1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月五日(金曜日)
午前十時十四分開議
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議事日程 第二十一號 大正十五年三月五日
午前十時開議
第一 健康保檢法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二 健康保檢特別會計法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 民事訴訟法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 民事訴訟法中改正法律施行法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
一昨三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
簡易生命保險法中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
日本勸業銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
同日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第六囘報告書
昨四日造幣局工場其ノ他改築費ニ關スル法律案外一件特別委員會ニ於テ當
選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君副委員長澤柳政太郞君
同日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
民事訴訟法中改正法律案修正報告書
民事訴訟法中改正法律施行法案修正報告書
吉祥如山囍発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、諸君ニ於テ御異議
ゴザイマセスケレバ、日程第一、第二ハ一括シテ議題ト致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、健康保險法中改正法律案、第二、健康
保險特別會計法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、俵内務政務次官
健康保險法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
健康保險法中左ノ通改正ス
附則ヲ左ノ如ク改ム
本法ハ大正十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ保險給付及費用ノ負擔ニ關
スル規定ハ大正十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
健康保險特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
健康保險特別會計法
第一條健康保險事業ヲ經營スル爲特別會計ヲ設置シ其ノ歲入ヲ以テ其ノ
歲出ニ充ツ
第二條本會計ニ於テハ保險料、一般會計ヨリ繰入ルル金額、積立金ヨリ
生スル收入、借入金及附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ保險給付費、保健
施設費、借入金ノ償還金及其ノ利子、一時借入金ノ利子、事業取扱費、
營繕費其ノ他ノ諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第三條前條ノ一般會計ヨリ繰入ルル金額ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ保險給
付ニ要スル費用ノ十分ノ一トス但シ被保險者一人ニ付一年平均二圓ノ割
合ヲ超ユルコトヲ得ス
前項ニ規定スル被保險者ノ員數ノ計算ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條本會計ニ於テ決算上剩餘金ヲ生スルトキハ之ヲ積立ツヘシ
本會計ノ歲計ニ不足アルトキハ積立金ヨリ之ヲ補足スヘシ
第五條本會計ニ屬スル經費ヲ支辨スル爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ
負擔ニ於テ借入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ借入ヲ爲スコトヲ得ル金額ハ保險料ヲ以テ保險給付費
及保健施設費ヲ支辨スル能ハサル場合ニ借入ルルモノヲ除クノ外最高五
百萬圓トス
第六條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕アルトキハ大藏省預金部ニ之ヲ預
入ルルコトヲ得
第七條本會計ニ於テ支拂上現金ニ不足アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ一
時借入ヲ爲シ又ハ國庫餘裕金ヲ繰替使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル一時借入金又ハ繰替金ハ當該年度內ニ之ヲ返還スヘシ
第八條政府ハ毎年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第九條本會計ノ收入支出及積立金ノ運用ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
附則
本法ハ大正十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=3
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004・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 唯今上程ニ相成リマシタ健康保險法中改正法律案、
竝ニ健康保險特別會計法案ニ付キ御說明申上ゲマス、健康保險法ノ施行期日
ハ御承知ノ通リ勅令ヲ以テ定ムルコトニナッテ居リマスノデアリマス、今囘
之ニ關スル政府ノ方針ガ決定イタシマシテ、同法ノ附則ヲ改正シテ、改メテ
法律ヲ以ヲ施行期ヲ明定イタスコトニ相成ッタノデアリマス、之ガ施行ノ圓滿
ヲ期スル爲ニ、其期日ヲ二段ニ分チマシテ、先ヅ大正十五年七月一日ヨリ同
法ノ一部ヲ施行スルコトニ致シマシテ、以テ諸般ノ準備ヲ整ヘマシテ、大
正十六年一月一日ヨリ保險料ノ徵收、保險給付ノ支給ヲ開始イタシマスルコ
トニ致シタノデゴザイマス、又次ニ健康保險特別會計法ニ付キマシテ御說明
申上ゲマスルガ、健康保險法ハ、別ニ提出イタシマシタ所ノ同法中改正法律
案ニ明定イタシマシタ如ク、大正十五年度ヨリ之ガ施行ヲスルノ計畫デゴザ
イマスノデアリマスガ、健康保險ノ事業ハ、被保險者及之ヲ使用スル事業主
ノ負擔ヲ致シマスル所ノ保險料ヲ以テ、保險給付ニ要スル費用ニ充ツルモノ
デアリマスルカラ、政府ニ於テ管掌イタシマスル所ノ健康保險事業モ、性質
上其歲入歲出ハ一般會計ト區分イタシマシテ、特別會計ヲ設ケテ、特別ニ經
營スルコトヲ適當ト認メマスルカラ、法案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマ
ス、次ニ本案ノ內容ニ付テ、主ナル點ヲ聊カ申述べテ置キマスルガ、第一本
會計ノ歲入ハ、保險料及一般會計ヨリノ繰入金、卽チ國庫負擔金ガ主ナルモ
ノデアリマシテ、其他積立金ヨリ生ズル收入、歲入不足ノ場合ニ於テ爲ス所
ノ借入金等デアルノデアリマス、國庫負擔金ハ健康保險組合ニ對スル國庫負
擔ト步合ヲ合セ、原則トシテ保險給付ノ費用ノ一割ノ額デアリマス、第二ニ
歲出ハ法定ノ保險給付費及被保險者ノ健康保持ノ爲ニ施設スル所ノ事業ノ
費用、事務費等ガ其主ナルモノデアルノデアリマス、而シテ本會計ニ於テ決
算上剩餘ヲ生ジマスル時ハ、之ヲ積立テテ、歲入不足ノ場合ニ、之ヲ補足ス
ルノ計畫デアルノデアリマス、願ハクハ御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレムコトヲ
御願ヒ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モナイト認メマスカラ、同案ノ特別委
員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
健康保險法中改正法律案外一件特別委員
伯爵柳原義光君喜納治五郞君神野勝之助君
男爵關義壽君川村竹治君永田秀次郞君
金杉英五郞君橋本萬右衞門君津村重舎君
불구가훑###発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、第四ハ同一委員ニ付託セラレマシタカ
ラ、委員長ノ報告モ一括シテ煩ハスコトニ致シマス、日程第三、民事訴訟法
中改正法律案、第四、民事訴訟法中改正法律施行法案、政府提出、第一讀會
ノ續、委員長報〓、特別委員長伊東子爵
民事訴訟法中改正法律案
右別冊ノ通修正セリ依テ及報〓候也
大正十五年三月四日
右特別委員長
子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
特別委員ノ修正ニ係ル條ノミヲ印割シ其ノ山ハ之
(千略ス小字ハ修正文、ハ同消除ノ符號ナリ
第十五條不法行爲ニ關スル訴ハ其ノ行爲アリタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起
スルコトヲ得
○其ノ他海上ノ事故
船舶ノ衝突〓ニ基ク損害賠償ノ訴ハ損害ヲ受ケタル船舶カ最初ニ到達シ
タル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第三十五條判事ハ左ノ場合ニ於テハ法律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラ
ル
一判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ事件ノ當事者ナルトキ又ハ事件ニ
付當事者ト共同權利者、共同義務者若ハ償還義務者タル關係ヲ有スル
トキ
二判事カ當事者ノ四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族ナルトキ又ハナ
リシトキ
後見監督人、保佐人
三判事カ當事者ノ後見人。又ハ同居ノ戶主若ハ家族ナルトキ
四判事カ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
五判事カ事件ニ付當事者ノ代理人又ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六判事カ事件ニ付仲裁判斷ニ關與シ又ハ不服ヲ申立テラレタル前審ノ
裁判ニ關與シタルトキ但シ他ノ裁判所ノ囑託ニ因リ受託判事トシテ其
ノ職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第五十七條法定代理權ノ消滅ハ本人又ハ代理人ヨリ之ヲ相手方ニ通知ス
ルニ非サレハ其ノ效ナシ但シ相手方カ其ノ事實ヲ知リタルトキハ此ノ限
ニ在ラス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ變更ニ之ヲ準用ス
三
第八十二條數人ノ訴訟代理人アルトキハ各自當事者ヲ代理ス
當事者カ前項ノ規定ニ異ル定ヲ爲スモ其ノ效力ヲ生セス
第八十三條第八十一條及前條ノ規定ハ法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲
スコトヲ得ル代理人ノ權限ヲ妨ケス
○裁判所ノ審訊、
第百四十九條第百四十二條乃至前條ノ規定ハ○受命判事又ハ受託判事ノ
審問及證據調ニ之ヲ準用ス
受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營
業所又ハ事務所ヲ有セサルトキハ其ノ
第百七十條當事者、法定代理人又ハ訴訟代理人ハ訴訟ノ繫屬スル裁判所
ノ所在地ニ於テ送達ヲ受クヘキ場所及送達受取人ヲ定メ之ヲ屆出ツルコ
要ス
トヲ得
裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラサ
ル場合ニ於テ送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ届出ヲ爲ササルトキハ其ノ者
ニ對シテ送達スヘキ書類ハ前條第一項ノ規定ニ依リ送達スヘキ場所ニ宛
テ郵便ニ付シテ之ヲ發送スルコトヲ得
第一項ノ屆出ハ送達ヲ受クヘキ者カ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有
スル場合ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=6
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007・判決原本ニ基キ
○判決原本ニ基キ 第百八十九條判決ノ言渡ハ〓裁判長主文ヲ朗讀シテ之ヲ爲ス
裁判長ハ相當ト認ムルトキハ判決ノ理由ヲ朗讀シ又ハ口頭ヲ以テ其ノ要
傾ヲ告クルコトヲ得
二
第百九十條判決ノ言渡ハ口頭辯論終結ノ日ヨリ」週間內ニ之ヲ爲ス但シ
事件繁雜ナルトキ其ノ他特別ノ事情アルトキハ此ノ限ニ在ラス
判決ノ言渡ハ當事者カ在廷セサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
後遲滯ナク
第百九十二條判决ハ言渡ノ日ヨリ一週間內ニ之ヲ裁判所書記ニ交付シ書
記ハ言渡及交付ノ日ヲ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第百九十四條判決ニ違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキ
ハ裁判所ハ何時ニテモ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ更正決定ヲ爲スコトヲ
得但シ判決ノ主文又ハ理由ニ影響ヲ及ホスヘキ場合ニ限ル
更正決定ハ判決ノ原本及正本ニ之ヲ附記スルコトヲ要ス但シ正本ニ附記
スルコト能ハサルトキハ決定ノ正本ヲ作リ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ
要ス
更正決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得但シ判決ニ對シ適法ノ控訴
アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百九十六條財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ付テハ裁判所ハ必要アリト
○申立ニ因リ又ハ
認ムルトキハ○職權ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セスシテ假執行ヲ爲スコト
ヲ得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
○申立ニ因リ又ハ
裁判所ハ○職權ヲ以テ擔保ヲ供シテ假執行ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトヲ
宣言スルコトヲ得
前二項ノ宣言ハ判決主文ニ之ヲ揭クルコトヲ要ス
第二百四條決定及命令ハ相當ト認ムル方法ヲ以テ之ヲ告知スルニ因リテ
其ノ效力ヲ生ス
裁判所書記ハ告知ノ方法、場所及年月日ヲ裁判ノ原本ニ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第二百三十八條當事者雙方カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ辯論ヲ爲サ
三
スシテ退廷シタル場合ニ於テ六月內ニ期日指定ノ申立ヲ爲ササルトキハ
訴ノ取下アリタルモノト看做ス
第二百六十九條第二百六十七條第二項ノ規定ニ依リテ宣誓ヲ爲シタル當
事者又ハ法定代理人カ虛僞ノ申述ヲ爲シタルトキハ宣誓ヲ爲サシメタル
五百
裁判所決定ヲ以テ千圓以下ノ過料ニ處ス
第二百九十六條裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ後ニ訊問スヘキ證人ニ
在廷ヲ許ス
一時退廷ヲ命スルコトヲ得
第三百三十六條裁判所カ證據調ニ依リテ心證ヲ得ルコト能ハサルトキ其
○申立ニ因リ又ハ
ノ他必要アリト認ムルトキハ○職權ヲ以テ當事者本人ヲ訊問スルコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ當事者ヲシテ宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得
第三百三十九條宣誓シタル當事者カ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ裁判所
五百
決定ヲ以テ午間以下ノ過科ニ屬ス此ノ決定ニ對シテハ印時批書ヲ爲
トヲ得
第三百三十一條第二項ノ規定ハ前項ノ決定ニ之ヲ準用ス
第三百六十一條財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ對シテハ控訴ニ因リテ受
クヘキ利益ノ價額カ三百圓ニ滿タサル場合ニ於テハ再審ノ事由アルニ非
サレハ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
二
前項ノ規定ハ訴訟ノ目的ノ價額カ三百圓以上ナル事件ニ付裁判所カ訴訟
ノ一部ニ付爲シタル判決ニハ之ヲ適用セス
第一項ノ價額ハ控訴提起ノ時ヲ標準トシテ之ヲ定ム
控訴審ニ於テ擴張シタル請求ノ價額ハ第一項ノ價額ニ之ヲ算入セス
二
第一項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ハ三百圓ト看做ス
第二十三條ノ規定ハ第一項ノ價額ノ算定ニ之ヲ準用ス
第三百六十四條控訴ハ控訴審ノ終局判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第二百三十六條第一項但書第二項第三項、第二百三十七條第一項及第二
百三十八條ノ規定ハ控訴ノ取下ニ之ヲ準用ス
第三百七十一條第二百二十八條ノ規定ハ控訴狀カ第三百六十八條第二項
違背
ノ規定ニ反スル場合、法律ノ規定ニ從ヒ控訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合
及控訴狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第三百七十三條被控訴人ハ控訴權消滅ノ後ト雖口頭辯論ノ終結ニ至ル迄
附帶控訴ヲ爲スコトヲ得附帶控訴ニ因リテ受クヘキ利益ノ價額カ三百圓
ニ滿タサルトキ亦同シ
第四百二十四條再審ノ訴ハ當事者カ判決確定後再審ノ事由ヲ知リタル日
三十日
ヨリ二週間內ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
判決確定後五年ヲ經過シタルトキハ再審ノ訴ハ之ヲ提起スルコトヲ得
ス
再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキハ前項ノ期間ハ其ノ事由發生ノ
日ヨリ之ヲ起算ス
民事訴訟法中改正法律施行法案
右別冊ノ通修正セリ依テ及報〓候也
大正十五年三月四日
右特別委員長
子爵伊東祐弘
貴族院議長公爵德川家達殿
特別委員ノ修正ニ係ル條ノミヲ印ノ
文、馴シ其ノ他ハ之ヲ略ス小字ハ修正)ハ同削除ノ符號ナリ
モ
第二條新法ハ新法施行前ニ生シタル事項ニ亦之ヲ適用ス但シ舊法ニ依リ
テ生シタル效力ヲ妨ケス
第十一條新法施行前ヨリ繋屬スル訴訟ニ付言渡シタル判決ニ對シテハ上
二
訴ニ因リテ受クヘキ利益ノ價額三百圓ニ滿タサル場合ニ於テモ上訴ヲ爲
スコトヲ得
〔子爵伊東祐弘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=7
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008・伊東祐弘
○子爵伊東祐弘君 民事訴訟法中改正法律案竝ニ民事訴訟法中改正法律施行
法案ノ特別委員會ノ御報告ヲ申上ゲマス、兩案ノ特別委員會ハ先月十七日委
員長副委員長ノ選擧ヲ終リマシテ、十九日カラ殆ド連日審査ニ著手イタシ、
昨日マデ審査ヲ續ケタノデアリマス、其間小委員ヲ組織シ、小委員ノ手ニ於
テ詳細ニ審査セラレタノデアリマス、審査ノ時日ノ多クハ此小委員會ノ審
査ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 伊東子爵、モウ少シ大キナ聲デ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=9
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010・伊東祐弘
○子爵伊東祐弘君 ハイ······此小委員會ノ審査ニ費サレテ居ッタノデアリマ
ス、斯ノ如ク特別委員會ニ於テハ愼重審議ノ結果、御報告申上ゲマシタ通リ
兩案トモ修正議決イタスモノト決シタノデアリマス、民事訴訟法ノ改正ハ御
承知ノ如ク多數ノ條項ニ亙ル大部ノ改正デアリマシテ、此審査ガ比較的短キ
時日ヲ以テ結了イタシマシタコトハ、特別委員、殊ニ小委員ノ方〓ガ連日熱
心ニ審査ニ努メラレマシタ賜デアリマシテ、其努力セラレマシタコトノ多大
デアッタト云フコトハ、茲ニ特ニ附加ヘテ置キタイト思ヒマス、先ヅ民事訴訟
法中改正法律案ヨリ申上ゲマス、此法案ガ成案ニ至リマスマデノ經過ニ付キ
マシテハ、司法大臣カラ御說明ガアリマシタカラ、玆ニハ省略イタシテ置キ
やっ、本案ノ編成ノ大體ノ分チ方ハ現行ノ民事訴訟法ノ例ヲ踏襲イタシテ、
唯、訴訟費用ノ規定ヲ當事者ノ章ヨリ分チ別章ト致シ、判決ト云フ表題ヲ裁判
ニ改メ、之ヲ第一審ノ訴訟手續ノ編カラ移シテ總則編ニ入レ、督促手續ヲ獨
立ノ一編トシタト云フ點デアリマス、而シテ其內容ノ改正ノ條項ニ渉ッテ最モ
重ナル點ヲ申シマスレバ、第一ハ、準備手續ノ制度ヲ擴張シ、地方裁判所ノ
管轄ニ屬スル訴訟ニ付テハ準備手續ヲ經ルコトヲ原則ト致シ、而シテ準備手
續ニ於テ、受命判事ハ當事者ヲシテ一切ノ攻擊防禦ノ方法ヲ提出セシメ、爭
點ヲ整理シ、之ガ解決ニ必要ナル總テノ證據ヲ申出デシメ、當事者ガ準備手
續中ニ申出デザル事項ハ、訴訟ノ遲延ヲ來サザル場合、又ハ重大ナル過失ナ
クシテ準備手續中ニ中出デザリシ場合ノ外、之ヲ口頭辯論ニ於テ主張スルコ
トヲ得ザルモノトシテ、口頭辯論ニ於ケル審理ノ適正ト迅速トヲ期シタ點デ
アリマス、第二ハ、關席判決ノ制ヲ廢止シテ、當事者ノ一方ガ口頭辯論ノ期
日ニ出頭セナイ場合ト雖モ、裁判所ハ其提出シタル訴狀、答辯書其他ノ準備
書面ニ記載シアル事項ヲ斟酌シ、出頭シタル當事者ヲシテ辯論ヲナサシメ、
通常ノ判決ヲナシ得ルコトトシタ點デアリマス、第三ハ、當事者ガ合意ニ依
リ自由ニ期日ヲ變更シ得ル現行ノ規定ヲ改メ、濫リニ期日ヲ變更スル弊ヲ防
イダ點デアリマス、第四ハ、訴ガ管轄權ヲ有セザル裁判所ニ提起セラレタル
場合ト雖モ、之ヲ却下セズシテ管轄權アル裁判所ニ移送スルコトトシ、又管
轄權アル裁判所ニ提起セラレタル場合ニアッテモ、當事者ニ著シキ損害ヲ生
ジ、又ハ訴訟手續ノ遲滯ヲ來ス虞ノアル場合ニ於テハ、之ヲ他ノ適當ナル管
轄裁判所ニ移送スルコトヲ得ルト爲シタ點デアリマス、第五ハ、當事者ガ故
意又ハ重大ナル過失ノ爲ニ時期ニ後レテ攻擊防禦ノ方法ヲ提出シ、ソレガ爲
ニ訴訟ノ完結ヲ遲延セシムベキ場合ニハ當事者ノ申立ヲ待タズ職權ヲ以テ
之ヲ却下スルコトガ出來ルトシタ點デアリマス、第六ハ、法人ニアラザル社
團又ハ財團ト雖モ、代表者又ハ管理人ノ定メアルトキハ訴訟當事者タル能力
ヲ有スルコトトシ、又共同ノ利益ヲ有スル多數ノ者ガ當事者ナル時分ハ、總
員ノ爲ニ被〓又ハ原〓トナリ訴訟ノ衝ニ當ル者ヲ選ブコトガ出來ルトシタ點
デアリマス、第七ハ訴訟參加ノ制度ヲ擴張シテ、他人間ノ訴訟ノ目的ノ全
部又ハ一部ヲ自己ノ權利ナリト主張スル者、又ハ他人間ノ訴訟ノ結果ニ依リ
權利ヲ害セラルベキコトヲ十張スル者、或ハ訴訟ノ目的ガ當事者ノ一方ト合
一ニ確定スベキ地位ニアル者ハ、何レモ他人間ノ訴訟ニ參加スルコトガ出來
ルトシテ、複雜ナル紛爭ヲ一度ニ解決シ、訴訟ノ多端ニ涉ル弊ヲ防イダ點デ
アリマス、以上ガ此改正ノ最モ重要ナル點デアリマスガ、尙ホ其他證書訴訟
手續及ビ爲替訴訟ノ手續ハ、多年ノ經驗ニ照シテ其實益少ク、却テ訴訟關係
ヲ複雜ナラシムル弊ガアリマスカラ、之ヲ廢止シ、又ハ不適法ナル訴、或、
上訴ニシテ其欠缺ヲ補正スルコト不可能ナルモノ及ビ上告ノ理由ナキコト
明カナルモノノ却下ノ手續ヲ簡易ニシタルコト、中斷シタル訴訟手續ノ受繼
手續ハ不變期間ヲ懈怠シタル場合原狀囘復ノ手續ヲ簡易ニシタルコト、證據
調ハ事情ニ因リ職權ヲ以テモ之ヲ爲シ得ルコトトシ、輕微ナル訴訟ニ付テ上
訴ヲ制限シ、又ハ上訴ノ期間ヲ短縮シタルコト、訴訟ノ繫屬中其債務ヲ承繼
シタル者ノ爲ニ訴訟引受ノ制度ヲ認メタルコト、判決ハ職權ヲ以テ送達スル
コトトシ、請求ノ抛棄又ハ認諾ニ付テハ、調書ニ記載シタル時ハ和解ト同ジ
ク確定判決ト同一ノ努力ヲ有スルコトトシタルコト、疏明ノ方法ヲ擴張シテ
保證金ノ供託又ハ當事者ノ宣誓ヲ以テ之ニ代ヘルコトヲ得トシタ點、證人忌
避ノ制度ヲ廢シテ證據採集ノ途ヲ擴メタルコト、宣誓ヲ嚴肅ニナスベキ規定
ヲ設ケ、當事者宣誓ノ制度ヲ認メタルコト、鑑定囑託ノ途ヲ擴メ、當事者以
外ノ第三者ニ對シ書證ノ提出又ハ檢證物ノ提示ヲ命ズルコトヲ得トナシタル
コト、當事者雙方控訴ヲナサザル旨ノ合意ヲ認メタルコト、再審ニ付テ現行
法ノ如ク取消ノ訴ニ依ルベキ場合ト、原狀囘復ノ訴ニ依ルベキ場合トノ區別
ヲ廢スルコト、督促手續ニ關スル規定ヲ改メテ、之ヲ簡易ニシタルコト、是
ナドハ注意スベキ改正ノ點デアリマス、要スルニ本案改正ノ主眼トスル所ヲ
約言イタシマスレバ、現行法中訴訟ノ遲延トナルベキ諸規定ヲ改メテ、專ラ
其圓滑ナル進捗ト審理ノ適正ヲ圖ルト云フコトニ歸スルノデアリマス、六一
民事訴訟法中改正法律施行法案ノ要旨ハ民事訴訟法ノ改正ニ伴ヒマシテ新法
卽チ改正法ト、舊法卽チ現行法トノ規定ヲ調和シ、事件ノ處理ノ圓滑ヲ圖ヲタ
ノデアリマシテ、其主眼トスル處ハ左ノ三點ニ歸スルノデアリマス、第一ハ、
新法施行前ニ生ジタル事項ニモ原則トシテ新法ヲ適用スルコト、第二ハ、舊
法ニ依ッテ既ニ生ジタル效力ハ新法ニ依ッテ之ヲ妨ゲナイヤウニスルコト、第
三、新舊兩法ヲ比較イタシテ成ルベク當事者ノ利益ニナル規定ヲ適用スル方
針ヲ取ッタコト、以上ハ其主眼トスル點デアリマス、次ニ特別委員會ノ質問ノ
主ナルモノヲ一二申上ゲヤウト思ヒマス、第一ハ、今囘提案トシテ提出セラ
レタル條項ノ中デ、最モ必要トナル點ヲ考ヘテ見ルニ、改正理由書ニ揭グア
ルモノハ、七ツノ事項デアル、若シ然リトスレバ、今囘ノ如キ全部ノ改正ヲ
必要トスル理由ハ無イカノ疑ガ起ル、解釋上又ハ常識ノ判斷、或ハ大審院ノ
判例ニ依ッテ今日マデ別段差支ナク行ッテ居ルモノハ其儘ニシテ置イテ宜シ
イデハナイカ、現行法ハ既ニ四十年近ク實行サレテ、裁判官ハ勿論、辯護士
其他一般ノ民衆ハ慣熟シテ居ルノデ、斯カル法律ヲ全部改正スルコトハドウ
カト考ヘル、訴訟ノ遲延ハ必シモ法ノ不備バカリデナク、其進捗ヲ圖ル上
ニ於テ厲行シテ然ルベキ條項ヲ厲行セズ、又之ヲ好マナイガ爲ニ生ズルモノ
モアル、斯ク考ヘレバ、改正ノ理由ノ最モ必要トスル訴訟遲延ノ原因ヲ除ク
ト云フ改正ノ點ハ、左程多クナイヤウニ思ハレルガ、ナゼ當局トシテハ其必
要ナル改正ニ止メテ、其他ハ其儘ニシテ置イテ宜シイト云フ考ハナイカ、卽
チ一部改正デ滿足スル意思ガナイカト云フ質問デアリマシタ、之ニ對シテハ
左ノ答辯ガアッタノデアリマス、現行ノ民事訴訟法ハ明治二十三年ニ制定セラ
V 、殆ド母法トモ云フベキ獨逸ノ訴訟法ヲ飜譯シタモノデアッテ、獨逸ニ於ケ
ル慣習ハ旣ニ變更セラレテ居ルニ拘ラズ、法律ノ精神ガ尙ホ存シテ長イ間不
便ヲ恐ンデ居ッタノデアル、今日改正スル要點ハ七ツノ點デアルヤウニ說明書
ニハ說明ガアルケレドモ······理由書ニハ說明シテアルケレドモ、是ガ全部ノ
改正、······全部ト云フ趣旨デハナクシテ、訴訟ノ迅速竝ニ審理ノ適正ヲ期スル
爲ニ必要ナル改正ノ條項ハ非常ニ多クアルノデアル、民事訴訟法トシテハ
全般カラ見テ頗ル重要ナル部分ニ亙ッテ居ル、唯一部ノ改正デハ能ク其精神ヲ
徹底シ理解セシメテ、豫期スル所ノ訴訟ノ促進ト審理ノ適正トヲ期スルコト
ガ甚ダ困難ト考ヘル、政府トシテハ全部ノ改正ガ最モ適當ナリト信ジテ居ル
ノデアル、又各條項ニ亙ッテ見ルノニ、多年ノ經驗、實際ノ便否、學理上ノ議
論ヲ討究シタ結果、手ヲ染メナケレバナラヌ條項ガ非常ニ多クアッテ、各條殆
ド全部ニ亙ッテ居ルト云フテ宜シイ位デアル、斯カル狀態デアレバ、立法ノ技
術トシテモ、全部ノ改正ヲ必要トスルト云フ答辯デアリマシタ、第二ハ民事
訴訟法ト云フモノハ、裁判官、辯護士、法律、此三ツノモノガ揃ハナケレバ、
到底圓滿ナル實行ガ遂ゲラレナイト考ヘルノデアルガ、裁判官ノ實質上精神
上ノ優遇ハ著々圖ラレテ居ルト云フコトハ聞イテ居ルガ、辯護士法ノ改正ニ
ハ如何ナル點、又如何ナル工合ニ改正セラレルノデアルカ、例ヘバ今日辯護
士ハ日本全國ニ亙ノテ業務ヲ取扱フコトガ出來ルヤウニナッテ居ル、其爲メ時
間ノ衝突ガ起·テ、期日ノ延期ト云フコトモ自然ニ起ルヤウナコトニナル、又
辯護士實務ノ實習ト云フコトモ必要ト考ヘル、實際ノ取扱ノ不慣レノ爲メ訴
訟ノ延期ヲ來ス場合ガナイトモ限ラナイノデアル、是等ニ付テ司法大臣ハ如
何ニ考ヘテ居ラレルカト云フ質問デアリマス、之ニ對シテハ、裁判官、檢事、
辯護士、此三ツノモノガ裁判所構成法ノ認メル必要ナル機關デアッテ、其爲ス
所ノ職能ハ各。異ナッテ居ルケレドモ、國家ノ司法權ニ參與シテ其行使ノ徹底
ヲ期スルト云フ點ニ至ッテハ、皆目的ハ一ツデアル、故ニ辯護士ニ對シテハ、
常ニ此立場ヲ尊重シテ職務ニ當ルコトヲ希望シ、屢、會同ヲ催シテ、部內ノ各
首腦ト互ニ司法ノ改善ニ努力シヤウト云フコトヲ申シテ意見ヲ交換シテ居
ル、既ニ昨年八月以來十數囘ノ會同ヲナシテ居ル次第デアル、辯護士法ノ改
正ニ付テハ、若シ多年ノ面白クナイ慣習ガアリトスレバ之ヲ除キ、民事訴訟
法ノ目的トスル同一ノ目的ニ向ッテ改正ヲ進メナケレバナラヌト考ヘテ居ル、
辯護士法ノ改正委員會ニ於テ、色〓ノ點ガ議論ガアルヤウデ、辯護士ノ事務
執行ノ事ニ付テモ問題トナッテ考究中デアル、又辯護士事務ノ實習ト云フ點モ
相當考慮スベキ點デアルト考ヘテ居ル、免ニ角辯護士法ノ改正ニ付テハ辯
護士ノ多クノ人〓及ビ裁判官、檢事等出身ノ委員ガ目下調査中デアルト云フ
コトデアリマス、第三ハ、民事訴訟法ハ事件行使ノ手續デアルカラシテ、成
ルベク簡易ニ、敏速ニ、又適正ニ行カネバナラヌト考ヘル、現行法ノ規定ノ
中デモ裁判官ガ厲行シナイモノ、又其厲行ヲ憚ルガ爲ニ、幾分カ訴訟遲延ノ
原因トナルベキモノガ無イデハナイカト考ヘル、訴訟遲延ヲ防ギ、審理ノ適
正ヲ圖ルヲ主眼トシテ改正セラレタ以上ハ、是等ノ趣旨ヲ裁判官ニ徹底セシ
ムル考ハ無インデアルカ、之ニ對シテハ、當局ニ於テハ此點ハ非常ニ重大ニ
考ヘテ、法案ガ通過シタ以上ハ、其重要ナ改正デアルト云フ趣旨ヲ司法部內
ニ徹底セシムルニ十分最善ノ努力ヲ致ス考デアル、大正十七年中ニ施行スル
ノデアルカラ、相當歲月ガアルノデアル、其間ニ、丁度今囘豫算ニ提出スル
司法〓究ニ關スル經費ヲ以テ、地方裁判所ノ部長以上ニ該當スル人〓ヲ東京
ニ會同スルコトトナッテ居ルカラ、一方面デハアルケレドモ、之ニ依ッテモ改
正法ノ趣旨ハ十分徹底シ、又辯護士ノ會同ニ對シテモ其趣旨ヲ徹底セシムル
ヤウニシテ、相俟ッテ法律ノ精神ガ貫徹スルヤウニ努力スル積リデアル、又是
ハ司法行政ノ衝ニ當ル者ノ殆ド全部ノ責任デアルカラシテ、最善ノ努力ヲ
致シテ其徹底ヲ圖ル、而シテ法律ガ圓滿ニ行使セラルルコトヲ期スル次第デ
アル、ト云フ答辯デアリマス、マダ二三質問モアリマシタケレドモ、此位ニ
止メテ置キタイト思ヒマス、特別委員會ニ於テ大體ノ質問ガ終ラムトスル時
ニ當リマシテ、動議ガ提出セラレタノデアリマス、卽チ議事進行ヲ圖ル爲、
小委員ヲ組織シテ、兩案ヲ小委員ニ付託シ、詳細ナル審査ヲ遂ゲテ、其報〓
ヲ俟ノテ討論ニ移ルヤウニシタイト云フ動議デアリマシタ、此動議ハ成立ヲ致
シマシテ、兩案ヲ小委員ノ手ニ付託スルコトトナッタノデアリマス、小委員ハ
六名ヲ選バレタノデアリマス、而シテ其小委員ノ方〓ハ皆法律ニ博識ニシテ
經驗ヲ有セラレ、殊ニ裁判實務ニハ多年ノ經驗ヲ有セラレ素養ノ積ンデ居ラ
レル方〓ガ多クアリマシタ、先月二十日カラ、一日休マレタ外連日殆ド午
前午後ニ亙ッテ審査ニ努メラレタノデアリマス、其囘數ガ實ニ十一囘ニ及ンダ
ノデアリマス、其質疑ハ準備手續、闕席判決ノ制ヲ廢スルノ可否等カラシテ、
必要ナル各條項ニ亙ッテ皆ナ要點ヲ質サレタノデアリマス現行ノ民事訴訟法
ハ勿論、民法、商法、刑事訴訟法ノ規定ト比較シ、改正法案ニ於ケル各條項
ノ異同ノ點、立法ノ精神、或ハ字句又ハ實際上適用ノ便否、利害等ニ至ルマ
デ、多クノ質問ガアッタノデアリマス、之ニ對シテ政府委員ヨリ亦懇切詳細ナ
ル答辯モアッタノデアリマス、質疑ガ終ッテ後、辯護士ノ各團體カラ出サレテ
居リマスル所ノ修正意見ニ付テ、政府委員ヨリ之ニ對スル意嚮ヲ聽取サレタ
ノデアリマス、又懇談會ヲ開イテ、各委員ノ腹藏ナキ意見ハ勿論、政府當局
トモ十分ニ意見ヲ交換セラレタノデアリマス、而シテ後ニ各委員ニ依ッテ各<
注意スベキ條項ヲ選ンデ、修正スルノ必要ガアリヤト云フ點ニ付イテ意見ヲ
鬪ハサレタノデアリマス、其間政府當局トモ意見ヲ交換セラレタノデアリマ
ス、懇談會ヲ開カレルコトガ數囘ニ及ンダノデアリマス、小委員會ニ於テハ
以上ノ如キ經過ヲ以チマシテ、詳細ニ又愼重ニ審議セラレマシテ、兩案ハ修
正スルコトニ決定イタシタノデアリマス、小委員會ニ於ケル質問應答ハ實ニ
各條項ニ亙ッテ數多クアリマスカラ、、玆ニハ一々申上グルコトヲ省略イタシタ
イト思ヒマス、是等ノ質疑應答ハ速記錄ニ全部留メテアリマスカラ、何卒速
記錄ヲ御覽ヲ願ヒタイト考ヘマス、又修正ノ點ニ付テハ最後ニ申述ブルコト
ニ致シマス、小委員會ノ審査ガ終リマシテ、特別委員ノ總會ヲ開キ、小委員
會ノ決定ノ報告ヲ聽キ、討論ニ移リ、採決ノ結果ハ全會一致ヲ以テ兩案共ニ小
委員會決定通リ修正議決スベキモノト決セラレタノデアリマス、終リニ修正
ノ點ニ付テ、民事訴訟法中改正法律案ヨリ申上ゲマス、修正ノ條文ヲ朗讀イ
タシマスコトハ省略イタシマシテ、其理由ヲ簡單ニ申上ゲタイト思ヒマス、
第十五條ノ二項ノ修正ハ、第二項ニ於テハ船舶ノ衝突ニ基ク損害賠償ノ訴ニ
限ッテ居リマスケレドモ、ソレ以外海上ノ事故ニ因ッテ生ジタル損害賠償ノ訴
ニ付テモ、此規定ニ依ラシムルコトガ便宜トシテ修正サレタノデアリマス、
第三十五條ハ、判事ガ當事者ノ後見監督人又ハ保佐人ナル場合ニモ、除斥ノ
原因トナスヲ適當トシテ修正イタシタノデアリマス、卽チ現行ノ刑事訴訟法
ト同一ニナルノデアリマス、第五十七條ハ、代理權消滅ノ效力ノ發生ヲ、相
手方ガ代理權消滅ノ事實ヲ知リタルヤ否ヤト云フ點ニ係ハラシムルトキハ、
此點ニ付テ爭ヲ多カラシムル虞ガアリマスルカラ、之ヲ削除イタシタノデア
リマス、第八十二條及八十三條ハ、八十三條ニ於テ、例ヘバ支配人ノ如キ、
商法上共同シテ代表權ヲ有スル者ノ權限ヲ妨ゲナイヤウニシテ居ルノデアリ
マスケレドモ、斯ノ如キモノモ、第八十二條ノ規定スル各自代理權ヲ認ムル
ヲ實際上便宜トナシテ、之ヲ修正イタシタノデアリマス、第百四十九條ハ、
裁判所ガ當事者其他第三者ヲ審訊スル場合ニ於テモ、其調書ヲ作成セシメテ
·······作成セシムルコトガ、必要デアリマスカラ、口頭辯論調書ニ準ジテ審訊
調書ヲ作成スルモノトシタノデアリマス、第百七十條ハ、原文ノ意味ガ不明
ノ點ガアリマスカラ、之ヲ明カニシタニ過ギナイノデアリマス、第百八十九
條ハ、判決ノ作成ノ遲延スルコトハ、其原本ヲ作成シナクシテ之ヲ言渡スコ
トニ起因スルコトガ無イノデモナイノデアリマスカラ、判決ノ言渡ハ判決原
本作成ノ上之ヲ爲スベキモノト致シタノデアリマス、第百九十條及第百九十
二條ハ、唯〓申上ゲマシタ百八十九條ノ修正ニ關聯シテ居ルノデアリマシ
テ、判決ノ言渡ハ判決原本作成ノ上爲スコトトナリマシタカラ、其「言渡ハ口
頭辯論終結ノ日ヨリ一週間内」トアリマスノヲ「二週間內」ト致シテ、其時日ヲ
少シ延長シタノデアリマス、又事件ガ繁雜ナル場合又ハ特別ノ事情アルトキ
ハ又例外ヲ認メタノデアリマス、又判決原本作成後其言渡ヲ爲スコトトナリ
マシタカラ、言渡後直チニ原本ヲ書記ニ交付スルコトガ出來マスカラ、判決
ハ言渡後遲滯ナク裁判所書記ニ交付スベキモノト爲シテ、第百九十二條ヲ改
メタノデアリマス、第百九十四條ハ、當事者ノ氏名又ハ住所ニ誤謬ナドガア
リマシテ、判決ノ主文又ハ理由ニ影響ヲ及ボサナイ場合デモ、誤謬ヲ更正ス
ル場合ハ尠ナクナイノデアリマスカラ、第一項但書ヲ削除イタシタノデアリ
マス、第百九十六條ハ假執行ノ宣言ハ事財產權ニ關シマスカラ、當事者ノ申立
ニ因リテモ亦之ヲ爲サシムルヲ必要トシタノデ、又假執行ノ宣言ヲ免ルルコ
トノ······假執行ヲ免ルルコトノ宣言ニ付テモ同樣デアリマスカラ、其申立ヲ
許シタノデアリマス、第二百四條ハ決定及命令ノ效力ハ告知ニ依ッテ發生ス
ルモノデアリマスカラ、告知ノ方法、場所、年月日等ハ之ヲ明確ニシテ、當事者
其他之ヲ受クル者ノ利益ヲ確保スル必要ガアリト致シテ、告知ノ方法、場所等
ヲ明確ニスル趣旨デアリマス、第二百三十八條ハ、本條ノ期間ハ少シ長キニ
失スルト云フコトデ、之ヲ三箇月ニ改メタニ過ギナイノデアリマス、第二百
六十九條ハ、矢張リ是モ本條ノ過料ノ制裁ガ少シ重キニ過ギルト云フ點デ、
之ヲ引下ゲタノデアリマス、第二百九十六條ハ證人ノ訊問ハ、後ニ訊問ス
ベキ證人ノ居ナイ所デ爲スガ本則デアリマスカラ、其趣旨ヲ明カニシタニ過
ギナイノデアリマス、第三百三十六條ハ當事者訊問ハ現行法ノ認ムル如ク、
申立ニ因リテモ爲スコトヲ得ルモノト爲シテ、特ニ其申立ヲ許サナイコトト
スル理由ガナイノデアリマスカラ、申立ニ因リテ許スコトモ出來ルヤウニシ
タノデアリマス、第三百三十九條ハ、二百六十九條ノ修正ト同一デアリマス、
第三百六十一條ハ、控訴ノ制限ハ······制限ノ金額ハ或ハ生活ノ程度ニ依ッテ
ハ多額ニ失シハシナイカト云フコトデ、之ヲ二百圓ニ引下ゲタノデアリマス、
第三百六十四條ハ、控訴ノ取下ハ訴ノ取下ト異ナリマシテ、事實上控訴權消
失ノ結果ヲ來スコトガ多クアリマスカラ、之ニ付テ相手方ノ同意ヲ得ルコト
ヲ必要トスル理由ハナカラウト云フコトデ、之ヲ修正シタノデアリマス、第
三百七十一條ハ、單ニ是ハ文字ノ修正デアリマシテ、他ノ用例ト一致セシム
ル爲デアリマス、第三百七十三條ハ第三百六十一條ノ修正ノ結果デアリマ
ス第四百二十四條ハ、本條ノ期間ハ少シ短キニ失シハシナイカト云フコト
デ、現行法ノ如ク之ヲ三十日ト致シタノデアリマス、次ニ民事訴訟法中改正
法律施行法案ノ修正ハ、第二條ハ、唯文字ノ修正デ、他ノ條文ト用例ヲ同ジ
クシタダケデアリマス、第十一條ハ、民事訴訟法中改正法律案ノ第三百六十
一條ノ修正ノ結果デアリマス、而シテ是等ノ修正ニ對シテハ、政府ハ全然同
意ヲサレタノデアリマス、以上ヲ以チマシテ兩案ノ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=10
-
011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=11
-
012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=12
-
013・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=13
-
014・五條爲功
○子爵五條爲功君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=14
-
015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
東京平山吉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=16
-
017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題ニ供シマス
〔土方寧君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=17
-
018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 土方君ハドウ云フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=18
-
019・土方寧
○土方寧君 政府ニチヨット質問ガシタウゴザイマス、此ノ席デ簡單デゴザイ
マスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質問デスカ、宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=20
-
021・土方寧
○土方寧君 政府ハ此委員會ノ修正ニ御同意デアリマスヤ否ヤヲ伺ヒタイ
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=21
-
022・江木翼
○國務大臣、江木翼君) 全部同意デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=22
-
023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 委員會ノ修正ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=23
-
024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、他ハ原案ニ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=24
-
025・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=25
-
026・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=26
-
027・五條爲功
○子爵五條爲功君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=27
-
028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ兩案ノ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=28
-
029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
東京発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案トモ第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ、決定次第後トヨリ御通知ニ及ビ
やく、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午前十時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02119260305&spkNum=32
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