1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月十六日(火曜日)
午前十時二十分開議
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議事日程 第二十六號 大正十五年三月十六日
午前十時開議
第一 請願委員長報告
第二 對支文化事業特別會計法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 教育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 明治三十八年法律第十七號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 議院法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 商事調停法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第八 大正十四年法律第三十五號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第九 輸出生絲檢査法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十 郵便年金法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十一 郵便年金特別會計法(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十二 舊慣に依り永小作權者か地租額負擔を約したる田畑の地租免除に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十三 姫路津山間鐵道敷設の請願 會議
第十四 田名部大間間鐵道敷設の請願 會議
第十五 萩小郡間鐵道敷設の請願 會議
第十六 白河廣田間鐵道敷設の請願 會議
第十七 工業用鹽特價供給に關する請願 會議
第十八 荒川跨線道路新設の請願 會議
第十九 福島地方裁判所白河支部存置の請願 會議
第二十 柳津野澤間鐵道敷設の請願 會議
第二十一 民間航空事業開發に關する請願 會議
第二十二 蠶絲局設置の請願 會議
第二十三 堤郵便局を一等郵便局と爲すの請願 會議
第二十四 滋賀縣東黒田郵便局に集配事務開始の請願 會議
第二十五 産業組合中央金庫法中改正の請願 會議
第二十六 航路標識設置に關する請願 會議
第二十七 黒糖、白下糖消費税免除に關する請願 會議
第二十八 沖繩分蜜糖業保護に關する請願 會議
第二十九 島根縣邑智郡布施村に郵便局設置の請願 會議
第三十 久利郵便局に電信竝電話事務開始の請願 會議
第三十一 島根縣美濃郡二川村に無集配郵便局設置の請願 會議
第三十二 渡良瀬川改修の請願 會議
第三十三 三國、吉氷兩郵便局に電信竝電話事務開始の請願 會議
第三十四 海面に於ける行政區域制定の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
昨十五日豫算委員長ヨリ第三分科擔當委員赤池濃君ヲ第二分科兼務委員ニ
選定シタル旨ノ報告書ヲ提出セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
對支文化事業特別會計法中改正法律案
〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
議院法中改正法律案
東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
商事調停法案
大正十四年法律第三十五號中改正法律案
輸出生絲檢査法案
郵便年金法案
郵便年金特別會計法案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ
奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
大正十二年勅令第四百五號廢止法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
舊慣ニ依リ永小作權者カ地租額負擔ヲ約シタル田畑ノ地租免除ニ關スル
法律案
同日政府ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十三年度國有財產增減總計算書
大正十三年度各省所管國有財產增減報〓書
大正十三年度國有財產增減總計算書檢査報告
南荒山〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、請願委
員長報告、一條公爵
〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=2
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003・一條實孝
○公爵一條實孝君 第二囘請願委員長報告ヲ申上ゲマス、去ル二月二十四日
第一囘報〓ヲ致シマシタル以後ニ於キマシテ、委員會ハ二囘、分科會ハ第一、
第三分科ニアッテハ三囘ヅツ、第二、第四分科ニアッテハ二囘ヅツ、開會イタ
シマシタ、請願文書表報〓ハ二月二十四日ニ第五囘ヲ、三月三日ニ第六囘ヲ、
三月十日ニ第七囘ヲ提出イタシマシタ、又請願委員會特別報告ハ三月五日、
三月十二日ノ二囘提出イタシマシタ、三月十五日午後四時ノ締切ニ於テ、請
願受領件數ハ二百一件、三百四十二通、連署人名三万九千二十名デアリマシ
テ,之ニ第一囘報〓ノ際、請願文書表未揭載件數八十九件、百五十八通アリ
TV.此中請願文書表揭載件數ハ百九十八件、三百九十通デアリマス、之ニ
第一囘報〓ノ際、審査未了ニ屬シタル百三十六件、三百四十通ヲ加ヘマスト、
三百三十四件、七百三十通ト相成リマス、以上ニ付キ審査イタシマシタル結
果、院議ニ付スベシト議決シタルモノ三十九件、四十通、院議ニ付スルヲ要
セズト議決シタルモノ五件、三十八通、審査未了ニ屬スルモノガ二百九十件、
六百五十二通デアリマス、尙ホ請願文書表未揭載件數九十二件、百十通アリ
マス
小山市立山王発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、對支文化事業特別會計法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、外務參與官永井柳太郞君
對支文化事業特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
對支文化事業特別會計法中左ノ通改正ス
第七條中「二百五十萬圓」ヲ「三百萬圓」ニ改ム
第九條中「本會計ノ資金ハ」ヲ「本會計ノ資金ハ國債ヲ以テ保有シ又ハ」ニ改
ム
第十一條本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル事業費ノ支出殘額ハ遞次之ヲ
翌年度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
附則
本法ハ大正十五年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=4
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005・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 對支文化事業特別會計法中改正法律案ノ提出ノ
理由ヲ簡單ニ說明イタシタイト存ジマス、大正十二年四月對支文化事業特別
會計法ヲ制定イタシマシテ以來、政府ハ銳意事業ノ堅實ナル發展ヲ圖リマシ
テ、諸般ノ文化的施設ハ著々整理改善ノ實ヲ擧ゲ來ッタノデアリマス、併シ尙
ホ是ガ充實ノ必要ヲ感ズルコト痛切ナルモノガアリマス、例ヘバ支那ニ於テ
行フベキ文化事業ノ一部分デアル北京及上海ノ學術研究所ニ於ケル準備的研
究、竝ニ從來支那ニ於テ經營セラレ來リマシタ東亞同文會及同仁會ノ事業ノ
如キガ是デアリマス、加之、最近列國モ亦我國ト同樣ニ義和團事件賠償金ノ全
部又ハ一部ヲ對支文化事業ニ投ズル事トナリマシテ、今ヤ此種ノ事業ハ各國
共ニ熱心ナル注意ヲ加フルコトトナッタコトハ、御承知ノ通リデゴザイマス、
從テ日本ト致シマシテハ、此方面ニ對シテ更ニ一層ノ努力ヲ盡シ、之ガ有終
ノ美ヲ濟スコトニ最善ノ努力ヲ致サネバナラナイコトハ、各位モ必ズヤ御同
感ノコトト信ジマス、然ルニ本特別會計法第七條ニ於ケル歲出制限額ハ御承
知ノ通リ二百五十万圓デアリマシテ、到底、是等諸般ノ緊急ナル要求ヲ滿タ
スニ足ラザル憾ミガアルノデゴザイマス、依テ更ニ五十万圓ヲ增額イタシマ
シテ、之ニ依ッテ文化事業ノ達成ヲ期スルコトト致シタイノデゴザイマス、
依テ是ガ爲ニ積立金ノ運用方法ヲ改メマシテ、卽チ從來、本會計ノ資金ハ單
ニ大藏省預金部ニ對スル預入ノミニ限定サレテ居ッタノデアリマスガ、更ニ該
資金ヲ以テ國債ヲ保有シ得ルコトト致シマシテ、之ニ依ッテ前記所要額ノ全部
ヲ安全ニ支出シ得ル方法ヲ講ズルノ必要ヲ認メタノデゴザイマス、尙ホ本特
別會計ノ事業費ハ、事業ノ性質ニ鑑ミマシテ、前年度ノ歲出豫算殘額ヲ遞次
翌年度ニ繰越シテ使用シ得ルノ途ヲ開キマシテ、之ニ依ッテ豫定事業計畫ノ遂
行ニ支障ナカラシムルヤウ、本法律案ヲ提出スルノ必要ヲ感ジタノデゴザイ
マス、是ガ本改正法律案ヲ提出スルニ至リマシタ主要ナル理由デゴザイマス、
何卒御審議ノ上ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ切望イタス次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=5
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006・阪本さん之助
○阪本釤之助君 登壇イタシマセウカ、餘リ長イコトデハゴザイマセヌガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御登壇ノ方ガ總テノ點ニ宜カラウカト考ヘマス
〔阪本釤之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=7
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008・阪本さん之助
○阪本釤之助君 唯今、上程サレマシタ對支文化事業ノ法律案改正デアリマ
ス、此機會ニ於キマシテ、對支文化事業其モノノ成行ニ付テ、少シ政府ニ御
尋ネシタイト思フノデアリマス、對支文化事業實施ト云フコトハ、事其モノ
ニ於テハ私共頗ル喜ブ所デアリマシテ、效果サヘ好ケレバ盛ンニ御實行ニナ
リタイト云フコトヲ希望スル一人デアルノデアリマスガ、既ニ實施サレテ以
來數年、無論御努力ニモナッテ居リ、其方面ニ種々視察ノ目ヲ放ッテ居リマス
レバ、著々效果ヲ擧ゲテ居ルコトデアラウト信ジマスケレドモ、我〓局外者
ガ唯、離レテ斯ウ見テ居リマスルトドノ位ノ效果ガ擧ガッテ居ルカト云フコ
トヲ實ハ疑フノデアリマス、第一、順序ヲ立テテ伺ヒタウ存ジマスルガ、收
入ニ於キマスル、此元資金トナッテ參リマスル所ノ金ハ靑島ノ公有財產ニ關
シマスル國庫證劵ト、團匪事件ニ關係シマスル賠償金ト、此二ツガ財源ニナッ
テ居ルヤウニ思ハレルノデアリマスルガ、此金ハ最早收入スベキモノハ悉ク
收入ヲ致シテ固定イタシテ居ッテ、之ヲ利殖イタシテ使用スルコトサヘ宜シキ
ヲ得レバ、都合ヨク行クノデアルカ、或ハ又マダ〓〓取ルベキ金ガ取ラレズ
ニ居ルノカ、幾ラカ有ルノデアルカ、若シ取ルベキ金ガマダ有ルナラバ、唯
今ノ支那ノ現狀ニ鑑ミマシテ、尙ホ滯リナク取リ得ル見込ガアルカドウカ、
既ニモウ取ルモノハ取ッテシマヒ、何等今後ニハ關係ガ無イト云フコトデゴザ
イマスレバ、別ニ御說明ヲ要セヌ譯デゴザイマスルガ、此點ヲ少シ伺ッテ見タ
イ、ソレカラ歲出ノ方ニ參リマシテ、此御使ヒ途ヲ見マスルト、先ヅ留學生
ト云フ者ヲ御出シニナッテ居ル、又此豫算ヲ見マスルト、能ク分リマセヌガ···
···分ラヌコトハナイ、見ヤウガ惡イノダラウト思ヒマスガ、アチラヘモ日本
ノ學生ヲ出シ、支那カラモ又日本ニ學生ヲ引受ケテ、兩方ノ費用ヲ御支辨ナ
サルモノデアラウト想像スルノデアリマスガ、細カイ數字ニマデ涉ッテ御說
明ハ要シマセヌガ、支那ヘ出シテ居ル留學生ノ現狀如何、又支那カラコチラ
ニ參ノテ居ル學生ノ現狀如何、殊ニ支那カラ參ッテ居ル學生ト云フモノハド
ウ云フ狀況ノモノデアリマスルカ、時〓支那ノ學生ト云フモノハ、何カ事ガア
リマスルト大集會ヲ開イテ、俄ニ歸國ヲスルトカ、若クハ公使館ニ迫ルトカ
云フコトヲ見聞イタスノデアリマスガ、此費用ヲ以テ補助サレテ居ル所ノ學
生ハ、別ニ沈著ニ致シテ居ッテ、是等ノ仲間ニハ這入ッテ居ラヌモノデアルカ、
時ニハ矢張リ仲間入リヲスルモノデアルカ、又平常ドウ云フ方法ヲ以テ御取
締ニナッテ居ッテ、ドウ云フ方面ニ入學サセテ御イデニナルカト云フヤウナコ
トヲ、大體デ宜シイノデアリマスカラ承リタイト思フ、ソレカラ第二ハ、交
換講演ト稱シテ、本邦カラモ相當ノ學者ヲ御派遣ニナッテ、アチラデ講演ヲス
ルコトニナッテ居ル、又支那カラモ相當ノ學者ヲコチラニ御招キニナリマシ
テ、出ス方モ招ク方モ皆此費用ノ中カラ出シテ、四万圓以上ノ金ヲ御使ヒニ
ナッテ居ルヤウデアリマスルガ、ドノ位ノ效果ガアリマスルカ、ドウモ私共、
局外者カラ見マスルト、支那カラ學者ガ來テ講演ヲシタカラト云ッテ、ドレ程
ノ日本人ニ感ジヲ與ヘテ居ルカ、又支那ヘ參ヲテ、立派ナ學者ガ日本カラ折角
御苦勞下サレテ、ドノ位ニ受ケテ居ルモノデアルカ、辭令ニ巧ミナル支那ノ
コトデアルカラ、相當ニ感謝モ致シテ居ルカモ知レマセヌガ、實際ノ所ヲ穿ツ
テ見マシテ、ドウ云フモノデアリマセウカ、政府ハドンナ風ニ御覽ニナッテ居
ルカ、無論、效果アリト仰シヤイマセウケレドモ、其效果ノ有リ工合ガドウ
云フモノデアルカト云フコトヲ、出來得ルダケ一ツ御說明ヲ願ヒタイト思フ、
次ニハ補助費ト云フモノヲ此中カラ御出シニナッテ居リマスルガ、其補助費
ヲ見マスルト、靑島ノ諸學校ノ、是マデ日本ガ造ッテ居。ヲタを校デモ、大方向
ウデ引受ケマシタノデ、ソレニ補助ヲ致シテ繼續ヲスルト云フコトニナッテ
居ルノダラウト思ヒマスガ、ソレハドウ云フヤリ方デ以テ、幾ツ程ノ學校ヲ
ドウシテ補助シテ居ルノデアルカ、又東亞同文會ト申スモノハ是ハ古クカ
ラ有リマスノデ、皆樣御熟知ノモノデアリマスルガ、多少消長ガアッテ、振ツ
タリ振ハナカッタリシテ居ルヤウデアリマスガ、免ニ角、數十年一日ノ如ク努
力ヲ致シテ居ル、元ハ東亞同文書院ト申シタカト思ヒマスガ、會カドチラカ
知リマセヌガ、之ニ三十五万九千圓ト云フ金ヲ御補助ニナルヤウデアリマス
ルガ、東亞同文書院ト云フモノノ、今ノ現況ハドウ云フモノデアルカ、此卽
チ三十五万餘圓ノ金ヲ御補助ニナッタニ付ラ、ドレダケノ進步ヲ圖フタカト云
フコトヲ承ッテ見タイ、ソレカラ次ガ同仁會、是ハ支那ニ向ッテ醫業ノ施設ヲ
シテ、支那人ヲシテ我國ノ德ニ化セシムルト云フ意味デ、十年來、大隈侯在
世中ナドハ非常ニ御盡力ナサレタモノデアリマスルガ、私モアチラニ參ッテ、
同仁會ノ病院モ一々視察シタコトモゴザイマスルガ、非常ニ勉强ハナサッテ居
リマスルガ、今日ハ如何カ存ジマセヌガ、北京ニ在リマス所ノ同仁會ノ病院
ナドハ「ロックフエラー」ノ巨大ナ病院ガ隣リニ出來マシテ、同仁會ノ病院ハ頗
ル遜色ガアッテ、遺憾ニ存ジタコトデアリマス、幸ニ此對支文化事業ナドノ補
助モ得マスルシ······アノ會ニシテ四十六万何ンボト云フモノヲ、別ニ此費用
カラ補助ヲ受ケルト云フコトハ非常ナ都合ノ好イコトデ、爲ニ大イニ振起イ
タシタコトデアラウト存ジマスルガ、ドノ位ニ振ヒ起ッタカ、多分此中ニハ濟
南ノ元陸軍デ立テラレタ病院モ含ンデ居ルノデハナイカト思フ、是モ私ハ一
度見テ居リマスルカラ記憶ガアリマスルガ、是等モ良イ病院デアル、此病院
ナドガ四十六万餘圓ノ中ノ最モ重ナルモノデアルカ、他ニドウ云フヤウナモ
ノニ使ッテ御イデニナルカト云フコト、又其現況ヲ承ッテ見タイト思フノデア
ル、ソレカラ日華學會ト云フモノニ、僅カノ金デハアリマスルガ、二万五千
圓御補助ニナルヤウデアリマスガ、此日華學會ト云フモノハ、ドウ云フヤウ
ナモノデアルカ、是モ極クザットデ宜シウゴザイマスガ、現況ヲ承ッテ見タイ、
ソレカラ助成金ト云フモノニ三十三万圓カ、〓括シテ豫算ニ計上サレテ居リ
マスガ、助成金ハ主モニドウ云フ方面ニ御使ヒニナルノデアルカ、豫メ定メ
ズニ置イテ、外務大臣ノ御見計ラヒデ或ハ御ヤリニナルモノカノヤウニモ察
セラレマスガ、サウデナケレバドウ云フ······ソレデアッテモ、此助成金三十三
万餘圓ハ、ドウ云フ風ニ御使ヒニナル御見込ノモノデアルカ、斯ウ云フヤウ
ナ點ヲ承リマシテ、本案ノ賛否ヲ決シタイト存ズルノデアリマス、要スルニ
此對支文化事業特別會計ニ依ヲテ支出サレル所ノ金及收入ノ狀態ハドウ云フ
モノデアルカト云フ、普遍的ノ知識ヲ私共ニ御與ヘ下サルコトヲ希望スル爲
ニ、御說明ヲ煩ハス次第デアリマス
〔政府委員永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=8
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009・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 唯今、阪本君カラ對支文化事業ノ實狀ニ付テ、
更ニ詳細ナル說明ヲナスヤウニ御話ガゴザイマシタノデ、御質問ノ順序ニ從
ヒマシテ、簡單ニ御答ヘ申シタイト存ジマス、第一ニ、對支文化事業ノ資金ハ
團匪賠償金トカ靑島公有財產補償、國庫債劵ノ元利トカ云フヤウナモノカラ
積立テルコトニナッテ居ルガ、ソレハ確實ニ收得サレテ居ルカドウカト云フ御
質問デアッタヤウニ存ジマス、團匪賠償金ハ是ハ關稅ヲ資源ニシテ居ルノデ
アリマスルカラ、確實ニ支拂ハレテ居ルノデゴザイマス、膠濟鐵道ノ國庫債劵
ノ利子モ此資源ニナッテ居ルノデアリマスガ、此支拂モ今日マデノ所ハ確實ニ
支拂ハレテ居ルノデゴザイマス、靑島公有財產ニ關スル國庫債劵ノ支拂······
元利支拂ガ時〓遲延シタコトハゴザイマスケレドモ、當方カラ催促イタシマ
シテ、今日マデノ所デハ收得スベキモノハ收得シテ居ル譯デゴザイマシテ、財
源ノ點ニ於テ、今日ハ何等不確實トシテ心配ヲスル程ノモノハ無イヤウニ考
ヘマス、第二ニ、日支兩國カラ互ニ留學生ヲ出シテ居ルヤウデアルガ、其成蹟
ハドウカト云フ御尋ガアッタヤウニ思ヒマスガ、支那カラ日本ニ留學生ヲ派遣
スルコトニナッテ居リマスケレドモ、日本カラ支那ニハ留學生ハ出シテ居ラナ
イノデゴザイマス、日本カラ支那ニ派遣イタシマスノハ、時〓視察員ト云フモ
ノヲ出スダケデゴザイマス、留學生ハ支那カラ日本ニ參ッテ居ルダケデゴザイ
マスガ是等ノ留學生ハ總テ専門學校以上ノ學生デゴザイマシテ、總數約千五
百名ニ達スルノデアリマス、是等ノ學生ハ何レモ眞面目ニ〓究イタシテ居リ
マシテ、他ノ留學生ニ較ベマシテ、寧ロ模範トナルモノガアルヤウニ考ヘテ居
ルノデゴザイマス、第三ニハ、交換講演ヲヤッテ居ルガ、其實蹟ハ如何デアルト
云フ御尋デゴザイマシタガ、交換講演ノ方ハマダ十分ニ成蹟ヲ具體的ニ認メ
ルト云フコトハ出來マセヌケレドモ、雙方ノ尊敬サレテ居ル學者ガ、互ニ自國
ニ於テ研究イタシタ結果ヲ發表イタシテ、其知識ノ交換ニ依ッテ、日支兩國ヲ
精神的ニ、思想的ニ結合スルコトニハ少カラザル貢獻ガアルヤウニ考ヘル
ノデゴザイマス、第四ニハ靑島ニ於ケル各種ノ學校ニ對スル補助ヤ、東亞
同文會竝ニ同仁會ナドニ對スル補助ノコトニ付テ、果シテ豫期ノ成蹟ヲ擧ゲ
テ居ルカドウカト云フコトニ付キマシテモ、御尋ガアッタヤウニ思ヒマスガ、
靑島ノ方ニ於テハ御承知ノ通リ、靑島日本中學校、靑島日本高等女學校、靑
島小學校ナドニ對シマシテ、ソレゾレ補助ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、是
等ノ學校ハ相當ナ成蹟ヲ擧ゲテ、日支兩國ノ文化的ノ結合ノ爲ニ、少カラザ
ル貢獻ヲシテ居ルヤウニ存ジマス、東亞同文書院······東亞同文會ハ御承知ノ
通リ、上海ニ東亞同文書院ヲ設ケテ居リマスガ、約六百名ホドノ學生ヲ收容
シテ居リマシテ、東亞同文書院ノ學生及卒業生ガ支那ノ實情ヲ〓究シ、又研
究シタ結果ヲ日本ノ人〓ニ傳ヘマスル點ニ於キマシテモ、又日本人ガ支那人
ト各種ノ共同目的ニ事業ヲ營ム場合ニ於テモ、其協力者トシテ、過去ニ於テ
モ、現在ニ於テモ、少カラザル功蹟ヲ擧ゲテ居ルコトハ御承知ノ通リデゴザ
イマス、東亞同文會ハ上海ニ同文書院ヲ有ッテ居リマス外、天津ニ於テモ、漢
口ニ於テモ、今日ハ中學校ヲ經營シテ居リマシテ、ソレ等ノ學校モ最近ハ著
々トシテ成蹟ヲ擧ゲテ居ルノデゴザイマス、同仁會ノ方デハ、漢口、北京、
此兩所ニ於テ同仁會自ラ經營シテ居ル病院ノアリマスル外、濟南ト靑島ニ於
キマシテハ、又ソレゾレ病院ノ委託經營ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、支那
ニ對スル社會的文化的事業ニ對シテ、相當ナ努力ヲ致シラ居ルノデアリマス、
私共モ、唯〓阪本君ガ御話ニナリマシタ通リ、我ガ同仁病院ノ如キモノハ、
其規模ニ於テ、又其設備ニ於キマシテ、唯今御引用ニナッタ「ロックフエラー」
ナドノ事業ニ比ベテ、誠ニ不十分ナ點ガアルコトヲ遺憾ト政シテ居ルノデゴ
ザイマス、私モ實際ニ其事業ヲ見マシテ、阪本君ノ御說明ニナリマシタト同
樣ナ感ジヲ持ッタノデアリマスガ、併シ政府ト致シマシテハ、出來ルダケ諸外
國ノ事業ニ對シマシテモ遜色ナキヤウニ、同仁會ノ事業ヲモ援助イタシタイ
ト云フ精神カラ、此度、補助金ノ如キモノモ增額ヲスルコトニ決メマシテ、
ソレニ對シテ御協賛ヲ仰イデ居ル次第デゴザイマス、ソレ等ノコトガ御質問
ノ主要ナ點デアッタヤウニ···
〔阪本彰之助君「日華學會ノコトニ付テ······」ト述フ〕
ソレカラ最後ニ、日華學會ニ付テ御尋ガゴザイマシタガ、簡單ニ其實狀ヲ申
上ゲテ置キマス、日華學會ハ、是ハ支那ノ留學生ノ爲ニ色〓骨ヲ折フテ居ルノ
デゴザイマス、例ヘバ留學生ノ爲ニ學校ヲ選擇イタシマストカ、入學ノ便宜
ヲ圖ッテヤルトカ、寄宿舍ノ設備ヲスルトカ、ソレカラ又學校ニ入學シ、寄宿
舍デ生活ヲスルダケデナシニ、銀行トカ、會社トカ、工場トカ、其他個人商
店ナドニ實習見習ヲシタイト云フヤウナ者ニ對シマシテハ、出來ルダケ其手
引ヲシ、其世話ヲスルトカ云フヤウナコトモ、事業ニナッテ居ルノデゴザイマ
ス、是等ノコトニ對シマシテ種々努力ヲ致シテ居リマスル外ニ、日華學會ノ
著シイ事業ト致シマシテハ、此東亞高等豫備學校ノ經營ヲ致シテ居ルノデゴ
ザイマス、是ハ各大學、高等學校、其他各種ノ專門學校ニ入學ヲ希望シテ居
リマスル支那ノ留學生ニ對シテ、豫備知識ヲ與ヘル、豫備〓育ヲ施スト云フ
コトヲ目的ニ致シテ居ルノデゴザイマス、現在ニ於キマシテハ約一千名內外
ノ學生ヲ收容イタシテ居リマス、詰リ日華學會ハ、日本ニ參リマシタ學生ノ
爲ニ、親身ニナッテ世話ヲシテ、サウシテ入學カラ、寄宿舍デ生活ヲスルコト
カラ、學校ヲ出タ後ノ實習ノコトカラ、萬般ノ世話ヲスル、サウシテ支那ノ
留學生ヲシテ外國ニ在ルト云フヤウナ寂寞ナル不便ナル感ジヲ懷カセナイヤ
ウニシヤウト云フ爲ニ、組織セラレテ居ルノデゴザイマシテ、政府ト致シマ
シテハ、日華學會ノ事業ハ對支文化事業ノ精神ニ合致スルモノト認メマシテ、
豫算ニ計上シテアリマスルヤウニ、補助ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス、是
等ガ唯〓ノ御質問ニ對スル主要ナル點カト思ヒマスガ、尙ホ御不審ノ所ガア
リマシタラ重ネテ御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=9
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010・阪本さん之助
○阪本彰之助君 モウ一ツ最後ニ御尋ネ申シマシタ、本員ガ最モ必要ト認メ
マス點ニ付テ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) モウ少シ大キナ御聲デ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=11
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012・阪本さん之助
○阪本釤之助君 餘程大キナ聲ノ積リデアリマスガ······最後ニ御尋ネ致シマ
シタ助成費ト云フモノガ、如何ナル······既ニ使ハレテ居ルナラバ、ドウ云フ
コトニ使ハレテ居ルカ、又十五年度ニドンナ御計畫デアルカト云フヤウナコ
トヲ伺ヒタイト云フコトヲ申シタノデアリマスルカラ、此助成費三十三万圓
ノ使途如何ト云フコトヲ、モウ一應御答ヲ願ヒタイ、ソレカラ尙ホ唯今ノ御
答辯ニ對シテ補足ヲシテ少シ伺ヒタイト思ヒマスガ、靑島ノ公有財產ニ付テ
收入スル金ハ、相當遲延勝デアルガ、催促ヲシテドウニカ今日マデハ收入ヲ
致シテ居ルト云フ御言葉デアリマシタガ、遲延ノ程度ハ如何、隨分骨ノ折レ
ルコトデアリマスカ、其遲延ガ翌々年度ニナッタト云フヤウナ事實ガアルカ、
其狀況ヲ承リタイノデアリマス、ソレカラ留學生ハ日本カラ出シテ居ルノデ
ナイ、支那ノ學生ヲ日本ヘ引受ケテ居ルノガ千五百人程モアルト云フ御答辯
デアリマス、是ハ相當ニ取締モ著イテ居ル、寧ロ模範トモ申スベキモノデア
ル、斯ウ云フコトデアリマシタガ、サウ鑄型ニ篏メタヤウニモ參リマスマイ
ケレドモ、此千五百人ハ何等カノ統一法ガ著イテ居リマシテ、其首腦者ガ指
圖スレバ、右ヘデモ、左ヘデモ動クモノデアッテ、他ノ支那留學生ト稱スル者
ガ種々妄動ヲ致ス場合ニモ、其千五百人ダケハ其取締ヲスル人ガ注意ヲ致シ
マスレバ、微動ダモ致サナイ、斯ウ云フコトニ認メラルルノデアリマスカ、
其點ヲ承リタイ、ソレカラ、日本カラハ留學生ハ出シテ居ラヌガ、視察員ト
云フモノヲ時〓出シテ居ルト云フコトデ、成程、豫算ヲ見マスト、六万六千
圓ナニガシト云フモノガ使ハレテ居ルヤウデアリマス、大層多數ノ人ガ支那
ノ視察ニ出ルカノヤウニ見エマスガ、是ハドウ云フ方面ノ人ガ視察ニ出ルノ
デアリマスカ、サウシテ其視察ノ效果如何、又彼ノ地ニ於ケル彼ノ官民ノ氣
受ケ如何、將來モ尙ホ之ヲ踏襲シテ改ムル所ナク、同ジ種類、同ジ方針デ御
派遣ニナリマスカト云フヤウナコトヲ承リタイ、ソレカラ東亞同文書院ノ學
生ガ、此金ノ爲ニ養ハレテ居ル者ガ六百人程モアルト云フコトデアリマス
ガ、左樣ニナリマシタ以上ハ、從前ハ各府縣ニ於テ費用ヲ出シマシテ、二人
乃至五六人デスカノ人ヲ、每年各地方ノ費用デ推薦ヲ致シテ、此東亞同文書
院ヘ付託シタ時代ガアリマシタガ、此節ニ於キマシテハ、ソレ等ハ廢メマシ
テ、皆此對支文化事業ノ費用ノ恩澤ニ浴シテ、是等ノ人ハ養ハレテ居ルノデ
アリマスカ、又從前、各府縣ノ費用デ養ノテ居フタ東亞同文書院ノ卒業生ト同
ジコトデ、政府ノ手ニ依ッテ其身ノ振方ヲ付ケル、斯ウ云フコトニナッテ居ル
ノデアリマスカ、又ハ府縣ノ推薦ニ係ル所ノ生徒ト云フモノハ、從前ノ通リ
別ニアルノデアリマスカト云フコトヲ承リタイ、此諸點ニ付テ······尙ホソレ
カラモウ一ツ伺ヒタイノデアリマスガ、日華學會ノ狀況ハ承リマシタガ、神
田區ノ三崎町ニアリマス、確カ日華學會トアッタト思ヒマスガ、西洋造リノ、
餘リ立派ナモノヂヤゴザイマセヌガ、可ナリノ建物ガアッテ、時〓集會ヲ催サ
レテ居ルヤウデアリマスガ、アレハ卽チ其本部ト云フヤウナモノデアリマス
カ、左樣ナ點ヲ序デナガラ參考ニ伺フノデアリマス
〔政府委員永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=12
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013・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 唯今、阪本君カラ重ネテ御質問ガアリマシタノ
デ、御答ヘ申上ゲタイト存ジマス、第一ニ此助成金ノ內容ニ付テ御尋ガゴザ
イマシタガ、此助成金ノ中デ二十万圓ガ、〓究所ノ······北京、上海ニ設ケマ
スル〓究所ノ準備〓究及設備ノ完了イタシマスル前ノ豫備研究ノ費用ニナル
ノデゴザイマス、御承知ノ通リ、對支文化事業ノ一部ト致シマシテ、北京デ
人文科學ノ〓究所、上海デ自然科學ノ〓究所及圖書館ヲ開クコトニナッテ居ル
ノデゴザイマスガ、其研究所ノ準備〓究ト致シマシテ、二十万圓ヲ要求スル
コトニナッテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ其繪畫ノ展覽會ヲ致シマストカ、
又圖書ヲ刊行及寄贈ヲ致シマス爲ノ補助トカ、サウ云フコトノ爲ニ助成金ヲ
要求スルコトニナッテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ次ニ、先程、支那カラ日
本ニ參。ヲテ居リマス留學生ノ總數ガ約千五百ト云フコトヲ申上ゲマシタガ是
ハ支那カラ日本ニ參ヲテ居リマス留學生ノ總數デゴザイマシテ、其中ノ補給金
ヲ受ケ居リマシタノハ是ハ從來ハ約三百デゴザイマシタ、來年度ニハ諸君ノ
御協賛ヲ得マシテ三百五十名程ニ其補給金ヲ受ケル者モ增加イタシタイノデ
アリマス、日本カラ支那ニ參リマスル視察員ハ、是ハ對支文化事業ニ關係ノ
アル職業ニ從事シテ居ル者ヤ、又ハ學生デゴザイマス、ソレ等ノ者モ一時的
ニ此視察員トシテ支那ニ派遣シテ居ノタノデゴザイマス、留學生ノ內地ニ在ル
者ヲ統一スルニハ、何等カノ機關ガアルカト云フコトデゴザイマシタガ、ソ
レニハ此支那ノ方デ留學生ノ監督ヲスル機關ガ出來テ居リマシテ、其方デ監
督ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、次ニ上海同文書院ニ對シテ少カラザル補助
ヲ與ヘテ居ルノデアルガ、各府縣カラ派遣セラレテ居ル者トノ關係ハ、如何
ニナッテ居ルカト云フ御尋デアッタト思ヒマスガ、各府縣カラ選拔シテ上海ノ
同文書院ニ派遣イタシマスルコトハ、從來ノ通リデゴザイマス、ソレハ其儘
存續シテ居リマシテ、サウシテ其派遣サレタ學生、其他ノ學生全體ノ〓育ニ
對シマシテ、對支文化事業カラ同文書院ノ事業ニ援助ヲ與ヘテ居ルト云フ譯
ニナッテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ東京ノ神田ニ在リマスル日華學會ノ本
部ニ對シテ御尋ガアッタヤウニ存ジマスガ、御尋ネニナリマシタ場所ガ卽チ日
華學會ノ本部デアルト同時ニ、アスコニ會館ガ出來テ居リマシテ、色〓ナ集
會ニ充テルト云フコトニナッテ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=13
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014・阪本さん之助
○阪本彰之助君 甚ダ澤山日程ノゴザイマスノニ時間ヲ潰シテ恐縮デゴザイ
マスガ、モウ一囘簡單ニ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス、唯今、御尋ネ申シタ
中ノ靑島ニ關シテ受取ルベキ金ノ遲延ノ狀況、例ヘバ翌々年度デナケレバ這
入ラナカッタトカ或ハ斯ウ云フ狀況デアッテ、ヤット受取ッタト云フコトノ、
何カ狀況ヲ承ルコトガ出來レバ、ソレヲ承リタイト云フコトヲ再三申シマシ
タケレドモ、唯今ノ御答ニ漏レテ居ル、ソレカラ助成金ノ二十万圓ノ使途ハ
唯今御示シニナリマシタガ、尙ホ十三万圓ト云フ金ハマダ御未定デアッテ、
唯.外務省ノ手心デ御使ヒニナルカ、此二點ヲモウ一應伺ヒマス
〔政府委員永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=14
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015・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 重ネテ御答へ申上ゲマス、此靑島ノ公有財產カ
ラ得マス收入ハ、時トシテ遲延スルコトガアルト申上ゲマシタガ、御承知ノ
通リ支那ノ財政狀態ノ困難ナル所カラ、時トシテ遲延イタシタコトガ有ルノ
デゴザイマスケレドモ、ソレモ非常ニ遲延シタト云フ譯デハアリマセズ、極
ク僅ナ期間遲延イタシマシタコトハ有リマスケレドモ、ソレハ當方カラ催促
ヲ致シマシテ、直チニ其約束ガ履行サレテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ助
成金ノ內容ニ付キマシテ、最モ大キナモノガ二十万圓デ、殘リノ十數万圓ノ
金ニ付テモ、尙ホ詳細ナル說明ヲスルヤウニ御話ガゴザイマシタガ、其點ハ
御差支ガナケレバ委員會デ詳細申上ゲルコトニ、御許シヲ願ヒタイト存ジマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
對支文化事業特別會計法中改正法律案特別委員
伯爵松浦厚君子爵藪篤麿君子爵〓岡長言君
男爵北里柴三郞君北條時敬君男爵大鳥富士太郞君
德富猪一郞君大城兼義君森平兵衞君
吉星小寺山本発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、〓育改善及農村振興基金特別會計法中
改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
〓育改善及農村振興基金特別會計法中左ノ通改正ス
第二條中「一億三千萬圓」ヲ「一億四千四百萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ大正十五年度ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員武內作平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=17
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018・武内作平
○政府委員(武內作平君) 曩ニ第五十囘帝國議會ニ於キマシテ、造幣局資金
ノ內一億三千万圓ヲ基金ニ繰入レ、之ガ利殖金ヲ以テ〓育ノ改善及農村振興
ノ經費ニ充當スル爲メ特別會計ヲ設置イタシマシタコトハ、御承知ノ通リデ
アリマス、然ルニ造幣局ノ資金ハ大正十四年度末ニ於キマシテ、約六千四百
餘万圓トナル見込デアリマス、而シテ造幣局ノ資本ハ五千万圓ヲ以テ足ル筈
デアリマス、ソレ故ニ、千四百万圓ハ差當リ造幣局ノ資金トシテ之ヲ留保ス
ルノ必要ガアリマセヌノデ、他ノ使途ニ使用スルコトガ出來ルノデアリマ
ス、デ、此金額ハ前囘ノ繰入ト同樣ノ趣意ヲ以テ、〓育改善及農村振興基金ニ
繰入レ、之ガ利殖基金ノ······之ガ增加基金ノ利殖金ハ之ヲ農村振興ニ關スル
費用ニ充當スルコトハ、最モ機宜ニ適スルモノト認メマシテ、本案ヲ提出イ
タシマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、速ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ
希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案特別委員
伯爵松木宗隆君玉利喜造君木場貞長君
井上哲次郞君男爵南部光臣君澤柳政太郞君
赤池濃君石川三郞君土田萬助君
南南善東ネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、明治三十八年法律第十七號中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
明治三十八年法律第十七號中左ノ通改正ス
第一條中「九千萬圓」ヲ「一億千萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
專賣局及製鐵所据置運轉資本補足ニ關スル法律月刊行作者に對十八年間一
第一條專賣局及製鐵所ノ据置運轉資本ニ不足ヲ生シタルトキハ大藏大臣
ハ借入金ヲ爲シ又ハ融通證劵ヲ發行シテ一時之ヲ補足スルコトヲ得但シ
其ノ金額ハ專賣局ニ在リテハ九千万圓製鐵所ニ在リテハ九千八百万圓ヲ
超過スルコトヲ得ス
前項ノ借入金及融通證劵ハ遲クトモ翌年度ニ於テ之ヲ償還スヘシ
第二條大藏大臣ハ前條第一項ノ借入金又ハ融通證劵ノ發行ニ代ヘ當該會
計年度內ニ限リ國庫餘裕金ヲ繰替使用スルコトヲ得
〔政府委員武內作平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=20
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021・武内作平
○政府委員(武内作平君) 本案ハ專賣局及製鐵所据置運轉資金補足ニ關スル
法律ノ第一條ニ專賣局ノ据置運轉資金不足補足額ガ九千万圓トナッテ居リマ
スノヲ二千万圓ヲ增額イタシマシテ、一億一千万圓ニ改メタイト云フ改正案
デアリマス、現行法ニ依リマスルト、專賣局ノ据置運轉資本金ハ一千万圓デ
アリマシテ、其資本ニ不足ヲ生ジタル時ハ大藏大臣ハ借入金ヲ爲シ、又ハ融
通證劵ヲ發行シテ一時之ヲ補足シ得ルノデアリマシテ、其借入金額又ハ融通
證劵發行ノ制限額ガ九千万圓デアリマス、故ニ現在ニ於キマシテハ、右制限
ノ九千万圓ト、据置運轉資本受入額一千万圓、合計一億万圓ノ範圍內ニ於テ
事業ヲ經營イタシテ居リマスノデアリマス、然ルニ近時、專賣品ノ賣行ハ累
年增加ノ傾向ヲ示シマシテ、事業ハ年ト共ニ發展シツツアルノデアリマス、
從テ是ガ需給ノ圓滿ヲ圖リ、事業ノ發展ニ順應イタシマスルノニハ、當時、
一定數量ノ原料、材料竝ニ專賣品ノ準備貯藏ヲ必要ト致シマスル關係上、年
度末ニ於ケル持越品ガ非常ニ多額ニ上ルコトニナッタノデアリマス、殊ニ大正
十五年度ニ於キマシテハ十三、十四兩年度ヲ通ジテ、鹽ノ生產ハ稀有ノ豐
收デアリマシタガ爲ニ、內地鹽ノ持越數量ガ非常ナ巨額ニ達シマシタ、又葉
煙草ニ於キマシテモ、十三年度及十四年度ニ於テ賠償金ノ引上ヲ致シマシタ
結果、其持越額ハ相當ノ巨額ニ達シマシテ、年度末ニ於ケル總持越物品價額
ハ一億一千八百餘万圓ニ達スベキ豫定デアリマス、從テ現在ノ資本ニテハ
啻ニ事業ノ遂行ニ支障ヲ來シマスルバカリデナク、延イテ其年度ノ益金ヲ所
定ノ如ク年度內ニ一般會計ニ納入シ得ザル虞ガアルノデアリマス、故ニ現行
法据置運轉資本不足補充制限額九千万圓ヲ、更ニ二千万圓增額ヲシテ、億億
一千万圓ト改正ヲ致シマスル必要ガアルノデアリマス、御審議ノ上、協賛ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
サセマス
〔小林書記官朗讀〕
明治三十八年法律第十七號中改正法律案特別委員
伯爵酒井忠正君子爵新庄直知君子爵舟橋〓賢君
男爵中島久萬吉君仁尾惟茂君山之內一次君
西久保弘道君西野元君瀨川彌右衞門君
千古市立ルキツキ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、議院法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
議院法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院修正)
議院法中左ノ通改正ス
二
第四十條ニ左ノ一項ヲ加フ
豫算案カ貴族院ニ移サレタルトキハ豫算委員ハ其ノ院ニ於テ受取リタル
日ヨリ二十一日以內ニ審査ヲ終リ議院ニ報〓スヘシ
停會ノ日數ハ審査期間ニ算入セス
〔政府委員山川端夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=23
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024・山川端夫
○政府委員(山川端夫君) 本日ハ總理大臣ガ樞密院會議ニ出席中デゴザリマ
スルカラ、私カラ本案提出ノ理由ヲ說明申上ゲマス、現行制度ニ於キマシテ
ハ豫算案ガ衆議院ニ提出セラレタ場合ニ於キマシテハ、豫算委員ハ、其院
ニ於テ受取ッタ日ヨリ二十一日以內ニ審議ヲ了シテ、本會議ニ報〓スルコトト
ナッテ居ルノデゴザリマス、是ト權衡ヲ得セシメル爲ニ、貴族院ニ於テモ同樣
ノ規定ヲ設クルコトヲ必要ト認メマシテ、改正案ヲ提出イタシマシタ次第デ
ゴザリマス、固ヨリ豫算委員會ニ於ケル審査期限ノミニ關係スルモノデゴザ
リマシテ、敢テ貴族院ノ權限ニ關係スルモノデハゴザリマセヌ、本案ハ昨年
之ヲ帝國議會ニ提出イタシマシタノデゴザリマスルガ、其成立ヲ見ルニ至ラ
ナカッタノデゴサリマスルカラ、今囘更ニ提出イタシマシタ次第デゴザリマ
ス、何卒御審議ノ上、速ニ御協賛アラムコトヲ切ニ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=24
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025・池田長康
○男爵池田長康君 本日ハ總理大臣モ御出席······見ヱマセヌヤウデアリマス
シ、豫算ニ關スルコトデアリマスルガ、大藏大臣モ御出席ナイノデアリマス、
其他國務大臣ハ御出席デアリマスルガ、此議院法ノ······立法府ノ改正デアリ
マスルガ、山川長官ノ御答辯ヲ得テモ宜シウゴザイマスルガ、或ハ玆ニ御出
席ノ國務大臣ヨリ又御答辯デモ得ラレマセウカ、チヨットソレヲ伺ヒタウゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 池田男爵、今、總理大臣、大藏大臣ハ缺席セラレ
テ居リマスガ、他ノ國務大臣ニ於テ答辯ガ出來ルヤ否ヤト云フ御質疑ノヤウ
ニ思ヒマスガ、其御質疑ノ事柄ヲ國務大臣ノ御耳ニ御入レニナッタ上ノ方ガ
宜クハナイカト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=26
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027・池田長康
○男爵池田長康君 承知イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 登壇ヲ望ミマス
〔男爵池田長康君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=28
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029・池田長康
○男爵池田長康君 議院法ノ改正デアリマスルカラ、立法府ノ矢張リ改正ニ
關スル問題デアルノデ、實ハ本員ハ政府ヲ代表サレマシタ總理大臣、又場合
ニ依リマシタナラバ、豫算ニ關係ガアルモノデアリマスカラ、大藏大臣ノ御
所見モ承ッテ置クガ必要デアラウト思フノデアリマス、併シ御都合ガアリマシ
テ御出席ヲ得マセヌト致シマシタナラバ、實ハ國務大臣トシテ御說明ヲ煩
ハスト云フコトガ妥當ダラウト思フケレドモ、併シ御用意ノ無イノニ拘ラズ、
敢テ······强ヒテ御質疑ヲ致スト云フコトハ、是モ亦、如何デアラウカト思フ、
ソコデ唯今、法制局長官カラ御說明ガアリマシタガ、法制局長官ノ御答辯ヲ先
ヅ得マシテ、尙ホ本員ガ質疑ヲ致シマス點ヲ總理大臣ニモ御傳言ヲ願フト云
フコトニ致シマシテ、滿足イタサウト思フノデアリマス、御承知ノ通リ、此
議院法ノ改正ニ付キマシテハ、是ハ一面カラ申シマスト、重大ナル法案デア
ルノデアリマス、然ルニ總理大臣、竝ニ此豫算ニ關係アル大藏大臣ノ御出席
ノ無イト云フ事柄ハ、御出席ニナリ得ナイ、又他ニ理由ガアルノデアリマセ
ウケレドモ、此法案ガ、寧ロ私ハ政府トシテ輕ク取扱ハレテ居ルノデハナイ
カト云フコトニ付キマシテ、寧ロ輕キ、私ハ不滿足ヲ感ズルノデアリマス、
此法案ガ出マシタコトニ付キマシテ、私ハ其眞意ヲ眞ニ了解スルニ苦シムノ
デアリマス、何ノ爲ニ之ヲ御出シニナルノカ、其動機、其理由ガ、私ハ本當
ニ之ヲ理解スルコトガ出來ナイノデゴザイマス、唯今モ山川長官ヨリ、去年
之ヲ出シタガ審議ニ至ラズシテ終ッタト仰セニナルノデアリマスガ、昨年ノ情
勢ヲ見マスルナラバ、此貴族院ノ考ハ明瞭ニ現ハレテ居ル、然ルニ今年之ヲ
御提出ニナル、其間ノ經過ヲ見マシテ何等變化ハナイ、何故ニ本年又之ヲ御
提出ニナルカ、其理由ガ私ハハッキリ分ラナイ、又御提出ノ御說明ヲ承ッテ見
テモ、唯、均衡論、衆議院ガ二十一日デアルカラ、貴族院モ二十一日デナケ
レバナラヌ、均衡上サウダ、誠ニ私ハ簡單ナ、サウシテ寧ロ私ハ淺薄ナ、私
ハ御考ヂヤナイカ、斯ウ思フノデアリマス、一體均衡論ト云フノハ、唯.日
ニチヲ以テ均衡論ト云フコトヲ言ヒ得ルカ、ドウカ、其審議ノ實際ノ狀況ヲ
以テ均衡論ト云フモノヲ考ヘテ見ナケレバナラヌ、若シ又均衡論ヲ以テ致シ
マシタナラバ、會期ヲ兩分イタシマシテ、サウシテ半分ハ衆議院、半分ハ貴
族院ト、斯ウスルノガ單純ナル均衡論カラ申シマスル必然ノ結論デアリマス
ル、片一方ハ二十一日スルカラ、貴族院モ二十一日セナケレバナラヌト云フ
均衡論ノ根據ト云フモノハ、誠ニ薄弱デアル、私ハ其理由ヲ解スルニ苦シム
ノデアリマス、卽チ貴族院ハ尙ホ審議ノ餘裕ノ時日ガアル、衆議院ハ二十一
日ト決メラレテ居ル、故ニ衆議院ノ審議期間ヲモウ少シ長ク延バサウ、サウ
云フ御理由デアルナラバ、玆ニ均衡論ノ又出發點ガアルノデアリマス、併シ
衆議院ガ二十一日アルカラ貴族院モ二十一日ニシナケレバナラヌト、其方ヘ
持ッテ行カレルト云フコトハ單純ナ理窟ノ上カラ云ヒマスト、均衡論ラシク
見エマスケレドモ、實質カラ考ヘレバ均衡論ニナラヌ、一體之ヲ考ヘテ見マ
スルト、會期ト云フモノガ卽チ審議期間デアル、會期ナルモノガ······三箇月
ノ議會ノ會期ト云フモノガ審議期間デアル、其審議期間ノ中ヘ又一ツノ審議
期間ヲ設ケルト云フコトハ何カ特別ノ理由ガアッテソレガ出來ルノデ、卽チ
衆議院ニ於テ審議期間ヲ設ケルト云フ事柄ハ、卽チ衆議院ニ於テ先議權······
豫算ノ先議權、先キニ豫算ヲ議スルト云フ特別ノ理由ガアレバコソ、之ニ審
議期間ガ設ケラレルノデ、會期ト云フモノガ審議期間デアル、然ルニ先議權
ヲ有ッテ居ラヌ所ノ貴族院ガ、又其中ニ審議期間ヲ設ケル、會期ガ審議期間デ
アル其中ヘ又審議期間ヲ設ケル、屋上屋ヲ架スルト云フコトガアリマスルガ、
屋内屋ヲ造ルト云フヤウナ事柄ニナルノデアリマス、ソコデ此均衡論ト云フ
モノハドウ云フ譯カ、會期全體ヲ通ジテ置キマシテ、ソレヲ兩分スルト斯
ウ云フコトデアリマスルナラバ、均衡論ハ立ツト私ハ思フ、ケレドモ、唯、
衆議院ガ二十一日ダカラ貴族院モ二十一日ニセナケレバナラヌト云フ事柄
ハ全ク私ハ其理由ヲ發見スルニ苦シム、衆議院ニ於テ二十一日ノ審議期間
ヲ設ケルノハ、卽チ先議權ノ結果デアリマス、尙ホ茲ニ考ヘテ見ナケレバナ
ラヌノハ衆議院ト貴族院ハ同ジク立法府デアリマスケレドモ、各〓審議ノ手
段其他ニ於テ特色ヲ各、有ッテ居ルノデアリマス、此異ナッタル特色ヲ有ッテ
居レバコソ、此二院制度ト云フモノノ妙用ガアル、ソコデ此豫算ヲ審議スル狀
態ヲ······實際ノ狀態ヲ考ヘテ見ナケレバナラヌ、ソレハ同ジヤウニ之ヲ考ヘ
ル譯ニハ行カヌノデアリマス、ソレヲ先ヅ考ヘテ置カナケレバナリマセヌガ、
特ニ茲ニ考ヘテ置カナケレバナラヌ事柄ハ豫算ト、豫算ニ伴フ所ノ法律案、
此關係ヲ少シ考ヘテ置カナケレバナラヌト思フ、ソレカラ法律案ノ政府提出
ト云フモノニ對シテ、何等ノ拘束力ガアリマセヌカラ、政府ハ何時デモ法律
案ヲ議會ニ提出サレルノデアリマス、今コノ今日ノ情勢ヲ見マシテモダ、衆
議院ニ於テ尙ホ審議中ノモノモアリマセウ、ケレドモ、此會期切迫ノ際ニ於
キマシテ、ドシ〓〓法律案ガ此貴族院ヘ累集シテ來ルノデアリマス、今現在
ニ於テドレダケ是カラ審議イタスベキ法律案ガアリマスルカ、私ハ詳シクハ
存ジマセヌケレドモ、或ハ五十、六十以上ノ法律案ガマダ停滯シテ居ルノデ
アリマス、豫算ニ伴フ所ノ法律案ハ特ニ又關係ガアリマスルガ、豫算ニ伴ハ
ナイ所ノ法律案モ澤山アルノデアリマス、是等、年末······長年、貴族院ノ會
期切迫ニ於ケル所ノ狀況デアル、會期ノ初メニ於キマシテハ法律案ハ無イ、
法律案ノ提出ハ少イ、會期ノ末ニ於キマシテ澤山法律案ガ累集シテ來ル、ソ
コデ尙ホ、玆デ一ツ考ヘテ戴カナケレバナラヌ事柄ハ此豫算ニ伴フ所ノ法
律案、卽チ豫算ノ結果ヲ待ッテ法律案ヲ決定セナケレバナラヌ事柄ト法律案
ノ決定ヲ待ッテ豫算ヲ審議セナケレバナラヌ事柄ト、兩々相俟ヲテ決定セナケ
レバナラヌ事柄ガアルノデアリマス、サウシテ衆議院ニ於キマシテハ二十
一日ノ豫算審査期間ガ附イテ居リマスケレドモ、豫算ニ伴フ所ノ法律案ニハ
期間ガ附シテナイノデアリマス、例ヘバ稅制改正ノ法律案ノ如キ、或ハ關稅
改正ノ法律案ノ如キ、共ニ是ハ豫算ニ關係アル所ノ法律案デアリマス、併シ
衆議院ニ於キマシテハ、此法律案ハ審議期間ハ附シテナイノデアリマス、故
ニ豫算ハ二十一日ノ審査期間ヲ以テ貴族院ヘ廻付サレマスルケレドモ、此豫
算ニ伴フ所ノ法律案ハ是ハ十分ナル衆議院ノ審議ヲ以テ廻付サレマスカラ
ニ、現ニ豫算ガ貴族院ヘ〓付サレマシタ日ト、殊ニ關稅改正ノ法律案ガ貴族
院ヘ參リマシタ日ト、十日以上ノ差ガソコニアルノデアリマス、或ハ衆議院
ニ於キマシテ斯ウ云フ說ガアル、衆議院ハ下見ヲスル所デアル、先議權ガア
ルト云フケレドモ下見ヲスルヤウナモノデアル、ソレデ貴族院ハ其下見ヲ見
テソコデヤルノダカラ早ク出來ル、斯ウ云フ御說モアル、ソレハ一說デアリ
マセウ、併シ貴族院ハ衆議院デセラレタ事柄ニ對シテ跡始末ヲセナケレバナ
ラヌ、豫算ヲ決定スル場合ニ於テ、ソレニ豫算ニ伴フ所ノ法律案ト相共ニ揃
ヘラ、玆ニ結末ヲ著ケナケレバナラヌ、此跡始末ヲヤラナケレバナラヌト云
フ運用ノ大切ナル所ヲ忘レタル議論ガ世間ニ往々ニシテ行ハレテ居ルノデア
リマス、之ヲ又言換ヘテ申シマスルナラバ、豫算ノ方ハ二十一日デ衆議院カ
ラ來、サウシテ貴族院モ二十一日ノ審議期間ヲ設ケルト云フコトニナルト致
シマス、然ルニ法律案ハ······豫算ニ伴フ所ノ法律案ハ衆議院ニ於テ審査期
間ハアリマセヌカラ、例ヘバ關稅法ノ改正ノ如キモ事實サウナッテ居リマス、
左樣ナ狀況デ、是ガ二十一日ガ三十日、四十日ト審議ガ成リマシテ、サウシ
テ豫算ヲ貴族院ヘ廻付サレル後ニナリマシテ是ガ出テ參リマスト、貴族院ノ
方ニ於キマシテハ豫算ノ審議期間ガ二十一日ニナッテ居ル、然ルニ法律案ヲ受
取ル時ハ、十日カ或ハ十五日後ニ相成リマスルト、其法律案ハ自ラ審議期間
ヲ決定サレタ形ニナル、是ハ法律上、明文ヲ存シマセヌケレドモ、必然的結
果ト致シマシテ、其豫算ニ伴フ所ノ法律案ハ、自ラ審議期間ヲ定メタト云フ
結果ニナルノデアリマス、斯ウ云フ結果ニナルコトヲ考ヘマスナラバ、豫算
ノ審議ヲ圓滑ニナラシムルト云フ上ニ、豫算ノ審議ヲ完成セシムルト云フ上
ニ於キマシテハ、非常ニ困難ナ狀況ガ來ルノデアリマス、尙ホ其處ニ、先程
申上ゲマシタヤウニ色〓ノ法案ガ其處へ累集シテ來ル、例ヘバ去年ノ狀況ヲ
見マスナラバ、普通選擧ノ法案ガ三月ニ於テ審議セナケレバナラス、又貴族
院改正ノ法律ハ矢張リ三月ニ於テ之ヲヤラナケレバナラヌ、又此議院法ノ改
正ノ如キモノモ出テ來タ、豫算ニ伴フ所ノ法律案モ其間ニ審議セナケレバナ
ラヌト同時ニ、豫算ニ伴ハナイ所ノ法律案モ此三月ニナッテ非常ニ累集シテ
來ルノデアリマス、故ニ唯、二十一日ノ審議期間ガ衆議院ニアルガ故ニ、貴
族院モ二十一日ノ審議期間ヲ設ケナケレバナラヌ、ソレガ均衡論デアル、此
論ハ單純ナル議論デアリマシテ、此議會ノ實際ヲ究メタル、理ヲ究メタル所
ノ、私ハ議論デナイト思フノデアリマス、或ハ此一事ヲ以テ貴族院改革ノ要諦
デアルト云フ風ニ解サレテ居ル方ガアリマスルケレドモ、此運用論、此實際
ノ有樣カラ是ハ歸納シタ議論ト致シマシテハ何等之ニハ關係ガ無イノデア
リマス、如何ニモ此論ヲ以テ致シマスルナラバ、衆議院ガ二十一日デアルノ
ダカラ、貴族院ガ餘計持ッテ居ルノハ怪シカラヌヂヤナイカト云フヤウナ議論
ハ多クノ人ニ分リ易イ議論ダケレドモ、ソレハ實際カラ歸納シタ所ノ論デ
ハナイノデアリマス、然ルニ政府ハ去年御提出ニナリ、サウシテ是ガ院ノ意
ノアル所ガ明瞭ニナッテ居ルエノヲ、再ビ强ヒテ之ヲ貴族院ヘ提出サレルト云
フ、眞ノ理由ヲ解スルニ私ハ苦シムノミナラズ、唯今申上ゲマシタヤウナ均
衡論カラハ、ドウシテモ之ヲ理解スルコトヲ得ナイ、又審議ヲ延期セシムル
コトヲ以テ何時モ貴族院ガ政府ヲ脅カスノデアル、斯ウ云フ風ニ言ハレル人
ガアル、ケレドモ、審査期間ヲ短ク致シマシテモ、若シ茲ニ貴族院ノ權力ヲ、
權限ヲ利用イタシマシテダ、何等カ政府ヲ脅ス方法ヲ取ルト致シマスルナラ
バ、何モ此方法ヲ取ル必要ハ無イ、此方法ニ限ル必要ハ無イ、貴族院ノ權限
ニ基イテ、幾多ノ自巳ノ主張シ得ル所ノ手段方法ハアルノデアリマス、尙ホ
之ヲ短ク致シマシタガ爲ニ、尙ホ一層政府當局トシテ御困リノ事情ガ起ルノ
デアリマス、多ク審議期間ヲ延バスト云フコトハ、政府ノ御要求ニ基イテ延
期スル場合ガ多イノデアリマス、私ハ此點ニ付テモ十分理解スルコトヲ得ナ
イ、均衡論、圓滑論、豫算ノ審議ノ圓滑論、衆議院ト貴族院ト均衡論共ニ、
倶ニ此實際議院ノ運用カラ歸納シタ所ノ私ハ結論デナイト思フノデアリマ
ス、ソコデ唯今、政府委員ヨリ御說明ガアリマシタケレドモ、其說明デハ一
向私ハ分ラナイ、故ニ〓括的ニ尙ホ確乎タル所ノ何カ御意見ガアルノカ、ソ
レヲ私ハ〓括的ニ承リタイ、ケレドモ、ソレハ御答ヘニナルコトハ出來マス
マイ、ソコデ私ハモウ一ツ具體的ニ御尋ネシテ見タイト思ヒマスルノハ、今
マデ政府ノ法律案ノ御提出ハ、イツモ遲レルノデアリマス、モウ少シ議會ノ
初メニ於テチヤント備ヘテ、其議會ニ提出スベキ所ノ法律案ト云フガ如キモ
ノハ、一切議會ノ開會前ニ於テ揃ヘテ置イテ、サウシテ早ク御出シニナルト
云フ事柄ノ方ガ、實際問題ニ於テ、豫算ノ審議等ニ於テ、圓滑ナラシムル所
以デハナイカト思フノデアリマス、卽チ法律案ト云フモノノ政府ノ提出ニ、或
ル一定ノ制限ヲ與ヘル所ノ法律案ガ必要デハナイカ、又左樣ニ提出イタシマ
スル所ノ時期ニ於テ、政府ニ一ツノ拘束力ヲ與ヘルコトノ必要アリハシナイ
カ、左樣ナコトヲ法律的ニ拘束イタシマスルヨリモ、矢張リ運用ノ上ニ於キ
マシテ、政府ノ意思、政府ノ實行ニ於テ、是ガ圓滑ニ行ハレルノチヤナイカ、
何モ窮屈ニ法律ヲ以テ斯ク議會ノ權限ヲ、權限ニ附隨シテ來ル所ノモノヲ拘
束シテ行クト云フヤウナ事柄ハ、果シテ議會ト云フモノヲ圓滑ナラシメル所
以ナリヤ否ヤト云フコトヲ私ハ疑フノデアリマス、ソコデ此質問ニ對シマシ
テ、政府ト致シマシテハ矢張リ均衡論カ、或ハ豫算ヲ審議スルノニ圓滑論カ、
孰レカ、サウ云フ抽象的ナ御答辯ダケシカ出來ヌト思フ、若シ其程度デアリ
マスナラバ、一ツ私ハ問題トシテ承ッテ置ク、本年ノ議會ニ於キマシテ、政府
ヨリ提出サレタル所ノ法律案ハ幾ツアリマスカ、サウシテ現在通過イタシマ
シタ所ノ法律案ハ幾ツアリマスカ、衆議院ニ於キマシテハ幾ツノ法律案ガ停
滯イタシテ居リマスカ、貴族院ガ是カラ審議イタシマス所ノ法律案ハ幾ツア
リマスルカ、ソレヲ私ハ承ッテ置ケバ、大抵諸君ニ於カレマシテモ、私ノ質問
ノ要旨ハ分ルダラウト思フノデアリマス、是デ私ノ質問ハ終リマス
〔政府委員山川端夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=29
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030・山川端夫
○政府委員(山川端夫君) 此議院法ノ改正ハ、今池田男爵ノ御話ノヤウニ、
極メテ重要ナモノデゴザイマス、從テ本日ハ、先程申上ゲタ通リニ、總理大
臣カラ御紹介イタス筈ニナッテ居リマシタケレドモ、樞密院會議ニ出席スルコ
トニナリマシタ爲ニ、私ヨリ代ッテ申上ゲタノデゴザイマス、政府ハ此案ヲ輕
ク取扱フト云フヤウナ考ハ毛頭ゴザイマセヌノデアリマス、ドウカ其點ハ宜
シク御了承ヲ願ヒタイト考ヘテ居リマス、更ニ池田男爵ノ御尋ノ、本年更ニ
改メテ此案ヲ提出シタ理由ト云フコトデゴザイマス、昨年、加藤內閣ニ於キ
マシテ此案ヲ極メテ必要ナコトト致シテ提案ヲ致シマシタノデゴザイマスル
ガ、其提案ノ理由ハ先程申上ゲマシタノト大體同ジコトデゴザイマス、ソレ
デ加藤內閣ニ於テ重要ナモノトシテ一之ヲ提案イタシマシタノデゴザイマシ
テ,今年ニ於キマシテモ、今ノ內閣ニ於キマシテモ、其點ニ付キマシテハ
全然同ジ考ヲ持ッテ居リマス、昨年、此案ガ議會ヲ通過イタシマセナカッタノ
ハ殘念ト考ヘテ居リマスルガ、居リマスルカラ本年更ニ此案ヲ提出イタシマ
シタ次第デゴザイマス、ソレデ本案提出ノ理由ハ先程申上ゲマシタ通リニ、
豫算ノ審査ニ付キマシテ、貴族院ト衆議院トノ間ニ權衡ヲ得ルト云フコトガ
第一ノ理由デゴザイマス、豫算ノ審査ニ付キマシテハ、御承知ノ通リニ、先
議權以外ニ於キマシテハ貴族院ト衆議院ト全ク同等デゴザイマス、從ヒマシ
テ此審査期間等ニ付キマシテモ、兩方······兩院同等ニ同ジヤウニ致スコトガ
適當デアラウト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、尙ホ豫算ノ審議ニ付キマシテ
ハ唯今池田男爵ノ御話ノヤウニ、豫算ニ伴フ法律案ノ審議ト云フモノガゴ
ザイマス、此點ニ付キマシテハ、從來ノ慣例ト致シマシテモ、豫算ノ審議ト
法律案ノ審議トハ、互ニ相關聯シ、相伴ッテ審議サレルト云フコトガ通常デア
リマス、無論、一二ノ例外ハアリマスケレドモ、大體ノ慣例ト致シマシテハ、
此豫算案及法律案トハ相伴ッテ審議サレルト云フ實況デゴザイマスカラ、既ニ
衆議院ニ於キマシテ、二十一日間ニ豫算及之ニ伴フ所ノ法律案ヲ大體ニ於テ
審議シマス關係カラ見マスレバ、貴族院ニ於キマシテモ、同樣ニ致スコトガ
最モ適當ヂヤナイカト考ヘルノデアリマス、尙ホ豫算及法律案ノ審議ニ付キ
マシテハ、此案ハ豫算委員會ノ審議期間ヲ定メタイト云フ案デゴザイマス、
豫算ノ審議等ニ付キマシテ、更ニ必要デアリマスレバ、本會議ニ於キマシテ
モ十分愼重ニ御審議ニ相成ル機會モアルノデゴザイマス、サウ云フ關係カラ
見マシテ、豫算委員會ニ於ケル審議期間ヲ衆議院ト同ジヤウニ定メルト云フ
コトガ、最モ適當デアラウト云フ考カラ致シマシテ、此案ヲ提出イタシマシ
タ次第デゴザイマス、更ニ池田男爵カラ、政府ガ法律案ヲ提出スルコトガ非
常ニ遲レルカラ、アトデ貴族院ニ於テ法律案ガ幅輳シテ非常ニ實際ノ審議ニ
困ルコトガアルヤウナ御話ガアリマシタ、此法律案ノ提出ノ遲レマスコトハ、
如何ニモ我〓モ遺憾ト考ヘテ、成ルベク速ニ提出スルト云フコトニ努メテ居
ル次第デゴザイマス、併シ政府ニ於キマシテモ、豫算ノ決定等ニ伴ヒマシテ、
色〓此法律案ヲ思案イタシマスニ、豫算ノ關係ヲ見ル必要ガアリマス、又色
色ノ都合デ常ニ遲レ勝ニナリマスコトハ、誠ニ遺憾ト思ヒマスガ、是等ハ將
來共ニ十分實際ノ働キニ於キマシテ、此法律案ノ提出等ヲ成ルベク速カニス
ルト云フコトニ努メタイ考ヲ持ヲテ居ル次第デゴザイマス、ソレカラ最後ニ池
田男爵ノ御尋ノ、此議會ニ於テ政府ノ提出シタル法律案ノ數、貴族院衆議院
ニ於テ審議中若クハ通過シタ法律案ノ數、サウ云フモノノ調査ノコトヲ御話
ガアリマシタガ、是ハ唯今手許ニ持ヲテ居リマセヌデゴザイマス、調査イタシ
マシテ、アトデ御知ラセヲ致ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=30
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031・池田長康
○男爵池田長康君 唯今、山川長官ヨリ御答辯ガアリマシタガ、實ハ總理大臣
又ハ國務大臣トシテノ御答辯ヲ要求スベキ性質ノモノデアルノデアリマスケ
レドモ、今日ハソレハ私ハ要求イタシマセヌ、唯山川長官ノ事務的ノ上ニ
於キマシテノ事情ヲ御說明ニナリマシタ點ニ付キマシテハ、政府ノ御提案ニ
ナリマシタ理由ガ益〓薄弱ナモノデアルト云フコトヲ私ハ認識セザルヲ得ナ
イソレカラ最後ニ、今法律案ガ衆議院デトウナッテ居ルカ、貴族院デドウナツ
テ居ルカト云フ事柄ハ、私ハ敢テ御調査ノ御報告ヲ得ナクテモ、私自身ト致
シマシテモ取調ベルコトガ出來ルノデアリマス、寧ロ之ヲ皆樣ノ前ニ公表セ
ラレルナラバ、此審議期間ヲ設ケルト云フ所以ガ、却テ總テノ事ヲ混雜ナラ
シムル所以デアルト云フコトガ、私ハ明カニナルデアラウト思ヒマシテ、政
府委員カラ御答辯ヲ煩ハシタラ結構デアラウト思ヒマシタノデスガ、唯今ソ
レガ御手許ニ無イト致シマスレバ、敢テソレハ御尋ネシナクテモ宜シウゴザ
イマス、是デ私ノ質問ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=31
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032・八條隆正
○子爵八條隆正君 本案ノ特別委員ハ十八名トシテ、議長ニ於テ指名セラレ
ムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=32
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033・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵ノ本案ノ特別委員ノ數ヲ十八名トシ議長
ニ指名ヲ任カスト云フ動議ニ、同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス、書記官ヲシテ特別委員ノ氏名
ヲ朗讀イタサセマス
[小林書記官朗讀]
議院法中改正法律案特別委員
公爵一條實孝君伯爵松平賴壽君男爵木越安綱君
子爵牧野忠篤君子爵前田利定君子爵裏松友光君
荒川義太郞君河村讓三郞君若林資藏君
男爵福原俊丸君男爵池田長康君石渡敏一君
高田早苗君鍋島桂次郞君松本烝治君
佐竹三吾君尾崎元次郞君横山章君
生氣重点発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公
債發行ニ關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、仙石鐵道大臣
東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
東濃鐵道株式會社所屬新多治見廣見間鐵道買收ノ爲政府ハ該買收ニ必要ナ
ル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
〔國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕
〔副議長候爵蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=36
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037・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 今囘買收セムトスル東濃鐵道會社ノ新多治見、廣見
間ノ鐵道デアリマスガ、是ハ政府ニ於テ目下建設中ノ國有鐵道多太線卽チ多
治見、太田間ノ線路デアリマス、其線路ノ十分ノ六ニ該當スル部分ト其路線
ガ同一デアルノデアリマス、故ニ政府ハ之ヲ買收シテ其路線ヲ利用シ、全線
ノ工事ノ進捗ヲ圖ルコトニ致シタイト思フノデアリマス、依テ是ガ買收費ニ
充當スル爲公債發行ノ法律案ヲ玆ニ提出シタ次第デアリマス、何卒、十分御
審議ノ上ニ御協賛アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=37
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038・佐竹三吾
○佐竹三吾君 私ハ此案ニ付テ二三御質問イタシタイノデアリマス、極メテ
簡單デアリマスカラ、此席カラ發言ヲ御許シ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=38
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039・蜂須賀正韶
○副議長(候爵蜂須賀正韶君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=39
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040・佐竹三吾
○佐竹三吾君 唯〓鐵道大臣ノ御說明デ了解ノ出來マセヌ點ガ一一三アルノデ
アリマス、其一ツハ、是ハ地方鐵道法ニ依ッテ强制的ニ買收サレルノデアリマ
スカ、或ハ任意ニ、會社ト協定ノ上ニ任意ニ買收サレルノデアリマスカ、其
點ガ一ツデアリマス、ソレカラ買收ニ依ッテ發行サレマスル公債ノ額ハ凡ソ
ドレ位ノ額デアリマスカ、極ク大體ノ數デ宜シウゴザイマス、公債ノ額ノ御
示シヲ願ヒタイノデアリマス、ソレカラ又買收サレル時期ガ何時デアリマス
カ、其時期ガ若シ定マッテ居リマスレバ、其時期ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス、
其三ツノ點ニ關聯シマシテ、實ハ地方鐵道法ノ中ニハ色〓不備ノ點ガアルノ
デアリマシテ、之ヲ改正スル必要ヲ認メテ居リマスコトハ、獨リ民間ノ者バ
カリデハナイノデアリマシテ、政府ニ於テモ其必要ヲ認メラレテ居ルト心得
テ居ルノデス、所ガ此改正案ガ今日ニ至リマスル迄、未ダ議會ニ提案ニナラ
ヌノデアリマスルガ、政府ハ此議會中ニ改正案ノ通過ヲ圖ルト云フ御考デア
リマスルカ、或ハサウ云フ御考ガ無イノデアリマスカ、私ガソレヲ御伺ヒ致
シマスルノハ其改正案ノ通過サレマシタ曉ニ於キマシテハ、買收サレマス
ル鐵道ニ取ッテ重大ナル影響ガアルノデアリマス、此鐵道ガ何時買收サレマ
スカ、其時期ヲ伺フノモ其一ツノ理由デアルノデアリマス、若シ地方鐵道法
ノ改正案ガ此議會デ通過イタシマシタナラバ、其改正ノ結果ヲ第一ニ此鐵道
ガ受クルコトニナルト思ヒマスガ、其點ニ付キマシテ鐵道大臣ノ御考ヲ一應
承ノテ置キタイト思フノデアリマス
〔國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=40
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041・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 唯今、佐竹君ノ御質問ニ係ル公債ノ價額竝ニ其買收
ノ時期等ニ付キマシテハ、目下其數字ヲ持ッテ居リマセヌカラ、何レ調査ヲシ
マシテ後刻御返事ヲスルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=41
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042・佐竹三吾
○佐竹三吾君 私ハ唯買收ノ價額ダケヲ聽イタノデナイノデアリマスガ、其
外ノ點ハ御說明ガナイノデアリマス、第一ハ是ハ强制的ニ買收サレルノデア
ルカ、或ハ任意ニ買收サレルノデアルカト云フコトガ第一ノ質問デアリマス、
ツレカラ買收サレルナラバ何時デアルカ、其時期ガ何時デアルカト云フコト
ガ第二ノ質問デアリマス、ソレカラ買收ノ公債發行ノ額ハ是ハ第三ノ質問デ、
其中ノ一ツデアルノデアリマス、其次ニハ、地方鐵道法改正ノ必要ハ鐵道大
臣自身モ御認メニナッテ居ル、其改正案ガ今日ニ至ルマデ未ダ議會ニ御提案ニ
ナラヌノデアリマスガ、政府ハ果シテ其改正案ヲ此議會中ニ是非通過サセル
御見込デアルノデアリマスカ、或ハサウ云フ御考ハ無イノデアリマスカ、其
點ヲ御伺ヒ致シタノデアリマスガ、唯今ノ御答辯ハタッタ其中ノ一ツダケニ
付テノ御答辯デ、肝腎ノコトハサッパリ御答ガ無イノデアリマス
一國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=42
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043・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 佐竹君ニ御答ヘシマス、此買收ハ强制買收デアリマ
ス、ソレカラ價額ハ凡ソ六十万圓、時期ハ此議會ガ濟ミマシタラ成ルベク早
ク著手シヤウト思ヒマスガ、ソレヲ御答ヘ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=43
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044・佐竹三吾
○佐竹三吾君 私ハモウ一ツ質問ヲ致シタノデアリマスガ、ソレハ地方鐵道
法ヲ改正サレル意ガ政府ニアリマスカ、既ニ其案ハ相當ノ程度マデ進行イタ
シテ居ルト承知イタシテ居ル、併ナガラ未ダニ議會ニ御提案ニナラヌノデア
リマス、若シ是ガ强制買收デアルナラバ、其買收ノ結果、地方鐵道法ノ適用
ヲ受ケマスル上ニ於テ、改正案ガ通過スルト否トハ重大ナ茲ニ差違ヲ生ズ
ルノデアリマスガ、其點ニ付キマシテ鐵道大臣ノ御考ヲ承リタイ、卽チ地方
鐵道法ノ改正案ハ、鐵道省ヲ離レタコトハ既ニ昨年デアリマス、他ノ關係省
ノ意見モ既ニ濟ミマシテ、モウ疾クニ議會ニ御提案ニナルベキコトニナッテ
居ルト思ヒマスガ、未ダニ議會ニ御提案ニナラヌノデアリマスガ、其點ニ付
キマシテモ鐵道大臣ノ御考ヲ承リタイト思ッテ居リマス
〔國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=44
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045・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 地方鐵道ノ改正ハ日下協議中デアリマシテ、何時之
ヲ提出スルト云フコトハ、今ノ所明言ガ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=45
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046・佐竹三吾
○佐竹三吾君 唯今ノ御答辯デ大體ハ分ッタノデアリマスガ、ソレデハ既ニ鐵
道省、或ハ大藏省等ノ御調ベモ濟ンダト聞イテ居ルノデアリマス、未ダニ議
會ニ御出シニナラヌ所ヲ見マスルト、サウスルト、此議會ニハ御提案ニナラ
ヌコトニナルノデアリマスカ、或ハ御提案ニナル御方針デ今御進メヲサレツ
ツアルノデアリマスカ、此點ニ付テモウ一應鐵道大臣ノ御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=46
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047・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 御答ヲ致シマス、地方鐵道ノ改正ハ目下大イニ急イ
デ居ル次第デアリマシテ、成ルベク此議會ニ提出シタイト云フ考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=47
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048・阪本さん之助
○阪本釤之助君 チヨット承ッテ置キタイト思フノデアリマスガ、此鐵道ハ東
濃鐵道ノ一部ノヤウデアリマスガ、大部分ノ卽チ岐阜カラ發スル所ノ本線ハ、
矢張リ是ガ一ツノ前提トナリマシテ、將來、國有ニ御移シニナル御意思ガア
ルノデアリマスカ、或ハ是ハ政府線トノ關係上、是非買ハナケレバナラヌノ
デアルケレドモ、其他ノ東濃鐵道ノ線路ト云フモノハ、政府ハ御買上ゲニナ
ルト云フ御意思ハ將來ニ於テモ御持チニナラヌノデアリマスカ、此二點ヲ伺
ヒタイノデアリマス
〔國務大臣仙石貢君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=48
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049・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 阪本サンニ御答ヲ申シマスガ、全部ノ中ノ或ル部分
ヲ、此鐵道ニ沿ウタ所ヲ買ヒマシテ、アトノ私設鐵道ハ、其會社自ラ經營ス
ルコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=49
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050・阪本さん之助
○阪本釤之助君 モウ一ツ伺ヒマス、此東濃鐵道ノ岐阜ヲ發シマスル所ノ或
ル部分ハ、政府線ノ高山ニ通ズル線路ト稍、「ダブ」ル所モアルヤウデアリマ
スガ、是等ハ別ニ御斟酌ニナラズニ、將來モ民有ニ御任ニセナッテ行クト云
フ御考デアルト、唯〓デハ受取リマシテ宜シウゴザイマスカ
〔國務大臣仙石貢君演擅ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=50
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051・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 御答ヘ致シマス、是ハ目下買收スル考ハアリマセヌ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=51
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052・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 本案ハ日程第四ノ議案ノ特別委員ニ付託イタ
シマス、休憩ヲ致シマス、午後ハ一時半ヨリ開會ヲ致シマス
午後零時十五分休憩
囍〓山호〓
午後一時四十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
健康保險法中改正法律案可決報告書
健康保險特別會計法案可決報〓書
本日請願委員長ヨリ土田萬助君ヲ第一分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報〓
書ヲ提出セリ
날〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、請暇ノ件ニ付キ御
諮リヲ致シマス、男爵村上敬次郞君病氣ニ付キ會期中ノ請暇ノ申出ガゴザイ
マシタ、之ヲ許スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=54
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055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
九十五五十六発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第七、商事調停法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會
商事調停法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
商事調停法
第一條商事ニ關シ爭議ヲ生シタルトキハ當事者ハ相手方ノ住所、居所、
營業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リ
テ定リタル地方裁判所若ハ區裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
調停ノ申立ヲ受ケタル裁判所調停ヲ爲スニ付相當ト認ムルトキハ決定ヲ
以テ事件ヲ他ノ地方裁判所又ハ區裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ
裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二條商事調停ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外借地借
家調停法ヲ準用ス
第三條裁判所調停ヲ爲スニ付必要アリト認ムルトキハ計算人ヲ選定シ之
ヲシテ計算ヲ爲サシムルコトヲ得
調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ前項ニ規定スル裁判所ノ權限ハ調停
委員會ニ屬ス
計算人ニハ旅費、日當及止宿料ヲ給ス其ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條調停委員會ハ當事者ノ合意アル場合ニ於テハ第一條ノ爭議ニ付民
事訴訟法ニ依ル仲裁判斷ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當事者ノ指定シタル調停委員會ノ屬スル裁判所ハ申
立ニ因リ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス
第五條借地借家調停法第十八條及第二十九條乃至第三十一條ノ規定ハ前
條ノ規定ニ依ル仲裁ニ關シ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
當事者ノ一方ニシテ本法施行地區內ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有
スル者ニ對シ調停ノ申立ヲ爲シ得ヘキ事件ニ付テハ其ノ相手方ノ住所、居
所、營業所及事務所カ本法施行地區外ニ在ル場合ト雖之ニ對シ其ノ住所、
居所、營業所又ハ事務所ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲ス
コトヲ得
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=56
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057・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 商事ノ取引ニ關スル紛爭ヲ、訴訟及之ニ對シマスル
所ノ裁判ニ依リマシテ解決ヲ致サムト致シマスレバ、其解決ニ多クノ費用ト
日子トヲ要スルバカリデアリマセズ、爾後ノ取引ノ上ニモ好マシカラザル結
果ヲ遺スノ虞レガナイト致シマセヌ、從ヒマシテ、此種ノ紛爭ハ寧ロ調停ニ
依リマシテ簡易迅速ニ之ヲ解決イタシ、爾後ノ取引ヲ圓滿ニ繼續セシムルコ
トヲ圖ルノガ最モ得策デアルト認ムルノデアリマス、本商事調停法案ハ商
事ニ關スル紛爭ヲ調停ニ依リ解決セムトスルモノデアリマシテ、本案ニ依リ
マスレバ、裁判所又ハ調停委員會ガ調停ノ任ニ當ルモノデアリマシテ、調停
委員會ハ判事中カラ指定セラレマシタル所ノ調停主任及民間ヨリ選任イタ
サレマシタ所ノ調停委員カラ組織セラレマスル所ノ合議體デアリマス、調停
ノ當事者ノ合意ニ依リテ成立イタスモノデゴザイマシテ、裁判所ノ爲シタル
調停ハ直チニ、又調停委員會ノ爲シマシタ所ノ調停ハ裁判所ノ認可決定ニ依
リマシテ、確定判決ト同一ノ效力ヲ有スルモノデゴザイマス、之ヲ要シマス
ルニ、今後益〓複雜トナリツツアリマス所ノ商事取引ノ紛爭ヲバ圓滿且ツ迅
速ニ解決スルニハ、裁判ト相俟ッテ調停ノ手續ヲ採用スルヲ最モ必要ト認メ
マシテ、本案ヲ提出イタシタ次第デゴザイマス、御審議ノ上、速ニ御協賛ア
ラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
商事調停法案特別委員
侯爵中御門經恭君子爵鍋島直繩君子爵板倉勝憲君
土方寧君男爵二條正麿君藤田四郞君
森本善七君田村新吉君田村駒治郞君
山古小山東山嘉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、大正十四年法律第三十五號中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
大正十四年法律第三十五號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十四年法律第三十五號中左ノ通改正ス
第一項中「大正十五年九月三十日」ヲ「大正十六年九月三十日」ご飯人
參照
日本銀行ノ手形割引ニ因ル損失ノ補償ニ關スル法律法律第三十五號大正十四年三月
政府ハ日本銀行カ大正十二年勅令第四百二十四號第一項第四號ニ該當スル
手形ニシテ大正十四年十月一日ヨリ大正十五年九月三十日迄ノ間ニ於ケル
滿期日ヲ有スルモノノ割引ヲ爲シ之ニ因リテ損失ヲ受ケタル場合ニ於テ同
行ニ對シ其損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項補償金額ハ大正十二年勅令第四百二十四號ニ依リ補償金額ト合シテ
億圓ヲ超ユルコトヲ得ス
日本銀行ハ本法ニ依リテ爲ス手形ノ割引ニ付政府ノ監督ヲ受クヘシ
〔政府委員武內作平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=59
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060・武内作平
○政府委員(武內作平君) 大正十二年九月大震災直後ノ施設ト致シマシテ、
大正十二年勅令四百二十四號ニ依リマシテ、震災手形ニ對シ日本銀行ヲシテ
特別融通ヲ爲サシムル制度ガ設ケラレマシタ、而シラ其特別融通ノ期間ヲ大
正十四年九月三十日迄ト定メラレマシタガ、其後大正十四年法律第三十五號
ヲ以テ更ニ一年間延長イタシマシテ、大正十五年九月三十日迄ト改定セラレ
マシタ、ソレガ現行法デアリマス、然ルニ震災ガ原因トナッテ居リマスル財
界ノ創痍ハ豫想以上ニ甚シク、其整理恢復ハ漸次ニ進捗シテ居リマスケレド
モ現狀ニ於キマシテハ尙ホ不十分デアルト云フコトヲ免レナイノデアリマ
ス、從テ現行法ニ規定シテアリマス融通期間デハ震災手形ノ債務者デアル
商工業者中ニ、其債務ヲ完濟シ得ナイモノモアリマスルシ、又震災手形ヲ割
引イタシマシタ一般銀行中ニモ、尙ホ金融疏通ノ爲ニ、震災手形ニ對シマス
ル特別融通ヲ必要トスルモノモアルノデアリマス、左樣ナ次第デアリマスノ
デ、現下ノ經濟界ノ趨勢及震災ニ依リマスル損害ノ復舊狀態ニ鑑ミマシテ、
現行法及勅令ノ趣旨ヲ達成セシメマスルガ爲ニ、大正十四年法律第三十五號
ニ規定シテアリマスル特別融通ノ期間ヲ更ニ一年延長イタシマシテ、之ヲ大
正十六年九月三十日迄ト致シタイノデアリマス、愼重御審議ノ上、速ニ御協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサ
セマス
〔成瀨書記官朗讀〕
大正十四年法律第三十五號中改正法律案特別委員
候爵大隈信常君子爵本多忠錄君子爵綾小路護君
淺田德則君男爵藤田平太郞君片岡直輝君
馬越恭平君吉野周太郞君高廣次平君
WHITE호주古市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、輸出生絲檢査法案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會
輸出生絲檢査法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
輸出生絲檢査法
第一條生絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ正量ニ付國ノ生絲檢査所ノ檢査
ヲ受ケタルモノニ非サレハ之ヲ輸出スルコトヲ得ス
主務大臣必要アリト認ムルトキハ公共〓體ノ設クル生絲檢査所ヲシテ前
項ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
第二條生絲ハ前條ノ檢査ニ依ル正量ニ依ルニ非サレハ輸出ノ目的ヲ以テ
其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス
輸出ヲ業トスル者ノ主務大臣ノ指定スル地ニ於テ買入ノ爲ニ爲ス生絲ノ
賣買取引ハ之ヲ輸出ノ目的ヲ以テ爲スモノト看做ス
第三條主務大臣特別ノ事情ニ依リ前二條ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認
ムル場合ハ命令ヲ以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第四條當該官吏取締上必要アリト認ムルトキハ店舗、倉庫其ノ他ノ場所
ニ臨檢シ業務ノ狀況及帳簿、生絲其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得此ノ
場合ニ於テハ其ノ證票ヲ携帶スヘシ
第五條第一條及第二條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第六條正當ノ理由ナクシテ當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ケ若ハ忌避シ
又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第七條生絲ヲ輸出シ又ハ輸出ノ目的ヲ以テ生絲ノ賣買取引ヲ爲ス者ハ其
ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者カ本法若ハ本法ニ
基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指
揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ生絲ヲ輸出シ又ハ輸出ノ
目的ヲ以テ生絲ノ賣買取引ヲ爲ス者ニ適用スヘキ罰則ハ其ノ者カ法人ナ
ルトキハ理事、取締役其他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ
禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
生絲檢査所法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前ノ賣買契約ニ因ル生絲ノ受渡及其ノ生絲ノ輸出ニ付テハ命令ノ
定ムル所ニ依リ本法ヲ適用セサルコトヲ得輸出ヲ業トスル者カ本法施行前
輸出ノ目的ヲ以テ買入ヲ了シ又ハ輸出ノ委託ヲ受ケタル生絲ノ輸出ニ付亦
同シ
〔國務大臣早速整爾君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=62
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063・早速整爾
○國務大臣(早速整爾君) 輸出生絲檢査法案ニ付キマシテ提出ノ理由ヲ說明
ヲ致シマス、生絲ノ取引ヲ正量取引ニ致スコトハ、本邦生絲ノ聲價ヲ高メ、
且ツ賣買ヲ公正ニ致シマシテ、生絲取引ノ圓滑ヲ圖ル上ニ於テ、極メテ緊要
ノコトデアリマス、之ガ實施ニ付キマシテハ政府ニ於キマシテモ夙ニ其必
要ヲ認メマシテ、内外ノ關係當業者モ亦多年之ヲ切望イタシテ居リマシテ、
當業者ノ間ニ於キマシテハ、明治三十二年以來、或ハ內地ニ於ラ、或ハ國際
間ニ於テ、屢〓其實行方法ヲ協議イタシタコトガアッタノデアリマスルガ、何
分、正量檢查ヲ實行スベキ設備ガ出來ナカッタ爲ニ、其實行ガ不可能トナッテ
居ッタノデアリマス、然ルニ幸ニ曩ニ議會ノ協賛ヲ經マシテ、國ノ生絲檢査所
ヲ擴張スルコトトナリ、其擴張工事モ本年度內ニハ落成ノ豫定デアリマシテ、
正量檢查ノ設備モ出來上ルコトト相成ルノデアリマスルノデ、愈〓來年度ヨリ
正量取引ヲ實行スル方針デ、之ニ屬スル經費モ來年度ノ豫算ノ中ニモ計上シ
テアリマスル次第デアリマス、而シテ正量取引ノ實行ニ付キマシテハ檢查
及之ニ伴フ取締ニ關シマシテ、法律ヲ制定スル必要ガアリマスルカラ、玆ニ
本法案ヲ提出イタシマシタル次第デアリマス、何卒愼重御審議ノ上、速ニ協
賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス
〔今井五介君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=63
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064・今井五介
○今井五介君 會期切迫ノ折柄、大切ノ時間ヲ費スコトハ甚ダ恐縮デアリマ
スルガ、自分ノ關係スル業ニ關聯セル問題ノ爲ニ、一言述ベテ、政府ノ御所
見ヲ伺ヒタイ點モアルノデ、此壇ニ立ッタ次第デアリマス、唯今大臣ノ御說
明ニ依リマシテモ、本案ノ意味ハ、永イ間ノ懸案ニ致シマシテ、國內ニ於ケ
ル當業者ノ折衝ハ勿論、日米間ニ於ケル所ノ當業者ノ間ニ數囘ノ折衝ヲ重ネ
マシテ、此本案ノ如キ事ヲ一日モ早ク實行スルコトヲ希望シテ已マナンダノ
デアリマス、幸ニ大臣ノ御述ベノ如ク、生絲檢査所ノ擴張モ茲ニ成リ、今ヤ
新シキ檢査所ニ於テ此問題ヲ實行シ得ルノ機會ヲ得マシタコトハ、我ガ蠶絲
業界ノ最モ喜ブベキコト、又亞米利加ノ當業者モ定メシ滿足ノ意ヲ表スルコ
トト.私ハ衷心喜ビニ堪ヘナイノデゴザイマス、本案ガ衆議院ノ希望條件附
ニテ通過イタシマシテ、本日玆ニ上程サレタノデ、本案中ニ付テ、或ハ多少
我〓蠶絲業者ノ意ニ滿タナイ、期待ニ副ハナイ點ガアルカモ測リ難ナイノデ
アリマスガ、是ハ已ムヲ得ザルコトデ、御互ニ恐ブト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、惟フニ本案ノ實施ハ我ガ蠶絲業界ノ一大革新、
維新トモ申スベキモノデアリマス、サリナガラ單ニ之ニ依ッテ我ガ蠶絲業ノ
目的ヲ達成スルト云フコトハ望マレナイノデアリマス、更ニ進ンデ他ニ幾多
ノ施設ヲ必要ト考ヘラレルノデアリマス、由來、我國ノ蠶絲業ハ畏多クモ
上、皇室ニ於カレマシテ、皇后陛下御手ヅカラ御養蠶ヲ遊バシ、又下、官民
一致協力以テ御趣意ニ副フベク努力ヲ致シマシテ、今日ノ如ク達成ヲ致シタ
ト、私ハ衷心ヨリ喜ブ次第デアリマス、更ニ我ガ蠶絲業ノ上ニ於キマシテハ、
指導奬勵ノ點ニ至リマシテハ至レリ盡セリデアリマセウ、併ナガラ我國ノ
蠶絲業ノ偉大ナル發展ヲナシタル蠶絲業ノ行政機關ノ上ニ於テハ、聊カ足リ
ナイ感ジモ持ツノデアリマシテ、我〓蠶絲業ニ從事スル者ノ希望ト致シマシ
テハ、今日ノ蠶絲業行政機關ヲ昇格イタシマシテ、蠶絲局ノ設置ヲ熱望シテ
巳マナンダノデアリマス、併ナガラ不幸ニシテ其目的ヲ達スルコトガ出來ナ
ンダノハ遺憾トスル所デアリマス、サリナガラ此蠶絲業ノ行政機關ノ不備ト
ハ申シナガラ、能ク我ガ蠶絲業界ヲ指導サレタト云フコトハ、我レ人トモニ
感謝スル次第デアリマス、然ルニモ拘ハラズ、我ガ蠶絲業ニ從事スル者ガ各、
孤立イタシマシテ、相互ニ利害ノ上ニ於テ他ヲ陷レムトスルヤウナ傾向ガ見
エルノデ、誠ニ遺憾ヲ感ズルノデ、是等ノ缺點ヲ補フノニハドウ致シマシ
テモ統一的ニ我ガ蠶絲業ヲ進メナケレバナラヌ、然ルニ御互ニ我田引水、自
己アッテ我ガ蠶絲業ヲ知ラザルト云フヤウナ譏リヲ往々耳ニスルノデ、私モ此
業ニ從事シテ居ルガ爲ニ、甚ダ慚愧ノ至リニ堪へナイノデアリマス、我國ノ
蠶絲業ガ今日ノ如ク發展シタルコトハ、全ク異數ナノデアリマス、此大勢ヲ
遠キ將來ニ齎ラシ得ルヤ否ヤト云フコトハ、私ハ疑問ト致スノデアリマス、
玆ニ改メテ申ス迄モナク、斯業ニ對シテハ、爲政者ト云ハズ、我〓蠶絲業界
ニ直接、間接、關係スル者トヲ論ゼズ、益、將來ノ發展ヲ講ズルコトニ努メテ
ハ居リマスルガ、如何セン、我ガ蠶絲業者ノ前途ニ測ラザル所ノ難關ガ節々
起ルノデアリマス、昨今、橫濱ノ市場ニ於ケル生絲ノ慘落ハ如何デアリマセ
ウカ、十四年度ニ於ケル最高最低ノ點ヨリ考ヘマスルト百斤ニ付テ四百圓
ノ、玆ニ暴落ヲ來シタノデアリマス、此暴落ノ爲ニ我ガ蠶絲業界ニ從事スル養
蠶家ト云ハズ、種屋ト云ハズ、製絲家ト云ハズ、金融業者ト云ハズ、實ニ一
ノ悲哀ヲ感ズルノデ、殆ド其歸スル所ヲ知ラザル有樣デアル此慘落ノ原因
ハ一ニシテ足ラナイノデアル、幾多ノ原因ハ有ルノデアリマスルノガ、最モ
其最近ニ於ケル所ノ原因ハ、御承知ノ爲替ノ反撥デアリマス、是ハ國家ニ取。ツ
テ最モ喜ブベキコトデ、斯クナクテハ我國ハナラナイノデアル、此反撥ハ喜
ブベキコトデアリマスルガ、反撥ニ反シテ慘落ガ伴フノデアリマス、卽チ爲
替ノ不安定デアリマス、是ガ最近ニ於ケル生絲ノ暴落ノ一大原因ニナッタト
考ヘテ居ルノデアリマス、又縱シ、此原因ガソコニアリマシタト致シマシテ
モ、蠶絲業界ノ力ガ充實イタシマシテ、此動搖ニ對スル維持力ニ富ンデ居。ツ
タナラバ、決シテ斯ノ如キ悲慘ナル所ノ相場ヲ私ハ見ナンダト思フノデアリ
マス、是卽チ實力ノ我ガ蠶絲業ノ發展ニ件ハナイ一大原因デアルト思フノデ
アリマス、斯ノ如キ暴落ハ單リ我國ノ蠶絲業ノ上ニ悲ムベキノミナラズ、米
國ニ於ケル所ノ機業家ノ迷惑ハヨリ以上ノコトト私ハ察スルノデアリマス、
元來、我國ノ蠶絲業ノ橫濱ニ於ケル相場ノ暴騰暴落ハ全ク不自然デアリマ
ス何等、由フテ來ル所ガナイ相場ガ節々現ハレルノデアリマス、斯ノ如キ最
モ、我國ニ一ニ數ヘテ二ツト無イ所ノ大切ナル蠶絲業ノ相場ガ朝、夕ヲ計ラ
レザルト云フヤウナコトハ、全ク我ガ蠶絲業界ノ爲、我ガ國家ノ爲ニ惜ム次
第デアリマス、今日ノ如キ暴落ガ需要供給ノ點ヨリ起ッタナラバ、是ハ已ムヲ
得ザルコトデアリマスルガ、彼ノ國ニ於ケル、卽チ米國ニ於ケル有樣ハ何等
橫濱ニ大暴落ヲ來ス如キ大ナル經濟界ノ惡材料ハ見出スコトガ出來ナイ、唯、
橫濱ニ於テ自カラ斯ノ如キ相場ヲ不自然ニ拵ヘルノデアル、橫濱相場ニシテ
米國ノ相場デナイノデアル、斯ルコトガ段々米國ノ機業家ニ慊ラザルニ至ル
ガ爲ニ、大切ナル所ノ得意ハ他ノ國ニ向ヒハセヌカト云フコトヲ心配スルノ
デアル、米國ノ機業者ハ日本ノ生絲ニ依ヲテ營業ヲ營ムコトハ、今日ノ場合已
ムヲ得ズトシテモ、將來之ニ依ヲテ營業ヲ晏如トシテ營ムコトガ出來ナイ、何
レカノ方面ニ販路ヲ······供給者ヲ求メナケレバナラヌト云フコトヲ口ニ唱ヘ
ルバカリデナク、支那ニ向ッテモ其方針ヲ多少トモ實行シツツアルノデアリマ
ス獨リ支那ノ蠶絲ノミデナイノデアル、斯ノ如キ不安ナ生絲ニ依ッテ業ヲ
營ムヨリハ寧ロ安全ニシテ業ノ安固ヲ求メ得ラレル所ノ人造絹絲ヲ、我ガ
生絲ノ代用ニ使用スルニ如カズト云フ議論モ起ッテ居ルノデアリマス、全然、
我國ノ生絲ヲ使用シナイト云フコトハ出來ナイノデアル、混織ヲシテ成ルベ
ク生絲ヲ避ケケヤウト云フコトヲ口ニスル人モアルノデアリマス、斯ノ如キ
コトガ我國ノ得意ナル米國ノ機業家ノ中ニ益〓宣傳サルルニ至ラバ、由々シキ
大事デアル、我〓蠶絲業者ハ玆ニ於テ此對策ヲ今ニシテ講ゼザレバ、大ナル
悔ヲ後ニ遺スコトガアリハセヌカト言ウテ互ニ心配スル次第デアリマス、然
ラバ如何ナルコトヲスレバ是等ノ缺點ヲ阻止シ得ルヤ、是ハ幾多ノ施設モ要
シマスルガ、要スルニ、實力ヲ養フニ如カズ、卽チ金融ノ便ヲ與ヘ、持久ノ
途ヲ或ル程度マデ講ジナケレバナラヌノデアリマス、併ナガラ自然ノ相場ガ
需要供給ノ點ヨリ來ッタ場合ハ、是ハ決シテ賣惜ミ、持久ヲスルト云フコトハ
不自然デアリマスガ、全ク暴落ノ原因ガ需要供給ノ點ヨリ來ラザル場合ニ於
キマシテハ或ル程度迄ハ互ニ持久ヲ必要トスルノデアリマス、此持久ヲ全
ウスルニ於テハ金融ノ途ヲ開カナケレバナラヌ、此途ニ依ッテ或ル程度迄之
ヲ挽囘シ得ルコトハ出來得ルモノト思フノデアリマス、御承知ノ如ク我ガ國
ノ蠶絲業ノ營業ノ狀態ハ、年度ノ終リニ於テ打切ルト云フヤウナ習慣ガ今ニ
殘フテ居ルノデアリマス、十四年度ノ產額ハ此十五年ノ五月迄ニ藏拂ヒヲシテ
シマハナケレバナラヌ、又金融ヲ受ケタ者モ此新舊蠶絲業ノ端境期ニ於テ全
部皆濟ヲシナケレバナラヌト云フヤウナ、全ク他ニ見ラレナイ所ノ金融ノ狀
態デアリマス、然ルニ半面ニ於キマシヲハ蠶絲業ノ發展ガ此金融ト一致シ
ナイノデアル、端境期ニ打切ルト云フコトガ、此今日ノ暴落ノ原因ヲ益〓深
カラシムル所以デアラウトモ思フノデアリマス、今日ノ如キ蠶絲業ノ發展ヲ
致シタル場合ニ於テハ、決シテ此事業ヲ打切ルベキモノデハナイ、金融モ決
シテ打切ルベキモノデハナイ、繼續的ニ業ヲ營ムノ方針ヲ立テナケレバナラ
ヌノデアル、私ハ紡績業······綿紡績業ト決シテ違ハナイト思フノデアリマ
ス、此點ガ我ガ蠶絲業ノ金融ノ上ニ甚ダ遺憾トスル點デアラウト思フノデア
リマス、玆ニ私ハ如何ニ我ガ國ノ蠶絲業ノ偉大デアルカト云フコトヲ數字デ
御迷惑樣デモ紹介イタシマス、生絲ノ輸出高ガ大正十四年度ノ八億七千九百
四十九万九千、絹織物ガ一億一千六百九十八万アル、屑物ガ約四千万圓、之
ヲ合スレバ十億餘ニ達スルノデアリマス、斯ノ如キ異數ノ發達ヲシタニモ拘
ラズ、之ニ伴フ所ノ實力ガ甚ダ副ハナイノデアリマス、故ニ投賣モ致シマス、
勢ヒ捨賣ヲシナケレバナラヌト云フコトニ至ルノデ、是ハ單リ當業者ノ損耗、
製絲業ニ從事スル者ノ損ニ歸スルバカリデナイ、是ハ轉嫁シテ養蠶家ニ及ブ
ト云フコトヲ私ハ甚ダ憂フルノデアル、纖維工業トシテ輸入ノ主ナルモノハ
羊毛ノ類モアリマスルガ、私ハ棉花ニ付テ對照シテ見タイト思フ、大正十四
年度ガ棉花ノ輸入ガ九億二千三百餘万圓、綿製品、綿布、綿絲ノ輸出ガ五億
九千三百餘万圓、此數字カラ見マスルト、我國ノ二百万ノ養蠶家ガ、是ガ努
力ヲシテ晝夜兼行デ十億以上ノ偉大ナル輸出ヲ致ス所ノ生絲モ、棉花ノ輸入
ニ依ッテ差引カレレバ、殘ル所幾許デアルカ、誠ニ遺憾ニ存ズルノデアリマス、
綿布綿絲ノ輸出ガ約六億デアリマス、此加工賃ハ十分ニ見マシテ四割デアリ
マス、サウ致スト云フト六億ニ對シテ二億四千万圓ノ加工賃ヲ得ルニ過ギナ
イノデアリマス、之ヲ差引イテ輸出サレ得ル所ノ原料ヲ約三億五千万圓、差
引ケバ我國ニ於テ使用スル所ノ棉花ハ五億七千三百万圓見當ヲ我ガ國民ガ使
用スルノデアル、實ニ我ガ國ノ生活ガ向上イタシマシタ結果トハ申シナガラ、
棉花ノ使用ガ如何ニモ多イノハ、是ハ恐ラクハ、我ガ國民ガ、綿布類ト云フ
モノハ是ハ日用品デアッテ、必需品デアッテ、安イト云フ習慣ニ囚ハレテ粗末
ニスルノ結果デハナイカト私ハ思フ、私ハ寧ロ生絲ヨリ貴イト云フ觀念ヲ持
タセナケレバナラナイノデアル、私ニ言ハシムレバ、我生絲ヲ、我國民ガモ
ウ少シク考ヘテ、實用的ニ用井タナラバ、棉花ノ輸入ヲ或ル程度マデ防グコ
トガ出來ハセヌカト思フ、生絲ニ依ッテ我國ノ纖維工業ヲ獨立シテ行クコト
ハ容易デアラウト思フノデアリマス、又我ガ國ノ習慣トシテ、生絲ハ最モ貴
イモノデアル、絹布ハ大切ナモノデアルト云フコトニ囚ハレテ、生絲ヨリ高
イ所ノ綿布類ヲ纏ウテ居ルトコロノ場合モアルノデアル、是等ハ全ク我ガ國
ノ國民ノ頭ヲ少シク改造シナケレバ、如何ニ我〓ノ大切ナル生絲ヲシテ盛ン
ナラシメテモ、此爲ニ何等得ル所ガナイト云フヤウナ結果ヲ齎ラスコトヲ私
ハ遺憾トスルノデアリマス、我國ニ於キマシテモ、最近人造絹絲ノ流行スル
コト、又人造絹絲ノ製造會社ノ勃興ハ著シキモノデアリマシテ、是等ハ全ク
我ガ生絲ノ敵デナイト斯ウ云フコトヲ言ヒ得ルカモ知レマセヌガ、私ハ品
質ニ於テハ敵デナイガ、其價ニ於テハ最モ恐ルベキ所ノ大敵デアルト私ハ
信ズルノデアル、ソレガ證據ニハ、生絲ノ價ガ高イ時ニハ、人造絹絲ガ多ク
用井ラレル、生絲ノ價ガ下ガレバ人造絹絲ノ方ガ、驅逐サレルトハ申シマセ
ヌガ、需要ガ減ル、價ニ於テ相敵シテ居ルノデアル、此ノ人造絹絲ニ對スル、
我ガ蠶絲業ニ從事スル者ハ覺悟ヲセネバナラヌト思フノデアリマス、之ヲ自
然ニ任セテ置クニ至レバめ我ガ蠶絲業ノ根柢ヲ危クスルト云フコトハ.私ノ
申スマデモナイコデアリマス、此人造絹絲ニ對抗スルニハ、生產費ヲ安クス
ル、良キモノヲ澤山拵ヘル、所謂廉價良品、廉價多賣主義ヲ採ルヨリ仕方ガ
ナイト思フ、此事ハ私ハ決シテ望ンデ得ラレナイコトデナイノデ、出來得ル
ト私ハ信ズルノデアリマス、誠ニ橫道ニ這入リマシテ、御迷惑ナコトヲ御耳
ニ入レテ恐縮ニ堪ヘナイ要スルニ、私ハ斯樣ナコトヲ伺ッテ置キタイト思フ
ノデス、我國ノ蠶絲業ノ······蠶絲ノ生產費ヲ安カラシムルニハ、政府トシテ
如何ナル御考ヲ御持チニナルカ、其邊ヲ御漏シシテ戴ケバ誠ニ仕合セデアル、
第二ニ、衆議院ニ於キマシテ、本案ニ希望條件ヲ附ケテ可決サレタノデア
ル、卽チ金融問題デアリマス、定メシ此希望條件ニハ政府モ御同意ノコトト
信ジテ疑ハナイノデアリマス、其方法竝ニ程度ヲ伺フコトヲ得マスレバ誠
ニ幸デアリマスルガ、是ハ直チニ伺フコトハ如何デアラウカト、私ハ御尋ネ
スル上ニ於テモ、其點ハ躊躇スル次第デアリマス、第三ハ、我〓ガ多年、蠶
絲業行政ノ擴張ヲ叫ンダノデ、決シテ今日ノ機關ヲ御不足ヲ申スノデハナイ
ガ、我ガ蠶絲業ノ發展ニ伴ハナイト云フ虞レガアルノデアリマス、故ニ蠶絲
局ノ設置ヲ今日マデ屢〓叫ンダノデアリマスルガ、現政府ニ於キマシテモ、行
政財政ノ整理中デアッテ、餘裕ガ無イカラ、餘裕ガ出來タラバ希望ニ副フコド
ガ出來ルダラウト云フコトノ御言葉モ戴イタノデアリマス、段々此席ニ於テ
伺ヒマスルト、整理モ稍〓其〓ニ就イテ、來ル議會ニハ蠶絲局ヲ設置スル餘裕
ハ或ハ生ジハセヌカト私ハ察スルノデアリマス、蠶絲局ヲ御設置下サル時期
ヲ御漏シヲ戴ケバ、全ク我〓ノ願フ所デアリマスガ、御差支ナイ程度デ其邊
モ御答へ下サルコトヲ、私ハ希望スルノデアリマス
〔國務大臣早速整爾君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=64
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065・早速整爾
○國務大臣(早速整爾君) 今井君ノ唯〓ノ御尋ニ對シテ御答ヲ致シマス、色
色御陳述ニ相成リマシタガ、前段御述ベニナリマシタ所ハ、主トシテ御意見
ヲ御述ベニナッタ點ガ多カッタノデアリマシテ、一々ソレニ對シテハ私ノ答辯
ヲ御要求ナスッタ譯デモナイヤウニ伺ッタノデアリマス、而シテ其御述ベニナ
リマシタル要旨ニ付キマシテハ、私共至ッテ同感ノ點ガ多イノデアリマシテ、
例ヘバ蠶絲業ガ今日マデ大ニ發展ヲシテ來テ居ルケレドモ、尙ホ將來憂慮ニ
堪ヘナイモノガアル、是ニハ官モ民モ共ニ幾多ノ施設經營ヲ要スル點ガアル
ンデハナイカト云フヤウナ御說ニ對シマシテハ、私共、矢張リ左樣ニ考ヘ居
リマス、安閑トシテ、此事業ハ非常ニ發展ヲシテ居ルカラ、之ニ甘ンジテ居
ルト云フコトニ相成リマシテハ、將來誠ニ寒心ニ堪ヘナイ、政府モ固ヨリ、
將來ノ此助長ト云フコトニ對シマシテハ、ドコ迄モ努力ヲ致サナケレバナラ
ヌノデアリマスケレドモ、此業ニ從フ多數ノ人〓モ奮發ヲシテ、益〓此事業ノ
發展ヲ圖ルト云フコトニ御努力ヲ願ハナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマスカラシテ、色〓御述ベニナリマシタル、ソレ等ノ點ニ付キマシテ
一私ハ全ク御同樣ナ意見ヲ持ッテ居ル、デ、尙ホソレニ付テハ絲價ノ安定ト
云フコトヲ圖ラナケレバナラヌ、現ニ今日、橫濱ニ於キマシテアノ暴落ヲ來
シタ結果、不自然ナル相場ヲ現ハシテ、非常ニ不利益ナル境遇ニ立ッテ居ル、
斯ウ云フコトハ今年バカリデハナイ、能クアル例デアリマシテ、不自然ナル
相場ガ現ハレ、是ハ延イテハ漸次、此生絲ノ販路ヲ却ッテ狹メルト云フヤウ
ナ結果ニ陷ル、ドウシテモ此絲價ヲ安定セシムル所以ノ途ハ考究シナケレバ
ナラヌト云フ御意見ノ下ニ、ソレハドウスレバ宜イカト云フコトニナレバ、
卽チ持久的ノ考ヲシナケレバナラヌ、實力ヲ養フ、主トシテハ是ハ金融ノ問
題デアルト云フ御說デアッタノデアリマス、之ニ付キマシテ、最後ノ結論ニ付
テ、此金融ニ付テ、政府ハ如何樣ニ考ヘルカト云フ御間ヲ御發シニナッタノ
デアリマス、是ハ無論、私カラ大體ヲ御答ヘ致シタイト思ッテ居ルノデアリマ
ス、生產費ノ點ヲ更ニ御述ベニナッテ、良キ品物ヲ造ルト同時ニ成ルベク生產
費ヲ安クシテ、ソレデ以テ品物ヲ餘計ニ市場ニ出ス、而シテソレガ賣行クト
云フコトニシナケレバナラヌト云フ御說、此生產費ノ問題モドウ云フ風ニ考
ヘテ居ルカ、生產費ヲ安クスルト云フコトニ付テ、ドウ云フ風ニ考ヘテ居ル
ト云フコトガ御尋ノ一點デアッタ、私ハ、此生產費ヲ安クスルト云フコトニ付
テノ御尋ノ點ト、ソレカラ金融ノ點ニ付テ如何樣ニ考ヘテ居ルカト云フ點ト
ニ付テ、先ヅ御答ヲシタイト思フノデアリマス、此二ツノ點ニ付キマシテハ、
當局者ノ考ヘテ居リマス所ハ多少相關聯ヲシテ居ルノデアリマスカラ、御答
ヲスルニハ二ツノ點ガ關聯シテ御答ヲスルト云フコトニナルカモ知ラヌト思
ヒマスカラシテ、豫メ御承知置キヲ願ヒタイノデアリマス、如何ニモ御說ノ
如ク此製絲家ノ金融、所謂製絲ノ資金ト云フモノノ融通ヲ圖ラレテ居ル點ニ
於キマシテハ、誠ニ今日ノ儘デハイケナイ點ガ多イ、申サバ是モ矢張リ不自
然デ、製絲家ノ金融ノ特色ト云フカ、或ル意味ニ於テハ如何ニモ是ハ缺點デ
アルト私共考ヘテ居リマス、其原因ハ何所ニアルカト申セバ、是ハ矢張リ
今井君モ稍〓此席ニ於テモ御述ベニナッタ點モアルノデアリマス、ドウモ製絲
業ト云フモノガ免角投機的ノ事業ノヤウニ見ラレテ居ル、ソレト同時ニ此事
業ガ小サク分レテ居ッテ、如何ニモ全體ノ統一ヲ缺イテ居ルト云フヤウナ點ニ
於テ、弱點ヲ持ッテ居ル爲ニ、免角此小サイ工場ガ多ク、、纏マッタ大キナ工場モ
無イト云フ點カラシテ、信用ガ薄弱デアル、而モ此繭カラ絲ニナッテ來ル間ニ
於テ、貸付ヲ受ケルト云フコトニ付テ、免角無擔保ノ貸付ガ多イ爲ニ、却テ
金融ノ圓滑ヲ缺クト云フヤウナ狀況モアルノデアリマス、サウ云フ點ニ加フ
ルノニ、製絲ガ一時ニ多額ノ資金ヲ要スルト云フコトニナッテ居ルガ爲ニ、免
角金利ガ高クナッテ來ルト云フヤウナ傾キヲ有シテ居ルノデアラウト思フノ
デアリマス、是ガ同ジク融通ヲスルニ於キマシテモ、此製絲ニ關スル手形ガ、
他ノ紡績手形其他ノ普通ノ商業手形ヨリモ、金利ガ高イト云フ狀況ニナッテ
周う、如何ニモ製絲ノ金融ト云フモノハ思フヤウニ行ッテ居ラヌト云フ事實
ヲ認メルノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ、之ニ對シテハ相當ノ施設
ヲ爲シテ、成ルベク金融ガ圓滑ニナルヤウニ計畫ヲシナケレバナラヌト、當
局者ハ考ヘテ居リマス、根本ノ策ト致シマシテハ、ドウシテモ此製絲業ト云
フモノヲ工業的ノ經營ニ移ス、是ハ工業的ノ經營ニナッテ居リマスケレドモ、
前申上ゲマス如ク免角投機的ノ事業ノ如ク思ハレテ居ルト云フヤウナ一ツノ
弊ガアルノデアリマス、ソレニハ矢張リ唯今申シマスル此小サイ工場ハ成ル
ベク之ヲ合同シテ、成ルベク大キイ組織ノモノニシテ、統一ヲ圖リ得ルモノ
ニシナケバナラヌ、ソレカラ其次ニハ此ノ繭ヲ擔保トシテ金融ノ途ヲ開クト
云フ途モ考究シナケレバナラヌデアリマセウ、從テ一方ニハ乾繭取引······生
繭デアルカラ此取引上ニハ非常ナル弊ヲ生ジ、此取引ガ圓滿ニ行ハレナイト
云フ結果ニナッテ居リマスカラ、乾繭ノ取引ヲ助長スルト云フコトモ無論行ハ
ナケレバナラヌト思ッテ居ルノデアリマシテ、サウ云フヤウナ施設ヲ十分ニ
行ナッテ參リマスレバデス、此金融ノ上ニ於テモ非常ナル便宜ヲ得ルコトガ出
來ハシナイカ、ソレニハ政府ガ今日モ熱心ニ主張ヲ致シテ居リマスル、此共
同繭倉庫ノ此事業ノ經營ヲ致シテ居リマスル產業組合、或ハ產業組合中央金
庫ノ如キモノヲ利用シテ、各般ニ分レテ居ル此一般ノ小サイ製絲業者邊リニ
對シテモ、金融ノ途ヲ開クト云フコトガ出來得ルデアラウ、大キイ所ニ至リ
マスレバ、無論日本銀行ヲ旨ク利用スル、日本銀行ト云フモノトノ連絡ヲ旨
ク取ラナケレバナラヌト云フコトハ是ハ無論ノ話デアリマスケレドモ、要
スルニサウ云フ風デ以テ、乾繭ト云フモノノ統一ヲ助長スル結果ハ、此養蠶
業者ニ向ッテ乾繭ノ取引ヲ助長スル、從テ是ガ共同繭倉庫ト相竝ンデ、服
製絲ノ資金ヲ供給スル上ニ於テモ非常ニ便宜ヲ與ヘルコトニナリハシナイ
カ、私ハ根本ノ策トシテハ工業的ニ此經營方法マデ改メナケレバナラヌト申
シタノデアリマスガ、唯今申ス此共同繭倉庫ノコトヤ、或ハ產業組合ノ利用
ナドト云フモノハ、應急的ノ策トシテ先ヅヤラナケレバナラス點デアラウト
思フノデアリマス、デ、斯ウ云フ風ニシテ、官モ民モ一致シテ此金融ノ便宜ヲ
圖ルト云フコトニ致シテ參リマスレバ、私ハ將來ニ於テ今日ノ如ク行詰ッタガ
如キ狀態ノ製絲金融ヨリモ、モウ一步進ンデ此金融ノ便宜ヲ圖ルコトガ出來
ハシナイカト考ヘテ居ルノデアリマス、衆議院ニ於テ製絲ノ資金ニ關シテ問
題ガ起リマシタ際モ、私ハ具體的ノコトハ申シタノデハアリマセスケレド
モ、大體ハ斯樣ナ方針ノ下ニ、此製絲業者ノ金融ノ圓滑ヲ圖ルト云フコトニ
付テハ、一步ヲ進メタイト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ次ニ此
生產費ノ問題デアリマスガ、是ハ今日ノ狀況ガ生絲ノ此生產費ガ高イト云フ
コトニ付テノ原因ハ、色〓アルデアリマセウケレドモ、主トシテハ此一ツハ
金利ノ問題、此金利ガ高イト云フコトハ矢張リ生產費ヲ高クスルト云フ原因
ニナッテ居ルノデアリマスカラ、唯今申スヤウニ金融上ノ便宜ヲ圖ルト云フコ
トニ相成リマスレバ、從テ生產費ヲ安クスルト云フコトノ一方法ニハ相成ル
ト考ヘルノデアリマス、ソレカラ今一ツハ矢張リ工賃、工賃ヲ安クスルト云フ
コトヲシナケレバ、矢張リ此生產費ヲ安クスルト云フ途デハナイノデアリマ
スデ、是ハ矢張リ工賃ヲ安クスルト云フコトニ付テ、物價ノ關係モアルシ、
或ハ色〓ノ點ニ於テ考究シナケレバナラヌ點ガアルノデアリマスケレドモ、
是モ矢張リ官民一致シテ、將來成ルベク此生產費ヲ安クスルト云フコトニ努
力イタシマスレバ、從テ此製絲業者ノ製絲上ノ生產費ヲ減ズルト云フコトニ
付テハ、相當ノ效果ヲ現ハスコトガ出來得ナイ譯デモアルマイト、斯樣ニ考
ヘテ居ルノデアリマス、兎角不自然ナルコトガ多ク行ハレテ居ルノデアリマ
スカラシテ、成ルベク之ヲ自然ニ直ス、自然ニ持直スト云フコトガ最モ必要
ナル點デハナイカト當局者ハ斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、第三點トシテ
御尋ネニナリマシタノハ、矢張リ此蠶絲局ノ事デアッタノデアリマス、蠶絲
業ノ奬勵發逹ヲ圖ルト云フ目的ノ上カラ、成ルベノ蠶絲局ヲ設置シテ、サウ
シテ此助長行政ノ上ニ大ニ手腕ヲ振フコトガ出來ルヤウニシタイト云フ御希
望ニ付キマシテハ當局者モ矢張リ其希望ヲ同ジウ致シテ居ルノデアリマス
ガ唯之ヲ直チニ設置スルコトガ出來ナカッタト云フコトニ付キマシテハ、財
政上其他ノ事情カラシテ、本年度豫算ノ中ニ蠶絲局設置ト云フ經費ヲ要求ス
ルコトガ出來ナカッタノハ私共トシテモ固ヨリ遺憾ニ存ズルノデアリマス、
併シ將來ニ於キマシテハ、或ル機會ニ於テ、成ルベク近キ時機ニ於テ、此蠶
絲局ト云フコトガ實現スルヤウニ致シタイト云フ、私ハ希望ヲ持ッテ居ルノデ
アリマス、左樣御了承ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=65
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066・今井五介
○今非五介君 唯今農林大臣ヨリ御親切ナ御答、御說明ガアリマシテ、私ハ
感謝スル次第デアリマス、唯チヨット伺ッテ置キタイコトハ、乾繭取引ヲ助長
スルガ爲ニ、新タニ御施設ヲ爲スッテ、今ヤ實行ニ及ンデ居ルノデアル、是一
私モ理想トシテ全ク結構ナ御施設デアルト思フノデアリマス、此問題ハ、私
ガ彼是レ申上ゲルコトハ誤解ヲ生ズルヤウナ嫌ヒガアルノデ、遠慮イタシタ
イト思ヒマシタガ、是ハ御參考マデニ御聽キヲ願ヒタイ、我國ノ蠶絲業者ガ
今日ノ如ク發達シタ原因ハ、那邊ニ在ルカト申シマスルト、製絲業者ト養蠶
家ガ直接ニ取引ヲシタ、其間ニ何等隔タリガ無カッタ、偶、仲買業者ガアリト
雖モ、能ク養蠶家ノ生產シタル所ノ品物ノ良否ヲ製絲家ガ直接知ルコトヲ得
テ,互ニ奬勵······互ニ助ケ合ッテ玆ニ至ッテ、今日ノ此達成ヲ致シタト私ハ思
フ其半面ニ於テ、支那ノ取引ニ付テチヨット御聽キヲ願ッテ置キタイト思フ
私ハ明治二十六年ニ初メテ支那ニ渡リマシテ、支那ノ繭ノ輸入ヲ企テタ、爾
後數囘ニ互ッテ視察ヲシ、今日ニ至ッテハ彼ノ地ニ工場モ營ンデ居ルノデアリ
マス其當時ト、今日ノ支那ヲ見マスレバ、支那ノ繭ノ品位ガ優ッテ居ルカ、
衰ヘタカト云フト、段々衰ヘテ來タノデアリマス、明治ノ初年カラ中頃マデ
ハ支那ニ於キマシテモ、製絲家ガ乾繭場ヲ持ッテ、自ラ繭ヲ賣買シタノデア
ル其後段々乾繭業者ガ發達シ、製絲家ノ力ガ其反對ニ衰ヘタ、ソレデ多ク
ハ支那ノ製絲業ハ乾繭業者ノ手ニ依ッテ製絲ガ行ハレテ居ル爲ニ、製絲家ハ
價ノ如何ニ依ッテ品物ヲ買フ、何處ノ地方デドウ云フ物ガ出來タカト云フコト
ハ重キヲ爲サナイノデアリマス、從テ養蠶ノ惡イ物ヲ取ッテ高ク賣ラウ、其
時限リデ、其繭ノ良否ガ製絲家ニ(聽取シ難シ)ナイ、斯ウ云フ爲ニ支那ノ蠶
絲業ガ段々衰へタト云フコトハ、單リ私ノ觀察バカリデナク、何レモ左樣ニ
感ジテ居ルノデアル、然ル處此度我ガ國ニ於テモ、稍〓支那ニ於ケル乾繭取引
ト同樣ナコトガ行ハレルノデアリマス、然ラバ此取引ノ上ニ於テ我ガ國ノ從
來ノ慣習ニ副フベク、成ルベク養蠶家ノ生產シタル物ガ製絲家ノ希望ニ副フ
ヤウニ、又製絲家ト養蠶家ト互ニ、其間ノアヒダニ、乾繭業ノ爲ニ疎隔ヲ來
サナイヤウニ、從來ノ美風ヲ此業ノ上ニ齎ラスコトヲ、私ハ希望トシテ御聽
キヲ願ッテ置ク次第デアリマス
〔服部一三君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 服部一三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=67
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068・服部一三
○服部一三君 質問ガアリマスガ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=69
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070・服部一三
○服部一三君 此處デ致シマセ.ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大キナ御聲デ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=71
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072・服部一三
○服部一三君 宜シウゴザイマス、第一ニ伺ヒマスガ、「公共團體ノ設クル生
絲檢査所」云々ト云フコトガアリマスガ、是ハ第一條ノ一項デ見マスト云フ
ト、「國ノ生絲檢査所」トアルカラ、他ノ公共〓体デ設ケタ所ノ生絲檢査所ト
云フモノハ、國ノ生絲檢査所ノ代用······代理ト云フヤウナコトデ御許シニナ
リマスデスカ、ドウ云フ性質ノモノデアリマスカ、ソレヲ一ツ伺ヒマス、此
檢査所ハ手數料ト云フヤウナモノヲ徵收スルコトヲ御許シニナルノデアリマ
スルカ、如何デアリマスカ、其次ハチヨット質問ガ長ウアリマスケレドモ、大
キイ聲デ言ヒマスカラ、此處デヤリマス、私ノ親友デアリ、又斯業ノ專門家
デアル所ノ今井君ヨリ、喋々此製絲家ガ悲況ニ陷ッテ居ル、其狀況ト、ソレヲ
救濟スル方法ニ付テ御話ニナリマシタガ、私ガ伺ヒタイノハ、今日ノ製絲家
ガ悲況ニ陷ッテ居ルノハ一ツハ今井君ノ仰シヤル通リニ、實ニ此事業ト云フ
モノハ、性質トシテ不安定ナモノデアル、是等ハ資金ノ融通ガ乏シイト云フ
コトデ、ソレヲ救濟スルコトヲ大臣ニ色〓伺ハレタ樣子ニ聞エマシタガ、大
臣ニ伺ヒタイノハ、全體綿絲業ト、此蠶絲業トヲ較ベマスルニ、綿絲業ト云
フモノハ、矢張リ誠ニ不安ナ事業ト云ヘバ云ハレルノデアル、ナゼナレバ、
此原料ト云フモノハ悉ク外國カラ取ッテ來ルノデアル、外國デ產出スルノハ、
其土地ノ氣候ノ良否ニ關係シ、又他ノ國ノ需要供給ニモ關係イタスノデアリ
マスルガ、其原料ヲ以テ、コチラデ事業ニ從事シテ居ルカラ、其危險ナルコ
ト不安定ナルコトハ蠶絲業トサウ違ヒハシナイデアラウト思ヒマスルガ、
然ルニ綿絲業ハ今日デハ大體カラ言フト云フト、誠ニ安定シテ居ッテ、少々ノ
不況ナコトハアッテモ、ナカ〓〓動カナイ、然ルニ蠶絲業ノコトニ付キマシテ
ハ屢ヤア官カラ保護ヲシテ貰ヒタイトカ、ドウシテ貰ヒタイトカ云フコ
トヲ聞キ、前年モ確カ官カラ大分保護ガアッタヤウニ私ハ記憶シテ居リマス、
ソレデ此缺點ト云フモノハ、綿絲業者ハ常〓非常ニ注意シテ、マサカノ事ガ
起ッタ時分ニハソレニ當ルダケノ用意ヲシテ、積立金ト云フモノヲ常〓非常ニ
澤山置イテ居ル、年々ソレヲ增シテ居ルノデアルガ、蠶絲業者モ時トシテハ
非常ニ儲ケタト云フヤウナコトヲ新聞デ屢〓聞キマスガ、蠶絲業者モ矢張リサ
ウ云フコトヲ常〓シテ居ッテモ、矢張イカヌノデアリマセウカ、或ハ先刻御話
ノヤウニ、小サイ蠶絲業者ガ多イカラ、サウ云フ譯ニイカナイト云フコトデ
アリマセウカ、若シモ小サイ、蠶絲業者ガ多ウテ、ソレガイケナイト云フコ
トデアレバ、ソレハモウ直チニ合併スルヤウニ御著手ニナラナイノハ、甚ダ
手後レノコトノヤウニ思ヒマスルデ、其點ニ付テ御意見ヲ聽キタイ、ソレカ
ラ此、今井君モ頻リニ御憂慮ニナッテ居リマシタ人造絹絲ノコトデス、是ハ敵
トカ味方トカ色〓御話ガアッタヤウデアリマスガ、本員ハ此事ニ付テハ、十年
以來、日本ノ蠶絲業ノ大敵ト思ウテ、使用者ニモ屢、注意ヲ與ヘタコトモアリ
マスルガ、私ガ御聽キシタイノハ、此人造絹絲ト天然ノ繭ヲ用井テノ絲トガ、
常ニ競爭シ得ルト云フ御見込ガ確ニアリマスカ、ドウカト云フコトデアリマ
ス、人造絹絲ハ先キニ述ベマシタヤウニ、天然ノ繭ノ如ク不安定ナコトハ無
イ、何時モ同ジヤウニ出來ルノデアル、氣候ガ惡カラウガ、良カラウガ、ソ
レニハ少シモ關係ナイ、又原料モ安イノデアル、從テ其生產費モ非常ニ違フ
ノデアル、今日ニ於テハ其產出シタ所ノ物ノ品質ハ、或ル點ニ於テハ、天然
ノ物ニ比較シテ劣ッタ所モアリマセウガ、此價ノ點ニ付テハ、マア非常ニ安イ
ト云フコトハ御承知ノ通リデアリマスガ、十年前ニ御互ニ誰ガ、今日ノヤウ
ナ人造絹絲ガ出來ルト云フコトヲ豫期シテ居リマシタデセウカ、恐ラク此業
ニ當ッテ居ッタ人〓ノミデアラウト私ハ思フノデアリマス、過グル大戰爭ノ起
ル前ノ年ニ、或ル獨逸ノ製造家ヤ學者ヤラ、自分ハ今、人造絹絲ノコトニ付
テ日夜〓究シテ居ルガ、數年ノ後ニハ天然ノ物ニ劣ラヌヤウニシテ見ヤウト
云フコトヲ考究シテ居ルト云フノヲ讀ンダコトモアリマスルガ、其後、戰爭
モアリ、又總テノコトガサウ進ムモノデモアリマセヌカラ、サウモ參リマセ
ヌガ、今日デハ非常ナ進歩デアッテ、御承知ノ通リ、產出高ハ天然ノ蠶絲ト、
タント違ハヌト私ハ記憶シテ居リマス、ソレデ今日デハ生絲ト競爭スルト同
時ニ、綿絲ト競爭スルト云フコトノ方ヘ方向ヲ向ケテ居ルヤウニ見エマスル
ガ、世ノ中ト云フモノハ安クテ品質ガサウ惡クナイト云フ時分ニハ其方ヲ
買フ人ガ多ウナルコトハ是ハ水ノ低キニ向フガ如キモノデアッテ、迚モ止メ
ラレルモノデハナイ、ソレデ今日安閑トシテ、天然ノ絹絲ヲ以テ競爭ガ爲シ
得ラレルト云フ御見當ガ十分著イテ居リマスルカ、ドウカ、私ハ能ク覺エテ
居リマスルガ、明治ノ三十三年頃ニハ、織物ヲスル地方ヲ廻リマシテ、此人
造染料ヲ用井ナイト云フト酷イ目ニ遭フゾト云ウテ、色〓說諭ヲシテモ、イツ
カナ當業者ハ聽カナカッタ、ソンナ事ヲ仰シヤッタ所ガ、日本ノ特殊藍トカ何
トカ云フヤウナ良イ色ガ出ルモノデハアリマセヌ、是ハモウ極力反對シタモ
ノデアル、數年ナラズシテ、ドウデアリマスカ、今日ハ皆人造染料ニナッテシ
マッタノデアル、私ハ常ニ其事ヲ思ウテ、人ニ向ッテモ、是ハ餘程注意セヌトイ
カヌ、殊ニ製絲家ガ儲カッタ時分ニハ、事業ヲ擴張スルト云フカ、或ハ外ノ方
ヘ向ケルカシテ、積立金ト云フ方ノコトニハ準備ヲシナイヤウデアリマスル
ガ、是等ノコトハ先ヅ第一ニ當局デ御注意ニナラナクテハナラヌコトノヤウ
ニ本員ハ思ヒマスルガ、是等ノ點ニ付テハ、政府當局ハドウ云フ御考デアリ
マスルカ、御〓示ヲ願ヒタイ
〔國務大臣早速整爾君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=72
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073・早速整爾
○國務大臣(早速整爾君) 唯今ノ御尋ニ御答ヲ致シマスガ、第一ハ此公共團
體ノ檢査所ヲ認メルト云フコトニ付キマシテ、ソレハ國ノ檢査所ニ代用スル
意味ニ於テ之ヲ認メルカト、斯ウ云フ御尋デアッタノデアリマスガ、全ク左樣
デアルノデアリマス、但シ國ノ檢査所ト同樣ノ設備ヲ爲シテ其正量檢査ヲス
ルノニ差支ナイ範圍ノ十分ノ設備ヲスルト云フコトヲ前提ニ致シテ居ルノデ
アリマス、ソレカラ第二、手數料ノ御尋デアリマスガ、是ハ手數料ヲ徵シマ
ス積リデアリマス、ソレカラ第三ニ製絲業ノコトニ關シテ、免角、製絲業ノ不
安定ヲ訴ヘルト云フ點ニ付テノ御尋デアッタノデアリマス、此原因ハ色〓アル
コトデアリマスケレドモ、前刻モ私申述ベマシタル如ク、主トシテ此小サイ
事業ガ多イ、事業ト云フヨリモ元〓此養蠶業ガ農家ノ副業トシテ發達シテ、
ソレニ伴ウテ此製絲業ガ起ッテ來タト云フヤウナ譯デアリマシテ、誠ニ小サイ
モノガ多イ、工場ナント云ヒマシテモ、殆ド此個人的ノ小サイ工場ガ多イト
云フ風デ、全國ニ是ガ散在イタシテ居リマス相集マッテハ大變大キナ事業ニ
相成ッテ居ルノデアリマスケレドモ、如何ニモ小サイ、小サイガ爲ニ所謂前刻
申シマシタ通リニ、此生產費ニ於テモモウ少シ安ク出來ルモノヲ、此小サイ
工場ガ分立シテ居ルガ爲ニ、生產費モ高クナッテ來ルト云フヤウナ影響ヲ受ケ
ラ居リマス、金融ノ途モ十分ニ開ケヌ、所謂信用ノ基礎ガ確實ニナッテ居ラヌ
ト云フ譯デ、或ハ繭ナラバ繭ノ投賣ヲシナケレバナラヌ、生絲ニアッテモ生絲
ノ投賣ヲ時トシテハシナケレバナラヌト云フコトガ起ッテ來ルヤウナ、一ツノ
弱點ヲ持ヲテ居ルノデアリマス、是ガ卽チ此事業ニ關スル不安定ノ一ツノ原因
ヲ爲シテ居ルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、根本ノ策ト致シマシテハ前
刻モ申述ベマシタル如ク、ドウシテモ此工場ノ勞働、而シテ成ルベク大キナ
モノニ組織ヲ變ヘサセルト云フヤウナコトハ、誠ニ今後ニ處スル所以ノ途ト
シテハ必要ナル點デアラウト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ第四ニ御尋
ニナリマシタル、此人造絹絲ノコトデアルノデアリマス、人造絹絲ノコトニ
付キマシテハ、先日來此議場ニ於テ色〓御述ベニナッタ方モアルノデアリマ
ス、如何ニモ近時此ノ人造絹絲ノ事業ガ段々發達ヲシテ參ッテ、隨分人造絹絲
ノ生產額ガ殖エテ參リマスト同時ニ、人造絹絲ニ對スル需要ト云フモノモ擴
マッテ來テ居ルノハ、全ク事實デアリマス、唯私共必シモ此人造絹絲ヲ見テ悲
觀スルニモ及ブマイト思ヒマスル理由ハ、今日ノ狀況デ見マスレバ、免ニ角
人造絹絲トハ天然絹絲ノ方ハ成分ガ違フテ居リマスルガ爲ニ、従テ此用途ガ自
ラ變ヲテ居ル、ソレガ爲ニ現ニ今日ニ至ルマデノ間デハ、此人造絹絲ノ爲ニ天
然絹絲ト云フモノガ其用途ヲ遮ラレルト云フヤウナ狀況ハ無イノデアリマ
ス、人造絹絲モ盛ンニナッテ參リマスルケレドモ、併シ同時ニ天然絹絲モ非常
ニ盛ンニ賣レテ行ク、斯ウ云フヤウニ相伴ッテ居ル狀態デアリマスガ故ニ必
シモ人造絹絲ノ發展ヲ見テ悲觀ヲスルニハ當ラナイコトト考ヘテ居ル次第ナ
ノデアリマス、併ナガラ色〓此工業化學ノ進步ニ伴ヒマシテ、人造絹絲ノ改
良ト云フコトモ時々刻々ニ行ハレテ行クト云フ狀況ニ相成ッテ居リマシテ、是
モ侮ル譯ニイカヌ、品物モ良クナッテ行キ、色〓其艶ナドモ御說ノ通リニ段々
良ク變ヲテ來テ居ルト云フ、今日科學ノ進步ニ伴ヒマシテ、將來ハドノヤウニ
人造絹絲ニ改良ヲ加ヘラレルカモ知ラヌト云フコトハ、我〓モ之ヲ恐レテ掛
ラナケレバナラヌ點デアリマスカラ、此點ニ於キマシテ、我ガ天然絹絲モ益s
改良ト云フコトニ力ヲ加ヘナケレバナラヌ、人造絹絲ヲ矢張リ敵トシテ戰フ
ト云フ意味ニ於テ、ドコマデモ之ヲ改良ヲシテ、人造絹絲ノ爲ニ其販路ヲ侵
サレナイヤウニシナケレバナラヌト云フコトヲ、實ハ主眼ト致シテ、此蠶絲
業ノ經營ト云フコトニ付テハ、注意ヲ拂ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ次第
デアリマスカラシテ、將來ニ於キマシテモ、化學ノ進步ニ伴ッテ、人造絹絲モ
亦更ニ改良ヲ加ヘラレ更ニ發展ヲスルト云フ時期ハ到來ヲスルカモ知ラヌノ
デアリマスガ、併シ同時ニ又我ガ天然絹絲ニ於テモ十分ノ改良ヲ加ヘ、十分
ノ發達ヲ圖ルト云フコトニ致シテ參リマスレバ是ハ必シモ此人造絹絲ノ發
展ヲ恐レルニハ當ラナイト、斯樣ニ私共ハ考ヘテ居ル次第ナノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=73
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074・山田惠一
○山田惠一君 チヨット私ハ此席カラ御尋ヲ致シタイノデアリマス、此檢査法
ノ第一條ニ「主務大臣必要アリト認ムルトキハ公共團體ノ設クル生絲檢査所
ヲシテ前項ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得」ト斯ウ書イテアリマスニ付キマシ
テ、公共〓體ノ檢査所ト云ヒマスト唯今ハ福井ト神戶ノヤウニ考ヘラレルノ
デアリマス、デアリマスガ、是ハ一體ドウ云フ意味デ斯ウ云フコトヲ御書キ
ニナッタノデアリマスカ、御話ガ出來マスナラバ承リタイト思ヒマス
〔政府委員石黑忠篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=74
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075・石黒忠篤
○政府委員(石黑忠篤君) 唯今山田サンカラノ御尋ハ、差當リ政府ガ考ヘテ
居リマスル公共〓體ノ生絲檢査所ハ、神戶ノ市ガ立テテ居リマスル所ノ檢査
所ヲ指定シヤウト云フ考ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス、其他ニ於テハ差當リ何
等考ヘテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=75
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076・山田惠一
○山田惠一君 能ク分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
輸出生絲檢査法案特別委員
侯爵德川義親君服部-三君子爵牧野忠篤君
子爵西大路吉光君大久保利武君男爵伊藤文吉君
添田壽君小塩八郞右衞門君中村圓一郞君
東京市万発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十、郵便年金法案、日程第十一、郵便年金
特別會計法案、第一讀會、安達遞信大臣
郵便年金法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
郵便年金法
第一條郵便年金事業ハ政府之ヲ管掌ス
第二條郵便年金契約ハ政府カ契約者又ハ第三者ノ生存ニ關シテ其ノ者ニ
年金ヲ支拂フヘキコトヲ約シ契約者カ對償トシテ政府ニ掛金ヲ拂込ムヘ
キコトヲ約スルモノトス
年金契約ノ種類年金受取人ノ年齡掛金及年金受取人ノ爲ニ積立ツヘキ金
額ノ計算ノ基礎ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條年金ノ額ハ年金受取人一人ニ付年額二千四百圓以下トス
第四條年金契約ノ申込ヲ承諾シタルトキハ郵便年金證書ヲ年金契約者ニ
交付ス
郵便年金證書ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條年金契約ノ效力ハ掛金ヲ拂込ミタル日ニ始マル
第六條年金受取人カ第三者ナルトキハ其ノ第三者ハ當然年金契約ノ利益
ヲ享受ス
第七條年金契約者ハ年金契約申込ノ際年金受取人ノ死亡又ハ年金契約ノ
解除若ハ變更ノ場合ニ於テ拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ自己又ハ年
金受取人タル第三者ノ爲ニ留保スルコトヲ得
返還ヲ請求シ得ヘキ拂込掛金ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條自己ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲シタルトキハ年金契約者ハ年金
受取人タル第三者ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲スコトヲ得
年金受取人タル第三者ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲シタルトキハ年金契
約者ハ之ヲ變更スルコトヲ得ス
第九條年金又ハ第七條ニ規定スル拂込掛金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ讓渡
スコトヲ得ス
第十條年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ年額二百五
十圓ヲ超ユル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一條年金契約者ハ第三者ヲシテ年金契約者トシテノ權利義務ヲ承繼
セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ年金契約者カ年金受取人ニ非サルトキ
ハ年金受取人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ承繼ハ政府ニ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ政府ニ對抗スルコトヲ
得ス
第十二條年金契約者ハ年金支拂ノ事由發生スル迄ハ年金契約ノ解除ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ效力ヲ生ス
第十三條年金契約者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ年金契約ノ變更ヲ請求スル
コトヲ得
第十四條年金契約者掛金ヲ拂込マスシテ命令ノ定ムル猶豫期間ヲ經過シ
タルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年金契約ヲ既ニ拂込ミタル
掛金ニ依ル掛金拂濟年金契約ニ變更スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ掛金拂濟年金契約ニ變更セラレサル年金契約ハ解除セ
ラレタルモノト看做ス
第十二條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之ヲ準用ス
第十五條第七條ノ規定ニ依リテ拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保シ
タル場合ニ於テハ年金契約者又ハ年金受取人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ拂
込掛金ノ範圍內ニ於テ貸付ヲ請求スルコトヲ得
第十六條年金又ハ第七條ニ規定スル拂込掛金ヲ支拂フヘキ場合ニ於テ其
ノ年金契約又ハ之ニ基キテ爲シタル貸付ニ付政府カ辨濟ヲ受クヘキ金額
アルトキハ支拂金額ヨリ之ヲ控除ス
第十七條當該官署カ命令ノ定ムル所ニ依リ年金又ハ年金契約者若ハ年金
受取人ニ返還スヘキ金額ヲ支拂ヒタルトキハ其ノ支拂ハ之ヲ有效トス
第十八條年金支拂ノ義務及拂込掛金返還ノ義務ハ二年、掛金拂込ノ義務
ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第十九條年金契約者又ハ年金受取人カ郵便年金ニ關スル事項ニ付政府ニ
對シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ簡易生命保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
第二十條前條ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト
看做ス
第二十一條郵便年金ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セス
第二十二條郵便年金ノ事務ニ關スル郵便物ハ命令ノ定ムル所ニ依リ無料
ト爲スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
郵便年金特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
郵便年金特別會計法
第一條郵便年金事業ヲ經營スル爲特別會計ヲ設置シ其ノ歲入ヲ以テ其ノ
歲出ニ充ツ
第二條本會計ニ於テハ掛金、積立金ヨリ生スル收入及附屬雜收入ヲ以テ
其ノ歲入トシ年金、返還金、事業取扱費其ノ他ノ諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第三條本會計ニ於ケル歲入總額ノ歲出總額ニ超過スル金額ハ之ヲ積立ツ
ヘシ
本會計ノ歲計ニ不足アルトキハ積立金ヨリ之ヲ補足スヘシ
第四條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預
入シ又ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公債ヲ以テ之ヲ保有スルコトヲ得
第五條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第六條本會計ノ收入支出及積立金ノ運用ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=78
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079・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 郵便年金法案提出ノ理由ニ付キマシテ說明申上ゲ
やく、今囘制定セムトスル郵便年金ハ、國民ノ既ニ活動力ヲ減耗シ所得能力
ヲ喪失シタル老後ノ生活ヲ安定ナラシメムトスル、保險制度ノ一ツデアリマ
ス、現在幾多ノ社會問題中、人ノ將ニ貧困ナラムトスルヲ救ヒ、人ノ將ニ貧困
ナラムトスルヲ防グ所ノ、所謂防貧救貧ノ制度ハ重要ナル大問題デアリマシ
テ、既ニ貧困ニ陷レル者ヲ救濟スルノ策ヲ講ズルコトガ固ヨリ必要デアリマ
スト共ニ、又一面貧困ニ陷ラザラシムルノ對策、卽チ防貧ノ手段ヲ講ズルコト
モ極メテ緊要ナル事柄ト考ヘマス、幾多ノ保險制度ハ、〓シテ此目的ニ副ハム
ガ爲ニ設ケラレル所ノ最モ進步シタル相互扶助ノ組織デアルコトハ言フマデ
モナイ所デアリマス、而シテ人ノ生命ニ關スル保險制度トシマシテハ、早ク
死亡スル者ニ對シテ死亡保險ガ必要デアリマスト同樣ニ、長期間生存スル者
ニ對シテハ、年金制度ガ最善ノ防貧ノ目的ヲ達シ得ル制度ト考ヘルノデアリ
やす、人生ノ生活中最モ恐ルベキ事ハ、老幼婦女ノ如キ活動セムトスルモ活
動スル能ハズ、殆ド全ク所得能力ナク、而モ家ニ蓄財ナク、又扶養保育スベ
キ父兄ナキ悲慘ナル狀態デアリマス、是等ノ場合ニ備ヘルガ爲ニハ、或ハ養
老保險、貯蓄等、相當ノ效果ヲ納メ得ベキ制度ガアルノデアリマスガ、其養
老保險、貯蓄等ニ依リマシテ蓄積シ得タル金額ハ、四圍ノ境遇ニ依リマシテ、
其元金ヲ費消シ盡シマス危險ガ伴フノデアリマス、ソレデ、何時マデ生クル
カ不明ナル所ノ、所謂豫期シ得ザル生存期間中ノ必要ニ應ジテ、的確ニ準備
スルコトハ不可能デアリマス、然ルニ年金制度ハ每年一定ノ金額ヲ保障スル
モノデアリマスガ故ニ、老幼婦女ノ生活ヲ確實ニ安定スルト云フ目的ノ爲ニ
ハ最モ適切ナルモノデアリマス、從テ他ノ生命保險、貯蓄制度ト、其機能
ヲ異ニシ、是等ト相伴ヲテ國民生活安定ノ社會制度トシテ最モ必要ナルモノ
デアリマス、今囘制定セムトスル郵便年金制度ハ、斯樣ナ目的ノ下ニ、所謂
多數民衆ノ利用ヲ目途トスルコトハ勿論デアリマスガ、又中產階級ノ利用ニ
モ備ヘムトスルモノデアリマス、思フニ、社會ノ健全ナル發達ヲ圖ラムガ爲
ニハ一方ニハ多數民衆ヲシテ自助的向上ニ努メシムルト共ニ、他方ニハ中
產階級ヲシテ能ク其地位ヲ維持シ、下層階級ニ陷ラザラシムルノ方法ヲ講ズ
ルコトガ最モ肝要ナリト信ズルノデアリマス、郵便年金制度ハ是等ノ必要ニ
應ジ、中產階級以下ニ對スル防貧制度トシテ、之ヲ阻止セムトスルモノデア
リマス、由來、我國ニ於テハ家族制度ガ發達イタシテ居リマシテ、老幼ノ扶
助保育等ハ相當ニ行届イテ居リマスガ、經濟組織ノ變化、國民思想ノ變遷ト
時代ノ推移ニ伴ヒマシテ、今後ニ於キマシテ、各人獨立シテ各〓其生活ヲ健實
安固ニスルコトガ一層必要デアルト考ヘルノデアリマス、又會社、工場等ニ
於ケル使用人、被使用人トノ關係ニ於キマシテモ、永年誠實ニ勤續シタル人
ニ對シ、官吏ニ對スル恩給制度ノ如キモノガ漸次行ハルルニ至ルコトト想像
サレルノデアリマスガ、斯ノ如キ場合ニ利用スベキ制度トシテモ、年金制度
ヲ確立シテ置クコトガ甚ダ肝要デアルト信ズルノデアリマス、年金制度ヲ制
定セムトスル趣旨ハ、以上述ベタル通リデアリマスガ、我國ニ於テハ從來、
此種ノ制度ハ未ダ廣ク一般ニ行ハレテ居ラナイノデアリマス、現在、一二ノ
保險會社ニ於テ此事業ヲ經營イタシテ居リマスルガ、其成蹟ハ微々トシテ振
ハナイ狀況デアリマス、其振ハザル所以ハ、我國ニ於テハ一般ニ金利ガ高ク
テ、採算上、經營ガ困難デアルガ爲ニ、營利會社ハ今日マデ進ンデ此制度ノ
普及ニ努メナカッタノデアリマス、從テ一般國民モ此制度ニ關シテ十分ナル理
解ガ無ク、自然、年金制度ノ發達普及ガ遲レタノデアリマス、是等ノ點ニ顧
ミマシテ、今囘之ヲ政府ニ於テ經營イタシマシテ、非營利的ニ、且ツ既設機關
ヲ利用シマシテ經費ヲ節約シ、出來得ルダケ掛金ヲ安クシテ、一般金利トノ
權衡ヲ圖リ、又全國ニ普及セル八千有餘ノ郵便局ヲ取扱機關ト致シマシテ、
利用者ノ便利ヲ圖リ、以テ國民生活ヲ安定シ、延イテハ社會ノ健全ナル發達
ニ貢獻セムトスルモノデアリマス、此制定ニ關シマシテハ、政府部內ニ於テ
ハ古クヨリ、卽チ去ル明治三十三年郵便貯金法制定ノ際、小口保險ト共ニ併
セテ經營セムトスルノ議ガアッタノデアリマス、爾來、調查ノ步ヲ進メマシ
テ、大正五年、簡易生命保險事業開始ノ際ニ於テモ、同樣ノ議ガアッタノデア
リマス、併ナガラ其當時ニ於テハ先ヅ簡易保險ヲ實施シ、相當ノ經驗ヲ經、
實蹟ヲ見タ上、年金事業ヲ始ムルヲ適當ト認メマシテ、引續キ調査シテ今日
ニ及ンダノデアリマス、恰モ本年ハ簡易保險モ創業以來滿十年ニ當リ、十年
滿期ノ養老保險ノ支拂ヲ開始スルコトニ相成ルノデアリマシテ、是ト關聯シ
テ、又社會一般ノ情勢カラ見テ、今日之ヲ實施スルヲ適當ト認ムルノデアリ
〒ゝ、本制度ニ關シマシテハ、ソレ〓〓專門家ノ意見ヲ徵シ、愼重審議シ、
萬遺漏ナキヲ期シタノデアリマスルガ、此事ガ一度、新聞紙上ニ傳ヘラレマ
シテヨリ以來、社會各方面ニ於テモ非常ニ好感ヲ以テ迎ヘラレテ居リマス、
今日マデ現ハレタル意見、輿論カラ見マシテモ、時代ガ確ニ之ヲ要求シテ居
ルト信ズルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマスガ故ニ、愼重御審議ノ上、何
卒御協賛アラムコトヲ希望イタシマス、尙ホ詳細ノ點ニ付キマシテハ、委員
會ニ於テ說明イタスコトニ致シマス、次ニハ郵便年金特別會計法案ニ付キマ
シテ說明ヲ致シマス、本案ハ唯今說明申上ゲマシタ郵便年金法案ト關聯シテ
立案ノ必要ヲ認メタモノデアリマス、申スマデモナク、郵便年金事業ハ年
金契約者カラ拂込マセル掛金ヲ運用利殖イタシマシテ、之ヲ年金又ハ拂込元
金ノ支拂等ニ要スル費用ニ充テルモノデアリマスカラ、性質上、是ガ收入及
支出ハ、一團トシテ獨立ニ計算スルコトガ適當デアリマス、從テ郵便年金事
業ニ關スル歲入及歲出ハ、之ヲ一般會計ト區分シテ、特別會計ヲ設置スルノ
要アルノミナラズ、他ノ特別會計ト併合經理スルコトモ、收支ノ關係ヲ明カ
ナラシムル上ニ於テ、之ヲ避ケルノ必要ガアリマスカラ、本件、郵便年金事
業ハ、其實行機關ヲ同ジウスル簡易生命保險事業ノ會計トモ引離シマシテ、
本案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、速ニ協贊ヲ與ヘ
ラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
郵便年金法案外一件特別委員
侯爵佐佐木行忠君子爵大河內輝耕君藤澤利喜太郞君
小松謙次郞君男爵黑田長和君室田義文君
末延道成君永田仁助君山崎龜吉君
豊市立八重山発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二、舊慣ニ依リ永小作權者カ地租額負擔
ヲ約シタル田畑ノ地租免除ニ關スル法律案、衆議院提出、第一讀會
舊慣ニ依リ永小作權者カ地租額負擔ヲ約シタル田畑ノ地租免除ニ關スル
法律案
右本院提出案及送付候也
大正十五年三月十五日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
民法施行前ヨリ引續キ存スル永小作權ニ付其ノ設定ノ當時舊來ノ慣行ニ依
リテ小作料支拂ノ外當該出畑ノ地租ノ全額ヲ永小作權者ニ於テ負擔スルコ
トヲ約シタル田畑ニ關シ地租條例第十三條ノ二ノ規定ノ適用ニ付テハ命令
ノ定ムル所ニ依リ永小作權者ヲ所有者ト看做ス
明治三十七年法律第十二號第三條ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
附則
本法ハ大正十五年分地租ヨリ之ヲ適用ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ、所得稅法中改正法律案外二十一件ノ特別
委員ニ付託イタシマス
南京市立やま発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三ヨリ第三十四マデ請願、會議
意見書案
姫路津山間鐵道敷設ノ件
兵庫縣揖保郡龍野町長櫻井幸三郞外五十五名呈出
右ノ請願ハ兵庫縣揖保郡龍野町ハ郡ノ首腦地ニシテ夙ニ交通ノ要衝ニ位シ
從テ商工業亦旺盛ニシテ貨客ノ集散夥多ナルニ拘ラス未成線鐵道姫路津山
間鐵道ノ同町ヲ經由セサルハ同地方ノ產業竝交通上甚遺憾ナルニ依リ豫定
線ノ一部ヲ龍野町經由ニ變更セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
田名部大間間鐵道敷設ノ件
靑森縣下北郡田名部町長菊池門五郞外八名呈出
右ノ請願ハ大湊線鐵道田名部驛ヨリ靑森縣下北郡大畑村ヲ經テ同郡大奥村
字大間ニ至ル鐵道ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル林產、水產及鑛產等ノ資源
ヲ開發スルノミナラス海陸交通上竝國防上最重要ト認ムルヲ以テ速ニ之ヲ
敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
萩小郡間鐵道敷設ノ件
山口縣阿武郡萩町長土井市之進外二十八名呈出
右ノ請願ハ山陽線鐵道小郡驛ヨリ分岐シテ山口縣阿武郡萩町ニ達スル鐵道
ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル農產、林產及鑛產等ノ利源ヲ開發シ且山陽、
山陰兩道ノ連絡ニ資スル重要ノ線路ナルニ拘ラス過般財政緊縮ノ影響ヲ蒙
リ大正十九年度起工トナリタルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ之ヲ敷設セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
白河廣田間鐵道敷設ノ件
福島縣西白河郡白河町長丸野實行外百四十二名呈出
右ノ請願ハ東北本線鐵道白河驛ヨリ福島縣岩瀨郡長沼町地方及安積郡福良
村ヲ經テ磐越西線廣田驛ニ達スル鐵道ハ沿線地方ニ於ケル林產及鑛產等ノ
利源ヲ開發スルノミナラス風光明媚ナル猪苗代湖畔ヲ探勝スル旅客ニ利便
ヲ與フル等運輸交通上ニ貢獻スルコト多大ナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
工業用鹽特價供給ニ關スル件
大阪市西淀川區大野町大阪製煉株式會社社長小島甚太郞呈出
右ノ請願ハ大阪製煉株式會社ハ曩ニ硫酸採取後含銅硫化鐵鑛ヨリ銅ト共ニ
製鐵原鑛ヲ產出スル瑞典ラメーン式濕式製煉法ヲ採用セシ以來鐵鑛自給問
題ノ解決ニ資スルノ外有用ナル副產物ヲ得ムトセルニ拘ラス該事業ニ關ク
ヘカラサル用鹽ノ高價ナルカ爲今尙經營難ニ沈淪セルハ甚遺憾ナルヲ以テ
同會社ニ對シ之カ特價供給ノ途ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及
送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
荒川跨線道路新設ノ件
靑森縣靑森市大字柳町辯護士川口榮之進外百十五名呈出
右ノ請願ハ靑森縣靑森市柳町通ヨリ大野村ヲ經テ荒川、高田兩村ニ通スル
荒川道路ハ夙ニ交通上竝產業開發上便益至大ナルニ拘ラス近時鐵道省ハ操
車場設置ノ爲同道路ノ杜塞シ之ニ替フルニ同市浦町ニ通スル新路線ヲ以テ
セムトスルモ斯クテハ市郡兩者ノ不利不便尠カラサルニ依リ荒川道路ニ跨
線道路ヲ新設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
福島地方裁判所白河支部存置ノ件
福島縣西白河郡白河町長丸野實行呈出
右ノ請願ハ福島縣東西白河、岩瀨及石川ノ四郡ハ行政區劃上竝司法事務執
行上共ニ白河區裁判所ノ管轄區域ニ屬スルコト至當ナルニ拘ラス近時郡山
市地方民ハ岩瀨郡及石川郡ノ一部ヲ郡山區裁判所ノ管轄區域トナシ且福島
地方裁判所支部ヲモ設置セムトスルノ陳情請願アリト聞ク斯クテ若白河區
裁判所ノ管轄區域ヲ減少シ又福島地方裁判所白河支部廢止セラレムカ管轄
區域ニ於ケル住民ノ不利不便尠カラサルハ甚遺憾ナルヲ以テ現制ヲ維持セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
柳津野澤間鐵道敷設ノ件
福島縣河沼郡野澤町長齋藤兵鬼千外十五名呈出
右ノ請願ハ福島縣河沼郡柳津村ヨリ磐越西線鐵道野澤驛ニ至ル鐵道ハ交通
連絡上ニ貢獻スルトコロ多大ナルニ依リ之ヲ敷設セラルルヤウ曩ニ屢請願
シ第五十囘帝國議會貴族院ニ於テ採擇セラレ測量亦完了シタルニ拘ラス未
工事ニ著手セラレサルハ甚遺憾ナルヲ以テ速ニ之カ實現ヲ圖ラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
民間航空事業開發ニ關スル件
東京市麴町區有樂町帝國飛行協會會長男爵阪谷芳郞呈出
右ノ請願ハ民間航空事業開發ノ爲帝國領土ノ首要都市間ニ航空路ヲ設置シ
之ヲ鄰邦ノ要地ニ延長シテ國防ニ備ヘ尙航空輸送補助法竝航空機製造補助
法ヲ制定シ以テ斯業奬勵ノ途ヲ講セラルルヤウ曩ニ屢請願シ貴族院ニ於テ
數囘採擇セラレタルニ拘ラス未之ニ對スル何等ノ施設ナキハ斯業發展上洵
ニ遺憾ナルニ依リ速ニ之カ實施ヲ圖ラシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
蠶絲局設置ノ件
東京府豐多摩郡中野町帝國養蠶組合會長男爵藤村義朗呈出
右ノ請願ハ蠶絲業ハ本邦產業ノ發展上竝農村振興上貢獻スルトコロ多大ナ
ルニ拘ラス未斯業行政機關ノ確立セラレサルハ之カ健全ナル進步發達ヲ期
スル所以ニアラサルヲ以テ速ニ養蠶、蠶絲及製絲等ノ諸業ヲ管掌スル蠶絲
局ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
堺郵便局ヲ一等郵便局ト爲スノ件
大阪府堺市堺商業會議所會頭辻本豐三郞呈出
右ノ請願ハ大阪府堺市ハ近時大阪市ノ都市計劃ト相俟テ產業益發展シ市勢
頓ニ向上ヲ來シタルヲ以テ一般行政機關ハ皆時勢ノ進運ニ順應シテ各擴張
セルニ拘ラス獨郵便局ノミ依然二等局ナルハ通信事務激增ノ今日甚遺憾ナ
ルニ依リ堺郵便局ヲ一等郵便局トシ同郵便局長ノ地位ヲ進メラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
滋賀縣東黑田郵便局ニ集配事務開始ノ件
滋賀縣坂田郡東黑田村長高畑友吉呈出
右ノ請願ハ滋賀縣坂田郡東黑田村ハ近時產業ノ發展著シク貨客ノ集散頻繁
ニシテ通信事務夥多ナルニ拘ラス東黑田郵便局ハ集配事務ヲ取扱ハサル爲
村民ノ齊シク不利不便ヲ感スルコト痛切ナルヲ以テ同郵便局ニ集配事務ヲ
開始セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
產業組合中央金庫法中改正ノ件
東京市麴町區有樂町東京府建築組合協會會長西垣恒矩呈出
右ノ請願ハ產業組合ハ自作農創定、職工ニ對スル工場ノ設備及組合員ノ住
宅、土地取得等ニ關シ資金ノ需要愈多大ナルニ拘ラス產業組合中央金庫ハ
長期年賦貸付ヲ爲シ得ス爲ニ其ノ目的ヲ十分ニ遂行スル能ハサルハ產業發
展上甚遺憾ナルニ依リ速ニ該貸付ヲ營ミ得ルヤウ產業組合中央金庫法ヲ改
正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
航路標識設置ニ關スル件
北海道根室郡根室町長本橋貞七呈出
右ノ請願ハ北海道根室國納沙布水道ハ通航船舶逐年增加スルニ拘ラス其ノ
通路狹隘、潮流急激ナルノミナラス夏期海霧ノ襲來アリテ遭難船舶尠カラ
ス爲ニ航海業者ノ不安甚シク延イテ同地方ノ開拓ヲ阻礙スルハ遺憾ナルニ
依リ速ニ該水道ニ適當ナル航路標識ヲ設クルト共ニ落石燈臺ニ霧笛ヲ附設
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
黑糖、白下糖消費稅免除ニ關スル件
沖繩縣那覇市沖繩縣農會長亀井光政呈出
右ノ請願ハ沖繩縣ニ於ケル黑糖及白下糖ハ近時其ノ生產費多額ヲ要スルニ
拘ラス販賣價格ハ常ニ世界的市況ニ左右セラレ爲ニ間接稅タル消費稅モ勢
生產者ノ負擔ノ如ク轉嫁シ加之糖類トシテ其ノ質決シテ高位贅澤ノモノニ
アラサルカ故ニ收支相償セス日ヲ逐フテ斯業者ノ罷弊甚シク本縣經濟上ニ
及ホス打擊ノ偉大ナルハ遺憾トスルトコロナルニ依リ速ニ該消費稅ヲ免除
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
沖繩分蜜糖業保護ニ關スル件
沖繩縣那覇市沖繩縣農會長亀井光政呈出
右ノ請願ハ砂糖ハ沖繩縣唯一ノ重要物產ニシテ分蜜糖業ノ興廢ハ縣經濟ニ
至大ノ影響アルニ拘ラス近時本縣ニ於ケル甘蔗生產者ハ栽培費ノ高價ニ苦
ミ爲ニ一方糖價暴落ニ沈淪セル製糖業者ヲモ現時ノ供給價格以下ヲ以テ之
ヲ救濟スルコト愈難ク兩者ノ前途共ニ憂慮ニ堪ヘサルモノアルハ斯業發展
上遺憾ナルニ依リ分蜜糖原料生產者ニ對シ相當ナル保護奬勵ノ途ヲ講セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
島根縣邑智郡布施村ニ郵便局設置ノ件
島根縣邑智郡布施村長土崎丈三郞呈出
右ノ請願ハ島根縣邑智郡布施村ハ郡ノ中央部ニ位シテ交通ノ要衝ニ當リ郵
便物輻輳スルニ拘ラス同村ニ郵便局ナキ爲村民ノ不便甚シキハ通信上遺憾
ナルヲ以テ速ニ之ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
愈見書案
久利郵便局ニ電信竝電話事務開始ノ件
島根縣通摩郡久利村長森山英作呈出
右ノ請願ハ島根縣邇摩郡久利村ハ近時產業發逹シ從テ商工業者ノ來往繁ク
爲ニ電信竝電話事務夥多ナルニ拘ラス久利郵便局ハ該事務ヲ取扱ハス通信
上ノ不利不便尠カラサルハ甚遺憾トスルトコロナルヲ以テ本年度內ニ於テ
同局ニ電信竝電話事務ヲ開始セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送
付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
島根縣美濃郡二川村ニ無集配郵便局設置ノ件
島根縣美濃郡二川村長河野兼右衞門呈出
右ノ請願ハ島根縣美濃郡二川村ハ地域廣大ニシテ近時產業大ニ發達シ郵便
事務繁多ナルニ拘ラス道川、都茂ノ兩郵便局ヲ距ルコト遠ク住民ノ不便甚
シキハ遺憾ナルヲ以テ速ニ郵便交換所アル同村ニ無集配郵便局ヲ設置セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
渡良瀨川改修ノ件
栃木縣足利市昌平町商定方鍋吉外二百四十六名呈出
右ノ請願ハ渡良瀨川ノ下流ハ昨年其ノ改修工事ヲ完了シタリト雖上流ハ今
尙洪水每ニ氾濫シ沿岸地方ニ於ケル被害甚シク從テ產業ノ隆替ニ影響スル
ハ遺憾ナルヲ以テ栃木縣足利郡山邊村大字田中ヨリ群馬縣山田郡大間間町
ニ至ル區間及栃木縣足利郡菱村大字黑川地内ヨリ桐生川渡良瀨川合流點ニ
至ル區間ニ對シ速ニ改修工事ヲ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
三國、吉永兩郵便局ニ電信竝電話事務開始ノ件
岡山縣和氣郡三國村長竹內安四郞外二名呈出
右ノ請願ハ岡山縣和氣郡三國、神根及英保ノ各村ハ共ニ交通ノ要衡ニ位シ
且近時產業著シク發展シ通信ノ敏活ヲ要スル切ナルニ拘ラス三國及吉永ノ
兩郵便局ハ電信竝電話事務ヲ取扱ハス爲ニ地方民ノ蒙ル不利不便甚シキハ
遺憾ナルヲ以テ速ニ兩局ニ於テ電信竝電話事務ヲ開始セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
海面ニ於ケル行政區域制定ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會長伯爵吉井幸藏呈出
右ノ請願ハ海面ニ於ケル行政管轄ニ付テハ從來ノ慣例ニ依ルノ外別ニ明文
ノ據ルヘキモノナキヲ以テ漁業ノ取締其ノ他ニ關シ屢紛議ヲ釀生シ司法、
行政共ニ甚シキ不便ト困難トニ遭遇スル事實尠カラサルハ遺憾ナルニ依リ
速ニ海面ニ於ケル行政區域ヲ定メラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
也候
大正十五年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 請願委員長ノ報告ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス
桌〓山本真発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 報告ヲ致サセマス
[小林書記官朗讀]
本日豫算委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
大正十四年度歲出總豫算追加案(第一號)、大正十四年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案(特第一號)可決報告書
が市東南불효기술発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明後十八日午前十時ヨリ開會イタシマス、議事日
程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會
午後三時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02619260316&spkNum=87
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