1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
大正十五年二月三日（水曜日）午前十時二十五分開議
出席委員左の如し
委員長 加藤政之助君
理事 永田善三郎君
理事 吉津度君
理事 岩切重雄君
飯塚春太郎君 神部爲藏君
井上利八君 奥村千藏君
三好榮次郎君 松本眞平君
堀切善兵衞君 山本条太郎君
佐々木文一君 長田桃藏君
星島二郎君 山内範造君
高橋光威君 本多貞次郎君
沼田嘉一郎君 清水長郷君
佐々木平次郎君 岡田温君
出席國務大臣左の如し
農林大臣 早速整爾君
商工大臣 片岡直温君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 武内作平君
大藏省主税局長 黒田英雄君
大藏技師 矢部規矩治君
農林政務次官 小山松壽君
農林省農務局長 石黒忠篤君
商工參與官 野村嘉六君
商工省工務局長 宮内國太郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
關税定率法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=0
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001・加藤政之助
○加藤委員長 只今ヨリ關稅定率法中
改正法律案ノ委員會ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=1
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002・永田善三郎
○永田委員 一寸議事ノ進行ニ付キマ
シテ申上ゲタイト思ヒマス、本案ハ今
期議會中ノ政府提出法律案トシマシテ
ハ重大ナル案ト思ハレマスノデ、殊ニ
國民生活ノ各方面ニ亙リマシテ、最モ
重大ナル關係ノアル議案デアルノデア
リマスルカラ、旁〓以チマシテ總テノ
法律案ニ付テ愼重審議スルコトハ勿論
デアリマスガ、本案ニ付キマシテハ特
ニ其審議ヲ愼重ニシタイカト思フノデ
アリマス、就キマシテハ先ヅ本案審議
ノ順序ト致シマシテ、當局カラ致シマ
シテ商工省大藏省主管ノ各常局ヨリ
本案ニ對スル懇切ナル說明ヲ戴キマシ
テ、ソレニ續キマシテ大體ノ質問ヲ致
シタイト思ヒマス、各派ニ於キマシテ相
當ナ人員ヲ割當テマシテ、サウシテ此質
問ヲ先ヅ兩三日繼續ヲ致シマシテ、ソ
レガ終リマシタ後ニ、各類別ニ付キマ
シテ逐條審議的ニ一ツ審議進メテ行キ
タイ、是ガ終リマシテ三四日委員會ヲ
休會致シテ、各派ノ本案ニ對スル態度
ヲ決メマシタ後ニ、更ニ委員會ヲ開イ
テ討論ニ移ル、斯樣ナ順序ニ致シテ本
案ノ審議ヲ決了致シタイト思フノデア
リマス、委員長ニ於カレマシテ宜シク
御取計ノ程ヲ御願ヒシタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=2
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003・加藤政之助
○加藤委員長 只今永田君ノ發議ノ通
リ、先ヅ主管大臣ノ懇切ナル說明ヲ聽
イテ、然ル後總體ニ付テ質疑應答ヲ重
ネ、ソレガ濟ンデカラ分類ニ付テ質疑
應答ヲ重ネル、サウシテソレガ終ッテ、
三四日間休會ヲシテ、其間ニ各派ノ意
見ヲ定メ、サウシテ更ニ委員會ヲ開イ
テ討論ニ移ルト云フコトデアリマスガ、
之ニ對シテ御異存ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ
者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=3
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004・加藤政之助
○加藤委員長 ソレデハ永田君ノ發議
ノ通リ決定致シマス-ソレデハ主管
ノ大臣カラ御說明ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=4
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005・黒田英雄
○黑田政府委員 只今主管ノ大臣ヨリ
ト云フ御話デゴザイマシタガ、大藏大
臣ハ只今他ニ參ッテ居リマシテ差支ガ
ゴザイマスノデ、私カラ大體ノ御說明
ヲ申上ゲタイト思ヒマス、關稅定率法
ノ改正案ニ付キマシテハ、既ニ先日本
議場ニ於キマシテ、大藏大臣ヨリシテ
大體ノ御說明ヲ申上ゲマシタノデアリ
マス、ソレ故ニ改正ノ方針又理由等ニ
付キマシテハ、私ハ此所ニ之ヲ省略致
シマシテ、內容ニ入リマシテ、改正ノ要
點竝ニ其理由ニ付テ大要御說明申上ゲ
タイト考ヘルノデアリマス、先ヅ定率
法ノ前文ノ改正ニ付テ申上ゲマスト、
此前文ハ關稅ノ賦課、減免及拂戾等ニ
關シマスル規定デアルノデアリマシ
テ、是モ別表ト同ジヤウニ明治四十三
年ノ制定ニ係ルモノデアルノデアリマ
ス、其後大正十年迄ニ數度必要ナ部分
的ノ改正ヲ行ッタノデアリマシテ隨ッテ
今囘其骨子ニ付テハ、大體現行ノ通リ
デ支障ナイコトト考ヘテ居リマスガ、
今囘別表ノ改正ニ伴ヒマシテ、自然多
少改正ノ必要モアリマスルシ又今日關
稅行政ヲ執行シテ參リマス實際ノ上カ
ラ見マシテ不便ノ點モアルノデアリマス
ソレ等ニ付キマシテ數條ノ改正ヲ致ス
コトニ致シタノデアリマス、先ヅ第一
ニハ四條ノ改正デアリマスガ、是ハ卽
チ保護關稅ニ關スル規定デアリマシ
テ、本邦ノ輸出品、又本邦ノ通過品ニ對
シマシテ、或ル國ニ於テ第三國ニ對シ
マスルヨリモ利益ナル取扱ヲ致シマス
場合ニ於キマシテハ、此方ニ於キマシ
テモ其國ノ輸出品、其國ノ通過品ニ對
シテ、報復的ニ關稅ヲ課シ得ルト云フ
一種ノ稅デアルノデアリマス、是ハ今
後ハ國際經濟ノ事ヲ考ヘマスルト云フ
ト必要ナル規定デアリマス、外國ニ於
キマシテモ其例モアルノデアリマス、
ソレカラ此七條中ノ改正ニ付キマシテ
ハ、本邦ニ派遣セラレテ居リマス外國
ノ大使、公使其他之ニ準スベキ使節ニ
屬スル自用品、及本邦ニ於キマスル外
國ノ大使館、公使館ニ屬シマスル公用
品デアリマスルガ、之ニ就テハ現行ニ
於キマシテハ絕對ニ免稅ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、然ルニ現在外國ニ於キ
マシテ我國ノ大使又ハ公使其他ノ自用
品、或ハ大使館、公使館ノ公用品ニ對シ
マシテ制限ヲ附ケテ免稅ヲスル國ガア
ルノデアリマス、ソレ故ニ是等ノ國ニ
對シマシテ、矢張我國ニ於キマシテモ
制限的免稅ヲスルコトガ適當デアラウ
ト考ヘマシテ、ソレ故ニサウ云フ場合
ニ於テハ制限的免稅ヲ爲シ得ルト云フ
規定ヲ設ケタノデアリマス、ソレカラ
第十號ノ改正デアリマスガ、是ハ一面
ニ於キマシテハ其範圍ヲ廣メ、又一面
ニ於キマシテハ適用ヲ制限シタコトニ
ナッテ居リマス、卽チ現行ニ於キマシテ
ハ私立ノ專門學校ト云フ風ニ、私立ニ
付キマシテハ專門學校ト云フコトニ限
定ヲ致シテ居ッタノデアリマスガ、之ヲ
少シク廣メ、命令ヲ以テ指定シタル私
立ノ學校ト云フコトニ致シタノデアリ
マス、同時ニ又一面カラ見マスト云フ
ト、此規定ノ適用ニ當リマシテ稍廣
キニ過ギ、或ル場合ニ於テハ是ハ濫用
サルルト云フ嫌ヒガアリマシテ、適用
上屢問題ヲ起スノデアリマスカラ、
ソレ故ニ是等ノ事ニ鑑ミマシテ、大藏
大臣ノ許可シタルモノト云フコトニシ
テ、今後是等ノ適用ノ規定ヲ統一的ニ
制限ヲ致シタイト云フ考ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ第十一項ノ改正
ニ付キマシテモ、是ハ從前適用上ニ付
キマシテ屢問題ヲ起スノデアリマシ
テ、現行ノ規定ガ稍抽象的ニ規定サ
レテ居リマス爲ニ、免稅ヲ致シマス範
圍ニ於テ、屢各稅關ニ於キマシテ取
扱上統一ヲ缺ク場合ガ起リ易イ、又是
等ノ免稅ヲ致シマスコトニ付テモ、屢
適用ノ範圍ヲ擴ゲタイト云フコトモ
アリマスノデ、ソレ故ニ稍具體的ニ
規定ヲ致シマシテ、適用上ノ便宜ニ致
シタノデアリマス、ソレカラ十五號ノ
規定ハ送還品デアリマスルガ、之ニ就
キマシテモ在外公館カラシテノ送還品
ニ付テ免稅ノ規定ガアリマセヌ爲ニ、
適用上ニ實際ノ不便ヲ感ジタノデアリ
マス、此際ニ於テ之ヲ改正致シタイノ
デアリマス、ソレカラ二十號ノ外國航
行ノ艦船ニ引渡シマス物品ノ規定デア
リマスガ、之ニ就キマシテハ現行ハ開
港內ニ限ッテ居リマシタガ、外國航行ノ
船ガ其以外ニ入リマス場合ガアルノデ
アリマス、ソレ等ノ場合ニ是等ノ船用
品ヲ免稅致スコトモ、別ニ取締上ニ於
テ不都合ガナイノデアリマス、ソレ故
ニ之ヲ加ヘタノデアリマス、二十二號
ニ付テハ但書ヲ加ヘタノデアリマス、
是ハ現在通リデアリマスガ、但書ヲ加
ヘテソレヲ補ッタノデアリマス、七條ノ
十一號ノ二ノ「社寺、〓會又ハ禮拜堂ニ
寄贈セラレタル式典用具及禮拜用具」、
是モ自然精神生活ノ方面ニ必要デアラ
ウト考ヘマシテ加ヘタノデアリマス、
ソレカラ八條ノ六號ノ二ノ「製作見本
品トシテ輸人スルモノ」、是ガ規定ヲ缺
イテ居リマシタ、見本トシテ本邦ニ寄
越シマシテ、サウシテ其見本ニ依テ外
國ニ輸入スル場合ノ規定ヲ缺イテ居ル
ノデアリマスカラ、ソレヲ追加シタノ
デアリマス、九條ニ付キマシテハ、是ハ
本法ノ改正ニ伴ヒマシテ自然改正ノ必
要ヲ生ジタノデアリマス、第一ニ此現
行ニ於テハ亞鉛華ヲ構成致シマシタ場
合ニ、其原料ニ對シマシテ輸入稅ノ一
部若クハ全部ヲ免除スル規定ガアリマ
シタガ、是ハ亞鉛ヲ用ヰズシテ亞鉛華ヲ
造リマシテ、「ペイント」ヲ造ル場合ニ
於キマシテ「ペイント」ニ對シマシテ英
吉利トノ協定稅率ノアリマシタ爲ニ
亞鉛華ノ稅率ヲ引上ゲルコトガ出來ナ
カッタノデ、隨テ此亞鉛華ニ對シマシテ
其用ヒマシタ亞鉛ニ對シマシテ免稅ヲ
致シマシタ、御承知ノ通リ昨年三月十
日ニ於キマシテ英吉利トノ協定ガ消滅
致シタ、隨テ適當ノ稅率ヲ課スルコト
ニナリマシタノデ、亞鉛華ニ致シテモ
其必要ガ無クナッテ參リマシタ、ソレカ
ラ茶鉛ヲ加ヘマシタガ、是ハ卽チ此輸
出品ノ包裝ニ使ハレルノデアリマス、
外國ニ輸出サレマスモノノ包裝用ニナ
ルノデアリマスカラ、其製作ハ適當ニ
便宜ヲ圖ルコトガ必要デアルト云フ考
カラ、其製作ニ對シマシテハ、此原料ニ
對シテ免稅ヲスル規定ヲ設ケタノデア
リマス、ソレカラシテ亞鉛薄板デアリ
マスガ、是ハ現行ノ規定ハ厚サガ〇·二
「ミリメートル」ヲ超エザルモノハ薄板
ニナッテ居リマスガ、是ハ御承知ノ通リ
燃寸等ノ包裝ニ使ハレマシテ輸出サレ
ルモノデアリマスガ、事實ニ於キマシ
テハ〇·二ノ厚サマデハ要ラナイ、ソレ
等ノモノニ對シマスル必要ト致シマシ
テハ、〇·一七「ミリメートル」ト云フモ
ノデ十分デアルト云フコトニナッテ居
リマスカラ、ソレ故ニ是ハ改メマシテ
〇·一七「ミリメートル」ニ致シマシ
タ、ソレカラ現今ニ於キマシテハ之ヲ
肥料ノ製造ト云フコトニ使ッテ居リ
マスガ、是ハ油又ハ油糟製造ト云フコ
トニ致シタノデアリマス、ソレ等ガ此
第九條第二項ノ改正デアルノデアリ
マス、別表ノ改正ニ付キマシテハ、
先般大藏大臣カラシテ其大體ノ方針
ノ說明ガアッタノデアリマスカラ、ソ
レ等ノコトハ省略致シマスルガ、第
一申上ゲマスルコトハ、贅澤品等ニ關
シマスル法律ノ關係デアリマシテ、此
所謂贅澤稅ヲ課シテ居リマスル品目ニ
付キマシテハ、其設置ノ趣旨ニ鑑ミマ
シテ、暫ク是ハ別個ニ致シマシテ手ヲ
觸レナイコトニ致シテ居ルノデアリマ
ス、ソレ故ニアノ法律ニ規定シテ居リ
マスルモノハ、現行ノ別表ノ稅番ヲ揭
ゲテ品目ヲ指定シテ居ルノデアリマ
スソレ故ニ今囘ノ別表ニ於キマシテ
ハソレ等ノ稅番ハ動カサナイコトニ
致シテ居ルノデアリマス、隨テ今囘ノ
別表ニハ色〓ノ品目ガ、多少分類ヲ變
ヘテアリマスガ、併ナガラソレ等ニ關
係致シテ居リマスル品目ニ關シマスル
稅番ニハ異動ガナイノデアリマス、隨
テ此關係ニ於キマシテハ、贅澤品等ニ
對シマスル法律ヲ變更スル必要ハナイ
ノデアリマス、關東州ヨリ輸入シマス
ル關東州ノ生產ニ係リマス物品ノ輸入
稅免除ニ對シマスル法律デアリマス
ガ是モ矢張同ジヤウニ現行ノ別表ノ
稅番ヲ揭ゲテ品目ヲ指定シテ居ルノデ
アリマス、之ニ就キマシテハ一二變更
ヲ致サナケレバナラヌ所ガアルノデア
リマス、是ハ何レ其法律ノ改正案トシ
テ御協賛ヲ願フヤウニナルコトト考ヘ
テ居ルノデアリマス、輸入稅表ノ編成
ノコトニ付テデアリマスガ、是モ根本
的ニ之ヲ變ヘマスレバ、又色〓立テ方
ガアルノデアリマスカラ、改正スベキ
點モアラウト考ヘルノデアリマスガ、
旣ニ相當長年月ノ間實際ニ施行致シマ
シテ、官民共ニ之ニ慣熟致シテ居ルノ
デアリマスカラ、先ヅ大體ハ現行ノ儘
ニ之ヲ致シタノデアリマス、唯此稅目
ノ配列分類ノ方法ニ付キマシテハ、今
申上ゲマスヤウニ成ベク現行ノモノヲ
踏襲致シテ居リマスガ、實施致シマス
上ニ於キマシテノ便否モ考ヘマシテ、
多少變更致ス所モアルノデゴザイマ
ス、卽チ現在ニ於キマシテ二ツニ分ケ
テ居リマスモノガ、實際ノ品物ニ當リ
マシテ、稅關ノ通關ノ手續ヲ致シマス
上ニ於テ區別ノ困難デアルト云フ風ナ
モノハ、之ヲ一ツニ合セマストカ、或ハ
藥品等ノ所ニ於キマシテ花デアルト
カ、根デアルトカ、葉デアルトカ云フ風
ノモノガ色〓アルノデアリマスガ、是
等ガ諸所ニ散ッテ居リマシテ見ルノニ
不便ノヤウナモノハ、成ベク之ヲ一ツ
ノ所ニ集メルト云フ風ニ致シテ居リマ
ス、又今マデ別號ニ揭ゲザル品目トシ
テ揭ゲテ、一ツノ中ニ入レテ特揭ヲ致
シテ居リマセヌ品物ニ付キマシテモ、
今日輸入ノ相當多イ物ガアッテ、特ニ之
ニ對シテ稅率ヲ盛ルト云フコトガ適當
ナモノニ付キマシテハ、ソレ等ノ中カ
ラ之ヲ抽出シテ、別ニ特揭ヲ致シマシ
テ、適當ノ稅率ヲ盛ルヤウニ致シテ居
ルノデアリマス、サウ云フ風ニ所々ニ
ハ實際ノ便宜ヲ考ヘマシテ變ヘタ所モ
アルノデゴザイマスガ、前申シマス通
リ大體ニ於キマシテハ、稅率ノ配列又
ハ分類ト云フコトモ現行法ヲ踏襲致シ
テ居ルノデアリマス、ソレカラシテ今
日從價稅デアリマスモノモ、從量稅ニ
直スコトノ出來マスルモノハ、成ルベ
ク之ヲ直ス方針ヲ執ッタノデアリマス
ガ、又同時ニ一方ニハ從量稅ニナッテ居
リマスモノモ、輸入ガ非常ニ少クシテ
實際ニ從量稅ヲ割出スコトガ困難デア
ルト云フ風ナモノハ、之ヲ從價稅ニ改
メマスモノモアルノデアリマスシ、又
新ニ設ケマシタモノニ付キマシテモ、
從量稅ニ於テ適當ナル從量稅ヲ割出
シ價格ヲ見出スコトノ困難ナモノニ付
キマシテハ、從價稅ニ致シテ居ルノデ
アリマスカラ、結局ニ於キマシテ從量
稅ニナリマシタ數ハ、現行ニ較ベテ僅
カシカ增加致シテ居ラヌノデアリマ
ス、併ナカラ出來ルダケハ實際ノ通關
ノ上ニ於キマシテモ從量稅ガ便宜デア
リマスカラ、出來ルダケハ從量稅ニ改
メルコトニ致シタノデアリマス、ソレ
カラ稅率ヲ盛リマスルニ付キマシテ、
大體ノ方針ハ、是ハ大藏大臣ヨリモ御
話ガアッタノデアリマスガ、生活ノ必需
品等ニ付キマシテハ成ベク輕減スルト
云フ趣意カラ致シマシテ、此前ニモ申
上ゲマシタ通リ、生牛肉或ハ鳥卵等ニ
付キマシテハ之ヲ引下ゲ、或ハ鳥獸肉
ノ罐詰トカ、或ハ生鮮ナル魚介類、或ハ
魚介類ノ罐詰等ニ付キマシテハ稅率ヲ
引下ゲテ居ルノデアリマス、又稅率ヲ
引下ゲルコトヲ致シマセヌデモ、ソレ
等ノ趣意カラ致シマシテ据置キマシタ
モノハ、或ハ小麥デアルトカ、或ハ小麥
粉デアルトカ、大豆デアルトカ、「バタ」
デアルトカ、或ハ或種ノ醫藥品等ニ付
テハ据置ヲシテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ別表ニアリマスモノニ付キマシ
テハ、成ベク之ヲ無稅ニシ、若クハ課稅
ヲ廢スルト云フコトニ注意ヲ致シタノ
デアリマス、例ヘバ製藥ノ原料ト云フ
ヤウナモノニハ、無稅ニ致シタモノモ
アルノデアリマス、或ハ「ピッチ」デアリ
マストカ、或ハ木「タール」トカ云フヤ
ウナモノハ、是ハ無稅ニナッテ居ルノデ
アリマス、又染料トカ醫藥品ノ原料デ
アリマストカ、「コールタール」ノ分餾
物、是ハ二割カラ免稅ニ致シテアリマ
ス、又工業用ノ藥品等ニ對シテハ硫酸
曹達トカ、或ハ硫酸「ノトリウム」トカ、或
ハ硝酸「セリウム」、、「ロヂウム」鹽類、或
ハ木精ト云フヤウナモノ、之ヲ皆無稅
ニ致シテ居ルノデアリマス、又工業ニ使
ヒマス眞綿、「ベニー」ト云フヤウナモ
ノモ無稅ニ致シテ居ルノデアリマス、
ソレカラ輸出奬勵ノ爲ニ免稅ヲ致シマ
シタヤウナモノニ付キマシテモ、減免
致シマシタモノハ、或ハ水品ノ原石デ
アル、或ハ「アンペラ」袋、是等モ無稅ニ
致シタノデアリマス、或ハ漂白シマシ
タ手織ノ亞麻布、是モ輸入致シマシテ
ハ更ニ加工シテ海外ニ輸出スル物デア
リマスカラ、現在モ無稅ニ致シテゴザ
イマスガ、其範圍ヲ實際ニ合ヒマスヤ
ウニ、適當ニ修正擴張ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、ソレカラ稅率ヲ盛ル上ニ
於テ、稅率卽チ何割ト申シマスルモノ
モ引下ゲ、又ソレヲ從量稅ニ直シ、其
從量稅率モ共ニ引下ゲタモノモアル
ノデアリマスガ、併ナガラ稅率ヲ引
下ゲルトカ若クハ据置キマシテモ、
價格ノ關係カラ致シマシテ、實際ニ從
量稅率ガ幾分カ增シタ物モアルノデア
リマス、是等ノ物ニ付キマシテハ稅率
ヲ定メマス上ニ於キマシテモ、他トノ
權衡ヲ見マシテ、或ハ生活ニ必要ナ物
デアルトカ、或ハ原料ニナリマストカ
云フ物ニ付キマシテハ低イ稅、或ハ五
分、或ハ一割ト云フ風ナ稅率ヲ盛リマ
シテ、又ソレガ加工サレマシテ製品ニ
ナッテ居リマスレバ、ソレヨリ高クス
ル又直接商品トナリマスル物ニナル
ト、更ニ其稅率ヲ引上ゲルト云フ風ニ
シテ、他トノ權衡ヲ見マシテ、其品物ニ
付テ適當ナル稅率ヲ盛ッタノデアリマ
スガ、ソレヲ從量稅ニ直シマス際ニ於
テ、多少現行ノ稅率ヨリモ增スモノモ
出來テ參ッテ居ルノデアリマス、併シソ
レハ他トノ權衡カラ見マシテ、ソレ位
ナ增シ方ハ差支ナイト云フ風ニ大體考
ヘテ居ルノデアリマス、又或ル物ニ付
キマシテハ、內地ノ生產上ニ於テ良好
ナ結果ヲ得ラレルモノデアルト云フ風
ニ考ヘテ、卽チソレガ上ルト云フコト
ハ差支ナイ、寧ロ好キ結果ヲ得ラレル
ト云フ風ニ考ヘル物モアルノデアリマ
ス、又嗜好品デアリマスレバ、多少上ル
ト云フコトモ是ハ差支ナイ、又內地ノ
產業ヲ保護スルト云フコトノ必要カラ
致シマシテ稅率ハ下リマシタガ、實際
ノ從量稅ヲ適當ノ程度マデ引上ゲテ、
サウシテソレニ依テ保護ノ目的ヲ達ス
ルト云フコトモアルノデアリマス、ソ
レ故ニ一〓ニ稅率ガ下ッテ、實際ノ結果
ガ上ッテ居リマス物ニ付キマシテモ、其
上ッテ居ルト云フコトガ、色〓ノ點カラ
見マシテ適當デアルト云フ風ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、一寸一例ヲ申上ゲ
テ見マスルト云フト、食料品ノ所デ「カ
リー」、「マスタード」ノ如キ、是等モ稅
率ハ減ジテ居リマスルガ、從量稅率ハ
上ッテ居ルノデアリマス、是ハ稅率ハ他
トノ權衡上定メタノデアリマスガ、併
シ是等ノ物ハ嗜好的ノ物デアッテ、少シ
位ノ高率ハ差支ナイト云フ風ニ考ヘタ
ノデアリマス、又或ハ人造絹絲デアル
トカ、或ハ「リロリユーム」、「ブラソケッ
ト」、綿絲ノ中デモ糸卷ニ卷イタモノデ
アルトカ云フ風ノモノハ、稅率ハ下ッテ
居リマスガ、實際ノ從量稅率ハ上ッテ居
ルノデアリマス、其上ッテ居ル程度ハ、
是等ノ事業ヲ相當保護スル必要アリト
考ヘテ、ソレニ適當ナダヶ引上ゲテ居
ルノデアリマス、ソレトモウ一ツハ從
量稅額ヲ定メテ居ルモノモアル、從價
稅ヲ從價稅ノ其儘ニ据置キ、又從量稅
ニナッテ居リマスル物ハ、其割出シマシ
タル稅率ノ如何ニ拘リマセズ、其從量
稅額ヲ据置クト云フ物モアルノデアリ
マス、是等モ据置キマシタ趣旨ガ生產
ガアリマシテモ、原料トシテ必要デアッ
テ、之ヲ引下ゲ若クハ無稅ニスルト云
フコトハ、内地ノ生產ニ惡イ影響ヲ及
ボス虞ガアリマス、又之ヲ引上ゲルト
云フコトハ、是等ハ原料品ニ使ハレル
ト云フ關係カラ致シマシテ、下ゲル方
ガ適當デアルト云フ風ニ考ヘタ物モア
ルノデス、例ヘバ一二ノ例ヲ擧ゲマス
レバ、漆デアルトカ、或ハ銅デアルト
カ、亞鉛或ハ醋酸、石灰、製紙料ノ「パル
プ」デアルトカト云フモノハ、大體サウ
云フ風ナ趣旨デ出來テ居ルノデアリマ
ス、又同ジ据置キマシタ物ニ付テモ生
產ガアルノデアリマス、併ナガラ之ヲ
引下ゲルト云フコトハ其需要ニ對シテ
稍危險ヲ及ボス虞ガアルト云フ風ナ
物ニ付キマシテ、据置イタ物モアルノ
デアリマシテ、ソレ等ハ譬ヘテ見マス
レバ、例ヘバ羊毛製ノ「フエルト」帽子
及帽體、或ハ硝子板デアリマストカ、瓦
斯石油機械ノ小サイ部類ノモノデアリ
マストカ云フモノデアリマス、又据置
イタ物ノ中ニ第二ノ部類ニ屬シマスル
物ハ、卽チ特殊ノ物デアリマスガ、例へ
バ縫衣「ミシン」ノ機械ノ如キ、是等ノ
如キハ無論專賣デアッテ、內地ニ於テ出
來ナイノデアリマス、ソレ故ニ据置ト
云フ風ナモノハ白金製ノ坩堝デアルト
カ、皿デアルトカ云フモノモ、是等ハ特
殊ノ趣意カラ致シマシテ据置イタノデ
アリマス、サウ云フ風ニ稅率ヲ盛リマ
ス上ニ於テハ色〓ナ場合ガアルノデア
リマス、其結果ト致シマシテ有稅品ヲ
無稅ニ改メマシタ物ガ全體デ三十四ア
ルノデアリマス、無稅ヲ有稅ニシマシ
タ物ハ六ツデアリマス、稅率ヲ輕減致
シマシタ物ガ二百二十七、稅率ヲ引上
ゲマシタ物ガ六百十二、稅率ノ變更ノ
ナイ物ハ八百三十ト云フ風デ、大體五
十「パーセント」ノ物ハ現行据一置ニナッ
テ居ルノデアリマス、以上ガ大體ノ御
說明デアリマスガ、終リニ此改正案ノ
附則ト致シマシテ、大正十一年ノ法律
第二十二號及大正十四年法律第二號ヲ
廢止致シテ居ルノデアリマス、十一年
ノハ、銅、眞鍮及靑銅ノ輸入稅ニ關スル
モノデアリマスシ、十四年ノモノハ、同
ジク英吉利ノ協定ガ無クナリマシタ際
ニ於キマシテ、應急ノ處置ト致シマシ
テ、鐵板等ニ付テノ稅率ヲ定メテ居ル法
律デアリマスガ、是ハ今囘ノ稅率ノ別
表ノ中ニ之ヲ編入致シタノデアリマス
カラ、此法律ヲ廢スルコトニ致シタノ
デアリマス、以上ハ大體ノ御說明デゴ
ザイマスガ、尙ホ御疑問ノ點ニ付キマ
シテハ御尋ニ依リマシテ御答ヲ申上ゲ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=5
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006・加藤政之助
○加藤委員長 商工大臣カラ御說明ガ
アリマスカ-ソレデハ今ノ大體ノ御
說明デ他ニ御聞キスル必要ハアリマセ
ヌカ、無ケレバ總體質問ニ入リマスー
-ソレデハ是カラ全體ニ付テノ質問ヲ
開始シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=6
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007・堀切善兵衞
○堀切委員 私ハ大體ノ方針ニ付キマ
シテ大藏大臣ノ御答辯ヲ要求致シタイ、
商工大臣御出席デゴザイマスガ、關稅
法ニ付テノ大體ノ御說明ハ、政府ヲ代
表シテ大藏大臣ガヤラルルコトガ當然
デアラウト思ヒマス、其御演說ニ付テ
主トシテ御尋致シタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=7
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008・加藤政之助
○加藤委員長 大臣ハ稅制整理ノ方ニ
行ッテ居ラレルサウデスガ、代ッテ御質
疑ニ對シテ說明スルコトハ出來ルヤウ
デスケレドモ、大臣ノ御出席ヲ求メマ
スカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=8
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009・堀切善兵衞
○堀切委員 此關稅案ハ非常ニ重大ナ
ル關係ヲ國民生活ノ各方面ニ及スノデ
アリマス、稅制整理案モ重大ニハ相違
アリマセヌガ、是ト相對立シテ非常ニ
重大ナモノデアル、又委員長モ吾ミノ
老先輩加藤君ヲ煩シテ居ル位デアリマ
スカラ、大藏大臣ニ御出席ノ上御答辯
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=9
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010・加藤政之助
○加藤委員長 ソレデハ大臣ノ出席ハ
求メマスガ、今向フデ御說明中デアリ
マスカラ、ソレガ濟ムマデ保留シテ他
ノ問題ニ移リタイト思ヒマス、大臣ガ
出席シテ御質問ナサイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=10
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011・堀切善兵衞
○堀切委員 左樣致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=11
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012・岩切重雄
○岩切委員 私モ大藏大臣ニ承リタイ
事モアリマスケレドモ、ソレハ堀切君
ト同樣大藏大臣ガ御見エニナリマシタ
際ニ承リタイト思ヒマス、併ナガラ其
他ノ問題ニ付キマシテ此際御尋致シマ
ス、第一ニ御尋致シタイ事ハ、是ハ商工
大臣竝ニ農林大臣ノ產業政策ニ對スル
今後ノ御見解ニ關スル問題デアルト考
ヘマスガ、只今黑田政府委員ノ御話ニ
依リマシテ、本關稅政策ノ御改正ノ趣旨
ハ、大體大藏省トシテノ御考ハ承リマ
シタガ、商工大臣竝ニ農林大臣ハ、自己
ノ省トシテノ方針ハ御說明ガ無イヤウ
ニ考ヘマスガ、是ハ大藏省ノ御見解ト
若シ同ジデアルトスルナラバ、只今ノ
御說明ヲ基礎トシテ御尋申シタイト考
ヘマス、關稅政策ハ非常ニ國民生活ニ
重大ナル影響ヲ持ッテ居ルコトハ특선,
議論ノ無イ所デアリマス、是ハ私本會
議ニ於テモ質問致シタイノデアリマス
ガ、單ニ關稅ノ表ヲ改メルト云フコト
ニノミ勿論執着スルモノデハアリマセ
ヌケレドモ、此關稅ト云フモノハ、同時
ニ國內產業ヲ如何ニ確立シテ行クカト
云フコトニ非常ナ重大ナ關係ヲ持ッテ
居ルト考ヘマス、一方ニ保護政策ヲ執
ルト云フコトヲ大體ノ主眼ト爲サルト
スルナラバ、保護政策ヲ執ルト同時ニ、
如何ニシテ內地ノ產業ヲ興スカト云フ
コトヲ考ヘナケレバナラヌ、保護政策
ヲ執ッテ內地產業ニ十分ナル力ヲ注ガ
ナケレバ、其結果ハ當然物價ノ引上ト
云フコトニナッテシマウノデアリマス、
所謂收入主義ニ結論ガナッテ來ル、若シ
關稅政策ト云フモノガ、保護關稅ノ意
味ガ徹底スルナラバ、收入ガ零ニナル
ノガ結局理想デアル、勿論此中ニハ保
護政策ノミデハナイ、原料ニ對シテ無
稅ニサレル保護モアリマスケレドモ
保護政策ノ關稅ハ理想トシテハ少シモ
收入ハ無クナル、隨テ豫算ノ中ニ將來
其額ヲ見積ルト云フコトモ極メテ不當
ナ事ニナルト、是ハ理想的ニ云ヘバサ
ウ云フ結論ニナルト考ヘマスデアリ
マスカラ一方ニ關稅ト云フモノガ目的
ヲ達スルニハ如何ニシテ產業ノ發達ヲ
圖ルカ、此方面ニ對スル商工、農林兩大
臣ノ御方針ト云フモノガナケレバナラ
ヌト思フ、併ナガラ現下ノ內地產業ノ
狀勢ヲ考ヘマスト、殊ニ農村ニ於テ甚
シク片手落ナ點ガアル、若シモ產業ヲ
發達スル爲ニハ一面ニハ關稅政策ヲ
十分ニ考慮スルトスルナラバ、之ニ對
シテ內地產業ニ對スル十分ナル奬勵ト
云フモノガナケレバナラヌ、然ラズン
バ前ニ言フ如ク物價ト云フモノハ洵ニ
高クナル、其處デ金融問題ト云フモノ
ガ、最モ是ハ大事ナ問題ニナッテ來ルノ
デハナイカ、而モ農村ニ於ケル金融狀
態ハ、一〓ニ非常ニ金利ガ高イト思フ、
地方ノ小銀行ノ金利ト云フモノハ、決
シテ中央デ金利ノ協定ヲ致シマシテ
モ、殆ド高利貸ニ等シイヤウナ銀行ガ
尙ホ今日地方ニアル、假ニ非常ナ高イ
金利デ融通ヲ得ルト致シマシテモ、借
リラレバマダ結構デアリマスケレド
モ、地方ノ小產業家ハ今日金融ト云フ
モノハ非常ニ塞サレテ居ルト云フ現狀
デアルト思ヒマス、低利資金其他ノモ
ノガアルト申シマシテモ、是亦極メテ
不十分デアル、此問題ニ對シテハ、先月
大藏大臣ハ地方ノ產業ヲ興スノニ低利
資金ヲ主體トシテヤルノハ宜シクナイ、
自己ノ力ヲ以テ自ラシナケレバイカヌ
ト云フ御趣旨ノ御答辯ガアリマシタケ
レドモ、自己ノ力ヲ以テ產業ヲ興ス所
ノ能力ガアレバ、日本ノ農家、農村產業
ト云フモノハ旣ニ興ッテ居ナケレバナ
ラヌ、サウ云フ能力ガナイカラシテ低
利資金ノ途ヲ仰ギ、從來ノ一割乃至二
割三割ト云フ高イ金利ヲ整理シテ比
較的利益ノ少イ農產物ヲ能ク賣ラウト
云フノガ今日農家ノ心得デアリマス、
此地方ノ產業ヲ興スノニ對シテ、今日
農村ノ金融ト云フモノハ不十分デナイ
ト云フコトヲ農林省ノ方〓ハ御考ニナ
ルノデアリマスカ、又大藏大臣ガ言ハ
レル通リ、自己ノ力ヲ以テ、地方ノ產業、
殊ニ農村產業ト云フモノハ興セバ宜
1、低利資金ナルモノハ從タルモノデ
アルト云フコトヲ農林省ハ御考ニナツ
テ居ルノデアルカ、又サウデナイトス
ルナラバ、私ガ言フガ如ク地方ノ資金
ハ今日不十分デアルト云フ事實ハナイ
ト御認メデアルカ、ソレ等ノモノヲ若
シ處置サレルト致シタナラバ、如何ニ
シテ農村產業ヲ開發スルノデアルカ農
林省ノ方カラ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=12
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013・小山松壽
○小山政府委員 只今ノ御尋ノ產業ノ
根本政策ニ付テ農林大臣ヨリノ說明ヲ
求メラレタノデアリマスガ、是ハ御要
求ノ通リ農林大臣カラ御答スルコトニ
致シマス、第二ノ農村金融ノコトニ付
テ、政府委員トシテノ說明ヲ御求メニ
ナリマシタ、大體之ニ就テ申上ゲマス、
農村ニ於ケル產業政策ニ付テハ、農林
省ト致シマシテハ、五十議會ニ於テ農
林省ノ獨立ノ豫算ヲ御協賛ノ得マシタ、
此精神ニ基キマシテ、其所管ノ事業ニ
對シ、最善ヲ盡シテ其効果ヲ擧ゲタイト
努メテ居リマス、御承知ノ如ク農村ノ
產業ニ付キマシテハ、出來得ルダケ奬
勵助長ノ方針ヲ執ッテ居リマスコトハ、
各般ノ施設豫算ノ上デ御認メ下スッテ
モ分ルト思ヒマスガ、併ナガラ唯〓政
府ノ施設スル所ノミニ依テ我國ノ產業
ガ其目的ヲ達シヤウトハ考ヘマセヌ
民間ニ於テモ政府ノ施設ト相俟テ、協
力シテ其効果ヲ擧ゲルコトニ致シマセ
ヌケレバ、政府唯單リ此力ヲ致シテ
所期ノ目的ヲ擧ゲ得ルト云フコトハ至
難デアラウト考ヘマス而シテ只今ノ
御尋ノ農村金融ノ問題ニ付テハ、毎議會
ニ於テ是等ニ對シテノ種々御意見モア
リマスシ、農村金融ノ事ニ付テ各方面
ノ種々ノ御意見モ承リ、私共モ其御意
見ノ全部ニ共鳴スル譯ニハ參リマセヌ
ガ、確ニ御意見ノ中ニ拜承スベキ所ノ
御尤デアルト信ズル所モアリマス、
此事ニ付テハ先ヅ以テ低利資金ノ供給
等ニ付テモ出來得ルダケ、前段ニ申上
ゲマシタ奬勵助長ノ方針ニ依リ、ソレ
等利用ノ途ヲ講ズルコトニ盡シタイト
考ヘマシテ、種々ナル方面ニ尙ホ一層
其融通ヲ期シタイト努メテ居ル譯デア
リマス、而シテ都會ニ於ケル金利ト農
村ニ於ケル金利トノ間ニ、或ハ格段ノ相
違ノアルト云フコトハ、是ハ御說ノ通
リデアリマス、要ハ成ベク低利資金ノ
供給ヲ圖リ、金利ニ於テハ成ベク其低
利ナルコトヲ期シタイト考ヘマス、農
村ノ金融ノ方面ヲ掌ッテ居リマス所ノ
勸業銀行、農工銀行、而シテ產業組合中
央金庫等ノ金融關係ニ付テモ、旣ニ勸
業銀行ニ於テモ此ノ方ニ意ヲ加ヘマシ
テ、成ベク農村ノ金利ヲ考慮シテ、御意
見ノアル所ニ副ヒタイト云フ風ニ努メ
テ居ルヤウデアリマス、中央金庫ノ事
ニ付キマシテモ、是ハ前ノ議會デ御協
賛ヲ得マシテ、此中央金庫本來ノ性質
カラ、成ベク其機能ヲ發揮スルヤウニ
ト云フコトヲ政府素ヨリ監督ノ位地
トシテ之ニ努メテ居ル譯デアリマス
ガ、申上ゲルマデモナク產業組合中央
金庫ハ其創立日尙ホ淺ウゴザイマシ
テ、只今其機能ヲ十分ニ發揮スルノ狀
態ニ進ンデ居リマセヌ、サリナガラ只
今ノ御意見ニアリマス金融ノ方面ニ付
キマシテハ先ヅ以テ政府監督下ニア
リ、議會ニ於テ中央金庫ヲ創立致シマ
シタ時ノ其精神ニ則リマシテ、成ベク
一日モ早ク其ノ金融ノ衝ニ當ラシメタ
イト考ヘマス、ツイ先頃是等ニ付テノ
金利方面ノ中央金庫ノ利率引下等ニ付
テモ考慮ヲ拂ヒマシタヤウナ譯デアリ
マス、今後ニ於テモ只今申上ゲマシタ
意味ニ於テ十分ニ其方面ニハ努力致シ
タイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=13
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014・岩切重雄
○岩切委員 只今大體政務次官ヨリノ
御答辯ニ依リマスレバ、吾ミノ考ヘテ
居ルヤウナコトヲバ漸次サレルヤウデ
アリマスケレドモ、昨年ノ議會ニ於ケ
ル行政整理ノ當時ノ財政計畫カラ考ヘ
マシテモ、昨年ハ例ノ繰延事業ニ依リ
マシテ八千萬圓ト云フモノガ繰延ベラ
レタノデアリマス、是ハ其當時當然地
方ニ振向ケラルベキ八千萬圓ト云フモ
ノハ繰延ベラレテ、地方ニハ其金ガ廻ツ
テ行カナカッタ、尙ホ公債劵其他ニ依テ
地方ノ零細ナル金ト云フモノハ郵便局
ノ窓カラ十分ニ絞メ上ゲラレテ、中央
ノ經費ノ中ニ繰込マレテ居ル、本年ニ
於テモ公債ノ非應募政策ハ執ラレルケ
レドモ、其財源ハ依然トシテ、地方ノ小
金融者ヲ相手トシテ取ラレル狀態ニア
ルノデアリマス、是ハ一面カラ考ヘル
ト中央ノ大ナル銀行家ヤ大キナ事業家
ヲ相手トシテ御相談ニナレバ、只今ノ
政策ヲ何レモ是認シマスケレドモ、地
方ノ零細ナル金ノ所有者、小事業家ノ
頭力ニ考ヘレバ、非常ナ矛盾シタ政策
ノヤウニ考ヘラレル、假リニ義務〓育
ト云フヤウナモノヲ四千萬圓地方ニ廻
シタトシテモ、一方ニ公債劵デ五箇年
ニ二億圓モ零細ノ金ヲ取ラレテ行ケ
バソレダケノ金ト云フモノハ地方ノ
金融界カラ無クナルコトニナルト私ハ
思フノデアリマス、殊ニ中央金庫法案
ノ出來マス當時ノ議論モ、我國ノ郵便
貯金ト云フモノハ十數億、十一億カ二
億デスカ、アルガ其中ノ五割以上、五億
圓以上ト云フモノハ、殆ド地方ノ農民
乃至小賣業者ミタヤウナ人達ノ懷ロ
カラ出タ金デアル、然ルニ其ノ中ノ五
百萬足ラズノモノガ地方ニ還元サレテ
居ルト云フノハ、地方ニ對シテ極メテ
不深切ナ政策デアルト云ウテ、例ノ中
央金庫ト云フモノガ出來タ、吾々ハ其
後ト雖モ、是等ノ金ガ益地方へ還元シ
テ行クコトヲ希望シテ居ルノデアリマ
ス、只今ノ狀況カラ申シマスレバ、預金
部ノ金ハ殆ド地方ニハ問題ニナリマセ
ヌガ唯纔ニ遞信省デ計畫サレテ居ル簡
易保險ト云フモノガ、低利資金トシテ
稍地方ニ融通サレテ居ルノデアリマ
ス、此際私ハ商工大臣ニ御尋シタイト
思ヒマスガ、此簡易保險ナルモノハ、
地方ノ低利金融ヲ助ケル爲ニハ非常ナ
有利ナル政策デアル、尙之ヲ進ンデ或
ハ火災ノ簡易、更ニ進ンデハ保險業ノ
金部ヲ國營ニシテ、何十億ト云フ定額
ノアル是等ノ事業ヲバ政府ノ手ニ收メ
テ、低利資金トシテ地方ノ產業資金ニ
廻ハスヤウナ御計畫ハテイカドウカ
是ハ大分世間デモ問題デアルヤウデア
リマスガ、ソレニ對シテ商工大臣ハ如
何ナル御考ヲ持ッテ居ルカ、之ヲ一ツ御
聞キシタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=14
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015・片岡直温
○片岡國務大臣 只今ノ岩切君ノ御質
問ニ御答ヲ致シマスルニ先ダチマシ
テ、一應關稅改正ニ關スル商工省ノ意
見ヲ申上ゲテ置キマス、是ハ本會二於
テ大藏大臣ヨリ說明ヲ致シタノデアリ
マスカラ、重複スルヤウナ事ヲ避ケル
爲ニ省略致シタイト考へテ居リマシタ
ガ、岩切君ノ先ノ御尋ノ御言葉中ニモ、
商工省トシテ產業ノ方針政策ナルモノ
ハ遺憾ガアルデアラウト云フヤウナ御
言葉ガアリマシタノデ、極メテ簡單ニ
申上ゲルノデアリマスガ、此現在ノ關
稅法ハ四十三年ノ制定デアリマシテ、
今日ニ至リマスル間ニハ、世界ノ所謂
大戰爭ナルモノガ挾ンデ居リ、產業界
ニ於キマシテモ、亦生活ノ狀態ニ於キマ
シテモ非常ノ變化ヲシテ居リ、我國ト
致シマシテモ、今日相當ノ改正ヲ加ヘ
ナケレバナラヌト云フコトハ、最早全
體ニ異論ノ無イコトデアラウト思ヒマ
ス、唯其關稅ノ改正其モノガ實生活ニ
重大ノ關係ヲ持ツコトハ岩切君ノ御意
見ノ通リデアリマス、若シ之ヲ引上ゲ
ルコトニ依テ消費者ノ側ガ高イ物ヲ
消費シナケレバナラヌト云フコトニナ
リマスト、隨テ物價ノ騰貴ヲ喚起ス、斯
ウ云フ狀態ニ陷ルノデアリマス、ソレ
デ改正ヲセナケレバナラヌト云フコト
ハ、誰モ一點ノ議論ハナイ筈デアリマ
スガ、其改正ノ程度ニ至ッテハ非常ナ重
大ナル事デアルト思フ、是ニ於テ商工
省ノ關係ニ於キマシテハ、今度ノ改正
ノ關稅其モノノ大部分ハ關係ヲ有スル
ノデアリマス、關稅改正ノ方針ト致シ
マシテハ、我國ノ產業ニシテ貿易上對
抗シ得ル物ニ對シテハ無論關稅ノ引
上ヲ行ハヌノミナラズ無稅ニスル又
原料其他ノ物デ我國ニ出來ナイ、多少
產業其モノハ興ルトシテモ、若干ノ保
護ヲ加ヘタ位デハ成立ノ仕遂ゲラレナ
イ、斯ウ云フモノハ遺憾ナガラ當相ノ
時期ヲ待ツコトヲ要スルト思フ、之ニ
反シテ當相ノ期間相當ノ保護ヲ加ヘレ
バ自給自足ノ域ニ達シ得ル、斯ウ云フ
見込ノ物ニ對シテハ保護ヲ加ヘル意味
ニ於テ關係ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
大體關稅改正ノ商工省トシテノ意見
ハ、此二點ニ基イテ出發シテ居ルト御
承知ヲ下サッテ宜シイト思フノデアリ
マス而シテ產業保護ニ關スル岩切君
ノ御意見デアリマス、此產業保護ト云
フコトハ極メテ必要ノ事デ、國ノ隆昌
富强ハ產業ノ發達如何ニ依ルコトデア
リマスカラ、之ニ十分ノ功績ヲ擧ゲシ
ムルト云フコトニ努力スベキハ今更論
ヲ俟タヌノデアリマス、併ナガラ此產
業ト申シマスルト云フト、商工省若ク
ハ農林省ノ力ノミニ依テハイカヌト云
フコトハ先ニ政府委員ヨリ御話ガア
ツタノデアリマスガ、是ハ勞働者ノ關
係モゴザイマス、交通ノ關係モゴザイ
マス、運賃ノ關係モゴザイマスシ、金利
ノ關係モ生ズルノデアリマシテ、唯商
工省トシテハ產業ノ發展ニ障碍ヲ見ル
コトガアレバ之ヲ排除スルコトハ、是
ハ當然ノ務メデアリマス、貿易ニ關ス
ル利用ニ對シテハ、成ベク之ニ保護モ
加へ、監督モ致シ、指導モ致スト云フコ
トニ力ヲ盡スコトハ當然デアリマス、
各分業的ニ政府其モノノ定ムル方針ニ
從テ行クヨリ外ニハ、部分部分ニ依テ
成功セシムルコトハ甚ダ難イノデアリ
マス、今御話ノ金利ノ問題、金融ガ地方
ハ如何ニモ梗塞シテ非常ニ高イコトヲ
私知ッテ居ル、併ナガラドウモ是ハ困ッ
タコトハ、金融業者ノ側カラ見マスル
ト、安心ノ付ク方法サヘ備ハレバ、金融
機關ハ招イテ來ナクテモ赴イテ行クモ
ノデアリマス、其處ニ其安全ナル放資
ノ途ヲ得ナイト云フコトニナルト其途
ハ開ケテ來ナイ、要スルニ金融ハ付ケ
タイガ付ケルヤウニ行カナイト云フノ
ガ今日ノ實情デゴザイマス、是ガ國民
全體ガ非常ニ德義心ガ高クナッテ一旦
借リタ金ハ必ズ返ス、貸シタ金ハ返
ルモノデアルト云フヤウニナルト宜
シイデスガ、ドウモ實際ハサウイカ
ヌノデアッテ、如何ニモ今日ノ地方ノ
狀況ト云フモノハ困ッタ狀況ニアル
ト思ヒマス、是ニ於テ商工省ノ方ノ
側カラハ、重要輸出品ニ關スルヤウ
ナ工業ニ對シテハ成ベク組合ヲ設ケ
マシテ、其組合全體ノ責任ト云フモ
ノヲ以テ改良モスル、金融モ得ル、斯ウ
云フ風ニサセタイ、斯ウ考ヘマシテ此
組合法ヲ今變理シテ居リマス、是ガ出
來ルト同時ニ農工銀行或ハ勸業銀行等
カラ、必シモ擔保ガナクテモ、其組合ト
云フモノノ組織宜シキヲ得レバ金融ノ
途ノ開ケラレルヤウナ法律ヲ作ッテ、改
正シナクチヤナラヌ、此改正案ハマダ
案ガ具ハリマセヌガ、當議會ニ協賛ヲ
得タイト思ッテ居リマス、要スルニ金融
ノ途ハ、金融ヲ受ケヤウトスル者モ金
融ノ出來ルヤウニ考ヘテ行ク、ソレカ
ラ金融業者ニ在ル者モ安全ナル方法ニ
導イテ行クト云フ風ニスルヨリ仕方ガ
ナイト思フ、今御尋ノ生命保險事業ヲ
國營トシテ、其金ヲ一ツ融通スルヤウ
ニスル考ハナイカト云フコトデアリマ
ス、是ハ世間ニ於テ其論ハゴザリマス、
又保險ノ性質カラ考ヘマシテモション
國營ノ方ガ適當デアラウト思ハレル節
モ少クナイノデアリマス、併ナガラ生
命保險事業ノ我國ニ起リマシタノハ明
治十四年デアリマス、今日マデ可ナリ
長キ星霜ヲ經テ居リマス、尤モ多少盛
大ニナッテ來タト世間ニ見ラレルヤウ
ニナリマシタノハ明治二十二年以來デ
アリマスガ、今日ハ四十四、五ノ會社ニ
分レテ居リマシテ、契約高モ四十億ヲ
超シテ居ル、積立金ノ如キモノモ約六、
七億ニ達シテ居ルト思ヒマス、斯樣ニ
ナッテ見マスルト可ナリ-同ジ生命保
險ト一口ニハ言ヒマスガ、非常ニ複雜
シテ居リマス、詰リ利益ノ分配方法ニ
至リマシテモ、種々ニ分レテ居リマス、
ソレカラ又其六、七億ノ金ト云フモノ
ガ、金融業者ノ間ニモ融通サレテ居リ、
又金融業者ニアラザル事業家ノ手ニモ
渡ッテ居ル譯デアリマス、之ヲ一朝國有
トシテ國ニ引上ゲル、斯ウ云フガ如キ
コトヲヤッテ、果シテ經濟界ニ於テ何等
ノ反動ヲ與フルコトガナイヤ否ヤ、又
實際種々ニ複雜ニ分レテ居ルモノヲ統
一シテ行ク上ニ於テ、一ツノ機關デ以
テ旨ク統一ガ附イテ、前途隆盛ヲ期シ
テ行クコトガ出來ルヤ否ヤト云フガ如
キコトハ、餘程考慮ヲセヌナラ又問題
デアラウト思ヒマス、ソレデ只今ノ所
ニ於テハ、國有ニシテ其金ヲ融通シヤ
ウト、斯ウ云フコトヲ考ヘテハ居リマ
セヌノデアリマス、事柄ソレ自身ハ今
始マッタ問題デナクシテ、餘程以前カラ
其論ハアルノデアリマシテ、私自身ト
シテモ平生ニ多少ノ攻究ハ致シテ居リ
マスガ、今政府トシテ國有ニ斷行スル
考ヲ持ッテ居ルトハ申上ゲル時期ニ到
達致シテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=15
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016・岩切重雄
○岩切委員 農林省ノ方ニ御尋シタイ
ト思ヒマスガ、勿論逐條的ノコトハ後
デ聞クコトデアリマスカラ成ベク是ハ
省キマスガ、大體論ト致シマシテ、此度
ノ改正ノ最モ世間ノ注意ヲ惹キマシタ
問題ハ農產物ノ保護ト云フ問題ガ極
メテ手薄デアルト云フ點デアリマス
是ハ日用品ノ騰貴ヲバ防止スルト云フ
意味カラシテ、或ハ小麥トカ鳥卵ト云
フヤウナモノヲバ、割合ニ保護シナカッ
タト云フ御說明デアリマシタガ、此處
ハ最モ我國ノ產業組織ノ上ニ對スル主
要點ニ關係ノアル問題ダト私考ヘマ
ス、成程日用品ハ今日非常ニ高イ、故ニ
農產物ガ是レ以上高クナルト云フコト
ハ、我國ノ國民生活ノ基礎ヲ脅威スル
モノデアルト云フ議論モ一應尤デアリ
マスガ、第一只今ノ農產物ガ我國ノ物
價ノ現狀カラ見マシテ高イト云フ御考
デアルヤ否ヤ、先ヅ是ガ第一ノ質問ノ
點デアリマス、ソレカラ農產物ニ對ス
ル保護政策ト云フ如キ態度ヲ執ル必要
ハナイカドウカ、我國ノ如キ未ダ工業
ガ十分發達シナイ、殊ニ工業原料ノ少
イ國デアッテ、自國ノ原料ヲ以テシテ
ハ出來ナイヤウナ我國ニ於キマシテ
ハ、自ラ工業ニ對スル政策ト農業ニ對
スル政策ガ違ハナケレバナラヌ、氣候
ガ極メテ溫暖デアッテ、天惠ノ利用ト云
フコトガ他ノ國ニ比シテ最モ出色デア
ル我國ニ於テハ、ドウシテモ此農業ト
云フモノヲモウ少シ保護シテ發達サセ
テ行クト云フ必要ガアルノデハナイ
カ、唯關稅率ヲ高クスレバ物價ガ上ガ
ルト云フ單純ナル議論ハ、是ハ勿論承
服サレマスケレドモ、一面關稅ト云フ
モノヲ設定シマシテモ、他ニ農業ヲ大
量生產ニスルトカ、モウ少シ金融ノ途
ヲ附ケルト云フコトガアルナラバ、此
物價ノ點ハ、一面關稅ヲ設定シマシテ
モ、片一方ニ於テ奬勵スル農業政策ニ
據ルヨリハ緩和ガ出來ルカモ知レマセ
ヌ、此事ヲ爲サズシテ、關稅ノミヲ高ク
スレバ、隨テ日用品ノ騰貴ト云フ問題
ニ一直線ニ進ミマスケレドモ、其處ガ
我國ノ前途ニ對スル當局大臣ノ政策ヲ
立テラルベキ所ノ眼目デアリマス
方ニ關稅ヲ以テ農村ヲ保護スルナラ
バ、物價ノ引上ト云フコトバカリヲ考
ヘズニ、ソレヲ緩和スベク他ニ農業政
策ト云フモノヲ立テテ、產農物ノ價格ト
云フモノヲモウ少シ上ゲル、サウシテ
農家ノ生活狀態ヲ改善シテ行ッテ、我國
ノ國家的基礎ヲ玆ニ確立スルト云フコ
トガ必要ヂヤナイカ、極メテ簡單ナ問
題デ、卵ノ如キデモ、僅カ一箇年ニ千五
六百萬圓ノモノデアルト考ヘマスケレ
ドモ、吾〓ノ聞ク所ニ依レバ農業家ノ
何時デモ例ニ引カレル丁抹ノ鷄卵會社
ノ事業ノ如キデモ、アノ小面積ノ丁抹
ガ非常ナ農產物ヲ今日拵ヘテ居ル乳
製品ノ如キニ付テモ、內務省ナドハ何
時モ良イ「パンフレット」ヲ拵ヘテ、地方
ノ團體ニ頒布シテ、吾〓ガ內務省ニ居
ル時分ニハ、內務大臣ハ何時モ丁抹ノ
例ヲ引イテ地方ノ產業ノ發達ト云フモ
ノヲ奬勵サレテ居ッタ、斯ウ云フ例モア
ルノデアル、殊ニ我國ハ氣候ガ好イノ
デアッテ是等ノ政策ヲ執ルノニハ持ッテ
來イノ國デアルト考ヘルノデアリマ
ス、之ニ對シテ農林大臣ハ、是等ノ農產
物ノ物價問題ト云フコトニ付テハ御考
慮ガナイノデアリマスカ、此點ヲ伺ヒ
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017・早速整爾
○早速國務大臣 只今ノ御尋デアリマ
スガ、私中途カラ此席へ罷出テ最初ニ
御述べニナッタコトヲ多少聽漏シテ
居リマスカラシテ、尙ホ私ノ答ヘマ
シタ後ニ於テ御尋ガアリマスレバ、
更ニ御答ヘスルコトニシテ、十分ニ
御尋ノ趣意ノ分ラヌ點モアリマスケレ
ドモ、大體ニ於テ御答ヲ致シマスカラ、
豫メ左樣御承知ヲ願ッテ置キマス、色〓
御述ベニナッタノデアリマスガ、大體ノ
產業政策ト云ヒマスガ、其方針ト致シ
マシテハ、先日本會議デモ大體申述べ
マシタ通リ、無論產業ト云フモノヲ奬
勵シテ行カナケレバナラヌ、助長シテ
行カナケレバナラヌ、何處マデモ國家
ノ爲メ國民ノ爲ニ出來得ルダケ此助長
奬勵ト云フモノハ、十分ニ之ヲ行ハナ
ケレバナラヌト云フ考ハ持ッテ居ルノ
デアリマス、唯ドウ云フヤウニヤッテ行
クカト云フ所ガ問題ニナッテ來ル、是モ
矢張見樣デアリマスガ、例へバ農產物
ノ保護ト云ウテモ、無論或程度ニ於テ
ハ此助長奬勵ト云フモノハ保護ヲ意味
シテ居ルノデアルガ、絕對ニ放任主義
ヲ執ルト云フヤウナ考ハ私共持ッテ居
ラヌ、物ニ依テハ保護シナクテモ宜イ
モノモアルデアリマセウ、多少獎勵ト
云フ方針ヲ以テ導イテ行ケバ、殊更ニ
保護ト云フコトヲシナクテモ宜イト云
フモノモアルデアリマセウ、併ナガラ
或物ハ力ヲ極メテ之ヲ保護スル必要ガ
アル、斯ウ云フ風ニ色〓問題ハ分レテ
來ルノデアリマスケレドモ、今日政府
ノ方針トシテ居ル所ハ、農業ニ對シテ
放任主義ヲ執ルト云フ考デハ毛頭無イ
ノデアリマス、此事ハ先日モ私ガ申シ
タ農產物ノ關稅ノ點ニ關シテ只今モ御
尋デアリマスガ、無論農產物ヲ保護ス
ルト云フ精神ノ上ニ於テハ、岩切君ノ
御述べニナルノモ變リハナイ、但シ關
稅ヲ保護スルト云フ場合ノ話デアル是
ガ私ハ矢張繰返シテ申ス通リニ唯農
產物ヲ保護スルト云ウテモ、一方カラ
言ヘバ矢張消費者ノ立場モ考ヘテ見ナ
ケレバナラヌ、生產者ヲ保護スルト云
フコトノ爲ニ、多數ノ消費者ニ生活上
ノ困難ヲ與ヘルヤウナ事ガアッテハナ
ラヌカラ、今囘ノ關稅改正ノ方針モ、生
活ノ必需品ニ對シテハ成ベク關稅ノ率
ヲ輕クスル、或ハ無稅ニスルト云フ方
針デ立テラレテ居ルノデアリマス、相
成ベクハ生活ノ必需品ナドニ對シテ
ハ、關稅ヲ輕クスルト云フ方針デ立テラ
レテ居ルノハ、卽チ國民生活ノ安定ト
云フコトヲ頭ニ置イテ考出サレタ方針
デアル、其間ノ調和ヲ取ラナケレバナ
ラヌノデ、一方ニ於テハ產業ヲ保護ス
ルト云フ精神モ之ヲ重ンジナケレバナ
ラヌケレドモ、他ノ一方ニ於テモ又一
般國民ノ生活ノ安定ト云フコトモ考ヘ
テ行カナケレバナラヌ、其間ノ調和ヲ
取ッタ所ガ今囘ノ關稅改正ノ案ニ現
ハレテ居ル、一ツ々々ノ品物ニ付テ之
ヲ〓究スルト云フコトニナリマスレ
バ、色ミノ材料ニ依テ更ニ〓究ヲ重ネ
ナケレドナラヌノデアリマスガ、大體
ノ方針トシテハ、先日モ申述べ、只今モ
申述ベマス通リデアッテ、詰リ生產者ト
消費者トノ間ノ調和ヲ取ルト云フコト
ガ大切デアルト斯樣ニ考ヘテ居ルノデ
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018・岩切重雄
○岩切委員 大體其御答辯ハ先日モ承
ツタ所デアリマシテ、更ニ繰返ス必要
モアリマセヌケレドモ、私ハ只今ノ御
言葉ニアッタ調和ト云フ意味ノ中ニハ、
非常ニ微妙ナ點ガアルト思ヒマス、是
ハ譬ヘバ今日本ノ卵ガ一個十錢スル、
支那ノ卵ハ一個一錢ニモ當ラナイ、日
本ノ卵ハ高イカラ安イ物ヲ持ッテ來レ
バ宜イデハナイカト云フノハ、現在ノ
事情ガ其儘永久ニ續クト云フモノナラ
バ其議論ノ通リデアリマス、併ナガラ
日本ノ此惠マレタ國土ニ於テ、度々大
臣ナドガ言ハレル如ク、奬勵スレバ發
達スベキ性質ヲ持ッテ居ッテ、而モ奬勵
シテ行ケバ-假ニ鶏ノ如キニシテ
モ、只今農家ハ全國平均シテ五羽位ノ
鷄ヲ飼ッテ居ルガ、是モ奬勵ノ方法如何
ニ依テハマダマダ增加シテ行ク見込ガ
アル、丁抹ナドノ例ヲ引クマデモナク
十分發達スル見込ガアルト云フ國デア
ツテ、是ガ發達スベキモノデアルト云
フ目安ガ付キマスナラバ一面ニ保護シ
テ大量生產ニ導クヤウナ奬勵ノ政策ヲ
執ラナケレバナラヌ、唯物價問題ト云
フコトダケヲ眼目ニシテ關稅問題ヲ云
云スルナラバ片手落ノ政策ニナルノデ
ハナイカ、サウ云フ議論ノ立方カラ私
ハ繰返シテ申スノデアリマスガ、足八
又後デ御答辯下サレバ承リマス、次ニ
是ハ此前ノ本會議ニ於テ簡單ニ一言聞
イテ置イタノデアリマスガ、今朝ノ新
聞ニモ見エテ居リマシタ、關稅常設委
員會ト云フモノヲ拵ヘテ、ソレハ勅令
ニ依テヤル、法律ニ關係ナイモノデ、世
間デ言フエライ人〓ヲ委員ニシテ、其
處デ時々研究シ、適當デアルト思フヤ
ウナモノハ關稅率ヲ改正スルト云フヤ
ウナコトガ今一朝新聞ニ見エテ居リマ
ス、是ハ新聞ノ誤リカ分リマセヌガ、
其內容ヲ承リタイト思フ、若シサウ云
フ委員會ト云フモノガ出來テ、其委員
會ノ中デ將來關稅問題ト云フモノヲ、
其委員ノ人達ノ權限ニ依テ勝手ニ改正
シテ行クト云フコニトナリマスト、是
ハ非常ナ重要ナ問題ニナッテ來ヤシナ
イカト思フノデアリマス、此點ヲ一ツ
御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=18
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019・黒田英雄
○黑田政府委員 私カラ御答致シマ
ス、關稅委員會ノ事ニ付キマシテハ先
日本議場ニ於キマシテ大藏大臣カラモ
一寸御答辯ヲ申上ゲタ次第デアリマ
ス、此法案ガ幸ヒ議會ヲ通過致シマシ
タナラバ、來年度ニ於キマシテ關稅ニ
關スル常設委員會ヲ設ケルコトニ付テ
考慮ヲスルト云フコトヲ大藏大臣ハ御
話ニナッタノデアリマス、此常設委員會
ハサウ云フヤウナ次第デアリマシテ、
未ダ具體的ニハドウ云フ組織デ、ドウ
云フ權限ト云フコトマデハ問題ニナッ
テ居ラナイノデアリマスケレドモ、大
體吾ミガ考ヘテ居リマスノハ、只今岩
切君ノ御話ニナリマシタ常設委員會ニ
於キマシテ關稅率ノ調査ヲ致シマシタ
結果、年度ノ半ニ於キマシテ議會ノ協
賛ヲ經ズシテ其稅率ヲ變更スルト云フ
風ナコトマデハ考ヘテ居ラナイノデ
ス、勿論緊急ノ必要ガアリマシテ、稅率
ヲ或ハ輕減シ或ハ無稅ニシタコトハ既
ニ前例ノアルコトハ御承知ノ通リデ
アリマスガ、斯ノ如キ緊急ノ必要ガア
リマシタ場合ニ於テ、或ハ緊急勅令等
ニ依テ變更サレルト云フコトモアラウ
ト思ヒマス、サウ云フ風ナ時ニ、或ハ委
員會ニ之ヲ諮問スルト云フヤウナコト
ニナルカモ知レマセヌガ、又是ハ緊急
ノ事デアリマスカラ、委員會ニモ諮問
セズシテ、之ヲ緊急勅令ニ依テ其目的
ヲ達スルト云フ風ナコトニナル場合モ
アラウカト思ヒマスガ、サウ云フ場合
ヲ除キマシタナラバ、委員會ニ於テ常
時此稅率ハ實際ニ之ヲ施行スル上ニ於
テ果シテ適當デアルカドウカ、或ハ經
濟界ノ變動デアルトカ、若ハ產業狀態
ノ變化ニ伴ヒ、稅率保護ノ目的ヲ持ッテ
居ッタモノデアルカラ不適當デアル、或
ハ是ガ多キニ失シテ、却テ物價ニ惡影
響ヲ及ボスト云フヤウナ事ガアリマシ
タナラバ、ソレ等ノ點ヲ十分ニ〓究致
シマシテ、其結果政府ニ於テ果シテ變
更スルガ適當デアルト云フコトニナレ
バ、案ヲ具シテ其次ノ議會ニ提案シテ、
議會ノ御協賛ヲ求メルト云フコトニナ
ルデアラウト思フ、又前申上ゲル通リ
組織ニ付キマシテモ、果シテドウ云フ
範圍ノ人ヲ網羅シテ委員會ヲ組織スル
カト云フコトモ定ッテ居ラヌノデアリ
マスガ、前申上ゲル通リ議會ノ閉會中
ニ於テ稅率ヲ變更スル權限ヲ委員會ニ
與フルト云フヤウナコトハ無カラウト
考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=19
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020・加藤政之助
○加藤委員長 ソレデハ堀切君始メ政
友會側ノ委員諸君カラ大藏大臣ノ出席
ヲ、此委員會ヲ續行スルニ付テ是非求メ
タイ、斯ウ云フ御要求デアリマスガ、只
今アチラデ答辯中デ出席ガムヅカシイ
ト云フコトデアリマスカラ、明日午前
十時大藏大臣ニ必ズ出席シテ貰フヤウ
ニ今次官ニ御求メシテ置キマシタカ
ラ、今日ハ本會モアル事デアリマスカ
ラ是デ散會致シマス
午前十一時五十四分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005110395X00219260203&spkNum=20
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