1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十四年三月十七日(火曜日)午後一時二十五分開議
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議事日程 第二十七號
大正十四年三月十七日
午後一時開議
質問
一 松村大分縣知事の暴政に關する質問(吉良元夫君提出)
二 賣國的行爲取締に關する質問(建部遯吾君提出)
三 思想善導に伴ふ特殊機關設置に關する質問(秋田寅之介君提出)
四 永樂銀行支拂停止に關する質問(筒井民次郎君提出)
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第一 教育改善及農村振興基金特別會計法案(政府提出、貴族院囘付)
第二 藥劑師法案(政府提出) 第一讀會
第三 藥品法案(政府提出) 第一讀會
第四 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 條約に基く外國との利權契約に依り外國に於て事業を營むことを目的とする帝國會社に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 帝國美術院美術研究奬勵金委任經理に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 支那に於ける帝國法人の所有する船舶等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 外國人土地法案(政府提出貴族院送付) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 漁業財團低當法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 登録税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 印紙税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 行政整理又は軍備整理に際し退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 下關漁港速成に關する建議案(秋田寅之介君外一名提出)
第十八 高等工業學校設置に關する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第十九 北海道高等學校設置に關する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第二十 刑餘者に對する法令の差別待遇撤廢に關する建議案(原夫次郎君外四名提出)
第二十一 生計調査に關する建議案(加藤鯛一君提出)
第二十二 日南鐵道東部線速成に關する建議案(山道襄一君提出)
第二十三 酒田、觀音寺及眞室川間鐵道敷設に關する建議案(熊谷直太君外四名提出)
第二十四 今泉坂町間鐵道起點變更に關する建議案(石塚三郎君外四名提出)
第二十五 借家人の利益保護に關する建議案(廣瀬徳藏君外四名提出)
第二十六 鳥栖長尾間鐵道建設に關する建議案(加藤十四郎君提出)
第二十七 金鵄勳章年金令改正に關する建議案(中野寅吉君外五名提出)
第二十八 蠶絲局設置に關する建議案(武藤金吉君外六名提出)
第二十九 蠶絲織物の單科大學設置に關する建議案(清水留三郎君提出)
第三十 高等蠶絲學校建設に關する建議案(岡本實太郎君外二名提出)
第三十一 農業教育振興に關する建議案(加藤知正君外二名提出)
第三十二 鳥栖臼井間鐵道建設に關する建議案(山内範造君外三名提出)
第三十三 野岩羽鐵道速成に關する建議案(高橋元四郎君外二名提出)
第三十四 教員俸給支給法改定に關する建議案(建部遯吾君提出)
第三十五 青森港に領事機關設置の交渉に關する建議案(工藤鐵男君提出)
第三十六 敦賀港に露國領事館設置に關する建議案(河崎清君外一名提出)
第三十七 伏木港に露國領事館設置に關する建議案(石原正太郎君外四名提出)
第三十八 警察費國庫下渡金連帶支辨規定改正に關する建議案(千葉宮次郎君外三名提出)
第三十九 漁村振興に關する建議案(千葉宮次郎君外六名提出)
第四十 淡路縱貫鐵道敷設速成に關する建議案(千葉宮次郎君外二名提出)
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001・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 諸般ノ報告ヲセ
シメマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
藥劑師法案
藥品法案
(第二號)大正十四年度歲入歳出總豫算追
加案
(第三號)大正十四年度歳入歳出總豫算追
加案
(特第二號)大正十四年度特別會計歲入歲
出豫算追加案
(以上三月十五日提出)
條約ニ基ク外國トノ利權契約ニ依リ外國
ニ於テ事業ヲ營ムコトヲ目的トスル帝國
會社ニ關スル法律案
帝國美術院美術〓究獎勵金委任經理ニ關
スル法律案
支那ニ於ケル帝國法人ノ所有スル船舶等
ニ關スル法律案
(以上三月十六日提出)
一昨十六日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
外國人土地法案
一昨十六日貴族院ヨリ囘付アリタル議案左
ノ如シ
〓育改善及農村振興基金特別會計法案
(政府提出)
議員ヨリ提出シタル議案左ノ如シ
關稅定率法中改正法律案
提出者
砂田重政君永田善三郞君
黑仕成章君
(以上三月十四日提出)
德山港ヲ第二種港編入ニ關スル建議案
提出者
橫山金太郞君渡邊林策君
移住組合法制定ニ關スル建議案
提出者
津崎尙武君山本愼平君
移住組合法制定ニ關スル建議案
提出者
荒川五郞君石井謹吾君
土井權大君
(以上三月十四日提出)
長崎五島佐世保間命令航路ノ完備ニ關ス
ル建議案
提出者
牧山耕藏君則元由唐君
向井倭雄君富田愿之助君
志波安一郞君森肇君
川原茂輔君本下謙次郞君
小橋一太君松田源治君
成田榮信君田中隆三君
高見之通君
(以上三月十六日提出)
漆樹栽培奬勵ニ關スル建議案
提出者
寺島權藏君佐藤實君
名古屋港ニ自由港設置ニ關スル建議案
提出者
服部英明君田中善立君
小山松壽君
岡崎市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者近藤重三郞君
(以上三月十七日提出)
一今十七日政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ
如シ
衆議院議員吉良元夫君提出松村大分縣知
事ノ暴政ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員建部遯吾君提出賣國的行爲取
締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員秋田寅之介君提出思想善導ニ
件フ特殊機團設置ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
衆議院議員筒井民次郞君提出永樂銀行支
拂停止ニ關スル質問ニ對スル答辯書
松村大分縣知事ノ暴政ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月五日
提出者吉良元夫
松村大分縣知事ノ暴政ニ關スル質問主
意書
一現內閣成立後松村義一氏大分縣知事
トシテ赴任スルヤ陽ニ所謂綱紀肅正
ヲ高唱シ陰ニ憲政會大分縣支部ノ陳
情ニ聽キ大小官公更數百名ヲ馘首シ
主トシテ同支部幹部ノ獻策ヲ容レ大
小ノ縣施設殆ト悉ク憲政會擴張ノ手
段ナリト謂フモ誣言ニ非サルヘキノ
情態ニシテ其ノ暴政今之ヲ列擧スル
ニ遑アラス斯ノ如キ事相ハ知事トシ
テノ職務執行上相當ノ措置トシテ認
容セラルルモノナリヤ如何
二大正十四年度大分縣通縣縣ニ於テ
靑莚檢査ノ件米生產檢資ノ件道路修
繕費ノ件ノ三件ヲ縣會ニ於テ原案ヲ
修正可決ヲ爲シタリ然ルニ松村大分
縣知事ハ右縣會ノ議決ヲ否認シ原案
執行ノ申請ヲ爲シタルニ内務大臣ハ
右ニ對シ原案執行ヲ認可シタリト聞
ク右ハ如何ナル理由ニ因リ知事ノ申
請ヲ認可シタルモノナリヤ其ノ理由
ヲ明元セラレタシ
右及質問候也
大正十四年三月十七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員吉良元夫君提出松村大分縣知
事ノ暴政ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
內務省發地第一一號
衆議院議員吉良元夫君提出松村大分
縣知事ノ暴政ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
大分縣知事ノ期スル所ハ綱紀ノ肅正ニ在
リ官吏吏員ノ進退其ノ他縣ノ施設ニ於テ
政黨政派ニ偏倚セル措置アリト認メス
大正十三年通常縣會ニ於ケル議決事項中
靑莚檢査費、米穀檢査所費及道路修繕費
ニ對スル縣會ノ議決ハ公益ヲ害シ收支ニ
關スル不適當ノ議決ト認メタルヲ以テ府
縣制ノ規定スル所ニ從ヒ知事具狀ノ通リ
指揮シタル次第ナリ
右及答辯候也
大正十四年三月十七日
內務大臣若槻禮次郞
賣國的行爲取締ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月七日
提出者建部遯吾
賣國的行爲取締ニ關スル質問主意書
宇內列國ノ對立スルヤ所謂五間卽チ〓間
內間反間死間生間ノ盛ニ用役セラルルハ
平時ト戰時トヲ問ハス國際關係古今ノ通
勢ナリ道路傳フル所ニ據レハ近時外國ヨ
リ使嗾若ハ資金ヲ受ケテ帝國社會ノ秩序
ヲ紊亂シ思想ヲ紛更シ風俗ヲ糜爛シ軍機
若ハ廣義ニ於ケル戰爭能力ノ秘密ヲ竊ミ
テ之ヲ外國ニ致サムトスル者往往之レ有
リト謂フ政府ハ此ノ種ノ事實ヲ認ムルヤ
若之ヲ認ムトセハ政府ハ之ニ對スル豫防
囘復取締懲罰ニ關シ從來如何ナル方策ヲ
講シタルカ竝將來ニ對スル計畫如何
右及質問候也
本質問ニ對スル政府ノ答辯ハ文書ヲ以
テシ若ハ祕密會議ニ於ケル口頭陳述ヲ
以テスル等政府ニ於テ適當ト認ムル方
法ヲ取ラレタシ
大正十四年三月十七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員建部遜吾君提出賣國的行爲取
締ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
内務省警祕第一五三號
衆議院議員建部遯吾君提出賣國的行爲
取締ニ關スル質問ニ對スル各辯書
賣國的行爲取締ニ關スル質問ハ適當ノ機
會ニ祕密會議ニ於テ口頭陳述スヘシ
右及答辯候也
大正十四年三月十七日
陸軍大臣字坦成
海軍大臣財部彪
內務大臣若槻禮次郞
司法大臣小川平吉
思想善導ニ伴フ特殊機關設置ニ關スル
質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月九日
提出者秋田寅之助
思想善導ニ伴フ特殊機關設置ニ關スル
質問主意書
下關港ハ歐亞連絡地點トシテ將又文化ノ
輸入及世界交通經濟ノ要衝ニ當ル上ヨリ
シテ此ノ地ニ國費支辨ニ依ル特種機關ヲ
設置シ國家ノ體面ヲ維持スルト同時ニ國
運ノ伸張ト社會民衆ノ安寧幸福ヲ講ズル
コトハ甚ダ緊要ノ義ト信ズルモノデアリ
マス
晝夜間斷ナク陸ニ海ニ汽車ニ汽船ニ乘降
呑吐來往スル世界各國人ノ頭腦ニ向ツテ
先ヅ下關テフ日本ノ玄關ニ於ケル感情乃
至感想ハ我ガ國ニ對スル第一印象ヲ印ス
ルモノデアラネバナラヌノデアリマス
然ルニ此ノ樞要ナル地點卽チ單ニ通商貿
易ノ港ト謂フヨリモ今日ノ場合國際的ニ
於テ幾多重要ノ意義ガ含マレテ居ル下關
ニ國家トシテ特種機關ノ施設ガナク只纔
ニ地方官憲ノ微溫的取扱ニ依リ日日ヲ糊
塗シテ行ク如キ狀態ノ下ニ置カレテアル
コトハ社會ノ實情乃至世界ノ思潮カラ謂ラ
テモ甚ダ面白クナイ現象ト謂ハネバナリ
マセム
今私ハ日本ノ玄關タル下關ニ思想善導ト
其ノ設備ニ就キ國費支辨ニ依ル或特種機
關設置ノ急要ヲ認メ左ノ諸項ニ就キ政府
ノ御所見ヲ永リタイノデアリマス
各國ノ貴顯紳士紳商乃至觀光團等ニ
對スル國際的待遇及渡來鮮人取締緩
和策竝日支親善ノ實ヲ擧グル爲メ相當
機關ヲ設クルコトハ帝國隆興上將來至
大ノ影響アルモノト認ムルノデアリマ
ス
二朝鮮ニ於ケル諸種陰謀團ハ今尙跡ヲ
絕タザルノミナラズ赤化セル鮮人ノ共
產主義者ハ今後日露通商ノ開カルルニ
乘ジ續續押シ寄セ來リ遂ニ一大波瀾ヲ
湧起スルデアラウ又解内主義者等ハ日
露間障壁ノ撤慶セラレタルコトヲ喜ビ
之ト共ニ一段緊張シ步調ヲ揃へ組織的
ニ進出ヲ企テテ居ルト謂フコトデアル
又最近日露ノ國交回復ヲ動機トシテ無
政府主義共產主義等ノ過激思想ハ其ノ
銳鋒ヲ露骨ニ現ハシ來ルハ火ヲ睹ルヨ
リモ瞭カナル所ニ付下關ニ適當ナル取
締及善導機關ヲ設置シ之ヲ防止スルコ
トハ最モ必要デアルト信ズルノデアリ
マス
三汽車汽船其ノ他交通ノ便ヲ利用シテ
乘降去來スル幾多ノ荷客ニ附隨シテ時
ニ諸種惡疫傳染病等ノ輸入セラルル危
險ハ敢テ想像ニ難クナイノデアリマス
此等モ宜シク第一線ニテ之ヲ發見シ撲
滅スルニ非ザレハ其ノ病勢遂ニ各地ニ
傳播シ停止スルコト困難ニ陷ルノデア
リマス是モ相當機關ヲ設ケ未然ニ防禦
スルコトガ必要デアルト考フルノデア
リマス
四如上ノ點カラ綜合考察シマスルト下
關ハ日本ノ玄關トシテ將夕東洋ノ咽喉
トシテ思想上カラ謂クテモ國際的ノ立
場カラ謂ッテモ將又國權ノ維持國威ノ
發揚ト謂フ點カラ論ジテモ常ニ第一戰
線ニ立ッテ帝國ノ興廢ト最モ密接ナル
鍵鑰ヲ把握シテ居ルモノト信ズルノデ
アリマス
五先般小山檢事總長ガ下關ニ出張セラ
レ警察署ヲ巡視シテ其ノ貧弱ニ驚カレ
タト謂フ話デアルガ事實斯ル國際的主
要ナル立場ニ在ル國家ノ機關ガ一地方
費支辨ノ下ニ其ノ面目ヲ維持シ機能ヲ
完カラシメヤウトスルノハ根本的ニ其
ノ觀念ヲ誤ッテ居ルノデハナイカト考
ヘラルルノデアリマス此ノ警察ト謂フ
コトニ關聯シテ今下關ヲ中心トスル近
縣ニ於ケル警察官ヲ調査シテ見マスル
ト大略デアリマスルガ福岡縣ガ千五百
四十七人廣島縣ガ千二百五十人長崎縣
ガ九百十七人山口縣ガ一番少クテ七百
六十人前後トノコトデアルガ此ノ定員
ハ其ノ縣ノ面積トカ人口ヲ標準トシ決
定セラレタルモノナルカ否寡聞ニシテ
之ヲ知ラザルモ面積ヤ定者セル人口ニ
依リ決スルコトハ按配宜シキヲ得タモ
ノデナイト考フルノデアル然ルニ下關
警察署ハ定員僅カ百人巡査一人ノ受持
戶數三百人口千二百ヲ負荷シテ居リ其
ノ中カラ更ニ請願巡查其ノ他市外ノ派
出所十三人ヲ差引クト殘リ八十七人內
外ニテ下關全市ノ安寧秩序ヲ取締リ其
ノ餘力ヲ割キ日本ノ玄關デアリ世界ノ
交通路タル下關來往内外人ノ警備ニ任
シ事故ヲ未然ニ防ギ事後ニ處理セネバ
ナラヌノデアリマス之ハ警察廳舍ノ外
觀ニ對シ併セテ内容ノ貧弱ヲモ例證ト
シテ申上ゲタモノデアッテ決シテ多數
警察官ノ垣ヲ作ッテ交通ノ整理トカ主
義者ヲ取締ラレタイト謂フノデハナイ
只現在ノ制度ハ設備ニ於テモ內容ニ於
テモ環境ニ順應シテ發達シテ居ナイカ
ラ相當警察官增員ノ必要ガアラウト考
フルノデアリマス
六下關通過世界各國人ノ待遇方ヲ改善
シ利便ヲ計リ十分快感ヲ與へ目的ヲ達
セシメ最モ愉快ニ其ノ行程ヲ娛シマシ
ムルト同時ニ一面此ノ地ヲ濾過池トシ
テ不逞ノ徒ヤ主義者ノ侵入脫走ヲ防遏
スル爲メ第一關門ノ守備ヲ嚴ニシ國政
ノ暢達ト邦家ノ安泰ヲ期スルハ洵ニ緊
要ト信ズルノデアリマス而シテ之ガ局
ニ當ル者ニハ時代ニ一隻眼ヲ有スル新
人ノ必要モアラウ語學ニ堪能ナ明敏ナ
士モ必要デアラウ或ハ思想ニ於テ理解
ヲ持チ適從ヲ誤ラザル檢察官ノ必要モ
アラウ斯ノ如ク有爲有能ノ士ヲ選任シ
テ或特殊機關ヲ別ニ設置スルカ或ハ下
關警察署内ニ增設シ以テ國家ノ機能ヲ
完カラシムルト同時ニ國交ノ親善ヲ加
へ社會ノ安寧ト民人ノ共存共榮ヲ計ル
コトハ對內外政策上ノ見地ヨリシテ最モ
機宜ニ適セルモノト信ズルノデアリマ
ス況ンヤ治安維持法實施ヲ急要トセラ
ルル政府ニ於テハ此等諸種ノ點ニ一考
察ヲ加ヘラルルコトハ他ノ政策ト相俟
チ甚ダ必要デアラウト信ズルノデアリ
マス
右及質問候也
大正十四年三月十七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員秋田寅之介君提出思想善導ニ
伴フ特殊機關設置ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
〔別紙〕
內務省衆警第一號
衆議院議員秋田寅之介君提出思想善導
ニ伴フ特殊機關設置ニ關スル質問ニ對
スル各辯書
政府ハ渡來外人ノ待遇、親善其ノ他各般
ノ涉外事項ニ關スル設備竝無政府主義
者共產主義者等ニシテ內地ニ渡來スル
モノニ對スル取締、善導的措置及檢疫等
ニ就テハ從來常ニ周到ナル注意ヲ拂ヒ國
內一般ニ涉リ特ニ涉外須要府縣ニ對シテ
ハ必要ナル施設、實行ヲ爲シツヽアリ山
口縣ニ對シ國費ヲ以テ現ニ警察官ノ要員
ヲ增置シアルハ此趣旨ニ基キ必要ヲ特ニ
考慮シタルモノナリ
現在ニ於テ特ニ同地ニ特殊機關ヲ設置ス
ルコトハ未タ其ノ必要ヲ認メサレトモ政
府ハ常ニ注意ヲ怠ラサルヲ以テ時勢ノ進
運ニ應シ適切ナル措置ヲ講スヘキコトヲ
期スルモノナリ
右及答辯候也
大正十四年三月十七日
內務大臣若槻禮次郞
永樂銀行支拂停止ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十四年三月十日
提出者筒井民次郞
永樂銀行支拂停止ニ關スル質問主意書
近年銀行業界ニ破綻續出シ曩ニ積善銀行
高知商業銀行京和銀行等アリテ多數ノ預
金者及株主ニ甚大ノ損害ヲ被ラシメタリ
前記銀行外銀行業者ノ無暴無責任ナル經
營ノ結果經濟界及人心ニ至大ノ恐怖ヲ抱
カシメ當局ノ之ニ對スル監督權ニスラ不
審ノ思ヲ爲ス今日又復高田商會ト姊妹關
係ヲ有スル永樂銀行ノ支拂停止ヲ見タリ
大藏當局ノ現今ニ於ケル銀行監督上ノ處
置及永樂銀行ニ對スル所見及善後策等ニ
就キ政府ノ所信ヲ質シタシ
右及質問候也
大正十四年三月十七日
內閣總理大臣子爵加藤高明
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員筒井民次郞君提出永樂銀行支
拂停止ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員筒井民次郎君提出永樂銀行
支拂停止ニ關スル質問ニ對スル答辯書
銀行業ニ對スル監督ニ付テハ政府ハ常ニ
最善ノ努力ヲ盡シツヽアルモ尙大正九年
財界ノ反動及過般震災ノ影響ヲ受ケ銀行
中ニ破綻ヲ生シタルモノ尠カラサルハ寔
ニ遺憾トスル處ナリ
永樂銀行ニ付テハ目下整理中ナルヲ以テ
政府ハ預金者ノ損害ヲ出來得ル限リ尠カ
ラシムル爲銳意其ノ督勵ニ努メツヽアリ
右答辯候也
大正十四年三月十六日
大藏大臣濱口雄幸
一昨十六日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ
受領セリ
朝鮮鐵道用品資金會計法案(政府提出)
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府
提出)
特別都市計畫區域內ニ於ケル寺院ノ國有
境内地譲與等ニ關スル法律案(政府提出)
船舶無線電信施設法案(政府提出)
議院法中改正法律案(本院提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去十三日加藤内閣總理大臣ヨリ粕谷本院
議長宛大正十一年四月一日ヨリ同十二年
三月三十一日ニ至ル竝大正十二年四月一
日ヨリ同十三年三月三十一日ニ至ル朝鮮
總督府所屬、臺灣總督府所屬及樺太廳所
屬官有財產增減異動報告ヲ受領セリ
一去十四日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
日本銀行ノ手形割引ニ因ル損失ノ補償ニ
關スル法律案委員
柵瀬軍之佐君作間耕逸君
平沼亮三君荒井建三君
高橋元四郞君手代木隆吉君
本多貞次郞君金光庸失君
〓水長郷君福井甚三君
堀喜幸君高山長幸君
伊澤平左衞門君若尾幾太郞君
坂梨哲君松本眞平君
大口喜六君佐々木平次郞君
借家法中改正法律案委員
橫山勝太郞君廣瀨德藏君
平川松太郞君加藤六藏君
筒井民次郞君加藤鐐五郞君
宮崎三之助君吉津度君
本田義成君
議院本建築工事速成ニ關スル建議案委員
樋口秀雄君川崎安之助君
一柳仲次郞君河野正義君
金田平兵衞君小島證作君
田中隆三君中村四郞兵衞君
小野寅吉君吉良元夫君
志波安一郞君渡邊祐策君
木村政次郞君西澤定吉君
宮本逸三君長岡外史君
齋藤眞三郞君田崎信藏君
一去十四日大正三年臨時事件ニ關スル臨
時軍事費特別會計終結ニ關スル法律案委
員岩切重雄君、砂田重政君辭任ニ付其ノ
補關トシテ寺田市正君、板野友造君ヲ、
猿投神社昇格ニ關スル建議案委員加藤六
藏君辭任ニ付其ノ補關トシテ近藤重三郞
君ヲ、北海道農地整理處理法案委員土井
權大君辭任ニ付其ノ補關トシテ馬場義與
君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一去十四日常任委員理事補闕選擧ノ結果左
ノ如シ
第二部選出
懲罰委員理事吉田眞策君(理事渡邊
伍君補關)
一昨十六日理事補關選舉ノ結果左ノ如シ
大正三年臨時事件ニ關スル臨時軍事費特
別會計ノ終結ニ關スル法律案(政府提出)
委員
理事板野友造君(理事砂田重政君補關)
一昨十六日大正三年臨時事件ニ關スル臨時
軍事費特別會計終結ニ關スル法律案委員
田中萬逸君辭任ニ付其ノ補關トシテ藤井
敬愼君ヲ、〓育ノ機會均等ニ關スル建議
案委員藤田包助君、黑住成章君辭任ニ付
其ノ補闊トシテ黑住成章君、藤田包助君
ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一昨十六日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
日本銀行ノ手形割引ニ因ル損失ノ補償ニ
關スル法律案外三件
委員長柵瀨軍之佐君
理事
若尾笈太郞君佐々木平次郞君
借家法中改正法律案
委員長廣瀨德藏君
理事宮崎三之助君
議院本建築工事速成ニ關スル建議案
委員長渡邊祐策君
理事
川崎安之助君齋藤眞三郞君
一昨十六日常任委員補闢選擧ノ結果左ノ如
第一部選出
懲罰委員黑佇成章君(志賀和多利君
補闕)
第四部選出
請願委員宮島幹之助君(小屋光雄君
補闕)
第八部選出
豫算委員原夫次郞君(禱苗代君補闕)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=1
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002・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、諮問事項ガアリマス、土生影君病
氣ニ付、三月十六日ヨリ三月二十五日マデ
請暇ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=2
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003・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナケレバ
許可致シマス-本日ノ日程ニ揭ゲタル質
問全部ハ政府ヨリ答辯書ガ參リマシタ、仍
テ日程ヨリ之ヲ省キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=3
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004・作間耕逸
○作間耕逸君 質問者ノ意見ノ陳述ヲ次ノ
機會ニ讓リ、此際特ニ橋本喜造君提出、遞
信省補助航路船舶沈沒ニ關スル緊急質問、
竝ニ土屋興君提出電氣事業者ノ取締ニ關ス
ル緊急質問ノ趣旨辯明ヲ逐次許サレンコト
ヲ望ミマス
〔「贊成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=4
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005・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス-政府ノ同意ヲ得
マシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、是
ヨリ逐次提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-
橋本喜造君
遞信省補助航路船舶沈沒ニ關スル緊急質
問(橋本喜造君提出)
〔橋本喜造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=5
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006・柵瀬軍之佐
○柵瀨軍之佐君 是ヨリ日本銀行ノ手形割
引ニ因ル損失ノ補償ニ關スル法律案外三件
ノ委員會ヲ開キマス、委員諸君ハ第二委員
室ニ御參集ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=6
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007・橋本喜造
○橋本喜造君 諸君、我ガ長崎縣下ニ於キ
マシテ、世界ノ海運史上ニ未ダ曾テ見ザル
所ノ大不祥事ガ出來ダノデアリマス、ソレ
ハ長崎五島間ノ定期航路ノ汽船デアリマス
ル第六宇和島丸ノ沈沒デゴザイマス、此船
舶ハ長崎五島間ノ定期航海ヲ致シテ居リマ
シテ、去ル十一日ノ夜九時長崎港ニ於キマ
シテ、貨物約千、乘客百十七名、更ニ船員
二十餘名ヲ乘セマシテ五島ニ向ケテ出帆致
シタノデアリマス、サウシテ其當夜卽チ十
二日ノ午前二時、長崎港ヲ去ルコト僅二三
十浬ノ地點ニ於キマシテ、此船舶ハ何レノ
個所ヨリカラカ分リマセヌガ、船底ヨリ浸
水スルコトガ分ッタノデアリマス、サウ致
シマシテ午前六時ニ至リマシテ、既ニ浸水
益〓深クシテ、機關室マデ浸水致シマシ
テ、遂ニ汽鑵ニ火ヲ焚クコトガ出來ズ、機
械ガ止ッタノデアリマス、ソコデ船長ハ乘
客ヤ或ハ船員ニ向ヒマシテ、最早浸水益、
强イ、如何ニシテモ助カルコトハ出來ヌノ
デアリマス、諸君ハ此本船ト共ニ運命ヲ決
セラレンコトヲ望ムト云フヤウナ宣告ヲ致
シタノデアリマス、ソコデ船員ハ申スニ及
バリ、百十七名ノ乘客ハ取ルモノモ取皎ヘ
ズ上ヲ下ヘト騒動致シマシテ、阿鼻叫喚殆
ド此世ナガラノ生地獄デアルト云フヤウナ
狀態デアッタノデアリマス、ソレカラ浸水ハ
ミ益〓强クナリマシテ、十二日ノ午後二時ニ
至リマシテ正ニ本船ハ沈沒ノ狀態ニナッタ
ノデアリマス、ソコデ船長ハ「ポート」或ハ
傳馬ヲ下シマシテ、諸君ノ自由ニ御任セ致
シマスカラ、各、急ニ本船ヲ御去リニナル
方ハ御去リナサイト云フ命令ヲ下シタノデ
アリマス、然ルニ乘客トシテ誰一人本船ヲ
去ル者ハ無カッタ、併ナガラ其中デ船員ノ
或者、或ハ乘客ノ氣ノ早イ者ハ、其「バッテ
ーラ」ニ數十人共ニ飛乘ッタノデアリマス、
ソレガ爲ニ「パッテーラ」ハ沈沒致シマシタ、
ソコデ傅馬船ニ船員三名、乘客十三名、合
計十六名ノ者ガ乘リマシテ、サウシテ運ヲ
天ニ仕セテ、波ノ間ニ々々任セテ、サウシ
テ其儘櫓權モ持タズシテ漂流シテ居ッタノ
デアリマス、幸ニシテ一隻ノ傳馬ガ助カリ
マシテ、翌十三日熊本縣天草郡高濱村ニ漂
著致シマシテ、助カッタノデアリマス、殘
ル所ノ者ハ全部本船ト運命ヲ共ニシテ、海
底ノ藻屑トナッタノデアリマス、是ガ暴風
トカ或ハ不可抗力デアルナラバ、諦メルコ
トモ出來マスルケレドモ、此本船ノ出帆ノ
十一日ト云フモノハ、其日ハ稍、風ガ强カフ
タケレドモ、十一日ノ晩景ヨリ凪ニナリマ
シニ、サウシテ本船ガ愈、凪デアルカラ長
崎港ヲ出帆スルト云フ間際ニ於テ、夜九時
ニ長崎港ヲ出帆シテ、十一日カラ翌十二日
ニ掛チテハ何等ノ波モナク、風モナク、
海上ハ平穩無事デアッタノデアリマス、
サウシテ本船ハ老朽船ナルガ爲ニ自然ノ
浸水デアッテ、風波ノ爲デモ何デモアリマ
セヌ、自然ノ浸水ノ爲ニ本船ハ沈沒致シ
マシテ、百餘名ノ生命ヲ海底ノ藻屑ト化
セシメタノデアリマス、御承知ノ通リ本
船ハ明治三十四年ニ伊豫國ノ宇和島汽船
會社ガ、大阪ノ空幾太郞ト云フ船大工ガ
アリマス、之ニ拵ヘサセマシテ、サウシ
テ宇和島大阪間ヲ約二十年間航海サセマシ
テ、最早危險デアルト云フコトデ是ハ豫備
船ト致シマシテ、或ハ繫泊セシメ、或ハ航
海ヲサセタノデアリマス、之ヲ數年前五
島汽船ガ買收シテ、サウシテ長崎五島間ノ
定期航路ニシタノデアリマス、其後ニ九州
汽船ト云フモノト五島汽船ガ合併致シマシ
テ、新興汽船會社ト云フモノヲ指ヘテ、今
日ノ船主ハ新興汽船會社ナルモノデアリマ
ス、五島汽船會社ナルモノハ此船舶ヲ十二
万圓ト云フ價格ヲ以テ船舶出資ト致シマシ
テ、此新興汽船會社ヲ拵ヘタノデアリマ
ス、其當時是ガ五島汽船會社デ、マダ新興
汽船會社ニナル前デゴザイマスルガ、本黨
ノ牧山耕藏君ガ本船ニ對シテ五島長崎間ノ
定期航路ヲヤル、シレデ補助金ヲ要求ス
ルト云フコトデ建議案ヲ出シマシテ、二万
圓ノ航海補助金ガ政府ヨリ出ルコトニナツ
タノデアリマス、サウシテ今此二万圓ノ補
助金ト云フモノハ繼續致シテ居リマス、是
ハ取モ直サズ我ガ帝國ノ遞信省ノ補助航路
デアリマス、此建議案ガ出マシタトキニ、
私ハ斯ノ如キ老朽船ヲ定期航路ニ使フト云
フコト、或ハ之ニ對シテ遞信省ガ航海補助
金ヲヤルト云フコトハ何事デアルカ、朝朝
過失ガアッタナラバ其責任ハ何人ガ持ツカ、
御承知ノ通リ船舶ト云フモノハ生命ニ限リ
ガアリマス、軍艦ハ十年、普通商船ハ十五
年、木船ハ八年若クハ十年ト云フコトデアリ
マス、八年若クハ十年ノ生命ノ船舶ガ本年二
十五年目ノ船デアリマス、此建議案ガ出タ
時ハ二十三年目ノ船デアリマス、此二十三
年目ノ船ニ對シテ補助金ヲ與ヘルト云フコ
トハ、何事デアルカト云フコトヲ以テ私ハ
反對シタノデアリマス、然ルニ政黨内閣ト
云フモノハ妙ナモノデアリマシテ、遂ニ二
万圓ノ補助金ヲ與ヘマシテ、此航海ヲ今尙ホ
續ケテ居リマス、其時ニ私ガ中シマシタル
所ノ、一朝事アッタラバドウスルカ、必ズ
近イ中ニ斯ウ云フ事ガアルニ違ヒナイト云
フコトヲ私ハ言ッタノデアリマス、其豫言ガ
今日當リマシテ、サウシテ斯ノ如キ悲慘事
ヲ來シタト云フコトハ、返ス々々モ殘念デ
アリマス、又政府ニ於キマシテモ、木船ト
云フモノハ十年經ッタラバ役ニ立タナイ
ト云フコトハ十分ニ分ッテ居ル、鐵船ハ丈
夫デアリマシテ水ガ浸込ミマセヌガ、木船
デアリマスレバ海中ニ浮イテ居リマスレバ
必ズ水ガ浸込ム、甲板ト肋骨ヲ縫ウテ居ル
所ノ釘ガ必ズ腐ノテ、サウシテ切レテシマ
7、假令切レナクテモ木ト木トノ間ニ割目
ガ入ッテ、釘ヲ見ルト或ハ針金ノヤウニ針
ミタイニナル、既ニ其危險ナルコトハ何人
モ知ッテ居ル、何人モ知ッテ居ルニ拘ラズ、
政府當局ハ今尙ホ之ニ補助金ヲ與ヘテ居ル
ノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事デゴザイ
マスカラ、政府其モノモ全ク之ニ關シテ責
任ガ無イト云フコトハ出來ヌノデアリマ
ス、又玆ニ五島カラモ電信或ハ手紙ガ參。ツ
テ居ルノデアリマスガ、牧山君ニ賴メバ如
何ナル事モ出來ルト田心シテ、牧山君ニ明細
書ヲ送ッテアルカラ、ドウカ今後五万圓ニ
目下ノ補助金ヲ增シテ吳レト云フ玆ニ書留
ノ手紙ガ參ッテ居リマス、五島ノ福江ノ村
長出口本吉ト云フ者カラ尙ホ二三日前電信
ガ參リマシテ、牧山君ニ依賴ノ航路補助金
ヲ宜シク賴ムト云フノモ參ッテ居ル、牧山
君ニ賴メバ何デモ彼デモ出來ルヤウニ思ッ
テ居ル、ソコデ私共ハ斯ノ如キ老朽船、而
モ利益ノアッテ補助金ナドヲヤル必要ガナ
イ所ノ航路ニ補助金ヲ出シ、或ハ斯ノ如キ老
朽船ニ今尙ホ續ケルト云フコトハ言語道斷
デアル、是ハ全ク政府ノ怠リデアリマス、
又過日無線電信ノ强制据附ト云フコトガア
リマシタガ、是ハ二千噸以上ノ船舶デア
リマス、二千噸以上ノ船舶ト云フナラバー
貨物船デアッタナラバ僅カ二十人カ二十
五人ノ船員デアリマスガ、客船ハ三百噸、
四百噸デモ客ノ定員ハ一一百人デ、船員ハ二
十五六人乘ルノデアリマス、ソレデ此客船
ナルモノニハ二千噸デハイケナイ、千噸若
クハ五百噸ノ船デモ定員一一百人以上乘ル船
舶ニ對シテハドウシテモ無線電信ヲ据附
ケナケレバナラヌ、又貨物船トシテハ三千
噸以上ノ船ニ無線電信ヲ据附ケルナラバ、
是ハ寧ロ當リ前デアルト申シマシタ、而モ
協議會ヲ開イテ相談シタノデアリマスガ、
遂ニ私ノ意見ヲ容レラレナクテ、二千噸以
上ノ貨物船ニハ無線電信ヲ附ケル、而モ二
百人、三百人ノ定員ヲ有シテ居ル沿海航
路或ハ近海航路ノ客船ニハ無線電信ヲ附
ケル必要ガナイト云フコトニナッタノデア
リマス、若シ此船ニ無線電信ガ『アッタナラ
バ、前夜ノ二時カラ午後二時マデ漂流シタ
ノデアリマスカラ、必ズ船員ガ助カルノデ
アリマス、シレデ唯〓無線電信モ空ニ囚ハ
レ、或ハ形式的ニヤルヤウナ譯デアッテ、實
際無線電信ハドノ位效力ヲ有スルモノデア
ルカ政府當局モ考ヘラレンコトヲ希望致シ
マス、又此船舶ガ十二万圓トシテ新興汽船
會社ハ出シテ居ルガ、幾ラ贔屓目ニ見テモ
何人ガ評價シテモ、本船ハ二万圓以上ノ價
値ハナイノデアリマス、之ヲ十二万圓ト云
フ評價ヲ致シマシテ、サウシテ會社ヲ組織
シテ居ル、第一此會社其モノガ間違デア
ル、然ラバ保險ハドウカト云フト、總テノ
保險會社ハ之ヲ拒絕致シマシテ、此船ハ保
險ヲ附ケル資格ガ無イト總テノ保險會社ハ
引受ケマセヌ、引受ケナイガ爲ニ此船體ハ
保險ガ無イ、無保險デアル船ガ沈沒シテ、
十二万圓ノ船價ハ損シテ居リマスケレド
モ、一文モ保險金ガ取レナイ、又十一日
ハ-前ニ申上ゲマシタヤウニ、十一日ハ
少々時化デアリマシタケレドモ、十二日ハ
決シテサウデナイ、時化デナクテ沈ンダト
云フコトハ、全ク天災不可抗力デナイ、不
可抗力デナクシテ沈沒シタト云フコトハ
取モ直サズ船主其者ノ責任デアリマス、之
ニ對シマシテ船主ハ無限ノ責任ヲ負ハナケ
レバナラヌ、私共立法府ニ立ッテ奔走ヲ致
シテ居リマスノモ、結論ト致シマシテハ生
命ノ安定ヲ保タンガ爲デアリマス、此百十七
名ノ生命ニ對シテ、政府五ニ此汽船會社-
新興汽船會社ハ絕對ノ責任ヲ持タナケレバ
ナラヌ、又無限ノ責任ヲ持タナケレバナラ
ヌノデアリマス、是ガ不可抗力デアルナラ
バ万已ムヲ得マセヌケレドモ、不可抗力デ
ナイト云フコトハ是ハ確カデアリマス、諸
君ガ御承知ノ通リ何レニモ測候所ナルモノ
ガアリマシテ、「ウエザーチヤート」ガアフ
テ、「ウエザーチヤート」ガ每日出テ居リマ
ス、ソレヲ見レバ十二日ノ風力ハ幾ラカト
云フコトハ明デアリマス、此時ハ南風デ
アッタノデアリマス、强風デモ烈風デモア
リマセヌ、無論暴風デモナイノデアリマ
ス、ソレデ自然ニ浸水スルヤウナ老朽船ニ
補助金ヲ與ヘテ、今尙ホ補助ヲ繼續サレテ
居ルト云フコトハ言語道斷デアリマス、ソ
レデ私ハ之ニ對シマシテ、政府ノ御考ヲ玆
ニ聽ク積リデ居リマスガ、之ヲ約メマシテ
三項ニ分チマス、政府ハ此航路ニ對シマシ
テ尙ホ繼續的ニ補助金ヲ給與スル御積リデ
アリマスカ、是ガ第一、第二問ハ尙ホ本邦
ニ於キマシテ、此航路ト殆ド同ジ航路、又
本船ト同樣ノ年齡ヲ持ッテ居ル所ノ老朽船
ガアリマス、是ハ樺太トカ、北海道トカ、
朝鮮總督府、斯ウ云フモノハ實際其通リ之
ニ對シテ今後ドウ云フ事ヲ爲サル御積リデ
アルカ、又此第六宇和島丸ノ沈沒ニ對シ
テ、二百十七名ノ生靈ニ對スル政府ノ御考
此百十七名ノ生靈ニ對シテ、而モ其遺族ニ
對シテ政府ハドウ云フ處置ヲ執ラレルカ、
又之ニ對シテハ相當ノ救恤ヲシナケレバナ
ラヌト思ヒマスガ、其救恤ノ方法竝ニ其程
度、或ハ給與スベキ金額ガ分テテルルナラ
バ其金額マデ併セテ御知ラセヲ願ヒタイ
ノデゴザイマス、之ヲ以テ質問ノ終リト致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=7
-
008・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 植原政府委員
〔政府委員植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=8
-
009・植原悦二郎
○政府委員(植原悅二郞君) 只今ノ橋本君
ノ御尋ニ對シテ御答致シマス、長崎縣長崎
市ト玉浦間ヲ航行ノ際ニ於キマシテ、新興
汽船會社所有ノ宇和島丸ガ十二日海上ニ於
キマシテ遭難致シ、多數ノ人命ヲ失ヒマシ
タコトハ實ニ遺憾至極デアリマス、生命ヲ
失ハレタ諸君ニ對シテハ勿論ノコト、是等
ノ遺族ニ對シテモ實ニ御同情ニ堪ヘナイ次
第デアリマス、此事ハ既ニ天聽ニ達シマシ
テ、御下賜金ノ御沙汰マデゴザイマシタコ
トデ、實ニ恐懼ニ堪ヘザル次第デゴザイマ
ス、橋本君ノ御質問ニ對シテ、事ヲ明瞭ニ
致シマスガ爲ニ、事實ノ相違モゴザイマス
ルカラ、今日マデ政府ノ調査ニ依リマシテ
得マシタ所ノモノヲ一應御傳ヘヲ致シ、而
シテ具體的ニ御述ニナリマシタ所ノ御質問
ノ箇條ニ對シテ御答ヲ致シタイト思シテ居
リマス新興汽船會社ノ所有ニ屬スル第六
號宇和島丸ガ、長崎玉浦線ニ就航中、本月
十一日午後九時五島福江ニ向ケテ航行中、
風波ニ出遭ヒマシテ浸水致シタノデアリマ
ス、其事ガ傳ハリマシタノデ、佐世保ノ鎮
守府カラハ五隻ノ驅逐艦ヲ出動セシメ、又
九州汽船會社カラモ相當ノ船ヲ出シマシ
テ、有ユル搜索救助ニ努メタノデゴザイマ
ス、サウシテ努力ハ致シマシタケレドモ、
船ニ段々水ガ入リマシテ、火ヲ焚クコトモ
出來ズシテ、乘客ト船員ハ端艇ト傳馬船ニ
乘リマシテ船ヲ遁レ出デタノデアリマス、
サウシテ傳馬船ニ乘リマシテ避難致シタ者
ガ、肥前ノ野母、樺島ノ南方ノ沖ニ遁レマ
シテ、サウシテ風波ノ爲ニ漂著致シタ、此
傳馬船ニ乘シテ居リマシ夕者ガ船員、事務長、
賄長、給仕三名、乘客十三名、都合十六名
助カリマシタノデ、總テノ乘客船員ヲ合シ
テ百二十二名ノ中、助カリマシタ者ガ十六
名、其他ハ全部御說ノ如クニ海底ノ藻屑ニ
ナッタコトデ、洵ニ御氣ノ毒千萬デゴザイ
マツ、サウシテ只今マデ得タ所ノ報告ニ依
リマスト云フト何ニ致セ殘リマシタ所ノ者
ニ依リマシテ、其當時ノ狀態ヲ知ルヨリ致
方ガアリマセマ、船員トシテ殘リマシタ所
ノ者ハ、事務長ト賄長ト給仕三人ノ傳フル
所ニ依ッテ事實ヲ知ルヨリ致方ガナイ、船ハ
肥前ノ野母ト樺島沖ノ南ノ方ノ沖合ニ於テ
〓覆シタカノ如ク思ハレテ居ルノデアリマ
ス、其他ノ細カシイ事實ニ付キマシテハ
マダ詳報ヲ得テ居リマセマ、今日マデ手ニ
得マシタ所ノ確報ト申シマスモノハ是ダケ
デアルコトヲ御水知ヲ願ッテ置キタイノデ
アリマス、ソコデ只今橋本君ノ御說ニモゴ
ザイマシタ通リ、此航路ハ補助航路デアリ
やっ、補助航路デアリマスケレドモ、遠洋
航路ノ補助トハ性質ガ違フノデゴザイマシ
テ、本州ト離島間ノ航路ニ付テハ、海上ニ
於ケル一種ノ縣道ノ延長ノ如クニ考ヘテ居
ルノデアリマス、ソレ故ニ斯樣ナ一ツノ縣
ト其縣ニ屬シマスル所ノ離島トノ間ヲ航行
スル所ノ船舶ハ直接ニ地方長官ガ取扱ウ
テ居ルコトニナッテ居ルノデアリマス、其
必要ガアル場合之ヲ政府カラ補助ヲ致ス
ト、斯ウ云フ立前ニナッテ居ルノデ、大正
十一年度以來此長崎ノ航路ニ對シテ二万圓
補助スルコトニ致シテ居リマシテ、一万圓
ハ此新興會社ニ補助ヲ致シ、他ノ一万圓ハ
九州汽船會社ニ補助スルコトニ相成シテ居
ル譯デアリマス、併ナガラ此二万圓ヲドウ
云フ風ニ取扱ウカト云フコトニ付キマシテ
モ、之ヲ直接管轄シテ居ルノハ地方長官デ
ゴザイマシテ、勿論地方長官ハ遞信省ノ認
可ヲ受ケナケレバナリマセヌケレドモ、直
接取扱ッテ居ルノハ地方長官ガ取扱シテ、遞
信省ノ認可ヲ得テ、サウシテ此金ヲ補助會
社ニ交付シテ居ルト、斯樣ナ次第ニナッテ
居ルノデアリマス、ソコデ橋本君ハ補助
航路ノ船舶ニ付キマシテハ、十五箇年以上
ノ老朽船ニ付テハ補助ヲ致サナイコトニ
ナッテ居ルト、斯樣ナ御說モアリマシタノ
デアリマスガ、遠洋航路ノ補助ニ付キマシ
テハ御說ノ如クデアリマス、併ナガラ斯ウ
云フ近海沿海ノ航路ニシテ、地方長官ガ主
管トシテ居ルモノニ付キマシテハ左樣ノ
規定ガ無イノデアリマス、而シテ之ニ補助
ヲ與ヘルニ付キマシテモ、帝國議會ノ協賛
ヲ經マシタ其方針ニ基キマシテ政府ハ補
助ヲ與ヘテ居ルコトヽ御承知ヲ願ヲテ置キ
タイノデゴザイマス、次ニ橋本君ノ御意見
ニ無線ノ事モゴザイマシタガ、斯樣ナ事モ
起ルコトヲ承知致シマスルガ故ニ、船舶無
線法案ヲ此議會ニ提出シテ、諸君ノ御協賛
ヲ仰イダ譯デアリマス、ソレカラ此事ニ付
テハ、政府ハ絕對ニ責任ガアル、此船ノ沈
ンダコトハ風波デナクシテ、船自體ガ惡イ
ト云フ御說モアッタヤウニ承知シテ居リマ
スガ、ドノ船ニ對シテモ、遞信省ハ定期ノ
檢査ヲ致スノデアリマス、此船ヲ檢査致シ
タノハ昨年ノ四月一日ニ檢査ヲシテ居ルノ
デアリマス、而シテ其當時ノ狀態ニ於キマ
シテ、相當ニ航海ニ適スルト認メナイ以上
ハ許ス氣遣ハナイノデアリマス、而シテ
橋本君ノ御說ハ此當日ハ風波無シトノ御
意見デゴザイマシタケレドモ、左樣デハゴ
ザイマセヌ、何故ナラバ十二日ニ遭難ヲ致
シタ船舶ガ可ナリ多數デアリマス、丁度汽
船長久丸ハ十二日ノ午後二時、此新興汽船
會社ノ宇和島丸ノ遭難シタト同時刻ニ、大隅
カラ鹿兒島へ航行中遭難シタ所ノ事實モア
ルノデアリマス、又發動機船デ行衞不明ニ
ナッタモノガ二隻アリマス、帆船デ遭難致
シマシテ〓覆シタモノガ廣島沖ニ於テアリ
マイ、又呉ノ所管內ニ於キマシテ八十噸パ
カリノ船ガ沈沒致シタコトモアリマス、鳥
取縣方面ニ於キマシテ漁船十數隻ノ行衞不
明ニナッタ事實モアリマス、當日各地カラ參
リマシタ所ノ主トシテ日本海、九洲沖カ
ラ參リマシタ所ノ情報ニ依リマスルト、可
ナリ此日ニ風波ガアリマシテ、遭難致シテ
居ルモノガ多數ニ上ッテ居ル所カラ見マス
ルト、橋本君ノ只今御述べニナッタ、全ク
海上平穩デアリマシテ、此船ガ惡クテ水ガ
這入ッタト云フ所ノ事實ハ、政府當局トシ
テ未ダ認メルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、勿論是等ノ浸水ノ原因ニ付キマシテハ、
十分ナル調査ヲ得テ居リマセヌ、餘リニ事
實ガ新シイコトデ、唯、電報ニ依リマシテ
此報告ヲ得テ居ルノミデアリマスカラ、ソ
レ以上ノ報告ニ付テハ何等得テ居ル所ガ無
イカラ、更ニ正確ナル事實ノ報道ヲ得マシ
タナラバ、御知ラセ致ス機會ガアラウ
ト思ヒマス、最後ニ橋本君ガ三ツノ質問ヲ
揭ゲテ爲サレマシタ事ニ付テ御答致シマ
ス、政府ハ此航路ニ付テヨク多クノ補助ヲス
ルカ、斯樣ナ御質問デアッタト思ヒマス、政
府デハ此航路ニ付キマシテ年々二万圓ノ補
助ヲ致スコトハ、議會ノ協賛ヲ經テ居リマ
ス而シテ將來ノ事ハ主トシテ議會ガ定メ
ルコトデアリマスケレドモ、政府ノ見ル所
ニ依リマスルト、此新興會社ガ此航路ニ依
リマシテ年々相當ナ利益ヲ占メテ居リマ
ス、會社ノ計算ニ依リマシテモ、昨年度ノ
牧支決算ニ依リマスルト、一万七千圓位ノ
利益ヲ占メテ居リマスルガ故ニ、政府ノ見
ル所ニ依リマスレバ、是レ以上ノ補助金ハ
此航路ニ補助スル必要ハナカラウト、只今
ノ場合ハ考ヘテ居リマス、更ニ次ノ御質問
デアリマシタ、老朽船ニ對シテドウスルカ、
遠洋航路ニ付テハ御承知ノ如ク補助船舶ノ
船齡ヲ十五箇年ニ制限シテ居ルコトハ橋
本君御承知ノ如クデアリマス、ソレカラ歐
羅巴戰爭後、海運事業界ガ極メテ不況ニ陷
リマシタ結果、新造船ガ少ク老朽船ガ多ク
ナッタト云フコトハ橋本君ノ能ク御承知
ノコトデアラウト思テ居リマス、而シテ此
老朽船ニ對シマシテモ、出來得ルダケ船舶
ノ檢査ヲ嚴重ニ致シマシテ、生命財產ノ安
全ヲ圖ルヤウニ、將來トモ尙ホ十分ニ注意
ヲ致スコトヲ御承知ヲ願ッテ置キタイノデ
アリマス、ソレカラ第三ノ御〓デゴザイマ
ス、是等ノ死亡シタル者、遭難シタル者ニ
對シテ政府ハ如何ニ處直スルカト云フコト
ノ問題デアリマス、既ニ御下賜金ノ救恤金
モゴザイマス、又是等ニ對シテハ汽船會社
モ相當ニ考慮致シマセウ、又ソレヲ監督致
シテ居ル所ノ縣廳ニ致シマシテモ、ソレ等
ノ事實ニ依リマシテ、相當ノ處置ヲ致スダ
ラウト考ヘテ居リマス、具體的ノ事ニ付キ
マシテハ只今ノ場合ソレ以上ノ事ヲ申上
ゲルダケノ程度ニ進ンデ居ラヌコトヲ御承
知願シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=9
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010・湯淺凡平
○湯淺凡平君 決算委員會ヲ開キタイト思
ヒマス、御許可ヲ願ヒマス、委員諸君ハ御
集リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=10
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011・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 橋本喜造君
〔橋本喜造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=11
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012・橋本喜造
○橋本喜造君 只今政府委員カラ大變御深
切ナ御答辯ヲ戴キマシタガ、御答辨中ニ大
分違テ居ル事ガアリマスカラ、之ヲ私申
上ゲテ置キタイト田心ヒマス、政府委員ハ十
一日.十二日、詰リ遭難當時ハ大分ノ時化
デ、長久丸ガ何處デ沈ンダ、或ハ日本海ニ
於テ汽船ハ何隻無クナッタト云フヤウナ御
話ガアリマシタガ、是ハ日本全體ノ遭難船
ヲ御調ベニナッタ結果デアラウト思ヒマス
ガ、此長崎港附近ニ於テサウ云フヤウナモ
ノガ有ッタカ無カッタカ、ドウモ遠方ノモノ
ヲ持シテ來テ、サウシテ長崎附近ガ時化デ
アッタト言フガ、此風ト云フモノハ何哩ノ
間ヲ吹クモノデアルカ、ソレハ程度ガアリ
マス、免ニ角測候所ト云フモノガ····(「簡
單々々」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)「ウヱ
ーザーチヤート」ト云フモノガアリマシテ、
其日ノ風ノ方向ガ書イテゴザイマスカラ、
之ヲ御持チニナッタナラバ御示シヲ願ヒタ
イ、ソレカラ戰後ニナッテ海運界ガ不況ニ
ナッテ、新造船ガ少クナッタト云フ御話デア
リマシタガ是ハ全ク間違デアリマシテ、歐
羅巴戰爭中ニ隨分船ハ殖エマシタ、約百五
十万噸ノ船ガ殖エマシテ、戰後ニ海運界ガ
悲況デアリマス爲ニ、百五十万噸ノ船舶ハ
殆ド遊ンデ居リマシテ、如何ナル立派ナ船
デモ求メルコトガ出來ルノデアリマス、斯
ノ如キ二十五年以上ノ木船ヲ用ヰル必要ハ
更ニ無イノデアリマス、其邊ノ事ハ或ハ官
吏ノ方デアリマスレバ、或ハ船舶ノ事ヲ知
ラヌ方デアリマスレバ、知ラヌト云フノガ
寧口當然ダラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=12
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013・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 植原政府委員
〔政府委員植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=13
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014・植原悦二郎
○政府委員(植原悅二郞君) 橋本君ハ如何
ナル根據ニ依リマシテ、此當日長崎一帶ガ
平穩無事デアッタト仰シヤルカ存ジマセヌ
ガ、中央氣象臺ノ報告ニ依リマシテモ、三
月十二日長崎一帶、九州沖ハ相當暴風デアツ
タコトヲ事實證明致シテ居リマス、ソレノ
ミナラズ只今申上ゲタ遭難船ノ多數ハ、九
州ノ鹿兒島沖カラ下ノ關、鳥取縣ヘ掛ケテ
ノ一面デアルコトヲ御承知ニナリマシタナ
ラバ政府ノ申上ゲルコトガ確實デアルト
信ジテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=14
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015・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 一身上ニ關シテ
發言ノ通告ガアリマス-牧山耕藏君
〔牧山耕藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=15
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016・牧山耕藏
○牧山耕藏君 只今憲政會ノ橋本喜造君ノ
御質問ノ中ニ、屢〓不肖牧山耕藏ノ名前
ヲ御引用ニナリマシタ、又其言葉ノ中ニ
ハ少シク誤解ヲ招キ易イ御言葉モアッタ
ヤウニ思ヒマスルカラ、議長ノ許可ヲ得マ
シテ辯明ヲ致シタイト思フノデアリマス、
此長崎、五島、佐世保間ノ航路補助ニ付キ
マシテハ第四十四議會ニ私共同志ヨリ、
政府ニ命令航路ヲ開イテ貰ヒタイト云フ建
議案ヲ提出致シタノデアリマス、同時ニ私
ノ紹介ノ下ニ、五島ニ十箇町村ノ町村長モ
聯盟ヲ致シマシテ、同一意味ノ請願ヲ致シ
タノデアリマス、請願モ採擇サレ、建議案
モ橋本君ヲ除ク外ハ全部御賛成下サッタト
記憶シテ居リマスガ、該建議案ガ本院ヲ通
過致シマシタ結果、翌第四十五議會ニ政府
ハ衆議院ノ院議ヲ尊重致シマシテ、國庫ヨ
リ二万圓ノ補助ヲ與ヘルコトニ相成シタノ
デアリマス、其時ニ私共ガ提案ヲ致シマシ
夕趣旨ハ-私橋本君ト違シテ洵ニ貧乏者
デアリマシテ、船ナドハ一隻モ持合セガナ
イ、又船會社ニモ關係ヲ持ッテ居ラナイ者
デアル、併シ此五島ト長崎、佐世保間ノ航
路ノ狀態ヲ見マスルト云フト、曩ニ五島航
海ノ若津丸ト云フ百何十噸ノ老朽船ガ沈沒
致シマシテ、百三十餘名ノ生靈ヲ海底ノ藻
屑ト致シタヤウナ苦イ經驗ヲ持ッテ居ル航
路デアリマス、又歐洲大戰ノ時ニハ政府
ノ命令航路デアリマセヌガ爲ニ、五島ニ船
ヲ通ハシテ居ル所ノ會社、是ハ能ク橋本君
モ御承知デアリマセウガ、其會社ナドハ極
メテ橫暴デアッタ、他ノ利益アル方面ニド
ンドン船ヲ廻シテ、此五島ノ航路ニ對シテ
甚ダ不忠實デアッタ離島ノ生活ヲ致シテ居
リマスル者ハ、交通機關ノ不備不安定ガ一
番困ルノデアリマス、ドウシテモ北九州本
土ト五島トノ交通ノ聯絡ヲ完全ニシテ貰ヒ
タイ其連フ所ノ船ガドノ會社ニ屬シヤウ
ガ、左樣ナ事ニハ島民ハ關係ハ無イノデア
リマス、島民ハ安全ニ航海ヲ爲シ得レバソ
レデ滿足致スノデアリマスカラ、其意味ニ
於テ第四十四帝國議會ニ、吾々ハ長崎、五
島、佐世保間ノ交通運輸ノ設備ニ關スル建
議案ヲ提出可決サレ、政府モ右建議ニ基
キ、此命令航路ヲ開始スルコトニナッタノ
デアリマス、只今橋本君ノ御引用ニナリマ
シタ新奥汽船會社ハ一體是ハドウ云フ性
質ノ會社デアルカ、一寸御言葉ノ中ニ何ダ
カ政黨政派ノ關係ヨリシテ、此會社ニ補助
デモ致シテ居ルカノ如キ御言葉モアリマシ
タガ、是ハ滿天下ノ船舶業者ハ能ク承知致
シテ居ル所デアリマシテ、新興汽船會社ト
云フノハ是ハ九州汽船會社ノ娘會社ト申
シマスルカ、姉妹會社デアルト申シマスル
カ、九州汽船會社ト深キ關係ヲ持ッテ居ル
會社デアリマス、吾々本黨ニ屬スル者ト致
シマシテハ、別ニ特殊ノ關係ヲ持,テ居ラ
ヌノデアリマス、是ハ橋本君ハ能ク御承知
デアル、殊ニ九州汽船會社ノ社長ハ橋本喜
造君ノ御令兄デ-從兄ニ當ラレルカ知レ
マセヌガ、能ク御目ニ懸ノタトキニ、橋本
喜造君ハ兄貴々々ト仰シヤッテオキデニナ
ル、是ハ何人モ知ッテ居ル、貴族院議員ノ
橋本辰二郞君ガ慥カ先年迄重役カ社長デア
ラレタト思ヒマス、若シ御兄弟デアルト申
シタコトガ間違ッタナラバ、御從兄カモ知
レヌ、始終橋本君ガ私ニ御話ニナルニハ
兄貴々々ト言ッテ居ラレル、又左樣ニ世間
モ言ッテ居リマス、私ハ戶籍ヲ拜見シマセ
ヌカラ能ク存ジマセヌガ、橋本君ガ私共ニ
辰二郞君ヲ兄貴々々ト言ッテオヰデニナル、
其橋本辰二郞君ガ此會社ノ重役、慥カ社長
デ在ラレルヤウニ私ハ記憶致シテ居ル沈
沒致シマシタ船ノ所有會社ト云フモノハ
卽チ此新興汽船會社デアル、併シ是ハ何モ
ソレダカラ私ハ善イトカ惡イトカ云フコト
ヲ言ッタノデハナイガ、何ダカ此會社ニ吾
吾ノ屬スル政友本黨ガ、特別ノ關係デモア
ルカノ如ク誤解サレル言葉ガアリマシタカ
ラ、此關係ヲ明瞭ニ致シテ置キマス、吾々
ハ九州汽船會社ノ兄弟關係ニ在ル新興汽船
會社ガ善イトカ惡イトカ云フコトヲ此處デ
論ジテ居ルノデハアリマセヌ、唯〓五島ノ
島民トシテハドノ會社デアラウトモ、五島
ト長崎、佐世保間ノ航路ガ安全ニ開カルレ
バソレデ宜シイノデアリマスカラ、政府
ガ此會社ニ對シテ命令ヲ致シタト云フコト
ニ對シテ、五島ノ十一万島民モ、長崎縣ノ
吾々同志モ、何等之ニ異議ヲ持ッテ居ルモ
ノデハアリマセヌ、左樣ナ關係デアリマシ
テ、何カ補助航路ガ開カレタカラ今回ノ如
キ慘事ガ演ゼラレタカノヤウナ御話モアリ
マシタガ、此定期航路ガ開カレヌ以前ノ五
鳥航路ニ使用サレタ所ノ船舶ト云フモノ
ハ今日ヨリマダ惡カッタト云フコトハ
是ハ橋本君ハ船ノ事ニ御精通デアリマスカ
ラ、能ク御水知デアラウト思ヒマス、政府
ノ命令航路開始以前ハ百何十噸ト云フ小
サイ船ガ多ク通ッテ居ッタ、此沈沒致シマシ
タ第六宇和島丸ハ、橋本君ト深イ關係ヲ御
持チニナッテ居ル所ノ會社ノ船デ、是ハ四
百二十六噸ノ船デアッテ、電燈ノ設備モア
リ、從來ヨリ船ハ幾ラカ改良サレテ居ッタ
ト私ハ思フノデアリマス(「ソレガ一身上ノ
辯明カ」ト呼フ者アリ)橋本君ガ私ニ何カ會
社ニ特別ノ關係アルガ如キ御言葉ヲ發セラ
レタカラ、私ハ辯明ヲ致スノデアリマス、
而シテ〓囘更ニ一層五島航路ノ完備ヲ切望
スル所ノ請願ガ、私ノ紹介ノ下ニ五島二十
箇町村長連名デ當議院ニ呈出サレマシタ
ガ、橋本君ハ只今此事ニ關シ、是ハ牧山君
ニ賴ム、牧山君ニ賴シデ置ケバ何デモ出來
ルト云フ風ニ五島民ハ考ヘテ居ルガ、自分
ドモヘモ電報ガ來テ居ルト云フ御話デアツ
タ、私ハ航路トカ陸上交通機關ト云フヤウ
ナモノハ、何モ政黨政派ノ問題デハナク
定期航路ガ開カレタト云ムテ、吾々本黨ニ
屬スル者共ガ便利ヲ得ルトカ云フ問題デハ
ナク、唯、と島民ガ安全ナ航路ガ開カレルト云
フコトヲ熱望致シマシタ結果、更ニ從來ノ
航路デハ不完全デアル、不十分デアルト云
フコトデ五島ノ福江町長出口本吉君等二十
箇町村長ガ、最近協議ノ結果連署シテ當院ニ
請願書ヲ呈出シマシタ、ソレガ昨十六日ノ
請願委員會ニ付議サレ、私ガ紹介議員トシ
テ詳細說明シ、審議ノ結果政府ヨリハ植原
參與官モ御出席ニナッテ賛成ノ意見ヲ御述
ニナリ、滿場一致ヲ以テ採擇サレタノデア
リマス、尙ホ今囘ノ慘事ニ鑑ミマシテ、私
共ハ此政府ノ命令航路ノ完備ヲ期スル意味
ニ於テ、更ニ長崎、五島、佐世保間命令航路
完備ニ關スル建議案ヲ昨日當院ニ提出致シ
マシタヤウナ次第デアリマス、若シ今囘ノ
宇和島丸ノ慘事ガ、使用船舶ガ惡カッタ爲
デアルト云フコトデアルナラバ、ソレハ政
府ノ責任カ、又ハ會社ノ責任デアッテ、吾
吾此定期航路ヲ開始スルコトヲ提唱シタル
者ニハ何等ノ責任ガ無イト云フコトヲ此處
デ辯明致シテ置キマス、又宇和島丸遭難當
日ハ好天氣デアッテ、暴風デハナカッタト云
フヤウナコトニ付テハ政府ヨリモ十分御
說明ガアリマシタ、又是ハ東京ノ朝日新聞
ヲ始メトシテ、都下ノ大新聞ガ詳細ニ特號
活字ヲ以テ此慘事ヲ報道致シテ居ルノデア
リマス、ソレデ見マシテモ當日ハ非常ナ烈
風デアッタコトガ分ルノデアル、又橋本喜
造君ハ無線電信ノ設備ガ無カッタコトヲ攻
擊サレマシタガ、此間ドノ委員會デアッタ
カ、橋本君ハ三千噸以上ノ船デナケレバ無線
電信ヲ設備スル必要ハナイト言ハレタサウ
デアリマスガ、宇和島丸ハ四百餘噸ノ船デ
アリマス、私ハ船ノ事ハ詳シクアリマセヌ
ガ、只今御述ニナリマシタ御意見ハ、橋本
君ノ御人格ノ上カラ申シマシテモ、少シク
私ハ不可思議、遺憾ニ感ゼザルヲ得ナイノ
デアリマス、此航路ニ對シテハ只今申述べ
マシタコトニ依シテ、大體同僚諸君ハ御諒解
下サッタ事ト思ヒマスガ、尙ホ橋本君ニ何カ
御意見ガアレバ、私ハ三時間デモ五時間デ
モ、詳シク申述ベテ事態ヲ明ニシタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=16
-
017・橋本喜造
○橋本喜造君 一身上ノ辯明ニ付テ發言ヲ
求メマス
〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=17
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018・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 身上ノ辯明ナラ
バ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=18
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019・橋本喜造
○橋本喜造君 只今牧山耕藏君ヨリ九州汽
船會社ノ社長ハ橋本辰二郞デアル、橋本喜
造君ノ兄デアルカ、或ハ從兄カモ知レヌ、
兄貴々々ト云フコトヲ言ウテ居ルト云フコ
トヲ言ハレマシタガ、九州汽船會社ニハ社
長ナル者ハアリマセヌ、橋本辰二郞ナル者
ハ決シテ九州汽船會社ノ社長デハアリマセ
又、之ヲ私ハ辯明致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=19
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020・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 土屋興君
〔「止セ〓〓」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=20
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021・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 土屋君ニ發言ノ
許可ヲ致シマシタ
電氣事業者ノ取締ニ關スル緊急質問士
屋興君提出)
〔土屋典君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=21
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022・土屋興
○土屋興君 諸君、私ハ會期ノ切迫セル今
日、特ニ緊急質問ノ機會ヲ御與ヘ下サレタ
ル三派諸君ノ寬厚ナル雅量ニ對シテ謹ンデ
敬意ヲ表スル者デアリマス、私ノ質問ハ極
メテ簡單デアリマスガ、而モ其事實タルヤ
國民ノ實生活ヲ脅威スル極メテ重大ナル問
題デアリマス、私ハ電燈電力供給ノ任ニ在
ル電氣事業者ノ取締ニ對シテ、遞信當局ニ
質問ヲ致ス者デアリマス、諸君、近頃吾々
ノ家庭ニ供給セラルヽ所ノ電氣ハ甚シク暗
イ、其光モ特ニ鈍イノデアリマス、十燭ヤ
十六燭ノ電球ヲ以テハ新聞スラ讀ミ得ナイ
ト云フヤウナコトモ問々アルノデアリマ
ス是ハ申上ゲルマデモナク電氣事業者ガ
一定ノ電壓ノ送電ヲ爲サズシテ、甚シク低
キ電壓ノ下ニ送電ヲ致シマスル結果、斯ノ
如キ不都合ヲ生ズルノデアリマス、家庭ニ
於テ夜間新聞紙ヲ讀ミ得ナイト云フガ如キ
コトハ甚シク不自由不便ノ事デアリマス
ルガ、尙且ツ之ヲ忍ブベシトスルモ、工場
ヲ經營スル者、家內工業ヲ營ム者、或ハ家
庭ニ於テ手內職ヲ致シマスル者ガ、電氣光
力ノ鈍イガ爲ニ夜業ヲ撤廢シナケレバナラ
ヌト云フガ如キコトハ洵ニ忍ブベカラザ
ル事デアリマス、殊ニ電壓ガ甚シク低イガ
爲ニ、工場ノ「モーター」ヲ動カスコトガ出
來ナイデ、全然工場ノ作業ヲ荒廢ニ歸スル
ト云フガ如キニ至ッテハ、洵ニ悲慘ナル事
實デアリマス、而モ斯ノ如キ事實ガ一日ヤ
二日デハナク、數箇月二亙ッテ繼續シテ行きと
ハレルト云フニ至ッテハ、其修害蓋シ測リ
知ルベカラザルモノガ存スルノデアリマ
ス、今ヤ電氣事業者ノ設備怠慢ヨリシテ起
ル、斯ノ如キ損害ノ爲ニ、電氣事業者ヲ呪
ヲ聲ト云フモノハ勃然トシテ全國ニ起リツ
ツアルノデアリマス、私ハ先頃伊豆方面ニ
旅行ヲ致シタノデアリマスルガ、溫泉宿ノ
電燈ガ非常ニ暗イ、殆ド光ヲ放ッテ居ルト
云フヨリハ、唯〓赤イ色ヲ呈シテ居ルノミデ
アリマス、八疊ノ部屋デアッテ、四五尺ヲ
隔テヽ相對シテ居ル者ノ顏ガ殆ド見ルコト
ガ出來ナイト云フヤウナ狀態デアル、〓
テ電球ヲ、檢シマスルト云フト、五十燭ノ
「タングステン」電球ガ點サレテ居ルヤウナ
狀況デアル、宿ノ主人ヲ呼ンデ、何トカ電
氣ハナラナイモノデアルカト云フコトヲ交
涉致シマスト云フト、イヤ此地方ハ例年十
二月カラ三月四月ニ亙シテ、斯ノ如キ事ガ
每年繼續セラレルノデアリマス、而シテ電
氣會社ニ向ッテ電氣ヲ明ルクシテ貰ヒタイ
ト云フコトヲ交涉致シマスルト云フト、サ
ウ云フ我儘ヲ言フ者ニ向ッテハ今後電燈ヲ
供給シテヤラヌト云フコトヲ言ハレルカ
ラ、マダ斯ウ云フ暗イ電燈デモ蠟燭ヲ點ス
ヨリカ宜シイト云フノデ我慢シテ居ル次第
デアリマス、然ラバ料金ハドウナルノデア
ルカト云フト、料金ハ明ルカラウガ暗カラ
ウガ、一定料金ヲドン〓〓徴收セラレルノ
デアル、私共ノ不平ハ尙ホ忍プベシデアリ
マスガ、附近ノ工場ヲ營ム者ニ向ッテハ
實ニ氣ノ毒デ、電氣ガナイ爲ニ工場ハ殆ド
休止ヲ致シテ居ルト云フコトヲ申スノデア
リマス、翌日宿屋ヲ出デテ附近ヲ視察致シ
マスト、製氷ノ工場ト云ハズ、煉乳ノ工場
ト云ハズ、鐵工所ト云ハズ、鑛山ト云ハ
ズ、何レモ休止ヲシテ居ル狀態デアリマ
ス、就テ之ヲ質シマスト、殆ド數箇月ニ亙ッ
テ甚シキ低キ電壓ノ下ニ送電ヲセラレマス
關係カラ、「モーター」ヲ動スコトガ出來ナ
イ結果、事業ヲ曠廢シテ居ルト云フコト
ヲ申スノデアリマス、諸君、私ハ歸來各地
ニ就テ取調ヲ致シテ見マスト、今ヤ二三ノ
大電燈會社ヲ除クノ外ハ、完全ナル送電ヲ
爲シテ居ルト云フ電氣事業者ハ無イノデア
リマス、而モ電氣事業者ニ依ッテ電氣ノ需
要者ニ被ラシムル損害ニ至ッテハ事實上
救濟ノ途ガ無イノデアリマス、諸君、吾々
ハ憲法ニ於テ生命財產ノ安全ヲ保障セラレ
テ居ル、吾々ハ不當ニ何人ヨリモ自己ノ有
スル財產ヲ侵害セラルヽコトハナイ、吾々
ハ又不當ニ他人ノ財產ヲ侵害スルコトガ出
來ナイト同時ニ、若シ不當ニ他ヨリ吾々ノ
財產ニ損害ヲ加ヘラレタル場合ニ於テ、吾
々ハ之ニ向ッテ卽時ニ賠償ヲセシムルコト
ガ出來ルノデアリマス、是ガ吾々ガ文明國
民トシテ存在ヲスル所以デアリ、又文明國
民タル意義ガ玆ニ存スルノデアリスマ、然ル
ニ電氣事業者ニ向ッテ損害恢復ノ途ガ無イ
ト云フニ至ッテハ、蓋シ聖代ノ不祥事デア
ルト言ハザルヲ得ナイノデアリマス、是ニ
於テカ私ハ默サント欲シテ默スルコトガ出
來ナイ、五千万國民ノ爲ニ立シテ此壇上カ
ラ我國ノ多クノ電氣事業者ノ不當ヲ鳴ラ
シ、其反省ヲ求メテ以テ需要者ノ被ル所ノ
損害ヲ、幾分ナリトモ輕微ナラシメントス
ルト同時ニ、是ガ監督ノ任ニ在ル遞信當局
ニ向ッテ警告ヲ與ヘテ、以テ適當ナル監督、
適當ナル取締ヲ爲サシメ、又法規ノ不備ニ
對シテハ新ナル制定ヲ要求シテ、以テ國民
塗炭ノ苦ミヲ除カントスルノガ只今質問セ
ムトスルニ至ッタ所以デアリマス(拍手)併
ナガラ私ハ極メテ時間ヲ制限セラレテ居リ
マスカラ、時間ヲ短縮致シマスル都合上、
質問ノ要旨ヲ朗讀致シタイト思ヒマス、第
ハ電氣事業者ハ電氣事業法ニ依リ施行
規則第五十一條ニ依ッテ一定電壓又ハ一定
電流ヲシテ百分ノ四以上ノ變動ヲ起サシメ
サルコト、電燈供給ノ場合ニアッテハ技衞
上已ムヲ得ザルモノヲ除クノ外光力ニ不定
ヲ生ゼシメザルコトヲ要求セラレテ居ルノ
デアリマス、但シ是ハ特殊ノ事由アル場合
ニ於テ遞信大臣ノ認可ヲ得タルモノハ百
分ノ四以下ノ電壓ニテ送電スルヲ得ルコト
トシテアルノデアリマス、例年十二月ヨリ
三月ニ亙リテ、電氣事業者ガ公然低キ電壓
ノ送電ヲナスハ主務省ノ認可ニ依ッテヤッ
テ居ルモノデアルカドウカ、若シ主務省ノ
認可ニ依クテ爲サレツヽアルモノキスレバ、
主務省ハ公然盜賊ヲ爲スト同一ノ行爲ヲ公
認スルト何等選、所所ハナイ、公然公認ヲ致
シテ居ルト云フコトニ相成ルノデアリマ
ス、サウデナイナラバ施行規則第五十一條
ハ空文トナリツヽアル譯デアリマシテ、當
局ノ監督不行屆、怠慢ノ罪ハ免レナイ所デ
アラウト思フノデアリマス、第二ハ主務
大臣ハ電氣事業法第六條ニ依ノテ公益止必
要ナリト認メタル時ハ電氣事業者ニ對シ
テ料金ノ制限、其他電氣供給ノ條件ニ關シ
必要ナル命令ヲ爲スコトガ、出來ルノデア
リマス、何故ニ主務大臣ハ只今御話シタヤ
ウナ場合ニ料金ノ引下ゲ、又ハ免除、其他
適當ノ救濟ヲ當業者ニ御命ジニナラナイ
カ、聞ク所ニ依レバ米國アタリデハ僅カ半
日半夜ノ停電デスラ一箇月分ノ電氣料ヲ拂
ハヌコトニナッテ居ルト云フヤウニ間イテ
居リマス、第三八、主務大臣ハ電氣事業法
第十四條ノ二ノ規定ニ依シテ、天災其他ノ
事故ニ依ッテ電氣工作物ノ障害ヨリ生ズベ
キ電氣ノ供給、又ハ使用ノ停止ヲ豫防セシ
ムル爲ニ、公益上必要アリト認ムル場合ニ
於テハ電氣事業者ニ對シテ電氣ノ流用ヲ
命ズルコトガ出來ルノデアル、渴水期ニ際
シ、水量減少ノ爲メ發電ノ不足ヲ來シ、其
結果電氣ノ供給又ハ使用ヲ停止スル場合ニ
於テハ主務省ハ電氣事業者ニ對シ隣接
セル電氣事業者トノ間ニ互ニ電氣ノ流用ヲ
命ジテ、需要者ノ損害ヲ少カラシムル處置
ヲ致スコトガ出來ナイノデアルカ、假ニ電
氣事業法第十四條ノ二ノ規定ニ依ッテ之ヲ
爲シ得ザルトスルモ、斯ル處置ハ電氣事業
法第六條ノ規定ニ依ッテ、當業者ニ對シテ
豫メ平時ニ於テ之ヲ命ジ、萬一ノ場合ノ準
備ヲ爲サシメ得ルデハナイカ、第四、電氣
需要者ガ契約ヨリモ甚シク光力ノ不足セル
電氣ヲ供給セラレ、又ハ全ク使用ニ堪ヘザ
ル低キ電壓ニテ電氣ノ供給ヲセラレ、或
不時ニ電氣ノ供給ヲ拒絕セラレ、之ガ爲ニ
其事業ニ不測ノ變動ヲ生ジ、莫大ナル損害
ヲ被ルモ事實上救済ヲ受クルノ途ハ無イ
デアル、一例ヲ舉ゲレバ工場ヲ經營スル
煮、又ハ手內職ヲ爲ス者ガ光力不足ノ爲ニ
夜業ヲ停廢シ、或ハ電壓低キ爲メ「モータ
ー」ヲ動カス能ハザル理由ニ依シテ全然作
業ヲ休止シ、而モ斯ル狀態數箇月ニ渉リ、
其損害眞ニ測リ知ルベカラザルモノアル
モ、損害ハ賠償セラレナイノデアリマス、
此場合需要者ガ電氣事業者ニ向シテ損害ノ
賠償ヲ求メンカ、彼等ハ供給區域ヲ獨占
スル專賣事業ナルニ依テ、傲然タル態度ヲ
以テ之ヲ拒否シ、且ツ斯ル要求ヲ爲ス者ニ
向ッテハ電力ノ復活セル場合、送電ヲ拒絕
スベキコトヲ灰カシテ威嚇スルヲ常ト致シ
マス、第五ハ電氣供給事業者ハ電氣事業法
施行規則第五十條ニ依テ、需要者ニ對シ
正當フ理由ナクシテ電氣ノ供給ヲ拒絕スル
ヲ得ザルコトヲ規定セラレテ居ルノデア
ル、隨テ需要者ヨリ損害ヲ申込ミタリトノ
理由ニ依シテ、故意ニ供給ヲ拒絕スルコト
ハ出來ナイ筈デアリマス、併ナガラ遞信省
ノ監督不行屆ノ結果、事實上獨占事業ナル
ガ故ニ甚シキ專恣横暴ヲ彼等ハ敢テシテ、
第五十條ノ如キハ今ヤ全ク空文トナッテ居
ルノデアリマス、第六ハ、電氣供給ノ如キ公
益的獨占事業ニ對シテハ當局ハ特ニ嚴重
ナル監督取締ヲ爲スノ心要ガアリマス、又
需要者ノ被ル損害ノ救濟ノ如キモ、弱キ立
場ニ在ル需要者ヲシテ遺憾ナカラシムルニ
就テハ、法律上ノ保護ヲ必要トスル、卽チ
需要者ハ其損害ヲ直接當業者ニ申出スコト
ナク、之ヲ監督官廳ニ申告シ、監督官廳ハ
當業者ニ向ッテ賠償ノ支拂、又ハ適當ナル
救濟ヲ命ズルノ規定ヲ設クルガ如キ或ハ
損害ヲ申出テタルガ爲ニ、將來故意ニ送電
ヲ拒絕シ、又ハ不公平ナル取扱ヲ爲シタル
時ハ斯ル電氣事業者ニ對シテハ嚴罰ヲ科
シ、場合ニ依シテハ營業ノ計可ヲ取消スノ
規定ヲ設クルガ如キ、極メテ必要ナ事デア
ルト思フノデアリマス、第七ハ從來主務省
ノ方針ヲ見ルニ、電氣事業者ヲ保護シ、
般需要者ヲ保護セザルノ傾向ガアル、公益
的性質ヲ有スル獨占的事業ニ對シテハ特ニ
嚴重ナル監督ヲ爲シ、獨占ノ弊ニ陷ラシム
ルコトナキヲ要スルノデアル、殊ニ民衆内
閣ヲ標榜セル現政府トシテパ、特ニ弱キ立
場ニ在ル需要者ニ向ッテ保護セラレンコト
ヲ望ムノデアリマス、第八ハ、水力發電ニ
依ル電氣事業者ニ對スル主務省ノ營業許可
ノ方針ハ最低水量ニ於ケル發電力ヲ限度
トシテ許可シツヽアル筈デアラウト思フ
ノデアリマス、然ルニ今日ノ如キ不都合
ヲ生ズルト云フノハ、要スルニ當業者ガ
許可ヲ得ル場合ニ爲ス最低水量ノ申請ニ
僞リガアルカ、許可ノ場合當局ノ調査ガ
杜撰デアル爲デアルカ、當業者ガ定時發
電力以上ノ供給契約ヲ敢テ爲シ、不當利得
ヲ得ントシテ故意ニ過大ノ契約ヲ平時ニ於
テ爲ス爲メカ、三者何レカニ歸スルノデ
アル、當局者ハ是等ノ點ニ就テ調査ヲ進メ
タ事實ガアリマスカドウカ、之ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス、第九ハ、從來主務省ノ方針
ハ水力主義ニ偏重シテ、火力設備ヲ疎外シ
タル結果、今日ノ如キ失態ヲ演ジタルモノ
ト思ハレルノデアル、水力發電ニ依リ電燈
電力ノ供給ヲ爲ス者ニ對シテハ必ズ火力
設備ヲ併セ設クルコトヲ命ジ、少クモ許可
發電力ノ三割ニ相當スル火力設備ヲ爲サシ
メルノ必要ガアラウト思フ、第十ハ、資力不
十分ナル者、發電力少ナキモノニ電氣供給
ノ事業ヲ爲スコトヲ許可スルコトハ絕對ニ
避ケナケレバナラヌコトデアル、資力豐富
ニシテ大規模ノ經營ヲ爲ス者ガ、需要者ニ
損害ヲ與フルノ程度ハ比較的少イケレド
モ、資力少キ小規模ノ經營ヲ爲ス者ガ需要
者ニ與ヘル損害ニ至ッテハ極メテ深刻ニ
シテ悲慘ナルモノガアルノデアリマス當
局ハ將來斯ル不完全ナル電氣事業者ヲ認メ
ザルト同時ニ、現ニ營業ヲ許可シツヽアル
者ニ向ッテハ、極力其設備ノ完備ヲ期シ、需
要者ニ不測ノ損害ヲ被ラシメヌヤウ御注意
願ヒタイノデアリマス、私ハ以上十項ニ向ク
テ何卒御懇篤ナル御各辯ヲ要求致シタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=22
-
023・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 植原政府委員
〔政府委員植原悅二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=23
-
024・植原悦二郎
○政府委員(植原悅二郞君) 只今土屋君カ
ラ電氣事業ノ監督其他ニ付キマシテ、十項
ニ瓦ル御質問ガゴザイマシタ、御陳述ノ中
ニハ御意見モアリ、御希望モ多カッタヤウ
デアリマスガ、御質問ハ極メテ多岐ニ亙ル
コトデアリマスカラ、書面ヲ以テ御各辯申
上ゲタ方ガ宜カラウト思ヒマス、御意見御
希望ノ所ハ謹ンデ拜聽致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=24
-
025・土屋興
○土屋興君 是ハ極メテ國民ノ生活ヲ脅威
スル問題デアリマスカラ、私ハ遞信大臣ノ
御答辯ヲ要求致シタノデア「リマスケレド
モ、貴族院ノ委員會ニ於ケル御都合ニ依リ
テ御出席ガ願ハレズ、只今植原參與官カラ
代ッテ御答辯ガアッタノデアリマスガ、極メ
テ重大ナ問題デハアルガ、多岐ニ互ッテ居ル
カラ文書ヲ以テ答辯スルト云フ御話デアリ
マシタ、是ハ洵ニ遺憾ナ事デアリマシテ、
願クハ此議場ニ於テ政府ノ意ノ在ル所ヲ御
聲明下サルコトガ、洵ニ國家國民ノ爲ニ、
當業者ニ向シテ警告ヲ與ヘル意味ニ於テ、殊
ニ願ハシキコトデアルト信ズルノデアリマ
スカラ、私ハ特ニ政府當局ニ向ノテ再考ヲ
願フ者デアリマス、併ナガラ若シ政府當局
ガ之ヲ爲スト云フコトヲ欲シナイ、是非文
書デ答辯シタイト云フナラバ、何卒私ガ質
問ヲ致シタル趣旨ノ存スル所ヲ能ク御諒解
ニナッテ、當業者ヲ鞭撻シ、十分ナル監督
取締ヲ將來ニ於テ御與ヘニナリ、國民塗炭
ノ苦ミヲ御救濟アランコトヲ希望スル者デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=25
-
026・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 是ニテ質問ハ終
了致シマシタ-日程第〓育改善及農
村振興基金特別會計法案ノ回付案ヲ議題ト
致シマス
第〓育改善及農村振興基金特別會
計法案(政府提出、貴族院囘付)
〓育改善及農村振興基金特別會計法案
右貴院ノ送付ニ係ル政府提出案本院ニ於
テ修正議決セリ依テ議院法第五十五條ニ
依リ及囘付候也
大正十四年三月十六日
貴族院議長公爵德川家達
衆議院議長粕谷義三殿
(-ハ貴族院修正)
〓育改善及農村振興基金特別會計法案中
貴族院囘付ノ箇所左ノ如シ
第三條本基金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
師範〓育ノ改善及農村產業ノ振興ニ必
要ナル費途ニ之ヲ使用ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=26
-
027・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 貴族院ニ於ケル
修正箇條ハ既ニ印刷ヲ致シ、御手許ニ配付
致シテアリマスカラ、既ニ御了知ノ事ト存
ジマス、此回付案、卽チ貴族院ノ修正案ニ
同意スルヤ否ヤヲ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=27
-
028・小山松壽
○小山松壽君 簡單デアリマスカラ議席カ
ラ發言ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=28
-
029・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=29
-
030・小山松壽
○小山松壽君 只今議題ニナリマシタル〓
育改善及農村振興基金特別會計法案ノ貴族
院ノ回付案ハ、同法第三條中本基金ハノ次
「勅令ノ定ムル所ニ依リ師範」ノ十二字竝ニ
農村ノ次「產業」ノ二字ヲ削リマシテ、「本基
金ハ〓育ノ改善及農村ノ振興ニ必要ナル費
途ニ之ヲ使用ス」ト相成ルノデアリマス、
此修正ハ原案ノ趣旨ト大差ナク、活用ノ範
園ヲ廣メ、且ツ其精神ニ於テ彈力性ヲ有セ
シメタルモノト考へルノデアリマス、貴族
院ノ修正ニ同意ヲ致シマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=30
-
031・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 採決致シマス、
貴族院ノ修正ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=31
-
032・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議カナケレ
バ貴族院修正ニ同意スルコトニ決シマシタ
(拍手)日程第二、第三ハ同種關聯セル議案
デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=32
-
033・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ガナイト
認メマス、仍テ日程第二、藥劑師法案、日程
第三、藥品法案ヲ一括シテ其第一讀會ヲ開
キ、政府ノ趣旨辯明ヲ許シマス-若槻内
務大臣
第二藥劑師法案(政府提出)第一讀會
藥劑師法案
藥劑師法
第一條藥劑師トハ醫師ノ處方箋ニ依リ
調劑ヲ爲ス者ヲ謂フ
藥劑師ハ藥品ノ製造及販賣ヲ爲スコト
ヲ得
第二條藥劑師タラムトスル者ハ内務大
臣ノ免許ヲ受ケ藥劑師名簿ニ登錄ヲ受
クヘシ
前項ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各號ノ
ニ該當スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
大學令ニ依ル大學ニ於テ藥學ヲ修
メ學士ト稱スルコトヲ得ル者、官立
公立ノ藥學專門學校、醫科大學附屬
藥學專門部若ハ醫學専門學校樂學科
ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ニ於テ
之ト同等以上ト認メ指定シタル學校
ヲ卒業シタル者
二藥劑師試驗ニ合格シタル者
三外國ノ藥學校ヲ卒業シ又ハ外國ニ
於テ藥劑師ノ免許ヲ受ケタル者ニシ
テ命令ノ規定ニ該當スルモノ
第一項ノ登錄及前項第二號ノ藥劑師試
驗ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條内務大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當
スル者ニ對シテハ藥劑師ノ免許ヲ爲ス
コトヲ得ス
六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處
セラレタル者
二未成年者、禁治產者又ハ準禁治產
者
三精神病者、瘖啞者又ハ盲者
第四條內務大臣ハ左ノ各號フ一ニ該當
スル者ニ對シテハ藥劑師ノ免許ヲ爲サ
サルコトヲ得
六年未滿ノ徵役又ハ禁錮ノ刑ニ處
セラレタル者
二藥事ニ開シ罰金ノ刑ニ處セラレ又
ハ不正ノ行爲アリタル者
第五條藥劑師ニ非サレハ販賣又ハ授與
ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲スコトヲ得ス
藥劑師販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑
ヲ爲ス場合ニ於テハ藥局ニ於テ之ヲ行
フヘシ
第六條藥劑師ニ非サレハ藥局ヲ開設ス
ルコトヲ得ス但シ命令ヲ以テ定ムル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
藥局ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第七條藥劑師ニ非サレハ藥局ヲ管理ス
ルコトヲ得ス藥劑師ト雖二以上ノ藥局
ヲ管理スルコトヲ得ス
第八條藥劑師ハ調劑ノ需アル場合ニ於
テハ晝夜ヲ問ハズ正當ノ事由ナクシテ
之ヲ拒ムコトヲ得ス
第九條藥劑師ハ醫師、齒科醫師又ハ獸
醫ノ處方箋中疑ハシキ廉アルトキハ其
ノ醫師、齒科醫師又ハ獸醫ニ質シ證明
ヲ得ルニ非サレハ調劑ヲ爲スコトヲ得
ス
第十條藥劑師ハ醫師、齒科醫師又ハ獸
醫ノ處方箋ニ記載セラレタル藥品ニ付
之ヲ省略シ又ハ他ノ藥日ヲヲテ之ニ代
ヘ調劑ヲ爲スコトヲ得ス但シ藥品ニシ
テ缺乏セルモノアル場合ニ於テ其ノ醫
師齒科醫師又ハ獸醫ノ同意ヲ得タル
トキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條藥劑師毒藥又ハ劇藥ヲ配伍シ
タル調劑ヲ爲シタルトキハ處方箋ニ檢
印シ其ノ日附ヨリ三年間之ヲ保存スヘ
シ但シ處方箋ニ指定スル使用期間ニ對
スル調劑ノ全部ヲ了ラサルトキハ此ノ
限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テハ處方箋ニ調劑
ノ年月日及調劑量ヲ記入シ記名捺印ス
ヘシ
第十二條藥局開設者ハ藥局ニ調劑錄ヲ
備フヘシ
藥劑師調〓ヲ爲シタルトキハ直ニ調劑
錄ニ調劑ニ關スル事項ヲ記載スヘシ
調劑錄ハ三年間之ヲ保存スヘシ
第十三條藥劑師ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ道府縣樂劑師會ヲ設立スヘシ
道府縣藥劑師會ハ日本藥劑師會ヲ設立
スルコトヲ得
道府縣藥劑師會及日本藥劑師會ハ法人
トス勅令ノ定ムル所ニ依リ藥事衞生ノ
改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
道府縣藥劑師會ハ道府縣ヲ、日本藥劑
師會ハ內地ヲ區域トス
第十四條道府縣藥劑師會及日本藥劑師
會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ會員ヨ
リ徵收スヘキ收入ニ關シ民事訴訟ヲ提
起スルコトヲ得
第十五條本法ニ規定スルモノノ外道府
縣藥劑師會及日本藥劑師會ニ關シ必要
ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條藥劑師第三條各號ノ一ニ該當
スルトキハ内務大臣ハ其ノ免許ヲ取消
スヘシ
藥劑師第四條各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ內務大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期
間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ
得
前二項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖第
三條第二號又ハ第三號ノ原因止ミタル
トキ又ハ改悛ノ情顯著ナルトキハ再免
許ヲ爲スコトヲ得
內務大臣第二項ノ處分ヲ行フ場合及改
悛ノ情顯著ナル者ニ對シ前項ノ再免許
ヲ爲ス場合ニ於テハ中央衞生會ノ審議
ヲ經ルコトヲ要ス
第十七條第五條第一項、第六條第一項、
第七條若ハ第九條ノ規定ニ違反シタル
者又ハ業務停止中ノ樂劑師ニシテ其ノ
業務ヲ爲シタルモノハ五百圓以下ノ罰
金又ハ科料ニ處ス
第十八條第五條第二項、第八條若ハ第
十條乃至第十二條ノ規定ニ違反シタル
者又ハ誤リテ調劑ヲ爲シタル者ハ二百
圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
醫師、齒科醫師又ハ獸醫ハ其ノ診療ニ用
フヘキ藥品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ
第五條第一項ノ規定ニ拘ラス調劑ヲ爲ス
コトヲ得
本法施行ノ際現ニ藥劑師タル者ハ本法ニ
依リ藥劑師ノ免許ヲ受ケ藥劑師名簿ニ登
錄ヲ受ケタル者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ帝國大學醫科大學藥
學科ヲ卒業シタル者ハ大學令ニ依ル大學
ニ於テ藥學ヲ修メ學士ト稱スルコト
ヲ得ル者、高等中學校醫學部藥學科
又ハ高等學校醫學部藥學科ヲ卒業シタ
ル者ハ官立藥學專門學校ヲ卒業シタル
者ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六
號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者
ハ六年ノ懲役又ノ禁錮以上ノ刑ニ、同
法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年未
滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者
ト看做ス
第三藥品法案(政府提出)第一讀會
藥品法案
藥品法
第一條藥品營業者タラムトスル者ハ藥
劑師ヲ除クノ外地方長官ノ許可ヲ受ク
ヘシ
藥品營業者ニ非サレハ藥品ノ販賣又ハ
販賣ノ用ニ供スル藥叩ノ製造ヲ爲スコ
トヲ得ス
第二條日本藥局方ニ記載アル藥品及日
本藥局方ニ記載ナク外國藥局方ニ記載
アル藥品ハ其ノ性狀品質日本藥局方又
ハ當該外國藥局方ノ所定ニ適合スルニ
非サレハ之ヲ販賣若ハ授與シ又ハ販賣
若ハ授與ノ目的ヲ以テ製造、輸入、移
入、貯藏若ハ陳列スルコトヲ得ス但シ
命令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲シタル場合ハ
此ノ限ニ在ラス
日本藥局方ハ内務大臣之ヲ定ム
第三條前條ノ藥品ニシテ其ノ藥局方ニ
貯藏方法ノ定アルモノハ之ニ従ヒ貯藏
スヘシ
第四條日本藥局方ニ記載ナキ藥品ニシ
テ衞生上危害ヲ生スル虞アリト認ムル
モノハ地方長官其ノ販賣若ハ授與ノ目
的ヲ以テスル製造、輸入、移人、貯藏
若ハ陳列ヲ禁止スルコトヲ得
第五條薬品ノ命令ノ定ムル所ニ依リ官
立公立ノ衛生試驗所、藥劑師又ハ當該
製造者ニ於テ封緘ヲ爲シタルモノニ非
サレハ藥品營業者以外ノ者ニ之ヲ販賣
又ハ授與スルコトヲ得ス但シ藥品營業
者ニ於テ其ノ封緘ヲ開キ之ヲ零賣スル
場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六條毒藥及劇藥ハ藥劑師タル藥品營
業者ニ非サレハ之ヲ零賣スルコトヲ得
ス
第七條醫師、齒科醫師又ハ獸醫ノ處方
箋ニ依リ調劑シタルモノ以外ノ毒藥及
劇藥ハ藥品營業者醫師、齒科醫師、獸
醫其ノ他業務上之ヲ必要トスル者以外
ノ者ニ之ヲ販賣又ハ授與スルコトヲ得
ス
薬品營業者醫師、齒科醫師及獸醫以
外ノ者ニシテ業務上前項ノ毒藥又ハ劇
藥ヲ必要トスルモノニ之ヲ販賣又ハ授
與セムトスルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ證書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
前項ノ證書ハ其ノ日附ヨリ五年間之ヲ
保存スヘシ
第八條毒藥及劇〓ハ十四歳未滿ノ者其
ノ他不安心ト認ムヘキ者ニハ之ヲ交付
スルコトヲ得ス
第九條毒藥及劇藥ハ各他ノ藥品ト區別
シ之ヲ貯藏スヘシ毒藥ヲ貯藏スル場所
ニハ鎖鑰ヲ施スヘシ
第十條藥劑師タル藥品營業者ハ命令ヲ
以テ指定スル配合劑ヲ販賣又ハ授與ス
ルコトヲ得
第十一條指定藥品ハ藥劑師タル藥品營
業者又ハ命令ノ定ムル所ニ依リ藥劑師
ヲ使用スル藥品營業者ニ非サレハ藥品
營業者以外ノ者ニ之ヲ販賣又ハ授與ス
ルコトヲ得ス
前項ニ規定スル藥劑師以外ノ藥品營業
者ノ指定藥品ノ販賣又ハ授與ニ關シテ
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條地方長官ハ土地情況ニ依リ前
條第一項ノ規定ニ拘ラス前條第一項ノ
藥品營業者以外ノ薬品營業者ニ對シ期
間及營業所所在地ヲ定メ前條第一項ノ
藥品營業者ヨリ得タルコトノ證明アル
指定藥品ノ販賣又ハ授與ヲ許可スルコ
トヲ得
第十三條前二條ノ規定ニ依リ指定藥品
ヲ販賣スル藥品營業者ハ正當ノ事由ナ
クシテ藥品營業者以外ノ者ニ指定藥品
ノ販賣ヲ拒ムコトヲ得ス
第十四條毒藥、劇藥及指定藥品ノ品目
ハ內務大臣之ヲ定ム
第十五條第二條第一項又ハ第四條ノ規
定ニ依リ販賣又ハ授與スルコトヲ得サ
ル藥品ヲ販賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ所
有又ハ所持スル者アルトキハ行政官廳
ハ其ノ者ヲシテ之ヲ廢棄セシメ又ハ直
接ニ之ヲ廢棄シ其ノ他必要ナル處分ヲ
爲スコトヲ得但シ所有者又ハ所持者ニ
於テ衞生上危害ヲ生スル虞ナキ方法ニ
依リ處置セムコトヲ請フトキハ之ヲ許
可スルコトヲ得
第十六條行政官廳ハ當該官吏員ヲシテ
薬局又ハ藥品ヲ販賣、授與シ若ハ販賣
授與ノ目的ヲ以テ製造、貯藏、陳列ス
ル場所ニ就キ巡視セシメ又ハ試驗ノ爲
必要ナル分量ノ藥品ヲ無償ニテ收去セ
シムルコトヲ得
第十七條藥劑師以外ノ藥品營業者禁錮
以上ノ刑ニ處セラレタル者ナルトキ又
ハ其ノ業務ニ開シ罰金、科料ノ刑ニ處セ
ラレ若ハ不正ノ行爲アリタル者ナルト
キハ地方長官ハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ
期間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコト
ヲ得
第十八條第一條第二項、第二條第一項、
第七條第一項又ハ第十一條第一項ノ規
定ニ違反シタル者、第四條ノ規定ニ依
ル禁止ニ違反シタル者、第十條ノ規定
ニ依ル場合ヲ除クノ外配合劑ヲ販賣又
ハ授與シタル者及前條ノ規定ニ依リ業
務ヲ停止セラレタル者ニシテ其ノ停止
中其ノ業務ヲ爲シタルモノハ五百圓以
下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十九條第三條、第五條、第六條、第
七條第二項第三項、第八條、第九條又
ハ第十三條ノ規定ニ違反シタル者、藥
劑師ニシテ事實ヲ知ラスシテ第二條第
一項ノ規定ニ違反シタル者、第十一條
第一項ニ規定スル藥劑師以外ノ藥品營
業者ニシテ指定藥品ニ付事實ヲ知ラス
シテ第二條第一項ノ規定ニ違反シタル
モノ及當該官吏吏員ノ巡視ヲ受クル場
合ニ於テ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ケ若ハ
忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サ
ス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ二百
圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十條薬品營業者未成年者又ハ禁治
產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ
發スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則
ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ業務ニ
關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成
年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十一條藥品營業者ハ其ノ代理人、
戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從
業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本
法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルト
キハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第二十二條明治三十三年法律第五十二
號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
藥品營業竝藥品取扱規則ハ之ヲ廢止ス
第十六條ノ規定ノ通用ニ付テハ藥劑師法
附則第二項ノ規定ニ依リ醫師、齒科醫師
又ハ獸醫カ調劑ヲ爲ス場所ハ之ヲ藥局ト
看做ス
本法施行ノ際現ニ藥種商又ハ製藥者タル
者ハ第一條第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受
ケタル者ト看做ス
本法施行ノ際現ニ地方長官ノ許可ヲ受ケ
指定藥品ヲ販賣スルコトヲ得ル者ハ第十
二條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト石
做ス
前項ニ規定スル者ヲ除クノ外本法施行ノ
際現ニ指定藥品ヲ販賣スルコトヲ得ル者
ハ第十一條第一項ノ規定ニ拘ラス引續キ
之ヲ販賣又ハ授與スルコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ第十三條及第九條ノ規定ヲ準用
ス
「モルヒネ」及「コカイン」、其ノ誘導體竝其
ノ鹽類ニ關シ取締上必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム痘苗、血〓其ノ他細菌學
的豫防治療品ニ付亦同シ
第十一條第一項ノ規定ハ藥劑師法附則第
二項ノ規定ニ依リ醫師、齒科醫師又ハ獸
醫カ調劑シタルモノニ付テハ之ヲ適用セ
ス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=33
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034・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 藥品ニ關係シ
マスル現行法規ハ明治二十一一年ノ制定ニ係ッ
テ居リマシテ、爾來數次ノ改正ヲ經タノデ
アリマスルケレドモ、時代ノ進運ニ件ハナ
イモノガアルノデアリマス、殊ニ藥品營業、
竝ニ藥品取扱ニ關スル規定ヲ主ト致シテ、之
ニ藥劑師ノ身分ニ開スル規定ヲ混淆シテ居
リマスル結果ハ、藥劑師ニ對スル特別ノ身分
法ヲ缺クコトニナッテ居ルノデアリマス、仍
テ現行法中藥劑師ニ關スル規定ハ、一 b.
テ之ヲ藥劑師法ト致シ、藥品ニ關スル規定
ハ一括シテ之ヲ藥品法トスルノガ、藥餌衞
生ノ改良發達ニ資スル所以デアルト認メテ
居ルノデアリマス、是ガ玆ニ藥劑師法案並
ニ藥品法案ヲ提出致シマシタ理由デアリマ
ス、藥劑師法案ノ內容ノ大體ヲ申上ゲマス
ルト云フト、藥劑師ノ身分、資格、職能及監
督ニ關スル規定デアリマシテハ新ニ藥劑師
會ノ制度ヲ法ノ上ニ公認シタノデアリマ
ス、蓋シ藥劑師ニ對シテ藥劑師法ナル身分
法ヲ制定致シマスルコトハ、之ヲ醫師ニ醫
師法アリ、齒科醫師ニ齒科醫師法アルノニ
鑑ミマシテモ、適當ノ事ニ屬スルノデアリ
マスルシ、藥劑師ノ地位ヲ向上シ、公衆衞生
ニ貢獻セシムルノ效果ガ尠カラナイコトデ
アルト考ヘテ居ルノデアリマス、藥品法案
ニ於キマシテハ藥品營業竝ニ藥品取扱ニ
關スル規定ヲシテ居ルソデアリマス、其要
旨ヲ申上ゲマスルト、藥品ノ品質、性狀ノ優
良ヲ保證シ、併セテ藥ロ叩ノ誤用〓用ニ因ノテ
生ズベキ危害ヲ防止セントスルノニ外ナラ
ナイノデアリマス、此兩案ハ全ク只今御說
明申上ゲル趣旨ニ依ッテ成立ッテ居ルノデア
リマスカラ、御審議ノ上ニ速ニ御協賛ヲ與
ヘラレンコトヲ切ニ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=34
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035・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シ多數
諸君ノ質疑ノ通告ガアリマス、順次是ヨリ
許可致シマス-中原德太郞君
〔中原德太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=35
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036・中原徳太郎
○中原德太郞君 只今議題トナリマシタル
所ノ藥劑師法竝ニ藥品法ニ關シマシテ、私
ハ政府ニ對シテ二三ノ條項ニ付テ御質問ヲ
致シタイト思フノデアリマス、本來藥學ノ
進步發達、藥劑師ノ地位ノ向上ト云フコト
ニ對シマシテハ、吾々ハ常ニ之ヲ唱道シテ
居リマスル者デアリマス、現ニ四十六議會
ニ於キマシテ、議員河上哲太君外數十名ノ
方々ガ提案者トナリ、私モ之ニ賛成ヲ致シ
マシテ、藥劑師法制定ニ關スル建議案ナル
モノガ本議場ヲ滿場一致ヲ以テ通過シタコ
トガアルノデアリマス、併ナガラ此藥劑師
法ト申シマスルト、單ニ藥劑師ノ身分法ノ
如ク聞エマスルケレドモ、此法案ニ依リマ
シテ他ニ及ボシマスル所ノ影響ト云フコト
ハ深ク考慮センケレバナラヌコトヽ信ジ
マス、殊ニ只今上程サレマシタル所ノ藥劑
師法及藥品法ナルモノハ不可分ノ法案ト
致シマシテ提出サレタノデアリマス、此藥劑
師ナル者ノ職務ハ申ス迄モナク第一ハ製藥
デアリマス、藥劑師ノ本職ハ製藥デス、抑〓
藥品ノ調劑販賣ノ如キモノハ藥劑師ト致
シマシテモ申セバ枝葉末節ニ屬スルコトデ
アルト私ハ考ヘテ居リマス、而シテ此藥劑
師ノ職務ハ-殊ニ調劑ニ從事致シマスル
所ノ藥劑師ノ職務ハ常ニ醫師ト密接ナル
關係ヲ有シテ居ルソデアリマシテ、醫師並
ニ藥劑師ノ關係ト申シマスルモノハ、恰モ
車ノ兩輪ノ如キモノデアリマシテ、御互ニ
相扶ケ相俟→テ國民保健ノ上ニ貢獻スルコ
トニ努力センケレバナラヌコトヽ私ハ信ジ
テ居ウマス、私ハ此法案ニ對シマシテハ前
ニ申述べマシタル如ク深キ賛意ヲ表シ、又
藥劑師ニ向シテハ深キ同情ヲ有シテ居リマ
スル者デアリマス、併ナガラ此法案ニ依リ
マシテ國民ノ蒙リマスル影響ト云フコトニ
付テハ、深キ考〓ヲ要スルコトヽ確信ヲ致
シマス、今回提案サレマシタル此兩案ハ
先以テ政府ハ政府ノ醫事衞生ニ關スル最高
諮詢機關デアリマスル所ノ中央衞生會ニ諮
詢ヲサレマシテ、其中央衞生會ノ議決ヲ根
據トシテ、政府案トシテ提出サレタノデア
リマス、併ナガラ此法案ノ內容ヲ見マスル
1、甚ダ不滿足ナル點ガアリマス、又甚ダ
杜撰ナル點ガアルト思ヒマス、殊ニ中央衞
生會ノ內情ヲ能ク承知シテ居リマスル所ノ
私カラ見マスルナレバ此法案ヲ議定致シ
マスルノニ向ッテハ、其間ニ種々ナル事柄ガ
起ノテ居リマス、例ヘバ政府ノ原案ト云フ
モノガ始メアリマシテ、ソレガ途中デ修正
ノ案ガ出マシテ、終ニハ此原案モ修正案モ
撤廢シテ、急遽作上ゲラレマシタル所ノ卽
チ此原案、只今ノ案デス、此案ノ條項ニ依リ
マシテ滿場一致ヲ以テ可決シタト云フヤウ
ナ有樣デアリマス、ソレハ三月五日ノ日デ
アリマス、最後ノ解決ハ-面シテ今日是
ガ議場ニ出タ、今ヤ議會ハ正ニ閉會ニ迫ノ
テ居リマス、此問題ハ國民保健ノ上カラ最
モ重要ナ問題デアル、斯ノ如キ問題ヲ而モ
斯ノ如キ不徹底ナル成立ノ下ニ、政府ガ此
場合ニ提出サレルト云フコトハ-何故ニ
急イデ斯ウ云フモノヲ出サレルカト云フコ
トニ向ッテ、私ハ一點ノ疑ヲ挾マナケレバ
ナラヌノデアリマス、先以テ其點ニ向。シテ
政府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマ
ス、由來國民ノ保健ト云フコトニ對シマ
シテハ、今日ハ滿場ノ諸君ノ如キ所謂政治
家、學者、一般ノ國民ガ非常ニ今日自覺ヲ致
シマシテ、現ニ政黨關係カラ申シマスルナ
レバ、私ノ屬シテ居リマスルル息政會ニ於キ
マシテハ、一昨年ノ四十七議會ノ當初ニ當
リマシテ、政鋼政策ヲ天トニ發表スルニ當
リマシテ、其中ニ保健政策ナルモノヲ加へ
テ居リマス、又政友會ニ於キマシテハ、私
ハ新間紙デ見タノデアリマスガ、其後政務
調査曾總會ニ於キマシテ此保健衞生ト云フ
コトヲ加ヘテ居リマス、革新倶樂部ニ於キ
マシテハ其政策ノ中、特ニ農村衛生ト云フ
コトヲ加ヘテ居ラレマス、又本黨ニ屬シテ
居ラレマスルカ詳シクハ存ジマセヌガ、本
黨側ノ時ノ內務大臣デアリマシタル所ノ水
野内務大臣、此方ハ地方官ヲ招集サレマシ
テ演說ヲサレマスル-地方長官會議ノ席
上ニ於テ時ノ水野內務大臣ハ、保健衞生ノ
大切デアルト云フコトヲ縷說サレテ居ラレ
マス、我國議會開會以來、議場ニ於テ施政方
針ヲ總理大臣ガ述ベル時ニ當リマシテ、未
ダ此保健政策ニ觸レタ大臣ハアリマセヌ、
御水知ノ如ク亞米利加ニ於キマシテハ議會
ノ開會ノ當初ニ當リマシテ、大統領ハ〓書
ヲ發シテ此保健衞生ノ事ニ付テ論議サレマ
ス、又英國議會ニ於キマシテハ總理大臣
ハ必ズ施政方針ノ時ニ保健政策ヲ御述ベニ
ナリマス、我國ニ於キマシテハ、兎モ角モ議
會ニ於キマシテ施政方針中ニハ之ヲ發表シ
夕人ハアリマセヌガ、先以テ地方長官會議
ニ於テサヘモ是マデハ無カッタ、衞生局長
位ガ事務ノ打合ト云フヤウナ場合ニ於テ述
ベル位デアリマシテ、國務大臣トシテ保健
政策ヲ述ベタ人ハ無カタ、ソレヲ水野君
ガ地方長官會議ニ於テ初メテ述ベラレタ、
私ハ此點ニ向シテハ水野君ノヤラレタコト
ヲ非常ニ多トシテ居ル者デアリマス、斯ノ
如ク致シマシテ各政黨ニ於キマシテハ國
民保健ト云フコトニ一致シテ考ヲ有シ、又
政治家ハ悉ク此國民ノ保健ト云フコトニ
向シテ重キヲ置イテ居リマス、然ルニ今世
界ノ保健狀態ヲ見マスルト、今ヤ衞生事業
ト申シマスルモノハ、國際的協力ニ依シテ
之ヲ行フト云フコトニナッテ居ルノデアリ
マシテ、先ヅ世界ノ人類ノ數ハ約二十億デ
アリマス、而シテ其中デ少クトモ七千万人、
日本國ノ國民ト同ジダケノ數デス、其七千
万人ハ絕エズ病氣ニ罹ッテ居リマス、年々
其中カラ三千五百万人死ヌノデアリマス、
其三千五百万人ノ死亡者ノ中デ、少クトモ
九百乃人ハ醫療竝ニ手當次第デハ十分ニ其
死期ヲ延シ得ル者デアリマス、又病人ノ七
千万人ノ中デ、二千八百万人ハ罹ラナクテ
モ濟ム病氣ニ罹テ居ルト云フコトハ事實
デアリマス、斯ノ如キ事實カラ申シマシテ
モ、醫療手當不十分ノ爲ニ死ンデ居ル入ガ、
只今申シマシタ如ク、病氣ニ罹クタ者ノ中
デ約四割ト云フモノハ不完全ナル手當ノ
下ニ死ンデ居ル、是ハ人道ノ上カラ申上ゲ
マシテモ、非常ニ重大ナル事項デアルト私
ハ考ヘテ居ル、我國ニ於テモ年々千人ノ中
カラ二十人ノ死亡率ヲ有シテ居リマス、此
二十人ノ中ノ四割ト云フモノハ、詰リ醫者
ニ掛ッテ適當ナ治療ヲ受ケレバ治ルト云フ
病人ガ死ンデ居ルト云フコトガ現代ノ實情
デアリマス、此時ニ當リマシテ此提案ヲサ
レマシタ藥劑師法竝ニ藥品法ナルモノニ依
リマスルト、醫者ノ診察ヲ受ケズシテ樂劑
師ニ行ッテ藥ヲ調劑シテ貰ッテ、ソレヲ用ユ
ルコトガ出來ルト云フコトニナルノデアリ
やく、是ハ私ハ手療治獎勵ト云フ法律デア
ルヤウニ思ヒマス、手療治奬勵ト云フコト
ハ只今中述べマシタ如ク人道上極メテ重要
ナル問題デアリマシテ、唯、是ハ便利デア
ルト云フコトニ口ヲ藉リテ、此問題ヲ解決
セント欲シマスコトハ誤シテ居ルコトデア
ルト私ハ信ジマス、卽チ如何ナル人ガ病氣ニ
罹リマシテモ、先以テ醫者ニ診テ貰ッテ、而シ
テ適當ナル樂ヲ用ユル、例ヘバ病氣ト申シマ
スモノハ、一ツノ病氣ニ罹リマシテモ、其病
ノ時期ニ依リマシテ治療法が違シテ居リマス、
藥劑師ハ調劑ニ向ッテハ專門家デアリマス
ケレドモ、患者ヲ診察スル能力ハ無イノデ
アリマスカラ、其能力ガ無イ藥劑師カラ病
人ガ藥ヲ調劑シテ貰シテ、何時マデモソレ
ヲ飮ンデ居ルト云フコトニナレバ、其病人
ハ詰リ手遲レニナラヌデモ宜イ病人ガ手遲
レニナリ、死ナヌデモ宜イ病人ガ死マト云
フ結果ニナリマスコトハ明ナ事デアルト私
ハ信ズルノデアリマス、殊ニ醫師法ノ第五
條ニハ「醫師ハ自ラ診察セスシテ診斷書處
方箋ヲ交付シ若ハ治療ヲ爲シ又ハ儉案セス
シテ檢案書若ハ死產證書ヲ交付スルコトヲ
得ス」云々ト云フ條項ガアリマス、醫者サ
ヘモ患者ヲ診察セズシテ容態ヲ聞イタダケ
デハ投藥ヲシテハナラヌト云フコトヲ法律
デハ定メラレテ居ル、然ルニ此度出來マス
所ノ藥劑師法竝ニ藥品法ニ依リマスト、診
察ドコロデハナイ、唯、素人ガ申込ンデ、
藥劑師カラ藥ヲ調劑シテ貰ヘルト云フコト
ニナルノデアリマスカラ、私ハ此醫師法第
五條ガ存在シテ居リマスル間ニ於テハ、其
間ニ於キマシテ極メテ矛盾ガアルト私ハ考
ヘル者デアリマス、斯ノ如キ譯デアリマス
カラ、此法案ヲ作リマスコトニ向ッテハ、深
キ考慮ヲ拂ヒ、慎重審議ヲシタ上デ提案ス
ルコトガ正當ト思ヒマス、此問題ハ決シテ
藥劑師竝ニ醫者ノ間ニ起ルベキ問題デハア
リマセヌ、然ルニ今ヤ天下五万ノ醫者ガ皆
自分ノ業務ヲ棄テヽ東京ニ集リ、是ノ反對
運動ヲスル、又天下一万五千ノ藥劑師ハ或
ハ數百名ノ婦人ヲ伴レテマデモ東京ニ來
テ、サウシテ此藥劑師法案ノ通過ヲ圖ル、
藥劑師竝ニ醫者ノ間ニ於テ爭鬪ガ起ッテ居
リマスコトハ私ハ國家ノ爲ニ之ヲ悲ム者
デアリマス、是ハ國民ノ要求ニ依ッテ始メ
テ解決スベキ問題デアリマシテ、固ヨリ此
所謂手療治ナルモノハ外國ニ於テモ行ッテ
居ル所モアリマス、例ヘバ英國ノ如キハ此
混合販賣ナルモノヲ許シテ居リマス、獨
逸ニ於キマシテモ許シテ居リマス、併ナガ
ラ何レモソレニ困シテ居リマス所モアル、
彼ノ獨逸ノ如キハ卽チ「クールプッセル」、例
ヘバ此井醫公認法案ト云フモノヲ作リマシ
タ、是ハ鐵血宰相「ビスマルク」ガ、自分ノ政
敵デアリマス醫者出身ノ「ウキルヒヨウ」此
者ニ向ッテ深ク反對ヲシ、何時デモ「ウヰル
ヒヨウ」ト「ビスマルクノ」間ニ爭鬪ガ絕エズ、
又遂ニハ決闘マデモ兩方デシタコトガアリ
マス、此「ビスマルク」ノ政策ト致シマシテ、
政敵「ウヰルヒヨウ」ヲ倒スノニハ、ドウシ
テモ此「ウヰルヒヨウ」ヲシテ醫仲間カラ
信用ヲ失ハシメルコトガ最モ必要デアルト
云フコトヲ考ヘマシテ、サウシテ醫者ガ悉ク
反對ヲシテ居リマス所ノ此「クールプッセ
ル」法案ヲ政府ガ提出致シマシテ、議會ハ
多數ヲ以テ通過シタノデアリマス、美味
ト致シマシテ、「ウキルヒヨウ」ハ爾來再ビ
衆議院ニ席ヲ有スルコトガ出來ナイコトニ
ナッタノデアリマス、卽チ「ピスマルク」ハ
「ウヰルヒヨウ」ヲ倒スト云フ政策ハ圖ニ
當ッタノデアリマスゲレドモ、「クールプッセ
ル」ノ法律ハ今尙ホ獨逸ニ現存シテ居リマ
シテ、最モ科學的ニ進步シ、又醫學ニ於キ
マシテモ最モ進歩シテ居リマス獨逸國民ハ、
此法律ノ存在ニ依リマシテ今ヤ非常ニ苦ン
デ居リマスコトハ事實デアリマス、斯ノ如
ク致シマシテ、人類ノ全體ニ關係ヲ致シマ
ス問題、殊ニ最モ大切デアリマス所ノ國民
保健ニ關係致シマス法案ノ如キハ、極メテ
公平ニ、例ヘバ政黨政派ノ如何ヲ論セズ極
メテ公平ニ、卽チ國民ト致シマシテ協力一
致シテ之ヲ〓究シテ、サウシテ之ヲ實行ス
ルト云フコトニ向シテ努力致シマスコトガ、
私ハ當然デアルト信ズルノデアリマス、私
ハ今日ハ與黨ノ一人ト致シマシテ、政府案
ニ向ッテ之ニ賛成ヲ致シマスルコトガ當然
デハアリマスケレドモ、私ハ自分ノ疑シテ
居リマス點ニ向ッテハ、政府ニ向ノテ懇篤ナ
ル御說明ヲ仰グト云フコトハ是亦政府ヲ
支持致シマス與黨トシテ當然ノ責任デアル
ト確信スル者デアリマス、モウ一ツ御尋致
シマス事項ハ、此案ノ出マシタ所ノ順序、
卽チ政府ノ最高諮詢機關デアリマス、彼ノ
中央衞生會ノ事柄デアリマス、中央衞生會
ト申シマスモノハ其委員ニハ官吏モアリ
やっ、又醫師ヲ代表シテ居リマス人モアリ
マっ、又藥劑師側ヲ代表シテ居リマス人モ
アリマス、サウ云フ人〓ガ集ンテ、政府ニ對
シマス最高諮詢機關トシテ存シテ居ルノデ
アリマス、然ルニ此内容ハ固ヨリ是ハ祕密
デアリマシテ、新聞紙若クハ官報ニ依シテ
公表ハ致シマセヌ、併ナガラ其内容ニ付キ
マシテ、日本醫師會ナル名前ヲ以テ天下ニ
發表シテ居リマス、私ハ是ハドウシテモ重
要ナル事項デアリマスカラ之ヲ朗讀致シマ
ス、前略「三月五日招集ノ中央衞生會總會
ニハ中央衛生會長北里男爵以下三十名出
席、二名缺席、特別委員會ニ於テ査定セル
修正意見ノ報告ニ次デ、栗本委員ヨリ委員
會ノ經過ニ關スル詳細ナル補足的說明有之、
斯テ土肥慶藏博士ヨリ藥品法第十條ヲ削除
スベシトノ意見陳述アリ、二宅秀博士、金杉
英五郞博士、北島多一博士、栗本庸勝氏、平
野勇氏(海軍省醫務局長)其他ノ賛成アリ、次
デ栗本氏ハ所謂栗本案ナルモノヲ特別委員
會ニ於テ提言セル刹郡ノ實情ヲ陳ベテ、原案
竝ニ長岡案ヲ否認スルノ意見ヲ表明シ、結
局土肥博士ノ削除說、栗本委員ノ修正說、
長岡委員ノ修正說及長與博士ノ再調査說ニ
就テ、順次採決スルコトニ相成リ、先ヅ土
肥說十二票ヲ得テ二三票ヲ輸シ、次デ栗本
案ニ就テ採決セムトスルヤ、山田衞生局長
ハ曩ニ特別委員會ニ於テ自ラ同意ヲ與ヘ、
中濱委員長ノ一票ニ依リ辛ウジテ成立セシ
メ得タル長岡案ナルモノヲ一排シ、栗本案
ニ同意スル旨ヲ述べ、斯テ愈〓起立ヲ以テ
採決スルヤ、長圖案ノ提出者タル長岡氏一
人ノミ起立セズ、意外ニモ栗本案ナルモノ
大多數ヲ占メ、其他ハ自然消滅ニ歸シ候、
此時長岡案ノ支持者クルベキ藥學系委員
ガ、全部山田衞生局長ト同樣栗本案ニ贊成
致候等、萬事不可解ナル點多ク、之ニ關シ
種々ナル揣摩臆測行ハレ居リ候ガ、議事ノ
經過ニ徵スルニ、結局當局ノ豹變付度スベ
カラザルモ、蓋シ議會提案期ニ氣構ヘタル
結果、紊ニ栗本案ナルモノヲ以テ本會ノ意
圖ニ出デタル一種ノ妥協案ナルガ如ク誤信
シ、之ヲ容ルヽコトニ依リテ活路ヲ見出サ
ムトセルモノカト被存候ガ、斯ノ如キ變態
的經過ノ下ニ變態的成立ヲ遂ゲ候、栗本案
ナルモノニ就テハ當日何等ノ質問應答モ行
フ遑ナク、咄嗟ノ間ニ進行セル結果、今日
ニ於テハ當局モ自ラ誤斷ナリシヲ覺ルト共
ニ、其内容其者ニ就テモ正確ナル觀念ヲ捉
ヘズシテ、途方ニ暮レ居ルトノ事ニ御座候、
中央衞生會長ニシテ偶〓本會會長タル北里
男爵會長ハ勿論表決ニ加ラズ、會議ノ席上
極力土肥博士ノ原案削除說ヲ支持シテ止マ
ザリシ金杉北島雨博士ガ、前來ノ主張ニ係
ル削除說不幸ニモ成立セザル結果、栗本案
ニ起立セルハ一時ノ次善案トシテ之ヲ認
ノ、少クトモ原案竝ニ長岡案其モノヽ成立
ヲ妨グル意味ニ出デタルモノニ有之、何等
積極的ニ之ガ成立ヲ熱望セル次第ニ無之モ
ノト相信ジ申候、本會トシテハ前來決議ノ
精神ニ則リ、原案ハ勿論如何ナル形式ニ於
デスル修正案モ凡テ容認セザルモノニシ
テ、殊ニ栗本案ノ如キハ議事ノ推移ノ所產、
彼我權略ノ犠牲ニ過ギザルモノニシテ、何
等豫メ妥協等ノコト無之バ如上ノ經濟ニヨ
リテモ、幸ニ御高察ヲ賜ハリ得ル儀ト相信
ジ申候得共、此際爲念御明鑑ヲ賜リ度云々」
斯ウ云フコトヲ日本醫師會-日本醫師會
ハ卽チ法律ガ命ジテ居リマスル法定醫師會
デアリマス、此法定醫師會ニ依ッテ發表シ
テ居リマス、此事實カラ考ヘマスルト云フ
ト、政府ガ最高諮詢トシテ居リマスル中央
衞生會ト云フモノハ極メテオカシナモノ
デアルト私ハ思フノデアリマス、況ンヤ中
央衞生會ノ中ニハ日本醫師會ノ會長モ居リ
マスルシ、又日本醫師會幹部ノ人ニモ中
央醫師會ノ委員ニアリマス、其外ニ日本醫
師會ノ會員ノ人モ大勢居リマス、其一面ニ
於テハ成程中央衞生會員デアリ、一面ニ於
テハ資格ノ變シタ日本醫師會ノ會員デアル
ト云フコトニ依シテ資格ヲ二ツニ分ケルコ
トハ出來マセウケレドモ、其人ハ同ジ人デ
アル、例ヘバ北里博士ハ中央衞生會長デア
リマシテ、一方ニハ日本醫師會ノ會長デア
ル、此人ハ同ジ人デアル、中央衞生會ノ會
長トシテハ之ニ贊成シ、日本醫師會長トシ
シテハ之ニ反對スル、況ヤ其内情ヲ斯ノ如
ク明ニ中述べシテ其實情ヲ-實情デア
ルカドウカ知レマセヌガ、其内情ヲ天下ニ
公表シテ、之ヲ以テ藥品法ノ第十條撤廢ノ
理由トシテ居ル、私ハ此中央衞生會ノ今囘
ノ事蹟カラ考ヘマシテ、政府ハ斯ノ如キ信
賴スルニ堪ヘザル所ノ中央衞生會ヲ、今後
ニ於キマシテモ存置シテ置クト云フ必要ヲ
認メラレテ居ラルヽヤ否ヤト云フコトヲ私
ハ承リタイ、又之ニ屬シマスル所ノ人ニ
ガ、二重人格ヲ現ハシ、內ニ在ッテハ賛成
シ、外ニ在ッテハ反對スル、オマケニ甚シ
キニ至ッテハ彼我權略ノ犠牲ニ過ギザル云
云ト云フヤウナ、極メテ不穩當ナル言辭ヲ
弄シ、而シテ自己等ガ此中央衞生會總會ニ於
キマシテ、所謂起立シテ其結果滿場一致ヲ
以テ通過シタル案ヲ、他ノ場合ニ於テ葬ラン
トスルト云フヤウナ策ニ出タルニ至ッテハ、
中央衞生會ノ言議ト云フモノハ、何等信ズ
ルニ至ラザルモノデアル、サウ云フ人ミヲ網
羅シテ中央衞生會ナル立派ナ機關、最モ此
保健衞生ニ對シマシテハ最高諮詢機關ヲ存
置スルコトハ政府ハ如何ナル趣意ヲ以テ
之ヲ存置シテ居ルノデアルカ、少クトモ之
ヲ廢メルカ、若クハ大改造ヲスルト云フコ
トハ差迫シテ居ル所ノ政府ノ任務デアルト
確信スル者デアリマス(ヒヤ〓〓)斯ノ如ク
矛盾撞著ナル事實ヲ一方ニハシテ居リ、
一方ニ於テハ藥劑師側ハ是ガ通過ヲ圖リ、
醫師側ハ之ニ反對スル、私ハ自分ガ醫者デ
アリマス、醫者デアリマスケレドモ、若モ
此問題ガ其結果醫者ノ不利益ニナリマシテ
モ、或ハ樂劑師ノ不利益ニナリマシテモ、
私ハ眼中ニシンナ事ハ考ヘテ居リマセヌ、
私ハ一ニ此問題ノ解決如何ニ依ッテ所謂國
利民福ヲ圖ル得ルモノデアリマスナラバ
一身ヲ犧牲ニ供シマシテモ之ニ贊同ヲ致シ
マスコトニ向ノテ躊躇致シマセヌ(拍手)然
ルニ此法案ナルモノハ只今申シマシタヤウ
ナ實情ニ依リマシテ今日提案サレタノデア
リマシテ、又中央衞生會ノ事ハ只今申上ゲ
マシタ通リデアリマスガ、政府當局者ニ於
キマシテモ、特別委員會ニ於キマシテ政府
ガ出シマシタ案、極メテ簡單デアリマスカ
ラ、モウ一遍讀マシテ戴キマス、政府原案
「毒藥劇藥ニ非サル藥口叩ハ藥劑師タル藥品
營業者ニ限リ相手方ノ指示スル藥品ノ種類
分量ニ從ヒ調査シテ之ヲ販賣又ハ授與スル
コトヲ得」是ガ政府ノ原案デアリマス、是
ガ中央衞生會ニ付議サレマシテ、特別委員
會ニ於テ修正サレマシタモノハ「毒藥及劇
藥ニ非サル藥品ハ藥劑師タル藥品營業者ニ
限リ相手方ノ提出スル書面ノ記載ニ從ヒ、
配合シテ之ヲ販賣又ハ一授與スルコトヲ得、
内務大臣ハ前項ノ規定ニ拘ラズ藥局法ニ記
載セサル藥品ニ付前項ノ販賣又ハ授與ヲ禁
止若ハ制限スルコトヲ得第一項ノ書面ハ
其日附ヨリ三年間之ヲ保存スヘシ」是ガ特
別委員會ノ所謂長岡業ナルモノトシテ出マ
シテ、四票ニ對スル五票ノ差ヲ以テ是ガ可
決致シマシタ、是ガ卽チ本月五日ノ中央衞
生會ノ本會議ニ上リマシテ、其結果只今申
上ゲマシタヤウナ事情ニ依リマシテ、藥劑
師タル藥品營業者ハ命令ヲ以テ指定スル配
合劑ヲ販賣又ハ授與スルヲ得ト云フコトニ
直シタ、是ガ只今提案サレマシタル原案デ
アリマス、政府ハ僅カ十數日カ、二週間カ
三週間ノ間ニ、其所信ヲ二遍モ三遍モ取替
ヘルト云フコトハ、私ハ此點ニ向クテハ政
府ノ本案ニ對スル確信ガ甚ダ乏シカッタト
云フコトヲ斷言シテモ差支ナイモノト思フ
者デアリマス(拍手)要スルニ斯ノ如キ確信
ノ無イ案ヲ、今ニ差迫。テ此處ニ提出スル
ト云フコトハ果シテ何ノ理由デアルカ、而
シテ此最モ今日爭ニナッテ居リマス藥品法第
十條ノ眼目デアリマスル所ノ、命令ヲ以テ
指定スル配合劑ヲ販賣又ハ授與スルコトヲ
得ト云フコトガアリマスガ、命令ヲ以テ指
定スル配合劑ト云フモノハ抑〓如何ナルモノ
ヲ許スノデアリマスカ是ハ私ハ此席ニ於
テ-委員會デハ無論詳シク承リマスルケ
レドモ、是ハ出來テ居リマスカ、命令ノ範
圍ハ既ニ確定シテ居ルノデアリマスカ、若
モ確定シテ居ナイモノト致シマスレバ斯
ンナ法案ガ出來マシテモ何ノ意義モナイ、
藥劑師ハ却テ迷惑ヲスルカモ知レナイ、何
ノ效能モ無イ、又指定スル命令ノ範圍ガ定
ラヌケレバ、假令此法案ガ通過致シタト假
定致シテモ、何等得ル所ハナイノデアリマ
スカラ、政府ガ本法案ヲ慌テヽ通過セシム
ルト云フ必要ハ那邊ニ在ルノデアルカ、是
ハ事實上命令ノ範圍ノ定ノテ居ナイト云フ
コトハ明デアルト思フ、固ヨリ命令ノ範圍
ヲ定メント欲スルナラバ省令デアリマス
カ、勅令デアリマスカ、免モ角モ此最高諮
詢機關タル中央衞生會ノ議ニ付シテ、サウ
シテ之ヲ定ムベキモノデアルト確信ヲ致シ
マン、然ルニ少シモソレヲヤッテ居ラナイ
此案ガ急遽決定シタトスレバ、命令ノ範圍
ハ極ッテ居ルコトハ明デアル、是ハ政府ハ
此處ニ於テ發表出來ヌト思フ、然ラバ斯ノ
如キ内容ノ伴ハナイ所ノ不徹底ナルモノ
提案ニ努力致シマシタル中央衞生會ナルモ
ノハ、只今申シマシタ如ク寔ニ不都合千萬、
不埒千萬ナル分子ヲ以テ集メテ居リマスル
此中央衞生會ガ諮詢ニ應ジテ出來マシタル
此本案ト云フモノハドウ致シマシテモ
吾々國民ト致シマシテ之ニ滿足ノ意ヲ表ス
ルコトガ出來ナイト云フコトハ是ハ私ハ
滿場諸君一人モ反對ハ無イト断言スル者デ
アリマス、私ハ何卒政府ハ此點ニ向ッテ、所
謂國民衞生ト云フ點ニ向シテ深キ考慮ヲ拂
ハレマシテ、深甚ノ注意ヲ以テ、又只今御
尋ネ致シマシタル事柄ニ付キマシテ、御懇
篤ナル御說明ノアランコトヲ懇願致ス次第
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=36
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037・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 若槻内務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=37
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038・木戸豐吉
○木戶豐吉君 高等師範學校設置ニ關スル
委員會ヲ開キタイト思ヒマスカラ、御許シ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=38
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039・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=39
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040・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今此問題ニ
付テ最モ深キ知識ヲ持ッテ居ラルヽ所ノ中
原君カラ御質問ガアッタノデアリマスガ、
專門ノ御質問デアリマス故ニ、私ノ各〓或
ハ御滿足ニナラヌカモ知レマセヌケレド
モ、一通リ御答ヲ致スコトニ致シマス、中
原君ハ此重要ナル法案ヲ會期ノ切迫シタル
今日ニ提出シタノハドウ云フ譯デアルカ、
是ガ第一ノ御質問ノヤウデアリマス、如何
ニモ國民ノ衞生ニ大關係ノアル此法律案ヲ
會期剩ス所餘リ多クナイ時ニ提出致シマシ
タコトハ私モ甚ダ之ヲ遺憾トシテ居ルノ
デアリマス、實ハモット早ク十分御審議ノ
出來ル期間ノアル時ニ提出スル積リデアリ
マシタガ、斯ノ如ク國民ノ衞生ニ重大ナル
關係ノアル法案ハ、專門家ノ議ヲ十分經
テ、是ナラバ間違ナイト云フ所ニ至ッテ始
メテ提案スルノガ宜シイト思ヒマシタ爲
ニ、手續ヲ鄭重ニシテ、調査ヲ十分ニシテ
更ニ又其道ノ權威者ノ意見ヲ聽イテ始メテ
提出スルコトニ致シマシタ爲ニ、提出スル
時期ノ遲レタコトハ甚ダ遺憾デアリマシタ
ケレドモ、遲レタダケソレダケ政府ノ調査
ハ十分ナル手續ヲ經テ居ルト居フコトダケ
ハ御了水ヲ願ヒタイノデアリマス、保健街
生ハ各政黨ニ於テモ掌議トシテ決シテ居ル
所デアル、ソレダケ今日ハ政治家ノ重キヲ
置イテ居ル問題デアル、而シテ今日ハ十分
ナル醫治ヲ經ズシテ死亡シタル者ガ割合ニ
多イヤウナトキニ、此法律案ヲ提出シタノ
ハドゥ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ御質問デ
アリマス、其御質問ハ主トシテ藥品法ノ第
十條ニ關係シタ御質問デアルヤウニ伺フノ
デアリマス、中原君モ御質問ノ當初ニ於
テ、醫師ト藥劑師ハ國家ノ保健ノ上ニ協力
シテ進ムベキモノデアル、此協力ニ依ッテ
保健衞生ナルモノガ全ウセラルヽト仰セニ
ナッテ、藥劑師ノ身分地位ヲ向上セシメ、
又其團體ニ相當ナル法人資格ヲ認メテ其
意見ヲ發表シ、其他ノ行動ヲ爲スニ便宜ヲ
與ヘシメルコトニ付テハ、中原君モ御同情
デアノタヤウデアリマスカラ、ソレデアリ
マスト云フト、藥劑師法ニ付テハ中原君ニ
モ聊カノ御異論ガ無イヤウニ私ハ伺シタノ
デアリマス、主トシテ御懸念ニナッテ居ル
點ハ藥品法中ノ唯〓第十條ダケノヤウニ
伺ッタノデアリマス、而シテ其十條ナルモ
ノハ、今日ノ如キ死亡率ノ多イトキニ之ヲ
提出スルト云フコトハ宜クナイデハナイ
カ、斯ノ如キ法律ヲ制定スルト云フト、手
療治ヲ奬勵スルヤウナコトニ相成ル虞ハナ
イカト云フノガ中原君ノ御心配デアッタヤ
ウデアリマス、政府ハ手療治ハ決シテ獎勵
ハ致シマセヌ、手療治ヲ獎勵致シマセヌノ
ミナラズ
〔小泉副議長議長席ヲ退キ粕谷議長復
席
疾病ニ罹リマシタル者ニ對シテハ一日モ
早ク完全ナル醫師ノ治療ヲ受ケシメルコト
ヲ希望シテ居ルノデアリマス、又受クルヤ
ウニ全力ヲ盡シテ奬勵シタイト考ヘテ居ル
ノデアリマス、併シ世間ニハ或ハ邊鄙ノ爲
デアッタリ、或ハ貧困ノ爲デアッタリ、又或
ハ其他ノ事情ノ爲デアッタリ、種々ナル事
情デ醫治ヲ受クルコトガ容易ニ出來ナイ場
合ノアルノガ事實デアリマス、是ハ左樣ノ
事ノナイヤウニ致シタイノデアリマスガ、
事實ハサウ云フ場合ノアルコトハ免レヌノ
デアリマス、此場合ニ於テ手療治ヲスルト
云フコトガ、已ムヲ得ザル社會事實トシテ
之ヲ承認セナケレバナラヌノデアリマス、
左樣ナ次第デアリマシテ、政府ハ手療治ヲ
決シテ奬勵ハ致シマセマ、成ベク速ニ醫師
ノ完全ナル治療ヲ求ムルヤウニサセタイノ
デアリマスガ、併ナガラ已ムヲ得ザル事實
トシテ手療治ノ存在ガアリマス以上ハ其
手療治ノ爲ニ幾ラカ便宜トナルコトヲ制定
スルコトモ、是モ亦已ムヲ得ナイノデアリ
マス、手療治ノ種類トシテハ、或ル場合ニ
ハ神佛ニ對シテ祈禱ヲシ、祈願ヲスル、或
ハ電氣療法ヲ企テルトカ、其他色々アリマ
セウケレドモ、最モ著シイモノハ賣藥、買
藥デアラウト思ヒマス、卽チ樂品法ノ第十條
ハ所謂買藥ト云フモノニ關係シタ法規デア
リマシテ、左樣ナ事ハ固ヨリ獎勵ハ致シマ
セヌ、成ベク醫師ニ掛ッテ、醫者ノ診斷ニ
依シテ、其處方ニ依ノテ療治ヲスルコトヲ切
ニ望ムノデアリマスケレドモ、ソレモ尙ホ
出來ナイヤウナ者ガ手療治ヲスル場合ハ已
ムヲ得ナイトシテ、若干其便宜ヲ圖ラナケ
レバナラヌ、斯ウ云フ意味デアルノデアリ
やっ、中原君ノ御質問ノ中ニハ醫師デア
レバ診察ヲセズシテ投藥スレバ罰セラレ
ル然ルニ藥劑師ガ買手ノ希望ニ依ッテ配
合劑ヲ與ヘルト云フコトハソレハ矛盾デ
アルト云フヤウナ御意見デアリマシタガ、
第十條ハ藥劑師ガ自分ノ見計ヒデ配合劑ヲ
スルノデハアリマセヌノデ、依賴者カラ是
レ是レト言ハレテ、唯〓ソレダケノ物ヲ配合
スルノデアリマスノデ、醫師ガ診察ヲセズ
シテ投藥致ス場合ニ罰セラレルコトヽハ
矛盾ガ無イヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
ス第十條ヲ如何ニシテ實行スルカ、政府
ニ其成案ガ出來テ居ルカ否ヤ、是ハ中原君
ノ仰セニナリマス通リ、マダ命令デ規定ス
ベキ詳細ノ規定ハ出來テ居リマセヌケレド
モ、此規定ヲ致シマス時ニハ專門家ノ意見
ヲ徴シマシテ、詳細ナル規定ヲスル見込デ
アリマシテ、何藥何程ト何藥何程トノ配合
劑ナラバ宜シイト云フヤウニ、藥品ノ品目
ノミナラズ、配合スベキ分量モ定メマシタ
リ、或ハ藥品ノ種類ヲ列擧シテ、是レ々々
ダケハ配合シタ藥ハ賣ッテモ宜シイト云フ
ヤウニ、命令デ規定スル積リデアリマス
ガ、是ハ醫師ノ意見モ十分ニ聽カナケレバ
ナリマセヌ、藥劑師ノ意見モ聽カナケレバ
ナリマセヌ、又衞生行政ニ從事シテ居ル者
ノ意見モ聽カナケレバナリマセヌ、ソレ等
ノ意見ヲ聽イテ政府ハ愼重ニ議ヲ盡シ、然
ル後中央衞生會ノ議ニ掛ケテ、十分ナル專
門家ノ批評竝ニ決議ニ依テ始メテ之ヲ定
ムル考デアリマシテ、決シテ輕卒ナル事ハ
致サナイ積リデアリマス、最後ニ御尋ニナ
リマシタ中央衞生會ノ經過ノコト、竝二中
央衞生會員デアリナガラ、外ノ法人ノ一員
トシテハ中央衞生會ニ於テ發表シタ意見ト
異ノタル意見ヲ發表シテ居ル、ソレカラ推定
スルト云フト、中央衞生會ノ價値ナルモノ
ガ少シク疑ハレルノデ、其議ヲ經タト云フ
ノダケデハ安心ガ出來ヌト云フヤウナ意味
ノ御質問ガアンタノデアリマスガ、中央衞
生會ニハ醫學ノ方面ニ於テモ、藥劑ノ方面
ニ於テモ、其道ノ専門家ガ集合シテ居ラル
ルノデアリマシテ、私共ハ今日保健衞生ノ
事ニ付テハ兎ニ角此權威者ノ意見ヲ尊重ス
ルノ外他ニ方法ハ無イヤウニ思ヒマス、但
シ實ハ私ハ今日ハ議會ノ用事ガ多イ爲ニ、
此度ノ中央衞生會ニハ出席スルコトガ出來
ナンダノデアリマスルカラ、經過ノ詳シイ
事ニ付テ御質問ガアリマスナラバ、是ハ政
府委員ノ方カラ御答辯ヲ申上ゲルヤウニ致
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=40
-
041・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤鐐五郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=41
-
042・中原徳太郎
○中原德太郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 中原君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=43
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044・中原徳太郎
○中原德太郞君 今ノ續キデスカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=44
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045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤君一寸御待下サ
イ、中原德太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=45
-
046・中原徳太郎
○中原德太郞君 只今ノ御答辯中、中央衞
生會ニ關シマシテハ是ハ極メテ重要デアル
ト私ハ感ジマス、此事ハ或ハ此議場デ祕密
會ニシテ戴キマシテ、內容ヲ詳シク伺ヒマ
シテ、ソレトモ他ノ場合ニ於テ更ニ此問題
ヲ-只今トハ申シマセヌガ、十分御調査
下サイマシテ、之ヲ七千万國民ニ向ッテ何
等カノ方法ヲ以テ公表セラレンコトヲ、私
ハ此機會ニ於テ懇願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=46
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047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤鐐五郞君
〔加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=47
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048・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 私ハ玆ニ數箇ノ質疑ヲ爲
スニ當リマシテ、豫メ政府及諸君ニ御諒承
ヲ願ヒタキ一事ガアルノデアリマス、卸チ
此藥品法案及藥劑師法案ハ、決シテ政黨政
派ノ問題デハナイノデアリマシテ、純乎夕
ル國民衞生、保健ニ關スル問題デアルノデ
アリマス、随テ私共ガ此問題ニ對シテ論議
シ、又政府ニ質疑ヲ致シマスルノハ、政黨
政派ノ立場ニ於テスルノデナクシテ、純乎
タル保健問題ニ向ッテ質疑致スノデアリマ
スルガ故ニ、政府ニ於カセラレマシテモ、
御答辯ノ場合ハ露骨ニ、正直ニ御答辯ヲ願
ヒタイノデゴザイマス、今一ツハ世間此問
題ヲ藥劑師對醫師間ノ爭ノ如ク誤解シ、若
クハ左樣ニ言觸ラシテ居ル者モアルノデゴ
ザイマスガ、是ハ藥劑師側ニ於キマシテモ
迷惑ヲ感ゼラレル事デアリマセウシ、醫者
ニ於キマシテモ迷惑ヲ感ズル事デアリマシ
テ、兩者保健衞生ノ上ニ於テ偶〓意見ヲ異ニミ
致シタルモノデアリマシテ、何レモ兩者ハ
保健衞生ノ立場ニ於テ論議スル事デアルノ
デアリマスガ故ニ、此點ヲ諸君ノ御諒承ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス、先ヅ第一ニ
私ハ御尋致シタイ事ハ藥劑師法案反藥品
法案ノ箇々ニ付テノ問題ハ姑ク措キマシ
テ、今囘論爭ノ中心トナリマシタル藥品法ノ
第十條、卽チ藥劑師デアル所ノ營業者ハ
命令ニ依シテ指定サレタル配合劑ヲ賣リ、
若クハ授與スルコトヲ得ト云フ、卽チ內務
大臣ノ只今ノ御答辯ノ手療治ヲスルコトヲ
政府ガ之ヲ公許スルコトガ、保健衞生ノ上
ニ害アリヤ否ヤト云フ問題ガ骨子デアルノ
デアリマスガ故ニ、細カイ事ハ他ノ機會ニ
讓リマシテ、第十條ヲ特ニ加ヘラレタル所
ノ骨子理由、卽チ唯〓便宜デアルト云フヤ
ウナ御說モアッタノデアリマスガ、便宜ト
云フコトハドウ云フ意味デアルカ、藥ヲ唯、、
口ノ中ニ取ルト云フコトガ便宜デアルカ、
身體ヲ治スト云フコトノ便宜ト云フ意味デ
アルカ、此邊ガ不明瞭デアルノデアリマス
ガ故ニ、此邊ニ今少シク吾々ニ會得徹底ス
ルヤウニ御說明ヲ煩ハシタイト思フノデア
リマス、次ニ私ガ御專申上ゲル事ハ斯樣
ニ手療治ヲ政府ガ公許スルト云フコドハ
我國ノ醫事行政、從來執來ノタ所ノ根本ノ
方針ニ矛盾シ、背馳シ、モウ少シ聲ヲ大ニ
致シマスレバ、從來ノ根本方針ヲ破壞スル
コトニナリハシナイカト云フコトデアルノ
デアリマス、我國ハ御承知ノ如ク、醫學ハ
世界第一ニ發達致シテ居サマシテ、醫者ノ
數ニ於テモ相當普及サレテアルノデアリマ
ス、少シク餘談ニ涉ルヤウデアリマスガ、
我國ノ今日ノ醫學ノ進步ヲ致シマシタルコ
ーハ、明治初年ニ於ケル我國醫界ノ先輩ガ
非常ナル達識先見ノ致ス所デアリマシテ、
當時政府部內ニ於テ、我國ノ醫者ノ手本ヲ
英國ニ採ルカ、佛蘭西ニ採ルカ、卽チ英國
ハ當時權勢ヲ持クテ居リマシタガ爲ニ、迎
合ノ意味或ノ阿附ノ意味カラ申ジマスレ
パ我國ノ醫師ノ手本ハ英國ニ採ラナケレ
バナラナイノデアル、若夫レ總テノ情誼、
便宜、醫者ヲ日本ニ送ル便宜情誼ノ點ヨリ
致ジマスレバ、佛蘭西ニ之ヲ求メナケレバ
ナラヌノデアリマスガ、醫界ノ先輩ハ此廟
議ヲ排シテ獨逸ニ學ンデ、今日ノ隆盛ヲ致
シタノデアリマス、卽チ疾病ハ醫者ヲ主ニ
シテ、醫者ニ依ノテ治サナケレバナラヌ、
卽チ醫學ヲ非常ナ力ヲ以チマシテ奬勵致シ
マシテ、サウシテ醫者ヲ盛二養成スルト共
ニ、根本方針トシテハ治療ハ醫者以外ノ者
ニハサセナイ、所謂手療治ヲ禁ズルト云フ
方針デアリマス、苟モ藥ヲ與フル者ハ醫者
以外何人ニモ與ヘナイト云フ方針ヲ以テ今
日ニ來リ、斯ノ如キ隆盛ヲ致シ來ッタノデ
アリマシテ、國民保健ノ上ニ洵ニ慶質スペ
キ事デアルノデアリマスガ、唯、此間ニ於
テ醫師未ダ普及セザル時ニハ、已ムヲ得ズ
賣藥制度ナルモノヲ認メタノデアリマシタ
ガ、此賣藥制度ト云フモノハ已ムヲ得ザ
ル素人療治ノ最大限度デアルノデアリマ
ス只今貧困ノ者云々ト云フコトガアリマ
シタガ、貧困ニシテ治療ヲ講ジ得ザル人ノ
多イコトハ洵ニ氣ノ毒デアリマスガ、是一
賣藥制度ガチヤント在ルノデアリマス、用
法效力、總テガ記載シテ嚴密ナ試驗ヲ經
夕上ニ、賣樂ナルモノガ設ケラレテアル、
私ハ此場合序ニ御尋致スノデアリマスガ、
賣藥制度ナルモノモ、醫師が未ダ普及セザ
ル時ニ於テハ已ムヲ得ザル治療機關デアル
ノデアリマスガ、政府ハ今後モ此賣藥制度
ニ對シテ尙ホ之ヲ擴大スル意思ガアルカ、
或ハ現狀ノ儘ニ置クカ、若クハ醫師グ斯樣
ニ殖エタガ故ニ之ヲ縮小スルト云フ御考デ
モアルカ、併セテ是モ伺ヒタイノデアリマ
スガ、要スルニ折角醫師ガ增加シテ、國民
ガ醫師ニ依シテ治療ヲ講ゼラレル所ノ美風
ガ斯樣ニ盛ニナリ、サウシテ明治初年以來
此方針ヲ執ッテ來タノニ、益〓醫師ガ增加
スル此機會ニ於テ、逆ニ素人療法ヲ政府ガ
公許スルト云フコトハ此大方針ニ相反ス
ルモノデハナイカ、時代錯誤デハナイカト
云フノガ質問ノ要旨デアルノデアリマス、
次ニ私ガ御尋致シタイコトハ只今中原君
ヨリ御質問モアリマシタガ、醫師法第五條
ト對照シテ、政府ハ如何ナル所見ヲ有サル
ルカト云フノデアリマス、卽チ現行ノ醫師
法ニ依リマスレバ、醫者ハ自ラ診察スルニ
非ズンバ、之ニ投樂シ、藥ヲ盛リ、治療シ、
或ハ診斷書ヲ書キ、處方箋ヲ書キ、檢案セ
ズシテ檢案書ヲ書クコトハ出來ナイト云
7、此範圍ヲ狭少シテアルノデアリマス、
今シレ藥劑師ニ、之ヲ便宜ノ爲ニ素人療治
ヲ許スト云フナラバ、醫者ニ許サレタ方ガ
便宜デハアルマイカト思フ、何トナレバ醫
者ハ其數大約五万アッテ、藥劑師ハ大約只
今一万アル、若夫レ數ノ上、便宜ノ上ヨリ
申シマスレバ、五万ノ醫師ニ此手療治ヲ許
シタ方ガ便宜デハナイカ、又地理的ノ方面
ヨリ見マシテモ、五万ノ醫師ハ全國如何ナ
ル寒村僻地ニモ普クトハ申シマセヌガ、大
體ニ分布サレテ居ルノデアル、藥劑師ハ都
會ニ集中シテ村落ニ少イノデアル、藥ヲ取
ル方面カラノ地理的便宜ノ上カラ申シマシ
テモ、藥劑師ヨリモ醫師ニ許シタ方ガ便宜
デハ無カラウカ、私ハ斯樣ニ中シマスルケ
レドモ、謨解ナキ爲メ一言〓シテ置キマス、
醫師ノ此診斷セズシテ投藥ヲシ、治療ヲス
ルト云フコト、處方箋ヲ書クト云フコト
ハ是ハ極メテ危險ナモノデアリマスルガ
故ニ、是ハ今ヨリ一層峻嚴ニ取締ラナケレ
バナラヌノデアリマスルガ、若シ唯、便宜
ト云フ上ヨリ致シマシタナラバ、醫師ニ許
シタ方ガドレダケ便宜デアルカモ知レヌノ
デアリマス、數ニ於テ、地理的ノ關係ニ於
テ、又醫者ト致シマスレバ、一箇月前ニ其
人ヲ診タコトガアリマスレバ、大概其人ノ
身體ノ樣子モ病氣ノ有樣モ、終始特異質ノ
總テガ能ク分ッテ居リマスルガ故ニ、此人
ガ聞イタヾケデ藥ヲ盛,夕方ガ、全ク素人ノ
藥劑師ヨリモ更ニ安全デハナイカ、又之ニ
對シテ特定ノ藥、卽チ此十條ニアル如キ、
所謂指定シタル配合劑ダケト致シマシテモ、
此方ガ便宜デハナイカ、若夫レ金ノ安イ
ト云フ、廉價ト云フ點ヨリ致シマスレバ、
醫師法ニ斯樣ナ問診、聞イテ樂ヲ盛ルト云
フ方ハ安クスルト云フ規定ヲ設ケサシテ
モ、更ニ便宜デハアルマイカト思フノデア
リマス、便宜ノ方面ヨリ中シマスレバ今回
ノ十條、只今若槻内務大臣ノ御說明ハ私ハ
少シモ會得スルコトハ出來ナイノデアリマ
スルガ故ニ、若槻内務大臣ハ此醫師法第五條
1、之ヲ今度ノ藥品法案ノ第十條ト對照シ
テ、如何ナル所見ヲ有セラルヽカト云フコ
トヲ御尋致シタイ、次ニ御尋致シタイノハ、
此所謂手療治ノ奬勵ト、公衆衞生ノ關係ハ
如何ニ考ヘラルヽカト云フノデアリマス、
手療治ノ奬勵ト、此危險ト、公衆衞生ノ關
係如何、卽チ政府ト致シマシテハ保健衞
生全體ノ上ヨリ見マスレバ、醫者ニ治療ヲ
國家トシテハ講ジサスノガ正當デアル、個
人ト致シマシテモ、醫師ニ疾病當時ハ掛ル
ノハ當然デアルガ、併シ個人ガ隨意ニ手療
治ヲ試ルコトハ是ハ個人ノ隨意デアリマ
スガ、國家トシテハ成ベク手療治ヲ避ケル
美風ヲ作ラネバナラヌノデアル、個人ノン
レガ爲ニ癒ルベキ病氣ヲ癒サズシテ死ヌコ
トハ個人ノ唯、損害ダケデアルヤウデア
リマスガ、傳染性疾患等ニ於キマシテハ、
此手療治ニ委シタガ爲ニ傳染シ、國家ガド
レダケノ損害ヲ被ルカモ分ラナイノデアリ
マス(拍手)或ハ內務大臣ハ普通ノ指定シタ
ル藥劑デアルガ故ニ、毒藥ヤ劇藥デナイガ
故ニ危險デナイ、或ハ輕イ病氣ガサウ云フ
手療治ヲ試ミルノデアッテ、重イ病氣ハ醫
者ニ掛ルガ故ニ害ハナササウニ思フ位ノ御
答辯ガアリハシナイカト思フノデアリマス
ガ、現代ハ輕イ內ニ成ベク病氣ヲ見出シ成
ベク早ク治サナケレバナラヌノデアル、早
期診斷ト云フコトガ醫者ノ方ニアル、早期
治療ト云フ事モアル、例へバ肺結核ノ如キ
ハ初ハ極ク輕イ病氣デアリマシテ、初
醫師ガ完全ナル治療ヲスレバ、肺結核ノ如
キハ完全ニ治ルノデアルニモ拘ズ、所謂之
ヲ手療治ニ委シマスルガ爲ニ、其人ハ治ラ
ナイノミナラズ、肺結核ノ蔓延甚シキニ至
ルノデアリマス、政府ハ結核豫防法其他ノ
法律ヲ出シテ、色〓ナル煩項ナル手續ヲ取ノ
テ、結核豫防ノ方法ヲ講ゼラレツヽアルニ
拘ラズ、一面ニ於テハ之ヲ放任スルハ、其
害毒ヲ流スト云フ方ヲ獎勵サレル結果ニナ
リハシマイカ、或ハ輕イ簡易ナル劇藥、毒
藥デナイガ故ニ差支ナイデアラウト云フ御
意見モアリマセウガ、是ハ素人ノ御意見デ
アリマス、普通ノ樂ヲ飮ンデ居リマス、ソ
レガ爲ニ取返シノ付カナイ例ガ多々アル、
甚ダ斯樣ナ場合申シテハイカヌノデアリマ
スガ、最近ノ實例デー私ハ先日ノ日曜ニ
名古屋ヘ歸シテ居リマシタ時ノ實驗デアル、
十五、六ノ中學生ガ熱ガ出テ、藥屋カラ藥
ヲ貰シテ飮ンデ居ッテモ熱ガ治ラナイ、非常
ニ高イ、三十九度以上ノ熱ガ出テ衰弱シテ
居ルドウシテモ治ラナイト云スコトデ來
マシタ、幸ヒ私ハ歸ッテ之ヲ診マシタ所ガ、
身體ニハ何モ故障ガ無イ、解熱劑モ普通ノ
解熱劑、普通ノ藥ヲ盛ッテアル、身體ニ故
障ハ無イ、段々調ベテ見ルト足ノ先ニ凍傷
ガ出來デ、ソレガ爲ニ其處ニ淋巴線ノ「グ
リ」ガ出來テ、ソレガ膿ミ掛ケテ、ソレガ
爲ニ三十九度以上ノ熱ガ出夕、ソレヲ一寸
切ッテシマヘバ直ニ熱ガ下ル、ソレハ其人
ノ個人ノ一人ノ損害デアリマスガ、是ガ傳
染性疾患例ヘバ腸窒扶斯ナドガアリマシタ
ナラバ如何デアルカ、熱ガ出タノデ藥屋へ
行ケバ解熱劑ヲ吳レル其爲ニ却テ豫後ヲ
不良ナラシムルノミナラズ、是ハ個人ノ損
害デ構ハナイトシテモ、傳染蔓延ノ危險ガ
甚ダ多イノデアリマス、多ク傳染病ノ蔓延
ハ之ヲ隠蔽シテ、斯樣ナ素人療治ヲシタ結
果デアルノデアリマス、今ノ多クノ人等ハ
傳染性疾患ニナルト之ヲ隱蔽スル所ノ氣風
ガアルノデアリマシテ、醫者ニ診テ貰ヘバ
屆出デルガ故ニ、成ベク之ヲ素人療治ヲヤ
ル斯樣ナ事ハ其人個人ノ損害ナルノミナ
ラズ、國家全體ノ損害ハ測ルペカラザルモ
ノガアルノデアル、政府ガ諸種ノ傳染病豫
防規則ヲ設ケテ居ル趣意ト根抵ニ於テ相
矛盾撞著スルコトニナルノデアリマスガ、
之ニ對シテ政府ハ如何ナル所見ヲ有セラレ
ルカト云フノデアリマス、ソレカラモウ一
ツ御尋致シマスル事ハヽ取締ヲ如何ニ爲サ
レルカト云フノデアリマス實際ノ狀態ニ
於キマシテ藥劑師ニ於テハ固ヨリ、天下
悉クトハ申サナイノデアリマス、中ニハ眞
面目ニヤッテ居ル人ノ多々アルコトヲ知ッテ
居ルノデアリマスルガ、大部分ノ人等ハ今
處方箋ニ依ラズンバ調劑スルコトガ出來ナ
イ、然ラズンバ之ヲ處罰セラルヽ所ノ者ガ
アルニ拘ラズ、公然色ミナル調合ヲ致シテ
居ルト云フノガ、今ノ事實デアルノデアリ
やっ、諸君モ恐クハ御經驗ガアルデアリマ
セウガ、風ヲ引イタ、咳ガ出ルガ故ニ杏仁
水、「ゼネガ」ヲ盛ッテ吳レル、劇樂デアル
ノデアリマス、斯樣ナル事ハ公然ノ祕密デ
ヤッテ居リマシテ、日本醫師會ノ如キ斯樣
ナル事ハ國家保健衞生ノ上ニ於テ大害アル
ガ故ニ、政府ハ之ヲ取締ラナケレバナラナ
イト云フコトヲ逐次決議致シテ居ル次第デ
アリマスルガ、事實是ハ公然ノ祕密デ、巡
査マデガ公然制服ヲ著テ買ニ行クト云フ事
デアリマス事實ハ斯ノ如キ狀態デアルノ
デアル、然ルニ之ヲ政府ガ今回公許スル事
ニナリマスト、商略上ニ於テモ政府公許、
一般ノ人ハ何デモ政府ガ認メテ法律デ素人
ニ藥ヲ合ハシヲ貫ヘルト云フ、是ハ誤解デア
ル、是ハ誤解デアリマスルガ、左樣ナ風ニ
ナリマシテ滔々風ヲ成シテ素人療治ヲ致シ
テシタナラバ、此取締ヲ如何ニスルガ、政
府ハ之ニ對シテ取締ノ確信ヲ有サルヽカト
云フコーヲ、私ハ御尋致シタイ、取締ニハ
相當ノ制裁ヲ加ヘラルヽ確信アリト仰シヤ
ルノデゴザイマセウガ、若夫レ斯ノ如ク簡
單ニ確信アリト斷言サレマシタナラバ是
ハ事實ニ疎イ所ノ御議論デアリマスルガ
政府ハ果シテ之ヲ十分取締ル所ノ確信ヲ有
サルヽヤ否ヤト云フコトヲ御尋致スノデア
リマス、次ニ今回ノ十條ニ依リマシテ、「命
令ニ依ノテ指定ジタル配合劑」トアリマスル
ガ、命令ニ依シテ指定シタル配合劑ト云フ
コトニナルト、伸縮自在デアリマス、5
邊マデ行クノデアルカ、是ハ只今專門學者
ノ御意見ヲ聽クト云フコトデアリマスル
ガ、時々是ガ變更スルヤウナコトガアリマ
シテハ甚ダ困ルガ、ドノ邊ニ於テ之ヲ規定
サレルノデアリマスルカ、私ハ此場合重ネ
テ之ニ關聯シテ御尋致シタイ事ハ賣藥制
度ナルモノガアル以上ハ、此賣藥ニ斯樣ナ
ルモノヲ認メテ、サウシテ薬品法案ノ中ニ
斯樣ナル誤解-手療治ヲ奬勵スルヤウナ
モノハ除カレルノガ本來デナケラネバナラ
ヌト思フノデアリマスルガ、之ニ對シテモ
政府ハ如何ナル所見ヲ有サルヽノデアリマ
スルカ、最後ニ私ガ御尋致シタイ事ハ、今
囘ノ只今中原君ヨリモ縷々中央衞生會ノ事
ノ質問ガアッダノデアリマスルガ、此中央
衞生會ニ諮問サレル時ニ、政府ハ此中央衞
生會ニカヲ加ヘテ-虚心川懷ニ學者ノ說
ヲ求ムルニアラズシテ、カヲ加ヘテ色々ナ
ル方策力ヲ加ヘテ此通過ヲ圖ラレタト云
フコトヲ聞クノデアリマスルガ、此邊如何
デアルカ、マダ御何致シタイ點ハアルノデ
アリマスルガ、尙ホ數多ノ御質問モアル事
デアリマスルガ故ニ大體以上ノ數點ニ付テ
御辯明ヲ願ヒタイ、願クハ是ハ正直露骨
ニ-此保健問題デアリマスガ故ニ、前以
テ御了承ヲ願ヒ置キマシタル如ク、正直露
骨ニ御辯明ヲ切望シテ已マザル者デゴザイ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=48
-
049・粕谷義三
○議長(粕谷義三若) 若槻内務大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=49
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050・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 加藤君ノ第一
ノ御質問ハ手療治ヲ公許スルノハドウ云
フ譯デアルカ、先程ノ答辯ニ依ルト云フト、
便宜ヲ與ヘルト云フノデアルガ、誰ニ便宜
ヲ與ヘルノデアルカ、斯ウ云フ御質問ノヤ
ウデアリマシタ、手療治ハ今日ハ全然禁ジ
テハナイノデアリマス、奬勵ハ固ヨリ致シ
マセヌケレドモ、全然禁ジテハナイノデア
リマス、之ヲ全然禁止スルト云フマデニ至
ルコトハ、餘リニ行過ギテ居ルヤウニ存ズ
ルノデアリマス、只今私ガ申上ゲタ便宜ト
云フノハ、奬勵ヲスルト云フ意味デモ何デ
モアリマセヌ、政府ハ眞ニ醫師ノ治療ヲ受
クルコトガ出來ナイデ、病ニ在ル者ガ醫師
ニ就テ治療スルヤウニナルコトヲ希望スル
ノデアリマス、又サウセシムルヤウニ常ニ
政府ハ努メテ居ルノデアリマス、手療
治ハ成ベクセナイ方ガ宜イト思ッテ居リ
マス、併ナガラ或ハ貧困ニ依ッテ、或ハ僻
地ナル故ヲ以テ、或ハ其他ノ事由ヲ以テ醫
師ニ就テ診斷ヲ受クルコトガ出來ヌヤウナ
事情ニ在ル者ガアル、サウ云フ已ムヲ得ナ
イ者カアルナラバ、其已ムヲ得ナイ者ガ買
藥ヲセントスレバ出來ルヤウニ致シタイ、
此點ニ付テ實ハ現行法ニ於テモ、內務省ノ
解釋ハ或ル程度ノ買藥ガ別ニ法規ニ違反ス
ルモノデハナイト云フ解釋ヲ採ッテ居ルノ
デアリマス、併シ此解釋ハ裁判所ノ解釋ト
一致セヌモノデアリマスカラ、ソレ故ニ此
度ハ法律ヲ改メテ、現行法ノ法規ノ下デ內
務省ガサウマデ込入ラナイモノニ付テダケ
ハ而シテ害ノナイモノニ付テダケハ買藥
ヲシテモ宜イト云フ、現在採ッテ居ル解釋
ヲ法律ノ上デ明ニ認メテ置カウト云フノ
ガ、私ノ申上ゲタ便利ヲ圖ルト云フコトデ
アンタノデアリマス、第二ハ日本ハ明治ノ
初年ヨリ醫師ニ依ノテ療治ヲスルト云フコ
トノ方針ヲ執ッテ醫學ノ發達ヲ圖リ、醫師
ノ充實ヲ金テタノデアル、ソレガ若シ手·療
治ヲ許スヤウニナルナラバ、從來ノ方針ヲ
破ルコトニナリハセヌカ、是モ第一ニ申上
ゲタノト同一ナル趣意デ御答ヲシタイノデ
アリマス、矢張明治初年カラ執ノテ店ル方
針ハ、政府ハ何所マデモ之ヲ守ッテ尊重シ
テ行キタイノデアリマス、病ノアル者ハ醫
師ニ就テ療治ヲ受ケルヤウニサセタイ、ソ
レガ爲ニ醫學ヲ發達セシメタイ、ソレガ爲
ニ醫師ヲ充實セシメタイ、其方針ハ全然變
ル事ハアリマセヌ、唯、其方針ヲ執リナガラ
モ、加藤君ノ御認メニナッタ如ク、今日ハ賣
藥ナルモノヲ認メテ居ルノデアリマス、賣
藥ナルモノハ卽チ手療治デアリマス、是八
成ベク醫師ニ就テ療治ヲ受ケシメタイケレ
ドモ、事情ンレノ出來マ者ニ對シテハ賣樂
ヲ用フルコトモ亦之ヲ認メナケレバナラヌト
云フ爲デアラウト思ヒマス、賣藥制度ヲ擴
張スル方針デアルカト云フ御尋デアリマス
ガ、左樣ナ考ハアリマセヌ、願ハクハ醫師
ニ就テ診察ヲ受ケテ、其處方ニ依ノテ病ヲ
治スヤウニアリタイ、此方針ハ何所マデモ
一貫シテ守ッテ行ク積リデアリマス、併シ
此節新案ガ出來ル、新製劑ガ出來ル、是モ
亦世ノ中ニ色ミナ學術カ開ケテ行クニ付テ
伴ッテ來ル現象デアリマシテ、是ハ禁ジヤ
ウト云ッテ止メル譯ニハ參リマセヌ、併シ
太體ニ於テハ病アレバ醫師ニ就テ治療ヲス
ルヤウニサセナケレバナラマト云フ方針
ハ何所マデモ嚴守スル考デアリマス、此
度ノ藥品法ノ第十條ノヤウナコトヲ許スコ
トハ醫師法ノ第五條ニ對シテ矛盾ヲシテ
居リハセヌカ、政府ハ之ニ就テハドウ云フ
考ヲ持シテ居ルカト云フ御尋デ、ソレニ引
續イテ斯樣ナ事ヲヤル位ナラバ、寧口醫師
ニ無診斷デ投藥ヲスルコトヲ許シタ方ガ一
層便利デアルト云フヤウナ御說デアルヤウ
デアリマス、此度ハ藥劑師ガ病狀ヲ聽イテ
之ニ投樂ヲスルト云フノデハアリマセヌ、
ソレヲ禁ジテ居ルノデアリマス、唯.斯ウ
云フ藥ト斯ウ云フ藥ト混合シテ貰ヒタイト
云フノヲ、ツレヲ或ル一定ノ範圍ニ於テー
害ノ無イ範圍ニ於テ之ヲ認メヤウト云フダ
ケデアルノデアリマス、醫師ガ診察セズシ
テ投藥ヲスルト云フコトハ恰モ藥劑師ガ
病狀ヲ聽イテ混合藥ヲ投ズルト云フ所ニハ
匹敵スルノデアリマセウ、此十條ノ關係デ
ハ醫師法ノ第五條ト矛盾スルコトハナイト
思ヒマス、ソレカラ第四ノ御尋ハ手療治
ヲ奬勵スルコトハ、公衆衞生トノ關係如何、
手療治ハ奬勵致サヌノデアリマス、何所マ
デモ是ハ繰返シテ申上ゲマスガ、政府ハ手
療治ハ成ベクシイ方ガ宜イ、併シドウモ已
ムヲ得ズ其事情ノアル者ハ、手療治ヲスル
コトハ是ハ仕方ガナイ、萬已ムヲ得ザル所
デアルト云フノデアフテ、決シテ奬勵ハ致
シマセヌ、ソレ故ニ病氣ニナッタナラバ、
成ベク醫師ニ就テ藥ヲ貰ッテ治スト云フコ
トガ公衆衞生ノ上ニハ良イコトデアリマス
カラ、政府ハ何所マデモサウサセタイノデ
アリマス、ソレガ能ウ出來ヌヤウナ者ハ
已ムヲ得ズ只今ノ藥品法ノ十條ノヤウナモ
ノヲ認メテ行カウト云フダケデアリマス、
是ハ例外ノ例外デアリマス、原則ハ何所マ
デモ醫師ニ就テ治療ヲ受ケシメルト云フコ
トガ政府ノ原則トスル所デアリマシテ、手
療治ノ奬勵ヲ決シテ致サヌノデアリマス、
第五ノ御質問ハ、左樣ニナシタナラバ取締
ハドウ付ケルカ、斯ウ云フコトデアリマシ
タ、取締ハ容易デナイト認メテ居リマス、
併ナガラ取締ノ容易デナイノハ、現行法ニ
於テ混合販賣ヲ認メテ居ナイ所ニ於テ、加
藤君ノ指摘セラレタヤウナコトガアルト云
フ、ソコニ取締ノ容易ナラヌ點ガアルノデ
アリマス之ヲ認メタカラ取締ガ困難ニナ
リ、認メナイカラ取締ガ容易ニナル、斯ウ
云フモノデハナイト思ヒマス、兩者共取締
ハ容易デアリマセヌガ、併シ病氣ガアリマ
ス以上ハ、政府ハ如何ニシテヾモ取締ヲ十
分ニスルコトニ努力センケレバナラヌト
恩ッテ居ルノデアリマス、第十條ニ依ッテ命
令ヲ定ムルトキニ-命令ニ讓フテ置クコ
トハ伸縮自由デ、洵ニ危ナイ事ハナイカト
云フ御懸念デアリマス、是ハ先程中原君ニ
御答申シマシタ通リ、此命令ヲ定メマスト
キニハ-是ハ確定デハアリマセヌケレド
モ、私只今ノ腹案ハ、凡ソ醫師ノ三人、藥
劑師ノ三人、衞生行政ノ經驗アル人ヲ三人
ト云ッタ具合ニ、十分其道ノ權威者ヲ集メ
テ相談ヲシテ、是ナラバ害ガ無イ、此所マ
デ行ッテモ宜イト云フ原案ヲ作ル積リデア
リマス、ソレ迄ハ決定ハ致シマセヌ、而シ
テ其案ヲ以テ中央衞生會ト云フ權威者ノ會
合ニ持ッテ行ッテ、其又十分ナル審議ヲ受ケ
テ、初メテ十條ノ命令ト云フモノヲ定メル
積リデアリマスカラ、決シテ政府ノ任意デ
伸縮自在ニスルト云フヤウナコトハ致シマ
セヌ、十分鄭重ナル手續ヲ盡ス積リデアリ
マス、最後ノ御質問ハ、此度此案ヲ制定スル
ニ付テ、政府ハ中央衞生會ニ何カカヲ加
ヘ、無理ニ之ヲ通過セシメタノデハナイ
カ左樣ナ事ハ全然アリマセヌ、是ハ私色
色醫師ノ人ニ面會ヲ求メラレテ面會ヲシタ
コトガアリマス、サウ云フ所デモ十分述べ
テ居リマスガ、斯樣ナ法案ハ若槻ノ如キ專
門家デナイ者ニ、迚モ分ラヌコトデアルカ
ラ、斯ウ云フ事ハドウシテモ専門家ノ意見
ニ任セルノデアル、決シテ無理ヲシテ通過
サセヤウト云フ考デモ何デモナイト云フコ
トヲ屢、申シタノデアリマス、ソレ故ニ中央
衞生會デハ極ク自由ニ意思ヲ發表スルコト
ガ出來ルヤウニシテ、其議決ヲ經タノデア
リマス、決シテ政府ハ力ヲ加へテ無理ニ原
案ヲ通シタト云フコトハアリマセヌ、先程
中原君ノ述ベラレマシタ通リ、政府ノ出シ
タ議案ガ何遍デモ變更サレテ、結局此所ガ
適正デアルト云ッテ今日ノ十條ガ極マッタ位
ニマデ、中央衞生會ニ於テモ意見ガ屢、變
ル程デ、政府ハ決シテ原案ヲ以テカヲ加ヘ
テ壓迫スルナドト云フコトハ致サナカッタ
ノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=50
-
051・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 簡單デアリマスカラ此席
デー只今内務大臣ノ御深切ナル御答辯ガ
アリマシタガ、內務大臣ハ博識多才デ在ラ
ルヽモ、御答辯ノ御說明ヲ承リマシテ、益と
私ハ第十條ヲ加ヘルト云フコトガ惡イト云
フコトノ信念ヲ强メルバカリデアルノデア
リマス、此上更ニ質問ヲ一々致シマスルコ
トハ専門家タラザル若槻内務大臣ニ御氣
ノ毒ニ存ズルノデゴザイマスルガ故ニ、他
日適當ナル機會ニ於テ、專門家ノ比較的知
識有ル方ニト質問應答ヲ重ネタイト思フノ
デアリマス、尙又各條ノ色ミナルコトニ付
テ御答辯ガアリマシタガ、是モ亦適當ナル
機會ニ於テ私ハ事實ヲ元シテ、若槻内務大
臣ノ御說ヲ駁シタイト思ヒマス、唯〓此一言
ヲ加ヘテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=51
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052・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 宮島幹之助君
〔宮島幹之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=52
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053・宮島幹之助
○宮島幹之助君 本日上程ニナリマシタ藥
劑師法案及藥品法案ニ付テ、同僚ノ中原君
加藤君等ヨリ御質疑ガアリマシテ、內務大
臣カラ色〓御答辯モアッタノデアリマスル
ガ、私ハ唯〓一ツノ點ニ付テ內務大臣ニ質疑
ヲ致シタイノデアリマス、ソレハ何デアル
カト申シマスルト云フト、此藥劑師法案ナ
リ、藥品法案ナリノ根本ヲ成シテ居ル所ノ
藥品ト云フモノニ付テ、內務大臣ハ如何ナ
ル御解釋ヲ爲シテ居ラッシヤルカト云フコ
トヲ伺ヒタイノデアリマス、由來我國デハ
餘リニ藥品ト云フモノニ重キヲ置キマシ
テ、濫用ヲ致ス傾向ガ大ニアルノデアリマ
ス、又同ジ藥ニ致シマシテモ、色〓ノ差別
ハ立テヽ居リマスルガ、其樂モ普通藥ト申
シテ居ル所ノ藥モ、其用方ノ如何ニ依ッテ
ハ危害ヲ來スノデアリマス、例ヘバ「マラ
リヤ」ト云フ病氣ニハ「キニーネ」ト云フ
特效藥ガアリマシテ、是ハ決シテ劇藥デモ
毒藥デモナイノデアリマス、所ガ此「キニ
ーネ」モ用方ヲ誤リマスルト云フト、癒ル
ベキ「マラリヤ」モ痢疾ニ陷リマシテ、遂
ニハ黑水熱ト云フガ如キ危險ナル病氣ヲ起
スノデアリマス、隨テ今囘御制定ニナリマ
シタ藥品法ニ於ケル第十條ノ如キモノニ
依タつ此藥品ガ醫師ノ指圖ヲ受ケルコト
ナク、手療治ノ上ニ廣ク使ハレマシタナラ
バ國民ノ衛生上ニ一大危害ヲ來スコトヽ
私へ考ヘルノデアル、殊ニ私ノ憂フルコト
ハ歐羅巴或ハ亞米利加等ニ於テ從來今日
申ス所ノ混合販賣等ガ行ハレテ居リマスル
結果、今日ニ至リマシテ米國ノ如キハ百
万人ノ「モルヒネ」或ハ「コカイン」等ノ
中毒者ガアリマシテ、其救濟ニ良イ方法ヲ
見出スコトガ出來ナイノデ困ノテ居リマス、
斯ル缺陷モ要スルニ藥品ノ濫用カラ來テ居
ルモノデアリマシテ、濫ニ此藥品ヲ濫用ス
ルト云フコトニナリマスレバ色ミナ障碍
ガ起ルノデアリマス、此點ニ於テ內務大臣
ハ藥品ト云フモノニ付テ十分ノ御理解ガア
ルカ否カト云フコトヲ私ハ御尋致シタイノ
デアリマス、其他ノ細カイ事ニ付キマシ
テハ、何レ委員會デ政府委員ト折衝致シマ
シテ、吾々ハ討詠ヲ重ネ、此二ツノ重大法
案ニ付テ愼重ニ熟議致シマシテ、耐久的ノ
法案ト致シタイト思フノデアリマス、法律
ガ屢、變更サレ、所謂朝令暮改ニナリマシテ
ハ國民ハ安心スルコトガ出來ナイト私ハ
信ズルノデアリマス、ドウカ今日ハ簡單デ
宜シウゴザイマスカラ、右御伺致シマシタ
一點ニ付テ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻内務大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=54
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055・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今專門家デ
アリマス所ノ宮島君カラ御質問デアリマシ
タ、宮島君ノ仰セニナリマス通リ、私ハ專
門ノ學問ニ付テハ至ッテ知識ガ乏シイノデ
アリマス、併シ御質問ヲ伺ッテ居リマスル
ト云フト、藥品濫用ノ結果恐ルベキ結果ガ
生ズルデアラウト一云フコトハ宮島君ノ御
述ニナッタ通リデアラウト私モ存ズルノデ
アリマス、併シ此藥品法ノ今日提出シテア
リマスル所ノ第十條ハ左樣ナ濫用セラレテ
害ノ生ズルヤウナモノハ決シテ命令デハ
定メナイ積リデアリマス、命令デ定メル所
ノモノハ、世間普通藥ニシテ害ノ無カリサ
ウナ、サウシテ大抵此病氣ニハ斯ウ云フモ
ノガ利クト云フコトガ、普通ノ知識デ大抵
分ッテ居ルヤウナモノヲ、成ベク命令デ定
メルヤウニシタイト思ヒマス、ソレナラバ
ドレガソレデアルカト云フコトハ專門家
デアリマセヌ私ニハ分リマセヌノデソコハ
矢張醫師、藥劑師衞生行政ノ知識ノアル專
門家ニ調ベテ貰シタ結果ニ依ッテ制定スル積
リデアルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=55
-
056・宮島幹之助
○宮島幹之助君 何レ詳細ノ事ハ委員會ニ
於テ質問致スコトニシテ、私ノ質疑ハ是デ
打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=56
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057・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 土屋〓三郞君
〔土屋〓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=57
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058・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 只今議題トナッテ居リマ
スル藥劑師法案竝ニ藥品法案ハ藥劑師、藥
種商、製藥者、賣樂業者等ノ各藥業關係者
竝ニ醫師、齒科醫師、獸醫等ノ各治療業者
ノ間ニ密接ナル關係ヲ持ッテ居リマスルバ
カリデナク、六千万國民ノ保健衞生ニ重大
ナル關係ヲ有ノテ居ルモノデアリマス、私
ハ此案ニ對シマシテ幾多疑點ガアルノデア
リマスケレドモ、ソレ等ノ、多クハ既ニ先
刻末立タレタル所ノ諸君ニ依ノテ質問セラ
レマシタガ故ニ、私ハ是等ト重複スル事ハ
避ケマシテ、其他ノ點ニ付テ質問致シタイ
ト思フノデアリマス、第一ニ藥劑師法案ニ
對シテ、内務大臣ト文部大臣ニ御尋致シタ
イノデアリマス、政府ハ何ノ目的ヲ以テ、
何ヲ目標トシテ藥劑師ヲ造リツヽアルノデ
アルカ、今日我國ニ於チハ醫藥分業ハ行ハ
レテ居リマセマ、藥劑師ノミナラズ、醫師
モ、齒科醫師モ、獸醫モ自ラ診療スル者ニ
限シテ調劑スルコトガ出來ルノデアリマス、
又劇藥、毒藥竝ニ規定藥品ヲ除クノ外ハ、
藥種商ガ之ヲ販賣スルコトガ出來ルノデア
リマス、製藥ニ至リマシテハ何人ト雖モ
免許ヲ得テ之ヲ行フコトガ出來ルノデアリ
マス、然ルニ此間ニ於テ政府ノ藥劑師〓育
ノ目標ヲ見マスルト、何所ニソレガアルカ
ト云フコトガ明瞭ヲ缺クノデアリマス、今
日藥劑師ノ分布ハ殆ド都會ニ集中シテ居リ
マシテ、地方ノ僻遠ナル郡部ニ至リマシテ
ハ一人モ無イ所ガ少カラズアルノデアリマ
ス、而モ都會ニ於キマシテハ同業多キニ過
ギテ、互ニ競爭軋轢致シマスル結果、法ヲ
潜ノテ所謂混合販賣、問診投藥ヲスル者ガ
多々アルノデアリマス、飜シテ今日我ガ集
劑師界ガ分業國トシテ模範トシテ居リマス
所ノ獨逸其他ノ歐羅巴大陸諸國ニ於キマシ
テハ、醫藥分業ヲ行フト同時ニ、必ズ藥局
制限ヲ行ッテ居ルノデアリマス、即チ人口
一万乃至二万ニ付テ、一ツノ藥局ヲ許スト
云フコトノ制度ヲ執ッテ居リマスルガ故ニ
前ニ藥局開設ノ權利ヲ得タル所ノ藥劑師ニ
對シテ新ニ藥劑師ノ資格ヲ得タル所ノ者
ハソレ等ノ藥局ニ雇ハルルカ、然ラザレ
バ自ラ祕密藥、或ハ化粧品、其他ヲ賣,テ生
活ヲシナケレバナラナイヤウナ狀態デアリ
マスルガ爲ニ、背ニ腹ハ代ヘラレズ、法律
ヲ沿フテ潜リノ調劑投藥ヲ致スノデアリマ
ス、彼等ハ豫メ罰金ヲ用意シテ調劑投樂ヲ
致シマスルガ爲ニ、常ニ此開局樂劑師ト然
ラザル藥劑師トノ間ニ、恰モ血デ血ヲ洗フ
ガ如キ醜争ヲ演ジツヽアルノデアリマス、
我國ニ於キマシテハ分業ハ行ハレテ居リマ
セマ、分業國デスラ既ニ斯ノ如ク困シテ居
ルニモ拘ラズ、我國ニ於テハ何等此樂劑師
ノ養成ニ對シテ制限ヲ加ヘナイ、殊ニ最近
五箇年間ノ統計ニ依リマスト云フト、每年
藥劑師ノ資格ヲ得ル者ガ千六百人平均ニ
ナッテ居ルノデアリマス、而モ斯ノ如キ多
數ノ樂劑師ヲ養成シツヽ、依然トシテ地方
儒遠ノ地ニハ是ガ普及シテ居ラナイノデア
ル政府ハ何ヲ目標トシテ藥劑師ヲ養成シ
テ居ルノデアルカ、又此藥劑師ノ養成ヲ制
限シ、藥局ヲ制限スル所ノ御意志ガナイノ
デアルカ、今日ノ儘ニシテ放任シテ置キマ
スルナラバ、徒ニ榮劑師ヲ養成シテ同業相
食ムノ醜態ヲ演ズル以外ニ、何等ノ理由ガ
ナイト云フコトヲ私ハ信ズルノデアリマ
ス、此點ニ對シテ政府ハドウ云フ御考ヲ持,
テ居ラレルノデアルカ、次ニ藥品法案第十
條ニ對シテ內務大臣ニ御尋ヲ致シマス、樂
劑師法案第十條ハ命令ニ依リ定ムル所ノ配
合劑ヲ、藥劑師ガ自由ニ調劑投與スルコト
ガ出來ルコトニナッテ居ルノデアリマス、卽
チ命令ニ依シテ内務大臣ナル素人ガ處方ヲ
作った藥劑師ガ之ヲ調劑シテ、素人ガ自
ラ自分ノ病氣ヲ診斷シテ、サウシテ藥ヲ選
擇シテ之ヲ服用スルノデアリマス、今日醫師
法ニハ免許ヲ得ズシテ醫業ヲ爲スコトヲ禁
ジテ屈ルノデアル、內務大臣ハ無免計醫ヲ
幇助スルノデアリマスカ、明治元年十二月
七日付ヲ以テ、明治天皇ノ有難キ御聖旨ニ
依シテ次ノ如キ太政官布告ガ出テ居ルノデ
アリマス、其内ノ一節ニ「近世不學無術ノ
徒猥リニ方案ヲ弄ヒ生命ヲ誤ル者少カラサ
ルヤニ相聞へ大ニ聖朝仁慈ノ御趣旨ニ相肯
キ甚夕以テ相濟マサル」云々、內務大臣ハ
此明治天皇ノ御聖旨ヲ如何ニ御考ニナル
ノデアリマスカ、第三ハ矢張此事ニ關聯致
シマシテ、內務大臣ガ此十條配合制定ノ理
由トシテ御說明ニナリマシタコトハ大臣平
素ノ聰明ニモ似合ハズ、頗ル重大ナル矛盾
ガアルト考ヘルノデアリマス、卽チ中原君
ノ質問ニ對シマシテ「手療治ハ奬勵ハシナ
イノミナラズ病者ハ一々醫療ヲ受ケシメ
タイト考ヘル、然ルニ世ニハ邊鄙ナル爲、
又ハ貧困ナル爲、醫療ヲ受ケル能ハザル者
ガアル、此場合ニ於テ手療治ヲ認メルコト
ハ已ムヲ得ザル社會事實トシテ認メザルヲ
得ナイ」斯ウ云フ御答辯ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、私ハ是ガ非常ニ重大ナル矛盾デ
アルト考ヘル、何トナレバ此法案ノ藥劑師
ヲシテ内務大臣ノ定メタル處方ニ依ッテ調
劑投藥ヲサセヤウトスルノデアル、然ルニ
今日藥劑師ハ邊鄙ナル所ニハ居ナイデハア
リマセヌカ郡ニ依シテハ無イ所ガ全國數
十ニ亙ルノデアリマス、如何ニシテ邊鄙ナ
ル人ニ便宜ヲ與ヘルコトガ出來ルデアリマ
セウ、又貧困デ困ル人ニハ買藥モ已ムヲ得
ナイト云フコトデアルガ、然ラバ何故ニ貧
困者ノ爲ニ施療機關ヲ完備シナイノデアリ
マスカ、今日地方ヲ見マスト府縣立ノ公立
病院或ハ市町村立ノ公立病院ガアリマスガ、
是等ノ病院ハ普ク縣民ヨリ金ヲ絞リナガラ、
治療ヲ受ケル者ハ多クハ中產階級其他ノ有
產階級デアリマス、僻遠ニ在ル所ノ貧困者
ハ何等是ガ恩惠ニ浴シナイノデアル、赤十
字社ノ如キニ至リマシテハ地方ノ富豪ヲ
勸誘シテ寄附ノ多イ者ニハ割引ヲシテ治療
ヲシテヤルト云フコトヲヤッテ居ル、何等貧
民ニハ恩惠ヲ與ヘナイノデアリマス、之ヲ
例ヘバ英國ノ公立病院ニ致シマシテモ、施
療病院ニ致シマシテモ、苟モ病院ニ寄附ヲ
致シタ所ノ者ハ決シテ此處ニ行シテ治療ヲ受
ケナイ、卽チ公立病院ハ總テ貧民ニ對スル
施療病院デアリマス、内務大臣果シテ僻遠ノ
人ノ爲ニ、又貧民ノ爲ニ考ヘルナラバ、先
以テ是等ノ公立病院ヲ悉ク施療病院ト致サ
ナイノデアリマスカ(「問題外」ト呼フ者ア
リ)問題外ヂヤアリマセヌ-又貧民其他
中產以下ノ人々ガ、醫療ヲ受ケル爲ニハ相當
ノ費用ヲ要スルガ爲ニ買藥亦已ムヲ得ナ
イト云フコトデアリマスルガ、然ラバ何故
ニ政府ハ健康保險法ヲ擴大シ、且ツ速ニ之
ヲ實施シナイノデアリマスカ、卽チ中產以
下ノ一定ノ收入ノ人々ヲシテ强制的ニ此保
險ニ加入セシメテ、一朝病氣ニ罹ノタトキ
ニハ無料デ如何ナル醫師ニモ治療ヲ受ケ
ルコトガ出來ルト云フ、此立派ナル制度法
律ヲ制定シテ置キナガラ、又吾々醫師會ハ
此法律ヲ速ニ實施セシムベク幾度カ建議
ヲシテ居ルニ拘ラズ、政府ハ此實施ヲ今日
尙ホ依然トシテ延期致シテ店ルノデアリマ
スカ、由來醫術ハ貧富貴賤ヲ問フベキデハ
アリマセヌ、有ル者モ無イ者モ等シク此恩惠
ニ浴スルヤウニシナケレバナラナイノデ
アル、僻遠ノ者ヤ貧民ハ買デ宜宜カラウ、Z
斯ノ如キ御答ハ聰明ナル若槻内務大臣ノ御
答辯トシテ受取ルコトガ出來ナイノデア
ル社會政策ノ上ニモ一大矛盾デハアリマ
セヌカ、内務大臣ハ之ヲ如何ニ御考ニナル
ノデアリマスカ次ニ中央衞生會ノ事ニ付
キマシテ先刻中原君ヨリ質問ガアリマシ
タ中原君ノ御尋ニナリマシタ點ト、私ノ
質問シヤウト云フ點ハ頗ル異ノテ居リマス
ガ故ニ、此點ハ特ニ玆ニ質問致シマス、
體中央衞生會ナルモノハ各省大臣ノ諮問機
關デアリマス、随テ其審議ハ極メテ公平ニ
ヤラセナケレバナラナイノデアル、又其結
果ガ-答申ガ如何ニアラウトモ、
之ヲ採ルト採ラザルトハ內務大臣ノ自
由デアリマス、然ルニ内務大臣ハ此兩法案
ヲ中央衞生會ノ審議ニ付スル當時ニ於キマ
シテ、俄ニ文部省竝ニ農商務省ノ役人ヲ委
員ニ任命シナガラ、官制ノ上カラ當然委員
トナルベキ、侍醫頭デアル入澤博士ヲ此委員
ニ任命スルノ手續ヲ執ラレナカッタノハ、何
等カ其間ニ理由ガアルノデアリマセヌカ、
況ヤ此案ガ中央衞生會ニ現レマスルト云フ
ト、成程內務大臣ハ公平ニ力ヲ加ヘナイト
申シテ居ラレマスルガ、ソコニ居ル所ノ山
田衞生局長ハ多數ノ官吏タル委員ヲ歷訪シ
テ、官吏道德上此政府ノ案ニ同意ヲシテ吳
レロト云フコトヲ極力運動致シタデハアリ
マセヌカ、而シテ特別委員會ニ於テ形勢非
ナリト見ルヤ、社會局長官ニシテ且ツ同會
ノ委員タル長岡隆一郞君ニ賴ンデ、所謂長
岡案ナル修正案ヲ提出セシメ、是ハ最善ノ
案デアルト總會ニ於テ自分ガ說明ヲシナガ
ラ、形勢非ナリト見ルヤ、態〓舅父ノ平田伯
ノ病氣ヲ其儘ニシテ、逗子カラ馳セ參ジタ
所ノ長岡君ヲ置去リニシテ、直ニ飜クテ栗本
案ナルモノニ同意ヲ致シタノデアリマス、
長岡君ハ此事ニ付テ大ニ憤慨ヲシテ、實ニ
吾輩ハ二階へ上ゲラレテ梯子ヲ取ラレタモ
ノデアルト申シテ居ルサウデアル、斯ノ如
キ事ハ綱紀〓正ヲ叫バレル所ノ若槻内務大
臣ノ部下ニ於テ如何デアリマセウ(「ヒヤヒ
ヤ」「其通リ」)同僚中原君ハ此中央衞生會ノ
内情ニ付テ不都合デアル、或ハ不埒千萬ナ
ドト云フヤウナ言葉ヲ用ヰラレマシタガ、
若シモ內務大臣ガ日本醫師會ニ御諮問ニナ
ルナラバ、吾々ハ奇麗ニ第十條ヲ削除シテ
答申ヲスルノデアル、日本醫師會ニ諮問ス
ルコトヲ爲サズシテ、今更中央衞生會ノ答
申ヲ以テ是ガ公平ナル醫界ノ輿論ナリト云
フコトハ、私ハ斷ジテ受取ラナイノデアリ
マス
〔「藪蛇ニナルゾ」「却テ不利益デセウ」
「與當靜肅ニ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=58
-
059・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=59
-
060・土屋清三郎
○土屋〓三郞君(續) 次ニモウ一ツ內務大
臣ニ御尋ヲ致シマス、此法案ヲ御出シニナル
前ニ、宮内大臣ト御交涉ニナラレマシタカド
ウデアルカ、宮内省ニハ傳染病豫防法ガアツ
テ、特ニ宮中ノ保健衞生ノ爲ニ力ヲ致サレ
テ居ルノデアリマス、畏多イ事デアリマス
ルケレドモ、先年皇后陛下ガ「チプス」ニ御
罹リニナリマシタ當時、段々其原因ヲ調べ
テ見マスルト云フト、赤坂カラ宮内省ノ大
膳職ニ出入スル者ノ雇人ノ家族ノ中ニ「チ
フス」ガアッタト云フコトデ、當時ノ內務當
局者ハ大ニ恐縮ヲシタ事實ガアルデハアリ
マセヌカ、又先年「コレラ」流行ノ當時、同
ジク宮內省大膳臓ノ樺用ヲシテ居ル所ノ或
ル菓子屋ニ、「コレラ」菌ノ保菌者ガ出マシ
ク、早期ニ之ヲ發見致シマシタガ爲ニ幸ニ
事ナキヲ得マシタケレドモ、爾來宮内省ニ
於テハ非常ニ此事ヲ心配セラレマシテ、現
ニ今日ハ内務省衞生局ノ防疫官ヲ宮內省ノ
囑託トシ、警視廳ハ御所附近ノ區ニ於テ傳
染病ガ發生致シマシ夕場合ニハ一々電報
ヲ以テ宮内省ニ之ヲ報告致シテ居ルデハア
リマセヌカ、殊ニ今日ハ震災ノ後ヲ承ケテ
帝都ノ窒扶斯ノ蔓延ハ洵ニ恐ルベキ狀態ニ
在ルノデアリマス、警視廳ハ銳意之ガ防遏
ニ努メマシテ、或ハ健康診斷ニ、或ハ衞生
講話ニ、賣藥ヤ手療治ヲ禁ジテ、少シデモ
身體ニ異常ノアッタ場合ニハ直ニ醫師ノ
診察ヲ受ケルヤウニ官傳ヲ致シテ居ルノデ
アリマスルガ、今內務大臣ノ御說明ニナリ
マシタ如ク、貧民ハ醫者ニ掛ラレナイカラ
買藥已ムヲ得ナイト云フコトニ致シマシタ
ナラバ、如何ニシテ此傳染病ヲ早期ニ發見
スルコトガ出來ルノデアリマスカ(拍手ス
ル者アリ)此點ニ對シテ宮內當局ト如何ナ
ル御交涉ヲナサッタカト云フコトヲ承リタ
イノデアリマス
〔「宮內省ト何ノ關係ガアル」「問題外」
ト呼フ者アリ〕
何ガ問題外ダ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=60
-
061・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=61
-
062・土屋清三郎
○土屋〓三郞君(續) 事、宮中ノ衞生ニ關
スル事デアル(ヒヤ〓〓)何ガ問題外デアル
カ
〔「問題外ヂヤナイカ」「謹聽」「賣名ハヨ
セ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=62
-
063・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 私語ヲ禁ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=63
-
064・土屋清三郎
○土屋〓三郞君(續) 最後ニ私ハ大藏大臣
ニ御導ヲ致シマス、今日賣藥ナルモノハ賣
藥法ニ依ノテ免許ヲ得ナケレバナラヌ、而
シテ之ニ相當スル所ノ稅金ヲ納メナケレバ
ナラヌノデアリマス、大藏大臣ハ此法案ガ
通過セラレマシタ曉ニ於テハ、此賣藥稅ヲ
免除サレルノデアリマスカドウデアリマス
ルカ、若シ賣樂業者ガ此第十條ノ命令ニ定
メタト同一ノ配合藥ヲ出願致シマシタナラ
バ、政府ハ是ガ免許ヲ與ヘナイコトハ出來
ナイデアリマセウ、免許ヲ與ヘマシタ以上
ハ之ニ課稅ヲスルコトハ出來ナイデアリ
マセウ、同一ノ藥品ヲ藥劑師ガ調劑スレバ
無稅トナリ、賣藥業者ガ調劑スレバ有稅ト
ナルト云フガ如キ矛盾ナコトハ斷ジテ國
民ハ許サナイノデアリマス、私ハ此事ニ對
シテ大藏大臣ノ明白ナル御答辯ヲ仰グノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=64
-
065・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻内務大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=65
-
066・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 土屋君ノ第一
ノ御質問ハ文部大臣カラ答辯セラレマス、
但シ一言申上ゲテ置キマスガ、藥劑師法ノ
此度ノ改正ニ依ッテ、昨年ノ特別議會ニ提
出致シマシタ德島ニ於ケル高等工業學校ノ
卒業生ニ、藥劑師ノ資格ヲ與ヘルト云フコ
トモ、亦此法律ニ依シテ目的ヲ達シタイノ
デアリマス、此法律ガ通過致シマセヌト、
其必要ヲ充タスコトガ出來ヌト云フ關係ニ
ナッテ居ルト云フコトダケハ、内務當局ト
シテ一言玆ニ申上ゲテ置キマス、第二ノ御
質問ハ、改正案ノ藥品法ノ第十條ハ命令ヲ以
テ定メルト云フコトニナッテ居ル、其命令
ハ內務大臣ト云フ素人ガ作ノテ、サウシテ其
素人ノ作ッタ命令ニ依テ出來タモノヲ、素人
ガ藥劑師ニ註文シテ、サウシテ服藥ヲスル
ノデアル、ソレデアルト云フト明治天皇
ノ御聖旨ニ仰セラルヽ、醫師ノ治療ヲ受ケ
ナイ者ガアッテハ相成ラマト云フ御趣旨ト
矛盾スルデハナイカト云フ御質問ノヤウデ
アリマス、前ニ申上ゲタ通リ、政府ハ何時
マデモ病アル者ニ對シテハ醫者ノ治療ヲ受
ケサセタイ、明治天皇ノ御聖旨ノ通リニ
致シタイ、併シ其希望ハ持ヶテ居リマシテ
モ、世ノ中ニハ醫師ノ治療ヲ受クルコトノ
出來ヌ程ノ事情ノアル者ガアル、是ガ買藥
ヲシテ必要ニ應ジタイト云フノガ世間ニ澤
山アルノデアリマスカラ、之ニ向ッテ命令
ノ定メタ極ク害ノ無イ範圍內ニ於テハ、之ヲ
認メヤウト云フダケデアリマス、而シテ其
命令ハ何囘モ申上ゲマシタガ、內務大臣ト
云フ素人ガ獨斷デ作ルノデハアリマセヌ、
醫師、藥劑師、衞生行政ノ經驗ノアル者、
是等ノ人ノ十分ナル審議ヲ經テ立案シテ、
更ニ中央衞生會ト云フ權威アル機關ノ議決
ヲ經テ定ムルノデアリマスカラ、決シテ是
ハ素人ノ作ノタ命令デアルト云フコトハ申
サレヌ、斯ウ云フコトヲ申シテ置キタイノ
デアル、第三ノ御質問ハ私先程申述ベマシ
タ僻遠ノ地方、或ハ貧乏人、其他ノ事情ガ
アッテ療治ヲスルコトノ已ムヲ得ナイ者ガ
アル、成ベク醫師ノ治療ヲ受ケシメタイケ
レドモ、土地ガ僻遠ニシテサウ云フ譯ニ行
カヌトカ、或ハ貧乏デサウ云フ譯ニ行カヌ
ト云フ者ガアル、ソレノミデハナイ、其他
ノ事情ノ爲ニ已ムヲ得ズ療治ヲシタイト云
フ者ガアルト云フコトヲ申上ゲタ、之ニ對
シテ左樣ナ僻遠ナ地方ニハ藥劑師ガ無イカ
ラ、言フ所ノモノハ矛盾シテ居ル、或ハ無
イ所ガアルカモ知レマセヌ、偶〓アル所デサ
ウ云フ便宜ガアッタラ大變便利デアラウ、
斯ウ云フコトヲ申スコトガ出來ルノデア
リマス、貧乏人ニ對シテハ何故慈惠病院ノ
ヤウナモノヲ造ラヌカ、英吉利ナドデハ公
立ノ病院ハ大抵慈善病院デアル、富者ハ病
院ニ入ラヌ、自分ノ家デ専門醫師ノ治療ヲ
受ケル、日本モ左樣ニシタラ宜カラウ、
私モ左樣思フノデアリマス、ンコマデ進步
スレバ至極結構デアル、今日ハマダンコマ
デ進步致サヌノテアリマス、進步致サヌ以
上ハ其間ニ已ムヲ得ズ手療治ヲスル者ニ
對シテハ害ノ無イ範圍ニ於テ、買藥ヲ爲ス
コトガ出來ルヤウニ認メタカラト云ウテ、
是ハ決シテ私申述ベル所ニ矛盾ガアルトハ
認メヌノデアリマス、第四ノ御質問ノ健康
保險法ヲ實施シテ、勞働者ガ病氣ノ時ニハ
無料デ以テ治療ヲ受ケルヤウニシテヤレバ
宜イ、ソレガ無イカラシテ、買藥デモシナ
ケレバナラヌヤウニナル、斯ウ云フコトデ
アリマス、買藥ヲシテ所謂手療治ヲスル者
ハ勞働者ノミデナイノデアリマス、僻遠ノ
地方、大多數ノ所ニ於テ此必要ヲ感ジテ居
ル者ガアルノデアリマス、併シ健康保險法
ヲ實施スレバ、社會ノ餘リ富裕デナイ者ガ、
疾病ノ場合ニ大ニ便利ヲ得ルト云フコト
ハ、私ハ認メルノデアリマス、ソレ故ニ一
日モ速ニ健康保險法ハ實施致シタイノデア
リマス、ソレガ爲ニ出來ルダケノ努力シタ
積リデアリマスケレドモ、財政ノ狀況ガ之
ヲ許サズシテ、今日ハ是ガ實施ヲ見ルコト
ガ出來ヌノデアリマスガ、大正十五年ニ至
レバ私ハ是非健康保險法ヲ實施サレルヤウ
ニ致シタイト思ヒマス、併シ之ヲ實施シタ
カラト云ウテ、只今申上ゲタ通リ、全然手療
治ヲ爲ス必要ガ無クナルト云フ譯ニ參リマ
セヌカラ、健座保險法ノ實施ガアリマシテ
モ、改正案ノ第十條ナルモノハ矢張施行ノ
必要ガアルノデアリマス、ソレカラ第五ノ
御質問ノ中央衞生會ノ事ハ、質疑ノ終リニ於
テ先程私ガ中原君ニ御答シタ中央衞生會ノ
事ハ此事ノ承知シテ居ル政府委員ノ方カ
ラ申上ゲマセウト申シテ置キマシタガ、何
レ委員會ニ於テ詳細ハ申上ゲルデアリマセ
ウガ、簡單ニ此處デ政府委員カラ說明ヲ致
ス筈デアリマスカラ、ドウカ之ヲ御聽キニ
ナリタイノデアリマス、ソレ故ニ私ハ之ニ
對スル答辯ハ省略ヲ致シマスガ、唯2一言
ダケ申上ゲマスルガ、內務省カラ出テ居ル
官吏ノ委員デアリマシテモ、委員ノ地位ニ
居ッテ、中央衞生會デ審議ヲ致シマス時ニ
ハ、其人ノ良心ト自由ニ依ノテ判斷スルノ
デアリマシテ、決シテ政府ノ命令通リニ動
イテ居ルノデナイト云フコトダケハ申上ゲ
テ置キタイノデアリマス、改正案ヲ起草ス
ルニ付テ、宮內大臣ト交渉シタリヤ否ヤニ
付テハ交渉ハシナカッタノデアリマス、是
ダケノ改正ニ付テハ宮内大臣ニ協議ヲ致サ
ヌデモ、内務當局トシテ判斷シテ宜イト考
ヘタノデアリマス、第七ハ大藏大臣ニ向,
テノ御質問デアリマスガ、唯〓賣藥稅法ハ
大藏大臣ノ所管デアリマスケレドモ、賣藥
法ハ內務大臣ノ所管デアリマスカラ、賣藥
法ニ關スル限ニ於デ私ハ申上ゲマスガ、此
十條ニ於テ認メタ配合劑ヲ賣藥トシテ賣ル
時ニハ免稅スルヤ否ヤ、賣藥トシテ免許ヲ
受ケレバ、或ル場合ニ於テハ免許ヲ致シマ
ス、併シ賣藥ナルモノニハ效能書ガ附ケテ
アッテ、此賣藥ハ何ニ效能ガアルト云ウテ、
初メカラ效能書ガ附イテ居ルノデアリマ
ス、其賣藥ト、此新法ニ於テ配合劑トシテ
藥劑師ガ依賴者ノ要求ニ依シテ配合スルモ
ノハ何等效能モ書イテアリマセズ、何等藥
劑師ノ診斷ヲ加ヘナイモノトハマルデ別デ
アリマスカラ、之ヲ賣藥トスルナラバ賣
藥トシテ賣藥稅ガ課カル、賣藥ニシナケレ
バ藥品法十條ニ依ッテ稅ハ課ケナイ、斯ウ
云フ關係ニナリマス、併シ尙ホ稅法ニ付テ
精シイコトガ御聽キニナリタケレバ、大藏
省所管デ是ハ御答辯スルコトニ致シマス
(拍手)
〔國務大臣岡田良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=66
-
067・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 只今土屋〓三郞
君ノ御質問ノ第一ハ藥劑師ノ養成ノ事デ
ゴザイマス、而シテ土屋君ノ御質問ハ、今
日樂劑師ノ數ガ多キニ過ギルト云フ趣旨ヲ
以テ御質問ニナッタト考ヘマス、此學生ヲ
養成致スニ付テ數ヲ定メルト云フコトハ
非常ニ困難ナル問題デアリマス、今日醫師
ノ養成機關ガ旣ニ多キニ過ギル、醫師ハ斯
程澤山ニ養成シナクテモ宜イト云フコトヲ
主張スル人モアリマス、又或ハ商業學校ノ
數ハ既ニ多キニ過過ル、斯ノ如ク多數ノ實
業學校卒業生ヲ養成スル必要ナシ、斯業ニ
唱ヘル人モアリマスガ、此〓育機關ハサウ
機械的ニ、ドレ程ガ適當ダト云フコトヲ何
人モ之ヲ定ムルコトハ出來ヌノデアリマ
ス、成程或人ハ之ヲ多キニ過ギルト考ヘル
人モアリマスガ、或人ハ是ハ未ダ少キニ過
ギルト考ヘル人モアル、或ハ日本ニ於テバ
カリ働クト見マシタナラバ、多キニ過ギル
ト考ヘマシテモ、或ハ朝鮮、支那ニ出デ、
或ハ南洋ニ出デ、其他各地ニ出テ働クト云
フコトニ考ヘマシタナラバ、今日多キニ過
ギルト思フモノモ或ハ少キニ過ギルカモ知
レナイ、故ニ此學生ノ養成ノ數ト云フモノ
ハ正確ニ定ムルコトハ出來ナイノデアリ
マシテ、今日藥劑師ノ養成ガ果シテ多キニ
過ギルカドウカト云フコトハ頗ル當局ト
シテ正確ナル標準ハ定メ得ナイモノト考へ
テ居リマス、併ナガラ藥劑師トシテ養成セ
ラレタ者ガ、世ノ中ニ出テ藥劑師ニナルコ
トガ出來ナイ、或ハ藥劑師ガ多キニ過ギル
ト云フコトデアッテ、御互ニ職業上ノ競爭
ヲ起スト云フコトガアッテハ甚ダ不利益
デアリマスルガ故ニ、藥劑師ノ養成ニ付テ
ハ文部省ハ數年前其方針ヲ改メテ、從前
藥學ノ學校ハ醫學校ニクッ付ケテ居ッタモノ
デアリマス、左樣ニ致シマシテ、其學校ニ
於テ養成セラレタル者ハ單ニ藥劑師トシ
テ調劑ノ事ニノミ堪能ナル人ヲ養成スルト
云フヤウナ方針ヲ執リ來タタデデリマス
ガ、近來追々此學校ガ發達スルニ伴ヒマシ
テ、寧口是ハ單ニ調劑ト云フコトニ止マリ
マセズシテカラニ、藥品ノ製造ト云フコト
ニ重キヲ置クコトニ致シテ居ルノデアリマ
ス、隨テ以前ハ醫學校ニ附屬致シマシタモ
ノガ、段々醫學校ト分離スルヤウニ致シ、
若クハ獨立ニ工業學校ノ種類トシテ、之ヲ
設置スルコトニ致シテ居ルノデアリマス、
只今內務大臣ノ述ベラレマシタ德島ノ工業
學校ノ如キニ於テ、此藥學ノ學科ヲ置キマ
シタノモ、矢張其一例デアリマス、斯樣ナ
次第デアリマスルカラシテ、今日其數ガ多
キニ過ギマシタ所ガ、藥品ノ製造ト云フコ
トニ行キマシタナラバ、是ハドノ邊ガ適當
デアリマスルカ、今日ノ數ガ決シテ多キニ
過ギルト云フガ如キコトハナカラウト思
フ、是ハ其人ニ適當ナル人ヲ得マシテ、色
色〓究モ致シ、發明モ致シテ參リマシタナ
ラバ、其製藥事業ト云フモノハ非常ニ發達
致シマシテ、今日獨逸邊カラ輸人シテ居ル
所ノ藥品ヲ內國ニ於テ製造シ得ルト云フコ
トニナリマスレバ、人ヲ用ヰルニ於キマシ
テモ澤山ノ人ヲ要スルコトニナリマスノ
デ、卽チ今日ノ養成ト云フモノガ、未ダ多
キニ過ギルト云フコトハ出來ナイト考ヘル
ノデゴザイマス(拍手)
〔政府委員早速整、爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=67
-
068・早速整爾
○政府委員(早速整爾君) 大藏大臣ニ對シ
テ賣藥稅ノ事ニ關シテノ御尋デアッタノデ
アリマスガ、私カラ御答ヲ致シマス、先程
內務大臣カラ申述ベラレタ通リデアリマシ
テ、只今ノ所大藏當局ト致シマシテモ、此
賣藥稅法ニ變更ヲ加ヘル意思ハ無論持タヌ
ノデアリマス、賣藥ハ何所マデモ賣藥トシ
テ賣藥稅ヲ課スルコトノ出來ルモノト考ヘ
テ居ルノデアリマス、唯御尋ノ法律ヲ施
行シタ結果トシテ、賣藥稅ヲ課スル上ニ付
テ、或ハ不權衡ヲ生ジハシナイカト云フ御
意見ノヤウデアッタノデアリマス、只今ノ
所デハサマデニ考ヘテ居リマセヌ、併シ若
シ非常ナル不權衡ヲ生ズルト云フ虞アリト
致シマスナラバ、他日稅制整理ノ際ニ於テ
考慮スベキ問題ダト考ヘテ居ルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=68
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069・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 只今內務大臣ノ御答辯ノ
中ニハ私ノ質問ニ觸レナイ事ガアリマスカ
ラ、更メテ此席カラ御尋致シマス、僻遠ノ人
ノ爲ニ買藥トシテ第十條ヲ設ケタト云フ御
說明デアリマシタガ、然ラバ藥劑師ノ無イ
地方ニ對シテ其分布ヲ如何ニスルノデアル
カ、之ニ對シテ内務大臣ノ御答辯ガアリマ
セヌ、モウ一ツハ宮內大臣ニ對シテ何等御
交渉ガ無カッタト云フコトデアリマス、若
シ誤シテ宮内省出入ノ者ニシテ先年ノ如キ
場合ガアリマシタトキニ、內務大臣ハ責任
ヲ負ヒマスカ、此二ツヲ御答辯願フノデア
リマス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=69
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070・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 此法律ガ成立
致シマシテモ、ソレガ爲ニ藥劑師マデ分布
シテ、買藥ノ便利ヲ圖ルト云フコトマデハ
致シマセヌノデアリマス、或所ニ行ッテ之
ヲ爲サウト思フ者ハ禁ズルト云フコトヲセ
ナイダケデ、藥劑師ヲ增加シテマデ買藥ヲ
獎勵スルト云フコトハ致シマセヌノデス、
宮内大臣ニ交涉セナカツタト云フ事柄ハ、
單リ此問題バカリデハアリマセマ、內務行
政デアルモノヲ、何事デモ一應ハ宮内省ニ
斷ラナケレバ實行ガ出來ヌト云フヤウナ、
左樣ナ關係ノモノデハナカラウト思ヒマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=70
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071・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 森田茂君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=71
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072・森田茂
○森田茂君 極ク簡單デアリマスカラ當席
カラ御許ヲ願ヒタイ、ホンノ一言デアリマ
ス-私ノ質問ヲ致サント欲シマスル所
ハ、他ノ議員諸君カラ大半盡サレタノデア
リマスガ、唯ミ一點御尋致シタイト考ヘマ
スルノハ、先刻中原德太郞君ノ御質問ノ中
ニ、又理由ハ異ニ致シマシタケレドモ土屋
清三郞君ノ御質問ノ中ニ於キマシテモ、中
火衞生會議ニ於キマスル所ノ藥品法、卽チ
本件ノ骨子トモナルベキ問題トナッテ居リ
マスル藥品法第十條、此事ニ關シマシテ中
史衞生會ニ於テハ色々變遷モアッタヤウデ
アリマスケレドモ、結局所謂栗本案ナルモ
ノガ滿場一致ヲ以テ成立ヲ致シマジテ、サ
ウシテ其結果ガ本案ノ藥品法第十條トナツ
テ居ルガ如クニ承知ヲ致シテ居ルノデアリ
マス面シテ其當時私共ガ新聞ニ、或ハ又
政府當局ノ方ガラ漏レ承ル所ニ依リマスレ
中央衞生會ノ委員諸公ハ其栗本案ナ
ルモノニ對シマシテハ非常ナル滿足ヲ表
シ、或ル委員ノ如キハ、政府委員ノ手ヲ
執シテ握手ヲ致シクト云フコトニ私共ハ聞
イテ居ルノデアリマス、然ルニ之ニ對シテ
中原君ガ只今御尋ニナリマシタ迪リ、其後
勿論形ハ違ヒマスルケレドモ、中央衞生何
ノ會長タル北里男爵ハ日本醫師會長ト致
シマシテ、餘程之ニ異シタル行動ヲ執ッテ居
ルガ如クニ承知スルノデアリマス斯ノ如
キ事ニ付キマシテ北里男爵ノ人格、或ハ二
重人格ト云フヤウナコトハ此際申上ゲル
コトハ私ハ遠慮スルノデアリマス、併ナガ
ラ只今申上ゲル如ク、中央衞生會ニ於キマ
シテ斯ノ如ク御歴々ノ集リ、又或ル意味ニ
於キマシテハ中央衞生會ハ日本醫師會ノ
諸君ガ或ル程度マデ左右スルガ如クニ考へ
ラレルヤウナ會議テアルヤウデアリマス
ガ、此會議デ定リ。マシタモノヲ、日本醫師
會ノ諸公ガ左樣ナ態度ヲ執ルト云フコトニ
付キマシテハミ〓此會議ノ繼續中ニ於キマシ
ラ、所謂土屋君ノ申サレマシタル如ク、政
府當局ト致シマシテ何等カ壓迫トカ、或ハ
脅威トカ云フヤウナ手段ヲ、執ッタモノデ
モアリハシナイカト云フヤウナコトモ考へ
ルノデアリマス、疑ハレルノデアリマス、
私共ハ此問題ヲ中央衞生會議ノ經緯ト云フ
モノヲ明ニスルト云フコトハ、或ハ世ノ中
ノ人ガ此問題ニ對シテ懷イテ居リマスル所
ノ疑ヲ解ク上ニ於キマシ非常ニ必要
ナ事デアルト思フノデアドス、只今中原
博士ハ祕密會デモト云フヤウナ御話ガアリ
マシタガ、是ハ祕密會ニ於テハ私ハ滿足ヲ
致シマセヌ、玆ニ公然ト經緯ヲ明ニ致シマ
シテ、願クハ此問題ニ付キマシテ、世ノ中
ノ人ガ疑ウテ居リマス所ノ所謂疑ナルモノ
ヲ解キ、又吾々議員ト致シマシテハ別
醫師ト云ハズ藥劑師ト云ハズ、公平ナル
見地ヨリ致シマシテ、此問題ヲ圓滿ニ解決
致シマシテ、而シテ此問題ナルモノガ全國
ニ向ッテ非常ナル大ナル波紋ヲ與ヘテ居ル
コトヲ私ハ遺憾ト致シテ居ル者デアリマス
ガ、ドウカ圓滿ナル解決ヲ望ム上ニ於キマ
シテモ、其經緯ヲ明ニスルト云フコトヲ希
望〓シマスカラ、只今内務大臣ノ申サレル
ガ如ク、內務大臣ニ於テ御承知ノナイ事ハ
片岡政務次官、又山田衞生局長等ヨリ詳細
ナル御答辯アランコトヲ希望シテ置キマ
ス、是デ私ノ質問ハ終リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=72
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073・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 片岡政務次官
政府委員片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=73
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074・片岡直温
○政府委員(片岡直溫君) 只今森田君ヨリ
御質問ガゴザイマシタガ、ソレヨリ先キ中
原君、土屋君等ノ御質問中ニ、本案ノ諮問
ヲ致シマシタ所ノ中央衞生會ノ本案ニ對ス
ル會議ノ實情ヲ明ニスルヤウニト云フ趣旨
ヲ以テ、御質疑ガアッタノデアリマス、本
案ヲ中央衞生會ニ諮問ヲ致シマシタノハ一
月二十七日デアリマス、中央衛生會ニ於テ
第一囘ノ會議ヲ聞キマシタノハ一月ノ二十
九日デアリマス爾來本案ニ付テハ小員
會ヲ設ケ、或ハ總會ヲ開キ、數回〓究ヲサ
レタノデアリマスガ、局三月五日ニ至ッテ
此法律案ノ如キ決議ヲ見タノデアリマス、
中央衞生會ハ會員ハ三十二名デアリマス、
其中醫師ガ十七名、藥學者ガ五人、官吏ガ
七人、獸醫ガ三人デアリマス、此會議中ニ
醫師ノ側ト築劑師側トガ委員會外ニ於テ活
動ヲセラレタト云フコトハ是ハ種々ノ印
刷物等ノ配付ニ依ッテモ御承知デモゴザイ
マセウシ、其他ニ依ノテモ諸君ハ御承知デ
アラウト思フ、周圍ノ事情斯ノ如クナリマ
スル以上ハ、此中央衞生會ノ會員トシテハ
相互ノ間ノ意見ヲ十分ニ取纏メル爲ニハ
非常ニ苦心ヲ拂ハレタコトデアラウト思フ
ノデアリマス、今質問者ノ中ニハ政府ヨリ
殊ニ何等カノ壓迫ヲ加ヘタトカ、甚シキニ
至ッテハ、新ニ委員ヲ任命シタト云フガ如
キコトヲ仰セラレタ方モアルノデアリマス
ガ、成程農商務省ノ畜產局長、是ハ前ノ會
員ガ更ッタノデアリマスルカラ、當然任命
ヲシナケレバナラマノデ任命シタ者ガアル
ノデアリマス、其他本案ヲ通過セシムル爲
ニ新シク會員ヲ-委員ヲ命ジタト云フガ
如キコトハ一切ナイノミナラズ、此本案ニ
付テハ藥劑師ト醫師トノ間ニ於テ埋論ト
シテハ免モ角、實際トシテ多少利害関係ノ
アルコトハ勿論デアリマス、ソレ故ニ成ベ
ク政府トシテハー涉ヲ致サズ、卽チ此會員
ニ醫師トシテ十七人モ加ッテ居ル、其他獸
醫ノ方モ三人モ居ラルヽ譯デアリマスカ
ラ、此間ニ於キマシテ十分相互ノ利害ヲ〓
究セラレテ、圓滿ナル決定ヲ見ルコトヲ期
待致シタマデヽアッテ、此委員會ノ委員ニ向ソ
テ斯ウ云フ風ニシタラ宜カラウトカ、ア、
シテ貰ヒタイト云フガ如キ希望ヲ一切申述
ベタコトガ無イノデアリマス、之ガ爲ニ小
委員會等ヲ設ケテ、所謂長岡案ナルモノモ
アノタノデアリマス、又其他屢、色ミノ案ガ
出タト云フコトハ事〓只デアリマス、種々ニ
研究ノ結果、所謂栗本案ナルモノガ出マシ
テ此案ニハ曩ニ長岡案ガ宜カラウト思ノ
テ居シタ人モ、此栗本案ノ方ガ遙ニ宜イ、
斯ウ云フコトニ相成シテ、委員會ハ長岡ト
云フ人ハ立タナカッタヤウデアリマスルガ、
其他ノ方ハ全會一致デ決マッタノデアリマ
ス、卽チ醫師側カラ出テ居ラルヽ方々ハ
悉ク之ニ賛成ヲセラレタ、如何ニモ洵ニ良
イ案デアルト私共ハ思ウテ居ル、何トナレ
バ最初ノ案ハ多少醫師ノ方ノ側ノ範圍ニ藥
劑師ノ仕事ガ入リ過ギル、斯ウ云フ感ジヲ
懐カレタト思ッタノデアリマスガ、此修正
ニ依シテ醫師ノ方ノ意見モ行ハレ、藥劑師
ノ方ノ面目モ立ツコトニナッテ居ルト思フ
ノデアリマス、又利害モソレ程甚シキ影響ヲ
受ケナイヤウニナッチ居ルト思フイデア
リマス、然ルニ先刻中原君ノ御演說、
竝ニ今森田君ノ御話中ニ、一旦斯ウ云
フ決議ヲシテ置キナガラ、他ノ機關ニ於テ
反對ノ行動ヲ執ッタト云フガ如キコトガア
ルノハ怪シカラヌ、中原君ハ其文章マデ玆
ニ御讀上ゲニナッタノデアリマスルガ、成程
日本醫師會ノ會長ハ北里男爵デアルト思ヒ
マス、當日北里男爵ハ中央衞生會ノ會長デ
ゴザイマシタカラ、此賃否ノ何レヲモ表
市ヲサレナカッタト思フノデアリマス、併
ナガラ日本醫師會ノ理事ヲ爲サレテ居ル方
方ハ矢張委員トシテ此案ニ賛成ヲ爲サレ
テ居ル、斯樣ナ次第ニナンテ居リマスカラ、
醫師ノ側ノ全部ノ-主ナル方ハ本案ニ同
意ヲ表サレテ居ルモノト私ハ信ジテ居ル
其裏面カラ反對的行動ヲ執ラレタト云
フガ如キコトハ何等カノ間違カ、若クハ
出發ガ違シテ居リハセマカト思フノデアリ
や 、然ラザレバ論理ガ合ハマノデアリマ
ス、其裏面ニ伏在シテ居ルモノ若シアリト
セバ、是ハ相當調査シタ後ニ非ザレバ、
何トモ茲ニ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、
中央衞生會ニ諮問致シマシテ以來ノ經過結
果ハ斯樣ナ次第デアルノデアリマスチタ
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=74
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075・森田茂
○森田茂君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=75
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076・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 森田茂君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=76
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077・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=77
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078・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 森田君ニ發言ヲ許シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=78
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079・森田茂
○森田茂君 私ハ本案ハ大ニ考慮ヲ要スル
問題デアルト考ヘマス、但シ只今片岡政務
次官ノ御演說ニ依リマシテ、大體此經緯ヲ
明ニスルコトヲ得マシタコトヲ滿足ニ考へ
ルノデアリマス、又是ト同時ニ私ハ中央衞
生會ナルモノニ向ヒマシテ、政府當局ト致
シマシテハ相當ナル改善ヲ爲スノ必要ガア
リハセヌカト考ヘマスルガ、是ハ別ニ御谷
辯ヲ望ム譯デハアリマセヌ、サウ云フ意味
ニ於キマシテ、將來十分ノ御注意アランコ
トヲ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=79
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080・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 中原君ヨリ議事進行
ニ付テ發言ヲ求メラレマシタ、之ヲ許シマ
ス-中原德太郞君
〔中原德太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=80
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081・中原徳太郎
○中原德太郞若 私ノ質問ニ對シマシテ只
今片岡政務次官カラ御答辯ガアッタノデア
リマスルガ、其事項ニ付キマシテ、殊ニ中
央衞生會ノ議事ノ經過竝ニ結果ニ付キマシ
テハ、大體ニ於キマシテ私ノ永知シテ居リ
マスル點下同樣デアリマスルカラ、之ニハ
滿足ヲスルノデアリマス、唯〓私が伺ヒタ
イノハ中央衞生會ナルモノハ先刻質問ノ
時ニ申述ベマシタル如ク、政府ノ衞生ニ關
スル最高諮詢機關デアリマシテ、最モ神聖
ナルモノデナクテハナラスト私ハ信ズルノ
デアリマス、此衞生會ノ委員モ從フテ最モ大
切ナル責任ヲ有シテ居ラレルモノト私ハ確
信スルノデアリマス、然ルニ斯ノ如キ委員
ニシテ、只今申述ベマシタル如キ、外ニ在シ
テハ氏衆ヲ煽動シテ之ニ反對運動ヲシ、內
ニ在シテハ之ニ滿場一致ヲ以テ贊成スルガ
如キ人物ヲ以テ、中央衞生會ヲ組織シテ、
之ヲ政府ノ最高諮詢機關ト認メテ居ラレル
ヤ否ヤト云フコトニ對スル御答辯、同時ニ
是等ノ中央衞生會ノ改造ト云フコトニ向ッ
テ如何ナル所見ヲ有シテ居ラレルカト云フ
コトヲ伺ヒタイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=81
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082・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉良元夫君
〔吉良元夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=82
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083・吉良元夫
○吉良元夫君 只今上程セラレテ居リマス
ル所ノ藥劑師法案及藥品法案ナルモノ
ハ-是ハ私ハ明ニ申上ゲテ置キマス、門外
漢テアリマス、門外漢デアリマスケレドモ
ガ、此法案ガ今日ニ至リマシテ上程サレタ
ト云フコトニ付テハ當局ニ於テモ容易ナ
ラヌ御苦心ノアッタコトヽハ信ズルノデア
リマスガ、此兩法案ガ將ニ提出セラレント
スルニ臨ンデ、全國ノ醫師及藥劑師、卽チ
各自其業務ノ側ニ立ッテ居ル人方ハ非常ニ
利害ガゴザイマスカラシテ、吾々ノ手許ニ
向ッテ種々ナル忠告、種々ナル注文、或
種々ナル指導等ヲ致シテ來テ居ルノデアリ
マイ、ソレデ吾々ハ專門的ニ之ヲ〓究シタ
モノニ非ザルガ故ニ、深キ注意ヲ拂ウテ此
原案ノ筋ヲ見タイト思ウテ居ッタノデアリ
マスガ、是ハ只今ノ御說明ニ依リマスト、
當局ニ於テハ一月二十七日ニ中央衞生會ニ
諮問サレテ、サウシテ諮問後ニ至ッテ所謂長
岡案ナリ栗本案ナリ、色ニノ案ガ出テ、サ
ウシテ圓滿トカ不圓滿トカ、ノレハドウデ
モ宜シウゴザイマスガ、免ニ角此具體案ガ
成立シテ、今日吾々ノ手許ニ配付セラレタ
ノデアル、實ニ是ハ重大ナル案件デアリマ
セウガ、此ニ至ノテ私ハ吾々ガ所謂此立法
議定權ニ參加以シマスル上ニ付テ、頗ル常識
上ヨリ之ヲ考ヘテ見マスルト、會期ハ如何
ニモ切迫シテ居ルノデアリマシテ、今日ヨ
リ開會豫定日ハ十九日、二十三日、二十四
日、二十五日ニ會期バ盡クルノデアル、而シ
テ此法案ガ突如トシテ茲ニ出テ來夕、之ヲ
委員會ノ議ニ掛ケマシテ、適當ナル調査、
考究、慎重審議ヲ盡シテ此本會議ニ掛ケ
テ、サウシテ又貴放院ニ送シテ、之ヲ通過
シテ法律ト爲サンケレバナラヌノデアリマ
スガ、今日ノ場合是ハ案其モノヽ自體ハ甚
ダ重要デアルケレドモガ、條目ハ餘リ澤山
ナモノデハアリマセヌ、アリマセヌケレド
モガ、吾々ノ知得ル程度ニ於テ、藥劑師ノ
人ノ側カラ色ミノ御說ヲ承シテ見ルト、如何
ニモ其說、其議論、甚ダ考フベキ點ガアル、
又一方ノ醫師ノ立場ニ在ラルヽ所ノ人ミノ
說明ヲ聞イテ見ルト云フト、唯、醫師其者
ノ利害トカ云フ點デハナイ、國民衞生ノ上
ニ付テ適當ナル處方箋ニ依ラザル-先刻
カラ段々御討論ノアリマシタ手療治ト云フ
ヤウナコトハ無暗ニヤリハ致シマスマイ
ケレドモ、此十條ニ規定セルガ如キ頗ル廣
汎ニモ考ラレ、頗ル狹小ニモ考ラレル、法文
ノ解釋上デハ仲縮自在ノ手心ガ出來ルヤウ
ナモノヲ御制定ニ相成ルト云フコトニナリ
マシタトキニハ頗ル是ハ重大ナル結果ヲ
持來スルモノデアラウト私ハ信ズルノデア
ルンコデ私ノ質問致シマスル要點ハ外デ
ハナイ、最早會期切迫、議會ノ終了ニ臨ン
デ、ドサクサ紛レニドウデモ宜イ、人ハ倦
怠ヲシテ居ル場合ニ、議會ヲ一瀉千里ニ通
過セシムルト云フ御積リデアルカ、或ハ慎
重審議ヲシテ尙之ヲ貴族院ノ會議ニ付シ、
所謂十分ニ愼重審議ヲ經夕立法卜云フモノ
ガ出來ルト云フ常識ヲ持シテ之ヲ御出シニ
ナッタノデアルカ(「質問ノ趣旨ガ分ラヌ」ト
呼フ者アリ)能ク聽ケバ分ル、玖テ聽
ケ-當局ガ之ヲ中央衞生會ニ諮問スルノ
ハ必要デセウ、其諮問期間モ三十八日ニ亙
テ居ル、サウシテ中央衞生會ガ如何ナル立
案ヲシヤウトモ、法律ヲ議定スルノハ吾々
ノ権能ニアルノデアル、其權能アル者ニ僅
カ四日シカナイ、四日シカナイノニ貴衆兩
院デ愼重ニ審議シテ之ヲ決定シ得ルト云フ
コトヲ、アナタ方ハ常識上ノ御考ガアノテ
ノ事デアリマスカ、甚ダ私ハ政府ノ誠意ヲ
疑フ者デアリマス、斯樣ナル輕々ナル事デ
ハ吾々立法議定催ニ參與スルコトガ出來ヌ
ノデアル、貴衆兩院ヲ通過シテ法典ニナル
コトヲ、此四日間ニ於テ爲シ得ルモノデア
ルト云フコトヲ確信シテ居ラルヽノデアル
カ、確信セズシテ尙且ツ唯〓之ヲ出シテ其成
行ニ委セル御意思デアルカ、又此案ノ內容
ニ付テハ頗ル〓究スベキ餘地ガアルノデア
ル、何トナレバ藥劑師ノ定義ノ如キモ各國
ノ立法ト違クタ定義ヲ使シテ居ル、藥品ノ製
造ヲ爲スヲ本旨ト爲スベキ藥劑師ヲ、醫師
ノ處方箋ニ依シテ調劑ヲ爲ス者ヲ樂劑師デ
アルトシテアル、是等ノ事ハ吾々ハ此立法
ヲ慎重審議ヲ經夕立派ナ原案トハ認メヌノ
デアル、(ノウ〓〓ヒヤ〓〓)與黨諸君ハ
何デモ彼デモ無我ニ押シテ行キサヘスレバ
宜イト云フ御考カ知ラヌガ、其樣ナ不法ノ
半デ行ケルモノデハナイノデアル、蓋シ此
四日間ニドウシテ此重要ナル法案ヲ議了シ
得ルノデアルカ、常識ヨリ決シテ出來ナイ
コトデアル、其樣ナ亂暴ナ事ヲヤルト云フ
ノハ是ハ立法議定權ヲ甚ダ輕々シク取扱
フモノデアンテ、吾々ハ慨嘆ニ堪ヘナイノ
デアル、此點ニ付テ内務大臣ノ明確ナル御
答辯ヲ求ムル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=83
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084・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻内務大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=84
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085・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今本案カ會
期切迫シタル時ニ提出セラレタルコトニ付
テ、此案ガ審議セラレ法律ニナルト云フコ
トヲ確信シテ居ルヤ否ヤト云フ御問ノヤウ
デアリマシタ、先程モ御質問ニ對シテ御答
致シマシタ通リ、今少シク早ク提出スルコト
ガ出來タナラバ大變宜カッタノデアリマス
但シ後レタルコトハ先程政府委員ガ述ベマ
シタ通リ、專門家ノ審議ヲ經タ爲ニ後レタ
ノデアリマシテ、ソレダケ本案ニ付テハ〓
究ガ十分積ンデ居ルノデアリマス、而シテ
藥劑師ト云フコトノ定義ニ付テ御意見ガア
リマシタガ、是ハ現行法規ニ於テ與ヘラレ
テ居ル定義其モノデアリマシテ、決シテ今
囘之ヲ改メタノデモ何デモアリマセヌ、而
シテ醫師ニ付テハ醫師法アリ、齒科醫師ニ付
テハ齒科醫師法アリ、大抵同ジヤウナ職業
ノ人ニ付テハ法規ガアルノデアリマシテ
其法規ト似寄タ法規ニ依テ茶劑師法ヲ制定
シ、身分ヲ確立シ、藥劑師會卜云フモノヲ
拵ヘテ、藥劑師ノ意見ヲ發表スルニ付テ、
或ハ藥劑師ノ主張ヲ明ニスルニ付テ便宜ヲ
有スルコト恰モ醫師會、菌科醫師會ノ如キ
モノデアル、此點ニ於テハ類似ノ法規デア
リマスカラ、凡ソ斯ウ云フヤウナ立派ナ立
法ヲスルノナラバ、大抵似寄シタ所デ斯ウア
ルベキト云フ所ガアルノデアリマシテ、法
文ハ十何條ト云フヤウナ法文デアリマスケ
レドモ、事柄ハ頗ル簡單デアンテ、別段大變
ニ御〓究ニチルニ付テ困難ヲ感ゼラレル程
ノ法律案デハナイト思フノデアリマス、又
藥品法ニ付テモ大體ハ現行法ガ認メテ居ル
ヤウナ、藥品ノ濫用ヤ誤用ガアッテハナラ
ヌト云フ規定ガ設ケテアルノデアリマスカ
ラ、是亦今改メテ大ニ〓究シナケレバナラ
ヌト云フ程ノ事柄デハナイノデアリマス、
問題ハ先程カラ數回ノ應答ニ依ッテ御承知
ニナンテ居リマス通リ、藥品法案ノ第十條
ニ於ケル混合販賣ト云フコトヲ許スガ宜シ
イカ否ヤト云フコトガ、御意見ノ分レテ居
ル所デアルト思ヒマス、之ニ就テ十分御〓
究ニナリ、御審議ニナッテ、ンレニ付テノ
御判斷ガ出來レバ、他ノ點ハ凡ン他ノ法規
ナリ、現行法ニアル所ヲ整理シタノニ過ギ
ナイノデアリマスカラ、左程ニ〓究ニナル
ニ時間ヲ要スル法律案デハナイクデアリマ
ス、シレデアリマスカラ今日カラ二十五日
マデク則間ガアリマスレバ、貴衆雨院ニ於
テ慎重ニ審議セラルヽニハ十分ナル期間ガ
アリ、此法案ガ審議セラレ、法律ニナルコ
トヲ私ハ確信シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=85
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086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 此際議事進行ニ關ス
ル發言ヲ許シマス、八木逸郞君
〔八木逸郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=86
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087・八木逸郎
○八木逸郞君 私ハ極ク簡單ニ議事進行ニ
付テ申シタイクデアリマス、先程我ガ親愛
ナル中原君ガ議事進行ト云フ名ノ下ニ中央
衞生會ヲ誹謗シ、中央衞生會ノ委員ヲ御批
評ニナッタノハ、是ハ私敢テ彼是レ申サヌ
ノデアリマス、併ナガラ其言葉ノ中ニ、煽
動シテ院外デ働イタ、斯ウ云フ言葉ガアツ
タヤウニ思フノデアリマス、日本全國ノ醫
師大會ガ此法案ニ反對シテ、而シテ輩轂ノ
下ニ集ッテ居ッタ此運動ヲ、日本醫師會ノ幹
部若クハ二三ノ入ノ煽動ニ依ルト云フヤウ
ナ言葉ハ私ハ中原君ノヤウナ溫厚ナル人
ニ、唯、中央衞生會ヲ批評スル言葉ノ迸リ
トシテ出タモノデナイカトハ信ズルノデア
リマスケレドモ、若シ左樣デアッタラ御取
消ヲ願ヒタイ、然ラズシテ煽動ナリト認メ
ラレルニ於テハ吾々ハ他ノ方法ヲ以テス
ルガ、之ヲ默止スルコトハ出來ナイノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=87
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088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今八木君ガ御述ニ
ナリマシタ事ニ付テ、中原君ハ如何御考ニ
ナリマスカ
〔「必要ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=88
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089・中原徳太郎
○中原德太郞君 別ニ私ハソレニ對シテ取
消スノ必要ヲ認メマセヌ、煽動ト云フ言葉
ハ明ニ用キマシタ、併シ私ハ電報デ色々
ノ事ヲ通牒ヲ發スル、或ハ集會ヲ催シテ其
意味ニ於ケル運動ヲスルト云フヤウナコト
ハ矢張煽動ト云フコトニ理解シテ居リマ
ス、若シ私ノ理解ガ誤シテ居ルナラバ取消
シマスガ、私ハサウ云フコトハ煽動ト言ツ
テ宜カラウト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=89
-
090・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ大口喜六君
〔大口喜六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=90
-
091・大口喜六
○大口喜六君 私ハ極メテ簡單ニ此場合二
項ダケ質問ヲ致シテ置キタイト思フノデア
リマス實ハ出來マスナラバ質問ヲ差控エ
タイト思ッテ通告ヲ致サズニ居ツタノデアリ
マスガ、是マデ大分澤山ノ御質問ガアリマ
シテモ、殆ド其全部ガ樂品法第十條ノミニ
限ラレテ居リマシテ、此大法案ノ藥劑師
法藥品法、雙方ニ亙シテノ質問ガ殆ド無
カツタヤウデアリマス、私ハ此樂品法第十
條ニ付テモ多少ノ意見ハ持ノテ居リマスガ、
ツレヨリ先ニ藥劑師法、藥品法、此全體ニ付
テ疑問ガアルノデアリマス、之ヲ二ツニ分
ケテ此際政府ニ承シテ置キタイト思ヒマス、
先ヅ私ハ此藥劑師法ノ方カラ承リタイト思
フノデアリマスガ、藥劑師法ノ第一條ヲ見
マスト「藥劑師トハ醫師ノ處方箋ニ依リ調
劑ヲ爲ス者ヲ謂フ」トアリマス、ソレカラ
第五條ニ參リマシテ「藥劑師ニ非サレハ販
賣又ハ授與ノ目的ヲ以テ調劑ヲ爲スコトヲ
得ス」トアリマス、卽チ此樂劑師法ト云フ
モノハ第一條カラ第十八條マデアリマシ
テ、之ニ附則ガ五條附イテ居ルノデアリマ
ス、此全體ヲ通覽致シマシテ、只今讀上ゲ
マシタ一條ト五條トガ骨子ニナッテ居ルノ
デアリマス、卽チ藥品ノ販賣授與ノ目的ヲ
以テ藥品ノ調劑ヲ致ス者ガ、藥劑師ニ限ラ
レテ居ルコトハ此藥品法デ制定サレテ居ル、
然ルニ此澤山ノ箇條ヲ讀ンデ、第十八條マ
デ本文ヲ讀ミマシテ、附則ニ參リマスト、
附則ノ第二項ニ於テ斯ウ云フコトガ書イテ
アル「醫師、齒科醫師又ハ獸醫ハ其ノ診療
ニ用フヘキ藥品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依
リ第五條第一項ノ規定ニ拘ラス調剤ヲ爲ス
コトヲ得」トアリマス、卽チ第五條ニ於テ
ハ樂品ノ調劑ヲ致シマシテ、之ヲ販賣授與
致ス者ハ藥劑師ニ限ル、藥劑師以外ノ者ハ
一切相成ラナイト定メラレテ居ルノニ、附
則ヘ持クテ行ッテ、醫師ト齒科醫師ト獸醫ト
ハ己レガ診療ニ使フ藥品ハ調合シテ販賣授
與シテモ宜イト云フ、ソコデ藥劑師ニ處方
ヲ持シテ行ク者ハ誰デアルカト云ヘバ藥
劑師ハ醫師ノ處方ニ依ルニ非ザレバ調劑ヲ
スルコト出來ナイ、其處方ヲ出ス本家本元
ノ醫師ハ、自分ノ療治スル者ダケハ自分デ
手盛ヲシテ宜イト云フノデアリマス、然ラ
バ藥劑師ニ樂ヲ調合シテ貰ヒニ行ク人ハ
何ニ依シテ行クカト云フコトニナル、皆醫者
ガ手盛ヲヤッテシマフ、自分一人デ手盛ヲ
スルヤウニ許サレテ、醫者ハ自分デ藥ヲ賣
ルカラ、藥劑師デナクテハ調合ヲスルコト
ハナラヌト定メテアル、法律ハ此一箇條ノ
附則ニ依ノテ打消サレテ居ル、是ガ多年ノ
醫藥分業ノ說ノ起ル所以デアルト私ハ痛感
致シテ居リマス、凡ソ我ガ日本國ガ藥劑師
ヲ設ケタ始ハドウデアルカ、先刻土屋君ノ
御質問ハ私ハ實ハ謹ンデ水ッテ居ッタ、良
イ質問デアルト失禮ナガラ承ッテ居ッタノデ
アリマス、我國ニ於テ醫學ガ段々進步シテ
西洋ノ醫學ガ這入ッタ結果、實ニ醫者ノ學
問ト云フモノハ澤山ノ種類ガアッテ、同ジ
醫者ノ中デモ婦人科モアレバ耳鼻咽喉科モ
アリ、内科モアリ、外科モアル、外科ノ中
デモ幾ッカニ分レテ參マテ、専門專門ニナ。フ
テ居ル、到底醫者ガ一方ニ於テ藥其モノヽ
〓究ヲシテ居ルト云フコトハ出來ナイカラ、
藥ハ獨逸或ハ英國、亞米利加等デヤッテ居ル
ヤウニ、藥劑師ト云フモノヲ設ケチ、藥ノ
學問ヲ醫者ノ學問ヨリ引分ケテ、藥劑師ト
ト云フ者ヲ置イテ、築品ノ取扱ハ總テ藥劑
師ニ委セテ、我國ノ公衆衞生ヲ進メナケレ
バナラヌ、此趣意ニ依ノテ、一體樂劑師ト云
フモノヲ設ケラレテ居ル、私ハ今日ハ議論
デナイカラ此所デ申シマセマ、内務大臣ハ
私以上ニ御〓知デアルト思ヒマスカラ茲ニ
希サナイガ、古イ物ヲ御調ニナレバ、其
當時醫者ノ泰斗ト言ハレテ居ル人ハ悉ク醫
藥分業ヲ唱ヘテ居ル、勿論其時分ニハ藥劑
師ト云フモクハ日本ニハ一人モ無イノニ、
醫者ノ奏斗ガ醫藥分業ヲシナクテハイケナ
イト熱心ニ唱ヘテ、藥劑師ト云フモノヲ拵
ヘテ醫樂分業ノ元ヲ始メタ、ソコデ段々規
則ガ出來テ來タガ、偖テ我ガ日本帝國ノ實
際ハドウデアルカト云フト長イ間ノ習慣
ガ醫樂樂業デ、醫者ハ脈ヲ診ルダケニ非ズ
シテ藥品ヲ賣ル此樂品ヲ賣ラナケレバ醫
者ノ生計ガ立タナイト云フ日本ニ社會問題
ガアリマシテ、中〓此醫藥分業ガ行ハレナ
イ藥品法ノ第十條ニ付テハ大分理想ヲ
唱ヘル方モアッテ、御立派デアルト思シテ聽
イテ居リマス、ツレ程理想ニ趨ルナラバ、先
以テ醫藥分業ヲシテ掛カルノガ當然デアル
ト信ジテ居ル(拍手)サウサヘスレバ藥品法
十條ハ削ラレテモ結構デアル、十條ヲ削リ、
賣藥モ全廢シ、一切素人ニ藥品ヲ賣ラナイ、
醫者ハ何所マデモ脈ヲ診ル者、藥劑師ハ調
劑ヲスル者トハッキリ決マッテシマヘバ理想
通リ、所ガ我國ノ現狀ハ中ニ實際ガサウハイ
カナイ、イカナイカラ藥劑師法ト云フヤウ
ナ長イ箇條ヲ作リ、大法典ヲ作ラレテ、而
モ附則ノ一條一項ニ依シテ此全體ガ沒却サ
レテ居ッテ·一万何千ノ藥劑師ト云フモノ
ハ一體何ガ自分ノ商賣ダカ分ラナイ、斯ウ
云フコトニナッテ居ル〓拍手)之ヲ全體解決
シテ掛カラナケレバ、我國ノ醫者ト藥劑師
ノ間ハ親密ニナラナイ、一體醫者ト藥劑師
ト喧嘩スルナント云フコトハ私ハ大間違
デアルト思フ、而シテ多數ノ議員諸君ニ失
禮デアルガ、御迷惑ヲ掛ケズ、政府モ亦之
ヲ早ク解決サレヽバ斯ウ云フ迷感ハ無ク。
テ濟ム、此本ヲ解決シナケレバナラヌガ、
如何セン、醫者ハ多數、藥劑師ハ少數、多
勢ニ無勢、ソレデ遂ニ醫藥分業ハ何時デモ
葬ラレル、私ノ如キモ屢、選舉圖係ノアル
色ふノ人ニカラ、藥劑師ト云フ古イ肩書ヲ
持ノテ居ル爲ニ屢、壓迫ヲ加ヘラレテ居ル、
サウ云フ半デ何時マデモ此議場ヲ混亂セシ
ムルト云フコトハイケナイカラ、何時カ政
府ハ此根本ヲ解決シナケレバナラヌト吾々
ハ考ヘル、吾々ハ此議院ニ出テカラ十五年
バカリニナルガ、未ダ曾テ一度モ醫樂分業案
ヲ此議場ニ提出シタコトハナイ、何故デア
ルカト云へバ現在ノ事情、醫者ノ狀態ヲ
モ考察シ、社會狀態ト云フモノモ考ヘナケ
レバ、單純ノ理想ノミデハイカナイト信ジ
テ〓リマス、吾々ハ今日マデ醫藥分業案ヲ
出サナイケレドモ、政府ニ此解決ダケハ常
ニ吾々ハ迫ッテ居ル、所ガ今囘政府ガ玆ニ
見ル所ガアッテ、此多年ノ困難ナ反對ヲ受
ケル問題ヲ一擧ニシテ解決シヤウト云フ考
ヲ立テラレテ、長イ間中央衞生會ニ諮ラレ、
忍耐ニ忍耐ヲシテ今日此案ヲ出サレタト云
フコトニ付テハ、私ハ現内閣ニ對シテ極メ
テ敬意ヲ拂フ所ノ者デアルノデアリマス
(拍手)サウナルト私ハ質問モシナクテハナ
ラナイ、今ハ已ムヲ得ヌトスルガ、追々ニ
ハ理想ニ近ヅイテ、此附則ヲ取ッテ醫藥分
業ヲ爲スノ意思アリヤ否ヤ、之ヲ私ハ先ヅ
政府ニ承リハイノデアリマス、一面ニ於テ
此次ニ承ルノハ藥品法ノ十條デアリマス、
藥品法ノ十條ハ成程只今ノ理想カラ言ヘ
バ、私ハ餘リ極ク褒メラレタ法トハ思シテ
居ラヌ、併ナガラ一部ノ方ガ仰セラレテ居
ル程ニ天下國家ニ古ヲ爲スモノトハ見テ居
ラヌ、是ハ討論ノトキ、私ハ藥學ノ方ノ立
場カラ詳シク一ツ委員ノ専門家ノ御方ト議
論ヲ討ハシテ見タイト思フノデアルガ、吾
吾ハ或ル一部ノ人ガ言ハレル程害ノ有ルモ
ノトハ見テ居ラヌ、併ナガラ是ガ立派ナモ
ノデアル、理想ニ適ノテ居ルカト言ヘバ、吾
吾ハ藥ノ學問ヲシタ者デアルガ、理想ニ適ッ
テ居ルモノトハ言フコトガ出來ナイ併ナ
ガラ現在、日本、狀況ニ於テハ恰モ醫藥分
業ヲ爲スベク藥劑師ヲ拵ヘテ置イテ、今日
ノ醫者ニ尙ホ賣藥ヲ許シテ居ルガ如ク、矢
張茲ニ國民ノ因襲ト云フモノヽ間ニ關係ヲ
持ツガ-多年ノ間ノ習慣竝ニ現狀ヲ考慮
シテ法律ヲ制定セナケレバナラヌト思フガ、
私ハ此十條ハ敢テ反對ハシナイ、賛成スル
ノデアルガ、之二付テ承シテ置キタイコト
ガ一ツアル、ソレハ何デアルカト言ヘバ
此問題ニ付テモ多年ヤカマシイコトガアツ
タケレドモ、內務省ハ省議ヲ以テ決定ヲ致
シテ、大分古イトキカラ私ハ記憶致シテ居
ル、歷代ノ内務大臣ハ御送リニナッテモ此
省議ノ決定ト云フモノハ今日マデ動カス
所ナク、ズット續イテ來テ居ルガ、藥劑師ト
云フ者ニ、藥品ノ混合販賣ト云フコトヲ公
ニ許シ、內務當局ハ通牒ヲ各府縣ニ出シテ
居ル筈デアル、ソコデ私ハ內務大臣ハ素人
ダト仰シヤルガ、素人デアッテモ私位ノコ
トハ御水知デアルト考ヘテ居ル、言フマデ
モナク混合販賣ト對症投藥トハ違フ、無診
察投藥ト藥品ノ混合販賣トハ違フノデアリ
マスルガ、是ハ專門ニ屬スルコトデアリマ
シテ、斯ウ云フ說明ハ稍面倒デアル、私
ハ此所デハ失禮デアルカラ致サナイガ、今
日色ミナ運動ヲシテ居ル人ヲ見ルト、藥品
ノ混合販賣ト對症投藥卽チ無診察投樂ト云
フモノヲ同ジモノニシテ、ゴチヤ〓〓ニシ
テ論ジテ居ル人ガアル、是ハ實ニ思ハザル
ノ甚ダシキモノデアル、素人ナラバ是ハ分
ラヌデモ仕方ガナイガ、玄人ガ論ズルニ至ッ
テハ吾々ハ甚ダ是ハ遺憾デアルト思フ拍
手)ンコデ對症投藥-無診察投藥ト云フ
モノハ醫者ニ禁ジテ居ルノミナラズ、無論
藥劑師ニモ禁ジテ居ル、又將來ニ於テモ禁
ゼナケレバナラヌ、素人ハ無論ヤッテハイ
ケナイ、有ユル者ガ禁ゼラレテ居ル、所ガ
藥品ノ混合販賣ダケハ、藥劑師ハ特殊ノ藥
學ニ對スル特殊ノ知識ヲ持ッテ、國家ノ許可
ヲ受ケテ商賣ヲシテ居ル者デアルガ故ニ、
藥品ノ零賣ト云フモノハ勝手ニ素人ニ賣
ル特催ヲ今藥劑師ニ與ヘテ居ル、之ガ與へ
ラレテ居ル以上、藥劑師ト云フ者ガ素人ノ
要求ニ應ジテ混合販賣ヲシテ差支ガナイト
スル以上ハ、之ヲ相當ノ責任ヲ以テ混ゼテ
賣ルト云フコトガ、何ガ不思議ガアルカト
云フコトガ、內務省ノ省議ノ決定デアル、
又其議論ヲ私承知シテ居ル、其事ハ各縣ニ
行ヒマスノデソレニ對シテ内務省ハ通牒ヲ
シテ居ル筈デアル、ソレデアルカラ藥劑師
ガ對症投藥ヲスレバ罰セラレル、ガ藥品ノ
混合販賣ヲシテモ警察ハ單ニ儉擧シナイ方
針ニナッテ居ルト、吾々ハ信ジテ居ル、所ガ
先年五六年前デアッタカ、何デモ醫藥分業
カ何カノコトカラ、醫者ノ一部ノ方ト一部
ノ藥劑師ノ諸君下ノ間ニ、感情ノ衝突デモ
アッタカノ如クニ、私ハ承ッテ居ルガ、此事
案ニ付テ或人カラ藥劑師ガ告訴デアルカ、
告發デアルカヾアッタ、一方ニ於テ內務省
ハ差支ナイト言ヒ、裁判所ニ於テハ遂ニ科
料六圓デアッタト私ハ記憶シテ居ルガ、科料
カ罰金ニ其藥劑師ガ處セラレタ、是カラ混
合販賣ニ疑ガ起シテ參。テ、內務省ノ解釋ト
裁判所ノ解釋トノ間ニ解釋ガ違ヒマシテ、
ソレカラ内務省ハ多年ノ方針、內務省ガ取
リ來ッタ所ノ方針ヲ實行シ、ソレガ今日ノ
事情ニ宜イト信ズルガ爲ニ、混合販賣ノ十
條ヲ法律ノ明文トシテ設ケテ、法律上疑ガ
ナイヤウニシヤウト云フ趣意デアラウト私
ハ信ジテ居ル、ソレヲ中央衞生會デ著シク
縮メラレテ、是マデヤッテ居ル三分ノ一ニ
モ四分ノ一ニモ縮メラレ、其上ニ命令ヲ以
テ定ムル、其命令ハ更ニ醫者ノ諸君ガ大多
數デアル中央衞生會ニ懸ケラレテ決メラレ
ル此位ノコトガ出來ナイト云フコトニナ
レバ、是ハ日本ノドウモアベコベニ私共ハ
民衆ノ非常ニ不便ヲ來ス所ノ問題デアル
ト私ハ思ノテ居ル、ソコデ之ニ對シテ内
務省ハ今日迄混合販賣ニ對シテ取リ來ラレ
夕所ノ方針、今囘出サレタ其根本ノ事情ヲ、
此演壇ニ於テ明確ニサレタイト、斯ウ云フ
質問デアリマス、此二箇條ヲ質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=91
-
092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若梘內務大臣
〔國務大臣若槻禮大郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=92
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093・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今大口君カ
ラ二箇條ノ質問ガアリマシタ、其第一箇條ハ
今回提出シタル樂劑師法ノ本文ニ於テハ
調劑ナルモノハ藥劑師ノ爲スベキコトデ
アッテ、其他ノ者ハ出來ヌコトニナッテ居ル、
附則ニ於テ醫師ナリ、齒科醫師ナリ、
獸醫ナリガ調劑ヲスルコトガ出來ルコト
ニナシテ居ルガ、此規定ハ何時マデモ此通
リデハアルマイト思フガ、何時カ之ヲ改メ
テ本文通リニ致スヤ否ヤト云フノガ、第
問デアリマス、法律ノ規定デ原則ヲ設ケラ
レテ居リマシテ、附則ニ於テ經過法トシテ
斯ウシテモ宜イト云フ規定ノアルコトハ、何
時モソレハ例外法デアリマス、例外法ハ何時
カハ原則ニ戾ルノガ當然デアリマスカラ、
早晩何時ノトキニカ本則ノ通リニセナケレ
バナラヌト思ヒマス、併シ其時ガ何時來ル
カト云フコトハ只今大口君ノ述ベラレタ
通リ、社會ノ現象ガ變シテ來マセヌケレバ、
容易ニ實行ガ出來マセヌカラ、私ハ之ガ近
イ間ニ來ルトハ思ヒマセヌケレドモ、早晩
何時トカハ本則ニ戾ラナケレバナラヌト斯ウ
考ヘテ居ルノデアリマス、第二ノ御質問ノ、
内務省ハ從來混合販賣ハ差支ナイト云フ解
釋ヲ取シテ、之ヲ地方廳ニ通牒シテ居ッタ筈
デアルガ、其通リデアッタヤ否ヤ、ソレニ
付テ裁判所ト見解ヲ異ニシテ、或ル時ハ裁
判所ハ內務省ト解釋ヲ異ニシタ爲ニ、藥劑
師ガ罰金ニ處セラレタコトガアルヤウデア
ル、之ヲ改メルガ爲ニ此法律案ヲ提出シタ
ノデアルカ、之ガ第二ノ御質問デアルト思
ヒマス、是ハ加藤君ノ御質問ニ對シテ、先
程其事ハ私カ申述ベテ居ルノデアリマス、
卽チ大口君ノ申サルル通リ、內務省ハ從來
混合販賣ハ差支ナイト云フ解釋デアリマス
ケレドモ、裁判所ガ此解釋ヲ採リマセヌ故
ニ、行政府ト司法部ト互ニ解釋ヲ異ニシテ
居ルト云フコトガ、如何ニモ人民ノ迷感デ
アリマス、故ニ玆ニ法律ヲ改正シテ、解釋
ヲ一定シテ人民ノ迷咸ニナラナイヤウニシ
ヤウト云フノガ改正案ヲ提出シタ所以デア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=93
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094・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是デ質疑通告ノ發言
ヲ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=94
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095・土屋清三郎
○土屋〓三郎君 議長-議長、私ハ先程
ノ片圖政務次官ノ中央衞生會ニ關スル說明
ニ付テ質疑ガアリマス、御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=95
-
096・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑終了ノ宣告ヲ致
シマシタゝ許シマセヌ、日程第四右各案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シ
マス
第四右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=96
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097・作間耕逸
○作間耕逸君 本案ハ委員ノ數ヲ特ニ十八
名トシ議長ニ於テ指名セラレムコトヲ望ミ
マス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=97
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098・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作問君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=98
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099・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議チイト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五
條約ニ基ク外國トノ利權契契ニ依リ外國ニ
於テ事業ヲ營ムコトヲ目的トスル帝國會社
ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマズ、幣
原外務大臣
第五條約ニ基ク外國トノ利權契約ニ
依リ外國ニ於テ事業ヲ營ムコトヲ目
的トスル帝國會社ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
條約ニ基ク外國トノ利權契約ニ依リ外
國ニ於テ事業ヲ營ムコトヲ目的トスル
帝國會社ニ關スル法律案
條約ニ基ク外國トノ利權契約ニ依リ外國
ニ於テ事業ヲ營ムコトヲ目的トスル帝國
會社ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設
ケ之ニ準據セシムルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=99
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100・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今議題
ト相成リマシタル法律案ハ條約ニ基ク外
國トノ利權契約ニ依リマシテ、外國ニ於キ
マシテ事業ヲ營ムコトヲ目的トスル會社ニ
對シ、勅令ヲ以テ其準據スベキ特別規定ヲ
設ケ得ルヤウニ致シタイト云フ趣意ヲ以テ
提案サレタモノデアリマス、條約ニ依ル外
國トノ利權契約ノ施行ニ付キマシテハ
國家トシテ色ミノ義務ヲ負フ場合ガ多イノ
デアリマスガ故ニ、事業ノ經營ヲ單純ナル
營利會社ニ一任致シマシテハ種々不都合ナ
ル場合ヲ生ズルノデアリマス、例ヘバ最近
締結サレマシタル日露條約ノ附屬書ノ議定
書ニ依リマシテ得マシタル北樺太ニ於ケル
石油ノ利權ノ如キモ、一年內ニハ將來開發
スベキ一千平方露里ノ區域ヲ選定致シ、且
ツ五年乃至十年以内ニ試掘ヲ終ヘナケレバ
ナラヌト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリ
マス、而シテ政府ト致シマシテハ、此區域ノ
選定竝ニ試掘ト云フ如キコトニ付キマシテ
ハ條約ノ規定ニ違反セザルヤウ、又條約
ノ規定ノ範圍內ニ於キマシテ、利權契約ノ
目的ヲ全クシ得ルヤウ、當業者ニ對シテ適
當ナル監督ヲ加ヘナケレバナリマセマ、隨
テ是等ノ事業ヲ營ミマスル日本ノ會社ニ對
シマシテ、勅令ヲ以テ特別ノ準據規定ヲ設
ケ、政府ニ於テ適當ナル監督ヲ致スト云フ
コトガ本案ノ趣意デアリマス、何卒御審議
ノ上御協賛ヲ得タイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=100
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101・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第六右議案ノ審
查ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=101
-
102・井本常作
○井本常作君 木案ハ政府提出大正三年臨
時事件ニ關スル臨時軍事費特別會計ノ終結
ニ關スル法律案ノ委員ニ併セテ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=102
-
103・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=103
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104・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=104
-
105・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=105
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106・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 土屋君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=106
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107・土屋清三郎
○土屋〓三郎君 議事進行ニ付テ發言ガア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=107
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108・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許シマス
〔土屋〓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=108
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109・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 先刻藥劑師法案竝ニ藥品
法案ノ審議ノ間ニ於テ、吉良元夫君ガ登壇
ノ際ニ於キマシテ、私ハ片岡內務次官ガ中
央衞生會ニ關スル說明中、幾多ノ疑義ガア
リマスルガ故ニ、之ニ對シテ書記官長マデ
質疑ノ通告ヲ致シテ置イタノデアリマス、
然ルニ議長ハ之ヲ御許シニナラナイト云プ
コトハ如何ナル次第デアリマスルカ、明
瞭ナル御答辯ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=109
-
110・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今土屋君ヨリ御尋
デアリマスルガ、從來此質疑ハ旣往ノ先例
ニ見マスルト云フト、二回ニ限シテ居ル、
其後或ル場合ニ於テハ三回許シタコトモア
リマスルガ、ソレハ繼續的ニ其質疑ヲ續ケ
ラレテ居ルノデアリマス、土屋君ノ如キハ
旣ニ曩ニ發言ヲ求メラレテ、二回質疑ヲサ
レタノデアリマス、而シテ中斷シテ更ニ發
言ヲ求メラレタノデアリマスガ、其通告ニ
對シテハ書記官長ヨリ旣ニ通告ガアルカラ
後デナケレバ駄目ダ、斯ウ云フ御答ガシテ
アルカラ、改メテ土屋君ノ通告ガナカッタモ
ノデアリマスカラ議長ハ其儘ニ致シタ次第
デアリマス-日程第七帝國美術院美術研
究獎勵金委任經理ニ關スル法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、岡田文部大臣
第七帝國美術院美術研究獎勵金委任
經理ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
帝國美術院美術〓究獎勵金委任經理ニ
關スル法律案
帝國美術院ニ於テ美術〓究奬勵ノ爲ニ要
スル金額ハ之ヲ帝國美術院長ニ交付シ經
理ヲ委任スルコトヲ得
委任經理ニ係ル會計ノ檢査ハ會計檢査院
法第十六條ノ規定ニ依ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣岡田良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=110
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111・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 帝國美術院ニ於
テ美術ノ奬勵ヲ目的トスル寄附金ヲ受入レ
マシタ際ニ、直ニ之ヲ帝國美術院長ニ經理
ヲ委任致シマシテ、寄附者ノ意思ニ從ヒ奬勵
ノ目的ヲ十分ニ達シタイト考ヘルノデアリ
マス、是レ本案ヲ提出致シタ所以デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=111
-
112・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第八右議案ノ審
査ヲ付託スベキ委員ノ還舉ヲ議題ト致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=112
-
113・井本常作
○井本常作君 本案ハ委員ノ數ヲ九名トシ
議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=113
-
114・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ-日程第九支那ニ於ケル帝國法人
ノ所有スル船舶等ニ關スル法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス植原參與官
第九支那ニ於ケル帝國法人ノ所有ス
ル船舶等ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
支那ニ於ケル帝國法人ノ所有スル船舶
等ニ關スル法律案
支那ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル帝
國法人ニシテ合名會社ニ在リテハ社員ノ
二分ノ一以上、合資會社及株式合資會社
ニ在リテハ無限責任社員ノ二分ノ一以
上、株式會社ニ在リテハ取締役ノ二分ノ
一以上、其ノ他ノ法人ニ在リテハ代表者
ノ二分ノ一以上カ日本臣民ナルモノノ所
有ニ屬スル船舶ハ勅令ノ定ムルモノニ限
リ船舶法第一條ノ規定ニ拘ラス之ヲ日本
船舶トス
前項ノ日本船舶及支那ニ住所ヲ有スル日
本臣民ノ所有ニ屬スル船舶ノ船籍港及積
量測度ニ關シテハ勅令ヲ以テ別段ノ規定
ヲ設クルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=114
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115・植原悦二郎
○政府委員(植原悅二郞君) 極メテ簡單ナ
法律デアリマスガ、只今議題トナッテ居リ
マスモノニ付テ、提出ノ理由ヲ說明致サウ
ト思ヒマス、支那ト日本トノ關係ハ日ニ密
接ニナリ、又其關係ハ益〓發達シナケレバ
ナラヌノデアリマス、然ルニ現行ノ船舶法
ニ依リマスルト云フト、日本ニ於テ本據ヲ
構ヘル所ノ商事會社若クハ法人デナケレ
バ日本ノ船籍ノ船舶ヲ有スルコトガ出來
ナイ規定ニナッテ居リマス、ソレ故ニ玆ニ
提出シタル所ノ法案ニ依リマシテ、支那ニ
於テ本據ヲ有スル所ノ商事會社、法人デア
リマシテモ、其二分ノ一ノモノガ帝國臣民
ヲ以テ代表サレル場合ニハ日本ノ船舶ヲ
所有スルコトニ定メタイト云フノデアリマ
ス、又個人ノ場合ニ於キマシテハ、日本ノ船
舶ヲ支那ニ居リマシテモ所有スルコトガ、
出來マスルケレドモ、船籍港ヲ支那ニ求ム
ルコトガ出來ナイノデ、此法案ニ依ッテ法
人タルト個人タルトヲ問ハズ、小型ノ船舶
ニ對シテ支那ニ於テ船籍港ヲ置クコトヲ許
スト云フ趣意ニ出タノデアリマスカラ、何
卒御審議ノ上御賛同アランコトヲ希望致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=115
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116・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第十、右議案ノ
審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シ
マス
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=116
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117・井本常作
○井本常作君 本案ハ日程第五ノ議案ト同
一委員ニ併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=117
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118・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ其通リ決シマシ
タ-日程第十一、外國人土地法案ノ第一
讀會ヲ開キマス、小川司法大臣
第十一外國人土地法案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
外國人土地法案
外國人土地法
第一條帝國臣民又ハ帝國法人ニ對シ土
地ニ關スル權利ノ享有ニ付禁止ヲ爲シ
又ハ條件若ハ制限ヲ附スル國ニ屬スル
外國人又ハ外國法人ニ對シテハ勅令ヲ
以テ帝國ニ於ケル土地ニ關スル權利ノ
享有ニ付同一若ハ類似ノ禁止ヲ爲シ又
ハ同一若ハ類似ノ條件若ハ制限ヲ附ス
ルコトヲ得
第二條帝國法人又ハ外國法人ニシテ社
員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半
數以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決權
ノ過半數カ前條ノ外國人又ハ外國法人
ニ屬スルモノニ對シテハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ之ヲ其ノ外國人又ハ外國法人
ト同一ノ國ニ屬スルモノト看做シ前條
ノ規定ヲ適用ス
第三條外國ノ一部ニシテ土地ニ關シ特
別ノ立法權ヲ有スルモノハ本法ノ適用
ニ付テハ之ヲ國ト看做ス
第四條國防上必要ナル地區ニ於テハ勅
令ヲ以テ外國人又ハ外國法人ノ土地ニ
關スル權利ノ取得ニ付禁止ヲ爲シ又ハ
條件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得
前項ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス
第五條帝國法人ニシテ社員、株主若ハ
業務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資
本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數カ外
國人又ハ外國法人ニ屬スルモノニ對シ
テハ前條ノ規定ヲ適用ス
第六條土地ニ關スル權利ヲ有スル者カ
本法ニ依リ其ノ權利ヲ享有スルコトヲ
得サルニ至リタル場合ニ於テハ一年内
ニ之ヲ讓渡スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル權利ノ讓渡ナカリシ
場合ニ於テ其ノ權利ノ處分ニ關シ必要
ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前二項ノ規定ハ土地ニ關スル權利ヲ
有スル者ノ相續人其ノ他ノ包括承繼人
カ本法ニ依リ其ノ權利ヲ取得スルユト
ヲ得サル場合ニ之ヲ準用ス但シ第一項
ニ規定スル期間ハ之ヲ三年トス
第一項及前項ニ規定スル期間ハ通シテ
三年ヲ超ユルコトヲ得ス
附則
第七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之
ヲ定ム
第八條本法ノ施行ニ伴フ不動產登記法
ニ關スル特例ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條明治六年第十八號布告及明治四
十三年法律第五十一號ハ之ヲ廢止ス
第十條明治三十二年法律第六十七號中
「土地ノ抵當權者ナル外國人カ」ヲ「抵
當權者カ抵當權ノ目的夕ル權利ヲ享有
スルコトヲ得サル場合ニ於テ」ニ、「抵
當不動產」ヲ「抵當權ノ目的タル權利」
三六人
第十一條民法第九百九十條中「日本人
ニ非サレハ享有スルコトヲ得サル權利
ヲ有スル場合」ヲ「國籍ノ喪失ニ因リテ
其有スル權利ヲ享有スルコトヲ得サル
ニ至リタル場合」ニ改メ「日本人ニ」ヲ
削ル
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=118
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119・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 本案ハ外國人ニ
土地所有權ヲ許サウト云フ所ノ案デゴザイ
マス、御承知ノ通リ我國ニ於テハ明治六年ノ
布告ニ依リマシテ外國人ニハ土地ノ所有
ハ許サレテナイノデアリマス、然ルニ近時
我ガ經濟界竝ニ一般社會ノ進步ノ程度ヨリ
見マスレバ今日ハ最早外國人ニ土地ノ所
有權ヲ與ヘテモ差支ナカラウト信ジテ居ル
ノデアリマス、去ル明治四十三年ニ一度外
國人土地所有權法ト云フ法律ガ制定ニナリ
マシテ、外國人ニ土地ノ所有ヲ許スコトニ
相成ッテ居ルノデアリマスガ、御承知ノ通
リ今日マデ此法律ガ實行ヲ見ルニ至ラナ
カッタノデアリマス、之ガ爲ニ我國ノ人民
ガ外國ニ於テ土地ヲ所有スルコト等ニ於キ
マシテモ、往々ニシテ差支ガ生ジタ場合モ
アリマシタノデ、今日ハ最早我國ノ進步ノ
程度ニ顧ミ、文明諸國ノ通例ニ從ヒマシ
テ外國人ニ土地ノ所有ヲ許シテモ差支ナ
カラウ、斯ウ考ヘマス、殊ニ所有權ハ許シ
テコソアリマセヌガ、民法ニ於キマシテ地
上權小作權ノ如キハ少シモ制限ナク外國人ニ
許シテ居リマスノデ、既ニ地上權ヲ有シテ
居ル外國人モ少クナイト云フ有樣デアリマ
ス、仍テ今回所有權ヲ許スニ付キマシテ、
明治四十三年ノ法律ニ依リマスレバ色々ノ
條件ガアリマシテ、或ハ外國人ノ土地所有
ニ付テハ日本ニ住居シタ者デナケレバ所
有スルコトガ出來ヌトカ、或ハ外國ノ法人
ガ土地ヲ所有スルニ付テハ日本ニ於テ登
記ヲ受ケルコト、內務大臣ノ許可ヲ受ケル
コト、斯樣ナ條件等モアリマシテ、種々外
國人ノ土地所有ニ付テ不便ノ點ガ少クナ
カッタノデアリマスガ、今日ハ最早斯ノ如
キ條件ハ削除シタ方ガ相當デアラウト云フ
考カラ、四十三年ニ發布ニナリマシテ今日
マデ實行ニナラナカッタ所ノ外國人土地所
有權法ニ向ッテ、根本ヨリ改正シテ本案ヲ
提出致シタ次第デアリマス、詳細ノ點ハ委
員會ニ於テ又申上ゲタイト考ヘマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=119
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120・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 既ニ定刻ニ近ヅキマ
シタカラ時間ヲ延長致シマス、本案ニ對シ
テ質疑ノ通告ガ數名アリマス、順次之ヲ許
シマス、堤康次郞君
〔堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=120
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121・堤康次郎
○堤康次郞君 只今小用司法大臣ノ說明ニ
依リマシテ、本案ハ極メテ時宜ニ適シタ必
要ナル案デアルト信ズルノデアリマスガ
併シ本案ノ第一條ニ於キマシテ、我ガ國人
ノ土地ノ所有ヲ禁止シ、若クバ條件ヲ附ケ
制限ヲ加エテ居ル國ニ對シテハ我國ニ於
テモ同樣ニ此土地ノ所有ヲ禁止シ條件ヲ附
ケ制限ヲ加ヘルコトガ出來ルト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、併シ此第一條ハ私ハ寧
ロ削除ヲシテ、假令外國ニ於テ我ガ國人ニ
土地ノ所有ヲ禁止致シマシテモ、我國ニ於
テハ之ヲ許ス方ガ宜シイト考ヘルノデアリ
マス(ノウ〓〓)何トナレバ只今小川司法
大臣ノ說明ニモアリマシタルガ如ク、我國
ニ於テハ最早今日ニ於テハ、外國人ニ土地
ヲ買收セラルヽト云フコトヲ恐レル必要ハ
少シモナイ、寧口我ガ國民ガ外國ニ於テ如
何ニシテ土地ヲ所有スベキカト云フコトヲ
考ヘナケレバナラナイト私ハ深ク信ズルノ
デアリマス、又外國ニ於テ我ガ國民ノ土地
ノ所有ヲ禁止シテ居ル國ニ對シテ、報復的
ニ同樣ノ禁止ヲスルコトガ出來ルト云フヤウ
十、斯ウ云フ條文ヲ設ケテ置キマシテモ、
實際ニ於テトント效果ハナイト考ヘルノデ
アリマス、何トナレバ現在ニ於テモ外國人ニハ
土地ノ所有ハ禁止シテ居リマスケレドモ
地上權ヤ借地権ハ許シテ居ルノデアリマス
カラ、大シタ痛痒ヲ感ジナイ、故ニ寧口此
條文ヲ削除シテ、假令外國ニ於テ之ヲ禁止
シテモ、我國ニ於テハ是ハ禁止ヲシナイ、此
土地ト云フモノバ總テ人類ガ共存スベク天
ガ造ッタモノデアル、故ニ人種的偏見ニ依ッ
テ差別的待遇ヲスルト云フコトハ、正義人
道ニ反スルト云フ此堂々タル大旆ヲ翳シ
テ、若シ外國ニ於テ之ヲ禁止シタトキニ
ハ我國ハ此正義人道ノ大旆ヲ翳シテ、堂
堂ト抗議スル方ガ、此法規ガ遙ニ權威ヲ生
ズルト私ハ考ヘルノデアリマス、故ニ寧口
我國ハ無條件ニ之ヲ敬廢シテ、假令外國デ
制限シテ居ッテモ、我國ニ於テハ制限シナ
ィ、如何ナル國ノ者ニモ上地ノ所有ヲ許ス
ト云フコトニシテ、制限ヲ加ヘタ國ニ對シテ
强ク抗議ヲ申込ムコトガ有效デアルト本員
ハ信ズルノデアリマス、我國ノ現狀ニ於キ
マシテハ我ガ國民ガ海外ニ發展スルト云
フコトハ極メテ重大ナルコトデアリマスル
カラ、本案第一條ノ如キ一種ノ制限ト見ラ
レルヤウナ條文ヲ設ケテ置クト云フコト
ハ、我ガ國民ノ海外發展ト云フ點ニ於テ、障
害ヲ來シハセヌカト云フコトヲ恐レルノデ
アル故ニ司法大臣ハ本案ノ第一條ヲ削除
スル考ガアルカドウカヲ伺ヒタイノデアリ
マス尙又其他ニ此條文ヲ設ケナケレバナ
ラナイヤウナ重大ナル必要ガアルカ、ドウ
カト云フコトモ、同樣ニ御伺ヒ致シタイノ
デアリマス(拍手起ル)
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=121
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122・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 政府ニ於キマシ
テハ相互主義ヲ執ルコトノ必要ガアル場合
ガアルデアラウト云フコトヲ想像致シマシ
テ隨テ法律ニ之ヲ規定セズニ、勅令ヲ以
テ是等ノ國ニ對シテハ相互主義ヲ取ルコト
ガ出來ルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス左樣ナ必要ガ生ズル場合ガアラウト考
ヘテ居リマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=122
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123・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 津崎尙武君
〔津崎尙武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=123
-
124・津崎尚武
○津崎尙武君 此法案ハ我國ニ取リマシテ
歷史ノ古イ法案デアリマス今日茲ニ御提
出ニナッタノデアリマスガ、日本ト致シマ
シテハ非常ニ重大ナル法案デアルト信ズル
ノデアリマス、其意味ヲ以チマシテ玆ニ、
二三ノ質疑ヲ此場合ニ致シテ置キタイト思
フノデアリマス只今司法大臣ハ經濟上其他
ノ事情カラ致シマシテ、過去ニ於テ日本ニ
於キマシテハ外國人ノ土地所有ヲ禁止シ
テ居ッタケレドモ、今日ハモウソレヲ許可
シテモ宜シイ時機ニナッタト云フコトデア
リマスルガ、唯々此時勢ノ進運ニ伴ウテ、
外國人ニモ土地ノ所有ヲ許シテ宜シイト云
フ唯。單純ナ理由ノミデアリマスカ、ソレ
トモ本法ヲ制定スルニ付キマシテ、他ニ何
カ重大ナル理由ガアッタノデアルカト云フ
コトヲ、御尋シタイノデアリマス卽チ只今
御答ニナリマシタガ、此法案ヲ制定スルニ
付テ、相互的ノ事柄ガ動機ヲ爲シタノデハ
ナイカドウカト云フコトヲ御尋致シタイノ
デアリマス、第二ニハ此第三條ニ於キマシ
ラ、特例ガ設ケテアリマス、是ハ米國ノ如
キ國ヲ指サレルノガ其一ツデアラウト思ヒ
マスガ、此問題ハ會社内ニ於テ例ヘバ日本
人ニ土地ノ所有ヲ禁止シテ居ル加州ノ人
ト、土地ノ所有ヲ許シテ居ル紐育ノ人、斯
ウ云フモノガアッタ場合ニ於テ、其判別ス
ルコトガ非常ニ困難ニナリハセヌカト思フ
ノデアリマスガ、サウ云フコトニ付キマシ
テハ何等カノ方法ニ依リマシテ、此區別ヲ
シテ行カレルカドウカ、ドウ云フ方法ニ依7
テ此區別ヲシテ行カレルカト云フコトヲ御
尋シタイノデアリマス、而シテ又第一ニ御
尋致シマシタコトニ依リマシテ、之ガ相互
的ノ意味ヲ有シテ居ルトシマスレバ加州
其他ニ於ケル邦人ニ土地ノ所有ヲ禁止シテ
居ル問題ニ付キマシテ、何等力緩和ノ材料
ニナル御見込デアルカドウカト云フコトデ
アリマス、次ニ御尋致シタイコトハ第四
條ニ於テ國防上必要ナル地區ト云フコトガ
アルノデアリマス此必要ナル地區ノ範圍
ハドウ云フコトニ置カレテ居ルカト云フ
コトデアリマス、要塞地帶以外ニ於キマシ
テ相當國防上必要ナ地區ガアルト思フノ
デアリマス、例ヘバ將來飛行場ヲ造ルトカ、
其他陸海軍ニ於キマシテ、相當ナ設備ヲ要
スル見込ノ所ガアル、サウ云フ所モ此範圍
ニ入ルノデアルカドウカ、此地區ノ範圍ハ
ドウ云フ程度ニ御定メニナル御考デアルカ
ト云フコトヲ御尋致シタイノデゴザイマ
ス、第六條ニ於キマシテ權利ヲ有スルニ
至ッタ者ガ、其權利ヲ喪失シタ場合ニ於テ、
其権利ヲ有スヤ否ヤト云フ認定ガ非常ニ困
難デハナカラウカト思フノデアリマスガ、
之ニ對シテハ勅令ニ依ヲテ其事ヲ定メルト
云フコトニナッテ居リマス、其內容ハ大體ニ
於テドウ云フコトニナサルノデアルカト云
フコトヲ伺ヒタイノデアル、外國人竝ニ外
國關係ノ會社ニ依シテ所有セラルベキ見込
ノ土地ハ、大體ドウ云フ土地デアルノデアリ
マスカ、是ハ日本ニ於キマシテ、外國人ガ
農業ヲスル爲ニ土地ヲ買ハウトモ思ハヌノ
デアリマス、併ナガラ一方ニ於テ都會地其
他形勝ナ土地ヲ外國人ニ依ッテ可ナリ占有
セラレル、所有セラレル虞ガアリハセヌ
カ、サウ云フコトノ爲ニハ本問題ニ付キ
マシテハ明治ノ初メカラ日本ニ於キマシテ
ハ重大ナ問題トシテ取扱ヒ來ッテ今日ニ
及ンデ居ルノデアリマス、之ヲ今日外國人
ニ-制限ハアリ、條件ハアリマスガ、兎
ニ角今日ノ場合ニ於テ之ヲ許可セラレルコ
トニ付キマシテハ如何ナル土地ガ大體ド
ウ云フ程度ニ外國人ノ所有ニ歸スル見込デ
アルカト云フコトハ日本トシテ特ニ留意
スベキ問題デアラウト思フノデアリマス
是等ノ點ニ付キマシテ政府ノ御見込ヲ御尋
致シタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=124
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125・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 小川司法大臣
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=125
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126・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 御答ヲ致シマ
ス、第一ニ本法ヲ制定スル理由ニ付テ何カ
他ニ特別ノ事情ガアルカト云フ御尋デアリ
マス、別段他ニ特別ノ理由ハナイノデアリ
マ 、近年我ガ國民ガ海外ニ發展ヲ致シテ
參リマス、と又今後益、發展セシメナケレバ
ナラヌ、其發展シテ行ク先ニ於テ、土地ヲ
所有スルコトニ付テ度々都合ノ惡イコトガ
出來マスノデ、是ガ先以テ此法ヲ制定スル
最モ必要ナル理由ノ一ツデアリマス、ソレ
カラ外國ノ一部ニシテ、土地ニ關シ特別ノ
立法權ヲ有スルモノハ本法ノ適用ニ付テ
ハ之ヲ國ト看做ス、此國ハ只今津崎君ノ御
引キニナリマシタ例ノ如ク、紐育州ノ人モ
アリマセウシ、「カリフオルニア」ノ人モア
リマセウ、「カリフオルニア」ニ於テ我國ノ
國民ガ土地ヲ所有スルコトヲ禁ズル場合ニ
ハ勅令ヲ以テ「カリフオルニア」州ノ人ニ
禁ズルコトガ出來ルノデアリマス、禁ジナ
イ土地ニ對シテハ無論禁ジナイ譯ニナルノ
デアリマス、其區別ハ若シ二人三人寄合ク
テ會社デモ拵ヘテ居リマス場合ノコトハ
第二條ニ規定ガ致シテアリマスカラ、第二
條ニ依シテ或ハ土地ヲ與へ、或ハ與ヘヌト
云フコトニナルノデアリマス、ソレカラ第
四條ノ國防上必要ナル地區、是ハ國防上ノ
見地カラ必要、不必要ヲ勅令ヲ以テ定メル
譯デアリマス、勅令ニ依クテ此土地ハ許ス
トカ、許サヌトカト云フコトヲ決メルノデ
アリマス、ソレカラ第六條矢張勅令ニ依ソ
テ權利ノ喪失シタ場合ハ決メルノヂアリマ
スソレカラ最後ニ如何ナル土地ガ外國人
ニ歸スルデアラウカト云フ御尋デアリマシ
タガ、是ハ一寸此處デ想像ヲシテ中上ゲル
譯ニハ行カナイノデアリマスガ、今日既ニ
外國人ガ地上權ヲ有シテ居ル部分ハ住宅
地ガ十六万何坪トカアルサウデアリマス、
其外色ニナモノガアリマシテ、件數ニスル
ト千件程アルサウデアリマス、住宅地ハ十
六万坪、今後ニ於テモ只今御說ノ通リ、日
本ニ來テ高イ土地ヲ外國人ガ思感ニ廣ク買
占メヤウトハ想像ガ出來ナイノデアリマ
ス、恐ラクハ矢張リ今日迄ノ地上權ノ如ク、
工業ノ爲ニ土地ヲ買フトカ、住居ノ爲ニ土
地ヲ買フト云フコトガ多イノデナイカト思
フノデアリマスガ、併ナガラ將來ノコトニ
向ッテハ此席ニ於テ斯ウ云フモノハ多分
買フデアラウト云フコトハ一寸申上ゲ兼ネ
ル次第デアリマス、尙細カイ事ハドウゾ委
員會ニ於テ申上ゲルコトニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=126
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127・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 猪野毛利榮君
〔猪野毛利榮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=127
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128・猪野毛利榮
○猪野毛利榮君 大體只今ノ質疑デ分リマ
シタケレドモ今數點腑ニ落チヌコトガア
リマスカラ御尋ヲ致シタイト思フノデアリ
マス、卽チ政府ガ之ヲ提出シマシタ動機ト、
此法律ヲ施行サレマシ夕後ニ於テ、是ヨリ
來ル影響ニ付テ御尋ヲ致シタイト思フノデ
アリマス、卽チ只今小川法相ノ述ベラレタ
ル本案提出ノ理由デハ十分ニ私ハ理解ガ
出來キ兼ネルノデアリマス、第一本案ハ外
資輸入主義カラ發シテ來タモノデハナイカ
ト云フ疑ガアルノデアリマス御永知ノ通
リ昨年來ヨリ日本ノ事業家ガ主トシテ亞米
利加ニ向シテ事業ヲ爲ス爲ニ、外資ノ輸入
ヲ交涉致シタノデアル、其時ニ於キマシテ
モ例ヘバ大同電力或ハ束邦電力等ノ諸會社
ガ向フト交渉ヲ致ス時ニ於テ、日本ノ土
地ヲ亞米利加人ガ持ツコトガ出來ヌト云フ
法律ガ、頗ル支障ニナッテ居ッタト云フコト
ヲ承フテ居ッタノデアリマス、今日ニ於テ日
本ノ事業家ガドウシテモ日本ダケノ金デハ
事業ヲヤルコトガ出來ヌ、豐富ニシテ而モ
安イ利子ノ外國ノ金ヲ使ハナケレバナラヌ
ト云フ立場カラ、斯ウ云フヤウナコトヲ政
府ニ進言シテ、政府ヲシテ促進セシメタモ
ノデナイカト云フコトヲ思フノデアリマ
ス、第二ニ法相ハ所謂人文主義ヨリ之ヲ出
サレタト云フ意味デアリマシタガ、成程此
明治五年四月ニ於ケル太政官布告及明治六
年一月ノ太政官官制是等ヲ見マスルト鎖國
主義ヨリ發シテ居ッタコトガ分ッタノデアリ
マス、併ナガラ其後明治四十三年ニ現行ノ
外人土地所有權ノ法律ガ出來マシタ、法律ガ
出來タケレドモ勅令以テ之ヲ東セセル爲
メ法ノ功力ハ有名無實ニ終タノデアリマ
ス、然ルニ何故斯ル法律ヲ制定セシカト云フ
ニ、ソレハ矢張澁澤サンナドガ明治三十年
カラ明治四十年ノ間ニ於テ頻ニ外國ノ金ヲ
日本ニ持ノテ來ネバナラヌト云フ議論ヲシ
テ、此議論ガ遂ニ該法律ノ發布ヲ促進シタ
ノデアルヤウニ思ハレル、第二ニ政府ニ於
テハ今日ハ最早鎖國主義ヲ廢シテ人文主義
ヲ採リ、以テ、日本ノ土地ヲ廣ク外國人ニ解
放スルト云フ公明正大ナル心カラ出タモノ
デアルカト云フニ、只今ノ法相ノ御言葉ダ
ケデハ本員十分ニ諒解ガ出來ナイノデアリ
マス、第三ニハ是モハッキリ致シマセヌデシ
タガ、日米親善ノ爲ニドウシテモ之ヲヤ
ラナクテハナラヌト云フノ意味ガアッタノ
デハアリマセンカ、ソレト云フモノハ此案
ガ未ダ議會ニ現レヌ以前ニ當リ、松平大使
ガ亞米利加ニ行カレタ時ニ、亞米利加ノ新
聞ハドウ云フコトヲ言ッタカト云フト、近ク
日本ハ外人ノ土地所有ヲ許ス法律モ出スカ
ラ、日米ノ間ニ於テハ更ニ一層ノ親善ヲ來
スノデアラウト云フコトガ書カレテアッタ
ノデアリマス、是故ニ私ハ松平氏ガ亞米利加
ニ行カレテ、日米親善ノ御土產トシテ後日
日本ガ此法律ヲ出スコトノ意味モ含マレテ居
タノデハアリマセヌカ、又加州土地問題ハ頗
ル日米間ニ於テ雙方ノ感情ヲ惡クシテ居ル
一ツノ問題デアルガ爲メ、此問題ヲ後日政府
ガ解決スルガ爲ニ先ヅ我ヨリ進ンデ此法律
ヲ出シタモノデハアリマセヌカ、私ハ此疑ヲ
深ク抱イテ居ルノデアリマス、更ニ御伺ヒ致
シタイコトハ、此法律ヲ施行サレタ曉ニ於テ
左ノ如キ心配ガナイカト云フコトデアル、第
一ハ國際上ノ問題デアリマス、卽チ將來日
本ニ於テ經濟組織ノ大改革ガ起シテ來ルモ
ノト先ヅ思ハナケレパナラヌ、此時ニ於テ
万一ニモ土地國有ヲ斷行サレタト假定セン
カ、此時ニ於テ外國人ガ日本ノ土地ヲ持ノ
テ居フタ場合ニ、頗ル國際上ニ面倒ガ起リ
ハセヌカトノ心配デアリマス(「杞憂ダ」「ソン
ナ必配ハナイ」ト呼フ者アリ)鄰國支那ノ如
キハ僅ナル地上權ニ類シタ借款ノ如キモノニ
サヘ外國人トノ間ニ面倒ナル事柄ガ起ッテ居
ルノデアリマス第二ニ國防上ノ事ニ付テ
津崎君ノ質問ニ對スル答辯デハ十分ニ滿足
出來マセヌ、成程國防上一局部ノ地帶ハ之
ヲ制限スルコトガ出來ル、例ヘバ飛行機ノ
著陸場デアルトカ、或ハ要塞地帶トカ、師團
ノ所在地ト云フヤウナコトハ制限ハ出來ル
ケレドモ、例ヘバ鐵道ノ沿線ノ如キモノデ
アルトカ、其他廣袤ニ亙ル土地ニ對シテハ中
中此制限ヲ勅令ヲ以テ定メルト云フヤウナ
コトハ骨ガ折レルト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、更ニ今一ツ御伺ヒシタイコトハ日本
デ金ガナイ所ヘ持シテ來テ、此土地ニ依テ
外國カラ多額ノ金ガ入ッテ來タトキニ於テ、
日本ノ土地ガ外國人ノ卽チ所有ニナッタト
キニ、國民ノ思想ノ上ニドウ云フ影響ガ來
ルカト云フコトデアル、日本人ノ國民性ハ
非常ニ土地ニ對シテ執看心ガ强イ、卽チ日
本ノ國民性ハ土地ニ執著スルコトニヨリ一
ツノ愛國心ノ要素ニモナッテ居ルノデアル、
今日日本ガ津ミ浦ミニ至ル迄非常ニ疲弊ヲ
シテ居ルコトハ農工銀行ノ報告ヲ見マシテ
モ殆ト其土地ガ大部分擔保ニ入シテ居ルノデ
明瞭デアリマス、此時ニ山ナス黄金ノ波ヲ持ノ
テ亞米利加人ナドガ日本ノ土地ニ對シテ金ヲ
貸シ、ソレガ抵當流レトナッテ、ドン〓〓土地
ヲ所有スルコトニナリ、終リニハアノ村モ
此村モ外國人ガ土地ヲ占有シテ仕舞シテ、サ
ウシテ其所ニ土地へノ未練ガ殘リ、又小作
爭議ガ起ル、亞米利加人ト日本人トガソコ
デ感情ノ衝突思想上ノ行違ヲ生ジ、又生活
ノ問題ノ上カラ種々ナル面倒ガ發生シテ來
ルコトモ又私ハ考ヘテ見ナケレバナラヌト
思フノデアリマス、卽チ如何ニ金ガアッテモ
猶太人ノ如ク水草ノ民デ一國ヲ成スコトハ
出來ヌノデアリマス日本ガ今日マデ强イ
國民性ヲ有シテ居リ、强イ敵愾心ヲ有シテ
居リ、此ノ一步モ退カヌト云フ風ノ精神ハ
日本ノ此國、此土地ヲ持ツモノハ我等バカ
リデアル、吾等ノ外ニハ何人ニモ一指モ此
祖國ノ土地ニハ指サセヌト云フ所ノ此强イ
信念ガ餘程與シテ力アルト思フノデアリマ
ス、ソレヲ金サヘ持ノテ來レバ祖先傳來ノ
土地デモ、或ハ墳墓ノ地デモ、公園デモ、
名所デモ、古蹟デモ、何デモカデモドシド
シ賣拂フモノガ出來、又ドシ〓〓買ハレタ
ト云フトキニ於テ、吾々日本人ノ持ツ考ハ
ドウデアルカ、是等ノ點ニ於テ何卒御說明
ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=128
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129・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 御答致シマス、
此本法制定ノ動機ニ付テハ先刻申述ベマシ
タ通リデ、只今御述ベニナッタ束方電力會
社ノ外資輸入云々ト云フガ如キコトガ動機
ニナッテ出來タノデハナイノデアリマス、
本來明治六年所有權ヲ外國人ニ禁ズルト云
フ法律ガ旣ニ特殊ノ法律デアリマス、通例
トスレバ民法ニアル如ク、一般ニ許スノガ
通則デアリマス、併ナガラ當時ノ事情トシ
テハ外國人ニ土地所有ヲ禁ジテ居ッタノデ
アリマス、社會竝ニ經濟上ノ進步ガ出來テ
禁ズル必要ガナクナリマスレバ一日モ早
ク解クト云フノガ當然ノコトデアラウト考
ハ、又文明國ノ通例デアリマス、此原則
ニ從ッテ先刻モ中シマシタ通リ、今日我國
民ノ益〓海外ニ發展ヲスル場合デアリマス
カラ今囘此法律ヲ制定シタ次第デアリマ
ス又猪野毛君ハ第二ニ明治四十三年ノ時
ノ事ヲ御述ベニナリマシテ、是モ外資ノ輸
入云々ト云フコトデアリマシタ、或ハ其當
時其言葉ハアリマシタデアリマセウガ、ア
ノ當時ハ御水知ノ通リ條約改正ヲ致シテ
居ク夕場合デアリマス、此事ガ大分關係ヲ
致シテ、旣ニ明治四十三年ニ於テ最早外國
人ニ土地ノ所有ヲ許シテ差支ナイト云フノ
デ此法律ガ制定ニナッタ、併ナガラ此法律
ハ御永知ノ通リ條約改正ノ關係ノ爲ニ勅令
ヲ以テ施行期日ヲ定メルト云フコトニナソ
テ居ッタ、其後種々ナル事情ニ依テ今日マ
デ之ヲ實行致サナカッタト云フ次第デアリ
マス、ソレカラ其次ニ御述ベニナリマシタ
日米親善ノ事ニ關係ガアルカ、加州問題解
決ニ關係ガアルカト云フコトデアリマシ
夕、是ハ外務大臣ヨリ御答中上ゲルコトニ
致シマス、ソレカラ將來土地國有ノ場合ニ
何カ心配面倒ガアリハセヌカト云フコトデ
アリマシタガ、是ハ無論外國人ト雖モ日本ノ
法律ニ服從シテ所有権ヲ得テ居ルノデアリ
マスカラ、日本ノ法律ノ範圍ニ於テ國有其
他ノ事ガ行ハレル場合ニ於テハ何等ノ苦
情ノアルベキ筈ハナイト信ジマス次ニ國
防上ノ地區ノ事デアリマス、是レハ先刻申
シマシタ通リ勅令ニ依テ必要ナル範圍ヲ定
メレバソレニ依テ足リルコトヽ信ジマス、
猪野毛君ノ御述べノ如ク鐵道ノ沿線ヲ皆買
占メテシマヒハセヌカ、之ヲ防グ必要ハナ
イカト云フコトデアリマシタガ、サウ云フ
ヤウナコトノ憂ハ今日ハナイト考ヘテ居リ
やっ、最後ニ矢張猪野毛君ハ外國人ガ本邦
ニ參ッテ土地デモ買占メハセヌカト云フ御
氣遣ヒノヤウデアリマシタガ、明治六年ニ
ハ餘程サウ云フ氣遣ガアッタコト信ズル
ノデアリマス、今日ニ於テハ日本ノ經濟事
情、社會事情竝ニ國民ノ思想氣分等カラ見
マシテ、明治六年トハ非常ニ違ヒマシテ、餘
リ恐ルヽニ足ラヌノミナラズ、外國ニ於テ
今日實際ノ狀況ハ、日本ニ參ッテ此高イ土
地ヲ買占メルナドト云フ者ハ今日ノ場合
ハ先ヅ殆ド無カラウト思フ、特別ノ事情必
要ノアル者ガ此方ニ參,テ土地ヲ所有スル
コトハアリマセウガ、猪野毛君ノ御心配ノ
如ク廣大無邊ノ土地ヲ買占メテ之ガ爲ニ
日本ノ國民ガ迷惑スル國家ガ之ガ爲ニ困
難ヲ來スト云フヤウナ事ハ實際ナイト云フ
考カラ、卽チ本法ヲ制定致シマシタ次第
デ、隨テ之ガ又國民思想ニ惡影響ヲ及ボス
ナドト云フコトモ是モ少シモ今日ハ心配ハ
ナイト云フ考デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=129
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130・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉良元夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=130
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131・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=131
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132・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉良君一寸御待チ下
サイー幣原外務大臣
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=132
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133・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今御質
問ノ中ニ松平大使ガ亞米利加ニ到著致ス時
ニ、此土地法案ノ事ニ言及致シ、恰モ之ヲ以
テ日米親善ノ御土產ニスルノデハナイカ、
斯樣ナ御質問ノ趣意ガアリマシタガ、斷ジ
テ左樣ナ事ハアリマセヌ、松平大使ガ如何
ナル言說ヲ致シマシタカ、報道ハ受ケテ居
リマセヌケレドモ、日米親善ノ御土產トシ
テ土地法案ヲ提出スルノデアルト云フヤウ
ナコトハ斷ジテアリマセヌ、ソレカラ此
法律案ハ例ヘバ「カリフオルニア」州邊
ニ於ケル外國人土地法ト云フモノニ對シ何
等カノ影響ガアルカト云フ御質問デアダ
ヤウニ伺ヒマシタガ、此法律案ガ制定セラ
レマシテモ直接ニハ加州ノ現行ノ土地法ヲ
改廢スルト云フ結果ニハ相成ラヌカモ分リ
マセヌ、併ナガラ日本ガ斯ノ如キ自由主義
ニ依リ寛大ナル方針ヲ執リツヽアルト云フ
コトハ間接ニハ何等カノ影響ガナケレバ
ナラヌト思フ、從來亞米利加ノ各州ニ於キ
マシテ排日土地法ト云フヤウナモノガ制定
セラレル時ニハ何時デモ日本自身ガ亞米
加人ノ土地所有權ヲ許シテ居ラヌデハナイ
カト云フ事ガ有力ナル理由ノ一ツニナッテ
居ルノデアル此法律案ガ通過致シマシタ
ナラバ斯ノ如キ理由ハ全ク其根柢ヲ失フ
ノデアリマス(ヒヤ〓〓)随テ間接ニハ何等
カノ影響ガアルモノデアラウト考ヘマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=133
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134・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉良元夫君
〔吉良元夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=134
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135・吉良元夫
○吉良元夫君 此外國人土地所有法案ナル
モノハ是ハ容易ナラヌ重大ナルモノト私
共思ヒマス然ルニ現當局ニ於カセラレテ
マシテハ我ガ帝國ノ進運、既ニ餘程ノ進
步デアッテ、最早今日ニ於テハ外人ニ土地
所有ヲ許スト云フヤウナ時代ニ到達シタノ
デアッテ、外人ニ對シテ斯ノ如キ度量ヲ示ス
ベキ法案ヲ拵ヘルト云フコトハ我ガ日本
ノ立場ニ於テ極メテ有利デアルト云フ御考
ノ上ヨリ御提案ニナッタモノト信ジマス、併
シ私ナドハ斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ルノデ
アリマス、此日本帝國ナルモノハ容易ラ
ヌ、是ハ詰リ神様ヨリ傳へラレタ所ノ國土
トシテ、今日歷史ノ上ニ於テ、國民ハ一種ノ
誇ト一種ノ重大ナル責任ヲ感ジマ、今日マデ歷
史ガ發達シテ來テ居ルノデアリマシテ(「一
種ノ重大ナル責任トハ何ダ」ト呼フ者アリ)
默シテ御聞キナサイ(「簡單々々」「頭ガ舊イ」
ト呼フ者アリ)我ガ帝國ノ土地ト云フモノ
ハ尺寸ノ土地ト雖モ之ヲ外人ニ所有セシム
ルト云フヤウナコトハ吾々ノ祖先吾々ノ
先人ハサウ云フヤウナ事ハ甚ダ好マヌデ
今日マデ發達シテ來テ居ルノデアラウト思
ヒマス(「攘夷論ダ」ト呼フ者アリ)是ハ貴方
ガタハ私ノ發言ヲ御笑ヒニナリマスケレド
モ、ソンナモノデハアリマセヌ、是ハ笑フ
ベキモノデハナイ、吾々ノ頭ガ舊イトカ何
トカ云フヤウナ事ヲ評セラレルコトハ御自
由デアルケレドモ、私ナドハ此日本帝國ノ
領土ニ生レ、日本帝國ノ今日國氏トナッテ居
ルト云フコトハ吾々ハ非常ニ感謝ヲシ
非常ニ有リ難ク信ジテ居ルノデアリマス、
之ヲ今日ノ時代ニ進展シテ來タカラシテ、
亞米利加ナドガ日本人ニ土地所有權ヲ許サ
ヌナドト云フコトハ畢竟スルニ我國ガ許
サヌカラシテ向フモ許サヌト云フノデアル
カラ、今日デハ斯樣ナル進歩セル立法ヲ行
フテ、我國ノ度量ヲ示スト云フコトハ極メ
テ我ガ國民ノ發展ノ上ニモ必要ガアルト云
フヤウナ御見込デアラウト思ヒマスガ、我
ガ國民ハ海外ニ是非發展シナケレバナラ
ヌ、殖民政策ヲ樹テナケレバナラヌト云フ
ヤウナ事モ、識者ノ既ニ久シク御論究ニナ
ル所デアリマスケレドモ、近來世界ノ何レ
ノ方面ニ於キマシテモ、段々植民ノ考ヲ以
テ御ヤリニナッテ見ルケレドモ、ドウモ思
ハシク行カナイ、ノデアル實際ノ成績ト云
フモノハ甚ダ思ハシク行カヌノデアル我
ガ國民ガ最モ有望ニ發展シ得ルト思フタ南
米「ブラジル」ノヤウナ所デモ、其豫想ハ全
ク今日デハ思ウタ程ニハ成功ノ見込ガナイ
ノデアル、サウ云フヤウナ時代ニ我國ガ此
危險ヲ冒シテ外國人ニ土地所有權ヲ許スト
云フヤウナコトハ私ナドハ甚ダ恐レルノ
デアル(「何モ危險ハナイ」「質問ノ要旨ヲ言
ヒ給へ」「靜〓ニ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=135
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136・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=136
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137・吉良元夫
○吉良元夫君(續) 是ガ大體ニ於テ質問ニ
ナルノデアル、ヤカマシク言フ必要ハナイ
(簡單々々)聽カザラント欲セバ場外ニ出給
ヘソレハ自由デアル吾々ハ甚ダ是ハ重大
ナルモノデアルト思フ我ガ帝國ノ經濟的
ノ現狀ニ致シテモ、實ハ殘念ナガラ悲觀ス
ベキ狀態ニ陷ッテ居ルノデアル、此際ニ外
人ニ土地所有權ヲ許シマシタナラバ〓
或ハ恐レルノデアル、智識程度ノ高イ御方
方ハ濫リニ之ヲ外人ニ賣放スヤウナ事ハアリ
マスマイ、又極メテ樞要ナル地點モサウ云
フ所ニハ無イカハ存ジマセヌケレドモ、何ゾ
知ラヌ、帝國ノ將來ニ向シテ極メテ必要ナ
ル地點デモ、今日デハ小作爭議ガ起シタリ、或
ハ又風景ノ極メテ佳イ所デモ畑ノ如キモノ
ハ極メテ價格ガ安イノデアル外人ハ色ミ
ノ人ガアリマス、金儲ケニ熱心ナ人モアリ
マスルガ、又風光ヲ愛スル方面ニ於テ非常
ナ多趣味ナ人ガアルノデアリマシテ是
ハ随分私ハ意外ナル方面ニ買收ヲ試ント欲
スル人ガナイト限ラヌト思フノデアル左
樣ナル事ハ私モ想像シ得ルノデアリマス、
今日ノ如ク我國ガ疲弊困憊ニ陷リマシテ、
金ノ無イ時代ニ斯樣ナル法案ヲ成立致シマ
シテ外人ニ土地所有ヲ許スト云フヤウナル
コトヲ致シマシタナラバ甚ダ私ハ此祖宗
カラ傳ヘテ來夕所ノ、我ガ瑞穗國ニ實ニ悲
シムベキ事情ガ到來シハセヌカト云フコト
ヲ恐ルヽノデアリマス所ガ當局ノ御考デ
ハ全クソレハ正反對デアル日本ハ比較的
土地モ高イノデアル、其樣ナ虞ハナイ、今
日土地所有ト云フコトヲ外人ニ許シタ所
ガ、外人ガ來テ大區域ノ土地ヲ買收スル
ガ如キコトハナイト云フ御答デアリマスケ
レドモ、ソレハ吾々ニ於テ非常ニ違フノデ
アル私ハ今マデ外國人ニ對スル土地所有
權ト云フモノガ、非常ナ面倒ナ手續上實
際ニ於テ行ハレ惡イ狀態ニアリ、大變困難
ナモノニナッテ居ッタカラシテ、之ガ今日マ
デ行ハレヌデ居リマシタコトヽ私ハ思ウテ
居ルノデアリマスルガ、之ガ明確ニ此外國
人土地法ト云フモノガ制定サレマシテ、何
時デモ此法案ノ精神ヲ侵サヌ以上ニ於テ
直ニ賣買ガ出來ルト云フコトニナリマ
スレバ、或ハ恐ルヽノデアリマス、我國ハ
非常ナ場合ガアルト云フコトヲ、私ハドウ
モサウ云フヤウニ感ズルノデアル私ハ此
土地所有法案ニ付テハ非常ニマダ〓究ヲ
致シテ居ラヌノデ分ラヌ、實ニ不明瞭ナル
文句ガアルノデアリマシテ、今後大ニ〓究
致シマシテ、尙ホ御尋ヲスル場合ガアラウ
ト思フノデアリマスルガ、大體ニ於テ吾々
ハ政府ノ御提案ノ趣旨トハ全ク反對ニ考ヘ
テ居ルノデアル斯樣ナ土地所有案卜云フ
ヤウナモノヲ御立テニナルト云フコトハ
是非必要アリトセバ會期ノ十分アル、モツ
ト早イ時ニ之ヲ御出シニナラナイト云フコ
トハ甚ダ遺憾デアル貴族院ニ提出セラ
レタノモ此間僅カナ時間デアルサウシテ
之ヲ貴族院カラ回付サレテ決スルヤウナコ
トニナッテ居ルノデアリマスガ、是ハ所謂ド
サクサ紛レニ行クノデアル兩黨諸君ガ多
イカラシテ、ドサクサ紛レニ行クノデアル
(「貴族院カラ來タノヲ知ラヌカ」ト呼フ者
アリ其他發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=137
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138・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=138
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139・吉良元夫
○吉良元夫君(續) 貴族院カラ來テ居ルコ
トハ知ッテ居ル貴族院ト雖モ今日ハ眞正
ノ憂國ノ人ハ餘リ居ラヌノデアル、貴族院
ノ人デモ吾々ノ目カラ見ルト眞ニ憂國ノ人
ハ居ラヌト認メル、吾々ハサウ云フヤウニ
思フ、私ハ此法案ガ此會期切迫セル時代ニ、
ドサクサ紛レデ唯、與黨ガ多數デアルカラ
ト云フコトデオヤリニナルノハ吾々ノ帝
國ノ爲ニ非常ニ悲シム者デアル、非常ニ重
大ナル法案デアルアナタ方ハ至クテ之ヲ簡
單ニ御取リニナルカモ知レマセヌガ、私ハ
簡單ニハ見テ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=139
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140・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉良君ニ注意シマス
ガドウゾ質問ノ要旨ヲ御述ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=140
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141・吉良元夫
○吉良元夫君(續) 質問ノ要旨ニ入ラント
スルト彼處カラ頻ニ迫害ヲ加ヘラレテ、
論脈ヲ紊ルノデ困ル、要スルニ私ハ政府ノ
考トハ非常ニ違フノデアル私ハ斯樣ナル
重大ナルモノヲ會期切迫ノ折柄貴族院ニ突
然出サレテ、貴族院ガ通過シタカラト云ウ
テ、直グ之ヲ御出シニナッテ、三四日デ之
ヲドサクサ紛レデオヤリニナルト云フコト
ハ帝國ノ爲ニ非常ニ私ハ悲シムノデアッ
テ、私ハ大體ニ於テ當局ノ考トハマルッ切
リ違フ考ヲ持。ッテ居ルノデアリマシテ、私
ハ斯樣ナルコトハ十分是ハ攻究ヲ致シマセ
ヌト云フト、後日ニ至ッテ臍ヲ嚙ムトモ及
バナイ場合ガ出ナケしバ宜イガト心配スル
ノデアル蓋シ私ノ杞憂ナルモノガ眞ニ杞
人ノ憂デアッテ、更ニサウ云フコトガ出來
ナカッタトキニハ非常ニ仕合セデアル併
シ若シ出來タナラバ取返シガ付カヌノデア
ルカラシテ、私ハ政府ノ御考ハドウシテモ
間違フテ居ルト云フ點ニ付テ、今少シクド
ウカ丁寧ナル御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=141
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142・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 小川司法大臣
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=142
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143・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 吉良君ノ御述ニ
ナリマシタコトハ多クハ吉良君ノ御意見
ノヤウニ伺ヒマシタガ、併ナガラ或ハ吉良
君ノ如キ杞憂ヲ抱カレル方モアラウカト考
ヘマスカラ、一應私ハ御答辯ヲシテ置キタイ
ト思フ、明治六年ニ外國人ノ土地所有權ヲ禁
ジマシタ頃ニハ御承知ノ通リ我國ノ進步
モ洵ニ幼稚ナモノデアリマシタ、經濟上カ
ラ見マスレバ土地ハ頗ル安イ、又一般國民ノ
外國人ニ對スル感情ト云フモノモ、餘程今
日トハ違ッテ居ッタノデアル、故ニ明治六年
ニ於テハ之ヲ禁ジタ、殊ニ最モ注意スベキ
事柄ハ其當時ニ於テハ御承知ノ通リ、日
本ノ國家ノ權力ト云フモノハ遺憾ナガラ
洵ニ弱カッタノデアリマス、治外法權ナルモ
ノガアッテ、外國人ハ我國ニ居ッテモ自國ノ
法律ヲ適用シテ居ルト云フヤウナコトデ
アッタ、條約ノ改正ハ未ダ出來ズ、政權ノ
恢復モ未ダ出來ズト云フヤウニ、國家ノ權
カハ極メテ微弱デアリ、經濟界ハ幼稚デア
リ一般人心ノ感情モ外國人ニ馴レヌト云
フ、斯ウ云フ事情デアリマシタカラ、當時
ノ立法者ハ特例ヲ設ケテ、外國人ノ土地ノ
所有ヲ禁ジタノデアリマス、其後ハ玆ニ私
ガ申上ゲル迄モナク、治外法權ハ撤廢セラ
レ、政權ハ恢復セラレ、國家ノ權力ハ相當
强クナッテ來マシテ、決シテ外國人ノ力ガ
國內ニ跋扈致シタカラトテ、之ガ爲ニ日本
ノ國家ガ困ルト云フヤウナコトハアリマセ
ヌ、又外國トノ交通モ益、頻繁トナリ、知識
モ開ケ、世界ノ大戰爭ニ於テモ度々勝ヲ制
シ、國民ノ知識感情ハ-外國人ニ對スル
關係ハ全ク昔日ト一變致シテ居リ、經濟上
カラ致シテモ非常ナル進步デアリマシテ、
我國ノ土地ノ値段ト云フモノハ非常ニ高ク
ナッテ居リマス、吉良君ノ恐レラレル所ノ
亞米利加、英吉利、佛蘭西、獨逸ハ悉ク廣
大ナル植民地ヲ持ッテ居ルカ又ハ亞米利
加ノ如キ自分ノ國ガ非常ニ廣イ土地デア
ル、中ミアノ通リニ安イ土地ガ澤山アルノ
ニ、世界第一ノ人口稠密ナル土地、而モ此
狹イ領土ノ無比ノ高イ土地ヲ持シテ居ル
殊ニ國民ノ感情ハ土地ヲ愛スルト云フ國ニ
來ッテ、土地ノ買占ヲスルト云フヤウナコ
トハ今日ニ於テハ私ハ想像ハ出來ヌノデ
アリマス、故ニ是等ノ點カラ見マシテモ、
今後假令如何ナル變化ガアリマシテモ、此
英吉利、佛蘭西、獨逸、亞未利加ノ如キ國
ガ、非常ナ廣大無邊ナ桶民地ナリ本國ノ
領土ヲ持ノテ居ル國ガ、此國ニ來テ土地ヲ
買占メルト云フコトハ是ハ明治六年時代
ノ杞憂ニ過ギナイモノデアルト信ジテ疑ハ
ヌノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=143
-
144・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第十二、右議案
ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=144
-
145・井本常作
○井本常作君 本案ハ委員ノ數ヲ九名トシ、
議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=145
-
146・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=146
-
147・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日程
第十三乃至第十六ハ同一委員ニ付託シタ議
案デアリマスカラ、一括シテ議題ニ爲スニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=147
-
148・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第十三漁業財團抵當法案、日
程第十四、登錄稅法中改正法律案、日程第
十五印紙稅法中改正法律案日程第十六行
政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シタル
者等ニ交付スル公債發行ニ關スル法律案、
右議案ヲ一括シテ其一讀會ノ續ヲ開キマス
委員長吉原義雄君
第十三漁業財團抵當法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一漁業財團抵當法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スベキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年三月十四日
漁業財團抵當法案委員長
吉原義雄
衆議院議長粕谷義三殿
第十四登錄稅法中改正法律案(政府提
出第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一登錄稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年三月十四日
登錄稅法中改正法律案天員長
吉原義雄
衆議院議長粕谷義三殿
第十五印紙稅法中改正法律案(政府提
也第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一印紙稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年三月十四日
印紙稅法中改正法律案委員長
吉原義雄
衆議院議長粕谷義三殿
第十六行政整理又ハ軍備整理ニ際シ
退官退職シタル者等ニ交付スル公債
發行ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十四年三月十四日
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退
官退職シタル者等ニ交付スル公
債發行ニ關スル法律案委員長
吉原義雄
衆議院議長粕谷義三殿
〔吉原義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=148
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149・吉原義雄
○吉原義雄君 御付託ニナリマシタ法案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報道申シマス、
第一漁業財團抵當法案ノ委員會ハ數回ニ
亙リマシテ、十分審議討論ノ結果、滿場一
致ヲ以テ可決致シマシ夕次第デアリマス、
大體ハ御異存ノ無イコトデアルト信ジマス
ルシ、時間モ經過致シテ居リマスカラ、極
メテ簡單ニ申上ゲマスルガ、委員中ニ於キ
マシテ相當御希望ノ點ガアリマシタ、又修
正ヲセラレントスルヤウナ御意見モアリマ
シタノデ、之ニ就テ政府當局ト數次質問應
答ヲ試ミマシタコトニ付キマシテ、二三重
要ナル點ヲ摘ンデ御報道スル必要ガアルヤ
ウニ考ヘマス、第一本案施行ニ付キマシ
テ、同業者ガ非常ニ金融機關ニ於テ便利ナ
ルコトヲ得マスルコトハ當然ノ事デアリマ
スルガ、更ニ本案ノ施行ト同時ニ、水產銀
行ト云フヤウナ特殊ナ金融機關ヲ設ケルト
云フコトノ希望ガアリマシタノデアリマ
ス、之ニ對シマシテ政府當局ノ御辯明ハ
目下ノ所ニ於テハ必シモ之ヲ不必要ト認ム
ルコトハナイケレドモ、只今直ニ之ヲ施行
スルト云フ考ハナイノデアル而シテ本案
ガ施行ニナリマスト、勸業銀行乃至農工銀
行、其他ノ特殊銀行ヲ始メト致シマシテ
般金融界-金融總テニ付テ非常ナル利便ヲ
得ルコトデアリマスルカラ、今日ノ所ニ於テ
ハ先ツ此位ノ程度ニ於テ止ムルコトハ最モ
相當ナリト信ズル、斯ウ云フ答辯デアリマ
シタ、第二ニ付キマシテハ水產組合乃至水
產會ト云フヤウナ團體ガアリマスルノデ
今囘提出セラレマシタ所ノ法案ニ依リマシ
テハ是等ノ團體ニ對シテ金融スルコトハ
出來ヌノデアリマス然ルニ實際ニ於キマ
シテハ是等ノ水產組合乃至水產會ト云フ
ヤウナ團體-法人團體ニモ金融ヲ許スコ
トニシテ貰ヒタイ、卽チ財團ヲ認メテ貰ヒ
タイト云フ御意見ガアリマシタケレドモ、
之ニ對シマスル政府ノ答辯ハ水產組合又
ハ水產會ト云フヤウナモノニ付キマシテ
ハ其以外ニ於ケル所謂農村振興法、又ハ
產業組合ト云フヤウナコトデ諸種ノ方法
ニ於テ利便ヲ圖シテ居ル又現ニ低利資金
ノ融通モ致シテ居ルノデアル斯ウ云フヤ
ウナ事デアリマスカラ、本法案ニ依ッテ金
融ヲ圖ル必要ハ認メナイ、第三ハ本案ノ第
二條ノ規定ニ依リマスルト、唯〓財團ハ一
人ノ者ニ限ラレテ居ルノデアリマス、之ヲ
數名聯合ノモノモ財團ヲ作ルト云フコトニ
修正ヲ致シタイ、卽チ實際ニ付テ見マスル
ト甲ノ人ハ漁業權ヲ持ッテ居ル、乙ノ人
ハ船舶ヲ持シテ居ル、丙ノ人ハ網ヲ持シテ居
ル實際ニ於テ此三者ガ聯合シテ漁業ヲ營
ンデ居ルモノガ澤山アルノデアルカラ、此
數名聯合ノ團體ニ對シテ財團ト認ムルコト
ニ修正致シタイ、斯ウ云フ修正意見デアリ
マシタガ、之ニ對シマシテハ政府ノ答辯
ハ本件ニ付キマシテハ極メテ愼重ニ、所
謂其金融機關ヲ調査〓究ヲ致シマシタ結
果矢張此金融ヲ與ヘル所ノ人カラ見マス
ト唯ミ一人ニ貸付ケルト云フコトガ安心
デアル最モ便利デアルト云フコトヲ認メ
マシタ爲ニ、之ヲ一人ニ限ルコトニ致シタ
ノデアル、而シテ此船舶又ハ漁業權、又ハ綱
ヲ持ッテ居ル所ノ或一人ガ他ノ賃借權ヲ持チ
マスルト云フト、ソレハ卽チ一種ノ財〓ニナ
リマスカラ、實際ニ於テハ聯合シテ居リマ
シテモ、金融ヲ得ルコトニ於テハ何等ノ不
便ヲ感ズル理由ガナイ、斯ウ云フ答辯デア
リマシテ、委員會ハ卽チ是等ノ問題ニ付キ
マシテ、前後三回ニ亙リマシテ、愼重討論
ノ結果、全會一致ヲ以テ本案ヲ可決致シタ
ノデアリマス願クハ宜シク御審議ノ上、
滿場一致ヲ以テ御決定アランコトヲ希望ス
ル次第デアリマス、其次ノ法案ハ、此法案
ニ依ッテ生ジマシタル所ノ案デアリマスル
ニ依ッテ、是ハ直ニ原案通リ決定致シマシ
タ更ニ其次ノ法案モ亦同樣卽決ヲ致シマ
シタ其次ノ法案ニ至リマシテハ是モ行
政整理ノ結果デアリマスルニ依ッテ、委員
會ハ全會一致ヲ以テ本案ヲ決定致シタ次第
デアリマス、何卒滿場一致ヲ以テ御協賛ア
ランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=149
-
150・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第十六ニ付テ質
疑ノ通告ガアリマス-牧山耕藏君
〔牧山耕藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=150
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151・牧山耕藏
○牧山耕藏君 極メテ簡單ニ質問致シマ
ス大藏大臣ニ御尋致シタイト思ヒマス
ソレハ行政整理ニ伴フ所ノ植民地ニ於ケル
退官退職者ノ數ガ約五千人バカリデアルト
思フノデアリマスルガ、其家族ヲ合シマス
ルト三万人ノ多キニ達スルヤウデアリマ
ス退職賜金モ數百万圓ニ上ルノデアリマ
スルガ政府ハ是等ノ退官退職者ニ對シ
テ成ベク植民地ニ引續イテ居住セシメル
事ニ付テ、何等カノ方策ヲ取ラレタカト云
フコトヲ伺フノデアリマス、現在臺灣、朝
鮮關束州、南洋群島、樺太等ニ居住致シ
テ居リマスル內地人ノ數ハ約八十万人バカ
リデアルト記憶致スノデアリマス、是等ノ
植民地ノ面積ハ本國ノ約八割デアッテ、新附
ノ同胞ハ二千餘万人ヲ數ヘテ居ルノデアリ
マスルガ、內地人ノ在住致シテ居ル者ハ僅
ニ七八十万人デアル政府ハ同化政策ノ上
ヨリ又植民地統治聞發ノ上ヨリ、內地ニ
於ケル過剰人口ノ始末ノ上ヨリ、成ベク多
クノ内地人ヲ植民地ニ移スコトノ方針ヲ御
取リニナッテ居ルト思フノデアリマス、所
ガ今回八十万人ノ此植民地在住者、ソレヲ
調ベテ見マスト云フト、其半ト云フモノハ
植民地ニ生レタ者デアッテ約四十万人ガ
海ヲ越エテ内地ヨリ移住ヲ致シテ居ルノデ
アリマスルカラ、今回退官退職致シマスル
者ノ家族總人員ノ約三万人ト云フモノガ植
民地ヨリ引揚ゲルト云フコトニ付テハ是
ハ植民政策ノ上ヨリ見テモ頗ル重大ナモノ
ト思ハレルノデアリマス、內地ニ於ケル官
吏ノ退職者ニ對シテハ旅費ヲ支給シテナイ
ノデアリマスルガ、植民地ニ於ケル此退官
退職者ニ對シテハ相當巨額ノ旅費ヲ與ヘ
ラレテ居ル成程遠方カラ歸ルノデアリマ
スカラ、旅費ヲ與ヘルコトニ付テハ私異論
ヲ申述ベル者デハアリマセヌガ、併シ其旅
費ノ支給規定等ヲ調ベテ見マスト云フト
歸ルト云フ事實ガナケレバ旅費ヲ支給シナ
イト云フコトデアリマスカラ、之ヲ實際ノ
上カラ言フト、〓里ニ歸ルコトヲ奬勵スル
所ノ一ツノ方法デアルヤウニモ見エル結
果ガ左樣ニナルノデアル、ソレデ歸ラナク
トモ其旅費ニ相當スル所ノ金ハ之ヲ支給
スルトカ何トカ云フヤウナ方法ヲ設ケルコ
トモ一策デアラウト思フ、尙ホ臺灣ニ於テ
モ朝鮮ニ於テモ國有ノ耕地ガ隨分澤山アル
ノデアル引續キ居住ヲシテ、其土地ニ
留ッテ居ラウト云フヤウナ者ノ中ニハ百
姓ヲシタイト云フヤウナ希望者モアルノデ
アリマスルカラ、政府ガ少シク此方面ニ考
慮ヲ拂ヒマシタナラバ公債ヲ與ヘル代リ
ニ國有地ヲ與ヘテ、成ベク其土地ニ永ク之
ヲ住マハシムルト云フコトノ方法ハ出來ル
ト思フノデアリマスガ、政府ハ是等ノ點ニ
付テ何等カ考慮サレル所ガアッタカ、唯〓公
債ヲ內地同樣ニ與ヘテ歸ラウガ歸ルマイ
ガ、ソンナ事ニハ一向頓著シナイ斯ウ云
フヤウナ一山百文的ノ方針ヲ、矢張檣民地
ノ退官退職者ニ對シ賜金ノ支給ニ付テ執ラ
レタノデアリマスカ此點ニ植民地統治上
頗ル重大ナ問題デア。ッテ植民地ニ居リマ
ス者ハ段々內地ニ引揚ゲテ歸ルト云フコト
ニ對シテハ非常ニ悲致シテ居ルノデア
リマスカラ、政府トシテハ段々是カラ植民
地ノ繁榮ヲ圖ル上ニ於テ又人口問題解決
ノ上カラ言ッテモ、母國ヨリ益〓多ク植民
地ニ移住セシムル方針ヲ執ラナケレバナラ
ヌノデアルガ、之ニ反對ノ結果ヲ生ズルガ
如キ感ヲ爲スノデアリマスガ、此點ニ付テ
如何ニ政府ハ考ヘラレタカ、實ハ植民地ノ
各當事者ヨリ伺ヒタイノデアリマスガ、ソ
レハ時間ヲ要シマス、又拓殖局長ガ全般ニ
涉ッテハ能ク御承知デアラウト思ヒマスガ、
濱田拓殖局長ハ先般私ノ質問ニ對シテ、大
連旅順ニ市制ヲ施行シテ、サウシテ臺灣ヤ
朝鮮ニ付テ···(發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=151
-
152・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=152
-
153・牧山耕藏君(續)
○牧山耕藏君(續) 諸君ガ騒グト段々長ク
ナリマスカラ暫ク御〓〓ヲ願ヒマス臺
灣ヤ朝鮮ノ重要ノ都市ニ自治制ヲ施行セザ
ルハ如何ナル理由デアルカト斯樣ナ質問ヲ
シタ、所ガ拓殖局長ハ、大連旅順ニ於ケル市
制ハ內地人ノミガ市政ニ參與シテ居ルノ
デアッテ、支那人ハ全ク之ニ與フテ居ラヌト
云フコトヲ此神聖ナル壇上ニ於テ明言サレ
タ所ガ大連ニ於テハ五名ノ支那人ノ市會
議員ガ市政ニ參與シテ居ル、斯樣ナル明白ナ
ル事實ヲ否定スルガ如キ拓殖局長ノ答辯ハ
私ハ忌避スルノデアリマスカラ、ドウカ大藏
大臣ヨリシテ深切ナル御答辯ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=153
-
154・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 濱口大藏大臣
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=154
-
155・國務大臣(濱口雄幸君)
○國務大臣(濱口雄幸君) 牧山君ニ御答ヲ
〓シマスガ中央政府ノ方針トシテ別ニ
極民地ニ於ケル行政〓ノ犠牲トナリマシ
テ淘汰ヲサレマシタ官吏ヲ内地ニ歸サズシ
テ其植民地ニ定住ヲセシムル如キ方針ヲ
特ニ執ッタコトハアリマセヌ、此度ノ淘汰者
ニ對シマシテハ御水知ノ通リ相當ナル所
ノ賜金ヲ支給シテ居リマス、其支給ヲ受ケ
タル所ノ罷メラレタル人ニガソレヲ資本
ト致シテ其地ニ於テ定住ヲ致シ、相當ノ職
業又ハ事業ニ從事スルコトガ出來レバ洵ニ
幸デアリマス、要スルニ其人〓ガ內地ニ歸
リマセウトモ、或ハ其場所ニ留リマセウト
モ、是ハ其人〓ノ自由ニ委ス外ハナイノデ
アリマス歸ル者ニハ旅費ヲ給スル、歸ラ
ナイ者ニハ其代リニ何カ給スベシト云フ御
意見モアリマシタケレドモ、是ハ左樣ニハ
參リマセヌ、歸〓旅費ハ歸ラナイ者ニハ支
給スル譯ニハ參リマセヌ、是等ノ事柄ハ
ニ其人〓ノ自由意思ニ放任ヲスル外ヘアリ
マセヌト考ヘマス、植民地ニ對スル所ノ移
民ノ政策、或ハ拓殖ノ政策ト云フコト、此
度ノ行政整理ニ依ル所ノ被淘汰者ノ居住ト
云フコトヽハ全然別ノ問題トシテ考フル
外ナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=155
-
156・原夫次郞君
○原夫次郞君 議長、議事ノ進行ニ付テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=156
-
157・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=157
-
158・原夫次郞君
○原夫次郞君 只今見渡ス所、議席ガ定員
數ニ充タナイヤウデアリマスガ、御調ヲ願っ
テ、足リナケレバ此程度ニ於テ本日ノ議事
ヲ止メテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=158
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159・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 議長ニ於テハ定員數
ハ缺イテ居ナイト認メマス-日程第十三ニ
對シテ贊成ノ通告ガアリマス、中村嘉壽君
〔中村嘉壽君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=159
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160・中村嘉壽君
○中村嘉壽君 極ク簡單ニヤリマス、只今
委員長カラ御報告ニナリマシタ漁業財團抵當
法案、竝ニ是ト關聯致シマシタ登錄稅法
印紙稅法中改正法律案ニ付キマシテ私ハ贊
成ヲスル者デゴザイマス賛成ヲスルニ方
リマシテ少シ許リ註文ヲシテ置キタイト思ヒ
ママ、私ノ希望ヲ申上ゲテ置ク次第デゴザ
イマス、此水產社會ガ金融ノ機關ニ頗ル缺
ケテ居ル尙ホ此金融機關ニ付テ政府ガ然
ルベキ施設ヲシテ戴キタイト云フコトハ
曩ノ遠洋漁業法中改正法律案ノ場合ニ於
キマシテモ、私ハ希望ヲ申シテ置イタノデ
ゴザイマスガ、其當時政府當局者ハ私共ノ
意ヲ諒トシテ、他日何等カノ形式ニ依ソテ
斯ノ如キ方法ヲ講ズルト云フコトヲ御約束
ニナッタノデゴザイマス然ルニ是ガ只今
現レタ所ノ財團法人デゴザイマシテ由來
水產社會ガ金融ノ便ヲ缺クコトハ久シウゴ
ザイマシテサウシテ之ニ對シテ民間カラ
モ長イ間水產銀行ノ設立ヲ希望シテ居ッタ
コトハ皆サン方モ御水知ノ通リデアリマ
ス之ヲ過去ノ政府ガ等閉ニ付シテ居シタ
ノヲ現内閣ガ之ニ少シデモ手ヲ御著ケニ
ナッタト云フコトニ付キマシテハ私共敬
意ヲ表シ且ツ感謝ヲスル次第デゴザイマス
(拍手)私ハ先程委員長ノ御話ガアリマシタ
コトデ盡キテ居ルカモ知レマセヌガ尙ホ
其他ニ色〓希望ノ條件ガアリマスカラ玆
ニ簡單ニ申上ゲマス、漁業法ヲ改正シテ漁
業權ノ期限ヲ延長スルコト、現在ハ漁業權
ガ最長二十箇年デゴザイマシテ、多クハ五
年トカ十年トカ云フコトニナッテ居リマス
カラ、之ニ對シテ金融業者ガ頗ル警戒ヲ要
シ、又不安ヲ有スルガ爲ニ、金融ノ途ガ開
カレナイノデゴザイマスカラ、他日斯ウ云
フヤウナ事ニ付キマシテ政府ガ注意ヲ拂ッ
テ、延長ノ方法ヲ講ジテ戴キタイ、其次ニ
ハ定置漁業中-此定置漁業ノ中ニ色ミゴ
ザイマスガ、其中ノ臺網類ト云フヤウナモ
ノハ地方廳ニ是ガ許可權ヲ委ネテゴザイ
マスケレドモ、之ヲ中央政府ニ取上ゲテ
サウシテ愼重ナル許可ヲヤッテ戴イタナラ
バ漁場ノ整理ガ出來、又金融業者ガ之ニ
對シテ安心ヲスルデアラウト云フコトヲ感
ズルノデゴザイマス其次ニハ區割漁業權
ト云フノガゴザイマスガ、水面ニ「シビ」ヲ設
ケテ海苔ヲ拵ヘルトカ或ハ色こノ方法ヲ
講ズル區割漁業權、ソレニ對シテ公有水面
埋立法ノヤウニ改正ヲシテ、長イ間ニ亙デ
所有權ヲ與ヘルト云フコトヲ希望スル次第
デアリマス、其次ハ漁業組合ニモ漁業權ノ
行使ヲ許スコト、卽チ漁業組合ト云フモノ
ニハ今日デハ漁業權ヲ持ッテ居ルコトハ出
來マスケレドモ、此權利ヲ行使スルコトガ
出來ナイヤウニナッテ居ル、ソレデ是ハ漁業
組合ニモ漁業ヲヤルコトガ出來、サウシテ
之ニ依リマシテ公共ノ貸付トカ、或ハ共同
販賣、共同購買、倉庫業、或ハ共同製造ト云
フヤウナコトヲ行ハシムルヤウニ致シマシ
タナラバ、唯〓金融ノ途ガ開ケテ來ルノミナ
ラズ、蓋シ漁業ヲ發達セシムルニ頗ル有利
ナル事デアルト信ズルノデゴザイマスソ
レカラ其次ノ希望ハ銀行條例ヲバ又ハ特
殊銀行法ヲバ改正致シマシテ、北海道拓殖
銀行、朝鮮銀行立灣銀行、農工銀行ト云
フヤウナ銀行ノ法律ニモ何カ改止ヲ加へ
テ、金融ノ途ガ出來ルヤウニシテ戴キタイ
ト云フノデゴザイマス、現在ニ於テハ日本興
業銀行ト朝鮮殖產銀行トニハ是等ニ適合
スル所ノ條項ガアリマスルケレドモ、只今
申上ゲマシタ所ノ諸銀行法ニハ此項目ガゴ
ザイマセヌカラ、特ニ之ヲ設ケルヤウニシ
テ戴キタイト云フコトヲ希望スルノデアリ
マス更ニ又此法律ガ出來マシテモ、此運
用宜シキヲ得ナイケレバ到底所期ノ目的ヲ
達スルコトハ出來ヌノデゴザイマスカラ
之ニ對シテハ是等ノ特殊銀行ニ於キマシ
テ.水產ノ事ニ經驗ヲ有シ、或ハ知識ヲ有
スル所ノ人達ヲ入レテ、サウシテ貸付ノ方
法ヲ講ジテ戴キタイト云フノガ私ノ希望デ
ゴザイマス、從來水產ノコトニ金融ノ途ガ
開カレナイト云フコトハ而シテ又金融ガ
頗ル圓滑ニ行カナイト云フコトハ蓋シ水
產ニ知識ヲ持シテ居ル所ノ人ガ金融界ニ居
ナイト云フコトガ最モ大ナル原因ヲ爲シ、
且ツンレガ爲ニ色ミナル危險ガアルノデゴ
ザイマスルガ、一タビ斯ノ如キ法案ガ出來
マシテ、之ヲ運用スルニ知識アル人達ガ入
ラレマシナタラバ必ヤ適當ナル方法ガ講
ゼラルヽデアラウト云フコトヲ私ハ考ヘル
ノデゴザイマスルガ、ソレヲ私ハ希望シテ
置ク次第デアリマス、ドウゾ皆樣他日斯ノ
如キ方法ヲ講ジテ、終ニハ獨立ノ水產銀行
ガ出來テ、吾々ノ所期ノ目的ヲ達シ得ルコ
トガ出來ルヤウニシテ戴キタイト云フコト
ヲ、切ニ御願スル次第デアリマス(拍手)
○同長(粕谷義三君)四案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=160
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161・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=161
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162・作間耕逸君
○作間耕逸君 四案ヲ一括シテ直ニ其第二
讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、何レモ委
員長報告ノ通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=162
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163・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=163
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164・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ直ニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
漁業財團抵當法案第二讀會(確定議)
登錄稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
印紙稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者フリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=164
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165・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス仍テ第三讀會ヲ省略シテ、四案トモ
委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ-
只今議長ノ認ムル所ニ依リマスルト定足數
ヲ缺イテ居ルト認メマス仍テ今日ハ此程
度ニ於テ散會致シマス、次囘ノ日程ハ公報
ヲ以テ御通知致シマス
午後七時六分散會
衆議院議事速記錄第二十七號中正誤
頁段行誤正
六四七一三九喪失搜查
二三〇院內院外
四二七見込ハ事ガ是レマデ
同同六同同四八二四三者デ者バカリデ
四三三七議長ニハ議長ガ
二森田君森田兩君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005013242X02819250317&spkNum=165
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