第51回帝国議会　衆議院　本会議　第30号　大正15年3月15日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  大正十五年三月十五日（月曜日）午後一時二十四分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第二十九號
  　　大正十五年三月十五日
  　　　午後一時開議
  　第一　出版物法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　土地賃貸價格調査法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　海軍軍備制限に關する條約の實施に伴ふ損害の補償に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　暴力行爲等處罰に關する法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第九　獸醫師法案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十一　民事訴訟費用法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　第一讀會
  　第十二　民事訴訟用印紙法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　第一讀會
  　第十三　商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　第一讀會
  　第十四　非訟事件手續法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　第一讀會
  　第十五　人事訴訟手續法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　第一讀會
  　第十六　競賣法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十七　民法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十八　破産法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　　　第一讀會
  　第十九　明治三十二年法律第五十號中改正法律案（外國人の署名捺印及無資力證明に關する件）（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第二十　刑事訴訟法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　　　　　　　　第一讀會
  　第二十一　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第二十二　大正十三年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　大正十三年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　大正十四年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　大正十四年度豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　大正十四年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　大正十四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　臨時軍事費特別會計豫備費支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十二　自大正六年二月二十六日至大正九年六月二十五日臨時軍事費特別會計豫備費外に於て豫算超過支出の件（承諾を求むる件）
  　第二十三　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第二十四　對支文化事業特別會計法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十五　教育改善及農村振興基金特別會計法中改正法律案（政府提出）　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十六　明治三十八年法律第十七號中改正法律案（專賣局据置運轉資本補足に關する件）（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十七　議院法中改正法律案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十八　東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十九　商事調停法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十　大正十二年勅令第四百五號廢止法律案（暴利取締令廢止の件）（政府提出、貴族院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十一　大正十四年法律第三十五號中改正法律案（日本銀行の手形割引に因る損失の補償に關する件）（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十二　輸出生絲檢査法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十三　郵便年金法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十四　郵便年金特別會計法案（政府提出）　　　　　　　　　　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十五　舊慣に依り永小作權者か地租額負擔を約したる田畑の地租免除に關する法律案（大石大君提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十六　地租條例中改正法律案（床次竹二郎君外二十三名提出）　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十七　所得税法中改正法律案（床次竹二郎君外二十三名提出）　　　　　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十八　大正九年法律第十二號中改正法律案（所得税法の施行に關する件）（床次竹二郎君外二十三名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三十九　明治四十二年法律第七號廢止法律案（國債の利子所得税免除に關する件）（床次竹二郎君外二十三名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=0

  ---

• 001・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　諸般ノ報告ヲセ
  シメマス
  〔書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  製鐵所特別會計法案
  大正十三年法律第十號中改正法律案〓 〓〓
  等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫算ノ施
  行ニ關スル件)
  (以上三月十五日提出)
  一今十五日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
  案左ノ如シ
  產業組合法中改正法律案
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  兵庫縣警察費國庫下渡金增額ニ關スル建
  議案
  提出者
  砂田重政君若宮貞夫君
  土井權大君廣岡宇一郞君
  原惣兵衞君井上虎治君
  藤井忠兵衞君小寺謙吉君
  森田金藏君折原巳一郞君
  多木久米次郞君
  (以上三月十三日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  大東文化協會ニ關スル質問主意書
  提出者山枡儀重君
  (以上三月十五日提出)
  〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一本月十三日民事訴訟法中改正法律案外一
  件委員岩崎幸治郞君辭任ニ付其ノ補闕ト
  シテ砂田重政君ヲ、議員梅田寬一君ノ行
  動ニ關スル調査ノ件委員工藤鐵男君辭任
  ニ付其ノ補闕トシデ田中万逸君ヲ孰レモ
  議長ニ於テ選定セリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=1

  ---

• 002・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　是ヨリ會議ヲ開
  キマス、諮問事項ガアリマス、第九部選出
  豫算委員秋田寅之介君常任委員辭任ノ申出
  ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=2

  ---

• 003・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ガナケレ
  バ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選
  舉ヲ行ヒ、屆出アランコトヲ望ミマス、尙
  ホ藤澤萬九郞君病氣ニ付、三月十二日ヨリ三
  月二十一日マデ、田口文次君事故ニ付、三
  月十五日ヨリ三月二十四日マデ請暇ノ申出
  ガアリマシタ、許可スルニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=3

  ---

• 004・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ガナケレ
  バ許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=4

  ---

• 005・作間耕逸

  ○作間耕逸君　議事日程變更ニ關スル緊急
  動議ヲ提出致シマス、卽チ此際日程第二十
  四乃至第三十四ノ十一案ヲ特ニ繰上ゲテ、
  逐次議題トナシ、各〓其第一讀會ノ續ヲ開
  キ、尙ホ該委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ
  進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=5

  ---

• 006・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=6

  ---

• 007・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程ハ變更サレマシタ、日程
  第二十四、對支文化事業特別會計法中改正
  法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
  ノ報告ヲ求メマス、委員長長峰與一君
  第二十四對支文化事業特別會計法中
  改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一對支文化事業特別會計法中改正法律案
  (政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月二日
  對支文化事業特別會計
  法中改正法律案委員長
  長峰與
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔長峰與一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=7

  ---

• 008・長峰與一

  ○長峰與一君　對支文化事業特別會計法中
  改正法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結米ヲ御報
  告申上ゲマス、改正法律案ノ要旨ハ、對支
  文化事業ノ進捗ニ伴ヒマシテ、從來ノ歲出
  二百五十万圓ヲ以テシテハ、更ニ緊要ナル
  施設ニ對シテ其要求ニ應ズル能ハザルノ憾
  ミアルヲ以テ、更ニ五十万圓ヲ增額シテ以
  テ對支事業ノ向上發展ヲ期セントスルノデ
  アリマス、尙ホ本特別會計ノ資金ハ大藏省
  預金部ニ預入ノミニ限ラレテ居ッタノデア
  リマスガ、該資金ヲ以テ國債ヲ保有スルノ
  途ヲ開キマシテ以テ健全ニ資金ノ確立ヲ圖
  リ、尙ホ所要額支出ヲ安全ナラシメルト云
  フノデアリマス、更ニ本事業ノ性質ニ考へ
  マシテ、前年度ノ豫算殘額ハ遞次次年度ニ
  繰越シ得ル途ヲ開キマシテ、事業ノ性質上
  遂行ニ支障ナカラシメントスルノデアリマ
  ス、委員會ニ於キマシテハ御承知ノ通リ本
  事業ハ東亞ノ共存共榮、日支親善ノ基調ト
  ナルベキ所ノ事業デアリマズ故ニ、各委員
  ハ政治ヲ離レ外交ヲ離レテ、純眞ナル態度
  ヲ以テ愼重ニ審議サレタノデアリマス、而
  モ各委員ハ皆何レモ支那ノ事情ニ精通セラ
  レタル人デアリマシテ、特ニ神田正雄君、
  植原悅二郞君、宮島幹之助君、今里準太郞
  君ノ如キ委員ノ所論ハ、實ニ傾聽ニ値スベ
  キモノガアッタノデアリマス、是等ハ何卒
  會議錄ニ依ッテ御水知アランコトヲ望ミマ
  ス、以上ヲ以テ御報告ト致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=8

  ---

• 009・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス、第二讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=9

  ---

• 010・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=10

  ---

• 011・作間耕逸

  ○作間料逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決ヒラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=11

  ---

• 012・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=12

  ---

• 013・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作回君ノ動議ニ
  御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  對支文化事業特別會計法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=13

  ---

• 014・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　別ニ御發議ガナ
  イヤウデアリマス、仍テ第三讀會ヲ省略シ委
  員長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日
  程第二十五、〓育改善及農村振興基金特別
  會計法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、
  委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長千葉宮次
  郞君
  第二十五〓育改善及農村振興基金特
  別會計法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一〓育改善及農村振興基金特別會計法中
  改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月三日
  〓育改善及農村振興基全特別
  會計法中改正法律案委員理事
  千葉宮次郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔千葉宮次郞君。登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=14

  ---

• 015・千葉宮次郎

  ○千葉宮次郞君　本案ハ至ッテ簡單ナ案デ
  アリマスルガ、唯、農村振興上ニ重大ナル
  關係ガアル故ヲ以チマシテ、委員會ニ於テ
  ハ愼重審議ヲ盡シマシテ特ニ委員長田陣
  君、其他ト當局トノ間ニ質疑應答ヲ重ネマシ
  タ結果、政府提案ノ通リ滿場一致ヲ以テ可決
  致シマシタ次第デゴザイマス、此段委員會
  ノ經過及結果ヲ御報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=15

  ---

• 016・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　前會ノ續ニ付キ
  質疑ノ通告ガアリマス-小島善作君
  〔小島善作君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=16

  ---

• 017・小島善作

  ○小島善作君　私ハ本案ノ上程ニ際シマシ
  テ、簡單ナル質問ヲ當局ニ致シタイノデア
  リマス、農村振興ノ費用ニ付テハ昨年ヨリ
  モ本年度ハ事業費ニ於キマシテ、所謂獎勵
  費ニ於キマシテ、五十何万圓ノ增額ヲ見タ
  ト云フコトハ洵ニ農村トシテ喜バシキ事
  デアリマスルガ、但シ昨年政府當局ノ申サ
  ルヽ所ニ依リマスルト云フト、農村振興費
  ニ充ツル費目ハ極ク簡易ニシテ、短年月ノ
  間ニ總テ完成スベキモノヲ以テ先ニスルト
  云フコトヲ仰シヤラレテ居ルノデアリマス
  ガ、ソレハ御尤ナ事ト私共モ信ジマスル
  ガ、確ニ本年ハ昨年ノ九目ニ三項目ヲ加ヘ
  テ十二目ニナリマシタガ、マダソレ以土ニ
  極ク簡單ニシテ、極ク急ヲ救フベキ最モ焦
  眉ノモノガアルト私ハ信ズルノデアリマ
  ス、ソレ故ニ其急ヲ救フベキ最モ早急ニス
  ベキ事枘二、三ニ付キ御意見ヲ伺ヒタイト
  思フノデアリマス、ソレハ農具考案〓究所
  ノ設置デアリマス、此農具考案ニ付キマシ
  テハ勿論各府縣ノ最事試驗場ニ於テ、委
  託ヲシテ〓究ヲセラレテ居ルヤウデアリマ
  スルガ、農事試驗場ノ遣方ハ別ニ農事試驗
  場ニ屬スル所ノ本業ガアル故ニ唯、是ガ
  名前ニ過ギナイノデ、新シキ道具ヲ持ッテ
  來テ、サウシテ試驗場ニ陳列シテ置クト云
  フニ過ギナイノデアリマス、甚ダ實際ヲ見
  マスルト、少シモ試驗場アタリガ此農具〓
  究ト云フコトニ付テ、身ヲ入レテ居ラナイ
  ト云フコトヲ見テ甚ダ寒心ニ堪ヘナイノデ
  ス、固ヨリ此農具ハ各地方ニ依リマシテ、
  事情ヲ異ニシテ居ル關係カラ一樣ニハ參リ
  マセヌガ、但シ一樣ニ參ラナイ故ニ、各府
  縣ニ於テドウシテモ細カニ〓究ヲシテ、其
  地方々々ニ應ズルヤウナ適應ノ農具ヲ考案
  シ、〓究ヲスルト云フコトハ、ドウシテモ
  ヤラナケレバナラヌノデアリマス、幾ラ今
  日ノ文明ノ利器ヲ或ハ獎勵シ、或ハ普及
  セント致シテモ、其土地柄ニ適當ナルモノ
  デナカッタナラバ、幾ラ普及シヤウト思テ
  モ其實ハ擧ラナイノデアリマス、今日一般
  ノ地方ヲ見マスト云フト、或ハ發動機ニ致
  シマシテモ、或ハ其他ノ文明利器ニ於キマ
  シテモ、高イ金ヲ農家ニ出シテ買ハセテ、
  サウシテ其普及奬勵ヲシテ居ルヤウデアル
  ガ、其事實ハ少シモ擧ッテ居ナイト云フヤ
  ウナコトガ多イノデアリマス、徒ニ農家ハ
  高イ金ヲ出シテ、サウシテ高イ機械ヲ抱イ
  テ泣イテ居ルヤウナモノデアリマス、卽チ
  是ハ先ヅ下和ガ壁ヲ抱イテ泣イテ居ルヤウ
  ナモノデアルト私ハ思フノデアリマス、如
  何ニ共同施設ノ方法ヲ講ジマシテモ、農具
  ノ適當ナルモノヲ農家ニ授ケルト云フ方法
  ヲ講ジナケレバ、ドウシテモ農業ノ促進ト
  云フコトハ出來得ナイ、此意味ニ於キマシ
  テ、農具ノ考案〓究ト云フ此機關ヲ設ケル
  ノ必要アリト思ヒマスガ、果シテ農林省ハ
  ドンナ考ヲ持シテ居ルカ、之ヲ御伺致シタイ
  ノデアリマス、次ニハ金融機關ノ完備デア
  リマス、農村ノ金融機關ニ付キマシテハ
  勿論農工銀行モアルシ、或ハ勸業銀行モ、
  或ハ產業組合ノ中央金庫モアリマスガ、昨
  年モ申上ゲマシタ通リ、實際此機關ト云フ
  モノハ名ハ立派デアリ、機關ハ備シテ居ル
  ヤウデアリマスガ、農村ニモ之ヲ十分利用
  スルト云フコトノ出來ナイノハ甚ダ遺憾
  ナ次第デアリマス、昨年當局ノ言ハレルノ
  ニハ十分ナル機關ガ備シテ居ルノデアル
  カラ、農村トシテモ其利用サヘスレバ宜イ
  デハナイカト云フヤウナ御答辯ガアッタノ
  デアリマスガ、甚ダ左様ナ各辯デハ私ハド
  ウシテモ之ヲ御請ケスルコトハ出來ナイノ
  テアリマス、免ニ角勸業銀行ニシマシテ
  モ、或ハ農工銀行ニシマシテモ、其町村ニ
  貸付ケルコトヲ得ルト云ク條項ガアリマス
  ルガ、其町村ニ於テ之ヲ借リヤウトスル場
  合ニハ少クモ二十名以上ノ保證人ガナケ
  レバ貸與ヘルコトヲシナイノデアル、當局
  ノ昨年言ハレル所ニ依レバ、慈善的ニ銀行
  ガヤッテ居ルノデハナイ、物的ノ上ニ返還ス
  ベキ目的ヲ立テヽ、サウシテシナケレバ仕
  事ガ出來ナイ、ソレハ勿論ノ話デアリマ
  ス、併ナガラ、成程是等ノ機關ヲ農村ニ於
  キマシテ利用ノ出來ル人ハ宜シイガ、又產
  業組合ノヤウナモノガ設ケラレテアッテ、ソレ
  ガ完全ニ働イテ、產業組合デ之ヲ利用スル
  コトガ出來レバ洵ニ結構デアルガ、是ガ利
  用ノ出來ナイ一番最下級ノ農家ハドウシタ
  ラ宜イノデアルカ、此最下級ノ農家ト云フ
  モノヽ此金融機關ノ缺ケテ居ルノハ農
  村振興ニ一番必要ナル、所謂最下級ノ農家
  ニ此金融ノ機關ガ缺ケテ居ルノデアリマ
  ス、一番最下級ノ農家ハ成程地方ニ於キマ
  スルト云フト、產業組合ガ澤山出來テ居ル
  ガ、昨年當局ガ說明サレルガ如ク、產業組
  合ハ一万四千アルケレドモ、其成績ノ見ル
  ベキモノガ少イカラ、所謂銀行ニハ全
  ハ澤山アルケレドモ、中央金庫ノ金
  ヲサウ融通スルト云フコトガ出來ナ
  イ、已ムヲ得ズ蓄積シテ居ルト云フ御答
  デアッタガ、全ク左ノ如クニ產業組合ノ成
  績ト云フモノハ、事實ニ於テ左樣ノ成績ノ
  モノガ多イノデアリマス、眞ニ立派ナ成績
  ヲ擧ゲテ居ルト云フモノハ實ニ少イノデア
  リマス、斯樣デアリマスカラ、何トカシテ
  此小サイ一番下級ノ農家ノ金融機關ト云フ
  モノヽ心配ヲシナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス、若シ物的ノ上ニ返還ノ目的ヲ立
  テルコトガ出來ナイカラ、サウ云フコトハ
  出來ナイト云フコトデ、拾テヽ置クト云フ
  コトデアッタナラバ、無產ニシテ勤勉ナル農
  家ト云フモノハ、何時ニナッテモ有產家ノ
  奴隷ニ終ラナケレバナラヌノデアリマス、
  是ハ何トカ今日ノ場合ニ於テ急ニ此機關ヲ
  設ケ、所謂昔ニ於ケル質取金融ノヤウナモ
  ノデモ設ケルト云フコトニシタナラバ、大
  變ニ最下級ノ農家ト云フモノハ、救濟スル
  コトガ出來ルデアラウト思フ、殊ニ甚ダオ
  カシイノハ、近來政府ハ如何ナル方針ヲ以
  テ、此銀行ノ整理統一ヲシテ居ルノデアルカ
  ハ分ラヌガ、私ノ地方ニ於キマシテハ、小サ
  イ銀行業者ヲ統一シテ、サウシテ中央ノ銀
  行ニ皆合併サシテシマフト云フ有樣デア
  リマスルガ、是等ハ殆ド最下級ノ農民ニ最
  モ適當ナル金融機關ヲ、政府ガ奪取ッテシ
  マフト云フヤウナコトニ歸著スルノデアリ
  マス、何故ナラバ農村ノ一番小サイ所ノ最
  下級ノ農民ハ、此地方ノ小銀行ニ依ッテ、資
  本ノ融通ヲ受ケテ、サウシテ肥料モ買ヒ農
  具モ買フト云フコトニシテ居ヲタノデアリ
  マスガ、大都會ノ大銀行ニ之ヲ併呑セラレ
  テシマフト、殆ド之ヲ利用スルコトガ出來
  ナイ、併呑サレタ其翌日カラ銀行ノ態度ガ
  變ッテシマッテ、何カ十分ナル所ノ擔保ガナ
  ケレバ今度ハ貸スコトガ出來ナイ譯ニナフ
  タノダト云フ態度ヲ執。テ居ルノデアリマ
  ス、成程一面ニ於テ所謂此資金ト云フモノ
  ノ-工業方面ノ資金ト云フモノヽ潤澤ヲ
  期スル上ニ於テ、小銀行ヲ併セテ、サウシテ
  大銀行ニ併呑セシメタト云フ意味合ハソレ
  ハ尤デアリマセウガ、一面ニ於テ農村ノ最
  下級ノ所謂金融機關ヲシテ絕滅サセタト云
  フコトハ、今日農村振興ヲ唱ヘル場合ニ於
  テ、洵ニ間違ノタ事デハナイカト私ハ考へ
  ルノデアリマス、是等ノ點ニ付テ政府當局
  ハ如何ナル考ヲ持シテ居ラッシヤルカ、御伺
  致シタイト思フノデアリマス、次ニ中上ゲ
  テ御伺致シタイノハ、農事講習講話ノ常設
  場デアリマス、此農事講習講話ト云フコト
  ハ元ヨリアルコトデアッテ、今日流行ッタ
  コトデナイト云フヤウニ見ル人ガアリマス
  ガ、實際今日農村振興ヲ圖ルト云フコトニ
  付キマシテハ、深遠ノ學理ヲ授ケテ、幾多
  ノ年月ヲ經テ、サウシテ養成シテ仕上ゲタ
  ト云フ者ニ此農村振興ノ仕事ヲサセルト云
  フコトハ河ニ手緩イコトデアル、一四二
  於テソレヲ行フト云フコトハ勿論必要デア
  リ、現在ヤッテ居ルコトデアルガ、手取早ク農
  學ノ如何ナルモノカト云フコトヲ理解セシ
  メテ、實際ニ農事ニ從事シテ其效果ヲ擧ゲ
  ヤウト云フノハ、農事ノ所謂短期講習講
  ト云フモノガ最モ適切ナル必要ナモノデア
  ルト私ハ信ズルノデアリマス、是ハ各府縣
  ニ唯、委セテ置クト云フダケデハ、中〓實
  行出來得ナイカラ、ドウシテモ各府縣ニ常
  設場ヲ設ケテ、有ユル靑年男女ヲ其處ニ寄
  セテ、サウシテ、常ニ講習講話ヲ施シテ農業ノ
  學理ヲ授ケ、實地ヲ〓ヘルト云フコトニシ
  タナラバ、直ニ農村振興ノ實ヲ擧ゲルト云
  フコトヲ期スルコトガ出來ルト私ハ信ズル
  ノデアリマス、此點ニ付キマシテ、當局ハ
  如何ナル考ヲ持ッテ居ルカ、御尋ヲ致シタイ
  ト思フ、其次ニモウ一ツ御伺ヲ致シタイノ
  ハ農業勞働仲介所ノ設置デアリマス、而
  モ農村ハ誰方モ仰シヤルガ如ク、農村ノ靑
  年男女ハ段々都會ノ光景ニ憧憬レテ、サウシ
  テ都會ニ趨ッテシマフ、是ハ時勢ノ然ラシム
  ル所デ已ムヲ得ナイト云フモノヽ、一面ニ於
  テ之ニ對スル所ノ救濟ノ機關ガナケレバナ
  ラナイ、或ル學者ハ農村ハ人口ガ過剩デア
  ル、人口ガ過剰デアルカラ勢ヒ時代ニ伴ウ
  テ、都會ノ方面ニ靑年男女ハ趨ノテシマフ
  ノデアル、斯ウ言フ人モアルガ、農村ニ於
  テ人口過剩ト云フ意味ハ、農村ノ人口ハ農
  村ノ人間ヲ能ク調ペテ見ルト云フト、一人
  前ノ勞働能率ヲ持シテ居ルト云フ者ハ、其家
  ニ對スル一人キリ位居ラナイデ、アトハ大
  〓女ノ人ヤ、或ハ子供ヤ、或ハ病人ヤ、免
  ニ角半分ノ能率キリ持ンテ居ラナイ所ノ人
  達デアリマス、斯ウ云フヤウニ數ハ多クト
  モ、勞働能率ト云フモノガ少イノデアリマ
  ス、所謂量ニ於キマシテハ成程人口過剩デ
  アルカ知ラナイガ、質ニ於テ大ナル缺乏ヲ
  シテ居ルノデアリマス、此缺乏シテ居ル勞
  力ヲ何トカ補給ノ途ヲ考ヘテヤラナケレ
  バ、目下農村ノ振興ヲ幾ラ圖ラウトシテモ
  圖ルコトハ到底出來ナイノデアリマス、此
  意味ニ於テ政府當局ハドンナ御考ヲ持ッテ
  居ルカ、私ハ御伺ヲ致シタイト思フノデア
  リマス、終リニモウ一ツ御伺ヲ致シタイノ
  ハ本問題ガ委員會ニ掛リマシタ當時ニ於キ
  マシテ、長田サンカラノ御質問デアッタカ
  ト思ヒマスルガ、甘諸竝ニ小麥ト云フモノ
  ニ付テ御質問ガアッタヤウデアリマスルガ、
  其時ニ政府當局ノ御答ニ依ルト、先ヅ甘藷
  ト云フモノヽ試驗ハ沖繩縣ニ於テヤルノデ
  アル、斯ウ云フヤウナ御答ガシテアルヤウ
  デアルガ、甚ダ此點ニ付テ私ハ迷ヲ生ジテ
  居ルノデアリマス、何故ナラバ甘藷ト云フ
  モノハ御水知ノ如ク熱帶地方ノ產物デ、段
  段溫帶寒帶ノ方面ニ移シタノデ、是ハ其通
  リデアリマスルガ、而モ此東北地方ニ於ケ
  ル食糧增殖ノ目的ヲ以テ此繁殖ヲ圖ラウト
  スル此計畫ニ於テ、沖繩縣ニ於テ試驗ヲス
  ルト云フコトハ何事デアルカ、沖繩縣方面
  ノ氣溫ト東北方面ノ氣溫ト同一デナイト云
  フコトハ是ハ明カデアル、但シ花粉交媒ノ
  ヤウナ手段ヲシテ、サウシテ、種ヲ取ルト云フ
  ダケナラバソレデ宜シイガ、沖縄デヤッタ所
  ノ品種ヲ東北方面ノ寒イ所ニ持ッテ來テ、大
  ナル效果ヲ得ヤウト一云フコトハ、是ハ難イ
  事デアリマス、然ルニ拘ラズ沖繩縣ニ於テ
  試驗ヲスルト云フ御答辯ダト云フコトハ
  甚ダ私共ハ合點ガ行カナイノデアリマス、
  是ハ少シク技術ノ方面ニ渉ルカモ知レマセ
  ヌカラ、先ヅ此位ニシテ私ハ止メマスルガ、
  ドウゾ是等ニ付テ確カリシタ御答ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス(拍手)
  〔政府委員高田耘平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=17

  ---

• 018・高田耘平

  ○政府委員(高田耘平君)　只今ノ質問ニ御
  答致シマス、第一農具ノ考案〓究所ニ付テノ
  意見ト云フコトデアリマス、此事ニ付キマ
  シテハ數年來、或ハ建議案等モ提出サレテ
  アリマスルノデゴザイマスケレドモ、現在
  政府ノ考デハ大正十四年度ヨリ農村振
  興費中ニ、農具ノ改良普及獎勵費ヲ置キマ
  シテ、之ニ依リテ優良農具ノ發明者ニ對シ
  テ相當ノ奬勵金ヲ交付シ、而シテ優良ナル
  農具ハ之ヲ共進會等ヲ開イテ、各方面ノ農業
  者ニ紹介ヲスルト云フヤウナル方法ヲ執ンテ
  居リマスルカラシテ、現在ノ所デハ農具考
  案〓究所ト云フモノヲ新ニ設クル意思ハ持ン
  テ居リマセヌ、第二ハ農村ノ金融機關ノ問題
  デアリマスガ、之ニ就キマシテハ產業組合
  ノ發達助長、農業倉庫ノ普及、是等ニ依ッ
  テ所謂小農階級ノ金融ヲ圓滿ニスルト云フ
  方法ヲ執ル積リデゴザイマス、但シ一方低
  利資金ノ融通及簡易生命保險ノ積立金ノ流
  用等ヲ、成ベク農村ニ多カラシムルト云フ
  方針ニ付キマシテハ、出來得ルダケ其方ニ
  向シテ進ミタイト思ッテ居リマス、其御質問
  ノ中デ小銀行ノ合併ニ依ル云々ト云フ事柄、
  是ハ私ヨリ御答申サズシテ、大藏當局ヨリ
  御答申スコトヽ思ヒマス、成程小銀行ヲ合
  併シテ中央ニ之ヲ合セルト云フコトニ付キ
  マシテハ、一長一短アルト思ヒマスルガ、
  免ニ角モ銀行ノ合同ノ方針ヲ執ルト云フコ
  トニ付キマシテハ農村金融ト云フ問題ヲ
  離レテ、金融上ノ相當ノ理由ガアッテ、之
  ヲ實行スルコトヽ存ジマスカラ、其點ニ付
  テハ大藏當局ヨリ御答辯アルノガ當然ダト
  信ジマス、次ニ農事講習所ノ常設如何、是
  モ成程必要デゴザイマセウ、併ナガラ農村
  振興ノ事ニ付キマシテハ農事講習所ノ常
  設ヲ爲スヨリモ、農事試驗場其他ヲシテ
  優良ナル農業ノ學問ト經驗ノアル人物ヲ造
  ル其技術員ヲ養成シテ、而シテ之ヲ各村ノ
  農會ニ配置シテ、農村ニ知識ノ普及ヲ圖ル
  ト云フコトガ最善ノ方法ト信ジマシテ、大
  正十五年度ヨリ農村振興費中ニ、各府縣ニ
  於テ農業技術員ヲ養成スル場合ニ於テ、之
  ニ對シテ相當ノ補助ヲ爲シ、尙ホ此養成ニ
  依シテ得ル所ノ技術員ヲ各町村ニ配置シテ、
  農村ノ發達ニ資セントスル考ヲ持ッテ居ル
  次第デアリマス、次ニ農村振興費中ノ甘藷
  ノ試作及試驗ヲ、之ヲ沖繩縣デヤルノハ氣
  候風土ガ異ヲテ居ル關係上已ムヲ得ナイカ
  ドウカ、斯ウ云フ御意見ノヤウニ思ヒマシ
  タガ、是ハ御承知ノ通リ沖縄縣ニ於キマシ
  テハ氣候ノ關係上、甘藷ニ花ガ咲キマシ
  テ、人工交媒ヲスルノガ非常ニ便利デアリ
  マス、卽チ甘藷ノ種類ノ改良ヲスルト云フ
  コトハ沖縄縣ニ於テ種々ノ試驗ヲ爲シテ
  優良ナル種類ヲ作リマシテ、之ヲ漸次各府
  縣ニ配付スル、成程沖繩ノモノヲ直ニ或ハ
  東北ニ持ノテ來テ、是ハ適當スルヤドウカ
  ト云フコトニ付キマシテハ色ミノ試驗〓
  究ヲ遂ゲル積リデゴザイマス、唯〓此甘藷
  ノ試驗ト云フコトハ、氣候ノ閣係上沖繩ニ
  於テ爲スコトガ、最モ便利デ有利デアルカ
  ラ、此費用ヲ沖繩ニヤッテ、而シテ此試驗
  ヲ爲サシメルト云フコトニ過ギナイノデア
  リマス、以上五點ニ付キマシテ御質問ノ要
  項ヲ御答シタ積リデアリマス
  〔小島善作君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=18

  ---

• 019・小島善作

  ○小島善作君　マダ一寸分ラナイ所ガアリ
  マスカラ、少シ詳シク御伺ヲ致シタイト思
  ヒマス、成程只今仰シヤル通リノモノデア
  ルカモ分ラナイガ、此講習講話ト云フコト
  ハソレハ町村ニ於ケル所ノ技術員ヲ養成
  スルノト大變ニ違ヒマス、町村ニ於ケル所
  ノ技術員ヲ養成スルコトハ、ソレハ最モ善
  イ事デアリマス、善イ事デアリマスガ、技
  術員ヲ養成シテ、其技術員ガ必ズ戶每ニ其
  效果ヲ擧ゲ得ルコトガ出來ルカト云フト、
  ンレハ當然出來ナイコトデアリマス、何レ
  ノ町村ニ於テモ二百戶--少イ町村デモ二
  百戶、大キナ町村デハ六百戶或ハ七百戶モ
  アルノデアリマスカラ、其家ニ一々此技術員
  ガ廻ッテ步イテ、-々已ノ意思ノ如ク指導
  誘掖ヲシヤウト云ッテモ、中々是ハ出來ナ
  イ事デアリマス、而シテ是ガ養成ヲ致シマ
  シテモ、一年デ其養成ガ十分ニ行ク筈ハナ
  イノデアリマス、デスカラ一面ニ於テソレ
  ヲ行フコトハ宜シイガ、一面ニ於テ一般農
  事ニ携ハル所ノ靑年男女ヲシテ、農學ヲ授
  ケテ、サウシテ實地ヲ〓フルト云フコトガ、
  所謂講習講話ト云フモノヽ必要ナル所デア
  リマス、是ガ私ト少シク違フヤウデアリマ
  スルガ、此點ニ付テ一寸詳シク御答ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス、ソレカラ甘藷ニ付
  テノ御話ハ成程御尤、沖繩地方ニ於テ品種
  ノ改良ヲスルト云フノニ付テハソレハ御尤
  デアリマス、成程花粉交媒ニ依ル所ノ品種
  ノ改良ハ、先ヅ日本ニ於キマシテハ沖繩デ
  ナケレバ出來マスマイ、沖繩ノ農事試驗場
  ニ於テモ是ハ前年ヨリ最早ヤッテ居ル事デ
  アリマス、併ナガラ、之ヲ東北ノ寒イ處へ
  持ッテ行ッテ直ニヤルト云フコトガ、直ニヤリ得
  ラルヽカ否カ、是ハ私等ノ經驗ニ依レバ
  直ニ是ガ實效ヲ現ハスコトガ出來得ナイト
  私ハ確信シテ居ルノデアリマス、少クモ寒
  イ處へ持ノテ行ノテ、相當ノ效果ヲ得ヤウト
  云フモノハ、漸次寒イ方ニ及ボシテ行ノテ
  其種類ヲ取シテ試作ヲシタノデナケレバ、
  效果ト云フモノハ擧ガル筈ハナイノデアリ
  やっ、故ニ先ヅ之ニ對スル所ノ食糧增殖ノ
  目的ニシテモ、農家經濟ノ能率ヲ增進スル
  上ニシテモ、免ニ角甘藷ト云フモノヲ東北
  地方ニ栽培セシメテ見ヤウト云フナラバ、
  少クモ東北地方ニ目下存在シテ居ル所ノ種
  類ヲ取ッテ、十分ニ之ヲ〓究シテ、サウシ
  テ其土地ニ暫ク慣レテ居ル所ノ習慣性ヲ利
  用シテ、東北地方ニ新シキ立派ナ種類ヲ拵
  ヘルト云フコトガ最モ必要ナ事デアルト思
  フ、然ルニ拘ラズ學理一方ノ沖繩地方ダケ
  ノ所謂花粉交媒ノ效果ヲ見テ、之ヲ直ニ東
  北ニ用キルト云フコトハ甚ダ迂遠デアラ
  ウト思フ、是ハ單リ私バカリデハナカラウ
  ト思フ、多少ナリトモ農業ニ關係シタ知識
  ヲ持シテ居ル者ハ、此位ノ事ハ分ルコトデ
  アルト私ハ信ズル、此點ニ於ケル私ハ當局
  ノ考ガ甚ダオカシナ考デアルト思フノデア
  リマスガ、モウ少シ此技術ニ付テ、東北方
  面ニ於テ、モウ少シ效果ヲ擧ゲルヤウニ忠
  實ニ御〓究ヲサレタイコトヲ私ハ願フノデ
  アリマス
  〔政府委員高田私平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=19

  ---

• 020・高田耘平

  ○政府委員(高田耘平君)　先ヅ以テ第二ノ
  御質問ニ御答シマス、東北方面ニ適用スル
  甘藷ノ種類等ニ付テハ農事試驗場ノ奧羽
  支場ニ於テ特ニ甘藷ニ付テノ現在アル所ノ
  種類ニ付キマシテ、種々〓究調査ヲ爲シテ
  居リマス、成ベク東北ニ適スル所ノ甘藷ヲ
  得タイト十分〓究シテ居ル次第デゴザイマ
  ス、決シテ束北地方ニ於テノ甘蔗ノ栽培ニ
  付テ、唯〓沖繩縣デ優良ナル種類ガ出來タ
  カラ、ソレヲ直グニ東北ニ持シテ行ッテ、サ
  ウシテ奬勵ガ出來ルトハ私ハ信ジテ居リマ
  セヌ、東北ハ東北デ奧羽支場ニ於テ相當ノ
  〓究ヲ爲シテ居リマスカラ、此段御諒永ヲ
  願ヒタイト思ヒマス、第一ノ講習所ノ常設
  機關ノ問題、是ハ御意見トスレバ御尤デゴ
  ザイマセウガ、今ノ政府ト致シマシテハ
  國費ヲ以テ各地方ニ常設ノ講習所ヲ設クル
  意思ハアリマセヌ、只今ノ御說ニ依レバ、
  國ガ相當ノ補助ヲ出シテ、府縣ノ農事試驗
  場ニ於テ農業技術員ヲ養成シテモ、是ハ農
  家ノ各戶ニ就テ指導スルコトハ出來ナイノ
  デハナイカト云フ御意見ノヤウデゴザイマ
  シタガ、各村一人ヅヽ位ノ技術員ヲ成ルベ
  ク配當致シマシテ、成ベク各戶ニ就テ深切
  丁寧ニ指導獎勵ノ任ニ當ラシメタイト思ノ
  テ居ル積リデアリマス、而シテ常設講習所
  ノヤウナモノヲ置クヨリモ、現在ノ各府縣
  ニ在ル所ノ縣立ノ農學校ヲ相當ニ利用致シ
  マスレバ、漸次農民ノ總テノ階級ニ向ッテ農
  業〓育ノ普及ガ出來ルト信ジテ居リマス、
  現在ノ所デハ小島君ノ御意見ノヤウニ、國
  費ヲ以テ常設ノ講習機關ヲ設ケルノ考ハ
  持ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=20

  ---

• 021・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス、第二讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=21

  ---

• 022・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=22

  ---

• 023・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=23

  ---

• 024・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=24

  ---

• 025・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、直ニ二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議
  題ト致シマス
  〓育改善及農村振興基金特別會計法中
  改正法律案第二語會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=25

  ---

• 026・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　別ニ御發議ガア
  リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
  通リ可決確定致シマシタ-日程第二十
  六、明治三十八年法律第十七號中改正法律
  案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ
  求メマス、委員長堤〓六君-堤君ハ御著
  席ガナイヤウデアリマス、理事モ御著席ナ
  イヤウデアリマスカラ、本案ハ一時後廻シ
  ニスルコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=26

  ---

• 027・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ其通リニ致シマス-日程第
  二十七、議院法中改正法律案ノ第一讀會ノ
  續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス、山口
  義一君
  第二十七議院法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一議院法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  議院法中改正法律案
  (政府提出)委員長
  黑住成章
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔別紙〕
  (小字及-ハ委員會修正)
  議院法中左ノ通改正ス
  二
  第四十條ニ左ノ」項ヲ加フ
  豫算案カ貴族院ニ移サレタルトキハ豫
  算委員ハ其ノ院ニ於テ受取リタル日ヨ
  リ二十一日以內ニ審査ヲ終リ議院ニ報
  告スヘシ
  停會ノ日數ハ審査期間ニ算入セス
  〔山口義一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=27

  ---

• 028・山口義一

  ○山口義一君　議院法中改正法律案ノ委員
  會ノ經過及結果ヲ御報告致シマス、委員會
  ヲ開キマシタルコト三囘デゴザリマシテ、
  本黨ノ原夫次郞君ヨリ御質問ガゴザイマシ
  テ、主ニ豫算ノ先議權ノコトデゴザイマシ
  タガ、豫算ノ先議権ニ付テ此貴族院ノ豫算
  ノ審査期間ニ制限ヲ設ケルト云フコトニナ
  ルト云フト、衆議院ノ豫算ノ先議權ヲ尊重
  シナイト云フコトニナリハシナイカト云フ
  ヤウナ御質問デゴザイマシタガ、ソレニ對
  シテ政友會ノ提出者ノ方ヨリ、ソレハ却テ
  サウデハナイノデアッテ、貴族院ノ豫算審
  査會期間ノ制限ヲ附セナイト云フコトニナ
  ルト、此衆議院ノ豫算ノ先議權ヲ形式上ハ
  認メラレテ居ルケレドモ、實質上ニ於テハ
  却テ尊重サレナイコトニナルノデアルカラ
  シテ、此豫算審査期間ノ制限ヲ附シテコ
  %、本當ニ此衆議院ノ豫算ノ先議權ヲ尊重
  スルコトニナルノデアルト云フヤウナ答辯
  ガアッタノデアリマス、ソレカラ又本黨ノ
  丸山君ヨリ、政友會ノ案ガ一箇月モ前ニ提
  出サレテ居ルノニ、何ガ故ニ政府ガ同ジ案
  ヲ出シタノデアルカト云フコトヲ、政府委
  員ニ質問致シタ所ガ、政府委員ノ方デハ
  樞密院其他色ミノ手數ガ掛ッタカラ遲レタ
  ノデアルト云フヤウナ御答辯ガアッタノデ
  アリマス、ソレカラ横山金太郞君ヨリ、停
  會ノ日數ハ之ヲ通算シナイト云フコト、ソ
  レカラ衆議院ト貴族院ト兩方ニ三日宛延バ
  セルト云フヤウナコトニスルト云フ考ハ政
  府ニナイカト云フヤウナコトヲ、政府委員
  ニ質問サレタノデアリマスルガ、ソレニ對
  シテ政府姿員ハ一日考慮サレマシテ、サウ
  シテ御答辯サレマシタル所ニ依リマスル
  ト政府ハ原案ノ通過ヲ望ムノデアッテ、
  之ニ對スル修正ノ意見ハ今持ッテ居ナイト
  云フ、斯ウ云フヤウナ御意見デアッタノデ
  アリマス、質問ノ有樣ハサウ云フ風ナ狀況
  デゴザイマシテ、最後ニ第三日ノ日デアリ
  マシタ、モウ質問モ打切リマシテ、サウシ
  テ政友會ノ砂田代議士ヨリ修正意見ガ出マ
  シタ、ソレハ次ノ如クデアリマス、第四十
  條ニ左ノ一項ヲ加フ「豫算案カ貴族院ニ移
  サレタルトキハ豫算委員ハ其ノ院ニ於テ受
  取リタル日ヨリ二十一日以內ニ審查ヲ終リ
  議院ニ報告スヘシ」、其次ニ「停會ノ日數バ
  審査期間ニ算入セス」斯ウ云フ修正ノ動議
  ガ出マシテ、ソレニ對シテ憲政會ノ富出君
  ガ御費成ノ御意見ヲ御述ニナリ、本黨ノ丹
  下君ヨリ御賛成ノ御息見ヲ御述ニナリマシ
  テ、委員會ハ原夫次郞君ヲ除キタル外、滿
  場一致ヲ以テ砂田君ノ御意見-修正ノ御
  意見ノ通リ可決致サレマシタカラシテ、此
  段御報告ヲ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=28

  ---

• 029・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　委員長ノ報告ニ
  對シ質疑ノ通告ガアリマス、-原夫次郞君
  〔原夫次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=29

  ---

• 030・原夫次郎

  ○原夫次郞君　只今山口君カラノ御報告ヲ
  拜承致シタノデアリマスルガ、私ハ先ヅ委
  員長ニ-山口君ハ委員長ノ代理デアリマ
  スケレドモ、委員長ニ伺ッテ置キタイコト
  ガアルノデアリマスガ、一體此本案ハ去ル
  二月十七日ニ上程セラレタノデアリマシ
  テ、其當時ニ於キマシテ政府提出案ト議院
  ノ政友會案ト、兩方一括シテ議題ニ供セ
  ラレテ、吾々ハ審議ヲ致シタ者デアリマス、
  委員ニ於テモ亦同樣ニ此二ツノ法案ヲ一括
  シテ付託ヲ受ケテ、是ガ審議ヲサレタモノ
  デアリマス、然ル所此兩法案ヲ一括シテ審
  議ヲ爲シタル其最後ニ於テ、委員砂田君カ
  ラ先程山口君ノ述ベラレタ如キ修正意見ガ
  提出セラレタノデアリマス、而シテ其修正
  意見ナルモノハ、政府案ニ對シテダケノ修
  正デアッテ、政友會案ニ對シテハ修正ヲシナ
  イノデアル斯ウ云フ御答辯デアリマシタ
  爲ニ、私ハ其修正ノ動議者ニ對シテ、如何
  ナル理由デ斯ノ如キ修正ヲ一方ニシ、万
  ニ爲サナイノデアルカト云フコトヲ御尋致
  シタ場合ニ於テ、委員會ニ於テ砂田君ノ言
  ハルヽノニハ、政府案ハ修正スルノデアル
  ガ、政友會案ナルモノハ、何所マデモ無修
  正デ突ノ張リタイ考デアルカラ、修正ヲシナ
  イノデアル、斯ウ云フ御答辯デアッタノデ
  アリマス、而シテ政府案ノ其修正案ニ付テ
  ハ委員會ニ於テ討議ヲ爲シ、其討議ニ依ツ
  テ先程山口君ノ報告ノ如キ結果ヲ得タノデ
  アリマス、之ニ對シテハ、先程山口君ノ御
  報告ノ通リ、間違ヒハナイノデアリマスガ、
  然ル所政友會案ナルモノハ、マダ委員會ニ
  殘ッテ居ルベキ筈ノモノデアルノデアリマ
  スガ、所デ吾々委員ト致シテハ一括議題
  ニ供セラレタノデアルカラ、此政友會案ヲ
  一體ドウスル積リデアルカト、今日マデ何
  トカ鳧ヲ付ケラルベキモノデアルト考ヘテ
  居フタ所ガ、何ゾ圖ラン黑住委員長ノ此吾々
  ニ報告セラレタル所ニ依ルト云フト、政府
  案ニ付テハ別紙ノ通リ修正スベキモノト議
  決致シ候、此段報告スルト、斯ウ云フ報告
  書ヲ御配付ニナリ、又政友會案ニ付テハ「右
  ハ本院ニ於テ政府提出議院法中改正法律案
  議決ノ結果議決ヲ要セサルモノト議決致候
  此段及報告候也」斯ウ云フ虚僞ノ報告書ヲ
  吾々ノ方へ御配付ニナッタノデアリマス、ソ
  コデ私共ハ委員ノ一人トシテ、委員長ガ何
  故斯ノ如キ虛僞ノ報告書ヲ吾々ニ配付致シ
  タカト云フノデ、疑ヲ懷イテ居リマシタ、
  所ガ去ル本會議ニ-四五日前ノ本會議
  ニ、此政府案ト議員提出案ト雨方ガ日程ニ
  上ッテ居ッタノデアリマス、所デ議長ハ宣言
  シテ曰ク、此政友會案ノ方ハ委員長カラ撤
  囘ヲ求メラレタ故ニ、此日程中カラ之ヲ省
  クト云フコトニナッテ、今日ノ此日程ニ於
  テモ、政府案ダケガ此日程ニ上ッテ居ルノ
  デアリマス、ソコデ私ハ疑ヲ生ズルノハ
  私ハ斯クマデニ二月十六日ノ此本會議ニ於
  テ、當然斯ウ云フ結果ニナルノデアルカラ、
  全然同一案デアル所ノ此法案ハ、政友會案
  ノ方ヲ撤回シテ然ルベキデアルト云フコト
  ヲ申シタノニ拘ラズ、之ヲ撤回セズ、此兩
  案共委員會ニ付託セラレテ、委員會ノ討論
  ノ際ニ於テモ、私ハ特ニ注意ヲ致シタニ拘
  ラズ、其注意モ受ケナイデ、斯ノ如ク委員
  會デハ譯ノ分ラナイ結果ヲ來シタノデアリ
  てく、一體此衆議院規則ヲ見マシテモ、明
  ニ此五十六條デアリマス、五十六條ニ於テ
  ハ委員會ノ付託ヲ受ケタル議案ガ審査ガ
  終ッタ場合ニ於テ、初メテ之ヲ報告スベキ
  義務ガアルノデアル、兩案一括シテ、同
  ナル法案ガ同時ニ委託ヲ受ケテ、而シテ其
  審査ガ未ダ兩者共ニ終局シナイ場合ニ於
  テ、一方ヲ報告シ一方ヲ報告セザルト云フ
  コトハマルデ此議院規則ヲ無視シタルモ
  ノデアルト謂ハナケレバナラヌト思フノデ
  アリマス(拍手)是ハ恐ラクハ政友會諸君
  ハ僅カナコトニ固執ヲ致シテ、政府案ト
  下ラナイ競爭ヲ爲シタ結果、斯ノ如キ自繩
  自縛ノ結果ニ陷ッタモノデアッテ、今日政府
  案其モノダケヲ此所デ報告スルト云フコト
  ハ一體何タル事デアリマスカ、私ガ伺ヒ
  タイノハ、此要點ヲ摘ンデ御伺スルナラバ、
  此前ノ議長ノ宣言ノ如ク、口頭ヲ以テ委員
  長カラ政友會案ノ報告ヲ撤回スルト云フコ
  トハ是ハ出來ナイノデアリマス、議院規
  則ニ於テ出來ナイ、議院規則ニ於テハ報
  告ナルモノハ委員會デ特ニ口頭ヲ以テ報告
  スベキコトヲ決議ヲシナイト云フト、必ズ
  文書ニ依ッテ先ヅ議長ノ手許ニ報告致サナ
  ケレバナラヌ、議長ノ手許ニ文書ヲ以テ報
  告スルコトニ依シテ、議長ハ之ヲ日程ニ揭
  ゲルノデアリマス、然ルニ拘ラズ、黑住委
  員長ハ曩ニ口頭ヲ以テ此報告ヲ撤回致ジ、
  而シテ議長ハンレヲ日程カラ削除致シタ
  ノデアル、此手續ガ甚ダ間違ノタ手續デアツ
  テ、衆議院規則上許スベカラザルコトニ屬
  スルノデアリマス、況ヤ黑住委員長ガ此政
  友會ノ議案ニ對シテ、斯ノ如キ虚僞ナル報
  告ヲ議院ニ致スト云フコトハ、以テノ外ノ
  事デアルト思フノデアリマス、一體斯ノ如キ
  場合ニ於テハ、此事務局ニ於テモ大ニ注
  意ヲ致サレナケレバナラヌコトデアッテ、黑
  住委員長ノ如キ、此議院法若クハ委員會ノ
  典例ニ通ゼザル所ノ委員長ニ對シテハ(「何
  ヲ言ッテルノダ」ト呼フ者アリ)事務局ニ於
  テ宜シク是ガ指導ヲ爲シ、斯ノ如キ間違,
  タル報告ヲ爲シタル場合ニ於テハ、議事課
  ニ於テモ、ソレ〓〓專門家ガ注意ヲ致サナ
  ケレバナラヌコトヽ思フノデアリマス、サ
  ウデナイトスルト、若シ吾々ノ如キ委員ガ
  居ナカッタナラバ、マルデ滅茶々々ナ報告
  ヲ爲スコトニナル、仍テ是ガ經過ニ付テ委
  員長ノ答辯ヲ伺フト同時ニ、議長ハ何故ニ
  斯ノ如キ手續ヲ執ッタノデアルカト云フコ
  トヲ、御伺致シテ置ク次第デアリマス(拍手)
  〔山口義一君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=30

  ---

• 031・山口義一

  ○山口義一君　原君ハ委員會ニ於テ、政友
  會ノ案ガドウナッテ居ルカト云フヤウナ御
  質問デアッタヤウニ思ヒマスルガ、是ハ議院
  ノ權能ヲ尊重スル意味カラ言ヒマシタナ
  ラバ先ヅ政友會案ヲ先ニ審議シテ、サウ
  シテソレヲ決定スルト云フノガ當然デアラ
  ウト思ヒマスルケレドモ、ドウモ委員會ノ
  空氣ハサウデナクシテ、政府案ヲ先ニ決定
  シナケレバナラヌト云フヤウナ空氣ニナッ
  テ居リマシタカラシテ、委員長ハ先ヅ政府
  案ヲ先ニ決定シタノデアリマス、ソコデ政
  府案ガ先ニ決定致サレマシタル以上ハ、全
  ク內容一字一句異ニ致シテ居ラヌノデアリ
  マスルカラシテ、既ニ政府案ガ今日此所ニ
  報告致サレマシタル以上ハ、政友會ノ案ト
  云フモノハ、委員會ニハ殘ッテ居リマスケ
  レドモ、全ク內容ガ同ジデアルカラシテ、
  是ハ審議不要ト云フコトニナッテ是ハ決定
  ヲスル必要ガナイノデアリマスカラシテ、
  是ハ撤囘スルノデモナケレバ何デモナイ、
  其儘委員會ニ殘ッテ居ルケレドモ審議ヲス
  ル必要ハナイ、斯ウ云フコトニナッテ居リ
  マスカラ、委員長黑住君ノ手續ハ少シモ誤ノ
  テ居ナイト云フコトヲ、私ハ玆ニ御報告ヲ
  致シテ置キマス
  〔原夫次郞君登壇〕
  〔「好イ加減ニセヨ」ト呼ヒ又拍手スル者
  アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=31

  ---

• 032・原夫次郎

  ○原夫次郞君　好イ加減ニシテモ宜シイノ
  デアリマスケレドモ、是デハ手續上運
  ブコトガ出來ナイデハアリマセヌカ
  ソンナ滅茶々々ナ議院政治ト云フモノハ
  アルモノデナイ-委員會ノ經過ハ斯ノ如
  キ次第デアリマス、卽チ砂田委員ガ「私ハ政
  府ノ原案ニ修正ヲ加ヘタイト思フノデアリ
  マン、ソレハ原案ノ次ニ今一項ヲ更ニ附加
  ヘタイト思フノデアリマス」云々、ソコデ黑
  住委員長ハ「只今ノ砂田委員ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ」「異議ナシ」ト云フコトニ
  ナッテ、ソレカラ黑住委員長ガ「ソレデハ直
  ニ討論ニ入リマス、ドウゾ討論ヲ願ヒマス」
  ソコデ砂田君ガ其修正意見ヲ述ベラレ、黑
  住委員長ガ「原案及修正案ニ對シテ討論ハ
  アリマセヌカ」「原委員、今ノ修正案ハ政
  府案ニ對シテダケノ修正デ、政友會案ニ付
  テハ修正ハシナイ譯デアリマスカ」此問ニ
  對シテ「黑住委員長、委員長ハサウ聽取リ
  マシタ」「原委員、サウスルト政友會案ハ原
  案ヲ矢張支持セラレルノデアリマスカ、ド
  ウデスカ」黑住委員長、支持スルノデアリマ
  ス、是ハ委員長ノ解釋デアリマス」ソコデ
  「原委員、修正者ニ承リタイノデアリマス
  ガ、先程ノ砂田君ノ修正案ハ政府原案ニ對
  シテ修正ヲ爲スト云フ案デアッタノデアリ
  マスガ、政友會案ニ付テハ修正說ハ御出シ
  ニナラナイノデ、原案ノ儘ト云フコトニ了
  承シテ差支ナイノデアリマスカ、是ハ重要
  ナル點デアリマスカラ念ノ爲ニ御伺致シ
  マスガ、若シサウデアルトスルナラバ、是
  ハ何故デアルカト云フコトヲ伺ッテ置キマ
  ス」之ニ對シテ「砂田委員、吾々ハ成ベク時
  間ヲ節約致シタイ考デアリマスルガ、只今
  御質問ガアリマシタカラ御答致シマスガ、
  御承知ノ如ク政府案ト議員案トノ同一案ガ
  玆ニ提案ヲサレテ居リマシテ、委員長ハ矢
  張政友會案ニ付テ採決ヲサレルモノト考ヘ
  やっ、隨テ其結果ハ本會議ニ於キマシテモ
  原案ト同一案デアル政府案ガ先ニ決定サレ
  マスナラバ、議員ノ提出シマシタ案ハ當然
  廢案ニナルモノト考へマス」ソコデ「原委
  員、私ハ只今ノ修正ニ反對スルノミナラズ、
  政府原案ニモ反對スルノデアリマスガ」ト
  云フコトデ議論ヲ進メタノデアリマス、斯
  ノ如キ次第デ、砂田委員ノ考デハ、兩案共
  ニ本會議ニ上程セラレテ、本會議デ政府案
  ガ自然消滅スルモノト云フ意見デ、委員會
  ダケハ矢張兩方共討論竝ニ採決ヲシナケレ
  バナラヌモノト云フ考デアッタノデアリマ
  ス、ソコデ結果ハ此修正案ニ對シテダケ色
  色討議賛否ノ兩論ガ行ハレマシテ、亞デ「黑
  住委員長、計論終結ト認メテ宜シウゴザイ
  マスカ」「異議ナシ」ト言フ、ソコデ「黑住
  委員長、左樣ニ致シマス、採決ヲ致シマス、
  原案ノ砂出委員提出ノ修正案、之ニ對シテ
  原君一人御反對ノヤウデアリマスガ、原君
  ヲ除クノ外總テ贊成ト認メテ宜シウゴザイ
  マスカ」「異議ナシ」「黑住委員長、左樣ニ決
  シマス、散會致シマス」斯ウ云フコトニナッ
  テ、政友會案ナルモノハ未ダ採決ヲ經ズシ
  テ、委員會ニハ繼續シテ居ルノデアリマ
  ス而シテ議院規則ニ依ルト云フト、是ダ
  ケ一括シテ委託サレタモノガ、審議未了デ
  アル場合ニ於テハ、政府案ノミ單リ玆ニ
  上程スルト云フコトハ議院規則ニ反スル
  ノミナラズ、尙ホ先程山口君ノ御答辯中、
  何故ニ此虚僞ノ報告ヲ致スコトデアルカト
  云フ點ニ付テノ御答辯ガナカッタノデアリ
  マス、卽チ政友會案ニ付テハ議決ヲ要セザ
  ルモノト、委員會ニ於テ決議ヲ致シタカラ
  シテ、此段報告スル、斯ウ云フ報告書ガ吾
  吾ニ參シテ居ルノデアリマス、然ルニモ拘
  ラズ、委員會ニ於テハ決議ヲ爲サラナカッ
  タノデアリマス、斯ウ云フ矛盾ノアルノハ
  一體如何ナルコトデアルカ、更ニ此點ニ付
  テ御尋致スノデアリマス、尙ホ此點ニ付テ
  先程中上ゲマシタ如ク、議長ニ於テモ此報
  告ヲ受取ッタ場合ニ於テハ、往々ニ斯ウ云
  フ大キナル間違ヲ爲シタル場合ニ於テハ
  事務局ニ於テソレ〓〓チヤント注意ヲ致シ
  テ、斯ウ云フ典例ニ通ジナイ、規則ニ通ジ
  ナイ委員長ガ間違ヲスルコトガアルカラ、
  ソレヲ能ク〓ヘテ指導シナケレバナラヌモ
  ノト思ヒマスガ、一體議長ハソレ等ニ付テ
  如何ナル遣方ヲ執ッテ居ルノデアルカ、之
  ヲ御尋致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=32

  ---

• 033・山口義一

  ○山口義一君　先程私ノ答辯ニ依シテ大體明
  カデアリマス、原君御一人ガドウモ御分リ
  ニナラナイヤウデアリマス、原君ハ委員會
  ニ於テモ御一人ダケガ、ドウモ幾多ノ點ニ
  付テモ御分リニナラナイヤウデアリマス、
  此處ハ學校デハアリマセヌ、原君一人ニ向ッ
  テ〓ヘル譯ニハ參リマセヌカラ、私ハ是レ
  以上答辯スルコトヲ避ケマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=33

  ---

• 034・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　原君ニ御答致シ
  マス、原君ノ所謂政友會案ナルモノハ委
  員長ヨリ報告書撤回ノ申出ガアリマシタ、
  仍テ一旦上程サレマシタ日程ヨリ之ヲ省イ
  タノデアリマス、面シテ院議ニ諮ラザリシ
  先例モアリ、又別ニ何等ノ規定モナイカラ
  左樣取計ッタノデアリマス、宜シク御了承
  ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=34

  ---

• 035・原夫次郎

  ○原夫次郞君　只今議長カラ報告書ノ撤回
  ガアッタト云フコトデアリマスガ、私ハ左
  樣ニ承シテ居ナイノデアリマス、ソレヲ議
  長ニハ何ニ依シテサウ云フ御話デアリマス
  カ、唯〓本會ニ於ケル報告デ知ラレタシト
  云フノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=35

  ---

• 036・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御答致シマス、
  委員長ヨリ報告書ノ撤囘ノ申出ガアッタノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=36

  ---

• 037・原夫次郎

  ○原夫次郞君　ソレハ口頭デアリマスカ、
  文書デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=37

  ---

• 038・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　口頭デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=38

  ---

• 039・原夫次郎

  ○原夫次郞君　口頭デサウ云フコトガ出來
  ルノデアリマスカ-御答辯ガナケレバ此
  程度ニ於テ止メテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=39

  ---

• 040・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案第二讀會ヲ
  開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=40

  ---

• 041・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=41

  ---

• 042・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二請會ヲ開キ
  第三請會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決
  セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=42

  ---

• 043・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  議院法中改正法律案第二語會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=43

  ---

• 044・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報
  告通リ可決確定致シマシタ(拍手)-先刻
  一時後廻シニ致シマシタ日程第二十六、明
  治三十八年法律第十七號中改正法律案、專
  賣局据置連轉資本補足ニ關スル件ノ第一讀
  會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス
  -委員長堤〓六君
  第二十六明治三十八年法律第十七號
  中改正法律案(專賣局据置運轉資本
  補足ニ關スル件)(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一明治三十八年法律第十七號中改正法律
  案(專賣局据置運轉資本補足ニ關スル
  件)(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及〓告候也
  大正十五年三日二日
  明治三十八年法律第十七
  號中改正法律案委員長
  堤〓六
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔堤〓六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=44

  ---

• 045・堤清六

  ○堤〓六君　只今上程ニ相成リマシタル法律
  案ハ、去ヌル二月十三日政府ヨリ本會議ニ
  御提出ニ相成リマシタル所、本會ニ於テ委
  員付託ト相成リマシタル明治三十八年法律
  第十七號中改正法律案、專賣局据置運轉資
  本補足ニ關スル件デアリマス、同法ノ第一
  條ニ「専賣局及製鐵所ノ据直運轉資本ニ不
  足ヲ生シタルトキハ大藏大臣ハ借大全ヲ爲
  シ又ハ融通證券ヲ發行シテ一時之ヲ補足ス
  ルコトヲ得、但シ其ノ金額ハ專賣局ニ在リ
  テハ九千万圓、製鐵所ニ在リテハ九千八百
  万圓ヲ超過スルコトヲ得ス云々」ト相成ッテ
  居ルノデアリマス、此專賣局ノ運轉資本
  ヲ、二千万圓增額致シマシテ、卽チ一億一
  千万圓ト改正致シ、作業會計法ニ依ル專賣
  局ノ資本金一千万圓ト合計致シマシテ、總
  額一億二千万圓ヲ運轉資本トセントスルモ
  ノデアリマス、而シテ政府ノ趣旨辯明ハ
  提出ノ際本會ニ於テ御說明ガアリマシタノ
  デゴザイマスヲ以テ、之ヲ省略致スコトニ
  致シマスルガ、煎ズレバ專賣局ガ一般社會ノ
  經濟界ニ竝行致シマシテ、其事業ノ發展ニ
  伴ヒテ資本金ノ增額ヲ必要トスルトノコト
  デアリマス、由來本法ノ歴史ヲ鑑ミマスル
  二、明治三十八年ニ制定サレマシテ以來、
  四回ノ改正ガ行ハレテ居ルノデアリマス、
  而シテ其制定ノ當時ニハ七百万圓、明治三
  十九年ニハソレヲ一千六百万圓、四十一年
  ニハ二千万圓ニ相成ッテ居リマス、其後十
  四箇年ヲ經過致シマシテ、大正九年ニハ九
  千万圓、卽チ現行法デゴザイマスガ、之ヲ
  今囘一億一千万圓トセントスルモノデアリ
  やっ、委員會ハ會議ヲ開キマスルコト三
  囘愼重審議ノ結果、政府提出案ガ相當ナ
  ルモノト認メマシテ、全會一致ヲ以テ負成
  可決ニ相成リマシタ次第デゴザイマス、本
  案ハ單ナル法律改正案デアリマスケレド
  モ、直接間接ニ影響スル所ガ頗ル廣ク、或
  ハ商業的ニ、或ハ工業的ニ、國民生活ニ密
  接ナル關係ヲ有スルガ故ニ、委員諸君モ熱
  心ニ實際問題ニ付テ論議討究サレマシタノデ
  アリマス、仍テ主ナル質問應答ノアリマシ
  タ要點ヲ摘約致シマスレバ、以下六點ニ相
  成ッテ居リマスルガ故ニ、其大要ヲ御報告
  申上ゲマス、其第一點ハ運送制度方針ヲ改
  善サレル御意思ナキヤ如何ト云フコトデア
  リマス、專賣局ノ專賣品ヲ廻送ナサルヽ其
  方針ハ、多ク一定ノ請負者ヲ定メテ其人間
  ニノミヤラセル、殆ド專賣的ニ此輸送方針
  ヲ定メテアラルヽ故ニ實際ノ當業者カラ
  之ヲ見マスルトキハ時代ニ相應ハシカラ
  ザル、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ高イ料金
  ヲ以テ政府ハ之ヲ運送シツヽアル、此廻送
  方針ニ付テ、之ヲ公開的ニ入札其他ノ方法
  ニ依シテ、最モ利益アル方法ヲ御採リニナ
  ル御意思ハアリマセヌカ、斯樣ノ御問デアソ
  タノデアリマス、專賣局ノ御各辯ハ之ニ對
  シテ、競爭入札ニスルト云フコトニ付テ
  ハ專賣品ハ一般商品ト違ヒマシテ、甲乙
  間ニ賣買ガ成立シテ、甲地ヨリ乙地ニ送リ
  マシテ、ソレヲ以テ事足レリトスルノデハ
  ナイノデアル、各方面ニ於ケル地方支局、
  若クハ地方出張所等ニ於テ、常ニ專賣品ノ
  不足ヲ來サミルヤウニ、而シテ又或ル部分
  ニ於テ餘リニ充實ニ過ギテ、製品ガ澁滯ス
  ルト云フコトモ專賣局トシテハ考ヘナケレ
  バナラヌ、故ニ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)
  成ベク圓滑ナル方法ヲ採ラナケレバナラヌ
  カラ、直ニ之ヲ一般入札ニシテ、最モ安イ
  方法ヲ以テ取扱フト云フコトハ、之ヲ斷片
  的ニ考ヘマスレバ、或ル一ノ荷物、或ル一
  ノ汽船輸送等ニ於テ、高キニ失スル場合モ
  アルデアラウケレドモ、全般カラ考ヘテ見
  テ、普通商品ノ如ク取扱フコトガ出來ヌ、
  故ニ能ク意ノ在ル所ハ考應致スケレドモ、
  仰シヤル通リニ今直ニ出來ルト云フコトハ
  申上ゲ兼ル、斯樣ナ御說明デゴザイマシタ
  (「簡單々々」ト呼フ者アリ)簡單ニヤリマ
  ス其第二點ハ煙草元賣捌人ノ政府與黨的
  態度、及ビ元賣捌人銓衡ノ方針ニ付テノ御
  質問デゴザイマシタ、是ハ煙草元賣捌人ヲ
  指定サレマストキニ、其元賣捌人ノ立場ガ
  與黨的關係デアルナラバ、頗ル是ガ寬大ニ
  取扱ハレル、若シソレガ反與黨的ノ關係ニ
  在ル人デアルナラバ、或ハ之ヲ苛酷ニト云
  フデモアリマセヌガ、頗ル不便ガ多イ、之
  ニ對シテハ政府ハ如何ナル方針デ御定メニ
  ナッテ居ルカ、斯樣ナ御質問デアリマス、
  其次ニ政府ノ與黨ノ販賣人ニ對シテ、當一一
  政府ノ鼻息ヲ窺シテ、往々ニシテ一般公平デ
  ナイ嫌ガアルガ、之ニ對シテ政府ハ何カ內
  訓的ノモノヲ發シテ、左樣十場合ニ於テハ
  政府ノ方場ヲ考慮セズトモ宜シイト云フガ
  如キ內調ヲ發シテ吳レル御意思ハナイカ、
  斯樣ナ御質問デアリマス、ソコデ是ハ三木
  參與官カラ特ニ御答辯ガゴザイマシタガ、
  政府ガ與黨ニ好意ヲ持,テ居ル者デモナケ
  レバ或ハソレニ許可スルト云フヤウナコ
  トハ絕對ニアリマセヌ、殊ニ私共ガ在野黨
  當時ニサウ云フコトヲ屢、聞キマシテ、隨
  分ソレヲ攻擊シタコトモアルノデゴザイマ
  スケレドモ、實際ニ其局ニ當レバ、左樣ナ
  事ハ中〓出來ヌノデアル、斯樣十明カナル
  御答辯デゴザイマシタ、殊ニ內訓ヲ發スル
  云々ト云フコトデアリマスケレドヒ、此事實
  ノ應答ガ社會ニ発表セラレルナラバ、寧口
  內調ヲ發スルノ必要モナイヤウニ感ズル
  此方ガ却テ效果アルヤウニ感ズルカラ、左
  樣ニ御水知ヲ願ヒタイ、斯樣ノコトデゴザ
  イマシタ、尙ホ又御說明ガアリマシタノ
  ハ煙草元責冽人ハ三箇年ノ契約デアリマ
  シテ、現在ハ四百四十二名アラルヽサウデ
  ゴザイマス、面シテ其更迭ノ當時ニハ多ク
  之ヲ事務的ニ考ヘテ、其人ノ人格トカ、或
  ハ經驗トカ、若クハ資產狀態トカ云フヤウ
  ナモノヲ參的致シマシテ、成ベク更迭ノ際
  ト雖モ、前經營者ヲシテ之ヲ爲サシムルト
  云フ方針ヲ執ルガ故ニ、アナタ方ノ御心配
  ニナルヤウナコトハ政府ニ於テ考ヘテ居リ
  マセヌ、斯樣ナ御答辯デゴザイマシタ要
  スルニ更迭ノ際モ多キハ七名、若タハ十二
  名、卽チ二十分ノ一位ノ程度以下デア
  ル斯樣ノ御各辯デゴザイマシタ、其第三
  點ハ、是ハ一部ニ若干ノ疑義者ガアルヤウ
  ニ思ハレマスカラ、特ニ御報告ノ中ニ加ヘテ
  置キタイノデアリマス、煙草値段引上ノ際
  ニ、元賣捌人ノ手持品ヲ賣下値段當時ノ値
  段卽チ前値段ヲ以テ賣ラセナカッタノハ
  ドウ云フ譯デアルカト云フ御質問デアリマ
  ス、之ニ對シテ政府ノ御答辯ハ最近ニ於
  テ十一月七日ニ突然値上ヲ致シタノデアリ
  マスガ、此政府ノ伯上ハ絕對ニ祕密ノ方針
  ヲ執ッテアーマスル故ニ、何レニモ漏レル
  何レニエ相似ヲスルト云フコトガ無イノデ
  アッテ、月カ亦斯樣ニシナケレバ色ミノ弊
  害ガ其間ニ生ズル、斯樣ナ御各辯デゴザイ
  マッ、殊ニ賣捌値段ヲ先値ニシテ置カナ
  カッタノハドウ云フコトカト云フ御問ニ對
  シテ、ソレハ法律ニ、煙草ハ定價ヲ以テ販
  賣ス、是ガ明ニナッテ居リマシテ、此定價
  ヲ、例ヘバ敷島十五錢ノ定價ヲ改正致シマ
  シテ十八錢ト致シマスレバ、卽チ定價ガ十
  八錢デアリマスルカラ、法律上如何トモ致
  方ガナイノデアル、又實際ノ取扱カラ見テ
  甚ダ困難デアルカラ、ソレハ到底出來ナイ
  事デアルト云フ御答辯デアリマス、其第四
  點ハ煙草伯上ニ依ッテ一般ノ耕作者、葉
  煙草製造業者ニ利潤ヲ均雪セシムル意思ハ
  ナイカ、卽チ煙草ヲ価上シタルト同時ニ
  賠償價額ノ値上ヲスルコトヲ御考ニナラヌ
  カト云フ御質問デアリマス、之ニ對シマシ
  テ政府ノ御答辯ハ煙草賠償價額ノ引上ニ
  付テハ十三年度ニモ十四年度ニモ値上ナ
  シテ居ル、要スルニ其時ノ實際經濟社會ニ
  鑑ミテ、其賠償價額ヲ定ムルモノデアル、
  而シテ其定ムルニ當リマシテ第一ニ生産費
  ヲ考ヘマス、第二ニハ其地方ガ其耕作ヲ爲
  ス代耕物ノ實況ヲ考ヘマス、第三ハ生產品
  其物ノ價値ヲ考慮スル、此三ツノ點ニ基礎
  ヲ置イテ値段ヲ定メルノデアリマシテ、卽
  チ優等葉ト稱スル最モ優良ナル葉ニ對シマ
  シテハ是ハ作ル人ハ非常ニ不利トスルノ
  デアリマス、殊ニ產額ガ少ウゴザイマスカ
  ラ、之ニハ一番割ノ好イ方法ヲ以テ賠償價
  額ヲ定メテ居ル、中等葉ハソレニ次ギ、下
  等葉ニ至リマシテハ、會ハ非常ニ多過ギル
  カラ、賠償價額ハ成ベク生產費ヲ基準トシ
  テ定メテ居ルカラシテ、今直ニ稅金ヲ値上
  シタルガ故ニ、此葉煙草ノ賠償價額ヲ値上
  スルト云フコトハ直ニ實行シ兼ルト云フ
  御各辯デアリマシタ、其第五點ハ曹達灰
  工場ニ對シテ、鹽供給ニ關シテ圓滑ニオヤ
  リニナル御考ハナイカト、斯樣ナ御質問デ
  アリマシタ曹達灰ハ申スマデモナク總テ
  ノ化學工業ノ殆ド根本的原料デアリマス、
  而シテ此曹達灰ヲ製造致シマスルニ、曹達
  灰百斤ヲ製造スルニ鹽百五十斤ノ原料ヲ要
  スルト云フ位、密接ナル鹽トノ連絡斷係ガ
  アルノデアリマス、ソコデ政府ノ御答辯
  ハ曹達灰工業者ニ對シマシテ、殆ド專賣
  制度ヲ考慮外ニシテ居ル、彼等ノ自由輸入
  ニ任シテ居ル、世界何レヨリ買入ルヽモ自
  由デアル、而モ唯、單ナル形式ニ於テハ一
  旦專賣局ニ買入レタ形式ニハスルケレド
  モ直ニソレト同樣ノ價額ヲ以テ其當人ニ
  賣下ヲ致スガ故ニ、專賣局(昭和三帳薄上附
  替ヲスルニ止マル、當業〓ニ對シテハ何等
  不便ヲ與ヘテ居ラヌ、斯樣ノ御聲明デアッタ
  ノデゴザイマス、其第一點ハ我國ノ時價ヲ
  低落セシメ、國民ノ負擔ヲ輕減サレテハ如
  何デアラウカト云フ質問デアリマス、現在
  我國ノ鹽ノ値段ハ世界各國ニ標準ヲ致シマ
  スト、米國ハ「ソルトレーキ」ト云フヤウナ
  天恵ヲ持ッテ居リマス、英國ハ「チヤシヤイ
  ヤ」ノ鹹湖ト言ハレ、殆ド水ヲ汲取レバ直
  ニ鹽トナルト云フ天惠ヲ持ノテ居リマス得
  逸ハ「シレシヤ一ニ岩〓ノ鑛山ヲ持ノテ居リ
  マス、殆F石炭ヲ堀ルト同樣ニ岩鹽ガ出
  ル、何レノ國モ其販賣價額ハ日本ノ約十分
  ノ二位デアルノデアリマス、卽チ日本ニ於
  テハ百斤約ニ圓六十錢位ノ標準デアリマス
  カ、是等ノ各國ニ於テハ五六十錢位ノ範圍
  デ國民ニ供給シテ居ルノデアリマス故
  ニ專賣局メカ針ガ現在ノ通リデアリマス故
  ニ國民ノ負擔似シマスルモノガ、專賣局
  ノ總賣上ガ約四千五百万圓アルノデアリマ
  ス之ニ對シマシテ若シ世界的ニ此政策ヲ
  解放致シマシテ、世界ノ鹽ノ產地ヨリ安キ
  鹽ヲ自由ニ國民ニ供給致シマスルナラバ、
  優ニ國民ノ負擔ハ一千五百万圓ヲ以テ足ル
  デアラウト思フ、其差額三千万圓ハ、無形ノ
  形式ニ於テ國民ガ負擔シテ居ルノデアリマ
  ス之ニ對シテ政府ノ御答辯ヲ伺ヒマシタ所
  ガ、現在ノ鹽田ヲ直ニ廢棄シテシマッテ、面
  シテ一億圓ノ價値ヲ有スル〓田ヲ消滅セシ
  ムルト云フコトハ政府ノ方針トシテハド
  ウ云フモノデアラウカ、是モ考ヘナケレバ
  ナラヌ、併ナガラ大正八年ニ於テ臨時財政
  經濟調査會ノアリマシタ時ニ、其調査會ニ
  鹽ノ自由供給ニ關スル根本方策如何ト云フ
  コトヲ諮問ニナリマシタ、其調査會ニ於テ
  頗ル愼重ニ審議サレマシテ、先ヅ現在ノ方針
  ヲ以テ進ムナレドモ、漸次外國ヨリ、或
  其他ノ日本ノ領地ヨリ之ヲ取入レテ緩和ス
  ルコトモ亦一ツノ方法トシテ考慮シナケレ
  バナラヌ、卽チ現在ノ鹽ハ增サナイケレド
  モ、多ク必要ニ應ジテ世界ヨリ安イ鹽ヲ持っ
  テ來ル、斯樣ナ事デゴザイマシタ(「好イ加
  減ニシロ」「簡單々々」「ヤレ〓〓」ト呼フ者
  アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=45

  ---

• 046・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜〓ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=46

  ---

• 047・堤清六

  ○堤〓六君(續)　委員長ノ義務ナリト信ジ
  テ居ル者デゴザイマス(「簡單々々」ト呼フ
  者アリ)モウ止メマス、之ヲ要スルニ本案
  ノ當否ヲ決シマスル諸材料ハ澤山ニ集中サ
  レテアルノデアリマスケレドモ、之ヲ申シ
  マスト又御叱リヲ蒙リマスガラ、委員會ニ
  於ケル速記錄ニ依フテドウカ御水知ヲ願ヒ
  タイ、ンコデ本案ヲ決シマスル必要ナル數字
  ヲ簡單ニ報告致シマシテ、此案ノ報告ヲ
  終ル積リデアリマス、其資本金ヲ增スト云
  アコトニ付テハ專賣局ノ總賣上高ヲ申シ
  マスト、現行法ノ最初ニ於キマシテハ總賣
  上ガ一億二千六百三十九万五千圓ニナッテ
  居リマス、而シテ其年度ノ利益金ガ一億一
  千八百八十九万六千圓ニ相成シテ居リマス、
  斯樣ナ數字ガ卽チ現行法ヲ制定サレマシタ
  大正九年度ノ數字デアリマス、ソレカラ大
  正十五年度、卽チ本年度ノ計算ハ如何デア
  ルカト申シマスルト、其賣上金ガ三億百九
  十万九千圓ニ相成ッテ居リマス、而シテ益金
  ガ一億五千二百二十万三千圓ト相成シテ居
  ルノデアリマス、而シテ此益金ト申シマス
  一億五千二百何万圓ノ金ハ、其年度末ニ於
  テ一般會計ニ繰入レナケレバナラヌノダサ
  ウデゴザイマシテ、其必要上是非共今回ノ
  法律改正ニ依リマシテ、其資金ノ運用ヲ圖
  リタイト云フコトデ、此法律ヲ改正スベキ
  必要ガ生ジタノデゴザイマス、委員會ニ於
  キマシテハ、以上ノ實況ニ鑑ミマシテ、原
  案ヲ可決致シマシタ次第デゴザイマスガ、
  何卒本會ニ於キマシテモ、速ニ可決確定ア
  ランコトヲ希望致ス次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=47

  ---

• 048・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=48

  ---

• 049・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=49

  ---

• 050・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二語會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=50

  ---

• 051・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  明治三十八年法律第十七號中改正法律
  案專賣局据置運轉資本補足ニ關スル件
  第一讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=51

  ---

• 052・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　第三讀會ヲ省略
  シテ委員長報告通リ可決確定致シマシタ
  (拍手)-日程第二十八、東濃鐵道株式會
  社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法
  律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告
  ヲ求メマス-委員長太津淳一郞君
  第二十八東濃鐵道株式會社所屬鐵道
  買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月八日
  東濃鐵道株式會社所屬
  鐵道買收ノ爲公債發行
  ニ關スル法律案委員長
  大津淳一郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔大津淳一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=52

  ---

• 053・大津淳一郎

  ○大津淳一郞君　東濃鐵道株式會社所屬鐵
  道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案、此案
  ノ審査特別委員會ノ結果竝ニ經過ヲ御報告
  申上ゲマス、此案ハ鐵道敷設法中改正法律
  案ノ審査特別委員會へ併セ付託サレタ案デ
  ゴザイマシテ、其審査カ先ニ付託セラレタ
  案ノ審査、竝ニ速記ノ都合ニ依シテ大分延
  引ヲ致シタノデアリマス、去ル五日ニ第一
  囘ノ審査委員會ヲ開イテ、委員數人ヨリ政
  府ニ向シテ質問應答ガ細大漏サズアッタノ
  デアリマス、ソレハ財政、經濟、產業發達
  等各種ノ質問デアリマシタガ、早ク既ニ速
  記錄ガ諸君ノ手ニアリマスカラ、別段其趣
  意ハ申上ゲマセヌ、ソレカラ翌々八日ニ討
  論ニ入リマシテ、政府ノ說明ヲ是ナルモノ
  ト信ジテ委員一致デ可決セラレマシタ、此
  段御報告申シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=53

  ---

• 054・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クコトニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=54

  ---

• 055・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=55

  ---

• 056・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=56

  ---

• 057・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  東濃鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公
  債發行ニ關スル法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=57

  ---

• 058・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　第三讀會ヲ省略
  シテ委員長報告通リ可決確定致シマシタ
  拍手)-日程第二十九、商事調停法案ノ
  第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求
  メマス-委員長高木益太郞君
  第二十九商事調停法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一商事調停法案(政府提出)
  右ハ木院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月九日
  商事調停法案委員長
  高木益太郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  希望決議
  商事取引ハ全國的ノモノニシテ交通通信
  ノ發達ト共ニ漸次頻繁ナラムトスルモノ
  ナレハ政府ハ商事調停法ノ實施ニ鑑ミ成
  ルヘク速ニ之ヲ全國的ニ適用スヘキ法規
  トセラレムコトヲ望ム
  〔高木益太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=58

  ---

• 059・高木益太郎

  ○高木益太郞君　本案ハ委員會ヲ開キマシ
  テ、一般國民ハ勿論、商業社會ニ於テ頗ル歡
  迎スル案ト認メマシテ、全會一致ヲ以テ可決
  致シマシタ、但シ委員岡本實太郎君ヨリ希
  望決議ノ提出ガアリマス、之ヲ讀ミマス
  「希望決議、商事取引ハ全國的ノモノニシ
  テ交通通信ノ發達ト共ニ漸次頻繁ナラムト
  スルモノナレハ政府ハ商事調停法ノ實施ニ
  鑑ミ成ルヘク速ニ之ヲ全國的ニ適用スヘキ
  法規トセラレムコトヲ望ム」是ハ政府ハ同
  意ヲ致シマシク、此段御報告申上ゲマス(拍
  き)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=59

  ---

• 060・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=60

  ---

• 061・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=61

  ---

• 062・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ、
  卽チ原案ヲ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=62

  ---

• 063・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  商事調停法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=63

  ---

• 064・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　第三讀會ヲ省略
  シテ、委員長報告通リ可決確定致シマシタ
  (拍手)日程第三十及第三十一ハ同一委員ニ
  付託シタル議案ナルニ依リ、一括議題トナ
  スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=64

  ---

• 065・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程第三十、大正十二年勅令
  第四百五號廢止法律案、日程第三十一大
  正十四年法律第三十五號中改正法律案ヲ一
  括シ、其第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報
  告ヲ求メマス-委員長櫻内幸雄君
  第三十大正十二年勅令第四百五號廢
  止法律案(暴利取締令廢止ノ件)(政
  府提出、貴族院送付)
  第一語會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一大正十二年勅令第四百五號廢止法律案
  (暴利収締令廢止ノ件)(政府提出、貴族
  院送付)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月十日
  大正十二年勅令第四百
  五號廢止法律案委員長
  櫻內幸雄
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三十一大正十四年法律第三十五號
  中改正法律案(日本銀行ノ手形割引
  ニ因ル損失ノ補償ニ關スル件)(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一大正十四年法律第三十五號中改正法律
  案(日本銀行ノ手形割引ニ因ル損失ノ
  補償ニ關スル件)(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月十日
  大正十四年法律第三十五
  號中改正法律紊委員長
  櫻内幸雄
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔櫻内幸雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=65

  ---

• 066・櫻内幸雄

  ○櫻內幸雄君　只今上程サレマシタル兩案
  一付、委員會ノ結果ヲ御報告申上ゲマス、
  大正十二年勅令第四百五號廢止法律案ハ、
  震災當時發布セラレタル生活必需品異利取
  締ノ緊急勅令ハ最早必要ナシトノ意味ヲ以
  テ廢止案ヲ提案セラレタノデアリマシテ、
  本案ニ付テハ委員會ヲ一一回間會致シマシテ、
  何等ノ異議ナク滿場一致ヲ以テ本案ヲ可決
  致シタ次第デアリマス、次ニ大正十四年法
  律第三十五號中改正法律案ハ大正十二
  年勅令第四百五號第一項第四號ニ該當スル
  手形、卽チ震災手形ノ割引ニ付、日本銀行
  ガ被ル損失補償ニ關スル期限、大正十五年
  九月三十日ヲ大正十六年九月三十日マデ延
  期スルト云フ案デアリマスガ、是亦委員會
  ヲ二囘開キマシテ、滿場一致ヲ以テ此原案
  ヲ可決シタ次第デアリマス、此段御報告申
  上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=66

  ---

• 067・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ノ第二讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=67

  ---

• 068・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ聞クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=68

  ---

• 069・作間耕逸

  ○作間耕逸君　兩案ヲ一括シテ直ニ第二讀
  會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ何レモ委員
  長報告ノ通リ可決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=69

  ---

• 070・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=70

  ---

• 071・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  大正十二年勅令第四百五號廢止法律案
  (暴利取締令廢止ノ件)
  第二讀會(確定議)
  大正十四年法律第三十五號中改正法律
  案(日本銀行ノ手形割引ニ因ル損失ノ
  補償ニ關スル件)第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=71

  ---

• 072・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　第三讀會ヲ省略
  シテ、兩案共委員長報告通リ可決確定致シ
  マシタ(拍手)日程第三十二、輸出生絲檢査
  法案ノ第一詰會ノ續ヲ開ヤ、委員長ノ報告
  ヲ求メマス-委員長折原巳一郞君
  第三十二輸出生絲檢査法案(政府提
  〓第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一輸出生絲儉査法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月十日
  輸出生絲檢査法案委員長
  折原巳一郞
  衆議院議長粕谷義三殿
  希望條件
  -輸出生絲儉査法ノ施行ヲ大正十六年
  一月一日以後ニ於テスルコト
  理由
  最近生絲輸出業者側ノ決議ニ依リ製絲
  業者側ニ對シ生絲取引ニ關スル數箇ノ
  要求ヲ爲シタルコトハ世間周知ノ事實
  ナリ右ハ製絲業者側ニ取リテ頗ル重大
  ナル關係ヲ有シ惹テ生絲取引ノ圓滑ト
  輸出貿易ノ消長ニ多大ナル打撃ヲ加フ
  ル結果本法施行ノ成果ヲ減殺スル虞ア
  ルノミナラス養蟲業者ニ及ホス影響至
  大ナルモノアリト信ス從テ此ノ問題ハ
  本法施行以前ニ於テ圓滿且自由ナル解
  決ヲ了セシムル必要アリト認ム依テ政
  府ハ是等ノ關係ヲ充分考慮シ本法ノ施
  行ヲ大正十六年一月一日以後ニ於テセ
  ラレムコトヲ望ム
  二製絲業者ノ製絲資金ヲ圓滑潤澤ナラ
  シムル途ヲ講スルコト
  理由
  製絲業者カ輸出業者ニ制肘セラルル重
  ナル點ハ資金問題ニ在リト信ス製絲業
  者ノ資金運用ノ奈何ハ直ニ養蠶業者ニ
  至大ノ影響アルヲ以テ政府ハ將來一層
  製絲資金ノ圓滑潤澤ヲ得セシムルノ途
  ヲ講シ充分ナル注意ト努力ト拂ハレム
  コトヲ望ム
  〔折原巳一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=72

  ---

• 073・折原巳一郎

  ○折原巳一郞君　只今議題ニナリマシタ輪
  出生絲儉査法案ニ對スル委員會ノ經過及結
  果ヲ御報告申上ゲマス、本案ノ內容ハ第一
  ニ輸出生絲ノ取引ハ正量ヲ以テスルト云フ
  コト、第二ニ正量檢査ハ之ヲ强制施行スル
  ト云フコト、第三ニハ儉査ニハ手數料ヲ徵
  收スルト云フコト、第四ニハ國立檢査所ノ
  外公共團體設置ノ生絲檢査所ヲ認ムルト云
  フ、大體四點デアルノデアリマス、其條文
  ハ極メテ少ナク、八箇條ニ過ギナカッタノ
  デアリマスガ、內容ハ極メテ重大ナルガ爲
  ニ、小委員會マデヲモ設ケテ十分愼重ナル
  質疑應答ヲ盡シタ次第デアリマス、委員會
  ノ詳細ハ之ヲ委員會ノ速記錄ニ讓リマシ
  テ、極メテ簡單ニ會議ニ現ハレマシタル重
  要ナル二、三點ヲ御紹介申上ゲタイト思ヒ
  マス、其第一ハ手數料ニ關スル法律論デア
  リマス、所謂本法ノ檢査ハ强制シテ之ヲ施
  行スルモノデアッテ、輸出生絲ニ取ッテハ絕
  對的ノモノデアル、隨テ此手數料ト云フモ
  ノハ之ヲ租稅ト看做スベキ程ノモノデル、
  隨テ假ニ此手數料ヲ取ルコトガ正當デアル
  トシテモ、是ハ必然的ニ法律ヲ以テ規定ス
  ベキモノデアッテ、全然之ヲ命令ノ規定ニ讓
  ルト云フコトハ其當ヲ得テ居ラナイ、斯ウ
  云フ議論ガアルノデアリマス、之ニ對シテ
  政府ハ、檢查手數料ト云フモノハ、檢査ヲ
  受ケル者ノ利益ノ爲ニスル政府ノ行爲ニ對
  スルモノデアッテ、一種ノ報償デアル、隨テ
  之ヲ强制スルト否トハ、此報償ト云フコト
  ノ性質ニハ何等關係ガナイ、隨テ之ヲ憲法
  第六十二條第二項ノ規定ニ基イテ命令ヲ以
  テ定ムルト云フ事柄ハ合法ノ處置デアル、
  政府ハ此種ノ問題ニ對シテハ、從來常ニ斯
  ノ如キ解釋ヲ執リ、又其類似ノ實例モアル、
  斯ウ云フ辯明デアリマス、第二點ハ正量取
  引ヲ行フノガ今日適當ノ時機デアルカ否
  カ、所謂本法ヲ施行スルノニ、今日ヲ以テ
  時ヲ得テ居ルカ否カト云フ點デアリマス、
  ソレハ正量檢査ノ結果ハ、現在トシテハ內
  地ニ止ッテ、之ニ依シテ海外ヲ拘束スルコト
  ニハナッテ居ラナイノデアリマス、然ラバ
  其效果ト云フモノハ極メテ微弱デハナイカ
  ト云フ點ト、此取引ヲ行フニ付キマシテ、
  輸出業者ト生絲業者トノ間ニハ利害ノ相反
  スルモノガアリマシテ、其間ノ協調ヲ失ハ
  ントシツヽアルノガ今日ノ實況デアルノデ
  アリマス、故ニ是等ノ諸點ガ完全ニ解決ス
  ルマデハ本法ノ施行ヲ見合ス方ガ宜シク
  ナイカト云フ二ツノ質問ガアッタノデアリ
  やっ、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、今日直ニ
  海外ニ對シテマデ正量檢査ノ效果ヲ及ボス
  コトノ出來ナイト云フコトハ甚ダ遺憾デア
  ル、併ナガラ政府ハ出來得べキダケ速ニ努
  力シテ其實現ヲ期スル、斯ウ云フ答ト、モ
  ウ一ツハ輸出業者、生絲業者トノ間ニ問題
  ノアルコトハ政府トシテモ其憂ヲ共ニス
  ルモノデアル、併ナガラ本法實施ノ時期マ
  デニハ、必ズ圓滿ナル解決ヲ見ル確信ヲ有
  シテ居ル、斯ウ云フ答〓デアルノデアリマ
  ス、第三點ハ手數料ノ徴收ト云フ點デアル
  ノデアリマス、從來ノ檢查ハ任意ニシテ無
  手數料デアッタ、卽チ任意檢査ノ時代ニ於
  テスラ手數料ヲ徴收シナカンタモノヲ、今
  回ハ强制シテ檢査ヲ行フ、卽チ輸出檢査ニ
  取ッテハ絕對的ノモノデアル、然ルニモ拘
  ラズ之ニ對シテ手數料ヲ徴收スルト云フコ
  トハ宜シクナイ、殊ニ負擔ノ上ニ於テモ當
  業者ニ對シテ相當ナル重荷ヲ掛ケルト云フ
  コトデアルカラシテ、手數料ハ徴收シナイ
  ト云フコトニシタイ、但シ其結果トシテ公
  共團體デ經營シテ居ル儉査所、卽チ現在ト
  シテハ神戶ニ於ケル檢査所ガ手數料ヲ徴收
  シナイト云フコトニナレバ、其維持經營ノ
  上ニ於テ困難ヲ來スカラ、之ニ對スル經費
  ハ之ヲ國庫ノ支辨ト爲スベシ、斯ウ云フノ
  ガ手數料ニ對スル意見デアリマシタ、之ニ
  對スル政府ノ辯明ハ大體三點ニ分レテ居リ
  ひと、其第一點ハ檢査ノ結果ト云フモノハ
  市價ヲ高メルカラ、受檢者ノ刊益トナルノ
  デアル、故ニ、受益者ガ之ニ要スル費用ヲ
  負擔スルト云フコトガ、寧口公平ノ處置デ
  アッテ、一部分ノ者ノ利益ニ要スル費用ヲ、
  國家ノ費用全體ヲ以テ負擔スルト云フコト
  ハ寧口當ヲ得テ居ナイ、斯ウ云フ一點、
  從來ノ檢査ハ保護獎勵ノ時代デアッタ、故ニ
  無手數料デ成ベク檢査ヲ受ケシメルト云フ
  方針デアッタノデアリマスケレドモ、最早當
  業者ニ於テ十二分ノ進步ト、又鞏固ナル基
  礎ヲ有シテ居ル今日ニ於テハ、格別多額ニ
  モ要セザル手數料ヲ徴收スルト云フコト
  ハ寧口然ルベキ事デアル、是ガ二點、第
  三點ハ蠶絲業上ニ付テハ今後尙ホ全般ニ
  亙ノテ國家トシテ經營スベキ事業ガ非常ニ
  多イ、唯〓經費ノ關係上其實現ヲ見ナイノ
  ヲ遺憾トシテ居ルノデアル、然ルニ本儉査
  ノ如ク一部當業者ヲ利スル費用マデヲモ全
  體ノ國費ヲ以テ支辨スルト云フコトニナレ
  色ミ他ノ事業ノ施設ヲ促進スルコトノ
  障碍トナル、之ヲ反對ニ言換ヘレバ、部
  業者ノ利益ニスル費用ト云フモノハ其當
  業者ノ負擔ヲ以テ支辨スル、サウスレバ其
  處ニ消極的ニハ國費ノ上ニ餘力ヲ生ズルカ
  ラ、一般的ニ事業ノ施設ヲ促進スル强イ動
  機トモナルト云フ點デアリマス、是等ノ論
  議ノ後ニ、委員ノ中カラ二ツノ希望ヲ提出
  致サレタノデアリマス、其希望ノ第一ハ「最
  近生絲輸出業者ヨリ製絲業者ニ對シ生絲取
  引ニ關スル數個ノ要末ヲ提出シテ居ル、是
  ハ製絲業者ニ取リテハ頗ル重大ナル關係ヲ
  有シ、延イテ生絲取引ノ圓滿、輸出貿易ノ
  消長ニモ多大ノ打撃ヲ加へ、本法施行ノ成
  果ヲモ減殺スルノ虞ガアル、此事柄ハ延イ
  テ養蠶業者ニモ亦同樣ノ影響ヲ及ボスモノ
  ト信ズ、從シテ此問題ハ本法施行前ニ於テ
  圓滿且自由ナル解決ヲ了セシムル必要ガア
  ルカラ、政府ハ是等ノ關係ヲ十分ニ考慮シ
  テ、本法ノ施行ヲ大正十六年一月一日以後
  ニ於テセラレタイ」ト云フノガ一箇條、第二
  箇條ハ「製絲業者ガ輸出業者ニ掣肘セラレル
  重ナル點ハ資金ノ問題デアッテ、製絲業者
  ノ資金運用ノ如何ハ又直ニ養蠶業者ニモ至
  大ナ影響ヲ有ス、依クテ政府ハ將來一層製
  絲資金ノ圓滑潤澤ヲ得セシムルノ途ヲ講
  ジ、十分ナル注意ト努力トヲ拂ハレタシ」
  此二點ニ對シマシテハ、第一點ニ付テハ政
  府ハ大體ニ於テ其憂ヲ同ジウスルモノデア
  ルカラ、其施行時期ニ付テハ希望ニ副フベ
  ク十分ノ考慮ヲ致シタイ、斯ウ云フ聲明デ
  アリマス、第二點ニ付テモ亦出來ルダケ希
  望ニ副フベク十分ノ考應ヲ拂ヒタイト思
  フ、斯ウ云フ答辯デアリマシテ、兩者トモ
  之ヲ肯定スル意味ニ於テ聲明ヲセラレテ居
  ルノデアリマス、以上ノ經過ノ結果、委員
  會ハ多數ヲ以テ本案ヲ可決致シタノデアリ
  マイ、但シ本案ニ對シテハ修正意見ガアリ
  マシテ、ソレハ少數意見トシテ別ニ委員ノ
  中カラ本會へ提出セラレテ居リマス、以上
  御報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=73

  ---

• 074・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテハ
  少數意見ガ出テ居リマス、是ハ修正デアリ
  マスカラ、第二讀會ニ於テ其報告ヲ許スコ
  トニ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異識ナシ」ト呼フ者ア
  ツ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=74

  ---

• 075・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ二讀會ヲ開クコトニ決シマシ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=75

  ---

• 076・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=76

  ---

• 077・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  輸出生絲檢査法案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=77

  ---

• 078・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　此際少數意見ノ
  報告ヲ求メ、隅田豐吉君ノ辯明ヲ求メマス
  少數者意見書
  一輸出生絲檢査法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
  大正十五年三月十日
  輸出生絲檢査法案
  委員少數意見者
  志賀和多利
  外十名
  輸出生絲檢査法案中左ノ通修正ス
  第一條第三項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ儉査料ヲ徴セス
  同條第二項中「檢査ヲ爲サシムルコトヲ
  得ノ下ニ「此ノ場合ハ儉査ニ要スル經
  費ハ之ヲ國庫ヨリ交付ス」ヲ加フ
  附則第一項ヲ左ノ如ク改ム
  本法ハ大正十六年一月一日ヨリ之ヲ施
  行ス
  〔隅田豐吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=78

  ---

• 079・隅田豐吉

  ○隅田豐吉君　只今二讀會ニ移サレマシタ
  本案ニ付テハ、曩ニ委員會ニ於テ吾々政友
  會竝ニ新正倶樂部ノ委員ヨリ、此儉査ノ手
  數料ヲ徴收セナイ、而シテソレニ關係スル
  法文ニ付テノ修正ヲ提出致シタノデアリマ
  ス、然ルニ遺憾ナガラソレハ少數ヲ以テ成
  立致サナカンタノデアリマス、是ニ於テ吾
  吾ハ少數意見者ノ代表ト致シマシテ、出來
  得ルダケ簡單ニ其越旨ヲ辯明致シタイト存
  ズルノデアリマス、折原委員長ヨリ報告セ
  ラレマシタル其中ニ、政府ノ本案ニ對スル
  趣旨竝ニ手數料ノ點ニ關シテ政府ノ意見ノ
  在ル所ヲ紹介セラレマシタ、ソレニ依リマ
  スト云フト此輸出生絲檢査法案ニ依リテ
  正量檢査ヲ實行スルト云フコトニ相成レ
  バ其利益ヲ得ル者ハ當業者デアル、故ニ
  從來ハ檢查ノ手數料ヲ徴シテ居ラナイノデ
  アルガ、今囘ハ之ヲ强制シテ絕對的ノモノ
  ト爲スガ故ニ、檢查ノ手數料ヲ徵收シテ
  モ、其利益ト比較致スト云フト、僅少ナル
  手數料ヲ徵シテモ何等當業者ノ苦痛ニ相成
  ラヌ、斯樣ニ申サレテ居ルノデアリマス、
  然ルニ委員會ニ於キマシテ色〓審議致シテ
  居ル中ニ、圖ラズ吾々ノ意見ト政府當局ノ
  意見ト、此正量檢查ヲ實施スルニ當ノテ大
  ナル意見ノ相違ヲ見マシタ次第デアリマ
  ス、ソレハドウ云フ譯デアルカト申シマス
  ニ、今日政府ガ實行セラレントスル所ノ正量
  檢查ノ方法ト云フモノハ吾々當業者、-
  輸出業者ニセヨ、製絲業者ニセヨ、當業
  者ノ期待シテ居ル所ノ方法ト大ナル相違ガ
  アルノデアリマス、其相違致シテ居ル點ハ、
  申ス迄モナク當業者ノ期待致】シテ居ッタ所
  ハ、此正量檢査ヲ內地ニ實施致シマスト同時
  ニ、海外ニ其效力ヲ及ボス、海外ノ取引モ
  拘束スルト云フコトデアッタノデアリマス、
  然ルニソレハ當業者ノ期待ガ大ニ裏切ラレ
  マシテ、唯"內地ニ實施スルノミデアッテ、
  當分ノ內ハ海外ニ及ボサナイ、而モソレ
  ハ內地ニ實施シマシテモ、其商品ニ對シテ
  ハ檢査所ノ封印ヲ附ケナイ、封印ハ任意デ
  アル、斯樣ナ次第デアリマス、是ニ於テ政
  府ハ此正量檢査、正量取引ヲ實施スルト云
  フコトニナレバ、當業者ハ水分上ニ於ケル
  所ノ莫大ナル利益ヲ得ル、假ニ之ヲ計數ニ
  シテ見マスト云フト、約一千万圓ノ利益ヲ
  得ル、斯樣ニ申サレルノデアリマスルガ、
  實際ニ於テノ當業者ノ意見ヲ徴シテ見マス
  ト云フト、ソレハ反對ノ結果ニ相成ルノデ
  アリマス、卽チ內地ニノミ實施シテ海外ニ
  及ポサヌト云フコトニナルト、水分ノ低減
  ニ依ル所ノ斤量ノ減少ニ對スル所ノ利益ト
  云フモノハ悉ク是ハ輸出業者ノ利益ニナ
  リマシテ、製絲業者ハ利益ニナラナイ、斯
  樣ナ計算ニ相成ルノデアリマス、ソコニ於
  テ憲政會ノ確ニ村上君デアッタト記憶致シ
  テ居リマスガ、左樣ナ意見デアルトスルナ
  ラバ、君等ノ意見ハ此正量収引ニ反對ニナ
  ルノデハナイカト言ハレタ、吾々ハ政府ガ
  今囘計畫シタ如キ正量取引ヲ長ク實施スル
  ト云フコトニナレバ、無論絕對反對デアリ
  せっ、併ナガラ漸次之ヲ海外ニ及ボスト云
  フコトニ致シマスレバ、其準備期間ハ當業
  者トシテ多少ノ犠牲ヲ拂テモ宜イト云フ
  意味ニ於テ、已ムヲ得ズ之ニ同意スル者デ
  アリマス、而シテ其準備期間ニ於ケル利益
  ト云ノコトハ-政府ト致シマシテハ當業
  者ノ利益デアルト言フガ、當業者ト致シマ
  シテハ反對ノ結果ニ相成ルモノデアリマシ
  テ、寧口八百万圓以上ノ損失ト相成ルノデ
  アリマス、左樣ナ次第デアリマスルガ故
  ニ、當業者ハ免ニ角準備期間ガ損失ト云フ
  コトニナルノデアリマスカラ、損失ノアル
  -卽チ大ナル棧牲ヲ拂テ居ル者ニ手數
  料ヲ徵收スルト云フコトハ不條理デアル
  是ハ政府ノ意見ト吾々修正論者ノ意見ト
  根本ニ於テ相違致シテ居ル所ノ第一點デア
  リマス、ソレカラ第二點ト致シマシテハ
  些末ノ點デアリマスガ、政府當局ノ意見ハ
  此檢査ノ手數料ト云フモノハ極メテ僅少ナ
  金デアル、之ヲ原價ト比較シテモ極メテ少
  額ノモノデアル、斯樣ニ申サレルノデアリ
  マスケレドモ、段々〓究ヲ致シテ居リマス
  內ニ、其金額ハ決シテ少額デナイト云フコ
  トヲ發見致シタノデアリマス、之ヲ詳シク
  申述ベマスト長キ時間ヲ要シマス、是ハ委
  員會ニ於テ相當論議セラレテアル問題デア
  リマスガ故ニ、委員會ノ遠記錄ニ讓ル次第
  デアリマス、ソレカラ第三ノ點ト致シマシ
  テハ、政府ノ今回檢査ヲ强制シテ手數料ヲ徵
  牧スルコトニナリマシタ理由ノ一ツトシ
  テ、從來生絲質易ノ商取引ニ於テ行ハレテ
  居リマシタ所ノ習慣ノ中ニ、荷掛金ト致シテ
  相當ナル金ヲ製絲家ガ拂ノテ居ルノデアル、
  卽チ一俵ニ付テ約九十錢ノ金ヲ拂ノテ居ル
  ノデアル、故ニ此檢査ノ手數料ハ結局製絲
  家ノ負擔トナルト致シマシテモ、從來ノ荷掛
  金ヲ廢スルコトニナルノデアルカラ、ソレ
  ト相殺スレバ決シテ苦痛トナラナイ、製絲家
  ノ負擔トナラナイ、斯樣ニ申サレルノデア
  リマス、所デ此荷掛金ト中シマスノハ生
  絲貿易ノ上ニ於テ看貫料ト俗ニ申スモノデ
  アリマシテ、此看貫料ナルモノハ橫濱ニ於
  テ生絲貿易ガ開始サレマシテカラ以來ノ、
  數十年ニ互ッテノ因襲ヲ成シテ居ルモノデ
  アリマス、吾々モ常ニ其不合理不條理ナル
  ヲ認メテ居ル者デアリマスルガ、永キ商習
  慣ヲ有スル所ノ此看貫料ハ、果シテ政府當
  局ノ意見ノ如ク、今回ノ正量檢査ノ實施ニ
  依ッテ廢止ニナルカ否カ、是ハ大ナル疑問ト
  致サナケレバナラヌノデアリマス、ソレカ
  ラ更ニ第四ノ點ト致シマシテ、政府當局ハ此
  檢査手數料ヲ徵收スルト云フコトニ付テハ、
  ソレ〓〓相當當業者ノ了解ガアッタノデ
  アル、斯樣ニ申サレテ居ルノデアリマスル
  ガ、是モ色〓此法案ニ對シテ審議應答ヲ致
  シテ居ル中ニ、決シテ左樣ナ了解ガ當業者
  ノ間ニ成立シテ居ラナカッタト云フコトガ明
  瞭ニ相成ノタノデアリマス、更ニ最後ニ、極
  メテ本案ニ對シテ重大ナル問題トシテ、是
  非諸君ノ御〓聽ヲ煩ハサナケレバナラヌ
  問題カ殘シテ居ルノデアル、ソレハ何デア
  ルカト申シマスルニ、政府ノ蠶絲業ニ對ス
  ル根本政策ニ觸ルヽ問題デアリマス、今委
  員長モ報告セラレマシタル如ク、政府ハ從
  來蠶絲業ハ相當幼稚ナ時代デアッタ、故ニ
  保護奬勵ヲ加ヘテ居ッタ、儉查ノ手數料ノ
  如キモ任意儉查デアッタガ故ニ、徵收ヲ致
  シテ居ラナンダ、併ナガラ既ニンレハ相當
  發逹ヲ致シテ居ル、基礎モ鞏固ニナッテ居
  ル他ニ色ミナ事業デ相當保護ヲシ、獎勵
  ヲ加ヘナケレバナラヌ事業モ存シテ居ルモ
  ノデアルカラ、此儉査ニ要スル所ノ費用ハ、
  手數料ヲ徴收シテヤラナケレバ、到底實行
  スルコトガ出來ナイ、斯樣ニ申サレテ居ルノ
  デアリマスルガ、此點ニ付キマシテハ、私
  共ハ絕對ニ政府ト所見ヲ異ニ致シテ居ル者
  デアリマス其理由ハ御承知ノ通リ、此
  我ガ蠶絲業ハ政府ノ御意見ノ如ク、成程幼
  稚ノ時期ヲ脫シテ居リマス、人間ニ譬ヘレ
  バ旣ニ幼年時代ヲ過ギテ靑年時代ニナッテ
  居ル、併ナガラ其靑年ノ時代ニハ相成シテ
  居リマスガ、ソレハ病人デアリマス、而モ
  大病人ニナッテ居ルノデアリマス、諸君、
  近來我ガ内地ニ於テノ勞銀ノ昂騰、物價ガ
  騰貴シテ今日安クナラナイコト、斯樣ナモ
  ノカ此製絲業ニ對シテ非常ナ脅威ヲ與ヘテ
  居ル、政府ハ本員ノ蠶絲業ノ根本政策ニ對
  シテノ答辯ノ中ニ、良品廉賣主義良イ品
  ヲ造シテ廉ク賣ル、斯樣ニ言ハレテ居ルノ
  デアリマスルガ、偖如何ニ之ヲ改良シ、如
  何ニ生產費ヲ安クスルカト云フコトニ付テ
  ハ何等觸レテ居ラナイ、觸レテ居ラナイ
  ノミナラズ、左樣ニモウ既ニ靑年ノ域ニ對
  シテ居ルノデアルカラ、何等保護奬勵ヲ加
  フル必要ハナイト申サレルノデアリマスル
  ガ、吾々ハ左樣デハナイ、內ニ勞銀ノ騰貴、
  外ニハ人造絹絲ノ需要ガ盛デアッテ、政
  府當局トシマシテハ、人造絹絲ハ唯、綿織
  物ナリ、毛織物ノ需要ノ領分ヲ侵スノミデア
  ルト言ヒマスケレドモ、決シテ左樣デハナ
  ィ、大ニ我ガ轉絲ノ領分七侵シテ居ルモ
  ノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマスガ故
  ニ、決シテ今日ノ蠶絲業ト云フモノハ何
  等保護奬勵ヲ加ヘズシテ、其儘抛ンテ置ク
  ト云フコトハ出來ナイノデアリマス、諸君、
  現内閣ノ諸公ハ常ニ此壇上ニ於テ、我ガ國
  力ノ充實ハ貿易ノ振興デアル、貿易ノ振興
  ハ輸出ノ奬勵デアルト云フコトヲ、屢〓絕叫
  セラレテ居ルノデアル、本員モ亦同樣ノ意見
  ヲ持ッテ居ル者デアル、併ナガラ輸出ノ獎
  勵ニ於テ、輸出貿易品ノ大宗タル、卽チ大正
  十四年ノ統計ヲ見マシテモ、輸出總額二十
  五億有餘万圓ノ中ニ於テ、其四割以上、卽
  チ八億八千万圓ノ巨額ヲ算スル所ノ此生絲
  貿易ヲ閑却シテ、何ノ輸出奬勸ガアリマセ
  ウ、政府ハ此蠶絲業ハ既ニ發達シテ居ル、
  基礎ガ鞏固ニナッテ居ルト言フガ、今日全
  國ノ製絲家ノ悲慘ナル狀況ヲ一度見マシタ
  ナラバ、左樣ナル冷酷ナル批評ガ果シテ眞
  實ノ政府ノ意見トシテ御說明ニナレマセウ
  カ、私ハ其點ニ付テ政府ノ無責任、政府ノ
  詭辯ニ驚カザルヲ得ナイノデアリマス斯
  樣ナ意義ニ於テ、吾々ハ此蠶絲業ヲ保護奬
  勵スル意味ニ於テ、當分ノ間檢査料ヲ徵セ
  ザルコト、卽チ現行法ノ通リ檢査料ヲ徴セ
  ズト云フコトニ修正ヲ致シタ次第デアリマ
  ス、而シテ其第一條ノ第一項ニ「檢査料ヲ
  微セス」ト修正ヲ致シマシタ結果、第二項
  ノ末ニ「此場合ハ檢査ニ要スル經費ハ之ヲ
  國庫ヨリ交付ス」斯樣ニ修正文字ヲ加ヘマ
  シタガ、是ハ御承知ノ通リ、國ノ生絲檢査
  所ハ橫濱ニ新築セラレタモノデアリマスル
  ガ、此法文ニアリマスル所ノ公共團體ノ設
  ケル生絲檢査所、卽チ神戶ニ對シマシテハ、
  檢査料ヲ徵セナイト云フト、其經費ノ支出
  ニ困リマスガ故ニ、斯ノ如ク修正致シマシ
  タ次第デアリマス、面シテ此附則ニ於テ、
  政府ノ原案ハ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム」トアリマスルノヲ、「本法ハ大
  正十六年一月一日ヨリ之ヲ施行ス」斯樣ニ
  修正致シマシタルコトハ、委員會ニ於テ本
  黨ノ丹下君ヨリ希望條件トシテ提案セラレ
  タル其第一點ニ於キマシテ、卽チ本法ノ實
  施ヲ成ベク當業者ノ紛擾ヲ解決スル間ハ實
  施セナイト云フコトノ意味ノ下ニ、成ペク
  大正十六年一月以後ニ實施ヲシテ欲シイト
  云フ意味ノ希望條件デアッタノデアリマス、
  ソレニ對シマシテ政府ハ殆ド同意ヲセラレ
  テ居ルノデアリマス、此希望條件ニ準據致
  シマシテ、本員ハ此附則ヲ「本法ハ大正十六
  年一月一日ヨリ之ヲ施行ス」ト修正スル次第
  デアリマス、以上ノ理由デアリマシテ、何
  卒吾々ノ修正案ニ對シマシテ、諸君ノ御賛
  成ヲ翼フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=79

  ---

• 080・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　隅田君ノ少數意
  見ニ御賛成ガアリマスカ
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=80

  ---

• 081・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　成規ノ賛成アリ
  ト認メマス、仍テ少數意見ハ修正案トシテ
  成立〓シマシタ、是ヨリ討論ニ移リマス-
  丹下茂十郞君
  〔丹下茂十郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=81

  ---

• 082・丹下茂十郎

  ○丹下茂十郞君　諸君、只今上程ニナッテ
  居リマスル輸出生絲檢査法案ニ付キマシ
  テ、委員長ヨリ報告セラレマシタ、卽チ二
  個ノ希望條件、其一ハ本法ノ施行ヲ大正十
  六年一月一日以後ニ於テ爲スコト、二、製
  絲業者ノ製絲資金ヲ圓滑潤澤ナラシムル途
  ヲ講ズルコト、以上ノ二個ノ附帶條件ニ對
  シマシテ、早速農林大臣ヨリ一ニ付テハ御
  希望ニ副フベク十分ナル考慮ヲ致シマス、
  二ニ付キマシテハ出來得ルダケ此點ニ付テ
  十分ナ考慮ヲ拂ヒタイ、斯樣ニ責任アル聲
  明ヲ得タノデアリマスガ故ニ、私ハ此聲明
  ニ信賴致シマシテ原案ニ賛成スル者デアリ
  さく、聊カ此原案ニ贊成〓シマス理由ヲ、
  簡單ニ申述ベタイト思フノデアリマス、本
  案ガ曩ニ當院ニ提出致サレマシタ以來、世
  上中ミノ物議ヲ生ジタノデアリマス、本員
  乏ヲ此特別委員ニ擧ゲラレマシテ、本法ヲ
  審議スルニ當リマシテ、聊カ了解ニ苦シン
  ダ點ガ二個アッタノデアリマス、本法ノ內
  容ハ先程委員長ヨリ報告ニナリマシタ通
  リ、先ツ第一ニ輸出生絲ノ取引ハ正量ヲ以
  テスルト云フコト、第二ニハ正量檢査ヲ屬
  行スルト云フコト、第三ニハ正量檢査ノ手
  數料ヲ徴スルト云フコト、第四ニ公共團體
  ノ經營ニ係ル所ノ檢査所ヲ認メルト云フコ
  ト此四點ガ重要ナル部分ヲ占メテ居ルノ
  デアリマス、而シテ此四個ノ問題ニ對シマ
  シテハ、第一第二第四ニ付キマシテハ最
  早議論ノ餘地ハナイト思フノデアリマス、
  唯、第三デアリマスル所ノ手數料ヲ徴收ス
  ルト云フコトノ可否、是ガ重大ナル關係ヲ
  持ッテ居ルノデアリマス、私ノ聊カ了解ニ
  苦ンダ、之ガ第一點デアリマス、卽チ本法
  ヲ提出サレマシテ世間ニ物議ヲ生ジマシ
  テ、殊ニ當業者ノ間ニハ異論百出致シマシ
  タト云フコトハ、要スルニ手數料强制徴收
  問題ヲ中心ト致シテ居ッタノデアリマス、
  卽チ輸出業者ト製絲業者トノ間ニ於キマシ
  テ、其取引上ニ關係シマシテ、重大ナル紛
  議ヲ生ジタノデアリマス、此紛議ガ容易ニ
  解決ヲ告ゲナイノデアリマス、此時ニ方リ
  マシテ本法ヲ施行致シマシテモ、果シテ滿
  足ニ法ノ成果ヲ牧メルヤ否ヤト云フコトガ
  卽チ私ノ了解ニ苦シンダ第二點デアルノデ
  アリマス、輸出業者ト製絲業者トノ間ニ蟠
  リマス所ノ紛議ノ〓要ヲ申述ベテ見マス
  レバ、本法ノ施行ニ際シマシテ所謂買人ノ
  側卽チ輸出業者ヨリ製絲業者ニ對シテ數
  箇條ノ要求ヲ提案致シタノデアリマス、其
  結果兩者ノ間ニ協定ガ容易ニ解決ヲ致サナ
  ィ、之ガ洵ニ重大ナル關係ヲ持シテ居リマ
  スガ故ニ、私ハ此要求ノ條件ノ大要ヲ申述
  ベテ見タイト思フノデアリマス、先ヅ第一ニ
  正量取引實施ノ爲ニ生ズル所ノ檢査手數
  料運搬費、運送及ビ檢査中ノ保險料、其
  他總テノ費用竝ニ危險ハ、賣人側卽チ製絲
  業者ノ負擔ニシテ吳レヨト云フ、第二ニ荷
  物ノ引渡ハ買人ニ於テ正量檢查ヲ受ケタル
  荷物竝ニ檢査票ヲ人手シテ、現品ノ引合ヲ
  了ッタ時ヲ以テ完了スルト云フコトデアル
  コト、第三ト致シマシテ買人ハ見本用トシ
  テ拜見後千斤ニ付テ十綛ヲ拔取ルコトヲ
  得ルト云フコト、第四ト致シマシテ品質檢
  査是ハ五十本デアリマス、品質檢査供試
  絲竝ニ前項ノ見本絲ハ、無償ニテ買人ニ提
  供スルコト、第五ト致シマシテ買人ノ倉庫
  ニ引込ミタル荷物ニ對シマシテハ、保管料
  トシテ百斤ニ付テ金一圓ヲ賣人ニ於テ負擔
  ヲスルコト、第六ト致シマシテ、荷掛料ハ
  正量ニ依リ取引セラルヽモノニ付テハ之ヲ
  廢止スルコト、是ハ問題ハ無イヤウデアリ
  やっ、第七ト致シマシテ正量檢査ニ用ヰタ
  ル所ノ供試絲ハ賣人ニ返還スルコト、第八
  ト致シマシテ原料檢査ハ供試絲ヲ拔キタル
  後ニ之ヲ爲スコト、檢査ハ請求日若クハ少
  クモ翌日迄ニ完了スルコト、ソレカラ第九
  ト致シマシテ正量以上正量ノ百分ノ二以上
  ノ水分アルモノハ之ガ取引ヲ拒絕スルコ
  トヲ得ル、第十ト致シマシテ受渡量目ハ正
  量千斤ニ對シ二十斤以上ノ過不足ヲ許サナ
  イ、第十一ト致シマシテ賣買兩者ハ當該荷
  物ニ付再度ノ儉查ヲ要求スルコトヲ得ル、
  此場合ニ於テハ代金ノ決濟ハ最後ノ正量ニ
  依ルコト、但シ再儉査ノ費用及ビ供試絲ハ
  請求者ノ負擔トスルコト、第十二ト致シマ
  シテ、代金支拂ハ賣人ノ希望ニ依リ左ノ
  二法ノ一ニ依ルコト、一荷渡完了後十日
  目、千分ノ五引現金拂ノコト、二、荷渡完
  了後三十日目拂ノコト、從來ハ四日目ニ支
  拂テ居ッタノデアリマス、之ニ對シマシテ
  賣人ノ側卽チ製絲業者ノ側ニ於キマシテ
  ハ、第一ノ正量檢查ノ手數料ト云フコト
  ハ是ハ全廢ヲシテ貰ヒタイト云フコトデ
  アリマス、尙ホ正量取引實施ノ爲ニ生ズル
  運搬費ハ賣人ノ側ノ負擔ニシテ是ハ差支ナ
  イ但シ其他總テノ費用竝ニ危險ニ付テハ
  從來ノ慣習ニ依ルコト、ソレカラ第二ニ對シ
  マシテハ原量秤定濟ノ時ヲ以テ、當該荷口ヲ買
  方ニ引渡ヲ了リタルモノトスル、ソレカラ
  第三ニ付テハ同意スルコトハ出來ナイ、第
  四ニ付キマシテハ從來ノ慣習ニ依ルコト、
  第五ニ付テハ異議ナイ、但シ運送及ビ檢査
  中ノ保険料ヲ含ムト云フコト、第六ハ異識
  ガナイ、第七、第八、第九モ異議ナシ、第
  十ハ從來ノ慣習ニ依ルコト、第十一ニ付キ
  マシテハ同意スルコトガ出來ナイ、十二ニ
  付キマシテモ從來ノ慣習ニ依ルコト、斯ウ
  云フ對案ヲ提案致シマシタ爲ニ、輸出業者
  ト製絲業者トノ間ニ於キマシテハ、其後雙
  方協定ヲ致シマシテモ到底一致點ヲ見出ス
  コトガ出來ナイ狀態ニナッテ居ルノデアリ
  マス、本問題卽チ此輸出業者ト製絲業者ト
  ノ間ニ於ケル所ノ紛議、此紛議ノ解決如何
  ト云フコトガ頗ル重大ナル關係ヲ持ノテ居
  ルモノデアリマス、將來生絲ノ取引ノ上ニ
  於キマシテ其取引ノ圓滑ヲ缺キ、又我國輸
  出貿易ノ大宗デアル所ノ生絲ノ輸出ノ上
  ニ、非常ナル關係ヲ惹起シテ來ルモノデア
  リマシテ、極メテ重大デアルト思フノデア
  リマス、ノミナラズ斯ノ如クシテ直ニ本法
  ヲ施行スルト云フコトニナリマシテモ、其
  法ノ成果ヲ收メルコトガ出來ナイノミナラ
  ズ、延テハ我國ノ農家ノ唯一ノ副業デアル
  所ノ養蠶業ニ至大ノ影智ヲ齋スト云フコト
  ハ火ヲ睹ルヨリ瞭然ナルコトヽ思フノデ
  アリマス、此點ガ洵ニ吾々ノ憂應ニ堪ヘナ
  イ所デアリマス、更ニ只今ノ讀上ゲマ
  シタ所ノ輸出業者及ビ製絲業者トノ
  十二箇條ノ問題ニ付キマシテハ若モ
  製絲業者ノ主張ガ通ラズ輸出業者ノ言フ
  ガ儘ニ此問題ヲ片付ケタナラバ、我國
  ノ蠶絲卽チ輸出生絲ノ全體ニ於キマシテ
  約千二百万圓ノ損失ヲ製絲業者ハ受クルト
  云フコトニナッテ居ルヤウデアリマス、是ハ
  細カイ數字ノ計算ヲ所持シテ居リマスケレ
  ドモ、餘リ時間ガ移リマスカラ是ハ省略致
  シマス、其千二百万圓以上ノ製絲業者ノ損
  失ト云フモノハ、是ハ恐ラク農村ニ影響ス
  ルモノデハナカラウカ、製絲業者ノ損失ハ
  軈テ農家ノ副業タル繭ノ販賣ノ上ニ影響シ
  テ來ルモノデハナガラウカ、卽チ吾々ハ二
  百万ノ養蠶家ノ爲ニ非常ニ憂ヒタノデアリ
  マス檢査手數料ヲ徴收スルコトノ可否ハ
  從來任意檢査デアリマシテ、而モ儉查手數
  料ハ徵收シナカッタ、然ルニ此度法律ヲ以テ
  檢査ヲ强制致シマスルニ付テ檢査料ヲ取ル
  ト云フコトハ、是ハ如何ナモノデアラウカ、
  吾々ハ殊ニ此儉査料ト云フモノハ、極メテ
  僅少デハアリマスルケレドモ、自然ニ農家
  ノ副業ノ上ニ影響シテ來ルモノデハナイカ
  ト云フコトヲ心配致シマシテ、若シ出來得
  ルナラバ、從來任意檢査ニ於テ手數料ヲ徵
  收シナカッタト同様ニ、强制儉査ノ場合ニ於
  テハ尙更檢査料ハ徵收セズニ置クコトガ出
  來ナイカ、所謂檢査手數料ハ徵收シナイ方
  ガ穩當デハナカラウカ、斯ウ云フ意味ニ於
  キマシテ、此點ニ付テハ十分自分ノ愚見ノ
  アル所ヲ述べ又政府ノ所見ヲ質シタノデ
  アリマス、尙ホ此問題ニ付キマシテハ只
  今政友合ノ隅田君ヨリ詳細ナル御說明ガア
  リマシテ、隅田君及ビ加藤君ヨリ極メテ熱
  心ナル質問應答ヲ重ネマシタノデアリマシ
  テ、吾々ハ大ニ傾聽致シタノデアリマス、
  政府ノ言フ所ニ依リマスレバ、從來ハ正量
  檢査ノ奬勸時代デアッテ、成ベク多ク檢査ヲ
  受ケサシムルト云フ意味ニ於テ手數制ヲ徴
  收シナカッタ、然ルニ最早十二分ニ其基礎モ
  發達シテ、又當業者モ其必要ヲ認メテ來ル
  ヤウニナッタノデアルカラ、今囘ノ法律ヲ以
  テ之ヲ强制スル、强制スル以上ハ他ノ强制
  檢査ニ依ル所ノ手數料ヲ徵收シテ居ル振合
  モアリ、又財政上ノ關係モアルガ故ニ、之
  ヲ徴牧スルハ至當デアルト云フ解釋ナノデ
  アリマス、又檢查ノ結果ニ依リマシテ取引
  上ニ受檢者ノ品物ニ對シテ市價ヲ高カラシ
  メ、所謂受檢者ノ利益トナルコトデアル、其
  受益者、卽チ特定ノ人ノ利益ヲ享有スルモ
  ノニ對シテ、國家全般ニ亙ノテ其費用ヲ負
  擔スルト云フコトハナイノデアルソレハ
  極メテ不條理デアル、理論上適當デナイ尙
  ホ吾々ノ心配致シテ居リマス此農家、卽チ
  農蠶家ノ副業ノ上ニ及ボシマス所ノ影響ニ
  付テ、輸出生絲ノ市價ガ昂上致シマシテ、
  其結果自然ニ繭ノ値段ノ上ニモ好影響ヲ與
  ヘルモノデアル、卽チ免ニ角儉査手數料ノ
  影響ハ所謂生絲ノ聲價ガ高マッタ結果トシ
  テ、却テ農家ノ利益トナルト云フ意味ノ答
  辯ガアッタノデアリマス、此點ニ付キマシ
  テハ成ベク手數料ヲ取ラナイ方ガ宜イト思
  フノデアリマスケレドモ、又是ハドチラニ
  モ道理理窟ノアルコトデアリマシテ、唯
  國家ガ財政上ノ關係モ餘程考慮セネバナラ
  ヌコトヽ思ヒマシテ、ソレ故ニ私ハ此手數
  料ヲ取ルト云フコトハ最早已ムヲ得ヌコト、
  デアルト諒解シタノデアリマス、免モ角モ
  ソレヨリモ圓滿ニ本法ヲ施行シマシテ、十
  分ナル成果ヲ擧ゲテ我ガ蠶絲業ノ發達ヲ圖
  ルト云フコトガ最モ犬切ナルコトヽ思フノ
  デアリマス、此意味ニ於キマシテ我ガ蠶絲
  業ノ上ニ於キマシテハ未ダ施設經營シナ
  ケレバナラヌコトガ多々アルノデアリマ
  ス、例ヘバ蠶絲局ノ設置ノ如キ、或ハ蠶絲
  業ニ於キマスル金融機關ノ整備ノ問題ノ如
  キ、其他幾多吾々ハ蠶絲業ノ上ニ要望致シ
  テ居ルコトガアルノデアリマスガ、何時モ
  財政上ノ關係ニ於キマシテ吾々ノ要望ハ達
  セラレテ居ラヌノデアリマス、常ニ此點ニ
  就キマシテハ吾々遺憾ヲ感ジテ居ルモノデ
  アリマスガ、斯ウ云云折柄デアリマスカラ、
  假令此手數料ガ積極的ニ直ニ是等蠶絲業ニ
  對スル所ノ施設ニ振向ケラレナイト致シマ
  シテモ、消極的ニハ國ノ財政ニ餘裕ヲ生ジ
  マシテ、ソレニ依シテ將來蠶絲業ノ上ニ於
  テ吾々ノ希望シテ居ル要望ヲ實現サスト云
  フコトモ出來得ルト思フノデアリマス、又
  政府ニ於キマシテモ、矢張是等ノコトニ付
  テハ相當努力スルコトニ付テ聲明セラレテ
  居ルノデアリマスカラシテ、此意味ニ於キ
  マシチ手數料ノ徵收ト云フコトニ付テハ
  賛成スルノ已ムヲ得ヌコトニナッテ居ルノ
  デアリマス、唯〓恐ルヽ所ハ前ニ申シ述べ
  マシタ通リ、本問題、卽チ手數料ノ徵收問
  題ヲ中心ト致シマシテ、輸出業者ト製絲業
  者ノ間ニ起ッテ居リマス紛議如何、此問題
  ガ洵ニ重大デアリマス、此問題ノ解決ハ洵
  ニ重要デアリマスルガ故ニ政府ガ本法ヲ
  施行スル所ノ施行期日、卽チ勅令ニ讓シテ
  居リマス所ノ施行期日ハ勅令案ノ未定稿
  ニ依リマスト云フト、八月一日ヨリ施行ス
  ルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、
  八月一日ノ施行デアリマスト云フト、來ル
  ベキ春蠶ノ絲ヨリ既ニ之ヲ施行サレルコト
  ニナルノデアリマスガ、只今ノ紛議ノ狀態
  カラ見マスト云フト到底急速ニ圓滿ナル
  解決ヲ付ケルト云フコトハムヅカシイノデ
  アリマス、ソレ故ニ八月一日ノ本法ノ施行
  ト云フコトハ甚ダ面白クナイ、斯樣ナ時期
  ニ於テ本法ヲ施行スルコトハ大ニ考慮シナ
  ケレバナラナイ、私ハ此理由ヲ以チマシテ
  曩ニ委員會ニ於キマシテ、此問題ノ圓滿ナ
  ル解決ヲ爲シ、然ル上ニ於テ本法ヲ施行ス
  ルト云フコトガ最モ適當デアルト考ヘル
  之ニ就テハ凡ソ大正十六年一月一日以後ニ
  於テ本法ヲ施行スルト云フコトガ適當デア
  ルト思フ、其間ニ相當政府モ努力ヲセラレ
  マシテ製絲業者及ビ輸出業者トノ間ニ於ケ
  ル關係ヲ圓滿ニ解決致シマシタナラバ本
  法ヲ施行スルニ都合ガ宜カラウト考ヘマシ
  タノデ、此點ニ付テ政府ノ所見ヲ質シタノ
  デアリマス然ルニ早速農林大臣ハ明確ニ
  責任ヲ以テ之ニ應ズルト云フ聲明ヲ致サレ
  タノデアリマス是ハ委員長報告、又私ノ
  前段申述べマシタ通リデアリマス、サウシ
  テ政府ハ本法施行ニ付テ必ズ吾々ノ希望ス
  ルガ如キ此紛議ヲ十分ニ解決ヲ付ケテ、其
  上ニ於テ大正十六年一月一日以後ニ於テ施
  行スルト云フコトニ同意サレマシタノデア
  リマスカラ、宜シク政府ハ本問題ニ對シマ
  シテ最善ノ努力ヲ拂ハレムコトヲ重ネテ望
  ンデ置ク次第デアリマス、本法ノ施行ヲ餘
  リ急ギマス爲ニ、此問題ノ解決ニ對シテ餘
  リニ干涉壓迫ヲ加ヘルト云フコトハ是一
  宜シクナイノデ無理ナル解決ヲ爲サシメ
  マシテハ尙ホ將來ニ禍根ヲ貽ス虞ガアリ
  マス故ニ、彼等當業者ヲシテ圓滿ニ、自由
  ニ、且ツ公正ニ此問題ヲ解決サスルヤウニ、
  政府トシテ相當努力サレムコトヲ希望致シ
  テ置ク次第デアリマス、次ニ吾々ハ一般養
  蠶業者ニ對シマシテ、卽チ農村ノ立場ニ於キ
  マシテ、常ニ不利益ヲ認メテ居ルコトハ地
  方多數ノ製絲業者ノ資金ノ關係デアルノデ
  アリマス、大ナル基礎ヲ持ヲテ居リマスル
  所ノ製絲業者ハ左マデデハアリマセヌト思
  フノデアリマスガ、併ナガラ今日ノ製絲業
  者ハ實ニ多數デアリマシテ、多數ノ製絲業
  者ハ地方ニ於テ極メテ小規模ノ經營ヲ致シ
  テ居ル者デアリマス、此小規模ノ製絲業者
  ハ〓ネ資金ガ缺乏致シテ居ルノデアリマ
  ス此資金ノ融通ニ付キマシテハ常ニ輸
  出業者ノ保護、援助ヲ受ケテ居リマス、是
  ハ殆ド大部分ト言ッテモ宜カラウト思フノ
  デアリマス、詰リ先賣ノ契約ニ依リマシテ、
  資金ノ供給ヲ仰イデ、サウシテ農家ノ繭
  ヲ買出スト云フコトガ殆ド大部分デアル
  ノデアリマス、カルガ故ニ常ニ輸出業者ニ
  依リマシテ、壓迫掣肘ヲ受クテ居ルノデア
  リマス、其壓迫掣肘ヲ受ケテ居ル取引上
  ノ不利益ヲ受ケテ居ル結果ト致シマシテ
  繭ノ買入ニ影響ヲ來シテ參リマス、繭ノ買入
  ガ圓滿ニ行ハレマセヌ結果、直ニ是ハ農
  家ノ副業ニ轉嫁サレテ來ルノデアリマス、
  今回出業者ヨリ製絲業者ニ要求致シマシ
  タ重大ナル案件モ、卽チ其一ツデアルト私
  ハ信ズルノデアリマス、故ニ政府ニ於キマ
  シテ、將來製絲業者ノ資金ノ圓滑ト其潤澤
  ノ途ヲ講ズルコトニ付テ、今一段ノ考慮ヲ
  煩シタイ、之ヲ望ンデ已マナイノデアリマ
  ス、卽ヲ政府ニ於テハ一面ニ於テ農村振興
  ニ付テ相當ノ施設ヲ爲シテ居ルト云フコト
  デアリマスガ、農村振興ニ對シテハ最モ重
  大ナル關係ヲ持シテ居ルモノデアリマス、
  故ニ此製絲業者ノ資金ノ關係ニ付キマシテ
  モ、是亦政府ノ責任アル所見ヲ伺ッタノデ
  アリマス、之ニ對シテモ亦先ニ申シマス通
  リ農林大臣ヨリ吾々ノ希望ニ應ズベク十
  分ナル考慮ヲスルト云フ聲明ヲ得タノデア
  リマス願ハクバ嘗テ大正九年ノ當時及ビ
  大正十二年ノ當時、政府ガ製絲資金ノ供給
  ニ付テ、相當幹旋ヲ致シマシテ、又效果ヲ
  收メマシタ其實績ニ鑑ミラレマシテ、低利
  資金ノ供給ナリ、或ハ特殊銀行其他一般金
  融業者トノ聯絡ニ付キマシテ、政府ハ出來
  得ル限リノ方策ヲ講ジテ、以テ此蠶絲業ノ
  發達ノ上ニ萬違算ナキヲ期セラレンコトヲ
  希望スル次第デアリマス、此二個ノ條件ニ
  付キマシテハ〓ネ當業者ニ於キマシテモ、
  滿足ノ意ヲ表シテ居ルノデアリマスカラ、
  私ハ以上ヲ以チマシテ、二個ノ附帶條件ヲ
  附シメル所ノ原案ニ贊成スル者デアリマス
  (拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=82

  ---

• 083・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　二木洵君
  〔二木洵君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=83

  ---

• 084・二木洵

  ○二木洵君　此輸出生絲法案ノ實現致シマ
  シタコトハ我ガ國蠶絲業界ノ爲ニ最モ喜
  ブベキコトヽ私ハ信ズルノデアリマス、而
  シテ此法案ニ對シマシテハ大體ハ賛成ヲ表
  スル者デアリマスガ、此檢査手數料ヲ徵ス
  徴シナイト云フコトニ付キマシテ、私ハ隅
  田君ノ修正案ニ賛成ノ意ヲ表スル者デアリ
  マシテ、隨ヒマシテ其他ノ二箇條モ矢張同
  樣賛成ヲ表スル譯デアリマス、先ヅ賛成
  ヲ表スベキ理由ト致シマシテハ、我國ノ蠶
  絲業貿易ガ今日マデノ隆昌ヲ致スニ付キマ
  シテハ横濱ニ於ケル所ノ取引ノ狀態ニ付
  キマシテ、非常ニ不都合ナ箇條、多年ノ陋
  習ガ有ノタノデアリマスガ、是ハ何處デモ
  改善ヲ致サナケレバ世界ノ市場ニ於テ正シ
  キ取引ヲ行ッテ、我國ノ生絲ノ聲價ヲ向上
  セシメルコトガ出來ナイト云フ所以ニ於キ
  マシテ、政府ガ見ル所アリ又民間ノ人ヒモ
  多年ノ要望デアリマシテ、玆ニ生絲儉査所
  ノ設立ヲ見ルコトニナリ、随ッテ日ナラズ
  シテ之ガ實施ヲ見ルト云フ運ビニナッタノ
  デゴザイマスガ之ニ付キマシテハ多年ノ
  弊害ヲ一洗スルニ付テ、種々ナル困難ノ此
  所ニ横ッテ居ルコトハ固ヨリ當然デアリマ
  ス、政府者ト致シマシテモ十分ノ努力ヲ此
  所ニ費サナケレバ此實現ハ覺束ナイコトハ
  固ヨリ至當デアリマスガ、之ニ付キマシテ
  私ノ見ル所デハ、政府ノ取調ガ甚ダ壮漏デ
  アル又堅イ確信ヲ以テ之ニ臨ンデ居ラナ
  カッタ形跡ガアリハシナイカト思フノデア
  リマス、ソレハナゼカト申シマスレバ先
  年來建築ニ著手シ斯樣々々ノ次第デ進ンデ
  行ケバ此實績ガ速ニ擧ガルト云フ所ノ見
  込ヲ立テナケレバナラヌノデアリマス、取
  引上ニ於ケル所ノ種々ナル弊害、錯雜致シ
  マシタル事柄ニ付テハ、十分ノ審査ヲ致シマ
  シタナラバ、此實施ノ場合ニ當リマシテ、
  遽ニ輸出業者ト、或ハ製絲業者トノ間ニ紛
  議ガ生レルト云フヤウナコトガ有ルベキ筈
  デハナイノデアリマス(拍手)又政府ノ所見
  ハ八月一日ヨリ之ヲ實施シヤウト云フ御意
  見デアッテ、旣ニ豫算モ御提出ニナッテアリ
  マスヤウナ次第デアリマシテ、茲ニ今承リ
  マスレバ、丹下君ノ御希望ニ對シマシテハ
  之ヲ肯定シテ居ル卽チ大正十六年ノ一月
  一日以降ニ於テ、此紛議ヲ解決シテ然ル後
  ニ實行シテ貰ヒタイト云フ希望ヲ肯定シテ
  居ル所ハ、卽チ政府ハ曩ニ八月一曰ヨリ實
  行セントスルト云フ所ノ御趣意ニ對シテハ
  變更シテ居ル、何ト不見識ナル次第デハア
  リマスマイカ(拍手)是ハ卽チ此蠶絲業ノ改
  良ニ付テノ熱心ノ足ラザル所ヲ元シテ居ル
  一點デハアルマイカト私ハ思フ(拍手)又
  私ハ此蠶絲業ノ方面ノ主管大臣ト致シマシ
  テ、此委員會ニ御臨ミニナリ、又本會議デ
  御辯明ニナッテ居ル所ヲ見マシテモ、ドウ
  シテモ此業ニ對スル御熱心ノ程度ガ割合ニ
  深イモノデナイト云フコトノ鑑定ヲシナケ
  レバナラヌコトハ甚ダ遺憾ニ思フノデアリ
  マス(拍手)卽チ何デアルカト申シマスレ
  同僚隅田君ノ質問ニ對シマシテ、我國
  ノ蠶絲業ノ根本策ハ如何デアルカト云フコ
  トニ付キマシテ、先程隅田君ガ申述ベラレマ
  シタガ、私モ之ヲ重ネテ言フコトハ皆樣ニ
  對シテ甚ダ御迷惑ノ樣デアリマスガ、私
  深ク信ズル、我國ノ蠶絲業ハ實ニ我國ノ國
  運ヲ繋グ所ノモノデアル此爲ニハ多少ノ
  時間ヲ割愛セラレンコトヲ希望スルノデア
  リマス、早速農林大臣ハ良品ヲ廉賣スル
  斯ウ云フ御趣意デアリマス、尤モ貿易ノ上
  カラ參リマシタナラバ適當ナル御趣意デ
  ゴザイマセウガ、併ナガラ我國ノ蠶絲業ト
  申シマスモノハ、我國特有ト申シテ宜イカ、
  特殊ノ加工生產品デアリマシテ、一般ノ商
  品ト同等視スベキモノデハナイノデアリマ
  ス、之ヲ良品ヲ造ルト云フナラバ、少クト
  モ良品ヲ造ルダケノ總テノ徑路、順序、方
  法、計畫ト云フモノガ立タナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、良品ヲ造ル方法ト申
  シマスレバ、我國今日ノ蠶絲業ハ今日マ
  デ、發達シテ參リマシタケレドモ、是ハ不
  規則-自然ニ委セマシタ所ノ不規則ナル
  所ノ發達デアリマスルガ爲ニ、製絲ト云フ
  モノヲ順次改良致シテ參リマシテモ、固ヨ
  リ、皆サンノ御存知ノ通リ蟲ノ巢デアリマ
  ス、繭ト云フモノハ蟲ノ巢デアリマスルカ
  ラシテ、其品位、種類ニ依シテ「デニール」
  ノ不整ハ澤山アリマス、類節ノ多イノモ澤
  山アリマス、色ミノ事ガ常ニ亞米利加ノ市
  場ニ於テ小言ヲ言ハレル種デアル、之ヲ改
  良致シマスル、徹底的ニ改良ヲスルコトニ
  致シマシタナラバ先以テ其品位、种類ノ
  改良カラ企テナケレバナラヌノデアリマス
  今日マデ國立蠶業試驗場ニ於テ、是等ノ試
  驗〓究ヲ重ネテハ居リマスルケレドモ、多
  クハ色〓ソレヲ弄リ物ニ致シ、オモチヤニ
  致シテ居ル、或ハ名ヲ〓究ニ藉リマシテ、
  自己ノ學位ノ製造ニ取掛ラレルヤウナ人こ
  モ今日マデハアッタノデアリマス、左樣ナ
  コトヲ致シマシテ、國費ノ多クヲ濫費致シ
  マシテ、其實績ハ中ニ擧ッテ居ラナイコトハ吾
  吾御同樣日本人ノ一ノ缺陷デアラウトモ思
  ヒマスルケレドモ、斯ウ云フコトハ今日マ
  デ多クアル又將來ニモアラウト思ヒマス
  カラ、私ハ之ヲ憂ヘマスガ、是等ハ別ト致
  シマシテ、此〓究ト云フコトガ、徹底シナ
  イ、而シテ後ニ其實績ノ擧ラナイ所カラ、
  昨年アタリカラ農林省ニ蠶業試驗場等ノ經
  費モ大分減ラサレテ、施設モ寂シクナッタ
  ノデアリマス、左樣ナヤウナ譯デアリマス
  カラ、隨テ新〓究、新發見ナドノ現ハルヽ
  次第ハナイノデアリマス、茲ニモ良品ヲ造
  ル所ノ徑路ガ足リナイノデアリマス又製
  絲ノ能率ヲ增進シナケレバナラヌ、之ガ卽
  チ良品ヲ造シテ、比較的廣價ニ行ケル要素
  デアリマスカラ、良品ヲ造ル爲ニハ-廉
  價ニスル爲ニハ能率ヲ增進シナケレバナラ
  又、製絲能率增進ニ付テハ各、業者ガ競ノ
  テ、其〓究ヲ進メテ居リマスル之ニ對シ
  マシテ、政府ハ餘リニ其助長獎勵ノ策ヲ執フ
  テ居ルト見受ケラレナイノデアリマス、又
  政府ガ助長、獎勵ノ策ヲ執ノテ居ル如クニ
  御吹聽ニナッテ居リマスルケレドモ、其施設
  ノコトハ何デアルカト言ヘバ具體的ニ表
  ハレテ居リマスルモノハ、此共同倉庫、繭
  倉庫、乾繭装置ト云フコトデアリマスルケ
  レドモ、是モ一部ノ仕事デアリマシテ、決
  シテ此增收ノ計畫アハナイノデアリマスル
  シ、又良品ヲ造ル、卽チ品質改善ニ資スル
  トコロ絕對ニナイデハアリマセヌケレドモ、
  甚ダ僅カナモノデアリマス、ソレデ品質改
  善ニ資スルノ途ハ何ニ依シテ立ッテ居ルカト
  言ヘバ現在デハ遺憾ナガラ別ニ是ト言ソ
  テ見ルベキモノハナイノデアリマス政府
  ガ鼻ヲ隆クシテ言ハレル所ノ共同繭倉庫
  乾繭装置ト云フモノハ單ニ取引上ノ一緩
  和策ニ過ギナイノデアリマス、斯樣ナコト
  デハ到底徹底シタルコトハ出來ナイノデア
  ラウト思ヒマス、而シテ又安ク賣ルト云フ
  コトハ、御趣意デアリマスケレドモ、是、
  先程モ申上ゲマシタ通リ、他ノ商品ト違ヒ
  マシテ此生絲ノ如キヲ安ク賣ルコトヲ本旨
  トセラレテハ吾々堪シタモノデハナイト
  思ヒマス、現在ニ於キマシテハ絲價ハ正ニ
  一千七百圓臺ニナッテ居リマスル安クナ
  ルト云フコトヲ御希望デアッテ、モット安ク
  賣ラレテハ吾々實ニ大變ナコトデアラウト
  思フノデアリマス、ドウカ此點ニ付キマシ
  テハ絲價ノ維持トカ、絲價安定ノ策ト云フ
  コトガ極メラ緊要ナモノデアッテ、之ヲ農
  林大臣ニ於テ御考慮ノ中ニ加ヘラレ、否御
  考慮ノ主タルモノトシテ戴キタイト思フノ
  デアリマス(拍手)之ニ對スル御抱負ノ如キ
  ハ遺憾ナガラ承ルコトガ出來ナイノデアリ
  マシテ、委員會ノ模樣ヲ承リマスレバ、斯
  ウ云フコトニ付テ、半官半民ノ會社ノ如キ
  モノヲ造ノテ、サウシテ絲價安定ニ資スル
  所アルノ考ハナイカト云フヤウナコトニ對
  シテモ、ソレ等ノ如キ考ハ更ニ無イト云フ
  御話デアリマスガ、我ガ蠶絲業ノ行詰ラン
  トスル、卽チ一面ニ於キマシテ外國ノ生絲
  ノ發達及ビ人造組絲ノ脅威ニ依リマシテ、
  何所迄モ改善ヲシテ行クベキモノデ、型
  之ヲ一貫シテ行クト云フ方針デナケレバ
  到底前途ノ發達ヲ期スルコトノ出來ヌト云
  フヤウナモノデアリマシタナラバ、特ニ此
  助長政策ニ付キマシテハ一層ノ留意ヲセ
  ラレンコトヲ望ンデ止マザル者デアリマ
  ス然ルニ此改良發達ヲ主トシテ行キマス
  ル所ノ正量取引ニ對シマシテノ御意兄ノ如
  キモ前段申述ベマシタヤウナ次のデアツ
  テ、政府ニ方針ガ立ッテ居ナイ、斯樣ナコ
  トデアルナラバ到底比將來ニ橫ハル所ノ
  幾多ノ難局ヲ排除シテ行キマシテ、我國ノ
  蠶業-蠶絲業ヲ何時迄モ發達シテ行クト
  云フコトニ付テ、非常ニ憂慮ヲ懷カザルヲ
  得ナイノデアリマス、私ハ我國ノ此貿易ト
  云フモノヲ發達致シテ行キマスルニハ蠶
  絲業ヲ振興致シマスルコトガ一番唯一ノ捷
  徑デアルト思フノデアリマス、ソレガ爲ニ
  全國ニ於ケル所ノ蠶絲業ヲ十分ニ指導奬勵
  致シマシテ、發達セシメルコトガ洵ニ容易
  イコトデアラウト思フ、現在ノ狀態ニ加フ
  ルニ、各府縣共悉ク〓絲業ニ關スル所ノ指
  導員ヲ設ケテ、ソレ〓〓適當ナル方法ヲ立
  テヽ行キマシタナラバ、蠶絲業ト云フモノ
  ハ決シテ冒險ノ仕事デハナイ、唯こ國ト致
  シマシテモ玆ニ絲價ノ安定ノ出來ル所ノ
  策ヲ一ツサヘ立ッテ行キマスルナラバ安
  全ニ收穫ヲ增加セシメルト云フヤウナコト
  ハ極メテ樂ナコトデアリマス、サウシテ今
  日ノ七百五十万石ノ產繭ヲ一千万石ニ致シ
  マシテ、或ハ八億八千万圓ノ較出貿易ヲシ
  テ十六億圓ニ致シマシテ、我國ノ歲計豫算
  全部ヲ負擔スルト云フコトニ致シマスル位
  ナコトハ決シテ至難ナコトデナカラウト
  私ハ信ズルノデアリマス、斯樣ナ大抱負、
  確信ヲ持ッテ農林大臣ガ臨マレタナラバ
  決シテ此輸出正量取引ノ如キ、簡單ナル問
  題ヲ解決スルニ、イト易イ事デアルト思ヒ
  マス此意味ニ於キマシテ儉査手數料ノ如
  キ微々タルケチ臭イ所ノ考ヲ持シテ居ラズ
  シテ、サウシテ是ハ我國ガ此蠶業ノ爲ニ利
  益スルコトデアッテ、決シテ一部ノ少數者
  ガ利益ヲ受ケルナドト云フモノデハナイノ
  デアリマス、卽チ利益ヲ受ケルノハ我國ノ
  全體デアル、我國全體ガ享益者デアリ受
  益者デアル以上ハ我國ノ國費ヲ以テ我國
  全體ガ受益者デアル以上ハ我國全體ノ國
  費ヲ以テ支辨スルニ何ノ不可カアラント信
  ズルノデアリマス、ソレ故ニ儉査手數料ヲ
  取ラヌコトニ賛成致シマシテ、而モ此檢查
  手數料ヲ徴サナイト云フコトニナリマスレ
  ハ眼前ニ横ヲヲ居ル横濱ノ紛議ナドト云
  フモノハ一掃シテ直ニ實行ガ出來ルモノ
  デアルト深ク確信スルノデアリマス、此意
  味ニ於テ贊成ノ意ヲ表シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=84

  ---

• 085・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)、　村上國吉君
  〔村上國吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=85

  ---

• 086・村上國吉

  ○村上國吉君　私ハ只今討論中ニ係リマス
  此輸出生絲檢査法案ニ付キマシテ丹下君
  ノ附ケラレタル希望條什ト共ニ、委員長ノ
  報告ニ贊成シ、隅田君ノ御提出ニ係ル所ノ
  修正意見ニ反對スル者デアリマスルガ極
  メテ簡單ニ其理由ノ存スル所ヲ申述ベタイ
  ト存ジマス隅田君ノ修正ノ御意見ハ要
  スルニ手數料ヲ取ラナイト云フコトニ繫
  テ居ルト存ジマス、此手數料ノ問題ニ關シ
  マシテハ此手數料ヲ徵收スルト云フコト
  ヲ法律ノ上ニ規定セズシテ、命令デ以テ規
  定スルト云フコトハ、憲法ノ精神ニ反スル
  モノデアルト云フ說ガアルノデアリマス、
  又此法案ニ依ル所ノ生絲ノ儉査ハ强制檢査
  デアル、强制デ檢査ヲスルモノニ對シテ、
  手數料ヲ徵收スルコトハ不當ナリト云フ
  議論ガアルノデアリマス、又更ニ蠶業政策
  上ノ見地カラ致シマシテ、手數料ヲ徴スル
  コトヲ以テ不可ナリトスル議論ガアルノデ
  アリマス憲法上ノ精神ニ反スルヤ否ヤト
  云フコトニ付キマシテハ委員會ニ於キマ
  シテモ、數次ノ質疑應答ガ重ネラレタコト
  デアリマスルガ、政府ノ主張スル所ニ依リ
  マスルト憲法第六十二條ノ第一一項ニ依ッテ、
  報償ノ性質デアリマスカラ、此手數料ヲ徴
  收スルト云フコトハ、何等憲法ノ違反デハ
  ナイ、卽チ租稅ト全ク其性質ヲ異ニスルモ
  ノデアルカラシテ、此手數料ノ徵收ハ之ヲ
  命令ニ讓ルノデアルト云フ說明ヲ致シテ居
  ルノデアリマスルガ、此解釋ニ付キマシテ
  ハ私共ハ之ヲ妥當ナリト認メルモノデア
  リマス、尙ホ其詳細ニ至リマシテハ費
  クハ委員會ノ速記錄ニ依シテ、能ク御諒解
  ヲ求メタイノデアリマスルガ、私ガ玆ニ主
  トシテ此手數料ノ問題ニ付テ論ゼント欲ス
  ル所ハ先程隅田君ノ述べラレタル手數料
  不徴收說、卽チ隅田君ノ手數料ヲ取ラナイ
  ヤウニシヤウト云フ修正意見ハ蠶業政策
  上ノ見地カラ來テ居ルモノデアルト解釋ヲ
  致スノデアリマス、隅田君ノ所說ニ付テ少
  シク之ヲ申シテ見マスルナラバ、其手數料
  ヲ取ルコトヲ可ナリトスル根據ヲ、隅田君
  ハ凡ソ四ツニ分ケラレテ居ルノデアリマ
  ス第一ハ我國ノ蠶絲業ハ尙ホ大ニ保護奬
  勵ヲ要スル仕事デアル、然ルニ此保護奬勵
  ヲ要スル所ノ蠶絲業ヨリシテ檢査料ヲ徵
  收スルト云フコトハ其保護獎勵ノ精神ニ
  反スルガ故ニ不可ナリト斯ウ仰セラレルノ
  デアリマス、第二ノ論據ハ此法案ノ如キ
  海外市場ニ其取引ノ延長セザル正量取引ノ
  實行デアルカラシテ、是ハ畢竟我國ノ製絲
  家ニ多大ナル損失ヲ負擔セシムルモノデア
  ル、損失ヲ來ス上ニ更ニ之ニ檢査料ヲ負ハ
  セルト云フコトハ洵ニ宜シクナイ、斯ウ云
  フ御論旨デアルト承知ヲ〓シア写リマス
  第三ニハ政府ハ驗〓料ハ甚ダ輕微ナヒノ
  デアル故ニ、是位ヲ檢會手數料ハ當業者ノ
  負擔シ得ナイモノデナイ、斯ウームフケレド
  モ事實ハ決シテサウデハノイ、政府ノ豫
  定シテ居ルガ如キ手數料、卽チ一俵ニ對シ
  テ一圓ノ手數料ヲ負擔セシムルト云フコト
  ハ製絲家トシテハ甚ダ重キ負擔デアル、
  斯ウ仰セラレテ居ルノデアル第四ノ點ハ
  政府ハ正量取引實施ノ結果トシテ、從來製
  絲家ノ負擔ニ屬シテ居ッタ所ノ荷掛金ト云
  フモノガ、之ニ依ッテ一掃サレル、卽チ從來
  凡ン一俵ニ付テ九十錢納メテ居ッタ所ノ此
  荷掛金ト云フモノガ無クナルノデアルカ
  ラ、ンレデ手數料ヲ一俵ニ付テ一圓ヅヽ
  取シテモ、其甲ナル者ガ乙ナル者ニ形ガ變ル
  ト云フダケデアッテ、殆ド當業者ノ負擔ヲ論
  ズル程ノ問題デナイ、斯ウ云フケレドモ併
  ナガラ此荷掛金ト云フモノハ、多年ノ商習
  慣ヲ爲シテ居ルモノデアルカラシテ、是ガ
  假令不合理ナ負擔デアルト致シマシテモ、
  此伺掛金ガ、此正量取引ガ實行サレルコト
  ニ依ッテ、綺麗ニ廢止サレルカ否カハ大ナ
  ル疑問デアル斯ウ云フ見地カラ致シマシ
  テ論ゼラレテ居ルノデアリマス、其中デ先
  刻モ此壇上ニ於キマシテ、隅田君ハ我國ノ
  蠶絲業ハ大ニ保護獎働ヲ要スル、然ルニ政
  府ハ一向之ニ對シテ意ヲ拂シテ店ラヌト云
  フ所ノ見地カラ致シマシテ、段々ト論ゼラ
  レタノデアリマシタガ、尙ホ又只今ハ二木
  君ヨリシテ同樣ノ點ニ於テ縷々御話ガア
  リマシタ、此檢査手數料卽チ一俵ニ付テ
  一圓ト云フモノガ蠶絲業ノ奬勵發達ノ上
  ニドレ位ノ影響ノアルモノデアラウカト
  云フコトヲ考ヘテ見マスルナラバ位
  圓ノ手數料ハ原量ノ繭一升ニ對シテ、僅
  ニ六毛ニシカ當ラナイ程度ナノデアリマ
  ス、私共ハ我國ノ蠶絲業ガ、原量一升ニ付
  テ凡ン六毛ニ當ル所ノ手數料ヲ取ルトカ取
  ラヌトカ云フコトガ、此蠶絲業ノ前途ニ對
  シテ、大ナル支障ヲ來スガ如キ程度ノ問題
  ノモノデナイト斯樣ニ考ヘルモノデアリマ
  ス(拍手)或ハ又二木君ハ政府ハ良品ヲ造
  ルノガ目的デアルト云フガ良品ヲ造ルノ
  ニハソレー〓ノ方法ガナクテハナラナイ、
  其適當ナル方法ヲ講ゼズシテ良品ヲ造ルト
  云フコトヲ言フノハ不都合デアルト云フ
  980円
  意味合ニ〓テノ御話デアリマシタガ、手
  思フ、此生絲檢査法ヲ施行シテ、正量取引
  ヲ行フト云フコトガ、卽チ是レ我國ニ於テ
  生絲ノ良品ヲ造ル一ツノ有力ナル方法デア
  ルト斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
  何故カナレバ我國ノ當業者ガ此正量取引
  ノ實行ヲ望ムヤ既ニ久シイ問題デアリマ
  ス其久シキニ亙ラテ、此取引法ノ實行ヲ望
  ミ來ッタ所以ノモノハ折角彼等ガ苦心ヲ
  シ努力ヲシテ、立派ナル所ノ製品ヲ造上ゲ
  マシテモ、從來ニ於ケル所ノ生絲取引ノ關
  係ニ於キマシテハソレダケノ努力ガ認メ
  ラレナイ、ソレダケノ働キガ報ヒラレナイ
  ト云フ點ニアッタノデアリマス、此正量収
  引ガ行ハレルト云フコトハ之ニ依シテ其
  取引ニ十分完全ナル改善方法ノ全キヲ得タ
  モノトハ申シマセヌケレドモ、併ナガラ是
  ガ實行サルヽコトニ依シテ、我國ニ從朱行
  ハレタ生絲取引ノ上ニ於テ餘程ノ改善ガ出
  來得ルモノデアルト云フコトヲ吾々ハ認メ
  ルモノデアリマシテ、斯樣ナ方法ヲ用ユル
  コトガ即チ良品ヲ造ル所ノ一ノ有力ナル手
  段ナリ方法デアルト、斯樣ニ信ズルノデア
  リマス、隅田君ノ述ベラレタル檢査料ヲ徵
  收スルコトハ不可ナリトスル最モ力ヲ籠メ
  テ檢查料ノ徵收ニ反對サルヽ所ノ點ハ先
  ニ私ガ申シマシタル所ノ第二ノ點ニ在ルト
  思フ、ソレハ此正量取引ヲ行フト云フコト
  ニ致シマシタ所ガ、內地限リナンデアル、
  今直ニ是ガ海外ニ延長サレナイコトニナッ
  テ居ル、故ニ當分ノ間ト云フモノハ、此法
  ノ施行ニ依ノテ儲ケル者ハソレハ輸出商デ
  アッテ、生絲家ト云フ者ハ悉ク、是ガ爲ニ損
  失ヲ致サナケレバナラヌモノデアル此前
  提ノ下ニ斯樣ナル結果ヲ來スモノデアルニ
  モ拘ラズ其上ニ檢杏料ヲ徵收シテ、生絲
  家ノ負擔ヲ重クスルト云フコトハ延イテ
  我ガ蠶絲界ノ前途ニ洵ニ寒心スベキ結果ヲ
  來スモノデアルト云フ意味ニ於テ、力ヲ極
  メテ此徵收ニ反對セラレテ居ルモノト私ハ
  解釋シテ居リマス、政府ガ本案ヲ施行スル
  上ニ於キマシテ手數料ヲ徵收スルト云フコ
  トハ此正量檢査ヲ施行シテ、正量取引ガ
  行ハレルコトニナッタナラバ、當然ワレハ
  我國ノ生絲家ノ爲ニ、換言スルナラバ、我
  ガ蠶絲界ニ必ズ利益ヲ齎ラスモノデアル
  此特別ナル所ノ利益ヲ受クル者ニ對シテ、
  此法ノ施行ニ要スル經費ヲ負擔サセルト云
  フコトハ決シテ是ハ不當デナイト云フコ
  トノ見地ニ立ノテ居ル者デノリマス、隅山
  君ニ於キマシテモ、正量以引ト云フコトガ
  合理的デアッテ有利デアルコトハ十分ニ認
  メラレテ居リマスルグ、唯〓今四此政府ガ行
  ハントスル所ノ正量取引ト云フモノハ內
  地ニ限ラルヽカラ、ンレデ之ニ依ヶテ利益ス
  ル所ノ者ハ輸出商人デアル斯ウ云フコト
  カラ反對サレテ居ルモノデアリマス、ノミ
  ナラズ旣ニ先刻丹下君ガ御讀上ゲニナリマ
  シタ如ク、此取引ヲ行ハントスル所ノ機會
  ニ乘ジマシテ、輸出商人ハ我國ノ生絲家ニ
  對シテ十二箇條ノ條件ヲ提出シテ居ル、斯
  ウ云フ折柄デアルカラ、洵ニ是ハ生絲家ニ
  取シテ由々敷キ大事デアルトサレテ居ルノ
  デアリマスガ、之ニ付テ吾々ノ考ヲ申シテ
  見マスルナラバ成程隅田君ノ仰セラルヽ
  所ノ我ガ內地デノミ此=量取引ガ行ハレル
  ト云フコトデアリマスルカラ、隅田君ノ述
  ベラレル所ハ確ニ一面ノ理由ガナイトハ私
  ハ中サナイ、併ナガラ之ニ依シテ生ズル所
  ノ利益ガ悉ク輸出商ニ依ッテ聾斷サレルモ
  ノデアルト云フ所ノ御解釋ハ洵ニ片寄リ
  過ギタル偏見デハナイカト私ハ思フノデア
  リマス、若シ左樣ニ之ニ依ッテ生ズル所ノ
  利益ガ、輸出商ノ專有ニ歸スルモノデアル
  トスルナラバ如何ニ其利ヲ漁ルニ急ナル
  輸出商人達ト雖モ、更ニ此機會ニ乘ジテ、
  丹下君ガ申サレマシタ如ク十二箇條
  ノ要求條件ヲ提出シテ來ルガ如キ
  無理非道ナルコトハ決シテスベキモ
  ノデハナカラウ、從來行ハレテ居ッタ
  所ノ取引ニ較ヘテ、此正量取引ヲ行フ結果
  ハ卽チ輸出商ニ取ノテ旨味ガナクナル、少
  クトモ旨味ガ少クナル、故ニ之ニ變ルベキ
  何モノカヲ得ンケレバナラヌト云フコトカ
  ラ、卽チ十二箇條ノ要求條件トナッテ來タ
  モノデアラウト私ハ解スルノデアリマス、
  併シソレト同時ニ私ハ此正量取引ヲ行フト
  云フコトニ依リマシテ、政府ノ一部ガ頻ニ
  計算ヲサレ、唱道サレテ居リマスルガ如ク、
  其利益ノ悉クガ製絲家ノ利益ニ歸スルモノデ
  アルト私ハ卽斷スル譯ニモ參ラナイト思ヒ
  やっ、要スルニ今マデ此我國ノ生絲取引ノ
  上ニ於キマシテハ御承知ノ如キ猶豫水量
  ト云フモノガアッタ、此正量取引ヲ行フ結果
  トシテ、從來ノ取引ノ上ニ操ツリノ種トナツ
  テ居ッタ所ノ猶豫水量ト云フモノガ認メラ
  レナクナル結果トシテ、ドウシテモ是ハ輸
  出商ノ爲ニハ大ナル不利益、イヤ不利益ト
  申ス譯デハナイガ、從來程ノ信ケモークナ
  ルト認メナケレバナラナイ、ンレガ直接ニ
  來ルカ、間接ニ廻リ廻ノテ來ルカハ免モ角
  ト〓シマシテ、必ズヤ其結果ハ製絲家ヲ利
  スルモノデアルト斷定致シマシテ、決シテ
  是ハ間違ヒノナイモノデアルト吾々ハ信ズ
  ルノデアリマス(拍手)又隅田君ハ此正量取
  引ハ内地ダケデ行フノデアルカラ、甚ダ不
  十分デアルト申サレタガ、成程其通リデア
  リマス、併ナガラ我國ノ生絲ノ大輸出地デ
  アル所ノ亞米利加ニ於キマシテハ千九百
  二十一年卽チ大正十年ニ其絹業協會ノ生絲
  取引規則中ニ、日本生絲ハ早晩正量ニ依ッ
  テ取引セラルベク決定シテ居ルカラ、猶豫
  水量ヲ認メルノハソレマデニ過ギナイト云
  フ旨ヲ記載シテ居ル事貫ガアルノデアリマ
  ス、此絹業協會ノ生絲取引規約中ニ以上ノ
  コトガ記載サレルヤウニナッタト云フコト
  ニ付テハ長イ間ニ涉ノタル幾多ノ沿革ト
  經緯トヲ幾ラモ持ッテ居ルノデアリマスガ、
  ソレヲ玆ニ中述ベルコトハ差控ヘマセウ、
  併ナガラ亞米利加ノ當業者ニ於テモ、日本ノ
  國ニ於テ生絲檢査所ノ擴張ガ出來タナラ
  パ卽チソレカラ正量取引ヲ行フコトニナ
  ル日本ノ生絲ニ對シテ猶豫水量ヲ認ムル
  ト云フコトハ唯とソレマデノ期間ニ過ギ
  ナイト申シテ居ル位デアリマスカラ、愈
  我國ニ於テ此法案ヲ施行スルコトニ致シマ
  シタナラバ此亞米利加ニ於キマシテモ必
  ズヤ速ニ取テ以テ我國トノ間ニ正量デ以テ
  生絲ノ取引ヲスルト云フコトニナル事ハ萬
  誤リハナイト私共ハ確信致シテ居ルノデア
  リマス、斯樣ニシテ見マスルナラバ此正
  量取引ノ施行ハ必ズヤ我國ノ製絲家ニ大ナ
  ル利益ヲ齎スモノデアルト認メ、サウシテ
  亞米利加ニ於テモ遠カラズシテ正量ニ依ツ
  テ我國トノ生絲ノ取引ガ行ハレルコトニ相
  成リマスレバ先刻隅田君ノ段々ト御心配
  ニナラレタコトハ先ヅ以テ左樣ニ御心配
  ナラナクテモ宜イト云フ結論ニ到著スルト
  私共ハ考ヘルノデアリマスソレカラ斯樣
  ニ觀察致シテ見マスルトキニ吾々ハ政府
  ガ此法案ノ施行ニ要スル所ノ經費ハ受益
  者ノ負擔トシテ其手數料ヲ徵收セントスル
  コトハ必シモ無理ナ又不當ナル計畫デナ
  イト云フコトヲ信ジ、サウシテ先刻丹下君
  ガ述ベラレマシタルガ如ク、此事業ヲ施行
  スルコトニ依シテ、國費ハ煩ハスト云フヤ
  ウナコトヲ避ケテ、國費ノ一部ヲ割イテ、
  更ニ積極的ニ蠶絲業ノ獎勵助長ノ爲ニ其經
  費ヲ充テルト云フ途ヲ講ジテ置キマスコト
  モ、亦我國ノ蠶業ヲシテ將來アラシムル所
  以デアルト云フ意味ニ於キマシテ、吾々ハ
  此檢査料ヲ取シテ宜シイト云フコトニ賛成
  スルモノデアリマス、又隅田君ハ一俵一圓
  ノ手數料ハ甚ダ過重デアルソレハ一俵二
  千圓ノ生絲ト致シマシテ、其中ノ八割卽チ
  一千六百圓乃至一千七百圓ト云フモノハ原
  料代デアリマスカラ、生絲ノ代價ノ中カラ
  原料代ヲ差引イタ殘リノモノデ以テ一圓ノ
  手數料ヲ負擔センケレバナラヌコトハ甚ダ
  過重デアル斯樣ニ隅田君ハ絕エズ述ベラ
  レテ居ッタノデアリマスガ、併ナガラ私共ハ
  前ニモ申上ゲマシタ如キ理由ニ依リ、其他
  總テノ點ヲ考慮致シマシテ、一俵ニ付テ一
  圓位ノ手數料ハ決シテ左樣ニ不當ナ重課ノ
  モノデアルトハ思ハナイノデアリマス最
  後ニ第一ノ點ニ付テ私ハ一言ヲ致シテ置キ
  タイト思ヒマスガ、此橫濱ノ內外輸出商聯
  合協議會ノ決議トシテ、製絲家側ニ致サレ
  マシタ所ノ此十二箇條ノ條件ハ第三者的
  ニ吾々ガ考ヘマシテ、如何ニモ傍若無人ナ
  苛酷ナ條件デアルト思ヒマスガ、併ナガラ
  從來輸出商ノ方ミガ收得シテ居リマシタ所
  ノ其收入ノ一部ヲ、此正量取引ノ施行ニ依
  テ失フト云フコトニナリマスル其代償ト致
  シマシデ、我製絲家ノ方ニ於キマシテモ何
  物ヲカ是ハ提供センケレバナラヌコトニナ
  ルノハ當然デアルト思ヒマス、サウスルコ
  トニ依ッテ此製絲家ト輸出商間ニ於ケル所
  ノ此問題ハ當然ニ妥當ニ、而モ圓滿ニ是
  ハ解決サレベキモノデアル、又解決サレナ
  ケレバナラヌモノデアルト存ジマスガ、若
  シソレガ左樣ニ適當ニ解決サレルト云フコ
  トニナリマシタナラバ從來ノ荷掛金ト云
  フモノハ成程之ニ依ッテ消滅スル併ナガ
  ラソレノ代償トシテ製絲家ガ或何物カヲ提
  供センケレバナラナクナッタト云フ譯合テ
  ナクシテ、總テノ事柄ヲ包括シタル意味合
  ニ於テ、ソレ等ノ問題ハ當然是ハ解決サル
  ベキモノデアルト斯樣ニ信ズルモノデアリ
  マス、サウシテ此製絲家十輪出商間ニ於ケ
  ル所ノ、今日眼前ニ横ハッテ居リマス所ノ
  紛議ト申シマスカ葛膝ト申シマスカ私
  ハ是ハ紛議トカ葛藤トカハ中サナイ、免ニ
  角一方カラ要求ガ出テ、其要求條件ヲ如何
  ニ扱フカト云フコトガ、今日兩者間ノ交涉
  案件ニナッテ居ルノデアリマスカ、此交渉
  案件ハ當然私ハ適當ニ解決サルペキモノデ
  アルト信ジマスガ、併ナガラ若シ其解決ニ
  無理ガアッタリシテハ相成ラナイ、其又解
  決ガ出來ナイ前ニ此本法ヲ施行スルコトニ
  ナリマシタナラバソレコン我國ノ輸出ノ
  大宗タル所ノ生絲ノ取引ノ上ニ於テハ非
  常ニ損害ヲ來スコトニナッテ、國家ノ不利
  之ヨリ人ナルモノハナイト斯樣ニ考ヘマス
  ルカラ、隨テ此法ヲ施行スル所ノ時期ニ關
  シテハ、政府ハ十分ニ適當ニ之ヲ考慮サレ
  ナケレバナラヌト云フ所ノ丹下君ノ先程述
  ベラレタル希望條件ノ第一ト云フモノハ
  吾々ハ常然ノ希望ナリトシテ之ニ贊成ヲ表
  スルモノデアリマス(拍手)同時ニ又從來動
  モスルト製絲家ガ、輸出商カラ或ハ問屋カ
  ラ絕エズ型肘ヲ受ケテ居ッタ、是ハ畢竟製
  絲ニ要スル所ノ資金關係ニ外ナラナイノデ
  アリマスルガ、此事ニ付キマシテハ我國
  ノ蠶絲界ノ重大ナル問題トシテ、多年當業
  者ノ間ニモ色ニト〓究サレ、又政府ニモ建
  議サレ、或ハ當議會ニ於キマシテモ、屡
  政府ニ建議ヲ致シテ居ルヤウナ事柄デアリ
  マス之ニ付テ政府ガ適當ニ考慮セヨト云
  フ所ノ要求ヲ致シマスルコトハ是亦當然
  デアッテ、此要求ヲ致シマスルコトニ於テ、
  吾々何等遲疑スル所ハナイノデアル、卽チ
  此丹下君ノ希望條件ノ第二ニ贊成ヲ致シテ
  置ク次第ナノデアリマス、以上吾々ノ所見
  ヲ極ク大要ヲ中上ゲマシテ、委員長ノ報告
  ニ賛成ヲ致シ、隅田君ノ御提出ニナッテ居
  ル所ノ手數料ヲ微收シナイト云フ御意見ニ
  反對ヲ致ス次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=86

  ---

• 087・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　畔田明君
  〔畔田明君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=87

  ---

• 088・畔田明

  ○畔田明君　只今村上君ヨリ段々ノ御議論
  ヲ拜聽致シマシタ、其御論旨ハ要スルニ政
  府ガ正量取引ヲ創始致シタコト、ソレ自身
  ガ非常ニ產業保護デアル、斯ウ云フヤウニ
  解シタノデアリマス、村上君ハ此道ニ就テ
  ノ御專門家デアリマスルカラ、能ク御承知
  卜思ヒマスルガ、我國農業ノ大勢ト云フモ
  ノハ餘程最近ハ變,ラ來ラ居リマス、卽チ
  米ヲ作リマス以外ニ於キマシテ、雜穀ヲ作
  リマスル點ニ於キマシテハ餘程合ハナク
  ナッテ來タ随テ農家ノ大勢ハ出來得ルダ
  ケ養蠶ノ集中ヲ致シテ居ル言換ヘレバ從
  來副業デアリマシタ養蠶ハ段々ニ本業ニ
  ナリツヽアルノデアリマく、斯樣ナ大勢
  カラ考ヘマスレバ此手數村ノ問題、是ハ輸
  出商ガ負擔スルノハ直接デアリマスルガ、
  間接ニハ製絲家竝我國民中大多數ヲ占メテ
  居リマスル所ノ農民ガ負擔致スコトニナル
  ノデアリマス(拍手)若シ政府ノ蠶業政策ガ
  徹底シタモノデアリマシタナラバ必ヤ此
  點ニ徹底シタ解決ヲ致サナケレバナラヌ
  然ルニ本案ハ極メテ其點ニ於キマシテハ手
  溫イモノデアリマス、併ナガラ私ハ蠶業政
  策ソレ白身ヨリモ、他ノ點ヨリ本案ニ付テ
  自分ノ意見ノアリマスル所ヲ申上ゲタイト
  思フ、ンレハ本案ト我ガ帝國議會立法權ト
  ノ限界デアリマス、御水知ノ如クニ國家ガ
  其權力ヲ以テ國民ノ白由ヲ侵害致シマスル
  場合ニハ必ズ法律ニ依シテ致スベキコト
  ヲ要求致シテ居リマスルノハ近世法治國
  ノ原則デアリマス、立憲國ノ常態デアル
  又法律ナケレバ罰ナシ、是モ近世立憲國ニ
  共通致シマシタル所ノ原則デアリマス我
  憲法ニ於キマシテモ是等ノ原則ヲ認メテ
  保障ヲ致シテ居ルノデアリマス、憲法ノ第
  二十三條竝ニ第二十七條ニ之ヲ歷然ト記載
  致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ是ニ對
  シテ大ナル制限ガアル、此制限ガアルガ爲
  ニ本案ノ如キ其實體ニ於キマシテハ左程ノ
  缺點ハナイニ拘ラズ、甚ダ不合理ナモノヲ
  生ジテ來タノデアリマス、ソレハ何カラ來
  タカト申シマスレバ明治二十三年ノ法律弟
  八十四號デアリマス、是ハ命令ノ條項違反
  ニ關スル罰則ヲ規定致シタモノデ憲法制定
  後其實施前ニ於テ定メラレタル所ノ法律デ
  アル帝國議會ニ於テ制定シタ法律デハナ
  イノデス、其會施前-此法律ニ無條件ニ
  行政權ニ罰則ヲ委任シタルガ爲ニ本案ノ
  如キ不合理ノ法律ガ其後度〓出テ參シタ
  殊ニ官僚〓代ノ我ガ行政府ハ立法事項卽
  チ國民ノ自由權ヲ侵害スルコトマデモ、皆
  命令ヲ以テ之ヲ制限シ、或ハ手數料ヲ徵ス
  ルト云フヤウナ不法ノ慣例ニナッテ參ノタノ/
  デアリマス、是ハ委員會ニ於キマシテ政府
  當局ヨリ度〓慣例ニ依ルト云フ言葉ガ繰返
  サレテ居ルノデ明カデアリマス本案ハ第
  一條ニ於キマシテ輸出生絲ノ强制儉査ヲ規
  定致シテ居ルノデアリマス、ソレカラ第五
  條ニ於キマシテ千圓以下ノ罰則ヲ規定致シ
  テ居ル、併シ手數料ヲ徴スル明文カナイ
  又此手數料ヲ徴スルコトヲ命令ニ委任スル
  ト云フ規定モ存シテ居ラナイノヂアリマス、
  然ルニ一方ニハ豫算ニ檢査手數料ヲ計上致
  ンテ居ルノデアリマス、卽チ政府ハ法律ヲ
  以テ强制シタル義務ノ履行タル檢査ヲ受ク
  ルト云フコトニ付テ、命令ヲ以テ其手數料
  ヲ徴收セント致スノデアリマス、而シテ政
  府ハ斯ノ如キ規定ハ憲法六十二條ノ第二項
  ヨリ當然ダト稱シテ居ルノデアリマス、只
  今此壇上ニ於キマシテモ村上君ヨリ同樣ニ
  ソレヲ繰返サレテ居ル、憲法第六十二條ニ
  ハ「新ニ租稅ヲ課シ及稅率ヲ變更スルハ法
  律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ」第二項ニ「但シ報
  償ニ屬スル行政上ノ手數料及其ノ他ノ收納
  金ハ前項ノ限ニ在ラス」ト斯ウ規定致シテ
  居リマス、是ハ租稅ハ總テノ場合ニ於テ法
  律ニ依ルベク、手數料ハ必ズシモサウデナ
  イ、事ノ性質ニ依ッテ命令ニ依リ或ハ法律
  ヲ要スルト云フ意味ニ解釋致スノデアリマ
  ス、手數料ノ中、之ヲ徴收スル結果國民ノ
  自由權ニ影響シマスル場合ニハ手數料モ
  亦法律上ノ根據ヲ要スルコトハ明カデアル
  此規定ノ精神ヨリシテ明カデアリマス、サ
  ウシテ其場合ハ政府ノ行爲ヲ求メマスルコ
  トガ法律上ノ義務タル場合ニハ其手數料
  ヲ法律ニ非ザル形式ヲ以テ規定シ得ベキモ
  ノデハ決シテナイ、一定ノ法律ニ於キマシ
  テ或ル行爲ヲ國民ニ强制シナガラ、國民ガ
  此强制セラレタル所ノ義務ヲ履行セントシ
  マスレバ、法律ニ基カザル所ノ手數料ヲ徵
  スル、斯ウ云フコトハ此立憲法治國ニ於テ
  ハ容スベカラザル所ノ現象ト私ハ信ズルノ
  デアリマス、本案ノ生絲檢査モ亦是ト同樣
  デアル、法律ニ依リマシテ義務ヲ强制スベ
  キコトヲ規定シ、後ニ帝國議會ノ關與シナ
  イ所ノ行政命令ニ依リマシテ手數料ヲ徵收
  ヲスルガ如キハ不合理ト謂ハナケレバナ
  ラナイ、花莛儉查規則ニ於キマシテハ手數
  料ヲ取ッテ居ルデハナイカ、斯ウ云フ御議
  論ヲ承ッタノデアリマス、花莚檢査規則ハ
  命令ニ依シテ定メタ、此根本ニ付キマシテハ
  私ハ異議ガアリマスル、併ナガラ命令ニ依
  テ定メタモノデアリマスルガ故ニ、命令ニ
  依ッテ手數料ヲ規定シマスノハマダ是レ均
  衡ガ取レテ居ル、然ルニ本案ハ法律ニ依シテ
  强制スルサウシテ其法律ニハ何等ノ規定
  ガナイ、帝國議會ノ關與セザル所ノ行政命
  令ニ依シテ、サウシテ其手数料ヲ取ル均
  衡ニ於テモ得テ居ラナイノデアリマス、若
  シモ法律ニ於テ例ヲ求メマスナラバ、私
  重要物產組合法ノ如キハ其好キ例ニナルト
  思フノデアリマス、此法律ニ於キマシテハ
  第四條ニ强制加入ヲ規定致シテ居リマス、
  隨テ第十條ニ金錢問題ヲ解決致シテ居ル、
  又商業會議所法ノ如キモ同樣デアリマス、
  是ハ御承知ノ如クニ强制加入デアリマスル
  ガ故ニ、第三十條ニ經費ヲ規定致シテ居ル
  ノデアル、若シ所謂慣例ニ依ルト云フコト
  デアリマスルナラバ本案ノ如キハ此重要
  物產組合法或ハ商業會議所法ニ依ルベキコ
  トガ至當ト存ゼラルヽノデアリマス、隨テ
  本案ノ手數料ト云フモノハ寧口手數料ノ名
  前ハアリマスルガ、其實質ニ於キマシテハ
  租稅ト同樣ニ見ルベキモノデアル、各國ノ
  立法例ヲ見マシテモ又其實際ヲ見マシテ
  モ、斯樣ナ混濁ハ多イノデアリマス、佛蘭
  西或ハ墺地利ニ於キマシテハ租稅ト手數
  料ノ區別ニ付テハ付カナイ場合ガ多イノデ
  アリマス、殊ニ墺地利ハ相續稅、所有權移テ
  轉稅メ如キヲ稱シテ手數料ト言ヒ、英國ニ
  於テモ同樣ニ曖昧デアリマス、之ヲ要シマス
  ルノニ、本法ノ場合ハ檢査ノ强制ハ法律ニ
  依ル所ノ强制デアル而シテ强制ヲ創始シ
  タル所ノ立法機關ガ、此點ニ於テ何等ノ意
  思表〓ヲセズシテ檢査ヲ强制シタル場合ニ
  ハ國民ハ無手數料ニテ檢査ヲ受ケ得ベキ
  モノト解スルコトヲ至當ト致スノデアリマ
  ス、隨テ以上ノ理由ニ依リマシテ、私ハ委
  員長報告ノ政府原案ニ反對ヲ致シ、隅田君ノ
  修正案ニ賛成ヲ致スモノデアリマス、終ニ
  臨ミマシテ我ガ帝國議會ノ立法權今後ノ爲
  ニ、私共同志ノ憲法第六十二條第二項ニ對
  スル所ノ解釋ヲ闡明致シテ置キマス、「一帝
  國憲法第六十二條第二項ニ「但シ報償ニ屬
  スル行政上ノ手數料及其他ノ收納金ハ前項
  ノ限リニアラス」トアルハ唯〓行政上ノ手
  數料其他ノ收納金ガ必ズシモ立法ヲ要セザ
  ルヲ定メタルノミニシテ、其總テニ關シテ
  當然命令ニヨリ徵收シ得ベキモノト認メタ
  ルニアラズ、其命令ヲ以テ定メ得ルハ唯ミ
  其牧納ノ本來ノ性質上法律ヲ要セザルカ又
  ハ意法ノ他ノ條項ニ基キ命令ヲ以テ定メ得
  ベキ所ニ屬スルモノニ限ル、憲法ノ他ノ條
  項竝ニ精神ヨリシテ法律ヲ要スベキ場合ニハ
  依然帝國議會ノ協賛ヲ經タル立法ヲ要スル
  モノトス、二行政行爲ニ對スル報償ト雖モ、
  其反對給付タル行政行爲自體ガ、法律ニ依
  リテノミ定メ得ベキ所ニ屬スル場合、例へ
  バ租稅增促手數料ノ類、若クハ其反對給付
  タル行政行爲ガ現ニ法律ニ依リテ定メラ
  レタル場合、本件ノ輸出生絲ノ檢査ノ如キ
  類ニハ其報償タル手數料亦法律ニ依ラザ
  ルベカラズ、三、公衆ノ自由使用ニ供セラ
  ルヽ公物ノ使用ニ付キ、使用料ヲ徵スル場
  合、國家ノ營造物ノ利用ガ强制セラルヽ場
  合、若クハ國家ノ獨占ニ屬スル場合ニ於テ
  モ、其使用料ハ法規ノ根據ヲ要ス、以上申上
  ゲマシタ通リデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=88

  ---

• 089・作間耕逸

  ○作間耕逸君　第二讀會ノ討論ハ此程度ニ
  止メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=89

  ---

• 090・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　只今政府委員ヨ
  リ發言ヲ求メラレテ居リマス、作間君ノ動
  議ノ採決ハ後ニ廻シマス-山川政府委員
  〔政府委員山川端夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=90

  ---

• 091・山川端夫

  ○政府委員(山川端夫君)　只今畔田君ノ御
  議論ガアリマシタカラ、此點ニ付キマシテ
  ハ委員會ニ於テ極ク明ニ申上ゲテ置イタ
  ノデアリマス、併シ此所ニ問題ガ出マシタ
  カラ、極ク簡單ニ政府ノ意ノ在ル所ヲ申上
  ゲタイト思フノデアリマス、只今畔田君ノ
  御議論ノ根據ハ、最後ニ御話ニナリマシタ
  ヤウニ、本案ノ手數料ハ手數料ト云フケ
  レドモ其實質ハ和稅ニ同ジ、此點カラ總テ
  御議論ガ出テ居ルヤウニ見受ケラルヽノデ
  アリマス、本案ノ手數料ハ租稅トハ全然
  性質ガ異シテ居ル、行政上ノ報償ノ性質ヲ
  持ッテ居ル手數料デアリマス檢査ヲスル
  爲ニ、國家ガ或ル設備ヲ爲シ、輸出ヲスル
  者ハ其設備ヲ利用シテ檢查ヲ受ケ、其生絲
  ノ価打ヲ國ニ依シテ保障シテ貰フ、サウ云
  フ特殊ノ報償的ノ性質ヲ持ッテ居ル所ノ手
  數料デアリマスルカラ、之ヲ租稅ト同ジヤ
  ウニ見マシテ、唯〓一般的ニ或金ヲ取上ゲ
  ル、土地ヲ持クテ居ル、或ハ家屋ヲ持ッテ居
  ルト云フコトヲ元ト致シマシテ、租稅ヲ徴
  收スルト云フ場合トハ全然違フノデアリマ
  ス、ソレデ憲法第六十二條第二項ニ於キマ
  シテ明ニ其事ガ書イテアル租稅ハ無論法
  律ニ依ラナクチヤイカヌ併ナガラ此手數
  料ニ付テハ前項ニ依ルノ限ニ在ラズ、今畔
  田君ノ御述ニナッタ通リデアリマス、詰リ
  前項ニ依ルノ限ニ在ラズト云フコトハ法
  律ニ依ラナクテモ宜シイト云フコトデア
  ル何等ノ制限ヲ置イテ居ナイノデアリマ
  ス、ソレデ尙ホ先例ト致シマシテ色ミ御引
  用ニナッテ居リマスルガ、此法律デ檢查ヲ强
  制シナガラ、手數料ニ付テハ勅令ニ依ルト
  云フ例ハ幾ツモアルノデアリマス、例ヘバ
  屠場法ノ問題、或ハ船舶法ノ問題、其他サ
  ウ云フ例ハ、擧ゲレバ幾ラモアルノデアリ
  マス、ソレデ本案ニ付キマシテハ手數料
  ヲ徵收スルニ付テ法律ノ規定ヲ要シナイ、
  憲法六十二條第二項ノ規定ニ依リマシテ、
  命令ヲ以テ之ヲ定メテ差支ナイト云フ見解
  ヲ執ッテ居ル次第デゴザイマス、唯、一言
  其事ヲ明ニ致シテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=91

  ---

• 092・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ヲ
  採決致シマス、作間君ノ討論終結ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=92

  ---

• 093・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ討論ハ終結致シマシタ、是ヨ
  リ採決ヲ致シマス只今成立シタル修正案
  ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=93

  ---

• 094・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　起立少數デアリ
  マス、仍テ修正案ハ否決セラレマシタ、次
  ニ委員長ノ報告ニ付テ採決ヲ致シマス、委
  員長ノ報告ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=94

  ---

• 095・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　起立多數デアリ
  マス、仍テ委員長ノ報告通リ可決致シマシ
  タ是ニテ第二讀會ハ終了致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=95

  ---

• 096・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=96

  ---

• 097・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第三讀會
  ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  輸出生絲儉査法案第三讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=97

  ---

• 098・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　別ニ御發議ガナ
  イヤウデアリマス、仍テ本案ハ第二讀會議
  決ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第
  三十三及第三十四ハ同一委員ニ付託シタ
  ル議案ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異
  議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=98

  ---

• 099・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程第三十三、郵便年金法案、
  日程第三十四、郵便年金特別會計法案ヲ一
  括シテ、其第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報
  告ヲ求メマス、委員長作間耕逸君
  第三十三郵便年金法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一郵便年金法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月十日
  郵便年金法案委員長
  作間耕逸
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三十四郵便年金特別會計法案政
  府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一郵便年金特別會計法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月十日
  郵便年金特別會計法案委員長
  作間耕逸
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔作間耕逸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=99

  ---

• 100・作間耕逸

  ○作間耕逸君　郵便年金法案及郵便年金特
  別會計法案ヲ一括シテ、其委員會ノ經過竝
  ニ其結果ヲ御報告致シマス本案ノ委員會
  ハ三月三日以來回ヲ重ヌルコト七囘、其
  間政府トノ間ニ質問應答ヲ續ケ、慎重審議
  ヲ致シタノデアリマス、其結果滿場一致ヲ
  以テ、政府提出ノ原案通り可決致シタノデ
  アリマス、郵便年金制度ハ社會政策ノ施設
  デ、卽チ中產階級以下、庶氏ノ老後生活ノ
  安定ヲ保障スル所ノ效果ヲ有シマスル、調
  ハヾ一種ノ防貧制度ニ屬スルモノデアリマ
  シテ、歐米各國ニ於テハ夙ニ發達普及セ
  ルモノデアリマスルガ、我國ニ於キマシ
  テハ、未ダ廣ク一般ニ行ハレマセヌ、寧ロ新
  シキ施設ト謂フベキデアリマスガ故ニ、委
  員會ニ於キマシテハ制度ノ大體ヨリ、其
  內容ノ詳細ニ至リマスルマデ、十分ニ質問
  應谷ヲ重ネ、審議致シタノデアリマスル
  ガ、其間若宮、濱田、靑木、佐藤及平野、
  其他ノ各委員諸君カラ、有意義ナル質問ガ出
  タノデアリマス、其中主ナル二三點ニ付
  テ、此所デ御紹介申シテ置カウト思ヒマス
  ル其質問ノ第一ハ此事業ハ遞信省ニ於
  テ簡易保險ト併セ行フノデアルカラ、寧口
  是ト合併スルヲ適當トハシナイカ、殊ニ特
  別會計ハ成ベク整理スルコトヲ方針トスル
  今日ニ於テ、新ニ此事業ノ爲ニ特別會計ヲ
  設クルノハ當ヲ得タ施設ト言へナイデハ
  ナイカ、何故簡易保險ト合同セズシテ、別
  箇獨立ノ特別會計ト爲シタノデアルカト云
  フ點デアリマシタ、此點ニ付キマシテ政府
  ハ簡易保險ト年金事業トハ其目的種
  類ヲ異ニ致シテ居ル、且ツ計算ノ基礎ヲ別
  ニシテ居ルノデアル、又制度ノ對象デアル
  所ノ加入者階級ヲ異ニ致シテ居ルシ、又加
  ニ入スル者モ各〓其目的ヲ異ニ致シテ居ルカ
  ラ、相互ノ利害ヲ相混淆スルガ如キハ制
  度ノ趣旨及加入者ノ意思ニ反スル結果トナ
  ルノデアル、之ヲ要スルニ、制度ノ目的及
  計算ノ基礎ヲ異ニスル別個ノ相互扶助組織
  ノ保險團體ノ會計ヲ一ツニスルト云フコト
  ハ動モスレバ制度ノ本旨ニ反シ、事業ノ
  堅實ナル發達ヲ圖ル所以デナイノデアルカ
  ラ、斯樣ナ制度ト致シタノデアルト云フ答
  辯デアリマシタ、質問ノ第二ハ此事業ヨ
  リ生ズル積立金ハ豫定利率ノ關係ヨリシ
  テ、主トシテ國債及地方債ニ放資スル見込
  ノ由デアルガ、何故簡易保險ト同樣ニ各地
  方ニ對シ、公共事業資金トシテ貸付ヲシナ
  イノデアルカト云フ點デアリマシタガ、政
  府ノ之ニ對スル答辯ハ、此制度ノ構成、卽
  チ計算ノ基礎トナレル所ノ豫定利率ノ關係
  上、換言スレバ加入者ノ利益ヲ圖ル點ニ於
  テ、又事業ノ堅實ナル發達ヲ圖ル上ニ於
  テ、其資金ノ大部分ハ公債卽チ國債ニ放資
  スルノデアルケレドモ、其一部ハ正ニ中央
  地方ノ社會公共事業ニ對シテモ放資スル兄
  込デアル斯ウ云フ趣デアリマシタ、此御
  答辯ニ依ッテ、此點ノ質問ニ付テモ各委員
  ハ十分諒承致サレタノデアリマス、最後ニ
  質問ノ第三點ハ、年金ノ差押ヲ禁止スル金
  額ハ二百五十圓以內ト限ッテアルケレドモ
  加入者ノ生活安定ノ趣旨カラ見テモ、又民
  事訴訟法トノ關係カラ見テモ、少クトモ民
  事訴訟法ニ規定セルト同一ノ程度トスルヲ
  適當ト認ムルノデアルガ、何故ニ二百五十
  圓ニ止メタノデアルカト云フ御質問デアリ
  マシタ、此點ニ付キマシテ政府ノ答辯ハ
  民事訴訟法ニ於テ差押ヲ禁止致シテ居ル所
  ノ所得ト云フモノト、此制度ノ年金トハ其
  性質ヲ異ニスルモノデアル、且ツ二百五十
  圓ト致シマシテモ、其掛金ハ相當多額ニ上
  ル場合モアリ債權者保護ノ點ヲモ考慮致
  シマシテ、最小限度ノ生活費ヲ保護スル
  意味ニ於テ、民事訴訟法ノ規定トハ多少差
  異ヲ設クルヲ適當ト認ムルト云フコトノ御
  答辯ガアッタノデアリマス、以上ノ點ニ付
  キマシテハ立法ノ趣旨カラ見テ原案ガ適
  當デアルト認メタノデアリマスルガ、其他
  紺目ニ亙リマシテモ、亦各方面カラ色ミ質
  問ガアッタノデアリマスルガ、結局此種ノ
  社會的施設ハ我國ノ現狀カラ見マシテモ
  最モ必要適切ナルモノデアッテ、一日モ速
  ニ之ヲ實施セラレ、以テ社會ノ健全ナル發達
  ニ資スベキモノデアルト云フコトニ相成リマ
  シテ、討論ニ入リマシテハ全員一致シテ、
  郵便年金法案及郵便年金特別會計法案ト
  モ全部政府提出ノ原案通リ可決致サレタ
  次第デアリマス、以上(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=100

  ---

• 101・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　郵便年金法案ニ
  付テ質問ノ通告ガアリマス-濱田精藏
  君
  〔濱田精藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=101

  ---

• 102・濱田精藏

  ○濱田精藏君　私ハ只今委員長ヨリ御報
  告ガアリマシタ通リ、此法案ニ賛成致ス者
  デアリマスルガ、之ニ關聯致シマシテ、一
  言商工大臣ニ此機會ニ於テ御尋ヲ致シタイ
  事ガアリマス、極メテ簡單ニ其趣旨ヲ申述
  ベマス、ソレハ此郵便年金法案ガ保險類似
  ノ仕事デアリマスルガ爲ニ、私ハ委員會ニ
  於テ政府ハ生命及火災、卽チ只今民間ニ行
  ハレテ居リマスル所ノ、此保險ヲ官營ニ移
  スト云フ御計畫ガアルト云フコトニ付キマ
  シテ質問ヲ致シマシタル所、次官ヨリノ
  御答辯ニ依リマスルト云フト、左樣ノ事ヲ
  言明致シタコトハナイガ、サリナガラ左樣
  ノ趣旨ヲ以テ調査シタコトモアル、又今後
  モ或ハ調査スルカモ知レヌ、多分調査スル
  デアラウガ、サリナガラ直ニ其保險官營ト
  云フコトニ向フテ進ム考ハ無イト云フ御答
  デアリマシテ、私ハ其機會ニ於テ商工大臣
  ヨリ明カナル御答辯ヲ得タイト思ヒマシタ
  ケレドモ、其機會ヲ失シマシタルガ爲ニ
  本日此機會ヲ利用致シマシテ御尋致シマス
  ノデアリマスルガ、御水知ノ通リ此氏間ノ
  保險會社ト云フモノハ非常ニ今日ハ發達
  致シマシテ、凡ソ我國ノ事業中初メヨリ政
  府ノ補助、其他ノ誘導ト云フ如キコトニ由
  ラズシテ、自分ノ手デ以テ是程發達致シタ
  事業ハナイ-ナイノミナラズ今日ニ於キ
  マシテハ、其積立金ハ莫大ナル高ニ達シテ
  居リマスノデアリマス、卽チ銀行ノ銀行デ
  アルト言ハレル位デアリマスルガ故ニ、之
  ヲ官營ニスルカセヌカト云フコトハ我
  ガ經濟界ニ於キマシテ絕大ノ影響ガアルノ
  デアリマス當業者ニ於キマシテハ片岡
  商工大臣ガ所謂保險通デアルガ爲ニ、或
  左樣ノ御計畫ガアリハシナイカト云フ點ニ
  於テ非常ニ疑ヲ持ノテ居ルノデアリマス(ヒ
  ヤヒヤ)此點ニ付キマシテ先刻申シマシタ
  通リ次官ヨリノ御答辯ニハ私甚ダ不滿ヲ
  感ジマシタノデ此機會ニ於キマシテ左樣
  ノ御考ガアルカ、御調査ノ結果官營ト云フ
  コトガ宜シカフタラバ御實行ニナルカ、又
  ハ其方針デ今後モ御調査ニナルカ否ヤト云
  フコトヲ、此機會ニ於テ大臣ヨリ御言明ヲ
  願ヒタイノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=102

  ---

• 103・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　片岡商工大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=103

  ---

• 104・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ御質問ニ
  簡單ニ御答申上ゲマス、生命保險事業ハ極
  メテ長期ニ涉ル事業デアリマシテ、其性質
  カラ考ヘマスレバ國營ニ致スト云フコト
  ハ敢テ不當デハナイト思ヒマス、併ナガラ
  今ノ御質疑ニモゴザイマシタ通リ、今日ハ
  契約高旣ニ四十億ヲ超シテ居リマス、併シ
  是等ヲ經營致シテ居リマスル會社ノ數ハ四
  十餘デアリマシテ、四十餘ト云ヘバ僅カノ
  ヤウニ聞エマスルガ、生命保險ノ營業ハ各
  支店、出張所、代理店ヲ通ジテ契約ヲ致シ
  テ居ルノデアリマスルカラ、此經營ノ場所
  ト云フモノハ非常ニ廣イノデアリマスソ
  レ故ニ今日ノ場合ニ於テハ可ナリ競爭ノ弊
  害ヲ生ジテ居リマス、併シ前段申上ゲマシ
  タ如ク、既ニ四十億餘ノ契約高ニ達シテ居
  リマスル以上ハ經濟界ニ於ケル此資金
  ノ-積立金ノ運用等ニ於キマシテハ廣キ
  關係ヲ持シテ居ルモノデアリマス、ソレ故ニ
  相成ベク現在ノ弊害ヲ艾除ヲシテ、將來十
  分ナル發達ヲサセタイト云フコトガ只今ノ
  私ノ考デアルノデアリマス、併シ是等ノ矯
  正ハ果シテ出來ルヤ否ヤト云フコトハ將
  來ニ於テ大ニ考慮ヲ要スルノデアリマス
  斯ノ如キ次第デゴザイマスルカラ、今日只
  今ノ所ニ於テ國營ニ移サウト云フ考ハ持シ
  テ居リマセヌ、又御尋中ニ火災保險ノ事モ
  ゴザイマシタガ、火災ト申シマスル事ニ付
  テハ實ニ完全ナル所ノ統計ガ我國ニ無イ
  ノデアリマス、ソレ故ニ官營ト致シテ果シ
  テ十分ニ行ケルヤ否ヤ、餘程考ヲ要スルモ
  ノデアリマス、又今日ノ火災保險業者ノ間
  ニモ無益ナ競爭ヲ致シテ、互ニ身ヲ削ッテ
  居ルト云フガ如キ弊害ガアルノデアリマ
  ス、是モ漸次矯正ヲ致ス考デゴザイマスガ、
  此火災保險ニ關シマシテモ只今國營ニ致
  ス考ハ持ッテ居リマセヌ、併ナガラ將來ニ
  弊害カ艾除セラレズ、其必要ノ機關ガ十分
  ニ發達ガ出來ヌト云フコトノ事實ヲ認メマ
  スレバ或ハ別ノ考ヲ起スカモ知レマセ
  ヌ之ヲ要スルニ現在民營ニ依ッテ居リマ
  ス事業ハ成ベク民營ヲシテ發達セシメタ
  イ、是ガ今日ノ考デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=104

  ---

• 105・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　兩案ノ第一一讀會
  ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシト」呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=105

  ---

• 106・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郎君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=106

  ---

• 107・作間耕逸

  ○作間耕逸君　兩案ヲ一括シテ直ニ其第二
  讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長タ
  ル本員ノ報告通リ、可決確定セラレンコト
  ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=107

  ---

• 108・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  佛異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=108

  ---

• 109・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ガナイト
  認メマス仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開
  キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  郵便年金法案第二讀會(確定議)
  郵便年金特別會計法案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=109

  ---

• 110・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　別ニ御異議ナイ
  ト認メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、兩
  案共委員長報告通リ可決確定致シマシタ
  (拍手)只今松本君平君ヨリ成規ノ賛成ヲ得
  テ山東ニ於ケル帝國軍艦砲擊ニ關スル緊
  急質問ガ提出サレマシタ、日程ヲ變更シテ
  之ヲ許スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=110

  ---

• 111・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス
  -提出者松本君平君
  山東ニ於ケル帝國軍艦砲撃ニ關スル緊急
  質問(松本君平君提出)
  〔松本君平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=111

  ---

• 112・松本君平

  ○松本君平君　私ハ玆ニ帝國ノ威信ニ關ス
  ル重大ナル國際問題ニ付テ緊急質問ヲ提出
  致シマシテ、玆ニ海軍大臣竝ニ外務大臣ヨ
  リ御答辯ヲ得タイト田心ッテ居ルノデアリマ
  ス事ハ數日前、卽チ今月ノ十二日午後ニ
  起ノタ事柄デアリマシテ、藤、薄ト云フ二ツ
  ノ帝國ノ巡洋驅逐艦ガ、日本ノ商船四艘ヲ
  保護シテ、太沽ノ沖ヨリ塘沽、天串ニ航行
  ヲスル其際ニ、突如トシテ國民軍ノ兵隊ヨ
  リ砲撃サレタ事柄デアリマス、此砲撃ニ依ソ
  テ司令官デアッタ海軍中佐並ニ辻大尉、其
  他ノ艦員ガ負傷ヲシテ、驅逐艦ハ遂ニ航行
  ヲスルコトガ出來ズシテ、遂ニ太沽ノ沖ニ
  鐘,タノデアリマス、此事實ハ洵ニ新聞ニ
  於テハ種々ニ書立テラレテアリマスルガ、
  實際ノ狀況ハ如何ナモノデアリマシタカ、
  又斯ル事件-國際上ニ重要ナル事柄ガ突
  如トシテ起ッテ來ルノハ何カソレヲ導ク
  ベキ所ノ原因ガアッタノデハナイカ、靑天
  白日ノ下ニ帝國ノ國旗ヲ揭ゲタル所ノ驅逐
  艦ガ、國民軍ノ爲ニ砲擊ヲ受ケルト云フヤ
  ウナ洵ニ殆ド常識ヲ以テ判斷スルコトノ出
  來ナイヤウナ事柄デ、如何ニ支那ノ兵隊ノ
  無識デアルニシテモ、斯ル亂暴ナル狼藉ナ
  ル所ノ事柄ヲ我ガ帝國ニ加ヘタルコトハ
  殆ド信ズベカラザル所ノ暴擧ト謂ハナケレ
  バナラナイノデアリマス(拍手)是ハ帝國ノ
  國旗ニ對シテ大ナル侮辱ヲ與ヘタルノミナ
  ラズ、國際上ニ於ケル所ノ此正義ヲ無視シ
  テ、無暴ナル亂暴ナル擧動ヲサシタト云フ、
  又シタト云フ事柄ノ其根源ニ於テ、何等カ
  我ガ海軍ニ於テ不注意ノ點ハ無カッタノデ
  アルカ、之ニ就テハ色ミノ說ガ唱ヘラレテ
  居ッテ、卽チ支那官憲トノ連絡ガ十分デナ
  カッタ爲ニ、驅逐艦ガ或ハ一艘ノ約束デアッタ
  ノガ二艘デアッタガ爲ニ、間違ッタノデアル
  トカ、或ハ塘沽ノ沖ニ於テ一定ノ場所ニ船
  ヲ止メテ、サウシテ支那ノ官憲ノ認識ヲ受
  ケナケレバナラナイ約東ノモノヲソレヲ非
  常ナ速力ヲ以テ此約定ヲ無視シテ日本ノ軍
  艦ガ通過シタノデアルトカ或ハ又日本ノ
  官憲ト約束ヲシタル所ノ時刻ガ違クテ居シタ
  トカ其他色ミノ事ヲ以テ我ガ海軍ノ失策ノ
  如クニ之ヲ唱ヘテ居ルノデアリマス、此點
  ハ十分ニ私共ノ信ズル所ヲ以テ見レバ我
  ガ海、軍ニ於テ斯ノ如キ不用意トカ不注意ノ
  アルベキ理由ハ無イト信ズルノデアルガ
  頻ニ斯ノ如キ宣傳ヲスル之ニ對シテ明白
  ナル海軍ニ於テ聲明ヲセラレテ、此席ニ於
  テ十分我ガ態度ニ於テハ何等之ニ對シテ誤
  リノ無イ、少シモ缺點ノ無イト云フコトヲ
  明白ニシテ戴キタイノデアル(拍手)又傳フ
  ル所ニ依レバ奉天軍ガ今太沽ノ沖ニ於テ
  國民軍ト戰端ヲ開イテ居ルノデアリマス
  ガ、此奉天軍ガ屢〓。ガガ帝國ノ國旗ヲ濫用シ
  テ、サウシテ軍艦ニ揚ゲタト云フヤウナコ
  トモ聞イテ居ルノデアリマス斯樣ナ事ガ
  果シテ事實デアルヤ否ヤ、又支那ノ國民軍
  ガ機械水雷ヲ塘沽ノ沖ニ竝ベ或ハ白河ノ
  交通ヲ妨害シタト云フヤウナコトモ聞イテ
  居ルノデアル、言フ迄モナク白河ハ義和團
  ノ議定書ニ-義和團ノ戰爭ノ後ニ議定シ
  タル所ノ最終議定書中ニ於テ列國ガ航行ノ
  自由ヲ得テ居ル所デアリマスル、之ニ對
  シテ斯ル亂暴ナル敷設水雷ヲ設ケルト云
  フヤウナコトヲスルノハ明ニ國際法ヲ
  無視シタル行爲ト言ハナケレバナラヌ、
  斯樣ナルコトガ果シテアッタノデアルヤ
  否ヤ、色こノ說ガ紛々トシテ未ダ全ク吾
  吾ガ信ズルコトノ出來ナイヤウナ狀態
  デアリマスルカラ、此點ニ於テハ海軍
  大臣ハ明白ニ此席ニ於テ天下ニ聲明サ
  レテ、我國ノ海軍ニ於テハ何等ノ不注意モ
  若クハ缺點モナイト云フコトヲ十分ニ聲明
  アランコトヲ希望スルノデアリマス、尙ホ
  海軍ガ執ッタ所ノ事柄、又支那ノ國民軍ガ
  我軍艦ニ向ッテ發砲ヲシタル此事實ノ詳細
  ナル〓末、事ノ此ニ到タ夕以以海軍當局
  者ヨリ十分ニ玆ニ說明サレンコトヲ望ムノ
  デアリマス、以上ハ海軍大臣ニ對シ、今マ
  デ起ッタ原因及其結果ニ付テノ明細ナル聲明
  ヲ此處ニ得ンコトヲ希望スルノデアリマ
  ス、次ニ外務大臣ニ向ラテ御伺シタイコト
  ハ、此事件ハ帝國ノ威信ニ最モ重大ナル關
  係ノアル問題デアルト云フコトハ申スマデ
  モナイコトデアリマス、而シテ此事件ニ對
  シテ外務大臣-政府ハ如何ナル決心ヲ以
  テ此問題ニ向ハウトセラレテ居ルノデアリ
  マスルカ、此事件ハ想フニ決シテ偶發シタ
  事件デハナイト私ハ考ヘテ居ル、數日前ニ
  起ッタ所ノ此太沽ノ沖ニ於テ、我ガ國旗ヲ
  掲ゲタル軍艦ニ向ッテ無法十發砲ヲシ、軍
  人ヲ傷ケ、帝國ノ威信ヲ損シタル事柄ハ
  單ニ數日前ニ突如トシテ起ノ夕問題デハナ
  〃必ズヤ深キ之ニ對スル原因ガナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス(ヒヤ〓〓)此事
  件ハ又一面ニ於テハ支那ガ今ノ日本ニ對
  スル所ノ心理狀態ヲ極メテ明白ニ語シテ居
  ルモノデハナイカト思フノデアリマス伯
  手)又此事件ノ出來事ガ確ニ日本ノ外交ノ
  一大弱點ヲ暴露シタモノデアルト信ズルノ
  デアリマス(ヒヤ〓〓)昨年ノ末ニ殆ド是ト
  同樣ナル事件ガ、國民軍ト天津ノ李景林ノ軍
  ト相對シテ居ル時ニ起ッタ、其對戰中ニ起,
  タ其事件ガ、今日尙ホ是ガ解決セラレズニ
  居ルノデアリマス、支那側ハ我國ノ抗議ニ
  對シテ、十分ナル說明ヲ今日尙ホ與ヘテ居
  ラナイ、今日起ッタル、卽チ三月ノ十二日
  午後三時ニ起ッタル所ノ此事柄ハ昨年ニ
  於テモ同樣ナ事件トシテ現ハレテ來テ居ル
  ノデアリマス、斯ノ如ク重ネ〓〓斯樣ナル
  事件ガ起シテ、サウシテ支那ガ我國ニ加フ
  ル所ノ此傍若無人ノ態度ト云フモノハ何デ
  アリマセウ、之ヲ私ハ外務大臣ガ、ドウ云
  フ御考ヲ以テ此事件ニ臨ムカト云フ所ノ考
  ヲ之ニ依フテ伺ヒタイト思フノデアリマス
  又此事件ニ付テ外務省デハナイガ、外交官
  ガ執ッタ所ノ手段ト云フモノガ甚ダ緩慢デ
  アル、是ハ決シテ此外務大臣ヲ攻擊スル意
  味デハナイガ、我國ノ外交ノ傳統的ニ麻痺
  シテ居ル所ノ一ツノ缺陷デアルト思フ
  (ヒヤ〓〓拍手)此明白ナル事實ハ御承知
  ノ如クニ三月十二日ノ午後ニ起シタ事柄デ
  アルサウシテ其事柄ハ直ニ其夜ノ中ニ、
  -其夜デナク其事柄ヲ聞クト同時ニ何等
  カノ處置ヲ執ラナケレバナラヌ筈デアル、
  然ルニ支那側ニ於テハ其夜ノ何時デアリマ
  スルカ、時ヲ移サズ其夜直ニ外務次官ノ
  質、此人ノ祕書官沈ハ、直ニ日本ノ公使館
  ニ往ッテ、今度ノ事件ハ日本ノ手落デアル
  此事件ノ原因ハ日本ニ在ルノデアル今後
  注意シテ貰ヒタイト云フ、斯ウ云フ逆捩ヲ
  日本ノ公使館ニ持込シダノデアル、是ハ先
  ヅ支那ガ其非ヲ掩ハンガ爲ニ先手ヲ打ッタ
  ノデアル、サウシテ何時モ日本ノ外交ガ此
  手ニ遭シテ、正當ナル理由ガアルニモ拘ラズ、
  後手ニナッテ、之ヲ辯解シ、之ヲ保護シナケ
  レバナラヌト云フヤウナ立場ニ置カレルト
  云フコトハ、日本ノ外交官ガ常ニ時機ヲ見
  ス、時機ヲ逸シテ外交ノ機微ヲ失フト云フ
  コトデアラウト思フノデアリマス、此時ニ
  於テ日本ノ外交官ハ何故直ニ進ンデ之ヲ
  支那ニ抗議ヲセヌカ、却テ支那ヨリ無法ナ
  ル抗議ヲ受ケナケレバナラナイヤウナ立場
  ニ置カレルト云フコトハ常ニ日本ノ外交
  官ノ遣口ト云フモノハ斯樣ナル遣口ヲシテ
  居ル又厚カマシクモ此事件ヲ支那側ヨリ
  シテ直ニ其夜ノ中ニ日本ノ公使館ニ逆捩ヲ
  喰ハシニ往。シタト云フ、此逆襲的ノ辯駁ヲシ
  テ居ルノデアリマスガ、是ハ洵ニ支那人ハ
  外交官ト言ハズ、總テノ支那ノ政客ノ中ニ
  殆ド眼中人ナキ態度デアリマス眼中日本
  ガナイ、支那人ハ今日ノ日本ヲ視ルコト
  殆ド所謂眼中人ナシト言ッテモ宜シイノデ
  アル鹿鐘麟ノ如キハ眇タル一武辨ニ過ギ
  ナイ、此眇タル武人ノ其態度ハ既ニ斯ノ
  如ク日本ニ對シテ洵ニ無禮千萬ノ態度ヲ
  執ッテ居ル、斯樣ニシテ何處ニ日本ノ威信
  ガアルデセウカ、帝國ノ威信ガ如何ニシテ
  保タレルコトガ出來ルデアリマセウカ、又
  斯ノ如ク日本ガ〓々タル者ニマデ侮リヲ受
  ケ、而シテ常ニ逆捩ヲ喰っテ、日本ガ之ニ向シ
  テ辯明ヲシナケレバナラヌト云フヤウナ立
  場ニ置カレルト云フ、其態度ソレ自身ガ大
  ナル不利益デアル、又一面ニ於テハ支那人
  ガ日本ヲ祝ルコト殆ド何ト言ヒマスカ日
  本帝國ノ地位ト國民ノ光榮アル地位ヲ、何
  等ノ價値ナキモノヽ如クニ考ヘテ居ルト云
  フ彼等ノ心理狀態ヲ能ク現ハシテ居ルト思
  ヒマス、私ハ斯樣ナル狀態ニ日本ヲ置クト
  云フコトハ是ハ抑〓誰誰罪デアリマセウ
  カ殊ニ近來帝國外交ノ甚ダ振ハザルコト
  ヲ私ハ感ズル者デアリマス(拍手「ノウ
  ノウ」)支那ニ於テハ殆ド日本ノ威信ハ地ニ
  墜チントシテ居ルノデアリマス今日外務
  大臣ハ支那ニ於ケル日本ノ「プレステー
  ジ」ヲドウ見テ居ラルヽノデアルカ、此狀
  態ヲ如何ニ御考ヘニナッテ居ルノデアリマ
  スカ、私ハ玆ニ現政府ガ執ッテ居ル所ノ絕
  對不干涉主義ノ外交ノ是非ヲ批判セントス
  ル者デハナイ、ナイガ、恐ラク今日日本ノ外
  交程軟弱ヲ極メテ居ルコトハナイト思ヒマ
  ス(拍手)斯樣ナル軟弱ナル外交ノ有樣ガ、
  今日ノヤウナ狀態ヲ惹起シタノデハナイカ、昨
  年ノ十二月ニ於テ楊村ノ附近デ日本ノ軍曹
  ガ實際ノ業務ニ携シテ居ル際ニ遭難シタ
  今日尙ホ此問題ガ解決シテ居ラナイ、又昨
  年ノ五月ニ御承知ノ通リニ豐田紡績工場ノ
  騷ギノトキニ、其支配人デアッタ原〓某ト
  云フ者ガ、此騷ギノ爲ニ殺サレテ居ル、ソ
  レニ對スル始末モマダ著イテ居ラナイ、或
  ハ又上海ニ、或ハ漢口ニ、工場ガ破壞サレ
  タノモ多イ、商店ノ潰サレタノモ多イ、又
  日本人ノ財產ガ非常ナル損害ヲ受ケマシタ
  コトモ諸方ニアルノデアリマス、是等ノ問
  題モ、今日尙ふ少シモ解決シテハ居ラナ
  イ、又最モ憂フベキコトハ彼ノ滿蒙ノ土
  地租借權ノ如キ、是ハ獨リ此政府ノ罪デハ
  ナイト思ヒマスケレドモ、免モ角モ十年前
  ニ得タル所ノ日本ノ権利ガ、今日マダ之ヲ
  解決セラレズニ居ル、又之ヲ解決シヤウト
  スルコトノ努力ヲ拂ッテ居ラナイト云フコ
  トハ洵ニ國ノ爲ニ歎ズベキコトヽ言ハナ
  ケレバナラヌ、斯樣ナル色ミノ問題ガ解決
  セラレズニ、皆支那人ノ機嫌ヲ考へ、支那
  人ノ心ヲ和ゲンガ爲ニ、或ハ其歡心ヲ得ン
  ガ爲ニ、日本デ强ク行カナケレバナラナイ
  ヤウナ問題ヲモ之ヲ抑ヘ、サウシテ唯〓徒ラ
  ニ支那ノ歡心ヲ得ントシテモ、決シテ其目
  的ハ達セラレルモノデハナイ、日本政府ハ
  稅權ノ回復モ列國ニ先ンジテ之ヲ唱ヘ、或
  ハ治外法催ノ撤去モ列國ニ先ンジテ之ヲ唱
  ヘテ居ル斯樣ナ重大ナル問題、支那ヲ再
  生セシムベキ所ノ色〓重大ナル問題ヲ日
  本ハ列國ニ先ンジテ與ヘヤウトシテ店
  ル吾々ハ決シテ之ヲ惡イト云フ者デハナ
  イ、併ナガラ正當ナル權利ハ之ヲ得ルコ
  トハ出來ズ却テ支那ニ向ッテ重大ナル利
  權若クハ支那ニ權利ハ之ヲ與ヘテ、サウシ
  テ我ガ國ニ得ベキモノ、當然得ナケレバナ
  ラヌ所ノ其權利ヲモ得ルコトガ出來ナイニ
  至ッテハ實ニ國ノ爲ニ慨嘆セザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、曩ニハ靑島ヲ支那ニ返シテ、
  サウシテ支那ヨリハ何等ノ感謝ヲ得テハ居
  ラナイノデアリマス、斯ノ如ク讓歩ニ譲歩
  ヲ重ネ、又退嬰ニ退嬰ヲ重ネテ、サウシテ
  今日ノ外交ヲシテ居ル、外交ハ決シテ慈善
  事業デハナイ、日本ノ外交ハ宋襄ノ仁デア
  ル今日支那ニ向フ所ノ態〓反唯唯、宋襄ノ
  仁ヲ繰返シテ居ルノデアッテ、支那人ノ嘲
  侮ヲ受ケルコトハ當然ノ事デアル外交ハ自
  國民ノ權利ト國民ノ利益ヲ擁護スルコトヲ
  第一義トシナクレバナラヌコトハ無論ノ話
  デアル、又此目的ヲ持ヲ、此第一義ヲ外交
  ガ行フニ非レバ、日本ノ外交ハ何等ノ價値
  ヲ持タナイト思フノデアリマス、今日ノ事
  件ノ如キモノ、塘沽ノ沖合ニ於テ砲撃シタ
  ル事併ノ如キ、頻々トシテ是カラ起ルノデ
  アル是ハ日本ノ外交ノ根柢ニ横ハル所ノ
  一大弱點カラ起ッテ來タ所ノ問題デアルノ
  デアル私ハ決シテ帝國主義ヲ謳歌スル者
  デハアリマセヌ、徒ニ支那ノ歡·心ヲ買ハン
  トスル爲ニ、或ハ自由主義ニ感溺シテ、斷
  乎タル外交ノ方針ヲ立テルコトガ出來ナイ
  ヤウナコトデアレバ是ハ外交ニ依ノテ國
  ガ亡ビルノデアル、最近ニ於ケル世界ノ外
  交ノ大勢ヲ見テモ分ル、決シテ今日ノ日本
  ノヤウナ軟弱外交ヲシテ居ル所ハナイ唯一
  二人ノ宣〓師ヲ失。ッタガ爲ニ獨逸ハ主円島
  ヲ取ッタ、是ハ古イ例デ、大戰爭後ノ今日
  ニ於テハ非常ニ外交方針ガ違ノテ來タト言ッ
  テモ、最近ニ於テ英吉利ハ一人ノ將軍ヲ埃
  及人ニ依シテ殺サレタガ爲ニ、進ンデ國務大
  臣ヲ捕虜ニシタコトモアル、或ハ亞米利加
  ノ如キ自由民主國ガ「サンドマンゴ」ニ於テ
  軍事占領ヲシテ居ルコトモアル、或ハ伊太
  利ノ「ムッソリニ」內閣ガ二人ノ伊太利人ガ
  「アルバニヤ」ノ國境ニ於テ希臘人ニ殺サレ
  タト云フ理由ニ依ッテ、直ニ希臘ノ重要ノ
  地點ヲ占領シテ居ルノデアル、或ハ佛人ガ
  「ルール」ニ於ケル獨逸人ヲ驅逐シテ之ヲ占
  領シテ居ル、或ハ近頃人道ト「インターナ
  シヨナル」ヲ唱ヘテ居ル露國共產政府ガ外
  蒙古ヲ占領シ、或ハ波蘭ニ侵入シ、或ハ又
  「ジヨージヤ」ニ於テ武力占領ヲシテ居ルト
  云フヤウナコトヲヤッテ居ル、今日ノ外交ハ
  〓皆各〓其政策ヲ立ッテ、斷乎トシテ一步モ讓
  ラズニ、其國民ト國家ノ利益ヲ擁護シテ店
  ルノデアル(ヒヤ〓〓)私ハ今日ノ日本ノ外
  交ガ支那ニ對シテ餘リニ軟弱デアルト云フ
  コトヲ遺憾トスル者デアル、政府ハ必ズ是
  ハ强硬ナル態度ヲ取ルト云フコトヲ申サル
  ルニ相違ナイト思ヒマス、强硬ナル態度
  ヲ取ルト云フコトハ至極結構ナコトデア
  ル御水知ノ如クニ支那人ニ對シテ如何ナ
  ル强硬ナル態度ヲ取ルニシテモ、口舌ノ上
  ニ於テ之ヲ爭シタ所ガ何ノ役ニモ立タヌト
  思フ、結局支那人ハ糠ニ釘ヲ打ツヤウナモ
  ノデアッテ、支那ノ外交ニ對シテ日本ガ强硬
  ナル-今マデノヤウナ文書或ハ言葉ニ
  依シテ、ドウ云フ强硬ナルコトヲ言ハウガ、
  結局何等得ル事ハナカラウト思フ、然ラバ
  ドウスル覺悟デアルカ、外務大臣ハ如何ナ
  ル覺悟ヲ以テ、若シ支那ガ誠意ヲ披瀝スル
  コトガ出來ズ、又政府ノ希望ガ行ハレナイ
  時ニ於テハ、現國務大臣ハ如何ナル態度ヲ以
  テ支那ニ臨マントスルノデアルカ、今日關
  稅會議ハ開カレテアルガ、或ハ此關稅會議
  ヲ止メルコトモ宜シイ、或ハ直接行動ニ出
  テ、何レカノ地ヲ占領スルモ宜シイ、苟モ
  國家ノ利益ト體面トヲ保タンガ爲ニハ强
  硬ナル態度ヲ執ッテ、將ニ日本ガ支那ニ於
  テ落チントスル所ノ此日本ノ「プレステー
  ジ」ヲ恢復スルコトヲ考ヘナケレバナラナ
  イト思フ、此機會ニ於テ外務大臣ハ長イ間
  懸案ニナッテ居ル所ノ色こノ外交上ノ問題
  ヲ一擧ニシテ解決スル考ハ持シテ居ラナイ
  カ、又此目的ヲ達スルガ爲ニ戰意ヲ····(發
  言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=112

  ---

• 113・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=113

  ---

• 114・松本君平

  ○松本君平君(續)　徹底スルガ爲ニ力ヲ以
  テモ此事柄ヲ貫徹スル所ノ希望ハナイカ
  私ハ此點ニ於テ外務大臣ガ誠意ヲ以テ、又
  誠意ヲ披瀝シテ國民ニ外交ノ不振ト、又
  支那ニ於テ我帝國ノ「プレステージ」ガ日ニ
  衰ヘントスル其時ニ、此狀態ヲ恢復スルト
  云フ覺悟ハナイカ、之ヲ此席ニ於テ外務大
  臣ノ明白ナル御答辯ヲ得ンコトヲ望ムノデ
  アリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=114

  ---

• 115・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　幣原外務大臣
  〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=115

  ---

• 116・幣原喜重郎

  ○國務大臣(男爵幣原喜重郞君)　只今松本
  君ヨリ塘沽ニ於ケル射擊問題ニ付テ緊急質
  問ヲ出サレタノデアリマス、而シテ此質問
  ハ海軍大臣ニ對スルモノト、私ニ對スルモ
  ノト二方面ガアッタノデアリマスガ便利
  ノ爲ニ私ヨリ先ヅ大體ノ御說明ヲ申上ゲタ
  イト思フノデアリマス、御水知ノ如ク昨年
  ノ終ニ於キマシテ、國民軍ガ天津ヨリ李景
  林軍ヲ驅逐致シマシテ以來、天津方面ハ國民
  軍ノ手ニ落チタノデアリマス、然ルニ最近
  ニ至リマシテ、李景林ハ張宗昌ト提携シ、
  其失ヒタル天津方面ヲ奪還センコトヲ試ミ
  テ居ルノデアリマス、陸上ニ於キマシテハ
  陸兵ハ既ニ天津方面ニ向ヒ、馬廠附近ニマ
  デ參ッテ居ルノデアリマス、而シテ海上ニ
  於キマシテ更ニ畢司令ノ指揮ノ下ニ屬シマ
  スル若干ノ艦船ガ、兵員ヲ搭載致シマシテ
  天津方面ニ向ッタノデアリマス隨テ國民
  軍ニ取リマシテハ是等ノ兵員ガ太沽附近ニ
  上陸セラレルデアラウト云フ恐ヲ懷イテ、
  居ルノデアリマス、ソレヨリ致シマシテ、
  太沽ヨリ天津ニ參ル是等ノ船舶ニ對シテ、色
  色ノ制限ヲ加ヘルヤウニ相成ッタ其航行ニ
  對シテ色ミノ制限ヲ加ヘルヤウニ相成クタ
  ノデアリマス或ハ臨檢ヲ行ヒ、或ハ其航
  行ノ時期ヲ制限致シ、又或ハ先刻松本君ノ
  仰セラレタル如ク、水雷ヲ敷設シタト云フ
  風說モアッタノデアリマスソレハ機械水
  雷デハアリマセヌ、祝發水雷デアルト云フ
  コトデアリマシタガ、果シテ斯樣ナ水雷ガ
  敷設サレテ居ルカドウカト云フコトハ是ハ
  確カデハアリマセヌ、何レニ致シマシテモ、
  天津ニ出入スル船舶ノ航行ガ制限ヲ受ケ、
  妨害ヲ受ケタト云フ事實ニ顯ミマシテ、千
  九百一年ノ議定書ニ關係致シテ居ル諸國ノ
  公使ガ集リマシテ、是等ニ對スル對抗策ヲ
  講ジタノデアリマス初メハ本月ノ十日ニ
  會合ヲ〓シマシテ、先ヅ支那中央政府ニ對
  シテ深甚ナル注意ヲ喚起致シタノデアル
  是ト同時ニ奉天ニ於キマシテモ、濟南ニ於
  キマシテモ、靑島ニ於キマシテモ、是等ノ
  關係國ノ領事ヨリ、と各〓其地方ノ官憲ニ抗
  議ヲ提出致シマシテ斯ノ如キ不法行爲ノ
  停止ヲ要求致シタノデアリマス、然ルニ是
  等ノ手段カ餘リ有效ナル效力ヲ奏シナイト
  云フコトヲ見マシテ、更ニ關係國ノ公使ガ
  此十二日ニ會合致シマシテ、是マデノ手段
  デハイケナイ、今少シク具體的ニ强硬ナル
  手段ヲ執ラナケレバナラヌト云フ考ニ相成
  リマシテ遂ニ一ツノ議決ヲ致シテ居ル
  其議決ニ依リマシテ天津太沽方面ニ於ケル
  列國ノ海軍ノ指揮官ガ、共同デ支那ノ現ニ
  交戰ニ從事シテ居ル南方面ニ對シテ、速ニ
  斯ノ如キ不法行爲ノ廢止ヲ求ムルコト、例
  ヘバ若シ水雷ガアルナラバ水雷ヲ直ニ除
  クコト、或ハ兩軍ノ艦ハ苟モ軍用ニ供セ
  ラルヽモノデアルナラバ、太沽ニ近付クコ
  トハ相成ラヌ、又船舶ノ航行ニ對シテ一切
  干涉シタリ臨檢致シタリスルコトハ相成ラ
  ヌト云フヤウナ趣意デ、是等ノ交戰軍雙方
  ノ官憲ニ對シテ注意ヲ喚起シ、若シ十六日、
  卽チ明日ノ朝ノ潮時マデニ滿足ナル回答ヲ
  得ラレナイ、滿足ナル保障ヲ得ラレナイ場
  合ニ於テハ、千九百一年ノ議定書ニ基キ
  斯ノ如キ不法行爲ヲ防遏スル爲ニ必要ト認
  ムル手段ヲ執ルト云フコトヲ警告ヲ致スコ
  トニ相成ッテ居ルノデアリマス、是ハ列國
  共通ノ關係ニ在リマス一般ノ問題デアリマ
  ス是ト同時ニ又、日本單獨ニ關スル問題
  ガ起ッテ參クタノデアリマスソレガ則チ松
  本君ノ御話シニナッタ所ノ射撃事件デ、塘
  沽方面ニ於ケル射擊事件ト云フノガソレデ
  アリマス如何ニシテ斯樣ナ事件ガ起ッタ
  カト云フコトヲ單簡ニ申上ゲタイト思ヒマ
  ス、昨今ノ天津ノ形勢ニ顧ミマシテ旅順
  ニ碇泊致シテ居ッタ驅逐艦四隻ガ一隊トナ
  リマシテ、十一日デアッタト思ヒマス、十
  一日ニ天津方面ニ急航〓シ、十一日ノ夕刻
  ニ太沽沖ニ到著致シタノデアリマス、面シ
  テ十二日ニナッテ直ニ是等ノ軍艦ガ遡行致
  シマスルニ先ダチ、先ヅ天津ニ於ケル日本
  ノ總領事ヨリハ國民軍總司令官タル鹿鐘
  麟ノ注意ヲ喚起シ、斯々ノ理由ヲ以テ日本
  ノ軍艦ガ參ルカラ、之ニ對シテ何等ノ誤解
  ガアッテハイケナイ、十分ナル便宜ヲ供與
  スベキモノデアルト云フコトヲ要求シタノ
  デアリマスガ、鹿鐘麟ハ忽チ之ヲ快孝致シ
  マシテ、必要ナル訓令ヲソレ〓〓執ルト云
  フコトヲ申シタノデアリマス更ニ他ノ
  面ニ於キマシテハ日本ノ總領事館ヨリ館
  員ヲ塘沽ニ派遣致シマシテ塘沽ノ砲
  臺ニ居リマスル將校ト談ヲ致シマシ
  テ是等ノ將校ヲ迚レマシテ一緒ニ
  小蒸汽船デ以テ太沽ノ沖合ニ於ケル日本ノ
  驅逐隊ノ所ニ參リマシテサウシテ意思ノ
  疏通ヲ試ミタノデアリマス、間違ノナイヤ
  ウニ、斯々斯ウ云フ事情ノ下ニ於テ、斯ウ
  云フ風ニシテ這入ッテ來ル、随テ支那ノ方
  ニ於テ何等ノ妨害ヲ加ヘルコトハナラナイ
  ト云フ話合ヲ付ケル爲ニ、支那ノ士官モ
  伴ッテ沖合マデ參ッタノデアリマス、所ガ
  途中ニ日本驅逐隊ノ中ノ二隻卽チ藤、薄デ
  アリマス之ヲ遡行シテ來ルノニ逢ヒマシ
  テ、其途中デ逢)ノテ話ヲ致シマシタ所ガ、
  先刻松本君ガ仰セラレタヤウニ、先ヅ差當
  リ一隻ダケ遡行スルコトニシテ貰ヒタイト
  云フヤウナコトヲ、支那ノ國民車ノ士官ハ
  申シタノデアリマスケレドモ、ドウシテモ
  二隻タルコトヲ必要トスルト云フコトヲ日
  本ノ方カラ中シマシタノデ、到頭之モ同意
  致シマシテ、遂ニ日本ノ驅逐艦ハ二隻日
  本ノ國旗ヲ揭ゲ、軍艦旗ヲ揭ゲ、又特別ニ
  必要ト致シテ居ル信號旗ヲモ掲ゲマシテ遡
  航致シタノデアリマス、然ルニ若干遡航致
  シマシタ上デ、此支那ノ國民軍ノ士官ガ上
  陸ヲ致シテ-話合ノ決シタコトヲ自分ノ
  長官ニ報告スル必要ガアルト言ッテ、上陸
  致シタノデアリマス、其瞬間ニ、上陸〓シ
  マスト云フト、忽チ陸上ヨリ小銃デ射擊ヲ
  始メタノデアル、亂射ヲ致シタト云フコト
  デアリマス、是ニ於テ日本ノ驅逐艦ハ已
  ムヲ得ズ機關銃ヲ以テ之ニ應射ヲ致シタノ
  デアリマス若干ノ間、應射ヲ致シテ居リ
  マシテ、又更ニ引返シテ沖合ニ居リマスル
  驅逐隊ト合スル爲ニ引揚ゲタノデアリマ
  ス、斯樣ナ次第デアリマシテ、今日ニ於キ
  マシテ、果シテ支那ガ如何ナル理由ヲ以テ、
  陸上ヨリ小銃ヲ以テ射撃ヲ始メタカト云フ
  理由ハ、マダ明ニナッテ居ナイノデアリマ
  ス、併ナガラ此事件ハ、十二日ノ午後三時
  四時頃ト思ヒマスガ、其間ニ起ッタノデア
  リマスガ、其夜ニ至リマシテ、北京ノ外交
  部ニ天津ノ方面ヨリ電話ガアッタト中シマ
  シテ、其電話デ聞込ンダ結果ヲ、曾外交次
  長ガ日本ノ公使館ニ傳ヘニ參ッタノデアリ
  マス、其傳フル所ニ依ルト、自分ノ方ノ電
  話デ聞イタ所ニ依レバ-餘リ正確デハナ
  イガ、電話デ間イタ所ニ依ルト、日本ノ軍
  艦ガ運レテ參ッタ、サウシテ日本ノ軍艦タ
  ルコトハ能ク判ラヌ時ニ、暫ク規則ニ依ン
  テ一時停止ヲ命ズル爲ニ空砲ヲ發射シタ
  所ガ忽チ日本ノ軍艦ノ方デハ機關砲ヲ以テ
  鷹射シタト云フコト斯ウ云フ報告ヲ電話
  デ受ケタト云フコトデアリマス、是ハ固ヨ
  リ事實ガ誤シテ居ルコトデアリマシテ、斯
  樣ナ事ガアルベキ筈ハ無イノデアリマスカ
  ラ其當時ニ於テ直ニ日本ノ公使ハ左樣ナ
  事實ノアルベカラザルコトヲ明白ニ答ヘマ
  シタ、其翌日ニ至リマシテ、卽チ十三日ニ
  至リマシテ、日本ノ公使ヨリ正式ニ支那政
  府ニ對シマシテ抗議書ヲ提出致シタノデア
  リマス、嚴格ナル抗議ヲ〓シタノデアリマ
  ス抗議ガ一日遲レタト云フガ爲ニ、15元
  支那ニ機先ヲ制セラレテ、非常ニ不利益ナ
  地位ニ陥ッタト云フ御話デアリマシタガ、左
  樣ナ事ハ無イト私ハ考ヘルノデアリマス、
  而シテ十三日ニ致シマシタ抗議ハ房
  抗議デアリマシテ、更ニ將來日本ノ此問題ニ
  關シテノ要求ト云フモノハ、他日ニ留保致
  シテ居ルノデアリマス、唯、差當リ斯樣ナ問
  題ガ度々繰返サレルト云フコトニ相成リマ
  シテハ甚ダ不都合千萬ナ話デアリマスガ
  故ニ、免ニ角斯ノ如キ事件ノ再發ヲ豫防ス
  ベキ手段ヲ執ルベシト云フコトノ要求ヲ致
  シタノデアリマス、而シテ今日ニ於キマシ
  テハ、吾々ハマダ其事實ニ明ニナッテ居ラヌ
  所ガアリマシテ、其點ヲ調査致シテ居ルノ
  デアリマス、何レニ致シマシテモ、此問題
  ハ吾々ハ極メテ重要ナル問題デアルト云フ
  コトハ十分了解致シテ居ルノデアリマ
  ス、而シテドウシテモ吾々ハ此問題ノ爲ニ
  ハ將來ヲ成メルト共ニ、既ニ發生致シマシ
  タ此事件ニ付キマシテハ、十分ナル滿足ナル
  解決ヲ求メルト云フ覺悟ヲ持シテ居ルノデ
  アリマヌ(拍手)尙ホ其他ノ問題ニ付キマシ
  テ、色〓御話ニナリマシテ、或ハ支那ニ對
  スル日本ノ地位ガ既ニ低クナッタ、日本ノ威
  信ガ地ニ墜チタト云フヤウナ御話ガアリマ
  シタケレドモ、是ハ所謂緊急質問ノ問題ニ
  直接關係ノナイ事ト考ヘルノデアリマス、
  何レニ致シマシテモ、吾々ハ此點ニ付キマ
  シテ、全ク松本君トハ見解ヲ異ニ致シテ居
  リマシテ、何故ニ支那ニ於ケル日本ノ地位
  ガ低下シタト仰セラレルカ、吾々ハ斷ジテ
  左樣ナ形跡ハ認メテ居リマセヌ、何レニ致
  シマシテモ、御意見ノ話デアリマシテ、松
  本君ノ御意見デアルト存ジマスカラ、其點
  ニ關シマシテハ私ハ答辯致シマセヌ
  〔國務大臣財部彪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=116

  ---

• 117・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　松本君ノ御質問ニ
  御答申上ゲタイト存ジマス大體ノ成行
  ハ外務大臣ヨリ殆ド詳細ニ盡サレマシタ
  カラ此上餘リ私カラ申上ゲルコトモ無イ
  カノヤウニ思モマスケレドモ、事實ヲ簡單
  ニ中上ゲタイト思ヒマス、旅順ニ碇泊致シ
  テ居リマス驅逐艦四隻ノ一隊ヲ天津方面ニ
  派遣以シマシタ狀況ハ、外務大臣ヨリ御說
  明ノ通リノ狀態ノ下ニアッタノデアリマシ
  テ、上海ニ碇泊〓シテ居リマスル所ノ第一
  遣外艦隊司令官ノ命令ニ依シテ、旅順カラ太
  沽沖ノ方ニ十一日ニ廻航致シタノデアリマ
  ス、サウシテ十二日ノ午後、天津ノ領事館
  員ガ、鹿鐘麟ノ國民軍ノ方トノ打合セモ十
  分ニ濟ンダト云フコトノ報知ニモ接シマシ
  テ、又此領事館員ト一〓ニ參リマシタ支那
  ノ武官トモ打合ヲ遂ゲマシテ、サウシテ二
  隻連レ立シテ白河ニ航入セント致シタノデ
  アリマス、所ガ午後二時五十八分、白河ノ
  河口ノ所ニ差掛リマシ夕時分ニ、河口ノ突
  堤ノ上ニ數開致シテ居リマスル所ノ支那兵
  ガ、突然小銃火ヲ浴セカケタト云フコトデ
  アリマス之ニ對シテ驅逐艦ハ直ニ機銃ヲ
  以テ應射致シタノデアリマス、五十八分ニ
  彼ノ砲火ヲ浴ビマシテ、五十九分ニ機銃ヲ
  以テ之ニ應射ヲ開始致シタノデアリマス
  サウシテ十二分間應射ヲ致シマシタ所ガ、
  支那側ノ方ハ沈默致シテ屈服致シタサウデ
  アリマス、此射撃ヲ受ケマシタ地點ハ唯こ
  河口ノ突堤ニ差掛ッタ時ト云フダケデア
  リマシテ、其外ノ報告ニハ「リーフポール」
  ニ散開シテ居ル所ノ支那兵カラト云フコト
  モアリマスケレドモ、是ハ海圖ノ上ニ依ッテ
  能ク調ベテ見マスルケレドモ、左樣ナルモノ
  ハ海圖ノ上ニモ現ハレテ居リマセヌ、故
  果シテドノ點デアルカ分リマセヌケレド
  モ蓋シ河口ノ砲臺ノ下ニアリマスル所
  ノ波止場ミタヤウナ所デアラウカト思フ
  ノデアリマス、此所ハ河幅ガ僅カ二百米突
  位シカナイ所デアリマシテ、斯ノ如キ所ニ
  長ク驅逐艦ガ居ルト云フコトハ極メテ不
  利益ナ所デアリマスガ故ニ、此處ヲ引揚ゲ
  テ再ビ河ノ外ニ出マシテ、サウシテ太沽沖ニ碇
  泊致シタ、斯ウ云フ事デアルト考ヘマス、藤、
  薄ノ二艦ガ費シマシタ所ノ機銃弾ハ僅ニ
  二百餘發ニ過ギマセヌ、ソレデサマデ激烈
  ナ小銃火戰ガアッタモノトモ考ヘマセヌケ
  レドモ、不幸ニシテ驅逐隊司令ノ蒲田中
  佐、辻主計大尉、及服部二等兵曹、此三人
  ガ、一名ハ重傷、一名ハ輕傷、他ノ一名ハ
  微傷ヲ被ッタノデアリマス、此重傷ヲ被シタ
  者ハ其後旅順ノ方ニ後送致シマシテ、病
  院ニ入院シテ手當ヲ致シテ居リマス、輕傷
  者ハ艦内ニ於テ休養致シテ療養ヲヤッテ居
  ル程度デアルサウデアリマス、又驅逐隊司
  令ノ蒲田中佐ハ極メテ微傷デアリマシ
  テ、其後モ尙ホ任務ニ服シテ居リマス、其
  後上海ニ居リシタ所ノ艦隊司令官ハ直ニ上
  海ヲ出航致シマシテ、今ヤ太沽沖ニ向シテ
  航行中ニアリマス、又其外ニ巡洋艦ノ平戶
  グ旅順ニ居リマスカラ何事カ是レ以上ノ
  悶著ガ起ルヤウナ事ガゴザイマスレバ是
  等モ亦送ル積リデアリマスケレドモ、其後
  餘リ詳シイ報告モ參リマセヌガ、今日晝頃
  受取リマシタ電報ニ依リマスト前ニ小銃
  火ヲ浴ビマシタ所ノ「藤」ハ、今朝太沽沖ヲ
  出マシテ天津ニ向ッタト云フコトデアリマ
  スカラ、其後此事件ハ發展ハ致サヌコトデ
  アルト考ヘテ居リマス、唯〓今回ノ事ハ
  我ガ軍艦旗ニ汚辱ヲ與ヘタルモノト考ヘマ
  スカラ決シテ之ヲ輕々ニ看過スル積リデ
  ハゴザイマセヌ、併ナガラ何分ニモ事情ガ
  能ク分リマセヌカラ、事情ヲ篤ト取調ベマ
  シテ、適當ナル手段ヲ執ルコトニ致ス積リ
  デゴザイマス、左樣ナ次第デゴザイマスル
  カラ、御質問ノ中ニ、日本ノ海軍側ニ何等
  カ手落デモアリハシナカッタカト云フ御言
  葉デアリマシタガ、是ハ手落ハ萬々ナカッタ
  ト考ヘテ居リマス、唯〓支那ノ兵ハ頗ル無
  節制ノ者ガ多イノデアリマシテ、實ハ日本
  ノ軍艦、又軍隊等ノ近邊ニ、小銃彈ヤ何カ
  ガ飛ンデ來ルコトハ今迄モ屢、〓アッタノ
  デゴザイマス、是等ハ洵ニ困ッタモノデア
  リマスケレドモ、彼ノ內亂ノアル土地ニ
  行ッテ居リマシテハ、斯ノ如キコトヲ一々
  取上ゲテ彼此レ言フコトモ、頗ル困難ナ事
  モアルノデアリマス、デ今回ノ事情ハ果
  シテ如何ナル事デアルカ分リマセヌケレド
  モ、苟モ白晝靑天ノ下ニ、又事前ノ打合モ
  能ク致シマシテ這入リマシタモノニ向ヒマ
  シテ、一隊ノ兵團カラ小銃火ヲ浴セタト云
  フコトハ如何ニシテモ不都合デアルト考
  ヘマス、是ハ何處迄モ曲直ヲ明ニシテ、相
  當ノ手段ヲ執ラナクチヤナラヌト考ヘテ居
  リマス、ソレカラ····(「曲直トハ何ダ」ト
  呼ヒ其他發言スル者多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=117

  ---

• 118・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　静肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=118

  ---

• 119・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)(續)　一言附加ヘテ
  申上ゲタイト思ヒマス、派遣艦隊ノ任務
  ハ單リ此國民軍ニ對シテノミデハナイノ
  デアリマシテ奉天軍ト申シマセウカ、山
  東軍ト申シマセウカ、此勃海艦隊ノ方ノ者
  ガ、各國ノ商船ノ白河ニ這入リマスモノヲ
  之ヲ臨檢スルヤウナコトガアルノデアリマ
  スカラ、之ニ向シテモ商船保護ノ任務ヲ我
  ガ隊ハ持テ居ルノデアリマスソレデ
  能ノ分リマセヌガ、我ガ艦隊ノ此二艦ガ太
  沽ニ人港セント致シタノハ太沽ノ狀況調
  査ノ爲ニ入港セント致シタ、斯ウ云フ話デ
  アリマスカラ、或ハ世間ニハ僅ニ支那兵ノ
  小銃火ヲ浴ビテ日本ノ驅逐艦ハ任務ヲ抛
  棄シテ外ニ引返シタノヂヤナイカト云フヤ
  ウナ疑惑モアルヤニ聞キマスケレドモ、決
  シテ斯カル事小無イト考ヘテ居リマス、前
  ニ申シマス通リ、小銃彈ガ飛ンデ來マスコ
  トハ常ニアルノデアリマスカラ、決シテ
  斯ノ如キ事ニ於キマシテ、我ガ海軍々人ハ
  避易シタト云フヤウナ事ハ萬々ナイト信ジ
  マスカラ、尙ホ是等ノ事ハ能ク調査致シマ
  シテ、分リマシタナラバ詳細御報告ヲ申上
  ゲタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=119

  ---

• 120・松本君平

  ○松本君平君　尙ホ少シ伺ヒタイ事ガアリ
  マス(「登壇々々」ト呼フ者アリ)只今海軍大
  臣ヨリノ御話ハ我ガ海軍ニ於テ何等ノ手
  落ハ無イヤウダト云フヤウナ、極メテ瞹眛
  ナル事デアリマシタガ、何カ御不安ガアル
  ノデアルカドウカ、又曲直ヲ明ニスルト云
  フノハ何ニ依シテ曲直ヲ明ニスルノデア
  ルカ、或ハ之ヲ裁判所ニ訴ヘテー(笑啓
  起ル)國際裁判ノ事デアル、裁判所ニ訴ヘ
  テ、何レガ善イカ惡イカト云フヤウナコト
  ヲ明ニスル意味デアルカドウデアルカ、若
  シ我ガ海軍ニ手落ガ無イコトデアルナラ
  日本帝國ノ驅逐艦ニ向ッテ、之ニ無法
  ナル發砲ヲスルト云フコトハ若シ海軍ニ
  於テ手落ガ無イ、不注意ナ點ガ無イト云フ
  コトデアルナラバ何モ調ベテ曲直ヲ調べ
  テドウスルト云フヤウナ弱音ヲ吐ク必要ハ
  無イ、ソレデ、此點ニ付テ海軍大臣ノ持タ
  レル確信ヲ披瀝シテ貰ヒタイ、然ラザレバ
  支那ニ居ル十數万ノ日本國民ハ非常ニ不
  安ヲ持っテ居ルノデアル(拍手)又外務大臣
  ニ御伺シタイ事ハ日本ノ態度、支那ニ對
  シテ此問題ニ對シテドウ云フ態度ヲ執ル
  カソレヲ伺フノデアル、今迄此樣ナ懸案
  ノ問題ハ多々アルノデアリマスケレドモ、
  一トシテ此問題ガ片付イテ居ラナイコトハ
  諸君ノ知ラルヽ通リデアル一トシテ日本
  ノ不利ノ位置ニ置カレタル所ノ-財產生
  命ヲ迫害サレ、脅威サレタ問題ハ、一トシ
  テ片付イテ居ラナイノデアル是ハ何デア
  リマスカ、今日ノ支那ニ對スル日本ハ何處
  ニ斯樣ナ態度ヲ執ラナケレバナラナイ必要
  ガアルノデアルカ、斯樣ナ政策ヲ執ッテ行,
  タナラバ、如何ナル問題モ支那ニ對シテ爲
  スコトハ出來ナイノデアル、幾千万ノ財產
  ヲ投ジ、資本ヲ投ジ、幾十万ノ日本人ガ支
  那ニ於テ事業ヲシテ居ルケレドモ、今日ノ
  政府ガ執ルガ如キ態度ヲ以テ進ンデ行シタ
  ナラバ、日本ノ總テノ經濟的施設ト云フモ
  ノハ、皆無ニ歸シテシマヒハシナイカト思フ
  (拍手)私ハ外務大臣ハ、事實ガ今能ク分ラ
  ヌカラ能ク調査シテ、ドウ斯ウト云フ御話
  ガアッタヤウデアルガ、何時モ調査シテ調
  査シテト云フ中ニ、時機ハ經シテシマッチ、
  昨年末ニ是ト同ジヤウナ問題ガ起ッタノデ
  アルガ、今尙ホソレモ解決セズニ居ル、今
  度ノ問題モ解決セズニ又一年二年濟ンデシ
  マフノデアル斯樣ニシテ時ヲ經タナラバ、
  何ノ時ニ於テカ日本ノ支那ニ於ケル所ノ此
  墜チントスル所ノ威信ヲ回復スルコトガ出
  來ヤウカ、之ヲ吾々ハ虞レルノデアリマ
  ス、モウ少シ明白ニモウ少シ勇氣アル態度
  ヲ執ンテ、此議場ニ外務大臣ハ答辯セラレ
  ンコトヲ希望致シマス
  〔國務大臣財部彪君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=120

  ---

• 121・財部彪

  ○國務大臣(財部彪君)　松本君カラ更ニ御
  尋デゴザイマシタカラ、更ニ一言申上ゲテ
  置キタイト思ヒマス、固ヨリ我ガ海軍側ニ
  ハ曲ハナイト考へマス、曲ハナイト考ヘマ
  スカラ、曲直ヲ明ニスルト云フコトハ彼
  ノ曲ヲ明ニスル積リデ、私ハ曲直ヲ明ニス
  ルト云フ言葉ヲ用ヰマシタガ、併シ其言葉
  ハ或ハ完全デハナカッタカモ知レマセヌ、
  私ノ精神ハ其所ニアリマシタカラ御諒水ヲ
  願ヒマス
  〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=121

  ---

• 122・幣原喜重郎

  ○國務大臣(男爵幣原喜重郞君)　更ニ松本
  君ヨリ此射撃問題ニ對スル政府ノ態度如何
  ト云フ御質問デアリマシタ、其御質問ニ對
  シマシテハ私ハ先刻御答申シタ積リデア
  リマス、卽チ吾々ハ此問題ハ極メテ性質ノ
  重大ナルコトヲ了承致シマシテ、ドウシテ
  モ此問題ニ對シテ滿足ナル解決ヲ得ナケレ
  バナラヌト云フ覺悟ヲ持ッテ居ル、卽チ差
  當リ十三日ノ日附ヲ以テ一應ノ强硬ナル抗
  議ヲ提出シ、更ニ事實調査ノ上デ將來ニ對
  スル保障ト共ニ既ニ發生セル事件ニ付キ
  マシテハ十分ナル滿足ナル解決ヲ求メル
  覺悟デアルト云フコトヲ先刻御話申シタノ
  デアリマス、是ガ卽チ吾々ノ此間題ニ對ス
  ル熊度デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=122

  ---

• 123・松本君平

  ○松本君平君　私ハ唯ス一言ヲ述ベテ終リ
  タイト思ヒマス、此問題ハ私ハ今海軍大臣
  ノ言明ニ對シテ之ヲ信ジマス又今外務大
  臣ガ玆ニ重ネテ述ベラレタ、此事柄ヲ十分力
  强クヤラレルト云フコトヲ希望スルノデア
  リマス、又此問題ヲ若シ誤ルヤウナコトガ
  アッタナラバ、日本ハ總デノ問題ヲ失フト
  云フ御覺悟ヲ以テ、ドウゾ外務大臣ガ大勢
  力ヲ振ッテ此問題ノ解決ヲセラレンコト
  ヲ-私ハ外務大臣ヲ傷ケンガ爲ニ言フノデ
  ハナイ、日本帝國ノ威信ノ支那ニ於テ失ハ
  レントスルコトヲ恐レルノデアリマスカ
  ラ此意氣ヲ以テ努力セラレンコトヲー
  暫ク外務大臣ノ說ヲ信ジテ、此質問ヲ終リ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=123

  ---

• 124・作間耕逸

  ○作間耕逸君　重ネテ日程變更ニ關スル緊
  急動議ヲ提出致シマス、卽チ政府ノ同意ヲ
  得テ、日程第三十五乃至三十九ノ五案ヲ此
  際特ニ繰上ゲテ「括議題ト爲シ、當該委員
  長ノ報告ヲ求メ、其第一讀會ノ續ヲ開カレ
  ンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=124

  ---

• 125・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=125

  ---

• 126・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス-政府ノ同意ヲ得マシタ、仍テ日
  程ハ變更セラレマシタ、日程第三十五、舊慣
  ニ依リ永小作權者ガ地租額負擔ヲ約シタ
  ル田畑ノ地租免除ニ關スル法律案外四案ノ
  第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メ
  マス-委員長代理金光庸夫君
  第三十五舊慣ニ依リ永小作權者カ地
  租額負擔ヲ約シタル田畑ノ地租免除
  ニ關スル法律案(大石大君提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一舊慣ニ依リ永小作權者カ地租額負擔ヲ
  約シタル田畑ノ地租免除ニ關スル法
  律案(大石大君提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  舊慣ニ依リ永小作權者カ地租
  額負擔ヲ約シタル田畑ノ地租
  免除ニ關スル法律案委員長
  元田肇
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三十六地租條例中改正法律案床
  次竹二郞君外二十三名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一地租條例中改正法律案(床次竹二郞君
  外二十三名提出)
  右ハ本院ニ於テ議決ヲ要セサルモノト議
  決致候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  地租條例中改正法律案(床次竹
  二郞君外二十三名提出)委員長
  元田肇
  衆議院議長泊谷義三殿
  第三十七所得稅法中改正法律案床
  次竹二郞君外二十三名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一所得稅法中改正法律案(床次竹二郞君
  外二十三名提出)
  右ハ本院ニ於テ議決ヲ要セサルモノト議
  決致候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  所得稅法中改正法律案(床次竹
  二郞君外二十三名提出)委員長
  元田肇
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三十八大正九年法律第十二號中改
  正法律案(所得稅法ノ施行ニ關スル件)
  (床次竹二郞君外二十二名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一大正九年法律第十二號中改正法律案
  (所得税法ノ施行ニ關スル件)(床次竹
  二郞君外二十三名提出)
  右ハ本院ニ於テ議決ヲ要セサルモノト議
  決致候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  大正九年法律第十二號中改
  正法律案(床欠竹二郞君外
  二十三名提出)委員長
  元田肇
  衆議院議長粕谷義三殿
  第三十九明治四十二年法律第七號廢
  止法律案(國債ノ利子所得稅免除ニ
  關スル件)(床次竹二郎君外二十三名
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一明治四十二年法律第七號廢止法律案
  (國債ノ利子所得稅免除ニ關スル件)
  (床次竹二郞君外二十三名提出)
  右ハ本院ニ於テ議決ヲ要セサルモノト議
  決致候此段及報告候也
  大正十五年三月四日
  明治四十二年法律第七
  號廢止法律案委員長
  元田肇
  衆議院議長粕谷義三殿
  〔金光庸夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=126

  ---

• 127・金光庸夫

  ○金光庸天君　委員長ニ代リマシテ御報告申
  上ゲマス、日程第三十五、大石君ノ提案ニ
  係ル本案ハ所得稅法中改正法律案外二十七
  件ノ委員會ニ併託サレタノデアリマス、而
  シテ委員會ニ於キマシテハ愼重審議ノ結果、
  全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、日程第三
  十六ヨリ第三十九ニ至ル四案ハ委員會ニ
  於テ是ト關聯シテ居リマスル所ノ他ノ政府
  ノ提出ニ係ル諸案ヲ修正通過致シ、且ツ大石
  君ノ提案ヲ可決セラレマシタ結果、是等ノ
  諸案ハ何レモ進ンデ之ヲ議決スル必要ガナ
  イト云フコトヲ議決致シタノデアリマス、
  此段御報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=127

  ---

• 128・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　先ヅ第一ニ舊慣
  ニ依リ永小作權者カ地租額負擔ヲ約シタル
  田畑ノ地租免除ニ關スル法律案ノ第二讀會
  ヲ開クニ付テ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=128

  ---

• 129・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=129

  ---

• 130・作間耕逸

  ○作間耕逸君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會會省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=130

  ---

• 131・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ本案ノ第二
  語會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  舊慣ニ依リ永小作權者カ地租額負擔ヲ
  約シタル田畑ノ地租免除ニ關スル法律
  案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=131

  ---

• 132・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　第三讀會ヲ省略
  シテ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシ
  タ次ニ地租條例中改正法律案外三案ハ
  委員長報告ハ議決ヲ要セザルモノデアリマ
  スカラ、委員長報告通リニ御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=132

  ---

• 133・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス仍テ床次竹二郞君外二十三名提
  出、地租條例中改正法律案外三案ハ、委
  員長報告ノ通リ議決ヲ要セザルモノト決シ
  マシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=133

  ---

• 134・作間耕逸

  ○作間耕逸君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期セ
  ラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=134

  ---

• 135・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　作間君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
  マシタ、次回ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致
  シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
  午後六時十六分〓會
  衆議院議事速記錄第二十九號中正誤
  頁段行誤正
  七七二-一七發言質疑

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03019260315&spkNum=135

4. 会議録のPDFを表示

この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。