1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月十六日(火曜日)午後一時十八分開議
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議事日程 第三十號
大正十五年三月十六日
午後一時開議
質問
一 金鵄勳章年金令改正即行に關する再質問(古川清君外一名提出)
二 東本願寺問題に關する再質問(津崎尚武君提出)
三 松島遊廓移轉竝政界革新に關する質問(田崎信藏君提出)
四 綱紀肅正に關する再質問(丹下茂十郎君提出)
五 株式取引所取締に關する再質問(中山貞雄君提出)
六 森林政策に關する再質問(佐藤富十郎君提出)
七 軍部の公金取扱方法に關する質問(清瀬一郎君提出)
八 製鐵所の經營に關する再質問(岡田伊太郎君外一名提出)
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第一 出版物法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 土地賃貸價格調査法案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 海軍軍備制限に關する條約の實施に伴ふ損害の補償に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 暴力行爲等處罰に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 獸醫師法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 民事訴訟費用法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十二 民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十三 商事非訟事件印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十四 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十五 人事訴訟手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十六 競賣法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十七 民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十八 破産法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十九 明治三十二年法律第五十號中改正法律案(外國人の署名捺印及無資力證明に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十一 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十二 大正九年法律第五十三號中改正法律案(關税法等の朝鮮に於ける特例に關する件)(政府提出) 第一讀會
第二十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十四 大正九年に於ける尼港事變及「オコーツク」事變の爲損害を被りたる者の救恤に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二十五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十六 製鐵業奬勵法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十七 製鐵所特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第二十八 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十九 土地收用法中郡長の職務を定むる規定の適用に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三十一 都市計畫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十二 特別都市計畫法第五條の土地區劃整理に伴ふ清算金及補償金に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第三十三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第三十四 産業組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三十五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三十六 大正十三年法律第十號中改正法律案(高等諸學校震災復舊諸費に屬する豫算の施行に關する件)(政府提出) 第一讀會
第三十七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三十八 大正十三年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 大正十三年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 大正十四年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 大正十四年度豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 大正十四年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 大正十四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 臨時軍事費特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第三十八 自大正六年二月二十六日至大正九年六月二十五日臨時軍事費特別會計豫備費外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)
第三十九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第四十 農業倉庫業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十一 府縣會中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十二 市制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十三 町村制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十四 北海道會法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 北海道地方費法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十六 水利組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十七 徴發令中郡及郡長に關する規定の適用に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十八 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十九 農工銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十一 議員高橋熊次郎君懲罰事犯の件 (委員長報告)
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
大分縣第三區選出議員木下謙次郞君ノ補
充トシテ羽田彥四郞君常選セラレタリ
一昨十五日若槻内閣總理大臣ヨリ粕谷議長
宛大正十三年度國有財產增減總計算書及
之ニ添付スヘキ各省ノ同增減報告書竝會
計檢査院檢査報告ヲ受領セリ
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
金鵄勳章年金ニ關スル法律案
提出者
古川〓君靑木精一君
山口義一君
倶知安町ニ區裁判所設置ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君淺川浩君
一柳仲次郞君山本厚三君
手代木隆吉君神部爲藏君
澤田利吉君
福井市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者
谷口宇右衞門君土生彰君
山口嘉七君
金澤市ニ綜合大學設置ニ關スル建議案
提出者
佐藤實君堀喜幸君
米原於蒐男君室木彌次郞君
靑山憲三君
渡良瀨川改修工事速進ニ關スル建議案
提出者
阿由葉勝作君飯塚春太郞君
高橋元四郞君
朝鮮ニ於ケル鐵道ノ普及促進ニ關スル建
議案
提出者
牧山〓藏君箕浦勝人君
川原茂輔君山本条太郞君
松田源治君松山常次郞君
橫山金太郞君西英太郞君
本多貞次郞君高木益太郞君
野田俊作君湯淺凡平君
佐藤潤象君河崎助太郞君
田中讓君
貴生川加茂間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
高井商二君藤澤萬九郞君
兼松寅太郞君長田桃藏君
淡水魚族增殖施設ニ關スル建議案
提出者藤澤萬九郞君
關ヶ原木ノ本間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
藤澤萬九郞君兼松寅太郞君
高井商二君
北海道治水ニ關スル建議案
提出者
岡田伊太郞君黑住成章君
松實喜代太君東武君
北海道港灣修築ニ關スル建議案
提出者
黑住成章君東武君
松實喜代太君岡田伊太郞君
北海道鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
松實喜代太君東武君
黑住成章君岡山伊太郞君
北海道綜合大學ノ完成竝高等〓育機關設
置ニ關スル建議案
提出者
東武君松實喜代太君
黑住成章君岡田伊太郞君
北海道漁港竝船入澗築設ニ關スル建議案
提出者
黑住成章君東武君
松實喜代太君岡田伊太郞君
寺泊港修築ニ關スル建議案
提出者
中村貞吉君山田又司君
中野寅吉君
(以上三月十五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
綱紀市正ニ關スル再質問主意書
提出者
藤澤萬九郞君高井商二君
滋賀縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再質
問主意書
提出者
藤澤萬九郞君高井商二君
(以上三月十五日提出)
農村振興ニ關スル再質問主意書
提出者土井權大君
(以上三月十六日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員山本芳治君外五名提出大阪市
立高等商業學校昇格ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
衆議院議員加藤十四郞君提出店舗飾窻損
壞行爲制裁的立法ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
(以上三月八日受領)
衆議院議員丸山浪彌君提出綱紀粛正ニ關
スル再質問ニ對スル答辯書
(以上三月九日受領)
衆議院議員長田桃藏君外一名提出京都府
會決議無效ニ關スル質問ニ對スル答辯書
(以上三月十二日受領)
衆議院議員古川〓君外一名提山金鵄勳章
年金令改正卽行ニ關スル再質問ニ對スル
答辯書
無議院議員津崎尙武君提出東本願寺問題
ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
衆議院議員田崎信藉君提出松島遊廓移轉
竝政界革新ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員中山貞雄君提出株式取引所取
締ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
衆議院議員佐藤富十郞君提出森林政策ニ
關スル再質問ニ對スル答辯書
衆議院議員〓瀨一郎君提出軍部ノ公金取
扱方法ニ對スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員岡田伊太郎君外一名提出製鐵
所ノ經營ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
(以上三月十六日受領)
大阪市立高等商業學校昇格ニ關スル質
問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年二月十九日
提出者山本芳治
外五名
大阪市立高等商業學校昇格ニ關スル質
問主意書
大阪市立高等商業學校昇格問題ハ年來ノ
懸案ニシテ既ニ第四十九回議會ニ於テ之
カ建議案ノ通過セルノミナラス當局ニ於
テモ屢賛意ヲ表明セルニ拘ラス今日ニ至
ルモ尙之カ實現ヲ見サル理由如何
右及質問候也
大正十五年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員山本芳治君外五名提出大阪市
立高等商業學校昇格ニ關スル質問ニ對シ
別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員山本芳治君外五名提出大阪
市立高等商業學校昇格ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
大阪市立高等商業學校ヲ大學ト爲スコト
ハ大學ニ關スル根本規程タル大學令ノ改
正ヲ必要トスルヲ以テ尙慎重ナル手續ヲ
要ス
右及答辯候也
大正十五年三月八日
文部大臣岡田良平
店舗飾窻損壞行爲制裁的立法ニ關スル
質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年二月二十日
提出者加藤十四郞
店舗飾窗損壞行爲制裁的立法ニ關スル
質問主意書
店舗ノ異彩タル飾窻ハ我カ國ニ於テ近時
非常ノ進展ヲ遂ケツツアリ彼ノ先進文明
國ノ如キハ之ヲ以テ普通建造物ノ單ナル
一部トセス保險契約ノ獨立的對手物タル
ヲ認ムルモ準主格的物件タルノ性質アリ
トスレハナリ而モ玲瓏透明ヲ要スル結果
トシテ無防備ノ狀態ニアルカ爲其ノ被ル
ヘキ侵害事實ハ將ニ益增加セムトスルノ
狀アリ就中現代ニ於ケル都市ノ地域カ漸
次商工中心區ト住宅區ニ分離セムトスル
傾キアルト同時ニ自カラ看守上ノ困難ヲ
招致セサル能ハサルカ故一朝不逞ノ徒出
沒スルニ當テハ最危險ニ瀕シ易キ憂ナキ
ニ非ス殷鑑遠カラス彼ノ銀座事件ニアリ
若夫レ社會的現象ニモ霜ヲ履ムテ堅氷至
ルノ觀アルヲ解セハ政府タルモノ今ノ時
ニ當リテ舊時代ノ產物夕ル現行法規ノ
ミニ甘ムセス更ニ痛切有力ナル立法ノ必
要ヲ感セサルヤ或ハ現行刑法ニ建造物關
係ノ規定アルカ爲之ヲ以テ足レリトスル
ノ意思ナリヤ如何
右及質問候也
大正十五年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員加藤十四郞君提出店舗飾窻損
壞行爲制裁的立法ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤十四郞君提出店舗飾窻
損壞行爲制裁的立法ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
犯情重キモノニ對シテハ嚴重ニ之カ取締
ヲ爲スノ必要ヲ認メ近ク暴力行爲等處罰
ニ關スル法律案ヲ提出スルコトト爲セリ
右及答辯候也
大正十五年三月二日
內務大臣若槻禮次郞
司法大臣江木翼
綱紀肅正ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月二日
提出者丸山浪彌
綱紀肅正ニ關スル再質問主意書
現代ニ於テ官權ヲ利用シテ私利ヲ營ム者
尠シトセス是レ綱紀ノ紊亂最太シキモノ
ナリト認ム
右及再質問候也
追テ右ハ二月十六日質問書ヲ提出セシ
ニ政府ハ今日ニ至リ漫然斯ル事實無キ
旨答辯書ヲ發シタルカ子ハ其ノ事實ヲ
演說シテ其ノ答辯ヲ煩ハサムト欲スル
モノナリ政府ハ其ノ趣旨ヲ聽取シタル
上ニ於テ口頭ヲ以テ詳細答辯セラレタ
シ
大正十五年三月九日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員丸山浪彌君提出綱紀〓正ニ關
スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員丸山浪彌君提出綱紀〓正ニ
關スル再質問ニ對スル答辯書
政府ハ斯ノ如キ事實ヲ認メス
右重ネテ及答辯候也
大正十五年三月九日
內閣總理大臣若槻禮次郞
京都府會決議無效ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月四日
提出者長田桃藏
外一名
京都府會決議無效ニ關スル質問主意書
大正十四年十二月開會シタル京都府會通
常會ニ於テ府會ノ少數派ニシテ單リ市部
會ニ於テノミ多數ヲ有スル一派カ多數派
タル郡部會及市郡聯帶會ノ議事ヲ妨ケテ
之ヲ未決議ニ了ラシメムカ爲府會ノ最終
期日ニ於テ先ツ議場ヲ占領シテ市部會ヲ
開キ故ラニ議事ヲ延引シ時刻ノ切迫スル
モ尙議場ヲ開ケ渡サス玆ニ於テ郡部會及
聯帶會ハ府知事ニ對シ府參事會議場ニ於
テ開會セムコトヲ要求シタルモ府知事ハ
言ヲ左右ニ托シテ之ニ應セサルカ故ニ止
ムヲ得ス先ツ郡部會ハ市部會カ占領シツ
ツアル議場ニ入リ議事ヲ開キ議案全部ヲ
議了シ聯帶會亦相續テ同議場ニ入リ同シ
ク議案ヲ議了シ卽チ市郡部會聯帶會孰レ
モ議事ヲ了ヘ府知事ハ閉會式ヲ行ヒタリ
蓋京都府會議場ハ手廣ニシテ優ニ同時ニ
二會ヲ開テ混雜セサルノ餘地アリ府參事
會議場亦決シテ狹隘ニ非ス
事實ハ以上ノ如シ然ルニ府知事ハ市部會
ノ決議ノミヲ有效トシ郡部會及聯帶會ノ
決議ハ之ヲ認メス卽チ府縣制第八十五條
「議決スヘキ事件ヲ議決セサルモノ」ノ條
項ヲ適用シ目下事後ノ處分ヲ爲シツツア
リ抑郡部會及聯帶會ハ法律命令ニ違ハス
會議規則ニ背カス三十日ノ日子ヲ費シテ
正當ニ審議ヲ重ネ議事ノ全部ヲ了ヘタル
ニ唯最終日時ニ於テ同時ニ同一議場ニ二會
ヲ開クノ止ムヘカラサルニ至リタル一事ヲ
囚ヘテ其ノ決議ヲ無效トシ如上ノ處分ヲ爲
スカ如キハ曲解モ亦太シカラスヤ殊ニ故
意ヲ以テ議場ヲ占領シ他ヲ妨クル暴擧ニ
出テタル市部會ノ決議ノミヲ有效ト爲ス
ハ何事ソヤ若市部會ノ決議ヲ以テ有效ナ
リトスレハ郡部會及聯帶會ノ決議亦有效
ナラサルヘカラス何トナレハ市議會ト雖
亦同一議場ニ於テ同時ニ二會ヲ開キタル
モノニ外ナラサレハナリ唯其ノ議場ニ入
ルノ前後ニ依リテ一ハ以テ有效トシ一ハ
以テ無效トスルカ如キハ明ニ矛盾ニ非ス
ヤ且府知事カ府參事會議場ニ於テ開會ス
ルコトヲ拒ミタルカ如キモ甚夕不可解ノ
コトナリト謂ハサルヘカラス元來府縣會
ハ每時一定不變ノ場所ニ於テ開カサルヘ
カラサルカ如キ理由ナケレハ府知事ハ假
令府會ノ要求ナシト雖同議場ニ於テ開會
スルノ臨機ノ處置ニ出ツヘキ筈ナルニ却テ
其ノ要求ヲ拒ムテ之ニ應セス遂ニ斯ル紛紜
ヲ來サシメタルカ如キ其ノ處置果シテ誤
ナシト謂フコトヲ得ヘキカ今若百步ヲ讓
リテ郡部會及聯帶會ノ決議ヲ無效ナリト
假定スルモ其ノ意思ノ表示ニ至リテハ兩
會孰レモ業ニ已ニ明確ナリ然レハ則チ府
知事ハ輿論政治ノ本旨ニ鑑ミ其ノ表示サ
レタル意思ノ全部ヲ取リ是ニ依テ善後ノ
處分ヲ爲スヘキハ當然ナリ若郡部會及聯
帶會ノ決議ヲ無效トシ加之明確ニ表示サ
レタル意思ヲ捨テテ顧ミス原案ヲ執行ス
ルカ如キ擧ニ出ムカ監督權ノ濫用自治體
ノ不安之ヨリ大ナルハナシ政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十五年三月十二日
內閣總理大臣若槻禮次郎
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員長田佻藏君外一名提出京都府
會決議無效ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進候
〔別紙〕
內務省發地第二五號
衆議院議員長田桃藏君外一名提出京都
府會決議無效ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
京都府ニ於テハ從來連帶會、市部會、郡
部會ヲ開會スルニ當リテハ交互ニ一ノ議
場ヲ使用スルノ慣例ニシテ現ニ市部會ノ
開會中ナルニ拘ラス郡部會議員、連帶會
議員カ同一議場ニ入リテ爲シタル會議ハ
之ヲ法律上有效ノモノト認ムルヲ得ス
右ノ如ク郡部會、連帶會ノ會議ニシテ無
效ナル以上ハ其ノ議決スヘキ事件ニ關シ
知事カ善後ノ處置ヲ講スルハ當然ノコト
ニ屬ス、尙郡部會、連帶會カ知事ニ對シ
テ參事會議場ニ於テ開會セムコトヲ要求
シ知事ニ於テ之ヲ拒絕シタル事實ハ之ヲ
認メス
右及答辯候也
大正十五年三月十二日
內務大臣若槻禮次郞
金鵄勳章年金令改正卽行ニ關スル再質
問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年二月二十一日
提出者古川〓
外一名
金鵄勳章年金令改正卽行ニ關スル再質
問主意書
-金鵄勳章年金令改正ニ關スル請願ハ每
會期木院ニ於テ採擇セラレ更ニ前後二
囘迄滿場一致ノ議決ヲ以テ政府ニ建議
シ之カ改正卽行ヲ要望セリ然ルニ政府
ハ名ヲ行政調査會ノ調査ニ藉リテ漫然
放置シ單ニ增額ノ意見ヲ有スルヤ否ヤ
ヲモ亦調査終了ノ期限ヲモ言明セス之
レ全ク院議ヲ無視シ武功者ヲ顧ミサル
ノ舉ニシテ此ノ如キハ立憲政治ノ本義
ニ悖ルノミナラス聖旨ニ反シ思想ヲ
惡化セシムルノ嫌アリ政府ハ(一)行政
調査會ノ調査ト本院ノ院議(建議)ト何
レヲ重シトスルヤ(二)若木院ノ院議ヲ
以テ尊重スヘキモノトヒハ改正卽行ノ
主旨ニ顧ミ本期議會ノ終迄ニ調査終了
ノ期限ヲ言明シ及增額ノ意思ヲ表明ス
ル能ハサルヤ
二治ニ在テ亂ヲ忘ルルハ國亡フノ徵ナ
リ若夫レ一朝有事ニ際セムカ現在ノ年
金令ヲ卽時改正セサルヘカラサルコト
ハ日露戰役及大正戰役ノ行賞ニ徵シテ
明白ナリ然ルニ干戈治マリテ年ヲ隔ツ
ルニ從ヒ治ニ慣レ亂ヲ忘レ忠勇ナル戰
士ノ年年數萬人ノ請願ヲ無視シ更ニ本
院ノ院議ヲ無視シテ名ヲ行政調査會ノ
調査ニ藉リテ責ヲ免レムトスル現內閣
ノ不誠意實ニ驚クヘク此ノ如キハ精神
的國防計畫ヲ忘レタルモノニシテ邦家
前途ノ爲寒心ニ堪ヘサルモノアリ政府
ノ所見如何
三金錢給與ヲ加味セサル恩賞ハ暫ク措
キ苟クモ金錢給與ヲ加味スル以上ハ主
タル目的カ生活費補助ヲ目的トスルモ
ノナルト否トヲ問ハス其ノ功勞ニ準シ
時代ニ適應シタル經濟的價値ヲ有スル
額ナラサルヘカラス然ラサレハ恩賞ノ
光輝ハ沒却ス玆ニ於テカ明治二十七年
十月勅定ノ功一級ハ九百圓ニシテ功七
級六十五圓ナリシモノヲ翌二十八年七
月ニ至リテ其ノ加賜スル年金額ノミヲ改
正シタリ又日〓戰役ニ於ケル伍長級ノ
一時賜金ハ五十圓ナリシカ日露戰役ニ
於テハ二百圓乃至三百圓トナリ大正戰
役ニ於テハ八百圓乃至千圓トナレリ要
スルニ恩賞ト雖金錢給與ヲ加味スル以
上ハ其ノ額ハ常ニ其ノ時代ニ適應セシ
メサルヘカラス然ラサレハ恩賞ノ光輝
ハ沒却ス政府ノ所見如何
四一時賜金ハ其ノ給與セラレタル當時
其ノ當時ノ經濟的價値ニ於テ之ヲ使用シ
恩賞ノ目的ヲ完了シタルモノナリ年金
ハ然ラス故ニ年金ヲ增額シタリトスル
モ之カ爲當時ノ他ノ恩貝ニ波及スヘキ
モノニ非ス政府ノ所見如何
五金鵄勳章ハ特ニ武功拔群ナル者ニ對
シ忠勇愛勵ノ御思召ヲ以テ一般恩賞ニ
超絶シテ國民羨望ノ的トナルヘク當時
ノ功七級ニ於テ已ニ巡査ノ一箇年ノ生
活費ニ該當スヘキ經濟的價値アル金錢
ヲ終身給與セラル誠ニ深遠ナル御思召ト
謂フヘシ然ルニ時代ノ變遷ニ依リ經濟
的價値著シク減退シ又ハ滅失シタルト
殆ト均シキ狀態ナルニ於テモ尙之ヲ顧
ミサルカ如キコトアラハ制定言時ノ深
遠ナル御黒召ニ悖ルモノト信ス政府ノ
所見如何
六政府ハ年金ハ生活費給與ノ性質ヲ有
セサルカ故ニ生活品物價變動ノ爲之ヲ
增額スヘキモノニ非スト謂ヘリ然レト
モ左記事實ノ如キハ生活費給與ノ性質
ヲ有セサルニ拘ラス現ニ增額改正セリ
要スルニ時代ノ變達及要求ニ件フテ之
ヲ改正スルコトハ當ニ爲政者ノ執ルヘ
キコトニ屬ス生活費給與ノ性質ヲ有ス
ルト否トハ問フ所ニ非スト信ス政府ノ
所見如何
イ帝國議會議員ノ歲費ハ制定當時八
百圓ナリ其ノ後一千五百圓トナリ今
日三千圓トナレリ而シテ生活費給與
ノ爲ニ非ス
ロ大正元年頃ノ准士官ノ年末賞與ハ
三十圓内外ナリ其ノ後七八十圓トナ
リ今ヤ百五十圓內外トナレリ而シテ
生活費給與ノ爲ニ非ス
ハ日〓戰役ニ於ケル伍長ノ一時賜金
ハ五十圓ニシテ大正戰役ニハ八百圓
乃至千圓ナリ
ニ日〓戦役ノ當時故有栖川宮殿下ハ
功二級六百五十圓ニ敍セラレ其ノ後
二十八年七月ノ改正ニ依リ年金千圓
トナレリ
七古ノ武功者ニハ祿高ヲ給シテ子子孫
孫ニ迄之ヲ支給シ其ノ恩典ニ浴セシメ
タリ拔群ノ武功者ニ年金ヲ加賜セラレタ
ル御思召ハ蓋之ニ基因スルモノナリト
信ス果シテ然ラハ一定年限單ニ無事ニ
勤續シテ恩給年金ヲ受クル者ニハ其ノ
遺族ニ對シテ迄扶助料トシテ年金ノ半
額ヲ支給スルモノトセハ武功者ニハ更
ニ半額以上ノ額ヲ其ノ遣族ニモ給スヘ
キモノナリト考フ政府ノ所見如何
八强制徵集セラレテ筋肉勞働ニ服シ國
家ノ爲死生ノ巷ニ奮戰シテ拔群ノ功ヲ
奏シタル如キハ一種ノ國寶ナリ然ルニ
國家ハ當初ハ生活費ヲ支持スルニ足ル
年金ヲ與へ今日ニ至リテ生計ニ窮スル
者甚タ多キニ拘ラス法理ニ藉口シテ之
ヲ顧ミサル如キハ理由ノ是非ニ拘ラス
國家トシテ殊動者ヲ遇スル所以ノ道ニ
非スト信ス政府ノ所見如何
九法理上ノ性質論ハ暫ク之ヲ別トシ敍
功者カ其ノ受クル年金ヲ以テ生活費ノ
補助ニ供シタルハ事實ナリ而シテ受恩
給者ハ相當ノ体給ヲ受ケテ自ラ好テ單
ニ十一年間勤續シタルニ過キス然ルニ
終身恩給ヲ受ケ更ニ再三增額セラレ且
遺族ニ迄繼續支給セラルルニ拘ラス僅
少ノ小使費ノ外ハ無給ニテ且其ノ意ニ
反シ徵集セラレテ服役シ砲煙ノ下彈雨
ノ中劒戟交リ叫喚ノ聲四方ニ起リ滿目
凄愴ノ裡ニ於テ血ヲ踏ミ雇ヲ超ヘテ苦
戰奮鬪九死ニ僅ニ一生ヲ得テ而モ群ニ
拔ムテテ武功ヲ樹テ依テ以テ一世ノ龜
鑑トシテ殊勳ニ敍セラレタルモノハ咽
喉元過キテ熱サヲ忘レ易ク三十年改正
ナク增額ナク依然トシテ放置セラル之
レ本人及其ノ家族ハ勿論一般ノ國民觀
念ニ於テ不公平ヲ感ス政府ハ法理上ノ
性質論ヲ避ケテ此ノ際年金ヲ改正增額
スルノ意思ヲ決シ行政調查會ニ對シ通
達スルノ誠意ナキヤ
十恩給ハ年年增加ノ傾向アルモ年金受
領者ハ加速度ヲ以テ減退シ今後十年二
十年ノ後ニハ殆ト絕滅スヘシ年金制度
ヲ存置スルヤ否ヤノ根本問題ハ寧口恩
給ニ於テ〓究スヘキモノト信ス依テ政
府ハ行政調杏會ノ議案ヨリ年金問題ヲ
撤回シ速ニ建議ノ主旨ニ依リ本問題ヲ
解決スルノ至當ナルヲ信ス政府ノ所見
如何
±本員素ヨリ武斷政治ヲ好マス然レ
トモ太平ニ慣レテ國民ハ武功者ノ當時
ノ苦難ヲ忘レ文官ハ日ニ跋扈シテ武官
ノ言議ハ廟議ニ輕ムセラレムトス邦家
前途ノ爲寒心ノ至ニ堪ヘサルナリ現ニ
年金令改正增額案ノ如キモ陸海軍ハ前
年己ニ提案セルニ拘ラス文官側之ヲ蔑
視シ年ヲ經ルモ尙名ヲ行政調査會ノ調
査ニ藉リテ放置セムトスルノ事實ハ請
願委員會ノ答辯ニ於テ明白ナリ政府ノ
所見如何
十二法ヲ適用スルノミヲ以テ職トスル
司法官ハ別トシ苟クモ輔弼ノ大任ニ當
リ立法ノ發案權ヲ有スル者ハ立法當時
ノ精神ヲ參酌シ時代ニ適應シテ之ヲ改
善スルノ道ヲ講セサルヘカラス當時ノ
關係者ヨリ確間スル所ニ依レハ金鵄勳
章年金令制定當時ノ年金額ノ立案ノ基
礎ハ之ヲ當時ノ軍人恩給法ノ恩給額ニ
因リタルモノニシテ功一級年金千五百
圓ハ當時ノ大將ノ最低恩給年額一千五
百圓ニ全ク相當セシメ功五級年金三百
圓ハ當時ノ大尉ノ最低恩給年額三百圓
ニ全ク相當セシメ兵卒ノ功七級年金百
圓ハ當時ノ准士官ノ最低恩給年額百五
十園ト曹長ノ最低恩給額六十圓トノ中
間ニ相當セシメタリト謂フ政テ質問ス
果シテ然ルヤ否ヤ若夫レ年金額制定ノ
基礎不明ナリトセハ本問題ニ對スル政府
ノ不誠實無責任ヲ語ルモノニシテ若前
述ノ如シトセハ制定當時ノ御精神ハ生
活費補給ノ恩給額卜對比セシメタルモノ
ニシテ今日ノ大將ノ最低恩給額ハ二千
五百圓大尉ノ最低恩給額ハ七百八十四
圓雀士官ノ最低恩給額ハ四百圓曹長ノ
最低恩給額ハ二百八十五圓ナリ故ニ今
年金額ヲ制定當時ノ御精神ニ則リ乃チ
互法當時ノ精神ヲ參酌シ改正スルトキ
ハ功七級ハ年額三百五十圓功五級ハ年
額七百八十四圓功一級ハ二千五百圓ニ
改正增額スルヲ至當ナリトス立法ノ發案權
ヲ有スルモノハ宜シク茲ニ鑑ミテ時代
ニ適應スルノ改正ヲ爲ササルヘカラス
然ルニ後年ニ至リ若輩ノ官吏カ立法ノ
精神ヲ解セス司法官ニモ劣ル法文ノ字
句ニ拘泥シテ勝手ナル法理性質論ヲ說
キ以テ深速ナル聖旨ヲ覆ハムトス恐
懼ノ至ニ堪ヘサルナリ政府ハ宜シク速
ニ反省シテ今期課會ニ改正增額ノ意思
ヲ表明シ以テ輔弼ノ責ヲ完ウスルノ意
思ナキヤ
右及再質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員古川〓君外一名提出金鵄勳章
年金令改正卽行ニ聞スル再質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員古川清君外一名提出金鵄動
章年金令改正卽行ニ關スル再質問ニ對
スル答辯書
-政府ハ金鵄勳章年金令改正ニ關スル衆
議院建議ノ存スルコトヲ重ンシテ之ニ
開スル事項ヲ行政調査會ニ討議シタル
次第ナリ然レトモ調査事項ハ關係スル
所廣汎ナルヲ以テ今ニ於テ其ノ調査終
了ノ期限等ヲ表明スルコトヲ得ス
二政府カ關係事項ヲ行政調査會ニ付議
シタルハ本問題ニ付多方面ヨリ觀察シテ
最モ公正妥當ナル結果ヲ得ムトスルニ
在リ固ヨリ名ヲ調査ニ藉リテ責ヲ免レ
ムトスルモノニ井ス
金錢給與ヲ加味スル恩賞ハ當初ニ於テ
諸般ノ事情ヲ考慮シ適當ト認メラレタ
ル額ヲ定メラレタルモノナルモ其ノ標
準ハ相當複雜ニシテ單ニ物價ノ高低ニ
從ヒテ判斷シ得ル經濟價価ノミニ依リ
テ之ヲ決スヘキニ非ス
四質問者ノ見解モ理由アリト考フレトモ
年金額ヲ增額スルヤ否ヤヲ決定スルニ
付テハ他ノ諸般ノ關係ヲモ併セテ考慮
スルヲ要スヘシ
五及八金鵄勳章年金額ヲ如何ニスヘキ
カハ目下行政調査會ニ付議中ニ屬スル
ヲ以テ今日未夕答辯スルノ時機ニ達セ
ス
六質問ニ係ル諸給與中增額アリタルモ
ノハ各理由ノ存スルアリテ之ヲ以テ金
鵄勳章年金ニ類推スルコトヲ得ス
七恩給及扶助料ト動章年金トハ制度ノ
理由ヲ異ニスルヲ以テ政府ハ扶助料ノ
例ニ準シ其ノ遺族ヲシテ終身年金ヲ享
有セシムヘキモノナリトハ考ヘス
九年金ニ關スル制度ニ付テハ行政調査
會ノ慎重ナル調査ヲ以テ決定セムトス
ル爲之ニ付議シタルモノナルヲ以テ其
ノ調査ニ先チ增額ノ意田心ヲ決定シテ之
ヲ行政調査會ニ通達スルノ意思ナシ
十年金ニ關スル問題ハ極メテ重要ナル
關係ヲ有スルモノナルヲ以テ慎重ニ之ヲ
攻究スルノ要アリト信ス從テ行政調査
會ヲシテ之ヲ調查セシムルヲ相當ト思
考ス
十一年金改正ニ關スル事項ヲ名ヲ行政
調査會ノ調査ニ藉リテ放置セムトスル
ノ事實ナキコト旣述ノ如シ
十二明治二十八年七月十五日ノ金鵄動
章年金令改止ノ理由ハ全ク旭日章年金
トノ權衡ヲ保ツニ在リタルモノニシテ
質問ニ係ルカ如キ他ノ理由ヲ參酌シタ
ルモノト認ムヘキ資料ヲ發見セス而シ
テ年金增額ニ關スル事項ハ行政調査會
ニ付議ン調査中ナルコト既述ノ如クナ
ルヲ以テ今直ニ意思ヲ表明スルコトヲ
得ス
右及答辯候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郎
東本願寺問題ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年二月二十一日
提出者津崎尙武
東本願寺問題ニ關スル再質問主意書
本年一月二十七日東本願寺問題ニ關シ十
項ニ亙ル質問主意書ヲ提出セルニ對シ政
府ハ二月六日附四項ノ簡單ナル答辯ヲ爲
シタリ
本員ハ具體的ニ事實ヲ指摘シテ答辯ヲ求
メタルニ對シ政府ハ抽象的ニ簡單ナル一
語ヲ以テ之ニ谷ヘタリ斯ノ如キハ質問ニ
對スル答辯トシテ其ノ體ヲ爲ササルノミ
ナラス極メテ不親切ナル答辯ト認ム故ニ
本員ハ玆ニ再質問主意書ヲ提出シテ政府
ノ所見ヲ問ハムトス政府ハ各項ニ付親切
ニシテ責任アル答辯アラムコトヲ望ム
ー大正十四年九月十八日岡田文部大臣
ハ文部事務官ヲ東京「ステーシヨンホ
テル」ニ遣ハシ眞宗大谷派管長伯爵大
谷光演氏ニ管長ノ辭表ヲ提出セシメタ
ルハ事實ナリヤ
二當時事務官ハ大谷伯爵ニ對シ文部大
臣ノ命令ヲ傳達スト稱シ貴下ハ大谷派
管長ニ不適任故直ニ辭職スヘキヲ以テ
セリ之ニ對シ大谷伯ハ長ク此ノ職ニ在
ルノ意ナキモ時局ヲ拾收シテ退職セム
ト考ヘ居タル折ナリシヲ以テ退職スル
ハ安キモ事一山ノ重大事ナルカ故ニ歸
山其ノ順序ヲ連フヘキヲ述ヘタリ然ル
ニ事務官ハソレハ相成ラヌ文部大臣ノ
命令ナレハ唯今直ニ退賊書ヲ差出スヘ
シト强要セリ大谷伯ハ旅行中ニテ印章
ヲ持參セサル由ヲ告ケタルニ自著ナレ
ハ印章ニ及ハス御待申ス故直ニ持參セ
ラレヨトテ聞入レス仍テ大谷伯ハ餘リ
ニ人格ヲ無視セラレタルニ憤慨シ席ヲ
立チテ自署スヘク自室ニ歸ル際事務官
ハ後ヨリ追掛ケ來リ辭職書ハ願ニ非ス
屆ナリト注意セリ大谷伯ハ自室ニ歸
懷紙ニ屆書ヲ認メ事務官ニ持參セシニ
一覽シテ自若ニ間違ナキヤヲ問ヒタル
故伯ハ苦笑シテ御命令通認メタリト答
ヘタルニ直ニ中達スへシト立去リタル
カ當日直ニ都下ノ新聞紙ハ管長辭職ノ
コトヲ發表シタリ
右ニ對シ政府ハ
イ文部事務官カ斯ノ如キ行動ヲ執リ
タルコトヲ認メラルルヤ
ロ苟クモ歴史アリ且皇室トモ關係深
ク國民ノ信仰厚キ大谷派管長ノ職ヲ
罷メシムルニ付テ斯クモ急迫セル手
續ヲ執ルノ必要アリタリト認メラル
ルヤ
ハ斯カル處置カ何等宗〓ノ權威ヲ傷
クルコトナク又國民思想ニ惡影響ナ
シトセラルルヤ
三內閣總理大臣ハ岡田文部大臣カ大谷
派管長ヲシテ辭表ヲ提出セシムルニ至
リタル前後ノ處置竝其ノ手續ヲ是認シ
何等ノ遺憾ナキモノトセラルルヤ
四大谷伯ノ管長辭職ヲ屆出ツルヤ同日
約一時間後一木宮内大臣ハ大谷伯ニ面
會ヲ申傳ヘラレタルカ大谷伯ハ病氣ノ
爲面會ヲ謝絕セラレタルヨリ翌十九日
午前宮内大臣ハ大谷学潤氏及九條公爵
ヲ宮内大臣官合ニ招キ宗秩寮總裁立會
ノ上大谷宗家ノ安参ヲ計レト命シタル
ハ明ニ伯爵ヲモ隱退スヘキコトヲ迫レ
ルニ非サルカ何トナンハ右宮內大臣ノ
申聞ト入レ違ニ大谷伯爵ノ隱居願ハ宮
內大臣ニ到著シタルヲ以テ宮內大臣ハ
之レサヘ出レハ今朝官含ニテ申入レタ
ルコトハ最早返事ニ及ハサル旨ヲ同日
午後宮内大臣ヨリ九條公爵ニ傳ヘラレ
タルコトニ依リテ明ナリトス果シテ
然ラハ文部大臣ハ宮内大臣ト聯絡シテ
大谷派管長ノ職ヲ辭セシムルト同時ニ
伯爵ヲモ辭退セシメタルモノト解シテ
差支ナキヤ
五管長職ヲ辭セシメタル上ニ更ニ同時
ニ伯爵ヲモ隱居セシメムトシタルハ文
部宮内兩大臣間ニ聯絡シテ眞宗大谷派
管長伯爵大谷光演氏ヲ强要シテ其ノ顯
要ノ地位ヲ去ラシメタルモノニシテ國
民精神ニ及ホス影響大ナルノミナラス
將來ニ重大ナル惡例ヲ殘スモノナリト
信ス政府ノ所見如何
六十二月九日新法主大谷光暢氏カ東宮
妃殿下御慶事奉祝竝淺草別院就職披露
ノ爲束上ヲ期トシ岡田文部大臣ハ一木
宮内大臣方ニ光暢師ヲ伴ヒ行キ大谷伯
爵家相續ニ付限定相續ノ必要ヲ力說セ
ラレ結局親戚ニ委任セヨト强要セラレ
光暢師ハ已ムヲ得ス九條三條兩公爵竝
正親町伯爵ノ三氏ニ委任セルノ事實ハ
文相カ宮相ト共ニ限定相續ヲ强要セル
モノニシテ相續問題ニテ東本願寺ヲ更
ニ紛擾ニ導キタル一原因ナリト思惟ス
政府ノ所見如何
七國民思想ヲ善導スルハ政府ノ重大ナル
任務ニシテ特ニ文〓ノ府ニ在ル文部大
臣ハ其ノ最重要ナル責任ヲ有ス然ルニ
岡田文部大臣ハ所謂東本願寺問題ニ付
テ事件ノ眞相ヲ究ムルコトナク一度管
長辭職ヲ强要シ續テ伯爵隱退ヲ迫リ更
ニ限定相續ヲ强要セリ斯クテ東本願
寺問題ハ益紛擾ヲ重ネテ其ノ國民思想
ニ及ホス惡影響極メテ大ニシテ誠ニ寒
心スヘキモノアリ政府ハ岡田文部大臣
ノ執レル敍上ノ行動ニ付テ何等缺點ナ
シトスルヤ而シテ又文部大臣ノ處置ハ
文部大臣ノ所期ニ反シ却テ東本願寺ノ
紛擾ヲ大ナラシメ國民思想ニ惡影響ヲ
及ホシタリト思惟セスヤ
八岡田文部大臣ノ執レル敍上ノ處置ニ
付テハ文部大臣ハ東本願寺竝大谷伯爵
家ノ爲ニ計リテ爲シタルコトナリト謂
ハム其ノ動機ノ如何ハ別トスルモ其ノ
結果ハ明ニ東本願寺ノ紛擾ヲ大ニシ而
シテ國民思想ニ重大ナル惡影響ヲ及ホ
シタルハ否ムヘカラスト信ス政府ノ所
見如何
以上述フル所ニ付テ政府ハ親切ニシテ責
任アル答辯アラムコトヲ要求ス殊更ニ茫
漠タル答辯ヲ以テ本問題ヲ取扱ハムトス
ルハ啻ニ無責任ナルノミナラス國民思想
ニ惡影響ヲ及ホス結果ヲ更ニ招來スルニ
至ルヘシ
右及再質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員津崎尙武君提出東本願寺問題
ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員津崎尙武君提出東本願寺問
題ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
ー眞宗大谷派前管長大谷光演ノ行動ニ
關シテ注意ヲ與ヘタルニ對シ之ヲ遵守
スヘキ旨ノ囘答アリタルニ拘ラス毫モ
其ノ實ヲ擧クルニ至ラサリシヲ以テ更
ニ召致シテ談示スル所アラントセシモ
之ニ應セス玆ニ於テ已ムヲ得ス宗務課
長タル文部書記官ヲ遣シ辭職ヲ勸告セ
シメタルニ本人ニ於テ何等ノ異議無ク
辭職ノ屆出ヲ爲シタルモノナリ
二政府ハ前項文部大臣ノ執リタル措置
竝手續ニ付何等ノ遺憾ナキモノト認
ム
三曩ニ提出セル答辯書記載ノ如ク大谷
光演ニ對シ伯爵ヲ辭セシメントシタル事
實無ク又大谷伯爵家ノ相續ニ關シ限定
承認ヲ强要シタル事實無シ
右及答辯候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
文部大臣岡田良平
松島遊廓移轉竝政界革新ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月二日
提出者田崎信藏
松島遊廓移轉竝政界革新ニ關スル質問
主意書
近時我カ國政治家ノ風紀ニ關シ續續
トシテ不祥ノ事實ノ傳へラルルハ邦家
ノ爲深憂ヲ禁スル能ハス過般大阪西區
同仁會ノ名ニ於テ配布シタル印刷物ニ
依レハ近來一部政商竝政當員ハ大阪市
中ニ存在スル「松島遊廓」ヲ同市郊外ニ
存在スル某某土地會社經營地ニ移轉シ
該經營地ノ地價ヲ暴騰セシメ以テ會社
ヲシテ巨利ヲ博セシメムト圖リ此ノ目
的ヲ達スル爲政府側大新聞地方官竝政
黨幹部ニ巨額ノ黃白ヲ散布セムトシタ
リトアリ又大正十五年三月二日發行大
阪朝日新聞ノ記事ニ依レハ「各方面へ
ノ運動資金トシテバラ撒カレタ金ハ大
部分田附政次郞氏ノ手カラ出テキルト
噂サレ一昨年夏カラ今日マテニ各政黨
利權屋等ニ撒カレタ額ハ實ニ七十餘萬
圓ノ巨額ニ達スルト稱セラレテキル」
トアリ更ニ本日ノ大阪各新聞紙ニ於テ
ハ大阪地方裁判所西堀安井生島外數名
ノ檢事角南服部西川石井芹川ノ五豫審
判事ハ三月一日朝大阪府刑事課員多數
ヲ帶同シ前記田附政次郎ノ家宅竝同人
カ社長タル豊國土地株式會社ヲ搜索セ
リト傳ヘラル吾人ハ一片ノ回文又ハ一
時ノ新聞記事ヲ信セサラムト欲シタレ
トモ事茲ニ至レハ其ノ事實ノ存在ヲ否
定シ去ルノ勇氣ナシ田附某カ此ノ問題
ノ爲ニ黃白ヲ散シタルコトカ事實ナル
以上亦之ヲ受ケタル者ノ存在スルコト
モ事實ナリト考ヘサルヘカラス
二綱紀ノ〓正ヲ以テ重要主張トセル若
槻內閣總理大臣ハ此ノ事實ニ付知ル所
ナキヤ之ヲ知ル以上其ノ經緯一切ヲ議
場ニ公開スヘシ若之ヲ躊躇ルル於於
ハ政府亦其ノ渦中ニ在ルヲ疑ハシムル
コトト爲ラム
三我カ國家ノ憂患ハ實ニ政黨竝政堂員
ノ健全ヲ疑ハシムルノ傾向ニ在リ今日
ヨリ以後此ノ邦國ノ運命ヲ擔當スルモ
ノカ政黨ニ在リトスレハ國家ノ大政ヲ
託セラレタル首相ニハ必スヤ黨界廓〓
ノ大志ナカルヘカラス若槻首相ハ政黨
革新ノ爲如何ナル抱負ヲ有スルヤ此ノ
問題ニ關スル徹底的所懷ヲ議場ニ披瀝
セラレムコトヲ望ム
右及質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員田崎信藏君提出松島遊廓移轉
竝政界革新ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進候
〔別紙〕
衆議院議員田崎信藏君提出松島遊廓移
轉竝政界革新ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
-本年一月中旬「西區同仁會」ナル名義
ヲ以テ大阪市松島遊廓移轉問題ニ關スル
印刷物ヲ頒布シタル者アリ右印刷物ハ出
版法ニ牴觸シ且關係者ヨリ名譽毀損ノ
告訴アリタルヲ以テ司法官憲ニ於テ之
ヲ起訴シ目下取調中ナリ
二右印刷物竝大正十五年三月二日發行
大阪朝日新聞記載ノ事實ニ關シテハ目
下司法官憲ニ於テ取調中ニシテ其ノ結
果ヲ俟ツニ非サレハ事實ノ眞否竝其ノ
經緯等明カナラス
三政府ハ若シ果シテ政黨竝政黨員ニシ
テ其ノ健全ヲ疑ハシムルカ如キ傾向ア
ラハ自發的ニ革新セラレムコトヲ希望
ス
右及答辯候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
內務大臣若槻禮次郞
司法大臣江木翼
株式取引所取締ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月三日
提出者中山貞雄
株式取引所取締ニ關スル再質問主意書
本年二月十二日本員ノ提出セル株式取引
所取締ニ關スル質問主意書ニ對シ政府ヨ
リ三月二日附ヲ以テ三項ヨリ成ル簡單ナ
ル答辯書ヲ受領セリ
本員ノ擧而セル具體的事實ニ對シテ政府
ハ悉ク抽象的言辭ヲ以テ之ニ應酬シ答辯
其ノ體ヲ爲ササルノミナラス極メテ不親
切ナル答辯ト認ム依テ本員ハ玆ニ再質問
主意書ヲ提出シテ更メテ政府ノ所見ヲ問
ハムトス政府ハ左記各項ニ付明確懇切且
責任アル答辯ヲ爲サレムコトヲ望ム
當所株ノ上場ヲ禁止スルコトハ財界
ニ及ホス影響甚大ナルモノアルヘキヲ
以テ政府ニ於テハ目下之カ禁止ヲ爲ス
ノ意思ヲ有セストノコトナルカ取引所
法改正ノ主旨ヨリスレハ當然當所株上
場禁止ニ到達スルコトハ自明ノ理ニシ
テ本員カ改正當時ノ農相山本達雄氏ヨ
リ聽取セシ改正法ノ精神ハ行行當所株
上場禁止ノ域ニ迄到達セシムル目的ヲ
以テ立案提出セルモノナリトノ話說ハ
正シク本員ノ見解ニ對スル鐵證ト謂フ
ヘキナリ偖テ本員ハ頭次ノ質問主意書
ニ於テ當所株上場カ如何ニ投機的空賣
買ヲ旺ムナラシムルカヲ詳述シ置キシ
カ猶景近ノ東京取引所ニ於ケル熱狂的
人氣カ束株ニノミ集中シテ急激異常ナ
ル相場ノ騰落ヲ演シツツアル反面他ノ
多クノ上場株ニハ影響太タ少ク殆ト財
界復活ノ反映ヲ發見スルコト難キハ端
的ニ當所株上場ノ弊ヲ暴露セルモノニ
シテ或ハ之ニ代フルニ他ノ有力ナル事
業株ヲ以テシテモ同樣ノ結果ニ陷ルカ
如ク說ク者アルモ畢竟自家擁護ノ曲論
ニ過キス事業株ノ騰落ハ時ニ常調ヲ逸
スルコトアルモ直ニ事業自體ヲ反映シ
テ平靜ニ復スヘキハ「スチール」株等ノ
例ニ見テモ明白ナリトス然ルニ當所株
ヲ標準トスルコトハ其ノ取引高ノ增加
手數料ノ增收株價ノ上騰カ因ハ果トナ
リ果ハ因トナリ無限ニ循環上昇シテ一
囘ハ一回毎ニ取引所ノ利益ヲ增進セシ
ムル點及前記作用ニ依リテ或程度迄ハ
財界事業界ニ關係ナク投機的技術ニ依
リテ相場ノ昂下ヲ左右シ得ル可能性最
大ナルモノアルヲ以テ取引所及取引員
ノ投機心煽揚ニ件ヒ世人ノ當所株ヲ以
テスル投機的空買買ニ魅惑セラレテ產
ヲ破リ家ヲ失フ者頻年絕ヘス其ノ弊容
易ナラサルモノアリ殊ニ國民精神ニ及
ホス惡影響恐ルヘキモノアルハ公知ノ
事實ナリ政府ハ此ノ當面ノ嚴タル事實
ニ眼ヲ塞キ抽象的ニ過キタル單ニ財界
ニ及ホス影響大ナリトノ理由ヲ以テ其
ノ上場ヲ禁スルノ意ナキヲ聲明セルハ
答辯ノ不親切ナルハ謂フ迄モナク其ノ
改正法ノ主旨ニ悖レル國民ノ投機心挑
發ノ原動力タル當所株上場ノ根本ニ向
テ斧鉞ヲ加アルノ意思如何ニ付テ何等
言及スル所ナシ然ルニ副島局長ハ嘗テ
本員ニ對シ當所株上場ノ弊ヲ大體ニ於
テ承認シ理想トシテハ其ノ禁止ヲ可ト
スル旨言明セル事實ニ照シ特ニ此ノ點
ニ具體的ニ明確ナル答辯ヲ與ヘラレム
コトヲ望ム
二有價證劵ノ短期精算取引カ法理上形
式上投機的空賣買タルノ性質ヲ有セサ
ルハ勿論ニシテ若其ノ性質ヲ有スルニ於
テハ政府カ之ヲ認許スルノ理由ナキハ
法治國治下ニ在リテハ三尺ノ童子モ之
ヲ知悉セリ唯其ノ運用上其ノ内容カ純
乎投機的空賣買ニ墮セルノ事實ヲ擧ケ具
體的ニ之ヲ詳述シテ其ノ現狀カ政府認
許ノ主旨ニ反シ弊害特ニ甚シキモノア
ルニ對シ此ノ取引方法ヲ禁止又ハ改善
スルノ意圖ナキヤヲ頭次ノ質問主意書
ニ依テ問ヒタルモノニシテ政府ノ回答
ハ寸毫モ此ノ要點ニ觸レス更ニ之ニ對
スル所見ノ具體的明答ヲ望ム
三二重上場廢止ノ時期ニ關シ政府ハ短
期取引ノ實施ニ伴ヒ取引員ノ之ニ慣熟
セサルカ爲當分ノ間認ムルコトトナリ
タルモノニシテ適當ナル時期ニ之カ廢
止ヲ行フ意思アル旨答辯セリ
抑二重上場問題ハ大正十一年取引所法
改正ノ精神ニ基キ特ニ投機的空賣買ノ
禍源ト看做サレタル此ノ二重上場ヲ絕
對禁止スルコトトナリシカ急激ナル變革
ヲ加フルコトハ財界ヲ惡化スル所以タ
ルヲ考慮シ改正當時ノ農相山本氏力之
ニ一箇年ノ期限ヲ附シテ許可シ期限經
過後ハ斷乎トシテ之ヲ禁スル方針ナリ
シコトハ本員カ親シク同氏ヨリ聽取セ
シ所ニシテ猶之力現行省令ニ改定セラ
レタル經緯ニ關シ同氏ヨリ承リタル事
實左ノ如シ
一年ノ期限ヲ附シ二重上場許可ノ後
期限撤廢ノ猛運動カ隴ヲ得テ蜀ヲ望
ム取引所及取引員ニ依テ開始サレ時
ノ農相荒井氏ハ前仕者山本氏ヲ訪問
シテ當業者ノ猛迚動當リ難キヲ以テ
更ニ一箇年ヲ限リ許可スルノ外ナキ
事情ヲ訴ヘ且山本氏改正法ノ精神ヲ
絕對尊重スル諒解ノ下ニ改定ヲ行ヒ
シカ何故カ之ヲ二箇年ト改メスシテ
「當分ノ內」ト改メラレタルモノナリ
免ニ角以上ノ經緯ヨリ「當分ノ內」ハ許
可ノ初ヨリ數ヘ二箇年以内ニ解スヘキ
ヲ至當トス爾來四星霜其ノ間當局ハ一
囘タモ其ノ禁止ニ付テ考慮シ又ハ問題
トセシ形跡ナク寧ロ今日ニテハ當局モ
當事者モ二重上場ヲ當然トシテ怪マス
當分ノ意義ハ頭次質問主意書ニ述ヘシ
如ク實際上永久ト解シ居ルヤノ觀アリ
而シテ之ニ依テ紹來セル投機的空賣買
ノ泊天的盛行ハ現ニ吾人ノ目撃シツツ
アル所ナルニ拘ラス當局ハ今日猶適當
ナル時期ヲ云云シツツアルカ過去四年
間ニ果シテ適當ナル時期ナカリシトス
ルカ將又政府カ當分ノ間許可セシ理由
トシテ擧ケタル取引員ノ短期取引ニ對
スル不慣熟カ此ノ期間ニ於テ猶慣熟ノ
域ニ達シ得サリシトスルモノナルカ或
ハ震災等ノ大變事カ其ノ機會ヲ與ヘサ
リシトセハ今後如何ナル時期ヲ適當ト
スルモノナルヤ單ニ適當ノ時期ト謂フ
カ如キ漠タル措辭ヲ用ヰス禁止時期ニ
對スル政府ノ具體的方針及見解ニ付明
答アラムコトヲ望ム
四先日付手形問題ニ關シ政府ハ現在ノ
狀態ニ於テハ取引上何等ノ危險ナシト
シ其ノ理由トシテ提供株ノ種類提供者
ノ信用手形ノ發行金額ヲ考査シテ愼重
ニ發行シツツアルコトヲ擧ケタリ政府
ハ果シテ實際ニ付調査シテ此ノ所信ニ
到達セシモノナリヤ若政府カ調査ヲ行
ヘルモノトセハ去ル二月二十六七日ニ
於テ一氣ニ三十圓近キ暴落ヲ告ケタル
當所株カ提供株ノ五割以上ヲ占メ居ル
コト提供者カ無資產且無保證無證據金
狀態ニテ投機市場ニ輸贏ヲ爭ヒツツア
ル取引員ナルコト及手形發行金額カ丸
金ナルコト等ノ事實カ果シテ今日又ハ
萬一ノ際財界ニ危險ヲ及ホス恐ナシト
認メタルモノナルカ又此ノ先日付手形
ノ濫發カ投機資金ヲ潤澤ナラシメ益投
機ヲ助長昂進セシメツツアルコトハ如
何ナル口實ヲ以テシテモ到底否認シ難
キ所ニシテ之ハ最近銀行集會所ニ於テ
市來日銀總裁カ銀行家ニ向テ發シタル
警告ノ一節ニ
假令資金カ一時潤澤ナリトスルモ投
機其ノ他不健實ナル事業ニ對シ貸出
スコトハ最愼ムヘキコトニシテ之カ
爲ニ或ハ投機熱ヲ煽リ或ハ一般產業
資金ヲ奪ヒ產業發展ノ好機ヲ阻害ス
トアリシヲ裏切レル銀行家カ東京取引
所カ發行セル五千万圓近キ巨額ノ先日
付手形ヲ割引シ投機資金ヲ豐富ニ當業
者ニ向テ供給セルカ爲ニシテ昨冬以來
ノ投機ノ熱狂狀態釀成ノ主因ナリトス
而シテ確實ナル手形ニ投資スルコトハ銀
行家當然ノ態度トシテ深ク之ヲ尤ムル
ヲ得サルカ不健全ナル投機助長ヲ豫期
シテ此ノ手形ノ濫發ヲ敢行セシ取引所ノ
罪ハ堂堂皷ヲ鳴シテ責ムルニ値スルコト
世既ニ定論アリ又其ノ權内ニ於テ之カ取
締ヲ爲シ得ル當局ノ放任的態度ヲ以テ世
人ハ甚シク不可解事ト爲シ居ルモノノ如
シ然ルニ尙政府ハ此ノ眼前ノ事實ヲ否認
シテ何等財界ニ危險ナシト斷スルモノナル
ヤ本員ハ財界ノ重大問題化シツツアル
本問題ニ對シ政府ヨリ簡單ナル抽象的答
辯ヲ以テ酬キラレタルコトヲ深ク遺憾ト
シ重ネテ政府ノ所見ヲ質スコトトセリ片岡
商相カ豫算分科會ニ於テ約セラレタル
如ク質問者カ充分滿足シ且一般ニモ了
解出來得ル樣誠意アル具〓的明答ヲ望ム
右及再質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員中山貞雄君提出株式取引所取
締ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員中山貞雄君提出株式取引所
取締ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
第取引所株ハ廣ク所有、取引セラレ
其ノ上場ハ永年行ハレ來レル所ニシテ
之カ上場ヲ禁止スルハ財界ニ及ホス影
響甚大ナルヘキヲ以テ政府ニ於テ目下
禁止ノ意思ナキハ曩ニ答辯セル所ナリ
第二有價證劵ノ短期〓算取引ハ相當ノ
受渡アリ之ヲ他ノ〓算取引ニ比スルモ
之ヲ禁止スヘキ必要ヲ認メス尤モ本制
度ハ實施以來日尙淺キヲ以テ之カ健全
ナル發達ヲ圖ル爲必要ナル監督ヲ爲ス
ヘキハ勿論ナリ
第三有價證劵ノ二重上場ハ取引員カ短
期〓算取引ニ慣熟シ證券取引ノ運用ニ
支障ナキトキ之ヲ廢止セントスルモノ
ニシテ豫メ其ノ時期ヲ確定スルコト困
難ナリ
第四先日附手形ノ發行ニ付テハ前答辯
書ノ通リ政府ハ常ニ監督ヲ怠ラサル所
ナリ而シテ東京株式取引所ニ於テハ最
近其ノ發行總額ニ制限ヲ設ケタル次第
ニシテ現狀ニ於テハ取引上危險ナキモ
ノト認ム
右及答辯候也
大正十五年三月十六日
商工大臣片岡直溫
森林政策ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月五日
提出者佐藤富十郞
森林政策ニ關スル再質問主意書
-政府ハ本員ノ曩ニ提出シタル趣意ニ
依リ答辯書トシテ與へラレタル其ノ第
一項ニ於テ官行斫伐ハ更新ノ意味ニ於
ケル官行斫伐ト稱スル施業案ナルモノ
ハ全國百三十九箇所ニ於テ之カ續行セ
サルヘカラストノ答辯ナルカ政府ハ現
下ノ狀態ニ於テ全國河川ノ水源ハ枯渴
シ而シテ灌漑用水水力電氣飮料水ニ不
足ヲ來シ惹テ水害ハ年年歲歲著シク增
加シ來リ之カ爲ニ國費地方費ヲ要スル
コト年ヲ追フテ甚シク之レ森林濫伐ノ
結果ナリト認ムルカ政府ハ果シテ他ニ
原因アリテ斯ル大害ヲ醸スモノト思フ
ヤ否ヤ此點明瞭ナル御答辯ヲ乞ハムト
ス
二官行斫伐ハ政府ハ施業案ト稱スル名
目ノ下ニ實行シツツアレトモ官行斫伐
ナルモノハ施業案トハ別問題ニシテ必
シモ官自ラ事業ヲ爲ササルヘカラスト
謂フ理由ハ一モ存セサルニ非スヤ官行
斫伐ノ如キハ所謂普通ノ木材業者ノ事
業ニシテ官業トスル必要ナキノミナラ
ス却テ冗員冗費ヲ要シ國家ニ多大ナル
損害ヲ與へ居ル事實明白ニシテ之カ整
然タル損益計算書明白ナラス從テ事業
ノ黑白ヲ明瞭ニスルノ方法ナク其ノ證
據ニハ大正十三年度官行斫伐ノ調書ヲ
要求シタルニ其ノ與ヘラレタル調書ニ
依レハ甚夕不完全ニシテ何等認ムルモ
ノナキヲ見テモ明瞭ニ官行斫伐ノ事業
ノ官業ニ適セサルヲ證明スルニ餘リア
リ又吾カ帝國ノ森林力今日ノ儘ニ續行
スルニ於テハ水源涵養ヲ失ヒ灌漑用水
ハ勿論水力電氣ノ減退或ハ廢電ノ已ム
ナキニ至ルヘシ今ヤ水力電氣ノ減退ハ
甚シキモノニシテ其ノ一例ヲ擧クレハ
信越ハ五萬七千キロヲ出ツヘキモノカ
三萬九千キロニ減シ東信ハ五萬四千キ
ロヲ出ツヘキモノカ二萬六千キロニ減
シ京濱ハ二萬二千キロヲ出ツヘキモノ
カ九千八百キロニ減シタル事實アリ斯
ノ如ク年ヲ追フテ減退セムトスル傾向
ニアルハ歷然タル事實ノ證明ヲ如何ニ
セムヤ政府ハ此ノ事實ヲ知リ乍ラ强テ
官行斫伐ヲ續行セムトスルモノナルヤ
否ヤ明瞭ナル答辯ヲ乞ハムトス
三政府ノ答辯ニ依レハ保安林設置ニ同
意セラレ成ルヘク設置スヘシトノコト
ナルカ元來水源油資保安林ノ如キハ現
ニ立木鬱葱タル森林ヲ以テ其ノ保安林
ト爲ササルヘカラサルハ多言ヲ要セス
然ルニ政府ハ官行斫伐ヲ續行シ森林ハ
最早鬱葱タルヲ見ルコト能ハサル狀態
ニ垂ムトスル此ノ秋ニ於テ保安林設置
ヲ直ニ實行セムトスルカ果シテ政府ノ
確信如何
四立木カ水源ヲ涵養スル狀態ハ假ニ玆
ニ立木一本アリト假定シ其ノ立木ハ周
圍六尺ヲ有シ長サ三十尺アリトスレハ
其ノ枝葉木根ヲ含ム十五石ノ材積ヲ有
シ其ノ一石ハ生木ニテ八十貫ノ貫量ヲ
有シ之カ乾燥シタル場合ハ直ニ一石ノ
乾燥木四十貫ノ減貫ヲ爲シ其ノ減貫シ
タル四十貫ハ一升ノ水ノ量目五百匁ニ
換算シ一石ノ材積ニ對シ水分八斗ヲ含
有シ十五石卽チ立木一本ニ對シ常ニ十
二石餘ノ水量ヲ涵養スルモノナリ之カ
山林一町歩ニ對シ二百本ヲ樹立スルモ
ノト見ハ其ノ水分二千四百石ヲ含有シ
之カ立木ノ使命トシテ常ニ雲霧ヲ起シ
新陳代謝ノ感應ヲ適度ニ吸吐出シ一旦
降雨ニ際シテハ木皮枝葉根底ニ尠カラ
サル水量ヲ保有シ之カ適度ニ吐出シ以
テ水源ヲ涵養スルモノニシテ此ノ意味
ヨリ論スルトキハ更新ノ意味ニ於テ全
國百三十九箇所ノ官行斫伐ト外ニ立木
ノ儘人民ニ拂下ケル立木ト總體的ニ論
スルトキハ一箇年百萬町步ノ森林カ伐
採セラレツツアリテ其レニ植立タル苗
木ハ二三十年間ハ水源涵養ノ力ナク其
ノ植附年限六七年ヲ經タル急坂地盤ハ
大雨ノ場合以前伐採シタル大木ノ綱目
的根底カ腐朽シタル結果ハ其ノ苗木ト
共ニ崩壊シ之カ河川ニ濁流シ以テ河底
ヲ埋メ堤防ヲ破壞シ遂ニ堤防ノ上ニ堤
防ヲ築堤スルノ現狀ニアリ斯ノ如ク森
林カ如何ニ水源ノ涵養ヲ爲シツツアル
カハ多言ヲ要セサル所ナリ而シテ今ヤ
全國ノ渴水狀態ハ益甚シク吾カ國唯一
ノ天然浴タル水力電氣ハ非常ナル發達
ヲ見ツツアリ今ヤ既ニ全國二千八百二
十二ノ水力發電所アリ此ノ渴水馬力六
百四十一萬五千馬力ニシテ之カ水源涵
養ヲ失ヒタル結果三百萬馬力ヲ減シタ
ル事實ハ明瞭ニシテ此二ノ疑問ナシ假ニ
一馬力ノ價格一箇年六十圓トセハ一箇
年驚ク勿レ一億八千萬圓ノ損害ヲ國民
カ損害シタルト同樣ナリ政府ハ吾カ電
氣事業ヲ必ス輕視スルモノトハ信セサ
ルモ水力電氣ノ現狀ヲ前陳ノ如ク水源
枯渴ノ爲水力電氣カ減退スルハ果シテ
何カ原因ナルカ亦政府ハ水力電氣ノ今
後ノ大方針ハ如何ニスル心算ナリヤ大
ナル問題ニ付愼重ニ御答辯アラムコト
ヲ乞フ
五第一乃至第四ノ條件ニ依リ吾カ森林
ノ官行斫伐ヲ廢シタル場合ニ於テ吾カ
國木材ノ供給不足ヲ來シ益米材ノ輸入
多カラムコトヲ顕慮シ之カ實行困難ナ
リト政府ハ痛感セラルルナラムモ之ニ
對スル對策トシテハ樺太及沿海州ニ政
府ハ現今官行斫伐ヲ爲シツツアル全國
百三十九箇所ノ事業費及役員ヲ其ノ儘
派遣セシメ伐木セシムルニ於テハ吾カ
內地ノ國有林ヲ伐木スルヨリハ遙ニ有
利安直ニ木材ノ供給セラルルコトハ現
ニ木材業者ノ現業狀態ニ於テ證明スル
ニ難カラス其ノ橫濱迄ノ木材一石ニ對
スル總掛金四圓ヲ超エサルコトハ證明
スルニ餘アリ此ノ見地ヨリ一ハ國内ノ
水源涵養ヲ成シ一ハ卽チ木材ノ不足ヲ
補ヒ一ハ米國ヨリノ輸入材ヲ防止シテ
玆ニ全ク森林政策トシテ施スヘク確案
ト信スルカ政府ハ如何ナル感ヲ有スル
ヤ國家ノ爲明瞭ナル御答辯ヲ乞ハムト
ス
右及再質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員佐藤富十郞君提出森林政策ニ
關スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員佐藤富十郞君提出森林政策
ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
-官行斫伐事業ニ就テ
森林ハ適當ナル更新ヲ計ルニアラサレ
ハ林力ノ維持保續及治水竝水源涵養ノ
萬全ヲ期スル能ハサルノミナラス徒ニ
其ノ伐採ヲ見合スカ如キハ林業ノ發達
ヲ阻害スルノ虞ナシトセサルニ依リ技
術上最進步シタル方法ヲ講シ保安關係
及經濟關係ヲシテ最有利ナラシメムコ
トニ努メツヽアリ而テ國有林ニ在リテ
ハ是等ノ諸點ニ特ニ愼重ナル考慮ヲ拂
ヒ其ノ經營上ノ必要ニ應シ政府·目ラ適
當ナル伐採事業ヲ行フモノニシテ毫モ
過伐、濫伐ノ虞ナキハ勿論之レカ爲水源
ヲ枯渴シ或ハ治水ヲ破壞スルカ如キコ
トアルヲ認メサルヲ以テ官行斫伐ハ之
ヲ廢止スルノ意ナシ尙沿海州北樺太ノ
森林ニ付テハ外國ニ屬スルヲ以テ政府
自ラ事業ヲ行フカ如キコトハ慎重ニ考
慮ヲ要スルモノト認ム
二水力電氣事業ニ就テ
我國水力電氣事業ハ將來益々其ノ發達
ヲ計ルヘキ必要アルハ勿論ナルヲ以テ
之カ水源涵養ニ就テハ政府ハ深甚ナル
注意ヲ拂ヒツツアリ
右及各辯候也
大正十五年三月十六日
農林大臣早速整爾
遞信大臣安達謙藏
軍部ノ公金取扱方法ニ關スル質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月六日
提出者〓瀨師
軍部ノ公金取扱方法ニ關スル質問主意
書
甲永年ニ亙リ我カ軍部ノ資金カ軍事當
局個人ノ名義ヲ以テ民間銀行ニ預金セ
ラレ又ハ公債證書ニ投資セラレタルハ
動カスヘカラサル事實ナリ
-該銀行預金ノ利息ハ何人カ牧得シ
タリヤ
二公債利札ニ因ル收入ハ如何ニ處理
セラレタルヤ
三公債價格騰落ニ因ル損益ハ何人ノ
負擔ニ歸シタリヤ
乙西伯利亞出兵以來我カ軍カ多額ノ有
價物兵器ヲ押收シタルハ事實ナリ
-右現品兵器ノ種類數量如何
二右賣却代金ハ如何ナル科目ニ依リ
整理シタリヤ
右及質問候也
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員〓瀨一郞君提出軍部ノ公金取
扱方法ニ關スル質問ニ對シ別紙各辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員〓瀨一郞君提出車部ノ公金
取扱方法ニ關スル質問ニ對スル答辯書
永年ニ亙リ我軍部ノ官金カ軍事當局
個人ノ名義ヲ以テ民間銀行ニ預金セラ
レ又ハ公債證書ニ投資セラレタル事實
ナシ但シ官金以外ニ於テハ共濟組合、
偕行社義助會、陸海軍義濟會、海軍信
義會及陸海軍倶樂部等ノ資金ヲ民間銀
行ニ預金シ或ハ之ヲ以テ公債ヲ購入シ
タルコトアリ
二押收物件ニ就テハ其ノ處置左ノ如シ
甲陸軍
西伯利出兵ハ國際關係頗ル複雜ナリ
シヲ以テ鹵獲押收物件ノ處理ノ如キ
モ亦慎重審議ヲ要シタリ從テ是等諸
物件ハ特ニ處理規程ヲ設ケ力メテ內
地ニ還送スルヲ避ケ多クハ出動地ニ
於テ通宜處理セシムルノ方針ヲ採レ
リ卽チ被服糧秣ノ如キハ主トシテ露
國窮民ノ救恤ニ、鹵獲押收艦船兵器
ノ如キハ軍事上必要已ムヲ得サルモ
ノノ外適當ノ時機ニ於テ確實ナル露
國政權ニ還附スヘキヲ聲明シテ一時
之ヲ管理シタル後敬兵ニ際シ悉ク在
庫ノ儘露國官憲ニ引渡シ又通貨類ニ
シテ流通シ得ルモノハ時價ヲ以テ歲
入ニ受入ルル等常ニ公平無私ノ態度
ヲ以テ通法ニ處理セシメ只全ク用途
ナク而モ治安維持若ハ危害豫防上內
地ニ澄送スルヲ有利ト認メタル兵器
又ハ學術〓究上ノ參考トナルヘキ鹵
獲物件ノ一部ヲ內地ニ選送セシメタ
リ而シテ是等內地遠送品等ハ各法規
ニ基キ正當ノ手續ニ依リテ整理ヲ了
セリ
乙海軍
押收物件ニシテ賣却シタルモノナシ
西伯利亞哈府ニ於テ陸軍カ押收シタ
ル艦船ヲ海軍ノ手ニテ保管シタリ
シカ同所撤退ノ際之ヲ亞港ニ移シ臨
時海軍防備隊ニ於テ管理シ來リタリ
然ルニ大正十四年五月同隊撤退ノ際
派遣軍司令官ヲ介シテ現地現狀ノマ
マ露國ニ引渡スコトトナリ防備隊司
令其ノ實施ノ術ニ當リ五月五日附被
我兩國全權間ニ調印セラレタル細目
協定附屬調査ニ基キ同日露國側海軍
委員ニ授受調印ヲ了セリ
右及答辯候也
大正十五年三月十五日
陸軍大臣宇垣一成
海軍大臣財部彪
製鐵所ノ經營ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月八日
提出者岡田伊太郞
製鐵所ノ經營ニ關スル再質問主意書
曩ニ本員等ノ提出シタル製鐵所經營ニ
關スル質問ニ對シ政府ノ示シタル答辯
書ハ要領ヲ得ス現ニ大正十三年度末ニ
於ケル同所ノ固定〓本金据置運轉資金
及同補足金ノ總額一億八千七百九十萬
圓ニ對シ益金八十六萬圓卽チ利益率千
分ノ五ニ充タス若運轉資金補足金ニ年
六分ノ金利ヲ見込ムトキハ二百四十萬
圓ノ損失ト爲ル大正十四年度乃至十五
年度ニ於テモ此ノ關係ハ殆ト改善セラ
レサルモノト認ム同所ハ有ユル特典ヲ
有シナカラ斯ノ如ク經營狀態不良ナル
ハ何故ナルヤ是ニ對シ如何ナル對策ヲ
有セラルルヤ關稅ノ增率ハ是カ爲ナル
カ
大正十三年度ノ銑鐵及各種鋼材(鋼塊
鋼片重軌條棒鋼型鋼厚板線材外輪等成
ルヘク詳細ニ區別シテ)ノ畦當リ各平
均生產原價及販賣價格ノ實績ヲ示サレ
タシ
右及再質問候也
追テ答辯ハ書面ヲ以テセラレタシ
大正十五年三月十六日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員岡田伊太郞君外一名提出製鐵
所ノ經營ニ關スル再質問ニ對シ別紙各辯
書差進候
〔別紙〕
衆議院議員岡田伊太郞君外一名提出製
鐵所ノ經營ニ關スル再質問ニ對スル答
辯書
製鐵所ハ純然タル民間營利ノ會社ニ
非サルヲ以テ其ノ益金ノ固定資本金、
据置運轉資金及同補足金ノ總額ニ對ス
ル割合ノミニ依リ同所ノ事業成績ヲ判
定スルコトノ當否ニ付テハ議論アルヘ
キモ政府トシテハ常ニ同所ノ事業經營
ノ改善進步ヲ圖ルコトヲ怠ラス今囘提
案セル製鐵所特別會計法案ノ如キモ同
所ノ事業經營ヲ成ル可ク民間會社ト同
一基礎ニ置キ損益ノ計算ノ根據ヲ明カ
ナラシメ同所ノ事業經營ヲ步一步改善
セシメムトスルノ趣旨ニ外ナラス尙製
鐵所ノ成績ト今囘ノ關稅ノ改正トハ何
等關係スル所ナシ
二大正十三年度ノ銑鐵及各種鋼材ノ瓲
當リ平均生產原價ハ公示シ難シ其ノ平
均販賣價格ハ別紙ノ通リ
右及答辯候也
大正十五年三月十六日
商工大臣片岡直温
大正十三年度鋼塊鋼片等瓲當リ平均販賣
價格
鋼塊六六·九四二
鋼片七四·八七四
重軌〇七·〇一〇
鋼條
棒一八〇二四
型鋼一二二·一四〇
鋼板一二五·九〇四
亞鉛引鋼板二一八·一〇七
錻カ板二八三·〇九二
線材及製釘材-一七〓五一二
外輪二九八·一三三
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十五日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ如ク變更セリ
七一吉木陽君
一七〇土井權大君
一昨十五日民事訴訟法中改正法律案外一件
委員砂田重政君辭任ニ付其ノ補闕トシテ
近藤達見君ヲ、議員梅田寛一君ノ行動ニ
關スル調査ノ件委員服部英明君辭任ニ付
其ノ補關トシテ工藤鐵男君ヲ孰レモ議長
ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=1
-
002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス此際新ニ議席ニ著カレタル議員ヲ御紹
介致シマス、其氏名ヲ請上ゲマシタナラバ
御起立ヲ願ヒマス、第二百十九番、大分縣
第三區選出議員羽田彥四郞君
〔羽田彥四郞君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=2
-
003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御諮リヲ致スコトガ
アリマス、齋藤珪次君病氣ニ付、三月
十五日ヨリ三月二十二日マデ、原田藤次郞
君事故ニ付、三月十五日ヨリ三月二十四日マ
デ、右兩君ヨリ請暇ノ申出ガアリマシタ、
許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=3
-
004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス-諸君ニ御斷リヲ
致シテ置キマスガ、本日本議場ノ空氣、其
他衞生上ノ試驗ヲスル爲メ、係リノ者ヲ數
名入場致サセマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒ
やく、本日ノ豫定中、質問ノ第四ヲ除キマ
ス外ハ、何レモ政府ヨリ答辯書ヲ受領致シ
マシタカラ、日程ヨリ之ヲ省キマス、質問
第四ニ付テ質問者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、
丹下茂十郞君
四綱紀粛正ニ關スル再質問(丹下茂十
郞君提出)
綱紀市正ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月二日
提出者丹下茂十郞
綱紀〓正ニ關スル再質問主意書
一大正十四年九月實施セラレタル貴族院
多額納稅者議員選舉ニ際シ機密ノ漏洩
選擧千涉壓迫等ノ事實
一地方及中央官憲ト通謀シ學校又ハ產業
施設ヲ利用シ政黨ノ黨勢擴張ニ資シタ
ル事實
一地方交通機關ノ施設ヲ利用シ政黨ノ黨
勢擴張ニ資セムトスル事實其ノ他
右及再質問候也
追テ去ル二月十二日綱紀出正ニ關スル
前記ノ事項ニ付質問主意書ヲ提出セシ
カ右ハ内容複雜ノ爲其ノ趣旨ヲ演說シ
之ニ依リ答辯ヲ需ムルコトトセリ然ル
ニ政府ハ其ノ趣旨ノ奈邊ニ在ルカヲ極
メスシテ唯漠然トシテ答辯書ヲ發シタ
ルカ如キハ不親切極マレリト言フヘシ
依テ政府ハ充分陳旨ノ陳述ヲ聞キタル
上ニ於テ口頭ヲ以テ詳細答辯セラレム
コトヲ望ム
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=4
-
005・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 諸君、私ハ綱紀肅正ノ
問題ニ付キマシテ、二三政府當局ニ質問
ヲ致シタイト思フノデアリマス、此問
題ハ若槻首相兼內相、鐵道大臣、文部大臣
ニ主ニ關係ヲ致シテ居リマスルガ、只今出
席ニナッテ居リマセヌカラ、願クバ速記錄
ニ依リマシテ、此趣旨ニ對シテ御答辯ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス、二月ノ六日ニ、
私ハ綱紀出正ノ件ニ付キマシテ質問ヲ致シ
テ置イタノデアリマス、然ルニ本月二日ニ
至リマシテ、卽チ質問日ニ當リマシテ、突
如トシテ極メテ簡單ナル答辯書ヲ發セラレ
タノデアリマス、私ノ質問セントスル事柄
ハ、内容ガ頗ル複雜致シテ居リマス爲ニ、書面
ニ於テ要ヲ盡シ兼ネマスガ故ニ、當議場ニ
於キマシテ十分ニ其意ノ在ル所ヲ盡シテ、
之ニ依ッテ政府當局ノ責任アル御答辯ヲ煩
ハサウトシタノデアリマシタ、然ルニ極メ
テ無責任ナル、極メテ冷淡ナル、極メテ不
深切ナル所ノ通リ一遍ノ簡單ナル答辯ヲ發
セラレタノデアリマス、由來政府ノ答辯ハ
斯ノ如キ無責任ナルモノデアルカ、先ニ誰
方カノ御質問ニ依リマシテ、政府ノ答辯ガ
頗ル不深切デアル、此問ニ對シマシテ若槻
總理大臣ハ、政府ノ答辯ハ懇切丁寧ヲ盡ス
ト云フコトヲ聲明サレテ居ルノデアリマス、
然ルニモ拘ラズ、唯〓其質問ノ内容ガ那邊ニ
在ルカト云フコトモ究メズシテ、唯一片
ノ形式的ノ答辯ヲ發セラレテ居ルト云フコ
トハ政府當局ノ無責任、不深切ニ對シマ
シテ私ハ非常ニ遺憾ヲ感ズル者デアリマス、
私ノ質問セントスル事柄ハ所謂現內閣ノ
政綱ト致シテ居ラレル所ノ綱紀粛正、卽チ
第一次加藤內閣ノ成立當時、天下ニ聲明致
シマシタ四大政綱ノ隨一トシテ、所謂加藤
內閣ノ旗印トシテ掲ゲラレマシタ綱紀肅正
ノ問題、現内閣ハ前内閣及前々內閣ノ政策
ヲ襲踏シテ居ラレル、又曩ニ若槻總理大臣
ハ前內閣、前々內閣ノ政治上ノ責任マデ帶
ビルト云フコトヲ聲明致シテ居ルノデアリ
さく、此意味ニ於キマシテ、私ハ所謂綱紀
肅正ト云フ此政策ニ對シテ果シテ現內
閣ガ此綱紀肅正ナルモノニ力ヲ入レテ居ル
ヤ否ヤ、此點ニ付テ私ハ御尋致シタイト思
フノデアリマス、綱紀肅正ノ必要ナルコト
ハ今更申スマデモナイコトデアリマス、
殊ニ現時我國ノ國情ニ於キマシテ、畏多ク
モ國民精神作興ニ關スル詔勅ヲ戴イテ居ル
我ガ國民ト致シマシテ、官紀ヲ振作シ、綱
紀ヲ肅正シテ、動モスレバ頽廢セントスル
所ノ道義觀念ヲ高メ、動モスレバ弛緩セン
トスル所ノ人心ヲ緊張セシメルト云フコト
所謂國民精神ヲ作興スル上ニ於キマシ
テ、誠ニ必要ナル事デアルノデアリマス、
現内閣ハ、此綱紀〓正ヲ政綱ノ第一ニ揭ゲ
ラレテ居リマス以上ハ、此綱紀肅正ニ向ヒ
マシテハ、嚴肅ニ其徹底ヲ期セネ、バナラヌ
コトヽ思フノデアリマス、然ルニ現内閣ノ
綱紀肅正ノ跡ヲ見マスレバ、何等綱紀甫正
ノ實ガ擧ラナイノミナラズ、寧口却テ之ヲ
紊亂シテ居ルト云フ事實ヲ多々認メル者デ
アリマス、殊ニ綱紀肅正ニ付キマシテハ
本議會ノ當初ニ於キマシテ屢、論議セラレ
タ所デアリマス、强テ申シマスレバ、現內
闇ノ綱紀〓正ト唱ヘテ居ラレルノハ、僅
與黨ノ諸君ノ言フガ儘ニナラナイ官吏ヲ黜
陟シテ、之ニ代フルニ當臭紛々タル所ノ。
而シテ永ク埋レテ居ッタ所ノ自黨ノ人物ヲ
起用シテ之ニ當嵌メテ、以テ綱紀肅正ノ事
成レリト言ッテ居ルノデアリマス、例ヘバ
地方長官ノ更迭ニ付テ見テモ、又植民地ニ於
キマスル總督或ハ長官ノ更迭ニ見マシテ
モ、若クハ特殊會社ノ總裁或ハ頭取等ノ更
迭ニ見マシテモ、殆ド與黨ノ色彩ノ薄イ、
與黨ニ好意ヲ持タナイ所ノ者デアレバ、其
官吏ヲ誠ルコト大限ヲ切ルガ如クデアリマ
ス曾テ國際勞働會議ノ隨員ト致シマシテ
派遣セラレマーシタ或ル地方官ガアリマス
ガ、是等ニ對シマシテモ、其御用序デヲ以
テ、歐洲各國ニ於ケル農業狀態ノ調査ヲ命
ジテ置キナガラ、而モ其調査半バニシテ一
面ニ於テ歸朝ヲ命ジ、然ルニ中途ニ於テ官
制ノ改正ノ名ノ下ニ之ヲ減ッテ居ル、而モ
其事パ本人モ知ラズシテ、亞米利加ニ渡シテ
初メテ之ヲ知ッタト云フヤウナ實例ガアル、
地方長官ノ任免ニ於キマシテモ、マダ赴任
シテ席暖マラナイ、其家族ハ移轉ノ爲ニ汽
車中ニ在ル者ガ、途中ニ於テ免官ノ發令ヲ
見タト云フガ如キ、其他轉任日尙ホ淺クシ
テ、何等仕事ノ手ニ著カナイトキニ、直ニ
免官ノ處分ヲシテ居ルモノガ多々アルノデ
アリマス、亂暴モ此ニ至ッテ極マレリト言フ
ベキデアリマシテ、是ガ爲ニハ人心ヲ惡化
セシメ、思想ヲ險惡ニ導クモノデアッテ、
断ジテ綱紀粛正ト云フコトハ出來ナイト思
フノデアリマス(拍手)而モ私ノ不可解ニ感
ジマスルコトハ、中央竝ニ地方ノ官恵ヲシ
テ、盛ニ地方輿黨ニ便宜ヲ與ヘテ、其黨勢
ノ擴張ヲ圖リ、而シテ綱紀ヲ紊亂シテ居ル
ト云フコトガ、枚擧ニ遑アラヌノデアリマス、
卽チ憲政會ノ黨勢擴張ノ爲ニ、地方官憲ト通
謀シ、中央官憲ト聯絡ヲ保シテ、有ユル手
段ヲ以テ黨勢ノ擴張ニ狂奔シテ居ル事實ガ
アルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」「ノウ〓〓」「夢
ヲ見テ居ッテハイカヌゾ」ト呼フ者アリ)ドウ
ゾ與黨諸君、暫ク我慢ヲ願ヒマス、之ヲ我ガ
愛知縣ノ實例ニ見マシテモ、其例ハ少カラ
ヌノデアリマス、一二ノ例ヲ以テ中上ゲマ
スレバ、彼ノ三派協調ノ加藤內閣ガ成立致
シマスルヤ、愛知縣ニ於キマスルナ悪政會ノ
諸君ハ尾張內閣ノ出現ト稱シ、我黨內閣
ヲ謳歌セラレタノデアリマス、是ハ吾々ト
致シマシテモ、縱令政黨ノ所屬ヲ異ニスル
トシマシテモ、我ガ〓土ニ於ケル先輩ガ、
大宰相ノ印綬ヲ帶ンダト云フコトニ付キマ
シテハ頗ル歡喜ニ堪ヘナカレタノデアリ
やっ、而シテ名實共ニ尾張内閣タラシメン
コトヲ希望致シタノデアリマス、然ルニ世
間ニ於キマシテハ、之ヲ尾張內閣ト言ハナ
イ之ヲ稱シテ土佐内閣ト云フ、或ハ三菱
內閣ト言ヒ、若クハ金權內閣、更ニ財閥内
閣ト云フコトヲ唱ヘタノデアリマス(拍手)
私ハ此尾張內閣ガ財閥內閣デアルカ、三菱
內閣デアルカト云フコトハ敢テ茲ニ喋々
致ス必要ハナカラウト思フノデアリマス、
唯、愛知縣ニ於キマスル憲政會ノ諸君ハ
愛知縣ノ出身テアル加藤高明氏ノ其發祥
ノ地ニ於キマシテ、縣政ノ上ニ黨勢甚ダ
振ハズ、カ、政友本黨ニ及バナイト云フ
コトニ付キマシテ、非常ニ御苦心ノアル
コトハ御祭シ申上ゲル次第デアリマス、
何トカ致シテ我黨天下ノ威力ヲ元サン爲
ニ、有ユル方法手段ヲ以チマシテ、黨勢ノ
擴張ニ腐心セラレテ居ルノデアリマスハ而
シテ我黨前總理ノ發祥ノ地ニ於テ、憲政會
ノ根柢ヲ養ハントセラレタ事ハ洵ニ御察
シスル次第デアリマス、而シテ政黨デアリ
マス以上ハ其黨勢ノ擴張ヲ圖ルト云フコ
トハ固ヨリ異論ガ無イノデアリマス唯〓〓
其黨勢擴張ノ爲ニ官權ヲ濫用シ、地方問
題ヲ利用シ、或ハ利權問題ヲ提供シ、甚シ
キハ員白ノ魔力ニ依ッテ、黨勢ヲ擴張セント
スルガ如キ事ハ、斷ジテ與スルコトガ出來
ナイノデアリマス(拍手「ノウ〓〓」「馬鹿ナ
コトヲ言フナ」ト呼フ者アリ)暫ク我慢ヲ願
ヒマス、斯ノ如キ陋劣ナル手段ニ於テ、黨
勢擴張ノ目的ヲ達セントスルガ如キコト
ハ公明正大ナル政黨ノ爲ス事デナイト思
フノデアリマス(拍手)況ヤ地方官憲ヤ、或
ハ中央官憲ト通謀致シマシテ、或ハ中央官
憲ヲ使嗾シテ、其中央官憲ノ力ニ依テ地
方ノ官憲ヲ壓迫シテ、サウシテ地方ノ自治
體ヲ驅シテ政爭ノ渦中ニ引人レントスルガ如
キ事ハ断ジテ許スベカラザルコトデアリ
マス(拍手)而モ綱紀〓正ヲ高唱スル所ノ現
內閣ニ於テ、斯ノ如キ紊亂ノ甚シキモノア
ルコトハ吾人ノ最モ遺憾トスル所デアリ
マス(拍手)今更ニ一二ノ例ヲ以テ申上ゲマ
スレバ、昨年ノ九月ニ行ハレマシタ貴族院
ノ多額納稅者議員ノ選擧ノ如キ、洵ニ綱紀
紊亂ト選擧ノ干涉坐迫甚シキモノアル事
實ヲ認メチ居ルノデアリマス(拍千)我ガ愛
知縣ニ於キマシテハ二百人ノ中ヨリ二人
ノ多額納稅議員ヲ選出スルコトニナッテ居
ルノデアリマス、其中ニ於キマシテ、三人
ノ候補者ガ現レマシテ、二人ハ憲政會デア
リ、一人ハ吾々ノ支持スル所ノ候補者デ
アタノデアリマス、憲政會候補者ノ一人
ハ互選人名薄ノ發表セラレル數箇月以前
ヨリ、既ニ内密ニ互選人ニ對シテ戶別訪問
ヲ致シテ居ッタト云フ事實ガアルノデアリ
マス、一體縣ニ於キマシテハ此名簿縱覽
前ニハ絕對ニ之ヲ祕密ニシテ發表シナカ
タノデアリマス、納稅額ハ勿論、其互選人
資格ノアル人名ヲ、嚴祕ニ付シテ之ヲ見セ
ナカタノデアリマス、然ルニ此改正規則ノ
發布當時ヨリ、所謂內務百ニ於キマシテ、
互選人ノ下調ベヲ縣ヨリ徵シテ居リマス時
ヨリ、旣ニ憲政會ノ或ル一人ノ人ハ、之ヲ
明瞭ニ知ッテ居シタノデアリマス、故ニ數箇
月前ヨリ數回ニ亙ノテ、此戶別訪問、內密運
動ヲ致シテ居シタノデアリマス、卽ヲ選擧
人互選人名簿ガ確定致シマシテ、他ノ候
補者ガ立候補致シマス以前ニ於テ、既ニ數
囘ノ戶別訪問ヲ致シテ居ル、是ハ何ニ由シテ
知ルコトガ出來タノデアルカ、必ズヤ地方
官憲ト通謀シテ、此機密ヲ漏洩シタト云フ
ニ外ナラヌノデアリマス(拍手)而モ選擧ニ
當リマシテハ各大臣ハ麗々シク名前ヲ列
ベ政務次官ハ盛ニ選舉運動ニ沒頭致シテ
居ルト云フ事實ガアルノデアリマス、殊ニ
選擧ノ當時ニ於キマスル地方官憲ノ、所謂
反對黨ノ候補者ニ對スル所ノ壓迫十涉ハ
實ニ甚シキモノガアッタノデアリマス、其事
實ヲ申上ゲマス、反對黨ノ候補者ノ事務所
ハ極メテ交通便利ナ所ニ在ルノ故ヲ以チマ
シテ多數ノ警察官ヲ之ニ配置致シマシテ
常ニ其事務所へ出人スル所ノ者ヲ監視シ、
而モ憲政會ノ候補者ノ事務所ノ方ハ極メテ
緩慢デアリマシタ^或日ノ如キハ電車ノ交
又點デアルガ故ニ、警戒ヲスル名ノ下ニ十
數人ノ警察官ヲ配置シテ、其事務所附近ヲ
警戒致シタコトガアルノデアリマス、斯ノ
如キ事ハ一種ノ威嚇デアル、選擧干渉デア
ルノデアリマス(拍手)而モ選擧ノ當日ノ如
キハ互ニ紳士協約ニ依リマシテ、當日ハ
切選擧運動ヲシナイト云フ約束ヲシタノデ
アル、卽チ當日ヲ無風狀態ニ置クコトニシ
タノデアリマス、然ルニ此無風狀態ニスル
ト云フコトヲ奇貨トシテ、此反對黨ニ厚意
ヲ有シテ居ル有資格者ト認メマスト云フト
家ノ外ニハ一人ノ正服私服ノ巡査ヲ配置シ、
又家ノ中ニハ二人ノ私服巡査ヲ配置シテ石
リマスサウシテ其家ニ出入スル者ヲ誰何
シ、營業上非常ナ妨害損失ヲ與ヘタノデア
リマス、而シテ刑事巡査ハ其主人ニ面會ヲ
强要シテ、何人ニ投票スベキカヲ質シ、若ク
ハ早ク投票ニ行カンコトヲ慫慂致シタリ、
種々ナル方法手段ヲ以テ選擧ノ妨害ト干涉
ヲ致シテ居ルノデアリマス(拍手)斯ル干涉
壓迫ヲ爲ス傍ニ於キマシテ、鈴置君、小山
君ノ如キ政務次官ガ、盛ニ選舉運動ニ沒頭シ
テ居ラレタト云フコトデアリマス(拍手)固ヨ
リ政務官デアルカラ選擧ニ關係スルコトヲ何
ノ憚ルコトガナイト言ハレマスカ知リマセヌ
ガ、職務ヲ抛擲シテ選擧運動ニ熱中スル如
キコトハ縱令政務官ト雖モ官吏トシテハ
其服務規律ニ依ラナケレバナラヌ(拍手)或
ハ甚シキハ或ル警察署長ノ如キハ、自カラ電
話口ニ立ッテ、サウシテ有資格者ヲ尋ネ、又
自カラ足ヲ運ンデ有資格者ノ宅ヘ行シテ、他
ノ候補者ノ選舉運動ノ狀況ヲ聽キ、ソレニカ
コツケテ何人ニ投票スルカヲ探リ、而シテ又
憲政會候補者ニ對シテ有利ナル實傳ヲ致シ
タト云フ事實ガアルノデアリマス、又甚シ
キハ或ル警察署長ノ如キハ自ラ「オート
バイ」ヲ飛シマシテ、本黨系ノ或ル有資格者
ヲ訪問致シマシテ、貴下ニ對シテ忌ハシキ
投書ガ參ノテ居ル、貴下ノ人格ニ對シテ左樣
ナ事ハナカラウト思フケレドモ、萬一本黨
ノ候補者ノ人ガ當選致スヤウナコトガアリ
マシタナラバ遺憾ナガラ貴下ニ對シテ相當
ノ手續ヲ執ラナケレバナラヌカラ、豫メ御
注意ヲ致ジマスト云フコーヲ、警察署長自
ラ出テ言ッテ居ルノデアリマス(拍手)斯ノ
如キハ暗ニ威嚇ヲ與ヘ、而モ其噂ニ依リマ
スレバ、署長ノ面前ニ於テ本黨候袖者ニ
對シテ投票ヲ御斷リスルト云フ文書ヲ書カ
セタト云フコトデアリマシア、當時其文書
ヲ私ハ認メテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ
選擧干涉壓迫ノ事實ハ多々アルノデアリマ
ス(拍手)更ニ愛知縣會ニ於キマスル所ノ政
黨ノ分野ガ先キニ申上ゲマス通リ、折角我
黨內閣ノ下ニ於キマシテ黨勢政友本黨ニ及
バナイト云フ爲ニ、其大勢ヲ挽回スルガ爲
ニハ中學校問題ヲ餌ト致シ、或ハ工業試驗
場ノ問題ヲ餌ト致シ、甚シキハ暴力ヲ以テ
本黨議員ヲ拉致セント致シタ事ガアルノデ
アリマス、開會ノ日ニ當リマシテ名古屋驛
頭ニ非常ナル暴行問題ガ起シタト云フコト
ハ是ハ事實デアルノデアリマス、所謂一
昨年町立女學校ヲ縣營ニ移スト云フ餌ヲ以
チマシテ、旨ニト本黨議員ヲ一名奪取致シ
マシタ、其味ヲ覺エマシテ昨年ノ縣會ニ於
キマシテハ中學校二校增設スル、其中學校
ヲ增設スルニハオ前ガ政友本黨ニ屈ッテハ
工合ガ惡イ、我黨へ入ッテ來レバオ前ノ所
ニ中學校ヲ增設シテヤレルンダ、而シテ地
方民ヲ煽動致シマシテ、其地方民ヨリ縣會
議員ヲ壓迫致シマシテ、而モ此二校ノ中學
校ハ數郡ニ振廻サレマシテ、數名ノ縣會議
員ヲ-所謂政友本黨ノ縣會議員ヲ掠奪セ
ント致シタノデアリマス(拍手)然ルニ縣會
ノ初メニ當リマシテ、知事ハ果シテ中學校
ヲ增設スベキ案ヲ提出スルノデアルカ否ヤ
ト云フ質問ニ對シマシテ、當時知事ハ明瞭
ニ財政緊縮ノ折柄、當縣會中ニ於テハ提
案スルコトハ致サナイコトヲ言明致シタノ
デアリマス、ソレガ爲ニ憲政會ノ諸君ハ色
ヲ失シタ、爲ニ憲政會ノ意ノ如ク動カザル
知事ヲ難ジマシテ、内務省ニ向シテ盛ニ排斤
運動ヲ始メタト云フコトデアリマス、現ニ
最近ニ於テモ此知事排斥ノ問題ガ起ッテ居
ルト云フコトデアリマス、而モ其知事ノ排斥
運動ト同時ニ、更ニ内務省ニ向シテ-內
務省ヨリ知事ヲ高壓ヲ致シテ、二校增設ノ
案ヲ提出サセント致シタノデアリマス、聞ク
所ニ依レバ川崎内務事務次官ハ極力此二校
增設案ヲ提出スルコトヲ知事ニ强要壓迫甚
シキモノガアルト云フコトデアリマス(「事
實デナイ」ト呼フ者アリ)事實デアリマス
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=5
-
006・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=6
-
007・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 知事ハ一旦提案致サ
ザルコトヲ言明致シマシタ關係非常ナ窮地
ニ陷シテ、進退兩難ニ陷ノタノデアリマス、
内務省ニハ政務次官ト事務次官ノアルコト
ハ御承知ノ通リ、然ルニ只今地方ニ於キマ
シテハ、內務省ニハ政務次官ガ二人アル、
卽チ川崎事務次官ガ非常ニ政務ニ付テ地方
長官ヲ壓迫十涉スルノ煩ニ堪ヘナイト云フ
コトヲ言ッテ居ルサウデアリマス、恐ラク
我ガ愛知縣ニ起リマシタ事實モ其一ツデア
ラウト思フノデアリマス、斯ル事業ニ於キ
マシテ、綱紀肅正ノ内務大臣ハ如何ニ之ヲ
見テ居ルカ、而モ憲政會ハ此二校ノ中學校
ノ增設案ヲ以テ、本堂議員ヲ一兩名旨こト
釣上ゲマシタ關係上、何ト致シテモ此中學
校ノ增設ヲシナケレバナラヌ、遂ニ某憲政
會ノ代議士ハ若槻内務大臣ノ使者デアルト
稱シテ、其知事ニ最後ノ談判ヲ致シタノデ
アリマス、我黨ノ内閣ノ而目ニ懸ケテドウ
シテモ中學校ノ二校增設案ヲ提出シナケレ
バナラナイ、卽チ中學校案ヲ提出スルカ、
ソレガ嫌ナラ馘ラウカ、ソレトモ自分デ腹
ヲ切ルカト云フ、洵ニ際ドイ事ヲ致シテ居
ルノデアリマス、(拍手)所謂白木ノ三實ニ九
寸五分ト云フ、洵ニ凄イ劇的ナ場面ヲ演出致
シタノデアリマス、斯ノ如ク虎ノ威ヲ假ル
何ト申シマスカ、其某代議士ハ羊ノ如ク柔
順ナル知事ヲ捉ヘテ、其喉首ヲ絞メタノデ
アリマス、故ニ已ムヲ得ズ知事ハ縣會ノ盡
ル前二日ニ至リマシテ、突如トシテ此二中
學校增設案ヲ提出致シタノデアリマス、斯
ノ如ク政務次官ノ行動ハ綱紀〓正ノ上ニ於
テ差支ナイカ、又若視内務大臣ガ某代議士
ヲ使者トシテ知事ニ最後ノ壓迫ヲ加ヘ、遂
ニ悲痛ナル-知事ノ立場ヲ失ハシメテ、地
方自治ヲ驅ッテ政爭ノ具ニ供シ、之ヲ攪亂ス
ルガ如キハ內相自ラ甚シイ綱紀紊亂デアル
ト思フノデアリマス(拍手)而シテ只今ノ問
題ハ會期ヲ終ル前日、漸ク參事會ニ付議サ
レマシタノデアリマスケレドモ、斯ノ如キ
不純ナル動機ニ於テ提案サレタモノデア
リマス故ニ、十名ノ參事會員中六名ノ反對
ガアリ、四名ノ賛成デアンタノデアリマス
ガ、然ルニ縣ノ官吏タル參事會員ノ二名ガ
加ハリマシテ、賛否同數トナリマシテ、ソ
レニ知事ガ採決致シマシテ玆ニ決定致シタ
ノデアリマス、然ルニ餘リニ倉皇トシテ此
問題ヲ扱ッタガ爲ニ、之ニ附帶スル所ノ經
費負擔ニ關スル議案ノ付議ヲ忘レタノデア
リマス、而シテ參事會ニ此問題ヲ付議セズ
シテ散會ヲ宣告致シタノデアリマス、後ニ
至リマシテ附帶議案ガ參事會ノ決議ヲ經ナ
カッタト云フコトデ、洵ニ知事始メ縣當局
ハ色ヲ失シテ、翌日ノ縣會ニ本案ヲ提出サ
レマシタケレドモ、果シテ參事會ニ於テ決
議ヲ經タモノデアルヤ否ヤト云フコトガ問
題ニナリマシテ、其問題ノ調査ノ爲ニ丁度
午後十二時ヲ經過致シマシテ、玆ニ會期ハ
滿了致シマシテ、本案ハ遂ニ縣會ノ議案ト
ナラズシテ終ッタノデアリマス、而モ斯ノ
如キ議案ガ其後間ク所ニ依リマスルト云フ
ト原案執行ヲスルト云フコトガ內務省ニ
提示サレテ居ルト云フコトデアリマス、而
シテ鈴置支部政務次官ハ、此問題ニ頗ル關
係ヲ持ッテ居ラレルシ、又川崎事務次官ハ
是非共此原案ハ執行ヲシナケレバナラヌト
云フコトヲ言ッテ居ルト云フコトデアリマ
ス、恐ラク斯ノ如キ不純ナル動機、又斯ノ如
キ不備ナル、卽チ縣會ノ決議ヲ經テ居ナイ
所ノ問題ヲ以テ、原案執行ヲスルト云フコ
トハ萬々ナカラウト信ジマスケレドモ、此
場合ニ於テ切ニ內務大臣ノ反省ヲ促シテ置
ク次第デアリマス(拍手)更ニ内務大臣ニ御
尋ヲ致サナケレバナラヌコトハ、愛知縣ニ
二木千年君ト云フ內務部長ヲ置カレタノデ
アリマス、固ヨリ私ハ二木君トハ何等恩怨
ノナイ間柄デアリマス、同君ハ曾テ滋賀縣
ノ警察部長ノ當時、恰モ寺內內閣ノ時ニ內
務大臣ガ選擧干涉ヲ强フルモノナリト斷定
シテ職ヲ抛ッテ去シタ人デアリマス、所謂俗
ニ申シマス札附ノ憲政會ノ人デアルノデア
リマス、斯ノ如キ政黨的色彩ノ濃厚ナル人
ヲ以テ、愛知縣ノ內務部長ニ入レタト云フ
コトハ、彼ノ至公至平ヲ以テ自ラ任ジテ居
ル-吾々カラ見マスレバ優柔不斷デア
リマセウ、其優柔不斷官僚的ナル山脇知事
ニ配スルニ、此極端ニ色彩ノ濃厚ナル內
務部長ヲ配シタト云フコトハ〓政府ノ意ノ
在ル所ヲ察スルニ餘リアルノデアリマス、
所謂愛知縣ヲ思フ存分ニ憲政會化セシメン
トスル所ノ魂膽デアルコトハ、何人ト雖モ
直ニ分ルコトデアルノデアリマス、而モ同
君ハ自ラ憲政會デアルコトヲ表明致シテ居
ルノデアリマス、彼ノ縣會議員争奪ノ策謀
ノ如キ、學校問題ト云ヒ、或ハ工業試驗場
問題ト云ヒ、是等ノ策謀ハ常ニ縣廳ノ內務
部長室ニ於テ行ハレテ居ル、又内務部長ノ
官舍ニ於テ行ハレテ居ル、特ニ甚シイノハ
諸君御承知ノ通リ、愛知縣ニハ瀨戶ト云フ
陶器ノ原產地ガアルノデアリマス、此陶器
ノ原產地ノ原料タルベキ陶土、其陶土ハ瀨
戶附近ノ縣有地ヨリ產スルノデアリマス、
後來當業者ハ縣ヨリ拂下ヲ受ケテ、サウシ
テ自ラ採掘ヲ致シテ居ッタノデアリマス、
而モ昨年縣會ニ無謀ニモ此仕事ヲ縣營ニ
依ッテヤラウト云フコトヲ案出シタノデア
リマス(「縣會ノ問題ダ」ト呼フ者アリ)縣會
ノ問題デハアリマセヌ、聞ク所ニ依レバ、
此問題ノ爲ニ陶土ノ採掘權ヲ或ル利權屋ガ
占メテ、サウシテ巨利ヲ博セントスル所ノ
計畫ガ暴露致シマシタ爲ニ、地方民ハ之ニ
對シテ非常ナル反對ヲ致シタノデアリマス、
是等ノ事ニ付キマシテモ、内務部長自ラ策
動致シマシタ、此問題ニ付キマシテ地方ノ
當業者ハ、非常ナル恐怖ノ念ヲ持チマシテ、
縣ニ向シテ反對運動-陳情ヲ致シタノデ
アリマス(此時發言スル者多シ)與黨諸君ハ
靜ニ、暫ク耳障リデモ御辛抱ヲ願ヒマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=7
-
008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=8
-
009・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 此陶土ノ縣營問題ニ
付キマシテ、地方ノ當業者ガ縣ニ向シテ陳情
致シマシタル場合ニ、内務部長ハ曰ク、「瀨戶
町ハ憲政會ノ盛大ナル所デアルト聞イテ居
ル、人ハ私ヲ憲政會ト言フ、サウデアラウ
ト思フ、其憲政會ニ好意ヲ持,テ居ル私ガ
憲政會ノ盛ナル地方ニ對シテ不利益ノ事ヲ
シナイカラ任シテ置ケ、卽チ我ハ憲政會ノ
人間デアル」ト云フコトヲンコニ言明致シ
テ居ルノデアリマス、斯ノ如ク縣ノ官吏ガ
最モ公平ニ、最モ嚴正ニ政黨政派ニ超越シ
ナケレバナラナイ地方ノ官憲ガ、自ラ政黨
ニ屬スルガ如キ態度ヲ以テ、サウシテ地方
ノ自治ヲ驅ノテ混亂セシムルト云フヤウナ
コトハ斷ジテ許スベカラザル事デアルト
思フノデアリマス(拍手)固ヨリ內務省ハ其
計畫デ以テ二木千年君ヲ配シタモノトス
レバ、內務大臣ハ甚ダ怪シカラヌ、綱紀紊
亂ノ張本人ト謂ハナケレバナラヌノデアリ
マス、更ニ仙石鐵道大臣ニ御尋ヲ致スコト
ガアル、地方交通機關ノ設置ヲ利用致シマシ
テ、憲政會ノ黨勢擴張ニ供スルト云フコト
デアリマス、是ハ名古屋ヲ中心ト致シマシ
テ、東濃多治見ニ通ズル爲ニ、所謂尾濃中
央電氣鐵道ト云フモノヽ開設ヲ目論ンデ居
ルノデアリマス、此申請ニハ此地方ノ最モ
有力者ヲ網羅シ、發起人トシテ店ルノデア
リマス、(一脫線スルナ」ト呼フ者アリ)マア
御廳キナサイ、然ルニ聞ク所ニ依リマスレ
古屋鐵道參與官ノ命ナリト稱シテ、
此申請人タル發起人ノ中ヨリ、政友本黨系
ノ人物ヲ刎除ケサセタノデアリマス、即チ
政友本黨ノ人ガ發起人ニ入ッテ居ッテ吳レテ
ハ、本問題モ許可スル上ニ於テ差支ヲ來ス、
ソレ故ニ政友本黨ノ人ヲ是カラ、抜イテ御
貰ヒシタイ、是ガ古屋サンヨリ命令サレタ
ー云フコトデアリマス、而モ甚ダ怪ムベキ
ハ其中ニ僅ニ二名ダケ特別ニ殘シテアル、
苟モ斯ル交四伏關卽チ經濟的ノ事業ニ關
シマシテモ、政黨的色彩ヲ以テ許否ヲ決ス
ルガ如キコトハ實ニ言語道斷デアルト思
フノデアリマス綱斜紊亂是ヨリ甚シキ
ハナシト思フノデアリマス、而モ本件ハ既
ニ技術官ノ手ノ離レマシテ事務官ノ手ニ
渡シテ居ル、サウシテ最早許可ニナラナケ
レバナラヌ場合ニナノテ居ルケレドモ、聞
ク所ニ依リマスト云フト、古屋參與官ノ御
手許ニ是々保留サレテ居ルト云フコトデア
リマス是ハ甚ダ怪ムベキ事デアリマス、
聞ク所ニ依リマスト云フト、此議會ノ解散
ヲ氣構ヘテ、若シ解散ニデモナレバ、次ノ
選舉ニハ鐵道問題テ以テ此地方ノ首根シ子
フ押ヘヤウト云フ計畫デアルサウデアリマ
?而モ一兩名殘シタ人物ハ從來政友本
豆ノ利手デアル其利手ヲ此問題ノ爲二首
ヲ押ヘテ、サウシテ我黨ノ便宜ノ爲ニ働カ
セントスル魂胎デアルコトハ何人モ認メテ
居ルノデアリマス(拍手)斯クテモ鐵迫大臣
ハ綱紀肅正ノ上ニ不都合ナシト言得ルカ
此點ニ付テ明確ナル各辯ヲ望ム次第デアリ
マス、今一ツ頗ル重要ナル問題ガアルノデ
アリマス、彼ノ名古屋中ニ尾三銀行ト稱シマ
スル所ノ、元壱政會ノ代議土内藤傳祿ナル
人ガ、農工銀行ノ頂取ト兼ネマシテ、其銀
行ノ頭取トナラ經營致シテ居ノ夕銀行ガア
ルノデアリマス、然ルニ此尾三銀行ガ、去
ル大正十二年、積年ノ不始末ヲ曝露致シマ
シテ取付ニ會ヒ、支拂ヲ停止シ、休業ニ次
グニ休業ヲ以テ致シマシテ、地方ノ財界ヲ
混亂セシメ、金融市場ヲ脅威致シマシタコ
トハ、今尙ホ吾人ノ耳ニ新ナル所デアリマ
シテ、同銀行ハ元貯蓄銀行デアッタモノガ、
彼ノ貯蓄銀行法ノ改正ニ依リマシテ、普通
銀行トナリ、更ニ他ノ銀行ヲ合併致シマシ
テ、内容ハ免モ角、外形ダケハ相當規模ノ
大キイ所ノ銀行トナッテ居ノタノデアリマ
ス、而シテ此銀行ハ初メ農工銀行ノ預金吸
收ノ機關トシテ設ケラレタノデアリマシ
テ、而モ地方ニ於ケル或ル銀行ヲ合併致シ
マシタ關係モアリ、何レモ地方ノ極メテ下
級ノ方面ニ多數ノ預金者ヲ持ッテ居シタノデ
アリマス、而シテ此銀行ハ何故カ從來憲政
會ノ御用銀行ト稱サレテ居ッタノデアリマ
ス、隨テ内部ノ經營ハ免角面白カラザル事
ガアッテ、常ニ此風評ガ傳ッテ居ッタコトハ、
世間周知ノ事實デアルノデアリマス、ソレ
カアラヌカ當時不始末ガ曝露致シマシテ、
殆ド收拾スルコトガ出來ナイ混亂狀態ヲ呈
シマシテ、整理不能ニ陷リマシ夕時ニ、時
ノ憲政會總裁デアル加藤高明氏ガ、時ノ愛
知縣知事、今ノ警視總監デアリマス太田政
弘氏ニ旨ヲ含メマシテ、其枚濟ノ途ヲ立テ
シメント致シタノデアリマス、卽チ銀行ノ
經營者ハ、此加藤前憲政會總裁ノ御聲掛リ
ニ依リマシテ、太田知事ニ哀訴嘆願ヲ致シ
テ、其整理ニ關係ヲシテ貰フコトニナッタ
ノデアリマス故ニソレマデ殆ド我レ關セ
ズ焉ノ態度ヲ執ンテ居リマシタ時ノ愛知縣
知事太田政弘君ハ終ニ部下ニ命ジマシテ
之ニ關與スルコトニナリ、所謂縣廳案ナル
整理案ヲ提ゲマシテ、預金者總代トノ間ニ
協定ヲ整へ、五箇年間預金ノ拂戾ヲ致サナ
イ、サウ云フ約束ノ下ニ一時開店ヲ致シテ
整理スルコトニナッタノデアリマス(「銀行
ノ總會デハナイゾ」ト呼フ者アリ)是ハ大問
題デアリマス、銀行ノ缺損ハ〓要少ク
見積ノテモ六百万圓、少シク多ク見積
リマスレバ七百万圓ニ垂ントシテ居ル所ノ
大穴ガ明イタノデアリマス、然ルニ一方ニ
於テハ預金拂戾ノ停止、重役ノ責任負擔、
株金ノ拂込、是等ニ依リマシテ相當ノ年間
ニ此缺損ヲ塡補スルト云フ、誠ニ都合ノ好
イ案ガ出來タノデアリマス、併ナガラ到底
豫期ノ如ク行ハレナイノデアリマス、而モ
預金者ノ總代トナリマシタ者ハ、多ク銀行
ニ多額ノ負債ヲ持シテ居ル者ガアリマシタ
カラ、其間ニ於キマシテハ種々不正ナル行
爲モ行ハレタト云フコトデアリマス、前
申シマシタ通リ同銀行ハ元貯蓄銀行デアリ
マシタ爲ニ、又農村ニ於ケル某銀行ヲ合併
シマシタ關係上、農村ニハ支店、代理店、
出張店ト云フヤウナモノヲ澤山ニ持ッテ居
ルノデアリマス、ソレ故ニ極メテ下層階級
ノ零細ナル所ノ預金、言葉ヲ換ヘテ申シマ
スレバ汗ト膏、血ト淚ノ結晶デアル所ノ預
金デアルノデアリマス、此七百万圓ニ垂ン
トスル所ノ大金ヲ雲散霧消セシメマシタガ
爲ニ、預金者ノ中ニ於キマシテハ、ソレガ
爲ニ發狂致シタ者アリ、或ハ自殺ヲ致シタ
者モアリ、或ハ一家離散ノ悲境ニ沈淪シタ
者モアリマシテ、非常ニ社會ニ害毒ヲ流シ
タノデアリマス、殊ニ地方農村ニ於キマシ
テハ、小作階級ノ者ガ粒々辛苦ヲシテ貯ヘ
夕預全ガ大部分ヲ占メテ居リマス、ソレ等
ノ人ニ非常ナ慘害ヲ與ヘタノデアリマス、
諸君モ名古屋地方ノ新間ヲ御覽ニナリマス
レバ、每日ノ三行廣告ニ、尾三銀行預金高
價頁人ト云フ廣告ガ澤山アル、又株式ノ仲
買店トカ債券ノ「ブローカー」ノ店頭ノ立看
板ニハ、尾三銀行ノ預金高價買入ト云フ廣
告ヲ致シテ居ル、ソレガ如何ナル狀態カト
申シマスレバ、預金ノ三分乃至三分五厘ノ
値打シカナクナッテ居ルノデアリマス、卽
チ斯ノ如キ大穴ヲ明ケルコトハ尋常一樣ノ
經營ヲ誤シタトカ、或ハ放漫ナル貸出ヲ致シ
タト云フコトデハナイ、此間ニハ必ズ不正
不義ノ行ハレテ、ソレニ消費サレタコトハ
疑フ餘地ガナイノデアリマス(拍手)卽チ從
來憲政會ノ御用銀行デアルトカ、或ハ憲政
會ノ金穴デアルトカ一云フコトヲ言ハレテ
居ッタコトモ、單ニ一ツノ噂トノミ見ルコト
ハ出來ナイト思フノデアリマス、果セル·哉
爾來司直ノ手ガ伸ビマシテ、彼レ内藤傳祿
君ガ多年ニ亙ッテ惡辣ナル黑手ヲ伸バシ、
私慾ヲ貪ルト共ニ、一面ニ聞ク所ニ依リマ
スレバ多年憲政會ノ軍用金トシテ支出シタ
ト云フコトデアリマス(拍手)豫審決定書ノ
內容ニ付テ見マシテモ、〓ネ此間ノ消息ヲ
窺フコトガ出來ルノデアリマス(拍手)彼ガ
斯ル厖大ナル金ヲドウ云フ風ニ支出致シタ
カト申シマスト、總テ泡汰會社ヲ造リ、由
靈會社ノ名前ダケ造シテ、ンレニ貸付ノ形
式ヲ取ッテ居ルノデアリマス、卽チ銀行ノ
帳薄ニ於キマシテハ立派ナ貸出ニナッテ
居リマスケレドモ、其實ハ何時ノ間ニヤラ
其先ガポーット消エテ居ルノデアリマス甚
シキハ被告自身ト其弟ニ依ッテ設立セラレ
テ居リマス某幽靈會社、而モ內藤ソレ自身
ノ宅ヲ事務所トシテ居ル其齒靈會社ニ對シ
テ、二百數十万圓ヲ貸付ケ夕形ヲ取ノテ居
ルノデアリマス、其他所謂憲政會ノ走狗ト
謂ハレテ居ル或ル殆ド無資產ノ者ニ對シテ
モ、數十万圓ノ貸付ヲ致シテ居ルノデアリ
マス(拍手)マルデ銀行ノ金ヲ個ミ取シテ、サ
ウシテ之ヲ以テ憲政會ノ軍用金ニ投ゼラレ
タト云フコトデアルノデアル(ノウ〓〓)噂
ニ依リマスレバ、某々政務次官モ相當御園
係ガ淺カラヌト云フコトデアリマス(拍手)
更ニ奇怪ナル事ハ彼レ内藤ガ正ニ司直ノ
手ガ仲ビントシマスルヤ、姿ヲ晦マシテ杏
トシテ長ク其消息ヲ絕テテッタノデアリマ
ス、巧ミニ逃廻リマシテ、其問ニ罪ノ彌縫ヲ
爲シ、何トカシテ此罪ヲ免レル工夫ヲ致シ
タノデアリマシテ、聞ク所ニ依リマスレバ
當時加藤高明氏及鉛置氏等ニ縋リマシテ
時ノ司法大臣ニ泣ヲ入レテ、何トカ致シテ
此罪ヲ免レント致シタノデアリマス(拍手)
而モ甚シキハ此隱遁中ニ於キマシテハ鈴
置政務次官ノ家ニ隠レテ居ッタト云フコト
デアリマス(拍手)鈴置政務次官ノ家ヲ隱レ
家トシテ、サウシテ各方面ニ運動シテ居ソ
タト云フコトハ世間周知ノ事實デアリマ
ス、如何ニ惡辣ナル方法ヲ執リマシテモ天
ハ之ヲ許サナイ、百計盡キマシテ遂ニ〓圖
ノ身トナッタノデアリマス、既ニ豫審ニ於テ
ハ決定致シテ居リマスガ、マダ豫審調書ハ
發表ニハナリマセヌ、恐ラク豫審調書ノ發
表ト公判ノ開廷トニ依リマシテ、其實情ガ
赤裸々ニ世間ニ發表セラレルコトヽ考ヘマ
ス、私ノ問ハントスル所ハ、是ガ若シモ事實
デアルトスルナラバ、苟モ一國文〓ノ府ニ於
テ最モ重要ナル職ニ在ル所ノ鈴置氏ガ-
借金問題ハ是ハ別デアリマス、借金問題ハ
別ト致シマシテモ、斯ル大罪人ヲ隱匿シテ
居ッテ、之ヲ庇護スルト云フコトガ果シテ
事實ナリトスレバ、綱紀〓正ヲ叫フ所ノ現
內閣ノ高官ト致シマシテハ、許スベカラザ
ル事ト思ヒマス(拍手)而シテ煙ノ揚ル所ニ
ハ多少ノ火ガアルト云フコトヲ申スノデア
リマス、必ヤソレ相當ノ火ガアルカト思フ
ノデアリマス、不日豫審決定、豫審調査ノ發
表公判ノ開始ニ依シテ是ハ世間ニ赤裸々
ニ出マスカラ、恐ラク其實情ガ明瞭ニナル
事ト思フノデアリマス、此點ニ付キマシテ
文部大臣ハ此問題ヲ如何ニ見テ居ルカ、綱
紀〓正內閣ノ而モ文〓ノ首腦デアル所ノ文
部大臣ガ、此問題ヲ如何ニ見ルカト云フコ
トヲ私ハ問ハントスルノデアリマス、要ス
ルニ以上申述べマシタ數箇ノ問題ハ、現內
閣ノ標榜シテ居ラレマス所ノ、綱紀〓正ナ
ル此旗印ノ前ニ慚ヅル所ハナイカ(拍手)此
點ニ付キマシテ關係各大臣ヨリ明快ナル所
ノ答辯ヲ煩ハシテ此壇ヲ降ルノデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=9
-
010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 仙石鐵道大臣
〔國務大臣仙石貢君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=10
-
011・仙石貢
○國務大臣(仙石貢君) 丹下君ニ御答ヲ致
シマスガ、鐵道大臣ハ私設鐵道ノ重役ノ私
事ニ付イテ何モ關係スル者デハアリマセ
ヌ、隨テ又先刻御述べノ事實ニ付テハ、何
モ聞イテ居リマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=11
-
012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 鈴置政府委員
〔政府委員鈴置倉次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=12
-
013・鈴置倉次郎
○政府委員(鈴置倉次郎君) 只今丹下君ヨ
リ地方及中央官憲ト(「大聲ニ願ヒマス」ト
呼フ者アリ)只今丹下君ヨリ文部大臣ニ御
質問ニナリマシタ要點ハ(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=13
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014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜出ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=14
-
015・鈴置倉次郎
○政府委員(鈴置倉次郞君)(續) 地方官憲
ト中央官憲ト連絡ヲ致シテ、學校ヲ利用シ
テ勢擴張ヲ、圖ツタト云フ御質問ノ趣意デ
アリマス、私ハ斯ノ如キ事ハ斷ジテ無イコ
トヲ玆ニ誓言致シマス、愛知縣ニ於テ御話
ノ如ク、今中學二校、增設案ガ縣會ニ出タ
ト云フ事ハ事實デアリマス、又此事ハ文部
大臣トシテ豫メ知事ヨリ協議ヲ受ケテ居ル
ノデアリマス、サリナガラ是ガ爲ニ黨員ヲ
釣ルトカ、若クハサウ云フ事實ハ毫頭無イ
ノデアリマス、愛知縣ニ於キマシテハ御承
知ノ通リ、是ハ第一流ノ縣デハアリマスガ、
〓育上ノ見地カラ申シマスト、第一流デハ
ナイノデアリマス、長野縣等ニ比シマスレ
バ、數等下ッテ居ルノデアリマスカラ、愛
知縣ニ於テハマダ中等學校ヲ數校會設スル
必要ガアルノデアリマス、ソレカラシテ只
今最モ必要ナル所ハ三河デアリマシテ、東
三河若クハ西三河ニ層設ノ必要ガアルノデ
アリマス故ニ位置ハ確定シテハ居リマセ
ヌガ、多分知事ノ豫定トシテハ西三河若ク
ハ東三河ニ置クコトヽ存ジテ店リマス其
位置ハ大口君ガ出テ居ラレマス豐橋市モ其
指定地ニナッテ居リマス、憲政會ハ豐橋市
ニ學校ヲ置イテ、大口君ヲ憲政會ニ引張ラ
ウト云フ考ハ無論ナイ、又御入リニナラヌダ
ラウト思ッテ居リマス、決シテ黨勢擴張ノ
意味ニハ使シテ居ラヌノデアリマス、又先
刻丹下君ハ、私ガ貴族院議員選擧ノ際ニ於
テ、干涉致シタト云フ御話ガアリマシタガ、
私ハ今囘ノ貴族院議員選擧ニハ、少シモ關
係ハナカッタノデアリマス、其當時選擧ノ
日ニ、文部大臣ガ學校視察ノ爲ニ愛知縣ニ
參ラレマシタカラ、私モ參リマシタ、選擧
以前ニ於テハ毛頭モ今囘ノ選擧ニハ關係致
シテ居リマセヌ、又關係致シテモ差支ハア
リマセヌガ、事實上關係致シテ居リマセヌ
ト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、ソレカラ
最後ニ文部大臣トシテ答フベキ事デハアリ
マセヌガ、内藤傳祿トカ云フ人ヲ、鈴置ガ
隱蔽シタト云フコトデアリマスガ、其事ガ
當時名古屋ノ憲政會ノ新聞ニ出テ居ノタト
云フコトデアリマス、私ハ事實ハ少シモ知
ラナイノデアリマス、又政府ノ答辯ハ不深
切ダト仰シヤリマスガ、知ラザル事ハ知ラ
ザルト答ヘル、其以上ニ深切ナ答ハナイト
思ヒマス、丹下君ガ御述ニナリマシタ如キ
ヤウナ事實ハ毛頭ナイト云フコトヲ申上ゲ
レバ、此以上深切ナ答辯ハナイト思ヒマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=15
-
016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス
〔政府委員古屋慶隆君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=16
-
017・古屋慶隆
○政府委員(古屋慶隆君) 丹下君ノ只今ノ
御尋ニ對シテ御答ヲ致シマス、丹下君ノ御
演說中、古屋參與官ノ命ニ依リ云々ト云フ
コトデアリマシタガ、私ハサウ云フ命令ヲシ
タコトハナイノデアリマス、サウ言ッテ來
タト云フコトハ私ノ關係シテ居ル所デハナ
イ、ソレハ一向知リマセヌ、ソレデアリマ
スカラ、從來ノ內閣ニ於テハドウ云フ事
ヲヤッタカ私ハ能ク存ジマセヌガ、現内閣
ニ於テハ鐵道問題等ヲ當勢擴張ノ具ニ供シ
タコトハ斷ジテアリマセヌ、此點ハ御安心
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=17
-
018・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 議事ノ進行ニ關シテ
御發言ヲ求メラレマシタ-武富濟君
〔武富濟君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=18
-
019・武富濟
○武富濟君 議事ノ進行ニ關シテ一言致シ
マグ丹下君ノ御演述ハ縷々數千万言ヲ
費サレタノデアリマスガ、悉ク自己ノ獨斷
ニ基イテ居ル論結デアリマシテ、何等具體
的ノ證據ヲ示サレテ居ラヌノデアリマス、
斯ル荒唐無稽ナル言辭ヲ弄スルト云フコト
ハ徒ニ議場ノ紛亂ヲ生ゼシメマシテ、
議事ノ圓滑ナル進行ヲ期スル譯ニ參ラヌノ
デアリマス、抑、丹下君ノ議論ノ中デ、吾
輩ニ關係ヲ致シテ居リマスル點ガ一二アル
ノデアリマス(「武富君ト云フコトハ一言モ
言ッテ居ナイ」ト呼フ者アリ、其他發言スル
者多シ)御聽キナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=20
-
021・武富濟
○武富濟君(續) 昨年町立某女學校ヲ縣立
ニ移管スルト云フコトニ付テ、政友本黨ノ
一人ノ縣會議員ヲ奪ヒ去ッタト云フ言ガア
リマシタガ、是ハ毛ヲ吹イテ疵ヲ求ムルノ
御論デアリマシテ、是ハ縣會ニ提案セラレ
マシタ二校ノ問題ガアリマシテ、ハ常滑
ノ學校ヲ縣ニ移管シ、一ハ刈谷町ノ女學校
ヲ縣ニ移管スルト云フ案デアリマシタガ、
本黨ノ縣會議員ノ人ミハ頗ル不公平ニモ、
常滑ノ一校ハ縣移管ニ贊成致シマシテ、故
ナク刈谷ノ女學校ヲ否決セシメタノデアリ
やく、是ヨリ先キ本黨ノ某有力者ハ刈
谷町ノ女學校ヲ縣ニ移管シテヤルカラ、政
友會ヨリ縣會議員ニ打シテ出ロト云フ甘言
ヲ以テ、或ル縣會議員ノ候補者ヲ擁立致シ
タノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=21
-
022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 武富君ニ
〔發言スル者多ク聽取スル能ハス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=22
-
023・武富濟
○武富濟君(續) 議事ノ進行ニ關係ガアル
ト思ヒマス、政友本黨ノ人ミガ斯ル横暴ナ
ルコトヲ取計ヒマシタノデ、之ヲ是正スル
意味ニ於テ縣知事ガ正シキ途ヲ執ッタノデ
アリマス(「愛知縣會デハアリマセヌヨ」ト
呼フ者アリ)決シテ憲政會ノ人ミガ、或ル
縣會議員ヲ奪取センナドト取計ノタモノデ
ハアリマセヌ(發言スル者多シ)次ニ又某代
議士ガ內務大臣ノ使者ナリト稱シテ、縣知
事ニ對シテ中學校問題ヲ提案スルカ、辭職
ヲスルカ、首ヲ馘ルカト云フ劇的場面ヲ引
出シタト申サレマシタガ、ソレハ明ニ此武
富ニ論及サレテ居ルノデアル、吾輩ハ微力
ニシテ左樣ナル大芝居ヲ打ツノ技倆ハ特ノ
テ居ラヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 武富君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=24
-
025・武富濟
○武富濟君(續) 斯ノ如キ荒唐無稽ナル言
ヲ濫ニ弄スルト云フコトハ議事ノ妨害ニ
モナルコトヽ思ヒマスカラ、將來ハ本黨ノ
諸君中、殊ニ丹下君ノ如キハ御發言ヲ十分
ニ注意アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=25
-
026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=26
-
027・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ日程第四十、政府提出、
農業倉庫業法中改正法律案、日程第四十一、
政府提出、府縣制中改正法律案、日程第四
十二、政府提出、市制中改正法律案、日程
第四十三、政府提出、町村制中改正法律案、
日程第四十四、政府提出、北海道會法中改
正法律案、日程第四十五、政府提出、北海
道地方費法中改正法律案、日程第四十六、
政府提出、水利組合法中改正法律案、日程
第四十七、政府提出、徵發令中郡及郡長ニ
關スル規定ノ適用ニ關スル法律案、日程第
四十八、政府提出、日本勸業銀行法中改正
法律案、日程第四十九、政府提出、農工銀
行法中改正法律案、日程第五十、政府提出
北海道拓殖銀行法中改正法律案ノ各案ヲ、
逐次繰上ゲ上程シ、委員長ノ報告ヲ求メ、
一讀會ノ續ヲ開キ、其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=27
-
028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ日程變更ノ
2動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=28
-
029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
四十、農業倉庫業法中改正法律案ノ第一讀
會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-由谷義治君
第四十農業倉庫業法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一農業倉庫業法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也、
大正十五年三月十二日
農業倉庫業法中改
正法律案委員長
由谷義治
衆議院議長粕谷義三殿
〔由谷義治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=29
-
030・由谷義治
○由谷義治君 政府提出、農業倉庫業法中
改正法律案ノ委員會ハ先ヅ主務大臣ノ改
正案ニ對スル說明ヲ求メマシテ、然ル後ニ
極メテ熱心ナル、且ツ實際ニ適合セル質問
ト同時ニ、熱心ニシテ且ツ要領ヲ得タル答
辯トガアッタノデアリマス、此質問應答ノ
御紹介ヲ申上ゲルコトハ、特ニ議事ノ進行
ヲ尊重スル意味カラ省略致シマシテ、是ハ
特別委員會ノ速記ニ讓ルコトヲ御許シヲ願
ヒタイト思フノデアリマス、採決ノ結果ハ
全會一致ヲ以テ原案、卽チ政府提出ノ通リ
可決確定致シマシタ、是ガ委員會ノ經過及
結果ノ報告デアリマス、滿場ノ御賛成ヲ願
ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=30
-
031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ、討
論ノ發議ノ通告ガアリマセヌカラ、直ニ採決
ヲ致シマス
〔「質疑ノ通告ガアリマス」「通告シテア
リマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=31
-
032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) ソレデハ只今ノ宣告
ハ取消シマス、質疑ヲ許シマス-高橋熊
次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=32
-
033・高橋熊次郎
○高橋熊大郞君 質疑ヲ始メマス前ニ、主
務大臣ノ出席ヲ求メタイノデアリマス、誰
モ的ノ無イ所ヘ質問ハ出來マセヌ-主務
大臣ノ出席ハ暫時保留ヲシテ置キタイト思
ヒマスガ···
〔「賛成」「採決々々」ト呼フ者アリ〕
〔高橋熊次郞君登壇〕
〔「後廻シニシロ」「議長、後廻シニシ
タラドウデス」「政府委員ノ出席ガナケ
レバ休憩ヲ求メマス」「休憩々々」「後廻
シ」ト呼フ者アリ、議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=33
-
034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス
〔「政府委員ノ出席ガナケレバ休憩ヲ求
メマス」ト呼フ者アリ議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=34
-
035・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋君ノ(發言スル
者多シ)静〓ニ願ヒマス、高橋君ノ質疑ハ
ドウシテモ第一讀會ニ於テ爲サナケレバナ
ラヌ質疑ダサウデアリマス、然ルニ政府ノ
都合ハ今出席ノ程ガ分リマセヌカラ暫時休
憩ヲ致シマス
午後二時三十五分休憩
午後三時二十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=35
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036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 休憩前ニ引續イテ會
議ヲ開キマス-高橋熊次郞君
〔高橋熊次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=36
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037・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 私ガ先程此壇上ニ登ッタ
ノデアリマスガ、不幸ニシテ農林大臣ノ出席
モ見ズ、又其他ノ政務官モ御頭出シガナカソ
タノデアリマス、已ムナク議長ニ於テハ休
憩ヲ宣セラレタノデアリマス、然ルニ僅カ
休憩ノ後ニ總理大臣ヲ始メ歷々ノ方ミガ御
顏揃ヲ得タト云フコトハ、議會ノ大ナル收
穫トシテ私ハ喜ブ者デアリマス(拍手)併ナ
ガラ私ハ斯ノ如ク致シテ議事ノ進行ヲ妨ゲ
ルト云フコトハ甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデ
アリマス(拍手)世間ニハ野黨ガ故意ニ議事
妨害ヲスルナドト宣傳スル者モアルノデア
リマスケレドモ、斯ル光景ヲ目ノ當リ見マ
スト云フト、國民ハ必ズ是ハ野黨ノ責ニ非
ズシテ、政府竝ニ與黨ノ罪デハナイカト
斯樣ニ考ヘルニ至ルデハナカラウカト思フ
ノデアリマス(拍手)本日ハ重要ナル農政上
ノ法案ガ議ニ上ッテ居ルノデアル、然ルニ
モ拘ラズ、其團係ノ農林省ノ大臣ヲ始メ、
其係リノ人、政務官ト云フモノハ悉ク議
場ニ顏ヲ出シテ居ナイト云フコトハ吾々
ハ是デ圓滿ニ議事ノ進行ガ出來ルト、斯樣
ニ思ハレルノデアルカヲ疑フモノデアル、(拍
手)私ハ議會ノ審議ノ上ニ、主務省關係ノ
人々ノ御顏出シノナイナドト云フコトハ
從來餘リ例ヲ見ザルコトダラウト思フノデ
アリマス(拍手)吾々ハ之ニ對シテ如何ニシ
テ議事ノ進行ヲ圖ルコトガ出來ルカヲ怪ム
モノデアル、從來トテモ、吾々ニ愼重ニ審議
ヲ爲サシムル所ノ機會ヲ與ヘナイト云フコ
トガ議事進行ヲ妨ゲタ眞因デアル、其動機ハ
如何デアッタカト云フトト本日ノ如キ政府
當局ノ罪ニ出デタルモノモアリ、或ハ與黨
ガ多數ヲ擁シテ吾々ノ審議ノ機會ヲ失ハシ
ムルガ爲ニ、憤懣トナッテ議事ノ進行ガ妨
害サルヽヤウナ形式ノヤウニ見エルコ
トモアッタト云フコトニ過ギナイノデア
ル左樣ナ事デアリマスガ故ニ、是ハ矢張
議事ノ進行ヲ妨ゲタノハ政府竝ニ與黨
ナルコトハ明白デアルカラ、議事妨害ノ責
ハ之ヲ其人〓ニ返上スルノデアリマス柏
手)デ若シ今日ノ場合ヲ以テ論ズルナラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=37
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038・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋君、質疑ヲ御進
メヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=38
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039・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 質疑ヲ進メル前ニ政
府ノ責任ヲ私ハ問ハナケレバナラヌ、洵
斯ノ如クシテ此事ヲ論ズルノハ、徒ニ政府
竝ニ與黨ニ對シチ惡聲ヲ放ツモノデハナ
イ、併ナガラ私ハ農政上ニ於テ政府竝ニ與
黨ハ其誠意ガ無イヂヤナイカト云フコト
ヲ疑フガ故ニ、此言辭ヲ費スノデアル、敢
テ駄辯ヲ弄シテ居ル者ヂヤナイノデアリマ
スカラシテ、議長モ此點ヲ諒セラレンコト
ヲ望ム次第デアリマス、ソレデ私ハ第一ニ
斯ル農政上ノ重要法案ガ議ニ上ルニモ拘ラ
ズ、之ニ關係アル所ノ政府ノ人とガ此處ニ
出席ヲ致サナイト云フコトハ議事ヲ進行
セシムルニ付テ最善ノ方法デアルカ否ヤト
云フコトヲ、此機會ニ於テ豫メ若視總理大
臣ニ質問ヲ致ス次第デアリマス(拍手)而シ
テ愈こ本問題ニ關スル質疑ニ移リタイト
斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、農林大
臣ハ曩ニ本員ノ質問ニ對シテ、農會ナルモ
ノハ無力デアルト云フコトヲ御認メニナッ
タヤウデアル、故ニ農業倉庫ノ主體トシテ
之ヲ認メナイノデアルノデアル、左樣デア
ルカラ幾多ノ農會法上ニ於テ缺陷ガアリ
是ガ爲ニ農會ト云フモノハ微力デアッタト
言ヒナガラ、農業倉庫ニ關係ヲ持タシメヌ
ノデアルカラ、農業倉庫ニハ何等累ヲ及ボ
サナイト、斯ノ如クニ大膽ニ斷言ヲサレタ
ノデアル、私共ハ斯ル言辭ガ果シテ農村派
興ノ爲ニナルカ、農村ノ行詰リタル現狀ヲ
之ニ依ッテ匡救シ得ルカ否カト云フコトニ付
テ、多大ノ疑問ヲ挾マザルヲ得ナイノデアリ
マス、左樣デアリマスガ故ニ、農林大臣ハ
將來農會ト云フモノヲ、ヨリ以上ニ力强ク
セシムルト云フコトニ付テ、御考ハナイノ
デアルカト云フコトヲ伺ッテ見タイト思フ
ノデアリマス、殊ニ郡制ガ廢止サレ、今ヤ
郡役所モ廢止サレントスル運命ニュ五至ンテ
居ル、又本案ニ次イデ上程サレル所ノ府縣
制ノ改正其他ニ於テ、郡ノ區域サヘモ之ヲ
認メナイト云フヤウナ、政府ノ意思ノヤウ
ニモ承ッテ居ルノデアル我黨ハ之ニ對シテ
反對ヲ致シテ居リマスルケ、レドモ、斯ノ如
キ事ヲヤッタ其後ニ於テ、郡農會ト云フモノ
ハドウ云フ運命ニ立至ルカ、今ヤ地方ノ產
業上ニ於テハ政府ノ役人-地方官ト云フ
ヤウナモノハドウ云フ狀態ニナッテ居ルカ
殊ニ農政上ニ關係アル所ノ地方官ト云フモ
ノハ、ドウ云フ有樣デアルカト云フコトヲ
私ハ一言シテ見タイト思フ、今日地方ニ於
テ是等ノ官吏ト云フモノハ唯.地方ニ行ッ
テ學問ヲ致シテ居ルヤウナモノデアル、卽
ヲ一年カ二年ノ間地方ニ居ノテ、產業課長ト
カ農務課長ト云フヤウナ椅子ニ坐ッテ居ッテ
モ、何等分リハシナイ、地方ノ事情ナドニ
ハ通ジテ居ラナイ、農業ノ農ノ字モ知ラナ
イト云フアモ差支ナイヤウナ人ミガ單ニ御
稽古的事務ヲ執ルガ爲ニ唯ト事務ノ澁滯ヲ
來シテ地方民ヲ困ラシテ居ル、漸ク二年ナ
リ三年ナリノ間ニ事務ヲ妨ゲナイト云フ程
度ニナッタ頃、サウスルトヤレ榮轉ダトカ何
ダトカ云ッテ、他縣ニ走ノテ行クダケニアラ
ズシテ、今迄農政上ノ事ヲヤッテ居ッタ者ガ
-躍警察部長ニナッテ行クト云フコトヲヤッ
テ窟ルノデアリマス、左樣ナ次第デアリマ
スカラ、地方ト云フモノハ全然官吏ノ養成
所見タヤウナ有樣ニナッテ居ル、是ガ爲ニ地
方ノ政務ノ澁滯ヲ來シ、地方民或ハ農民ノ
迷惑スル所吾々ノ測リ知ル可ラザルモノガ
アルノデアリマス、元來一部ノ人ニ、殊ニ
政府當局ナドハ法律サヘ設ケレバ、法律
サヘ學ペパ、是デ以テ農村ノ振興ガ出來ル、
產業ノ開發ガ出來ルト云フヤウニ思シテ居
ルノハ間違ヲテ居ル、行政法ヤ民法ヤ、商
法刑法、訴訟法ナドヲ一寸繙イテ居ッテ
モ是デ以テ米ガドウシテ會殖ガ出來ルカ、
繭ガドウシテ出來ルカト申シタイ、大體サ
ウ云フヤウナ頭デ臨ムカラシラ、白然百姓
ハ馬鹿ダナドト云フコトヲ言ッテモ、諸君ハ
不思義トシナイト云フヤウナコトニナルノ
デアル、斯ウ云フヤウナ事デアリマスカラ
シテ、私ハ斯ル重要ナル法案ノ審議ニモ大
臣ガ顏ヲ出サナイ、其他ノ政務官モ顏ヲ御
出シニナラナイト云フコトニ相成ルノデハ
ナイカト、斯樣ニ考ヘテ店ル(拍手)ソレデ
ハ私ハセメテモ、官吏ノ中ニ於テモ農村ニ
直接ノ關係ヲ致シテ居ル、而シテ農村ノ事
情ヲヨリ能ク之ヲ理解シ得ルモノハ、私
從來ノ郡長モリト斯樣ニ考ヘテ居ッタノデ
アリマス、郡長竝ニ郡ノ制度ニハ幾多ノ弊
害ハアルダラウ、併ナガラセメテモ地方ノ
其農村ニ於テハ、所謂之ヲ歡迎シタト云フ
ノハ卽チ農村ニ親ンデ居ル、長年ノ間同ジ
場所、或ハ地方ト云フモノニ固定サレテ居
ルト云フコトガ、郡長ノ特徵デアッタト思
フノデアル、是ガ今此特徴ハ失ハレヤウト
シテ居ルノデアル、左樣ニナリマシタナラ
其他ノ方面ハ〓モ角ト致シマシテ、私
ハ此農村ノ方面ニ於テ、之ニ代ルベキモノ
ハ郡農會ヲ措イテ他ニ無カラウト思フ、卽
チ此町村ガ小サナ團體ニ於テヤリ得ナイ施
設ト云フモノヲ、多數ノ力デ以テヤル、比
較的大ナル區域デヤルト云フモノハ、マダ縣
ノミニ於テハ到底之ヲ行ヒ得ナイノデア
ル、我國ハ諸外國ト異ノテ、諸君御承知ノ通リ
地勢上ノ關係カラシテ、風土人情ト云フモ
ノハ非常ニ違ッテ參ル左樣デアリマスカラ
シテ、農業上ノ施設ニ於キマシテハ、殊ト
非常ナル廣汎ナル區域ニ於テ、同一ナル施
政方針ヲ執ルト云フコトハムヅカシイノデ
アリマス、左樣ニ申シマシテモ、又町村ト
云フヤウナ狹イ區域ノミデハ徹底致サナイ
ノデアル、中間ノ區城タル郡ト云フモノガ
茲ニ存シテ居ルト云フコトハ、農事ノ施設
上ニ於テハ非常ニ從來ハ結構ナ事デアッタ
ノデアル、今ヤ是ガ無クナル、随テ郡役所
ニ代ルモノハ郡農會デナケレバナラヌ、吾
吾ハ斯樣ニ感ジテ居ルノデアル、左樣デア
リマスカラ、郡農會ト云フモノハ力ガ强イカ
弱イカト云フコトハ、將來ノ農事上ノ施設
ニ於テ非常ナル關係ガアルト私ハ考ヘテ居
ル、然ルニモ拘ラズ、私ハ過日ノ質問ニ對ス
ル御答辯ノ趣旨ニ依リマスト、郡農會ト云
フモノハ存スルニハ存スルガ、併ナガラ何
等是ハ當テニナルモノデハナイカラ、此農
業倉庫ノ經營者トシテハ新ニ之ヲ認メナイ
ノデアルカラシテ、高橋ノ云フヤウナ心配
ハ無用デアルト云フヤウナコトヲ申サレタ
ヤウニ私ハ記憶シテ居ルノデアル、併ナガ
ラ私ガ以上申上ゲルガ如ク、殊ニ農業倉庫ヲ
中心トシテ農村ノ改善ヲヤルト云フヤウナ
御志望モアル、併ナガラ地方ノ農村ノ仕事
ト云フモノハ、將來農會ヲ中心トシテヤラ
ネバナラヌト云フコトニ相成ッテ居ルト云
フコトハ、私ノ申上ゲタ通リデアル、此
農業倉庫ヲ完全ニ發達セシメル上ニ於テ
モ、而シテ其機能ヲ十分徹底セシメル上ニ
於テモ、農會ト相俟タナケレバナラヌト
云フコトハ當然ノ事デアルノデアル、然
ルニ此農會ト云フモノハ、現今ニ於テハ非
常ニ微力デアル、是ハ一ニ農會自體ノ
農會ノ本能ガ斯ノ如キモノデアルト云フ譯
デハアリマセヌノデ、是ハ要スルニ農會法
ノ缺點デアルト思フ、左樣デアリマスガ故
ニ私ハ農會法ノ改正ヲ、此機會ニ於テ行フ
ベキモノナリト私共ハ確信ヲシテ居ッタノ
デアリマス、然ルニ農林大臣ハ是等ニ付テ
毫モ本員ノ質問等ニ付テハ御答ガナカッタ
ノデアル、却テ私ヲシテ益〓不安ノ感ニ陷ラ
シムルガ如キ御答辯ノアッタコトヲ憾ム次
第デアリマスカラシテ、此際ニ徹底的ノ御
答辯ヲ順:タイモノデアリマスガ、一々抽
象的·事ヲ申上ゲテモ、或ハ御判斷ニ苦シ
マレルト云フヤウナコトヲ虞レテ居リマス
カラシテ、モウ少シ具體的ニ申上ゲテ見タ
イ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ
只今ニ於テ、何レノ〓體ニ於キマシテモ經
費ト云フモノハ、第一ノ存立要件デフル、
活動ノ原動力ト云フモノハ經費ニ在ルノダ
ト思フ、而シテ此農會ニ於テハ、市町村農
會ノ如キ下級農會ニ於キマシテハ强制徵
收ノ方法モアリマスニモ拘ラズ、上級農會
ト稱ヘラレル所ノ郡農會、或ハ府縣農會ニ
於テハ、毫モ此强制徵收ノ方法ト云フモノ
ハ認メテ居ラナイノデアル、ソレデアリマ
スガ故ニ、玆ニ下級農曾ニシテ郡農會、或
ハ縣農會ノ施設ニ快クナイト云フヤウナ場
合ニハ彼等ハ是ガ經費ヲ不納ニ致スノデ
アリマス、之ヲ納メナイ、左樣ナ場合ニ於
テハ之ヲ一々民事上ノ手續ニ依ッテ事ヲ起
スト云フヤウナ途ハアリマスケレドモ、到
底斯ウ云フコトハ煩ニ堪ヘナイ、然ルニ一
方ニ於テハ强制徵收ノ送ガ無イノデアル、
又强制徴收ノ途ガ無イバカリデナク、是等
ノ〓體ハ財產ト云フモノヽ持合セハナイノ
デアル郡農會ナリ、縣農會ナリニハ財產
ト云フモノハナイ、將來是等ノモノヲ無財
產ニシテ置クト云フノデアルカ、或ハ是等
ニモ財產ヲ所有セシムル途ヲ講ゼラルヽト
云フヤウナ御意見デアルカト云フコトヽ
强制徴收ヲ下級農會ト同ジク、上級ノ農會
ニモ之ヲ附與スルト云フ御見込デアルヤ否
ヤヲ第一ニ伺ヒタイノデアル、ソレカラ今
日ノ如ク次第ニ政黨政派ノ爭ガ强クナル、
是ガ矢張町村ニモ及ブノデアリマス、サウ
致シマスト役員ノ選舉等ニ於キマシテ、
部ノ役員ハ甲派ニ依ッテ占領サレルト云フ
ヤウナ場合ニ於テハ、乙ノ堂派ノ者ハ犬糞
的ノ讐討ヲヤラウト云フノデ、農會ノ否認
ヲヤッタリナドシテ、之ヲ解散致スト云フヤ
ウナ場合モアルノデアリマス、斯ウ云フコ
トヲ申上ゲルト云フト、一部ノ御方ニ氣ニ
入ラナイヤウデアリマスケレドモ、サウ云
フコトガ實際アルノデアリマス、氣ニ入ラ
ナイ方ナドガ矢張尻押ヲサレテヤッタノデ
アラウト思フガ、斯ウ云フコトガ實際アル
ノデアル、左樣デアリマスカラシテ、此人
人斯ウ云フヤウナ農會ガアッタ場合ニ
ハ、三分ノ二以上ノ同意ヲ得レバ-會
員三分ノ二以上ノ同意ヲ經レバ、解散ハ
出來ルノデアル、解散ノ決議ヲ致スト云フ
コトニナル、解散ノ決議ヲ致シ上級ノ官廳
ノ許可ガアレバ是ガ解散ニナルノデアリマ
ス、然ルニ上級官廳ニ於テハ斯ノ如ク一
部ニ解散ヲ認ムルト云フコトハ農會自體
ノ結束力ヲ破ル基ニナルカラ、之ヲ許可シ
ナイ、斯ウ云フ場合ニハ下級農會ハドウ
スルカト云フト、所謂「サボタージユ」ヲヤ
ルノデアリマス、上級農會ノ役員ヲ選舉シ
テ、後ニ解散ヲ決議シタノデアルカラ、今
度ハ會費ヲ納メナイ、又役員ノ選擧-改
選ノ期日ガ來テモ役員ヲ選擧シナイト云フ
ヤウナコトニナルノデアリマス、役員ガナ
〃會費ヲ納メナイト云フコトニナレバ、
解散ヲ致サナクトモ、其農會ト云フモノハ
解散シタト同ジ狀態ニ在ルノデアリマス、
左樣デアリマスカラ、是ハ事實ニ於テ解散
ト同ジヤウナ狀態ニナッテ居ルノデアル、
町村ニ於キシタナラバ、是ハ事務管掌ノ方
法ガアリマシテ、政府ノ役人ガ參リマシテ
地方ノ吏員ガソレヘ參リマシテ、而シテ町
村長ノ事務ヲ執ルト云フ途モアリマスケレ
ドモ、農會法ニハ之ヲ認メテ居ナイノデア
リマスカラ、上級農會モ監督官廳モ何等手
ヲ下スコトハ出來ヌノデアリマス、左樣デ
アリマスカラシテ、將來斯ル不合理ヲ矯正
スル爲ニ、當局ニ於テハ事務管掌ト目スベ
キヤウナ方法ヲ農會法ニ將來認メラレルカ
否ヤト云フコトヲ御伺シタイノデアリマス、
ソレカラ從來農會法ニ於キマスル上級農會
議員ノ制度デアリマスガ、洵ニ是ハ不徹底
ナ方法デアリマシテ、農會ノ議事ヲ進メル
上ニ於テ非常ニ困ッテ居ッタ、ソレガ農會
ノ機能ヲ發揮スル上ニ於テ大ナル支障ガ
アッタ、農會議員ガ一區域、一町村ニ一人
制度ヲ取クテ居ルノデアル、ソレデアルカ
ランレガ缺席スルト議事ガ洵ニ圓滿ニ進行
シナイト云フノデ、其議員ガ出席シ能ハザ
ル場合ニ、豫備議員ト云フモノヲ設ケテ居
ル豫備議員ノ制度ト云フヤウナモノハ
斯ンナ會議ニ餘リ例ヲ見ナイ事デアル、參
事會-府縣ノ參事會等ニ於テハ豫備議員
等-豫備議員デハナイ、豫メ補缺ノ際ニ
備ヘテ置クト云フヤウナ方法モアルヤウデ
アリマスガ、是ハ全然缺ケタ場合デアルガ
ソレデナクシテ出席不能ノ場合ニ豫備トシ
テ出スト云フヤウナ方法デ、斯ンナ幼稚ナ
方法ヲ相變ラズ之ヲ認メテ居ルノデアリマ
ス、ンレデアリマスカラ、斯ンナ幼稚ナ方
法ヲ止メテ一區域カラ二人ヲ出スト云フヤ
ウナ事ニシテヽ一人制度ヲ止メテ二人制度
ニスルト云フヤウニシテ、會議ノ圓滿ナル
進行ヲ圖ルト云フヤウナ方法ハ、政府ハ考
ヘテ居ラレナイカ、ドウカト云フコトヲ御伺
シタイ、ソレカラ郡長ガ廢止ニナルト云フ
ヤウナ事ニナルト、農會議員ノ構成ノ中ニ
ハ特別議員ト云フモノガアッタノデアリ
マス、是ハ郡農會ニ於テハ郡長、府縣農會
ニ於テハ府縣知事ガ之ヲ推薦スルコトニ
ナッテ居ルノデアリマスガ、郡長ガ將來無
クナッタ曉ニ於テハ是等ノ特別議員ト云
フモノヲ存置スレバ、誰ガ之ヲ指名ヲスル
ト云フコトニナルカ、又特別議員ノ推薦ノ
仕方ニモ、是ハ色〓弊害ガアル、將來之ヲ
矯正致スト云フヤウナ御考ハナイカ、ドウ
カト云フヤウナ事ヲ伺ヒタイノデダリマス
(「ソンナコトハ關係ガナイ」ト呼フ者アリ)
私ハ是ハ餘リ抽象的ニ申上ゲルト云フト、
誤解ヲ招クカラ之ヲ徹底的ニ具體的ニ申上
ゲルト云フコトヲ中シタノデアリマス、左
樣デアリマスカラ、是ハ農會ニハ大ナル關
係ガアル、隨テ此倉庫ヲ-農業倉庫ヲ圓
滿ニ發達セシメ、圓滿ニ其機能ヲ運行セシ
ムル上ニ於テ、重大ナル關係ガアルノデア
リマス、之ヲ關係ナシナドト云フコトハ、
農村ノ人こニ笑ハレマスカラ、諸君ガ御注
意ニナッテ然ルベシト考ヘテ居ルノデアリ
さっ、隨テ第二ニ御問シタイノハ斯ノ如
キ農業倉庫ガ若シ完備シタト致シテモ、之
ニ對スル金融機關ト云フモノガモウ少シ整
備ヲシテ行カナケレバ駄目ダト云フコトハ
此前モ論ジタ、併ナガラ政府ニハ之ニ對シ
徹底シタル御考ハナイノデアル、デ私ハ此
前ニ大藏大臣、或ハ大藏關係ノ方ミニ之ヲ
質問致シタノニ、御谷辯モナカッタノデア
リマス、御答辯ノナカッタト云フコトハ、確
タル方案ガ無イカラデアル(「關係ハ無イカ
ラダ」ト呼フ者アリ)大ニアル、例ヘバ今日養
蠶家ヲ保護スル爲ニ、農業會庫ア、繭ヲ取
扱ハシメルト云フコトガ出來ルソレデア
ルカラ養蠶家ハ之ニ依)テ救濟サレルト言
ハレタ、併ナガラ倉庫ニ繭ヲ預ッテ吳レテ
モ唯〓繭ヲ作ノ喜喜デデデ居ルノデハナイ、
繭ヲ作ッテソレヲ賣っテ金ニシナケレバ農蒙
ハ潤ハヌ、倉庫ニ入レテ證書ヲ貰ノタカラ
ト云ウテ、農民ハ生キラレナイ、農民ハ暮
セナイ、ソレデアルカラ繭ニ對シテ金融ノ
途ヲ講ジテ貰ハナケレバナラヌ、是ガ卽チ
農民ノ要求デアル、只今マデハ殊ニ此繭ト云
フヤウナモノハ一時ニ出テ參ルノデア
ル左樣デアルカラ製絲家ガ十分ニ之ヲ買
取ラナイコトニ於テハ吾々ハ繭ノ處置ニ
困ル、又質ノ惡イ製絲家ナドハ此狀況ヲ見
テ、忽チ數名ガ合同致シテ買止メト云フ方
法ヲヤルノデアル買止メノ方法ヲヤルト
云フト、繭一粒モ買ハヌカラシテ、是ニ於
テ私ハ農村ノ事情ヲ申上ゲルガ、農民ハ
困シテ拾賣ヲスルカラ、其時期ヲ待ッテ居ル
ソコデ此繭ヲ如何ニ處置スルカト云フコト
ニナルト、農業倉庫ヲ造シテモ、金ヲ貸シ
テ吳レヌト云フコトニナレバ、舊ノ杢阿彌
デ農業倉庫ハ蜘蛛ノ巢ダラケニナッテシマ
フ、空寺ノヤウナモノデアルト云フコトデ
アル、左樣デアルカラ佛造ッテ魂ヲ入レヌ
ト云フコトニ相成ルダラウト、私共ハ思ッ
テ居ル、ツレデアルカラ農林大臣ニ於テハ、
將來農村ノ金融ヲドウスルカト云フヤウナ
コトニ對シテ、十分ナル御考ノアルベキ筈
ダラウト思フ、御考ガ無カッタラ、總理大
臣ニ補足シテ戴キタイト斯樣ニ考ヘテ君ル、
總理大臣ハ財政ニ精通シテ居ラルヽガ、農
村ノ經濟、農村ノ金融問題ハ天下ノ大問題
デアル、ソンナ事ガ分ラズニ此政府ガ持テ
ルカト云フコトヲ私申上ゲタイノデアル、
(「熊」ト呼フ者アリ)熊ダノ虎ダノト每度言
ハレマスケレドモ、政府ハ斯ウ云フ問題ガ
少シモ眼中ニ無イヤウデアル、畜產ト云フ
ヤウナモノガ-序ニ申上ゲルノデアリマ
スケレドモ、此前ニモ申上ゲル通リ、畜產
ト云フモノハ農業ノ根本デナケレバナラヌ
ト申上ゲタ、然ルニ此畜產物ヲ取引スルニ
非常ナル缺點ガ我國ニアルノデアル、ソレ
デ此儘ニ之ヲ放置シテ居ッタラ、畜產ハ全
滅スル時期ニ達シハセヌカト云フコトヲ憂
ヘテ居リマス、而シテ關稅ニ依ッテ產業ヲ
保護シヤウト云フ時ニ、此畜產ヲ消費者ノ
利害關係ト云フヤウナ意味ヲ以テ之ヲ棚ニ
上ゲテシマッテ顧ミナイ、而シテ一方ニ於テ飼
料問題モ顯ミナイ、又此農業倉庫ニ關聯シ
テ、取引ノ問題モ徹底的ニ解決ヲシナケレ
バナラヌ、然ルニ一向之ヲ解決サレルト云
フヤウナ御意思デアルヤウニ吾々ハ認メル
コトハ出來ナイノデアリマス、將來此畜產、
殊ニ馬ノヤウナモノデモサウデアル、牛モ
サウデアル、豚モサウデアル、鷄モサウデ
アル、是等ノモノニ付テ何等徹底的ノ方策
ハ政府ニ無イ、何等是等ニ對スル政策ガ確
立シナイト云フコトハ吾々農村ノ住民ト
シテ、農民トシテ看過スベカラザル事デア
ル(拍手)私ハ斯ノ如ク農業會庫ニ依シテ、是
等ノ農村ニ於ケル取引關係ヲ園滑ニスルト
云フコトヲ謠ハレル今日ニ於テ、何故從來
ノ問題ヲ此際ニ慎重ニ扱ハレナカッタカド
ウカト云フコトヲ此場合ニ伺シテ見タイノ
デアリマス、諸君ハ畜產ナドト云フコトハ
何ノ事カト云ッタヤウナ顏ヲナサルケレド
モ、我國ニ於ケル畜產ノ狀態ナドハ、洵ニ
吾々ハ悲ムベキ狀態ニナッテ居ルト思フノ
デアリマス、馬ニ致シマシテモ、或ハ牛ニ
致シマシテモ其通リデアル
〔此時發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=39
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040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=40
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041・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 馬ナドト云フモノハ
色ミナ計畫ヲサレタト云フケレドモ、何等
徹底シテ居ナイ、一定ノ方針ガ立ッテ居ナイ
ヂヤナイカ、或ハ乘馬ヲ勸メル、挽馬ヲ勸
メル、重イ馬ヲ勸メタリ輕イ馬ヲ勸メタリ
何カシテ譯ガ分ラヌ、日露戦爭ニ行ッテ露
西亞ノ馬ガ洵ニ力强イ、二三頭デモ重砲ヲ
引上ゲルト云フ事實ヲ見テ驚イテ、直ニ「ク
ライデスデール」トカ「ペルシロン」ト云ア
大キナ、高橋熊次郞ノ體格ヲ引延バシタヤ
ウナ馬ナドヲ奬勵シタ、然ルニモ拘ラズ飼
料ト云フモノガ充實シナイ、今日秋田縣ノ
重挽馬ハドウナッテ居ルカ、是ハ要スルニ
飼料問題ヲ解決シナイガ爲ニ、又斯ク奬勵
シタル大キナ馬モ何等役ヲ爲サナイデハヲ
イカ、サウ云フヤウナ事モアルノデアル
而シテ中間種ヲ奬勵スルト云ウテ、一カニー
「ハクニー」ノ奬勵ヲヤル、又一方ニニョン
グロ、ノルマン」ノ奬勵ヲヤル、一向何等
分ラナイデハナイカ、ソレデアルカラ斯ウ
云フ畜產上ノ施設ト云フモノハ不完全デア
ルカラセメテ其取引關係ニ於テ圓滑ニス
ルト云フコトハ、是ハ重大ナル問題デアル
ト思フノデアリマス、一方ニ於テ數年前ニ
於テ旣ニ議會ヲ通過シタ中央市場ヲ設ケテ、
セメテ農產物ノ卸賣市場ヲ完備シヤウトシ
タガ、マダ完備シタモノハナイ、サウ云フ
コトモ地方ニ農業倉庫ヲ完備スルト同時ニ、
中央ニ於ケル卸賣市場ト云フモノハ速ニ之
ヲ開設シナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、是等ニ對シテハ農林大臣ハドウ云フ御
考ヲ持ノテ居ルカト云フコトヲ此場合承リ
タイノデアリマス、色ミ承リタイ事ハ多々
アルノデアリマスケレドモ、私ハ先ヅ此數
項ニ止メテ置イテ、而シテ總理大臣竝ニ農
林大臣ノ十分ナル答辯ヲ煩シタイト思フノ
デアリマス、マダ場合ニ依シテハ再ビ此壇
上ヲ汚スト云フコトノ虞ガアリマスガ、ソ
レハ時間ノ節約上、議事ノ進行上私ハ悲ム
ベキコトナリドシテ、而シテ其議事ノ進行
ヲ促進セシメル上ニ本員ノ滿足シ得ル、御
懇切ナル、徹底シタル御答辯ヲ煩スコトヲ
切望シテ此壇ヲ降ル者デアリマス
〔國務大臣早速整爾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=41
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042・早速整爾
○國務大臣(早速整爾君) 私丁度貴族院ノ
曾議ニ列シテ居リマシテ、私ノ方カラ提出
シタ議案ノ說明等ニ對スル質問應答ニ當,
テ居リマシタガ爲ニ此方ニ罷リ出ル暇ガ
ナカツタノハ洵ニ遺憾デアリマス、故意ニ
私ガ議事ノ進行ヲ避ケタノデハナイト云フ
コトダケハ御諒承ヲ願ッテ置キタイ、高橋
君ノ御尋ニ對シテ御答致シマスガ、第一ノ
御尋ハ此農會ト農業倉庫トノ關係ニ付テ
デゴザイマス、先日此事ハ高橋君カラ御尋
ニナッテ、私ハ御答ヲ致シタノデアリマス
ガ、私ノ言方ガ惡カッタ爲カ、或ハ誤解ヲ
招イタカモ知レヌノデアリマス、高橋君ノ
御尋ハ主トシテ農會ト農業倉庫トノ關係ガ
ドウ云フ風ニナルカト云フコトニ付テノ御
尋デアッタカト思フ、私ハ御答ヲシテ從來
ノ關係ハアル、農會、其他ノ公法人ヲシテ
此農業倉庫ヲ經營セシメタト云フコトニハ
ナッテ居リマスケレドモ、今囘新ニ設ケル
モノハ農會ヲシテハ新ニハ經營セシメナイ、
從來ノモノハ其儘デアルケレドモ新規ニハ
農會ニ之ヲ經營セシムルコトハ致サヌコト
ニシテアル、ソレデアルカラ農會ト農業倉
庫トノ關係ヲ御心配ニナルケレドモ、將來
ニ於テハ其御心配ハアリマセヌト云フコト
ヲ御答致シタノデアッタ、其理由ヲソレデ
ハ申シマスケレドモ、元來農會ノ如キモノ
ハ、此農業倉庫ノ經營主體トシテ適當デナイ
農業倉庫ヲ經營セシムル其主體トシテハ、
先ヅ產業組合ノ如キモノヲシテ之ヲ經營セ
シムルト云フノガ適當デアノテ、農會ノ性
質上是ハ適當デナイ、事業ヲ經營セシムル
ト云フコトハ農會ノ性質ニ反スルト云フノ
ガ第一ノ理由デアルノデアリマス、事業上
或ハ損失ヲ招クト云フヤウナコトガアルカ
モ知レナイ、左樣ナ場合ニ於テハ事業上
損失ヲ招クト云フ場合ニ、其損失ニ對スル
責任ハ農會ノ如キモノガ之ヲ負フ譯ニ行カ
ナイ、サウ云フ性質ノモノデハナイノデア
リマスカラ、從來ハ唯〓例例的ニ、一ヲヲ
經過的ニ之ヲ經營セシメタト云フコトニ止
マッテ居ッテ、新規ニハ之ヲ經營主體タラシ
ムルト云フコトハ成ベク之ヲ避ケナケレ
バナラヌト云フ精神ノ下ニ、農會ヲシテ農
業倉庫ヲ經營セシムルト云フコトハ、將來
ニ於テハ之ヲ止メル積リデアル、斯樣ニ御
答シタノデアッテ、理由ハ只今申スヤウナ
點カラ參ノテ居ルノデアリマス、農會ノ無
力デアルトカ無力デナイト云フコトハ、全
ク別ノ問題デアルカラ、是ハ只今御尊デア
リマシタガ、私ハ別ノ問題トシテ御答スル
コトガ出來ルノデアリマス、如何ニモ此間
中カラ御述ニナリマシタ如ク、農會ニハ無
力ナモノガ多イ、之ヲ其儘ニスルト私ハ申
シタノデハナイ、農業倉庫トノ關係ハ只今
申シタ通リデアルケレドモ、農會ハ別ノモ
ノトシテ考ヘタナラ、無力ノ農會ガ多ケレ
バ之ヲ有力ノモノニセシムルト云フコト
無論今日ノ急務デアル、農林當局ト致
シマシテモ無力ナ農會ガ多イノヲ其儘放任
シヤウト云フ風ノ考ハ無論持シテ居ラヌノ
デアリマスカラ、成ベク之ヲ奬勵シテ、成
八々、之ヲ助長シテ、此農會ヲシテ有力ナ
ルモノニシテ働カスヤウニシナケレバナラ
ヌト云フコトハ當局本來ノ素志デアル、ソ
レデアリマスカラ現ニ豫算ニ要求ヲシテアリ
マス此下級農會ノ補助、下級農會ノ技術員ノ
施設ニ對スル補助ト云フモノハ實ハ此農
會ヲ力强クスル爲ニ政府ハ左樣ナル補助金
マデ支出シテ、色〓ナル奬勵ヲ加べテ居ル
ト云フ譯デアリマスカラ、之ニ就テハ政府
ハ相當ニ考ヘテ居ル、ソレデ郡農會ハ今度
郡役所ガ廢止ニナルト云フコトニナレバ、
餘程郡農會ノ立場ハ困ルデアラウト云フヤ
ウナ御說デアルノデアリマスケレドモ、ソ
レハ郡長ガ居ナクナル、ソレガ爲ニ郡農會
ハ是迄シ來ッタ仕事ヲ郡長ニ依賴シテ居タ
部分ト云フモノハ、何處カヘ矢張依賴ヲシナ
ケレバナラヌト云フコトニハナル、併ナガラ
郡農會ガ郡農會トシテ矢張働キヲスル、農會
ノ爲ニ力强キモノニナッテ働キヲスルト云
フ點ニ於テ、少シモ變リナク之ヲ指導シテ
行クコトハ出來ルデアラウト考ヘテ居ル
ノデアリマス唯、色と御述ニナリマシタ
是マデノ法律上ニ缺點ガアル、斯ウ云フ風
ニ改メナケレバナラヌ、斯ウ云フ風ニ改正
ヲ加ヘナケレバナラスト云フ風ニ御述ニ
ナッタ點ニ付テ、當局者モ今日矢張考慮ヲ
致シテ居ル、農會法ハ是ハ改正ヲ加ヘナケ
レバナラヌ、改正ヲ加フベキ點ガ澤山アル
ト云フコトハ認メテ店ルノデアリマスカラ、
將來ニ於テ相當調査ノ上デ、此農會ニ對シ
テ相當ノ改正ヲ加へルト云フコトダケ
ハ私ハ此席ニ於テ申上ゲ得ルノデアリマ
ス、ソレカラ次ニハ金融ニ付テ御尋デアソ
タノデアリマス、農業倉庫ノ金融ニ付キマ
シテハ之ヲ產業組合ニ經營セシムルト
云フコトガ、卽チ矢張金融ノ便ヲ圖ルト云
フ所以ニナルノデアル、前日モ私申シマシ
タ如ク、農業倉庫ニハ今日マデニ內容ノ充
實シナイモノガアンタ、是カラ大ニ內容ヲ
充實セシメナケレバナラヌ、內容ノ充實ト
云フコトハ卽チ農業倉庫ノ信用ヲ高メル
所以デアリマスカラシテ、自ラ此間ニ金融
ノ途ヲ開クコトガ出來ルト云フコトハ、私
ハ當然デアラウト考ヘルノデアリマス、
般農村ノ金融ニ付テハ、屢、申述ベマシタ如
ク、矢張此產業組合中央金庫ノ如キモノヲ
利用シテ、金融ノ疏通ヲ圖ラナケレバナラ
又、一方ニ於テ勸業銀行モアレバ農工銀行
モアルガ、相俟シテ互ニ此金融疏通ノ途ヲ
開カナケレバナラヌ、ソレト同時ニ、低利
資金ノ供給ト云フコトニ付テ、政府ハ將來
ニ向ッテハ、益。其供給ガ裕カニナルヤウ
ニ努メタイト云フ考ヲ持テ居ルノデアリ
マスカラシテ、農村ノ金融ヲ圖ルト云フコ
トニ付テハ、ソレ以上ノコトハ只今具體的ニ
申上ゲルコトハ出來ナイケレドモ、私ガ只
今申上ゲタヤウナ方法ニ依シテ、相當ニ金
融ノ途ヲ開クコトガ出來ルデアラウト信ジ
テ居ルノデアリマス、尙ホ續イテ畜產ノ事
ニ付テ御述ニナッタノデアリマスガ、是ハ
矢張私ガ申述ベマシタ如ク、政府モ相當ニ
此畜產ノ事業ニ付テハ力ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、一向畜產ノ事ハ顧ミナイト云フ
風ニ御述ニナリマシタガ、左樣デハナイ、
富產事業ノ大切デアルト云フコトハ當局
ハ固ヨリ認メテ居ル、十分ニ畜產ノ事業ニ
ハ力ヲ盡シタイト考へテ居ルノデアリマス
カラ、此點ハ能ク御諒解願ヒタイノデアリ
ママ、飼料ノ事ニ付テ御尋デアッタノデア
リマスガ、此畜產ニ關スル飼料ノ如キモ、
附隨ノ事業トシテ矢張是ハ農業倉庫ニ於
テ之ヲ受託スルコトニナッテ居ル、附隨ノ
事業トシテ受託スルト云フコトニ相成リマ
スレバ、畜產ノ飼料ノ如キモ、亦玆ニ非常
ナル便宜ヲ得ルト云フコトニ御諒承ヲ願ヒ
タイノデアリマス、追ミ此農業倉庫ノ改正
ニ依ッテ、聯合農業倉庫ガ發達ヲスルト云
フコトニ相成シテ參リマスガ、此聯合農業
倉庫ハ、御說ノ如ク中央市場ノ働キヲ爲シ、
其モノト必ズ進歩シテ行カナケレバナラヌ
性質ノモノデアリマスカラ、是ガ中央市場
的ノモノトナッテ、大ニ一般ニ對シテ便利
ヲ與ヘルト云フコトハ、此法律改正ノ結果、
必ズ見ルベキ效果ガアルデアラウト信ジテ
居ルテデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=42
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043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、討論ノ通告モアリマセヌカラ、
直ニ採決ヲ致ジマス、本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=43
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044・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=44
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045・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=45
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046・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
叫アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=46
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047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二詰會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
農業倉庫業法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=47
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048・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告ノ通リ可決確定セラレマシタ-日程
第四十一乃至第四十七ハ、同一委員ニ付託シ
夕議案ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=48
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049・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第四十一、府縣制中改正法律
案。外六件ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス-
委員長荒川五郞君
第四十一府縣制中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一府縣制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
府縣制中改正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
府縣制中改正法律案中左ノ通修正ス
第六條府縣内ノ市町村公民ハ府縣會議
員ノ選擧權及被選舉權ヲ有ス
陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者(未夕入
營セサル者及歸休下士官兵ヲ除ク)及戰
時若ハ事變ニ際シ召集中ノ者ハ選擧權
及被選擧權ヲ有セス兵籍ニ編人セラレ
タル學生生徒(勅令ヲ以テ定ムル者ヲ
除ク)及志願ニ依リ國民軍ニ編人セラ
レタル者亦同シ
市町村公民權停止中ノ者ハ選擧權及被
選擧權ヲ有セス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及吏員ハ其ノ
關係區域内ニ於テ被選擧權ヲ有セス
府縣ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ存縣ニ於テ
費用ヲ負擔スル事業ニ付府縣知事若ハ
其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲
ス若及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ
行爲ヲ爲ス去人ノ無畏責任社員、取締役
監査役若ハ之ニ準くヘキ名、〓算人及
文配人ハ其ノ府縣ニ於テ被選擧権ヲ有
セス
府縣ノ官吏及有給ノ吏員其ノ他ノ職員
ニシテ在職中ノ者ハ其ノ府縣へ府縣會
議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
衆議院議員ハ府縣會議員ト相兼ヌルコ
トヲ得ス
第三十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
當選者定マリタルトキハ選舉長ハ直ニ
當選者ニ當選ノ旨ヲ告知シ同時ニ當選
者ノ住所氏名ヲ告〓シ且選擧錄及投票
錄ノ寫ヲ添へ之ヲ府縣知事ニ報告スへ
シ當選者ナキトキハ直ニ其ノ旨ヲ告〓
シ且選擧錄及投票錄ノ寫ヲ添へ之ヲ府
縣知事ニ報告スヘシ
同條第四項ノ次ニ左ノ一項ヲ加へ第五項
中「第六條第九項」ヲ「前項」ニ改ム
六
第六條第七項ニ揭クル在職ノ官吏以外
ノ官吏ニシテ當選シタル者ハ所屬長官
ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ニ應スル
コトヲ得ス
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
府縣ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ府縣ニ於テ費用
ヲ負擔スル事業ニ付府縣知事若ハ其ノ委任
ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲ス者若ハ其ノ
支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人
ノ無限責任社員、役員若ハ支配人ニシテ當
選シタル者ハ其ノ請負ヲ罷メ又ハ請負ヲ爲
ス者ノ支配人若ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲
ス法人ノ無限責任社員、役員若ハ支配人タ
ルコトナキニ至ルニ非サレハ常選ニ應スル
コトヲ得ス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準ス
ヘキ者竝〓算人ヲ謂フ
第三十二條當選者左ニ掲クル事由ノ一
ニ該當スルトキハ三箇月以内ニ更ニ選
擧ヲ行フヘシ但シ第二項ノ規定ニ依リ
更ニ選擧ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ
定メ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
-當選ヲ辭シタルトキ
二數選擧區ニ於テ選擧ニ當リタル
第三十一條
場合ニ於テ前條第三項ノ規定ニ依リ
一ノ選擧區ノ選擧ニ應シタル爲他ノ
選擧區ニ於テ當選者タラサルニ至リ
タルトキ
三第二十九條ノ二ノ規定ニ依リ當選
ヲ失ヒタルトキ
四死亡者ナルトキ
五選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セ
ラレ當選無效ト爲リタルトキ但シ同
一人ニ關シ前各號ノ事由ニ依ル選擧
又ハ補關選擧ノ告〓ヲ爲シタル場合
ハ此ノ限ニ在ラス
六第三十四條ノ二ノ規定ニ依ル訴訟
ノ結果當選無效ト無リタルトキ
前項ノ事由第三十一條第二項、第三項
若ハ第六項ノ規定ニ依ル期限前ニ生シ
タル場合ニ於テ第二十九條第一項但書
ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ者
アルトキ又ハ其ノ期限經過後ニ生シタ
ル場合ニ於テ第二十九條第二項ノ規定
ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシテ當選者
ト爲ラサリシ者アルトキハ直ニ選舉會
ヲ開キ其ノ者ノ中ニ就キ當選者ヲ定
ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ第二十九條第一項但
書ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ
者選擧ノ期日後ニ於テ被選擧權ヲ有セ
サルニ至リタルトキハ之ヲ當選者ト定
ムルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第三
十七條第二項ノ規定ヲ準用ス
第一項ノ期間ハ第三十四條第七項ノ規
定ノ適用アル場合ニ於テハ選舉ヲ行フ
コトヲ得サル事由已ミタル日ノ翌日ヨ
リ之ヲ起算ス
第一項ノ事由議員ノ任期滿了前六箇月
以內ニ生シタルトキハ第一項ノ選舉ハ
之ヲ行ハス但シ議員ノ數其ノ定員ノ三
分ノ二ニ滿チサルニ至リタルトキハ此
ノ限ニ在ラス
〓ヲ左ノ如ク改メ第一一項
第三十七條第一項○中左ノ如ク改會し問
中「被選擧權ヲ有セサル者」ノ下ニ「又ハ第三
十一條第七項二揭クル者」ヲ、同條第三項中
「通知ヲ受ケタルトキハ」ノ下ニ「七日以內ニ」
ヲ、「被選擧權ヲ有セサル者」ノ下ニ「又ハ第
三十一條第七項ニ揭クル者」ヲ加フ
仁破產者ト爲リタルトキ
府縣會議員被選擧權ヲ有セサル者ナルトキ
同條同項ノ次ニ左ノ一項ヲ、第三項中
又ハ第三十一條第七項ニ揭クル者ナルトキ
「通知ヲ受ケタルトキハ」ノ下ニ「七日
ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ノ右無又ハ第
以内ニ」ヲ加フ
三十一條第七項ニ揭クル者ニ該當スルヤ否ハ
府縣會議員カ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ因リ
被選擧權ヲ有セサル場合ヲ除クノ外府縣參事
會其ノ異議ヲ決定ス
禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リダルト
キ
二破產者ト爲リタルトキ
三禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處
セラレタルトキ
府縣會議員ハ住所ヲ移シタル爲被選擧
權ヲ失フコトアルモ其ノ住所同府縣内
ニ在ルトキハ之カ爲其ノ職ヲ失フコト
ナシ但シ同府縣內ニ於テ住所ヲ移シタ
ル後被選擧權ヲ失フヘキ其ノ他ノ事由
ニ該當スルニ至リタル下キハ此ノ限ニ
在ラス
第六十五條府縣ニ府縣參事會ヲ置キ議長及
名譽職參事會員十人ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十七條中「高等官參事會員」ヲ「其ノ代理
者」ニ改ム
第二項ヲ削リ第三項中「過半數
第七十三條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
ヲ「名譽臟參事會員ノ追半數」ニ改ム
議長ハ其ノ職務ヲ行フ場合ニ於テモ之
カ爲參事會員トシテ議夫ニ加ハルノ權
ヲ卡ハス
第七-四條第一項中「府縣參事會員」ヲ「議長、
其ノ代理者及名譽職參事會員」ニ改ム
希望
三部制府縣ノ參事會員ハ其ノ數ヲ十二名
トスルコトニ勅令ニ於テ規定セラレムコ
トヲ望ム
第四十二市制中改正法律案(政府提
〓第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一市制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
市制中改正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
市制中改正法律案中左ノ通修正ス
第十八條選擧權ヲ有スル市公民ハ被選
擧權ヲ有ス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選舉權ヲ有セス
選舉事務ニ關係アル官吏及市ノ有給吏
員ハ其ノ關係區域內ニ於テ被選擧權ヲ
有セス
市ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ市ニ於テ費用
ヲ負擔スル事業ニ付市長若ハ其ノ委任
ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲ス者及其
ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲
ス法人ノ無限責任社員、取締役監査役
若ハ之ニ準スヘキ者、〓算人及支配人
ハ其ノ市ニ於テ被選舉權ヲ有セス
市ノ有給ノ吏員〓員其ノ他ノ職員ニシ
テ在職中ノ者ハ其ノ市ノ市會議員ト相
兼ヌルコトヲ得ス
第三十二條第一項ヲ左ノ如ク改メ第三項
中「數紋又ハ」ヲ削リ同條第四項中「第十
八條第二項ニ揭ケサル官吏」ヲ「官吏」ニ
改ム
當選者定マリタルトキハ市長ハ直ニ當
選者ニ當選ノ旨ヲ告知シ(第六條ノ市
ニ於テハ區長ヲシテ之ヲ告知セシメ)
同時ニ當選者ノ住所氏名ヲ告ホシ且選
擧錄ノ寫(投票録ノルトキハ併セテ投
票錄ノ寫)ヲ添へ之ヲ府縣知事ニ報告
スヘシ當選者ナキトキハ直ニ其ノ旨ヲ
告〓シ且選擧錄ノ寫(投票錄アルトキ
ハ併セテ投票錄ノ寫)ヲ添へ之ヲ府縣
知事ニ報告スヘシ
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
市ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ市ニ於テ費用ヲ負
擔スル事業ニ付市長若ハ其ノ委任ヲ受ケタ
ル者ニ對シ請負ヲ爲ス者若ハ其ノ支配人又
ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責
任社員、役員若ハ支配人ニシテ當選シタル
者ハ其ノ請負ヲ罷メ又ハ請負ヲ爲ス者ノ支
配人若ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ
無限責任社員、役員若ハ支配人タルコトナ
キニ至ルニ非サレハ當田選ニ應スルコトヲ得
ス第二項又ハ第三項ノ期限前ニ其ノ旨ヲ市
長ニ申立テサルトキハ其ノ當選ヲ辭シタル
モノト看做ス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準ス
ヘキ者竝〓算人ヲ謂フ
ヲ左ノ如ク改メ第二項中
第三十八條第一項中左ノ如ク〓ム
「被選擧權ヲ有セサル者」ノ下ニ「又ハ第三十
二條第六項ニ揭クル者」ヲ加フ
二破產者ト爲リタルトキ
市會議員被選擧權ヲ有セサル者ナルトキ又
ハ第三十二條第六項ニ掲クル者ナルトキハ
其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ノ有無又ハ第三
十二條第六項ニ揭クル者ニ該當スルヤ否ハ
市會議員カ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ因リ
被選擧權ヲ有セサル場合ヲ除クノ外市會之
ヲ決定ス
禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リタルト
キ
二破產者ト爲リタルトキ
三禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處
セラレタルトキ
第七十三條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
市長ハ市會ニ於テ之ヲ選擧ス
市長ハ其ノ退職セムトスル日前三十日目迄
ニ中立ツルニ非サレハ任期中退職スルコト
ヲ得ス但シ市會ノ承認ヲ得タルトキハ此ノ
印ニ在ラス
第七十五條第二項中「選擧シ府縣知事ノ
認可ヲ受クヘシ」ヲ「選擧ス」ニ改メ同條
第三項ヲ削リ第四項ヲ左ノ如ク改ム
第七十三條第三項ノ規定ハ助役ニ之ヲ準用
助役ハ其ノ退職セムトくレ日前三十日
ス
日迄ニ甲をツルニ非サレハ任期中退職
スルコトヲ得ス但シ市會ノ水忍ヲ得夕
ルトキハ此ノ限ニ在ラス
七十七條市長市參與及助役ハ第十八
四
條第二項又ハ第五項ニ揭ケタル職ト兼
ヌルコトノ得ス又其ノ市ニ對シ請負ヲ爲
シ又ハ其ノ市ニ於テ費用ヲ負擔スル事
業ニ付市長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ
對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人又ハ主
トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責
任社員、取締役監査役若ハ之ニ準スヘ
キ者、〓算人及支配人タルコトヲ得ス
希望
-市長ニ對スル現行優遇ノ方法ハ自治
行政ヲ重ムスル上ニ於テ未タ十分ナラ
スト認ムルヲ以テ政府ハ一層適切ナル
優遇方法ヲ設ケラレムコトヲ望ム
二市制第三十九條ノ二ノ勅令ヲ以テ指
定スル市ハ人口凡五萬以上トセラレム
コトヲ望ム
第四十三町村制中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一町村制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
町村制中改正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長袖谷義三殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
町村制中改正法律案中左ノ通修正ス
第二項中左ノ如ク改ム
第十一條第四項中「内務大臣」ヲ「存孫知
停」ニ改ム
-削除
二人口五千未滿ノ町村十二人
同條第四項中「內務大臣」ヲ「府縣知事」ニ改ム
第十五條選擧權ヲ有スル町村公民ハ被
選擧權ヲ有ス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及町村ノ有給
吏員ハ其ノ關係區域内ニ於テ被選擧權
ヲ有セス
町村ニ封シ請負ヲ爲シ又ハ町村ニ於テ
費用ヲ負擔スル事業ニ付町村長若ハ其
ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲ス
者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行
爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、取締役
〓査役若ハ之ニ準スヘキ者、〓算人及
支配人ハ其ノ町村ニ於テ被選擧權ヲ有
セス
町村ノ有給ノ吏員〓員其ノ他ノ職員ニ
シテ在職中ノ者ハ其ノ町村ノ町村會議
員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第二十九條第一項ヲ左ノ如ク、第三項中
「第十五條第二項ニ揭ケサル官吏」ヲ곱
吏」ニ改ム
當選者定マリタルトキハ町村長ハ直ニ
當選者ニ當選ノ旨ヲ告知シ同時ニ當選
者ノ住所氏名ヲ告〓シ且選擧錄ノ寫
(投票錄アルトキハ併セテ投票錄ノ寫)
ヲ添へ之ヲ府縣知事ニ報告スヘシ當選
者ナキトキハ直ニ其ノ旨ヲ告〓シ且選
擧錄ノ寫(投票錄アルトキハ併セテ投
票錄ノ寫)ヲ添へ之ヲ府縣知事ニ報〓
スヘシ
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
町村ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ町村ニ於テ費用
ヲ負擔スル事業ニ付町村長若ハ其ノ委任ヲ
受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲ス者若ハ其ノ支
配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ
無限責任社員、役員若ハ支配人ニシテ當選
シタル者ハ其ノ請負ヲ罷メ又ハ請負ヲ爲ス
者ノ支配人若ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス
法人ノ無限責任社員、役員若ハ支配人タル
コトナキニ至ルニ非サレハ當選ニ應スルコ
トヲ得ス第二項ノ期限前ニ其ノ旨ヲ町村長
ニ中立テサルトキハ其ノ當選ヲ辭シタルモ
ノト看做ス
前項ノ役員トハ取締役、監査役及之ニ準ス
ヘキ者竝〓算人ヲ謂フ
○ヲ左ノ如ク改メ第二項中
第三十五條第一項〇中左ノ如ク改ム
「被選擧權ヲ有セサル考」ノ下ニ「又ハ第二十
九條第五項ニ揭クル者」ヲ加フ
町村會議員被選擧權ヲ有セサル者ナルトキ
波產者ト爲リタルトキ
又ハ第二十九條第五項ニ掲クル者ナルトキ
ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選舉權ノ有無又ハ第
二十九條第五項ニ揭クル者ニ該當スルヤ否
ハ町村會議員カ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ
因リ被選擧權ヲ有セサル場合ヲ除クノ外町
村會之ヲ決定ス
禁治產者又ハ準禁治產者ト爲リタルト
キ
二破產者ト爲リタルトキ
三禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ罰金ノ刑ニ處
セラレタルトキ
第四十五條中「年長ノ議員議長ノ職務ヲ
代理ス年齡同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ
定ム」ヲ「臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧
スヘシ」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項假議長ノ選擧ニ付テハ年長ノ議員
議長ノ職務ヲ代理ス年齡同シキトキハ
抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
特別ノ事情アル町村ニ於テハ第一項ノ規定
ニ抅ラス町村條例ヲ以テ町村會ノ選擧ニ依
ル議長及其ノ代理者一人ヲ置クコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ市制第四十八條及第四十九
條ノ規定ヲ準用ス
第五十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
第四十五條第三項ノ町村ニ於ケル町村倉ノ
會議ニ付テハ前二項ノ規定ニ抅ラス市制第
五十六條ノ規定ヲ準用ス
第五十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
第四十五條第三項ノ町村ニ於ケル町村會ノ
會議ニ付テハ市制第六十二條第三項ノ規定
ヲ準用ス
第六十四條第一項中「又ハ助役ヲ定メ若
ハ選擧シ」ヲ、同條第二項中「町付長又ハ」
ヲ削リ同條第三項ヲ左ノ如ク改ム
〓有給町村長及有給助役ハ其ノ退職セム
トスル日前三十日目迄ニ申立ツルニ非
サレハ任期中退職スルコトヲ得ス但シ
町村會ノ承認ヲ得タルトキハ此ノ限ニ
在ラス
第六十五條町村長及助役ハ第十五條第
四
二項又ハ第五項ニ揭ケタル職ト兼ヌル
コトヲ得ス又其ノ町村ニ對シ請負ヲ爲
シ又ハ其ノ町村ニ於テ費用ヲ負擔スル
事業ニ付町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタ
ル者ニ對シ請負ヲ爲ス者及其ノ支配人
又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲ス法人ノ
無限責任社員、取締役監査役若ハ之ニ
準スヘキ者、〓算人及支配人タルコト
君は、
希望
町村長ニ對スル現行優遇ノ方法ハ自治行
政ヲ重ムスル上ニ於テ未夕十分ナラスト
認ムルヲ以テ政府ハ一層通切ナル優遇方
法ヲ設ケラレムコトヲ望ム
第四十四北海道會法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
恨告書
一北海道會法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
北海道會法中改正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
(小字及-ハ委員會修正)
北海道會法中改正法律案中左ノ通修正ス
第五條在職ノ檢事、警察官吏及收稅官
吏ハ被選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及吏員ハ其ノ
關係區域內ニ於テ被選舉權ヲ有セス
北海道廳長官若ハ北海道也方費ニ對シ
請負ヲ爲シ又ハ北海自地方費ニ於テ貴
用ヲ負膽スル事業ニ付北海道廳長言若
其ノ委任ヲ受ケタル者ニ計シ請負ヲ
爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一
ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、取
締役監査役若ハ之ニ準スヘキ者、〓算
人及支配人ハ被異〓權ヲ有セス
北海道廳ノ官吏及北海道地力費ノ有給
ノ吏員其ノ他ノ職員ニシテ在職中ノ者
ハ北海道會議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
衆議院議員ハ北海道會議員ト相兼ヌル
コトヲ得ス
第九條北海道參事會ハ議長及名譽職參事會
員十二人ヲ以テ之ヲ組織ス
第十四條府縣制第五條、第八條、第十
三條乃至第二十二條、第二十三條ノ二
乃至第四十條、第四十二條乃至第六十
四條、第六十六條、第六十七條、第六十
九條乃至第七十四條、第八十二條乃至
第八十七條、第百二十七條乃至第百二
十九條、第百三十一條、第百三十五條、
第百三十六條、第百四十二條及第百四
其ノ三十一
十四條ノ規定ハ之ヲ準用ス但シ其ノ第七
條第七項中府縣ニ對シ請負ヲ爲シトアルハ
十三條中第六十八條第二トアルハ本去
北海道廳長官若ハ北浜道理方事ニシシ計負
第十條第二號トス
ヲ爲シトス
第四十五北海道地方費法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一北海道地方費法中改正法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大止十五年三月十二日
北海道地方費法中
改正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
第四十六水利組合法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一水利組合法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
水利組合法中改
正法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
第四十七徵發令中郡及郡長ニ關スル
規定ノ適用ニ關スル法律案(政府提
出第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一徵發令中郡及郡長ニ關スル規定ノ適用
ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月十二日
徵發令中郡及郡長ニ
關スル規定ノ適用ニ
關スル法律案委員長
荒川五郞
衆議院議長粕谷義三殿
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=49
-
050・荒川五郎
○荒川五郞君 凡ソ自治體ハ國家ノ細胞デ
アリマシテ、細胞ノ一ツ〓〓ガ健全ニ發逹
シナケレバ國家ノ健全ナル進歩ハ望マレマ
セヌ、故ニ自治ノ改善、自治制度ノ改正ハ
極メテ必要ノコトデ、殊ニ此度ノ改正案ハ
郡役所廢止ノ斷行ニ關聯スル改正ノ外、重
要ナル普通選舉法ノ實施ニ伴ヒマシテ、選
擧權被選擧權ノ擴張、選擧運動方法ノ改善
及地方自治權ノ擴張、白治校開ノ整備等、
府縣制、市制、町村制及北海道會法ヲ通ジ
テ、全般ニ亙シテ多クノ重要ナル改正ノ條
項ヲ包含致シマシテ、實ニ自治制施行以來
ノ大改正デアリマシテ、本議會ニ現レタ重
要法案ノ一デアリマス、隨テ委員ノ數モ二
十七名ノ多キソレガ皆地方自治ニ種々ノ
抱負ヤ、多クノ經驗ヲ有セラルヽ諸君デ、
何レモ眞摯ニ熱心ニ審議攻究サレマシタ、
政府ヨリハ若槻内閣總理大臣兼内務大臣
ハ、特ニ屢〓出席シテ、自治ノ大綱、改正
案ノ骨子等ニ付テ說明ガアリマシタ、又小
橋一太君、大口喜六君、其他諸君ノ大體質
問ニ對シテモ答辯ガアリマシタ、又多クノ
質問ニ對シテハ俵次官、潮地方局長、田中
書記官等專ラ應酬ニ努メラレ、回ヲ重ヌル
コト八回、ソレ〓〓多數ノ修正意見ガ提出
セラレ、討議ノ結果、報告書ノ通リニ決定
〓シマシタ、其種々質問應答セラレタ實際
的又ハ理想的ノ所論ニハ大ニ傾聽スベキ
モノガ少クアリマセヌガ、本日本議場ニ於
テ、第二讀會討論ノ際ニ、各派各〓其主張
論議ヲ交換セラルヽ筈デアリマスカラ、私
ハカメテ重複ヲ避ケ、簡約ニ唯、質疑討論
ノ大體ニ關シテ、其經過ト且ツ御參考ニ供
スルヲ必要ト認メマス點ノミヲ、成ベク簡
單ニ報告致シテ、其詳細ハ委員會速記錄ニ
付テ、地方自治ニ熱心ナル諸君ノ御一讀ヲ
切望致シマス、先ヅ質問中ニ現レマシタ主
要ナル其項目ヲ擧ゲマセバ、自治權ノ擴張、
府縣ノ分合、府縣知事ノ公選論、府縣會ノ
權限擴張、條例設定權、發案權、府縣參事
會ノ組織變更、府縣ノ財政、均一賦課ニ關
スル件、黨爭ノ弊ヲ避クル方案、選擧運動
ノ取締、議員定數ノ增加、請負者ノ缺格問
題不在投票ノ事、原案執行存廢ノ件、參
事會審議權ノ事等、是等ガ主トシテ府縣制
ニ關スルモノデアリマス、ソレカラ市制町
村制ニ關シテハ、町村ノ分合問題、市長町
村長ノ公民直接選擧論、市町村長ノ栽可認
可制存廢ノ事、郡ノ名存置ノ事、公民ノ年
齡ヲ二十歲ニ低下スベシトノ意見、公民住
所制限二箇年ヲ一箇年ニスベシトノ議、名薄
一册主義、名簿申告主義ノ事、財政監督ノ
件、制限外賦課及起債ニ關スル事、交付金
補助金ノ件、稅外收入ノ方針、市町村起業
法制定ノ意見、市町村長優遇ノ問題、市長
名譽職制ノ事等デアリマシタ、又北海道ニ
關シテハ府縣制ト同樣ニ、北海道制ト云フヤ
ウナモノヲ制定スベシトノ意見、町村ニ付
テ勅令ニ依ル制度ヲ改メテ、法律ニ依シテ自
治制ヲ定ムベシト云フ意見等デアリマシ
タ、其他各法案、各條項ノ多クニ就テ種々
質問應答ガアリマシタ、斯クシテ討論ニ入リ
憲政會ヨリハ由谷義治君ガ代表シテ、市長
ノ栽可竝ニ町村長ノ認可制ヲ廢スル事、町
村會議員ノ定數ヲ最少十二名ニ增加スル
事、町村條例ヲ以テ町村會議長專任ヲ許ス
ト云フ事、請負者被選擧權ヲ認メマシテ、
但シ相兼ヌルコトヲ得セシメザル事、府縣
制第三十二條中ノ前條ヲ第三十一條ト改ム
ル事、以上五箇ノ修正意見、竝ニ議員候補
者制度ヲ認ムル市ハ人口五万以上ノ市ヲ指
定セラレタシト云フ希望ガ提出サレマシタ、
政友會ヨリハ亦間嘉之吉君カラ府縣制ニ郡
ノ名ヲ存スルコト、請負者被選擧權ヲ認メ
相兼ヌルコトヲ得サル事、選擧長ハ府縣知
事ノ指定スル官吏トアルノヲ、町村長又ハ
官吏ト改ムル事、府縣制ノ第三十二條中ノ
前條ヲ第三十一條ト改ムルコト、意見書提
出ヲ內務大臣ニ限ラズ主務大臣トスル事、
北海道及府縣參事會員中カラ總テ官吏ヲ除
キ、議員數ニ應ジテ参事會貝ノ定數ヲ增ス
事、市長町村長ヲ公民直接選擧トシテ裁可
認可ノ制ヲ廢スル事、議員定數ヲ增加スル
事、町村會議長副議長ヲ議員中ヨリ選擧ス
ル事、卽チ總テ町村長ヲ議長トセズ議長專
任トスル事市參事會ノ定員ヲ增加スル事、議
員候補者制度ノ法ヲ例外ナク各市ニ準用スル
事、卽チ指定ノ市ト云フ制度ヲ改ムル事、出
席停止ノ日數ノ事等ガ修正案トシテ出サレマ
シタ、次ニ政友本黨ヨリハ小橋一太君ガ代
表シテ、北海道及府縣參事會ノ組織ヲ改メ
テ高等官ヲ削リ、長官ハ議長トシテ採決權
ヲ有スル事、縣參事會員ノ定員七名ヲ十名
トスル事、竝ニ三部制府縣ハ十一一名トスル
事ニ勅令ヲ改メラレタシトノ希望案ヲ付
シ、又請負者ノコトハ政友會憲政會ト同一
ナル事、市長ノ栽可町村長ノ認可ノ手續ヲ
削ル事、併セテ市町村長優遇ノ途ヲ講ゼラ
レタシトノ希望ヲ附シテ提出ニナリマシ
タ、最後ニ新正倶樂部ノ土屋〓三郞君ハ憲
政會、政友本黨ノ修正案ニ賛成スルノ外、
婦人參政權ヲ認メテ、二十五歲以上ノ世帶
主タル女子ニ公民權ヲ與フベシトノ意見ノ
提出ガアリマシタ、尙ホ此外ニ憲政會ノ工
藤鐵男君ヨリ、議員候補者制度指定ノ市ニ
關スル希望再說ガアリマシタ、ソレヨリ各
提出者ニ對シ種々ノ質問ガアリマシテ、愈、
採決ニ入リ、先ヅ四派共通ノモノ、卽チ
請負者ノ被選權ノ事、竝ニ府縣制第三十二
條中ノ前條ヲ第三十一條ニ改ムルト云フ、
此二案ハ滿場一致デ可決致シマシタ、次ニ
市長ノ栽可町村長ノ認可制ヲ削ルノ件ハ憲
政會、政友本黨共通ノ主張デアリマシテ、
之ニ新正倶楽部ノ賛成ガアリマシテ、多數
デ可決致シ、又町村會議員ノ數ヲ最少ヲ十
二名トスル事、竝ニ町村條例ニテ町村會議
長ヲ選擧專任スルコトヲ許スベシトノ憲政
會ノ主張ニハ、政友本黨竝ニ新正倶樂部ノ
賛成ガアリマシタ、又北海道及府縣參事會
ノ組織變更、定員增加ニ關スル政友本黨ノ
熱心ナル御主張ニハ憲政會、新正倶樂部之
ニ賛成致シマシテ、以上三案ハ何レモ多數
ニテ可決致シマシタ、是ニテ政友本黨竝ニ
憲政會提出ノ修正案ハ全部可決トナリマシ
タ、政友會提出ノ修正案中ニ於テ、以上採
決ニ關セザル他ノ條項ハ、遺憾ナガラ少數
ニテ否決トナリ、又婦人參政權ヲ認ムル修
正案ハ、主張者タル土屋君一名ノ外他ニ一
名ノ賛成者モナクシテ、動議トシテ成立ス
ルニ至ラズ自然消滅致シマシタ、斯樣ニシ
テ各派提出ノ修正案ヲ決定致シマシタ後
ニ、爾餘ノ政府原案ヲ各法案トモ一括シテ
採決ニ付シマシテ、滿場一致之ヲ可決致シ
マシタ、仍テ府縣制、市制、町村制、北海
道會法ノ四箇ノ改正法律案ハ修正可決トナ
リ、北海道地方費法、水利組合法ノ二改正
法律案、竝ニ徵發令中郡及郡長ニ關スル規
定ノ適用ニ關スル法律案、此三案ハ全部原
案ノ通リ可決トナリマシタ、而シテ條文ノ
整理ハ總テ之ヲ委員長ニ一任スルト云フコ
トニ決シマシタ、是ニテ七法案全部ノ採決
ヲ終リ、ソレヨリ政友本堂小橋君提出ノ市
町村長ノ待遇ハ未ダ十分ナラザルヲ以テ、
政府ハ是ガ優遇ノ方法ヲ講ゼラレタシト云
フ熱心ナル御希望案ハ、滿場一致可決致シ、
又同ジク政友本黨提出ノ三部制府縣參事會
員ヲ十二名トスル事、竝ニ憲政會提出ノ議
員候補者制度準用ノ指定市ヲ、人口五万以
上ノ市トスルト云フ希望案、此二ツハ何レ
モ多數ニテ可決致シマシタ、終リニ赤間嘉
之吉君ヨリ政友會提出修正案中否決トナッ
タモノハ少數意見ヲ本議場ニ報告スルノ
申出ガアリマシテ之ヲ認メマシタ、以上ノ
經過ヲ以テ委員會ハ無事ニ終了致シマシ
ク、玆ニ之ヲ御報告申スノ光榮ヲ有シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=50
-
051・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 日程第四十一、府縣
制中改正法律案外四案ニ對シマシテハソ
レソレ修正意見ガアリマス、何レモ修正デ
アリマスカラ、第二讀會ニ於キマシテ其報
告ヲ許スコトニ致シマス、此際質疑ヲ許シ
マス-板野友造君
〔板野友造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=51
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052・板野友造
○板野友造君 本案ノ提出ノ御趣旨ニハ異
存ハアリマセヌ、唯。私此機會ニ於テ、政
府ニ向シテ地方自治體ノ監督、此事ニ付テド
ウ云フ見解ヲ懷カルヽカヲ明ニ致シテ置キ
タイ、地方白治ノ刷新發達ヲ圖ル、是ニハ
勿論異存ハアリマセヌガ、之ヲ圖ル爲ニハ
公明嚴正ナル監督官其人ヲ得ルニアラズン
バ、其所期ノ目的ハ達セラレナイ、如何ニ
此府縣制、市町村制、其他ノ地方自治ニ關
スル制度、法規、是等ヲ改正致シマシテモ
其監督官廳、監督權ヲ行使スル者ニ人宜シ
キヲ得ルニアラズンバ、是等ノ制度法規ト
云フモノハ、結局法律トシテ形骸ハ殘シマ
スケレドモ、所期ノ目的ヲ達スルコトガ出
來ナイ(拍手)是ガ度々本院ニ於テ地方自治
刷新ニ關スルコトガ提唱サレタ所以デア
リ、四十六議會ニ於テモ吾々ハ憲政會ノ諸
君ト共ニ此地方自治ノ刷新、殊ニ其監督ヲ
嚴正公明ニスル必要ノアルコトヲ絕叫シタ
所以ハ此ニ基クノデアル(拍手)唯近時甚
ダ此地方自治官憲、及ビ之ニ對スル監督官
廳此行動ニ付テ疑ヲ深カラシムルモノガ
頻々トシテ起ルコトハ、洵ニ痛歎ノ至リニ
堪ヘマセヌ(拍手)私此際過日來ノ問題ニ相
成シテ居リマスル松島遊廓移轉問題、之ニ
關シテ監督官廳タル內務官憲ガ其監督ノ下
ニ在ル者、若クハ此松島遊廓移轉ニ關係ヲ
持ツ利害ノ關係者、是等ノ者ト議會ニ於テ問
題ト相成ッテ居リマスル此事實、之ヲ惹起シ
タコトニ付テ監督權ニ付テノ所見ヲ伺ヒタ
イ(拍手)此松島遊廓移轉ノ問題ハ、洵ニ此
醜穢極マレルモノデ、之ヲ政界革新ノ上カ
ラ申シマシテモ、又綱紀或ハ官紀肅正ノ土
カラ申シマシテモ、洵ニ由々敷問題デアル
コトハ申スマデモアリマセス(拍手)私ハ玆
ニ松島問題ノ醜穢ナル事實ヲ說ク者デハア
リマセヌ、又之ニ關係ヲ致シテ居ル政黨員、
或ハ大小ノ官吏、是等ノ人ノ氏名ヲ讀上ゲ、
若クハ關係ノ程度ヲ說タ者デハアリマセヌ、
唯。此松島遊廓事件ニ件テノ監督官廳、內
務官憲ノ行動ニ付キ私所見ヲ伺ヒタイ、是
ダケノ事デアリマス(拍手)事實ハ極メテ簡
單デアル、本月ノ二日ニ吾々ノ同志濱田國
松君ガ此松島遊廓移轉問題ニ付テ、政務官
及議員ノ行動ヲ調査スベシト云フ緊急動議
ヲ提出致シタ、其際ニ内務政務次官俵孫一
君ハ此松島遊廓ノ移轉問題ト云フモノハ
內務省トシテハ-現内務大臣トシテハ初
メヨリ之ニハ手ヲ觸レナイ、非移轉ノ方針
ヲ以テ進〓來ッタモノデアル、斯ウ云フ御答
辯デアッタノデアル、早クカラ非移轉論ノ
方針ヲ確定シテ進ミ來ッタモノデアル、斯
樣ナ意味ノ答辯ヲサレテ居ルノデアリマ
ス、ソコデ私共ハ甚ダ怪誘ニ堪ヘナイ事實
ガアル、川崎警保局長、今ノ内務次官川崎
卓吉君ハ警保局長タリシ時代ニ於テ、屢〓
此問題ニ付テー私今日ハ此問題ノ具體的
事實ヲ說クノガ目的デハナイカラ名前ハ言
ヒマセヌガ、某政黨ノ某幹部、或ハ某政黨
員、其他比移轉ニ猛烈ナル運動ヲ致シテ居
ル土地會社ノ重キ地位ヲ占メテ居ル者ト、
·出當會見ヲサレデ居ルノデアリマス、警保
局長ガ遊廓移轉ニ極メテ深ギ關係ノアルコ
ドハ只今絮說スルノ必要ハアリマセヌ、
如何ナル所ノ遊廓移轉問題ニモ、最モ問題
ノ中心トナルノハ警保局長ト其知事デア
ル、最モ深イ關係ノアルコトハ申ス迄モナ
イ、此川崎君ガ-今日ノ內務次官川崎君
ガ警保局長時代ニ於テ、相當此事ニ付テ會
見ヲ致シテ居ルノガ、是ハ果シテ監督權ノ
行使トシテ斯ノ如キ行動ヲ執ッタノデアル
カ否ヤ、此點ガ承リタイ、ソレカラ昨年ハ
片岡サンガ丁度内務政務次官デシタ片岡君
ガ、內務政務次官トシテ此遊廓問題ノ矢張
立役者タルベキ地位ニアラレタ時、相當片
岡君モ是等ノ連中ト會見ヲナサッタデハナ
イカ、名前ハ是モ祕シマセウ、貴方ハ貴方
ノ桃山ノ有名ナル御屋敷ニ於テ某黨ノ幹
部-某黨ノ幹部、ソレカラ此問題ノ中心ト
ナルベキ役人、其他ノ人ト會見ヲナサレ、
此會見ニ於テ某黨ノ堂賞等ヲシデ、是ハ此
月ノ末ニハ此事ガ確定發表スルノ運ビニ至
ルモノデアルトノ確信ヲ有セシメタデハア
リマセヌカ、此會見ハ何ノ爲メノ會見デアル
カ、内務政務次官トシテノ命見デアルカ、
監督權行使ノ上ニ於テ必要デアッタカ否ヤ、
之ヲ承リタイト存ジマス、若シ御記憶ヲ喚
起ナサル上ニ於テ必要デアルナラバ-御
便利トアラバ何時デモ名前ト日時ヲ申上ゲ
やっ、ソレカラ川崎卓吉、片岡直溫此兩君
ガ內務省ニ於テ大枚ナル金ヲ此關係者ニ吳
レテ居ルガ、此事實ハ如何、是ハ監督權ノ
行使カドウカ、大正十三年ノ八月末、此時
分ニ一切遊廓移轉ノ方針ガ確定シテ居ッタ、
大正十三年ノ八月ノ末ニ、是モ名前ハ隱シテ
置キマス、或ル靑年ガ現內閣-〓現内閣ト
云フヨリハ其時ハ鼎立內閣、此内閣ノ內務
ノ諸公ノ遣方ハ極メテ醜穢ナリトシテ大正
十三年ノ八月、其時ニ先ヅ此靑年ハ警保局
長ノ川崎卓吉君ヲ訪問致シマシタ、サウシ
テ川崎君ニ對シテ、內務ノ官憲ガ屢〓關關
者ト會見スルノハ何故デアルト、ソレカラ
內務官憲ハ十四年ノ四月ニ移轉ヲ發表スル
ト云フコトヲ關係者ニ言明シタデハナイ
カ、此事實アリヤ否ヤ、ソレカラモウ一ツ
此問題ニ付テハ官憲ガ不正ナル金ヲ收受シ
タト云フ噂ガアルガ、此疑ヲ解クダケノ說
明ヲ願ヒタイ、此三點、之ヲ持シテ此純眞ナ
ル靑年ガ內務省ニ迫。ク、屢"是等ノ關係係
者ト會合シ、移轉ノ日ヲ先ツ豫メ發表シタ
カ、ソレカラ不正ナル金ヲ收受セルコト、
之ヲ持シテ迫ッタ、此時ニ川崎君ハ相當ノ苦
勞人デセウガ、ドウモ此靑年ニ對スル方法
ガ少シ宜シキヲ得ナカッタラシイ、怒ラシテ
キマッタ、靑年ハ其時ニ此事實ヲ聞イタ、其
人間ノ名前ヲ言ッタ、其時ニ川崎君ハ、アレ
ハ能ク知ッテ居ル、兄弟分ノヤウナ者デア
ルト云フコトヲ言ッタガ、此靑年ヲ怒ラシテ
シマッタ、怒ラシテシマッタカラ、此靑年ハ
直ニ踵ヲ返シテ片岡君ノ所ニ行シタ、(此時發
言スル者アリ)何ヲ言フ(「何ダ其態度ハ」ト
呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=52
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053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=53
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054・板野友造
○板野友造君(續) 極メテ此川崎君ノ答辯
ガ曖昧デアリ且ツ不深可デアル、不深切デ
アッタガ、川崎君ハ其者ニ對シテ金一封ヲ差
出シタ、靑年ニ一封ヲ差出シタ、所ガ靑年
ハ其態度ニ不滿ヲ抱イテ居ルカラ、直ニ之
ヲ突返シテ片岡政務次官ヲ訪問シタ、片岡
政務次官ハ此靑年カラ遂一ノコトヲ聽イ
テ、サウシテ色ヲ變ヘテ卓上ノ「ベル」ヲ押
シテ川崎君ヲ呼ンダ、川崎君ヲ呼ンデ暫ク
別室ニ密談ノ上、片岡政務次宮ハ此靑年ニ
對シ、モウ一遍川崎ノ所ニ行ケ、川崎ノ所
ニ能ク話ヲシテアルカラト言フノデ、此靑
年ガ再ビ川崎氏ト會ッタ際ニ、内務次官カラ
詳細ノ話ヲ聽イテ居ルト云フコトデ、川崎
君ガ之ニ對シテ多額ノ金ヲ渡シテ居リマ
ス、是バ何ノ爲デアルカ、私ハ此點ニ付テ
ハ詳細ナル告白書ヲ持ッテ居リマス、モウ
少シ詳細ニ書イテアリマスガ、此必要ハア
リマセヌ、内務官憲ハ何故ニ斯ノ如キ事ヲ
スルカ(拍手)斯ノ如キ事ヲスル原因ハ如
何綱紀肅正デアルドカ、官紀ノ肅正デアル
トカ言ッテ置キナガラ、此不態ハ何デアルカ、
此態度ハ何デアルカ(拍手)是ト此監督權ノ
關係ヲ聞イテ見ルト、何ノ爲ニ拂ノタノデア
ルカ、此際私共ハ川崎次官ハ此處ニ御出テナ
イやウデアリマスカラ、私ガロ〓マデニ申
シタ川崎次官當時ノ局長、此人ノ行動ニ付
テハ内務大臣カラ事實ナ有無。)此事實ガア
リトスレバ何故ニ左樣十行動ガアッタト
云フコトノ御答辯ヲ願ヒタイ、サウシデ片
岡商工大臣ニハ私ガ名前ヲ擧ゲテ御尋シ
タ點ニ付テ、御答ヲ願ヒマス吾々ハ內務
省以外ノ官〓ノ人〓、ソレカラ政黨員ノ方
方、是等ノ人ガ此問題ニ付テ相當醜關係ノ
アル事實モ、多少ハ私ハ調査ヲ致シテ結果
ヲ得テ居リマス(「發表セヨ」ト呼フ者アリ)
此處デ發表スルハ其機會デアリマセヌカ
ラ、私ハ適當ナル機會ニ於テ必ズ發表スル
ト云フコトヲ玆ニ申シテ置キマス(拍手)併
ナガラ今日ハ地方制度ノ改廢問題ニ付テ論
ズベキデ、此問題ヲ解クベキ場合デナイカ
ラ、吾々ハ之ヲ省略ズルダケデアル、アナタ
方ガイヤト仰シヤッテモ、吾々ハ之ヲ表明ス
ル機會ハ必ズアルト思]フ、唯。私共ハ川崎
前局長、片岡前次官、ソレカラ只今デハ丁
度此處ニ御出席ノ內務大臣、是等ノ人〓ガ
此問題ハ自治ノ監督ト云フコトヽ離ルベカラ
ザル關係ガアリマスカラ、私ハ今疑ヲ懷ク
點ニ付テ御說明ヲ願ヒタイト考ヘマス、私共
ハ地方自治ニ對スル監督權ヲ持ツ監督者、其
監督ヲ受クル者、自治ノ作用トシテ色ミノ仕
事ヲスル者、此等ノ者ガ一緒ニ成シテヤルコ
トニナレバ監督モ被監督モナイ、最早團子ニ
成ッテヤッテ居ルカラ上下交ヘ利ヲ征ル、斯
ウナッテハ監督モ地方自治モナイ、斯ノ如キハ
根本カラ自治ヲ破壞スルモノデアルト斯樣
ニ考ヘルノデアリマス、答辯如何ハ本案ノ
審議ノ上ニ於テ重大ノ關係ヲ持ツモノデ
尠クトモ監督ノ點ニ付テ吾々ハ傾重ノ考慮
ヲ拂ハナケレバナラヌト信ジマスカラ、以
上ノ點ニ付テ政府ノ極メテ明瞭ナル御答辯
ヲ煩シタイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=54
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055・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今板野君ノ御
尋ニ對シテ御答ヲ致シマス、私ハ內務政務次
官トシテ在職中ニ、松島遊廓問題ノ移轉ヲ取
極メタト云フガ如キ御言葉ガアッタノデア
リマスガ、私ガ內務省ニ入リマシテ在職中
ニ、松島問題ナドト云フコトヲ承ノタコト
ハナイノデアリマス(拍手)私ヨリ話シタコ
トモナケレバ、警保局長ガラ承ッタコトモ
ナシ、又內務大臣カラ永ッタコトモナイノ
デアリマス、果シテ其前ヨリ極ッテ居ッタカ
否ヤハ私ハ今申上ゲタ通リ、聞イタコトモ
アリマセヌカラ分リマセヌガ、私ハ在職中
ニ會テ其話ヲ聞イタコトガナイト云フコト
ハ明カデアリマス、ソレカラ或ル靑年ガ警
保局長ニ面會ヲ致シテ金ヲ包ンデ貰ノタ
ガ、其態度ガ氣ニ入ラナカッタ、而シテ引
返シテ政格次官ノ室ニ來テ、卽チ政務次官
タル私ガンレヲ詳シク聽イテ、直ニ「ベル」
ヲ押シテ警保局長ヲ呼ンデ別室デ何カ話ヲ
シテ、更ニ本人ニ向フテ今話ヲシテ置イタ
カラ〓一〓行シテ會ヘト、斯ウ云フコトヲ
言ッタト云フ御話デアル、事ノ御話ノ順序
い洵ニ眞シヤカニ間エマスガ、私ハ一向左
樣ナコトハ覺エモ何ニモナイ、私ハ實ハ內
務省ニ入リマシテ以來、面會ヲ求メラレル
場合ニ於テハ大〓ノ人ニハ會ウタノデア
リマス、先ヅ以テ人ガ入シテ來レバ、要點
ダケヲ聽イテ、其事柄ハ某ニ言ヘ、其事柄
ハ某ニ言ヘ或ハ文書課長ヲ呼ンデ、此入
ノ要旨ハ斯ウ云フ譯デアルカラ紹介ヲシロ
ト云フガ如キ指國ヲ致シテ、大〓少イ時ハ
十四五人、多イ時ハ四十人モ面會シテ其用
ヲ辨ジタ事ハアリマスガ、今御話ノ如キ事
ハ一向存ジマセヌ、餘リニ眞シヤカニ仰セ
ラレマスカラ、少シハ覺エガアリサウナモ
ノデアルガ、元來ガ遊廓〓題ガ私ノ頭ニ無
イノデス、斯樣ナ事實ハ私ノ在職中ニ-
(此時發言スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=55
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056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=56
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057・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君)(續) 私ノ在職中
ニ斯樣ナ事實ハ決シテゴザイマセヌ、(拍
手)若シアリトスレバ、其人間ト相對決シ
タラ、卽チ板野君ト共ニ相對決シタラ分
ルデアラウト思ヒマス、ソレカラ私ノ桃山
ノ邸宅ニ於テ十三年ノ八月ニ某ニ面會ヲシ
テ、松島遊廓ノ問題ハ程ナク發表スルコト
ニナッテ居ル、斯ウ云フ御話ガアッタノデアリ
マスガ、私ハ桃山ニ於テ斯樣ナ人ニ會クタ
覺ハナイ、是モ名前ハ言ウテモ宜イガト云
フ御話デアリマシタカラ、是ハ必ズ板野君
ハ其名前ハ御承知ノ筈デアリマス、然ラバ
ンレモ其人ト多勢ノ人ヲ置イテ、其前デ話
ヲシテ見タラハ分ルデアラウト思フ(拍手
私ハ本來左樣ナ隱然夕ル問ニ惡事ヲ企ラム
ト云フガ如キコトヲヤッタ覺エハナイノデ
アリマス、左樣ナ事ハ致サナクテモ、一身
ノ獨立ニ付テハ他人ノ御世話ヲ蒙ラヌノデ
アル、又金ヲ内務省中ニ於テ呉レタト云フ
御言葉モアリマシタガ、私ハ内務省ノ金ヲ
取扱フ權能ガナイノデアリマス、未ダ曾ア
内務省内ノ金ヲ取扱ッタ事モナケレバ、聞
イタ事モゴザイマセヌ、何ノ金ヲ渡スコト
ガ出來ルカ、若シ自分ノ「ポッケット」カラ出
シテ渡スナラバ格別デアリマスガ、是モ役
所ニ於テ左樣ナ事ヲ致シタ覺エハナイ、人
ヲ誣ユルモ亦甚シキ御質問デアリマス、根
本カラ無イコトデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=57
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058・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻內閣總理大臣
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=58
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059・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮大郞君) 板野君ノ御質
問ガアリマシタ故ニ、所謂松島遊廓問題
ト云フモノニ付テ私ノ承知シテ居ル所ヲ申
上ゲマス、所謂松島遊廓問題ト云フモノニ
付テ私ノ聞キマシタノハ中川大阪府知事
カラ松島遊廓ヲ何處カヘ移サウト云フ運動
ガアル、激シイ運動ガアッテ甚ダ困ノテ店ル
ト云ウテ參リマシタ、ソレニ對シテ私ハ、
大阪市ニ於テ遊廓ヲ移轉スル必要ガアルナ
ラバ、大阪市長ナリ、大阪ノ市會議員ナリ、
都市計畫委員ナリ、凡ツ大阪ノ事ヲ考ヘテ
居ル者ガ、遊廓ハ斯ウセナケレバナラヌト
言ッタナラバソシニハ耳ヲ傾ケテ聽イテ
宜シイノデアル、併シ其方面カラ何モ言ハ
ヌノニ、運動者ガアルカラト云テテ廓ノ
移轉ナドハ斷ジテ許シテハナラヌゾト斯ウ
申シマシタ(拍手)此私ノ訓用ニ付テ大阪府
知事ハ堅ク守ッテ彼ハ何人ノ運動ガアリマ
シテモ決シテ許可ハ致サナカッタノデアリマ
ス又許可ヲスルヤウナ豫約モ決シテ〓サ
ヌノデアリマス、同時ニ私ハ只今丁度御指
摘ニナリマシタ内務省ノ警保局長、內務省
ノ政務次官、是等ヲ集メテ、大阪府知乎カ
ラ斯樣ナ事ヲ聞イタ、是ハ何人ガ內務省ヘ
言ウテ來テモ決シテ取合ッテハナラヌゾト
申付ケタノデアリマス、是ガ行ハレテ、內
務省ニ於テハ此事件ニ付テハ決シテ耳ヲ傾
ケテ居ラナイノデアリマス(拍手)板野君ハ
何時カ何カ靑年ガ內務省へ來タト云フ御話
デアリマス、ソレハ私ハ曾テ間及ンデ居リ
マセズ、全然知リマセヌ、併シ只今片岡商
工大臣ガ内務政務次官デアリシ時ノ事デア
ルト仰シヤッタ爲ニ、自ラ此處ニ出テ事實
ノ全然無根ナルコトヲ言ハレタノデアリマ
ス、然ル以上ハ私モ亦曾テ間及バヌ事デ
アッテ、板野君ガ關係者デアルト言ハレタ
片岡商工大臣ガ、明ニ無根デアルト言ハル
ル以上ハ、其事ガ無根デアルコトハ私モ確
信シテ居ルノデアリマス、之ヲ以テ御答ト
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=59
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060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 板野友造君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=60
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061・板野友造
○板野友造君 簡單デアリマスカラ此席力
ラ申シマス(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=61
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062・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜粛ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=62
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063・板野友造
○〓野友造君(續) 詳細ノ事ハ-唯〓只
今總理大臣ガ當時ノ政務次官片岡君、ソシ
カラ警保局長川崎君、是等ニ向シテ遊廓問
題ニマデ手ヲ觸ルヽナト云フ意味ノ卽チ非
移轉ノ旨ヲ言明サレタ、斯ウ云フ御話デア
リマシタガ、ソレハ何時デアッタカト云フ
コトダケヲ承ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=63
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064・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 若槻内閣總理大臣
〔國務大臣若視禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=64
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065・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻體次郞君) 私ノ申シタ政
務次官ト云フノハ現任政務次官デアリマス、
而シテ其時日ガ何時デアリマシタカ、私共
ハサウ一々仕事ヲ致シマシタ日時マデハ覺
エテ居ラヌノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=65
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066・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ質疑ハ終局致
シマシタ、別ニ討論ノ通告ガアリマセヌカラ
直ニ採決致シマス、府縣制中改正法律案外六
件ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=66
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067・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=67
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068・作間耕逸
○作間耕逸君 七案ヲ一括シテ直ニ其二讀
會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=68
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069・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ七案ノ二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ致シマス
府縣制中改正法律案第二讀會
市制中改正法律案第二讀會
町村制中改正法律案第二讀會
北海道會法中改正法律案第二讀會
北海道地方費法中改正法律案第二讀會
水利組合法中改正法律案第二讀會
徵發令中郡及郡長ニ關スル規程ノ適用
ニ關スル法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=69
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070・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 此際府縣制中改正法
律案外四件ニ對スル少數意見ノ報告ヲ求メ
マイ、植原悅二郞君
少數者意見書
一府縣制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者薫見書及提出候也
大正十五年三月十二日
府縣制中改正法律
案委員少數意見者
赤間嘉之吉
外九名
〔別紙〕
(小字及-ハ少數意見)
府縣制中改正法律案中左ノ通修正ス
第一條中「郡市」ヲ「市町村」ニ攻ム
第三條第二項中「郡」ヲ削リ同條第三項中
「府縣郡市參事會及町村會」ヲ「府縣參事
會及市町村會」ニ改ム
第四條第二項中「郡市ノ區域一ヲ「市ノ區
域メハ從前郡長若ハ島司ノ管轄シタル區
域」ニ改メ同條第三項及第四項ヲ〓ル
第六條府縣内ノ市町村公民ハ府縣會議
員ノ選擧權及被選擧權ヲ有ス
陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者(未タ人
營セサル者及歸休下士官兵ヲ除ク)及
戰時若ハ事變ニ際シ召集中ノ者ハ選舉
權及被選擧權ヲ有セス兵籍ニ編人セラ
レタル學生生徒(勅令ヲ以テ定ムル者
ヲ除ク)及志願ニ依リ國民車ニ編人セ
ラレタル者亦同シ
市町村公民權停止中ノ者ハ選擧權及被
選舉權ヲ有セス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及吏員ハ其ノ
關係區域内ニ於テ被選舉權ヲ有セス
○府縣會議員ハ其ノ○其ノ
○府縣ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ○府縣ニ於
テ費用ヲ負擔スル事業ニ付府縣知事若
ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ
爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一
行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、取締
役監査役若ハ之ニ準スヘキ者、〓算人
タルコトヲ得ス
及支配人ハ其ノ府縣ニ於テ被選擧權ヲ
有セス
府縣ノ官吏及有給ノ吏員其ノ他ノ職員
ニシテ在職中ノ者ハ其ノ府縣ノ府縣會
議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
衆議院議員ハ府縣議員ト相兼ヌルコト
ヲ得ス
第二十三條選擧長ハ市長又ハ府縣知事発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=70
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071・町村長若ハ
○町村長若ハ ノ指定シタル○官吏ヲ以テ之ニ充ツ
選擧長ハ選擧會ニ關スル事務ヲ擔任ス
選擧會ハ市役所又ハ選擧長ノ指定シタ
ル場所ニ之ヲ開ク
選擧長ハ豫メ選舉會ノ場所及日時ヲ告
示スヘシ
第三十二條當選者左ニ揭クル事由ノ
一ニ該當スルトキハ三箇月以内ニ更ニ
選舉ヲ行フヘシ但シ第一一項ノ規定ニ依
リ更ニ選擧ヲ行フコトナクシテ當選者
ヲ定メ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
-當選ヲ辭シタルトキ
二數選擧區ニ於テ選擧ニ當リタル場
第三十一條
合ニ於テ前條第三項ノ規定ニ依リ一
ノ選擧區ノ選擧ニ應シタル爲他ノ選
舉區ニ於テ當選者タラサルニ至リタ
ルトキ
三第二十九條ノ二ノ規定ニ依リ當選
ヲ失ヒタルトキ
四死亡者ナルトキ
五選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セ
ラレ當選無效ト爲リタルトキ但シ同
一人ニ關シ前各號ノ事由ニ依ル選擧
又ハ補關選擧ノ告示ヲ爲シタル場合
ハ此ノ限ニ在ラス
六第三十四條ノ二ノ規定ニ依ル訴訟
ノ結果當選無效ト爲リタルトキ
前項ノ事由第三十一條第二項、第三項
若ハ第六項ノ規定ニ依ル期限前ニ生シ
タル場合ニ於テ第二十九條第一項但書
ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ者
アルトキ又ハ其ノ期限經過後ニ生シタ
ル場合ニ於テ第二十九條第二項ノ規定
ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシテ當選者
ト爲ラサリシ者アルトキハ直ニ選擧會
ヲ開キ其ノ者ノ中ニ就キ當選者ヲ定ム
ヘシ
前項ノ場合ニ於テ第二十九條第一項但
書ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ
者選擧ノ期日後ニ於テ被選舉權ヲ有セ
サルニ至リタルトキハ之ヲ當選者ト定
ムルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テハ第三
十七條第二項ノ規定ヲ準用ス
第一項ノ期間ハ第三十四條第七項ノ規
定ノ適用アル場合ニ於テハ選擧ヲ行フ
コトヲ得サル事由己ミタル日ノ翌日ヨ
リ之ヲ起算ス
第一項ノ事由議員ノ任期滿了前六箇月
以内ニ生シタルトキハ第一項ノ選舉ハ
之ヲ行ハス但シ議員ノ數其ノ定員ノ三
タ
分ノ二ニ滿チサルニ至リタルトキハ此
ノ限ニ在ラス
第四十四條中「內務大臣」ヲ「主務大臣」ニ改ム
第六十五條府縣參事會ハ府縣參事會員ヲ以
テ之ヲ組織ス
府縣參事會員ノ定數ハ府縣會議員ノ定數ノ
四分ノ一トス但シ一人未滿ノ端數ハ之ヲ算
入セス
○中「名譽職」ヲ「府縣」ニ改メ
第六十六條〓第五項中「每年」ヲ「隔年」ニ、
同條第六項中「後任者就任ノ前日マテ」ヲ
「後任者ノ就任スルニ至ルマテ」ニ改メ同
條ニ左ノ一項ヲ加フ
府縣
名參職參事會員ハ其ノ選擧ニ關スル第
八十二條第一項ノ處分確定シ又ハ判決
アルマテハ會議ニ參與スルノ權ヲ失バ
ス
第六十七條府縣參事會ハ府縣參事會員中ヨ
リ議長一人ヲ選擧スヘシ
議長ノ任期ハ府縣參事會員ノ任期ニ依ル
第六十九條中「名譽職」ヲ「府縣」ニ改ム
第七十條中「第四十五條」ノ下ニ「第四十八條」
ヲ、「第五十一條第三項」ノ下ニ「第五十二條第
五十三條」ヲ加へ「及第六十二條」ヲ「第六十二
條及第六十三條」ニ改ム
第七十一條中「名譽職」ヲ「府縣」ニ改ム
削除
第七十三條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
議長ハ其ノ職務ヲ行フ場合ニ於テモ之
カ爲參事會員トシテ議決ニ加ハルノ權
ヲ失ハス
第九十四條中「名譽職」ヲ「府縣」ニ改ム
少數者意見書
一市制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
大正十五年三月十二日
市制中改正法律案
委員少數意見者
赤間嘉之吉
外九名
〔別紙〕
(小字及-ハ少數意見)
市制中改正法律案中左ノ通修正ス
第十三條第二項中「三十人」ヲ「三十九人」ニ、
「三十六人」ヲ「四十三人」ニ、「四十人」ヲ「四十
人人」ニ、「四十四人」ヲ「五十三人」ニ、「四十八
人」ヲ「五十七人」ニ改メ第三項中「四人」ヲ
「五人」ニ改ム
第十八條選擧權ヲ有スル市公民ハ被選
擧權ヲ有ス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選舉權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及市ノ有給吏
員ハ其ノ關係區域内ニ於テ被選舉權ヲ
有セス
○市會議員ハ其ノ○其ノ
〓市ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ○市ニ於テ費
用ヲ負擔スル事業ニ付市長若ハ其ノ委任
ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲ス者及其
ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ行爲ヲ爲
ス法人ノ無限責任社員、取締役監査役
若ハ之ニ準スヘキ者、〓算人及支配人
タルコトヲ得ス
ハ其ノ市ニ於テ被選擧權ヲ有セス
市ノ有給ノ吏員〓員其ノ他ノ職員ニシ
テ在職中ノ者ハ其ノ市ノ市會議員ト相
兼ヌルコトヲ得ス
第十九條第二項中「總選擧ノ第一日」ヲ
「總選擧ノ日」ニ、同條第三項ヲ左ノ如ク
改ム
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲解任ヲ
要スル者アルトキハ市長抽籤シテ之ヲ
定ム但シ闕員アルトキハ其ノ闘員ヲ以
テ之ニ充ツヘシ
前項但書ノ場合ニ於テ闕員ノ數解任ヲ
タ
要スル者ノ數ニ滿チサルトキハ其ノ不
足ノ員數ニ付市長抽籤シテ解任スヘキ
者ヲ定メ關員ノ數解任ヲ要スル者ノ數
ヲ超ユルトキハ解任ヲ要スル者ニ充ツ
ヘキ闕員ハ最モ先ニ闕員ト爲リタル者
ヨリ順次之ニ充テ闕員ト爲リタル時同
シキトキハ市長抽籤シテ之ヲ定ム
議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲解任ヲ
要スル者アル場合ニ於テ選舉區アルト
キハ第十六條ノ市條例中ニ其ノ解任ヲ
要スル者ノ選擧區ヲ規定シ市長抽籤シ
テ之ヲ定ム但シ解任ヲ要スル者ノ選擧
區ニ闕員アリタルトキハ其ノ闕員ヲ以
テ之ニ充ツヘシ此ノ場合ニ於テハ前項
ノ例ニ依ル
第三十三條當選者左ニ掲クル事由ノ一
ニ該當スルトキハ三月以内ニ更ニ選擧
ヲ行フヘシ但シ第二項ノ規定ニ依リ更
ニ選擧ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ定
メ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
-當選ヲ辭シタルトキ
二數選擧區ニ於テ當選シタル場合ニ
於テ前條第三項ノ規定ニ依リ一ノ選
擧區ノ當選ニ應シ又ハ抽籤ニ依リ一
ノ選擧區ノ當選者ト定マリタル爲他
ノ選擧區ニ於テ當選者夕ラサルニ至
リタルトキ
三第三十條ノ二ノ規定ニ依リ當選ヲ
失ヒタルトキ
四死亡者ナルトキ
五選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セ
ラレ其ノ當選無效ト爲リタルトキ但
シ同一人ニ關シ前各號ノ事由ニ依ル
選擧又ハ補闕選擧ノ告示ヲ爲シタル
場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ事由前條第二項、第三項若ハ第五
項ノ規定ニ依ル期限前ニ生シタル場合
ニ於テ第三十條第一項但書ノ得票者ニ
シテ當選者ト爲ラサリシ者アルトキ又ハ
其ノ期限經過後ニ生シタル場合ニ於テ
第三十條第二項ノ規定ノ適用ヲ受ケタ
ル得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ者
アルトキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ
中ニ就キ當選者ヲ定ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ第三十條第一項但書
ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ者
選擧ノ期日後ニ於テ被選擧權ヲ有セサ
ルニ至リタルトキハ之ヲ當選者ト定ム
ルコトヲ得ス
第二項ノ場合ニ於テハ市長ハ豫メ選擧
會ノ場所及日時ヲ告用スヘシ
第一項ノ期間ハ第三十六條第八項ノ規
定ノ適用アル場合ニ於テハ選擧ヲ行フ
コトヲ得サル事由已ミタル日ノ翌日ヨ
リ之ヲ起算ス
第一項ノ事由議員ノ任期滿了前六月以
内ニ生シタルトキハ第一項ノ選擧ハ之
ヲ行ハス但シ議員ノ數其ノ定數ノ三分
タ
ノ二ニ滿チサルニ至リタルトキハ此ノ
限ニ在ラス
市會議員
第三十九條ノ二勅令ヲ以テ指定スル市
○會議員
(第六條ノ市ノ區〓ヲ含ム)ノ市會議員
(又ハ區會議員)ノ選舉ニ付テハ府縣制
第十三條ノ二、第十三條ノ三、第二十
九條ノ三及第三十四條ノ二ノ規定ヲ準
用ス此ノ場合ニ於テハ第二十三條第三
項及第五項、第二十五條第五項及第七
項第二十五條ノ三、第二十八條、第
二十九條、第三十三條第一項竝第三十
六條第一項ノ規定ニ拘ラス勅令ヲ以テ
特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
市會議員(第六條ノ市ノ區
第三十九條ノ三前條ノ規定ニ依ル選擧
會議員ヲ含ム)ノ選擧
ニ付テハ衆議院議員選擧法第十章及第
十一章竝第百四十條第二項及第百四十
二條ノ規定ヲ準用ス但シ議員候補者一
人ニ付定ムヘキ選擧事務所ノ數、選擧
委員及選擧事務員ノ數竝選舉運動ノ費
用ノ額ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
前條ノ規定ニ依ル選擧ヲ除クノ外市會
議員(又ハ第六條ノ市ノ區ノ區會議員)
ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選擧法第九
十一條、第九十二條、第九十八條、第
九十九條第二項、第百條及第百四十二
條ノ規定ヲ準用ス
第六十三條第二項中「三日以內出席ヲ停
止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スル規定
○開會
ヲ設クルコトヲ得」ヲ「〇五日以内出席ヲ
停止スル規定ヲ設クルコトヲ得」、ニ改ム
第一項中「六人」ヲ「八人」ニ、「十
第六十五條第四項ヲ左ノ如ク改ム
二人」ヲ「十五人」ニ改メ第四項ヲ左ノ如ク改
ム
名譽職參事會員ハ隔年之ヲ選擧スヘシ
名譽職參事會員ハ後任者ノ就任スルニ
至ル迄在任ス市會議員ノ任期滿了シタ
ルトキ亦同シ
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
名譽職參事會員ハ其ノ選舉ニ關シ第九
十條ノ處分確定シ又ハ判決アル迄ハ會議
ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第七十三條市長ハ有給トス
市ハ市條例ヲ以テ市長ヲ名譽職ト爲スコト
ヲ得
市長ノ任期ハ四年トス
市長ハ選擧權ヲ有スル市公民之ヲ選擧ス
名譽職市長ハ其ノ市公民中選擧權ヲ有スル
者ニ限ル
市長ノ選擧ニ付テハ市會議員ノ選舉ニ關ス
ル規定ヲ準用ス
第七十六條中「市長」ヲ「有給市長」ニ改ム
○市長
第七十八條第一項中「o有給市參與及助
「有給市長」ニ、第二項中「市長」ヲ「有
役」ヲ削ル
給市長」ニ改ム
第百四條中「名譽職市參與」ヲ「名譽職市長、名
譽職市參與」ニ改ム
第百五條中「市長」ヲ「有給市長」ニ改ム
少數者意見書
一町村制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
大正十五年三月十二日
町村制中改正法律
案委員少數意見者
赤間嘉之吉
外九名
〔別紙」
(小字及-ハ少數意見)
町村制中改正法律案中左ノ通修正ス
○第二項中「八人」ヲ「十二人」ニ、「十二
第十一條○第四項中「內務大臣」ヲ「府縣知
人」ヲ「十八人」ニ、「十八人」ヲ「二十三人」ニ、
事」ニ改ム
「二十四人」ヲ「三十一人」ニ「三十人」ヲ「三十
九人」ニ、
第十五條選擧權ヲ有スル町村公民ハ被
選擧權ヲ有ス
在職ノ檢事、警察官吏及收稅官吏ハ被
選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及町村ノ有給
吏員ハ其ノ關係區域內ニ於テ被選擧權
ヲ有セス
。町村會議員ハ其ノ○其ノ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=71
-
072・町村ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ
○町村ニ對シ請負ヲ爲シ又ハ ○町村ニ於
テ費用ヲ負擔スル事業ニ付町村長若ハ
其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ爲
ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一ノ
行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、取締
役監査役若ハ之ニ準スヘキ者、〓算人及
タルコトヲ得ス
支配人ハ其ノ町付ニ於テ被選擧權ヲ有
セス
町村ノ有給ノ吏員〓員其ノ他ノ職員ニ
シテ在職中ノ者ハ其ノ町村ノ町村會議
員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第十六條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項但書ノ場合ニ於テ闕員ノ數解任ヲ
タ
要スル者ノ數ニ滿チサルトキハ其ノ
不足ノ員數ニ付町村長抽籤シテ解任ス
ヘキ者ヲ定メ關員ノ數解任ヲ要スル者
ノ數ヲ超ユルトキハ解任ヲ要スル者ニ
充ツヘキ闘員ハ最モ先ニ關員ト爲リタ
ル者ヨリ順次之ニ充テ關員ト爲リタル時
同シキトキハ町村長抽籤シテ之ヲ定ム
第三十條當選者左ニ掲クル事由ノ一ニ
該當スルトキハ三月以內ニ更ニ選舉ヲ
行フヘシ但シ第二項ノ規定ニ依リ更ニ
選擧ヲ行フコトナクシテ當選者ヲ定メ
得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
-當選ヲ辭シタルトキ
二第二十七條ノ二ノ規定ニ依リ當選
ヲ失ヒタルトキ
三死亡者ナルトキ
四選擧ニ關スル犯罪ニ依リ刑ニ處セ
ラレ其ノ當選無效ト爲リタルトキ但
シ同一人ニ關シ前各號ノ事由ニ依ル
選擧又ハ補關選擧ノ告市ヲ爲シタル
場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ事由前條第二項若ハ第四項ノ規
定ニ依ル期限前ニ生シタル場合ニ於テ
第二十七條第一項但書ノ得票者ニシテ
當選者ト爲ラサリシ者アルトキ又ハ其
ノ期限經過後ニ生シタル場合ニ於テ第
二十七條第二項ノ規定ノ適用ヲ受ケタ
ル得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ者
アルトキハ直ニ選舉會ヲ開キ其ノ者ノ
中ニ就キ當選者ヲ定ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ第二十七條第一項但
書ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラサリシ
者選擧ノ期日後ニ於テ被選擧權ヲ有セ
サルニ至リタルトキハ之ヲ當選者ト定
ムルコトヲ得ス
第二項ノ場合ニ於テハ町村長ハ豫メ選
擧會ノ場所及日時ヲルロ用スヘシ
第一項ノ期間ハ第三十三條第八項ノ規
定ノ適用アル場合ニ於テハ選擧ヲ行フ
コトヲ得サル事由已ミタル日ノ翌日ヨ
リ之ヲ起算ス
第一項ノ事由議員ノ任期滿了前六月以
內ニ生シタルトキハ第一項ノ選擧ハ之
ヲ行ハス但シ議員ノ數其ノ定數ノ三分
タ
ノ二ニ滿チサルニ至リタルトキハ此ノ
限ニ在ラス
第四十五條町村會ハ議員中ヨリ議長、副議
長各一人ヲ選擧スヘシ
議長、副議長ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長及
副議長共ニ故障アルトキハ年長ノ議員議長
ノ職務ヲ代理ス年齡同シキトキハ抽籤ヲ以
テ之ヲ定ム
第五十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
議長ハ會議錄ヲ添へ會議ノ結果ヲ町村長ニ
報告スヘシ
第五十九條第二項中「三日以內出席ヲ停
止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スル規定
○開會
ヲ設クルコトヲ得」ヲ「〇五日以内出席ヲ
停止スル規定ヲ設クルコトヲ得」ニ改ム
第六十三條第一項ヲ左ノ如ク、第二項中「前
項ノ例ニ依ル」ヲ「町村會ニ於テ之ヲ選擧ス」
ニ改ム
町村長ハ選擧權ヲ有スル町村公民之ヲ選擧
ス
町村長ノ選擧ニ付テハ町村會議員選擧ニ關
スル規定ヲ準用ス
第二項
第六十四條第一項中「又ハ助役ヲ定メ若
ハ選擧シ」ヲ、同條第二項中「町村長又ハ」
ヲ削リ同條第三項ヲ左ノ如ク改ム
有給町村長及有給助役ハ其ノ退職セム
トスル日前三十日目迄ニ申立ツルニ非
サレハ任期中退職スルコトヲ得ス但シ
町村會ノ承認ヲ得タルトキハ此ノ限ニ
在ラス
第百三十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
町村組合内ノ町村カ市ト爲リタル場合ニ於
テハ其ノ市ハ從前ノ町村ノ權利義務ヲ繼承
ス
少數者意見書
一北海道會法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
大正十五年三月十二日
北海道會法中改正法
律案委員少數意見者
赤間嘉之吉
外九名
〔別紙〕
(小字及-ハ少數意見)
北海道會法中改正法律案中左ノ通修正ス
第五條在職ノ檢事、警察官吏及收稅官
吏ハ被選擧權ヲ有セス
選擧事務ニ關係アル官吏及吏員ハ其ノ
關係區域內ニ於テ被選舉權ヲ有セス
○北海道會議員ハ
〓北海道廳長官若ハ北海道地方費ニ對シ
請負ヲ爲シ又ハ北海道地方費ニ於テ費
用ヲ負擔スル事業ニ付北海道廳長官若
ハ其ノ委任ヲ受ケタル者ニ對シ請負ヲ
爲ス者及其ノ支配人又ハ主トシテ同一
ノ行爲ヲ爲ス法人ノ無限責任社員、取
締役監査役若ハ之ニ準スヘキ者、〓算
タルコトヲ得ス
人及支配人ハ被選舉權ヲ有セス
北海道廳ノ官吏及北海道地方費ノ有給
ノ吏員其ノ他ノ職員ニシテ在職中ノ者
ハ北海道會議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
衆議院議員ハ北海迫會議員ト相兼ヌル
コトヲ得ス
第九條削除
第十四條府縣制第五條、第八條、第十
三條乃至第二十二條、第二十三條ノ二
乃至第四十條、第四十二條乃至第六十
四條、第六十六條、第六十七條、第六
十九條乃至第七十四條、第八十二條乃
至第八十七條(第百二十七條乃至第百
二十九條、第百三十一條、第百三十五
條第百三十六條、第百四十二條及第
百四十四條ノ規定ハ之ヲ準用ス但シ其
ノ第七十三條中第六十八條第二トアル
ハ本法第十條第二號トス
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=72
-
073・植原悦二郎
○植原悅二郞君 玆ニ私ハ委員長ノ報告ニ
對シ、私共ノ異ナル所見ヲ述べ、修正意見
ヲ陳述致シテ諸君ノ御考慮ヲ煩シタイト思ヒ
マス(拍手)政府提出ニ係ル所ノ只今問題ト
ナッテ居リマスル府縣制、市制、町村制、
北海道會法ニ付キマシテハ衆議院議員ノ
選擧法ニ於キマシテ、所謂普通選擧ヲ採用
致シタ以上ハ、當然起ルベキ歸結トシテ現レ
テ參ッタモノデアリマス、併ナガラ斯ル地
方自治機關ニ對シマシテ選擧權ノ大擴張ヲ
行ヒ、根本的ノ整理ヲ致スニ付キマシテハ
此時代ニ適應スル所ノ極メテ徹底的ノ改正
ヲ試ミナケレバナラナイト、私共ハ確信致
シテ居ルノデアリマス(拍手)然ルニ玆ニ提
案サレタモノハ、衆議院議員ノ選擧法ニ於
ケル所ノ選擧權、被選擧權ノ擴張、ソレニ
伴フ所ノ選擧方法ノ改正ヲ致シタト云フノ
ミニ止マリマシテ、殆ド私共ノ期待スル所
ノ自治權ノ擴張、自治機關ノ整理ト云フコ
トニ付テハ殆ド手ヲ染メテ居ラナイト斷
言致スモ誤クテ居ラナイト私ハ確信致シテ
居ル者デアリマス(拍手)私共ハ如何ナル政
策ヲ立テマスルニモ、又如何ナル法律ヲ取
扱フニ付キマシテモ、一定ノ主義主張ヲ有
シ、確乎タル信念ニ依シテ之ヲ決行スル者
デアリマス(拍手)而シテ私共ガ豫算ノ問題、
或ハ稅制ノ問題、關稅ノ問題ニ付キマシテ
モ、政府及與黨諸君ト見解ヲ異ニシ、行政
財政ノ整理ヲ致スニ對シテハ、地方竝ニ中
央ヲ竝行セシメナケレバナラナイ、殊ニ立
憲政治ノ根幹ハ地方自治團體デアルガ故ニ、
財政ニ於テモ、權能ニ於テモ、其機關ノ運
用ニ於テモ、此ノ徹底的國民ノ要求ニ適應
スル所ノ整理ヲ致スコトハ目下ノ急務ナリ
ト確信シテ居ルノデアリマス(拍手)私共ノ
總テノ修正ハ此主張ニ依ッテ現レテ居ルコ
トヲ御承知ヲ願ヒタイ、併ナガラ此場合ニ
諸君ノ御諒解ヲ願シテ置カナケレバナラナ
イコトハ只今問題トナノテ居リマスル所
ノ諸法案ハ、極メテ廣汎多岐ニ亙ルモノデ
アリマス、ソレ故ニ私共ノ修正ヲ以テ致シ
テモ、私共ノ主義主張ヲ徹底的ニ實現セシ
ムルダケノ此場合ニ時日ヲ得ナイガ爲ニ、
現在ノ狀態ニ於キマシテ選擧權、被選擧權
ノ擴張ヲスルニ付キ、出來得ル限リ私共ノ
主義主張ニ適スルヤウニ致シタダケノ改正
デアルト云フコトノ御水知ヲ願ッテ置キタ
イト思ヒマス(拍手)而シテ第一ニ私ガ申上
ゲマスルコトハ、府縣制、次ニ市制、町村
制、最後ニ北海道會法等ニ關シテ修正ノ意見
ヲ申上ゲルコトヲ御諒水ヲ願ッテ置キタイ
ト思ヒマス、府縣制ニ付キマシテハ私共
現在ノ府縣知事ヲ公選ニ致サナケレバナラ
ナイト云フ主張ヲ有シテ居ル者デアリマス
(拍手)現在ノ府縣制ハ地方白治團體デアル
ト申シテ居リマスケレドモ、御水知ノ如ク
府縣知事ハ純然タル所ノ官吏デアリマス、
而シテ府縣會ハ御水知ノ知ク府縣民ノ意思ヲ
代表シ其意思ノ在ル所ヲ縣治ニ運用スル
爲ニ處スル所ノ議決機關ト申スヨリハ、寧
ロ府縣知事ノ諮問機關デアルガ如キ形式ヲ
有シテ居ルノデアリマス(拍手)故ニ私共ハ
是等ニ對シテモ府縣制ナルモノガ眞ニ府縣
民ノ自治機關デアルベキ修正マデニ至ラナ
ケレバ、滿足致ス者デハアリマセヌ(拍手)
ケレドモ先刻申上ゲタ通リ、眼ノ前ニ受ケ
テ居リマスル所ノ法案ヲ以テ、此程度ニ修
正ヲ試ミルコトハ不可能デアリマス故ニ
現在ノ事情ニ於テ許ス限リノ、私共ノ主張
ヲ徹底セシムル修正ヲ爲シタト云フコトヲ
御水知ヲ願ヒタイ(拍手)第一ノ私共ノ府縣
制ニ對スル修正ニ付キマシテハ郡ニ關ス
ル問題デアリマス、此度政府ガ郡役所ヲ廢
止スルニ付キマシテ、郡ト云フ行政區劃ハ
無クナリマス、ソレ故ニ府縣制ニ於ケル所
ノ郡市町村トアリマス文字ヲ除リマシテ、
市町村ト改メルト云フ趣意デ現行法ヲ修正
ナサレタ箇條デアリマス、郡役所ノ廢止ハ
私共之ヲ認メテ居ル、併ナガラ郡役所ヲ廢
止致シマシテモ、地理的郡ハ私共永久ニ存
スルモノト確信致シテ居リマス(拍手)1
ミナラズ一府縣ニ於キマシテ、若シ郡ト云
フ字ヲ、郡役所ヲ廢止シタガ爲ニ全部取除
イテシマウト致シマシタナラバ一縣下內
ニ於テ隨分同ジ名ノ町村ガ存在致シテ居リ
マー、是等ヲ如何ニスルカ、又戶籍ノ上ニ
此郡ト云フ字ヲ取除イタナラバ之ヲ如何ニ
スルカ、郡農會ハ如何ニ取扱フ積リデアル
カト政府當局ニ質問致シテ見マスト、政府
當局ハ郡役所ヲ廢シテモ郡農會ハ認メテ置
〃而シテ戶籍ノ上デハ郡ト云フ字ヲ用ヰ
ナケレバナルマイ、而シテ一縣下ニ同名ナ
町村ノアルコトヲ認メテ居ル、故ニ郡ト云
フ字ヲ全部削ッテシマッタナラバ不便モア
ラウケレドモ、其不便ガアッタ後ニ、政府
ハ然ルベキ所ノ處置ヲ執ルト、斯樣ナ無貴
任ナ谷辯デアリマス(拍手)私共ハ多數ノ國
民ノ利害ヲ考ヘル場合ニ、厄介ナ事ガ起ノ
テ來タナラバ其時ニ處置ヲスルト云フヤウ
ナコトヲ、責任アル政治家トシテ申サレル
コトデナイト確信致シテ居リマス(拍手)私
共同志ガ之ヲ質問シ夕時ニハ政府當局ハ
定メテ此郡ノ問題ハ行政區劃ハ無クスケ
レドモ、勅令カ何カニ依ノテ相當ノ途ヲ講
ズルデアラウト云フ答辯ヲ期待致シテ居リ
マシタノデアルニ拘ラズ、政府當局ハ差支
ノ生ジタ時ニ何等カノ處置ヲ取ルト云
フヤウナ、甚ダ無責任ナル御答辯ヲ爲サッタ
ノデアリマス、ソレ故ニ私共ハ此事實ニ鑑
ミマシテ、府縣制ノ上ニ現在存在シテ居ル
所ノ地理的郡ト云フ字ヲ殘シテ置キマシテ
モ、更ニ法律上ニ差支ナイ、更ニ取扱上ニ
差支ナイ、更ニ行政ノ行使ニ於テ支障ヲ招
クモノデナイト確信〓シテ居リマスガ故
ニ、是ハ現行法通リニ維持シヤウト云フ第
一ノ修正デアリマス、(拍手)次ニ私共ガ修
正致ス箇條ハ洵ニ微々タル點デアリマス、
斯樣ナコトヲ皆樣方ニ申上ゲルコトモ如何
カト思ヒマスケレドモ、此法律ガ如何ニ官
僚式ニ、如何ニ御役人ガ小細工ヲ致シテ提
出シタモノデアルカト云フコトヲ諸君ニ立
證スル上ニ於テ、極メテ便宜ナル修正デア
リマスルガ故ニ、些々夕ル事デアリマスガ、
御〓聽ヲ頰シタイ思ヒマス、ソレハ此法案
ニ於キマシテ、從來總テノ法文ノ上ニ滿
タサル」ト云フ文字ヲ使テテルノデアリマ
ス、是ガ多年我國ノ法文ノ上ニ用ヰ來ラレ
タル所ノ慣例的ノ用語デアリマス、然ルニ
此際政府ハ此諸法案ヲ改正爲サルニ付キ
マシテ、此「滿タサルート云フ用語ヲ(学)
サル」ト云フ用語ニ御改メニナッタノデアリ
やっ、此政府當局ノ說明ハ「滿タサル」ト云
フヨリハ「滿チサル」ト云フ方ガ言語上正確
デアルカラト云フ御答辯ノヤウニ承リマシ
タ、私共何レノ言葉ガ日本ノ國語上正確デ
アルカト云フコトヲ、此場合ニ論議スル者
デハアリマセヌ、ノミナラズ、政府當局ガ
「滿チサル」ト云フ言葉ガ正シイト云フナラ
バソレヲ御使用爲サルニ對シテ私共ハ異
議ハナイ、サラバ現在ノ府縣制ヲ改正スル
條項モ、現行法ニ存在致シテ居ル所モ、總テ
ノ法文ニ對シテ用語ヲ一ニシナケレバ差支
ノ出來ルト云フコトハ、諸君御異存ナカラ
ウト思ヒマス(拍手)從來官僚政治家ハ何
カノ願書ヲ出スニ付キマシテモ、「其」ト云
フ下ニ「ノ」ヲ付ケロ、「是」ト云フ下ニ「レ」
ヲ付ケテハイケナイト云フヤウナ、用語ニ
付テ隨分人民ニ對シテ迷感千萬ノ事ヲ掛ケ
テ居ルコトパ諸君御承知デアリマセウ(拍
手)而シテ政府當局ハ現在ノ法律ヲ改正ス
ルニ付キマシテ、改正スル項ノミニ對シテ
「滿チサル」ト云フ字ヲ用ヰ、存在シテ居ル
所ノ現行法、其他ノ部分ニ於テハ相變ラズ
「滿タサル」ト云フ文字ヲ使シテ居ル、如何
ニ政府ノ法案ガ其調査ニ於テ不徹底デアリ、
其取扱ニ於テ粗漏杜撰デアルカト云フコト
ハ此一事ヲ見テモ明瞭デアラウト私共ハ
確信致シテ居リマス、併ナガラ左樣ナコト
ヲ非難攻擊スル爲ニ之ヲ申スノデハアリマ
セヌ、私共ハ一ツノ法律ニ對シテハ總テノ
用語ヲ統一シ、整理シ正シク致サナケレバ
ナラナイト云フ意味ニ於テ、政府ノ改正ノ
箇條ニ限ッテ「滿チサル」ト云フ文字ヲ使シテ
居ルノヲ、現行法通リニ「滿タサル」ト云フ
ヤウニ修正致スノデアリマス、次ニ私共ノ
修正ヲ企テマシタコトハ、府縣制ニ對シテ
極メテ根本的ノ一ツノ事項デアリマス、御
承知ノ如ク政府提出、卽チ委員長報告ノ府
縣制ニ依リマスト、選擧長ハ市長又ハ府縣
知事ノ指定シタル所ノ官吏ヲ以テ之ニ充ツ
ルト云フコトデアリマス、我ガ國ハ普通選
舉ヲ實行シヤウト致シテ居リマス、既ニ其
緒ニ就テ居リマス、今ヤ府縣制、市制、町
村制ニ於テ普通選擧ヲ實行スル場合ニ於テ、
出來得ルダケ總テノ事ハ人民デ致サナケレ
バナラナイノデアリマス、然ルニ選擧長ヲ
市長又ハ府縣知事ノ指定シタル官吏ニ致ス
ト云フガ如キニ付テハ、依然トシテ官僚政
治ノ維持ニ關スル規定デアルト私共ハ信ジ
マスガ故ニ、選擧長ハ市長又ハ府縣知事ノ
指定シタル所ノ町村長ト致スコトニ原則ヲ
定メ、萬一僻陬ナ、極メテ特殊ナ町村ニ限ノ
テ、町村長ヲ以テ充テヽ不便ナリトスル場
合ニハ、官吏ヲ以テ之ニ充ツルモ差支ナイ
ト云フヤウニ修正ヲ加ヘタノデアリマス、
(拍手)次ニ私共ノ修正ヲ致ス箇條ハ從來
ノ法律ニ依リマスト、府縣會ガ公益ノ事ニ
關シテ其意見書ヲ中央政府ニ提出スル場合
ニ於キマシテハ、內務大臣竝ニ之ヲ主務大
臣ニ提出シナケレバナラナイヤウナ規定ニ
ナッテ居ルノデアリマス、故ニ私共ハ之ヲ
主務大臣ニ限ルコトニ致シタノデアリマス、
ト云フノハ努メテ事務ヲ簡捷ニシ、人民ノ
便利ヲ圖リ、地方ノ自治權ノ運用ヲ圓滿ナ
ラシムルノ趣意ニ出デタルモノデアリマ
ス、其次ノ私共ノ修正ハ極メテ重要ナル事
デアリマス、私共既ニ申述べタ通リ、現在
ノ府縣會ノ權能竝ニ府縣參事會ノ權能ヲ以
テ、地方自治機關ノ運用ヲ全カラシメ得ル
モノトハ確信致シテ居リマセヌ、併ナガラ
現在ノ此問題ヲ取扱フニ致シテハ私共ノ
希望スルガ如クニ修正ヲ試ムルコトハ出來
ナイ、故ニ出來得ルダケ私共ハ府縣會ノ權
能ヲ擴張スル意味ニ於キマシテ、從來ノ參
事會員ニ於キマシテハ純官吏タル知事ト
高等官二名ガ參事會員ニ加ハルコトノ規定
ヲ有シテ居ルノデアリマス、御承知ノ如ク
知事ヤ高等官ハ行政官、執行官ヂアリマス、
參事會竝ニ縣會ナルモノハ人民ヲ代表スル
決議機關デアルト云フコトニ付テハ、御
存ナイモノト思ヒマス、此決議機關デアル
所ノモノヽ中ニ、府縣知事竝ニ高等官ガ列
席致シ、其採決ニ加ハルト云フガ如キコト
ハ、極メテ官僚式ノ事ニナルノミナラズ、
地方自治團體ノ發達ヲ阻止スル所以ナリト
確信致シマスガ故ニ、私共ハ府縣參事會員
ノ中カラ此知事竝ニ高等官二名ヲ削除シ、
參事會員ハ全部縣會議員ヲ以テ之ニ充テル
コトニ定メタノデゴザイマス、而シテ此規
定ヲ改メマシタ其附帶トシテ起リマス所ノ
事ハ當然府縣參事會員ノ數デアリマス、
御水知ノ如ク今囘ノ政府提出ノ案ニ依リマ
スルト云フト、府縣參事會ノ任期ハ從來一
年デアリマシタノヲ、二年ニ仲長スルコト
ニ規定サレテ居リマス、ソレニ對シテハ私
共異存ゴザイマセヌ、ソレ故ニ府縣參事會
員ヲ府縣會議員ノ數ノ四分ノ一ニ定メマシ
タナラバ、洵ニ二年交代ニシテ其運用ヲ圓
滑ナラシムルノミナラズ、府縣會ニ於テ參
事會員ヲ定ムルニ於テモ頗ル便宜ナリト信
ジマシテ、參事會員ノ數ヲ府縣會議員ノ定
數ノ四分ノ一ト定ムルコトニ致シタノデアリ
マス(拍手)知事竝ニ二名ノ高等官ガ府縣參
事會員カラ除カレルコトニナッタノデアリ
マスカラ、參事會員ニ「名譽職參事會員」ト
云フ特殊ノ名ヲ用ヰル必要ガアリマセヌカ
ラ、「名譽職」ト云フ字ヲ總テノ關係項目ニ
付テ削除スルコトニ致シタコトモ御承知ヲ
願ッテ置キタイト思ヒマス、次ニ府縣參事
會ニ於キマシテハ、是迄知事ガ其議長ダッタ
ノデアリマスケレドモ、私共提案ニ依リマ
スルト云フト、府縣參事會員ハ全部府縣會
議員ノ中ヨリ選出スノデアリマスルガ故ニ、
參事會ニ於ケル議長モ參事會ニ於テ互選ト
致シ、其任期ハ參事會員ノ任期ト同一ナルコ
トニ致スコトニ定メタコトモ御永知ヲ願〓
テ置キタイノデアリマス(拍手)尙ホ之ニ關
聯致シマシテ、從來參事會ノ議長ハ知事デ
アリマシタガ故ニ、參事會ノ議事ヤ經過ヲ
知事ニ報告スル必要ハアリマセヌデシタケ
レドモ、今度私共ノ提案ニ依リマスル參事
會ノ組織ニナリマスルト云フト、定吏ガ之
ニ加ハルコトガ出來ナイノデアリマスカ
ラ、其議事ノ經過ヲ知事ニ報告スベキ必要
ガアルト思ヒマシテ、府縣參事會ノ組織變
更ニ伴フ此必要ナル條項モ加ヘタコトヲ御
承知ヲ願ヒタイノデアリマス、以上ハ私共
ノ府縣制度ニ對スル改正ノ骨子デアリマ
ス總テ是等ハ私共ノ主張スル所ノ、將來
出來得ベクンバ知事ノ公選ヲモ致スト云フ
趣意ヲ以チマシテ、努メテ府縣會ノ權限ヲ
擴張シ、官僚式ノ府縣會ヲ一掃シテ、人民
本位ノ府縣會ニスル趣意ニ出デタルモノデ
アルコトヲ御承知ヲ願ヒタイノデアリマス
(拍手「人民々々ト言フナ」ト呼フ者アリ)
次ニ市制ニ對スル所ノ改止ヲ申上ゲマス、
私共市制ニ於キマシテ、所謂衆議院ノ普通
選擧ト略〓同一ニ、こ一切ノ納稅資格ヲ撤廢
致シ、滿二十五歲以上ノ男子デ二箇年以上
同一地ニ居住スル者ニ選擧權、被選擧權ヲ
與ヘルコトニナリマシテ、非常ニ選舉民ノ
數ガ增シマスルガ故ニ、其選擧民ニ依ッテ
選出サレル所ノ代表者モ、總テノ階級ヲ網
羅スル者ヲ選出出來ルヤウニ整ヘナケレバ
ナラナイト思ヒマシテ、市會議員ノ定數ヲ
或ル程度ニ增員スルコトニ致シタノデアリ
マス、大體ニ於テ極メテ小サナ都市ニ於テ
ハ市會議員ノ數ヲ現在ノ數ニ對シテ三割
ノ增加、大都市ニ於テハ大體ニ於テ二割、
詳細ノ事ハ諸君ノ御手許ニ回付致シタル所
ノ私共ノ修正案ニ依ッテ御了承ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、次ニ私共市制ニ於テ修正ヲ加
ヘマシタ所ノ箇條ハ、議員候補者制度ヲ認
ムル所ノ都市ニ於テ、勅令ヲ以テ或ル特
殊ノ市ニ於テ差別的待遇ヲスルコトハ
現在ノ日本ノ都市ノ狀態ニ應ジテ極メテ
不適當ナルモノト確信致シマスルガ故
ニ、是ハ總テノ都市ニ對シテ平等ナル取
扱ヲ爲スコトニ定メタノデゴザイマス
次ニ私共府縣參事會ニ於テ相當ノ變革ヲ加
ヘマシタ如ク、市ノ參事會員ニ於キマシテ
モ其數ヲ改メマシテ、普通ノ都市ニ於テハ
現在名譽職參事會員ガ六人デアリマスルノ
ヲ、之ヲ八人ト致シ、勅令デ定メタル所ノ
都市ニ付キマシテハ十一一人ノ定員ヲ十五人
ニ增加スルコトニ規定致シタノデアリマ
ス、其次ニ修正ヲ試ミマシタコトハ、市制
若クハ會議規則ニ違反シタル議員ニ對シマ
シテ、市會ニ於テ議決ニ依ッテ其出席ヲ停
止スル所ノ規定ガアリマス、從來ニ於テハ
之ヲ三日ト定メテアリマス、政府提出委員
長報告ノ案ニ依リマシテハ、之ヲ五日ト規
定シテ居リマスルケレドモ、是ハ諸君御永
知ノ如ク、市會ガ五日繼續シテ開カレルト
云フコトハ、日本全國ノ都市ニ於テ殆ド見
ルコトノ出來ナイ所ノ事實デアリマス、此
五日ノ停止ノ規定ハ名アッテ實ナキモノデア
ル故ニ之ヲ意義アラシムルモノトスルガ
爲ニ、曆日五日デアリマスモノヲ、開會五
日ニ致シマシタ、是ハ市制ニ付テモ、町村
制ニ付テモ同一デアルコトヲ此場合御諒承
ヲ願ッテ置キタイト思ヒマス、最後ニ私共市
制ニ對シマシマシテ根本的ニ改正ヲ試ミタ
一項ノアルコトハ、諸君竝ニ國民カラ十分
ニ御了解ヲ得タイト思フノデアリマスTe
手)ンレハ市長ヲ選擧權ヲ有スル所ノ公民
ニ依シテ選擧スル規定ヲ定メタコトデアリ
マス(拍手)御承知ノ如ク我國ニ於テ比較的
府縣制、市制、町村制ノ中デ自治ノ發達致
シテ居ルノハ、何ト申シテモ都市デアリマ
ス而シテ都市ハ郡部ト餘程違ヒマシテ、
總テノ文明ニ於テ一步先キニ進ムモノデア
ルガ故ニ、之ニ對シテ時代ニ伴フ所ノ相當
ノ施設ヲナスト云フコトハ、當然ノコトデ
アリマス、然ルニ現在ノ都市ニ於テハ總
テノ市長ハ全部間接選擧デアリマス、言葉
ヲ換ヘテ中セバ、市會議員ノ選擧デアル故
ニ市長ニナリマスル者ハ多クノ場合ニ官吏
ノ古手カ、或ハ市會ニ於テ多數ヲ制スル所
ノ議員ノ情實因緣ニ依ッテ推薦サレタモノ
ガ、市長ノ椅子ヲ占ムルト云フコトニナッテ
居ルノデアリマス(拍手)恐ラク東京市程全
體ノ市ノ總テニ於テ腐敗致シテ居ル所ハ世
界稀ナルモノデアリマセウガ、其根本ヲ質
セバ何處ニアルカト云ヘバ、市長ノ間接選
舉ニ因由スルノデアリマス、市會議員ガ多
數デ連動シ、情實因緣ヲ以テ擔ギ上ゲタモ
ノデアリマスルガ故ニ、如何ニ是ガ手腕ヲ
有スルモノデモ、思フ通リニ其總テノ施設
ヲ實行スルコトガ出來ナイ、又市會議員ト
市長トノ間ニ色と情實因緣ガアリマシテ、
總テノ都市ノ腐敗ヲ誘致シテ居ルコトハ、
諸君御承知ノ如クデアリマス(拍手)現在ノ
改正ヲ試ムルニ付キマシテ、政府當局ガ之ニ
一指ヲ染メザルト云フヤウナコトハ、實ニ時
代ヲ知ラザルモ甚シキモノト申サナケレバナ
ラナイ(拍手)私共ハ玆ニ市長ハ常ニ選擧權ヲ
有スル公民ノ公選タラシムルコトニ規定ヲ
設ケタノデアリマス、シレト同時ニモウ一ツ
私共市長ニ關シ、現在ノ都市ノ自治機關ノ
革正ノ爲ニ必要ナル條項トシテ定メマシタ
コトハ、現在ノ市長ハ總テ有給デアリマス
名譽職ニ之ヲ致セバ隨分地方ノ名望家ナド
ニ於テ立派ナ市長ヲ得ルコトモ出來ルノデ
アリマスケレドモ、有給ト云フ規定ガアルガ
爲ニ、多クハ軍人ヤ官吏ノ古手ヲ市長ニ推
薦シナケレバナラナイヤウナ狀態ニ陷ノテ
居ルノデアリマス、故ニ此弊害ヲ改メル爲
ニ、私共ハ市長ハ有給ヲ原則トスルケレド
モ、其市ノ條例ニ依テ名譽職市長モ戴クコ
トノ出來ル規定ヲ定メタノデアリマス(拍
手)次ニ中述べタイコトハ、町村制ノ改正
デアリマス、御承知ノ如ク町村制ニ於テモ
此度ハ非常ニ選舉權ガ擴張サレタノデアリ
せっ、而シテ從來ノ選擧人ハ多少ナリトモ
納稅資格ト云フ制限ヲ有シテ居リマシタ
ガ、今度ノ選擧法ハ人間本位ノ選擧法デ從
來ノ選與民ト今回夥シク增加致シマシタル
所ノ選擧民トハ根本ニ於テ多少其素質ヲ
異ニシテ居ルモノガアルノデアリマス、故
ニ此場合ニ町村ナゾニ於テ非常ナル急激ナ
ル變化ヲ試ルコトハ動モスレバ町村自治
ヲ危殆ナラシムル虞ガアルト信ジマスルガ
故ニ、選擧權ヲ一方デ擴張スルト共ニ、
方ニ於テ町村會議ノ數ヲ增シマシテ、此問
ニ總テノ階級ノ人ガ町村會ニ町村ヲ代表セ
シムベキ機會ノ得ラレル規定ヲ設ケタノデ
アリマス、此町村會議員ノ數ノ增加ハ極メテ
小サナ町村ハ五割、中程ノ町村ハ現在ノ議
員ニ對シテ三割、大キナ所ハ市ト同一三割
ト定メタコトヲ御承知ヲ願ヒタイノデアリ
せっ、次ニ私共町村制ニ於テ改正ヲ試ミタ
コトハ一ツノ町村制ニ於ケル所ノ根本的
改革デアリマス、御承知ノ如ク從來ノ町村
會ノ議長ハ、町村長之ニ當ノテ居ノタノデア
リマス、併ナガラ町村長ハ一ノ行政官、町
村會ハ決議機關デアリマス、此町村長タル
所ノ執行機關ニ職ヲ置ク者ガ、決議機關ナ
ル所ノ町村會ノ議長ヲ兼ルコトハ村治ヲ圓
滿ナラシメ、且ツ町村長ヲシテ十分ナル所
ノ村治ノ爲ニ手腕ヲ振ハセルニ支障アルモ
ノト認メマシテ、私共町村會ノ議長、副議
長ハ町村會議員中ヨリ選擧ヲ致シ、其任期
ハ町村會ノ議員ト同一任期ニ依ルコトノ規
定ニ致シタノデアリマス、而シテ市制ト同
一ニ私共町村制ニ對シテモ根本的ノ重要ナ
ル改正ヲ試ミマシタコトハ、町村長ヲ選擧
權ヲ有スル所ノ公民ノ公選トスルコトニ規
定シタノデアリマス(拍手)御水知ノ如ク現
行法ニ於キマシテハ、町村長ハ町村會議員ノ
間接選擧デアリマス、今日普通選擧ヲ實行
シナケレバナラヌ、民意ヲ暢達致サナケレ
バナラヌ、地方自治機關ノ權限擴張ヲ圖ラ
ナケレバナラスト云フ場合ニ於キマシテ、
町村長ヲ公選ニ致スコトハ當然ナリト確信
致シテ居ルノデアリマス(拍手)最後ニ私共
町村制ニ對シテ修正ヲ加ヘマシタコトハ、
主トシテ町村組合ニ關スルコトデアリマ
ス、御承知ノ如ク或町村ガ市ニ編入サレタ
場合ニ於キマシテ、從前ノ町村デ組合ヲ組
織シテ居リマシタ場合ニ、之ヲ市ニ引繼グしき
所ノ方法ガナイノデアリマス、是ガ爲ニ現
在沼津ナゾニ於キマシテハ非常ナ困難ヲ
來シテ居ルト云フコトハ諸君御水知ノ通リ
デアリマス、政府當局ニ對シマシテ此事ニ付
キマシテ質問致シマシタ所ガ、政府當局デ
モ誠ニサウ云フ場合ニハ困ッタモノデアル、
併ナガラ其取扱ニ對シテ適當ナル法規ヲ定
ムルコトガ困難ナルガ故ニ、事實非常ニ困
難ナ事情ガアルト永知致シテ居シテモ、此點
ニ付テ手ヲ觸レナカッタト云フコトデアリ
マシタカラ、私共ハ是ニ適當ニ應用出來ル
所ノ一項ヲ定メマシテ、第百三十六條ノ規
定ニ斯樣ナ項目ヲ加ヘタノデアリマス「町
村組合內ノ町村ガ市トナリタル場合ニ於テ
ハ其市ハ從前ノ町村ノ椿利義務ヲ繼承ス」
此條項ガ加ハリマスレバ、將來町村ガ市
ニ併合サレタル場合ニ、從前ノ諸町村カ有
シテ居リマシタ所ノ町村組合ノ權利義務ニ
付キマシテモ、總テノ遺漏ナク市ニ引繼グ
コトガ出來ルヤウニナッテ、總テノ點ニ於テ
人民ノ有利ニナルモノト信ジマシテ、此項
ヲ加ヘタノデアリマス(拍手)次ニ北海逗會
法中改正案ニ對シテ、私共修正ヲ加ヘタ所
ノ一項ガアルノデアリマス、此問題ハ北海
道ノ町村ニ關スル問題デアリマスルケレド
モ、諸君御承知ノ如ク、北海道ノ町村制ナ
ルモノハ勅令デ定メラレテアリマスルガ故
ニ、議會トシテハ此修正ヲ希望致シテモ、
ソレニ手ヲ觸ルヽ所ノ催能ヲ持タナイノデ
アリマス、而シテ北海道ニ於キマシテモ、
總テノ文化ガ發達〓シ、今日ノ政府ノ提案
ニ依リマシテモ、戶長役場等ノ費用ニ對シ
テ廢止スルノ規定ガ設ケラレテ居リマス、
私共ハ此以外ニ現在ノ一一級町村ノ村長、書
記ノ給料、旅費ト云フ項目ヲ、北海道ノ地
方費法中改正法律案カラ取除カウト、斯樣
ニ修正案ヲ提出スルノデアリマス、此結果
ハドウナルカト言ヘバ此法律ガ成立シマ
スレバ、政府ハ自ラ勅令ニ對シテ改正ヲ試
ミナケレバナリマセヌ、北海道ノ人民モ非
常ニ進步致シ、北海道ノ自治モ相當ニ發達
致シテ居リマス其場合ニ於キマシテ、北海
道ノ二級町村長ヲ、北海道廳デ定メル所
ノ官吏ニ致シテ置クト云フヤウナコトハ
時代ニ適セザルモノデアリマスルガ故ニ、
此改正ヲ試ミ、二級町村長ト雖モ、選擧ニ
依ッテ人民ノ間カラ之ヲ定メルコトニ致シ
マシテ、若シ費用ヲ補助シナケレバナラナ
イ必要ノアルヤウナ町村ニ付キマシテハ、
現行ノ北海道地方費法ニ依リマシテ、地方
費トシテ之ヲ援助スレバ支障ハナイ、北海
道ニ於キマシテモ、內地ト同樣ニ出來ルダ
ケ自治權ノ擴張ヲ圖リ、自治機關ノ整正ヲ
俟タナケレバナラナイ、其一步ト致シテ此
改正ヲ試ミタノデアリマス(拍手)私共ハ北
海道會法全體ヲ改正致サナケレバナラナイ
ト云フ、强キ信念ヲ有シテ居ルモノデアリ
マス、現行ノ北海道會法ハ是ハ普通ノ人
ガ見マシテモ了解ハ出來マセヌ、或場合ニ
於テハ府縣制ヲ準用シ、或場合ニ於テハ市
制ヲ準用シ、或場合ニ於テハ町村制ヲ準用
スルト云フヤウナコトデ、尋常一樣ナコト
デハ北海道ノ會法ハ了解出來ナイヤウニ組
立ラレテ居ルノデアリマス、私共ハ何ト致
シテモ此根本的改正ヲ致サナケレバナラナ
イト確信ヲ致シテ居リマスルケレドモ、此
場合之ヲ實現スルコトガ不可能デアリマス
ルガ故ニ私共ノ主張ノ一端ヲ實現セシム
ル爲ニ、只今ノ修正ヲ試ミタコトヲ御承知
ヲ願ヒタイノデアリマス(拍手)以上ハ私共
ノ修正ノ大體ノ項目デアリマス、其他ノ事
ニ付キマシテハ何レ又同僚ヨリ詳シク申
上ゲルコトガアラウト思ヒマス、何卒私共
ノ主義主張ノアル所、私共ノ修正ノ意思ノ
アル所ヲ御諒本下サッテ、深甚ナル御考慮ヲ
煩シタイト思フモノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=73
-
074・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今植原君ニ依ノテ
說明セラレマシタ赤間嘉之吉君外九名御提
出ノ少數意見、之ニ對シテ御賛成ガアリマ
スカ
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=74
-
075・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 成規ノ賛成アリト認
メマス、仍テ此少數意見ハ何レモ修正案
トシテ成立致シマシタ、次ニ土屋〓三郞君
ヨリ成規ノ賛成ヲ得テ修正案ヲ提出サレマ
シタ、卽チ市制中改正法律案、町村制中改
正法律案、北海道會法中改正法律案、此三
案ニ對シテ修正案ガ提出セラレマシタ、其
趣旨辯明ヲ許シマス-土屋〓三郞君
〔土屋〓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=75
-
076・土屋清三郎
○土屋〓二郞君 私ハ只今議題トナッテ居
ル各案ニ對シマシテ、大體ニ於テ委員會修
正可決ノ案ニ同意ヲ表スル者デアリマスル
ガ、其中特ニ市制、町村制及北海道會法中
改正法律案ニ對ンテ、各、こ-ノ修正意見ヲ
提出致シタイノデアリマス、卽チ市制第九
條町村制第七條及北海道會法第三條、是
等各條ノ「帝國臣民タル年齡二十五年以上
ノ男子」云々ノ次ニ「及世帶主タル女子」ノ
八字ヲ挿人致シタイノデアリマス、卽チ二
十五年以上ノ男子ノ外、世帶主タル女子ニ
對シテモ公民權ヲ與ヘントスルノデアリマ
シテ、其目的トスル所ハ將來女子ニ對シ
テ、男子ト同ジ條件ノ下ニ參政權ヲ與フル
其道程トシテ、先ヅ自治制ニ參與スル端ヲ
開キ、漸ヲ逐ウテ男子專制ノ不條理ナル政
治組織ヲ改メ、男女ノ別ナク國民均シク政
治ニ參與スルノ狀態ニ到達セシメントスル
モノデアリマス、政治上啞ノ如ク沈默ヲ餘
儀ナクセラレテ居ル所ノ可憐ナル女子ノ爲
ニ、私如キ微力ナル者ノロヲ藉ンテ、諸君
ニ愬ヘナケレバナラヌ、弱キ者ノ爲ニ暫ク
御〓聽ヲ願ヒタイノデアリマス、元來婦人
參政權問題ハ普通選擧ト共ニ當然解決セ
ラルベキ問題デアリマシテ、普通選舉ガ實
施セラルヽ今日、婦人ニ尙ホ參政權ヲ與ヘ
ナイト云フ主張ハ如何ニシテモ立タナイ
ノデアリマス、苟モ政治ガ自由、公平及正
義ノ基礎觀念ニ立脚致シマスル以上、唯
性ヲ異ニスルノ故ヲ以テ、國民トシテ同等
ナル權利ヲ附與スルニ反對スルガ如キハ、
啻ニ政治正義ニ反スルノミナラズ、人トシ
テノ生物學的本質ヲ無視シタルモノト云ハ
ナケレバナラヌノデアリマス、婦人ニ參政
權ヲ與フルノ緊切ナル理由ハ幾多アリマス
ル、併ナガラ今一々之ヲ羅列スルコトハ致
シマセヌ、特ニ考慮ヲ要シマスルノハ、婦
人問題ノ解決デアリマス、御永知ノ通り婦
人問題ハ、是又二大社會問題トセラレテ居ル
所ノ勞働問題ニ比べマシテ、思想問題トシテ
モ一層深刻デアリ、社會問題ト致シマシテ
モ一層切實デアルノデアリマス、是ガ正當
ナル解決ハ洵ニ急務中ノ急務ト申サナケレ
バナリマセヌ、蓋シ婦人ハ生理的ニ姙娠、
育兒、ソレ等種族保存ノ大任ヲ負ノテ居ル
ノデアリマシテ、隨テ國家ハ次代國民ノ繁
榮ヲ圖ルガ爲ニ、何ヲ差措イテモ母性ノ保
護ニ努メナケレバナラナイノデアリマス、
然ルニモ拘ラズ、文明ノ餘弊ハ男女ヲ驅,
テ均シク結婚難、生活難ニ陷ラシメ、爲
ニ女子ハ家ヲ外ニ、其屏弱ナル體驅ヲ提ゲ
テ劣等ナル待遇ノ下ニ男子ト其生存ヲ爭ハ
ナケレバナラヌト云フ狀態ニ陷ッテ居ルノ
デアリマス、一家貧困ノ犠牲トナッテ、
ラレ行ク憐レナル者モ、亦實ニ女デアリマ
ス、若シ之ヲ此儘ニ致シテ留キマスルナラ
バ、婦人ハ生理的ニモ精神的ニモ、漸ク母
性トシテノ健全ナル特質ヲ失ヒマシテ、延
イテ後繼國民ニ不良ノ影響ヲ及ボスベキコ
トハ、燎トシテ火ヲ睹ルヨリモ明カデアリ
やっ、而シテ之ヲ解決スル所ノ最善ノ手段
ハ、先以テ婦人ニ參政權ヲ、真へ、其深刻ニ
シテ切實ナル主張ヲ、政治ノ核心ニ向テ
注入セシムルコトニ在ルト信ズルノデア
リマス併ナガラ私ハ此場合婦人ニ對シ
テ、卽時ニ男子ト全然同一條件ノ下ニ、參
政權ヲ附與スベシト主張スルモノデハアリ
マセヌ、其道程ニ達スル順序トシテ、前申
述ベマシタ如ク、市町村仕民ノ中、先ヅ世
帶主タル女子ニ對シテ公民權ヲ與ヘ、漸ヲ
逐フテ其終極ニ到達セントスルモノデアリ
マリ、蓋シ今回ノ改正案ハ原則トシテ、二
十五歲以上ノ男子ハ總テ公民權ヲ獲得スル
コトガ出來マスケレドモ、女子ハ如何ナル
條件ノ下ニ於テモ、絕對ニ之ヲ拒絕セラレ
テ居ルノデアリマス、其結果ト致シマシテ
假ニ甲ノ家ハ五人ノ家族デアリマシテ、何
レモ二十五歲以上ノ男子デアリマスレバ總
テ公民權ヲ獲得致シマスルニ拘ラズ、乙ノ隣
家ハ十人ノ家族ガアルニ拘ラズ、二十五歳
以上ノ男子ヲ有シナイガ爲ニ、一人モ公民
權ヲ得ルコトガ出來ナイノデアリマス、而
モ是等ノ世帶主ノ中ニハ戰爭其他ノ公ノ事
ノ爲ニ、最愛ノ夫ヲ失ヒマシテ、困苦缺乏
ト鬪ヒツヽ遺子ヲ育テヽ國家ニ御奉公ヲス
ルコトガ、セメテ亡キ人ノ志ヲ繼ク所以デ
アルトシテ働イテ居ル所ノ、尊敬スペキ女
性ガ少クナイノデアリマス、而モ是等ノ人
ニ對シテスラモ、女性ナルノ故ヲ以テ、男
子ニ比シテ劣等ナル差別待遇ヲ致シ、公民
權スラ與ヘナイト云フコトハ何タル不公
平、無情ナル所ノ政治組織デアリマセウ、
是レ私ガ委員會ニ於テ少數意見スラ成立シ
ナカッタニ拘ラズ、敢テ玆ニ修正意見ヲ提
出致シタ所以デアリマス、要スルニ政治ノ
目的ハ國民各個ノ總テノ力ヲ漏レナク結束
シテ、之ヲ國家ノ大目的ニ向テ集中セシ
ムルニ在ルト思フノデアリマス、此見地
カラ致シマシテ國民ノ中其一半タル、女子
ヲ度外セル男子專制ノ政治組織ハ全ク自
由、公平正義ノ觀念ニ背反シ、萬機公論ニ
決スル五箇條ノ大精神ニ反スルコトハ勿論
デアリマス、而シテ私ノ修正案ハ將來ニ
亙ッテ、此政治上ノ缺陷ヲ矯正スル爲ニ、
纔ニ其第一步ニ過ギナイノデアリマス、只
今婦人參政權運動ニ熱心セラレテ居ル一部
ノ人々、坂本眞琴女史ヨリ受取ッタ所ノ文
書ニ依リマスレバ(天聲、拍手起ル)此議場
ニ於テ此婦人公民權ニ熱心ニ贊成セラレテ
居ル所ノ諸君ガ、非常ニ多數アルノデアリ
マっ、又最近市内ノ演說會ニ於テ熱心ニ此
事ヲ主張セラレ、本日ハ是非共此修正案ヲ
提出スルト、公約セラレタ方モ少クナイト
承ッテ居ルノデアリマス、是等ノ諸君ヨリハ
私ノ案ハ如何ニモ手緩シトシテ、御叱リヲ
蒙ルカモ知レマセヌケレドモ、案ノ通過ヲ
圖ランガ爲ニ、已ムヲ得ザルモノト御諒察
ヲ願ヒタイノデアリマス、萬一ニモ今囘ノ
案ガ此儘通過致サナイト云フコトニナリマ
スレバ、同ジク市町村ノ住民デアリナガラ
全國ニ於テ九十七万二千ノ婦人世帶主、及
其家族タル五百餘万ノモノハ、己ノ住ム所
ノ町村ノ自治政ヨリ取殘サレマシテ、何等
發言權ヲ有シナイ氣ノ毒ナル立場ニ至ルノ
デアリマス(拍手)セメテ弱キ婦人-國民
中取殘サレタル半分ノ婦人ノ爲ニ、何卒廣
大海ノ如キ度量ヲ以テ、本修正案ニ御賛成
アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=76
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077・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依シテ其發言ヲ許シマス、由
谷義治君
〔由谷義治君登壇〕
〔粕谷議長、議長席ヲ退キ小泉副議長
代リ著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=77
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078・由谷義治
○由谷義治君 政府提出案ニ係リマス所謂
地方制度ノ改正案ニ對シマシテ、私ハ委員
長報告ノ總テニ贊成ヲ致シ、政友會ニ依シテ
御提出ニナリマシタ修正意見ニ對シ、反對
ノ意ヲ表スルモノデアリマス、成ベク簡單
ニ出來ルダケ簡潔ニ、私ノ反對意見ヲ述べ
タイト思フノデアリマスルガ、事重大デア
リマスルカラ多少ノ時間ヲ御割キ下サル
コトハ豫メ御考慮ヲ願テ置キタイト思フ
ノデアリマス、私ハ委員長報告ノ條項ニ對
シマシテハ、成ベク多ク言及セズシテ、主
トシテ討論デアリマスルガ故ニ、政友會御
提出ノ箇條ニ對シテ反對ノ理由ヲ此所ニ續
ケテ行キタイト思フノデアリマス、政友會
ノ御修正ノ御意見ハ府縣制、市町村制、北
海道地方費負擔法等ニ關シマシテ約十五、
六箇條ニナッテ居ルヤウデアリマス、府縣
制ニ於テ第一ノ問題ハ郡ニ關スル御意見
デアリマス、植原君ノ御說明ヲ承リマスル
1、郡ト云フモノハ依然トシテ府縣制ノ
上ニ於キマシテ認ムル必要ガアルト云フ御
議論デアリマス、併ナガラ今日郡其モノヽ
內容、組織ヲ考フル時ニ、第一府縣制ノ第
一條ニ於テハ是ハ府縣ノ區域ヲ認メテ居ル
規定デアリマス、郡ガ既ニ郡制廢止ノ結果
自治團體タル性質ヲ失ヒ、更ニ郡役所ノ廢
止ニ伴ヒマシテ、行政區域タル性質ヲ失ッ
テ居ル以上ハ、單ニ地理的名稱トシテ殘ル
ノミデアリマスカラ、特ニ此府縣制第一條
ニ於テ郡ヲ以テ表示スルハ適當デナイト考
ヘルノデアリマス、是ハ府縣ノ區劃ハ、其
府縣内ノ市町村ニ依シテ明ニシテ十分デア
ルノデアリマス、殊ニ政友會ノ御意見中、
府縣制ノ第三條中ノ郡ニ關スル規定デアリ
マス、是ハ郡ノ境界變更ノ場合デアリマス、
前段ニ申シマシタ通リ、郡ガ其廢止ニ依ッテ
其自治權ヲ失ヒ、更ニ郡役所廢止ニ依テ
行政區畫タル郡ハ消滅スルノデアリマスカ
ラ、今後郡其モノヽ境界變更ノ如キハ是
ハ郡其モノニ依ッテハ何等決定シ得ナイノ
デアリマス、隨テ此點カラ見テモ、御修正
ノ意見ニ對シテハ斷ジテ賛成出來ナイノデ
アリマス、更ニ府縣制ノ第四條、卽チ府縣
會議員ノ選擧ノ區劃ヲ定メル規定ニ對シマ
シテモ、私共ハ既ニ郡制廢止サレ、郡役所
ガ廢止サレタ今日ニ於テハ今回ノ改正案
ノ通リ「從前郡長若ハ島司ノ管轄シタル
區域」ト云フ明確ナル言葉ニ依シテ之ヲ規
定スルハ最モ時宜ニ適シタル方法ナリト
シテ、結局政友會ノ御意見ニ對シテ反對セ
ザルヲ得ナイノデアリマス、殊ニ私ガ政友
會ノ御修正ノ意見ヲ具サニ拜見シテ、衷心
カラ遺憾ニ堪ヘナイ點ハ政友會ノ諸君ハ
此郡ノ存續問題ヲ熱心ニ主張サレテ居ル、
然ルニ唯、單ニ修正ノ箇所ハ府縣制ヲ通
ジテ第一條、第三條、第四條ニ止マッテ居
ル今囘ノ改正案ニ現レテ居ル第百四十五
條ノ矢張、郡ニ對スル規定ニ對シマシテハ
政府案ヲ御認メニナッテ居ルト云フ其矛盾
ノ點デアリマス、是ハ政友會ノ諸君ノ御手
落デアルカモ知レマセヌケレドモ、提案者
ノ說明ノ熱心ナルニ比較致シマシテ、〓
政友會諸君ノ修正意見ガ最後マデ徹底シ得
ナカッタ憾ミニ對シテ、遺憾ヲ懷ク者デア
リマス、政府ハ將來或ハ戶籍關係、或ハ地
籍ノ關係、或ハ郵便關係、若クハ兵事ノ關
係ニ依ッテ、現在ノ郡其モノヲ殘ス必要ガ
アルナラバ、其必要ニ遭遇シタ場合ニ於テ
適當ニ之ヲヤルト聲明シテ居リマスルカ
ラ、私共ハ之ニ對シテ絕對安心ヲ表シテ宜イ
ト思フノデアリマス、第二ノ點ハ府縣會議
員ノ選擧ニ於ケル選擧長ノ問題デアリマス
修正意見ハ政府ノ原案ニ對シマシテ、町村
長ヲ原則トシテ選擧長ニスルト云フ御主張
デアリマス、私ハ此御主張ニ對シマシテモ
遺憾ナガラ反對ノ意ヲ表セザルヲ得ナイ、
選舉區ハ御示知ノ通リ從來ノ郡ノ區域デア
リマスガ故ニ、其間ニハ數箇町村乃至數十
箇町村ガアルノデアリマス此數箇乃至數
十箇ノ町村、某町村中カラ選擧長ヲ物色ス
ルト云フコトハ是ハ或ハ黨派ノ關係ア
リ、隨テ府縣知事ガ之ヲ指定スルニ當リマ
シテ、困難ナ結果ヲ招來致シマスシ、又不
公平ナル結果モ生ズルコトナキニ非ズト思
フノデアリマス、且ツ選擧長ハ其職權ニ於
テハ投票ノ效力ヲ決定シ、當選者ヲ定メル
等、極メテ重要ナル職務権限ヲ有スル者デ
アリマスカラ、之ヲ多數ノ町村長ノ中ヨリ
指定シタル一町村長ニ全權ヲ委ネルト云フ
コトハ、決シテ圓滿ニ事務ヲ運行スルモノ
ニ非ズト思フノデアリマス、特ニ將來ノ選
擧ニ於テ私ハ層此憂ヲ深クスル者デアリ
やっ、寧口官吏ヲ指定シテ、サウシテ各町
村ニ對シテ何等ノ利害關係ノナイ、極メテ
公平ナル見地ニ於テ選擧事務ヲ鞅掌セシム
ルト云フコトガ、實際上適當デアリマシテ、
唯此選擧長ノ規定ニ於テ町村長ヲ任命シ
ナイカラ、ソレニ依シテ自治權ノ侵犯デア
ルト云フ如キ議論ハ是ハ決シテ實際ニ應
ジナイコトデアルト思フノデアリマス、第
三ハ改正案中ノ「滿チサル」ト云フ字ヲ滿
タサル」ト修正スル御意見デアリマス、植
原君モ此問題ハ些々タル問題デアルケレド
モ、官僚精神ノ發露デアルガ故ニ反對スル
ト云フヤウナ御意見デアリマシタガ、吾々
ハ日本人デアリマス、日本人ガ日本ノ法律
ヲ作ルノニ、日本文典ノ正確ナル字句ニ依
ルコトハ是ハ當然デアリマス、滿ト云フ字
ハ「滿ツル」ト云フ自動詞デアッテ、サウシ
テ上二段沽用デアリマスカラ、斷ジテ「滿
タサル」ト云フ字句ハ出ナイノデアリマス、
今迄之ヲ政府ガ慣用シテ來テ居クタノハ是
ハ誤リデアリマス、誤リニ氣ガ付イタ以上
ハ今後之ヲ訂正スルト云フ意味ニ於テ、吾
吾ハ之ヲ熱心ニ支持シタイノデアリマス、私
ハ甚タ老婆心デアリマスガ、政友會ノ諸君
ハセメテ中學校ノ生徒ノ使フ位ナ日本文典
ノ〓科書ノ御精讀アランコトヲ希望スルノ
デアリマス、次ニ意見書ノ問題デアリマス
御修正ノ意見ハ、現在ノ法律ニ於テ府縣會
ガ其府縣ノ公益ニ關スルノ事件ニ付、內務
大臣ニ意見書ヲ出ストアリマスノヲ、主務
大臣ニ出スト致シタイト云フ御意見デアリ
マス、併ナガラ實際ニ於テ吾々ガ考フベキ
コトハ府縣行政ニ關シテハ全般的ニ內務
大臣ガ其監督者デアリマス、而シテ府縣會ニ
於テ提案スル所ノ公益ニ關スル意見書ハ
卽チ府縣ノ公益ニ關スル問題ニ關聯スルコ
トデアリマスガ故ニ、之ヲ總テ內務大臣ニ
提出スルコトヲ以テ最モ適當ナリト認ムル
ノデアリマス、且ツ今日政府ニ於テハ、實
際ノ運行ニ於テモ此內務大臣ハ府縣ノ意見
書ニ現レタル所ノ關係事務ニ付テハ、各主
務省ニ之ヲ囘覽シテ、サウシテ府縣會ノ意
見ハ十分ニ主務大臣ニ傳達シテ居ルノデア
リマス、强テ此際之ヲ主務大臣全體ニ對シ
テ直接意見書ヲ送ルヤウニ修正スルコトノ
實益ヲ認メナイノデアリマス、又若シ此御
主張ガ正確デアルナラバ、私ハ政友會ノ諸
君ガ何ガ故ニ府縣會ノ意見書ノ範圍ノミノ
修正ヲ御考ニナッテ、之ヲ市制、町村制全體
ニ御用ヰニナラナカッタカ、先刻承ッテ居リ
マスルト、植原君ノ御意見ニ依ルト、所
謂町村長公選論ノ如キ、確ニ時代ノ魁ヲ爲
スモノデアルト云フ非常ナ御勇氣デアリマ
ス、左樣ナ御勇氣ヲ今日市制ナリ、町村ナ
リニ御用キニナルナラバ、此意見書提出ノ
範圍モ、獨リ府縣會ノ範圍ニ之ヲ限ラズシ
テ、廣イ市會、町村會ニ御主張ニナッテコ
ツ、初メテ意見ノ徹底ガ期セラレルト思フ
ノデアリマス、私ハ此點ニ對シマシテモ、
政友會ノ提出ノ理由ガ、修正ノ箇所ガ所謂
府縣ニ重クシテ、市町村ニ輕ク、其間一貫
セル統一ナキコトヲ衷·心カラ遺憾トスル者
デアリマス(拍手)第五ハ府縣參事會ノ組織
及定員ノ變更デアリマス、之ニ對シマシテモ、
非常ニ力强キ賛成ノ御意見ガアッタヤウデ
アリマスガ、私共ハ現在ノ府縣參事會ノ組
織ニ關シマシテハ、遺憾ナガラ御修正ノ意
見トハ反對ノ意思ヲ持ツ者デアリマス、
蓋シ只今ノ法律、卽チ此議會ニ於テ未ダ
改正セラレザル所ノ現行ノ府縣制ニ於キ
マシテ、吾々ノ不都合ヲ感ズル點ハ官
吏ノ參事會員ガ二名參加シ、且ツ府縣知
事ガ府縣參事會ノ議長トシテ、採決權ト
投票權ト二ツヲ持シテ居ル點デアリマス、隨
テ官吏參事會員ヲ此際除クト云フコトハ
自治權擴張ノ趣旨ニ於テ適當デアリマスル
シ、且ツ府縣知事ガ府縣參事會ノ議長トシ
テ投票採決ノ二ツノ權限ヲ有スルコトハ
不適當デアリマスカラ、特別委員會ハ、多
數ノ意見ヲ以テ官吏參事會員二名ヲ廢シ、
而シテ府縣知事ハ議長トシテ參事會ノ構成
ニ加ハルノミデアッテ、サウシテ採決權バ
カリヲ與フルコトニ決定シタノデアリマ
ス、元來府縣知事ヲ參事會ノ議長トスルコ
トハ、第一ハ府縣參事會其モノガ懇談的性
質ヲ有スル、參事會ノ議事ヲシテ圓滑ニ進
行セシメ得ル便宜カラ申シマシテモ、且又
一面府縣參事會ノ權限中ニ、或ハ訴願ノ採
決デアルトカ、或ハ異議ノ決定デアルトカ、
多數ノ國政事務アルガ故ニ、府縣知事ガ之
ニ議長トシテ參加スルトハ、相當ノ理由ガ
アルノデアリマス、今直ニ政友會ノ御主張
ノ通リ、全然名譽職主義ニ改ムルコトハ、
却テ實際上ノ庶務ノ實行運用ニ於テ、不便
不利ヲ感ズルコト少カラザルコトヽ思フノ
デアリマス、例ヘバ今ノ府縣參事會ニ於テ
ハ府縣ノ知事ガ議長デアリマスガ故ニ、國
政ニ關スル色とノ庶務事項ヲ或ハ縣屬ヲ以
テ、或ハ屬官ヲ以テ處理スルコトガ出來マ
スケレドモ、若シ全然名譽職主義ニ依ル時
ハ、是等ノモノヲ全部府縣參事會ノミニ於
テ、處理スル必要ガアル、斯樣ニ考ヘマシ
テモ、吾々ハ今日府縣知事ヲ議長ニスルコ
トヲ以テ最モ時宜ニ適シタル改正方法ト考
ヘルノデアリマス、之ヲ府縣知事ヲ全部除
外シテ、全部縣會議員ノミニ依リ參事會ノ
構成ヲセントスルコトハ是ハ實情ヲ顧ミ
ザル空論デアリマスシ、且又理論上ニ於テ
モ斷ジテ認容出來ナイノデアリマス、更ニ
參事會員ノ定員ノ問題デアリマス、參事會
員ノ定員ノ原則ヲ變更致シマシテ、サウシ
テ府縣會議員ノ四分ノ一ノ數ニ、所謂「ス
ライデイング、スケール」ヲヤルト云フ御
話ハ參事會ノ本質ニ適合シナイト思フノデ
アリマス、蓋シ府縣參事會ハ府縣ノ代理議
決機關デハアリマスケレドモ、其他ニ其議
事ハ國政ニ參與シテ居ルノデアリマス、或
ハ裁定デアルトカ、採決デアルトカ、決定
デアルトカ、色〓國政事務ニ關與シテ居リ
マスカラ、代決機關トシテ、其府縣會ノ縮
圖トスルナラバ、或ハ四分ノ一ノ定員增減主
義ハ、結構デアルカモ知レマセヌケレドモ、
參事會ノ性質其モノカラ考ヘマシテ、私共
斷ジテ承認ガ出來ナイノデアリマス、植原
君モ先刻參事會ハ府縣會ノ代表機關デアル
カラ、其故ニ四分ノ一ニ改メタイト云フ御
意見デアリマシタケレドモ、實際ニ於テ府
縣參事會ノ職務權限ハ、國政ニ關スルモノ
ガ澤山アルノデアリマス、隨テ嚴密ナ理論
カラ申シマスト、此參事會-府縣參事會
ノ職務權限ニ對シテ決定的ノ改良ヲ施シ
テ、其上デ純粹ナル代決機關ニシタ上デ、
政友會御主張ノ「スライヂング、スケール」
ヲ御使ヒニナルナラバ、吾々ハ理論トシテ
承認スルノデアリマスケレドモ、遺憾ナガ
ラソレニ觸レテ居リマセヌ、隨テ吾々ハ反
對セザルヲ得ナイノデアリマス、更ニ市制
ノ問題デアリマスガ、市會議員ノ定數ヲ一
般的ニ增加シタイ、同時ニ町村會議員ノ定
數モ一般的ニ增加シタイ、而シテ市會ニ於
テ增加スル所以ハ、是ハ各階級ヲ綱羅スル
爲ノ增加デアルシ、又町村會ニ於テハ變ナ
者ガ出テハナラヌカラ、町村自治ヲ危殆ニ
瀕スルコトヲ防グ爲ノ修正デアルト云フ御
意見デアリマス、元來市町村會議員ノ定數
ハ公民權ノ權限ニ伴ヒマシテ、當然之ヲ增
加スルト云フモノデハアリマセヌ、議員ノ
定數ハ多クノ選擧法制ヲ通ジマシテ、人口
ヲ標準トシテ選擧有權者ノ數ノ增減トハ必
然的ノ關係ハ無イノデアリマス、最近ニ於
ケル普通選擧ノ改正案ニ於キマシテモ、有
權者ノ數ハ四倍ニ增加致シマシタケレド
モ、而モ議員ノ定數ハ僅ニ二名ノ增加ニ終ク
タコトニ鑑ミマシテ、吾々ハ今公民數ノ增
加ヲ見ルト同時ニ、之ニ伴ヒマシテ市町村
會議員ノ數ヲ全體的ニ增加スベシト云フ理
由ヲ發見スルコトハ出來ナイノデアリマ
ス、而モ一面現在市町村會ノ實際ヲ見マス
ルニ、一般的ニ市町村會議員ノ數ガ少イカ
ラ、ソレデ團體意思ノ決定ニ不都合デアル
ト云フ意味ノ非難ヤ不平ハ無イヤウデアリ
マス、吾々ハ此意味カラ市町村會議員ノ定
員會加ニ對シマシテ、遺憾ナガラ反對スル
ト共ニ、玆ニ私ハ反問シテ見タイコトハ
此政友會ノ御修正意見ニ依ッテ、市町村會
ノ增員ハ御計畫ニナッタケレドモ、府縣會
ノ增員ハ決シテ御計畫ニナッテ居ナイノデ
アリマス、政友會ノ御意見ヲ其儘借用致シ
マスト、市ノ最少定員ハ三十六名デアリマ
ス、之ニ對シテ府縣ノ最少定員ハ現行法通
リ三十名デアリマス、市ヨリモ數十倍ノ廣
サト十數倍ノ人口ヲ持ツ所ノ決議機關ノ
府縣會ガ三十名デアッテ、サウシテ市ガ三十
六名デアルト云フコトハ、別ニ絮說ヲ用キズ
トモ吾々ハ常識的ニ判斷シ、直覺的ニ判斷
シテ、政友會ノ御意見ガ遺憾ナガラ紙背ニ
徹シナイコトヲ憾ミトスル者デアリマス、
議員候補者ノ制度ヲ之ヲ都市全體ニ用ヰタ
イ、是ハ委員長ガ報告シマシタ通リ、吾々
ノ希望條件トシテ人口五万以上ノ都市ニ使
用スルト云フノデアリマス、之ニ對スル政
友會ノ御修正ハ都市全體ニ使用シタイ、
併ナガラ今日ノ都市ハ東京大阪ノ如キ大都
市モアリマスルシ、同時ニ丸龜、都城ノ如
キ、殆ド人口三万ヲ往來シテ居ル都市モア
リマス、隨テ之ニ對シテ全體的、割一的ノ
法ヲ施行スルト云フコトハ、是ハ決シテ
巧妙ナル方法デナイト思フノデアリマス、
隨テ吾々ハ全部都市ニ對シテ均一的ニ、之
ヲ實行スル必要ヲ認メザルノミナラズ、又
良好ナル結果ヲ得ルコトモ保シ難イト思フ
ノデアリマス、殊ニ私共ガ立法技術ノ上カ
ラ最モ遺憾ニ考ヘマスコトハ此都市ニ普
通選擧ノ精神ヲ行フト云フ規定ニ對シマシ
テ、第三十九條中ノ第二項ニ對シテ御修正
ニナッテ居リマスケレドモ、斯樣ナ修正ヲ
スルコトハ、卽チ現行法ノ市制ノ選舉ニ關
スル規定全部ヲ修正スル意味ニナルノデア
リマス、吾々ハ立法技術ノ點カラ考ヘテモ、
此第三十九條第二項ノ御修正ハ甚シキ困難
ト、サウシテ甚シキ不都合ヲ伴ノテ居ルト
云フコトヲ敢テ提案者ニ告ゲタイノデアリマ
ス、更ニ町村會議長及副議長ヲ町村會ニ於
テ常ニ選擧スルト云フ御意見デアリマス、先
刻植原君ノ御演說ヲ拜聽致シマシタガ、今
日日本ニ於テハ此市ト町村ト云フモノハ
總テノ點ニ於テ事情ヲ異ニ致シマスルガ故
ニ、其制度ニ於テモ、兩者相異ナル方法ヲ
認メテ居ルノデアリマス、町村會ノ議事モ亦
市會ノ議事トハ之ヲ原則的ニモ、總括的ニ
モ觀察スル時ハ大ニ差異ガアルノデアリ
やっ、現行制度ハ卽チ町村會ニ於テ、町村
長ノ議長ヲ認メ、而シテ市會ニ於テハ專任議
長ヲ認メテ居ルノハ、此差異ガ最モ大ナル
モノト思フノデアリマス、然ルニ今日都市
地方ヲ通ジテ均一的ニ、專任議長ヲ置カン
トスル議論ハ是ハ或ル意味ニ於テハ、我
ガ日本ノ地方ノ發達、從來カラ我ガ村落自
治ノ發達ノ歷史根柢ヲ成シテ居ル所ノ、所
調圓滿ナル會議或ハ村相談、或ハ名主奇
合ト云フヤウナ、我ガ日本ノ基礎ヲ成シテ居
ル所ノ圓滿會議ソレ自體ヲ脅威スル虞ナキ
ニ非ズヤト云フコトヲ私ハ恐ルヽノデアリ
マス、併ナガラ今日ノ町村ノ中ニ於テ、其
實情ク全ク市ニ等シク、或ハ市ニ近寄ノテ
居ル、若クハ種々ノ理由カラ町村長ト町村
會議長トヲ別ニスルヲ以テ、適當ト認ムベ
キ町村、又ハ之ヲ希望スル町村モ澤山アリ
マスルカラ、吾々ハ此特別ノ町村ニ對シマ
シテハ町村條例ヲ設ケテ、之ニ依ノテ町
村長ノ選任ヲスルコトヲ得ル規定ヲ設ケタ
ノデアリマス、何卒其規定ニ對シマシテ、
格別ノ賛成アランコトヲ希望スルノデアリ
マス、而シテ市參事會ニ於キマシテモ、府縣
制同樣ニ增員ノ御意見ガ出テ居リマス、私
共ハ府縣會ノ組織ト、市參事會ノ組織ニ對
シテハ必シモ是ハ同一ナリトハ考ヘマセ
ヌケレドモ、併ナガラ府縣會ノ府縣參
事會ノ定員增加ニ反對シタリト云フ理由ヲ
以テ、此市參事會ノ增員ニ反對ガ出來ルト
思フノデアリマス、殊ニ私ノ遺憾ニ思フコ
トハ此政友會ノ御提案ニナシテ居ル所ノ
府縣參事會ノ增員ノ比率ト、市參事會ノ增
員ノ比率トニ於テ、何等ノ統一セル觀念ガ
ナイト云フコトデアリマス、一方ニハ四分
ノ一ヲ取リ、一方ハ八人或ハ十五人ヲ取ル
ト云フノデアリマシテ、其間ニ何等理論ニ
根柢ノナイコトヲ、最モ遺憾トスル者デアリ
マス、最後ニ植原君ハ市町村長ノ公選問題ヲ
御主張ニナッテ居リマシテ、恐ラク此地方制度
ニ對スル政友會案中ノ最モ大ナル誇デアル
ト思フノデアリマス、植原君ハ我ガ日本ノ
地方制度ヲシテ、今後革新ノ一方ニ出ヅル
爲ニハ、此市町村長ノ公選主義ニ依ッテ進
ムベキデアルト云フコトヲ、非常ニ力强ク
力說ニナッタノデアリマス、勿論吾々ト雖モ
將來市町村長ガ公選タルベシト云フ理想ニ
對シテハ、決シテ反對ハシナイノデアリマ
ス、併ナガラ現行ノ制度其モノヲ認容シテ
置イテ、唯〓市町村長ヲ公選ニスルダケニ
依シテ、市町村長ノ自治權擴張ガ忌憚ナク
徹底的ニ實現スルト思フナラバ、是ハ驚ク
ベキ錯誤デアルト思フノデアリマス、例へ
バ一ノ例證ヲ擧ゲテ見マセウ、市町村會ハ
市町村公民ノ意思機關デアリマス、而シテ
之ニ對立シテ居ル所ノ市町村長ハ執行機關
デアル、今日ニ於テ値原君ハ弊害ノ方面ヲ
御擧ゲニナッタケレドモ、今日ニ於キマシテ
ハ此間接選擧デアルガ故ニ、卽チ市會ノ
議決機關ト此執行機關トハ極メテ圓滿ナ
ル運用ヲ持ノテ行クノデアリマス、然ルニ若
シ市町村長ヲ公選ニ致シマスルト、植原君
自身モ御述ニナッテ居リマスルガ、所謂此市
長ナルモノト市會ナルモノトノ間ニ、非常
ナル意思ノ疎隔ヲ來ス虞ノアルコトヲ吾々
ハ見適スコトガ出來ナイノデアリマス、是
ハ多數黨ノ横暴ヲ論ジマスルケレドモ、其
市會ニ於ケル多數黨ガ、或ル市長ヲ擁シテ
居ル場合ニハ、其行政ノ善惡ハ別モノトシ
テ、少クモ其白治ノ連用ヲ圓滿ニ進行スル
ノデアリマス、然ルニ市長ナル者ガ公選ニ
依ノテ市曾ヲ向フニ廻シテ、此議決機關ト執
行儀關トガ、政然トシテ相對立スル時ニハ
此始末ヲドウスルカト云フコトガ現行法令
ニ於テハ何等解決ガ出來ナイノデアリマ
ス随テ吾々ハ此市町村長ノ公選論ニ對シ
マシテハ之ニ對シテ理論トシテ認容シマ
スケレドモ、少クトモ此市町村長ノ公選ヲ
行フガ爲ニハ其全體不可分的ノ關係ニ在ル
所ノ現今ノ市長制度ノ一切ニ對シテ、徹底
的ナル整理、徹底的ナル改革ヲ斷行シナケ
レバ、決シテ其結果ニ於テ得ル所ハ無イノ
デアリマス(此時發言スル者アリ)靜ニ御聽
キ下サイ、私ハ徒ニ反對センガ爲ニ、政友
會ノ最モ然リト御信ジニナッテ居ル市町村
長ノ公選論ニ反對スル者デハアリマセヌ、
前段ニ申シマスル通リ、私ト雖モ此問題ニ
對シテハ相當ノ共鳴モシテ見タイ、吾々ノ
感情ガ之ヲ許スノデアリマス、吾々ノ理性
モ之ヲ認容スルノデアリマス、併ナガラ吾
吾ノ最モ考フベキコトハ、非常ナル改革ニ
當シテ、其改革ンレ自體ノ結末成績デアラ
ネパナラヌノデアリマス、私ノ考ニ於テ、
現行ノ市町村長ヲ公選ニシタ所デ、現行ノ
市制或ハ町村制ニ對シテ適當ナル改革ヲ加
ヘザル以上ハ其市町村長ノ公選制度ハ決
シテ徹底シナイト思フノデアリマス、例ヲ
以テ言ヒマスルナラバ、或ハ原案執行ノ問
題デアルトカ、或ハ停會ノ權利デアルトカ、
若クハ解散ノ権利デアリマストカ、現行ノ市
制町村制ハ是等ニ對シテ決シテ市町村
長ニ自由ナル權限ヲ與ヘテナイノデアリマ
ス、同時ニ現行ノ議決機關ニ對シマシテハ
唯〓單ニ發案シタルモノヲ審議スルト云フ
ノミデアッテ、所謂市町村會ニ自ラ發案スル
自由ヲ與ヘテナイノデアリマス、斯樣ナ場
合ニ於テ、此問題ニ觸レズシテ、唯〓市町
村長ノ公選ヲスルト云フ事ダケデハ如何
ニモ奇麗デハアリマスケレドモ、併ナガラ
其結果ニ於テハ、斷ジテ何等ノ得ル所ナシ
ト思フノデアリマス(拍手)殊ニ吾々ガ實際
問題トシテ考慮セネバナラヌノハ、現在ノ
事情ニ於テ市町村長ノ公選主義ヲ實行スル
コトハ選擧ガ非常ニ複雜ニナッテ、其處ニ
非常ナル面倒ガ起ルト云フ點ト、又今日ノ
間接選擧ニ依ル市長ト、公選選擧ニ依ル市
長トハ果シテ何レガ適任者ヲ出シ得ルカ
ト云フコトハ蓋シ大ナル問題デアラウト
思フノデアリマス要スルニ今次ノ選擧權、
被選擧權ノ大擴張ハ實ニ市町村會其モノ
ノ大刷新ヲ、先ツ以テ第一步ニ意味シテ居
ルモノト考フルノデアリマス、大擴張後ノ
議決機關ノ信用ヲ增加スルカ、此信用ヲ無
クスルカト云フコトガ、今回ノ選舉權、被
選擧權擴張ノ先決問題デアリマシテ、吾々
ハ此意味カラ市會、町村會ノ決議ニ對シテ、
深甚ナル敬意ヲ拂フ爲カラ、裁可-所謂
認可ノ例ヲ廢シタノデアリマス、之ヲ要ス
ルニ政友會ノ御修正ノ意見ヲ、之ヲ通觀シ
テ見ルナラバ、所謂地方分權論ガ其基礎ニ
ナッテ居ルヤウデアリマス、或ハ稅制整理ノ
問題ニ付テ、地租委譲ヲ論ジ、若クハ本日
ノ議場ニ於テ、知事公選乃至市町村長直接
選擧等ヲ御主張ニナルモ、畢竟政友會近時
ノ政策ノ一端アアル所ノ地方分權論ノ御主
張デアルト思フノデアリマス、我等モ亦同
樣ナル希望、同樣ナル信念ヲ持,テ居リマ
ス、地万分權論ノ主張ハ、決シテ政友會ノ
專賣特許デハナイコトヲ此際明カニシテ置
クト共ニ、今後ノ我國ノ政治家ノ責任ハ
實ニ日本ノ地方其モノヽ繁榮、日本ノ地方
其モノヽ隆盛ヲ希望スルコトニ於テ、始メ
テ其政治的生命モ、又其政治的光輝モアル
ト思フノデアリマス、唯〓考フベキ事ハ-
唯〓此際最モ深ク考フベキ事ハ、斯樣ナ變
革ヲ市町村長公達ト云フガ如キ、或ル程度
マデノ變革ヲ斷行スルニ當リマシテハ、吾々
ハ常ニ其全體トシテノ統一、其全體トシ
テノ完成ヲ考ヘナクテハナラヌ、渾然タル
組織、整然タル有機的發達其モノヲ忘レテ
ハナラヌノデアリマス、政友會ノ御修正ヲ
拜見スルノニ、吾々ハ矛盾撞者ヲ屢、發見ス
ルノデアリマス、僅カ熊單ナル、而モ卑近
ナル修正意見ニ於テモ、不完全ノ連續デア
リマス、不統一ガ續イテ居ルノデアリマス、
例ヘバ郡ヲ廢スル規定ニ於テ、百四十五條
ノ問題ニ觸レナイコトノ如キ、或ハ委仕狀
ノ問題ニ於テ、府縣制ニ擴張シテ、市町村
ニ於テ之ヲ現行法ニ止メントスルガ如キ、
若クハ府縣參事會員ノ增員ト、市參事會員
ノ增員トノ間ニ、何等ノ統一チキガ如キ、
或ハ又市町村會ノ定員ヲ增加シナガラ、府
縣會ノ定員ニ付テ何等觸レナイガ如キ、吾々
ハ斯樣ナル所謂統一ナキ、所謂有機的機
能ノ渾然タル一致ヲシナイ所ノ修正案ニ對
シマシテハ遺憾ナガラ反對セザルヲ得ナ
イノデアリマス、植原君ハ徹底的ニ改革ス
ルコトハ、此際遠慮スルト云フ御話デアリ
マ 、併ナガラ政友會ノ其徹底的デナイト
云フ修正意見デスラ、既ニ私ガ指摘シタ通リ
ニ、全體ノ統一全體ノ聯絡ガ無イノデアリ
マス、私ハ願クハ政友會諸君ト共ニ、今後地万
分權ノ事ヲ論ズルナラバ、是等ノ問題ニ對シ
マシテ、深甚ナル用意ト愼重ナル準備ノ下ニ
出發シタイト思フノデアリマス(拍手)或ハ
市町村長公選論ト云フガ如キハ、如何ニモ
一見美シイ議論デアリマス、綺麗ナ議論デ
アリマス、私共ハ其議論ニ眩惑サレテ、サ
ウシテツレニ近寄ッテ見ルト、焉ンゾ知ラ
ン、其議論ハ唯こ一本立デアル、何等ノ聯
絡モ、何等ノ統一モ無イ、丁度東京テ今頃流
行ル所ノ「バラク」普請ノ「シヨーウインド
ー」ノヤウナモノデアルマイカト思フノデ
アリマス(拍手)吾々ハ要スルニ政府提案ノ
今日ノ地方制度ハ、卽チ普通選擧ノ結果ニ
依ル選擧權ノ問題ト、サウシテ郡役所廢止
ニ依ル所ノ其結果ガ重大ナル原因デアルト
聞イテ、之ニ絕對賛成ヲスルト共ニ、吾々
ハ今日直ニ出來ルコト、今日卽今ニ於テ可
能デアリ、且ツ實行ノ範圍ニ屬スルコトニ
於テ、修正意見ヲ提案シタ次第デアリマス、
卽チ委員長ノ報告ノ修正意見ハ、自治機關
ノ整齊デアリ、自治權ノ擴張デアル、吾々
ハ此程度ニ於テ、今日ノ地方制度ニ贊成ヲ
表スル者デアリ、卽チ委員長ノ報告ニ對シ
マシテ、全體的ノ賛成ヲ表シ、而シテ政友
會ノ御提案ニ對シテ、遺憾ナガラ反對ノ意
ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=78
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079・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 赤間嘉之吉君
少數者意見書
一北海道地方費法中改正法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
大正十五年三月十二日
北海道地方費法中改正
法律案委員少數意見者
赤間嘉之吉
外九名
(小字ハ少數意見)
北海道地方費法中改正法律案中左ノ通修
正ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=79
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080・「一二級町村長書記給料旅
○「一二級町村長書記給料旅 第八條第一項中。「一戶長役場費及戶長以
砦」及
下給料旅費及諸給與」ヲ削リ同條第二項
ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ外公共事務ノ爲費目ノ增加ヲ要
スルトキハ北海道會ノ議決ヲ經テ北海
道廳長官之ヲ定ム
〔赤間嘉之吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=80
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081・赤間嘉之吉君
○赤間嘉之吉君 私ハ植原君ノ修正意見ニ
賛成ヲ致シマシテ、委員長ノ一部ノ報告ニ
反對ヲ致シタイト思ヒマス、今囘政府ガ地
方制度ヲ改正致シマシテ、地方議會ノ選擧
權被選舉權ノ擴張ト同時ニ、地方自治權
ノ擴張ヲ企テマシタ、之ニ付キマシテハ、
大體ニ於テ賛意ヲ表スル者デゴザイマスル
ガ、併ナガラ先刻植原君ガ申シマシタヤウ
ニ、甚ダ不徹底ナル所ガアル、只今由谷君
ガ政友會ノ修正案ニ對シテ、細カニ反對ノ
意見ヲ指摘セラレマシタケレドモ、之ニ付
キマシテモ、後ニ一々辯駁ハ致シタイト思
ヒマス、先ヅ植原君ノ修正意見ニ對シテ、
大體ニ於テ賛意ヲ表シマスル所ハ全體此
市町村制ハ、明治二十一年ノ四月ニ發布セ
ラレマシタモノデゴザイマシテ、當時市町
村制ノ理由ナルモノガ其法律ニ附イテ居ル、
之ヲ見マスルト云フト「地方自治體ハ其自
治體ノ共同事務ニ任スヘキノミナラス一般
行政ニ屬スルモノモ全國ノ統治ニ必要ニシ
テ官府自ラ處理スヘキモノヲ除クノ外ハ之
ヲ地方ニ分任スルヲ得策ナリトス」ト云フ
理由ガ書イテアッテ、非常ニ地方分權、地
方自治權ノ擴張ト云フコトハ明治二十一
年ノ當時ニ於テ政府ハ見テ居ッタノデゴザ
イマスルガ、爾來歳ヲ經ルニ從ヒマシテ、
段々此大趣意ニハ逆行致シマシテ、何時ノ
間ニカ漸次地方分權ガ中央集權ニ傾イテ
參ッテ居リマス、之ヲドウシテモ中央集權
ノ弊ヲ打破致シマシテ、地方分權ノ主義ヲ
擴張シナケレバナラヌト云フコトハ我ガ
政友會多年ノ主張デアッテ、大正八年ニ衆
議院議員選擧法、卽チ普選案ガ本議會ニ上
程セラレマシタ時ニ於キマシテモ、當時ノ
原內閣時代ニ於テ、政府及我黨ハ之ニ對シ
テ尙早意見ヲ唱ヘマシタ、此尙早意見ヲ唱
ヘマシタノハ、衆議院議員選舉法ニ於ケル
普通選擧ハ最モ望ム所デアルケレドモ、是
ト併行致シマシテ、地方ノ自治權ヲ擴張シ
ナケレバナラヌ、地方自治ヲ擴張致シテ、
然ル後ニ中央ノ衆議院議員選擧法ヲ普通選
擧ニ及バナケレバナラヌト云フコトハ、當
時我黨ヲ代表致シテ我黨ノ代議士ガ此壇上
ニ於キマシテ說明致シテ居リマス政府モ
亦當時之ニ說明致シテ居リマシタ、是故ニ
自治權ノ擴張ト云フコトニ付キマシテハ
大體ニ於テ我黨ハ異議ハゴザイマセヌケレ
ドモ、植原君モ前來中述ベマシタヤウニ、
此度ノ改正ハマダ甚ダ不徹底デアル、此點
ニ付テハ逐次申上ゲマスガ、第一ニ植原君ノ
修正意見ニ對シテ由谷君ノ申述ベマシタ郡
ニ關スル問題、折角現在ノ府縣制ニハ郡市
ト云フ此郡ト云フモノヲ認メテ居リマスガ、
之ニ對シテ政府委員ノ答辯ハ將來郡ヲ認
ムル必要ガアル場合ニハ、各省別々ニ之ヲ
適當ノ處圖ヲ執ルト云フコトヲ答辯サレテ
居リマスケレドモ、併ナガラ現在ニ於テ、
縣ノ下ニ直ニ町村ト云フコトニナッテ參リ
マスルト云フト、總テノ方面ニ於テ非常ニ
不便デアルト云フコトハ植原君モ一應指
摘サレマシタゲレドモ、之ヲ細カニ申シマ
スルト、第一遞信省ノ所管ニ於ケル郵便ノ
配達デアル、何縣ノ何村ト云フコトニシテ
郵便ニ出シマシタ所ガ、其縣内ニ同ジ村名
ナリ町名ナリガ五ツナリ三ツナリアルト、
ドコニ持シテ行ッテ配達シテ宜イノカ分ラヌ
コトニナル、又司法事務ノ方カラ申シマス
ルト、裁判所或ハ檢事局カラ町村役場ニ照
會致シマス場合ニ於テモ、或ル戶籍謄本ヲ
町村役場カラ取ルト云フ場合ニ、何縣ノ何
村ト云フコトニナッテ參リマスルト縣
ノ中ニ數箇町村同一名ノ町村ガゴザイマス
ルト、ドノ町村デアルカ分ラヌコトニナッ
テ參リマスルシ、或ハ其他ノ戶籍事務ノ如
キ、兵事々務ノ如キ、幾多ノ弊害ヲ生ズルト
云フコトハ、今日ヨリ分リ切ッタ事デアル、
ソレ故ニ私ハ必シモ府縣制ノ上ニ認メナケ
レバナラヌト云フノデハアリマセヌケレド
モ、政府ハ我黨ノ質問ニ對シテ定メシ勅令
ヲ以テ之ヲ規定スルト云フコトヲ答ヘル
デアラウト思ヒマシタガ、必要ニ應ジテ政
府ハ何等カノ處置ヲ執ルト云フ漠然タル答
ヲ致シテ居リマス、ソレ故ニ統一ヲ致シマ
シテ、何カ郡ト云フモノヲ認メル必要ガア
ル、現在ノ府縣制ニ於キマシテハ、郡市ト
云フコトガ規定シテゴザイマスガ故ニ、郡ト
云フモノヲ存置致シテ、差當リ各省或ハ各
局又人民一般ニ蒙ル所ノ非常ナル不便ヲ除
去シヤウト云フノガ、郡市ト云フモノヲ府
縣制ノ上ニ存續シタイト云フ吾々ノ意見デ
ゴザイマス、由谷君ハ郡ハ從來行政區劃デ
アッタ、之ヲ今後既ニ行政區劃デナイト云
フコトニナレバ、之ヲ存置シテ置ク必要ハ
無イト云フコトヲ言ハレタヤウデアリマス
ケレドモ、只今申上ゲマス理由ニ依リマシ
テ、行政區劃トシテノ郡ハ强イテ認メナ
クテモ宜イケレドモ、幾多ノ支障ガアル故
ニ、此法律ノ上ニ郡ト云フモノヲ認メテ置
イテ、或ハ勅合デ定メテモ宜シウゴザイマ
スケレドモ、政府ガ統一致シタ所ノ或ハ勅
令ヲ出ストカ、法律ヲ出スト云フコトヲ明
言致シマセヌガ故ニ、吾々ハ府縣制ノ上ニ郡
ト云フモノヲ存置致シタイト思ヒマス、次ニ
由谷君ハ府縣會ノ選擧長、數十箇町村ヨリ
成ル所ノ地方ニ於テ、或ハ選舉長ヲ町村長
ニスルノハ黨派ノ關係ガアル、或ハ黨弊
ノ甚シイ處ニナルト、是ガ爲ニ幾多ノ弊害
ヲ生ズルト云フコトヲ申述ベラレテ、私共
ノ修正案ニ對シテ反對意見ヲ述ベラレマシ
タケシドモ、私共ノ修正致シマシタノハ
市長若クハ府縣知事ノ指定シタル所ノ町村
長若クハ官吏ト云フコトニ致シテ置キマシ
テ、必シモ町村長バカリデハナイ、今日ノ
狀態カラ中シマスト、或ハ黨弊モゴザイマ
セウ、ソレガ爲ニ或ル町村長ヲシテ指定ヲ
致シマスルト云フト、非常ナ弊害ヲ生ズル
所モゴザイマセウ、ソレ等ノ所ハ此條項ニ
アル所ノ官吏ヲ指定スレバ、一向差支ハゴ
ザイマセヌ、或ル地方ニ於キマシテハ町
村長ノ中ニ非常ニ有力ナル人ガアル、德望
ノアル人ガアル、地方ノ或ハ理事官トカ屬
官トカ云フヤウナ役人ラシテ指定致シマス
ルヨリモ、其地方ニ於ケル所ノ德望ノアル
町村長ヲ知事ガ指定致シテ、之ヲ選舉長ニ
致シマスル方ガ、或ハ理事官ヲ指定スル
或ハ屬官ヲ指定スルヨリモ、寧口適當ナル
所ノ選擧長ヲ得ラレルコトト私共ハ考ヘテ
居リマス、(拍手)此故ニ必シモ町村長トハ
限ラズシテ、町村長或ハ官吏ノ中カラ府縣
知事ハ適當ナ者ヲ指定スルト云フコトニ致
シマシタ方ガ、法ノ運用ノ上ニ於テ、餘程
範圍ガ廣イト考ヘテ居リマス(拍手)次ニハ
府縣會議員或ハ市町村會議員ノ定數ニ滿タ
ザルト云フアノ文字ニ付テ、吾々ノ修正案
ニ對シテ「滿チサルトキ」ト反對ノ意見ヲ申
述ベラレマシタ、或ハ吾々政友會ノ者ハ、
切メテ中學校ノ〓科書デモ看テ見レバ宜イ
ト云フコトヲ仰セラレマシタガ、今ノ〓科
書ノ中ニ於キマシテモ、或ハ康熙字典、或
ハ其他ノ古イ書物ノ上カラ申シマシタナラ
バ、今日ノ小學校ノ〓科書ノ假名遣ノ上ニ
於テ、餘程誤フテ居ル事モアル是ハ昨年
ノ議會ニ於テ、我黨ノ松山常次郞君カラ指
摘致シマシタ次第デアリマス、今日ノ〓科
書ヲ看テ見マシテモ、餘程謨シテ居ル事ガ
多イ、又假名遣ヲ文部省ガ統一スル爲ニ、
サウ云フモノニ拘泥セズシテ、〓科書ノ假
名遣ノ統一ヲ致シテ居リマスルヤウデゴザ
イマス、旣ニ小學校ノ〓科書スラモ、昔ノ
モノニ拘泥シナイデ、新シイ假名遣ヲ定メ
テ居リマスルガ、只今吾々ノ修正致シマシ
タ所ノ定員ノ三分ノ二ニ淋タサルトキ-
之ヲ從來「滿タサルトキ」トアルノヲ、殊更
ニ政府ハ「滿チサルトキ」ト云フコトニ訂正
ヲシテ此度法律ヲ出シテ居リマスガ、或
是ハ法制局ノ參事官デアルガ、或ハ內務省
ノ御役人デアルカ、國語ノ假名遣ヲ調ベテ
見テ、是ハ「滿チサル」デナケレバナラヌ、
「滿タサル」デハイケナイト云フコトニ始メ
テ氣ガ付イタカモ知レマセヌガ、此「滿タ
サルトキ」ト云フ文字ハ、明治二十一年ノ
四月ニ發布セラレマシタ所ノ町村制、ソレ
ニ始メカラ此「滿タサル」ト云フコトニ使ヒ
來ッテ居ッテ、既ニ今日マデ四十年間モ滿
タサル」ト云フコトヲ遣ヒ馴レテ來テ、吾
吾國民ハ何等ノ不便ヲ感ゼナイ、ソレヲ誤
テ居ルト云フ考ヲ持,テ居ナカッタノデアリ
マイ、國民ハ既ニ「滿タサル」ト云フ文字ニ
モウ馴レ來シテ居ル、ソレガ或ハ國語ノ假名
遣ノ上ニ於テ誤ノテ居ルカドウカト云フコ
トヲ深ク詮鑿シナイデモ宜シイト思ヒマス
植原君ノ指摘致シマシタヤウニ「但シ」ト云
フ「シ」ヲ附ケルガ宜イカトカ、附ケナイガ
宜イトカ、「其ノ」ノ「ノ」ノ字ヲ附ケルガ宜
イトカ附ケナイガ宜イトカ「此ノ限リニ
在ラス」ト云フ所ニ「リ」ヲ附ケルガ
宜シイ、附ケナイガ宜シイト云フヤ
ウナ、法制局アタリデハ細カナ假名
遣ノ詮鑿ヲ始終致シテ居リマスケレドモ、
既ニ吾々國民ガ四十年間馴レ來ッテ居ル所
ノ文字ヲ、假ニ誤リガアルト致シマシテモ、
此際之ヲ改正スル必要ガ何處ニゴザイマセ
ウカ(拍手)而モ之ヲ改正スルト云フナラ
バ、府縣制、市制、町村制ノ全體ニ亙ノテ此
改正ヲスレバ宜シイケレドモ、或ル條項ニ
ハ矢張此「滿タサル」ト云フコトヲ殘シテ置
イテ、一部分ダケヲ改正スルト云フコトハ
非常ニ不徹底デアルト考ヘテ居リマス拍
手)ソレデ吾々ハ既ニ四十年間使ヒ馴レテ居
リマスル所ノ「滿タサル」ト云フ所ノ文字ヲ
其儘存續致シタイト云フノガ、吾々少數ノ
意見デアリマス(「モウ宜シイ」「簡單」ト呼
フ者アリ)由谷君ノ反駁致シマシタ所ダケ
ハ說明ヲスル必要ガアリマス、ドウゾ十二
時マデハ御幸抱ヲ願ヒタイ、府縣會ガ公益
ニ關スル意見書ヲ內務大臣ニ呈出スルト云
フ此條項ヲ、吾々ハ主務大臣ト云フコトニ
修正ヲ致シタイノデアリマス、是ハ植原君
ガ提案理由ニモ申述べマシタヤウニ、各省
ニ向シテ府縣會ハ意見ヲ呈出スルコトガ出
來ルコトニナッテ居リマス、各省ニ向シテ意
見書ヲ呈出スル事柄ト云フモノハ或ハ各
省ニ亙ル事柄デゴザイマスルガ故ニ殊更ニ
内務省ニ關係ノ無イ、必シモ內務省ヲ經ナ
イデモ、或ハ郵便ノ問題ナラバ、遞信省ニ
持ッテ行ッテ宜シイ、兵事ニ關スル問題ナラ
バ陸軍省ニ持ッテ行シテ宜シイ、海軍省ニ持ク
テ行シテ宜シイ、必シモ内務大臣ヲ經ナイ
デモ宜シイ問題デアル、殊更ニ内務大臣ニ
呈出スルト云フコトニ致シマスルノハ是
ハ卽チ繁文縟禮デアル、是故ニ私共ハ其主
管大臣ニ持テ行ノテ意見書ヲ呈出スルコト
ニ致シタイト云フ考デゴザイマス、主管大
臣ニ意見書ヲ呈出致シマシテ、主管大臣ガ
之ヲ地方官ヲ監督致シテ居リマスル所ノ內
務大臣ニ合議スル必要ガアレバ、始メテ他
ノ主管大臣カラ內務大臣ニ之ヲ合議シテ宜
シイ、內務省ニ囘覽スレバ宜シイト考ヘテ
居ル、此必要モナイモノヲ悉ク内務大臣ニ
出サナケレバナラヌト云フコトハ·甚ダ適
當デナイト考ヘマスルガ故ニ、吾々ハ之ヲ
修正致シマシタ所以デゴザイマス、由谷君
ハ府縣會ノ府縣参事會ノ議長ガ、採決權ト
議決權トヲ併セテ持シテ居ルノハ不適當ナ
ルガ故ニ、單ニ知事ヲ議長トスル府縣參事
會ヲ認メテ、知事ヲ府縣參事曾ノ議長トシ
ヂ、採決權ダケヲ持タスルト云フコトデゴ
ザイマスガ、吾々ハ民意ヲ暢達スル上カラ
考ヘマシテ、府縣參事會ナルモノハモウ官
吏ヲ一切加ヘナイ、是ハ植原君ガ說明致シ
マシタ通リデゴザリマス、何ガ故ニ官吏
ヲ-官吏タル知事ヲ府縣參事會ノ議長ニ
殘シテ置カナケレバナラヌカ、理事者ト議
決機關トハ此際吾々ハ一切引離レテシマン
テ、民意ヲ暢達致シマスル上カラ、府縣參
事會議長モ矢張府縣會議員タル府縣參事會
員ガ互選ヲ致シマシテ、サウシテ議長ヲ定
ムルト云フコトニ致シマシタ、知事ハ府縣
參事會ニ決シテ何等ノ干涉ヲシナイコトニ
致シタイト考ヘテ居リマス、是ハ府縣制、
中制及町村制ヲ通ジマシテ、或ハ市制ニ於
テ、或ハ市制ハ勿論、今市會議長ヲ選擧致
シテ居リマスルガ、町村會ニ於キマシテモ、
施行機關ト議決機關トハ之ヲ別ニ致シマシ
テ、町村長ガ議長ニナルト云フ今日ノ制度
ハスンカリ改メテ、町村會議員ガ議長ヲ選
舉スル-互選スルト云フコトニ改メタ
イ、此意味カラ致シマシテ、府縣參事會ニ
致シマシテモ、府縣參事會ノ議長ハ參事
會員ガ互選ヲスルト云フコトニ修正ヲ致シ
タイ、サウシテ始メテ或ハ縣民或ハ町村民
ノ代表機關デアル所ノ意義ヲ徹底スル譯ニ
ナルト思ヒマス、更ニ市會議員、町村會議
員ノ定員ヲ吾々ハ增加致シマシタ、此增加
ノ理由ニ付キマシテハ植原君モ說明致シマ
シタガ、今日ノ思想界ガ段々變遷シテ參リ
マスルシ、階級的ノ鬪爭ガ甚シクナッテ參
リマシタ所ノ現狀ニ於キマシテハ地方ノ
小サイ區域ニナル程此軋轢ハ最モ甚シイ、
或ハ町村ニ於テハ地主ヤ小作人トノ爭、資
本家ト勞働者ノ爭ト云フ風ニ、非常ニ此階
級的モ團體的ノ闘争ガ甚シクナッテ參リマス、
隨テ此市會議員或ハ町村會議員等ノ數ヲ現
在ノヤウナ小サイ數ニ致シテ居リマスルト云
フト、或ル場合ニ於キマシテ此階級的ノ鬪
爭ガ益と甚シクナッテ參リマスルガ故ニ、或ル一
部ノ階級、一部ノ團體ノ人ハ。代表者ヲ
出ス機會ガ無イヤウニナッテ、出スコトガ
出來ナイヤウナコトニナッテ參リマス、此
故ニ市會議員或ハ町村會員ノ數ヲ增加致シ
マシテ、此弊ヲ除去致シタイト云フノガ
吾々ガ定員ヲ增加致シタル根本ノ觀念デゴ
ザイマス(拍手)デ然ラバ府縣會議員ノ數ハ
何故增サナカッタカト云フ御反問デゴザイ
マシタガ、是ハデス、モウ縣下ト云フ風ニ
廣イ區域ニナッテ參リマスト、或ハ一市內、
或ハ一町村内ニ於ケルガ如ク殆ド弊害ガ無
イト考ヘマスルガ故ニ、之ヲ此際强イテ
改ムル必要ハ無イト考ヘマシタノデアリマ
ス(拍手)町村會ノ議長、之ヲ現在ノヤ
ウニ町村長ヲ議長トスルノヲ原則ト致ス
ト云フ、之ハ與黨側ノ御修正ノ御意見デゴ
ザイマスルガ、特別ノ町村ニ町村條例ヲ設
ケテ、町村會議長ヲ町村會議員ノ中カラ選
擧シテ宜シイト云フコトニ致サレテ居リマ
ス、隨テ吾々ノ提出致シマシタ所ノ修正案
ニ致シテ、從來歷史的ニ圓滿ナル發達ヲ致
シテ居ル所ノ此自治ヲ脅威スルト云フヤウ
ナコトヲ仰セラレマシタケレドモ、是ハ
誤シタル考デアルト私ハ考ヘテ居ル、現在
市長或ハ町村長ハ、町村會議員ガ選擧致シ
テ居リマス-市會或ハ町村會ニ於テ選擧
致シテ居リマスルガ、現ニ此各地方ノ市ニ
於キマシテモ、市會議員ガ選擧致シマスル
所ノ市長ナルモノハ、ドウ云フ人ヲ物色致
シマスルカト云フト、大抵市會ニ於テハ市
長ノ銓衡委員ナルモノヲ設ケテ、其銓衡委
員ナル人ハ、市長ノ候補者ニナルベキ人ヲ
知ラナイ、有ユル方面ヲ物色致シマスケレ
ドモ、適當ナ人ガ無イ、適當ナ人ガ出來ナ
イ、ソレ故ニ或ハ內務省ニ出テ、參ッテ内
務大臣ニ聞クカ、或ハ內務省ノ局長ニ聞クカ
致シテ、漸ク物色致シタノハ地方官ノ古手デ
アル、其内務大臣或ハ內務省ノ局長邊リカラ
選定シテ貰ヲタ所ノ市長候補者ナルモノハ、
其銓衡委員タル人ハ一面識モナイ、アレガ
宜カラウ、是ガ宜カラウト云フ話ヲ聽イテ、
初メテ其人ニ會シテ見ル、唯〓一遍會ッテ見テ
成程アノ人ハ宜ササウデアルト云フコト
デ、直ニ銓衡委員ハ之ヲ決定〓シテ行クノ
ガ通常ノ狀態デアルソレガ故ニ市長ヲ選
舉致シマシテ、一年カ一一年モ經タナイ中ニ、
切角選擧致シテ居ル所ノ市會議員ガ既ニ市
長ニハ飽キガ來テ、モウアノ市長デハイケ
ナイ、市長ハ不信任デアルト云フヤウナ聲
ガ段々起ッテ參リマシテ、全國ノ各市ヲ通
ジテ見マシテモ、市長ガ一任期續クカ續カ
ヌカ、再選セラルヽ市長ハ至ッテ少イヤウ
ナ狀態デアル、斯ウ云フヤウナコトデハ
ドウ致シマシテモ市町村ノ事務ヲ圓滿ニ遂
行スルト云フコトハ私ハ出來ナイト考ヘテ
居ル、ソレデ町村長ニ致シマシテモ、町村
會議員ガ之ヲ現在ニ於テハ選擧致シテ居リ
マスル、サウシテ之ニ町村會ノ議長ヲ兼
ネサシテ居リマスルガ故ニ、町村會タル
議決機關ト、執行機關タル所ノ町村長ノ
間ガ、或ル場合ニ於テハ圓滿ニ參リマセ
ウケレドモ、ソレガ爲ニ色ミナ弊害ガ生
ジテ來ルト云フコトモ亦考ヘナケレバナラ
マ問題デアルト思ヒマス、或ハ市ニ於キ
マシテハ市長ト市會議員ト馴合ヲテ、色ミナ
弊〓ガ生ジテ居ル、或ハ時ニ依シテハ、砂利
ヲ喰シタリ硝子ヲ喰ッタリスルヤウナコトモ
生ジテ居リマスル、斯ウ云フコトハドウシ
テモ此議決機關ト執行機關トハ別ナモノニ
シナケレバナラヌシ、又町村會ノ議長ト町村
長トハ別ナモノニ致シマシテ、議決機關ト
執行機關トハ、ハッキリ之ヲ別ニ致シマス
ルシ、又町村長ト町村會議長トヲ兼ネサレ
テ置キマスルト云フト、只今申上ゲマスル
ヤウニ色ミナ之ニ弊害ノ伴フト云フコトハ
當然免レナイ次第デゴザイマスル、町村長
ガ議案ノ編成ヲ致シ、之ヲ町村會ニ提案致
シマスルト云フト、之ヲ決議ヲスルニハ町
村長ガ其議長ノ席ニジット坐ッテ居ッテ、サウ
シテ是ハ自分ガ提案致シタノデアルカラ、
之ヲ是非共議決シテ吳レト云フヤウナ風ニ
ナッテ參リマスルト云フト、其間ニ種々ナ
弊害ガ生ジテ參リマシテ、却テ町村自治ヲ
圓滿ニ遂行スルコトガ出來ナイヤウナ結果
ニナッテ參リマスト思ヒマス、是故ニ町村
會ト議長ト町村長トハ全ク別ナモノニ致シ
タイ、次ニハ此市參事會員ノ增員ニ由谷君
ハ反對ヲセラレマシタヤウデゴザイマス、
是モ縣會議員、府縣參事會員ノ定數ヲ、府
縣會議員ノ數ニ按分〓シマシテ、府縣會議
員ノ四分ノ一ヲ以テ參事會員トスルト云フ
ヤウニ、同ジヤウナ埋由デ以テ參事會員モ
增加致シマシタノデゴザイマス、次ニハ町
村長ノ公選、此市長及町村長、之ヲ公民ノ直
接選擧ニスル、之ニ對シテ由谷君ハ反對セ
ラレマシタガ、將來ハ市町村長ハ公選セラ
ルベサモノデアルト云フコトニハ反對ハシ
ナイト云フ御意見デアッタケレドモ、現在
ノ制度ヲ其儘ニシテ市町村長公選ノミヲ實
行スルノハ甚ダ適當デナイト云フ御意見デ
ゴザイマシタガ、先程カラモ申述ベマシタ
ヤウニ、現在ノヤウニ市會或ハ町村會デ以
テ市長ヲ選擧シ、町村長ヲ選擧スルト一ムフ
コトニ致シテ置キマスルト、幾多ノ弊害ガ
生ジテ參リマス、又民意ヲ暢達スル上カラ
申シマシテモ、間接選擧ニ致シマスルト云
フト、市公民或ハ町村公民ハ自分ハ之ヲ適
當デナイト思フ所ノ市長或ハ町村長ヲ、市
會或ハ町村會デ選擧スルト云フヤウナコト
ニナッテ參リマス、市公民ノ多數、町村公民
ノ多數ハ、此市長或ハ町村長ノ候補者ハ
多數ノ人ハ信任シテ居ナイ人ヲ市會ガ選擧
ヲシ、町村會ガ選舉ヲスルト云フコトニナツ
テ參リマス、或ハ市民大會トナリ、或ハ町
村民ノ大會トナッテ、折角市會デ選擧致シ
マシタ、或ハ町村會デ選舉致シマシタ所ノ
市長或ハ町村長ニ對シテ、市民或ハ町村民
ハ之ニ大反對ヲスルヤウナ結果ヲ生ジテ參
リマスル(拍手)斯樣ナ事ハドウシテモ市長ヲ
市公止ノ直接選擧トシ、町村長ヲ町村公民
ノ直接選擧ト致シマシテ、斯樣ニ致シマスル
ト云フト、初メテ市民或ハ町村民ノ意見ガ市
長ノ選擧ノ上ニ現ハレ、町村長ノ選擧ノ上ニ
現ハレマシテ、市公民ノ望ム所、町村公民
ノ望ム所ノ適當ナル候補者ヲ出スコトガ出
來マスル、現在ノヤウニ市會或ハ町村會ノ
少數ノ人ガ選舉ヲ致シマスルト云フト、非
常ナル不公平ガ生ジテ參リマス、只今由谷
君ノ御話ニハ明治初年ノ頃、マダ國會開設
ノ請願ノアル頃ニ政府ニ於キマシテハ地方
官會議ヲ開イテ、此地方官會議デ以テ現在
ノ帝國議會ニ於ケルヤウナ會議ヲ開イ
テ見タコトガゴザイマスルガ、丁度是ト同ジ
ヤウナ結果ニナルト思ヒマスル、地方官ガ
集シテ民意ヲ代表スルト云フヤウナ意味カ
ラシテ、以前ハ地万官會議ヲ開イテ、丁度今
日ノ帝國議會ニ代ルヤウナ會議ヲ致シマシ
タケレドモ、決シテ此地方官ナルヒノガ民
意ヲ代表スルモノデハナイ、帝國議會ガ國
民ノ意思ヲ今日代表スルヤウニナリマシタ
ノハ、吾々多數ノ國民ガ此選擧權ヲ有シテ、
初メテ衆議院議員ヲ中央ニ送リ、帝國議會
ニ於テ初メテ民意ヲ代表スルコトガ出來ル
ヤウニナッタノデマリマス、今由谷君ノ仰セ
ラレマシタ所ノ意味ハ丁度矢張此地方官
會議ノ主義ノヤウナ意味ニナッテ參リマス
ト私ハ考ヘテ居リマス、此故ニ市長及町村
長ハ市公民及町村公民ノ直接選舉ト致シマ
シテサウシテ初メテ此萬機公論ニ決スル
ト云フ趣意ヲ貫徹スルコトガ出來ルト私ハ
考ヘテ居リマス、大體ニ於テ由谷君ノ御指
摘ニナリマシタノハ是ダケデアッタト思ヒ
マス、先刻申上ゲマシタヤウニ、我黨ハ中
央集權ノ弊ヲ改メテ、地方分權、自治權ノ
範圍ヲ擴張スルト云フ、此論據カラ出發致
シマシテ、修正案ヲ提出致シテ居リマス
此主義ハ單リ地方制度ノミナラズ、總テノ
方面ニ於テハ我黨ハ此主義ハ一貫致シテ居
リマスル(拍手)先般稅制整理ニ於キマシテ
我黨ノ先輩ノ諸君ガ主張セラレマシタ、或
ハ委員會ニ於テ、本會議ニ於テ、主張致シ
マシタヤウニ、地租委譲ノ問題ノ如キ、或
ハ先年義務〓育費國庫負擔ノ途ヲ開クヤウ
ニ吾々ガ主張致シマシタノハ全ク此中央
集權ノ弊ヲ矯メ、地方分權、自治權ノ範圍
ヲ擴張スルト云フ、此主義カラ出發致シマシ
テ地租委譲ヲ唱ヘ、或ハ義務〓育費國庫負擔
ノ途ヲ開クヤウニ致シマシタ主義デゴザイマ
シテ、單リ地方制度ノミ許リデハゴザイ
マセヌ、總テノ租稅制度ニ向,テモ其意見
ヲ主張致シテ居リマスル、府縣參事會カラ
官吏ノ參事會員ヲ全然除クト云フコトニ付
キマシテハ先刻申述ベマシタ通リデゴザ
イマスガ、與黨ノ諸君ノ修正案ニハ參事會
ノ議長ハ矢張府縣知事ヲ認ムルト云フコト
ニナッテ居リマス、府縣ノ高等官二名ノ參
事會員ハ是ハ全ク創ノテシマッテ、サウシテ
府縣知事ダケヲ議長ニ殘シテ置クト云フコ
トハ折角是マデ修正ヲスルト云フコトニ
御企ニナリマシタナラバ、百尺竿頭モウ一
步ヲ進メテ、セメテ此府縣知事ト云フコト
モ取除ケニナリマシタナレバドウデゴザイ
マセウカト思ヒマス、斯樣ニ致シマシテ初
メテ民意ヲ暢達スルコトモ出來マスル(拍
手)ソレカラ與黨側ノ與黨諸君ノ希望條件
ト致シマシテハ、三部制府縣ノ參事會員ヲ
十二名トスル勅令ノ制定ヲ希望セラレテ居
リマスルガ、既ニ此際總テノ法律案、府縣
制市町村制ニ向ッテ修正ヲ企テラレマシ
タナラバ、此法律デ以テ修正ノ出來ル所ノ
此三部制ノ府縣參事會員ヲ十二名トスル勅
令ノ制定ト云フコトハ、旣ニ十二名ト云フ
コトニ指定致シマスルバ、必シモ勅令デナ
クトモ法律デ以テ宜シイノデゴザイマスカ
ラ、何故モウ一步進ンデ之ヲ法律ニ修正ヲ
御企ニナラナカッタノデゴザイマセウカト
思ヒマス(拍手)ソレカラ從來市長ハ有給市
長ダケヲ認メテ居リマシタケレドモ、我黨
ノ修正案ハ有給市長ノ外ニ名譽職ノ市長モ
認メテ居リマスル、是ハ一市内ニ於テ非常
ナ德望家ガアリ、市内ニ於テ有力ナル人ガ
アッテモ、現在有給制度デアルガ爲ニ市長
トナルコトヲ肯ジナイ、之ヲ名譽職ノ市長
ヲ認メマシテ、有給市長ト名譽職ノ市長ト
相併セテ之ヲ實行スルヤウニナリマスル
ト、有給ノ市長ヨリモ其土地ニ德望ノアリ、
勢力ノアル有力ナル所ノ市長ヲ選舉スルコ
トガ出來テ、市ノ自治ヲ圓滿ニ遂行スルコ
トガ必ズ出來ルト私共ハ確信致シテ居リマ
ス(拍手)此故ニ市長ニハ有給市長ノ外ニ名
譽職ノ市長ヲ認ムルト云フコトニ致シテ居
リマス、此點ニ付テハ與黨ノ諸君ノ間ニモ
或ハ政友本黨ノ諸君ノ間ニモ、賛意ヲ表セ
ラレテ居リマシタケレドモ、黨議ニ制セラ
レテ遂ニ是ニハ贊成セラレナカッタヤウデ
ゴザイマスル(拍手)併ナガラ或一人ノ人ハ
此採決ノ際ニハ起立ヲセラレテ居リマシタ
ヤウデゴザイマス、與黨ノ諸君ハ既ニ政府
ノ提案デアルガ故ニ、縱令自分ニハ惡イト
云フコトヲ御考付キニナリマシテモ、政府
案ハ通サナケレバナラヌ、甚シク修正スル
ノハ政府ニ痛棒ヲ加ヘル所以デアルト云フ
考デアルカ致シマシテ、吾々ノ修正案ノ趣
旨ニハ大體ニ於テ御賛成ニナッテ居リマシタ
所ノ御方モ、之ニ賛成ヲセラレナカッタヤウ
デゴザイマスルガ、願クハ是ハ一黨一派ノ問
題デハナイ、黨派ノ問題デハナイ、旣ニ黨派ノ
問題デナイト云フコトニナリマシタナラ
諸君モ胸襟ヲ披イテー-吾々ノ修正案
ニ對シテ賛成スベキ所ハ胸襟ヲ披イテ御賛
成ニナッテ、吾々ノ修正案ニ對シテ起立ノ際
ニハ御賛成ニナル方ガ國民ノ爲メ、地方ノ
爲ニ適當デアルト私ハ考ヘテ居リマス拍
手)更ニ附帶條件トシテ-希望條件ト致
シマシテ與黨カラ提案セラレマシタ此市町
村長ノ優遇ノ問題、市長及町村長ヲ優遇シ
タイ、現在ノ待遇甚ダ薄イカラ、之ヲ物質
的デナイ、其他ノ方面カラ優遇ノ途ヲ講ゼ
ラレタイト云フコトヲ、委員會ニ於テ政府
ニ質問ヲセラレマスルシ、更ニ最後ニハ此
希望條件トシテ提案セラレマシテ、是ニハ
吾々ハ固ヨリ同意デゴザイマスル、賛成ヲ
致シテ居リマスルガ故ニ、ソレニ贊成ヲ致
シマシタガ、私共ハ市長モ町村長モ勿論優
遇ヲ致サナケレバナリマセヌケレドモ、更
ニ進ンデ助役其他ノ吏員ニ向ッテモ、モウ少
シ優遇ノ途ヲ開キタイ思ヒマス、何ト言ヒ
マシテモ、國政ヲ圓滿ニ遂行致シマスル其
根本ハ地方自治デアル此地方自治ヲ圓
滿ニ遂行スルガ爲ニハ町村長ヲ優遇シ
或ハ助役ヲ優遇シ、町村吏員ヲ優遇スルコ
トガ、其地方自治ヲ圓滿ニ遂行スル上カラ
最モ必要ナコトヽ思ヒマス、ソレ故ニ吾々
ハ此優遇ノ途ハ市町村長バカリデナク、
更ニ進ンデ其下ノ吏員ニモ及ビタイト云フ
考ヲ持ッテ居リマスル(拍手)前來申述ベマ
シタヤウニ、吾々ノ修正意見ハ大分多岐ニ
亙ッテ居リマスル、多岐ニ亙ノテ居リマスル
ガ、是ハドウシテモ、此モット進ンデ府縣
制或ハ市制、町村制ハ根本的ニ改正ヲ致
シタイト考ヘテ居リマスケレドモ、今俄二
之ヲ修正ヲスルト云フコトハ、時日ガ許シマ
セヌノデゴザイマスカラ、吾々ハ此僅カノ範
圍ニ於テ修正ヲ致シテ居リマスケレドモ、
此修正致シテ居リマス箇條ハ最モ現在ノ
狀態ニ於テ必要デアルト云フコトヲ考ヘテ
居リマスルノミナラズ、與黨ノ諸君ニ於キ
マシテモ、既ニ委員會ニ於キマシテハ質
問ノ間ニ於テ此吾々ノ修且意見ニ賛成スル
ヤウナ意味ノ御質問ガアッタヤウデゴザイ
マス(拍手)旣ニ起立ノ際ニ於キマシテハ
或ル一人ノ委員ハ吾々ノ修正意兄ニ對シ
テ賛成ヲ表セラレテ起立ヲシテ居ラレマ
シタ位デアリマスカラ、諸君ニ於キマシテ
モ、更ニ胸襟ヲ御開キニナリマシテ、吾々
ノ修正意見ニ對シテ御賛成アランコトヲ希
望致シテ置ク次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=81
-
082・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 加藤鐐五郞君
〔加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=82
-
083・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 諸君、私ハ玆ニ委員長ノ
修正意見ニ賛成ヲ表シ、併セテ此機會ニ於キ
マシテ、委員長修正ノ骨子ハ我ガ政友本黨
ノ主張デアリマスルガ故ニ、此機會ニ於テ
之ヲ明ニ致シテ置キタイト存ジマス(拍手)
今回ノ地方制度改正ノ主ナル點ハ、若槻內務
大臣ガ先日御說明ニナリマシタル如ク、ハ
選舉權及被選擧權擴張デアル二ハ選擧制
度ノ改正、三ハ自治機關ノ整齊、四ハ自治
權ノ擴張デアルノデアリマス應是等ノ
事ヲ拜聽致シマスルト、自治制ノ上ニ大ナ
ル何物カアルヤウデゴザイマスルガ、選擧
權ノ擴張ト云ヒ、選舉制度ノ改正ト云フガ
如キコトハ衆議院議員選舉法改正ノ結果
ヲ受ケタモノデアリマシテ、此處ニ特ニ新
シク、吾等ハ之ヲ喜、程ノコトハナイノデ、
當然ノ歸結デアルノデアリマス(拍手)仍テ
此案ノ生命、最モ大ナル意義ト云フモノハ、
自治權ノ擴張デアルト云フコトヲ、內務大
臣ガ說明サレタノデアリマシテ、私共モ自
治權ノ擴張ノ聲ヲ大ニサレルコトニ依リマ
シテ、定メテ大ナル自治權擴張アルコトヲ
期待致シタノデアリマス、併ナガラ其內容
ヲ調查スル時ニ於キマシテハ擴張サレタ
ル範圍ノ極メテ狹キコトニ大ナル失望ヲ禁
ジ得ナイノデアリマス(拍手)自治權ノ擴張
ト申シテ今回改正サレタノハ、自治構擴張ノ
唯〓枝葉未節デアルノデアリマス、而シテ
根本ニ向ッテハ何等觸レザリシ事ヲ吾々ハ
遺憾ト致スノデアル何ヲカ枝葉未節ト云
フカ、唯〓從來ニ於テ府縣知事ガ認可許可
シタル所ノ些末ナル手續ヲ廢シタノデアル
ノデアリマス、一例ヲ申シマスレバ、現行府
縣制ニ於キマシテハ、會議規則ヲ設クベシ
傍聽人取締規則ヲ設クベシ、而シテ會議規
則ハ内務大臣ノ許可ヲ受クベシト規定シテ
アルノヲ、今回ハ此許可ヲ受クベシト云フ
ノヲ止メタノニ過ギナイノデアリマス(拍
手)市制ナドニ於キマシテハ現行法ニ於
キマシテハ市役所ノ位置ヲ定メ若クハ
之ヲ變吏セントスル場合、區役所ノ位置ヲ
定メ、若クハ之ヲ變更セントスルガ如キ此
些末ナル手續ヲ廢サレタノデアリマス、斯
ノ如キ廢サレタルモノガ二十位アリマスル
ガ、是ハ自治權ノ擴張ノ一小部分デアリマ
シテ、唯、事務ノ簡捷ヲ圖ヲタト云フニ過ギ
ナイノデアリマシテ、是レ吾々ガ今回ノ地
方制度擴張ニ對シテ大ナル失望ヲ爲シタト
云フ〓、(卽チ是デアルノデアリマス(拍手)
〔此時小泉副議長議長席ヲ退キ粕谷議
長代リ著席〕
私共ハ自治權ノ擴張ヲ政府ガ聲明サレルナ
ラバ今ノ府縣制ニ對シテ大ニ擴張ノ手ヲ
染メナケレバナラヌト思フノデアリマス、
只今ノ府縣制ハ是ハ自治制ト謂フベキカ
他治制ト謂フベキカデアリマス、卽チ其首
腦者タル所ノ知事ハ官僚デアリマス、而シ
テ執行機關ノ主ナルモノハ悉ク地方〓體
ト何等ノ交涉ノ無イ所ノ是亦官僚デアル
事務ヲ執ル所ノ者モ、殆ド全部地方自治團
體ト何等ノ關リ無イ所ノ官吏デアルノデア
リマス、斯ノ如クニシテ自治トハ稱シナガ
ラ、府縣會ノ權限ハ唯、財政ニ關スル事項
豫算ニ關スル決議權ヲ持ッタダケデアリマ
ス、是ハ自治制ト云フノデナクシテ、他治
デアルノデアリマス、若シソレ之ヲ其比例
ヲ言ヘヾ、八分他治官治、二分自治ノ狀態デ
アルノデアリマシテ、玆ニ大ナル改正ヲ施
スニアラズンバ自治權ノ擴張ナドヽ云フ
コトハ吾等ハ言ヘナイト信ズル者デアリマ
ス(拍手)何ヲカ私共ハ府縣制ノ上ニ於テ、
自治權ノ擴張ヲドノ邊ニ仲スベキカ、卽チ
只今ノ市制、町村制ニ於キマシテハ、此市
制ノ十二條ニ於キマシテ市ハ市住民ノ權利
義務又ハ市ノ事務ニ關シ市條例ヲ設クルコ
トヲ得」トアルノデアル、而シテ市制ノ四
十一條ニ於テハ「市會ハ市ニ關スル事件及
法律勅令ニ依リ其ノ權限ニ屬スル事件ヲ議
決ス」町村制ニ於キマシテモ亦十條ニ同樣
ナ事ガ規定シテアルノデアリマス、卽チ此
府縣制ニ於キマシテモ眞ニ自治權ノ擴張ヲ
爲サント致シマスレバ府縣ノ一切ノ事件
ヲ決議シ、府縣ノ條例ヲ此市町村制同樣ニ
設クルコトヲ制定スルコト或ハ之ヲ自治
權ト申シマスカ、條例制定權ト申シマス
カ、此處マデ及バナケレバナラナイノデアル
ニ拘ラズ、何等其邊ニ手ヲ著ケテナイコト
ニ對シマシテ、今囘ノ地方制度改正ニ吾々
ハ甚ダ遺憾ヲ感ズルノデアリマス(拍手)殊
ニ私共ガ此府縣制ノ第八十二條第四項ニ於
テ「府縣會若クハ府縣參事會ノ議決公益ニ
害アリト認ムルトキハ府縣知事ハ自己ノ意
見ニ依リ、又ハ內務大臣ノ指揮ニ依リ、理
由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改
メザルトキハ內務大臣ニ具狀シテ指揮ヲ請
フヘシ」トアル、卽チ是ハ原案執行ト云フ
コトデアルノデアリマス、固ヨリ府縣會ガ
權限ヲ超エ、法律命令ニ違反シタル決議ヲ
爲シマシタナラバ、原案執行ハ當然デハ
ゴザイマスルナレドモ、唯2公益ニ反ス
ル-害アリト認ムルト云フガ如キ漫然、
漠然タル文字ヲ用ヰマシテ、府縣會ガ豫算
ノ上ヨリ見テ否決シタルモノヲ原案執行
スルナドト云フコトハ是ハ府縣會ノ意思
ヲ無視シ、府縣會ノ決議ヲ蹂躪致シタルモ
ノデアリマシテ、私共ハ全部原案執行ヲ廢
セヨト云フノデハゴザイマセヌガ、斯樣ニ
漠然タル文字ヲ用キテ府縣會ノ決議ノ意思
ヲ無視蹂躪スルガ如キコトノナイヤウニ
此範圍ヲ相當明確ニシテ-此範圍ヲ狹メ
ザルベカラザルモノギアルト信ズルモノ
デアリマスガ、此點ニ對シテモ何等ノ考
慮ノサレザルコトハ、返ヘス々々々モ今
囘ノ府縣制ガ自治權ノ擴張ト稱シナガ
ラ、其實極メテ微小ナルコトニ對シテハ
吾々ハ遺憾至極ノ言葉ヲ繰返サザルヲ得
ナイノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)諸君我
黨ノ先輩ハ此自治権擴張ノ爲ニ終始一貫努
力致シタノデアリマス、床次總裁、小橋總
務ノ如キ、第一囘ノ改正ニ當リマシテモ、
第二囘ノ改正ニ當リマシテモ、此地方制
度自治權擴張ノ爲ニ努力致サレタノデアリ
マスガ、今囘ノ此機會ニ於キマシテモ、右
樣ノ主義ニ依リマシテ私共ハ玆ニ徹底セル
修正ヲ致シタカッタノデアリマスルガ、〓何
分委員會ノ日數ガ短クシテ、政友會ノ諸君
モ言ハルヽ如ク、到底此短時日ニ全般ニ
亙ッテ修正ヲスルコトノ困難デアルコトヲ
信ジマシタガ故ニ、遺憾デハアリマスル
ガ、暫定應急ノコトヽシ、他日今迄ノ立場
ヨリ致シマシテ、適當ナル機會ニ於テ根本
的ノ修正ヲ爲スト云フコトヲ聲明致シマシ
テ、三個ノ主ナル點ノ修正ヲ爲シタノデア
リマス、卽チ第一ハ此參事會ノ權限ニ關シ、
參事會ノ組織ニ關スルコトデアル、第二ハ府
縣參事會員ノ定員ニ關スルコト、第三ハ市
町村長ノ選任ニ關スルコトデアリマス、政
友會ノ諸君ハ先刻來與黨ノ主張ト言ハレマ
スガ、與黨ハ斯ノ如キ主張ハシナカッタノ
デアリマシテ、原案ヲ與黨ハ維持シタノデ
アリマス、我黨ガ此三種ノ主張ヲ致シマシ
テ之ニ追隨致サレタノデアリマス(「ヒヤヒ
ヤ」拍手)此等ノ問題ニ對シマシテハ是ハ私
共ハ暫定的應急策ト申シマスカ、是ハ現行
制度若クハ今囘政府ガ提出サレマシタル所
ノ案其物ト較ベマスルト、格段相違デアリ
マシテ、自治權擴張ノ爲ニ大ニ貢献シタル
モノデアルコトヲ信ジマス(拍手)與黨ノ諸
君及多數ノ委員諸君ガ我黨ノ主張ニ贊成サ
レタコトハ私共ノ間ニ欣快ト致ス所デア
リマス(拍手、笑聲)諸君旣ニ此等ノ問題ハ
多數ノ方々ヨリ先ニ相當紹介サレマシタガ
故ニ、極ク簡單ニ私共ノ主張ノ在ル所ヲ申
シタイト思フノデアリマス只今ノ府縣制
ニ依リマスレバ參事會ハ府縣知事一名、
高等官二名、名譽職參事會員ヲ以テ組織スル
コトニナッテ居リマスルガ、今囘ハ此官
吏-高等官二名ヲ除イタノデアリマス
從來ニ於キマシテ未ダ縣會議員其他參事會
員ニ於テ、法制行政ノ智識ノ乏シカリシ時
ニ於キマシテハ或ハ是モ必要デアッタカ
モ知レマセヌガ、最早今ノ時代ニ於テハ斯
樣ナル必要ノナイコトヲ信ジマシテ、是亦
我黨ハ此高等官二名ヲ除クコトヲ小橋總務
ヨリ主張致サレタノデアリマス而シテ政
友會ノ諸君ハ議長デアル所ノ知事モ之ヲ除
クベシト云フノ意見デアリマスガ、最早二
人ノ手足デアル所ノ高等官ヲ除イテ置ケバ
知事ハ唯、議長デアル、可否同數ノ場合採
決スルノミデアリマシテ、唯〓最早殘骸ガ
議長席ニ橫ッテ在ルガ如キモノニ、斯樣ナ
ルコトハ大シテ差支ナイコトデアリ、是ガ
又當然デアルト思フノデアリマス、而シテ
此現行法以上ニ、今回ノ政府提出ノ改正案
ハ府縣知事ガ議長トシテ採決權ノ外ニ尙
ホ議決權ヲ有スルト云フコトニナリマス、
故ニ是ハ却テ自治權ノ擴張如キデナク寧
口縮少ト云フ意味ニナルノデアリマス、例
ヘバ此三部制ノ所ニ於キトシテ、名譽職參
事會員ハ五人デアル其時ニ此一人ガ知事
提出ノ原案ヲ賛成致セバソレガ通過スル
ト云フ有樣ニナルノデアリマス、何トナレ
バ一人ニ對シテ高等官ガ二名加ハリ更ノ
知事ガ一名加ッテ、四票ト四票ニナルソ
コデ採決權ヲ持シテ居ル知事ガ提出ノ原案
ヲ認ムルコトニナルノデアリマスガ故ニ、
今囘ノ提案ハ參事會ニ對シマシテハ自治權
ヲ却テ縮小シタルコトニナルノデアリマ
ス、仍テ此點ハ三派モ四派モ一致致シタル
コトデアリマスルガ、參事會ノ議長タル知
事ハ唯〓採決權ヲ有スルノミト致シタノデ
アリマス、次ニ參事會ノ定員ヲ殖シマシタ
ルコトハ一面ニ於テ高等官ヲ除キマシタ
ル埋合セモアリマスガ又一面ニ於テ府縣
會議員ノ多數ノ意思ニ合致セシムル爲ニ
參事會員ノ數モ多クスル又府縣會ノ意思
ヲ反映セシムル上ニ於キマシテモ適當デア
ルト信ジ、之ヲ十名ニ增スコトニシ、三部
制ノ所ニ於キマシテハ、先刻モ委員長報告
ノ通り十二名-勅令ヲ以テ十二名トシ、
之ヲ市郡折半スルト云フ希望ヲ我黨ヨリ附
シ、是亦多數諸君ノ賛成ヲ得タコトデゴザ
イマス、第三ニ市町村長ノ選擧ニ關シマシ
テハ只今ハ市制ニ依リマスレバ市長ヲ
選舉セントスルトキハ內務大臣ノ命令ヲ受
ケテ、サウシテ三人ノ候補者ヲ選擧推薦ス
ルコトニナッテ居ルノデアリマス苟モ自
己ノ信ズル所ノ市長ヲ自治〓體ガ選擧スル
ニ、内務省カラ命令ヲ受ケテ、ソレデ初メ
テ選擧ヲ開始スルガ如キハ、不見識至極デ
アルト私共ハ存ズルノデアリマス、又市町
村制ニ於キマシテハ選擧シタル後ニ於テ
知事ノ認可ヲ得ベシト云フコトニナッテ居
ルノデアリマス、自己ノ信ズル所ノ町村長
ヲ選擧シテ、知事ノ認可ハ何モ必要ノナイ
コトデアリマス、此間ニ於テハ從來弊害そ
少カラザルコトデアルノデアリマス、仍テ
自ラ發意シ、自ラ之ヲ決定シテ、直チニ市
長トシテ就職シ得ル、所謂自主獨往、此事
ハ洵ニ自治體ノ上ニ於テ一面カラ觀察致シ
マスレバ取扱ヲ粗略ニシタガ如クニモ思
ヘマスガ、實ハ然ラズシテ、自治ノ本義ニ
合シ、自治體ノ上ニ〓新潑溂ノ意氣ヲ與ヘ
タルコトデアルト存ズルノデアリマス、併
ナガラ私共ハ一面ニ於テ此市町村長ノ地位
ヲ優遇セナケレバナラヌト云フコトハ選
擧ト別問題デゴザイマスガ故ニ、市長ナド
ニ於キマシテハ我黨ノ希望ニ依リ、宮中
等ニ於キマシテモ相當ノ御優遇ヲ賜ハルヤ
ウ、町村長ナドニ於キマシテ、自治ノ功勞
ニ對シテ叙位、叙動其他ノ表彰ヲ致シマシ
テ其優遇方法ヲ講ズルト云フコトハ洵ニ
至當デアルコトヲ信ジ是亦我黨ガ主張
シ、多數委員諸君ノ御贊成ヲ得タコトハ洵
ニ欣幸ト致ス次第デアリマス、政友會ノ諸
君ハ先刻植原君ノ如キハ市町村長ノ公選
論ヲ主張致サレタノデアリマス、私共モ趣
旨ニ於キマシテハ洵ニ結構デアリマシテ
何レ近ク其機會ノ來ラムコトヲ欲スル者デ
ゴザイマス、唯〓市長ヲ公選ニスルト云フ
コトノミヲ以テ、市長ノ權限ヲ殖スコトニ
考へ及バナカッタコトハ如何ニモ徹底ヲ
缺キタルモノデアルト思フノデアリマス
例ヘバ市制ノ第二條ニハ「市ハ法人トス官
ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共
事務ヲ云々處理ス」ト云フコトガアル、法令
ノ範圍內ニ於テ其公共事務ヲ處理スト云フ、
此法令ノ範圍內ニ於ケル公共事務ノ擴張ヲ
シナケレバナラヌノデアル、唯、只今ノ自
治體ニ於テハ繁瑣ナル色〓ノ法律命令ニ
限フテ市ハ縛ラレテ居ル、苟モ公選ニシタ
ル以上ハヽ市長ノ權限ヲ增サムコトヲ考へ
ナケレバナラヌ、然ルニ此點ニ於テハ少シ
モ修正ノ意見ガ現ハレテ居ラナイデアリマ
ス苟モ公選ニシタル以上ハ、又市會ニ對
シテ、原案執行權ノ如キモ之ヲ與ヘナケレ
公選ニシタ意義ガ徹底シナイノデアリ
マス、此點ニ對シテ唯〓徒ニ名ヲ公選ニシ
タダケデ、時勢トモ合ハズ、權限現狀ノ儘
デ市町村長ヲ公選スルガ如キハ徒ニ地
方團體ニ於テ黨爭ヲ甚シクスル以外ニ、何
モノヽ貢献スル所ガナイノデアリマス(拍
手第「ノー〓〓」)諸君私共ハ此點ニ對シマ
シテ、斯樣ナ三個ノ意見及ビ二ツノ希望條
件ヲ附シタツデアリマシテ、私共ノ主張ヨ
リ見マスレバ、尙ホ憾ノ點ガアルノデア
リマスガ、何レ適當ノ機會ニ於テ之ヲ實現
致シタイト思フコトヲ、玆ニ天下ニ聲明〓
サントスル者デゴザイマス、右ノ主旨ニ依
リマシテ願クハ委員會修正通リ、卽チ我黨
ノ主張ニ御賛成アランコトヲ切望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=83
-
084・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 石坂豐一君
〔石坂豐一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=84
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085・石坂豐一
○石坂豊一君 私共ハ只今上程サレテ居リ
マス所ノ府縣制改正案其他六件ノ法案ニ對
シマシテ我黨提出ノ意見ニ賛成ヲ表シ
玆ニ其趣旨ヲ辯明致スト共ニ、反對ノ諸君
ニ對シテ一言吾々ノ主張ヲ闡明シナケレバ
ナラヌ必要ヲ認メルノデアリマス、甚ダ時
間切迫致シマシテ、皆樣モ御退屈デアリマ
セウガ、暫時御〓聽ヲ汚シマス(謹聽)吾々
ノ考フル所ニ依リマスト云フト、我國ノ自
治ハ明治時代ニ於キマシテハ指導ヲ主ト
シテ施行シテ居ンタノデアリマス、又大正
ニ入リマシテハ此指導的ヨリ轉換致シマシ
テ、市町村民ノ自覺ニ基ク所ノ自治ニ變ッ
タノデアリマス、是ハ時勢ノ進步ニ伴ヒマ
シテ當然ノコトデアリマスガ、市町村民ノ
自覺ニ伴ヒマシテ當然法律モ相當ニ改正
シナケレバナラヌト信ズルノデアリマス、
今回政府ノ御提案ニナリマシタ所ノ改正ハ
曩ニ植原君ノ述ベラレタカ如ク、又諸君ノ
御主張ニナッテ居ルガ如ク、衆議院議員選
擧法ノ改正ニ伴ヒ、選擧權及被選擧權ノ擴
張ト、今一ツハ郡役所ノ廢止ニ伴ヒマシテ、
之ニ必要ナル改正ニ基イテ居ルノデアリマ
ス、內務大臣ハ此改正ニ對シテ四ツノ理由
ヲ申シテ居ラレルノデアリマスガ、其根本
ノ必要ハ今申シタ二ツニ外ナラヌノデアリ
マス、故ニ内務大臣ハ四ツノ理由ヲ揭ゲテ
居ラレルケレドモ、其實ハ加藤君ノ述ベラ
レタガ如ク、選擧權及被選擧權ハ當然ノ擴
張ヲナサレタニ過ギズシテ、其他ノ所謂自
治權限ノ擴張竝ニ自治機關ノ改善、此二ツ
ニ付テハ何等觸レテ居ル所ガナイト信ズル
ノデアリマス(拍手)選舉方法ノ改正ニ付キ
マシテモ、是亦徹底セザル所ガアルノデア
リマス、吾々ハ曩ニ赤間君ノ說明ニ依リマ
シテ、〓ハ多クヲ語リマセヌケレドモ、先
ノ由谷君ノ反對論ニ對シテ、少シク赤間君
ノ辯明ヲ補足シテ置キタイト思フノデアリ
マス/謹聽)ソレハドウ云フ點デアルカト申
シマスト市町村會議員ノ員數ヲ增加シテ
置キナガラ、府議會議員ノ定數ヲ增加シナ
カッタノハ如何ナル譯デアルカ、斯樣ノ御
質問デアル是ハ從來ノ府縣會議員ノ定員
ト市町村會議員ノ定員トノ割方ガ全ク
違フノデアリマス、從來ノ市町村會議員
ハ今日ニ於テ村ト云フ所ニ於テハ級別ヲ
廢シテアリマスガ、大ナル町及市ニ於テハ
依然トシテ級別選擧ニナッテ居ルノデアリ
ママ、其級別選擧ヲ今囘ノ改正ニ依ッテ敏
廢シマスルガ故ニ、所謂此點ノ調和ヲ取ラ
ンガ爲ニ議員ノ員數ヲ增加スル必要ヲ認ム
ルノデアリマス(拍手)由谷君御存知ノ如ク、
府縣會議員ニハ決シテ級別選擧ハナカツタ
ノデアル、其級別選舉ヲ廢スルト同時ニ、
所謂各階級ヲ代表スル所ノ議員ノ定數ヲ增
加スルコトニ依ッテ、初メテ被選擧權擴張
ノ意味ヲ成スノデアリマス、此點ニ於キマ
シテ明敏ナル由谷君ガ、此點ヲ御察シナカツ
タト云フコトハ頗ル遺憾ニ存ジマス、又甚
ダ些々タル事デアリマスガ、由谷君ハ法文
ノ假名遣ヲ直シタ事ニ付テ御批評ニナリ
マシタ、斯ノ如キ事ハ赤間君ノ唱ヘラレタガ
如ク、必シモ文法ニ拘泥スル必要ハナイノ
デアル、數十年來慣レ來ッタ所ノ法律用字
例ニ依シテ-法ノ全體ヲ通ジタル所ノ用
字例ニ從フト云フコトハ當然ノ事デアル
(「ヒヤ〓〓」拍手)若モ所謂宇典ニ拘泥スル
ト云フコトデアルナラバ第一貴方ノ御名前
ヲ「ユタニ」君ト云フノハ間違ッテ居ルノデ
アル、若シ貴方ヲ「ヨシタニ」ト云フナラバ
貴方ハ之ニ奇怪ナル返辭ヲ爲サルデアラウ
左樣ナ事ヲ申サルヽモノデハアリマセヌ
(拍手)世ノ中ニ通ッタ事ハ通ノタ事デ宜シイ、
法律モ之ヲ認メルノガ當然デアル其次ニ
私ガ申上ゲタイコトハ市町村長ノ公民選
擧此公民選擧ニ伴ッテ法律上相當ノ權限
ヲ附與シテナイト云フコトニ言及セラレマシ
タ只今加藤君モ其點ヲ述ベラレマシタ、
併ナガラ吾々ノ信ズル所ニ依リマスレバ
斯ノ如キ法律上ノ權限ヲ振舞フト云フコトハ
既ニ遲イノデアル吾々ハ民衆ノ公正ナル
判斷ト正義ニ基ク所ノ力ニ依シテハ、其識見
高邁ナル者ヲ市長ナリ町村長ニ選ブコトニ
ナッタナラバ町村長ノ職務ハ立派ニ成シ遂
ゲラレルト信ズルノデアリマス(「ヒヤヒ
ヤ」拍手)町村長ニハ警察權モ附與シテアリ
マセヌ、又原案執行ノ規定モアリマセヌ、
ソレハ御說ノ通リデアル、併ナガラ民衆ノ
公正ナル判斷ハ警察力ニモ勝ルノデアル、
民衆ノ熱誠ナル所ノ判斷ハ兵力ニモ勝ルノ
デアリマス(拍手)諸君ハ此點ヲ考ヘズシテ、
徒ニ法律ノ枝葉末節ニ心ヲ留メラレテ居ル
ト云フコトハ甚ダ吾々ノ遺憾トスル所デ
アルソレカラ更ニ只今加藤君ノ御說ニ依
リマシテ、本黨ノ諸君モ此修正ニ御滿足ニ
ナッテ居ラヌヤウデアル、然ラバ本黨ニ於カ
レマシテモ、飜然トシテ吾々ノ努力ニ依ッテ
修正ヲ致シタル所ノ此修正ノ全部ヲ鵜呑ニ
爲サッタ方ガ宜イデハナイカ(拍手)此際ニ於
テ時間ガ無カッタトカ、色ニノ事ヲ言ッテカ
ラニ之ニ辯明ヲ附セルト云フコトハ、國
民ヲ欺クモノナリト信ズルノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」、拍手)ソレカラ郡ノ名稱ニ付
テ言及セラレマシタガ、此點ニ付テハ我國
ノ郡ノ歴史ハ頗ル古イノデアンテ、現在一
万二千餘ノ町村ノ中デ、郡ノ名稱ヲ除リマ
シテ直ニ世間ニ通リ得ル町村ト云フモノハ
サウ餘計アリマセヌ、僅ニ町デアルトカ
大キナル村ト云フヤウナ所ハ或ハ郡ノ名
稱ヲ除ノモモ通ズルカモ知レマセヌガ、其
他ノ大多數ハ郡ヲ省キマシタナラバ決シ
テ世間ニ通ラナイノデアリマス、サウシテ
永久ニ施行スベキ所ノ府縣制ノ中ニ、從來
郡長ノ管轄タル區域、若クハ島司ノ管轄夕
ル區域ト稱スルガ如キ、長タラシイ文字ヲ
用キテ永ク存續シテ置キマシテモ、十年
二十年ノ末ニ行キマシタラ、誰モ了解スル
者ハ無イト信ズルノデアリマス(「ヒヤヒ
ヤ)私共ハ此際ニ於テ地方制度ノ如キモノ
ハ、左樣ニ頻繁ニ改正スベキモノデハナイ、
相當ノ機會ニ於テハ出來ルダケ十分徹底ス
ル所ノ改正ヲ施シマシテ、サウシテ地方人
民ニ其運用ヲ慣熟セシメルノ必要ガアル
今日一條改メ、明日又數箇條ニ修正ヲ加ヘ
テ、サウシテ何時モ改正ニ改正ヲ加ヘルト
云フコトハ、國民ヲシテ不安ノ域ニ陷ル
モノデアル、故ニ吾々ハ玆ニ十分ノ努力ヲ
以テ本案ヲ修正シテ、敢テ諸君ノ御協賛ヲ
求メル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=85
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086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ採決ニ入リマスガ、之ン
先ダッテ一言致シマス、赤間君ノ修正案モ、
土屋君ノ修正案モ、共ニ委員長報告ノ修正
ト共通ノ點ハアリマセヌ、玆ニ採決ノ順序
ニ付テ御諮リヲ致シタイト思ヒマスガ、先
ヅ府縣制中改正法律案、市制中改正法律案、
町村制中改正法律案、北海道會法中改正法
律案、此四案ヲ一括シテ採決ヲ致シマス、
而シテ此四案ニ付キマシテハ亦間君外九名
提出ノ修正案ガアリマス、其外ニ市制中改
正法律案外二案ニ付キマシテハ土屋〓三
郞君提出ノ修正案ガアリマス、其外ニ委員
長報告ノ修正デアリマス、之ヲ順次赤間君
ノ修正、土屋君ノ修正、委員長ノ報告、斯
ウ云ワ順序ニ依ッテ之ヲ採決ヲ致シマス
次ニ北海道地方費法中改正法律案ノ採決ヲ
致シ、最後ニ水利組合法中改正法律案、徵
發令中郡及郡長ニ關スル規定ノ適用ニ關ス
ル法律案、此二案ヲ一括シテ順次採決致シ
マス之ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=86
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087・粕谷義三
○議長(柏谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ其通リノ順序ヲ取シテ採決致シマ
ス-先ツ府縣制中改正法律案、市制中改
正法律案町村制中改正法律案、北海道會法
中改正法律案、此四案ニ對シマスル赤間君
外九名御提出ノ修正ニ御同意ノ諸君ノ起立
ヲ求メマズ
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=87
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088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマス、
仍テ修正案ハ否決セラレマシタ-次ニ市
制中改正法律案外二案ニ對スル土屋〓三郎
君御提出ノ修正ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=88
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089・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマス、
仍テ修正案ハ否決セラレマシタ-最後ニ
委員長報告ノ修正ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=89
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090・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ委員長報告修正通リ決定致シマシ
タ、次ニ委員長報告ノ修正ノ箇所以外ハ原
案通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=90
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091・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍ア其通リ決シマシタ-次ニ北海道
地方費法中改正法律案ニハ赤間君外九名
御提出ノ修正ガアリマス其修正ニ賛成ノ
諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=91
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092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマス、
仍テ修正案ハ否決サレマシタ-次ニ本案
ノ委員長報告ハ可決デアリマス、之ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ一ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=92
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093・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ委員長ノ報告通リ可決致シ
マシタ、最後ニ水利組合法中改正法律案、
徵發令中郡及郡長ニ關スル規定ノ適用ニ關
スル法律案、右二案ハ何レモ委員長報告ハ
可決デアリマス、兩案ヲ一括シテ委員長ノ
報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=93
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094・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、兩案トモ委員長報告ノ通リ可決致シマ
シタ、是ニテ七案ノ第二讀會ヲ終局致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=94
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095・作間耕逸
○作間耕逸君 直ニ第三讀會ヲ開カレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=95
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096・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=96
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097・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ七案ノ第三讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
府縣制中改正法律案第三讀會
市制中改正法律案第三讀會
町村制中改正法律案第三讀會
北海道會法中改正法律案第三讀會
北海道地方費法中改正法律案第三讀會
水利組合法中改正法律案第三讀會
徵發令中郡及郡長ニ關スル規定ノ適用
ニ關スル法律案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=97
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098・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ノ議決通リ、可決確
定致シマス-議事ノ進行ニ關シテ發言ヲ
求メラレテ居リマス、之ヲ許シマス-山
本芳治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=98
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099・山本芳治
○山本芳治君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ發言ヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=99
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100・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=100
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101・山本芳治
○山本芳治君 本月十三日ノ本會議ニ於ケ
ル本員ノ演說中、本黨ノ諸君ニ御考慮ヲ煩
シタイト中シタ言說ノ中ニ、若シ不穩當ノ
言葉ガアリマスレバソレハ決シテ惡意カ
ラ出タモノデハアリマセヌ而シテ議場ガ
騷々シカッタ爲ニ、論旨ガ徹底シナカッタ
カモ知レマセヌガ、當日ノ速記錄ヲ御覽下
サイマシタナラバ、本員ノ意見ノ在ル所ハ
十分ニ御諒承下サルト思フノデアリマス一
言釋明致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=101
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102・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ニ日程第四十八乃
至五十ハ同一委員ニ付託シタ議案デアリマ
スカラ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=102
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103・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第四十八日本勸業銀行法中
改正法律案、日程第四十九、農工銀行法中
改正法律案、日程第五十、北海道拓殖銀行
法中改正法律案、右三案ヲ一括シテ一讀會
ノ續ヲ開キマス-委員長山本厚三君
第四十八日本勸業銀行法中改正法律
案(政府提出貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一日本勸業銀行法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
大正十五年三月十五日
日本勸業銀行法中
改正法律案委員長
山本厚三
衆議院議長粕谷義三殿
第四十九農工銀行法中改正法律案
(政府提出貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一農工銀行法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月十五日
農工銀行法中改
正法律案委員長
山本厚三
衆議院議長粕谷義三殿
アクスル
第五十北海道拓殖銀行法中改正法律
案(政府提出貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一北海道拓殖銀行法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)
右本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致候
此段及報告候也
大正十五年三月十五日
北海道拓殖銀行法中
改正法律案委員長
山本厚三
衆議院議長粕谷義三殿
〔山本厚三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=103
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104・山本厚三
○山本厚三君 日本勸業銀行法中改正法律
案外二件ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ
御報告致シマス、本案ノ改正ノ要旨ニ付テ
ハ改メテ申上ゲル迄モアリマセヌガテ、
是ハ省略致シマスガ、之ニ對シマシテハ二
日間ニ亙ノテ委員諸君カラ非常ニ熱心ナル
御質問ガアリマシテ、其御質問ハ非常ニ多
岐ニ涉リマスルガ、其二三ダケハ如何ニ時
間切迫ト雖モ報告ヲ致サナケレバナラヌカ
ト考ヘマスカラ、暫時御〓〓ヲ煩シマス、
其本案ニ直接ニ關係ノアリマスル希望ノ
點卽チ質問ノ要點ハ今回ノ改正ニハ非
常ニ有益ナ改正ガアルケレドモ、其中ニ水
產組合ニ對スル所ノ資金供給ノ途ガ開イテ
ナイ是ハ政府ニ於キマシテハ水產組合ト
云フモノハ特ニ仕事ヲシテ居ラヌ、又其組
合ニ組合費强制徴收ノ權利モ與ヘテ居ラ
ヌ、故ニ水產組合トカ或ハ漁業組合ニ對シ
テハ特ニ此途ガ與ヘテアルガ、水產組合
ニ對シテハ之ヲ除外シタト云フ御意見デア
リマスガ、實際ノ模樣ヲ調ベテ見ルト、水
產組合ニ於テモ可ナリ仕事ヲ致シテ居ル
又資本ヲ融通スル途ヲ付ケレバ十分ナル仕
事ガ出來ルノデアリマス、此途ガ缺タテ居
ルガ故ニ、特ニ此仕事ガ少イノデアル、又
此質問者ノ要旨ハ日本ニ於ケル水產ノ養
殖ト云フ事ニ付テハ非常ニ〓究ガ足リナ
イ、之ニ就テハ殊ニ水產組合ニ資金供給ノ
途ヲ設ケテ、一層積極的ニ產業ノ發展ヲ圖
ラナケレバナラヌト云フノが趣意デアリマ
シテ、是ハ政府ニ於テモ其趣意ニ付テ諒水
サレタ次第デアリマス今一ツ直接關係ノ
アリマスルノハ是等ノ幾多ノ新シキ金融
ノ途ヲ開イタ爲ニ、サナキダニ此產業方面
ニ資金ガ少カッタモノガ、一層此供給ノ途ガ
少クナッテ、農村ノ資金ニ對シテ缺乏ヲ來
ス虞ハナイカ、斯ウ云フ事ニ付テ可ナリ熱
心ニ質問ヲザレマシタガ、之ニ就テ政府ハ
是等ノ今囘資金ヲ新ニ供給シマス所ノ三ツ
ノ組合、足等ノモノハ矢張從來モ是等ノ銀
行ニ於テ資金ヲ供給シ來タタノノ同一性
質ノモノデアッテドウシテモ此際是等ノモ
ノニハ資金供給ノ途ヲ與ヘナケレバナラ
又卽チ農村資金ト云フモノト同一ノ意味
ニ於テ之ヲ許シタノデアル斯樣ナル御答
辯デアリマシタ、其他特殊銀行ニ對シテ金利
ガ非常ニ高イ、例ヘバ北海道拓殖銀行ノ如
キニ於テハ一割近キ金利ヲ持ッテ居ルガ
ラシテ、之ニ對シテハ政友會ノ方カラノ御
質問デアリマスガ、割增債劵ノ發行ヲ許シ
テ、現在ノ土功組合等ニ一割近キ資金ヲ供
給シテ居ルカラ、是等ニ對シテハ割增債劵
デモ許シタナラバ低利ヲ供給スルコトガ
出來ルデアラウト云フ熱心ナル御希望兼御
意兄ガアリマシタガ、之ニ就テハ割增債劵
ハ餘程特殊ナ場合デナケレバ之ヲ許スコト
ハ出來ヌ、斯樣ナ場合ニ割增債劵ヲ許スコ
トハ今日政府ハ許ス考ハナイト云フ御意
見デアリマシタ其他二三ノ市要ナル御質
問ハアリマシタガ、是ハ速記錄ニ於テ諸君
ノ御覧ヲ願ヒタイト考ヘマス、斯樣ナ質問
應答ノ結果討論ニ入リマシテ、滿場一致ヲ
以テ原案ヲ可決致シマシタ、但シ本黨ノ佐
藤君ヨリ、又憲政會ノ岡本君ヨリ此水產組
合ニ對シテハ、ドウシテモ此金融ノ途ヲ開ク
必要ガアルカラ、政府ニ於テハ十分調査ヲ
致シテ適當ノ時期ニ其途ヲ與ヘテ貰ヒタ
イ、是ハ希望條件デハアリマセヌガ、單
ニ希望ヲ述べラレマシタ、政府モ之ニ對シ
マシテハ十分考慮ヲスルト云フ御答デア
リマシタ、斯樣ニ致シマシテ、滿場一致無
修正デ可決致シタ次第デアリマスアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=104
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105・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質問ノ通告ガアリマ
セヌカラ、直ニ採決ヲ致シマス三案ノ第
二語會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=105
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106・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス仍テ第一一讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=106
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107・作間耕逸
○作間耕逸君 三案ヲ一括シテ直ニ第二讀
會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報
告通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=107
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108・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニハ御
異議ナイト認メマス、仍テ直ニ三案ノ第二
讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
日本勸業銀行法中改正法律案
第一語會(確定議)
農工銀行法中改正法律案
第二讀會(確定議)
北海道拓殖銀行法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=108
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109・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス仍テ第三讀會ヲ省略シテ、三案ト
モ委員長ノ報告通リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=109
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110・作間耕逸
○作間耕逸君 殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ
動議ヲ提出致シマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=110
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111・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 作間君ノ動議ニ御異
議ナシト認ノマス、次回ノ日程ハ公報ヲ以
テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致シ
マス
午後七時五十八分散會
衆議院議事速記錄第二十九號中正誤
頁段行誤正
金鵄勳章年金鵄勳章年
七七〇一六金令中改正金ニ關スル
法律案法律案
衆議院議事速記錄第三十號中正誤
頁段行誤正
七九一四六摘約摘譯
同同-一人間者
同同二〇專賣局政府
七九二一九ノ販賣人ニ的元賣捌人
對シテニシテ
同同四二二十分四十分
同二三五代耕物對抗物
同三二三一部六點
同一-自由需要
同五其他ノ衍
同同一同同四一七験、鹽產量ハ
八〇七五太活塘沽
同六太沽塘沽発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03119260316&spkNum=111
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