1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月二十三日(火曜日)
午前十時十九分開議
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議事日程 第二十九號 大正十五年三月二十三日
午前十時開議
第一 製鐵業奬勵法改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二 製鐵所特別會計法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 大正九年法律第五十三號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 都市計畫法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 衆議院議員の選擧權に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第八 北海道會員及府縣會議員の選擧權及被選擧權竝市町村會議員の公民權に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第九 土地收用法中郡長の職務を定むる規定の適用に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十 勞働爭議調停法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十一 治安警察法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十二 所得税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 大正九年法律第十二號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 地租條例中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 明治三十七年法律第十二號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 營業税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 營業收益税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 資本利子税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 相續税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 通行税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 酒造税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 酒精及酒精含有飮料税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 麥酒税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 醤油税則廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 自家用醤油税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 織物消費税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 賣藥税法廢止法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 骨牌税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 清涼飮料税法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 大正九年法律第五十一號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 地方税に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 教育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 農業倉庫業法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 市町村義務教育費國庫負擔法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨二十二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可
決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
對支文化事業特別會計法中改正法律案
明治三十八年法律第十七號中改正法律案
東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
商事調停法案
大正十四年法律第三十五號中改正法律案
輸出生絲檢査法案
郵便年金法案
郵便年金特別會計法案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案可決報告書
八木春樹君選擧爭訟ノ件報告書
尾崎元次郞君及中村圓一郞君選擧爭訟ノ件報告書(原〓見城十作)
尾崎元次郞君及中村圓一郞君選擧爭訟ノ件報告書(原〓小澤孝三)
津久居彥七君選舉爭訟ノ件報〓書
鳴海周次郞君選擧爭訟ノ件報告書
平田吉胤君選擧爭訟ノ件報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
製鐵業奬勵法改正法律案
製鐵所特別會計法案
大正九年法律第五十三號中改正法律案
都市計畫法中改正法律案
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法中改正法律案
大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員ノ選擧權ニ關スル法律案
北海道會議員及府縣會議員ノ選擧權及被選擧權竝市町村會議員ノ公民權
ニ關スル法律案
土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ノ適用ニ關スル法律案
勞働爭議調停法案
治安警察法中改正法律案
南京市立永水点発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、製鐵業
獎勵法改正法律案、第二、製鐵所特別會計法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會
製鐵業奬勵法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家逹殿
製鐵業奬勵法
第一條一ノ場所ニ於テ一年三萬五千瓲以上ノ製銑能力及一年三萬五千瓲
以上ノ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ以テ營ム製鐵事業ハ土地收用法第二條ノ
土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業トシ同法ヲ適用ス
第二條主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ前條ニ規定スル設備ヲ新設
シタル製鐵事業者ニハ設備完成ノ年及其ノ翌年ヨリ十五年間其ノ設備ヲ
以テ營ム製鐵事業ニ付營業稅、營業收益稅及所得稅ヲ免除ス
前項ノ製鐵事業者其ノ設備完成前其ノ設備ノ一部ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム
場合ニ於テモ其ノ事業ニ付營業稅、營業收益稅及所得稅ヲ免除ス但シ前
項ノ規定ニ依ル期間內ニ設備ヲ完成セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三條第一條ノ規定ニ該當セサル設備ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム者主務官廳
ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ第一條ノ規定ニ該當スルニ至ルヘキ設備ヲ
增設シタルトキハ其ノ增設シタル設備ヲ以テ營ム製鐵事業ニ付前條ノ規
定ヲ準用ス
第一條ニ規定スル設備ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム者作業上必要ナル場合ニ於
テ主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ其ノ場所ニ於テ製銑又ハ製鋼ノ
設備ヲ增設シタルトキ亦前項ニ同シ
第四條主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ一ノ場所ニ於テ一年五千二
百五十瓲以上ノ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ新設シタル鍛鋼品又ハ鑄鋼品製
造事業者ニ付テハ第二條ノ規定ヲ準用ス
主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ一ノ場所ニ於テ一年二千五百瓲以
上ノ製銑能力又ハ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ新設シタル低燐銑鐵製造事業
者、坩堝製鋼事業者及電氣製鐵事業者ニ付亦前項ニ同シ
第五條第一條乃至前條ニ規定スル製鐵事業ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條製鐵ノ事業ヲ繼續スル者又ハ其ノ事業ヲ繼續スルモノト認ムヘキ
事實アル者ハ前事業者カ本法ニ依ル營業稅營業收益稅及所得稅免除期間
內ニ在ルトキハ其ノ期間ヲ繼承ス
第七條北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ本法ニ依リ營業
稅營業收益稅及所得稅ヲ免除セラレタル製鐵事業者ニ對シ其ノ免除セ
ラレタル部分ニ相當スル資本金額、從業者、營業用ノ工作物若ハ物件、
使用動力又ハ收入ヲ標準トシテ課稅スルコトヲ得ス但シ市町村其ノ他之
ニ準スヘキモノニシテ特別ノ事情ニ基キ主務官廳ノ認可ヲ受ケタル場合
ハ此ノ限ニ在ラス
第八條製鐵事業者左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ其ノ製鐵事業者ニ對シ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
-第一條ニ規定スル設備ヲ以テ製鐵事業ヲ營ムトキ
二主務官廳ノ認可ヲ受ケ一定ノ期間內ニ第一條ニ規定スル設備ヲ完成
スルニ至ルヘキトキ
三二以上ノ製鐵事業者ノ事業ニシテ主務官廳ニ於テ其ノ作業ノ狀況ニ
依リ第一條ニ規定スル製鐵事業ニ準スヘキモノト認メタルトキ
第九條帝國內ニ於テ製造シタル鋼材カ船舶ノ建造又ハ修繕ニ使用セラレ
タル場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ鋼材ノ製造者ニ對シ
奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
第十條詐欺ノ行爲ヲ以テ前二條ノ奬勵金ノ交付ヲ受ケタル者ニ對シテハ
其ノ金額ヲ償還セシム
第八條ノ奬勵金ノ交付ヲ受ケタル者本法、本法ニ基キテ發スル命令又ハ
交付ノ條件ニ違反シタルトキハ其ノ金額ヲ償還セシムルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル償還金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコト
ヲ得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
第十一條第一條ニ規定スル製鐵事業ノ爲必要ナル器具、機械其ノ他ノ材
料ヲ主務官廳ノ認可ヲ受ケ輸入スルトキハ本法施行ノ日ヨリ十五年間命
令ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第十二條本法ニ依リ認可ヲ受ケタル事項ヲ變更セムトスルトキハ主務官
廳ノ認可ヲ受クヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ土地收用法ノ適用ヲ受ケ又ハ輸入稅ノ免除ヲ受クルコト
ヲ得ヘキ製鐵事業ニシテ第一條ノ規定ニ該當セサルモノニ付テハ本法施行
後五年間仍從前ノ例ニ依ル
本法施行ノ際現ニ營業稅及所得稅ノ免除ヲ受クルコトヲ得ヘキ製鐵事業ニ
付テハ仍從前ノ例ニ依ル但シ從前ノ規定ニ於テ開業ノ年又ハ能力增加ノ年
及其ノ翌年ヨリ十年間トアルハ之ヲ開業ノ年又ハ能力增加ノ年及其ノ翌年
ヨリ十五年間トシ營業稅トアルハ營業稅及營業收益稅トス
製鐵所特別會計法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
製鐵所特別會計法
第一條製鐵所ノ事業ヲ經營スル爲從來ノ固定資本及据置運轉資本竝將來
ノ製鐵所益金及本會計ノ負擔ニ屬スル公債又ハ借入金ヲ以テ資本ト爲シ
其ノ歲入ヲ以テ其ノ歲出ニ充テ特別會計ヲ設置ス
第二條製鐵所ニ於テ固定財產ノ擴張及改良ニ要スル經費ヲ支辨スル爲必
要アルトキハ公債ヲ發行シ又ハ借入ヲ爲スコトヲ得但シ公債又ハ借入金
ノ額ニ付テハ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ
製鐵所ニ於テ運轉資金ニ充ツル爲必要アルトキハ最高六千萬圓ヲ限度ト
シ公債ヲ發行シ又ハ借入ヲ爲スコトヲ得
第三條左ニ揭クル國債ハ本會計ノ負擔トス
一製鐵所ノ創設及擴張ニ必要ナル經費ヲ支辨スル爲從來發行シタル公
債及之カ借換ノ爲從來發行シタル公債
二前條ノ規定ニ依ル公債又ハ借入金
三前二號ニ規定スル國債ノ借換ノ爲起債シタル國債
前項ニ規定スル國債ノ償還金、利子、割引料竝發行及償還ニ關スル經費
ノ支出ニ必要ナル金額ハ每年度之ヲ國債整理基金特別會計ニ繰入ルヘシ
第四條本會計ハ之ヲ資本勘定、用品勘定及作業勘定ニ區分ス
第五條資本勘定ハ作業益金繰入金、固定財產減價償却繰入金、公債募集
金借入金、固定財產ノ賣拂代金其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ
固定財產ノ擴張費改良費補充費、本勘定ニ於テ使用スル固定財產ノ維持
修理費、國債償還金其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第六條用品勘定ハ用品收入、工作收入其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入
トシ用品費、工作費、本勘定ニ於テ使用スル固定財產ノ維持修理費減價
償却金其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第七條作業勘定ハ作業上ノ諸收入、固定財產ノ貸付料、預金利子其ノ他
附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ作業上ノ諸費用、總係費、本勘定ニ於テ
使用スル固定財產ノ維持修理費減價償却金、國債ノ利子割引料其ノ他附
屬諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第八條需要ノ增加ニ基ク生產又ハ販賣ノ增加ニ因リテ生シタル豫算ノ不
足ヲ補フ爲用品勘定及作業勘定ノ歲出ニ豫備費ヲ設クヘシ
第九條用品勘定又ハ作業勘定ニ於テ使用スル固定財產ノ減價償却金ハ之
ヲ資本勘定ニ繰入ルヘシ
第十條用品勘定又ハ作業勘定ニ於テ決算上生シタル利益又ハ損失ハ之ヲ
資本勘定ニ移シ整理スヘシ
第十一條資本勘定ニ於テ決算上生シタル利益ハ之ヲ製鐵所益金トシ資本
ニ組入ルヘシ
資本勘定ニ於テ決算上損失ヲ生シタルトキハ之ヲ製鐵所損金トシ資本ヲ
減額スヘシ
第十二條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歳出ノ總豫算ト
共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第十三條本會計ニ於テ支拂上現金ニ不足アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ
最高千萬圓ヲ限度トシ一時借入ヲ爲シ又ハ融通證劵ヲ發行スルコトヲ
得
一時借入金及融通證劵ニ依ル資金ハ當該年度內ニ之ヲ返還スヘシ
第十四條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ
預入ルヘシ
第十五條本會計ノ收入支出及損益計算ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
附則
第十六條本法ハ大正十六年度ヨリ之ヲ施行ス
第十七條作業會計法第一條第一號乃至第六號ヲ左ノ如ク改メ同法第二條
第三項ヲ削ル
第印刷局
第二海軍火藥廠
第三海軍燃料廠
第四專賣局
第十八條明治三十八年法律第十七號第一條第一項中「及製鐵所」、「專賣局
ニ在リテハ」及「製鐵所ニ在リテハ九千八百萬圓」ヲ削ル
第十九條本法ニ依リ本會計ニ於テ借入ヲ爲シ又ハ一時借入ヲ爲ス必要ア
ル場合ニ於テハ當分ノ內當該年度內ニ限リ國庫餘裕金ヲ繰替使用スルコ
トヲ得
第二十條本法施行前ニ於ケル製鐵所特別會計(作業會計法ニ依ルモノ)ニ
屬スル收入及支出ノ未濟額ハ之ヲ本會計ニ繰越スヘシ
第二十一條一般會計ノ歲出豫算ニ於ケル製鐵所擴張費ハ大正十六年度以
降本會計ノ所屬トス
一般會計ノ歲出豫算ニ於ケル製鐵所擴張費及製鐵所設備補足費ニシテ大
正十五年度ヨリ翌年度ニ繰越ヲ要スルモノハ之ヲ本會計ニ移シ使用スル
コトヲ得
前項ノ規定ニ依リ繰越ヲ爲シタル場合ニ於テハ一般會計ハ其ノ繰越額ニ
相當スル金額ヲ本會計ニ繰入ルヘシ
〔國務大臣片岡直温君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=2
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003・片岡直温
○國務大臣(片岡直温君) 唯今日程ニ上リマシタ製鐵業奬勵法改正案ノ大要
ノ理由ヲ申上ゲマス、製鐵業ハ造船、機械其他各種ノ重要產業ノ基礎工業デ
アリマシテ、是ガ盛衰ハ一國產業ノ消長ニ及ボス所大ナルヲ以テ、政府ハ大
正六年ニ於キマシテ製鐵業奬勵法ヲ制定イタシマシテ、本邦製鐵業ノ發達ニ
資スル所尠ナクナカッタト存ジマスルガ、歐洲大戰後世界ノ經濟事情ガ變化イ
タシマシテ、各國競ウテ廉價ナル製品ノ供給ヲ爲シツツアル時ニ當リマシテ
ハ本邦製鐵業モ亦之ニ對應スルノ基礎ヲ確立シナケレバナラヌト存ジマ
ス、仍テ將來製鐵奬勵ノ適用ヲ受ケ得ルモノハ、其規模ノ相當ニ大ニシテ且
ツ銑鐵ノ製造及鋼材ノ製造ニ至ル一貫的作業設備ヲ有シ、最モ經濟的ニ其作
業ヲ爲シ得ルモノヲ以テ其基礎ト致シマスルト共ニ、斯ノ如キ製鐵事業ニ對
シマシテハ、相當ノ奬勵金ヲ交付シテ其保護ヲ十分ニシ、以テ本邦製鐵業ノ
堅實ナル發達ヲ期シタイト存ジマス、是レ本改正案ヲ提出イタシマスル主ナ
ル理由デゴザイマスルガ、其他現行奬勵法ノ適用ヲ受ケツツアルモノニ對シ
マシテモ、其現狀ニ鑑ミマシテ、土地收用法ノ適用竝ニ營業稅所得稅及輸入
稅ノ免除等、現行奬勵法上付與セラレ居ル特典ハ、現行法ヨリモ更ニ五箇年
間延長イタスコトトシタノデゴザイマス、尙ホ巨細ノ點ハ委員會ニ於キマシ
テ御說明ヲ申上グルコトト致シタイト思ヒマス、何卒御審議ノ上速カニ御協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス、第二ノ日程ニ上ボリマシタ、唯今議
題ト相成リマシタ製鐵所特別會計法案ニ付キマシテ、其提案ノ理由ヲ御說明
申上ゲマス、製鐵所ノ事業ヲ最モ適切ニ經營イタシマスルニハ、常ニ斯業ノ
狀勢ニ順應イタシマシテ、必要ニ應ジ其擴張又ハ改良ヲ行ハナケレバナリマ
セヌ、然ルニ現在ノヤウナ作業會計ノ組織デゴザイマシテハ資本ノ擴張改良
ハ一般會計ノ負擔ニ於テ行フコトトナッテ居リマスルカラ、一般財政計畫ノ影
響ヲ蒙リマシテ、其施設ガ斯業ノ發達ニ順應シナイ憾ミガ無イトハ申サレヌ
ノデゴザイマス、玆ニ於キマシテ其設備ノ擴張及改良ハ製鐵所特別會計自身
ノ負擔ニ於テ行フコトト致シマシタ、卽チ原則トシマシテハ、擴張改良ノ資
源ハ其益金ヲ以テ之ニ充當スルコトト致シマシタ、之ガ目的ヲ達シマスル爲
ニハ製鐵所ノ經理ヲ獨立會計ノ組織ト致スコトガ最モ妥當デアルト認メタ
ノデゴザイマス、尙ホ製鐵所ノ事業ハ他ノ作業會計ニ於ケル政府ノ作業ト趣
ヲ異ニ致シマシテ、民間當業者ト全ク同一ノ地位ニ立ッテ、市場ニ其製品ヲ供
給スルモノデゴザイマスカラ、其會計法式ノ如キモ、民間事業會社ニ成ルベ
ク近似セシムルコトト致シマシテ、固定財產ニ付テハ明確ニ原價償却ヲ行ヒ、
過去及將來ノ借入資金ニ對シマシテハ、之ガ元利ノ償還ヲ負擔スルコトトス
ル等ノ方法ニ依リマシテ、損益計算ヲ的確明瞭ニシマシタナラバ、從業者ヲシ
テ其精勵ノ效果ヲ自覺セシムルノ效果アルコトト存ジマス、又延イテ其經理
狀態ヲ良好ナラシムルコトガ出來ルト考ヘルノデゴザイマス、而シテ其益金
ヲ以テ更ニ有利ナル設備ノ擴張ノ改良ヲ遂行スルコトガ出來、又其事業成蹟
ハ彼此比較考量シヤウト致シマスル、民間當業者ノ要望ニモ應ズルコトガ出
來ルト考ヘマス、併ナガラ一擧ニ民間會社ト全然同一ノ方式ニ依リ、純然タ
ル獨立會計ノ制ヲ設ケマスコトハ、多少支障ガアリマスルカラ、成ルベク其
理想ニ近イ制度ト致シマシテ、大正十六年度ヨリ之ヲ實施イタシタイ考ヲ以
チマシテ、本案ヲ提出イタシマシタノデゴザイマス、何卒御審議ノ上協賛ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一第二ノ兩案ハ、關稅定率法中改正法律案
ノ特別委員ニ付託イタシマス
吉市山〓〓東発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、大正九年法律第五十三號中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、黑金內閣拓殖局長
大正九年法律第五十三號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
大正九年法律第五十三號中左ノ通改正ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條第二項中「前項ノ設備ヲ爲ス者」ヲ「前
項ノ設備ヲ以テ製鐵事業ヲ營ム者」三郎人
一ノ場所ニ於テ一年三萬五千瓲以上ノ製銑能力及一年三萬五千瓲以上ノ
製鋼能力ヲ有スル設備ヲ以テ營ム製鐵事業ノ爲必要ナル器具、機械其
ノ他ノ材料ヲ朝鮮總督ノ認可ヲ受ケ朝鮮ニ輸入スルトキハ朝鮮總督ノ定
ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
第八條中「關稅法、」ノ下ニ「關稅定率法、」ヲ加フ
別表輸入稅表中「礦油(關稅定率法別表輸入稅表第一一二號二ノ乙ニ該當ス
ルモノ)」ヲ「礦油(關稅定率法別表輸入稅表第一一二號二ノ甲ニ該當スルモ
ノノ内〇·七三〇ヲ超エ〇·八七五ヲ超エサルモノ)」ニ、「木材(關稅定率法
別表輸入稅表第六一二號一ノ己及癸ニ該當スルモノ)」ヲ「木材(關稅定率法
別表輸入稅表第六一二號一ノ己ノ二ノイ及ロ竝癸ノイニ該當スルモノ)」ニ
改メ「綿羊(生活力ヲ有スルモノ)無稅」ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三條ノ改正規定施行ノ期日ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
參照
關稅法關稅定率法保稅倉庫法及假置場法等ノ朝鮮ニ於ケル特例ニ
關スル法律法律第五十三號大正九年八月(抄)
第一條朝鮮ニ輸入スル物品ニシテ別表ニ揭クルモノニハ別表ニ依リ輸入
稅ヲ課ス
第三條朝鮮ニ於ケル製鐵業者一ノ場所ニ於テ一年三萬五千佛噸以上ノ製
銑能力若ハ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ爲ス爲又ハ一ノ場所ニ於テ一年三萬
五千佛噸以上ノ製銑能力若ハ製鋼能力ヲ增加スル設備ヲ爲ス爲必要ナル
器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキハ朝鮮總督ノ定ムル所ニ
依リ輸入稅ヲ免除ス
前項ノ設備ヲ爲ス者朝鮮總督ノ指定シタル副生物製造ノ設備ヲ爲ス爲必
要ナル器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキ亦前項ニ同シ
第八條朝鮮ニ於テハ關稅法、保稅倉庫法又ハ假置場法中大藏大臣又ハ主
務大臣トアルハ朝鮮總督、市町村役場トアルハ府廳又ハ面事務所、市町
村吏員トアルハ府ノ官吏若ハ吏員又ハ面ノ吏員、國稅徴收法トアルハ國
稅徵收令トス
(別表)
略
〔政府委員黑金泰義君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=5
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006・黒金泰義
○政府委員(黑金泰義君) 唯今議題ニ供サレマシタ大正九年法律第五十三號
中改正法律案ノ大體ヲ說明申上ゲマス、元來關稅定率法竝ニ製鐵事業奬勵法、
之ヲ朝鮮ニ實行イタシマスニ付キマシテハ、申上ゲル迄モナク、朝鮮ニハ自
ラ事情ノ異ナル所ガアリマシタ爲ニ、今日マデ此大正九年法律第五十三號ヲ
以テ、是等法律ノ實施ノ特例ヲ設ケテ居ッタノデゴザイマス、然ルニ今囘是等
ノ法律ガ改正セラレマスニ付テ、自然此五十三號ヲ改良セナケレバナラヌ次
第ニ立至ッタノデゴザイマス、其改正ヲ要シマスル第一ノ要點ハ、今囘ノ關稅
定率法ノ改正ニ伴ヒマシテ、朝鮮ニ於テハ改正ヲ要シナイ、寧ロ現在ノ儘デ
宜シイト云フ事情ガアリマス、併ナガラ其品目ノ表示方法等ニ付キマシテハ
自ラ改正ヲ加ヘナケレバナラヌ、又其關係ガ一ツデゴザイマス、又關稅定率
法ノ改正ニ伴ヒマシテ、之ヲ實行イタシマスルニ付テモ、一部ニ對シテ規定
ノ追加ヲ要スルト云フコトガ一ツゴザイマス、又第三ニハ、製鐵事業ノ奬勵
法ノ改正ニ際シマシテ、關稅ノ方面カラ致シマシテ、朝鮮ニ於ケル製鐵事業
ノ奬勵ニ關シテ是モ內地ノ規定ニ順應イタシマシテ、規定ヲ設クルノ必要
ガアリマス、以上ノ三點ガ此改正法律案ヲ提出イタシマシタ理由デゴザイ
マス、極メテ內容ハ簡單ゴザイマスルガ、ドウゾ御審議ノ上御協贊ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ關稅定率法中改正法律案外二件ノ特別委員
ニ付託イタシマス
华东山嘉水点発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、都市計畫法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、俵內務政務次官
都市計畫法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
都市計畫法中左ノ通改正ス
第八條第一項中「國稅營業稅割」ヲ「營業收益稅割」ニ、「國稅營業稅」ヲ「營業
收益稅」ニ改メ第四號ヲ第五號トシ第三號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
四特別地稅北海道及其ノ市町村ニ在リテハ地價千分ノ四以內、府縣
及其ノ市町村ニ在リテハ地價千分五以內
第八條第一項ノ次ニ左ノ二項ヲ加フ
營業收益稅割ノ賦課ニ付テハ營業收益稅法第十條第二項ノ規定ニ依ル資
本利子稅額ノ控除ヲ爲ササルモノヲ以テ營業收益稅額ト看做ス
特別地稅ノ賦課率ハ當該年度ノ豫算ニ於テ定メタル田畑ニ對スル地租割
ノ賦課率ヲ以テ算定シタル地租割額ノ當該田畑ノ地價ニ對スル比率ヲ超
ユルコトヲ得ス
附則
本法ハ大正十五年度分ヨリ之ヲ適用ス但シ營業收益稅割ニ關スル改正規定
ハ大正十六年度分ヨリ之ヲ適用ス
營業稅法廢止法律ニ依リテ免除セラルル營業稅額ハ大正十五年度分國稅營
業稅割ノ賦課ニ付テハ免除セラレサルモノト看做ス
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=8
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009・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 唯今議題ニナリマシタ都市計畫法中改正法律案ノ提
出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、營業稅率法廢止法律及營業收益稅法ノ制定ニ
伴ヒマシテ、都市計畫特別稅タル國稅營業稅、其營業割ニ關スル規定ノ改正
ヲ致シマスル必要ガアリマス、又地租條例ノ改正ニ依リマシテ、地價二百圓
以下ノ田畑ヲ所有スル者······其所有スル自作農ニ免稅スルノ結果ト致シマシ
テ、都市計畫特別稅ノ地租割ニ減收ヲ見マスカラ、玆ニ特別地稅ヲ設置スル
ノ必要ガアリマスノデアリマス、此意味ヲ以チマシテ茲ニ本案ヲ提出イタシ
マシタノデアリマス、願クハ御審議ノ上協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ所得稅法中改正法律案外二十二件ノ特別委
員ニ付託イタシマス
吉市山市小山南京発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、明治三十三年法律第七十三號衆議院議
員選擧法中改正法律案、第六、大正十四年法律第四十七號衆議院議員選舉法
中改正法律案、第七、衆議院議員ノ選擧權ニ關スル法律案、第八、北海道會
議員及府縣會議員ノ選擧權及被選擧權竝市町村會議員ノ公民權ニ關スル法律
案、第九、土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ノ適用ニ關スル法律案、政
府提出、衆議院送付、第一讀會、俵内務政務次官
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷議三
貴族院議長公爵德川家達殿
明治三十三年法律第七十三號衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第六條左ニ揭クル者ヲ以テ選擧長トス
-一支廳管內又ハ一市一選擧區タル場合ニ於テハ其ノ支廳長又ハ市長
二一選擧區數支廳管內、數市又ハ支廳管內及市ニ涉ル場合ニ於テハ關
係支廳長又ハ市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指定スル者
三其ノ他ノ選擧區ニ於テハ官吏又ハ關係市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指
定スル者
選擧長ハ選擧會ニ關スル事務ヲ擔任ス
第十八條第一項及第二項ヲ削リ同條第三項中「市長」ヲ「市町村長」ニ、「市
內」ヲ「市町村內」ニ改ム
第二十條中「其ノ廳」ヲ「市役所、町村役場」ニ改メ「郡長、」ヲ削ル
第二十一條中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改ム
第二十四條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
第二十五條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改ム
第二十六條削除
第二十七條第二項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改メ同條第三項ヲ削ル
第三十二條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ、「各投票區內」ヲ「其ノ投票區
内」ニ改ム
第五十一條中「郡市役所」ヲ「支廳若ハ市役所」ニ改ム
第五十九條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第六條第一項第三號ノ規定ニ依リ地方長官ノ指定シタル官吏(支廳
長ヲ除ク)選擧長タル場合ニ於テハ地方長官ニ於テ之ヲ保存スヘシ
第六十條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ前條第一項但書ノ規定ハ選擧錄及投票錄ノ保存ニ之ヲ準用ス
第百五條ノ二本法中郡トアルハ從前郡長ノ管轄シタル區域ヲ謂フ
前項ノ規定ハ島ニ之ヲ準用ス
從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域内ニ於テ市ノ設置アリタルトキ又ハ
其ノ區域ノ境界ニ涉リテ市町村ノ境界ノ變更アリタルトキハ其ノ區域モ
亦自ラ變更シタルモノト看做ス
從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域ノ境界ニ涉リテ町村ノ設置アリタル
場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付其ノ町村ノ屬スヘキ區域ハ內務大臣之ヲ定
第百五條ノ三北海道廳支廳長ノ管轄區域ニ變更アルモ選擧區ニ關シテハ
仍從前ノ管轄區域ニ依ル但シ市町村ノ境界ノ變更アリタル爲北海道廳支
廳長ノ管轄區域ニ變更アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依ル選擧ニ關シ本法ノ規定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令
ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
第百五條ノ二ノ規定ヲ除クノ外本法中郡ニ關スル規定ハ支廳長ノ管轄區
域ニ之ヲ適用ス
附則
本法ハ郡長及島司廢止ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正十年法律第六十四號ハ之ヲ廢止ス
大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十四年法律第四十七號衆議院議員選舉法中左ノ通改正ス
第十二條第一項及第二項ヲ削リ同條第三項中「市長」ヲ「市町村長」ニ、「市
內」ヲ「市町村內」ニ改メ同條第四項中「第一項又ハ」及同條第六項中「又ハ第
三項」ヲ削ル
第十三條中「郡市役所」ヲ「市役所」ニ改メ「郡長及」ヲ削ル
第十四條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改ム
第十五條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改メ同條第二項及第三項ヲ
削ル
第十六條第一項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改ム
第十七條第二項中「郡市長」ヲ「市町村長」ニ改メ同條第三項及第四項ヲ
削ル
第四十四條中「郡市長」ヲ「支廳長、市長又ハ地方長官ノ指定シタル官吏」ニ
改ム
第四十五條中「郡市役所」ヲ「支廳、市役所」ニ改ム
第五十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第四十四條ノ規定ニ依リ地方長官ノ指定シタル官吏開票管理者タル
場合ニ於テハ地方長官ニ於テ之ヲ保存スヘシ
第五十四條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ前條但書ノ規定ハ開票錄及投票錄ノ保存ニ之ヲ準用ス
第五十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
左ニ揭クル者ヲ以テ選擧長トス
一一縣又ハ一市一選舉區タル場合ニ於テハ其ノ地方長官又ハ市長
二一選擧區數市又ハ支廳管内及市ニ涉ル場合ニ於テハ關係支廳長又ハ
市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指定スル者
三其ノ他ノ選擧區ニ於テハ官吏又ハ關係市長ノ中ニ就キ地方長官ノ指
定スル者
第五十九條中「縣廳若ハ郡市役所」ヲ「縣廳、支廳若ハ市役所」ニ改ム
第六十四條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第五十八條第一項第三號ノ規定ニ依リ地方長官ノ指定シタル官吏
(支廳長ヲ除ク)選擧長タル場合ニ於テハ地方長官ニ於テ選擧錄及第四十
九條第三項ノ報告ニ關スル書類ヲ保存スヘシ
第百四十四條ノ二本法中郡又ハ島廳管內トアルハ從前郡長又ハ島司ノ管
轄シタル區域ヲ謂フ
從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域內ニ於テ市ノ設置アリタルトキ又ハ
其ノ區域ノ境界ニ涉リテ市町村ノ境界ノ變更アリタルトキハ其ノ區域モ
亦自ラ變更シタルモノト看做ス
從前郡長又ハ島司ノ管轄シタル區域ノ境界ニ涉リテ町村ノ設置アリタル
場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付其ノ町村ノ屬スヘキ區域ハ內務大臣之ヲ定
ム
第百四十四條ノ三北海道廳支廳長ノ管轄區域ニ變更アルモ選擧區ニ關シ
テハ仍從前ノ管轄區域ニ依ル但シ市町村ノ境界ノ變更アリタル爲北海道
廳支廳長ノ管轄區域ニ變更アリタトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依ル選擧ニ關シ本法ノ規定ヲ適用シ難キ事項ニ付テハ勅令
ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百四十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
第百四十四條ノ二ノ規定ヲ除クノ外本法中郡ニ關スル規定ハ支廳長ノ管
轄區域ニ之ヲ適用ス
附則
本法ハ郡長及島司廢止ノ日ヨリ之ヲ施行ス
衆議院議員ノ選擧權ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
本法公布前ノ調製期日ニ依リ調製セラレタル最近ノ衆議院議員選舉人名簿
ニ登錄セラレタル者ハ次ノ總選舉ニ至ル迄ノ間納稅要件ヲ闕クニ至リタル
場合ト雖之カ爲其ノ選擧權ヲ失フコトナシ本法公布後次ノ總選擧ニ至ル迄
ノ間ニ調製セラルル選擧人名簿ニ登錄セラレタル者亦同シ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
北海道會議員及府縣會議員ノ選擧權及被選擧權竝市町村會議員ノ公民權
ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
本法公布前ノ調製期日ニ依リ調製セラレタル最近ノ北海道會議員又ハ府縣
會議員ノ選擧人名簿ニ登錄セラレタル者ハ次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間納稅要
件ヲ闕クニ至リタル場合ト雖之カ爲其ノ選擧權及被選擧權ヲ失フコトナシ
本法公布後次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間ニ調製セラルル選擧人名簿ニ登錄セラ
レタル者亦同シ
本法公布ノ際現ニ北海道會議員、府縣會議員又ハ市町村會議員ノ職ニ在ル
者ハ其ノ任期ヲ終ル迄ノ間被選擧權又ハ公民權ノ納稅要件ヲ關クニ至リタ
ルカ爲其ノ職ヲ失フコトナシ本法公布後次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間ニ其ノ職
ニ在ルニ至リタル者亦同シ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ノ適用ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
土地收用法中郡長ノ職務ヲ定ムル規定ハ町村長ニ之ヲ適用ス
附則
本法ハ郡長廢止ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=11
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012・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 唯今上程ニ相成リマシタ諸法案ハ、衆議院議員選舉
法ノ改正ニ依ルモノデアリマスルガ、極メテ重要ナ法案デアリマスガ、其改
正ノ事由ハ極メテ簡單デアルノデアリマス、便宜上第五、第六ニ上程ナリマ
シタ兩案ヲ一括シテ御說明申上ゲタイノデアリマス、政府ハ大正十五年度ニ
於キマシテ、行政財政ノ整理改善ヲ圖ルノ目的ヲ以テ、郡長ヲ廢スルコトニ
致シマシタノデアリマス、從テ衆議院議員選舉法中改正ヲ爲スノ必要ヲ生ジ
マシタノデ、卽チ郡長廢止ニ牽連イタシマシテ、必要已ムヲ得ザル限度ニ於
テ、現行ノ選擧法竝改正ノ選擧法ニ付テ、選擧長、開票管理者、選擧人名簿、
投票立會人等ニ關シマスル規定ニ改正ヲ加ヘル趣意デアリマスノデアリマ
ス、是ガ本案ヲ提出シマシタ理由ノ大要デアリマス、願ハクハ協賛ヲ與ヘラレ
ムコトヲ希望イタシマス、次ニ第七、第八ノ兩案ニ付キマシテ御說明ヲ申上
ゲマス、今囘ノ稅制整理ニ於キマシテ、地租、所得稅及營業稅ニ關シテ改廢
ヲ加ヘタル結果ト致シマシテ、衆議院議員選擧權竝地方議會議員ノ選擧權被
選擧權及公民權中、納稅條件ヲ缺如スルニ至リマシタガ爲ニ、相當多數ノ失
格者ヲ生ジマスル見込デアリマスノデアリマス、而シテ稅制整理ノ結果ト致
シマシテ、俄ニ多數ノ失格者ノ生ズルト云フコトハ、憲政竝ニ地方行政ノ運
用上ニ於キマシテ、圓滿ヲ缺クノ嫌ヒガアリマスカラ、從テ之ガ適當ナル對
策ヲ講ズルノ必要ガアルノデアリマス、次ニ第九日程ノ土地收用法中郡長ノ
職務ヲ定ムル規定ノ適用ニ關スル法律案ノ理由ヲ說明イタシマス、現行法ニ
依リマスレバ、天災事變ニ際シテ急施ヲ要スル事情ノ爲メ、土地ヲ收用スル
場合ニ於キマシテハ郡市長其事業ノ認定ヲ致シ、土地ヲ使用セシムル規定
ガアリマスノデアリマスルガ、然ルニ今囘郡長ヲ廢シマスルガ爲ニ、是等ノ
事務ハ町村長ヲシテ執行セシムルコトニ致シタイト思フノデアリマス、是ガ
本案ヲ提出イタシマシタ理由デアリマス、願ハクハ何レモ御審議ノ上協贊ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯〓內務政務次官ノ說明セラレマシタ日程第五ヨ
リ第九マデノ法律案ハ府縣制中改正法律案外六件ノ特別委員ニ付託イタシマ
ス
吉本小〓冀発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十、勞働爭議調停法案、第十一、治安警察
法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、若槻内務大臣
勞働爭議調停法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
一小字ハ衆議院ノ修正文、ハ同削除ノ符號ナリ
勞働爭議調停法
第一條左ニ揭クル事業ニ於テ勞働爭議發生シタルトキハ行政官廳ハ當事
者ノ請求ニ依リ調停委員會ヲ開設スルコトヲ得當事者ノ請求ナキ場合ト
雖行政官廳ニ於テ必要アリト認メタルトキ亦同シ
-蒸氣、電氣其ノ他ノ動力ヲ使用スル鐵道、軌道又ハ船舶ニ依リ公衆
ノ需要ニ應スル運輸事業
二公衆ノ用ニ供スル郵便、電信又ハ電話ノ事業
三公衆ノ需要ニ應スル水道、電氣又ハ瓦斯供給ノ事業
四第一號乃至第三號ノ事業ニ電氣ヲ供給スル事業ニシテ其ノ休止カ第
一號乃至第三號ノ事業ノ進行ヲ著シク阻害スルモノ
五其ノ他公衆ノ日常生活ニ直接關係アル事業ニシテ勅令ヲ以テ定ムル
モノ
六陸軍又ハ海軍ノ直營ニ係ル兵器艦船ノ製造修理ノ事業ニシテ勅令ヲ
以テ定ムルモノ
前項ニ揭クル以外ノ事業ニ於テ勞働爭議發生シタルトキハ行政官廳ハ當
事者雙方ノ請求ニ依リ調停委員會ヲ開設スルコトヲ得
第二條調停委員會ヲ開設セムトスルトキハ行政官廳ハ當事者雙方ニ之ヲ
通知スヘシ
第三條調停委員會ハ九人ノ委員ヲ以テ之ヲ組織ス委員ノ中六人ハ勞働爭
議ノ當事者ヲシテ各同數ヲ選定セシメ他ノ三人ハ當事者ノ選定シタル委
員ヲシテ爭議ニ直接利害關係ヲ有セサル者ニ就キ選定セシメ行政官廳之
ヲ囑託ス
前項ノ規定ニ依リ囑託セラレタル委員ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ辭スル
コトヲ得ス
第四條勞働爭議ノ當事者第二條ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタルトキハ三日
內ニ前條第一項ノ規定ニ依リ其ノ選定シタル委員ヲ行政官廳ニ屆出ツル
コトヲ要ス
當事者前項ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲ササルトキハ行政官廳ハ當事者ニ代リ
委員ヲ選定ス此ノ委員ハ當事者ノ選定シタルモノト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル手續終リタルトキハ行政官廳ハ直ニ前條第一項ノ規
定ニ依リ當事者ノ選定シタル委員ニ於テ選定スヘキ委員ノ選定ヲ要求ス
ヘシ此ノ場合ニ於テハ當事者ノ選定シタル委員ハ四日內ニ之ヲ選定シ行
政官廳ニ屆出ツルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル屆出ナキトキハ行政官廳ハ當事者ノ選定シタル委員ニ
代リ前項ノ規定ニ依リ選定スヘキ委員ヲ選定ス此ノ委員ハ當事者ノ選定
シタル委員ニ於テ選定シタルモノト看做ス
第五條委員中缺員ヲ生シタルトキハ前二條ノ手續ニ準シ之ヲ補充ス
第六條委員定リタルトキハ行政官廳ハ直ニ調停委員會ヲ招集シ之ヲ開會
スヘシ
第七條調停委員會ニ議長及其ノ代理者ヲ置ク議長及其ノ代理者ハ當事者
ノ選定ニ係ル委員ニ於テ選定シタル委員ノ互選ニ依リ投票ノ多數ヲ得タ
ル者ヲ以テ之ニ充ツ多數ヲ得タル者ナキトキハ抽籤ニ依ル
第八條調停委員會ハ勞働爭議ノ解決ニ必要ナル調査審理ヲ爲シ其ノ調停
ヲ爲スモノトス
第九條調停委員會ハ開會ノ日ヨリ十五日內ニ調停手續ヲ結了スルコトヲ
要ス
前項ノ期間ハ當事者ノ選定シタル委員全員ノ同意アリタルトキハ之ヲ延
長スルコトヲ得
第十條調停委員會ハ議長又ハ其ノ代理者及各當事者ノ選定シタル委員各
二名以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス
第十一條調停委員會ノ議事ハ本法中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外過半
數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第十二條調停委員會ノ議事ハ之ヲ公開セス
行政官廳ハ調停委員會ノ承認ヲ得テ當該官吏ヲシテ會議ニ臨席セシムル
コトヲ得
第十三條調停委員會ハ調停ニ必要ナル範圍ニ於テ當事者又ハ其ノ代表者
其ノ他利害關係人又ハ參考人ニ對シ出席說明ヲ求メ又ハ說明書類ノ提示
ヲ求ムルコトヲ得
第十四條調停委員會ハ調停ニ必要ナル範圍ニ於テ委員ヲシテ作業所其ノ
他爭議ノ關係場所ニ立入リ、作業若ハ設備ヲ視察シ又ハ關係者ニ質問セ
シムルコトヲ得但シ軍事上祕密ヲ要スル場所ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條委員又ハ委員タリシ者ハ故ナク前二條ノ場合ニ知得シタル祕密
ヲ漏洩スルコトヲ得ス
第十六條第九條ニ規定スル調停手續ノ結了ノ場合ニ於テハ調停委員會ハ
其ノ〓末ヲ行政官廳ニ報告スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ勞働爭議解決スルニ至ラサリシトキハ調停委員會ハ其
ノ報告ニ委員會ノ決議セル爭議調停案及之ニ關スル少數意見ヲ表示スル
コトヲ要ス
第十七條行政官廳ハ前條ノ規定ニ依ル報告ノ要旨ヲ公表スヘシ但シ勞働
爭議解決シタル場合ニ於テ當事者一方ノ選定シタル委員全員カ豫メ反對
ノ意思ヲ表示シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十八條委員及第十三條ニ規定スル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ費用ノ辨
償ヲ受クルコトヲ得
第十九條第一條第一項ニ揭クル事業ニ於ケル勞働爭議ニ關シ第二條ノ規
アル使用者及勞働者竝其ノ屬
定ニ依ル通知アリタルトキハ現ニ其ノ爭議ニ關係ナキ者ハ第九條ニ規定
スル使用者〓體及勞働者團體ノ役員及事務員以外ノ其ノ爭議ニ關係アル使用者
スル調停手續ノ結了ニ至ル迄左ニ揭クル目的ヲ以テ當事者ヲ勸誘スルコ
又ハ勞働者ヲ誘惑若ハ煽動
トヲ得ス
-使用者ヲシテ勞働爭議ニ關シ作業所ヲ閉鎖シ、作業ヲ中止シ、雇傭
關係ヲ破毀シ又ハ勞務繼續ノ申込ヲ拒絕セシムルコト
二勞働者ノ集團ヲシテ勞働爭議ニ關シ勞務ヲ中止シ、作業ノ進行ヲ阻
害シ、雇傭關係ヲ破毀シ又ハ雇傭繼續ノ申込ヲ拒絕セシムルコト
第二十條故ナク第十三條ニ規定スル出席說明又ハ說明書類ノ提示ヲ爲サ
サル者ハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準
用ス
第二十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
一第十三條ノ場合ニ於テ虛僞ノ說明ヲ爲シタル者
二故ナク第十四條ノ規定ニ依ル立入、視察ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケ又ハ質
問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
三第十五條ノ規定ニ違反シタル者
第二十二條第十九條ノ規定ニ違反シタル者ハ三月以下ノ禁鋼又ハ二百圓
以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
治安警察法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ困テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十二日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵徳川家達殿
治安警察法中左ノ通改正ス
第十七條削除
第三十條削除
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=14
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015・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 我國產業組織ノ近代化スルニ從ヒマシテ、勞働
爭議モ亦頓ニ增加イタシタノデアリマス、勞働爭議ノ發生ハ、現時ノ產業界ニ
於テ避クベカラザル自然ノ勢デアリマスルケレドモ、爭議ノ爲ニ國家社會ノ
被リマス損害ハ莫大デアリマシテ、產業界ノ受クル積極的損失ノミニ付テ見
マシテモ、同盟罷工ノ爲ニ失ハレタル勞働日數ハ、大正十年ニ於テ百十七万
三千餘日デアリマス、大正十一年ニ於テハ四十四万七千餘日、大正十二年ニ於
テ四十一万一千餘日、大正十三年ニ於テ六十二万二千餘日ノ多キニ上ボッテ居
ルノデアリマス、勞働爭議ノ發生ハ已ムヲ得ザル理由ニ依ルモノガアルトハ
申シマスケレドモ、或ハ當事者ガ事實ヲ誤認シテ居ルガ爲ニ生ズルコトモア
リマス、或ハ又當事者間ニ意思ノ疏通ヲ缺イタガ爲ニ發生スルコトモアリマ
ス、或ハ又單純ナル感情上ノ行懸リノ爲ニ生ズル場合モ少ナクナイノデアリ
やき、是等ノ場合ニ於キマシテ、事實ノ眞相ヲ調查シテ、無用ノ誤解ヲ去リ、
感情ノ融和ヲ圖リマスルコトハ、卽チ不必要ナル爭鬪ヲ避ケ、又ハ之ヲ速ニ
終了セシメル所以ニナルノデアリマス、斯ノ如クシテ出來ル限リ爭議ノ防止
竝ニ其解決ノ機會ヲ多カラシメマシテ、爭議ニ依ル無用ノ犠牲ヲ除キ、產業
界ノ平和ヲ確保スルニ努メマスコトガ肝要デアルト存ゼラレルノデアリマ
ス、此趣意ニ依リマシテ、勞働爭議ニ關スル調停制度ヲ設ケマスコトハ、
日モ速ナルコトガ宜シカラウト存ジマス、是ガ本法律案ヲ提出シタ次第デア
ルノデアリマスルガ、此法案ニ對シテハ、衆議院ニ於テ修正ヲ加ヘテ可決ヲ
セラレテ居ルノデアリマス、其修正ハ第十九條デアリマシテ、爭議ガ調停ニ
掛リマシタ時ハ、現ニ其爭議ニ關係ノナイ者ハ、爭議調停ノ手續ノ終リマス
マチ、當事者ヲ勸誘シテハナラナイト云フ規定ニナッテ居リマス、此爭議ニ關
係ナキ者ト云フノハ、ドレダケノ人ヲ云フノデアルカト云フノガ疑ガアリマ
シテ、政府デ之ニ答辯シタモノガ、卽チ玆ニ書イテアリマス所ノ、使用者及
勞働者竝ニ其屬スル使用者團體及勞動者團體ノ役員及事務員、是ダケハ關係
アルモノト思ッテ居ルノデアルガ、是以外ノ者ハ關係ガナイカラ、之ニハ關係
シテハナラヌト云フ說明ヲ致シタノデアリマス、然ルニ唯關係ナキ者ト書イ
テアッタノデハ、時ニ依ッテ解釋ヲ異ニシテ爭ガ生ジテモナルマイカラト云フ
コトデ、政府ノ說明シタ通リヲ取ッテ、衆議院デハ法文ノ上ニ修正案トシテ加
ヘラレタノデアリマス、ソレト共ニ當事者ト云フ、當事者ハ如何ナルモノデ
アルカト云フコトニ付テモ亦、衆議院ニ於テ疑問ガアリマシテ、當事者ト云
フノハ其ノ爭議ニ關係アル使用者又ハ勞働者デアルト云フコトヲ答ヘタノデ
アリマスルカラ、之ヲ明カニ揭ゲテ、又勸誘ト云フダケデハ、意味ガ明瞭デナ
イカラト云フコトデ、「誘惑若ハ煽動」斯ウ云フ文字ニ變ヘテ修正ヲ加ヘラレ
タノデアリマス、此修正ハ政府原案ノ趣旨ト全然一致シテ居ルノデアリマス
カラ、政府ニ於テモ固ヨリ異議ハナイノデアリマス、尙ホ治安警察法ノ改正
案ニ付テ、提出ノ理由ヲ申上ゲマスガ、治安警察法第十七條ノ規定ハ、勞働
爭議等ノ場合ニ勸誘煽動等ヲシテハナラヌト云フ條文デアリマスガ、其中暴
行、脅迫ニ關スル部分ハ、現行刑法ニ既ニ規定ガアルノデアリマシテ、此治
安警察法ガアリマセヌデモ罰セラレルコトニ相成ッテ居ルノデアリマス、而
シテ其他ノ部類ニ付テハ、勞働爭議又ハ小作爭議ニ關シマシテ、此治安警察
法中第十七條ノ如キ規定ヲ存シテ置ク必要ガナイノデアリマス、此條文ハ是
マデ屢〓議會ニ於テ問題トナッタ條文デアルノデアリマスルガ、今囘一方ニ於
テハ勞働爭議調停法第十九條、竝ニ此第十九條ニ對スル制裁ヲ設ケマシタ以
上ハ······サウシテ一方ニ刑法ニ於テ暴行脅迫ヲ罰シテ居リマス以上ハ、今日
ハ治安警察法ノ第十七條ノ如キ規定ハ、存シテ置ク必要ガナイト認メマシタ
故ニ、今囘ハ之ヲ廢止セムトスル次第デアリマス、兩法案トモ今日ノ場合極
メテ必要ノ立法デアルト存ジマスガ故ニ、御審議ノ上ニ於テ御協贊アラムコ
トヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十ノ法案ニ付テ質疑ノ通告ガゴザイマスカ
ラ順次發言ヲ許シマス、添田壽一君
〔添田壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=16
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017・添田壽一
○添田壽一君 社會政策竝ニ勞働問題ニ付キマシテ、今マデ幾多遺憾ノ點ガ
アリ、又閑却セラレテ居リマシタニ拘リマセズ、此度政府ガ、或ハ稅制、或
ハ健康保險又ハ郵便年金ノ上ニ於キマシテ、間接的勞働立法ニ力ヲ用井ラレ、
又今日唯今、問題トナッテ居リマスル議案、其他是ト伴フドコロデハナイ、ソ
レノ根本トモナルベキ勞働組合法ヲ、所謂直接勞働立法トシテ御提出ニナリ
マシタコトハ、數年ノ懸案ヲ解決イタシマスル上カラ、私ハ甚ダ喜ブノデア
リマス、然ルニ本日、上程サレテ居リマスル二ツノ案ノ根本トモ云フベキ勞
働組合法ガ未ダ此議場ニ現ハレナイト云フコトハ非常ニ遺憾トスルノデア
リマス、果シテ是ハ前後輕重其宜シキヲ得テ居ルモノデアルカ否ヤト云フコ
トヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、殊ニ組合法ニ依リマシテ、勞働者ノ集
團ガ一ノ人格ヲ有シ、其節制秩序ヲ重ンズルト云フヤウナ邊カラ、初メテ此
所謂勞働爭議調定法案若クハ治安警察法ノ修正ト云フヤウナコトガ意味ヲナ
スト思フノデアリマス、固ヨリ此二ツノ法案ノ速ニ成立ヲ望ムト云フコトニ
於キマシテハ唯〓內務大臣ノ仰セラレタコトニ全然御同意ヲ申上ゲルノデ
アリマスルガ、ソレト共ニ、私ハドウシテモ此所謂根本法トモ云フベキ勞働
組合法案ガ、速ニ此議場ニ現ハレナケレバナラヌト云フコトヲ信ズル者デア
リマス、詰リ組合法ノ必要ナルコトハ、今更私ガ申上ゲルマデモアリマセヌ
所謂資本、勞力ノ集中ニ依リマシテ、互ニ資本勞働ガ集團トナリ、力デナク、
理ニ依ッテ問題ヲ決スルト云フ場合ニ於キマシテハ玆ニ組合ナルモノガ法律
上認メラレナケレバナラヌト云フコトハ當然デアリマス、況ヤ既ニ事實ニ於
テハ、勞働組合ト云フモノハ、御承知ノ通リ數百ヲ以テ實現ヲ致シテ居ル今
日デアリマス、是等ノ實現シテ居ル事實ヲ無視スルト云フコトハ到底出來ナ
イノミナラズ今マデ是等ニ付テデス、國家ノ拂ハレル注意ガ足ラザリシ爲
ニ、是等ハ益〓好マシカラヌ傾向ヲ帶ビルニ至ッタト云フコトハ、皆樣モ既ニ
憂ヘテ御イデニナル所デアルト信ズルノデアリマス、私ハ詰リ此問題ハ既ニ
時期ガ遲レテ居ルト思フノデアリマス、況ヤ勞働團體ノ其執ル所ガ、大イニ
穏健ナル方向ニ向ヒツツアルト云フ今日ガ、私ハ最モ此立法ノ必要ナル時期
デハナイカト思フノデアリマス、或ハ所謂普通選擧法ガ實行サレタ時ガ宜カ
ラウト云フ說ヲ耳ニ致シマスルガ、今日ト形勢ガ異ナル場合ニ於テ、私ハ果
シテ中正ヲ得タル立法ガ出來ルヤ否ヤト云フコトヲ疑ハザルヲ得ナイノデア
リマス、寧ロ今日ニ於テ適當ナ程度ニ於ケル所ノ立法ヲ實現スルニ御努力下
サル方ガ、所謂無イヨリハ勝ルト云フ點カラ申シマシテ、勞働階級ノ爲ニモ
ナルト私ハ信ジマス、又資本家ノ側カラ御考ヘニナリマシテモ、餘程是ハ私
ハ熟考ヲ要スル點ダラウト思フノデアリマス、殊ニ立法府ガ他日非常ニ極端
ナル問題ニ逢著イタシマスルト云フコトハ、私ハ餘程御考ヘニナルベキ事柄
デハナイカラウカト思フノデアリマス、故ニ成ルベク、私ハ速ニ勞働組合法
ガ此議場ニ現ハレルト云フコトヲ切望セザルヲ得ナイノデアリマス、殊ニ此
普選ト云フ問題ヲ實行サレマシタル內閣ト致シマシテハ、ドウシテモ此組合
法ト云フモノハ速ニ成立ヲ御努メ下サレナケレバ、私ハ終始一貫シナイト思
フノデアリマス、政治上ニ普選ヲ御許シニナリマスレバ、ドウシテモ此組合ナ
ルモノヲ法律上御認メニナラナケレバナラヌト思フカラデアリマス、況ヤ經
濟上、我國ハ御承知ノ通リ、天然力、資本力ニ於キマシテハ、迚モ他ノ先進
國ニ比ブルコト遠シト云ハザルヲ得ナイノデアリマスガ、我國ハ幸ヒ勞力ト
云フ點ニ於テハ、大ニ彼等ニ比ベテ富ンデ居ルノデアリマス、然レドモ此勞
力ヲ唯數ガ多イト云フ儘ニ置キ、若クハ之ヲ非常ニ輕ク見、若クハ非常ニ之
ヲ危險視スルト云フガ如キコトデハ、私ハ所謂我國ノ此經濟ノ根本ト云フモ
ノニ於テ、非常ニ錯誤ガアルト考ヘルノデアリマス、我國ハ勞力、勞働ヲ以
テ他ノ天然力若クハ所謂資本ノ不足ニ充當シナケレバナラヌト云フ以上ハ、
餘程此勞働問題ニ重キヲ置カヌケレバナラヌト云フコトハ、申スマデモナイ
ト思フノデアリマス、此問題ノ解決宜シキヲ得マセヌガ爲ニ、既ニ過日モ此壇
上ニ於テ申上ゲマシタ如ク、我ガ所謂政治上經濟上ノ問題ガ解決セザル前ニ、
社會問題ト云フモノニ惱マサルルト云フコトニナリマシタナラバ、私ハ甚ダ
憂フベキ狀態ヲ誘致スルト云フコトヲ憂フル者デアリマス、幸ニ我國ハ他ノ
先進國トハ是等ノ點ニ於キマシテハ大ニ異ナッテ居リマス、彼等ガ過チマシタ
ル點、彼等ガ所謂困難ニ陷リマシタ、其覆轍ヲ避ケルト云フコトノ出來ル地位
ニ立ッテ居ルノデアリマスガ故ニ、我等ハ須ラ此固有ノ見地カラ、速ニ此問題
ヲ解決シタイト思フノデアリマス、幾分事柄ガ輕イヤウデアリマスケレドモ、
私ハ更ニ此對外關係カラ組合法ノ必要ヲ申上ゲザルヲ得ナイノデアリマス、
詰リ勞力、勞働ノ能率ト云フコトガ總テ勝敗ヲ決スル所以デアリマス、能率
ノ缺ケタル儘ニ勞働問題ヲ御置キニナリ、能率ノ點ニ富ンデ居ル國ト經濟上
ノ競爭ヲスルコトノ出來ヌト云フコトハ、今日我國ガ陷ッテ居リマスル此輸入
超過ノ狀態ト云フモノデ明白デアル、輸入超過ト云フヤウナコトハ、色〓ナ
原因ガアリマセウケレドモ、我國ノ品物ガ粗惡ニシテ且ツ價ガ高イト云フニ
アルコトヲ、過日申上ゲタノデアリマス、此粗末ナト云フ點ニハ、卽チ勞働
ノ能率ト云フ問題ガ大ニ與ッテ力ガアリマス、故ニ對外競爭ト云フ上カラモ必
要デアリマスガ、幾分、事柄ガ更ニ輕クハゴザイマスルケレドモ、國際會議
ハ如何デアル、常ニ國際會議ニ於テ、我ガ勞働代表者ガ其資格如何ニ付テ問
題ヲ喚起シタト云フニ至リマシテハ、私ハ實ニ國家ノ體面上憂フベキコトト
思フノデアリマス、寧ロ左程マデニ、內ニ勞働問題ノ解決ガ進ンデ居ラヌナ
ラバ、寧ロ國際會議等ニ勞働代表ヲ御出シ遊バサヌ方ガ宜カラウト思フ位デ
アリマス、最近ノ勞働會議ニ於テ、印度ノ代表カラ非常ニ此點ニ付テ我ガ代
表ハ究追サレタト云フコトノ事實ハ、是ハ內務當局ニ於テモ、又外務當局ニ
於テモ、能ク御承知ノコトト思フノデアリマス、殆ド國家ノ恥辱ト申サナケ
レバナラヌ場面ヲ演出シタト云フコトヲ、遙ニ耳ニ致シテ居ルノデアリマ
ス、故ニ私ハ玆ニ内務大臣ニ御伺ヒ致シタイノハ、政府ハ此處ニアリマスル
二ツノ案ノミヲ通過セシメテ滿足ナサルノデアリマスカ、未ダ衆議院ニアル
所ノ勞働組合法案ナルモノハ、其進行ニ付テ如何ナル程度ニアルノデアリマ
スカ、而シテ今マデ實ニ驚クベキ間、此問題ニ付テ、卽チ組合法ノ調査ニ付テ
多クノ時日ガ費サレテ居ルノデアリマスガ、其原因ハ何處ニアルノデアリマ
スカ、殊ニ斯ノ如キ重大ナルモノヲ、會期切迫ノ今日、貴族院ニ提出サレテ、
或ハ其審議ト云フ事柄ガ、時日ノ上カラ出來ナイヤウナ、殆ド窮迫シタル所
ノ地位ニ貴族院ヲ御置キニナルト云フコトハ私ハ貴族院ノ爲ニ甚ダ宜シキ
ヲ得タモノデナイト確信スルモノデアリマス、故ニ政府ハ、此後ニ殘ヲテ居リ
マスル組合法ノ提出ニ付テハ、今後如何ナル態度ヲ御執リニナルノデアリマ
スカ、其成立ハ固ヨリ御希望デアラウト思フノデアリマスガ、ソレニ付テ如
何ナル手段ニ御出デニナルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニハ
政府ノ提出セラレマシタ各種ノ社會政策、之ニ向ッテハ政府ニ私ハ大イニ感謝
シテ差支ナイト思ヒマスガ、其以外ニ尙ホ勞働者ノ住宅問題、或ハ日用品市
場問題、或ハ小額金融機關問題、ナカ〓〓今後社會政策ヲ完全ニ行ハウト云
フニハ、幾多ノ懸案ガアルト思フノデアリマスガ、最モ內外ニ對スル關係上
カラ御提出ニナラナケレバナラヌト思ヒマスルノハ、工場法ノ改正デアリマ
ス、是ハ卽チ國際關係ヨリシテ必要デアリマス、又今日、實際工場法ノ行ハ
レテ居ル有樣ハ工場監督官ト云フ機關ニ依ッテ、御承知デモゴザイマセウ
ガ、實ニ憂フベキモノガアリマス、就中女工ノ問題、此女工ノ問題ダケデモ、
實ハ此席ニ於テ申上ゲルヲ憚ルヤウナ狀態ガ、間ニハ存在シテ居ルノデアリ
マス、故ニ此工場法ノ改正ト云フコトハ、實ニ急ヲ要スルノデアリマス、之
ニ付テモ何レノ時期ニ於テ御實施ニナリマスカ、又我國ノ所謂、是ハ美風ト
申上ゲマシテ宜シイ所ノ、年老イタル者ヲ尊敬スルト云フ上カラ申シマシテ
モ養老保險ト云フ問題ハ、最モ私ハ急ヲ要スルト思ヒマス、又失業保險モ
同樣デアリマス、今日ハ政府ノ、殊ニ內務大臣ノ御盡力ニ依リマシテ、各地
方ニ事業ヲ興スヤウナコトニ依ッテ、一時的失業問題ハ救濟サレツツアルノデ
アリマスケレドモ、左樣ナ一時的ノ問題デハ決シテナイト云フコトハ、內務
大臣モ十分ニ御承知ノコトト思フノデアリマス、失業保險ト云フ問題ハ愼
重ニ考ヘナケレバナラヌト同時ニ、最早差迫ノタル問題ト信ズルノデアリマ
ス、然ルニ私ハ實ニ遺憾ト思ヒマスルノハ、失業統計、殊ニ柳澤伯ガ御イデ
ニナリマスレバ御同感デアラセラレルト思ヒマスガ、勞働統計ニ至ッテハ、實
ニ他ノ先進國ニ較ベテ恥カシイ程ノ狀態デアリマス、失業者ノ數ガ分ラヌト
云フノデ、最近ニ失業統計ト云フモノヲ俄ニ御始メニナッタヤウナコトハ、私
ハ社會政策ニ重キヲ置カレルト云フ內閣トシテハ、大ニ御勘考ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス、故ニ先ヅ他ノ問題ハ別ト致シマシテ、工場法ノ改正實施、
養老失業保險ノ制定ニ付テ、政府ノ御見込如何ト云フコトヲ伺ヒタイノデア
リマス、第三ニハ、斯ノ如ク行政立法共ニ勞働問題ガ重キヲ有スルニ至リマ
シタ以上ハ、勞働行政機關ト云フモノハ餘程有力ニナリ、一層統一セラレナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス、然ルニ今日ノ社會局ト云フ機關ヲ以テ、
政府ハ御滿足ニナルノデアリマスカ、此機關ノ統一ヲ缺キマスル所カラ生ズ
ル幾多ノ不便ハ、私ガ申上ゲズトモ既ニ十分御了解ノコトト思ヒマスルガ故
ニ、此機關ノ統一充實ニ付テ如何ナル御考ヲ有セラルルカト云フコトヲ伺ヒ
タイノデアリマス、サウシテ私ガ最後ニ申上ゲテ置キタイノハ、斯ノ如キ立
法ヲ〓究イタシマスル場合ニ於テ、贊成スル御方モ、反對スル御方モ、外國ノ
例ニノミ依ラレルト云フコトハ、私ハ甚ダ遺憾ト感ズルノデアリマス、我國
ノ勞働問題ハ、我國固有ノ國民性ニ基イテ、固有ノ歷史ニ基イテ、固有ノ考
ヲ以テ解決スベキモノデアルト云フコトダケヲ附加ヘテ置クノデアリマス、
此二ツノ法案ニハ贊成イタシマスルガ、ドウシテモ根本トモナルベキ組合法
ニ付テノ御考ヲ伺ヒマセヌケレバ、此案ニ對スル考ヲ確定スルニ不便デアリ
マスノデ、玆ニ御尋ヲ致ス次第デアリマス、實ハ今日ハ申ス迄モナク、我國
ノ此總テノ問題ガ、所謂根本ニ觸レナイノデアリマス、ソレガ爲ニ私ハ政
治上、經濟上、社會上、實ニ憂フベキ時代デアルト思フノデアリマスガ故ニ、
其憂ヲ除ク上ニ於テ、內閣ノ責任ハ至重至大ト考ヘテ居リマス、ドウゾ責任
ヲ有スル所ノ御答辯ヲ賜ハラムコトヲ御願ヒ致シマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=17
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018・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 勞働組合法ハ目下衆議院ノ特別委員會ニ於テ繋
屬中デアリマス、政府ハ成ルベク速ニ委員會ヲ終ラレ、尙ホ衆議院ノ院議ヲ
決メラレテ、當院ニ送ラレムコトヲ、切ニ祈フテ居ル次第デアリマス、又之ガ爲
ニ政府トシテ爲スベキ努力ハ十分ニ盡ス考デアリマス、私ハ間モナク衆議院
ハ組合法ヲ可決セラレルコトト信ジテ居ルノデアリマスガ、假ニ衆議院ニ於
テ此組合法ガ會期ノ終ル迄ニ議決セラレヌト云フヤウナコトガアリト致シマ
スナラバ、政府ハ次期ノ議會ニ提出シテ、必ズ之ガ成立ヲ期シタノデアリマ
ス、私ハ今期ノ議會ニ於テ之ガ成立ヲ期待ヲ致シ、又之ヲ祈フテ居ルモノデ
アリマス、而シテ假ニソレガ出來ヌト致シマシテ、勞働爭議調停法トノ關係
ハ如何相成ルカト云ヒマスト、勞働組合法、是モ勞働立法デアリマスガ、勞
働爭議調停法ハ、組合法ト全ク離レテ施行シ得ラレル一ツノ勞働立法デアル
ノデアリマス、元來、勞働爭議調停法ハ、公益ノ關係ノアルヤウナ事業ニ付
テ爭議ノ起リマシタトキニ、其爭議ガ永ク續キマスト云フト、資本家勞働者
ガ困ルバカリデアリマセヌデ、第三者タル公衆ガ大變ニ困ルノデアリマス、
例ヘバ電氣事業ニ付テ爭議ガ起ル、瓦斯ノ事業ニ付テ爭議ガ起ル、電車ノ事
業ニ付テ爭議ガ起ル、サウシマスト一番困ル者ハ誰デアルカト云フト、瓦斯
ヲ使用スル者ハ臺所ノ仕事ガ直チニ出來ナクナッテ來ルノデアリマス、電氣ヲ
使用スル者ハ明リガ直チニ無クナッテ來ルノデアリマス、電車ニ乘ルコトガ出
來ヌ、ト云フヤウナ工合ニ、公益ニ關係シタ事業ニ付テ爭議ガ起リマスト、
資本家勞働者共ニ困リマスケレドモ、一番直接ニ困ル者ハ公衆デアルノデア
リマス、其公衆ノ利益ヲ保護スル爲ニ、今囘玆ニ勞働爭議ノ調停法ヲ制定シ
テ、成ルベク速ニ爭議ガ解決セラルルコトヲ圖ルノデアリマスカラ、此法律
ハ勞働組合法ヲ離レテモ、固ヨリ施行ガ出來ルノミナラズ、又今日ハ一日モ
速ニ斯樣ナ法律ハ制定セラレテ置カナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、
併シ唯今、添田君ノ御質問ニナリマシタ勞働組合法モ、誠ニ大切ナル法律デ
アルノデアリマスカラ、政府ハ衆議院ニ於ケル可決ヲ成ルベク速ニ進行セラ
ルルヤウニ、政府亦努力スル考デアリマス、不幸ニシテ若モ今期議會ニ於テ
其成立ヲ見ルコトガ出來マセヌケレバ、次期ノ議會ニ提出シテ、必ズ之ガ成
立ヲ期シタイト思フノデアリマス、第二ノ御質問デアリマス所ノ、勞働者ノ
生活狀態ヲ改善スルガ爲ニ、住居改善ノ問題トカ、日用市場ノ問題トカ、是
等ノ事モ、ドウシテモ早晩ハ實行セヌケレバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、殊ニ添田君ノ御質問ノ重モナル點デアリマス所ノ、工場法ノ施行、此工
場法ノ改正ハ既ニ出來テ居ルノデアリマス、之ニ依ッテ產前產後ノ婦人ノ關
係其他幼年工ノ就職スル年齡ノ關係、其他餘程善ク改良セラレルコトニナッ
テ居ルノデアリマスガ、施行規則ガ出來マセヌト云フト、之ヲ實施スルコト
ガ出來ヌノデアリマス、其施行命令ニハ罰則ノ規定ガアル爲ニ、之ヲ樞密院
ニ御諮詢ニナッテカラデナイト、制定セラレルコトガ出來マセヌノデ、目下施
行令ハ樞密院ノ議ニ繫カッテ居ルノデアリマス、樞密院ヲ通過イタシマシタナ
ラバ、政府ハ成ルベク速ニ改正工場法ヲ實行イタシタイト考ヘテ居ルノデア
リマス、失業保險ノコトモ、是モ御尤デアリマス、御非難ニナリマス通リ、
失業統計ガ無カッタノデアリマスソレ故ニ加藤內閣ガ成立スルト、直チニ第
一ニ失業ノ統計ナルモノヲ拵ヘルト云フコトニ努メマシタ、前期ノ議會ニ於
テ繼續費トシテ豫算ノ御協賛ヲ受ケタノデアリマスカラ、目下失業統計ノ調
査ヲ致シテ居ルノデアリマス、失業保險ハ其統計ガ出來レバ直チニ實行スル
トハ申上ゲマセヌ、財政ノ狀況竝ニ經濟界ノ事情ニ鑑ミマシテ、適當ナ場合
ガ到來イタシマシタナラバ、失業保險法ノ制定モ致シタイト考ヘルノデアリ
やべ、養老年金ノコトニ付テモ御尋ネニナリマシタガ、養老年金ノコトモ日
本ニ於テ早晩ハ解決シナケレバナラヌカモ知レマセヌ、是ハ誠ニ結構ナコト
デアリマス、併シ是モ亦財政ノ關係ガ最モ重大ナ關係ノアリマス問題デアリ
マスガ故ニ、之ニ鑑ミテ適當ニ考慮セヌケレバナラヌト思ウテ居ルノデアリ
マス、最後ノ御質問ハ、勞働行政機關ノ統一ト云フコトデアリマス、是モ大切
ナ事デアリマス、今マデハ社會局ノ事業ハ調査ノヤウナコトガ多カッタノデ
アリマスガ、愈〓玆ニ健康保險法ヲ實施スルト云フコトニナルト、餘程ナ仕事
ガ殖エテ來ルノデアリマス、其上ニ追〓ニハ住居問題、或ハ唯今申上ゲルヤ
ウナ失業保險ノ事、其他ノ事ガ段々行ハルルヤウニナリマスレバ、此勞働行
政機關ノ問題ニ付テモ、餘程考慮シナケレバナラヌコトデアルト存ジマスカ
ラ、此事ハ篤ト〓究ヲ致ス考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=18
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019・添田壽一
○添田壽一君 私ハ今日ノ場合、此以上各位ヲ煩ハスコトハ致シマセヌ、又
最後ニ總理大臣兼內務大臣ヨリ、勞働組合法ハ若シ不幸ニシテ此會期ニ於テ
成立ヲ見ナイナラバ、次ノ會期ニト云フ御言葉ヲ承リマシテ、私ハ十分ニ滿
足ハ致シマセヌケレドモ、此御言葉デ慰ムル所ガアルノデアリマス、又最後
ニ希望トシテ申上ゲテ置キマスコトハ、呉〓モ斯ノ如キ重大問題ハ成ルベク
議會ノ劈頭ニ御提出ニナッテ、又貴族院ニ現ハレルコトモ會期餘ス所數日ナド
ト云フヤウナ窮迫ナコトニナラナイヤウニ、御盡力願ヒタイト云フコトヲ附
加ヘテ置キマス
〔男爵阪谷芳郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ハドウ云フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=20
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021・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 質問:発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通〓ガマダゴザイマスカラ少々御待チヲ願ヒタウ
ゴザイマス、松本勝太郎君
〔松本勝太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=22
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023・松本勝太郎
○松本勝太郞君 私ハ本問題ニ付キマシテ少シ御尋ネシタイト考ヘテ居リマ
シタガ、唯今、添田博士ヨリモ御質問モアリマシタ、此會期切迫ノ折柄、私
ハ此演壇デ駄辯ヲ費シマスルコトヲ避ケマシテ、唯一言茲ニハ極ク簡單ニ、極
メテ重要ナリト思フコトヲ政府ニ御尋ネシタイト思フノデアリマス、其要點
ハ極メテ簡單デアリマスル、思想界現下ノ情勢ニ鑑ミ、政府ハ政府主宰監督
ノ下ニ、官民合同ノ、而モ廣キ範圍ニ於テ思想變遷ニ伴フ所ノ研究機關ヲ設
置セラルルノ御意思ハナイカト云フコトヲ御尋ネスルノデアリマス、熟〓現下
思想界ノ變遷スル所ノ情勢ヲ考、ヘテ見マスルノニ、實ニ寒心ニ堪ヘヌ所ガア
ルノデアリマス、政府當局ニ於カレテモ玆ニ鑑ミマシテ、本年議會ニ御提出
ニナッタ所ノ各種ノ法律案ヲ見マシテモ、此思想ニ處スル上ニ於キマシテ、之
ヲ改善スルト云フコトノ加味セラレテ居ルト云フコトハ十分了承スルコト
ガ出來ルノデアリマス、實ニ其點ニ付テ思ヲ寄セラレテ居ルト云フコトハ
各種ノ法律案ニ依ッテ十分想察スルニ餘リアル次第デアリマスル、玆ニ於テ
カ、此現下ノ思想問題ハ研究機關ヲ設ケマシテ、廣ク官民合同ノ知識ヲ集
メマシテ、此機關ヲ設ケルト云フコトハ、最モ刻下ノ急務デハナイカト考ヘ
ルノデアリマス、又政府ガ施設セラルル上ニ於キマシテモ、非常ナル御便宜
デハナイカト私カニ考ヘルノデアリマス、政府ニ於カセラレマシテモ、本年
ノ法律案ヲ以テ決シテ御滿足ニナッテ居ルモノトハ考ヘマセヌ、將來ニ於テモ
御研究ガ進ンデ法律案トナッテ、此思想ノ問題ニ付キマシテモ、今後御提案ニ
ナルコトトハ考ヘマスルガ、最モ此研究機關ヲ備ヘルト云フコトハ、刻下ノ
急務デハナイカト考ヘラレマスルガ故ニ、敢テ政府當局ノ御考慮ヲ煩ハシ、
總理大臣ノ之ニ對スル御答辯ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、誠ニ簡單デ
アリマスルケレドモ、重大ナルガ故ニ、此會期切迫ノ折柄敢テ御尋ネ致スヤ
ウナ次第デアリマス
〔國務大臣宇垣一成君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=23
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024・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 唯今、松本君カラ御質問デゴザイマシタガ、總理
不在デアリマスカラ、今日マデ政府ノ考究シテ居リマス所ノ景況ダケヲ御話
申上ゲテ置キマス、政府ト致シマシテハ、此社會ノ思想ヲ純正ニ導クト云フ
コトニ付テハ常ニ配慮モ致シ、又出來ルダケノ施設モ致シテ居リマスガ、
併シ唯今御質問ニナリマシタヤウナ機關ノ設置ト云フコトニ付テハ、私共未
ダ其議ニ與カッテ居ラヌト云フヤウナ次第デゴザイマス、併シ御希望ノ點モア
リマシタコトデアリマスカラ、今後尙ホ研究ハ致シテ見ル考デ居リマス、取
敢ズ是ダケノコトヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ質疑ノ通告者ハ終リマシタカラ、阪谷男爵
ニ發言ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=25
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026・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 簡單デゴザイマス、治安警察法ノ改正ハ頗ル重大ナル間
題ト思ヒマス、其理由書ニ、社會現下ノ狀態ニ照シ之ヲ削除スルヲ適當ナリ
ト認ム、ト書イテアリマス、社會現下ノ狀態ハ頗ル險惡ノヤウニ思ハレルノ
デアリマスガ、此社會現下ノ狀態ニ照スト云フコトハ非常ニ此社會ノ有樣
ガ進步シタト云フ意味ナノデアリマセウカ、此社會現下ノ狀態ニ照シ之ヲ削
除スルト云フ意味ガ能ク分リマセヌ、一應伺ヒマス
〔政府委員長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=26
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027・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 唯今ノ阪谷男爵ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲテ置キ
W 、 、治安警察法ノ第十七條ハ、御承知ノ通リ、此勞働爭議ニ關係イタシマ
シタ特別ノ取締法規デ、此點ニ付テ刑法ノ例外規定ヲ爲シテ居ルノデゴザイ
マスルガ、今日ノ現下ノ狀態カラ見マシテ、治安警察法十七條ニ規定シテ居
リマスル、暴行脅迫等ヲ用井マシテ同盟罷業ヲ起スモノ、或ハ公然誹毀スル
ト云フヤウナコトハ、勞働爭議ナルガ故ニ特別ノ刑罰ノ法規ニ依ッテ處罰イ
タシマセヌデモ、他ノ刑罰法令、卽チ刑法其他ノ刑罰法令ニ依ッテ處罰イタシ
マシテモ、其目的ヲ達スルト考ヘテ居ルノデゴザイマシテ、其暴行脅迫、公
然誹毀等ノ、單純ナル煽動誘惑ト云フコトニ付キマシテハ公益事業ニ付テ
ノ勞働爭議調停法第十九條ノ規定以外ノ點ニ付キマシテハ、之ヲ廢止イタシ
テモ差支ナイト云フ考デゴザイマス、卽チ此唯今ノ狀態カラ申シマシテ、所
謂思想界ノ險惡トカ或ハ此治安維持法ト云フヤウナコトニ觸レマスル問題
ハ此唯今ノ治安警察法ノ十七條トハ殆ド交渉ガアリマセヌノデ、治安警察
法十七條ハ單純ナル勞働爭議及小作爭議ニ關スル規定デゴザイマスカラ、是
等ノ問題ハ特ニ勞働爭議ナルガ故ニ、特別法ヲ以テ處罰イタシマセヌデモ、
現下ノ情勢ニ鑑ミマシテ足レリト云フ考ヲ以チマシテ、之ヲ廢スト云フ考デ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=27
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028・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 勞働爭議調停法ト······今總理大臣ノ說明モアリマシタ通
リニ、勞働爭議ノ一部ニシカ適用ガ出來ナイ、故ニ勞働爭議調停法ト治安警
察法トガ、全然相殺スルト云フ譯ニハイカナイ、而シテ社會現下ノ狀態ニ照
シト云フコトハ、政府ハ險惡ナリト現下ノ社會ヲ見テ居ルノカ、此意味デ見
ルト云フト泰平無事ト云フヤウニ本員ハ讀メル、社會現下ノ狀態ニ照シ之ヲ
削除スルコトヲ適當ト認ム、社會現下ノ狀態ノ見方ヲ本員ハ聽クノデアリマ
ス
〔政府委員長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=28
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029・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 重ネテ御答ヲ申上ゲマスルガ、唯今、思想界其
他社會問題等ニ付キマシテ、決シテ平靜デアルトハ考ヘテ居リマセヌ、併ナ
ガラ先程モ申上ゲマシタヤウニ、治安警察法十七條ハ單純ナル勞働爭議ニ關
スル刑罰法令デゴザイマスルガ故ニ、勞働爭議ト致シマシテハ、今日ハ餘程
鎭靜モ致シテ居リマスルシ、尙又我國ニ現在シテ居リマスル所ノ勞働團體ノ
思想ハ、大正十三年以來、漸次穩健ニ進ンデ參リマシテ、大戰後ノ狀況トハ
餘程趣ヲ異ニシテ居ルヤウニ考ヘマス、又社會ノ一部ニハ日本ノ國體ト相
容レナイヤウナ、甚ダ忌ハシイ思想ノ現存シテ居ルコトハ事實デゴザイマス
ルケレドモ、是ハ治安維持法其他ノ法令ノ力ニ依ッテ取締ル、又思想ノ力ニ
依ッテ善導スベキモノデアリマシテ、勞働爭議、勞働運動ト云フコトニ關係ア
リマスル、卽チ治安警察法十七條ガ關聯イタシテ居リマスル範圍內ニ於キマ
シテハ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、勞働運動ナルモノハ大正十二年以來
今日ニ至ルマデ、漸次々々穩健著實ニ進ンデ居ルヤウニ觀察イタシテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
勞働爭議調停法案外一件特別委員
公爵二條厚基君石原健三君男爵稻田昌植君
添田壽一君鎌田榮吉君赤池濃君
永田仁助君金杉英五郞君山崎龜吉君
훑喜市営東発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二ヨリ第三十二マデノ議案、第一讀會ノ
續委員長報告、前田子爵
所得稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
大正九年法律第十二號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
地租條例中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
明治三十七年法律第十二號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
營業稅法廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
營業收益稅法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
資本利子稅法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
相續稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
通行稅法廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
酒造稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
酒精及酒精含有飮料稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
麥酒稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
醬油稅則廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
自家用醬油稅法廢止法律案
右可決スヘキモハナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
織物消費稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
賣藥稅法廢止法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
骨牌稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
〓涼飮料稅法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
大正九年法律第五十一號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
地方稅ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十一年法律第三十七條中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=31
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032・前田利定
○子爵前田利定君 唯今日程ニ上ボリマシタ所得稅法中改正法律案外二十
件、之ニ對シマスル特別委員會ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓イタシマス、
報告ノ便宜上、先ヅ結果ヨリ申上ゲマス、三月二十日午後ニ委員會ヲ開キマ
シテ、前陳イタシマシタル各案ノ審議ヲ致シマシテ、各案全部、何等修正ヲ
加フルコトナク、衆議院送付案ノ通リニ可決相成リマシタ、次ニ委員會ノ經
過ヲ申述ベマスル前ニ、今囘ノ稅制整理ニ關シマスル要領ヲ御紹介申サウト
思フノデアリマス、今囘ノ稅制整理ノ各案ヲ通觀シテ見マスト云フト、改正
ニ關シマスル法律案ガ所得稅法中改正法律案ヲ初ト致シマシテ、十二件アル
ノデアリマス、而シテ今囘新設セラルル所ノモノ、卽チ新稅法案ガ四ツデア
リマス、卽チ營業收益稅法案、資本利子稅法案、〓涼飮料稅法案、竝ニ地方
稅ニ關スル法律案ノ四ツデアリマシテ、廢止サレマスル所ノ法律案ガ五ツデ
アリマス、卽チ營業稅法案、通行稅法案、醬油稅則廢止法律案、自家用醤油稅
法案竝ニ賣藥稅法案デアルノデアリマス、而シテ是等各法律ノ改廢、創設、
之ニ煙草ノ稅ガ引上ノ增額、是等全部ヲ差引イタシマスト云フト、最初ノ政
府ノ原案ニ依リマスト云フト、平年度卽チ大正二十二年度ニ於キマシテ、八
百三十万圓ノ輕減ニナルノデアリマス、然ルニ衆議院ニ於キマシテ、皆サン
ノ御承知ノ通リニ、地租ノ一分減ト云フモノヲ止メマシタ爲ニ、九百六十万
圓ト云フモノガ歲入ニ戾ッテ來ルノデアリマス、其結果、政府最初ノ減額ト相
成リマス所ノ八百三十万圓ヲ控除イタシマスト云フト、大正二十二年度卽チ
平年度ニ於キマシテ、今囘ノ稅制整理ノ結果ガ、百三十万圓ノ增トナルノデ
アリマス、而シテ今囘政府ガ稅制ノ整理ヲナスニ當リマシテ、其取リマシタ
所ノ方針ニ付キマシテハ、過日本議場ニ於キマシテ、大藏大臣ノ演述スル所
ニ依リマスト云フト、現下ノ我國ノ財政ノ實況ニ鑑ミマシテ、著シク歲入ノ
增減ヲ來サナイ範圍內ニ於テ、現行ノ直接稅法ノ組織ヲバ根據ト致シマシテ、
之ニ多數ノ補完稅ヲ附加ヘマシテ、租稅ノ體系ヲ正シ、一面ニ於キマシテハ、
國民全般ノ利福ヲ增進スルト云フコトヲ考ヘ、又現時ノ趨勢ニ副フヤウニ、
社會政策的效果ヲ舉ゲルニ努メ、事業ノ基礎ヲ鞏固ニシ、產業ノ發展ニ資ス
ルト云フノガ、今囘ノ稅制整理ノ政府ノ方針デアル趣デアリマス、併ナガラ、
此點ハ皆サンノ御判斷ニ讓リマシテ、經過ノ大要ヲ申述ベマスレバ、本月ノ
二日ニ第一囘ヲ開キマシテ、爾後連日續行イタシマシテ、十二日マデ九囘、
特別委員會ヲ開キマシテ、此間全部、質疑應答ニ費シタ次第デアリマス、越
エテ十八日、二十日、此二日間ハ速記ヲ中止イタシマシテ、各委員ハ隔意ナ
キ意見ノ交換ヲ致シテ、懇談ニ懇談ヲ重ネタ次第デアリマス、遂ニ二十日ノ
午後ニ至リマシテ、討論ニ入リマシテ、前申上ゲマシタ通リニ、全部ノ表決
ヲ致スコトニ相成ッタ次第デアリマス、討論竝ニ表決ノ模樣ヲ申上ゲマス前
ニ、委員會ニ於ケル所ノ質疑ノ模樣ヲ御參考ニ供サウト思ヒマス、尤モ前後
十一囘ニ亙リマシタル委員會ニ於キマシテ、各委員ヨリ多數ノ質問ガアリ、
政府當局ノ之ニ應答サレマシタコトデアリマシテ、頗ル其數ハ多キニ上ボッテ
居リマス、皆有用ナル、有益ナル質疑應答トハ考ヘマスケレドモ今日ノ場
合、之ヲ委曲申上ゲル時ヲ有シマセヌガ故ニ、私ガ其中デ最モ重要ナリト認
メマシタモノ、竝ニ將來政府ノ執ラムトスル所ノ政策ノ一端ヲ窺ヒ知リ得ラ
レルト云フヤウナモノヲ十個、玆ニ引拔キマシテ、皆サンノ御參考ニ供ヘヤ
ウト思フノデアリマス、第一ハ地租委讓ニ關スル問題デアリマシタ、委員ノ
一人ハ、今囘政府ハ稅法ノ整理ニ當ッテ、單一稅法ノ主義ヲ採ラズシテ、所得
稅ヲ中樞トシテ、之ニ多種ノ補完稅ヲ以テ體系ヲ整ヘタ、斯ル次第デアルカ
ラ、土地ノ如キ最モ重要ナル此不動產ノ、所謂地租ノ如キモノニ付テハ是
ハ國稅トシテ極ク大切ナモノト思フガ、之ヲ地方ニ委讓スルト云フコトノ考
デアルカドウカ、此質問ニ對シマシテ、大藏大臣ハ答ヘテ申サレマスノニハ
質問者ノ申サルル通リニ、租稅ノ體系ノ上ヨリ、地租委讓ニハ反對ヲ致スノ
デアル、第二ニハ財政ノ點カラ反對ヲ致スノデアル、何トナレバ、地租ヲ
地方ニ委讓スルト云フコトニナルト云フト、歲入ニ於テ、恆久的財源トシテ
七千四百万圓歲入ニ入ッテ居ルモノガ、地方ニ移ルノデアル、ノミナラズ、營
業稅モ矢張リ理論上、地租ヲ地方ニ委讓スルト云フコトニナルト、營業稅モ
地方ニ委讓シナケレバナラヌヤウナコトニ立到ルコトハ、必然ノ勢デアルト
思フ、サウ云フコトニナルト云フト、兩者合セテ一億三四千万圓ノ歲入減ヲ
見ルコトニナルノデアルカラ、今日ノ財政ノ、サナキダニ難境デアル所へ、
搗テテ加ヘテ地租モ讓リ、ソレニ引續イテ、營業稅ヲ委讓シナケレバナラヌ
ト云フヤウナコトニナッテ行ケバ、著シキ歲入ノ缺陷ト相成ル次第デアルカ
ラ、財源上カラシテ、地租委讓ト云フコトニ付テハ反對ヲ致スノデアル、斯
樣ナ明確ナル御答辯ガアッタノデアリマス、第二ハ或ル委員カラシテ、政府ハ
今囘ノ稅制整理ノ初メニ當ッテハ、地租ノ一分減ト云フコトヲ提案サレタノデ
アッタガ、是ハ衆議院ノ修正ニ依ッテ止メルコトニ相成ッタ、今日ノ稅制整理ノ
最モ重要ナル部分ヲ占メテ居ッタ所ノ、地租ノ一分減ガ止メラレタト云フコト
ニ付テハ、政府ノ御考デハ、ソレニ代フルニ市町村義務〓育費國庫負擔法中
ノ改正法律案ト云フ此法律案ガ出タコトニ依ッテ、大體ニ於テ政府ノ整理ノ精
神ガ實現シ得ルト云フ考デアラルヽデアラウト思フ、シテ見ルト云フト、此
地租ノ一分減ト云フコトハ此際打切ラレルノデアルカドウカ、過日、本議場
ニ於テ、此點ニ付テ或ル議員カラ質問ヲサレタ時ニ、總理大臣ハ、他日財政
ニ餘裕ノ出來タ時ニハ考ヘルガト云フヤウナ御答デアッタ、其邊ガ鮮明ヲ缺
イテ居ッタガ、政府ガ將來、地租一分減ト云フコトニ付テハ如何ナル考ヲ持タ
レルカ、今囘ノ稅法整理、稅制整理ニ付テハ打切ラレタモノデアルト思フガ
如何ト、斯樣ナ質問ニ對シマシテ、大藏大臣ハ答ヘテ申サレマスノニハ全
ク其通リデアル、今囘ノ稅制ノ整理ノ方針ニ於フハ、政府ノ當初計畫シタ所
ノ考ト大シタ變リガナイカラ、地租ノ一分減ト云フコトニ付テハ差控ヘタ譯
デアル、デアルカラ、他日別ニ此稅制整理ト云フコトニ付テ、新規ナル計畫
ヲ立テルト云フ場合ニ於テハ格別、質問者ノ言ハレル通リニ、此今囘ノ稅制
整理ニ付テハ、此地租ノ一分減ト云フコトハ打切ッタノデアルト、斯樣ナ答辯
デアッタノデアリマス、第三ノ質問ト致シマシテハ、今囘ノ稅制整理ノ結果、
政府當局ハ減稅ニナル、結局四五百万圓バカリ負擔ガ輕減ニナルト、斯樣ナ
コトヲ申サレテ居ルケレドモ、商業會議所ノ調ベニ依ルト云フト、負擔ガ輕
減ドコロデハナイ、現在營業稅法ニ依ッテ徵收サレテ居ル所ノ稅額ヨリモ、五
割方增稅ニナル結果ニナル、斯樣ノ事ヲ申シテ居ルガ、政府ノ所見ハ如何デ
アルカ、決シテ政府ノ調ベハ嘘デアルト云フコトヲ申スノデハナイガ、曾テ
往年、戰時利得稅ノ法案ノ出タ時ニ、民間ノ調ベト、政府側ノ調ベト相違シ
テ居ッタコトガアッタガ、他日ニナッテ、民間側ノ調査ガ却テ的確デアッタト云
フ前例モアルカラ、決シテ噓デアルトハ申サヌガ、民間ノ此調ベヲ政府ハ如
何ニ見ルカト、斯樣ナ御質問ガアリマシタ、ソレニ對シマシテ、大藏大臣ハ
·····大藏大臣デハアリマセヌデシタ、政府委員デアリマシタ、政府委員ハソ
レニ答ヘテ申サレマスノニハソレハ民間側ノ御調ベモ一應我〓ハ見タノデ
アル、併シ其內容ニ付テハ誤謬ガアルコトヲ認メテ居ル、其第一ノ點ハ現
在ノ營業稅額ヲ見積ッテ居ルト云フコトガ過小デアル、又第二點トシテハ、純
益ノ計算ノ仕方ガ過大ニナッテ居ル、第三ニハ、地租ト資本利子稅トノ控除ノ
開キガ、政府ノ調ベトハ開イテ居ル、民間ノ調ベハ六大都市ニ於ケル所ノ統
計デアッテ、ソレヲ本トシテ他ノ地方ヲ類推ヲシタ調ベダガ、政府ノ見ル所ニ
依ルト、ソレガ計算ガ多キニ失シテ居ルト思フ、決シテ政府ノ方ニ於テハ、
收入ヲ見積ルコトヲ控ヘ目ニシテ、減稅ヲ調査スルコトガ的確ダト云フヤウ
ナ調べ方ヲ致シテ居ルコトハナイト云フコトヲ申サレマシテ、後ニ至リマシ
テ政府ノ調查サレマシタ所ノ計數ヲバ、書面ヲ以テ特別委員ニ配布サレマ
シタ次第デアリマス、第四ノ質問ト致シマシラハ、此質問ニ關聯ヲ致シテ居
リマス所ノ質問デゴザイマシテ、一委員ハ、政府ノ見ル所ト、民間ノ見ル所
1、其數字ノ上ニ於テ相違ガアル、若モ營業收益稅法ヲ實施シタ暁ニ於テ、
其徵收セラルル所ノ稅額ガ、政府ガ當初豫期シテ居ル所ノ稅額ヨリモ多額ニ
上ッタ場合、卽チ收益稅法ノ稅率ニ依ッテ徵收シタ所ノ稅額ガ、政府ノ豫算ヨ
リモ超過シタル部分ニ對シテハ稅率ヲ改正スルト云フコトヲ爲サルカ、斯
ウ云フ質問ニ對シマシテ、大藏大臣ノ答ヘラレマスノニハ、免ニ角新稅法ノ
實施ノ結果ノ現ハレルト云フコトハ十六年度ノ成蹟ヲ見ナケレバ分ラヌノ
デアル、是ハ餘程先キノコトデアルガ、十七年度ノ豫算ヲ組ムニ當ッテ、若モ
稅ノ徵收額ガ政府ノ豫期シタ所ヨリモ多額デアッタ場合、尤モ此多額ノ增收ト
云フコトニ付テモ、自然、經濟界ノ進展ニ伴フ所ノ自然增收デモナイ、全ク
此稅率ノ結果ニ其因ヲ爲シテ居ルト云フコトガ明カニナッタ場合ニ於テハ考
慮スルケレドモ、免ニ角是ハ先キノコトデアルカラ、此場合其點ニ付テハ
其時ニ考慮スルト云フ御答辯デアッタノデアリマス、第五ノ質問ト致シマシテ
ハ公債ニ關スル質問デアリマス、一委員ハ、政府ノ發行スル所ノ公債ニ付
テハ、從來免稅ニナッテ居ル
〔副議長候爵蜂須賀正詔君議長席ニ著ク〕
併ナガラ產業ノ進展ヲ圖ル上ニ於テ、資金ト云フモノガ潤澤ニ供給サレナケ
レバナラナイノデアルガ、斯樣ナコトヲ續ケテ行カレル時分ニハ、政府ノ方
ノ御都合ハ宜カラウケレドモ、一般ノ企業ノ上ニ於テ、誠ニ支障ガアルト思
フノデアリマスガ、此免稅ノ特典ヲ廢スル考ハナイカ、斯樣ナ質問ニ對シマ
シテ、大藏大臣ハ、之ニ付テハ相當ノ議論モアルコトデモアリ、沿革モアル
コトデアルガ、今日此場合ニ、此特典ヲ止メルト云フコトハ、時機尙早デアラ
ウト思フ、今日ハ短期ノ公債ヲバ長期ノ公債ニ乘替ヘテ、公債ノ整理ヲ爲サ
ヌケレバナラヌ時柄デアルカラシテ、而モ其整理モ十分ニ捗ッテ居ラヌノデア
ルカラシテ、此場合ニ特典ヲバ廢スルト云フコトハ、其時機ニ非ズト、斯樣
ニ考ヘテ居ルトノ答辯デアリマシタ、尙ホ公債ニ付キマシテ、斯樣ナ質問ヲ
或ル委員カラ申サレマシタ、外國ニ於テ發行シタル所ノ國債、而モ其公債ニ
ハ何等ノ稅モ課サナイト云フ約束ノ下ニ起シタル所ノ外國公債ニ對シテ、此
資本利子稅法ハ如何ニ適用サレルノデアルカ、若モ斯樣ナ條件ノ下ニ發行シ
テ居ル所ノ公債ノ利子ヲ、內地ニ於テ受取リタイト云フ者ガアッタ場合ニハ、
ソレニ對シマシテ、資本利子稅ヲバ課稅スルカドウカ、此稅法ノ上カラ云ヘ
バ、課稅シナケレバナラヌガ、公債ヲ發行シタル所ノ約束カラ云ヘバ、課ス
ルコトハ出來ナイ筈デアルガ、其點ハ如何デアルカト云フ質問ニ對シテ、政
府委員ノ答辯ニ、外國デ以テ發行イタシタ所ノ公債ニ付テ、內地ニ於テ請求
ガアレバ、利子ヲ渡サナケレバナラヌト云フコトニナッテ居ル、公債ハ三ツア
ル、ソレハ四分利附英貨公債、第三囘ノ四分利附英貨公債、第六囘ノ英貨公
債最初ノ四分利附英貨公債ト申シタノハ誤デアリマス、四分利附佛貨公債
デアリマス、此三種デアル、是ガ殘ッテ居ルノデアル、併ナガラ外國人ニシ
テ、內國ニ居住セザル外國人ガ、此資本利子ヲ請求スル······内地ニ於テ利子
ヲ請求スル場合デアルカラシテ、左樣ナ場合ハ稀有ノ場合デアル、左樣ナコ
トハ實際ノ問題トシテ起リ得ナイト思フガ、若モ左樣ナ場合ニ於テハ課稅
シナイ方ガ宜カラウト思フ、斯ウ云フ答デアッタノデアリマス第七ノ質問ト
致シマシテハ、此度ノ稅制整理ニ付テハ、通行稅ノ廢止、賣藥稅法ノ廢止ナ
ドガアル、所謂間接消費稅ガ廢止サレルモノガアルガ、此廢止ノ結果ガ、消
費者ニ果シテソレダケノ效果ガ現ハレテ來ルカドウカ、賣藥稅法ハ廢止サレ
タケレドモ、藥ノ値段ハ下ガラナイ、通行稅ガ廢サレタケレドモ、汽車、電車
其他ノ運賃ガ下ガラナイト云フヤウナコトハアリハセヌカ、尤モ政府ノ監督
ノ餘地アル所ノ事業ニ付テハ、政府ノ監督權ヲ以テ其邊ニ及ブデアラウケレ
ドモ、政府ノ監督權以外ノモノニ付テハ、此廢稅ノ結果ガ消費者ニ便益ヲ與
ヘルカドウカ、甚ダ覺束ナクハアルマイカ、斯樣ナ質問ニ對シマシテ、大藏
大臣ハ、政府ノ統制下ニアル所ノ汽車電車ノ如キモノニ付テハ、統制權力ノ
下ニアルモノデアルカラシテ、認可ヲ要スルコトデアルカラシテ、十分取締
モ出來ル、併ナガラ統制下ニアラザル所ノモノニ付テハ、差當リ方法ノ講ジ
ヤウモナイ、サリナガラ、一方ニ於テハ是ダケノ稅額ガ輕減サレル次第デモ
アルカラシテ、當業者ニ於テハ、自由競爭ノ結果ニ於テ、勢ヒソレダケノ效
果ヲバ消費者ニ與ヘナケレバナラヌヤウナコトニ相成ルデアラウト信ズル、
理論カラ申シマシテモ、實際カラ考ヘテモ、稅ノ減ッタダケハ必ズ消費者ニ便
益ガ行クモノデアル、斯樣ニ信ジテ居ル次第デアルト云フ答デアリマシタ、
第八ノ質問ト致シマシテハ、此度ノ稅制整理ノ結果、是マデハ外形標準ニ依ッ
テ課稅ヲサレテ居ッタノデアルガ、此改正ノ結果ハ、純益ニ課稅サレルト云フ
コトニ相成ル結果ガ、俄ニ負擔額ガ增加スルト云フ激變ヲスルコトモアルヤ
ウニ考ヘル、一例ヲ以テ云ヘバ、信託業ヲ營ンデ居ル所ノ信託會社ノ如キモ
ノハ此稅法ノ改正ニ依ッテ、著シク稅額ガ激增スルト思フ、斯ウ云フヤウナ
モノニ對シマシテ、何カ緩和ノ方法ヲ政府ノ方ニ於テ講ズルカ、斯樣ナ質問
ニ對シマシテ、政府當局ノ答ハ別ニ緩和ノ方法ヲ講ジテハナイ、ナイガ、
ソレハ多クノ會社ノ中ニ、此度ノ稅法改正ニ依ッテ偶稅額ガ增加スルト云フ
向キモアルデアラウ、又一面ニ於テハ、負擔額ガ減少スルト云フモノモアル
デアラウ、元來、信託會社ノ如キモノハ、今囘ノ所謂純益標準ト云フコトニ
ナレバ、純粹ナル信託業ヲ營ンデ居ルモノデアリマシタナラバ、報償額ト純
益額トガ大差ガ無イ筈デアルカラシテ、實際ニ於テハ負擔ハ多クナルベキ
筈ノモノデハナイノデアル、ガ、併ナガラ今日、信託業法ノ行ハレテ年尙ホ
淺イガ爲ニ、信託業法ノ範圍ガ、規定ノ事業ノ範圍ガ廣イガ爲ニ、純粹ナル
信託業以外ニ、色〓ナ事業ヲ傍ラ營ンデ居ルト云フヤウナ會社ニ於テハ、中
ニハ今囘ノ改正ノ結果、多少稅額ノ負擔ガ殖エルト云フ向キモアルカモ知レ
ナイ、ガ、併ナガラ元來ガ、現在ノ狀況ハ、銀行業其他ニ對シテ信託業者ノ
負擔ガ、均衡上、低過ギタ感ガアッタ次第デアル、故ニ今囘ノ改正ノ結果ガ、
或ルモノニ付テハ增額ニナルカモ知レヌガ、併シソレハサウ云フヤウナ種々
雜多ノ業ヲ營ンデ居ル信託業者ニハサウ云フコトガアルカモ知レマセヌ
大體ニ於テハ、負擔ハ輕減セラレル筈デアルト云フ答デアリマシタ、特別委
員ニ非ズシテ特別委員會ニ來ラレマシテ、委員會ノ許可ヲ經テ、委員外ノ議
員カラ斯樣ナ質問ガアリマシタ、酒精及酒精含有飮料稅法ノ改正ニ伴ッテ、稅
額ガ四割方昂騰ヲスル、斯樣ノコトニナルト云フト、酒精工業······「アルコー
ル」ヲ本トシタ所ノ酒精工業ノ上ニ付テ、憂フベキコトガ出來テ來ハシナイ
カト思フ、第一ハ學術研究ノ上ニ大打擊ヲ被ル、第二ニハ農村ノ副業トシテ
最モ恰好デアル所ノ酒精工業ナドガ、是等ノ爲ニ十分發達シ得ナイト云フコ
トニナリハセヌカ、農村問題ノヤカマシイ今日ニ於テ、農村ノ伸展ヲ阻害ス
ルヤウナコトヲ、此法案ノ改正ニ依ヲテ誘致スルト思フガ、其點ハドウデアル
カ、又國防軍事上ノ立場カラシテ、此酒精ノ稅ノ上ガルト云フコトハ誠
ニ心配スベキコトデアルガ、其點ニ付テハドウデアルカ、火藥ノ製造ノ如キ、
「ガソリン」ノ代用燃料トシテ「アルコール」ノ如キモノハ最モ大切ナモノデア
ル、而シテ平時ニ於テ「アルコール」ノ工場ハ、戰時ニ於テハ火藥製造工場ニ
變ルコトモ得ラレルヤウナ次第デ、「アルコール」ト云フモノニ付テハ、國防
上重要ナル位置ヲ占メテ居ルモノデアルガ、今囘ノ增稅ニ依ヲテ、此點ニ付テ
憂ヘルガ如何テアルカ、「セルロイド」ノ如キ、石鹼ノ如キ、皆ナ是ハ戾稅ガア
ルガ、此點ニ付テハ政府ハ考慮シテ居ルカドウカ、又陸軍省トシテハ、大藏
省ニ對シテ斯樣ナル問題ニ付テ十分連絡ヲシテ居ルカドウカ、斯樣ナ質問ニ
對シマシテ、陸軍參與官ノ答辯サレマシタノニハ質問者ノ申サルル通リニ、
軍事工業動員ノ上カラ、軍事資源トシテ、此酒精工業ト云フコトニ付テハ、
誠ニ重要視シテ居ル次第デアル、戰時ニ於テハ到底此「ガソリン」ノ供給モ足
ラヌカラ、飛行機ダトカ、左樣ナモノハ「ガソリン」ニ依ラナケレバナラヌ
ガ、運搬用ノ自動車ノ如キモノハ、「ガソリン」ノ代用トシテ「アルコール」ヲ
燃料トシテ使用シナケレバナラヌノデアル、左樣ナ次第デアルカラシテ、陸
軍當局トシテ、此際ノ改正ニハ同意ハ致スケレドモ、酒精ノ變性及戾稅ノコ
トニ付テ十分ニ〓究ヲシテ、此酒精工業ノ發展ト云ヒ、發達ト云フコトニ付
テハ、十分努メル考デアル、尙又大藏當局、商工當局ニモ、此點ニ付テハ協
力シテ努力スル考デアル、斯樣ナ答辯デアリマシタ、續イテ大藏大臣ノ之ニ
對スル答辯トシテハ、政府ノ方ニ於テモ戾稅ノ範圍ヲ擴張スル議ガ熟シツツ
アル、既ニ其一部ハ勅令ヲバ作製中デアル、又未ダ詮議ノ濟マザル部分ニ付
テモ詮議ヲ續行シテ、左樣ナコトニ遺憾ノナイヤウニ致ス考デアル、斯樣ナ
答辯ガアッタ次第デアリマス、尙又特別委員以外ノ或ル一議員ハ、矢張リ委員
會ノ同意ヲ經ラレマシテ、所得稅法ニ付テ質問ヲサレマシタ、卽チ所得稅法
第十四條第一項第一號ニ、所謂營業ニ非ザル者ノ貸金ニ付テハ、十四年度ニ
於テハ豫算主義ノ下ニ徵稅ヲサレテ居ルノデアル、然ルニ改正法ニ依ルト云
フト、十五年度ニ於テハ、十四年度ノ實蹟ニ鑑ミテ徵收サルルト云フコトデ
アル、斯樣ナコトニ相成リマシテハ所謂課稅ガ重複サレル次第デアルガ、
其邊ハ如何デアルカ、斯樣ナ質問ガアリマシテ、此議員ハ熱心ニ、再三再四
政府委員トノ間ニ質問應答ヲ重ネラレマシタ、結局、私ガ聽取リマシタ所ニ
依リマスト云フト、政府委員ノ答辯ノ歸著スル所ガ、昨年ハ豫算主義ヲ取。ツ
テ,今年ハ實蹟主義ヲ取ッタカラ、成程十四年度ノ分ニ付テハ重複スルヤウナ
形ニハナル、形ニハナルガ、一ツハ豫算主義デアリ、一ツハ實蹟主義デアル、
主義ガ違ッテ居ルシ、又左樣ニシナケレバ脫稅ヲ防グ譯ニハ行カナイト云フヤ
ウナ御答辯デアッタノデアリマス、以上ガ特別委員會ニ於ケル所ノ私ガ以テ
重要ナリト認メタ質問デアリマシテ、其中ニ、外國公債ニ關シマスル質問應
答、竝ニ營業ニ非ザル所ノ貸金ニ對スル課稅、此質問應答ハ、特ニ皆樣ニ於
テ御注意ヲ願ヲテ置キタイト思ヒマス、後段ニ至リマシテ、ソレニ對シマスル
問題モゴザイマスルガ故ニ、特ニ御記憶ヲ願ッテ置キマス、サテ其他幾多ノ名
質問モ少クハゴザイマセヌガ、何分ソレ以上玆ニ御紹介申上ゲマスコトハ
前申上ゲマシタ通リ、時ヲ得マセヌカラ割愛ヲ致シマシテ······尤モ此質問應
答ノ速記錄ハ、既ニ全部印刷配付サレテアリマスルコトデアリマスカラ、諸
君ニ於テハ速記錄ニ就イテ十分御精讀ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、サ
テ討論ノ模樣ヲ申上ゲタイト思ヒマス、委員會ノ其時ノ審査ノ順序上、日程
ノ順序トハ違ヒマスルケレドモ、先ヅ地租條例中改正法律案カラ、討議表決
ノ模樣ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス、地租條例中改正法律案、竝ニ明治
三十七年法律第十二號中改正法律案、此二案ハ關聯ヲ致シテ居リマスルガ故
ニ、一括シテ先以テ議題ニ供シタノデアリマス、然ル所、一議員ヨリ修正ノ
意見ヲ提出サレマシタ、其修正ノ意見ノ要領ハ、地租條例中改正法律案ノ衆
議院ニ於テ修正イタシタ部分ニ付テハ、之ヲ修正ヲシテ、政府ノ原案ヲ復活
スルト云フノガ第一デアリマス、卽チ地租ノ一分減ヲ實現ヲサセタイ、斯樣
ナル修正デアリマス、ソレニ關聯イタシマシテ、市町村義務〓育費國庫負擔
法中改正法律案、之ヲ否決スル、ソレカラ永小作權者ガ多年、地租ノ負擔ヲ
約シテ、所有者ニ代,テ納付イタシテ居リマスル、其田畑ノ地租ノ免除ニ關ス
ル法律案、是ハマダ今日ノ日程ニハ上ッテ居リマセヌガ、其關聯スル法律案モ
否決スル、斯樣ナル御論旨デアリマシテ、先ヅ其前提ト致シテ、今囘ノ稅制
整理ヲ通觀サレテ、之ニ批評ヲ加ヘ、而シテ前陳ノ修正ノ意見ヲバ述ベラレ
タノデアリマス、其要領ヲ申上ゲマスト云フト、現下ノ情勢ニ於テ稅制整理
ヲスルト云フコトハ、刻下必要ノコトデアルト云フコトハ、自分ニ於テモ認
メル、併シ唯、其方法ガ問題トナルノデアル、政府ガ今囘ナサレタル所ノ稅
制整理ハ、誠ニ遣繰リノ整理案デアル、ナゼナラバ、歲入ニ增減ノ無イヤウ
ニスルト云フ制限ガ附イテ居ル、根本的ノ稅制整理ヲ爲スト云フ場合ニ於テ
ハ先ヅ各階級ノ國民、各階級ノ負擔能力ヲバ精査シテ、能ク國民經濟ノ實
況ヲ觀テ、サウシテ稅率ナリ、稅法ナリヲ改正セラレレバ宜イノデアル、其
以外ニ何等制限ヲ置ク必要ガ無イノデアル、然ルニ政府ハ歲入ニ付テ著シク
增減ヲシナイト云フ、斯樣ナル制限ヲ附ケテノ稅制整理デアッテ見レバ、根本
的稅制整理トハ申サレナイ、ドノ途モウ一遍、眞ニ根本的カラ稅制整理ヲ爲
ス時期ガ到來スルト思フカラ、一遍是ハ御止メニナッテ、更ニ御出シニナル方
ガ宜イト思フ、併ナガラ既ニ衆議院モ通ッテ來タコトデモアルカラ、已ムヲ得
ズ之ニ贊成スルノデアルガ、ソレニ付テハ前申シタ通リ、地租ノ一分減ヲ復
活ヲスルト云フコトニシタイト思フ、元來今囘ノ稅制整理ニ付テ、眼目トモ
スベキ所ノ地租ノ一分減ヲ、直チニ衆議院ノ修正ニ政府ガ共鳴セラレタト云
フコトハ、誠ニ遺憾至極ノコトデアル衆議院ニ多數ノ黨人ヲ持ヲテ居ラヌ所
ノ政府ガ、卽チ政局ノ不安デアルト云フコトカラシテ、一時的ノ安定ヲ得ム
ガ爲ニ、衆議院ノ修正ニ共鳴苟合シテ妥協シタト云フコトハ誠ニ遺憾至極
ノコトデアル、斯樣ナ前提デアリマシテ、結局今申上ゲタ修正、竝ニ市町村
義務〓育費國庫負擔法中改正法律案ニ對シマシテハソレト永小作權者免租
案ニ對シマシテ、否決案ヲ······否決ノ意見ヲ提出サレタノデアリマス、併シ此
議論ハ採決ノ結果、少數デ消滅ヲ致シタノデアリマス、續イテ一委員ヨリ、
地租條例中ニ付キマシテ、修正ノ意見ヲ提出サレタノデアリマス、其修正ノ
箇所ハ、地租條例中改正法律案ノ第十三條ノ二ヲ次ノ如クニ修正ヲシヤウト
云フノデアリマス、條文ノ讀上ゲハ省略イタシマシテ、意味ヲ申上ゲマセウ、
政府案ニ依リマスルト云フト、同一市町村內ニ於ケル田畑地價ノ合計ガ二百
圓以內ノ時ニハ免稅スルト云フノガ、政府ノ最初ノ原案デアッタノデアリマ
ス然ル所、衆議院ニ於キマシテハ、其住居シテ居ル所ノ市町村內ニ於ケル
所ノ田畑ノ地價、及住居地ニ隣接ヲシテ居ル所ノ市町村內ニ於ケル所ノ田畑
ノ地價ト、合計二百圓以內ナル場合ニハ、之ヲ免稅スルト云フノガ、衆議院
ノ修正デアッタノデアリマス、然ルニ一委員ノ修正ノ御意見ハ、同一市町村内
ニ於ケル所ノ田畑ノ地價ガ二百圓以內ナル時ハ、免稅ハ無論ノコトデアルガ、
住居地ニ隣接ヲスル所ノ市町村內ニ於テ所有シテ居ル所ノ地價ガ二百圓以內
デアッタ時ニハ、サウ云フ隣接ノ方ノ町村內ニアル所ノ田畑ニ付テモ免稅ニナ
ルヤウニシタイ、斯樣ナ修正デアルノデアリマス、例ヘバ、例ヲ以テ申上ゲ
マスレバ自分ノ住ンデ居ル村ニ於テ、百九十圓ノ地價デアル田畑ヲ有ッテ居
リマスレバ、無論是ハ免稅ニナルノデアリマス、隣村ニ於キマシテ十圓ノ地
價ノモノヲ有ッテ居リマシタ場合ニハ二百圓ヲ超過イタシマスルカラシテ、自
分デ住ンデ居リマス所ノ町村ノ田畑ノ分モ、隣リノ分モ、免稅ニハナラナイ
ノデアリマス、合計シテ二百圓ヲ超過イタシマスルガ爲ニ、又自分ノ町村ニ
於テ百九十圓、隣リノ町村ニ於テ五圓ノ地價ノモノヲ有ッテ居リマシタ場合ニ
ハ合計二百圓ニナリマセヌカラ、其場合ニハ自分ノ住ンデ居ル村ノ方ノ分
モ、隣接シテ居ル所ノ村ニ於テ有フテ居リマス所ノモノモ、共ニ併セテ免稅ニ
ナルノデアリマスガ、此委員ノ修正ノ意見ハ兩方、自分ノ住ンデ居ル村モ、
隣村モ、兩者各別ニ二百圓ニ達スル迄ハ、兩方トモ免稅シテ貰ヒタイト云フ
修正ノ意味デアルノデアリマス、其理由ト致シマシテ提出サレマシタ所ハ、
今囘ノ地租條例ノ改正ニ於テ、二百圓ノ免租點ヲ設ケタト云フコトハ、誠
自作農創設維持ノ上ニ於テ誠ニ福音デアル、農民トシテ誠ニ喜ブベキコトデ
アルガ、併ナガラ衆議院ノ修正デアッテハ、偶〓隣リノ村ノ地價ト我ガ村ノ地
價トヲ合セテ、二百圓以上ニ達スルト云フト、免稅ニナラナイト云フコトデ
ハ、十分ニ自作農創設維持上ニ於テ遺憾ガアルカラシテ、其兩者共ニ二百圓未
滿ナラバ、何方モ免稅ニシテ貰ヒタイト云フ修正ノ御意見ニ歸著スルノデア
リマシタ、採決ニ付シマシタ所ガ、此修正ノ意見モ少數デ否決ニナリマシテ、
原案ヲ討議ニ付シマシタ所ガ、過半數ヲ以チマシテ原案通リ、卽チ衆議院修
正案通リニ可決ニ相成リマシタ、次ニ所得稅法案ニ付キマシテ討論ニ這入リ
マシタ、一委員ハ所得稅法案ニ付テハ贊成デアルケレドモ、其贊成ヲ致ス
ニ付テハ、責任アル所ノ政府當局者ヨリ言明ヲ得タイノデアル、此言明ヲ得
ラルレバ、無修正デ本案ヲ贊成ヲスルト云フコトデアリマシタ、其言明ヲ求
メラレマシタ事柄ハ、卽チ先刻質問ノ場合ニ於キマシテ、營業ニアラザル所
ノ貸金ニ付テハ二重ノ課稅ニナルト云フ點ニ付キマシテ、委員外ノ議員ヨリ
質問ヲ致シマシタ場合ニ、政府ノ答辯ト致シマシテハ、十分滿足ナル答辯ヲ
得テ居ラナカッタノデアリマス、此點ハドウ考へテモ二重ノ課稅ニナルコトハ
明カナコトデアルカラ、斯ウ云フ場合ニ付テハ、二重課稅ヲ爲サザルコトニ
シテ貰ヒタイ、卽チ所得稅法第十四條第一項第一號ノ所得稅大正十四年分ニ
付テ二重ノ課稅ヲ爲サザルコト、斯樣ナルコトニ付テ責任アル政府ノ言明ヲ
得タイト云フコトヲ、一委員ハ申サレマシタノデアリマス、時恰モ大藏大臣
ハ御病氣ノ故ヲ以チマシテ、委員會ニハ御出席ニナリ難イト云フコトデアリ
マシテ、總理大臣ヲ煩シマシタノデアリマス、總理大臣ハ其委員ノ要請ニ應
ジマシテ、所得稅法第十四條第一項第一號ノ所得ニ關シテ、大正十五年分課
稅ニ付テハ、大正十四年分ノ豫算課稅ト實際上二重課稅ノ結果ヲ來サザルヤ
ウ實行上適當ニ考慮スベシ、斯樣ニ內閣總理大臣ガ言明ヲサレタノデアリ
さい、之ニ依リマシテ表決ニ入リマシタ所ガ此言明ニ滿足シマシテ、全會一
致ヲ以テ、所得稅法中改正法律案ハ原案通リニ可決サレタノデアリマス、次
ニハ資本利子稅法ニ付キマシテ討論ニ入リマシタ、一委員ヨリ、是モ亦政府
當局カラシテ言明ヲ得レバ原案ニ贊成ヲスル、言明ヲ得ナケレバ修正ヲスル
ノ已ムヲ得ナイト云フコトデ、其政府ノ意嚮ヲ質サレタノデアリマス、其事
柄ハ先程ノ質問ノ場合ニ於テモ現ハレマシタ、外國ノ國債ノ利子ノ事柄デア
リマシテ、外國ニ於テ發行シタル所ノ國債中、日本ニ居住シテ居ナイ所ノ外
國人ノ所有スルモノデアリマシテ、總テ是等ニ付テハ何等ノ稅ヲ······何等
ノ公課ヲバシナイト云フ旨デ約束ヲシテ居ルモノデ、若シ日本內地ニ於キマ
シテ、其利子ノ支拂ヲナシタ場合ニ於テ、資本利子稅ヲ課スト云フコトハ、
如何ニモ國際的ニ考ヘテモ、又發行ノ契約ヲ考ヘテ見テモ、不條理ナコトデ
アルカラ、斯ウ云フ場合ニ於テハ課稅シナイト云フコトニシナケレバナラナ
イ本來ハ立法上ノ缺陷トモ考ヘルカラシテ、修正ヲナスベキデアルケレド
モ若モ政府ニ於テ此點ニ十分ニ留意シテ、左樣ナ場合ニハ課サナイト云フ
コトデアレバ、實際上ニ於キマシテ差支モナカラウカラ、免ニ角モ此點ニ付
テ政府ノ意嚮ハ如何デアルカト云フコトヲ質サレタノデアリマス、ソレニ對
シマシテ內閣總理大臣カラ、外國ノ國債ノ利子ノ點ニ付テハ、卽チ外國ニ於
テ發行シタル國債中、日本ニ居住セザル外國人ノ所有セルモノニシテ、公課
ヲ課セサル旨ヲ約セルモノニ付テ、日本ニ於テ利子支拂ヲナス場合ニハ資
本利子稅ヲ課セザル考ナリ、斯樣ナ辯明ガアリマシタ、次デ採決ニ付シマシ
タ所ガ、全會一致ヲ以テ資本利子稅法案ヲ可決議了ヲ致シマシタ、第三ニハ
營業收益稅法案ニ付キマシテ討論ニ入リマシタ、一委員ヨリシテ修正ノ意見
ノ提出ガアリマシタ、其第一ハ、同法ノ第六條ニ、「二」ト云フ條項ヲ加ヘル
ノデアリマス、營業ノ純益算出ノ方法ニ付テ、大藏大臣ニ於テ、主ナル商業
會議所十箇所以內ノ會頭ヨリ成ル委員會ヲ組織シ、其意見ヲ聽イテ命令ヲ以
テ之ヲ定ム、其變更ヲ要スルトキ亦同ジ、斯ウ云フ條項ヲ置カウト云フノデ
アリマス、卽チ純益ノ算出ノ方法ニ付テハ、稅務官吏ノ專斷ニ依ラナイヤウ
ニ、民間ノ有力ナル商業會議所ノ會頭カラ成ル所ノ委員會ニ諮問ヲシテ、サ
ウシテ此算出方法ヲ決定シテ貰ヒタイ、斯ウ云フ意味合ノ修正ノ御意見デア
リマス、第二ニハ同法第十條中左ノ通リ修正ス、「法人百分ノ三·六」ヲ「百分
ノ二·六」ト改ム、個人ノ方ニ付キマシテハ「百分ノ二·八」ヲ「百分ノ一·八」ト
改ム、卽チ「一」ダケ法人ニ付テモ個人ニ付テモ減ジヤウト云フ修正ノ御意見
デアルノデアリマス、是ハ矢張リ質問ノ時ニ申上ゲマシタガ、商業會議所ノ
營業收益稅法ノ實施ノ結果ヲ調ベタ計數ト、政府ノ計數トノ間ニ非常ナル違
ヒガアル、殆ド五割方······民間ノ方〓ノ言ニ依レバ、五割方增稅ニナルト云
フコトデアル、政府ノ方デハ五百万圓程減額ニナルト云フノデ、甚ダ話ガ違
ヒ過ギテ居ル、違ヒ過ギテ居ルガ、戰時利得稅ノ時ノ事例モアルノデ、政府
ノ調ベニ付テハ十分ニ信憑モ出來ナイ、免モ角モ法人利子ノ稅額ニ付テハ、
百分ノ一ヅツ減ジテ置イテ、實際其實蹟ニ考ヘテ、ドウシテモ是ハ不足ダト
云フコトデアルナラバ、其際改メテ取立テテモ宜カラウ、國民ハ不必要ノ稅
額ヲ納メル何ハナイ、又政府ハ若モ實蹟ニ鑑ミテ餘計ニ取リ過ギテ居。ッタナ
ラバ、後ニナッテ之ヲ改正スルト云フコトモ申サレルカモ知レナイ、又サウ云
フヤウナ希望ヲ附ケヤウト云フ方ガアルカモ知レナイケレドモ、是ハ甚ダ安
心ハナラナイ、免ニ角モ自分ノ考デハ、增稅ニナル結果トナルデアラウト考
ヘラレルカラシテ、先以テ稅率ヲ少シク引下ゲテ置カウ、斯ウ云フ御意思カ
ラシテ、此第二ノ修正ガ出タノデアリマス、第三ハ、第二十五條ヲ左ノ通リ
修正ス、「收稅官吏ハ營業者ニ質問スルコトヲ得、收稅官吏ハ營業者カ速カニ
質問ニ答ヘス又ハ答フルモ答辯要領ヲ得サルトキハ營業者ノ營業ニ關スル帳
簿物件ヲ檢查スルコトヲ得、前項ノ場合ニ於テ收稅官吏ハ帳簿物件檢查ノ必
要ヲ認ムル理由ヲ具シ所得稅調査委員會ノ承認ヲ得豫メ其旨ヲ營業者ニ通知
スヘシ」、此收益稅法ノ第二十五條、此問題ハ詰リ收稅官吏ガ商工業者ノ店先
ヘ行ッテ帳簿トカ物件トカヲ檢査スル權能ヲ與へタ規定デアルノデアリマス、
其一委員ノ申サレル所ニ依リマスト元來營業稅法ガ惡稅デアルト云ハレ、
又營業稅ノ徵收ニ付テ納稅者ト收稅吏トノ間ニ紛議ガ起リ紛爭ガ起ルト云フ
其元ハ何デアルカト云フト、收稅吏ガ店先ヘ行ッテ帳簿ヤ物件ヲバ檢查スル
ト云フコトカラ、其事ガ起ッテ來ルノデ、誠ニ苦〓シイコトデアル、デアルカ
ラ納稅者トシテモ納稅道德ヲ重ンジナケレバナラヌ、此收稅官吏トシテモ徵
稅上ニ付テ十分其邊ヲ考ヘナケレバナラヌコトデアル、デアルカラ一應ハ此
營業者ニ質問ヲスルガ、要領ヲ得ナイト云フヤウナ場合ニ於テ、直チニ帳簿
物件ヲ檢査スルト云フ擧ニ出デズシテ、所得稅調査委員會ト云フヤウナモノ
ニ一ツ諮ッテ、サウシテ豫メ其納稅義務者ニ通告ヲシテ置イテ、帳簿物件ヲ檢
査スルト云フ風ナ段取ニシタ方ガ宜カラウ、サウスレバ徵稅官吏ト納稅義務
者トノ間ガ誠ニ感情モ緩和サレ、是等ヨリ起ル所ノ紛爭紛議ト云フコトモ無
クナルデアラウカラ、斯樣ニシタ方ガ宜カラウ、全體斯樣ナ規定ガ無イ方ガ
宜イカモ知レナイガ、併シ之ヲ削ルト云フコトモ如何デアルカラ、斯樣ナ緩
和方法ヲ以テ本案ヲ通過サセタイト思フ、ソレニハ問題ニ能クナルノハ此第
二十五條デアルカラ、第二十五條ハ少シク帳簿物件ヲ檢査スルト云フコトニ
付テ、手重モナ手續ヲ要スルコトニ致シテ置イタ方ガ宜クハアルマイカ、斯
樣ナ修正ノ御意見デアッタノデアリマス、又他ノ一委員ヨリシテ、此營業收益
稅法ニ付キマシテ、別個ノ修正意見ヲ提出サレタノデアリマス、其修正ノ意
見ハ、矢張リ此同法案ノ第二十五條ヲ全部削除シテシマハウトスル御意見デ
アルノデアリマス、所謂禍ノ根ト云フモノハ此法條ニ存スルノデアルカラシ
テ、其禍根ヲバ取ッテシマハウ、サウ云フ意味ニ於テ此第二十五條ヲ削除スベ
シト云フ修正ノ御意見デアッタノデアリマス、採決ニ付シマス場合ニ於キマシ
テハ、原案ニ最モ遠キ所ノ第二十五條削除ノ修正意見ヲ表決ニ付シマシタ所
ガ、少數ヲ以テ否決ニ相成リマシタ、次ニ一委員ヨリノ······最初修正意見ナ
リトシテ御紹介申上ゲタル所ノ三箇條ニ亙ッテノ修正ノ意見、其修正ノ意見ヲ
バ表決ニ付シマシタ所ガ、是亦少數デ否決ニナリマシタ、此場合ニ於キマシ
テ一委員ヨリシテ二箇ノ嚴重ナル所ノ附帶希望ヲ添ヘテ本案ヲ贊成スルト
云フ意見ガ出タノデアリマス、其希望條件ハ第一、
營業收益稅法實施ノ結果政府當初ノ豫算ニ超過シ多大ノ增收ヲ來シタル場
合ニ於テ其增收ガ同稅法所定ノ稅率ニ基クモノナルトキハ政府ハ宜シク同
稅率ノ低減ヲ圖ラレムコトヲ望ム
是ガ第一ノ附帶希望デアリマス、卽チ質問ノ時ニモ現レマシタ民間ノ調ベト
政府ノ調ベガ相違ヲシテ居ル、特別委員トシテハ何レニ信ヲ置クベキカト云
フコトニ付テ惑ハザルヲ得ヌ、併ナガラ特別委員トシテハ、此兩者ヲ判別ス
ル爲ニ調査スル所ノ機關ヲ有シテ居ラナイ、デアルカラ已ムヲ得ナイ、應
政府ノ調査シタ所ヲ以テ假ニ信ズベキモノトナシテ、此本案ハ通スケレドモ、
若モ此實蹟ニ鑑ミテ、多大ノ增收ガアッタ場合ニ、其增收ガ他ノ原因デハアリ
マセヌ、全ク此稅率ノ關係カラ斯樣ナ增收ガアッタンダト云フコトガアッタ場
合ニハ宜シク政府ニ於テハ稅法ヲ改正シテ、稅率ノ低減ヲ圖ヲテ貰ヒタイ、
斯樣ナ附帶希望デアッタノデアリマス、第二ノ附帶希望ト致シマシテハ
政府ハ營業收益稅法ノ實施ニ當リ同法第二十五條ノ規定ニ付キ嚴ニ濫用ノ
弊ナキヲ期スルト同時ニ努メテ納稅者ト稅務官吏トノ間ニ於ケル紛爭ヲ避
ヶ稅法ノ圓滿ナル施行ヲ圖ラレムコトヲ望ム
前段ニ申上ゲマシタ修正ノ意見ヲ提出ヲシマシタ方〓ノ御意思ト矢張リ同ジ
デアリマス、此第二十五條ノ規定ガ濫用サレマスト云フト、誠ニ納稅者ト稅
務官吏ノ間柄ガ不良ニナリマシテ、徵稅上ニモ不便モ少クアリマセヌシ、又
ソレガ爲ニ圓滿ナル施行モ出來難イト云フコトニナリマスルカラシテ、政府
ノ方ニ於テハ、嚴重ニ此第二十五條ノ利器ト云フコトニ付テハ十分ニ考慮シ
テ貰ヒタイ此紛爭ヲ避ケルコトニ付テハ、或ハ所得稅調査委員會ニ於テ諮
ラレルト云フコトモ宜カラウ、或ハ其他ノ適當ナル方法モアラウカラ、十分
ソレ等ノ方法ヲ考ヘテ、納稅者ト稅務官吏トノ間ノ論爭ニナラナイヤウニ、
此二十五條ノ規定ハ稅務官吏ニ取ッテハ利器デアルガ、此利器ヲ振廻サナイヤ
ウニ、十分ニ政府ノ方ニ於テ注意ヲシテ貰ヒタイト云フ、嚴重ナル所ノ警告
的附帶希望ヲ附シテ之ヲ通サウト云フノガ、一委員ヨリ申サレタ所デアルノ
デアリマス、結局原案ヲバ表決ニ付シマシタル所ガ、過半數ヲ以チマシテ可
決サレマシタ、次ニ此希望案ヲ表決ニ付シマシタ、卽チ此附帶ノ二ツノ希望
ハ委員長ガ本議場ニ於テ營業收益稅法表決ノ模樣ヲ御報告ヲ致ス時ニ、委
員會デ決議シタ節ヲ希望トシテ皆樣ニ披露ヲシテ貰ヒタイ、斯ウ云フ意見ノ
主張ニ基キマシテ、委員會ノ意嚮ニ問ヒマシタ所ガ、全會一致ヲ以テ、此二
箇ノ希望ハ附帶希望トシテ本議場ニ委員長ヨリ警告シテ貰フト云フコトニ決
定ヲ致サレタ次第デアリマスルガ故ニ、玆ニ御報〓ヲ致ス次第デアリマス、
次ニ〓涼飮料稅法ノ問題ヲバ討議ニ付シマシタ、一委員ヨリシテ此〓涼飮料
稅法案ニ對シマシテ、否決スベシトノ意見ガ陳述サレマシタ、惟フニ本議場
ニ於キマシテ、後刻其論者ヨリ、此否決論ヲ此壇上ニ於テ御紹介ニナルコト
デアラウト思ヒマスルカラシテ、私ハ極ク簡單ニ其要點ヲ申上ゲヤウト思フ
ノデアリマス、〓涼飮料稅ヲ課シタ結果ガ、國庫ニ於テ收納スル所ノ稅額ハ
僅ニ三百万圓餘リデアル、誠ニ僅少ナル額デアル、而モ其取立ハ頗ル煩瑣デ
アル、成程歐羅巴ニ於キマシテハ、戰時中ニ斯樣ナ、戰時稅トシテ、水ニ稅
ヲ掛ケタト云フコトガアルガ、我ガ日本ニ於テ此水ニ稅ヲ掛ケルト云フノハ
何事デアルカ、政府ノ提案ノ理由ヲ聽クト云フト、麥酒ノ稅ヲ增シタガ爲ニ、
麥酒ヲ飮ンデ居"フタ者ガ〓涼飮料水ノ方ニ移ッテ來ルデアラウカラト云フノ
デ、〓涼飮料水ニ稅ヲ掛ケルト云フヤウナ趣意デアルガ如クニ申サレルケレ
ドモ、誠ニ是ハ驚入ッタコトデ、上戶ト下戶ノ區別ヲ是ハ知ラナイモノデア
ル、麥酒ヲ飮ンダ者ガ〓涼飮料水ニ移ッテ來ルト云フコトハ、衞生上カラ云ツ
テモ誠ニ歡迎スベキコトデアルンダ、斯樣ナモノヲ課稅物件トスルト云フコ
トハ甚ダ不穩當デアル、斯ウ云フ意味ニ於テ〓涼飮料稅法ヲ否決スベシト云
フコトヲ主張サレタノデアリマス、表決ニ付シマシタ所ガ、是ハ少數デ否決
ニ相成リマシテ、原案ガ成立、卽チ可決議了ヲ致シタノデアリマス、次ニ地
方稅ニ關スル法律案ニ付キマシテ討議ヲ開キマシタ所ガ、一委員ヨリシテ、
本案ニハ贊成デハアルケレドモ二箇ノ附帶希望ヲ附シテ贊成ヲシタイト云フ
コトデアリマシテ、其希望ノ案件ヲバ申サレタノデアリマス、第一ガ
地方稅制限外ノ賦課ハ國民負擔ノ過重ヲ來スノ虞アルヲ以テ政府ハ右制限
外ノ賦課ニ付キ特ニ嚴密ナル注意ヲ加ヘラレムコトヲ望ム
地方稅ノ制限外ノ賦課ト云フコトハ往々過重ヲ來ス虞ガアルカラシテ、此制
限外ノ賦課ニ付テハ大藏大臣、內務大臣ニ於テ十分ニ考究サレテ許可スルヤ
ウニ致サレタイ、斯樣ナルコトガ第一ノ希望デアリマス、第二ノ希望案件ト
致シマシテハ
今囘ノ國稅及地方稅整理ノ實施ニ伴ヒ市町村ハ其調査等ニ關シ負擔スヘキ
經費尠カラサルヘシ政府ハ市町村ノ負擔ノ苦痛ヲ輕減スヘク相當ノ措置ヲ
講セラレムコトヲ望ム
卽チ今囘ノ國稅整理ニ關シ、地方稅制ノ刷新ニ關シ、市町村ハ其調査等、卽
チ免稅點ノ調査ニ付キマシテ、負擔スベキ所ノ經費ガ少クハナイデアラウ、
政府ヨリ交付スル金ハアリマスケレドモ、市町村ニ於テモ尙ホ負擔スベキ經
費ガ多イノデアラウト思フカラ、政府ハ市町村ノ負擔ノ苦痛ガ輕減セラレル
ヤウニ、相當ノ措置ヲ取ッテ貰ヒタイト云フ希望デアルノデアリマス、尙此二
箇ノ希望ハ、委員會ノ希望ト致シマシテ、本議場ニ委員長ヨリ報告ヲ致サレ
タイト云フコトデアリマシテ、先ヅ此原案ヲバ表決ニ付シマシタ所ガ、原案
ハ全會一致ヲ以テ可決サレマシテ、次ニ此委員會ノ希望トシテ議場ニ紹介ス
ルト云フ點ニ付キマシテ、表決ヲ取リマシタ所ガ、是亦全會一致ヲ以テ可決
相成リマシタ、而シテ討議ノ際ニ何等ノ異議モ出マセズ、滿場異議ナク可決
イタシマシタ所ノモノハ、營業稅法廢止法律案、相續稅法中改正法律案、通
行稅法廢止法律案、酒造稅法中改正法律案、酒精及酒精含有飮料稅法中改正
法律案、麥酒稅法中改正法律案、醬油稅則廢止法律案、自家用醬油稅法廢止
法律案、賣藥稅法廢止法律案、織物消費稅法中改正法律案、骨牌稅法中改正
法律案、是等ノ十一ノ法案ハ何等ノ意見ノ提出モナク、全會一致ヲ以テ原案通
リニ無修正デ、可決相成リマシタ、右ハ大體特別委員會ニ於ケル所ノ經過竝
ニ結果デアリマス、此段御報告ヲ申上ゲマス
〔拍手起ル〕
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=32
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033・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 唯〓前田特別委員長ヨリ御報告ニナリマシタル
中ニ、委員會ニ於テ政府ニ對シテ希望ヲ御決議ニナリマシタモノガ四ツアッタ
ノデアリマス、此四ツノ御希望ニ對シテハ、政府ハ十分ニ考慮イタス考デア
リマス、此段言明ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=33
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034・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 休憩ヲ致シマス、午後ハ一時半ヨリ開會イタ
シマス
午後零時四十三分休憩
市立小小山〓
午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
本日大正九年ニ於ケル尼港事變及「オコーツク」事變ノ爲損害ヲ被リタル者
ノ救恤ニ關スル法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ
如シ
委員長候爵四條隆愛君副委員長男爵坂本俊篤君
本日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
日本興業銀行外二銀行ノ對支借款關係債務ノ整理ニ關スル法律案可決報
告書
關稅定率法中改正法律案可決報告書
大正九年ニ於ケル尼港事變及「オコーツク」事變ノ爲損害ヲ被リタル者ノ
救恤ニ關スル法律案可決報告書
HUITOUN南山吉木発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス
;発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=36
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037・前田利定
○子爵前田利定君 私ハ午前ニ於キマシテ稅制整理諸案ノ特別委員長トシテ
ノ報告ヲ致シマシタガ、尙ホソレニ追加シテ議場ニ御報告ヲ致シタ方ガ皆サ
ンノ御參考ニナルカト考ヘマス點ヲ、此際、補充シテ申述ベタイト思ヒマス、
頗ル簡單ナコトデゴザイマスルカラ、自席ニ於テ發言スルコトノ御許シヲ得
タイト思ヒマス、ソレハ地方稅ニ關スル法律案ノ討議表決ノ際ニ、委員會ノ
附帶希望トシテ本議場ニ紹介サレタシト云フ附帶希望ノ議決ニ付キマシテ
ハ先刻既ニ御報告ヲ致シタノデアリマス、其折ニ、本議場ニ委員長ヨリ報
告スルコトノ煩ヒハ掛ケナイケレドモ、斯樣ナル希望ヲ懷イテ居ルカラシテ、
之ヲ委員會ニ申述ベルト云フコトデ、一員ヨリ左ノ希望ノ演述ガアリマシタ、
第一ハ、「政府ハ地方財政ノ整理緊縮ニ關シテ更ニ一層ノ努力ヲ望ム、殊ニ市
町村義務〓育費國庫負擔額增額セラレムトスル際尙更其必要ヲ認ムルモノナ
リ」、是ハ市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律案ガ議決サレタ場合ニ於キ
マシテハ、其金額ガ地方ノ市町村ニ均霑ヲ致シマス事柄デアリマスカラ、左
樣ナ場合ニ於テハサラヌダニ地方財政ノ整理ヲ要スル時デモアルカラ、是
ガ無意義ニナラヌヤウニ、十分ニ注意シテ貰ヒタイト云フノガ此希望デアリ
マス、第二ノ希望ハ、「地方雜種稅ハ更ニ一段ノ整理ヲ要ス、雜種稅中自動車
稅ノ重課ハ交通ノ發達ニ至大ノ影響ヲ來スベキヲ以テ政府ハ右ニ關シ適當ナ
ル考慮ヲ拂ハレムコトヲ望ム」、此意味合ヒハ地方ノ雜種稅ハ更ニ一段ノ整理
ヲナス必要ガアルト思フ、殊ニ其中デモ自動車稅ノ重課ハ交通ノ發達ヲ阻礙
スルカラシテ、此點ニ付テハ政府ハ適當ナル考慮ヲ拂ッテ貰ヒタイト云フ趣旨
デアリマス、此二ツノ希望ハ單ニ委員會ニ於テ述ベラレタ迄ニ止マッタコトデ
アリマスケレドモ、特別委員ノ一員ニシテ斯カル希望ヲ持ッテ居ッタト云フコ
トヲ、此議場ニ報告スルノ義務アリト信ジマス故ニ、此補充的報〓ヲ致シテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通告ニ依リマシテ質疑ヲ許シマス、地租條
例中改正法律案ニ付テ小林嘉平治君ノ質疑ガゴザイマス、小林君ノ發言ヲ許
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=38
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039・小林嘉平治
○小林嘉平治君 此重要法案ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 登壇ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=40
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041・小林嘉平治
○小林嘉平治君 チヨット此處カラ要望スルコトガアルノデアリマス······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) ドウ云フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=42
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043・小林嘉平治
○小林嘉平治君 此重要法案ヲ議スル際ニ、一人ノ國務大臣ノ御出席ノナイ
コトハ如何デスカ、ドウカ一ツ、ドナタデモ、政務多端ノ際デアリマスケレ
ドモ、代表的ニ御出席ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林君ニ伺ヒマスガ、國務大臣ノ出席ヲ待ッテ質疑
ヲナサイマスカ、或ハ國務大臣ノ出席ヲ待タズシテ委員長ニ對スル質疑ヲナ
サイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=44
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045・小林嘉平治
○小林嘉平治君 唯〓カラソレデハ質問ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林君ノハ委員長ニ對スル質疑ト議長ハ心得テ居
リマス、ソレデモ矢張リ國務大臣ノ出席ヲ求メマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=46
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047・小林嘉平治
○小林嘉平治君 私ハ國務大臣ニ向ッテモ質問イタシタイノデアリマス、又併
シ今日必シモ御答辯ヲ要求イタシマセヌ、ソレデアリマスルカラシテ筆記ヲ
通シテ御答辯ヲ得タラ宜イノデアリマスカラシテ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林君ノ御登壇ヲ望ミマス
〔小林嘉平治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=48
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049・小林嘉平治
○小林嘉平治君 本日茲ニ、多年ノ懸案デアリマシタ重要ナル稅制整理ノ法
案ガ、現內閣ノ手ニ依リマシテ解決セラルルコトハ私共ノ最モ喜ビトスル
所デアリマス、殊ニ委員諸君ニ於カセラレマシテ、現下ノ政情ニ鑑ミテ衆議
院ノ修正案其儘ヲ受入レラレタト云フコトハソコニ深キ御苦心ノ存スルコ
トヲ認メテ居ルモノデアリマス、此意味カラ申シマシテ、私ハ玆ニ質問スル
コトヲ遠慮イタサウトモ思ウタノデアリマスガ、私ハ政府ノ取扱ハルル如ク
此稅制整理問題ハ打切ッタト云フヤウナ、簡單ナ問題デハアリマセヌ、私ハ爲
政者トシテハ不斷ノ努力ヲ要スル、〓究ヲ要スル問題ナリト認メテ居リマス、
殊ニ此稅制案ノ決議サレタ結果、營業收益稅ハ大正十六年度カラ實行サルル
コトニナッテ居ル、此收益稅ニ對シテハ先刻委員長ノ御述ベニナッタヤウナ、
色〓ト重要ナ、私共ガ見テモ尤ト感ズルヤウナ希望條件モ附イテ居ルノデア
リマス、必ズ之ヲ實行サルルニ當リマシテハ、相當ノ考慮ヲセラルルコトモ
·····又地租條例ノ案ニ付キマシテハ、政府ハ之ヲ賃貸價格ニ改メテ、十七年度
ヨリ實行サレルコトニナッテ居ル、マダ實行サルル迄ニハ二年餘地ガアルノデ
アリマス、又其地租ナルモノヲ、其總額ヲドレダケニ押へテ扱フベキカト云
フコトモ、私ハ大イニ考慮スベキデアルト思フ、殊ニ政府提案ノ趣旨ニ鑑ミ
マシテ、私ハ其總額ト云フコトニ付テハ、餘程考慮シテ行カナケレバナラヌ
ト思フ、從テ其課稅ノ率ニ付テモ愼重ナル考慮ヲ要スベキモノガアルト思フ
ノデアリマス、此機會ニ私共ノ所信ヲ語リ、私共ノ疑問ト致シテ居ル所ヲ申
述ベテ、政府ノ考慮ヲ煩ハスト云フコトハ最モ時宜ヲ得タルモノト考ヘル
ノデアリマス、私ハ營業稅ノ問題ニ觸レテモ質問イタシタイノデアルガ、此
點ハ委員會ニ於テモ相當注意ヲ拂ハレテ、其結果ニ於テモ希望條件ヲ附シテ
アル、ガ此多數國民ニ關係ヲ致シテ居ル地租ノ問題ニ付テハ比較的輕ク扱
ハレタヤウナ憾ミガアルノデアリマス、私ハ此點ヲ甚ダ遺憾ニ存ズルモノデ
アル、此地租條例ノ點ニ觸レテ自分ノ所信ヲ語ッテ、其疑ノ存スル所ヲ玆ニ申
述ベヤウト思フノデアリマス、衆議院ニ於キマシテモ、貴族院ニ於キマシテ
モ其委員會ニ於テ此一分減ヲ廢シテハナラヌト云フコトニ付テハ相當有
力ナル論議ガ重ネラレタヤウニ承知イタシテ居ルノデアリマス、而モ此二十
ニ餘ル諸案ノ中デ、唯此一案ダケ削ルノニデス、何ガ故ニ一分減ヲ廢スベキ
カト云フコトニ付テハ論議ガ重ネラレテ居ナイノデアリマス、何等ソコニ
理由ヲ見出サレナイノデアリマス、唯.衆議院ナリ又貴族院ノ委員會ニ於ケ
ル質問應答ニ依ッテ、多少ソコニ理由ノ存スルラシク見受ケルコトハ何デアル
カト云フト一分減ヲ廢シタ代リニ、國庫ノ負擔金ヲ一千万圓增シタノデア
ルト云フ、唯、是デアリマス、此問題ハ阪谷男爵ガ此間質問サレタ通リ、全
ク別種ノ問題デアル、其中ニ何等因果關係モ何モナイノデアリマス、或人ノ
說明ニ依レバ、一千万圓ノ國庫負擔金ハ、其一分ハ市ニ分配スル、九分ハ町
村ニ分配スルノデアル、ソレデアルカラシテ、此地租一分減ト相對シテヤッテ
モ宜イモノデアルト、斯ウ云フ論議ヲ爲サレル人ガアルノデアリマス、以テ
ノ外ノコトデアリマス、私ハ此間ノ阪谷男爵ノ質問ニ依ッテ、十分ニ言ヒ盡サ
レテ居ルト思ヒマスカラ、茲ニ重ネテ申上ゲマセヌガ、私ハ玆ニ數字ヲ擧ゲ
テ、サウシテ其論據ノ薄弱ナルコトヲバ、玆ニ言明シテ置カウト思フノデア
リマス、此前ノ國勢調査ノアノ時ヲ基礎ト致シマシテ、大正九年ニ於ケル
デス、田畑ヲ所有シテ居ル者ハ何戶アリマスカ、總戶數ハ四百八十六万一千
三百六十戶デアリマス、其中デ一町步未滿ノ土地ヲ持ッテ居ル者、卽チ今度ノ
自作農ニ依ッテ大體政府ハ一町步ト云フコトヲ以テ自作農ノ限度ト致シテ居
ルノデアリマスカラシテ、其一町步未滿ノ所有者ガ何人アルカ、三百五十七
万八千百六十六人、差引百二十八万三千百九十四人、ソレガ卽チ地租ヲ納メ
テ居ル者デアルノデアリマス、而モ其當時ニ於ケル日本ノ總戶數ハドレダケ
アルカ、一千百二十二万二千五十三人、卽チ總戶數ノ一割一分ニ當ル者ガ納
メル所ノ地租ヲ以テ、サウシテソレニ十倍スル所ノ者ニ代ッテ負擔シテ居ル、
御承知ノ通リ地方ノ〓育費ト云フモノハ戶數割ナンカト云フモノデ大分背
負ッテ居リマス、卽チソレニ十倍スル所ノ負擔ヲシテ居ッタ所ノ〓育費ニ充テ
ルト云フコトデアリマス、統計ハ斯ノ如ク、モウ玆ニ議論ノ餘地ハアリマセ
ヌ、ソレガドウシテ一千万圓ノ國庫負擔ヲ殖ヤスト云フコトト、地租一分減
ト交換スルコトガ出來マスカ、殊ニ此國庫負擔金ナルモノハ、私共丁度衆議
院ニ居ッタ當時ノコトデアリマシテ、三重縣ニ於ケル一村長ガ發議ヲ致シマシ
テ、國民ノ負擔ヲ輕減スルト云フ意味ヲ唱道イタシタノデアリマス、是ガ政
府ノ容ルル所トナッテ、サウシテ此國庫負擔金トナッテ現レテ來タ、デアルカ
ラシテ國庫負擔金ヲ出スノニハ、行政整理ノ結果、財政整理ノ結果、少クト
モ自然增收ニ依フテ之ヲ補助シテコソ、支出シテコソ、意味ヲ爲スノデアリマ
ス、今ノ政府ノ計畫ニ依レバ、一分減ヲ爲シテ、サウシテ今ノ財政ヲヤッテ行
キ得ル計畫ニナッテ居ッタ、爲スベカリシ此一分減ヲ爲サズシテ、一千万圓ヲ
增スト云フコトハ、一種ノ增稅デアリマス、地方費ヲ國費ニ移シタト云フノ
ニ過ギヌ、國庫負擔金ノ支出ト云フコトハ誠ニ是ハ可ナリデアリマセウ
ガ此意味カラ云ウテモ全ク無意味デアリマス、唯、玆ニ理由アリトシタナラ
バ、丁度一分減ハ九百六十万圓ニ當ノテ居ル、國庫負擔金ハ一千万圓デアル、
高ガ能ク似テ居ル、ヨンベ內ヘ這入ッタ盜人ハ此男ト顏ガ似テ居ルト牢屋ヘ
Hillツタヤウナモノデ、誠ニ氣ノ毒ナコトト私ハ思フノデアリマス、尙ホ私
ノ御尋ネ致シタイコトハ、此一分減ヲ廢スルニ當ッテ、負擔ノ均衡ト云フコト
ニ付テ相當考慮ヲ運ラサレタカドウカ、今度ノ廢減稅案ハ實ニ、社會政策ヲ
加味シテ負擔ノ均衡ヲ圖ルト云フ意味カラ拵ヘタト仰シヤルガ、能ク出來テ
居リマス、併ナガラ是ハ縱ノ言換ヘレバ農民ニ付テ、營業者ニ付テ考ヘレ
バ、同業者ニ付テ考ヘレバ、相當考慮ガ運ラサレテアル、負擔ノ均衡ヲ得ル
コトニナッテ居ル、累進率ヲ以テ進ムベキモノハ進ミ、比例率ヲ以テヤルベキ
モノハヤリ、相當改善ハ加ヘラレテ居ルノデアリマス、併ナガラ橫ノ均衡、
農民ト其他ノ營業者トノ均衡ハドウナッテ居ルカ、今度ノ豫算ノ跡ニ見マスル
ト云フト、地租輕減ニ依ッテ、大凡平年度ニ於テ五千七百万圓バカリヲ收入ス
ルコトニナッテ居ル、ソレデ營業稅ハ、其御附合デ五百万圓バカリ減ズルコト
ニナッテ居リマス、此意味カラ云ヒマシタナラバ如何ニモ橫ノ均衡ト云フコト
ニ相當考慮ガ加ヘラレテアルヤウデアル、サウシテ丁度營業稅モ、五千七百
万圓ニ似タ五千九百万圓位ノ所ガ押へテアル、假ニ此意味ニ於テ橫ノ均衡ト
云フコトガ考慮セラレテアルナラバ、地租ノ一千万圓減ト云フコトヲ廢スル
コトニ依ッテ、ドウナルノデアリマスカ、併シ私ハ斯ル橫ノ均衡論ハ論理ガ徹
底シナイ、斯ウ云フコトハ餘リ重キヲ置キマセヌ、私ハ所謂擔稅力ニ依フテ、
農民ト營業者トノ擔稅力ヲ根據トシテ、サウシテ均衡ヲ圖ルト云フコトガ必
要デアルト思フ、農民ノ百ノ力ノ者ニハ一割ナラバ十ヲ納メル、然ラバ營
業者ノ方モ、百ノ力ノ一割ナラバ十ヲ納メル、斯ウ云フ風ノ一ツ調査ヲセニ
ヤナラヌト思フノデアリマス、此點ニ付テ、委員會ニ於テハ相當考慮ヲ運ラ
サレタカドウカ、私ハ屢〓衆議院デモ貴族院デモ、此均衡論ヲ聽クノデアリマ
スルガ、併シ此橫ノ均衡ト云フコトニ付テ論議セラレタコトヲ、不幸ニシテ
聽カナイノデアリマス、委員會ニ於テハドウ云フ程度ニ之ヲ取扱ヒニナリマ
シタカ、此邊ヲ承リタイト思フノデアリマス、次ニ私ハ地方稅制限率ノ問題
ニ觸レマシテ質問イタシタイノデアリマス、御承知ノ通リ、地方課稅ノ制限
率卽チ附加稅ノ制限率ハ、現行率デハドウナッテ居ルカト云ヒマスト、田畑地
租ニ對シテハ府縣稅ハ百分ノ八十三、然ルニ營業稅デハ百分ノ四十一、課
稅率ガ半分以下ニナッテ居ルノデアリマス、市町村稅デハ左樣ナ隔リハ無イ、
田畑地租ニ於キマシテハ百分ノ六十六營業稅ハ百分ノ六十一ト斯ウナッテ居
ルノデアリマス、政府當局ノ說明ニ依リマスト、此稅率ト云フコトニハ手ヲ
觸レナカッタ、大體、以前ノモノヲ根據トシテ、政府ノ提案デモ多少數字ハ
直ッテ居リマスガ、ソレハ唯、率ヲ合ス爲ニヤッタダケデ、此根柢ニハ觸レ
テ居ラヌト斯ウ云フ御說明デアリマシタ、勿論修正案デハ現行率ニ引直シタ
ノデアリマス、一體此縣稅ナドニ於テ、地租ニ對シテハ百分ノ八十三ヲ課ス
ルノニ、營業稅ニ對シテハ百分ノ四十一ヨリ附加率ハ課セナイ、是ハ一體、
何處カラ來タンデス、何處ニ論據ガアルノデアリマスカ、私ハ曾テ四十一議
會デ此點ニ觸レテ、二囘ホド正式ニ質問ヲ繰返シテ見タコトガアリマス、政
府ノ答ヘル所ハ、從來ノ慣行ニ依リテト、是ダケデアリマス、私ハ此方ヘ參ツ
テカラ非公式ニ尋ネテモ、矢張リソレヨリ答ヘルコトガナイ、從來ノ慣行ニ
依リテ······是ハ何デアルカ、地租ハ封建時代カラ背負ッテ居ルモノデアルデ
アルカラ、少々今重イモノヲ課シテモ宜イ、營業稅ハ三四十年前カラノ稅率
デアルカラ、成ルベク輕クシテヤル、此慣行ヨリ外ニ無イノデアリマス、何
ニモ外ニ論據ハ無イ、先刻ノ委員長ノ報〓ヲ聽キマスト云フト、餘リ制限外
ノ課稅ヲセヌヤウニ注意ヲシテ貰ヒタイト云フヤウナ註文モ出テ居ルヤウデ
アリマス、尤モデアリマス、私モ贊成イタシマス、併ナガラ根本ニ於テデス、
何等論據ノ無イ斯カルモノガ未ダニ行ハレテ居ル、現政府ハ、大藏大臣ハ茲
デ說明サレテ、是マデノ稅制ハ過去ノ沿革ニ基クモノガ多イ、是ハ改メナケ
レバナラヌト云フヤウナ意味デ、隨分大膽ナル、勇猛ナル稅制ノ改革モ行ハ
レタノデアリマス、相當習慣ヅケラレテ、惡稅トハ云ッテモ、モウ既ニ良稅ト
ナッテ居ルヤウナモノデモ、打切ラレタヤウナモノモアル、又營業稅ニ於テ
モ是マデノ外形課稅ノ如何ニモ不當デアルト云フコトハ我〓常ニ唱ヘテ
居ノシ、ソレガ全ク根本カラ收益稅ニ改メラレマシタ、又此地租ノ方モサウデ
ス,其地價修正ト云フヤウナモノハ、我〓ノ先輩天春文衞氏ナドガ唱ヘラレ
タモウ議會始マッテノ問題デ、未ダ解決ヲシテ居ラヌ、非常ニ不公平デア
ル、併シ一擧ニシテ······實ニ私ハ敬服シマシタ、之ヲ賃貸價格ニ由ルコトニ
依ッテ、若シ是ガ地價修正ヲ今ヤルト云ッタナラバ、茲ニ二億圓ノ經費ガ要ルト
云フコトデアリマス、又六七年ノ期間ヲ要スルト云フコトデアル、然ルニ此
賃貸價格ニ改メルコトニ依ッテ、全クソレガ公平ニ、僅ナ勞力、僅カナ豫算デ
以テ、是ガ實行出來ルノデアリマス、私ハ實ニ此成案ニ敬服ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、此位ノ大改革ヲ行ハレタニ拘ラズ、此地方稅ノ制限率ニ觸レナ
カッタト云フコトハドウ云フ意味デアリマスカ、唯.百姓ハ封建時代カラ年
貢ヲ納メトルデト云フコトガ、是ガ原因ヲ爲シテ居ル、不平等ナル率デアリ
PX、私ガ斯ル論議ヲ爲シマスルノニハ相當數字上ノ根據ヲ持ッテ居リマ
ス、先刻來、私ハ橫ノ均衡ト云フコトニ付テ申上ゲマシタガ、實際ニ付キマ
シテ、ドンナ風ニナッテ居ルカ、實地ニ私ハ調ベテ見タノデアリマス、大藏
省、內務省、農林省方面デモ出來トルノカ知ラヌガ、存外、私等ニ御示シ下
サルモノガ出來テ居ラヌラシイ、巳ムヲ得ズ、私ハ理想トハ參リマセヌガ、
不完全ナガラ私等ノ縣ダケ調ベタ材料ヲ玆ニ持ッテ居リマス、私ハ此問題ハ多
年、自分ノ頭ニ持ッテ居ル問題デアリマスノデ、三重縣農會デハ、近年、數年
ニ亙ッテ之ヲ調ベテ居ル、最近ノ二箇年、十二年度ト、十三年度ニ亙ッテ玆ニ
調査イタシタモノガアリマス、私ハ之ヲ議長サンノ御許シヲ得テ速記錄ニ載
セテ置キタイ、結論ダケ申上ゲマスルガ、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、大
正十二年度ニ於ケル比例ヲ申上グスマト〓商業ガ百納メルモノデアリマスト、
工業ハ五十七、農業ハ二百二十六、商業ニ比シテ二倍二分六厘ノ多キヲ納メ
テ居リマス、十三年度ハドウナッテ居ルカ、商業ハ矢張リ百ト致シマシテ、工
業七十八、農業二百六十八、二倍六分八厘ト云フ重稅ヲ負ンデ居リマス、デ、
是ハドウ云フ風ニシテ調ベタカ、是ハ皆サンニモ私ハ御研究願ヒタイノデア
リマスノデ、詳シク申上ゲテ置キマス、是ハ先ヅ其負擔力、擔稅力ト云フモ
ノハ、所謂其者ガドレダケノ一年ニ所得額ヲ持ヲテ居ルカ、所得稅調査ノ結果
ニ依ル所ノ、其所得額ト云フモノヲ基礎ニ致シタノデアリマス、先ヅ今日ノ
場合ハ、之ヲ基礎ニスルヨリ外、途ガ無イダラウト思フ、ソレデ同ジ町村デ
殆ド同ジヤウナ所得稅ヲ納メテ居ル者ノ農工商ヲ取リマシテ、サウシテ是ハ
成ルベク多クノ町村ニ付テ見ルガ宜シイガ、調査ノ都合上サウ參リマセヌカ
ラ矢張リ六七箇村ニ付テヤッタノデアリマス、是ハモウ公平ナ立場ニ付テ
ヤッタノデ、此結論ヲ見出ス爲ニヤッタノデアリマセヌ、ソレデアリマスカラ、
私ハ此表ヲ速記ニ載セマシテ、皆サンニ同ジヤウナ意味デ御研究願ヒタイノ
デアリマス、斯ノ如クニシテ調ベタ結果ハ、今申上ゲタ通リデアリマス、ソ
レカラ又外ノ府縣ニ於キマシテモ、或ハ仙臺ノ稅務監督局デ、其縣下ノ、管
下ノ五縣ニ亙リマシテ、相當細カク調査ヲ致シマシタ、是モ大藏省カラ得タ
材料ヂヤナイノデアリマス、ソレニ依リマスト、收益ガ百圓ニ付キマシテ、
農ハ三十五圓六十五錢、其他ノ營業ガ十六圓八十錢、之ヲ率ニ致シマスト、
商ノ百ニ對シテ、農ガ二百二十ト云フコトニナッテ居リマス、其他、京都外數
縣ニ亙リマシテノ材料ヲ玆ニ持ッテ居リマスガ、大體ニ於テ、農民ノ負擔ガ二
倍以上デアルト云フコトハ、確ニ言明シ得ルノデアリマス、是ハ一ツ皆サン
方ニモ政府ハ勿論、商業會議所ナリ、農會ナリ、ソレ〓〓手ヲ經テ十分御
〓突置キヲ願ヒタイ、而モ農村ノ現狀ハ如何デアリマスカ、農村ト云フモノ
ハ昔カラ餘リ物質的ニ惠マレタ所デアリマセヌ、併ナガラ少クトモデス、
住ミ心地ノ良イ、至ッテ平和ノ泉ノ流レテ居ル所デアッタ、國民ノ根强イ力ガ
此農村ニ堅ク植附ケラレテアッタノデアリマス、然ルニ今日ノ現狀ハ如何デア
リマスカ、物質的ニモ、經濟的ニモ、精神的ニモ、實ニ混亂シタ狀態ニアル、
先刻社會局長ハ、近頃ハモウ勞働爭議ナンカト云フモノハ、大變以前トハ良
クナッタト仰シヤルガ、私ハ其呑氣ニ驚キマス、東京ハサウカモ分ラヌガ、地
方ニ行ッタラ決シテソンナモノデハナイ、所謂鬪爭ノ巷ト化シテ居ル、此間、
京都デ農民ノ組合ノ大會ガアッテ、三月十一日ト記憶イタシテ居リマス、其時
ノ決議ニ何ト書イテアル、闘爭ヲ以テ小作問題ヲ解決ス、斯ウ云ウヤウナ意
味ノコトガ、第一箇條ニ書イテアルノデアリマス、之ヲ事實ニ於テ行ウテ居
ルコトヲ、アノ文字ニ現ハシタノデアリマス、決議シテ、是カラヤラウト云
フノデハナクテ、實際鬪爭ヲヤッテ見タ所ガ、政府官廳ノ取締モ存外樂デアル
シ、農民組合ト云フ看板デ、順良ナル農民ハ這入ル者ガアリマス、斯ノ如ク
ニシテ、農村ノ現狀ハ全ク鬪爭ノ巷ト化シテ居ル、併シ私共ハ、農民組合ハ
如何ニ考ヘテ居ルカ、斯ノ如クニシテ彼等自身ヲ救フコトガ出來ルカ、鬪爭
ハ所謂破壞デアリマス、彼等ハ或ハ今一時ハデス、ソレデ大キナ顏ヲシテ氣
張ッテ居ルカ知ラヌガ、彼等ハ外デハ其鬪爭デ勝利ヲシテ居ルガ、家庭ニ歸ツ
タ時ハ結局、自分自身ガ苦マナケレバナラヌコトニナル、決シテ鬪爭ハ彼等
自身ヲ救フ途デハナイノデアリマス、先般大阪ニ於キマシテ、勞働農民黨ナ
ルモノガ出來マシタ、私ハ其宣言ヲ見マスルト云フト、流石ニ農民勞働黨ハ
ソレデモエライ、其宣言ニ依レバ我ガ國運ノ無窮ノ隆昌ト、社會文化ノ無限
ノ向上發達トニ貢獻セムコトヲ期スルモノデアル〓而シテ其手段トシテハデ
ス、飽クマデ公明正大ナル言論ト、合法的政治的運用、卽チ議會政治ニ依ッテ
邁進セムトスルモノデアル、是デナクテハナラヌノデアリマス、農民組合モ
宜シク此親分ニナラナケレバナラヌノデアリマス、併シ此勞働農民黨ノ生レ
タノハ皮肉デアリマス、衆議院ニ於テ血デ血ヲ洗フヤウナ爭ヲシテ居ル間
ニ、此勞働農民黨ハ安〓ト產聲ヲ舉ゲタノデアリマス、私ハ玆ニ深ク意味ノ
アルコトヲ痛切ニ感ジテ居ル、此安產ヲシタ子供ガ健全ナル發達ヲスルコト
ヲ希望シテ居ルガ、併シ彼等ノ取ルベキ手段ハ宣言ノ文字逋リ行カネバナラ
ヌノデアリマス、要スルニ、農村ハ今申上ゲタヤウナ憐レナル狀態デアリマ
ス、玆ニ於テカ
〔副議長侯爵蜂須賀正詔君議長席ニ著ク〕
政府ノ所謂社會政策ヲ加味シテ居ルト仰シヤル此稅制案モ、確ニ意義ヲ爲シ
テ居ッタ、更ニ自作農創定維持ニ付テノ茲ニ大本ヲ立テヽサウシテ玆ニ免稅
サルヽ所ノ斷案ヲ施サレル如キハ、非常ニ私ハ敬服イタシテ居ル、此自作農
創定ト云フコトハ隨分多年ノ問題デアリマス、是マデ躊躇シテ能ウヤラナカッ
タ、玆ニ自作農創定ノ旗印ヲ立テルコトニ依ッテ、農民ノ歸向スル所モ明カニ
ナッタノデアリマス、農村デハ或ハ今年ハ四分、來年ハ五分、其後ハ小作ノ作
リ取リナンカト云フコトデ、殆ド共產主義見タイナ宣傳ヲシテ居ル者モアッ
タ、今囘ノ計畫ハ小サイケレドモ、漸次大キクナラナケレバナラヌノデアル
ト思フ、非常ニ是ハ意味ノアルモノデ、衆議院ニ於テモ、貴族院ニ於テモ喜
ンデ之ヲ容レタコトハ私共深ク感謝スル所デアリマス、之ト同時ニ、此
分減ナルモノハ、橫ノ負擔ノ均衡ヲ得ル上ニ於テ意味ノ深イモノデアリマ
ス、嘗テ營業稅ニ對シテハ、加藤友三郞內閣ノ時代ニ一千九百万圓ノ減稅ヲ
サレタト記憶シテ居ル、今度ノ五百万ト合セテ、一一千四百万圓ニナリマスガ、
其間ニ農民ノ方ハドウデアッタカ、憲政會ハ其野黨デアッタ時代ニ、確ニ二分
減ヲ高唱イタシテ居。ッタ、所ガ、政友會ガ地租委讓ト云フ問題ヲ持出シテ今日
ニ至ッタ其結果、加藤友三郞內閣ニ於テモ爲スベカリシ所ノ地租輕減ヲバ、其
問題ノ決定セナイ中ニ今日ニ至ッテ出來得ナカッタ、憲政會ト致シテハ、私
恐ラク二分減ヲ實行スルノハ理想デアッタト思フ、併シ此負擔輕減ヲ意味シナ
イ稅制整理ニ於テ一分減ヲシタト云フコトハ、非常ニ意味ノ深イ、社會政策
ヲ實行スル上ニ於テ意味ノ深イモノデアッタノデアリマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
ニモ拘ラズ、此減稅ヲ廢スルコトニ於テ、何等適當ナル合理的ノ理由モ示ス
コトナクシテ、暗カラ暗ニ葬リ去ルトハ一體何事デアル、私ハ其點ニ付テ、
ドレダケ論議ヲ盡サレタカ、委員長ニ承リタイノデアリマス、私ハ先刻、政
府當局カラ答辯ヲ求メルヤウナコトヲ申シタガ、是ハ取消シテ置キマス、ナ
ゼナレバ、政府當局ニ答辯ヲ求メマシタ所ガ、既ニ斷案ハ定マッテ居ルノデア
ル、此結論ニ到達スル此申譯ヲ聽クニ過ギナイノデアリマス、私ハドウカ今
申上ゲタ意味ガ、相當考慮スベキ重大ナル意義ガアルモノト思召シニナリマ
スナラバ、今恐ラクハ是ハ貴衆兩院ヲ通ジテノ大疑問デアルト思フ、私
今御答ヲ求メヤウトシナイ、ドウカ今申上ゲタコトヲ一ツノ希望トシテ能ク
考慮サレテ、今申上ゲタ橫ノ均衡ト云フコトニ十分ニ調査ヲ下サレテ、サウ
シテ實現サルルコトニ依ッテ、私ニ答辯ヲシテ戴キタイノデアリマス、唯、私ハ
委員長ニダケ、今ノ御尋ネヲシタコトニ付テ御答辯ヲ御願ヒヲ致シテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=49
-
050・前田利定
○子爵前田利定君 唯今、小林君カラ縷々委員長ニ對シテ御質問ガゴザイマ
シタガ、大分長ク御演述ニナリマシタガ、其要點トスル所ハ、此度衆議院ノ
修正ニ依ッテ、政府ガ農民ノ負擔ヲ輕減スルベク企圖シタ所ノ地租一分減ト云
フモノガ無クナッテ、ソレニ代フルニ市町村義務〓育費國庫負擔法ガ改正サ
レテ、都合、豫算ノ二千万圓ヲ合セテ三千万圓ヲ補充スルト云フコトニナッタ
ガ.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 前田子爵、御發言中デゴザイマスガ、小林君ニハ
御聞エニナラヌカト思ヒマスガ、登壇ヲ煩ハシタ方ガ得策ト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=51
-
052・前田利定
○子爵前田利定君 宜シウゴザイマス
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=52
-
053・前田利定
○子爵前田利定君 地租一分減ト云フモノト、義務〓育費ノ國庫負擔ト云フ
モノトハ、性質ガ違ッテ居ッテ、何等地租一分減ニ代ルベキ農民ノ輕減ト云フ
コトハ實現サレテ居ラナイト云フコトガ、一ツデアッタト思ヒマス、今一ツハ
農業者ト商工業者トノ負擔ノ均衡ガ取レテ居ラナイ、縷々數字ヲ御示シニナ
リマシタガ、農業者ノ負擔ガ商工業者ヨリモ非常ニ過重ニナッテ居ル、ソレ等
ノコトガ特別委員會ニ於テ十分論議サレタカドウカト云フコトニ歸著スルデ
アラウト考ヘマス、足リマセヌデシタラ更ニ御質問ヲ願ヒマスガ、特別委員
會ニ於テハ左樣ナ論議ガゴザイマシタ、唯、午前ニ於キマシテ此演壇ニ報〓ヲ
私ガ省略イタシマシタノハ、時間ノ關係デ普ク特別委員會ニ現ハレマシタル
質問應答ヲ、漏レナク御報道イタスト云フコトハ、到底不可能ノコトデゴザ
イマスカラ、速記錄ニ就テ御精讀ヲ望ムト云フコトヲ以テ省キマシタ、第
點ノ、地租一分減及義務〓育費國庫負擔法中改正法律案ノ關係事項ニ付キマ
シテハ、或ル一委員ヨリ御質疑ガアリマシテ、ソレニ對シテ政府ノ應答ガゴ
ザイマシタ、ソレハ本案ノ特別委員會議事速記錄第二號ニ出テ居リマス、御
名前ヲ申シテモ差支ナイコトデアリマスカラ申上ゲマスガ、馬場鍈一君ノ質
問ガソレデアリマシタ、又第二ノ、農業者ト商工業者トノ均衡ガ取レテ居ラ
ナイト云フコトニ付テ質疑ヲ致サレマシテ、是モ同委員會ノ速記錄、議事速
記錄ノ四號ニ出テ居リマス、他ノ諸君ノ御質問モアッタカモ存ジマセヌガ、私
ノ記憶スル所ニ依レバ、矢張リ馬場君ガ質問サレテ居リマス、ソレカラ進ン
デ今囘ノ稅法整理ニ付テハ、一面ニ營業稅法ヲ廢メテ、營業收益稅法ヲ起シ
テ、商工業者ノ方ニ負擔ヲサシテアル、蓋シ是ハ一面ニ於テ農業者ニ對スル
地租一分減ト云フモノガアルカラ、ソレヲ見合シテ收益稅法ナルモノノ稅率
ヲ定メテアルノダト斯ウ思フ、サウデアルトスレバ、其相向合ニナッテ居ル所
ノ地租一分減ト云フモノガ無クナッタノダカラ、餘程商工業者ノ方ガ農業者ヨ
リ割ガ好クナッテ居ル、モット收益稅法ノ率ヲ上ゲタ方ガドウカト云フ、進ン
ダ御質問デアッタノデアリマスガ、唯今申上ゲタ是モ第四號ノ速記錄ニ載ッテ
居リマス、又此問題ヲ他ノ側面カラ御觀察ニナッテ御質問ニナッタ方ガアリマ
ス、ソレハ營業收益稅ト地租トノ關係ニ付テ御質疑ニナッテ居リマス、是ハ左
右田博士カラ質問サレマシテ、是モ同委員會ノ速記錄第七號ニ載ッテ居リマ
ス,其委員會ニ於テノ質疑應答ヲ更ニ玆ニ辯ジロト仰シヤレバ、速記錄ヲ持ツ
テ參リマシテ讀上ゲテモ差支アリマセヌガ、相成ルベクハ是ハ速記錄ヲ御精
讀ヲ願ヒタイト思ヒマス、但シ小林君御自身ガ御質問ニナル程、ソレ程切實
ノ深刻ナ御質問デアルカドウカハ、是ハ分リ兼ネマスガ、確カニ御希望ニ
ナッテ居ッタ點ニ付キマシテハ、遺憾ナク委員會ニ於テハ質疑應答ヲ重ネタ次
第デアリマス、右御答イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ニ伺ヒマス、阪谷男爵ハ地租條例中改正
法律案ニ付テ、政府ニ質疑ヲ通告セラレタト議長ハ考ヘマスガ、左樣デゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=54
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055・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 イヤソレハ違ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ノハ他ノ問題デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=56
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057・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 私ハ營業收益稅法第二條ニ於テ修正說ヲ提出イタシマ
ス、ソレカラ〓涼飮料稅法ト市町村義務〓育費ノ三簡所デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ先以テ便宜上、日程第十四ヲ議題ニ供シ、
第一讀會ニ於テ小林嘉平治君ノ通〓ガゴザイマスカラ、小林君ニ發言ヲ
唯今小林君ニ議長ハ發言ヲ許サウト存ジマシタガ、取消サレル趣デゴザイマ
ス、就キマシテハ日程第十四、地租條例中改正法律案ノ第二讀會ヲ開クコト
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=59
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060・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=60
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061・藪篤麿
○子爵數篤麿君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
南木小山事
〔山田惠一君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 少々御待チヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今問題ニ供シマスノハ、「地租條例中左ノ通改正
ス」竝ニ「第四條中「郡」及第三項ヲ削ル」、之ヲ問題ニ供シマス、原案ニ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ハ「第十三條ノ二」、是
ニハ山田惠一君ノ通〓ガゴザイマスカラ、山田君ニ發言ヲ許シマス、御登壇
ヲ望ミマス
〔山出惠一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=66
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067・山田惠一
○山田惠一君 私ハ所得稅法外二十一件ノ改正法律案ニ付キマシテノ特別委
員ト致シマシテ、此委員會ニ於キマシテ、地租條例第十三條ノ第二ニ向ッテ修
正案ヲ提出イタシタノデアリマス、然ルニ其意見ハ少數デ否決サレマシタ、
故ニ私ハ殘念ナガラ委員會多數ノ意見即チ原案ニ贊成ヲ致シタノデアリマ
ス、玆ニ於キマシテ一言政府ニ向ッテ希望ヲ述ベタイノデアリマス、諸君、近
來農村ノ振興、農村ノ發展、農村ノ救濟ト云フ聲ガ盛ンニ天下ニ唱道サルル
ヤウニナリマシタノハ、何ノ原因ガアルカト申シマスレバ、申ス迄モナク、
農村ノ疲弊困憊卽チ農村ノ衰微ノ結果ニ外ナラヌノデアリマス、農村ノ衰微
ノ原因ハ種々アリマスケレドモ、其主ナルモノヲ列擧スレバ、卽チ年々歲々
負擔ノ增加、物價ノ騰貴ト、之ニ伴フ所ノ生活ノ不安定デアリマス、又次ニ
ハ農業ハ他ノ商工業ニ較ベマシテ、其利益ガ甚ダ僅少デアリマス、故ニ農村
ニ於ケル所ノ子弟ハ、祖先傳來ノ職業タル此農業ヲ棄テマシテ、商業或ハ工
業ニ轉職ヲシ、又ハ都市ニ向ッテ頻々トシテ轉住スル者、其數少カラヌノデア
リマス、而シテ此農村ニ於ケル救濟ノ方法ト致シマシテハ、金融事業ノ改善
或ハ販賣組織ノ改善等モヤッテ居リマス、又一面ニハ農具ノ改良ヲ致シ、品種
ノ統一デアルトカ、或ハ肥料ノ共同購入及配合ノ指導、竝ニ共同作業或ハ耕
作地ノ整理等、經濟界ノ方面ニ向ッテ生產ノ增殖ヲ圖ルト共ニ、他面ニハ養
蠶、養鷄、畜產、果樹、蔬菜ノ栽培等ノ副業ノ奬勵ニ努メツツアリマス、然ル
ニ農村ノ骨髓トモ申シマスベキ中產階級、卽チ自作農ノ數ガ年々歲々減少ス
ルト云フコトハ、統計ノ示ス所デアリマス、加フルニ各地ニ小作問題ナルモ
ノ卽チ地主對小作ノ問題ガ益〓激シクナリマシテ、延イテ町村ノ自治制上ニ
マデ及ンデ居ルノデアリマス、昨年ニ於ケル香川縣ノ實例ヲ申シマスルナラ
バ、數人ノ地主カ數千人ノ小作人ノ脅威ヲ受ケタル所ノ事實、卽チ善通寺事
件或ハ伏石事件ト云フモノハ皆樣モ御承知ノ通リデアリマス、甚シキニ至
リマシテハ、地主ニシテ食糧ノ缺乏ヲ告ゲマシテ、商人ヨリ米穀ヲ買入レテ
生命ノ安定ヲ保ッテ居ル所ノ地主ガ、澤山ニアルノデアリマス、是ハ其勃發ス
ル所ノ以前ニ於キマシテノ注意ト取締トノ方法ヲ誤ッタモノト存ジマス、斯樣
ナル所ノ現在ノ有樣ヲ考ヘテ見マスルト云フト、實ニ國家ノ爲感慨ニ堪ヘラ
レヌノデアリマス、我國ノ健全ナル農村ノ發達ヲ圖リマスルノニハ、所謂脊
髓タル此農村ノ自作農ノ維持創設ニ依ラネバナリマセヌ殊ニ不健全ナル思
想ノ排除ヲ致シマスルノニハ、自作農ノ發達ニ俟ツノ外ハナイノデアリマ
ス、是本員等ガ屢〓政府ニ向ヒマシテ、自作農創定維持ト云フコトヲ請願シタ
ル所ノ所以デアリマス、然ルニ政府ハ財政經濟上ノ都合ニ依リ、今日マデ此
自作農創定維持ト云フコトノ目的ヲ達シ得ナンダノハ、實ニ遺憾ノ次第デア
リマス、幸ニ現政府ニ於カレマシテハ、吾人年來ノ宿望ヲ諒トセラレ、今囘
地租條例ニ改正ヲ加ヘ、地價二百圓未滿ノモノニ對シテ免稅サレルコトヲ本
議會ニ提出サレマシタ、是ハ從來營業者及ビ所得納稅者ニ免稅點ヲ設ケテアツ
タ如ク、農業者モ亦同樣ナル取扱ヲ受ケルコトニナッタノデアリマス、斯樣ナ
ルコトハ我〓農業ニ關係ヲ持ッテ居ル者ハ衷心感謝ノ至リニ堪ヘヌノデア
リマス、而シテ此改正案タルヤ、一度衆議院ニ提出サレマシテ、彼ノ如ク修
正サレマシタ、地租條例第十三條ノ二、「前條ノ規定ニ依リ地租ヲ納ムヘキ者
(法人ヲ除ク)ノ同一市町村內ニ於ケル田畑地價ノ合計金額其ノ同居家族ノ分
ト合算シ二百圓未滿ナルトキハ其ノ田畑ノ地租ヲ徵收セス但シ其ノ住所地以
外ノ市町村ニ於ケル田畑ニ付テハ此ノ限ニ在ラス」斯樣ナル案デアリマシタ
ノガ、次ノヤウニ修正サレテ居リマス、「同一市町村」ト云フ中ノ「同一」ト云
フモノヲ削リマシテ、「住所地市町村及其隣接市町村」ト改マッテ居リマス、又
「其ノ田畑ノ地租ヲ徵收セス」ノ「其ノ」ノ「ノ」ノ字ヲ除キマシテ、「命令ノ定ム
ル所ニ依リ」ト改マッテ居リマス、又但「シ其ノ住所地以外ノ市町村ニ於ケル」
ト云フ字ヲ削リマシテ、「小作ニ付シタル」ト改マッテ居リマス、此修正案ニ依
リマスト意味ハ廣汎ニシテ實ニ適切ナル法案ノ如キ感ジヲスルノデアリマ
ス、然ルニ實際ニ於キマシテ、此修正案ノ爲ニ免稅サルル所ノ自作農ニ對ス
ル所ノ範圍ガ却テ狭マッタノデアリマス、卽チ茲ニ例ヲ擧ゲテ申シマスレバ、
同一ノ市町村內ニ於テ百九十圓ノ地價ヲ有チ、隣接ノ市町村ニ於テ二十圓ノ
地價ヲ有ツ場合ト假定ヲ致シマスレバ、合計二百十圓ト云フモノニナリマス、
改正案ニ依リマスト、此二百十圓ナルモノハ免稅ノ恩典ニ浴スルコトガ出來
ヌノデアリマス、而シテ政府ノ最初ノ案ニ依リマスト、此二百十圓ノ中デ百九
十圓ト云フモノハ免稅ノ恩典ニ浴スルコトハ勿論デアリマス、「其ノ隣接市
町村」ノ七字カ挿入サレタガ爲ニ、恩典ニ浴スル者ガ減少スルト云フコトニナ
リマシタノハ誠ニ遺憾ナ次第デアリマス、政府ノ御意見ヲ伺ッテ見マスルニ、
隣接市町村ノ境ニ居住ヲシテ居ル者、又ハ隣接市町村ニ多額ノ地價ヲ有ツ場
合、無論二百圓未滿ノ時デアリマスガ、ソレハ改正案ノ恩典ニ浴スル者ガ多數
アルト云フ御見込ノヤウニ承ッテ居リマス、又此問題ハ數ノ問題デ、何レガ多
イカト云フコトハ不明デアルカラ、別ニ改正案ト最初ノ案トノ間ニ於テ、大
差ハナイヤウニ思フト云フ御答デアリマシタ、是ハ一應御尤ノヤウニ聞エル
ノデアリマス、元來農業ナルモノハ遠ク隔ツテ耕作シ得ルモノデハアリマセ
ヌ、又農業者ガ多ク村界ニ住ンデ居ルモノデモアリマセヌ、然ルニ斯樣ナ場合
ハ極ク極メテ少數デアリマス、然ルニ其少數ノ場合ヲ以テ多數ノ場合ヲ律セ
ラルルト云フコトハ、實ニ殘念ナ次第デアリマス、故ニ私ハ次ノ修正案ヲ提
出シタノデアリマス、「第十三條ノ二、前條ノ規定ニ依リ地租ヲ納ムヘキ者(法
人ヲ除ク)ノ同一市町村內ニ。於ケル田畑地價合計金額其ノ同居家族ノ分ト合
算シ二百圓未滿ナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ田畑ノ地租ヲ徵收セス、隣
接市町村ニ於ケル田畑地價ヲ合セテ二百圓未滿ナルトキ亦同シ但小作ニ付シ
タル田畑ニ付テハ此ノ限ニ在ラス」斯樣ナル修正案ヲ私ガ提出イタシタノデ
アリマス然ルニ先程申シマシタ如ク、委員會ニ於キマシテハ少數意見トシテ
否決セラレマシタ、本員ハ殘念ナガラ原案ニ賛成ヲ致スト云フコトヲ最初ニ
表明イタシタ次第デアリマス、故ニ私ハ此問題ヲ皆サンニ諮リマシテ復活ヲ
望ム者デモナイノデアリマス、併ナガラ此問題ハ實際問題ト致シマシテ、他日
ドウシテモ諸君ノ御諒解ヲ得テ、政府ニ向ッテ適當ナル時ニ於テ此法律ノ改
正ヲセラレムコトヲ希望シテ已マヌ者デアリマス、玆ニ私ノ希望ヲ申述ベル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 唯今問題ニ供シマシタ十三條ノ二、原案ニ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ハ「附則、本法ハ大正十
五年分地租ヨリ之ヲ適用ス」、之ヲ問題ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、之ニテ第二讀會ヲ終リマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=70
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071・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=71
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072・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 櫛笥子爵ノ直チニ第三讀會ヲ開クト云フ說ニ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
呈山川山市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
山东水车〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ日程第十七、營業收益稅法案ヲ議題ト致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=78
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079・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=79
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080・藪篤麿
○子爵藪篤麿君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
후보가호平山東発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス、本日阪谷男爵
ヨリ三十八名ノ贊成ヲ以テ營業收益稅法案ニ對スル修正案ヲ提出サレマシ
タ、修正案ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔成瀨書記官朗讀〕
營業收益稅法案ニ對スル修正案
右議院法第二十九條ニ依リ提出候也
大正十五年三月二十三日
發議者
男爵阪谷芳郞君
贊成者
男爵藤村義朗君男爵木越安綱君男爵藤田平太郞君
男爵高木喜寬君男爵立花小一郞君男爵沖貞男君
男爵關義壽君男爵千田嘉平君男爵大寺純藏君
男爵足立豐君男爵有地藤三郞君男爵渡邊修二君
男爵寺島敏三君男爵坂本俊篤君男爵小畑大太郞君
男爵安場末喜君男爵大井成元君男爵井上〓純君
男爵伊藤安吉君男爵高崎弓彥君男爵神山郡昭君
男爵金子有道君男爵加藤定吉君男爵千秋季隆君
男爵池田長康君男爵今枝直規君男爵黑川幹太郞君
男爵北河原公平君男爵紀俊秀君男爵船越光之丞君
男爵〓誠之助君男爵岩倉道倶君男爵上村從義君
男爵今園國貞君男爵北島貴孝君男爵上田兵吉君
男爵佐藤達次郞君男爵鍋島直明君
貴族院議長公爵德川家達殿
營業收益稅法案中左ノ通リ修正ス
第六條ノ二ヲ加フ
營業ノ純益算出ノ方法ニ付テハ大藏大臣ニ於テ重モナル商業會議所十箇
所以內ノ會頭ヨリ成ル委員會ヲ組織シ其ノ意見ヲ聽キ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
其ノ變更ヲ要スルトキ亦同シ
一、第十條中左ノ通リ修正ス
法人百分ノ三·六ヲ百分ノ二·六ト改ム
個人百分ノ二·八ヲ百分ノ一·八ト改ム
一、第二十五條ヲ左ノ通リ修正ス
收稅官吏ハ營業者ニ質問スルコトヲ得
收稅官吏ハ營業者カ速カニ質問ニ答ヘス又ハ答フルモ答辯要領ヲ得サル
トキハ營業者ノ營業ニ關スル帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ收稅官吏ハ帳簿物件檢査ノ必要ヲ認ムル理由ヲ具シ所
得稅調査委員會ノ同意ヲ得豫メ其旨ヲ營業者ニ通知スヘシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 先以テ阪谷男爵ノ提出セラレマシタ修正ヲ議題ト
致シマス、阪谷男爵ノ登壇ヲ望ミマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=84
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085・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 諸君今囘ノ稅制整理案ハ、決シテ滿足ナモノデハアリマ
セヌ、勿論先ヅ此程度ニマデ政府ガ稅制整理案ヲ纏メテ提出セラレタト云フ
政府ノ努力ハ多ト致シマスル、歷代ノ內閣ガ屢〓明言シテモ其明言通リ實現
シナカツタノヲ、免ニ角不完全ナガラ、此程度ノ稅制整理案ヲ提出セラレタト
云フコトニ付テハ、多ト致スノデアリマス、併シ甚ダ不備ノ點ガ多イノデア
リマスルガ、ソレニ加ヘテ衆議院デ修正ヲ加ヘラレタガ爲ニ、先刻來同僚ノ
小林君ナリ、山田君ナリカラモ、段々御意見ガ現ハレテ居リマス、是ハ不完全
ナガラ一通リ纒マッタモノヘ、後カラ傷ヲ付ケルト云フコトハ到底免カレヌ、
不備ナル點ガ現ハレテ來ルノデアリマス、而シテ稅制整理ノ一番ノ眼目、卽
チ多年ノ問題ト云フモノハ此營業稅ニアッタノデ、此營業稅ハ二十七八年日〓
役ノ結果、國帑多端ニシテ已ムヲ得ズ、其當時四ツノ國稅ヲ新ニ起シタノデ
アリマスガ、營業稅ハ矢張リ其時起サレタ一ツデアリマシテ、其時カラ今日
マデ苦情ノ絕エヌ、每年苦情ノ絕エヌ稅デアリマス、所謂惡稅トシテ常ニ其
聲ヲ絕タナカッタノデゴザイマス、故ニ現內閣ガマダ在野黨デアル時カラ、此
營業稅全廢ト云フコトニ付テハ、屢〓之ヲ標榜シテ政見ヲ爭ハレタノデアル
ガ、而シテ今ヤ朝ニ立ヲテ、其在野中ノ約束ヲ果サムトシテ、玆ニ營業稅法廢
止案ヲ提出セラレタノデアリマスガ、同時ニ營業收益稅法ト云フモノヲ共ニ
提出シタノデアリマシテ、甚ダ一方ノ看板ハ綺麗デアルケレドモ、ソレノ代
リニ又營業收益稅法ナルモノヲ以テシ、而モ其稅法ニ甚ダ不滿足ノ點ガアル
ト云フノカラシテ、未ダ政府ガ提出セラレザルニ先ダッテ、既ニ非難ノ聲ガ高
カッタノデアル、而モ政府ハ此營業收益稅法ノ成文ヲ世ノ中ニ示スコトガ、是
ハ別ニ故意デハナカッタノデアリマセウケレドモ、非常ニ議會ノ開會ニ切迫シ
テ示サレルト云フヤウナ譯デ、全國ノ營業者ハマダ能ク知ラナイノデアリマ
ス、從テ其非難ノ聲ガ先ヅ六大都市アタリカラ現ハレテ來タヤウナ譯ニナッ
テ居ルノデ、此節ニ至ッテ段々諸方カラ非難ノ聲ガ集マッテ居リマス、ソレハ
先刻前田子爵ヨリ詳細ニ委員會ノ經過ヲ報〓ニナリマシテ、我〓ノ說モ御述
ベ下サッタノデアリマスデ、略〓御承知デハアリマセウガ、先ヅ非難ノ點ガ稅率
ノ高イト云フコト、ソレカラ營業者ノ帳簿物件ノ調査ト云フコトガ殘酷デア
ルト云フコト、ソレニ今度新ニ收益稅トシテ加ハリマシタ純益ノ算出方法ト
云フモノガ、甚ダ心配デアル、純益ノ算出方法ト云フモノハ、新ニ加ハツタモ
ノデアリマスルカラ、能ク研究シタ營業者ノ外ハ、マダ氣ガ付イテ居リマセヌ
ケレドモ是ガ他日ハ帳簿物件ノ檢査ト同ジヤウナ非難ノ種ニナルト云フコト
ヲ、氣ノ付イタ營業者ハ憂慮シテ居ル、如何トナレバ、何ガ純益デアルカト
云フコトガ分ラナイ、法人會社デアリマスレバ、自ラソコニ一定ノ規定ガア
リマスルカラ、損益勘定ガ明カニ分ルノデアリマス、從テ其純益ト云フモノ
モ明ニ分ルノデアリマスルガ、個人ノ營業ト云フモノニハ、純益ヲ見ルコト
ガ甚ダムヅカシイノデ、大キナ個人ニ致シマシテモ、相當ナ個人、富豪ト云
ハレル人ニ致シマシテモ、恐ラクハ帳簿ガ······純益ト云フモノガ、收稅官吏
ガ望ムガ如クニ揃ヲテ居ルノガ少ナイト云ッテ宜カラウト思フ、況ンヤ中以下
ノ相當ナル帳簿ヲ備フルコトノ出來難イ商人ニ至リマシテハ、此營業純益ト
云フモノヲ算出スル方法ニ付テ、餘程非難ノ聲ガ起ルデアラウ、例ヘバ、番
頭ノ留守ニ息子ガ番頭ノ代リヲシタ、其息子ガ只デ働クカ、其給料ヲ見ルカ
ト云フヤウナコトモ、甚ダ面倒イ、唯是ハ一例デアリマスケレドモ、收稅官
吏ハ息子ガ番頭ノ代理ヲシテモ、番頭ノ給料ヲ見ヌデアラウ、營業者ノ方ハ
番頭ヲ置ケバ番頭ノ給料ガ要ル、其代リニ息子ガ代理ヲシタノデアルカラ、
無論營業費ト見ルト云フヤウナ、此類ノ事ガ頻々ニ起ルノデ、ソコデ私ノ提
出イタシマス所ノ修正案ハ、今更此稅法整理ヲ全部動カスト云フコトハ、迚
モ出來ルコトデナシ、ソコデ多年ノ懸案デアル營業稅ノ問題ニ付テ相當ナ修
正ヲ加ヘ、而モ其修正ハ政府ノ豫算ニ關係モナク、極メテ穩健ナル修正ヲ加
ヘラ、玆ニ營業稅ニ付テノ問題ヲ全ク解決シタイト云フノガ、モウ單純ナ私
ノ希望ナノデ、政治上ニハ幾多ノ問題ガ、幾年モ引懸ッテ居ルコトガアリマ
ス、地租ノ問題モ、議會開會ノ初メカラ長ラク地租ノ問題ガ引懸,テ居リマ
シタガ、ソレガ或ル時期ニ一應解決シマシテ、近年ニ至ノテ又山田君小林君
ノ御說ノヤウニ、再ビ其問題ガ起リマシタケレドモ、地租ノ問題ト云フモノ
ハ實ハ矢張リ解決シテ居。ッタノデアリマス、ト申スヤウニ此政治上ノ問題
ハ或ル場合ニハ解決ヲ著ケナケレバナラヌ、ソレガ又後ニ再ビ解決ヲ要ス
ルヤウナ場合ニハ、又其時ニ相當ナ解決ヲ著ケテ、卽チ政府ノ今度ノ稅制整理
ノ目的ハ營業稅ノ解決ヲ著ケルト云フノガ、主ナル目的デアルト見ナケレバ
ナラヌ、又我〓モサウ信ズルノデスガ、其目的ガ達セラレヌナラバ、此度ノ稅
制整理ト云フモノノ殆ド半分ハ、其意味ヲ失ッテシマフコトニナルノデ、而モ
今日ノ勢ヲ以テ見マスト云フト貴族院ガ此稅法ヲ可決シテモ明日カラ直グ
ニ又改正トカ色〓ナル苦情ガ始マリサウデアル、デ、私ノ修正ハ、條文ハ三ツ
ニナッテ居リマスケレドモ、簡單ニ申セバ能ク御分リニナルト思ヒマスガ詰
リ此營業稅ト云フモノニ今日非難ガアルノハ、營業者ト收稅官吏トノ間ニ意
思ヲ疏通スル機關ヲ缺イテ居ル、其意思ヲ疏通スル機關ヲ玆ニ一ツ設ケタラ
宜カラウト云フノガ、私ノ修正案ノ目的ノ一ツナンデス、卽チ其意思ヲ疏通ス
ル機關トシテ、商業會議所ト云フモノガ、全國ノ營業者、詰リマア代表的ノ機
關、法律ヲ以テ完全ニ組織セラレテ居ル機關デアリマスルカラ、此商業會議所
ヲ一ツ使ッテ見ヤウ、卽チ全國ノ主ナル商業會議所十箇所以內カラ、其會頭ヲ
指名イタシマシテ、一ツノ委員會ヲ組織シテ、面倒ナ問題ニ對シテハ、其委員
會ニ聽イテ捌イテ行ッタラ宜カラウ、デ、會議所ノ頭取ハ皆歷々タル立派ナ人
デ、所謂其地方······其地ノ紳士デアリマスカラシテ決シテ政府ニモ偏セズ、
又營業者ニモ偏セズ、公平ナル態度ヲ執ッテ居ル方〓デアル、現ニ仲裁ナドノ
問題ハ商業會議所ガ捌クノデアリマスガ、サウ云フ一ツノ機關ヲ作ルト云フ
コトハ稅ヲ取ル方カラモ便利、納メル方カラモ便利、色〓ナル不平ヲ稅務署
ヘ持ノテ行ッテモ、忙シイカラ收稅官吏ハ能ク聽イテクレナイ、商業會議所ヘ行
ッテ聽ケバ、豫テ懇意ナル人デアル、自分ノ信ズル人デアリマスカラ、能ク其話
ヲ話シテクレル、又分ラヌコトハ役所ヘ行ッテ聽イテクレルト云フヤウナコト
デ、所謂意思ガ疏通スルノデス、近來ノ總テノ立法ハ、所謂民衆化······民衆化
スルト云フコトノ傾ヲ持ッテ居リマス、例ヘバ最モ官僚式デアルベキ···JR.
官僚式デアルベキ裁判所ニシマシテモ、今日モ既ニ日程ニ上ッテ居ル如クニ
商事調停法ト云フヤウニ、何等裁判官ノ資格ノナイ者ガ加ハッテ調停シテ、ソ
レデ正式ノ裁判ニ代フル、最モ簡便ニシテ意思ガ能ク疏通シテ、誠ニ雙方滿足
スルドウシテモ解決ガ著カヌ場合ニハ、之ヲ初メテ正式ノ裁判ニ持ッテ行ク
ト云フヤウナ譯デ、裁判所スラ近來ハ卽チ民衆化ヲ努メラレテ居ルノデアリ
マスカラ、此稅法ノ上ニ於テモ、成ルベク營業稅ノ如キ面倒イ稅ハ、苦情ノ
多イ稅ハ、民衆化スル方ガ、政府モ便利デアリ、又納稅者モ便利デアル、故
ニ第六條ニ一項ヲ加ヘテ、卽チ商業會議所十箇所以內ノ頭取カラ成ル委員ヲ
組織シテ、之ニ純益算出方法ヲ諮詢シテ、其意見ヲ聽イテ之ヲ定メルト云フ
風ニシタラバ宜カラウト云フコトヲ、一箇條入レタイ、ソレカラ第二ニハ
稅ガ何分高イ、高イト云フ苦情ガ非常ニ多イノデアリマシテ、續々私等ノ所
ニハ書面ガ參リマス、試ニ其一ツヲ御紹介イタシテ見マス、是ハ如何ニ勉强
勤勉ナル商業家ノ人〓ガ、ドウ云フヤウナコトヲ感ジテ居ルカト云フコトノ
一端ヲ示スコトガ出來ルデアラウト思ッテ、其爲ニ之ヲ御紹介イタシテ見マ
ス是ハ澤山ノ本員ナドノ受取ッテ居リマス陳情書ノ一ツデアリマス營業收
益稅法案中削除修正ニ關スル陳情書、是ハ營業收益稅法案削除修正ニ關スル
東京市各區聯合會、是ハ東京市各區聯合會ノ提出ニナッテ居リマスガ、此類ノ
モノデ個人トシテ出シテ居ルモノハ、モウ續々アリマス、ソレ等ヲ悉ク御紹
介スルコトハ出來マセヌガ、此東京市各區聯合會ノ意見書ハ、蓋シ全國ノ營
業者ガ此營業收益稅ニ付テ如何ナル感ジヲ持ッテ居ルカト云フコトノ一端ヲ
示スモノト、本員ハ考ヘル、「今期議會ニ於テ既ニ衆議院ヲ通過シ目下御院ニ
於テ特別委員ノ御審議中ニ有之候營業收益稅法案ハ一般商工業ニ重大ナル利
害關係アリ全國商工業者ハ睜目シテ御院ノ愼重ナル御審議ヲ凝視致シ居ル所
ニ御座候、蓋シ該法律案ハ現行營業稅法ガ商品ノ賣上高ニ課稅スルヲ原則ト
スル立法ヲ變改シテ收益高ニ賦課スルモノニ有之或ハ商工業者ノ負擔ヲ多少
輕減スルガ如ク認メラルル筋モ有之候得共、實際ハ全ク正反對ニ相成リ却テ
負擔ヲ增嵩シ稅率ハ高ク徵稅法ハ現行法ヨリモ一層煩瑣ト苛察ヲ極メ又法人
ノ課稅ニ比シ個人營業者ニハ種々ノ點ニ於テ不公平ニ陷リ候殊ニ地租額及資
本利子稅額ヲ收益稅額ヨリ控除サルベキ恩典ヲ獨リ法人ニノミ與ヘテ個人營
業者ニ及ボサズ、爲ニ大會社ト個人營業者トノ間ニ甚ダシキ負擔ノ不均衡ア
ラシムル如キハ特ニ御院ノ十分ナル御審議ヲ俟ツ所ニ有之候然ルニ一般商工
業者ガ最モ危惧致シ居リ候ハ本法案ガ現行法ヨリモ賦課徵收上特ニ苛辣峻嚴
ナル條文ヲ挾ミ忠良ナル納稅者ガ脫稅ノ意圖ヲ逞ウスル如ク猜疑ノ豫防線
ヲ張リ只商工業者ノ品位ト公權ヲ侮蔑スル結果ト相成リ居ル點ニ有之候、若
シ斯ル苛酷ナル立法ガ制定セラレムカ一般營業者ト收稅官吏ハ常ニ衝突シ
紛糾ト葛藤ハ停止スル所無之眞ニ國家ノ爲ニ憂虞ニ不堪候、卽チ同法第二
十五條、「收稅官吏ハ營業ニ關スル帳簿物件ヲ檢査シ又ハ營業者ニ質問スル
コトヲ得」トアリ又之ニ關聯シタル第二十八條、第二十九條、第三十條及第
三十一條ニ至ル各條文ハ實ニ納稅者ノ公德心ヲ毀損シ且ツ其反感ヲ激發セシ
ムルト共ニ收稅吏ノ職權濫用ヲ誘發スルニ過ギズ、殊ニ「十四歲以下ノ兒童
ハ罰セス」ト云フ刑法ノ明文ヲモ本法ニ適用セザルガ如キ從來ノ徵稅法ニモ
未ダ曾テ見ザル處ノ苛烈辛酷ナル規定ニ有之要スルニ甚大ノ不安ト壓迫ヲ一
般營業者ニ加フル不穩當至極ノ稅法ニシテ之アルガ爲ニ何等徵稅ノ能率ヲ保
障スルモノニアラザル事ト被存候何卒官民融和ノ大本ニ鑒ミラレ御院ニ於
テ細心ノ御詮議ヲ加ヘラレ削除御修正被成下度謹テ及陳情候也」、茲ニ今朗讀
イタシマシタ事柄ハ、中ニハ間違ッテ居ル點モアルヤウニ思ヒマスルガ、此陳
情書ヲ出シタ人ノ心配ト其衷情トハ大イニ察セナケレバナラヌ、是等ノ人ガ
孜々汲々働イテクレマスカラ東京ノ復興モ出來ルノデス、十二年ノ九月大震
火災デ橫濱モ東京モ殆ド全滅、剩ヘ保險料ハ一文モ取レズ、再ビ日本ハ立ツ
コトガ出來マイ、モウ日本ニ對スル所ノ軍備縮小ノ考ハ不必要ニ屬スルト迄
海外ノ新聞ニ出タノデアリマス、然ルニ是等ノ營業者ガ震災ニモ屈セズ、火
災ニモ負ケズ、誠ニ僅少ナル保險會社ノ涙金ノミヲ以テ、粗末ナル「バラック」
ノ中デ孜々汲々トシテ此帝都ノ復與ヲ計ッテ居ル、是等ノ勇氣アリ誠意アル營
業者ガアレバコソ、日本モ繁昌イタシ、國防モ充實スル譯デアルノデス、ソレ
等ノ人ガ窮餘訴フルニ所ナクシテ、貴族院ノ反省ヲ求メテ來タ手紙デアリマ
スカラ、是ハ何卒一片ノ涙ヲ呑ンデ諸君ガ御聽キ下サルコトヲ、私ハ是等ノ
營業者ニ代ッテ申述ベルノデアル、實ニ氣ノ毒ナモノデアリマス、然ルガ故
ニ、然ルガ故ニ私ハ此修正案ヲ提出シタノデアル、假令此演壇デ一人デアッテ
モ、私ハ此事ハ言ハナケレバナラヌ、貴族院議員トシテ陛下ノ恩命ヲ蒙ッ
テ居ル以上ハ、一人ノ······陛下ニ對シテ怨ム者ナカラシムヤウニ努メルノガ、
貴族院議員トシテノ職責デアル、故ニ私ハ今日ハ一人此處デモウ討死ヲスル
覺悟デ此演壇ニ立ッタ、幸ヒ同僚三十八人ノ御方ガ私ノ修正ニ贊成ヲ下スッタ
カラ、玆ニ修正案ヲ提議スルコトガ出來ルノデアリマス、諸君、決シテ此貴族
院ハ輕々ニ事ヲ議シテハナラヌ、思想ガ險惡デアルトカ、色〓ナコトヲ云フ
ケレドモ、禍ノ根本ニ對シテ自分ノ熱誠ヲ盡シテコソ、始メテ國民ガ滿足シ、
危險思想ト云フモノモ茲ニ熄マルモノデアル、モウ既ニ衆議院ガ通過シタカ
ラドウノ斯ウノト云フヤウナコトデナイ、斯ノ如クニ憐レナル陳情ニ對シテ
ハ諸君ハ宜シク一片ノ淚ヲ持ッテ宜シイノデアル、而シテ本員ノ提出シタ修
正ハ何處ニ差支ガアルカ、先刻前田子爵ガ述ベラレタ希望條件ト何處ガ達ツ
テ居ルカ、委員長自ラモデス、別ニ違ッテ居ル所ガ無イ、唯、法律ニシナイ方ガ
宜カラウト云フノデアリマスルガ、先刻總理大臣ガ諸君ノ希望ニ副フヤウニ
努メタイトタッタ一言、一言ノ此保證デ以テ、多數ノ營業者ニ安心ヲ與ヘ得ル
ヤ否ヤ、若槻總理大臣ノ內閣ノ永續セムコトハ本員ノ望ム所デアリマスルガ、
近來ノ內閣ノ變動ヲ顧ミマスルト云フト、十六年度、卽チ此稅制ノ施行セラ
ルル時ニ、此演壇デ若槻總理大臣ニ御目ニ掛ルコトガ出來ルヤ否ヤ、是ハ餘
程危イ、私ハ御目ニ掛カルコトラ望ムノデアリマス、望ムノデアリマス、併
ナガラ甚ダ危イノデアル、デ、又政府ガ唯努メル、努メルト言ッテ見タ所ガ、
此營業稅ガ多ク取ラレタノハ、稅率ガ高クテ取ラレタノカ、自然ノ增收デ取
ラレタノカ、是ハドウモ中〓區別ガムツカシイコトデアル、故ニ既ニ玆ニ政
府ノ調ベモアリ、又商業會議所ト云フ法律ヲ以テ組織セラレタル信用スベキ
團體ノ調ベモアッタ、其調ベト調ベガ相一致セヌ場合ニ於テハ一種其中間ノ
所ニ於テ相當ナル稅率ヲ定メテ、若シ稅ガ思フ通リ取レヌト云フ場合ニ更ニ
增シテ宜イ譯デアル、此希望ナルモノハ、タント取レタラ減ジテヤラウ、ソ
レデハドウモ決シテ貴族院トシテ國民ニ臨ム所以デハナイ、稅ハ一錢デモ輕
イ方ガ宜イ、旣ニ多ク取レ過ギルト云フ望ミガアルナラバ、稅率ハ輕クシテ
置イテ、他日足リヌ時ニ之ヲ增シテ取リサヘスレバ、一向國民ト云フモノハ、
自分ノ背負ッテ居ル國家デアリマスルモノヲ、何デ稅ヲ否ムモノデハゴザイマ
セヌ、、既ニ十六億ノ豫算ト雖モ國民ハ負擔シテ居ルノデアル、然ルニ今申ス如
キ憐レナル營業者ヲ摑ヘテ、足モ腰モ痩セコケテ働イテ居ルヤウナ營業者ヲ
摑ヘテ、多過ギル時ニハ止メテヤラウト云フヤウナ希望ヲ言ッテ、總理大臣モ
成ルベク希望ニ副フヤウニト云フノハ、私ハ甚ダドウモ不親切極マル議場ノ
狀態デハナイカト思フノデアル、故ニ私ハ諸君ガ委員會デ決シタコトデアル、
委員會ノ多數ガ決シタコトデアルカラ、委員長ニ對シ又委員會ニ對シテ敬意
ヲ拂ハレルト言フコトハ尤モデアリマスケレドモ、ドウゾ是ハモウ一步御考
ヘニナッテ、修正ニ御同意下サルコトヲ望ムノデアリマス、之ヲ修正シテモ何
等豫算ニ今日ハ關係ハ無イ、十六年カラ實施スルノデス、十五年度豫算ニ關
係ハ無イ、而シテ二ツノ修正ナルモノハ極メテ穩健ナ、唯、稅法ヲ民衆化シヤ
ウ、商業會議所ト云フモノノ意見ヲ聽クガ宜イ、所得稅調査委員ノ意見モ聽
イテ、成ルベク同ジ五千万ナリ六千万ナリ取ルモノナラバ、同ジク穩カニ取ツ
タラ宜イヂヤナイカ、權柄腰ニ押付ケテ取ルヨリモ、人民ガ喜ンデ笑ッテ出ス
ト云フ方ガ、國政ヲ料理スル上ニ於テ結構ナコトデナイカ、斯ウ云フ丈ノ修
正デアルノデスカラ、本員ノ提出イタシマシタ······今三十八人ノ諸君ノ御同
意ヲ得テ提出シタ此修正案ニ、御同意ニナッテ何等差支ナイ、而シテ二ツノ希
望ト云フコトト、本員ノハ其希望ヲ唯、法律ノ文ニ直シタイト云フ丈デアル、
意思ハ一致シテ居ルノデアル、單ニ形式デアル、其形式デアルガ、而モ其形
式ノ結果ガ重大ナ差ガアルノデアリマス、デ、唯今議場ヲ見渡シマシテ、本員
等ニ對シテ此營業稅ノ苦情ヲ訴ヘラレタ實業家諸君ガ澤山御出デニナル本
員等ヘ屢〓營業稅ヲ改正スベシト云フコトヲ御述ベニナッタ御方ガ澤山ニア
ル、ソレ等ノ方〓ハ、中ニハ特別委員會ニ於テ確ニ御贊成ヲ得ルト思ッタ諸君
ガ御立チ下サラナカッタト云フコトハ、甚ダ本員ハ遺憾ニ存ジマス、今本員ガ
熱血ヲ注イデ玆ニ再ビ諸君ニ訴ヘル以上ハ、少ナクモ本員ニ對シテ、大藏省
ノ門ヲ叩イテ本員等ニ向ッテ營業稅ノ不可ナルコトヲ訴へ、改正ヲ迫ラレタ所
ノ諸君ガ、今本員ノ修正案ニ御立チニナラヌト云フコトデアレバ、實業家ハ
果シテ誠意アリヤ否ヤト云フコトヲ本員ハ疑ヒマス、此一言ヲ殘シテ本員ハ
滿場諸君ノ御賛成ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通告順ニ依リマシテ順次發言ヲ許シマス、
馬場鍈一君
〔馬場鍈一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=86
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087・馬場えい一
○馬場鍈一君 私ハ遺憾ナガラ唯今ノ阪谷男爵ノ修正案ニ反對スル者デアリ
やべ、而シテ委員長報告通リ可決セラレムコトヲ望ムモノデアリマス、私
阪谷男爵ノ如クニ演說ガ上手デゴザイマセヌカラシテ、諸君ノ私ノ說ヲ御聽
キ下サル上ニ於テ、甚ダ御聽キ苦シイ點モ多カラウシ、又私ノ論旨ガ、或ハ
阪谷男爵ノ御說ヲ說服スルベク不十分デアルカモ知レマセヌガ、私ハ自己ノ
所信ニ向ッテ邁進セムトスル者デアリマス、阪谷男爵ノ商工業者、殊ニ小商工
業ニ對スル御同情ニ對シテハ、私モ敬意ヲ表シマス、併ナガラ私ト雖モ亦商
工業者ニ對スル同情ニ付テハ、決シテ人後ニ落チル者デハナイノデアリマス、
併ナガラ凡ソ稅法案ニ對スル審議ノ如キハ、唯一片ノ感情ニ因ハレズシテ、
極メテ冷靜公平ニ判斷ヲ致スベキモノト思フノデアリマス、其意味ニ於テ唯
今ノ御所見ヲ拜聽イタシマシタガ、稍〓感情ニ驅ラレテ居リハセヌカト云フコ
トヲ疑フノデアリマス、其述べラレタル所ノ御意見ヲ伺ヒマスルト、先ヅ第
一點ハ、稅法ノ民衆化ト云フ近來流行ノ文句ヲ述ベラレマシテ、其修正案ノ
極メテ合理的ナラムコトヲ立證セラレムトシテ居ルノデアリマス、併ナガラ
稅法ノ民衆化ナルモノハ阪谷男ノ述ベラルルガ如キ、營業ノ純益算出ノ方
法ニ付テ商業會議所ノ會頭ニ諮問ヲスルガ如キモノガ、私ハ稅法ノ民衆化ト
ハ信ジマセヌ、稅法ノ民衆化ト申スノハ、寧ロ納稅者ノ選出ニ係ル所ノ所得
稅調査委員會、其他ノ斯ノ如キ民衆ヨリ出デタルモノノ會議ニ諮問ヲスル
之ガ會議ニ付シテ、營業收益稅額ヲ決定スルガ如キガ、卽チ所謂私ハ稅法ノ
民衆化デアルト思フノデアリマス、唯營業ノ純益算出方法ヲ全國ノ商業會議
所······十箇所ノ商業會議所ノ會頭ニ諮問スルト云フガ如キハ、何等稅法ノ民
衆化トハ思ハレナイノデアリマス、加之、此營業收益稅法ノ第二十六條ニハ、
「政府ハ同業組合其ノ他ノ營業者ノ團體ニ對シ營業收益稅ニ關スル事項ヲ諮
問スルコトヲ得」、斯ウ云フ規定モアルノデアリマス、卽チ商工業者ノ收益
稅······營業收益稅ノ間題ニ關シテ、同業組合其他ノ〓體ニ諮問スルコトノ出
來ル規定スラアル、是等ヲ以テ敢テ玆ニ商業會議所ノ會頭ニ······而モ十箇所
以內ノ會頭ヨリ組織セラルル會議體ニ、大藏大臣ガ諮問シテ、純益算出ノ方
法ヲ定メルガ如キハ、寧ロ甚ダ拙ナル方法ト云ハナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、斯ヤウナ規定ヲ置イテ、之ヲ以テ稅法ノ民衆化ト言ハルルコトハ
甚ダ私ノ受取リ難キ點デアリマス、ノミナラズ、營業收益稅ヲ決定イタシマ
スニ付テハ、所得稅調査委員ニ諮問ヲシテ、卽チ營業者ヨリ選出シタル所ノ
所得稅調査委員會ニ十分ニ諮問シテ、愼重審議シテ決定スルノデアリマシテ、
決シテ稅務署長ノ專斷ニ依ッテ決定セラルルモノデハナイノデアリマス、從テ
此第六條ノ二ニ斯ヤウナ規定ヲ加ヘルコトハ、私ノ最モ反對セザルヲ得ザル
點デアリマス、次ニハ阪谷男爵ハ、今囘ノ營業收益稅ニ付テハ、六大都市ノ
法人ニ就イテ商業會議所ノ聯合會ガ調査ヲ致シタ、ソレニ依ルト云フト、政
府ノ計算ヨリモ五割ノ增收ガアルト云フコトデアル、嘗テ政府ガ戰時利得稅
ノ計算ニ於テ、非常ニ豫算ヨリ違ッタ實收ノアッタ例モアルノデアル彼此レ
考ヘルト云フト、今囘ノ營業收益稅ハ多大ノ增收ヲ來ス筈デアル、商業會議
所ノ調ベニ信ヲ置クベキモノデアル、斯ヤウナ御所說ニ基イテ、玆ニ營業收
益稅ノ稅率ヲ低下セラルルノ修正案ヲ出サレタノデアリマス、併ナガラ私共
ハ〓〓考ヘマスルニ、斯ノ如キ稅率ノ低減ヲ行フ如キハ我〓トシテ十分ナル
調査資料ニ依ッテ、明カニ斯ノ如キ稅率ノ定メ方ニ依ッテハ斯ノ如キ計算ガ出
ルト云フ確信ガナケレバ、妄リニ政府ノ定メタル稅率ヲ變更スルガ如キハ、
愼マネバナラヌコトト思フノデアリマス、私モ商業會議所ノ調ベガ必ズ間違ツ
テ居ルトハ思ハナイ、必シモ過大ナル間違ガアルトハ思ハヌ、併ナガラ、
方ニ於テ政府ガ責任ヲ以テ全國ノ稅務署ヲシテ取調ベサシタ所ノ營業收益稅
ノ收入ニ對シテ、直チニ之ヲ否認スルノ材料ハ有タナイノデアリマス、然レ
バ姑ク政府ノ算出ニ我〓ガ信ヲ置イテ、之ニ依ッテ自己ノ所見ヲ定メル外ハ
ナイト思フノデアリマス、併ナガラ商業會議所ノ計算モ、必シモ誤ヲテ居ラヌ
ト云フ考モ無キニシモアラズデアリマス、玆ニ於テ乎、我〓ハ此政府ノ提案ニ
對シテ直チニ修正スルコトハ致サナイガ、併ナガラ將來、營業收益稅ヲ實施
シタ結果ニ於テ、多大ノ收入ガ生ジ、而モ此收入ハ全ク稅率ノ高キニ過ギル
ガ爲ニ增收ヲ致シタト云フコトガ明カデアルナラバ、其時、政府ヲシテ此稅
率ノ變更ニ關スル法律案ヲ提出セシメルノガ、極メテ穩健ニシテ、又我〓責
任アル所ノ貴族院トシテハ爲スベキコトト思フノデアリマス、故ニ其附帶希
望ヲ附ケテ政府ノ考慮ヲ煩ハシ、政府ガ之ニ對シテ十分ナル考慮ヲ拂フト云
フ以上ハ、我〓ハ之ニ對シテ修正ヲ加ヘルコトハ愼マネバナラヌコトト思フ
ノデアリマス、第三點ハ阪谷男爵ノ修正案ハ、要スルニ帳簿物件ノ檢査ニ
付テハ所得稅調査會ノ同意ヲ得テ之ヲ實行シヤウト云フノガ、御趣意ニナツ
テ居ル修正案ト思フノデアリマス、私モ商工業者ニ就テ、卽チ營業者ニ就テ
帳簿物件ノ調查ヲ致スト云フコトハ、最モ政府ノ愼マネバナラヌ所ト思フ、
之ガ濫用ヲ致スニ於テハ、稅務官吏ト納稅者トノ間ニ紛爭ヲ生ジ、其爲ニ納
稅道德ヲ破壞シ、極メテ忌ムベキ結果ヲ生ズルコトハ私モ信ズルノデアリマ
ス故ニ此點ニ付テハ殊ニ强イ意味ヲ以テ政府ニ對シテ、我〓ハ警告的ノ希
望ヲ附ケタノデアリマス、卽チ此帳簿物件ノ調査ニ對シテハ、十分愼重ノ態
度ヲ以テ、固ヨリ濫用ヲ愼ムノミナラズ、極メテ不正ナリト認メラレルガ如
キ商工業者ニ對シテ、己ムヲ得ザル場合ニ於テ之ヲ行フベシ、卽チ謂ハバ傳
家ノ寳刀トシテ、濫リニ此刀ヲ振廻スコトハ絕對ニ禁物デアルト云フ意味ヲ
以テ、强イ警告ヲ附ケテ居ルノデアリマス、而シテ玆ニ阪谷男爵ハ、ソレニ
御滿足ニナラズシテ、法律ヲ以テ、所得稅調査委員會ノ同意ヲ得テ此帳簿物
件ノ檢査ヲ爲サウト云フ御考デアリマスルガ、是ハ直チニ私ノ贊成シ得ザル
所デアリマス、何故ナラバ、所得稅調査委員ナルモノハ、稅務署長ニ於テ既
ニ各營業者ノ營業收益ヲ取調ベタ結果ヲ、所謂所得······營業收益稅決定ニ近
ヅイテ、之ガ諮問ヲ爲ス所ノ機關デアルノデアリマス、固ヨリ御提案ニ依レ
バ、或ハ斯ノ如キ所得稅調查委員會ヲ常ニ開カルルト云フ御考カ知リマセヌ
ガ、是ガ果シテ實行シ得ラルルモノデアラウカドウカ、更ニ又斯ノ如キ調査
委員會ニ諮問ヲシタ上デ帳簿物件ノ檢查ヲ爲スト云フケレドモ、果シテ斯ノ
如キ機關ガ、帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトノ當否ヲ判斷スルノニ、適當デアル
カト云フコトヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、却テ斯ノ如キ機關ニ依リ、
此條文ノ運用ヲ爲サムトスレバ、或ハ運用ヲ爲ス能ハズ、或ハ運用ヲ誤マル
ト云フコトガ却テ生ジハセヌカト云フコトヲ、私ハ窃カニ虞ルルモノデアリ
やべ、固ヨリ政府ニ對シテ此濫用ヲ愼マレタイト云フコトヲ希望スル以上、
又官民ノ間ニ於ケル紛爭ヲ避ケテ、稅法ノ圓滿ナル施行ヲ望ム以上ハ政府
ニ於テ、是等ノ諸點ニ付テ固ヨリ考慮セラルル、適當ナル方策ヲ講ゼラレル
コトヲ私ハ信ジマスガ故ニ、今此場合、果シテ阪谷男爵ノ言ハルルガ如キ方
法ガ適當デアルヤ否ヤニ付テ、極メテ疑ハシイニ拘ラズ、俄ニ此修正ヲ爲ス
ト云フコトハ、最モ愼マネバナラヌコトト思フノデアリマス、故ニ此點ニ於
テハ寧ロ政府ニ對シテ、私ハ十分ナル調查ヲ爲シ、極メテ穩健ナル方法ヲ發
見シ、而シテ此條文ニ依ル營業者ノ不安ヲ除クト云フコトヲ、政府ニ御委セ
スルガ適當デアラウト信ズルノテアリマス、故ニ此第三點ニ於ケル阪谷男爵
ノ御修正ニ對シテハ遺憾ナガラ私ハ反對スルノデアリマス、要スルニ、私
ト雖モ、營業者殊ニ小商工業者ニ對スル所ノ同情ニ於テ、敢テ阪谷男爵ニ劣
ル者デハ絕對ニ無イノデアリマス、併ナガラ稅法ヲ取扱フ上ニ於テハ極メ
テ冷靜公平ニ判斷スベキモノデアルガ故ニ、遺憾ナガラ阪谷男爵ノ修正案ニ
ハ反對ヲ致シマシテ、委員長報告ノ通リ可決セラレムコトヲ望ム者デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 森田福市君
〔森田福市君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=88
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089・森田福市
○森田福市君 私ハ唯今問題ニナッテ居リマスル營業收益稅法案ノ修正ノ問
題デアリマスガ、本員ハ阪谷男爵ノ修正案ニ贊成スル一人デアリマス、本案ニ
贊成スル理由ヲ聊カ述ベマシテ、各位ノ御贊成ヲ願ヒタイノデアリマス、之ニ
關聯イタシマシテ、意見ヲ附加ヘテ尙ホ贊成ノ理由ヲ申上ゲタイト思フノデ
アリマスガ、現在······此度營業收益稅法案ヲ本院ニ御提出ニナリマシタ時ニ、
私ハ詳細ニ數字ヲ擧ゲテ政府ニ質問イタシタノデアリマスガ、他ノ機會ニ於
テ答辯ヲスルト云フコトデアリマシタ、サウ致シマシテ、本日委員長報〓ヲ承
リマシテモ、何等其間ノ應答ハ出來テ居ナイヤウデアルノデアリマス、元來、
現在ノ政府ハ行政整理ヲ爲シ、財政整理ヲ行ヒ、而シテ此稅制整理ヲヤラレタ
ノデアリマス、其結果、所謂稅制整理ノ結果、一方ニ於テ廢稅ヲ行ヒ、或ハ減稅
ヲ爲シ、一方ニ於テ新稅ヲ新設シ、或ハ增稅ヲ斷行セラレタノデアリマス、サ
ウシテ差引シタ結果ガ國民ハ何ヲ得タカト云ウタラ、負擔ノ增加ヲ得タト云
フコトニナルノデアリマス、左樣ナ整理ナラバ、寧ロ國民ハシテ貰ハナイ方ガ
宜シイ、所謂舊法ノ方ガ優ノテ居ッテ、新法ノ方ガ劣ッテ居ルト云フコトヲ私ハ
考ヘテ居ル者デアリマス、唯今ノ阪谷男爵ノ修正案ヲ御出シニナリマシタ營
業收益稅法ノ第十條ノ率ノ問題デアリマスガ、此問題ハ政府ニ於テハ、現行ノ
營業稅法ヨリモ、營業收益稅法ヲ施行シタ曉ニ於テハ、四百万圓ホド減ズル、
斯樣ニ常ニ仰シヤッテ居ラレルノデアリマスガ、決シテ私ハ左樣ナコトハ無イ
ト云フコトヲ申上ゲルノデアリマス、ソレハ本年、大正十五年度ノ豫算案トシ
テ政府ガ御出シニナリマシタ所ノ、大正十五年度ノ第一種所得デアリマス、
第一種所得稅ハ所得稅法ヲ唯今、此日程ニ載ッテ居リマス改正ノ結果ハ、法人
ノ稅率ハ從來、保留所得デアルトカ、其他澤山ニ區分サレテ居ッタノデアリ
マスガ、今囘ハ多少アリマスガ、主トシテ純益金ノ百分ノ五ト云フコトニナッ
タノデアリマス、サウ致シマスルト此大正十五年度ノ第一種所得稅トシテ、
政府ガ本年ノ豫算ニ御要求ニナッテ居ルモノハ、七千八十四万九千二百四十一
圓アリマスカラ、是ガ百分ノ五、純益ノ百分ノ五ニ依ッテ算出シテ居ルト致
シタナラバ、卽チ是ガ二十倍シテ見ルナラバ、法人ノ第一種所得額ガ分ルノ
デアリマス、極ク簡單ナ問題デアリマシテ、之ヲ二十倍イタシマスルト卽チ
十四億圓ニナルノデアリマス、政府ハ之ヲ十億圓ト仰シヤッテ居ラレマスル
ガ、然ラバ本年御提出ニナッテ居ル所ノ豫算案其モノガ、此第一種法人所得稅
七千万圓ヨリ下ルト云フ御見込デ御出シニナッタモノデアリマセウカ、サウデ
ハナイト考ヘマス、必ヤ政府ハ七千八十四万九千圓ヨリハ、幾千万圓カ·····
幾百万圓カ增收ガアルト云フコトハハ何レノ決算ヲ拜見シテモ、サウナッテ居
ルノデアリマス、サウ致シマスレバ、此第一種法人所得ノ七千八十四万九千
圓ト云フモノヲ政府ハ知リナガラ御出シニナッタモノナラバ、卽チ百分ノ五ヲ
掛ケテ御出シニナッタモノデアリマスカラ、卽チ二十倍シタモノガ此第一種
ノ所得額ニナルノデアリマス、サウ致シマスルト十四億圓デゴザイマスカラ
之ニ百分ノ三·六ヲ掛ケレバ卽チ四千八百四十万圓ニ第一種ノ方ガナルノデ
アリマスカラ、營業收益稅額四千八百四十万圓ト云フモノハ是ハ卽チ法人
ノ納メル營業收益稅ナノデアリマス、個人ノ方ノハ、玆ニ第三種所得稅額ヲ
所得額ニ改算シテ見ルコトガ困難ナノデアリマス、ナゼナラバ、商工業者其
他ノ所得等ガ併セテアルノデアリマスカラシテ、是ハ尙ホ累進稅其他ノ面倒
ガアリマスカラ······之ヲ政府ガ唱ヘラレル通リニ約十億圓ニナルモノト假定
イタシマシテ、政府ハ之ヲ十億圓デアルト言ウテ居ラレマスルカラ、之ニ百分
ノ二·八ヲ掛ケマスト云フト卽チ二千八百万圓ニナルノデアリマス、合セテ七
千四百万圓餘リニナルノデアリマスカラ、政府ノ言ウテ居ラレル所ノ實際ヨ
リハ二千四五百万圓ノ增收ニナルト云フコトハ明カナノデアリマス、サウ致
シマスレバ營業稅法ヲ廢セラレテ、營業收益稅法ヲ新設セラレタ爲ニ、商工業
者ハ少クモ二千万圓以上ノ負擔ノ增加ヲ受ケルト云フコトニナルノデアリマ
スガ、是ハ我〓國民、商工業者ノ堪ヘ得ル所デハナイノデアリマス、尙ホ委員
長ノ御報告ニハ若シ此率ヲ適用シテ取タ稅金ガ、現在政府ノ言フ豫算ヨリ
多カタ場合ニハ率ヲ下ゲテクレ、政府モ考慮シヤウ、斯樣ナ御報告デアリ、
斯ウ云フ政府ノ言明デアルノデアリマスガ、果シテ、此大正十六年度カラ本
法ヲ施行セラレマシタ結果ニ於テ、其結果ノ分リマスノハ大正十八年デアラ
ウト本員ハ心得ルノデアリマス、大正十八年度ガ來タ時ニ、必ズ二千万圓、
三千万圓ノ增收ガ現ハレマセウガ、其時ニ現在ノ政府ガ、ソレマデ政治的生
命ガアルカドウカト云フコトハ、我〓ハ先ヅ通常ノ例トシテハ無イモノダラ
ウト思ヒマスガ、併シ假ニ有ッタトシテモ、政府ハ其時、今日ノ約束ニ基イテ
稅率ヲ下ゲルト言ハズニ、是ハ決シテ率ノ高イ爲ニ、.率ノ爲ニ多クナッタノ
デハナイ、自然增收デアル、斯ウ言ウテ又拔ケラレルダラウト私ハ考ヘルノ
デアリマス、殊ニ答辯上手ナ現內閣ノ諸公ハ、必ヤ左樣ニ拔ケラレルモノト
私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、然ルガ故ニ、イッソ將來、大正十八年頃ニナッ
テ之ヲ修正スルヨリハ、現在ニ於テ修正シテ、、賛成ヲ致シテ置クコトガ最モ當
ヲ得タモノデアラウト本員ハ考ヘルガ、斯カルガ爲ニ數字ヲ擧ゲテ、全ク政
府ハ減收ニナラナイ、增收ニナルト云フコトガ明カナノデアリマスカラ、
約三割ノ百分ノ三·六ヲ百分ノ二●六ニ修正サレマスレバ、約三割デアリマ
スガ、唯今私ガ申述ベマシタノハ三割五分以上ニ當ルノデアリマスカラシ
テ、阪谷男爵ノ修正案ハ最モ適當ナ修正案デアルト本員ハ信ズルノデアリマ
ス、斯樣ナル理由ニ依リマシテ、私ハ此修正案ノドウカ本院ヲ通過セムコト
ヲ切ニ希望スル者デアリマス、ソレカラ次ノ第二十五條デアリマス、「收稅
官吏ハ營業ニ關スル帳簿物件ヲ檢査シ又ハ營業者ニ質問スルコトヲ得」ト云
フ是モ阪谷男爵ノ修正案デアリマスガ、是ハ我〓ノ考トシテハ、此修正案ヨ
リモ一步進メテ、二十五條ノ削除說ヲ持ッテ居ル者ナノデアリマス、所謂病根
ヲ絕ッテ置クナラバ、何等問題ハ生ジテ來ナイノデアリマス、既ニ所得稅ニア
リマシタ所ノ帳簿物件ノ檢査ハ本院ニ於テ削除サレタト云フコトヲ私ハ承知
シテ居ルノデアリマス、所得稅ノ調査ヲスルノニハ帳簿物件ヲ檢査セヌデモ
出來ルガ、營業稅ノ······營業收益稅ノ調査ハ帳簿物件ヲ檢査シナケレバ出來
ナイト云フ理由ガ何處ニアルノデアリマセウカ、少クモ、然ラバ所得稅ハ
般國民ノ商工業者以外ノ者モ納メルノデアルガ、是ハ商工業者ガ納メルノデ
アルカラ檢查シテモ宜イト云フコトモナイデアリマセウ、商工業者獨リガ、
謂ハバ是ハ所得稅納稅者ヨリモ、商工業者ノ納メル營業收益稅ヲ納ムル者ハ、
特ニ斯樣ナ苛酷ナル所ノ法律ノ制裁ヲ受ケヌケレバナラヌト云フ義務ヲ發見
スルコトニ苦シムノデアリマス、又商工業者ノ人格ヲ無視シタ是ハ法律案ナ
ノデアリマス、斯カル政府ハ壓制的ノ法律案ヲ以テ、サウシテ我〓商工業者
ノ負擔ノ增徵ヲ······增收ヲ圖ルト云フヤウナコトニハ我〓ハ遺憾ナガラ贊
成ガ出來ナイノデアリマス、併シ第二十五條ノ削除ト云フコトハ如何ニモ突
飛ナヤウデアリマスカラ······過激ナヤウデアリマスカラ、私ハ阪谷男爵御提
案ノ修正案ニ同意スル者デアリマスガ、行ク行クハ本案モ削除シテ戴キタイ、
本案ノ如キモノノアルコトハ、商工業者······全國ノ商工業者一人タリト雖モ
之ヲ喜ブ者ハ無イノデアラウト考ヘルノデアリマス、而モ是ガ穩健的ニ此帳
簿ノ檢査ガ出來得ルモノナラバ、强ヒテ國民モイヤガラヌノデアリマセウガ、
此稅務署ノ官吏、卽チ收稅官吏ガ店舗ニ來テ、帳簿物件ノ檢査ヲ求ムル態度
ハ恰モ檢事ガ刑事被〓人ニ接スルガ如キ態度ヲ以テ接スルノデアリマス、
若シ一朝ニシテ此態度ニ反感ヲ得ムカ、商工業者ガ反感ヲ得ルガ如キ答デモ
シタナラバ、忽チ從前三千圓ノ賣上デアッタモノナラバ、六千圓位ニハ忽チニ
シテ來ルノデアリマスカラシテ、感情デ以テ······一旦感情ヲ害ネタナラバ直
チニ左樣ナ苛酷ナ目ニ遭フノデアリマス、本案ノ第二十五條ガ無カッタナラ
バ斯樣ナ事ヲ受ケル人モ無シ、又感情ノ迸リヲ受ケル人モ無イコトニナル
ノデアリマス、全國ノ商工業者ガ、此ノ二十五條ノ撤廢ヲ望ンデ居ルト云フ
コトハ此諸君ノ中ニモ、商業會議所其他ノ方面ニ御關係ノ御方モ澤山居ラッ
シヤルノデアリマスカラ、能ク御承知デアラウト思ヒマス、尙又、此修正案
ニ對シテモ斯ウ云フ方面ノ商工業ニ御關係ノ御方ハ、是非トモ進ンデ御贊成
ガ願ヒタイノデアリマス、極ク簡單デアリマスガ、阪谷男爵ノ修正意見ニ贊
成ノ意見ヲ述ベテ、此壇ヲ下リマス、ドウゾ諸君ノ御贊成ヲ願ヒタイノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通告者ハ終リマシタ、別ニ他ニ御發言モ無
イト認メマスカラ、採決ヲ致シマス、阪谷男爵ノ修正說ニ同意ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 少數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス
〔子爵西大路吉光君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=93
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094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) マダ御早ウゴザイマス、殘リ全部ヲ問題ニ供シマ
ス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是ニテ第二讀會ヲ終リマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=95
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096・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=96
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097・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 賛成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
miniminutemi후発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開キマス、第二讀會ノ決議通リ
デ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
三十七年平山発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ問題ニ供シマスノハ、日程第二十九、〓涼
飮料稅法案、阪谷男爵ノ通〓ガゴザイマスカラ、發言ヲ許シマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=102
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103・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ〓涼飮料稅法案ヲ否決スルト云フ意思ヲ持ヲテ居
リマスルガ、其ノ意見ヲ述ベマス前ニ、大藏大臣ハ居ラレマセヌガ、商工大
臣デモ宜シイ、一應質問イタシマス、關稅定率法ノ改正ニ衆議院ノ修正デア
リマス、小麥ノ稅ト卵ノ稅ヲ、衆議院ガ引キ上ゲタ趣デ、政府ハ之ニ同意イ
タシテ居ルト云フコトデ、其修正ニ政府ハ同意ヲシタニ付テ、歲入ガ幾ラ增
スカト云フコトヲ質問······議員ノ方デ質問イタシマシタ所ガ、小麥ニ付テハ
三百餘万圓、卵ニ付テハ五十餘万圓增スト云フコトデゴザイマス、サウスル
ト云フト、三百五十餘万圓財源ガ玆ニ餘ッテ來タ譯、此〓涼飮料稅ハ僅カ三百
万圓ニ足ラヌ稅デアリマス、本員ハ果シテ此三百五十万圓ノ增收ガ衆議院ノ
修正ニ依ッテ成リ立ッタヤ否ヤト云フコトヲ確メタイ、是ハ本員ノ否決論ヲ援
ケマス一大有力ナル條件ト相成リマス、要ラヌ稅ヲ取ル筈ハナイ、一應確メ
テ置キマス商工大臣カラデモ宜シウゴザイマス
〔政府委員黑田英雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=103
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104・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 御答ヲ致シマス、關稅定率法ノ改正ニ付キマシテ
衆議院ニ於キマシテ、小麥竝ニ小麥粉及鳥卵ノ稅率ニ付キマシテ、政府ノ提
案ニ修正ガアッタノデアリマス、ソレニ基キマシテ、ドレ程ノ收入ノ增加ガア
ルカト云フ意味ノ御尋デアッタノデアリマスガ、之ニ付キマシテハ政府ノ提
案ニ修正ヲ致サレタノデアリマシテ、詳細ナル調査ヲ致シテ居ラヌノデアリ
マスガ、併ナガラ大體ニ於キマシテ、稅率ガ政府提案ヨリモ引上ゲラレマシタ
ノハ、內地ニ於キマスル小麥ノ生產ヲ增加セシムルト云フコトガ目的デアル
ノデアリマス、其結果ト致シマシテハ、自然小麥ノ輸入モ減ジテ參ルヤウニ
考ヘルノデアリマスカラ、是等ノ點ヲ斟酌ヲ致シマスルト云フト、差當リ大
體三百万圓位ノ······小麥竝ニ小麥粉ニ付キマシテ、三百万圓內外ノ增收ガ
アラウカト考ヘテ居ルノデアリマス、鳥卵ニ付キマシテハ、現行ノ稅率ニ修
正ヲサレタノデアリマスカラ、現行ノ稅率ニ付キマシテ這入ッテ來テ居リマ
スルモノト、政府ノ提案ヲ致シテ居リマシタ所ノ收入トヲ比較シテ見マスト
云フト大體、唯今御話ニナリマシタヤウニ、五十万圓內外ノモノデハナカ
ラウカト云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=104
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105・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ直チニ······日程ニ上ボッテ居リマスル〓涼飮料稅
法案ハ否決スベキモノナリト云フ、卽チ第二讀會ヲ開クベカラズトスルノ說
ヲ述ベマス、此水ニ稅ヲ掛ケルト云フコトハ、以テノ外ノ是ハ惡稅ダト本員
ハ信ズルノデアリマス、歐羅巴ノ大戰中ニ此稅ヲ或ル國デ掛ケマシタ場合ニ、
甚ダ恥カシイ稅デアルケレドモ、戰時中デアルカラ諸君我慢ヲシテ贊成シテ
クレロト云フコトヲ、當時ノ大藏大臣ガ附加ヘテ、議會ノ賛成ヲ求メテ居ル
ノデアリマス、有名ナ話デアリマス、是ハ國土ヲ敵ニ取ラレルカドウカト云
フ卽チ國家ノ存亡ノ秋ニ於キマシテハ、最後ノ一錢マデ捧ゲ、最後ノ一滴マ
デ血ヲ捧ゲナケレバ、國家ヲ防禦スルコトハ出來マセヌカラ、當然ノコトデ
アリマセウガ、現在ニ於キマシテハ、段々ト此水ノ稅ト云フモノハ何處ノ
國デモ廢メツツアルカノ如ク、私ハ承知イタシテ居ルノデアリマス、然ルニ
今、政府ガ惡稅ヲ廢シテ稅制ヲ整理シヤウト云フ際ニ、僅カ三百万圓許リノ
稅ヲ水ニ掛ケテ取ルトハ何事デアルカ、國家ノ信用ニ關スルト殆ド本員ハ思
フノデアリマス、唯、政府ノ唯一ノ理由ハ、麥酒ニ稅ヲ掛ケルカラ、麥酒ヲ飮
ム者ガ減ヲテハ麥酒業者ガ困ルダラウカラ、水ニ稅ヲ掛ケルト云フノデアリマ
スガ、麥酒ト水トハ全ク上戶下戶ノ違ヒガアルノミナラズ、政府ノ言フ理由
二、理由アリトシテモ、今日亞米利加デハ酒ヲ飮ムコトヲ禁ズル法律マデ出
テ居ル、諸國ノ形勢ヲ見マシテモ、成ルベク飮酒ハサセヌヤウニ、酒ヲ賣ル時
問ヲ短縮スルトカ、酒ヲ賣ル場所ヲ極メテ、制限スルトカ酒ヲ成ルベク國民
ガ飮マヌヤウニシテ、國民ノ健康ヲ助長シテ居ルノデアル、サウ云フ際ニ、
麥酒ニ稅ヲ掛ケタガ爲ニ、麥酒ヲ飮マヌデ水ヲ飮ム者ガ殖エルナラバ結構ノ
コトデ、政府ハ之ヲ助長シテモ宜イ譯デアル、然ルニ此水ヲ飮ム者ヲ殖ヤサ
ヌガ爲ニ、水ニ稅ヲ掛ケルト云フコトハ、一向理由ニナラヌ、殊ニ此度ノ酒
ノ稅ガ重クナルニ付テハ、沖繩縣ダケハ此增稅ヲ施行セヌト云フコトニナッ
テ居ル、所ガ此沖繩縣グラ井水ノ惡イ所ハ無イ、沖繩縣ノ那覇ナドニ御出デ
ニナッタ方ガアリマセウガ、ドウモ矢張リ此壜詰ノ水ヲ飮ム外ニハ雨水ヲ溜
メテ赤クナッテ居ルノヲ飮マナケレバナラヌノデアリマスカラ、沖繩縣ノ人ニ
モ甚ダ氣ノ毒デアルガ、內地カラ行ッタ人ハ殆ドタマラナイ、サウ云フ所ニモ
此稅ヲ掛ケル、セメテ酒造稅ノ如ク、〓涼飮料稅ニ付テハ沖繩縣ニハ實施セ
ズト云フ箇條デモ這入ッテ居レバ、人道ノ上カラ申シテモ、稍良法デアラウ
ト思フガ、之ヲ沖繩縣ノ如キ、既ニ豫算ニハ、沖繩縣ノ財政經濟ヲ救濟セネ
バナラヌト云ウテ、幾多ノ金ガ盛ッテアル位困難シタ土地デ、而モ水ニ乏シイ、
雨水ヲ以テ飮料ニシテ居ルト云フ沖繩ニマデ此稅法ヲ實施スルノハ、如何ニ
モ不仁ナ遣リ方デアル、實ニ私ハ恥カシイ稅ト思フ、恥カシイダケデ濟メバ
宜シウゴザイマスケレドモ、餘リ細カイ稅ヲ起スト又整理ガ起ル、必ズ〓涼飮
料稅法ヲ通セバ、來年カラ又此廢止案ガ年々出テ來ル、トヾノ詰リ是ハ整理、
誠ニクダラヌコトデアリマスガ、今政府委員ノ說明ニ依レバ、關稅定率法ガ
改正セラレタガ爲ニ、三百五十万圓、玆ニ豫想外ノ金ガ出テ居ルト云フコト
デアリマス、是ハ卽チ三百万圓デアル
〔副議長侯爵蜂須賀正詔君議長席ニ著ク〕
卽チ餘計ナモノヲ取ル必要ハ無イ、既ニ歲入ノ上ニ三百五十万圓ノ茲ニ餘リ
ガ出テ居ル以上ハ、何ヲ苦ンデ斯ウ云フ恥カシイ詰ラヌ稅ヲ取ル必要ガアル
カ、私ハ滿場ノ諸君ガ斯カル稅ハ直チニ否決シ去ッテ御シマヒニナルガ當然
ダト思フ、ソレガ爲ニ何等歲入ノ上ニ響キガ無イ、三百五十万圓デハ三百万
圓ヲ相殺シテ尙餘ルノデアリマスカラ、何等政府ノ歲入ノ上ニ困ルコトハナ
イ、政府ガ歲入ニ困ラズ、而シテ其飮料稅ナルモノハ甚ダ不法ナル稅ナリト
スレバ、何ヲ苦ンデ之ヲ今日、我〓ハ可決スルノデアルカ、私ハ茲ニ於テ滿
場ノ諸君ノ否決說ニ御贊成アラムコトヲ切ニ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=105
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106・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 馬場鍈一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=106
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107・馬場えい一
○馬場鍈一君 私ハ簡單デアリマスカラ、此席カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=107
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108・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 御登壇ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=108
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109・馬場えい一
○馬場鍈一君 極メテ簡單デアリマスガ···
〔馬場鍈一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=109
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110・馬場えい一
○馬場鍈一君 重ネテ阪谷男爵ノ御提案ニ反對スルノハ衷心遺憾デアリマス
ガ、已ムヲ得ズ反對ヲ致サネバナラヌノデアリマス、唯〓ノ御說ニ依リマスル
ト水ニ稅ヲ掛ケルト、斯ウ一言ニ仰セラレマスルト云フト如何ニモ唯普通
ノ水ニ稅ヲ掛ケル如クニ誤解スル人ナキニシモアラズデアリマス、〓涼飮料、
卽チ相當額ノ炭酸瓦斯ヲ含有シテ居ル飮料デアリマシテ、所謂「ラムネ」、「サ
イダー」、「シトロン」等、或ハ平野水ト云フ類デアリマスカラ、唯、水ニ稅ヲ掛
ケルト云フコトハ、少シ言葉ガ不十分デハナイカト私ハ思フ、成程「アルコー
ル」含有飮料デハアリマセヌ、併ナガラ、今日國民ノ可ナリ多數ノ嗜好品トシ
テ、廣ク用井ラレテ居ルノデアリマス、成程、今日ニ於テハ稅額ハ平年四百三
十一万圓デアリマスケレドモ、私ハ此稅ハ將來可ナリ增收ヲ來シ得ベキ素質
ヲ有ッテ居ルト思フノデアリマス、固ヨリ國稅ノ稅源トシテ極メテ良好ナルモ
ノトハ私モ信ジマセヌ、併ナガラ他ノ生活必需品ヲ廢シテ、「アルコール」飮料
等ニモ段々增稅ヲ致スト云フ以上ハ生活必需品デナイ所ノ國民多數ノ嗜好
品ニ對シテ稅ヲ掛ケルト云フコトモ、亦已ムヲ得ザルモノガアルト思フノデ
アリマス、先刻、男爵ハ外國ノ大藏大臣ガ耻カシナガラト云ウテ此稅ヲ設ケ
タト云フコトデアリマスガ、ソレハドコノ國デアルカ、私ハ寡聞ニシテ承知
イタシマセヌ、恐ラク此稅ハ佛蘭西、伊太利、獨逸、其他ニモ行ハレテ居ル
ノデアリマシテ、必シモ何レノ國ノ大藏大臣モ左樣ナコトヲ申シタ譯デハア
ルマイ、又小麥粉竝ニ卵ノ關稅ノ變更ノ結果、多少ノ增收ガアルカラ廢メテ
モ宜イト云フ御話デアリマスガ、私ハ今囘ノ稅制ノ體系ヲ、我〓一括シテ承
認スル以上ハ、此稅モ亦已ムヲ得ズ其稅制ノ一部ト認メルノガ、却テ負擔ノ
公平ヲ期スル所以デアラウト思フノデアル、殊ニ個人々々ノ負擔トシテハ
サマデ大シタモノデナクテモ、將來ニ於テハ、私ハ一千万圓近クノ收入ヲ擧
ゲル時期ガ必ズ來ルデアラウト思フノデアリマス、故ニ重ネテ遺憾ナガラ阪
谷男爵ノ提案ニ反對ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=110
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111・蜂須賀正韶
○副議長(候爵蜂須賀正韶君) 是ニテ通告者ノ發言ヲ終リマシタ、本案ノ第
二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=111
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112・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 過半數ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=112
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113・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=113
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114・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=114
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115・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開クコトノ動議ニ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=115
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116・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 御異議ナイト認メマス
기葉한発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=116
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117・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 直チニ第二讀會ヲ開キマス、本案ハ原案通リ
デ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=117
-
118・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=118
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119・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=119
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120・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=120
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121・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 直チニ第三讀會ヲ開クコトノ動議ガ出マシ
タ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=121
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122・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 御異議ナイト認メマス
美南小学南小山市↑発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=122
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123・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=123
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124・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正詔君) 御異議ナイト認メマス
万桌面発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=124
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125・蜂須賀正韶
○副議長(候爵蜂須賀正韶君) 日程第十二、十三、十五、十六、十八、十九、
二十、二十一、二十二、二十三、二十四、二十五、二十六、二十七、二十八、
三十、三十一、三十二、此各法律案ヲ議題ニ供シマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=125
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126・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=126
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127・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=127
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128・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀會開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=128
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129・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=129
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130・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案ノ第二讀會ヲ直チニ開クベシトスル西大路子
爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=130
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131・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
平山市童発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=131
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132・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=132
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133・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=133
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134・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=134
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135・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=135
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136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=136
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137・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
小山市한후発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=137
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138・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=138
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139・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
莫五水発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=139
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140・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ日程ニ移リマス前ニ御諮リヲ致スコトガゴザ
イマス、先刻、小林嘉平治君ガ地租條例中改正法律案ニ付キ質疑中、引用セ
ラレタル農商工業者ノ、租稅負擔額比較表ヲ議事速記錄ニ揭載スルノ希望ヲ
述ベラレマシタ、之ヲ登載スルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=140
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141・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
炭水호호発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=141
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142・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ日程第十二、十三·······唯今ノハ議長ガ誤リマ
シタ、次ハ日程第三十三、〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、松木伯爵ノ登壇ヲ望ミ
マス
〓育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十二日
右特別委員長
伯爵松木宗隆
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵松木宗隆君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=142
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143・松木宗隆
○伯爵松木宗隆君 唯今議題ニ上ボリマシタル〓育改善及農村振興基金特別
會計法中改正法律案ニ付キマシテ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマ
ス、此度、貨幣改鑄ノ益金ガ增收ニ依リマシテ玆ニ一千四百万圓ヲ本基金ニ
增加繰入レベク定額ノ改正案ヲ提出サレタノデアリマシテ、而シテ之ニ依ツ
テ生ズル利殖金七十万圓ヲ以テ今囘專ラ農村振興ノ財源ニ充テラルルコトト
ナッタノデアリマス、之ニ依ッテ農村振興基金ハ計一一百二十万圓トナリマシテ、
而シテ一面ニ於テハ〓育改善費ガ四百万圓デアリマスルカラ、是デ均衡ヲモ
得ルコトトナッタノデアリマス、此貨幣改鑄ノ益金ハ次ノ年度ニ於テ又增收ノ
見込アリヤトノ質問ニ對シマシテ、當局ハ今囘ガ最終ノモノデアル、將來ハ
益金ノ見込ナシトノ御答辯デアリマシタ、又一委員ヨリ農村振興ノ計畫ニ對
シテ、單ニ之ヲ物質的方面ニノミ求メズシテ、精神作興、社會改善ノ如キ精
神的見地ヨリモ施設アラレムコトヲ望ムト云フ御希望モアリマシタ、尙ホ農
林省當局ヨリ此七十万圓ニ付キマシテ、其計畫事項竝ニ經費ノ計數等ニ付テ
御說明ガアリ、之ニ付キマシテ質問應答ガ行ハレマシテ、其間ニ農事上ニ付
テ二三ノ希望モ出サレタコトデアリマスルガ、是ハ御報告ニ餘程長時間ヲ要
シマスルカラ、ソレハ速記錄ニ讓リタイト存ジマス、採決ニ及ンデ何等異議
ナク、全會一致ヲ以テ可決ト相成リマシタ、此段御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=143
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144・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=144
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145・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=145
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146・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=146
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147・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=147
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148・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=148
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149・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
业嘉禾発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=149
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150・徳川家達
○議長(公爵德川家逹君) 本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=150
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151・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=151
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152・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=152
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153・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=153
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154・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ第三讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=154
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155・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
囍华南小学発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=155
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156・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
「「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=156
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157・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
High-im-giventi-후보호発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=157
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158・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三十四、農業倉庫業法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、志村源太郞君
農業倉庫業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
志村源太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔志村源太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=158
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159・志村源太郎
○志村源太郞君 農業倉庫業法中改正法律案特別委員會ノ經過及結果ヲ御報
告申上ゲマス、此改正ハ農業倉庫、卽チ御承知アラセラレマスル通リ、主ト
シテ農村ニ在リマシテ營利ヲ目的トセザル農產物ノ倉庫ガ、近來段々ト普及
イタシマシタニ付キマシテ、其業務ノ發達ヲ圖リマスル爲ニ、第一倉庫ニ入
レマスル所ノ物品、卽チ從來ハ穀物竝ニ繭ヲ主トシテ居リマシタノヲ、更ニ
其他勅令ヲ以テ定ムル所ノ物品ヲ加フルト云フコトノ改正ガ第一デゴザイマ
ス、政府ニ質問イタシマスト、差向キ沖繩縣ノ黑砂糖ト云フモノガ目的デア
ル、其以上、段々時勢ノ進運ニ應ジテ增加イタス見込デアルト云フコトデア
リマシタ、次ニハ近來、繭取引ノ改良ノ爲ニ繭ヲ乾燥イタシマスル設備ヲ政
府ガ奬勵ヲ致シテ居リマス、其設備ノ完成イタシマシタル所ノ倉庫ニ於キマ
シテ、單ニ生產者ノミナラズ、販賣組合若クハ其聯合會等ヨリ繭ヲ預カルト
云フコトヲ差加ヘマスル規定デゴザイマス、其他尙ホ從來各町村ニ存在シテ
居リマスル所ノ農業倉庫ノ上ニ更ニ聯合農業倉庫ナル制度ヲ拵ヘマシテ、
農村ニ在ル農業倉庫ノ寄託シテ居ル、保管シテ居ルモノヲ、更ニ其聯合倉庫
ニ再保管ヲ致サセマシテ、以テ農產物ノ販賣金融等ニ一層ノ便利ヲ圖リ、農
產物ノ集散ニ裨益シヤウト云フ、聯合農業倉庫ノ制度ヲ加ヘマシタ改正案デ
ゴザイマス、其外、農業倉庫ノ倉荷證劵ノ制度ヲ簡單ニ致シマシテ、地方ノ
實際ノ取引ニ適合スルヤウニ致スコトト、此農業倉庫ノ營業收益稅ヲ免除ス
ル、若クハ農業倉庫ノ敷地ニ取得稅卽チ地方稅ヲ賦課スルコトヲ免除スルト
云フ、法律ヲ以テ保護イタシマスル租稅免除ノ規定ガ主モナルモノデゴザイ
マス、斯ノ如ク倉庫制度ノ發達ニ伴ヒマスル、自然ノ情勢ニ應ジタル改正案
デゴザイマスルカラ、委員會ニ於キマシテハ、二日ニ亙リマシテ質問應答ヲ
重ネマシタノデアリマスガ、大體ニ於テ其質問ノ趣意ガ、モウ一層進ンデ此
倉庫ノ利用等ヲモット廣クスル方法ハ無カラウカ、ト云フコトニ付テノ趣意ノ
質問應答ガ多クゴザイマシタ、就中、特ニ御報告ヲ申上ゲテ置キタイト存ジ
マスルノハ、免稅ノ點ニ於キマシテ、單ニ敷地ノ取得稅ト云フモノヲ免ズルノ
ミナラズ、更ニ此度法律ニ依ッテ設定セラレマスル所ノ家屋稅、地方稅ノ家屋
稅ト云フモノヲ此倉庫ニ免除スルト云フコトガ必要ト委員ハ考ヘマシテ、此
點ニ付キマシテ政府當局ノ說明ヲ求メマシタノデアリマス、地方稅ノ主管ニ
關スル內務省ノ政府委員ノ臨席ヲ求メマシテ、段々說明ヲ求メマシタ所ガ、現
在ノ家屋稅法ニ於テ、公益ノタメ又ハ其他ノ理由ニ因リ家屋稅ヲ賦課スルヲ
不適當ト認ムル場合ニハ家屋稅ヲ免除スルコトヲ得ト云フ規定ガ、家屋稅法
ノ中ニゴザイマスルカラ、蓋シ此農業倉庫モ法律ノ規定ノ精神ニ從ッテ、家屋
稅ノ地方稅ノ賦課ヲ免除セラルベキモノト當局ハ考ヘテ居ル、又其趣意ヲ以
テ審議ニ及ブ積リデアル、斯ウ云フ言明ヲ得マシタ次第デゴザイマス、其他
ノ事柄ニ付キマシテハ、委員會ハ寧ロ此倉庫ノ利用ヲモウ少シ擴張シタイト
云フ位ノ希望デゴザイマスルカラ、本案ノ改正ノ度合ニ對シテハ何等ノ異議
ナク、全會一致之ヲ可決イタシマシタ次第デアリマス、此段御報告申上ゲマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=159
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160・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=160
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161・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=161
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162・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=162
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163・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=163
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164・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=164
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165・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
吉市立方十十六発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=165
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166・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス、本案全部ヲ問
題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=166
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167・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=167
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168・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=168
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169・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=169
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170・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 櫛笥子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=170
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171・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
黑木山훑山市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=171
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172・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=172
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173・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
皇帝赤平等〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=173
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174・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
大正十五年度歲入歳出總豫算追加案(第一號)
大正十五年度歲入歳出總豫算追加案(第二號)
大正十五年度各特別會計歲入歲出總豫算追加案(特第一號)
大正十五年度歲入歲出總豫算追加案(第三號)
大正十五年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第二號)
南市立八仙子発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=174
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175・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ御諮リヲ致シマス、唯今報告ヲ致サセマシ
タ豫算追加案、各案ノ審査期限ヲ定ムル件ヲ、議事日程ヲ變更シテ唯今議シ
タイト考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=175
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176・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、大藏政務次官武內君
(第一號)大正十五年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十三日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(第二號)大正十五年歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十三日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(特第一號)大正十五年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十三日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(第三號)大正十五年度歲入歲出總豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十三日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(特第二號)大正十五年度各特別會計歲入歳出豫算追加案
右本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
大正十五年三月二十三日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
〔政府委員武內作平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=176
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177・武内作平
○政府委員(武內作平君) 大正十五年度歲入歲出豫算追加案ヲ提出イタシマ
シタノニ付キマシテ、其大體ノ御說明ヲ申上ゲマス、大正十五年度歲入歲出總
豫算追加案第一號ニ計上スル所ノ金額ハ、歲入歲出各〓千七百六十三万五千
四百九十八圓デアリマシテ、内、歲入ノ重ナルモノハ前年度剩餘金繰入ノ增
加千五百四十五万三千四百八十六圓、國有財產整理資金繰入ノ增加、二百一
万三千三百九十二圓、利根川及渡良瀨川改修工事其他水害復舊費分擔金ガ、
十四万四千百六十七圓等デアリマス、又歲出ニ付キマシテ、其重ナルモノ二三
ヲ御說明イタシマスレバ、一昨年夏以來風水害ノ爲ニ、災害土木費國庫補助
規程ニ依リ、東京外十三府縣ニ災害土木費補助ノ支出ヲ要スルモノガアルニ
依ッテ、此經費ヲ三百六十二万四千圓ヲ計上イタシマシタ、九州帝國大學ニ於
テ昨年八月及九月火災ノ爲メ、附屬病院及〓室ノ一部ヲ燒失シマシタノデ、
是ガ復舊等ノ爲メ、新營費トシテ總額六百五十万圓ヲ、十箇年間ノ繼續費ト
シテ要求イタシマシタ、其內、大正十五年度ノ年割額ハ、六十五万圓デアリ
マス、又朝鮮總督府及樺太廳特別會計ニ於キマシテ、風水害ノ爲ニ、復舊費
ヲ要シマスガ、同特別會計ノ歲計ヲ以テシテハ、到底其財源ヲ得ルコトガ出
來マセヌカラ、一般會計ヨリ補充スル必要ガアリマスノデ、特別會計經費補
充金ト致シマシテ、五百四十二万二千八百十四圓ヲ計上イタシマシタ、右ノ
外、內務、大藏、陸軍、司法、文部、農林、遞信ノ各省ニ亙リマシテ、風水
害、又ハ火災等ノ復舊費ヲ要求イタシテ居リマス、以上各省ニ互ル災害關係
ノ經費ヲ通計イタシマスルト、其總額ハ千二百六十五万九千五百七十九圓ニ
達シテ居リマス、伯刺西爾ニ於ケル本邦獨立農業者ハ主トシテ「ザンバウロ」
州ニ於テ、珈琲及ビ棉花ノ裁培ヲシテ居リマスガ、彼等ハ年賦金ヲ以テ、土地
ノ買入ヲ致シマシタ所、一昨年突發イタシマシタ叛亂ト大旱魃ノ爲メ、收獲及
收獲物處分ニ手違ヲ生ジ、年賦拂込ノ資金ニ窮スルニ至ッタノデアリマス、依
テ此際相當金額ノ貸付ヲ爲シ、以テ我ガ在留民ノ經濟的地步ヲ確保セシムル
ハ最モ緊要ノコトト認メマシテ、之ガ經費八十五万圓ヲ要求イタシマシタ、
次ニ中央諸官衙及其附屬建造物ノ中、大正十二年九月ノ震火災ニ依リ、燒失
又ハ大破シタルモノガアリマス、又經年ノ久シキ爲メ腐朽破損シテ居ルモノ
モアリマス、是等ニ付テハ取敢ズ假建物ヲ建築シ、又ハ修理ヲ施シテ、以テ
一時ノ急ニ應ジテ居リマスガ、常時執務上ノ不便、尠ナカラザルノミナラズ、
帝都復興計畫遂行上、是等ノ建造物ハ遠カラズ之ヲ改築スルノ必要ガアリマ
スカラ、政府ニ於キマシテハ、昨年來中央諸官衙建築準備委員會ヲ設ケマシ
テ、之ニ關スル〓究調査ヲ致シテ居リマスルガ、差當リ今囘最モ急ヲ要スル
警視廳廳舍其他ノ建築及ビ中央官衙建築敷地整理等ニ要スル經費ト致シマシ
テ、總額千七十八万千九百三十八圓ヲ、三箇年間ノ繼續費トシテ要求イタシ
マシタ、其内大正十五年度ノ年割額ハ、二百一万三千三百九十二圓デアリマ
ス、而シテ之ニ要スル財源ハ、總テ一般財源ニ依ラズシテ、國有財產ノ整理
ニ依リ生ジタル資金ヲ以テ之ニ充ツル積リデアリマス、次ニ大正十五年度歲
入歲出總豫算追加第二號ニ計上スル所ノ金額ハ、歲入歲出各、千五百八十六
万二千五百十圓デアリマス、歲入ニアリテハ、地租條例中改正法律案修正ニ
伴フ地租ノ增加、七百五十五万九千七十九圓、前年度剩餘金繰入ノ增加八百
三十万三千四百三十一圓デアリマス、又歳出ニアリマシテハ市町村義務〓育
費國庫負擔法中改正ニ伴フ、小學校〓員俸給分擔金ノ增加、一千万圓、地租
條例中改正法律案修正ニ伴フ內國稅徵收費ノ增加ガ三十二万一千三百四十二
圓同ジク地租名寄帳整理補助ノ增加ガ三十五万八千八百九十圓、及ビ土地
賃貸價格調査ニ要スル經費、五百十八万二千二百七十八圓デアリマス、次ニ
大正十五年度歲入歳出總豫算追加第三號ニ計上スル金額ハ、何レモ法律案ニ
伴フ所ノ豫算案デアリマシテ、其歲入歲出各、七百七十万二千八百四十圓デ
アリマス、內歲入ニアリマシテハ、商事調停法施行ニ伴フ印紙收入ノ增加、
九万四千九百八十圓、前年度剰餘金繰入ノ增加、七百六十万七千八百六十圓
デアリマス、次ニ歲出ニアリマシテ、其重ナルモノハ、勞働爭議調停法施行
ニ關スル經費、勞働組合法施行ニ關スル經費、製鐵業奬勵法改正ニ伴フ經費、
帝都復興事業〓算金立替ニ要スル經費、海軍々備制限ニ關スル條約ノ實施ニ
伴フ損害ノ補償ノ爲メ交付スル公債及尼港事變及「オコーツク」事變ノ爲ノ損
害ヲ被リタル者ノ救恤ノ爲交付スル公債ノ利子等デアリマシテ、何レモ法律
案ノ施行ニ伴ヒ必要已ムベカラザル經費デアリマス、尙ホ特別會計ニ於キマ
シテハ、郵便年金法ノ施行ニ伴ヒマシテ、新タニ郵便年金特別會計ノ豫算ヲ
提出イタシマシタ、以上御審議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ御願ヒ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=177
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178・林博太郎
○伯爵林博太郞君 唯今上程セラレマシタ、大正十五年度追加豫算案、此豫
算案ト云フモノヲ此際審査期限ヲ別ニ定メマセヌデ、審査終了次第報〓イタ
シマスト云フ動議ヲ提出イタシマス
〔子爵西大路吉光君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=178
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179・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長ハ御名ヲ御呼ビ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=179
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180・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 聞エマセヌデシタカラ〓〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=180
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181・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 林伯爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=181
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182・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
南小寺1発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=182
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183・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三十六、市町村義務〓育費國庫負擔法中改
正法律案、衆議院提出、第一讀會ノ續、委員長報告
市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
大正十五年三月二十日
右特別委員長
子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=183
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184・前田利定
○子爵前田利定君 本案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓イタシマス、
本案ハ御覽ノ通リニ、形ニ於キマシテハ誠ニ簡單デアリマシテ、第二條ノ四
千万圓ト云フノガ七千万圓ト改マリマス、附則ニ於キマシテハ、十五年ノ四
月カラ之ヲ施行スルト云フコトガ附則トシテ出テ居ルダケノコトデアリマシ
テ、至極簡單デアリマス、併ナガラ其意義ニ於キマシナハ、ナカ〓〓重要ナ
モノデアリマシテ、皆樣モ御承知ノ通リニ、地租ノ一分減ト殆ド釣合ノヤウ
ニ相成リマシテ、此法律案ガ衆議院カラ提出ニナッタモノデアリマス、本案ノ
審議ニ際シマシテ質疑應答ノ大部分ハ、斯樣ナル法律ハ入用ガ無イデハナイ
カト云フコトニ付キマシテ、或ル委員ヨリ文部大臣ニ質問ヲ發セラレマシタ、
其理由ハ、本年度ノ豫算ニ於キマシテハ義務〓育費國庫負擔額ガ二千万圓增
加サレテ居ルノデアリマスルガ、ソレニ對シマシテハ何等法律案ハ出テ居ラ
ナイ、政府ニ於テハ法律案ヲ出スコトノ必要ナシト斯ウ認メラレタ結果デア
ラウト思フ、然ラバ衆議院ニ於テ負擔額ガ一千万圓ヲ增加スルト云フコトニ
付テハ、政府ガ豫算ヲ修正サヘスレバ宜イデハナイカ、何モ斯ノ如キ法律案ハ
要ラヌデハナイカ、然ルニ政府ハ修正セズシテ、斯樣ナル法律案ヲ衆議院カ
ラ提出サレタノヲ是認シテ、其結果斯樣ナル法律案ガ貴族院ニ廻付サレタト
云フコトハ、是ハ違式デアル、左樣ナ論戰ガ委員ト文部大臣トノ間ニ繰返サ
レタノデアリマス、又或ル委員ハ、斯樣ナル法律案ヲ一方ニ否定スルト云フ
コトガ、效力ノ上ニ於テ、有ルト無イデハ違フデアラウト思フ、ト云フヤウ
ナル質問ヲサレテ、文部大臣ハ此法律ガ有ルト無イトデハ大變效力ノ上ニ於
テ異ナルト云フヤウナ答辯ヲセラレタノデアリマス、此質疑應答モ速記錄ニ
既ニ出テ居リマスルカラシテ、詳シイコトハ速記錄ニ付テ御覽ヲ願フコトニ
致シタイト思ヒマス、而シテ此討論ニ這入リマスルト、一人ノ委員ガ申サレ
マスノニハ、元來政府ノ方ニ於テハ質疑應答ノ時ニアッタ如クニ、二千万圓ノ
增額ニ付テハ法律ヲ出サナイ、法律ヲ出スノヲ要サナイト政府ハ認メテ居ラ
レタノデアル、然ルニ衆議院ヨリ斯樣ナル法律案ガ出テ、政府ガ妥協ノ結果
之ヲ承認スル以上ニハ、豫算ヲ修正ヲシテ廻サナケレバナラヌ、一體ノ本來
ノモノデアル、然ルニ豫算ヲ修正セナイデ、其儘本院ニ廻サレテ居ル以上ニ
ハ斯樣ナル法律ハ有ッテモ無クテモ宜シイノデアル、有ッテモ無クテモ宜シ
イモノナラバ、何モ此忙シイ此議會ニ於テ論議スル要ハ無イデハナイカ、是
ハ宜シク延期スル方ガ宜カラウ、斯樣ナ延期ノ意味ニ於キマシテ本案ヲ否決
スベシト主張サレタノデアリマス、之ニ對シテ一委員ハ、本案ハ是ハ地租條
例中改正法律案ト相對應シテ、一ツニ相關聯イタシテ居ルモノデアルカラシ
テ此場合ニ於テ本案ヲ矢張リ通過シタ方ガ穏當デアラウ、ト云フヤウナ贊成
論ガアッタノデアリマス、表決ニ付キマシテハ延期論ハ少數デ否決ニナリマ
シテ、本案ハ過半數ヲ以チマシテ原案ヲ可決サレタ次第デアリマス、右御報
告イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=184
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185・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ヨリ總理大臣ニ對シテ質疑ガアル趣デゴ
ザイマスカラ、發言ヲ許シマス、阪谷男爵
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=185
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186・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ總理大臣ニ質問ヲ致シマス、此法律案ノ憲法上ノ
取扱方ニ付テ、先月ノ二十六日ニ本員ト總理大臣トノ間ニ問答ガ此議場デア
リマシタ、本員ノ質問イタシマシタノハ、歲出ヲ增スト云フコトヲ、貴族院
ナリ衆議院ナリ議院ノ爲スト云フコトハ、憲法上ニ於テハ是ハ避ケルト云フ
慣例上ノ解釋ニナッテ居ル、故ニ歲出ヲ減ズルコトハ出來ルケレドモ、增スト
云フ提議ヲスレバ、內閣ノ責任ヲ輕カラシムルヤウニナルカラト云フヤウナ
コトガ明カニ認メラレテ、又ソレハ堅ク其事ガ守ラレテ居ル、然ルニ此法律
ハ豫算デハナイケレドモヽ明カニ一千万圓モ增スト云フ法律デアル、斯ウ
云フモノヲ出スト云フコトハ矢張リ從來ノ憲法上ノ取扱ノ慣例ニ違反スル
デハナイカト云フコトヲ、本員ガ質問イタシタニ對シテ、若槻總理大臣ハ、
成程宜クナイ、成程宜クナイガ、是ハ元〓地租一分減ト云フコトヲ政府ハ目
的トシテ居ッタノヲ、妥協ノ結果、衆議院ガ地租一分減ヲ止メテ、地方ノ義務
〓育費國庫負擔ヲ輕減スルト云フ意味デ以テ、此法律ヲ衆議院ガ提出シタノ
デアル、デアルカラ一方ヨリ見レバ歲出ヲ增シタヤウニモ見ラレルケレド
モ、其精神ノ基ク所ハ負擔輕減デアル、精神ノ基ク所ハ負擔輕減ニアルカラ
此法律ハ憲法上ノ取扱ニ於テ從來ノ慣例ニ反スルモノトモ認メラレナイ、餘
リ望マシイコトデハナイガ、ドウカ此儘ニシテ吳レト云フ意味ノ御答辯デア
リマシタ、デ然ルニ不幸ニシテデス、本員ガ心配イタシマシタコトガ忽チ實
現シテ參ッタノデアリマス、唯〓衆議院ニ於テ議員ノ歲費ヲ六千圓ニ增スト云
フ法律ヲ提出セムトシテ居ルノデアリマス、是ハ隨分ゴタゴタシテ居ッテ、本
員ハ其衆議院ノ結果ガドウナッテ居ルカ、今日ノ所ハ能ク存ジマセヌ、斯カル
事ガ繰返サレルト云フコトニナレバ、詰リ政府ハ有ッテモ無キガ如ク、議院
ガ勝手ニ法律ヲ出シテ歲出ヲ增ス、尤モ前年モ衆議院ハ議員ノ國有鐵道ノ乘
車劵ト云フモノヲ可決イタシテ、貴族院モ之ニ同意シタ例モアリマス、是ハ
マダ恕スベシデ、直チニ歳出ヲ增シタト云フ意味ニナラヌト云フ解釋デ當時
アッタト思ヒマス、併ナガラ議員ノ歲費ヲ三千圓ヲ六千圓ニ改メルト云フ議
院法ノ改正ト云フモノハ、明カニ歲出ノ增加デアッテ、貴衆兩院ヲ通ジタナラ
バ二百五十万圓カラノ負擔ニナルノデアリマセウ、是ハ財政緊縮ヲ旨トシ
テ居ル貴族院トシテハ、到底廻フテ來テモ、是ハ容レルコトノ出來ヌモノト思
ヒマスルガ、第一、此斯ウ云フ惡例ノ開ケタノガ、抑〓市町村義務〓育費國
庫負擔法ニ依ッテ政府ガ正當ノ手續ヲ執ラナカッタト云フコトニ基クノデハナ
イカト思フノデアリマス、豫算審査期限ノ法律ニ付テ衆議院ガ提出シタ場合
ニ、政府ハ同ジ法律案ヲ慌テテ御出シニナッタヤウナ形跡ガアル、同ジモノ
ガ衆議院ニ現ハレタ、而モ政府ノ方ガ後トカラ現ハレタ、此市町村義務〓育
費國庫負擔法ノ如キモ、衆議院ノ出スノガ若シ正當ノモノデアルトスレバ、本
員ハ、先刻特別委員長前田子爵ノ御說明ノ通リニ、疑ヲ懷イテ、有ノテモ無ク
テモ宜イノデハナイカト云フコトヲ文部大臣ニ聽イタノデアリマスガ、然シ
是ハ先ヅ要ルヤウナモノト假ニ致シマシタナラバ、政府ガ提出シテ、······御出
シニナッタ方ガ、憲法ノ取扱上ノ慣例ニ於テ其當ヲ得タモノノヤウニ思フ、デ、
政府ハ果シテ此議員ガ歲費ヲ增加スルト云フガ如キ法律案ヲ提出シテモ差支
ナイト御認メニナッテ居ルノデアルカ、貴族院ト致シマシテハ、慣例ニ從ッテ
是ハ到底廻ッテ來テモ、其事ノ可否得失ハ暫ク別ト致シマシテ、慣例上、取扱
フベキモノデナイト本員ハ考ヘルノデアリマスガ、政府ノ解釋ヲ伺ッテ置キタ
イ、本員ハ、是ハ惡例ト思フ、誠ニ市町村義務〓育費國庫負擔法案ノ如キ、此事
ノ善イ惡イヲ論ズルノデハアリマセヌガ、憲法ノ慣例ハ明カニシテ破ラヌヤ
ウニシナイト、憲法ト云フモノハ簡單ナモノデアル、此慣例ト云フモノハ時代
時代ノ國情ニ應ジ、民情ニ應ジテ發達シテ行クモノデアリマスカラ、其慣例
ヲ互ニ守ッテ行ケバコソ、立憲政治ノ誠ニ圓滿ナル發達ヲ見ルコトガ出來ルト
思ヒマスケレドモ、之ヲ互ニ勝手ニ崩スト云フコトニナルト、到底、大勢寄ッ
テ國事ヲ議スルト云フ立憲政治ノヤリ方ト云フモノハ行ハレナイ、名ヲ表ハ
スト云フコトハ甚ダ憚リマスケレドモ、例ヘバ我ガ隣國タル支那ノ立法機關
ノ如キハ、初終混亂ニ陷ッテ、議事ヲ開クコトガ出來ヌ、是ハドウシテモ互ニ
憲法トカ法規ヲ守リ慣例ヲ守ッテ、其範圍內デ是非得失ヲ論ジテ行カナクチヤ
ナラヌト思フ、此市町村義務〓育費國庫負擔法ノ如キ、此法律ト云フモノハ、
元來政府ノヤリ方ガ惡イノデアルカラ、忽チ脚下カラ今日ノ衆議院ニ於ケル
議員ノ歲費增加ト云フコトガ出テ來ル、若シ是ガ善イト云フコトニナレバ、
今度ハ六千圓ヲ一万圓ニ增シ、其次ニ二万圓ニ增ス、勝手ニ豫算ヲ增加スル
ト云フコトニナルト、誰ガ責任ヲ取ルカト云フコトニナル、責任ノ取リ手ガ
無イ、サウスレバ憲法政治ト云フモノハ圓滿ニ行ハレナイ、其基ク所ハ此法
律ニアルト思フ、首相カラ、此法律ノ出方ガ惡カッタ、今後ハ斯ウ云フコトハ
シナイ、又今ノ歲費ヲ增スト云フガ如キ法律案ト云フモノハ、是ハ明カニ慣
例ニ背クモノデナイカ否ヤト云フコトヲ伺ヒタイ
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=186
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187・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 議院ガ歳出ニ關スル發議ヲスル權能ガアリヤ否
ヤ、此事柄ニ付テハ憲法上、別ニ定マッテ居ル所ハアリマセヌカラ、ソレ故
二、議院ニハ歲出增加ノ發案權ガ無イト云フコトハ、斷言スルコトガ出來ヌ
ノデリマス、併ナガラ我國ニ於テ憲法ガ布カレテ以來ノ慣例トシテ、議院カラ
歲出增加議案ヲ提出スルト云フコトニナリマスルト、政府ノ責任ガ薄クナル、
政府ニ十分責任ヲ持タセテ政治ヲサセヤウト思フナラバ、議院カラ歲出增加
ノ發案ヲセラレナイト云フノガ當然デアルト云フコトニナッテ、左樣ナ慣例ニ
出來テ居ルコトハ、私之ヲ認メテ能ク承知シテ居ルノデアリマス、憲法上出
來ナイト云フコトデアルトハ存ジマセヌケレドモ、歲出ノ增加ヲ議院カラ發
議ナサレルト、政府ノ責任ガ大變薄ク感ズルヤウニナリマスカラ、責任政治
ヲ實行シテ行クト云フナラバ、左樣ナ事ハ宜シクナイ、斯樣ニ認メテ居ルノ
デアリマス、又是ハ憲法實施以來行ハレ來ッタ慣例デアルノデアリマス、唯、
ソレナラバ其事ニ全然是マデ例外ガ無イカ、斯ウ云ヒマスト、是迄ハ法律ニ
一定ノ金額迄ハ補助ヲスル、補助金ノ總額ヲ百万圓トカ、五十万圓トカ決メ
テアルノヲ、此金額ヲ增加スルト云フ法律ノ法律案ヲ提出セラレテ、ソレガ
成立シテ居ル例モアルノデアリマス、ソレデアリマスカラシテ、此慣例ニハ
ノ例外ガ無イトハ申シマセヌ、是迄ニモ有リマスガ、左樣ナ例ハ矢張リ宜シ
クナイト思フノデアリマス、矢張リ歲出ノ增加ニナルコトナラバ、政府ニ責
任ヲ持タセラレテ、議會ニ其意思ガアルナラバ建議デモセラレテ、サウシテ
實際ノ責任ハ政府ニ取ラセラルルノガ至當デアラウト私ハ考ヘテ居ルノデア
リマス、此義務〓育費國庫負擔額ノ增加ノ法律モ、實ハ此政府ガ發案ヲ致シ
マシテ、ソレニ依ッテ增加スルモノナラバ增加スルト云フノガ至當デアリマ
ス、其點ハ阪谷男爵ノ御述ベニナルト同樣デアルト私ハ心得テ居ルノデアリ
マス、唯併シ、此問題ハ妥協々々ト仰セニナルガ、公然ト議會ニ論議セラレ
テ、サウシテ地租ノ一分減ヲ政府ガ提出シタニ對シテ、地租一分減ヲシテ農
民ノ負擔ヲ輕減スルヨリモ、今農民ガ地方費トシテ、町村費トシテ農村ガ負
擔シテ居ル所ノ此〓育費、之ヲ國庫ノ方ガ支出シテ、ソレダケ町村ハ出サヌ
デ宜イコトニナッテ、ソレダケ町村ノ負擔ガ減ズルナラバ、結局農民ノ負擔ヲ
輕減スルコトハ大體同一デアル、午前中、小林君ハ數字ヲ擧ゲテ同樣ニナラ
ヌト仰セラレタ、其通リデアリマス、極ク窮極スレバ小林君ノ論ゼラレル
通リデアリマスケレドモ、併シ之ヲ實行イタシマスレバ、農民ノ負擔ノ輕減
ニナルコトハ確カデアリマス、ソコデ衆議院ノ一部ノ人ニハ、地租ノ一分減
デ負擔ヲ輕減スルヨリモ、今負擔シテ居ル所ノ町村ノ〓育費ニ對スル所ノ負
擔ヲ減ジテヤル、卽チソレダケヲ國庫ノ負擔ニ移スト云フコトニ依ッテ、農民
ノ負擔ヲ減ズル方ガ宜シイト云フ議論ガアッタノデアリマス、其二ツノ議論ヲ
大イニ鬪ハシテ、政府ハ何處マデモ地租一分減デ行ク方ガ宜シイト言ヒマス
ケレドモ議會ノ一部ニ於テハ矢張リ義務〓育費國庫負擔金ノ增加デ行ク
ト云フ方ガ宜シイノデアルト云フ結果、政府ノ一分減ハ修正セラレテ、サウ
シテ玆ニ〓育費ヲ增加スルト云フ案ガ殘ッテ居ルノデアリマス、突然ト此案ガ
出タノデハナイ、サウシテ其出タ趣意ガソコニアッテ、大イニ論議セラレテ、
結局其方ニ多數ノ意見ガ纏マッタト云フコトデアッテ、案ガ有ッタモノデアリ
マスカラ、ソレナラバ政府ガ態〓玆ニモウ一遍同ジ案ヲ提出セヌデモ、其案
ニ依ッテ其意見ヲ實行スレバ宜シイト云フコトデ、別ニ政府ノ案ヲ出サナカツ
タノデアリマス、議院法中ノ改正案ニ付テ衆議院ニ案ガ出テ居ツタニモ拘ラ
ズ、政府ガ案ヲ出シタ、アレト同樣ニスレバ宜イヂヤナイカ、是ハ私モサウ
スルコトガ出來ヌコトモナイト云フコトヲ認メルノデアリマス、唯議院法中
ノ改正案ハ、是ハ前議會ニ於テ政府ガ提出シマシテ成立セナンダノデアリマ
スケレドモ、政府ハ、是ハ矢張リ外ノ案ト一〓ニ、是非是ダケノモノハ實行
シタイト云フ考デアッタノデアリマスカラ、ソレ故ニ、政府ニ於テハ提出スル
積リデアリマシタガ、憲法附屬ノ法律案ノ改正デアリマスカラ、樞密院ノ議
ヲ經ナケレバナラヌノデアリマス、ソコデ政府ハ樞密院ノ議ヲ經ル手續ヲシ
テ居ル間ニ、衆議院ニ案ヲ出サレタノデアル、サウシテ樞密院ノ議ガ濟ンダ
ノデアリマスカラ、ソレデ案ハ出テ居リマスケレドモ、同ジ案ヲ政府カラ出
シタト云フヤウナ關係デアリマス、所ガ、此義務〓育費ノ問題ハ、初メカラ
衆議院ニ出テ居リマシテ、政府ハサウ云フコトハセナイ積リデアリマス、別
ナ計畫デ行ク積リデアリマシタノガ、政府ハ此一分減ト云フモノガ止マッテ、
一分減ノ代リニ之ヲヤラウト云フ論デアリマスカラ、ソコデ出テアル本案ニ
同意ヲシテ、今日、玆ニ當院ニ是ガ上程セラレルヤウニ相成ッタ次第デアリ
や、、大體ニ於テ、歲出增加ノ案ヲ議院カラ提出スルノハ宜シクナイ、斯ウ
云フ好イ慣例ノ出來テ居ル筈デアルガ、其慣例ハ維持スル考カト云フ御問ニ
對シテハ、其通リデアリマス、唯今、衆議院ニ議員ノ歲費ノ增加案ガ上程セ
ラレテ居ルカドウカハ私マダ審カニハ分リマセヌガ、恐ラクハ、是ハ衆議
院ニハサウ云フヤウナ風ニシテ決議セラルルコトハナイノデアラウト私ハ
考ヘテ居リマス、併シ、サウ云フノヲ提出シヤウト云フ意見ガ一部ニアッタ
ヤウデアルコトハドウモ事實ノヤウデアリマス、是ガ阪谷男爵ハ義務〓育
費國庫負擔金ノ增加案ガ議院カラ出タカラ、斯ウナッタト云フヤウニ、聯關
シテ御論ジニナリマシタケレドモ、私ハ是ハ全ク別ナ事デアル、此義務〓育
費國庫負擔金ノ法律案ガ、衆議院ノ提出案ガ今日コチラヘ參リマシタ爲ニ促
サレテ、歲費ノ增加案ガ出ムトシタノデハアリマセヌデ、是ハ全然別ノ動機
カラ起ッテ居ルデアラウト想像イタスノデアリマス、而シテ之ニ付テハ政府ハ
ドウ思フカト云フ御尋ガアリマシタガ、政府バ固ヨリ今日ノ緊縮方針ヲ以テ
財政ヲヤッテ居ル所、尙又國費ノ將來大イニ多端デアラムトスル情勢ニアル今
日、固ヨリ歲費ノ增加案ニ同意スル意思ハ持タヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=187
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188・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=188
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189・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=189
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190・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=190
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191・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=191
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192・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存コザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=192
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193・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
囍囍한후発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=193
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194・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キマス、本案全部ヲ問
題ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=194
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195・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=195
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196・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=196
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197・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=197
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198・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=198
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199・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
山本木幸発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=199
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200・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=200
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201・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
氚光市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=201
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202・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔長書記官朗讀〕
本日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
大日本聯合靑年團補助金ニ關スル建議案
(發議者公爵近衞文麿君外七名、賛成者侯爵中御門經恭君外百六十四名)
朝鮮ニ於ケル鐵道ノ普及促進ニ關スル建議案(發議者淺田德則君外四名、
贊成者公爵近衞文麿君外三十七名)
本日豫算委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十五年度歲入歲出總豫算案竝大正十五年度各特別會計歲入歲出豫算
案豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=202
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203・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明二十四日午前十時ヨリ開會イタシマス、議事日
程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後五時七分散會
〔參照〕
農商、工業者稅額比較調查(三重縣農會)
比較事項商業工業農業
圓圓圓
一十二年度一七、一八五·〇〇〇八、七一二·〇〇〇一四、五一七·五〇〇
一、所得總額
[十三年度一七、四一四·七五〇五、三〇四·〇〇〇一一、七四八·〇〇〇
一十二年度二、二七七·七一〇六六二·〇八〇四、三四四·九二〇
二、納稅總額
〔十三年度二、四八五·五四〇五九〇·九六〇四、五〇二·六二〇
(十二年度一、〇一〇·七〇〇一八八·七五〇一、三五八·九八〇
國稅
一十三年度一、〇八三·七四〇一八九·一二〇一八九·〇五〇
一十二年度六六一·一七〇二二六·六一〇一、七六三·〇八〇
縣稅
〔十三年度六一四·七六〇一六七·五二〇一、六四九·九三〇
〔十二年度六〇五·八四〇二四六·七二〇一、二二二·八六〇
町村稅
一十三年度六七八·二七〇二〇七·〇〇〇一、一二〇·九一〇
〔十二年度〇○○
其他
〔十三年度一〇八·七七〇二七·三二〇五四二·七三〇
割割割
三、總所得ニ對スル「十二年度一·三三〇·七六三·〇〇
稅率〔十三年度一·四三一·一一三·八三
四、總所得ニ對スル〔十二年度一·〇〇〇·五七二·二六
稅率比較指數〔十三年度一·〇〇〇·七八二·六八
備考
一、本調査ハ同町村內ニ於ケル殆ト同額ノ所得額(所得稅調査ノ)ヲ有スル農工商業者ヲ撰
ヒ各其所得額ヲ合計シ其納稅額ヲ比較シタルモノナリ
但シ工業者所得額ノ小ナルハ農商業者ト殆ト同額ノ所得アル工業者ヲ缺ク町村アル
ヲ以テナリ
二、大正十二年調查ハ縣下七箇町村
三、大正十三年調查ハ縣下五箇町村発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005103242X02919260323&spkNum=203
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