1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年二月二十六日(金曜日)
午前十時二十六分開議
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議事日程 第十六號 大正十五年二月二十六日
午前十時開議
第一 所得税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二 大正九年法律第十二號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 地租條例中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 明治三十七年法律第十二號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 營業税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 營業收益税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 資本利子税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第八 相續税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第九 通行税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十 酒造税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十一 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十二 麥酒税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十三 醤油税則廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十四 自家用醤油税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十五 織物消費税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十六 賣藥税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十七 骨牌税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十八 清涼飮料税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十九 大正九年法律第五十一號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二十 地方税に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二十一 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二十二 大正十四年勅令第二百四十五號(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第二十三 大正十二年勅令第四百五號廢止法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 市町村義務教育費國庫負擔法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十五 小出柳津間鐵道敷設の請願 會議
第二十六 帝國在郷軍人會國庫補助の請願 會議
第二十七 木次落合間鐵道速成の請願 會議
第二十八 木次三次間鐵道敷設の請願 會議
第二十九 花巻驛より遠野町を經て釜石港に至る鐵道敷設の請願 會議
第三十 初山別村に漁港修築の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、吉原正隆君病氣ニ
付キ十四日間ノ請暇ノ申出ガゴザイマシタ、之ヲ許可スルコトニ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
불発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ議事日程ニ移リ、本日モ日程第一ヨリ第二
十一マデノ議案ノ一讀會ヲ開キ、通告順ニ依リマシテ質疑ノ發言ヲ許シマ
ス、阪谷男爵ノ登壇ヲ望ミマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=3
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004・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ唯〓、日程ニ上ボッテ居リマスル稅法整理案ニ付
キマシテ質問イタシマス、申ス迄モナク本案ハ本議會ヲ通ジテノ最モ重要ナ
ル法案デアル、謂ハバ現内閣ノ主義主張ノ中心點、謂ハバ現內閣ノ生命ト云ツ
テモ宜イ重要ナ法案デアリマス、デ、第一ニ本員ハ內閣諸公ノ此法案ニ對ス
ル所信ヲ問ハムトスル者デアリマス、現內閣ノ稅制整理ニ對シマスルノ要點
ハ地租ヲ輕減シ營業稅ヲ全廢スルト云フコトガ、最モ此整理中ノ重キヲ爲
スモノト思フ、是ハ當然サウアラネバナラヌ、現內閣ノ率井ラレル與黨ノ在
野中ノ主張ト云フモノハ玆ニアッタノデ、殊ニ營業稅ノ全廢ト云フコトヲ以テ
呼號シ居ラレタノデアリマス、然ルニ地租ハ一分輕減セラレルト云フコトガ
衆議院ニ於テハ否決サレテ居ル、現內閣ノ最モ重要ナル主義主張デアル稅法
整理案ノ大事ナ一角ト云フモノガ崩レテ居リマス、是ハソコニ色〓ノ事情モ
存在スルデアラウガ、免ニ角、重要ナル一點ガ崩レテ居ル、左右ノ手、卽チ
右手ガ一本挽ゲタト云フ譯デアル、此事ト云フモノハ決シテ輕ク見ルコトガ
出來ナイト思フノデアリマス、勿論、地租ノ一分減ヲ止メテ義務〓育費ノ國
庫負擔ヲ增ス、ダカラ地租ヲ輕減シタト同ジヤウナ結果デアルト云フコトヲ
言ハレルカモ知レナイ、併ナガラソレハ全然別事デアル、全然別事デアル、
〓育費ノ負擔ハ國民全部ノ納稅者ガ負ッテ居ルノデアリマシテ、地租ノ負擔者
ガ負ッテ居ル譯デハナイ、〓育費ト云フモノハ地租ニ依ヲテ支辨スルト云フコ
トハ何處ニサウ云フ法律ガアルカ、我〓ハ決シテサウ云フコトヲ承知スル譯
ニハ行カナイ、卽チ一般國民ガ義務〓育費ヲ負擔スルノデアル、寧口義務〓
育費ヲ七千万圓ニ增スト云ソヤウナコトハ國費ヲ增シタモノデアル、歲出ヲ
增シタモノデアル、輕減ト正反對、デアルカラ、〓育費······義務〓育費ヲ國
庫ノ負擔ニ幾分カ移シタカラ地租ノ輕減ト云フモノハ目的ヲ達シタノダト云
フコトハ、如何ナル堅白異同ノ辯ト雖モ、是ハ出來ナイ話デアル、然ラバ地
租一分減ヲ標榜セラレタル現內閣ノ生命トモ云フベキ殆ド肺ノ臟ノ附近ヲ破
ラレタト云フコトニナルノデアルノデス、サア、サウシテ見ルト此法案ノ
價値ハドウデスカ、我〓ハ單ニ書生ノ議論ヲ以テ玆ニ演壇ニ立ツモノデハナ
イ、所信アリ、責任ヲ有シ、是ナラバ今日ノ刻下ノ急ニ應ズルコトガ出來ル
ト云フ鞏固ナル確信ノ下ニ立脚シタル法案デナクテハ、唯徒ラニ貴族院ガ
時間ヲ費ス必要ハナイ、私ノ見ル所ヲ以テスレバ現內閣ノ案ハ潰レテ居ル
形ニ見エル、卽チ骸骨ニナッタヤウニ見エル、甚ダ遺憾ニ堪ヘヌノデアル、私
一個トシテハ現内閣諸公ハ悉ク親友デアリ、又加藤內閣ノ成立以來、財政經
濟ノ緊縮ヲ主トセラレ、常ニ其御主張ニハ贊同ヲ表スルモノデアリマス、今
囘モ亦稅制整理ノ法案ニハ成ルベク贊同ヲ表シタイノハ山〓デアリマス、併
シ既ニ憲法政治ヲ布イタ以上ハ筋目ハ正サナケレバナラヌ、筋目ヲ正シウ
シテ國民ニ適從スル所ヲ知ラシメナケレバナラヌノデアル、最モ大切ニシ
テ、最モ主眼トスベキ要點ニ疵ガ付イテ、尙ホ此案ヲ本席ニ於テ如何ニ總理
大臣、大藏大臣ガ主張セラルルカト云ヘバ、衆議院ノ修正ハ甚ダ宜シイ、ド
ウゾ之ニ贊成シテ吳レト云フコトノ御言葉デアルト記憶イタシテ居ル、然ラ
バ政府ノ御作リニナッタ原案ハ惡イノデアルカ、甚ダ疑ハザルヲ得ヌ、國民ガ
信賴スル內閣ニ於テ惡イモノヲ作ッテ御出シニナッタノデアルカ、疑ハザルヲ
得ヌ、ドウゾ之ニ贊成シテ吳レ、是ハ至極良イ修正デアルト云フ御言葉デ以
テ見ルト、前ニ御作リニナッタ案ト云フモノハイケナイ、ソレハ如何ナル人物
ガ局ニ當ルト雖モ逐條悉ク完全ナルモノヲ作ル譯ニハ行カヌ、和衷協同ノ
趣旨ニ依ッテドコ迄モ和衷協同デナクテハナラナイ、事ニ依リマス······併ナ
ガラ物ニ依ル、事ニ依ル、左右ノ手ト看做スベキ要點ガ既ニ崩レテモ構ハヌ
ト云フコトニナルト、國民ハ何ヲ信ジテ宜イノデアルカ、甚ダドウモ惑ハザ
ルヲ得ヌコトニナルノデアリマス、新聞ノ傳フル所デアリマスカラ、果シテ
其當ヲ得テ居ルカ得テ居ラヌカ、私ハ知リマセヌガ、過日、衆議院ニ於テ
下諏訪鹽尻間ノ僅ナ鐵道デ、······僅ナ鐵道ヲ否決シタルガ爲ニ、仙石鐵道大
臣ハ責ヲ引イテ片瀨ニ行ッテシマウタ、之ヲ成ルベク留任セシムルガ爲ニ、閣
臣ノ一人ハ仙石君ヲ片瀨ニ訪ヒ、又東京ニ歸ラレテカラ色〓話ガアッテ、議會
ヲ終ルマデハ留任セラルルトカ何トカ云フコトデアリマス、私ハ其事實ガ正
シイカ、正シクナイカハ存ジマセヌ、併シ何事カアッタラシイ、是ハ一面カラ
考ヘルト、加藤伯ガ突然薨去セラレテ、議會開會中、甚ダ內閣ノ立場モ困難
ナル際ニ、斯ノ如キ小サナル問題デ閣臣ガ辭表ヲ出スト云フコトハ、少シク
早マリ過ギハシナイカト云フ非難モアリマセウ、併ナガラ又自分ガ主張スル
事柄ガ破レタ以上ハ、是ハ當然其職ニ在ルベキデナイト云フ仙石君ノ所信モ
亦諒トスベキデハナイカ、寧ロ內閣ノ責任ノ上カラ言ヘバ、仙石君ノ自分ノ
主張シタ鐵道ガ一本、甚ダ短距離ノモノデアルガ其一本ガ否決セラレタト云
フコトノ爲ニ、是デハドウモ自分ガ民意ニ副フコトガ出來ナイト云フ決心、
可ナリト言フベキデアルガ、ソレヲ以テ見ルト、地租ヲ一分減ズルト云フ事
柄ハ、其何レガ重ク何レガ輕キ、其輕重大小ハ三尺ノ童子ト雖モ、之ヲ辨ズ
ルコトガ出來ハシナイカト私ハ思フ、同ジ內閣ニ於テ鐵道大臣ハ短距離ノ一
本ノ線ガ削ラレタ爲ニ、而モソレハ私カラ見ルト改良費カラ出シテ一向差支
ナイコトノヤウニ思フ、ソレデモ責任ヲ取ッテ議場ニ現ハレナイ、現ニ今日ハ
見エテ居ラヌヤウニアリマスガ、此內閣ノ生命トモスベキ最モ大事ナル此法
案ニ付テ閣臣ガ甚ダ寥々デアル、況ヤ仙石君ノ顏ハ見エナイ、故ニ私ノ內閣
ニ聽カムト欲スル所ハ、此法案ニ付テ政府ハ何處マデノ支持ヲセラレルノデ
アルカ、其所信ト云フモノガ、餘リ良イ事柄デハナイケレドモ、マア〓〓宜
シク賴ムト云フヤウナ、アッサリシタコトデアリマスカ、サウ云フアッサリシタ
事デアレバ、何モ今日之ヲ急イデ實施ナサラナクテモ宜イヂヤナイカト云フ
結論ヲ生ズルノデアリマス、卽チ第一ニ本員ノ聽カムト欲スルノハ、斯ノ如
ク右ノ手トモ云フベキ問題ガ椀ゲテシマッタ、片輪ニナッタ稅制整理ノ計畫案
ヲモ尙ホ政府ハ何處迄モ支持主張セラルルノデアルカ、前ノ主張ガ惡カッタ
ト云フコトヲ御考ヘニナルノデアルカ、其政府ノ所信ヲ明瞭ニ玆ニ御一言ヲ
願ヒタイノデアリマス、ソレガ第一ノ點ナンデアリマス、次ニ第二ノ問題ニ
移リマスカ、地租ノ一分減ハ衆議院ガ否決シタ、政府ハ之ニ同意シタ、貴族
院ニ向ッテハドウゾ衆議院ノ修正通リ通シテ吳レ、斯ウ云フ御說明デアル、然
ラバ玆ニ問題ガ起ルノデス、地租ノ輕減ト云フコトハ現內閣ハ今後抛棄セラ
レタノデアルカ、地租ノ輕減ニ付テハモウ現內閣ハ今後抛棄セラレタノカド
ウカ、稅制整理ト云フコトヲ、如何ナ良イコトデアルカ知レナイケレドモ、
サウ度〓稅制整理、稅制整理ト云フ譯ニモ行キマスマイト思ヒマス、今衆議院
ノ修正ニ御同意ニナリ、貴族院ニモドウゾ其通リ通シテ吳レト云フ御賴ミデ
アッテ見ルト、政府ハ今後ニ於テ地租輕減ト云フコトハ再ビ主張シナイ、モウ
二百圓未滿ノ地價ノ免稅ダケデ足レリ、地租ノ輕減ニ付テハ今後再ビ主張シ
ナイト、斯ウ貴族院ハ考ヘテ宜シイノデアリマセウカ、其政府ノ御主張ヲ是
亦明カニ御答ヘヲ願ヒタイ、ソレカラ第三ニハ營業稅ノ全廢、是ハ現内閣ノ
與黨ノ方〓ガ多年叫バレタ問題デアリマス、又營業稅ハ日〓戰爭、卽チ明治
二十七八年ノ戰役ノ後、國費多端ノ爲ニ據ロナク營業稅ト云フモノガ初メテ
國稅トシテ現ハレタノデアリマス、爾來實施セラレルコトガ殆ド三十年、此
三十年ノ間一年タリトモ民間ニ惡稅々々ノ叫ビガ絕エタコトガナイ、ソレガ
爲ニ數度修正ハセラレマシタノデアリマスガ、尙ホ惡稅ノ聲ガ絕エナイ、茲
ニ於テ現內閣ノ與黨ノ方ヽハ盛ニ營業稅全廢ヲ主張セラレテ、而シテ稅制整
理案ノ最モ重要ナル要點トシテ、營業稅ハ全廢セラレルト云フコトヲ屢〓聲
明セラレタ、故ニ全國ノ營業稅ヲ課セラレタ部類ノ人〓ハ、非常ナル喜ビヲ
以テ之ヲ迎ヘタノデアリマス、其喜ビヲ以テ迎ヘタル希望ガ、果シテ欺カレ
ナカッタカドウカト云フコトヲ私ハ一ツ尋ネタイ、成程營業稅ハ稅法トシテハ
全廢セラレタ、營業稅法ヲ廢止スト政府ガ言フ以上ハ是ハ廢止セラレタノデ
ナイカ、併シ三十年間國民ガ叫ンダノハ法文ノ廢止デハナイ、其內容ガ營業
者ノ苦痛ヲ輕減セラレタイ、如何ニモ營業者ガ苦痛デアルカラ、其内容ヲ輕
減セラレタイト云フノデアッテ、法文ニ付テノ問題ヂヤナイト云フコトハ論ヲ
俟タナイ、然ルニ此度ノ政府ノ稅制整理案トシテ現ハレタモノニ依ッテ見ル
ト、營業收益稅ト云フモノガ現ハレタ、此營業收益稅ト云フモノガ果シテ營
業稅全廢ヲ叫ンダ國民ノ苦痛ヲ除キ得タナラバ、是ハマア政府ガ其營業稅全
廢ヲ聲明セラレ、與黨ガ叫バレタ精神ト合致スル譯デアリマスルガ、若シ苦
痛ヲ輕減シ得ズシテ、尙ホソコニ幾多ノ苦痛ガ殘ッタトスルナラバ稅制整理
ハ何ノ爲ニシタノカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ス、營業稅ノ全廢ト云フコト
ガ非常ニ議論ガヤカマシイ、私ハ今申ス明治二十七八年ノ日〓戰役ノ後始末
ノ爲ニ此營業稅ハ起シタノデアル、卽チ當時ノ營業稅ヲ主張シタ一人デアリ
マシテ、無論私ハ大藏省ノ一小官吏ニ過ギヌノデアリマスケレドモ、當時如
何ニモ國費多端デアルカラ、已ムヲ得ズ此營業稅ハ掛ケネバナラヌト云フコ
トヲ主張シタノデアリマス、故ニ其モノガ國民ノ苦痛トナル以上ハ、改善ニ
付テハ自分ノ深キ責任ヲ持ッテ常ニ其事ハ努メタノデアリマス、併シ營業稅
ヲ全廢シテ、マルデ廢メテ了フト云フコトハ、國庫ノ不足ヲ來ス譯デアル、
ソレハドウモ考ヘテ貰ハネバナラヌト云フコトハ、私ノ常ニ主張シタノデア
リマス、幸ニ此度ハ營業稅ノ全廢ヲ主張スル人モ大分其事ヲ諒解シテ、營業
收益稅ナラバ、色〓ナル面倒ナルコトガ無クナッテマア宜カラウ、デ、ソレナラ
バ、一ツ營業稅ノ全廢ハ出來ヌノデアルカラ、之ヲ改正シテ營業稅ノ成ルベ
ク營業者ニ苦痛ヲ與ヘヌ方法ニシタラ宜カラウト云フコトニ、先ヅ其營業者
ノ代表ト見ルベキ、各地ノ商業會議所、或ハ商業會議所ノ聯合會、是等ニ於
テモ大分其論ニ傾イテ來タ、又其論ニ傾クコトヲ本員等ハ努力シタ、サウ全
廢々々ト云ウテモ、マルデ免稅ニスルコトハ出來ルモノチヤナイカラ、幾分
ノ負擔ハ商工業者ガスルノガ當然デハナイカ、唯、其苦痛ニシテ、如何ニモ商
工業ノ發達ニ害アル點ヲ除イタラ宜カラウト云フコトデアリマシタカラ、此
營業收益稅ト云フモノハ、東京大阪アタリノ有力ナル所カラ、個人トシテデ
ハアリマスルケレドモ、當局ニモ建議ガ當時出タノデアル、ガ其建議ト云フモ
ノハ、此度政府ガ提出セラレタ如キモノガ現ハレヤウトハ思ハナカッタ詰リ
當業者ノ希望ハ稅率ニ於テ輕減ヲセラレ、又其取扱方ノ煩瑣ナル點ニ於テ輕
減セラレタイ、固ヨリ幾分ノ負擔ヲ辭スルモノデハナイ、斯ウ云フ點デアッ
タデアルカラ若シコノ政府ガ營業稅全廢ト云フコトノ約束ヲ履ム、政黨ト
シテ各地ニ於テ之ヲ公言セラレタ以上ハ、一種ノ是ハ公約ダ、其約束ヲ履マ
ムトスルナラバ、其點ハ一致シナケレバナラヌノデアル、然ルニ稅率トシテ
重イ、又取扱ノ手續モ煩瑣デアル、此煩瑣ナル點ニ付テハ、昨日貴族院ニ於
テ森君ノ質問デアッタト思ヒマスガ、營業稅法第二十五條ニ矢張リ收稅官吏ガ
店頭ニ腰ヲカケテ帳簿ヲ調べ、種々ノ面倒イ取扱ヲシテ、甚シク當業者ガ苦
シムト云フ、大事ナ箇條、稅ヲ取ル方カラ見レバ甚ダ大事ノ箇條デアッテ、取ラ
レル方カラ見レバ非常ニ是ハ煩瑣ナル箇條デアル、其營業稅法第二十五條ノ
規定ハ依然トシテ存シ、稅率ハ依然トシテ重イ、此點ニ付キマシテハ、大藏
當局ノ計算ト當業者ノ計算トハ、著シク違フノデアリマス、私ハ始終政府ノ
計算ニ重キヲ置イテ、政府ノ計算ハ當レリト思フノデアリマスガ、先年戰時
稅ヲ課シタ時ニ、政府ノ計算ト民間ノ計算トニ相違ガアッテ、貴族院デモ大分
ソレガ質問ニナリマシタ、當時我〓ハ政府ノ計算ヲ信ジテ、戰時稅ヲ通過シ
タノデアッタガ、其後ニ現ハレタ結果ハ著シク政府ノ計算ガ間違ッテ居ッテ、當
業者ノ調ベノ方ガ正シカッタト云フ事實ガ現ハレテ以來、此商工業ニ關スル稅
ニ付テハ、大藏省ノ信用ハ多少傷ケラレテ居ル、故ニ此度ノ政府ノ計算ト、
又當業者カラ提出セラレタ計算トヲ照シ合セテ見ルト、ドウモ政府ノ計算ノ
間違ッテ居ルヤウニ思ハレルノデアリマス、此當業者ハ何レモ算盤ニ長ジテ居
ル人デアリマスルカラ、早イデス、寔ニ其計算ヲ立テルコトガ早クシテ、先
ヅ間違ガ少イ、是ハ卽チ商工業者ハ算盤ガ生命ナンデアル、デ、收稅官吏ノ見
ル所ト商工業者ノ見ル所トハ、ドウモ私ハ此方ニ信ヲ置クベキデハナイカト
思フ、併シ私ハ憲法實施以來、兩院共ニ歲入ノ計算ニハ傷ヲ付ケナイ、未ダ
嘗テ政府ノ歲入ヲ修正シタコトハナイノデアル、兩院ガ何時モ大藏大臣ノ計
算ニ信任ヲ置イテ、歲出ノ方ハ修正ヲ試ミマスケレドモ、歲入ニ對シテ嘗テ
···憲法實施以來嘗テ歲入ニ觸レタコトハナイ、政府ヲ信用スルコトノ此點
ニ於テハ厚イノデアリマス、今年ノ歲入ヲ敢テ私ハ疑フコトハナイノデアリ
マスガ、併シ營業稅者ガ若痛ヲ述ベルコトカラ考ヘルト、ドウモ政府ノ見込
ニ多少誤ガアリハセヌカト思フ若シ誤ガアリトスルト、營業稅全廢ヲ叫ン
デ其政府ノ聲明ヲ聞イテ喜ビ、又收益稅ノ容レラレタルコトヲ聞イテ喜ン
ダル當業者ガ、蓋ヲアケテ見タラ、開イタ口ガ塞ガラヌト云フコトニナッタ、
是ハ甚ダドウモ稅制整理ノ趣意ニモ背キ、又問題ノ解決ニ甚ダ遠イコトハア
リマスマイカ、營業稅ヲ全廢スルト云フコト卽チ何故ニ政府ガ此度營業稅ニ
手ヲ著ケタカト云ヘバ、營業稅實施以來三十年ノ問題ヲ解決シヤウト云フノ
デアッテ、三十年モ苦情ヲ聽イテ隨分毎年々々貴族院ヘモ山ナス請願書ガ出
テ、請願委員諸君ハ事ノ外手數ヲ取ラレタノデアリマス、此山ナス請願ガ、
營業稅全廢ノ請願ガ、斯ク年々、三十年モアルノデアルカラ、是ハドウシテ
モ政治家トシテ解決ヲ付ケニヤナラヌト云フコトハ當然ナコトデアル、政府
ガ此營業稅問題ノ解決ニ著手セラレタト云フコトハ、最モ然ルベキコトト贊
成スルノデアル、此點ニ付テハ寔ニ結構デアリマス、併ナガラ、今申ス如キ有
樣デアッテ見ルト、解決ニナラナイ解決ニナラナイト云フノハ業ニ已ニ我〓
ノ所ヘハ決議書デアルトカ何トカ云ッテ玆ニ出テ居リマス如キ、此營業收益稅
ハ甚ダ困ル、商業會議所ノ聯合會デアリマストカ、色〓ノ所ノ人〓ノ、最モ營
業稅ニ關係アル人〓ノ苦情ガ現ハレテ居ル、政府ガ案ヲ提出シタカセヌノニ
モウ一方デハ苦情ガ現ハレテ居ルト云フト、解決ニナラヌ、政治ノ要ハ多年
ノ面倒ナ問題ヲ一ツヅツ解決シテ行ッテ、サウシテ國家ノ安寧隆昌ヲ期シテ行
カナケレバナラヌ、政府ハ稅制整理トシテ之ニ著手シ、一タビ手ヲ著ケル以
上ハ效力アルモノデナイト、又貴族院ガ營業收益稅ト云フモノヲ通シテモ、
矢張リ來年カラ今度ハ營業收益稅ノ廢止トカ云フヤウナ請願書ガ續々出テ
來ルト云フコトニナレバ、誠ニ徒勞ノ事ヲスルヤウニナル、折角、此處マデ
政府モ奮發シ、三十年來ノ懸案ヲ解決スルト云フコトハ誠ニ結構ナコトデア
リマスガ、何トカモウ少シ國民ヲシテ滿足セシムル修正ヲ御容レニナッテハ
ドウデアルカ、最早、一步モ修正ノ餘地ナシトシテ置カレルノデアルカ、其
點ヲ一ツ明瞭ニ伺ッテ置キタイノデアリマス、ソレカラ次ハ〓涼飮料ノ稅デ
アリマスガ、是ハ誠ニ少額ノ稅、今年三百万圓、平年ガ四百万圓、ソレハ三百
万圓デモ四百万圓デモ稅ハ多イ方ガ宜イニ相違アリマセヌガ、是マデ稅制整
理、稅制整理ト云フノハ、此稅ト云フモノハ簡單ナモノニシタイ、色〓錯雜
面倒イモノハ廢シタイト云フノガ一般ノ希望デアル、卽チ政府ガ醬油稅ト云
フヤウナモノヲ廢サウト云フノモ、其理由ガ一ツデアラウト思フ、今日ハ社
會政策トカ「デモクラシー」トカ、色〓ナ新シイ言葉ガ出來テ來テ、ソレニ聲
ヲ藉リル方ガ國民ニ能ク分ルト云フコトデ、社會政策カラ醬油稅ヲ廢スルト
カ何トカ云フヤウナコトヲ、此演壇デモ聽クヤウニナリマシタノデスケレド
モ、併シ要スルニ此稅ト云フモノハ成ルベク······理窟ハ理窟デアッテモ、面倒
デナク皆ガ斯ウ便利ニ納メルヤウナ稅ノ方ガ宜イノデアル、然ルニ一方ニコ
ザ〓〓シタ小サナ稅ヲ御廢メニナッテ、一方ニ又僅カ三百万圓ノ稅ヲ取ルト云
フコトハ是ハドウ云フコトナノカ、三百万圓位ノ收入デアレバ、地租ノ一
分減ヲ御同意ニナル勇氣ヲ持ッタ大藏大臣デアルナラバ何デモナイ、斯ンナモ
ノヲ廢メテシマッテモソレハ政府ノ歲入ノ中ニハ骨牌稅ト云フヤウナ僅ナ
小サナ收入ヲ取ル稅モアリマス、併シ是ハ骨牌其モノハ甚ダ風俗上、面白カ
ラヌ、弊害ガアルカラ、ソレニ稅ヲ課スルト云フ意味カラ、骨牌ノ稅ガ、國稅
トシテアヽ云フモノヲ取ッテ宜イカドウカ分ラヌ稅デスガ、併シ今日モ尙ホ
殘ヲテ居ル、骨牌稅ハ初テ掛ケタトキニハ二十万圓シカ稅ガ無カッタ、二十万
圓ノヤウナ小サナモノデモ貴衆兩院ヲ通ッタノハ博奕ガ惡イト云フヤウナ
感情モ加ハッテ通ッタノデアル、サウ云フヤウナ國民ノ道德ヲ幾分カ匡正シ、
其傍ラ國庫ノ收入ニナルト云フモノハ幾ラ少イ稅デモ在ッテモ宜イガ、〓涼
飮料稅ト云フヤウナ僅カ三百万圓位ノモノヲ掛ケル、之ガ爲ニハ、新ニ又稅
務ノ取扱ヲ仕組マナケレバナラヌ、稅ガ一ツ習熟シテシマフト、收稅官吏モ
慣レ、色ミ手數ガ掛ラナクナッテ來ルノデスガ、新ニ斯ウ云フモノヲ起スト甚
ダ面倒イ、サウ云フ面倒ヲ冐シテマデモ、斯ウ云フ小サナ稅ヲ增ス、是ハ又
他日〓涼飮料稅廢止ト云フヤウナコトガ、續々請願ニ出テ來ハシナイカ、三
百万圓位ハ何ニモナラヌ、ソンナモノハ取ッテモ取ラヌデモドウデモ宜イ、若
又政府ハ、イヤ今ハ三百万圓ダガ段々稅ヲ增ス、千万圓デモ二千万圓デモ取
ルノデアルト、政府ガ思ヲテ居ルノデアルカモ知レヌガ、サウデアルト、是ハ
考ヘモノデ、詰リ〓涼飮料ト云フモノハ謂ハバ水デス、水ニ稅ヲ取ルト云フ
ヤウナコトハ餘リ是ハ褒メタ議論デハナイ、殊ニ沖繩縣ナント云フヤウナ所
モ、矢張リ〓涼飮料稅ヲ取ルト云フコトニ法律ハナッテ居ル、此度ノ酒造稅ヲ
增シタノハ沖繩縣ニハ增サナイ、ソレハドウ云フ譯カト云フト、沖繩地方ハ
疲弊シテ居ルカラ增サナイト云フ、附則ニ取除ガアリマスガ、〓涼飮料ノ方
ハ取除ガ無イノヲ見ルト、沖繩ノヤウナ、水ガ無イ、私ノ友人デアチラニ行ッ
テ居ッタ者ガ、是ニハ誠ニ困ッタト云フ、サウ云フ所ニマデモ稅ヲカケル、人
間ノ必需品、水ト云フモノハ最モ必要デアル、ソレニマデモ稅ヲカケル、又
是ガ「ビール」ノヤウニ「エビスビール」トカ「キリンビール」トカ云フヤウナ、
大キナ工場ニ纒マッテシマヘバ大變樂デスケレドモ、近頃ハ平野水トカ、或ハ
「サイダー」トカ「シトロン」トカ、大分大キナ工場モアリマスケレドモ、〓涼
飮料ノ方ハ甚ダ······謂ハバ主人ガ小僧ヲ相手ニ製造シテ居ルト云フヤウナモ
ノヲ往々路傍デモ見ルノデアリマスガ、サウ云フモノニマデモ取締ヲシナケ
レバナラヌト云フ風ニナッテ來ル、稅ヲ取ルカラニハドウシテモ公平ニカケ
ナケレバナラヌ、或者ハ見逃ガシ或者ハ見逃ガサヌト云フコトニナルト不公
平ニナル、サウスルトナカ〓〓面倒ナモノニナッテ來ル、多少「ラムネ」トカ
「シトロン」トカ云フモノハ贅澤トシテ、ソレハ少々ノ稅ヲ御取リニナッテモ
一向差支ナイ、稅ヲカケラレル者カラ言ヘバ差支ナイケレドモ、如何ニモ收
稅事務ガ面倒ダ、地方稅カ何カデ取ルノナラバ姑クダケレドモ、此六千万、
七千万ト云フ大ナル整理ヲスルニ當ッテ僅ニ三百万圓ノ收入ノ稅ヲ置クト云
フ必要ハ殆ド無イヤウニ私ハ思フ、ソレヲドウシテモ取ラネバナラヌト云
フ、ソコニ强イ理由ガアルノデアルカ、其事ヲ一ツ伺ヒタイ、ソレカラ其次
ハ資本利子稅、是ハ私ハ、公債ニハ稅ヲカケヌト云フコトハ政府ガ約束ニナッ
テ居ル、法律ニ於テサウナッテ居ル、資本ノ利子ニ稅ヲカケルト云フコトト、
公債ノ利子ニ稅ヲカケルト云フコトトハ別ダ、所得稅ノ方ハ、モウ既往ノ法
律ダカラ免ジテ置クケレドモ、資本利子稅ノ方ハ新ニ決メルモノデアルカラ
免ジナイ、斯ウ云フ政府ノ說明デアル、私ハ其公債ノ利子ノ所得稅ヲ免ズルト
云フコトモ必要ガナイト實ハ思フ、初カラソンナ必要ハ無カッタカモ知レヌト
思フノデアリマスガ、其沿革ヲ言ハバ、日露ノ戰役······我國ノ五十倍カラア
ル大キナ露國ヲ相手ニ、國土ヲ賭シテノ戰デスカラ······モウ當時、國民ノ決
心ト云フモノハ、國ガ亡ビレバ大和民族ナシト云フ決心ダカラ、何物ヲモ提
供シテ惜マナカッタ、サウ云フ際ニハ最モ此公債ノ募集ト云フコトガ急ヲ〓ゲ
テ、日本ノ國力ニ不相當ナル大キナ國債ヲ出サナケレバナラヌカラ、成ルベ
ク政府ノ利子ヲ安ウセニヤナラヌ、政府ノ利子ヲ安ウスルニハ成ルベク國
債ノ値ヲ良クシナケレバナラヌ、國債ノ値ヲ良クスルニハソレニ稅ヲカケ
チヤイカヌ、斯ウ云フ論デ當時、公債ノ利子ト云フモノハ免稅ニナッタ、其當
時カラ言ヘバ當然ナコトデセウ、今日泰平ノ世ノ中ニナッテ見ルト云フト、
聊カモ其必要ガ無イヤウニ感ジマスガ、免ニ角サウ云フコトデアッタ、然ル
ニ此度、資本利子稅ヲカケルト云フコトニナルト、是ハ別ナモノハ別ナモノ
ダガ、一般國民ト云フモノハ、ソレヲ別ト云フコトヲ了解シ得ルデアラウカド
ウカ、私ハ寧ロ資本利子ノ稅ヲ取ラヌ方ガ宜イコトハナイカ、詰リ公債ニハ
免稅シタ方ガ宜イコトハナイカ、取ルナラバ、兩方トモ取ッタ方ガ宜イコトハ
ナイカ、ドウモ、ソコノ理論ガ聊カ徹底セヌヤウニ考ヘル、併シ是ハ小サイ問
題デアリマスガ、免ニ角、伺ッテ置キマス、ソレカラシテ尙ホコノ先年、政府ガ
豫算委員會デ以テ考慮スルト云フコトノ御約束ニナッテ居リマシタガ、此度ノ
地方稅ニ關スル法律ノ中ニ見エマセヌヤウデスガ、此土地增價稅ニ關スル規
定ハ、是ハ法律ノ中ニ入ッテ居リマスノデアリマスルカ、或ハ是ハ別ニ勅令カ
何カデ御規定ニナルノデアルカ、大分、此度ハ地方稅ノ制度モ變ハリマスヤウ
デアリマスシ、前年、政府ニ於テ考慮スルト云フ御言葉モアリマシタヤウデス
カラ、併セテ伺ッテ置キマス、尙ホ終リニ一ツ伺ヒタイノハ、此〓育費國庫負
擔ト云フモノヲ衆議院ニ於テ增加シテ、其法律案ガ貴族院ノ方ニ廻ッテ居リマ
スルガ、此歲出ヲ增スト云フコトヲ各議院ガ提議スルト云フコトハ、如何ニモ
此政府ノ責任ヲ輕クスル、卽チ政府ガ自分ノ計畫以外ノモノヲ其處ヘ提議ス
ルト云フコトニナッテ、甚ダ面白クナイ、故ニ豫算ニ於キマシテノ歲出ノ增加
ト云フコトハ、一切、貴衆兩院トモ、シナイト云フコトニナッテ居リマス、若シ
歲出ヲ增加セムトスルナラバ、必ズ政府カラ提案スル、政府ノ提案ナキニ貴衆
兩院ガ自ラ進ンデ豫算ヲ修正スルコトハセヌト云フコトニナッテ居ル、〓育費
國庫負擔法ハ法律デアリマス、法律デアルケレドモ、全ク豫算其モノト何等變
ハル所ハナイ、而モ三千万圓ヲ增スト云フヤウナ大キナ法律デアル、尤モ其
中ニハ旣ニ豫算ニ入ッテ居ルモノモアルガ、一千万圓カ何ボカハ今度新ニ增ス
デアリマセウ、其新ニ增スト云フコトヲ政府ノ提案ナキニ、衆議院ガ決議ヲ
シテ政府ヘ之ヲ押シ付ケル、是ハマア憲法上ノ違反トハ言ヘナイ、憲法上ノ違
反トハ言ヘナイガ、豫算ノ例カラ論ズルト、決シテ善キ例ヲ作ッタトハ申サレ
ナイ、若シサウ云フ必要ガアルナラバ、何故、政府ヨリ先ニ御出シニナラヌノ
デアルカ、豫算審議權、豫算審議權ト云フ豫算ノ審査期間ニ付テノ問題ガ、今
衆議院ニ上ボッテ居リマシテ、政友會ガ提出シタ案ト同ジモノヲ一字一句違ハ
ヌヤウナ案ヲ政府ガ出シテ居ル、豫算審査期間ノコトニ付テハ、ドウ云フ必要
ガアッタノカ、政友會カラ出タ卽チ衆議院カラ出タ案へ、政府ガ同ジヤウナ案
ヲ出シテ、委員ニ付託ニナッテ居ルト云フコトニ承ッテ居ル、若シサウ云フコ
トガアルナラバ、義務〓育費國庫負擔ノ如キ歲出ヲ增ス、政府ガ何トモ言ハ
ヌノニ、歳出ヲ增セト云フコトヲ議院カラ言フ、卽チ豫算ノ趣旨ニ悖ッタ憲
法ノ精神ニ悖ッタ法律案ノ提出ノ場合ニ、政府ガ之ヲ否認スルカ、然ラズンバ
是認スルナラバ、何故政府ガ案ヲ先ニ御出シニナラヌカ、豫算審査期間ニ
付テ、サウ云フ手續ヲ執ッタナラバ、何故、政府ニ於テ義務〓育費國庫負擔ニ
付テハ其手續ヲ執ラナカッタカ、此事ハ現内閣一代ノ事デハナイ、後〓ノ惡例
ニナッチヤ甚ダ遺憾ナコトニ思フノデアリマス、何故ニ政府ハ斯カル惡例ノ出
來ルコトヲ其儘ニシテ置イタノカ、政府ノ所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、尤
モ是ハ此後ニ日程モアリマスカラ、其場合デモ宜シイノデゴザイマスガ、是
ハ關聯シテ居リマスカラ、此際ニ承ッテ置キタイ、而シテ此豫算ノ全體ノ上ニ
於キマシテハ、此度ノ政府ノ此稅制整理ノ結果トシテ、又財政ノ結果トシテ、
政府ノ御提示ニナッテ居ル來年度以降十箇年間カニ亙ル歳人〓計表ニ依ッテ見
ルト······歲入出〓計表ニ依ッテ見ルト、兩三年ノ間ハ不足シテ居ル、是レ甚ダ
財政ノ計畫トシテ薄弱ニ本員ハ感ジマス、此點ハ或ハ重ネラ豫算案ノ上程ニ
ナリマシタ時ニ、御尋ネスルカモ知レマセヌガ、玆ニ伺ッテ置キタイノハ此
國防計畫、國防計畫ニ付テ此際併セテ伺ッテ置キマス、聞ク所ニ依レバ、現在
ノ海軍ノ補助艦艇、現在ノ海軍ノ補助艦艇ト云フモノハ、段々船齡ガ參ッテ來
テ、追〓古艦ニナッテシマフ、相當ナル補充ノ計畫ヲ立ツルニアラズンバ其勢
力ヲ維持スルコトガ出來ナイ、因テ今年度ニ於テ政府ハ驅逐艦四雙ノ製造ノ
計畫ヲ豫算ニ編入シテ、之ヲ協賛ヲ求メラレタノデアル、我ガ海軍ノ補助艦
艇補充ト云フコトハ英國若クハ米國アタリノ計畫トハ全然異ニシテ、日本
ハ現在、古艦ニナルモノヲ補充スルト云フノデ、新ニ增スノデナイカラ、何
等、世界ノ平和ヲ脅威スルモノデナイ、是ハ明カニ國民トシテ了解シテ置カ
ナケレバナラヌ、何等、世界ノ平和ヲ脅威スルモノデナイ、新ニ擴張スルノ
デナイ、古クナッタ艦ノ補充ヲスルノデアル、艦ト云フモノハ使ヘバ減ッテ行
クマア消耗品デアル、是ハ世界ニ向ッテ日本ノ此艦艇補充ト云フコトハ、何
等、世界ノ平和ヲ脅威スルモノデナク、唯.全ク現存勢力ヲ保存スルニ過ギ
ナイ、若シ之ヲ保存シナケレバ段々日本ノ海軍ノ勢力ハ減ジテ行クノデア
ル減損シテ行クノデアル、私ハ平和論者デアリマスカラ陸海軍ノ費用ノ減
ルコトハ望ムノデアリマス、無論陸海軍ノ費用ノ段々ト減ッテ行クト云フコ
トハ望ムノデアリマスガ、國防ハ危クシテモ宜イト云フコトハドウシテモ
言ヘナイ、況ヤ歐米各國ガ盛ニ補助艦艇ノ勢力ヲ增スコトニ熱中スル場合ニ
於テハ、平和論ハ平和論トシテ私ハ主張スルケレドモ、自分ノ國ヲ危クスル
ト云フ現實ノ問題ニ付テハ、ドウモ是ハ已ムヲ得ズ贊成シナケレバナラヌ此
驅逐艦四雙ノ計畫ニハ矢張リ贊成ヲ表スルモノデアル、然ルニ日本ノ補助艦
艇ノ減損シテ行クノハ此四隻ノ艦艇ニハ止マラナイ、是ハ誰ガ見テモ明カデ
アル、段々大正十九年二十年頃マデニハ餘程ノ補助艦ヲ補充セネバナラヌ、ソ
レカラモウ大正二十年カ、二十一年ニナルト主戰艦ヲ補充シナケレバナラ
ヌ、卽チコノ陸奧トカ何トカ云フ等級ノ中ニアル、卽チ主戰艦隊金剛ナドト
云フヤウナモノガ古クナルノデアリマセウ、サウ云フ大キナ一億圓モ要スル
ヤウナ艦ヲ補充シナケレバナラヌト云フヤウナ譯デアッテ、世界ノ列强ノ間
ニ、或ハ國際聯盟ヲ通ジ、或ハ華盛頓會議ノ如キモノニ依ッテ、列强ノ間ニ軍備
縮小ノ協定ガ出來ザル以上ハ、減損シタル勢力ハドウシテモ是ハ補充シナケ
レバナラヌト云フコトハ、當然ノ理窟デアラウト思フ、サウシテ見レバ同ジ
ク費用ヲ使フナラバ、成ルベク此費用ハ平均ニ支出セラレテ財政ノ負擔ニモ
堪へ、又艦ノ勢力ノ維持ニモ最モ有效ナル使ヒ方ヲ御同樣ハ考ヘナケレバナ
ラヌ、今年度ノ豫算ノ初ニ於テ海軍省カラハ三億二千万圓デスカ、三億二
千万圓カノ此補助艦艇ノ補充費ト云フモノヲ請求セラレタノガ、豫算ノ都合
デ以テ其中、四隻ヲ認メテ、アトハ次ノ年度ニ讓ルト云フコトニナッテ居ル趣
ニ聞イテ居リマス、然ルニ此度、此地租輕減ヲ政府ガ抛棄シテ〓育費國庫負
擔ノ方ニ費用ヲ增シタガ、衆議院ノ要求ハ尙ホ之ニ止マラズシテ、更ニ又大イ
ニ增スト云フコトヲ希望セラレルト云フコトデアル、是モ〓育方面カラ云ッタ
ラ極メテ必要ナコトデアリマセウ、〓育モ必要デアル、併ナガラ國ノ防禦、
國ノ防禦ヲ減ジテモ〓育ノ方ニ廻スト云フ譯ニハ行クマイト思フ、卽チ此國
防ト云フコトハ垣根、家屋デ云ヘバ垣根ナリ、戶締リト云フヤウナモノデ
アル、垣根ヤ戶締リヲ打チヤッテ置イテモ室內ノ置物トカ何トカ云フモノヲ
調ノヘネバナラヌト云フコトハナイノデアル、無論、〓育ト云フモノガ室內
ノ置物ト云フ意味デハアリマセヌ、〓育ト云フモノハ非常ニ必要ナコトデア
リマスルガ、私ノ云フ意味ハ其國ノ生存ヲ危クスルモノヲ犧牲ニスル譯ニハ
行クマイト云フコトヲ御尋ネスルノデアル、サウナッテ見ルト、此稅制整理ノ
法案ヲ議スルニ當ッテハ、、此點ニドウシテモ觸レナケレバナラヌト思フ、政府
ガ國防計畫ヲ維持シ、卽チ國ノ防禦ト云フモノノ現在ノ勢力ヲ維持スルニ付
テハ、政府ハ更ニ增稅デモナサルト云フ計畫デアルカ、若クハ現在ノ財政ノ力
ニ於テ之ニ應ゼラレルノデアルカ、私ハ此海軍ノ艦艇補充ノ如キ、謂ハバ今、
一隻ノ艦ヲ造レバ其艦ハ何年ニハ無クナッテ行クト云フコトノ決マッタモノデ
アル、經常費同然ノモノデアル、此經常費同然ナ艦艇ヲ造ルニハ必ヤ政府ハ
經常ノ歲入ヲ以テ充テルト云フ從來ノ方針ヲ執ラルルコトト思フ、之ヲ公債
ノ如キ臨時ノ財源ヲ以テスルト云フヤウナ一時的ノ計畫ニ依ルベキモノデナ
イト思フノデアル況ヤ政府ハ非募債主義ヲ以テ立ッテ居ラルル所ノ內閣デ
アリマス、然ラバ何處ニ此財源ヲ見出サムトスルノデアルカ、斯ウ論ジテ行
クト、增稅ニ依ルノ外ニハ海軍ノ計畫ニ充ツルモノガナイヤウニ思ハルルガ、
ソレニモ拘ラズ、〓育費ト云フモノガ、ズン〓〓增シテ行クト云フコトヲ約
束セラレタノデアリマス、〓育ガ重キカ、國防ガ重キカト云フコトハ、是一
問題デアリマセウ、併ナガラ〓育其モノハ既ニ現在ノ制度ニ於テ地方デ負擔
シテ居ルノデアル、其負擔ヲ······地方ノ負擔ヲ輕減スルト云フコトガ出來レ
バ結構デアル、國防ノ計畫ト云フコトハ現在我〓ガ既ニ持ッテ居ルノデアル、
持ッテ居ル其艦ガ古クナルノヲ取替ヘルト云フコトヲ、之ヲ抛擲シテ置ク譯
ニハイカヌ、私ハ決シテ〓育ガ重イトカ、國防ガ重イトカ云フ比較論ハ致サ
ヌ、併ナガラ政府ガ財政計畫ヲ立テルニ付テハ、況ヤ此稅制ノ整理ヲ計畫ス
ルニ付テハ、今年ダケガ宜ケレバ宜イ、自分ノ內閣ノ居ル間ダケガ宜ケレバ
宜イト云フヤウナ譯ニハ、是ハ行クモノデナイ、遠大ナル計畫ヲ立テテ置カ
ナケレバナラヌノデアル、殊ニ稅制整理ト云フガ如キコトヲ、サウ度〓スル
ト云フコトハ是ハ非常ニ此財政經濟ノ混亂ヲ生ゼシムル、ドンナ良イ計畫
デモ、コノ稅ヲ減ズルトカ、稅ヲ增ストカ云フコトハ、經濟ノ上ニ混亂ヲ來
ス、稅制整理ト云フコトハ······況ヤ斯ノ如キ稅制ノ計畫ト云フコトハ、サウ
度〓ハ出來ルモノデナイト思フ然ラバ此內閣ガ玆マデ盡力シテ居ル以上ハ、
將來ノ國帑ノ必要ヲ略見渡シテ、玆ニ適當ナ計畫ヲ立ッテ御置キニナラナケ
レバナラヌ筈ノモノデアル、サウデナイト又面倒ナ問題ヲ將來ニ遺スヤウナ
コトニナルデ、以上ノ點ニ付キマシテ總理大臣、若クハ大藏大臣ヨリ、ド
ウゾ明瞭ナ御答辯ノアルヤウニ望ミマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=4
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005・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 阪谷男爵ノ御質問ハ稅法、義務〓育費國庫負擔
金增加竝ニ國防費ノコトニ關係シテ居ルノデアリマシテ、何レ其各項目ニ付
テノ御質問ノ點ニ觸レテハ、大藏大臣ヨリ御答辯イタスデアラウト思ヒマス
ガ、衆議院ノ修正ニ對シテ政府ガ同意シタコトニ付テ、政治上ノ責任ニ付テ、
御尋デアリマシタ故ニ、之ニ關聯イタシテ居ルコトニ付テ、私ヨリ御答ヲ申上
ゲタイノデアリマス、稅制整理ハ國民ノ多年要望シテ居ル所デアリマシテ、
同時ニ私共在野デアルト在朝デアルトノ時ヲ問ハズ、年來、是ガ實現ヲ努メ
テ居ッタ次第デアリマス、此度ノ稅制ノ整理案ナルモノハ、一昨日、大藏大臣
ヨリ詳細ニ說明ヲ申上ゲマシタ通リ、稅制ノ體系ヲ正シテ、所得稅ヲ中心ト
シテ、地租、營業收益稅、資本利子稅、地方稅ニ於ケル家屋稅、之ヲ以テ直
稅ノ體系トシ、而シテ同時ニ地方稅制ヲ改善シテ、國稅ノ整理ト地方稅ノ整
理ト相俟ッテ、國民ノ負擔ヲ均衡ニシヤウ、而シテ國稅中、中產以下ノ者ノ負
擔ニナッテ居ルモノヲ、財政ノ許ス限リ輕減イタシテ、所謂社會政策ノ目的ヲ
達シヤウト云フ大體ノ趣旨ニ依ッテ出來テ居ルノデアリマス、所得稅ニ於キマ
シテハ、免稅點ノ引上ゲヲスルコト、又會社ニ於テ積立金ヲスルコトニ對ス
ル課稅ガ宜シクナイガ爲ニ積立金ヲスルコトヲ阻止スル傾向ガアリマシテ、
是ガ爲ニ曾社ノ基礎ヲ確實ニスルト云フコトニ缺クル所アルヤウニ考ヘマス
カラ、之ヲ改正シテ產業ノ發達ヲ助クルコト、竝ニ山林ノ所得ニ付テ今日マデ
事業者ニ於テハ、ナカナカ議論ノ問題デアッテ、同時ニ又現行ノ山林所得ノ取
リ方ハマダ十分其宜シキニ至ッテ居ラナイト云フ點ヲ認メマシテ、是等ノ點ヲ
所得稅ニ於テハ改正スル、地租ニ於テハ一方ニ於テハ一分減ヲ致スト共ニ、
他ノ一方ニ於テハ小農自作農ノ耕作スル所ニ向ッテハ免稅ヲシテ、成ルベク之
ヲ保護シヤウト云フコトヲ致サウトスルシ、營業稅ニ於テハ、是マデノ外形
標準ニ依ッテ課稅シテ居ッタコトヲ改メテ、收益課稅ニ致シテ、利益ガ無イノ
ニ營業稅ヲ取ラルルト云フヤウナ、營業者ノ極メテ苦痛トスル所ヲ除イテ行
カウト云フヤウナ改正ヲ施ス、サウシテ相續稅ニ於テモ、免稅點ヲ引上ゲテ
行キ······營業稅ニ付テハ尙ホ私言ヒ遺シマシタガ、收益四百圓以下ヲ免稅ス
ルト云フコトモ、是モ亦免稅點ノ引上ゲデアルノデアリマスガ、假ニ營業者
ガ一割ノ利益ヲ儲ケテ居ルモノトスレバ、四百圓ノ收益ト云フモノハ四千圓
ノ賣上高ニナルノデアリマス、今日ハ二千圓ノ賣上高ガ免稅點ニナッテ居リマ
スガ、之ヲ引上ゲテ四千圓ニシタト同樣デアリマスカラ、是モ亦成ルベク小
サイ商工業者ノ營業稅ハ取ラヌヤウニシヤウト云フ精神ガ籠ノテ居ルノデア
リマス、相續稅ニ付テモ今日マデハ家督相續ニ付テハ二千圓以上ハ稅金ヲ
取ルコトニナッテ居ル、之ヲ五千圓マデハ稅金ヲ取ラヌヤウニスルト云フコト
モ、是モ一ツノ改正デアリマス、其他、醬油ノ稅ヲ廢止スル、通行稅ヲ廢止
スル、賣藥ノ稅ヲ廢止スル、木綿織物ノ稅金ヲ廢メル、云フヤウナ工合ニシ
テ、今日所謂細民稅ト稱スルヤウナモノハ成ルベク廢メテ行ク中產以下ノ者
ノ苦痛ニナルヤウナモノハ成ルベク輕減シテ行ク、而シテ產業上ノ妨ニナル
モノハ、之ヲ改善シテ行ク、ト云ウタヤウナ精神ニ依ッテ、此稅制ノ整理案ガ
案ゼラレマシタガ、併シ大體ニ於テ此度ハ、歲入歲出ガ、稅制ノ整理ノ結果、
增減ナイコトヲ期シテ之ヲ企テタノデアリマス、實ハ國民ノ負擔ヲ輕減スル
コトガ出來マスナラバ、是ヨリ結構ナコトハナイノデアリマスケレドモ、ソ
レハ今日ノ財政ガ許サヌノデアリマス、財政ノ情況許サヌ以上ハ、全體ニ於
テ國庫ノ負擔、國庫ノ財源ヲ減ズルコトナキ程度ニ於テ、稅制ノ整理ヲセヌ
ケレバナラヌ、其必要ハ唯今申上ゲタヤウナ、一方ニ於テ租稅ノ廢止又ハ輕
減ヲ致シマス以上ハ他ノ一方ニ依ッテ若干ノ之ヲ補フモノヲ求メナケレバナ
ラヌ、ソレガ爲ニ大藏大臣ノ說明イタシタ通リ、資本利子稅ヲ取ル、相續稅
ノ若干ノモノヲ增徵シ、ソレカラ一方ニハ酒ノ稅ヲ引上ゲ、〓涼飮料ノ稅金
ヲ新設シ、骨牌稅ヲ增シ、煙草ノ値上ゲヲスルト云フヤウナ工合ニシテ、財
源ニ缺陷ノナイヤウニシテ、今囘ノ稅制整理ヲシテ、國民ノ負擔ヲ均衡ナラ
シメル、是ガ大體ニ申上ゲタ今囘ノ稅制整理、國稅ノ整理デアリマス、是ト
共ニ地方稅ニ於テハ、一昨日、私申上ゲタ通リ、府縣稅トシテ徵收スルノニ
極メテ不公平、.不便デアル所ノ戶數割ナルモノハ、府縣稅カラ之ヲ市町村ニ
移シテ、府縣稅トシテハ取ラナイコトニスル、ソレト共ニ是マデ市町村ガ取ツ
テ居ッタ所得稅ノ附加稅ハ、原則トシテハ之ヲ廢メシメ、之ヲ府縣ニ移シテ代
リノ財源ニスル、府縣ニ家屋稅ヲ設ケテ、直接國稅ノ體系ヲ、地方稅ヲ以テ
之ヲ補ッテ行クト云フコトニスルト共ニ、戶數割ヲ府縣稅トシテ取ラナクナッ
タ缺陷ヲ補ッテ行クヤウニスル、府縣稅中ノ營業稅、雜種稅、殊ニ雜種稅ノ中
ニハ、所謂貧民稅ト云フヤウナモノガ澤山ニアリマシテ、之ヲ存シテ置クト
云フコトハ、一方ニハ煩雜ナルト共ニ、一方ニハ下層ノ階級ノ人ニ向ッテ極メ
テ不適當ナル課稅ヲスルコトニナリマスカラ、之ヲ整理シテ成ルベク細民稅
ト云フヤウナモノハ廢メルト云フヤウナコトニスル、是ト共ニ市町村ニ於テ
ハ又從前ハ附加稅ヲ課シテ居ッタモノヲ、今度ハ附加稅デナク、本稅トシテ戶
數割ヲ徵セシメルト云ウタヤウナ改正ヲ加ヘテ、全體カラシテ國稅、地方稅ノ
改正ニ依ッテ、國民個々ノ人ノ負擔ヲ均衡ニスルト云フ案ヲ立テタノガ、今囘
ノ稅制整理ノ案デアルノデアリマス、此稅制整理ノ案ハ、衆議院ニ於テハ地
租ノ一分減ヲ止メラレタノト、ソレカラ小農ニ對スル免稅ノ點ニ若干ノ修正
ヲ加ヘラレタコトト、地方稅ノ附加稅ノ制限ノ所ニ於テ國稅ノ改正ガ變リマ
シタカラ、ソレニ應ジタ修正ヲ加ヘタコトト、尙ホ營業收益稅竝ニ所得稅ノ
附加稅ヲ掛ケマス場合ニ於テ、今囘ハ重複課稅ヲ避ケタ關係カラ、重複課稅
ヲ避ケマシタノハ至極結構デアリマスケレドモ、ソレガ爲ニ地方ノ附加稅ノ
上ニ於テ、若干減額スルモノヲ見ルコトニナリマシタカラ、其點ニ對スル修
正ガ衆議院デ加ハッタ、ソレダケノコトデアリマシテ、唯今申上ゲマシタ稅制
整理ノ全體ハ、唯今申上ゲタダケノ修正デ、其他ハ衆議院ハ悉ク政府ノ企テ
タ稅制整理ヲ認メラレタノデアリマス、ソレデアリマスカラ衆議院ノ修正ナ
ルモノハ、大體ニ於テハ政府ノ原案タル稅制整理ヲ認メテ居ルト見テ差支ナ
イノデアリマス.ソレ故ニ政府ハ此修正ニ向ッテ、若干ノ修正ヲ加ヘラレタコ
トハ遺憾デハアリマスケレドモ、併シ政府ノ企テタル稅制整理ノ全般ト云フ
モノハ大體ニ於テ認メラレタノデアリマスカラ、之ニ向ッテハ私ハ政治上ノ責
任トシテ、何カ政府ノ主張ガ破レタト云フヤウナ感ジヲ起サヌケレバナラヌ
程ナ修正デアルト思ウテ居ナイノデアリマス、ソレ故ニ其修正ノ箇條ニ付テ、
私ガ更ニ、サウ政府ノ目的トスル所ヲ妨ゲラレタモノデナイト云フコトヲ申
上ゲタイノデアリマス、附加稅率ノ事柄ハ當然ノ結果デアリマスカラ、强ヒ
テ是ハ申上ゲヌデ宜シカラウト思ヒマス、問題ハ唯地租條例ノ改正ノ所ニ關
係スルダケデアリマス、阪谷男爵ノ御擧ゲニナッタノハ.ソレダケデアリマ
ス、其他、稅制ノ整理ト云フノハ、唯地租ダケデアリマセヌ、唯今申シマス
如ク、國民全體ノ負擔ヲ綜合シテ、今囘ハ整理ヲ圖ッテ居リマスカラ、全體ノ
結合シタル整理ニ付テハ衆議院デ認メラレテ居ル、唯地租條例ニ付テ若干ノ
修正ガアル、此修正ナルモノガ、ソレナラバ政府ノ當初目的トシタル所ノモ
ノヲ大イニ損ズルヤウナ修正デアルヤ否、是ガ問題ニナルデアラウト存ジ
マスカラ、之ヲ申上ゲタイト思ヒマス、第一ニハ小額地租ノ免稅ノ點デアリ
や、、當初政府ノ提出イタシマシタノハ同一ノ市町村內ニアル所ノ田畑ニ
シテ、地價二百圓以下ノモノハ免稅スルト云フ案デアッタノデアリマス、此案
ハ何ヲ目的トシテ居ルカ、地價二百圓以下ノ田畑ヲ持ッテ居ル者ト云フノハ、
ソレハ小農デアル、小農······殊ニソレハ自作農デアル、自作農ヲ奬勵シヤウ
ト云フノガ、政府ノ目的デアッタノデアリマス、地價二百圓以下ノモノヲ免稅
スルト云フノハ······所ガ政府ノ原案ハ一市町村內ニ限ッテ居リマシタ、所ガ是
ハ衆議院ニ於テモ屢、質問ガアリマシタガ、本院ニ於テモ、ソレハ過日御質問
ガアッタト思ヒマスガ、一市町村內ニ限ッテ居ルト云フト、此村ニ住マッテ居ル
者ガ、隣村ニ亙ッテ土地ヲ持ッテ居ッテ自作シテ居ル者ガアルガ其隣村ニ亙ッテ
居ルモノハ免稅セラレヌト云フ不公平ガ起ルデハナイカト云フ議論ガ、衆議
院ニ於テ、當院ニ於テモアッタト思フノデアリマス、此點ハ政府ノ案ノ缺點デ
アリマス、缺點ナルコトハ當初カラ認メテ居ルノデアリマス、ケレドモ唯、
手數ヲ簡單ニスルノハ、他ノ村ニ亙ヲタモノハ見ナイデ、其市町村内ノモノノ
ミヲ見ルト云フト、課稅上、極メテ手數ガ省ケルノデアリマスカラ、ソレデ
政府ノ原案ニハ左樣ニ致シテ置キマシタ、併シ理論カラ言ヒマスレバ、同ジ
町村內デアラウガ、隣リ村ニ是ガ亙ッテ居ラウガ、自作ヲシテ居ルモノナラ
バ、小自作者ハ之ヲ免稅スルト云フコトガ政府ノ當初ノ目的ニ益〓適フ方デハ
アツテモ、決シテ其目的ヲ離レルモノデハナイノデアリマス、唯.手數ガサ
ウナルト云フト稍〓增スカラト云フノデ、政府ハ左樣ハ致シテ居ラナカッタノ
デアリマス、併シ衆議院ニ於キマシテハ、手數ハ若干增シテモ、其村內ノモ
ノノミナラズ、隣接シタ所ノモノ位ハ矢張リ見ル方ガ宜シイト云フ修正デア
リマシテ、根本カラ云フト、政府ノ考ヲ寧ロ補充スル程デアッテモ決シテ政
府ノ考ト、サウ異ルモノデナイノデアリマスカラ、此點ニ付テノ衆議院ノ修
正ナルモノハ、政府ガ當初免稅ニ依ッテ達セムトシタ目的ヲ、チットモ妨ゲル
モノデハナイノデアリマス、ノミナラズ衆議院ノ修正ニ於テハ、但書ヲ加ヘ
ラレテ、小作ニ付シタルモノハ、此限ニ在ラズトシテアル、卽チ自作農ノミ
ヲ免稅スルノデアル、小作ニ付シテ自分ハ別段耕作ノ勞ヲ執ラナイ者ニマデ
免稅スルニハ及バヌト云フノガ、衆議院ノ修正デアリマス、此點モ亦强ヒテ
言ッタラ政府案ノ缺點デアリマス、元來、政府ハ、小作ヲサシテ自分ハ耕作ノ
勞ヲ執ラナイ者ニマデ免稅シヤウト云フ目的デハナイノデアリマス、併シソ
レヲ一々調ベルトスルト云フト、幾ラカ手數ガ掛ルノデアリマスカラ、手數
ヲ省クガ爲ニ、政府デハ一市町村ナラバ、小作シテ居ラウガ、自作シテ居ラウ
ガ、二百圓以下ノ者ハ免稅スルト云フ、簡單ナル方法ヲ採ッタノデアリマス、
併シ理窟ヲ言ヒマスレバ、此目的ハ自作農ノ保護奬勵デアルノデアリマスカ
ラ、小作ノ方ヲ除クト云フ方ガ寧ロ目的ニハ益〓適フト云フコトニナリマシ
テ、ソコデ衆議院ガ其修正ヲ加ヘラレタ、是ハ政府ノ考ヘマシタ所ト、何等
目的トシテハ異ル所ハアリマセヌ故ニ、政府ハ之ニ同意シタノデアリマス、
決シテ政府提出ノ理窟ヲ害セラレタコトモ何ニモナイト申上ゲテ宜シイト思
ヒマス、地租ノ一分減ヲ削ラレタ、此點ガ阪谷男爵ガ非常ニ御非難ヲナサレ
タ點デアリマス、政府ハ一分減ヲスルト云ッテ、ソレヲ削ラレタ、ソレデモ尙
ホ晏然トシテ局ニ安ンジテ居ルト云フノハドウ云フ譯カト云フ御論デアリ
マス、併シ衆議院ガ地租ノ一分減ヲ削リマシタノハソレト同時ニ一方ニ於テ
ハ義務〓育費一千万圓ヲ增加スルト云フコトニシテアルノデアリマス、政府
ガ地租ヲ一分減ニスルト云フノハ何ノ爲ニサウシタノデアルカ、是ハ農民ノ
負擔ヲ輕減シテ、農村ノ振興ニ資シヤウト云フノデアリマス、農村振興ト云フ
議論ガナカ〓〓ヤカマシイノデアリマスガ、私共モ是ハ是非、農村ノ振興ハ圖
ラヌケレバナラヌト存ジマス、是ニハ種々ナルコトヲセヌケレバナラヌト存
ジマスガ、農村ノ負擔ガ重イト云フコトモ亦今日ノ農村疲弊ノ一ツノ原因デ
アリマス、故ニ農村ノ負擔ヲ輕減スルト云フコトガ、農村振興ノ目的ヲ達スル
上ニ於テハ、極メテ必要ナルコトト考ヘマシテ、ソレ故ニ田畑ノ地租ハ一分減
ニシヤウト云フコトヲ計畫イタシマシテ、田畑地租ヲ一分減ズルト云フノハ、
其目的ハ農村ノ負擔ヲ輕減シヤウト云フコトニアルノデアリマス、所ガ衆議
院ハ之ヲ削ラレマシテ······削ラレマシタケレドモ一方ニ於テハ丁度地租一
分減ガ九百六十万圓程デアリマスガ、丁度ソレニ代ルダケ、一方ニ於テハ一千
万圓、義務〓育費國庫負擔金ヲ增加スルト云フコトニ衆議院ハセラレタノデ
アリマス、義務〓育費ノ、今マデ地方ガ負擔シテ、或ハ戶數割ヲ以テ課稅シ、
或ハ地租附加稅ヲ以テ課稅スル、其地ノ稅ヲ以テ、地方稅デ取ッテ、地方デ負
擔シテ居ッタモノヲ、國ノ方デ其負擔ヲ千万圓ダケ出シテヤッテ地方デ負擔セ
ヌデモ宜イト云フコトニナリマスレバ、其結果市町村戶數割ヲ輕減スルカ、
或ハ其他ノ附加稅ヲ輕減スルコトガ出來ルノデアル、サウ致シマスト、
方ニ於テハ地租ノ一分減デ農村ノ負擔ヲ減ズルモノガ、其方デハ參リマセヌ
ケレドモ、今度ハ義務〓育費一千万圓ノ負擔ヲ國庫デシテ、ソレダケ地方稅
ヲ輕減スルコトガ出來ルヤウニナリマシタ爲ニ、農村ハソレダケ負擔ガ輕減
セラレルノデアリマス、從來ノ經驗ニ依ッテ見マスト云フト、國庫負擔金ノ分
配ナルモノハ、市ト町村デ比ベマスト云フト、市ハ一割足ラズデアリマシテ、
九割以上ハ皆町村ニ行クノデアル、町村ノ中ニハ固ヨリ農民バカリデモアリ
マセヌケレドモ、大體ハ町村ノ人間ハ先ヅ農民ト云ッテ宜イノデアリマスカ
ラキチント、一分減通リノモノガ免稅セラレルモノデハアリマセヌガ、達
觀シテ見レバ、地租ノ一分減ニ依フテ農民ノ負擔ヲ輕減セムトシタコトガ、義
務〓育費國庫負擔金ノ增加ニ依ッテ地方ノ負擔ガ減ズルコトニ依ヲテ、農民ノ
負擔ガ輕減セラレルコトニナルノデアリマス、ソレデアリマスカラ、地租一
分減ハ削ラレタケレドモ、形ヲ變ヘタル義務〓育費國庫負擔金ト云フモノノ
形ニ於テ、農民ノ負擔ガ輕減セラレルノデアッテ、卽チ當初政府ガ農民ノ負擔
ヲ輕減セムトシタ目的ハ、矢張リ衆議院ノ修正ニ依テテ目的ヲ達スルコト
ガ出來ル、斯樣ニ考ヘマシタ故ニ、衆議院ノ修正ナルモノハ政府當初ノ稅
制整理案ノ大體ノ目的トシタ所ヲ少シモ損スルコトナク、唯、形ガ變ヲテ、其實
ヲ擧ゲルコトニナッタノデアルカラ、之ニハ同意シテ、全般ノ國民負擔ノ均衡
ヲ圖ルトシテ目的ヲ達シタ方ガ宜シイ、斯樣ナ考ニナリマシテ、政府ハ衆議
院ノ修正ニ同意ヲシテ居ルノデアリマス、ソレト共ニ政府ハ自カラ立テタル
國民負擔ノ均衡ヲ圖ル目的ハ之ニ依ッテ十分達セラレテ、少シモ政府ノ目的ヲ
損スル所ナシト考ヘテ居リマスル爲ニ、別ニ政治上ノ責仕ヲ感ジテ、局ニ居
ルニ堪ヘナイト云フヤウナ、感ジヲ起スニ至ラナイ次第デアルノデアリマス、
此場合ニ併セテ申上ゲマスガ、義務〓育費國庫負擔金ノ增加ニ付テハ歲出
ノ增加デアル、歲出ノ增加ハ衆議院カラ之ヲ提出シタ事柄ハ、憲法ノ精神ノ
上カラ云ウテ面白クナイコトデアリハセヌカト云フ御尋ネデアッタノデアリ
やす、之ニ付テハ私共モ歲出ノ增加ヲ假令法律案デアッテモ、法律案ニ於テ、
衆議院カラ提出セラレルコトハ好マシイコトデナイト思ヒマス、唯、併シ此度
ノ此問題ハ、地租一分減、ソレヲ變ヘルガ、其代リ地方ノ負擔ヲ減ズル爲ニ
義務〓育費ノ國庫負擔金ヲ增スト云フノデ、全ク地租一分減ト牽聯シタル事
柄デアリマシテ、歲出ノ增加ノヤウニ見エルケレドモ、其實ハ農民ノ負擔輕
減ト云フ目的ヲ達スルガ爲ニ、地租一分減ノ形ヲ變ヘテ、義務〓育費國庫負
擔金ノ增加ト云フコトニナッタノデアリマスカラ、全ク牽聯シタル事柄デアル
故ニ、衆議院ガ此度義務〓育費國庫負擔金ニ修正ヲ加ヘラレタルコトハ、此
場合ハ、私ハ差支ナイト思ウテ居ルノデアリマス、此事柄ニ付テ、ソレナ
ラ全ク前例ガナイカト云ヒマスト、是マデ衆議院ニ於テ例ヘバ遠洋漁業奬勵
法ト云フヤウナ法律ノ、何百万圓以下トナッテ居リマスヤウナモノヲ、之ヲ增
加セラレタヤウナ例モアルノデアリマス、其實例ハ私共餘リ贊成シナイノデ
アリマスケレドモ、全ク既往ニ於テ例ガナイカト云フト、サウ云フ例ハアル
ノデアリマス、其場合ニ較ベテ見レバ、今囘ノ場合ハ一層此一分減ノ形ガ變ツ
タコトデアリマスカラ、聯關シテ居ルト云フ關係ニ於テハ從前ノ實例ヨリ
モ尙ホ一層此場合ノ方ハ、同ジク衆議院ニ於テ歲出增加ノ法律ノ改正案ヲ出
サレタニシテモ、以前ノ例ヨリモ寧ロ私共ハ此方ガ宜イ方ノ事柄デハアルマ
イカト考ヘル位デアルノデアリマス、ナゼソレナラバ、政府ガ法律案ヲ出サ
ナカッタカト云フニ、是ハ衆議院ニ於テ、私說明シマシタ通リ、法律案ハ出シ
テモ宜シイノデアリマス、併シ當初文部省ノ考デハ、今日ノ法律ニ於テ、國
庫負擔金ハ「四千萬圓ヲ下ラサルモノトス」ト書イテアリマスカラ、是ヨリ以
上出スト云フコトハ、法律ハ少シモ妨ゲナイノデアリマス、是レ以上出スコ
トハ豫算ニ於テ要求スレバ宜イト云フ考ヲ持タレテ、初メ法律案ヲ出サヌコ
トニシテ居ラレタノデアリマス、ソレデ一方ニハ豫算デ二千万圓ヲ要求スル
ト共ニ、法律案ガ出テ居ラナカッタ、ソコニ衆議院ニ於テ既ニ案ガ出テ居ッタ
ノデアリマス、ソレデアリマスカラ、政府ノ考ヲ當初ノ通リ遂行シツツアル
間ニ、衆議院デハ自己ノ·······衆議院議員カラ提出サレタ案ニ今ノヤウナ修正
ヲ加ヘラレテ、此度ビ當院ニ送ラレタト云フ關係デアリマスノデ、政府ノ考
ハ此場合ニ於テハ、法律ヲ改正セヌデモ豫算デサヘ要求スレバ宜イト云フ
考デモアリマシタ爲ニ、法律案ノ提出ヲ致サナカッタノデアリマス、第二ノ阪
谷男爵ノ御尋ネノ地租一分減ヲ玆デ、衆議院デ廢メラレタ、ソレナラバ政府ハ
地租一分減ノ主張ハ棄テテシマッテ、將來ハ地租ノ輕減ハシナイノデアルカ、
斯ウ云フ御尋ニ對シテハ、財源ニ增減ノ生ゼナイヤウニシテ、國民負擔ノ均
衡ヲ圖ルト云フ稅制整理ノ此問題ニ關シテハ、政府ハ地租一分減ナルモノハ、
玆デ致シマセヌノデ、玆デ打切リニ致スノデアリマス、併ナガラ他日國庫
ノ財政ノ狀況ガ許シマシテ、國民負擔ノ輕減ヲ爲シ得ル狀態ニナリマシタナ
ラバ、ソレナラバ、私共ハ矢張リ地租ノ輕減ヲモ、サウ云フ場合ニハ致スコト
ニ致シタイト思フノデアリマス、ソレ故ニ今日カラシテ他日ノ事ヲ、斷然此
地租一分減ハ見合セシテシマッタト申上ゲル譯ニハ參リマセヌガ、財源ノ增減
ノナイヤウニシテ、國民負擔ノ均衡ヲ圖ルト云フ此稅制整理ニ於テハ、地租
ノ一分減ハ玆デ打切ッタト申上ゲヌケレバナラヌノデアリマス、營業稅ノ事等
ハ大藏大臣カラ申サレルノデアリマスガ、私モ一言之ニ加ヘテ置キタイノデ
アリマス事ハ、實ハ私共所屬ノ政黨員ニシテ、營業稅ノ全廢ヲ唱ヘタ者モア
リマシタコトハ、阪谷男爵ノ言ハレタ通リデアリマス、是ハ營業稅ナルモノ
ハ日〓戰爭後ニ出來マシタ初メカラ、當業者ノ中ニハ是ガ全廢ヲ熱望シ
テ盛ニ其說ヲ唱ヘタ者モアッタノデアリマス、ソレ等ニ共鳴シタ者ガ私共所屬
ノ政黨員ノ中ニモアッテ、之ヲ唱ヘテ居。ッタコトハ事實デアリマス、大正三年
ニ私ハ大隈侯爵ノ組織セラレタ內閣ノ一員トナリマシテ、財務當局ニナッタ
ノデアリマスガ、豫ネテ黨員ノ中ニモ營業稅ノ全廢ヲ唱ヘテ。居ッタ者モアリ
マシタケレドモ、當時私ハ明カニ申上ゲマシタガ、財政ノ狀況、決シテ營業
稅ノ全廢ナドハ許サヌノデアル、ソレ故ニ國庫ノ狀態ヲ鞏固ニシテ置イテ、
財政ノ料理ヲシテ行カウト云フナラバ、、營業稅ノ全廢ハ出來ヌト云フコトヲ、
議場ニ於テ明カニ聲明シテ、私ハ營業稅ノ全廢ハシナイト云フコトニ實際イ
タシタコトハ、當時御承知ニ相成ッテ居ルノデアラウト存ジマス、併シ其後ニ
於テモ當業者ノ中ニハ營業稅全廢ノ議論ガ其聲ガ多々アッタノデアリマス、ソ
レト共ニ阪谷男爵ノ仰セニナルヤウニ、當業者ノ間ニ若シ營業稅ヲ全廢スル
ト云フコトガ出來ヌナラバ、少クトモ外形標準ニ依ル課稅ハ止メテ收益課稅
ニシテ貰ヒタイト云フ希望ノアッタコトハ、是モ亦確カデアルノデアリマス、
ソレ故ニ私共所屬ノ政黨デハ、其後ハ營業稅ヲ全廢スルト云フコトハ迚モ是
ハ出來ヌガ、外形標準ニ依ル營業稅ハ止メテ、收益課稅ニスル、營業稅ヲ卽チ
今日出シマシタヤウナ營業收益稅ト云フヤウナモノニセヌケレバナラヌト云
フコトヲ唱ヘタノデアリマス、其コトガ今日ハ朝ニ立ッテ實行セラレテ、茲ニ
御目ニ掛ケタヤウナ次第デアリマスルノデ、此點ハ何レ大藏大臣ガ詳細ニ述
ベラレルコトト思ヒマス、營業稅ニ於テ、從前アッタ通リ依然トシテ又今日ノ
法律デモ帳簿ノ檢査ノコトガ殘ッテ居ルト云フヤウナ點ノ如キハ、大藏大臣カ
ラ十分說明セラレルコトト思ヒマス、尙ホ國防ノ費用ニ付テモ大藏大臣カラ
述ベラレマスガ、私モ茲ニ一言イタシテ置キタイト思ヒマスノハ海軍ハ阪谷
男爵ノ仰セノ如ク始終アトカラ補充シテ參リマセヌケレバ、其現在ノ力ヲ維
持シテ行クコトガ出來ヌノハ、是ハモウ分リ切ッタコトデアリマス、ソレ故ニ
海軍ノ現在ノ勢力ヲ維持セムト欲スルナラバ常ニ是ガ補充ヲ怠ッテハナラヌ
ト云フコトハ政府モドコマデモ心得テ居ル次第デアリマス、今日ハ驅逐艦四
隻ノ建造ヲ大正十五年ニ實行スレバ、海軍ノ現在ノ勢力ヲ維持シテ行クコト
ガ出來マスカラ、豫算ニ於テ是ハ求メテ居ルノデアリマス、併ナガラ是サヘ
ヤッテ置ケバ、今後何時迄經ッテモ、何等ノコトヲセヌデモ、海軍ノ現在ノ力ガ
維持ガ出來ルカト云フト、サウハ參ラヌノデアリマス、何レ大正十六年以後ニ
至ッテハ又相當ナル施設ヲセヌケレバ、現在ノ勢力ヲ維持スルコトハ出來ヌ
ノデアラウト存ジマス、ソレハ政府ニ於テハ心ノ中ニ持フテ居ルノデアリマ
ス、ソレデアリマスカラ、阪谷男爵ノ御指摘ニナリマシタ歲入歲出ノ〓計表
ト云フモノノ中ニ於テモ、海軍ハ矢張リ引續イテ補充ノ途ヲ講ゼヌケレバナ
ラヌト云フコトガ相當ニ考慮セラレテ出來テ居ルノデアリマス、衆議院ニ於
テ政府ハ〓育費ノ尙ホ此上ノ增加ニ付テ考慮スルト言ッタ、サウスルト云フ
ト、或ハ國防ノ費用ヨリモ〓育ノ方ヲ先ニシテ、ソレガ爲ニ國防ノ費用ノ出
所ガナイヤウニナリハシナイカト云フヤウナ御疑ヲ御持チニナッテ居ルノデ
アリマスガ、衆議院ニ於テ政府ノ言明シマシタノハ、大正十六年以降財政ノ
狀況、歲入ニ餘裕ガ生ジタナラバ他ノ緊要ナル施設ト共ニ此義務〓育費國
庫負擔金ノ增加ノコトモ考慮スルト申シタノデアリマス、他ノ緊要ナル施設
ト云フ中ニ海軍ノコトノ含マレテ居ルコトハ申上ゲルマデモナイノデアリマ
ス、サウ云フコトト共ニ考慮スル、斯ウ云フノデアリマスカラ、國防ノコト
ヲ考ヘズシテ、〓育費ダケノ施設ノコトニ政府ガ重キヲ置イテ居ルヤウニ御
覽ニナルナラバ、決シテ左樣ナ次第デハナイト云フコトヲ、茲ニ明カニ申上
ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=5
-
006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憇ヲ致シマシテ午後ハ一時三十分ヨリ開會イタ
シマス
午後零時五分休憩
吉市小山東京홍준
午後一時四十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=6
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007・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、若槻總理大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=7
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008・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 午前中、御答辯ヲ致シタノデアリマスガ、私ガ
御答ヘセナケレバナラヌモノデ今一ツ漏ラシテ居ッタモノガアリマスカラ、
ソレダケヲ此際御答ヘスルコトニ致シマス、ソレハ阪谷男爵ノ御質問中ニ、土
地增價稅ノコトニ付テ、昨年、政府ハ考慮スルト云フコトヲ申シタノデアル
ガ、如何ニスル考デアルカト云フ御質問ガアッタノデアリマス、御承知ノ通リ
都市計畫法ナルモノノ中ニ規定ガアリマシテ、其規定ニ依ッテ都市計畫ノ爲
ニ要スル費用ハ、勅令ヲ以テ之ヲ取ルコトガ出來ルヤウナ條項ガアルノデア
リマス、ソレ故ニ此條文ニ基イテ、勅令ヲ以テシテモ土地增價稅ヲ課スルコ
トガ出來ルノデアリマス、唯、前年阪谷男爵ハ、矢張リ土地增價稅ノ如キモノ
ハ法律ヲ以テ制定セラレタ方ガ相當デアルト云フ意見ヲ述ベラレテ、貴族
院ニ於テモソレニ御賛成ニナッタ方モアッタノデアリマス、ソレ故ニ政府ハ其
御意嚮ニモ顧ミテ、現行法ニ依ッテ勅令ガ出來ヌコトハアリマセヌケレドモ
成ルベク法律ヲ以テ規定スルヤウニ致シタイト思ウテ、唯今ハ考究シテ居ル
所デアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=8
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009・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 阪谷男爵ノ御質問ニ對シテ、總理大臣ガ答辯ヲ殘
サレマシタル二三點ニ付キマシテ、私ヨリ御答ヲ申上ゲマス、營業稅ヲ全廢
イタシテ、其代リニ營業收益稅ヲ設クベシト云フ所ノ私共ガ屬シテ居ル政黨
ノ主張ハ、御承知ノ通リ第四十六議會ニ於キマシテ、衆議院ニ於テ法律案ヲ提
出イタシタノデアリマス、其コトニ付キマシテハ總理大臣ヨリ說明セラレマ
シタ通リデアリマス、而シテ其時ノ主張ニ基キマシテ、此度ノ稅制ノ整理ニ
當カノ營業稅ノ廢止、營業收益稅ノ新設ヲ提案イタシマシタコトモ、是亦、
總理大臣ノ說明サレマシタ通リデアリマス、而シテ營業稅ヲ廢シテ純益ヲ標
準トスル所ノ營業收益稅ヲ起シマシタト云フ、大體ノ趣旨ニ付キマシテハ
阪谷男爵モ御同意ヲ表セラレタヤウニ承知ヲ致シマシタ、然ルニ男爵ノ御質
問ハ、此度ノ營業收益稅法ノ中ニ世人ノ期待ニ背クモノガアル、卽チ當業者
ノ苦情ガ之ニ依ッテ絕エナイモノデアルト云フコトニ付テ二三ノ點ヲ御擧ゲ
ニナリマシテ、御質問ニナッタノデアリマス、其第一ハ政府ノ計算ニ依レバ、
此度ノ營業收益稅法ニ依レバ、現在ノ營業稅法ニ依ル場合ヨリモ、商工業者
ノ負擔ハ數百万圓ノ輕減ヲスルト云フ話デアルガ、當業者側ノ計算ニ依レバ、
却テ增稅ニナルト云フコトデアル、政府ノ計算ヲ信ズルノガ相當デアラウト
思フケレドモ、此營業收益稅ノ計算ニ付テハ、當業者側ノ計算ガ、或ハ據ロ
ガ多イカモ知レヌト云フ意味ノ御疑デアッタノデアリマス、營業收益稅法ニ
俊ノ、國家ガ收入イタシマス所ノ、其歲入ノ依ッテ來ル根據ニ付キマシテハ、
大藏省ニ於キマシテ、全國ニ於ケル相當ノ機關ヲ經マシテ、精密ノ調査ヲイ
タシマシタ上デ、歲入ノ見積リヲ立テマシタノデアリマス、從ヒマシテ、此
政府ノ計算ニ萬々間違ガナイモノト確信イタシテ居リマス、固ヨリ當業者ノ
御計算ト雖モ、是ハ其御調査ノ御方法ニ付キマシテハ、相當デアラウト考ヘ
マスケレドモ、昨日モドナタカノ御質問ニ對シマシテ、申上ゲマシタ通リ、
或ル局部的ニ計算ヲ致シマスレバ、現在ヨリモ負擔ガ重クナルト云フ計算ガ
出ルダラウト思ヒマス、唯營業ノ全體ニ亙リマシテ、又全國ニ亙リマシテ、
總括的ニ計算ヲ致シマスレバ、政府ノ計算ガ相當デアルト云フコトヲ信ズル
ノデアリマス、第二點ハ今日マデノ營業稅法ニアリマスル所ノ規定デアッテ、
當業者ノ迷惑トナル所ノ帳簿物件ノ檢査ノ權能ヲ稅務官吏ニ與ヘテ置クト云
フ其箇條ヲ、依然トシテ此度ノ收益稅法ニ於テモ殘シテアルト云フコトハ、
甚ダ宜シクナイト云フ御疑デアッタノデアリマス、是亦、昨日申上ゲマシタ通
リ、當業者ノ申告ガ必ズ正當デアッテ、實際ノ收益ヲ有リノ儘申告スルモノト
致シマスレバ、此規定ハ要ラヌノデアリマス、遺憾ナガラ現在ノ國民ノ納稅
道德ノ程度ニ於キマシテハ未ダ當業者ノ申〓ノミヲ其儘無條件ニ信賴スル
譯ニハ參ラヌト思ヒマス、從テ當業者ヲシテ正當ナル所ノ申〓ヲナサシメマ
スル手段ト致シマシテモ、此帳簿物件ノ檢査ノ權能ヲ收稅官吏ニ與ヘテ置ク
ト云フコトノ規定ヲ存スル必要ガアルト考ヘマス、他日、納稅觀念ガ段々進
步イタシテ參リマシテ、此規定ナシニ、徵稅ノ目的ヲ完全ニ達スルコトガ出
來ルト云フ時期ニナリマスレバ、政府ハ喜ンデ此規定ヲ削除スルコトニ御同
意ヲ申上ゲマスルガ、今日ノ狀態ニ於キマシテハマダ其程度ニ達シテ居ナ
イト思ヒマス、依テ現行法ノ如クニ之ヲ存置スルコトニ致シタ次第デアリマ
ス、當業者ノ主張意見ヲ承ッテ居リマスルト、此度ノ政府ノ提案ニ對シマシテ
種々苦情ガアルヤウニ承知ヲ致シテ居リマス、殊ニ商工業者ノ有力ナル所ノ
團體ノ意見ト致シマシテ、營業收益稅ニ改メルコトハ相當デアラウト思フケ
レドモ、其稅率ヲ半減ニシテ貰ヒタイト云フ希望ヲ承ッタコトモアリマス、又
營業收益稅ニ改メナクテモ、現在ノ營業稅法ヲ其儘存續スルコトニ致シマシ
テモ、其稅率ヲ半減ヲ致シテ貰ヘバ宜シイト云フ議論ヲ承ッタコトモアリマ
ス是ハ租稅ノ負擔ヲ受ケマス所ノ當業者ノ希望ト致シマシテハ一應尤モ
ニ考ヘマスルケレドモ、ソレデハ他ノ租稅トノ負擔ノ均衡上、餘リニ商工業
者ノ負擔ガ輕キニ失スルト云フ虞ガアリマスルノミナラズ、ソレガ爲ニ國
庫ノ歲入ノ減少イタシマスル所ノ程度ガ餘程大キクナリマスルニ依ッテ、
遺憾ナガラ今日ノ財政狀態ニ於キマシテハ其希望ニ副フ譯ニ參ラヌト考ヘ
やす、從ヒマシテ營業收益稅法ノ規定ト云フモノハ、政府ノ提案ノ通リ御
協賛アラムコトヲ切ニ希望イタシマス、其次ニハ〓涼飮料稅ニ付テノ御說
デアッタノデアリマス、如何ニモ〓涼飮料稅ノ新設ニ依テ、新ニ國庫ガ得マ
スル所ノ財源ハ初年度ニ於テハ三百餘万圓、平年度ニ於テモ四百三十万圓
ニ過ギマセヌ、餘リ大ナル所ノ財源ト云フコトハ出來マセヌガ、此〓涼飮
料稅ヲ新ニ設ケマシタ所ノ趣旨ハ一昨日モ申上ゲテ置キマシタ通リ、二ツノ
理由ニナッテ居ルノデアリマス、第一ハ麥酒ニ向ッテ、步合カラ申シマスレバ約
四割ト云フ增稅ヲ行ッタノデアリマス、其金額カラ申シマスレバ一石ニ付キ七
圓デアリマスカラ〓酒ト同樣デアリマスガ步合ハ〓酒ノ二割ニ對シマシテ
麥酒ハ四割ノ增稅ヲ行ッタノデアリマス、若シ〓涼飮料ニ對シマシテ課稅ヲシ
ナイデ其儘ニ放任ヲ致シテ置キマスト云フト麥酒ニ對スル所ノ消費ガ〓涼
飮料ノ方ニ移ルト云フ虞ガアルト考ヘタノデアリマス、其消費ガ〓涼飮料ニ
移ッテ參リマスト云フト、麥酒稅ニ於テ政府ハ增徵ノ目的ヲ達スルコトガ出來
ナイト云フ虞ガアリマス、就テハ其麥酒ノ稅源ヲ涵養スルガ爲ニ、麥酒ノ代
用ニ供セラルル所ノ〓涼飮料ニ對シマシテ相當ナル課稅ヲスルト云フコト
ガ、稅源ノ擁護上適當デアラウト思ッタノデアリマス、尤モ其稅率ガ餘リ高キ
ニ過ギマシテハ、是ハ苦痛デアリマスルト考ヘマシタガ故ニ、麥酒ノ二十五
圓ニ對シマシテ〓涼飮料ハ低イ、七圓或ハ十圓、十二三圓位ニ相當スル所ノ輕
度ノ增率ヲ行ッタ次第デアリマス、第二ノ理由ハ此度ノ稅制ノ整理ニ依リマシ
テ大分廢減稅ヲ致シマスル結果トシテ、其歲入ノ缺陷ヲ補塡スル必要ガアリ
PX.其歲入ノ缺陷ノ補塡ノ一部ニ充テルガ爲ニ、四百三十万圓ノ收入ヲ平
年度ニ於テ生ズベキ所ノ、〓涼飮料稅ヲ起スノ止ムヲ得ザルニ至ッタノデアリ
やっ、昨日モ申上ゲマシタ通リ政府ハ成ベク增稅ヲ避ケ、殊ニ新稅ヲ避ケタ
イト云フ考ガアリマシタケレドモ、現在ノ財政狀態ノ下ニ於キマシテ、是ダ
ケノ大規模ノ稅制ノ整理ヲ行ヒマスルニ當ッテ、何ト致シマシテモ、相當ナ
ル所ノ歲入減少ノ補塡ノ財源ヲ發見ヲセナケレバ、稅制ノ整理ガ困難デアツ
タノデアリマス、其必要ニ基キマシテ已ムコトヲ得ズ、新ニ資本利子稅ヲ設
ヶ、又新ニ〓涼飮料稅ヲ設クルニ至ッタ次第デアリマス、其次ノ御質問ハ資
本利子稅ニ關シマシテ、國債ノ利子ニ對シテ資本利子稅ヲ課スルコトニナッテ
居ルガ、是ハ所得稅ヲ國債ノ利子ニ向ッテ課セナイ位ナラバ、同ジク資本利子
稅モ課セナイ方ガ宜シクハアルマイカ、若シ國債ノ利子ニ向ッテ資本利子稅ヲ
課スルナラバ、所得稅モ課シタ方ガ徹底スルデハナイカ、若シ課スルナラバ、
二ツナガラ之ヲ課スルガ宜カラウ、課セナイナラバ、二ツナガラ之ヲ課セナ
イガ宜クハナイカ、斯ウ云フ御意見ノヤウニ承ッタノデアリマス、國債ノ利子
ニ對シテ所得稅ヲ課セナカッタ所ノ沿革上ノ理由ニ付キマシテハ、阪谷男爵ノ
御說明ニナリマシタ其通リデアリマス、而シテ今日ノ財政狀態ハ如何ト申シ
マスレバ、國債利子ニ對シテ所得稅ヲ課セナイト云フ法律ヲ設ケマシタ當時
ニ比較イタシマスレバ、大分改善ヲセラレテ居ルトハ考ヘマスルケレドモ、多
年ノ間與ヘ來リマシタル所ノ國債利子ニ對スル傳統的ノ恩典ト云フモノヲ、
一朝ニシテ奪ヒ去ルト云フニハマダ時期ガ早クハアルマイカ、此點ニ付テ
ハ十分ナル所ノ考慮ヲスル餘地ガアルト認メマシタルガ故ニ、國債利子ニ對
シテ所得稅ヲ課スルト云フコトハ致サナカッタノデアリマス、然ルニ國債利子
ニ所得稅ヲ課セナイト云フ現在ノ制度ニ對シテ、世間ニハ種々ノ議論ガアリ
マス、地方債或ハ社債、銀行ノ預金等ニ對シテ所得稅ヲ課シテ居ルニ拘ラズ、
獨リ國債ノ利子ノミニ對シテ之ヲ課セナイト云フコトハ、公平ヲ得テ居ナイ
ト云フ議論ガアル位デアリマス、併シ之ニ向ッテ今日所得稅ヲ課シマスルコ
トハ、前段申述ベマシタル趣旨ニ依リマシテ、得策ニ非ズト考ヘマシタガ故
ニ、所得稅ヲ課セナイト云フ現行法ハ据エ置キマスルガ、サリトテ新ニ設ケ
マス所ノ補完稅タル資本利子稅ヲモ國債ノ利子ニ課セナイト云フコトニ致シ
マスルト愈〓國債ノ利子ノ他ノ有價證劵ノ利子ニ對スル所ノ權衡ヲ益〓失フ
結果ニナル虞ガアルト考ヘマシタカラ、此度新ニ設ケマシタ所ノ資本利子稅
ハ此國債利子ニ對シマシテモ他ノ證劵ニ對スルト同樣極メテ輕イ所ノ百分
ノ二ト云フ一律ノ稅ヲ課スコトニ致シタ次第デアリマス、一面カラ申シマス
レバ、男爵ノ御說ノ通リ、若シ之ニ稅ヲ課スルコトガイケナイト云フナラバ、
所得稅ヲ課セナイト同時ニ資本利子稅ヲ課セナイガ宜シイ、若シ資本利子稅
ヲ課スルナラバ、所得稅ヲモ課シテ宜イデナイカト言フ御議論ハ、是ハ理論
上私モ一面ノ眞理ガアルトハ考ヘマスケレドモ、種々ノ狀況ヲ綜合イタシマ
シテ、之ヲ判斷イタシマスノニ、所得稅ハマダ課セナイガ宜カラウ、併ナガ
ラ新ニ起ス所ノ資本利子稅ダケハ他ノ證劵トノ權衡上カラ申シマシテモ、サ
ウ重イ稅デモナイト考へマスルガ故ニ、一律ニ之ヲ課スルコトガ穩當デアラ
ウト考ヘマシテ、此提案ヲ致シタ次第デリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=9
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010・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 總理大臣竝ニ大藏大臣ノ御答辯ニハマダ私ハ承服ハ出
來マセヌ、併シ大分時間モ經チマシタヤウデゴザイマスカラ、此以上玆デ追
究ハ致シマセヌガ、唯.一ツ大藏大臣ノ唯今ノ御答辯中ニ麥酒ノ稅ヲ上ゲル
カラ、水ノ稅ヲ掛ケルト云フ御說明ガアリマシタ、私ハ麥酒ハ上戶ノモノ
水ハ下戶ノモノト思フ、其上戶ト下戶ト違ッテ居ルノニ、麥酒ノ稅ヲ上ゲルカ
ラ水ニモ稅ヲ掛ケルト云フノハ少シ御答辯ガ、其ノ當ヲ得ヌヤウニ思ヒマ
ス、上戶ト下戶ヲ混同シテ居ラレルヤウデアリマス、モウ一應何カ誤リデナ
イカ御答辯ヲ願ヒマス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=10
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011・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 御答ヘ致シマスガ、若シ政府ノ考ガ當リ前ノ〓酒
ニ增稅ヲ致シ、其〓酒ノ稅源ヲ擁護セムガ爲ニ〓涼飮料稅ヲ掛ケタト云フコ
トデアルナラバ、是ハ御說ノ通リ上戶ト下戶トヲ混同シタ議論ニナルカモ知
レマセヌ、併ナガラ、實際ノ消費ノ狀態ヲ考ヘテ見マスルニ、麥酒ノ代用品
トシテ或ハ平野水デアルトカ、或ハ「サイダー」トカ云フモノヲ消費スルト云
フコトハ是ハ普通ノ狀態カラ考ヘマシテ、私ハサウ云フコトガアルト考ヘ
テ居リマス、若シ御說ノ通リ上戶ノ飮ムモノト致シマスレバ、是ハ〓酒デア
ラウト考ヘマスケレドモ、麥酒ノ代用品トシテ〓涼飮料ガ消費サレテ居ル
ト云フコトハ、是ハ社會ノ實際カラ考ヘマシテ普通アルコトデアリマスカラ、
其麥酒ノ代用品ニ向ッテ麥酒ノ稅ノ增徵ト同時ニ相當ノ稅ヲ掛ケルト云フコ
トハ麥酒ノ稅源ヲ擁護スル所以デアラウト考ヘマス、〓酒ノ稅源ヲ擁護ス
ルトハ申サナカッタ積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=11
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012・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 上戶ト下戶トノ論ハモウ止メマス、ドウモ餘程無理ナ御
說明ノヤウニ考ヘマスカラ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=12
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013・蜂須賀正韶
○副議長(候爵蜂須賀正韶君) 藤村男爵ノ登壇ヲ望ミマス
〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=13
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014・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 一昨日、稅制整理諸法律案ノ提案ニ當リマシテ、濱口大
藏大臣ハ今日ノ國家ノ歲入ヲ著シク減少セシメムトスルガ如キコトハ財政ノ
現狀ニ照シテ到底不可能デアル、故ニ今囘ノ稅制整理案ハ歲入ニ著シク增減
ナカラシムル範圍ニ於テ實行スルコトトシタ、ト云フ御說明デアリマシタ、
歲入ニ增減ナカラシムルト云フガ如キ條件附ノ整理ハ前代未聞ノ整理デアリ
マス、斯ノ如キ整理ハ稅制ノ根本整理ニ非ズシテ、私ハ之ヲ遣繰リ整理ナリト
思フノデアリマス、極メテ好意ヲ以テ迎ヘテ見マシテモ、部分的、若クハ枝
葉的ノ整理ナルコトハ整理諸案ノ內容ヲ繙イテ見マスル迄モナク明カナコ
トデアリマス、恐ラク國民モ斯カル整理案ハ何等ノ感興ヲ以テ見テ居ナイノ
デアラウト私ハ存ズルノデアリマス、若シ私ヲシテ今囘ノ整理案ニ對スル私
ノ結論ヲ率直ニ端的ニ言ハシメマスナラバ、斯樣ナ不徹底ナル間ニ合セ的ノ
整理案ハ政府ニ於テ一應御撤囘ヲ願ヒタイ、而シテ、モウ一度、今度コソ行
政財政ノ本當ニ徹底的ナ整理ヲ行ハレマシタ後、更ニ出直シテ、眞ノ根本的
稅制整理案ヲ御出シヲ願ヒタイト申シタイノデアリマス、併ナガラ本案ハ既
ニ衆議院ヲ通過シテ參ーテテル貴族院ハ金錢ニ關スル法案ニ對シマシテハ
出來ル限リハ衆議院ノ議決ヲ尊重スルコトヲ至當ナリト私ハ考ヘテ居ル者デ
アリマス、衆議院ヲ通過シテ參フタ金錢ニ關スル法律案ヲ否決シ去ッタリ、或
ハ其根本ニ觸ルルガ如キ修正ヲ施サムトスルガ如キコトハ貴族院トシテハ
大ニ之ヲ考慮セナケレバナラヌト私ハ思フノデアリマス、故ニ今囘ノ整理諸
案ノ如キモ已ムヲ得マセヌノデ、我〓ハ愼重審議、仔細ニ各案ノ內容ヲ討究
イタシマシテ其不備缺陷ヲ補正シテ、出來ルダケノ完全ヲ期スルノ外ハアル
マイカト存ズルノデアリマス、私ハ今囘ノ諸法律案ニ對シマシテハ、幾多ノ
疑義ヲ有ッテ居ルノデ、政府ノ所見ヲ質シテ見タイト思フ所ハ頗ル多イノデア
リマスケレドモ、既ニ多數ノ同僚諸君ヨリ幾多ノ御質問モアリ、又本案ガ特
別委員會ニ移サレマシタナラバ、種々ノ御論議モアルデアラウト存ジマスル
ガ故ニ、私ガ此際、政府ノ原案ニ對スル質疑ハ差控ヘタイト思フノデアリマ
ス、併ナガラ、玆ニ是非トモ伺ヲテ置カネバナラヌコトガアルノデソレハ政府
提出ノ諸案ノ中、地租條例中改正法律案ニ對シ衆議院ニ於テ之ニ修正ヲ加ヘ
タコトニ付テデアリマス、所謂政府ト政友本黨間ノ妥協ニ成ル修正案ナルモ
ノデアリマス、此件ニ付キマシテハ、今朝阪谷男爵ヨリ極メテ適切ナル御質問
ガアリマシテ、政府ノ所信ヲ質サレマシタ、之ニ對シテ若槻總理大臣モ亦縷
縷御辯明ガアッタノデアリマスルケレドモ、私ハ今少シ具體的ニ伺ッテ見タイ
ト思フノデアリマス、衆議院ノ修正ノ要點ニ付キマシテハ、既ニ大藏大臣ヨ
リモ亦今朝、若槻總理大臣ヨリモ縷々ノ御說明ガアリマシタノデ、私ハ之ヲ
省略シタイト思ヒマスル、別ニ私ハ此際政府ノ原案ト衆議院ノ修正案トヲ對
比イタシマシテ、可否ノ意見ヲ鬪ハサウト申ス者デモアリマセヌ、又地租ノ
免稅點設定ノ當否或ハ義務〓育費國庫負擔增額ノ多少ヲ論ゼムトスル者デモ
アリマセヌシ、或ハ又妥協ノ是非ヲ彼是レ茲デ論評ヲ試ミルト云フ者デモ
アリマセヌ、唯、私ハ政府ガ此修正案ノ通過ヲ希望セラルル以上、之ニ對スル
政府ノ意嚮ヲ確カト承リ置キマスルコトハ、案ノ審議上極メテ必要ナリト信
ジマスルガ故ニ、玆ニ數項ニ亙ッテ質問ヲ致シテ置キタイト思フノデアリマ
ス、明確ヲ期シマスル爲ニ、出來ルダケ簡單ニ要項ノミヲ述ベテ申上ゲタイト
思ヒマス、第一ノ質問ハ政府ガ衆議院ノ修正案ニ同意シタル理由如何、今朝
右ニ付キマシテハ總理大臣ヨリ縷々ノ御說明ガアリマシタ、私ハ總理大臣ノ
御論旨ヲ首肯スルコトハ出來マセヌ、免ニ角、總理ノ御意見ニ依リマスルト、
修正案ハ政府案ニ比ベテ確カニ改善セラレタル案ト認メテ居ラレルヤウニ思
フノデアリマス、然ルニ衆議院ニ於キマシテハ政府ハ修正案ガ貴衆兩院ヲ
通過シタ時ハ之ニ同意スルト云フヤウナコトヲ濱口大藏大臣ハ仰セラレテ居
ラレルノデアリマス、衆議院ノ稅制整理ノ小委員會ニ於キマシテ、大藏大臣
ハ斯樣ニ言ハレテ居ル、「唯今小委員會懇談會デ一致ヲ致シマシタ、政府案ニ
對スル修正案、是ガ修正案トナッテ衆議院ニ現ハレ、衆議院ヲ通過シ、又貴族
院ヲ通過シタ時ニ於テハ、政府ハ此修正案ニ同意ヲ致シマス」、ソレカラモウ
一ツ國庫負擔金ノ增額ニ付テモ「此七千万圓ヲ下ラザルモノトスルコト、斯
ウ云フ法律案ガ出マシテ、ソレガ貴衆兩院ヲ通過イタシマスレバ是亦政府ハ
同意ヲスル積リデアリマス」、斯樣ニ聲明ヲサレテ居リマス、今朝ノ若槻君ノ
御答辯ニ依レバ、衆議院ノ修正案ハ政府ノ原案ヨリハ頗ル改善サレタモノデ
アルト云フヤウニ御話ガアッタノデアリマス、大藏大臣ノ衆議院ニ於ケル御聲
明ニ依リマスルト、澁〓御同意ヲサレタガ如キヤウニ伺ハレルノデアリマス、
併ナガラ事實ハ大藏大臣ノ此御聲明ハ私ハ全然無意義ノ御聲明デアルダラウ
ト思フ、貴衆兩院ヲ通過シテ參フタ以上ハ、例ヘバ政府ガ同意サレヤウト或
ハ不同意デアラウト、サウ云フコトニ頓著ハナイ、通過シテ法律トナルノデア
リマス、何モ貴衆兩院ヲ通ッタカラ、通ッテ來タナラバ同意スルトカセヌトカ
云フヤウナコトハ、全ク入用ノナイコトデアリマス、斯樣ナコトヲ仰セラルル
ノハ.何ダカドウモ整理計畫ニ對スル政府ノ無定見ヲ現ハシテ居ラレルヤウ
ナ風ニモ考ヘラレルノデアリマスガ、此際私ハ此修正案ニ同意ニナッタ眞ノ理
由ヲ玆ニ確カト大藏大臣ヨリ伺ッテ置キタイノデアリマス、第二ハ田畑地租一
分減ノ原案修正ハ稅制整理計畫ノ實質ヲ根本的ニ變更スルモノト認メズヤ、
是ガ第二ノ質疑デアリマス、政府案ノ田畑ニ對スル地租率輕減ノ理由ハ申ス
迄モナク耕地ニ對スル負擔ヲ輕減シテ、農村ノ振興ニ資セムトスルニアルト
云フコトハ、大藏大臣モ過日說明セラレ、又今朝モ總理大臣ニ於テ此事ヲ高
調サレタ所デアリマス、而シテ此地租率輕減ニ對スル衆議院ノ修正ニ付キマ
シテハ若槻總理ハ此修正案ハ整理案ノ唯一小部分ノ修正ニ過ギナイト云フ
ヤウニ仰セラレ、極メテ輕ク小サク取扱ハレテ居ラレタノデアリマス、併ナ
ガラ此地租ノ輕減ト申スコトハ、今囘ノ稅制整理計畫中ノ一ノ重要ナル事項
ナリト世間デハ認メテ居ルノデアリマス、ソレニモ拘ラズ今遽ニ衆議院ノ修
正ニ同意セラレテ、稅制整理トハ全ク別種ノ性質ニ屬スル義務〓育費國庫負
擔ノ增額一千万圓ノ犠牲ニ之ヲ供シテ迄モ地租輕減ト云フコトヲ抹殺シ去ラ
ムトセラレマスノハ、稅制整理計畫ノ實體ヲ根本ヨリ破壞スルモノデナイカ
ト私ハ考ヘルノデアル、政府ハ、例ヘバ一分減デモ、〓育費ノ增額デモ、農村ノ
負擔ヲ輕減スル趣意實質ニ於テハ少シモ變リガナイ、實際ノ效果ニ於テハ歸
著スル所逕庭ナシト云フヤウニ若槻總理モ今朝仰セラレタノデアリマス、併
ナガラ申ス迄モナク稅制整理ト申スコトト、〓育費負擔ト申スコトハ、全然別
箇ノ問題デアリマス、性質ガ違ッテ居ル、唯單ニ計數ノミノ打算ニ依ッテ、算盤
球ノヤリ繰リデ整理計畫ノ重要ナル一角ヲ崩スト云フコトハ、卽チ整理計畫
全體ノ實質ヲ變更スルト云フコトデハ私ハアルマイカト思フ、斯樣ナ修正ニ
政府ガ同意セラレマスコトハ、政府ニ於テ重大ナリト考ヘテ居ラレル稅制整
理ノ遂行ニ對スル政府ノ信念ヲ私ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、如何ニ
若槻總理ガ長廣舌ヲ振ハレマシタ所ガ、此缺陷ハ蔽フコトハ出來マイト思フ
ノデアリマス、併ナガラ此事ニ付テハ今朝モ既ニ若槻總理ヨリ詳シク御辯明
ガアッタ、多分私ノ質問ニ對シテ同樣ノ御辯明ダラウト思フノデアリマスガ、
若シ同樣ナラバ之ニ對スル御辯明ハ御省略ニ相成リマシテモ宜シイノデアリ
マス、第三ハ田畑地租一分減ノ原案修正ハ地租ト營業稅トノ不均衡ヲ增大ス
ルモノト認メズヤ、政府ガ田畑地租輕減ノ理由ハ、大藏大臣ガ衆議院ニ於テ說
明セラレマシタ所ニ依リマスレバ、
〔議長公爵德川家達君議長席ニ著ク〕
大正十二年ノ稅制整理ノ際ニハ營業稅ニ付テハ千九百万圓ノ減稅ヲナシタル
ニ拘ラズ、地租ニ付テハ少シモ輕減ヲ行ハズシテ、兩者ノ權衡其當ヲ失シテ
居ル故ニ、今囘ノ改正ヲ機トシテ地租ニ相當ノ輕減ヲ行フハ適當ナル措置デ
アルト云フ御說明ヲナスッテ御イデニナルノデアリマス、此御說明ハ······過
日ノ貴族院ニ於ケル御說明ハ是丈ハ省イテアッタノデアリマス、大藏大臣ノ
此御言葉ニ依ッテ見マシテモ、現在ニ於テ此地租、營業稅ノ兩者ノ間ニ斯ノ
如キ不權衡ガアルノデアリマス、故ニ政府ハ今囘ノ改正ニ於キマシテハ、地
租ノ輕減ニ依ッテ九百六十万圓ヲ減ジ、營業稅ニ代ハル營業收益稅ノ輕減ニ
依ッテ四百十万圓ヲ減ジ、差引キ地租ノ方ヲ五百五十万ダケ餘計ニ輕減シテ、
兩者ノ權衡ヲ得セシメムトセラレタノデアリマス、然ルニ衆議院ノ修正ニ依ッ
テ、一分減ヲ抛棄スルコトトナリマスレバ、地租ハ一文モ輕減セラレズシテ、
營業稅ノミ却ッテ四百十万圓ノ輕減ヲナシテ、現在デサヘ權衡ヲ失シテ居ル
兩者ノ間ハ、愈〓以テ權衡ヲ失スルト云フコトニ相成ルカト、私ハ思フノデア
リマス、サスレバ此重要ナル二ツノ補完稅間ノ負擔ノ均衡ハ彌ガ上ニモ不釣
合ト相成リマシテ、稅制整理ノ趣旨ガ何所ニ在ルカト云フコトガ分ラナクナッ
テシマフノデハナイカト私ハ思ヒマス、故ニ此事ニ付テ政府ノ御所見ヲ伺ヒ
タイ、第四ハ十七年度以降ニ於テ實施セムトスル課稅標準ノ改正ニ依ッテ得
ムトスル地租總額ハ政府原案、修正案ノ何レヲ目標トスルカ、政府ノ原案タル
地租一分減ハ根本ノ改正ニ先ダテル經過的改正ニ過ギナイノデアリマス、根
本ノ改正ハ十七年度ヨリ之ヲ實行サレテ、課稅標準ヲ賃貸價格ニ捉へ、而シ
テ其稅率ノ定メ方ハ、大體地租ノ總額ヲシテ今囘ノ經過的改正ニ依ッテ低減セ
ラレタル結果ノ金額ヲ超過セシメザルヤウ規定セムトスル、政府ノ御意思デ
アルヤウニ承ルノデアリマス、私ノ之ニ付テ承リタイノハ、若シ此修正案ガ
法律トナリマシタ曉、大正十七年度以降ノ賃貸價格ニ依ル稅率ヲ定ムル際ニ
於テ標準トスル地租ノ總額ハ、政府原案卽チ百分ノ三箇五ト云フ地租ニ依リ
マスルカ、或ハ修正案タル百分ノ四半ニ依ルノデアリマスルカ、之ヲ明白ヲ
期スル爲ニ一應伺ヲテ置キタイノデアリマス、第五ハ政府ガ田畑地租一分減ノ
原案ヲ抛棄シ、義務〓育費國庫負擔額一千万圓ノ增額修正ヲ承認シタル理由
如何、市町村義務〓育費國庫負擔法制定ノ趣旨ハ、市町村立尋常小學校〓員
ノ俸給ニ要スル經費ノ一部ヲ國庫ニ於テ負擔スルト云フ〓育行政ノ見地ヨリ
出デタルモノト私ハ考ヘルノデアリマス、而シテ私ハ詳シクハ存ジマセヌケ
レドモ、〓育會議トカ、或ハ臨時〓育行政調査會トカ云フ權威アル〓育家ノ
會合デハ、義務〓育費國庫負擔額ノ目安ハ先ツ總額ノ半分ト云フ所ニ目安ヲ
置イテ居ラレルト云フコトデアリマス、今日全國尋常小學校〓員ノ俸給總額
ハ一億二千五六百万圓デアルト私ハ承ッテ居ル、サスレバ此目安ヲ······半額ト
云フ目安ヲ完全ニ實現セシムル爲ニハ六千万圓ノ負擔デ先ヅ結構デアルト、
私ハ思フノデアリマス、卽チ今囘政府ガ從來ノ四千万圓ヲ二千万圓殖ヤシテ
六千万圓ニスルト云フ御提案、是デ私ハ結構デハナイカト思フノデアリマス、
然ルニ此タビ政府ハ地租一分減ノ政府原案ヲ棄テテ、更ニ一千万圓卽チ七千
万圓マデノ負擔額ヲ認メラレテ、其上更ニ十六年度ニ於テ尙ホ一千万圓支出
ノコトヲ考慮スルト云フ言質マデ與ヘラレマシタコトハドウ云フ理由デア
リマセウ、如何ナル緊急的必要ガアッテ斯樣ナ修正ヲ差支ナシト御認メニナッ
タノデアリマセウカ、假令主義トシテ半額以上ノ國庫負擔ヲ可ナリト認メテ
モ、今日ノ如キ國家ノ財政ノ困難ナル場合ニ於テ、極メテ大切ナル稅制整理
計畫ノ一部ヲ抛棄シテモ、又殊ニ今日國家ノ存亡ニ最モ關係ノアル海軍國防
ニ關スル財源問題ニ付テ、世間ガ頗ル囂々喧シク論評シテ居リマスル際ニ於
テ、斯ノ如キ時ニ一千万圓ヲ是非增サナケレバナラナイト云フ理由ガ、私ハ
何所ニ在ルカト云フコトガ分カラヌ、世間デ申ス政府ト在野政黨トノ妥協ノ
爲ニ斯ノ如キコトヲスルト云フ外ニ私ハ何等ノ理由ヲモ見出スコトハ出來ナ
イノデアリマス、一體此數千万圓ノ巨額ニ上ル國庫負擔額ガ市町村ニ分配サ
レテ、ソレガドウ云フ風ニ使ハレテ居ルノデアリマセウカ、其使途ニ付テ私
ハ政府ガ分カッテ居ルダケノ最近ノ明細ナル數字ノ內容ヲ書面ヲ以テ御示シ
ヲ願ヒタイト云フコトヲ序デナガラ要求イタシテ置クノデアリマス、第六ハ
政府ハ八千万圓ノ中一千万圓ハ、十六年度以降ニ於テ財源ノ餘裕アル限リ他
ノ緊急ノ施設ト共ニ篤ト考慮スルト云フ、政府ノ衆議院ニ於ケル聲明中、考慮
ナル字句ハ、ドウ云フ意味デアルカ、過日衆議院ニ於テ本案ノ特別委員會ノ
報告ヲ本會議ニ於テセラレマシタ際、元田委員長ハ考慮ト云フコトハ、政府
ガ承諾シテ實行スルト云フコトナリト解釋シテ居ル、斯樣ナ說明デ此案ハ衆
議院ヲ通過シタノデアリマス、政府ハ此解釋ヲ是認セラルルヤ否ヤ、或ハ考慮
ト云フコトハ、唯アッサリ金ガ餘ッテ居ルヤウナコトガアッタラバ、外ノ事業ト
共ニ序デニ考ヘテ見ヤウト云フ位ノ程度ノモノデアリマセウカ、又之ニ關シ
テ若シ承諾實行ト云フ意味ニ於テ政府ハ聲明セラレマシタナラバ、政府ハ斯
カル公約ヲナサレマシタ以上、果シテ十六年度ニ財源捻出ノ確實ナル見込ア
ルヤ否ヤ、ト云フコトヲモ、併セテ伺ッテ置キタイノデアリマス、第七ハ小
作農ニ免稅點ノ恩典ヲ與ヘザルハ政府ノ所謂社會政策ノ趣旨ニ反スト認メズ
ヤ政府ハ此自作農ト小作人ノ不均衡ヲ矯正スル何等ノ對策ヲ有スルヤ否ヤ、
田畑地租ニ免稅點ヲ設ケマシタコトハ、大藏大臣ノ御說明ニ依リマシテモ、
政府ノ所謂社會政策的效果ヲ舉ゲムガ爲ナリト思ハルルノデアリマス、果シ
テ然ラバ自分デ耕作スル四反カ五反ノ田畑ヲ有ツ力サヘナイ細民ノ農業、卽
チ小作農ハ、此恩典ニ浴シ得ザルガ如キ修正ニ政府ガ同意サレマシタコトハ、
明カニ社會政策ノ根本趣旨ニ反スルモノト思フノデアリマスガ、政府ハ如何
御考デアリマセウカ、自作農ノミ免稅スルト云フコトハ、畢竟比較的資力ア
ル自作農民ヲ厚遇シテ、無產者トモ稱セラレルベキ小作農民ヲ虐待スルト云
フ結果ヲ生ズルノデハアリマスマイカ、同ジ農業ヲ營ム國民ニ對シテ、一方
ニ厚ク一方ニ薄イ立法ヲ是認スルガ如キハ、果シテ國民生活ノ安定ヲ期スル
所以デアリマセウカ否ヤ、サウシテ尙政府ニシテ此兩者間ノ不權衡ヲ認メラ
レルニ於テハ、政府ハ此不權衡ヲ矯正スルニ於テ、何カ御考ガアルカドウカ
ト云フコトモ併セテ伺ヒタイ、第八ハ、右兩者差別待遇ノ結果ハ小作爭議ヲ
誘發助長スルノ虞ナシト認メラルルヤ、是ハ別ニ說明ヲ要シマセヌ自作農
ト小作農トノ所得ノ權衡ヲ得ザル結果、小作爭議ヲ頻發セシメルガ如キ事ガ
私ハアルト思フノデアリマスケレドモ、若シ斯樣ナコトガ起リマシタ場合、
政府ニ於テハ何等カ的確ナル對策ヲ有セラルルカドウカト云フコトヲ伺ッテ
見タイノデアリマス、第九、自作農免稅點設定ノ結果ハ農民ノ愛〓愛土ノ觀
念ヲ消耗セシメ、又合法的脫稅ヲ頻出セシムル虞ナキヤ、自作農ノ地價二百
圓未滿ノ田畑地租ヲ免稅スル結果ハ、地價二百圓以上ノ自作農者ハ其二百圓
以上ノ田畑ヲ賣拂ッテ、多クノ多數ノ二百圓未滿ノ自作農者ヲ作ルカ、或ハ又
同居以外ノ家族ノ名義ニ變更シテ、自作ノ形式ヲ作ッテ免租ヲ受ケルト云フコ
トガ、私ハ出來ルト思フノデアリマス、斯ノ如キハ我國ノ醇風美俗ト認メラ
レテ居リマス郷土ヲ愛スル土地ヲ愛スルト云フ觀念ヲ、次第ニ薄ラガシメル
ヤウニモナリ、又、他面ニハ合法的脫稅ヲ奬勵誘發スルト云フ結果ニモナルノ
デハナイカト私ハ思フノデアリマス、斯樣ニ自作農ハ地價二百圓未滿ノ土地
ニ限ル、ソレ以上ノ大キナ規模ノ自作農ハ經濟上不可ナリト云ハムバカリノ
原則ヲ當然トスル方法ハ甚ダ面白クナイヤウニ私ハ思フノデアリマス、是ハ
政府ハ如何ニ御考ヘデアリマセウカ、政府ガ自作農ヲ奬勵スルト云フコトハ
地價二百圓未滿ノ地租ノ自作農ヲノミ奬勵スル御趣旨デアルカドウカト云フ
コトモ、是モ一ツノ問題デハナカラウカト思フノデアリマス、第十、修正案
通過後ニ於ケル地租徵收ニ關スル市町村ノ事務ハ非常ニ煩雜トナリ、其費用
モ巨額ノ增加ヲ來ス虞ナキヤ、納稅者ガ自分ノ住所地市町村及隣接市町村ニ
於テ所有スル土地ノ······自作農ニ限リ······地價二百圓未滿ノ田畑地租ヲ免除
ヲスルト云フ此衆議院ノ修正ハ、地租徵收ノ責任者タル全國一万二千ノ市町
村ノ徵稅事務ヲ極メテ煩雜ナラシメ、徵稅費用ノ負擔ヲ非常ニ增加スルモノ
デハナイカト思ハレルノデアリマス、私ハ市町村ノ徵稅事務ニ付テハ何モ智
識モ經驗モ無イ者デゴザイマスガ、唯、普通常識カラ考ヘテ見マシテモ、一通
リナラザル複雜ナル手續ヲ要スルガ如クニ考ヘラルルノデアリマス、之ヲ全
國ニ通算シテ見マスト、頗ル巨額ナ特別ナル支出ヲ、是ガ爲ニ要スルニ至リ
ハセズヤト思ハレルノデアリマス、其額ノ多少ハ別問題ト致シマシテ、免ニ
角多クテモ少ナクテモ、ソレガ爲ニ增加セラルベキ經費ハ、矢張リ市町村ニ
於テ國稅徵收法ニ依ッテ負擔スルモノデアリマセウカ、或ハ又此爲ニハ特ニ
國家ニ於テ負擔セラレルト云フヤウナ特例ヲ設ケラレル御積リデアリマセウ
カ、是ガ私ノ最後ノ質問デアリマス、以上ノ質問ハ何レモ皆衆議院ノ修正ニ
關スル事實、或ハ又其事實ニ付テノ政府ノ御所見ヲ伺ッタノデアリマス、決シ
テ私ハ之ニ付テ是非ノ議論ヲ此際ニ致サウト云フ次第デハアリマセヌ、ドウ
ゾ政府ノ御答辯ハ出來ルダケ明確ニ御願ヒシタイト思ヒマス
〔國務大臣濱口雄幸君濱壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=14
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015・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 唯今ノ藤村男爵ノ御質問ニ對シマシテ私ヨリ成ル
ベク簡單ニ御答ヲ致シタイト思ヒマス、其事項ハ十箇條ノ多キニ達シテ居リ
マスノデ、或ハ是ヨリ御答ヲ致シマス事柄ガ御質問ノ全部ヲ漏ラサズ御答ヲ
スルコトガ出來ルヤ否ヤト云フコトハ多少疑ヒマスケレドモ、若シ漏レマシ
タ點ガアリマシタナラバ、更ニ御尋ネヲ願ヒタイト思ヒマス、第一ニハ政府
ガ衆議院ノ修正ニ同意ヲ致シタト云フ其ノ眞ノ理由ハ如何デアルカ、斯ウ云
フ御質問デアリマス、如何ニモ藤村男爵ノ御說ニアリマシタ通リ、此修正案
ガ衆議院ノ特別委員會ノ小委員會ニ現ハレマシテ、小委員會ニ於テ決定セム
トスル場合ニ於テ、此修正ニ對シテ政府ハ如何ナル所見ヲ有スルカト云フ質
問ヲ受ケマシタ場合ニ於テ、私ノ答辯ハ唯〓男爵ノ御述べニナリマシタ通リ、
此修正案ガ衆議院ニ現レ、多數ヲ以テ衆議院ヲ通過イタシ、又貴族院ヲ通過
シタ時ニ於テハ、之ニ同意ヲスル考デアルト云フコトヲ申シタニ相違ハナイ
ノデアリマス、其當時ノ私ノ考ヲ申上ゲマスレバ、直チニ小委員會ノ修正ニ
同意スルト云フコトヲ申ス譯ニハ參リマセヌ、卽チ議會ノ院議ヲ重ンズル趣
旨カラシマシテ、議會ヲ通過イタシタル時ハ同意ヲスルト云フコトヲ申シタ
ノデアリマス、爾來修正案ガ特別委員會ヲ通過イタシ、既ニ衆議院ヲ多數ヲ
以テ通過イタシタル今日デアリマス、從ッテ今日ノ場合ニ於テ政府ガ貴族院ニ
臨ムニ當リマシテ、此衆議院ノ修正ハ政府ト致シマシテ差支ナイモノト認ム
ルト······既ニ差支ナイモノト認メマスル以上ハ、此修正案ニ向ッテ御同意ヲ
願フト云フノガ當然ノ態度デアラウト考ヘマシタニ依ッテ、說明ノ際ニモ其事
ヲ申上ゲテ置イタ次第デアリマス、衆議院ノ修正ガ政府ノ原案ニ對シテ著シ
ク改善ヲセラレタト認ムルヤ否ヤト云フ御質問モアッタヤウデアリマスガ總
理大臣ハ本日阪谷男爵ノ御質問ニ對シテ說明ヲサレマシタガ、別ニ政府ノ原
案ニ對シテ非常ナ改善ヲサレタモノデアルカラ同意ヲスルトハ仰セラレナ
カッタト私ハ思ッテ居リマス、殊ニ地租條例中改正法律案ニ對スル衆議院ノ修
正ニ於キマシテハ、是ハ總理大臣カラモ申サレマシタ通リ、大體ニ於テ政府
ノ此度ノ稅制整理ニ依ッテ達成セムトシタル所ノ目的ヲ達スルニ適スルモノ
ト認ムル、固ヨリ地租ノ一分減ト云フコトト〓育費ヲ一千万圓增加スルコト
トハ其負擔ノ歸著スル所ニ於テ必シモ數字的ニ完全ニ一致ヲスルモノトハ
考ヘテ居リマセヌガ、是亦總理大臣ノ申サレマシタ通リ、大體ニ於テ農村ノ
負擔ヲ輕減シ、農村ノ振興ヲ圖ルト云フコトニモ、兩者共ニ歸著スルノデゴ
ザイマス、從ッテ政府ガ地租ノ一分減ト云フコトヲ實現スルコトニ依ッテ達セ
ムトシタル所ノ此農村振興ノ目的ハ假令地租一分減ヲ廢メマシテモ、ソレ
ヲ財源ト致シテ〓育費ヲ一千万圓增加スルコトニ依ッテ、大體ニ於テ同一ノ目
的ヲ達スルモノデアラウト考ヘマス、ソレ故ニ政府ハ此修正ヲ以テ敢テ差支
ノナイモノト考ヘマシテ、御同意ヲ求メル次第デアリマス、稅制整理ト云フ
局限サレタル範圍內ニ於テ考ヘマスレバ、地租一分減ト云フコトガ見合セニ
ナッタト云フコトデアリマスルガ、併ナガラ政府ノ政策ト云フモノハ、申スマ
デモアリマセヌガ、稅制整理ノミニ依ッテ之ヲ達スルニ及バヌト考ヘマス、
稅制整理ノ事柄ト他ノ事柄トヲ綜合イタシマシテ、サウシテ最初ニ期待シテ
居リマシタト同樣ノ目的ヲ大體ニ於テ達スルコトガ出來レバ、ソレデ滿足シ
テ宜カラウト考ヘマス、其見地カラ考ヘマスレバ、地租一分減ヲ見合セマシ
テ、〓育費一千万圓增加ノ財源ニ充テルト云フコトハ、政府ノ政策全體ト致
シマシテ、大體同一ノ所ニ歸著スルデアラウト考ヘマス、是卽チ政府ガ衆議
院ノ修正ヲ別ニ差支ノナイモノト考ヘマシテ、御同意ヲ求ムル所以デアリマ
ス、第二ノ御質問ハ唯今申上ゲマシタコトト重複ニナリマスガ、地租一分減
ト〓育費ノ振替ト云フコトデハアリマセヌガ、先ヅ振替ト申シマスカ、ソレニ
同意ヲシタ理由如何ト云フコトデアリマスガ、是ハ藤村男爵ヨリモ、總理大
臣ノ答辯ヲセラレタ點ト同樣ノ答辯デアレバ答辯ヲ省略シテモ宜シイト云フ
御注意デアリマシタガ、是ハ全然總理大臣ノ御答ヘセラレタコトト一致ノ意
見ヲ私ハ持ッテ居リマスカラ、改メテ御答申上ゲルコトハ省略イタシマス、第
三ニハ、地租ノ一分減ヲ見合セルト云フト、地租ノ負擔ト營業稅ノ負擔トノ
權衡ヲ愈〓失スルコトニナリハセヌカト云フ御質問デアリマス、其御質問ヲ
發セラレルニ當リマシテ、私ガ衆議院ニ於テ此稅制整理案ヲ提案イタシマシ
タ場合ニ於ケル所ノ說明ヲ御引用ニナリマシタ、數宇ヲ擧グテノ御質問デ
アッタノデアリマス、其御說ノ中ニ地租一分減ヲ見合セルト云フコトニナレ
バ、地租ニ於テ少シモ輕減スル所ハナイノミナラズ、營業稅ニ於テ、其反對
ニ四百餘万圓ヲ輕減スルコトニナルコトニ依ッテ其間不公平ヲ生ズルコトニ
ナリハセヌカト云フ御質問デアリマス、地租ノ一分減ハ廢メマスケレドモ、
地租ノ免稅點ト云フモノハ依然トシテ存置ヲ致シテ置キマスニ依ッテ、其免稅
點ノ點カラ致シマシテ千二百万圓ノ負擔ノ輕減ニナルト云フコトハ、是ハ御
了解下サルコトデアラウト思ヒマス、併ナガラ二百圓以上ノ土地所有者ニ向ツ
テハ一分減ヲ廢メマス結果ト致シマシテ、負擔ノ輕減ハナイコトニナリマス
ガ、其代リニ〓育費ノ方ニ向ッテ一千万圓ノ增加ニナリマスカラ、其負擔ノ
歸著スル所ハ、一分減ヲ行ッタト略〓同樣ノ結果ニナリマスカラ、別ニ全體ト
致シマシテ考ヘマスレバ、營業稅トノ間ニ負擔ノ權衡ヲ失スルト申サヌデモ
宜カラウト思ヒマス、卽チ農村ノ負擔ト商工業ノ負擔トハ一分減ヲ廢メマシ
テ〓育費ノ增額ニ當テマシテモ、ソレガ爲ニ負擔ノ不權衡ヲ生ズルコトハナ
カラウト考ヘテ居リマス、第四ノ御質問ハ地租ノ課稅標準ヲ賃貸價格ニ改メ
テ,大正十七年度カラ······十七年分カラ施行スル場合ニ於テ、其賃貸價格ニ
依ル所ノ地租ノ稅率ヲ定ムルニ當リマシテ、原案ニ依ル所ノ地租ノ總額ヲ標
準トシテ稅率ヲ決メルノデアルカ、或ハ修正案、卽チ一分減ヲ見合セタ場合
ニ起ル所ノ地租ノ總額ヲ標準トシテ稅率ヲ決メルノデアルカト云フ御質問デ
アッタノデアリマス、賃貸價格ノ調査終リマシテ、新地租法ノ制定ヲ致シ、議會
ノ御協賛ヲ仰ギマスルマデニハ二箇年ノ歲月ガアリマスカラ、ハッキリシタ
コトハ茲デ申上ゲルコトハ出來マセヌケレドモ、今日ノ狀態カラ考ヘマスレ
バ、既ニ地租一分減ト云フ政府ノ原案ヲ見合セルト云フコトニ致シマスル以
上ハ、十七年ニ於テ新地租法ヲ制定スル時ニ、賃貸價格ニ依ッテ稅率ヲ決メ
ルト云フ場合ニ於キマシテハ、現在ノ地租ノ額、卽チ一分減ヲ行ハザル所ノ
地租ノ總額ヲ標準トシテ稅率ヲ決メルノデアルト申上ゲル外ハナイト考ヘマ
ス、固ヨリ其時ノ狀態ニ依ッテ、財政上ノ事情ニ依ッテ變化ヲナシ得ル餘地ハ
アリマスケレドモ、今日カラ申上ゲマスレバ、現狀ノ儘ニ於テハ一分減ヲ
行ハナイ所ノ其地租ノ總額ヲ標準トシテ適當ナル稅率ヲ盛ルト申上ゲル外ハ
ナイノデアリマス、第五ノ御質問ハ〓育費七千万圓ト云フコトニ政府ガ同意
ヲスルト云ッタ其理由ハ如何デアルカ、斯ウ云フ御質問デアッタノデアリマ
ス、地租ノ一分減ト云フコトヲ政府ノ原案通リニ殘シテ置キマシテ、其上更
ニ〓育費ノ國庫負擔額ヲ一千万圓增加スルト云フコトハ是ハ財政上許サナイ
所デアリマス、政府ノ同意スルコトノ出來ナイ所デアリマスケレドモ、其一
千万圓ヲ增加スル財源ニ充ツルガ爲ニ、地租ノ一分減ヲ見合セルト云フ修正
デアリマス、財政上ノ見地カラ申シマスレバ、少シモ異ナル所ハナイノデア
リマス、而モ其農村ノ負擔ノ輕減ニ及ボス所ノ影響ト云フモノハ、大體ニ於
テ同一デアリマスト致シマスル以上、其〓育費ノ增額ニ向ッテ同意ヲスルコ
トハ別ニ差支ナイト思フノデアリマス、唯、七千万圓ト致シマスレバ、義務〓
育費ノ小學校ノ〓員俸給ノ半額以上ニナルデハナイカト云フヤウナ意味ノ御
說モアッタヤウニ拜承イタシマシタケレドモ、政府ハ今日ニ於キマシテ、別
ニ國庫ノ負擔額ハ小學校〓員ノ俸給ノ半額ニ止メナケレバナラヌト云フ主義
ヲ持ッテ居ル譯デハナイノデアリマス、財政上ノ狀態モ無論アリマスルガ、
其他諸般ノ情況ヲ判斷イタシマシテ、適當ニ〓育費ノ負擔額ヲ決メテ宜イト
考ヘマス、必ズシモ半額以上負擔シテハナラヌト云フ主義ヲ今日持ッテ居ル
譯デハナイト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、第六ノ御質問ハ、七千万圓ニス
ルト云フコトニ同意ヲ致シマシタ上、更ニ衆議院ニ於キマシテ私ガ聲明イタ
シマシタ、其聲明ニ付キマシテノ御質問デアッタノデアリマス、其聲明ハ唯今
男爵ノ御述べニナリマシタ通リ、殘リノ一千万圓、卽チ八千万圓ニスル爲ニ、
殘リノ一千万圓ト云フモノハ大正十六年以降ニ於テ財政ニ餘裕ヲ生ズルニ
至リタルトキハ他ノ緊急ナル施設ト共ニ篤ト考慮スベシ、斯ウ云フ聲明ヲ致
シタノデアリマス玆ニ於テ篤ト考慮スベシト言ッタ其考慮ト云フ意味如何ト
云フ御質問デアッタノデアリマス、是ハ私ハ政府ノ聲明ト致シマシテハ、他ノ
緊急ナル施設ト共ニ篤ト考慮イタシマスルト云フ事以上ニ、其說明ヲ申上ゲ
ル必要ハナイト思ヒマス、又十六年度ニ於テ一千万圓ノ財源ヲ捻出スルト云
フコトニ對シ、今日確定ノ見込ヲ有ッテ居ルカト云フ御質問デアッタノデアリ
マス、是ハ聲明ノ時ニモ申シテ置キマシタ通リ、十六年度以降ニ於テ云々ト
云フコトヲ申シテアリマスニ依ッテ、今日大正十六年度ニ於テ、一千万圓ノ確
カナル財源ヲ持ッテ居ルト云フコトハ、是ハ申上ゲヌデモ宜シイト考ヘマス、
第七ニハ地租ノ免稅點ニ關シマシテノ御質問デアリマス、政府ノ原案ニハ、
田畑ノ地價二百圓未滿ノ場合ニ於テハ、其人ノ住居イタシテ居ル所ノ市町村
內ニ於テ、田畑二百圓未滿ノ場合ニ於テハ其自作ヲシテ居ル土地タルト、
又ハ小作ニ付シテ居ル土地タルトニ拘ハラズ、凡テ免除スルト云フ意味ノ規
定ニナッテ居ッタノヲ、此度衆議院ノ修正ニ依シテ、「但小作ニ付シタル田畑ニ
付テハ此限ニアラス」卽チ地租ヲ免除シナイト云フコトニ修正サレタ以上ハ、
玆ニ自作農ト小作農トノ間ニ待遇ヲ異ニシタコトニナル、自作農ニ對シテハ
相當ノ恩惠デアルケレドモ、小作農ニ對シテハ恩惠ガ薄イト云フコトニナル
ト云フ意味ノ御質問デアッタノデアリマス、是ハ申スマデモアリマセヌ、地租
ノ免除ノ問題デアリマスルガ故ニ、自作農ニ對シテハ免除シ、小作農ニ對シテ
ハ免除セヌト云フノデハナイノデアリマス、小作ニ附シタル土地ニ付テハ、之
ヲ免除シナイト云フ意味デアリマス、卽チ土地ノ所有者ガ自ラ耕ヤシテ居ル
場合ニハ、是ガ隣接町村ノ分ヲ合セテ二百圓未滿デアッタ時ハ免除スルガ、假
令隣接町村合セテ二百圓未滿デアッテモ、ソレガ自ラ耕作セズシテ、他人ノ小
作ニ附シテ居ル場合ニ於テハ免除シナイト云フ修正ニナッタノデアリマス卽
チ自作農ハ免除スルガ小作農ハ免除シナイト云フコトニ修正セラレタノト全
ク意味ガ違ヒマス、小作農ニ對シテハ、初メヨリ、之ヲ免除ノシヤウガナイ
ノデアリマス、土地ヲ持フテ居ル者ニ對シテノ免除規定デアルガ故ニ、小作農
ト云フモノニ對シテハ、地租ノ免除ノ仕樣ガナイノデアリマス、從テ此度ノ
衆議院ノ修正ニ依ッテ、新タニ小作農ニ對シテ免除シナイト云フ修正デハナ
イト云フコトヲ宜ク御承知ヲ願ヒタイノデアリマス、然ラバ自作農ト云フモ
ノニ對シテハ、地租ノ免除ノ恩典ハアルガ、小作農ニ對シテハ地租ノ關係ニ
於テハ成程之ハ免除ノ仕樣モナカラウガ、其他ノ稅制整理ノ範圍內ニ於テ、
特ニ小作農ノ利益ニナルコトハ何ガアルカト云フ、サウ云フ御質問デアルト
致シマスレバ、是ハ特ニ小作農ノ負擔ヲ輕減スル意味ノ稅制整理ノ仕樣ハナ
イノデアリマス、强ヒテ申シマスレバ、單リ小作農ノミニ限リマセヌ、一部分,
中流階級以下ノ多數國民ノ負擔ヲ輕減スル爲ニ行ヒマシタ所ノ、此生活必要
品ニ對スル課稅ノ減免ト云フモノハ一般中產階級以下多數ノ國民負擔ノ輕
減ニナリマシテ、其利益ノ增進ヲ圖リマスコトニナリマスト同時ニ、小作農
ニ對シテモ亦其利益ノ均霑ヲサレルト云フ結果ニナラウト思ヒマス、第八ノ
御質問ハ、免稅點ヲ設ケル結果ト致シマシテ、小作爭議ヲ誘發スル虞レハナイ
カト云フ御質問デアッタノデアリマス、二百圓未滿ノ田畑ヲ有スル自作農ニ向
ヒマシテ、地租ノ免除ヲ致シマスルト、其結果ト致シマシテ、小作爭議ヲ誘
發スルト云フコトハ、少シモ政府ハ考ヘテ居リマセヌ、サウ云フ憂ハ萬々有
ルベカラザルコトト考ヘマス、ノミナラズ寧ロ反對ニ此度ノ自作農奬勵ノ政
策ニ依ッテ、寧ロ小作爭議ト云フモノヲ幾ラカ無クスル、之ヲ減少スルト云フ
傾向ガアルデアラウト云フコトヲ、私ハ考ヘテ居ル者デアリマス、卽チ小作
人ガ從來ノ如キ狀態ニアリマシテハ、何時マデ經ッテモ、土地ヲ所有スルト云
フ見込ガ乏シイ今日デアリマス、然ルニ此度ノ地租條例中ノ改正法律ニ依リ
マシテ、二百圓未滿ノ土地ヲ有ッテ之ヲ自作スル者ニハ地租ヲ徵收シナイト
云フコトニ致シマスルト云フト、是マデ他人ノ土地ヲ小作イタシテ居リマス
ル者ガ、自ラ勤儉力行イタシマシテ、僅ナル所ノ地面ヲ買入レマシテ、卽チ
免稅ノ思典ヲ受ケルト云フ望ミガアリマスカラ、勉强イタシテ、二百圓未滿
ノ田畑ヲ購入イタシ、之ヲ自ラ耕ヤスト云フ其傾向ヲ助長スルモノデアラウ
ト考ヘマス、卽チ自作農ノ奬勵デアリマス、左樣ニ致シマスレバ、小作農ガ
減少イタシテ、自作農ハ殖ヱルト云フ、其程度ハ別問題デアリマスガ、確カ
ニサウ云フ傾キヲ生ズルデアラウト思ヒマス、サウ云フ傾キガ生ジマスルト
云フコトハ、卽チ小作問題ノ解決ニ向ッテ假令顯著ナル效果ハナイト致シマ
シテモ多少ノ效果ハアルデアラウト云フコトヲ、政府ハ窃カニ期待シテ居
ルモノデアリマス、第九ノ御質問ハ、二百圓未滿ノ田畑ヲ有ッテ居ル者ハ免稅
ヲシ、二百圓以上ノ田畑ヲ有ッテ居ル者ハ免稅シナイト云フ規定ヲ設ケルト
云フト二百圓以上ノ田畑ヲ有ッテ居ル者ガ賣買其他ノ方法ニ依ッテ土地ヲ分
割スルト云フ弊風ヲ生ズル、ソレガ爲ニ〓土愛ト云フ醇風美俗ヲ傷ケル、又
合法的ノ脫稅ヲ助長スルト云フ弊害ハナイカト云フ御質問デアッタノデアリ
P〓、是ハ誠ニ御尤ナル御質問ト拜承イタシマシタガ、此點ニ付キマシテハ、
立法ノ當時ニ於テモ相當ナ研究ヲ致シマシタガ、今日私唯今手許ニ其表ハ持ツ
テ居リマセヌケレドモ、現行ノ登錄稅ノ稅率ハ相當ニ輕クナイ稅率デアリマ
ス、隨ヒマシテ二百圓未滿ノ田畑ノ自分ノ有フテ居ル所ノ廣イ面積ヲ分割ヲ
致シ、賣買ノ形式ニ依ッテ分割ヲ致ス、ソレニ依ッテ地租ノ免稅ヲ受ケムトス
ル場合ニ於テ、免除ヲ受ケル所ノ地租ノ金額ト、其免除ヲ受ケルガ爲ニ土地
ヲ分割スル、分割スルコトニ依ッテ賣買イタシマス、其賣買ニ依ッテ負擔スル
所ノ登錄稅ノ金額トヲ比較イタシマスルト云フト一賣買ノ形式ニ依ッテ登錄稅
ヲ拂ヒマシテ、ソレニ依ッテ二百圓未滿ノ小サイ田畑ニ致シテシマッテ、田畑ノ
免稅ヲ受ケルト云フコトハ、是ハ必シモ利益デナイノデアリマス、從ッテ登
錄稅ノ負擔ヲ甘ンジテ地租ノ免稅ヲ受ケルト云フガ如キ弊害ハ萬々生ジナイ
デアラウト考ヘマス、從ッテ御心配ノ如キ合理的ノ脫稅デアルトカ、或ハ〓土
ヲ愛スルト云フ其美風ヲ傷ケルト云フガ如キ御心配ハ蓋シナカラウト考ヘマ
ス、最後ノ御質問ハ免稅點ヲ設定イタスト云フ事柄ト、竝ニ自作農ニ限ッテ
ソレヲ免稅スルト云フ事柄ノ爲ニ、市町村ノ徵稅事務ガ增加シ、從テ市町村
ニ於テ新ニ費用ヲ要スルコトニナリハシナイカ、其費用ト云フモノハ是ハ市
町村ヲシテ負擔セシメル積リデアルカ、或ハ國費ヲ以テ之ヲ負擔スル考デア
ルカト云フ御質問デアッタノデアリマス、此點ニ付テモ政府ハ相當ノ考慮ヲ致
シマシタガ、此免稅點ノ規定ヲ設ケマスルガ爲ニ、新ニ市町村ノ徵稅事務ノ
增加ヲ致スト云フコトハ是ハ確カナ事實デアリマス、事務ガ增加ヲ致シマス
ナラバ其經費モ增加ヲ致シマスルガ、併ナガラ是ガ爲ニ增加スル所ノ其事務
ノ分量ト、從ッテ其金額ト云フモノハ、蓋シ極メテ少イモノデアラウト考ヘマ
ス、大藏省ノ當局ニ於キマシテ唯今調査中デアリマスルケレドモ、大體ノ〓
算ヲ致シテ見マスルニ、數十万圓ノ金額ガ全國ニ於テ殖エルタラウト云フ位
ノ考ヲ有ヲテ居リマス、決シテ是ハ精密ナル計算デハアリマセヌガ、達觀上數
十万圓ノ金額デ濟ムダラウ、併シ其金額ハ初年度ニ於テハ或ハ殖エル、次年
度以後ハ一層減少スルダラウ、是位ノ大體ノ達觀ヲ有フテ居リマス、精密ノ
調查中デアリマスガ、其調査ガ出來マスレバ金額ノ如何ニ依ッテ、場合ニ依リ
マシテハ追加豫算ヲ提出イタシマシテ、御協賛ヲ仰グコトニナルカモ知レヌ
ト考ヘテ居リマス、以上ヲ以テ大體御質問ニ御答イタシタ積リデアリマスガ、
若シ洩レタ點ガアリマスレバ更ニ御尋ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=15
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 藤村男爵······藤村男爵ニ今伺ヒ洩ラシマシタガ、
何ト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=17
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018・藤村義朗
○男爵藤村義朗君 私ハ重ネテノ質疑ハ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 金杉英五郞君ノ登壇ヲ望ミマス
〔金杉英五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=19
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020・金杉英五郎
○金杉英五郞君 私ハ稅制ナドニ付キマシテハ固ヨリ何等ノ知識ナキモノデ
アリマス、從ッテ今囘政府ガ御提案ニナリマシタル稅制整理ナドノコトニ付キ
マシテハ其廢稅ガ宜イカ、增稅ガ惡イトカ云フヤウナコトニ付キマシテハ、別
ニ御質問申上ゲル積リデアリマセヌ、從ッテ此案ヲ撤囘セヨナドト言フ勇氣ハ
到底私ヨリ出ヅル事ノ出來ザル事柄デアルト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、
唯一二申上ゲテ置キタイコトハ通行稅及〓涼飮料課稅ノコトガ第三十九議
會ニ、卽チ寺內內閣ノ時ニ、私ガ衆議院ニ在任中提案サレタコトガアリマス、
其際ニ於キマシテ私モ委員ノ一人ト致シマシテ、此案ノ不可ナルコトヲ唱ヘ
マシタ、ソレハ改メテ申スマデモナク昨日阪本君ガ御述ベニナリマシタルヤ
ウナ事柄ニ依テ反對イタシタノデアリマス、卽チ通行稅ニ付キマシテハ、固ヨ
リ其初メニ於キマシテハ人〓之ヲ惡稅ト唱ヘタルコトハ申スマデモナイコト
デアリマスルケレドモ、今日二十年ノ歲月ヲ經タル場合ニ於キマシテ、何等ノ
苦痛ヲ國民ニ與ヘザル案デアル、而シテ尙ホ十年以上ヲ經タル稅ハ惡稅モ善
稅ニ變ハルモノデアルト云フ經濟上ノ原理ヨリ申シマシテモ、少シモ差支ナ
イモノデハナイカ、大體サウ云フ意味ニ於キマシテ玆ニ反對ヲ致シマス、又
〓涼飮料水課稅ニ付キマシテハ一ツハ阪谷男爵ノ今朝述ベラレタルヤウナ
意味、モウ一ツハ〓涼飮料水ハ今ヤ醫事衞生ノ上カラ申シマスルト贅澤品ニ
非ズシテ國民飮料デアル、卽チ政府ノ仰シヤル所ニ依リマスルト〓上流ノ人
ノミガ飮用スルヤウニアリマシタケレドモ、其實ハ筋肉勞働者或ハ學生等ノ
用ヒマスルコトガ多イノデアリマス、從フテ是ガ傳染病豫防或ハ腎臟ノ疏通ヲ
良クスルト云フヤウナコトノ關係カラ、知ラズ識ラズ少ナカラザル效ノアル
モノデアリマス、ソレ故ニ之ニ課稅スルノハ宜シクナイ、特ニ社會政策ヲ加
味スルト稱シテ之ニ課稅イタシ、又一方通行稅ハ之ヲ廢スルト云フニ至リマ
シテハ、我〓ノ考トハ餘程違ッテ居ルト云フコトデ其時反對シタノデアリマ
ス、ソコデ其際ハ否決セラレタルコトハ御承知ノ通リノ次第デアリマス、其
意味ニ於キマシテ、今日モ尙ホ、此事ハ甚ダ宜クナイモノデアルト云フコトヲ
一言申上ゲテ置キマス、次ハ賣藥稅廢止ノ問題デアリマス、此事モ昨日阪本
君ノ質問ニ對シ大藏大臣ヨリ詳細ニ御說明ガアリマシタケレドモ、是ガ果シ
テ社會政策ヲ加味シタルモノト大聲疾呼スル程ノ事柄デアリマセウカドウ
カ、我〓ヨリ見マスレバ寧ロ反對ノ考ヲ持タナケレバナラヌヤウニ思フノデ
アリマス、昨日ノ御答辯ニ依リマスルト、賣藥ハ下層民ニ對シテ必需品デア
ル、第一ニハ醫師ノ存在セザル場所ニ於テ必要デアル、第二ニハ貧困ニシテ醫
師ノ治療ヲ受クルコト能ハザルモノニ必要デアル、第三ニハ醫師ニ掛カル前
ニ緊急治療トシテ必要デアル、斯ウ云フ御說デアッタヤウニ承リマシタ、此事
ニ付キマシテハ政府當局特ニ内務大臣ニ御考慮ヲ煩ハサナケレバナラヌコト
デアリマシテ、醫師ノ存在セザル場所ニ必要デアルト云フコトデアルナラバ、
何故ニ醫師ヲ配布イタス方法ヲ講ゼザルカ、此事ナドガ蓋シ社會政策トシテ
ハ最モ重要ナルモノデハナカラウカト思フノデアリマス、ソレニ付テ大正十
二年ニ時ノ內務大臣ガ地方長官ニ命令ヲ發シマシテ、公費ヲ以テ郡或ハ府ノ
醫師ノ存在セザル場所ヲ救濟シヤウト云フ考ヲ起シテ、醫師ノ存在セザル村
落ヲ調查サセタコトガアリマス、其報〓ニ依リマスルト、全國ヲ通ジテ醫師
ノ存在セザル村落ガ千六百餘リアリマス、ソコニ住ンデ居リマスル人間ノ數
ハ六十万人デアル、斯ウ云フコトノ復命デアリマシタヤウニ承ッテ居リマス、
而シテ之ニ國庫ヲ以テ經費中補助スレバドノ位デ此六十万人ヲ救護スルコト
ガ出來ルカト申シマスルノニ、我〓ノ算用ヲ致シマシタル所ニ依リマスルト、
一箇年一百万圓乃至一百二十万圓ヲ之ニ充テマスレバ、此六十万人ノ醫師ヲ
見ルコトノ出來ザル所ノ同胞ヲ救護スルコトガ出來ルノデアリマス、如何ニ
モ容易イコトデアリマス、是等ノ事ニ少シモ御著目ニナラズニ、何等ノ苦情
モナク何等ノ間違モナク一千二三十万圓納メテ居リマスル所ノ賣藥稅ヲ廢ス
ルト云フコトハドウ云フモノデアラウカ、申上ゲルマデモナク社會政策ノ根
本義ハ國民生活ノ安定卽チ衣〓住ノ充足、不幸或ハ疾病ニ罹リマシタル者ノ
救護ニアルト私ハ存ジテ居リマス、言ヒ換ヘテ見マスレバ、保健衞生ニ依テ
國民ノ福利ヲ增進スルト云フコトニアルト信ジテ居リマス、此賣藥稅ヲ廢シ
タル爲ニドウシテ國民ノ福利ヲ增進スルコトガ出來ルノデアリマセウカ、是
ガ私ガ非常ニ疑ッテ已マザル所デアリマス、賣藥ト云フモノハ昨日阪本君モ述
ベラレマシタル通リ、元來無效無害ト云フコトヲ原則ニシテ時ノ政府ガ之
ヲ許可シタモノデアリマス、其後漸次ニ進步イタシマシタト申シマセウカ、
或ハ衞生上カラ申シマスレバ退步シタト申シマセウカ、無效無害ト云フコト
ガ餘程變遷シテ參ッタノデアリマス、賣藥ノ種類ヲ區別イタシマスルト大要左
ノ如クナリマス、第一ニハ無害無效、卽チ嗜好品同樣ノモノデアルト云フノ
ガ第一種類ノモノデアリマス、第二種類ハ無害微效ノモノデアリマス、害ガ
無クテ少シバカリ效ノ有ルモノ、是ハ疾病如何ニ依リマシテ幾ラカ利クコト
ガ出來ルト云フモノデアリマス、第三種類ハ有害微效デアリマス、ドウシテ有
害微效デアルカナラバ、通常ノ場合ニ於キマシテハ一服デ利キマスル所ノ藥
ヲ、素人ガ此頃ハ能ク心得テ居リマシテ、賣藥ト云フモノハ分量ガ少イト云フ
コトデアルカラ四服モ五服モ一〓ニ飮マナケレバイカヌト云フノデ、自分ノ
病ガ如何ナルコトモ知ラズニ四服モ五服モ飮ムト云フ、其爲ニ及ボス所ノ害
ハ少カラザルモノデアリマス、是ガ有害微效ト稱スルモノデアリマス、而シ
テ全體ニ申シマスレバ、賣藥ト云フモノハ祕密藥デアリマス、佛蘭西ニ於キ
マシテハ之ヲ許サナイコトニナッテ居リマス、英吉利ニ於キマシテハ一割ノ
稅ヲ課シテ居リマス、其他ノ國ニ於キマシテハ賣藥ノ大部分ガ醫師ノ處方箋
デナケレバ與フルコトノ出來ザル規定ニナッテ居ルノデアリマス、ソレカラ此
有害微效ノ藥ノ爲ニ、一年ニ危險ノ狀態ヲ呈シマスル者ガ頗ル多クアリマシ
テ、是モ此際政府當局ノ御方ニ申上ゲテ置ク必要ガアルト思ヒマス、而カモ
是ハ內務大臣ノ御調査ニナッタコトデアリマシテ、御承知トハ存ジテ居リマス
ケレドモ、大體申上ゲテ置ク必要ガアルト思ヒマス、卽チ內務省ノ調ベニ依
リマスト、昨年一ヶ年ニ賣藥服用ノ爲ニ危險ニ陷リタル者ガ、全國ヲ通ジテ
六千四百九十六人、其內二百三十三名ハ死亡シテ居リマス、是ガ昔時ノ無害
無效ヨリ一轉イタシマシテ、有害微效ノモノヲ賣捌クコトガ出來ルヤウニナッ
タル一ツノ出來事デアルト御承知アリタイノデアリマス、斯ノ如ク無害無效
デアリ、有害微效デアルト云フヤウナ、此賣藥ヲ普及セシメテ、以テ大ナル
社會政策ノ如ク大聲疾呼セラルルニ於キマシテハ、文化ノ民タル我〓ノ體面
上、國際上許スベカラザル一大事デアルト、私ハ深ク痛歎スルノデアリマス、
若シ社會政策ヲ高處大處ヨリ見テ、之ヲ實施實行セムトスルナラバ、外ニ種
々雜多ノ事ガ澤山アリマス、是等ノ事ヲ致シマスル爲ニハ通行稅ヲ廢スル
コトナク、又賣藥稅モ······何ノ苦情ノナイ賣藥稅ヲ廢スルコトナク、是等ノ
モノヲ以テ充ツルヤウニ致シタナラバ、頗ル便利デハナカラウカ、又國民ノ
福利ヲ增進スル上ニ於キマシテ大ナル效果ガ有リハセヌカト思ハルルノデア
リマス、此賣藥稅ノ起リマシタル最初ヲ申シマスレバ、明治十年一月二十日
ニ衛生施設上種々ノ考ガ起キタケレドモ、金ノ無イ爲ニ非常ニ窮シタノデア
リマス、時ノ御雇外人「ゲールツ」ト云フ人ガアル、「ゲールツ」氏ニ相談イタ
シマシタ所ガ、文化ノ未ダ普ク及バザル日本國ニ於テハ、是ヨリ益〓賣藥ト云
フモノガ發達スルニ違ヒナイカラ、賣藥稅ヲ取レト云フコトデ、「ゲールツ」
ト云フ人ノ智慧デ始メタノガ本デアル、ソコデ先ヅ東京ヨリ始メマシテ二万
圓ノ稅ガ取レテ、ソコデ御成街道、或ハ一ツ橋等ノ排水ニ必要ナル暗渠ヲ造ツ
タノガ本デアルサウデアリマス、是ハ故長與專齋氏ヨリ詳シク我〓ガ聞キ傳
ヘテ居リマスルコトデアリマスルシ、又昨年內務省ノ依賴ニ依リマシテ、私
ノ書キマシタ醫制五十年史ニモ大要ハ書イテ置キマシタ、サウ云フ工合デ賣
藥稅ハ最初衞生施設ノ爲ニ必要ナル金ヲ得ムガ爲ニ計畫シタノガ本デアル、
若シ歷史ヲモ尊重セネバナラヌト云フコトデアルナラバ、是等ノ事ヲ御一考
ニナッテハ如何カト思フノデアリマス、先日大藏大臣ガ衆議院ニ於ケル御答辯
ノ中ニ、下層社會ニ遍ク用ヒラレル所ノ賣藥ニ稅ヲ課スル如キコトハ無情ノ
政治家デアルト云フ御話デアッタサウデアリマスルガ、私ハ直接ニ承ハッタノ
デハアリマセヌガ、是ニハ私ハ反對デアリマシテ、高處ヨリ見テ、社會政策
ノヨリ大ナルモノヲ御樹立ニナラズニ、斯ノ如キ姑息ノコトヲ以テ社會政策
デアルト御力說ニナルコトガ、却ッテ無情ノ政治家デハナカラウカト、失禮ナ
ガラ思ハルルノデアリマス、是等ノコトニ付キマシテハ平素御懇親ヲ辱ウ
致シテ居リマスルカラ、膝ヲ突合セテ御相談ヲ致シテモ宜イコトデアルケレ
ドモ、中〓大臣サンナトト云フ者ハ、我〓ノ言フコトヲ容易ニ聽カレナイノ
デアリマス、尙ホ內務大臣ニ此際御伺ヒシタイコトハ、斯ノ如キ稅ヲ御廢止
ニナルヨリハ、之ヲ此儘ニ置イテ、世界第一ノ微々タル我日本國ノ衞生行政
中樞機關ノ擴大ニ充ツルトカ、或ハ世界第一ノ結核國デアリ、世界第一ノ傳
染病國デアリ世界第一ノ花柳病國デアル現今ノ我ガ日本ノ衞生保健ノ上ニ此
金額ヲ差向ケテ、十分ニ國民衞生保健ノコトニ御盡力ニナル御意思ハナイカ、
其コトヲ內務大臣ヨリ承リタイト思フノデアリマス、卽チ質問ノ要ハ、大藏
大臣ハ如何ナル點ヲ以テ、最大ノ社會政策ト御考へニナッタノデアリマセウ
カ、又內務大臣トシテハ、ヨク大藏大臣ト御談合ノ上、是等ノ稅金ヲ衞生保
健ノ施設方面ニ御向ケニナル御意思ハナイカ、御伺申シタキ大要ハ右ノ次第
デアリマス
〔國務大臣濱口雄幸君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=20
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021・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 唯今金杉君ヨリ賣藥稅ノ廢止ト云フコトガ何故ニ
最高ノ社會政策デアルカト云フ御質問ガアッタノデアリマス、而シテ其御質問
ヲサルルニ當リマシテ、金杉君ハ賣藥稅ノ沿革、竝ニ賣藥ノ內容ニ付キマシ
テ、詳細ニ御述ベニナリマシタ、如何ニモ賣藥ノ中ニハ種々ノ種類ガアルデ
アリマセウ、政府ハ此稅ヲ廢止セムトスル理由ハ、賣藥ト云フモノハ、全部
ガ生活必需品ト認メタ爲デハアリマセヌ、成程御說ノ通リ、中ニハ嗜好品或
ハ更ニ進ンデ寧ロ贅澤品ニ屬スルモノモ有ルカモ知レヌト思フノデアリマス
又其性質カラ申シマシテモ、或ハ有害微效ト云フモノモアルデアリマセウガ、
其有害ナル所以ヲ唯〓承ッテ居リマスレバ、服用其度ニ過ギル、卽チ多クノ
分量ヲ一時ニ飮ム爲ニ玆ニ有害トナルト云フ御說明ガアリマシタ、サウ云フ
場合モアラウト思ヒマス、併ナガラ今日ノ國民生活ノ現狀ニ於キマシテ、賣
藥ト云フモノハ如何ナル階級ノ人〓ガ主トシテ使用シテ居ルモノデアルカト
云フコトヲ、政府ハ考ヘタノデアリマス、此賣藥ヲ如何ナル種類ノ國民、如何
ナル階級ノ人ミガ主トシテ用井テ居ルカト申シマスレバ、是ハ最初ニ說明ノ
際ニモ申上ゲテ置キマシタ通リ、主トシテ山間僻邑ノ住民ニシテ、醫師ノ診療
ヲ受ケル便宜ヲ有セザルモノ、是ハ醫者ノ少イト云フ點カラ來テ居ルデアリ
マセウ、或ハ又貧困ニシテ醫師ノ診療ヲ受クル所ノ資力ノ乏シイモノ、第三ニ
ハ金杉君ノ御述ベニナリマシタ通リ、醫師ノ來ル間ノ應急的治療トシテ普通
之ヲ消費スルト云フ如キ、消費ノ狀態ニナッテ居ルト信ジマス、無論例外ヲ申
シマスレバ有リマス、アリマスガ、總テノモノニ例外ハアリマセウガ、大體
カラ申シマスレバ、賣藥ノ消費ハ左樣ナル狀態ニ於テ、今日行ハレテ居ルモ
ノト思ヒマス、然ル以上、如何ニモ政府ガ稅制ノ整理ニ依リマシテ社會政策
ヲ行ハムトスルニ當リマシテ、或ハ綿織物消費稅、或ハ通行稅、或ハ醬油稅等
ト共ニ當然廢止スベキ種類ニ屬スルモノト認メタノデアリマス、固ヨリ賣藥
稅ノ廢止ト云フコトヲ以テ······之ノミヲ以テ、政府ハ最高ノ社會政策ヲ行ッタ
モノトハ考ヘテ居リマセヌガ、是亦社會政策ノ一ツデアルト云フコトヲ考ヘ
テ居リマス、專門家ノ見地ヨリ御〓究ニナリマスレバ、種々ノ例外モアリマ
セウ、又種々ノ不均衡ナル點モアリハ致シマセウガ、ソレハドチラカト申シ
マスレバ寧ロ局部的ノコトデ、國民消費ノ現狀ノ大體カラ考ヘマスルト、
右申ス通リノ次第デアリマシテ、之ヲ廢止スルコトハ、社會政策ノ一ツデア
ルト信ズル爲ニ廢止案ヲ提案イタシタ次第デアリマス、甚ダ簡單デゴザイマ
スケレドモ、之デ御答ト致シマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=21
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022・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 我ガ國ノ衞生上マダ十分ナラザル所ガアッテ、是
ガ施設ヲセヌケレバナラヌト云フ事柄ハ金杉君ノ御述ベニナッタ通リデア
リマス、內務省所管ニ於テモ、今日マデニ實施イタシマシタ所ハ、固ヨリ十
分デアルトハ認メテ居リマセヌノデ、國民衞生保健上、モット/〓施行スベキ
事ガアラウト思ウテ居ルノデアリマス、是ハ順序ヲ追ウテ實行スルコトニ努
メタイト考ヘテ居リマスガ、賣藥稅ニ依ッテ得ル收入ヲ殘シテ置イテ、之ヲ
ヤッタナラバ宜イデハナイカ、斯ウ云フ御論ニ對シテハ、如何サマ賣藥稅ニ
於キマシテ、年額千万圓バカリノモノガ國庫ノ財源ニナッテ居リマス、併シ今
囘ハ唯〓大藏大臣ノ御答辯イタシマシタ通リ、賣藥ニ限ラズ、其他ノモノデ
モ、現實國民ノ大多數、所謂中產以下ノ多數ノモノガ現ニ消費シテ居ルモノ
デ、其消費ガ日常ノ生活上必要デアルカ、或ハ疾病醫療等ノ上ニ實際ドウデ
アルカ知ラヌガ、本人ガ是ハ有效ナリト信ジテ、ソレニ依ッテ治療ニ用井テ居
ルト云フ現狀デアリマス以上、左樣ナモノニ課稅スルト云フコトハ、極端ナ
ル言葉ヲ使ヒマスレバ、所謂細民稅ト云フヤウナコトニナルカラ、サウ云フ
モノハ此際廢止シタ方ガ相當デアルト、斯ウ政府ガ認メマスト云フト、其主
義ノ下ニ於テハ、賣藥稅ハドウ云フ地位ヲ有ッテ居ルカト云ヘバ、矢張リソレ
ハ今囘ノ廢止スル部類中ノ稅目ニ入レルノガ相當デアラウト認メタノデアリ
やで、而シテ何囘モ繰返シテ申上ゲテ居リマス通リ、今囘ノ稅制整理ハ、現
在取レテ居ル歲入ハ之ヲ增減セナイヤウニト云フコトデアリマスカラ、玆ニ
賣藥稅ヲ廢止シタカラト云ウテ從來ノ財源ヨリモ一層減ズル次第デハナイノ
デアリマス、ソレ故ニ今後是迄實施シツツアッタヤウニ、保健衞生ノ上ノ施設
ハ實行シテ參リタイノデアリマスガ、賣藥稅ヲ廢止シマシテモ一般收入ノ下
ニ於テ必要ナル施設ヲ實行シテ行ケバ宜シカラウト考ヘテ居リマスノデ、
方ニ於テハ所謂細民稅ヲ廢止スル、一方ニ於テハ國民ノ保健衞生上必要ナル
施設ハ實行スル、兩者共ニ之ヲ努メタイト云フ考デ內務當局ハ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=22
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023・金杉英五郎
○金杉英五郞君 此事柄ハ他ノ機會ニ於キマシテ質問スルコトニ致シマス、
今日ハ是デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通告者ハゴザイマセス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=24
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025・八條隆正
○子爵八條隆正君 日程第一ヨリ第二十一ニ至ル所得稅法中改正法律案外二
十件ハ同一委員ニ付託シ、其委員ノ數ハ十八名トシテ、議長ニ於テ指名セラ
レムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=25
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026・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=26
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027・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郎君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗續ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
所得稅法中改正法律案外二十件特別委員
子爵靑木信光君子爵前田利定君子爵裏松友光君
石原健三君男爵阪谷芳郞君男爵藤村義朗君
男爵長基連君仁尾惟茂君橋本圭三郞君
添田壽一君南弘君井上準之助君
志村源太郞君馬場鍈一君西野元君
藤山雷太君末延道成君左右田喜一郞君
万南市立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十二、大正十四年勅令第二百四十五號、
承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、委員長報告、川村伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
大正十四年勅令第二百四十五號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年二月二十四日
右特別委員長
伯爵川村鐵太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵川村鐵太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=30
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031・川村鐵太郎
○伯爵川村鐵太郞君 大正十四年勅令第二百四十五號、承諾ヲ求ムル件、是
ハ牛ノ傳染性ノ肋膜炎防遏ニ付テ出マシタ所ノ緊急勅令ノ件デアリマス、委
員會ノ經過及結果ヲ簡單ニ申上グマス、大正十四年五月ノ二十八日ニ大阪市
ニ於テ最モ惡性ノ傳染性肋膜肺炎ガ起ッタノデアリマス、而シテ六月ニ入リ
マシテ大阪市、大阪府、京都府、其外四縣ニ亙リマシテ、九十三頭ノ病牛ガ
發見サレタノデアリマス、畜產界ニ於テハ大ナル衝動ヲ受ケタノデアリマシ
テ、政府ハ直チニ醫員ヲ派遣イタシテ是ノ研究ニ從事シタノデアリマス、其結
果、敏活ニシテ確實ナル手段ヲ施スニアラザレバ甚ダ大事デアルト云フコト
カラ、緊急勅令ノ公布ヲ見タ次第デアリマス、此現行ノ公布ニナッテ居リマス
ル傳染病豫防法ノ中ニハ此傳染病ノ肋膜肺炎ハ規定ハゴザイマスケレド
モ病牛ニ對シテ相當ノ防疫措置ハ規定サレテアルノデアリマスケレドモ傳
染ノ虞アル牛ニ向ッテハ其效力ガ及ンデ居リマセヌノデアリマス、故ニ勅令ノ
趣旨ハ本病ニ感染シタル虞アル牛ヲ殺スコトヲ得ル規定ヲ玆ニ設ケラレタノ
デアリマス、卽チ五分ノ四ノ手當金ヲ渡シマシテ殺シ得ル途ヲ開イタノデア
リマス、尙ホ隔離消毒ノ如キモノハ豫防法ノ中ニ規定サレテアリマスノヲ準
用スルノデアリマス、八月ニ入リマシテ朝鮮牛ノ移入ガアリマシタ、是ハ九
月ニ至リマシテ大分廣イ範圍ニ於テ此發生ヲ見タノデアリマスガ、漸次此防
疫ノ機關ガ整ヒマスト同時ニ、漸次終熄ニナッテ來マシタ、本年ニナッテ僅カ三
頭ダケダッタト思ヒマス、初ヨリ感染シマシタ病牛ハ二百三十四頭デアリマ
シテ、感染ノ虞レアリトシテ處分サレマシタモノハ二千八十餘頭ノ多キニ上ッ
テ居リマス、此病氣ハ其潛伏期ノ長キ其性質ノ頑固ナル所カラ、今後相當ノ
期間本勅令ハ將來ニ效力ヲ有スルト云フヤウニシタイト云フコトデゴザイマ
シタ、委員會ニ於キマシテハ質問ヲ一日イタシマシテ、第二囘ニ於テ別段何
等ノ議論ナク緊急勅令ハ承認イタスベキモノト決シマシタ、此段極ク簡單ニ
御報告イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニ承認ヲ與フベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマ
ス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス
호주가幕!吉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十三、大正十二年勅令第四百五號廢止法
律案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長報告、大隈侯爵ノ登壇ヲ望ミマス
大正十二年勅令第四百五號廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年二月二十日
右特別委員長
侯爵大隈信常
貴族院議長公爵德川家達殿
「候爵大隈信常君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=34
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035・大隈信常
○侯爵大隈信常君 生活必需品ニ關スル暴利取締ノ緊急勅令ハ、御承知ノ通
リ大正十二年九月大震災ノ直後、卽チ同月七日ニ發布ニナリマシタモノデア
リマス、實ニ此時機ニ適シタル所ノモノデアルト云フコトハ、相當多數ノ違
反者ガアリマシタト云フコトヲ以テモ判明スル所デゴザイマス、卽チ今其適
用ヲ一覽致シマスルノニ、懲役ノ刑ニ處セラレタ者ハ四人、罰金ヲ課セラレ
又ハ沒收ヲ命ゼラレタルモノハ、其人數ガ一千百八十二人ニ達シテ居リマ
ス、又其金額ハ實ニ二十五万六千餘圓ノ多キニ上ッテ居ル次第デゴザイマス
併ナガラ幸ニ大正十三年ノ五月二十日以降ニ於キマシテハ、此勅令ノ違反者
ヲ見ナカッタノデアリマス、ソレ故ニ當時ニ於キマシテ直チニ此勅令ノ廢止ヲ
圖ッテモ宜カッタノデアッタノデアリマスケレドモ、未ダ案件ガ確定シナカッタ
者ガ多數アッタノデアリマス、從ッテ今日漸ク其案件ガ全部確定ノ域ニ達シタ
ト云フコトデアリマシテ、其故ニ玆ニ此廢止ノ法律案ヲ提出スルト云フ政府
カラノ御說明デアリマシタ、委員會ニ於キマシテハ何等ノ議論モナク、全會
一致ヲ以テ之ヲ可決イタシタ次第デアリマス、委細ハ速記錄ニ依リマシテ···
···大要右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=37
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038・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=38
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039・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開クト云フ西大路子爵ノ
動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
青山市立山훑東京発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=43
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044・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=44
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045・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
幸南吉東発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議ノ通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
山東京市立平山古市立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十四、市町村義務〓育費國庫負擔法中改
正法律案、衆議院提出、第一讀會
市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
大正十五年二月二十一日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
市町村義務〓育費國庫負擔法中左ノ通改正ス
第二條中「四千萬圓」ヲ「七千萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=50
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051・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 唯今議題ニナリマシタ市町村義務〓育費國庫負擔
法中改正法律案ハ、市町村義務〓育費國庫負擔ノ金額ヲ七千万圓ニ增額セム
トスルモノデゴザイマス、此案ハ衆議院ニ於テ提出セラレタモノデアリマス
ルガ、政府ニ於キマシテハ之ニ同意ヲ致スコトニ異存ハゴザイマセヌノデア
リマス、其理由ハ今朝來總理大臣竝ニ大藏大臣ヨリ說明イタシタ通リデゴザ
イマス、何卒御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ所得稅法中改正法律案外二十件ノ特別委員
ニ付託イタシマス
山古小心平山市東本発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十五ヨリ日程第三十、請願、會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚
フ〕
意見書案
小出柳津間鐵道敷設ノ件
新潟縣北魚沼郡藪神村長桑原重作外六名呈出
右ノ請願ハ新潟縣北魚沼郡小出町ヨリ福島縣下只見村ヲ經テ同縣柳津村ニ
至ル鐵道ハ交通上ニ資スルコト大ナルノミナラス沿線地方ニ於ケル鑛產林
產其ノ他幾多富源ノ開發上最重要ナルニ拘ラス未開通ナキハ甚遺憾ナルニ
依リ速ニ小出町ヨリ起工シテ該鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
帝國在〓軍人會國庫補助ノ件
熊本縣熊本市內坪井町〓員木庭初治外七千五百二十名呈出
大分縣大分市荷揚町平民竹田津彌外二千五百五十九名呈出
大分縣西國東郡高田町商爲成一藤外九百六名呈出
右ノ請願ハ帝國在〓軍人會ハ由來國民ノ中堅トシテ良兵卽良民ノ實ヲ舉ケ
一面國防ノ根幹タルト共ニ他面國民思想ノ善導ニ任シ有爲事業ノ爲スヘキ
モノ多多アルニ拘ラス財源每ニ乏シク爲ニ十分ナル活動ヲ爲シ得サルハ甚
遺憾ナルヲ以テ速ニ國庫ヨリ相當ノ補助ヲ給與セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
木次落合間鐵道速成ノ件
島根縣仁多郡八川村平民農絲原武太郞外二百十四名呈出
右ノ請願ハ木次線鐵道ハ其ノ沿線地方ニ林產農產等ノ富源ヲ擁スルノミナ
ラス廣島、松江及岡山ノ三市ヲ連絡スル捷徑ニシテ產業開發上竝交通上至
要ノ線路ナルニ拘ラス其ノ起工ヲ大正十六年度ニ延期セラレタルハ甚遺憾
ナルニ依リ速ニ該工事ニ著手セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
木次三次間鐵道敷設ノ件
島根縣飯石郡吉田村平民農田部長右衞門外百八十名呈出
右ノ請願ハ島根縣下木次町ヨリ三刀屋村、赤名村等ヲ經テ藝備鐵道三次驛
ニ至ル鐵道ハ陰陽兩道ヲ連絡スル線路トシテ物貨集散ノ系統ヲ全フスルノ
ミナラス國防上及產業開發上極メテ重要ナルニ拘ラス未開通ナキハ甚遺憾
ナルニ依リ速ニ該鐵道ヲ敷設セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送
付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
§
意見書案
花卷驛ヨリ遠野町ヲ經テ釜石港ニ至ル鐵道敷設ノ件
巖手縣稗貫郡花卷川口町商宮澤善治外一萬三百三十一名呈出
右ノ請願ハ東北本線鐵道花卷驛ヨリ巖手縣下遠野町ヲ經テ同縣釜石港ニ至
ル鐵道ハ縣ノ中央部ト太平洋岸トヲ連絡シ交通上竝產業開發上最重要ナル
モノナレハ速ニ該鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候
也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
初山別村ニ漁港修築ノ件
北海道苫前郡初山別村漁業三田拙侍外二百五十一名呈出
右ノ請願ハ北海道苫前郡初山別港附近ハ從來鰊魚ノ漁獲豐富ナリシモ近時
魚族ハ主トシテ沖合ニ集中シ之カ漁獲ハ沖合漁業ニ俟タサルヘカラサルニ
拘ラス同港ニハ完全ナル漁船避難ノ設備ナク爲ニ漁民モ危難ヲ慮リテ出漁
ヲ逡巡シ徒ラニ天惠ヲ逸スルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ漁港修築ノ工事ヲ實
施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願ハ請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=54
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055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明日ノ議事日程ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
議事日程第十七號大正十五年二月二十七日
午前十時開議
第大正十五年度歲入歲出總豫算案竝大正十五年度各特別會計歲入歲
出豫算案審査期限ヲ定ムルノ件
第二豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件審査期限ヲ定
ムルノ件発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日ハ是ニテ散會
午後三時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X01619260226&spkNum=57
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