1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正十五年三月二十三日(火曜日)午後一時二十八分開議
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議事日程 第三十四號
大正十五年三月二十三日
午後一時開議
第一 (第一號)大正十五年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (第二號)大正十五年度歳入歳出總豫算追加案
第三 (特第一號)大正十五年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第四 (第三號)大正十五年度歳入歳出總豫算追加案
第五 (特第二號)大正十五年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第六 獸醫師法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 民事訴訟費用法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 商事非訟事件印紙法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十一 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十二 人事訴訟手續法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十三 競賣法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十四 民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十五 破産法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十六 明治三十二年法律第五十號中改正法律案(外國人の署名捺印及無資力證明に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十七 刑事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十八 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十九 産業組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第二十一 民事訴訟法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 民事訴訟法中改正法律施行法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 暴力行爲等處罰に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 王公族の權義に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 土地賃貸價格調査法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 移住組合法案(樋口秀雄君外七名提出) 第一讀會
第二十七 漁業法中改正法律案(谷原公君外二名提出) 第一讀會
第二十八 漁業財團抵當法中改正法律案(中村嘉壽君提出) 第一讀會
第二十九 民事訴訟法中改正法律案(谷原公君外一名提出) 第一讀會
第三十 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(望月圭介君外二十二名提出) 第一讀會
第三十一 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(林田龜太郎君外一名提出) 第一讀會
第三十二 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(東武君外二名提出) 第一讀會
第三十三 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(廣瀬徳藏君外二名提出) 第一讀會
第三十四 治安警察法中改正法律案(清瀬一郎君外一名提出) 第一讀會
第三十五 治安警察法中改正法律案(安藤正純君外三名提出) 第一讀會
第三十六 治安警察法中改正法律案(田中善立君外二名提出) 第一讀會
第三十七 大阪市に關する法律案(廣瀬徳藏君外十一名提出) 第一讀會
第三十八 神戸市に關する法律案(砂田重政君外三名提出) 第一讀會
第三十九 名古屋市に關する法律案(田中善立君外二名提出) 第一讀會
第四十 京都市に關する法律案(森田茂君外六名提出) 第一讀會
第四十一 横濱市に關する法律案(平沼亮三君外二名提出) 第一讀會
第四十二 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(安藤正純君外四名提出) 第一讀會
第四十三 寺院現境内地無償下戻に關する法律案(福井甚三君外四名提出) 第一讀會
第四十四 古社寺保存法中改正法律案(田中萬逸君外四名提出) 第一讀會
第四十五 會計檢査院法中改正法律案(武藤山治君外一名提出) 第一讀會
第四十六 牧野法案(八田宗吉君提出) 第一讀會
第四十七 造林助成法案(東武君外十名提出) 第一讀會
第四十八 違警罪即決例中改正法律案(横山勝太郎君提出) 第一讀會
第四十九 違警罪即決例廢止法律案(原夫次郎君外三名提出) 第一讀會
第五十 家祿引直處分法案(隅田豐吉君外五名提出) 第一讀會
第五十一 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(福田五郎君外七名提出) 第一讀會
第五十二 北海道拓殖銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第五十三 日本勸業銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第五十四 農工銀行法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第五十五 煙草專賣法中改正法律案(森恪君外九名提出) 第一讀會
第五十六 著作權法中改正法律案(内ヶ崎作三郎君外三名提出) 第一讀會
第五十七 特別都市計畫法中改正法律案(關直彦君外八名提出) 第一讀會
第五十八 借家法中改正法律案(横山勝太郎君外一名提出) 第一讀會
第五十九 北海道農地特別處理法案(丸山浪彌君外六名提出) 第一讀會
第六十 産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外五名提出) 第一讀會
第六十一 果物罐詰原料砂糖戻税法案(中村嘉壽君外十一名提出) 第一讀會
第六十二 大正十二年法律第三十三號中改正法律案(工場法中改正の件)(清瀬一郎君提出) 第一讀會
第六十三 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外二名提出) 第一讀會
第六十四 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(山口政二君外十二名提出) 第一讀會
第六十五 恩給法中改正法律案(丸山浪彌君外二名提出) 第一讀會
第六十六 恩給法中改正法律案(松實喜代太君外三名提出) 第一讀會
第六十七 恩給法中改正法律案(山口政二君外三名提出) 第一讀會
第六十八 大正十三年法律第二十四號中改正法律案(贅澤品等の輸入税に關する件)(高橋熊次郎君外二名提出) 第一讀會
第六十九 北海道御料拂下地の地租免除に關する法律案(一柳仲次郎君外九名提出) 第一讀會
第七十 土地收用法中改正法律案(廣瀬徳藏君外三名提出) 第一讀會
第七十一 金鵄勳章年金に關する法律案(佐藤實君外二名提出) 第一讀會
第七十二 金鵄勳章年金に關する法律案(古川清君外二名提出) 第一讀會
第七十三 蠶絲業法案(二木洵君提出) 第一讀會
第七十四 社交舞踏取締法案(柏田忠一君外一名提出) 第一讀會
第七十五 輸出羽二重精練業法中改正法律案(森田金藏君提出) 第一讀會
第七十六 議院法中改正法律案(中林友信君外三名提出) 第一讀會
第七十七 北海道御料拂下地免租年期に關する法律案(東武君外三名提出) 第一讀會
第七十八 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(佐々木春作君外四名提出)
第七十九 蠶絲局設置に關する建議案(武藤金吉君外四名提出)
第八十 高等師範學校設置に關する建議案(佐々木春作君外五名提出)
第八十一 臼井鳥栖間鐵道敷設に關する建議案(赤間嘉之吉君外三名提出)
第八十二 肥前山口諫早間鐵道速成に關する建議案(則元由庸君外六名提出)
第八十三 八戸久慈間鐵道速成に關する建議案(柏田忠一君提出)
第八十四 警察官の待遇改善に關する建議案(本田義成君提出)
第八十五 左澤荒砥間鐵道速成に關する建議案(西方利馬君外五名提出)
第八十六 國有林野所在府縣市に町村に對し交付金下付に關する建議案(八田宗吉君外二名提出)
第八十七 馬政振作に關する建議案(八田宗吉君提出)
第八十八 京都市に國立音樂學校設置に關する建議案(森田茂君提出)
第八十九 越美線速成に關する建議案(猪野毛利榮君外一名提出)
第九十 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(蟻川五郎作君外二名提出)
第九十一 二見港三田間鐵道敷設に關する建議案(多木久米次郎君提出)
第九十二 帝國軍人後援會國庫補助に關する建議案(加藤政之助君外三名提出)
第九十三 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(中林友信君外五名提出)
第九十四 金鵄勳章竝旭日章年金改正即行に關する建議案(中林友信君外九名提出)
第九十五 養蠶組合法制定に關する建議案(山田道兄君提出)
第九十六 猿投神社昇格に關する建議案(岡本實太郎君提出)
第九十七 高等蠶絲學校建設に關する建議案(岡本實太郎君外二名提出)
第九十八 若松市に高等師範學校設置に關する建議案(町野武馬君外一名提出)
第九十九 自營林業奬勵に關する建議案(村山喜一郎君提出)
第百 廣濱鐵道速成に關する建議案(河野曉君外二名提出)
第百一 澁川長野原間鐵道速成に關する建議案(木檜三四郎君提出)
第百二 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(長田桃藏君外四名提出)
第百三 福井縣三國港築港竝竹田川改修に關する建議案(熊谷五右衞門君提出)
第百四 養蠶組合法制定に關する建議案(加藤知正君外三名提出)
第百五 興部濱頓別間鐵道速成に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百六 北海道に高等學校設置に關する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第百七 留萌羽幌間鐵道速成に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百八 高等工業學校設置に關する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第百九 小頓別枝幸港間鐵道速成に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百十 宗谷線恩根内咲來間に停車場設置に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百十一 根北鐵道速成に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百十二 北海道甜菜糖業補助法制定に關する建議案(小池仁郎君外七名提出)
第百十三 有珠岳洞爺湖及登別温泉を中心とする國立公園設定に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百十四 余市漁港修築に關する建議案(澤田利吉君外六名提出)
第百十五 鴛泊港修築に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百十六 廣尾港修築速成に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百十七 釧路港海陸連絡に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百十八 室蘭港海陸連絡施設速成に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百十九 根室港修築工事に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百二十 鐵道敷設法中改正に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百二十一 苫小牧廣尾間鐵道速成に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百二十二 釧路網走間鐵道速成に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百二十三 京極紋鼈間及京極壯瞥間鐵道速成に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百二十四 高等師範學校設置に關する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第百二十五 小樽港及函館港に港務部設置に關する建議案(山本厚三君外六名提出)
第百二十六 野岩羽鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君外二名提出)
第百二十七 柳津小出間及只見古町間鐵道速成に關する建議案(八田宗吉君提出)
第百二十八 湖南鐵道建設に關する建議案(八田宗吉君提出)
第百二十九 林業金融に關する建議案(東武君外十名提出)
第百三十 國立公園調査機關設置に關する建議案(東武君外十名提出)
第百三十一 立木に關する法律改正に關する建議案(東武君外十名提出)
第百三十二 金鵄勳章旭日章年金改正に關する建議案(古川清君外二名提出)
第百三十三 高田市に高等農林學校設置に關する建議案(富永孝太郎君外三名提出)
第百三十四 磐梯山猪苗代湖を中心とする國立公園設定に關する建議案(八田宗吉君外一名提出)
第百三十五 國有林野法中改正に關する建議案(八田宗吉君提出)
第百三十六 川俣浪江間鐵道建設速成に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第百三十七 國有林野不要存置林處分に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第百三十八 福島市に國立倉庫設立に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第百三十九 泉崎岩沼間改良工事速成竝宇都宮福島間複線工事速成に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第百四十 福相鐵道速成に關する建議案(大島要三君外六名提出)
第百四十一 婦人參政に關する建議案(坂東幸太郎君外三名提出)
第百四十二 鳥栖臼井間鐵道敷設に關する建議案(大里廣次郎君外二名提出)
第百四十三 東京帝國大學農學部附屬農業教員養成所獨立に關する建議案(山本愼平君外一名提出)
第百四十四 北海道河川治水工事速進に關する建議案(神部爲藏君外六名提出)
第百四十五 岩内築港速成に關する建議案(澤田利吉君外六名提出)
第百四十六 無線電信の裝置に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百四十七 京濱運河速成に關する建議案(湯淺凡平君提出)
第百四十八 實業補習教育振興に關する建議案(高橋熊次郎君外四名提出)
第百四十九 越美線速成に關する建議案(谷口宇右衞門君外二名提出)
第百五十 受驗資格撤廢に關する建議案(山下谷次君提出)
第百五十一 瀬戸内海を中心とする國立公園設定に關する建議案(山下谷次君外一名提出)
第百五十二 野岩羽鐵道速成に關する建議案(高橋元四郎君外二名提出)
第百五十三 日足鐵道速成に關する建議案(高橋元四郎君外一名提出)
第百五十四 日光國立公園設定に關する建議案(高橋元四郎君外一名提出)
第百五十五 沖繩縣救濟に關する建議案(宜保成晴君外十六名提出)
第百五十六 樣似漁港修築に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百五十七 羽幌下沙流別間鐵道敷設速成に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百五十八 壽都漁港修築速成に關する建議案(澤田利吉君外六名提出)
第百五十九 船舶村に避難港築設に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百六十 名寄羽幌間鐵道敷設速成に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百六十一 京濱運河速成に關する建議案(戸井嘉作君外一名提出)
第百六十二 蠶絲局設置に關する建議案(樋口秀雄君外十六名提出)
第百六十三 京濱運河速成に關する建議案(若尾幾太郎君外一名提出)
第百六十四 新町小海間鐵道建設に關する建議案(井本常作君外四名提出)
第百六十五 下仁田三反田間鐵道建設に關する建議案(井本常作君外四名提出)
第百六十六 金澤市に鐵道局設置に關する建議案(佐藤實君外四名提出)
第百六十七 出雲大社宍道湖及中海を中心とする國立公園設定に關する建議案(原夫次郎君外二名提出)
第百六十八 福島縣松川浦に避難港兼漁港築設に關する建議案(佐藤富十郎君外三名提出)
第百六十九 金澤市に高等師範學校設置に關する建議案(佐藤實君提出)
第百七十 遠信鐵道速成に關する建議案(山本勝次君外一名提出)
第百七十一 越中島線敷設速成に關する建議案(太田信治郎君外二名提出)
第百七十二 拓殖省設置に關する建議案(清水留三郎君外二名提出)
第百七十三 民間航空事業促進の爲政府の施設に關する建議案(安藤正純君提出)
第百七十四 温泉法規制定に關する建議案(平川松太郎君外三名提出)
第百七十五 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(作間耕逸君外二名提出)
第百七十六 鶴岡、羽前高松間鐵道敷設に關する建議案(石川長右衞門君外七名提出)
第百七十七 酒田眞室川間鐵道敷設に關する建議案(齋藤金吾君外一名提出)
第百七十八 鶴岡市に高等師範學校新設に關する建議案(齋藤金吾君外一名提出)
第百七十九 荒砥左澤間鐵道速成に關する建議案(石川長右衞門君外八名提出)
第百八十 庄原區裁判所管轄區域變更に關する建議案(渡邊伍君外二名提出)
第百八十一 貴生川加茂間鐵道速成に關する建議案(高井商二君外三名提出)
第百八十二 淡水魚族増殖施設に關する建議案(藤澤萬九郎君提出)
第百八十三 關ケ原木ノ本間鐵道速成に關する建議案(藤澤萬九郎君外二名提出)
第百八十四 北海道治水に關する建議案(岡田伊太郎君外三名提出)
第百八十五 東京都制急施に關する建議案(作間耕逸君外二十三名提出)
第百八十六 北海道甜菜糖業補助に關する建議案(松實喜代太君外三名提出)
第百八十七 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(松岡俊三君提出)
第百八十八 帝國在郷軍人會國庫補助に關する建議案(池田泰親君提出)
第百八十九 衞生組合法制定に關する建議案(大里廣次郎君外三名提出)
第百九十 京都高等蠶業學校に製絲科設置に關する建議案(川崎安之助君外一名提出)
第百九十一 拓殖省設置に關する建議案(牧山耕藏君外八名提出)
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
政治連動ノ爲金品供與ノ制限ニ關スル法
律案
提出者
尾崎行雄君關直彥君
林田龜太郞君湯淺凡平君
〓瀨一郞君增田義一君
永田新之允君佐々木平次郞君
畔田明君山口政二君
政治結社加入勸誘方法ノ制限ニ關スル法
律案
提出者
關直彥君尾崎行雄君
林田龜太郞君湯淺凡平君
〓瀨一郞君增田義一君
永出新之允君佐々木平次郞君
畔田明君山口政二君
議員ノ職務ニ關スル法律案
提出者
增田義一君尾崎行雄君
關直彥君林田龜太郞君
湯淺凡平君〓瀨一郞君
永田新之允君佐々木平次郞君
畔田明君山口政二君
大正十五年度歳入歳出總豫算追加案ニ對
スル修正案
提出者
磯部尙君秦豐助君
森恪君鈴木隆君
加藤知正君牧野良三君
岡田伊太郞君東武君
小川平吉君若宮貞夫君
黑住成章君木暮武太夫君
板野友造君土井權大君
植原悅二郞君西方利馬君
杉宜陳君岸谷次君
山崎達之輔君靑柳郁次郞君
倉元要一君井上孝哉君
嶋居哲君
羽犬塚、宮原、竹田間鐵道敷設ニ關スル
建議案
提出者
有馬賴寧君山崎達之輔君
坂梨哲君山内範造君
中村〓造君
細民秀才子弟高等専門〓育國費補助ニ關
スル建議案
提出者佐藤實君
富山市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者
寺島權藏君高見之通君
石坂豊一君
黑部峽谷ニ國立公園設置ニ關スル建議案
提出者寺島權藏君
魚津漁港兼避難港修築ニ關スル建議案
提出者寺島權〓君
漆樹栽培癸勵ニ關スル建議案
提出者
佐藤實君寺島權藏君
町野武馬君
國有雜種財產處分二關スル建議案
提出者
大島要三君紺野九右衞門君
比佐昌平君菅村太事君
金澤安之助君中野寅吉君
佐藤富十郞君
福島猪苗代間鐵道建設ニ關スル建議案
提出者
大島要三君紺野九右衞門君
比佐昌平君金澤安之助君
中野寅吉君佐藤富十郞君
菅村太事君
稅務官ノ待遇改善ニ關スル建議案
提出者
大島要三君紺野九右衞門君
比佐昌平君金澤安之助君
菅村太事君中野寅吉君
佐藤富十郎君
警察官ノ待遇改善ニ關スル建議案
提出者
大島要三君紺野九右衞門君
比佐昌平君菅村太事君
金澤安之助君中野寅吉君
佐藤富十郞君
陸軍軍樂隊派遣所設置ニ關スル建議案
提出者
紺野九右衞門君比佐昌平君
菅村太事君中野寅吉君
金澤安之助君佐藤富十郞君
大島要三君田中万逸君
樺太地方制度ノ設定竝〓議院議員選舉法
施行ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君澤田利吉君
速記士法制定ニ關スル建議案
提出者
黑住成章君齋藤隆夫君
牧山耕藏君
薩哈嗹州撤兵ノ爲損害ヲ被リタル者ノ枚
済ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君一柳仲次郞君
藤井〓信君池田泰親君
中村嘉壽君佐々木平次郞君
砂田市政君寺島構藏君
五ヶ瀨川及大瀨川治水ニ關スル建議案
提出者
佐藤重遠君長峰與一君
陣軍吉君吉松忠敬君
永井作次君
生命保險制度改正ニ關スル建議案
提出者
岡田溫君荒川五郞君
有馬賴寧君
福井縣大野郡富田村ニ葉煙草假收納所設
置ニ關スル建議案
提出者猪野毛利榮君
尼港漁業者ノ損害救濟ニ關スル建議案
提出者佐々木平次郞君
(以上二月二十三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
下關漁港速成ニ關スル質問主意書
提出者秋田寅之介君
(以上三月二十三日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯言左ノ如シ
衆議院議員佐藤富十郞君提出蠶絲業ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議興藤澤萬九郞君外一名提出滋賀
縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再質問ニ
對スル答辯書
衆議院議員作間耕逸君外二名提出正米市
場法制定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員土井權大君提出農村様興ニ關
スル再質問ニ對スル答辯書
(以上三月二十三日受領)
蠶絲業ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月十三日
提出者佐藤富十郞
蠶絲業ニ開スル質問主意書
吾ク國ノ囂絲業ハ財政上經濟上重大ナル
問題ナルカ學者政治家實業家所有論客ノ
論旨ヲ閱スルニ大同小異ニシテ吾吾ノ期待
ニ反スルモノアルハ甚夕遺憾トスル所ナ
リ吾カ日本帝國ノ國際的經濟ヲ如何ニ處
埋スヘキヤハ大問題ナリト思フ現内閣諸
公ハ此ノ點ニ力ヲ致サルルコトハ感
謝スル所ナルカ本員ノ見ル所ハ貿易ノ逆
調卽チ入超ハ之ヲ如何トモスルコト能ハ
ス政府ハ此ノ點ニ大ナル犧牲ヲ拂ヒ輸出
品奬勵ヲ爲スコト急ナルカ如キモ未タ其
ノ目的ヲ達スルニ至ラス甚タ國家ノ爲遺
憾トスル所ナリ思フニ輸出品數種アリト
雖其ノ原料ハ輸入ニ依ル結果差引計算ニ
於テハ幾何ノ利スル所ナク隨テ輸入超過
ノ現狀ニアリ而シテ此ノ輸入超過ノ抑制
ヲ爲スカ爲諸種ノ關稅ヲ引上ケタルモ未
タ之ヲ抑制スル能ハス元來輸入輸出ノ關
係ハ水ノ低キニ依ルト同樣ニシテ容易ニ
人爲的ニ之ヲ如何トモスルコト能ハサル
ヘシ然レトモ關稅引上ニ依リ多少ノ輸入
防止ノ實現ヲ見ルコトアリトシテモ其
甚夕僅少ニシテ到底目的ヲ達スル能ハス
ト信ス故ニ吾カ國ハ善蠶國トシテ他外國
ノ追從ヲ許ササル帝國ノ特產品ニシテ現
ニ九億園以上ノ餘出アリ其レカ他ノ輸出
品ト異リ而モ一會社一事業家ノ手ニ成ル
モノニ非ス國民全體トモ謂フヘキ全ク獨
立獨步ノ生產品ニシテ尙且廣地ハ勿論由
間僻地ニ至ル迄全國的ニ適シ而モ春夏秋
共年中三度養蠶セラルルヲ以テ現ニ大正
五年頃ヨリ今日ニ至ル約倍額ノ輸出ヲ見
ルニ至レルヲ以テ見テモ實ニ吾カ國トシ
テハ輸出品中ノ殆ト其ノ半ヲ占メ尙且賣
レ行キノ益圓滑ニ行ハルル狀態ハ國家ノ
爲喜フヘキ次第ナリ亦近年人造絹絲ノ製
造盛ナル此ノ時ニ於テ些ノ障害ナク賣レ
行キ盛ナルヲ見ハ人造絹絲ト蠶絲ノ關係
ハ恰モ紡績絲ノ其ノモノト同樣毫も憂ウ
ル所ナク益隆盛ナラムトス然ルニ歷代ノ
內閣ハ此ノ養蠶ノ爲ニ國家ノ財政ヲ繫ク
ト稱シ乍ラ養蠶家ニ對シ製絲家ニ對シ如
何ナル補助及奬勵ヲ爲シツツアルカヲ〓
覈スルニ遺憾乍ラ何等ノ見ルヘキ保護獎
勵ヲ見ス唯徒ニ農業組合ヲ組織セシメ蠶
絲業組合ヲ組織セシメ產業組合ヲ組織セ
シメ中央會ヲ組織セシメ今亦蠶絲檢査法
ヲ制定シ一人ノ農民ニ對シ五箇ノ組合ヲ
組織シ其ノ費用ヲ養蠶家ニ支出セシメタ
ルノミニシテ何等保護奬勵ノ見ルヘキモ
ノナク却テ農民ヲ苦シムルモノノ如クハ
國家ノ爲甚タ遺憾ノ次第ナリ顧レハ農產
物ニハ米穀法アリ聞墾助成法アリ漁業ニ
ハ補助法アリ漁具及漁場抵當貸付法アリ
其ノ他種種ナル助成法ヲ爲シツツアルモ
養蠶家製絲家ニ向テハ前陳ノ如ク何等見
ルヘキ保護助成法ナキハ甚タ遺憾トスル
所ナリ依テ本員ハ左ノ方法ニ依リ養蠶「永
及製絲家ニ資金ノ融通ヲ爲シ大ニ養蠶ヲ
獎勵シ現下ノ生絲貿易ノ上ニ顯ハルル九
億圓ノ倍額十八億ニモ達セムトスル目的
ヲ以テ政府ハ大ナル努力ヲ吝マス此ノ點
ニ於テハ止ムナクムハ公債ヲ發行シ大ニ
資金ノ融通ヲ爲スヘキモノト信スルカ政
府ハ如何ナル方針ナリヤ御答辯アラムコ
トヲ乞フ
養蠶家ニ對シテハ町村長ノ證明ニ
據リ養蠶組合ニ對シテ年三分以內ノ
利子ヲ以テ成繭ノ賣拂期迄之ヲ貸付
ケルコト其ノ金高ハ二億圓卽チ養蠶
家一戶當リ百圓ノ見込ナルカ政府ノ
所見如何
二製絲家ニ對シテハ銀行ヲ介在シ成
繭買入高ノ三割ニ相當スル金額ヲ利
子五分以内ニテ政府ハ之ヲ貸付クル
コト此ノ金高約二億圓ノ見込ナルカ
政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十五年三月二十三日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員佐藤富十郞君提出蠶絲業ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員佐藤富十郞君提出蠶絲業ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
→養蠶業者ニ對スル金融ニ付テハ質問者
ノ意見ノ如キ方法ハ實行シ難シト認ム
本問題ハ他ノ一般農村金融ト關聯シテ
同時ニ之ヲ考慮スルヲ適當トシ現在ニ
於テハ產業組合ノ組織、日本勸業銀行、
農工銀行、產業組合中央金庫等ノ機關
ヲ利用シ其ノ便宜ヲ圖リツツアル次第
ナルモ今後之等機關ノ機能及利用方法
等ニ付テハ一層〓究ヲ進メ金融ノ改善
ト圓滑トヲ圖ラムトス
製絲業者ニ對スル金融ニ付テハ政府ハ
其ノ改善ヲ圖ル要アルモ質問者ノ意見ノ
如キ方法ハ實行シ難シト認ム現在製絲
金融ノ圓滑カ阻害セラルルハ主トシテ
一般ニ製絲業ハ投機的ニシテ危險多キ
事業ト認メラルルコト事業經營ノ規
模小ニシテ經營者ノ資力薄弱ナルモノ
多ク從テ金融業者ニ對スル信用ヲ高ム
ルニ遺憾アルコト、短期間ニ多額ノ資
金ノ融通ヲ必要トスルコト、無擔保ノ
貸付ヲ受クル場合多キコト等ニ職由
スルモノト認メラルルヲ以テ斯業ニ對
スル金融ノ圓滑ヲ期スル爲ニハ之等諸
點ノ改善ヲ必要トスヘシ政府ハ玆ニ鑑
ミル所アリ共同繭倉庫及共同乾蘭装置
ノ助成、生絲檢査所附屬生絲絹物倉庫ノ
建設等ニ依リ繭及生絲ヲ擔保トスル金融
ノ便ヲ圖ラムトシツツアル次第ニシテ
將來ニ於テモ更ニ適當ナル方法ヲ考究
シ金融ノ改善ニ努メムトス
三尙政府ハ從來桑園ノ改良、繭質ノ改
良、蠶病ノ豫防取締、共同蘭倉庫及共同
乾繭装置ノ助成等ノ爲相當ノ奬勵、補助
又ハ助成ノ經費ヲ支出シツツアリテ銳
意蠶絲業ノ助長發達ヲ圖リツツアリ將
來ニ於テモ一層斯業ノ獎勵ニ努メムトス
右及答辯候也
大正十五年三月二十三日
大藏大臣濱口雄幸
農林大臣早速整爾
滋賀縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再
質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月十五日
提出者藤澤萬九郞
外一名
滋賀縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再
質問主意書
本年二月十六日附ヲ以テ提出シタル滋賀
縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル質問ニ對
シ三月一日附內務省閣地第四號ヲ以テセ
ル內務大臣ヨリノ答辯書ニ據レハ唯單ニ
「目下調査中」ノ一言ニシテ盡ク
然ルニ内務省行政課長ノ滋賀縣會議員ニ
語ル所ニ依レハ既ニ調査結了ノ上上司ノ
決裁ヲ求ムヘク其ノ一件書類ヲ回移セラ
レ又新聞紙ノ報スル所ニ依レハ或程度迄
禀伺ノ手續進行セルヤニ傳フ殊ニ滋賀縣
知事ハ既ニ其ノ筋ノ內諾ヲ得タリト稱シ
且許可指令ノ到ルハ近キニ在リト言明シ
頻ニ新候補地ノ實地路査ニ著手シツツア
リ以上ヲ綜合スレハ未タ大臣ノ決裁ヲ經
ルニ至ラサルモノナリト雖既ニ或種ノ諒
解ヲ與ヘラレタルモノト推斷セサルヲ得ス
然ルニ單ニ「目下調査中ナリ」ト辯スルハ
甚夕誠意ナキモノト認ム因テ政府ハ直シ
ク曩ニ質問シタル點ニ對シ其ノ調査セル
程度ニ於テ右ニ關スル所見ノ說明ヲ爲ス
ヘキ要アリト信ス
右及再質間候也
大正十五年三月二十三日
内閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員藤澤萬九郞君外一名提出滋賀
縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
內務省閣地第一二號
衆議院議員藤澤萬九郞君外一名提出滋
賀縣會ニ於ケル原案執行ニ關スル再質
問ニ對スル答辯書
滋賀縣ニ於ケル原案執行ノ件ハ曩ニ答辯
シタル通目下調査中ニ在リ
右及答辯候也
大正十五年三月二十三日
内務大臣若槻禮次郞
正米市場法制定ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月十六日
提出者作間耕逸
外二名
正米市場法制定ニ關スル質問主意書
正米市場ハ主要食糧品タル米穀ノ集
散ヲ圓滑ニシ米價ノ波瀾ヲ防止シ國民生
活ノ安定ヲ期スル必須ノ設備ニシテ精
算取引所トハ自ラ特異ノ機能ヲ有スル
獨立ノ機關ナリト信ス政府ノ正米市場
ニ對スル所見如何
二正米市場ノ賣買方法ハ現物延取引ノ
二種ニシテ共ニ實物ノ受渡ヲ目的トシ
〓算市場ノ差金ヲ目的トスル賣買トハ
其ノ趣ヲ異ニシ正米ヲ生產者ヨリ需用
者ニ導ク唯一ノ方法ナリト思惟ス政府
ノ所見如何
三正米市場ハ古キ緒由ト長キ沿革トヲ
有シ多年正米ノ配給價格ノ調節ニ貢獻
スルコト尠カラス又大正十二年大震火
災ニ際シ正米市場ノ如キハ直ニ其ノ米
廩ヲ開キ罹災民ノ救助ニ著手シ一面食
糧局ト協力シテ米穀ノ配給分配ニ當リ
完全ニ其ノ職責ヲ盡シタリ政府ハ其ノ
功績ヲ認ムルヤ
四政府ハ正米市場法案ヲ提出セムトシ
當業者ハ熱心ニ之ヲ歡迎シ輿論モ亦之
ニ共鳴シツツアルニ拘ラス米穀取引所
ハ自己營業上ノ立場ヨリ其ノ提案ニ難
色アリ爲ニ政府ハ其ノ提案ヲ躊躇シツ
ツアルヤニ仄聞ス苟モ政府多年ノ政策
遂行ニ當リテハ米穀取引所ノ意嚮ヲ顧
慮スル所ナク此ノ際速ニ同法案ヲ提出
シ其ノ制定ヲ速進スル意思ナキヤ
五正米市場法ノ制定ハ生產者ニ對シテ
ハ主要農產物タル米穀ヲ安全有利ニ販
賣スルノ途ヲ開キ延テハ農村振興トナ
リ需要者ハ配給ノ圓消購入ノ利便ナル
ニ依リ國民生活ノ安定ヲ得セシムルモ
ノト思惟ス政府ノ所見如何
六政府ハ此ノ際米穀取引所カ正米市場
ト協調シタル場合ハ省令ニ依リ之ヲ許
可セムトスルヤニ聞ク斯テハ多年國民
ノ要望タル正米市場法ノ制定ニ關シ支
障ヲ來スコトナキヤ政府ノ所見如何
右及質問候也
大正十五年三月二十三日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員作間耕逸君外二名提出正米市
場法制定ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員作間耕逸君外一一名提出正米
市場法制定ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
-政府ハ正米ノ賣買取引ヲ爲ス施設ヲ
整備スルノ必要アルヲ認ム
二政府ハ實物取引〓算取引共ニ米穀ノ
需給ニ必需ナル取引方法ナリト認ム
三政府ノ認可ヲ受ケタル正米市場ハ米
穀ノ需給ニ關シ相當寄與セルノ事實ハ
之ヲ認ム
四政府ハ米穀ノ賣買取引ヲ爲ス施設ヲ
整備スルノ必要アリト認メ目下調査中
ニ屬ス
h正米市場法ノ制定ニ付テモ目下調
查中ニ屬ス
六質問書記載ノ如キ趣旨ノ省令ニ付テ
ハ未タ何等決定シタルコト無シ
右及答辯候也
大正十五年三月二十三日
商工大臣片岡直溫
農村振興ニ關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月十六日
提出者土井權大
農村振興ニ關スル再質問主意書
今ヤ我カ國ノ農村ニ於テハ各種ノ社會問
題頻出シツツ有リ卽チ小作爭議ノ如キ或
ハ中地主ノ滅亡ノ如キ或ハ自作農ノ減退
ノ如キ或ハ不在地主ノ增加ノ如キ或ハ〓
年ノ離村ノ如キ或ハ農業勞働ヲ嫌忌スル
思想彌漫ノ如キ或ハ農民思想ノ惡化ノ如
キ其ノ顯著ナルモノトス而シテ是等ノ因
テ起ル所以ノモノハ農民生活ノ不安ト農
目經濟ノ不確立ニ歸セサルヘカラス故ニ
農村振興ノ根本義ハ農民生活ノ安定向上
ヲ計リ更ニ農村經濟ノ確立ヲ企ツルノ外
ニ途ナシ要ハ經濟問題ノ解決ヲ以テ先決
トシ然ル後ニ福神ノ作興民風ノ刷新ヲ行
ヒ堅實ニシテ展開セル農村ヲ形造ラサル
ヘカラス
數年以來農村問題ハ政治上重要ナル問題
トナリ今ヤ朝野共ニ深甚ナル注意ト熱誠
ナル〓究トヲ怠ラサルニ至リシハ慶賀ノ
至リニ堪ヘスト雖其ノ所說又ハ其ノ政策
ハ〓ネ消極的ニシテ未夕積極政策ノ域ニ
達セサルノ恨ナットセス例ヘハ昨年ノ議
會ニ於テ決定セラレタル米穀法ノ改正ノ
如キ農村振興基金二百五十萬圓設置ノ如
キ更ニ本年ノ議會ニ於テ論議セラレタル
小麥及烏卵ノ關稅引上ニ依ル農產物保護
政策ノ如キ地租免稅點設置ノ如キ義務〓
吉費國庫負擔三千萬圓增加ノ如キ自作農
維持創設ニ關スル利子補給ノ如キ其ノ他
胡麻鹽式各種ノ補助獎勵費ノ計上ノ如キ
ハ是レ悉ク農家負擔ノ輕減若ハ姑息ナル
金融ノ提供若ハ姑息ナル補助獎勵ノ方策
乃至農產物ノ價格維持第ニシテ所謂對症
療法ニ類スル消極政策ナリト謂ハサルヘ
カラス卽チ農民ノ活動又ハ農民團體ノ活
動又ハ國家ノ活動ニ依リ進取的ニ積極的
ニ生產增加ヲ計ルノ政策ニ非スシテ袖手
退嬰シテ單ニ法制ノ保護ニ依リテ農民ノ
懷合ヲ溫メムトスル溫罨法ニ依ル對症療
法ヲ施シツツ有ルモノト謂ハサルヘカラ
ス
若夫レ農村經濟ヲ不確立ニ陷ラシメタル
原因ヲ探求セムカ蓋經濟組織ノ變遷ニ歸
セサルヘカラス卽チ十八世紀後半ニ英國
ニ端〓ヲ發シ爾來文化世界ニ普及シタル
所謂產業ノ革命ハ學術ノ應用ニ依リテ生
產技術ノ進步トナリ交通ノ發達ニ依リテ
市場ノ擴大トナリ其ノ結果農民ノ單獨的
經濟組織ハ打破セラレタルモノトス我カ
國ニ於テモ日〓日露戰爭後彼等農民ノ家
內的仕事ハ資本家乃至大仕掛ノ機械ニ奪
取セラレ彼等ノ仕事ハ單ニ田畑ヲ耕スカ
又ハ養蠶其ノ他ノ副業ニ漸クニシテ有リ
ツキ孜孜營營トシテ生活費ヲ稼キ出スニ
止マルノミ卽チ明治維新前後ノ如ク自ラ
織リテ衣服ヲ造ル能ハス自ラ釀シタル濁
酒ヲ飮ム能ハス煙草ヲ自作シテ之ヲ嗜ム
ヲ禁セラレ悉ク日用品ハ自己ノ收獲シタ
ル米麥養蠶其ノ他副業日叩ヲ賣却シテ之ヲ
買ハサルヘカラス往往ニシテ收獲物ヨリ
得タル收入少クシテ買入ルル日用品ノ價
格高キコトノ不幸ヲ見ルノ場合多シ加フ
ルニ公課ニ攻メラレ社交費ニ攻メラレ醫藥
ノ料ニ攻メラレ子弟ノ〓育費ニ攻メラレ
其ノ他冠婚葬祭ノ費用ニ攻メラレ今ヤ遂
ニ農民トハ血ト油トヲ產業革命ノ爲ニ絞リ取
ラルルノ動物ナリトノ觀ヲ呈スルニ至リ
シモノトス然ルニ〓尙我カ國ノ農民ハ此
ノ如キノ經濟組織ノ變遷ヲ自覺セス其經
濟思想ハ依然トシテ單獨經濟主義ナリ孤
立經濟主義ナリ〓體經濟主義ヲ排シテ晏
如トシテ個人主義ヲ信奉シ加フルニ封建
時代ヨリスル傳統的他力本願主義ナリ要
スルニ現在ハ資本文明機械文明團體經濟
組織ノ時代ナルヲ白覺セス徒ラニ舊式經
濟組織ノ下ニ於テ其ノ生活ノ安定ト向上
トヲ貪ラムトシツツ有ルモノトス然ルニ
尙且從來ノ農村政策モ亦敍上ノ如ク〓ネ
其ノ多クハ此經濟組織ノ變遷ニ順應セス
只一時逃レノ姑息ナル消極政策ヲ施シタ
ルニ過キサルノ觀アリ故ニ農民ノ生沽ハ
日ニ不安ニ赴キ農村ノ經濟ハ月ニ困憊ニ
赴キ遂ニ今日ノ行詰ヲ招來シタルモノト
斷セサルヘカラス
故ニ此時ニ當リ官民共ニ永キ情眼ヨリ覺
醒シ此ノ經濟組織ノ變遷ニ着眼シ積極的
農村政策ヲ樹立セスムハアルヘカラス然
ラサレハ我カ國ノ農村ハ遂ニ滅亡スルニ
至ルヤモ圖リ難シ然ラハ其積極政策果シ
テ如何カト謂ヘハ卽チ經濟組織ノ變遷
ニ鑑ミ左ノ梗〓ヲ骨子トシ政策ノ樹立ヲ
企テサルヘカラス
第單獨經濟ヨリシテ團體經濟組織ニ
改ムルコト特ニ農產物共同加工其ノ他
副業及農村工業ヲ奬勵シ其ノ原料ハ之
ヲ共同ニ購入シ生產品ノ生產制限檢査
ノ勵行價格協定販路ノ分野協定等ヲ團
體組織ノ下ニ强制的ニ之ヲ斷行シ專ラ
團體ノ利益增進ヲ計リ之ヲ分配シテハ
各自組合員ノ收益增進ニ資スルコト卽
ヲ現行ノ法制上ヨリ謂ヘハ購買販賣利
用組合ト重要物產同業組合トヲ合併シ
タル新組織ニ改正シ此團體組織ニ依リ
テ同種ノ營業者打テ一丸ト爲シ獨逸ニ
流行スル「カルテル」ヲ實行シ生產ト販
賣トノ調節ヲ計リ生產費以上ニ生產品
ヲ賣却スルコト
以上團體ニ對シ國家ハ適度ノ低利資金
ヲ供給スルコト此ノ如クニシテ始テ農
民ノ收益增進ノ途ヲ開拓シ得ルコト
第二農村振興ノ爲ニ大資本ノ運用及大
機械ノ利用ヲ爲スコト卽チ資本ハ官氏
ノ合本ニ依ルモ可ナリ又國家ノ資本ニ
依ルモ可ナリ而シテ當面ノ施設トシテ
水力電氣ノ統一窒素肥料ノ製造用排水
幹線ノ完成耕地整理ノ完成干拓開墾開
田等ノ促進ヲ計畫シ一ハ以テ農村生產
費輕減策トシテ安價ナル動力低廉ナル
肥料ヲ供給シ他ハ以テ輸入肥料ヲ防壓
シ其ノ他土地利用ノ完壁ヲ期シ國富ノ
增進ト農村ノ振興ヲ期スルコト
第三科學知識ヲ徹底的ニ農村振興ノ爲
ニ應用スルコト卽チ試驗場及調査所ノ
擴張ヲ計リ農作物增收方法ノ研究例へ
ハ獨逸ヨリ輸入シツツアル「チランチ
ン」劑ノ如キモノノ發明其他農家副業
及農村工業等ノ〓究調査ヲ爲シ其研究
調査ヲ基礎トシ之ヲ我カ國農村ニ普及
シ農家ニ職業ヲ與へ恒產ヲ與ヘ農民ノ
福利增進ニ資スルコト
以上ハ產業革命ニ應スル根本〓念ヨリシ
テ之レヲ我カ國農村ノ現狀ニ對照シ具體
的ニ積極的農村振興政策ノ二三ヲ例示シ
タルモノトス今ヤ世界ハ愈產業ノ戰鬪其
ノ激甚ヲ加ヘムトシツヽ有ルノ折柄茲ニ此
ノ行詰レル農村經濟ノ展開ヲ圖リ他面ニ
ハ商工業特ニ輸出貿易ノ發展ヲ期スルハ
蓋刻下ノ急務ナリト確信スルモノナリ
右及再質問候也
追テ書面ニテ答辯アリタシ
大正十五年三月二十三日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員土井權大君提出農村振興ニ關
スル再質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員土井權大君提出農村振興ニ
關スル再質問ニ對スル答辯書
農村振興ニ關スル根本政策ニ對スル政府
ノ所見ニ付テハ曩ニ答辯セル所ナルカ今
囘再質問ノ事項ニ關シテモ農村事情ヲ考
究シ財政ノ許ス限リ積極消極ノ政策ヲ按
配實行シ且共同經營ノ獎勵ニ付テモ各方
面ニ於テ著々其ノ步ヲ進メ相當ノ效果ヲ
擧ゲツツアリ又資本ノ運用及機械ノ利用
ニ付テモ我農業ノ實情ニ順應スル適宜ノ
措置ヲ採リツツアリ而シテ科學知識ヲ徹
底的ニ農村振興ノ爲ニ應用スルコトニ付
テモ中央地方共ニ現在ノ機關ヲ活動セシ
メツツアル所ナルカ將來一層時宜ニ應ス
ル施設方法ヲ擴張運用シ各般ノ方策ヲ調
査攻覈シ事情ノ許ス限リ之カ實行ヲ爲ス
ハ謂フヲ俟タサル所ナリ
右及答辯候也
大正十五年三月二十三日
農林大臣早速整爾
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨二十二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第二部選出懲罰委員濱田國松君
第八部選出懲罰委員西方利馬君
一昨二十二日常任委員補關選擧ノ結果左ノ
如シ
第一部選出
豫算委員木暮武太夫君(松山常次郞
君補闘)
第一部選出
請願委員土屋〓三郞君(富永孝太郞
君補闕)
第二部選出
豫算委員山田助作君(吉原義雄君
補闘)
第八部選出
豫算委員杉宜陳君(小野義一君
補關)
一昨二十二日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
出版物法案(政府提出)委員
委員長增田義一君
理事
工藤鐵男君安藤正純君
寺田市正君
王公族ノ權義ニ關スル法律案(政府提出、
貴族院送付)委員
委員長松田源治君
理事西英太郞君
一昨二十二日議長ニ於テ選定シタル委員左
ノ如シ
大正十三年法律第十號中改正法律案
(高等諸學校震災復舊費ニ屬スル豫算
ノ施行ニ關スル件)委員
建部遯吾君土生彰君
山枡儀重君中島守利君
飯村五郞君近藤達兒君
上原好雄君志村〓右衞門君
山口政二君
大正十三年度第一豫備金支出ノ件外七件
(承諾ヲ求ムル件)委員
阿由葉勝作君木檜三四郞君
加藤六藏君山口嘉七君
淺賀長兵衞君紺野九右衞門君
寺島權藏君榊原經武君
平山爲之助君石坂豐一君
安保庸三君吉津度君
藤井忠兵衞君神崎勳君
津崎尙武君中村嘉壽君
山谷德治郞君田崎信藏君
一昨二十二日海軍軍備制限ニ關スル條約ノ
實施ニ伴フ損害ノ補償ニ關スル法律案委
員板野友造君、熊谷直太君辭任ニ付其ノ
補闕トシテ高井商二君、秋田寅之介君ヲ、
都市計畫法中改正法律案外一件委員土屋
〓三郞君辭任ニ付其ノ補關トシテ田崎信
藏君ヲ、勞働爭議調停法案外一件委員森
恪君、浦野謙朗君辭任ニ付其ノ補闕トシ
テ野田俊作君、谷原公君ヲ孰レモ議長ニ
於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=1
-
002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リヲ致スコトガアリマス、第一部
選出懲罰委員岩崎幸治郞君、第七部選出懲
罰委員渡邊伍君、右兩君ヨリ常任委員辭任
ノ申出ガアリマシタ、許可スルニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=2
-
003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君)、 御異議ナイト認メマ
ス許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關
選擧ヲ行ヒ屆出アランコトヲ布望致シマ
ス、本日ハ質問ノ豫定日デゴザイマスガ、
議案ノ都合ニ依リマシテ之ヲ延期致シマシ
タ、此段御了承ヲ願ヒマスー-是ヨリ日程
ニ入リマス、日程第一ヨリ第五ハ豫算案デ
アリマスカラ、一括議題トナスニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=3
-
004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ日程第一第一號大正十五年度歲
入歲出總豫算追加案、第二、第二號大正十
五年度歳人歲出總豫算追加案、第三、特第
一號大正十五年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案、第四、第三號大正十五年度歳入歲
出總豫算追加案、第五、特第二號大正十五
年度各特別會計歳入歳出豫算追加案、右五
案ヲ一括シテ議題ト致シマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス-委員長藤澤幾之輔君
第(第一號)大正十五年度歲入歳出
總豫算追加案
報告書
一(第一號)大正十五年度歲入歳出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿
附帶決議
北海道第二期拓殖計畫調査會委員ニハ民
間ノ智識經驗アル人ヲモ之ニ加へ公平ナ
ル調査ヲ遂ケ以テ適切ナル計劃ヲ立テラ
レムコトヲ望ム
◆◆久
第二(第二號)大正十五年度歲入歲出
總豫算追加案
報告書
一(第二號)大正十五年度歳入歳出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長柏谷義三殿
〓
第三(特第一號)大正十五年度各特別
會計歳入歲出豫算追加案
報告書
(特第一號)大正十五年度各特別會計歲
入歳出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿
第四(第三號)大正十五年度歲入歳出
總豫算追加案
報告書
-(第三號)大正十五年度歳人歳出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿
第五(特第二號)大正十五年度各特別
會計歲入歳出豫算追加案
報告書
一(特第二號)大正十五年度各特別會計歲
入歳出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
豫算委員長藤澤幾之輔
衆議院議長粕谷義三殿
〔藤澤幾之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=4
-
005・藤澤幾之輔
○藤澤幾之輔君 豫算委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ御報告致シマス、政府ヨリ三月十八日
ヲ以チマシテ、第一號大正十五年度歲入歳
出總豫算追加案、第二號大正十五年度歳入
歳出總豫算追加案、特第一號大正十五年度
各特別會計歲入歳出豫算追加案、又其翌十
九日、第三號大正十五年度歳入歲出總豫算
追加案、特第二號大正十五年度各特別會計
歳入歳出豫算追加案ヲ提出セラレマシタ、
各〓提出セラレマシタ翌日ヨリ審査ヲ開始
致シマシテ、昨日其審査ノ終了ヲ告ゲタノ
デアリマス、此經過竝ニ結果ヲ御報生ロスル
ノデアリマスガ、大體カラ申セバ此豫算案ニ
計上セラレマシタル所ノ多クノ事項ハ、或
ハ曩ノ本豫算ノ場合ニ於テ、若クハ稅制整
理ノ各法案ノ調査若クハ討議ノ際ニ於テ、
皆何レモ御承知ニナリマシタ所ノモノデア
リマシテ、全ク新シイモノハ少イノデアリ
マス、殊ニ第三號ノ追加ノ如キハ、何レモ
法律ニ伴フ所ノモノデアリマシテ、ソレト
共ニ確定スベキ所ノ性質ヲ持ッテ居ルモノ
デアリマスカラ、私ハ此會期切迫ノ場合
デアリマスカラ、是等ノコトハ速記錄ニ依ッ
テ御承知下サルコトヽ致シマシテ、豫算案
ノ計數デアルトカ、或ハ政府ノ說明デアル
トカ或ハ委員會ニ於ケル質問應答デアル
トカ云フヤウナコトハ一切省略致ス積リ
デアリマスカラ、左樣ニ御承知ヲ戴キタイ
ノデアリマス、討論ニ入リマシテ政友會ノ植
原悅二郞君カラ、御配付致シマシタ如キ修
正案ガ提出セラレマシタ、卽チ第二號ノ追
加豫算中ノ第二款ノ調査費デアリマシテ、
第十四項ノ土地賃貸價格調査費、之ヲ削除
スルト云フ修正動議デアリマシタ、此金額
竝ニ之ニ關係ノアル歲入若クハ總計ノ數字
等ハ一切之ヲ省キマス、此案ハ御永知ノ地
租委讓論ニ關聯致シテ居ル所ノ事柄デアリ
マシテ、現ニ本日ノ日程ノ第二十五ニ揭ゲ
ラレテアル所ノ問題ニ關聯致シテ居ルノデ
アリマス、故ニ是モ私カラハ詳シイ御報告
ハ致シマセヌ、勿論後ニ政友會ノ諸君カラ
詳細ハ御報告ニナルコトヽ考ヘルノデアリ
マス、ソレカラ政友本黨ノ丸山浪强君カラ
北海道ノ拓殖計畫ノ調査會ニ關スル附帯決
議ヲ提出セラレマシタ、ソレハ簡單デアリ
マスカラ此處デ申上ゲマス、「附帶決議北
海道第二期拓殖計畫調査會會員ニハ民間ノ
智識經驗アル人ヲモ之ニ加へ公平ナル調査
ヲ遂ケ以テ適切ナル計畫ヲ立テラレムコト
ヲ望ム」、斯ウ云フ附番決議ヲ提出セラレマ
シタ、丸山君カラ之ヲ提出致シマシタ趣旨
ヲ議會デ報告シテ吳レト云フ御註文ガアッ
タノデアリマスガ、是ハ要スルニ一旦此附
帶決議ガ延期トナッタ以上ハ、比決議ヲ政
府ニ於テ尊重シテ貰ヒタイト云フ趣旨ニ止
マルノデアリマス、其詳細ハ丸山君カラ御
述ニナルコトヽ思ヒマスカラ、是亦此程
度ニ止メマス、ソレカラ新正倶樂部ノ坂東
幸太郞君カラ、滿蒙ニ於ケル商租權ノ問題
ノ解決ニ關スル希望ノ御意見ガアッタノデ
アリマス、是ハ內容ヲ申上ゲマセヌデモ、
直ニ御諒解ニナルコトデアリマスカラ、是
モ此程度ニ止メマス、其他憲政會ノ〓水留
三郞君ハ植原君ノ修正動議ニ反對シ、又
丸山君ノ附帶決議ハ、單ニ希望デアルト云
フニ止マラバ、勿論之ニ賛成スルモ差支ナ
イケレドモ、附帶決議ト云フコトニ付テハ
之ニ贊成スルコトハ出來ナイ、斯樣ナ意見
ヲ述ベラレ、ソレカラ本黨ノ井坂君、竝ニ
新正倶樂部ノ坂東君ハ、各〓其會派ヲ代表
セラレマシテ、植原君ノ修正ニ反對セラレ、
丸山君ノ附帶決議ニ賛成セラレマシタ、其
他ハ全部原案ニ贊成セラレマシタ、結局採
決ニ當リマシテ、多數ヲ以チマシテ植原君
ノ修正動議ハ否決セラレマシタ、又多數ヲ
以チマシテ丸山君ノ附帶決議ハ可決致サレ
マシタソレカラ、大多數ヲ以チマシテ、原案
全部ハ之ヲ可決致シマシタ、大體斯ノ如キ
次第デアリマス、之ヲ以テ御報告ト致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=5
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006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 磯部尙君外二十二名
ヨリ第二號大正十五年度歳入歲山總豫算
追加案ニ對スル修正案ガ提出セラレマシ
タ此際其趣旨辯明ヲ許シマス-植原悅
二郞君
(第二號)大正十五年度歲入歳出總豫算
追加案ニ對スル修正案
右成規ニ據リ提出候也
大正十五年三月二十二日
提出者磯部尙
外二十二名
(第二號)大正十五年度歲入歲出總豫算
追加案中左ノ通修正ス
甲號
歲入臨時部
第九款前年度剩餘金繰入
三、一二一、一五三
八、三〇三、四三一
第一項前年度剩餘金繰入
三、一二一、五三
八三〇三、四三一
六八〇、二三二
歲入總計五、八六二、五一〇
歳出臨時部
大藏省所管
第二款調査費五、一八二、二七八
第十四項土地賃貸價格調査費
五八二、二七八
大藏省所管合計
三五八、八九〇
五、五四一、一六八
六八〇、二三二
歳出總計五、八六二、五一〇
〔植原悅二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=6
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007・植原悦二郎
○植原悅二郞君 只今議題トナッテ居リマ
スル所ノ大正十五年度豫算追加案ニ對シテ
委員長ノ報告ニ對シ、吾々ノ主張スル修正
案ノ提出ノ理由ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
ソレニ先ダチマシテ一言申述ベテ置ク必要
ガアルト思ヒマス、此大正十五年度總豫算
追加案一號、二號、三號ヲ總括ヲ致シマス
レバ、約四千一百万圓以上ノ金額ニ上ルノ
デアリマス、追加豫算ト致シマシテハ極
メテ巨額ノ案デアル、而シテ御承知ノ如ク
本年度ノ總豫算ハ十五億九千万圓以上ニ上
リ、約十六億ニモ達スルノデアリマシテ、
本豫算竝ニ玆ニ提出サレテ居リマスル所ノ
追加豫算ヲ合シマスレバ、十六億四千万圓
ニモ達スベキ巨額ノ豫算デアリマシテ、殆
ド我國ノ前代未聞ノ巨額ノ豫算デアルト申
上ゲテモ異論ノ無イコトデアルト思ヒマス
(拍手)是モ建設的ナ積極政策ヲ執リマシテ
立テマシタ所ノ豫算デアルナラバ時代ノ
要求上巳ムヲ得ナイトモ中サレマセウ、然
ルニ極メテ消極的、寧口退嬰的ナ緊縮方針
ヲ執ッテ居ル政府ノ聲明ニ基キマシテ、此
豫算ヲ見ル時ニハ實ニ驚クノ外ハナイノ
デアリマス(拍手)而シテ此四千一百万圓ニ
對スル所ノ追加豫算ノ中ニハ、其費目ノ性
質上、當然本豫算ニ繰入レラルベキモノガ
アルノデアリマス、政府當局モ其豫算ノ性
質上、或ル項目ハ本豫算ニ繰人レベキコト
ガ當然デアル事ヲ御認メニナッテ居リマス
ルガ、唯〓本豫算ヲ編成スル當時ニ、是ガ
間ニ合ハナカッタト云フ御辯明デアリマス
ルガ、私共ノ考ニ依リマスレバ、退嬰緊縮
ノ主張ヲ爲シテ「居ル所ノ政府ト致シマシテ、
十六億以上ノ豫算ヲ本會議ニ提出スルト云
フコトハ國民ノ輿論ニ對シテ如何カト云
フ懸念ノ立場カラ、當然本豫算ニ入ルベキ
モノヲモ國民ノ幾分-瞞著ト申セバ語弊
ガアルカ知レナイガ、國民ノ輿論ヲ忌避ス
ル爲ニ、本豫算ニ於テ僅カ削リマシテ十六
億以內ニ止メ、追加豫算ニ斯樣ナ莫大ナ金
額ヲ要求致シタト中シテモ、政府ハ之ニ對シ
テ辯明ノ辭ハナカラウト信ジテ居ルノデア
リマス(拍手)大體斯樣ナ豫算デアリマシ
テ、政府ノ主張スル所ノ主義カラ申シマス
レバ豫算全體誠ニ私共驚入ル項目モアル
ノデアリマス、而シテ此追加豫算ヲ提出致
シマスルニ付テハ殆ド提出致シタ卽日カ
ラ此審議ヲ進メマシテ、成ベク質問ヲ簡單
ニシヤウト云フヤウナ意味デ、十分ニ調査
ガ出來ナイト中サナイケレドモ、會期切迫
ノ折、十分ニ政府ト質疑應答ヲ重ヌルダケ
ノ餘地ノナカッタト一云フコトハ此場合ニ
申上ゲテ差支ナカラウト思フノデアリマス
此案ニ對シマシテ、私共ノ修正ヲ企テマシ
タ所ノモノハ、大正十五年度總豫算ノ追加
案第二號ノ大藏省ノ所管ニ屬スル土地賃
貸借價格調査ニ要スル經費五百十八万二千
二百七十八圓ヲ削除スル、隨テ歲入臨時部
ニ於キマシテ、前年度繰入剩餘金ノ中カラ、
此額ニ相當スル所ノ金額ヲ削除スルト云フ
結論ニナルノデアリマス、屢、私共本會議
ニ於キマシテモ、諸君ノ御諒解ニナルヤウ
ニ申上ゲテ居ル通り、私共稅制ノ整理ニ致シ
マシテモ、中央ト地方ノ稅制制度ヲ併行セシ
メナケレバナラヌ、而シテ之ニ對シテハ
地租ヲ地方ニ委譲スルコトガ、最モ時宜ニ
適シタ所ノ措置デアルノミナラズ、今日ノ
日本ノ稅制ト致シマシテ、恐ラク地租ヨリ
ハ不公平ナ課稅ノ方法ヲ取ラレテ居ルモノ
ハナイノデアリマス、御承知ノ如ク或縣ニ
於キマシテハ、地租ヲ定メマスル時ニ一段
步ノ地價ガ十四、五圓ノ所モアル、或縣ニ
於キマシテハ一段步四十圓内外ノ所モア
ル、ノミナラズ都合地ト郡村トノ間ノ實際
ノ土地ノ賃貸價格ニ於テハ、非常ナ差ガア
ルニモ拘ラズ、數十年前ニ定メラレマシタ
所ノ地價ヲ標準トシテ今日課稅サレテ居リ
マスルガ故ニ、非常チ不公平ナモノデアル、
此負擔ノ公平ヲ圖リ、國民ノ負擔ヲ公平ナ
ラシメ、地方自治ノ發達ヲ圖リ、地方稅制
ト中央ノ税制ト均衡ヲ保ッテ參リマスニハ
何ト致シマシテモ地租ヲ地方ニ委讓スル策
ヨリ良策ハナイト確信致シテ居ルノデアリ
マス(拍手)私ハ此主張ニ基キマスル故ニ、
此條項ヲ倒除スルト云フコトガ當然ノ結論
デアルト云フコトヲ御永知置キヲ願ヒタイ
ノデアリマス(拍手)次ニ此場合ニ申上ゲテ
置カナケレバナラナイコトハ、此追加豫算
ノ三號ニ於テ、勞働組合法施行ニ關スル經
費三万五千五百二圓ヲ計上サレテ居リマス、
同ジク同號ニ於キマシテ、海軍ノ軍備制限
ニ關スル補償審査曾ニ要スル經費六千圓ヲ
計上サレテ居リマス、諸君ノ御承知ノ如ク、
是等ノ法案ハ未ダ委員會ニ於テ審議未了
ニ屬スルモノデアリマス、故ニ私共ハ是ハ
法律ガ定マッタ後ニ於テ、當然起ルペキ必
要ナル費用デアリマスルガ故ニ、是等ノ法
案ガ審議木了デアリマスル間ハ、此計上サ
レテ居ル費額ハ當然富保スルコトガ至當
ノコトヽ考ヘマシテ、之ニ對シテ私共法律
案ノ結果ヲ待フテ決定スベキモノトシテ、
留保ト云フコトヲ申述ベテ置キタイト思ヒ
マス、次ニモウ一項、私共此場合ニ申上ゲテ
置カナケレバナラナイコトハ追加豫算案
第一號ニ於ケル外務省所管ニ關スル經費ノ
中デ、伯剰西爾ノ移民ガ非常ナ早害ヲ受ケタ
爲ニ、年賦デ買入レテ括リマスル所ノ土地
ニ對シテ、年賦支拂金ガ出來ナイカラ之ヲ補
助救済スル意味ニ於テ、八十五万圓ノ經費
ガ計上サレテ居ルノデアリマス、私共ハ住
慣レタ故國ヲ去リ、殊ニ世界無比ナル國體
ヲ有スル我國ノ如キ國ニ住ミマス所ノ國民
ガ、其墳墓ノ土地ヲ捨テヽ海外ニ移住スル
ト云フコトハ容易ナラザルコト、是モ時代
ノ必要、又國家ノ發展上大ニ獎勵スベキモ
ノデアリマスルケレドモ、是等ノ海外ニ移
住スル所ノ日本ノ人民ニ對シテハ、多大ノ
同情ヲ注グ者デアリ、是等ノ事業ニ對シマ
シテハ出來得ルダケ本國カラ後援シ、援
助シ、鞭撻シテ我國ノ海外發展ヲ助ケナケ
レバナラナイト云フ確信ヲ持テテル者デ
アリマス、ソレ故ニ必要デアリマスルモノ、
是ガ我國ノ海外發展ニ有益ナモノデアルナ
ラバ、國家トシテ出來得ルダケノ救濟後援
ヲ致スト云フコトニ對シテ、私共躊踏致ス
者デハ斷ジテアリマセヌ(拍手)ケレドモ此
八十五万圓ノ支出ノ方法ヲ見マスレバ、斯
樣ナ狀態デアリマス、伯刺西爾ニ於ケル所
ノ早害ハ千九百二十三年カラ始マッタモノ
デアリマス、二十三年ノ十月-伯刺西爾
ハ日本ト狀態ガ違ヒマスガ故ニ、主ナル農
產物ハ十月カラ翌年ノ三四月頃ニ收穫スル
ト云フヤウニナッテ居ルノデアリマス、而
シテ千九百二十三年ニ但當ノ旱害ガアッテ、
我國ノ居留民モ可ナリ財政上ノ打擊ヲ受ケ
タノデアリマス、面シテ二十四年ニ、更ニ
激甚ナル所ノ早害ヲ受ケマシテ、在留民ノ
狀態ハ非常ニ窮地ニ陷ッタ、是ハ事實デア
リマス、面シテ政府ガ八十五万圓ヲ支出致
シテ、之ヲ救濟シヤウトスル土地ハ、何時買
入レタモノデアルカト中シマスレバ、千九
百二十三年ノ早害ノ打擊ヲ受ケ、經濟上
不利ナ立場ニ居ルニモ拘ラズ、千九百二十
四年ニ買入レタ土地デアリマス、千九百二
十四年ニ買入レテ三箇年ノ年賦デ支拂ヲ致
ス契約ヲ致シタモノ勿論此土地ヲ買入
レマス時ニハ、相當ノ手附金ヲ拂ノタニ達ヒ
ナイ、此手附ニ對シテハ、從來居留民ガ所
有シテ居リマス所ノ所有權確實ノ土地ヲ擔
保ニ入レテ、借人金ヲシテ、一部ノ支拂ヲ
致シタト、斯樣ニ政府ノ說明デアリマス、
而シテ千九百二十四年ノ旱害ハ、伯剌西爾
ニ於テモ近年、稀ナル所ノ早害ト謂ハレテ
居ル、而シテ未ダ手附金ノヤウナモノヲ拂
ヒマシタヽケデ、三箇年ノ年賦ノ第一年目
ノ年賦金サヘモ支拂フテ居ラナイモノデ
アリマス、シレ故ニ如何ニ慘酷ナ地主デア
リマシテモ、天變地異、不可抗力ニ對シテ
三箇年ノ年賦契約デ致シテ居リマスモノ
ヲ、之ヲ願次繰延ベテ支拂ヲ致スト云フコ
トニヨモヤ異議ガアルマイト思ハレルノ
デアリマス、又既ニ土地ヲ擔保ニ取リマシ
テ、貸付ケテ活リマシタモノト雖モ、年賦
金ガ支拂ハレルマデニ其元金ヲ償却サセル
ト云フヤウナ條件デ貸付ヲシタモノト思ハ
レナイノデアル、ソレ故ニ此天變ニ對スル
不可抗力ノ早害ニ對シテハ金ヲ貸シマシ
夕者ト雖モ、相當ニ猶豫スベキモノト考慮
致ス者デアリマス、ンレ故ニ非常ニ窮地ニ
陷ッテ居ルコトハ事實デアリマスケレドモ、
支拂ヲ漸次繰延ベタラバ、本國カラ八十五
万圓ノ支出ヲ致シテ、救濟致サナクテモヤ
リ拔ケルコトデハナカラウカト思フノデア
リマス、更ニ私共疑問ト致スノハ海外ニ
於ケル者ガ屢、斯樣ナ事實ガアルノデアリマ
ス、移民ヲ出シマスル時ニモ、動モスルト
移民會社ヤ船會社ガ、政府テ折角獎勵シ、
募集致ス移民ノ頭ヲ撥ネルヤウナ場合モア
ルノデアリマスヽ此土地モ在留民ガ個々ニ
所有シテ居ル土地ニ對シテ救済スルト云フ
ナラバ、又已ムヲ得ナイモノトモ思ハレマ
スケレドモ、万一此土地ガ或ル事業家ガ土
地ノ買占ヲシテ居ッテ、之ヲ個々ノ移民ニ
賣渡シテ其利益ヲ收得スル爲ニ政府カラ
八十五万圓ノ救済金ヲ得テ、自分ノ所得ダ
ケハ確實ニスル、面シテ是ガ移民直接ニ非
常ニ有利ナモノナラザルモノデアルト云フ
時ニハ折角私共ガ海外ニ於ケル移民ヲ後
援シ、其發達ヲ-發展ヲ助成シヤウトス
ル趣意ニ悖ルモノデアリマスルガ故ニ、斯
樣ナ氣遣フ點モアリマスルカラシテ、此八
十五万圓ノ支出ニ對シテハ政府當局ガ十
分ニ御監督ヲ爲スッテ、個々ノ移民ノ發展
ヲ助成スル上ニ於テ、最大ノ效果ヲ齋ラス
ヤウニ、十分ノ御注意アランコトヲ希望致
シテ、此案ニ賛成ヲ表スル者デアリマス、
私共ノ修正ニ對スル所見竝ニ此豫算案ノ大
體ニ對スル所ノ意見ハ、前段申上ゲルヤウ
ナ次第デアリマスルカラシテ、諸君ニ於カセ
ラレテモ、十分ニ御考慮下スッテ、此問題
ヲ御審議アランコトヲ希望致ス者デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=7
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008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガ數名ア
リマス、順次之ヲ許シマス-三土忠造君
〔「總理大臣ノ出席ヲ求メマス」ト呼フ
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=8
-
009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 總理大臣ハ今貴族院
ノ豫算會ニ行シテ居ラレマス、其内此方ニ出
席ニナルト思ヒマス
〔三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=9
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010・三土忠造
○三土忠造君 陸軍ノ經費ノ使用ニ關脚致
シマスル問題デアリマスルカラ、此場合ニ
陸軍大臣ニ主トシテ御尋ヲ致シタイノデア
リマス、陸軍大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマシタ上
デ、總理大臣ニ重ネテ御伺致サナケレバナ
ラヌ必要ガ生ズルト思ヒマス、主トシテ目
下問題トナッテ居リマスル彼ノ機密費ノ關
係デアリマスルガ、先般三瓶某ノ作製致シ
マシタル文書、竝ニ之ニ基イテ本議場ニ於
テ議員中野正剛君ノ爲サレタル御演說、之
ニ依リマシテ我ガ陸車ノ經費ノ使用ニ付キ
マシテ、多大ノ疑惑ヲ國民ニ起サシメタノ
デアリマス、吾々ハ此疑惑ガ延イテ國運ノ
威信ニ關スルト云フヤウナ重大問題デアル
ト考ヘマシテ、我黨ノ秋田〓君ガ先般此壇
上ニ於キマシテ、陸軍大臣竝ニ總理大臣ニ
極メテ明晰ニ質問ヲ致シ、又陸軍大臣竝ニ
總理大臣ヨリ的確ナル御答辯ガアッタノデ
アリマス、此質問應答等ニ依リマシテ、吾々
ハ最初ヨリ確信ヲ致シテ居リマスル通リ、
我ガ帝國陸軍ニ於キマシテハ、機密費其他
ノ費用ニ於テ不正ナル使用等ハアルベキモ
ノデハナイト云フコトヲ、明瞭ニ理解致シタ
積リデアリマス、然ルニ當時陸軍大臣ノ御
說明ハ詳細ヲ盡シテ居ラズ、又具體的ノ問
題ニ這入ッテ居リマセナカッタ爲ニ、或ル
部ノ人〓ハ之ヲ奇貨舍クベシト爲シテ、各
種ノ流言蜚語ヲ今尙ホ放テテ居ルノデアリ
マス、随テ國民中ニ尙ホ我ガ陸軍ニ對シテ
疑惑ヲ懷イテ居ル人ガアルヤウニ思ハレル
ノデアリマス、此疑惑ナルモノヲ一掃シ去
ラナケレバ、洵ニ國家ノ前途ニ對シテ非常
ナ重大問題デアリマスルガ故ニ、私ハ玆ニ
重ネテ問題ヲ局限シテ、且ツ具體的ニ這人
リマシテ、陸軍大臣ニ明確ナル且ツ詳細ナ
ル御說明ヲ仰ギタイト思フノデアリマス、
第一ハ大正三年臨時軍事費ナルモノハ、申
ス迄モナク大正十三年マデ一本ノ會計トシ
テ續イテ參リマシタ、卽チ十一箇年間一ツ
ノ會計ニナッテ居ッタノデアリマス、此間ニ
於キマシテ臨時軍事費中、所謂機密費トシ
テ支出致シマシタモノガ二千四百万圓ト私
ハ承知致シテ居リマス此一一千四百万圓ノ中
デ主トシテ多ク使ヒマシタノハ、大正七八
年ノ二箇年デアリマス、卽チ大正七八年ノ
二箇年ニ千八万圓支出ヲ致シテ居ル、殘餘
ヲ六百万圓デ十箇年ヲ支ヘタノデアリマシ
テ大正七八年ノ千八百万圓ト云フ巨額ノ臨
時軍事費ヲ支出致シテ居ル、此事ニ對シテ
幾分カ國民ガ了解ヲ致シテ居ラヌヤウデア
リマス、私ハ當時軍費ノ支出ニ付キマシテ
ハ多少關係致シタ一人デアリマス、故ニ私
共ハ毛頭疑ヲ持ノテ居ラヌノデアリマス、大
正七八年ニ斯ノ如キ巨額ノ機密費ヲ要シタ
下云フコトハ、申ス迄モナク臨時軍事費ト
申シマシテモ、靑島ノ獨逸軍ニ對スル戰鬪
行爲、西伯利ニ於ケル出兵ト此二ツデアリ
マシテ、西伯利ニ於キマシテ大正七八年ハ
卽チ「チヱンク、スラヴアキア」ノ救援、竝
ニ西伯利ニ於ケル戰線ノ最モ擴大シテ居ッ
タ時デアリマス、露國ノ白軍ト策應等ノ關
係モアッタヤウニ思ハレマス、隨テ此兩年間
ガ最モ大部分ノ機密費支出ヲ要シタコトハ
固ヨリ當然デアリマス、然ルニ三瓶某竝ニ
議員中野正剛君ノ議論サレタ所ハ、主トシ
テ大正七八年ノ兩年ニ支出致シマシタル千
八百万圓ノ機密費ノ用途如何ト云フコトデ
アルヤウニ考ヘラレルノデアリマス、吾々
ハ機密費ノ支出ニ付キマシテハ、非常ナル
嚴格ナル手續ヲ要スルコトヲ存ジテ居ルノ
デアリマス、卽チ機密費ノ支出ハ三箇月每
ニ要求スルノデアリマシテ、サウ長イ間ノ
モノヲ一度ニ要求スルコトハ許サヌノデア
リマス、每三箇月ノ所要經費ヲ參謀本部ヲ
主トシテ、其他各方面ヨリ要求シテ參リマ
スモノヲ、陸軍大臣ガ纏メテ其用途ヲ指摘
シテ、如何ナル用途ニ使フカト云フコトヲ
具シテ閣議ニ之ヲ諮リ、閣議ノ決定ヲ待,
テ大藏大臣ニ要求シ、大藏大臣ヨリ上奏裁
可ヲ經テ陸軍大臣ニ交付スル、陸軍大臣ハ
多ク直接扱ヒマセヌデ、經理局ニ入リマシ
テ、經理局カラ參謀本部始メ其他ノ各方面
ニ交付スルノデアリマス、故ニ此間ニ於テ
陸軍大臣デアルトカ、或ハ陸軍次官デアル
トカ云フ人ノ間ニ機密費ノ用途ヲ何ト申シ
マスカ、胡麻化シテ不正ノ用途ニ之ヲ使用
スルト云フヤウナコトハ有リ得ベカラザル
コトヽ私共確信致シテ居ルノデアリマス、
然ルニ此間ノ手續ガ明瞭ニ國民ニ了解サレ
テ居リマセヌ爲ニ、動モスレバ機密費ナルモノ
ト他ノモノトヲ混淆シテ、國民ノ疑惑ヲ煽
ルト云フヤウナ傾向ガアルコトヲ私共甚ダ
遺憾ニ致シテ居ル、故ニ此場合陸軍大臣ヨ
リ致シマシテ、臨時軍事費ニ屬スル機密費
ノ用途ヲ私共ハ聽クコトハ出來マセヌガ、
要求決定致シマス手續、其手續ニ付キマシ
テ、詳細ニ玆ニ御說明ヲ仰ギタイノデアリ
マス、是ガ第一デアリマス、第二ニハ三瓶某
及議員中野正剛君ノ言ハレル所ニ依リマス
ルト、此機密費ノ一部ヲ以テ公債ヲ購入シ、
若クハ民間ノ數銀行ニ之ヲ預入シテ利殖ヲ
圖ッタ、此預入ノ中ニハ陸軍大臣、陸軍次
官、其他ノ人〓ノ個人名義ニシテ預入レテ
居ル、斯樣ナ不正ナ事ヲシテ居ルト云フノ
デ、國民ガ之ヲ聞イテ非常ニ疑惑ヲ持ノタ
ノデアリマス、苟モ陸軍ノ機密費ナルモノ
ヲ、個人名義デ以テ利殖ヲスルト云フコト
ハ怪シカラヌト云フノデ、國民ノ間ニ何ト
ナク疑惑ヲ懷キマシテ、之ニ對シテ諒解致
シマセヌ爲ニ、非常ナ問題ガ起ッテ居ル譯デ
アリマス、固ヨリ機密費ナルモノニ依シテ
公債ヲ買フトカ、或ハ民間ノ銀行ニ預金ヲ
シ運用ヲシテ利殖ヲ圖ルト云フコトハ有
リ得ベカラザルコトデアリマス、又法規典
例ガ許サヌ所デアリマス、然ルニ斯樣ナ事
ヲシテ居ルト云フコトヲ宣傳スルコトガ、
却テ非常ナ國民ノ疑惑ヲ起シタノデアリマ
スカラ、私ハ更メテ茲ニ陸軍ノ臨時軍事費
ノ機密費ヲ以テ公債ヲ買フ、或ハ銀行ニ定
期預金ヲシテ利殖ヲ致シタト云フヤウナ事
實ガアルヤ否ヤ、之ヲ第二ニ伺ヒタイノデ
アリマス、第三ニハ陸軍省ニ於キマシテハ、
普通ノ豫算ニ現レタル經費ノ以外、共濟組
合ノ資金トカ或ハ招魂祭ノ基金ト云フヤウ
ナモノヲ保管運用サレテ居ルト云フコトデ
アリマス、此金ハ相當巨額ニ上ルコトヽ考
ヘマス、殊ニ共濟組合ノ金ハ、工廠ニ於ケ
ル職工ノ掛金及國庫ノ補助金ノ兩方アルノ
デアリマスガ、ソレヲ合セマスルト相當多
額ノ金ト考ヘマス、是等ノ資金及基金ハ固
ヨリ是ハ或ハ公債ヲ買フトカ、銀行ニ預金
ヲスル、之ニ依ッテ利殖ヲ圖ルト云フコト
ハ當然デアリマス、斯樣ナ財源ノ資金ヲ以
テ公債ヲ買ヒ、或ハ利殖ヲ圖フテ居ルノヲ、或
ハ强ヒテ機密費ト混淆致シマシテ、機密費
ヲ以テ公債ヲ買ヒ、利殖ヲ圖ノテ居ルヤウ
ナコトヲ言觸ラシテ、サウシテ我ガ帝國陸
軍ニ傷ヲ付ケヤウト云フ惡イ動機ヲ以テ、
アヽ云フ宣傳ヲ致シタカト私ハ思フノデア
リマス(拍手)故ニ斯樣ナ金ハ勿論祕密ニス
ル必要ハナイト考へマスカラ、陸軍ノ共濟
組合ノ資金竝ニ招魂祭ノ基金ノ如キモノ
デ、陸軍省デ之ヲ保管シテ利殖シテ居リマ
ス金ハ幾ラアッテ、如何ナル方法ニ依ノテ利
殖シテ居ルカ、之ニ依ッテ公債ヲ買ッタコト
ガアルカ、銀行ニ預金シタコトガアルカ、
其運用方法竝ニ金高ニ付キマシテ、詳細ニ
此際陸軍大臣ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリ
マス、第四ニハ御承知ノ通リ、三瓶某ノ作
製致シマシタ文書ニ依リマシテモ、議員中
野正剛君ノ此議場ニ於ケル御演說ヲ伺ヒマ
シテモ、最初ハ主トシテ臨時軍事費中ノ機
密費ヲ當時ノ陸軍大臣竝ニ陸軍次官等ガ、
不正ニ使用シ利殖ヲ圖リ私腹ヲ肥シタカ
ノ如ク申シテ居ッタノデアリマス
然ルニ最近去ル十八日デアリマス、十八日
ノ報知新聞ノ朝刊ニ依リマスルト云フト、
此朝刊ニ三瓶某ノ談話トシテ掲載サレテ居
リマスガ、其談話ヲ讀ンデ見マスルト云フ
ト、全然變ノテ居ルノデアリマス、最初申
シテ居ッタノト非常ニ變テ參クテ居ル、私ハ
玆ニ其話シテ居ル要旨ヲ申上ゲマスルガ、
斯ウ云フ話ヲ致シテ居ルノデアリマス、話
ノ儘デアリマセヌガ、明瞭ニスル爲ニ前後
致シテ書イテ見マスト云フト「機密費ハハン
キリト軍事費豫算ニ組込マレテアッテ、固ク
大藏省ニ保管セラレ、陸軍省ニ於テハ使用
ノ度ニ引出シテ使フコトニナッテ居ル、決シ
テ個人ノ名義ニ移シ得ルモノデハナイ、隨
テ陸軍大臣ノ官房ニ於テ公債其他ヲ買人レ
テ利殖ヲ圖ルナドト云フ時間ハナイ、併シ
問題ハアルベカラザル八百万圓ト云フ金ノ
性質デアル、此巨額ノ金ガ免ニ角大臣官房
ニ在ノテ田中、山梨、菅野、松本、遠藤ノ五
人ノ個人名義ニ依ッテ各銀行ニ預金セラレ、
自分等ハ何度モ之ヲ引出シテ公債ヲ買ハサ
レテ居ルト云フ事實ガアル、大臣官房會計
ノ取扱フ金ハ陸軍本省ノ費用ダケデ、機密
費モ本省デ使フ範圍ニ止マリ、一般陸軍ト
シテノ經費ハ軍事費ニセヨ、機密費ニセヨ、
陸軍經理部デ扱フコトニナッテ居ル、然ラバ
其金ノ出所ハ果シテ何處カ、自分ハ大方見
當ハ付イテ居ルガ今玆ニ言明ガ出來兼ネ
ル」斯ウ云フノガ三瓶某ノ去ル十八日ノ
報知新聞ノ朝刊ニ掲載セラレタル談話デア
リマス、此話ニ依リマスト云フト、最早三
瓶某モ機密費其モノニ付テ何ノ疑モ持ッテ
居ナイ、唯、陸軍ニ出所不明ノ金ガ八百万圓
程アル、此金ガ問題デアル、此金ヲ當時ノ
陸軍大臣、或ハ陸軍次官、經理局長ガ個人
名義ヲ以テ利殖ヲ圖シテ居ル、其金ノ出所モ
自分ニハ大體分ヲテ居ルガ、今之ヲ申ス譯エ
行カヌ、斯ウ云フ話ヲシテ居ル、最初三瓶某
ガ文書ヲ作製シテ世間ニ宣傳シマシタモノ
ト竝ニ之ニ依シテ議員中野正剛君ノ本壇上
ニ於テ致サレタル御演說、此內容トハ全然
變ンテ參シテ居ル、非常ニ局限サレテ居リマ
シテ、機密費其モノニハ一切疑ヲ持タヌ、
又持ツベキ餘地ハナイ、唯こ八百万圓ト云
フ所謂得體ノ知レナイ金ガアル、斯ウ云フ
ノデアリマスガ、果シテ斯樣ナ金ガ陸軍ニ
アリト致シマシタナラバ、洵ニ不可思議千
萬ナ話デアル、果シテ斯樣ナ金ガ有ルカ無
イカト云フコトヲ陸軍大臣ニ承リタイ、以
上申上ゲタ四ツノ質問ニ依リマシテ、大體
本件ガ陸軍大臣ノ御答辯ガアリマスレバ明
瞭ニナルト思ヒマスガ、尙ホ其他陸軍ニ於
キマシテ、是等以外ニ於テ或ハ保管運用セ
ラレテ居ル金ガアッテ、ドウ云フ風ニナッテ居
ルカ、苟モ國民ノ疑惑ヲ招クヤウナ種トナ
ルベキモノガアルカ、若シアリトスルナラ
バ之ニ就キマシテモ斯樣ナモノガアル、斯樣
ナ事ヲ致シテ居ルト云フコトヲ、此際明瞭
ニ御說明願ヒタイノデアリマス、以上數項
ヲ陸軍大臣ヨリ御說明ヲ願ヒマシテ、其御
說明ヲ伺ッタ上デ、私ハ總理大臣ニ對シテ御
伺スルコトガアリマスガ、ソレハ保留致シ
マス(拍手)
〔國務大臣宇垣一成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=10
-
011・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 只今三七君ヨリ
御質問ヲ蒙リマシタガ、實ハ只今御述ニナ
リマシタ問題ハ既ニ私カラ數囘機會ノア
ル度ニ御話ヲ申上ゲテ居ル、今日ハ最早疑
感ハナク、十分ニ御了解ハ得テ居ルト考ヘ
テ居リマシタガ、料ラザリキ尙ホ三土君カ
ヲ只今ノ如キ御質問ガ出マシタカラ、玆ニ
過日來申上ゲタコトヽ重複スル點ガアルカ
知リマセヌガ、免ニ角暫ク御〓聽ヲ煩シマス、
第一ノ御問ハ臨時軍事費、殊ニ其中ノ機密
費ノ支出ノ手續ノヤウニ拜承致シマシタ、
大正三年カラ十四年ノ四月一日ニ涉リマシ
テ前後通ジテ十一年、此間ニ於キマシテ臨
時軍事費ト致シマシテ、陸軍ガ使ヒマシタ
モノガ六億四千萬圓デアリマス、從來臨時
軍事費ハ議會ノ協賛ヲ經テ居リマスモノデ
モ又豫算外ノ支出ニ係ルモノデモ、何レ
モ只今三土君ノ御述ニナリマシタ通リ、凡
ソ三箇月分ヲ見積リマシテ會計年度-事
ノ初メカラ事ノ終結マデ數年、今回ノ如キ
ハ十一年ニ涉ノテ居リマスガ、其中デ年々議
會ノ協賛ヲ經テ居ル、或ハ豫算外ノ支出ニ
係ルモノ、是ハ凡ン三箇月ヅツノ見積リヲ
立テヽサウシテ陸軍省カラ大藏省ノ方ニ
內交涉ヲ致シ、ソコデ協議ガ纏ヲタ所デ、
大藏大臣ヨリ之ヲ閣議ニ提出ヲシテ、閣議
決定ノ上ニ勅栽ヲ伸グ、勅栽濟ノ上ニ於テ
支出ヲ致ス、斯ウ云フ手順ニナッテ居ルノ
デアリマス、卽チ臨時軍事費ノ一目デアル
所ノ機密費モ同樣ノ手續ヲ經ルノデアリマ
ス、御承知ノ通リ臨時軍事費ハ立法課目ト
致シマシテハ款項共ニ臨時軍事費ノ一本
デアリマス、行政課目ト致シマシテ、其中
デ一ツノ目ヲ設ケ、人件費、物件費等ト同
ジヤウニ目ヲ設ケテ、機密費モ一ツノ目ニ
ナッテ居ル譯デアリマス、ソレガ勅栽ヲ經
テ逐次ニ支出致ス譯デアリマスカラ、隨テ
他ノ課目トノ流用ト云ブヤウナコトモ固ク
禁ジラレテ居ル次第デアリマス、尙ホ其六
億幾千万圓ノ中デ機密費トシテ十一年間ニ
支出致シテ居ルモノガ、先ニ御述ニナリマ
シタ通リ二千四百万圓、其二千四百万圓ノ
中デ、一番多數ニ使ヒマシタノガ大正七年
カラ八年ニ涉クテヾアリマス、卽チ兩會計
年度ニ使ヒマシタ額ガ前ニ御述ニナリマシ
タヤウニ約一千八百万圓、アトノ六百万圓
ハ九年間バカリニ使ハレテ居ルト云フヤウ
ナ狀態デアリマス、ンコデ僅カ二年ノ中ニ
千八百万圓ノ機密費ヲ使フト云フ所ニ、或
ハ一部ノ疑點ヲ懷ク者ガアルカモ知レヌト
思ヒマス、就キマシテハ其經費ヲ、多額ノ
其機密費ヲ使ヒマシタ當時ノ狀況ヲ聊カ申
述ベテ、諸君ニ其當時ノ有樣ヲ御追想ヲ願
ヒタイノデアリマス、御承知ノ通リ其當時
ハ露西亞ノ革命ガ成立シテ、革命新政府ニ
對シテ各處ニ反對ノ軍ガ起ッテ居クタ際デア
リマス、卽チ南露西亞、高加索方面ニ於テ
ハ「デニキン」或ハ「ウランゲル」是等ノ兩將
軍ガ大軍ヲ起シテ赤衞車ニ對スル中部西
伯利ニ於キマシテハ「コルチヤック」ノ政府
ガ「オムスク」ニ成立致シマシテ、彼ノ配下
ニ集ッテ居ル所ノ十數万ノ軍隊ハ「ウラル」
ノ所ニ於テ、戰線ヲ赤衞軍ニ對シテ形作ッ
テ居ル、又後貝加爾州ニ於キマシテハ、御
承知ノ「セミヨノフ」ガ軍ヲ起シ、大正七年
ニ於テハ、マダ其威力タルヤ微々タルモノ
デアリマシタガ、八年ニ移リマシテ、彼ノ
全盛時代ニハ凡ソ五万以上ノ軍ヲ擁シテ
居ッタヤウナ次第デアリマス、尙ホ黑龍州
ニ於キマシテハ黑龍哥薩克ノ支隊ガ赤衞
軍ニ對シテ事ヲ擧ゲテ居ル沿海州ニ於キ
マシテハ「カルミコフ」ガ有力ナ支隊ヲ編成
シテ、亦衛軍ト對抗致シテ居ル、又東支鐵道
沿線ニ於キマシテハ、「コルワント」ヲ長官ト
致シテ其下ニ幾多ノ軍隊ガ編制サレテ赤衞
軍ト相對スル、斯ウ云フヤウナ狀態ニナン
テ居リマス、又其當時ニ於キマシテハ西伯
利ニ拘禁サレテ居ッタ所ノ獨墺ノ俘虜十數
万ト云フモノガ解放ヲサレテ、自由行動ヲ
取ッテ居ッタヤウナ際デアリマス、又聯合軍
ト致シマシテハ、帝國軍ハ御永知ノ通リ、
其當時ハ約四個師團以上ノ軍隊ヲ滿洲西伯
利ノ野ニ出シテ居リマシタ、又ソレニ參
加致シテ居ル者ハ英、米佛伊、支那ヲ
モ加ヘテ其聯合ノ協同軍ガ約二万以上ニ達
シテ居リマシタ、ソレガ各處ニ於テ赤衞軍
ト對抗致シテ仕事ヲ致シテ居ル、卽チ西伯
利全體ノ狀況ハ、亂麻ノ如キ形デアッタト
申シテ宜シカラウト思ヒマス、此間ニ處シ
テ此錯雜錯綜セル狀況ノ下ニ、機宜ヲ制シ
時機ヲ失セズ、帝國軍ノ威武ヲ發揚致シテ
行クト云フ上ニ於テハ頗ル苦心慘憺タル
モノガアッタト考ヘマス(拍手)デアリマス
カラ私ハ其當時ノ此複雜シタル狀況ヲ能ク
頭ニ考ヘテ戴キマシタナラバ、是ダケノ經
費ヲ使シタト云フコトハ必シモ不當デハナ
イ、寧口私ハ正當ナ造ロデアッタデアラウ
ト思ヒマス、然ルニ此内容ヲ此處デ申上ゲ
ルト云フコトハ每々述ベテ居リマス通リ、
軍部ニ於ケル機密費ハ云フモノハ所謂國
軍國策上ノ機務ニ關係シタ方面ニ使用サレ
テ居ルモノデアリマスカラ、之ヲ公ニスル
ト云フコトハ、卽チ國家ノ爲ニ不利デアリ
マス、ノミナラズ、寧口有害デアルト考ヘル
ノデアリマス、ソレ故ニ其公表ハ避ケマス
ルガ、併シ其當時ノ狀況ヲ御考へ下サッタ
ナラバ、賢明ナル諸君、又一般ノ國民モ、
ソコニ冷靜ナル判斷ヲサレテ、判決ヲ得ラ
ルヽコトヽ考ヘルノデアリマス、ソレカラ
第二ノ質問ハ機密費デ公債ヲ購入シ、或
ハソレヲ銀行ニ預金シタコトハアルカナイ
カト云フヤウナ御問ノヤウニ承知致シマシ
タガ、機密費ヲ以テ公債ヲ買入レ、或ハ之
ヲ銀行ニ預金スルト云フヤウナコトハ毛頭
ナイト云フコトハ足ハ再三申上ゲテ居ル
筈デアリマス、第三ノ御問ハ共〓組合、其
他招魂祭ノ基金ノ運用ノコトニ付テノ御問
デアリマシタガ、御說ノ通リ、又私カラモ每
回申述べテ居ル通リ、共濟組合、或ハ招魂
祭等ノ基金ハ、陸軍省デ運用ヲ致シテ居リ
マス、此金高ハ時機ニ依シテ增減ハアリマス
ルガ、目下ノ所デハ凡ソ三百万圓位ハアル
ト考ヘテ居リマス、之ニ依シテ公債ヲ買ヒ、
又ハンレヲ銀行ニ預金スルト云フヤウナコ
トハ從來ヤンテ居リマス、又今後モヤルノデ
アリマス、第四ノ御問ハ、去ル十八日ノ報
知新聞ニ載ッテ居ッタト云フ、卽チ陸軍省ガ
得體ノ分ラヌ、性質不明ノ八百万圓ノ金ヲ
持シテ居ルカドウカ、私ハ新聞其物ハ見マセ
ヌ、唯只今ノ話デハソレニ依シテ御疑問
ガアルヤウデアリマスガ、ソンナ性質ノ分
ラナイヤウナ金ハ陸軍省ニハ一文モアリマ
セヌ、ドウカ左樣御水知ヲ願ッテ置キマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=11
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012・三土忠造
○三土忠造君 只今ノ陸軍大臣ノ御說明ニ
依リマシテ能ク分リマシタガ、其御說明ニ
依リマシテ、私ハ總理大臣ニ御伺シタイト
思ヒマス、總理大臣ノ御出席ヲ要求致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=12
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013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 總理大臣ハ只今貴族
院ニ於テ、稅制案ノ本會議ガアリマシテ、
偶〓大藏大臣ガが病氣ノ爲メ缺席ヲセラレ
テ居リマスルノデ、代ッテ質問ニ應答セラレテ
居ルト云フコトデアリマシテ、只今直ニ出
席ハムヅカシイト思ヒマス、併ナガラ是ヨ
リ交涉ハ致シテ見マスルガ、直ニ出席ノ如
何ハ確メラレマセヌ、三土君ノ總理大臣ニ
對スル御尋ハ、他ノ機會若クハ今日質疑ノ
終リニ於キマシテ、總理ガ御出席ニナリマ
シタナラバ、其時ニ御述ヲ願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=13
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014・三土忠造
○三土忠造君 ソレデハ私ハ陸軍大臣ニ對
スル質問竝ニ陸軍大臣ノ御答辯ヲ、總理大
臣ニ出席セラレテ御聽キヲ願ッタ上デ、御質
問ヲシタイト思フノデアリマス、只今不幸
ニシテ貴族院ノ方へ御出席ニナッテ、御出デ
ニナラヌヤウデアリマスカラ、只今ノ私ノ
質問竝ニ陸軍大臣ノ御答辯ノ要旨ヲ、國務
大臣若クハ政府委員ノ御方ヨリ總理大臣ニ
御傳ヘヲ願フテ、サウシテ後刻總理大臣ガ御
出席ニナリマシタ時分ニ、總理大臣ニ對シ
テ御質問ヲ致シタイト云フコトヲ保留シテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=14
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015・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ノ質疑者松實喜代
太君
〔松實喜代太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=15
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016・松實喜代太
○松實喜代太君 諸君、私ハ本日只今議題
ニナッテ居ル追加案ノ中、北海道第二期拓殖
計畫調査費ト云フ部分ニ限ッテ當局者ニ御
尋ヲ致シタイノデアリマス、此費用ハ僅ニ
二万五千四百九十七圓ト云フ少額ノ費用デ
アリマスケレドモ、併シ是ガ北海道第二次
拓補計畫ノ樹立ニ關スル根本ノ調査ヲ行フ
ト云フノデアリマスカラ、北海道拓殖ノ上
ニ於テハ、極メテ重要ナル事柄デアルト思
ビマスカラ、此會期切迫ノ折柄甚ダ恐縮テ
アリマスルガ、暫時時間ヲ御割愛ヲ願ノテ、
御〓聽ヲ願フ次第デアリマス、私ハ去ル二
月九日ニ北海道拓殖政策ニ關スル質問書ヲ
政府ニ提出シタノデアリマシタガ、ソレハ
矢張、此問題ニ關聯シタ事柄デアッタノデア
リマス、所ガ三月ノ一日ニ至リマシテ、內
務大臣カラ答辯ガアックノデアリマスルケ
レドモ、其各辯ハ極メテ抽象的デ、私ガ質
問シタ要領ニ觸レテ居ラヌノデアリマス、ソ
レ故ニ私ハ冉質問ヲ致シ、又意見ノ陳述ヲ
致シタイト今日マデ待ッテ居リマシタケレ
ドモ、先刻議長ヨリ議場ニ御話ノ通リニ、
質問ト云フコトハ今日モ許サレナイノデア
リマス、故ニ此問題ニ關聯シテ私ハ少シク
意見ヲ述ベ、且ツ政府ノ所見ヲ伺フ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 成ベク簡單ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=17
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018・松實喜代太
○松實喜代太君(續) 議長ヨリ成ベク簡單
ニト云フコトデアリマスカラ、諸君ガ御静
ニ聽イテ下サルナラバ簡單ニヤリマスガ、
餘リ彼此レ言ハレヽバ少クトモ一時間位ヤ
ラナケレバナラヌト思ヒマス、諸君ガ御水
知ノ通リ、現在ノ北海道拓殖事業計畫ハ大
體ニ於テ大正十五年度ニ終了ヲ告グルノデ
アリマス、サウシテ大正十五年度ノ豫算額モ
極メテ不足ニナッテ居ルノデアリマスルカ
ラ、ソレニ又附加ヘマシテ、北海道ニ只今
ヤッテ居ル事業ノ中、幾多經費不足ノ爲ニ完
了ヲ告ゲナイ事業ガアルノデアリマス、例
ヘバ港灣ノ如キニ例ヲ取ッテ見マスルト云
フト澤山漁港港灣ノ修築ヲ爲シツヽアル
ノデアリマスルガ、其中ニモ港灣デハ二千
四百餘万圓ノ金ガナケレバ現在ノ計畫ガ終
ラナイ、又漁港ノ方デモ五ツノ漁港ヲ修築
致シテ居ルノデアリマスルガ、是モ四百二
十七万餘圓ト云フ金ガナケレバ、今後之ヲ
遂行ンテ行クコトガ出來ナイト云フヤウナ
現狀ニ在ルノデアリマス、斯樣ナ次第デア
リマスルカラ、政府ハ昨年時ノ長官ニ命令
ヲ致シマシテ、サウシテ新ニ第二次拓殖計
畫ノ樹立ヲ立案ヲ命ジタノデアリマス、サ
ウシテソレト同時ニ政府ハ大藏省主計官ノ
荒川昌二氏、又當時ノ內務次官湯浅倉平氏、
又當時ノ内務省ノ政務次官タル現商工大臣
ノ片岡直溫氏、又現内務省政務次官ノ俵氏
ヲ派遣シテ、實地ノ調査ヲ爲サシメタノデ
アリマス、サウシテ一面ニ於テハ道廳ニ於
テ新計畫ヲ樹立シテ、サウシテ五十一議會ト
ニハ提出シナケレバナラヌト云フノデ、長
官始メ其他ノ首脳部ハ聿一兼兼行之ニ從事シ
タノデアリマス、是ハ天下公知ノ事實デア
リマス、斯ノ如ク中央政府カラハ幾多ノ官
憲ガ出張シ、又道廳ニ於テモ非常ナ勢刀ヲ
以テ-意氣組ヲ以テ調査シタノデアリマ
スルカラ、民間ニ於キマシテモ或ハ政黨ノ
意見ノ發表トナリ、或ハ新聞紙上ニ於テ意
見ノ陳述トナッテ、サウシテ北海道ニ於キマ
シテハ頗ル大騷ギヲヤッテ、サウシテ是非共
此五十一議會ニ於テハ此計畫ノ遂行ヲサレ
タイト云フノデ、種々調査〓究ヲ重ネタノ
デアリマス、サウシテ道廳ニ於キマシテハ
結局二十箇年約十億万圓ヲ費シテ、サウシ
テ拓殖事業ヲヤルト云フ案ヲ立テ、之ヲ內
務省ニ移シ、內務省ハ又幾多調査〓究ノ結
果ト致シマシテ、多少ノ修正ヲ道廳案ニ加
ヘマシテ、サウシテ成案ト爲シテ之ヲ大藏
省ニ送付シタト云フコトデアリマス、サウ
シテ内務省ト大藏省トハ幾多交涉折衝ノ結
果、遂ニ此成案ハ大藏省ノ同意ヲ得ズシテ、
サウシテ一年ヲ延期シ、更ニ調査會ヲ設置
シテ調査スル、斯ウ云フコトヲ主張致シマ
シタ爲ニ、遂ニ內務省ハ之ニ讓歩致シマシ
テ、サウシテ其事ニ決シ、卽チ只今此御提
案ニナッテ居ル所ノ拓殖計畫ノ調査費ト云
フモノハ、此處ニ基イテ居ルノデアリマス、
然ルニ只今私ガ申上ゲタヤウニ、道廳當局
ハ幾多ノ調査〓究ヲシ、又政府ノ要路ノ大
官ガ相踵イデ北海道ニ御出張ナサッテ、サウ
シテ調査〓究ノ結果立案ヲ得タノデアリマ
ス、然ルニ更ニ又玆ニ經費ハ僅カナリト雖
モ調査シナケレバナラヌト云フ理由ハ何處
ニ在ルノデアルカ、之ヲ明ニシナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、此事柄ハ極メテ
小サイヤウデアリマスケレドモ、決シテ小
サクナイト私ハ思フノデアリマス、結局大
正十五年度ノ豫算案ニ對シテ-豫算案ト
申シマスルガ、以前ニ殘シテ居ル案ニ對シテ
二百八十三万圓ト云フ增額ヲシテ、サウシ
テ一時ヲ糊塗スルコトニナッタノデアリマ
ス、此二百八十万圓ノ增額ヲ、十五年度ノ
以前ニ殘シテ居ル經費ニ加ヘルト云フト、合
計一千九百九万三千餘圓ト云フコトニナル
ノデアリマスルガ、之ヲ以テ大變成功デア
ルガ如ク得々トシテ誇ッテ居ル者ガアルト
云フコトデアリマスルガ、併シ之ヲ十一、
十二年度ノ豫算、卽チ一千九百三十餘万圓
ニ比較スルト云フト、尙ホ足ラザルコト二
十餘万デアルノデアリマス、是ハ言換ヘテ
見マスルト云フト、大正十三四年ニ財政整
理緊縮ヲ行ウタ結果減額サレテ居ッタモノ
ガアッタガ、ソレヲ辛ウジテ復活シタニ過ギ
ナイ、復活ト申シテモマダ二十餘万圓ノ經
費ガ不足ニナッテ居ルノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ次第デアリマスルガ、何故ニ先程
モ申上ゲマシタヤウニ、更ニ調査會ヲ組織
シナケレバナラヌト云フノデアルカ、之ヲ
先ヅ第一ニ御伺シタイノデアリマス、サウ
シテ第二ニ御聞キシタイノハ、此處ニ計上
シテ居ル所ノ經費ハ僅ニ二万五千餘圓デア
リマスルガ、更ニ調查ヲスルト云フナラバ
是位ノ經費ヲ以テ調査ガ出來ル筈ハ無イ、
ドウ云フコトヲ調査スルノデアルカ(「議長
定數ヲ缺イテ居ル」ト呼フ者アリ)調査項目
ハ如何ナルモノデアルカ、此事ヲ御聞キシ
タイノデアリマス、マダ調査シナイノデア
ルカラ答辯ノ限リニアラズト、斯ウ仰セラ
レルカ知リマセヌガ、併シ白紙ヲ以テ調査
ハ出來ナイノデアリマス、少クトモ今ハ
(「定數ヲ缺イテ居ル」ト呼フ者アリ)最早此
調査ニ付スル所ノ項目、斯ウ云フ方面ニ對
シテ調査ヲスルト云フ所ノ案ガナクテハナ
ラヌノデアリマス(「定數ヲ缺イテ「居ル」ト
呼フ者フリ)間ク所ニ依ルト此頃新聞デハ
アリマスルガ、内務省ハ長官ニ命ジテ二十
箇年ニ僅ニ六七億ノ限度ヲ以テ、サウシテ
更ニ立案ヲシロト云フコトヲ命ジタト云フ
コトデアリマスガ、併シ是ハ新聞或ハ世評
デアリマスルカラ、果シテ事實ノ有無ハ私
ハ能ク分ラヌ、是等ニ對シテ內務省ハサウ
云フコトヲヤリツヽアルカ(「二百名ヲ缺ケ
マシタ」ト呼フ者アリ)如何カト云フコトヲ
御聞キシタイノデアリマス一體政府當局
ニ對シテ私ガ御伺シタイコトハ、北海道ノ
此招殖政策ニ關スル根本ノ事柄デアルノデ
アリマス、ソレハドウ云フ事柄デアルカト
申スト、國策上ニ於ケル北海道ノ眞價ト云
フモノヲ政府ハ誤解シテ居ルノデハナイカ
ト思フノデアリマス(「定數無シ」「謹聽」ト
呼フ者アリ)政府ガ見テ居ル所ノ北海道ニ
將來何程ノ人口ヲ收容シ得ルカ、是ガ先ヅ
根本ノ問題ダト思ヒマス、道廳ノ調査ナド
ヲ見マスルト云フト五六百万人位デアラウ
ト云フコトデアル、先達テ俵次官ガ貴族院
ノ委員會ノ質問ニ答ヘタニハ八百万人ダラ
ウ、八百万人位デアラウト云フコト、是モ
新間デ見タノデアルガ、果シテサウ云フヤ
ウナ見當デ居ルヤ否ヤ、斯ウ云フコトヲ先
ヅ伺ヒタイノデアル、其次ニハ目下問題ニ
ナッテ居ル食糧ノ關係デアル、先ヅ日本ノ國
民ノ常食タル所ノ米、此米ハ北海道ニ何程
ノ生產ヲセシムル目標ヲ以テ拓殖計畫ヲ立
テルノデアルカ、此事モ矢張道廳ナドハ五
六百万石ヲ限度トシテ計算シテ居ルサウデ
アリマスガ、吾々ノ考フル所ニ依ルト、吾
吾ノ調査シテ居ル所ニ依ルト一千万石以土
一子二百万石マデハ生產シ得ル所ノ可能性
ヲ持クテ居ルト思フノデアリマス、此事ニ付
テ詳細ニ述ベマスト又時間ヲ取ルカラ餘
リ詳細ハ申シマセヌガ、是等ニ付テ如何ニ
考ヘテ居ルカ、是ガ卽チ拓殖ノ根本義デア
ルト私ハ思フノデアリマス、其次ニハ壯海
道デ只今生産シテ居ル所ノ甜菜精製糖デア
リマス是モ政府ハ今年相當ニ補助ヲ出シ
テ居ルヤウデアリマスガ、併シ吾々ノ調査
ニ依リマスト、北海道ニ於ケル砂糖ハ、約
四億〓位ヲ生產シ得ルト思フノデアリマ
ろ若シ假ニ四億斤生產シ得ルノナラバ、
直ニ是デ外國カラ輸入スル所ノ砂糖ノ問題
ヲ解決スルノデアリマス、米ノ如キモサウ
デアリマス、米ノ如キモ只今私ガ申上ゲタ
ヤウニ、一千万石以上一千二百万石位ノ可
能性ガアルモノトスルナラバ直二禾ノ
輸入ノ問題ハ解決スルノデアルフレカラ
又次ニハ生產總額ナ云フ問題ニ觸レテ御尋
ヲシタイ、生產總額ハ政府ハ如何ナル目標
ヲ以テ居ルカ斯ウ云フコトデアルノデア
リマス、是モ極メテ消極的ニ計算スル所ノ
者ハ、將來北海道デ十億位デアラウト云フ
コトノ說ヲ爲シテ居ル者ガアルガ、是ハ又
極メテ誤シテ居ルモノデアルト私ハ思フノ
デアリマス、何故ナレバ只今北海道ノ一人
當リノ生產額ハ何程デアルカト申シマスト
云フト、一人當リノ生產高ハ一一百十七圓
ト云フコトニ、大正十三年度ノ統計デハナッ
テ居リマスガ、若シ吾々ノ主張スルガ如ク
ニ一千万人ノ人口ヲ包客シ得ルト云フコト
ニナリマスナラバ、卽チ二十億以上ノ生產
總額ヲ得ルコトハ少シモムヅカシイ事デハ
ナイ、ソレハ今日ノ大正十三年ヲ基礎トシ
テノ計算デアリマスケレドモ、吾々ノ希望
スル所ニ依ルト、一人當リノ生產額ト云フ
モノヲ今日以上ニ進メナケレバナラヌ、少
クトモ一人當リハ三百圓位マデナラナケレ
バナラヌ、卽チ一家五口アルト、一家ノ收
人、生產額ハ一千五百圓位ノ所マデ進ムコ
ナハ敢テ難クナイト思ヒマス、サウスルト
云フト北海道ハ、將來ニ於テ三十億圓ノ生
產總額ヲ擧ゲルト云フコトモ、是モ餘リ至
難ノ事デナイノデアル、是等ニ付テ政府當
局ハ如何ニ考ヘテ、居ルカ、或ハ是モ調査シ
テ行クノデアルト云フ御答ガアルカモ知シ
マセヌガ、フレハ當ラスト思フ、何故ナレバ
斯ウ云フ大體ノ見當ハ、今日マデ既ニモウ付
イテ居ラナケレバナラヌ、令後僅ニ二万何
千圓テ調査スルト云フコトハ或ハ枝葉末節
ノコトデアッテ大體ノ方針ト云フモノハ既
ニ決定シテ居ラナケシパナラヌト思フノデ
アリマス、此問題ヲ決定シナケレバ、北海
道ニ金ヲ澤山使ッテ善イカ惡イカト云フコ
トハ問題デアリマス、只今道廳アタリノヤ。
テ居ル四百万トカ五百万位ノ人口ホカ包容
シナイ、或ハ生產額モ十億万ヲ目標トシテ
居ルトカ、米ノ如キモ五百万石ヲ目標ニシ
テ居ルトカ云フヤウナコトデアルナラバ、
如何ニ北海道ニ多大ノ經費ヲ投ジテ、サウ
シテ拓殖ヲ進メテ吳レト申シテモ、ソレハ
國家ガ其支出ヲ許サナイト云フコトモ當然
デアルノデアリマス、吾々ハ斯ノ如ク北海
道ヲ多大ニ有望ナルモノト見テ居ル、ソレ
故ニ北海道ニ對シテハ積極的政策ヲ立テラ
とう、サウシテ大ニ拓殖ノ折與ヲ期セラレ
タイ、サウスルト先刻モ中上ゲタヤウニ
(「簡單々々」、4ト呼フ者アリ)外因ノ米ノ輸
入ヲ防ギ、砂糖ノ如キモ輸入ヲ防ギ、其他
年々四億カ五億ノ輸入ノ逆調ヲ轉換スルト
云フコトハ最こ易々タル事デアルノデア
リマス、是ハ所謂國策立カラ見テ、北海道
ノ價値ヲ斯ノ如ヲ兒タナラバ、先刻中シタ
ヤウニ二十年間ヲ期シヲ條ニ六德士億、乃
至八億位ノ金ヲ吝ムト云フヤウナコトデ
ハ到底此國策ノ遂行ヲ期シ得ルモノデナ
イノデアリマスカラ、是非共之ニ就テ政府
ガ如何ニ考ヘテ居ルカ、ソレヲ御伺シタイ
ノデアリマス、只今申上ゲタヤウニ是カラ
調査スルト云フナラバ是ハ二万圓ャ三万
圓ノ金ヲ投ジテ調査ノ出來ルモノデハナイ、
デアリマスカラ如何ナル程度ニ於テ此拓
殖計畫ノ調査ヲスルノデアルカト云フコト
ヲ、此際詳細ニ御說明ヲ願ヒタイノデアリ
マス
〔政府委員俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=18
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019・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今ノ松實君ノ御
質問ニ對シテ御答致シマス、松實君ノ御質
問ハ拓殖調査費ト云アモノニ付テ、何ヲ調
査スルカト云フコトヽ今其調査費ヲ要求
スル必要ハ何處ニ在ルカト云フコトノ御尋
ノヤウデアリマシタ、成程御話ノ通リニ、
昨年ニ於キマシテ内務省ニ於キマシテハ、
北海道廳ト共ニ北海道拓殖計畫ノ第二期計
畫ニ付キマシテ、十分ナル調査〓究ヲ致シ
タノデアリマス、併ナガラ此計畫ハ今年ハ
止メマシテ、明年ニ更ニ計畫ヲスルコトニ
至リマシタ理由ハ調査〓究ヲ致シマシタ
上ニモ尙ホ十分ニ調査スル必要ガアルト云
フコトガ一ツ、モウ一ウハ只今松實君モ御話
ノ通リニ、現時大正十五年ハ尙ホ第一期拓
殖計畫事業ノ進行中デアリマスノデ、此年
度ガ過ギタ後ニ於キマシテ第二次計畫ヲ立
テヽモ決シテ晩シトシナイ、斯ウ云フ理由
デアッタノデアリマス、ソレ故ニ明十六年度
ノ豫算審議ノ機會ニ於キマシテ、卽チ本年
度ニ於テ第二期拓殖計畫ニ對シテ向ホ十分
ニ調査〓究ヲスルト云フ必要ガアル譯デア
リマス、面シテ第二ノ御質問ト致シマシテ
ソレナラバモ少シ澤山ノ費用ガ要ルノ
デアラウ、斯ウ云フ僅カナ金ヲ以テ何ヲ調
査スルカト云フコトデアリマシタノデアリ
マスガ、此調査費ハ各官廳間、各省ノ拓殖
計畫ニ關スル所ノ事務上ノ連絡ヲ取ル爲デ
アルノデアリマス、從來ニ於キマシテハ內
務省乃至北海道廳ガ之ニ對シテ調査シテ居
リマシタカ、之ニ就テハ大藏當局ノ調査ヲ
必要トスル場合ガアリマスルシ、又進ンデ
ハ農林省、或ハ商工省ノ政府當局ノ調査ヲ
必要トスルモノモアリマスノデアリマス、
モウ一步進ンデ申シマスト、尙ホ遞信省ノ當
局ノ調査ヲ必要トスルモノモアリマスノデ
アリマス、是等ノ各官廳ノ當局ノ此北海迫
拓殖ニ關スル所ノ調査ヲ十分ニ致シマシ
テ、以テ尙ホ念ニ念ヲ人レタ〓究ヲ致シマ
シテ、遺漏ナキヤウニ更ニ第一一期計畫ニ進
ミタイト云フ積リデアリマスノデアリマス、
ソレニ付キマシテハ、北海道ノ產業ニ關ス
ル根本調査ガドウデアルカト云フコトデア
リマスガ、是ハ松實君ヒ多分御水知デアリマ
セウガ、北海道廳ニ於キマシテハ、北海道ト
云フモノニ關スル生產ノ根本的調査ハ多
年ニ亙ッテ〓究シテアリマスノデアリマス、
卽チ人口ノ問題ニ於キマシテモ、米ノ問題
ニ於キマシテモ、將又製糖-砂糖ノ問題
ニ於キマシテモ、或ハ生產其他ノ問題ニ於
キマシテモ、總テ北海道廳ニ於キマシテハ
多年ノ年月ヲ費シ、多大ノ費用ヲ費シテ、
是等北海道ニ關スル生產ノ根本的調査ガア
ルノデアリマス、是等ノ調査ガ更ニ間遲クテ
居ルカドウカト云フコトハ勿論計畫ヲ遂
ゲマスル上ニ於テハ考慮スル必要ハアリマ
スガ、今更其點ニ於テ餘リ深ク調査スルト
云フ考モアリマセヌノデアリマス、卽チ今
申シマスル通リニ、本年ニ於キマシテ更ニ
十六年度ノ豫算ヲ編成シマス時ニ當フテ、更
ニ第二期招殖計畫ヲ必要ヲ感ジマスルガ故
ニ、其各廳間ノ事務ノ連絡統一ヲ圖リマシ
テ、尙ホ拓殖計畫ノ完璧ヲ期シマスル爲ニ、
調查ヲシヤウト云フコトデ調査費ヲ要求シ
タ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=19
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020・松實喜代太
○松實喜代太君 マダ幾多質問致シタイ事
ガアリマスガ、會期モ切迫致シテ居リマス
カラ省略致シマス、唯〓此席デ一言御許シ
ヲ願ヒタイノハ、先刻委員長ガ御話ニナリ
マシタ希望附帶決議ト云フモノニ對シテ、
政府ノ所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、卽チ
之ヲ容レ得ルヤ否ヤト一云フコトヲ伺ヒタイ
ノデアリマス
〔政府委員俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=20
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021・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 此問題ニ付キマシ
テハ豫算總會ニ於キマシテ、內務大臣ヨ
リモ御答ニナッタノデアリマスルガ、此委員
長ノ御報告ノ北海道調査、其調査會ニ於キ
マシテハ、民間ノ經驗者、將夕學者モ尙ホ人
レテ、調査會ノ組織ヲシテ貰ヒタイト云フ
御希望デアリマスガ、此點ハ御趣意ハ民間ノ
希望、乃至民間ノ意見ヲ此拓殖計畫ニ挿入
スルヤウニト云フ御趣意デアリマスノデアマ
ス、是ハ御尤千萬デアル御尤千萬デアリマス
ガ、實ハ民間ノ有志若クハ、學者ノ意見ト申シ
マスモノハ、既ニ昨年ニ於テ調査シタ際ニ於テ
モ、北海道ニ於ケル或ハ政友會、或ハ憲政會、
將又政友本黨ノ諸君ノ意見ハ悉ク一應ノ
調査〓究ヲ遂ゲラレテ、其意見ノ御發表ガ
アリマスノデアリマスガ、勿論ソレヲ以テ
十分トハ致シマセヌ、尙ホ今後ニ於テモ、
民間ノ諸君ノ御意見ハ十分ニ聽クコトヲ政
府ハ喜ンデ居ル譯デアリマス、併シ此調査
ノ目的ハ只今モ丁度松實君ノ御質問ニ對
シテ御答シマンタ如ク、行政官廳間ノ其統
其連絡ヲ圖リマシテ、行政的ニ、事務
的ニ、此拓殖計畫ノ調査ヲ致シタイト云フ
積リデアリマス、然ルニ之ニ對シテ更ニ民
間ノ委員ヲ人レルト云フコトニナリマス
上、此費用ヲ以テシテハ到底支辨シ能ハヌ
ノデアリマス、唯〓單ニ此費用ヲ以テ支辨
シ能ハヌカラ、其御意見ヲ採用スル譯ニハ
行カヌト申上ゲルノデハナイ、其必要モ餘
リナイト思フノデアリマス、而シテ更ニ此
調査會ハ、勅令ヲ以テ其官制ヲ作ルニアラ
ズシテ、單ニ内閣ノ閣議ノ決定ニ據ノタ、申
サバ調査會ハ極ク輕イ意味ニ於テノ調査會
ニ致シマス積リデアルノデアリマスソレ
故ニ更ニ此調査會ニ於キマシテ、民間ノ諸公ヲ
御入レセヌデモ、民間ノ諸君ノ御意見ハ總
テノ機會ニ於テ十分ニ尊重致ス積リデアル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=21
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022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 三土忠造君ニ申シマ
ス、只今總理大臣ガ御出席ニナリマシタカ
ラ.先刻保留ニナリマシタ質疑ヲ御進メヲ
願ヒマス
〔三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=22
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023・三土忠造
○三土忠造君 先刻私ガ陸軍大臣ニ對シテ
質問ヲ致シマシタ、其質問ト陸軍大臣ノ答
辯トヲ、總理大臣ニ御聽キヲ願ッテ、其上ニ
總理大臣ニ質問ヲ致シタナラパ宜カラウト
思ウタノデアリマスガ丁度貴族院ノ會議中
デ已ムヲ得ズ御退席ニナリマシタ、甚ダ遺
画デアリマス、故ニ私ハ國務大臣及政府委
員ノ方ニ、此質問應各ノ要領ヲ總理大臣ニ一
御傳ヘヲ願ヒタイト申シテ置イタノデアリ
マスガ、多分御傳ヘ下スノタ事ト考ヘマス、
又明敏ナル若槻總理大臣ハ、兩方ノ質問應
答ヲ十分御了解アッタ事ト考ヘマス、其信用
ノ下ニ質問ヲ致スノデアリマス、我ガ帝國
陸軍ニ對スル國民ノ疑惑ト云フコトハ私
共ハ非常ニ重大問題ト考ヘテ居ルノデアリ
マス(ヒヤ〓〓)申ス迄モナク我ガ忠勇義烈
ナル陸海軍、此光輝アル我ガ陸海軍ニ對シ
テ、苟モ國民ヲシテ毫末モ之ニ對スル疑惑
ノ念ヲ懷カシムルコトガアリマシテハ吾
吾ハ極力是ガ一掃ニ努メナケレバナラヌト
思フノデアリマス(ヒヤ〓〓)又疑惑ヲ懷カ
シムルヤウナ種ガアッタト致シマスルナラ
バ是ハ重大問題デアリマス、陸軍ニ向ッテ
ハ非常ナ吾々ハ決心ヲ以テ適當ノ處置ヲ講
ジナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ先
日同僚秋田〓君ノ質問竝ニ陸軍大臣ノ答辯
ニ對シテ、總理大臣ハ陸軍大臣ノ言明ヲ保
證サレマシタ、卽チ陸軍大臣ハ三瓶某ノ作
成シタル文書、竝ニ之ニ依ッテ爲サレタル議
員中野正剛君ノ言フガ如キ事ハ荒唐無稽
ナ事デアル、事實無根ナ事デアルト云フ意
味ノ事ヲ明瞭ニ言明サレタノデアリマス、
之ニ對シテ若槻總理大臣ハ裏書ヲサレ、同
ジ責任ヲ分ツト云フコトヲ申サレタノデア
リマスルガ、然ラバ憲政會ハ黨議ヲ以テ中
野正剛君ニ質問ヲセシメタト云フコトデアリ
マスカラ、之ニ對シテ如何ニ責任ヲ感ジラ
レルカト云フコトヲ御尋シマシタ所ガ、黨
議トハ自分ハ聞イテ居ナイ、黨議ナラバ責
任ヲ帶ビルケレドモ、黨議トハ思ウテ居ラ
ヌカラシテ責任ヲ帶ビナイ、斯ウ云フ事デ
アリマシタ、私共ハ直接勿論憲政會ノ黨議
決定ノ席ニ臨ンデ居リマセヌノデアリマス
カラ、黨議デナイト仰シヤレバ、黨議デナ
イト受取ル外ハアリマセヌ、併シ事實ハ黨
議デアッタト思ヒマスガ、ソレハ黨謙デアツ
タカナカッタカト云フコトヲ、今日御尊スル
必要ハナイ、中野君ガ先達テ爲サレタ演說
ニアノ內容ヲ持ッテ居ルナラバ或ハ憲政會
ノ幹部諸公モ許サレナカッタカモ知レヌト
思フ、併シ今日カラ申シマスルト、アノヤ
ウナ所謂荒唐無稽ナ事實ヲ基礎トシテ演說
サレマシテ、是ガ爲ニ非常ナ國民ニ疑惑ヲ
懷カシメタノデアリマスカラシテ、若シ若
槻總理大臣ガ、先日陸軍大臣ノ當席ニ於テ
御述ニナッタ事、竝ニ先刻私ノ質問ニ對シテ
御答辯ニナッタ事ガ、全部其通リデアルト云
フコトヲ御確信ニナルナラバ、中野君ノ演
說サレマシタ以後ニ於テ、或ハ中野君ノ動
議ヲ撤回セシムルトカ、或ハ其他適當ノ處
置ヲ講ジテ、サウシテ國氏ノ疑惑ヲ解クコ
トニ努メルコトガ憲政會ノ總裁デアッテ、總
理大臣タル若槻首相ノ洵ニ免ルベカラザル
責任ト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)然ル
ニ如何ニモ不可思議ニ考ヘマスノハ、其後
憲政會ヲ代表セラレタル御方ノ此壇上ニ於
ケル御演說ヲ聽キマシテモ、陸軍大臣竝ニ
總理大臣ハ左樣ニ言ハレタ-荒唐無稽ト
言ハレタト云フケレドモ、自分等ハ荒唐無
稽トハ思ハヌト、憲政會ノ代表者ガサウ言
ハレルノデアリマス、荒唐無稽ニアラズト
言ハレルノデアリマスガ、而シテ今尙ホ中
野君ノ動議ニ因ル査問委員會ハ繼續サレテ
居ルノデアリマス、總理大臣ニシテ憲政會
ノ總裁タル若槻君ガ、陸軍大臣ノ言明ヲ信
用サレルト云フコトヲ聲明シテ置キナガ
ラ、而シテ中野君ノ御演說ガ非常ニ我ガ陸
軍ニ對シテ疑惑ヲ懷カシメ、我ガ國軍ノ將
來、國民思想ノ上ニ重大ナル影響ヲ及ボス
コトニナッテ居ルノデアリマス(拍手)之ヲ
憲政會ノ總裁竝ニ輔ノ重責ヲ帶ビラレル
若槻首相ト致シマシテ、袖手傍觀シテ居ル
コトヲ私共ハ甚ダ不可思議ニ思フノデアリ
マス(拍手)故ニ尙ホ今日ニ及ビマシテモ、
只今ノ私ノ質問、陸軍大臣ノ御答辯ノ要領
ヲ御聽キ下サッタコトヽ考ヘマスガ、其上デ
總理大臣ハ、晩シト雖モ議員中野君、卽チ
政府與黨タル總裁ノ節度ノ下ニ服スベキ中
野君ノ此提案ヲ撤回セシメ、而シテ國民ノ
疑惑ヲ解ク擧ニ出ヅルト云フ御意思ガアル
カ不ヤ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、若シ
無シトスルナラバ其理由ヲ承リタイ其理由
ヲ承シタ上デ、私共ハ滿足出來マセナカッタ
ナラバ、適當ノ處置ヲ執ラナケレバナラス
ト考ヘマス、此場合ニ明瞭ニ御答ヲ願ヒマ
ス(拍手)
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=23
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024・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 私ハ過日モ御
答ヲ致シテ置キマシタガ、吾々政黨員デ互
ニ居リマスル以上ハ、常ニ總テノ事ガ同一
ニ出ヅルコトヲ望ムノデアリマス、併ナガ
ラ大勢ノ人ノ集シテ居ルコトデアル、個々ノ
人ノ意見ヲ悉ク左右スルト云フコトハ出來
ヌノテアリマス、ソレデアリマスカラ私ハ
私ガ聽イテ居ッテ、自分ガ判斷シテ宜イト
言ッテ實行シタ黨議ニ付テハ何所マデモ貴
任ヲ負ヒマスガ、唯〓個々ノ議員ノ如何ナ
ル言論ニ付テモ悉ク責任ヲ負フ譯ニハ行カ
ヌ、斯ウ云アコトヲ申上ゲタノデアリマス、
而シテ中野君ノ言論ニ對シテハ、只今議會
ニ於テ之ヲ査問委員會ニ付シテ居ラレルノ
デアリマス、ソレ故ニ議會ガ御判斷爲サル
ベキコトデアル、議會ノ御判斷デ、私モ然
ル後之ヲ考慮致シマス(拍手)
〔三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=24
-
025・三土忠造
○三土忠造君 只今ノ御答辯ヲ伺ヒマシテ
ハ重ネテ御確メヲシナケレバナラヌノデ
アリマスガ、私モ勿論政黨ノ總栽ト致シ
テ、所屬議員ノ言論ニ一々統制ヲ加ヘルト
云フコトノ困難ナコトハ能ク存ジテ居リマ
ス、隨テ之ニ對シテ一々責任ヲ帶ビルコト
ヲ强フル者デアリマセヌ、併ナガラ此問題
ハ帝國ノ國軍ノ威信ニ關スル非常ナ重大問
題デアリマス(拍手)
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=25
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026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=26
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027・三土忠造
○三土忠造君(續) 若シ議員中野正剛君ノ
言論ニ依シテ、寸毫タリトモ我ガ帝國ノ陸
軍ノ信用ニ關スル結果ヲ來スナラバ總理
大臣ト致シマシテ私ハ默止スルコトハ出來
ナイト思フノデアリマス、査問委員會ニ於
キマシテ議會ノ問題トナッテ居ルコトハ申
スマデモアリマセヌ、査問委員會ニ於ケル
正式ノ手續ニ依シテノ問題ヲ私ハ總理大臣
ニ御伺スルノデアリマセヌ、總理大臣ガ眞
ニ帝國ノ陸軍ノ事ヲ憂ヘラレ、眞ニ輔弼ノ
責任ヲ盡サウト云フ御考ナラバ、私ハ自分
ノ節度ノ下ニ在ル議員ノ行動ニ對シテ統制
ヲ加へ、サウシテ之ニ依シテ國民ノ疑惑ガ
解ケルト云フナラバ、當然執ラナケレバナ
ラヌ手段ト考ヘル(拍手)ソレヲ總理大臣ガ
其責任ヲ囘避サレテ、成行ニ委スト仰シヤ
ルナラバ、私共ハ最早之ニ對シテ御尋スル
必要ハアリマセヌ、吾々ハ權能ニ依ッテ通
當ノ處置ヲ執ル外アリマセヌ、唯私ハ若槻
總理大臣ニ、私ガ今申スヤウナコトヲ爲スツ
夕方ガ、內閣ノ爲ニモ、國家ノ爲ニモ私ハ
宜シクナイカト考ヘルノデアリマス、故ニ
左樣ナ事ハ出來ナイカト云フコトヲ今一度
御尋致シマス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=27
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028・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 再質問デアリ
マシタガ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=28
-
029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=29
-
030・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君)(續) 再ビ御質
問デアッテ、而モ御忠告デアリマシタガ、
私ハ先刻答辯致シタ通リデ之ニ加ヘルモノ
ハアリマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=30
-
031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 丸山浪彌君
〔九山浪彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=31
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032・丸山浪彌
○九山浪彌君 私ハ極メテ簡單卒直ニ內務
大臣ノ所見ヲ御伺シテ置キタイノデアリマ
ス、併ナガラ先刻委員長ノ御報告中、此附
帶決議ニ付テハ丸山ヨリ何レ何カ申出ルダ
ラウト云フコトノ御言葉ガ殘サレマシタ、
委員會ニ於キマシテハ、私ハ特ニ委員長ヨ
リ附帶決議ノ內容ヲ申述ベテ貰ヒタイト云
フコトヲ註文シテ置キマシタガ、委員長ハ
私ヨリ述ベルト云フヤウニ、私ニ陳述ノ機
會ヲ與ヘラレマシタガ故ニ、餘儀ナク此點
ニ付テ極メテ簡單ニ諸君ノ御耳ヲ汚シテ置
カナケレバナラヌ、此附帶決議ナルモノハ
先刻松實君ノ御演說中ニ、北海道拓殖論ト
シテ其片鱗ヲ現ハシテ居リマシタ、唯〓吾々
ガ是非附帶決議ヲ加へナケレバナラヌ所
以ノモノハ若シ政府ノ原案ノ儘ニシテ此
案ガ通過スルノデアッタナラバ、今日ノ北
海道ニ於ケル道民ガ政府ヲ見ルノ眼ハ、此
拓殖調査會ナルモノハ眞ニ拓殖ノ調査ヲ爲
スモノニアラズシテ、憲政會ノ黨勢擴張ノ
機關デアルト見ラルヽ虞ガアル、此故ニ私
ハ附帶決議ヲ附シテ置イタノデアル、所デ
委員會ニ於テハ內務大臣ハ、此會ハ各本省
ノ聯絡ヲ圖ルガ爲ニ設クル調査會デアルガ
故ニ、特ニ民間ノ有志ヲ加フルノ必要ガ無
イト云フノ御答辯ガアッタノデアル、諸君是
ニ於テ僅ニ二万五千有餘圓ノ調査會費用デ
アルケレドモ、二万五千ノ調査四ノ費用ノ
中ニ、一万二千有餘圓ト云フモノハ悉ク旅
費ニ使用サレテ居ルデハナイカ、今日北海
道ノ拓殖計畫ナルモノハ、業ニ旣ニ諸君御
承知ノ通リ、民間ヨリモ、政府ヨリモ、微
ニ入リ、細ニ渉ノテ殆ド隅カラ隅マデ港灣、
道路、到ル處其調査シ盡サヾルモノナキモ
ノガアルノデアリマスゾ、既ニ二十箇年案
トシテ十二万圓、又憲政會案トシテモ一一十
箇年案トシテ十万圓、政府案トシテモ九万
二千圓、左樣ニ幾多ノ成案ト云フモノガ十
分ニ出來テ居ルノニ、更ニ調査會ニ名ヲ藉
リテ調査會ヲ設立スル必要ガ何處ニ在ル
カ、只今俵內務次官ハ、念ニハ〓ヲ入レル
ト言ウタ、念ニハ念ヲ入レルト云フ言葉ヲ
以テ此調査會ノ必要アリトシタナラバ、今
後何年ノ後ニモ念ニハ念ヲ人レナクテハナ
ラヌ必要ガアル、斯樣ナ言葉ノ下ニ、徒ニ
名ヲ調査會ニ藉リテ、憲政會ノ堂勢擴張ヲ
爲スト云フコトハ、實ニ國家ノ爲ニ憂フル
所デアル(拍手)私ハ豫算總會ニ於テ、特ニ
今日マデ政府當局ハ北海道ヲ親シク視察セ
ラレタル其際ニ於テ、現ニ俵内務次官ガ昨
年北海道ヲ視察セラレ、余市ノ町ニ寄ラレ
タ時ニ於テ、余市町ノ町會議員ヲ始メ町民
五百餘名ヲ悉ク憲政會ニ入黨セシメタ事實
ハ天下公知ノ事實デアル(拍手)是ハ此余
市港ノ漁港問題ヲ餌トシタモノデアルト云
フ、此位ノ事ハ憲政會ノ代議士諸君ト雖
モ之ヲ認メナクテハナラヌノデアル
(拍手)是ハ單ニ一ノ事例デアルケレ
ドモ、恐ラク今後此調査會ナルモノ
ハ憲政會ノ政府委員諸君ノミニ依シテ組
織セラレタナラバ、折角眞面目ニ調査セン
ト欲スル所ノ調査會デモ、道民ノ眼ヨリハ
疑惑ノ眼ヲ以テ判斷セラレルト云フコト
ハ實ニ政府當局ノ爲ニモ惜ムベキコトデ
アル、所デ私ハ先刻委員長ノ申述ベラレタ
ルガ如ク、希望ヲ附帶決議ト致シマシタ、
所デ若槻内相ハ又御見エニナラヌガ、是ハ
是非若槻内相ヨリ御答ヲ得タイ問題デアル
ガ、此附帶決議ナルモノヲ内相ハ如何ニ取
扱ハレルデアラウカ、現政府ハ院議ヲ無視
ナシタル所ノ先例ガアル貴族院ニ於テ文
部大臣ガ陳謝シタルノ事實モアル(ヒヤヒ
ヤ)洵ニ此憲法上ノ立憲的行動ノ上ニ於テ
ハ私ハ一點ノ疑ヲ挾マザルヲ得ナイ所ノ
政府ノ行動デアル(拍手)私ガ若シ此條件ヲ
單ニ一ノ希望ト致シマシタナラバ憲政會
ノ諸君ヲ〓水君ガ代表シテ御賛成爲サルト
云フコトデアッタガ、單ニ一ノ希望ノミデ
ハ折角ノ此決議ナルモノハ有效ニ如實ニ
スルコトガ出來ナイ、故ニ特ニ附帶決議ト
爲シタルガ故ニ、憲政會ノ諸君ヨリハ反對
セラレタ、偖此處デ愈、附帶決議ナルモノ
ハ委員長報告通リ、本會ニ於テ必ズ滿場ノ
大多數ヲ以テ通過セラレルニ違ヒナイガ、
當局若槻内務大臣ハ此院議ニ對シテ如何
ニ取扱ハレルカ、若シ此院議ナルモノヲ無
視シテ、假ニ政府提案ノ其通リニ之ヲ實行
セラレルト云フコトデアルナラバ其非立
憲的內閣ニ對シテ吾々ハ今後ノ深キ警戒、
今後ノ深キ注意ヲスルモノガアルノデアル
(拍手)此問題ニ對シ内閣大臣、責任アル內
務大臣ハ如何ニ取扱ハルヽノデアルカト云
フコトヲ、內務大臣ニ向シテ簡單率直ナ御
答辯ヲ煩スノデアリマス、只今內務大臣ハ
出席ガアリマセヌガ、特ニ政府委員ヨリ此
意味ヲ御通達ノ上、內務大臣ノ御答辯ヲ煩
シタイト思ヒマス(拍手)
〔政府委員俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=32
-
033・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今丸山君ヨリ特
ニ內務大臣ノ御答辯ヲ求メラレタノデアリ
マスガ、御出席ガアリマセヌカラ、私デ宜
シケレバ私ガ御答致シマス(丸山浪彌君
「内務大臣デナケレバイケナイ」ト呼フ)内
務大臣ノ答辯ヲ御必要トセラレルナラバ、
其御答辯ハ後ニ讓リマス、私ハ玆デ自己ノ
身上ノ辯明ヲ致サンケレバナラヌモノガア
ルノデアリマス、ソレハ只今丸山君カラシ
テ申述ベラレタ通リニ、昨年出張ノ際ニ於
キマシテ私ガ余市ニ旅行シタ、余市ニ立寄ソ
〃、此機會ニ於テ憲政會ニ五百名程入黨シ
タト云フコトヲ御話ニナリマシタガ、私
此旅行ノ際、余市ノ人達ガ五百人入黨シタ
カセヌカト云フ事實ハ知リマセヌ、知リマ
セヌガデス、或ハ其時機ヲ同ジウシテ入黨
員ガ五百人アッタカモ知ラヌ、私ハ全ク知
ラナイ、併ナガラ此種ノ事ハ〓テ政友會內
閣ノ際ニ-嘗テ政友會內閣ノ際ニ、或
港灣鐵道ヲ利用シテ、地方ノ黨員募集ヲシ
タデアラウト云フ世間ノ非難ガアッタノデ
アリマス、サウ云フ非難ガ澤山アッタ、私
ハ併ナガラサウ云フコトハ信用シナイ、是
ハ多分地方ノ人達ガ或ハ時ノ政府ニ媚ピン
ガ爲ニ、或ハ特ニ政府ニ其地方ノ仕事ヲシ
テ貰ハンガ爲ニ、特ニ或ハ地方ノ人達ハ時
ノ政府ガ喜プデアラウト云フ譯デ以テ、此
種ノ利害關係アル地方ハ、其機會ニ於テ入
黨證書ヲ出シタカモ知レナイ、私ハサウ云
フコトハ知ラナイガ、多分サウデアルダラ
ウト思フノデアル、若シ北海道ニ於キマシ
テ金市ノ地方ノ人達か、私ガ出張シタ際ニ
入堂證書ヲ出シタトシタナラバ蓋シ此怠
味デアラウト思フノデアリマス、是ハ私ハ
政府トシテ又個人トシテ責任ノ無イコトデ
アリマスカラ、是ダケ御答辯シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=33
-
034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 丸山君ニ御尋致シマ
スガ、内務大臣ハ先刻御承知ノ通リ、貴族
院ノ本會議ノ爲ニ退席サレマシタ、貴方ノ
質問ハ保留セラレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=34
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035・丸山浪彌
○丸山浪彌君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=35
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036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ〓瀨一郞君
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=36
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037・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 三土君ノ御質問ニ相成リマ
シタ軍費ノ事ニ關シ、私ヨリ陸軍大臣ニ對
シ重ネテ御伺致シマス、同ジク軍費ニ付キ
論ジマスル吾々ノ立場モ、陸軍大臣ノ立場
モ同一デアル、同ジク國軍ヲ思ヘバコソ質
問ヲ致スノデアリマス、何卒。虛心坦懷ナル
御答ヲ得タイト思ヒマス、一ツハ昨日豫算
ノ委員會ニ於キマシテ、彼ノ機密費ガ個人
名義デ銀行預金ト相成タト云フ一件、又
之ヲ以テ公債ヲ買入レタト云フ一件ニ付キ
御伺致シタノデアリマス、其質問應谷ノ結
果ハ現宇坦大出ハ陸軍省ニ於ケル記錄及
自分ノ記憶ニ依レバ、其事無シト云フコト
ニ歸スルト結論サレタノデアリマス、何レ
速記錄ガ出來マスルガ故ニ、私ノ言フコト
ノ誣妄ナラザルコトガ明ニナリマス、今三
土君ノ御質問ニ對シテハ預金、公債證書
買人ノ事ハ毛頭アリマセヌト御谷ニナッテ
居ル、陸軍省ニ保存セラレタル公ノ記錄ニ
依ッテ無イト云フコトヽソレカラ大正十三
年一月カラ御就任ニナリマシタ、宇垣陸軍
大臣ノ記憶ニナイト一云フコトヽ、此二ツノ
否定ト、今日ノ毛頭無イト云フコトノ問ニ
ハ多少ノ差異ガアルデ國民ノ疑惑ト云フ
ノハ此差異ニ付テ疑ヲ持ツノデアリマスガ
故ニ、重ネテ御尋ヲスルノデアリマス、(謹
聽昨日モ引用鉸シマシタガ、貴方ノ前任
者ノ山梨半造大將、此人ハ-前文ハ讀ミ
マセヌ、朝日新聞ノ紙上ニハ莫大ノ公金ヲ
銀行へ預入シタルハ事實ダ、預入者ノ名義
ニ吾輩其他ノ名義ヲ使ノテ居ルガ、是ハ何
處ノ役所デモアル事務上ノ慣例デアルト、
貴方ノ前任者ハ仰シヤル、而シテ是ハ新聞
社訪問ノ記事デアリマスルカラ、私モ初メ
全幅ノ信ヲ置キマセヌカッタ、然ルニ其翌
年三月七日ノ新聞紙上ニ、同大將ガ自ラ正
誤ヲ申込マシテ、第一項中莫大ノ公金トア
ルモ、單ニ公金ノミナラズ、官金モ含マレ
テ居ルト訂正サレテ居ル、此訂正ヲ前ニ續
ケテ讀ミマスルト、莫大ノ公金ト莫大ノ官
金ヲ銀行ヘ預人レタノハ事實ダト云フコト
ニナル、預入名義者ハ時ノ陸軍大臣價人ノ
名前ヲ使シタノモ事實ダト、斯ウ云フコト
ニナル、ソコデ以テ國民ガ疑ヲ持ツノデア
リマスガ故ニ、此疑ガ消エルヤウニ仰シヤ
ラヌト云フト、毛頭無シト云フコトヲ幾ラ
大キナ〓デ仰シヤッテモ、國民ノ疑ハ霽レマ
セヌ(拍手「疑ハシナイ」ト呼フ者アリ)第二
項ニハ同シ由梨半造大將ハ銀行利子ハ低イ
故高利ノ公債ヲ買換へタノモ事實、參謀
ノ主計モ買ヒニ行ッタコトダラウ、皆吾輩
ノ命令デアルト訪問ノ記者ニ語ラレ、之に
對シテ正誤ヲサレテ居リマス(「新聞博士」
ト呼フ者アリ)正謨ノ中ニハ第二項中、金
ノ命令ニテ公債ヲ買ハシメタ如クアルガ、余
ハ西伯利臨時軍事費中ノ或種ノ項目ニ依ル
費用ヲ以テ二三囘、公債ヲ購入セシメタノ
ミンチ、各會ノ分ハ其會自ラ購入シタモノデ
アルト訂正サレテ居ル、デアルカラシテ今
御說明ニナッタ共済組合、招魂祭ノ費用等
ハ其會白ラ買ウタモノデ、シレハ別ダ
自分ノ公債ヲ買ウタノハ、銀行ノ預金利子
ハ安イカラシテ、西伯利出兵ノ或種ノ基全
デ以テ、二三回公債ヲ買入レタト云フ正誤
ニ相成ルノデアリマス、卽チ毛頭其事實無
シト云フコトヽ大變違シテ參ル、昨日ノ御
答辯ノ方ガ正確デアルノデハナイカト私ハ
考ヘマス、卽チ大臣自身ハ潔白ノ方デ御記
憶ニハナイ、陸軍省ノ記錄モ能ク整理シテ
アッテ、斯樣ナル事ノ記錄ハナイ、斯ウニ云
フコトナラバ信用ハ出來マスルケレドモ、當ノ
前任者山梨半造大將ガ筆ヲ執ッテ、正誤マデ
シテ居ル文章ニアルト云ヲテ居ルノニ、如何ニ大
臣ガ無イト伸シヤッテモ、本人ノ言フコトヲ信
ズルヨリ國民ハ信ジ方ガナイノデアリマス(「ヒ
ヤヒヤ」拍手)茲ニ又益、私ガ山梨前任者ヲ
信ズル譯ハ軍事費ハ三箇月分宛前ニ勅栽
ヲ經テ貰ヒマスルモノダト仰シヤル、成程何
千万ト云フ金ヲ三箇月モ前ニ御貰ヒニナル
ト云フト、是ハ銀行ノ預金ニスルカ公債ニ
スルカシナケレバ、御保管ニ御困リニナ,
タノデハナイカ、此頃ハ內幸町一丁目デモ
强盜ノ出ル世ノ中デアル(拍手)何千万ト云
フ金ヲ三月モ前ニ御引出シニナレバ、矢張
銀行ニ豫金ヲ爲サルカ、公債ヲ御買ヒニナ
ルカシナケレバナルマイ、私ハ大臣ヲ責メ
ルノデハナイ、過去ノ歷史ヲ茲ニ仰シヤル
ト云フト善イモノハ善イ惡イモノハ惡イ、
ソコデ判定ガ決マッテ國民ニ安定ヲ與ヘル
ノデアル、之ヲ押ッ塞ゲテ大臣ガ斯ウ言ウ
タ、總理大臣ガ裏書ヲシタ、ソレガ事實ナ
リト言ッテ、一黨一派カラ如何ニ大聲呼號
サレテモ、私始メ何人モ信ズル譯ニ行キマ
セヌ(「ヒヤ〓〓」拍手)元末機密費トハ仰シ
ヤルケレドモ-是ハ法律ノ事デ御尋ハシ
マセヌ、機密費ト云フノハ立法課目、此議
會デ以テ機密費トシテ決議シタルモノヽミ
ガ機密費ナノデ、此議會ガ機密費ノ項ヲ定
メナイノニ、行政部ガ勝手ニ之ヲ機密費ダ
ト云フノデ、議會入ルベカラズ、會計儉查
院入ルベカラズ、斯樣ナ機密費ハ世界何レ
ノ國ノ會計法ニモアラウ筈ガナイ(拍手)名
前ヲ機密費ト御付ケニナッテモ宜イケレド
モ、是ハ眞ノ機密費デハアリマセヌ、眞實
ノ機密費デハナイ、然ラバ戰サハドウスル
カト云フト、戰サノ費用ヲアナタ方ガ御使
ヒ下サルノニハ法律ガアル、明治二十三年
法律第七十號ト云フノデ、軍ニ要スル郷費
ト云フモノ、出師準備ニ關スル物購買ハ
陸海軍大臣其責ニ任ジ、會計檢資院ノ検査
ヲ受ケナイ、是ハアナタ方ノ機限內デアル、
機密費トハ違ヒマス、機密費ト云フモノハ
矢張是ハ會計檢査院ノ檢査ト、議會ノ承諾
ヲ必要トスルモノデアリマス、政府ニハ多
數ノ法律家モ鳥ラレル、有名ナル山川長官
モ居ラレル、ドウカ法律ノ事ヲ能ク御研究
ヲ願ヒタイ、是ガ機密費ダカラ議會ニ報告
シナイト云フ譯ニハ參リマセヌ、國家ノ爲
ニ惡イト云フナラバ祕密會ノ制度モアルカ
ラ、祕密會ニシテモ二千四百万ト云フ内容
ヲ御公表ニナレバ疑問ハ解ケル、事員ヲ公
表シナイデ毛頭無イト仰シヤッタ所カ、無
イデハ通リマセヌ、ソレ故ニ(「常議ナ
シ」「謹聽」ト呼ビ發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=37
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038・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜粛ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=38
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039・清瀬一郎
○〓瀬一郞君(續) 先ヅ第一ト致シマシテ
ハ貴方ノ銀行預金ハ無イ、公債買人ハナ
イト仰シヤルノハ昨日仰シヤッタ通リニ
陸軍省ノ記錄ニ無イト云フダケデアルカ、
貴方ノ記憶ニ無イト云フダケデアルカ、此
二ツノ意味デアッテ、絕對ニ無イ事デアル
ト云フ保證ヲ貴方ハ爲サルノデハアルマイ
ト思ヒマスガ、其意味ヲ御釋明願ヒタイト
云フノガ第一ソレカラ今ノ三箇月分デ私
ハ驚イタ、全體國民ガ感フ人ガ疑フト云フ
テ、國民ヤ議員ヲ惡イ者ニ貴方ハ思ッテオ
キデニナルケレドモ、億三千万ノ事後
承諾ト豫備金支出ニ向ッテ、ドウ云フコト
ヲサレテ〓ルカト云フト、大正七年ノ八月
十六日ニハ九百二十七万圓、八月二十六日
ニハ九百六十八万圓ナゾト使ウタ金ト日ト
ダケヲ出シテ、事後承諾ヲシロ、斯ウ云フ
モノヲ出シテ何ニ使ハレタト云フコトハ少
シモ御說明ニナラナイ、ソレデ疑フ奴ガ惡
イト貴方ハ仰シヤル、ソレデ三箇月分ヲ出
シタト仰シヤルガ是ハ豫備金デス、御手許
ニアレバ御一覽ヲ願フ、大正九年一月二十
四日ニ陸軍ダケノ豫備費トシテ一日ニ二千
五百七十五万八千圓一ツニ出テ居ル、是ガ
タッタ三月ノ費用デアリマセウカ、三箇月
内ニ當時二千五百万圓ヲ御他ヒニナッタノ
デアルカ、先刻ハ大正八九年ハ西伯利ハ忙
シカッタ時分デアルト仰シヤルガ、ソレハ
僞リデアリマス、丁度大正九年ノ一月ノ
議會ニ於テ、田中陸軍大臣ガ此處デ演說サ
レテ居ル、大正八年度ト云フモノハ西伯利
ハ手控ヘタ、日本ノ軍隊ハ半分以上ハ引返
シテ、僅カ二万五千ダケデ以テ西伯利ヲ守
テ居ッタ年ナノデアリマス、ソレヲ如何ニ
モ大キナ戰デモシタ如クニ大臣ハ仰シヤノ
タケレドモ、其時ノ記錄ヲ是コン請ンデ能
ク御調べ下サイ、田中義一大將ノ演說ガチ
ヤントアル、アノ當時ノ答ハ二万五千シカ
送ッテ居ラヌノデアル、其年ノ三〓月分ノ經
費トシテ二千五百乃圓、所ガ玆ニ私ガ疑ヲ
持チマスノハ大正九年一月二十四日ト云フ
ノハドウ云フ日デアルカ、大正九年一月二
十二日ニ憲政會及四民黨ヨリ普通選舉案ガ
提案サレ、ソレニ對シイ島田三郞君ガ演說
サレテ、二月二十六日ニ議會ハ解散ニ相成フ
テ居ル、議會ノ解散ト豫備費ノ莫大ナル支出
ガ前後鉸シテ居リマスルガ爲ニ、國民ガ茲
ニ疑感ヲ懷クノデアリマス(拍手)疑惑ヲ
投ゲテハイケナイト云フコトヲ伸シヤル代
リニ、此一月二十四日ノ一口一一千五百万圓
ト云フ豫備金支出ガ、選擧トハ關係ガナイ
ト云フコトヲ證明ナサッタナラバ、國民ハ
安心ヲ致スコトヽ思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣宇垣一成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=39
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040・宇垣一成
○國務大臣(宝垣一成君) 只今〓瀨君カラ
臨時軍事費ノ關係ニ付テ御質問ガアリマシ
タガ、〓瀨君ハ熱心ニ軍事ノ事ヲ御考ヘ下
サッテ、度ミ御質問ヲ戴キ、海ニ有難ウゴ
ザイマス、本日三土君ニ對シテ私ノ答ヘマ
シタコトハ昨日〓瀨君ノ御質問ニ對シテ
答辯致シタコトヽ何カソコニ矛盾齟齬ガア
リハセヌカト云フ意味ノ御質問デアリマシ
タガ、昨日如何ニモ御述ニナリマシタ通リ、
私ハ陸車宮ノ記錄、又自分ノ記憶ヲ辿レテ
見テモ、サウ云ブコトハナイト云フコトヲ
中上タテ〓リマス、卽チ記錄ト記憶以外ノ
何ヲ求メマスカ、毛頭ナイト云フ結論ヲ申
上ゲテ差支ナイト私ハ思クテ居リマス、次
ニハ新聞ノコトニ付テ如何ニモ-昨日モ
拜聽致シマシタ、又今日モ〓聽致シマシタ
ガ、新聞記事ヲ何カ金科玉條ノヤウニ御述
ニナリマシタガ、私ハ昨日モ申上ゲマシタ
通リ、今日局ニ當ノテ居ラナイ個人ガ、新
聞ニ對シテ話ヲシタコトニ對シテ、私カラ
別ニ御答辯ヲ申上ゲル所ノ必要ハ毛頭ナイ
ト考ヘテ居リマス、ソレカラ次ハ臨時軍事
費三箇月分纔メテ前以テ引出シタ、サウシテ
使フ、三〓月分ト云ヘバ今御話ニナリマシ
タヤウニ二千何百万圓ト云フヤウナ巨額ナ
ル金ヲソレヲ前受ヲシテ使フト云フコト
ニナレバ、銀行ヤ何處カニ預ケタコトガア
ルダラウ、斯ウ云フ御推定ニナッタノデア
リマスガ、私ガ先刻三箇月分云々ト云フコ
トヲ申シマシタコトハ、卽チ豫算ノ三箇月
毎ニ切ッテ要求シタノデアリマス、支出ハ
其都度致スノデアリマスカラ、サウ御承知
置キヲ願フテ置キマス、次ハ臨時軍事費デ
軍部ガ使シタ機密費ハ眞ノ機密費デナイト
云フ御議論ガアリマシタガ、此事ニ付テハ
昨日大藏ノ政府委員カテモ詳細御說明申上
ゲテ置イタ筈デアリマス、尙ホ御必要ガア
リマスナラバ、大藏當局カラ御答致スデア
リマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=40
-
041・清瀬一郎
○〓瀨一郞君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=41
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042・清瀬一郎
○〓瀨一郎君 最早會期モ切迫ノ際デアリ
マス、尚ホ豫備金支出ノ委員會モアリマス
コトデアリマスルガ故ニ、細カナ點ハ留保
致シテ置キマスガ、唯〓能ク陸軍大臣ハ今
官職ニ在ル者デナイト物ヲ知ラヌヤウナコ
トヲ仰シヤル、前ニモソンナコトヲ言ッテ、
豫備後備ノ者ハ物ヲ知ラヌト仰シヤル、今
段々聽イテ居リマスルト云フト、山梨大將
ハ今局ニ當ノテ居ラヌカラ知ラウ筈ハナイ
ト仰シヤル、成程現在ノ事ナレバ今局ニ
當フテ居ル人ガ一番能ク知ッテ居ル、所ガ今
ノ問題ハ過去ニ貴方ガマダ大臣ニモ次官ニ
モ衡成リニチッテ居ラマ時分ノ事ナノデア
ル由築隆軍大將ガ大臣ヲシタリ次官ヲシ
テ居ッタ時ノ事ガ問題トナッテ居ルノデアリ
マスルガ故ニ、今局ニ居ラヌカラ彼ノ言フ
コトハ嘘ダドバカリ言フ譯ニハ相成リマス
アノ又新聞ハ信ズルニ足ラヌト仰シヤル、
勿論新聞記事ニハ誇大モアリマセウ、錯誤
モアリマセウ、是ハ併シ新聞社ノ書イタ記
事デハナクシテ、其擔當者山梨ト云フ人ガ
筆ヲ執ッテ訂正ナリトシテ申込ンダ訐正文
ナノデアリマス、印刷ハ新聞ニシテアリマ
スルガ、書イタ人ハ山梨ノ筆ニ成ルモノデ
アリマスルガ故ニ、貴方ハ此山梨大將ヲ嘘
吐キデアルト言フ勇氣ヲ御持チニナリマス
カ、之ヲ信ズベカラズト云ヒ、自分ノ言フ
コトバカリガ重實デアルト云フ前提デハ
國民ノ疑惑ハ解クニ足リマセマ、貴方ノ良
心ヲ欺クコトハ出來テモ、國民ヲ敗クコト
ハ出來マセヌ(拍手)三箇月每ニ豫算ヲ要求
スルト伸シヤルガ、ソレハ間近デス、豫算
ト云フモノハ議會デチヤント決シテ居ル、
三箇月每ニ勝手ニ豫算ヲ決メルナドト云フ
コトハ抑〓ノ問違デアリマス、ソレ故ニ是
等ノコトニ付テハ評細蘇備·金審議ノ席ニ譲
リマスル、唯、再ビ此壇ヲ汚シタル所以ハ
貴方ハ山梨大將ノ言タコトハ問違ッテ居ル
ト斷言ナサルノデアルカ、ドウカト云フ一
點デアリマス
〔國務大臣宇垣一成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=42
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043・宇垣一成
○國務大臣(宇坦一成君) 〓瀨君ノ再ピノ
御質問ニ御答取シマスガ、私ハ先刻モ朝日
新聞ニ由架な何か言ウタト云フコトニ付テ
別ニ嘘ダトモ本當ダトモ申シテ居リマ
セヌ、卽チ個人ガ新聞記者ニ語ノテ、ソレガ
新聞ニ載"テ居ッタコトニ對シテハ答辯ノ限
リデナイ、斯ウ云フ風ニ申上ゲテ置キマシ
夕、ソレノ眞否ヲ質サウト云フ御質問ナラ
山梨ニ御聞キニナッタラ一番能ク分ル
ダラウト思ヒマス(拍手、發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=43
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044・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜粛ニ願ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=44
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045・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮大郞君) 丸山君ノ御質
問ガアッタザウデアリマス、私貴族院ニ行ク
テ居リマシテ、之ヲ聽キマセナカンタコト
ハ遺憾千萬デアリマス事柄ハ松實君カラ
御質問ニナッテ、政府委員ノ答ヘタ事柄デ
アルラシウゴザイマス、ワレデアリマスト
云フト、政府委員ガ松膏君ニ各ヘマシタ通
リ、私モ御答申上ダナケレバナリマセヌ(拍
き)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=45
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046・井本常作
○井本常作君 本案ニ對スル質疑ハ此程度
ニ於テ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=46
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047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ質疑終局ノ
動議ニ袖異議アリマセマカ
〔「異議チシ」ト呼フ音メリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=47
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048・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ質疑ハ終局致シマシタ、別ニ計論
ノ通告モアリマセマカラ直ニ採決ニ人リマ
マ採決ノ順序ハ日程第二、第二號追
加案ニ對シテ磯部君外二十二名提出ノ修正
ガアリマス、先ヅ其修正案ニ對シ·採決致
シマス、次ニ第二號ノ追加豫貧案委員長ノ
報告ニ付キ採決ヲ致シマス、最後ニ他ノ四
案ヲ一括シテ委員長ノ報告ニ付テ採決ヲ致
シマス先ヅ第二號ノ磯部君外二十二名提
出ノ修正ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=48
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049・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマ
ス、仍テ修正案ハ否決サレマシタ、次ニ第二
號追加案ノ委員長報告ニ賛成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=49
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050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數デアリマ
ズ仍テ本案ハ委員長報告ノ通リ可決確定
致シマシダ最後ニ第一號ノ追加案特第
一號ノ追加案、第三號ノ追加案、特第二號
ノ追加案此四案ノ委員長報告ニ賛成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=50
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051・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數デアリマ
ス仍テ四案ハ何レモ委員長報告ノ通リ可
決確定致シマシタ(拍手)仍テ第一號、第二
號特第一號、第三號、特第二號ノ追加案
ハ全部議了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=51
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052・青木精一
○靑木精一君 此場合議事日程變更ニ關ス
ル緊急動議ヲ提出致シマス、卽チ茲ニ東武
君提出ノ思想問題ニ關スル緊急質問ヲ議題
トナシ、其趣旨辯明ヲ許シ、政府ノ答辯ヲ
求メラレンコトヲ望ミマヌ
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=52
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053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靑木君ノ日程變更ノ
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=53
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054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス-政府モ日程變更ニ同意セラレマシタ
仍テ提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-東武
君
思想問題ニ關スル緊急質問(東武君提
〓
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=54
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055・東武
○東武君 會期切迫ノ場合ニ際シマシテ
餘リ長時間ヲ費スコトハ洵ニ恐縮ニ堪ヘマ
セヌガ成ルベク簡單ニ申上ゲル積デアリ
マスカラ暫ク御〓聽ヲ煩シタイ、私ノ此質
問ハ帝國最高學府ニ於ケル赤化宣傳事件ニ
園スル緊急質問、是ハ黨派ノ問題テモアリ、
マセズ、又總テノ上ノ政略政策ナドニ關係
スル問題デモアリマセヌ私ハ衷心ヨリ此
事ニ對シテ、國家ノ前途ニ對シテ憂慮スル
モノガアッテ、此質問ヲ致ス譯デアリマス
世界大戰後、我國ニ於ケル思想界ノ動搖ハ
諸君ト共ニ海ニ憂フベキモノガアルト考ヘ
テ居リマス又隣邦露西亞ノ赤化宣傳ノ組
織ハ實ニ巧妙ヲ極メ今ヤ全世界ニ涉シテ
公然トシテ大規模ニ開始サレテ居ルノデア
リマス是ハ申スマデモナク第三「インタ
ーナシヨナル」ノ豫定ノ行動ヲ取リツヽア
ルコトデアリマス此宣傳ハ非常ニ恐ルベ
キモノガアリマシテ、彼等ハ常ニ公言シテ、
吾々ハ機關銃、毒瓦斯或ハ小銃、大砲ヨリモ
威力ノ大ナル所ノ武器ヲ有シテ居ル郎チツ
レハ何デアルカト云へバ宣傳デアル、斯樣
ニ彼等ハ稱シテ世界ニ具傳網ヲ張フテ盛ニ
第三「インターナシヨナル」ノ趣意ニ依ケテ、
此共産主義ノ思想ヲ全世界ニ傳播シテ居ル
ノデアル、又此手段ヲ達スルニ對シマシテ
ハ、彼等ハ「マルクス」ノ所謂最高ノ目的ハ
手段ヲ擇バズ、最高ノ目的ハ如何ナル事ニ
依ッテモ手段ヲ擇バナイト云フコトガ彼等
ノ一種ノ「モットー」デアルノデアル卽チ
之ニ反對スル者ニ對シマシテハ之ヲ壓倒シ、
或ハ抵抗スル者ハ粉碎シ、又全世界ヲ打ツ
テ一丸ト爲シ、共產主義ヲ實現セントスル
ノデアリマス、遂ニ其宣傳機關ト云フモノ
ハ全世界ニ悉ク蔓延ヲシテ居ルノデアリマ
スガ、其機關ニ對シマシテハ、中央執行委
員會ナルモノガアリマシテ、又其中央執行
委員會ノ中ニ國內ノ宣傳部、軍隊ノ宣傳部、
或ハ國外ノ宣傳部、斯樣ニ分チマシテ又
國外ノ宣傳部ニ對シマシテハ更ニ二課二
十七支部ニ分ッテ組織的ニ行クテ居リマス
其機關ノ大體ヲ申シマスレバ、公式ノ機關
トシテハ所謂「ソビエット」政府ノ宣傳ノ
公式機關ト致シマシテハ、外交ノ上ニ於テ、
又通商ノ上ニ於テ、又此「ロスター」ノ通信
網ト云フ世界ニ對スル「ロスター」ノ通信
綱又露國内外ニ於ケル所ノ無線電信、電
話所謂是等ノ總テ此宣傳ノ機關ヲ掌握シ
テ、政府ノ事業トシテ是等ノ仕事ヲヤッテ
居ルト云フコトハ是ハ殆ド天下公知ノ事
實ニナッテ居ルノデアル又外國ノ公使館
ニ於ケル所ノ-公使館ニ從屬セル所ノ支
那ガ多數アッテ、此支那ガ各方面ニ涉ッテ絕
ヘズ宣傳ヲ爲シツヽアル、外國ニ在ル所ノ
祕密探偵機關ト云フモノモ三十名乃至五
十名ト云フ所ノ探偵、所謂支部員ナル者ヲ
組織的ニ置イテ、サウシテ赤化宣傳ノ方法ヲ
遺憾ナク執リツヽアルノデアリマス、之〓
對スル歐羅巴各國其他ノ先進國等ニ於テ
ハ之ヲ防グ爲ニハ殆ド力ノ有ラン限リヲ
致シテ努力ヲ致シテ居ルノデアリマス、聞
ク所ニ依リマスレバ露國カラシテ獨逸ニ
對スル所ノ宣傳費ハ今日マデ一千万圓以
上ヲ投ジテ居ルト云フコトデアル而シテ
相當ニ宣傳ノ效果ハ有ルケレドモ、獨逸ノ
國民ニハ獨逸ノ國氏性ナルモノガアル爲ニ、
此露西亞ノ宣傳ハ獨逸ニ行ッテ革命政府ヲ
起シタケレドモ、獨逸ノ國民性ハ必シモ彼
等ニ蠶食ヲサレル虞レガナイト云フヤウナ
狀況ガ今日ハ傳ハッテ居ルノデアリマスガ、
併シ極端ナル手段ヲ執リツヽアルト云フコ
トハ疑ナイ事實デアルノデアリマス又日
本、東洋、支那、其他中央亞細亞ニ於ケル
所ノ宣傳ノ方法ハ、今日ハ〓養ノ積ンダ文
明國ニ向ッテハ此思想ノ傳播ガ甚ダ困難デ
アルト云フコトヲ感知致シマシテ、今日ハ
中央亞細亞、印度、支那、朝鮮、日本ニ於
テ極力宣傳ノ方針ヲ立テマシテ、之ヲ此方
面ニ最大ノ努力ヲ致シテ居ルノデアリマス
ガ、「ソヴイヱット」政府ノ報告ニ依リマスレ
バ-印刷シタル報告ナルモノヲ見マスル
ト、日本ニ對シテモ種々ナル方法ガ執ラレ
ツヽアルト云フコトガ、彼等ノ報告ニアル
ノデアリマスガ、ソレ等ノ事ヲ玆ニ詳シク
申上ゲルコトハ、餘リニ時間ヲ取リマスカ
ラ申上ゲマセヌ、唯、千九百二十一年ノ報
告ヲ見マスルト、日本ニモ此宣傳支部ガ五
箇所アル、サウシテ新聞ノ-機關新聞ニ
ナッテ居ルモノモ十二箇處アルト云フコト
ガ彼等ノ「ソヴイヱット」政府ノ報告書類ニ
アル、又一昨々年ノ衆議院選擧、所謂護憲
內閣ノ出來タ時ノ總選擧ニ對スル衆議院ノ
選擧ニモ相當ニ努力ヲ致シタト云フコトガ、
彼等ノ報告書ニアルノデアル、日本ノ選擧
ニ對シテモ相當ニ努力ヲ致シタト云フ所ノ
報告ガアル、是等ノ事ハ吾々必シモ信ズル
ノデハアリマセヌ、左樣ナコトデ衆議院ノ
選擧ニ彼等ノ魔ノ手ガ及ンデ居ルト云フコ
トハ吾々ノ考へ及バナイノデアリマスガ、
彼等ノ報告書中ニ左樣ナコトモアルノデア
ル而シテ今ヤ我ガ帝國ノ狀況ヲ見マスル
ト私共ハ各方面ニ於テ憂フベキ現象ガア
ルト考ヘル全ク吾々ハ衷心ヨリ左樣ニ考
ヘテ居ルノデアル、特ニ私ガ此所ニ極言ヲ
致シテ、吾々ハ身ヲ挺シテ此事ヲ論ジヤウ
ト思フ、斯ウ云フ問題ヲ提起致シタト云フ
コトハ思想問題ト云フ漠然タル名ニ於キ
マシテ、或ハ農民組合デアルトカ、勞働組
合デアルトカ、或ハ左傾團體デアルトカ
種々ナルモノガアリマスケレドモ、是等ノ
事ニ對シテ私ガ一々論詳シ、又質疑ヲ試ミ
ルト云フコトハ餘リニ廣汎ニ失シマスカ
ラ、私ハ單ニ帝國大學內ニ於ケル所ノ赤化
ノ經過及其眞相ニ付テ、私ハ玆ニ述ベント
スル者デアリマス、私ノ調査シタ事實ガ或
ハ多少誤リガ無イトハ限ラナイノデアリマ
スガ、併シ私共ハ此問題ヲ起ス爲ニハ相當
ノ苦心ヲ致シ、相當ノ材料ヲ集メ、相當此
內容ニ渉シテ調査〓究ヲ遂ゲテ參ッタ積リデ
アリマス、餘リニ無責任ナル言動ヲ弄スル
考ハ持シテ居ラナイノデアリマス、若シ誤
リガアッタナラバ是正ヲ賴ムノデアリマス
ガ、第一ニ帝國大學内ニ於ケル所ノ新人會、
又其他官公私立大學內ニ左傾學生團體ノ存
在スルト云フコトハ是ハ明カナ事實ニナッ
テ店リマス、是等ノ左傾團體ト云フモノハ、
悉ク露西亞共產黨、靑年會ノ組織ヲ模倣致
シマシテ、班部等ニ分チテ、サウシテ所謂
細胞組織ナルモノヲ拵ヘテ、一首腦部ノ指
導スル團體全部ニ亙テ、徹底的ニ是ガ實
行スル方法ヲ採。ッテ居ルノデアリマス私
ハ此處ニ書類ヲ携ヘテ居リマスガ、是等ノ
團體ノ組織等ニ付テモ印刷シタ物ヲ持シテ
居リマスガ、是ハ玆ニ詳シイコトハ申上ゲ
マセヌ、又是等ノ團體ハ表面ハ學術〓究ニ
名ヲ藉リマシテ、社會思想〓究會、或ハ社
會科學研究會、又ハ讀書會等ノ名ヲ冠シテ
居リマス帝國大學ノ新入會、早大ノ文化同
盟、或ハ建設者同盟等ハ是ハ歷史的ニ、最早
餘程古イモノデアリマジテ、社會科學〓究
會ノ指導的地位ヲ占メテ、是等ガ詰リ科學
〓究ノ名ノ下ニ社會科學ノ〓究ト稱シテ、
是等ガ殆ド思想ノ指導ヲ爲シテ居ルノデア
リマス、是等ノ團體ハ單ニ帝國大學內ニ止
マラズ致シマシテ、廣ク全國的ニ亙ッテ聯
盟ヲ致シ、例ヘバ最近ノ例ト致シマシテモ、
福岡高等學校ノ退學事件、或ハ小樽ノ高商
ノ假想敵國事件、又京大生ノ-京都大學
生ノ檢擧事件、是等ノ事件ノ起ル每ニ全
國的ニナッテ-聯盟ノ上ニ全國的ニナッテ
學生ノ代表ナル者ガ皆東京ニ集ヲテ、盛
ニ示威運動、宣傳ヲ爲シツヽアルノデ
アリマス、是等ノ團體員ノ信條ハ言フ、マ
デモナク徹頭徹尾「マルクス」主義デア
ル又露西亞革命ノ證美者デアル故
當然ノ結果ト致シマシテ、日本ノ國體ヲ
破壞スルコトヲ理論上正面ノ目的ト致シテ
居ル而シテ日本ノ國家組織ヲ根本ヨリ破
壞セン爲ニハ、有ラユル機會ヲ利用セント
シテ、實ニ虎視耽々タル狀態ニアルト言ッテ
モ差支ナイト思シテ居ルノデアリマス拍
手)是ハ抽象的ノ言葉デアリマスガ、最近彼
等ノ行ッテ居ル所ノ事實ニ付テ之ヲ申上ゲ
タイト思フノデアリマスルガ、第一ニ全國
官私立大學内ニ於テ發刊スル所ノ大學新聞
ト云フモノガアリマスガ、此大學新聞ヲ彼
等ノ手ニ獨占ヲ致シテ、大學新聞聯盟ナル
モノヲ組織シテ居ル、事アル每ニ此聯盟ノ
名ノ下ニ有ラユル思想ト、有ラユル聲明
書ヲ時々公ケニシテ居ルコトハ、是亦公知
ノ事實デアル、又新聞獨占ノ外ニ各大學内
ニ於ケル學友會ノ各部ノ支配權ヲ彼等ガ獨
占致シテ居ル、卽チ辯論部、學藝部、雜誌
部ヲ獨占〓シテ、聯絡團體ト致シテ都下大
學辯論部聯盟ナルモノヲ組織致シテ、サウ
シテ聯盟ノ下ニ彼等ハ之ヲ唯一ノ牙城ト致
シテ、之ニ據シテ有ラユル宣傳ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、最近著シキ例ハ大正十三年
ノ六月ニ護憲內閣ガ成立致スト同時ニ、學
生ノ軍事訓練問題ガ是ガ其內閣ニ依シテ發
表サレタ時ニ、彼等ハ之ニ對シテ猛烈ニ反
對ヲ致シ、直ニ學生社會主義團體ヲ組織致
シテ、全國學生軍事〓育反對同盟ノ名ヲ冠
シテ、各大學ヲ巡回シテ、此軍事〓育反對
ノ演說會ヲ開イタコトガアル是モ亦其當
時ヨリ今日マデ連續シテ彼等ガ爲シツヽア
ルト云フコトハ明カナル事實デアル大正
十三年ノ十一月二十一一日、全國軍事〓育反
對學生聯盟ノ名ノ下ニ、所屬大學ノ専門學
校代表者ガ五十餘名集シテ、九段ノ牛ケ淵ト
云フ所ニ集シテ此決議ヲ致シテ居ル「吾人
ハ學生軍事〓育ニ絕對反對ス」此決議文ヲ
携ヘテ彼等ハ如何ナル行動ヲ執ノタカト云
フト、先ヅ文部省ニ到ッテ文部大臣ニ面會ヲ
乞ヒ、又陸軍參謀本部ヲ訪問シテ參謀總長
ニ面會ヲ乞ヒ、各政黨本部ヲ訪問シテ、反
對蓮動ヲ繼續致シテ居ルノデアリマス、又
一昨年七月ニ朝鮮水害ノ時ニ於キマシテ、
是ガ救濟ノ資金ヲ募集スルコトニ著手致シ
マシタ、日本人ノ共產主義者ノ一派ト聯盟
ヲ致シテ、其實行運動ト致シテ、全國ニ亙シ
テ朝鮮水害義捐金募集演說會ナルモノヲ
開イタ、各大學ノ所在地ニハ悉ク演說會ヲ
擧行致シマシテ、朝鮮水害ノ救済ト云フ名
ノ下ニ於テ、彼等ガ思想ノ上ニ於テ共產主義
ノ宣傳ヲ爲シタト云フコトハ是亦明カナ
ル事實デアルノデアル、社會科學〓究學生
聯合會ハ、又會歌ナルモノヲ拵ヘテ居ル
此歌ナルモノハ何デアルカト云ヘバ露西亞
ノ「赤旗」ト云フモノヲ翻譯致シタモノデア
ル、其宣傳歌ヲ高唱シテ、是ガ學生間ニハ
殆ド流行シテ居ラナイ所ハナイ、此流行歌
ハ今ヤ驚クベキ勢ヲ以テ、都下ノ電車ノ中
デモ、或ハ倶樂部、集會所其他ニ於テ、大
抵ナ女ヤ子供ガ此會歌ナルモノヲ今ハ覺エ
テ居ル、電車内デモ往々靑年男女ガ此會歌
ナルモノヲ歌ッテ居ルト云フ事實ガアル、又
帝大新人會デハ、日ハ一寸忘レマシタガ帝
大ノ三十番ノ〓室ニ於テ、露西亞ノ「ロス
ター」通信ノ「スレーパック」ト云フ人ヲ彼等
ハ招待致シ、露國ニ於ケル所ノ學生ノ革命
運動ノ經過ヲ聽イテ居ル、其「ロスター」通
信ノ「スレーパック」ト云フ人ハ「革命導火
線タリ中心勢力タルモノハ各國共學生デア
ル」ト云フ講演ヲ致シテ、之ニ共鳴ヲ彼等
ハ致シテ居ルノデアリマス、帝國大學ノ講
堂ニ於テ斯樣ナコトヲ彼等ハ公然行ッテ居
ルノデアル又甚シキコトハ是ハ文部大臣
ハ疾ニ御承知デアリマスルガ、帝大ノ法科
ノ試驗委員ガ學生ノ入學試驗課題ニ對シテ、
「マルクス」ノ共產黨ノ宣言書ノ獨文ヲ和譯
ヲサセ、是ガ問題トナッテ居ル是ガ〓授
會ノ問題トナッテ〓授會ハドウシタカト云
ヘバ非常ニ不穩當デアル、「マルクス」ノ
共產黨ノ宣言書ヲ試驗科目ノ課題トシテ出
シタノハ、是ハ甚ダ不謹慎デアル、今後ハ
十分注意ヲスル、又擔當〓授ハ是ガ爲ニ陳
謝ヲ致シ、サウシテ僅ニ世間ニ餘リ大問題
トナラナカッタト云フ事實ガアルノデアリ
マス、又是モ隱レモナイ事實デアリマスル
ガ、昨大正十四年ニ新人會ノ主催ノ下ニ於
キマシテ、關東鐵工同盟會ノ同盟罷エガアツ
タ關東鐵工組合所屬ノ同明能工、卽チ日
暮里ノ鐵工所ニ榮信社ト云フノガアリマシ
タガ、是ガ同盟罷工ヲ致シタ場合ニ、此爭
議ノ資金ヲ帝國大學ニ於テ募集シテ居ル事
實ガアル學生ハ罷工團體ニ對シテ澤山ナ
金デハナイノデアリマスケレドモ、各詰
リ同盟能工ヲ維持スル爲ニ、之ニ應援ヲス
ル爲ニ資金ノ募集ヲ爲シタト云フ事實モ、
是モ明カナル事實ガアルノデアリマス又
帝國大學ノ新間ノ例ニ依テ見テモ、學友會
ノ經營シタル機關新聞ニハ大學〓授學生ノ
意思表示ト致シマシテ、軍事〓育反對、國
防破壞乃至國防ヲ呪咀スルト云フ事實ハ
是ハ明ニ認メテ宜シイト思フノデアリマ
ス新聞ノ記事ノ上ニ於テ洵ニ明瞭ナモノ
ガアルノデアリマス、諸君、此軍事〓育反
對ニ對スル可否ハ是ハ暫ク別問題ト致シマシ
テ、御互ニ考ヘナケレバナラヌ事ハ帝國
大學ナルモノハ國家ヨリシテ莫大ナル國費ヲ
投ジテ、彼等ヲ養成ヲ致シテ居ルノデアル、
卽チ高等專門〓育以外ニハ、我ガ帝國ノ國
費ハ五千万圓以上ハ之ニ投ジテ居ルノデア
リマス、然ルニ苟モ國家ガ方針ヲ決メテ軍
事〓育ヲ施スト云フコトニ依リマシテハ
吾々ハ本年モ百万圓ノ豫算ヲ之ニ協賛ヲ與
ヘテ居ルノデアル此協賛ヲ與ヘテ國家ノ
方針トシテ軍事〓育ヲ施スト云フコトニ
至ッタ以上ハ、此國家ノ方針ニ背イテ、帝國大
學ガ之ニ對シテ反對ヲスルト云フコトガア
リト致シマシタナラバ、如何デアリマセウ
カ、又國防ノ上ニ於テハ吾々ハ國民全體
ノ血稅ヲ以テ殆ド歲入ノ半バヲ費シテ、我
ガ國防ハ吾々ガ擔當ヲ致シテ居ル、然ルニ
帝國大學ノ最高學府ニ於ケル所ニ於テ既ニ
軍隊ヲ呪咀シ、或ハ軍事〓育ニ反對スル行動
ガ公々然ト行ハレルト云フ事ガアッタナラ
バ帝國大學ヲ維持スル爲ニ五千万圓ノ金
ヲ以テ彼等ヲ〓養シテ、一方ニハ此軍事〓
育ト國防ヲ破壞スル行動ヲ執リツヽアルト
云フ事ニナッタナラバ國家ハドウナリマセ
ウカ(拍手)是ハ相互差引相殺サレテ何モ無
クナルト云フコトノ事實ガアルノデアル
實ニ私ハ驚クベキ現狀デアルト考ヘルノデ
アリマス、國民ノ犠牲ヲ破壞スベク努力シ
ツヽアルト云フコトガ、卽チ此點ニ於テ極
メテ明瞭デアルト思フノデアリマス又最
近ニ起シタ所ノ京都大學社會科學研究會ノ
事件、是ハ今尙ホ司法官搜査ノ手ニ在ルト
考ヘマスルガ、重大ナル事ガアルノデアリマス、
是ハ齊東野人ノ言葉デアリマスルケレドモ、
此勞農露西亞ノ代表「レブセ」ト云フ人ガ、
昨年ノ八月ニ參ッタ時分ニ、京都帝國大學ノ
學生ガ決議ヲ致シ、此「レプセ」ナル者ヲ大
阪ノ停車場デ之ヲ歡迎ヲシ、不穩ノ文書ヲ
之ニ交付シタ、又其事ガ顯レマシテ、其學
生ハ遂ニ引致サレテ居ルノデアリマスル
ガ、此京都帝國大學ノ赤化ノ檢擧事件ノ起,
タト云フコトハ何ガ因デアルカト申シマ
スレバ、最近卽チ大阪ニ起ッタ所ノ市電爭議
ノ場合ニ此京都帝國大學ノ詰リ學生〓授
ガ、之ニ應援致シタト云フ事實ガ其因ヲ成
シテ居ルノデアリマス、此京都大學ノ亦化
宣傳網ト云フノハドウ云フ所カト云ヘバ、
是ハ甚ダ吾々ハ言フヲ憚カルノデアリマ
スガ、露西亞共產黨カラ直接ノ命令ガ出テ
居ルト云フ事實ガアル、共產黨ガ直接之ヲ
命令シテ、絲ヲ引イテ居ルト云フコトガア
ル、是ハ何處カラ出タカト云フト、矢張彼
等ノ中ニ前非ヲ悔イテ皆其内容ヲ暴露シタ
者ガアルノデアル、此亦化宣傳ノ共產主義
者ノ山川均デアルトカ、或ハ荒畑寒村ト云
フ人ハ、始終出入シテ是等ノ學生ト行動ヲ
共ニシテ居ル、又ソレニ對シテ費用モ出シ
テ居ルト云フ事實モアル今京都帝國大學
ハ學生山内某、桑原某、阿波某ト云フ十餘
名ノ檢擧ヲ見ルニ至ッタ事實ガアル此不
穩ノ文書ノ中ニハ吾々ガロニスベカラザ
ルモノガアル是ハ驚クベキモノガアルノ
デ、是ハ司法當局者モ恐ラク公表ヲ憚ルコ
トガアルト承知シテ居ルノデアリマス彼
等ガ常ニ唱ヘテ居ルノハ理論ノ〓究ハ實
行ガ伴ハナケレバ無意味デアリ、無價値デ
アルト言ッテ居ル理論ダケシテ實行ニ至ラ
ナカッタナラバ殆ド其議論ハ無價値デアル、
卽チ吾々ガ學問ノ自由、吾々ガ學問ノ獨
立ニ依シテ〓究シタモノハ、必ズ社會ニ
實行シナケレバナラナイト云フコトハ
彼等ノ平素唱ヘテ居ル所ノ主張デアル、又
軍事聯盟ト同樣ニ、吾々ガ考ヘナケレバナ
ラヌコトハ全國ノ學生科學〓究會員ナル
モノガ、各大學ヲ通ジテ學生ガ二千餘名ア
ル此中デ每年卒業シテ社會ニ出ヅル者ガ
約四百五十名宛アル是等ノ學生ハ既ニ在
學中ヨリ赤化宣傳ノ中心ニナッテ濃厚ナル
極左傾分子デアル、之ヲ實社會ニ放ツノハ、
恰モ虎ヲ野ニ放ツテモ同樣デアル、危險此
上モナイ、然ルニ當局官憲ハ如何ナル措置
ヲ執ッテ居ルカト云ヘバ甚ダ矛盾ノ點ガ
アルノハ最近警視廳及全國警察署ニ於キ
マシテ、當局官憲ガ此四百有餘名ノ學生ガ
ソレ〓〓社會ニ出ヅルト云フコトノ爲ニ、
之ニ尾行シ、監視スル爲ニ警視廳ニハ高等
課員ト云フモノヲ特ニ增置シナケレバナラ
ナイ必要ガ起シタ、又全國各府縣ニハ左樣
ナ者ガ段々年々出テ來ルノデアルカラ、之
ヲ取締ルガ爲ニ、各府縣警察ニハ不足ヲ生
ジテ、之ガ增員ヲ要求シテ居ルト云フ事實
ガアルノデアル實ニ驚クベキ事デアルト
吾々ハ考ヘテ居ルノデアル、而シテ是ハ私
ガ決シテ荒唐無稽ナコトデハナイト云フコ
トハ此處ニ居ラルヽ岡田文相モ恐ラク私
ト同感デアラウ、平素支相ノ御意見ヲ伺ン
テ居リマシテモ、吾々ノ思想ニ一點共迪シ
タ點ガアルト思フ、故ニ私ハ此事ニ對シ
マシテハ、文部大臣ヲ非難スルト云フ考ハ
毛頭持ノテ居リマセヌ、又內務大臣ノ取締
ガ不十分デアルト云フコトモ私ハ玆ニ唱ヘ
マセヌ、吾々ガ力ヲ協セテ、此洛々ト押寄
セル所ノ此大勢ヲ抑止スルト云フコトニ付
テハ是ハ今日ノ行政官ノ力ノミデハイケ
ナクナッタ、卽チ立法府ノ權威ニ依リマシテ、
吾々ガ連帶責任ニ國家ヲ擁護スルト云フ上
ニ立ッテヤラナカッタナラバ此大勢ハ抑止
スルコトハ出來ナイト吾々ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス(拍手)政府モ決シテ之ヲ看過シ
テ居ラヌト云フコトハ本年一月十五日ニ
東京地方裁判所ノ檢事局ニ於テ、檢事七名、
豫審判事七名ガ、自動車七臺ヲ驅ッテ帝國
大學ノ新人會員ノ家宅搜索ヲ致シマシタ
サウシテ有力ナル證據書類ヲ押收スルト同
時ニ、帝大新人會ノ幹部是枝某始メ四
名ノ者ヲ拘引致シマシタ、是ニ續イテ社會
科學〓究會員ノ二十餘名檢擧ト云フコト
モ是モ事實デアリマス此新人會ノ是枝
某ト云フ者ハ是ハ私ハ此所デ斷言スルコ
トハ出來マセヌガ、昨年露西亞ノ勞農使節
ガ參ッタ、即チ「レフセ」ト云フ人ガ帝國「ホ
テル」ニ參ッタ時分ニ、此帝國大學ノ新人會
ノ幹部ニナッテ居ル者ハ五千圓ノ金ヲ受
取ノタト云フコトガ、朧氣ナガラ、詰リ此
事實ヲ推測スルコトガ出來ルノデアル、此
當時、此「レプセ」ガ來タ時分ニ、警視廳モ
殆ド此綱ノ手ヲ張ッテ、注意ヲ怠ラナカッタ
ノデアリマシタケレドモ、七万圓ノ金ヲ其
時ニ置イテ行ッタト云フコトモ、朧氣ナガ
ラ明ニナッテ居ル、之ヲ受渡シタノハ何所
デアルカト云ヒマスト、是ハ確的ノ證據ガ
アッテ申スノデハアリマセヌガ、、芝ノ協調
會館ノ二階デ授受シタト云フコトハ稍
推測シ得ベキ筋ガアルノデアリマス是日、
福岡ニモ最近檢事局ニ起ッタ、此赤化宣傳
ニ對シテ、檢事局ガ活動シテ居ルト云フ事
實ガアル、多數ノ學生ガ拘引サレテ取調ヲ
受ケテ居ル事實モアルノデアリマス、斯ク
多數ノ此學生、或ハ學校ニ斯樣ニ赤化宣傳
ノ毒手ガ廻ッテ居ルト一云フコトハ何ガ元デ
アルカ、大學〓授及專門學校、高等學校ノ
〓授中ニ、極左傾ノ分子ノ指導〓授ガ澤山
アルト云フコトデアリマス、斯ク全國的ニ
學生ノ不穩行動アル其原因ヲ質シタナラ
バ學校内ニ絕エズ共產主義、「マルクス」
主義ノ指導〓授アル爲デアル、此源ヲ正サ
ナカッタナラバ、其源ヲ〓メナカッタナラバ、
是ハ決シテ此大勢ヲ抑止スルト云フコトハ
出來ナイ事實ガアルト吾々ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス(拍手)斯樣ナ指導〓授ノアルト
云フコトヲ、此儘看過ヲシテ置イテ宜イノ
デアルカドウカ、之ニ對シマシテハ、此所
ニ私ハ詳細ナル調ベナドヲ持ノテ居リマス
ルガ、帝國大學ノ繩濟部、京都帝國大學法
學部、經濟部、又ハ九州大學ノ文學部、束
北大學ノ法文科、北海道大學、之ニ對シテ
此亦化思想ヲ持ノタ所ノ持主ガ、絕エズ指
導〓授ヲシテ居ル其人、是ハ明カナモノ
ガアル天下公知ノ事實ガ澤山アル、弘
玆ニ一々、姓名ヲ申シマセヌ、姓名ヲ申サ
ナイト云フノハドウ云フコトデアルカト云
ベ私ハ賣名的ニ彼等ガヤッテ居ル者モ
アラウト思フ、新思潮、新傾向ナント申シ
テ是等ノ徒ヲ歡迎ヌルト云フ風潮ガアル
爲ニ心ニ無クテモ斯樣ヲ危險思想ヲ持っ
テヤッテ居ルト云フコトモナイトモ限ラナ
イ又吾々ガ今後之ヲ戒飭シ、監督スルト
云フコトニナッタナラバ彼等ハ多少今日マ
デノ思想ハ誤シテ居シタト云フコトニ、自然侮
悟ノ餘地ヲ與ヘルモノト考ヘルカラ、昼ハ
此所ニ名前ヲ申シマセヌ、申シマセヌガ
帝國大學ニ於キマシテ末廣嚴太郎、吉野博
士ノ如キハ天下公如ノ人間デアルカラ
是ハ申上ゲテモ決シテ憚ラナイ、又京都帝
國大學ニモ多數アリマス多數アリマスケ
レドモ、天下ニ明ニナッテ居ルモノニ河上肇
ト云フ人ガアリマス、其他ニ数名最モ濃厚
ナル者ガアリマスルガ、其名前ハ省イテ置
キマス、又九州帝國大學ニ於テモ〓授高田
保馬以下十數名ノ者ガアルノデアル此九
州帝國大學ニ於キマシテハ憲法ヲ〓ヘルニ
際シテ、憲法ノ講座ニ於キマシテ、何ヲ憲
法ノ講義ヲ致シテ居ルカト云ヘバ英吉利
ノ憲法モ日本ノ憲法モ教ヘズシテ、露西亞
ノ「ソヴエット」ノ憲法ノミヲ〓授シテ居ル
所ノ〓授ガアルノデアリマス、又東北帝國
大學、卽チ北海道大學ニ於キマシテハ私
ガ住居シテ居ル所ハ札幌ノ大學町ト稱ス
ル所ノ一隅ニ私ハ住居シテ居リマスルガ、
此〓授ノ中ニハ三大節ニ於テドウシテモ國
旗ヲ立テナイ〓授ガアル又自分ノ子供ヲ
小學校ニ入レナチ所ノ〓授ガアル、又ドン
ナニシテモ土地ノ官幣大社ノ御祭ニ際シ
う、町内デ寄附金ヲ十錢、二十錢ト集メル
ガ、一銭デモ出サナイ、彼等ハドウ云フコ
トヲ言フカト云フト、自分ノ子供ヲ學校ニ
人レルト云フト馬鹿ニサレル或ハ忠サダ
ノ國體ナドト云フ馬鹿ナコトヲ〓ヘルカ
ラソンナ學校ヘハ入レナイノデアルト言。フ
テ自分デ〓ヘル、家庭デ〓ヘルト公然稱シ
テ居ル、三大節ニ國旗ヲ立テナイト云フヤ
ウナ、サウ云フヤウナ人間ガ多年蟠屈シテ
居ルト云フコトハ私ハ朝夕目撃シテ居ル
ト斯ウ云フ事實ガ各地方ニ在ルノデアル
彼等ハドウ云フコトヲ稱シテ居ルカト申シ
マスルト云フト、學問ノ研究ハ固ヨリ大學
ノ使命デアル學問ノ〓究ヲスルト云フコ
トハ〓究ノ結果ヲ制限サレルコトデハナ
イ〓究ノ-學問ノ研究ハ其手段モ亦自
由デナケレバナラヌ、シレハ自由ダ、其手
段ニ於テモ自由デナケレバナラヌ、ノミナ
ラズ〓究モ月由デアル、自由テアルナラバ
其結果ニ於テモ自由デナケレバナラヌト
斯樣ニ稱シテ居ルケレドモ吾々ハ大學ニ
於テ如何ナル危險思想ヲ〓究スルモソレハ
宜シイ、宜シイト思フガ苟モ國法ニ觸レ
テ國禁ニ觸レタル事ヲシナケレバナラヌ
ト云フコトニナッタナラバ吾々ハ是ハ斷
ジテ容赦スルコトハ出來ナイト考ヘルノデ
アル(拍手)申スマデモアリマセヌガ、私ガ
斯樣ナ演說ヲ致シマシタナラバアナタ方
ハ私ノ演說ニ多少疑ヲ存スル人ガアリマセ
ウガ私ハ玆ニ實ニ身ヲ挺シー身ヲ挺シ
テ諸君ニ想ヘタイコトガアル、此壇上ニ於
テ私ガ此事ヲ述ベルト云フコトハ私ハ決
シテ黨派ノ問題デモナク、自分一人一己ノ
利害休戚ヲモ顧ミマセヌ、如何ナル迫害ガ
アラウトモ、ソレハ顯ミナイト云フ決心ガ
アル、其決心ノ下ニ於テ私ハ此事ヲ論ジテ
居ル若シ此事ガ行ハレタナラバ私ハ明
日議員ヲ罷メテモ決シテ私バ遺憾デナイト
考ヘルダケノ決心ヲ持,テ居ル(拍手)諸君
ニ甚ダ私ハ中上ゲ惡イコトデアリマスケレ
ドモ、已ムヲ得ヌカラシテ諸君ニ一言申述
ペルノデアリマス、難波大助ノ犯行ト云フ
モノハ如何ナル動機デアルカ、畏多イ事デ
アルガ、金顯無缺ノ我ガ帝國ニ於テ、三千
年來建國ノ理想ヲ破ラレタ所ノ彼ノ難波大
助、此難波大助ノ犯行ハ如何ナル動機ニ依シ
テ起シタモノデアルカ是ハ秘密書類デア
リマス是ハ秘密書類デアリマスケレドモ
議員ノ言論ハ自由デアリマス議員ノ言論
ハ自由デアリマスルガ、此豫算調書ノ全文
ノ中ノ一節ヲ諸君ニ御披露ヲ申シマス、大
體ヲ申上ゲマス卽チ難波大助ノ不滿ヲ抱
イタト云フコトニ付テノ動機ハ大正十年
一月頃ヨリ雜誌「改造」ヲ耽讀シテ(「秘密會
デヤレ」ト呼フ者アリ)-一寸御斷リシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=55
-
056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 東君ニ一寸御注意シ
マスガ、ソレハ秘密會ニ致シテシタラ如何
デス
〔「秘密會ノ必要ナシ」「祕密會デヤレ」
ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=56
-
057・東武
○東武君(稲) 觀讀ヲ官キマス、朗讀ヲ省
イテ私ガ其趣意ダケヲ申上ゲマス卽チ此
雜誌ノ社會主義思想ニ共鳴シテ、雜誌〓〓
造」ノ四月號ニ於テ博士河上肇ノ短篇「テロ
リスト」ヲ讀ミテ、「テトリズム」ハ專制ニ對
スル當然ノ結論デアルト云フコトヲ彼ハ考
ヘタ、又圖書館ニ於テ幸德秋水ノ公判ノ記
事ヲ耽讀致シ、之ニ依テテ彼ニ同情ヲ致シ
テ「テロリスト」ノ意思ヲ繼續スルト彼ハ稱
シテ居ルノデアリマス、又其後早稻田ノ高
等學院ニ入學致シマシテ、思想ハ一變シテ
社會主義者トナリ、街頭革命家ヲ以テ彼ハ
任ジテ居タ、而シテ漸次勞働問題ニ興味
ヲ加ヘマシテ、共產主義的思想ニ變化致シ、
更ニ佐野學氏ヨリ佐野學氏ヨリ共產黨
宣言ノ講義ヲ聽イタノデアリマス、サウシ
テ愈、ヒ共產主義ノ信念ヲ彼ハ固メタノデア
ル此無產獨〓、卽チ共產主義ト皇室ノ存
在トハ到底兩立スベカラザルモノガアルト
彼ハ稱シテ、之ニ對シテ畏多イ事デアリマ
スルガ、彼ハ我ガ日本帝國國民トシテ會テ
無イ所ノ大逆ヲ犯シテ、「テロリズム」ヲ遂
行ヲスルト云フ決心ヲ致シタト云フコト
ハ公判ノ此調書ニ壓々トシテ載ッテ居ル
ノデアリマス、又「プロレタリア」ノ革命思
想、震災ノ爲メ反動思想ダ旺盛ニナッタ
爲ニ、「プロレタリア」ノ思想ガ漸次聞息セ
ント致シタ場合、卽チ國家主義ノ思想ガ非
常ニ旺盛ニナッテ來タ爲ニ、此「プロレタリ
ズム」ノ「フロレタリア」ガ非常ニ意氣銷
沈シタ場合ニ於テ、是ガ反動團體ノ爲ニ之
ニ對スル所ノ報復手段ト致シテ彼ハ最モ
此我國ニ於テ諸團體方神聖侵スベカラズト
稱シタルモノニ向シテ、之ニ向ッテ甚シキ不
逞ノ行爲ヲ爲サント云フコトヲ決意致シタ
ト云フコトハ此豫審調書ノ一節ニ於テ歷
歷トシテ現ハレテ居ルノデアリマス然ラ
バ我ガ帝國ハ開闢以来萬世一系ノ皇統ヲ奉
ジ君臣一體、忠孝一致ヲ以テ國體ノ精華
ト爲シテ居ルノデアル固ヨリ吾々ハ歐米
ノ新思想ト稱スル功利主義或ハ物質本位
ノ社會觀ニ依シテ我ガ國體ノ基礎ガ動搖ス
ルモノトハ吾々ハ考へテ居リマセヌ、考、
テ居リマセヌガ、併シ今日ハドウ云フ社會
相デアルカト申シマスレバ明治初年以來
物質支明ガ輸入致シ、同時ニ產業革命ノ結
果ト致シマシテ、我ガ帝國ノ貧富ノ點隔ガ
著シク進ミ、階級意識ガ册瞭トナリ社會
各方面ニ於キマシテ生活上ノ不安、思想上
ノ缺陷ト云フモノガ最モ著シクナッテ、是
ガ爲ニ我國ノ思想界ト云フモノハ今ヤ暴風
ノ眞只中ニ漂ウテ居ルヤウナ狀況ヲ呈シテ
居ルノデアリマス私ハ若シ一歩ヲ誤,4
ナラバ、我が建國以來ノ此精神ト云フモノ
ヲ失ハレ、金甌無缺ノ國ヲヲ破衆シテ、遂
ニ生民ヲ塗炭ニ苦メル、彼ノ恐ルベキ隣部
露西亞ノ覆轍ヲ見ルト云フヤウナコトガ
或ハナイコトヲ保證スルト云フコトガ、如
何ニモ大膽デアルガ如キ感ヲ懷ク者デアリ
マスル故ニ私ハ此點ニ付テハ諸君ノ深
甚ナル御考察ヲ煩シタイト同時ニ、餘リ永ク
ナリマスルカラ、此以上ハ申述ベマセヌ
ガ、私ノ前段申述ベタ所ノ質問ノ要旨ヲ述
ベテ此壇ヲ降ラウトスル者デアリマス質
問ノ要旨ハ第一、以上述べ來ッ々事實ニ
對シテ、政府ハ斯ノ如キ事實十シト認ムル
ノデアルカ若シ事實ガアリト致シタナラ
バ政府ハ國家ノ思想上イカヌト云フ考ヲ
持クテ居ラナイカドウカ、第二ハ歐未各
國ハ今ヤ苟モ國家組織ニ對スル破壞的行爲
ニ對シテハ極力其防遏ニ從事シテ、徹底
的ニ權力ヲ用キテ居ルノデアリマス、各國
共法制上或ハ國家ノ權力ヲ用キテ居ルノデ
アルガ單リ我國ニ於テハ朝野共ニ頗ル
此點ニ付テハ徹底味ヲ缺イテ居ル且ツ傍
觀的態度ニ出ルノ觀ガナシトシナイ、斯
ソ如キ狀態ニ於テ政府ハ我ガ國家、百年ノ
前途ヲ如何ニ考ヘテ居ルノデアルカ、此點
ニ對スル政府當局ノ御考察ヲ伺ヒタイ又
第三ニハ政府ハ曩ニ高等學校ニ於ケル社
會科學〓究會ノ解散ヲ命ジタ、岡田文相ハ各
高等學校ニ對シテ非常ナル英斷ヲ以テ、社
會科學〓究會ノ解散ヲ命ジタガ、是ハマダ
學問ガ幼稚、思想ガ軟弱デアルト一云フガ爲
ニ之ニ解散ヲ命ジタノデ、一世ノ議論ヲ生
ジタノデアリマスルガ、若シ徹底的ニ思想
善導ノ舉ニ出デントスルナラバ何故ニ最
モ危險性ヲ帶ビタ所ノ、所謂朝憲紊亂ノ虞
アリトモ云フベキ所ノ帝國大學內ノ新人
會其他ニ對シテ解散ヲ命ジナイノデアル
カ、是ガ第三點デアリマス、第四點ハ彼等
ハ既ニ全國的聯盟ノ下ニ學術〓究ノ範圍ヲ
越エテ實行手段ニ著手シツヽアルト云フ
コトハ前段申述ベタ如クデアル、何故ニ
政府ハ今尙ホ傍觀ノ熊度ニ出デツヽアルノ
デアルカ、文部大臣ハ一度此方面ニ手ヲ下
シタナラバ、或ハ彼等ハ大學ノ獨立ノ名ノ
下ニ、或ハ大學ノ勢力ノ下ニ及噬的熊度ニ
出ヅルト云フ〓ガアル爲ニ、今尙ホ躊躇;
巡シツヽアルノデハナイカト云フコトヲ私
ハ質問致スノデアリマス、此事ニ付テハ
仄カニ承リマスレバ、閣議ニ於テモ數回問
題ニナッタト云フコトヲ聞イテ居ル然ル
ニ今尙ホ此狀態ニ放任シテ置クト云フコト
ハ如何ナル考デアルカ、何故ニ芷躊躇逡巡
シツヽアルカト云フコトガ第四問デアリマ
ス第五ハ各大學內ノ共產主義〓授ハ非常
ニ多數ニ上ッテ居ルト云フコトハ先程申
述ベマシタ、如何ニ生徒ヲ取締レバトテ、危
險思想ハ止ムベキモノニアラズ、畢竟其末
ヲ清クセント欲スレバ其源ヲ正サヾルベ
カラズ、是等大學ニ潜在スル所ノ多數ノ不
良〓授ヲ徹底的ニ處分スル所ノ意思ハナイ
カドウカ、是ガ卽チ第五問デアリマス、第
六ハ既ニ大學〓授中ニハ司法官憲ノ手ニ
依リマシテ家宅搜索ヲ受ケタル者モアルノ
デアリマス、數人アルト聞イテ居ルノデア
リマス、又私ノ懇意ナ人デアリマスガ、吉
野博士ノ如キハ思想上ノ犯罪ニ依リマシ
テ、今起訴猶豫ニナッテ居ル人デアル、五
箇條ノ御誓文ニ對シテ非難ヲ致シタト云フ
廉ニ依ッテ、犯罪ハアルケレドモ起訴猶豫
ニサレタ人デアリマス、此起訴猶豫ニサレ
タ人ガ何時ノ間ニカ再ビ-犯罪ノ汚名ヲ
受ケテ居ル人ガ現ニ大學ノ講師ヲシテ居ル
ノデアル、講師トシテ之ヲ傭聘シタ、起訴
猶豫ニナッテ居ル人ヲ講師トシテ更ニ傭聘
シテ居ルノデアルガ、之ニ對シテ、文部大
臣ハ、如何ナル考ヲ以テ斯ノ如キ人ヲ更ニ
講師トシテ用キテ居ルノデアルカ、以上六
問デアリマスガ、本員ノ此質問ハ先程申
上ゲタ如ク、決シテ一黨一派ノ問題デハナ
ィ、超政黨趙世間的、超個人的デアリマス
此嚴肅ナル理想ノ上ニ於テ私ハ此質問ヲ發
シテ居ルノデアル、此問題ヲ提起スル爲ニ
ハ齋戒沐浴、伊勢大廟、明治神宮ニ祈願ヲ
籠メル熱誠ヲ以テ此質問ヲ提起致シテ居ル
ノデアル(拍手)故ニ政府ハ最モ嚴肅ニシテ
且ツ碎乎タル力針ノ下ニ、一時ヲ瞞過シ、
一時ヲ糊至スルガ如キ暖味ナル其場遁レノ
答周ヲシナイデ、國家ノ改策ハ郡遂ニ在ル
カ內務省或ハ支部省ニ於キマシテハドウ
云フ方針デアルカト一云フコトヲ、徹底的ニ
確乎不拔ナル覺悟ニ於テ、此質問ニ御答辯
アランコトヲ望ンデ、此壇ヲ降ル次第デア
リマス(拍手)
〔國務大臣岡田良平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=57
-
058・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 只今東君ヨリ思
想問題ニ關係致シマシテ最モ熱心ナル又
最モ國ヲ憂ヘラレル所ノ東情ヲ披瀝シタ御
質問ガアリマシタ、私ハ當局者ト致シマシ
テ最モ深厚ナル敬意ヲ表シテ拜聽ヲ致シタ
ノデアリマス、殊ニ東君ガ是ハ政黨政派ヲ
超越シタ問題デアル又單リ政府ノミヲ責
ムルノデハナイ、立法府ニ於テモ共ニ倶ニ力ヲ
盡シテ此弊ヲ救フコトニ努力センケレバナ
ラヌト云フコトヲ御述ニナリマシタ、此點
ニ付キマシテハ最モ私ハ深厚ナル敬意ヲ表
スル者デアリマス、勿論政府ト致シマシテ
ハ此點ニ付テ最善ノ努力ヲ致スベキハ當
然デアリマス併ナガラ決シテ是ハ政府ノ
力ノミヲ以テ完全ナル結果ヲ得ルコトノ出
來ナイ困難ナル問題デアリマス、國民共ニ
倶ニ、殊ニ此立法府ノ諸賢ガ、此事ニ付テ
深厚ナル援助ヲ與ヘラレルト云フコトハ最モ
有力ナル事デアルシ、最モ必要ナル事デア
ルト私ハ深ク感ズルノデアリマス、東君ガ
御述ニナリマシタ種々ノ事實ニ對シマシテ
ハ私ハ玆ニ一々其事實ニ對シテ辯解等ハ
致シマセヌ、承リマシタ事實ノ中ニ、私ノ
聞イテ居ル所ト多少違テテルルモモアリマ
ス、又私ノ全然承知似シテ居ラヌ事柄モア
リマス、然シ大體ニ於キマシテハ東君ノ
御述ニナリマシタ事ガ事實ト甚シイ相違ハ
ナイモノト考ヘルノデアリマス、然ラバ當
局者ハ將來如何ナル方法ヲ執ルノデアル
カ第二ノ御尋トシテ歐米諸國ニ於テハ是
等ノ惡思想ヲ防遏スル爲ニ最善ノ努力ヲシ
テ居ル最モ有力ナル防遏ノ方法ヲ執ッテ
居ルノデアルガ、我國ニ於テハ如何ナル方
法ヲ執ルカト云フ御話デアリマス、此點ニ
付キマシテハ從來私ガ執リ來リタルコト
略、東君モ御水知下スッテ居ルヤウデ
アリマス私ハ就職ノ初メヨリ此問題ニ付
キマシテハ最モ憂慮ヲ致シマシテ、一昨年
ノコトデアリマスルガ、高等學校程度ノ學
校ニ於キマシブハ總テ斯ノ如キ〓究ニ耽
ル所ノ團體ヲ禁止致シマシタ、然ルニソレ
以上ノ程度ノ學校ニ付キマシテハ是ハ〓
究ヲ目的トスル以上ハ、之ヲ禁止スルト云
フコトハ甚ダ穏當ヲ缺クノデアリマスルカ
ラ、總テ是ハ〓究ノ範圍ニ止メテ、苟モ實
際的行動ヲ執リ、或ハ外部ト聯絡ヲシテ種
種ノ行動ヲ爲スト云フガ如キコトハ是一
禁止スルコトニ致サナケレバナラヌト云フ
事ヲ以チマシテ、學校ノ當局者ニ向シテハ
絕エズ注意ヲ促シテ居、タノデアリマス
然ル所當局者ノ眼ノ及バナイ、又學校長ノ
眼ノ屆キマセヌ所ニ於キマシテ、段々不都
合ナ行動ガアッタモノト見エマス、最近ニ京
都ニ於キマシテ數名ノ學生ヲ檢擧致シマシ
タ、司法官ノ手ニ於テ調査ヲ致シテ居リマ
スルが、其調査ノ結果ハマダ私モ能ク承知
ハ致シテ居リマセヌガ、併シ漏レ聞ク所ニ
依リマスルト色とナ新事實ガアルノデアリ
ママ、是迄當ん者ノ承知致シテ居ラナカツ
タヤウナ事ガアルノデアリマス、今一層此調
査ガ進ミマシテ、此泉面ノ事實ガ歷々ト現
レルコトニ至リマシタナラバ當局者ト致
シテハ單リ高等學校程度ニ止ラズ、大學程
度ニ對シマシテモ徹底的ノ手段ヲ執ル積リ
デ居リマス、又其法ニ觸レル者ノ如キニ至
リマシテハ勿論是ハ聊カモ假借スル所ナ
ク致ス積リデアリマスデ大學ノ〓授ノ中
ニ不都合ナ說ヲ唱ヘル者ガアルト云フ事ヲ
御述ニナリマシテ、其例トシテ一二ノ人名
ヲモ御擧ゲニナッタノデアリマスガ、其點ニ
付キマシテハ大學〓授ガ例ヘバ「マルクス」
ハ斯樣ナル說ヲ抱イタ者デアルト云フコト
ヲ學生ニ紹介致スト云フコトハ、是ハ已ムヲ
得ヌ事ト思フノデアリマス、苟モ〓授ガ宣
傳ヲ致シマシタリ、或ハ特別ノ行動ヲ執リ
マシタリ、卽チ國法ニ觸レルヤウナ行動シ
致シマシタナラバ是ハ決シテ假借ヲ致サ
ヌ積リデアリマス、京都ノ大學ノ〓授ガ十
數名家宅投索ヲ受ケタト云フ御話ガアリ
マシタガ、是ハ少シク事實ガ間違ノテ居ル
ヤウデアリマスガ、家宅搜索ヲ受ケタ者ハ
一名デアリマス、併ナガラ若モ其行動ガ學
術研究ト云フヤウナ範團ヲ超越致シテ居リ
マシテ、國法ニ觸レルガ如キ事ガアリマシ
タナラバ申スマデモナク假令國法ニ觸レ
ル程度ニ至リマセヌデモ、不都合ナル行動
ヲ認メマシタ以上ハ、當局者ハ之ニ對シテ
相當ノ處置ヲ執ルコトハ決シテ躊躇致シマ
セヌノデアリマス、唯〓〓日ノ程度ニ於キ
マシテマダソレ程ニ確實ナル事實ヲ私ハ
摑ンデ居リマセヌガ、併シ只令司法官ノ年
ニ在リマスル所ノ事實ガ、調査ガ進シデ參
リマシタナラバ定メシ種々私共ノ水知致
シテ居ラヌ事ガ明ニナルコトデアラウト思
ヒマス、然ル上ハ當局者トシテハ決シテ勇
斷ヲ下スコトニ付テ躊躇ヲスル者デハゴザ
イマセヌ、要スルニ私ハ將來ニ向ヒマシテ
ハ十分ニ此東君ノ御心配ニナル問題ニ付
キマシテ、徹底的ノ手段ヲ執ル積リデアリ
やく、十分ノ努カヲ致ス積リデアリマス、
願クバ立法府ノ諸公ニ於カレテモ、之ニ對
シテハ深甚ナル御援助ヲ與ヘラレンコトヲ
私ハ深ク希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=58
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059・井本常作
○井本常作君 議事日和變更ニ關スル緊急
動議ヲ提出シマス卽チ政府提出、大正十
三年法律第十號中改正法律案ヲ特ニ上程
シ、委員長ノ報告ヲ求メ、第一語會ノ續ヲ
開カレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=59
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060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ日程變更ノ
動議ニハ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=60
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061・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、大正十
三年法律第十號中改正法律案ノ第一讀會ノ
續ヲ開キマス-委員長上原好雄君
大正十三年法律第十號中改正法律案
(高等諸學校震災復舊諸費ニ關スル豫
算ノ施行ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ道(委員長報告)
報告書
一大正十三年法律第十號中改正法律案
(高等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫
算ノ施行ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十三日
大正十三年法律第十號
中改正法律案委員長
上原好雄
衆議院議長粕谷義三殿
布望
東京帝國大學其ノ他諸學校復舊事業ハ可
成速ニ完成セラレムコトヲ望ム
〔上原好雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=61
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062・上原好雄
○上原好雄君 私ハ只今上程ニナリマシタ
本案ニ對シ、委員會ノ經過及結果ヲ御報告
致シマス、本案ハ御承知ノ通リ極メテ簡單
ナル案デアリマシテ、卽チ帝國大學特別會
計法中ニ一ノ特別ヲ設ケタイト云フノガ本
案ノ骨子デアリマス、卽チ東京商科大學ヲ
移轉改築致シマス爲ニ、其殘地ヲ特別會計
カラ引離シテ、國有財產ノ方ニ移シタイト
云フノデアリマス、之ニ對スル委員會ハ委
員諸君ト政府委員トノ問ニ最モ熱心ニ仔細。
ナル質問應答ヲ重ネラレマシタ結果、希望
條件ヲ附シマシテ、滿場一致原案ヲ可決致
シマシタ、希望條件ハ「東京帝國大學其ノ
他諸學校復舊工事ハ可成速ニ完成セラレム
コトヲ望ム」以上御報生〓シシスス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=62
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063・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ別ニ
發議ノ通告モアリマセヌカラ、直ニ採決ヲ
致シマス本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=63
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064・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=64
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065・井本常作
○月本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ
三語會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決セラ
レンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=65
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066・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス仍テ直ニ第二讀會ヲ
開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
大正十三年法律第十九號中改正法律案
(高等諸學校震災復舊諸費ニ屬スル豫
算ノ施行ニ關スル件)第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=66
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067・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三會ヲ省略シテ委員長報告ノ
通リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=67
-
068・井本常作
○井本常作君 再ビ議事日程變更ノ緊急動
議ヲ提出致シマス卽チ政府提出、日程第
二十一乃至第二十五ヲ遂次上程シ、委員長
ノ報告ヲ求メ其第一讀會ノ續ヲ開キ、審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=68
-
069・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ日程變更ノ
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異識ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=69
-
070・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
二十一及第二十二ハ同一委員ニ付託シタ議
案デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=70
-
071・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第二十一、民事訴訟法中改正
法律案、日程第二十二、民事訴訟法中改正
法律施行法案ヲ一括シテ第一讀會ノ繪ヲ開
キマス-委員長齋藤隆夫君
第二十一民事訴訟法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一民事訴訟法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモ
ノト議決致候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
民事訴訟法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)委員長
齊藤隆夫
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
民事訴訟法中改正法律案中左ノ通修正ス
第三十一條裁判所ハ其ノ管轄ニ屬スル
訴訟ニ付著キ損害又ハ遅滯ヲ避クル爲
必要アリト認ムルトキハ其ノ專屬管轄
ニ屬スルモノヲ除クノ一中申立ニ因リ
又ハ職權
決定ヲ以テ訴訟ノ全部又ハ一部ヲ他ノ
管轄裁判所ニ移送スルコトヲ得
第三十五條判事ハ左ノ場合ニ於テハ法
律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラル
判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ
事件ノ當事者ナルトキ又ハ事件ニ
付當事者ト共同權利者、共同義務者
若ハ償還義務者タル開係ヲ有スルト
キ
二判事カ當事者ノ四親等內ノ血族若
ハ三親等內ノ姻族ナルトキ又ハナ
リシトキ
三判事カ當事者ノ後見人、後見監督
人、保佐人又ハ同居ノ戶主若ハ家族
ナルトキ
四判事カ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト
爲リタルトキ
五判事カ事件ニ付當事者ノ代理人又
ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六判事カ事件ニ付仲裁判斷ニ關與シ
又ハ不服ヲ申立テラレタル前審ノ裁
判ニ團與シタルトキ但シ他ノ裁判所
ノ嘱託ニ因リ受託判事トシテ其ノ職
務ヲ行フコトヲ効ケス
第八十一條訴訟代理人ハ委任ヲ受ケタ
ル事件ニ付反訴、參加、强制執行、假
ヲ爲シ
差押及假處分ニ開スル訴訟行爲モ亦之
且辨濟ヲ受領スル
ヲ爲スコトヲ得
左ニ揭クル事項ニ付テハ特別ノ委任ヲ
受クルコトヲ要ス
-反訴ノ提起
二訴ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ
認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル脫
退
三控訴、上告又ハ其ノ取下
四代理人ノ選任
訴訟代理權ハ之ヲ制限スルコトヲ得ス
但シ辯護士ニ非サル訴訟代理人ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラス
第百三十九條當事者カ故意又ハ重大ナ
ル過失ニ因リ時機ニ後レテ提出シタル
攻撃又ハ防禦ノ方法ハ之カ爲訴訟ノ完
結ヲ遲延セシムヘキモノト認メタルト
申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ
キハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スル
却下ノ決定ヲ爲ス
コトヲ得
攻擊又ハ防禦ノ方法ニシテ其ノ趣旨明
瞭ナラサルモノニ付當事者カ必要ナル
釋明ヲ爲サス又ハ釋明ヲ爲スヘキ期日
ニ出頭セサルトキ亦前項ニ同シ
第百四十四條調査ニハ辯論ノ要領ヲ記
載シ殊ニ左ノ事項ヲ明確ニスルコトヲ
要ス
一和解、認諾、抛棄、取下及自白
二證人鑑定人ノ宣誓及陳述
三檢證ノ結果
四裁判長ノ記載ヲ命シタル事項及當事者
ノ請求ニ因リ記載ヲ許シタル事項
五
四書面ニ作ラサル裁判
六
五裁判ノ言渡
第百四十八條裁判所必要アリト認ムル
○申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ
トキハ○速記者ヲシテ口頭辯論ニ於ケ
ル陳述ノ全部又ハ一部ヲ筆記セシムル
コトヲ得
第百五十二條期日ハ裁判長之ヲ定ム
受命判事又ハ受託判事ノ審問ノ期日ハ
其ノ判事之ヲ定ム
期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以
テ之ヲ爲ス
口頭辯論ニ於ケル最初ノ期日ノ變更ハ顯著
ナル事由ノ存セサルトキト雖當事者ノ合意
アル場合ニ於テハ之ヲ許ス準備手續ニ於ケ
ル最初ノ期日ノ變更亦同シ
第百七十條當事者、法定代理人又ハ訴
訟代理人ハ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、
居所、營業所、又ハ事務所ヲ有セサルト
キハ其ノ裁判所ノ所在地ニ於テ送達ヲ
受クヘキ場所及送達受取人ヲ定メ之ヲ
屆出ツルコトヲ要ス
送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ屆出ヲ爲サ
サルトキハ其ノ者ニ對シテ送達スヘキ
書類ハ前條第一項ノ規定ニ依リ送達ス
○書留
ヘキ場所ニ宛テ○郵便ニ付シテ之ヲ發
送スルコトヲ得
第一項ノ屆出ハ送達ヲ受クヘキ者ガ受
訴栽判所ノ所在地ニ住所、居所、營業
所又ハ事務所ヲ有スル場合ニ於テモ亦
之ヲ爲スコトヲ得
第百七十二條前條ノ規定ニ依リテ送達
ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ裁判
○書留
所書記書類ヲ○郵便ニ付シテ之ヲ發送
スルコトヲ得
○交付ヲ受ケクル日
第百九十三條判決ハ○當事者ニ之ヲ送
ヨリ二週間內ニ之ヲ
達スルコトヲ要ス
判決ノ送達ハ正本ヲ以テ之ヲ爲ス
第二百六十二條裁判所ハ必要ナル調査ヲ
官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ公署又
○學校、商装會議所、取引所其ノ他ノ團體
ハ○法人ニ囑託スルコトヲ得
第三百六十一條財產權上ノ請求ニ關ス
ル判決ニ對シテハ控訴ニ因リテ受クヘ
キ利益ノ價額カ二百圓ニ滿タサル場合
ニ於テハ再審ノ事由アルニ非サレハ控
訴ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ訴訟ノ目的ノ價額カ二百
圓以上ナル事件ニ付裁判所カ訴訟ノ一
部ニ付爲シタル判決ニハ之ヲ適用セス
第一項ノ價額ハ控訴提起ノ時ヲ標準ト
シテ之ヲ定ム
控訴審ニ於テ擴張シタル請求ノ價額ハ
第一項ノ價額ニ之ヲ算入セス
第一項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサル
トキハ其ノ價額八二百圓ト看做ス第二
十三條ノ規定ハ第一項ノ價額ノ算定ニ
之ヲ準用ス
第三百六十二條ヲ第三百六十一條トシ以下第
三百七十條マテ順次繰上ク
第三百七十一條第二百二十八條ノ規定
七
ハ控訴狀カ第三百六十八條第二項ノ規
定ニ違背スル場合、法律ノ規定ニ從ヒ
控訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合及控訴
狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之
ヲ準用ス
第三百七十二條ヲ第三百七十一條トス
第二街被控訴人ハ控訴權消滅
ノ終結ニ至ル迄附帶
控訴ヲ爲スコトヲ得附帶控訴ニ因リテ
受クヘキ利益ノ價額カ二百圓ニ滿タサ
ルトキ亦同シ
第三百七十四條ヲ第三百七十三條トシ以下第
三百九十二條マテ順次繰上ク
二
訴訟完結シタル後上訴
第三百九十年 -
訴期間滿了シタルト
キハ裁判所書記ハ判決又ハ第三百七十
一條ノ規定ニ依ル命令ノ正本ヲ訴訟記
鎖ニ添附シ之ヲ第一審裁判所ノ書記ニ
送付スルコトヲ要ス
第三百九十四條ヲ第三百九十三條トシ以下第
三百九十七條マテ順欠繰上ク
第三百九十七條上告裁判所ノ書記ハ原裁判
所ノ書記ヨリ訴訟記錄ノ送付ヲ受ケタルト
キハ道滯ナク其ノ旨ヲ當事者ニ通知スルコ
トヲ要ス
第三百九十八條上告狀ニ上告ノ理由ヲ
前條ノ通知ヲ受ケタル
記載セサルトキハ近クトモ上告期間滿
了ノ日ヨリ三十日內ニ上告理由書ヲ提
出スルコトヲ要ス
三
第四百四條第三百九十四條第二項ノ規
定ニ依ル上告アリタル場合ニ於テハ上
告裁判所ハ原判決ニ於ケル事實ノ確定
カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ
其ノ判決ヲ破毀スルコトヲ得ス
第二十二民事訴訟法中改正法律施行
法案(政府提出、貴族送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一民事訴訟法中改正法律施行法案(政府
提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報生侯也
大正十五年三月二十一一日
民半訴訟法中改正法
律施行法案委員長
齋藤隆夫
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
民事訴訟法中改正法律施行法案中左ノ通
修正ス
第十一條新去施行前ヨリ繋屬スル訴訟
ニ付言渡シタル判決ニ對シテハ上訴ニ
因リテ受クヘキ利益ノ價額ニ滿タ
サル場合ニ於テモ上カヲ爲スコトヲm
第十二條ヲ第十一條トシ以下順次緑上ク
〔齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=71
-
072・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君 只今議題トナッテ居リマス
ル兩案ノ中、先ヅ民事訴訟法中改正法律案、
此特別委員會ノ經過竝ニ結果ニ付キマシ
テ、極メテ大要ヲ御報告致シマス、御水知ノ如
ク本案ハ現行民事訴訟法中第一編乃至第
五編ニ對シテ根本的ノ改正ヲ企テ、尚ホ之ニ
關聯致シマシテ第六編乃至第八編ニ對シ
テ一部ノ改正ヲ加ヘントスルモノデゴザイ
マシテ、本期或會ニ現ハレマシタル法律案
ト致シマシテハ其內容ガ最モ活瀚デアリ
マスルノミナラズ、私權ノ行使ニ付キマシ
テハ極メテ重大ナル四係保有有ルモノデア
リマス幸ニシテ委員諸氏ハ何レモ知名ノ
在野法曹デアリマスルガ故ニ、多年ノ經驗
ニ基キ、熱心精細ニ本案ヲバ審議セラレマ
シタ結果、委員會ハ最モ圓滿ニ且ツ順調ニ
終リヲ告ゲマシタコトヲ、先ヅ以テ諸君ノ
前ニ御報告致スコトヲ喜プノデアリマス、
而シテ本案ノ主眼トスル所ハ何レニ在ルカ
ト中シマスルト云フト、詰リ現行民事訴訟
法施行以来多年ノ經驗ニ基キ、訴訟遲延ノ
原因トナルベキ諸種ノ規定ヲ改メマシテ、
專ラ事件ノ圓滿ナル進捗ト審理ノ適正ヲ圖
ルニ在ルコトハ本案提出ノ理由トシテ司
法大臣ノ述ベラレタル通リデアリマス、此
目的ヲ達シマスルガ爲ニ、第一ニハ準備手
續ヲ擴張シ、第二ニハ關席判決ノ制ヲ廢
シ、第三ニハ當事者ノ合意ニ依ル期日ノ變
更ヲ廢シ、第四ニハ裁判管轄移送ノ制ヲ設
ケ、第五ニハ攻撃防禦方法ノ提出ヲ制限シ、
第六ニハ法人ニアラザル社團又ハ財團ノ訴
訟能力ヲ認メ、第七ニハ訴訟參加ノ制ヲ擴
張シ、第八ニハ證重書訴訟及爲替訴訟手續ヲ
廢シ、第九ニハ輕微ナル訴訟ニ付テハ上訴
ヲ制限シ、第十ニハ上訴期間ヲ短縮シ、其
外幾多ノ新シキ規定ヲ設ケテ居ルノテアリ
マス、斯ル規定ヲバ設クルニ至リマシタ理
山ノ大要ハ此所ニ司法省編纂民事訴訟法
中改正法律案理由書、東京〓水書店發行定
價一圓五十錢、之ニ載シテ居リマスルニ依。テ、
之ニ就テ御覽ヲ願ヒタイノデアリマス、委
員會ハ去ル十一日ヨリ連日ニ渉リマシテ開
會ヲ致シ、政府當局ト委員諸氏トノ間ニ於
テ幾多ノ質問應答ガ重ネラレタノデアリマ
ス、此質問ノ中デ主ナルモノヲ御紹介致シ
マスルナラバ、第一ニハ本案ヲバ豫メ世上
ニ公ニシテ、廣ク各方面ノ意見ヲ求メナカツ
タノハ何故デアルカ、第一二八風會ノ會期
ハ餘ス所僅ニ十數日ヲ出ナイ、此短カキ期
間ニ於テ斯ノ如キ大法典ノ審査ヲ盡サシメ
ントスルノハ餘リニ輕率デナイカ、第三
ニハ本期會ニ於テ是非共本案ヲバ成立
セシメネバナラヌ所ノ必要ハ何處ニ在
ルカ、第四ニハ訴訟遲延ノ原因ハ獨リ
訴訟法ノミノ罪デハナイ、訴訟機關即チ、
裁判官、益護士、裁判所書記是等ノ
者ノ能率ガ舉ガラナイト云フノモ原因ヲ
成シテ居ルノデアル政府ハ如何ニシテ是
等ノ機關ヲ改善シ、其能率ノ運ヲ圖ラン
トスルノデアルカ、第五二證書訴訟爲
替訴訟手續ヲ廢シタル理由ハ如何、第六ニ
ハ闕席判決ノ制ヲ廢シタル理由ハ如何第
七ニハ準備手續ヲ擴張シタル理由ハ如何
第八ニハ訴訟價額三百圓未滿貴族院ニ於
キマシテハ之ヲ二百圓未滿ト修正ヲシテ居
リマスガ、免ニ角此種ノ訴訟ニ付テ控訴及
上告ヲ許サズト定メタル理由ハ如何、第九
ニハ現行法ニ於テハ當事者ノ合意ガアル場
合ニ於テハ、自由ニ期日ノ變更ヲ許スニ拘
ラズ、本案ニ於テハ一切之ヲ廢シタル理由
ハ如何、其他幾多ノ質問ガ發セラレマシ
テ之ニ對スル政府ノ答辯ヲバ御紹介致シ
マスルト云フト非常ニ長時間ヲ要シマスル
ニ依ッテ、是ハ速記錄ニ依シテ御覽ヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス、斯ノ如クニシテ委
員會ニ於ケル總體的及逐條的質問ガ終リマ
シタ後ニ、更ニ小委員ヲ設ケタノデアリマ
ス委員長ヲ加ヘテ十名ノ小委員ヲ設ケ
テ、此委員會ニ於キマシテハ速記ヲ廢シテ
懇談會ニ移ッタノデアリマス、此委員會ノ內
容ニ付キマシテ、特ニ御報告申シテ置キタ
イ一事ガアリマスソレハ外ノ事デハゴザ
イマセヌ、此改正案ニ付キマシテハ在野法
曹ノ間ヨリ幾多ノ修正意見ガ現ハレ吾々
ノ手許ニモ配付セラレテ居ルノデアリマ
ス其一ハ日本辯護士協會及東京辯護士會
ノ名ニ依ッテ、又一ツニハ帝國辯護士會及
東京第一辯護士會ノ名ニ依ッテ、各〓六十
餘條ニ亙ル所ノ修正意見ガ現ハレテ居ルノ
デアリマス、面シテ是等ノ團體ハ何レモ
我國ニ於キマシテハ最モ有力ナル所ノ法曹
家ノ寄集リデアリマスルニ依ッテ、吾々ガ
本案ヲバ審議スルニ當リマシテ、是等ノ怠
見ニ重キヲ置キ、之ヲ參考ニ供スルト云ム
コトハ決シテ不當ノ事デハナイト思ヒマ
ス、此趣旨ヨリ致シマシテ小委員ニ於キマ
シテハ是等ノ意見ヲバ逐次審議ヲ盡シタ
ノデアリマス、而シテ最後ニ於テ委員相互
ノ意見ヲバ交換致シマシタ結果、一ノ修正
案ヲバ作製シタノデアリマス、續イテ委員
總會ヲ開キマシテ此修正案ヲバ議シ、更ニ
委員會ニ於テ新シキ修正モ認メマシタ、其
修正案ガ此ニ諸君ノ御手許ニ廻サレテ居ル
所ノ印刷物ナノデアリマス、之ニ就キマシ
テハ別ニ詳シイ說明ハ致シマセヌガ、此
ニ二ツバカリ特ニ御注意ヲ願ヲテ置キタイ
コトガアルノデアリマス、シレハ何デアルカ
ト云フト、第一ハ上訴ノ制限ヲバ撤廢シタコ
トデアリマス、政府原案ニ於キマシテハ訴
訟價額三百圓未滿ノモノ、貴族院ノ修正ニ
於テハ二百圓未滿ノモノハ控訴上告ヲ許サ
ナイト云フ規定ガアリマシタガ、委員會ニ
於キマシテハ之ヲ全部削除シテ、如何ナル
種類ノ訴訟ニモ上訴ヲ許スト云フ現行法ノ
規定ニ還シテ居ルノデアリマス、其理由ハ
金額ノ多少ニ依ッテ權利ノ救濟ニ差等ヲ設
クルト云フコトハ宜シクナイノミナラズ、
斯ノ如キ規定ヲ設ケマスト云フト〓シテ
下層階級ノ人ミハ權利ノ救濟ニ付テ十分ニ
國家ノ保護ヲ受ケルコトガ出來ナイト云フ
コトニナッテ、今日ノ時代思想ニ逆行スル
モノデアルト云フ意味モ含マレテ居ッタヤ
ウニ本員ハ理解シテ居ルノデアリマス若
シ私ノ考ニ誤ガゴザイマシタナラバ4委員
諸氏ヨリ御遠慮ナク御訂正ヲ願ヒタイノデ
アリマス次ハ現行法ニ於キマシテハ合意
ノ延期ヲ無條件ニテ許シテ居ルノデアリマ
ス、ソレヲ改正案ニ依リマスト云フト、
切禁止シテ居リマス、今日ノ如ク訴訟當事
者ガ合意ヲスレバ無制限ニ何回、何十囘デ
モ期日ヲ延期スルト云フコトモ惡イガサ
リトテ一切之ヲ許サナイト云フコトニナル
ト云フト、當事者ノ不便モ察セネバナラヌ
ニ依シテ、委員會ハ此間ヲ適當ニ調和ヲ致
シマシテ、準備手續及辯論期日ニ付テ、最
初ニ定メタル所ノ期日ダケハ當事者ノ合意
ヲ以テ變更ヲ許ス、其次ノ期日ハ裁判所ノ
自由ニ決定スルト云フコトニ改メタノデア
リマス其外詳細ノコトハ此印刷物ニ就テ
御覽ヲ願フコトニ致シマスソレカラシテ
委員會ヲ閉ヅルニ當リマシテ、〓瀨君ヨリ
政府ニ向ッテ斯ウ云フ質問ガ發セラレタノ
デアリマス本案ハ私法上ノ權利義務ニ關
スル極メテ重要ナルモノデアルガ、何分ニ
モ審査期間十分ナラザルガ爲ニ、精細ノ考
究調査ヲ爲スコトガ出來ナイノハ甚ダ遺憾
デアル仍テ政府ハ將來本法ノ實施前後ヲ
問ハズ、或點ニ付テ改正ノ必要ヲ認メタル
場合ニ於テハ直ニ是ガ改正ヲ惜マザルヤ
否ヤ、之ニ對スル答辯ヲ聞イ夕上ニ於テ、
修正案ニ賛否ヲ決シタイト云フコトデアリ
マシタ、此質問ニ對シテ江木司法大臣ハ
御質問ノ如ク將來本法中ニ於テ若シ不都合
ノ點ヲ發見シタル時ハ實施ノ前後ヲ問ハ
ズ是ガ改正ニ吝ナルモノデナイト云フ答辯
ヲセラレタノデアリマス次ニ黑住成章君
ヨリ次ノ如キ希望條件ヲ提出セラレタノデア
リマス「委員會ハ本案ヲ審議決定スルニ當
リ改正案ノ精神趣旨ニミ左ノ希望條件ヲ
附シテ本案ニ賛成ス、第一裁判官及裁判
所書記優遇ノ方法ヲ講シ人材簡抜ノ途ヲ聞
キ訴訟蕋滯ノ弊ヲ一掃スルコト第二、次
期議會ニ於テ辯護士法改正案ヲ必ス提出ス
ルコト第三、次期議會ニ强制執行法及競
賣法ノ改正案ヲ提出スルコト、第四、執行
期間ヲ改善シ其監督ヲ嚴ニシ以テ裁判ノ進
行ニ遺憾ナカラシムルコト」右申シマシタ
修正案及希望條件ハ滿場一致ヲ以テ之ヲ
可決致シタノデアリマス、是ガ民事訴訟法
中改正法律案ノ經過竝ニ結果ノ大要デアリ
マス最後ニ於テ之ニ關聯シテ一言、述べ
テ置キタイコトハ政府ノ原案ニ對シテ貴
族院ニ於キマシテモ二十幾箇條ノ修正ガ加
ヘラレテ居ルノデアリマス貴族院ノ修正
ニ對シマシテハ委員會ハ全部適當ノモノ
ト認メテ之ニ賛成ヲシテ居リマス、唯〓其
中ニ於テ一箇條ダケ最前申シマシタ上訴ノ
制限ヲ撤廢スルコトニ付テハ貴族院ト意見
ヲ異ニシタノハ甚ダ遺憾デゴザイマスガ
吾々ガ斯ノ如キ修正ヲ加ヘザルベカラザル
必要ヲ感ジマシタ理由ハ先程申シタ通リ
デアリマスカラ、貴族院ノ諸公ニ於カレマ
シテ十分吾々ノ意ノ在ル所ヲ諒察セラレ
テ衆議院ノ修正ニ御同意アルコトヲ私ハ
確信シテ疑ハナイノデアリマス、次ハ民事
訴訟改正法律施行法案、是ハ民事訴訟法ヲ
實施スルニ當リマシテ其經過ヲ圓滿ニス
ルガ爲ニ必要ナル規定ヲ設ケテ居ルノデア
リマシテ別ニ異論ヲ中シマスルヤウナ體
モナイノデアリマス、唯、先程申シマシタ
上訴制限ヲ廢シマシタ結果トシテ、此法案
ノ第十一條全部ヲ削除スルニ止マルノデア
リマス、以上ガ兩案ノ委員會ニ於ケル經過
竝ニ結果ノ大要デアリマス、左樣ニ御承知
ヲ願ッテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=72
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073・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 兩案ニ對シテ別ニ發
言ノ通告モアリマセヌカラ採決致シマスー
兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=73
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074・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ハナイト認メ
マス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=74
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075・井本常作
○井本常作君 直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ希望致シマス
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=75
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076・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナイト認メマス仍テ直ニ兩案ノ第二讀
含ヲ開キ議案全部ヲ議題ニ供シマス
民事訴訟法中改正法律案第二讀會
民事訴訟法中改正法律施行法案
/第二讀會
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=76
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077・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御發議モナイヤ
ウデアリマスカラ採決致シマス-是ニテ
第二讀會ハ委員長報告通リ終了敘シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=77
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078・井本常作
○井本常体若 直ニ兩案ノ第三請會ヲ開カ
レンユトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=78
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079・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナイト認メマス仍テ直ニ第三讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
民事訴訟法中改正法律案第三讀會
民事訴訟法中改正法律施行法案
第三讀會
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=79
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080・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス仍テ兩案共第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手起ル)-次ハ日程第二
十三、暴力行爲等處罰ニ關スル法律案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キマスー-委員長森田茂君
第二十三、暴力行爲等處罰ニ關スル
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一暴力行爲等處罰ニ關スル法律案(致府
提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報生〓也也
大正十五年三月二十二日
暴力行爲處罰ニ關
スル法律案委員長
森田茂
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
暴力行爲等處罰ニ關スル法律案中左ノ通
修正ス
第一條中「假装シテ床力ヲ元シ」ノ下「ヽ」ヲ
削リ「又ハ」ヲ加へ「兒器ヲ元シ」ノ下又
ハ」ヲ「若ハ」ニ改ム
〔森田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=80
-
081・森田茂
○森田茂君 暴力行爲等處罰ニ關スル法律
案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報告致シマス、
委員會ハ三月十九日、同月二十二日ノ雨
日ニ涉リマシテ愼重審議セラレマシタ、本案
ハ團體的背景ニ依リ兒器ヲ携帶シ又ハ常習
トシテ暴行脅迫、又ハ强談威迫ヲ行フ者及
之ヲ援助スル者ヲ處罰スル規定デアルノデ
アリマス、法律ハ僅ニ三箇條ヨリ成立ッテ居
リマシテ、極メテ簡單デアリマス、所ガ此
法律案ニ付キマシテ、玆ニ一言辯明致シテ
置カナケレバナラヌコトハ此法案ナルモ
ノガ勞働運動若タハ小作速動或ハ水平運
動ヲ阻止スル目的ハナイカト、斯ウ云フ疑
問デアルノデアリマス、等チ此點ニ關シマ
シテハ憲政會ノ山樹儀重、新正倶樂部ノ山
口政二、政友會ノ有馬賴寧、政友本黨ノ原
夫次郞氏等ヨリ種々質圖ヲ發セラレタノデ
アリマヌ、所ガ此點ニ關シマシテ政府當局
ノ答辯スル所ニ依リマスト、本案ハ決シテ
勞働運動若クハ小作運動、或ハ水平運動等
ヲ目標トシテ、之ヲ阻止スル意味ヲ以テ立
案サレタモノデハナイ、此目的ヲ以テ立案
セラレタモノデナイト同時ニ、如何ナル者
ト雖モ此法案ノ意味ニ牴觸シマスル所ノ多
衆ノ〓醫ヲ背景トスル或ハ兇器ヲ携帶シ
若クハ當習トシテ暴行脅迫ヲ爲ス者、及之
ヲ援助スル者ハ處罰スルコトヲ決シテ假借
スルモメデナイ、斯ウー云フ答辯ガアッタノデ
アリマス、又有馬君ヨリハ水平運動ニ關シ
若タハ水平社ニ對シテ侮辱的言辭ヲ弄シタ
ル者ニ對シテ處罰スル法案ヲ拵ヘルコトニ
政府ハ考慮シテ居ルヤ否ヤ、或ハ差別的言
辭ヲ弄シタル者ヲドウスル、若クハ此差別
的言動ニ依リテ爭ヲ生ジタル場合ニ於テ
之ヲ調停スル法案ヲ拵ヘルカ否ヤト云フコ
トニ付テノ御質問モアッタノデアリマスガ、
併シ是等ノコトニ付キマシテハ、其詳シ
イコトハ矢張速記錄ニ依ッテ郡覺ヲ願フコ
トニ致シタイト思フノデアリマス、斯ノ如
キ問題ニ付テ質問應答ヲ重ネタノデアリマ
スガ、其結果大體ニ於キマシテ政府ノ案ニ
何人モ異存ガナカッタノデアリマス、本黨ノ原
夫大郞君ヨリ第一條ニ僅カバカリノ修正ヲ
試ラレマシタ、卽チ第一條ノ前略「團體若
ハ多衆ヲ假裝シテ威力ヲ市」ト云フ下ニ
「又ハ」ト云フ文字ヲ挿入スルコト其次ニ
「兒器ヲ示シト」云フ下ニ「又ハ」ト云フ支字
ガアリマスガ、之ヲ「若ハ」ト斯樣ニ變ヘタ
イ、サウシテ此法像ノ意味ヲ明白ニ致シタ
イト云フ修正意見ガ提出サレマシタガ、之
ニ對シテハ政府ニ於キマシテモ別ニ異議モ
アリマセズ、又吾々委員ノ間ニ於キマシテ
モ、何等異議ナタシテ、此案ハ多數ヲ以テ
可決セラレタノデアリマス政友會ノ委員
諸氏ハ本案ニ對シマシテ、別ニ賛否ノ意見
ヲ發表セズ、本會議ニ於テ何等カノ意見ヲ
發表スルト云フコトデ、其意見ヲ留保セラ
レテ君ルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマシ
テ、只今申上ゲマシタ僅カノ修正ヲ除クノ
外ハ全部原案ガ可決セラレタ結果ニナッ
タノデアリマス、右御報告ニ及ビマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=81
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082・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス通告願ニ依ッテ發言ヲ許シマス-、山
口義一君
〔山口義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=82
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083・山口義一君
○山口義一君 只今委員長ノ御報告ニナリ
マシタル暴力行爲等處罰ニ關スル法律案、
是ハ時弊ヲ匡救スル上ニ於テ已ムヲ得ザル
ノ便法デアルトハ認メテ居リマスケレド
モ、若モ此通用ヲ誤リマシタナラバ、恣ニ
人權ヲ蹂躪スルコトガ出來ル所ノ恐ルベキ
法律トナルト云フ虞ガゴザイマスルカラシ
テ、此適用ニ關シマシテ附帶決議ヲ附ケタ
イト思フノデアリマス、ソレハ次ノ如キ附
帶決議デアリマス「本案規定ノ暴力行爲等
ヲ檢擧スルニ當リ當局ハ須ク其運用ニ戒心
シ苟モ人權蹂躪ノ非違ナキコトヲ期スヘ
シ」斯ウ云フ附帶決議ヲ附ケタイト思フノ
デアリマス、何ガ故ニ斯ノ如キ附帶決議ヲ
附ケテ、當局ニ對シテ警告ヲ發シナケレバ
ナラナイカト申シマスルノニ、此法律ノ適用
範圍ガ頗ル不明瞭、瞹味模糊ト致シテ居ル
ノデアリマス此本議場ニ於テ司法大臣ノ
御說明ニナッタ所ヲ承ノテ居リマスルト云フ
ト是ハ勞働組合運動或ハ農民運動、又ハ
水平社ノ運動、其他正田ナル目的ヲ持ッテ居
ル所ノ〓體運動ニ對シテハ適用シナイ、斯
ウ云フ風ノ御說明デアリマシタ、又委員會
ニ於テノ質問應答ヲ聞イテ居リマスルト、
或ル委員ノ質問ニ對シテ政府委員ノ答ヘル
所ヲ聞キマスルト云フト、矢張司法大臣ト同
ジヤウニ、此法律ハ押借リ强請ト云フヤウ
ナモノ、其他不正ナル團體ヲ取締ルノガ、
目的デアルケレドモ、此法律ノ立法技術上
カラ云ムテテ是レ以上ニ其意味ヲ明瞭ニス
ルコトガ出來ナイノデアル斯ウ云フヤウ
ナ御各辯モアッタノデアリマスルガ、又或ル委
員ノ質問ニ對シマシテハ是ト矛盾シタヤ
ウナ、如何ナル團體デアッテモ、正當ナ團
體デアッテモ、團體ノ威力ヲ背景トシテ、
暴行ヲスルヤウナ場合ニハ此法律ヲ適用
シテ嚴重ニ處罰スル、斯ウ云フヤウナ御答
辯モアッタ、ンコデ此法律案ハ正當ナル〓體
ニ對シテモ、其團體員ノ一員ガ暴行シタ場
合ニハ適用サレルノデアルカ、ドウカ、唯、ミ
不正ナル〓體ニノミ適用サレルノデアル
カドウカ、其範圍ガ明カデナイ、凡ン勞働運
動ニ致シマシテモ、農民運動ニ致シマシテ
モ、是ハ正シイ〓體ノ正シイ運動デアリマ
シテ獨リ々々デハ力ガ弱イカラシテ、多
數ノ人ガ力ヲ協セテ其地位ヲ改善シ維持シ
テ行カウト云フノデアルカラシテ、是ハ正
シイ目的ヲ持シテ居ル所ノ正シイ運動デア
テ、政府ガ勞働組合法ヲ認メ、又小作組合
法ヲ認メ、サウシテ之ヲ制定セントシテ居
ラレマスノモ、此團體ノ效果ヲ認メタ結果
ニ外ナラナイ、所ガ一方ニ於テ暴力行爲處
罰法律案ニ依リマシテ、假令正當ナル圍體
デアッテモ、、團體ヲ背景トシテ暴力ヲシタト
キニハ之ヲ嚴重ニ處罰スルノデアル、卽チ
圍體ノ威力ヲ發揮スルノヲ禁ズルノデアル、
斯ウ云フ風ニナリマシタナラバソコニ大
ナル矛盾ガ生ジテ來ル、一方ニ於テハ團體
ノ效力ヲ認メテ居リ、他方ニ於テハ其團體
ノ威力ヲ發揮スルコトヲ禁ジテ居ル團體
ノ效力ヲ認メテ居ルト云フコトハ取モ直サ
ズ團體ノ威力ヲ發揮スルコトヲ認メテ居ル
結果ニナルノデアリマスカラシテ、效力ヲ
認メテ置キナガラ其威力ヲ發揮スルコトヲ
禁ズルト云フコトニナルト洵ニ矛盾シタ
結果ニナルノデアリマスカラシテ、此法律
案ハ正當ナル團體ガ誤テ或ハ情ニ激シテ、
其團體ノ一員ガ暴力行爲ヲ爲シタトキニ之
ヲ禁ズルモノデアル或ハ普通一般ノ刑罰
規定ガ處罰ヲ命ジテ居リマス所ノ其處罰上
ニ嚴重ナル處罰ヲスルト云フ趣旨デナイ
コトハ明カナノデアル、例ヘバアノ水平社
ノ運動ニ致シマシテモ、アレハ正シイ運動
ナノデアル、少數ノ同胞ガ一般ノ人とカラ
侮辱的言辭ヲ弄セラレタリ或ハ賤視的觀
念ヲ以テ過セラレルト云フトキニ水平社
ノ人ガサウ云フコトハ誤シテ居ル觀念デア
ルサウ云フヤウナ觀念ハ一掃シナケレバ
ナラヌ、斯ウ云フ運動ヲ起スノデアリマス
カラシテ、是ハ正シイ運動デアル、其水平
社運動ノ一ツノ手段トシテ行ハレテ居リマ
ス所ノ卽チ徹底的糺斷ト云フモノガアル
ソレハ何カト云フト一般人ガ少數同胞ニ對
シテ差別的觀念ヲ以テ侮辱ヲ加ヘタルトキ
ニ、其人ニ對シテ謝罪ヲ要求スル、其方法
ハ謝罪文ノ廣告デアルトカ或ハ講演會ヲ
要求スルトカ、色ニナ方法ガゴザイマスル
ガ、其謝罪ヲ要求致シマシタル場合ニ於テ
此要求ニ其侮辱ヲ加ヘタル人ガ應ジマシタ
ナラバ、圓滿ニ何事モナク解決サレルノデ
アリマスケレドモ、ソレニ應ジナイトキニ
ハドウナルカト云フト、勢ノ激スル所ソコ
ニ暴力ノ行爲ガ行ハレルト云フコトニナル
ノデアリマス、サウ云フ場合ニナリマスル
1、自然栽判沙汰ニナルノデアリマスガ、
從來其實例ヲ見マスルトドウナッテ居シタカ
ト云フト此場合ニ於キマシテハ侮辱的言
辭ヲ弄シマシタ所ノ一般人ハ、侮辱的言辭
ヲ弄シタトカ、弄シナイトカ云フコトデ、
ドウモ、後カラ考ヘルト證據ガ擧ラナイ、
ソコデ裁判ノ結果罪セラレルト云フコトハ
洵ニ少イ、所ガ一方ニ於テ水平社ノ人ガ直
接行動ニ出テ、サウシテ暴力ヲ加へルト云
フトソレハ明ニ證據ガ殘ルカラシテ、何
時モ兩方ノ場合ヲ見ルト云フト、水平社ノ
人ガ嚴ニ處罰サレル、從來ニ於テサヘモ水
平社ノ運動ノ際ニ於テ、一般人ト少數同胞
ノ人トノ爭ニ於テハ水平社ノ人ガ嚴重
ニ處罰サレテ居リマスノニ、此法律ガ出テ
此法律ヲ誤クテ適用スル所ノ當局者ガ有,タ
ナラバ益〓嚴重ニ水平社ノ人ガ處罰サレ
ル結果ニナル、サウ云フ風ニナルト云フト、
結果ハドウデアルカト云フト、時ハサウ
云フ運動ハ鎭壓サレルカモ知レナイケレド
モ、其結果ハ益と惡イト云フ事ニナルノデ
アリマスルカラ、是ハ大ニ考ヘナケレバナラ
ナイ、要スルニ農民運動ニ致シマシテモ、
勞働運動ニ致シマシテモ、又水平運動ニ致
シマシテモ正シイ連勤デアルカラシテ
是ハ普通一般ノ刑法ガ規定シテ居ル所ノ其
刑割以上ニ、特別ニ嚴罰ニ處サナケレバナラ
ヌト云フ理窟ハ無イ、一人デアッテモ多数デ
アッテモ、正シイ行動ヲシテ、其行動ヲシテ
居ル最中ニ、或ハ時偶〓情ニ激シテ暴力ニ
訴ヘルト云フヤウナトキニハソレハ普通
一般ノ規定ニ從ッテ處罰スレバ宜イノデ、ソ
レ以上嚴罰ニ處スル謂ハレハ少シモ無イノ
デアリマスカラ、此法律ノ適用ト云フコト
ハ最モ嚴重ニ戒愼シテ適用シナケレバナ
ラヌ卽チ問題ノ岐ルヽ所ハ正シキ團體ノ
正シキ運動ノ際ニ行レ夕所ノ暴力デアル
カ、不正ナル目的ヲ持,テ居ル所ノ不正ナル
團體ノ運動ノ際ニ行ハレタル所ノ暴力デア
ルカト云フ、此界目ヲ發見スルト云フコト
ガ一番大事ナ事デアルソコデ之ヲ當局ノ
此法律ヲ適用致シマスル場合ニ於テ、最モ
嚴重ニ注意シテ其運用ヲ誤ラナイヤウニシ
ナケレバナラナイノデアリマスルカラ、私
共ハ此附帶決議ヲ付ケテ、將來此法律運用
ノ際ニ人權蹂躪ノ無イヤウニシナケレバナ
ラヌト云フ意味ニ於テ、此附帶決議ヲ付ケ
テ本案ニ贊成スル次第デアリマス(拍手)
○ 長(粕谷義三君)原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=83
-
084・原夫次郞君
○原夫次郞君 只今議題トナッテ居ル暴力
行爲等處罰ニ關スル法律案ハ現今世相ノ
副產物デアリマシテ、私共斯ル法律ガ玆ニ
上程セラルヽコトヲ甚ダ遺憾トスル者デア
リマス、世人口ヲ開ケバ近時我國ノ思想界
ノ危險若クハ混亂ヲ高唱致シ、議論スル人
ガアルノデアリマスケレドモ、或ハ時ニ依ッ
テ斯カル議論ヲスル人自體ニ於テ、大ニ危
險性ヲ帶ビテ居ル人モ有ルシ、又世ノ中ヲ
騷ガス人モアルシ、誠ニドウモ困タ世ノ
中デアルノデアリマス(拍手)一體本案ハ政
府ノ提案ニ係ル法律案デアッテ、私共ハ實
ハ此法律ハ少シ生溫ルイト思フノデアリマ
スガ先ヅ第一番ニ暴力行爲等ヲ目的トス
ル所ノ國體ガ玆ニ生レマシタナラ、斯カル
團體ヲ先ヅ其團體的ノ行動ヲ取ラナイ以前
ニ於テ、其成立シタル團體其モノノ撲滅策
ヲ大ニ攻究シナケレバナラナイ、是ハ大ナ
ル社會政策ノ一ツデアリマスケレドモ、併
ナガラ是ハ非常ナル「デリケート」ナ問題デ
アッテ、吾人ニ結社集會ノ自由ガ憲法上ニ
許サレテ居ル限リハ無暗ニ當局ガ甲ナル
團體ハ暴力問體デアル乙ナル團體ハ然ラ
ズト云。ンテ之ヲ差別スルコトガ出來ナイノ
デアリマスカラシテ、之ヲ制禦スルト云フ
コトノ法律ハ中々困難デアルケレドモ、併
シナガラ斯ル非法ヲ目的トスル所ノ〓體
ヲ、其發生前ニ於テ撲滅ヲスルヤウナ一體
法律ヲ作ルベキデアラウト思フノデアリマ
スガ、然ルニ事此ニ出デズシテ、本法ハ斯
ノ如キ惡イ〓體ガ、其團體ノ威力ヲ藉リ
或ハ斯カル〓體ヲ假装致シテ、其威力ヲ藉
リテ暴力行爲ニ及ブ場合ニ於テ、其暴力行
爲、卽チ社會ニ害毒ヲ流シタ所ノ者ヲ處罰
シナケレバナラヌト云フ本法ノ立テ方デア
リマスガ、甚ダ不十分デアリマスケレド
モ、私共ハ今日我國ノ世相ニ鑑ミテ、洵ニ
是ハ緊急必要ナルモノデアルト考ヘテ居ル
ノデアリマス、斯ノ如キ暴力行爲ハ今日
我國ノ思想界ガ產ム所ノモノデアリマシ
テ、何カト云フト或ル成力ヲ藉リ、時ト場
所トヲ考ヘナイデ暴威ヲ逞シウスル團體若
クハ個人ガ多イノデアリマス、洵ニ怪シカ
ラナイ物騒ナ世ノ中ニ相成ッテ居ルノデア
は
リマスカラ、若シ本法ニ觸ルヽ者ガアル場
合ニ於テハ裁判官タル者ハ嚴重アル處罰
ヲシナケレバナラヌト云フコトハ是ハ論ヲ
要シナイ、併ナガラ先程山口君ノ所謂附帶
決議ノ御希望ハ斯ノ如ク裁判官ガ處罰ス
ル場合ノ御希望ニハアラズシテ、本法ヲ實
際ニ運用致シテ、之ヲ檢擧スル場合ニ於テ、
適正ナル檢擧ノ仕方ヲ爲シ、本法ノ精神ヲ
蹂躪スルヤウナコトヲ爲シテハイカヌ、又
人權ヲ跤晒スルヤウナコトヲ爲シテハイカ
ヌト云フ、此警察官竝ニ檢事ニ對スル御希
望ハ私共洵ニ御尤ナ御希望デアルトシテ
賛成ヲ致スノデアリマス、併ナガラ所謂暴
力行爲ナルモノハ何處マデモ是ハ刑事政
策ノ見地カラ申シテモ、社會政策ノ見地カ
ラ申シテモ、斷々乎トシテ糾斷ヲシナケレ
バナラヌコトヽ思フノデアリマス、此意味
ニ於キマシテ、私共本案ニ賛成スルノミナ
ラズ、山口君ノ所謂此希望決議ナルモノニ
對シテハ、賛成ノ意ヲ表スルモノデアリマス、
但シ玆ニ注意スベキハ、山口君ノ所謂附
帶決議ナルモノハ吾々委員會ニ於テ現ハ
レザリシ所ノモノデアリマシテ、委員長カ
ラモ其報〓ハナカッタノデアリマス、此處デ
本會議ニ於テ、政友會ノ諸君カラ提案ニナッ
タル此附帶決議ナルモノハ所謂本案ニ贊
成ナサル所ノ希望デアルト思ヒマシテ、其
意味ニ於テ贊成ヲ致スノデアリマシテ、別
ニ特段ナル附帶ノ決議トシテ動議ヲ御提出
ニ相成ラナイノデアリマスカラ、是ハ希望
デアリマシテ、其希望ハ吾々ニ於キマシテ
モ全然贊成ヲ表スルモノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=84
-
085・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 之ニテ討論ハ終局致
シマシタ、仍テ直ニ採決ヲ致シマス、本案
ノ二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=85
-
086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=86
-
087・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=87
-
088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=88
-
089・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
暴力行爲等處罰ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=89
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090・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ三讀會ヲ省略シ、委員長報告ノ通
リ可決確定致シマシタ-次ハ日程第二
十四、王公族ノ權義ニ關スル法律案ノ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長松田源治君
第二十四王公族ノ權義ニ關スル法律
案(政府提出、貴族院送付)
第一譜會ノ續(委員長報告)
報告書
一王公族ノ權義ニ關スル法律案(政府提
出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
王公族ノ權義ニ關
スル法律案委員長
松田源治
衆議院議長粕谷義三殿
〔松田原治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=90
-
091・松田源治
○松田源治君 本案ニ付テ昨日委員會ヲ開
キ、先ヅ政府ノ要求ニ依リマシテ祕密會ト
致シマシテ、各委員ヨリ政府ニ質問シ、政
府ノ答辯ヲ得マシテ、本提案ノ正當ナル理
由ヲ諒解致シマシタ、討論ニ入ルニ先チ會
議ヲ公開致シマシテ、委員ヨリ、本案ハ王
公族ヲ優遇スル案デアッテ、委任立法ニ依ッ
テ皇室令ヲ以テ特別ノ規定ヲ爲スコトハ
適當デアルト云フ趣旨ノ議論ガアリマシ
テ各委員トモ一人ノ異議ナク、全會一致
ヲ以テ可決致シマシタ、右委員會ノ經過結
果ノ大要デアリマス、ドウカ本會ニ於デモ、
全會一致通過アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=91
-
092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 直ニ採決致シマス、
本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異識ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=92
-
093・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=93
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094・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=94
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095・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=95
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096・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
王公族ノ權義ニ關スル法律案
第二語會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=96
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097・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決確定〓シマシタ(拍手)次ニ日程第二十
五、土地賃貸價格調査法案ノ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、理事小川〓太郞君
第二十五土地賃貸價格調査法案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一土地賃貸價格調査法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
大正十五年三月二十二日
土地賃貸價格調査法案委員理事
小川〓太郞
衆議院議長粕谷義三殿
〔小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=97
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098・小川郷太郎
○小川〓太郞君 議題ニナッテ居リマス土
地賃貸價格調査法案特別委員會ノ經過及結
果ヲ報告致シマス、特別委員會ハ三日ニ亙ッ
テ開カレマシテ、其間ニ澤山ノ質問應谷ガ
アリマシタ、其詳細ナルコトハ速記錄ニ讓ッロ
テ置キマス、唯〓本案ハ稅制整理ニ關聯致
シマス重要ナル事項デアリマスカラシテ
二三質問中重要ナモノト思ヒマスモノヲ報
告シテ置キマス、地租ノ課稅標準トシテ賃
貸價格ヲ選ンダ理由如何ト云フ質問ガアリ
マシタ又其其貸價格ナルモノハ貸主ガ
公課修善費其他土地ノ維持ニ必要ナル
經費ヲ負擔スル條件ヲ以テ之ヲ貸付ケタ場
合ニ於テ、貸主ノ收得スベキ金額デアルト
云フコトニナッテ居ルガ、ソレハ純益デナ
イカラ、營業稅ト相對立スル所ノ補完稅ト
シテハ公平デナイデハナイカ、純益ト見
ルベキモノヲ調査スルト云フコトニシテハ
如何デアルカト云フ多少詰問的質問ガ盛
ニ起ッタノデアリマスガ政府ハ斯ノ如キ
賃貸價格ヲ調ベルコトガ、容易デアリ且又
之ニ依ッテ大體負擔能力ニ應ズル所ノ課稅
ヲスルコトガ出來ルト云フコトデ、强ク原
案ヲ主張セラレタノデアリマス、次ニ此賃
貸價格ヲドウ云フ方法、ドウ云フ手續ニ依ツ
テ調ベルカト云フコトニナリマシテ、政府
ノ說明シタル所ノ大要ハ、斯ノ如クデアリ
やく、各地々々ニ依ッテ調べルノデアリマ
セヌデ、各地目ニ付テ茲ニ一ツノ情況相類
似スル所ノ區域ヲ定メマシテ、其中デ標準
地ヲ選ビマシテ-標準賃貸價格ヲ調ベマ
シテ、而シテ各地ノ標準價格ヲ定メルト云
フ順序ニナルノデアリマス、唯サウニ云フ
風ニ致シマスト云フト、其標準地ノ標準貨
貸價格ト云フモノヲドウシテ調ベルカ、ド
ウ云フ風ニ稅務署ナリ政府ガ決メルカト云
フコトニ付キマシテハ是ハ政府ハ適當ニ
ソレヲ決メルト云フヨリ外ハ十分ノ根據ガ
ナカッタノデアリマスガ、其賃貸價格ガ穀物
ニ依ッテ出來テ居ルモノハ五年間ノ平均
穀物ノ價格ニ依リ、五年間ノ賃貸價格ニ依ッ
テ之ヲ決メルノデアル併シ其賃貸ニ付
セザル所ノモノハ如何ニスルカ、或ハ宅地、
或ハ山林原野、斯ウ云フモノハ非常ニ困ル
デハナイカト云フ質問ガアリマシタガ、ソレ
ニ對シマシテ政府ハ宅地ノ如キハ大體明治四
十三年ノ宅地價修正ノ例ニ依リ、或ハ其他
ノ所得ヲ調ベル方法ニ依ノテヤルト云フコ
トデアリマシタ、尙ホ此土地ノ丈量ヲ仕直
サヌト云フコトデアリマスカラシテ、今日
ノ實際ノ反別ト云フモノト、土地臺帳ニア
ル反別トハ非常ニ違フモノガアルサウ云
フモノハ大變不公平ニナリハセヌカト云フ
質問ガアリマシタガ、シレハ賃貸價格ヲ定メ
ル時分ニ於テ斟酌スルト云フコトヲ申サレ
タノデアリマス、尙ホ一體ノ賃貸價格ガ定
マッタ後ニ稅額ヲ充テ、或ハ稅率ヲ盛ルト
云フコトニ付テノ質問モアリマシタサウ
云フコトハ孰レソレガ決マッタ後ニ尙ホ法
律案ガ出ルサウデアリマスノデ其時ニ讓
ル或ハ都市ノ如キハ賃貸價格ガ非常ニ高
クナリマスカラシテ、地租ノ負擔ハ都市ニ
大半集ルコトニナリハセヌカ、ソレニ對シ
テハ緩和ノ規定ヲ必要トシナイカト云フ質
問モアリマシタガ、ンレモ他日地租條例ノ
改正法律案ガ出ル時分ニ斟的スルト云ノコ
トデアリマシタ、ソレデ討論ニ入リマシ
テ、政友會ノ山內君カラ致シマシテ、本案ハ
地租委譲ニ關聯スル所ノ案デアルカラシテ
反對ヲスルト云フ意目ルデアリマシタ、之二
對シマシテ村山君ハ原案ノ維持ヲ主張セラ
レマシタ、浦野君モ之ニ對シテ賛成ヲサレ
マシタガ、唯一ツノ希望ト致シマシテ、
土地ノ丈量ヲ行ハザレバ不公平トナルカラ
シテ、政府ハ此點ニ於テ十分ニ〓究セラレ
ンコトヲ望ムト云フコトデアリマシタ、採
決ノ結果山內君ノ反對論ハ少數否決トナ
リ、村山君ノ原案賛成ガ多數デ決マリマシ
タ浦野君ノ希望ハ條件付デハアリマセヌ
ガ故ニ別ニ決議トシテハ採リマセヌデア
リマシタガ、大體委員會ニ於キマスル空氣
ハ此希望ト云フモノガ相當デアルト云フヤ
ウナ風デアリマシタカラシテ、之ヲ附加ヘ
テ報告致シテ置キマス、此段報告ニ及ビマ
ス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=98
-
099・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ質疑
ノ通告ガアリマス、之ヲ許シマス-多木
久米次郞君
〔多木久米次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=99
-
100・多木久米次郎
○多木久米次郞君 本案ハ餘程重大ナル問
題ト私ハ存ジマス、然ルニ政府ガ是マデ負
擔ノ不平等ナルモノヲ成ベク平衡ニ致シタ
イト云フ所ノ考カラ、此調査會ヲ開クト云
フコトハ寔ニ御精神ニ於テハ私ハ雙手ヲ擧
ゲテ贊成スル所デアリマス、併ナガラ私ハ
政府ニ第一番ニ伺ヒタイコトハ是ハ地租
ヲ增スベキ目的カ、或ハ減ズベキ目的カ
又減ズルトスレバ何ヲ減ズルノガ目的カ、
或ハ增ストスレバドレヲ御增シニナル御考
デアラウ、之ヲ第一ニ私ハ伺ヒタイト思
フ、而シテ私ハ田畑租ト云フモノハ
租稅中ノ最モ大ナル惡稅中ノ惡稅ト
考ヘテ居ルノデアリマス、デアリマ
スカラ斯ウ云フモノハ食糧問題カラ申シテ
モ、亦此小作爭議ヲ緩和シマスル上カラ申
シテモ、是非是ハ全免スルコトガ最モ適當
ナリト存ズルノデアリマス殊ニ此地租ノ
如キハ-田畑租ノ如キハ極メテ彈力ノナ
イモノデアリマシテ、斯カルモノハ若シ天
變地變ガアリマスト、加何ニ「ベスト」ヲ盡
シテヤリマシテモ、迚モ此天變地變ニ對應
スルコトハ出來マセヌ、風害、水害、早害
若クハ蟲害ノ如キ防グベカラザル非常ナ
ル天變ト鬪ッテ行カナケレバナラヌ、殊ニ
日本ノ土地ノ如キハ御承知ノ通リ極メテ狹
小ナル土地デアリマシテ、如何ニ知識ガ進
歩シ機械ガ精巧ニナッテ參リマシテモ、實
際上應用スルコトハ出來ヌ譯デアル、殊ニ
日本ノ農業ト云フモノハ全ク盆栽的デアリ
マシテ、殊ニ此輸入ノ問題ニ於キマシテモ、
天候ヤラ氣候ヤラ、地質ニ依ッテ自然ニ殆
ド無代價デ出來ルヤウナ農產物ト鬪ハンナ
ラヌ位置ニ居ルモノデアリマス、併ナガラ
之ヲ保護シマスレバ日本ノ人口ガ如何ニ
增殖シテモ、自然自足ノ法ヲ得ルコトガア
ルコトヲ私ハ確信致シマス、然ルニ農商務
省ヲ割イテ而シテ農林省ガ出來タニモ拘ラ
ズ、専屬的大臣ガ我ガ農產物ノ將來ヲ殆ド悲
觀サレマシテ、自給自足ト云フモノハ食糧
問題ニ於テモ非常ニ至難ナル如ク言明サレ
ルト云フコトハ我ガ農業發達上ノ爲ニモ
洵ニ遺憾千萬ナル政府ノ御宣言ト存ジマシ
テ、實ニ遺憾ニ思シテ居ルノデアリマス、
殊ニ今回ノ關稅問題ニ付キマシテモ、米ガ
安ウナラナケレバナラヌト云フ御精神デ
アッタノカ、政府ハ米ノ五圓ヤ六圓ノ時ニ
決メラレタ關稅ノ一圓ヲ維持サレテ居ル
實際ニ於キマシテ世界的ニ物價ノ高イ折
柄又世界的ニ總テニ對シテ保護政策ヲ行
ハンケレバナラヌ場合ニ於キマシテ、關稅
稅率ヲ改正セヌト云フコトハ-稅金ヲ增
サヌト云フコトハ寔ニ此農業ヲ撲滅サスノ
策デアリマス、此ニ於テモ私ハ田畑租ト云
フモノハ無代ニセンナラヌト思フ、御承知
ノ通リ政府ハ御熱心ニ稅制整理ヲヤラレマ
シタ、而シテ此稅制整理ノ結果多少色ミノ
コトモゴザイマスケレドモ、一二ノ例ヲ舉
ゲテ申シマシテモ、酒ニ於キマシテ四千何
百万圓、煙草ニ於キマシテモ殆ド五千万圓
近イ所ノ稅金ガ上ッタ、此稅金ハ何ガ負擔ス
ルノデアリマセウカ、是ハ卽チ國民ノ六七
割ヲ占ムル所ノ農民ノ負擔、農民ノ嗜好物
ノ價ガ高クナル結果ニナル次第デアリマ
ス、米ノミヲ以テ人間ハ生キテ居ルノデハ
アリマセヌ、農民ノ求メル所ノ織物ノ如キ
モ二割ノ關稅スラモ私ハ既ニ高イト思ヒマ
シテ、政友會ニ居ル中ニ度々諸君ノ協賛ヲ
得テ建議モシタノデアリマスニ拘ラズ、殊
ニ十大會社ガ世界的ニ發展ヲ致シマシテ
既ニ三億万圓以上ノ毛織物ノ進歩發達ヲシ
テ居ル原料ヲ買フニモ、運賃ノ如キモ、
利子ノ如キモ、又保險料ノ如キモ、歐洲カ
ラ買フヨリハ三分ノ一以内デ買フコトガ出
來、極メテ便利ニナッタ、而モ加工ノ上ニハ
勞銀ガ半分以下デ加工セラレルニ拘ラズ、
ドノ會社ニ於テモ毛織物ニ於テ非常ナル暴
利ヲ爲シツヽアル狀態ニ拘ラズ、更ニ進
ンデ此二割ノ關稅ヲ二割七分ニ本會ハ決議
シテ居ル、近來ノ議案ヲ見マスト或ハ戰
爭中ノ補償トカ、或ハ軍艦ノ違約ニ付テノ
補償トカ、種々ナル名目ヲ設ケテ富豪ニ金
ヲヤルトカ、製鐵ニ金ヲヤルトカ、色〓富
豪ニ金ヲヤルト云フヤウナ法律ガ出テ居
ル、左樣ナコトデ社會政策、負擔ノ均衡ト
云フモノハドノ邊ニアルカト云フコトヲ吾
吾ハ諒解ニ甚ダ苦シンデ居ル次第デアリマ
ス而モ農民ハ米ヲ以テ酒ヲ造ルコトモ出
來ズ、濁酒スラモ造ルコトヲ禁ゼラレテ居
ル狀態デアル、煙草ヲ作ッテモ喫ムコトガ
出來ヌ農民デゴザイマス、然ルニ此田畑租
ノ如キ、天變地變、勞力ノ問題、機械ヲ應用
シ能ハズ、而モ負擔ハ重クシテ買フ所ノモ
ノハ關稅其他デ嗜好口四ノ如キハ五割モ十割
モ課稅セラレ、其債格ノ騰貢ヲ圖ラント云
フヤウナ狀態ニナンテ居ル政府ハ三千年來
ノ惡歴史ニ依シテ此彈力ノナイ所ノ田畑租ヲ、
地價調査ノ名目ノ下ニ於テ御上ゲニナル御
考デアラウカドウデアラウカ、眞ニ國本ヲ
培養シ、食糧ノ充實ヲ圖リ、自給自足ヲ爲
サントスルナラバ社會問題ノ上カラ申シ
マシテモ、負擔ノ均衡カラ申シテモ、全免
租ニスルコトガ當然デアル、殊ニ此調査ト
云フモノハ容易ナラヌ金ガ要ル全免租ニ
スレバ徵收費モ要ラヌ、面シテ農村ノ狀態
ハドウデアルカ、實ニ小作爭議ノ如キハ農
村ノ善良美風ト云フモノガ破壞サレテ、全
ク修羅ノ時代、殆ド無警察無政府ノ狀態
ニアルト云フコトハ諸君御承知ノ通リデア
ル諸君ハ又農村カラ選出サレタ所ノ議員
デアル、是等ノ議員諸君ニ向シテ吾々此農
村ノ狀態ヲ共ニ語ルト云フコトハ私ノ最モ
幸トスル所デアリマス、苟モ諸君ガ責任ヲ
負ハレルナラバ、吾々ノ下手ナ演說ヲ決シ
テ笑シテ聽ク譯ノモノデナイ、是ガ卽チ眞
理デアリマス、而モ御承知ノ通リニ今日米
ガ五六百万石足ラヌ自給自足ガ出來ナイ
ト云フコトハ勿論、政府ハ洵ニ賢明ナル大
臣ガ店ラレルニ拘ラズ、頭ノ方ノコトハ詳
シイケレドモ、足ノ方ハ一向御案内ナイ大
臣ガ多イ、農村ノ事情ヲ御水知ナイ所ノ大
臣デ居ラレルト云フコトガ、卽チ此農村ヲ
疎ンゼラレル所以デアリマス、米ノ代金ヤ
小麥ノ代金ヲ拂フコトハ少シモ惜マナクシ
テ、商品ガ少シ這入ッテ來ルト非常ニ恐ロ
シイヤウニ思フ、商品デ金ヲ拂フノモ農
產物デ金ヲ拂フノモ、金ニ變リハナイ理窟
デアル若シ此農業ガ更ニ衰微致シマシ
テ、今日スラモ三億六千有餘万ノ輸入超過
デアル、是ガ五年モ續ケバ日本ノ十四五億
圓ノ硬貨ト云フモノハ失クナル次第デアリ
マス、一昨年亞米利加カラ金ヲ借リタ、如
何ナル利子デアッタカ、實ニ世界ノ笑ヒモノ
デアル、而モ侮辱的ナ菊ノ御紋ノ這入ッタ
文ヲ書イテ、百圓ノ證支額ニ對シテ八十圓、
八十五圓ト云フヤウナ、貧乏人モ眞似ノ
出來ナイヤウナ金ヲ借リテ、一時ヲ彌縫シ
ナケレバナラヌ、而モドウデアリマスカ
財政上ニ於キマシテモ全ク中央集權デアフ
テ、緊縮々々ト云フコトデ、地方ノ生產的
ノ費用、卽チ港灣ノ如キ若クハ道路或ハ鐵
道ノ如キモ、全ク地方デハ止メテシマッテ
東京デハ黃金ノ波ヲ打ツヤウナ狀態デアル
東京ノ震火災ハ實ニ同情スベキデアルガ、
國ノ財政ハ困難デ僅カ五十億万ノ負債ノ爲
ニ利子スラ拂フコトガ出來ナイデ、政府ハ
心配シナケレバナラヌ狀態デアリナガラ、
餘リ國力不相當ナル華美ナル不生產的ナコ
トニ金ヲ掛ケテ、而モ國民ニ奢侈的精神ヲ
助長サシテ、生產的、活動的ノ精神ヲ銷磨
スル如キ政策ト云フモノハ甚ダ遺憾デア
ル私ハ決シテドノ政府ニモ反對モシナケ
レバ贊成モシナイ、善政ヲ行ヒ國利民福
ヲ增進スル所ノ政府ニ私ハ賛成スルノデア
リマス、政府ハ全知全能ノモノデナイカラ
吾々ノ下手ナ演說ヲ聽イテ大ニ參考トシ
テ、善政ノ上ニ資スルコトガ大切デアル、
之ヲ全免シテモ僅ニ六千万圓內外デアル
東京ノ二億六千万ノ金カラ五六千万引ケバ
宜イノデアル、東京ニ金ヲ置ク爲ニ刑務所
ガ繁昌シタリ、高位高官ノ人ガ自殺シタリ
豫審判事ガ忙シクテ困ルト云フ狀態デア
ル國家ノ金ヲ使フ權衡ト云フモノヲ全ク
失ッテシマッテ居ル、此東京ヲ國力以上ニ立
派ニシテ何ニスルノデアラウカ、金ヲ借リ
テ家ヲ立派ニシテドウスルノデアラウカ、
是ガ國力增進ノ本ニナルカドウカ、諸君ハ
能ク御考ニナルト宜イ、農村ノ代議士ガ何
デモカンデモ黨議ニ服從シテシマッテ、サウ
シテ心ニモナイ賛成ヲシテ、國家ノ政策ヲ
誤ラスト云フコトハ是デアルカ非デアル
カ、如何デアリマセウカ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=100
-
101・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 多木君法案ニ關係ノ
アルコトヲ御述べ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=101
-
102・多木久米次郎
○多木久米次郞君(續) 斯ウ云フ狀態デアフ
テ全ク農村ト云フモノニハ負擔ノミ掛ケ
テ、豫算ノヤリ方ト云フモノヲ全ク誤ッテ
居ル今日食糧ガ五百万石、千万石足ラヌ
デモ、內地ハ勿論朝鮮モアレバ臺灣モアル、
經營宜シキヲ得マスレバ十年、二十年ノ自
治自足ヲスルコトハ出來ルノデアリマスカ
ラ、第一番ニ私ハ此惡稅-天變地變ト聞
テ行カナケレバナラヌ、如何ナル機械力デ
モ、如何ナル發明工夫ニ致シマシテモ、天
變ニ勝ツコトハ出來ヌモノデアル殊ニ亞米
利加ノ如キ殆ド無稅同樣デアル英國亦然
リ、何ヲ芳シンデ惡稅ヲ徵收スルノデアル
カ、以テ都會ノ濫費ニ備へントスルモノデ
アラウカ、政府ハ田畑租ヲ廢スル意思アリ
ヤ否ヤ伺ヒタイ
〔政府委員黑田英雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=102
-
103・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 御尋ノ第一點ハ
今囘賃貸價格ヲ調査致シマスノハ減稅ノ目
的デアルカ、如何ト云フコトデアッタノデ
アリマス、本案ニ依リマシテ土地賃貸價格
ヲ調査致シマスルノハ卽チ今日土地ニ對
シマス課稅標準ハ、土地臺帳ニ揭ゲマシテア
ル所ノ地價デアルノデアリマスカラ、是ガ
今目負擔ノ公正ヲ得マスル上ニ於キマシテ
適當デナイト考ヘルノデアリマスカラ、其
課稅標準ヲ公正ナラシメル目的ヲ以テ、土
地ノ賃貸價格ヲ調査致スノデアリマシテ、
其賃貸價格ニ依リマシテ、今囘稅制整理ニ
依リマシテ、取リマスル所ノ地租ノ總額ヲ
動サナイ範圍ニ於テ、適當ナル稅率ヲ盛ル
考デアルノデアリマス、本案ノ目的ハ其課
稅標準ヲ調査スルノデアリマシテ地租ノ
減ズルトカ、若クハ之ヲ增收スルトカ云フ
目的ハ持タナイノデアリマス、ソレカラ第
二ノ點ハ、田畑ニ付テハ地租ヲ全免スル意思
ガナイカドウカト云フコトデアッタノデア
リマス、之ニ就テハ長ク御意見ヲ御述ニナツ
タノデアリマスガ、所得稅ノ補完稅トシテ
地租ヲ課シマスル上ニ於テ、田畑ニモ課稅
ヲ致スト云フコトハ適當デアルト考ヘテ居
ルノデアリマス、併ナガラ今囘ノ法案ニ依
リマシテ、賃貸價格ノ實際ヲ調査致シタ上
ニ於テ、土地ノ各地目ノ間ニ其負擔ノ公平
ヲ得セシメマスル爲ニハ果シテ其稅率ヲ
宅地或ハ田畑其他ノ地目ニ於テ之ヲ同一ニ
致スコトガ適當デアルカ、或ハ宅地田畑等
ノ間ニ適當ニ其稅率ニ差等ヲ設ケルコトガ
其負擔ノ公正ヲ得マスル上ニ於テ適當ナリ
ヤ否ヤト云フコトハ賃貸價格ヲ調査致シ
マシタ上ニ於テ、其負擔ノ狀況ヲ考慮致シ
マシテ、適當ナル案ヲ具シマシテ、地租條
例改正ノ際ニ於キマシテ御協賛ヲ仰グ積リ
デアルノデアリマス、今日ニ於テハマダ稅
率ヲ一律ニスルカ、或ハ其間ニ區別ヲ設ケ
ルカト云フコトハ決メテ居ラナイノデアリ
マス、併ナガラ田畑ニ付キマシテ、總テ如
何ナル田畑ヲ多ク有シテ居ル者ニ對シテ
總テ田畑ニ付テ地相ヲ免ズルト云フ考ハ
持ノテ居リマセヌ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=103
-
104・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス-八田宗吉君
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=104
-
105・八田宗吉
○八田宗吉君 本案ハ政府ガ本議會ニ於テ
最モ力說主張シタル稅制案ニ伴フ所ノ提案
デアリマシテ其趣意タルヤ負擔ノ公平ヲ
期スルト云フ點ヨリ致シマシテ、全國ノ土
地ニ對シテ賃貸價格制ヲ以テ之ヲ二箇年ニ
亙ノ一一五五百ヅヽ卽チ大正十五年
度ニ於テ五百万圓、十六年度ニ於テ五百万
圓、合計一千万圓ヲ費シテ全國ノ土地ヲ賃
貸價格ニ依ッテ賦課スベキ稅率ヲ定メント
スル所ノ大ナル企デアリマス吾々ハ此點
ニ對シマシテ、委員會ニ於テ種々調査ヲ致
シマシタガ、遺憾ナガラ其政府ノ提案ニ對
シテハ吾々ハ賛成スルコトガ出來ナイノ
デアリマス、(「ヒヤ〓〓」拍手)其理由ニ付
キマシテ簡單ニ私ハ申述ベタイト思ヒマス、
吾々多年農民ノ負擔ガ甚ダ過重デアッテ、
此負擔ノ過重ヲ公平ナラシムルニ非ザレ
バ農民ノ苦シンデ居ル狀態ヲ救フコトハ
能ハズトシテ、幾囘カ農家負擔輕減ト云フ
コトニ對スル建議案ヲ議會ニ提案致シマシ
タ每回議會ノ容ルヽ所トナリ政府亦之
ヲ容認シ、各黨各派ハ皆何レモ農村振興ト
云フ題目ノ下ニ、其政策ヲ實行スベク何レ
モ誓ヒツヽアル狀態デアルノデアリマス、
其振興タルヤ否ヤ吾々ガ多年唱ヘテ居ッタ
農民ノ負擔ガ重イ、之ヲ公平ニシナケレバ
ナラヌト云フコトガ卽チ振興デアル、斯樣
ナ點カラ出發シタル上ニ於テ、今日殊ニ此
政府ハデス、現政府ハ農民ニ對スル負擔ガ
重イ、地租二分減ヲ野ニ在ッテ主張シテ居ッ
タケレドモ、政府ニ立ッテ見レバ二分減ハ
出來ナイデ一分減ヲヤラウトシテ、今回稅制
整理案トシテ提案シタノデアリマス、卽チ
農民ノ過重ヲ輕減スベク試ミラレタル所ノ
一政策デアルニ相違ナイ、卽チ地價二百圓
以上ノ地主ニ對シテハ一分減ヲ爲スト云
フコトヲ政策ノ一ニ揭ゲテ、稅制整理案ヲ
提案シタノデアリマス、然ルニ妥協政治玆
ニ現レ、此一分減モ終ニ撤回サルヽニ至リ
マシテ、一分減ノ財源ヲ以テ〓育費國庫負
擔金ノ增額ニ充テルト云フコトニナッテ參ノ
タ、其趣意タルヤ決シテ惡イトハ致シマセ
ヌガ、吾々ガ多年唱ヘテ居フタ農民ノ負擔
過重ナリト云フ點カラ考ヘマスト吾々ハ
甚ダ政府ノ取扱ガ不公平デアルト云フコト
ヲ斷言セザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)
何ヲ以テ爾カ云フカ、政府ノ地租一分減案
トシテ、今囘此費目ノ計數ガ九百五十万圓
ヲ農民カラ滅ラサント試ミタノデアル之
ヲ見合セマシタガ爲ニ、最初カラ二千一百
万圓ヲ減ラサントシタノデアリマス、地價
二百圓以下ノ自作農等ヲ免除スベク金額ヲ
合セテ二千一百万圓ヲ農民ノ負擔カラ輕減
スル、然ル以上ハ漸ク商工業者ニ對シテ稍ミ
對等トナッテ來ルト云フコトヲ政府ハ認
メタノデアリマス、何ヲ以テ爾カ云フ、大
正十二年度ノ營業稅ニ於テハ一千九百万圓
ヲ此營業稅ニ於テ減ラシテ居ル面シテ今
囘ノ改正案ニ於テハ四百万圓ヲ減ラシタノ
デアリマスカラ、二千三百万圓ヲ商工業者ハ
負擔ヲ輕減サレタ譯デアル地祖一分減ヲ
試ミレバ初メテ二千一百万圓ニナルカラ、
ソレデ、稍と二千三百万圓ニ對スル二千一
百万圓、斯樣ニ政府ノ試ミラレタモノハ
稍〓公平ニ近キモノデアッタノヲ、妥協政
治茲ニ行ハレテ、農業者ノ負擔ト云フモノ
ハ僅ニ一千万圓シカ減ラサレナイカラ、玆
ニ益〓商工業者ト農業者トノ間ノ負擔ガ不
公平極マリナイト云フコトニナッテ妥協
政治ノ致ス所、農民ハ過重ナル負擔ヲ帶ビ
ルヤウニ至ッタ所以デアル(拍手)故ニ農民
ノ方ノ負擔ヲ重クシテ、一般商工業者ノ負
擔ヲシテ輕減セシムル結果ヲ來シタコトハ、
能ク攻究シ來レバ是レ卽チ農民ノ負擔過
重ナル狀態ニナッテ來ルコトヲ吾々ハ憐マ
ザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)政府ハ斯
樣ナ點ニ付テ非常ニ苦心ノ存スル所ガアツ
タコトヲ聞クノデアリマスルガ、其主張ヲ
抛棄シタノデアル而モ吾々東北出身ノ者
ハ顧ミテ此地價修正問題ニ付テハ感慨無量
ナモノガアルノデアリマス、國會開設以來
吾々東北方面カラ出身シタル所ノ代議士
ハ政府ニ向シテ二十三年以來地價ノ修正
ヲ幾度カ要望シタカ知レナイ、吾々東北ノ
者ハ實ニ此地價ノ上ニ於テ非常ナ不公平ナ
ル藩閥政治ノ下ニ、過去五十年間大ナル負擔
ヲ爲サシメラレツヽアッタノデアリマス(拍
手)私ハ我ガ福島縣下ノ例ヲ申シマシテモ、
福島縣ハ田地ガ二十八圓デアリマス、畑ガ
十圓デアリマス是ガ平均額、然ルニ鹿兒
島縣ハ-私ハ今ニナッテ斯ウ云フコトヲ
申スノハ甚ダ殘念ニ感ジマスケレドモ、是
ハ矢張社會ノ爲ニ明ニシナケレバナラヌ
カラ申上ゲマスガ、福島縣ハ二毛作ノ出來
ナイ田地デアル、秋ニナレバ早クモ雪來リ、、
氣候寒冷ニシテ凶作來ヲ唱ヘザルベカラ
ザル所ノ憐レナル田地デアル然ルニ此田
地ガ二十八圓スル時ニ當。シテ鹿兒島縣ノ二
毛作ノ出來ル田地グ一一十四圓ト二十錢デア
ルサウシテ山口縣ガ二十五圓デ、畑ニ至ノ
テハドウデアルカト申シマスト云フト福
島縣ハ先程申シタ通リ十圓十七錢デアル
然ルニ鹿兒島縣ノ如キハ四圓二十二錢、福
島縣ノ三分ノ一シカ納メナイ、山口縣ガ三
圓三十八錢、高知縣ガ二圓五十六錢、殆ド
此三分ノ一シカ幸福ナル土地ニ居テ稅金ヲ
納メルコトガ少イト云フヤウナ狀況ニナッ
テ居ル薩長藩閥、卽チ薩長土肥デス、私
ハ露骨ニ申ス斯樣ナコトニナッテ居リマ
シタカラ東北民ハ非常ナ不平ヲ感ジテ、議
會ニ此地價修正ハ一日モ早ク爲サナケレバ
ナラヌ、東北ノ振ハザルコト久シイノハ
此過重ナル負擔ニ東北ノ人民ガ苦ンデ居シ
タカラデアルカラ、此負擔ヲ輕減スル爲ニ
地價ノ修正ヲセヨト云フコトヲ、此壇上ニ
幾度吾々ノ先輩ガ叫ンダカ知レナイノデア
ル、然ルニ何時モ時ノ政府ハ是ハ非常ニ金
ガ掛カルト云フコトヲ辭柄トシ、全國ニ亙ッ
テ之ヲヤレバ幾年掛カルカモ知レナイ、サ
ウシテ金ハ掛カル幾年掛カルカモ知ラナ
イカラ諸君諦ムベシト宣明シテ居クタノデ
アリマスガ、東北民ノ實ニ忍ブコト能ハザ
ル所デアッタノデアル、過去ノコトヲ考へ
ルト實ニ悲哀ニ堪ヘナイ(拍手)諸君、斯樣
ナコトヲ考ヘル時ニ、政府ガ英斷ヲ以テ不
平均ヲ均一ナラシムル爲ニ、全國ヲ統一シ
タル課稅標準ノ下ニ、賃貸價格制ニ依ル地
價修正ヲセラレルコトハ公平ナル政治ヲ
實施セントスルノデ、現內閣ノ政策トシテ
ハ吾々ハ大ニ謳歌セントスル者デアリマス
ケレドモ、奈何セン過去ニ於テ政府ガ議會
ニ於テ聲明シタル事ハ實際ニ當ッテハ机
上ノ言論ハ免モ角、政府ノ言フ所ハ机上ノ
空論ト思フ、實地ニ臨ンデ之ヲヤウラトス
レイ、日ニ々々變ル地價ノ價額ト云フモノ
ハ交通機關ノ完備、文化ノ發達ニ伴レテ
非常ニ變ハルモノデアル單リ賃貸憤格ニ
依シテ制定セントシテモ、而モ十年ノ後マ
デ据置クト云フナラバ、負擔ノ不公平ナル
コトヲ覺シテ、人民ハ課税ノ不公平ヲ叫ンデ
來ルト云フコトニナッテ來ル、由來日本國
民ハ土地ニ對シテハ殊ニ愛者心力强クアフ
テ、土地ニ對シテ稅金ヲ納ムルコトヲ忠義
ノツト考ヘ良民ト考ヘテ居ッ夕我ガ
日本國民ハ斯樣ナコトニ付テ不平ヲ訴フ
ルト云フコトハ從來ハ少カッタケレドモ、
段々後日其眞相ガ明ニナッテ來ル、此權利
義務ノ思想ガ濃厚ニナリツヽアル今日、況
ヤ社會思想ガ惡化セントシツヽアル今日、
況ヤ小作爭議ガ各所ニ頻發シツヽアル現在
ノ狀態-殊ニ色ミナ宣傳ニ依ヶテ勞働者
ガ相呼號呼應シテ、此不公平ヲ叫ンデ來ル
ト云フヤウナ時機ニ當。ラ到底十年据置
クト云フコトハ机上ノ空論デアルソレコ
ン年額五百万圓、二年デ一千万圓ヲ使シテ
モ、結局ハ伊太利ト同ジ結果ニ陷ルコトヲ
憂フル者デアリマス、私ハ伊太利ノ例ヲ、
縣農會ガ調査シマシタル例ヲ申シマス伊
太利ハ嘗テ日本ト丁度今回ノト同ジヤウナ
事ヲシタコトガアッタ、此一說ヲ讀ンデ御
〓聽ヲ願ヒタイト思ヒマス「伊太利ハ王國
ノ統一當時統一的地租法ヲ制定スルコト困
難ナリシヲ以テ、從來各州ニ於テ徵收セル
地租ノ合計額ヲ各州ノ徵收額ニ應ジテ配賦
スルガ如キ不徹底ナル方法ヲ採用セリ此
稅法ハ千八百九十六年ノ法律ニ依リテ廢
止サレ、之レニ代ルニ全國ヲ通ジテ土地臺
帳ヲ定メ一定ノ稅率ニヨリテ課稅スルノ制
度ヲ以テセリ、然レドモ新法實施ニ要スル
臺帳調製事業ハ遲々トシテ進マス、遂ニ千九
百十九年所得稅法大改正ニヨリ地祖ハ所得
稅中ニ包含セラルヽニ至レリ」地租ハ取ラ
ナクナッタ、斯ウ云フ風ニナッテシマッタノ
ハ伊太利ノ例デアリマス、賃貸價格ノ如キ嘗
テ宅地價修正ニ付テ試ミタ所ノー又全國
ノ市街地、其他田畑山林ヲモ一律ニ定率法。
ニ依ッテ定メルト云フヤウナ企ハ言フベク
シテ行ハレザル伊太利ノ如キ例トナッテ
又遂ニハ之ヲ地方々々ニ依ッテ取ラシムル
ヤウナ方法ニナッテ來ルヨリ仕方ガナイト
私ハ考ヘルノデアリマス、先ヅ私ハ伊太利
ノ例ヲ舉ゲマシタガ、全體ノ今回ノ政府提
案ニ付テ不備ナ點ヲ申述ベテ、サウシテ吾々
ハドウシテモ斯樣ナ案ニ賛成ガ出來ナイト
云フ理由ノ一端ニ供シタイト思フ、卽チ今
囘ノ法律案中ニ標準價格ト云フコトヲ言ウ
テ居リマス、或ル地目ニ對シテ標準價格ヲ定
メテ、ンレニ依ッテ其地目ヲ一律ニ律スル
ト云フヤウナ方法デアルト云フコトヲ、此
法律ノ第三條ニ規定シテ居リマスルガ、其
標準土地ト云フコトハ中ミ實地ニ臨ンデ
明確ニ決メ得ナイノデアル明確ニ之ヲ標
準價格ノ土地デアルト選ブコトハ中と困難
デアル殊ニ山林デアルトカ、原野デアル
トカ云フモノニナリマスト、殊ニ此標準價
格ノ土地ヲ定メルト云フコトハ困難デア
ル實地是ハ農村ニ生活シテ居ル者ノ直グ
ニ肯ク所ノコトデアリマス(拍手)
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
此山ハ澤山ノ木ガ生ヘル、此處ニハ生ヘナ
イト云フ色こナコトヲ見定メルニハ殊ニ
原野ノ方ガムヅカシイ、ソレヲ定メルト云
フコトハ到底出來ナイ、斯樣ナコトニ對シ
テ力瘤ヲ八シ政府今回ノ法律ハ宅地價ト
云フモノノ修正ヲ試ミタ時ニ當ッテ、宅地
價ノ如キハチヤント地目ガ決ッテ居ル、ソ
レニ依ッテ定メタノト、山林ノ如キ漠タル
土地ニ對スル賃貸標準土地ノ價格ノ標
準ヲ決メルト云フヤウナコトヲ致スコトハ、
到底困難ナ事デアルト云フコトヲ私ハ確信
シテ疑ハヌノデアリマス、ソレカラ今回ノ
賃貸價格ノ定メ方ニ付キマシテ先程來申シ
マシタヤウニ地租ト營業稅ト云フモノハ
補完稅デアル、所得税ヲ中樞ト爲シテ、此
兩稅ヲ以テ政府ハ補完稅ト爲サラント致サ
レツヽアルノ卽チ政府ノ政策ノ一例
デアル然ルニ今囘ノ賃貸價格ヲ定ムルニ
富,テ經費ヲ差引カナイ、地租ニ對シテハ
經費ヲ差引カナイデ賃貸價格ヲ定ムルノ
デアリマス、營業稅卽チ營業收益稅ハ經
費ヲ差引イテサウシテ定メルノデアリマ
ス、一方ノ地租ニ對シテハ經費ヲ差引カズ、
營業收益稅卽チ商工業者ノ納メル稅ニ對シ
テハ經費ヲ差引クト云フヤウナコトニナ
リマスルコトハ甚ダ不公平極マル課稅ノ
方法デアルト考ヘル(拍手)斯樣ナコトモ一
度地方民ガ知リマシタナラバ誰ガ今回ノ
賃貸價格ニ滿足シテ稅金ヲ拂ハウトスル者
デアリマセウカ、私ハ實ニ不安心主仲ニ感
ズル者デアリマスソレカラ又段別ノ整理
ヲ臺帳面ニ於テ整理シナカッタナラバ、是
ハ到底行ハレナイ、又地目ノ變換ヲ明ニセ
ラレナカッタナラバ、是ハ到底賃貸價格ヲ定
メルコトハ出來ナナイト思フ、現ニ東京ニ
來ッテ私共ノ驚キマスコトハ東京市中ニ
山ノアルコトデアル、出ノアルコトデアル、
東京ノ市中ニハ山モ田モナイニ拘ラズ、臺
帳面ニ當ノテ見ルト山ガ澤山アリ田ガアル、
或ル富豪ノ庭園ハ山トナッテ居リ、或ル富豪
ノ土地ハ宅地デアルニ拘ラズ田トナッテ居
ル、泉水ガ池沼ニナッテ居ル、斯樣ナ地所ガ
澤山アル斯樣ナ地目ヲ先ヅ改メナケレバ
ナラヌ、段別モサウデアリマス、山ノ如キ
ニナッテ來マスト臺帳面デハ十町歩デアリ
マス、實測致シテ見マスト往々ニシテ五十
町歩、百町步ト云フ所ガアルト云フコトハ
事實デアリマス、斯樣ナ地目ヲ變更スルコ
トガ必要デアル、地目變換ニ對シテンレモ
爲サズシテ、其費用モ計上シテ置カナイト
云フコトハ、又臺帳面積ヲ直スベキ段別ノ
更生ヲ爲サナイデ以テ、單ニ賃貸價格ヲ以
テ田畑、宅地、皆一律ニ律セント云フコト
ハ私ハ不可能ノ事ト信ジテ、政府ノ爲ニ
惜ムノデアリマス(拍手)ソレカラ政府ガ言
フガ如ク十年之ヲ据置クト云フコトハ全
ク是ハ別ノ課稅ノ標準ノ上ニ於テ、人民ノ
権利ヲ沒却シタル所ノ亂暴ナル政治ノ致方
ト申サナケレバナラヌ、營業稅ノ如キハ年
年營業稅調査委員ヲ定メテ、サウシテ之ヲ
爲サシテ營業稅、所得稅ヲ得テ居ル、地租
ノミ賃貸價格ニ依シテ十年間モ据置イテ、之
ヲ尙ホ動カサヌト試ミルモノヽ如キハ-
方ニ片手落ナル不公平ナル政治ヲ、敢テ農
民ニ擬セントスル所ノ政府ノ致方デアルト
私ハ考ヘル者デアリマス(拍手)斯樣ニ考ヘ
來リマスト、今囘ノ賃貸價格ノ定方ハ到底
出來得ザルコトヲ、非常ニ簡易ナル所ノ宅地
價修正當時ノ明治四十三年ニ試ミタルコト
ヲ以テ、直ニ之ヲ今回當嵌メントスル次第
デ、暴政モ亦甚シイ、私ハ斯樣ナ事ハ速ニ
御撤回ニナッテ、サウシテ斯樣ナ事ハ改メ
ラレンコーヲ希望スル者デアリマスガ、吾
吾ハ窮極スルニ、各國ノ稅制ヲ調ベテ見マ
シテ七、土地ニ對シテ稅金ト一云フモノハ多
クハ國ガ取ラナイ、是ハ私此ニ在ル所ノ租
稅ノ知識ト云フ書物、卽チ法學士ノ藤澤弘
氏ガ著シタノヲ見マシテモ能ク分リマス
ガ、各國ハ稅金ヲ取ラナイヤウニ-地租
ニ對スル税金ハ色こ變ッテ參ル、何處デモ
地租ヲ取ラヌ、或ハ地租ヲ納メナケレバ人
民ガ愛國心ヲ失ウテ來ルヤウニナルト云フ
ヤウナ解釋ヲ致シテ居ル所ノモノハ私
實ニ怪シカラヌ事デアルト思フ、斯ウ云フ
ヤウナ人民ヲ愚ニシテ、斯樣ナ制度ヲ布カ
ントスルナラバサウ云フ人ヲ私ハ憎ンデ
且ツ政界カラ驅逐シナケレバナラヌト考へ
ル(拍手)此農民ノ爲ニ深ク私ハ惜ム者デア
リマス、是ハ私詳シク申上ゲマセヌデモ宜
シイガ、御參考ノ爲ニ讀ンデモ宜シイ、縣
農會トシテ調ベタル調査書ヲ讀ンデモ宜シ
イガ、煩雜デアルカラ申シマセヌ、ソレヨ
リハ此方ノ方ガ簡單デアリマスカラ書物
ニ書イタ所ヲ此際申シ夕方ガ明カデアルト
考ヘル、私ガ調査シタノヲ稅制委員會ニテ
申上ゲタラ、荒唐無稽ノ事ヲ論議スルガ如
ク言ハレタ方モアルケレドモ、實ハ非常ナ
金ヲ費シテ某縣農會ガ調查シタ所ノ材料デ
アッタノデアル、此書物ハ卽チ租稅ノ知識
藤澤氏著「英國ニ於テハ特ニ地租ノ名義ニ於
ケル課稅ヲ存シナイ、若シ夫レ其ノ實質ニ
於テ我國ノ地租ニ相當スルト認メラルヽモノ
ヲ需ムレバ、卽チ所得稅ニ於ケル第一種-
土地所得ヨリ生ズル所得及第二種-
土地ノ農業的利用ヨリ生ズル所得-ノ各
所得ニ對スル課稅ヲ以テスルコトガ出來
ル佛國ノ地租ハ舊時ノ租稅制度ニ於テハ
所謂四大老稅ノ一トシテ革命以來ノ古キ沿
革ヲ有シ、而シテ其ノ課稅法ハ土地臺帳ニ
記載シタル土地ノ收益ヲ課稅ノ標準トスル
配賦稅デアッタガ、一九〇七年及一九一四
年ノ改正ニ依テ課稅標準ハ土地ノ普通ノ賃
貸收益ヨリ其ノ五分ノ一ヲ控除シタルモノ
ニ依リ之ヲ定率稅ニ改メタ、然ルニ一九一
七年ニ於テ分類所得稅ヲ制定スルト共ニ卽
チ從來ノ地租制ハ當然ニ廢止ニナッタ」伊太
利ノ事ハ先程申述ベマシタカラ申上ゲマセ
ヌ、獨逸及米國ニ於テハ從來ヨリ一般的ナ
ル地祖ノ制定ヲ有シナイ、獨逸ノ各聯邦特
ニ普國ニ於テハ夙ニ地租ノ制度ヲ有シ
テ居ッタノデアリマスガ、千八百九十
三年ニ於テ之ヲ地方公共團體ノ財源ニ
委譲シタ、亞米利加ニ於テハ収テ居ラナ
イ獨逸ハ地方ニ委讓シテ居ル年
年是ハ人民ノ租稅觀念ガ發達スルニ伴レマ
シテ、不平公ナル稅金ヲ出スト云フコトハ、
誰モ喜ンデ出ス者ハアリマセヌ、年々之ヲ
改メサス方法ヲ取ッテ行カナケレバナラヌ、
課稅ノ標準、經濟事情、生產狀態等皆各地
各様ニ異ナル故ヲ以テ、ドウシテモ各地方
各町村每ニ年々決定スルト云フヤウニナラ
ナケレバ、到底公平ニハナラナイ、ソレハ
「プロシヤ」ガ町村ニ地租ヲ委讓シタ理由書
ニモアリマスガ、煩雜ヲ避ケ此際私ハ申シ
マセヌガ、實際全國的ニ統一シタル地租制
度ヲ行シテ見テモ行ヘナイ、是ハ宜シク地
方ニ委譲シテ地方ノ財源ニ宛テ、地方ニ於
テ今日ノ戶數割ノ如ク會議ノ上決定シ、此
煩雜ナル手數ヲ國家ハ免レテ、サウシテ地
方ノ自治團體ノ資源ニ供スルコトヲ以テ、
最モ進步シタル政治ノ致方デアルト私ハ信
ズル(「ヒヤ〓〓」拍手)之ヲ以テ我ガ日本國
ガ新ニ試ミル所ノ-政友會ガ如何ニモ國
體ヲ破壞セントスルガ如キ言動ヲ爲シテ、
稅源ガ無イノニドウデアルトカ、財源ガ無
イノニ徒ニ地方人民ヲ愚ニスルモノデアル
ト宣傳スル人ガアルケレドモ、是ハ私ハ能
ク各國ノ租稅制度ト對照シテ然ル後ニ言フ
ベキデアルト思フ(拍手)唯〓昔カラ農民ハ
稅金ヲ出スガ當然デアルト、斯樣ニ農民ヲ
愚ニシタル傳統的ノ政治ヲ致ス所ノ因習ニ
囚ハレタル人ノ說デアルト思フ(拍手)私ハ
農民ノ爲ニ看過スルコトハ出來ナイ、斯樣
ニ私ハ考ヘテ居ル、各國ノ地租ヲ調ベテ見
ルト、前申シタル通リデアル實際踏込ン
デ地方ノ財源ガ如何ニ枯渇シテ居ルカト云
フコトヲ考ヘテ見マシタナラバ、先日誰カ
ハ「プロシヤ」ガ地租ヲ取ルヤウニシタト言
ハレタガ、地租ヲ取ルヤウニナッタカモ知レ
ナイ、卽チ賠償金ヲ出スガ爲ニ國難ニ際會
シタカラ地租ヲ委譲シテ居ッタモノヲ、二三
年前ニ之ヲ課稅スルコトニナッタカモ知レナ
イ、斯樣ナ國家ノ大難ニ方ッテハ玆ニ卽チ伸
縮自在ナル地租デアルカラ、中央ニ取ルカ
モ知ラヌガ、、平生ハ地方ノ財源ヲ養フ爲ニ、
之ヲ地方ニ移シテ置クガ當然デアル是八
如何ニ〓究シテモ之ヲ地方ニ委讓スルニ
非ザレバ今日地方ヲ救フコトハ出來ズ、
不公平ナル政治ヲ公平ナラシムルコトハ出
來ナイ(拍手)農村振興策トハ何ゾ、不公平ナ
ルコトヲ公平ニスルコトデアル、東北振興
トハ何ゾ東北振興ヲ論ズルコトハ甚ダ私
ハ殘念ニ感ズル從來不公平ナル取扱ヲ受
ケテ居ッタカラ、之ヲ公平ニサスノガ振興
ノ意味デアルト私ハ多年殘念ニ感ジテ居ル
(拍手)斯樣ナ意味カラ致シテ、私ハ地租委
讓ヲ爲サズシテ、今日ノ地方ヲ救フコトハ
出來ナイ、地租委讓ヲ爲サズシテ農村ノ困
憊ヲ救フコトハ出來ナイト確信致シマス
斯樣ナ無益ナル國費ヲ投ジテ、出來得ザル
所ノ法案ヲ實行セントスル政府ノ政策ニ對
シテハ賛成スルコトノ出來ナイモノデア
ルト云フコトヲ特ニ表明致シマシテ、本案
ニ反對スル者デアリマス、何卒諸君ノ御賞
成ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=105
-
106・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 討論ハ終局致シ
マシタ、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス、第二讀會ヲ開クニ賛成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕
〔「反對」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=106
-
107・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 多數デアリマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=107
-
108・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」「反對」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=109
-
110・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 反對ノ聲ガアリ
マス、仍テ起立ニ依シテ採決致シマス、井本
君ノ動議ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 起立多數デアリ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、直ニ第
二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
土地賃貸價格調査法案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=111
-
112・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 別ニ御發議ガナ
イヤウデアリマスカラ、第三讀會ヲ省略シ
テ、委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ
日程第六、獸醫師法案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス、高田政府委員
第六獸醫師法案(政府提出、貴族院
送付)第一讀會
獸醫師法案
(小字及-ハ貴族院修正)
獸醫師法
第一條獸醫師タラムトスル者ハ農林大
臣ノ免許ヲ受ケ獸醫師名簿ニ發錄ヲ受
クヘシ
獸醫師ノ免許ヲ受クルニハ左ノ各號ノ
一ニ該當スル資格ヲ有スルコトヲ要ス
大學令ニ依ル大學ニ於テ獸醫學ヲ
修メ學士ト稱スルコトヲ得ル者、東
京帝國大學農學部獸醫學實科ヲ卒業
シタル者又ハ官立公立ノ專門學校若
ハ文部大臣カ之ト同等以上ト認メ指
定シタル學校ニ於テ獸醫學ヲ修メ之
ヲ卒業シタル者
二獸醫師試驗ニ合格シタル者
三外國ノ獸醫學校ヲ卒業シ又ハ外國
ニ於テ獸醫師ノ免許ヲ受ケタル者ニ
シテ命令ノ規定ニ該當スル者
第一項ノ登錄及前項第二號ノ獸醫師試
驗ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條農林大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當
スル者ニ對シテハ獸醫師ノ免許ヲ爲ス
コトヲ得ス
ー六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處
セラレタル者
二未成年者、禁治產者又ハ準禁治產
者
三精神病者、聾者、啞者又ハ盲者
第三條農林大臣ハ左ノ各號ノ一ニ該當
スル者ニ對シテハ獸醫師ノ免許ヲ爲サ
サルコトヲ得
-六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處
セラレタル者
二獸醫事ニ關シ罰金ノ刑ニ處セラレ
又ハ不正ノ行爲アリタル者
第四條獸醫師ハ自ラ診察セスシテ診斷
書、處方箋ヲ交付シ若ハ治療ヲ爲シ又
ハ檢案セスシテ檢案書若ハ死產證書ヲ
交付スルコトヲ得ス但シ診療中斃死シ
タル場合ニ交付スル斃死診斷書ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラス
第五條開業ノ獸醫師ハ診察又ハ治療ノ
需アル場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ
之ヲ拒ムコトヲ得ス
獸醫師ハ法令ノ規定ニ依リ必要アル者
ニ正當ノ事由ナクシテ診斷書、檢案書
又ハ死產證書ノ交付ヲ拒ムコトヲ得ス
第六條獸醫師ハ診療薄ヲ備へ三年間之
ヲ保存スヘシ
第七條獸醫師ハ何等ノ方法ヲ以テスル
ヲ問ハス業務上學位、稱號及專門科名
ヲ除クノ外其ノ技能、療法又ハ經歷ニ
關スル廣告ヲ爲スコトヲ得ス
第八條獸醫師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
道府縣獸醫師會ヲ設立スヘシ
道府縣獸醫師會ハ日本獸醫師會ヲ設立
スルコトヲ得
道府縣獸醫師會ハ日本獸醫師會ノ會員
トス
道府縣獸醫師會及日本獸醫師會ハ法人
トス勅令ノ定ムル所ニ依リ獸醫事衞生
ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
道府縣獸醫師會ハ道府縣ヲ、日本獸醫
師會ハ內地ヲ區域トス
第九條道府縣獸醫師會及日本獸醫師會
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ會員ヨリ徵收
スヘキ收入ニ關シ民事訴訟ヲ提起スル
コトヲ得
第十條本法ニ規定スルモノノ外道府縣
獸醫師會及日本獸醫師會ニ關シ必要ナ
ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條獸醫師第二條各號ノ一ニ該當
スルトキハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消
スヘシ
獸醫師第三條各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ農林大臣ハ其ノ免許ヲ取消シ又ハ期
間ヲ定メテ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ
得
前二項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖第
二條第二號又ハ第三號ノ原因止ミタル
トキ又ハ改悛ノ情顯著ナルトキハ再免
許ヲ爲スコトヲ得
農林大臣第二項ノ處分ヲ行フ場合及改
悛ノ情顯著ナル者ニ對シ前項ノ再免許
ヲ爲ス場合ニ於テハ中央衞生會ノ審議
ヲ經ルコトヲ要ス
第十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
獸醫師ノ免許ヲ受ケスシテ其ノ業
務ヲ爲シタル者
二業務停止中ノ獸醫師ニシテ其ノ業
務ヲ爲シタル者
三第四條又ハ第七條ノ規定ニ違反シ
タル者
第十三條第五條又ハ第六條ノ規定ニ違
反シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料
ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
獸醫免許規則ハ之ヲ廢止ス
本法施行前獸醫免狀ヲ受ケタル者ハ本法
ニ依リ獸醫師ノ免許ヲ受ケ獸醫師名簿ニ
登錄ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ該當スル者ニ付テハ未成年
者タルノ故ヲ以テ其ノ免許ヲ取消スコト
乙酸)、
本法施行前交付シタル獸醫假免狀ハ本法
施行後ト雖仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ假免狀ノ有效期間ハ申請ニ依リ之
ヲ更新スルコトヲ得
本法ノ規定ハ獸醫假免狀ヲ受ケタル者ニ
付之ヲ準用ス
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ獸醫免狀
ヲ受クル資格ヲ有スル者及本法施行後
十二
八年内ニ從前ノ規定ニ依ル獸醫免狀ヲ受
クル格格ヲ得タル者ハ第一條第二項ノ規
定ニ拘ラス獸醫師ノ免許ヲ受クルコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ未成年者タルコトヲ
妨ケス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六
號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレタル者
ハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ、同法
ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ六年未滿
ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ト
看做ス
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=112
-
113・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 提案ノ理由ヲ極
メテ簡單ニ說明致シマス、獸醫師ニ關スル
現行法律タル獸醫免許規則ハ明治二十三
年ノ制定ニ係ッテ居リマス、故ニ畜產界ノ
發達ニ伴ハナイ點ガ多々ゴザイマスカラシ
テ其改正ノ要望ハ去ル五十議會ニ於キマ
シテ、請願トシテ或ハ建議トシテ本院ニ現
レタノデゴザイマス、其請願及建議ノ趣旨
ニ依リマシテ、今回獸醫師法ヲ制定致サン
トスルノデゴザイマス、改正ノ第一點
ハ現行法ニ於テハ獸醫師ノ免許資格ハ農
業學校程度ニ依ル獸醫學ヲ卒業シタ者ニ、
免許資格ヲ與ヘタノデゴザイマスガ、我ガ
畜產界ノ現況竝ニ獸醫學ノ進步ニ鑑ミマシ
テ専門學校卒業程度ニ改メルノ必要アル
ノデゴザイマス、獸醫師ノ向上ト其衞生ノ
發達ヲ圖ラントスル爲ニハ獸醫師ノ團體
的活動ヲ俟ツ所ガ極メテ大ナルモノガアル
ノデゴザイマス、故ニ獸醫師會ヲ設ケシム
ルノ必要ガアルノデアリマス、仍テ是等ノ
事項ニ關スル規定ヲ設ケマシテ、獸疫衞生
ノ改良發達ヲ圖リ、以テ我ガ畜產業ノ振興
ニ資セントシテ玆ニ法律案ヲ提出シタノデ
ゴザイマス、本案ニ對シマシテ貴族院ニ於
キマシテ、政府原案ニ對シ、第四條及附則
ノ第八項ニ修正ヲ加へタノデゴザイマス、
サリナガラ此修正ハ何レモ本案ノ改正ノ根
本ニ觸レテ居ルモノデハゴザイマセヌカ
ラ、政府ハ此修正ヲ以テ大體支障ナキモノ
ト看做シテ居ルノデゴザイマス、以上ノ通
リデゴザイマスカラ、御審議ノ上ニ速ニ協
贊ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=113
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114・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス-高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=114
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115・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 此獸醫師法案ハ四五日前
カラ日程ニ上ッタガ、其儘棚曝シニナッタ法
案デアリマス、而シテ時刻モ既ニ六時三十
分ヲ過ギ、吾々ハ空腹ヲ感ジテ居ルノデア
リマス、然ルニモ拘ラズ斯ノ如キ畜產發展
上ニ於テ大ナル效果ノアルト云フ重大ナル
法案ガ、突如トシテ玆ニ現ハレテ來ルト云
フコトハ吾々ハ不可思議ニ感ズルノデアリ
マス、而シテ吾々ハ御水知置キノ通リ、各
派ニハ議事係ト云フソレ〓〓ノ機關ガアツ
テドノ法案ガ日程ニ上リ、ドノ議案ガ議
題ニ供セラルヽト云フ順序ガ定メラルヽ
本日ハ此程度ヲ以テ打切ルトカ、色ニナ打
合セガアッタト云フコトハ諸君ガ分ッテ居ル
通リデアル、今日ハ此法案ガ日程ニ上ラヌ
ト云フノデ、吾々モ其積リデ居ッタノデア
リマス、然ルニモ拘ラズ、何等打合セモナ
クシテ、突如トシテ斯ル重大ナル法案ガ玆
ニ現ハレルト云フコトハ吾々ハ不思議ニ
堪ヘナイ、諸君ハ或ハ政府當局者ニ於テモ、
又議事ヲ進行スル方面ノ人〓ニ於テモ、農
事上ノ諸法案ト云フモノハ一向注意ヲ惹
イテ居ナイヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、重大視シテ居ラヌヤウナ模樣ガアルヤ
ウニ吾々ハ感ジテ居ル、吾々農村ニ生活ス
ル者ニ於テ、殊ニ農事ハ國家ノ大事ナリト
考ヘテ居ル者ニ在ッテハ、遺憾ヲ禁ジ能ハヌ
ノデアリマス、斯ノ如ク致シテ政府ハ果シ
テ國務ニ澁滯ヲ來サミルヤ否ヤト云フコト
ヲ、私ハ責任アル國務大臣ニ問ハントスル
者デアリマス、本日ナドモ色〓重要ナル法
案ガ日程ニ載シテ居ルニモ拘ラズ、之ヲ審議
スルコトヲ爲サズシテ、徒ニ何ノ何某ノ懲
罰事犯ヲ本日日程ニ上ポストカ何トカ言ン
テ、懲罰事犯バカリ大切ニ思シテ、法律案ヤ
其他ノ建議案等ハ眼中ニ無イヤウニ考ヘラ
レルノデアリマス斯ノ如キコトガ國務ヲ
進行スル上ニ於テ、政府ハ遺憾ナリト思ハ
ナイカ、或ハ又議員ノ多數ガ、提出シヤウ
ト致シテ日程ノ變更等ヲ求メタ法案ニ對シ
テハ突如トシテソレヲ遮ギルヤウナコト
ヲ爲サルト云フヤウナコトハ、私ハ議長ニ
モ遺憾ノ點ガアルノデハナイカト思ハレル
ノデアリマス、左樣デアリマスルガ故ニ、
私ハ此法案ハ成ベク簡單ニ之ヲ質問ヲ致シ
タイト思ッテ居ッタノデアリマスケレドモ、諸
君ハ農事上ノ事、殊ニ畜產上ノ事ハ餘リニ
輕ク取扱ハレルモノデナイカト思フ、ソレ
ガ故ニ少シク丁寧ニ質問ヲ致シタイト斯樣
ニ考ヘル、畜產ガ如何ニ國家ニ必要ナルカ
ト云フ所以ヲ明ニシタイト、斯樣ニ考ヘル
次第デアリマス、相變ラズ農林大臣ヤ次官
ノ出席ガ無ク、高田參與官ノミ出席サレテ
居ルヤウデアリマスガ、併ナガラ高田參與
官ハ洵ニ農事ニ熱心ナ方デアリマスカラシ
テ、私ハ質問ヲ致シテモ明快ナル御答辯ヲ
得ルト思フノデアリマスガ、一二問質疑ヲ
試ミテ、後ハ大臣ノ御出席ヲ仰ギタイト斯
樣ニ考ヘテ居リマス(拍手)ドウカ議長ニ於
カレマシテモ、農林大臣ノ出席ヲ求メラレ
ンコトヲ此壇上ヨリ希望シテ置ク次第デア
リマス、此獸醫師法案ヲ御提出ニ相成シタ
ノハ、之ニ依ノテ獸醫師ナル者ノ素質ヲ向
上致シ、又學識ノ向上ヲ圖リ、而シテ之ニ
依ッテ獸醫師ノ權利ヲ明ニシ、又義務モ相
當ニ負ハセヤウト云フヤウナコトニ承シタ
ノデアリマス、而シテ此法律ヲ見マスルト、
又只今ノ御意思ニ依ッテ見マスルト云フト、
權利ノ方ト云フモノハ洵ニ薄イヤウニ感ゼ
ラレル形式ニ於テハ權利ハ相當認メラレ
テ居ルヤウデアリマスケレドモ、實質ニ於
テハ此法律ニ依シテ期待サレル所ノ獸醫師
ノ權利ト云フモノハ確的ニ認メラレルヤ
否ヤト云フコトハ疑問ニ相成シテ居ルノ
デアリマス、然シテ義務ノ方ニ於テハ隨
分過重ナ義務ヲ負ハシメルヤウニ思ハレル
ノデアリマス、卽チ此法案ノ第何條デアリ
マスカ、末項ニアリマス所ノ十三條ニ「第
五條又ハ第六條ノ規定ニ違反シタル者ハ百
圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス」斯ウ云フコ
トガアル、其第五條ト云フノハドウ云フ事
デアルカト云フト「開業ノ獸醫師ハ診察又
ハ治療ノ需アル場合ニ於テ正當ノ理由ナク
シテ之ヲ拒ムコトヲ得ス」ト斯ウ云フ規定
ガアルノデアリマス又第二項ニハ「獸醫
師ハ法令ノ規定ニ依リ必要アル者ニ亞當ノ
事由ナクシテ診斷書、檢案書又ハ死產證書
ノ交付ヲ拒ムコトヲ得ス」斯ウ云フコトガ
若シ起リマシタナラバ、百圓以下ノ罰金ニ
處セラレル、斯樣ナコトニ相成シテ居ルノ
デアリマス、是ガ重イカ輕イカト云フヤウ
ナコトハ之ヲ他ノ比較法デアル所ノ醫師
法或ハ齒科醫師法、藥劑師法ト云フモノ
ト比較對照鉸サナケレバ相成ラヌト斯樣
ニ考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ醫師法ニ
於キマシテハ斯樣ナ場合ニ於テハ如何ナ
ル罰則ガアルカト云フト、二十五圓以下ノ
罰金、斯ウ云フヤウナコトニ相成ルト私共
ハ考ヘテ居ルノデアリマス、或ハ齒科醫師
法デモ二十五圓以下ト云フコトニ相成シテ
居ル、又藥劑師ノ方面ニ於テモ斯ウ云フ嚴
重十規定ハ無カッタト思フ、多分五十圓以
下デアッタラウト思フ、能クハ記憶致シマセ
ヌガ、此獸醫師法案ニ於テ始メテ百圓ト云
フヤウナ過重十罰金又ハ科料ト云フコトニ
相成ッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フコトデ
アリマスト、何ガ故ニ動物ノ診療ヲ致ス所
ノ獸醫ガ、人間ヲ取扱フ所ノ醫師、齒科醫
師藥劑師ヨリモ重ク之ヲ罰シナケレバナ
ラナイカト云フコトガ、私ノ第一ノ疑問デ
アルノデアリマス、人間ノ命ト云フモノ
ハソレハ一樣デアリマセウ、國務大臣デ
アラウガ、參與官デアラウガ、或ハ守衞ノ諸
君デアラウガ、給仕デアラウガ、小使デア
ラウガ、命二八一變リハナイノデアリマスケ
レドモ、動物ニ於テハ左樣ニハ參ラヌノデ
アリマス、動物ニ於テハソレ〓〓經濟的
價値ト云フモノガアル、左樣デアリマス
カラ只デ貰ッテモ要ラナイト云フヤウナ
モノモアルシ、何万圓ト云フヤウナモノモ
アルダラウト思フ、能ク世ノ中ニ問題ニナッ
テ居ル所ノ露西亞ノ犬ナドヽ云フモノハ
隨分値打ガアル、十万圓ト斯ウ云フヤウナコ
トニナッテ云ム、斯ウ云フ工合デアル、或ハ
「ライオン」デアルトカ、或ハ又下ッテ蕾庵デア
ルトカ云フヤウナ色ニナ方モアリマスケレ
ドモ、人間ノ價値トシテハ同ジデアルノデ
アル、動物ハサウ云フコトニハ參ラヌノ
デアリマス、左樣デアリマスカラシテ、私
ハ一ツノ動產トシテノミ取扱ハレル此動物
ヲ取扱フ所ノ獸醫師ガ、人間ノ命ヲ取扱フ
所ノ醫師、齒科醫師、其他ノ者ト非常ナ玆
ニ逕庭ノアルト云フコトハ私ハ是ハ諒解
ニ苦シムノデアル、何ガ故ニ獸醫師ニノミ
斯樣十過重ナル負擔ヲ負ハシメタカト云フ
コトヲ能ク承ラナケレバナラヌ而シテ之
ニ付キマシテ尙ホ玆ニ疑問ノアリマスノハ、
旦診療ヲ拒ム、卽チ診察或ハ治療ヲ拒ム
ト云フコトニナルト、斯ノ如キ過重ナル刑
罰ヲ受ケルノデアル、然ラバ獸醫師ト云フ
者ハドウ云フ立場ニ在ルカ、所謂獸醫ト云
フモノ-獸醫師ト云フ言葉ガアリマス
ガ、獸醫師ト云フ者ハ如何ナル意味デアル
カ、卽チ之ニ關聯シテ家畜ト云フモノハド
ウ云フモノデアルカト云フコトヲ能ク定メ
テ行カナケレバナラヌト思フノデアル貴
族院ノ委員會等ニ於テソレ〓〓說明サレタ
ヤウデアリマス、私ハ豫備知識ヲ得ル爲ニ
貴族院ノ速記錄モ此處ニ持シテ來テ居ルノ
デアリマスガ政府ノ說明スル所ハ斯樣ニ
ナッテ居ルノデアリマス、私ガ分ラナイバカ
リデナク恐ラクハ諸君ニ於テモ御分リ惡
イト思フノデアリマス、是ハ曾我子爵ノ委
員長トシテノ御報告ノ御演說中ニアルノデ
アリマスガ「獸醫ト云フ字ノ定義ハ如何」是
ハ委員會デ斯ウ云フ質問ガ出タト云フコト
ヲ此處デ述ベラレテ居ルノデアリマス、「獸
醫ト云フ獸ノ字ノ定義ハ如何、或ハ獸畜、
或ハ家畜、或ハ家禽ト云フヤウナ字ガ用ヰ
ラレテアルガ、此定義ヲ明カニスル必要ガ
大ニアルト思フ、如何トナレバ此法案ト云
フモノハ法律ノ制裁ヲ加ヘルコトニナッ
テ居ルカラ、獸ノ字ノ定義如何ニ依ツテハ
非常ニムツカシイ問題ガ起リハセヌカト云
フヤウナ御質問デゴザイマシタ、政府ノ說
明スル所ニ依リマスレバ此字ノ定義ニ付
キマシテハ政府自身モ非常ニ適當ナル字
ヲ探サレマシタガ、遂ニ其一言ニシテ盡ス
所ノ簡單ニシテ明瞭ナル所ノモノヲ見出ス
コトガ出來ナイ、而シテ今日政府ノ解釋シ
テ居ル所ノ獸醫ト云フ字ノ定義ト云フモノ
ハ普道ノ狀態ニ於テ人間ガ飼養シ得ル所
ノ獸畜、或ハ家禽ヲ込メテ、サウシテ人間
ノ馴飼シ馴ラシ得ル所ノモノ、普通蕃殖性
ヲ持ッテ居ル所ノモノ、其肉ハ以テ食料ニ
供スルコトヲ得、其中カラ勞働ニ使用スル
コトヲ得ルモノ、又其毛、革ノ如キハ工
業原料ニナリ得ルモノ、其外ニ愛玩用ノ獸、
卽チ競馬馬トカ、犬トカ、猫トカ云フ種類
ノモノヲ含ンダモノト解釋シテ居ル、今日
ニ於テハ其範圍ヲ確定的ニ定メルト云フコ
トハ非常ニムヅカシイカラ、ドウカ常識ノ
判斷ニ俟クテ貫ヒタイト云フヤウナ御說明
デゴザイマシタ」斯ウ云フコトニナッテ居リ
マス、ソレデ私ハ斯ウ云フコトヲ家畜ノ定
義如何ナドヽ直ニ御問ヒ申シテモ、矢張同
ジヤウナ答辯ガアルダラウト云フコトヲ恐
レテ、先廻リシテ此事ヲ私ハ申上ゲテ置ク、
私ハ斯ノ如キ答辯デハ滿足致サヌト云フコ
トヲ、時間ノ節約上豫メ申上ゲテ置クノデ
アル、何ガ故ニ斯ノ如キ說明デハ私ハ
滿足セヌカト云フト、法律ノ解釋ニ常識ヲ
用ユルト云フ如キコトハ何ノコトデアルカ、
サウ云フ法律上ノ解釋ニ常識ヲ用ユルト
云フヤウナコトハ其法律ヲ取扱フ人ミノ
常識ニ依シテ色ミニ解釋ガ違フト云フコト
ニ相成ル斯樣ナコトニ相成ルダラウト思
フ、或ハ警察官デアルトカ、或ハ裁判官デ
アルトカヾ是ハ家畜デアル左樣デアル
カラオ前ハ之ヲ診察シテ吳レト言ッタノニ
行カヌカラ百圓ノ罰全ニ處スル、或ハ又鼠
ノ如キモノ、鼠ハ家畜デアル、是ハ大切ナ
モノデアル、「モルモフト」是モ大切十家畜
デアル、或ハ又「ライオン」ガ少シ風邪ヲ引
テ五六日寝テ居ル、是デハ困ルカラト云フ
テ來ル、斯ウ云フ猛獸モ馴セバ馴サレルモ
ノデアル、或ハ豹ト云フモノガアル、大分
欝イデ居ッタガ、近頃是ガ調子ガ變シテ時々
大キナ聲デ嚇シタリスルガ、是ハ病的デア
ルカモ分ラヌカラ診察シテ吳レト言フテ來
ル、併ナガラ是ハ猛獸デハアリマスケレド
モ、之モ馴ラセバ馴ラシ得ル、馴飼シ得ル
コトガ出來ルソレノミナラズ斯カル獰猛
ナル動物モ、馴ラセバ藝當マデスルコトガ
出來ル、ソレデアリマスカラ人ガ飼シテ馴
ラスコトガ出來ルモノデアルト云フヤウナ
コトニナレバ「ライオン」ヤ豹ナドガ問題ニ
ナラヌトモ限ラヌ、私ハ斯ウ思フノデアリ
やっ、マダ色ミアル面シテ私ハ法律ノ上
ニ於テ家畜ト云フ語ヲ探シマシタケレド
モ私ハ唯〓家畜傳染病豫防法ニ於テ、此
法律ノ云フ家畜ハ是レ々々デアルト云フヤ
ウナコトヲ八ツバカリ揭ゲテ居ルト云フ外
ニ、家畜ト云フ語ハ見出サナイ、卽チ此法律ニ
依リマス、ト家畜ト云フノハ馬、牛、緬羊、山羊、
或ハ犬、ソレカラ鷄デアルトカ、或ハ鵞
鳥デアルトカ-ソレカラモウ一ツ拔ケタ
ノデアリマス(「熊」ト呼フ者アリ)熊ダノ虎
ダノハ人クテ居ナイ、(笑聲起ル)アヽ豚ガ入ソ
テ居ッタ、是デ八ツニナル、マア常識ノ標
準ハ之ニ依シテ見レバ宜イジヤナイカト云
フコトヲ政府當局ハ言ハレルノデアラウケ
レドモ、常識ノ標準ト言シテモ、鵞鳥ガ家畜
ノ中ニ入ッテ居シテ、家鴨ガ家畜ノ中ニ入ッテ
居ラナイト云フノハオカシイジヤナイカ、
日本ニ鵞鳥ナドハドレ位アルカト云フコト
ハ統計ヲ見レバ分ル、此法律デハ常識デ
ヤルト云フガ、而モ政府デハ大ニ奬勵ヲサ
レテ居ル所ノ狐ノヤウナモノハドウデス、
千島邊リニハ四箇所モ養狐所ヲ設ケテ、狐
ノ蕃殖トデモ言ヒマセウカ、サウ云フコト
ヲ行ッテ居ル者ガアル筈デアル、法律ナド
ヲ探シテ見テ見マスルト-別ニ探ネル必
要ハナイダラウト思ヒマスガ、種狐ヲ配付
スルト云フ規定ナドガアル以上ハ、此種狐
ヲ養成シテオキデニナルサウ云フモノヲ
家畜ニ入レナイト云フコトハ不思議ナ話
デアリマスカラ、是ハ矢張常識ノ標準ニハ
ナラナイト云フコトニナルダラウト思フ、
サウ云フコトニナリマスト云フト、一體家
畜卜云フモノハ何ヲ指スカト云フコトハ
十分ニ嚴重ニシテ置カナケレバ相成ラヌト
思フノデアリマス先程「ライオン」、豹ナド
ノ例モ出マシタケレドモ、是ハ猛獸デアリ
マセウガ、將來猛獸ト云フヤウナモノモ、
十分馴ラシマスト云フト、柔順ナモノニナ
ル又是ガ觀賞用ナドヽ云フコトニナリマ
スト、何万圓ニ賣レル品物ニナルダラウト
思フノデアリマス、左樣デアリマスカラ、
外國ト同ジヤウニ、我國ニ於テモ之ヲ馴致
致シ、繁殖致シマシテ、逆ニ海外ニ輸出ス
ルト云フヤウナ商賣ガ、玆ニ出テ來ルダラ
ウト私ハ考ヘテ居ルノデアル、斯ウ云フヤ
ウナ事デアリマスルト云フト、斯フ云フ猛
獸デアリマスケレドモ、是ハ猛獸バカリデ
モナカラウト思フ、隨分之ニ類シタヤウナ
モノガ澤山アルダラウト思フノデアリマ
ス實際ニ於テ疑問ノ生ズルモノヲ、犬ナ
ドト申シテモ、隨分高價ナモノガアルト云
フコトヲ私ハ度〓聞イテ居ル、或ハ英吉利
ノ獵犬ナドハ、二十万圓モスルモノガアル、
現ニ議員ノ中ニ中野君ノ如キ露西亞犬ヲ
三頭モ持ッテ居ル、一日ノ食費ダケデモ五圓
掛ル、吾々ノ食費ヨリハ餘程多イノデア
ル斯ウ云フ御方々ハ犬ナドノ病氣シタ
時ハオ囊ドンヤ下男ナドノ病氣ニナッタ
ヨリ餘程心配シ、苦痛ニ感ゼラレルダラウ、
醫者ノ所ニ駈付ケテ、醫者ガ來テ吳レテ獸
醫ガ來ナカッタ、或ハ醫者モ來ナカッタ、獸
醫モ來ナカッタ、兩方來ナカッタト云フ場合
ニハ醫者ノ方ハ二十五圓以下ノ罰金ニ處
セラレ、獸醫ノ方ハ百圓以下ノ罰金ニ處セ
ラレルト云フコトニナルト、下男ノ生命ヨリ
ハ、此犬ノ生命ガ大切ダト云フ斯フ云フコト
ニ法ハナルト思フ、サウ云フコトニ齟齬ヲ來
スガ故ニ、私ハ家畜ナルモノヽ定義ヲ嚴密ニ
シナケレバナラヌ、面シテ一方ニ於テハ
ソレデアルカラ馴スコトガ出來ルトカ、或
ハ繁殖性ヲ持ヲテ居ルモノモアリ、或ハ今
ノ畜產學ノ原則カラ言フト、繁殖シタモノ
ガ又馴化スルコトガ出來ルト云フコトヲ言
テ居ルヤウデアリマスケレドモ、ソンナ
コトヲ以テ此獸醫師ヲ律スルコトノ基礎ニ
致シタラ、將來隨分面倒ナ問題ガ起ルデハ
ナイカト吾々ハ考へテ居ル殊二一方ニハ
獸醫學ナドト云フモノハ日進月步、駸々
乎トシテ進ンデ居ッテ、我國ニ於テハ水產
ト云フコトハ獸醫學カラ省イテ居ルヤウ
デアルケレドモ、諸外國ニ於テハ水產モ亦
獸醫學ノ中ニ
〔「議長定數ガ〓ケテ居リマス」「議長計
算シナサイ」「只今計算シマシタガ足リ
マセヌ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=115
-
116・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) ソレデ私ハ家畜ノ定
義ガ分ラヌト云フヤウナコトヲ非常ニ
〔「憲政會ハ五十三人シカ居リマセヌ」
ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=116
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117・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 發言ガ多クテ-
私ハ今日咽喉ヲ痛メテ居ルカラドウカ御静
ニナルヤウニ議長ニ願ヒマス(「憲政會ハ五
十三、政友會ハ五十、ドウシテ是デ足リマ
スカ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=117
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118・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 只今調査中デア
リマス-定足數ヲ缺クノ虞レアリト認メ
せく、仍テ本日ハ是ニテ延會ヲ致シマス
午後七時六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005113242X03519260323&spkNum=118
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