1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
大正十五年二月十五日(月曜日)
午前十時十三分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十一號 大正十五年二月十五日
午前十時開議
第一 民事訴訟法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 民事訴訟法中改正法律施行法案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=0
-
001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲシテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル十日衆議院ヨリ政府ニ於テ左ノ議案ヲ撤囘セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
同日請願委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願文書表第三囘報告書
去ル十二日政府ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律施行法案
一昨十三日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
簡易生命保險法中改正法律案
大正十四年勅令第二百四十五號(承諾ヲ求ムル件)
山東小山平山市八木発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=1
-
002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、牧野子爵病氣ニ付
キ會期中齋藤安雄君病氣ニ付キ十四日間ノ請暇ノ申出ガゴザイマシタ、許可
スルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=2
-
003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
un华南市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=3
-
004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程第一、民事訴訟法中改正法律案、政府提
出、第二、民事訴訟法中改正法律施行法案、政府提出、第一讀會、諸君ニ於
テ御異議ナケレバ兩案トモ一括シテ說明ヲ煩ハシマス、司法大臣江木翼君
民事訴訟法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正十五年二月十二日
內閣總理大臣若槻禮次郞
兼內務大臣
陸軍大臣宇垣-成
海軍大臣財部彪
外務大臣男爵幣原喜重郞
文臣岡田良平
鐵藏道部石貢
大大大大大口
遞大臣臣臣臣江安濱仙謙雄
信達翼藏幸
司法木
農林大臣整爾
片早岡速
商工大臣直温
民事訴訟法中左ノ通改正ス
民事訴訟法目錄第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク改ム
第一編總則
第一章裁判所
第一節管轄
第二節裁判所職員ノ除斥、忌避及囘避
第1級當事者
第一節當事者能力及訴訟能力
第二節共同訴訟
第三節訴訟參加
第四節訴訟代理人及輔佐人
第三章訴訟費用
第一節訴訟費用ノ負擔
第二節訴訟費用ノ擔保
第三節訴訟上ノ救助
第四章訴訟手續
第一節口頭辯論
第二節期日及期間
第三節送達
第四節裁判
第五節訴訟手續ノ中斷及中止
第二編第一審ノ訴訟手續
第一章地方裁判所ノ訴訟手續
第一節訴
筆記師辯論ノ準備
第三節證據
第一款總則
第二款證人訊問
第三款鑑定
第四款書證
第五款檢證
第六款當事者訊問
第七款證據保全
第二章區裁判所ノ訴訟手續
第三編上訴
第一章控訴
第二章上告
第三章抗告
第四編再審
第五編督促手續
民事訴訟法第一編乃至第五編ヲ左ノ左ク改ム
第一編總則
第一章裁判所
第一節管轄
第一條訴ハ被〓ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ノ管轄ニ屬ス
第二條人ノ普通裁判籍ハ住所ニ依リテ定ル
日本ニ住所ナキトキ又ハ住所ノ知レサルトキハ普通裁判籍ハ居所ニ依
リ,居所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ最後ノ住所ニ依リテ定ル
第三條大使、公使其ノ他外國ニ在リテ治外法權ヲ享クル日本人カ前條ノ
規定ニ依リ普通裁判籍ヲ有セサルトキハ其ノ者ノ普通裁判籍ハ東京市ニ
在ルモノトス
第四條法人其ノ他ノ社團又ハ財〓ノ普通裁判籍ハ其ノ主タル事務所又ハ
營業所ニ依リ、事務所又ハ營業所ナキトキハ主タル業務擔當者ノ住所ニ
依リテ定ル
國ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付國ヲ代表スル官廳ノ所在地ニ依リテ定ル
第一項ノ規定ハ外國ノ社團又ハ財團ノ普通裁判籍ニ付テハ日本ニ於ケル
事務所、營業所又ハ業務擔當者ニ之ヲ適用ス
第五條財產權上ノ訴ハ義務履行地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第六條寄留者ニ對スル財產權上ノ訴ハ寄留地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコ
トヲ得
第七條軍人、軍屬又ハ船員ニ對スル財產權上ノ訴ハ軍事用ノ廳舍ノ所在
地又ハ艦船ノ本籍若ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第八條日本ニ住所ナキ者又ハ住所ノ知レサル者ニ對スル財產權上ノ訴ハ
請求若ハ其ノ擔保ノ目的又ハ差押フルコトヲ得ヘキ被〓ノ財產ノ所在地
ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第九條事務所又ハ營業所ヲ有スル者ニ對スル訴ハ其ノ事務所又ハ營業所
ニ於ケル業務ニ關スルモノニ限リ其ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコ
トヲ得
第十條船舶又ハ航海ニ關シ船舶所有者其ノ他船舶ノ利用ヲ爲ス者ニ對ス
ル訴ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十一條船舶債權其ノ他船舶ヲ以テ擔保スル債權ニ基ク訴ハ船舶ノ所在
地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十二條會社其ノ他ノ社團ヨリ社員ニ對スル訴又ハ社員ヨリ社員ニ對ス
ル訴ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ會社其ノ他ノ社團ノ普通裁判籍所
在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ規定ハ社團又ハ財團ヨリ役員ニ對スル訴及會社ヨリ發起人又ハ檢
査役ニ對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十三條會社其ノ他ノ社團ノ債權者ヨリ社員ニ對スル訴ハ社員タル資格
ニ基クモノニ限リ前條ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十四條第十二條及前條ノ規定ハ社團、財團、社員又ハ社團ノ債權者ヨ
リ社員、役員、發起人又ハ檢査役タリシ者ニ對スル訴及社員タリシ者ヨ
リ社員ニ對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十五條不法行爲ニ關スル訴ハ其ノ行爲アリタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起
スルコトヲ得
船舶ノ衝突ニ基ク損害賠償ノ訴ハ損害ヲ受ケタル船舶カ最初ニ到達シタ
ル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十六條海難救助ニ關スル訴ハ救助アリタル地又ハ救助セラレタル船舶
カ最初ニ到達シタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十七條不動產ニ關スル訴ハ不動產所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコト
ヲ得
第十八條登記又ハ登錄ニ關スル訴ハ登記又ハ登錄ヲ爲スヘキ地ノ裁判所
ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十九條相續權ニ關スル訴又ハ遺留分若ハ遺贈其ノ他死亡ニ因リテ效力
ヲ生スヘキ行爲ニ關スル訴ハ相續開始ノ時ニ於ケル被相續人ノ普通裁判
籍所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十條相續債權其ノ他相續財產ノ負擔ニ關スル訴ニシテ前條ノ規定ニ
該當セサルモノハ相續財產ノ全部又ハ一部カ前條ノ裁判所ノ管轄區域內
ニ在ルトキニ限リ其ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十一條一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ爲ス場合ニ於テハ第一條乃至前條
ノ規定ニ依リ一ノ請求ニ付管轄權ヲ有スル裁判所ニ其ノ訴ヲ提起スルコ
トヲ得
第二十二條裁判所構成法ニ依リ管轄カ訴訟ノ目的ノ價額ニ依リテ定ルト
キハ其ノ價額ハ訴ヲ以テ主張スル利益ニ依リテ之ヲ算定ス
前項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ハ千圓ヲ超過スルモ
ノト看做ス
第二十三條一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ爲ストキハ其ノ價額ヲ合算ス
果實、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請求カ訴訟ノ附帶ノ目的ナルトキハ
其ノ價額ハ之ヲ訴訟ノ目的ノ價額ニ算入セス
第二十四條左ノ場合ニ於テハ關係アル裁判所ニ共通スル直近上級裁判所
ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ管轄裁判所ヲ定ム
一管轄裁判所及裁判所構成法第十三條第二項ノ規定ニ依リテ之ニ代ル
ヘキ裁判所カ法律上又ハ事實上裁判權ヲ行フコト能ハサルトキ
二裁判所ノ管轄區域明確ナラサル爲管轄裁判所カ定ラサルトキ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二十五條當事者ハ第一審ニ限リ合意ニ依リ管轄裁判所ヲ定ムルコトヲ
得
前項ノ合意ハ一定ノ法律關係ニ基ク訴ニ關シ且書面ヲ以テ之ヲ爲スニ非
サレハ其ノ效ナシ
第二十六條被〓カ第一審裁判所ニ於テ管轄違ノ抗辯ヲ提出セスシテ本案
ニ付辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ其ノ裁判所ハ
管轄權ヲ有ス
第二十七條第一條、第五條乃至第二十一條、第二十五條及前條ノ規定ハ
訴ニ付專屬管轄ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十八條裁判所ハ管轄ニ關スル事項ニ付職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコト
ヲ得
第二十九條裁判所ノ管轄ハ起訴ノ時ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第三十條裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一部カ其ノ管轄ニ屬セスト認ムルトキ
ハ決定ヲ以テ之ヲ管轄裁判所ニ移送ス
第三十一條裁判所ハ其ノ管轄ニ屬スル訴訟ニ付著キ損害又ハ遲滯ヲ避ク
ル爲必要アリト認ムルトキハ其ノ専屬管轄ニ屬スルモノヲ除クノ外申立
ニ因リ決定ヲ以テ訴訟ノ全部又ハ一部ヲ他ノ管轄裁判所ニ移送スルコト
ヲ得
第三十二條移送ノ裁判ハ移送ヲ受ケタル裁判所ヲ覊束ス
移送ヲ受ケタル裁判所ハ更ニ事件ヲ他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得ス
第三十三條移送ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
移送ノ申立ヲ却下シタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十四條移送ノ裁判確定シタルトキハ訴訟ハ初ヨリ移送ヲ受ケタル裁
判所ニ繫屬シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テハ移送ノ裁判ヲ爲シタル裁判所ノ書記ハ其ノ裁判ノ正
本ヲ訴訟記錄ニ添附シ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコト
ヲ要ス
第二節裁判所職員ノ除斥、忌避及囘避
第三十五條判事ハ左ノ場合ニ於テハ法律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラ
ル
判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ事件ノ當事者ナルトキ又ハ事件ニ
付當事者ト共同權利者、共同義務者若ハ償還義務者タル關係ヲ有スル
トキ
二判事カ當事者ノ四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族ナルトキ又ハナ
リシトキ
三判事カ當事者ノ後見人又ハ同居ノ戶主若ハ家族ナルトキ
四判事カ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
五判事カ事件ニ付當事者ノ代理人又ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六判事カ事件ニ付仲裁判斷ニ關與シ又ハ不服ヲ申立テラレタル前審ノ
裁判ニ關與シタルトキ但シ他ノ裁判所ノ囑託ニ因リ受託判事トシテ其
ノ職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十六條除斥ノ原因アルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ除
斥ノ裁判ヲ爲ス
第三十七條判事ニ付裁判ノ公正ヲ妨クヘキ事情アルトキハ當事者ハ之ヲ
忌避スルコトヲ得
當事者カ判事ノ面前ニ於テ辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタ
ルトキハ其ノ判事ヲ忌避スルコトヲ得ス但シ忌避ノ原因カ其ノ後ニ生シ
又ハ當事者カ其ノ原因アルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十八條第三十六條又ハ前條ニ規定スル申立ハ其ノ原因ヲ開示シテ判
事所屬ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
除斥又ハ忌避ノ原因ハ申立ヲ爲シタル日ヨリ三日內ニ之ヲ疏明スルコト
ヲ要ス前條第二項但書ノ事實亦同シ
第三十九條合議裁判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所、區裁
判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方
裁判所決定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第四十條判事ハ其ノ除斥又ハ忌避ニ付裁判ニ關與スルコトヲ得ス但シ意
見ヲ述フルコトヲ得
第四十一條除斥又ハ忌避ヲ理由アリトスル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツ
ルコトヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ
得
第四十二條除斥又ハ忌避ノ申立アリタルトキハ其ノ申立ニ付テノ裁判ノ
確定ニ至ル迄訴訟手續ヲ停止スルコトヲ要ス但シ急速ヲ要スル行爲ニ付
テハ此ノ限ニ在ラス
第四十三條第三十五條及第三十七條第一項ノ場合ニ於テハ判事ハ監督權
アル判事ノ許可ヲ得テ囘避スルコトヲ得
第四十四條本節ノ規定ハ裁判所書記ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ裁判
ハ書記所屬ノ裁判所之ヲ爲ス
第二章當事者
第一節當事者能力及訴訟能力
第四十五條當事者能力、訴訟能力及訴訟無能力者ノ法定代理ハ本法ニ別
段ノ定アル場合ヲ除クノ外民法其ノ他ノ法令ニ從フ訴訟行爲ヲ爲スニ必
要ナル授權亦同シ
第四十六條法人ニ非サル社團又ハ財團ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アル
モノハ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得
第四十七條共同ノ利益ヲ有スル多數者ニシテ前條ノ規定ニ該當セサルモ
ノハ其ノ中ヨリ總員ノ爲ニ原告若ハ被〓ト爲ルヘキ一人若ハ數人ヲ選定
シ又ハ之ヲ變更スルコトヲ得
訴訟ノ繫屬ノ後前項ノ規定ニ依リテ原〓又ハ被〓ト爲ルヘキ者ヲ定メタ
ルトキハ他ノ當事者ハ當然訴訟ヨリ脫退ス
第四十八條前條ノ規定ニ依リテ選定セラレタル當事者中死亡其ノ他ノ事
由ニ因リ其ノ資格ヲ喪失シタル者アルトキハ他ノ當事者ニ於テ總員ノ爲
ニ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得
第四十九條未成年者及禁治產者ハ法定代理人ニ依リテノミ訴訟行爲ヲ爲
スコトヲ得但シ未成年者カ獨立シテ法律行爲ヲ爲スコトヲ得ル場合ハ此
ノ限ニ在ラス
第五十條準禁治產者、妻又ハ法定代理人カ相手方ノ提起シタル訴又ハ上
訴ニ付訴訟行爲ヲ爲スニハ保佐人ノ同意、夫ノ許可又ハ親族會ノ同意其
ノ他ノ授權ヲ要セス
準禁治產者、妻又ハ法定代理人カ訴、控訴若ハ上〓ノ取下、和解、請求
ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル脫退ヲ爲スニハ常ニ特別ノ
授權アルコトヲ要ス
第五十一條外國人ハ其ノ本國法ニ依レハ訴訟能力ヲ有セサルトキト雖日
本ノ法律ニ依レハ訴訟能力ヲ有スヘキトキハ之ヲ訴訟能力者ト看做ス
第五十二條法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ハ書面ヲ以テ
之ヲ證スルコトヲ要ス
第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ選定及變更亦同シ
前項ノ書面ハ訴訟記錄ニ之ヲ添附スルコトヲ要ス
第五十三條訴訟能力、法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ
欠缺アルトキハ裁判所ハ期間ヲ定メテ其ノ補正ヲ命シ若遲滯ノ爲損害ヲ
生スル虞アルトキハ一時訴訟行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第五十四條訴訟能力、法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ
欠缺アル者カ爲シタル訴訟行爲ハ其ノ欠缺ナキニ至リタル當事者又ハ法
定代理人ノ追認ニ因リ行爲ノ時ニ遡リテ其ノ效力ヲ生ス
第五十五條第五十三條及前條ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル當事者カ
訴訟行爲ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十六條法定代理人ナキ場合又ハ法定代理人カ代理權ヲ行フコト能ハ
サル場合ニ於テ未成年者又ハ禁治產者ニ對シ訴訟行爲ヲ爲サムトスル者
ハ遲滯ノ爲損害ヲ受クル虞アルコトヲ疏明シテ受訴裁判所ノ裁判長ニ特
別代理人ノ選任ヲ申請スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ特別代理人ヲ改任スルコトヲ得
特別代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニハ後見人ト同一ノ授權アルコトヲ要ス」
特別代理人ノ選任及改任ノ命令ハ特別代理人ニモ之ヲ送達スルコトヲ要
ス
第五十七條法定代理權ノ消滅ハ本人又ハ代理人ヨリ之ヲ相手方ニ通知ス
ルニ非サレハ其ノ效ナシ但シ相手方カ其ノ事實ヲ知リタルトキハ此ノ限
ニ在ラス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ變更ニ之ヲ準用ス
第五十八條本法中法定代理及法定代理人ニ關スル規定ハ法人ノ代表者及
法人ニ非スシテ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得ル社團又ハ財
團ノ代表者又ハ管理人ニ之ヲ準用ス
第二節共同訴訟
第五十九條訴訟ノ目的タル權利又ハ義務カ數人ニ付共通ナルトキ又ハ同
一ノ事實上及法律上ノ原因ニ基クトキハ其ノ數人ハ共同訴訟人トシテ訴
へ又ハ訴ヘラルルコトヲ得訴訟ノ目的タル權利又ハ義務カ同種ニシテ事
實上及法律上同種ノ原因ニ基クトキ亦同シ
第六十條他人間ノ訴訟ノ目的ノ全部又ハ一部ヲ自己ノ爲ニ請求スル者ハ
其ノ訴訟ノ繋屬中當事者雙方ヲ共同被告トシ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ
提起スルコトヲ得
第六十一條共同訴訟人ノ一人ノ訴訟行爲又ハ之ニ對スル相手方ノ訴訟行
爲及其ノ一人ニ付生シタル事項ハ他ノ共同訴訟人ニ影響ヲ及ホサス
第六十二條訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場
合ニ於テハ其ノ一人ノ訴訟行爲ハ全員ノ利益ニ於テノミ其ノ效力ヲ生ス」
共同訴訟人ノ一人ニ對スル相手方ノ訴訟行爲ハ全員ニ對シテ其ノ效力ヲ
生ス
共同訴訟人ノ一人ニ付訴訟手續ノ中斷又ハ中止ノ原因アルトキハ其ノ中
斷又ハ中止ハ全員ニ付其ノ效力ヲ生ス
第六十三條第五十條第一項ノ規定ハ前條第一項ノ場合ニ於テ共同訴訟人
ノ一人カ提起シタル上訴ニ付他ノ共同訴訟人ノ爲スヘキ訴訟行爲ニ之ヲ
準用ス
第三節訴訟參加
第六十四條訴訟ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル第三者ハ其ノ訴訟ノ繫屬中
當事者ノ一方ヲ補助スル爲訴訟ニ參加スルコトヲ得
第六十五條參加ノ申出ハ參加ノ趣旨及理由ヲ具シ參加ニ依リテ訴訟行爲
ヲ爲スヘキ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
書面ニ依リテ參加ノ申出ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ書面ハ之ヲ當事者
雙方ニ送達スルコトヲ要ス
參加ノ申出ハ參加人トシテ爲シ得ル訴訟行爲ト共ニ之ヲ爲スコトヲ得
第六十六條當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘタルトキハ參加ノ理由ハ之ヲ疏
明スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ參加ノ許否ニ付決定ヲ以テ
裁判ヲ爲ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第六十七條當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘスシテ辯論ヲ爲シ又ハ準備手續
ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ異議ヲ述フル權利ヲ失フ
第六十八條參加人ハ參加ニ付異議アル場合ニ於テモ參加ヲ許ササル裁判
確定セサル間ハ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得
參加人ノ訴訟行爲ハ當事者カ之ヲ援用シタルトキハ參加ヲ許ササル裁判
確定シタル場合ニ於テモ其ノ效力ヲ有ス
第六十九條參加人ハ訴訟ニ付攻擊又ハ防禦ノ方法ノ提出、異議ノ申立、
上訴ノ提起其ノ他一切ノ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得但シ參加ノ時ニ於ケル
訴訟ノ程度ニ從ヒ爲スコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
參加人ノ訴訟行爲カ被參加人ノ訴訟行爲ト牴觸スルトキハ其ノ效力ヲ有
セス
第七十條前條ノ規定ニ依リテ參加人カ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得ス又ハ其
ノ訴訟行爲カ效力ヲ有セサリシ場合、被參加人カ參加人ノ訴訟行爲ヲ妨
ケタル場合及被參加人カ參加人ノ爲スコト能ハサル訴訟行爲ヲ故意又ハ
過失ニ因リテ爲ササリシ場合ヲ除クノ外裁判ハ參加人ニ對シテモ其ノ效
力ヲ有ス
第七十一條訴訟ノ結果ニ因リテ權利ヲ害セラルヘキコトヲ主張スル第三
者又ハ訴訟ノ目的ノ全部若ハ一部カ自己ノ權利ナルコトヲ主張スル第三
者ハ當事者トシテ訴訟ニ參加スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十二條
及第六十五條ノ規定ヲ準用ス
第七十二條前條ノ規定ニ依リ自己ノ權利ヲ主張スル爲訴訟ニ參加シタル
者アル場合ニ於テハ參加前ノ原〓又ハ被〓ハ相手方ノ承諾ヲ得テ訴訟ヨ
リ脫退スルコトヲ得但シ判決ハ脫退シタル當事者ニ對シテモ其ノ效力ヲ
有ス
第七十三條訴訟ノ繫屬中其ノ訴訟ノ目的タル權利ノ全部又ハ一部ヲ讓受
ケタルコトヲ主張シ第七十一條ノ規定ニ依リテ訴訟參加ヲ爲シタルトキ
ハ其ノ參加ハ訴訟ノ繫屬ノ初ニ遡リテ時效ノ中斷又ハ法律上ノ期間遵守
ノ效力ヲ生ス
第七十四條訴訟ノ繋屬中第三者カ其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承繼シタル
トキハ裁判所ハ當事者ノ申立ニ因リ其ノ第三者ヲシテ訴訟ヲ引受ケシム
ルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依リテ決定ヲ爲ス前當事者及第三者ヲ審訊スルコ
トヲ要ス
第七十二條ノ規定中脫退及判決ノ效力ニ關スルモノハ第一項ノ規定ニ依
リテ訴訟ノ引受アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十五條訴訟ノ目的カ當事者ノ一方及第三者ニ付合一ニノミ確定スヘ
キ場合ニ於テハ其ノ第三者ハ共同訴訟人トシテ訴訟ニ參加スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ第六十五條ノ規定ヲ準用ス
第七十六條當事者ハ訴訟ノ繫屬中參加ヲ爲スコトヲ得ル第三者ニ其ノ訴
訟ノ告知ヲ爲スコトヲ得
訴訟〓知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟告知ヲ爲スコトヲ得
第七十七條訴訟〓知ハ理由及訴訟ノ程度ヲ記載シタル書面ヲ裁判所ニ提
出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ相手方ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第七十八條訴訟告知ヲ受ケタル者カ參加セサリシ場合ニ於テモ第七十條
ノ規定ノ適用ニ付テハ參加スルコトヲ得ヘカリシ時ニ參加シタルモノト
看做ス
第四節訴訟代理人及輔佐人
第七十九條法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲スコトヲ得ル代理人ノ外辯護
士ニ非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但シ區裁判所ニ於テハ許可ヲ得
テ辯護士ニ非サル者ヲ訴訟代理人ト爲スコトヲ得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第八十條訴訟代理人ノ權限ハ書面ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ要ス
前項ノ書面カ私文書ナルトキハ裁判所ハ當該吏員ノ認證ヲ受クヘキ旨ヲ
訴訟代理人ニ命スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ當事者カ口頭ヲ以テ訴訟代理人ヲ選任シ裁判所書記カ調
書ニ其ノ陳述ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第八十一條訴訟代理人ハ委任ヲ受ケタル事件ニ付反訴、參加、强制執行、
假差押及假處分ニ關スル訴訟行爲モ亦之ヲ爲スコトヲ得
左ニ揭クル事項ニ付テハ特別ノ委任ヲ受クルコトヲ要ス
一反訴ノ提起
二訴ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル
脫退
三控訴、上告又ハ其ノ取下
四代理人ノ選任
訴訟代理權ハ之ヲ制限スルコトヲ得ス但シ辯護士ニ非サル訴訟代理人ニ
付テハ此ノ限リニ在ラス
第八十二條數人ノ訴訟代理人アルトキハ各自當事者ヲ代理ス
當事者カ前項ノ規定ニ異ル定ヲ爲スモ其ノ效力ヲ生セス
第八十三條第八十一條及前條ノ規定ハ法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲ス
コトヲ得ル代理人ノ權限ヲ妨ケス
第八十四條訴訟代理人ノ事實上ノ陳述ハ當事者カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更
正シタルトキハ其ノ效力ヲ生セス
第八十五條訴訟代理權ハ當事者ノ死亡若ハ訴訟能力ノ喪失、當事者タル
法人ノ合併ニ因ル消滅、當事者タル受託者ノ信託ノ任務終了又ハ法定代
理人ノ死亡、訴訟能力ノ喪失若ハ代理權ノ消滅、變更ニ因リテ消滅セス
第八十六條一定ノ資格ヲ有スル者ニシテ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ
當事者タルモノノ訴訟代理人ノ代理權ハ當事者ノ資格ノ喪失ニ因リテ消
滅セス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依リテ選定セラレタル當事者カ其ノ資
格ヲ喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七條第五十二條第二項、第五十三條、第五十四條及第五十七條ノ
規定ハ訴訟代理ニ之ヲ準用ス
第八十八條當事者又ハ訴訟代理人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ輔佐人ト共ニ出
頭スルコトヲ得此ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
輔佐人ノ陳述ハ當事者又ハ訴訟代理人カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサル
トキハ自ラ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三章訴訟費用
第一節訴訟費用ノ負擔
第八十九條訴訟費用ハ敗訴ノ當事者ノ負擔トス
第九十條裁判所ハ事情ニ從ヒ勝訴ノ當事者ヲシテ其ノ權利ノ伸張若ハ防
禦ニ必要ナラサル行爲ニ因リテ生シタル訴訟費用又ハ訴訟ノ程度ニ於テ
相手方ノ權利ノ伸張若ハ防禦ニ必要ナリシ行爲ニ因リテ生シタル訴訟費
用ノ全部又ハ一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十一條當事者カ適當ノ時期ニ攻擊若ハ防禦ノ方法ヲ提出セサル爲又
ハ期日若ハ期間ノ懈怠其ノ他當事者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リ訴訟ヲ遲
滯セシメタルトキハ裁判所ハ之ヲシテ其ノ勝訴ノ場合ニ於テモ遲滯ニ因
リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十二條一部敗訴ノ場合ニ於テ各當事者ノ負擔スヘキ訴訟費用ハ裁判
所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム但シ事情ニ從ヒ當事者ノ一方ヲシテ訴訟費用ノ
全部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十三條共同訴訟人ハ平等ノ割合ヲ以テ訴訟費用ヲ負擔ス但シ裁判所
ハ事情ニ從ヒ共同訴訟人ヲシテ連帶シテ訴訟費用ヲ負擔セシメ又ハ他ノ
方法ニ依リ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス權利ノ伸張又ハ防禦ニ必要ナラサル行爲ヲ
爲シタル當事者ヲシテ其ノ行爲ニ因リテ生シタル費用ヲ負擔セシムルコ
トヲ得
第九十四條第八十九條乃至前條ノ規定ハ當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘタ
ル場合ニ於テハ其ノ異議ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ參加人ト異議ヲ述
ヘタル當事者トノ間ニ於ケル負擔ニ關シ之ヲ準用ス參加ニ因リテ生シタ
ル訴訟費用ノ參加人ト相手方トノ間ニ於ケル負擔ニ付亦同シ
第九十五條裁判所ハ事件ヲ完結スル裁判ニ於テ職權ヲ以テ其ノ審級ニ於
ケル訴訟費用ノ全部ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス但シ事情ニ從ヒ事件ノ一
部又ハ中間ノ爭ニ關スル裁判ニ於テ其ノ費用ノ裁判ヲ爲スコトヲ得
第九十六條上級裁判所カ本案ノ裁判ヲ變更スル場合ニ於テハ訴訟ノ總費
用ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所カ其
ノ事件ヲ完結スル裁判ヲ爲ス場合亦同シ
第九十七條當事者カ裁判所ニ於テ和解ヲ爲シタル場合ニ於テ和解ノ費用
及訴訟費用ノ負擔ニ付別段ノ定ヲ爲ササルトキハ其ノ費用ハ各自之ヲ負
擔ス
第九十八條法定代理人、訴訟代理人、裁判所書記又ハ執達吏カ故意又ハ
重大ナル過失ニ因リテ無益ナル費用ヲ生セシメタルトキハ受訴裁判所ハ
申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ此等ノ者ニ對シ其ノ費用額ノ償還ヲ命スルコ
トヲ得
前項ノ規定ハ法定代理人又ハ訴訟代理人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者カ
其ノ代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權アルコトヲ證明スルコト
能ハス又ハ追認ヲ得サリシ場合ニ於テ其ノ訴訟行爲ニ因リテ生シタル訴
訟費用ニ之ヲ準用ス
前二項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第九十九條裁判所カ前條第二項ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタルトキハ訴訟
費用ハ代理人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者ノ負擔トス
第百條裁判所カ訴訟費用ノ負擔ヲ定ムル裁判ニ於テ其ノ額ヲ定メサルト
キハ第一審ノ受訴裁判所ハ其ノ裁判カ執行力ヲ生シタル後申立ニ因リ決
定ヲ以テ之ヲ定ム
訴訟費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ爲スニハ費用計算書及其ノ謄本竝費用
額ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第一項ノ決定ニ對シテハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得
第百一條裁判所ハ訴訟費用額ヲ定ムル決定ヲ爲ス前相手方ニ費用計算書
ノ謄本ヲ交付シ陳述ヲ爲スヘキ旨竝一定ノ期間內ニ費用計算書及費用額
ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス
相手方カ期間內ニ前項ノ書面ヲ提出セサルトキハ裁判所ハ申立人ノ費用
ノミニ付裁判ヲ爲スコトヲ得但シ相手方ノ費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ
妨ケス
第百二條裁判所カ訴訟費用額ヲ定ムル裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ前條第二
項ノ場合ヲ除クノ外各當事者ノ負擔スヘキ費用ハ其ノ對當額ニ付相殺ア
リタルモノト看做ス
第百三條第九十七條ノ場合ニ於テ當事者カ訴訟費用ノ負擔ヲ定メ其ノ額
ヲ定メサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ其ノ額ヲ定ムルコトヲ
要ス此ノ場合ニ於テハ第百條第二項第三項、第百一條及前條ノ規定ヲ準
用ス
第百四條前條ノ場合ヲ除クノ外訴訟カ裁判ニ因ラスシテ完結シタルトキ
ハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ訴訟費用ノ額ヲ定メ且其ノ負擔ヲ命ス
ルコトヲ要ス參加又ハ之ニ付テ異議ノ取下アリタルトキ亦同シ
第八十九條乃至第九十四條、第百條第二項第三項、第百一條及第百二條
ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百五條裁判所ハ裁判所書記ヲシテ訴訟費用額ノ計算ヲ爲サシムルコト
ヲ得
第百六條費用ヲ要スル行爲ニ付テハ裁判所ハ當事者ヲシテ其ノ費用ヲ豫
納セシムルコトヲ得
當事者カ裁判所ノ命ニ從ヒ費用ヲ豫納セサルトキハ裁判所ハ前項ノ行爲
ヲ爲ササルコトヲ得
第二節訴訟費用ノ擔保
第百七條原〓カ日本ニ住所、事務所及營業所ヲ有セサルトキハ裁判所ハ
被〓ノ申立ニ因リ訴訟費用ノ擔保ヲ供スヘキコトヲ原告ニ命スルコトヲ
要ス擔保ニ不足ヲ生シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ請求ノ一部ニ付爭ナキ場合ニ於テ其ノ額カ擔保ニ十分ナル
トキハ之ヲ適用セス
第百八條擔保ヲ供スヘキ事由アルコトヲ知リタル後被告カ本案ニ付辯論
ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ擔保ノ申立ヲ爲スコト
乙酸)、
第百九條擔保ノ申立ヲ爲シタル被告ハ原〓カ擔保ヲ供スル迄應訴ヲ拒ム
コトヲ得
第百十條裁判所ハ擔保ヲ供スヘキコトヲ命スル決定ニ於テ擔保額及擔保
ヲ供スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ要ス
擔保額ハ被〓カ各審ニ於テ支出スヘキ費用ノ總額ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第百十一條擔保ノ申立ニ關スル裁判ニ對シテハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得
第百十二條擔保ヲ供スルニハ金錢又ハ裁判所カ相當ト認ムル有價證劵ヲ
供託スルコトヲ要ス但シ當事者カ別段ノ契約ヲ爲シタルトキハ其ノ契約
一 致ん
第百十三條被〓ハ訴訟費用ニ付前條ノ規定ニ依リテ供託シタル金錢又ハ
有價證劵ノ上ニ質權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第百十四條原告カ擔保ヲ供スヘキ期間內ニ之ヲ供セサルトキハ裁判所ハ
口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得但シ判決前擔保ヲ
供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百十五條擔保ヲ供シタル者カ擔保ノ事由止ミタルコトヲ證明シタルト
キハ裁判所ハ申立ニ因リ擔保取消ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
擔保ヲ供シタル者カ擔保取消ニ付擔保權利者ノ同意ヲ得タルコトヲ證明
シタルトキ亦前項ニ同シ
訴訟ノ完結後裁判所カ擔保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ擔保權利者ニ對シ
一定ノ期間內ニ其ノ權利ヲ行使スヘキ旨ヲ催告シ擔保權利者カ其ノ行使
ヲ爲ササルトキハ擔保取消ニ付擔保權利者ノ同意アリタルモノト看做ス」
第一項及第二項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百十六條裁判所ハ擔保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ決定ヲ以テ供託シタ
ル擔保物ノ變換ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ供託シタル擔保ヲ契約ニ因リテ他ノ擔保ニ變換スルコトヲ
妨ケス
第百十七條第百九條、第百十條第一項及第百十一條乃至前條ノ規定ハ他
ノ法令ニ依リテ訴ノ提起ニ付供スヘキ擔保ニ之ヲ準用ス
第三節訴訟上ノ救助
第百十八條訴訟費用ヲ支拂フ資力ナキ者ニ對シテハ裁判所ハ申立ニ因リ
訴訟上ノ救助ヲ與フルコトヲ得但シ勝訴ノ見込ナキニ非サルトキニ限ル
第百十九條訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ之ヲ與フ
救助ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百二十條訴訟上ノ救助ハ訴訟及强制執行ニ付左ノ效力ヲ生ス
-裁判費用ノ支拂ノ猶豫
二執達吏及裁判所ニ於テ附添ヲ命シタル辯護士ノ報酬及立替金ノ支拂
ノ猶豫
三訴訟費用ノ擔保ノ免除
第百二十一條訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル者ノ爲ニノミ其ノ效力ヲ有ス」
裁判所ハ訴訟ノ承繼人ニ對シ猶豫シタル費用ノ支拂ヲ命ス
第百二十二條訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者カ訴訟費用ノ支拂ヲ爲ス資力ヲ
有スルコト判明シ又ハ之ヲ有スルニ至リタルトキハ訴訟記錄ノ存スル裁
判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ何時ニテモ救助ヲ取消シ
猶豫シタル訴訟費用ノ支拂ヲ命スルコトヲ得
第百二十三條訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ニ支拂ヲ猶豫シタル費用ハ其ノ
負擔ヲ命セラレタル相手方ヨリ直接ニ之ヲ取立ツルコトヲ得此ノ場合ニ
於テ辯護士又ハ執達吏ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ノ有スル債務名義ニ
依リ報酬及立替金ニ付費用額ヲ定ムル申立及强制執行ヲ爲スコトヲ得
辯護士又ハ執達吏ハ報酬及立替金ニ付當事者ニ代リ第百三條又ハ第百四
條ノ裁判ヲ求ムル申立ヲ爲スコトヲ得
第百二十四條本節ニ規定スル裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四章訴訟手續
第一節口頭辯論
第百二十五條當事者ハ訴訟ニ付裁判所ニ於テ口頭辯論ヲ爲スコトヲ要ス
但シ決定ヲ以テ完結スヘキ事件ニ付テハ裁判所口頭辯論ヲ爲スヘキカ否
可以上
前項但書ノ規定ニ依リテ口頭辯論ヲ爲ササル場合ニ於テハ裁判所ハ當事
者ヲ審訊スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第百二十六條口頭辯論ハ裁判長之ヲ指揮ス
裁判長ハ發言ヲ許シ又ハ其ノ命ニ從ハサル者ニ發言ヲ禁スルコトヲ得
第百二十七條裁判長ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲事實上及法律上ノ事
項ニ關シ當事者ニ對シテ問ヲ發シ又ハ立證ヲ促スコトヲ得
陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ前項ニ規定スル處置ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ裁判長ニ對シ必要ナル發問ヲ求ムルコトヲ得
第百二十八條裁判長ハ前條ノ規定ニ依リテ當事者ヲシテ釋明セシムヘキ
事項ヲ指示シ口頭辯論期日前準備ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第百二十九條當事者カ辯論ノ指揮ニ關スル裁判長ノ命又ハ第百二十七條
若ハ前條ノ規定ニ依ル裁判長若ハ陪席判事ノ處置ニ對シ異議ヲ述ヘタル
トキハ裁判所決定ヲ以テ其ノ異議ニ付裁判ヲ爲ス
第百三十條受命判事ヲシテ其ノ職務ヲ行ハシムヘキ場合ニ於テハ裁判長
其ノ判事ヲ指定ス
裁判所ノ爲ス囑託ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外裁判長之ヲ爲ス
第百三十一條裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲左ノ處分ヲ爲スコト
ヲ得
一當事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ出頭ヲ命スルコト
二訴訟書類又ハ訴訟ニ於テ引用シタル文書其ノ他ノ物件ニシテ當事者
ノ所持スルモノヲ提出セシムルコト
三當事者又ハ第三者ノ提出シタル文書其ノ他ノ物件ヲ裁判所ニ留置ク
コト
四檢證ヲ爲シ又ハ鑑定ヲ命スルコト
五必要ナル調査ヲ囑託スルコト
前項ニ規定スル檢證、鑑定及調査ノ囑託ニ付テハ證據調ニ關スル規定ヲ
準用ス
第百三十二條裁判所ハ口頭辯論ノ制限、分離若ハ併合ヲ命シ又ハ其ノ命
ヲ取消スコトヲ得
第百三十三條裁判所ハ終結シタル口頭辯論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百三十四條辯論ニ與ル者カ日本語ニ通セサルトキ又ハ聾若ハ啞ナルト
キハ通事ヲ立會ハシム但シ聾者又ハ啞者ニハ文字ヲ以テ問ヒ又ハ陳述ヲ
爲サシムルコトヲ得
鑑定人ニ關スル規定ハ通事ニ之ヲ準用ス
第百三十五條裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲必要ナル陳述ヲ爲ス
コト能ハサル當事者、代理人又ハ輔佐人ノ陳述ヲ禁シ辯論續行ノ爲新期
日ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ陳述ヲ禁シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ
裁判所ハ辯護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
訴訟代理人ノ陳述ヲ禁シ又ハ辯護士ノ附添ヲ命シタルトキハ本人ニ其ノ
旨ヲ通知スルコトヲ要ス
第百三十六條裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス和解ヲ試ミ又
ハ受命判事若ハ受託判事ヲシテ之ヲ試ミシムルコトヲ得
裁判所又ハ受命判事若ハ受託判事ハ和解ノ爲當事者本人又ハ其ノ法定代
理人ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
第百三十七條攻擊又ハ防禦ノ方法ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外口頭
辯論ノ終結ニ至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得
第百三十八條原告又ハ被〓カ最初ニ爲スヘキ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス
又ハ出頭スルモ本案ノ辯論ヲ爲ササルトキハ其ノ者ノ提出シタル訴狀、
答辯書其ノ他ノ準備書面ニ記載シタル事項ハ之ヲ陳述シタルモノト看做
シ出頭シタル相手方ニ辯論ヲ命スルコトヲ得
第百三十九條當事者カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ時機ニ後レテ提出シ
タル攻擊又ハ防禦ノ方法ハ之カ爲訴訟ノ完結ヲ遲延セシムヘキモノト認
メタルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
攻擊又ハ防禦ノ方法ニシテ其ノ趣旨明瞭ナラサルモノニ付當事者カ必要
ナル釋明ヲ爲サス又ハ釋明ヲ爲スヘキ期日ニ出頭セサルトキ亦前項ニ同
シ
第百四十條當事者カ口頭辯論ニ於テ相手方ノ主張シタル事實ヲ明ニ爭ハ
サルトキハ其ノ事實ヲ自白シタルモノト看做ス但シ辯論ノ全趣旨ニ依リ
其ノ事實ヲ爭ヒタルモノト認ムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
相手方ノ主張シタル事實ヲ知ラサル旨ノ陳述ヲ爲シタル者ハ其ノ事實ヲ
爭ヒタルモノト推定ス
第百四十一條當事者カ訴訟手續ニ關スル規定ノ違背ヲ知リ又ハ之ヲ知ル
コトヲ得ヘカリシ場合ニ於テ遲滯ナク異議ヲ述へサルトキハ之ヲ述フル
權利ヲ失フ但シ抛棄スルコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
第百四十二條口頭辯論ニ付テハ裁判所書記期日每ニ調書ヲ作ルコトヲ要
ス
第百四十三條調書ニハ左ノ事項ヲ記載シ裁判長及裁判所書記之ニ署名捺
印シ裁判長支障アルトキハ陪席判事其ノ席次ニ從ヒ順次之ニ代リテ署名
捺印シ且其ノ事由ヲ記載スルコトヲ要ス但シ判事皆支障アルトキハ書記
其ノ旨ヲ記載スルヲ以テ足ル
事件ノ表示
二判事及裁判所書記ノ氏名
三立會ヒタル檢事ノ氏名
四出頭シタル當事者、代理人、輔佐人及通事竝闕席シタル當事者ノ氏
名
五辯論ノ場所及年月日
六辯論ヲ公開シタルコト又ハ公開セサル場合ニ於テハ其ノ理由
第百四十四條調書ニハ辯論ノ要領ヲ記載シ殊ニ左ノ事項ヲ明確ニスルコ
トヲ要ス
ー和解、認諾、抛棄、取下及自白
二證人、鑑定人ノ宣誓及陳述
三檢證ノ結果
四書面ニ作ラサル裁判
五裁判ノ言渡
第百四十五條調書ニハ書面、寫眞其ノ他裁判所ニ於テ適當ト認ムルモノ
ヲ引用シ訴訟記錄ニ添附シテ之ヲ調書ノ一部ト爲スコトヲ得
第百四十六條調書ノ記載ハ申立ニ因リ法廷ニ於テ關係人ニ之ヲ讀聞カセ
又ハ閱覽セシメ且調書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
調書ノ記載ニ付關係人カ異議ヲ述ヘタルトキハ調書ニ其ノ趣旨ヲ記載ス
ルコトヲ要ス
第百四十七條口頭辯論ノ方式ニ關スル規定ノ遵守ハ調書ニ依リテノミ之
ヲ證スルコトヲ得但シ調書カ滅失シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百四十八條裁判所必要アリト認ムルトキハ速記者ヲシテ口頭辯論ニ於
ケル陳述ノ全部又ハ一部ヲ筆記セシムルコトヲ得
第百四十九條第百四十二條乃至前條ノ規定ハ受命判事又ハ受託判事ノ審
問及證據調ニ之ヲ準用ス
第百五十條申立其ノ他ノ申述ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外書面又ハ
口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲スニハ裁判所書記ノ面前ニ於テ陳述ヲ爲スコトヲ要ス」
前項ノ場合ニ於テハ書記調書ヲ作リ之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
第百五十一條當事者ハ訴訟記錄ノ閱覽若ハ謄寫又ハ其ノ正本、謄本、抄
本若ハ訴訟ニ關スル事項ノ證明書ノ交付ヲ裁判所書記ニ請求スルコトヲ
得利害關係ヲ疏明シタル第三者亦同シ
訴訟記錄ノ正本、謄本又ハ抄本ニハ其ノ正本、謄本又ハ抄本ナルコトヲ
記載シ書記之ニ署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
第二節期日及期間
第百五十二條期日ハ裁判長之ヲ定ム
受命制事又ハ受託判事ノ審問ノ期日ハ其ノ判事之ヲ定ム
期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百五十三條期日ハ已ムコトヲ得サル場合ニ限リ日曜日其ノ他ノ一般ノ
休日ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百五十四條期日ニ於ケル呼出ハ呼出狀ヲ送達シテ之ヲ爲ス但シ當該事
件ニ付出頭シタル者ニ對シテハ期日ヲ〓知スルヲ以テ足ル
第百五十五條期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ之ヲ開始ス
第百五十六條期間ノ計算ハ民法ニ從フ
期間ノ末日カ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ニ當ルトキハ期間ハ其ノ翌日ヲ
以テ滿了ス
第百五十七條期間ヲ定ムル裁判ニ於テ始期ヲ定メサルトキハ其ノ期間ハ
裁判カ效力ヲ生シタル時ヨリ進行ヲ始ム
第百五十八條裁判所ハ法定期間又ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ
短縮スルコトヲ得但シ不變期間ハ此ノ限ニ在ラス
不變期間ニ付テハ裁判所ハ遠隔ノ地ニ住所又ハ居所ヲ有スル者ノ爲附加
期間ヲ定ムルコトヲ得
裁判長、受命判事又ハ受託判事ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短
縮スルコトヲ得
第百五十九條當事者カ其ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リ不變期間ヲ遵
守スルコト能ハサリシ場合ニ於テハ其ノ事由ノ止ミタル後一週間內ニ限
リ懈怠シタル訴訟行爲ノ追完ヲ爲スコトヲ得此ノ期間ニ付テハ前條ノ規
定ヲ適用セス
第三節送達
第百六十條送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百六十一條送達ニ關スル事務ハ裁判所書記之ヲ取扱フ
前項ノ事務ノ取扱ハ送達地ノ區裁判所ノ書記ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第百六十二條送達ハ執達吏又ハ郵便ニ依リ之ヲ爲ス
郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便集配人ヲ以テ送達ヲ爲ス吏員トス
第百六十三條當該事件ニ付出頭シタル者ニ對シテハ裁判所書記自ラ送達
ヲ爲スコトヲ得
第百六十四條送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外送達ヲ受クヘキ者ニ
送達スヘキ書類ノ謄本ヲ交付シテ之ヲ爲ス
送達スヘキ書類ノ提出ニ代ヘ調書ヲ作リタルトキハ其ノ調書ノ謄本又ハ
抄本ヲ交付シテ送達ヲ爲ス
第百六十五條訴訟無能力者ニ對スル送達ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ爲ス
第百六十六條數人カ共同シテ代理權ヲ行フヘキ場合ニ於テハ送達ハ其ノ
一人ニ之ヲ爲スヲ以テ足ル
第百六十七條軍事用ノ廳舍又ハ艦船ニ屬スル者ニ對スル送達ハ其ノ廳舍
又ハ艦船ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十八條在監者ニ對スル送達ハ監獄ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十九條送達ハ之ヲ受クヘキ者ノ住所、居所、營業所又ハ事務所ニ
於テ之ヲ爲ス但シ法定代理人ニ對スル送達ハ本人ノ營業所又ハ事務所ニ
於テモ之ヲ爲スコトヲ得
送達ヲ受クヘキ者カ日本ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スルコト
明ナラサルトキハ送達ハ其ノ者ニ出會ヒタル場所ニ於テ之ヲ爲スコトヲ
得住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スル者カ送達ヲ受クルコトヲ拒マ
サルトキ亦同シ
第百七十條當事者、法定代理人又ハ訴訟代理人ハ訴訟ノ繫屬スル裁判所
ノ所在地ニ於テ送達ヲ受クヘキ場所及送達受取人ヲ定メ之ヲ屆出ツルコ
トヲ得
裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラサ
ル場合ニ於テ送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ屆出ヲ爲ササルトキハ其ノ者ニ
對シテ送達スヘキ書類ハ前條第一項ノ規定ニ依リ送達スヘキ場所ニ宛テ
郵便ニ付シテ之ヲ發送スルコトヲ得
第百七十一條送達ヲ爲スヘキ場所ニ於テ送達ヲ受クヘキ者ニ出會ハサル
トキハ事務員、雇人又ハ同居者ニシテ事理ヲ辨識スルニ足ルヘキ知能ヲ
具フル者ニ書類ヲ交付スルコトヲ得
前項ニ揭クル者其ノ他書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ正當ノ事由ナクシテ之
ヲ受クルコトヲ拒ミタルトキハ送達ヲ爲スヘキ場所ニ書類ヲ差置クコト
ヲ得
第百七十二條前條ノ規定ニ依リテ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ
裁判所書記書類ヲ郵便ニ付シテ之ヲ發送スルコトヲ得
第百七十三條第百七十條第二項又ハ前條ノ規定ニ依リテ書類ヲ郵便ニ付
シテ發送シタル場合ニ於テハ其ノ發送ノ時ニ於テ送達アリタルモノト看做ス
第百七十四條日曜日其ノ他ノ一般ノ休日又ハ日出前日沒後ニ於テ執達吏
ニ依ル送達ヲ爲スニハ裁判長ノ許可アルコトヲ要ス
前項ノ許可アリタルトキハ裁判所書記ハ送達スヘキ書類ニ其ノ旨ヲ附記
スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ニ違背スル送達ハ書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ之ヲ受取リタ
ル場合ニ限リ其ノ效力ヲ有ス
第百七十五條外國ニ於テ爲スヘキ送達ハ裁判長其ノ國ノ管轄官廳又ハ其
ノ國ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第百七十六條出陣ノ軍隊若ハ外國駐在ノ軍隊ニ屬スル者又ハ役務ニ服ス
ル艦船ノ乘組員ニ對スル送達ハ裁判長上班司令官廳ニ囑託シテ之ヲ爲ス」
前項ノ送達ニ付テハ第百六十七條ノ規定ヲ準用ス
第百七十七條送達ヲ爲シタル吏員ハ書面ヲ作リ送達ニ關スル事項ヲ記載
シ之ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百七十八條當事者ノ住所、居所其ノ他送達ヲ爲スヘキ場所カ知レサル
場合又ハ外國ニ於テ爲スヘキ送達ニ付第百七十五條ノ規定ニ依ルコト能
ハス若ハ之ニ依ルモ其ノ效ナシト認ムヘキ場合ニ於テハ申立ニ因リ裁判
長ノ許可ヲ得テ公示送達ヲ爲スコトヲ得
同一ノ當事者ニ對スル爾後ノ公示送達ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百七十九條公示送達ハ裁判所書記送達スヘキ書類ヲ保管シ何時ニテモ
送達ヲ受クヘキ者ニ交付スヘキ旨ヲ裁判所ノ揭示場ニ揭示シテ之ヲ爲ス
但シ呼出狀ノ送達ハ呼出狀ヲ揭示場ニ貼附シテ之ヲ爲ス
裁判所ハ公示送達アリタルコトヲ官報又ハ新聞紙ニ揭載スヘキコトヲ命
スルコトヲ得但シ外國ニ於テ爲スヘキ送達ニ付テハ公示送達アリタルコ
トヲ郵便ニ付シテ通知スルコトヲ得
第百八十條公示送達ハ前條第一項ノ規定ニ依ル揭示ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲
シタル日ヨリ二週間ヲ經過スルニ因リテ其ノ效力ヲ生ス但シ第百七十八
條第二項ノ公示送達ハ揭示ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲シタル日ノ翌日ニ於テ其
ノ效力ヲ生ス
前項ノ期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得ス
第百八十一條送達ニ關スル裁判長ノ權限ハ受命判事、受託判事及送達地
ノ區裁判所ノ判事亦之ヲ有ス
第四節裁判
第百八十二條訴訟カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ爲ス
第百八十三條訴訟ノ一部カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ其ノ一部
ニ付終局判決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ口頭辯論ノ併合ヲ命シタル數個ノ訴訟中其ノ一カ裁判ヲ爲
スニ熟スル場合及本訴又ハ反訴カ裁判ヲ爲スニ熟スル場合ニ之ヲ準用ス
第百八十四條獨立シタル攻擊又ハ防禦ノ方法其ノ他中間ノ爭ニ付裁判ヲ
爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ中間判決ヲ爲スコトヲ得請求ノ原因及數額
ニ付爭アル場合ニ於テ其ノ原因ニ付亦同シ
第百八十五條裁判所ハ判決ヲ爲スニ當リ其ノ爲シタル口頭辯論ノ全趣旨
及證據調ノ結果ヲ斟酌シ自由ナル心證ニ依リ事實上ノ主張ヲ眞實ト認ム
ヘキカ否カヲ判斷ス
第百八十六條裁判所ハ當事者ノ申立テサル事項ニ付判決ヲ爲スコトヲ得
ス
第百八十七條判決ハ其ノ基本タル口頭辯論ニ關與シタル判事之ヲ爲ス
判事ノ更迭アル場合ニ於テハ當事者ハ從前ノ口頭辯論ノ結果ヲ陳述スル
コトヲ要ス
第百八十八條判決ハ言渡ニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
第百八十九條判決ノ言渡ハ裁判長主文ヲ朗讀シテ之ヲ爲ス
裁判長ハ相當ト認ムルトキハ判決ノ理由ヲ朗讀シ又ハ口頭ヲ以テ其ノ要
領ヲ告クルコトヲ得
第百九十條判決ノ言渡ハ口頭辯論終結ノ日ヨリ一週間內ニ之ヲ爲ス
判決ノ言渡ハ當事者カ在廷セサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第百九十一條判決ニハ左ノ事項ヲ記載シ判決ヲ爲シタル判事之ニ署名捺
印スルコトヲ要ス
一主文
二事實及爭點
三理由
四當事者及法定代理人
五裁判所
事實及爭點ノ記載ハ口頭辯論ニ於ケル當事者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シ
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
判事判決ニ署名捺印スルニ支障アルトキハ他ノ判事判決ニ其ノ事由ヲ記
載シテ署名捺印スルコトヲ要ス
第百九十二條判決ハ言渡ノ日ヨリ一週間內ニ之ヲ裁判所書記ニ交付シ書
記ハ言渡及交付ノ日ヲ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第百九十三條判決ハ當事者ニ之ヲ送達スルコトヲ要ス
判決ノ送達ハ正本ヲ以テ之ヲ爲ス
第百九十四條判決ニ違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキ
ハ裁判所ハ何時ニテモ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ更正決定ヲ爲スコトヲ
得但シ判決ノ主文又ハ理由ニ影響ヲ及ホスヘキ場合ニ限ル
更正決定ハ判決ノ原本及正本ニ之ヲ附記スルコトヲ要ス但シ正本ニ附記
スルコト能ハサルトキハ決定ノ正本ヲ作リ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ
要ス
更正決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得但シ判決ニ對シ適法ノ控訴
アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百九十五條裁判所カ請求ノ一部ニ付裁判ヲ脫漏シタルトキハ訴訟ハ其
ノ請求ノ部分ニ付仍裁判所ニ繫屬ス
訴訟費用ノ裁判ヲ脫漏シタル場合ニ於テハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權
ヲ以テ其ノ訴訟費用ニ付裁判ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ第百四條ノ規定ヲ
準用ス
前項ノ規定ニ依ル訴訟費用ノ裁判ハ本案判決ニ對シ適法ノ控訴アリタル
トキハ其ノ效力ヲ失フ此ノ場合ニ於テハ控訴裁判所ハ訴訟ノ總費用ニ付
裁判ヲ爲ス
第百九十六條財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ付テハ裁判所ハ必要アリト
認ムルトキハ職權ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セスシテ假執行ヲ爲スコトヲ
得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
裁判所ハ職權ヲ以テ擔保ヲ供シテ假執行ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトヲ宣
言スルコトヲ得
前二項ノ宣言ハ判決主文ニ之ヲ揭クルコトヲ要ス
第百九十七條第百十二條、第百十三條、第百十五條及第百十六條ノ規定
ハ前條ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第百九十八條假執行ノ宣言ハ其ノ宣言又ハ本案判決ヲ變更スル判決ノ言
渡ニ因リ變更ノ限度ニ於テ其ノ效力ヲ失フ
本案判決ヲ變更スル場合ニ於テハ裁判所ハ被〓ノ申立ニ因リ其ノ判決ニ
於テ假執行ノ宣言ニ基キ被告カ給付シタルモノノ返還及假執行ニ因リ又
ハ之ヲ免ルル爲被〓ノ受ケタル損害ノ賠償ヲ原告ニ命スルコトヲ要ス
假執行ノ宣言ノミヲ變更シタルトキハ後ニ本案判決ヲ變更スル判決ニ付
前項ノ規定ヲ適用ス
第百九十九條確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有ス
相殺ノ爲主張シタル請求ノ成立又ハ不成立ノ判斷ハ相殺ヲ以テ對抗シタ
ル額ニ付既判力ヲ有ス
第二百條外國裁判所ノ確定判決ハ左ノ條件ヲ具備スル場合ニ限リ其ノ效
力ヲ有ス
ー法令又ハ條約ニ於テ外國裁判所ノ裁判權ヲ否認セサルコト
二敗訟ノ被告カ日本人ナル場合ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ訴訟ノ開
始ニ必要ナル呼出若ハ命令ノ送達ヲ受ケタルコト又ハ之ヲ受ケサルモ
應訴シタルコト
三外國裁判所ノ判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサ
ルコト
四相互ノ保證アルコト
第二百一條確定判決ハ當事者、口頭辯論終結後ノ承繼人又ハ其ノ者ノ爲
請求ノ目的物ヲ所持スル者ニ對シテ其ノ效力ヲ有ス
他人ノ爲原〓又ハ被〓ト爲リタル者ニ對スル確定判決ハ其ノ他人ニ對シ
テモ效力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ假執行ノ宣言ニ之ヲ準用ス
第二百二條不適法ナル訴ニシテ其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサルモノナ
ル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百三條和解又ハ請求ノ抛棄若ハ認諾ヲ調書ニ記戴シタルトキハ其ノ
記載ハ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第二百四條決定及命令ハ相當ト認ムル方法ヲ以テ之ヲ告知スルニ因リテ
其ノ效力ヲ生ス
第二百五條訴訟ノ指揮ニ關スル決定及命令ハ何時ニテモ之ヲ取消スコト
ヲ得
第二百六條裁判所書記ノ處分ニ對スル異議ニ付テハ其ノ書記所屬ノ裁判
所決定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第二百七條決定及命令ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ判決ニ關スル規定ヲ
準用ス
第五節訴訟手續ノ中斷及中止
第二百八條當事者カ死亡シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テ
ハ相續人、相續財產管理人其ノ他法令ニ依リ訴訟ヲ續行スヘキ者ハ訴訟
手續ヲ受繼クコトヲ要ス
相續人ハ相續ノ抛棄ヲ爲スコトヲ得ル間ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ得ス
第二百九條當事者タル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ訴訟手續ハ
中斷ス此ノ場合ニ於テハ合併ニ因リテ設立シタル法人又ハ合併後存續ス
ル法人ハ訴訟手績ヲ受繼クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ合併ヲ以テ相手方ニ對抗スルコトヲ得サル場合ニハ之ヲ適
用セス
第二百十條當事者カ訴訟能力ヲ失ヒタルトキ又ハ其ノ法定代理人カ死亡
シ若ハ代理權ヲ失ヒタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ法定
代理人又ハ訴訟能力ヲ有スルニ至リタル當事者ハ訴訟手續ヲ受繼クコト
ヲ要ス
第二百十一條受託者ノ信託ノ任務終了シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此
ノ場合ニ於テハ新受託者訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十二條一定ノ資格ヲ有スル者カ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ當
事者タル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ
場合ニ於テハ同一ノ資格ヲ有スル者訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス當事者
ノ死亡ニ因リ訴訟手續カ中斷シタル場合亦同シ
第四十七條ノ規定ニ依リテ原告又ハ被〓ト爲ルヘキ者ヲ選定シタル訴訟
ニ於テ其ノ選定セラレタル當事者ノ全員カ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ
訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ選定ヲ爲シタル者ノ總員又ハ新ニ原
告若ハ被告トシテ選定セラレタル者ハ訴訟手績ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十三條第二百八條第一項、第二百九條第一項及第二百十條乃至前
條ノ規定ハ訴訟代理人アル間ハ之ヲ適用セス
第二百十四條當事者カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破產財團ニ關スル訴
訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テ破產法ニ依ル受繼アル迄ニ破產手續ノ解
止アリタルトキハ破產者ハ當然訴訟手續ヲ受繼ス
第二百十五條破產法ニ依リテ破產財團ニ關スル訴訟手續ノ受繼アリタル
後破產手續ノ解止アリタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ破
產者ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十六條訴訟手續ノ受繼ハ相手方ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第二百十七條訴訟手續受繼ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ相手方ニ
通知スルコトヲ要ス
第二百十八條訴訟手續受繼ノ申立ハ裁判所職權ヲ以テ之ヲ調査シ理由ナ
シト認メタルトキハ決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス
裁判ノ送達後中斷シタル訴訟手續ノ受繼ニ付テハ其ノ裁判ヲ爲シタル裁
判所裁判ヲ爲スコトヲ要ス
第二百十九條裁判所ハ當事者カ訴訟手續ノ受繼ヲ爲ササル場合ニ於テモ
職權ヲ以テ其ノ續行ヲ命スルコトヲ得
第二百二十條天災其ノ他ノ事故ニ因リテ裁判所カ職務ヲ行フコト能ハサ
ルトキハ訴訟手續ハ其ノ事故ノ止ム迄中止ス
第二百二十一條當事者カ不定期間ノ故障ニ因リ訴訟手續ヲ續行スルコト
能ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ其ノ中止ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第二百二十二條判決ノ言渡ハ訴訟手續ノ中斷中ト雖之ヲ爲スコトヲ得
訴訟手續ノ中斷又ハ中止ハ期間ノ進行ヲ止メ訴訟手續ノ受繼ノ通知又ハ
續行ノ時ヨリ更ニ全期間ノ進行ヲ始ム
第二編第一審ノ訴訟手續
第一章地方裁判所ノ訴訟手續
第一節訴
第二百二十三條訴ノ提起ハ訴狀ヲ裁判所ニ提出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百二十四條訴狀ニハ當事者、法定代理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ記載
スルコトヲ要ス
準備書面ニ關スル規定ハ訴狀ニ之ヲ準用ス
第二百二十五條確認ノ訴ハ法律關係ヲ證スル書面ノ眞否ヲ確定スル爲ニ
モ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十六條將來ノ給付ヲ求ムル訴ハ豫メ其ノ請求ヲ爲ス必要アル場
合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十七條數個ノ請求ハ同種ノ訴訟手續ニ依ル場合ニ限リ一ノ訴ヲ
以テ之ヲ爲スコトヲ得
第二百二十八條訴狀カ第二百二十四條第一項ノ規定ニ違背スル場合ニ於
テハ裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期間內ニ欠缺ヲ補正スヘキコトヲ命
スルコトヲ要ス法律ノ規定ニ從ヒ訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合亦同シ
原告カ欠缺ノ補正ヲ爲ササルトキハ裁判長ハ命令ヲ以テ訴狀ヲ却下スル
コトヲ要ス
前項ノ命令ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
抗告狀ニハ却下セラレタル訴狀ヲ添附スルコトヲ要ス
第二百二十九條訴狀ハ之ヲ被〓ニ送達スルコトヲ要ス
前條ノ規定ハ訴狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十條訴ノ提起アリタルトキハ裁判長ハ口頭辯論ノ期日ヲ定メ當
事者ヲ呼出スコトヲ要ス
第二百三十一條裁判所ニ繫屬スル事件ニ付テハ當事者ハ更ニ訴ヲ提起ス
ルコトヲ得ス
第二百三十二條原告ハ請求ノ基礎ニ變更ナキ限リ口頭辯論ノ終結ニ至ル
迄請求又ハ請求ノ原因ヲ變更スルコトヲ得但シ之ニ因リ著ク訴訟手續ヲ
遲滯セシムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
請求ノ變更ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十三條裁判所カ請求又ハ請求ノ原因ノ變更ヲ不當ナリト認ムル
トキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其ノ變更ヲ許ササル旨ノ決定ヲ爲スコ
トヲ要ス
第二百三十四條裁判カ訴訟ノ進行中ニ爭ト爲リタル法律關係ノ成立又ハ
不成立ニ繫ルトキハ當事者ハ請求ヲ擴張シテ其ノ法律關係ノ確認ノ判決
ヲ求ムルコトヲ得但シ其ノ確認ノ請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ專屬セサル
トキニ限ル
前項ノ規定ニ依ル請求ノ擴張ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十五條時效ノ中斷又ハ法律上ノ期間遵守ノ爲必要ナル裁判上ノ
請求ハ訴ヲ提起シタル時又ハ第二百三十二條第二項若ハ前條第二項ノ規
定ニ依リ書面ヲ裁判所ニ提出シタル時ニ於テ其ノ效力ヲ生ス
第二百三十六條訴ハ判決ノ確定ニ至ル迄其ノ全部又ハ一部ヲ取下クルコ
トヲ得但シ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提出シ、準備手績ニ於テ申述ヲ
爲シ又ハ口頭辯論ヲ爲シタルトキハ訴ノ取下ニ付其ノ同意アルコトヲ要
ス
訴ノ取下ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス但シ口頭辯論ニ於テ又ハ準
備手續中受命判事ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ妨ケス
訴狀送達ノ後ニ在リテハ取下ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十七條訴訟ハ訴ノ取下アリタル部分ニ付テハ初ヨリ繋屬ナカリ
シモノト看做ス
本案ニ付終局判決アリタル後訴ヲ取下ケタル者ハ同一ノ訴ヲ提起スルコ
トヲ得ス
第二百三十八條當事者雙方カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ辯論ヲ爲サ
スシテ退廷シタル場合ニ於テ六月內ニ期日指定ノ申立ヲ爲ササルトキハ
訴ノ取下アリタルモノト看做ス
第二百三十九條被〓ハ口頭辯論ノ終結ニ至ル迄本訴ノ繫屬スル裁判所ニ
反訴ヲ提起スルコトヲ得但シ其ノ目的タル請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ專
屬セサルトキ及本訴ノ目的タル請求又ハ防禦ノ方法ト牽連スルトキニ限
ル
第二百四十條反訴ニ付テハ本訴ニ關スル規定ニ依ル
第二百四十一條本訴ノ取下アリタルトキハ被〓ハ原〓ノ同意ヲ得スシテ
反訴ヲ取下クルコトヲ得
第二節辯論ノ準備
第二百四十二條口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス
第二百四十三條準備書面ハ之ニ記載シタル事項ニ付相手方カ準備ヲ爲ス
ニ必要ナル期間ヲ存シ之ヲ裁判所ニ提出シ裁判所ハ之ヲ相手方ニ送達ス
ルコトヲ要ス
裁判長ハ準備書面ヲ提出スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ得
第二百四十四條準備書面ニハ左ノ事項ヲ記載シ當事者又ハ代理人之ニ署
名捺印スルコトヲ要ス
一當事者ノ氏名、名稱又ハ商號、職業及住所
二代理人ノ氏名、職業及住所
三事件ノ表示
四攻擊又ハ防禦ノ方法
五相手方ノ請求及攻擊又ハ防禦ノ方法ニ對スル陳述
六附屬書類ノ表示
七年月日
八裁判所ノ表示
第二百四十五條當事者ノ所持スル文書ニシテ準備書面ニ引用シタルモノ
ハ準備書面ノ各通ニ其ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
文書ノ一部ノミヲ必要トスルトキハ其ノ抄本ヲ添附シ文書カ大部ナルト
キハ其ノ文書ヲ表示スルヲ以テ足ル
第二百四十六條前條ノ文書ハ相手方ノ求ニ因リ其ノ原本ヲ閱覽セシムル
コトヲ要ス
第二百四十七條準備書面ニ記載セサル事實ハ相手方カ在廷セサルトキハ
口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス
第二百四十八條外國語ヲ以テ作リタル文書ニハ其ノ譯文ヲ添附スルコト
乙酸〓
第二百四十九條訴訟ニ付テハ受命判事ニ依リ口頭辯論ノ準備手續ヲ爲ス
コトヲ要ス但シ裁判所相當ト認ムルトキハ直ニ辯論ヲ命シ又ハ訴訟ノ一
部若ハ或爭點ノミニ付準備手續ヲ命スルコトヲ得
第二百五十條準備手續ニ於テハ調書ヲ作リ當事者ノ陳述ニ基キ第二百四
十四條第四號及第五號ニ揭クル事項ヲ記載シ殊ニ證據ニ付テハ其ノ申出
ヲ明確ニスルコトヲ要ス
受命判事相當ト認ムルトキハ準備書面ヲ以テ前項ノ陳述及調書ニ代フル
コトヲ得
第二百五十一條當事者ノ一方カ期日ニ出頭セサルトキハ前條ノ調書ノ謄
本ヲ之ニ送達シ新期日ヲ定メ當事者雙方ヲ呼出スコトヲ得
第二百五十二條受命判事ハ當事者ヲシテ準備書面ヲ提出セシムルコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ第二百四十三條ノ規定ヲ準用ス
第二百五十三條當事者カ期日ニ出頭セス又ハ前條ノ規定ニ依リ受命判事
ノ定メタル期間内ニ準備書面ヲ提出セサルトキハ受命判事ハ準備手續ヲ
終結スルコトヲ得
第二百五十四條當事考ハ口頭辯論ニ於テ準備手續ノ結果ヲ陳述スルコト
ヲ要ス
第二百五十五條調書又ハ之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサル事項ハ口頭
辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ事項カ裁判所職權ヲ以テ調
査スヘキモノナルトキ、著ク訴訟ヲ遲滯セシメサルトキ又ハ重大ナル過
失ナクシテ準備手續ニ於テ之ヲ提出スルコト能ハサリシコトヲ疏明シタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ規定ハ第二百四十七條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
訴訟又ハ準備手續前ニ提出シタル準備書面ニ記載シタル事項ハ調書又ハ
之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサルモノト雖口頭辯論ニ於テ之ヲ主張ス
ルコトヲ妨ケス
第二百五十六條第百二十六條乃至第百二十九條、第百三十一條、第百三
十三條乃至第百四十一條及第二百三十八條ノ規定ハ準備手續ニ之ヲ準用
ス
第三節證據
第一款總則
第二百五十七條裁判所ニ於テ當事者カ自白シタル事實及顯著ナル事實ハ
之ヲ證スルコトヲ要セス
第二百五十八條證據ノ申出ハ證スヘキ事實ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要
ス
證據ノ申出ハ期日前ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第二百五十九條當事者ノ申出テタル證據ニシテ裁判所ニ於テ不必要ト認
ムルモノハ之ヲ取調フルコトヲ要セス
第二百六十條證據調ニ付不定期間ノ障碍アルトキハ裁判所ハ證據調ヲ爲
ササルコトヲ得
第二百六十一條裁判所ハ當事者ノ申出テタル證據ニ依リテ心證ヲ得ルコ
ト能ハサルトキ其ノ他必要アリト認ムルトキハ職權ヲ以テ證據調ヲ爲ス
コトヲ得
第二百六十二條裁判所ハ必要ナル調査ヲ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ
公署又ハ法人ニ囑託スルコトヲ得
第二百六十三條證據調ハ當事者カ期日ニ出頭セサル場合ニ於テモ之ヲ爲
スコトヲ得
第二百六十四條外國ニ於テ爲スヘキ證據調ハ其ノ國ノ管轄官廳又ハ其ノ
國ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ之ヲ囑託シテ爲スコトヲ要ス」
外國ニ於テ爲シタル證據調ハ其ノ國ノ法律ニ遠背スルモ本法ニ違背セサ
ルトキハ其ノ效力ヲ有ス
第二百六十五條裁判所ハ相當ト認ムルトキハ裁判所外ニ於テ證據調ヲ爲
スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ部員ニ命シ又ハ區裁判所ニ囑託シテ證據調
ヲ爲サシムルコトヲ得
受託判事カ他ノ區判裁所ニ於テ證據調ヲ爲スコトヲ相當ト認ムルトキハ
更ニ證據調ノ囑託ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ受訴裁判所
及當事者ニ通知スルコトヲ要ス
第二百六十六條受託判事ハ證據調ニ關スル記錄ヲ受訴裁判所ニ送付スル
コトヲ要ス
第二百六十七條疏明ハ卽時ニ取調フルコトヲ得ヘキ證據ニ依リテ之ヲ爲
スコトヲ要ス
裁判所ハ當事者若ハ法定代理人ヲシテ保證金ヲ供託セシメ又ハ其ノ主張
ノ眞實ナルコトヲ宣誓セシメ之ヲ以テ疏明ニ代フルコトヲ得
第二百八十六條乃至第二百八十九條ノ規定ハ前項ノ宣誓ニ之ヲ準用ス
第二百六十八條前條第二項ノ規定ニ依リテ保證金ノ供託ヲ爲シタル當事
者又ハ法定代理人カ虛僞ノ申述ヲ爲シタルトキハ裁判所決定ヲ以テ保證
金ヲ沒取ス
第二百六十九條第二百六十七條第二項ノ規定ニ依リテ宣誓ヲ爲シタル當
事者又ハ法定代理人カ虛僞ノ申述ヲ爲シタルトキハ宣誓ヲ爲サシメタル
裁判所決定ヲ以テ千圓以下ノ過料ニ處ス
第二百七十條第二百六十八條及前條ノ決定ニ對シテハ卽時杭告ヲ爲スコ
トヲ得
第二款證人訊問
第二百七十一條裁判所ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外何人ト雖證人ト
シテ之ヲ訊問スルコトヲ得
第二百七十二條官吏又ハ官吏タリシ者ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊
問スル場合ニ於テハ裁判所ハ當該監督官廳ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ他ノ公務員ニ付之ヲ準用ス
第二百七十三條國務大臣、宮內大臣、內大臣、樞密院議長、樞密院副議
長、樞密顧問官、會計檢査院長、元帥、參謀總長、海軍軍令部長、〓育
總監若ハ軍事參議官又ハ此等ノ職ニ在リタル者ヲ證人トシテ職務上ノ祕
密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ勅許ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十四條貴族院若ハ衆議院ノ議員又ハ議員タリシ者ヲ證人トシテ
職務上ノ祕密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ院ノ承認ヲ得ルコ
トヲ要ス
第二百七十五條證人訊問ノ申出ハ證人ヲ指定シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百七十六條證人ノ呼出狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一當事者ノ表示
二訊問事項ノ要領
三出頭セサル場合ニ於ケル法律上ノ制裁
第二百七十七條證人カ正當ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ裁判所ハ決
定ヲ以テ之ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ負擔ヲ命シ且五百圓以下ノ過料
ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二百七十八條裁判所ハ正當ノ事由ナクシテ出頭セサル證人ノ勾引ヲ命
スルコトヲ得
前項ノ勾引ニハ刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ヲ準用ス
第二百七十九條左ノ場合ニ於テハ受命判事又ハ受託判事ヲシテ證人ノ訊
問ヲ爲サシムルコトヲ得
-證人カ受訴裁判所ニ出頭スル義務ナキトキ又ハ正當ノ事由ニ因リ出
頭スルコト能ハサルトキ
二證人カ受訴裁判所ニ出頭スルニ付不相當ノ費用又ハ時間ヲ要スルトキ
第二百八十條證言カ證人又ハ左ニ揭クル者ノ刑事上ノ訴追又ハ處罰ヲ招
ク虞アル事項ニ關スルトキハ證人ハ證言ヲ拒ムコトヲ得證言カ此等ノ者
ノ恥辱ニ歸スヘキ事項ニ關スルトキ亦同シ
-證人ノ配偶者、四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族又ハ證人ノ家ノ
戶主但シ親族ニ付テハ親族關係カ止ミタル後亦同シ
二證人ノ後見人又ハ證人ノ後見ヲ受クル者
三證人カ主人トシテ仕フル者
第二百八十一條左ノ場合ニ於テハ證人ハ證言ヲ拒ムコトヲ得
一第二百七十二條乃至第二百七十四條ノ場合
二醫師、齒科醫師、藥劑師、藥種商、產婆、辯護士、辨理士、辯護人、
公證人、宗〓又ハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リタル者カ職務
上知リタル事實ニシテ默祕スヘキモノニ付訊問ヲ受クルトキ
三技術又ハ職業ノ祕密ニ關スル事項ニ付訊問ヲ受クルトキ
前項ノ規定ハ證人カ默祕ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百八十二條證言拒絕ノ理由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第二百八十三條第二百八十一條第一項第一號ノ場合ヲ除クノ外證言拒絕
ノ當否ニ付テハ受訴裁判所當事者ヲ審訊シテ裁判ヲ爲ス
證言拒絕ニ關スル裁判ニ對シテハ當事者及證人ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ
得
第二百八十四條證言拒絕ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル後證人カ故ナ
ク證言ヲ拒ムトキハ第二百七十七條ノ規定ヲ準用ス
第二百八十五條裁判長ハ證人ヲシテ訊問前宣誓ヲ爲サシムルコトヲ要ス
但シ特別ノ事由アルトキハ訊問後之ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百八十六條宣誓ハ起立シテ嚴肅ニ之ヲ行フコトヲ要ス
第二百八十七條裁判長ハ宣誓前宣誓ノ趣旨ヲ諭示シ且僞證ノ罰ヲ警告ス
ルコトヲ要ス
第二百八十八條宣誓ハ證人ヲシテ宣誓書ヲ朗讀セシメ且之ニ署名捺印セ
シメテ之ヲ爲ス證人宣誓書ヲ朗讀スルコト能ハサルトキハ裁判長代リテ
之ヲ朗讀ス
宣誓書ニハ良心ニ從ヒ眞實ヲ述へ何事ヲモ默祕セス又何事ヲモ附加セサ
ルコトヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百八十九條左ニ揭クル者ヲ證人トシテ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシム
ルコトヲ得ス
-十六年未滿ノ者
二宣誓ノ趣旨ヲ理解スルコト能ハサル者
第二百九十條第二百八十條ノ規定ニ該當スル證人ニシテ證言拒絕ノ權利
ヲ行ハサル者ヲ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシメサルコトヲ得
第二百九十一條證人カ自己又ハ第二百八十條ニ揭クル者ニ著キ利害關係
アル事項ニ付訊問ヲ受クルトキハ宣誓ヲ拒ムコトヲ得
第二百九十二條宣誓ヲ爲サシメスシテ證人ヲ訊問シタルトキハ其ノ旨及
事由ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第二百九十三條第二百七十七條、第二百八十二條及第二百八十三條ノ規
定ハ證人カ宣誓ヲ拒ム場合ニ之ヲ準用ス
第二百九十四條裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ證人相互ノ對質ヲ命ス
ルコトヲ得
第二百九十五條裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ證人ヲシテ文字ノ手記
其ノ他必要ナル行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百九十六條裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ後ニ訊問スヘキ證人ニ
一時退廷ヲ命スルコトヲ得
第二百九十七條證人ハ書類ニ依リテ陳述ヲ爲スコトヲ得ス但シ裁判長ノ
許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二百九十八條陪席判事ハ裁判長ニ告ケ證人ニ對シテ問ヲ發スルコトヲ
得
第二百九十九條當事者ハ裁判長ニ對シ必要ナル發問ヲ求メ又ハ其ノ許可
ヲ得テ問ヲ發スルコトヲ得
當事者ハ發問ノ許否ニ付異議ヲ述フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所
異議ニ付裁判ヲ爲ス
第三百條受命判事又ハ受託判事カ證人訊問ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所及
裁判長ノ職務ハ其ノ判事之ヲ行フ但シ前條第二項ノ規定ニ依ル異議ノ裁
判ハ受訴裁判所之ヲ爲ス
第三款鑑定
第三百一條鑑定ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前款ノ規定ヲ準用ス
第三百二條鑑定ニ必要ナル學識經驗アル者ハ鑑定ヲ爲ス義務ヲ負フ
第二百八十條又ハ第二百九十一條ノ規定ニ依リテ證言又ハ宣誓ヲ拒ミ得
ル者ト同一ノ地位ニ在ル者及第二百八十九條ニ揭クル者ハ鑑定人タルコ
トヲ得ス
第三百三條鑑定人ハ之ヲ勾引スルコトヲ得ス
第三百四條鑑定人ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事之ヲ指定ス
第三百五條鑑定人ニ付誠實ニ鑑定ヲ爲スコトヲ妨クヘキ事情アルトキハ
當事者ハ其ノ鑑定人カ鑑定事項ニ付陳述ヲ爲ス前之ヲ忌避スルコトヲ得
陳述ヲ爲シタルトキト雖其ノ後ニ忌避ノ原因ヲ生シ又ハ當事者カ其ノ原
因アルコトヲ知リタルトキ亦同シ
第三百六條忌避ノ申立ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事ニ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
忌避ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
忌避ヲ理由アリトスル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理
由ナシトスル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百七條宣誓書ニハ良心ニ從ヒ誠實ニ鑑定ヲ爲スコトヲ誓フ旨ヲ記載
スルコトヲ要ス
第三百八條裁判長ハ鑑定人ヲシテ書面又ハ口頭ヲ以テ共同ニテ又ハ各別
ニ意見ヲ述ヘシムルコトヲ得
第三百九條特別ノ學識經驗ニ依リテ知リ得タル事實ニ關スル訊問ニ付テ
ハ證人訊問ニ關スル規定ニ依ル
第三百十條裁判所必要アリト認ムルトキハ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若
ハ公署又ハ相當ノ設備アル法人ニ鑑定ヲ囑託スルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ宣誓ニ關スル規定ヲ除クノ外本款ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ官廳、公署又ハ法人ノ
指定シタル者ヲシテ鑑定書ノ說明ヲ爲サシムルコトヲ得
第四款書證
第三百十一條書證ノ申出ハ文書ヲ提出シ又ハ之ヲ所持スル者ニ其ノ提出
ヲ命セムコトヲ申立テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百十二條左ノ場合ニ於テハ文書ノ所持者ハ其ノ提出ヲ拒ムコトヲ得
ス
ス
-當事者カ訴訟ニ於テ引用シタル文書ヲ自ラ所持スルトキ
二擧證者カ文書ノ所持者ニ對シ其ノ引渡又ハ閱覽ヲ求ムルコトヲ得ル
トキ
三文書カ擧證者ノ利益ノ爲ニ作成セラレ又ハ擧證者ト文書ノ所持者ト
ノ間ノ法律關係ニ付作成セラレタルトキ
第三百十三條文書提出ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
-文書ノ表示
二文書ノ趣旨
三文書ノ所持者
四證スヘキ事實
五文書提出ノ義務ノ原因
第三百十四條裁判所カ文書提出ノ申立ヲ理由アリト認メタルトキハ決定
ヲ以テ文書ノ所持者ニ對シ其ノ提出ヲ命ス
第三者ニ對シ文書ノ提出ヲ命スル場合ニ於テハ其ノ第三者ヲ審訊スルコ
トヲ要ス
第三百十五條文書提出ノ申立ニ關スル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコ
トヲ得
第三百十六條當事者カ文書提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ文書ニ關
スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百十七條當事者カ相手方ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ提出ノ義務アル
文書ヲ毀滅シ其ノ他之ヲ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタルトキハ裁
判所ハ其ノ文書ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百十八條第三者カ文書提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以
テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百十九條書證ノ申出ハ第三百十一條ノ規定ニ拘ラス文書ノ所持者ニ
其ノ文書ノ送付ヲ囑託セムコトヲ申立テ之ヲ爲スコトヲ得但シ當事者カ
法令ニ依リテ文書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ求ムルコトヲ得ル場合ハ此ノ
限ニ在ラス
第三百二十條裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ提出又ハ送付ニ係ル文書
ヲ留置クコトヲ得
第三百二十一條第二百六十五條ノ規定ニ依リテ受命判事又ハ受託判事ヲ
シテ文書ニ付證據調ヲ爲サシムル場合ニ於テハ裁判所ハ受命判事又ハ受
託判事ノ調書ニ記載スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ調書ニハ文書ノ謄本又ハ抄本ヲ添附スルコトヲ要ス
第三百二十二條文書ノ提出又ハ送付ハ原本、正本又ハ認證アル謄本ヲ以
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス原本ノ提出ヲ命シ又ハ送付ヲ爲サシムルコ
トヲ得
裁判所ハ當事者ヲシテ其ノ引用シタル文書ノ謄本又ハ抄本ヲ提出セシム
ルコトヲ得
第三百二十三條文書ハ其ノ方式及趣旨ニ依リ官吏其ノ他ノ公務員カ職務
上作成シタルモノト認ムヘキトキハ之ヲ眞正ナル公文書ト推定ス
公文書ノ眞否ニ付疑アルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ當該官廳又ハ公署ニ
問合ヲ爲スコトヲ得
第三百二十四條前條ノ規定ハ外國ノ官廳又ハ公署ノ作成ニ係ルモノト認
ムヘキ文書ニ之ヲ準用ス
第三百二十五條私文書ハ其ノ眞正ナルコトヲ證スルコトヲ要ス
第三百二十六條私文書ハ本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキハ
之ヲ眞正ナルモノト推定ス
第三百二十七條文書ノ眞否ハ筆跡又ハ印影ノ對照ニ依リテモ之ヲ證スル
コトヲ得
第三百二十八條第三百十一條、第三百十四條乃至第三百十七條及第三百
十九條乃至第三百二十一條ノ規定ハ對照ノ用ニ供スヘキ筆跡又ハ印影ヲ
具フル文書其ノ他ノ物件ノ提出又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正、當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提出ノ命ニ從ハサルトキ
ハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時
抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百二十九條對照ニ適當ナル筆跡ナキトキハ裁判所ハ對照ノ用ニ供ス
ヘキ文字ノ手記ヲ相手方ニ命スルコトヲ得
相手方カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命ニ從ハサルト
キハ裁判所ハ文書ノ眞否ニ關スル擧證者ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
書樣ヲ變シテ手記シタルトキ亦同シ
第三百三十條對照ノ用ニ供シタル書類ノ原本、謄本又ハ抄本ハ之ヲ調書
ニ添附スルコトヲ要ス
第三百三十一條當事者又ハ其ノ代理人カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ眞
實ニ反シテ文書ノ眞正ヲ爭ヒタルトキハ裁判所決定ヲ以テ五百圓以下ノ
過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコト得
前項ノ場合ニ於テ文書ノ眞正ヲ爭ヒタル當事者又ハ代理人カ訴訟ノ繫屬
中其ノ眞正ナルコトヲ認メタルトキハ裁判所ハ事情ニ依リ前項ノ決定ヲ
取消スコトヲ得
第三百三十二條本款ノ規定ハ證徵ノ爲作リタル物件ニシテ文書ニ非サル
モノニ之ヲ準用ス
第五款檢證
第三百三十三條檢證ノ申出ハ檢證ノ目的ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百三十四條受命判事又ハ受託判事ハ檢證ヲ爲スニ當リ必要アリト認
ムルトキハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三百三十五條第三百十一條、第三百十四條乃至第三百十七條及第三百
十九條乃至第三百二十一條ノ規定ハ檢證ノ目的ノ提示又ハ送付ニ之ヲ準
用ス
第三者カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提示ノ命ニ從ハサルトキ
ハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時
抗〓ヲ爲スコトヲ得
第六款當事者訊問
第三百三十六條裁判所カ證據調ニ依リテ心證ヲ得ルコト能ハサルトキ其
ノ他必要アリト認ムルトキハ職權ヲ以テ當事者本人ヲ訊問スルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ當事者ヲシテ宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得
第三百三十七條裁判長必要アリト認ムルトキハ當事者相互又ハ當事者ト
證人トノ對質ヲ命スルコトヲ得
第三百三十八條當事者カ正當ノ事由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ宣誓若ハ
陳述ヲ拒ミタルトキハ裁判所ハ訊問事項ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト
認ムルコトヲ得
第三百三十九條宣誓シタル當事者カ虚僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ裁判所
決定ヲ以テ千圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗〓ヲ爲スコ
トヲ得
第三百三十一條第二項ノ規定ハ前項ノ決定ニ之ヲ準用ス
第三百四十條當事者ヲ訊問シタルトキハ其ノ陳述及宣誓ヲ爲サシメ又ハ
爲サシメサルコトヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第三百四十一條第三百三十六條乃至前條ノ規定ハ訴訟ニ於テ當事者ヲ代
表スル法定代理人ニ之ヲ準用ス但シ當事者本人ヲ訊問スルコトヲ妨ケス
第三百四十二條第二百七十六條、第二百七十九條、第二百八十五條乃至
第二百八十九條、第二百九十五條及第二百九十七條乃至第三百條ノ規定
ハ本款ノ訊問ニ之ヲ準用ス
第七款證據保全
第三百四十三條裁判所ハ豫メ證據調ヲ爲スニ非サレハ其ノ證據ヲ使用ス
ルニ困難ナル事情アリト認ムルトキハ申立ニ因リ本節ノ規定ニ從ヒ證據
調ヲ爲スコトヲ得
第三百四十四條證據保全ノ申立ハ訴訟ノ繫屬中ニ在リテハ其ノ證據ヲ使
用スヘキ審級ノ裁判所ニ、其ノ提起前ニ在リテハ訊問ヲ受クヘキ者若ハ
文書ヲ所持スル者ノ居所又ハ檢證物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ之ヲ
爲スコトヲ要ス
急迫ナル場合ニ於テハ訴ノ提起後ト雖前項ノ區裁判所ニ證據保全ノ申立
ヲ爲スコトヲ得
第三百四十五條證據保全ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
-相手方ノ表示
二證スヘキ事實
三證據
四證據保全ノ事由
證據保全ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百四十六條證據保全ノ申立ハ相手方ヲ指定スルコト能ハサル場合ニ
於テモ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ相手方ト爲ルヘキ者
ノ爲ニ特別代理人ヲ選任スルコトヲ得
第三百四十七條裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ訴訟ノ繋屬中職權ヲ以
テ證據保全ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第三百四十八條證據保全ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十九條證據調ノ期日ニハ申立人及相手方ヲ呼出スコトヲ要ス但
シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百五十條證據保全ニ關スル記錄ハ本訴訟ノ記錄ノ存スル裁判所ニ之
ヲ送付スルコトヲ要ス
第三百五十一條證據保全ニ關スル費用ハ訴訟費用ノ一部トス
第二章區裁判所ノ訴訟手續
第三百五十二條區裁判所ノ訴訟手續ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外
前章ノ規定ヲ準用ス
第三百五十三條訴ハ口頭ヲ以テ之ヲ提起スルコトヲ得
第三百五十四條當事者雙方ハ任意ニ裁判所ニ出頭シ訴訟ニ付口頭辯論ヲ
爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴ノ提起ハ口頭ノ陳述ニ依リテ之ヲ爲ス
第三百五十五條被〓カ反訴ヲ以テ地方裁判所ノ管轄ニ屬スル請求ヲ爲シ
タル場合ニ於テ相手方ノ申立アルトキハ區裁判所ハ決定ヲ以テ本訴及反
訴ヲ地方裁判所ニ移送スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第三十二條及第
三十四條ノ規定ヲ準用ス
移送ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百五十六條民事上ノ爭ニ付テハ當事者ハ請求ノ趣旨及原因竝爭ノ實
情ヲ表示シテ相手方ノ普通裁判籍所在地ノ區裁判所ニ和解ノ申立ヲ爲ス
コトヲ得
和解調ヒタルトキハ之ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
和解調ハサル場合ニ於テ裁判所ハ和解ノ期日ニ出頭シタル當事者雙方ノ
申立アルトキハ直ニ訴訟ノ辯論ヲ命ス此ノ場合ニ於テハ和解ノ申立ヲ爲
シタル者ハ其ノ申立ヲ爲シタル時ニ於テ訴ヲ提起シタルモノト看做シ和
解ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
申立人又ハ相手方カ和解ノ期日ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ和解調ハサ
ルモノト看做スコトヲ得
第三百五十七條口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要セス
相手方カ準備ヲ爲スニ非サレハ陳述ヲ爲スコト能ハスト認ムヘキ事項ハ
前項ノ規定ニ拘ラス書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ
ハ準備書面ノ提出ニ代ヘ口頭辨論前直接ニ相手方ニ其ノ事項ヲ通知スル
コトヲ得
第二百四十七條ノ規定ハ前項ノ通知ヲ爲ササル場合ニ之ヲ準用ス
第三百五十八條準備手續ニ關スル規定ハ區裁判所ノ訴訟手續ニ之ヲ適用
セス
第三百五十九條判決ニ事實及理由ヲ記載スルニハ請求ノ趣旨及原因ノ要
旨、其ノ原因ノ有無竝請求ヲ排斥スル理由タル抗辯ノ要旨ヲ表示スルヲ
以テ足ル
第三編上訴
第一章控訴
第三百六十條控訴ハ第一審ノ終局判決ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得但シ當
事者雙方共ニ控訴ヲ爲ササル旨ノ合意ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ合意ハ上告ヲ爲ス權利ヲ留保シテ之ヲ爲スコトヲ得
第二十五條第二項ノ規定ハ第一項ノ合意ニ之ヲ準用ス
第三百六十一條財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ對シテハ控訴ニ因リテ受
クヘキ利益ノ價額カ三百圓ニ滿タサル場合ニ於テハ再審ノ事由アルニ非
サレハ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ訴訟ノ目的ノ價額カ三百圓以上ナル事件ニ付裁判所カ訴訟
ノ一部ニ付爲シタル判決ニハ之ヲ適用セス
第一項ノ價額ハ控訴提起ノ時ヲ標準トシテ之ヲ定ム
控訴審ニ於テ擴張シタル請求ノ價額ハ第一項ノ價額ニ之ヲ算入セス
第一項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ハ三百圓ト看做ス
第二十三條ノ規定ハ第一項ノ價額ノ算定ニ之ヲ準用ス
第三百六十二條訴訟費用ノ裁判ニ對シテハ獨立シテ控訴ヲ爲スコトヲ得
ス
第三百六十三條終局判決前ノ裁判ハ控訴裁判所ノ判斷ヲ受ク但シ不服ヲ
申立ツルコトヲ得サル裁判及抗〓ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判
ハ此ノ限ニ在ラス
第三百六十四條控訴ハ控訴審ノ終局判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第二百三十六條第一項但書第二項第三項、第二百三十七條第一項及第二
百三十八條ノ規定ハ控訴ノ取下ニ之ヲ準用ス
第三百六十五條控訴ヲ爲ス權利ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百六十六條控訴權ノ抛棄ハ控訴提起前ニ在リテハ第一審裁判所、控
訴提起後ニ在リテハ控訴裁判所ニ對スル申述ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要
ス
控訴提起後ノ控訴權ノ抛棄ハ控訴ノ取下ト共ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴權抛棄ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第三百六十七條控訴ハ判決ノ送達アリタル日ヨリ二週間內ニ之ヲ提起ス
ルコトヲ要ス但シ其ノ期間前提起シタル控訴ノ效力ヲ妨ケス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第三百六十八條控訴ノ提起ハ控訴狀ヲ第一審裁判所又ハ控訴裁判所ニ提
出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一當事者及法定代理人
二第一審判決ノ表示及其ノ判決ニ對シ控訴ヲ爲ス旨
第三百六十九條準備書面ニ關スル規定ハ控訴狀ニ之ヲ準用ス
第三百七十條第一審裁判所ニ控訴狀ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ
訴訟記錄ニ控訴狀ヲ添附シテ遲滯ナク之ヲ控訴裁判所ノ書記ニ送付スル
コトヲ要ス
控訴裁判所ニ控訴狀ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ遲滯ナク第一審
裁判所ノ書記ニ訴訟記錄ノ送付ヲ求ムルコトヲ要ス
第三百七十一條第二百二十八條ノ規定ハ控訴狀カ第三百六十八條第二項
ノ規定ニ反スル場合、法律ノ規定ニ從ヒ控訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合
及控訴狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第三百七十二條控訴狀ハ之ヲ被控訴人ニ送達スルコトヲ要ス
第三百七十三條被控訴人ハ控訴權消滅ノ後ト雖口頭辯論ノ終結ニ至ル迄
附帶控訴ヲ爲スコトヲ得附帶控訴ニ因リテ受クヘキ利益ノ價額カ三百圓
ニ滿タサルトキ亦同シ
第三百七十四條附帶控訴ハ控訴ノ取下アリタルトキ又ハ不適法トシテ控
訴ノ棄却アリタルトキハ其ノ效力ヲ失フ但シ控訴ノ要件ヲ具備スルモノ
ハ之ヲ獨立ノ控訴ト看做ス
第三百七十五條附帶控訴ニ付テハ控訴ニ關スル規定ニ依ル
第三百七十六條控訴裁判所ハ第一審ノ判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限
リ申立ニ因リ決定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第三百七十七條假執行ニ關スル控訴審ノ裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ス
前條ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シテハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得
第三百七十八條口頭辯論ハ當事者カ第一審ノ判決ノ變更ヲ求ムル限度ニ
於テノミ之ヲ爲ス
當事者ハ第一審ニ於ケル口頭辯論ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第三百七十九條前編第一章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外控訴
審ノ訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百八十條第一審ニ於テ爲シタル訴訟行爲ハ控訴審ニ於テモ其ノ效力
ヲヨ .
第三百八十一條第一審ニ於テ爲シタル準備手續ハ控訴審ニ於テモ其ノ效
力ヲ有ス
第三百八十二條控訴審ニ於テハ當事者ハ第一審裁判所カ管轉權ヲ有セサ
ルコトヲ主張スルコトヲ得ス但シ專屬管轄ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三百八十三條反訴ハ相手方ノ同意アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ
得
相手方カ異議ヲ述ヘスシテ反訴ノ本案ニ付辯論ヲ爲シタルトキハ反訴ノ
提起ニ同意シタルモノト看做ス
第三百八十四條不適法ナル控訴ニシテ其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサル
モノナル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコト
ヲ得
第三百八十五條控訴裁判所ハ第一審判決ヲ相當トスルトキハ控訴ヲ棄却
スルコトヲ要ス
判決カ其ノ理由ニ依レハ不當ナル場合ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正當ナ
ルトキハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
第三百八十六條第一審判決ノ變更ハ不服申立ノ限度ニ於テノミ之ヲ爲ス
コトヲ得
第三百八十七條控訴裁判所ハ第一審判決ヲ不當トスルトキハ之ヲ取消ス
コトヲ要ス
第三百八十八條第一審ノ判決ノ手續カ法律ニ違背シタルトキハ控訴裁判
所ハ判決ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十九條訴ヲ不適法トシテ却下シタル第一審判決ヲ取消ス場合ニ
於テハ控訴裁判所ハ事件ヲ第一審裁判所ニ差戾スコトヲ要ス
第三百九十條前條ノ場合ノ外控訴裁判所カ第一審判決ヲ取消ス場合ニ於
テ事件ニ付尙辯論ヲ爲ス必要アルトキハ之ヲ第一審裁判所ニ差戾スコト
ヲ得
第一審裁判所ニ於ケル訴訟手續カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ事
件ヲ差戾ストキハ其ノ訴訟手續ハ之ニ因リテ取消サレタルモノト看做ス
第三百九十一條事件カ管轄違ナルコトヲ理由トシテ第一審判決ヲ取消ス
トキハ控訴裁判所ハ判決ヲ以テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
第三百九十二條判決ニ事實及理由ヲ記載スルニハ第一審判決ヲ引用スル
コトヲ得
第三百九十三條訴訟完結シタル後上訴ノ提起ナクシテ上訴期間滿了シタ
ルトキハ裁判所書記ハ判決又ハ第三百七十一條ノ規定ニ依ル命令ノ正本
ヲ訴訟記錄ニ添付シ之ヲ第一審裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
第二章上告
第三百九十四條上告ハ控訴審ノ終局判決ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第三百六十條第二項ノ場合ニ於テハ第一審判決ニ對シ直ニ上〓ヲ爲スコ
トヲ得
第三百九十五條上〓ハ判決カ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキニ
限リ之ヲ爲スコトヲ得
第三百九十六條判決ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法令ニ違背シタルモノトス
-法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
二法律ニ依リ判決ニ關與スルコトヲ得サル判事カ判決ニ關與シタルト
キ
三專屬管轄ニ關スル規定ニ違背シタルトキ
四法定代理權、訴訟代理權又ハ代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授
權ノ欠缺アリタルトキ
五口頭辯論公開ノ規定ニ違背シタルトキ
六判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟齬アルトキ
前項第四號ノ規定ハ第五十四條又ハ第八十七條ノ規定ニ依ル追認アリタ
ル場合ニハ之ヲ適用セス
第三百九十七條前章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外上告及上〓
審ノ訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百九十八條上告狀ニ上告ノ理由ヲ記載セサルトキハ遲クトモ上告期
間滿了ノ日ヨリ三十日內ニ上告理由書ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百九十九條上告人カ前條ノ規定ニ違背シ上告理由書ヲ提出セサルト
キハ上告裁判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ上〓ヲ却下スルコトヲ
得
第四百條裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ答辯書ヲ提出スヘキコトヲ被上告人
ニ命スルコトヲ得
第四百一條上告裁判所カ上〓狀、上告理由書、答辯書其ノ他ノ書類ニ依
リ上〓ヲ理由ナシト認ムルトキハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ上告ヲ
棄却スルコトヲ得
第四百二條上告裁判所ハ上告理由ニ基キ不服ノ申立アリタル限度ニ於テ
ノミ調査ヲ爲ス
第四百三條原判決ニ於テ適法ニ確定シタル事實ハ上告裁判所ヲ覊束ス
第四百四條第三百九十四條第二項ノ規定ニ依ル上告アリタル場合ニ於テ
ハ上告裁判所ハ原判決ニ於ケル事實ノ確定カ法律ニ違背シタルコトヲ理
由トシテ其ノ判決ヲ破毀スルコトヲ得ス
第四百五條第四百二條乃至前條ノ規定ハ裁判所カ職權ヲ以テ調査スヘキ
事項ニ之ヲ適用セス
第四百六條上告裁判所ハ原判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因
リ決定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第四百七條上〓ヲ理由アリトスルトキハ上告裁判所ハ原判決ヲ破毀シ事
件ヲ原裁判所ニ差戾シ又ハ同等ナル他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口頭辯論ニ基キ判決ヲ爲スコトヲ要
ス但シ上告裁判所カ破毀ノ理由ト爲シタル事實上及法律上ノ判斷ニ覊束
キミント
原判決ニ關與シタル判事ハ前項ノ裁判ニ關與スルコトヲ得ス
第四百八條左ノ場合ニ於テハ上告裁判所ハ事件ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要
ス
一確定シタル事實ニ付法令ノ適用ヲ誤リタルコトヲ理由トシテ判決ヲ
破毀スル場合ニ於テ事件カ其ノ事實ニ基キ裁判ヲ爲スニ熟スルトキ
二事件カ通常裁判所ノ權限ニ屬セサルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀ス
ルトキ
第四百九條差戾又ハ移送ノ判決アリタルトキハ裁判所書記ハ其ノ判決ノ
正本ヲ訴訟記錄ニ添附シ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送
付スルコトヲ要ス
第三章抗〓
第四百十條口頭辯論ヲ經スシテ訴訟手續ニ關スル申立ヲ却下シタル決定
又ハ命令ニ對シテハ抗〓ヲ爲スコトヲ得
第四百十一條決定又ハ命令ヲ以テ裁判ヲ爲スコトヲ得サル事項ニ付決定
又ハ命令ヲ爲シタルトキハ當事者ハ之ニ對シテ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十二條受命判事又ハ受託判事ノ裁判ニ對シ不服アル當事者ハ受訴
裁判所ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得但シ其ノ裁判カ受訴裁判所ノ裁判ナ
ル場合ニ於テ之ニ對シ抗告ヲ爲シ得ルモノナルトキニ限ル
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニ繫屬スル事件ニ付受命判事又ハ受託判事ノ爲シ
タル裁判ニ之ヲ準用ス
第四百十三條抗告裁判所ノ決定ニ對シテハ其ノ決定カ法令ニ違背シタル
コトヲ理由トスル場合ニ限リ更ニ抗〓ヲ爲スコトヲ得
第四百十四條抗告及抗〓裁判所ノ訴訟手續ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ
第一章ノ規定ヲ準用ス但シ前條ノ抗〓及之ニ關スル訴訟手續ニハ前章ノ
規定ヲ準用ス
第四百十五條卽時抗告ハ裁判ノ告知アリタル日ヨリ一週間內ニ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百十六條抗告ハ原裁判所又ハ抗〓裁判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ
爲スコトヲ要ス
抗〓裁判所カ抗〓ヲ受ケタル場合ニ於テ適當ト認ムルトキハ事件ヲ原裁
判所ニ送付スルコトヲ得
第四百十七條原裁判所カ抗〓ヲ受ケ又ハ前條第二項ノ規定ニ依リ事件ノ
送付ヲ受ケタル場合ニ於テ抗告ヲ理由アリト認ムルトキハ其ノ裁判ヲ更
正スルコトヲ要ス
抗告ヲ理由ナシト認ムルトキハ意見ヲ附シ事件ヲ抗〓裁判所ニ送付スル
コトヲ要ス
第四百十八條抗〓ハ卽時抗〓ニ限リ執行停止ノ效力ヲ有ス
抗〓裁判所又ハ原裁判ヲ爲シタル裁判所若ハ判事ハ抗告ニ付決定アル迄
原裁判ノ執行ヲ停止シ其ノ他必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第四百十九條抗告裁判所ハ抗〓ニ付口頭辯論ヲ命セサル場合ニ於テハ抗
告人其ノ他ノ利害關係人ヲ審訊スルコトヲ得
第四編再審
第四百二十條左ノ場合ニ於テハ確定ノ終局判決ニ對シ再審ノ訴ヲ以テ不
服ヲ申立ツルコトヲ得但シ當事者カ上訴ニ依リ其ノ事由ヲ主張シタルト
キ又ハ之ヲ知リテ主張セサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
-法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
二法律ニ依リ裁判ニ關與スルコトヲ得サル判事カ裁判ニ關與シタルト
キ
三法定代理權、訴訟代理權又ハ代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授
權ノ欠缺アリタルトキ
四裁判ニ關與シタル判事カ事件ニ付職務ニ關スル罪ヲ犯シタルトキ
五刑事上罰スヘキ他人ノ行爲ニ因リ自白ヲ爲スニ至リタルトキ又ハ判
決ニ影響ヲ及ホスヘキ攻擊若ハ防禦ノ方法ヲ提出スルコトヲ妨ケラレ
タルトキ
六判決ノ證據ト爲リタル文書其ノ他ノ物件カ僞造又ハ變造セラレタル
モノナリシトキ
七證人、鑑定人、通事又ハ宣誓シタル當事者若ハ法定代理人ノ虛僞ノ
陳述カ判決ノ證據ト爲リタルトキ
八判決ノ基礎ト爲リタル民事若ハ刑事ノ判決其ノ他ノ裁判又ハ行政處
分カ後ノ裁判又ハ行政處分ニ依リテ變更セラレタルトキ
九判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判斷ヲ遺脫シタルトキ
十不服ノ申立アル判決カ前ニ言渡サレタル確定判決ト牴觸スルトキ
前項第四號乃至第七號ノ場合ニ於テハ罰スヘキ行爲ニ付有罪ノ判決若ハ
過料ノ裁判確定シタルトキ又ハ證據欠缺外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決
若ハ過料ノ確定裁判ヲ得ルコト能ハサルトキニ限リ再審ノ訴ヲ提起スル
コトヲ得
控訴審ニ於テ事件ニ付本案判決ヲ爲シタルトキハ第一審ノ判決ニ對シ再
審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第四百二十一條判決ノ基本タル裁判ニ付前條ニ定メタル事由アルトキハ
其ノ裁判ニ對シ獨立ノ不服ノ方法ヲ定メタル場合ニ於テモ其ノ事由ヲ以
テ判決ニ對スル再審ノ理由ト爲スコトヲ得
第四百二十二條再審ハ不服ノ申立アル判決ヲ爲シタル裁判所ノ專屬管轄
トス
審級ヲ異ニスル裁判所カ同一事件ニ付爲シタル判決ニ對スル再審ノ訴ハ
上級裁判所併セテ之ヲ管轄ス
第四百二十三條再審ノ訴訟手續ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ各審級ニ於
ケル訴訟手續ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百二十四條再審ノ訴ハ當事者カ判決確定後再審ノ事由ヲ知リタル日
ヨリ二週間內ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
判決確定後五年ヲ經過シタルトキハ再審ノ訴ハ之ヲ提起スルコトヲ得
ス
再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキハ前項ノ期間ハ其ノ事由發生ノ
日ヨリ之ヲ起算ス
第四百二十五條前條ノ規定ハ代理權ノ欠缺及第四百二十條第一項第十號
ニ揭クル事項ヲ理由トスル再審ノ訴ニハ之ヲ適用セス
第四百二十六條訴狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一當事者及法定代理人
二不服ノ申立アル判決ノ表示及其ノ判決ニ對シ再審ヲ求ムル旨
三不服ノ理由
第四百二十七條本案ノ辯論及裁判ハ不服ノ範圍內ニ於テノミ之ヲ爲スコ
トヲ得
不服ノ理由ハ之ヲ變更スルコトヲ得
第百二十八條再審ノ事由アル場合ニ於テモ判決ヲ正當トスルトキハ裁判
所ハ再審ノ訴ヲ却下スルコトヲ要ス
第四百二十九條卽時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令
カ確定シタル場合ニ於テ第四百二十條第一項ニ揭クル事由アルトキハ確
定判決ニ對スル第四百二十條乃至前條ノ規定ニ準シ再審ノ申立ヲ爲スコ
トヲ得
第五編督促手續
第四百三十條金錢其ノ他ノ代替物又ハ有價證劵ノ一定ノ數量ノ給付ヲ目
的トスル請求ニ付テハ裁判ハ債權者ノ申立ニ因リ支拂命令ヲ發スルコト
ヲ得但シ日本ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ其ノ命令ノ送達ヲ爲スコトヲ
得ヘキ場合ニ限ル
第四百三十一條督促手續ハ債務者ノ普通裁判籍所在地ノ區裁判所又ハ第
九條ノ規定ニ依ル管轄區裁判所ノ専屬管轄トス
第四百三十二條支拂命令ノ申立ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ訴ニ關スル
規定ヲ準用ス
第四百三十三條支拂命令ノ申立カ第四百三十條若ハ管轄ニ關スル規定ニ
違背スルトキ又ハ申立ノ趣旨ニ依リ請求ノ理由ナキコト明ナルトキハ其
ノ申立ハ之ヲ却下スルコトヲ要ス請求ノ一部ニ付支拂命令ヲ發スルコト
ヲ得サルトキ其ノ一部ニ付亦同シ
申立却下ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四百三十四條支拂命令ハ債務者ヲ審訊セスシテ之ヲ發ス
債務者ハ支拂命令ニ對シ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第四百三十五條支拂命令ニハ當事者、法定代理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ
記載シ且債務者カ支拂命令送達ノ日ヨリ二週間內ニ異議ヲ申立テサルト
キハ債權者ノ申立ニ因リ假執行ノ宣言ヲ爲スヘキ旨ヲ附記スルコトヲ要
ス
第四百三十六條支拂命令ハ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
第四百三十七條債務者カ假執行ノ宣言前異議ヲ申立テタルトキハ支拂命
令ハ其ノ異議ノ範圍ニ於テ效力ヲ失フ
第四百三十八條債務者カ支拂命令送達ノ日ヨリ二週間內ニ異議ヲ申立テ
サルトキハ裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ支拂命令ニ手續ノ費用額ヲ附記
シ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ要ス但シ其ノ宣言前異議ノ申立アリタルト
キハ此ノ限リニ在ラス
假執行ノ宣言ハ支拂命令ノ原本及正本ニ之ヲ記載シ其ノ正本ヲ當事者ニ
送達スルコトヲ要ス
假執行ノ申立却下ノ決定ニ對シテハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得
第四百三十九條債權者カ假執行ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル時ヨリ三十日內
ニ其ノ申立ヲ爲ササルトキハ支拂命令ハ其ノ效力ヲ失フ
第四百四十條假執行ノ宣言ヲ附シタル支拂命令送達ノ日ヨリ二週間ヲ經
過シタルトキハ債務者ハ其ノ支拂命令ニ對シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百四十一條區裁判所カ異議ヲ不適法ト認ムルトキハ請求カ地方裁判
所ノ管轄ニ屬スル場合ニ於テモ決定ヲ以テ其ノ異議ヲ却下スルコトヲ要
ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百四十二條支拂命令ニ對シ適法ナル異議ノ申立アリタルトキハ異議
アル請求ニ付テハ其ノ目的ノ價額ニ從ヒ支拂命令ノ申立ノ時ニ於テ其ノ
命令ヲ發シタル區裁判所又ハ其ノ區裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判
所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ督促手續ノ費用ハ
之ヲ訴訟費用ノ一部トス
前項ノ規定ニ依リテ地方裁判所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做サレタル
場合ニ於テハ裁判所書記ハ遲滯ナク訴訟記錄ヲ地方裁判所ノ書記ニ送付
スルコトヲ要ス
第四百四十三條假執行ノ宣言ヲ附シタル支拂命令ニ對シ異議ノ申立ナキ
トキ又ハ異議却下ノ決定確定シタルトキハ支拂命令ハ確定判決ト同一ノ
效力ヲ有ス
第四百四十四條乃至第四百九十六條削除
第四百九十七條ノ二判決カ其判決ニ表示シタル當事者以外ノ者ニ對シ效
力ヲ有ス可キトキハ其者ニ對シ又ハ其者ノ爲メニモ之ヲ執行スルコトヲ
得但第六十四條ノ規定ニ依ル參加人ニ付テハ此限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ執行力アル正本ノ付與ニ付テハ第五百十九條乃至第五
百二十一條ノ規定ヲ準用ス
第五百條中「原狀囘復又ハ」ヲ削ル
第五百一條乃至第五百十一條削除
第五百十二條中「故障ヲ申立又ハ上訴ヲ起シタルトキ」ヲ「上訴ヲ提起シタ
ルトキ又ハ假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令ニ對シ異議ヲ申立テタルト
キ」ニ改ム
第五百十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
第百十二條、第百十三條、第百十五條及ヒ第百十六條ノ規定ハ第一項ノ
規定ニ依ル保證ニ付キ之ヲ準用ス
第五百十四條中「第十七條」ヲ「第八條」ニ改ム
第五百十五條第二項中第二號ヲ左ノ如ク改メ第三號乃至第五號ヲ削ル
第二外國判決カ第二百條ノ條件ヲ具備セサルトキ
第五百四十一條中「第百三十九條、第百四十條及ヒ第百四十五條乃至第百四
十九條」ヲ「第百六十七條、第百六十八條、第百七十一條及ヒ第百七十二條」
三郎人
第五百四十五條第二項中「其原因ヲ生シ且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ
得サルトキ」ヲ「其原因ヲ生シタルトキ」ニ改ム
第五百四十八條第三項ヲ左ノ如ク改ム
右裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百五十條第三號ヲ左ノ如ク改ム
第三執行ヲ免カルル爲メ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル書面
第五百五十九條中第三號及第四號ヲ削リ第五號ヲ第三號トシ第二號ヲ左ノ
如ク改ム
第二假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令
第五百六十條中「債務名義」ヲ「債務名義及ヒ訴訟上ノ和解竝ニ請求ノ抛棄
又ハ認諾」ニ改ム
第五百六十一條中「執行命令」ヲ「假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令」ニ改ム
第五百六十一條ノ二過料ノ裁判ハ檢事ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス此命令ハ
執行力アル債務名義ト同一ノ效力ヲ有ス
第五百六十二條中「第十七條」ヲ「第八條」ニ改ム
第五百九十五條執行裁判所トシテハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區
裁判所、此區裁判所ナキトキハ差押フヘキ債權ノ所在地ヲ管轄スル區裁
判所管轄權ヲ有ス
差押フヘキ債權ハ第三債務者ノ普通裁判籍ノ所在地ニ在ルモノトス但物
ノ引渡ヲ目的トスル債權及ヒ物上ノ擔保權ヲ有スル債權ハ其物ノ所在地
ニ在ルモノトス
第六百七條中「第五百五條第二項ニ從ヒテ債務者ニ保證ヲ立テシメ又ハ供
託ヲ爲サシメテ」ヲ「第百九十六條第二項ニ從ヒテ債務者ニ擔保ヲ供セシメ
テ」ニ改ム
第六百三十七條中「看做ス旨ノ闕席判決ヲ爲ス可シ」ヲ「看做ス」ニ改ム
第六百三十八條第六百三十六條ノ判決ノ確定シタルコト又ハ前條ノ規定
ニ從ヒ異議ヲ取下ケタルモノト看做サレタルコトノ證明アルトキハ配當
裁判所ハ之ニ基キ支拂又ハ他ノ配當手續ヲ命ス
第六百四十一條中「第二十六條ノ規定ヲ適用ス」ヲ「各區裁判所管轄權ヲ有
ス此場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ事件ヲ他ノ管轄區裁判所ニ
移送スルコトヲ得」ニ改ム
第六百六十九條中「第百四十三條第三項」ヲ「第百七十條第二項及ヒ第百七
十三條」ニ改ム
第六百七十七條中「第百二十九條乃至第百三十二條及ヒ第百三十四條」ヲ
「第百四十二條乃至第百四十七條」ニ改ム
第六百八十一條中「取消ノ訴若クハ原狀囘復ノ訴」ヲ「再審ノ訴」ニ改ム
第七百五十六條ノ二假處分ヲ取消ス判決ハ財產權上ノ請求ニ關セサルモ
ノニ付テモ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第七百六十六條中「之ヲ爲シ其他法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百
五十七條第三項ノ規定ニ從ヒテ」ヲ削リ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
裁判所相當ト認ムルトキハ新聞紙ニ公〓ス可キコトヲ命スルコトヲ得
第七百七十四條第二項第六號ヲ左ノ如ク改ム
第六第四百二十條第四號乃至第八號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス條
件ノ存スルトキ
第七百七十六條中「第百二十條ノ條件ノ存セサルトキト雖モ」ヲ削ル
第八百一條第一項第六號ヲ左ノ如ク改ム
第六第四百二十條第四號乃至第八號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス條
件ノ存スルトキ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
民事訴訟法中改正法律施行法案
右
勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
大正十五年二月十二日
內閣總理大臣若槻禮次郞
司法大臣江木翼
民事訴訟法中改正法律施行法
第一條本法ニ於テ新法ト稱スルハ大正十五年民事訴訟法中改正法律ニ依
ル改正規定ヲ謂ヒ舊法ト稱スルハ從前ノ規定ヲ謂フ
第二條新法ハ新法施行前ニ生シタル事項ニ亦之ヲ適用ス但シ舊法ニ依リ
テ生シタル效力ヲ妨ケス
第三條新法施行前ヨリ繋屬スル事件ニ付新法ニ依リ管轄權アル裁判所ハ
舊法ニ依レハ管轄權ナキ場合ニ於テモ管轄權ヲ有ス
前項ノ事件ニ付舊法ニ依リ管轄權アル裁判所ハ新法ニ依レハ管轄權ナキ
場合ニ於テモ管轄權ヲ有ス
第四條新法ニ依リ新ニ期間ヲ定メタル訴訟行爲ニシテ新法施行ノ際爲ス
ヘキモノニ付テハ其ノ期間ハ新法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第五條新法第八十五條ノ規定ハ新法施行前同條ニ揭クル事由ヲ生シタル
訴訟代理ニシテ新法施行前委任消滅ノ通知ヲ爲ササリシモノニモ之ヲ適
用ス
第六條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ付テハ舊法ニ依リ訴訟費用ノ保證
ヲ立ツル義務ナキ者ハ新法ニ依リ擔保ヲ供スルコトヲ要セス
第七條新法施行前ヨリ進行ヲ始メタル法定期間及其ノ計算ハ舊法ニ依
ル
新法施行前言渡シタル判決ニ對スル上訴ノ期間カ新法施行後進行ヲ始メ
タル場合亦前項ニ同シ
第八條新法施行前裁判所書記カ判決原本ノ交付ヲ受ケタルトキハ其ノ判
決ノ送達ハ申立アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ要セス
第九條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ付テハ特ニ裁判所ノ命シタル場合
ニ限リ新法ニ依リ準備手續ヲ爲ス
第十條新法施行前舊法ニ依リテ罰金又ハ過料ニ處スヘキ行爲ヲ爲シタル
者ニシテ新法施行ノ際未タ其ノ裁判ヲ受ケサルモノハ新法ニ於テ過料ニ
處スヘキ場合ニ限リ新法ニ依リ處罰ス但シ過料ノ額ハ舊法ノ罰金又ハ過
料ノ額ヲ超ユルコトヲ得ス
第十一條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ付言渡シタル判決ニ對シテハ上
訴ニ因リテ受クヘキ利益ノ價額三百圓ニ滿タサル場合ニ於テモ上訴ヲ爲
スコトヲ得
第十二條新法施行前第一審裁判所又ハ控訴裁判所カ管轄違トシテ訴ヲ却
下シタル場合ニ於テ上訴裁判所カ第一審裁判所ニ其ノ管轄權ナシトスル
トキハ判決ヲ以テ事件ヲ第一審ノ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ上訴裁判所カ第一審裁判所ニ管轄權アリトスルトキハ
事件ヲ其ノ裁判所ニ差戾スコトヲ要ス但シ第一審裁判所カ管轄權アリト
爲シタル事件ニ付控訴裁判所カ管轄違トシテ訴ヲ却下シタル場合ニ於テ
ハ上〓裁判所ハ事件ヲ控訴裁判所ニ差戾スコトヲ得
第十三條新法施行前抗告裁判所ノ爲シタル決定ニ對シテハ仍舊法ニ依リ
更ニ抗〓ヲ爲スコトヲ得
第十四條關席判決ニ對シテハ仍舊法ニ依リ故障ヲ申立ツルコトヲ得
執行命令ニ對シテハ舊法ニ依ル故障期間內ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第十五條新法施行前妨訴抗辯ヲ棄却シ又ハ請求ノ原因ヲ正當ナリトシタ
ル中間判決ニ對シテハ仍舊法ニ依リ上訴ヲ爲スコトヲ得
第十六條新法施行前ヨリ繋屬スル證書訴訟及爲替訴訟ハ仍舊法ニ依リ之
ヲ完結ス但シ訴訟カ新法施行ノ際第一審ニ繫屬スルトキハ新法施行ノ日
ヨリ通常ノ手續ニ於テ繫屬スルモノト看做ス
第十七條故障ヲ許ササル闕席判決ニ對シテハ仍舊法ニ依リ上訴ヲ爲スコ
トヲ得
第十八條新法施行前請求ノ抛棄又ハ認諾ニ基キ判決ヲ求ムル申立アリタ
ルトキハ仍舊法ニ依リ裁判ス新法施行前關席判決ノ申立アリタルトキ亦
同シ
第十九條新法施行前言渡シタル判決ニシテ舊法第四百二十二條ニ揭クル
モノニ對シ控訴ノ提起アリタル場合ニ於テハ仍同條ノ規定ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=4
-
005・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 唯今、議題トナリマシタル民事訴訟法中改正法律案
外一件ニ關シマシテ御說明ヲ申上ゲマス、現行民事訴訟法ハ明治二十三年ノ
制定ニ係リマシテ、其翌二十四年ニ實施イタサレタモノデゴザリマス、爾來
三十有餘年ヲ經過イタシマシテ、其間ニ一二、改正セラレタ所ガ無イデハア
リマセヌケレドモ、殆ド大體ニ於キマシテ當初制定ノ儘デゴザイマシテ、不
備ノ點モ甚ダ少ナクナイノデゴザリマス、本法ノ改正ニ付キマシテハ、旣ニ明
治二十八年ニ其必要ヲ認メラレ、司法省內ニ委員會ヲ設ケ、之ガ調査ニ著手
イタシタノデゴザリマスルガ、明治三十二年ニ其事業ハ法典調査會ニ引繼ガ
レマシテ、法典調査會ハ明治三十六年ニ民事訴訟法ノ改正法草案ヲ脫稿イタ
シマシテ、之ヲ世間ニ公ケニ致シタノデゴザリマス、其後、明治四十四年ニ至
リマシテ、法律取調委員會ニ於キマシテ、本法ノ改正ニ更ニ著手イタシマシ
テ、前ニ公表イタサレマシタル所ノ法典調査會ノ成案ヲ基礎ト致シマシテ、
其上ニ裁判所、辯護士會、商業會議所等ノ意見ヲ徵シマシテ、審議ヲ進メタ
ノデゴザリマス、其中途ニ致シマシテ、大正八年ニ法律取調委員會ハ廢止イ
タサレ、是ト同時ニ司法省ニ民事訴訟法改正調査委員會ナルモノヲ設ケマシ
テ、其委員ハ大體、前法典調査會及法律取調委員會ノ委員タリシ人〓ニ委囑
イタシマシテ此事業ヲ繼續イタシ、斯樣ニ致シマシテ、漸ク稿ヲ脫シマシテ、
玆ニ提案ヲ致ス順序トナッタノデゴザリマス、卽チ本案ハ學者、老練ナル裁判
官、辯護士等、特別ノ學識經驗アル委員ヲ以テ組織イタサレタル所ノ委員會
ニ於テ、多年ノ間、各方面ノ意見ヲ徵シ、參酌シ、愼重審議ヲ重ネテ、起草
立案ヲ致シタモノデゴザリマス、而シテ本案ハ現行法ノ第一編乃至第五編ノ
改正ヲ目的ト致スモノデゴザリマシテ、第六編以下ノ規定ニ付キマシテハ
其改正ヲ他日ニ讓ルコトト致シマシテ、唯、五編マデノ改正ヲ致シマシタル結
果當然改ムルノ必要アル部分ダケニ付キマシテ、整理的意味ニ於テ若干ノ
改正ヲ加ヘルニ止メタノデゴザリマス、本案ノ內容ハ、現行法ノ第一編乃至
第五編ニ亙ル殆ド全部ノ改正ヲ企テタモノデゴザリマシテ、要スルニ改正案
ノ目的ト致シマスル所ハ、多年ノ經驗ニ鑑ミマシテ、現行法ノ弊ト致ス所ヲ改
メ、畢竟訴訟ノ延滯ヲ防ギ、其圓滑ナル進捗ヲ圖リ、且ツ訴訟ノ準備ヲ周到ニ
シテ、以テ審理ノ適正ヲ期セムトスルモノデゴザリマス、將又、民事訴訟法
中改正法律施行法案ハ、民事訴訟法改正ノ結果、改正法施行ノ際ニ於ケル新舊
二法ノ經過ヲ圓滑ナラシメル爲ニ、相當ノ規定ヲ設ケタモノデゴザリマス、
諸君ハ愼重審議以テ御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ切望イタス次第デゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=5
-
006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通告ニ依リマシテ富谷君ニ質疑ノ發言ヲ許シマス
〔富谷姓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=6
-
007・富谷しょう太郎
○富谷鉎太郞君 本員ハ唯今司法大臣ノ御說明ニナリマシタル法律案ニ付
テ、主務大臣カラ伺ヒタイコトガ二三點ゴザリマスル、極メテ簡單デゴザリ
マスルガ、暫時ノ間ドウゾ御〓聽ヲ煩ハシタイノデアリマス、其第一點ハ、
本改正案ノ施行ノ時ハイツニナルノデアルカト云フコト、案其モノハマダ
閱覽ヲ致ス時モ無イノデゴザリマスルガ、確カ勅令ヲ以テ施行ノ時ヲ御定メ
ニナルト云フコトニ書イテアルト心得マシテゴザリマス、多分サウデゴザリ
マセウ、デ其施行ノ時期ガイツ頃ニナル御見込デアルカト云フコトヲ、若シ
御定メニナッテ居リマスルナラバ、伺ヒタイノデゴザリマスル、デ此事ヲ伺ヒ
マスル理由ハ深ク私ガ此處デ述ベル迄モゴザリマセヌガ、御承知ノ如ク、民
事訴訟法ノ如キ最モ社會ノ實生活ニ深イ關係ヲ有ッテ居リマスル法律デゴザ
リマスルノデ、其法律ノ實行ガドウアルカ、卽チ法律ガ能ク圓滑ニ、立法者
ノ希望シタ如キ趣意ニ於テ行ハルルヤ否ヤト云フコトハ、最モ大切ノコトデ
ゴザリマスルカラ、此法律ノ施行ニ直接ニ關係ノアル人達ノ〓究時期モ······
〓究ノ時モ必要デゴザリマセウシ、又其用意ヲシナケリヤナラヌト云フコト
モアルノデアリマス、勿論、現在ノ法律ニ於テ、實務ニ從事シテ居ル人ノ知
識經驗、其常識ニ依リマシテ此法律ヲ實行スルコトハ、ソレ程ノ困難ナコト
デハナイト思ヒマスルケレドモ、此法律ハ······卽チ此法律ト申シマスルノハ、
私ハ新シイ法律ヲ申シマスノデ、此法律ハ、舊······ト云フノハ現在ノデス、
現行民事訴訟法トハ、大分相違ノ點ガアルヤウニ思フノデゴザリマスル從來
ノ訴訟法ニ於テハ缺陷ガアル、不足ナル······足ラナイ所ガアル、或ハ不十分
ナル點ガアルト云フヤウナ所カラシテ、改正セラレタ御趣意ハ誠ニ結構デア
リマシテ、我〓モ其事ハ豫テ心得テ居ッタノデアリマス、其點ガ今囘提出セラ
レタ法案ノ中ニハ、極メテ明瞭ニ分ルヤウニ、又行ヒ易イヤウニ出來テ居ル
モノトハ存ジテ居リマスガ、マダ之ヲ見ル暇モナイノデゴザリマスルガ、要
スルニ此法律ハ舊法ニ比スレバ、極メテ良イ法律ニナルノデアラウト思ヒマ
スル、併シ皆樣御承知ノ如ク、此法律取調會ノ仕事ハ、經過ト致シマシテハ
隨分長イコトデアリマスルケレドモ、其間ニ於テ取調ノ結果ハドンナデアラ
ウカト云フコトヲ、世ノ中ノ人ガ知ルコトハ出來ナカッタノデアル、卽チ法典
調査會ニ於テ成案トナリマシタ民事訴訟法案ノ世ニ公布セラレタ以外ノコト
ハ能ク分ラナイノデアリマスルカラ、或ハ此法律ニ付テハ多少ノ意見ヲ有ツ
テ居ル者モアルノデアリマセウガ、併シソレハ別ト致シマシテ、何レト致シ
マシテモ、此法律ノ施行ニハ多少ノ時間ヲ要スルコトト思フノデアリマス、
卽チ其時期ハイツノ時デアルカト云フコトハ實際ニ於テハ少カラザル、利
害ノ關係ト申シマセウカ、種々ノ點ニ於テ影響ノアルモノト思ヒマスルノ
デ、此法律施行ノ時間ガイツ頃ニナルコトデアルカト云フノヲ伺フ譯デアリ
W.V.ソレカラ第二ニハ、是モ極メテ簡單デゴザリマスルガ、民事訴訟法ノ
施行以來、數年間〓究ヲセラレタ實際ノ方面カラ見マシテ、此法律ニ缺陷ノ
アルコトハ殆ド疑ノ無イコトデアリマス、併ナガラ舊民事訴訟モ、マダ十分
ニ施行セラレテ居ラナカッタト云フコトハ、我〓モ如何ニモ遺憾ニ思フ、隨分
裁判官ナリ或ハ此訴訟ニ關與スル人ガ取扱方······事件ノ取扱方、訴訟法ノ解
釋ノ仕方ニ依ッテハ、改正セヌデモ宜カッタラウト思ハレル點モ無イデハナイ
デアリマセウ、サウ云フコトモ亦實際家カラモ承ッテ居リマスガ、何レニ致シ
マシテモ、此法律ガ社會ノ實情ニ適ヲテ、能ク唯〓司法大臣ガ御述ベニナリマ
シタ如キ結果ヲ得ルニ至ルヤ否ヤト云フコトハ、之ヲ取扱フ人ニ存スルノデ
アル、法ハ死物デアッテ、如何ナル良法ト雖モ、之ヲ取扱フ人ノ如何ニ依ッテ
ハ其法ノ精神ハ勿論、法ノ期待シタ所ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイノデ
アリマス、此法律ヲ取扱フ人、其人ノ知識經驗、殊ニ其人ノ人格ノ優良ナル
ヤ否ヤト云フ點ニ於テモ、非常ナル影響ノアルモノト考ヘルノデアリマス、
我ガ司法部ノ事務ニ從事シテ居ラレル、一般ニ申シマスルト司法官、又之ニ
重要ナル補助ヲシテ居リマスル屬官、庶務ニ從事シテ居ル書記ト云フヤウナ
人ノ取扱······、之ニ對スル待遇ト云ヒマスカ、取扱ハドウモ一般ノ行政官ト
少シ違ッテ居ル、言葉ヲ一言ニ申シマスルト、一般行政官ノ待遇ヨリモ幾ラカ
下サレテ居ル、惡クハ申シマセヌ、優遇ドコロヂャナイ劣遇サレテ居ルト云
フコトハ、是迄アッタノデアリマスガ、當局者ノ段々ノ御骨折デ、近年ハ
近頃ニ至リマシテ殊ニ此點ニハ改良セラレタヤウデアリマスルカラ、追〓良
クナルノデゴザイマセウガ、併シ唯今ニ於テモ未ダ、司法官ノ待週ハ他ノ一
般行政官ニ比シテ、頗ルトハ申シマセヌ、餘程多ク劣ッテ居ルヤウニ考ヘラレ
ルノデアリマス、同ジク公務ニ從事スル役人デアッテ、サウシテ其人ノ取扱ガ
異ナルト云フコトハ、種々ノ方面カラ來ッテ、沿革的ノコトモゴザイマセウ
ガ、主トシテハ財政ノ御都合デアラウト思フノデアリマス、併シ此人ノ待遇、
卽チ物質的待遇ト申シマスルカ、其方面ニ於テハ司法省······司法部ニ人ヲ得
ルコトノ出來ル······相當ナ人ト云ヒマセウカ、人ヲ得ルコトハ何時デモ出來
ル······先程申シマシタ如ク、學識經驗ヲ有シ、又人モ確カデアルト云フヤウ
ナ人ヲ澤山入レルト云フコトハ、多少ノ妨ゲニナルノデハナカラウカト思フ
ノデアリマス、司法官ノ其人ヲ多ク得ル方法······其人ト申シマスルノハ、適
當ナル人ヲ十分ニ入レルト云フコトニ付テハ矢張リ此物質的優遇ノ方法ヲ
モ御計リニナラナケレバナラヌノデアリマス、ト思フノデゴザリマス、ナゼ
私ガ此コトヲ申スカト申シマスルト、先ニ述ベマシタル如ク、法律ハ如何ニ
改正ヲシテモ、如何ニ改正サレテモ、之ヲ扱フ人ガ十分ノ技倆ガ無イ以上ハ、
詰リ、其死物ハ死ンダ儘デ居ルト云フヤウナ形ニナルノデアリマス、此人ヲ
シテ十分法律ノ希望目的ヲ達スルヤウニシヤウト云フノニハ其人ヲ得ナケ
レバナラヌ、其人ヲ得ルノニハ所謂此物質的ノ取扱モ、其方面ノ待遇方モ
良クシナケレバナラヌト云フコトハ確カナル一點デアラウト思フノデアリ
R×、又他ノ一方カラ見マシテ、此司法官ノ取扱ニ付テハ、物質的ノ待遇ヲ
一般行政官ト同等ニスルト云フコトノ外ニ、其任務ヲ扱ハシムル上ニ於テ、
多少名譽ノ地位ヲ與ヘルト云フコトモ、是モ必要ナル點デハナカラウカト思
フノデアリマス、御承知ノ如ク、官制上ニ於テハ、或ル一定ノ地位ニハソ
レダケニ限ラレタル待遇シカシテナイ、是ハ已ムヲ得ヌノデアリマスガ、併
シ重要ナル地位ニ居ッテ、サウシテ重要ナル地位ト云フノハ、地位ノ高イ低イ
ヲ云フノデハアリマセヌ、仕事ノ方面カラ見テ極メテ大切ナルコト、最モ人
民ニ接近、所謂民衆ニ接近イタス地位ニ居ル、區裁判所ノ判事ノ取扱ノ如キ
ハ唯今ノ所デハ先ヅ重要視セラレテ居ルヤ否ヤト云フコトニ付テ、私ハ疑
ヲ懷カナケレバナラヌ點ガアルノデゴザリマス、東京地方裁判所ノ管內デ申
シマスルト、其區裁判所ノ監督判事、上席判事ノ如キハ、極メテ忙シイ、大
切ナ仕事ヲシテ居ルノデアリマスルケレドモ、其取扱、待遇ノ方面カラ見マス
ルト、決シテ私ハ其地位ニ在ル人ヲ滿足セシムルコトノ出來ルモノデナイト
思フノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスルト、區裁判所ノ監督判事ノ如キ、
繁劇ナル地位ニ居ル人ヲ扱フ、待遇スル上ニ於テ、頗ル遺憾ニ感ズル點ガア
ルノデアリマス、是ハ代々ノ司法大臣ガ、此點ニ付テハ定メテ御留意ニナッテ
居リ、且其事ハ出來得ルダケ十分ナル扱ヒヲシヤウト云フ御考ハアルモノト
ハ存ジマスルガ、併シ實現サレタコトハ無イノデアリマス、他ノ國ノ例ナド
ニ於キマシテハ、此區裁判所ノ長ト云フヤウナ者ハ、他ノ地方裁判所ノ所長
トモ同ジヤウナ待遇ヲシテ居ル、サウシテ其地位ニ安ンゼシメテ、其名譽心
ヲモ十分ニ滿足セシムルト云フヤウナル取扱方ニナッテ居ルヤウニ承知イタ
シテ居リマス、唯今デモ其通リデアリマセウ、私ガ昔、留學イタシタ時分ニ
モソンナ考ヲ持ッタコトガアッタノデアリマス、此點ハ實際ノ事ニ御關係ニ
御ナリニナリマシタ方ハ、定メテ御承知デゴザイマセウガ、區裁判所ノ監督
判事トカ云フヤウナ人ノ地位ハ、此階級ノ上カラ申シマスルト、ズット下ノ方
ニ居ル、地方裁判所ノ所長ヨリモ、或ハ控訴院ノ部長ナドヨリモ、又大審院
ノ陪席判事ノ地位ヨリモ、ズット下ニ置イテアルノデアリマスケレドモ、仕事
ノ上カラ見ルト、是等ノ人ヨリモ忙シイ、ムツカシイ、サウシテ十分ノ知識
經驗ガナケレバナラナイ仕事ヲシテ居ルノデゴザイマス、是等ノ人ニ對シテ
特別ノ、滿足ナルト申シマスカ、滿足ナラシムルニ足ルヤウナル御扱ヒガ出
來ルヤウニ思フノデアリマスガ、サウ云フ御考ハ有ルノデアリマセウカ、無
イカト云フコトヲ伺ヒタイ、又モウ一ツニハ、殊ニ此際ニハ、御盡力下サレ
タト云フコトガ新聞ニハ書イテアリマスガ、司法官ニ一般文官ト同樣ナル俸
給ヲ御與ヘニナルト云フコトヲ、御實行ニナル御考ヲ遂行セラレルノデアル
カ、ト云フコトヲ伺ヒタイノデゴザイマス、是ガ第二、第三ハ第一ト關聯シ
テ居ルモノデゴザイマス、卽チ施行ニ關シテ伺ヒタイノデゴザイマス、民事
訴訟法ノ改正案トシテ、御提出ニナリマシタモノハ民事訴訟法ノ一部デア
リマス、大部分デハゴザイマスルガ、一部デアリマス、殘フテ居ルモノガ大分
アルヤウニ思ヒマス、其中ニ最モ重要ナル關係ノアルモノハ、强制執行デゴ
ザイマス、此强制執行ト云フモノハ、申ス迄モナク裁判所デ取扱ッタ事件ノ結
末ヲ付ケル、其判決通リニ思フヤウニイカヌト云フ時ニ、强制的ニ此判決ニ
依ッテ利害ノ關係アル者ガ滿足ヲ得ルモノハ、卽チ此規定デアリマス、卽チ此
强制執行ノ規定ハ、今度ハ引離サレテ別ノ法律トナッテ出ルヤウデゴザイマ
スト思ヒマスガ、此法律ハ單獨ノ法律トナッテ出ルノデアルカ、或ハドウ云フ
モノニナルノデアルカト云フコトモ、一應伺ヒタウゴザイマスルシ、又更ニ
我ガ民事訴訟法ノ中ニ、人事訴訟法ト云フ法律ガ一ツゴザイマスルガ、此人
事訴訟法ト云フノハ、唯今法制審議會ニ繫屬シテ居ル民法ノ改正委員······改
正ニ大ナル關係ノアルモノデゴザイマセウガ、此人事訴訟法ハドウ云フ御扱
ヒニナルノデゴザイマセウカ、是モ亦唯今ノ民事訴訟法改正委員ノ手ニ御付
託ニナッテ、サウシテ結局、成案ヲ得タ上ニ御改メニナリ、御施行ニナルノデ
アリマセウカ、或ハ現在ノ儘御扱ヒ置カレニナッテ居ッテ、何等カノ方法ヲ以
テ、不都合ノナイヤウニ御施行ニナルノデアリマセウカ、ココイラノ點モ一
ツ伺ヒタイノデアリマス、次ニ同ジ施行ニ屬スルノデアリマスガ、民事訴訟
法ノ施行ガ圓滿ニ行ハルルト云フコトハ、此訴訟取扱ニ、卽チ訴訟公務ニ從
事セラレル辯護士諸君ノ參與、協力ト云フモノガ極メテ必要デアルコトハ申
ス迄モアリマセヌ、此辯護士法ト云フモノハ丁度、或ハ間違ッテ居ルカモ知レ
マセヌガ、售民事訴訟法······現行民事訴訟法ガ施行ノ際カラシテ存シテ居ル
モノデアリマシテ、ソレ以來ニハ少シモ改正ガ無イノデアリマス、而シテ此
民事訴訟法ノ改正ト同時ニ、辯護士法ヲ改正ニナリマスコトハ、私ハ極メテ
大切ナルコトデナカラウカト思フノデアリマス、現行辯護士法ハ隨分缺陷ノ
多イ法律ナリトシテ、世人モ其通リニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、又現ニ辯
護士法改正委員モ、法制審議會ノ中ニデアリマスルカ、或ハ司法省內ニカ、
何レニカ御設ケニナッテ居ルコトヲ承ッテ居リマス、此民事訴訟法ノ施行ニ、
非常ノ······ト申シマスカ、重大ナル關係ノアル、辯護士諸君ニ必要ナル法律、
辯護士諸君ノ其人ヲ得ル、例ヘバ辯護士ノ養成、其他ニ於テ必要ナルコトヲ
規定スルコトノ出來ヤウト思フ辯護士法ハ、イツ頃出來上ルノデアリマス
カ、是モ一ツ伺フト同時ニ、辯護士法·······民事訴訟法ハ辯護士法ノ改正ヲ俟ツ
テ後ニ施行セラルルノデアルカ、辯護士法ノ改正ノ前タルト否トヲ問ハズ、
其法律ニハ不完全ナル所ガアルト否トヲ問ハズ、免ニ角現行ノ儘ニ······辯護
士法ハ現時ノ儘ニ、其儘ニシテ置イテ、サウシテ訴訟法ノミヲ實行セラルル
ト云フ御考デアリマスルカ、此ノ點モ一ツ伺ヒタイノデアリマス、是ハ訴訟
ノ新法律ガ其效力ヲ十分ニ擧ゲルト否トノ分レ目トモナルモノト、私ハ考ヘ
ルノデゴザイマスルカラ、此點ニ付テモ伺ヒタイノデアリマス、之ヲ要スル
ニ民事訴訟法新法ノ施行ノ時、施行ニ關シテ少カラザル關係ノアル他ノ法案
等ハ如何ニナサルノデアルカ、又此新法ヲ實行スルニ付テハ、勿論經驗ニ
富ンダル優良ナル司法官ヲ要スルト同時ニ、之ニ參與シテ司法ノ事務ノ進捗
ニ重大ナル關係ノアル、辯護士ノ職務ニ關スル法律ノ改正ヲ如何ニセラレル
カト云フコト、竝ニ裁判官ノ···ト云ヒマスカ、司法官一般ニ、司法官ノ優
遇法ハ如何ニナサルノデアルカト云フ、此三點ヲ伺フ次第デアリマス、唯、是
ダケデアリマス、述ベタイコトハ幾ラモアリマスガ、尙ホ法案ニ付テハ適當
ノ時機ニ伺ヒタイコトモゴザイマスルガ、是ハ除ケマシテ、此法案ニ直接ニ
關係ノアルコトダケヲ玆ニ申上ゲテ置キマス、之ヲ以テ質問ヲ終リマス
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=7
-
008・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 唯今富谷博士ヨリ御質疑ニナリマシタル三點ニ對シ
マシテ御答ヲ申上ゲマス、第一點ハ本改正案ノ施行時期如何、是ハ法律案ノ文
面ノ上ニ於キマシテ、御推察ノ如ク勅令ヲ以テ施行ノ時期ヲ定ムルコトニナッ
テ居ルノデゴザリマス、併ナガラ富谷博士モ縷々御述ベニナリマシタル如
ク本改止ハ民事訴訟法ノ中ノ最モ重要ナル部分ニ對シマシテ、頗ル重大ナ
ル改正ヲ施サムトスルモノデゴザリマスルカラ、裁判所、辯護士、卽チ司法
部ヲ組織イタシマスル所ノ各機能ニ於キマシテハ、卽チ實行ノ衝ニ當ツマス
ル各機關ニ於キマシテハ、十分ニ······此改正法案ノ意義精神ヲ十分ニ理解徹
底スル必要ガアルト認ムルノデアリマス、從ヒマシテ改正案ガ議會ヲ通過イ
タシマシテ、愈〓實行ニ入リマスル迄ハ、準備ノ時期ト致シマシテ、裁判所方
面ニ對シテ、司法行政部ガ之ガ徹底ニ努メマスルコトハ固ヨリデゴザリマ
スルシ、又裁判所ノ······司法部ノ一組織ヲ成シテ居リマスル辯護士方面ニ對
シマシテモ、之ガ普及徹底ヲ圖リマスルコトハ、最モ必要ナコトデアルト思
ヒマスル、故ニ目下ノ所ニ於キマシテハ、大正十七年中ニ施行ノ時期ヲ決メ
タイト思ッテ居ルノデアリマス、今期議會ニ通過イタシマシタ場合ニ於キマシ
テ、凡ソ一年半カ若クハ二年位ノ期間ヲ置キマシテ、十分ナル準備ヲ致シタ
イト、斯ウ云フ希望ヲ有ッテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ第二ニ、之ヲ施行
スル人ニ對スルノ待遇如何ト云フ點デゴザリマス、申上ゲマスル迄モナク、
今日裁判官全體ノ、所謂公正ヲ得テ居リマスルト云フ點ニ於キマシテハ殆
ド國民一般ニ絕對ノ信用ヲ持ッテ居ルト申シテ宜イカト思フノデアリマス、裁
判所ノ公正ヲ疑フト云フガ如キ點ハ殆ド無キヤニ信ズルノデアリマス、此
裁判所ノ公正ヲ確保スルト云フコトハ、一面ニ於キマシテハ、物質的、竝
ニ精神的ノ待遇ヲ充實ヲスルト云フコトハ最モ必要ナコトデアラウト思フ
ノデアリマス、資質ヲ改善スルノ必要ガアリマスルト同時ニ、又待遇ノ方ニ
於キマシテモ、是ハ改善ヲスルノ必要ガアラウト認ムルノデアリマス、行政
官ニ對シマシテ、待遇ノ厚薄ヲ論ジマスルコトハ、暫ク差控ヘテ置キマシテ、
今年度ノ豫算案ニ於キマシテハ、極メテ菲薄デハゴザリマスルガ、判事、檢
事ニ對シテハ少シバカリ待遇ノ改善ヲ爲スト云フ案ガ成立イタシテ、既ニ
提案ニナッテ居ルノデゴザイマス、司法部限リニ於キマシテハ、此待遇ノ改善
ヲ以テ必シモ足レリトスル譯デハナイノデゴザリマス、出來得ベクンバ、明
年度モ明後年度モ、要求ヲ致シタイト思ッテ居リマスルケレドモ、自カラ財政
ノ都合等モアリマスルカラ、左樣ナ事モ時ヲ見計ラフ外ナイト思フノデアリ
マスルガ、免ニ角待遇ノ改善ヲ爲シマスル必要ノアルト云フコトハ、司法當
局ニ於キマシテハ認メマシテ、既ニ其實行ニ著手ヲシ、案ノ提出ヲ致シテ居
ルト云フコトヲ、御了知ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、其待遇ノコトニ付
キマシテ、東京區裁判所ノ如キ、例ヘバ監督判事ノ地位ノ如キハ、モウ少シ
改善シタラ宜クハナイカト云フ御意見ノ如キハ、誠ニ御尤モニ思フノデアリ
マス、私ハ之ヲ視察イタシマシタ度ニ、實ニ驚イタノデアリマス、非常ナ繁
劇非常ナ混雜、寧ロ混雜ト申シテ宜シイ事務ヲ執ッテ居リマスル、其監督ノ
位置ニ立チマス者ノ待遇ハ、其職務ニ對シマシテ、何ダカ均衡ヲ得ナイ點ガ
アルガ如キ感ジヲ持ツノデアリマス、是等ノ點ニ對シマシテハ、此待遇改善
ニ關シマスル豫算ノ通過ト共ニ、相當考慮ヲ拂ッテ見タイト思ッテ居ル次第デ
アリマス、ソレカラ待遇改善ト云フコトヲ致シマスルト同時ニ、民事訴訟法、
或ハ陪審法、或ハ其ノ他ノ重要ナル改正法律ガ施行セラレ、若クハ施行セラ
レムトスルニ際シマシテハ裁判官全體ノ資質ヲ向上セシムル必要アルコト
ハ司法部ニ於テモ夙ニ認メテ居ル點デゴザイマシテ、是ハ御質問デハゴザ
イマセヌデシタガ、一面待遇ヲ優ニ致シマスト共ニ、又司法官ノ資質ヲ良ク
スルト云フ目的ヲ以チマシテ、〓究ニ關スル經費ナルモノヲ、司法省竝ニ裁
判所ノ經費ノ中ニ要求イタシタノデゴザイマス、年々數十人ノ人ヲシテ··
裁判官ヲ致シマシテ、東京等ニ見學ノタメ上京イタサセマシテ、恰モ實務及
ビ學理ニ付テ、相當期間ノ間、學校ニアリマスルガ如キ狀態ニ於テ、講究ヲ
繼續セシムル、以テ一般ノ裨益トナシ、一般ノ裁判官ノ資質ヲ向上セシムル
ノ資ニ致シタイ、此點ヲ豫算案ノ中ニ含マシテ居ル次第デアリマス、第三ニ、
此他ノ法律ノ部分トノ關係如何、例ヘバ强制執行ノ如キ、或ハ人事訴訟手續
ノ如キ、或ハ辯護士法改正ノ如キト、如何ナル關係ガアル、御承知ノ如ク、
第一編乃至第五編ノ改正ヲ出シマシテ、第六編乃至第八編ハ之ヲ他日ニ期シ
テ居ル次第デゴザイマスガ、其ノ中デ最モ重要デアリマス所ノ、强制執行ノ
部分ニ付キマシテハ、是ハ別個ノ特別法ト致シマシテ、競賣法ナドトノ關聯
モゴザイマスデ、委員ニ付託ヲ致シマシテ、速ニ之ガ改正ノ完成ヲ致シタイ
ト云フ積リヲ持ッテ居ルノデアリマス、申ス迄モナク裁判ノ手續ト執行ノ手續
ト云フモノハ當然、必然ノ因果關係ガアルモノデゴザイマセヌデ、必シモ同
時デナクテ宜カラウト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレカラ第二ニ此人事訴
訟手續法ハ、是ハ富谷博士モ御承知ノ如ク、法制審議會ノ方ニ於キマシテ家
事審判ニ關スル法律ノ綱領ヲ既ニ御決議ニナリ、之ト相伴ヒマシテ人事訴訟
手續法ヲ改正スベク、目下既ニ著手ニナッテ居ル次第デゴザイマス、是亦必シ
モ民事訴訟法ノ今囘ノ改正案ト同時ニ施行ヲ要スルモノデモナカラウカト考
ヘテ居ル次第デゴザイマス、最後ニ此辯護士法ノ改正ハ、固ヨリ餘程必要ナ
ルコトデアルト認メマシテ、旣ニ辯護士竝ニ判事檢事等ヨリ成立シテ居リマ
スル所ノ委員會ニ於キマシテ、日下審議ヲ急イデ居ル所ナンデアリマス、未
ダ成案ヲ得ルニ至リマセヌデ、今期議會ニ之ヲ提出スルノ運ビニハナラヌカ
ト思ッテ居リマス、實ハ成ルベク急ギマシテ、早ク致シタイト思ヒマスル事由
モ他ニアリマシテ、餘程急ギマシタノデアリマスルガ、ドウモ左程ニ參ラヌ
ノデアリマス、固ヨリ民事訴訟法ノ改正案ノ施行ニ付キマシテハ辯護士ノ
協力ヲ受クルノ必要ガアルドコロデハアリマセヌ、辯護士其者ガ司法部ヲ組
織スル裁判所構成法ノ中ノ一主要ナル機關ナンデアリマスルデ、民事訴訟ノ
手續ヲ進行スル上ニ於キマシテ、當然辯護士ノ關與ガアリ、從テ辯護士ノ狀
態ノ改善ニ向ヒマスルト云フコトハ必要デアリマスルコトハ、固ヨリ申ス迄
モナイコトデアルト思フノデアリマス、併ナガラ改正案ト辯護士法ノ改正ト
ガ、必シモ必然ノ因果ノ關係ガアルモノデハナカラウカニ思フノデアリマ
ス併ナガラ其關係ハ別ト致シマシテ、成ルベク急ギマシテ、實ハ次ノ議會
マデニハ是非成案ヲ得テ提出ヲ致シタイト云フ心組ヲ持ッテ居ル次第デゴザ
イマス、ドウカ左樣ニ御承知ヲ願ヒタイ、是ダケヲ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=8
-
009・富谷しょう太郎
○富谷鉎太郞君 モウ是ダケデ、アトハ議論ニナルコトデゴザイマスカラ、
質問ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=9
-
010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際諸君ニ御諮リ致シタイコトガゴザイマス、寺
島資格審査委員長ヨリ、本會議中、資格審査委員會ヘ退席シタイト云フ要求
ガ議長ノ手許マデ申出ガゴザイマシタ、之ヲ許可スルコトニ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=10
-
011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、且ツ今後、議事ガ追〓繁忙
ニ相成ルト考ヘマスカラ、本會期中ヲ通ジマシテ、本會議ノ開會中ト雖モ、
常任委員會及特別委員會開會ノタメ退席ノ要求ガゴザイマシタ場合ニ、議長
ニ於テ差支ナイト認メマシタ時ニハ、一々本議場へ御諮リヲ致サズニ許可ヲ
致シタイト考ヘマスガ、ソレデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=11
-
012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是ヨリ土方君ニ發言ヲ許
シマス
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=12
-
013・土方寧
○土方寧君 此民事訴訟法中改正法律案デアリマス、之ヲ今日、政府ガ提出
ニナリマシタルニ付テ、司法大臣カラ提案ノ御趣意ガ說明ニナッタヤウデア
リマス、私ハ少シ遲刻イタシマシテ、初ノ部分ガ伺ヘマセナカッタケレドモ
御說明ヲ聽クマデモナク、此仕舞ニ、簡單デアリマスケレドモ、提出理由ガ
記シテアリマス、是デ盡キテ居ルト思ヒマス、此民事訴訟法ノ改正案ハ先
刻富谷君モ言ハレマス通リ、頗ル重要ナル法案デアルト考ヘマス、如何ニ民
法商法其他ノ特別法ニ於テ、國民ノ權利ガ確保シテアリマシテモ、手續法ニ
不備缺點ガアリマシタナラバ、是ガ十分保護セラレナイト云フコトニナリマ
スカラ、實體法ト輕重ナイ、頗ル重要ナル法案デアルト考ヘマス、サウシテ
此法案ハ現行民事訴訟法ノ一編乃至五編······六編執行以下ハ別ニスルト云フ
コトデアリマス、一編乃至五編ノ大部分ノ改正ハ殆ド改正ト云フヨリハ改
造デアルト云フテ宜シカラウト思ヒマス、此法案ヲ愼重ニ審議スルト云フコト
ハ容易ナコトデアリマセヌ、成ラウコトナラ斯ウ云フ法案ハ、議會ノ開會
ノ初ニ御提出ニナリマシタナラバ、假令十二月ノ末カラ一月ノ末マデハ、休
會デアリマシテモ、委員ノ手ニ配付ニナッテ居レバ、ソレヲ見ル時モアリマス
ガ、餘ス所僅ニ三十日餘リノ時期ニ於テ、斯ウ云フ重大ナ條文ノ多イ法案ヲ御
提出ニナッテ、而モ司法大臣ハ愼重審議シテ協賛ヲ與ヘテ貰ヒタイト云フ希望
ヲ述ベラレタ、定文句デアリマス、是ハ開院式ノ時ニ勅語ニ對シテモ、愼重
審議スルト奉答シテアリマスカラ、是ハ我〓議員ノ職責デアリマスガ、之ヲ短
時日ノ間ニセヨト云フコトハ不能デアリマス、玆デ此儘ナリ或ハ多少ノ修正
ガアッテ、衆議院ヘ參リマス時ニハ、モウ既ニ衆議院ノ方デモ尙更時間ガ無ク
ナルト思ヒマス、政府ハ果シテ斯ウ云フ時期ニ斯ウ云フ重大ナ、條文ノ多イ
法律ヲ御提出ニナッテ、貴衆兩院トモ御通過ヲ圖ラレル御積リデアルカ、少シ
無理ナ注文デアルト思ヒマスガ、ソレヲ御尋ネシタイ、提出ノ遲延シタト云
フコトニ付テ、政府ノ怠慢ヲ別ニ非難スルト云フ程ノ意味ヂャアリマセヌガ、
私ハモット早ク出スベキモノデアッタラウト思フ、ケレドモ此事ハ餘リ深ク言
ヒマセヌ、ナゼナレバ開會ノ初メニ御提出ニナッテ、我〓ニ配付ニナッテ、十
二月ノ二十日頃ニナッテ居リマシテモ、實ハ私ナゾハ讀ンデ見マセウト思ヒマ
スケレドモ、讀ンデモ能ク分ラナイト思ヒマス、法律ヲ專修シタ者デナケレ
バ······ナカ〓〓判事辯護士等ノ訴訟ノ實際ニ從事シテ居ル者デナケレバ、利
害得失便否等モ能ク分ラヌダラウト思ヒマス、法律ヲ專修ナサラヌ方ハ尙更
ダラウト思ヒマス、假令早ク出シタカラト云ッテ、實ハ字義通リ愼重審議シテ
是非ヲ批判スルト云フコトハ、實ニ困難ノ事ダラウト思フ、ソンナラ盲判ヲ
捺スカト云フト、ソレデハ議員ノ責任ガ付カナイ、ソコデ私ノ政府ノ所見ヲ
伺ヒタイノハ、是ハ是デ原案ノ儘若クハ多少ノ修正ガアリマシテモ、貴衆兩
院ヲ通過シタト見ル、實施期ハ勅令ニナッテ居リマスガ、富谷君ノ話デハマ
ア大分大キナ改正デアルカラ、實務ニ從事シテ居ル人ニ〓究ノ時ヲ與ヘル爲
ニ、實施期ハ延バシタガ宜イト云フヤウナ、御趣意ノヤウニ聽キマシタガ、
其時期ハ一體イツデアルカ分リマセヌガ、免ニ角早晩、通過シタル以上ハ、サ
ウシタナラバ從來、明治二十三年以來行ハレテ居リマス訴訟法ニ比シテ非常
ナ改善デアル、今後ハ此訴訟法ニ依フテ今マデ見タ所ノ色〓ナ不平トカ訴訟
ノ延滯等ハ無クナルカ、實行シタ上デ不備缺點ハ決シテ發見シナイト云フコ
トハ、私ハソレハ保證出來ヌト思フ、此起案者ハ二十年程前カラシテ委員ノ
顏觸レハ大變ニ變ハッテ居ルヤウデアリマスガ、練リニ練ッタ案デアリマスカ
ラ、嘸立派ニ出來テ居ルト思ヒマス、ケレドモ人智ニハ限リガアル、將來ノ
人智ヲ豫測スルコトハ殆ド出來ヌカラ、サウシテ訴訟ト云フモノハ是ハ變態
ナモノデアリマスカラ、人間ノ頭デハ常態ノ事ハ想像シ得ルガ、變態ノ事ハ
ムヅカシイデスカラ、意外ナ故障ガ起ッテ來ルト、其場合ニハ此規則ヂヤ困
ル、斯ウ云フコトデハ其點ガ不明ニナル、不備デアルト云フコトヲ必ズ發見
スルデアラウト思フノデアリマス、サウ云フヤウナ事ガ起ッタ場合ニ此改正案
ヲ今度出サレルト同ジ樣ニ民事訴訟法ト云フモノヲ二十三年ニ拵ヘテ、數十
年ノ間ノ實驗上、色〓ナ不備缺點ヲ發見シタケレドモ、、ソレヲ改正スルト云ッ
テ、二十年來委員ガ代リ代ッテ審議シテ、ヤット出來上ッタノデアリマス、サウ云
フ調子ニ二十年ノ間、不備ナ手續法ト云フモノヲ、詰リ我慢ヲシテ居ッタ譯デ
アリマス、ソンナ事ヲシナイデ、何トカ今後ハソレヲ實施シタ上ニ於テ、
實驗上、不備缺點ヲ發見スル其都度、隨時改正スルコトニシタラドウデアラ
ウト思ヒマス、ソレニ付キマシテハ、司法本省ノ官吏モ加ハッテ宜シウゴザイ
マセウケレドモ、主モニ裁判ノ實際ニ當ル判事ノ中カラ常置委員ヲ設ケ、判
事ナリ、辯護士カラ意見ヲ徵シ、コチラカラ徵サナイデモ、向ウカラ申出ル
ノヲ受付ケテ、詮議シテ、不備デアルト云フヤウナモノハ、時ノ政府カラ政府
案トシテ出スヤウニスレバ、誠ニ結構ナコトデアラウト思ヒマス、斯ウ云フ
風ニ二十年間、其不備ヲ知リツツ我慢ヲシテ居ッテ、サウシテ急ニ改造スル、
之ヲ喩ヘテ言ヘバ、家ガ少々破損スルノヲ打ッチヤッテ置イテ、モウ此儘デハ
潰レテシマフト云フノデ、改造スルト云フノデハ實ニ不經濟ナ話デ、此長イ
問.破損シタ家ニ住マッテ居ルノモ不便ナ話デアリマス、ソレヨリハ小修繕ヲ
時〓ヤッテ置ケバ改造セヌデモ宜イ、、サウ云フヤウナ方法ヲ取ルノガ一番宜イ
ト思ヒマス、此事ハ私ガ空ニ考ヘ出シタ事デハアリマセヌ、英吉利ニ實例ガ
アリマスカラ、チヨット其事ヲ御參考ニ申シマシテ、サウシテ當局者ノ御意見
ヲ伺ヒタイ、長イ事ハ申シマセヌ、御承知ノ通リ、英吉利裁判所デハ十二三
世紀頃ニ所謂「コンモンロー」ノ裁判所、習慣法ノ裁判所ガ三ツ出來マシタ、十
四五世紀頃ニ所謂衡平法ノ裁判所「コート、オブ、チヤンセリー」ト云フモノガ
出來マシタ、其外ニモ色〓ノ裁判所ガアリマスガ、何レモ同等ノ上級裁判所
デアリマス、ソレガ數百年ノ長イ間行ハレテ居ッタ、其裁判所ニ、訴訟手續ト
云フモノハ裁判所ガソレゾレ定メタモノデアリマスカラ、區々ニナッテ居ッタ
ノデアリマス、尤モ慣習法ノ裁判所ノ手續ハ裁判所デ別デアリマスケレド
モ、同樣ノ點ガ多カッタノデアリマス、何レモ事實問題ハ陪審官ノ判斷ニ任カ
スト云フヤウニナッテ居リマシタノデ、共通ノ點ガ多カッタノデアリマス、十
四五世紀頃ニ出來タ衡平法ノ裁判所ニ於テハ、事實ノ判斷ハ判事ガ決スルト
云フコトニナッテ居リマシテ、他ノ立法ニ於ケルト異ッテ居リマス、陪審ノ制
度ニ依リマセヌ、是ハ序デノ事デアリマスガ、是ハ陪審制度ノ弊害ヲ矯正ス
ル一ツトシテ起ッテ來タモノデアリマス、衡平裁判所ハサウ云フコトデ大分
違ッテ居リマス、ソンナ譯デ、數百年ノ間、同等ノ上級ノ裁判所ガ數種アッテ、
其裁判手續ハ裁判所デ定メルノデアリマスカラ、區々ニナッテ不便ナ點モ多
クアッタノデアリマス、ソレガ爲ニ十九世紀、殊ニ千八百三十五年以後ニ、
本當ノ輿論ノ代表トシテ、議會ニ於テハ從來ノ英吉利現行法ト云フモノヲ盛
ニ改廢シテ居リマス、其一ツトシテ、三ツノ裁判所デ區々ニナッテ居ル手續ノ
不備缺點ノアル所ハ、成ルベク統一スルト云フ風ニ數囘改正ハシテ居リマス
ガ、ソレハ小規模ニ止マッテ居ッタノデアリマス、然ルニ千八百七十三年カラ
千八百七十五年ニ跨ル、何ト云ヒマスカ、司法條例ト申シマスカ「ジユヂケ
チュー、アクト」ニ依ッテ、從來ノ上級ノ數種ノ裁判所ヲ統一スルコトニナリマ
シタ、其統一スルニ付テハ、統一セラレル裁判所ニ於テ訴訟手續ヲ統一スル、
其統一セラレタ訴訟法ハドウシテ定メルカト云フト、「ジユヂケチュー、アク
ト」ノ法文ニ依ッテ判事ノ委員ヲ設ケマシテ······常置シテ居リマス、「スタン
ディング、コムミッティー」ヲ、判事ノ委員ヲ拵ヘマシテ、其委員ノ成案ト云フモ
ノヲ政府案トシテ、議會ノ協賛ヲ經テ法律ニナッタノガ八十三年デアリマス、
其後、其委員ハ常置委員デアリマスガ、年々必要ニ應ジテ修正ヲ加ヘテ茲ニ
至ッテ居リマス、是等ハ誠ニ便宜ナ方法デ、私ノ考デハ此案ヲ二十年モ掛ッテ
拵ヘテ、其間修正セラルベキモノデアルモノヲ其儘ニシテ置イテ、遂ニ大改
造ヲスルコトニナッタ、ソンナコトヲセズニ、之ヲ實地ノ上ニ、實務ノ上ニ於
テ實驗上アアトカ斯ウトカ修正意見ガアレバ、或ハ辯護士カラデモ宜シウ
ゴザイマス、申立ヲシテ、ソレヲ審査セラレ、修正案ヲ出ス、時ノ政府ガ其
部分部分ニ付テノ改正案ヲ出スコトニシタナラバ、今後コンナコトハセヌデ
モ濟ムデアラウ、ソレナラ我〓モ說明ヲ聽ケバ本當ニ愼重審議ガ出來ヤウ
ト思ヒマス、コンナ浩瀚ナルモノヲ短時日ノ間ニ愼重審議セヨト云ハレル
ノハ無理デアル、詰リ盲判ヲ押スト同樣ナ事ニナル、結果ハサウナル、序
デニ申シマスガ、英吉利ノ議會ハ御承知ノ通リ、ドコノ議會ヨリハ大變ニ
萬能力ガアルト稱セラレ居ルモノデアリマスガ、非常ニ英吉利人ハ實際ノ
方ニ重キヲ置イテ居ルト云フコトガ、斯ウ云フコトデ分リマス、判事ノ常
置委員ノ成案ヲ、時ノ政府ガ法律案トシテ出シマス時ニ、斯ウ云フコトヲシ
タデス、議會ニハ提出スルケレドモ、日程ニハ上ボセナイ、提出シテアリマ
スカラ議員ハ隨意ニ其法律案ヲ調査スルコトハ出來マス、サウシテ見タ上デ、
此點ハドウモ宜クナイカラ斯ウ改正スベキモノデアルト云フヤウナ、色〓ナ
意見ガアリマスレバ、特ニ議場デ動議シテ日程ニ上ボセテ其點ヲ審議スル、
何モ動議スルコトガ無ケレバ日程ニ上ボセナイ、會議中、議案ハ提出シテアッ
テモ、何モ動議ヲスルト云フ意見ガ無ケレバ、三讀會ヲ經テ可決シタモノト
云フ便法ヲ執ッタノデアリマス、ナゼ、ソンナ事ヲシタカト云フト、英吉利ノ
衆議院ニハ法律家モ居リマスケレドモ、法律ノ實務ニ從事シテ居ル者ハ極ク
少數デアリマス、サウ云フ人達ガ、實驗ヲ經タ人達ガ、作ッタモノヲイヂッテ
見タッテ宜クナラナイヂヤナイカ、却テ惡クナルコトガアル、手續法デアリマ
セヌデモ外ノ法律デモ、、議會デ修正ニナッテ、多クノ場合ニ於テ、何時デモ後ニ
行ッテ疑義ヲ起スト云ッテ居リマス、立案シテ行ク者ニアリマシテハ、初カラ
終リマデ頭ノ前後ノ聯絡ヲ取ッテ起案シテ居リマスガ、其一部分ニ付テ修正ガ
アリ、ソレガ通ッタト云フコトニナリマスト前後合ハナイヤウナコトガ能ク
起ヲテ來ルノデアリマス、英吉利ノ判例ナドヲ見マスト判事ガ······始終議
會デ成案ヲイヂクルモノダカラ能ク疑ヲ起シテ困ルト云フ小言ヲ言ッテ居ル
判事ガ澤山アリマス、ソレハ實體法デモサウデアリマス、訴訟手續法ニ於テ
ハ尙更ノコトデアリマス、ソレダカラ今申シマスヤウナ便法ヲ取ッタ、此例ハ
外ニアリマスマイ、之ヲ眞似シヤウト云フノデハアリマセヌガ、サウ云フ事
モアルノダシ、コンナ大キナモノデナシニ、隨時極ク僅ナ點ニ付テノ必要ナ
ル改正ヲ時ノ政府ガ出スト云フコトニシタナラバ、此內容ヲ能ク說明ヲ聽イ
テ,熟慮シテ批判ヲスルコトモ出來マセウ、此儘デヤッテ、二十三年ニ拵ヘタ
モノト同ジヤウニ、今後不便ヲ感ジテモ、何十年モ打ッチヤッテ置イテ、又改
造スルト云フコトハ愚ナ話ト思ヒマスカラ、ドウカ私ノ考デハ、判事ノ中ニ
常置委員ヲ設置シテ、民事訴訟法ノ常置委員ヲ設置シテ、大審院カラ區裁判所
マデ諮問スル、總テノ裁判所ノ判事或ハ辯護士カラ改正ノ意見ガアレバ之ヲ
申立テテ、ソレヲ詮議スル、適當デアッタナラバ改正案ヲ作ッテ、時ノ政府カ
ラ提出スル斯ウ云フ風ニシタナラバ宜カラウト思ヒマスガ、私ノ質問ハサ
ウ云フ常置委員ヲ設ケルガ宜イト思フノデアリマスガ、政府ノ御考ハドウデ
アルカ、ソレヲ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=13
-
014・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 唯今ノ土方博士ノ御質問ニ御答ヲ致シマス、提案ノ
時期ガ誠ニ遲レタノハ甚ダ不都合デアル、誠ニ斯カル大法案ヲ出シマスルト
致シマシテハ、多少遲延イタシマシタ感ガ無イデハナイノデアリマス、併シ
此法案ヲ、委員會ニ於テ成案ヲ得マスルヤ、委員會ノ成案ト致シマシテ、裁
判所ナリ、或ハ辯護士協會、或ハ大學ノ方面ナリヘ公ケニ致シマシテ、ソレ
ゾレ批評ヲ仰イダ譯デアリマス、相當實務家ノ方面ニ於キマシテハ、之ニ對
シテ意見ヲ鬪ハサレ、考究セラレマスル時間ガアッタカト認メタノデアリマ
ス、然ルニ此議會ニ提出トナリマスルト、色〓ノ法律トノ關係ナドヲ考究イ
タシマスルニ、ナカ〓〓面倒ガゴザイマス、實ハ非常ニ急ギマシテ、議會ノ
劈頭ニ出シタイト念掛ケタノデアリマス、其通リニ參リマセヌデ、博士ノ仰
セノ如ク、少シク遲レマシタコトハ誠ニ恐縮ニ存ジテ居ル次第デアリマス、
御諒察ヲ願フ外ナイノデゴザイマス、ソレカラ、將來、不備ノ點ガ出來タナ
ラバ、其都度、改正案ヲ出スヤウニ常置ノ調査委員ヲ設ケタラドウカト云フ
點ハ誠ニ御尤モノ點ト思フノデゴザイマス、不便ヲ恐ビ恐ンデ何十年間置
クト云フコトハ、如何ニモ適當デナイヤウニ思フノデゴザイマスガ、併シ委
員會ヲ設置イタシマストナリマスト、又彼レ此レノ考究ヲ要スルコトト思ヒ
マスルデ、是モ土方博士ノ意見ハ極メテ尊重スベキ御意見ナリト致シマシテ、
十分ノ考慮ヲ拂ヒタイト存ズルノデアリマス、是ダケ此際御答ヲ申上ゲテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=14
-
015・八條隆正
○子爵八條隆正君 本案ノ特別委員ハ十五名トセラレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵、兩案トモ束ネテ同一委員ニ付託シテ、
委員ノ數ハ十五名、サウ議長ハ解シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=16
-
017・八條隆正
○子爵八條隆正君 其通リ御解釋ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=17
-
018・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郎君 贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=18
-
019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵ノ兩案ノ特別委員ノ數ヲ十五名トナシ···
···勿論議長ニ於テ指名シテ宜イノデゴザリマセウ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=19
-
020・八條隆正
○子爵八條隆正君 本會期中、議長指名ニ一任シテアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=20
-
021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=21
-
022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、書記官ヲシテ特別委員ノ氏名
ヲ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
民事訴訟法中改正法律案外一件特別委員
子爵酒井忠亮君子爵伊東祐弘君子爵森俊成君
子爵板倉勝憲君水上長次郞君渡邊暢君
河村讓三郞君志水小一郞君男爵池田長康君
男爵松岡均平君男爵渡邊修二君安立綱之君
永田秀次郞君佐竹三吾君田村新吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=22
-
023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明後十七日午前十時ヨリ開會イタシマス、議事日
程ハ後ヨリ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午前十一時二十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01119260215&spkNum=23
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。