第51回帝国議会　衆議院　本会議　第17号　大正15年2月18日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  大正十五年二月十八日（木曜日）午後一時十六分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第十六號
  　　大正十五年二月十八日
  　　　午後一時開議
  　第一　勞働組合法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會（前會の續）
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　輸出生絲檢査法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案（鳩山一郎君外八名提出）　第一讀會
  　第八　漁業法中改正法律案（谷原公君外二名提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第九　民事訴訟法中改正法律案（谷原公君外一名提出）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案（望月圭介君外二十二名提出）　第一讀會
  　第十一　治安警察法中改正法律案（清瀬一郎君外一名提出）　　　　　　　　第一讀會
  　第十二　漁業財團抵當法中改正法律案（中村嘉壽君提出）　　　　　　　　　第一讀會
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=0

  ---

• 001・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセ
  マス
  衆議院議事速記錄第十七號
  〔書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  輸出生絲檢査法案
  (以上二月十六日提出)
  一昨十七日若槻内閣總理大臣ヨリ粕谷議長
  宛大正十二年度國有財產增減總計算書及
  之ニ添附スヘキ各省ノ同增減報告書竝會
  計檢査院檢查報告ヲ受領セリ
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  神戶市ニ關スル法律案
  提出者
  砂田重政君齋藤隆夫君
  折原巳一郞君森田金藏君
  砂糖消費稅法中改正法律案
  提出者
  禱·苗代君岩切重雄君
  中村嘉壽君前田兼寶君
  藏園三四郞君寺田市正君
  兒玉實良君津崎尙武君
  東〓實君宜保成晴君
  麓純義君神村吉郞君
  大城幸之一君
  著作權法中改正法律案
  提出者
  內ケ崎作三郞君有馬賴寧君
  原夫次郞君〓瀨一郞君
  (以上二月十六日提出)
  名古屋市ニ關スル法律案
  提出者
  田中善立君加藤鐐五郞君
  橫山一格君
  (以上二月十七日提出)
  川俣浪江間鐵道建設速成ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衛門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  國有林野不要存置林處分ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  福島市ニ國立倉庫設立ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  泉崎岩沼間改良工事速成竝宇都宮福島間
  複線工事速成ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  奧羽線福島米澤間電化速成ニ關スル建議
  案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  福相鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  福島市ニ高等蟲絲學校設置ニ關スル建議
  案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  金澤安之助君比佐昌平君
  佐藤富十郞君
  婦人參政ニ關スル建議案
  提出者
  坂東幸太郎君內ケ崎作三郞君
  山枡儀重君有馬賴寧君
  長尾篠柴間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者
  大里廣次郞君河波荒次郎君
  鳥栖臼井間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者
  大里廣次郞君加藤十四郞君
  福田五郞君
  敦賀京都間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者平井光三郞君
  後藤寺上山田間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者
  大里廣次郞君宮崎松次郞君
  福岡市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
  案
  提出者
  大里廣次郞君中野正剛君
  東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成所
  獨立ニ關スル建議案
  提出者
  山本愼平君二木洵君
  政治〓育普及ニ關スル建議案
  提出者
  古林喜代太君鷲野米太郞君
  (以上二月十六日提出)
  肥料政策確立ニ關スル建議案
  提出者
  齋藤藤四郞君土井權大君
  竹原樸一君佐々木長治君
  熊谷巖君嶋居哲君
  北海道河川治水工事速進ニ關スル建議案
  提出者
  神部爲藏君一柳仲次郞君
  小池仁郞君淺川浩君
  山本厚三君手代木隆吉君
  澤田利吉君
  帶廣區裁判所ニ地方裁判所支部設置ニ關
  スル建議案
  提出者
  小池仁郞君山本厚三君
  一柳仲次郞君手代木隆吉君
  神部爲藏君淺川浩君
  澤田利吉君
  岩內築港速成ニ關スル建議案
  提出者
  澤田利吉君山本厚三君
  一柳仲次郞君小池仁郞君
  神部爲藏君淺川浩君
  手代木隆吉君
  無線電信ノ装置ニ關スル建議案
  提出者
  小池仁郞君山本厚三君
  一柳仲次郞君神部爲藏君
  淺川浩君手代木隆吉君
  澤田利吉君
  稚内築港速成ニ關スル建議案
  提出者
  淺川浩君神部爲藏君
  一柳仲次郞君手代木隆吉君
  小池仁郞君澤田利吉君
  山本厚三君
  留萠築港速成ニ關スル建議案
  提出者
  淺川浩君一柳仲次郞君
  小池仁郞君山本厚三君
  手代木隆吉君澤田利吉君
  神部爲藏君
  (以上二月十七日提出)
  京濱運河速成ニ關スル建議案
  提出者湯淺凡平君
  (以上二月十八日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  綱紀肅正ニ關スル質問主意書
  提出者丸山浪彌君
  綱紀〓正ニ關スル質問主意書
  提出者
  藤澤萬九郞君高井商二君
  滋賀縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル質問
  主意書
  提出者
  藤澤萬九郞君高井商二君
  (以上二月十六日提出)
  肥料政策ニ關スル質問主意書
  提出者土井權大君
  製鐵所ノ經營ニ關スル質問主意書
  提出者
  岡田伊太郞君土井權大君
  農村振興ニ關スル質問主意書
  提出者土井權大君
  (以上二月十八日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一去十六日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
  議長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
  二五二福田五郞君
  四二四中野實君
  一去十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
  如シ
  議院法中改正法律案外一件委員
  橫山金太郞君高木益太郞君
  作間耕逸君粟山博君
  富田幸次郞君平川松太郞君
  服部英明君斯波貞吉君
  三橋四郞次君深井功君
  來栖七郞君川口義久君
  黒住成章君松本君平君
  山口義一君岩崎幸治郞君
  砂田重政君濱田精藏君
  松岡俊三君石原正太郞君
  則元由庸君原夫次郞君
  上原好雄君志村〓右衞門君
  丸山浪彌君丹下茂十郞君
  林田龜太郞君
  健康保險法中改正法律案外一件委員
  平野光雄君中原德太郞君
  菅原英伍君近藤重二郞君
  宮崎松次郞君丸山五郞君
  戶澤民十郞君近藤達兒君
  佐々木春作君米原於菟男君
  神崎勳君安保庸三君
  古林新治君多木久米次郞君
  富田愿之助君沼田嘉一郞君
  加藤鐐五郞君小屋光雄君
  一去十六日勞働爭議調停法案外一件委員河
  野曉君戶田由美君辭任ニ付其ノ補關トシ
  テ高橋元四郎君大里廣次郞君ヲ、明治三
  十八年法律第十七號中改正法律案委員磯
  部保次君吉村伊助君辭任ニ付其ノ補關ト
  シテ川口義久君木戶豐吉君ヲ、對支文化
  事業特別會計法中改正法律案委員關俊吉
  君辭任ニ付其ノ補闘トシテ神出正雄君ヲ、
  所得稅法中改正法律案外二十七件委員宮
  鳥幹之助君村山喜一郞君辭任ニ付其ノ補
  闕トシテ原田藤次郞君加藤十四郞君ヲ、
  關稅定率法中改正法律案委員森島昶君辭
  任ニ付其ノ補關トシテ來栖七郞君ヲ孰レ
  モ議長ニ於テ選定セリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=1

  ---

• 002・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ會議ヲ開キマ
  ス、御諮リ致スコトガアリマス、第四部選
  出豫算委員柏田忠一君ヨリ辭任ノ申出ガア
  リマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=2

  ---

• 003・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマ
  ス、仍テ許可スルコトニ致シマス、其部
  ノ諸君ハ速ニ補闘選擧ヲ行ヒ、屆出アラン
  コトヲ望ミマス、尙ホ鐵道敷設法中改正法
  律案ノ委員長ヨリ、本日午後引續キ同委員
  會開會ノ許可ヲ求メラレマシタ、尙ホ今後
  本會中ト雖モ、同委員會ヲ開會致シタイト
  云フ申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=3

  ---

• 004・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナイト認メマ
  ス、仍テ許可スルコトニ致シマス-政府
  委員ヨリ發言ヲ求メラレマシタ、之ヲ許可
  致シマス-鈴木政府委員
  〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=4

  ---

• 005・鈴木富士彌

  ○政府委員(鈴木富士彌君)　一昨日本議場
  ニ於キマシテ、勞働組合法ヲ審議スルニ際
  シ、有馬君ヨリ內閣總理大臣ニ對シ質問ガ
  ゴザイマシタ、然ルニ內閣總理大臣ハ不在
  デアリマシタカラ、便宜上私ヨリ答辯ヲ致
  シマシタ、其際議場ガ喧騒致シマシタカ
  ラ、私モ激昂ノ餘リ、最後ニ穩當ナラザル
  言論ノアッタコトハ深ク遺憾ト致シマス、
  玆ニ之ヲ取消シマス、尙ホ將來モ注意致シ
  タイト思ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=5

  ---

• 006・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　秦豐助君ヨリ(此時
  發言スル者多シ)靜肅ニ願ヒマス-秦豊
  助君ヨリ議事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレ
  テ居リマス、之ヲ許シマス-秦豐助君
  〔秦豐助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=6

  ---

• 007・秦豐助

  ○秦豐助君　去十六日ノ會議ニ於キマシ
  テ、鈴木政府委員ノ執ラレタル行動ハ洵ニ
  遺憾ト存ジマシテ、私ハ玆ニ發言ヲ致ス次
  第デアリマス、本日只今鈴木君ハ此處ニ登
  ラレテ、陳謝ヲセラレタノデアル(「ノウノ
  ウ」又ハ「何ガノウ〓〓ダ」ト呼ヒ發言スル
  者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=7

  ---

• 008・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=8

  ---

• 009・秦豐助

  ○秦豐助君(續)　是ハ此立法ノ府タル帝國
  議會ノ衆議院、ソレト行政府ノ間ニ於テ最
  モ嚴重ニ守ラナケレバナラヌ所ノ秩序ニ關
  スルコトデアリマス、私ハ鈴木君ガ政府委
  員トシテ此演壇ニ於テ、而モ議長ノ許可ヲ
  受ケズシテ演壇ニ登シテ、不規則ノ言動ヲ
  サレタコトニ付テ、陳謝ヲセラレマシタコ
  トヲ以テ宜シイト致シマスレバ、私ガ玆ニ
  問ハントスル所ノモノハ、斯ノ如キ政府委
  員ノ行動ニ對シテ、内閣總理大臣ハ如何ナ
  ル處置ヲ執ラレルカト云フコトデアリマス
  (拍手又「ノウ〓〓」ト呼ヒ其他發言スル者
  多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=9

  ---

• 010・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=10

  ---

• 011・秦豐助

  ○秦豐助君(續)　是ハ立憲政治ノ歷史ノ上
  ニ於テ、極メテ重大ナル意義ヲ有スルト云
  フコトヲ吾々ハ確信致シテ居ルノデアリマ
  ス、故ニ鈴木君ノ行動ニ對シテ、內閣總理
  大臣タル者ハ十分ナル處分ヲ執ラレナケレバ
  ナラヌト信ズルノデアルガ、果シテ如何、
  又次ニ將來ニ於テ立法府ト行政府ト、徒一
  斯ノ如キコトニ付テ爭ヲ起スト云フコト
  最モ避ケナケレバナラヌ點デアルガ、
  政府委員ノ行動ニ對シテ内閣總理大臣ハ
  將來如何ナル處置ヲ執ラルヽノデアルカ、
  此二點ニ付テ私ハ內閣總理大臣ノ所見ヲ御
  尋シタイト思ヒマス
  〔拍手、又「無用々々」ト呼フ者アリ〕
  〔國務大臣若視禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=11

  ---

• 012・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　政府委員ハ極
  メテ懇切丁寧ニ御答辯ヲ致ス筈デアルノデ
  アリマス、若シ其事ニ於テ幾分缺ケル所ア
  リシナラバ、甚ダ遺憾ナルコトデアッタノ
  デアリマス、將來共ニ政府委員ヲ戒飭シテ
  行ク積リデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=12

  ---

• 013・秦豐助

  ○秦豐助君　議長-議長(此時發言スル
  者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=13

  ---

• 014・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　秦豐助君(此時發言
  スル者多シ)靜粛ニ-秦豐助君
  〔秦豐助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=14

  ---

• 015・秦豐助

  ○秦豐助君　只今ノ內閣總理大臣ノ御答ニ
  依リマスト、内閣總理大臣ハ去十六日ノ此
  議場ニ於ケル所ノ鈴木政府委員ノ行動ヲ御
  存知ナイノデアル、唯〓答辯ガ不深切デアル
  トカ云フヤウナ問題デハナイノデアル、卽
  チ鈴木政府委員ガ議長ノ許可ヲ受ケズシ
  テ、此注增ニ登クタト云フ所ノ大ナル不都
  合ナル行動デアル、許可ヲ受ケズシテ演壇
  ニ登リタルノミナラズ、更ニ此議場ニ向。シ
  テ、全體ニ對シテ馬鹿ト云フ罵詈ノ聲ヲ發シ
  タデハナイカ、唯、不深切ナル答辯ヲスルト
  カ、懇ロニ答辯ヲセネバナラヌトカ云フヤ
  ウナ、サウ云フ問題デハナイ、アレダケノ
  騒ギガ起ッタノニ拘ラズ、若槻内閣總理大臣
  ハ此事實ヲモ認メテ居ラヌト云フコトハ、驚
  入ッタ話デアル、若モ其事實ヲ承知シテ居ッ
  テ態トヤッテ、態トサウ云フ風ナ答辯ヲ爲
  サルナラバ、實ニ内閣總理大臣トシテ風上
  ニモ置ケナイ人間デアル、更ニ此大ナル立
  憲政治ヲ汚ス所ノ政府委員ノ行動ニ對シ
  テ、今迄ソレヲ知ラナカッタト云フナラバ、
  政府委員監督ノ責任アル所ノ内閣總理大臣
  トシテ、負慢極マレルモノデアルー私ハ右
  ジマス、果シテ內閣總理大臣ハ、此政府委
  員鈴木君ガ許可ヲ受ケズシテ演壇ニ登リ、
  竝ニ罵詈ノ聲ヲ發シタ所ノ事實ニ對シテ、
  私ノ尋ネタル所ノ監督ノ處分、竝ニ將來ニ
  對スルノ御考、之ヲ私ハ御尋ネスルノデア
  リマス、唯〓懇切丁寧ニシナケレバナラヌ
  ト云フヤウナ問題デハナイ、此點ニ付テモ
  私ハ答辯ヲ承リタイノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=15

  ---

• 016・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　鈴木參與官ハ
  先程此處デ、自ラ自分ノ行動ニ付テノ意思
  ヲ表示セラレタノデアリマス、私ハ鈴木參
  與官ニ對シテ將來能ク戒飭シテ置ク積リデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=16

  ---

• 017・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　横山金太郞君ヨリ議
  事ノ進行ニ付テ發言ヲ求メラレテ居リマ
  ス-横山金太郞君
  〔橫山金太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=17

  ---

• 018・横山金太郎

  ○橫山金太郞君　諸君、議會政治ハ軈テ言
  論政治デアリマス、重要法案ガ上程サレタ
  際ニ當ッテ、一議員ノ質問ニ答フベク政府委
  員ガ此席ニ參リマシタト云フコトハ勿論
  合法的ノコトデアル、殊ニ質問者ハ之ヲ傾
  聽スベキ責任ガアルト思フノデアリマス、
  而モ徒ニ其言論ヲ妨害スル、卽チ今日此壇
  ニ立ッテ執拗クモ鈴木政府委員ヲ詰責セラ
  レマシタ秦氏ノ如キハ、現ニ政友會ノ院內
  總務デアリナガラ、其席二立ッテ手ヲ擧ゲ、
  手トサウシテ言葉トヲ以テ其言論ヲ妨害致
  シタデハアリマセヌカ(拍手)斯ノ如クニ致
  シテ自ラ顧ル所ナク、己ヲ責ムルコト極メ
  テ薄ク、人ヲ責ムルコト極メテ厚ク、而モ
  執拗ニシテ三度四度ノ登壇ニ亙リ之ヲ責ム
  ルト云フコトハ、議會道德ノ上カラ致シ
  テ、秦君ト云フ人ハ、或ハ吾々ノ立場カラ
  見マスレバ、邪推カハ知レヌガ、寧ロ政治
  的良心ガ麻痺シテ居ルデハナイカト私ハ思
  フノデアリマス(拍手)宜シク此際ニ於テ秦
  氏自ラガ反省シテ、鈴木氏ト同ジヤウニ此
  壇ニ立ッテ、一ノ釋明ガアッテ然ルベキデア
  ルト思フ、此點ニ付キマシテ私ハ敢ア申上
  ゲマス、議長ニ於キマシテモ宜シク秦氏ニ
  向ッテ、戒飭ノ言葉ヲ與ヘル必要ガアルト
  同時ニ、秦氏自ラ此壇ニ立ッテ、鈴木氏ヨリ
  以上ニ陳謝ノ言葉ヲ述ブル誠意ガアルヤ否
  ヤヲ秦氏ニ向ッテ問フノデアリマス(拍手)
  〔發言スル者多ク議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=18

  ---

• 019・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス-
  静肅ニ願ヒマス、只今橫山君ヨリ御述べニナ
  リマシタコトモゴザイマスガ、今重要法案
  ノ議事ノ前デアリマスカラ、ドウゾ努メテ
  諸君ノ冷靜ナランコトヲ希望致シマス而
  シテ一昨日ノ議場ガ斯ノ如キ喧囂ヲ來シマ
  シタコトハ、議長ノ頗ル遺憾トスル所デア
  リマス、而シテ又當時鈴木政府委員ノ執ラ
  レマシタ態度ニ付キマシテモ、只今同君茲
  ニ御述ニナリ、續イテ又總理大臣ヨリ御述
  ニナリマシタ通リデアリマシテ、議長ト致
  シマシテハ、將來政府委員ノ斯ノ如キ行動
  ハ、嚴ニ御愼ミアランコトヲ希望致シマ
  ス-日程ニ入リマス(發言スル者多ク議
  場騷然)日程第一、勞働組合法案第一讀會
  種(「議長々々」「今ノコトハドウス
  ル」「議長不公平」ト呼フ者アリ)旣ニ宣告ヲ
  致シマシタ-日程ニ移リマシタ、勞働組
  合法案第一讀會、前會ノ續ヲ開キマス
  第勞働組合法案(政府提出)
  第一讀會(前會ノ續)
  〔「議長々々」「ドウシタノダ」「不公平極
  マル」ト呼フ者アリ議場騒然〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=19

  ---

• 020・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜粛ニ願ヒマス、山
  口義一君ヨリ先日ノ質疑ニ對スル政府ノ答
  〓ニ對シ發言ヲ求メラレテアリマス、此際
  之ヲ許シマス
  〔此時發言スル者アリ議場騒然〕
  〔山口義一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=20

  ---

• 021・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=21

  ---

• 022・山口義一

  ○山口義一君　私ハ此間ノ勞働組合法案ニ
  對スル私ノ質問ニ對シマシテ、若槻總理大
  臣ガ御答ニナリマシタル其御答辯ニ對シマ
  シテ、更ニ御尋ヲ致シタイト思フノデアリ
  マツ、先ヅ私ハ勞働組合法ト云フモノハ、
  卽チ現在存在スル所ノ幾多ノ勞働團體ヲ、
  有ノ儘ノ姿ニ其儘認メマシテ、之ヲ法律ニ
  依シテ確認スルト云フノガ、卽チ勞働組合法
  ノ精神デアラウト思フノデアリマス(拍手)
  然ルニ此法案ニ依リマスト云フト、種
  特別ナル、偏狹ナル鑄型ヲ設ケマシテ、其
  鑄型ニ當嵌マラナケレバ勞働組合トハ認メ
  ナイト云フコトニ相成ッテ居ルノデゴザイマ
  スルガ、ソレデハ此勞働組合法ノ根本ノ精
  神ヲ沒却シタコトニナルノデアリマス、此
  點ニ付テハドウ云フ風ナ御所見ヲ持シテ居
  ラレルカト云フコトヲ此間尋ネタノデアリ
  マスガ、其點ニ付テハ總理大臣ハ御答ナ
  カッタカラシテ、玆ニ改メテ御尋致シマスル
  カラ、明瞭ナル御答辯ヲ願ヒタイノデアリ
  マス(拍手)次ニハ勞働組合法ノ目的ハ保護
  ニアルカ、勞働組合運動ノ保護ヲ目的トス
  ルノカ、或ハ其制限取締ヲ目的トスルノデ
  アルカト云フコトヲ御尋致シマシタ所、總
  理大臣ハ之ニ對シマシテ、勞働組合法ノ目
  的ハ卽チ保護ニアル、勞働者ト云フ者ハ、
  一人々々デハカガ少イ、孤立的ニハ弱者ノ
  地位ニ立ッテ居ルノデアルカラシテ、團結ノ
  力ニ依ッテ、卽チ共同ノ力ニ依ッテ其主張ヲ
  貫徹スルヤウニシナケレバナラナイノデア
  ルト云フコトヲ、總理大臣ハ仰セニナッテ
  居ルノデアル、卽チ勞働者ヲ保護スルト云
  フコト、又勞働者ノ團結ノ力ヲ認メテ居ラ
  レルノデアリマスケレドモ、ソレハ總理大
  臣ガ唯〓口先デ認メテ居ラレルニ過ギナイ
  ノデアリマシテ、此勞働組合法ソレ自體ニ
  於テハ、少シモ勞働者ヲ保護スルコトニ
  ナッテ居ナイ、又勞働者ノ團結力ヲ認メルコ
  トニモナッテ居ナイノデアル、例ヘバ玆ニ
  種々ナル職業ガアッテ、職業ガ同ジデアルナ
  ラバ組合ヲ認メテ居ルケレドモ、職業ガ違ツ
  テ居ルト云フトキニハ組合ヲ認メナイ、
  卽チ組合ヲ制限致シテ居ルノデアッテ、壓
  迫致シテ居ルノデアリマス、又單一組合ハ
  認メルケレドモ、其單一組合ガ一緒ニナッ
  テ聯合體ニナルト云フトキニハ是ハ認メ
  ナイト云フコトニ相成シテ居ルノデアリマ
  スカラ、卽チ〓結力ガ大キクナルト云フコ
  トヲ制限シテ居ル、卽チ阻止シテ居ルノデ
  アリマスカラシテ、此法案自體ニ現レテ居
  ル所ヲ見マスルト云フト、誰ガ見マシテモ
  是ハ保護ニハナッテナイ、團結力ヲ認メルコ
  トニハナッテ居ナイノデアリマシテ、總理大
  臣ハ自分デ是ハ保護デアル、或ハ〓結力ヲ
  認メテ居ルト言ハレマシテモ、卽チ此法案
  自體ニ於テハ左樣ナ事ヲ認メテ居ナイ、卽
  チ全國ノ勞働者全體ガ之ニ對シテ反對ヲシ
  テ居ルト云フ其事實カラ兄マシテモ(「ノウ
  ノウ」拍手)此法案ハ勞働者ノ爲ニナラナイ
  ト云フコトガ分ル、勞働者ノ爲ニ作ッタ法
  律案デアリマスカラシテ····(此時發言ス
  ル者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=22

  ---

• 023・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=23

  ---

• 024・山口義一

  ○山口義一君(續)　勞働者ノ方ガ喜バナケ
  レバナラヌ筈ノモノデアルガ、其却テ勞働
  者ガ喜ブ所デナイ、反對シテ惡法撲滅ノ大
  運動ヲ起シテ居ルト云フ事實ガアルノデア
  リマス(拍手)デアリマスカラシテ、是ハ客
  觀的ニ見マシタナラバ、誰ガ何ト言ッテモ
  勞働者ノ保護ニナッテ居ナイノデアリマス、
  總理大臣ガ之ヲ以テ勞働者ノ保護ト仰シヤ
  ルガ、如何ナル點ガ勞働者ノ保護ニナッテ居
  ルノカ、具體的ニ明瞭ニ御答辯ヲ願ヒタイ
  ノデアリマス(拍手)
  〔「議長々々」ト呼ヒ其他發言スル者多
  シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=24

  ---

• 025・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜〓ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=25

  ---

• 026・山口義一

  ○山口義一君(續)　ソレカラ第三ニハ聯合
  體ハ事實上認メルノデアル、法律上ハ認メ
  ナイケレドモ、事實上ニ於テハ是ハ認メル
  ノデアルト云フ風ニ言ハレテ居ラルヽケレ
  ドモ(發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=26

  ---

• 027・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=27

  ---

• 028・山口義一

  ○山口義一君(續)　事實上認メル所ノ此勞
  働團體ト、又法律上認メル所ノ勞働〓體ト
  卽チ二種類アルコトニナル、何故ニ斯ノ如
  キ區別ヲ設ケラレタノデアルカ、聯合體ヲ
  事實上ニ認メナケレバナラナイモノデアル
  ナラバ一步進ンデ何ガ故ニ之ヲ法律上認
  メナイノデアルカト云フコトヲ私ハ御尋致
  シタイ(拍手)卽チ法律上認メル所ノ此單一
  組合、ソレカラ事實上認メル所ノ聯合體ガ、
  何ガ故ニ同ジ労働團體デアルカ、之ヲ區
  別ナサッタノデアルカ、卽チ小サイ所ノ五
  十人ナリ六十人、百人位ノ労働團體デアツ
  タナラバ法律上認メルケレドモ、ソレガ段
  段大キクナルト云フト、法律上認メルコト
  ガ出來ナイノデアル、唯〓事實上ニ於テ之
  ヲ認メルノデアルト云フコトニナルト、勞
  働者ノ團結ノ大キクナルコトハ是ハ制限ヲ
  シナケレバナラヌト云フコトニナルカラ、
  是ハ制限ノ法律案ト云フコトニナル(拍手)
  之ニ就テ總理大臣ノ御意見ヲ明ニ御伺シタ
  イノデアリマス、ソレカラ第四ハ、總理大
  臣ハ憲政會ノ主張ト、此法案ニ現レテ居ル
  所ノ其政策トハ、大變ノ相違ガアルデハナ
  イカト云フ私ノ質問ニ對シテ、總理大臣
  ハソレハ變ノテ居ルコトハ變ッテ居ル、變ゾ
  テ居ルノハソレハ時代々々ノ情勢ニ應ジ
  テ變ッタノデアル、斯ウ云フコトヲ言ウテ
  居ル(「其通リ」ト呼フ者アリ)ソレハ時代ノ
  靜〓ニ應ジテ變ルト云フコトモ强チ惡イ事
  デハゴザイマセヌケレドモ、併ナガラ···
  (發言スル者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=28

  ---

• 029・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=29

  ---

• 030・山口義一

  ○山口義一君(續)　變ルトキニハ宜シ
  イ方ニ變ラナケレバナラナイノデアッテ、
  惡イ方ニ逆轉シテ變ルト云フノハドウ云フ
  譯デアルカ(拍手)前ニハ善カッタケレドモ
  今度ハ惡イ方ニ變ルト云フノハドウ云フ譯
  デアルカ、ソレデハ憲政會ニハ主張ト云フ
  モノガ無イコトニナル(拍手)又總理大臣ニ
  ハ定見ト云フモノガ無イコトニナッテ來ル、
  卽チ苟モ一國ノ大政黨ノ主張ト云フモノガ、
  ルマデ紫陽花ノ花ノ如ク、七面鳥ノ鳥冠ノ如
  クグルグル變ノテ居ル、サウ云フ風ニ政黨ノ主
  張ガ無雜作ニ變ルト云フコトニナリマシテ
  ハ國民ハ政黨政治ニ失望落膽セザルヲ得
  ナイコトニナル、何ガ故ニ曾テハ立派ナ主
  張デアッタ所ノ其主張ヲ(發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=30

  ---

• 031・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=31

  ---

• 032・山口義一

  ○山口義一君(續)　一擲シテ斯ノ如キ惡イ
  所ノ法律案ヲ出サナケレバナラヌヤウニ相
  成シタノデアルカ、其動機ハ何所ニ在ルカ
  ト云フコトニ付テ過日御尋シタノデアリマ
  ルスガ、其點ニハ明瞭ナル御答辯ガナイカラ、
  更ニ此點ニ付テモ明瞭ナル御答辯ヲ願ヒタ
  イノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=32

  ---

• 033・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜〓ニ願ヒマス-
  静肅ニ願ヒマス、此際議長ハ尙ホ一言致シ
  マス-靜ニ御聽キヲ願ヒマス、先刻横山
  君ノ御發言ニ於テ御述ニナリマシタ終リノ
  方ヲ、議長ハ遺憾ナガラ聽漏シマシタ、サ
  ウシテ横山君ノ-靜ニ御聽ナサイV横山
  君ノ御要求ハ、先日ノ議場ニ於ケル秦君ノ
  行動ニ對シテ、議長ヨリ之ニ警告ヲ與ヘヨ
  ト云フ御要求ダサウデス、一昨日ノ議場ノ
  如キ喧囂ヲ來シマシタ場合ニ於キマシテ
  ハ議場動モスレバ諸君ノ中ニ於テ色ニナ
  行動ヲ執ラレルコトガ往々アルノデアリマ
  ス、併ナガラ議長ハ斯樣ナ場合ニ於キマシ
  テ、一々誰方ガドウ云フコトヲ爲サレタト
  云フコトヲ認識スルコトハ頗ル至難デアリ
  マス、併ナガラ秦君ニシテ只今横山君ノ述べ
  ラレタル如キ事ガアリト致シマスレバ、是ハ
  秦君ニ於テモ將來御注意アランコトヲ私ハ
  玆ニ希望致シマス-若槻内閣總理大臣
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=33

  ---

• 034・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　山口君ノ御質
  問ノ第一ハ私能ク伺切レナカッタノデアリ
  マスガ、私ノ理解シタ所ニ依リマスト、現
  在旣ニ組合ガ出來テ居ルノデアル、今回提
  出シタ組合法ノ如ク職業別ニナッテ居ルト
  云フト、現在ノ組合ノモノハ大變ニ此制限
  ニ依シテ迷惑スルヤウナコトニナルト思フ
  ガソレハドウデアルカト云フヤウナ、言
  葉ハ違フヤウデアリマスケレドモ、御趣意
  ハサウデアッタヤウニ伺フノデアリマス
  ソレハ法律ノ附則ニ於テ、現在ノ組合ハ一定
  ノ期間ニ屆出ヲ致シマスト、之ヲ認ムルコ
  トニナッテ居ルノデアリマスカラ、自然山
  口君ノ御疑問ハ氷釋スルコトヽ思ウノデア
  リマス、今囘ノ提出案ハ勞働者ノ保護デア
  ルト云フケレドモ、組合ヲ職業別、又地方別
  ニ限ッタ以上ハ、大ナル組合ガ出來ナイコ
  トニナル、ンレデハ勞働者ガ十分ニ意思ヲ
  仲ベルコトガ出來ナイコトニナル、ト云フ
  ヤウナ御考ノヤウデアリマス、私共ノ見ル所
  ニ依レバ組合ハ職業別、地方別ニ定メマシ
  テ、丁度利害ノ一致シタルモノヽ固結ニナ
  ルノデアルカラ、最モ適切デアラウウト思
  フノデアリマス、而シテ後ニ御答致シマス
  ル通リ、法律ハ決シテ聯合ヲ禁ジテ居ナイ
  ノデアリマスカラ、法人タル組合ガ聯合シ
  テ其主張ヲ達シヤウトスルコトハ何モ此
  法律ニ於テ妨ゲラレル所ノモノデハナイノ
  デアリマス、第三ニハ聯合ヲ認メタト云フ
  ケレドモ、聯合體自身ガ法人ニナッテ居ラ
  ナケレバ、聯合ヲ認メタト言ッテモ認メタ
  コトニナラヌ、又事實聯合ヲ認メル位ナラ
  バ何故聯合シタモノヲ法人トセナイカト
  云フ御尋ノヤウデアリマス、是ハ第一問ニ
  御答シ、第二問ニ御答シタト同ジヤウニ、
  旣ニ利害ノ最モ密接ナルモノニ於テ組合ヲ
  作ッテ法人ト認メテ、其法人ガ事實ノ聯合
  ヲ爲スコトヲ永認シテ參リマスナラバ、强
  テ聯合體自身ヲ法人ニ爲サズトモ、能ク其
  目的ヲ達シ得ルト認メテ居ルノデアリマス、
  最後ノ御質問ノ、憲政會ガ嘗テ議會ニ提出
  シタ法律案ト、此度提出シタ法律案トハ違
  フ、而シテ今回ノモノハ大ニ退步シタト云
  フ御觀察ノヤウデアリマス、是ハ前總理大
  臣ガ先月二十一日ニ當議場ニ於テ方針ヲ說
  明致シタ際ニモ申述ベテ居リマスガ、如何
  ナル立法ト雖モ國各、其事情ガアル故ニ、
  外國ニ例ガアル故ニ必ズ之ニ模倣シナケレ
  バナラヌト云フコトハナイ、國情ニ應ジタ
  ル適切ナル立法ヲスルノデアルト申サレタ
  ノデアリマスガ、ソレガ卽チ今日ノ時代ニ
  今日ノ狀況ニ最モ適應シタル法案ガ只今提
  出シテアル法律デアル、斯ウ云フ趣旨デア
  ルノデアリマスカラ、御諒承アランコトヲ
  請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=34

  ---

• 035・山口義一

  ○山口義一君　簡單デアリマスカラ此席力
  ラ.
  〔「登壇」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=35

  ---

• 036・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜〓ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=36

  ---

• 037・山口義一

  ○山口義一君(續)　私ノ質問致シテ居リマ
  スル所ノ目的精神ニ、只今ノ總理大臣ノ御
  答辯ハ少シモ觸レテ居ナイノデアリマス、
  併ナガラ是レ以上御尋ヲ追究致シマスルト
  云フコトハ、無益デゴザイマスカラシテ、
  更ニ委員會ニ於テ此各條文ニ付テ御尋ヲ致
  スト云フコトニ致シマシテ、此質問ハ是デ
  打切ルコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=37

  ---

• 038・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　藏園三四郞君
  〔藏園三四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=38

  ---

• 039・藏園三四郎

  ○藏園三四郞君　先日來當議場ニ於キマシ
  テハ勞働立法問題ニ付キマシテ、議員ト
  政府ノ間ニ屢、質問應答ヲ重ネタノデアリ
  マス、然レドモ多クハ理想問題、若クハ
  一ノ假定ニ基クモノデゴザイマシタ然ル
  ニ今日勞働立法中ノ一部分デハアリマスケ
  レドモ、最モ其重要ナル組合法案ガ只今此
  議場ニ横クテロルノデアリマス、吾々ハ「メ
  ス」ヲ揮シテ此法案ノ解剖ヲ〓シタイト思
  フ而シテ其結果固ヨリ活殺白在ノ權ハ吾
  人ノ掌中ニ握ラレテ居ルノデアリマス、過
  日有馬君、山口君ヨリ致シマシテ熱心ナル
  而モ悉ク其「ポイント」ニ觸レタル所ノ御質
  問ガゴザイマシタ、デ私モ或ハンレト重複
  スル點モナイトハ限リマセヌガ、斯ノ如キ
  重大ナル法案デゴザイマスルカラ、重複ニ
  市複ヲ重ヌルコトモ故フ差支ハナイト思フ
  ノデアリマス、併シ私ノ問ハント欲スル所
  ハ此法案ノ眼目トモ云フベキ所ノ二三ニ
  付テ御尋ヲ致シタイノデアリマス、先ヅ第
  一ニ御尋ヲ致シタイノハ、勞働組合ノ組織
  ニ關シテ御尋ヲ致シタイ、ソレハ本法ノ第
  一條ニ明記サレテ居ルノデアリマス、第
  條ニ依リマスー同一又ハ類似ノ職業又
  ハ產業ノ勞働者ハ本法ニ依リ勞働組合ヲ設
  立スルコトヲ得ルト云フ規定デアリマシテ
  (「簡單ニヤレ」ト呼ヒ其他發言スル者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=39

  ---

• 040・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　靜〓ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=40

  ---

• 041・藏園三四郎

  ○植園三四郞君(續)　卽チ同一種類ノ職
  業、卽チ同一種類ノ產業、言葉ヲ換ヘテ申シマ
  スレバ產業別組織ニ相成ッテ居ルノデアリマ
  3所ガ之ニ就キマシテハ先程山口君モ御
  質問ニ相成リマシタノデアリマスガ元來此
  勞働組合ト云フモノハ、一般勞働者ガ其階級
  意識ニ覺メテ、而シテ玆ニ結合團結ヲスル
  モノデアリマシテ、普通ノ同業組合、又、
  職業組合ト云フヤウナル共済的ノモノトハ、
  殆ド其範ヲ異ニシテ居ルモノデアル、然ラ
  バ其組織ニ於テハ固ヨリ一般勞働者ヲ以テ
  之ヲ組織スルト云フコトガ、最モ其組合ノ
  本質ニ適ウテ居ルノデアル、然ルニ先ニ公
  表セラレタ所ノ社會局案ナルモノハ卽チ
  一般勞働者ニ於テ之ヲ組織スルト云フコト
  デアッタノデアリマス、然ルニ本案ニ依ッテ
  見マスルト云フト、職業別組織ニ變更サレ
  テ居ルノデアル、職業別組織ハ卽チ最モ親
  密ナル職業、同業者ノ結合トシテ、其發達
  ガ健全ニ出來ルデアラウト云フ只今ノ總
  理大臣ノ御答辯モアリマシタケレドモ、私
  共ハ之ニ對シテハ遺憾ナガラ贊意ヲ直ニ表
  スルコトハ出來ヌノデアル、此同業者ヲ以
  テ組織スルコトヲ學說ノ上カラ言ヘバ、卽
  チ之ヲ縱ノ組合ト申シ、又一般勞働者ヲ以
  テ組織スルコトヲ橫ノ組合ト中シテ居リマ
  Z然ルニ此縦ノ組合ガ第一條ニ明記サレ
  テ居ルニモ拘ラズ、何時ノ間ニカ是ガ變更
  ヲサレマシテ、卽チ第十二條ニ至ッテ直ニ
  是ガ橫ノ組合ト變シテ居ルノデアル、諸君、
  此本法第一條ヲ見マスト云アト、組合ヲ設
  立スルトキ、卽チ組合ノ設立其モノニハ同
  業卽チ職業ヲ同ジウスルトカ、產業ヲ同ジ
  ウスルト云フ勞働者ニ於テ、組織シナケレ
  バナラヌトナッテ居ルノデアリマスルガ、
  然ルニ一旦此組合ヲ設立シ終レバ、玆ニ其
  組合員トナルベキモノハ全ク其業體如何
  ヲ問ハズ、又勞働者デアルトナイトニ拘ラ
  ズ其組合員トナルト云フコトガ出來ルコ
  十、是ハ甚ダ自由ナ方法デアリマスケレ
  ドモ、此上義ノ上カラ云ヒマスト云フト
  何所ニ主義ガアルカ、殆ド分ラヌノデアル、
  諸君、試ニ第十二條ヲ御覽ナサイ、第十二
  條ニ依リマスト云アト、勞働組合ノ組合員
  トナルコトヲ得ル者ハ卽チ左ノ如シト云フ
  コトニナッテ居リマス、卽チ第一原則タル
  所ノ、第一條ノ同一又ハ類似ノ職業又ハ產
  業ノ勞飾者ニ井ザル者ト動モ左ノ場合ニ於
  テ労働組合員トナルコトヲ得ル、第一ニハ
  卽チ組合ノ役員ニ選任サレタル者、第二ハ
  元ト勞働者デアッタ者、職ヲ失ヒ若クハ廢
  メテ居ル者デス、第三ニ至ッテハ甚シイ、
  第三ニ至ッテハ組合ノ總會ニ於テ組合員ト
  決議ヲシタル者、卽チ加入ヲ許シタル者、斯
  ウ云フコトニナッテ居ル、卽チ勞働組合ノ
  總會ニ於テ、其決議ニ依シテ加入ヲ許サレ
  タル者ハ、労働者デアラウガアルマイガ、
  又其營業、其產業ヲ同ジウシヤウガセマイ
  ガ、之ニハ一ツモ制限ガ定メラレテナイノ
  テアル、シテ見マスレバ此三號ニ規定サレ
  デ居ル者ハ、組合ヲ設立スル當時ニ於テハ
  同業者ヲ以テ設立スルノデアルガ、一旦設
  立シ終レバ、最早其組合員トナルベキ者ハ
  労働者デアラウガアルマイガ、之ニ加入ス
  ルコトガ出來ルト云フコトニナッテ居ル
  而シテ更ニ進ンデ其附則ヲ御覽ナサイ、附
  則ノ末項ニ於テハ又更ニ斯ウ云フコトガア
  ル·第一條、第十二條ノ規定アルニ拘ラズ、
  同一職業又ハ同一產業ノ労働者ニ非ザル者
  ヲ以テ勞働組合ノ組合貝ト爲スコトヲ妨ゲ
  ヌ、斯ウ云フ規定ガ定メラレテ居リマシテ、
  最初ハ縱ノ組合ヲ作リ、而シテ是ガ又直ニ
  橫ニ變ッテ行クト云フ仕掛ニナッテ居ル是
  ハ結局ドウ云フコトカラ來タモノデアル
  カ、少シモ一定ノ主義ナク一定ノ主張ナキ
  斯ノ如キ組合ニナッテ居ルノハ、ドウ云フ
  次第カト申シマスルト云フト、聞ク所ニ依
  レバ政府ニ於テハ鐵道省、商工省、或ハ
  陸海軍省其他資本家側ヨリ致シマシテ、此
  横ノ一般的勞働者ノ組織ニ反對ヲシテ、サ
  ウシテ此產業別組織ニ强要サレタ結果デハ
  ナイカト云フコトヲ私共ハ考ヘルノデアリ
  や 、シテ見マスレバ全ク先程山口君ナド
  ガ言ハレタガ、此產業別ト定メタノハ、甚
  ダ勞働組合ノ本質ヲ著シク害スルモノデア
  ルト言ハレタケレドモ、其主張ヲ飽迄本法
  ニ於テ貫徹シテ居ルカト思ヘバ、直ニ其主
  張ヲ抛ッテ、一般勞働者ガ之ニ加入スルコ
  トガ出來ルト云フコトニ變ッテ居ルノデア
  リマス、サウシテ見マスレバ、私共ハ此縱
  ノ組合ガ宜シイカ、横ノ組合ヲ可トスルカ
  ト云フ問題ヲ論ズル前ニ於テ、立法者ノ立
  前ト致シマシテ、斯ノ如ク組合ヲ組織スル
  ト、直ニ其性質ヲ一變スルヤウナ立法ニ對
  シテハ、遺憾ナガラ賛成ヲスルコトガ出來
  スト云フコトニ相成ルノデアリマス、デ此
  點ニ於キマシテ、政府ノ意見ヲ伺ヒタイ
  ト思フ、次ニハ勞働組合ノ目的デアリマ
  ス、山口君モ目的ニ付テ質問ヲセラレタ
  ノデアリマシタガ、此目的ヲ組合法ニ於テ
  制限スルト云フコトハ今日ハ聊カ時代ニ
  遲レタル觀ガアルノデアリマス、本法ノ第
  二條ヲ見マスルト、勞働組合ハ勞働條件ノ
  維持、又ハ改善ヲ以テ目的トスル、是ハ宜
  シイ、是ハ對外條件トシテ必ズ勞働組合ニ
  ナケレバナラヌモノデアリマス、所ガ此組
  合ノ目的ヲバ立法的制限ヲスルト云フコト
  ハ果シテ善イカ惡イカト申シマスルト云
  フト、舊來ノ立法例ニ依リマスレバ、固ヨ
  リ斯ノ如キ目的ハ法律ヲ以テ制限スルノガ
  慣例デアリマス、併ナガラ進步シタル今日
  ニ於テ、殊ニ勞働組合ノ成立ニ鑑ミテ見マ
  スルト云フト、勞働組合ト云フモノハ、資
  本主義社會組織ノ上ニ於ケル獨特ノ社會性
  ヲ有スルモノデアッテ、他ノ一般組合ト其
  性質ヲ異ニスルモノデアリマスカラ、ドウ
  シテモ之ニ對シテ廣キ意味ノ自治的規定ガ
  必要デアル、卽チ其目的ノ如キハ法律ヲ
  以テ之ヲ制限スルニ及バズシテ、全ク勞働
  組合ノ自治ニ一任シ、勞働組合ノ規約ニ之
  ヲ讓ッテ可ナリト私ハ思ウテ居ルノデア
  ル勞働規約ニ之ヲ讓リマシテ、何ノ不都
  合ガアリマスカ、又何ノ怖イコトガアリマ
  スカ、若シ危險アリ、若シ法律違反ノ廉ア
  リ、若シ治安維持上不都合ナ點アリトスレ
  バ一般法規ヲ以テ之ヲ取締ルコトガ出來
  ルノデアル、何ヲ苦ンデ斯ノ如キ小サナ範
  圍ノ狹イ組合トシテノ目的ヲ制限スルコト
  ガ必要デアルカ、是等ハ今日進步シタル立
  法ノ上ニ於テハ、組合ノ自治ニ一任シテ可
  ナリデハナイカト云フコトヲ私ハ思フ、政
  府ノ之ニ對スル御所見如何、殊ニ玆ニ伺ノテ
  置キタイノハ、此本法ノ第二條ニ制限的規
  定ガゴザイマスルケレドモ、併ナガラ之ヲ嚴
  重ナル制度ト見ルコトハ、恐ラクハ許スマ
  イト思フ、何故ト申シマスルノニ、例ヘバ
  芳働條件ノ維持改善ト云フコトデアリマス
  ルナラバ、勞働條件ノ維持改善ノ其目的ヲ
  達スル爲ニハ、諸種ノ事業ヲ行フコトガ之
  ニ伴ウタル所ノ附帶ノ條件デアルノデアリ
  やく、シテ見マスレバ、昨日總理大臣ノ有
  馬君ノ質問ニ對シテ御答ニナッタヤウニ、
  營利事業ヲ許スト云フコトハ出來ヌト言ハ
  レマシタガ、是スラモ組合ノ資產ヲ增殖ス
  ル上ニ於テ或ハ如何カト思フノデアル、又
  其他ノ新聞ノ發行ヤ、雜誌ノ發行、之ニ伴
  フ所ノ事業ノ如キハ固ヨリ差支ハナイ筈デ
  アリマス、此目的ヲ達スル上カラ見テ、敢
  テ差支ノナイト云フコトヲ考ヘル、殊ニ茲
  ニ私ガ一ツ重要ナル問題トシテ御伺ヲ致シ
  テ置カナケレバナラヌコトハ勞働組合ガ
  出來テ、是カラ卽チ普選ニ基ク所ノ選擧ガ
  行ハレルノデアル、其時ニ當ッテ勞働組合
  ガ政治運動ニ參加シテ、労働組合ガ候補者
  ヲ立テ、而シテ之ヲ應援スルガ爲ニ組合ノ
  資金ヲ之ニ使用スルト云フコト、此事ハ
  組合ニ於テ自由デナケレバナラヌ筈デアル
  ガ、然ルニ之ニ對シテハ諸君モ御承知ノ通
  リニ、英國ニ於テハ千九百八年ニ例ノ有名
  ナル「オスボルン」事件ト云フモノガ起ッタ
  ノデアル、「オスボルン」事件ト云フモノガ
  必ズ近キ將來ニ起ルノデアリマス、「オス
  ボルン」事件ト云フノハドウ云フコトカト
  申シマスレバ、卽チ鐵道從業員タル所ノ「オ
  スボルン」ト云フ組合員ガ資本家ノ尻押ニ
  依リ、資本家ノ煽動ニ依リマシテ、勞働組
  合ガ候補ヲ立テ、而シテ政治連動ニ組合ノ
  資金ヲ使用スルコトハ、是ハ違法デアルト
  云フ訴ヲ致シタノデアリマス、所ガ英國栽
  判所ニ於テハ第一審ニ於テハ組合ノ勝訴
  トナリ第二審、第三審ニ於テハ遂ニ「オ
  スボルン」ノ敗訴ニ歸シタノデアル、其理
  由ハ何カト申セバ、卽チ労働運動ハ政治運
  動ト離ルヽコトハ出來ヌノデアル、政治運
  動ヨリ之ヲ除ケバ勞働連動ハ殆ド有名無實
  デアル、併ナガラ今日ノ法制ノ上ニ於テ
  ハ遺憾ナガラ此勞働組合ノ資金ヲ選舉連
  動ニ使用スルコトハ出來ヌト云フ判決ガ下
  サレテ居ルノデアル、勞働組合ハ御承知ノ
  通リ非常ナ狼狽ヲ極メタコトハ周知ノ事實
  デアリマス、是ニ於テ英國ニ於キマシテハ、
  千九百十三年ニ至ッテ法律ヲ改正致シマシ
  テ、其勞働組合法ニ選舉運動ニ使用スルコ
  トガ出來ルト云フコトヲ、組合規約ニ明記
  サレテ置ケバ宜シイ、デ若シ組合員トシテ
  之ニ反對ノアル者ニハ、卽チ其費用ノ割戾
  シヲセヨト云フヤウナ規定ヲ設ケテ、卽チ
  政府ノ干涉及資本家ノ煽動ヲ防禦致シテ居
  ルノデアリマス、然ルニ今此組合法ヲ見マス
  ル、其事ニ付テハ先進國ニ辛キ立法例ガ
  アルニモ拘ラズ、何等之ニ觸ルヽ所ガナイ
  ノデアリマスガ、近キ將來ニ於テ-而モ
  近キ將來ニ於テ斯樣ナ勞働組合ト、政治運
  動ノ關係ト云フモノハ、追ミニ紛雜ナル問
  題ヲ惹起スコトハ明瞭デアリマス、政府ハ
  之ニ對シテ政治運動ヲ認メルカ、而シテ政
  治運動ヲ認メル認メヌニ拘ラズ、政治運動
  ノ爲ニ組合ノ資金ヲ之ニ使用〓シタル場合
  ニ於テハ、如何ニ處理セラルヽカ、是ハ適
  法トシテ、合法トシテ見ナイデ置クカ、若
  クハ政府ガ選舉干涉ノ如キモノヲヤリ、或
  ハ之ヲバ嚴重ニ取締ルト云フヤウナコトガ
  アレバ、殆ド勞働組合運動ノ大半ハ此問題
  ニ於テ阻害サレル虞ガアルノデアル(拍手)
  之ヲ伺ッテ置キマス、次ニハ私ハ勞働組合
  ハ之ヲ法人トスルカセヌカ、此問題デアリ
  マス、法人ニ關シテ御伺ヲ致シマス、本法
  第三條ニ依リマスルト「勞働組合ハ之ヲ法
  人トス」ト斯樣ニ單刀直入ニ規定サレテ居
  ルノデアリマス、諸君、從來我國ニ於ケル
  所ノ立法沿革ニ照シテ之ヲ見マスレバ、斯
  樣ナ組合ノ場合ニ於テハ何々組合及聯合組
  合ハ之ヲ社團法人トス、斯ウ云フ風ニ規定
  サレルノガ我國從來ノ立法例デアリマス、
  即チ組合ヲ法人トシテ併セテ聯合組合ヲ法
  人トスル、而モ其法人ハ社團法人トスルト
  云フノガ從來ノ我國立法ノ沿革ニ照シテ明
  デアル、然ラバ此社〓法人ト云フ規定ハ、
  御承知ノ通リニ民法ノ法人デアルノデア
  ル、所ガ本法ヲ見マスト云フト、勞働組
  合ハ之ヲ法人トスト斯樣ニ端的ニ規定サレ
  テ居ルノデアル、然ラバ此勞働組合ノ法
  人タル資格ハ法律上是ガドノ地位ニ位ス
  ルモノデアルカ、民法ヲ超越シタル所ノ自
  治團體ト同ジキ規定ニ規定サレテ居ル所ヲ
  見ルト、勞働組合ハ一種ノ自治團體ト御認
  メニナッタノデアルカドウカ、言葉ヲ換ヘ
  テ申シマスレバ、今日ノ資本主義社會組織
  ノ上ニ於テ、勞働王國ヲ認メタルモノト見
  テ差支ガナイノデアルカドウカ、從來ノ民
  法ヲ超越シタル所ノ此法人ノ位置、此法人
  ノ法律學上ニ於ケル地位ト云フモノガドウ
  シテモ不明デアリマス、此點ヲ一ツ明瞭ニ
  致シテ置キタイト思フノデアリマス、サウ
  シテ聯合組合ニ付テハ曩ニ有馬君ヤ山口君
  ガ屢、御論議ニナッテ居リマスルガ、聯合
  會ト云フモノハ事實上認メテ居ルカラ宜イ
  デハナイカ、斯ウ云フ總理大臣ノ御答辯デ
  アル、此勞働法ニハ卽チ總會ノ決議事項ト
  致シマシテ、卽チ聯合組合ヲ組織スルコト
  ヲ許シテアルノデアル、然ルニ單リ其聯合
  組合ニ對シテ法人タル人格ヲ與ヘザルト云
  フコトハ是ハドウシタモノカ、先程ヨリ
  屢〓問答ガアリマシタケレドモ、未ダ私ハ
  之ヲ知ルコトガ出來ヌ、デ聯合組合ヲ法人
  ト認メルナラバ、其法人タルノ聯合ノ所ニ
  於テモ一ツノ法人格ヲ認メルト云フノガ、
  卽チ從來ノ立法沿革デアルノデアリマス、
  然ルニ單リ此聯合會ニ於テ法人タルコトヲ
  得セシメズシテ、事實上ノ存在ヲ認メテ之
  ヲ以テ終レリト云フコトハ、未ダ以テ
  法律ノ保護至レリトハ言フコトハ出來ヌ
  ノデアリマス、ソレカラ又昨年ノ八月御發表
  ニナッタ社會局ノ案ナルモクヲ拜見スルト、
  是ハ恐ラクハ内務省案デアッタト思フノデア
  ル其内務省案ナルモノヲ拜見致シマスルト
  云フト、勞働組合ヲ法人トスルモ法人トセ
  ザルモ、一ニ組合ノ自由採擇ニ一任スルト
  云フ規定ニ相成ッテ居ルノデアル、是ハ頗ル
  其組合ノ自然ノ發達、自然ノ發生ヲ御認メ
  ニナッテ拵ヘタモノト見ラレテ、頗ル機宜ニ
  適シテ居ルモノト云フ世上ノ評判デアッタ
  ノデアル、然ルニ本案ヲ見マスレバ、卽チ
  組合ハ之ヲ法人トスト云フ强制法人主義ヲ
  御採用ニナッタト云フコトハ、是ハ如何ナ
  ル見地ニ立ッテ斯ノ如ク早變リヲセラレタ
  モノデアリマスルカ、私ガ聞ク所ニ依リマ
  スト云フト、組合ヲ法人トセナケレバドウ
  シテモ組合ヲ訴ヘルコトガ出來ナイ、組合
  ニ對スル所ノ損害賠償ヲ訴ヘル主體ガナ
  イ、サウシテ見ルト勞働組合ハ何デモ不法
  ナ事ヲ遣リ放題デアル、斯ウ云フヤウナ論
  ガ一部特權階級ヨリ起ノテ、サウシテ損害賠
  償ノ對手トシテ可能タラシムベク、此組合
  ヲシテ强制法人トシタルモノデアルト云フ
  コトヲ承ッテ居ル、果シテ左樣ナ事實モアツ
  タラウト思フノデアル、一體斯ノ如キ此强
  制法人トスル、或ハ組合聯合會ヲシテ法人
  ト認メナイト云フヤウナコトハ、畢竟スル
  ニ此勞働組合ノ自治ヲ拘束シテ、而シテ此
  勞働組合ノ運動ヲ-活動ヲ阻害スル所ノ
  立法デハナイカト云フコトヲ、私ハ憂ヘル
  次第デアリマス、此點ニ對シテモ詳細ナル
  御辯明ヲ願ヒタイ、次ニ第四トシテ御尋致
  シマスルノハ、卽チ此社會局案ニ於キマシ
  テハ認可主義ヲ採ノテ居ッタノデアル、認可
  主義ニ對シテハ世間囂々トシテ非難ノ聲ガ
  アッテ、此所ニ鑑ミタノデゴザイマセウ、
  卽チ此認可主義ヲ止メテ、サウシテ屆出主
  義ニ變シテ居ルノデアリマス、然ルニ此屆
  出主義ニ變シタコトハ聊カ一進步ヲ認メル
  ノデアリマスルガ、併ナガラ此屆出ヲセナ
  ケレバドウシテモ法人トナルコトガ出來ヌ、
  又組合トナルコトガ出來ヌト云フコトニナ
  リマスレバ、卽チ此屆出ハ任意屆出主義ニ
  非ズシテ、全ク强制主義ノ屆出ニ相成シテ
  居ルノデアッテ、毫モ曩ノ認可主義ト異ナル所
  ハナイト云ノテモ可ナリト私ハ思フ、唯〓
  玆ニ御尋ヲ攻シテ置カナケレバナラヌノハ
  斯ウデアル屆出ヲシタル組合ト屆出ヲセ
  ザル組合ト云フモノヲ御認メニナルカドウ
  カ、英國等ニ於キマシテハ卽チ登錄シタル
  勞働組合、登錄セザル勞働組合ト云フ二個
  ヲ認メテ居ルノデアリマス、然ルニ此規定
  ニ依リマスト、ドウシテモ屆出ヲシタル組
  合以外ノ勞働組合ノ事實上ノ存在ヲ認メヌ
  ト云フヤウナ規定ニ見受ケラレテ、甚ダ强
  制的ニ見ラレルノデアリマスルガ、政府ハ
  之ニ對シテ屆出ヲシタモノハ法人トナル一
  種ノ特權ヲ有スル、併ナガラ屆出ヲセナイ
  モノハ法人トナラズシテ、一種ノ世間的勞
  働組合トシテ存在スルカ否カ、此所ヲ確メ
  テ置カネバナラヌ、ソコデ若シ是ガ屆出ヲ
  セナイ勞働組合ガアッタトキニ於テ、政府ハ
  又之ヲ如何ニ處理セラレルカト云フコトガ、
  最モ此法律施行ノ際ニ於ケル重要ナル問題
  デアリマスルカラ、併セテ是モ御尋ヲ致シ
  テ置キマス、次ニハ最後ニ第五ト致シマシ
  テ御尋ヲ致サナケレバナラヌモノガアリマ
  ス、ソレハ先程カラ段々御尋モアリマシタ、
  山口君等ノ熱心ニ御尋ニナッタ點デアリマス、
  此〓體交涉權ト申シマスレバ、勞働組合ノ
  是ハ二大武器デアル「ストライキ」ト團體交
  涉權ト云フモノハドウシテモ組合ニナク
  テナラヌモノデアッテ、而モ此二ツガ兩々相
  對シテ始メテ其目的ヲ達スル所ノモノデア
  ルノデアリマス、然ルニ政府ハ此罷業權ヲ
  認メナガラ、卽チ「ストライキ」ヲ認容スル
  ト云フ觀念ニ立脚ヲ致シテ居リナガラ、此
  「ストライキ」ヲ、按排シ、此「ストライキ」
  ヲ旨ク治メテ行クト云フ所ノ、此團體交涉
  權ト云フモノヲ否認シテ居ラレルト云フコ
  トハ是ハ甚ダ跛バ本義ノ立法ト謂ハナケ
  レバナラヌ、デ元來勞働組合法ニ於テ此交
  涉〓體權ト云フモノハ、卽チ組合法ノ生命
  デアルノデス
  〔粕谷議長議長席ヲ退キ、小泉副議長代
  リ著席〕
  然ルニ此生命ヲ與ヘズシテ、ダ働組合ヲ作ッ
  テ見タ所ガ、ソレハ生命ナキ一個ノ集團タ
  ルニ過ギナイモノデアリマス、デ私ハ之ニ
  就テ先日來ドウ云フ御答辯ガアルカト云フ
  コトヲ興味ヲ以テ見テ居ッタ、然ルニ一昨日
  ノ騷擾裡ニ、政府委員タル所ノ鈴木參與官
  ガ出マシテ、彼ノ紛爭裡ニ答辯シ夕所ノ其
  速記錄ナルモノヲ見マシテ茲ニ一ツノ獲物
  ヲ得タノデアリマス、シレハ鈴木君ガ此粉擾
  裡ニソレニ對スル答辯ヲ與ヘテ居リマス、
  卽チ團體交涉権ハ認メヌノヂヤナイ、之ヲ
  認メル、併ナガランレハ他ノ單行法ヲ以テ
  之ヲ制定スル、斯ウ云フ御答辯ニナンテ居
  ル、是ハ總理大臣モ恐ラクハ否定ハナサル
  マイト思フ、サウシテ見マスト云フト、政
  府ニ於テモ労働組合ニ團體交涉權ヲ附與セ
  ナケレバナラヌト云フコトハ、茲ニ御認メ
  ニナッテ居ルガ、併ナガラソレハ他ノ法律
  ヲ以テ制定セラルヽト云フ御意思ト承ル、
  是ハ鈴木君ノ言ハレタノヲ其儘水ノテ宜シ
  イト思フ、是ニ於テ私ハ總理大臣ニ希望シ、
  且ツ御伺ヲセナケレバナラヌコトハ、今申シ
  マシタ通リニ労働組合ノ團體交涉權ト云フ
  モノハ、卽チ勞働組合ノ生命デアリマス、
  此生命ヲ此勞働組合法ニ吹込ンデ置クト云
  フコトハ、最モ必要デアルノデアル、今玆ニ
  之ヲバ認メテ居リナガラ、他日ニ其立法ヲ
  讓ルト云フコトハ、如何ニシテモ私ノ理解
  ノ行カザル點デアリマス、若シ〓體交涉權
  ノ運用ニ至リマシテハ宜シク他ノ勅令、或ハ
  命令、或ハ他ノ法律ヲ以テセラルヽモ可ナリ、
  然レドモ今玆ニ組合法ヲ制定スルニ當ッテ、
  其組合ノ眼目、組合ノ生命タル所ノ交涉權
  ヲ他日ニ御讓リニナリ、而モ是ト分類シテ
  單行法ト爲サレルト云フコトハ、抑〓是レ如、
  何ナル御考デアルカ、立法ノ體枝カラ見マ
  シテモ、私共ハ之ニ承服スルコトハ出來ナ
  イノデアル、立法ノ體裁カラ申シマスナラ
  バ、成程團體交涉權ヲ他ノ單行法ニ於テ規
  定セラレタモノハ、他ニ立法例ハアリマセ
  ウ、併ナガラ勞働組合法ヲ制定スルニ當ノ
  テ、之ヲ他日ニ延シタト云フ立法例ハ恐
  ラク他ニ之ヲ見ルコトハ出來ヌデアラウ、
  サウシテ見マスレバ、何故ニ政府ハ既ニ此
  事ヲバ認メテ居リナガラ、而モ今此重大ナ
  ル、我國始マッテ以來ノ此重安ナル勞働立
  法ヲ議セントスルニ當ノテ、其肝腎要メノ交
  涉權ヲ出シ惜ムト云フコトハ、是ハ甚ダ解
  セナイ次第デアリマス、仍テ私ハ之ヲバ他
  ノ立法ニ讓ルト云フヤウナコトハ、是ハ立法
  ノ甚ダ醜態デアル、其細則、其細目ニ至ン
  テハ宜シク他ニ讓シテ宜シイノデアリマス、
  然レドモ此組合ノ生命タル交涉權ハ、只今
  之ヲ吹込ンデ置カナケレバ相成ラヌ次第デ
  アル、卽チ組合ヲシテ死物タラシメ、組合
  ヲシテ生命無キ一個ノ集團タラシメルト云
  フコトハ、折角ノ組合制定、勞働立法中ノ
  重大ナ此立法ヲ爲スニ當ッテ、甚ダ缺點デ
  アルト私ハ考ヘルノデアリマス、マダ法文
  ノ全體ヲ通ジテ、甚ダ遺憾ヲ感ズル點ノ尠
  カラヌノデアリマスケレド、餘リ長クナリ
  マスカラ、他ノ事ハ他日ニ之ヲ讓リ-委
  員會ニ讓リマスガ、只今御質問申上ゲタコ
  トハ願クハ詳細ニ御說明下サルコトヲ希
  望〓シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=41

  ---

• 042・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　若槻内閣總理大
  臣
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=42

  ---

• 043・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　勞働組合ノ組
  織ノコトニ關シマシテ、第一條デハ職業別、
  產業別ニナッテ居ルガ、十二條ニ至ッテ其產
  業ニ關係セナイ者ヲバ尙ホ許シテ居ルト云
  フノハ、主義ガ一貫セナイデハナイカト云
  フ御質問デアリマス、大體ニ於テ今回ハ同
  一若クハ類似ノ產業、職業、之ニ從事シテ
  居ル者ハ利害關係ガ最モ緊密デアリマス爲
  ニ、労働組合ハ其緊密ナル利害關係ヲ有シ
  テ居ル者ノ間ニ於テ、之ヲ作ラセルノガ相
  當デアル、斯ウ大體ハ認メタノデアリマ
  ス併ナガラ其事業ニ關係シテ居ナイ者デ
  モ、労働者ガ其知識ヲ借リテ組合ノ管理、
  若クハ行爲ヲ能ク指導シテ貰ヒタイト云フ
  ヤウナ場合ガナイデモアリマセヌ、其場合
  ニ總テノ者ハ其職業ニ屬シテ居ラナイト云云
  フト、組合員ニナルコトガ出來ナイト云フ
  コトニナリマスト、組合ハ甚ダ不便ヲ感ズ
  ルノデアリマスカラ、原則トシテハ産業別、
  職業別ニ致シマシタケレドモ、役員ニ通當
  ナル人ガ得タイ、其產業ニ從事シテ居ル者
  ノ中ニハ適任者ガ無イト云フヤウナ場合ニ、
  役員ト爲ス爲ニ他ノ人ヲ組合ニ加入セシ
  メルト云フコトハ矢張是ハ認メタ方ガ宜
  シイ、又現在ハ勞働者デナクテモ、嘗テ其
  職業ノ勞働ヲシテ居ッタ者ハ、矢張其知識ナ
  リ、利害關係ガ相類似シテ居ルノデアルカ
  ラ、是ハ矢張組合員ニ認メ夕方ガ宜シイ、
  ソレノミナラズ、組合ノ總會デ、アノ人ヲ
  入レタ方ガ、其人ノ知識ヲ借リタ方ガ其
  組合ノ爲ニハ便利デアルト見タ者ヲモ、加
  入セシメルコトガ出來ヌト云フコトニナリ
  マシタンデハ、餘リ窮屈デアリマス故ニ、
  ソレ故ニ十二條ニ於テ、役員トナル者、又
  ハ嘗テ其職業ニ付テ勞働者デアッタ者、又
  ハ總會ニ於テ決議シテ加入セシメテ相當デ
  アルトシタ者、ソレダケハ入レテモ宜シイ
  ト云フ、第一條ノ規定ニ對スル幾分ノ緩和
  ノ規定ヲ設ケテ、實際ノ必要ニ應ゼシメタ
  次第デアルノデアリマス、第二ノ御質問ノ、
  組合ノ目的ハ法律ニ定メヌデ置イテ、組合
  自身ノ規則ニ於テ之ヲ定メシメタラ宜イデ
  ハナイカ、斯ウ云フ御質問ノヤウデアリマ
  ス、然ルニ大體勞働組合ト云フノハ、勞働
  條件ノ維持改善ニ關シテ設ケルノガ、是ガ
  組合ヲ設立スル者ノ趣旨デアルノデアリマ
  ス、ソレ故ニ其事ヲ法律ニ規定シテ置クコ
  トガ當然デアリマスノミナラズ、此組合ニ
  ハ一方ニハ法人ノ資格ヲ與ヘ、而モ其登記
  等ニハ、極メテ輕便ナル取扱ニスルト云フ
  ヤウナ、法律ガ萬事便利ヲ與ヘテ居ルノデ
  アリマス、故ニ其便利ヲ受クル者ハ、如何
  ナル者デアルカト云フコトダケハ、法律ニ
  於テ規定シテアルノガ當然デアルノデアリ
  マス、ソレ故ニ是ハ組合ノ規約ニ讓ラズシ
  テ、法律ニ規定シタノデアリマス、但シ
  共濟事業ハ折角斯樣ナ組合ガアリマス以上
  組合員ガ之ヲ爲サウト考ヘルナラバ、ソレ
  ガ出來ルヤウニシテ置クノガ相當デアル、
  斯ウ云フ意味ニ於テ勞働條件ノ改善維持
  ノ外、共濟事業等ヲ爲スコトガ出來ルコト
  ニナッテ居ルノデアリマス、營利行爲ヲ認メ
  ナカッタコトハ、先達テモ御答辯致シマシタ
  通リ、元來此組合ナルモノハ、大體ハ勞働
  者ノ勞働條件ノ改善維持ガ目的デアルベキ
  モノデアリマスカラ、營利行爲等ヲ爲サシ
  ムル必要ガナイ、ノミナラズ時ニ依ッテ營
  利行爲ヲ爲シテ、ソレガ爲ニ資本ノ上二大
  ナル缺陷ヲ生ゼシメタナラバ、卽チ面白ク
  ナイト考ヘマシタカラ、營利事業ハ認メナ
  カッタノデアリマス、唯〓新聞ヲ發行スル等
  ノ如キモノモ出來ヌカト云フ御尋デアリマ
  スガ、ソレハ組合ノ主張ヲ明ニスルガ爲ニ、
  之ヲ新聞又ハ雜誌ヲ以テ世ノ中ニ公ニスル
  ト云フコトハ、營利事業ト認メマセヌノデ
  アリマスカラ、ソレハ勞働組合ニ於テ之ヲ
  爲シテ差支ナイト云フ考デアリマス、政治
  運動ノ費用ヲ支出スルコトヲ許スヤ否ヤ、
  總會ノ決議ニ依シテ組合ノ資本ハ之ヲ管理
  シ、處分スルコトガ出來ルヤウニナッテ居
  ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ選擧
  ノ際等ニ於テ、選擧費用ヲ總會デ決議シテ
  之ヲ支出セントスルナラバ、是ハ決シテ法
  律デハ禁ジナイ積リデアリマス、但シ勞働
  組合自身ガ政治組合ニナル譯ニ參リマセ
  々、政治組合ハ治安警圣法ニ基キマシテ、
  勞働者ハ別ニ之ヲ設ケナケレバナラヌト存
  ジマスガ、ソレニ對シテ組合ガ組合ノ資金
  ノ中カラ其費用ヲ支出スル、總會ノ決議ヲ
  經テ費用ヲ支出スル事柄ハ、法律ハ決シテ
  之ヲ禁ズルモノデハナイノデアリマス、
  今回ノ法律ハ労働組合ヲ法人トスルト云シ
  テアル、其他ノ法律ニハ多ク、社團法人ト
  スルト斯ウ言ッテアルノニ、此法律ニハ社
  斷法人トモナケラネバ、財團法人トモナイ、
  唯、法人ト書イテアル、ノレハドウ云フ譯
  デアルカト云フ御尋デアリマス、勞働組合
  ハ純然タル公益法人トハ認メテ居リマセ
  メ、ツレト共ニ又營利法人トモ認メチ居ナ
  イノデアリマス、是ハ一種中間ニ位スルモ
  ノデアルト存ジマス、ンレ故ニ又法律デモ
  一法人トス」ト云ッテ、別ニ社團法人トスル
  ト云フ文字ヲ使用セナカッタ所以デアリマ
  之聯合組合ヲ法人ト認メナカッタノハド
  ウ云フ譯デアルカ斯ウ云フ御專デアリマ
  ス大體今日ト雖モ、組合ハ職業別デ拵ヘ
  テ居ルノデアリマス、サウシテ其職業別ニ
  出來タ組合ガ、聯合會ヲ造ノテ居ルノデア
  リマス而シテ此法律ハ個々ノ労働者ガ組
  合ヲ造フテ、共同ノカデ自己ノ主張ヲ貫徹
  スルコトヲ認メヤウト云フノデアリマスカ
  ラ、組合サヘ法人トシテ認メテ置ケバ、勞
  衝組合ノ目的ヲ達セシムルノハ十分デア
  ル斯樣ニ認メタ次第デアリマシテ、聯合
  會ニ向ンテ法人格ヲ認メナカッタノ、唯
  ツレダケデアルノデアリマス、固ヨリ法律
  ヲ制定致シマストキニ、色ミニ調査ハ致シ
  マシタ、御話ニナリマシタ通リ、或時ニハ
  聯合曾ニモ法人資格ヲ與ヘヤウトシテ、調
  查ヲ致シタトキモアルノデアリマスガ、十
  分ナル攻究ノ結果、聯合會ニハ法人資格ヲ
  與ヘナイデ宜シイト認メマシタ、其結果
  只今法案ノ提出シタ如キコトニ相成シタノ
  デアリマス、尙ホ組合ヲ法人トスルト云フ
  コトヲ、法人トシテモ宜シイシ、又法人トセ
  ナイデヒ宜シイトアレバ宜カリサウナモノ
  ヲ、必ズ法人トスルト云フコトニシタノ
  ハ何カ理由ガアルノデアラウ、當初ノ案
  ニハ法人トシテモ法人トセナイデモ宜シイ
  ト云フ案ヲ拵ヘテ居ンタコトガアッタガ、ソ
  レヲ今回變ヘタノハ、何カ資本家ナドノ强
  要デモ受ケタノデハナイカト云フ御疑ノヤ
  ウデアリマスガ、勞他組合ヲ法人トスルト
  云フ案ハ、嘗テ憲政會ガ議會ニ提案ヲ致シ
  タ法律案ニハ左樣ニ致シテ居ッタノデア
  リマス、必シモ今日ノ政府ノ法案ニ於テノ
  ミ、新ニ斯ウ云フ規定ヲ設ケタ譯デハアリ
  マセヌ、法人ト定メテシマフガ宜イガ、或
  ハドッチデモ宜シイヤウニシテ置クガ宜イ
  カ、是ハ詰リ便宜ノ問題デアリマス、而シ
  テ兔ニ角法人トナッテ居レバ、洵ニ權利義
  務ノ關係ニ於テ便宜デアル、故ニ寧口勞働
  組合ハ總テ法人トスルトシタ方ガ、組合ノ
  爲ニ便宜デアルト考へマシタカラ、此度ハ
  勞働組合ヲ總テ法人トス、斯樣ニ致シタ次
  第デアルノデアリマス、嘗テ憲政會ノ提出
  シタ法律案ニ於テハ、認可主義ヲ取ッテ居ッ
  タガ、此度ハ屆出主義ヲ取シタ、是ハ大ナ
  ル改善デアル、併ナガラ必ズ屆出ナケレバ
  ナラヌノデアルヤ否ヤ、屆出ヲ强制シテ居
  ルヤ否ヤ、屆出ナイモノガアッタラバ、ソ
  レハドウ取締ルカ、斯ウ云フ御尋デアリマ
  ス、屆出ヲ致シマセヌケレバ、法人格ハ與
  ヘナイノデアリマス、併ナガラ屆出ヲ致シ
  マセヌデモ、事實勞働者ガ組合ヲ造ノテ居
  ルコトハ、政府ハ何等之ニ干涉ハ致シマセ
  ヌ、事實ノ組合ハ事實ノ組合デアリマス、
  但シソレハ法人格ヲ持チマセヌケレバ、法
  人トシテノ便宜ヲ受クルコトハ出來ヌノデ
  アル、屆出デタナラバ法人トナンテ便宜ヲ
  受ケル、屆出ヲシナケレバ事實トシテ唯、ミ
  ソレハ見テ居ルダケデアッテ、法人トシ
  テノ便利ヲ受クルコトガ出來ヌ、ソレダケ
  ノ差異ガアルノデアリマス、最後ノ御質問
  團體交涉權ト云フモノガ必要デアル
  ガ、此法律ハ之ヲ規定シテ居ラナイ、ソレ
  ガ大變缺點デアルカノ如キ御論デアッタヤ
  ウデアリマス、殊ニ同盟能業デモシテ、團
  體デ交渉スルコトガ出來ヌト云フコトデ
  ハ折角ノ勞働組合ヲ設ケテモ、洵ニ精神
  ガ這人ラヌノデアルト云ッタヤウナ御質問
  デアッタノデアリマス、同盟罷業ヲ致シマシ
  タ場合ニ、團體デ交涉致シマスコトハソ
  レハ事實デアリマシテ、ソレヲ決シテ政府
  ハ干涉スルモノデモ林示止スルモノデモアリ
  マセヌ、何等ノ規定ハナクトモ、現在其所
  ニ勞働組合ガアリマス以上、同盟能工ガ起
  レバ、組合ノ理事者ガ必ズ交涉ノ任ニ當ル
  ノデアリマセウ、ソレハ決シテ妨ゲナイノ
  デアリマス、法律ハ何所ニモ禁ジテ居ラナ
  イノデアリマス、唯、〓體交涉權ト世間ニ
  稱シマスモノハ團體デ交涉シテ定メレバ
  個々ノ契約ハ無效ニナルト云フコトヲ稱シ
  テ團體交涉權ノ實行、斯ウ云フコトニ言ッテ
  居ルヤウデアリマス、ソレデアリマスト、
  組合法ニ規定スベキモノデアッテ、ソレ
  ハ一ツノ立體法トシテ別ナ法規デ定ムベキ
  事デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
  デ政府ハ他日別ナ法規ニ於テ、團體協約ノ
  事ハ何レ規定シナケレバナラヌト存ジマス
  ガ、此勞働組合法中ニ規定シテ置ク必要ハ
  ナイトシテ、之ヲ定メナカッタノデアリマ
  ス、而シテ團體協約ハ、別ノ法規ヲ以テ規
  定シテ居ルコトハ、外國ニ多ク其實例ノア
  ルコトハ藏園君ノ御水知ノ通リデアラウ
  ト存ジマス
  〔藏園三四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=43

  ---

• 044・藏園三四郎

  ○藏園三四郞君　大體ニ於テ私ハ了解スル
  モノモアリマス、唯こ一ツモウ少シ御尋ヲ
  致シテ置キタイノハ、此職業別組合、職業
  別組合ト云フモノハ卽チ同業者ガ相團結シ
  テ最モ親密ニ、最モ健全ニ發達スルモノト
  認メタカラ斯ウ云フモノニシタ、斯ウ云フ
  御說デアリマス、成程此労働組合ノ結局歸
  結スル所ハ、同業者相團結ヲスルト云フ所
  ニ落チテ行クヤウデアル、例ヘバ英國ノ全
  國勞働總同盟ノ如キ、又日本ノ總同盟ノ如
  キ、何レモ各種各樣ノ團體ガ相集シテ、サウ
  シテ此總同盟ノ設立ヲ致シテ居リマスルケ
  レドモ、曰ヲ經ルニ從シテ、段々ニ同業者
  相團結ヲスルト云フヤウニ、分解作用ヲ起
  シテ行キツヽアルコトハ、是ハ私モ認メル
  ノデアリマス、併ナガラ斯樣ニ段々ニ分解
  作用ヲ行ッテ、サウシテ同業團結ニ歸著ス
  ルト云フコトガ自然デアリマスルナラバ、
  何モ一般的ニ之ヲ許シテ置イテ、サウシテ
  自然ノ發達ニ委シテ置イテモ、敢テ差支ハ
  ナイト思フ、然ルニ此一般的、卽チ横ノ組
  合ヲ絕對ニ之ヲ法案ニ於テ禁止シテ、サウ
  シテ直ニ其歸者スル所ニ歸着セシメヤウト
  云フコトハ是ハ甚ダ組合ノ自由及組合ノ
  自然ノ發達ヲ阻碍スルモノデハナイカト云フコ
  トヲ私ハ考ヘルノデアル、殊ニ政府ノ此法案
  ヲ見マスルト云フト、是ガ職業的ニ全ク一
  貫シテ居ルナラバ宜シイ、然レドモ其許サ
  レタル所ノ例外ガ寧口原則ニナッテシマッテ
  居ルノデアリマス、ト云フノハ斯ウナリマ
  ス、從來ノ社會局案ニ依リマスト云フト、勞働
  者十人以上ノ者ガ、勞働組合ヲ設立スル、斯
  ウ云フコトニナッテ居リマシタ、デアリマ
  スルカラ此法案ニ依レバ、少クトモ十人以
  上ノ團體デアルノデアリマス、然ルニ本案
  ヲ見マスレバ、其組合ノ設立ノ數ニ限リ
  ガナイ、數ニ是ガ限リガナイトスル以上
  ハ二人以上ハ卽チ常識ヲ以テ之ヲ團體下
  見テ宜シイノデアル、サウシテ見マスレバ
  組合ヲ設立スルノハ二人デ之ヲ設立ヲス
  ル、而モソレハ同業者デナケレバナラヌ、
  而シテ設立シ終レバ、卽チ第十二條ニ依フ
  テドンナ者デモ這入ッテ來テ宜シイ、斯ウ云
  フ規定ガ玆ニ設ケラレテ居ル以上ト云フモ
  ノハ此第一條ノ原則ヲ果シテ固執スル必
  要ガ何所ニ在リマスカ、何ニシテモ是ハ同
  業者若クハ同一產業ト云フコトニ固執ヲシ
  ナケレバナラヌ、卽チ之ヲ原則ニ立テナケ
  レバナラヌト云フコトハ毫モ私共八了解
  スルコトハ出來ヌ、寧ロ初ヨリ之ヲ撤回致
  シマシテ、社會局案ノ如ク、卽チ一般労働
  者ノ知識階級ニ之ヲバ一任シテ敢テ可ナル
  モノデハナイカト思フノデアリマス、今玆
  ニ出來上ッタ組合デハ、寧口橫ノ方ノ關係ガ
  多ク編入サレテ行クノデアリマス、サウ云
  フ法律ヲ制定シテ、而モ組合ガ設立サレヽ
  バ、直ニンレガ法律ノ精神ニ反シテ横ノ組
  合ニ一變スル、變化スル、之ヲ認メルト云フ
  コトハ立法上ノ大缺陷デアルト私ハ思フ
  ノデアリマス、此點ヲモウ一度伺ッテ置カヌ
  ケレバナラヌ、政府ハ初ハ卽チ横ノ組合ヲ
  認メテ、サウシテ今度ハ縱ノ組合ヲ原則ト
  シタ、而シテ又十二條ニ行シテ橫ニ是ガ轉
  ガッテ來テ居ル、斯ウ云フ風ニ縱ニナリ橫ニ
  ナリ、マルデ達磨ノ遊戯ノヤウナモノデア
  ル、元來物ハ折衷スル時ハ折衷シテ宜シイ、
  私ハ折衷說ニ必シモ反對デハナイ、併ナガ
  ラ此折衷ハ卽チ政府ノ内部ノ不統一ヨリ起
  ルモノ、或ハ資本家側ノ强要ニ出ヅルモノ
  デアルコトヲ私ハ考へルノデアル、サウシ
  テ見マスレバ、何モ政府ガ之ヲ苦ンデ、サ
  ウシテ斯ウ云フ性質ノ瞹眛ナルモノヲ作ル
  ト云フコトハ立法上ノ一大恥辱デアルト
  私ハ思フ(ノウ〓〓)鶴ノ脚長シト雖モ之ヲ
  鴨ノ脚ニ取ッテ附ケルコトハ出來ヌ、鴨ニモ
  ナラナケレバ鶴ニモナラナイヤウナ法案
  ガ、立法上ノ重大缺點デアルト云フコトヲ
  私ハ一言シテ已マヌ者デアリマス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=44

  ---

• 045・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　第一條ハ原則
  デアリ、第十二條ハ例外デアルト云フコト
  ハ申上ゲルマデモナイノデアリマス、而
  シテ其原則ノ場合ニ、唯、二人デ組合ヲ作
  ルト云フヤウナ、極端ナ場合ヲ御想像ニナツ
  テ、サウシテ其結果ヲ只今御指摘ニナッタ
  ノデアリマスルガ、極端ノ場合ヲ擧ゲタラ
  サウ云ンコトモアリマセウ、併シ大體ヲ達
  觀シテ見タナラバ、第一條ノ原則ニハ多數
  ナ者ガ店ッテ、第十二條ノ例外ハ全ク其人ノ
  知識ヲ利用シタイト云フダケノ者ガ加ハル
  ト云フ結果ニナルコトハ、法律全體カラ御
  覽ニナリマシテ、又世間一般ニ現レテ居ル
  理想カラ御考ニナリマスト云フト、大抵御
  分リニナラウト思フノデアリマス、其上カ
  ラ申上ゲマスレバ、第一條ト第十二條デ、
  決シテ縱ノモノガ直ニ横ニナルト云フヤウ
  ナ變化ヲ呈スル程ノモノデナイト云フコト
  ハ、自ラ明瞭ニナルト思フノデアリマス(拍
  き)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=45

  ---

• 046・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　原惣兵衞君
  〔原惣兵衞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=46

  ---

• 047・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　私ハ内務大臣ニ先ヅ第一點
  ト致シマシテ、此勞働法案ナルモノヽ立場
  ガ如何ナル立場ヲ御取リニナッタカト云フ
  コトヲ御聽キ申シテ見タイト思フノデアリ
  やっ、凡ソ此勞働組合法ナルモノヽ立法ノ
  立場ハ二ツアリマス、一ツハ卽チ國家ノ產
  業助長ヲ中心ト致シマシテ、何所迄モ一ツ
  ノ經濟的ニ現在ノ資本制度ヲ中心トシテ產
  業ヲ助長スルト云フ目的カラ出マシテ、ソ
  レカラ舊式ノ思想家ガ労働團體、卽チ勞働
  者ヲ團結セシメルト云フコトハ、國家ノ產
  業ヲ非常ニ阻止スルモノデアル、斯樣ニ解
  シマシテ何所迄モ資本經濟主義ニ基イテ、
  資本家ノ擁護ト云フ立場カラ勞働者ヲ取締
  ルト云フヤウナ意味カラ、勞働組合ヲ制定
  シヤウト云フ一ツノ立場ガアルノデアリマ
  ス、今一ツハ此國民自由權ノ保障ト云フ立
  場カラ、勞働組合ヲ設置シナケレバナラヌ
  ト云フ點デアリマス、卽チ憲法第二十九條
  ニ依リマシテハ、吾々ハ言論著作ノ自由ガ消
  極的ニ保障セラレテ居ルノデアリマス、併
  ナガラ是デハイケナイ、現在ノ社會ニ於テ
  下級ノ勞働者ノ地位ヲバ積極的ニ保障シ
  テ、何所迄モ組合ヲ公認シテ、サウシテ保
  護シナケレバナラヌ、卽チ憲法二十九條ノ
  消極的保障ヲバ積極的ニ公認シテ、勞働者
  ノ自由ナル立場ヲ保障シテヤラナケレバナ
  ラヌト云フノガ、卽チ國民ノ自由權保障ノ
  立場ノ、所謂労働組合法ノ立案デアリマス、
  私ハ此兩者ノ中ニ於テ、果シテ內務大臣ハ
  何レノ立場カラ此組合ヲ御設置ニナッタノ
  デアルカ、卽チ前者ノ立場カラ云ヘバ是ハ
  所謂取締法デアリマス、後者ノ方カラ云ヘ
  バ所謂組合法デアリマス、首相ノ御說明ニ
  依リマスト云フト、協同一致シテヤラナケ
  レバナラヌカラ、資本家モ勞働者モ共ニ救
  濟セナケレバナラヌ、サウシテ協同ニヤッテ
  貰ハナケレバナラヌノデアルカラ、其意味
  ニ於テ此勞働組合法案ヲ提出シタノデアル
  ト仰セニナリマシタガ、私等ハ凡ン此勞働
  組合法ナルモノハ吾々法律哲學カラ云フ、
  卽チ國アレバ法アリト云フ一般的ノ法規ト
  異リマシテ、社會ノ進步ト吾々ノ雇傭契約
  ノ自由ノ個人ノ立場カラ進ンデ、團體權ヘ
  行ッテ、團體ノ制限、之ニ進ンデ來テ、勞働
  組合法ヲ認メナケレバナラヌト云フ立場ニ
  於キマシテハドウ致シマシテモ勞働者ノ
  地位ト卽チ資本家ノ地位ト云フモノハ、全
  ク利益ガ相反スルノデアリマス、デアリマスル
  カラ利益ガ反スル時ニ於テ勞働組合法ヲ制
  定スルト云フコトハ、何所迄モ勞働者ノ擁
  護ノ上デナケレバ所謂意味ヲ成サナイノデ
  アリマス、ソレニ若槻内務大臣ノ言ノ如ク、
  兩者ヲ救濟スルノデアルト云フヤウナコト
  ナラバ、所謂主義ガ明ニナラヌト共ニ、卽
  チ此生產スル時ニ於ケル勞働者ノ人的條
  件、ソレカラ資本、資本家ト云フモノハ
  何所マデモ勞働者ガ資本家ト同等ノ地位權
  利ヲ認メテ吳レト云フコトガ、所謂勞働法
  ノ骨子デアッタナラバ、兩者ヲ救濟スルト云
  フコトハマダ若槻内務大臣ハ本當ノ立法
  ノ精神ガ御分リニナッテ居ナイト思フノデ
  アル、此點ニ付キマシテ、果シテ若槻内務
  大臣ハ何所マデモ取締法デナイ、勞働擁護
  法デアル、勞働組合タル團體ヲバ擁護シテ
  居ルノデアルト云フコトノ、何レヲ御取ニ
  ナッテ居ラレルカト云フコトヲ第一點ニ於
  テ御伺スルノデアリマス、第二點ニ於キマ
  シテハ、勞働團體ハ果シテ之ニ賛成シテ居
  ルノデアルカト云フ點デアリマス、全國ノ
  勞働團體ガ反對シタコトハ勿論デアリマス
  ガ、恐ラク若槻内務大臣ハ御答ニナルデア
  リマセウ、ソレハ勞働組合全體ガ反對シテ
  居ルカ知ラヌケレドモ、其組合以外ノ者ハ
  又本案ニ贊成シテ居ル者ガ無キニシモアラ
  ズデアルト云フ御答ガアルカモ分リマセヌ
  ガ、私等ハ先ニ申シマシタ通リ、資本家ト
  勞働者ヲ共ニ救濟シテ行クト云フヤウナコ
  トハ、決シテ出來得ナイノデアリマスカラ、
  ソコデ先ヅ昨年ノ八月ニ立チマシタ社會局
  法案ト云フモノニハ、資本家ハ一齊ニ之ニ
  反對ヲシタノデアリマス、然ルニ今度行政
  調査會ニ持ッテ行シテ出來上リマシタ勞働法
  其モノハ、今度ハ其大ナル反對ノ資本家ガ
  一齊ニ聲ヲ潜メテシマッタ、忽然ト何所カヘ
  影ヲ潜メテシマッテ、此反對ノ勞働組合、全國
  ノ勞働者ノ反對ガ勃然ト起シテ來タノデア
  リマス、私ハ此勞働者ノ非常ニ大ナル反對
  アルニ拘ラズ、此法律案ヲ制定スルト云フ
  コトニ於テハ、吾々最モ憂慮スベキ所ハ、結
  局勞働者ニ對スル所ノ一ツノ壓迫ニナリハ
  シナイカト云フコトデアリマス、過般ノ銀
  座ニ於ケル所ノ暴行事件ガ協調會館カラ出
  來ル前ニ、四日ニ神田ノ靑年會館デ原因ヲ發
  シタノデアリマス、諸君、神田ノ錦町署ノ署
  長ハ最モ頑冥ニシマシテ、其時ノ勞働者ノ演
  說ハ何所マデモ現在ノ此勞働組合法ノ原因
  ヲ成シタ連中等ガ、神田ノ靑年會館ニ於テ演
  說ヲシタノヲ、悉ク一言一句モ言ハセズニ
  壓迫シテ、皆檢東シタノデアリマス、サウ
  シテ其傍聽者ノ一人ガ進ンデ手ヲ叩イタラ、
  是モ亦檢束シテシマッタ、其翌日ガ卽チ芝ノ
  協調會館ノ問題ニナッタノデアリマス、ソ
  コデ散會ヲ命ゼラレルト同時ニ、直ニ是ガ
  隊ヲ成シテ、所謂勞働旗ノ棒切レガ今ヤ變ヲ
  テ、五六寸ノ直徑アル所ノ幅ニナッテ、是
  ガ銀座ニ現レタノデアリマス、サウシテ遂
  ニ白晝公々然トシテカラニ、此東京市ノ銀
  座ニ對スルアノ大暴行ト爲ッタノデアリ
  マス是レ卽チ勞働者ガ反對シテ居リマシ
  タニ拘ラズ、斯ウ云フ法規ヲバ制定スルト
  云フコトニナッタナラバ、所謂政府ハ危險
  思想ノ釀造所ニナリハシナイカト吾々ハ思フ
  ノデアル、願クハ勞働〓體ハ果シテ反
  對シテ居ルカ居ナイカ、ソレカラ進ンデ此
  勞働法ヲ制定スルコトニ依シテ、所謂勞働
  者ノ壓迫ニナリハシナイカト云フ點ヲ、第
  二點ニ御伺シタイノデアリマス、第三點ニ
  於キマシテハ、此勞働者保護ノ大精神ノ立場
  カラ、之ヲ制定セナケレバナラヌノデアリ
  マスカ、私ハ勞働組織ノ根本原則ト云フコ
  トハ、何所マデモ個人ノ自由意思ニ基ク
  所謂「インディベイヅウヱルフライハイト」
  ト云フ立場カラ、是ガ進ンデ團體ニ行フテ、
  團體ノ制限ニナッテ、〓體員ノ力ニナッテ
  進ンデ行ク所ノ雇傭契約デ、憲法ニモ民法
  ニモ認メテアル自由ト云フコトハ形式上ノ
  自由デアリマス、實際ハ資本家ガ有ユル場
  合ニ於テ資本ノ力デ制限スルカラ、ソレデ
  ハ勞働者ガ堪ラナイカラ、何所マデモ之ヲ
  集メテ、一ツノ國體ノ力ニ依テ、個人ノ
  自由ガ團體ニ移シタトキニ於テ、團體ハ一
  ツノ制限ヲシテ行ク、所謂制限シテ、團體
  ノ力デ資本家ニ對立シナケレバナラナイト
  云フコトニナルノデアリマス、随テ勞働組合
  ハ所謂資本主義制度ノ現在ノ經濟組織ニ
  於ケル必然ノ產物デアルノデアリマス、ソ
  レデアリマスルカラ、吾々ハ何所マデモ此
  現在ノ政府ガ勞働組合法ヲ設ケル以上ハ、現
  在存スル所ノ、社會ニ實在スル此狀態ヲ現
  實ニ認識シテ、サウシテ勞働者ニ一定ノ方
  向ヲ正確ニ意識セシメ、是ガ成長ニ保障ヲ
  與ヘナケレバ、所謂勞働組合法ト云フモノヽ
  存在ノ意義ハ何等ナイト思フノデアリマ
  ス、ソレデアリマスルカラ、願クハ內務大
  臣ハ本當ニ勞働組合ト云フ團體ヲバ御認
  メニナルト云フ御意思ハ過日來本員等ノ
  質問ニ對シテノ御答辯ニ依ッテ見マスト、
  本當ニ御意思ガアルヤウニモ見受ケラレヌ
  ノデアリマスカラ、若モ此御誠意ガナカツ
  タナラバ、本案ハ撤回サレテハ如何デアル
  カト思フノデアリマス、其次ニ勞働協約權ト
  云フ問題ハ、各人ガ言ヒマシタガ、此點ニ付
  テ一體此第十四條ニ於キマシテ組合ヲ設
  ケテ勞働者ヲ保護スル、此組合法ニ依シテ
  何ヲ保護シテ居ルノデアルカ、此效果ガ何
  所ニ在ルノカト聞イタナラバ、內務大臣ハ
  必ズ此十四條ヲ御出シニナッテ、是ガ組合
  ニ對スル最モ正シイ一ツノ利益ヲ與ヘルノ
  デアル、卽チ雇傭者ガ勞働者ニ對シテ、勞
  働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ爲シタル解
  雇ノ意思表〓ハ之ヲ無效トス、此規定ガア
  ルカラ是ガ卽チ勞働組合ガ法人トナッタト
  キニ於テ、法人トナッタラ此組合ノ效果ガ
  アルノダカラ、ンコデ此十四條ト云フモノ
  デ、組合員ニ勞働組合トシテ十分ニ效果ヲ
  與ヘテ居ルノデアルト仰セニナルカ知レマ
  セヌガ、一體先程カラ若槻内務大臣ハ、勞
  働ノ聯合團體ハ事實上認メテヤル、斯樣ニ
  仰セラレマシタ、併ナガラ組合法ノ規定ニ
  依シテ受クル效果ガ十四條デアルト御考ニ
  ナッタナラバ、吾々ハ非常ニ意義ヲ成サナ
  イ規定デアルト思フノデアリマス、其理由
  ハ斯ウ云フ場合ニ於テ、資本家ガオ前ハイ
  ケナイカラ解雇スルト言ッタ場合ニ、解雇
  セラレルト致シマス、併ナガラ解雇セラレ
  タ所ノ勞働者ニハ、如何ナル效果ガアルカ
  ト云シタラ、無效デアルト言ッタ所ガ、實際
  上無效ノ意義ヲ成サナイノデアリマス、隨
  テ是ハドウシテモ裁判所ヘ訴ヘナケレバナ
  ラヌ、勞働組合ノ組合員タルノ故ヲ以テ解
  雇スルト云フ解雇ノ意思表示ハ無效デア
  ルト云フコトヲ、裁判所へ勞働者ガ訴ヘテ
  出ナケレバナラヌ、栽判所へ無效確認ノ訴
  ヲシナケレバナラヌ、而モ勞働者ハ原告ノ
  立場デアリマスカラ、解雇セラレタル立證
  責任モ亦勞働者ガ負ハナケレバナラナイ、斯
  樣ナコトヲ貧乏人ノ勞働者ガ、救助ノ方法デ
  モ設ケテ吳レヽバ率知ラズ、ドウシテ斯ウ
  云フヤウナ費用ガアリマスカ、全ク此一箇條
  ノ規定ヲ以テ、我レ勞働組合法ヲ制定シテ組
  合員ニ保護ヲ與ヘルナドトハ驚入シタルコトデ
  アル(拍手)而モ此勞働協約權ノ問題デアリ
  マスルガ、政府ハ別法ヲ以テカラニ、此勞
  働協約權ト云フモノヲ認メル、若クハ勞働
  團體交涉權、ドチラデモ宜イノデアリマス
  ルガ、是ヲバ認メルト云フコトヲ仰セニナ
  リマシタガ、私ニ言ハシメタナラバ、所謂勞働
  者ノ唯一ノ保護ハ斯樣ナ十四條ノ規定デナ
  クシテ、先刻カラ先輩ガ言シタ如ク、何所マ
  デモ此協約權ヲ除イテカラニ、所謂團體ヲ
  保障スルト云フコトハ無イノデアリマス、
  此協約權ト云フコトヽ組合法ト云フ規定ハ、
  不可分ノ規定デアル、殊ニ獨逸ノヤウナ國
  ニ於テハ組合法ガ無クテ協約權ヲ認メテ居
  ル其協約權ノ中ニ組合ニ關スル規定ガ二
  條カ三條置イテアルダケデアリマス、ソレ
  デ澤山デアリマス、ソレニ拘ラズ協約權ト
  云フモノヲ除ケテ組合法ヲ設ケテ、而モ勞
  働者ヲ保護致スト言ウタ所ガ、全ク意味ヲ
  成サヌノデアリマス、ソレデアリマスカラ
  勞働組合法ハ協約權ヲ除イテ勞働組合法無
  シ、言換ヘレバ協約權ノ無イ所ノ勞働組合
  法ハ、勞働者ノ取締法デアルト斷言シナケ
  レバナラヌ(拍手)私等ハ若モ內務大臣ガ本
  當ニ勞働者保護ノ意味カラ組合法ヲ御出シ
  ニナル御意思ガナカッタナラバ、是ハ御止
  メニナッテ置イタガ宜カッタラウト思ヒマス、
  ソレハ何故カト言ヘバ、此獨逸ニ於ケル治
  安警察法ノ第十七條ニ相當致シマスル獨逸
  ノ組合法、產業條例ノ第百五十三條ヲ撤廢
  シタトキハ、斯ウ云フ徑路ヲ以テ獨逸ガ始
  メテ勞働協約權ヲ認メテ、本當ニ勞働者ノ
  地位ヲ保障スル、積極的ニ出テ居ル徑路ヲ
  持ッテ居リマス、ソレハ千九百十八年ノ五
  月ニ始メテ團結權ヲ制限スル法規ノ撤廢ヲ
  致シタノデアリマス、千九百十八年ノ人民
  委員會ニ於キマシテ、其十一月十五日ニ獨
  逸ノ全國ノ資本家勞働者ガ集リマシテ、
  サウシテ平等ノ權利及地位ヲ認メルヤウ
  ナ申合ヲシタノデアリマス、卽チ有名ナ「ア
  ルパイトゲブンデンハイト」勞働組合ノ申合
  ト云フ有名ナ資本家ト勞働者ノ本當ノ理解
  ニ依ッテ、獨逸ノ労働組合法ガ出來タノデア
  リマス、然ルニ拘ラズ我ガ日本ノ労働組合
  ハ全國ノ勞働者ノ反對ガアルニ拘ラズ、
  而モ理解モナク意識モナク、此反抗ノ中ニ
  此組合法ヲ制定スルト云フコトハ所謂時
  代ヲ見ザル所ノ勞働組合法デアルト吾々ハ
  言ハナケレバナラヌ、願クハ之ニ就テ本當
  ニ勞働者保護ノ上カラ見テ、勞働ノ協約權
  ヲ一體別法ニシテ御出シナサルト云フ御意
  思ガアル以上ハ、是ヲ先ヅ第一ニ御出シニ
  ナッテ、ソレカラ組合法ヲ御出シニナッタラ
  十分デアリマスガ、別ニ單行法ニ依ッテ之ヲ
  出スト云フ御意思ヲ今藏園君ノ質問ニ對ス
  ル答辯トシテ御答ニナリマシタガ、一體何
  時カラ御出シニナルノデアルカ、之ヲモ尙
  ホ進ンデ御聽シテ置キタイト思フノデアリ
  マス、最後ニ私ハ御〓致シタイ、鐵道大臣
  ニモ一寸御尋致シタイノデアリマス-ソ
  レカラ此勞働者ノ意義デアリマス、我國ニ
  於ケル労働者ト云フモノハドンナモノカ、私
  ハ詳細ハ委員會テ御尋致シタイ積リデアリ
  マスガ、最モ吾々ニ取ッテ勞働者ノ意義ハ
  興味アル問題ト思シテ、私ハ御答ヲ待ツ次第
  デアリマスガ、我ガ國法上ニ於キマシテ商
  法、工場法或ハ鑛業法、或ハ海上法ニ於キ
  マシテ、職工、坑夫、海員ナドニ於テ色〓
  勞働者ノ定義ガ切ッテアリマスガ、此勞働立
  法ニ於テ勞働者ガ如何ナルモノデアルト云
  フ定義ガ、少クトモ消極的ニデモ御提議ガ
  アルベキ筈デアルガ、勞働者ト云フモノハ
  何ニモ書イテナイ、唯、「労働組合ハ」ト云
  フノデアリマスカラ、吾々ハ甚ダ勞働者ノ
  意義ニ迷フ者デアリマス、卽チ筋肉勞働者
  以外ノ日傭人「アンダステルト」ト言ヒマス
  カ、銀行員デアルトカ、事務員デアルトカ、
  新聞記者ト云フヤウナ精神労働ト共ニ雇ハ
  レル人、是ハ果シテ勞働者デアルヤ否ヤ、
  ソレカラ鐵道從業員遞信ノ從業員、陸海軍
  ノ職工、ソレ等ハ官吏ト勞働者ノ區別ハ何
  所ニ在ルノデアルカ、ソレカラ學校ノ〓師
  「オーゲストラ」ノ「メンバー」、俳優道具方
  果シテ是等ハドノ程度デ勞働者ノ意義ニ嵌
  マルノデアルカ、俳優トカ舞臺方ハ一體ド
  ウシテ勞働組合ニナレルカ、ナレヌカト云
  フ重大ナ事ガアリマスカラ聽キタイノデア
  リマス、下女、下男、玄關番、ソレカラ執
  事、三太夫、果シテ是ガ勞働者デアルヤ否
  ヤ、ソレカラ番頭、手代殊ニ見習小僧ハ勞
  働者デアルヤ否ヤ、工場法ノ徒弟ハ此組合
  員トナルコトヲ得ルヤ否ヤ、妻タル労働者
  ガ獨立シテ、此夫ト獨立シテ組合員トナレ
  ルカ、否ヤ此點ヲ御聽シタイノデアリマス、
  ソレカラ組合員ニナルニハ年齡ニ制限ガ有
  ルノカ無イノカ、何ニモ書イテ居リマセヌ
  カラ、是モ併セテ質問スル次第デアリマス、
  鐵道大臣ガオキデニナリマセヌカラ、何レ
  詳シイ事ハ委員會ニ於テ二十一箇條ニ亙,
  テ質問致シタイト思ヒマス、之ヲ以テ詳細
  ナル御答辯ヲ願ヒマス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=47

  ---

• 048・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郎君)　原君ハ勞働組
  合法ハ勞働者ノ取締ノ爲デアルヤ、保護ノ
  爲デアルヤト云フ御質問デアリマス、第
  點ハ-是ハ先達來屢述ベテ居リマス、組
  合法ヲ作ノ協協ノ力デ彼等ノ勞働條件ノ
  維持改善ヲ爲スコトノ出來得ルコトニ爲ス
  ト云フノハ、保護ニアラズシテ何ゾヤト申
  シタイノデアリマス、全ク勞働者保護ノ目
  的ニ出テ居ルノデアリマス、唯〓如何ニ勞
  働者保護ノ目的ニ出テ居ル法律ト雖モ、勞
  働者ガ協同ノ力ニ依ッテ勞働條件ノ維持改
  善ヲ圖ルニ付テハ、餘程國情ニ應ジタ勞働
  デナケレバイケヌノデアリマス、法律ノ中
  ニ其點ガ所々ニ規定ノアル所以デアリマス、
  決シテ取締法デハナイノテアリマス、勞働
  者ガ此法案ヲ贊成シテ居ルヤ否ヤ、勞働者
  中ニハ此法律案ニ反對シテ居ル者モアルヤ
  ウデアリマス、併ナガラ其間ニハ誤解ニ出
  テ居ル者モアルノデアリマス、能ク法律ノ
  意味ガ明ニナリマシタナラバ、彼等ハ必ズ
  賛成スルト思フノデアリマス(拍手)今日ノ
  資本家ト勞働者ノ狀態ガ、個々ニ於テハ競
  爭スベキ狀態デナイ、契約ノ自由ト云フケ
  レドモ唯、形式的ノ契約ノ自由デハイケナ
  イ、事實ニ於テ勞働者ノ希望ノ徹底スルヤ
  ウナ契約ヲ爲サシメナケレバ、勞働者ノ自
  由ヲ保護シタコトニナラヌト思フガ、此法
  律ハ其趣旨ニ適ッテ居ナイヤウニ思フカラ、
  撤回シタラドウカト云フ御質問デアリマス、
  私ハ此法律ハ勞働者ガ原君ノ所謂事實上ノ
  自由ノ契約ヲ結ブヤウナ[機會ヲ得ルガ爲
  ニ、組合ヲ造ラシメルノデアリマスカラ、
  洵ニ現狀ニ適シタル法律案デアルト思ヒマ
  ス、決シテ撤囘スル考ハアリマセヌ、ソレ
  カラ此法律案ノ第十四條ニ依ルト云フト、
  勞働組合ニ加入シタル故ヲ以テ之ヲ解雇ス
  レバ、其解雇スルト云フ事柄ハ無效デアル
  ト云フ規定ニナッテ居ルガ、ソレ位ノ事デ勞
  働者保護ノ目的ヲ達スルヤ否ヤ、此第十四
  條ノミガ勞働者保護ノ規定デハナイノデア
  リマス、十四條モ亦勞働者ガ勞働組合ニ加
  入シテ自己ノ勞働條件ノ向上改善ヲ圖ル爲
  ニ便宜ナ規定デアリマス、併シ十四條ノミ
  ガ勞働者保護ノ規定デハナイ、勞働組合ヲ
  造リ、其組合ハ法人ニナル、ソレハ洵ニ屆
  出位ナ簡單ナ方法デ出來ル、總テサウ云フ
  ヤウニ全體ガ綜合サレテ、勞働者ノ保護ニ
  ナッテ居ル次第デアリマス、原君ハ十四條ノ
  規定ニ依レバ裁判所ニ訴ヘナケレバナラ
  又、サウ云フモノハ保護ノ規定ニナラナイ
  ト云フコトデアル、法律ガ權利ヲ認メテ之
  ヲ保護シテ居ル、併シ爭フ者ガアレバ裁判
  所ニ訴ヘナケレバナラヌ、如何ナル法律ノ
  保護ト雖モ、爭ガアッタラ裁判デ決定シテ貰
  ハナケレバナラヌ、當然ナ結果デアラウト
  思ヒマス、勞働協約ニ對スル法規ガ一番大
  切デアル、其法規ヲ制定シナイデ、組合法
  ヲ先ヅ制定スルノハ宜シクナイト云フ御觀
  察ノヤウデアリマス、勞働協約ノ事ハ是ハ
  私決シテ不必要トハ申シマセヌ、併シ今日
  世間ニハマダ其事ハ餘リ多ク事實ニ起ッテ
  居ナイノデアリマス、ソレデアリマスカラ
  政府ハ十分ナル調査ヲシテ、日本ニ最モ適
  合スルヤウナ成案ヲ得テ、議會ニ提出シヤ
  ウト思ウテ居ルノデアリマス、何時出スカ
  ト云フ御尋ニ對シテハ、調査ガ出來上リマ
  セヌケレバ、何時出スト云フ時期ヲ申上ゲ
  ルコトハ出來ヌノデアリマス、勞働者ノ意
  義ニ付テ御尋デアリマシタ、此組合法ニ依ッ
  テ勞働者ト稱シマスノハ、雇傭契約ノ下ニ
  在ル筋肉勞働者ト云フコトデアルノデス、
  精神的勞働者ト筋肉勞働者ノ區別ハ原君
  ガ只今御擧ゲニナッタ種々ノ例ニ於テハ稍、
  明瞭ヲ缺クモノモアリマス、併ナガラ常識
  ヲ以テ大體ニ判斷スレバ、決シテ誤ナイ見
  込ガ立ツモノト思フノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=48

  ---

• 049・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　只今勞働組合法ヲ制定シテ
  法人ト云フモノヲ御認メニナッテ、サウシテ
  勞働者ノ保護ハ十四條ダケデナイ、幾ラモ
  他ニアルト仰セラレマシタガ、法人ニナル
  ト云フコトヲ屆出ヲシナケレバナラヌ、殊
  ニ民法ノ規定ナドヲ以テ唯、法人ニシテ煩
  雜ニセシメタノミデアンテ、而モ十四條以外
  ニ於テハ如何ナル效果ヲ御認メニナッテ居
  ルノデアリマスカ、卽チ勞働組合ノ精神ハ、
  其組合員ニ一定ノ積極的ニ效果ヲ附與スル
  ト云フノガ組合法ノ制定ノ趣旨デアリマス
  ガ、私ノ言ッタ十四條以外ニ、如何ナル點ニ
  效果ヲ御與ヘニナッテ居ルカト云フ點ヲ御
  尋致シマス
  〔國務大臣若槻體次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=49

  ---

• 050・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　此法律案ニ於
  テ勞働者ヲ保護シテ居ル規定ト云フモノヲ
  舉ゲテ申セバ只今御指摘ニナリマシタ第
  十四條、第十五條、第三條、第八條ノ如キ
  規定ハ、總テ勞働者保護ノ規定デアリマ
  ス、而シテソレノミナラズ、法律案全體ガ
  勞働者ノ保護ニ相成ル次第デアリマス拍
  き)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=50

  ---

• 051・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　非常ニ若槻内務大臣ハ詭辯
  ヲ弄セラレル、卽チ第三條ト云フノハ法人
  トシタ爲ニ如何ナル效果ガアルカト言ッタ
  ラ、手續ニ困ッテ勞働者ガ實際迷惑スル規
  定デアル、是ガ何ノ利益ニナルカ、殊ニ第
  五條ハ法人ノ規定ニ關スル手續ノ問題デア
  リマスガ、斯ウ云フヤウナ規定ヲ以テ勞働
  者ニ對シテ利益ヲ與ヘルト云フ、ソレガ何
  ノ利益ヲ與ヘルカ、卽チ第十四條以外ニ何
  モ無イデアリマセヌカ、無ケレバ無イト
  御答ナサイ
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=51

  ---

• 052・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郎君)　原君ト意見ヲ
  異ニスルコトハ私甚ダ遺憾デアリマス、組
  合ガ法人ニナリ、權利義務ノ關係ニ於テ非
  常ニ便利デアリマス、其便利ヲ與ヘルコト
  ガ保護ニナラヌト云フ原君ノ御意見ハ、私
  共トハ大變違フノデアリマス、又法人ニナ
  リマス爲ニ、普通ノ民法ナドノ法人ナラバ
  洵ニ面倒ナ手續ガアル、ソレガ洵ニ簡單ニ
  シテ法人ニナレル、而モ登錄稅ヲ納メル
  ニ及バズ、サウ云フヤウナコトハ總テ法人
  ノ勞働組合ノ保護ニナルノデアリマス、其
  點ニ付テ原君ト意見ヲ異ニスルノハ甚ダ遺
  憾デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=52

  ---

• 053・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　谷原公君
  〔谷原公君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=53

  ---

• 054・谷原公

  ○谷原公君　私ハ本法立案ノ基礎ニ付キマ
  シテ二三ノ質疑ヲ致シタイノデアリマス、
  其一ツハ組合ノ設立ヲ労働者ノ自由ニ任ス
  ト云フコトガ、何故ニ產業平和ヲ紊スト御
  觀察ニナルノデアルカ、此點デアリマス、
  主務大臣ノ御說明ニ依リマスレバ、今日ノ
  時代ニ於テハ勞働者ノ自助的手段ニ依ッテ
  彼等ノ經濟的地位ヲ向上サスト云フコトハ
  認メナケレバナラヌ、故ニ組合法ヲ制定シ
  テ、サウシテ勞働者ノ團結ヲ公認セナケレ
  バナラヌト云フコトヲ言明サレテ居ルノデ
  アリマス、又質問ニ對スル御答辯ニ依リマ
  スレバ、元來勞働者ト云フモノハ頗ル資力ガ
  弱イ、故ニ資本家ト對立シテ其主張ヲ貫徹
  スルト云フコトガ甚ダムヅカシイ、故ニ
  玆ニ協力シテ資本家ニ對抗シテ、始メテ其主
  張ガ貫徹スルコトガ出來ルノダ、此故ニ組
  合法ト云フモノハ勞働團體ノ保護ノ意味ニ
  於テ制定シタノデアル、斯樣ニ明言サレテ
  居ルノデアリマス、是迄ノ議論ハ苟モ勞働
  問題ヲ理解スル人デアリマシタナラバ、少
  シモ異議ノナイ事ト思フノデアリマス、併
  ナガラ左樣ナ聲明ヲサレツヽ、左樣ナ理想
  ヲ持タレツヽ出サレタ此案ヲ見マスト云フ
  ト、第一條ニ此聲明ヲ裏切ル所ノ法文ガア
  ルノデアリマス、是ガ何人モ頗ル內務大臣
  ノ聲明ト、實際ノ立案トガ矛盾シテ居ルト
  謂フ所ニ疑ヲ起スノデアリマス、此點ニ付
  キマシテハ同僚ガ十分ニ御質疑ニナリマシ
  タガ、ソレニ對スル御答辯トシテハ、勞働者
  ノ協力ト云フコトハ認メナケレバナラヌ、
  是ハ大ニ尊重セナケレバナラヌ、併ナガラ
  國全體ノ產業ト云フモノヲ見ナケレバナラ
  又、產業ノ發達ト云フコトヲ調和スルコト
  ニ考ヘナケレバナラヌ、斯ウ云ウテ居ルノ
  デアル、言換ヘルナラバ勞働者ノ協力、是
  ハ必要デアルケレドモ、勞働者ノ團結協力ト
  云フコトガ强クナルナラバ、產業平和ヲ脅
  カス故ニ、此第一條ニ於テ產業別或ハ職業
  別ト云フヤウナ一ツノ制限ヲ加ヘタ、斯樣
  ニ了解シナケレバナラヌノデアリマス、凡
  ソ勞働者ガ弱イカラ其總テノ團結ガ必要ダ
  ト云フコトハ小都市ノ實況ヲ見マシタナ
  ラバ、私共ハ明ニ了解サレル事ト思フノデ
  アリマス、大工場地、大都市ノ如キデアリ
  マシタナラバ、職業別、產業別ノ勞働團體
  デアリマシテモ、或ル程度ノ力强キモノガ
  出來ルデアリマセウケレドモ、小都市デア
  リマシタナラバ、若モ茲ニ產業別職業別ト
  云フヤウナ一ノ制限ガ加ハリマシタナラ
  バ、ドウシテモ其數ノ上ニ於テ、或ハ經濟
  的ノ資力ノ上ニ於テ、資本家ニ對立シ、資
  本家ニ十分其主張ヲ貫徹スルダケノ力强イ
  〓體ハ出來ナイノデアリマス、若モ產業別
  職業別デ小都市ガ分働固體ガ出來マシテ
  モ、シレハ恰モ狼ノ前ニユッタ免位ノモノ
  ニシカナラナイノデアリマス、又假ニ大都
  市デ色〓專門的ノ職業或ハ專門的ノ工場ガ
  發達シテ居ルト致シマシテモ、彼ノ勞働者
  ガ同氣相求メ、肝騰相照ス、斯樣ナ意氣相
  合シタ者ガ玆ニ團結スル場合ニ於キマシ
  テ、之ヲ妨ゲルベキ何等ノ必要ガナイコト
  ト思フノデアリマスニモ拘ラズ、强テ職業
  別產業別ト云フ所ノ制限ヲ爲サルノハ是
  ハ結局斯樣ナ團體ガ出來タ場合ニ於テ、其
  產業ノ發達ニ惡影響ヲ與ヘルト云フ立場カ
  ラ、斯樣ナ御立案ガ出來タモノト思フノデ
  アリマス、又内務大臣ノ御聲明モ私共ハ左
  樣ニ拜承シタノデアリマス、此資本家ガ今
  日ノ經濟組織ニ於キマシテハ非常ニ强イ所
  ノ力ヲ持ッテ居ル、今ノ內閣ニ於キマシテ
  ハ公債ノ募集ト云フコトハ御苦心ニハナリ
  マセヌケレドモ、今迄ノ實例ニ依リマシテ
  モ國債募集ノ際ノ如キデモ、資本家ノ御機
  嫌ヲ損フト云フコトニナリマスト、忽チ其
  政策ノ實行ガ出來ナイ、故ニ政府ハ資本家
  ニ對シテ三拜九拜シテ、禮ヲ厚ウシテ彼等
  ノ歡心ヲ求メナケレバナラヌヤウナ實情ガ
  アルノデス、是ハ資本家ガ餘リニ力强イカ
  ラ斯樣ナコトニナルノデアリマス、又資本
  ノ豊カナルニ委セテ、彼等ハ色ミナ不倫ナ低
  級ナ娛樂ト云フモノニ浮身ヲ窶シテ、ソレ
  ガ爲ニ此無產階級ノ者ハ其所ニ非常ニ此經
  濟組織ノ不自然ト云フコトヲ自覺スル、左
  樣ニ不自然ナル經済組織デアルト云フヤウ
  ナコトヲ自覺シ、且ツ强イ刺戟ヲ與へラレ
  マスト、彼等ハ結局變ナ考ヲ起ス、卽チ經
  濟組織ノ變更、或ハ社會ノ根本改革ト云フ
  ヤウナコトヲ彼等ハ考ヘルノデアリマス
  是ハ詰リ餘リニ資本家ノ力ガ强イカラ斯樣
  コトニナルノデアリマス、故ニ此資本家
  ヲ反省セシムル爲ニハ、矢張勞働者ヲシテ
  協力セシメテ、資本家ト或ル程度ノ對立ガ
  出來ルマデニシナケレバナラヌノデアリマ
  ス、左樣ナ意味ニ於テ此團結スル所ノ勞働
  者ト云フモノハ、卽チ資本家ノ地位ニマデ
  相協力シテ達シヤウト云フノデ、勞働者ノ
  〓結ガ出來ルノデアル、漸ク資本家ニ追隨
  スル、資本家ノ地位ニマデ追付カウトシテ
  出來ル團體ソレ自體ニ、ドウシテ產業ノ平
  和ヲ紊ス虞ガアリマセウ、若シ資本家ニ追
  付クダケノ團結ガ出來テ、其以上國家ノ秩
  序ヲ紊スト云フヤウナコトガアリマシタナ
  ラバソレヲ取締ル方法ハ幾多アルノデハ
  アリマセヌカ、團結ソレ自體ニドウ云フ弊
  害ガ出來ルカ、私共頗ル是ハ了解ニ苦シム
  ノデアリマス、或ハ内務大臣ハ所謂眼光紙背ニ
  徹スルト云フ一ツノ御觀察ノ下ニ、労働團體ガ
  出來タナラバ必ズソレハ社會ノ秩序ヲ害ス
  ル、或ハ公安ヲ損ナフト云フヤウナ御觀察
  ニナッテ居ルノカハ知レマセヌケレドモ、凡ソ
  斯樣ナ御觀察ハ、私共ハ頗ル此國家ノ發達ヲ
  阻碍スルモノト思フノデアリマス、現ニ左樣
  ナ御觀察ノ下ニ其成立ヲ禁止致シマシタ無
  產政黨ノ如キハドウデス、恰モ四辻ニ盲人
  ガ引廻サレテ放サレタ如ク今日如何ニシ
  テ此政黨ヲ成立サシテ宜イカ、些トモ標準
  ガ立タナイデ、五里霧中ニ迷シテ居ルノデ
  アリマセマカ、是ハ唯、一ノ想像ノ下ニ何
  等ノ證據ナクシテ此團體ノ發達ヲ阻碍致シ
  マス結果トシテ、彼等ハ據ル所ナクシテ結
  局今ニ迷フヤウナコトニナルノデアリマ
  ス、又内務大臣ガ斯樣ナコトヲサレタ爲ニ
  彼ノ二月七日ノ勞働者ノ示威運動ノ場合
  ニ、錦町ノ署長ノ如キハ其團體員ヲ見テ是
  ハ人相ガ惡イ、是ハ舉動ガドウダト、所謂
  眼光紙背ニ徹スル所ノ檢索ヲヤリ、サウシ
  テ罪モナイ所ノ勞働者ヲ道路ノ上デ四間モ
  五間モ引摺廻シテ人權ヲ蹂躪シタ、上ノ行フ
  所下之ヲ做フ、斯樣ナ弊害ガ出來ルノデア
  リマス、自分ノ自由裁量、自分ノ憶測ヲ以
  ヲ此團體ノ成立ヲ阻碍スルト云フコトハ
  延イテ非常ナ弊害ガ出來ルト思フノデアリ
  マス、故ニ本法ノ制定ニ當リマシテモ勞働
  團體ガ出來ルコト自體ニ依ッテ、或ハ產業
  ノ平和ヲ紊シ、或ハ社會ノ秩序ヲ紊ス、斯樣
  ナル何等ノ證據ノナイ、何等ノ根據ノナイ
  所ノ一種ノ憶測判斷ニ依リマシテ、此團體
  ヲ禁止スルヤウナ規定ヲ設ケルト云フコト
  ハ是ハ頗ル危險ノコトヽ思フノデアリマ
  スデ若モ私共ヲ承服スルニ足ル所ノ其所
  ニ根據ガアルナラバ、是ハ明ニ御而シヲ願
  ヒタイ、卽チ勞働者ガ自由ニ團結スルコト
  ガ、如何ニ此產業ノ平和ト云フモノヲ紊ス
  ノデアルカ、如何ニ社會ノ公安、如何ニ
  社會ノ秩序ト云フモノヲ破壞スル虞ガアル
  ノデアリマスカ、其事ニ付テ御說明ヲ願ヒ
  タイノデアリマス、第二ニ伺ヒタイノハ、
  此勞働者ガ結束シテ資本家ト對立抗爭スル
  ト云フコトハ、是ハ社會進化ノ一階梯トシ
  テ當然ナコトデアル、斯樣ニ御認容ニナル
  カドウカ、此點ヲ伺ッテ置キタイノデアリ
  マス、本法ノ第十七條ニ依リマスト云フト、
  組合ノ決議ノ取消權ガ認メラレテ居ル、第
  十八條ニ依リマスト、規約ノ變更權ガ認メ
  ラレテ居ル、第十九條ニ依リマスト云フト、
  解散權ト云フモノガ認メラレテ居ルノデア
  リマス、卽チ私共ガ今聽カントスル所如何
  ニ依リマシテ、此十七條、十十條、十九條
  ト云フモノハ頗ル濫用サレル虞ガアルノデ
  アリマス、御承知ノ如ク今日ニ於キマシテ
  ハ、資本家ト勞働者トハ必ズ對抗氣分ヲ持ッ
  テ居ルノデアリマス、唯〓勞働者ハ弱クシ
  テ十分ニ資本家ヲ反省サスダケノ實力ヲ持
  タナイ、併ナガラ若モ此勞働者ガ結束シテ
  資本家ニ對抗セナカフタナラバ、資本家ハ
  益、自分ノ主張ヲ通シマシテ、結局社會ノ
  秩序ト云フモノヲ根本カラ破壞スルヤウナ結
  果ヲ惹起シハシナイカト思フノデアリマ
  ス、彼ノ近來ノ爭議ト致シマシテ随分長イ
  期間ヲ費シタ伊豫ノ別子ノ爭議、或ハ脚互
  ノ膝下ニ於キマシテ最モ事情ガ能ク判明致
  シマシタ所ノ共同印刷所ノ爭議、是等ノ如
  キハアノ爭議ダケ切離シテ見マスナラバ、或
  ハ資本家モ或ハ勞働者モ、又社會一般モ、
  或ハ産業ノ上ニ於テモ、ソレハ甚シイ損失
  ニハ違ヒアリマセヌ、併ナガラ此苦イ經驗ニ
  依リマシテ勞働者モ同明冊能業ト云フモノハ
  命懸ケノ仕事デアル、頗ル困難ナ仕事デアル
  ト云フコトヲ泌〓體驗シタ譯デアリマス、
  又資本家ニ於キマシテモ勞働者ニハ企業利
  得フアル部分ハ必ズ分ケテヤラナケレバイ
  ケナイ、自分ガ獨占スルト云フト必ズ勞働
  者ハ承知シナイ、斯樣ナ紛爭ガ起シテ、結局
  產業ト云フモノガ停滯スルト云フコトヲ泌ミ
  感ジタ譯ナノデアリマス、又斯樣ナ感ジ
  ハ啻ニ當業者ノミナラズ、社會一般ノ人ガ
  此出來事ニ依ッテ十分ンレダケノ感ジヲ持っ
  タ譯デアリマス、デアリマスカラ無限ノ生命
  ヲ有スル所ノ國家ノ立場カラ考ヘテ見マス
  ルト、又螺旋的ニ進步シテ居ル所ノ社會ノ
  狀態カラ考ヘテ見マスルト、左樣ナ出來事
  ニ依ッテ、左樣ナ經驗ニ依ッテ、總テノ人ニ
  ガ所謂社會連帶ト云フ所ノ觀念ヲ深クス
  ル、共存共榮ト云フ所ノ情ガ深クナル故ニ、
  結局ニ於キマシテハ此所ニ社會ノ協調ト云
  フコトガ、斯樣ナコトニ依ッテ產出サレテ
  來ルノデアリマス、爭議ソレ自體ハ成程悲
  ムベキ現象デハアリマセウケレドモ、爭議
  ガ今日ノ制度ノ缺陷カラ必然的ニ起ッタ
  場合ニ於テハ、左樣ナ爭議ト云フモノハ決
  シテ反社會的ノモノト見ルベキモノデハナ
  カラウト思フノデアリマス、之ヲ反社會的
  ノモノト見ルナラバ、斯樣ナ決議ヲシ、斯
  樣ナ規約ヲシ、斯樣ナ行動ノアッタ場合ニ
  於テハ第十七條、第十八條、第十九條ヲ以
  テ是ハ公益ヲ害スル、是ハ公安ヲ害スルト
  云ウテ直ニ勞働團體ノ活動ヲ政府ガ阻止ス
  ルコトニナルデアラウト思フノデアリマス
  ケレドモ、若モ左樣ナ立場ニ於テ此法規ヲ
  運用スルト云フコトニナリマシタナラバ、
  是ハ今迄質問者ガ屢〓叫ンデ居リマス通リ、
  全ク警察法規ニナッテシマウ、全ク取締法
  規ニナッテシマウノデアリマス、過般來同
  盟能業ト云フコトニ付テハ總理大臣ハ略〓
  公認サレタヤウニモ私共ハ聞イテ居リマス
  ケレドモ、態度ハ頗ル曖昧デアル、私共ハ
  彼ノ調停法ノ第十九條ニ於テハ、總理大臣
  ノ御意見ハ同盟能業ト云フモノハ認メル、
  ケレドモ唯、爭議「ブローカー」ノヤウナ第
  三者ガ、順調ニ進ンデ行ッテ居ル同盟罷業
  ヲ故ラニ色〓混亂ニ導クコトヲ除ク意味ニ
  於テ、結局第三者ノ關與ヲ禁ジテ居ルマデ
  デアル、同盟罷業ハ公認スル、斯樣ナ御精
  神ト私ハ思ッテ居ルノデアリマス、左樣ナ
  御精神ナレバ、矢張此第十七條、第十八條、
  第十九條ノ運用ニ於テモ餘リ心配ハ致シマ
  セヌケレドモ、若モ所謂勞働者ト資本家ノ
  對立抗爭ト云フコトハ社會ノ公安ヲ害シ、左
  樣ナコトハ社會ノ秩序ヲ紊ス、斯樣ナ御見
  切デアリマスナラバ、本法ハ頗ル勞働者ニ
  取リマシテ惧ルベキ一ツノ障碍ニナル將
  來勞働運動、勞働爭議ト云フモノヲ非常ニ
  障碍スルコトニナルト思フノデアリマス、
  故ニ此點ニ付テ政府ノ御所見ヲ伺ノテ置キ
  タイノデアリマス、最後ニ本法ト小作組合
  トノ關係ニ付テ伺ッテ置キタイノデアリマ
  ス、小作組合ハ社會ノ通念ニ於テ、或ハ又
  用語ノ慣例ニ於テ、是ハ勞働者ト變ッタ取
  扱ヲスルコトヽ思ウテ居ルノデアリマス、
  故ニ本法ニ小作組合ハ篏シテ居ラナイモ
  ノト承知致シテ居リマス、併ナガラ小作組
  合ノ實際ヲ見マスルト矢張同ジ狀態デアル、
  資本家ノ資本ニ對シテ或ル勞務ヲ働キ掛ケ
  テ、サウシテ一ツノ生產ヲ遂ゲルノデアリ
  マスカラ、其實際ハ頗ル能ク似テ居ルノデ
  アリマス、又彼等ハ甚ダ薄弱ナ資力シカ持
  タナイデ、結局協力シナケレバ資本家ニ對
  立ガ出來ナイ、小作條件ノ改善ヲ叫ブ場合
  ニ於テモ、個々ノ力デハ決シテ資本家、卽
  チ地主ヲ反省セシメラレナイ境遇ニ居ルト
  云フコトハ是ハ全ク一般労働者、所謂勞
  働者ト全ク能ク似テ居ルノデアリマス、故
  ニ、斯樣ナ小作組合ト致シマシテハ、苟モ
  本法ノ如ク社會ノ公益上カラ此勞働者ヲ保
  護スル法規ヲ立案ナサレル場合ニ於テハ
  彼等ニモ其恩典ヲ分タナケレバナラヌコト
  ト思フノデアリマス、又實際問題ト致シ
  マシテ全國津と浦〓、殆ず此小作組合ノ實
  在シテ居ナイ處ハナイノデアリマス、本案
  ノ成立ニ依リマシテ、彼等ト致シマシテモ
  必ズ其立法ノ要求ガアルコトヽ思フノデア
  リマスガ、政府ト致シマシテハ此法規ヲ準
  用シテ、彼等ニ一ノ規律標準ヲ與ヘント爲
  サルノデアリマセウカ、或ハ目下色〓審議
  中ダト言ヒマスル所ノ小作法ヲ作ル際ニ、
  別途立案ナサルト云フ所ノ御計畫デアリマ
  セウカ、其點ニ對スル政府ノ御所見ヲ伺フテ
  置キタイノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=54

  ---

• 055・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　谷原君ノ御質
  問ノ第一點ハ先程來最早十分ニ述ベタ積リ
  デアリマスガ、第一條ニ於テ產業別職業別
  ニシテ組合ヲ認ムルコトニ致シタコトニ付
  テ、谷原君ハ寧口勞働者ノ自由ニ委セテ置
  イテ、產業別デ作ラウトモ、或ハ異ノタル
  產業ノ間デモ組合ノ出來ルヤウニシタ方ガ
  宜クハナイカト云フ御尋ノヤウデアリマ
  ス政府ノ見テ居リマスル所ニ依レバ、利
  害關係ノ最モ密接ナルモノガ共同シタ時ニ
  於ケル關係モ、最モ萬事相談ヲスルノニ都
  合ガ好イト考ヘテ居リマス、ソレ故ニ產業
  別職業別ノ方ガ宜シカラウト考ヘテ居リ
  マスガ、加之現在日本ニ於テ組合ト云ッテ居
  ルモノハ多クハ產業別、職業別デアルノ
  デアリマス、此產業別ノ者ガ聯合シテ居ル
  ト云フ事實ハアリマケスレドモ、大體組合
  ハ產業職業デ分レテ居ルト云フノガ實際デ
  アリマスカラ、其實際ノ狀況ヲ直ニ法律案
  ニ移シテ、今迄ノ所デハ先ヅ產業別、職業
  別デ勞働組合ヲ認メタ方ガ相當デアル、斯
  樣ニ考ヘタノデアリマス、第二ノ御質問ハ
  勞働者ガ結束シテ資本家ニ對抗スルコトハ
  免ルベカラザルコトヽ認メテ居ルヤ否ヤ、
  私共ハ何回モ繰返シテ申上ゲテ居リマス
  ガ、勞資協調ヲ切ニ望ンデ居ル者デアリマ
  ス、資本ト労働何レモ皆生產ノ上ニハ必要
  デアリマス故ニ、勞資能ク協調ヲスルコト
  ヲ望ムノデアリマスガ、併シ勞働者ハ個々
  ノ力デハ其主張ヲ貫徹スルコトガ困難デア
  リマス故ニ、結束シテ資本家ニ對抗スル場
  合ガ或ル場合アリ得ル、是ハ免レナイコト
  デアルト云フコトハ谷原君ノ御尋ニナル
  通リニ、吾々モドウモ是ハ好マシイコトデ
  ナイトシテモ免ルベカラザルコトデアル、
  又或ル場合ニハ正當ナル主張ヲスルトキニ
  ハ、結束ノ力ニ依ッテ其主張ノ貫徹ニ努メル
  ト云フコトハ、決シテ惡イコトデナイト考
  ヘテ居ルノデアリマス、而シテ第十七條、
  第十八條、第十九條ノ適用ニ於テ、同明書
  業ヲスレバ其事自體ガ或ハ解散ノ理由ニナ
  リ、取消ノ理由ニナリ、サウ云フコトニナ
  ルガト云フ御尋デアリマスガ、決シテ左樣
  デハアリマセヌ、第十七條ノ適用ニ於テ同
  盟能業ヲスルト云フコトガ書イテアルカラ
  ト云ウテ、或ハソレヲ主張スルカラト云ウ
  テ其組合ヲ解散スルトカ、或ハ其行動ヲ變
  更セシムルト云フヤウナコトヲ爲ス考ハ全
  然ナイノデアリマス、第十七條、第十八條、
  第十九條ハ、例ヘバ共產主義ノヤウナ主張
  ヲ目的トスルヤウナコトガアリマスト云フ
  ト、ソレハ是等ノ條項ニ依テ解散ヲ命ジ、
  或ハ變更ヲ命ズルト云フコトヲセナケレバ
  ナリマスマイガ、唯、正當ナル要求ヲ結束
  ノ力デ貫徹シヤウト努メルコトハ決シテ
  十七條次下ノ適用ヲ受ケルモノデナイ、斯
  樣ニ御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、最後ノ
  御質問ノ此法律ト小作組合トノ關係ハ小
  作ハ雇傭關係ノ下ニ在ル筋肉勞働者ト認メ
  テ居リマセヌガ爲ニ、此勞働組合ナルモノ
  ハ小作組合トハ關係ガナイト申シテ居リマ
  スノデ、小作組合ニ向ッテハ勞働組合法ヲ適
  用モ致シマセヌケレバ、又準用モ致サヌノ
  デアリマス、併シ小作人ガ組合ヲ造ッテ小
  作人ノ利益ヲ擁護スルト云フコトモ亦大切
  デアルト云フ谷原君ノ御意見ハ、恐ラクハ
  矢張私共ト大體同ジ御意見デアラウト存ジ
  マスノデ、政府ニ於テモ小作ノコト全體ノ
  コトヲ是カラ調査〓究スル積リデアリマス、
  其場合ニ於テ小作組合ノコトモ同時ニ十分
  調査致ス考デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=55

  ---

• 056・谷原公

  ○谷原公君　簡單デアリマスカラ此處カラ
  御尋致シマス、御許ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=56

  ---

• 057・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=57

  ---

• 058・谷原公

  ○谷原公君　内務大臣ガ山口君或ハ有馬君
  ノ御質問ニ御答シテ居ル所ニ依リマスト
  「勞働組合ハ只今申上ゲマスル通リ、勞働者
  ガ協同ノ力ニ依シテ自己ノ主張ヲ貫徹スル
  ヤウニ努メル使宜ヲ得セシムル爲デアリマ
  スケレドモ、ソレト共ニ日本ノ產業全體ノ
  上ニ於テ、其制定ノ仕方ガ宜シクナイコト
  カラ、經濟界ニ不利ガ起リマスナラバ、其
  事ハ又同時ニ勞働者ノ不利益ヲ來スコトニ
  ナリマスカラ、其時代々々ノ狀勢ニ應ジ適
  當ニ定ムル外ハナイノデアリマス、今日ハ
  此財界不況、囘復ヲ速カナラシムル必要ノ
  アル時ニ於テ、一方ニハ勞働者ノ保護ヲ目的
  トシ、一方ニハ經濟界ニ甚シキ不利ヲ來サ
  シメナイ爲ニハ只今提出シタヤウニスル
  ノガ相當デアルトシテ「斯樣ニ御答ニナッテ
  居リマスガ、是ハ固ヨリ主トシテ在野當時ノ
  憲政會案ト、現在ノ政府案トノ違ヒノ點ニ
  付テ論議サレタノデアリマスケレドモ、其
  中ニハ卽チ此第一條ニ產業別或ハ職業別ト
  云フヤウナ區別ガアルト云フコトハソレ
  ハ團結ノ自由ヲ束縛スル、斯樣ナコトヲ併
  セテ御問ニナッタニ付キマシテ、只今讀上ゲ
  マシタヤウナ御答ガ出來テ居ル、卽チ成ベ
  ク團結ノ自由ハ許シタイケレドモ、ソレガ
  又日本全國ノ產業ノ上カラ考ヘテ、其所ニ
  一ツノ調和ヲ來サナケレバナラヌト云フ趣
  旨ト私ハ思フノデアリマス、併ナガラ只今
  述ベラレタヤウニ、現在ノ實際ガ產業別或
  ハ職業別ニナッテ居ルカラ、別ニ問ヘガナイ
  意味ノ立場カラ立案シタノデアル、若モ此
  團結ニ不自由ガアルトスルナラバ、修正勝
  手次第ト云フヤウナ政府ノ御決心ナラバ、
  私共ハ是レ以上强テ御答ヲ要求シナイノデ
  アリマスケレドモ、强テ若シ產業ノ上ニ於
  テ、產業別、職業別ノ制限ヲ入レナケレバ、
  ナラヌト云フナラバ、其先ニ御答セラレタ
  點ニ基イテ私ハ質問シタノデアリマスカ
  ラ、何故ニ此產業別、職業別ニシナケレバ
  產業ノ發達ヲ害スルノデアルカ、其理由ヲ
  御元シヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=58

  ---

• 059・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　產業別、職業
  別ノ勞働組合ヲ規定スルコトハ、憲政會ガ
  嘗テ衆議院ニ提出致シマシタ法律案ニモ其
  通リアッタノデアリマス、今囘ノ第一條ハ當
  時憲政會ノ提出致シタトキノ法案ト規定ハ
  違ッテ居リマスルケレドモ、產業別、職業別
  ノ組合ヲ認メルト云フ事柄ハ同樣ニ相成ッ
  テ居ルノデアリマス、併シ其後世間デ或ハ
  社會局案ト稱セラレタリ、或ハ內務省案ト
  稱セラレタリ、是ト異シタル法案ノ起草セ
  ラレタ場合モアッタノデアリマス、サウ云フ
  モノト較ベテ是ノ變ッテ居リマスコト、其點
  バカリデハナイノデアリマス、其他外ノ條
  文ニ於テモ社會局案ト稱セラレタリ、憲政
  會案ト稱セラレタリシテ居ル所ノモノト、
  今日提出シテアリマスモノト異ナッテ居ル
  所ガアルノデアリマス、全體ノ精神ハ同樣
  デアリマスケレドモ、條文ニ依ッテハ若干
  違ヲテ居ル所ガアリマス、其違シテ居ル所全
  體ハ目下ノ經濟界ノ狀況、目下ノ國狀ニ應
  ズル爲ニ致シタ、斯ウ云フ次第デアルノデ
  アリマス、之ヲ御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=59

  ---

• 060・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　加藤知正君
  〔加藤知正君登壇〕
  〔「加藤君簡單ニヤッタラドウダ」「精々
  ヤリ給へ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=60

  ---

• 061・加藤知正

  ○加藤知正君　簡單ニヤリマス、諸君、現
  今ノ社會ニ於テ政府ガ緊急ニ解決シナケレ
  バナラナイ問題ハ失業問題ト、賃銀問題
  ト、勞働問題ノ三大問題デアリマス、此度
  政府ガ此勞働組合法ヲ御提案ニナリマシタ
  御趣旨ハ、言フマデモナク勞働問題解決ノ
  一助デアルト云フコトヲ信ズルノデアリマ
  スガ、其勞働問題ノ解決ハ兒童勞働問題ノ
  解決ニ俟ツニアラザレバ眞ノ解決ハ出來
  ナイト私ハ信ズルノデアリマス、是ニ於テ
  カ政府ガ此勞働組合法ヲ立案セラルヽニ當
  リマシテ、此兒童勞働問題ニ對シテ如何ナ
  ル所ノ御考慮ヲ拂ハレマシタカ、此點ニ於
  キマシテ政府ニ向ッテ少シク質問ヲ致シテ
  見タイト考ヘル者デアリマス、諸君、第
  囘ノ國勢調査ノ推定數ニ依リマスト云フト
  工場法ノ規定ニ依ル所ノ工場ノ勞働者ハ、
  十四歲以下ノ兒童勞働者ハ十一「パーセン
  ト」ヲ占メテ居ル、十五歲以上五十九歲マ
  デノ勞働者ハ八十六「バーセント」ニナッテ
  居リマス、六十歲以上ガ一「パーセント」、而
  シテ之ヲ營利ノ上カラ見マスルト云フト、
  農業ニ從事シテ居ル者ガ四十八万七千人、
  工業ニ從事シテ居ル者ガ四十一万五千人、
  商業ニ從事シテ居ル者ガ十一万二千人、其
  他ノ者ガ五万人、合セテ百六万四千人ト云
  フ驚クベキ多數ニ上ッテ居ルノデアリマス、
  尤モ國際勞働會議ノ結果ト致シマシテ、各
  種ノ方面ニ於テ多少ハ其數ヲ減ジテ居リマ
  スルケレドモ、併ナガラ是レ以外ノ數ノ兒
  童勞働者トシテ認ムベキ者ガ隨分澤山アル
  カラシテ、全體ヲ調査致シマシタナラバ、恐ラ
  ク是レ以上兒童勞働者ノ數ガ多數ニ上ッテ居
  ルコ童トヽ信ズルノデアリマス、而シテ是等
  ノ兒ガ勞働ニ從事スル原因ハ複雜デアリマ
  シテ、決シテ一樣デハアリマスマイガ、併ナ
  ガラ之ヲ大別致シマスルト、第一ニ於キマ
  シテハ兩親ノ貪慾カラ、詰リ此兒童ナル者
  ヲバ資本又ハ資產ト心得マシテ、少年少女
  ニ勞働ヲ强ユル者ガ少ナクナイノデアリマ
  ス、又貧困ノ結果、卽チ經濟上ノ壓迫カ
  ラ、餘儀ナク最愛ナル少年少女ニ勞働ヲ强
  ヒテ居ル者ガ頗ル多イノデアリマス、又工
  場主ノ貧慾カラシテ色ミ甘言ヲ以テ兒童ニ
  勞働ヲ强フル所ノ者モ亦少ナクナイノデア
  リマス、又社會ノ慣習、卽チ農村部落等ニ
  於テハ、少年少女ニ勞働ヲ爲サシムベキモ
  ノデアルト云フ多年ノ習慣カラシテ、無意
  識的ニ兒童ニ勞働ヲセシメテ居ル者モ少ナ
  クナイノデアリマス、而シテ工業狀態ニ於
  キマシテハ、此兒童勞働ナルモノヲ頗ル歡
  迎ヲ致シテ居ルノデアル、卽チ精巧ナル所
  ノ機械ガ發明セラレマスルト同時ニ、成人
  勞働者デ間ニ合シテ來夕所ノモノモ、之ヲ
  バ兒童ヲシテ之ニ代ラシムルト云フコト
  ガ、段々ニ行ハルヽヤウニナッテ來テ居ル、
  是ガ爲ニ成人勞働者ハ、頗ル脅威ヲ感ズル
  ヤウナ場合ガ多イノデアリマス、又時間ヲ
  長ク要スル所ノ仕事、或ハチヨコ〓〓ト駈
  廻ッテ用ヲ足サナケレバナラヌト云フヤウ
  ナ仕事ハ、多クハ兒童勞働者ヲ以テ間ニ合
  ハスルヤウナコトニナリツヽアル、又段々
  分業ガ行ハルヽニ從ヒマシテ、單一技巧ヲ
  要スル場合ガ多イト同時ニ、兒童勞働者ノ
  容易ニ熟練エトナリ得ル關係カラシテ、其
  方面ニ使ハルヽ所ノ兒童モ亦少ナクナイコ
  トデアリマシテ、殊ニ此兒童勞働者ノ賃銀
  ハ低廉デアリマスルカラ、成人勞働者ノ勞
  銀ノ上ニ脅威ヲ感ズルコトガ頗ル多ク、又
  成人勞働者ガ同時ニ失業ノ機會ニ遭遇スル
  コトガ漸次增加スルヤウナ傾向ニナッテ居
  リマスルカラシテ、是ハ輕々ニ看過スルコ
  トノ出來ナイ問題デアルト思フノデアリマ
  ス、併ナガラ兒童勞働者ノ使役ト云フコト
  ハ是ハ一面ニ於テ大ニ考ヘナケレバナラ
  ヌト云フコトハ、頗ル諸般ノ上ニ惡影響ヲ
  與ヘルコトガ多イカラデアリマス、卽チ何
  レノ工場ニ於キマシテモ、彼ノ突發的事故
  ナルモノハ、工場生活者ニ取リマシテハ大
  ナル脅威デアルノデアリマスルガ、而モ兒
  童勞働者ニハ、此突發的事故ガ頗ル多イノ
  デアリマス、彼ノ紡績工場ノ如キハ成べ
  ク此危險ノ少イ所ニ兒童勞働者ヲ使役スル
  ヤウニ致シテ居リマスルケレドモ、ソレデモ
  十四歲、十五歲ノ兒童勞働者ノ事故率ハ、
  十六歲以上ノ勞働者ノ事故ヨリモ、四十八
  「パーセント」多イノデアリマス、殊ニ調
  革、廻轉軸、齒車等ニ從事スル兒童勞働者
  ノ事故率ハ成年勞働者ノ事故率ヨリモ百
  三十「パーセント」多イノデアリマス、又此
  兒童勞働者ノ生理或ハ衞生道德ト云フヤウ
  ナ方面カラ觀察致シマシテモ、中〓吾々共
  ガ輕々ニ看過スルコトノ出來ナイ事柄ガ多
  イノデアリマス、卽チ少年少女ノ勞働ニ從
  事致シマスル結果トシテ、頗ル其生理ヲ害シ
  テ、滿足ニ發育スルコトノ出來ナイ者ガ頗
  ル多イノデアリマス、工場ニ依リマシテ
  ハ終日塵埃ノ中ニ作業ヲシナケレバナラ
  ナイ、彼ノ紡績工場内ニ於キマシテハ、綿
  ノ「リント」ヲ何時トハナシニ吸收スル、其
  他塵埃等ヲ吸收スル結果ト致シマシテ、彼
  等ハ遂ニ其肺臟ヲ傷メ、肺結核ニ罹ル者モ
  少ナクナイノデアリマス、比較的座埃ノ少
  イト言ハルヽ所ノ製絲工場ニ於テスラモ、
  妙齡ノ女子ガ此最モ忌ミ嫌フベキ所ノ疾病
  ニ罹ル者ガ實ニ多イト云フコトハ、吾々國
  民トシテ大ニ考ヘナケレバナラヌコトデア
  ルト思フノデアリマス、ノミナラズ道德ノ
  上カラ之ヲ考ヘテ見マスルト、彼等兒童勞
  働者ガ、隨分犯罪ヲ致シテ居ルノデアル、
  其犯罪ヲ爲ス所ノ者ハ成人勞働者ニ較ベマ
  シテ十倍乃至二十倍ニ達シ、少女ノ如キハ
  殊ニ甚シク其犯罪數ガ多イコトデアリマ
  ス、斯ウ云フヤウナコトニナッテ居リマス
  カラ、吾々共ハ此點ニ於テ內務大臣ニ一ツ
  御伺ヲシテ置カナケレバナラヌト云フコト
  ハ今囘此勞働組合法ヲ御制定ニナリマス
  ルニ當リマシテ、此兒童勞働者ニ對シテ
  ハドウ云ウヤウニ御考ニナリマシタカ、
  如何ナル所ノ御考慮ヲ拂ハレマシタカ、詰
  リ此勞働組合ノ中ニハ兒童労働者ヲモ悉
  ク之ニ加入セシムル所ノ御考デアルカドウ
  カ、若シ其年齡ニ制限ヲ附セラルヽト云フ
  コトデアリマスナラバ、先刻原君モ此點ニ
  付テ質問ヲセラレタコトデアルケレドモ、
  ソレニ對シテノ御答辯ハ無カッタノデアリ
  マスガ、何歳位カラ此勞働組合員タラシム
  ル所ノ御考デアルカ、之ヲ一ツ御伺致シテ
  置キタイ、尙ホ序ニ御尋ヲ申上ゲテ置キタ
  イノハ、今日工場法ノ施行セラレテ居ル所
  ノ以外ノ工場ニ於ケル所ノ兒童勞働者ニ對
  シマシテ、如何ナル所ノ御考慮ヲ御拂ニナ
  リマシタカ、近キ將來ニ於テ是等ノ兒童勞
  働者ニ對シテ合法的ノ處置ヲ御執ナサル御
  考デアルカドウカ、若シ之ニ對スル所ノ御
  成案ガアルナラバ御伺ヲ致シタイノデアリ
  マツ、又今日工場法ノ規定ニ依リマスレ
  ア十四歳以上ト云フコトニナッテ居リマ
  スガ、只今申上ゲマシタヤウニ、生理狀態
  カラ考ヘマシテモ、衞生狀態カラ考ヘテ
  モ、道德上ノ上カラ之ヲ考ヘマシテモ、大
  ニ是ハ考慮シナケレバナラヌコトデアリマ
  スルカラ、十四歲以上ト云フコトヲバ、十
  六歳以上ト云フコトニ御改正ナサル所ノ御
  考ハナイノデアリマスカ、殊ニ鑛山トカ石
  山トカノ方面ニ働ク所ノ勞働者ニ對シマシ
  テ、之ヲ最低年齡十八歳迄ニ御改正ナサル
  御考ガアルカナイカ、又兒童勞働者ニ對シ
  マシテノ時間ハ、是ハ八時間トシ、午後五
  時以後ニ於ケル所ノ夜業ト云フモノニ付テ
  ハ絕對ニ之ヲ禁止スル所ノ御考ガナイ
  カ、是等ノ點ニ付テ御伺致シタイノミナラ
  ス、今日兒童勞働者ヲ使用スルト云フコト
  ニ付キマシテハ、醫師ノ診斷書ガナケレバ
  之ヲ雇傭スルコトガ出來ナイト云フヤウナ
  規定ヲ設クルヤウナ御考ハナイカドウカ、
  尙ホ最後ニ御尋申上ゲタイノハ、今日此勞
  働組合法ナルモノハ、先刻來屢〓山口君、其
  他ノ諸君カラシテ御演說モアリマシタガ、
  勞働者ノ上カラ見マシテモ、是レ我等ヲ呪
  フ所ノ惡法デアルト絕叫致シテ居ルノデア
  ル、又資本家ノ上カラ之ヲ見マシテモ、不
  完全ナル所ノ斯樣ナル法律ハ、寧口布カレ
  ヌ方ガ宜シイト言ッテ居ルノデアル、然ラ
  バ勞働者モ之ニ滿足シナイ、資本家モ之ニ
  滿足シナイ、日本國民悉ク之ニ滿足シナイ
  ヤウナ、斯樣ナ不完全ナル法律ヲ、國民全
  體ノ反對ヲ受ケテ、飽迄モ施行セラルヽノ
  御考デアルカドウカ、之ヲ御伺致シテ置キ
  タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=61

  ---

• 062・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　若槻内閣總理大
  臣
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=62

  ---

• 063・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　加藤君ガ兒童
  勞働者ニ付テ色〓御留意ニナッタ點ヲ御述
  ニナッタ點ハ、私モ能ク傾聽致シマシタ、兒
  童勞働者ヲ保護スルガ爲ニ法規ノ改善ヲ圖
  リマスコトハ必要ト思フノデアリマス、
  併シ經濟上ノ關係モアリマスノデ、是等ハ
  徐々ニ之ヲ講ゼナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス、目下ハ工場法ノ改正ニ依ッテ、
  十四年以下ノ兒童勞働者ハ工業ニ關係セナ
  イヤウニ、今改正ニナッテ居リマスガ、施行
  令ガ定マリマセヌ爲ニ、只今マデハ實施ニ
  ナッテ居リマセヌ、併シ遠カラズ施行令ヲ制
  定スル考デアリマスカラ、是ガ制定ニナリ
  マスレバ、只今デハ十二歲以下ガ禁ジテア
  リマスガ、今後ハ十四歲以下ノ者ハ工業ニ
  從事セナイコトニ相成ルノデアリマス、目
  下デモ既ニ危險ナル事業ニ對シテハ、十六
  歲以下ノ者ハ之ニ從事スルコトヲ許サヌコ
  トニ、工場法ノ規定ガ出來テ居ルノデアリ
  じ 、斯ノ如ク改正工場法ガ行ハレテ參リ
  マスト、十四歲以下ノ者ハ工業勞働者デナ
  イコトニナリマスカラ、隨テ勞働組合ノ會
  員ニナルコトハナイノデアリマス、併シ十
  四歳以上ノ者ハ矢張工場勞働者ニナルコト
  ガ出來ルノデアリマスカラ、組合法ノ關係
  ニ於テハ、其者ガ組合ニ加入スルコトハ是
  ハ妨ゲナイノデアリマス、唯〓併シ民法ノ
  規定ガアリマシテ、未成年者ハソレ〓〓或
  ル程度ノ權利實行ヲ爲スコトガ出來ヌヤウ
  ニナッテ居ルノデアリマスガ、其關係ハ工場
  ノ勞働ニ關係シテ居ル者デモ、尙ホ其適用
  ヲ受ケルノデアリマス、唯〓十四歲以上ノ勞
  働者ガ、勞働組合ニ加ハルコトガ出來ルヤ
  否ヤト云フ單純ナル御質問ナラバ、ソレハ
  勞働組合ニナルコトガ出來ルト御答セナケ
  レバナラヌノデアリマス、色〓工場法ノ改
  正ニ付テ政府ニ意アリヤ否ヤト云フ御尋デ
  アリマシタ、政府ハ先達改正セラレタ工場
  法ガマダ實施ニナッテ居リマセマカラ、今ハ
  改正工場法ヲ實施スルコトニ全力ヲ注イデ
  居ルノデアリマス、其以上ノ改正ハ前申上
  ゲル通リ、經濟上ノ關係ヲ考ヘテ、漸次改
  正ノ方針ヲ執リマセヌト、一時ニ之ヲ實行
  スルコトハムヅカシイト思フノデアリマス、
  此法案ガ資本家ニモ氣ニ入ラレヌ、勞働者
  ニモ氣ニ入ラレヌ、左樣ナ法律ハ止メテハ
  ドウカト云フ最後ノ御質問ハ、是ハ資本家
  ノ氣ニ八ラヌナラバ、資本家ガ誤解シテ居
  ル、勞働者ガ氣ニ入ラヌナラバ、勞働者ニ
  誤解ガアルト思フノデアリマス、雙方共誤
  解ガ解ケタナラバ、法律案ハ實ニ勞働者保
  護ノ爲ニ適切ナル法案ト思フノデアリマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=63

  ---

• 064・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　山口政二君
  〔山口政二君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=64

  ---

• 065・山口政二

  ○山口政二君　簡單ニ質疑ヲ試ミマス、
  第一ハ海事法規ト此法案トノ關係デアリマ
  スガ、船員法ノ第三十六條ニハ海員ガ職務
  ヲ怠リタルトキ、海員ガ船長ノ許可ヲ得ズ
  シテ船舶ヲ去リ、又ハ船長ノ指定シタル時
  ニ歸船セザルトキ、此場合ニハ海員ハ懲戒
  ニ附セラレルコトニナッテ居リマス、又同ジ
  ク七十二條ニハ、海員ガ相黨與シテ左ノ行
  爲ヲ爲シタルトキハ刑罰ヲ加ヘラレルト云
  フコトニナッテ居リマス、一ツハ職務ニ服セ
  ス、又ハ上長ノ命令ニ服セザルトキ、第二
  ハ脫船シタルトキト云フノデゴザイマスガ、
  此海事法規ト勞働組合法案トノ關係ヲ如何
  ニ御調節ニナルノデアリマスカ、此點ヲ伺
  ヒタイノデアリマス、第二ハ國際勞働會議
  ニ派遣スベキ勞働代表ノ任命ノ件デアリマ
  ス、我國ハ大正八年以來既ニ七回代表ヲ派
  遣致シテ居リマスガ、常ニ其任命ニ付テハ
  非常ナル紛爭ヲ伴クタノデアリマス、所ガ大正
  十三年ノ第六囘ノ委員ノ任命以來ハ、極メテ
  平穩ニ相成シテ居ルノデアリマス、是ハ申ス
  迄モナク對獨平和條約ノ規定ニ依リマシ
  テ、政府ガ勞働者ヲ最モ能ク代表スル所ノ
  產業上ノ團體ニ御協議ヲ爲スッタ結果デア
  ルト思フノデアリマス、然ラバ將來政府ハ
  此組合法ガ成立致シタル場合ニ於テハ、此
  代表ヲ選定スベキ協議ヲ、此組合法案ニ謂フ
  所ノ公認組合ノミニ與ヘルノデアルカ、乃
  至ハ事實上ノ組合ニハ全部與ベルノデアル
  カ、ソレトモ勞働者ノ集團デアレバ、誰ニ
  デモ一定數以上ニハ與へルト云フノデアル
  カ、其實際ノ取扱ヲ伺ヒタイノデアリマス、
  第三ニ御伺致シマスコトハ是等ノ點ニ於
  キマシテ、政府ハ蜜際上ノ取扱ト致シマシ
  テハ、公認セラレタル組合ト公認セラレザル
  組合トノ間ニ、恐ラク差別ヲ付ケナイノデア
  ラウト思フノデアリマスガ、此組合法案ニ依ツ
  テ公認セラレタルモノニノミ非常ナ便宜ヲ
  與ヘテ、然ラザルモノハ之ヲ抑壓スル、非
  公認組合ハ絕滅スルト一云フヤウナ御方針デ
  アルカドウカ、此點ハ實際ノ問題トシテ御
  伺シテ置カナケレバナラヌト思フノデアリ
  ママ、詰リ先般來屢。議員諸君ヨリ御尋ニ
  +リマシタガ、何故ニ公認スルカ、法人ト爲
  ス利益ガ何所ニ在ルカト云フ御尋ニ對シテ
  ハ總理大臣ヨリ斯ク々々ノ點ト云フヤウ
  ナ御說明デアリマシタガ、此法案ヲ通覽致
  シマスノニ、私共ハ其點ニ於テ總理大臣ノ
  御說明ハ承服シナイ點ガ多イノデアリマ
  ス、何デモ彼デモ公認シタモノハ絕大ナル
  保護ヲ與ヘテ、然ラザルモノハ、壓迫シテ、
  此法案ノ趣旨ヲ飽迄貫徹ナサルト云フノデ
  アリマスカドウデスカ、其點ヲ御伺シタイ
  ノデアリマス、最後ニ矢張關聯シタ問題テ
  アリマスガ、此組合法案ノ立案ノ根本ヲナ
  ス問題デアリマスル、政府ハ近來勞働組合
  ガ發達シタラ、之ヲ公認スル爲ニ此法律ヲ
  出スト仰シヤルノデアル、併シ現ニ勞働組
  合ナルモノハ國ガ認メテ居ル、唯〓法規ガ
  無イダケデ、既ニ公認シテ居ルノデアリマ
  ス、外國ノヤウニ組合ヲ禁止致シタモノガ、
  此禁止ヲ解クト云フ爲ニハ其立法ハ禁止
  ノ解除、卽チ組合ノ公認トナルカモ知レマ
  セヌ、併シ我國ニ於キマシテハ、曾テ組合
  ヲ禁止シタコトハナイノニ、法規ヲ作ルト
  云フコトハ、是ハ單ニ組合ヲ公認スルト云
  フダケデハイケナイ、更ニ一步進ンデ、組
  合ノ活動ヲ此法規ニ於テ保障スルト云フコト
  デナケレバ、組合立法ノ意義ハ極メテ不徹
  底デアリマス、然ルニ屢質質答辯ヲ繰返サ
  レマシタガ如ク、法律全編ヲ通ジテ見マシ
  テ、吾々ハ組合ノ活動ガ之ニ依ッテ保障セ
  ラシタリト考ヘルコトハ出來ナイノデアリマ
  ス、尙ホ政府ハ團體協約ト云フヤウナコト
  ハ、特別法デ出スト言ッテ居ラレルノデア
  リマスカラ、何時カハ法律上組合ノ活動ヲ
  保障セラレルデアリマセウ、ケレドモ此法
  律ニ於テ活動ガ保障セラレナクテハ、組合ガ
  公認サレ法人トナルト、非常ナル便宜ヲ得
  ルト仰シヤルケレドモ了解ニ苦ムノデアリ
  マス、外國ハ率知ラズ、曾テ組合ヲ禁止シナ
  カツ夕所ノ我國ニ於キマシテハ、ドウシテモ
  一步進ンデ組合其モノヽ活動ヲ保障スルコ
  トニナラナケレバイケマセヌ、其活動ハ或
  ハ團體協約トナル場合ガアル、或ハ又「ス
  トライキ」ニナル場合ガアル、ソレ等ニ對
  スル十分ナル保障ヲ規定ノ中ニナサラナ
  ケレバ、組合立法ノ本當ノ精神ハ貫徹ハ出
  來ナイノデアリマス、此點ニ付キマシテ、
  此組合立法ノ根本義ハ單純ナル組合ノ公認
  デアルカ、ソレトモ組合ノ活動ヲ保障セントス
  ルニ在ルカドウカト云フコトヲ御尋スルノ
  デアリマス、御尋シタコトハ簡單ナル要項
  デアリマスケレドモ、改メテ總理大臣ヨリ
  御懇切ナル御各辯ヲ煩シタイト思フノデア
  リス(拍手)
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=65

  ---

• 066・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　勞働組合法ト
  海員法トノ關係ニ付テ御尋デアリマシタ
  ガ、海員法ハ特別ノ法規デアリマスルガ故
  ニ、勞働組合法ガ成立致シマシテモ、是ト
  特別法ノ關係ヲ以テ、只今御尋ニナッタヤウ
  ナ事柄ハ、依然トシテ效力ヲ存スルト云フ
  解釋デ居ルノデアリマス、第二ノ萬國勞働
  會議ニ代表者ヲ派遣スル、其代表者ヲ任命
  スルニ付テハ、此法律ニ依ッテ公認セラレタ
  ル組合ノミヲシテ代表者ヲ選バシメルカ、
  或ハ事實存シテ居ル組合ニモ選擧權ヲ持タ
  シメルヤト云フ御尋デアリマス、此點ニ付
  テハ政府ハ今尙攻究中デアリマス、固ヨリ
  勞働條件ノ維持改善ヲ目的トシテ居ル團體
  以外ノ團體、例ヘバ共濟ヲ目的トシテ居ル
  ヤウナ團體、是ハ今日尙ホ勞働代表ヲ選ブ
  コトニハサセテ居ラナイノデアリマスカ
  ラ、是ハ問題デアリマセヌガ、此法律ニ依ッ
  テ法人トナッタ組合以外ニ、現實ニ勞働條件
  ノ維持改善ヲ目的トシテ居ル組合ガアリマ
  ス場合ニ、之ニ代表ヲ選ブ權利ヲ認メルヤ
  否ヤト云フコトハ、成ベク認メタイト思ウ
  テ居ルノデアリマスケレドモ、マダ政府デ
  ハ議ヲ纏メテ居リマセヌ、目下攻究中デアル
  ノデアリマス、ソレカラ此法律ニ依ッテ屆出
  ヲ爲シテ法人トナッタ組合ハ政府ハ大變保
  護スルガ、之ニ依シテ法人トナラナイ、卽チ
  届出デナイ組合ハ壓迫ヲシテ、成ベク其存立
  ヲ爲サシメナイヤウニスルヤウナコトハナイ
  カドウカ、斯ウ云フ御尋デアリマス、是、
  決シテ左樣ナコトハ致シマセヌ、此法律ニ
  依ッテ屆出デタモノハ法人トナッテ、法人ト
  シテノ便利ヲ受ケマス、屆出デナイモノハ
  法人トナラナイデ、法人タル便宜ヲ受ケル
  コトガ出來ナイ、併ナガラ政府ハ決シテ之
  ニ對シテ特ニ之ヲ惡ク見ルト云フヤウナ取扱
  ヲスル考ハ全然ナイノデアリマス、尙ホ最
  後ニ於テ組合法ヲ作ル以上ハ、組合ノ活動
  ヲ保障センケレバナラヌ、然ルニ此組合ノ
  活動ニ關スル規定ハナイカラ、此組合法ハ
  洵ニ其働ガ少イヤウナ御考ノヤウデアリマ
  ス、或ハ法人ノ資格ヲ與ヘテ、共同ノ動作
  ヲスルコトハ法律デ認メテ居リマスナラ
  バ、餘程ソレハ活動ノ上ニ於テハ便宜ヲ與
  ヘタコトデアルト思フノデアリマス、併シ
  其以上ニ勞働協約ニ關スルヤウナ規定ハ
  旣ニ答辯ヲシテ居リマスル如ク、是ハ組合
  法規ノ中ニ制定スルノハ其場所ヲ得ヌト存
  ズルノデアリマスカラ、別ニ法規ヲ作リタ
  イ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=66

  ---

• 067・山口政二

  ○山口政二君　尙ホ一點御尋ヲ致シタイノ
  デアリマス、勞働爭議調停法案ニ於キマシテ
  ハ、當事者ト云フヤウナ言葉ヲ以テ、終始一貫
  致シテ居リマス、當事者ノ一方ガ使用者デ
  アルコトハ明瞭デアリマスルガ、勞働者側ニ
  於キマシテハ單ナル個々ノ勞働者ヲ御認
  メニナッテ居ルノデアリマスカ、乃至ハ事實上
  ノ勞働組合、若クハ此法案ニ謂フ所ノ公
  認組合、サウ云フヤウナモノヲ眼中ニ置イ
  テ居ルノデアリマスルカ、此點ヲ御尋シタ
  イ、是ハ實際ノ問題トシマシテハ、個々ノ
  モノヲ眼中ニ置クカ、團體ヲ眼中ニ置クカ
  ト云フコトハ調停ノ效果ニ大影響ガアリ
  マイ、若シ組合ヲ眼中ニ置クナラバ、調停
  ノ效果ハ取モ直サズ勞働協約トナル、然ラ
  ザルモノハ個々ノ效果ヲ發生スルノデアリ
  マスカテ、全般ニ關係ガアルト思フノデア
  リマシテ、御尋致シマス
  〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=67

  ---

• 068・若槻禮次郎

  ○國務大臣(若槻禮次郞君)　芳働爭議ノ調
  停法ガ此議場ニ上リマシタ時ニ、御質問ノ
  ヤウナコトガ矢張問題ニナッタノデアリマ
  ス、當時私ハ當事者ト云フノハ一時的、或
  ハ永續的ノ團體デアリマスト云フコトヲ申
  上ゲタ、團體ノ幹部デアリマスト云フコト
  ヲ申上ゲタノデアリマス、ソレハ矢張勞働
  組合ガアレバ其組合ヲ見ルト云フ意味デ申
  デ上ゲタノデアリマス、但シ當時ノ此議場ニ
  於テ問題トナリマシタ時ニハマダ勞働組
  合法案ヲ提出シテ居ラナカッタモノデアリ
  マスカラ、事實上ノ爭議團ガアリマス故ニ、
  一時的、集團的ト云フ言葉ヲ使ヒマシタノ
  デ、此法律ニ依ヶテ組合ガ出來マスレバ、固
  ヨリ其組合ヲ認メデ行クノデアリマス、又
  其組合ニ掛ッテ居ナイ、一時ノ爭議團ガアレ
  バ、ソレモ尙ホ眼中ニ置イテ、労働爭議ノ
  調停法ヲ執行スル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=68

  ---

• 069・井本常作

  ○井本常作君　本案ノ質疑ハ此程度ニ於テ
  終局セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=69

  ---

• 070・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  ハ御異議ナイト認メマス、仍テ質疑ハ終局
  サレマシタ、日程第二、右議案ノ審査ヲ付
  託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選舉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=70

  ---

• 071・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ政府提出、勞働爭議
  調停法外一件ノ委員ト同一ノ委員ニ併セ付
  託サレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=71

  ---

• 072・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  ハ御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク
  決シマシタ、日程第三、東濃鐵道株式會社
  所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
  ノ第一讀會ヲ開キマス---旗旗政府委員
  第三東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收
  ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府
  提出)第一讀會
  東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案
  東濃鐵道株式會社所屬新多治見廣見間鐵
  道買收ノ爲政府ハ該買收ニ必要ナル額ヲ
  限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
  〔政府委員降旗元太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=72

  ---

• 073・降旗元太郎

  ○政府委員(降旗元太郎君)　東濃鐵道株式
  會社所屬新多治見、廣見間鐵道買收ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案ノ說明ヲ申上ゲマ
  ス、東濃鐵道株式會社所屬ノ新多治見、廣
  見間鐡道ハ目下政府デ建設中ノ國有鐵道、
  美濃太田、多治見間、卽チ太多線ノ一部ト
  其路線ガ同一デアリマスカラ、政府ハ之ヲ
  買收シテ其路線ヲ利用シ、工事ノ進捗ヲ圖
  ルコトニ致シタイト思ヒマス、仍テ是ガ買
  收費ニ充當スル爲メ、公債發行ノ法律案ヲ
  提出シタ次第デアリマス、何卒十分御審議
  ノ上、御賛成アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=73

  ---

• 074・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第四、右議
  案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
  致シマス
  第四右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=74

  ---

• 075・井本常作

  ○井本常作君　本案ハ政府提案ノ鐵道敷設
  法中改正法律案ノ委員ト同一委員ニ併セ付
  託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=75

  ---

• 076・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  ハ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=76

  ---

• 077・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
  五、輸出生絲檢査法案ノ第一讀會ヲ開キマ
  ス-早速農林大臣
  第五輸出生絲檢査法案(政府提出)
  第一讀會
  輸出生絲檢査法案
  輸出生絲檢査法
  第一條生絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
  ノ正量ニ付國ノ生絲檢査所ノ檢査ヲ受
  ケタルモノニ非サレハ之ヲ輸出スルコ
  トヲ得ス
  主務大臣必要アリト認ムルトキハ公共
  團體ノ設クル生絲儉査所ヲシテ前項ノ
  檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
  第二條生絲ハ前條ノ檢査ニ依ル正量ニ
  依ルニ非サレハ輸出ノ目的ヲ以テ其ノ
  賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス
  輸出ヲ業トスル者ノ主務大臣ノ指定ス
  ル地ニ於テ買入ノ爲ニ爲ス生絲賣買取
  引ハ之ヲ輸出ノ目的ヲ以テ爲スモノト
  看做ス
  第三條主務大臣特別ノ事情ニ依リ前二
  條ノ規定ヲ適用スル必要ナシト認ムル
  場合ハ命令ヲ以テ其ノ通用ヲ除外スル
  コトヲ得
  第四條當該官吏取締上必要アリト認ム
  ルトキハ店舗、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨
  檢シ業務ノ狀況及帳簿、生絲其ノ他ノ
  物件ヲ檢査スルコトヲ得此ノ場合ニ於
  テハ其ノ證票ヲ携帶スヘシ
  第五條第一條及第二條ノ規定ニ違反シ
  ダル者ハ升圓以下ノ罰金ニ處ス
  前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
  第六條正當ノ理由ナクシテ當該官吏ノ
  臨檢檢查ヲ拒ミ妨ケ若ハ忌避シ又ハ
  其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞
  ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  第七條生絲ヲ輸出シ又ハ輸出ノ目的ヲ
  以テ生絲ノ賣買取引ヲ爲ス者ハ其ノ代
  理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ
  他ノ從業者カ本法若ハ本法ニ基キテ發
  スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違
  反ジタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサル
  ノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得
  ス
  第八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
  令ニ依リ生絲ヲ輸出シ又ハ輸出ノ目的
  ヲ以テ生絲ノ賣買取引ヲ爲ス者ニ適用
  スヘキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ
  理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執
  行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者
  ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用
  ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力
  ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在
  ラス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  生絲檢査所法ハ之ヲ廢止ス
  本法施行前ノ賣買契約ニ因ル生絲ノ受渡
  及其ノ生絲ノ輸出ニ付テハ命令ノ定ムル
  所ニ依リ本法ヲ適用セサルコトヲ得輸出
  ヲ業トスル者カ本法施行前輸出ノ目的ヲ
  以テ買入ヲ了シ又ハ輪出ノ委託ヲ受ケタ
  ル生絲ノ輪出ニ付亦同シ
  〔國務大臣早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=77

  ---

• 078・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　輸出生絲檢査法
  案提出ノ理由ヲ說明致シマス、生絲ノ取引
  ヲ正量取引ト致シマスルコトハ、本邦生絲
  ノ聲價ヲ高メ、且ツ賣買ヲ公正ニ致シマシ
  テ、生絲取引ノ圓滑ヲ圖ル上ニ於テ、極ノ
  テ緊急ナルユトデアルト信ジマス、是ガ實
  施ニ付キマシデハ、政府ニ於キマシデモ風
  ニ其必要ヲ認メマシテ、內外ノ關係當業者
  モ亦多年之ヲ切望致シテ居リマスルガ爲
  ニ、特ニ當業者間ニ於キマシテハ、明治三
  十二年以來、或ハ内地ニ於テ、或ハ國際問
  ニ於テ、〓ノ其實行方法ヲ協議致シタコト
  がアリマシ多が、何分正量ノ檢査ヲ實行ス
  ベキ設備ガ出來ナカタガ爲ニ、其實行ガ
  不可能トナッテ居ッタノデアリマス、然ルニ
  幸ニ曩ニ議會ノ協賛ヲ經マシテ、國ノ生絲
  檢奇所ヲ擴ムズルコトヽナリ、其擴張工事
  モ本年度內ニハ落成ノ豫定デアリマシデ、
  正量ノ檢査ノ設備モ出來上ルコトヽ相成リ
  マスルカラ、愈、來年度ヨリ正量取引チ實
  行スル方針デ、之ニ要スル經常費モ來年度
  ノ豫算中ニ計上シテアル次第デアリマス、
  面シテ正量取引ノ實行ニ付キマシテハ檢
  査及之ニ伴フ取締ニ關シテ、法律ヲ制定ス
  ル必要ガアリマスルカラ、玆ニ本法案ヲ提
  出スル次第デアリマス、何卒愼重審議ノ
  上御協賛ヲ與ヘラレンユトヲ希望致シマ
  ス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=78

  ---

• 079・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、仍テ是ヨリ其質疑ヲ許
  シマス-隅田豐吉君
  〔隅田豐吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=79

  ---

• 080・隅田豐吉

  ○隅田豐吉君　只今議題ニナリマシダ輸出
  生絲檢査法案ハ早速農林大臣ノ御說明ア
  ラセテレタル如夕、極メテ簡單ナル法案デア
  リマスル、併ナカラ其事柄ハ我ガ帝國經濟
  ニ重大ナル關係ヲ有シテ居リマスル所ノ、
  卽チ輸出貿易品ノ大宗タル所ノ生絲、昨大
  正十四年度ニ於キマシテ、輸出貿易總額二
  十三億圓ノ中ニ於テ、八億八千万圓ノ巨額
  ヲ占メテ居ル所ノ生絲質易ニ關スル事柄デ
  アリマシテ、面シテ一度此正量取引ニ付テ
  ノ運用ヲ誤リマスルナラバ其影響スル所
  實ニ重大ナルモノガアリマスルガ爲ニ、本
  員ハ其些末ノ點、乃至數字ニ亙リマスル點
  ハ之ヲ委員會ノ質問ニ讓リマシテ、其大綱
  トモ申スベキ點ニ付キマシテ政府ノ所見ヲ
  質サントスル者デアルマズ、此法案ニ關聯シ
  テ先ヅ政府ノ所見ヲ質シタイ點ハ二三アル
  ノデアリマスルガ、ソレハ現内閣ノ我ガ蠶
  絲業ニ對スル所ノ根本策ヲ乱聽キ申シタイ
  ノデアリマス、御承知ノ如ク今ヤ蠶絲業ハ、
  內ハ勞銀乃至物價ノ騰貴ニ惱マサレ、外
  海外需要地ニ於ケル所ノ人造絹絲ノ旺盛ナ
  ルニ脅カサレツヽアルモノデアリマス此
  內憂外患ノ爲ニ、製絲業ノ經營ト云フモ
  ノハ頗ル困難ヲ來シテ居ル次第デアリマ
  ス、而シテ製絲業トシマシテハ其前途將
  來如何ニ經營致シテ宜シイカト云フコトニ
  付テ、此内憂外患ノ爲ニ、非常ニ迷ッテ居
  ル次第デアルノデアリマス、現內閣ハ此點
  ニ付キマシテ、如何ニ指導シデ當業者ヲ誤
  ラシメザルコトノ方針ヲ御取リニナルノデ
  アリマセウカドウカ、先ヅ第一點トシテ之
  ヲ承リタイノデアリマス、更ニ第二點トシ
  テ承リタイノハ我ガ處絲行政ノ統一ト改
  善ノ爲ニ、農林省ニ蠶絲局ヲ新設致シタイ
  ト云フコトハ當業者多年ノ希望デアルバ
  カリデハナク、當議會ニ於キマシテモ、幾
  度建議案ガ提出致サレマシテ、而シテ
  ソレガ常ニ滿場一致ヲ以テ可決セラレテ居
  ル次第デアリマス、然ルニ現内閣ハ、何等
  此蠶絲局ノ新設ヲスルト云フコトニ努力セ
  ラレテ居ラナイノデアリマスルガ、是ハ如
  何ナル理由デアリマセウガ、更ニ第三ノ點
  トシテ承ッテ置キタ台ノハ、我ガ蠶絲業者
  ニ對スル金融、殊ニ製絲業者ニ對スル所ノ
  金融ガ、現今甚ダ金融難ニ陷ノデ居ルノデ
  アリマス、卽ヂ高利ヲ拂ッテモ、尙且ツ其資
  金ノ吸收ニ困難ヲ來シテ居ル狀態デアルノ
  デアリマス、恐ラク大藏當局ドシマシテ
  モ、農林當局トシマシテモ、是等ノ點ハ御
  熟知ノコトヽ存ジマスルガ、是等ニ對シマ
  シテ、政府ハ何等其對策ヲ講ゼラレテ居ラナ
  イト云フコトハ、輸出貿易十億人巨額ヲ算
  シテ居ル所ノ蠶絲ノ爲ニ甚ダ遺憾ト存ズル
  次第デアリマス、政府ハ之ヲ何が故ニ等開
  ニ付シテ居ルノデアルか、其理由ヲ承タテ
  置キダイノデアリマス、更ニ本案ニ關係致
  シテ居ル所ノ輸出生絲正量取引ニ付テノ本間
  題ニ付テ、數個ノ點ヲ質シテ見タイト存ズ
  ルノデアリマス、今回實施セラレントスル
  所ノ生絲檢査所ニ於ケル正量取引ハ、今早
  速農林大臣ノ說明セラレタル如ク、品質ノ
  向上改善、更ニ取引ノ公正、此二ツノ理由
  ニ基イテ居ルト云フコトハ申スマデモアリ
  マセヌ、併ナガラ品質ノ改善向上、是ハ正
  量取引ノミニ依シテ得ルコトハ出來ナイノ
  デアリマス、卽チ品質ノ改善向上ニハ、ド
  ウシテモ品位檢査ト云フモノヲ强制致サナ
  ケレバナラヌ、現在ニ於キマシテ、日本生
  絲ノ缺點ハ屢〓海外需要地ヨリシテ非難セ
  ラルヽ如ク、寧口水分ノ過多ニアラズシテ、
  ソレハ或ハ纖度ノ不整デアルトカ、類節ノ
  過多デアルトカ、卽チ品位ニ關スルモノガ
  多イノデアリマス、現ニ横濱ニ於ケル所ノ
  生絲輸出會ガ、最近配付致シタ所ノ生絲正
  量取引ニ就テト云フ此「パンフレット」ノ中
  ニ於ギマシテモ、明瞭ニ左樣ニ記載致ジテ
  アルコトデアリマス、「正量取引唱導論者
  唯一ノ論據ハ本邦生絲品質ノ向上ニ資スト
  云フニアリ、然レ共コハ時勢ノ變遷ヲ知ラ
  ザルモノニシテ、十數年前、正量取引ノ初
  メテ唱エラレシ時ハ、或ハ品質改善ヲ目的
  ドセシヤモ計ラレザレ共其後年ト共ニ品位
  改善〓究サレタル結果、今日ニ於テハ各製
  絲家共目方ヲ正量以上ニスル目的ニテ、不
  自然ナル手段ヲ以テ水分ヲ加量スルガ如キ
  モノハ殆〓其跡ヲ絕チ、此方面ヨリノ苦情
  ハ漸ク絕ヱ、今日ノ緊急問題ハ纖度ノ平
  均、細ムラ、或ハ類節ノ改善等ニアリ」斯
  樣ニ申述ベラレテ居ルノデアリマス、之ニ
  依ッテ顧ミマスルナテバ、正量取引ヲ爲セ
  バ、取引ノ公正ヲ期スルコトガ出來マセ
  ウ、併ナガラ品位ノ改善ト云フコトハ到底
  期待スルコトハ出來ナイノデアリマス、ゾ
  レニ付キマシテ政府ハ此正量檢查ノ實施ト
  共ニ、更ニ進ンデ品位ノ檢査ヲ執行スル所
  ノ用意アリマセウカ、ドウカ卽チ品位ノ檢
  査ヲ爲シマシテ、漸次ソレヲ格附儉査ニ及
  ポスト云フコトノ準備ヲ、農林當局ニ於テ
  御持ニナルノカドウカ、此點ヲ承ッテ置キ
  タイノデアリマス、ソレカラ次ニ御問ヲ致
  シタイノハ、正量取引ヲ爲ス爲ニ、我ガ生
  絲質易界ニ重大ナル影響ヲ及ボスノ虞ナキ
  カドウカ、此點ニ在ルノデアリマス、農林
  大臣ノ說明セラレタル如ク、今回生絲正量
  取引ヲ現在開始セラレントスルニ當リマシ
  テ、卽チ昨年ノ四月乃至五月頃ヨリ致シマ
  シテ、此問題ニ付テ橫濱ニ於ケル所ノ輸出
  生絲商會ハ、絕對反對ヲ表シタノデアリマ
  ス、卽チ此所ニアル所ノ「パンフレット」ハ
  其反對ノ理由ヲ明記致シタモノデアリマス
  ガ、ソレニ依リマスルト、ドウシテモ生絲
  ノ正量取引ヲスルト云フコトハ、取引ノ圓
  滑ヲ缺クモノデアル、卽チ從來ヤリ來ッタ
  所ノ方法デ決シテ差支ナイ、ソレヲ證據立
  テル爲ニ幾多ノ事例ヲ擧ゲマシテ、而シテ
  更ニ昨年七月二十八日ト記憶致シテ居リマ
  スルガ、外務省ノ商務書記官ノ紐育ヨリノ
  報告ニ依リマシテモ、其報告ノ中ニハ明ニ
  現行ノ取引規定ニ於テモ決シテ差支ナイト
  云フ報告ヲ致シテ居ルノデアリマス、尙ソ
  レバカリデハナイ、此輸出會ニ於キマシテ
  ハ、色ミノ祕密契約ヲ致シマシテ、吾々輪
  出會ノ目的ニ合致セザル所ノ正量檢査ナラ
  バ、ドウシテモソレニ依ッテ賣買モ取引モ
  致サナイ、斯樣ナ祕密契約ヲ致シテ居ルノ
  デアル、ソレバカリデハナイ、現ニ私ノ友
  人デアル所ノ、日本生絲株式會社專務取締
  役-日本生絲株式會社ハ岩崎家ガ背景ト
  ナッテ居ル所ノ會社デアリマス、卽チ資本
  金ガ僅ニ五百万圓デアリマスケレドモ、
  年一億五千万圓乃至二億万圓ノ輸出ヲ致シ
  テ居ル所ノ會社デアリマス、其專務取締役
  ノ長峰君ガ最近一月二十五日ニ於キマシ
  テ、私ニ對シテ斯樣ニ申サレマシタ、此輸
  出ノ生絲ニ對シテ、今當業者トノ意思ノ疏通
  モ計ラズ、無暗ニ正量取引ヲスルト云フコ
  トハ策ノ得タルモノデハナイ、若モ之ヲ强
  制シテ執行スルト云フコトニナレバ、非常ニ
  取引ノ圓滑ヲ缺クノミナラズ、取引ノ少額
  ヲ來シ、隨テ我ガ生絲貿易ニ重大ナル蹉跌
  ヲ來ス虞ガナイトハ云ヘナイ、故ニ本年ノ
  新繭當時ニ於テ繭ヲ仕入レルニ於テハ、宜
  シク十分ナル注意ヲ致サネバナラヌト云フ
  コトノ好意的ノ注意ヲ致サレタノデアリマ
  ス、是ハ決シテ私捏造シタノデハアリマセ
  又、若シ御疑アレバ、電話ヲ掛ケテ御尋ニ
  ナッタナラバ直ニ明瞭ニナリマス、斯樣ナ
  次第デアリマシテ、此問題ヲ强行スルナラ
  バ必ズ重大ナル結果ヲ來スト云フ證明ヲセ
  ラレテ居ルノデアリマス、而モ現内閣ハ是
  等ニ對シテ何等ノ考慮ヲ煩サズシテ、之ヲ
  强行スル所ノ意見デアリマセウカドウカ、
  之ヲ先ヅ以テ承シテ置キタイノデアリマス、
  ソレカラ更ニ御問ヲ致シタイコトハ、此重
  大ナル取引ノ更新デアリマス、重大ナル生
  絲貿易ノ取引ノ改新デアリマスガ、ソ
  レニ付キマシテ、吾々ノ考フル所ニ依リマ
  スルト、寧口是ハ一箇年位ノ準備制間ヲ置
  イテモ宜シイト思フノデアリマスルガ、現
  ニ「メートル」法ノ實施ニ付キマシテモ、是
  ハ商工業者ノ取引ニ重大ナル關係ヲ有シマ
  スルガ爲ニ、其取引ニ付キマシテハ、五箇
  年ト云フ準備期間ヲ置イタモノデアリマ
  ス、之ニ鑑ミマシテ、此重大ナル所ノ取引
  ノ關係ニ付テハ相當ノ準備期間ヲ置ク必要
  アリト思フガ、政府ハ左樣ニ考ヘナイカド
  ウカ、此點モ承ッテ置キタイノデアリマス、
  ソレカラ更ニ承ッテ置キタイノハ、此輸出
  生絲ノ檢査ヲスルニ當リマシテ、從來ソレ
  ハ任意檢査デアリマシタケレドモ、總テ檢
  査ハ無料デアッタノデアリマス、現行生絲
  檢査法ノ第二條ノ但書ニハ「檢査料ヲ徵セ
  ス」ト斯樣ニ載ッテ居ルノデアリマスルガ、
  今旧提出ノ法律案ヲ見マスト云フト、但書ハ
  削除セラレテ居ルノデアリマス、政府ハ任
  意檢査ノ時代ニ於テ手數料ヲ徴收セバ、然
  ルニ檢査ヲ强制シ、違反スル者ニ對シテハ
  相當ノ罰ヲ加フル條項ヲ設ケマシテ、而モ
  其手數料ヲ徵收スルト云フコトハ、甚ダ不
  條理ノモノト信ズル次第デアリマスガ、政
  府ハ之ニ對シテ如何ナル理由ニ依ッテ檢査
  料ヲ徴收スルコトニ相成ルノデアリマスカ、
  此點ヲ承シテ置キタイノデアリマス、ソレカ
  ラ今早速農林大臣ノ御說明中ニモ、當業者
  ノ諒解ト云フ御話ガアリマシタ、此當業者
  ノ諒解ト云フコトハ之ヲ如何ナルコトニ解シ
  テ宜シイデノアリマセウカ、當業者ノ諒解ナ
  ル言葉ハ之ヲ生絲ノ正量檢査手數料ト云フコ
  トニ解シテ宜シイノデアリマスカ、此事ニ付
  キマシテハ私ハ些末ナ點デアリマスルガ、
  此壇上ヨリ政府ニ對シテ誤リヲ正シテ置キ
  タイト思フ次第デアリマス、政府ハ此取引
  ニ付テ正量檢査ヲ强制スル、ソレニ對シテ
  當業者ノ希望ヲ容レタノデアル、更ニ其費
  用トシテ要スルモノニ對シテ檢査料ヲ徵收
  シテ充ル、是モ亦當業者ノ諒解ヲ得テ居ル
  ト斯樣ニ御話ニナルノデアルカ知リマセヌ
  ガ、是ハ大ナル相違ガアルノデアリマス、
  現ニ去ル十五日、保險協會ニ於テノ生絲業
  者ノ大會ニ於キマシテ、此問題ハ端ナク紛
  擾ヲ來シタノデアリマス、ソレハ斯ウ云フ
  コトデアリマス、卽チ吾々生絲業者ハ大會
  ヲ開キマシテ、其席上ニ於テ强制檢査ヲ爲
  スニ拘ラズ、手數料ヲ徴牧スルト云フコト
  ハ極メテ不合理デアル、其意味ニ於テ之ニ
  對シテ政府ノ考慮ヲ求メルベク集會ヲ致シ
  タ場合ニ於キマシテ、生絲檢査所長芳賀某
  氏ハ一個人ノ資格ヲ以テ其大會ニ臨マレマ
  シテ、其生絲正量取引ニ至ルマデノ經過ヲ
  述ベラレマシタ、其中ニ手數料ノ問題ハ是
  ハ當業者トノ諒解ヲ得テ居ルノデアル、而
  モ蠶絲同業組合中央會、三部會ノ決議ヲ經
  テ居ルノデアルト、斯樣ナ陳述ヲ致シタノ
  デアリマス、是ニ於テ生絲業者大會ハ紛擾
  ヲ來シマシタ、芳賀檢査所長ノ言明セラル
  ル所ニ依レバ、此生絲正量取引ニ關スル檢
  査ノ手數料ハ、之ヲ當業者ガ負擔スベク三
  部會ニ於テ決議ヲ致シテ居ルト云フガ、左
  樣ナコトハナイト云フコトデ非常ナル紛擾
  ヲ來シタ次第デアリマス、其時ニ於テ色ニ
  調査ヲ致シマシタ所、左樣ナ事實ガ無カッ
  タノデアリマス、ソレガ爲ニ再開後ノ大會
  ニ於キマシテ、其三部會ノ決議デナカッタ
  蠶絲同業組合中央會ノ決議デナカッタ
  ト云フコトノ聲明ヲ致シタ次第デアリマ
  ス、然ルニ農林當局ノ言フ所ニ依レバ、此點
  ニ付テハ確ニ諒解ガアッタノデアルト、今
  尙ホ聲明致シテ居ルノデアリマス、果シテ
  然ラバ是ハ公式ニ蠶絲同業組合中央會ニ諮
  問シタ事實ガアルノデアリマスカドウカ、
  此點モ併セテ承シテ置キタイノデアリマス、
  尙ホ幾多ノ質問ガアリマスケレドモ、是ハ
  委員會ニ讓リマシテ、以上列擧致シマシタ十
  數點ニ對シテ、農林當局ノ深切ナル御答辯
  ヲ要求シテ降壇スル者デアリマス
  〔國務大臣早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=80

  ---

• 081・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　只今ノ御尋ニ御
  答ヲ致シマス、先日來本會議若クハ豫算會
  議等ニ於テ御尋ヲ受ケタ問題ト、餘程重複
  ヲ致シテ居ル點モ往々ゴザイマスルカラ、
  成ベク私ハ簡單ニ御答ヲスルコトニ致シタ
  イト思テ居リマス、第一ノ御尋ハ蠶絲業
  ノ根本策ヲドウ考ヘテ居ルカト云フコトデ
  アリマス、根本策ト云フ御尋ノ意味ガ多少
  不明瞭ナ點モアルノデアリマスケレドモ、
  政府ガ蠶絲業ニ對シテ內憂外患ノ裡ニ立。
  テドウ云フ風ニ指導シテ行クカト云フ御言
  葉ガアッタノデアリマス、內憂外患ト云フ
  御言葉ハ恐ラクハ人造絹絲、或ハ支那ノ蠶
  絲アタリノ色と壓迫ヲ受ケテ居ル今日ノ實
  情デハナイカト云フコトヲ意味スルノデア
  ラウト思ヒマス、是ハ先日モ私ガ中シタノ
  デアリマスガ、人造絹絲ニ付テハ固ヨリ樂
  觀スベキモノデハナイガ、併シ私ハ必シモ
  悲觀スベキモノデモナイ、相當ノ注意ヲ拂ノ
  テ蠶絲業ノ改善策ヲ行シテ行ケバ、之ニ對
  抗スルコトハ出來得ナイコトデナイト云フ
  コトヲ御答致シタノデアリマス、無論良キ
  品ヲ拵ヘテ之ヲ安ク海外ニ賣シテ行クト云
  フコトガ、蠶絲業ヲ發達セシムル上ニ於テ
  ノ大ナル問題デアリマスカラ、成ベク品質
  ノ改良ヲ圖リ、同時ニ生產費ヲ安クシテ、
  品物ガ多ク海外ニ賣レテ行クコトヲ圖ラナ
  ケレバナラヌ、卽チ人造絹絲ニ對抗スルニ
  モ、支那ノ蠶絲ニ對抗スルニモ、免ニ角品
  質ノ改善ト云フコトハ大ナル問題デアラネ
  バナラヌノデアリマス、ソレデアリマスカ
  ラ當局トシテハ第一ニ其事ニ注意ヲ拂ッテ
  居ルノデアリマス、良品廉賣主義デ行ク、
  是ハ我ガ蠶絲業ノ根本策トシテ考ヘナケレ
  バナラヌ點デアリマス、前ノ當局者時代カ
  ラ行ハレテ居ル所ノ養蠶、製絲業ニ關スル
  共同施設ト云フコトハ、卽チ是カラ起ッテ
  居ルノデアル、現內閣モ養蠶業ニ關スル共
  同施設ト云フコトニ付テハ、十分努力ヲ致シ
  テ居リマス、現ニ農村振興費トシテ共同繭
  倉庫ノ經營デアルトカ、或ハ乾繭装置ノ助
  成デアルトカ云フコトニ努メテ居ルガ如キ
  ハ、御問ニナッタ隅田君モ能ク御承知ノ通
  リデアリマス、隨テ繭ノ改良ヲ圖ルトカ、
  製絲ノ方法ニ付テ十分〓究ヲ遂ゲテ改良ヲ
  スルト云フヤウナコトノ如キハ、之ニ伴ッ
  テ政府ノ施設シテ居ル事項ノ主ナルモノデ
  アリマス、此等ノ事ハ現ニ政府ガ提出ヲ致
  シテ居リマスル豫算ノ體系ニ付テ御考下
  スッテモ、私ハ大體政府ノ方針ガ何所ニ在
  ルト云フコトハ御認メ下サルコトガ出來ル
  デアラウト思ヒマス、政府ハ固ヨリ此蠶絲
  業ニ重キヲ置イテ居リマス、唯每度中シ
  マス通リニ、此蠶絲業ノ改良發達ヲ圖ルト云
  フコトニ付テモ、是ハ獨リ政府ノ爲ス所ノ
  ミチ、滿足ニ此蠶絲業ノ發展ヲ圖ルト云フ
  コトガ出來ベキモノデハナイ、當業者卽
  チ國民ノ方デモ十分ニ此改良發展ト云フコ
  トニハ努力ヲシナケレバナラヌト云フコト
  ハ無論デアリマスカラシテ、私ハ政府ト致
  シテ何處マデモ此蠶絲業ノ改良發達ト云フ
  コトニハ助長ノ手ヲ弛メナイト同時ニ、國
  民ノ方デモ奮發ヲシテ、官氏一致シテ此事
  業ノ隆興ヲ圖ルト云フコトニ力ヲ致シタイ
  ト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)是ハ恐ラ
  クハ次ノ問ヲ起サルヽ所ノ前提トシテ御導
  ニナッタノデアラウト思フノデアリマス、
  次ニ御尋ニナリマシタノハ蠶絲局ノ問題デ
  アンタ、此事モ前日既ニ御尋ガアッテ、私カ
  ラ御答ヲシタコトガアッタノデアリマス、
  數回御答ヲ致シタノデアリマス、私共モ此
  蠶絲局ノ設置ヲ希望致ス、希望〓スケレド
  モ、財政上ノ都合其他ニ於テ今此蠶絲局ノ
  設置ガ行ハレナイト云フノガ現在ノ事實デ
  アリマス、私ハ之ニ對シテ前日モ御答シマ
  シタ、蠶絲局ノ設置ハ、固ヨリ吾々ハ之ヲ
  希望スルケレドモ、實際今日是ガ行ハレナ
  カッタト致シテモ、私ハ蠶絲業ノ發展ヲ圖
  ル點ニ於テノ責任ヲ取ル上ニ於テハ、蠶絲
  局ノ設置ノ有ルト無イトニ拘ラズ、十分ノ
  責任ヲ盡スト云フ覺悟ヲ持シテ居リマス、
  斯樣ニ御答ヲ致シタノデアリマス、將來好
  キ機會ニ於テ、此蠶絲局ノ設置ヲ見ルコト
  ニナレバ、寔ニ御同慶ノ至リデアリマス
  ガ、今日蠶絲局ヲ設置スルコトハ出來ナイ
  事情ニ在ルカラシア、設置ノ有ルト無イト
  ニ拘ラズ、私ハ十分ノ責任ヲ以テ此蠶絲界
  ノ爲ニ努力ヲ致シタイト考ヘテ居リマス、
  次ガ金融ノ問題ニ付テノ御尋デアッタノデ
  アリマス、勿論總テノ事業ニ付テ金融ノ
  問題ハ件フノデアリマスカラシテ、獨リ蠶
  絲業ノミニ於テ特ニ金融ノ問題ヲ考ヘナ
  ケレバナラヌト云フ譯ニモ參ラヌノデア
  リマス、ガ併シ是ハ卽チ前ニ申ス通リ
  共同施設ヲヤッテ居ル、繭ノ倉庫ヲ設ケル、
  或ハ色〓組合等ノ組織ニ於テ協同ノ施設ヲ
  ヤッテ居ルト云フコトハ、是ハ養蠶業其他製
  絲業ニ對スル相當ノ金融ノ途ヲ開イテ居ル
  所以ナノデアリマス、更ニ製絲家ト、貿易
  業者トノ間ニ於キマシテハ、私ガ申スマデ
  モナク、爲替銀行ガ今日相當ニ此貿易業者
  ニ對シテ努力ヲ致シテ居ルト云フコトハ御
  承知ノ事實デアリマス、是等ノ點ハ矢張政
  府ノ施設ノミデ行ケルノデハナイ、當業者
  ガ信用ヲ重ンジ、其金融機關ヲ利用スルコ
  トニ相成リマスレバ、製絲業者モ、或ハ輸
  出業者モ、或ハ養蠶業者モ、相當ニ金融ノ
  途ニ於テ便利ヲ得ルト云フコトハ出來得ル
  ノデアル、私ハ此點ニ關シテハ將來ニ對シ
  テモ相當ニ力ヲ致サナケレバナラヌト考へ
  テ居ルノデアリマスガ、現ニ今度ノ生絲檢
  査所ノ擴張ニ伴ヒマシテ、橫濱ニ生絲ノ倉
  庫ヲ設ケルコトニナッテ居ルコトノ如キモ、
  是ハ卽チ御承知ノ如ク矢張一般ノ蠶絲業者
  ニ對シテ、金融ノ便ヲ與ヘルト云フ點ニ對
  シテハ、非常ナカニナルコトヽ私ハ信ジテ
  居ルノデアリマス、是ハ總體ニ付テノ隅田
  君ノ御尋デアッタノデアリマス、大體私ハ御
  答ヲ致シテ置イタノデアリマス、ソレカラ
  其次ガ儉查法、今回提出致シタ檢査法ニ關
  係ノアル點ノ御尋デアリマス、是モ簡單ニ
  御答致シマスガ、第一ハ正量檢査ヲヤッテ
  モ品位檢査ヲヤラナケレバ效能ガ無イデハ
  ナイカ、斯ウ云フ意味ノ御尋デアンタト思
  ヒマス、是ハ御說御尤デ、私モ矢張左樣ニ
  考ヘテ居リマス、品位ノ檢査ヲシナケレバ
  唯〓正量檢査ノミデハ生絲ノ聲價ヲ高メ、
  生絲ノ信用ヲ高メル上ニ於テ不十分デアル
  コトハ無論デアリマス、此故ニ今日現ニ生
  絲檢査所ニ於キマシテハ、品質ノ檢査ト云
  フコトヲ行ッテ居ルノデアリマス、併シ是ハ
  將來十分ニ擴張シテ、此品質ノ檢査ニ付テ
  ハ尙ホ此以上ニ手ヲ延スト云フ計畫ハ立ノ
  テ居ルノデス、又格附ト云フ點ニ於キマシ
  テモ、今頻ニ調査ヲ進メテ居ルノデアリマ
  スカラ、他日格附ノ實行ト云フコトモ出來
  得ルコトヽ私ハ確信ヲ致シテ居ルノデアリ
  マス、正量ノ檢査ハ、一向品位ノ改良ニハナ
  ラヌデハナイカト云フコトヲ附ケテ御述ニ
  ナノタノデアリマスガ、是ハ前刻モ申シタノ
  デアリマス、水分ノ檢査ヲシテ成ベク水分
  ヲ少クスルト云フコトハ、成ベク水分ヲ少
  クスルト云フ習慣ヲ作ルコトニナル、水分
  ヲ少クシテ之ヲ取引スルコトニナレバ、是
  ハ其點ニ於テ既ニ品位ノ向上ヲ圖ル所以デ
  アルト私ハ信ジマス、殊ニ水分ノ多イモノ
  ハ、貯藏シテ置イテモ、動モスレバ品質ヲ
  損傷スル虞ガアリマスカラシテ、正量ノ檢
  査ト云フコトハ、正シク品位ノ向上ヲ意味
  スルト云フコトハ御諒解下サルコトガ出來ルト
  思フ、其次ニハ生絲貿易界ニ大ナル影響ヲ及
  ポシヤシナイカト云フ御說デアル、其趣意
  ハ輸出商ハ反對ヲスル、現在ノ取引デモ差
  支ナイト言ンテ居ル、此法律ヲ施行スレバ、
  生絲質易界ニ大ナル影響ヲ及ボスノデアラ
  ウト云フ御推測デアルノデアリマスガ、私
  ハ隅田君ノヤウニハ考ヘテ居ラヌノデアリ
  マス、現在此正量ノ取引ト云フコトニ付キ
  マシテハ或ハ輸出商ノ一部ニ於テハ、多
  少之ヲ喜バナイ者ガアルカモ知レマセヌ、
  併シ是ハ僅ニ一部ノ者ニ止マルト私ハ存ジ
  甲や、大體ニ於テ我國ノ生絲貿易ノ發達ヲ
  圖ル者ガ、正量ノ取引ヲスルコトニ反對ガ
  アルベキ筈ハナイ、私ハ今其理由ハ此席デ
  ハ申述ベマセヌ、何レ委員會等デ詳シク申
  述ベル積リデアリマスガ、要スルニ正量取
  引ハ海外ニ對スル我ガ生絲ノ信用ヲ高メル
  所以ニ外ナラナイ、而シテ品位ノ向上ヲ圖
  ルト云フコトハ之ニ伴フノデゴザイマスカ
  ラシテ、當業者ノ間ニ正量取引ヲ行フコト
  ニ付テ反對ノアルベキ筈ハナイト思フ、唯こ
  一部ニ於キマシテハ、己ノ利害關係カラ
  シテ、或ハ之ヲ善バナイ者ガアルカハ知レ
  ナイガ、是ガ爲ニ貿易界ニ大影響ヲ及ボス
  ト云フヤウナコトハ斷ジテ私ハ無イト信ジ
  マス、ソレカラ其次ハ斯ウ云フコトヲ實
  行スルニ付テハ多少ノ猶豫期間ヲ置ク必要
  ガアルカト思フガドウカト云フ御尋、是ハ
  此法律ヲ實行スルノハ勅令ヲ以テ施行ノ日
  ヲ定メル積リデアルカラシテ、之ヲ何時ヨ
  リ實施スルカト云フコトハ、何レ〓究ノ上
  決定ヲスル積リデアルノデアリマス、ソレ
  カラ其次ガ檢査ノ手數料ニ關シテノ御尋デ
  アタノデアリマス、檢査ノ手數料ヲ課スト
  云フコトハ、大變ナ問題デアルカノ如クニ
  隅田君ハ御述ニナッタヤウデアリマスケレ
  ドモ、私ハ此手數料ヲ取ルト云フコトハ
  サマデ重大十問題トハ考ヘテ居リマセヌ、
  此檢査ヲ實行スルト云フコトニ付テ關係者
  カラ僅ノ手數料ヲ取ルト云フコトハ、何ガ
  惡イカト斯樣ニ私ハ御尋シテ見タイ位デア
  ル、金ト致シマシテハ極メテ僅デアンテ、之
  ヲ國民カラ取ルト云フコトニナレバ、或
  反對ガアルデアラウ、事業ヲシテ行ク上ニ
  於テ其費用ヲ直接ノ關係者カラ取ルト云フ
  コトハ當リ前ノ話デナイカ、私ハ此生絲貿
  易ノ盛ナル今日ニ於テ、益〓此貿易ヲ盛ニ
  シヤウト望ム所ノ此計畫ニ對シテハ、當業
  者ガ若干ノ手數料ヲ拂フト云フコトハ、決
  シテ是ハ其當業者ニ對スル打擊ニモ何ニモ
  ナラナイ、當リ前ノコトデアラウト考ヘテ
  居ルノデアリマス、之ニ對シテ若シ異議ガ
  アルト致シマスルモ、私ハ是ハ唯、矢張少
  數ノ者ノ異議ニ止ッテ、多數ノ者ハ決シテ之
  ニ異議ヲ容ルヽノ餘地ハ無イト斯樣ニ考へ
  テ居ルノデアリマス、大體ハ是デ御答ガ済
  ンダラウト思フノデアリマス、若シ落チタ
  所ガアリマスレバ尙ホ重ネテ御尋ニ依シテ
  御答致シテモ宜イ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=81

  ---

• 082・隅田豐吉

  ○隅田豐吉君　簡單デスカラ當席カラ御許
  シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=82

  ---

• 083・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=83

  ---

• 084・隅田豐吉

  ○隅田豐吉君　只今農林大臣ノ懇々御答辯
  ヲ拜聽致シマシタコトヲ感謝致シマス、併
  ナガラ農林大臣ノ御谷辯中ニ、最初ノ本員
  ノ質問ト最後ノ檢査料ニ對スル答辯ト之ヲ
  綜合致シテ見マスルト、非常ニ矛盾ヲ致シ
  テ居ルノデアリマス、又檢查ノ手數料ハ僅
  デアルカラ當業者ガ出シテモ宜イ、併シ從
  來自由檢査ノ時代ニ於テ手數料ヲ徵收シナ
  カンタモノヲ、只今農林大臣ノ答辯ニハソレ
  ハ當業者トシテ僅ノ者ガ反對スルデアラウ
  ト云フガ、農林大臣モ御承知デアリマセウ、
  去ル十五日生命保險協會ニ於ケル大會ノ模
  樣ヲ-全國ノ主ナル所ノ製絲家ガ皆集。ツ
  テ居ルノデアリマス、而シテ此檢査料ヲ取
  ラナイヤウニ懇願ヲ致シテ居ル次第デアル
  ノデアリマス、デソレ等ノ點ニ付キマシテ
  ハ、何レ委員會ニ於テ詳細御質問致ス次第
  デアリマスガ、唯、一言申上ゲテ置キタイコ
  トハ農林大臣ノ只今ノ御答辯中ニ、輸出
  會ノ反對ヲシテ居ルノハソレハ輸出商ノ
  僅ナ者ダケデアルト云フ御話ガアリマシタ
  ガ左樣デハアリマセヌ、横濱生絲輸出會ハ
  三井物產株式會社、日本生絲株式會社、原
  輸出部-ト云フヤウナ有力ナル會社ガ輸
  出會ヲ組織致シテ居ルノデアッテ、現在找ガ
  横濱及神戶ヨリ輸出スル所ノ生絲ノ約八割
  以上ヲ取扱ッテ居ルノデアリマス、殆ド八割
  以上ヲ取扱シテ居ル所ノ此輸出會ニ於テ相
  團結シテ、而シテ「パンフレット」ヲ配付シ
  マシテ、之ニ絕對反對ヲ致シテ居ルノデア
  リマス、現ニ其輸出會ハ祕密契約ヲ致シ
  テ-取引ヲシナカッタナラバ決シテ賣買
  ヲシナイ、斯樣ナコトヲ言。テ居ルノデ
  アリマス、而シテ此實施期ハ本年ノ八月デ
  ハアリマセヌカ、八月ト云ヘバ新絲ノ出盛
  リノ時デアリマセウ、其時ニ於キマシデ(低
  聲聽取スル能ハズ)···致シマシタナラバ
  此生絲貿易ニ重大ナル阻碍ヲ來スモノト謂
  ハザルヲ得ナイノデアリマス、私ハ是ガ故
  ニ「メートル」法實施ノ如ク此生絲正量取引
  ニ付テ少クトモ(低聲聽取スル能ハズ)
  位ノ猶豫ヲ置イテハドウカト云フコトヲ好
  意的ニ農林當局ニ警告ヲ致シテ居ル次第デ
  アルノデアリマス、其他ノコトハ委員會ニ
  於テ答辯ヲ要求改シマスガ、只今ノ農林大
  臣ノ答辯ノ本員ノ質問ニ當ノテ居ラナイト
  云フコトヲ、此ニ告白ヲ致シテ置キマス
  〔國務大臣早速整兩君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=84

  ---

• 085・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　檢査手數料ノ事
  ニ付テ重ネテ御意見ヲ御述ニナッタノデア
  リマス、輸出商ノ一部ノ者ニ手數料ヲ課サ
  レルトカ、正量取引ヲヤルト云フコトニ付
  テ異議ノアル者ガアルデアリマセウケレド
  モ、私ハ全體ガ左樣デハナイト信ズル、而
  シテ日本全國ノ製絲家ノ利害ハドウデアリ
  マセウカ、私ハ製絲家トシテ此正量取引ニ
  反對スル者ガアルト御述ニナルノハ、事實
  ガ間違ヲテ居ハシナイカト思フ、製絲家トシ
  テハ非常ナ利益ニナルベキ筈ノ此施設デア
  ルカラシテ、之ニ對シテ製絲家全體ナドハ
  喜ンデ此案ヲ迎ヘナケレバナラヌト私ハ信
  ジテ居ルノデアリマス、尙ホ十五日ノ會云
  云ノコトハ私ノ存ジナイ所デアッテ、其會ノ
  內容ガ如何デアッタカト云フコトハ、今私ハ
  之ヲ穿鑿スル必要モ何モナイノデアリマ
  ス、輸出商ノ中デモ强テ此案ニ反對スル人
  ガアルトスレバ、私ハ進ンデ其誤解ヲ解キ
  タイト考ヘテ居ルノデアリマス
  〔加藤知正君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=85

  ---

• 086・加藤知正

  ○加藤知正君　私ハ暫時席ヲ離レテ居リマ
  シタ爲ニ、同僚ノ隅田君ガドウ云フ質問ヲ
  セラレタカト云フコトヲ能ク存ジマセヌ爲
  ニ、或ハ重複スルヤウナ點ヲ加尋ネ申上ゲ
  ルカモ知レマセヌガ、農林大臣ハ其御積リ
  デ明快ナル御答辯ヲ賜リタイコトヲ希望致
  シテ置キマス、此生絲ノ正量取引ト云フコ
  トハ、是ハ今言フ迄モナク生絲ヲ無水分ニ
  乾燥致シマシテ、其時ノ目力ニ一割一分ヲ
  加ヘタモノデアリマシテ、之ヲ正量ト稱ヘ
  テ居ル、是ハ西曆千八百四十一年ニ佛蘭西
  ノ里昂ニ於テ製絲家ト學者トガ相集ノテ、サ
  ウシテ生絲ノ水分ハ此位ガ適當デアラウト
  云フ所カラ之ヲ協定致シタノガ、抑生絲
  ノ正量取引ノ起リデアルノデアル、是ハ萬
  國ガ之ヲ公認シテ居ル、併ナガラダ-併
  ナガラ此生絲ノ正量取引ヲヤッテ居ル所ハ
  僅ニ歐羅巴ノ一部デアル、此世界ノ生絲ノ
  產額中、僅ニ一割何分サヘ產シテ居ラヌ所
  ノ歐羅巴ニ於テ、此正量取引ナルモノハ行
  ハルルニ過ギナイ、現ニ隣ノ支那ニ於キマ
  シテモ正量取引ハヤッテ居ラナイ、世界產額
  ノ七割餘ヲ占ムル所ノ我國ニ於テモ、未ダ
  曾テ正量取引ハシテ居ラヌノデアル、故
  生絲輸出業者ノ意見ト致シテハ從來ノ此生
  絲取引ノ方法ガ何ノ不足ガアルカ、何モ歐
  羅巴デ正量取引ヲヤッテ居ルカラ、我ガ日本
  ガ之ヲ眞似ヲセンケレバナラヌト云フ必要
  ガ何所ニアル、强テ之ヲ眞似センケレバナ
  ラヌト云フコトハ甚ダ其意ヲ得ヌコトデア
  ル、殊ニ今日ニ於テハ製絲家モ非常ナル所
  ノ進步ヲ致シテ、正量ノ上ニ故ラニ水分ヲ
  加ヘテ之ヲ販賣スルト云フヤウナ-生絲
  市場ニ出スヤウナ左樣牛橫著ヲ極メ込ム所
  ノ製絲家ハ只ノ一人モナイノダ、今日ニ於
  テハ正量取引ヨリモ寧ロ生絲ノ纖度ノ平均
  トカ、或ハ細ムラトカ、類節等ノ改善ガ我
  ガ蠶絲業界ノ急務デアルノデアル、其急務
  ナルモノヲ差措イテ、今俄ニヤラヌデモ宜
  イ所ノ正量取引ヲヤラナケレバナラヌト云
  フコトハ何事デアル、斯樣ナ意見スラ唱ヘ
  テ居ル者ガアルノデアル(「評判ガ惡イ」ト
  呼フ者アリ)如何ニ評判ガ惡クテモ構ハヌ、
  吾々ハ帝國ノ大生產業タル所ノ生絲ノ爲ニ
  ハ一身ヲ投棄テヽヤラナケレバナラヌ、
  諸石ガ如何ニ反對シヤウトモ、彌次ラウト
  モ、僕ノ言ハントスル所ハ何所マデモ言ハ
  ヌ中ハ此壇上ハ降ラヌノダ(此時發言スル
  者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=86

  ---

• 087・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜〓ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=87

  ---

• 088・加藤知正

  ○加藤知正君(續)　政府當局ハ此點ニ於テ
  如何ナル所ノ御考ヲ御持チニナルカ、只今
  全國ニ於テ各製絲業者ハ一人モ此正量取引
  ニ反對スル者ハ無イト仰シヤッタケレドモ、
  現ニ我ガ生絲ノ死命ヲ持シテ居ル所ノ橫濱
  ノ生絲輸出業者ハ、之ニ反對ノ意見ヲ表明
  シテ居ルデハアリマセヌカ、貴方ハ輸出業
  者ノ一部デアルト仰シヤルケレドモ、サウ
  デハアリマセヌ、現ニ前ノ隅出君ノ示サシ
  タ所ノ「パンフレット」ニ生絲輸出業者ノ全部
  ガ署名〓シテ居ルデハアリマセヌカ、尙ホ
  私ガ御尋以シタイノハ、此正量檢査ヲオヤ
  リナサルニ付アハ幾多ノ曲折ガアルノデア
  リマス、決シテ單純ニ今日ニ及ンダノデハ
  ナイ、輸出業者ハ專ラ之ニ反對シタノデア
  ル、所ガ其輸出業者ノ反對〓シタノヲソレ
  ヲ敬回致シテ、免モ角モ之ニ賛成ヲシヤウ
  ト致シタノハ、政府案其モノニ直グニ贊成
  ヲシヤウト致シタノデハナイノデアル、詰
  リ正量檢査ハ生絲檢査所ニ於テ之ヲ行フ、
  減量檢査ハ輸出業者ノ倉庫ノ中ニ於テ之ヲ
  行フ、而モ其減量檢査ナルモノハ賣買兩業
  者ノ立會デ之ヲ儉查スルト云フ所ニ於テ、
  初テ妥協ガ成立ッタノデアリマス、初テ此
  正量取引ト云フコトニ對シテ輸出業ガ之ニ
  賛成ヲ致シタノデアリマス、然ルニ政府ハ
  强壓手段ニ出テ、サウシテ何所マデモソレ
  ハサセルコトハ出來ナイ、減量檢查モ正量
  檢査モ、生絲檢査所ニ於テ之ヲ行ハナケレ
  バナラナイ、オ前等ガ如何ニ之ニ反對致シ
  テモ、何所マデモ是ハ政府ノ權威ヲ以テ之
  ヲ實行スルト云フ强壓手段ニ出テ、無理ヤ
  リニ之ヲ押付ケタガ爲ニ、輸出業者ハ仕方
  ガナイ、政府ガ左樣ナ決意ヲ以テヤラレル
  以上ハ、已ムヲ得ヌカラ吾々ハソレニ應ズ
  ルト云フコトニナッタノデアル、是ガ干涉
  デナクテ何デアルカ、人權ヲ重ンズル所ノ
  現内閣ガ、斯樣ナ干涉ヲ敢テ致シテ居ルノデ
  アル(此時発言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=88

  ---

• 089・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=89

  ---

• 090・加藤知正

  ○加藤知正君(續)　斯樣ニ强壓的ニ之ヲ實
  行セシムルヤウニシテ、サウシテ其儉査手
  數料ヲ取ルトハ何事デゴザイマスカ、當業者
  ノ方カラシテ希望ヲ致シテ檢査ヲ致シテ居
  リナガラ、其檢査ハ從來一文モ之ヲ徴收シ
  タコトハナイノデアル、然ルニ飽迄モ之ニ
  反對致シテ居ル者ノアルニモ拘ラズ、無理
  ヤリニ之ヲ押付ケテ置イテ、サウシテ强制
  的ニ之ヲ實行シヤウト致シテ居リナガラ、
  其檢查ノ手數料ヲ取ルトハ何事デアル、而
  モ其檢査手數料ナルモノハ僅デアルカラ、
  決シテ當業者ノ苦痛ハ何デモナイト云フコ
  トヲ言ハレタ、是ハ飛ンデモナイ話デア
  ル、私ハ其數字ヲ玆ニ列擧致シマセウ、其
  檢査手數料ナルモノハ四十万梱ト致シマス
  ナラバ、ドノ位ノ費用ガ掛リマスカ現在ニ
  於キマシテハ十斤ニ於テ十圓五十錢ノ檢査
  手數料ヲ取ルト云フコトニナッテ居ル、是
  ガ四十方梱ノ上ニ於キマシテハ四十万以上
  ノ手數料ヲ取レルノデアル、四十万以上ノ手
  數料デアル、單ニ是ノミナラバ宜イノデス、
  私ハ此數字ニ付テ御問申シタイノハ、此四
  十万以上ノ手數料ハ製絲家カラ取ル積リデ
  アルカ、或ハ輸出業者カラ取ル積リデアル
  カ、如何ナル當業者カラ之ヲ徴收セラレル
  御考デアルカ、之ヲ伺ヒタイ、尙ホ此手數
  料ノ外ニ今度ハ輸出業者ノ方ガ無理ヤリニ
  押付ケラレタカラソレハ已ムヲ得ナイ、所
  ガソレニ付テハ輸出業者ノ方デハ今度ハ從
  來貫々料トシテ取シテ來タモノ以外ニ、今度
  ハ荷造等ノ費用ト致シテ、一梱ニ付テ一圓
  宛ノ手數料ヲ貰ヒタト云フコトヲ要求シテ
  居ルノデアリマス(「止メ給ヘ」ト呼フ者ア
  リン生絹ヲ止メタラ君方ハ首ヲ縊ラナケレ
  バナラヌ、詰リ正量檢査ヲバ無理ヤリニ之
  ヲヤラスト云フコトノ結果ハ横濱ノ輸出
  業者ハ保管料ト致シマシテ一梱ニ付テ一圓
  宛要求スル、ソレカラ尙ホ見本用トシテ拜
  見後千斤ニ付テ十綛ヲ拔取ルコトニナッテ
  居リマスガ、其十綛ヲモ輸出業者ハ自分ノ
  方へ貰ヒタイト云フコトヲバ言出シテ居
  ル、又品質檢査供試絲竝ニ此見本絲ハ、無
  償ニテ買手ノ方へ提供シテ貰ヒタイト云フ
  コトヲ申出テ居ル、是等ヲバ合算ヲ致シテ
  見マスト、其金額ハ五百六十六万圓カラニ
  ナルノデアリマス、之ニ更ニ今ノ檢査手數
  料ナルモノガ若シ製絲家ノ方カラ出サネバ
  ナラヌト云フコトニナリマスト、四十万圓
  ノモノガ之ニ加ハルコトニナル、尙ホ是ガ
  輸出業者ト、製絲家トガ半々ニ分ケルコト
  ニナリマシテモ、二十万圓ノ金ヲ負擔シナ
  ケレバナラヌコトニナルノデアリマス、斯
  ウ云フヤウナ六百万圓ニ近イモノヲバ製絲
  業者ガ負擔シナケレバナラヌコトニナルノ
  デアル、之ヲシモ苦痛デナクテ何ガ苦痛デ
  ゴザイマセウカ、而モ是等ノ費用ト云フモ
  ノハ掛カル所ハ何所ニ掛カルカト云ヘバ、全國
  百八十万ノ養蠶家ノ背ニ結局ハ掛カルト云
  フコトニナルノデアル、現內閣ハ社會政策
  ト致シテ僅ノ通行稅ヤ、或ハ醬油稅ヤ、綿
  織物稅ヲ廢スルト云フヤウナコトヲ言ヒナ
  ガラ、是ダケ重大ナル所ノ負擔ヲ全國百八
  十万ノ養蠶家ニ負ハセルト云フコトニナル
  ノデアル、是デモ政策本位ヲ標榜スル所ノ
  內閣ト云ハレルカドウカ、尙ホ私ハ此際ニ
  於テ御伺ヲセナケレバナラヌコトハ、現
  輸出業者ハ斯樣ナコトヲ言ッテ居ル、生絲正
  量取引ヲ實行スル爲ニ我ガ日本ニ於テ生ズ
  ル所ノ損失ハドノ位ニナルカ、卽チ目方ノ
  上ニ損失トシテハ五百六十万圓カラ損スル
  コトニナル、正量檢査料ノ損失ハ四十一万
  六千圓ニナル、運搬料、保險料ノ損失ハ三
  十二万圓ニナル、又金利ノ損失ハ百十五万
  二千圓ニナル、合計七百四十八万八千圓ノ
  損失ヲ我國ニ於テ生ズルコトニナル、而シ
  テ米國ニテ生ズル輸出商ノ被ル損失ハドノ
  位ニナルカト云フト、是ハ日本ノ正量ト米
  國ノ正量トノ差ヨリ生ズル損失約百六十二
  万圓、正量檢査料ノ損失ガ九十八万八千
  圓金利ノ損失ガ四十四万四千圓、合計三
  百五万二千圓ト云フ數ニナル、之ヲ前ノモ
  ノト合算致シマスルト云フト、總計ニ於テ
  約千五十四万圓カラノ損失ニナルト云フコ
  トヲ輸出業者ハ玆ニ印刷物ニ致シテ吾々ノ
  手許ヘ配布シテ居ルノデアル、是ダケノ多
  大ノ損失ヲ生ズルノヲ、之ヲ何ト御覽ニナ
  ルカ、政府當局ハ若シ是ダケノ損失ヲ生ゼ
  ヌト云フコトナラバ、數字ヲ以テ之ヲ否定
  セラレル所ノ理由ヲ明ニシテ貰ヒタイノデ
  アル(拍手)唯、徒ニ正量取引ニスレバ是ガ
  直グニ日本ノ利益ニナルトカ、當業者ノ利
  益ニナルトカ云フノミノ御考デハイケマセ
  又、ソレダケノ御說明デハ吾々ハ滿足スル
  コトハ出來ナイノデアル、正量取引ヲ實行
  セラレル以上ニ於キマシテハ、十分確乎タ
  ル所ノ理由ガナケレバナラヌト吾々ハ信ズ
  ルノデアル、其點ニ於テ十分吾々當業者ノ
  滿足ノ行クヤウニ御說明アランコトヲ希望
  致シマス(拍手)
  〔國務大臣早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=90

  ---

• 091・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　御答ヲ致シマ
  ス、加除君ハ詰リ正量取引ニ反對ノ御意見
  ヲ御持ニナッテ居ルガ爲ニ、免角正量取引ハ
  イカヌト云フコトヲ御申述ニナッテ居ルノデ
  アリマス、私ハ前刻カラ申シマス如ク、兔
  ニ角此正量取引ヲ行フト云フコトニ依シテ、
  日本ノ蠶絲業ニ對シテ利益ヲ與ヘルト云フ
  コトヲ疑ハナイ、此事ニ付テ尙ホ私ハ一言
  申シテ置キタイト思フノデアリマスガ、歐
  羅巴ニ正量取引ガ行ハレルカラトテ、其眞
  似ヲスル必要ハナイト云フ御話デアリマス
  ケレドモ、必ズシモ直似ヲスルト云フ意味
  デハナイ、唯〓併シ日本ノ生絲ハ海外ニ於
  ヲ消費セラレテ居ルノデアリマスカラ、其
  點ハ考ヘナケレバナラヌ、海外市場ノ情況
  ハ考ヘナケレバナラヌ、正量取引ト云フモ
  ノハ全ク世界的デアリマセンカ、ソレ故ニ
  詰リ正量取引ヲ行フト云フコトハ、要スル
  ニ矢張日本ノ生絲ノ聲價ヲ海外ニ向上セシ
  ムル所以ニナルト云フコトダケハ私ハ之ヲ
  疑ハナイ、日本ノ生絲ハ段々品質ハ向上シ
  テ來テ居リマス、ケレドモ愈〓水分ヲ混ゼ
  テ之ヲ輸出スルト云フコトニナレバ、何ト
  ナク日本ノ生絲ハ品質ガ惡イガ如ク思ハレ
  テ居ル、ソレヲ此正量取引ニ代ヘルト云フ
  コトニナレバ、如何ニモ日本ノ生絲ノ品質
  ノ向上ト云フコトヲ海外ニ知ラシムルト云
  フ點ニ於テハ大ナル利益ガアルデハアリマ
  セヌカ、ソレカラ事實前刻申シマシタ通リ
  ニ、水分ヲ低減スルト云フコトニナッテ參
  ルノデアリマスカラ、勢ヒ品質ヲ向上セシ
  ムルト云フコト、品質ヲ改良スルト云フコ
  トガ、其實績ヲ示スコトガ出來ルト云ノ
  コトモ疑ヲ容レマセヌ、ソレデアルカフ、
  其點ニ於テ取引ノ公正圓沿ヲ圖ルコトガ出
  來ルト云フコトモ、是ハ疑ヲ容レナイノデ
  アリマスカラ、私ハ此止量取引ト云フコ
  トハ生絲業ノ將來ノ發展ヲ圖ル上ニ於テ、
  洵ニ利益ノアル、少シモ損失ヲ感ジナイ一
  ツノ計畫デアルト信ズルノデアリマス、唯、
  加藤君ノ今御述ニナリマシタノハ、輸出商
  ガ計算ヲシテ、是レ々々ノ損失ガアルカラ
  シテ、一千万圓以上ノ損害ヲ被ルコトニナ
  ルト云フヤウナ數字ヲ擧ゲテ御述デアッタ
  ノデアリマスガ、私ハ此輸出商ガ揭ゲタル數
  字ニ付テハ全部ヲ信用スル譯ニ行カナイノ
  デアリマス、何レ是ハ委員會等ニ於テ其數
  字ニ付テハ十分私共ノ所信ヲ申上ゲル機會
  ガアラウト思ヒマスガ、加藤君ノ今御述ニ
  ナリマシタ數字、卽チ日本ノ貿易上是ダケ
  ノ損ガアルト仰シヤッタ所ノ此數字ハ、私ハ
  其全部ヲ信ズル譯ニ參ラヌノデアリマス、
  又當業者ガ反對スル、政府ハソレニ對シテ
  非常ナ壓迫ヲ試ミタ、干涉ヲ試ミタナドヽ
  云フ御說ヲ御述ニナッタノデアリマスケレ
  ドモ、是ハ事實ガ間違ノテ居ル、政府ハ決シ
  テ當業者ニ對シテ干涉壓迫ヲ試ミタル覺エ
  ハナイノデアリマス、唯〓輸出業者ト製絲
  業者ノ間ニ意見ヲ異ニシタノガアッタト云
  フコトハ事實デアリマス、其中間ニ立ッデ調
  和ヲ圖ノタ、卽チ蠶絲業同業中央會ト云フモ
  ノガ、其中間ニ立ッテ、調和ヲ圖シタト云フ
  事貫ハアルノデアリマス、其中央會ノ意見
  ニ依シテ、私共ノ當局者トシテノ意見ヲ述べ
  タト云フコトハ事實アルニ相違ナイノデア
  リマスケレドモ、要スルニソレハ彼等當業
  者ノ調和ヲ圖ルト云フ手段ニ外ナラナカ
  タノデアッテ、決シテ之ニ向シテ壓迫ヲ加ヘ
  タトカ、干渉ヲ加ヘタト云フヤウナ事實ハ
  斷ジテ無イノデアリマス、私ハ此手數料ヲ
  取ルト云フコトハ、蓋シ今日ニ於テハ已ム
  ヲ得ナイト考ヘテ居ル、加藤君ノ御述ニナッ
  タノハ、從來ハ任意ニ檢査ヲシテ居ッタノ
  デアルケレドモ、檢査料ヲ取ラナカッタ、
  今度ハ强制デ檢査ヲスルノニ檢査料ヲ取ル
  ノハ間違ノテ居ルヂヤナイカト云フ御尋デ
  アリマスガ、從來ノ例ハ今日ノ例トハナラ
  又、洵ニ生絲業ノ幼稚ナル場合、頗ル幼稚
  デアッテ、殆ド引張ノテ行カナケレバナラヌ
  ト云フ程幼稚デアッタ場合ニ於テハ、ソレハ
  儉査料ヲ取ルナント云フコトハ、其當時デ
  ハ出來得ナカッタ事情ガアリマス、故ニ今日
  マデハ此儉查料ヲ取ラナカッタ、當業者ヲ苦
  メナカッタ、併シ今日ノ如ク蠶絲業ガ發達
  ヲシテ參ッタ場合ニ於テハ、若干ノ手數料ヲ
  取ルト云フコトハ、私ハ當業者ニ對シテ左
  マデノ苦痛ヲ與ヘルコトハナイト信ジテ居
  ルノデアリマス、非常ニ檢査料ガ高イ、檢
  査料モ随分重イ負擔ニナルト云フヤウニ御
  述ニナリマシタケレドモ、今日貿易ノ品ト
  〓シマシテハ、輸出ノ羽二重アタリノ檢查
  料是モ强制檢査デヤッテ居ル、此檢査料ト
  云フモノハ千分ノ一、五ニ當ッテ居リマス、今
  囘實行セントスル生絲ノ正量檢査料ハ一万
  分ノ五デアル、輸出ノ羽二重ノ檢査料ナド
  ニ較ベレバ、殆ド較べ物ニナラヌ程是ハ安
  イノデアル、貿易ト云フコトヲ離レテ、內
  地ノ生產ニ付テ强制檢査ヲ行ッテ居ル品物
  ヲ數ヘテ見テモ、或ハ府縣デ行ッテ居ル米ノ
  强制檢査ヲヤッテ居ル檢査料ト云フモノハ
  千分ノ五·二九、小麥ニ於テモ千分ノ七·四
  五、斯ウ云フヤウナ手數料ヲ徵收致シテ居
  ルト云フ例ガアルノデアリマスカラ、サウ
  云フモノニ比スレバ今日ノ隆々トシテ進ン
  デ居ル所ノ養蠶製絲業ト云フモノニ對シテ、
  僅ニ一万分ノ五位ノ手數料ヲ徴收スルト云
  フコトハ、決シテ高イモノデハナイト私ハ
  信ジテ居ルノデアリマス、尙ホ色と御述ニ
  ナッタ點ハアリマスケレドモ、是ハ委員會等
  デ詳シク申上ゲルコトニシテ、私ハ大體是
  ダケヲ御答致シテ置キマス(拍手)、
  〔加藤知正君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=91

  ---

• 092・加藤知正

  ○加藤知正君　農林大臣ハ私ガ正量檢查ヲ
  スルニ反對ヲスルト云フ御言葉デアッタケ
  レドモ、私ハ反對シマセヌ、唯〓斯ウ云フ
  反對意見ガアルガ、之ニ就テノ御考ハドウ
  デアルカト云フコトヲ御尋申上ゲタノデア
  ル、又今日ノ手數料ナルモノガ僅デアル、
  隆々ト進歩シテ居ル所ノ蠶絲業ニ於テ是バ
  カリノモノガ何デアルカト仰シヤルケレド
  モ、要スルニ此檢査手數料ト云ヒ、又此輸出
  業者ガ製絲家ニ要求スル所ノ、此五百六十
  万圓カラノ費用ト云ヒ、結局及ボス所ハ、
  是ハ養蠶家ガ負擔シナケレバナラヌト云フ
  コトヲ貴方ハ御認メニナリマセヌカ(「此方
  ヲ向イテヤレ」ト呼フ者アリ)宜シイ、何所
  ヲ向イテヾモヤラウ、此六百万圓前後ノ費
  用ト云フモノハ、結局ハ製絲家デナクシ
  テ、及ボス所ハ養蠶家ガ負擔センケレバナ
  ラヌ、其養蠶家ナル者ハ中產以上ノ者ガ蠶
  ヲ飼フノデナイ、中產以下ノ者ガ蠶ヲ飼フ
  ノデアル、サウ云フヤウナ所ニ是等ノ負擔
  ヲ轉嫁セシメテ、ソレデモ何等ノ苦痛ガナ
  イト仰シヤルカドウカ、社會政策ト云フコト
  ヲヤカマシク言ヒナガラ、是バカリノ費用
  ガ何デアルカトハ何デアル(此時發言スル
  者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=92

  ---

• 093・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　靜ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=93

  ---

• 094・加藤知正

  ○加藤知正君(續)　序ニ御伺致シマスガ、
  今日此正量檢查ヲ御ヤリニナルハ宜イガ、
  品位檢査ヲヤラナケレバ實際ノ效果ハナイ
  ノデアル、品位檢査ハ何時之ヲオヤリニナ
  ルノデアリマスカ是ハ生絲檢査所ノ内部ノ
  設備ガ整シテカラ後ニヤルト仰シヤルカ知
  レマセヌガ、然ラバ此正量檢査ナルモノハ、
  其時始メテヤッテ宜イノデハアリマセヌカ、
  是ハ内地ノミニ止メル御考デアルカ、外國
  マデモ此正量檢査ノ效果ヲ及ボス積リデア
  ルカドウカ、若シ是ガ外國マデ及ポス御考
  デアリマスナラバ、品位檢査ト正量檢査ト
  ガ相伴ハナケレバ、何等ノ效果ハナイノデ
  アル、其點ニ於テ矢張御考ヲ御持デナイノ
  デアリマスカ、之ヲ一ツ御伺ヲ申上ゲタイ
  ノデアリマス、尙ホ此輸出業者ノ擧ゲタル
  數字ハ、是ハ全部承認スルコトガ出來ナイ
  ト仰シヤル、之ヲ否定スル所ノ御理由ガア
  リマスナラバ、此席上ニ於テ承ハラウトハ
  存ジマセヌ、希クハ委員會ノ席上ニ於テ十
  分之ニ對スル所ノ數字ヲ御示シアランコト
  ヲ希望シテ置キマス、尙ホ私ハ十分反駁致シ
  タイ點モアリマスケレドモ、大分諸君モ倦
  息ヲ來シテ居ルヤウデアリマスカラ、是デ
  御遠慮申上ゲテ置キマス
  〔國務大臣早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=94

  ---

• 095・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　簡單ニ御答致シ
  マスガ、矢張檢査料ニ付テノ負擔ハ、般
  ノ養蠶家ニ來ルト云フコトナラバ、是ハ社
  會政策ニ反スルト云フ意味ノ御說デアッタ、
  養蠶家ニ假ニ行クト致シマシテモ、私ハ之
  ヲ當業者ニ拂ハサズニ、此經費ヲ一般ノ國
  民ニ課スルト云フコトハ、尙ホ社會政策ニ
  反シハシナイカト思ヒマス、元來此生絲ノ
  檢査ハ、事實ニ於テ行ハナケレバナラヌ、
  國家ガ經費ヲ使フノデアリマス、此經費ノ
  (此時發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=95

  ---

• 096・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=96

  ---

• 097・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　其經費ノ幾分ヲ
  手數料ニ於テ支拂フ、私ハ之ヲ全體ノ國氏
  ニ課スト云フヨリモ、當業者ガ負擔スルト
  云フ方ガ當然デアルト考ヘテ居リマス、尙
  ホ品位檢査ノコトニ付テ御尋ガアリマシタ、
  是ハ私ガ先刻申シタ通リ、私トシテモ同感
  デアル、品位檢査ハ現ニ行シテ居リマスケ
  レドモ、段々此步ヲ進メテ、格附ノ實行ヲ
  スルト云フマデニ至ラシメルト云フ積リデ
  アリマシテ、此檢査所ノ仕事トシテハ、其
  計畫ハ立ッテ居ルノデアリマスガ、但シ品
  位檢査ガ十分ニ行ハレ、格附ガ十分ニ行ハ
  レナケレバ、正量檢査ハ無益デアルト云フ
  御說ニハ私ハ服スル譯ニイカヌ、格附ヲシ
  ナクテモ正量ノ取引ヲスルト云フコトハ、
  矢張海外貿易ノ發展ヲ圖ル上ニ於テハ、ソ
  レダケノ利益アリト私ハ信ズルノデアリマ
  ス、ソレカラ之ヲ海外ニ及ボスカドウカト
  云フ御尋デアリマスガ、是ハ無論順次此準
  備ノ出來ルヲ俟テ、之ヲ海外ノ取引ニモ
  及ボサナケレバナラヌト云フ考ヲ持ノテ居
  ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=97

  ---

• 098・加藤知正

  ○加藤知正君、　簡單デアリマスカラ此處
  デ-私ハ正量檢査ヲ····(此時發言スル
  者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=98

  ---

• 099・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　暫ク御靜ニ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=99

  ---

• 100・加藤知正

  ○加藤知正君(續)　無益デアルトハ申シマ
  セヌ、若シ無益デアルト云フ言葉ガアッタ
  トスルナラバ、ソレハ取消シテ置キマス、
  唯一正量檢査ト品位檢査トガ相伴フニアラ
  ズンバ、眞ノ目的ヲ逹スルコトガ出來ナイ
  ト云フ意味デ中上ゲタト云フコトヲ御諒
  解ヲ願ヒマス、ソレデ序ニ申上ゲテ置キマ
  スガ、先刻隅田君ノ質問ニ對シテ、當業者
  ガ反對シテ居ラヌト云フコトヲ言ハレテ居
  ル、所ガ僅ナ手數料デアルカラ何ノソノト
  云フ意味ガアリマシタガ、現ニ此十五日ニ
  於テ、全國ノ製絲業者ガ大會ヲ開イテ、若
  シ此手數料ヲ飽迄徵收スルト云フナラバ、
  吾々ハ此正量檢査ヲヤッテ貰ハナクテモ宜
  イト云フマデニ意氣込ンデ居ルデハアリマ
  セヌカ、ソレ等ノ點ヲ十分ニ御含ミアッテ、
  之ニ對スル十分ニ委員會ノ席上ニ於テ明言
  アランコトヲ望ンデ置キマス
  〔森田金藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=100

  ---

• 101・森田金藏

  ○森田金藏君　大變時間ガ迫リマシテ、諸
  君ハ御迷惑デアラウト存ジマスガ、重大ナ
  問題デアリマスカラ、暫ク御〓聽ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス、私ハ今提出ニナッタ輸出生
  絲檢査法ニ付テダケデアリマス、外ノコト
  ハ御尋致サナイ、ソレニ付テ一ツ二ツ三ツ
  極ク簡單ニ御尋スルノデ、其御尋スル要旨
  ハ、今農林大臣ガ御述ニナッタ、駁々トシ
  テ發達シタ此生絲業ノ其問題ニ付テ、日本
  ノ輸出大宗デアル生絲ハ、經濟上ノ見地カ
  ラ云ッテモ、產業ノ見地カラ云,テモ、重大
  ナル輸出品デアルコトハ申スマデモナイノ
  デアリマス、所ガ今晨林大臣ノ言ハレタ、
  駸々トシテ進步シタ異產業ハ日本ノ何レ
  ノ處ガ進步シテ居ルカト云フコトガ大切ナ
  問題デアル、嘗テハ生絲ト云フモノハ信州
  カラ起ッテ、所謂信州一番トマデ言ッテ、海
  外ニ於テモ一等品ト云ヘバ信州一番ト言ッ
  テ居ッタ、然ルニ今日ハ位置ガ轉倒シテ、
  關西ノ優等品ヲ以テ海外ニ於ケル日本生絲
  ノ最上位トシテ品位ヲ定メラルヽ位ナコト
  ニナッタ、而シテ關西ニ於ケル生絲產業ノ
  發達ハ最近十年間ニ於テ非常ニ發達シテ
  居ル、關西ト關東トヲ較ベテ見ルナラバ、
  關西ハ優ニ半額ノ產額ヲ出スノデ、繭ニ於
  テハ四割五分デアリマス、繭ハ關東ガ五割
  五分、關西ハ四割五分、生絲ニ於テモ矢張
  量ハサウデアルケレドモ、價格ニ於テハ優
  等品ヲ出スカラ、關西ノ生絲ハ優ニ、八億
  万圓出レバ、四億万圓ハ關西ノ生絲ガ之ヲ
  占領シテ居ルト云ッチモ宜イノデアル、
  斯ノ如キ狀況デアリマスカラ、此檢査ヲス
  ルト云フコトニ於キマシテハ、國家產業、
  國家經濟ノ上カラ重大ナル關係ガアルノデ
  アリマス、然ルニ此一條ヲ讀ミマスト「生
  絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ正量ニ付」
  此所ガ大事デアリマス「國ノ生絲檢査所ノ
  檢査ヲ受ケタルモノニ非サレハ之ヲ輸出
  スルコトヲ得ス」ト書イテアル、是ハ此案
  ガ出夕骨子デアリマセウ、無論國ノ檢査ヲ
  要シナケレバ出サナイト云フコトガ、此案
  ノ骨子デアル、然ラバ此國ノ檢査所ナルモ
  ノハ何處ニ置クノデアル、是ガ私ノ聽キタ
  イ問題デアル、此所デハ何所ニモ書イテナ
  イ、國ノ檢査所ナルモノハ、今日ハ此法案
  ノ出ルマデハ、國ノ檢査所ハ卽チ自由檢查
  所デアッテ、品位ノ檢査所デアッタモノガ横
  濱ニ一ツアル、是モ歷史的ニ考ヘルナラ
  バ、明治二十八年ニ關西ト關東ニ在ッタノ
  デアル、横濱ト神戶ニ在ッタノデアリマス、
  然ルニ其當時ノ關西ノ機業ガ發達進步シナ
  カッタ、卽チ農林大臣ノ所謂隆々タル進步
  ガ關西ニナカンタ爲ニ、明治三十四年ニ其
  神戶ニ在タ夕所ノ檢査所ガ一ツニナッタ、所
  ガ今日ハドウデアルカト言ヘバ、量ノ上ニ
  於テモ、旣ニ今申上ゲタ如ク半額デアル、
  而シテ十三年度-十二年ノ十月以降十三
  年、十四年ト漸次ニ今神戶港ニ於テ生絲輸
  出ヲシテ居ルノデアル(ヒヤ〓〓)而シテ昨
  年ノ如キハ八億ノ生絲ノ輸出ノ中其四分ノ
  、二億圓ハ神戶デ輸出シテ居ルノデアリ
  マシテ、又段々此淵西ノ輸出ト云フモノハ
  神戶港ニ寄ッテ來ルコトハ明カナ事實デア
  ル(拍手)或ハ關東カラモ今來ツヽアルノデ
  アル、サウ云フ譯デアリマスカラ、此儉查
  所ヲ一ツノ港ニ置クトー云フヤウナコトハ決
  シテナカラウト思フノデアル、ケレドモ此
  所ニ明ニ書イテ居ル、國ノ生絲檢査所ノ檢
  査ヲ受クル生絲檢査所ト云フモノハ農林
  大臣ハ此重要ナル輸出港ニ、必要ニ鷹ジテ
  國ノ檢査所ヲ二ツ御置キニナル御考デアル
  カドウカト云フコトヲ明ニシテ置キタイト
  考ヘルノデアリマス、ソレガ一ツデアリマ
  ス、其次ニ第二ニハ「主務大臣必要アリト
  認ムルトキハ公共團體ノ設クル生絲檢査所
  ヲシテ前項ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得」
  トアル、是ハ併シ斯ウ云フ主務大臣必要ト
  認ムルトキト云フ、其主務大臣ガ更シタト
  キニ必要ナシト云フト、ドウ云フコトニナ
  ルカ分ラナイ、ソレデ公共〓體ノ設ケテ居
  ル生絲檢査所ト云フモノハ何レノ所ニ在ル
  カ(「心配シナサルナ」ト呼フ者アリ)イヤイ
  ヤ心配ヂヤナイ、是ハ明カニシテ置カナケ
  レバナラヌ、今在ル所ノ公共〓體ト既ニ政
  府ガ御出シニナッタ案ニ書イテアル、公共
  團體ノ檢査所ハ今何レニ在ルカ、多分私ノ
  想像スル所デハ神戶市ガ設置シテ居ル彼ノ
  檢査所ヲ御指シニナッテ居ルノデハナイカ
  ト思フ、若シ果シテサウデアルナラバ、此
  所ニハ必ズ神戶ニ在ル、卽チ神戶市ガシテ
  居ル檢査所ハ、現大臣ハ之ヲ認メテ彼處デ
  檢査ヲサセルト云フコトヲ、此議場ニ於テ
  明言シテ置イテ戴キタイ、何故ナラバ、是
  ハ關西ニ於ケル生絲産業ノ上ニ、國家經濟
  ノ上ニ、非常ナ關係ノアル大問題デアル
  デアル(拍手「ヒヤ〓〓ー)故ニ此事ハ明ニシ
  テ置カナケレバナラヌト思フ、ソレカラ壬
  ウ一ツ極ク簡單デアリマス、第三ニ「第三
  條主務大臣特別ノ事情ニ依リ前二條ノ規定
  ヲ適用スル必要ナシト認ムル場合ハ命令ヲ
  以テ其ノ適用ヲ除外スルコトヲ得」是ハ何
  ヲ意味シテ居ルノデアリマスカ、私之ヲ想
  像スルノニ、是ハ多分目下非常ニ進步シタ
  生絲業者、卽チ例ヲ以テ言フナラバ、關西ニ
  於ケル彼ノ郡是製絲ノ如キ、或ハ信州デハ
  片倉製絲ノ如キ、サウ云フ大キナ製絲家ト
  シテ世界ノ市場ニ非常ナ信用ヲ以テ彼等ガ
  造シテ出ス所ノ其生絲ヲ、到ル所ノ其織屋
  ノ手許ニ至ルマデ責任ヲ持ツガ爲ニ、卽チ
  其製造場デ造ノ夕絲其儘自家檢査ニ依シテ、
  自家保護ニ依ノテ卽チ洋俵ヲシテ出ス所ノ
  特別ナル進步シタル製造會社ヲ是ハ御指シ
  ニナッテ居ルモノデアルカドウカ、是モ明
  ニシテ置ク必要ガアルト思フ、此第三條ハ
  其意味ニ付テ御認メニナッタカ、斯ウ云フ
  事ヲ農林大臣ニ伺ッテ置キタイト思フ、私
  ノ御尋シタ事ハ甚ダ簡單明瞭デアリマス
  ガ、併シ國家經濟ニー關西ノ蠶絲業ニ偉
  大ナル關係ノアルト云フコトヲ御承知ヲ願
  ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=101

  ---

• 102・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　早速農林大臣
  〔國務大臣早速整爾君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=102

  ---

• 103・早速整爾

  ○國務大臣(早速整、君)　簡單ニ森田君ニ
  御答致シマス、國ノ生絲檢査所ハ何處ニ在
  ルノカ、斯ウ云フ風ノ御尋デアリマスガ、
  是ハ前刻モ私ガ此案ノ說明ヲ致スノニ申シ
  マシタ如ク、現ニ生絲檢査所ノ工事ヲ進メツ
  ツアル、是ハ儀濱ニ在ルノガ卽チツレデア
  リマシテ、此數年來大分ノ金ヲ掛ケテ工事
  ヲ進メテ、是ガ來年度ノ中ニ其工事ガ成ラ
  ントシテ居ル、此成ナラントシテ居ル工事
  ハ何ノ爲デアルカト云フト、卽チ此檢查
  法ニ依ヶテ正量檢査ヲヤル爲ニ、此工事ノ擴
  張コ爲シツヽアルノデアリマス、ンレデア
  ルカラ此工事ガ擴張セラルレバ、此横濱ノ
  生絲〓査所ニ於テハ、必ズ正量檢査ヲヤラ
  ナケレバナラヌト云フ行掛リニナノテ居ル
  ノデアル、ソレカラ第二ニ御尋ノ公共團體
  ニ置イテアル生絲檢査所ノ其設備ヲ認メテ
  ヤラスト云フヤウナモノハ、一體何處ニ在
  ルノカト云フ御尋ニ付テハ、是ハ御說ノ通
  リデアリマス、神戶ニ於テハ生絲檢査所ヲ
  設ケテ、現ニ公共〓體ノ設備ニ依テ此檢
  査ヲ實行シテ居ル、又生絲ノ正量檢查ヲ行
  フト云フコトニ付キマシテハ神戶市ニ於
  テモ、其正量檢查ヲ行フニ付テク設備ニ著
  手ヲ致シテ居ルト云フヤウナ事ニナッテ居
  ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ立派ナ設
  備デ生絲ノ檢査ヲ行フト云フモノ二對シテ
  ハ政府ハ寧口之ヲ監督シテ、而シテ此正
  量檢査ヲ實行セシムルト云フ積リデ居ルノ
  デアリマス、ソレカラ第三ニ付デノ御尋ハ
  是ハ此特殊ノ蠶業ニ關スル立場、野蠶絲デ
  アルトカ玉絲デアルトカ云フヤウナモノニ
  付テ、取除ケヲ設ケルト云フノガ第一第
  二ニハ標本トカ見本トカ、或ハ學術〓究ノ
  爲ニ、博覽會用ノ爲ニ之ヲ輪出スルトカ云
  フモノニ對シテ、取除ケヲ設ケルト云フ考
  デ居ルノデアリマスカラ、前列御述ニナツ
  タモクハ此例外ノ中ニハ這人ンテ居ラヌノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=103

  ---

• 104・森田金藏

  ○森田金藏君　極ク簡單デアリマスカラモ
  ウ一言ダケ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=104

  ---

• 105・小泉又次郎

  ○副議長(卜泉又次郞君)　森田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=105

  ---

• 106・森田金藏

  ○森田金藏君　今御述ニナッタ事ハ御深切
  ナ御答辯デアッタト思ヒマス、併シ國ノ檢査
  所ハ横濱ニ今一ツアルケレドモ、蠶業ガ發
  達シテ行クニ付テハ將來神戶ニ在ル檢査
  所ハ勿論今御認メニナッタコトヲ明言ナサツ
  タ、國デ必要ガアレバ之ヲ御置ニナル考ヲ
  御持ニナッテ居ルカ、其事ダケヲ承ッテ置キ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=106

  ---

• 107・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　早速農林大臣
  〔國務大臣早速整雨君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=107

  ---

• 108・早速整爾

  ○國務大臣(早速整爾君)　現在ノ計畫ニ於
  キマシテハ此横濱ニ於ケル國ノ生絲檢查
  所ヲ以テ、先ヅ政府ハ此正量檢査其他ヲ行シ
  テ行ク積リデ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=108

  ---

• 109・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案二對スル質
  疑ハ終局故シマシタ、日程第六、右議案ノ
  審査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シ
  マス
  第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=109

  ---

• 110・井本常作

  ○井本常作君　本案ヲ特ニ議長指名二十七
  名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=110

  ---

• 111・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=111

  ---

• 112・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=112

  ---

• 113・井本常作

  ○井本常作君　殘餘ノ日程ハ延期セラレン
  コトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=113

  ---

• 114・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　井本君ノ動議ニ
  御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=114

  ---

• 115・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナシト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、諮問事
  項ガアリマス、第五部選出請願委員佐竹庄
  七君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガアリマス、
  許可スルニ御異議ガアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=115

  ---

• 116・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　許可致シマス、
  其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ、屆出ア
  ランコトヲ望ミマス、次囘ノ日程ハ公報ヲ
  以テ御通知致シマス、今日ハ是デ散會致シ
  マス
  午後五時五十八分散會
  衆議院議事速記錄第十六號中正誤
  頁段行誤正
  四一一四二難波浪速

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X01719260218&spkNum=116

4. 会議録のPDFを表示

この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。