1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月十日(水曜日)午後二時七分開議
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議事日程 第二十六號
大正十五年三月十日
午後一時開議
第一 出版物法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 土地賃貸價格調査法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 海軍軍備制限に關する條約の實施に伴ふ損害の補償に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 暴力行爲等處罰に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 獸醫師法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 民事訴訟費用法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十二 民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十三 商事非訟事件印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十四 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十五 人事訴訟手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十六 競賣法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十七 民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十八 破産法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十九 明治三十二年法律第五十號中改正法律案(外國人の署名捺印及無資力證明に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十一 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十二 大正十三年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 大正十三年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 大正十四年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 大正十四年度豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 大正十四年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 大正十四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 臨時軍事費特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第二十二 自大正六年二月二十六日至大正九年六月二十五日臨時軍事費特別會計豫備費外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)
第二十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十四 對支文化事業特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 教育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 明治三十八年法律第十七號中改正法律案(專賣局据置運轉資本補足に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 議院法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 商事調停法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 舊慣に依り永小作權者か地租額負擔を約したる田畑の地租免除に關する法律案(大石大君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 地租條例中改正法律案(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 所得税法中改正法律案(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 大正九年法律第十二號中改正法律案(所得税法の施行に關する件)(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 明治四十二年法律第七號廢止法律案(國債の利子所得税免除に關する件)(床次竹二郎君外二十三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十六 決議案(中野正剛君に反省處決を促す件)(望月圭介君外一名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=0
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸君、本日ノ開會ガ
定刻ヨリ大ニ遲刻致シマシタコトハ議長
ノ甚ダ恐縮ニ堪ヘザル所デゴザイマス、F
ウゾ惡シカラズ御諒水ヲ冀ヒマス、是ヨリ
開會致シマ-都合ニ依リマシテ暫時
休憩致シマス
午後二時八分休憩
午後三時四十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 休憩前ニ引續イテ會
議ヲ開キマス、議事ノ進行ニ關シテ發言ヲ
求メラレテ居リマス、之ヲ許シマス、猪野
毛利榮君
〔猪野毛利榮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=2
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003・猪野毛利榮
○猪野毛利榮君 重要法案ガ山積ヲサレテ
居リマシテ、未ダ審議ニ至ラザルモノガ頗
ル多イノデアリマス、本月ヘ這入リマシテ
カラ、考ヘテ見マスルニ、此議場ニ於テ
政策上ノ鬪ヲ見タコトハ至ッテ少イノデア
ル其多クハ各政黨ノ卽チ內面ノ喧嘩ヲ此
議場ニ於テ現ハシタト云フコトニナッテ居
ルノデアリマス、政黨ト云フモノハ中ミ政
策バカリデモ行カヌ、色こノ感情モアル
シ、其他ノ駈引モ經緯モアリマスカラ、多
少ノ點ハ已ムヲ得ヌトシテモ、餘リニソレ
ノミニバカリ沒頭シテハ困ルノデアル、如
何ニ各派ノ人間ガ内輪喧嘩ヲヤッテモ、是
等ノ喧嘩ニ何等ノ關係ノナイ吾々、無所屬
ノ公平ナル立場ニ居ル者ハ此喧嘩ノ卷添
ヲ喰ノテハ迷惑千萬ト考ヘテ居ルノデアル、
今日國民ノ此議會ヲ見ルコトガドウデア
ル、普通選舉法ガ既ニ議會ヲ通過ヲシテ居
ルノデアルカラ、早ク普通選舉ニ依ッテ議
會へ議員ヲ送ラナクテハナラヌ、制限選舉
ニ依ッテ出サレテ居ル議員ヲ早ク退ケナケ
レバイカヌト云フ所ノ此聲ハ、今日天下ニ
滿チテ居ル矢先デアル、是故ニ議員ノ一擧
一動ト二、フモノハ餘程愼重デナクテハナラ
又、如何ニモ紳士的デナクテハナラヌノデ
アル、又官僚ノ方面ニ於テモサウデアル、
今日政友會ト憲政會、本黨、三派ガ入亂レ
テ喧嘩ヲシテ居ルト彼等官僚ハ喜ンデ之ヲ
迎ヘテ居ルノデアル、卽チ此政黨ノ内輪喧
嘩ニ乘ジテ、時代遲レナガラモ、二度、三
度、天下ノ政權ヲ掌握シヤウト云フ野心ヲ
今日官僚方面デハ懷イテ、著々實現ニ努メ
ツヽアル矢先デアル、諸君ガ此内輪喧嘩バ
カリヤルト云フコトハ餘程此點ニ於テモ
私ハ考へ物デアルト考ヘテ居ルノデアル、
此所マデ政黨政治ノ基礎ヲ作シテ來タニモ
拘ラズ、諸君ガ今日ニ至シテ下ラヌ喧嘩ヲ
ヤルガ爲ニ、官僚ニ乘ゼラレテ、政黨政治
ノ基礎ノ上ニ惡影響ヲ來スト云フコトニナ
レバ實ニ諸君ノ責任ハ重大デアルト私共
ハ考ヘルノデアル、諸君ノ先輩ハドウデア
ル諸君ノ先輩加藤君ニシテモサウデア
ル、原君ニシテモサウデアル、自分ノ政黨
ヲ大ニセンガ爲ニ、自分ノ政策ヲ政黨政治
ニ依シテ實現センガ爲ニ、現職ニ二人共斃
レタデハアリマセヌカ、是レ位身命ヲ擲ッテ
自ラノ政黨ノ爲メ、又一面カラ云ヘバ國家
ノ爲ニ努力シタニモ拘ラズ、諸君ガ今玆ニ
内輪喧嘩ヲヤッテ、此場合ニ於テ官僚政治
家ニ次ノ政權ヲ取ラレルト云フコトニナレ
バ、地下ニ眠シテ居ラレル加藤君デモ原君
デモ、私ハ泣クデアラウト考ヘルノデア
ル、又諸君ノ一擧一動ト云フモノハ實ニ
此議場バカリノ問題デハナイ、國民思想ノ
上ニモ大影響ガアル、國民ノ風〓ノ上ニモ
大影響ガアルノデアル、政黨ノ面目ノ上ニ
モ、政黨ノ権威ノ上ニモ、政黨ノ將來ノ發
達ノ上ニモ、大影響ガアルト私ハ考ヘテ居
ルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、特
ニ此與黨諸君ノ御方ニモ一言ヲ致シタイト
思フ、私共ハ多數ト云フコトニハ議場ニ於
テ殊ニ敬意ヲ拂フ、併ナガラ如何ニ多數ト
雖モ餘リニ無茶ヲヤッテハイカヌ、相當ノ
程度デヤラナクテハイカヌ、又常ニ眞理ニ
立脚セニヤイカヌ、眞理トカ正義トカヲ重
ンズル多數ノ諸君ニハ敬意ヲ拂フ積リデアル、
又多數黨ノ諸君ハ寬量ガ無クテハイカヌ、此
意味ニ於キマシテ多少政友會ガ駄々ヲ揑ネ
テモ、之ヲ或點マデハ認メテヤラナクテハ
私ハイカヌト思フノデアル、例ヘバ此中野
君ノ問題ナドノ出タ時ニ於テハ雅量ヲ示シ
テ之ヲ一ツ容レテヤル、此大雅量ヲ發揮シ
テ戴キタイト考ヘテ居ルノデアル、又此政
友會ニ於テモサウデアル、昨年マデハ諸君
ガ三派ノ力ニ依テ議場ノ四分ノ三近クヲ占
メテ居ッタ多數ノ仲間入ヲ致シテ居ノタ、故
ニ今日ノ此憲本ヨリハマダ〓〓横暴ヲヤ。
テ居ッタノデアル(拍手)然ルニ今日ノ諸君
ノ立場ヲ見レバ、私共ハ此無所屬ノ席カラ
見テ洵ニ昨年ヲ省ミ同情ノ念ニ堪ヘナイノ
デアル(拍手)併ナガラ-併ナガラ何ト言
フテモ少數黨ノ言ハ比較的國民ノ聲ニ近イ
ノデアル、私共考ヘルノニ此意味ニ於テ今
日最モ正シイ議論ヲ吐ク者ハ吾々無所屬デ
アル、ソレカラ此中正倶樂部、政友曾斯
ウ云フ順序ニ私共考ヘテ居ル(拍手)政治ニ
於テモサウデアル、必ズ一黨ガ過半數ヲ占
領スル時ニ於テ、必ズ暴政ガ行ハレル、昨
年ノ三派內閣ヨリ只今ノ憲本二派ノ内閣ノ
方ガ、人民ノ聲ニ耳ヲ傾ケル傾向ガアル、
是ハ爭フコトガ出來ヌ、人間ノ心理ガ然ラ
シムルノデアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=3
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004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 議事進行ニ付テ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=4
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005・猪野毛利榮
○猪野毛利榮君(續) ソコデ政友會ノ諸君
ニ私ハ申シタイ、諸君ハ何ト言シテモ今日
最モ力有ル野黨デアル、諸君ハ此所信ノ前
ニ勇往邁進スルコトハ、吾々ノ最モ之ニ向ッ
テ敬意且ツ同情ヲ有シテ居ルノデアル、併
ナガラ此勇往邁進タルヤ、其動機ガ純眞デ
ナケレバナラヌ、其戰ヒタルヤ一ニ公黨ノ
面目ニ愧ヌ所ノ遣方ヲシナケレバナラヌ、
先日來ノ遣方ヲ見レバ吾々ノ腑ニ落チヌ點
モ多々アル、例ヘバ中野君ノ問題ナドニ付
テ、大分經緯ガアッタガ、一中野君ノ如キ
ハ內閣ヲ倒ス刷ケ序ニ之ヲ始末スルト云フ
位ノ意氣ト見識ヲ有シテカラニ、諸君ハ此政
府ノ持ッテ居ル所ノ政策、或ハ若槻總理大
臣其モノニ著眼シナケレバイカヌト思フノ
デアル、善政ヲ布カセルト云フコトハ-
政府ヲシテ善政ヲ布カセルト云フコトニ付
テハ野黨ガ與ッテ力ガアルノデアル、野黨
ノ鞭撻如何、野黨ノ攻擊如何ニ依テ政府ハ
善政モ布キ、或ハ惡政モ布クト云フコトニ
ナリマスカラ、諸君ノ責任ハ決シテ輕イト
云フコトハ出來ヌト私ハ信ズル、最後ニ私
ハ若槻總理大〓ニ向ノテ一言致シタイ··
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=5
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006・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 議事進行以外ニ涉ラ
ヌヤウニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=6
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007・猪野毛利榮
○猪野毛利榮君(續) 今日ノ此狀態ヲ見ルト
中ミ政府モ苦シサウニ見ヘル、此內閣モ相
當ニ痛手ヲ負フテ居ルヤウニ吾々ニハ見へ
ル、各派モ傷ダラケデアル、此點カラ見テ
モ若シ餘リニ議事ノ進行ガ出來ズ、餘リニ
不當ナルコトガ現ハレタル時ニハ寧口思
切シテ解散ヲ斷行スルノ決心ヲ執ッタラドウ
カト思フノデアル、國民ハ今日サウ云フテ
居ル、今日ハ最早解散ヨリ外ニ行詰シタ政
局ニ對スル打開策ハナイト云フコトヲ言ソ
テ居ルデハナイカ、又吾々モ斯ウ信ジマ
ス區々タ』ル妥協フ如キモノハイカヌ、
寧ロ解散ヲ斷行シテ信ヲ與論ニ問ヒ、サウ
シテ人心ヲ一掃シテ、再ビ天下ニ臨ムト云
フ所ノ一大決心ヲシテ戴キタイト考ヘルノ
デアル、一言既成政黨及政府ニ向ッテ警告
ト希望トヲ述ベ更ニ進ンデ反省モ求メタ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=7
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008・作間耕逸
○作久間耕逸君 議事日程變更ニ關スル緊
急動議ヲ提出致シマス、卽チ日程第三十、
政府提出關稅定率法中改正法律案ヲ此際特
ニ繰上ゲテ議題トナシ、其第一讀會ノ續キ
ヲ開カレコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=8
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009・砂田重政
○砂田重政君 只今ノ作間君ノ動議ニ同意
致シマスト同時ニ、之ニ引續キマシテ日程
第三十六、決議案、中野正剛君ノ反省自決
ヲ促ス件ヲ議題トナシ、其審議ヲ進メラレ
ムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=9
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010・松田源治
○松田源治君 作間耕逸君ノ緊急動議タ
ル關稅定率法中改正法律案ノ日程變更ニハ
異議アリマセヌガ、第三十六ノ決議案、中
野正剛君ニ反省自決ヲ促ス件、此緊急上程
ニハ反對致シマス、簡單ニ其理由ヲ述べマ
ス、此中野正剛君ノ處決ヲ促スコトハ中野正
剛君ガ議場ニ於テ荒唐無稽ノ言辭ヲ弄シタ
ト云フコトヲ問題ニ致シテ居ル、ソレハ陸軍
大臣ガ荒唐無稽ト考へマスト云フコトヲ述
ベタノデアル、陸軍大臣ハ一ノ國務大臣デ
アル、吾々ハ立法府トシテ國務大臣ヲ監督
シテ居ルノデアル、且ツ宇垣君ハアノ當時
1、此事件ノ起ノテ當時ノ陸軍大臣デハナ
イノデアリマス、然ルニ此一國務大臣ノ答
辯ヲ捉ヘテ之ヲ金科玉條ト致シテ、議員ノ
権利ニ重大ナル關係ヲ有スル決議案ヲ出ス
ト云フコトハ吾々ハ絕對ニ反對スルモノ
デアル、今迄フ先例ニ依リマシテモ議員ノ
處決ヲ促ス決議案ニ付テハ、餘程愼重ニ吾々
ハ取扱シテ居ルノデアル、然ルニ中野君
〔此時發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=10
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011・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=11
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012・松田源治
○松田源治君(續) 然ルニ中野君ノ決議案
ニ對シ、何等ノ調査モセズ、一國務大臣ノ
言辭ヲ捉ヘテ直ニ之ニ處決ヲ促スト云フコ
トハ議員ノ權利ヲ輕卒ニ取扱フモノナリト
言ハナケレバナラヌノデアリマス(拍手)吾々
ハ一個ノ中野正剛君ヲ保護スルノデハア
リマセヌ、議員全體ノ権利ヲ擁護スルノデ
アリマス、故ニ吾々ハ斯ル不法ナル決議案
ニ向シテハ、三十六ノ日程ガ到達シテ審議
スル場合ハ免モ角モ、斯ル不法ナル決議案
ヲ緊急上程スルト云フコトニハ反對シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=12
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013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今作間耕逸君ヨリ
日程第三十ヲ繰上ゲテ、繰上ゲ上提スルト
云フ動議デアリマス、更ニ又砂田重政君ヨ
リ日程第三十六、決議案ヲ關稅定率法ノ次
ニ上程スルト云フ動議デアリマス、此二ツノ
日程變更ノ動議ニ付テ順次採決致シマス、
作間君ノ日程變更ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起
立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=13
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014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 全會一致デアリマ
ス、仍クテ動議ノ如ク決シマシタ、次ニ砂田
重政君ノ日程變更ノ動議ニ付テ採決致シマ
ス賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=14
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015・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 多數デアリマス、仍ノ
テ其通リ決シマス-靜甫ニ願ヒマス、只
今ノ砂田君ノ動議ニ係リマス日程第三十六
ノ繰上ゲニ付テハ、政府モ同意ヲセラレマ
シタ
〔拍手起リ發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=15
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016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜甫ニ願ヒマス-
日程第三十、關稅定率法中改正法律案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマ
〔別紙〕
關稅定率法中改正法律案(別表)輸入稅表中左ノ通修正ス
一六小麥
二二穀粉及澱粉類
ー小麥粉
五九鳥卵(生鮮ナルモノ)
附帶希望一
本案中左ノ品目ハ近ク新設セラルヘキ關
稅常設委員會ニ付議シ愼重審議ノ上之ヲ
次期議會ニ提案シ適當ニ改正セラレムコ
トヲ希望ス
二二ノ內タピオカ、マニオカ及セ
ーゴ
コーンスターチ
三五菜子及芥子
五二鳥獸肉類
五二ノ二魚介類ノ內
生鮮ナルモノ
鹹魚及乾魚
五三バター、人造バター及ギー
五五コンデンスドミルク
十一革類ノ內
一ノ乙染メタルモノ又ハ著
色シタルモノ
丙ノ一靴底革
二オレイン
ス、委員長加藤政之助君
第三十關稅定率法中改正法律案(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月九日
關稅定率法中改正法律案委員長
加藤政之助
衆議院議長粕谷義三殿
(小字及-ハ委員會修正)
一五○
每百斤〇·七七
二·九
每百斤八五
六○
每百斤四·五〇
一九五フォルマリン
二四四酸化コバルト(吳須ヲ含ム)
二四五金液
二七二綿織絲ノ內
一ノ甲ニ屬スルモノ
二七三綿線
二八七生絲ノ內
二ノ其ノ他
三六一製紙用パルプ
三六二印刷料紙ノ内
アートペーパー及其ノ他
四五二寫眞用乾板
四六二鐵(別號ニ揭ケタル特殊鋼ヲ
除ク)ノ內
銑鐵及鋼材
リードワイヤ
線索及撚合線
五二七懷中時計部分品
五五七樂器ノ內
ピアノ
五六八船舶
六一二木材
六三五白熱電燈球
六四〇運動器具
附帶希望二
-不當廉賣防止ニ關シ適當ナル修正ヲ
希望ス
二二四三別號ニ揭ケサル合成染料ニ對
スル輸入制限令ニ依ル取扱ハ將來使
用者ヨリ申請アルトキハ簡便迅速ニ
其ノ輸入申請ヲ許可シ當業者ノ利便
ヲ計ルコト
三四六二鐵ハ製鐵國策ノ見地ヨリ更ニ
精査シテ稅率ヲ變更スルコト
〔加藤政之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=16
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017・加藤政之助
○加藤政之助君 私ハ關稅定率法中改正法
律案ノ委員會ノ經過及結果ヲ報告致ス者デ
アリマス····
〔此時發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=17
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018・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 原君、靜甫ニ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=18
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019・加藤政之助
○加藤政之助君(續) 今日ハ旣ニ議會ノ會
期モ切迫致シテ居リマス、又時間モ極メテ
切迫致シテ居リマス、ソレ故ニ私ハ成ベク
要領ヲ諸君ニ申述ベテ、御諒水ヲ仰ガウト
斯樣ニ思シテ居リマス(拍手)委員會ハ一月
二十六日ニ指名ヲ受ケマシタノデアリマ
ス、而シテ二十七日ニ役員ノ選擧ヲ致シマ
シテ、爾來會ヲ重ヌルコトー一十一回、時日
ヲ經過スルコト四十餘日デアリマス、併シ
木案ハ甚ダ廣汎ナルモノデアリマシテ、十
七類ニ分レテ居リマス、稅番ヲ申セバ六百
七十四程アリマス、細目ヲ言ヘバ千數、白ニ
亙シテ居リマス、而シテ此案ハ農工商業ヲ營
ム所ノ人〓、及ビ消費者全般ニ關係ヲ持
テ居リマス案デアリマス、〓括シテ申セ
バ產業及貿易ノ盛衰ニ關係ヲ持チ、延イ
テハ國運ノ消長ニ關スル所ノ重大問題デア
ルノデアリマス(拍手)例ヲ申シマスコトハ
省キマスガ、英吉利、亞米利加ニ於テ關稅
ヲ改正致シタガ爲ニ、國運ノ消長ニ顯着ナ
ル影響ヲ及ポシタト云フコトハ今更申上
ゲルマデモナイノデアリマス、左樣ナル次
第テアリマスカラ、委員會ハ傾虫審議、政
府姿員ト四十餘日ノ間應答ヲ重ネマシタ次
第デアリマス、面シテ政府ガ本案ヲ提出致
シマシタル所ノ趣旨トシテ、說明セラレタ
所ニ依リマスルト云フト、此關稅案ハ收入
ヲ增減スルト云フコトハ目的ーシテ居ラナ
イ、是ガ第一デアリマス、第二ニハ我國ニ於
テ前途有望デアノテ、多少ノ保護ヲ加ヘレバ
自給自足ガ出來ルト云フヤウナ種類ノ產業
ニ向ッテハ、低率ノ保護ヲ加ヘ、之ヲ發達セ
シメタイ、是ガ第二デアルノデアリマス、
第三ハ課稅ノ公平ト徵稅ノ便宜、之ヲ得ル
ガ爲ニ從價稅、從量稅ヲ適宜應用致シタト
云フコトデアリマス、第三ハ國民生活ノ安
定ヲ顧慮致シテ、成ベク食糧品及原料ロ川ニ
對シテハ重キ稅ヲ課セナイやウニスルト云
フコトガ第三ノ目的デアッタト說明ヲサレ
テ居リマス、而シテ此關稅案改正ノ結果增
收ヲ圖ル意味デハナイケレドモ、自然ニ十
五年度ニ於テハ七百五十万圓、平年度ニ於
テハ千九百師万圓ノ增收ガアルト云フコト
ヲ中サレテ居リマス、第五ニハ此關稅案ガ
通過致シタ後、是ガ果シテ完全ノモノデア
リトスルモ、年所ヲ經ル内ニハ改正ヲシナ
ケレバナラヌ項目ヲ起ル、況ヤ千數百ノ項
目ニ亙ッテ居ルモノデアリマスルカラ、政府
モ吾々ノ調査シタル所ノ結果ヲ顧ミラレ
テ、此關稅案成立ノ後ニ於テハ、直ニ關稅
調査委員會、之ヲ常設致シテ、此委員ニ於
テ問題トナッテ居リマシタ所ノ事項ハ勿論、
本院ニ於テ問題トナッタル所ノ事項ニ對シ
テハ、十分ナル調査ヲ加ヘテ、十六年ノ次
ノ議會ニ提出スルト云フ考ヲ持ノテ居ル、
斯ゥ云フコトヲ說明セラレタノデアリマ
ス、次ニハ鐵ノ問題デアリマスガ、此鐵ノ
關稅ヲ引上ゲテ、鐵ノ自給自足ヲ圖ルト云
フコトハ國家重要ノ問題デアル、ガ併シ今
日銑鐵ノ日本ニ參ル所ノ輸出國ハ何所デア
ルカト云ヘバ印度デアル、面シテ印度トハ
綿絲布ノ關係ニ於テ我國ノ輸出先デアル、
此所ニ銑鐵ニ對シテ關稅ヲ引上ゲルト云フ
コトハ甚夕面白クナイ譯デアル、故ニ此銃
鐵及鋼材ニ對シテハ、政府ハ別ニ助成法ヲ
設ケテ、銑鐵カラ鋼鐵ニ至ルマデノ製鐵業
ヲ繼續シテヤルト云フ工場ニ對シテハ相
當ノ補助ヲ與ヘテ、サウシテ鐵ノ自給自足
ヲ圖ルト云フ目的デアル、斯ウ云フコトヲ
說明セラレタノデアリマス、次ニハ米ノ問
題デアリマスガ、米ニ對シテ關稅ヲ引上ゲ
タイト云フ希望モ多イノデアルガ、併ナガ
ラ米、籾ニ對シテハ、既ニ米穀運用法ト云
フモノガ存立致シテ居ッテ、現ニ前ノ議會
ニ於テ、量ノ修正バカリデハイケナイカ
ラ、是非之ヲ價格ノ調節モ保ツト云フコト
ニシナケレバイケナイト云フノデ、量及價
格ノ調節共ニ、此米穀法ニ依ッテ出來ルヤ
ウニナッテ居ルノデアル、然ラバ一朝米ニ
暴騰、暴落ガアッタ時ニハ、此運用法ニ依シ
テ調節スルコトガ出來ルノデアルカラ、玆
ニ一般ノ主食物タル米ニ對シテ、稅ヲ引上
ゲルト云フヤウナコトハセヌデモ宜カラ
ウト云フ當局者ノ說明デアッタノデアリマ
ス、以上ガ當局者ノ本案ヲ提出致シタル所
ノ趣旨及說明デアリマス、之ニ對シテ只今今
申上ゲタガ如ク、二十數回ヲ重ネテ、政府
ノ當局者ト吾々委員ト、質問應答ヲ重ネタ
ノデアリマス、デ其結果、第十九回目カト
思ヒマスガ、質問ヲ終了致シマシテ、如何
ニシテ此案ニ修正ヲ加フベキカト云フコト
ガ委員會ノ問題トナッテ、此六百數十項ニ分
レテ居ル所ノモノニ對シテ、二十七人ノ委
員ガ全體集ッテ、修正案ヲ作ルト云フコト
ハ極メテ至難デアル、故ニ各派カラ二名宛
ノ委員ヲ出シテ、サウシテ此委員ノ申合セ
ニ依ッテ、案ヲ作製致シタラ宜カラウト云フ
コトニ意見ガ一致致シマシテ、茲ニ九名ノ
申合委員ガ出來タノデアリマス、ソレハ名
前ヲ申上ゲレバ橋本喜逸君、永田善三郞君、
岩切重雄君、山本条太郞君、吉津度君、佐々
木平次郞君、岡田溫君、及私ガ委員長タル
ノ故ヲ以テ之ニ參加シタノデアリマス、ソ
コデ此申合委員ガ集リマシテ、サウシテ
修正案ノ作製ニ掛ッタノデアリマスルガ、此
委員等ノ作リマシタ案ガ、諸君ノ御手許ニ
今日私ノ報告トシテ御廻シ申上ゲテ居リマ
スル此案デアリマス、卽チ修正サレタル箇
條ハ諸君ノ御覽ノ通リデアリマスルガ、此
小委員ノ作リマシタ所ノ案ヲ、再ビ昨日
全部ノ委員會ニ掛ケマシテ、サウシテ二
十七名ノ委員諸君ノ意見ヲ伺ヒマシタ、所
ガ申合委員ノ作リマシタ修正案及附帶決議
二項、及同日政友會ノ諸君カラ提出サレタ
修正案、此四ツヲ議題ニ供シマシテ、サウ
シテ可否ノ意見ヲ圖ハシタル後ニ、採決致
シマシタル所ガ、此申合委員ノ作製シタル
所ノ案ハ、六ニ對スル二ノ多數デ以テ可決
セラレタノデアリマス-サウデハアリマ
セヌ、ソレハ申合姿員ノ時デアリマス、二
十七名ノ委員會ノ時ニハ此案ハ殆ド一名
カノ反對者ガアッタカト思ヒマシタガ、其
他ハ全會一致デ、此小麥、小麥粉、鳥卵、
此修正案ハ通過致シタノデアリマス、附帶
條件モ同樣デアリマス、ソレカラ政友會ノ
諸君ノ提出セラレタル所ノ、其可否ヲ尋ネ
マシタ所ガ、少數デ遺憾ナガラ消滅致シタ
ノデアリマス、以上ガ此委員會ノ輕過及結
果デアリマスルガ、一々此案ヲ此所デ朗讀
スルコトハ大變ニ時間ヲ要シマスル、既ニ
諸君ノ御手許ニ廻ツテ居リマスルコトデア
リマスカラ、是デ御覽ヲ下サルコトニ相願
ヒマシテ、報告ハ此程度ニ止メタイト思ヒ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテ質疑ノ
通告ガ數名アリマス、順次之ヲ許シマス
-三輪市太郞君
〔三輪市太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=20
-
021・三輪市太郎
○三輪市太郞君 議題トナリマシタ關稅定
率法中改正法律案ハ、申ス迄モナク今期議
會ノ稅制整理案ニ亞イデノ重大問題デアリ
マシテ、就中米、籾ノ關稅率ニ關シマシテ
ハ需給者共ニ、全國民多數ニ影響ノアル
問題デゴザイマシテ、此稅率ニ付キマシテ
ハ只今委員長ノ報告サレタル如ク、米穀
法ノ運用ニ依シテ調節ガ出來ルト云フ政府
ノ主張デアッタヤウデゴザイマスル、ソコデ
其米穀法ノ運用ガ果シテ適切ニ行ハレルヤ
否ヤ、是ガ最モ政府ノ所見ヲ質シテ置クベ
キ必要ナルコトヽ認メルノデゴザイマシテ、
之ニ對シテ私ハ項目ヲ分テ總理大臣ノ御
月日
答辯ヲ望ムノデゴザイマス、然ルニ此米穀
法ナルモノガ實ニ自由自在ニ渾用サレル法
律デゴザイマシテ、米穀法ノ第二條ニ「政
府ハ米穀ノ數量又ハ市價ヲ調節スル爲特ニ
〔「ソンナ八百長質問止メロ」「默ッテ聽
ケ」「屁子垂レ本黨ノハ聽カナイノダ」
ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=21
-
022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 原君ニ退場ヲ命ジマ
ス(拍手)
〔「議長」「議長」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=22
-
023・三輪市太郎
○三輪市太郞君(續) 必要アリト認ムルト
キハ勅令ヲ以テ期間ヲ指定シ米穀ノ輸入稅
ヲ增減若ハ免除シ又ハ其ノ輸入若ハ輸出ヲ
制限スルコトヲ得」トアルノデゴザイマス、
斯ノ如クノ法律デアリマシテ、政府當局ノ
運用方針如何ニ依ッテハ生產者ノ保護トモ
ナリ、又ハ壓迫トモナルノデゴザイマス、
此法律ヲ制定シタル當時ハ農家ノ生產經
濟ヲ保全スル爲ニ、農家ヨリ頻ニ運動致シ
テ此法律ガ出來タモノデゴザイマスガ、當
時衆議院ニ於テハ民意ヲ容レテ、此原案ハ
通過致シタモノデアルガ、貴族院ニ於テハ
農村ノ目的トスル骨子ヲ除カレタル爲メ、
或ハ此法律ハ效力ハアルマイカト云フ懸念
モアッタノデゴザイマスガ、無イヨリハマダ
有ルガ宜イ位ナ考ヲ以テ、之ニ農家ノ議員
モ賛成ヲシテ成立シタノデゴザイマス、然
ルニ五十議會ニ此法律中ニ價格モ調節スル
ト云フコトヲ追加改正ヲサレタモノガ現行法
デゴザイマスガ、實ニ是ハ農家ニ於テ熱望
致シテ居ッタ法律デゴザイマスガ、全ク期
待ヲ裏切ラレテ、此法律施行以來生產者ハ
此法律ニ依ッテ利益ヲ被リ、保護ヲ受ケタ
コトハナイノデゴザイマス(拍手)是ニ於テ
吾々ハ政府ガ唱ヘル如ク、果シテ米穀法ニ
依ッテ誠意ヲ以テ價格ヲ調節スルノ意思ア
リヤ否ヤヲ、具體的ニ項目ヲ舉ゲテ質問ヲ
セントスル者デアリマス、「第一項、米穀法
ノ適用ハ單リ內地產米ニ限ラス朝鮮、臺灣
ノ產米ニモ運用スルコト」、此必要ヲ認ムル
ヤ、政府ノ所見ヲ問フノデアリマス此理
由ハ米穀法ノ第三條ニ「政府ハ啻國内ニ於
テ第一條ノ規定ニ依リ米穀ノ買人又ハ賣渡
ヲ爲サムトスルトキハ」ニ云々トアリマシテ、
法文ノ上ヨリ解釋スレバ、當然朝鮮米若ク
ハ臺灣米ニ對シテモ運用スルコトハ差支ナ
イコトニナッテ居ルノデゴザイマスルガ、是
ハ實際問題トシテハ未ダ曾テ朝鮮米、臺
灣米ニ米穀法ヲ運用サレタル事實ハナイノ
デゴザイマス、又之ヲ吾々ガ望ム所以ノモ
ノハ、朝鮮米ノ生產費ナルモノハ內地米
ノ半額ニ當ルノデゴザイマシテ、朝鮮米ノ
移入ニ依〓テ、內地米ノ市價ト云フモノハ
常ニ壓迫ヲ受ケテ居ルノデゴザイマス、今
期議會ニ提案サレタル朝鮮產米計畫ニ依リ
マシテ、今後朝鮮米ヲ内地へ移入スルコト
ハ一層多量ニ上ルデアラウト思ヒマスル
ガ、内地ノ市價ガ下落ノ場合ニ於テ、多額
ノ移入ガアッタナラバ遂ニハ暴落トナッテ、
內地ノ農家生產經濟ハ破壞セラルヽト云フ
ノ結果ニ陷ルノデゴザイマス(拍手)斯ウ云
フ場合ニ於テハ、政府ハ米穀法ヲ朝鮮米ニ
モ運用ヲ致シタナラバ、國家經濟ノ見地ヨ
リ見マシテモ、安キ米ヲ買入レテ、而シテ
暴騰ノ豫備ニ致スコトハ洵ニ良策デアラウ
ト思フ、ノミナラズ沖繩縣ノ如キ生產米無
キ全ク保護ヲ要スル地方ニ對シテ、斯ウ云
フ買入米ヲ拂下ゲデモ致シタナラバ實ニ
便宜デアラウト思フガ故ニ、吾々ハ之ヲ望
ムノデアルガ、一部ノ論者ハ米穀法ヲ運用
シテ臺灣米若クハ朝鮮米ヲ買入レル場合ニ
ハ內地生產者ガ反對ヲ致シハセヌカト云
フコトノ議論モアリマスルガ、是ハ米穀法
ニ依ッテ買上ゲル其地方ノ商人ハ、或ハ反
對ノ傾向アルカモ知レマセヌガ、全國中ノ
生產者ヲ眼中ニ置イテ考ヘタナラバ、サウ
云フ議論ハ起ラナイノデゴザイマス、全ク
是ハ一部ノ米穀商人ノ唱ヘル聲デゴザイマ
シテ、ドウシテモ國家經濟及生產者保護ノ
見地ヨリ、臺鮮米ニモ此運用ヲ及ボスコト
ガ良策ナリト信ジテ此點ヲ望ムノデゴザリ
やく、第二項米價ハ(「議長々々」「質問デス
カ何デスカ」ト呼フ者アリ)議長ニ御問ニナ
ルマデモナク私ガ御答ヲ致シマス、卽チ前
提ニ於テ質問ノ趣旨ヲ述ベテ、而シテ之ニ
對シテ說明ヲ致シタノデアッテ、質問ナル
コトハ明カデアリマス(拍手)「第二項未價
ガ生產費以下ニ下落セシ場合ハ政府ハ速
ニ米穀法ニ依ッテ價格ノ引上調節ヲ圖ルコ
ト、此趣旨ノ實行ヲ望ムノデアルガ、政
府ノ所見如何一、米穀法ハ數量價格ノ調節ヲ
圖ルコトハ勿論デアリマス、隨テ下落ノ時
ニモ應用スルコトハ當然デアルガ、政府ハ
常ニ生產費ト云フモノヽ樗準ガ取リ惡イ、
卽チ生產費ヨリ下落シタカ否ヤヲ認メルガ
雖イト云フノ議論デアルガ、是ハ私共ヨリ見
レバ、實ニ政府ノ言フ所ハ首肯スルコトガ
出來ナイノデアリマヌ、多年吾々ガ希望致
シタル所ノ農林省ハ、今日獨立ヲサレテ居
リマシテ、各府縣每ニ生產費ガ何程要スルカ
ト云フコトノ調ノ出來得ナイ道理ハナイ、
民間ニ於テ縣農會、帝國農會等ノ機關ガアツ
テ、詳シク調ベラレテ居ルニ、官廳ニ於テ
斯ウ云フ調査、卽チ生產費ノ調査ノ行屆カ
ナイト云フ道理ハナイ、民間ノ調査ニ疑ガ
アルナラバ、政府ノ調査ト對照シテ、若シ
一致ヲ見ナイ場合ニハ各府縣每ニ適當ノ
地ヲ擇ンデ政府自ラ試作シテ、果シテドレ
ダケノ生產費ヲ要スルモノデアルト云フコ
ヲ御試驗ニナレバ、此標準ヲ拵ヘルコトハ
易々タル問題デアルガ(拍手)ソレマデノ手
續ヲ履マズシテ、唯、標準ガ取レナイ、生
產費ハ到ル所デ違フカラシテ、之ヲ目標ニ
スルト云フコハ出來ナイト云フ御議論ハ
吾々ニハ服從スルコトハ出來ナイ、成程地
方地方ニ依ッテ生產費ノ異ナルコトハ論ヲ
待タヌノデゴザリマスルガ、政府トシテハ
此平均ニ依ルモ、或ハ米價モ其地方ニ依ッ
テ値段ノ異ナルノデアルガ、常識上ヨリ見
テモ生產費ヨリ下ッタモノデアルカ、或人
生產費內ニ在ルカト云フコトハ調べ得ラルヽ
モノデアルガ、爲スベキ途ヲ爲サズシテ、
唯〓政府ガサウ云フ遁辭ヲ言フノハ吾々
ハドウシテモ服從ガ出來ナイノデゴザリマ
ス、殊ニ私ハ此生產費ト云フコトニ付テ、
今期議會ニ痛切ニ感ジマシタルコトハ、過
曰ノ稅制整理ノ委員會ニ於テ、濱口大藏大
臣ハ土地ノ法定地價百圓ニ付純益金ハ-
公課ヲ差引イタル所ノ純益金ハ一百圓アル
ト云フコトヲ唱ヘラレテ、而シテ商工業ノ純
益金四百圓ヲ免税點ト致シマシテ、土地ニ對
シテハ其半額、卽チ二百圓ヲ免稅點ノ基準
トサレタノデアリマスルガ、是ハ既ニ其免
稅點ノ比例ニ於テモ不權衡ナルノミナラ
ス、實際ノ土地ノ收益ヨリ算定ヲ致シタナ
ラバ、商工業ノ免稅點ノ三分ノ一ニモ當ラ
ナイ免稅點ニナッテ居ルノデゴザリマス(拍
手)斯ル結果ヲ招キマシタルモノハ、大藏
大臣固ヨリ偏頗ノ御扱ノアル御方トハ思ヒ
マセヌガ、全ク當該官衙ガ十分ナル調ヲ爲
サヌ爲ニ、遂ニ農家ノミガ斯ウ云フ不幸ニ
陷シテ居ルノデゴザリマス、此故ニ私共ハ
價格ニ付テモ調節ヲ望ム所以デアリマス
〔「議長-議長-三輪君ノ言論ハ本
案ニ關係ノ無イコトヲ喋ッテ居ルノデ
アリマス、此際議長ハ注意スベシ」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 三輪君、質疑ノ要旨
ヲ御述ベヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=24
-
025・三輪市太郎
○三輪市太郞君(續) 議長ノ御注意デゴザ
イマスルガ、私ノ述ベルコトハ此米、籾ノ關
稅率ニ關係スル事ノミデゴザリマス(拍手)
決シテ他事ニ涉シテ居リマセヌ、「第三項米
穀委員會ノ委員ハ半數ヲ農業ノ知識經驗
アル者ヲ民間ヨリ任命スルコト」、此點ハ政
府ハ實行シ得ルヤ否ヤト云フコトヲ御問ス
ルト共ニ、政府ガ之ヲ行ハントスレバ、現
任ノ委員ヲ更迭スルカ若クハ增員スルヨリ
外ニ途ハナイノデアリマスガ、其點ニ於テ
ハ吾々ハ何レデモ異論ノナイ所デゴザリマ
ス斯カル事ヲ望ム所以ノモノハ、米穀法
ノ委員會ヲ設置サレテ以來、其任命ヲ蒙リ
シ人とハ官吏カ華族、若クハ商工業ニ關係
ノ深キ人〓ガ多數デアリマシテ、農村ノ生
產經濟ニ精通シテ居ラレル方〓ハ實ニ稀レ
デアリマス、此事ハ現任ノ委員諸氏ヲ御調
ベニナッテモ能ク分ノテ居ルコトデゴザリマ
スガ、人格、地位、學歷等ニ於テハ實ニ
尊敬スベキ人ミノ御面揃ヒデアルガ、實際
問題ヲ理解シテ居ル人ハ少イカノ如キ感ヲ
持ツノデゴザリマス(發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=25
-
026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=26
-
027・三輪市太郎
○三輪市太郞君(續) 故ニ吾々ハ農家ノ生
產經濟ヲ心得テ居ラレル所ノ民間ヨリ任命
ヲ望ムノハ此意味ヨリ起ッタノデアリマ
ス、「第四項、米穀法委員會ハ委員ノ三分
ノ一以上ノ要求アル時ハ何時ニテモ開會ス
ルコト」、此希望ニ對シテハ政府ノ意見ハ
如何、此項ニ對シテハ多ク言フヲ要シマセ
ヌガ、是マデハ政府ノ都合ノミデ開カレタ
モノデアルガ、民間カラ必要ト認メテ要求
スル場合ニハ開催セラレンコトヲ望ムノデ
アリマス、「第五項、米穀法ノ運用ニ付テ
ハ委員會ノ意見ヲ尊重スヘシ」、政府ハ此
趣旨ニ同感ナリヤ如何、米穀法ノ委員會ハ
諮問機關デアッテ、其決定ヲ採否スルノ權
能ハ固ヨリ政府ニ在ルノデゴザリマスル
ガ、立憲政治ノ常義トシ、又政黨內閣ノ下
ニ在ッテハ此機關ヲ設ケタル以上ハ、委
員會ノ決定ニ從ハレルガ當然ノ事デアラウ
ト思フノデアリマスルガ、若シ政府ガ米穀
法委員會ノ意見ト云フモノヲ輕視スルナラ
バ、恰モ官僚政治、藩閥專制政治ト何等異
ラナイデアラウト思ヒマス(拍手)吾々ハ政
府ノ立場、責任ヲ思考スレバ、諮問機關ニ
對シテ其決定ニ從フベシト云フコトノ要求
希望ヲスルト云フコトハ多少無理カモ知
レマセヌカラシテ、是ハ穩カニ尊重サレル
ヤ否ヤト云フコトノ御問ヲスルノデアリマ
スルガ、其意味ハ全ク決定ニ基イテ運用セ
ラレルコトヲ望ムノデゴザイマス(拍手)以
上ノ質問ニ對シテハ、政府ハ項目ヲ別ケテ
御答辯ヲ願ヒタイノデゴザイマスルガ、
部ノ諸君ハ先程ヨリ色こノ御批評ガアリマ
スルガ、吾々ハ若シ政府ノ聲明ニシテ、吾
吾ノ會得シ得ザル程度ノ聲明ナラバ、或
如何ナル態度ニ出ルカモ分リマセヌ(發言
スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=27
-
028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜畫ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=28
-
029・三輪市太郎
○三輪 輪市太郞君(續)又吾々ハ全ク米穀法
ノ運用ニハ不安ノ念ヲ抱イテ居ッタ者デア
リマスルガ、御答辯如伺ニ依シテハ其不安
ノ念ヲ一掃致シマシテ、生產經濟ヲ破壞セ
ザル所ノ保障ヲ得タトモ見ルノデゴザイマ
ス、ノミナラズ米穀法ノ制定セラレタル當
時ノ貴族院ノ熊度ヲ、先刻申スガ如キコト
ヲ顧ミ、或ハ今期議會ニ於ケル此米、籾ノ
關稅率ニ對スル貴族院ノ空氣等ヲ冷靜ニ考
ヘテ見タナラバ、如何ナル結果ヲ招クデア
リマセウカ、實ニ是ハ考慮ヲ要スル場合デ
ゴザリマス、假ニ輸入外米ノ關稅ニ僅カノ
增加修正ヲ致シテモ、是ガ果シテ內地米ノ
市價ニ影響スルヤ否ヤト云フコトモ未知數
デアルノデゴザリマシテ、全ク農家ノ安全
策ヲ考ヘタナラバ、玆ニ政府ガ眞ニ誠意ヲ
以テ米穀法ノ運用ヲ圖ルナラバ、是レ恰モ
花ヲ見テ悲シムヨリモ、實ヲ結バシテ收穫
スルト同樣ナ結果ニナルノデゴザリマス、
(拍手)全ク吾々ハ衷心ヨリ暴落ノ場合ノ生
產者ノ事モ考へ、又一面ニハ消費者中外米
ヲ常ニ食糧トスル人ハ、比較的低級ノ人ミ
デアルカラシテ、社會政策ノ意味ヨリシテ
モ、是ハ一考スベキ問題デゴザリマシテ、
此質問ニ對シテ政府ノ聲明如何ハ卽チ生
產者ノ安堵スルカ否ヤノ分岐點デゴザイマ
スルカラシテ、ドウカ政府ガ關稅ノ委員會
ニ於テ述ベラレタル如ク、眞ニ誠意ヲ以テ
米穀法ヲ運用スルト云フコトヲ聲明サレタ
ナラバ、縱令一部ノ諸君ガ如何ナル批評ヲ
スルト雖モ、私ハ眞ニ農民ニ對スル深切、
眞ニ生產者ヲ保護スルニ執ルベキ途ナリ
ト、固ク信ズルノデゴザイマス(拍手)之ヲ
以テ私ノ質問ハ了リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=29
-
030・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻總理大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=30
-
031・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 三輪君ノ御質
問ハ極メテ重要ナル御質問デアリマス、故
ニ私ハ明確ニ箇條ヲ逐ウテ御答辯ヲ申上ゲ
やっ、第一ハ、米穀法ノ運用ニ關シマシテ
ハ單リ內地米ニ限ラナイコトニ致スノデ
アリマシテ、此點ハ申上ゲルマデモナイ事
デアリマス、第二ハ、米價ガ著シク騰貴若
クハ下落致シマシタ場合ニ於テハ、生產者
ト消費者トノ利害ヲ調和スルガ爲ニ、米穀
法ノ運用ニ依シテ之ヲ調節スルノ方針ヲ執
ル考デアリマス(拍手)第三ハ、米穀委員
會ノ委員ハ、半數以上ハ民間委員ヲ以テ之
ニ究充マシテ、民間委員ノ中農業ニ關シテ
知識經驗ヲ有スル者ノ數ヲ多クスル考デア
リマス(拍手)第四ハ、米穀委員會ハ委員三
分ノ一以上ノ要求ガアリマシタナラバ、之
ヲ開會スルコトニ致シマス(拍手)最後ノ御
質問ノ米穀委員會ノ意見ハ、之ヲ尊重スル
ヤウニト云フ事柏ハ、政府モ固ヨリ其通リ
ニ致ス考デアリマス(拍手)三輪君ノ御質問
ハ極メテ重要デアリマスル故ニ、私モ亦明
確ニ御答辯ヲ中上ゲテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=31
-
032・三輪市太郎
○三輪市太郞君 只今ノ總理大臣ノ御答辯
ハ滿足ヲ致シマス、全ク農家ノ爲ニ感謝ス
ル所デアリマス(拍手)
〔此時發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=32
-
033・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス-
諸君、先刻原惣兵衞君ハ屢、議長ヨリ御注
意ヲ致シマシタガ、ソレヲ聽カレマセヌ、
已ムヲ得ズ一時退場ヲ命ジマシタガ、只今
重要法案ノ會議デアリマスカラ、同君ノ靜
甫ヲ希望致シマシテ、此際入場ヲ許シマス
(「條件附デハイカヌ」ト呼ヒ其他發言スル
者アリ)次ハ加藤知正君
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=33
-
034・加藤知正
○加藤知正君 只今議題ニナッテ居リマス
ル所ノ、此關稅定率法中改正法律案ニ付キ
マシテ、私ハ委員長ノ報告ヲ伺ヒマシテ、
二ツノ大ナル遺憾ヲ禁ジ得ザル者デアリマ
ス、而シテ其一ツハ、米ノ關稅ガ其儘ニ据
置カレタト云フ事デアリマス、今一ツハ
染料ノ關稅ガ其儘ニ据置カレタト云フ事
〓此二ツデアルノデアリマス、而シテ此
米ノ關稅ニ付キマシテハ吾黨ヨリ此修正
案ガ出テ居リマスルカラ、必ズ其修正案ニ
付キマシテ、同僚諸君ヨリソレ〓〓御說明
ノアルコトヽ存ジマスルカラ、私ハ此點ニ
於キマシテ、自分ノ政府當局ニ對シマシテ
質問セント欲スルコトハ控ヘテ置キマス、
而シテ此第二ノ染料ニ付キマシテ、政府當
局ニ御〓ヲ致シ、委員長ニモ御尋ヲ申上ゲ
タイト考ヘル者デアリマス、前者ハ吾々食
糧問題ノ上ニ重大ノ關係ヲ持ツノミナラズ、
農村振興、農家經濟ニ重大ノ關係ヲ持ノテ
居ルモノデアリマスルカラ、是非此點ニ於
テモ質問ヲ致シタイトハ考ヘマスケレド
モ、前述ノ如キ次第ニ依ッテ之ヲ略シテ置
キマスルガ、後者ト雖モ、吾々國民トシテ
決シテ之ヲ看迫スルコトノ出來ナイ重大ノ
問題デアルト私ハ信ズル者デアル、何トナ
レバデス、此染料ハ吾々國民ノ日常著用致
シテ居ル所ノ、此衣服ノ上ニ重大ノ關係ヲ
有シ、而シテ我國ガ現在ニ於テ五億圓以上
ノ織物ヲ海外ニ輸出致シテ居リマスルガ、
其內ノ一億五千万圓ハ著色加工品デアリマ
スルカラ、此染料ニハ重大ナル密接ナ關係
ヲ持クテ居ルモノデアリマスルガ故ニ、吾々
國民ガ著テ居ル所ノ衣服ノ上カラ考ヘマシ
テモ、輸出ノ上カラ之ヲ考ヘマシテモ、決
シテ之ヲ看過スルコトノ出來ナイ問題デア
ルト私ハ信ズル者デアリマス、而シテ此染
料ニ付キマシテハ、諸君モ既ニ御承知ノ通
リ去ル大正十三年ノ六月ニ、時ノ農商務
省ハ染料ノ輸入制限令ヲ設ケタノデアリマ
ス此制限令ガ施行セラレテ以來今日ニ
至ル迄ノ實績ヲ見マスルト云フト、時ニハ
有害無益ニシテ不徹底ナル點アルヲ吾々
ハ遺憾ト致シテ居ル者デアル、此點ニ付キ
マシテ政府當局ニ御尋ヲ致シマシタ所ガ、
當局ノ御答ニハ、我國ニ於テ品質ノ上カラ
見テモ、數量ノ上カラ見テモ、又價格ノ上
カラ之ヲ見マシテモ、優ニ自給シ得ル所ノ
見込ノアルモノヽミニ付テ、是ガ輸人制限
ヲ致シタノデアル、又當業者ノ方カラシテ
之ヲ輸入致シタイ、此染料ヲ外國カラ取入
レタイト云フ希望ガアルナラバ、當局ハ簡
單敏㨗ヲ旨トシテ之ヲ取扱ヒ來クタノデア
ルカラシテ、決シテ當業者ニ不便ト迷惑ト
ヲ與ヘタ事ガ無イト言ハルヽノデアリマ
ス、併ナガラ事實ハ之ニ反スルモノアルヲ
如何セン、此輸入制限令ハ施行セラレマシ
テ以來玆ニ三囘、染料ノ禁止ヲセラレタコ
トデアリマスルガ、其中直接染料ニ屬スル
モノハ、全部硫化染料ニ屬スルモノヽ中、
責、黑黄、緣茶、此各種、鹽基性染料
ニ屬シマスルモノハ茶、綠青、亦、紫
ノ各種、其他各屬染料中ノ主ナルモノハ、
悉ク此輸入禁止ノ中ニ網羅セラレテアルノ
デアリマス、故ニ今日輸入制限ヲセラレマ
シタル所ノ染料中ニ於キマシテハ、未ダ以
テ滿足ニ我ガ·內地ニ於テ出來ナイモノモ此
中ニ含マレテ居ルト云フコトハ明カナル所
ノ事實デアル、而シテ此直接染料中、我國
ニ於キマシテ從來使用セラレテ居リマスル
所ノモノハ二百六十種ノ多キヲ算シテ居リ
マス、此中單色染料ニ屬シマスルモノガ約
百種類アルノデアル、而シテ現在我國ニ於
テ出來マスルモノハ、ドノ位デアルカト云
フコトヲ調ベテ見マスルト云フト、約七種
類デアル、卽チ輸入單色染料中ノ約一割ニ
モ滿タナイ所ノ僅カノ種類ガ出來ル、製造
セラレルニ過ギナイノデアリマス、然ルニ
此直接染料ニ屬シマスルモノヲ全部其輸入
禁止ヲセラレマシタカラシテ、當業者ノ受
クル所ノ不便不利益ハ〓貝ニ少カラザルモノ
ガアルノデアリマス、故ニ當業者ハ其不便
不利益ノ事情ヲソレー〓具申致シマシテ、
政府當局ニ輸入許可ノ事ヲ請願致シマシテ
モ、中〓容易ニハ應ジテ吳レナカッタノデ
アル、現ニ大阪府下ノ泉南郡「タオル」組合
ノ如キハ、此事ニ付キマシテ陳情ヲ致シテ
其筋へ出サレテアル、又桐生、足利、伊勢
崎濱松、八王子、或ハ京都等ニ於ケル所
ノ染織業者、或ハ織物業者ガソレー〓〓縣
廳ノ手ヲ輕マシテ、當局へ陳情ヲ致サレテ
居ルト云フコトハ、諸君既ニ御水知ノ事デ
アラウト考ヘルノデアリマス(「簡單」「簡
單」ト呼フ者アリ)就中最近ニ於テ最モ吾々
共ガ不審ニ堪ヘナイノハ斯樣ナ事實デアリ
マス、遠江ノ織物同業組合ガ、獨逸製ノ「カ
チゲンレツドブルー」三「アール」一万キロ
ノ輸入許可ヲ出願シタノデアル、所ガ商工
省デハ日本製ノ「プリユーオフスペシヤル」
ヲ代用セイト云フコトデアッタノデアル、是
ニ於テカ同組合ハ二日間是ガ試驗ヲ致シテ
見タ、所ガ獨逸製ノ染料ハ一回ノ水洗デ硫
黄分ガ立派ニ取レルニモ拘ラズ、此內地製
ノ染料ハ二回以上ノ水洗ヲ致サナケレバ其
硫黄分ガ取レナイ、而モ其色澤ガ惡イノデ
アル、サウシテ其價ガ一圡ニ付テ二十錢以
上モ高價ニ付イテ居ルト云フコトデアッタ
ノデアリマス、斯樣ナ欠第デアリマスル、
斯ウ云フヤウナ次第デアリマシテ、此當局
ハ內地染料保護ノ關係カラ、マダ十分ニ出
來ナイモノガアッテモ、成ベク之ヲ當業者ニ
使用セシメヤウト致シテ居ル、僅カバカリ
ノ試驗〓究ヲ致シテ見テ、少シ是ガ出來ル
ト思ヘバ直ニソレ等ノロ物ニ對シテハ輸入
制限ヲ加ヘント致シテ居ルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ事實ハ枚擧ニ遑アラザル
次第デアルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ
コトデハ當業者ガ、少カラザル所ノ迷惑ヲ
感ズルト云フコトハ言フ迄モナイ話デア
ルノデゴザイマスル、政府ハ此内地ノ染料
ガ八割以上モ出來ルヤウニナッタト言ハレ
マスルケレドモ、是等ノ事實カラ考へテ見
マスト云フト、吾々ハ不幸ニシテ之ニ信ヲ
置クコトガ出來ナイノデアリマスルガ、寧
ロ政府當局ハ此際實際ニ於キマシテ、我ガ
內地ニ於テ出來ル所ノ染料ハ何ミデ、出來
ナイモノハ何〓ト云フコトヲバ有體ニ之ヲ
告示致シマシテ、サウシテ其出來ナイ所ノ
染料ニ對シマシテハ自由自在ニ海外カラ
其輸入ノ出來ルヤウナ途ヲ開カレテハドウ
デアルカ、此點ニ於テ私ハ特ニ農林大臣ノ
御意見ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス、第
二ニ於キマシテハ、此輸入制限令ニ依リマ
シテ獨逸カラ來ル所ノ染料ヲ防止致シマシ
タ所ガ、外ノ方ノ國カラシテドンー〓獨
ノ染料ガ這入ッテ來ルヤウデハ何ニモナラ
ナイト思フガ、此點ニ於テハドウデアルカ
ト云フコトヲ政府當局ニ御尋ヲ致シタノデ
アル、所ガ當局ノ御答ハ左樣ノ事實ヲ認
メナイト云フコトデアッタノデアリマス、
併ナガラ實際市場ノ光景ヲ見マスルト云フ
下、ドウモ其疑ガアルノデアリマスガ、此
點ニ於テハ當局ニ於キマシテモ、十分ナル
所ノ御調査ヲ願ヒタイト思フノデアル、又
假令輸入制限令ニ依リマシテ、獨逸カラ來
ル所ノ染料ノ輸入ヲ禁止致シマシタ所ガ、
或ハ瑞西カラ這入ッテ來ルモノモアリマセ
ウ、或ハ米國カラ這入ッテ來ルモノモアリ
マセウ、是デハ獨逸カラ這入ッテ來ル所ノ
染料ヲ防ギマシテモ、何ニモナラナイノデア
ル而モ其品質が獨逸ノモノヨリモ惡イト
云フコトニナッタナラバ、其影響スル所ハ
如何デアリマセウウ、斯ウ云フヤウナ點ニ
於キマシテ、政府當局ハ如何ナル所ノ御考
ヲ持ッテオキデニナルカ、私ハ此點ニ於テ
セ御伺ヲ致シタイノデアリマス、第三ニ於
キマシテハ今回ノ染料ノ關稅改正ナルモ
ノハ、通關手續ノ簡提ト取引上ノ安全トヲ
目的ト致シマシテ、從價稅ヲ從量稅ニ換算
シタルニ過ギナイノデアッテ、決シテ重稅
ヲ課ンタルモノデハナイト云フコトヲ政府
當局ハ御答ニナッテ居リマス、併ナガラ吾々
ガ之ヲ見マスト云フト、トウモ合點ノ參ラ
メ點ガアルノデアル、今其事ヲ申上ゲテ見
マスト云フト、政府ノ提出セラレタル算出
ノ基礎ナルモノハ、稅率ノ標準デアル所ノ
輸入原價其モノハ、現今實際ノ「インヴオイ
ス」トハ大差ガアルノデアル、卽チ獨逸ノ最
低市價ト稱スル獨逸賠償染料ノ價格ハ一般
市價ヨリモ高イノデアル其高イ所ノ賠償
染料ノ價格ニ依シテ起算シ、之ニ從價稅三
割五分ヲ乘ジタルモノヲ各種品目每ニ算出
シテ、其合計ヲ單ニ品目數ニテ除ンタルモ
ノヲ平均稅率トセラレテアルノデアリマス
ルガ、是ハ洵ニ杜撰極マルモノト誦ハナケ
レパナラヌノデアル此場合ニ於キマシテ、
各品目ノ輸入數量ヲ考慮ノ中ニ御人レニナ
ラナカタト云フコトハ確ニ是ハ失當ノ
甚シイモノト謂ハナケレバナラヌト思フ、
而シテ更ニ之ヲ理論的ニ申シマスレバ、輸
入染料ノ總計ヲ以テ總金額ヲ除シテ、其平
均價格ヲ出シテ之ニ三割五分ヲ乘ジタルモ
ノヲ以テ、平均稅率トシナケレバナラナイ
ノデアル、然ルニ政府ノ今回ノ稅率ナルモ
ノハ、左樣十算出ニハ出デテ居ラヌノデア
リマスカラ、政府ノ此案ナルモノハ、第
ニハ其輸入原價ガ高キニ失シテ居ル、第二
ニ於キマシテハ算出ノ方法ヲ誤シテ居ル
此結果ト致シマシテ、今囘吾々ニ提案セラ
レマシタル所ノ染料ニ關スル關稅ナルモノ
勢ヒ高率トナラザルヲ得ナイノデアリ
やっ、此事ニ付キマシテハ、此「インヴ
オイス」ハソレ〓〓委員諸君ノ御手許ニ
參ッテ居ルコトデアラウト思ヒマスガ、
染料關稅ニ關スル政府案ト修正希望
案トノ對照書、是ハ染料業者ガ合同致シテ
作成シタルモノヲ、吾々ノ手許ニ提供致シ
テ居ルノデアリマス、是ハ委員諸君モ既ニ
御承知ノコトヽ思ヒマスガ、今御參考ノ爲
ニ其一二ヲ拾ノテ申上ゲテ見タイト思フ、
今回ノ此稅率ナルモノハ、染料ニ於キマシ
テハ一番低イモノガドウナッテ店ルカト云
フコトヲ調べテ見ルト、ソレハ媒染染料卽
チ毛織物ニ用キル所ノモノデアリマシフ、
ソレガ政府案ノ從價稅ニ換算シテ參リマス
ト云フト、三割三分八厘ニナッテ居ル、所
ガ三割三分八厘ト云フ染料ハ媒染染料ダケ
デアル、其他ノモノヲ見マスト云フト、
番低イモノガ〓基性染料デアッテ、是ガ五
割八分、其高イモノニナリマスルト硫化染
料、是ハ綿織物ニ用キルモノデアリマスガ、
二十七割三分二厘ト云フ高イ稅ニナッテ居
ルノデアル、實ニ驚クベキ高率デハアリマ
セヌカ、而モ是ハ綿織物ニ用ヰル所ノモノ
デアル、又直接染料、是モ綿織物ニ用キル
モノデアリマスガ、是ハ六割五分ノ高イ稅
率ニナッテ居リマス、綿織物ハ今日吾々共
ガ主トシテ用キル所ノ著物ニ使用スル染料
デアル、此直接染料ガ六割五分カラニナッ
テ居ッテ、而シテ高イモノニナレバ二十七
割以上ニモ付イテ「店ルト云フコトデハ、是
ハ吾々國民トシテ之ニ滿足スルコトガ出來
マセウカ、又之ヲ海外ニ輸出スル上ニ於テ
モ自然高價ノモノヲ海外ニ輸出シナケレ
バナラスコトニナルノデアル、然ラバ其結
果ハ自然ニ輸出ノ上ニ影響スルコトハ何
人カ見テモ爭ハレヌ事實デアリマス、故ニ
斯樣ニ高イ稅率ヲ算出致シテ、吾々共ニ之
ヲ示サレテ居ルノデアリマスガ、政府當局
ハ此點ニ於テ如何ナル考ヲ以テ、斯ル高イ
稅率ヲ算出シテ吾々ニ提出セラレタノデア
ルカ、而シテ委員諸君ハ此點ニ於テ如何ナ
ル審議ヲ進メラレタカ、此點ヲ私ハ委員長
ニ御尋申上ゲタイノデアル、第四ノ點ニ於
キマシテハ、政府當局ハ輸入制限令ヲ布イ
テ居ルノハ我國ノミデハナイ、染料ニ付テ
ハ各國トモ高イ關稅ヲ課シテ居ルカラシ
テ、我國ガ高イ關稅ヲ課シタ所ガ敢テ怪ム
ニ足ラヌト云フコトヲ言ハレテ居ルノデア
ル、所ガ英吉利、佛蘭西、伊太利或ハ亞米
利加等ノ富際ノ狀況ヲ調ベテ見マスルト云
フト、事實ハ大ニ之ニ反シテ居ルノデアリ
マツ、卽チ英國ニ於キマシテハ、是ハ成程
輸入禁止令ヲ布カレテハ居リマスナレド
モ、其結果ハドウデアリマセウカ、英國ハ
彼ノ歐洲戰爭ノ實磧ニ鑑ヽマシテ、染料ノ
自給自足ト云フコトノ以カラ、九百万磅
ノ大資本ヲ投下致シ、一ノ會社ヲ組織セシ
ノ、一方ニハ輸入禁止令ヲ布イテ極端ナル
所ノ保護奬勵ヲ致シタノデアリマス、所ガ
其會社ノ成績ハ立派ナル所ノ成績ヲ擧ゲ
ルカト思シタ所ガ、啻ニ其事業ガ優秀ナル
成績ヲ示サミルノミナラズ、近年ニ至リマ
シテハ段々其會社ノ成績ガ不如意ニナッテ、
配當ドコロノ話デハナイ、經濟上非常ナ窮
境ニ陷ック結果、英國政府ハ遂ニ其會社トハ
斷然關係ヲ絕ッタノデアリマス、其會社ハ
資本ヲ半額ニ致シマシテ、サウシテ經濟上
算盤ノ持テル所ノ染料、比較的簡單ニ容易
ク出來ル所ノ染料ノミヲ製造スルコトニ致
シタト云フコトハ、是ハ隱レモナイ事實デ
アリマス、面シテ英國政府ハ何故ニ此輸入
禁止令ヲ觧カナイカ、極端ナル保護政策ヲ
執ッタ結果ハ、却テ自國ノ織物等ニ付テ不
成績ヲ示シテ居ルト云フコトハ氣付カヌ
デハナイ、氣付イテハ居リマスケレドモ、
是ハ議會ノ協賛ヲ經マシテ、十年間ト云フ
モノハ如何トモスルコトガ出來ナイコトニ
ナッテ居リマシテ、尙ホ今後三年間ヲ餘シ
テ居ルト云フヤウナ狀態ニナッテ居ルノデ
アリマス、而モ今日ニ於テ吾々共、斯樣ナ
コトヲ耳ニ致シテ居ルノデアリマス、卽チ
英國ノ「マンチエスター」ニ於キマシテ毛織
物綿織物等ニ對シテ用キタル英國内地ノ
染料ハ甚ダ相製極造ノモノデアッタガ、
其織上ゲタル所ノ織物ガ、東洋方面、卽チ
我ガ日本ヤ支那方面ニ輸出セラレタ其織物
ガ、片端カラ褪色スル、色ガ變ル、斯ウ云
フヤウナ所カラシテ、非常ナ苦情ガ向フヘ
行クヤウナコトニナッタノデアリマス、是
ニ於テカ我國ニ居ル英國領事ガ東京商業會
議所へ照會ヲシテ來タ、第三者ノ眼カラ之
ヲ批判シテ實際是ハ惡イモノヲバ英國ガ輸
出致シタト云フコトナラバ、ソレハ其品物
ヲ自國ノ方ニ全部引取ッテモ宜イ、或ハ賠
償ヲ致シテモ宜イガ、此事ニ付テハ日本ノ
商業者ハ賛成ヲシテ吳レルカドウカ、斯樣
ナ照會ヲシテ來タト云フコトデアルノデア
リマス、免ニ角英國政府ハ極端ナル保護奬
勵政策ヲ染料ニ對シテ執リマシタケレド
モ、今日ニ於テハ其政策グ誤レルコトヲ自
覺致シテ居ルヤナ狀態デアルノデアリマ
ス、又佛蘭西ハドウデアルカ、此佛蘭四ハ
御承知ノ如ク彼ノ賠償染料ヲ澤山ニ取人レ
テ居ル關係上、染料ノ輸入制限令ヲ撤廢ス
ルコトガ出來ナイ、此輸入制限令ニ依ノT
獨逸カラ取人レマシタル所ノ賠償染料ノ價
格ヲバ、適宜ニ之ヲ定メテ居ルト云フヤウナ
關係ガアルカラシテ、是ハ此儘ニ据置カレ
テ居ルノデアリマス、我國トハ餘程違ノテ
居ルノデアル、伊太利ノ國ハドウデアル
カ、此伊太利ニ於キマシテハ、是ハ輸入制
限令ヲ撤廢ヲ致シテ居ル所ガ其關稅ハド
ウデアルカト云フト、輸入制限令ヲ撤廢致
シテ、非常ナ高イ關稅ヲ課シテ居ルト云フ
コトハ、是ハ單ニ黑色媒染染料ノミニ過ギ
ナイノデアリマシテ、「アニリン」染料其他
ノ染料ニ於キマシテハ、是ハ僅ニ三割三分
ト云フ關稅ニ過ギナイノデアル、亞米利加
ハドウデアリマセウ、亞米利加ハ此輸入制限
令ヲ布カレタ當時ニ於テハ、六割ノ關稅ヲ
課シ、其外ニ一封度四仙ト云フ從量稅ヲ課シ
テ居ノタノデアル、所ガ亞米利加ハ此輸入
制限令ヲ撤廢スルト同時ニ、六割ノ關稅ヲ
四割五分ニ引下ゲタノデアリマス、而シテ
從量稅ハ、每封度四仙デアリマシテ、是ハ
變リハナイ、此四割五分ノ關稅ト、每封度
四仙ノモノヲ合算致シマシテモ、五割前後
ノ關稅ニシカ過ギナイノデアル、卽チ輸入
制限令ヲ撤廢シテ、却テ關稅ヲ引下ゲタノ
デアリマス、斯樣ナ次第デアリマスカラシ
テ、我國ニ於キマシテハ今日ノ狀態カラ考
ヘテ見マスルト、農商務省ノ施行致シマシ
タル所ノ此輸入制限令ナルモノハ、我國ノ
織物業ノ關係カラ考ヘマシテモ、是ハ寧ロ
撤廢スル方ガ私ハ相當ナリト思フノデアリ
さっ、此點ニ付テ農林當局ノ御考ハ如何デ
アリマセウカ、尙ホ此點ニ於キマシテ御伺
ヲ致シテ置カナケレバナラヌコトガアリマ
ス私共ガ斯樣ニ申上ゲマスト云フト、是
ハ內地ノ染料ガ多少デモ出來ルヤウナ結果
卽チ海外ノ染料ガ安ク這入シテ來ルノ
デアル、現ニ四百万圓前後モ出來ルヤウニ
ナッタ、是ガ爲ニ海外ノ染料ガ安ク這入シテ
來ルヤウニナッタノデアルカラ、此點カラ
云フト嶮入制限令ヲ撤廢スルコトガ出來ナ
イ、相當ノ保設ヲスルコトガ必要ダト云フ
御話ガアルカモ知レマセヌガ、然ラバ彼ノ
人造藍ハ如何デアルカ、臙脂ハ如何デアル
カ是ハ內地ニ於テハ絕對ニ出來ナイモノ
デアル、出來ナイケレドモ併ナガラ(「簡單
々々」ト呼フ者アリ)曾テハ五十「キロ」千圓
カラ致シテ居ッタ所ノモノガ、近來ニ於テ
ハ僅ニ百七八十圓シカシナイヤウナ狀態デ
アリマス、此實例ニ徵シマシテモ、內地ニ
於テ出來ナイト云フタ所ガ、必シモ外國ノモ
ノガ高ク這入ッテ來ルトハ限ラヌ(「簡單々
々」「モウ止セ」ト呼フ者アリ)諸君ハ不眞
而目デアリマス、實業上ノ問題ヲ論ズルニ
當ッテ、ソンナ不眞面目デナクテ宜シイ(拍
手)又國防上内地ノ染料ヲ保護シナケレバ
ナラヌト云フコトヲ仰シヤルノデアルガ、
國防上必要デアルナラバ、何故ニ彼ノ東洋
窒素株式會社ヲシテ、空中窒素ヲ取ル所ノ
仕事ヲサセナイノデアルカ、空中窒素ノ採
取ト同時ニ、國防上必要ナル所ノ火藥ハ十
分ニ之ヲ補フコトガ出來ルノデアル、然ル
ニ唯〓此會社ヲシテ、何モ仕事ヲサセナイ
デ置イテ、サウシテ單ニ特許狀ノミヲ取ラ
シテ置クト云フヤウナコトヲ、何故ニヤラ
シテ居ルノデアルカ、甚ダ矛盾ナルヤリ方
ヲシテ居ルト謂ハナケレバナラヌノデアリ
さく、斯ウ云フヤウナ見地カラシテ、私
今日我國ノ國民ヲシテ、成ベク安イ所ノ着
物ヲ着サセル意味ニ於キマシテモ、此染料
ノ輸入制限令ヲ撤廢スル必要ガアラウト思
フ、又輸出スル織物ノ關係カラ考ヘマシテ
モ、之ヲ撤廢スルノ必要ガアルト思フノデ
アルガ、此點ニ於テ農林當局ハドウ御考ニ
ナルカ、又併セテ委員諸君ノ此關係ニ付テ、
如何ナル所ノ審議ヲセラレマシタカ、委員
長ノ之ニ對スル所ノ御答辯ヲ戴キタイト思
フノデアリマス(「ソレハ討論ダ」「答辯ノ必
要ナシ」ト呼フ者アリ)討論デハナイ質問
ダ、答ヘラレズナラ答へヌデモ宜イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=34
-
035・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=35
-
036・加藤政之助
○加藤政之助君 議長-發言ハ許セヌノ
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=36
-
037・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 加藤政之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=37
-
038・加藤政之助
○加藤政之助君 簡單デアリマスカラ自席
カラ御答ヲ致シマス、只今加藤君ノ御質問
ハ染料ノ關稅ガ高過ギルヤウデアルガ、
委員長ハ之ニシシ如如ナル考ヲ持シテ居
ルノデアルカト云フ御尋デアリマス、所ガ
此染料ノ關稅ニ付テハ委員會ニ於テ一向
手ヲ觸レテ居ラヌノデアリマス、若シ手ヲ觸
レテ引上ゲタト云フナラバ、私ガ御答ヲス
ル責任ガアリマスガ、委員會デハ一向手ヲ
觸レテ居ラヌノデアリマスカラ、若シ稅率
ガ高イト云フ御考デアリマシタナラバ、政
府當局ニ御尋ニナルガ然ルベキデアラウト
思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=38
-
039・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡商工大臣
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=39
-
040・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今加藤君ノ御
質問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマスガ、加藤君
ハ農林大臣ニ答辯ヲ求メラレタノデアリマ
ス、然ルニ是ハ私ノ方ノ主管デゴザイマス
ルカラ、私ヨリ御答ヲ中上ゲマス(拍手)加
藤君ノ御尋ハ、最初ニ於テ輸入制限ガアル
ガ爲ニ、染色業者ノ不便ヲ述ベラレマシ
テ、之ニ成タケ便利ヲ與へルヤウニト云フ
御希望ノ下ニ述ベラレタヤウデアリマシタ
ガ、段々質問ヲ進メラレルニ從ッテ、其制
限ヲ撤廢スル方ガ宜シイヂヤナイカト云フ
所ニ結バレタヤウデアリマス、ソレ故ニ御
質問ノ順序ヲ逐ウテ御答ヲ致シマスヨリ、
一番最終ノ所ヲ土臺トシテ御答ヲシタ方
ガ、御希望ニ副フノデアラウカト存ジマ
ス、此染料輸入ノ制限ヲヤルコトニ付キマ
シテハ、曩ニ本會ニ於テ御質問ノ起リマシ
タ當時ニ於テモ御答ヲ致シマシタ、又豫算
ノ分科會ニ於キマシテモ、確カ加藤君デアツ
タカト思ッテ居リマスガ、私ヨリ御答ヲ致シ
タト思ヒマス、又質問書ガ提出サレマシテ、
之ニ依シテ答辯書モ差出シテアルト思ヒマ
ス、ソレ故ニ私ハ、此切迫シタ時間ニ際會
シテ、諄とシク申上ゲルコトハ省略シマ
ス、要スルニ染料製造ノ事柄ハ、單ニ染料
ト云フコトニ止マラズシテ、此染料ヲ拵ヘ
ルマデノ間ノ徑路ニ付テ、所謂化學工業ノ
中樞ヲ成スモノデアリマシテ、是ガ我國ニ
於テ完全ニ出來ルヤウニナルト否トハ國
運ノ消長ニ大關係ヲ有スル事柄デアルノデ
アリマス、ソレ故ニ是ハ相當ノ保護ヲ加へ
テ、成功スルヤウニセシメナケレバナラナ
イノデアリマス、卽チ保護ヲ加ヘマシタ徑
路ニ付テモ、最早申上ゲナクテモ分ッテ居
ルト存ジマス、只今ノ所ニ於テハ約四五年
ヲ期シテ、今日マデ出來上ッテ居リマスル
モノヽ外ニ對シテ、約二十種位ナモノヲ成
功セシメヤウトシテ、旣ニ常議會ニ於テハ
獎勵ノ金額ニ對シテ協賛ヲ經テ居ルコト
モ、加藤君ハ御承知デゴザイマス、內ニ於
テ之ヲ成功セシメヤウトスレバ、外ヨリ壓
倒ヲ受ケルコトヲ避ケナケレバナラヌト云
フコトハ已ムヲ得ヌノデアリマス、卽チ茲
ニ制限ヲ行ッテ居ル次第デアリマス、ソレ
故ニ今此制限ヲ撤廢スルト云フコトハ其
時期ニ到達致シテ居ラヌノデアリマス、併
ナガラ之ヲ制限致シマシタ爲ニ、染色業者
ノ被ル所ノ不便不利ナルコトヲ顧ミナイノ
デハナイノデアリマス、卽チ其不便不利ニ
對シテハ不便不利ノ無イヤウニ十分ニ便
宜ヲ與ヘル考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
若シ既往ニ於テ其不便ノ事實ガゴザイマシ
タナラバ、是ハ取調べマシテ其不便不利ヲ
解除スル事ニ力メヤウト考ヘテ居リマス、
又之ニ關シテ各國ノ事例ヲ擧ゲテ色〓御話
ガゴザイマシタガ、是ハ我國ニ於ケル事業
トシテハソレ程御答辯ノ必要ハ無イト存
ジマスカラ、此場合ニ於テ時間切迫ノ爲ニ
省略〓シマス(拍手)而シテ之ニ對スル關稅
ノ御話ガゴザイマシタ、此關稅ハ所謂從價
稅ナルモノハ、稅關ヲ通過致シマスルトキ
ニ於テ、多少ノ不便ガアルト存ジマシテ、
從價稅ヲ從量稅ニ引直シタト云フコトニ過
ギナイノデアリマス、卽チ是ハ畢竟我國ニ
於テ出來ナイモノヲ、海外カラ求メルモノ
ニ對シテノ便利ヲ圖クタ趣旨ニ外ナラヌノ
デアリマス、若シ夫レ從前ノ稅關ノ手續ニ
對シテ、色〓御話モアッタヤウデゴザイマ
スルガ、之ニ對シテ尙ホ御不滿ガゴザイマ
スレバ、是ハ私ノ主管內デハゴザイマセヌ
カラ、大藏當局ヨリ御答ヲ致シマスデゴザ
イマセウガ、今日ノ關稅問題ニ對シテハ
私ガ今申上ゲタ所デ相當デナイカト存ジマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=40
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041・加藤知正
○加藤知正君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=41
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042・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 簡單ニ願ヒマス、加
藤知正君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=42
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043・加藤知正
○加藤知正君 委員長ハ私ガ委員長ノ考ヲ
聞イタヤウニ言ハレマスケレドモ、私ハ委
員長ノ考ナドハ聞カヌノデス、委員長ノ考
ヲ間イテ何ノ役ニ立チマスカ、卽チ委員長
ニ御尋シタノハ此問題ニ付テ如何ニ審議
セラレタカト云フコトヲ聞イタノデアリマ
ス、的違ヒデアリマス、又商工大臣ガ云々
ト云フゴトヲ言ハレマシタ、私ハ此商工省
ガ農商務省カラ分家ヲ致シタバカリデアツ
テ、實ハ一時眼中ニナカッタカラ農林省ト
言ッタノデアルガ、併ナガラ商工大臣ノ答
辯ハ、分家ハ分家相當ノ答辯デアッテ、吾々
ハ之ニ滿足スルコトガ出來マセヌ、何故滿
足スルコトガ出來ナイカ、其一ツハ今日吾々
ニ示サレタ所ノ關稅ハ、是ハ算出ノ方法
ヲ誤ッテ居ル、非常ニ高イ所ノ稅金ヲ課スル
コトニナルガ、是ハドウナサルカト云フコ
トヲ御質問申上ゲタノデアリマス、併ナガ
ラ此上ニ御尋ヲ致シマシテモ、私ハ此事ニ
付テハ御答辯ハ得ラレマイト思ヒマスカ
ラ、敢テ追窮致シマセヌ
〔松山兼三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=43
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044・松山兼三郎
○松山兼三郞君 私ハ只今上程ニナッテ居
リマス關稅定率法中改正法律案ニ對シマシ
テ、私ノ賛否ヲ決シマスル前ニ、二三政府
ニ對シテ御尋ガ致シタイ事柄ガアルノデゴ
ザイマス、ソレハ米及扨ノ關稅ニ關聯致シ
タ問題デアルノデアリマス、第一ニ御尋ヲ致
シタイコトハ、政府ハ米ノ增收ニ付キ、如何
ナル目標ノ下ニ其計畫ヲ進メラレツヽアル
カト云フコトデアルノデアリマス、デ過般來
本議場ニ於テ質問應答、竝ニ委員會等ニ於
キマシテ此食糧問題、就中米ノ增殖ノ問題
ニ付キマシテ、屢、質問應各ガ重ネラレテ
居ルノデアリマシテ、其速記錄等ニ就キ見
マスルノニ、總理大臣ハ米ニ向ッテハ自給
自足ト云フコトヲ希望スルト云フコトヲ仰
シヤッテ居ルノデアリマス、然ルニ農林大臣
ハ此米ノ增殖ト云フコトニ付テハ、政府ハ
出來得ル限リノ施設ヲシテ居ルノデアル
ト、斯ウ仰シヤッテ居ルノデアリマス、ソ
レデ今日ノ此米ノ增殖ト云フコトニ付キマ
シテ、政府ガ其政策ヲ樹立致ス上ニ於キマ
シハ、必ズ一定ノ目標ト云フモノヲ定メ
テ、ソレニ到達スルト云フ所ノ計畫ヲ樹テ
ナケレバ、政策ノ意義ヲ爲サナイモノデア
ルト信ズルノデアリマス、其意義カラ申シ
マスト云フト、目下我國ニ於テ內地米ヲ以
テ内地ノ人口ヲ養フニハ足リナイ所ノ數量
ハ、年ニ依ノテ多少ノ異動ハゴザイマスケ
レドモ、先ツ平均三百万石以上純外國米ノ
輸入ニ俟タナケレバナラヌト云フ狀態デア
ルノデアリマスガ、政府ガ此米ノ自給自足
ト云フコトヲ目標ト致シテ進マレルナラ
バ、此三百万石以上ノ收穫ニ對シテハ、ド
ノ計畫ニ依シテハドレダケノ收穫、ドノ計畫
ニ依ッテハドレダケノ收穫ト云フ所ノ具體
的ノ政策ガナクテハナラナイト私ハ信ズル
ノデアリマス、例ヘバ耕地反別ノ面積ノ增
加ニ依ノテドレダケ、土地ノ利用增進ニ依ル
增加ガドレダケ、或ハ耕地栽培ノ改良ニ
依シテ增牧ガドレダケ、何年ノ中ニ此色こ
ノ方面カラ寄セテ以テ此自給自足ヲ圓ルト
云フ所ノ計畫ガナケラネバ、唯"漫然ト出
來ルダケ餘計取リタイト云フダケデハ、此
米ノ增殖ト云フモノハ政策ト云フ名ハ附
カナイダラウト私ハ思フ、之ニ向シテ政府
ハ目下米ノ增殖ノ計畫ニ付テ持ノテ居ラル
ル所ノ政策ヲ、具體的ニ數字的ニ一ツ御示
シガ願ヒタイト思フノデアリマス、第二ノ
問題ハ、政府ハ米ノ市價ガ其生產費ヲモ償
フニ足ラザルノ狀態ニ在リテモ、尙ホ其增
收計畫ヲ遂行シ得ルト御考ニナルカドウ
デアルカ、斯ウ云フ質問デアルノデアリマ
ス、今日ノ米ハ言フ迄デモナク收穫セラル
ル所ノ約半數ハ外へ賣ラルヽ所ノモノデア
ル卽チ一般ノ經濟貨物ト同シモノデアル
ノデアリマス、デ經濟貨物ト同ジモノト致
シマシタナラバ、其價格ノ最低限度ト云フ
モノハ少クトモ其限界ハ生產費ニ置カナ
ケレバナラナイモノデアルト信ズルノデア
リマス、然ルニ是迄ノ米價ノ狀態ヲ考ヘテ
見マシテモ、又今日ノ米價ヲ調ベテ見マシ
テモ、私共ノ調査スル所ニ依リマスト、農
家ノ生產費ヲ償フニ足ラナイト云フノガ事
實デアルノデアリマス、是ハ大正十一年カ
ラ十三年マデノ米價ノ平均ハ三十五圓七十
三錢ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ吾々
ガ調査シタル所ノ生產費ニ依リマスト云
フト、其生產費ハ三十七圓五十八錢程度ヲ
往來シテ居ルノデアリマス、是ハ米價ガ生
產費ヲ償フニ足ラナイト云フ狀態デアル、
斯ウ云フヤウナ狀態ニ在ッテモ、尙ホ政府
ハ米ノ增殖ト云フコトノ計畫ヲ遂行シ得ル
見込ガアルカドウカト云フコトニ付テ、御
意見ガ承リタイノデアリマス、第三ニハ政
府ガ米ノ關稅ト云フモノヲ、現行法ノ率ヲ
以テ至當トセラルヽ所ノ理由ハ何所ニアル
カ、私共ガ調ベマス所ニ依リマスト云フ
ト少クトモ此內地米ト云フモノヽ價格
ガ、優ニ外米ノ價格ニ屋迫ヲ受ケナイト云
フ程度ニ致シマスルニハ保護關稅ト致シ
マシテ、現行ノ相場ニ於テ百斤二圓ト云フ
モノヲ以ヲ至當トスルノデアリマス、其數字ヲ
中シマスレバ、今日ノ外米ノ價格ハ西貢米、
蘭頁米ニ於キマシテ、大抵似寄シテ居リマス
ガ、沖相場ト云フモノガ百斤西貢米デハ八
圓九十錢ニナッテ居ル、ンレヲ一石ニ換算〓
シマスト二十二圓二十五錢デアリマス、ソ
レニ內地米トノ品質ノ相違ノ價格、値開キ
ヲ八圓ト見マシテ、ソレカラ又ソレニ加フ
ルニ百斤二圓ノ關稅ヲ一石ニ直シマシテ五
圓ヲ加ヘマスルト云フト、其總計ガ丁度一
石當リ三十五圓二十五錢トナルノデアリマ
ス、サウスルト云フト大正十一年カラ十三
年マデノ我ガ內地米ノ平均相場ノ三十五圓
七十五錢ト丁度合致スルノデアル、外米ノ
相場ニハ內地米トノ品質ノ差ニ依ル価開キ
ト、ンレカラ百斤二圓ノ關稅一石五圓ト、
ンレカラ沖値段トヲ加ヘルト云フト、丁度此
內地米トノ平均價格ト云フモノガ維持ガ出
來ルノデアル、是レ以下ニ關稅ヲ下ゲタナ
ラバ、內地米ト云フモノハ外國米ニ依シテ
其價格ガ壓追サレルト云フコトハ數字ニ依
テ明カデアル、此程度ニ於キマシテ政府ガ
現行ノ關稅率ヲ百斤ニ付テ一圓ト云フコト
ガ至當デアルト常ニ委員會ニ於テ辯明ニ
ナッテ居リマスルガ、其理由ハ何レニ在ルノ
デアリマセウ、其數字ノ根據ハ何レニ在ル
デアラウカト云フコトヲ水リタイノデアリ
やく、其次ニハ政府ハ米ノ關稅ノ定率卜云
フコトニハ重キヲ置カレズシテ、サウシテ
米穀法ノ運用ニ專ラ俟タウト云フノデア
ル、米價ノ維持ト云フヤウナコトハ關稅率
ニ依ラズシラ、米穀法ニ俟タウトセラルヽ
所ノ理由ガ何處ニ在ルノデアリマセウ、私共
ハ關稅ト云フモノハ內地產業ヲ保護スル所
ノ常時不斷ノ是ハ障壓デアルト思フノデ
アリマス、米穀法ノ運用ト云フノハ、是ハ
臨時的ノモノデアル、米穀法ニ規定シテア
ル所ハ、關稅ヲ增シタリ、減ジタリ、撤廢ヲ
スルト云フコトガ規定ヲシテアルノデアリ
マっ、サウスルト此關稅ト云フモノガ土臺
ニナラナクテハナラヌ、其土臺ニナル所ノ
關稅ト云フモノヲ常ニ此米穀法ノ運用ニ
依シテ、臨時的ノ法律ニ依シテソレヲ補ハ
ウトセラレル所ノ理由ハ何レニ在ルカ、私
ハ見出スコトガ出來ナイト思フノデアリマ
スガ、關稅定率ハドウデモ宜イ、唯〓ソレ
ヲ補フニハ米穀法ノ運用ニ俟ッテヤレバ宜
イト云フコトヲ言ハレル理由ハ何處ニ在ル
デアリマセウ、先刻三輪君ノ質問ニ對シマ
シテ、總理大臣ガ米穀法ノ運用ニ付テ言明
ヲ致サレマシタノデアリマスガ、アノ米穀
法ノ運用ハ、只總理大臣ノ言明ヲ俟ツマデ
モナク、サウナクテハナフヌモノデアルト
私共ハ信ジテ居ル、今更ノ言明デハナイト
私ハ思フノデアリマス、ソレニ付キマシテ
政府ガ此米ト云フモノヽ關稅ダケニ付テ
定率法ト云フモノヲ輕々シク見テ、サ
ウシテ專ラ重キヲ米殻法ノ運用ニ置カレル
ト云フ理由ハ何處ニ在ルデアリマセウカ、
此點ニ付キマシテ御答ヲ願ヒタイノデアリ
やく、シレカラ今一ツハ、是ハ只今委員長
ノ御報告ニアリマシタ所ノ修正ノ希望條件
ノ一ツニ、將來此「タピオカ」「マニオカ」等
ノ外二十五種類ノモノハ、將ニ設置サレン
トスル所ノ常設ノ〓稅委員會ト云フモノニ
其栽量ヲ一任スル、斯ウ云フヤウナコトニ
ナッテ居ルノデアリマスガ、此中ニ米ハナ
イ、サウスルト假ニ此希望條件ガ本會デ議
決セラレタト假定致シマシタ上ニ於テ、政
府ハ此希望條件ニ依ッテ立ツ所ノ關稅委員
會ト云フモノニ於テハ將來トモ此米ト云
フモノハ全ク其關稅ヲ弄クラズニ、此米穀
法ニ讓シテ、關稅委員會ガ出來上リマシタ
曉ニ於テモ、此關稅委員會ハ米ノ關稅ト云
フモノニ對シテ、其委員會ニ於テモ何等考
慮シナイト云フ意思デアルカドウカ、之ヲ
一ツ承ッテ置キタイト思フ、以上五點ニ付
テ願ハクハ明快ナル御答辯ヲ願ヒタイノデ
アリマス(拍手)
〔國務大臣早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=44
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045・早速整爾
○國務大臣(早速整爾君) 米ノ關稅ニ關シ
テ御尋ニナッタノデアリマス、大體私カラ
御答ヲ致サウト思フノデアリマス、第一點
ハ此米ノ增收計畫、之ニ就テ正確ニ其曾收
計畫ノ詳シイ所ノ話ヲセヨト云フ御尋デ
アッタノデアリマス、是ハ食糧ノ自給策ヲ講
ズルト云フ上カラ云ッテ、其自給策ヲ講ズル
ト云フ計畫ガ十分ニ立ッテ居ルカドウカト
云フコトニ就テノ御尋デアルノデアリマ
ス、屢〓申述ベマシタル如ク、政府ト致シ
マシテハ此食糧ノ自給ト云フコトノ計畫ヲ
立テタイ、無論之ヲ目的トシテ進ミタイノ
デアリマスケレドモ、此自給ノ計畫ト云フ
モノハ頗ル困難デアルト云フコトヲ私ハ申
シテ居ルノデアリマス、日本ノ內地ノ耕地
ガ洵ニ狹イ、段々耕地ノ擴張ヲ行ッテ居リ
マス、土地ノ利用ノ計畫ハ之ヲ進メテ行シテ
居ルノデアルケレドモ、一方ニ於テハ人口
ノ增殖ト云フコトガ頗ル非常ナ勢ヲ以テ進
ンデ行ッテ居ルノデアリマス、丁度此人口ノ
增加ヲスル率ト、ソレカラ食糧曾殖ノ計畫ト
云フモノガ、正比例ヲシテ進ムト云フ按排
ニナッテ居ラヌノデアリマス、今日ノ計畫、
政府ガ現ニヤッテ居ル計畫ニ依リ、是カラ將
來施設シナケレバナラヌト云フ計畫ヲ併セ
テ考ヘマシテモ、人口ガ非常ニ增加スルモ
ノニ對シテハ、尙ホ食糧ノ自給ヲ完全ニ行
フト云フ見込ハ、今日デハ十分ニ立タナイ
ノデアル、故ニ政府ハ矢張出來ルダケノカ
ヲ盡シ、卽チ耕地ノ擴張、土地利用ノ計畫
ニ付テハ出來得ルダケノカヲ盡シテ、サウ
シテ食糧ノ自給策ニ進ンデ行キタイ、斯ウ
云フコトヲ御答スルヨリ外ニハ仕方ガナイ
ノデアリマス、こ此點ハ唯、獨リ當局者ガ之
ヲ努メルノミナラズ、國民ト共ニ此食糧ノ
自給ト云フコトニ向ッテハ、大ニ努力シナケ
レバナラヌト云フコトハ分リ切ッタ話デア
リマスケレドモ、現在ニ於テ自給ノ計畫ハ
成ッテ居ル、斯樣ニ御答ヲスルコトハ今日
ノ當局者トシテ出來ナイ、將來ニ於テ段々
進ンデ其計畫ヲ進メタイ、唯〓此事ヲ申上
ゲルニ付テ、前日來私ノ申シタノハ、朝鮮
ニ於ケル產米增殖計畫デアル、朝鮮ニ於ケ
ル產米增殖計畫ノ如キハ、八百万石ノ增殖
ヲ圖ル爲ニ今回計畫ヲ立ッテ居ルノデアリ
マスガ、內地ニ於テハ十分ノ計畫ガ立タナ
イニ致シマシテモ、此朝鮮ノ產米增殖計畫
ヲ以テ之ヲ補フト云フコトニ致シマスレ
パ、將來ニ向ッテハ食糧ノ自給策ヲ講ズル上
ニ於テ、非常ナル助ケニナルト云フコト
ハ、私屢、繰返シテ申シタ通リデアリマス、
併シ朝鮮ノ產米增殖計畫ハ、御承知ノ通リ
十二年度ニ於テ完成ヲ致スノデアリマスカ
ラ、今日ニ於テ直ニ此增殖計畫ガ日本ノ內
地ニ非常ナ影響ヲ及ボスト云フマデニハ
ナッテ居ラヌ、將來ノ事デアリマスカラ、
是ハ將來ノ食糧政策トシテ之ヲ參考ニスル
ト云フコトヨリ外ニハ仕方ガナイノデアリ
マく、ソレカラ第二ニ御尋ノ今日ノ如キ生
產費デアッテモ、此米ノ曾殖ヲ圖ルコトガ
出來ルト考ヘルカト云フ御尋デアルノデア
リマス、是ハ私ハ現在ノ如キ生產費デアッテ
モ、出來得ルダケノ增殖計畫ヲスルト云フ
コトハ矢張爲シ得ルト考ヘテ居ルノデア
リマス、唯、御說ニハゴザイマシタガ、此
米ノ生產費ト云フモノガ果シテ幾ラデアル
カト云フコトニ付テハ頗ル正確ナル調べ
ヲ缺イテ居ル、土地ニ依シテ生產費ノ計算
ハ違ノテ居ル、色〓ニ計算ヲセラレテ居ル
ノデアリマスカラ、果シテ幾ラガ此生產費
ノ標準ト爲スコトガ出來ルカト云フ點ニ於
キマシテハ、政府ト致シマシテモ是ガ卽チ
生產費ノ標準デアルト云フコトヲ正確ニ申
上ゲルコトガ出來得ナイノデアリマスケレ
ドモ、併シ要スルニ米ノ價ガ如何樣デアル
カト云フコトガ矢張考へ物デアル、餘リニ
米ガ安クナッテ、非常ニ安クナッテ來ルト云
フコトニナリマスレバ、或ハ米ノ增殖計畫
ト云フモノニ對シテ、多少ノ障碍ヲ與ヘル
ト云フ虞ガアルノデアリマスケレドモ、現
在ノ狀態ニ於キマシテハ、此增殖計畫ヲ立
テル上ニ於テ餘リニ邪魔ニナラナイ、此儘
デ進ンデ行クコトガ出來ルデアラウト當局
者ハ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ現
在ノ關稅定率法ノ稅率デ、是ガ當然デアル
ト考ヘテ居ルノハドウ云フ譯カト云フ御尋
デアッタノデアリマス、是迄現ニ遣リ來ッテ
居ル此現行法ノ稅率ニ依リマシテ、先ヅ此
稅率ガ行ハレ來ッタ所ノ狀況ニ於テ當然デ
アッタ、餘リニ此稅率ト云フモノガ低イト
云フ感ジヲ起スト云フ程度ノモノデハナ
カッタ、長イ間行ハレテ來テ居ルノデアリ
さっ、此程度ノモノガ先ヅ通念トシテ考ヘ
テ當リ前ノ程度ノモノデアラウ、斯ウ考へ
テ居ルノデアリマシテ、殊更ニ之ヲ引上ゲ
ル必要ハナイ、斯ウ云フ風ニ政府ハ考ヘテ
居ルノデアリマス、ソレニ付キマシテ第四
段ニ御尋ノ米穀法ノ運用ガアルカラト云フコ
トハ、ドウ云フ意味カト云フ御尋デアッタノ
デアリマスケレドモ、是ハ卽テ米穀法ヲ
巧ニ運用致シマスレバ、米價ノ暴騰、暴落
ノ際ニ相當ニ此米價ノ調節ヲ圖ルコトガ出
來得ルノデアリマスカラ、獨リ關稅ニ依ッテ
米價ノ調節ヲ圖ルト云フコトハ出來ル譯ノ
モノデハナイガ、米穀法ノ運用如何ニ依リ
マスレバ暴騰、暴落ノ際ニハ相當ニ此調節
ヲ圖ルコトガ出來ルガ故ニ、殊更ニ此稅率ノ
改正ヲ致サナクテモ、米穀法ノ運用ニ依クテ
相當ノ結果ヲ收メルコトガ出來ルト信ズル
ガ爲ナノデアリマス(「ソレガ間違ヒダ」ト
呼フ者アリ)尙ホ委員會ノ事ニ付キマシテ
ハ是ハ前刻委員長カラ報告ガアリマシタ
ル如ク、各種ノ品目ニ付テ、此常設ノ委員
會ニ於テ相當調査ヲ遂ゲタル上ニ、改正ス
ベキモノガアレバ之ヲ改正スルト云フ、其
希望ノ下ニ-其目的ノ下ニ此委員會ヲ設
置スルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリ
マスカラ、其作用ニ付テハ左樣御承知ヲ願
ヒタイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=45
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046・作間耕逸
○作間耕逸君 第一讀會ニ於ケル質疑ハ之
ヲ以テ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=46
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047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ質疑終局ノ
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=47
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048・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ質疑ハ終局致シマス、反對演說ノ
通告ガアリマスカラ之ヲ許シマス-畔田
明君
〔畔田明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=48
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049・畔田明
○畔田明君 諸君、本案程重大ナル法律案
ハ今期議會ヲ通ジテ又ト無イノデゴザイマ
ス、本案ハ政黨政派ヲ超越致シマシテ、國
家的見地ヨリ審議スルノ必要ノアリマスル
コトハ申スマデモナイコトデアル、私ハ本
案竝ニ委員長報告ノ修正案ニ反對ヲ致シマ
シテ、其理由ヲ以下簡明ニ申上ゲタイト思
ヒマス、尤モ私ノ所屬シテ居リマスル新正
倶樂部ノ多數ノ諸君ハ、委員長報告ノ修正
案ニハ賛成デアリマス、併シ私ハ此機會ニ
於テ私ノ信念ヲ述ベサセテ戴キタイト思フ
ノデアリマス、本會議及委員會ニ於テ濱口
大藏大臣ガ本案ニ對シテ御說明ナサル所ヲ
要約致シマスルト、本案ノ目的ハ我國產業
ノ保護デアル、斯ウ云フコトニ歸著致スノ
デアリマス、果シテ本案ニ依リマシテ我國
產業ガ保護セラレルデアルカドウカト云フ
コトヲ先ヅ第一ニ考へナケレバナラヌ、御
承知ノ通リニ我國ニ於テハ明治維新ノ當初
ヨリ、近代產業ニ對シマシテハ特殊ノ保護
ヲ執ッテ參リマシタ徑路ニアルノデアリマス、
明治維新ノ際ハマダ草創ノ際デアリマシ
テ、內治外交極メテ多端デアッタニ拘ラズ、
時ノ政府ハ歐米ノ近代產業ヲ我國ニ移植シ
タノデアリマス、サウシテ非常ナル力ヲ入
レテ此產業ノ仲ビルヤウニ舵ヲ取ッテ參ッタ
ノデアリマス、明治十五年頃ニ至リマシテ、
政府ノ直接事業ニ關係致シマスルコトハ打
切ラレマシテ、一旦民間ノ事業ニ移サレタ
ノデアリマス、併ナガラ其近代產業ニ對シ
マスル所ノ保護ヲ努力ト云フモノハ變ラナ
イノミナラズ、一層强クアッタノデアリマス、
更ニ商工業偏重ノ政策ヲ極端ニ執リマシタ
以外ニ於テハ、租稅政策ニ於テモ亦偏ツタ
ル所ノ政策ヲ執ッタノデアリマス、ソレハ
何カト申シマスレバ、地租條例ノ設定デア
リマス、此地相條例ニ依リマシテ、今マデ
値段ノナカッタ所ノ土地ト云フモノハ急ニ
値段ヲ生ジ、御水知ノ如クニ舊幕時代ニ於
テハ其土地ノ收穫ノ半分、其半分以上ハ之
ヲ上納トシテ取ラレタノデアリマス、所ガ
此地租條例ノ改正ニ依リマシテ、ズット其公
課ハ減シタ、サウシテ地主ハ非常ナ有利ノ
立場ニ立ッタノデアリマス、併ナガラ小作
人中以下ノ農民ニ於テハ依然トシテ舊幕
時代ノ狀態ヲ續ケテ參ッタ、此狀態ハ我ガ
近代產業ニ非常ニ低廉ナル勞力ヲ供給致シ
マス所ノ源泉トナッタノデアリマス、是ガ我
ガ產業ノ上ニ非常ナル助ケトナリマシテ、
御承知ノ如クニ歐洲戰前ニ於テハ、我國ハ
勞力ノ低廉ト云フコトヲ以テ世界ノ經濟市
場ニ驅馳スルコトガ出來タノデアリマス、
更ニ私ハ明治三十二年條約改正ニ依リマシ
テハ關稅自主權ヲ回復シテカラ後ニ付テ
考ヘテ見ナケレバナラヌ、三十二年ノ國定
稅率實施ノ際ニ一割ニ增シタノデアリマ
ス、更ニ三十九年及四十四年ノ改正ニ依リ
マシテ一割八分ニ增シタノデアリマス、斯
樣ニ關稅ニ障壁ヲ立テヽ從來保護セラレタ
上ニ、彌ガ上ニモ保護セラレテ來タ、ソレ
デ我ガ產業ハドウナッタカト申シマスルト、
大正三年、丁度今ノ濱口大藏大臣ガ大藏次
官デアラレタ當時貿易ノ「パランス」ニ依ッ
テ非常ナ憂フベキ狀態ニ至ッタ、何トナレ
バ當時輸出入ノ差額、卽チ輸入超過ノ差額
ンレト外債ニ對スル利子ノ支拂デ一億二三
千万圓ハ海外ニ流レテ行ク、而シテ我ガ日
本ニアリマシタ正價ハ僅ニ三億餘、三億餘
ノ正貨シカナイ、随テ一億二三千万圓ヅ
ツ流レタナラバ、三年後ニハドウシヤウト
云フ當時朝野共非常ノ心配ガアッタノデア
リマス、幸ニシテ歐洲大戰ハ非常ナ僥倖ヲ
與ヘマシテ、大戰中ヲ通ジマシテ、貿易及
貿易外ノ收入ト共ニ約二十八億カラノ正貨
ガ流レテ入ッタ、此時ニ於ケル我ガ商工業
ハ非常ニ繁榮ヲ致シマシタ、從來政府ノ保
護ヲシテ參リマシタ產業モ免ニ角此繁榮ノ
渦中ニ入ッタノデアリマス、更ニ最近ニ於キ
マシテハ、是ハ委員會ニ於キマシテ山本代
議士ノ質問ガアリ、濱口藏相モ御承認ニナッ
タヤウデアリマスガ、過去二年ニ於キマス
ル爲替相場下落ノ結果トシテ我ガ產業ハ二
割位ノ保護ヲ受ケタト同一ノ結果ニナッタ、
以上私ノ申上ゲタコトヲ顧ミマスレバ、非
常ナ有利ノ狀態、僥倖ノ狀態ヲ重ネテ來タ
ノデアリマス、然ルニ我ガ產業ト云フモノ
ガ此所デ行詰ッタ其原因ヲ考ヘマスルナラ
バ今迄此保護ガ適當デナカッタト云フコ
トニ想ヒ到ルノデアリマス、然ルニ今囘政
府ハ從來其產業ノ經營ガドウ云フ風ニヤラ
レテ居ッタカト云フコトニ付テ、十分ニ徹底
的ノ整理方針ヲ執ラズシテ、漫然關稅ノ障
壁ニ依ッテ保護セントセラレルト云フコト
ハ矢張從來ノ、維新以來ノ歷史ヲ繰返スダ
ケデアリマシテ、私ハ本當ノ產業保護ニナ
ラヌト信ズルノデアリマス、日本ノ事業ニ
於キマシテ歐米ニ較ベテ少カラズ不利ノ位
置ニ在ルノハ數種アリマス、第一ニ於テ機
械ノ費用デアル、機械ノ資金ニ固定致シマ
スル高ト云フモノハ可ナリノ多額デアル
是ガ今迄ニ於テサヘモ不利デアリマシタニ
拘ラズ、更ニ今回ハ各種電氣用ノ機械器具
ニ高率ノ關稅ヲ課スル、或ハ紡績機械、織
布機械ナドニ倍額乃至五割ノ關稅ヲ引上ゲラ
レルマデノ保護ヲ致シマシテモ、是等ノ機
械ハ日本ニ於テハマダ完全ナモノハ製造サ
レナイノデアリマス、隨テ關稅ガドレ程引
上ゲラレマシテモ、工業家ハ輸入ヲシナケ
レバナラヌ、故ニ今日ノ現行率ヨリ五割ナ
リ、十割ナリヲ引上ゲタヾヶ固定資本ノ增
加トナッテ、随テ是ハ生產費ノ騰貫トナリ、
又更ニ物價騰貴トナリ【海外市場ニ於テ益、
不利ノ立場ニ至ラシメルノデアリマス、例
ヘバ紡績機械一錘當リノ建設費ヲ調ベテ見
マスト、最近ニ於キマシテハ百三十五圓掛
カルサウデアリマス、然ルニ亞米利加ニ於
キマシテハ其半分デ宜シイ、英國ニ於キマ
シテハ其三分ノ一デ宜シイ、現在ハ紡績機
械一錘當リノ建設費ガ英國ノ三倍、亞米利
加ノ二倍掛カンテ不利デアリマスノニ拘ラ
ス、更ニ此上ニ一層不利ナラシメルト云フ
狀態ハ、私ノ首肯スルコトノ出來ナイコト
デアリマス、御永知ノ如クニ歐洲大戰ニ於
キマシテ各國ノ產業ハ色ニノ設備ヲシテ、
戰爭ニ因レル所ノ急激ノ需要ニ應ジタノデ
アリマス、大戰後其需要ガ一變致シマシテ、
非常ナ不利ノ立場ニ立タ、ンコデ各國ノ考
ヘルノハ何カト云ヘバ、則チ一層ノ大量生
產ヲシテ、一層ノ安イ生產貨ヲ以テ、而シ
テ經濟市場ニ戰フト云フ策戰デアリマス、
隨テ歐米ニ於キマシテハドノ位新シキ進
步グ此機械ノ上ニ加ヘラレルカ分ラヌ、日
本ノ現在ガ當局カラ御考ヘニナレバ相當ノ
進步ヲシテ居ルモノト御思ヒデアリマセ
ウ、併ナガラ其御考ヨリモ遙ニ數步或ハ格段
ニ、歐米ニ於キマシテハ進步致シマシテ、
結局我ガ經濟戦爭ニ於テ根柢ニ於テ敗レナ
ケレバナラヌ條件ニ立タナケレバナラヌト
云フコトニナルノヲ私ハ虞レルノデアリマ
ス、本會議、委員會ニ於キマシテモ度々御
議論ノアッタコトデアリマスルガ、利子ノ高イ
ト云フコトガ我ガ生產ノ非常ニ不利ナル點
デアル、而シテ此點ハ何等除カレテ居リマ
セヌ、租稅負擔モ是モ過重デアリマス、而
シテ物價ノ騰貴ニ伴フ所ノ工賃ノ不廉ハ一
層デアル、斯樣ナ生產費ノ條件ヲ爲スモノ
ニ何等ノ御注意ヲ爲サズシテ、唯、漫然關
稅ヲ上ゲサヘスレバ其一部ノ產業ヲ保護セ
ラレルト云フコトヲ御考ニナリマスコト
ハ、私ノドウシテモ理解ノ出來ナイ點デア
リマス、更ニ此本案ノ內容ヲ見マスレバ、
政府ハ到底及バザル所ノ工業ヲ保護センガ
爲ニ、他ノ一般ノ工業關係ヲ疎外致シマシ
テ、一部ニ偏スル傾ガアル、ソレハ染料工
業ノ如キ一例ダト思ヒマス、只今片岡商工
大臣ヨリ此事業ニ付テ御說明ガアリマシ
ク、アリマシタガ、片岡商工大臣ノ御希望
ノ如クニ致シマスニハ是ハ更ニ遣リ直シ
テ、一層大キナモノニ更ニ根柢カラ變ヘテ
行カナケレバナラヌ、只今ノヤウナ遺方ニ
於キマシテハ、到底其目的ヲ達シ得ラレヌ、
斯ク私ハ信ズルノデアリマス、私ハ信ズル、
產業保護ノ根本方針ト云フモノハ物價低落
ヲ促進スルコトデナケレバナラヌ、然ルニ
政府ノ關稅改正計畫ト云フモノハ、偶然ノ
增收ヲ口實ト致シマシテ、內地ノ物價ヲ釣
上ゲルコトニ依リマシテ、更ニ輸入ヲ防止
セントスルコトニ依リマシテ、一層ノ物價
騰貴ヲ招來スルノデ、物價下落トハ相反シ
タ筋ニ向フノデアル、殊ニ此重要食糧品ニ
對スル稅率ニ付テ私ハ爾ク考ヘルノデアリ
やっ、又委員長報告ノ修正案ニ於キマシテ
其內容ヲ水リマシテ私ハ驚クノデアリ
マス、今日小麥ハ我ガ國民ハ米ト共ニ常食ト
致シテ居ル面シテ農業ノ大勢ハ漸次養蠶
ニ向ヒマシテ、農家ニ於キマシテハ饂飩ヲ
買ッテ食ベル、學校ノ子供ニハ麵麭ヲ持タシ
テヤルト云フヤウナ狀態ニナッテ、米ト殆ド
變ラヌ狀態ニ立ッテ居ル、然ルニ一躍殆ド
倍額ノ高率ヲ課スル案ニ賛成セラレタノ
ハ、私ハ政府ガ社會政策ト口ニシタ其價値
ガアルカドウカヲ疑フノデアル、更ニ只今
三輪君ニ對スル若槻首相ノ御答辯ニ依リマ
シテ、米穀法ノ運用ニ於テ一層不安ノ感ジ
ヲ我ガ國民ノ上ニ與フルコトヲ私ハ遺憾ト
スルノデアリマス、消費者側カラ申シマス
レバ、關稅定率法ノ引上ニ依リ、事實上ノ
最高限度ヲ定メルヨリモ、一層ノ不安ヲ是
レ增大セラレルモノデアリマス、斯樣ナ譯
デ何等ノ產業ノ保護ニナラヌノミナラズ、
却テ產業破壞ノ傾向ヲ持ツト云フコトニナ
リマスルコトヲ私ハ虞レルノデアリマス、
併ナガラ產業ノ上ニ保護政策ヲ執ルト云フ
コトハ單ニ日本バカリデハナイ、歐洲戰
後ニ於キマシテ、歐米ニ於テハ著シク此傾
向ガ强クナッテ來タノデアリマス、亞米利加ニ
於キマシテハ千九百二十一年五月二農產物
ノ保護關稅ヲ實施致シ、更ニ翌年全產業ノ保
護的關稅ヲ實施シマシタ、英國ニ於キマシ
テモ千九百二十一年ノ十月ニ、基礎工業ノ
保護ヲ目的ト致シマスル所ノ產業保護法ヲ
實施致シマシタ、ソレカラ獨逸ニ於キマシ
テハ「ベルサイユ」條約カラ開放セラレマシ
テ、完全ナ關稅自主權ヲ得マスルヤ、隨分
思切シタ所ノ保設政策ヲ執ッテ參ッタノデア
リマス、殆ド今日到ル處ノ列國ガ此保護主
義ヲ執シテ居ル、サウシテ其保護主義ハ更
ニ報復主義ヲ生ミマシテ、今日ノ世界ハ殆
ド關稅デ戰爭ヲシテ居ルガ如キノ感ガアル
ノデアリマス、更ニ私ハ世界ノ不景氣ト云
フコトヲ考ヘナケレバナラヌ、歐洲大戰後
ニ於キマシテ、景氣ノ好クナルト云フコト
ハ一般ニ豫想セラレテ居ッタコトデアル、
日本バカリデナイ、各國共サウデアル、
然ルニ今ニ此景氣ハ直リマセヌ、是ハ政治
上ノ安定ヲ得ナイ爲デアル、又輕濟上ノ安
定ヲ得ナイ爲デアルト云フ譯デ、不景氣ハ
餘儀ナイトセラレテ店リマシタガ、併ナガ
ラ御永知ノ如ク「ドース」案ノ實施ニ依リ、
又近ク「ロカルノ」會議ノ批准ニ依リマシ
テ、歐羅巴ノ政治上ノ不安、經濟上ノ不安
ハ除カレタノデアル、併ナガラ依然トシテ
其不景氣ハ止マナイ、私ハ惟フ此不景氣ト
云フモノハ要スルニ御互ガ關稅ノ障壁ヲ
立シテ、此世界ヲ小サク區切リマシテ、小サ
ナ經濟範圍、小サナ單位ニ於テ御互ニ爭ツ
テ居ルガ故デアルマイカト思フノデアリマ
ス、是ガ世界ノ現狀デアル、併ナガラ世界
ノ現狀トシテハ此儘看過シ得ルノデアリマ
スガ、我ガ日本ノ立場カラ考ヘマスルナラ
バ、決シテ安閑トシテ居レナイノデアリマ
ス、我國ハ年々七十五万ヅツ人口ガ殖エテ
行ク、是ハ當議場ニ於テ度々問題ニナッタ
コトデアリマスルカラ私ハ繰返シマセヌ、
人口ノ點、又今中上ゲタ產業ノ點カラ顧ミ
マシテモ、吾々ハ行詰リデ、ドウカシテ之
ヲ打開シナケレバナラヌ立場ニ立ッテ居ル
ノデアリマス、隨テ吾々ノ增加シタル所ノ
人口ノ持ッテ行キ場所、又吾々ガ努力シテ
生產シタル所ノ品物ノ持テテキ場所ニ付
テ考ヘナケレバナラヌ、言換ヘレバ吾々日
本國民ノ生存權、ソレヲ世界ニ向シテ正シ
ク主張致シマスル爲ニ、吾々ハ其前提ニ於
テ注意ヲ致サナケレバナラヌノデアリマ
ス、斯ウ云フコトニ問題ハ歸著致スノデア
リマス、此點カラ考ヘマシテ、私ハ本案ニ
非常ナ不滿ヲ感ズル者デアリマス、今申上
ゲタヤウナ點ニ付テ、政府當局ガ顧慮セラ
レタ點ハ毫末モ認メラレナイ、更ニ斯ノ如
キ國民生活ニ重大ノ關係ノアル大問題ハ
少クトモ議會ニ提案前一年位ハ之ヲ輿論ニ
公開シテ、輿論ノ討議ヲ經ルト云フコトガ
必要デアル、然ルニ議會ノ開會ニ當リマシ
テ、他ノ稅制案ノ如キ重大問題ノアル場合
ニ、突如トシテ此大法案ヲ出サレル、私
政府提案ノ精神ハ丁度政府ハ秘密ノ中ニ
煙草ヲ値上ヲシタト同ジ心理狀態デハアル
マイカト察セラルヽノデアリマス、又委員
會ニ於ケル當局ノ御辯明ニ依リマシテモ、
此法案ノ不完全ナルコトヲ是認セラレテ居
ル、或ル種類ノ物ハ關稅委員會ニ掛ケテ次
ノ議會ニ於テ改正ヲシヤウ、斯ウ云フ政府
ノ御意嚮ヲ見レバ、本案ニ對シテ不完全ナ
コトヲ御認ニナッテ居ルコトヽ思フ、隨テ
是ハ當期議會ニ於テハ御提案ハ御見合セニ
ナリマシテ、更ニ能ク慎重ニ御考慮ニナッ
テ、次期議會ニ御提出ニナルコトガ至當デ
ハナイカト私ハ信ズルノデアリマス、以上
ニ依リマシテ私ハ反對ノ趣旨ヲ申述べマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、仍テ直ニ採決ヲ致シマス、本案
ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立ヲ
求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=50
-
051・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數デアリマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=51
-
052・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=52
-
053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス、山本条太郞君外九名ヨリ
本案ニ對スル修正案ヲ提出セラレマシタ、
其趣旨辯明ヲ許シマス、堀切善兵衞君
關稅定率法中改正法律案第二讀會
〔堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=54
-
055・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君 諸君、關稅定率法中改正
法律案ニ關シマシテハ、本黨ノ諸君ヨリ修
正案ガ出テ居リ、又我黨ヨリ修正案ヲ提出
致シテアルノデアリマス、而シテ本黨ヨリ
出マシタ先程委員長ノ報告ノ修正ノ中デ、
三點ダケハ吾々ノ修正點ト一致致スノデア
リマス、併ナガラ其他ニ付テハ吾々ハ四
十品目ニ付テ修正ヲ致シタニ拘ラズ、本黨
ノ諸君ハ二十二三ノ品目ハ議會閉會後續イ
テ開カルベキ常設委員會ノ議ニ付シ、其審
議ヲ經テ來年ノ議會ニ之ヲ提出スベシト云
フ希望條件ヲ御附シニナッタノデアリマス
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
何故ニ直グニ此機會ニ於テ修正ヲ試ミラレ
ナカッタノデアルカ、其二十餘種ノ中吾々
ノ修正セント欲スルモノト、大分意見ノ一
致シテ居ル點モ少クナイノデアリマス、ソ
レデ何故ニ吾々ト共ニ直ニ修正ヲ試ミナイ
カ(拍手)此質問ヲ致シテ見マシタル所、ソ
レハ八分通リマデハ修正シタ方ガ宜シイト
斯樣ニ信ズルケレドモ、殘リノ二分通リノ
所ハマダ不明デアルカラ、委員會ニ移スト斯
樣ニ申サルヽ、只今モ御論ジニナッタ通リ前
後四十日以上委員會ヲ開イテ此問題ヲ議
シ、政府委員ヨリモ屢、詳細ナル說明ヲ承
リ、當業者ヨリ賛否兩樣ノ意見ヲ承シタ、
之ヲ判斷スルニ於テ何ノ苦シイコトガアリ
マセウ、然ルニ八分通リ分シタガ二分分ラ
ヌト云フ(拍手)本黨諸君ハ恰モ是デハ世ノ
中ニ天保錢ト云フモノガアル(拍手)八分ガ
宜シイ、二分ダケハ通用シナイト云フヤウ
ナ感ジヲ起サヾルヲ得ナイ(拍手)私ハ併ナ
ガラ箇々ノ問題ニ付テハ茲デ一々說明ハ申
上ゲナイノデアリマス、四十幾箇ノ點ニ亙シ
テ修正ヲ試ミタル中、大體ノ觀念ニ付テ私
カラハ斯樣ナル精神ヲ以テ修正ヲ試ミタ、
ソレダケヲ御說明申上ゲテ置キタイト思フ
ノデアリマス、吾々ハ常設委員會ニ移シ
テ、來年モ之ヲ提出スベシ、左樣ニ呑氣ニ
日本ノ現今ノ經濟狀態ヲ考ヘル譯ニハ參ラ
ヌノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)經濟上今
日我國ハ非常ナル難關ニ遭遇致シテ居ル、
少シク深刻ニ之ヲ考フル者ハ、我國ハ今ヤ
正ニ經濟的國難ニ直面シテ居ルトマデ申ス
ノデアル、是ハ最近二三年間ノ我ガ輸出入
ノ狀態ヲ一考致サレ夕者ハ、何人モ思ヒ半
パニ過グルダラウト思フ、卽チ畔田君ノ御
論ジニナッタ如ク、歐洲戰爭中ハ、是等ノ
諸國ヨリ輸入ガ困難デアリマシタガ爲ニ、有
ユル產業ガ國内ニ勃興シタノデアリマス、
之ヲ以テ獨リ國內ノ需要ヲ滿足スルバカリ
デナク、支那、朝鮮、印度、南洋、亞弗利
加南米ノ諸國マデ盛ニ是ガ輸出サレ、海
外ニ新販路ヲ開拓スルコトガ出來タ、然ル
ニ戰爭一タビ治ノテ是等ノ國ヨリハ非常ナ
勢ヲ以テ輸入ガ激曾シテ參ッテ折角開カレ
マシタル所ノ此海外市場ヲ席捲シタバカリ
デハナク、日本內地ニモ非常ナル勢ヲ以テ
輸入ガ激增シテ參クタ、殊ニ一昨年ノ大震
災ノ結果、輸入超過ハ非常ナル勢ヲ以テ激
增シタノデアリマス、大正十二年ノ輸入超
過額ハ實ニ五億二千万圓、大正十三年度ノ
輸入超過ハ六億四千万圓ヲ算シタノデアリ
せっ、是ガ爲ニ正貨ハ著シク減少シ、海外
諸國民ハ日本ノ經濟狀況ニ關シ、疑惧ノ念
ヲ懷ク者ガ餘計アリマシタガ爲ニ日本ノ圓
ノ價ハ暴落ヲ告ゲテ、爲替ハ非常ニ下落致
シマシタ、其結果遂ニ今日ニ至ルマデ我國
ハ事實上ノ兌換停止ノ有樣ニ在ルト申シ
テ差支ナイノデアル(「ヒヤ〓〓」拍手)加フ
ルニ一面ニ於キマシテハ、諸外國ノ競爭ヲ
受ケテ、折角戰爭中ニ勃興致シマシグル產
業モ、倒產ニ陷ッタルモノガ少クナイ、不
景氣ノ結果徒ニ失業者ガ增加致シ、是ガ爲
ニ思想ノ惡化ヲ導キ、種々忌ムベキ所ノ社
會的罪惡ノ甚シク近年增加致シテ居ルコト
ハ統計ノ上ニ明カナル所デアリマス〔 内
手)卽チ外ヲ見テモ内ヲ顧ミテモ、我國ノ
經濟狀態ハ正ニ非常ナル困難ノ狀況ニ遭
遇シテ居ルコトハ明カデアリマス、之ニ對シ
マシテハ種々手段方法ヲ考ヘテ、此經濟的
難局ヲ打開スルノ途ヲ講ジナケレバナラヌ
ト思フ(「ヒヤ〓〓」拍手)政府ニ於キマシテ
モソレ〓〓手段方法ヲ御執リニナッテ居ル
ト考ヘマスケレドモ、吾々ハ就中此關稅ノ
運用ヲ巧ミニ致スト云フコトガ、最モ有力
ナル手段方法ノ一ツト考ヘル(拍手)今日ハ
世界ハ經濟的戰爭ノ狀況ヲ爲シ、經濟的戰
爭ノ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、武力ノ
競爭ノ時代ハ旣ニ過去。テ於ル、世界ノ各國
ハ實ニ關稅ヲ以テ經濟的國防ノ第一線ニ之
ヲ立テヽ居ルノデアリマス(拍手)吾々ハ斯
ノ如キ考ヲ以テ、我ガ日本國民ニシテ此關
稅政策ノ根本ヲ確立シ、稅率ノ配合ヲ巧ミ
ニ致シテ、之ヲ實際ニ利用シテ行ッタナラ
バ、之ニ依シテ確ニ輸入ヲ防遏シ、國內ニ
產業ヲ振興セシメテ、由テ以テ輸出ヲ增進
シ、國際貸借ノ權衡ヲ恢復致シ、兌換ノ基
礎ヲモ之ニ依シテ確立スルコトガ出來ルト
考ヘル、又一面ニ於キマシテハ內ニ產業ヲ
勃興セシムル結果、資本家ニハ投資ノ途ヲ
開キ、勞働者ニハ勞働ノ機會ヲ與ヘテ、之
ニ依ッテ失業ヲ防ギ、忌ムベキ所ノ社會的
罪惡等ノ發生モ、之ニ依ッテ矯正スルコト
ガ出來ルト斯樣ニ感ジテ居ルノデアリマス
(拍手)斯ノ如キ考ヲ以テ、吾々ハ今回ノ政
府ノ關稅改正案ニ接シテ居ルノデアリマ
ス、然ルニ此政府ノ提案ヲ拜見致シマスト、
吾々ノ希望ニ副ハザル點ハ決シテ少クナイ
ノデアリマス、大藏大臣ハ今囘改正ノ主タ
ル目的ハ、重要產業ノ保護ニ在リ、斯樣ニ
申サレタ、然ルニ政府ノ所謂重要產業ノ中
カラ、政府當局ハ農產物ダケハ之ヲ除外セ
ラレタノデハナイカト私共ハ考ヘル(拍手)
其證據ハ今囘ノ改正ニハ政府ハ十五年度
ニ於キマシテ、農產物以外ノモノヨリ約八
百二十三万圓ノ增收ヲ見込ンデ居ル、然ル
間ニ農產物ニ對シテハ十五年度ニ於テ
却テ七十一万二千圓ノ減收ヲ現シテ居ルノ
デアリマス、是ハ何ガ爲デアルカ、農產物
以外ノモノニ對シマシテハ從來ヨリモ稅
率ヲ高ク致シマシタル爲ニ、八百餘万圓ノ
增收デアル、然ルニ農產物ニ對シマシテハ、
從來ノ稅ヲ其儘ニ据置クカ、然ラズンパ之
ヲ低減致シタルガ爲ニ、此方ハ却テ七十餘
万圓ノ減收ヲ示シテ居ルノデアリマス、斯
ノ如キハ農業ニ對シ、或ハ商工業、製造業
ニ對シ、政府ガ一視同仁ノ御考ヲ有セラレ
ザルモノト、判斷致スノ外ハナイノデアル
(拍手)吾々ハ農業タルト商工業タルトヲ問
ハマ、有ユル產業ニ對シテ一視同仁ニ、國
民ガ全力ヲ擧ゲテ之ニ努力スベシト云フノ
ガ、吾々ノ精神デアリマス(拍手)尤モ是ハ
考へ樣ニ依シテ只今畔田君ガ申サレタ如ク、
自由貿易ヲ理想トスル所ノ彼ノ英吉利ノ國
民ノ如キハ違シタ考ヲ持ノテ居ル農產物
ノ如キハ、何モ奬勵スル必要ハナイ、世界
中何處カラデモ一番安イ食物ヲ買ッテ來テ
使ヘバ、ソレデ宜イヂヤナイカ、國民ハ商
工業ニ專心從事シテ金儲ケヲスレバ宜シ
イ、其儲ケタ金ヲ以テ食糧日ヲ買ンテ來テ
食ベレバ宜シイヂヤナイカ、斯樣ナル議論
モ立ツノデアル、併ナガラ是ハ英吉利ノヤ
ウナ國ニ於テ、初メテ徹底的ニ實行スルコ
トガ出來ルノデアル、日本ナドハ其眞似モ
スルコトハ困難デアリマス(拍手)御永知ノ
如ク英吉利ハ最近ニ至ルマデ製造工業ニ於
テハ、何ト云ッテモ世界デ-番進ンデ居タ
ノデアル、ノミナラズ世界到ル處ニ植民地
ヲ澤山持シテ居ル、亞米利加合衆國ト雖モ、
其ノ他南米ノ諸國ト雖モ、今日世界中デ英
吉利人ヲ排斥スル國ナドハ一ツモナイノデ
アル、顧ミテ日本人ハドウデアルカ、世界
到ル處、日本人ニ對シテ門戶ヲ閉鎖シテ居
ルノデアル、七十五万ノ人口ガ增加スル、
何處へ其人口ヲ吐出スコトガ出來ルカ、唯〓
滿洲ノ一角ニ於テ吾々ノ這人シテ行ク所
ノ途ガアルダケデアル、斯ノ如キ國柄ニ
於テ、英吉利ノ眞似ナドハ到底出來ナイノ
デアル、こ我國ト事情ヲ稍〓同ジクスルモノ
私ハ寧口獨逸或ハ佛蘭西ノ如キ、歐洲
ノ大陸諸國デアルト考ヘル、是等ノ國ハ
五六十年前ニ、否モット前、七八十年前ニ、
鐵道或ハ運輸交通業、船舶等ガ發達シタル
結果、亞米利加大陸ヨリ非常ナル勢ヲ以
テ、農產物ガ輸人シテ居ッタノデアリマス、
此儘ニ致シテ置ケバ、大陸諸國ノ農業者ハ
非常ニ悲慘ナル狀態ニ立至ラナケレバナラ
ヌコトニ鑑ミ、斷然玆ニ農業保護ノ國策ヲ
立テタノデアリマス、商業ニモ、工業ニモ、獨
逸、佛蘭西等ハ全力ヲ盡シテ奬勵シタケレド
モ、是ト同時ニ、農業ノ保護ト云フコト
ハ、之ヲ一日モ忘レナカ。ツタノデアリマス、
固ヨリ是等ノ點ハ吾々ハ學バナケレバナ
ラヌト思フ、農產物ヲ保護シテ價ヲ高クス
レバ、生活費ガ高クナッテ、商工業ノ發達
ヲ阻害スルト云フ議論モアリマスケレド
モ、彼ノ獨逸ノ如キハドウデアリマスカ、
農業ノ保護ヲ徹底的ニヤッタニ拘ラズ、其
國ガ商工業ノ過去五六十年間發達ノ成績
ハ先輩國ノ英吉利ト同樣ノ有樣デアリマ
ス、要スルニ其國民ガ農業ニ對シテモ、商
工業ニ對シテモ、全力ヲ傾注スルカドウカ
ト云フコトガ、是ガ根本問題ニナッテ參ルノ
デアリマス、之ヲ我ガ農業ヲ今日ノ儘ニ致
シテ置ケバ、一面ニ於テハ亞米利加大陸ヨ
リ、一面ニ於テハ亞細亞大陸ヨリー諸大
陸ヨリ非常ニ安イ生產費デ出來ル農產物ヲ
輸入サレテ、農村ハ日一日ト衰亡ニ陷ルノ
外ハナイノデアリマス、農村衰亡スレバ、
卽チ地方ノ農民ハ地方ヲ離レテ都會ニ集中
スル、都會ニ集中シテ、職業ニ有リ附クコ
トガ出來レバ幸デアルガ、左樣ニ中ニ參ラ
ヌノデアル、失業者トシテ生活ニ困リ、遂
ニ種々困難ナル社會問題ガ起リ、階級鬪爭
モ之ニ依シテ始マル、有ユル社會的罪惡モ此
間カラ發生シテ參ルノデアリマス、然ラバ
日本ニ於テ、將來耕地整理ニ依リ、開墾十
拓等ノ進捗ニ依リ、農產物ガモット增加ノ
望ガナイカト申セバ、決シテ左樣ニ申ス譯
ニハ參リマセヌノデアリマス、今日農林省
アタリノ根本方針ハ、將來ノコトハ率知ラ
ズ、十年二十年ノ間位ハ、我國ニ於テ食糧
品ノ自給自足ハ可能ナリト云フ前提ノ下
ニ、有ユル農業政策ヲ實行シテ居ルノデア
リマス、卽チ十分ニ食糧品ヲ增加スル可能
性ハアルノデアリマス、併ナガラ私共ハ此
農業保護ノ問題ハ、決シテ獨リ是ハ通俗卑
近ナル經濟論カラバカリ之ヲ論ジ去ル譯ニ
ハ參ラヌト思フノデアリマス、種々ナル點
ニ付テ吾々ハ考ヘテ見ナケレバナラヌ、先
ヅ第一ニハ全國民ノ六割ノ多數ヲ占ムル
ノガ農民デアル日本ノ國民性ヲ維持スル
モノハ、如何ナル職業ニ從事スル者ガ一番
是ハ宜シイノデアルカ、又進ンデハ人間ノ
理想ト致シマシテ、每日金儲ケニ沒頭シテ
居ルノガ、果シテソレガ人間ノ目的デアル
カ、目ノ前ノ金儲ケハ致サナクテモ宜シイ
ガ、長イ間ノ期間ニ於テモント幸福ナル、
安全ナル、健實ナル生活ヲ國民ヲシテ送ラ
シムルコトガ、果シテ必要デアルカドウ
カ、斯樣ナル政治上、社會上、倫理上、總
テノ問題ニ對シ吾々ハ深ク考慮シテ、而シ
テ後農村ヲ此儘放任スル譯ニハ參ラヌト云
フノガ吾々ノ考デアリマス、又全國民ノ六
割ヲ占ムルノハ農民デアル、亞米利加ナド
ノ景氣、不景氣ノ有樣ヲ見マシテモ、農村
ノ景氣ガ好クナレバ、必ズ商工業ノ景氣ガ
好クナルノデアル、農村ガ不景氣ニナレバ
商工業ノ景氣ガ惡クナル、卽チ農村ト商工
業トノ共存共榮、是ハ最モ明ニ亞米利加ノ
經濟市場ニ現ハレテ居ル事實デアリマス、
吾々政友會ハ社會ノ有ユル階級トノ間ニ共
存共榮ノ實ヲ擧ゲシメ、相互扶助ノ精神ニ
基イテ、西洋人ノ所謂「ソシアルソリダリ
テー」ノ爲ニモ、今日ノ場合他ノ商工業ノ
稅率ヲ高クシヤウ、十數年ニ一回關稅ノ改
正ヲ實行セントスル際ニ、獨リ商工業ニ厚
クシテ、農民階級ヲ忘レ去ルガ如キハ吾
々ノ精神ニ非ズト斯樣ニ考ヘルノデアリマ
ス、尙ホ此點ニ付キマシテハ、長田君其他
ヨリモ御話ノアルコトヽ思ヒマスカラ、農
產物ニ對シテハ是ダケニ止メテ置キマス、
次ニ製造工業品ニ對シ、如何ナル趣旨ヲ以
テ修正ヲ試ミタカト申シマスト、是ハ政府
ニ於カレマシテモ相當考慮サレタ、相當ノ
事ハ出來テ居ルノデアリマス、唯〓種々ノ
點ニ付テ少シク不滿ノ點ガアリマスルカ
ラ、或ハ之ヲ高クシ、或ハ之ヲ低ク致シテ
修正ヲ試ミタノデアリマス、二三ノ例ヲ申
上ゲルナラバ、例ヘバ酸化「コバルト」ノ如
キ、吾々ハ之ヲ無稅ニ致シタノデアル、是
ハ憲政會諸君ノ委員ノ方ニモ、大分無稅論
ヲ主張ナサル御方モアッタガ、其御議論ヲ
吾々ハ適當卜認メテ是ハ無稅ニ致シマシ
タ、詰リ是ハ未ダ日本ニ成立シテ居ナイノ
デアリマス、一度興ノタケレドモ、到底經
營困難デアッテ今日ハ止メテ居ル、苟モ吾々
ハ保護ヲヤラントスルニハ、幼稚ナ產業デ
アルカラ保護ヲスルカ、或ハ他日ヱライモ
ノニナルダラウガ、今日ハ甚ダ幼稚デアル
カラト云フ、卽チ〓育的考ヲ以テ保護ヲ致
スノデアリマス、未ダ生レヌ先カラ保護制
度ヲ設ケテ置イテ、サア出テ來イト云フノ
ハ保護ノ境ヲ超越シタモノト認メ、吾々ハ
酸化「コバルト」ノ如キハ之ヲ無稅ニ致シ
タノデアリマス、次デハ綿絲デアリマス、
綿絲ハ今日ニ於テハ我國デハ最早十分立派
ナル產業トシテ成立致シテ居ルノデアル
前議會ニ於キマシテモ憲政會ノ諸君、吾々
及ビ革新倶樂部ノ諸君ト一緒ニナッテ、綿
絲ニ對シテ關稅ヲ免除スベシト云フ法律案
ヲ通過致シテ居ルノデアル、此精神ニモ鑑
ミテ、吾々ハ此際此關稅ヲ全廢スベシト云
フ修正ヲ加ヘタノデアリマス、次ハ毛織物
デアリマス、毛織物ハ日本ノ產業トシテ、
又軍事上ノ必要カラ申シマシテモ、其發達
ヲ期セナケレバナラヌ、政府ハ之ニ對シ餘
程保證ノ度ヲ高メラレタノデアリマス、其
精神ハ贊成致シマスケレドモ、此中デ地ノ
極メテ厚イモノ、卽チ一平方「メートル」ニ
付キ五百「グラム」以下ノ極メテ地ノ厚イ
洋服地ハ、所謂庶民階級ノ洋服地ニナルノ
デアリマスカラ、斯樣ナル點ハ吾々ハ政
府ノ社會政策ノ意味如何ト云フコトモ考慮
致シ、斯ノ如キ厚地ノ値ノ非常ニ安イモ
一、斯樣ナル洋服地ニ對シマシテハ、稅率
ヲ著シク低減致シタノデアリマス、次ハ新
聞雜誌用ノ紙ノ原料「パルプ」デアル「パル
ブ」ノ中デ新聞雜誌ノ原料ニ使フモノ、文
化事業ノ上ニモ大ナル影響アリト認メテ、
其原料ノ「パルブ」ニ對シテハ之ヲ無稅ニ
致シタノデアリマス、印刷用紙ノ如キ、殊
ニ筆記用紙、圖書用紙、包装用紙、斯ノ如
キ物モ亦皆社會政策ノ趣意、文化事業ニ相
關係アリト認メテ、總テ是等ノ物ニ對シ吾
吾ハ等シク稅率ヲ減ジタノデアリマス、次
ハ木材デアリマス、木材ノ我國ニ一年ニ輸人
サレル額ハ實ニ一億三千萬圓、之ニ對シ從
來政府ハ非常ニ安イ五分ノ稅ヲ課シ、然ラ
ズンバ之ヲ無稅ニ致シテ居ル、其木材ノ中
ニハ随分高價ナルモノモ多イ「マホガニー」
或ハ「ホワイシダー」等ハ寧口贅澤品トシ
テ用ヰラレルモノデアリマス、一面ニ贅澤
品關稅ニ於テ、紫檀、黑檀ノ如キモノニ十
創課シテ居ル、斯ウ云フ例ニモ鑑ミ、之ニ
近イモノデアリマスカラ、斯ノ如キモノヽ
稅率ヲ高ク致シタノデアリマス、又非常ニ
大キナ材木、日本ニ於テハ到底出來ナイ大
キナ材木ハ、之ヲ無稅ト致シマシタケレド
モ、所謂小丸太其他小サナ木材、斯樣ナ
モノハ十年、十五年、二十年ノ歲月ヲ經レ
バ日本ニ於テモ之ヲ生產スルコト困難ナラ
ズト認メ、植林業奬勵ノ趣意ヲ以テ、斯樣
ナモノハ無稅ニ致シ、然ラザルモノハ其稅
率ヲ高ク致シタノデアリマス、先ヅ大體製
造工業品ニ付テハ左樣ナル次第デアリマス
ガ、特ニ一言致サザルヲ得ナイノハ即チ鐵
ノ問題デアル、製鐵事業ハ有ユル產業ノ根
本ヲ成ス、或ハ造船事業、鐵道事業、船舶
事業、或ハ建築事業、有ユル工業ノ基礎ヲ
成スモノハ實ニ製鐵事業デアリマス、〓
ニ於ケル產業ノ發達シテ居ルカドウカト云
フコトハ、實ニ其國ノ製鐵事業ニ依シテ之
ヲト知スルコトガ出來ル如キ有樣デアル、
況ヤ一旦緩急アレバ一國ノ運命ハ實ニ此製
鐡事業ニ依シテ左右セラレルト申シテモ差
支ナイノデアリマス(拍手)此間ノ歐羅巴ノ
大戰爭ノ有樣ヲ見マスト、トウデアルカ、
アノ大戰爭ニ參加シタ英、米獨.佛諸
國ノ兵隊ハ一年間ニ約四噸ノ鋼鐵ヲ使シタ
ト云フコトヲ、日本ノ或ル學者ガ計算致シ
タノデアリマスガ、實際ハ日本ノ兵器ハ左
樣ニ進ンデ居リマセヌカラ、左樣ニ多額ノ
鋼鐵ヲ使用スルコトハ出來ナイカモ知レマ
セヌ、免ニ角、アノ大戰爭ノ關係等ヲ考へ
テ見テモ、製鐵事業ノ一番盛ンデアッタ國
ガ、一番强イノデアリマス、獨逸ガ歐羅巴
デハ一番製鐵事業ガ盛デ强カンタ、此獨逸
ヲ佛蘭モモ、伊太利モ、英吉利モ、抑へ付
ケルコドガ出來マセヌケレドモ、最後ニ亞
米利加合衆國ガ出テ行,テ、獨逸ニ對シテ止
メヲ刺シタ、止メヲ刺シタ亞米利加ハ獨逸
以上ニ、全ク世界第一ニ鐵ノ生產ガ進ンデ
居ッターデアル、斯樣ニ重要ナ產業デアリマ
スカラ、我國ニ於テモ昔ヨリ此業ニ對シマ
シテハ、官民共ニ注意ヲ拂シタノデアリマ
ス、日〓戰爭後間モナク其償金ノ一部分ヲ
以テ、政府ハ例ノ八幡ノ製鐵所ヲ始メ漸次
擴張致シテ、今日ニ於キマシテハ政府
ニ於テ投ジタル金ハ、億數千万圓ニ
達シテ居ル、又戰爭中ニ鐵ノ需要ガ
非常ニ多カッタ爲ニ、鐵ノ事業ガ國内ニ
勃興シ、大正十二三年頃ニハ製鐵事業ノ爲
ニ日本ノ國内ニ投ゼラレタ官氏兩方ノ資本
額ハ、四億六千万圓ヲ越シテ居ルノデアリ
マッ、所ガ是ガ歐洲戰爭後、歐洲ノ-歐
米ノ競爭ニ遇ノテ、或ハ破產ニ頻スルモノア
リ、然ラザルモノハ經營頗ル困難デアル、
何トカシテ此問題ヲ解決シナケレバイカヌ
ト云フノデ出來マシタモノガ、今日マデ二
ツアル、卽チ原內閣時代ニ出來タ財政經濟
調査會ノ一部分トシテ、鐵ノ事業ヲ調査セ
シメタモノ、ソレカラ三派聯立內閣ノ當時
高橋農商務大臣ガ主トナッテ此問題ヲ〓究
セラレ、朝野ノ斯界ノ「オーソリテイー」ヲ
集メテ製鐵鋼調査會ト云フモノヲ組織セシ
メタノデアリマス、其答申ハドウデアル
カ、色こノ點ノ意見モアリマシタガ歸スル
所ハ我國ニ於テハ製鐵事業ノ更ニ基礎ニナ
リマスル所ノ銑鐵ニ對シテ、約一割ノ稅ヲ
掛ケテ貰ハナケレバナラヌト云フノガ原內
閣時代、財政經濟調査會ノ議論ノ一致シタ
ル所デアル、又高橋農商務大臣時代ニ出來
マシタ製鐵鋼調査會ニ於キマシテモ、輸入
銑鐵ニ對シテ、相當ノ課稅ヲナサナケレバ
ナラヌト云フ答申ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、是等ノ答申ニ鑑ミラレテ、銑鐵ニ對シ
テ相當ノ關稅ヲ掛ケナケレバナラヌト云フ
コトハ、我國ノ朝野ノ輿論ナリト申シテ差
支ナイノデアリマス(拍手)サレバ今囘片岡
商工大臣ニ於カレマシテモ、此關稅ノ審議
ニ際シ、銑鐵ニ課稅スル案ヲ立テラレテ、
銑鐵一噸ニ付キ七圓ノ稅ヲ掛ケル案ヲ立
テ、鋼鐵其他ノモノニ付テハ之ヲ標準トシ
テ稅率ヲ盛ラレテ、調査會ノ議ニ付セラレ
タノデアリマス、所ガ其〓究ノ最中ニ印度
方面ヨリノ反對運動ガアツタガ爲ニ、卽チ
今日日本ニ輸人セラルヽ銑鐵ハ印度カラ大
分這入ッテ來ル、其銑鐵ニ日本ガ課稅スレ
パ印度デハ日本カラ送ル綿絲ニ對シテ稅
ヲ掛ケルト言ッテ運動ヲシテ騒イデ居ルト
云フノガ元トナッテ、先ヅ外務大臣ノ腰ガ
碎ケ、續イテ商工大臣モ折角ノ案ヲ抛シテ、
之ニ屈服シテシマウタト云フコトハ返一
ス返ヘスモ殘念千萬ナリト申スヨリ外ナイノ
デアル、此銑鐵課稅ノ初メノ案ヲ抛シテ、商
工大臣ハ開稅ヲ掛ケル代リニ其對案トシテ
所謂製鐵事業ノ獎勵法ヲ改正シヤウ、其案
ヲ提出セラレルト云フコトデアリマスカ
ラ、吾々ハ商工大臣ガ銑鐵ニ關稅ヲ掛ケ
ナカッタ代リニ、製鐵奬勸案ヲ御出シニナ
ルト云フカラ、今日御出シニナルカ、明日
御出シニナルカト、其奬勸法ノ出ルノヲ鶴
首シテ待シテ居タノデアリマスガ、遂ニ今日
マデ御出シニナラナカッタ、是ニハ色〓御
都合モアリマセウ、今調査中ダ、隨テ案ヲ
示スコトガ出來ナイカラ大體ノ趣旨ダケ御
話申ス、斯樣ナ趣意デ大體ノ趣意ハ吾々モ
承ッタノデアリマス、初メ是ハ祕密會デ御話
ニナッタ、祕密會ニ關シタ問題ヲ私ハ此處
ニ申上ゲルコトヲ好ミマセヌ、加藤委員長
カラ先程之ニ御觸レニナッタコトモドウ云
フモノデアラウカト考ヘルガ、委員長ガ旣
ニ範ヲ御示シニナッタ以上ハ、差支ナイダケ
ハ宜カラウト思ヒマスガ、此奬勵法ニ依ル
ト、銑鐵ニ對シテ僅ニ三圓ノ保護ヲ與ヘル、
政府デ關稅ヲ幾ラカ掛ケヤウト云ンテ、七
圓ノ案ヲ御出シニナッテ置キナガラ、今回ハ
獎勵法ヲ御出シニナッテ僅カ三圓ト云フコ
トデアッテハ、ドウ云フモノカ、左樣ニ僅
ナ奬勵金ニ依シテ日本ノ製鐵ガ果シテ豫期
ノ如ク發達スルコトガ出來ルカ、鋼鐵ニハ
モット餘計ニ遺ル、左樣ナ精神デアリマス
ケレドモ、銑鐵トシテ鑄物用其他ニ日本デ
使クテシマフ銑鐵ハ約四十万噸アル、此四
十万噸ノ銑鐵ニ對シテ僅ニ三圓ノ奬勵金デ
果シテ其目的ヲ達シ得ルヤ否ヤ、甚ダ吾々
ハ之ヲ危マナケレバナラヌノデアリマス
(拍手)又奬勵金デヤレバ此奬勵·金ノ利益ヲ
受ケル者ハ僅ニ二三ノ大會社ニ止ルノデア
リマス(拍手)規模ノ上ニモ相當ノ制限ガア
リ、產出能力ノ上ニ相當ノ制限ガアリマス
爲ニ、到底一般製鐵業者ガ此恩惠ニ浴スル
コトハ不可能デアリマス、又諸外國デ關稅
ニ依ッテ保護シテ居ル國ト、斯ノ如キ奬勵
法ニ依シテ奬勵シテ居ル國トヲ較ベテ見マ
スルト云フト、何處ノ國デモ關稅ノ上ニ自
主權ヲ持ノテ居ルモノハ關稅ニ依ッテ之ヲ保
護シテ居ル(拍年)奬勵法ナドニ依シテ胡麻
化シテ居ル所ハ、彼ノ英吉利ノ植民地加奈
陀ガ、歐羅巴本國其他ニ對スル氣兼カラ關
稅ヲ高ク掛ケルコトハ出來ナイカラ、已ム
ヲ得ズ此樣ナコトヲヤッテ居ル、何ヲ苦ン
デ斯樣ナ眞似ヲスル必要ガアリマセウ、又
私共ハ只今申上ゲマシ夕關稅自主權ノ確
〓斯樣ナ點カラ申シマシテモ、今囘此案
ヲ抛タレタト云フコトヲ甚ダ遺憾ニ思ハザ
ルヲ得ナイノデアリマス、卽チ日本ノ關稅
權ハ明治初年ニ於テハ恰モ今日ノ支那同
樣歐米先進國ヨリ關稅権ノ上ニ束縛ヲ加
ヘラレテ、最初ハ僅ニ五分以上掛ケテハイ
ケナイ、ソレガ其後一割ニナッテ、ソレ以
上掛ケルコトハ出來ナカツタノデアリマス、
漸ク日〓戰爭、白露戰爭ヲ經テ玆ニ始メテ
相務對等ノ通商條約ヲ締結スルコトガ出來
ルヤウニナッタ、併ナガラ四十三年、アノ當
時ノ關稅改正ニ際シマシテモ、我ガ政府ハ
英吉利方面ノ交渉ニ依リ、英吉利カラ入ツ
テ來ル鐵及ビ綿製品ニ對シ著シク片務的ノ
稅率ヲ協定シ、其代リ日本ヨリ英吉利ニ參
リマス絹物等ニ關シ、今日マデノ如ク將來
ニ於テモ英吉利ハ課稅セザルベシト云フ公
約ヲ取シテ、玆ニ再ビ片務的協定ヲ致シタ
ノデアル、其當時今日關稅ノ委員長ヲシテ
居ラレタ所ノ片岡君ノ如キハ大ニ憤慨シ、
外務省ノ軟弱外交ヲ攻撃シ、外務大臣小村
侯ハ英吉利ノ人氣ヲ恐レ、大金ヲ拂ッテ買
取ッタモノデアルト云フ演說ヲシテ居ルコ
トハ、私共ノ尙ホ記憶ニ新ナル所デアル、
片岡君當年ノ意氣アリヤ否ヤ疑ハザルヲ得
ナイノデアル殊ニアノ當年ト今日トヲ比
較スレバドウデアリマス、今回ハ英吉利カ
ラ交涉ガアッタノデモ何デモナイ、又印度政
府ハ我國ガ印度カラ輸入スル銑鐵ニ稅ヲ課
ケナケレバ、印度方面ニ日本カラ輸出スル
綿製品ニ稅ヲ課ケナイト云フ言質ガアンタ
譯デモ何デモナイ、唯〓印度ガ騷イデ居ル、
厄介デアル、オッカナイト云フノデ外務大
臣ハ先ヅ逃足ヲ張ラレタト云フコトハ、何
タル醜態デアルト謂ハナケレバナラヌ、支
那ハ今日デモ關稅ノ自主權ノ上ニ束縛ヲ加
ヘラレ、之ニ憤慨シ、最近關稅ノ改正ヲ企
テラレタ、近キ將來ニ或程度マデ成功ヲ見
ルニ至ラント云フコトハ私共新聞デ承知
スル所デアル、其支那ノ外交家ニ對シ、日
本ノ外務當局ハ遜色ナキヤ否ヤ、疑ハザル
ヲ得ナイノデアリマス(拍手)支那ノ外交家
ノ方ハ遙ニ腕ガ優ノテ居ルノデハナイカト
吾々ハ疑ハザルヲ得ナイ、又今日既ニ此關
稅ヲ擲シテ奬勵法ヲ設ケルト云フコトハ、
議會デモ討論セラレテ居ルガ、印度及英吉
利ノ新聞雜誌等ハ慥ニ之ヲ轉載スルデアラ
ウ、然ラバ日本ノ商工大臣ガ關稅ヲ課スル
コトノ出來ナカッタ代リニ其奬勵法ヲ出シ、
事實ニ於テハ矢張或程度マデ印度ノ銑鐵ヲ
阻害スル考デアル、サウスレバ印度ナリ英
吉利ノ政府ハ日本ノ遣方ハ所謂頭隱シテ尻
隱サズト謂フデアリマセウ、斯樣ナコトヲ
ヤルカラシテ、日本人ノ信用ガ世界ニ失墜
スル原因ニモナルト吾々ハ考ヘテ居ルノデ
アリマス(拍手)何ヲ苦ンデ左樣ナ姑息ノ手
段ヲ取ルカ、銑鐵或ハ鋼鐵ノ課稅ニ對シテ
ハ英米獨佛ノ先進國モ、實ニ眼ノ球ノ飛出
ル程高イ關稅ヲ掛ケテ今日マデ保護シ來,
タノデアル、亞米利加ハ七割五分ノ高イ稅
ヲ鋼鐵ニ掛ケテ居ルノデアリマス、此際四割
五割ハ普通ダ、斯ウ云フ高イ稅ヲ掛ケテ保
護シテ、立派ナ一人前ノ男ニナレバ段々之
ヲ下ゲテ來ルノデアリマス、關稅ニ依ッテ鋼
鐡事業ヲ保護スルト云フコトハ、世界ノ列
强何處ノ國モ之ヲヤッテ來タノデアル、況ヤ
銑鐵ニ對シ僅カ一割前後ノ關稅ハ何デアリマ
ス、之ヲ掛ケテ困ルト騷イデ居ル印度サ
へ、最近ニ至ルマデ一割ノ關稅ヲ掛ケテ居ッ
タノデアル、我國デモ此程度ノ關稅ヲ掛ケ
ルト云フニ何ノ憚ル所ガアル、吾々ハ將ニ
世界ノ公道ノ眞ン中ヲ正々堂々ト步マナケ
レバナラヌト云フコトヲ主張スルノデアル
(拍手)頭隱シテ尻隠サズ、左樣ナコトハ吾々
ハ甚ダ好マザル所、英人ノ言葉ニモ正直
ハ最善ノ政策ナリト云フ、吾々ハ正直ニ大膽
ニ、國家產業ノ發達ノ爲ニ、此關稅ノ常道
ヲ進ムベシト云フコトヲ提唱シ、此意味ニ
於テ銑鐵ノ關稅ヲバ初メ商工省デオ出シニ
ナッタ一噸七圓ノ稅ヲ銑鐵ニ對シ課稅スベ
〃、之ヲ標準トシテ其他ノ鋼鐵ニ對シソ
レ〓〓稅率ヲ上ゲタト云フヤウナ次第デア
リマス(拍手)次ニ私ハ我黨ガ是ダケノ修正
ヲ致シ、之ガ通過致シマスレバ政府ノ收
入ノ上ニドレ程增額ヲ見ルニ至ルカト云フ
コトヲ、簡單ニ申上ゲテ見タイト思フノデ
アリマス、ンレデ先ヅ政府ノ關稅改正ノ結
果增率ノ見積リヲナサレテ置ル、ソレ
ニ對シテ果シテ當ヲ得テ居ルカドウカ
ト云フコトヲ、簡單ニ御批評申サヾル
ヲ得ナイノデアル、政府ハ十五年度ニ
於テ此改正ノ結果、七百五十万圓、平年
ま
度、卽チ十六年度以後ニ於テハ千九百三
十万圓ノ增收、此計算ヲ立テヽ居ラル、
ノデアリマス、何ヲ基礎トシテ此計算ヲ
御立テニナッタカト云ヘバ、其計算ノ基
礎ハ大正十三年ノ輸入額デアリマス、之
ヲ押ヘテ此所カラ出發致シテ居ルノデアリ
マス、而シテ政府ノ計算ニ依レバ、大正十三
年。度ハ震災ノ次ノ年デ、震災關係ノ品物デ
無稅ニシタ物ガ大部這入テ來テ居ルカラ
ト云フノデ、其震災關係ノ無稅デ這入ッテ
來タ物ノ中デ、先ヅ三分ノ一ヲ差引イテ居
ルノデアリマス、次ニハ大正十三年ハ特ニ
一般ニ輸入ガ多イ年デアッタカラト云フノ
デ、其輸入ノ總額ノ中ヨリ一割五分ヲ差引
イテ居ルノデアル、私ハ十五年度ハ中途デ
アリマスカラ、十六年度ノ話ヲスルガ宜シ
イト思フ、又吾々ノ地租委譲ニ伴フ財源ハ
十六年度以後ニ生ズル、先ヅ三分ノ一ヲ差
引イテ續イテ十六年度ノ地租カラ一割五
分ヲ差引キ、サウシテ出來夕金額ノ中カラ
更ニ增稅ヲヤッタカラ消費減ガアルダラウ
ト云フノデ、消費滅一割一分ヲ差引イテ、
サウシテ其稅額、卽チ一億九百九十六万圓
ニナル、是ニ對シテ現行稅其儘ニ課稅シテ
居ッテ、十六年度ハ幾ラニナルカト云フト九
千六十五万圓ニナル、其差引勘定ヲシテ、
千九百三十餘万圓ト云フノハ平年度ニ於ケ
ル增牧ナリト斯樣ニ申レルノデアリマス、
所デ果シテ當ヲ得テ居ルカ、之ヲ吟味致シ
テ見マスルト、十三年ヲ基礎ニ御取リニナッ
タノハ是ハ正シイ、相當デアルト考ヘテ居
ル、其中ヨリ震災關係ノ分三分ノ一ヲ御引
キニナッタノモ、是亦宜シイ、然ルニ十三年
度ノ輸入ハ特ニ輸入ノ多イ年デアッタカラ
ト云フノデ、一割五分ヲ御引キニナッタノ
ハ甚シイ御間違デアル、何故カト申セバ
政府ハ此稅收入ノ御計算ヲ爲サッテ居ルノ
ハ十四年度、卽チ昨年ノ輸入ノ總額ガマダ
分ラヌ中デアリマシタカラ、十三年度ノ輸
入額ヲ以テ特ニ輸入ノ多イ年ト御認メニ
ナッタノハ無理モナイノデアル、併ナガラ
其十四年度ノ實績ガ舉ンテ見マスルト、輸
入總額ハ實ニ十三年ニ比シテ一億二千万圓
モ輸入ガ餘計ニ這入ッテ居ルノデアル拍
手)然ラバ十三年ガ特ニ輸入ノ多カッタ年
ト、左樣ニ申ス譯ニハ參ラヌノデアル、併
ナガラ確實性ヲ强クスル爲ニ一割五分ヲ御
引キニナッタノハ無茶デアルケレドモ、一割
位引イテ居ルノハ寧口確實ヲ期スルニ當然
カト思フ、更ニ政府ハ稅率ヲ增シタガ爲
ニ、消費减ヲ一割一分ト見積ラレタノハ如
何ナル基礎ニ據ルカ、此質問ヲ委員會ニ於
テ致シテ見タノデアリマス、然ルニ政府ノ
御答辯ハ稅ヲ上ゲタカラ一割一分位ノ消費
減ガアルダラウト云フ推測デアル、斯樣ナ
コトデアッテ何等基礎ガ無イノデアル、ソレ
デ私ハ然ラバ四十三年ノ一般的改正ノ際ニ
消費減ガドレ程アッタカ、之ヲ調ベテ見マ
スルト云フト、四十三年ニアレダケノ大改
正ヲヤッタニ拘ラズ、輸入ハ少シモ減ジテ
居ナイ、寧ロ年々增加致シテ居ル、數字ヲ以
テ簡單ニ申上ゲレバ四十三年ノ輸入總額ハ
四億六千四百万圓、改正ヲヤッタ後ノ四十
四年ハ五億一千三百万圓、大正元年ハ六億
一千八百万圓、大正二年ハ七億二千九百万
圓、稅率ヲ上ゲテ改正シタニモ拘ラズ、年々
歲々輸入額ガ却テ增加シテ居ル、國家ノ
經濟ハ年々進步致シマスルカラ、輸入モ或
ル一定ノ步合ヲ以テ年々增加スルコトハ
寧口是ハ當然ノ歸結ト申サヾルヲ得ナイノ
デアル(拍手)然ラバ今回ノ改正ニ依テ一割
一分ナドニ消費減ヲ見タノハ又甚ダ過大
ナリト申サミルヲ得ナイノデアリマス、斯
ノ如クニシテ、先ヅ十三年ガ多イト云フノ
デ一割五分ヲ減ジ、次デ消費減ヲ一割一分
更ニ減ジタ、斯ウ減ジテシマヘバ一體全體
政府ノ執ッタ基礎輸入額ハドノ位ニナルノ
カト見マスルト云フト、二十億圓ヲ下ルコ
トニナル、ドウデス、昨年ニ於テ我國ノ輸
入二十五億、本年再來年、政府ノ所謂平年
度ニ於テ日本ノ輸入ガ激減シテ、二十億以
下ヲ割ラウナドヽ云フコトハ、常識ヲ以テ
判斷スルコトガ出來ナイ事實デアル(拍手)
斯樣ナル計算ヲシテ居レバコソ、政府ノ歲
入ハ千九百三十万圓ナドヽ云フコトニ現ハ
レテ來ルノデアリマスケレドモ、吾々ハ相
當ノ計算-常識ヲ以テ合理的ニ計算ヲシ
テ見テ、卽チ十三年ヲ基礎ニ押ヘテ震災關
係ノ三分ノ一ヲ減ジ、其中ヨリ一割ヲ減
ジ、更ニ消費減トシテ五分位ヲ減ズルトド
ウナル、五分ヲ減ジテ出來タモノカラ政府
ノ所謂基礎數字、改正ノナイ時ノ數字ヲ引
イテ見マスルト云フト、實ニ政府ノ原案ノ
儘デ三千三百三十五万圓ト云フ增收ニナル
ノデアル、五分デハ一寸消費減ガ少ナイカ
ラト思ヒマシテ、更ニ之ヲ八分ニ消費減ヲ
見積ッテ計算致シマスト其結果ハドウデア
ルカ、八分ノ消費減ヲ見テ計算致シマス
ト、實ニ二千九百九十万圓ニナル、政府ガ
是ダケノ增收デアルト申シ居ルモノヨリ、
ドウシテモ是ハ千万圓位餘計ニナルノデア
ル(拍手)此上ニ以テ來マシテ、吾々ハ農
產物ニ對シテ增稅ヲ致シタノデアル、昨日
委員會ヲ通過致シマシタ所ノ小麥及小麥
粉、鳥卵、此三點ダケデ三十五万圓位ノ增
收デアルダラウト思フ、又吾々ハ米ノ一圓
ヲ一圓五十錢ニ致シタノデアル、ソレカラ
豆類、木材、鐵斯樣ナ我黨主張ノ如キ
修正ヲ致シテ稅額ヲ計算致シテ見マスト云
フト、ドウシテモ政府ガ計算致シマシタモ
ノヽ上ニ、千四百万圓前後ノ增收ハ可能ナ
ル計算ガ生ジテ參ル、大ニ確實ニ見積ッテ
モ千三四百萬圓ノ增收ヲ得ルコトハ疑ナ
イノデアル、然ラハ政府ガ出シタ其儘デモ
既ニ原案ヨリモ一千万圓餘計、其上ニ吾々
ハ千三四百万圓加算スルノデアリマス、之
ヲ合計シテ四千万圓ヲ下ルナドヽト云フコ
トハ是ハドウシテモナイノデアル(拍手)卽
チ我黨ガ前ニ地租委譲ノ財源ハ關稅ノ增收
ニ依ッテ、此額ハ四千万圓ト計算シタノハ、
最モ正確ノ數字デアルト云フコトヲ申シテ
差支ナイノデアル(拍手)此關稅ノ收入ヲ申
上ゲタ機會ニ私ハ英吉利ノ關稅收入ノコト
ヲ一寸一言御參考ニ申シテ置キタイ、英吉
利ハ近年約百億ノ輸人ガアリマス、百億ノ
輸入ニ對シテ英吉利ハドレ程ノ關稅ヲ擧ゲ
テ居ルカト云フト、近年ニ於テ十二億乃至
十三億ノ關稅ヲ擧ゲテ居ル、日本ハ昨年ノ
輸入額二十五億、二十五億ノ輸入ニ對シテ
僅カ一億内外ノ關稅シカ擧ゲテ居ナイノデ
アル、英吉利ハ輸入額ニ於テ日本ノ四倍デア
ルケレドモ、其關稅額ニ於テハ日本ノ十二
三倍餘計英吉利ハ之ヲ擧ゲテ居ル、而モ英
吉利ハ世界中有名ナル自由貿易國デ、何人
モ英吉利ハ關稅ニ依ッテ國民ノ生活ヲ脅威
スルナドヽ云フモノハ世界中ニ誰モナイノ
デアル、何故ニ斯ノ如キ大ナル違ヒガ生ジ
テ來ルカ、是ハ日本國民ガ關稅ト云フモノ
ノ運用ガ拙劣デアル、政府當局ノ關稅率ニ
對スル此配合按配ガ甚ダ拙劣デアル、其結
果ナリト私ハ申サザルヲ得ナイノデアル、
(拍手)又先年英吉利ノ議會ニ於テ有名ナル
「グラドストーン」ガ關稅ノ改正案ヲ提出致
シタル時ニ、上下兩院ニ於テ議員ノ質問ニ
對シ、起シテ自ラ答ヘタルコト實ニ六百八十
餘囘、斯樣ナル記錄ガ殘ンテ居ル、今回改正
案ヲ御出シニナッテ、今日初メテ總理大臣ガ
此處ニ來テ一回御答辯ニナッタ、濱口大藏大
臣ハ三日或ハ四日御答辯ニナッタノデアリ
マスルケレドモ、關稅委員會ハ前後十日間
許リ休ンデ、唯、一人床次總裁ノ跡バカリ
大藏大臣ハ追駈ケタ(拍手)此英吉利ノ政治
家ト日本ノ政治家トノ間ニ斯バカリノ違ヒ
アルコトヲ感ゼザルヲ得ナイノデアリマ
ス、政府モ政府、併ナガラ政黨モ亦政黨、
其政黨ガ黨議ニ依シテ決シタル所ノモノヲ
政府ヨリ一度之ヲ睨ミ付ケラルレバ忽チ之
ヲ撤回シ、首ヲ垂レ尾ヲ振リテ政府ノ前ニ
躓クニ至ッテハ、何タル事デアル(拍手)斯
ノ如クニシテ國氏ノ期待ニ副フテ居ルト諸
君ハ御考ニナルカドウカ、此改正案等ノ討
議ニ對シ、私ハ感慨ノ深キモノナカラザル
ヲ得ナイノデアリマス、一言諸君ノ反省ヲ
促ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=55
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056・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シ質疑
ノ通告ガアリマス、鷲野米太郞君
〔鷲野米太郎君登壇」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=56
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057・鷲野米太郎
○鷲野米太郎君 私ハ政府及堀切君ニ對シ
テ澤山ノ御質疑ヲ致シタイト存ジテ居リマ
シタガ、時間ガ非常ニ切迫致シテ居リマス
ルノデ、餘リ長イコトヲ申シマスルノハ議
事ノ妨害ニモナラウト存ジマス、殊ニ此日
程ノ後ニ於テ重要ナル決議案ノ上程モアル
ヤウデアリマスカラ、特ニ御遠慮申上ゲテ、
唯、特ニ政府ニ對シテ一二質疑ノ機會ヲ與
ヘラレンコトヲ御願申シマス(「質問デス
カ」ト呼フ者アリ)質問デアリマス、私ハ特
ニ此機會ニ陸軍大臣及外務大臣ニ御尋致シ
タイト存ジマス、染料ニ關係ノ事デアリマ
ス、私ガ聞ク所ニ依リマスルト、日獨通商
條約ノ改訂ノ交渉ガ染料輸入制限ノ爲ニ非
常ニ行惱ヲ來シテ居ルト云フコトデアリマ
スルガ、獨逸ノ主張スル所ハ關稅ニ依ッテ
日本ノ染料ヲ保護スルト云フコトニ付テ、
獨逸ガ不利益ヲ招クノハ一般的ノ事デアル
ノダカラ、敢テ異議ハナイケレドモ、農商
務省令第八號ニ依シテ獨逸染料ノ輸入ヲ制
限セラレルト云フコトハ、獨逸ニ對シテ日
本ガ差別待遇ヲスルト云フ事デアルカラ、
甚ダ不滿足デアルノダカラ、此點ニ於テ日
本ノ考慮ヲ求メルト云フコトニ付テ大ニ交
涉ガアルサウデアリマスルガ、果シテ左樣
ナ日獨間ノ交渉ノ行惱ガアルノデアリマセ
ウカ、其點ヲ伺ヒタイノデアリマス、若シ
又外務當局ハ此點ニ於テ日本ト獨逸ノ間ニ
何カノ交涉ガアルトシテ如何ニ御考ニナッ
テ居ラレルカ、其點ヲ伺ヒタイノデアリマ
スソレカラ陸軍當局及海軍當局ニ對シテ
ハ日本ノ染料工業ノ保護ノ主ナル點ハ一朝
有事ノ際ニ毒瓦斯及爆藥ヲ製出スル爲ニ、
染料工業ノ工場ヲ使用スル必要ノ爲ニ、特ニ
日本ノ染料工業ヲ保護スルト云フソウデア
リマスルガ、若シ毒瓦斯及爆藥ノ製出ノ爲
ニ必要ト云フコトカラ考ヘマスルナラバ、
「セルロイド」工場又ハ人造絹絲工場ニ於テ
モ、此目的ヲ十分ニ達スルコトガ出來ルサ
ウデアリマス、殊ニ人造絹絲工場及「セル
ロイド」工場ハ、此目的ノ達成ノ爲ニハ
ヨリ以上好都合デアルト云フコトデアリマ
ス、工場ノ設備ニ於キマシテモ、其技術者
ヲ利用スル點カラ云ヒマシテモ、遙ニ染料
工場ヲ使用スルヨリモ、ヨリ以上デアルト
云フコトデアリマスルガ、單ニ國防上ノ點
ダケハデナイトハ存ジマスルケレドモ、國
防上ノ重要ナ見地カラ、染料工業ノ保護ノ
爲ニ染料ノ輸入制限ヲヤッテ居ルガ、併ナ
ガラ人造絹絲工場及「セルロイド」工場ニ於
テ、軍需動員令ヲ下シタナラバ、其目的ガ
達スルト云フヤウナ、軍部當局ハ此制限解
除ニ付テ御考ヘ爲サル所ノ御見解デアリマ
セウカ、ソレヲ伺ヒタイノデアリマス、其
他色ミノ點ニ付テ御伺致シタイノデアリマ
スルケレドモ、殊ニ此二點ダケヲ御答辯ヲ
御願申上ゲマス、大藏大臣、商工大臣カラ
御答ヲ願ヘバ結構デゴザイマス
〔政府委員永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=57
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058・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 只今鷲野君カ
ラ日獨通商條約ノ改締ニ付テ、特ニ染料ノ
問題ニ關スル御尋ガアッタノデゴサイマス、
御承知ノ通リ日獨兩國ノ通商關係ハ、世界
戰爭後ノ平和條約ノ爲ニ、戰前トハ大ニ面
目ヲ異ニシテ居リマシタノデ、此度ハ從來
日獨兩國ノ通商關係ガ多少偏務的ニナッテ
居リマシタノヲ、雙務的ニスル精神デ今改
締ノ途中ニアル次第デゴザイマス、此度ノ
改締ニ於キマシテハ從來ノ日獨兩國ノ通
商關係全般ニ亙ッテ、常ニ條約關係ヲ改メ
ル必要ガアリマス爲ニ、相當ニ長イ時日ヲ
要シテ居ル次第デゴザイマス、總テノ問題
ニ付キマシテハ、マダ兩國ノ交渉ガ完了シ
テ居リマセヌ爲ニ、今箇々ノ商品ニ付テ如何
ナル經過ニアルカト云フコトヲ玆ニ申上ゲ
ル自由ヲ持タナイノデアリマス、併ナガラ
何處マデモ雙務的ノ精神デ、兩國ノ利益ヲ
十分ニ尊重シテ、兩國ニ取シテ有利ナル條
約ヲ締結シタイト思ヒマシテ、今日最善ノ
努力ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス、是デ
御諒水ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=58
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059・作間耕逸
○作間耕逸君 第二讀會ノ質疑モ、之ヲ以
テ絡局セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=59
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060・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 作間君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=60
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061・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ質疑ハ終局セラレマシタ、是ヨ
リ討論ニ移リマス、通告ノ順序ニ依リ其發
言ヲ許シマス-紫安新九郞君
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=61
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062・紫安新九郎
○紫安新九郞君 諸君、本員ハ只今議題ト
ナッテ居リマス關稅定率法中改正法律案ニ
對シテ、委員長ノ報告、卽チ、小麥、小麥
粉鳥卵ニ對スル修正ニ賛成シ、而シテ政
府ノ原案ヲ支持セントスルモノデアリマ
ス、關稅改正ハ今期議會ニ於キマシテハ
稅制整理案ト相竝ビマシテ、最モ重大ナル
法案ト看做サレテ、大ニ世ノ注目ヲ惹キマ
シタコトハ、諸君ノ御承知ノ通デアリマス、現
行關稅定率法ハ明治四十三年ノ制定ニカヽ
リマシテ、其後部分的ノ改正ハ幾度カ行ハレ
マシタガ、包括的、卽チ全般ニ亙レル
改正ハ未ダ會テ行ハズ、多年朝野ノ懸案
トナッテ居ッタルモノデゴザイマスル、然ル
ニ現政府ガ内外ノ經濟界ノ著シク變化シタ
ルコトニ顯ミ、又歐洲大戰ヲ期ト致シマシ
テ、全然面目ヲ異ニ致シマシタル我ガ經濟
界ニ、十六年以前ノ制定ニ係ル定率法ガ不
便デアリ、不公平デアルコトニ慮リマシテ、
關稅法ノ一般的改正ヲ企テタト云フコト
ハ是ハ明ニ現政府ノ一大英所ト謂ハザル
ヲ得ナイノデアリマス、申迄モナク關稅ノ
問題ハ國家ノ產業、貿易竝ニ國民ノ實生活
ニ影響スル所極メテ重大ニシテ、洵ニ容易
ナラザル事業デアリマス、私ハ大體論ニ於
テ贊成演說ヲ致ス積リデアリマス、箇々ノ
品目ニ亙レル議論ニ付キマシテハ、我ガ同
僚ヨリ詳細ニ申上ゲル筈デアリマス、ソコ
デ今此改正案ノ眼目ハ何レニ在ルカト申シ
マスルト、内地產業ノ生產條件ヲ有利ナラ
シムルト共ニ、重要產業ニ付キマシテハ
外國品ノ競爭ニ對シテ一樣ナ保護ヲ加ヘル
ト共ニ、又一面ニハ消費者ノ利害ヲ考ヘマ
シテ、國民生活ノ安定ヲ圖リ、其稅率ノ適
當ナル臨梅ヲナサントスルノニ在ルノデア
リマス、先刻加藤委員長中中レマシタヤ
ウニ、今囘ノ改正案ハ歲入ノ增加ト云フ
コトハ一切之ヲ目的トシテ居ナイ、是モ今
度ノ改正案ノ一ツノ特色トモ見ラレルノデ
アリマス、何分此法案ハ一般的ノ改正デア
リマシテ、其品目ハ非常ニ多イノデアリマ
スガ爲ニ、箇々ノ問題ニ付キマシテハ隨
分議論モ多イノデアリマス、併ナガラ大體ニ
於キマシテハ、前段申上ゲタルガ如キ趣旨
ヨリ出發シテ居リマスルカラシテ、此改正
案ハ色ミナル特長ヲ發揮致シテ居リマス
其主ナルモノ二三ヲ言フナラバ、第一ハ所
謂產業立國ノ根本見地ヨリ、各種產業ノ振
興ヲ促スガ爲ニ、我國ニ生產ナキ物、又生產
アルモ原料ニ乏シキ物ニ對シテハ、特ニ意
ヲ用ヒテ居ル點ヲ見受クルノデアリマス、
又第二ハ生產可能ノ工業ヲ奬勵シ、以テ輸
入ヲ防遏シ、進ンデ輸出ノ增進ヲ圖ルガ爲
ニ、重要產業ニシテ今尙ホ發達ノ道程ニア
ルモノ及將來發達ノ見込アルモノニ對シテ
ハ外國品ノ競争ニ對シテ、一樣ナル程度
ノ保護ヲ加ヘテ居ルコトデアリマス、第三
ニハ國內ノ產業ニシテ既ニ熟成ノ域ニ到達
シ、其事業ノ基礎ガ鞏固デアルモノ、又
我國ノ生產ガ豐富ニシテ、外國品トノ競爭
ニ堪へ得ルモノニ對シテハ、或ハ稅率ヲ輕
減シ、若クハ現行稅率据置ノ方針ヲ執ッツテ
居ルコトデアリマス、第四ハ社會政策ノ見
地ヨリ、一般生活ノ必要品ニ對シテハ稅率
ヲ輕減シ、若クハ現行稅率ヲ据置イテ居ル
ト云フ點デアリマス、第五ハ舶來品嗜好ノ
弊風打破ノ爲ニ、此種ニ屬スル物品ニ對シ
テ其消費ヲ抑制スル趣意ヲ以テ、相當ニ高
イ稅ヲ課シテ居ルノデアリマス、其他課稅
技術上ヨリ致シマスレバ從價稅ハ成ベク從
量稅ニ改メルノ方針ヲ執テ居ルコトモ、
此改正案ノ特長ト見受クルコトガ出來ルノ
デアリマス、先刻堀切君ハ(「批評ナドハ出來
ハシナイヨ」ト呼フ者アリ)默シテ聽ケ、先
刻掘切君ハ關稅政策ニ依ッテ、商工業者
モ農業者モ共存共榮ヲ圖ラザルベカラズト
云フ御意見ヲ御述べニナリマシタ、各種
產業者ノ共存共榮ト云フコトニ付テハ、天
下何人モ異論ハ無イ、異論ハ無イガ、關稅
ニ依ッテ各種產業ノ共存共榮ヲ圖ルノ方法
ハ如何ニスレバ宜シイノデアリマセウカ、
關稅ト云フモノハ申迄モナク動モスレバ生
產者ヲ利スルカ、或ハ消費者ヲ利スルカ、
此生產者消費者共ニ利スル方法ト云フモノ
ハ是ハ極メテムヅカシイト謂ハナケレバ
ナリマセヌノデアリマス、關稅政策ニ依ッテ
各種產業ノ共存共榮ヲ圖ルト謂フナラバ
如何ヤウナ方法ヲ執レバ宜シイノデアル
カ、其事ニ付テハ堀切君ハ一言モ論及スル
所ハナカッタノデアリマス(拍手)又銑鐵ノ
問題ニ付テモ
〔「何ヲ言"テ居ル」ト呼ヒ其他發言スル
者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=62
-
063・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=63
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064・紫安新九郎
○紫安新九郞君(續) 掘切君ハ色ミナル意
見ヲ述ベラレタ、堀切君ノ銑鐵ニ對スル意
見ハ數百言ニ亙シテ居,タガ、結局ノ意見ハ
ドウデアルカト云フト
〔發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=64
-
065・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=65
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066・紫安新九郎
○紫安新九郞君(續) 銑鐵ニ何故課稅シナ
イノデアルト云フノガ堀切君ノ意見ノ結論
デアッタト思フノデアリマス、銑鐵ニ課稅シ
マスレバ、生產者ニハ利スルデアリマセウ、
併ナガラ消費者ヲ利スルト云フコトハ是
ハ絕對ニ言ヘナイト思フノデアリマス、(拍
手)仍テ政府ハ銑鐵ヲ奬勵シ保護スルガ爲
ニ、銑鐵奬勵法案ヲ提出セントスルノ計畫
ヲ持シテ居ルノデアル、此銑鐵奬働法案ニ
依レバ、生產者モ消費者モ、共ニ相利スル
ト云フコトガ出來ルノデアリマス、(拍手)
(「君等ニ出來ルカイ」ト呼フ者アリ)高橋ナ
ドノ百姓ニハ分ラヌダラウ-今回ノ關稅
改正ニ對シテ、主トシテ問題ニナッテ居ル
ノハ食糧品ノ關稅デアル、此點ニ對シテハ
本員等同志ノ間ニ於テモ、生產者ト消費者
ノ利害ヲ考慮シテ、種々議論ガアッタノデ
アリマスルガ、結局農村ノ振興、農村ノ保
護ノ爲ニハ、小麥、小麥粉、鳥卵ニ付テハ
修正案ヲ是ナリトナシ之ニ贊成スルノデア
リマス、米及籾ニ付テハ、曩ニ若槻總理大
百、早速農林大臣ノ言明セラレタルガ如
〃米穀法ノ運用ニ依シテ、適當ナル調節
ノ行ハルルコトヲ信ジテ、吾々ハ之ヲ左樣
ニスルヲ以テ適當ナリトスル者デアリマ
ス、關稅改正ハ先刻モ申シマスル如ク、國
民ノ實生活ニ直ニ影響スル所ノ問題デアリ
ママ、随テ生活必需品ニ輕キ稅ヲ課スルト
カ、又ハ之ヲ無稅ニスルト云フコトヽ重
要產業ノ保護ヲ目的トスルモノ、例ヘバ豆
類羅紗、藥品、毛絲、染料、塗料、板硝
子、牛脂等ノ稅率引上ゲハ、動モスレバ
兩立シ難キ傾向ヲ呈スルモノデアリマスル
ガ、今囘政府ノ提案ハ及プベキダケ右兩
者ノ調和按排ニ苦心ノ存スル跡ヲ吾々ハ見
受クルノデアリマス(拍手)元來關稅問題ハ
政黨政派ヲ超越〓シマシテ、此天惠ノ薄キ、
困難ナル我國ノ經濟狀態ニ鑑ミマシテ、
日モ速ニ國情ニ適シタル〓稅ノ改正ヲ爲
シ、我國ノ經濟及產業ニ資スルト云フコト
ガ、最モ大切ナルモノナリト私ハ信ズル者
デアリマス、此意味ニ於テ今回ノ政府提案
ハ社會ノ要求シテ居ル實狀ニ適合セルモ
ノト信ジテ、吾々ハ之ニ賛成シ、切ニ諸君
ノ同意ヲ求メントスル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=66
-
067・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 長田桃藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=67
-
068・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 議事進行ニ付テ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=68
-
069・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 長田君ニ發言ヲ
許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=69
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070・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 議事進行ニ付テ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=70
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071・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 長田桃藏君ニ發
言ヲ許可致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=71
-
072・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 議事進行デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=72
-
073・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 長田君ガ保留ス
ルノニ異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=73
-
074・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=74
-
075・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 私ハ他ノ黨派ニ屬スル知
名ナル議員諸君ガ、交ル々々此演壇ニ於テ
私ヲ指ザサレテ色ミナ批評ヲサレルト云フ
コトハ非常ニ遺憾ニ思フノデアリマス、
而シテ只今ハ自ラハ辱シメラレタトハ思ハ
ナイノデアル、併ナガラ私ハ苟モ、百姓タ
ル高橋ニ何ガ分ルカト云フ-百姓ニ何ガ
分ラナイッ、卽ヲ諸君ハ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=75
-
076・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=76
-
077・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 農村ノ爲ニヤル、農
村振興ノ爲ニ滿身ノ努力ヲ致シテ居ル、農民
ノ爲ニ滿腔ノ誠意ヲ以テ努力スルト言ヒナ
ガラ、百姓ニ何ガ分ルカト言ッテ、百姓ヲ
輕蔑スル(拍手)全國三千有餘万ノ農民ヲ侮
辱スルヤウナ言葉ハ私ハ斷ジテ聽拾テニ
相成ラヌト信ズルノデアル、斯ノ如ク農民、
農村ト云フモノガ、如何ニ國家ニ大ナル關
係ガアリ、重要性ヲ帶ビテ居ルカト云フコ
トハ、私ノ申迄モナイ所デアル、我國ノ貿
易關係ニ於テモ、農民ナカリセバ-農村
ナカリセバ如何ニシテ此「バランス」ヲ保ツ
コトガ出來ルカ、而シテ一旦緩急アレバ、
義勇公ニ奉ジ、以テ國家ヲ一身ニ荷シテ戰
フモノハ多數ノ農民デハナイカ、大阪アタ
リノ一部分ノ贅六ニ何ガ働キガ出來ルカト、
斯ウ私ハ考ヘテ居ル、況ヤ斯ル農民ヲ侮辱
スルヤウナ言辭ヲ弄シテ、恬トシテ恥ヂナ
イ、而モ憲政會ノ大部分ノ人ガソレヲ是認
スルヤウナ態度ヲ以テ、如何ニシテ俺ハ農
村ノ味方ナリト云フコトガ何處ニ出來ルカ
(拍手)ソンナ考ヲ持ッテ居ルカラ、諸君ノ
言フ所ノモノハ支離滅裂ヲ極メテ居ル或
ハ農村振興ノ爲メ地租ノ一分減ヲヤルト
カ、或ハ在野時代ニハ多年地租ノ二分減ヲ
ヤルトカ唱ヘテ居ッタ、ソレヲ忽チ弊履ノ
如ク棄テ去シテ一向平氣デ居ル···
〔「ソレハ議事ノ妨害ダ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=77
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078・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=78
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079・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 而シテ是ガ政局ノ圓
滿ヲ圖ル爲デアル、斯樣ナコトヲ言ッテ胡
麻化シ去ノテ居ル、要スルニ諸君ハ農村ト云
フモノヲ侮蔑シテ居ル、頭カラ諸君ハ都會
中心主義デアリ、商工偏重主義テアッテ、農村
ノ利害ナド眼中ニ無イト云フコトガ、之ニ
依ヶテモ證明出來ルヂヤナイカ(拍手)斯ル
演壇ニ立テ國民ノ前デ臆面モナク、斯カル
暴言ヲ咄カレル、而モ諸君ハ常ニ議場ノ神
聖ヲ口ニセラレ、こ本員ガ唯、當然許スベカ
ラザルコト、吾々ハ是ハ不正ナル事デアル
忌ムベキ事デアルト云フヤウナコトヲ言ッ
テ居ル、ソレニモ拘ラズ其言辭ヲ摑ヘマシ
テ、議會ノ神聖ヲ瀆スナド、懲罰委員ナド
ニ付シテ居ル、而シテ諸君ガ全國ノ三千有
餘萬ノ此農民ヲ侮辱サレテ、恬トシテ顧
ミザルハ何事デアルカ、斯ル如キ論議ヲ爲
スハ、卽チ農民ヲ侮辱シ、隨テ此議會ノ言
論ヲ瀆スモノヂヤナイカ、卽チ此議會ノ神
聖ヲ濱スモノナリト私ハ認メル、ソレデ吾
吾ハ徒ニ同士ヲ懲罰ニ附スルノ何ノト云フ
ヤウナ、ソンナ大人氣ナイコトハ言ハヌケ
レドモ、ソレハ紫安君ノ如キ賢明ナル人
デ、憲政會總務ノ重職ニアリ、而シテ政治
ニモ慣レテ居ラレル方デアル、同氏ガ此ノ
擧ニ出デラレタルハ是ハ千慮ノ一失デアル
ト私ハ考ヘルノデアル、卽チソレハ全國農
民ノ名譽ヲ重ンジテ、而シテ諸君ガ眞ニ農
村ヲ重ンジ農民ノ爲ニ圖ル所ガアルト云フ
コトヲ思ウテ居ラレルナラバ、速ニ此言葉
ヲ御取消アランコトヲ望ンデ此壇ヲ降ルノ
デアリマス-腹ガ空イテルカラ、此位ニ
シテ此壇ヲ降ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=79
-
080・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郎君) 長田桃藏君
〔此時紫安新九郞君發言ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=80
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081・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 紫安君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=81
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082・紫安新九郎
○紫安新九郞君 一寸私ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=82
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083・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 簡單ナラバ自席
デ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=83
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084・紫安新九郎
○紫安新九郞君 只今私ノ演說中ニ、色之
彌次ヲ飛バサレタ方ガアリマシタガ、高橋
君モ少々穩カナラヌ彌次ヲ飛バサレタト
思ノタモノデアルカラ、私ハ圖ラズモ高橋
君ニ對シテ或ハ失禮ニ涉ルガ如キ言辭ヲ發
シタカモ分リマセヌ、ソレハ玆ニ私ハ取消
シマス(拍手)
〔此時高橋熊次郞君發言ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=84
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085・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高橋君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=85
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086・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今紫安君ガ御取消ニ
ナタト云フコトハ、洵ニ紳士的ナ立派ナ政
治家ノ態度デアリマス、併ナガラ私ハ私
ヲ侮辱シタト申上ゲタノデハナイ、農民ヲ
侮辱シタト云フコトヲ申上ゲタノデアリマ
ス、其點ヲ申上ゲテ全國農民ノ名譽ノ爲ニ
多ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=86
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087・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 長田桃藏君
〔長田佻藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=87
-
088・長田桃藏
○長田桃藏君 諸君私ハ委員長報告ノ中
デ、其主タル稅目改正ノ三點ニ對シテハ同
意ヲ致スノデアリマス、卽チ我黨ノ修正案
ノ其三點ト同一ノ稅盛ニナッテ居ルノデ
アリマス、而シテ其附帶條件ニ關係スル委
員長ノ報告ニ對シテモ、私共ノ頭ハ直ニ之
ニ反對スルト云フ意味ニハナラナイノデア
リマス、唯〓原案ノ中デ、此三者ヲ選ンデ
修正ヲシテ、殘餘ハ希望條件附デ、此原案
ニ賛成ヲスルト云フ、其全般ニ對シテ反對
ノ意ヲ申上ゲルノデアリマス、就中、私共
ハ政友會ノ提案中デ、特ニ私ノ分擔トナッ
テ居リマスル部分ハ、農產物ニ關係致ス部
分デアリマス、此部分ニ對シマシテハ特ニ
御了解ヲ願ッテ置カネバナラナイコトハ、吾
吾ガ過去數年ニ涉フテ農產物ノ〓究ヲシ
テ參リマシタノハ、啻ニ政友會ノ同僚ノミ
デハナイノデアリマス、所謂農產物卽チ日
本國民ノ主要食糧品ニ對シテ、將來此食糧政
策ヲ如何ニスルカ、又比年衰微シ行ク農村
ノ狀態ニ鑑ミテ、之ヲ振興セシムル途ハ如
何ニスベキカ、此二點ニ對シマシテハ政黨
政派ヲ離レテ、同憂ノ士相集ッテ實ハ協議
シテ參ッタノデアリマス、隨テ私ガ玆ニ申
上ゲントスル農產物ノ關稅引上ノ問題ニ對
シマシテハ假令茲ニ憲政會、或ハ本黨、
其他ノ委員長ノ修正案ニ御贊成ノ方ト雖
モ、農產物ノ關稅引上ニ對スル私共ノ意見
ト必ズヤ同一ノ御感想、御意見ヲ御持チニ
ナッテ居ルコトヲ信ジテ疑ヒマセヌノデアリ
マツ、唯〓政治ハ議論ヲ以テ進ム譯ニハ參
ラナイ、洵ニ實際ノ問題デアリマスルガ爲
ニ、其政治上ノ實際ニ當ッテハ、動〓モス
レバ吾々ノ考フル所ガ直ニ之ヲ政治ノ上ニ
實際ニ行フコトノ出來ナイ種々ノ關係ガア
ル、其關係カラ遂ニ今日ハ變ジテ希望條
件附ノ所謂修正案トナリ、又吾々ハ理想一
偏ニ、茲ニ全部ニ對シテノ修正案ヲ提出ス
ルヤウナコトニナッタノデアリマスルカラ、啻
ニ諸君ニ於カレテモ、此吾々ノ感想ヲ御聽
取リ下サルノミナラズ、此演壇ヨリ消費者
階級、生產者階級ノ有ユル國民ニ對シテ、
農產物關稅引上ニ對スル觀念ハ所謂議會
ニ於ケル最大多數ノ希望デアッタト云フコ
トダケハ申上ゲタイノデアリマス、特ニ私
共ノ考ヘテ居リマスルコトハ、此關稅引上
ニ臨ンデ農產物、卽チ國民ノ生活ニ對シテ
最モ必要ナル生活必需品、之ニ對シマシテ
ハ關稅ヲ引上ゲラレルコトガ、卽チ直ニ物
價ノ騰貴ヲ來スト云フ考カラ、多クノ消費
者階級ノ人々、或ハ上院ノ紳士諸君ノ間ニ
モ、反對ノ御考ヲ持ッテオキデニナルト云
フコトヲ聞イテ居リマス、故ニ私共ハ少ク
トモ衆議院ニ於テハ政黨政派ヲ超越シタ同
憂ノ士相集ッテ、諸君ニ御諮リヲ申上ゲテ、
吾々ノ立シテ居ル所ノ其理論ニ誤リナシト
スレバ、願クハ衆議院ハ一致ヲシテ上院ニ
之ヲ差送レテ、上院ト意見ヲ戰ハシテ、其
歸趨ヲ定メルコトガ適當デアルトマデ考へ
テ居ッタノデアリマス、其爲ニ私共ハ前段申
上ゲタヤウナ、假令形ハ變ルトモ、農產物
ノ關稅引上ニ對シテハ、吾々ノ同憂ノ士ノ
間ニハ同一ノ觀念ヲ持テ居ルト云フコト
ヲ强ク玆ニ申上ゲテ置キタイ所以デアリマ
ス、私共ハ此案ヲ委員會ニ於テ審議致シマ
シタノハ前同僚ヨリ申上ゲマシタ如ク、
又委員長ノ御報告ニナリマシタ如ク、四十
餘日ヲ費シ、二十一囘ノ委員會ヲ開キマシ
テ、洵ニ慎重審議ヲ致シタノデアリマス、
其間常ニ委員ノ間ニモ、政堂觀念ヲ離レテ
國民ノ利害、ソレヲ思ウテ相一致シテ意見
ノ歸趨ヲ定メヤウト一云フコトデ、實ニ此委
員會ハ議會ノ氣分ガ洵ニ荒ビテ居ルニモ
拘ラズ、關稅委員會ハ和氣洋々トシテ、各
々其信ジ、各々其分擔スル點ニ向ッテ、十二
分ニ意兄ヲ交換サレタノデアリマス、而シ
テ私共ガ常ニ其委員會ニ臨ンデ感謝措ク能
ハザル所ノモノハ、憲政會ノ諸君中ニモ、
綿絲關稅或ハ染料、或ハ「コバルト」金液、
其他特ニ專門ノ問題ニ對シテ政府委員トノ
間ニ論難數回ヲ重ネラレテ、親切丁寧ニ意
見ノ交換ヲ爲サレ、國民ノ代表トシテ洵ニ
吾々ガ伺ッテ感謝措ク能ハザル程度マデ審
議ヲ御進メニナッタコトデアリマシタ、又本
黨ノ諸君ニ於カセラレテモ、此點ニ對シテ
ハ同一ニ非常ナル綿密ノ御審議ヲ下ザイマ
シテ、私等ノ頭ニ於テモ非常ニ此點ニ對シ
テ威謝ヲ致シテ居ッタヤウナ次第デアリマ
ス、隨テ一度小委員會ガ始リマシテ、其小
委員會デ審議ニナル、前ニ何卒黨派ヲ超越
シタ、國民ノ利害ニ立脚シタ一ノ成案ヲ得
タイト云フ考カラ、大ニ御〓究ニナリ、遂
ニ私的會合トナッテ、黨派ヲ超越シテ各團體
ノ委員カラ小委員ガ出テ、私的ニ一案ヲ作
ラレタ、所謂意見ノ纏ル所デ一案ヲ作ラレ
タノガ大體ニ於テ我黨ノ修正案トナッテ居
ル點デアリマシタ、私共之ヲ聞キマシテ必
ズヤ此問題ニ對シテハ相當進步シテ居ルコ
トヲ期待シ、深ク國民ノ爲ニモ喜ンデ居ッタ
ノデアリマス、然ルニ吾々ガ此委員會ニ於
テ當初ヨリ協議ヲ致シ、御互ノ委員ノ心中
ニ於テハ必ズ黨派ヲ超越シテ審議ヲ進メ
ヤウト申シテ居ッタ氣分ガ、一朝ニシテ破
壞サレマシテ遂ニ議決ニナリマス其刹那ニ
ハ此處ニ現レマシタヤウニ、政友會ノ案
ト他ノ委員長御報告ノ案トノ分離ヲ見ルニ
至ッテ、當初期待シタコトヲ裏切ッタト云フ
コトハ、如何ニモ私ハ殘念ニ存ズルノデア
リマス、私共ハ委員會ニ於テモ大略私共ノ
感想ヲ申上ゲテ置イタノデアリマスガ、私
共ハ第一ニ於キマシテ數日ニ亙ノテ御審議
ニナリマシテ、吾々ガ滿足致シテ居リ、又
國民モ新聞紙ヲ通ジテ大ニ滿足ヲ表シテ
居ッタト云フ、所謂審議ガ十分ニ出來テ居
ルト云フ點ニ對シテマデ、之ヲ衆議院以外
ノ所謂行政機關ノ關係ニ於テ常設委員會ヲ
設ケテ、ンレニ附シテ再調サセル、サウシ
テ更ニ來ルベキ議會ニ之ヲ審議サセルト云
フガ如キ、如何ニモ吾々ノ審議權ガ侮辱サ
レテ居ル、吾々ガ數日ニ亙ッテ愼重審議ヲ
シテ、而モ心ノ中デハ、是々ノ問題ニ對シ
テハ明ニ稅盛リノ改正ヲシヤウト期待シ、
良心ノ發動トシテハ決シテ不詮議テハナ
1、十分ニ審議ガ出來テ居ルト信ジテ居ッ
夕、我人共ニ左樣ニ感ジテ居ッタモノヲ、
其決定ヲスル時、討議ニ入ル刹那ニ於テ、
自己ノ良心ヲ裏切ルガ如キ意味ヲ以テ拍
手)各黨派ノ間ニ互ニ違シタ案ヲ作成セナケ
レバナラヌト云フコトニナッタ、其心情ヲ有
ノ儘ニ國民ノ前ニ披瀝シテ-斯ノ如クニ
ナッタト云フ、其眞相ヲ有ノ儘ニ示スト云
フコトガ、切メテ私ハ國民ニ對スル義務デ
ハナイカトマデ考ヘタノデアリマス(拍手)
而モ委員會ノ其點ニ於ケル質問應答ハ何
等事ノ眞相ニ觸レナーイ、唯〓〓ミテ他ヲ言
フノミ或ハ議會政治ハ形式政治デアリマ
スルカラ、實際裏面ニ於ケル眞相ハ國民ニ
祕シテ置イテ、現ハレタル表面ノ事ノミヲ
述ベテ置イタナラバ足レリトシタカモ知レ
マセヌガ、私ハ今日ノ衆議院ニ對スル國民
ノ希望、待望スル所ヲ見マスルト、左樣ナ
モノデハナイ、議會ニ臨ンデ眞ニ眞劍味ヲ
以テ議會ノ成行ヲ見テ居ルト私ハ考ヘマス
(拍手)況ヤ關稅問題ノ如キ、直ニ自己ノ頭
上ニ加ハル所ノ重大ナル利害問題ニ接シマ
シテハ、國民ハ吾々以上ニ眞劍ヲ以テ此問
題ヲ見テ居ルコトハ明カナコトデアリマス
(拍手)然ルニモ拘ラズ、最後ノ五分ニ臨ン
デ、吾々ノ眞ニ考ヘテ居ル事柄ヲ高閣ニ束
ネテ置イテ、唯〓表面ニ現レタル事相ヲ捉
くう、漫然トシテ國民ヲ瞞過シ去ラウト云
フコトハ私ハ是ハ衆議院ノ權威ニ對シテ
國民ニ其信ヲ失フコトニナリハセスカト考
ヘルノデアリマス(拍手)彼等ハ言ヒマセ
ウ、議會ニ於ケル四十日ノ審査ハ、遂ニ一
箇年ノ間ノ議會ヲ離レタル行政上ノ力ニ
依ッテ現レタ所ノ關稅審議會ノ力ニ及バナ
イノデアルダラウ、議會ト云フモノハ遂ニ彼
等同僚ノ間ニ自己ノ力ヲ〓テヽシマッテ、寧
口立法院以外ノ行政機關ニ依シテ委員會ヲ
造ノテ、ソレニ調ベテ貰ヒタイト云フコトヲ
委託シタ事ソレ自身ガ、衆議院其モノヽ權
威ヲ失フト云フコトヲ自白スルモノデハナイ
カト國民ハ言ヒハセヌカト思フ(拍手)斯ノ
如クニシテ進ンデ參ッタナラバ、遂ニ恐ルベ
キ思想ガ國民ノ間ニ起リ、軈テハ議會否認
ノ聲ヲ大ナラシメハセヌカト云フコトヲ惧
レルノデアリマス(拍手)私ハ此點ニ對シテ
痛切ニ此眞劍ナル問題ノ前ニ、斯ル一夜作
リノ案ヲ作ラレタト云フコトヲ頗ル殘念ニ
考ヘルノデアリマス、就中私共ノ擔當致シ
テ居リマス問題トシテ、同僚同憂ノ諸君ト
共ニ年來考ヘテ參リマシタ所ノ、此農產物
中米ノ問題-此米及籾ノ問題ニ對シテ此
委員長ノ御報告、本黨ノ諸君及意政會ノ吾
々ト同憂ノ先輩諸君ハ、之ヲ關稅ノ引上ニ
待タズトモ、米穀法ノ運用ニ依シテ價格ノ
調節ハ出來、吾々ノ希望ヲ達成スルコトガ
出來ルト云フ御考ニナラセラレタト云フコ
トデアリマスガ、私共ハ玆ニ斷言致シマス
今日マデ過去數年ノ間、此同憂先輩諸君ト
共ニ〓究致シテ參シタノニ、吾々ハ未ダ會テ米
穀法ノ運用ナルモノヲ忘レテ參ッタノデハ
ゴザイマセヌ、米穀法ノ運用ハ-吾々ノ
希望ニ依シテ、吾々同僚ノ努力ニ依シテ、米穀
法ハ生レタノデアリマス、生レル時カラ此
米穀法ノ運用ト云フコトハ當然アリ得ルコ
トナリト云フコトハ計算ニ入レテ居ル-
計算ニ入レテ、ソレノ上ニ尙ホ足ラズトシ
テ、米穀ノ問題ニ對シテハ關稅引上ヲシナ
ケレバナラヌト云フコトヲ協議シタ、而モ
決定致シタノデアリマス、然ルニ一夜ニシ
テ何者ノ說得デアルカ、關稅引上ト云フモ
ノニ依ッテハ、早速大臣ノ說明ノ通リ、暴
騰暴落ヲ防グコトガ出來ルノデアルカラ、
之ニ任シテ宜シイ、斯樣ナ水臭イ淡キコト
水ノ如キ言葉ノ下ニ說服セラレテ、然ラバ
關稅稅率ノ引上ハ止メマセウト云フガ如キ、
簡單ナル考ヲ以テ出發シタノデハゴザイマ
セヌ(拍手)私ハ斯樣ナコトヲ國民ガ聽キ、
又農村ノ方ミガ聽カレタ時ニ、吾々農村問
題ニ對シテ多年〓究シテ居ル者ノ頭ガ、ド
ウカシタノデハナイカト云フコトヲ笑フダ
ラウト考ヘテ居リマス(拍手)私共ハ斷言致
シマス、私共ハ此米穀法ノ運用ト云フコト
ハ所謂其市價ノ暴騰暴落ヲ防イデ、消費
者階級ハ勿論、延イテ生產階級ニマデ所謂
時價ノ平調ヲ保タシメヤウト云フ爲ニ起,
タモノデアリマス、併ナガラ米穀法ノ中ニ
最初ノ出發點ヲ見ルト、所謂市價ヲ標準ニ
スルコトニナッテ居ッタノヲ、ソレヲ除カレ
テ、遂ニ貴族院ヨリ衆議院ニ廻リ、市價ノ
調節ナルモノハ省カレテシマッタノデ、數
年ノ經驗ニ依ッテ遂ニ昨年市價ノ調節ナル
モノヲ入レタ時ニ、サナキダニ强カリシ上
院ノ反對モ、遂ニ時ノ經過ト共ニ滅ビテ、
之ニ贊成セラレタノデアリマス、然レドモ
尙ホ吾々ガ每年農林當局ニ迫シテ居リマス
所ノ米穀生產費ノ公表、大キク言ヘバ農產
物ノ價格-農產物ノ價格ヲ定メル爲ニ其
生產費ヲ公表シロ、每年其時々ニ於ケル所
生產費ヲ公表シロト云フコトヲ迫シテ居ル
ケレドモ、今日ニ於テ尙ホ不可能ト爲シ
テ、是ガ公表ノ域ニ達シマセヌ、卽チ生產
費ト云フモノヲ土臺ニ置イテ、ソレカラ上
ニ騰ル、非常ニ騰レバ暴騰トナリ、ソレヨ
リ非常ニ下レバ暴落ニナルノデアリマス、
暴騰、暴落ト云フ言葉ヲ口ノ上カラ發シマ
スナラバ、早速大臣ノ說明ノ如ク何デモナ
イコトデアル、暴騰暴落ニ對シテ米穀法ヲ
運用シテ、物ノ平調ヲ圖ルコトハ容易ナ事
デアリマス、併ナガラ其暴騰暴落ノ基準ハ
何ニ據フテ見ルカ、眞逆早速農林大臣ト雖
モ堂島ノ定期相場トカ、或ハ蠣殻町ノ定期
相場ヲ以テ爲サラウトハ仰シヤリマスマ
イ、或ハ深川ノ正米相場、或ハ大阪ニ於ケ
ル堂島ノ正米相場ト云フガ如キ、正米相場
ヲ楯ニ暴騰暴落ト云フコトヲ御考ニナルト
思ヒマスケレドモ、其正米相場ナルモノ
ハ定期ヲ離レテ正米相場ハ立タナイノデ
アリマス、正米ソレ自身ハ定期ノ假定需要
ニ依ッテ、常ニ相場ガ左右セラレルノデア
リマス、故ニ米穀法ノ當時ニ於テモ、例へ
バ正米相場ガ立ッテモ、定期ニ於ケル觀念ヲ
離レテ立タナイカラ、是非共其年々ノ生產
費ヲ公表セネバイカヌト云フコトヲ迫タ
ノデアリマスケレドモ、歷代ノ政府之ヲ實
行スルコト能ハズ、遂ニ今日ニ至ッテ、尙且
ツ生產費ヲ公表スルコトガ出來ナイノデア
ル、私ハ此生產費ノ公表ト云フコトヲ考ヘ
ズニ置イテ、只今先輩三輪君ノ御質問ニ對
シテ政府ガ御答ニナッタ、其御答ニ依ッテ三
輪君ノ問ハント欲セラルヽ所ノ御言葉ノ中
ノ眞理ヲ、吾々ハ同ジヤウナ感ヲ以テ迎ヘ
テ來テ居ルノデ、其考カラ見ルト滿足スル
コトガ出來ナイノデアリマス、生產費其モ
ノヲ土臺ニ置カズシテ、暴騰暴落ト云フ此
言葉ヲ使シテ見テモ、私ハ無意味デアルト
思フ、啻ニ吾々ガ無意味デアルト思フノミ
ナラズ、國民ノ六割ヲ占メテ居ル所ノ農民
ハ、必ズヤ此早速大臣ノ御言葉ヲ嘲笑ヲ以
テ迎ヘテ居ルダラウト私ハ考ヘテ居リマス
(拍手)而モ此米穀法ヲ特ニ吾々ガ吟味致シ
マシタ結果、其第二條ニ於テ、政府ハ必要
ト見タ場合ニ於テハ勅令ヲ以テ期限ヲ定メ
テ、其爾稅ヲ增減又ハ免除スルコトヲ得ト
規定シテ居ルノデアリマス、故ニ增減スル
コトハ勿論出來ルノデアルガ、增ト云ヒ減
ト云ヒ、一定ノ基準ナクシテ增減ガ出來ル
モノデハナイノデアリマス、故ニ米穀法ガ
制定セラレテ數年ニナリ、歷代ノ政府ハ其
法律ノ運用ヲ巧ニシヤウト考ヘテ居ッテモ、
其基準トスル所ノモノガアリマセヌカラ、
未ダ曾テ增ト云フコトヲシタコトガナイ、
況ヤ所謂凶作ト見夕場合ニ、常ニ之ヲ減少
若クハ免除スル歷史ガアルノミデアッテ、
彼ノ米穀法ニ依ッテ關稅稅率ヲ增加シタト
云フコトノ歴史ガ無イ、歴史ノ無イノハ何
ノ爲カト云フト、所謂基準ガ無イカラデア
リマス、私共ハ此法律ノ一部分ニ如何ナル
改正ヲ施スベキカト云ヘバ、如何ニシテモ
アノ法ヲ滑カニ運用スルニハドウシテモ
生產費ヲ其年々公表スルノ外ハナイト私ハ
考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ更ニアノ
米穀法ニ依テ米ノ關稅引上ノ目的ガ達シ、
同ノ效力ヲ發生シ得ルモノト云フ考ノ
誤シテ居ルコトハ是亦本黨憲政會ノ吾々
ノ同憂ノ先輩ト均シク考慮シテ居リマス通
リ、所謂外米ノ問題ト同時ニ殖民地ノ產米
增殖ノ問題ニ關係スルノデアリマス、ソレ
ハ朝鮮ニ於キマシテモ大正九年ニ唐殖計畫
ガ行ハレ、其實行中、今又增殖增收計畫ガ
發表サレタノデアリマシテ、此御計畫ニ依
ルト目的達成ノ時期ハ十五年先デアルト云
フコトデアリマスケレドモ、徐々ニ其效果
ヲ現ハスモノデアリマシテ、最後達成時期
ニ於キマシテハ八百万石ノ增加ヲ圖ルト
云フノデアリマス、而モ其目的トスル所ハ
内地ノ食糧ヲ緩和スル爲ニ、內地ニ其朝鮮
米ヲ送ルト云フコト、或ハ朝鮮民族ノ增殖
ニ隨ッテ其食糧ヲ充實スル爲ニ之ヲスルノ
デアル、又土木工事ヲ起スガ爲ニ土工ガ起
ルカラ人夫ヲ要スル、隨テ失業者ニ對スル
緩和ニモナル、或ハ朝鮮ノ經濟ヲ之ニ依テ
向上セシムルト云フガ如キ、種々ノ目的ガ
アリマスケレドモ、要スルニ朝鮮民族ノ殖
エテ參ルニ對抗スル所ノ其食糧ノ充實ト、
內地ノ食糧不足ヲ補ハントスル所ノ二大目
的ノ達成ニ外ナラヌト考ヘテ居リマス、而
シテ私共ガ先輩ノ調査ヲシテ居リマス所ヲ
拜見致シテ見マスト、大正九年ニ朝鮮產米
增殖ノ計畫ガアリマシタカラ、今日ニ至リ
マス迄朝鮮民族ノ殖エルコトハ恰モ我ガ內
地國民ノ年々七十万以上ノ人ノ殖エルガ如
キ率ヲ以テ矢張殖エテ居ルノデアリマス、
而シテ米穀ノ增收モ之ニ依テ殖エテ居リマ
スケレドモ、而モ尙ホ其朝鮮ノ民族ガ此朝
鮮米ヲ食ベテ居ル所ノ一人當リノ率ハ、米
穀增收ニ反對シテ減ッテ居ルト云フ現象デ
アリマス、卽チ最近ノ例デ申シマスルト、
大正十年ニハ朝鮮人ハ一年ニ一人當リ六斗
六升ヲ食ベテ居リマシタモノガ、大正十一
年ニハ六斗五升トナリ、大正十二年ニハ六
斗二升、斯ウナッテ居リマス、斯ノ如キ
率ヲ以テ朝鮮民族ノ一箇年ノ消費率ガ
減シテ居ルト云フコトハ、何ヲ意味スルカ
ト云ヘバ、是ハ朝鮮民族ガ殖エテ參ル、朝
鮮米ヲ食糧トセズシテ雜穀ヲ食ベル數ガ殖
エテ參ッタ、或ハ其他ニ現ハレテ居ル所ノ外
米、其他ノ力ニ依テ消費ヲ助ケテ居ルト云
フ事實ガ明瞭ニ現ハレテ居ルノデアリマ
ス、而モ朝鮮内地ノ人ノ食ベル消費率ガ減。ツ
テ居ルノニ、朝鮮デ出來ル所ノ米ノ增率ハ
非常ナ力ヲ以テ殖エテ參ッテ、十二年ニ於
テハ千五百万石、十三年ニ於テハ一寸減リ
マシテ千三百万石ト云フ數ヲ表シテ居リマ
ス、サウスルト同時ニ恐ルベキ事ハ朝鮮ノ
人ハ食ベル量ガ減シタダケ食ヒ延シヲシテ
居ルノデアリマスカラ、此殖エタ率ハ皆我
ガ內國ニ入ッテ參ッテ居ルコトヲ語ッテ居リ
やく、我々ハ四五年前ハ先ヅ朝鮮米ハ先ヅ
我國ニ入ルノガ年額二百五十万石ト言ッテ
居ッタノガ、昨年ニ於テハ約五百万石ニ近
イ米ガ入シテ居ル、臺灣朝鮮ヲ通ジテ反對
ニ外米ガ約百四十万石入ッタ、斯樣ナ狀態
デ又反對ニ粟ノ滿洲ヨリ入ッテ居ル額ガ非
常ニ殖エテ居リマス、ソレデ吾々ガ考ヘナ
ケレバナラヌ問題ガ到達シタ、朝鮮ノ米穀
ノ增牧、卽チ内地米ノ品種ヲ朝鮮ニ移シテ
作ノタ米ハ殆ド內地米ト同一ニ改良サレテ
居ル、此米ガ非常ナカヲ以テ我ガ内地ニ
入ッタ場合ニ於テハ、內地ノ米穀ノ市價ガ
之ニ依シテ壓迫ヲサレルダラウト云フ問題
デアリマス、私ハ此問題ガ政府ガ說明セラ
レタ增殖計畫ノ如ク、十五年先ニ行ッテ八百
万石位ノ增收シカ無イカラ、左程憂ヘルニ
足ラヌト云フコトデアレバ、サウ神經ヲ惱
メル必要ガナイト考へマスケレドモ、而モ
朝鮮人ガ一人當リ消費量ガ益〓減クテ參ノテ、
彼等ハ雜穀ヲ食ベルコトニナル、又一部ノ
大キナ資本家、或ハ大キナ地主、又ハ商人
等ガ朝鮮ニ參ッテ、外米ヲ左ノ手ニ持ッテ右ノ
手ニ直ニ朝鮮ノ内地米ヲ引上ゲ、サウシテ
之ヲ日本内地へ持ッテ參ル、若クハ大資本家
ガ直ニ金ヲ朝鮮人ニ握ラセテ、直ニ朝鮮人
ノ有スル所ノ米ヲ內地ニ引張シテ來ルト云
フコトガアリ得ルコトデアルト云フコトヲ
想像シタ場合ニ、之ハ諸君何トシタラ宜イ
ノデアリマセウカ、若シ關稅ヲ此儘ニシテ
置イテ、或ハ粟、雜穀等ノ食糧ヲ朝鮮民族
ニ强イテ置イテ、朝鮮ニ出來上ル米ノ大部
分ヲ內地ニ齋シ來ス、紳士、大地主、或
相場師ガアッタ場合ニ、之ヲ此儘ニスルコト
ハ穩當デアリマセウカ、私共ハ少クトモ此
朝鮮米ノ壓迫ヲ考ヘテ見ル場合ニ、何トカ
之ニ對スル防禦ヲセネバナラヌト云フ必然
ノ決定ニ到著スルノデアリマス(拍手)卽チ
私ノ考ヲ以テスルト、只今ノ臺灣ニ於テ內
地ノ種米ヲ奬動シテ作ラシテ居ル、其關係
等カラ見テモ朝鮮、臺灣兩方面ヲ通ジテ一
千万石ノ米ガ內地ニ流入シテ參ル、移入シ
テ參ルコトガ三年經タナイト考ヘル、恐ラ
クハ三年經タズ一千万石ノ米ガ内地ニ八ッテ
平年作五千七百万石位ノ收穫ノアル場合ニ
於テ、一千万石入ノタナラバ直ニ生產過剰トナ
ルノデアリマス、内地ノ消費量ハ六千六百九十
万石アレバ宜シイノデアリマス、直ニ之ニ依
テ生產過剰ヲ來シ、內地ノ米價ノ壓迫サレ
ルコトハ當然デアリマス、然ラバ吾々ガ何
トカシナケレバナラヌト云フコトハ、政府ノ
言ハルヽ米穀法ノ寶刀デアリマス、此米穀
法ノ實刀ガ朝鮮內地ニモ、或ハ臺灣ニモ使
ハレルト云フ效力ガアルナラバ、尙ホ吾々ハ
我慢スルコトガ出來マスケレドモ、不幸ニ
シテ米穀法ハ內地ニノミ其效力ヲ有スルモ
ノデアッテ、決シテ朝鮮若クハ臺灣ノ如キ
殖民地ニ其效力ヲ及シテ居ラヌノデアリマ
ス、故ニ朝鮮ニ於テ外米ヲ引入レテ、所謂
朝鮮ノ米ガ豐作デアル、豐作ノ場合ニ於テ
紳士諸君ガ臺灣ニ、若クハ朝鮮ニ熱帶米ヲ
安イ代價ヲ以テ引入レテ-此關稅ヲ以テ
引入レテ、サウシテ朝鮮ノ安イ米ヲ買シテ
內地ニ入レルコトガ容易ニ出來ル、故ニ何
トカ之ヲ保護シナケレバナラヌ、ソレノカ
ガ無イノデアリマス、或ハ小山農林次官ハ
此點ニ對シテ相當ノ保護スル途ガアルト云
フコトヲ委員會デ御說明ニナッタノデアリ
やく、私共ハソレニ多少ノ尊敬ヲ拂ッテ居
リマシタノデアリマシタガ、不幸ニシテ其
法律ハ無イノデアリマス、唯〓法律ガ無イ
ノミナラズ、朝鮮ニ存在スル所ノ法律ハ
丁度米穀法ノ第二條ニアリマスル通リノ必
要ナル場合ニ於ケル增減ト云フ「增」ノ字ガ
除カレテ凶作ノ場合ニ於ケル所ノ減稅又ハ
免除ト云フ意味ニ外ナラヌノデアリマス、
少シモ此關係ニ於ケル救濟ノ途ガ法律ニ
依シテ開カレテ居ラナイノデアリマス、先程
三輪先輩ヨリ御質問ニナリマジタ第一點
ハ此點ニ對スル御質問デアリマシテ、政
府ノ御答辯ヲ傾聽致シマシタ所ガ、總理大
臣ノ御答ニ依リマスルト第一ノ三輪君ノ
御問ニ對シテハ、米穀法ノ運用ニ關シマシ
テハ單リ內地米ノミニ限ラナイコトニナ
ルノデアリマシテ、此點ハ申上ゲル迄モナ
イコトデアリマスト云フ御答辯デアリマ
ス、洵ニ是ハ總理大臣ノ御說明ノ如ク、申
上ゲル迄モナイコトデアリマス、私共ハ斯
樣ナ御答辯ヲ以テ滿足スルコトガ出來ナイ
ケチドウシテモ朝鮮ニ於テモ關稅ノ引上
ガ當然出來ルヤウニ、何トカ法律ヲ以テ救
濟スルノデナケレバ滿足ガ出來ナイ、卽チ
此點ダケデモ朝鮮ニ效力ヲ及ボス所ノ此關
稅定率法ヲ改正シテ、米穀ノ關稅ヲ一分引
上ゲテ置ク必要ガアルト認メタ點デアリマ
ス、又此外米ノ問題ニ對シテ考ヘテ見マス
ルト、申迄モナク同僚諸君ノ御承知ノ通リ、
熱帶米ニ對シテハマダ吾々ハ左程ニ感ジナ
イ、熱帶米ノ需要先、若クハ熱帶米ノ價格
等ヲ考ヘテ見ルト、熱帶米ハ如何ニシテモ
其間ニ大ナル等差ヲ生ズルノハ嗜好ノ上
カラ當然起ルノデアリマスカラ、左程ニ考
ヘナイ、併ナガラ溫帶米ノ事ヲ一タビ考へ
ルト、是ハ唯〓幸ニシテ圓價ノ爲替相場ノ
暴落ニ依シテ、溫帶米卽チ加州米ノ如キモ
ノヲ買入レルニハ、相當高キ代價ヲ支拂ハ
ナケレバナラヌト云フ結果ト相成リマスガ
故ニ、今日迄ノ輸入關係ニ於テハ、サウ大
ナル成結ヲ現シテ居ラナイ、卽チ北米合衆
國ヨリ十三年ニ這入ッ夕米ハ三百七十九万
圓位ニ止マルノデアリマスカラ、大ナル心
配ハ無カッタケレドモ、大藏大臣ノ御說明
ノ如ク、近時非常ナル御盡力ノ結果、圓價
ガ段々回復シテ參リ、免ニ角圓價ガ回復シ
テ參ルト云フコトヲ前従ニ置イテ考ヘマス
1、所謂加州米ノ代價ノ前途ハ、ソレダケ
安クナルト云フ結果ニナリマスカラ、必ズ
ヤ圓價ガ理想ノ價格、卽チ四十八圓乃至五
十圓ト云フ程度迄回復スルコトヲ考ヘマス
ト、加州米モ滔々トシテ輸入サレテ參ルコ
トハ明瞭ナル事實デアリマス、又昨年圖ラ
ズモ這入リマシタ所ノ「ニートン」米ハ如何
デアリオヤウ、日本ノ內地米ト少シモ其質
ニ於テ變シテ居ラナイ「ニートン」米ハ、吾々
ガ政府委員ニ御尋致シマスト、其收穫ハ
相當多額ニ上ッテ居ル、サリナガラ「ニート
ン」ヨリ內地ニ輸入スルニ臨ンデハ、熱帶
地方ヲ經由セネバナラヌガ故ニ、變質ヲ來
ス虞ガアルノデ、昨年モ失敗ニ終シタノデ
アル、故ニ暫クハアノ「ニートン」米ノ輪入
ヲ心配スルコトハ考フルニ及バヌト云フコ
トデアリマスケレドモ、私共ハ圓價ノ囘復
サレタ場合ヲ想像シテ、政府委員ノ御答辯
ダケデ満足スルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、如何ニシテモ大陸デ出來ル米ダケア
リ、又科學ノ進步シテ居ル國ダケアッテ、熱
帶地方ヲ越エルダケノ完全ナル設備ハ直ニ
爲シ得ルコトハ想像ニ餘リアルノデアル、
之ヲ考ヘマスルト、温帶地方デ出來ル米ノ
生產費ト、我國ノ米ノ生產費ヲ較ベレバ、
莫大ノ差ガアル譯デアル、其差ヲ關稅ニ依ッ
テ調節セズシテ、此儘抛シテ置ケバ、內地ノ
米價ハ壓迫セラルヽコトハ火ヲ觀ルヨリ明
カナル事實デアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)此
等ノ點ヲ考ヘテ見マスト、米穀ノ問題、米
及籾ノ關稅引上ノ問題ヲ、米穀法ノ運用ノ
ミニ俟ツトシテ此主張ヲ抛棄スルト云フ譯
ニ、私共ハ斷然イカヌト思フノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」拍手)此點ハ同僚ノ先輩ト考ヲ
異ニスルコトヲ遺憾ニ思フノテアリマスケ
レドモ、私ハ左樣ニ考ヘルノデアリマス、
尙ホ私共ハ此關稅ノ引上ト云フコトニ對シ
テハ、是ハ私獨リデアリマスガ、斯樣ナ心
配ヲ致シテ居リマス、卽チ茲ニハ小麥或ハ
小麥粉、鳥卯ト云フ如キ問題モ、此場合ニ
吾々委員ノ力ヲ信賴セズ、尙ホ調査ノ餘地
アリトシテ、寧ロ之ヲ院外ノ諸君ノ信ゼラ
ルヽ委員會ニ託シテ、再調ノ上デ來年今一
度此案ヲ出セト言ッテ、此關稅定率法ヲ未
決所謂否決ヲシテ置クト云フノナラバ
是ハ私ハ餘地ガアッタト思フ、洵ニ面白イ遣
方デアルト思ヒマスガ、關稅定率法ハ今ノ
儘ニ確定シテ置イテ、而モ工藝品ノ中デ夥
シキ議論ガアッタニモ拘ラズ、之ヲ此儘ニ
置イテ、唯、米穀法ヲ····此米穀ニ關係ノ
アル、卽チ農產品中ノ主モナル物トシテ吾
々ガ算へ來クタ所ノ小麥、小麥粉若クハ食
料品中ノ鷄卵ト云フモノダケヲ、是ダケノ
物ヲ特ニ改正ヲシテ稅盛リヲ變ヘテ、之ヲ
國民ノ前ニ出ス、又ハ之ヲ貴族院ニ廻ハス
ト云フコト自體ガ、吾々ハ消費者階級ノ方ミ
ニ對シテ、理性ヲ離レテ感情ノ上ニ如何ニ
モ何ダカ農村出身ノ代議士ノ横暴デアルカ
ノ如キ感想ヲ起シハシナイカト云フコトヲ
憂フルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)サナ
キダニ食糧品ノ問題ニ對シテハ生產階級
ハイヤガ上ニモ安キヲ希望シテ居ル、其場
合ニ於テ唯、小麥、小麥粉、鳥卵ダケヲ此
十五年ノ間抛ノテ置イテ、千載一遇ノ時機
ト考ヘテ居ル關稅定率法ノ改正ニ當リ、殘
餘ヲ原案ノ儘ニ通過スルト云フコトハ、如
何ニモ形ノ上ニ於テ私ハ面白クナカッタト
思フノデアリマス、ソレガ爲ニ米及小麥ノ
關稅定率ガ諸君ノ期待ニ反シテ、米穀法ノ
運用ダケデハ吾々ノ希望ヲ達成スルコト
ハ出來ナイト思フ、確ニ將來ノ一年ナリ或
ハ本年ノミニ付テ考ヘタトキニ於テ、吾々
ハ諸君ト力ヲ合セテ米小麥ノ關稅定率法ノ
改正ヲヤラウトシテモ、吾々ハ最早諸君ト
共ニ一致手ヲ携ヘテ大ナル關稅定率ノ改正
ヲ目論ムコトハ出來ナイト思フノデアリマ
ス(「ヒヤ〓〓」又「人情噺ハヨセ」ト呼フ者
アリ)人情噺デハアリマセヌ、當然ノ歸結
デアリマス、米麥ノ關稅改正ハ米穀法ノ運
用テイケナイト吾々ハ考ヘテ居ル若シ諸
君ノ中、何物カ大ナル力ニ依シテイケルト
考ヘラルヽナラバ、來年米麥ノ關係ノ改正
ヲ要求シテモ、ソレハ理論上出來ナイト信
ジテ居ル、此點ハ人情話デハナイ、眞劍味
デ各位ニ申上ゲテ居ル、左樣ナ譯デ私ハ大
體形ノ上ニ於テ委員長ノ報告ニ反對スルノ
デアリマス、唯〓私共ハ先輩ヲ前ニ置イテ
農產物ノ稅盛リヲ改正シタ、其理由ヲ申上
ゲルト云フコトハ洵ニ釋迦ニ說法ノ謗ヲ
免レマセヌガ、一應吾々ノ考ヘテ居ル所ヲ
御聽取リヲ願ヒマス、私ハ諸君ト共ニ先刻
申上ゲマシタ如ク、農村ノ衰微ヲ憂ヒ、食
糧問題ノ歸結ヲ憂フル者デハアリマスケレ
ドモ、農村問題〓究ノ爲メ、又ハ農村其モ
ノヲ直ニ救済センガ爲ニ、此食糧問題ノ關
稅々盛ノ引上ヲシヤウト考ヘテ居ル者デハ
アリマセヌ、私共ハ委員會ニ於テモ申シ上
ゲマシタ通リニ、第一ノ點ハ堀切君ガ一般
論ニ於テ申上ゲマシ夕通リニ、近年非常ナ
ル率ヲ以テ輸入シテ參ル所ノ食糧ノ金額ヲ
眺メテ、國際貸借ノ平均ヲ得ルコトヲ大藏
大臣ノ御心配ノ如ク商工業ノ力ニノミ委シ
テ置クト云フ譯ニハ參ラヌノデアル、固ヨリ
種々ノ力ガ集ッテ國民ノ緊張裡ニ產業ノ復
興ヲ圖シテ之ヲ防グノ外ハナイケレドモ、
而モ國氏ノ食糧品ナルモノガ、若シ内地
デ自足自給シ得ルト云フ望ガアルノデアル
ナラバ、國民ハ、消費者階級ト云ハズ、生
產者階級ト云ハズ、心ヲ一ニシテ內地ノ產
額ヲ增加セシメテ、食糧ノ自足自給ヲ圖ル
ト云フコトハ當然ノ責務デハナイカト考へ
やっ、此見地カラ國際貸借ノ食糧品ニ對ス
ル數字ヲ見マスルト、諸君御承知ノ通リニ
十三年度ニ於テ二億五千四百万圓、十四年
度ニ於テ二億九千五百万圓、ソレニ砂糖ノ
輸出輸入ノ差引勘定ヲ入レマスト、十三年
度ニ於テハ四億千七百万圓、十四年度ニ於
テモ四億千三百万圓、殆ド同一ノ數字ヲ現ハ
シテ居ル、此恐ルベキ食糧不足ニ基ク所ノ
輸入金額ヲ眺メテ、之ヲ一ツニ商工業者ノ
努力ニ依ッテ輸出ノ力ヲ增シテ、此食糧品
輸入ノ決濟ヲ恃ンデ置クト云フコトガ穩當
デアリマセウカ、私共ノ近時見ル所ニ依リ
マスト、此貿易ノ狀態ニ付テ、先ヅカヲ現
ハスベキ餘力アリト認ムベキモノハ、矢張
過去ノ統計ニ依ルト綿織物或ハ絹絲、絹織
物是等ガ卽チ大ナルモノデアリマス、
卽チ纖維工業デアリマスガ、生絲モ今日ハ
米國ヲ大ナル得意トシテ非常ナル數字、八
億以上ニモ上ッテ居ルノデアリマスガ、果
シテ今後多々益と辨ズルヤウニ、米國ニ於
テ之ヲ引受ケルカガアルノデアリマセウカ、
私共ハ此點ニ對スル十二分ノ調査材料ハ持
チマセヌケレドモ、憲政會ノ諸君ナリ本黨
ノ諸君ナリノ御質問ニアリマシタ人造絹絲
ノ怖ルベキ力ヲ以テ進ミツツアルノヲ見マ
シテ、唯、政府委員諸君ノ御說明ノ如ク、
人造絹絲ハ綿絲ノ得意ヲ侵蝕シテ行クノデ
アルカラ、所謂生絲ノ得意ハ侵サレナイト
云フ其說明ダケデハ滿足シテ參ル譯ニ參ラ
ヌノデアリマス、如何ニシテモ此人造絹絲
ノ細物ヲ織出ス所ノカハ軈テハ絹織物ノ
領分ヲ侵シテ參ルコトハ必然ノ道理ト思ハ
レマス、サレバ絹絲又ハ絹織物ノ輸出ノ力
ヲ無限デアルト斷ズルコトハ私ハ不可能デ
ハナイカト考ヘルノデアリマス、綿織物ノ
力モ如何デアリマセウカ、今日ハ支那ナリ
或ハ印度ナリ南洋方面ヲ殆ド唯一ノ得意ニ
シテ居リマス、又我國ノ國產トシテ必ズ自
足自給ヲセネバナラヌト云フコトヲ官民共
ニ唱ヘル、鐵アノ鐵ノ關稅ニ依ル所ノ自
足自給ノ根本國策、之ヲシモ遠慮セネバナ
ラヌ程ニ重大視シテ居ル印度ノ綿布ノ貿
易、是ハ諸君如何デゴザイマスカ、昨日ノ
大阪朝日新聞ノ報道スル所ニ、印度ニ於ケ
ル紡績聯合會長ガ說明サレタ言葉ガ書イテ
アリマシタ、ソレハ我國ガ銑鐵ノ輸入ニ對シ
テ官民共ニ是レ程心配シテ、御控へ申上ゲテ
居ルニ拘ラズ、日本ノ紡績ハ我ガ英國ノ纖維
工業者全體ノ敵デアルト云フコトヲ喝破シ
テ居ル「ランカシヤー」ノ紡績業者ハ、植民
地ト云ハズ、本國ト云ハズ、力ヲ協セテ日
本ノ紡績ヲ敵トシテ戰ハナケレバナラヌト
言ッテ居ルデハアリマセヌカ、而モ其輸出ノ
力ヲ不正ナル手段ダト申シテ居リマス、安キ
物ヲ外國ニ賣出スト云フ此努力ニ對シテ、
彼等當業者ハ之ヲ敵トシテ戰フト言シテ居
ルノデアリマスカラ、私ハ假令銑鐵關稅引
上ヲ印度ニ對シテ遠慮ヲ致スコトニ實際出
來上ルトシテモ、綿布一億万圓ノ輸出ガ今後
毎年繼續スルコトガ出來ルデアリマセウ
カ、私ハ此綿布ノ輸出ニ對シテモ將來無限
ノ發展ノカガアルト想像スルノハ大ナル早
計デアルト考ヘネバナラヌト思ヒマス(拍
き)斯樣ニ考ヘマシテ、今日現ハレテ參ル
所ノ國際貸借ト輸出ノ狀態ヲ見マスルト、
每年增加率ガ大ナル所ノ食糧不足ノ金額、
此食糧不足ニ基ク金額ニ對抗シテ、之ヲ決
濟シ得ル力ヲ織維工業ノミニ委スト云フコ
トハ大ナル失態ヲ來シ、將來ニ於テ必ズヤ
臍ヲ嚙ムノ憂ヲ貽スモノト信ジテ疑ヒマセ
ズ(拍手)是ガ爲ニ內地ニ於テ所謂生產階
級消費者階級、共ニ國民全體ガ力ヲ協セ
テ食糧ノ自足自給ヲ圖ルト云フコトガ國家
ノ急務デアリ、國家永遠ノ國策デナケレバ
ナラヌト考ヘルノデアリマス、此考カラ私
共ハ米穀ノ日本內地ニ於ケル生產力ヲ考へ
テ見マスルト、幸ニシテ歴代內閣ガカヲ協
セテ米穀耕作ノ改良、又用排水路幹線ニ對
スル補助奬勵、或ハ耕地整理ノ奬勵、或
開墾地助成法、是等ノ力ニ依シテ官民ノ努
力ガ大イニ效ヲ奏シテ、今日ニ至ルマデ吾々
ガ有スル所ノ統計ニ依リマスト、人口增
加ノ率ト、日本內地ノ米穀ノ主產增加率ト、
少シモ其間ニ憂フベキ現象ガナイ、卽チ日
本ノ人口ノ增殖ニ伴フダケノ供給ハ、產米
增殖ノ力ニ依シテ補ヒ得ル所ノ統計ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、況ヤ又此統計以外ニ尙
ホ二百万町歩ノ未墾地ヲ有シ、百三十万町
步ニ餘レル干拓其他改良ノ餘地アル所ノ土
地ヲ持ッテ居ルノデアリマス、其以上ニ又
政府ノ計畫セラレタ所ノ朝鮮ニ於ケル產米
增殖ノ計畫等ガアルノデアリマスカラ、吾々
ハ是カラ後數十年ノ間ニ互ッテ日本ノ食
糧ハ日本内地ニ依ッテ自給自足シ得、
不足ノ心配ハ毫モ無イト云フ確信ヲ
持シテ居ルノデアリマス、此確信ノ下ニ考
ヘテ見マスルト、既ニ内地デ自給自足ガ出
來ルトシタナラバ、何トカシテ國民ハ相助
ケテ此自給自足ノ途ニ赴カナケレバナラヌト
考ヘルノハ當然デアリマス、而モ此自給自
足ヲ圖ルガ上ニ於テ、特ニ注意シナケレバ
ナラヌ問題ガ一ツアリマス、ソレハ日本內
地ニ於ケル國民ノ一箇年ノ消費量ガ、年々
增加シテ參ル關係デアリマス、卽チ大正十
年ニ於テハ一人當リノ消費量ハ一石二斗、
十一年ニハ一石餘リ、十二年ニハ一石一斗
四升、十三年ニハ殆ド一石二斗ニナッテ居
ルト云フヤウナ狀態デ、多少其間ニ增減ガ
アリマスケレドモ、國民ガ消費スル其一人
當リノ關係ガ、甚ダ增大シテ參ッテ來タト
云フコトデアル、併ナガラ一石二斗ト一ムフ
數字ヲ表ハス以上ニ、今後一人當リノ消費
量ガ、過去ニ於ケル增率ノ力ヲ以テ進ンデ
行カウトハ考ヘラレナイ、故ニ吾々ハ此點
ニ對シテノ心配モ、將來左樣ニスル必要ハ
ナイト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ
此點ニ對シテハ、特ニ注意センケレバナラ
ヌ事ガアル、卽チ吾々ガ大切ニシテ居ル所
ノ內地米ノ消費ガ、果シテ吾々ノ純正ナル
生活ノ根本ニノミ使用サレテ居ルカドウ
カ、浪費ヲシテ居リハセヌカト云フ問題デ
アリマス、若シ茲ニ浪費ノ跡ガアルト云フ
コトデアルナラバ、是ハ官民相助ケテ、米
ノ浪費ノミハ防ガネバナラヌト思ヒマス、
卽チ昨年ノ請願委員會ニ現ハレマシタ、確
カ是ハ憲政會カ、或ハ無所屬ノ方デアリマ
シタカト思ヒマシタガ、汽車ノ辨當ノアノ
食殘リヲ三ツ四ツ持ッテ御出ニナッテ、サウ
シテ汽車辨當ハ勿體ナイカラ整理セヨト云
フ請願デアリマシタ、極メテ問題ハ卑野ナ
コトデアリマシタケレドモ、其結果ハ重大
ト認メテ、是ハ確ニ採擇シタコトデアッタト
考ヘテ居リマスガ、此問題ハ吾々ハ常ニ言ノ
テ居ルノデアリマスガ、消費者階級ノ方ガ
ドウモ米ヲ浪費スル、洵ニ汽車ノ中ノ辨當
ノ食事ノ後ヲ見マスルト、アノ日本食ノ後
ノ飯ガ、半分以上殘ッタ儘デ泥土ニナッテ捨
テヽアルノヲ澤山見ル、如何ニモ勿體ナイ、
且ツ殘念ナ事デアルト思ヒマス、ノミナラ
ズ都會ニ於ケル消費者階級ノ方ミハ、其臺
所ノ裏ヲ覗イテ見マシテモ、所謂洗ヒ流シ
ト稱スル所ノ米ノ浪費、卽チ捨テラルヽ部
分ガ非常ニ少クナイト云フコトデアリマス
(拍手)是等ノ問題ハ、特ニ國民ガ力ヲ協シ
タナラバ、私ハ年額百万石乃至一一百万石ノ
食延バシヲスルト云フコトハ容易ナ事デ
アルト考ヘテ居ル(拍手)大藏大臣ハ、昨年
モ吾々國民ニ對シテ所謂節約、貯蓄ヲ勸メ
ラレテ、盛ニ知事ノ力ニ依ッテ、地方委員
ヲ設ケテ御宣傳ニナル、其力ハ大ナル效果
ヲ表ハシテ、郵便貯金或ハ生命保險等ニ其
姿ガ現ハレテ參ッテ、非常ナ貯金率ヲ表ハ
シ、又ハ奢侈品ノ輸入ガ之ニ依シテ防遏セ
ラレルト云フヤウナ效果ヲ奏シ、此點ニ對
シテハ、一部國民ヨリハ、是ガ不景氣ノ原因
デアルト言ッテ、呪フ聲ガアルニ聲拘ラズ、
吾々ハ此實際ノ力ヲ見テ、深ク敬服ヲ致シ
テ居ルモノデアリマス、故ニアノヤウナ布
告ヲナシ、各地方官ヲシテアノヤウナ努力
ヲサセラレルト云フコトデアルナラパ、
歩進ンデ此食糧ニ對シテ、浪費ヲスルナト
云フコトヲ深刻ニ御訓示ヲ願ッタナラバ、其
效果タル必ズヤ少カラヌモノガアルデアラ
ウト考ヘルノデアリマス(拍手)斯樣ニ考ヘ
マシテ、若シ國民上下共ニ力ヲ協セテ、其
米穀ノ浪費ヲ防イダナラバ、去年ニ於テ五
百万石、其、中デ百四十万石ノ再輸出ガアソ
テ、三百四十万石バカリノ内地ノ消費デアリ
マスガ、ソレ等ノモノハ優ニ此浪費デ防グ
コトガ出來ルト考ヘル(ヒヤ〓〓)是等ハ大
ニ注意シナケレバナラヌ點ト考ヘルノデア
リマス、斯樣ナ考カラ、國民ガモウ少シ食
糧ニ對シテ眞劍味ニナリ、サウシテ國際貸
借ノ「バランス」ヲ得ルト云フコトハ國民
ノ義務デアル、將來ニ對シテ此自給自足ヲ
考ヘナカッタナラバ、大ナル恐ルベキ事ヲ
招徠スルト云フコトヲ考ヘタナラバ、假令
關稅引上ニ依ッテ、多少ノ負擔ガ重クナリ
マシテモ、是ハ甘ンジテ國民ガ負擔セナケ
レバナラヌ點デアルト考ヘルノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」拍手)況ヤ米國ノ或學者ハ、今
後三十年經テバ、世界各國ノ所謂食糧ハ其
國民ノ自給スル以外、輸出ノ力ハ無イコト
ニナル、人口問題ニ論及シテ、此恐ルベキ
力ヲ以テ、人口ガ各國共ニ增殖シタナラバ、
必ズ食糧問題ニ非常ナル衝突ヲ生ズルニ相
違ナイト云フコトヲ戒メテ、殊ニ日本國ノ
如ク、生產力ノ旺盛ナル所ノ國民ハ、速ニ食
糧問題ニ對シテ行詰リヲ生ズルダラウト云
フコトヲ戒メテ居リマス、是等ニ想到シテ
見ルト、三十年ト云ヘバ、吾々ハ指ヲ屈メ
テ直キデアリマス、サウシテ吾々ガ只今述
ベタ點ヲ考ヘテ見ルト、何トシテモ食糧ノ
自給自足ヲ圖ルノガ、當然國民ノ責務ナリ
ト考ヘルノデアリマス、此點カラ第一ニ吾々
ハ米及麥、其他食糧問題ニ關スル關稅
引上ヲ唱ヘル所以デアリマス、第二ニハ
此食糧ノ自給自足ヲ圖ルニ付テ、農民ハ現
今此儘ニシテ置イタナラバ、果シテ喜ンデ
農業生產物ヲ多量ニ生產シテ吳レルダラウ
カドウカ、ト云フ問題デアリマス(謹聽)
若シ食糧品ノ自給自足ヲ圖ルノガ國策デア
リ、國民ノ義務デアルトシタナラバ如何
ニシテモ今日ノ農民ノ力ヲ借リテ、今少シ
ク多收穫ヲ得ルコトニセナケレバナラヌ、餘
計ニ收穫ヲ得ル途ヲ考ヘナケレバナリマセ
ヌシ、又今日農民ガ從事シテ居ル所ノ勞賃
ヲ、都會ニ於ケル自由勞働者ノソレニ較ベ
テ見ルト、如何ナル統計ヲ現ス人デモ、自
由勞働者ノ賃銀ノ半額位ニシカ計上スルコ
トヲ許サナイノデアリマス(拍手)今日農村
ノ勞働者ノ勞賃ハ、都會ノ自由労働者ノ半
額ニシカ當ラヌト云フコトヲ其儘ニ措イ
テ、是カラ後將來ニ亙ッテ益、努力ヲシテ、
食糧ノ充實ヲ圖レヨト農民ニ號令シタトキ
ニ、農民ハ果シテ今後永ク、寧口永久ニ喜ン
デ彼等ハ努力スルト考ヘ得ラルヽデアリマ
セウカ(拍手)今日-是ハ想像デナク事實
ニ見マシテモ、農業労働者ノ多クヲ占メテ居
ル小作人ノ方〓ハ、農民組合ヲ造シテ、今
自己ノ立ッテ居ル所ノ其場所ニ目覺メテ居
リマス、目覺メル力ハ、地主ニ對シテ爭議
ヲ起スノミノ自覺デハアリマセヌ、彼等ハ
國民ノ食糧ヲ管理シテ居ル重大ナル職業デ
アルト云フコトニ自覺ヲ致シタノデアリマス
(ヒヤ〓〓)此自覺ノ下ニ考ヘマスト、果シテ
今後其勞賃ヲ、都會ノ自由勞働者ノ半額ニ
止メテ置ク事ガ許サレルコトデアリマセウ
カ、私ハ此點ニ對シテ深ク憂慮スルノデア
リマス、或ハ今日關稅引上ニ依ッテ、米價
ノ値上リガアリトシタナラバ、其値上リヲ
受ケル所ノ者ハ、少數ノ地主デアルト云フ
コトヲ言ハレル人モアリマスケレドモ、大
ナル考違ヒデアリマス(拍手)小作階級ノ方
方ハ米ヲ收穫スレバ直ニ次ノ年ノ肥料ヲ買
ハネバナラナイ、肥料ヲ買フノニハ前年度
ノ肥料ノ借ヲ返サナクチヤナラヌ、直ニ得
タモノヲ賣ラナケレバ其肥料ノ代金ハ拂ハ
レナイ域ニ居ルノデアリマス(拍手)而モ其
收穫ガ自己ノ愛スル妻子ニ對シテハ、彼等
ノ一年中ノ總テノ必要日ロヲ買ハナケレバナ
ラヌ所ノ元資金デアリマス、彼等ハ之ニ依ッ
テ之ヲ直ニ賣却シテ其希望ヲ達成スルノデ
アリマスカラ、米ノ價格ノ騰貴ハ農民全體
ノ希望デアルコトハ明カナルコトデアルノ
デアリマス(拍手)其見地ニ立ッテ私共ハ米
ノ代價ヲ維持シ、外米ノ壓迫ヲ防グト云フ
コトハ、農村民全體ノ希望デアルト同時ニ、
ソレガ若モ將來ニ於ケル農村民ガ喜ンデ農
村ノ事業ニ從事ヲスルト云フ原因ニナルナ
ラバ、是ハ何トシテモ其方策ヲ執ラネバナ
ラヌト考ヘルハノデアリマス(拍手)卽チ
農村民ノ負擔シテ居ル所ノ其生產費ナ
ルモノヽ科目ヲ調ベテ見マスルト、
所謂勞賃ガ大ナル部分ヲ占メテ居リマ
ス、其勞賃ニ對スル計算ノ仕方ニ依ッテ、
米ノ生產費ハ非常ニ高クナリ、或ハ相當ノ
位置ヲ保ツノデアルガ、今日自由勞働者ノ
半額位ニ計上シ、卽チ一圓六十錢位ニ計上
シテ見マシテモ、尙ホ四十圓ト云フガ如キ
生產費ヲ現シテ居ルノデアリマス、其生產
費ヲ現シテ居ル所ノ大ナルカデアル勞賃、
ソレヲ何トカセネバナラヌト云フコトヲ考
ヘル時ニ、之ヲ引上ゲテ生產費ヲ上ゲルト
云フコトハ亂基デアルト云シテ、消費者階級
カラ之ヲ阻ム、或ハ輿論多數ノ力ヲ以テ之
ヲ壓迫スルト云フコトハ、是ハ道理上當然
ノ事デアリマセウカ、私ハ甚ダ其理由ヲ解
釋スルニ苦ムノデアリマス(拍手)諸君、常
ニ例ニ現レル所ノモノデアリマスガ、商工
業ノ中デ關稅ノ過去ノ長キ保設ノ下ニ、今
日ハ十二分二一人立ノ出來、關稅ヲ無稅ニ
シテ迄モ今ハ構ハヌトマデ進ンデ參シタ、ア
ノ紡績業ヲ何ト御覽ニナリマス、今日ハ紡
績業ノ隆盛ハ工業中ノ王デアルト云ノテモ
宜イ程ノ旺盛ヲ極メテ居ル、旺盛ヲ極メテ
居クテ非常ニ大ナル配當ヲ會社ハシテ居ル
ノデアリマス、非常ニ何割ト云フ配當ヲシ
テ居リ、重役諸公ノ取ル所ノ「ボーナス」ノ
如キモ、吾々ガ聞イテ驚クガ如キ大ナル「ポ
ーナス」ヲ取シテ居ルノデアル、而モ一度彼
等ハ綿絲ノ市價ガ理想ノ値段ヨリ下ッタト
云フ時ニ當ルト、直ニ聯合會ヲ開イテ彼等
ハ何ヲ致シマス、直ニ操業ノ短縮ヲスルデ
ハアリマセヌカ、操業ノ短縮ヲシテ生產ヲ
減少セシメテ、遂ニ其力ニ依テテ價ヲ自
己ノ要求スル點マデ引上ゲルデハアリマセ
ヌカ(拍手)人間ノ大切ナル衣食住ノ中ノ、
其衣ト云フ大ナル-社會政策ノ上カラ見
テモ大ナル問題ノ一ツ、其木綿ノ著物ノ原
動力デアル綿絲、其綿絲ガ儲カラナイナラ
バ仕方ガナイガ、何割ト云フ配當ヲシ、又
從業者ハ大ナル「ボーナス」ヲ取ッテ居ルノ
デアル、而モ尙ホ自己ノ希望スル値段ニ達
スルニ至ラナイト、生產ヲ制限シテ希望ノ
値段ニ釣上ゲルト云フコトニ對シテ社會之
ヲ疑ハズ、政府亦少シモ之ヲ咎メヌト云フ
ノヲ見テ、諸君何ト御考ニナルノデアリマ
スカ(拍手)諸君ハ當然ナリト御考ニナリ、
消費者階級亦當然ナリト考ヘテ居ルト考へ
マン、然ラバ單リ之ヲ農產物ノミニ應用ス
ルコトノ不可ナル道理ハ無イデハアリマ
セヌカ、若シ此道理ヲ農產物、卽チ農業者
ガ考ヘテ之ヲ實行スル場合、卽チ農業労働
者ガ計畫シテ居ル所ノアノ農民組合ノ日本
的ニ集ッテ、此集團的勢力ノ下ニ生產ヲ減
少シヤウ、卽チ來年度ノ所謂作付反別ハ
割乃至二割ヲ減ジテ、其生產ヲ減ジヤウト
云フガ如キコトヲシタ場合ニ、由々敷社會
問題ヲ惹起スルデハアリマセヌカ(拍手)先
年行ハレマシタ大正七年、八年ノアノ米
騒動ノ跡ヲ考ヘテ見マシテモ、食糧問題ニ
對シテ生產不足ヲ想像シ、外國ヨリ輸入ス
ベキ外國米ノ產地モデ議饉アル場合ヲ想像
スルト、國民ハ此點ヲ甘受シナイ、卽チ燒
打問題ヲ惹起スデハアリマセヌカ、幸ニ
シテ我ガ農村ノ方ミハ柔順デアル、國家ニ
對シ國民ニ對シテ、此食糧政策ノ大切ナル
コトヲ考ヘテ居リマスカラ、斯ル過激ナル
手段ハ將來ニ亙ッテ決シテ實行スル方ミデ
ハアリマセヌ、是ハ吾々ハ喜ンデ農村ノ方
方ニ感謝セナケレバナラヌ點ブアリマス、
併ナガラ其農民ノ種々ナル國家ニ對スル忠
誠ト云フコトヲ吾々ガ考ヘルガ爲ニ、勞賃
ノ安キコトヲ將來ニ强ユルト云フ譯ニハ參
リマセヌ、彼等ニ忠誠ノ意アルナラバ、ソ
レニ對シテ國民ハ必ズヤ相當ニ酬ユル所ノ
途ガアルノハ當然ト考ヘル(拍手)其關係ニ
於テ私共ハ如何ニシマシテモ此勞賃ニ對シ
テ相當ノ酬ヒヲスルト云フコトハ吾々國
民全體ノ責務デハナイカト考ヘルノデアリ
ママ、然ラバ如何ニセバ宜シイカ、卽チ生
產費ヲ大體ニ考慮シテ、相當ナル市價ヲ保
ツト云フコトガ極メテ大切ナル事デアル、
幸ニシテ今日相當ナル市價ト云フ希望ノ市
價ニハ達成セヌケレドモ、近年稍、平準ヲ
得タル市價ニ近イ狀態ニナッテ居リマスル
カラ、之ヲ維持スル所ノ方法トシテ、將來
來ルベキ外米ノ壓迫ヲ防グト云フコトハ當
然ナル歸結デアル(拍手)此外米ノ壓迫ヲ防
イデ、而シテ內地ノ生產ヲ保護シ、内地ノ
生產ヲ保護シテ其市價ヲ相當ニ維持スルト
云フ、此二點ガ卽チ食糧政策ノ根本概念デ
アルト考ヘマシテ、吾々ハ〓糧問題ニ對シ
テ關稅稅盛リノ改正ヲ致シタ所以デアリマ
ス(拍手)更ニ吾々ノ考ヘナケレバナラヌコ
トハ國民ハ然ラバ食糧ノ自足自給ニ對シ
テ限リナキ犧牲ヲ拂フノデアルカ、ソレデ
ハ堪ヘルコトガ出來ナイ、大概ノ目安ヲ元
シテ貰ハナケレバナラヌト云フ論ガ、必ズ
ヤ國民ノ間ニ起ル所ノ點デアリマス、若シ
吾等ノ理想ヲ言ハシメタナラバ、政府ハ農
林省ノ獨立ヲ實行シタ關係カラ見マシテ
モ、第一ニ此米若クハ麥、是等ノ問題ニ對
シテハ一定ノ年限ヲ限ッテ、自給自足ヲ爲
シ得ル所ノ數字ヲ示シテ、之ニ對シテ其期
間ノ間、是位ノ犠牲ヲ拂ッテ貰シタナラバ
安心シテ自足自給ガ出來ルト云フ數字ヲ國
民ノ間ニ示スノガ、極メテ適當デアルト考
ヘルノデアリマス(拍手)此點ハ私共ガ申サ
ズトモ、流石ニ農林省ノ大官ハ此點ニ御氣
付ニナッテ居ルト見エマシテ、鳥卯ニ對
シテ委員會デ御質問ヲ申上ゲマシタ時ニ、
小山農林次官ハ農林省ノ案ナリトシテ吾々
ニ御〓シ下スッタ所ノ、所謂鳥卵ノ國策ト
デモ云フベキ、鷄卵ノ自足自給ノ御計畫ヲ
御發表ニナッタノデアリマス、吾々ハ此鷄
卵ノ自足自給ノ案ヲ農林省ノ大官ガ御示シ
下スッタコトヲ、國民ノ前ニ深ク感謝セナ
ケレバナラヌト考ヘテ居リマス、固ヨリ此
鷄卵ノ六年計畫ト云フモノハ、官吏ノ力ノ
政府ノ力ノミニ依ッテ其目的ヲ達成ス
ルモノデハナイ、卽チ官民合セタル力ニ
依シテ此鷄卵ノ輸入ヲ防ギ、此自足自給ノ
目的ヲ達成シヤウト云フ案デアルコトハ勿
論デアリマス、而モ其案ヲ元サレタル所ノ
御考、根本〓念ハ私ガ只今申上ゲマシタ通
リニ一定ノ期間內國民ニ相當ノ犠牲ヲ拂シ
テ貰ッタナラバ、斯ノ如ク自足自給ノ出來ル
ト云フコトヲ示スノガ、政府ノ國民ニ對ス
ル義務ナリト云フ根本觀念カラ起ッタノデ
アリマス(拍手)故ニ私共ハ鷄卵ガ十二年ニ
於テハ一千五百万圓ノ輸入デアリ、十三年
ニ於テハ一千三百万圓ノ輸入ニナッテ居リ
マス、ソレ位ノモノデアリマスカラ大ナル
注意ヲ拂フ必要ハナイケレドモ、農林省ノ
諸君ガ如何ニ食糧政策ヲ重大視シテ居ラレ
ルカト云フ點ニ對シテ、深ク私共ハ感謝シ
テ居ルノデアリマス、而モ此點ニ對シテ特
ニ諸君ニ御注意ヲ願ッテ置カネバナラヌ點
ガアリマス、此食糧ノ自足自給ヲ說明セラ
レマシタ中ニ、此六年計畫ノ鷄卵ノ自足自
給ノ御計畫ヲ爲サイマシタ中ニ、根本觀念
ノ一ツトシテ、鷄卵ノ輸入ニ對シテ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=88
-
089・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=89
-
090・長田桃藏
○長田桃藏君(續) 鷄卵ノ輸入ニ對シテ相
當ノ關稅ヲ課シ、外國卵ノ壓迫ニ對シテ本
邦養鷄ノ健全ナル發逹ヲ擁護スルコト是
ガ所謂六年ニ於ケル養鷄自給計畫ノ一ツデ
アッテ、農林省ノ御考ト雖モ其自足自給ノ根
本觀念ニハ相當ノ關稅ヲ課シテ外國卵ノ
壓迫ヲ防グト云フコトガ、其根本觀念ニナッ
テ居ルノデアリマス(拍手)然ルニ只今先輩
ノ質問ニ對シテ、早速農林大臣ハ米及籾ノ
市價ヲ維持スルト云フ問題ニ對シテ、其市
價ヲ維持スルト云フ點ハ米穀法ノ力ニ依ッ
テ之ヲ維持スルコトガ出來ル、此市價ヲ維
持スルト云フコトヲ關稅ニ依シテノミ之ヲ
現ハスト云フコトハ不可能デアル、斯樣ニ
言ハレタノデアリマス、〓稅ニ依ッテノミ
〓糧品ノ市價ヲ維持スルト云フコトハ出來
ナイト云フ事柄ハ是ハ聞クコトガ出來マ
ス、併ナガラ他ノカト相俟。テ關稅ノ稅率
ニ依ッテ之ヲ保護スルト云フコトガ大切ナ
ル一方法デアルト云フコトハ、此政府ノ御
出シニナッタ鷄卵自給計畫ノ根本觀念ニ自
白セラレタ所ニ依シテモ明カデアルト思フ
(拍手)何ガ故ニ早速農林大臣ハ鷄卵ノ輸入
ニ對シテノミ相當ノ關稅ヲ課シテ、外卵ノ
壓迫ヲ防グト唱ヘテ居リナガラ、他ノ食糧
品ニ對シテハ關稅ノ保護ヲ必要デナイト思
フノデアルカ、私ハ非常ニ訝カシク考ヘル
ノデアリマス、斯樣ニ考ヘマスルト吾々ハ
如何ニシテモ其負擔率ガ如何ナル程度マデ
及ブカト云フコトヲ考慮シ、國民ガ拂フ所
ノ犠牲ハ、吾々ノ修正案ニ依レバ如何ナル
犠牲ヲ拂フノデアルカト云フコトヲ、如何
ニシテモ穿鑿セネバナラヌノデアリマス、
吾々ハ內地米ト外米トニ對シテノ關係ヲ調
査致シマスルト、其生產費ヲ比較致シマシ
テ保護關稅ヲ課スルノガ最モ完全ナル保護
法デアリマス、故ニ內地米ト外米トノ生產
費ヲ玆ニ對照シテ見マスト、內地米ノ最モ
安キ二十縣ニ亙ル部分ニ對スル調査ニ依シ
テ見マスト、之ヲ大都市ノ東京マデノ蓮賃
ヲ入レマシテ三十八圓二十六錢ト云フ數字
ヲ現ハシテ居ル、之ニ對シテ溫帶米ノ加州
米ノ生產費ガ石二十一圓七十銭ニナッテ居
リマス、故ニ是ガ沖渡シ値段マデノ運送賃
銀ヲ入レマスト、輸入價格ハ一石平均二十
八圓五十九錢トナッテ居リマスカラ、少ク
トモ之ニ對シテ百斤二圓以上、卽チ一石ニ
對シテ五圓以上ノ關稅ノ保護ヲセネバ平均
ヲ得ルコトガ出來ナイノデアリマス、又熱
帶米トシテ西貢米、ソレガ百斤生產費ガ生
產地ニ於テ八圓九十錢、蘭貢米ガ九圓十錢
デアリマシテ、何レモ內地沖渡シ値段ガ石
二十二圓二十五錢カラ、二十二圓七十五
錢トナッテ居リマスカラ、縱シ熱帶米ト內
地米トノ趣味ニ於ケル其等差ヲ價格ニ見積
リマシテモ、尙且是モ五圓以上ノ引上ヲス
ルノガ當然デアル、卽チ百斤ニ對シテ二圓
以上ノ稅盛リヲスルト云フコトガ當然デア
リマスケレドモ、實ハ先輩ノ本黨ノ諸君ト
モ協議ヲ致シマシタ結果ガ二圓ト云フガ如
キ稅盛リヲ改正スルコトハ餘リニ消費者
階級ヲ脅スコトニナリハセヌカト云フノ
デ、政治上ノ調節ヲ玆ニ慮ッテ五十餘ノ稅
盛リ改正ヲ致シタ、卽チ合計一圓五十錢ト
云フコトニ致シタノデアリマス、而モ其稅
盛リノ改正ノ結果ガ國民ニ及ボス所ノ其負
擔率ヲ見マスト、所謂國民ハ一石一斗二升
三合食ベテ居ルモノト致シマシテ、月額十
一錢六厘ノ負擔デアリマスルシ、一升ニ對
シテ僅ニ一錢二厘五毛ノ負擔デアリマスカ
ラ、五十錢ノ稅盛リノ下ニ所謂輿論囂々ノ
聲ヲ放クテ、消費者階級ノ負擔ガ堪ヘラレ
ヌ程大ナルモノデアルト叫ブノハ、餘リニ
其聲ノ大ナルコトニ私共ハ驚クノデゴザイ
ママ、國民ハ米、籾ニ對シテ關稅一升ニ對
シテ一錢二厘五毛位ノ犠牲ヲ拂ヒマシテモ
決シテ其負擔ガ多イカラ、國策タル食糧政
策ヲ吾々ハ抛棄スルト云フガ如キコトハ申
サヌト考ヘテ居リマス、況ヤ一錢二厘五毛
ハ五百万石ノ外米ニ掛カルニ依シテ、日本ニ
得ラレル所ノ五千七百万石ノ内地米全體ノ
價格ガ騰貴スルト云フコトモ假定シタ計算
デアリマス、ソレデアルナラバ私共ハ決シ
テ五十錢位ノ稅率ノ引上ヲ以テ、國民ノ生
活ヲ脅カスモノデアルト云フガ如キハ誣ユ
ルモ甚ダシキモノデアルト考ヘル、此米、
籾ノ關稅問題ニ對シテハ是デ終ルノデアリ
マスケレドモ、私共ハ社會政策ノ問題ヲ此
稅盛改正ニ對シテ常ニ唱ヘラレル方々ニ對
シテ一言シテ置カナケレバナラヌコトハ
今政府ガ計畫シテ居ル所ノ彼ノ朝鮮ノ產米
增殖ノ結果ハ必然的ニ所謂幾十年カノ後
ニ於テ、朝鮮民族ガ覺醒シテ日本內地ノ國
民ノ如ク、日本內地ノ民族ノ如ク、一 七十三
一石二斗ノ米ヲ食ベルト云フヤウナ時期ニ
到達シマシタナラバ、必ズヤ理想的ノ時期
ニ達スルト考ヘマスルケレドモ、今粟ヲ宛
行シテ米ヲ奪ヒ、外國米ヲ宛行シテ朝鮮米ヲ
奪テテ參所所ノ其計畫ヲスル者ハ何人デア
リマス、諸君ノ最モ忌ンデ居ル社會政策上
許スベカラズト考ヘテ居ル所謂大地主ト
カ、或ハ大富豪トカ、或ハ大商人トカ云フ
者デハアリマセヌカ(拍手)然ラバ是等ノ者
ノスル所ニ當然反對ヲサレテ、外米輸入ヲ
防グガ爲ニ稅盛リ改正ヲスルト云フコト
ハ是ハ當然ノ事デアルト考ヘマス(拍手)
此點ニ對シテハ社會政策ヲ高調セラレル所
ノ方々ニ、重ネテ之ヲ申シテ置カナケレバ
ナラヌト考ヘマス(拍手)私共ハ此場合ニ一
言申上ゲテ置カネバナラヌコトハ委員長
ノ御報告ガ小麥或ハ小麥粉、鳥卵等ニ對シ
テ、吾々ト同感デアルコトデアリマスカ
ラ、之ニ對スル說明ハ要サナイノデアリマ
ス、併ナガラ此點ハ消費者階級ノ方々モ、或
ハ此案ガ貴族院ニ廻ハル場合ニ於テ、上院
ノ諸君モ此小麥ノ關稅引上ニ反對セラレテ
居ル所ノ方々ガ、如何ナル理由デ小麥ノ關
稅引上ヲシタノデアルカト云フコトヲ、如
何ニシテモ之ヲ御諒解ニナラヌト考ヘマ
ス、故ニ小麥ノ關稅引上ノ理由ト同時ニ、
小麥粉ノ關稅引上及鳥卵ノ問題等ニ對シテ
ハ此委員長報告ノ案ニ御賛成ニナル所ノ
議員ノ方々カラ、相成ベクハ三輪君ノヤウ
ナ熱心ナ方々カラ、徹底的ニ此關稅ノ引上
ヲセネバナラヌ所ノ理由ヲ御說明置キ下サ
ルコトヲ、私ハ國家ノ爲ニ、又國民ノ爲ニ
切ニ御願致スノデアリマス(拍手「ヒヤヒ
ヤ」)不幸ニシテ此說明ヲ完全ニセナイガ爲
ニ、上院ニ於テ是ガ否決ノ運命ニナリ、或
ハ尙ホ天下囂々反對ノ聲ガアルト云フコト
ニナルナラバ、吾々ハ爲スベキ事ヲ爲
サズ、努ムベキ貴努ヲ盡サナカッタト
云フコトノ國民ニ對スル責任ヲ甘受シナ
ケレバナラナイ、故ニ此點ニ對シマシテ
ハドウカ委員長ノ報告ニ御賛成ニナリマ
ス方々カラ、十二分ニ御說明ヲ賜ハランコ
トヲ私ハ切望致シテ置キマス(拍手)其他數
字ニ涉ッテノ說明ハ、私共病中デゴザイマス
ケレドモ敢テ其說明ハ辭シマセヌ、併ナガ
ラ時間ハ益〓切迫ヲ致シテ參リマスカラ、
數字ニ對スル說明ハ省略ヲ致シマス、唯こ
一言說明ヲ加ヘテ置カネバナラヌ點ガアリ
やっ、御〓聽ヲ願ヒマス(「謹聽」)此大豆ニ
對スル問題ハ是ハ近年大豆ノ内地生產ガ
作付反別ガ少クナイ、又輸入ハ非常ニ殖エ
テ參ッテ居ルノデアリマス、而モ其生產ハ
多ク東北地方ヨリ北海道方面ニ生產サレル
ノデアリマシテ、此農產物ヲ大ニ多收穫ヲ
シテ、サウシテ所謂農村ノ餘剩能力ヲ有利
ニ導キ、其勞賃ヲ引下ゲテ、農產物ノ價格
ヲ引下ゲルト云フ方面カラ考ヘテモ、此農
產物ノ裏作ノ問題ニ對スル奬勵ガ極メテ必
要ナノデアリマス、殊ニドウシテモ大豆ノ
如キモノニ對シテハ能フ限リ關稅上ノ保
護ヲ加ヘテ、有利ニ之ヲ導イテ、少クトモ
輸入ヲ防遏スル程度マデ之ヲ保護スル必要
ガアルト認メタノデアリマス、併ナガラ是
モ政治上ノ所謂調節ヲ以チマシテ、一圓二
十錢ト致シマシタノデアリマス、此點ニ對
シマシテモ私ハ絮說ヲ俟タズ、各位ニ於カ
セラレテモ疾ニ御水知ノコトヽ考ヘマスカ
ラ、說明ヲ簡單ニ致シマス、其他小豆ノ問
題.蠶豆ノ如キ或ハ綠豆、豌豆、是等ニ對
シテモ其比率ヲ以テ相當ニ關稅ノ稅盛リヲ
シ、農產物ニ對スル有利ナル價格ヲ維持セ
ンガ爲ニ、農村ノ方ミノ其勞賃ヲ主要ナル
農產物ノ所謂労賃カラ之ヲ引イテ、サウシ
テ主要ナル勢賃ノ成ベク減少スルヤウニト
考ヘタガ爲ニ企テタ所ノ稅盛リ改正デアリ
マイ、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス、ソレカラ
「タビオカ」「マニオカ」「セーゴ」ヲ二圓ニ
シ、又「コンスターチ」モ二圓ニ致シタノデ
アリマス、此「タピオカ」「マニオカ」、「セーゴ」
ノ問題ハ、私ガ說明スルヨリハ寧口憲政會ノ
奧村君カラ御說明ヲ請ウタ方ガ適當デアル、
是等ノ如キハ、餘程此點ニ對シテ、所謂調査ヲ
十二分ニシテオヰデニナルノデアリマス、不
幸ニシテ此問題ノ結論ヲ異ニスルニ依シテ、
私カラ說明シマスガ、「タピオカ」「マニオ
カ」、「セーゴ」ト.日本ノ甘藷激粉トガ同
一ノ效用ヲ爲シテ居ルノデアリマス、而シ
テ日本ノ甘藷澱粉、即チ千葉、廣島、九州
方面カラ、四國方面ニ於テ他ノ農產物ノ作
付ガ出來ナイ、所謂地味ノ荒レタ所ニ於テ
ノミ行ハレル所ノ甘藷栽培、此甘藷ノ栽培
ガ、輸入スル所ノ「タピオカ」、「マニオカ」
「セーゴ」ノ下ニ年々其生產ヲ縮小セラレ、
其正業ヲ奪ハレテ參ル悲慘ナル狀態ニ在ル
ガ爲ニ、何トカ此稅盛リヲ改正シテ、是等
ノ農作物ヲ保護シナケレバナラヌ立場ニ居
ルノデアリマズ(拍手)是ガ爲ニ私共ハ之
ニ對スル調査ノ結果、政府ガ說明シテ居ル「夕
ピオカ」「マニオカ」「セーゴ」ノ關稅ヲ寧ロ
引下ゲヤウトスルコトハ根本ニ誤リガアル
(拍手)卽チ「タピオカ」「マニオカ」「セーゴ」
ハ政府ハ主ニ工業用デアルト考ヘマシテ、
工用デアルト云フ見地カラ輸入關稅ヲ引下
ゲテ居ルノデアリマスケレドモ、調査ノ結
果ハ、是ハ大ナル部分ガ皆飴用デアリマシ
テ、飴ノ原料デアリマシテ食用ニナルノデ
アリマス、其一部分極メテ僅ナ一割ガ、
割五分ノ部分ダケガ西洋洗濯ノ糊、若クハ
諸工場ノ織布ノ糊ニナンテ居ルノデアリマ
シテ、全然政府ノ說明ハ實際ヲ裏切ッテ居
ルト云フコトヲ發見致シマシタ(拍手)卽チ
工業方面ニ對スル、所謂吾々ノ當然爲スベ
キ義務、或ハ又憐ムベキ瘠セタ土地ヲ持ッ
テ居ル所ノ小農ヲ保護スルト云フ-甘藷
栽培ヲ保護スルト云フ考デ、如何ニシテモ、
之ヲ寧口二圓ニスルト云フコトハ當然ナリ
ト考ヘテ、之ヲ改正致シマシタ(粕手)同時
ニ此「コンスターチ」ニ對シテハ、政府ハ
此「コンスターチ」ヲ〓用ナリト考ヘタノデ
アリマス、故ニ一圓六十五錢ノ稅盛リヲ四
圓五十五錢ニ引上ゲタノデアリマスケレド
モ、是モ調査ノ結果ハ非常ナ間違デ、其八
割五分ハ所謂織布用ノ糊デアリマス、外
「コンスターチ」ハ紡織ノ方面ニ於テナケレ
バナラヌ重要ナル糊デアル、此糊ガナカッ
タナラバ外國輸出ニ對シテ非常ナ缺陷ヲ生
ズル程ニ、重大ナル役目ヲ占メテ居ルモノ
デアリマス、其役目ヲ占メテ居ルモノヲ食
料品ナリト誤シテ、此大ナル高額ノ關稅引上
ゲヲスルト云フコトハ根本ニ誤謬ガア
ル、是亦委員會ニ於ケル空私ヲ見ルト、何
人モ異論ノ無イ點デアッタノデアリマス、
故ニ此點ニ對シテハ、等シク他ノ稅ト同ジ
〃之ヲ稅盛リ改正ヲシテ一一圓ニ致シマシ
タ、而モ之ヲ二圓ニ致シマシタノハ、卽チ
工業ヲ保護スル所以デアリマス、而モ、
言申上ゲテ置カネバナラスコトハ、甘藷澱
粉ニ對スル所謂二圓ノ稅率ハ、北海道ノ所
謂馬鈴薯澱粉ト其性質ヲ同ジウスルモノデ、
關稅稅盛リデハ「其ノ他」ニナッテ居ル所ノ、
所謂「ポテトスターチ」ト同ジデアリマスカ
ラ、其稅盛リガ二圓ニナッテ居ルカラ、此
「タピオカ」、「マニオカ」、「セーゴ」ヲ二圓ニ
シタト斯樣御了解ヲ願ッテ置キマス、ソレ
カラ其他牛肉、豚肉、鯨肉、此問題ニ對シ
テモ、稅盛リヲ現行法通リト一云フコトニ致
シマシタノデアリマス、其現行法通リニ致
シマシタノハ牛肉ニ對シテモ申上ゲテ置カナ
ケレバナラヌ點ガアリマス、ソレハ所謂畜
牛ノ關係デアリマス、先刻中上ゲルコトヲ
忘レマシタカラ、玆ニ併セテ申上ゲテ置キ
マスガ、早速農林大臣ノ言ハレマシタ如ク
ニ、又私ガ之ヲ肯定シタ如クニ、此農家ノ
農產物-生產スル農產物ノ此價格ヲ維持
スルノハ、關稅ノ力ノミニ依シテハ維持ス
ルコトガ出來ナイ、卽チ農商務省ガ年々主
張シテ居ル所ノ所謂農作ノ改良、或ハ畜牛
ノ奬勵其他、副業ノ奬勵等ト相俟クテ、此農
產物ノ收穫ヲ多クシ、或ハ生產費ヲ少クス
ル、斯樣ニ致サナケレバナラヌノデアリマ
スガ(拍手)其大ナル部分ヲ占メテ居ルノ
ガ、此畜牛ノ關係デアリマシテ(「ヒヤヒ
ヤ」)人間ノカヲ以テ勞賃ノ全部トスルヨリ
モ、畜牛ヲシ-牛馬ノ力ヲ以テ人間ノ力
ニ代ヘルト云フコトガ、其勞賃ヲ減少スル
所以ノ大ナルモノデアリマスルカラ(拍手)
何トシテモ畜牛ノ獎勵ヲシナケレバナラ
又、畜牛ノ奬勵ハ、總テ金肥以上ニ堆肥ヲ
增シテ、堆肥ハ地力ヲ增加スル、其結果肥
料ノ點ニ於テモ、非常ニ減少ヲ生ズル、所
謂農產物ノ生產費ヲ少クスルノデアリマス
カラ、其點カラ考ヘテモドウシテモ、畜牛
ヲ獎勵シナケレバナラヌ、畜牛ヲ奬勵スル
ト云フコトニナレバ、畜牛ガ役牛トナッテ
働イテ、次ニ七歲八歲ニナレバ所謂肉牛ト變
ル、肉牛ト變ル場合ニ於テノ其代價、卽チ
廢牛トナル場合ノ代價ヲ維持シテヤラネバ
ナラヌノガ當然デアル(拍手)然ルニモ拘ラ
ズ今日迄ノ情勢ヲ見マスト、益〓外國ノ牛
肉ハ其數量ヲ多ク輸入シテ參ル狀態デアリ
マスカラ、政府案ノ如ク其輸入閣稅ヲ低フ
シテ、益廢牛ノ代價ヲ安クセシムルト云
フガ如キハ、農村振興ノ途ニ背クノミナラ
ズ(拍手)所謂農產物生產費ヲ少クスルト云
フ所ノ、原則ニ反スル遣方デアルト考ヘル
ノデアリマス(拍手)故ニ此點ニ對シテ大ニ
慮ッテ少クトモ、之ヲ現行稅率ニ維持スル
ノガ當然ト考ヘタ所以デアリマス(拍手)豚
肉ニ對シマシテモ是ハ無論諸君ノ御永知ノ
通リ、吾々ハ豚ヲ飼フト云フ場合ニ新ニ飼
料ヲ買フヤウナコトハナイ、所謂農家ニ於
テハ其食物ノ餘フタ所ノ殘滓、或ハ又其他
ノ棄テヽ居ル所ノ塵芥ノ中ニ在ル食物、是
等ヲ以テ伺料トシテ養フ所ノモノデアリマ
シテ、農家ノ廢物利用ノ爲ニハナクテハナ
ラヌモノデアルト同時ニ、此廢物利用ガ卽
チ農村ノ農產物ノ代價ヲ、安クスル所ノ一
ツデアルト考ヘタトキニ、是亦ドウシテモ
獎勵ヲシナケレバナラヌモノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」)此奬勵ヲスルガ爲ニ豚肉ノ輸
入ヲ成ベク防遏シテ、內地ノ生產ヲ多クス
ルト云フコトハ、是亦國策トシテ當然執ラ
ナケレバナラヌ途デアル(拍手)之ガ爲ニ吾
吾ハ是亦稅盛リヲ改正シテ、從價三割ヲ四
圓ニ値下ヲシヤウト云フノヲ、吾々ハ現行
法律ノ通リ從價三割ニスルト云フコトガ、
最低度ノ保護デアルト考ヘテ斯樣ニ改正シ
夕所以デアリマス(拍手)次ハ鯨肉デアリマ
ス、此鯨肉ニ對シテハ少シク農產物ト懸離レ
テ居ルヤウデアリマスルケレドモ、此鯨肉
中ノ赤肉ハ、捕鯨會社ノ人ガ日本ノ食用品
トシテ此滋養物ヲ勸メルガ爲ニ、多年非常
ナ努力ヲ以テ鯨肉ヲ食用ニシタノデアリマ
ス、鯨肉ヲ食用ニ供シタアノ努力ヲ考ヘテ
見ルト、如何ニシテモ此捕鯨曾社ヲ保護ス
ル必要ガアル爲ニ、之ニ對スル關稅ニ從價
三割ヨリ一割五分ニ値下シテ、外國ニ於テ
ハ之ヲ肥料トシテ居ル赤肉ヲ、一定ノ方法
ヲ用ヒテ內地ニ輸入シテ來ルガ如キハ、折
角日本內地ニ於テ發逹シタ所ノ捕鯨會社
ヲ、根本ヨリ覆スコトニナリハセヌカト云
フ心配ガアルト云フノデ、是亦當然ナルコ
トヽ考ヘテ、此從價三割ヲ少クトモ維持ス
ル必要アリト認メテ之ヲ三割ニシタノデア
ル、「コンデンスミルク」ニ對シテモ其通リ
デ、政府ハ之ニ對シテ保護ヲスルノ必要ア
リト認メテ、稅額ヲ相當ニ引上ゲラレタノ
デアリマス、此稅額ヲ相當ニ引上ゲラレタ
ル所ノ「コンデンスミルク」ヲ見マスト、每
百斤ニ對シテ五圓五十五錢ノモノヲ、十三
圓四十錢ニ引上ゲラレタ所ノ、其增率ノ御
精神ハ、軈テ吾々ガ今少シク上ゲヤウト云
フ觀念ト、全ク所感ヲ同一ニ致シテ居ル、
是亦畜牛方面ニ於テ申上ゲマシタ如クニ、
所謂役牛又ハ食牛又ハ乳牛、是等ノモノ
ハ、當然農產物ノ生產費ヲ少クスル上ニ於
テ爲サナケレバナラヌ所ノ奬動デアル、其
獎勵トシテ近年酪農事業ノ發達ハ著シキモ
ノガアッテ、ソレニ依ッテ生產スル所ノ「コ
ンデンスミルク」或ハ之ニ依ッテ造ル所ノ
粉、粉製品是等ノ如キモノハ、內地ノ生產
品ハ外來ノ舶來品ニ比ベテ、其價値ガ優ル
トモ劣ッテ居リマセヌ(「ヒヤ〓〓」拍手)然
ルニモ拘ラズ、我國維新以來ノ舶來品尊重
ノ誤レル觀念ガ之ニ及ボシテ、今尙ホ效果
ノ少シモ變ラヌ、否效果ハ寧ロ劣シテ居ル
所ノ「コンデンスミルク」ノ舶來品ヲ尊重シ
テ、內國品ヲ貶ス習慣ノアルコトハ、實ニ
諸君ト共ニ痛嘆シナケレパナラヌ點デアル
ト考ヘル(拍手)而モ此輸人ヲ與ヘテ見マス
ト、是亦莫大、ナル價額ニ上ッテ居ルノデ何
トシテモ此輸入價額ハ、我ガ生產ノ價額ヲ
凌篤スルヤウナ耻ヅベキ狀態ヲ挽回シナケ
レバナラヌト考へルノデ、政府ト全ク此點
ニ於テ感ジヲ同ジクスル所カラ、吾々ハ今
少シク稅盛リヲ改正スルト云フ意味デ、從
價三割、而シテ乾キタルモノニ對シテハ、
從價三割五分ニ改正シテ速ニ國民ニ國產ヲ
獎勵シ、又舶來品ガ我國ノ「コンデンスミ
ルク」新製品等ニ劣シテ居ルコトヲ認識シ
テ、速ニ外國品ヲ排除シテ我ガ内國品ノミ
ニ依シテ、滋養ヲ充スコトニ致シタイト考ヘ
テ居リマス(「ヒヤ〓〓」拍手「終リ」ト呼フ
者アリ)マダ終リマセヌ(「好イ加減ニ引上
ゲタラドウデス」「謹聽々々」ト呼フ者アリ)
洵ニ諸君ニ對シテ相濟ミマセヌケレドモ、
私ハ病メル體ヲ此議會ニ出テ居リマスノハ、
當初以來關稅問題ノミニ終始シテ居ル、此
問題ヲ唱ヘンガ爲ニ病ヲ押シテ登院致シテ
居ル私ニ此問題說明ノ爲ニ十分ヤ二十分餘
計御與へ下サルコトハ、必ズヤ諸君ノ····
(拍手起リ「體モ大事ダヨ」「來年ノ議會モア
ルゾ」ト呼ヒ發言スル者多シ)モウ直グデ
ス、次ハ六百二ニ蒟蒻芋トソレカラ同ジク
切十、同ジク粉、此從價ヲ三割五分ニ上ゲ
タ點デアリマス、是ハ政府案ノ中ノ一番終
リニ在リマス所ノ、六百四十七ノ別號ニ揭
ゲザル物品ノ中ニ這人シテ居ルノデアリマ
スケレドモ、是ハ所謂山間僻地ニ居ラルヽ
方ミノ-山間ノ小農ノ方ミノ其農產品ヲ
保護スル爲ニ態、六、百七號ノ稅番ヲ設ケ
テ、之ヲ三割五分ニ修正ヲ致シタヤウナ次
第デゴザイマス、以上農產品ニ對スル說明
ノ〓略ヲ申上ゲタノデアリマス、定メテ御
聽苦シカッタト思ヒマスケレドモ、吾々ノ
說明ノ足ラザル所ハ、尙ホ諸君ノ方カラ補
足セラルヽコトヲ切望致シマス、サウシテ
私ハ特ニ此問題ガ國民ノ利害ニ卽スル所大
ナルコトヲ思ウテ、願クハ政黨關係ヲ離レ
テ、寧ロ自由問題トシテ、此問題ノ當否ヲ
決定セラレンコトヲ切ニ各位ニ御願シテ、
此壇ヲ引下ラウト考へマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=90
-
091・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 田中隆三君
〔田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=91
-
092・田中隆三
○田中隆三君 大分時刻モ移リマシタカラ
シテ、端折ルニ宜イダケ端折ッテ、極ク手
短カニ私ハ委員長ノ御報告ニ賛成致シマシ
テ、他ノ修正案ニ反對スル意味ヲ申上ゲマ
ス、吾々ノ修正案トシテ現レマシタ三種ノ
モノニ付キマシテハ、政友會ノ諸君モ御同
意トアッテ、委員會ニ於テモ起立賛成ノ意ヲ
表セラレテ居ルノデアリマス、卽ナ修正ノ三
項目ニ付テハ、別ニ說明ヲ附加ヘル必要ハ
ナイト思ヒマス、其他ノ政友會ノ諸君ノ主
張セラルヽモノハ、總體デ七十種ゴザイマ
ス、其七十種ノ中ノ三種ハ、只今申上ゲマ
ス如ク御同意デアリマスカラ、後ノ六十七
種ト云フモノヲ此際修正ヲスルカ、或ハ其
修正ヲ吾々ノ主張スルガ如ク、近ク開設セ
ラルベキ-設ケラルベキ常設委員會、關
稅ノ委員會ノ議ニ付シテ愼重審議ヲスルコ
トヲ必要トスルヤ否ヤト云フ點ダケガ、議
論ノ岐ルヽ所デアル(拍手)ソコデ只今長田
君カラモ御熱心ニ主張ガゴザイマシタガ、
此度ノ修正ヲ此三種ニ限ッテ、長田君等ノ主
張セラルヽ所ノ殘ル六十七種ヲ、此際修正
シナイト云フナラバ、寧ロ此三種ヲ止メタ
ガ宜シイト云フ御議論ガ一ツ、所ガ此御議
論ハ一應間エルヤウデハアリマスガ、B〓-
考ヘテ見ルト、洵ニ國民ノ爲メ、又我ガ產
業ノ爲ニ不深切ナル議論デアル、數字ニ現
レテ居ル、此關稅定率法ニ於テ稅率トナッ
テ現レテ居ルモノハ千六百六十九種アルノ
デアリマス、千六百六十九種ノ中、諸君ノ
主張スル六十七種ヲ除イタ後ノ千六百二種
ト云フモノハ、適當ナル改正案トシテ諸君
ガ認メラレテ居ルノデアル、僅ニ六十七種
ニ不服ナルガ故ニ、國民ノ爲メ最モ必要ナ
ル所ノ千六百二種ヲ此際棄テヽ修正ヲシナ
イト云フ理窟ハ、ドウシテモ分ラナイ柏白
手「根本問題ヲ措イテ何ヲ言ッテ居ルノダ」
ト呼ヒ其他發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=92
-
093・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=93
-
094・田中隆三
○田中隆三君(續) 寝呆ケテ居ル人ニハ寢
言ト聽エルカ知レマセヌ、併ナガラ眞面目
ニ御聽キナサイ
〔「代辯ハ止メヨ」ト呼ヒ其他發言スル
者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=94
-
095・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 古川サン、御静
肅ニ願ヒマス
〔「議長小公平」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=95
-
096・田中隆三
○田中隆三君(續) 只今ハ形式ノ上カラ私
ガ申上ゲマシタガ、更ニ進ンテ其七十
種-政友會ノ諸君ガ修正ヲ要スルト主張
セラルヽ其七十種ニ付キマシテモ、實際ノ
事ヲ申上ゲレバ、マダ調査ガ十分ト云フコ
トハ私申上ゲ兼ネルト思フノデアリマス、
例へバ昨日ノ委員會ニ於カレマシテモ、長
田君ハ我黨ノ沼田君ヲ指サレテ「キッド」、
「ポックス」、其他皮革ニ關スル知識ニ於テ實
ニ驚クベキ該博ナル方デアッテ、其所說ハ
寸毫モ疑ヲ容ルベキ餘地ガナイ、又同ジク
魚介類ニ關シテノ佐々木君ノ說ハ、洵ニ傾
聽スベキ値打ガアッテ、而モ之ニ對スル政
府委員ノ答辯ハ、何レモシドロモドロデ、
其曲直正邪ノ別既ニ明カナリト云フ御說明
ガアルカト思ヘバ、政友會諸君ノ御提出ニ
ナッタ所ノ修正案ニ魚介類ノコトモ現レテ
居ラズ、皮革ノコトモ何等痕跡ヲ見ナイノ
デアル、口ヲ極メテ調査明瞭ナリト主張セ
ラルヽ(「御前ノ方ハドウダ」ト呼フ者アリ)
御聽キ下サイ-卽チ吾々ハ是等ノモノニ
付テハ、今少シク傾重ニ、モウ少シ深切丁
寧ニ調査ヲシテ、而シテ後ニ適當ナル稅額
ヲ決メルガ宜シイ、何レモ關稅ノコトハ數
字ニ關スルコトデアリマス、而モ其各品目
ニ付テハ、ソレ〓〓利害關係ヲ異ニスルモ
ノガアルノデアリマス、單ニ陳情書ガ澤山
來タトカ、誰ニ會ッテ斯ウ云フコトヲ聞イ
タト云フコトデ以テ、卽斷ノ出來ルモノデ
ハナイノデアリマス(拍手)細カイ事ヲ申上
ゲル餘地ハアリマセヌガ、只今中上ゲマシ
夕如ク、旣ニ御自身ガ此說ニ寸毫疑定ガ無イ
ト仰シヤル其事柄ガ、己ノ提出スル修正案
ニ現レテ來ナイ位ノコトデアルカラシテ、
其他ノ事柄ニ付テ此上ニ愼重調査ヲ要スル
コトノ必要アリト云フコトハ御認メニナツ
テ居ルニ相違ナイ(拍手)其次ニ最モ力ヲ極
ノ、御熱心ニ御說明ニナリマス米穀ノコト
デアリマス、米及籾ノコトデアリマス、假
ニ三種ニ限ル、或ハ僅ノ數ニ限ルトシテ
モ、米及扨ト云フモノニ付テハ此際ドウシ
テモ修正ヲシナケレバナラヌト云フコト
ハ、他ノ反對者諸君ノ御主張ト承知致シマ
シタ、其御上張ノ點ニ付テハ私共モ大ニ御
同感ニ存ズル點モアルノデアリマスルケレ
ドモ、吾々ハ此米及籾ニ付テハ、先刻來既
ニ御話申上ゲタ方モアリマスガ、所謂此米
穀法ノ運用ニ依シテ十分其目的ヲ達スルコ
トガ出來ヤウ、殊ニ米穀法ニ付キマシテ
ハ最初制定致シマシタ時ハ數量ノ調節
ノミニ限ノテ居リマシタケレドモ、昨年諸
君ハ數量ト價格トノ調節ト云フコトヲ以
テ、十分其目的ヲ達スルコトガ出來ルト云
フコトハ、諸君ノ戴イテ居ル先華ガ、此壇
上ニ於テ保證シタデハアリマセヌカ(拍手)
實ヲ申セバ私共甚ダ懸念ニ思シタ、最初
ハ-ソレ故ニ吾々ガ責任者ノ位置ニアッ
テ、此法律ヲ制定シタ時ニハ、數量ト云フ
コトニノミ限ッテ居シタ、併ナガラ諸君自ラ
信ズル所アッテ、價格ノ調節ヲモ此米穀法
ノ運用ニ依シテ出來ルト云フノデ、法律ヲ
御修正ニナッテ居ル(拍手)若シモ其運用ノ
結果ガ諸君ノ思召サレル如キニ至ラナカ〓
ナラバ、法律ガ惡イノデナクテ、運用スル
人ガ惡カッタニ相違ナイ(拍手)殊ニ米穀
法-農民諸君ノ御希望ニナル點ハ米穀
ニ對スル關稅ヲ增スコトニ依ッテ、米ノ價
格ヲ引上ゲルコトガ出來ルト云フ信念ニ付
テ、少シ御考へ過ギガアルヤウニ私共考へ
ル(此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=96
-
097・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 古川君御注意致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=97
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098・田中隆三
○田中隆三君(續) ソレハサウ云フ御2矢
ガ、或ル部分ニ起ルト云フコトハ、無理ノ
ナイコトデアリマス、抑、關稅ト云フコトヽ、
外米ト云フコトハ、國民ノ頭ノ上ニ洵ニ面
白クナイ感ジヲ起スヤウナ因果ヲ持シテ居
ルノデアリマス(此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=98
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099・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=99
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100・田中隆三
○田中隆三君(續) 茲ニ調べ書ヲ持シテ居
リマスガ、此關稅ト云フモノヲ是迄度〓修
正シタコトハゴザイマスルガ、總テ明治四
十四年以來、今日迄九度、外米ノ關稅ヲ引
下ゲ、或ハ廢止シ、撤廢シテ居ルノデアリ
マス、ソレハ明治四十四年以來九度アリマ
ス、所ガ其九度ノ中デ、七度迄ハ關稅ヲ全
部免ジテ居ル、アトノ二度ハ四十錢ト六十
三錢デアリマス、サウ云フ風ニ、一切ノ稅
率ヲ下ゲテ居ル、ソコデ我國ノ食糧關係ニ
於テ、米ノ値段ガ段々ニ上シテ來夕、上ッタ
ガ爲ニ喜ブ人ガアルニ相違ナイ、其喜ビツ
ツアル時ニ、關稅敬廢或ハ關稅ノ減少、斯
ウ云フコトニナリマスルカラ、外米ト云フ
コト、關稅ト云フコトハ、非常ナ因果ヲ持ノ
テ、此米ノ値段ノ騰貴スルト云フコトヲ布
望スル人ニハ、而白クナキ響キヲ與ヘルノ
デアリマス(拍手)併ナガラ靜ニ考ヘテ見ト
スルト云フト、我國ノ食糧ハ先程來長田君
ノ御說モアリマシタガ、全ク我國ニ於ケル
食糧ガ-未穀ガ不足ヲスル、不足スルノ
ヲ補充スル爲ニ這入ッテ來ル、決シテ外米
ガ這人ッテ來テ、日本デ出來ル米ノ出來高
ガ少ナクナルノデハアリマセヌ、六百万石
足リナケレバ六百万石這人ル、千万石足リ
ナイ時ニハ千万石這入ッテ來ル、サウ云フ關
係デ足リナイモノダケガ這入ッテ來ル、這
入ッテ來ルモノハ而モドウナルカト申シマ
スレバ、所謂外國米トシテドウモ日本ノ人
ハ日本ノ米ヲ高クテモ力ノ及プ限リハ喰フ、
此日本米溫帶米ニ執著スルト云フコトハ、
日本民族ノ特性ナノデス、其特性アルガ故
ニ、出來ル限リハ内地米ヲ喰フノデアリマ
ス、併シカノ及バヌ者ハ已ムヲ得ズシテ外
米ヲ喰フ者モゴザイマセウガ、兔モ角日本
デ日本米ノ來ル限リハ、其米ト云フモノハ
皆日本人ガ喰フノデアリマス、食糧ノ足リ
ナイモノハ何處カラカ持,テ來テ補充スル
ノ外ハナイ
〔小泉副議長議長席ヲ退キ粕谷議長復
席
其補充ノ爲ニ這入シテ來ルノデアル、先程
來段々ノ御說ヲ伺ッテ居リマスト、是ハ議
論ノ迸ル所致方ガナイコトデゴザイマスケ
レドモ、朝鮮カラ米ガ來ルノガ困ルトカ、
臺灣カラ米ガ來ルノガ困ルトカ云フガ、來
テ吳レルコトヲ大ニ歡迎シナケレバナラヌ
ト思フ、無ケラネバ吾々ハ餓死ンナケレバ
ナラヌ(拍手)私ハ決シテ諸君ノ御說明ニ付
イテ根本的ニ反對スルト云フ意味デハアリ
マセヌケレドモ、所謂關稅ト云フモノヲ掛
ケレバ、日本ノ米ガ直グ値段デモ上ルヤウ
ニ御宣傳ナサンテ、若シモ假ニ此度米ノ稅
ヲ掛ケテ見マシタ所ガ、ナニマダ一寸モ米
ノ-內地米ノ値段ハサウ上ラナイデハナ
イカト云ッテ、諸君ガ御信用ヲ失フヤウナ
事ガアッテハナラヌト思フ心配カラ、此事
ヲ申上ゲルノデアリマス(拍手)殊ニ此感稅
ノ事ニ付キマシテハ、數字ニ屬スルガ故
ニ、特ニ慎重調査ヲ要スルト云フコトヲ先
程來ヨリ申シマシタ、甚ダ先輩ニ對シテ失
禮敬意ヲ失スルヤウニ當リマスケレド
モ、數字ノ事ヲウンカリ述ベマスト、直グ
後カラ間違ノ責任ヲ背負ハナケレバナラ
又、先程堀切君ガ十四年度ノ實蹟ガ十三年
ノ輸人ヨリ非常ニ曾額シテ居ル、三千〃國
乃至四千万圓モ-此度堀切君等ガ御從出
ニナンタ修正案ニ依ッテ、國家ノ收入ヲ增ス
大ニ手柄トシテ御話アリ、而モ何ノ爲ニ豫
算ノ問題デナイノニ數字ガ澤山出テ來ルコ
トカト思シテ居リマスト、之ニ依ノテ吾々ノ
主張スル地租委譲ノ問題ノ解決ガ出來ル
ト云フヤウナコトデ、死ンダ兒ノ齡ヲ算ヘ
ラレルヤウナコトガゴザイマシタ(拍手)御
氣ノ毒ナガラ十四年度ノ計算ハ明カニ間
違ッテ居ルノデアリマス(拍手)ソレハ十四
年度ノ輪入額ニ於テ二十五億七千万圓ノ數
字ガアリマスケレドモ、其中ニハ三億一千
八百万圓ト云フ其殖エテ居ルモノハ、棉花
ノ爲ニ殖エテ居ルノデアッテ、棉花其物ハ無
稅デアリマス(拍手)輸入總額ハ殖エテ居リ
マスケレドモ、稅額ハ些トモ殖エテ居リマ
セヌ、此數字ノミヲ見テ直グ數モソレニ
從ノテ殖エルト云フコトヲ速斷スルト、只
今申上ゲルヤウナ間違ガ起ル(拍手)デ殊ニ
最モ吾々トシテ注意シナケレバナラヌ所
ハ、此米穀ニ付テ如何ニシテ吾國ノ此食糧
ノ自給自足ヲ圖ルカト云フコトニ付テハ、
大體ノ主義トシテ、長田君ノ熱心ナル御議
論ニハ私モ共鳴スル者デアリマス、併ナガ
ラ其目的ヲ達スル爲ニハ、只今申上ゲマス
ル如キ米穀法モゴザイマセウ、耕地整理法
モゴザイマセウ、或ハ聞墾助成法モゴザイ
マセウ、或ハ用水排水等ノ施設モゴザイマ
セウ、何レ當局トシテハ是等ノコトニ付
キ、殆ド仕事ノ大部分ヲ擧ゲテ其政策ヲ達
成スルニ努メツヽアラレル譯デアル、是ハ
關稅ヲ上ゲレバソレデ以テ此白給自足ノ目
的ヲ達スルモノデアルトハ、長田君モ主張
セラレルノデハナカラウト思フ、其目的ヲ
達スル爲ノ有效方法、而モ其方法ノ中、既
ニ吾々ハ認メテ以テ法律ニシテアリマスル
モノハ多々アルノデアリマスカラ、吾々ハ
力ヲ專ラ之ニ注イデ、其連用ニ依ッテ目的
ヲ達シヤウト云フコトヲ主張スル所以デア
ル(拍手)繰返シテ申上ゲルマデモナク、此
開稅ノ調査委員ト云フモノガ出來ルノデア
リマスカラ、其委員諸君ノ今後ノ御審議ニ
依タナ又或ハ米、籾ノ關稅ヲ引上ゲルコ
トヲ必要トスルニ至ルカモ知レマセヌ拍
手)決シテ之ヲ絕對ニ否認スル意味ハ少シ
モ私共持ノテ居リマセヌ、兔モ角モ總理大臣
ガ御聲明モアリマスル如ク、此委員ノコト
ニ付テハ大ニ重キヲ置イテ、而モ其半數以
上ハ民間ノ經驗アル方ニ御願ヲシテ、ザウ
シテ愼重審議シテ戴イテ而モ其決スル所ニ
ハ最モ重キヲ置クト云フ御聲明モアリマス
ル以上ハ、此方法ニ依ノテ、サウシテ此目
的ヲ達スルト云フコトハ、最モ順當ナル筋
道デアルト私共ハ思フ、私ハ長イコトヲ申
上ゲル考ハゴザイマセヌ、大體ハ只今ノ御
議論ニ依シテ盡キテ居リマス、盡キテ居リ
マスガ、此際最後ニ一言附加ヘテ置キマス
ルコトハ、鐵ニ關スルコトデアリマス、殊
ニ堀切君モ熱心ニ此問題ニ付キ御說明ニナ
リマシテ、大體ノ御趣旨ニ於テハ私共モ同
感デアリマス、併ナガラ此鐵ノコトニ致シ
マシテハ、既ニソレ〓〓御推察モゴザイマ
スル如ク、免モ角(「推察トハ何ダ」ト呼フ
者アリ)熊ト推寧ト中シマシタ、祕密會ヲ
開イテ皆サンガ御相談ニナッタコトデアル、
私ハソレヲ推察ト云フ言葉ヲ以テ言ヒ現ハ
シタノデアリマス、免モ角モ根本義ニ於テ
ハ政府ニ於テモ、吾々ニ於アモ、必ズ此鐵
ノ獨立、我國ノ爲ニ鐵業ノ獨立ヲ圖ラナケ
レバナラヌ、又今日ノ程度ニ於テ凡ンドノ
位ノ程度ノ補助ヲスレバ、獨立ノ目的ヲ達
スルコトガ出來ルカト云フ、大體ノ趣旨ニ
於テハ意見ハ一致シテ居ルノデアリマス、
唯〓此際此暫定的ニ-暫ク稅ハ此儘ト
シテ置イテ、別ニ補助ノ方法ニ依シテ其道
ヲ盡シタイ、斯ウ云フコトデアリマス、而
シテ其補助ノ金額ハ所謂銑鐵一噸七圓ト云
フ價格ニ當ラヌト云フコトノ御非難モアリ
マシタガ、此補助法ハ更ニ此議會ニ提出セ
ラレマシテ、諸君ノ御審議ニ待ツノデアリ
マスルカラ、若モ其補助方法ノ率ガ少イト
カ、或ハ補助ノ方法ニ手落ガアルト云フコ
トデアリマス、十分ニ吾々ノ議員トシテノ
力ヲ其議案ノ上ニ伸スベキ機會ガアリマス
ルカラ、此現ハレザル法案ニ付テ、彼此レノ
議論ヲ鬪ハスコトハ無用ノコトト存ジマ
ス、私ノ意見ハ之ヲ以テ終リト致シマス
(拍手)
〔堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=100
-
101・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君 先程修正ノ意味ヲ述べマ
シタニ付テ
(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=101
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102・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス-
堀切君ノ發言ハ趣旨辯明ノ補足デアリマ
ス、是ハ先例モアルノデアリマスカラ、議
長ハ之ヲ許シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=102
-
103・堀切善兵衞
○堀切善兵衛君(續) 只今私ノ敬愛スル田
中君ヨリ、私ノ申上ゲタ數字ニ付テ、間違
ヒガアルト云フ御話デアリマス、私ハ大藏
省ヨリ直接ニ取リマシタ此數字ニ付テ申上
ゲタノデアリマス、之ニ依リマスルト云フ
ト、大正十三年度輸入總額ハ二十四億五千
万圓、大正十四年度輸入總額ハ二十五億七
千万圓、而シテ有稅品ハ十三年度ハ八億二
千七白万圓、十四年度ハ八億六千二百万圓
ニ增加致シテ居ルノデアリマス、獨リ輸入
總額ニ於テノミデハナイノデアル、有稅品
ニ於テ-有稅品ニ於テモ無稅品ニ於テモ
明ニ十四年度ハ增加致シテ居ル、田中君ハ
白分ガ御間違ヒニナンテ居ッテ、人ノ事ヲ間
違ヒガアルト云フコトハ飛ンデモナイ無禮
ナ話デアル、モウ一度顏デモ御洗ヒニナツ
テカラ御論ジニナル方ガ宜シイト云フコト
ヲ申シテ置キマス
〔星島二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=103
-
104・星島二郎
○星島二郞君 諸君今回ノ關稅ノ改正案
ハ、根本ニ於キマシテ各派ノ思想ハ、卽チ
大體ニ於キマシテハ一致致シテ居ルノデア
リマス、往年ノ英國ノ議會ニ於テアリシ如
ク、若シ是ガ自由貿易、保護貿易ト、斯ウ
云フ風ナ議論ガ岐レテ居ルナラバ免ニ角、
總テ保護スベシト云フ大前提ノ下ニ各派ノ
審議ガ行ハレタノデアリマス、唯〓其程度
如何ニ依リマシテ、意見ガ岐レタノデアリ
マシタ、唯。一ツ農產物ニ關シマシテハ、
多少意見ガ岐レタノデアリマス、私ハ四十
餘日ノ間、是ガ委員會ニ於キマシテ審議セ
ラレ、十日ノ間小委員會ガ之ヲ鍊シタ、而モ
本黨ノ方達ハ尙ホ成案ヲ得ルコトガ出來ナ
イ、十分ニ審議ヲ盡スコトガ出來ナイ、斯
ウ云フ理由ノ下ニ之ヲ閉會後ノ常設委員會
ニ讓ラルヽト云フ事柄ハ、取リモ直サズ議
院自カラ議院ノ權能ヲ輕ジタモノデアルト
謂フテ宜シイノデアリマス(拍手)若シ眞ニ
議院ノ權能ヲ重ンズルナラバ、宜シク議院
法第二十五條ノ繼續委員ニ之ヲ掛ケテ審議
スベシト主張サレルノガ當然ト思フノデア
リマス(拍手)尙ホ私ハ此多クノ改正ヲ要ス
ベキ中カラ、本黨ノ修正案ハタッタ三點デ
アル、而モ此一ツハ小麥粉デアリマスカラ、
是ハ小麥ニ對スル改正案デアリマスカラ、
本黨ノ改正ヲ要スル點ハ二點ト謂シテ宜シ
イノデゴザイマス、本黨ノ人達ガ四十日ノ
問、而シテ二十數回ノ各種ノ委員會ヲ開カ
レマシテ審議サレ、タッタ二點シカ本當ノ
意味ニ於テ修正出來ナイ、後ノ多クノモノ
ハ常設委員會ニ讓ラレルト云フ意味ナラ
バ、諸君此議案ガ今日ヨリ貴族院ニ囘付サ
レマシテ、最早會期ハ後十五日デアリマス、
諸君ガ四十日間〓究シテ尙ホ是ガイカナイ
ナラバ、如何ニ貴族院ノ人ガ賢明デアリマ
シテモ、十五日間デ審議出來マスカ、アナ
タ方ハ如何ニ貴族院ノ方ノ頭ヲ尊敬サレマ
シテモ、私ハサウ云フ意味ニ於キマシテ、
若シ眞ニ斯ル事ヲ申サルヽナラバ、此論理
ニ至ラザルヲ得ナイノデアリマス、私ハ尙
ホ本黨ノ修正ノ御意見ノ中ニ、非常ニ論理
ノ間違ノテ居ル點ヲ指摘シマスナラバ、若
シ二點ダケヲ修正サレマシテ、後ハ常設委
員會ニ讓ラレルト云フ御意思ナラバ、少ク
トモ現行法ノ儘ニシテ一一點ダケニ觸レルト
云フノガ論理デアリマセヌカ、諸君若シ二
點ダケニ觸レテアトノ希望條件ハ尙ホ審査
ヲ要スルト云フ御趣旨ナラバ、其希望條件
ヲ附セラレタル品目ニ付テハ、少クトモ現
行法デ宜イト云フ論理ニナラナケレバナラ
ヌノデアリマス(拍手)實ニ斯ル事ハ若シ諸
君ガ委員會ノ速記錄ヲ御覽ニナリマスレ
バ、十日間ニ於ケル所ノ此實ニ暗々ナル空
氣ノ爲ニ、單ニ本黨ハ常設委員會ニ名ヲ借
リテ、實際ハ解散ヲ恐レテ居ル(拍手)私ハ
日本ノ議會ガ最早空論ヲ離レテ、此ヤウナ
實際的ナ關稅問題デ以テ解散ガアッテ欲シ
イト思フノデアリマス(拍手)ソレハ實ニ議
會ノ一進步ト申サナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、私ハ本黨ノ修正案ニ對シマシ
テノ批評ハ此程度ニ致シマシテ、我ガ政友
會ノ修正案ニ對シマシテ、最早時間モ切迫
シテ居リマスシ、論旨ハ盡キテ居リマスカ
ラ、極メテ簡單ニ-若シ必要デアリマス
レバ一時間位ハ喋舌ッテモ宜シイノデアリ
やっ、政友會ノ修正案ノ根本ノ精神ハ、私
共國際聯盟ノ根本趣旨デアリマス所ノ、產
業ノ基本原料ハ無稅トスベシ、而シテ速ニ
所謂〓税戰爭ヨリ離レテ、早ク各國ノ關稅
協定ニ依ル精神ニ行カナクテハナラナイ、
吾々ノ目的ハ一時保護ヲスルケレドモ、其
保護ハ軈テ一二年ナリマスレバ、之ヲ自由
貿易ニスルト云フ精神ニ外ナラナイノデア
リマス(拍手)根本ノ精神ハ卽チ理想ハ自由
デナケレバナラヌト思フノデアリマス、故
ニ極メテ簡單ニ私共ノ修正ヲスル動機、其
根本ノ精神ヲ茲ニ條項的ニ申上ゲマシテ、
私ノ總テノ演說ニ代ヘタイト思フノデアリ
ママ、卽チ第一ハ產業立國ノ根本見地ヨリ
各種產業ノ振興ヲ促シ、生產ノ增大ニ依リ
物價ノ調節ヲ圖ルコト、國際貸借ノ改善ヲ
期スル爲、生產家ノ工業ヲ獎勵シテ、輸入
ヲ防遏シ、進ンデ輸出ノ增進ヲ圖ルコト、
第三ハ農業生產ノ增收ヲ圖リ、以テ食糧ノ
自給自足ヲ期シ、併セテ農村ノ安住及振興
ヲ圖ルコト、此中デ一言皆樣ニ簡單ニ、私
ハ時間ヲ省ク爲ニ極メテ條項的ニ申スノデ
アリマスガ、唯こ一事農村ノ安住ト云フ文
字ニ付キマシテノミ聊カ說明ヲ試ミタイノ
デアリマス、今回ノ我ガ黨修正案ノ根本ニ
ハ思想的背景ガアルコトヲ忘レテハナラ
ナイ、諸君、私共ハ先刻モ申シマシタ如ク、
目指ス目的卽チ方向ハ自由デアル、自由貿
易デアル、ケレドモ其過渡期ニ於キマシテ
保護シナケレバナラナイ、若シ實例ヲ擧ゲ
テ申シマスレバ、丁度日本ノ紡績業ノヤウ
ニ、完全ノ域ニ達スレバ之ヲ無稅ニシテ解
放スル、自由ニスル、總テノ產業ガ此ヤウ
ニアリタイト云フノガ吾々ノ念願デアリマ
ス(拍手)ケレドモ單リ辰產物ニ對シマシテ
ハ、是ト觀念ヲ別ニ致シテ居ルノデアリマ
ス、先程モ長田君ガ詳シク述ペラレマシタ
カラ、多ク私ハ略シマスケレドモ現在ノ日
本ノ國家、吾々ハ軍縮ヲ唱ヘ、所謂誤ッタ
ル富國强兵策ニ囚ハレズシテ、新ニ日本ノ
立國策ヲ考ヘナケレバナラナイ、ソレニ付
キマシテ最近ノ最モ歐洲大戰後、殊ニ國際
聯盟ノ理想ト致シマシテ吾々ハ考ヘナケレ
バナラナイコトハ、御互ガ單ニ算盤本位、
唯〓國ガ富メバ宜イ、國ガ强ケレバ宜イト
云フヤウナ思想ヲ離レテ、眞ニ各地方ニ分
布シタル生活ヲ致シマシテ、而シテ國ノ安
定ヲ期スルト云フコトニナラナケレバナラ
ナイト私ハ思フ(拍手)私ハ佛蘭西ノ田舍ガ
實ニ能ク農業ニ算盤ヲ離レテ熱心デアル、
或ハ和蘭ヤ丁抹ノ農村ガ實ニ能ク耕サレ、
農民ガ安住シテ居ル所ノ狀態、ソコニ人生
ノ樂ミガアル此根本ヲ以テ日本ノ現在ノ農
村ヲ見マスルト、私ハ一時段々畑、-山國
ヲ見マシテ斯ンナ所ニ生活スルノハ馬鹿馬
鹿シイ、宜シク「ブラジル」ニ行クベシ、滿
洲ニ行クベシト云フ考ヲ持ッタノデアリマ
スケレドモ、是ハ日本ノ國ヲ眞ニ安定ナラ
シムルニハ間違ッテ居ル、吾々ハ年ニ七十
万人殖エル人口、全部「ブラジル」ニ行クコ
トハ出來ナイ、全部滿洲ニ行クコトハ出來
ナイ、御互ガ二十年三十年掛ッテモ、僅カ
ノ人間シカ一年分ノ人口ノ殖エル增率サヘ
海外ニ植民スルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、ンコデドウシテモ算盤玉デ行ケバ合ハ
ナイケレドモ、此段々畑ヲ十分耕シテー島
國ニ十分ノ農村ヲ改良シテ、耕シテサウシ
テ地方ニ分布シタル生活ヲシナケレバ、
日本ノ國ハ安定デナイト云フ所ニ氣ガ
著イタノデアリマス(拍手)サウ云フ精神ガ
近時各國ノ有識者ニ分ッテ參リマシテ、私ハ
今後日本ノ立國策ノ中ニ、是ハ諸君ガ今日
眞ニ理解シテ居ナイケレドモ、所謂農村振
興ト云フ言葉以外ニ、是ハ眞ニ日本ノ將來
ノ大國策デアルト思フノデアリマス(拍手)
卽チ其思想ハ明治維新以來ノ餘リニ偏シタ
ル中央集權ヲ叩キ壞ハシ、而シテ地方分布
ノ安住生活、是ガ取モ直サズ眞ノ農業立國、
眞ノ農村立國ト自分ハ信ズルノデアリマ
ス、此原理ヨリ推シマスレバ、眞ノ農產物
ノ保護トナリ、或ハ地租ノ委譲論トナリ、
或ハ地方分權論トナル、徹底的ニ中シマス
レバ、維新後ニ於キマシテ家族ガ東京ニ集
中シタ生活ヲシテ居ル、斯ウ云フモノハ地
方分布シテ、再ビ舊各藩ニ還リマシテ、農事
ノ改良ヲヤル、サウ云フ所マデ實際的ニ延
ビナケレバ、徹底シナイト思フノデアリマ
ス(拍手)サウ云フ思想カラ行キマスレバ、
私ハ今迄ノ所謂自由貿易主義、所謂算盤玉
本位ノ精神カラ考ヘマシテ、自分自身ニモ
玆ニ非常ナル思想的ノ變化ヲ持チ來シタノ
デアリマス、私ハ農產物ノ保護、農村ノ振
興ト云フノニ新シイ意味、新シイ思想、根
本ノ〓念ヲ加ヘテ、之ニ賛成シタイト思フ
ノデアリマス(拍手)其他我ガ修正案ニ付キ
マシテハ、殊ニ意ヲ用キマシタノハ、工業
ノ基本原料ヲ無稅トスル、是ハ取モ直サズ
國際聯盟協會ノ主張デアリマス、而シテ半
製品ニ課稅ヲシテ、一時國內ノ勞働ヲ盛ン
ナラシメタコト、殊ニ私ガ特ニ注意シタイ
ト思ヒマスルノハ、社會政策ニ意ヲ用ヰル
1、現內閣ハ殊ニ多クノ言葉ヲ用キテ居ラ
ルヽノデアリマス、然ルニ拘ラズ、此關稅
改正案ニ當リマシテハ聲ヲ大キク爲サッテ
居ル割合ニ、其點ガ極メテ少イノデアリマ
ス(拍手)現ニ毛織物ノ關稅ノ增率ニ付キマ
シテモ、工業ノ獨立ヲ圖ル爲ニ、私共增率
ハ認メテ居リマスケレドモ、其增率ノ仕方
ガ高級品ニ薄クシテ、却テ下級品ニ厚イト
云フヤウナコトハ、取モ直サズ、社會政策
ノ見地ニ反スルト思フノデアリマス、我ガ
修正案ハ此點ニ付キマシテ、殊更ニ注意ヲ
致シタノデアリマス、其他軍需工業、或
奢侈品、舶來品、嗜好ノ弊習打破、其他生
產消費ノ調和ヲ考慮シテ、社會政策ノ見地
ヨリ一般生活必需品ニ對シマシテハ、殊更
注意ヲ致シタト云フコトガ、私共修正案ニ
對スル基本ノ〓念デアリマス、私ハ十分ノ
說明ヲ加ヘナイデ、自分ノ討論ノ徹底セザ
ルコトヲ甚ダ遺憾ト思ヒマスケレドモ、議
會ノ空氣ニ鑑ミテ、此程度ヲ以テ討論ヲ打
切リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=104
-
105・作間耕逸
○作間耕逸君 討論終結ノ動議ヲ提出致シ
マス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=105
-
106・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ討論終結ノ
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=106
-
107・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ討論終局ニ決シマシタ、是ヨリ採
決ニ入リマスガ、採決ノ順序ニ付テ一言致
シテ置キマス、山本条太郎君外九名御提出
ノ修正案ノ中ニ於テ、委員長報告ノ修正ト共
通ノ點ガリマス、其共通ノ點ハ委員長ノ報
告ト共ニ採決ヲ致スコトニ致シマス、先ヅ共
通ノ點ヲ除キタル山本君ノ修正案ニ付テ採
決ヲ致シマス、次ニ委員長ノ報告ト山本君
外九名御提出ノ修正ト共通ノ部分ヲ採決致
シマス、最後ニ委員長報告ノ修正ノ箇所ヲ
除キマシタル其他ノ部分ヲ採決致スコトニ
致シマス、先ヅ山本君外·九名提出ノ修正案
中、委員長報告ト共通ノ點、卽チ別表ノ中
ノ十六、二十二、五十九、此三點ヲ除キマ
シタル他ノ部分ニ付テ採決ヲ致シマス、之
ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=107
-
108・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立者少數デアリマ
ス
〔「多數」「少數」「異議アリ」ト呼フ者ア
リ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=108
-
109・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ宣告ニ對シテ
異議ガアリマス異議ガアリマスニ依シ
テ記名投票ヲ行ヒマス、山本君外九名提出
ノ修正案、卽ヲ共通點ヲ除キタルモノデア
リマスガ、之ニ贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ
諸君ハ靑票デアリマス-閉鎖-氏名點
呼ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕
〔發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=109
-
110・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜甫ニ願ヒマス-
投票ノ濟ミマシタ諸君ハ御著席ヲ願ヒマス
投票漏ハアリマセヌカ(拍手)投票漏ナシト
認メマス、投票函閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=110
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111・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 投票ノ結果ヲ書記官
長ヨリ報告致サセマス
〔中村書記官長朗讀〕
投票總數二百九十九
可トスル者白票百十
否トスル者靑票百八十九発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=111
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112・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ結果ニ依リマ
シテ、委員長報告ト共通ノ點ヲ除キタル山
本君外九名提出ノ修正案ハ否決セラレマシ
タ(拍手)
〔參照〕
委員長報告ト共通ノ點ヲ除キタル山本君
外九名提出ノ修正案ヲ否トスル議員ノ氏
名左ノ如シ
石塚三郞君石黑大次郞君
飯塚春太郎君井本常作君
井上利八君一柳仲次郞君
原脩次郞君濱口雄幸君
西英太郎君本田恒之君
戶井嘉作君戶澤民十郞君
富田幸次郞君中馬興丸君
大津淳一郞君大島要三君
大里廣次郞君小野重行君
岡本實太郞君奧村千藏君
片岡直溫君川崎克君
神谷彌平君神田正雄君
神部爲藏君加藤政之助君
加藤鯛一君加藤六藏君
加藤十四郞君河野曉君
河波荒次郞君金澤安之助君
金田平兵衞君横山勝太郞君
橫山一格君吉原義雄君
吉田磯吉君高木益太郞君
高木正年君高橋元四郞君
髙田耘平君賴母木桂吉君
武內作平君武富濟君
田中武雄君建部遯吾君
谷口宇右衞門君谷口源十郞君
俵孫一君中原德太郞君
中村貞吉君中野寅吉君
中野猪之助君水井柳太郞君
村松龜一郞君紫安新九郞君
室木彌次郞君內ケ崎作三郞君
野村嘉六君黑田重兵衞君
工藤鐵男君八並武治君
山宮藤吉君山田又司君
山田助作君山田道兄君
山口嘉七君山本勝次君
山本厚三君山枡儀重君
松井郡治君松本忠雄君
町田忠治君古屋慶隆君
深井功君降旗元太郎君
藤澤幾之輔君藤井敬愼君
福田五郞君小島證作君
小寺謙吉君小山松壽君
小池仁郞君木檜三四郞君
近藤重三郞君紺野九右衞門君
寺島權藏君手代木隆吉君
淺賀長兵衞君淺川浩君
阿由葉勝作君靑木知四郞君
荒川五郞君安達謙藏君
作間耕逸君佐藤球三郞君
齋藤隆夫君齋藤太兵衛君
齋藤仁太郎君齋藤金吾君
柵瀨軍之佐君木村小左衙門君
由谷義治君三木武吉君
宮崎松次郞君箕浦勝人君
斯波貞吉君〓水留三郞君
信太儀右衞門君鹽田團平君
重松重治君廣瀨德藏君
平川松太郞君平野光雄君
平井光三郞君樋口秀雄君
森田茂君粟山博君
關矢孫一君關俊吉君
鈴置倉次郞君鈴木富士彌君
杉浦武雄君菅原英伍君
菅村太事君井坂豐光君
岩切重雄君禱苗代君
原田佐之治君原田十衞君
本多貞次郞君星康平君
堀喜幸君床次竹二郎君
東郷實君陣軍吉君
折原巳一郞君小島善作君
小川〓太郞君小野寅吉君
大麻唯男君奥野小四郞君
川原茂輔君加藤鐐五郞君
柏田忠一君神村吉郞君
高鳥順作君丹下茂十郞君
田中隆三君田口文次君
谷原公君津崎尙武君
中林友信君中村啓次郞君
長峰與一君植場平君
則元由庸君熊谷五右衞門君
藏園三四郞君八木逸郞君
山谷德治郞君前田房之助君
前田兼寶君松田源治君
丸山浪彌君福井甚三君
麓純義君小橋一太君
兄玉で良君寺田市正君
櫻内幸雄君佐藤重遠君
宣保成晴君三輪市太郞君
島幹之助君志波安一郞君
志村〓右衛門君〓水市太郞君
〓水長〓君平田民之助君
森田政義君森肇吉
千葉三郞君鷲野米太郞君
河崎助太郞君森田金藏君
堀田義次郞君太宰孫九君
高島兵吉君
委員長報告ト共通ノ點ヲ除キタル山本君
外九名提出ノ修正案ヲ可トスル議員ノ氏
名左ノ如シ
板野友造君岩崎勳君
今里準太郞君今井健彥君
石井三郞君石坂豐一君
石原正太郞君井上敬之助君
井上孝哉君井上虎治君
井口延次郎君秦豐助君
濱口吉兵衡君濱田精藏君
八田宗吉君鳩山一郞君
西澤定吉君西方利馬君
堀切善兵衞君星島二郞君
七井權大君大竹謙治君
大口喜六君小川平吉君
岡田伊太郞君若尾璋八君
若宮貞夫君渡邊伍君
渡邊祐策君加藤知正君
加藤久米四郞君簾忠造君
河上哲太君川口義久君
吉津度君吉田眞策君
吉植庄一郞君竹原樸一君
高井商二君高木音藏君
高草美代藏君高山長幸君
中島守利君中村巍君
中村〓造君內田信也君
內野辰次郞君植原悅二郞君
上埜安太郞君野田俊作君
來栖七郞君熊谷巖君
熊谷直太君倉元要一君
矢野鉉吉君山本芳治君
山本愼平君山本条太郞君
山口義一君山口恒太郞君
山下谷次君山內範造君
山崎達之輔君前田米藏君
松本眞平君松岡俊三君
松山常次郞君松實喜代太君
牧野良三君藤井忠兵衞君
二木洵君古川〓君
木暮武太夫君小久保喜七君
小橋藻三衞君古林新治君
神崎動君近藤達兒君
安藤正純君安保庸三君
靑木精一君靑山憲三君
秋田寅之介君秋田〓君
赤間嘉之吉君有馬賴寧君
東武君齋藤珪次君
齋藤藤四郞君佐々木春作君
佐々木長治君坂井大輔君
坂梨哲君木戶豊吉君
宮崎三之助君三土忠造君
篠原和市君志賀和多利君
嶋居哲君島本信二君
廣瀨爲久君廣岡宇一郞君
森島昶君森恪君
望月圭介君瀨沼伊兵衞君
砂田重政君菅原傳君
隅田豐吉君多木久米次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=112
-
113・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ニ委員長報告ノ修
正ト山本君外九名ノ提出ノ修正ト其共通ノ
部分、卽チ關稅定率法中改正法律案別表ノ
中ニ於キマシテ、十六ノ小麥、二十二ノ穀
粉及澱粉類ノ一、小麥粉、五十九ノ鳥卵、
(生鮮ナルモノ)此三點ニ付キマシテ共通ノ
修正ノ部分デアリマス、此修正ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=113
-
114・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數デアリマス
(拍手起ル)仍テ委員長報告ノ修正ト、山本
君外九名提出ノ修正案ト、其共通ノ部分ハ
委員長報告ノ通リ修正可決サレマシタ(拍
手)次ニハ委員長報告ノ修正ノ箇所ヲ除キ
マシタル其他ノ部分ニ付キマシテハ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=114
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115・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ其通リ決シマシタ(拍手)是ニテ本
案ノ第二語會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=115
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116・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=116
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117・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=117
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118・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ本案ノ第二一會會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
關稅定率法中改正法律案第三語會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=118
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119・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可
決確定致シマシタ(拍手)本日ハ既ニ十一時
ニ近ク相成リマシタカラシテ(「ノウ〓〓」
拍手)是ニテ延會致シマス、次囘ノ日程ハ
追テ公報ヲ以テ御通知致シマス
午後十時三十六分散會
衆議院議事速記錄第二十六號中正誤
頁段行誤正
六八四三三八都市冬期
同同四〇六大市關係六大都市
ノ
同同四.公益公營発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X02719260310&spkNum=119
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