ此ノ限
ニ在ラス」ヲ加フ
第二十三條內務大臣ハ左ノ場合其ノ新
聞紙ノ発賣頒布ヲ禁止シ必要アルトキ
ハ之ヲ差押へ爾後同一事項ノ掲載ヲ禁
止スルコトヲ得
皇室ノ尊嚴ヲ冒瀆スル事項ヲ掲ケ
タルトキ
一作戰及動員ニ付陸海軍大臣力命合
ヲ以テ差止メタル事項ヲ揭ケタル
トキ
三目的及方法ヲ指示シテ直接暴動ヲ
煽動スル事項ヲ掲ケタルトキ
四著シク風俗ヲ害スル事項ヲ揭ケタ
ルトキ
前項ノ命令ハ其ノ新聞紙ノ版別アルモ
ノニ付テハ版別ヲ表示シ且當該事項中
ノ違反箇所ヲ指示スヘシ
本條ノ命令及之ニ依ル行政官廳ノ處分
ヲ不當ナリトスルトキハ行政裁判所ニ
出訴シ命令及處分ノ取消竝直接被リタ
ル損害ノ賠償ヲ求ムルコトヲ得
第二十四條中「安寧秩序ヲ紊シ又ハ風俗
ヲ害」ヲ「前條第一項ニ該當」ニ改ム
第二十七條削除
第二十八條中「又ハ編輯人」及「三月以下
ノ懲役又ハ」ヲ削ル
第二十九條中「三百圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第三十條中「百圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第三十一條中「及編輯人ヲ百圓」ヲ「ヲ五
十圓」ニ改ム
第三十二條中「百圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第三十三條中「及締輯人ヲ百圓」ヲ「五十
圓」ニ改ム
第三十四條中「三百圓」ヲ「百圓」ニ改ム
第三十五條中「、第二項」ヲ削リ「編輯人」
ヲ「發行人」ニ改ム
第三十六條中「編輯人」ヲ「五百圓」ヲ「發
行人ヲ五十圓」ニ改ム
第三十七條中「編輯人ヲ三月以下ノ禁錮
又ハ二百圓」ヲ「發行人ヲ五十圓」ニ改ム
第三十八條中「、第四十三條ニ依ル禁止ノ
裁判」ヲ削リ「、編輯人ヲ六月以下ノ禁錮
又ハ三百圓」ヲ「ヲ百圓」ニ、「二百圓」ヲ
「百圓」ニ改ム
第三十九條中「六月以下ノ禁錮又ハ三百
圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第四十條削除
第四十一條削除
第四十二條削除
第四十三條第二十三條第一號乃至第四
號ニ該當スルトキハ發行人ヲ三百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第四十五條新聞紙ハ誤報ヲ掲載シ且其
ノ正誤又ハ正誤書辯駁書ノノ載載ヲ拒ミ
タルトキニ非サレハ刑事及民事ニ關シ
責ヲ負フコトナシ但シ陷害ニ出テタル
場合又ハ正誤、正誤書若ハ辯駁書ノ揭
載方カ惡意ニ出テタル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
名譽囘復ニ關スル廣告ハ被告ノ新聞紙
ニ爲スモノトス
本條ノ訴ハ一年ヲ以テ免貴時效トス
附則
本法ハ大正十四年六月一日ヨリ之ヲ施行
ス
〔石川安次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=79
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080・石川安次郎
○石川安次郞君 新聞紙法ノ改正、此案ハ
單リ新聞社、新聞記者ニ關係スルバカリデ
ナク、日本ノ文化ニ大關係ヲ持,テ居ルル問
題デアリマシテ、勿論黨派ノ問題デナイノ
デアリマス、私ハ本案ノ如キハ殆ド說明
ヲ要セズシテ御協賛ヲ得ルコトヽ思ヒアス
ケレドモ、簡單ニ申上ゲタイ、現行新聞紙
法ハ凡ソ十六年前ニ改正ニナッタモノデア
リマスルガ、是ハ舊新聞紙條例ヲ根柢トシ
テ聊カ訂正シタ位ノモノデアリマシテ、此
爲ニ新聞紙ノ發達ヲ妨ゲ、新聞社ノ苦シム
コト、今日モ依然トシテ舊新間紙條例ノ時
ニ苦ンダヤウナ結果ガ非常ニ多イノテアリ
やく、故ニ今日ヲ改メタイト云フノデ種々
ナル細目ニ亙ッタ改正案ヲ提出致シタノデ
ゴザイマスガ舊新間紙條例ナルモノハ-
日本ノ新聞紙ハ極メテ新シイ仕事デアリマ
シテ、昔ニハ無カッタガ、維新開國ノ後ニ
出來テ、初ハ自由デアッタノニ閥族官僚ノ
徒日本憂國ノ志士ガ此新聞紙ニ依ッテ政
府ヲ攻擊シ、政府ノ缺點ヲ攻撃スルト云フ
コトヲ憤ッテ、此新聞紙條例ノ武器ヲ以テ
民間ノ志士ヲ壓迫シタル歴史ハ、日本ノ文
化史ニ一大汚點ヲ印シテ居ッタモノデアリ
マス(拍手)是ガ爲ニハ天下ノ名士ト稱セラ
レタル、其當時ノ新聞記者ノ優秀ナル方々
ハ多ク牢ニ打込マレタ、成島柳北、末廣重
恭、或ハ藤田茂吉ナドト云フ故人ニナッタ
名士モ牢ニ這人ラレマシタガ、現ニ本院人
一席ヲ占メラレテ居ル政界ノ長老箕浦勝人
先生ノ如キモ、此新聞紙條例ニ依シテ牢獄ノ
慘苦ヲ嘗メラレタト云フコトハ明ナル事實
デアリマス(拍手)而シテ新聞紙條例ガ既ニ
此長イ間吾々新聞記者ヲ苦シメ新聞紙ニ關
係セラレタル所ノ方々ハ、例ヘバ犬養先生
ノ如キ、尾崎先生ノ如キ、或ハ加藤政之助
先生ノ如キ、現ニ本院ニ在ラレル方ハ既
ニ新間記者時代ニ十分ニ御體驗ニナッテ居
ルノミナラズ、此新間紙法ガ改定サレテカ
ラ後デモ、舊新聞紙條例ノ如ク甚シクハナ
イケレドモ、尙ホ閥族官僚ノ徒ガ非常ナル
壓迫ヲ加ヘントシテ出來タル所ノ種々ナル
箇條ハ、新聞紙ヲ大變ニ壓迫シテ、新聞社ニ
從事シテ居ル所ノ人々ヲ非常ニ苦シメ、現
ニ内閣總理大臣ノ地位ニ居ラレル所ノ加藤
高明子爵ノ如キモ、東京日日新聞社ヲ御經
營ニナッタル當時ニ、此新間紙條例ノ不可ナ
ルコトハ、十分ニ御體驗ニナッタコトヽ確
信シテ疑ハナイ、又政友本黨ノ總栽ノ地位
ニ居ラレル所ノ床次竹二郞君モ、暫クノ間
東京每夕新聞ノ社長トナラレテ居ッタカラ、
確ニ此新聞紙法ノ宜クナイゴトハ十分ニ御
體驗ニナッテ御承知ノ事ト存ジマスル、是
ハ殆ド議論ノ無イ事デアリマシテ、今日此
改正案ガ此議場ニ現レテ、此議會ヲ通過シ
テ政府ノ方々、總理大臣モ、政友本黨ノ總裁
モ、喜ンデ是ハ一致デ以テ御改正ニ相成ル
ベキコトヽ私ハ確信シテ疑ハヌ者デアリマ
ス、殊ニ此新聞紙ガ斯ノ如クニ、斯ウ云フ
酷イ舊新聞紙條例カラ、ソレヲ少シク改メ
タル新聞紙法ニ依シテ壓迫セラレルニモ拘
ラズ、日本ノ新聞紙ハ如何ニモ色ニナル人
ノ努力ニ依ッテ駸々トシテ進步シ、日露戰
爭ノ後、「ポーツマス」會議ノ後私共世界ヲ
一周シテ歸ッタル時ニ、日本ノ新聞紙ノ世
界ニ於ケル公評ハ、「スエズ」以束ニ於テ日
本ノ優良ナル新間ニ及ブモノハナイ、「ス
エズ」以東ニ於テハ新聞界ニ於テハ日本
ノ新聞ガ一番良イト云フ公評デアリマシタ
ガ、爾來二十年、日本ノ進步ハ日本ヲ三大
强國ノ一ニ上スマデニ駸々トシテ進ム、其
進步ヨリモ更ニ新聞界ノ努力ノ結果トシ
テ、此進步ハ餘程著シク、吾々ハ最近ニ西
洋各國ノ輿論ヲ聞イテ見テモ、倫敦ノ一二
ノ新聞、紐育ノ一二ノ新間ノ外ハ日本ノ
最優良ノ新間ニ及ブモノハナイ位デ、今此
新間紙法ノ壓迫アッテサへ是ダケニ進步シ
タル所ノ日本ノ新聞紙ハ、玆ニ總理大臣、
政友本黨ノ反對ノ方々、與黨三派ノ方々、
無所屬ノ方々、總テノ人々ニ依ッテ新聞紙
法ノ改正ヲ行シテ、新聞紙ニ對スル壓迫ヲ
除イテ、此自由ナル進歩ヲ遂ゲシメタナラ
バ、私ハ文化ノ標準トナルベキ新聞紙ガ、
倫敦、紐育ノ新聞紙ヲ壓倒シテ、世界ノ新
間ノ最モ優良ナルモノトナルコトハ疑ナイ
ト思フ、是レ新聞紙ノ爲ニ言フニアラズ、
日本ノ文化ノ爲メ、國民ノ爲メ、新聞紙ニ
對スル國論ノ間ニハ往々ニシテ種々ナ風評
ヲ聞ク、吾々モ亦甚ダ不滿足デアル、而シ
テ其缺點ハ一二ニ止ラズ、記者ニ責任ア
リ、或ハ經營者ノ責任トスベキモノガア
ル、併ナガラ其新聞紙ノ發達ガ、遲々トシ
テ進マザル最大原因ハ閥族官僚ノ遺シタル
新間紙法ナルモノハ玆ニ之ヲ撤廢スルコト
ハ日本ノ文化ノ爲ニ吾々ガ爲サミルベカ
ラザル事デアルト確信シテ疑ハザル者デア
リマス、諸君、ドウゾ國ノ爲ニ、文化ノ爲
ニ、滿場一致ヲ以テ御協賛アルヤウニ、細
目ニ至ッテハ委員會ニ於キマシテ、更ニ十
分ニ御說明ヲ提出者ノ方カラ致スデゴザイ
マセウ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=80
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081・井本常作
○井本常作君 本案ハ議長指名、特ニ十八
名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=81
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082・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ、此場合俗越デアリマスガ一言申
上ゲマス、是ヨリ上程サレントスル建議案
ハ多數デアリマス、而シテ何レモ皆重要ナ
案件デアリマス、努メテ本日中ニ多少ノ時
間ハ延長致シテモ議了致シタイト考ヘテ居
リマス此故ニ提出ノ趣旨辯明竝ニ質問應答
ハ成ベク簡明ニセラレンコトヲ切ニ御願
致シテ置キマス(ヒヤ〓〓)日程第十六乃至
第二十二ハ便宜上一括議題ト致シ、各案每
ニ提出者ノ趣旨辯明ヲ許スニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=82
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083・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ガ無イト
認メマス、仍テ日程第十六、染料〓税撤廢
ニ關スル建議案、日程第十七、綿絲關稅撤
廢ニ關スル建議案、日程第十八、綿絲輸入
關稅撤廢ニ關スル建議案、日程第十九、綿
絲輸入關稅撤廢ニ關スル建議案、日程第二
+、關稅改正從進ニ關スル建議案、日程第
二十一、蛋粉ノ關稅定率法改正ニ關スル建
議案、日程第二十二、煉乳粉乳輸入關稅引上
ニ關スル建議案ヲ一括シテ議題ト致シ、各
提出者ノ趣旨辯明ヲ求メマス日程第十六、
第十七-提出者武藤金吉君
第十六染料關稅撤廢ニ關スル建議案
(武藤金吉君外一名提出)
染料關稅撤廢ニ關スル建議案
染料關稅撤廢ニ關スル建議
染料關稅ヲ速ニ撤廢セラレムコトヲ望ム
右建議ス
第十七綿絲關稅撤廢ニ關スル建議案
(武藤金吉君外一名提出)
綿絲關稅撤廢ニ關スル建議案
綿絲關稅撤廢ニ關スル建議
綿絲關稅ヲ速ニ撤廢セラレムコトヲ望ム
右建議ス
第十八綿絲輸入閣稅撤廢ニ關スル建
議案(關直彥君外一名提出)
綿絲輸入關稅撤廢ニ關スル建議案
綿絲輸入關稅撤廢ニ關スル建議
政府ハ速ニ關稅定率法中綿織絲ニ關スル
輸入關稅ヲ廢止スルノ法律案ヲ帝國議會
ニ提出スヘシ
右建議ス
第十九綿絲輸入圍稅撤廢ニ關スル建
議案(飯塚春太郞君外一名提出)
綿絲輸人關稅撤廢ニ關スル建議案
綿絲輸入關稅撤廢ニ關スル建議
政府ハ速ニ關稅定率法中綿織絲ニ關スル
輸入關稅ヲ廢止スルノ法律案ヲ帝國議會
ニ提出スヘシ
右建議ス
第二十關稅改正促進ニ關スル建議案
(太田信治郞君外二名提出)
關稅改正促進ニ關スル建議案
關稅改正促進ニ關スル建議
我カ帝國ノ現行關稅定率法ハ制定以來十
有四年ヲ經過シ其ノ間多少ノ改正アリタ
レ共歐洲ノ大戰ニ依リ世界ノ物價ハ非常
ナル變動ヲ爲シタルニモ拘ラス明治四十
一年ノ物價ヲ基礎標準トシテ算定シタル
從量稅ヲ以テ課稅スルモノ多數ヲ占メ居ルニ
依リ現在ノ物價ニ依ル從價稅トノ均衡ヲ
失シ大戰以來歐米列國カ自國ノ產業保護
ト貿易輸出入ノ均衡ヲ保全スル爲其ノ關稅
ノ改正ヲ斷行シタルニ獨リ我カ國ノ關稅ハ
其ノ均衡ヲ得サル爲國内產業ノ振興ヲ妨ケ
延テ貿易ト輸人超過ヲ助長シ其ノ結果爲
替ノ低落ハ生活必需品ノ騰反ヲ促シ尚嗜
好品ノ輸入增加ハ國民ヲシテ益奢侈贅澤
ノ惡風ヲ誘導セムトス今ヤ我カ國ハ經濟
的革正ヲ要スルノ秋ナリ政府ハ時代ノ趨
勢ニ鑑ミ速ニ適當ナル改正案ヲ提出セラ
レムコトヲ望ム
右建議ス
第二十一蛋粉ノ關稅定率法改正ニ關ス
ル建議案(平野光雄君外一名提出)
蛋粉ノ關稅定率法改正ニ關スル建議案
蛋粉ノ關稅定率法改正ニ關スル建議
政府ハ蛋紛ノ關稅定率法改正法案ヲ速ニ
今期議會ニ提出セラレムコトヲ望ム
右建議ス
第二十二煉乳粉乳輸入關稅引上ニ關
スル建議案(小池仁郞君外十七名提
出
煉乳粉乳輸入關稅引上ニ關スル建議案
煉乳粉乳輸入關稅引上ニ關スル建議
煉乳粉乳輸入關稅ヲ左記ノ如ク引上ラレ
ムコトヲ望ム
一煉乳從價三割
一粉乳從價三割五分
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=83
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084・武藤金吉
○武藤金吉君 只今上程ニナリマシタ建議
案ハ國民生活竝ニ我ガ產業ニ重大ナル關
係ヲ有スル建議案デアリマスカラ、政府當
局ノ出席ヲ要求シマス
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=84
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085・武藤金吉
○武藤金吉君 極メテ簡明ニ染料關稅撤廢
ニ關スル建議案ノ趣旨ヲ說明ヲ致シマス、染
料工業ノ政策ニ付キマシテハ、世界戰爭以
後ニ於テ非常ナ國家ノ消長ニ關スル重大ノ
關係ヲ持チ來リマシテ、今ヤ世界ニ於テ染
料工業ノ問題ハ延テ國防ニ關係ヲ有シ、又
此染料工業ヨリシテ、世界ニ於ケル化學ノ
蘊奥ヲ究メテ、是ヨリモ生ズル所ノ化學工
業ハ世界ノ强弱ヲ判別スル位ノ力ヲ持ツ
事業トナッテ居ルノデアリマス、而シテ我
國ニ於キマシテハ御承知ノ如ク、大正四年
ニ歐羅巴戰爭ノ際ニ於キマシテ保護會社ヲ
設立セシメテ、之ニ特殊ノ補給利子ヲ與
ヘ、昨年九月マデニ既ニ千一一百四十万圓ノ
保護ヲ與ヘテ、政府ノ說明スル所ニ依リマ
スト、其中デ數十種ハ成功致シテ居ルト申
サレマス、更ニ又政府ハ新ニ染料工業奬勵
ニ關スル法律案ヲ只今提出サレマシテ、更
ニ二十種ノ獎勵法ヲ六箇年間、一箇年百圓
以内ノ奬勵金ヲ出シテ奬勵スル、斯ウ云フ
案ヲ出シテ只今委員會ニ付サレテ審議中デ
アリマスガ、我國ニ於テ染料ヲ使フ種類ハ
三百餘種ニナッテ居リマス、而シテ此出來
上ッテ成功シタト稱スルモノハ、私ノ知ル
所デハ二十八種、更ニ二十種ヲ殖シマシテ
モ五十種ニ滿タナイノデアリマス、然ラバ
此染料工業ノ政策ハ國防ト關係ヲ持チ、卽
チ爆彈ヲ拵フ、毒瓦斯ヲ拵フ、藥ヲ拵フ、
斯樣ナ仕事ニ對シマシテハ、國家ガ相當ノ
保護ヲスルト云フコトハ勿論デアリマス
ガ、一面ニ於テ吾々ガ生活ノ必需、品タル織
物織物ノ色ヲ染メル爲ニ國內ニ於テ使フ
所ノ染料ヲ一面ニ於テハ安クスルト同時
ニ、又我國ノ纖維工業ハ主トシテ之ヲ輸
出ヲ奬勵スルト云フコトノ原料ニ使フニ付
キマシテハ、從來ノ保護會社ノ設立、高率
關稅ノ賦課、輸入制限等ト云フモノハ果
シテ之ニ適當スルモノデアルカ否ヤ、私
共ハ此國防上日本ニ於テ奬勵スベキモノニ
對シマシテハ特殊ナ保護方法ハ認メルモ
ノデアリマスルガ、爾餘ノ染料ニ付キマシ
テハ關稅ヲ撤廢シテ、一ハ輸出ノ奬動ヲ爲
シ、一ハ國內ノ生活ヲ易クスルコトノ方針
ヲ執ッテ欲シイト思フノデアリマス、比點
ニ付キマシテハ前々回ニ於キマシテ政府ニ
質問ヲ致シテアリマスカラ、大要今日ノ說
明ハ省略ヲ致シマシテ、之ヲ要スルニ此建
議案ハ國家ガ保護スベキモノハ致方ナイ
ノデアリマスルガ、其爾餘ノモノニ付キマ
シテハ、關稅ヲ撤廢シテ右ノ趣旨ヲ貫徹ス
ルコトニシタイト云フノガ、本建議案ヲ出
ス理由デアリマス、宜シク御審議ニ與リタ
ウ存ジマス(拍手)次ハ綿絲關稅撤廢ニ關ス
ル建議案デアリマス、諸君、綿絲ノ需要ハ
世界ニ於テ我國ハ最モ其需要ノ多イ國デア
リマシテ、又綿絲紡績ノ發達ハ近時著シキ
發達ヲ遂ゲテ居ルノデアリマス、而シテ此
綿絲ハ然ラバ紡績會社ハ現在ニ於テ如何ナ
ル地位ニ在ッテ、如何ナル國家ノ特殊ノ保
護ヲ受ケテ居ルカ、又紡績會社ノ狀態ハ保
護ヲセナイデヤッテ行ケルカ、ヤッテ行ケナ
イカ、又此綿絲ニ依シテ出來ル綿製品ハ如
何ニ國內デ使ハレテ居ルカ、又綿絲ニ依ツ
テ出來ル綿製品ノ海外輸出ハ如何ナル狀況
ニ在ルカト云フコトハ、近昨經濟政策ヲ論
ジ、國民生活ノ狀態ヲ論ジ、又此大問題、
實際問題ト致シマシテハ、私共ハ之ヲ眞面
目ニ、最モ嚴密ニ此審査ヲ致シマシテ、相
當ノ解決ヲ致シタイト云フ熱心カラ此案ヲ
出シタ譯デアリマス、第一社會政策上、我
ガ國民多數、殊ニ中產以下ノ國民ガ使ヒマ
スル所ノ綿服、綿製品ト云フモノヲ安クシ
テ、其生活ヲ緩和スルト云フコトハ物價
調節ノ上カラ行キマシテモ適切有效ナル所
ノ政策デアルト信ジマス、第二ハ輸出奬勵
ノ經濟政策上カラ申シマシテモ、我國ガ何
ヲ以テ立國產業ノ基礎トスルカト云ヘバ、
私ハ日本ニ於テハ纖維工業ガ第一ナリト算
ヘルモノデアリマス、其繊維工業ノ中デ生
絲即チ蠶絲-蠶絲トンデ海外ニ輸出ノ
見込ノアルモノハ綿製Ⅲデアリマス、輓近
十箇年ノ間ニ綿製品ノ輪出ノ增加ハ、大正
五年ニ於テハ六千万圓デアリマス、然ルニ
大正十二年ニハ二億六千四百九十九万圓ニ
上ッテ居ルノデアル、而モ此原料ハ悉ク綿
絲ニ俟タナケレバナラナイ、然ルニ此原料
タル綿絲ハ如何ノ狀態デ在ルカト申シマス
レバ、紡績會社ハ有ユル特殊ノ保護ノ下
ニ、更ニ紡績會社ハ關稅ノ保護ノ下ニ、操
業短縮ノ下ニ、輸入制限ノ下ニ、有ユル輸
入スル所ノ綿絲ノ防禦方法ヲ執ルト同時
ニ、國内ニ於テハ資本家ノ横暴、資本家ノ
專横甚シキモノガアルノデアリマス(拍手)
是ハドウシテモ直シテ、國民生活ノ中ニ於
ケル所ノ必需品ヲ安クシ、輸入品ノ原料ヲ
安クスルト云フコトガ出來マセヌケレバ、
輸出ノ奬勵卽チ輸出人貿易ノ均衡モ、又爲
替ノ均衡モ、金ノ解禁モ、此輸出入ノ均衡
ガ全クナイトキハ、何ノ效モ無イト私ハ確
信スル者デアリマス(拍手)果シテ我國ガ纖
維工業ヲ發達シ、國策上此工業ヲ奬勵スル
ト致シマスレバ、紡績ノ絲ノ輸入ノ關稅ヲ
撤廢スルト云フコトガ、私ハ紡績會社ニ對
シテモ忠實デアルト同時ニ、國家ノ實際カ
ラ言ッテ私ハ適當ナル措置デアルト考ヘル
ノデアル、紡績聯合會ノ調査ニ依リマスル
ト、大正十年ヨリ十二年ニ至ル我ガ經濟界
ノ最モ不況ナル時ニ於テモ、同會所屬ノ紡
績會社ハ五十五、資本金ハ三億二千万圓、
此運轉錘數ガ四百二十万錘ニナッテ居ル、
而シテ平均ノ純益率ハ二割五分ニナッテ居ル
ノデアリマス、其中ノ十大會社ノ所有錘數
三百八万錘デアッテ、全體ノ七割四分ヲ占
メテ居ルノデアリマス、之ヲ平均致シマス
レバ、實ニ三割八分ノ平均ニナッテ居ルノ
デアリマス、過去十年間ノ統計ヲ見ルニ、
綿絲ノ輸出サレタモノハ年々餘リ增加シテ
居ラナイ、之ニ反シテ綿製品ノ輸出ハ七倍
ノ增加ヲ致シテ居ル、今ヤ原料輸出ノ時代
ハ去ッテ、精製品ノ輸出ノ時代ニ移ノテ居
ルノデアル、若シ綿布ガ安ク原料ヲ供給サ
レルナラバ、只今三億近クノ綿製日叩ハ、數
年ナラズシテ私ハ生絲ト竝ンデ輸出ガ出來
ルコトヲ確信スル者デアリマス(拍手)然ル
ニ綿絲關稅ノ撤廢ハ、紡績業者ガ人爲的ニ
價額ノ釣上ヲ爲シテ、其價額ノ釣上ハ操業
短縮トナリ、資本ノ壓迫トナリ、紡績業者
ハ其外ニ種々ナル特殊ノ保護ヲ有シテ居
ル、卽チ船賃ガ安イ、仕入方ニ付テモ、六
箇月モ金ヲ拂ハヌデ居ル、自由ヲ有シテ居
ルニ拘ラズ、綿製品ハ市場ニ織物ニナッテ、
荷ガ出レバ直ニ金ガ這入ル、斯ノ如クニ致
シマシテ、我國ノ紡績ハ今日マデハ保護サ
レテ居ッタノデアリマスガ、今ヤ紡結業ハ
斯樣ニ保護ヲ致サヌデモ、十分ニ相當ノ利
益ガ擧ッテ居ル、擧ッテ居ルバカリデハナ
イ紡結業者其者モ、最早開稅ノ保護モ特
殊ノ保護モ要ラヌト云フコトハ明ニ中サレ
テ居ルノデアリマス、亡クナリマシタ和田
豊治君ハ公開ノ席ニ於テ、紡績保護ハ之ニ
止メテ置イテ、サウシテ綿製品ヲ出ス方ニ
力ヲ注グト云フコトガ、日本ノ經濟政策ト
シテ貿易政策トシテ相當ナリト云フコト
ヲ主張サレテ居ッタ、是ハ一昨年デアリマ
シタ、然ルニ紡績業ハ斯ノ如キ發達ヲ致シ
テ、斯ノ如キ利益ヲ得テ、甚シキハ七割ノ
配當ヲ爲シ、其重役ハ數十万圓ノ賞與及報
酬ヲ握シテ居ノテ(「ヒヤ〓〓」拍手)サウシテ
經濟政策ガドウノ、輸出貿易ガドウノト言ツ
テ、社會政策ヲ呶とスルガ如キ政治家、若ク
ハ實業家ガアリトスレバ、殆ド是ハ御話ニ
ナラナイモノデハナイカト思フ(拍手)諸君
吾々ハ紡績業者ガ本邦ノ工業ノ中心デアル
コトヲ認メル、中心デアルコトヲ認メルガ、
何故ニ保護ノ時代ヲ去ノテ、獨立シテ其原料
ニ依シテ綿製品ヲ國民ニ安ク提供シ、其原料
ニ依ッテ輸出綿製品ヲ盛ニ出スト云フコト
ニ手ヲ擴ゲテ經營ニナラナイノデアルカ、
何故紡績業者ハ操業短縮ヲ爲シ、內ニ於テハ
工女ヲ苦シメ、全夜業ヲ爲シ、深夜業ヲ爲シ
工女ヲ苦シメ、サウシテ其紡績工場カラハ
多數ノ癈疾病者ヲ出シテ置キナガラ、民衆
ニ媚ビル所ノ說ナドヲ執タリシテ、利益ヲ
壁斷シテ居ル、諸君、勞働者ノ「ストライキ」
ハ可憐ナモノトハ私ハ思フノデアリマス、
勞働者ノ「ストライキ」ハ賃銀ノ要求、待遇
ノ俊待ヲ迫ル位ニ止ルガ、資本家ノ横暴、
資本家ノ「ストライキ」ニ至ッテハ國家國
民ノ生活ヲ毒スル所ノ甚シキモノガアルノ
デアリマス(拍手)又資本家ノ橫暴ト自己ノ
營業ノ保護トハ國家ノ產業ヲ害スル甚シ
キモノガアルノデアリマス(拍手)諸君、金
ノ解禁論-武藤山治君ノ金ノ解禁論モ
拜讀致シマシタ、又武藤山治君ハ此事ニ付
キマシテハ當業者デアル、又自由貿易論者
デモアル、經濟論ノ達者ナル事、演說ノ立
派ナル事ニハ敬服ヲスルガ、武藤山治君ハ
自由貿易論ヲ唱ヘ、金解禁論ヲ唱ヘテ居ッ
テ、此綿絲ノ關稅ダケニハ保護論ヲ唱ヘテ
居ルト云フコトハ敢テ武藤山治君ヲ論ズ
ル譯デハアリマセヌガ、武藤山治君ハ紡績
聯合會ノ牛耳ヲ執ッテ居ル、紡績業者ノ泰
斗トシテ、或ハ此建議案ニ付テモ質問ノ通
告ヲサレテ居ル位、該博ナル知識ヲ持ッテ
居ラレマスガ、此間違クタ知識ヲ以テ、又
自分ノ立場ヲ明ニシナイデ-聯合會ノ武
藤山治君デアルナラバ格別、苟モ我ガ議政
壇上ニ立ッテ我ガ經濟政策ヲ論ジ、我ガ貿
易政策ヲ論ジ、國民生活ヲ云爲スル場合ニ
ハ、先ヅ當業者ノ位置ヲ離レテ、紡結業ハ
如何ナル特點ヲ持シテ居ルカ、如何ナル位
置ニ在ルカ、ドノ點マデ讓ノテ、ドウシテ
原料ヲ安クシテ國民ニ提供ガ出來ルカト云
フコトヲ自省スルコトガ、最モ必要デハナ
イカト思フノデアリマス(拍手)サウスルト
失業者ガ出テ來ルト云フカモ知レヌガ、紡
績業カラ多少ノ失業者ガ出來テモ、綿製品
ノ方デ安イ原料デ殖エテ參リマシタナラ
バ綿製品ヲ經營ナサレタナラバ宜シイノ
デハアリマセヌカ、國家ノ大局カラ見レ
バ一面ニ於テ資本ノ橫暴、資本家ノ専橫
ヲ防グト同時ニ民衆ノ利益ヲ圖リ、又輸出
貿易ヲ盛ニスルト云フコトガ此趣意ニナツ
テ居ルノデアリマス、之ヲ要スルニ尙ホ憲
政會カラモ革新倶藥部カラモ同樣ノ建議案
ガ提案サレテ居リマス、私共ハ此實際問題
ニ付キマシテハ、力メテ實際的ニ之ヲ攻究
シ、政府當局ノ反省ヲモ促シ、サウシテ内
地ニ於テハ吾々國民ノ生活問題ヲ緩和シタ
イ、生活問題ヲ緩和スルニ付キマシテハ
食物ノ自給自足ト、著ル物ヲ安ク提供スル
ト云フコトガ、國内ニ於テハ國民生活安定
ノ主ナルモノデアル、又國ヲ富マシ、サウ
シテ我國ノ經濟界ヲ安定サセ、產業ヲ發達
スルト云フコトニ付キマシテハ、生絲ト同
ジニ綿絲業ヲ盛ナラシメ、輸出ヲ盛ニシ
テ、我國ノ產業ノ發達ト共ニ、世界ニ於ケ
ル爲替相場ノ平定モ圖。テ行クト云フコト
ガ本ニナリハセヌカト考ヘテ、此建議案ヲ
提出致シタ次第デアリマス、尙ネ詳細ノ事
ハ委員會ニ於テ調査シタル所、及意見ノ
在ル所ハ申述ベタイ積リデアリマス、他派
カラモ提出サレテ居リマスカラ、私ハ此程
度ヲ以テ說明ノ一端ヲ表明シテ壇ヲ降リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=85
-
086・小泉又次郎
○剛議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シ質疑
ノ通告ガアリマス
〔「各建議案ノ說明ヲ全部濟マシテカラ
ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=86
-
087・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 辯明ヲ全部シタ
後ニ質疑ヲ許スコトニ致シマス、日程第十
八山本芳治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=87
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088・山本芳治
○山本芳治君 綿絲ノ〓稅撤廢案ニ付キマ
シテ、本員カラモ提案ノ理由ヲ說明致シタ
イト考ヘテ居ッタノデアリマスガ、只今武勝
金吉君ノ說明ヲ承リマスト云フト、提案ノ
理由ハ大要盡サレテ居ルト考ヘマス、加之
本日ハ議長ノ注文モアリマスノデ、議事ノ
進行ヲ圖リマス爲ニ、說明ハ委員會ニ於テ
致スコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=88
-
089・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第十九、提
出者飯塚春太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=89
-
090・飯塚春太郎
○飯塚春太郞君 本案ハ旣ニ武藤金吉君ノ
說明ト同一趣旨ノ建議案デアリマス、大要
武藤君ヨリ述ベラレマシタ、尙ホ補足スペ
キ點ハ委員會ニ於テ辯明スルコトニ致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=90
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091・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第二十、關
稅改正促進ニ關スル建議、提出者太田信治
郞君
〔太田信治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=91
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092・太田信治郎
○太田信治郞君 私ハ一般關稅ニ關シマス
ル建議案ヲ提案致シマシタ、簡單ニ提出ノ
理由ヲ申上ゲタイト存ジマス、御永知ノ通
リ大藏省ノ調ニ依リマスト、大正八年以來
大正十三年ニ至ル輸入超過ハ二十二億六千
万圓、更ニ植民地ニ於ケル輸入超過ヲ加ヘ
マスレバ二十七億万圓ト相成リマス、若シ
本年度ノ輸入超過ガ假ニ三億万圓アッタト
致シマスレバ、三十億万圓ノ輸入超過ト相
成リマス、而シテ之ガ爲ニ爲替ガ常ニ片爲
替ニナリマシテ、我國ノ爲替相場ハ度〓非
常ナル變動ヲ致シマス、其結果非常ナル不
利ニ相成ッテ居ルノデアリマス、面シテ此
時ニ當リマシテ最モ不備缺點ノ多イ所ノ現
行ノ關稅ヲ改正費スコトハ最モ必要ト認
メマシテ、此建議案ヲ提案致シタノデアリ
やっ、御水知ノ通リ現今ノ我國ノ關稅ハ、
從價稅ヲ以テ課スルモノト、從量稅ヲ以テ課
スルモノト二ツニ相成シテ居リマス、而シテ
從量稅ヲ以テ課シマスモノハ明治四十一年ノ
物價ヲ標準ト致シ、ソレヲ基礎トシテ組立デ
マシタ所ノ價格ニ從量ヲ以テ決定ヲ致シマ
シタル所ノ從量稅デアリマス、然ルニ御承
知ノ通リ世界ノ大戰以來物價ハ非常ナル變
動ヲ致シマシタ、今日ハ當時カラ見マスレ
バ三倍以上ニモ相成シテ居ルノデアリマス、
而シテ一方ニハ從價ヲ以テ課シテ居リマス
ルモノハ時々ニ相場ノ變動ニ順應致シマ
シテ、課稅ノ標準ガ異フテ居リマスケレド
モ、從價ヲ以テ課シテ居リマスモノハ、安
イ當時ノ價額ノ儘デ課セラレテ居ルモノモ
アルノデアリマス、之ガ爲ニ課稅ガ不均衡
ニナノチ居リマスト申シマスルコトハ甚
シク差ヲ生ジテ居ルコトハ申スマデモナイ
ノデアリマス、而シテ此改正ヲ致シマスル
コトハ、今日輸入超過ヲ防止致シマス上カ
ラ申シマシテモ、全ク必要デアルト云フコ
トニナルノデゴザイマス、爾カ致シマシテ
凡ソ何處ノ國デアリマシテモ、其國ノ產業
ヲ保護スル爲ニ、關稅ト云フ堤防ヲ其處ニ
設ケテ、サウシテ國內ノ產業ヲ保護シテ居
リマスルコトハ、世界ノ今日經濟政策ノ大
勢ト申シテ宜シイノデアル、然ル所我國ハ
其大勢ニ反キマシテ、サウシテ内地ノ產業
ヲ破壞致シマスルヤウナ關稅ガ制定致サレ
テ居リマスコトハ、私ガ玆ニ申上ゲルマデ
モナク、實例ヲ御考ニナレバ分ルノデアル、
大正元年マデニ我國ノ關稅ハ有稅品、無稅
品ヲ平均致シマシテ、總額ノ約一割ニ當ッ
テ居ル、然ル所最近十箇年間ノ平均ハ同ジ
ク無稅、有稅品ヲ平均致シマシテ、約四分
七八厘ニシカ當ラヌノデアリマス、左樣致
シマスルト物價ガ上リマシテ貿易額ガ增加
致シマシタ結果、關稅ソ定率ハ非常ニ變動
ヲ致シマス、寧口非常ニ關稅率ガ低落致シ
マシタコトハ全ク變態デアリマス、是ハ要
スルニ現在ノ關稅ノ不備ダト云フコトハ
此一點デ御分リニナルダラウト思フノデア
リマス、然ラバ外國ハドウデアルカ、禦
知ノ通リ米國ナドハ非常ナ大量生產ヲ致シ
マシテ、世界ニ向ッテノ一大輪出國デアリ
マス、ソレニモ拘ラズ產業ヲ保護スル爲ニ、
或ハ機械類ノ如キハ三割、織物類ノ如キハ
四割ト云フヤウナ重稅ヲ課ンテ居リマスノ
ハ全ク內地ノ產業ヲ保護シ、輸出入ノ均
衡ヲ得セシメンガ爲ニ此關稅政策ヲ採ノテ
居リマスコトハ、之ニ依ッテ見テモ明デア
ルノデアリマス、又世界各國ノ關稅收ヘ額
ヲ調ベテ見マスルト、英參佛伊等ハ
各2一割內外ノ關稅收入ヲ得テ居リマス然
ルニ我國ガ獨リ四分八厘ト云フ低位ニ居ル
ト云フコトハ、關稅政策ノ全ク不備デアルト
云フコトニ歸著致スノデアリマス、實例ト
致シマシテ現ニ關稅ノ制定當時ニハ從價
二割ヲ以テ加算ヲ致シマシタモノガ、今日
デハ六分位ニナッテ居ルモノガアル、或
七分ニナッテ居ルモノモアル電動機ノ機
械ノ如キハ二割ノ制定デアッタモノガ、今日
デハ九分ニナッテ居ル、子鑄鐵管ノヤウナ鐵
類ノヤウナモノハ、從價二割ヲ以テ其當時
制定シタモノガ今日ハ六分ニナッタ、鐵道ノ
機關車ノ如キモ從償二割カ二割五分位ニ制
定サレタモノガ、今日ハ一割ニ至ノテ居ル、
米國ハドウデアルカト云フト、米國ハ之ニ
二割五分ノ課稅ヲ致シテ居リマス、斯樣ナ
次第デアリマスカラ、全ク我國ノ關稅ノ不
均衡デアルト云フコトハニ明ニ相成ルノデ
アリマス、又織物ノ如キニ及ビマシテモ、日
本ノ毛織物ハ非常ナ最近多額ノ輸入ガアリ
マシテ、最近マデ僅ノ間ニ殆ド八倍ノ輸入ヲ
シテ居リマス、而シテ輸人ヲ致シマスル元
ハ多ク英國デアル、英國ノ織物ヲ一番世界
ニ於テ餘計需要致シテ居リマスノハ日本デ
アリマス、日本ニ二割内外ノ織物ヲ供給ヲ
致シテ居ル、元英國ノ織物ハ盛ニ亞米利加
ニ輸出致シマシタ時分ニ、亞米利加ハ內地ノ
產業ヲ保護シ、國內ノ自給自足ノ計ヲ立ツル
爲ニ、十割ノ課稅ヲ致シマシタ、然ルニ現在
我國ノ輸入稅ハ僅ニ七分内外デアル、又生
絲ノ如キモノモ最近ニ至リマシテ、僅二三
年間ノ間ニ二十倍ノ愉入超過ヲ致シテ居
ル、斯樣ニ我國ノ關稅ハ非常ナ低率デ僅ニ
六分內外、亞利米加ニ於テハ之ニ十割以上ノ
課稅ヲ致シテ居リマス、斯樣ナ次第デアリ
マスルカラシテ、我國ノ輸入ノ年々增加ヲ致
シマスノニ、非常ニ便利ナル關稅デアリマ
ス、彼ノ關稅政策ノ爲ニ一層輸入額ガ增加
スルト云フコトハ、全ク此一點ニ在ルト私
ハ思フノデアリマス、併ナガラ御水知ノ通
リ我國ハ原料ニ乏シイ國デアル、天產物ニ
洵ニ乏シイ國デアリマスカラ、原料ト致シ
マシテハ海外ヨリ輸人スル物ノ關稅ヲ引下
ゲ、サウシテ内地ニ於テ之ヲ製造ヲ致シ、ソ
レヲ海外へ輸出致シマスルコトニナリマセヌ
ケレバ、到底內地ノ輸出入ノ均衡ヲ得ルコ
トガ出來ナイト思ヒマス、輸入品ニ於キマ
シテモ、同ク輸人品ニ致シマシテモ、原料
トシテ輸入スル物ニ對シテハ、是ハ成ベク
ハ無稅主義ヲ採リタイト思フノデアリマ
ス所ガ現今ノ關稅政策ハ全ク是ハ矛盾致
シテ居リマス、一例ヲ中シマスレバ鋼鐵
ノ課稅ノ如キハ、大正十年ニ從來從價五分
ノ關稅ヲ一割五分ニ引上ザタ、一割五分ニ
引上ゲタモノヲ以テ造ル所ノ機械ハドウデ
アルカト申シマスト、機械ハ前ニ申上ゲマ
シタ通リ、非常ニ低率ナル稅金ヲ以テ之ニ
課シテ居リマス、故ニ原粁ガ高クテ、其
高イ關稅ヲ課セラレル所ノ高ク付ク原料ヲ
以テ內地ノ工業家ノ造タ夕機械ヲ、安イ原
料デ大量生產ヲ以テ低廉ナル資金ニ依シテ
抗ヘタ所ノ外國製品ト、競爭ヲ致サナケレ
バナラヌト云フヤウナ場合ニ居リマスカ
ラ、内地ノ工業家ノ發展ヲ致シマセヌデ、非
常ナル困難ノ立場ニ在ルト云フコトハ此一
事ヲ以テモ分ルノデアリマス、然ル所聞ク
所ニ依リマスト、此原料タル所ノ鐵類ノ保
護政策トシテ、或ハ鐵ノ自給自足ト云フヤ
ウナ計畫ノ爲ニ、關稅ノ引上計畫ヲセラレ
タコトガアッタカノ如ク聞キマシタガ、右樣
ナ事ガ若シ行ハレマスト致シマシタラ、國
內ニ於ケル所ノ工業家ハ全ク破產狀態ニ
立至ルヨリ外仕方ガナイー思フノデアリマ
ス、若シ一朝左樣ナ事ガゴザイマシタナラ
バ、我國ノ工業家ハ海外輸入品トノ競爭ニ
堪ヘズシテ、是ガ全敗ヲ致スヤウナコトガ
ゴザイマシタナラバ大變ナ問題ガ起ルデ
アラウ、之ニ從事シテ居リマスル所ノ勞働
者ハ、或ハ非常ナ失業者ヲ出ス、數十萬ノ
失業者ヲ出サナケレバナラヌカモ知レヌ、
社會政策的ニ偉大ナ問題ガ玆ニ起ルダラウ
ト思フソデアリマス而シテ此機械ノ輸入
額ハ-大正十三年ニ於ケル所ノ機械ノ輪
入額ハ總額二億三千九百万圓デアル、此二
億三千九百万圓ノモノガ若シ原料ヲ輸入致
シマシテ、内地ニ於テ製作致シマスコトニナ
リマスレバ、此原料ノ價格ト云フモノハ總
機械ノ價格ノ三分ノ一若クハ四分ノ一デア
リマス、假ニ之ヲ三分ノ一ト致シマシテモ、
僅ニ七千万圓ノ輸入ヲ致シマスレバ、億
六千万圓ノ輸入ヲ防止セラレルコトニ相成
リマスガ、國内ノ產業ヲ發展セシメテ、尙
且ツ輸入超過ヲ防止スルコトガ出來ル
ト致シタナラバ、國家ノ爲ニ大ナル好
結果ヲ生ズルコトデアラウト思フノデ
アリマス、併ナガラ是等ノ問題ハ要ス
ルニ區々ノ問題デアリマスケレドモ、大體
ヽ於テ我國ニ於テハ天產物ニ乏シイノデア
リマスカラ、此原料ニ付テハ、成ベク低廉ニ
之ヲ輸入スルト云フ方法ヲ採ラナケレバナ
ラヌ、之ニ就テ關稅撤廢ヲ御論ジニナリマス
方々ノ御意見モ御尤デアリマス、併ナガラ
其原料ヲ加工精選ヲ致シマシテ輸出スルト
云フコトニ付テ、方法ガ確立致シマセヌケ
レバ相成リマセヌノデアリマス、之ニ就テ
ハ此製作品ニ付テノ-所謂製造品ニ付テ
出來上ッタル物ニ付テノ輸、人ヲ調節致シマ
スモノニハドウシテモ關稅政策ト云フモ
ノヽ玆ニ必要ヲ感ズル次第デアリマス、御
承知ノ通リ現在ノ貿易狀態ノ不利ハ、或ハ
論者ハ金ノ輸出解禁ヲ唱ヘ、或ハ種々ナル
議論ガアリマスルガ、之ヲ要スルニ貿易ノ
均衡ヲ得セシメナケレバ止マナイノデアリ
マイ、貿易ノ均衡ヲ得セシメルニハドウ
シテモ内地ノ產業ヲ發達セシメ、內地ノ工
業家ガ總テ自足自給、進ンデ海外ニ之ヲ輸
出シテ均衡ヲ保タシメルト云フヨリ外ニ政
策ハ無イノデアリマス、此根本問題トシテ
ハ全ク內地ノ産業政策ニ重キヲ置イタル
所ノ事柄デナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、併ナガラ之ヲ縱斷的ニ議論ヲ致シマ
スレバ個々ノ物ニ付テハ社會政策トシテ
或ハ關稅ノ撤廢ノ議論モアリマセウシ、或
物ハ又此關稅ノ引上ヲ爲サナケレバナラヌ
ト云フ物モアリマセウケレドモ、是ハ縱斷
的ニ縱ニ其物々々一ツニ付テノ事柄ニ付テ
ハ左樣ナ議論モアリマセウガ、左樣ナ議
論ニ拘泥致シテ居リマシテハ、一般ノ關稅
ヲ改正スルコトハ出來ナイ、私共ハ各種ノ
品柄ニ付テ色々先刻來論ジ、其他ニ付テ御
議論モアリマシタガ、是等ノ關稅ノ改正ヲ
爲サルト云フコトモ必要ガアルト存ジマス
ルガ、ソレハ個々一ツ々々ニ付テノ横斷
的ノ事デアル、縱斷的ノ事デアル、左
樣ナ事柄ヨリハ寧ロ國家經濟、我國ノ產
業政策ニ付テ是ハ如何ニスルカト云フ
コトヲ大體ト致シ、更ニ國民生活ニ安定ヲ
得セシメ、國民ノ生活ノ必需品ヲ低廉ニ供
給スルト云フコトヲ緯ト致シテ、此大方針
ノ下ニ於テ關稅政策ヲ行ハナケレバナラヌ
ト私ハ思フ、ソレヲ矛盾シタル輸入業者ニ
非常ナ便利デアルトカ、或ハ不使デアルト
カ、或ハ一ツノ業務ニ付テノ縱斷的ノ事ニ
拘泥ナサッテ、此關稅ノ改正ヲ爲サルト云
フコトハ、甚ダ間違シテ居ルコトデアル、是
ハサウシタイデハアリマセウケレドモ、左
樣ナ事ニ顧慮致シマシテハ此問題ノ解決
ヲスル時機ハ何時モ無イノデアリマス、丁
度論者ノ議論デ申シマスレバ、柳ノ枝ニ櫻
ノ花ヲ咲カセヤウトシ、夏ノ土用ノ暑キ日
ニ雪見ヲシタイト云フノデ、出來ナイ事デ
アリマス、兩方良イコトハ到底出來ナイ、
是ニ於テカ大方針ヲ定メテ、ソレニ依ッテ國
內ノ產業ノ方針ヲ定メルト云フコトハ私
ハ大必要デアルト信ズル者デアリマス、只
今ハ關稅改正ニ非常ニ好イ時機デアリマ
ス、第一ニ日英協定ガ既ニ滿期ニナッテ居
ル之ニ依ッテ爭ガ生ジテ居リマシタ所ノ
事柄ガ全ク取レタノデアリマス、更ニ關稅
ヲ改正致シマスルト、海外ノ輸入業者ノ見
越輸入ヲ致スト云フヤウナ方法モアリマシ
タガ、今日ノ日本ノ經濟界ガ斯ノ如キ不況
ニ在リマスカラ、此見越輸入ト云フコトハ
今日デハ出來ナイ狀態ニ居リマス、又世界
各國ニ於テモ、我國ニ於テ關稅ヲ引上ゲレ
バ、報復的ニ關稅ノ引上ヲ行フデハナイカ、
然ルニ今日ノ我國ハ曠古未曾有ノ大震災以
來、非常ナ經濟界ニ動搖ヲ來シテ居ル、今
ヤ此一大改革ヲ致シマセヌケレバ、日本ノ
經濟界ノ前途ヲ奈何セント云フ場合デアリ
マスカラ、世界各國モ之ニ同情ヲ持クテ居
ル次第デアリマス、此時代ニ相手ガ報復的
ニ關稅ヲ引上ノ政策ヲ執ル必要モナカラウ
ト思フ、斯樣ナ好時機ニ於テ是非政府ハ此
關稅ヲ改正致シテ、專ラ當業者ノ反對、輸
入業者ノ便利、或ル特殊ノ者ノ反對論ナド
ヲ考慮ナサル必要ハナイト思ヒマス、斷然
國策ノ上ニ根本政策ヲ樹テヽ關稅ノ改正ヲ
爲サイマスレバ直ニ此輸出入ノ均衡ヲ恢
復スルノミナラズ、又我國ノ關稅收入ヲ增
加致シマシテ、其增加致スノガ目的デハア
リマスマイケレドモ、結論ニ於テ增加ヲ致
シマシタモノヲ他ニ利用ヲ致シマシテ、農
村振興、其他國民ノ負擔ノ輕減等ニ充當致
シマスコトガ出來夕ラバ、非常ナ結構ナ事
ト私ハ信ズルノデアリマス、是非此場合ニ
改正案ヲ御提案アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=92
-
093・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第二十一、
提出者平野光雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=93
-
094・平野光雄
○平野光雄君 議長-當席ヨリ申述ベマ
ス、本建議案ハ一方食糧問題ノ解決ノ一助
デアルト思フ、他方ニ於テ農村振興ニ尠カ
ラザル效果ヲ齎スモノデアッテ、先程武藤
君ノ御述ニナリマシタ綿絲關稅ノ撤廢ニ劣
ラザル國民生活上ニ至大ノ關係アル重要
ノ問題ヂアリマス、議事輻輳ノ際、特ニ議
長カラノ御注意モアリマスノデ、議場德義
ヲ重ンジマシテ、當席ヨリ簡單ニ提案ノ趣
旨ヲ申述ベマス、目下我國ニ輸入セラレマ
スル所ノ支那卵、此輸入額ハ三四年來年額
一千七百万圓ニ及ンデ居リマス、是ト共ニ
此卵ヲ乾燥シタル物、卽チ粉卵若クハ乾燥
卵ト謂ハレテ居ル物モ尠カラザル額ニ上ッ
テ居リマス、然ルニ一方生卵ノ多大ノ輸入
ノアルニ拘ラズ、乾燥鷄卵ノ輸入ノンレニ
比例セザルハ當局ガ如何ナル見解ノ下ニ
從來禁止的ノ高稅率ヲ課シテ居ッタカ-
生卵ト乾燥鷄卵トハ自ラ用途ガ違ノテ居リ
やっ、生卵ナラザレバ能ハザル所ノモノハ
卽チ食料上、調理上ニ必要ナルモノト、然
ラザルモノ、加工品或ハ藥品乃至ハ其他ノ
需要ニ充サルヽ所ノモノガ乾燥鷄卵デア
ル、故ニ乾燥鷄卵ノ輸入關稅ヲ低下スルナ
ラバ、從來生卵デ輸入サレタモノハ、其輸
送關係、又ハ保存等ノ便ニ照シテ、十分乾
燥鷄卵ニ是ガ向ケラレテ來ルノデアリマ
ス、先程申ス通リ其用途ハ違クテ居リマス、
而モ經濟關係カラシテ、生卵ガ自ラ乾燥鷄
卵ニ向ケラレマシテ、ソレダケ生卵ノ輸入
ハ減退サレ、防止サレルノデアリマス、此
結果ハ言フマデモナク、我國ニ於ケル養鷄
業.卽チ農村振興ノ一ツタル所ノ養鷄業ニ
モ間接ノ效果ヲ齋ス、而モ我ガ國民ノ最モ
缺乏シテ居ルト謂ハレル「ウィタミシエイ」
是ハ專ラ卵ニアルノデアリマス、是ハ學者
ノ定說デアリマス、然ラバ此乾燥鷄卵ヲ安
價ニスルコトハ、一方ニ於テ養鷄業ヲ助ケ、
他ニ於テハ國民ニ安價ナル「ウィタミンエ
イ」ヲ供給シ、卽チ「ヴィタミンエイ」ノ民
衆化トナリ、一舉兩得ノ妙案ト思ヒマス、詳
細ハ委員會ニ於テ說明致シマス、旣ニ當局
ニ於テモ此案ニ付テハ御諒解ニナッテ居リ
マス、今マデハ餘リ高率過ギタカラ、近ク
改正サルベキ關稅定率ニ於テ、當局モ之ヲ引
下ゲヤウト云フ御意見デアリマス、願クハ
滿場ノ御賛成ヲ得マシテ、國民生活ノ爲ニ、
農村振興ノ爲ニ此案ソ通過ヲ欲シテ已マナ
イ者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=94
-
095・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第二十二、
山本厚三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=95
-
096・澤田利吉
○澤田利吉君 議長-私ヨリ說明致シマ
ス-澤田利吉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=96
-
097・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 澤田利吉君
〔澤田利吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=97
-
098・澤田利吉
○澤田利吉君 此案ハ最モ重大ナル案デア
リマスガ故ニ、成ベク簡單ニ申述ベマスガ、
暫ク御〓聽ヲ煩シマス、農村振興ト云フ問
題ハ我ガ國家ノ朝野ノ大問題デアリマシ
テ、此事ニ對シテハ共ニ苦心シテ居ル事柄
デアリマス、サウシテソレニ對シテ如何ナ
ル策ヲ執ルカ、種々樣々ナ對策ガアリマス、
其中デ最モ吾々ハ斯クナリテハナラヌト信
ズルコトハ過去ノ日本ノ農業政策ハ穀物
ヲ主トシテヤッテ居ル、ソレガドウシテモ
將來有畜農業デナクテハナラナイ、農業ニ
家畜ヲ加ヘタ有畜農業デナクテハナラヌト
言フコトハ學者、識者、實際家ノ唱道シテ
居ル所デアリマス(發言スル者アリ)大切ナ
問題ダ、暫ク聽キ給へ、農家ノ現在ノ狀態
ヲ見ルトドウカト申シマスルニ、第一肥料
ガ高イ、得ル品物ヲ以テ肥料ヲ買フト云フ
コトニ算盤ガ合ハヌト云フコトカラシテ、
段々ト地力ガ滅耗スル、地力ガ減耗スルト
同時ニ、作物ノ取高ガ不足ニナッテ來ルト
云フコトモ主ナル原因デアリマシテ、之ニ
家畜ヲ加ヘルコトニ依ヶテ自給肥料ヲ得ラ
レ、ソレニ依ッテ收穫ヲ增スコトガ出來ル、
サウシテ農家ノ收入ヲ擧グルコトガ出來
ル、デアルカラドウシテモ有畜農業ヲセン
ケレバナラヌ、今一ツハ國民ノ食物モ進化
シテ居リマス、年々ト畜產ニ依ノテ得ラル
ル所ノ乳製品等ガ、國民ノ間ニ段々ト消費
セラレルヤウニナッテ來テ居ルノデアリマ
ス、デアルカラ國民食糧ノ改良トモ相俟〓
テ、日本ノ將來ノ農業ハ、ドウシテモ有畜
農業ニ最モ力ヲ人レンケレバナラヌト云フ
コトガ、專ラ定ッタル議論デアリマス、併
ナガラ今我國ノ此方面ノ狀態ハドウデアル
カト申シマスルニ、長ラクノ間唯、、穀物ヲ以
テノミ食糧トシテ來夕國民ノ間柄ニ於テハ、
歐米人ノソレノ如ク、未ダ乳製品等ガ汎ク
一般ニ用キラレテ居ラヌノデ、主トシテ製
造品-生乳デ用キル以外ハ製造品トシテ、
煉乳トシテ用キラレテ居ル、ソレハ子供ニ
用キル乳用トシテ多ク消費サレテ居リマ
ス、デ之ヲ統計上極ク簡單ニ申シマスガ、
大正元年ニ於キマシテ日本ノ消費高ガ九
百九十幾万斤デアッテ、國内デ生產シタ
物ガ二百十六万四千斤、輸入品ガ七百八十
三万斤、斯樣ナ數字デアッタガ、十二年
度-一昨年ニハ國內品ノ製品ガソレノ六
倍ニナッテ、千二百幾十万斤ニナッテ居ル
輸人品モ千百万斤ニナッテ居ル、ズット年度
ヲ通ジテ行ケバ大變宜イノデアリマスケレ
ドモ、時間ヲ節約シテ簡單ニ飛ビ々々ニ申
シマスガ、此輸入ノ狀態ハ大正元年カラ
七年マデニ日本ノ製品ハ段々々々增加シテ
來テ、ソレニ反シテ輸入品ハ段々減退シテ
來テ居ルノデアリマス、デアルガ、戰爭
後-歐洲戰爭ノ時最モ此輸入ガ不足デアツ
タノヲ、彼ノ震災當時ニ於テ一時輪入稅ヲ
撤廢シタ、ソレニ依ッテ再ビ輸入高ヲ高メ
マシテ、遂ニ今日ノヤウナ有樣ニナッテ居
ルノデアリマス、斯樣ナ狀態カラ致シマシ
テ、現在此牛、詰リ牛乳ヲ以テ製造シテ居
ル所ノ總テノ業者ガ、非常ナ窮地ニ陷ッテ
居ル、ソコデ今マデハ牛ノ乳ヲ製造家ガ一
升十七八錢乃至二十錢マデ買ンテ居リマシ
タケレドモ、今ノ有樣デハ十三四錢乃至
精々デ五錢マデ、ソレ以上ニ買ッテハ製造家
ガ合ハナイ、製造家ガ合ハヌト云フコトニ
ナリマスト、生產スル所ノ農家ハ左樣ニ賣
リマシテハ、是亦到底今マデ發達シテ來タ
所ノ其牛ヲ、尙ホ飼ッテ行クコトハ出來ナ
イト云フヤウナ有樣ニナッテ居ルノデアリ
やく、ドウシテモ此際ハ關稅ヲ引上ゲテ戴
キマシテ、サウシテ漸ク發達シテ來夕此事
業ヲ助ケテ行カナケレバ、將來取返シノ付
カザルコトニナルト云フノデアリマス、關
稅引上ヲシタ結果ガドウナルカト云フコト
ニ對シテ、或人ハ今外國カラ這入ッテ來テ
居ル其輸入品ガ、若シ關稅引上ニ依ッテ輪
入シナクナッタナラバ、日本ノ需要ニ對シ
テ內國品ニ依ッテ之ヲ充タスコトガ出來ル
カドウカト云フ問題ガ一ツ、今一ツハ外國
品ハ品物ガ優良デアル、日本品ガ惡イ爲ニ、
左樣ナ結果ニ陷フテ居ルノデハナイカト云
フコトガ一ツ、今一ツハ關稅ヲ引上ゲタナ
ラバ、內國品ガ高クナル、所謂今日ノ社會
政策上、此品物ノ消費者ハ主ニ中流以下乃
至子供ニ多ク用ヰラレルモノデアルガ、左
樣ナ結果値ガ高クナリハセヌカト云フノデ、
一面ニ心配スル人ガアルノデアリマス、此
三ツノ問題ニ對シテハ、私ハ如何ニ外國品ガ
這人ラナクナリマシテモ、日本ノ品物ニ依。ッ
テ優ニ供給スルコトガ出來ルト云フコト
ハ現在日本ノ會社ガ十一アリ、工場ガ二
十二アッテ、其製造能力ハ一日ニ生乳ヲ一
千二百石使フダケノ能力ヲ持ッテ居ルガ、現
在僅ニソレノ三分ノ一シカカヲ用キテ居ラナ
イト云フコトデアリマス、又日本ノ耕地ハ
畜產ニ通シナイノデハナイカト云フ議論モ
アリマスケレドモ、彼ノ丁抹ガ僅カ北海道
ノ半分位ノ面積ニシテ、牛三百万頭ヲ有シ、
乳製品六億ヲ輸出シテ居ル、ソレニ鑑ミ、又
日本ノ今日ノ斯業ノ發達ノ狀態ニ鑑ミテ、
決シテ左樣ナ心配ハナイ、品物ノ善惡ノコ
トニ付テハ、既ニソレ〓〓試驗場等ニ依っ
テ試驗セラレテ居ルノデアリマス、決シテ
惡イコトハナイ、唯、日本ノ今マデノ輸入
品ヲ宗拜シテ居ル、所謂輸入品ガ良イ、舶
來品ガ良イト云フ此思想ノ爲ニ今日外國品
ガ多ク迎ヘラレテ、日本品ガ其通リニ行ッテ
居ラヌト云フヤウナコトデアルノデアッテ、
品物ノ善惡ト云フコトニ付テハ決シテ外
國品ニ劣ラナイト云フコトヲ斷言シ得ラ
レルノデアリマス、然ラバ價格ヲ上ゲナイ
カ、關稅ヲ引上ゲルト云フコトハ價格ヲ騰
貴サセルデハナイカ、此事ニ對シマシテハ
製造業者ハ決シテ價格ヲ引上ゲナイト云フ
聲明ヲシ、旣ニ大藏省乃至農商務省ニ向。ツ
テハ如何ニ關稅ヲ引上ゲタリト雖モ、決シ
テ値上ヲ爲サヌト云フ公約書ヲ納メテ居ル
次第デアリマス、何故然ラバ左樣ナコトニ
ナルカト申セバ、今或ル力ヲ持ッテ居テ其
力ヲ用ヰテ屈ラナイ、ソレガ全能力ヲ出シ
マスルト生產費ガ安クナルカラ、却テ安ク
賣!得ルト云フコトニナリマスノデ、〓
會社ガ製造能力ヲ持ッテ居リツヽ其力ニ滿
ツルダケノ品物ヲ拵ヘルコトガ出來ヌカ
ラ、高ク賣ラナケレバナラヌト云フコトニ
ナッテ居リマス、此事ニ付テハモット申上ゲ
タイノデアリマスルガ此位ニシテ置キマ
ス、要スルニ決シチ高ク賣ラナイト云フコ
トニナルノデアリマス、然ラバ其園稅ヲ引
上ゲタト假定致シテ、何時マデ其關稅ヲ其
儘ニシテ置クカト云フニ、是ハ假定的ノ事
デアリマスケレドモ、十箇年位此關稅引上
ニ依フテ保護政策ヲ執ッテ貰ノタナラバ、今マ
デノ增加率、總テノ人口ノ增加及消費、輸
入製品等ノ增加率カラ之ヲ見マスルト云フ
1、今後十年ノ末ニハ日本ニ於テ消費スル
所ノ其數量ハ一億一千一一百万斤位消費スル
コトニナルノデアリマス、サウシテ製造高
ガ一億六千四百万斤位製造シ得テ、輸入品
ヲ防遏シテ更ニ五千二百万斤ヲ輸出スルト
云フコトニナリマスノデ、其時ニ至リマス
レバ既ニ其關稅ハ撤廢シテ自由貿易ニ依ッ
テ此事業ガ發達シテ行クノデアリマス、要
スルニ此問題ハ農村振興上ノ重大ナル問題
ニシテ、國民ノ食糧ノ改良ト、輸入ヲ防遏
シテ輸出ヲ增ス現下ノ大切ナル國策ノ一デ
アリ、又我國ノ農民ヲ此窮地ヨリ活カス所
ノ重大ナル案件デアリマシテ、曩ニ請願委
員會ニ於キマシテハ、北海道ヨリ九州ニ至
ル農業家一万五千名連名ヲ致シマシテ、請
願書ガ出テ居ル重大ナル案件デアリマス、
尙ホ詳細ノ事ハ委員會ニ於キマシテ精シク
申述べマスルガ、何卒諸君ハ一致此案ニ賛
成ヲ、與ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手
起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=98
-
099・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質疑ノ通告ガア
リマス、武藤山治君
〔武藤山治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=99
-
100・武藤山治
○武藤山治君 只今一括サレテ議題トナリ
マシタル中ノ綿絲輸入關稅撤廢ニ關スル議
案ニ付テ私ハ御質問申上ゲタイト考ヘマ
ス、私ハ本案ニ對シマシテハ直接利害關係
者デアリマスルガ故ニ、此案ガ委員會ヲ通
過シ、本議場ニ於テ討議セラルヽ場合ニ於
キマシテ賛否ノ意見ヲ述べ、若クハ表決ノ
數ニ加ハルト云フコトハ遠慮シタイト考へ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ私ガ本業ニ
從事致シテ居リマスル經驗ヨリ、本案ガ委
員會ニ付セラルヽ此場含ニ於キマシテ私ノ
見ル所ヲ中上ゲテ、皆樣ヶ太案ニ對シ御判
斷遊バス參考ニ供スルコトハ私ノ義務ナリ
ト信ズルノデアリマス(「質問ヂヤナイカ」
ト呼フ者アリ)勿論質問デアリマス-勿
論質問デアリマス、只今政友會ノ重鎮武藤
金吉君ヨリ本案ニ對シ詳細ナル御說明ガ
アッタノデアリマス、而シテ武藤君ノ御說
明ノ中ニ特ニ私ノ名ヲ呼上ゲテ、サウシテ
或場合ニ於キマシテハ私個人ノ人身攻擊ニ
關スル點ニマデ及ボサレタノデアリマス、
然ルニ此武藤金吉君ノ御述ニナリマシタ中
ニハ事實ニ相違シテ居ル所ガ少クアリマセ
ヌ、故ニ私ハ是等ノ點ニ付キマシテ私ノ見
ル所ヲ申上ゲ、武藤金吉君ノ御辯明ヲ仰ギ
タイト思フノデアリマス、第一ニ武藤金吉
君ハ社會政策ト貿易政策ヲ提ゲテ綿絲ノ輸
入關稅撤廢フ必要ヲ高唱セラレタノデアリ
マン、此點ニ付テ私ガ武藤金士口君ニ伺ヒタ
イノハ若シ眞ニ武藤金吉君ガ社會政策ノ
見地ヨリ此案ヲ御提出ニナリマシタナラ
バ何故ニ綿絲ノミナラズ綿織物ノ輸人關
稅撤廢案ヲモ御提出ニナラチカッタカト云
フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、更ニ私ガ武
藤全吉君ニ伺ヒタイノハ、若シ眞ニ武藤金
吉君ガ社會政策ノ上ニ斯程マデ御心配ニナ
リマスナラバ、武藤金吉君ノ屬スル政友會ハ
絕對過半數ヲ持ッテ長イ間內閣ヲ組織セラ
レテ居ッタノデアリマス、其間ニ何故ニ織
物稅ヲ撤度セラレナカッタカト云フコトヲ
伺ヒタイノデアリマス、斯ノ如ク若シ社會
政策ノ見地ヨリ本案ヲ御提出ニナリマシタ
ナラバ、單リ綿絲ノ輸入關稅ノミナラズ、
莫大小及綿織物ノ輸入關稅撤廢モ同時ニ本
案ノ中ニ私ハ御籠メニナラナケレバナラヌ
モノデアルト考ヘマスガ、此點ハ如何デア
ルカト云フコトヲ御伺シタイノデアリマ
ス、更ニ武藤金吉君ハ綿絲紡績業者ガ何力
特別ノ國家ノ保護ヲ受ケテ居ルヤウニ御述
ニナッタヤウデアリマスガ、綿絲紡績業ハ
輸入關稅ニ依シテ國家ノ保護ヲ受ケテ居ル
外ハ何物モ保護ヲ受ケテ居ラヌノデアリマ
ス、惟フニ此武藤金吉君ノ述ベラレタノ
ハ蠶絲業ガ時々困ッタ場合ニハ帝國蠶絲
會社ナドヲ拵ヘテ、サウシテ國家ノ保護ヲ
受ケラルヽカラ、其事ヲ誤解セラレタノデ
ハナカラウカト思ヒマス、吾々綿絲紡績業
者トシテハ綿絲輸入關稅ノ外ハ何等ノ保護
ヲ受ケテ居ラヌノデアリマス、故ニ此點ニ
付テ武藤金吉君ハ綿絲紡績會社ガ此輸入關
稅ノ外ニ國家ノ保護ヲ受ケテ居ルト御述ニ
ナリマシタガ、吾々ガ如何ナル保護ヲ受ケ
テ居ルカト云フコトヲ御指摘ヲ願ヒタイノ
デアリマス、更ニ私ガ武藤金吉君ニ御尋ヲ
シタイノハ、此紡績會社ノ高率配當ニ付テ
武藤金吉君ハ甚シク非難サレタノデアリマ
ス、是ハ一般ニ誤解セラルヽ點デアリマス
ケレドモ、此點ニ付テハ私ハ極メテ簡單ニ
皆樣ニ御說明申上ダルコトガ出來ルノデア
リマス、若シ二十年前ニ東京ノ眞中デ一坪
五十圓ノ地面ヲ買ッタ、ソレガ今日五百圓
ノ相場ニナッテ居ル、之ニ對シテ地代ガ一
箇年三十五圓所得セラルヽ場合ニ於キマシ
テハ其二十年前ノ五十圓ノ買入額ニ對シ
テハ七割デアリマスガ、今日ノ五百圓ノ相
場ニ對シテハ七分ヨリ當リマセヌ、綿絲紡
績業ノ高率配當ハ詳細ニ御調ニナッタナラ
バ此一ツノ事實ヲ御考ニナレバ容易ニ御
了解ニナルノデアリマス、今日世間ニ此戰
爭後出來夕所ノ紡績會社ハ一錢ノ配當モシ
ナイモノモ澤山アルノデス、是ハ卽チ綿絲
紡績業ト云フモノガ今日ノ工場ヲ建テヽ
今日ノ械械ヲ買入レヽバ利益ガナイト云フ
ノガ、卽チ今日ノ現狀デアリマシテ、高率
ノ配當ヲスルト云フノハ、明治十八、九年
頃カラ一錘二十二三圓ノ頃ノ機械ヲ買入レ
テ、ソレガ日露戰爭頃ニ五、六十圓ニナ
リ、此度ノ大戰爭ニソレガ二百圓前後ニナッ
タ、斯ウ云フ方法ニ依テ高率配當ヲシテ居
ルノデ、恰モ二十年前ニ買ンタ五十圓ノ地
面ガ、今日ハ五百圓ニナッテ、ソレガ三十
五圓ノ地代ヲ取レバ五十圓ノ原價カラ言ヘ
バ七割ノ配當デアル、今日ノ値段カラ言へ
バ七分ニシカナラヌ、此差異ヲ御考ニナレ
バ斯ノ如キコトハ賢明ナル諸君ガ容易ニ御
理解ガ出來ルト思ヒマスガ、武藤金吉君ハ
尙ホ斯ノ如キ誤解ヲ御持チニナルカドウカ
ト云フコトヲ御伺致シタイノデアリマス、
更ニ其次ニ私ハ武藤金吉君ノ事實ニ間違,
テ居ル點ヲ申上ゲマスレバ、武藤金吉君ハ
紡績會社ガ操業短縮ヲシテ、市價ヲ釣上ゲ
ル、斯ウ云フコトヲ御述ベニナッタ所ガ
是程間違シタコトハナイ、綿絲紡績業者ハ
社會ニ非難ガアル爲ニ、近年操業短縮ト云
フコトハヤラナイ、全ク其事實ヲ誤ッテ居
ラレルノデアリマス、一體此綿絲ガ暴騰シ
タト云フコトハ決シテ紡績業者ガ操業短縮
ヲヤッタ爲デハナイノデアリマス、卽チ是ハ
大正十二年九月十二日大震災ノ爲ニ勅令ニ
依ッテ輸入關稅ヲ撤廢サレタ爲ニ、三品取
引所ニ影響シテ、綿絲ノ暴落トナッテ、遂
ニ基礎ノ弱イ紡績會社ハ工場ヲ閉鎻シタ
其結果トシテ生產ガ大ニ減少シテ、其結果
市價ノ暴騰ヲ來シタノデアリマス、其處へ
爲替ガ下ノタ爲ニ綿償ノ暴騰トナリ、遂ニ
此綿絲ノ騰貴トナッタノデアリマス、然ル
ニ今日ハドウ云フ狀態ニ居ルカト申セバ
卽チ非常ニ綿絲ガ高クナッタカラ、休ンデ
居シタ所ノ紡績會社ハ工場ノ皆開始シタ、
ンコデ生產ガ非常ニ增加シ、昨今ノ綿絲ノ
相場ト云フモノハ此建案ガ出夕時分カラ
見レバ非常ニ暴落シテ、今日ハ殆ド不引合
ニ近付イテ居ル、斯ウ云フ譯デアルカラ、
紡績會社ガ操短ヲスルガ爲ニ此綿絲ガ高ク
ナッタリ下ッタリスル次第デハナイノデアル
ト云フコトヲ御諒水ヲ願ヒタイト考ヘルノ
デアリマス、此點ニ付テ御理解ヲ下サルカ
否ヤデアリマス、而シテ更ニ私ハ武藤君ニ
御尋ヲシタイノハ若シ武藤金吉君ガ綿絲
ノ輸入關稅ヲ撤廢シテ、ソレガ爲ニ綿絲ガ
安クナル、サウスレバ綿織物モ安ク出來ル
カラ非常ニソレガ國家ノ爲ニ利益デアル、
斯ウ御考ニナルナラバ、私ハ其處ニ非
常ナ誤解ガアルト云フコトヲ申上ゲタイ
ノデアリマス、若シ大正十二年ニ實行サレ
タヤウニ、今日突然綿絲ノ輸入關稅ノミヲ
撤廢サレテ、ソレガ三品取引所ノ相場ニ大
影響ヲシテ、遂ニ此綿絲商賣ト云フモノガ
不引合ニナリマシテ、綿絲ノ或ル部分ト云
フモノハ支那ニ工場ヲ移シテ、其後へ織物
機械ヲ入レルト云フコトニナルノデアリマ
ス、サウ致シマスト今日紡績會社カラ原資
ヲ仰イデ居ル全國無數ノ織物業者ト云フモ
ノハ原料ヲ得ルコトニ殆ド困難ヲスル、
全ク是ハ自家撞著ノ矛盾シタ一ツノ提案ダ
ト云フコトヲ私ハ申上ゲタイト考ヘマスガ、
此點ニ付テ武藤金吉君ノ御觀察ハ如何カト
云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、若シ此
綿絲紡績業ノアル部分ガ不引合デ支那ニ工
場ヲ移シテ原絲トシテ賣ラヌデ、自分ノ拵
ヘル絲ヲ自分ノ所デ織物機械ヲ入レテ之ヲ
コナスヤウニナリマスレバ、全國ノ織物業
者ト云フモノハ大恐慌ニ陷ルト私ハ思フノ
デアリマス、ソレナラ支那カラ買ヘバ宜イ
デハナイカト云フ議論ガアルカ知レマセス
ガ、支那デ使フ絲ノ質ト、日本ノ織物ニ使
フ絲ノ質ト云フモノハ全然違シテ居ルノデ
アリマス、故ニ支那ノ工場カラ絲ヲ買ハウ
トスルト、常ニ日本向ノ絲ヲ註文シテ、ソ
レヲ買溜メ先約シナケレバナラヌ、其危險
ト云フモノハ中々大ナルモノガアルノデア
リマス、故ニ是等ノ點ニ付テ私ハ武藤君ノ
御說明ガドウモ判然シマセヌカラ、其點ニ
付テ武藤君ノ御說明ヲ仰ギタイト思フノデ
アリマス、更ニ私ガ申上ゲタイノハ、〓
武藤金吉君ノ言ハレタ通リ、自由貿易政策
ヲ信ズルモノデアリマシテ、自由貿易政策
ト云フモノガ、眞ニ我國ニ最モ有要ナ政策
デアルト斯ウ唱ヘル者デアリマスガ、併ナ
ガラ本案ハ皆樣ニ御考ヲ願ヒタイノハ、唯、
綿絲ノミ獨リ輸入關稅ヲ取ル、斯ウ云フヤ
ウナコトヲシマシタナラバ、唯〓綿絲紡績
會社ノミヲ苦メ、其結果ハ世ノ中ノ何人ヲ
モ益シナイ、斯ウ云フ結果ニ私ハ陷ルト云
フコトニ付テ御考慮ヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス、若シ綿絲ノ輸入圍稅ヲ取ラレ、其
事ガ社會政策ノ上ヨリ國家ノ爲ニ必要ダ、
斯ウ諸君ガ御考ニナリマスナラバ、先程申
上ゲタヤウニ綿絲ノミナラズ、綿織物ノ輸
入ノ開稅モ、亦或ハ綿絲ヲ拵ヘル所ノ總テノ
職工ノ食ベル所ノ食糧品、綿絲ヲ製造スル
所ノ機關、サウ云フモノモ同時ニ輸入關稅
ヲ撤廢ヲ遊バサナケレバ非常ニ綿絲業者ダ
ケヲ苦メル、斯ウ云フ結果ニナッテ、決シ
テ私ハ國家ノ爲ニ利益デナイト考へマス
ガ、此點ニ付テノ武藤金吉君ノ御意見ハ如
何デアリマスカ、今ヨリ七、八年前ニ彼ノ
有名ナル英吉利ノ「ゴプデン」ノ働キニ依リ
マシデ、英吉利ガ穀物條例ヲ廢シタ時ニ、
唯、"穀物ノ稅ヲ取ッタバカリデナイ、英吉利
デ七百五十種ノ品目ノ輸入稅ヲ撤廢シタノ
デアリマス、斯ノ知キ〓稅政策ト云フモノ
ハ唯〓其一ツヲ捉ヘテ是ガ高イカラ取フタラ
宜カラウ、是ガ安イカラ保護スル爲ニ之ヲ
上ゲタラ宜カラウト、斯ウ云フヤウニ此考
ニナリマシテ、サウシテ政府ニ向ッテ御建
議ヲ爲サイマスト、其結果ト云フモノハ私
ハ極メテ不良ナル結果ヲ來スモノト考ヘマ
ス、此點ニ付テ賢明ナル武藤金吉君ノ御高
見ヲ伺ヘバ私ノ仕合ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=100
-
101・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 武藤金吉君
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=101
-
102・武藤金吉
○武藤金吉君 只今武藤山治君ヨリ數種ノ
御質疑ガアリマシタガ、同君ハ此事業、此
事ニ付キマシテハ最モ能ク知ラレテ居ル
最モ能ク知ラレテ居ッテ此質疑ヲ爲スト云
フ御心中ヲ御察シ致シマシテ、大部分ハ御
意見デアリマシタガ、折角ノ御質疑デアリ
マスカラ、之ニ對シテ私ハ答ヘヤウト思
フ、社會政策ノ見地カラ云,テ何故綿絲バ
カリノ關稅ヲ撤廢シテ綿布ノ輸入稅ヲ撤廢
シナイカ、是ハ一ツノ御議論デ、尤デアリ
マスガ、我國ニ入リマス綿布ハ極メテマダ
少ナイノデアリマス、又是等ガ我ガ綿製品
ト比較ヲ致シマシタナラバ、私共ハ此綿布
ノ輸入關稅ヲ撤廢スルモ相當ト考ヘテ居ルノ
デアル、更ニ織物稅ニ論及シマシテ、國民
生活ヲ安定スルナラバ、何故內地織物稅ヲ
廢サナイカト云フ御議論ニ至ッテハ此建
議案ノ趣旨ト全然異フテ、橫車ト私ハ承知
シテ御答スル必要ハナイ、ソレカラ保護政
策紡績會社ハ關稅ノ障壁ヲ置クノ外ニ何
等保護ガナイト申サレマスガ、關稅ヲ置ク
ト云フコトハ我國ニ於テハ綿絲ノ關稅ハ確
カ十數万圓シカ關稅ヲ取シテナイ、是ハ要
ラナイガ爲ニ置クノデアッテ、收入ノ方カ
ラ行ケバ僅ニ十數万圓、サウシテ其入ルモ
ノハ僅ニ支那カラ入ルノデアリマス、デ其
他ニマダ英吉利カラモ亞米利加カラモ綿絲
ト云フモノハ入ラナイヤウニ、此處ニ城壁
ガ立ッテ居ル、武藤山治君ハ其他ニ恩典ヲ
受ケテ居ナイ、保護ヲ受ケテ居ナイト申サ
レマシタガ、私ノ承知スル所ニ依リマスル
ト、紡績會社ハ郵船、商船會社ヨリ他ノ品
物ニ比ベテ特別廉價ノ運賃ヲ以テ無數ノ棉
花ヲ輸入シテ居ル、ソレデ其他ニ棉花ノ代
金ハ六十日拂、九十日拂ノ低利資金デ爲替
銀行カラ融通シテ居ル、是ガ結構デナイト
申セマセウカ、郵船會社、商船會社ハ國家ノ
保護ヲ受ケテ、棉花ダケハ特別ニ紡績會社
カラ運賃ヲ取シテ居ルノハ、是ハ如何デアリ
マスカ(拍手)此他ニ流動資本ヲ要シナイ便
利ヲ持シテ居ル、一面莫大小工場ヤ、綿製
品ノ方ハ現金デ賣ッテ倉カラ出シテ、直グ
ニ賣レバモウ爲替ガ付イテ貸サナイ、而モ
紡績會社ハ綿絲バカリデハナイ、絹絲紡績
ニシテモ其通リ、絹絲紡績ハ議題外デスカ
ラ申シマセヌケレドモ、武藤山治君カラ御
話ガアッタ、此十大會社ハ日本ノ絹絲紡績ノ
如キハ十貫目ノ原料デ三百圓、三百五十圓
モ儲ケテ居ルデハナイカ(拍手)其他ノ綿織
業者、莫大小業ト云フモノハ金ヲ持クテ來
ナケレバ原料モ入ラナイ、其又組織ト云フ
モノモ紡績會社ノ方ハ紡績聯合會ト云フ金
城鐵壁ヲ築イテ、仕事ハ操業短縮ヲヤラウ
トスレバ操業短縮モ出來ル、深夜業モ全夜
業モヤル、或ル場合ニハ賣止メヲスル
本ニ於テ資本家ノ横暴、資本家ノ一種ノ「ト
ラスト」ヲ行シテ居ルノハ紡績會社ヨリ外ニ
ナイデハナイカ(拍手)而シテ紡績事業ト他
ノ事業ト權衡ヲ取ッテ御覽ナサイ、貴下ハ
自由貿易論ヲ唱ヘテ居ルガ、是ダケハ國家
ノ保護ガ必要デアルト云フ、何所ニ理由ガ
アルカ、此點ニ就テハ保護政策關稅ノ保護
ノ法ガナイト云フコトハ折角ノ御尋デア
リマスガサウ云フ保護ガアル、ソレカラ又
操業短縮ハ今ハヤラナイト云フ、サウ操業
短縮ヲ始終ヤッタトキニハ堪ッタモノヂヤナ
イ、又生絲ノ救濟策ニ論及セラレタガ、此
場合ニ生絲ノ救濟策ヲ混同シテ此處ニ論ズ
ルノハ如何ニ武藤山治君ガ窮シタカ、貴
下ハ非常ニ苦シイト云フコトヲ言フニ過ギ
ナイカラオ止メニナッタラ宜カラウ(拍手)
更ニ原料ニ困ル、紡績會社ガ此原料ニ困ル
ト申シマシテ、サウシテ支那ノ輸入-武
藤山治君ハ支那ニ紡績會社ヲ起サナイト云
フ議論ヲ二三年前マデヤッテ居ッタヂヤナイ
カ、支那ニ紡績ヲ起スベカラズ、支那ト競
爭ヲスルナト云フ議論ヲ唱ヘテ居ラレマシ
タガ、貴下ハソレヲ何時御取消シニナッタ
カ、現ニ鐘淵紡績會社ハ支那ニ紡績事業ヲ
營ンデ居ルデハナイカ、モウ國民ハ能ク知ッ
テ居ルシ、又貴下バカリガ紡績デ人間ニナ
リ、議員ニナリ、サウシテ紡績デ以テ天下
ノ事ヲ、經濟政策モ總テオヤリニナラウト
シテモ、國民ハ貴下ノ議論バカリ傾聽スル
譯ニハ參リマセヌ(拍手)デ支那ト日本トハ
是カラハ紡績ニ於テモ絹糸業ニ於テモ恐ラ
クハ共通ニナリマス、又我帝國ハ支那ト總テ
ヲ共通シテ、紡績ニシテモ、綿織物ニシテ
モ、絹織物ニシテモ經濟共通、原料共通、
現ニ紡績會社ノ十大會社ハ支那各地ニ工場ヲ
持タナイ所ハナイノデハナイカ、現ニヤッテ
居ルデハナイカ、ソレデ何デ是ガ原料ノ不
足ヲ來スカ、吾々ガ關稅ヲ撤廢スルト云フ
コトハ支那カラ入ルモノト緩和シテ、日
本デ出來ナイ所ノモノハ支那カラモ入レ、
或ハ外國カラモ入レテ、小袖ノモノヤ何カ
ハ之ヲ共通品ヲ作シテ行カウトスレバ宜イ
ノデアル、何モ紡績業ヲ妨ゲヤウトシテ此
案ヲ出シタノデハアリマセヌ、紡績業ト姉
妹業ノ綿製品ヲ澤山作ッテ、輸出ヲ奬勵シ
テ產業ヲ盛ニスル、國內ニ於テハ此中產階
級以下ノ著ル著物ヲ安ク著セタイト云フノ
ガ此建議案ノ趣旨デアリマス、ソレカラ武
藤山治君ノ自由貿易論モ學校デ學ンダ時ハ
其通リカモ知レマセヌガ、アナタノ行動ハ
一向新聞ニハ大袈裟ニ御書キニナルガ、平
仄ガ合ハナイ(拍手)現ニ最近ニ於テハアナ
夕方ハ、公表ハシマセヌケレドモ斯ウ云フ
コトヲ希望シテ居ルデセウ、近ク實施ノ工
場法ニ付テアナタ方ハ深夜業ヲ廢止スルト
云フコトヲ考ヘテ居ル、否吾々ハ全夜業ヲ
工場衞生ノ上カラ國民保健ノ上カラ言ッテ
望ムモノデアルガ、アナタ方ハ深夜業ヲ廢
止スルト云フコトヲ計畫シテ居ル、更ニ英
吉利ノ關稅ノ御說明ガアッタカラ私モ英吉
利ノ關稅ノ御話ヲシテ答ヘテ置キマス(「智
慧競ベダシッカリ」ト呼フ者アリ)英吉利ノ
關稅政策ノ古イ講釋ガアリマシタガ、武藤
山治君等ハ新シイ政策ヲ斯ウ云フコトヲ考
ヘテ居ル、英吉利ハ御承知ノ通リ保守黨ノ
天下ニナッタ、保守黨ノ天下ニナッテ保護主
義ヲ以テ此棉花綿布ニ對スル所ノ特惠關稅
ノ實行ヲ諸君ハ止シテ貰ヒタイト云フ希望
ヲ持ッテ居ル、英吉利カ印度ニ對スル所ノ
特惠關稅ヲ止シテ貰ヒタイト云フ希望ヲ
持ッテ內々アナタ方ガ近ク働キ出シテ居ル
デアラウト思フ、サウ云フ一面ニ於テ考ヲ
持シテ居ルナラバ、何故自ラ關稅ヲ撤廢シ
テ姉妹業タル綿製品ヲ助ケテ、一面ニ失業
者ノ出來ルモノヲ其方ニ仕事ヲシテヤルト
云フ、モウ少シ廣ク大キクナッテ、自分ノ
今マデ育ッテ、儲ケテ喰ベテ居ル所ダケガ
繁昌スレバ宜イト云フヤウナ、ソンナ吝ナ
考ヲ取ッテ、サウシテ生產業ニ當ラレタラ
如何デアリマセウカ、アナタハ委員デハア
リマセヌケレドモ、重大ノ問題デアリマス
カラ、私ハ此問題ノ付託サルベキ委員長ノ
椅子ヲ保ッテ居リマスカラ、アナタガ委員會
ニオ出ニナッテ、委員デハアリマセヌガ、
國家ノ爲メ斯業ノ爲ニ該博ノ御意見ヲドシ
ドシ御述ベニナッタラ如何デアリマセウカ、
今日ハ時間ガアリマセヌカラ此邊デ御答ヲ
御免ヲ蒙リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=102
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103・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第二十二ニ
對シテ質疑ガアリマス、森田金藏君、
森田金藏君、御出席ガナイヤウデアリマス
カラ、御取消ト認メマス、之ニテ質疑ハ終
了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=103
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104・井本常作
○井本常作君 日程第十六乃至二十二ハ一
括シテ政府提出染料製造獎勵ニ關スル法律
案ノ委員ニ併セテ付託セラレムコトヲ望ミ
マス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=104
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105・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ、日程第二十三女子高等〓育ノ振
興ニ關スル建議案ヲ議題ト致シ、提出者ノ
趣旨辯明ヲ許シマス、提出者內ケ崎君
第二十三女子高等〓育ノ振興ニ關ス
ル建議案(内ケ崎作三郞君提出)
女子高等〓育ノ振興ニ關スル建議案
女子高等〓育ノ振興ニ關スル建議
政府ハ時勢ノ進運ト女子向學心ノ顯著ナ
ル實情トニ鑑ミ速ニ帝國大學其ノ他官公
私立諸大學及各種專門學校ニ女子ノ入學
ヲ一層容易ナラシムルト共ニ女子高等學
校竝各種専門學校ヲ新設スル等女子高等
〓育ノ振興ヲ圖ラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔内ケ崎作三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=105
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106・内ヶ崎作三郎
○内ケ崎作三郞君 今日ハ私ノ提案致シマ
シタル案ヲ、他ノ婦人問題ト共ニ上程セラ
レルヤウニ各派御交涉ノ上ニ於テ御決定ニ
ナリマシタルコトヲ、私提案者ノ一人トシ
テ厚ク感謝スルト共ニ、三千万人ノ日本婦
人ヲ代表シテ併セテ御禮ヲ申上ゲタイト思
フノデアリマス(拍手)提案ノ理由ハ頗ル簡
單デアリマシテ、今日日本ノ〓育ガ進步シ
タニ拘ラズ、女子ノ高等〓育ノ機關ガ頗ル
不完全デアルカラシテ、帝國大學、官、公
私立諸大學、各種專門學校ニ女子ノ入學ヲ
一層容易ナラシムルヤウニ計ラヒ、同時ニ
女子ノ高等學校及各種ノ專門學校ヲ新設シ
テ貰ヒタイト云フコトヲ政府ニ建議ヲ致ス
ノデアリマス、餘リ永イ說明ハ要ラナイト
思フノデアリマスケレドモ、私ノ記憶スル
所ニ於テハ、此種ノ建議案ハ初メテ衆議院
ノ問題トナッタト思フノデアリマスカラシ
テ、幾分カ之ヲ詳シク說明スル所ノ餘裕ヲ
與ヘラレンコトヲ希望スルノデアリマス、
婦人ノ高等〓育ノ問題ハ、歐米諸國ノ多ク
ノ國々ニ於キマシテハ、旣ニ解決セラレタ
ル問題デアリマスガ、我國ニ於テハ未ダ解
決セラレズシテ漸ク其曙光ヲ認メタルニ過
ギナイモノデアリマスルガ故ニ、幾分力此
問題ニ付テハ歴史的考察ヲ述ブルコトハ無
意味デナイノデアリマス、日本ノ舊キ昔ニ
於テハ男尊女卑トカ、女尊男卑ト云フコト
ハゴザイマセヌデ、男尊、女尊、兩尊主義
デアリマシテ、卽チ伊弉諾尊、伊弉册尊、
之ヲ證明スルモノデアリマス(「ヒヤ〓〓」
笑聲)奈良朝、平安朝ノ時代ニナリマシテ
藤原氏ガ全盛ヲ極メテ、其子女ヲ宮中ニ上
ゲマシテ或ハ中宮、或ハ其他ノ女官ニサレ
マシタルガ爲ニ、常ニ其子女ノ周圍ニ多ク
ノ婦人ノ學者ヲ附ケテ置クト云フコトガ、
權力ヲ維持スル上ニモ必要デアリマスガ故
千、女子ノ〓育ガ盛ンニナリマシテ、〓少
納言、紫式部ノ如キ者ガ現ハレタノデアリ
マス、紫式部ノ源氏物語ハ文章ノ優麗ナル
コト、又其著者ノ式部ノ人格ト相竝ンデ日
本ノ女子ノ典型トシテ仰ガレテ參ッタノデ
アリマス、然ルニ平安朝ノ終期ヨリソレニ
對スル反動トシテ、又他ノ理由ヨリ、武士
道ガ起リ、武士ノ家庭ニ於テハ貞女道ナル
モノガ奬勵セラレマシテ、式部ヲ理想トシ
タル所ノ優麗、典雅ノ趣ト貞女道ヲ理想ト
シタル所ノ婦人道ガ相竝ンデ發達シテ德川
時代ニ至ッタノデアリマス、德川時代ニ於
テハ御水知ノ如ク、貝原益軒ノ女大學ノ如
キモノガ、日本ノ婦人ノ典型的著書トナッ
テ愛讀セラレタノデアリマス、而シテ斯カ
ル狭義ノマダ保守的ノ〓育デアッタニモ拘
ラズ、德川時代ニ於テハ幾多ノ才媛ガ現ハ
レタノデアリマシテ、例ヘバ貝原益軒ノ妻
ノ東軒女史ノ如キ、或ハ野中兼山ノ娘蜿子
ノ如キ、其他幾多ノ才媛カ現ハレタ、之ヲ
見テモ日本女性ノ本質ハ洵ニ優良ナルモノ
ガアリマシラ、之ヲ導クニ法ヲ以テスレバ
確ニ世界ニ於テ最モ優レタル者ニナリ得ル
可能性ガアルト思フノデアリマス(拍手)一
體婦人ノ問題ガ大切デアルト云フコトハ
第一婦人ハ生命ノ源泉デアリマシテ、如何
ナル男子ト雖モ女ヨリ生レナイ者ハナイノ
デアリマス(笑聲)第一一ニ、婦人ハ子女ノ〓
育家デアリマシテ、如何ナル子女ト雖モ女
性ノ〓育ヲ受ケズシテ成育シタル者ハナイ
ノデアリマス、第三ハ、經濟的ニ申セバ婦
人ハ消費者デアリマス、男子ハ生產者デア
リマスガ、男子ガ生產シタ所ノ物ヲ消費ス
ルノハ婦人デアリマスガ故ニ、生產ト消費
ノ兩方面ガ國民生活ニ重大ナル關係ヲ有ス
ルガ故ニ、婦人ノ問題ノ重大ナルコト亦此
點ニ在リト思フノデアリマス、ソコデ斯カ
ル重大ナル問題ガ、我國ニ於キマシテモ明
治初年以來色ミニ取扱ハレマシテ、社會ノ
注目ヲ惹クヤウニナリマシタルコトハ大ニ
喜ブベキモノデゴザイマス、然ルニ歐洲大
戰爭ハ言フマデモナク歐羅巴及ビ亞米利加
ノ婦人ニ大ナル自覺ヲ及ボシタノデゴザイ
やっ、繰返ス必要モゴザイマセヌケレド
モ、佛蘭西革命ガ個人ノ自由ト云フコトニ
大ナル刺激ヲ與ヘマシタノデゴザイマスル
ガ、今度ノ大戰爭ハ社會ノ自由ニ大ナル刺
激ヲ與ヘタノデゴザイマシテ、其結果トシ
テ英國ニ於ケル所ノ產業上ニ於ケル民主主
義、或ハ露西亞ニ於ケル所ノ革命、或ハ中
歐諸國、或ハ愛蘭ニ於ケル所ノ民族自決主
義トナッテ表ハレ、又國際聯盟ノ運動トナッ
テ表ハレテ參ッタノデアリマシテ、此社會
的自由及ビ進步ノ一大潮流ニ棹サシマシ
テ、歐米ノ婦人ハ大ナル自覺ヲ致シマシタ
ノデアリマス、其結果トシテ一千九百十八
年ニハ英國ニ於テハ婦人ガ參政權ヲ得、千
九百二十年ニハ米國ニ於テ女子ガ初メテ大
統領ヲ選舉致シタノデアリマス、此潮流ガ
我國ニモ影響ガアリマシテ、ソコデ今日上
程ニナリマシタル所ノ諸問題ガ諸君ノ前ニ上
程セラレルヤウニナッタノデアリマス、我
國ノ女子〓育ハ日〓戰爭ノ頃ヨリ進步致シ
テ參ッタノデアリマシテ、其前ニハ二十幾
ツノ高等女學校ガアッタノデアリマシタケ
レドモ、其後次第ニ其數ヲ增シマシテ、今
日ハ六百有餘ノ高等女學校ガアルノデアリ
マシテ、中學ノ數ヨリモ高等女學校ノ數ガ遙
ニ多イノデアリマス、現在ノ中學校ノ數ハ四
百ニ近イノデアリマスガ、高等女學校ノ數
ハ六百ヲ突破シテ居ルノデアリマス、中學
生ノ總數ハ大正十一年三月ノ統計ニ依リマ
スト、二十万足ラズデアリマス、十九万四
千四百人餘デアリマス、高等女學校ノ生徒
數ハ十七万六千七百餘デアリマス、而シテ
卒業生ハ中學ノ卒業生一一万五千人弱ナルニ
對シテ、高等女學校ノ卒業生ハ三万九千人
ニ達シテ居ルノデアリマス、然ルニ中學ノ
卒業生ニ對シテハ、更ニ進ンデ學問ヲ致ス
ベキ〓育機關ガ完備シテ居ルノデゴザイマ
シテ、今日ハ高等學校ガ二十五校、高等工
業學校ガ十七校、高等商業學校ガ十一校、高
等農業學校ガ九校、又外國語學校ガ二校、
鑛山專門學校ガ一校、其他數校ノ專門學校
ヲ合セマシテ、文部省直轄ノ専門學校ガ七
十四校アルノデアリマス、其他ニ私立大學
ガ十六、單科大學ガ七校、綜合大學ガ五校
アルノデゴザイマス、是等ノ學生總數ハ約
十万人ニ近イモノガアルト思フノデアリマ
ス、然ルニ高等女學校ヲ卒業致シマシタル
所ノ女子ニ對シテハ、如何ナル官立學校、
若クハ公立學校、私立學校ガ設ケラレテ居
ルカト云ヘバ、官立學校ノ方面ニ於キマシ
テハ只二ツノ女子高等師範學校ガ設ケラ
レテアルニ止マッテ居ルノデゴザイマス、
綜合大學ノ或ル大學ハ女子ノ入學ヲ許シテ
居リマス、特別ナル資格ヲ有シテ居ル女子
ノ入學ヲ許シテ居リマス、東北大万、北海
道大學、九州大學ノ如キ然リデアリマス、
東京帝國大學及京都帝國大學ニ於テハ之ヲ
許シテナイノデ、僅ニ數フルニ足ラザル所
ノ聽講生ヲ包容シテ居ルニ過ギナイノデア
リマス、中學ノ卒業生ニ對シテ十萬人ノ學
生ヲ包容スルニ足ル所ノ〓育機關ヲ國家ガ
經營シテ居ルニ拘ラズ、高等女學校ノ卒業
生ニ對シテハ辛ウジテ千數百名ヲ包容シテ
居ルニ過ギナイ、二箇ノ高等女子師範學校
ト官立ノ高等女學校附屬ノ高等科、若クハ
專攻科ヲ以テスルノミデゴザイマス、公立
學校ニ於キマシテハ大阪府ニ府立ノ女子專
門學校ガ昨年ヨリ設ケラレ、福岡縣ニ於キ
マシテハ公立女子專門學校ガ一昨年ヨリ設
ケラレテ居ルニ止マッテ居ルノデゴザイマ
ス、其他ノ私立專門學校ガ十數校アルノ
デゴザイマスガ、是等ノ諸學校ニ學ンデ居
ル所ノ女子學生ノ總數ハ五千人ニハ上〃
テ居ラナイダラウト思フノデアリマス、卽
チ一方ニハ十万人ノ靑年學生ガ學ビ居ル諸
學校ガ存在シテ居ルニ拘ラズ、一方ニ於
テハ婦人ハ僅ニ其二十分ノ一ニ當ル所ノ五
千人足ラズノ學生シカ學ブコトガ出來ナ
イト云フコトハ、餘リニ是ハ片手落ノ沙汰
ト謂ハザルヲ得ナイノデアリマス、然ラ
バ此問題ヲ如何ニシテ解決スベキカト申セ
バ、先ヅ大學令及高等學校令ヲ〓究シテ見
ナケレバナラヌト思フノデアリマス、大學
令ノ第九條ニハ斯ウ云フコトガ書イテアリ
マツ、學部ニ入學スルコトヲ得ル者ハ當該
大學豫科ヲ終了シタル者、高等學校高等科
ヲ終リタル者、又ハ文部大臣ノ定ムル所ト
云フヤウナ、サウ云フ資格ガ了リマス、然
ルニ高等學校令ニハ男子ノ高等普通〓育ヲ
完成スルヲ以テ目的トシテ居ルノテアリマ
スルカラシテ、女子ハ高等學校ニ入ルコト
ハ出來ナイノデアリマスルカラシテ、隨テ
東京帝國大學、若クハ京都帝國大學ニ、女
子ハ入學スルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、併シ文部當局ニ於カレマシテモ、實ハ
女子ノ爲ニ幾多ノ専門學校ヲ造リタイト云
フ意思ガアルヤウデアリマスガ、兎ニ角財
政窮迫ノ今日デアリマスルガ故ニ、文部當
局ノ理想ガ容易ニ實現シ兼ネテ居ルト云フ
コトハ吾々國民ドシテモ甚ダ遺憾ト思フ
所デアリマス、ンコデ此問題ヲ解決スルニ
ハ色々ナル方法ガアリマスガ、先ヅ第一ニ
綜合大學ニ女子ノ入學ヲ容易ナラシメテ、
單ニ東北大學九州大學、北海道大學ノミナ
ラズ、東京帝國大學及京都帝國大學ニ於テ
モ、一定ノ資格ヲ有シタル所ノ女子ヲ正科
ノ學生トシテ入學スルコトヲ文部大臣ニ於
テ認可セラレンコトヲ希望スルノデアリマ
ス、其次ハ女子ノ専門學校ヲ幾ラカ新設ス
ルコトデゴザイマシテ、殊ニ文科、理科、
家政科ノ專門學校ガ必要デアルト思フノデ
アリマシテ、此種類ノ私立ノ女子專門學校
ハ多イノデアリマスカラシテ、此際政府ガ
一二ノ模範的ノ女子専門學校ヲ造ッテ範ヲ
垂レルト云フコト、亦〓育上必要ナルコト
デハナイカト思フノデアリマス、然ルニ金
ガ無イト云フノデアリマス、金ガ無ケレバ
已ムヲ得ズ專門學校ニ女子ヲ矢張正科學生
トシテ入學ヲ許スト云フ、共學ノ制度ヲ採
ル外ハナイト思フノデアリマス、共學ノ事
ニ付キマシテハ色〓問題ガアリマシテ、共
學ヲ許ス時ニハ第一風紀ノ問題ガ起ル、第
二ハ女子ノ學力ノ問題ガ起ルト云フコトデ
アリマスガ、併ナガラ貴族院ニ於テ過般文
部大臣ガ質問ニ對シテ答ヘラレテアリマス
ルガ如ク、東京音樂學校ノ如キハ男女共學
ニハ何等風紀ノ問題ヲ惹起サナイト言明サ
レテ居ルノデアリマスルガ故ニ、男女ノ專
門學校ニ於ケル共學ハ風紀ノ問題ニハ餘リ
關係ハ無イト思フノデアリマス、又婦入ノ
學力ノ問題ニ付テモ意見ガアルノデアリマ
スガ、併ナガラ今日ハ婦人ト男子ノ智力上
ノ相違ハ本質的優劣アル所ノモノニアラ
ズシテ、其發表、表現ノ形式ガ違フニ過ギ
ナイノデアルト云フコトガ明カニナッテ居
ルノデアリマスカラシテ、風紀上及智力上
ヨリ見マシテモ、專門學校ニ於ケル所ノ男
女共學ハ差支ガナイ問題デハナイカト思フ
ノデアリマス、米國ニ於キマシテハ専門學
校州立大學ガ起リマシタトキニ、男女共學
ヲ實行シタノデアリマス、第一ハ經濟的ノ
理由デアル、多クノ學校ヲ造ルヨリハ又造
ルコトガ出來ナイカラシテ、ソコデ一ツノ
學校ノ中ニ男女ヲ共ニ包容スルトキニハ
經濟上ノ利益ガアルト云フコトデアリマ
ス、又第二ノ理由ハ苟モ租稅ニ依ッテ立ッ
テ居ル所ノ學校ハ、國民ニ對シテ平等ナル
態度ヲ執ラナケレバナラヌト云フノデアリ
せく、今日日本ノ官立又ハ公立ノ學校ハ、
主トシテ租稅ニ依ッテ成立シテ居ルノデア
リマスカラシテ、國民男女ニ對シテ平等ナ
ル態度ヲ執ルベキノハ法律上ヨリ考ヘテモ
相當ナル事デアルト思フノデアリマス、ソ
レカラ若シサウ云フコトガ出來ナケレバ、
私立ノ學校ヲ補助スルト云フコトモ必要ナ
事ダラウト思フノデアリマス、私立女學校
ヲ補助シテ其制度ヲ完全ナラシムルト云ノ
コトモ、一ツノ方法デアルト思フノデアリ
ママ、兎ニ角日本ニ於テ政府ガ熱心ニナッ
テ女子ノ高等〓育ヲ振興スルト云フコト
ハ國際上ニモ大ニ意味ノアルコトデアル
ト思フノデアリマス、國際上ヨリ論ズルト
キニハ二ツノ點ガアルト思ヒマス、第一ノ
點ハ日本ニ於ケル女子ノ〓育ハ明治ノ初年
ヨリ歐米ノ基督〓ノ宣〓師ノ手ヲ煩シテ
居ッタノデアリマスガ、國力ガ充實セザル
時ニ當ッテ、又國民ノ自覺モ甚ダ發逹シナ
カッタ時ニ於キマシテハ、是モ亦已ムヲ得
ナカッタノデアリマスケレドモ、旣ニ日本ガ
世界ノ三大强國ノ一トナリ、或ハ五大强國
ノ一ニ數ヘラルル今日ニ至リマシテハ、國
民ノ體面トシテモ日本ノ女子ノ高等〓育ハ
國家自ラ其責任ニ任ジナケレバナラナイト
思フノデアリマス、第二ノ點ハ今日日本ノ
〓育ハ先程石川君モ述ベラレタ「スヱズ」
以束第一ノ〓育國デアリマスガ故ニ、我國
ノ〓育ハ東亞地方ノ中心トナッテ居ルノデ
アリマス、ソコデ我國ニ於テ〓育アル所ノ
婦人ガ多ク現ハルレバ、或ハ朝鮮ニ行キ、
或ハ支那ニ行キ、或ハ印度ニ行キ、或ハ滿
洲蒙古、西藏ニ參ッテ、サウシテ〓化ノ
任ヲ盡スコトガ出來ルノデゴザイマス、現
ニ暹羅ノ王室ニ聘セラレタル女子〓育家ア
リ、或ハ蒙古西藏ニ行シテ〓育ノ任ヲ盡シ
タル健氣ナル婦人モアッタノデゴザイマス
カラ、斯ウ云フ要求ハ將來益〓起ルコトデア
ルト思フノデアリマス、同時ニ國內ノ問題
トシテハ我國ニ於ケル婦人勞働者ノ數ハ頗
ル多クナッテ參シテ居ルノデコザイマシテ、
工場及鑛山ニ關係シテ居ル所ノ婦人總數ダ
ケデ、百四十六万餘ニ達シテ居ルノデアリ
ママ、是等ノ婦人ハ汗ミドロニナリマシテ
我國ノ富ヲ造リツヽアル所ノ人々デアリマ
シテ、是等ノ婦人ヲ指導スル所ノ〓育アリ、
見識アル婦人ガ輩出シナケレバナラナイノ
デアリマス、斯ウ云フ理由ニ依リマシテ女
子ノ高等〓育ヲ振興スルコトハ、我國ニ於
ケル焦眉ノ急務デアルト思フノデアリマ
ス、然ルニ金ガ無イト云フノデアリマスガ、
併シ日本國民ノ中斯ル重大ナル問題ガ衆議
院ニ依シテ愼重ニ討議セラレ、國民ノ輿論ヲ
代表シタト云フコトガ明ニナリマスルナラ
バ民間ノ有志ノ中、必ズ資ヲ投ジテ此事
業ヲ助ケル者ガアリト思フノデアリマスガ
故ニ、ドウカ政府當局ハ斷々乎トシテ女子
高等〓育振興ノ大飾ヲ飜シテ、國民ノ輿論
ヲ動カスガ爲ニ努力セラレムコトヲ希望ス
ルノデアリマス、吾々モ及バズナガラ驥尾
ニ付シテ國民ノ間ニ輿論ヲ作ンテ、官民協
力シテ理想ノ學校ヲ作ッテ、日本ノ女子ノ
進步發達ノ爲メニ貢獻スルコトヲ期スル者
デアリマス、尙詳細ノ點ハ委員會ニ於テ十
分述ベル積リデアリマスカラシテ、政黨政
派ヲ超越シテ此案ニ御協贊アラムコトヲ切
ニ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=106
-
107・井本常作
○井本常作君 本案ハ日程第十議案ノ委員
ニ併セテ付託セラレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=107
-
108・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマス、日程第二十四婦人參政ニ關スル建
議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明
ヲ許シマス、提出者松本君平君
第二十四婦人參政ニ關スル建議案
(松本君平君提出)
婦人參政ニ關スル建議案
婦人參政ニ關スル建議
婦人ノ智識意思感情ヲ全然度外シタル
政治ハ全社會全國家ノ幸福ト利益ヲ考
慮シタル善良ナル政治ト謂フヘカラス
婦人カ國ノ政治ヨリ遠サケラレ政治的
要素トシテ認メラレサル間ハ遂ニ其ノ
地位ヲ向上シ人格ヲ發達スル機會ヲ失
ヒ長ク屈辱ト輕侮ヲ免ルル時ナシ從來
婦人カ文明史上ニ重要ナル位地ヲ占ムル
コト能ハサリシモノハ婦人ノ天賦ノ本質
ノ然ラシムルニ非ス主トシテ〓育及環境
ノ結果ニ外ナラス女性トシテ人類社會國
家ニ奉仕スル所ノ使命ハ固ヨリ男性ニ比
シテ輕重貴賤ノ差異アルヘカラス婦人ヲ
シテ國家及法律ニ對シ男子ト同等ノ權利
ヲ保有セシメ婦人ニ對スル不合理ナル各
種ノ制限ヲ撤廢シ男子ト均等ノ境遇ニ立
タシムルハ正義ト人道ノ義シキ要求ニシ
テ女性ノ完成ニ缺クヘカラサルノミナラ
ス國家及民族ノ組織ヲ强大ナラシムル所
以ナリ
世界大戰爭ニ依テ深刻ナル慘苦ヲ嘗メタ
ル文明國民カ玆ニ覺醒スル所アリ婦人ノ
參政權ヲ認容スルニ至リタルハ決シテ偶
然ニ非ス健强ナル國家ト純眞ナル文化ハ
男女均等協力ノ基礎ノ上ニ建設セラレサ
ルヘカラス政府ハ速ニ我カ國婦人ニ對シ
テモ參政權附與ノ制ヲ定メラレムコト
ヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 都合ニ依シテ時
間ヲ延長スルコトヲ宣告シテ置キマス
〔松本君平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=109
-
110・松本君平
○松本君平君 本員ノ提出致シマシタル婦
人參政ニ關スル建議案ノ趣旨ヲ極メテ簡單
ニ說明致シタク思ヒマス、今日ハ最モ容易
ナラザル危期ニ直面シテ居ルト考ヘルノデ
アリマス、我ガ民族ハ一切ノ因襲ヲ打破シテ
舊弊ヲ擬脫シ、更始維新ノ大覺悟ヲ以テ新
シキ運命ヲ開拓シナケレバナラヌ時デアル
ト信ズルノデアリマス、而シテ國命民心ヲ
新タニスル所ノ方法ハ勿論有ラユル方面ニ
於テ重要ナル事柄デアリマス、就中我ガ國民
ノ全半數ヲ占ル所ノ、我ガ民族ノ全一半ヲ
有スル所ノ婦人ヲ解放シテ、其政治的、社
會的地位ヲ向上セシメル事ヲ計リ、ヨリ高
キ生活ニ此階級ヲ導クト云フコトハ現代
ノ社會ノ施設、政治上ノ施設ニ於テ最モ大
切ナル緊要ナ事柄ト信ズルノデアリマス、
其量ニ於テモ、亦其質ニ於テモ是程偉大ナ
ル幸福ヲ國民ノ上ニ齋シ、是程遠大ナル理
想ヲ實現スルモノハナイト思ヒマス、卽チ
本案ヲ提出シタル所以デアリマス、諸君、
本員ハ第四十五議會ニ於テ本案ト同一ナル
建議案ヲ提出致シマシテ諸君ノ御考慮ヲ煩
ハシタノデアリマス、再ビ此建議案ヲ本議
會ニ提出致シマシテ、更ニ賢明ナル諸君ノ
御考慮ヲ煩ハス所以ノモノハ本年ノ議會
ハ御永知ノ通リニ十年來ノ懸案デアル所ノ
普選案ガ衆議院ヲ通過シタノデアリマス、
本議會ハ我ガ立憲政治ノ歴史ニ於テ最モ記
憶スベキ、特筆大書スベキ所ノ立法議會デ
アリマス、此議會ニ於テ普選案ヲ通過シタ
ト云フコト卽チ、普選ハ納稅資格ヲ撤廢シ
テ廣ク普ク民衆ニ參政權ヲ與ヘルト云フコ
トデアル、是ハ物質ヨリ精神ヘ、又財產主
義ヨリシテ更ニ人格ヲ尊重スル自由平等ノ
大ナル精神ヨリ出發シタルモノデアリマ
ス、此主張原則ヨリシテ行タナラバ、婦
人ニ參政權ヲ與ヘナケレバナラナイコト、
參政權ヲ拒ムコトノ出來ナイ理由ガ明カニ
ナルノデアリマス(拍手)、何トナラバ婦人モ
亦人間トシテ人格ヲ持ツモノデアリ、又國
家トシテハ忠良ナル國民ヲ構成スルモノデ
アリマス、之ヲ拒ムト云フコトハ普通選舉
ノ根本ノ精神ヲ破壊スルモノデアリ、又之
ヲ拒ムト云フコトハ一大矛盾ト言ハナケレ
バナリマセヌ、カルガ故ニ此案ヲ提出シタ
ノデアル、此點ニ於テ本員ハ普通選擧ノ委
員會ニ於テ、屢、政府ノ意嚮ヲ問ヒ、又委
員諸君ノ意嚮ヲモ伺シタノデアリマスル、政
府當局ニ於キマシテモ原則トシテ主義トシ
テ婦人參政權ヲ認メラレテ居ルト云フコト
ハ諸君ノ御承知ノ通リデアリマス、既ニ
此主義ガ認メラレルト云フコトデアルナラ
バ、洵ニ木案ヲ提出スルト云フコトノ偶然
ナラザルコトヲ、諸君ノ御承知ヲ願フノデ
アリマス、本員ハ玆ニ男女兩性ノ體力、若
クハ智力ノ優劣ヲ論ズルト云フヤウナ愚ナ
ル議論ヲ玆ニシヤウトハ思ハナイノデアリ
マ、何トナレバ三千万人ノ男性ガ掛カツ
テモ一人ノ婦人ノ力ニ及バナイコトモアリ
マスル(笑聲起ル)、又本員ハ玆ニ政治ト云
フモノハ婦人ノ携ハルベキモノデハナイ、
政治ハ婦人ノ爲スベキ仕事デハナク、政治
ハ男性ノ專有獨占スベキモノナリト云フヤ
ウナ狹隘ナル議論ニ付テ、玆ニ批評ヲシヤ
ウトモ思フモノデハナイ、何トナレバ人間
生活ノ原理トシテ、機會均等ノ主義ト云フ
モノガ眞ニ之ガ人間生活ノ原理デアルナラ
バ婦人ヲシテ殊ニ政治ニ干與セシメナイ
ト云フ議論ハ立タナイノデアリマスル、(拍
手)又本員ハ婦人參政ハ家庭ヲ破壞スルモ
ノナリト云フヤウナ狹隘ナル議論ニ付テ
論議シヤウト考ヘル者デモアリマセヌ、何
トナレバ形式的ニ男性ガ、家庭ヲ代表スル
トシテモ、ソレハ決シテ圓滿ナル家庭ノ發
達ヲ助長スルモノデハナイト信ズルカラデ
アリマス、男女兩性共各〓其天分ヲ有シ、
人類トシテノ尊キ使命ヲ持テテルモノデ
アル、故ニ人間トシテノ價値ハ洵ニ平等デ公平
デナケレバナラヌコトヲ本員ハ確信スルモノ
デアリマス(拍手)、唯一ツ私ハ諸君ニ想へ
テ置カナケレバナラナイ問題ガ殘ッテ居ル、
ソレハ現代ノ婦人ハ政治的自覺ガ足ラナイ
ノデアル、或ハ參政權ニ對スル婦人ノ要求
ハマダ十分デナイト云フコトハ、屢〓論ゼラ
レ且ツ唱ヘラレルノデアリマス、是ハ一種
ノ俗論デアリマス、(ノウ〓〓)西洋諸國ニ行
ハルヽ所ノ標語所謂、求メヨ然ラバ與ヘラ
レン、叩ケヨ然ラバ其門ハ開カレント云フ所
ノ、爭鬪主義-力ノ爭ヒノ主義カラ來ル所
ノ議論デアリマス、私ハ信ズル、卽チ女子
ニ參政權ヲ與ヘルト云フコトガ洵ニ正シイ
道理デアルナラバ、是ハ求メズト雖モ之ヲ
與ヘナケレバナラナイ、叩カズト雖モ其門
ヲ開イテヤラナケレバナラナイト信ズルノ
デアル、(拍手)之ガ眞ノ正義ト公正ノ要求
デハナイカト信ズルノデアリマス、諸君ノ
御承知ノ如タ歐羅巴ニ於テ婦人參政權運動
ノ一派-彼ノ「パンクハースト」ノ一派ガ
極端ナル過激ナル獲得運動ヲ致シマシタ、
是ハ諸君ノ尙ホ耳目ニ新ナル所デアリマス
ガ、斯樣ナル極端ナル參政權獲得ノ運動
ハ私ハ日本ニ於テ-我國ニ於テハ之ヲ
願ハシクナイト思フノデアリマス、何トナ
ラバ西洋ニ於テノ主義ハ、力ノ爭ヒデアル
强キ要求ヲ爲ス者ガ勝ツ「求メヨ然ラバ與
ヘラレン叩ケヨ然ラバ其門ハ開カレン」ト云
フコトノ主義ヨリ成テ居リマス、强キ要
求-力强イ要求ガアルニ於テ、初メテ權
利ガ與ヘラレルノデアルガ、吾々ノ主義ハ
與フベキモノナラバ、假令ソレガ要求ガナ
クトモ、或ハ要求ガ弱クトモ、之ヲ與ヘナ
ケレバナラナイ、叩カズト雖モ若シ其事ガ
正義デアルナラバ、其門ヲ開イテ迎ヘテヤ
ラナケレバナラナイト云フ日本固有ノ主張
主義ニ立チタイト思フノデアリマス、諸君
ガ御承知ノ通リ國會開設ノトキニ、ドレダ
ケ國民ガ此立憲政治ノ思想ニ於テ自覺ヲ
持シテ居ッタデアリマセウカ、其當時ニ於ケ
ル少數ノ知識階級ノ人ハ、國會開設ノ請願
ヲシタノデアル、運動ヲシタノデアルガ、
國民大多數ハ殆ト與ラナカッタトキニ於テ
此國會ガ開カレ、憲法ガ布カレテ而シテ茲
ニ三十有餘年、日本ハ立派ナル立憲代議制
度ノ政ヲ行シテ居ルノデアリマス、故二一
世ヲ指導シテ而シテ世ノ新シキ政治組織ノ
改革ヲ爲ス所ノ先覺者タル者ハ此社會ノ
要求ト時代ノ趨勢ヲ達觀シテ、サウシテ之
ニ與フベキモノハ與ヘ、正義公道ノ命ズル
所ニ從ッテヤラナケレバナラヌト云フコト
ヲ信ズルノデアリマス、我國家民族ノ遠キ
將來ヲ考ヘテ、新シキ連命ヲ開拓セントス
ルトキニハ、常ニ正義ト公平ノ公正ナル命
令ニ從ッテ、國家政治ノ指導原理トシナケ
レバナラヌコトヲ、深ク信ジテ疑ハナイ者
デアリマス、此意味ニ於テ此婦人參政權ニ
關スル建議案ヲ提出致シタノデアリマス、
公正ナル諸君ノ賢明ナル御判斷ト御同情ニ
依ッテ、此案ノ通過セラレンコトヲ切ニ希
望スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ提
出者竝政府ニ質疑ノ通告ガアリマス原惣兵
衞君
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=111
-
112・原惣兵衞
○原惣兵衞君 私ハ提案者松本君ニ對シテ
二三ニ付テ質疑ヲ致シテ見タイト思フノデ
アリマス、勿論我黨ニ於キマシテハ婦人
ニ-世帯主ニ限リ參政權ヲ與ヘルト云フ
コトハ過般ニ於ケル所ノ修正案ニ於テ發
表シタ通リデアリマス、卽チ松本君ノ言ハ
レルマデモナイ、我ガ政治史ニ於ケル所
ノ-本黨ハ婦人ニ參政權ヲ與ヘルト云フ
所ノ嚆矢デアリ、之ガ唯一ノ政黨的主張デ
アリマス、唯〓松本君ニ一トロ御伺ヒシタイ
ノハ、若モ松本君ガ眞ニ婦人ニ參政權ヲ與
ルト云フ御考デアッタナラバ、過般ニ於ケ
ル我黨ノ婦人ノ參政權ニ對シテ之ニ贊成ヲ
スルカ、サモナケレバ自分自身ガ普選ニ對
スル關係ノトキニ於テ、婦人參政權ニ對ス
ルコトヲ修正ニ入レテ行カナケレバナラヌ
ノデアリマス(拍手)然ルニ松本君ハ其時ニ
於テソレニ對シテ何等我黨ト同ジヤウナ關
係ニ立タナイデ、反對ヲシテサウシテ此普
選案ニ贊成ヲシテ、修正案ヲ出サズシテ居ク
テ、數日ナラズシテ今日婦人參政權ノ建議
案ヲ出スト云フコトハ、ソコニ何カ矛盾ガ
アリハシナイカト思フ(拍手)若モ松本君ガ
眞ニ·心カラ婦人參政權ト云フモノニ御贊成
デアッタナラバ、斯ウ云フ矛盾ハナイト思
フノデアリマス、恐ラク松本君ハ此澤山ノ
婦人ヲ集メテ演說ヲ聽カス爲ニヤラレタノ
デアラウト思フ(拍手)松本君ガ鼻眼鏡ヲ掛
ケテ金鎖ヲ附ケテ、今日ハ殊ニメカシテ居
ラレル、斯樣ニシテ此壇上ニ來ラレテ演說
ヲセラレタノハ、其目的ハ婦人ニ其演說ヲ
聽カスト云フヨリ他ニ何等目的ハナイト吾
吾ハ見ナケレバナラヌ、全ク松本君ニシテ
若モサウデアルトシタナラバ、我ガ帝國議
會ヲ愚弄スルモノデアルト吾々ハ言ハナケ
レバナラヌ、此點ニ付テ松本君ハドウ云フ
御考ガアルカト云フコトヲ伺ヒタイノデア
リマス、ソレカラモウ一ツ松本君ニ御伺ヒ
セナケレバナラナイノハ、只今主意書ヲ見
マスト、人類天賦ノ權利ノ關係上、國家竝
ニ其法律ニ於テ婦人ニ權利ヲ得ルコトハ當
然ノ要求デアルト云フガ如ク伸シヤイマス
ガ、吾々ハ此自然人ノ立場カラ、單ニ文化
上ノ思想カラ一國ノ國內ニ於ケル參政權ヲ
與ヘルト云フヤウナ政治ノ權利ノ問題ト、
人類ノ天賦ノ權利タル文化史上ノ權利思想
トハ、別個ノモノト信ズルノデアリマス、唯こ
其點アルノミニ依ッテ男女平等デアル、サ
ウシテ之ニ權利ヲ與へナケレバナラヌト云
フコトハ生理學ノ一頁ヲモ知ラナイ者ト
言ハナケレバナラヌ、ソレ故ニ唯〓單ニ男
女ハ平等デアル、人類天賦ノ主張デアルト
簡單ニ申サルルナラバ、實ニ淺薄モ甚ダシ
イモノデアルト思フ、デアリマスカラ此點
ニ於テ婦人ニ如何ナル程度ニ於テ參政權ヲ
與ヘルカ、卽チ一國國内ニ於テ乞食デアル
トカ浮浪人ニ權利ヲ與ヘナイト云フコト
ハ、何處カラ來タカト云フト、卽チ國家ニ
於ケル社會上ノ分子トシテ、獨立ノ經濟上
ノ主體トシテ、何カ其一票ヲ投ズルコトニ
依シテ、卽チ國民トシテ其一票ヲ投ズル所
ノ效果ガ本人ニ歸屬シナケレバ、參政權ヲ
與ヘテモ全ク無意味デアリマス、其點ニ於テ
乞食トカ浮浪人ニ與ヘナイノデアッテ、若
槻サンノヤウニ單ニ國民ノ政治能力ガ發達
シタカラ之ニ與ヘルト言ッタナラバ、乞食ト
雖モ必ズシモ能力ノ無イ者バカリデハナイ、
有ルト言ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ意味
ニ於キマシテ、本黨ノ普選案ニ對シテ婦人
ヲ加ヘルト云フ此二點ニ、如何ナル御考ガ
アルカト云フコトヲ承リタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=112
-
113・松本君平
○松本君平君 只今ノ原君ノ御質問ニ對シ
テ御答致シマス
〔「登壇」「登壇」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=113
-
114・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 静粛ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=114
-
115・松本君平
○松本君平君(續) 本黨ハ婦人參政ノ先驅
者デアルト云フヤウナコトヲ御話ニナリマ
シテ、何故ニ普選案ニ入レヌ〃、修正ヲ提
出セヌカト云フ御質問デアッタト思ヒマス、
之ニ付テ申上ゲマス、普選案ニ付テ婦人參
政權ヲ入レルト云フコトハ固ヨリ私ノ積年
ノ主張デアリマス、故ニ之ニ付テハ昨年ヨ
リ普選案ヲ作成スルトキニ於テモ、こ屢〓婦
人ノ參政權ヲ普選案ニ入レルト云フコト
ハ其當時ニ於テ有志諸君ニモ御諮リシタ
ノデアリマス、併ナガラ御永知ノ普通選擧ト
云フモノト、婦人參政權ト云フモノハ別個
ノ歴史ヲ持シテ居ルモノデアリマシテ、普
通選擧ト云フモノト、婦人參政權ト云フコ
トハ別個ノ問題ニナッテ居リマス、必シ
モ之ヲ一緒ニシテヤル必要ハナイト思ヒマ
ス、原君ガ此歷史ヲ御調ベニナッタナラバ、
更ニ明瞭ニ御分リニナルデアラウト思ヒマ
ス、且ツ强テ此ノ問題ヲ普選案ニ入レルト
スレバ却テ事端ヲ繁クシテ根本ノ普選案ヲ
危フスル恐レガアッタカラ混同スルコトヲ
避ケタノデアリマス、又政友本黨ノ諸君ガ
世帶主論ヲ唱ヘテ、婦人參政權ハ之ニ依ノテ
解決セラレタリト考へラレルコトハ大ナ
ル誤リデアリマス、(拍手)吾々ハ斯ノ如キ
議論ニハ決シテ贊成ヲスルモノデハナイノ
デアリマス、吾々ノ唱ヘル所ノ婦人參政權
ハ其年齡ノ程度ハ異ナリマスレドモ、或
ハ英吉利ニ於ケル三十歲或ハ二十五歲-
其年齡ノ程度ハ別問額ト致シマシテ、婦人
ニモ亦男子ト同ジク平等ニ政治ニ參與スベ
キモノデアルト云フコトノ原則ヲ認メナケ
レバナラヌノデアル、然ルニ政友本黨ノ諸
君ガ、世滯主ニ於テ婦人ノ權利ヲ認メルト
云フコトハ何等ノ意味ヲ成シテ居リマセ
ヌ、決シテ是ハ婦人參政權ニ付テ解決ヲ與
ヘルモノデハアリマセヌ、又只今モウ一ツノ
問題トシテ原君ノ御質問ハ、男女ガ天賦ニ於
テ平等ヂアルカラ、其平等ナルガ故ニト
云フ、サウ云フ單純ナル議論ニ於テ參政權
ヲ與ヘルト云フコトハ反對デアルト云フ
ヤウニ聽イタノデアリマス、國家構成ノ上
ニ於テ婦人モ亦男子ト同ジク構成ノ分子デ
アリマス、忠良ナル臣民デアリマス、稅モ
納メレバ又國家ニ對スル奉公モシチ居リマ
ス、私ハ此點カラ國家構成ノ重大ナル要
素-其全民族、全國家ノ半分ヲ有スル所
ノ此婦人ヲ、政治ノ外ニ度外視スルト云フ
コトノ最モ誤マレルト云フコトヲ信ズルノ
デアリマヌ、勿論之ヲ生理的ニ考ヘ、生物
學ノ上ヨリ之ヲ考ヘ、此婦人ト云フモノヽ
其力ハ男子ト少シモ異ナル所ハナイ、其爲
ス所ノコト、其行フベキ所ニ於テハ色こ違
ヒマセウケレドモ、婦人ガ人類トシテ盡ス
所ノ其尊敬スベキ地位、又男子ガ人類トシ
テ盡ス所ノ地位、是ハ必ズ平等デナケレバ
ナラヌ、人間トシテ人類トシテ男女ハ平等
デナケレバナラナイト云フコトハ、是ハ自
明ノ理デアリマス、原君ノ如キ賢明ナル學
者ニシテ之ガ御分リニナラヌコトハナイト
思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=115
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116・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 吉良元夫君
〔吉良元夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=116
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117・吉良元夫
○吉良元夫君 私ハ此婦人參政權ノ問題ニ
付テ提案者タル松本君ニ質問ヲ致ス積リデ
アッタノデアリマスガ、ソレハ只今原君ニ
依リ御述ニナリマシタカラ、私ハ其點ヲ省
キマス、私ハ此婦人參政權ノ問題ハ是ハ極
メテ重要ナル問題ト心得ヘテ居ルノデアリ
マイ、今日我國ノ現狀ニ於キマシテハ婦人
ニ參政權ヲ與ヘルノハマダ少シク早過ギル
ト云フヤウナ意見ヲ、首相ガ先日委員會ニ
於テ御述ニナッタコトハ、其片鱗ヲ窺ウテ
居ルノデアリマス、私ハ我ガ日本國民トシ
テ極メテ喜ブベキノハ我ガ帝國ノ婦人ハ
歐米先進國ノ婦人ヨリハ、餘程尊敬スベキ
實質ガアルト思フノデアリマス、勿論歐米
先進國ノ婦人ハ、我ガ帝國ノ婦人ヨリカ知
識ノ點ニ於テ優ヲテ居ル感ガアルノデアリ
マス、併ナガラ婦人ニ於テ最モ尊ブベキモ
ノハ-知識ヨリ以上ニ尊、ブベキモノハ淑
德デアル、所謂節操ヲ保ツコトノ堅固ナル
點デアリマス、是ハ決シテ何人ト雖モ異論
ナキ所デアラウト思ヒマス、私ノ知リ得ル
程度ニ於テハ、歐米ノ婦人ハ節操ノ點ニ於
テ、實ニ下等動物ニ餘程似タ所ガ多イノデ
アッテ(發言スル者多シ)似タ所ガアルト申
スノデスカラ取消ス必要ハアリマセヌ、サ
ウシテ會テ彼國ニ於テ婦人參政ノ運動ヲ致
シマシタ人〓ノ遣方ヲ考ヘテ見マスルト
口角泡ヲ飛バシ、男以上ノ亂暴デアッテ、
到底我ガ帝國ノ婦人ニ此眞似デモシテ戴キ
マシテハ甚ダ吾々ハ殘念ニ考ヘテ居ルノ
デアル、所ガ焉ゾ知ラン我ガ帝國ニモ、日
本婦人ニシテ生半弱ニ歐化シタヤウナ、實
ニ奇々怪々ナル婦人ヲ近來屢〓見受ルノデ
アリマス、私ハ此婦人參政權問題ノ演說ナ
ドヲ謹ンデ拜聽ニ出掛ケテ見タコトガアル
ガ、ドウモ驚入ッタ方々ガ多イノデアル、
サウシテ其方々ハ私行ノ點ニ於テ洵ニ尊敬
スベキ方々デアルナラバ、吾々ハ深ノ謹ン
デ尊敬シテ御說ヲ聽クカモ知レヌガ、悉ク
トハ申シマセヌケレドモ、其大部分ハ不品
行不仕鱈、實ニ吾々ハ之ヲ聞クニ身ノ毛
ノ悚ツヤウナ次第デアル(「感情ニ走ル
ナ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)感情デハア
リマセヌ、私ハ冷靜ニ考ヘテ居ルノデアリ
マイ、デ私ノ考ヘル所ニ於キマシテハ大
體ニ於テ其時機來レバ、求メズト雖モ婦人
ニ參政權ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ頗
ル適當ナル事デアルト思フノデアル、曾テ
吾々ガ所屬シテ居リマシタ所ノ政友會ノ總
栽原敬氏ハ、其事ヲ此壇上ニ於テ深ク御話
シニナッテ居ルノデアリマス、併シ是ガ少
シク〓デハ尙早デアルカモ知レヌト云フ疑
モアルノデアリマス、併シ其時機既ニ來ン
テ居ルノカモ知レヌノデアル(「本黨ノ修正
案ハ何ダ」ト呼フ者アリ)ソレハ世帶主ノミ
ノ事デアリマス、是ハ一般ノ問題デアル、
世帶主ハ卽チ相當ナル世帶ヲ立ッテ、生活
上ニ於ケルソレダケノ程度ニナッテ居ル人
デアルカラ、之ニ與ヘルノハ何ノ不思議モ
ナイノデアル、併ナガラ一般ノ婦人卽チ二
十五年以上ノ婦人ニ與ヘルト云フヤウナコ
トハ、頗ル考慮ヲ要スベキ問題デアルト思
フノデアル、然ルニ支那ノ言葉ニモアリマ
スルヤウナ「牝鷄ノ農スルノハ其家ノ滅ビ
ル兆ナリ」ト云フ、近來隨分牝鷄ノ晨スル
モノガアル、是ハ時代ハ違ヒマスルケレド
モガ、只今提案者ノ一人タル松本君平君ハ
當年ノ三「ハイカラ」ト稱セラレ所謂此衆議
院ニ於テハ最モ好男子、在原業平見タイナ
方デアル(發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=117
-
118・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマ
ス、吉良君ニ御注意致シマス、同僚ニ對シ
テ衣服「スタイル」態度等ニ付テノ御批評ハ
餘リ爲サラヌコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=118
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119・吉良元夫
○吉良元夫君(續) (「無禮ダ」ト呼フ者ア
リ)無禮デハナイ-然ルニ此問題ニ於キ
マシテモ、先日旣ニ此衆議院選擧法ノ改正
ガアッタノデアリマス、卽チ此議場ヲ通過
シテ居ルノデアル、此場合ニ至ッテ突如ト
シテ又婦人參政權建議案ヲ出サレルト云フ
コトハ、所謂六日ノ菖蒲十ロノ菊ト云フヤ
ウナモノデ、大變ナ是ハ唯〓沽ランガ爲ニ
御提案ニナッタモノヽヤウニ私ハ思フノデ
アル、然ルニソレハ宜シイ、私ハ其事ハ最
早申上ゲマセヌガ、内務當局ハ-此提案
ハ私謹ンデ拜見致シタノデアル、サウシテ
之ニ贊成サレテ居ル所ノ御方々ノ記名ヲ拜
見シテモ、殆ド三派ニ互クテ多數ノ御方ガ
記名ヲ爲サッテ居ルノデアル、然ルニ當局
ニ於テハ之ヲ如何ニ見テ居ラルヽノデアル
カ、卽チ是ハ取モ直サズ此案ハ委員會ヲ開
イテ、委員會ノ議ニ上セルノデアリマセウ、
然ルニ屢、此憲法附屬ノ大典タル衆議院議
員選擧法ト云フモノガ、サウ朝令暮改スル
コトハ出來ナイ、ソレデアリマスカラシテ
本日ノ松本君ノ提案ニ對シテハ當局ハ如何
ニ之ヲ御考ニナッテ居ルカ、御同意デアル
ノデアルカ、或ハ不同意デアルノデアルカ、
其大體ヲ承リタイト思フノデアリマス、尙
ホ吾々ハ大ニ此點ニ付テハ眞面目ニ話シタ
イ事柄ガアルノデアリマスケレドモガ、頻
ニ諸君ハ御厭怠ノ模樣デアル、殊ニ田崎君
ノ如キハ頗ル私ノ發言ニ付テ妨害ヲサレル
ノデアル、ソレデ私ハ最早是レ以上論ズル
必要ハ無イノデアリマスカラ、簡單ニ當局
ノ御意見ヲ伺ッテ此壇ヲ降リルノデアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=119
-
120・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 片岡政務次官
〔政府委員片岡直温君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=120
-
121・片岡直温
○政府委員(片岡直溫君) 只今土屋君ノ御
質問ニ御答〓シマス(「吉良君ダ」)ト呼フ者
アリ)ア吉良君デゴザイマシタ、甚ダ失禮
ヲ致シマシタ、本問題ハ極メテ重要ナ大切
ナル事柄デアルト存ジマス、婦人參政權ト
申シマスルコトハ、理論上カラ申シマシテ
相當ノ事デアルト存ジマス、併ナガラ我國
ノ實際ノ所ニ對照シテ考ヘレバ、極メテ愼
重ニ考慮〓究スベキ事柄デアルト存ジマス
今現ニ普通選擧法ヲ議定シ、是ヨリ其實績
ヲ見ントスル所デアリマス、此間ニ於テ徐
ロニ〓究ヲ致シテ態度ヲ決メベキモノト思
ヒマス、今此案ニ對シテ直ニ贊否ヲ表スル
譯ニハ參リマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=121
-
122・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 質疑ハ終了致シ
マシタ-井本常作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=122
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123・井本常作
○井本常作君 本案ハ日程第十ノ委員ト同
一委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=123
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124・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ其通リ決シマ
ス、日程第二十五、市制及町村制改正ニ關
スル建議ヲ議題ニ致シ、提出者ノ趣旨辯明
ヲ許シマス、提出者高橋熊次郞君
第二十五市制及町村制改正ニ關スル
建議案(高橋熊次郞君外四名(提出)
市制及町村制改正ニ關スル遠議案
市制及町村制改正ニ關スル建議
時代ノ趨勢ト我カ國現在ノ文化トニ鑑ミ
市町村ノ公民權ヲ擴張シテ之ヲ婦人ニ及
ホスハ最必要ナリト信ス殊ニ小兒ノ〓育
及地方改善ニ關スル諸事業竝社會政策ニ
關スル幾多ノ公共事業ハ婦人ノ手ニ待ツ
モノ頗ル多シ且將來參政權ヲ婦人ニ及ホ
ス階梯トシテ婦人ヲシテ政治的調練ヲ爲
サシムルハ最緊要ノ急務ナリ政府ハ速ニ
市制及町村制ヲ改正シテ男子ト同一ノ條
件ニ依リ婦人ニ公民權ヲ與ヘラレムコト
ヲ望ム
右建議ス
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=124
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125・高橋熊次郎
○高橋能次郞君 只今上程ニナッテ居リマ
スル市制及町村制改正ニ關スル建議ニ對ス
ル趣旨ヲ、是ヨリ辯明致シタイト思フノデ
アリマス、本問題ハ御承知置ノ如ク、婦人
參政權ニ關係スル間題デアリマシテ、只今
松本君或ハ内ケ崎博士ヨリ此問題ニ付テ十
分論議ヲ盡サレタノデアリマス、其如何ナ
ルモノデアルカ、或ハ大勢ハドウデアルカ
ナドト云フ論議ハ、私ノ繰返ス必要ノ無イ
コトヽ思フノデアリマス、併ナガラ此問題
ハ洵ニ重大ナ問題デアリマシテ、其經濟上
ノ意味ニ於テ、其政治上ノ意味ニ於テ、又
婦人問題トシテハ法律上ノ問題ト致シマシ
テ、頗ル重要ナルモノデアル、之ヲ滑稽化
シ或ハ不眞面目ニ論議スルト云フコトハ
洵ニ政治家トシテ其當ヲ得ザルモノト私ハ
心得テ居ル、御承知置ノ通リ議會ハ輿論ノ
府デアルノデアル、議會ヲ通ジナケレバ與
論ト云フモノハ成立夕ヌノデアル、而シテ
婦人ハ此議會ニ議席ヲ持タナイ、卽チロヲ
持タナイノデアリマス、吾々男子ニ依シテ
之ヲ論議セラルヽヨリ、今ヤ何等ノ問題ハ
ナイノデアル故ニ、吾々男子ハ其如何ナル
地位ニ在ルカ、若イ者、老人ヲ論ゼズ、眞
面目ニ此問題ヲ論議シナケレバナラヌト思
フノデアリマス、此問題ヲ捉へ來ル者ニ對
シテ、徒ニ罵倒ヲ加ヘルガ如キハ、決シテ
私ハ士君子ノ取ラサル所ナリト思フノデア
リマス、此問題ハ法律ニ直接關係ノアル問
題デアリマスカラシテ、御參考ノ爲ニ關係條
文ヲ朗讀致シタイト思フノデアリマス、暫
時御〓聽ヲ煩ハシマス、卽チ是ハ市制ノ第
九條竝ニ町村制ノ第七條ニ關係アル問題デ
アリマスガ、市制ト略、-市ト云フ文字
ト町村ト云フ文字ガ異ッテ居ルダケデアリ
マスカラ、市制第九條ノ第一項ヲ朗讀シテ
見タイト思フノデアリマス、卽チ「市住民
ニシテ左ノ要件ヲ具備スル者ハ市公民ト
ス、但シ貧困ノ爲公私ノ救助ヲ受ケタル後
二年ヲ經サル者、禁治產者、準禁治產者、
及六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ
タル者ハ此限ニ在ラス一帝國臣民タル男
子ニシテ年齡二十五年以上ノ者二、獨立ノ
生計ヲ營ム者、三、二年以來其ノ市住民タ
ル者四、二年以來其ノ市ノ直接市稅ヲ納ム
ル者」斯クアルノデアリマス、吾々ハ之ヲ
改正致シテ婦人ニモ男子同樣ノ選擧權ヲ、
卽チ公民權ヲ附與シタイト云フ、斯ウ考へ
テ居ルノデアリマス、若シ出來得ベクンバ
此獨立ノ生計ト云フ以上ニ、相當ノ〓育ア
ル者、或ハ此公民權ヲ有スル男子ノ配偶者
ト云フヤウナ、必要ナ人々ニモ此公民權ヲ
與ヘラレタイト思フノデアリマシテ、少ク
トモ私ハ現行法ニ定メテアル所ノ男子ト同
等タル公民權シ之ニ附與シタイト云フノガ
其骨子デアリマス、前演說者ト重複スルノ
嫌モアリマセウケレドモ、私ハ多少此問題
ニ付テ論議ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、我ガ國民ノ-先程松本君ノ言ハレタ
通リ半數ヲ占ムル婦人デアル、此婦人ヲ將
來ドウ取扱フカト云フコトハ、此特殊ノ家
族制度ニ依シテ培ハレタ我國ノ婦人ノ社會
的地位、殊ニ其法律、政治上ニ於ケル苛酷
ナル待遇、之ヲ現狀ノ儘ニ放置スルコトガ
哲學的、道德的論議ハ姑ク措キマヌ、是ハ
松本君ニ盡サレテ居ル、實際問題トシテ我
ガ國運ノ伸張ニ對シデ策ノ得タルモノデア
ルカドウカ、是ハ社會問題ト致シマシテモ
政治問題ト致シマシテモ、先程申上ゲル通
リ十分愼重ニ審議シナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、固ヨリ經濟上ハ私權上ニ於
ケル所ノ性別待遇ノ撤廢デアルトカ、或ハ
男女問ノ機會均等デアルト云フヤウナ問題
ハ私ハ此所ニ論ジナイノデアリマス、卽
チ普通選擧權ガ輿論トナッテ衆議院ヲ通過
シテ將ニ實施ノ域ニ達セントスル今日ニ於
テ、性ノ異ナルト云フダケノ故ヲ以テ、女
子ノ前ニ參政權ハ全部門戶ガ閉サレテアル
ト云フヤウナコトハ、此際ドウデアルカ、
是非共之ヲ打開致シマシテ、此方面ニ向フ
ベキ鍵ヲ茲ニ拵ヘタイト云フノデアリマ
ス、デ世ノ因襲ニ捉ハレテ、唯〓深窻ニ立
籠ノテ男子ノ寄生物、之ガ婦人ノ本能デア
ルナドト思シテ居ルヤウナ婦人ハ兎モ角ト
致シマシテ、現代ニ於テ目覺メタル婦人ハ、
ソレ〓〓此問題ニ對シテ要求サレテ居ル、
熱心ナル運動モサレテ居ルノデアリマス、
併シ中ニハ不眞面目ナル遊戯氣分デ此問題
ヲ唱ヘテ居ル人モアリマセウ、先程本黨ノ
諸君カラ論ゼラレタヤウナ人モアル、是ハ
其問題其物ヲ減税セシムルモノデハナイノ
デアリマス、勿論吾々ハ一部ノ都會ノ人士
ノ有閑階級、有產階級ノ婦人ナドハ何等
生產的仕事ヲ爲サズシテ、消費ノミ是レ事
トシ、其消費モ下ラナイ愚ニモ付カナイヤ
ウナ奢侈品ナドヲ用ヰテ、自分ノ手廻リノ
仕事サヘ人手ヲ煩シテ、子女ノ育成ト云フモ
ノハ婦人ノ最大任務デアルニ拘ラズ、コン
ナ事サヘモ自分デ顧ミナイト云フヤウナ
婦人ガアルノデアリマス、是等ノ婦人ト
云フ者ハ、吾々ハ毫モ同情ノ値打ガナイ、
寧ロ國家ノ害物デアル、斯ウ云フ者ハ
卽チ國家ニ、或ハ社會ニ、寄生スル一ノ
寄生動物デアルト吾々ハ考ヘテ居ルノデ
アリマス、私ハ男子ノ生血ヲ吸ッテ居ッテ
生キテ居ル所ノ魔物デアルトモ申サレ
ヤウカト考ヘテ居ルノデアリマス、斯ウ
云フ婦人ガ集ッテ男女同權デアルトカ、
或ハ機會均等ト云フヤウナ事ヲ申スナラ
バ吾々ハ毫モ之ニ顧ミル必要ハナカラウ
ト思フノデアリマス、併ナガラ斯カル婦人
バカリガ都會ニハ居ラヌ、而シテ一タビ諸君
ハ眼ヲ轉ジテ農村ヲ御覽ナサイ、農村ノ婦人
ハドンナニ活動シテ居ルカ、農村ノ婦人ハ
何等其勞力ニ於テ決シテ男子ト異ナル所ハ
無イノデアリマス、是ハ決シテ東京ナドニ
在ル所ノ有田階級ノ者デ、著物ノ著狂ヒヲ
シテ其裾ガ切レルト云フヤウナコトモ困ラ
ナイヤウナ、自動車バカリ飛バシテ他ノ人
ヲ羨マシタリ、困ラシタリスルト云フヤ
ウナコトハヤッテ居ラヌ、我國ハ雪ノ國デ
アル、随テ「モンペイ」ト云フ袴ニ似タヤウナ
モノヲ穿キマシテ、朝カラ晩マデ家デ稼イデ、
男子ト同ジク山稼モ致シマス、畑ニモ出ル
コトハ無論デアリマス、其暇ニ家事ノ整理
モスル、病人ノ世話モスルノデアリマス、
近頃東京邊カラプラ〓〓ト靑年トカ少女ト
カヾ肺病患者ニナッテ歸ッテ來ルノデアリマ
ス、斯ウ云フ者モ能ク面倒ヲ見テ居ルノデ
アリマス、醫者ハ少イシ藥屋ハ遠イト云
フ、此間ノ農村婦人ノ苦心ト云フモノハ頗
ル慘憺タルモノガアルノデアリマス、併ナ
ガラ斯ンナ間ニ農村婦女ハ何ヲシテ居ル
カ諸君ハ御水知ノ通リ日本輸出ノ大宗タ
ルモノハ生絲デアル、生絲ノ本タル養蠶業
ハ誰ノ手ニ依ッテ營マレテ居ルカト云フコ
トヲ諸君考ヘテ御覽ナサイ、是ハ農村婦人
ヲ中樞トシテ營ンデ居ル、農村婦人デナケ
レバ養蠶業ハ到底行ハレ得ナイト一云フコト
ヲ私ハ斷言シテ憚ラヌノデアリマス、其他
ニ於テモ纖維工業-武藤サンアタリノ御
關係ニナッテ居ル纖維工業ノ如キモ、工女
ト云フモノヲ取去ッタナラバ何物ガ出來ル
カト云フコトヲ言ヒタイノデアリマス、斯
ウ云フヤウナ人ニ、其他ノ職業婦人ト云フ
ヤウナモノモアル、交通機關ノ電話、或
小學校カラ女〓員ヲ取去ノタナラバ、〓育ハ
ドウナルカト云フヤウナコトヲ考ヘマシタナ
ラバ、此婦人ヲ現狀ノ儘ニ置クト云フコト
ハ是ハ國家トシテ大イニ考ヘナケレバナ
ラヌト云フコトハ誰人モ分ッテ居ル、眞面
目ナ問題デアル(拍手)、併ナガラ物ニハ順
序モアリマセウ、又哲學上ノ議論ヤ人道論
ト云フヤウナ道德論ノミヲ、之ヲ直グ樣捉
ヘテ之ヲ規範トシテ法律ノ改廢ヲスルト云
フコトハ吾々モ直ニ同意出來ヌノデアリ
マツ、併ナガラ既ニ農村ニ於テハ此姉人ノ
努力、婦人ノ力ト云フモノヲ信認致シマシ
テ、之ニ農會ニ參與スル權利ヲ與ヘタヂヤ
アリマセヌカ、農會員トシテ、農會役員ト
シテ、男子ト婦人トハ毫モ差別ハ今日無イ
ノデアリマスソレハ十一年三月四十五議
會ニ現ハレテ諸君ガ協賃サレタノデアッテ、
諸君ノ御記憶ニ新タナル所デアリマス、農
村農政ニ於テ婦人ガ參政權ヲ持ッタ、農村
ニ於ケル問題ハ何デアリマセウ、〓育問題
デアリマセウ、衞生問題デセウ、大ナルモ
ノト云フモノハ土木ナドモアリマスケレド
モ、併ナガラ是等ノ問題ハ刀子ノ手ヨリハ
多クハ婦人ニ交涉アル問題デアル、農政ニ
參與セシメタル所ノ我國ガ〓育ヤ衛生ノ問
題ニ女子ヲ煩ハシテイカヌト云フ道理ガ何
處ニアリマスカ、是ニ於テ吾々ハ先ヅ町村
制ヲ改正致シマシテ、而シテ玆ニ婦人ニ公民
權ヲ與へ、地方自治體ニ婦人ヲ參與致サシ
ノ、而シテハ一ハ以テ有閑階扱アタリノ
ブラ〓〓シテ居ル婦人ヲ自覺セシメ、其餘ク
タル勞力、或ハ餘ノタル資力ヲ社會公共事
業ノ爲ニ使ハセル、自分ノ子ハ可愛イノデ
アル其人々モ人手ニハ委セルケレドモ、
其之ヲ育テラレル所ノ其土地ノ爲ニ、又自分
ノ住ンデ居ル此土地ノ爲ニ大ニ力ヲ致サセ
ルト云フコトハ、所謂禍ヲ轉ジテ福ト爲サ
シムル方法デアルダラウト斯ウ考ヘルノデ
アリマス、延テ何時カハ松本君ノ高唱サレ
ルガ如ク、本黨ノ諸君ノ言ハルヽ如ク、多
少意味ハ違ヒマスガ、併ナガラ斯ウ云フ問
題ハ早晩解決セラレナケレバナラヌ、ソレ
ノ準備ガ要ルノデアル、先ヅ此地方自治體
ニ於テンレ〓〓政治的訓練ヲ爲サシメ、之
ヲ軈テハ參政權ヲ得セシムル階梯ト致スト
云フコトハ、洵ニ當然ノ事ダラウト私ハ考
ヘルノデアリマス(拍手)、此故ニ市制竝ニ
町村制ノ改正ヲ致シマシテ、婦人地方自治
體ニ於ケル公務ニ參與セシムル、卽チ公民
權ヲ有セシメタイト云フノガ本案ノ大體ノ
趣旨デアリマス、其詳細ニ至リマシテハ委
員會ニ於テ十分ニ陳述ヲ致シタイト思フノ
デアリマス、ドウカ諸君ニ於カレマシテ
ソレ〓〓御審議ノ上ト御協賛アランコトヲ偏
ニ冀フ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=125
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126・井本常作
○井本常作君 本案ハ日程第十議案ト同一
委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=126
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127・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マス、是ニテ全部日程ハ終了致シマシタ、
諮問事項ガアリマス、細梅三郞君ハ事故ノ
爲三月十日ヨリ三月一一十日マデ請暇ノ申出
ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=127
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128・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナケレ
バ許可致シマス、次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ
御通知致シマス、本日ハ之ニテ散會致シマ
ス
午後六時三十五分散會
衆議院議事速記錄第二十四號
五七五頁一段二五行ノ後ニ左ノ〔參照〕ヲ
脫ス
〔治安維持法案ノ第二讀會ヲ開クヤ否
ヤノ投票者氏名〕
〔參照〕
第二讀會ヲ開クヘシトスル議員ノ氏名左
ノ如シ
一柳仲次郞君井本常作君
石川安次郞君石塚三郞君
石黑大次郎君飯塚春太郎君
早速:整爾君服部英明君
原脩次郞君橋本喜造君
戶田由美君大島要三君
太田信治郞君小野重行君
岡本實太郞君岡部次郞君
奧村千藏君片岡直溫君
川崎安之助君河波荒次郞君
加藤六藏君金澤安之助君
神谷彌平君神部爲藏君
橫山勝太郞君橫山金太郞君
横山一格君吉川吉郞兵衞君
吉原義雄君賴母木桂吉君
武內作平君田中善立君
高木益太郞君高田耘平君
高橋元四郞君谷口宇右衞門君
建部遯吾君中原德太郞君
中村貞吉君中野正剛君
村上國吉君村山喜一郞君
宇田友四郞君野村嘉六君
黑田重兵衞君栗延敬太郞君
工藤鐵男君八並武治君
山枡儀重君山田又司君
山田助作君山本勝次君
公井郡治君丸山五郞君
藤澤後之輔君深井功君
福田五郞君小島證作君
小寺謙吉君小山松壽君
小西和君小池仁郞君
木檜三四郞君河野正義君
河野曉君近藤重三郞君
紺野九右衞門君寺島權藏君
淺賀長兵衞君淺川浩君
阿由葉勝作君荒井建三君
荒川五郞君蟻川五郞作君
作間耕逸君佐竹庄七君
佐藤富十郞君佐藤實君
齋藤太兵衞君齋藤仁太郞君
齋藤金吾君柵瀨軍之佐君
澤田利吉君由谷義治君
三好榮次郞君箕浦勝人君
下元鹿之助君〓水留三郞君
信太儀右衛門君鹽田團平君
重松重治君廣瀨德藏君
平沼亮三君平川松太郞君
平野光雄君樋口秀雄君
森田茂君望月小太郞君
關矢孫一君關俊吉君
鈴木富士彌君菅村太事君
磯部尙君岩崎勳君
石井謹吾君石〓三郞君
今井健彥君伊澤平左衞門君
生田和平君八田宗吉君
秦豐助君濱口吉兵衞君
西方利馬君長田桃藏君
大竹謙治君岡田伊太郞君
岡崎邦輔君小川平吉君
小野義一君若尾幾太郞君
兼松寅太郞君吉津度君
吉田眞策君竹內友治郞君
高井商二君高山長幸君
高木音藏君中村〓造君
武藤金吉君野田卯太郞君
來栖七郞君熊谷巖君
熊谷直太君黑住成章君
矢野鉉吉君山口義一君
山口恒太郞君山內範造君
山下谷次君山崎達之輔君
松實喜代太君二木洵君
藤川〓助君古川〓君
木暮正一君靑木精一君
靑柳郁次郞君赤間嘉之吉君
東武君齋藤珪次君
榊原經武君佐々木文一君
佐々木春作君佐々木長治君
坂井大輔君宮本逸三君
三善〓之君志賀和多利君
廣瀨爲久君瀨沼伊兵衞君
鈴木隆君菅原傳君
板野友造君犬養毅君
馬場義興君濱田國松君
西村丹治郞君土井權大君
土居通憲君大口喜六君
大內暢三君高草美代藏君
高島兵吉君植原悅二郞君
山本芳治君秋田〓君
齋藤眞三郞君關直彥君
砂田重政君石原正太郞君
原惣兵衞君原田藤次郞君
富田愿之助君床次竹二郞君
東郷實君千葉宮次郞君
陣軍吉君小島善作君
小野寅吉君小園榮三郞君
川原茂輔君河崎〓君
加藤鐐五郞君柏田忠一君
神村吉郞君吉植庄一郎君
吉木陽君高見之通君
丹下茂十郞君田中隆三君
土屋興君筒井民次郞君
津崎尙武君中村四郞兵衞君
中村啓次郞君中村嘉壽君
中林友信君中山貞雄君
植場平君上埜安太郞君
梅田寛一君則元由庸君
野村治三郞君熊谷五右衞門君
藏園三四郞君前田房之助君
牧山耕藏君松田源治君
麓純義君古林新治君
吉良元夫君岸本賀昌君
宜保成晴君三輪市太郞君
志波安一郞君〓水市太郞君
平田民之助君森肇君
井上孝哉君磯部保次君
石坂豐一君堀田義次郞君
岡田忠彥君小川〓太郞君
若宮貞夫君若尾璋八君
堤〓六君浦山助太郞君
山口左一君山本眞平君
增田義一君松山兼三郞君
小屋光雄君秋田寅之介君
多木久米次郞君太宰孫九君
第二讀會ヲ開クヘカラストスル議員ノ氏
名左ノ如シ
星島二郞君尾崎行雄君
田崎信藏君〓瀨一郞君
湯淺凡平君今里準太郞君
坂東幸太郞君本田義成君
畔田明君山本愼平君
佐藤潤象君武藤山治君
前野芳造君古林喜代太君
森田金藏君猪野毛利榮君
湛增庸一君菊池謙二郞君
衆議院議事速記錄第二十四號中正誤
頁段行誤正
五五九一三三何ガ此何ガ故ニ此
同二四〇安寧ノ秩序安寧秩序
五七0三二二反對賛成
五七三一一檢事ハ行
同同一一二二對シテ處シテ
二四聽カイ聽カヌ
二一七普通普選
同同同同同同同一九四年十年
同二·來タ居タ
三二六政治說
五人八三三〇メツプネツプ
同四一ハ於テハ於テ
五七九二一八經果經過
同同同政府政體
同三三五ノデマスノデアリマ
ス
同四二〇地方他方
同同一三居ル居ラナイ
五八〇一四御話御騒ギ
コンクチーコレクチー
同同_0ヴ、バーゲヴバーゲ
インニング
同同二九斯ウ云フモ行
ノヲ
同三法律此法律
同同同同三三ヲ以テニ則ツテ
三四呈示呈
五八〇三我ニ我黨ニ
同同四三マシテハマシテ
同同三〇ヤリヤキ
同三三アル居ル
同同シテ、又シテモ、又此
同三六
五八一七シタノハシタイノハ
同二三本案ノ第二本案ノ第三発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02519250310&spkNum=128
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