1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年二月二十八日(月曜日)
午前十時七分開議
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議事日程 第十六號 昭和二年二月二十八日
午前十時開議
第一 大正十五昭和元年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第二 大正十五昭和元年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第三 豫算外國庫の負擔となるへき契約を爲すを要する件(追第一號) 會議(委員長報告)
第四 商工會議所法案(政府提出) 第一讀會
第五 輸出絹織物取締法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 御料地拂下地の地租及登録税免除に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 王公族より内地の家に入りたる者及内地の家を去り王公家に入りたる者の戸籍等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 不動産登記法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十 議院法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十一 船舶職員法改正の請願 會議
第十二 青森縣西津輕郡稻垣村に登記所設置の請願 會議
第十三 屯田兵の恩給に關する請願 會議
第十四 鹿兒島縣揖宿郡喜入村に登記所設置の請願 會議
第十五 江差、本郷間竝厚澤部、上磯間殖民軌道敷設の請願 會議
第十六 福山、三次間鐵道敷設の請願 會議
第十七 鍼灸師法制定の請願
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
[小林書記官朗讀]
去ル二十五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送
付セリ
土地收用法中改正法律案
同日常任委員長ヨリ左ノ如ク分科擔當委員ヲ選定シタル旨ノ報告書ヲ提出
セリ
豫算委員
第四分科擔當委員佐藤三吉君
請願委員
第二分科擔當委員玉利喜造君
第三分科擔當委員鎌田榮吉君
決算委員
第一分科擔當委員侯爵佐佐木行忠君
同日王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル
者ノ戶籍等ニ關スル法律案外一件特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長
ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵寺島誠一郞君
副委員長河村讓三郞君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者
ノ戶籍等ニ關スル法律案可決報告書
不動產登記法中改正法律案可決報告書
請願委員會特別報告第一號
一昨二十六日豫算委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十五年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)、大正十五元年度各特別會計歲入
昭和元昭和
歲出豫算追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ
要スル件(追第一號)可決報告書
同日豫算委員長ヨリ第五分科擔當委員今井五介君ヲ第三分科兼務委員ニ選
定シタル旨ノ報告書ヲ.提出セリ
同日政府ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
大正十四年度國有財產增減總計算書
大正十四年度各省所屬國有財產增減報告書
大正十四年度國有財產增減總計算書檢查報告
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
議院法中改正法律案
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
遞信省所管事務政府委員
遞信省電氣局長中西四郞君
本日第二部ニ於テ豫算委員男爵東〓安君ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果男
爵赤松範一君當選セリ
本日第八部ニ於テ豫算委員太田〓藏君ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果吉田
羊治郞君當選セリ
青森한류発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開キマス
大正天皇御崩御ニ付キ、去ル十二月二十九日白耳義國上院ニ於テ、一月十一
日同國下院ニ於テ、共ニ深厚ナル弔意表章ノ決議ヲ爲シ、又一月十日英國下
院ニ於テ、同ジク十五日同國上院ニ於テ、共ニ深厚ナル哀悼ノ意ヲ表シ、我
ガ今上陛下ニ對シ奉リ、兩院ノ我國皇室政府及國民ニ對シ有スル深甚ナル
同情ヲ傳ヘラレムコトヲ希フタメ、同國皇帝陛下ニ對スル上奏文ヲ議決シタ
レーロ、ソレ〓〓外務大臣ヨリノ通牒ニ接シマシタ、兩國議院ガ大喪ニ際シ示
サレタル深厚ナル同情ニ對シ、玆ニ本院ハ院議ヲ以テ感謝ノ意ヲ表スルコト
ニ致シタイト存ジマス、只今議長ノ申述べマシタコトニ同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
總員起立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全會一致ト認メマス
山本小学発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、大正十五、昭和元年度歲入歲出總豫算
追加案第二號、第二、大正十五、昭和元年度各特別會計歲入歲出豫算追加案
特第一號、第三、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件追第一
號會議、委員長報〓
大正十五元年度歲入歳出總豫算追加案(第二號)
昭和
一大正十五年度各特別會計歲入歳出豫算追加案(特第一號)
昭和元
-豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
右衆議院ヨリ送付シタル各案ヲ審查シ總テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモ
ノナリト議決セリ依テ及報〓候也
昭和二年二月二十六日
豫算委員長
伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=4
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005・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今日程ニ上リマシタ大正十五、昭和元年度歲入歳出總
豫算追加案、第二號、同ジク各特別會計豫算追加案、特第一號、豫算外國庫
ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、追第一號、右ノ豫算委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、去ル二月二十五日委員會付託ニ相成リマシ
テ、翌二十六日ニ總會ヲ開キマシタ、此豫算ハ歲入歲出各、計二千四百四十
万三千三百二十六圓デアリマス、歲入ノ主ナルモノハ前年度剩餘金繰入ノ增
加二千四百十万圓餘デアリマシテ、其外ハ極ク小サナモノデアリ、且又過日
大藏大臣ヨリ御說明ニナリマシタカラ之ヲ省略イタシマス、歲出ノ最モ主ナ
ルモノハ、爲替相場ノ變動ニ基ク貨幣交換差金ノ增加一千六十六万圓餘デア
リマス、其外ハ矢張リ小ナル補充費デゴザイマス、何レモ補充費デアッテ、巳
ムヲ得ナイ經費ニ屬スルモノデアルノデアリマス、總會ニ於ケル質問ノ主ナ
ルモノハ、朝鮮樂浪郡ヨリ發掘ノ貴重品ノ保護ニ關スル件ニ付テノ問答、海軍
休息日ノ滿期ト共ニ軍艦製造費トノ關係如何、國家總動員ヲ豫想スル國防會
議ノ設置如何、又陸海軍人ノ異動ガ動モスレバ早クヨリ新聞紙上ニ載セラレ
ルコトガアルノハ如何ニモ遺憾デアルガ、是等ニ付テノ善後策竝ニ其理由等
ニ付テノ質問應答ガゴザイマシタ、要スルニ愼重審議ノ結果採決ヲ致シマシ
タ所、是ハ分科ニ移サズシテ採決ヲ致シマシテ、多數ヲ以テ可決ニ相成リマ
シタ次第デゴザイマス、此段御報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ於テ御異議ガナケレバ、只今豫算委員長ノ
報告セラレマシタ豫算案、日程第一ヨリ第三マデ一括シテ全部議題ト致シマ
ス、三案トモ全部原案ニ御異存ゴザイマセヌ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
u불륜発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、商工會議所法案、政府提出、第一讀
會
商工會議所法案
右勅旨ヲ奉シ帝國議會ニ提出ス
昭和二年二月二十三日
內閣總理大臣若槻禮次郞
商工大臣藤澤幾之輔
商工會議所法案
商工會議所法
第一條商工會議所ハ商工業ノ改善發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二條商工會議所ハ法人トス
第三條商工會議所ノ地區ハ市ノ區域ニ依ル但シ商工業ノ狀況ニ依リ必要
アル場合ニ於テハ町ノ區域ニ依ルコトヲ得
特別ノ事情アル場合ニ於テハ市ト市町村又ハ町ト町村ヲ合シテ一地區ト
爲スコトヲ得
第四條商工會議所ヲ設立セントスルトキハ第十二條第一號ノ議員ノ被選
擧權ヲ有スベキ者三十人以上發起人ト爲リ其ノ議員ノ選擧權ヲ有スベキ
者三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項ヲ
定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五條商工會議所ハ前條ノ設立ノ認可アリタル日ニ於テ成立ス
商工會議所成立ノ後役員ノ選任アル迄ノ間必要ナル事務ハ發起人之ヲ行
フ
第六條定款ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一名稱、地區及事務所ノ所在地
二議員ノ定數竝ニ其ノ選擧及選定ニ關スル規定
三役員ノ定數、權限及選任ニ關スル規定
四會議ニ關スル規定
五事業及其ノ執行ニ關スル規定
六庶務及會計ニ關スル規定
第七條商工會議所ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ行フ
一商工業ニ關スル通報
二商工業ニ關スル仲介又ハ斡旋
三商工業ニ關スル調停又ハ仲裁
四商工業ニ關スル證明又ハ鑑定
五商工業ニ關スル統計ノ調査及編纂
六商工業ニ關スル營造物ノ設置及管理
七其ノ他商工業ノ改善發達ヲ圖ルニ必要ナル事業
第八條商工會議所ハ商工業ニ關スル事項ニ付行政廳ニ建議スルコトヲ得」
商工會議所ハ行政廳ノ諮問ニ對シ答申スベシ
商工會議所ニ商業部及工業部ヲ置ク場合ニ於テハ部ハ各前二項ノ建議又
ハ答申ヲ爲スコトヲ得
第九條行政官廳ハ商工會議所ニ對シ商工業ニ關スル事項ノ調査ヲ命ズル
コトヲ得
第十條商工會議所ハ商工業者ニ對シ商工業ニ關スル統計其ノ他ノ調査ヲ
爲ス爲必要ナル資料ノ提出ヲ求ムルコトヲ得
第十一條商工會議所ニ議員總會ヲ置ク
第十二條議員總會ハ左ニ揭グル者ヲ以テ之ヲ組織ス
一第十四條乃至第十八條ノ規定ニ依リ被選擧權アル者ニ就キ選擧人ノ
選擧シタル議員
二地區內ノ重要商工業ヲ代表セシムル爲第十九條ノ規定ニ依リ選定シ
タル議員
第十三條議員ノ定數ハ五十人以內トシ前條第二號ノ議員ノ員數ハ議員定
數ノ五分ノ一トス但シ地方ノ狀況ニ依リ其ノ割合ヲ五分ノ一未滿トスル
コトヲ妨ゲズ
同一商工會議所ニ於テ前條第一號ノ議員ト同條第二號ノ議員トヲ兼ヌル
コトヲ得ズ
第十四條左ノ條件ヲ具フル者ハ第十二條第一號ノ議員ノ選擧權ヲ有ス
一帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立シタル會社ナルコト但シ會社ニ在
リテハ資本又ハ財產ヲ目的トスル出資ノ半額以上及議決權ノ過半數ガ
帝國臣民(帝國法令ニ依リ設立シタル法人ヲ含ム)ニ屬スルモノタル
コトヲ要ス
二商工會議所ノ地區內ニ於テ引續キ二年以上本店、支店其ノ他ノ營業
場ヲ有スルコト
三自己ノ名ヲ以テ商行爲ヲ爲スヲ業トスル者、取引所又ハ鑛業權者ニ
シテ商工會議所ノ地區內ニ於テ營業收益稅、取引所營業稅又ハ鑛產稅
ヲ一年間ニ命令ノ定ムル額以上納ムルコト但シ地區外ニモ營業場ヲ有
スル者ノ納稅額ノ算出方法ニ付テハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
前項第三號ノ納稅額決定以前ニ於テハ其ノ最近ニ決定セラレタル一年間
ノ納稅額ヲ以テ其ノ納稅額ト看做ス
會社ノ資本又ハ財產ヲ目的トスル出資ガ命令ノ定ムル金額以上ナル場合
ニ於テハ第一項第三號ノ納稅ニ關スル條件ヲ具ヘザルトキト雖モ第一項
ノ選擧權ヲ有ス
家督相續ヲ爲シタル者ニ付テハ第一項ノ選擧權ニ關スル條件ニシテ被相
續人ノ具備シタルモノハ之ヲ其ノ者ノ具備シタルモノト看做ス
合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ニ付テハ前項ノ規
定ヲ準用ス
第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條ノ選擧權ヲ有セズ
一破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
二六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
三六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ
受クルコトナキニ至ル迄ノ者
第十六條第十二條第一號ノ議員ノ選擧權ヲ有スル者ハ其ノ被選擧權ヲ有
ス
第十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條ノ被選擧權ヲ有セズ
一禁治產者及準禁治產者
二女子及年齡三十歲未滿ノ者
第十八條第十二條第一號ノ議員ノ選擧ハ投票ニ依リ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
投票ハ選擧人自ラ之ヲ行フ但シ會社及無能力者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
代人ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ單記投票又ハ五人以內ノ連名投票ノ方法ニ依ル
選擧ハ選擧人ヲ二級ニ分チテ之ヲ行フコトヲ得
前五項ニ規定スルモノノ外選擧ノ方法、手續、取締其ノ他選擧ニ關シ必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條第十二條第二號ノ議員ハ地區內ノ重要商工業一業種ニ付各一人
トス
前項ノ重要商工業ノ種目ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ議員ハ第十四條第一項第一號ノ條件ヲ具フル者タルコトヲ要ス」
第十五條又ハ第十七條各號ノ一ニ該當スル者ハ第一項ノ議員タルコトヲ
得ズ
前四項ニ規定スルモノノ外第一項ノ議員ノ選定ニ關シテハ定款ノ定ムル
所ニ依ル
第二十條議員タル會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ代表者ヲ定ムベシ
前項ノ代表者ハ會社ノ業務ヲ執行スル社員若ハ役員又ハ登記シタル支配
人ニシテ帝國臣民タルコトヲ要ス
一人ニシテ同一商工會議所ニ於テ二以上ノ會社ノ代表者ト爲ルコトヲ得
ズ
第二十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前條ノ代表者タルコトヲ得ズ
一第十五條又ハ第十七條各號ノ一ニ該當スル者
二同一商工會議所ノ議員タル者
三第十二條第一號ノ議員ノ選擧權及被選擧權停止中ノ者
第二十二條議員ハ名譽職トス
第二十三條議員ノ任期ハ四年トス
前項ノ期間ハ第十二條第一號ノ議員ノ總選擧ノ第一日ヨリ之ヲ起算ス
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
第二十四條第十二條第一號ノ議員ニシテ其ノ被選擧權ヲ有セザルニ至リ
タル者ハ其ノ職ヲ失フ但シ納稅ニ關スル條件ヲ失ヒタル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ
第十二條第一號ノ議員ニシテ其ノ選擧權及被選舉權ヲ停止セラレタル者
亦前項ニ同ジ
第二十五條左ノ事項ハ議員總會ノ議決ヲ經ルコトヲ要ス
一定款ノ變更
二經費ノ豫算及賦課徵收方法
三事業報告及收支決算ノ承認
四借入金
五顧問ノ選任又ハ解任
六議員又ハ役員ノ解任
七過怠金ノ賦課
八第十二條第一號ノ議員ノ選擧權及被選擧權ノ停止
九商工會議所ノ解散
十帝國商工會議所設立ノ同意
十一其ノ他重要ナル事項
前項第一號、第二號、第四號及第九號ニ揭グル事項ノ議決ハ主務大臣ノ
認可ヲ受クベシ
第二十六條議員總會ハ會頭之ヲ招集ス
議員總會ノ議長ハ會頭、會頭事故アルトキハ副會頭ヲ以テ之ニ充ツ會頭
及副會頭共ニ事故アルトキハ出席議員ノ互選ニ依リ議長ヲ定ム
議員總會ハ議員三分ノ一以上出席スルニ非ザレバ之ヲ開クコトヲ得ズ
議員總會ノ議決ハ出席議員ノ過半數ニ依リ可否同數ナルトキハ議長之ヲ
決ス
前條第一項第一號及第六號乃至第九號ニ揭グル事項ノ議決ハ議員三分ノ
二以上出席シ其ノ出席議員三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲スベシ
第二十七條商工會議所ニ左ノ役員ヲ置ク
會頭一人
副會頭一人又ハ二人
會頭ハ商工會議所ヲ代表シ所務ヲ總理ス
副會頭ハ會頭ヲ補佐シ會頭事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス
會頭及副會頭ノ外商工會議所ニハ定款ノ定ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置ク
コトヲ得
第二十八條役員ハ議員總會ニ於テ議員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事由
アルトキハ會頭又ハ副會頭ニ限リ議員ニ非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコト
ヲ得
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十九條役員ノ任期ハ四年トス
前項ノ期間ハ第十二條第一號ノ議員ノ總選擧ノ第一日ヨリ之ヲ起算ス
第三十條議員中ヨリ選任セラレタル役員議員ノ職ヲ失ヒタルトキハ役員
ノ職ヲ失フ
第三十一條議員タル會社役員ニ選任セラレタル後第二十條第一項ノ規定
ニ依ル其ノ代表者ニ異動ヲ生ジタルトキハ其ノ會社ハ役員ノ職ヲ失フ
第三十二條役員ノ職務終了シタル場合ニ於テ所務ノ遂行ニ支障ヲ生ズル
虞アルトキハ退職シタル役員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ後任者ノ就職
スル迄引續キ仍其ノ職務ヲ行フコトヲ得
第三十三條商工會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ重要ナル事項ニ付諮問ヲ
爲ス爲議員定數ノ五分ノ一ヲ超エザル員數ノ顧問ヲ置クコトヲ得
顧問ハ商工業ニ關スル學識經驗アル者又ハ十年以上議員トシテ功勞顯著
ナル者ヨリ之ヲ選任ス
顧問ハ名譽職トス
第三十四條商工會議所ニ理事一人ヲ置ク
理事ハ會頭ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌理ス
理事ノ外商工會議所ニハ定款ノ定ムル所ニ依リ他ノ職員ヲ置クコトヲ得
第三十五條商工會議所ハ必要ニ應ジ商業部、工業部又ハ其ノ他ノ部ヲ置
クコトヲ得
部ノ名稱、組織、權限其ノ他部ニ關シ必要ナル事項ハ定款ヲ以テ之ヲ定
ム
第三十六條商工會議所ハ第十二條第一號ノ議員ノ選擧權ヲ有スル者ニ對
シ經費ヲ賦課スルコトヲ得
第四十一條又ハ五十二條ノ規定ニ依リ選擧權ヲ停止セラレタル者ニ對シ
テハ停止中ト雖モ經費ヲ賦課スルコトヲ得
商工會議所ノ經費賦課ノ額ニ關スル制限及經費賦課ノ方法ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三十七條商工會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款違反者ヨリ過怠金ヲ
徵收スルコトヲ得
第三十八條經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ會頭ノ請求アル
トキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ商工會議
所ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
前項ノ徵收金ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次デ先取特權
ヲ有シ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
經費ノ賦課又ハ過怠金ノ徵收ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申
立、訴願及行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第三十九條商工會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ使用料及手數料ヲ徵收ス
ルコトヲ得
前項ノ使用料及手數料ノ徵收ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第四十條商工會議所ハ職務ヲ怠リ其ノ他不正ノ行爲アリタル議員又ハ役
員ヲ解任スルコトヲ得
第四十一條商工會議所ハ經費ヲ滯納シタル者ニ對シ其ノ滯納中、前條ノ
規定ニ依リ解任セラレタル者ニ對シ解任ノ時ヨリ四年以內第十二條第一
號ノ議員ノ選擧權及被選擧權ヲ停止スルコトヲ得
第四十二條商工會議所ハ收支決算ヲ主務大臣ニ報〓スベシ
商工會議所ハ少クトモ每年一囘其ノ事業成績ヲ主務大臣ニ報告スベシ
第四十三條商工會議所ハ解散ノ後ト雖モ〓算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍
存續スルモノト看做ス
第四十四條商工會議所解散シタルトキハ議員總會ニ於テ〓算人ヲ選任ス
ベシ〓算人缺ケタルトキ亦同ジ
〓算人ノ選任ハ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ
第四十五條前條ノ規定ニ依リ〓算人タル者ナキトキハ行政官廳〓算人ヲ
選任ス
第四十六條〓算人ハ商工會議所ヲ代表シ〓算ヲ爲スニ必要ナル一切ノ行
爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
第四十七條〓算人ハ〓算及財產處分ノ方法ヲ定メ議員總會ノ議決ヲ經主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
議員總會前項ノ議決ヲ爲サズ又ハ爲スコト能ハザルトキハ〓算人ハ主務
大臣ノ認可ヲ受ケ〓算及財產處分ノ方法ヲ定ムベシ
第四十八條商工會議所ハ解散ノ後ト雖モ其ノ債務ヲ完濟スルニ必要ナル
金額ヲ賦課徵收スルコトヲ得
前項ノ賦課徵收ニ關シテハ第三十六條及第三十八條ノ規定ヲ準用ス
第四十九條主務大臣必要ト認ムルトキハ定款、經費ノ豫算及賦課徵收方
法又ハ〓算及財產處分ノ方法ノ變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ
發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五十條第十二條第一號ノ議員ノ選擧法令又ハ定款ニ違反スルトキハ主
務大臣ハ選擧又ハ當選ノ取消ヲ爲スコトヲ得
第五十一條商工會議所ノ議決又ハ議員、役員若ハ〓算人ノ行爲法令若ハ
定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲ス
コトヲ得
ー議員、役員又ハ〓算人ノ解任
二商工會議所ノ議決ノ取消
三商工會議所ノ事業ノ停止
四商工會議所ノ解散
第五十二條主務大臣ハ不正ノ行爲アリタルニ因リ第五十條ノ規定ニ基キ
當選ヲ取消サレタル者又ハ前條第一號ノ規定ニ依リ解任セラレタル議員
若ハ役員ニ對シ取消又ハ解任ノ時ヨリ四年以內第十二條第一號ノ議員ノ
選擧權及被選擧權ヲ停止スルコトヲ得
第五十三條商工會議所ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲帝國商工會議所ヲ
設立スルコトヲ得
帝國商工會議所ハ法人トス
帝國商工會議所ヲ設立セントスルトキハ六以上ノ商工會議所發起人ト爲
リ商工會議所總數ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ
他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十四條帝國商工會議所成立シタルトキハ商工會議所ハ總テ之ニ加入
シタルモノト看做ス
帝國商工會議所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ朝鮮、臺灣、樺太、關東州又ハ
外國ニ於テ設立シタル商工會議所ニ準ズル法人其ノ他ノ團體ヲ加入セシ
ムルコトヲ得
第五十五條帝國商工會議所ニ總會ヲ置ク
總會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ所屬ノ各商工會議所其ノ他ノ〓體ニ於テ選
定シタル者ヲ以テ之ヲ組織ス
第五十六條帝國商工會議所ニ常議員會ヲ置ク
常議員會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ所屬ノ商工會議所其ノ他ノ團體ニ於テ
選定シタル者ヲ以テ之ヲ組織ス
常議員會ハ定款ニ依リ委任セラレタル總會ノ權限ニ屬スル事項ヲ議決ス
但シ定款ノ變更及帝國商工會議所ノ解散ノ議決ハ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第五十七條帝國商工會議所ノ役員ハ所屬ノ商工會議所其ノ他ノ團體ノ役
員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事由アルトキハ會頭又ハ副會頭ニ限リ所
屬ノ商工會議所其ノ他ノ〓體ノ役員ニ非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ
得
帝國商工會議所所屬ノ商工會議所其ノ他ノ團體ノ役員中ヨリ選任セラレ
タル役員其ノ商工會議所其ノ他ノ團體ノ役員ノ職ヲ失ヒタルトキハ帝國
商工會議所ノ役員ノ職ヲ失フ
第五十八條帝國商工會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ所屬ノ商工會議所其
ノ他ノ團體ニ對シ經費ヲ分賦シ及過怠金ヲ徵收スルコトヲ得
第五十九條第五條第一項、第六條乃至第十條、第二十條乃至第二十二條、
第二十五條乃至第二十七條、第二十八條第二項、第二十九條第一項、第
三十二條乃至第三十五條、第三十六條第三項、第三十八條第三項、第三
十九條、第四十條、第四十二條乃至第四十九條及第五十一條ノ規定ハ帝
國商工會議所ニ之ヲ準用ス
第六十條主務大臣ハ本法ニ規定シタル其ノ職權ノ一部ヲ行政官廳ニ委任
スルコトヲ得
第六十一條第三條及第三十八條中町村トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ
於テハ之ニ準スベキモノトス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
商業會議所法ハ之ヲ廢止ス
商業會議所法ニ依リ設立セラレ本法施行ノ際現ニ存スル商業會議所ハ之ヲ
本法ニ依リ設立シタル商工會議所ト看做ス
前項ノ規定ニ依ル商工會議所ニ付テハ議員ノ選擧又ハ選定ニ關スル規定ハ
次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ施行前ニ於ケル議員ノ選擧ニ關スル事項ハ
仍舊法ノ規定ニ依ル
第三項ノ規定ニ依ル商工會議所ニ付本法施行ノ際必要ナル規定ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
日本銀行及橫濱正金銀行ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ會社ト看做ス
本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六號布告刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレ
タル者ハ之ヲ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
〔國務大臣藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=8
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009・藤澤幾之輔
○國務大臣(藤澤幾之輔君) 商工會議所法案提出ノ理由ヲ申上ゲマス、現行
商業會議所法ハ、明治三十五年ノ制定ニ係ルモノデアリマシテ、爾來大正五
年ト大正十四年ニ部分的ノ改正ヲ致シタニ止マッテ居リマス、時勢ノ進歩ニ副
ハヌモノガアリマスカラ、現時ノ經濟界ノ實情ニ鑑ミマシテ、會議所本來ノ
機能ヲ發揮セシメルガ爲ニ、今囘全部ノ改正ヲ行フコトト致シタノデアリマ
ス、玆ニ現行法ヲ廢止イタシマシテ、新ニ商工會議所法ヲ制定イタシマス、
其改正ノ主ナル點ハ、名稱ヲ商工會議所ニ改メ、工業者モ亦之ガ組織ニ
與カルノ意味ヲ明カニセルコト、二ハ會議所ノ地區內ニ於ケル重要ナル商工
業ノ業種別ニ依ル代表者ヲ議員ニ加ヘタルコト、三ハ議員選擧方法ヲ改正セ
ルコト、四ハ全國ノ會議所ノ聯合會ヲ法制上ニ認メタルコト、是等ノ箇條デ
ゴザイマス、願ハクハ十分ナル御審議ノ上ニ御協賛ヲ賜ハラムコトヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通告ニ依リマシテ森平兵衞君ニ質疑ノ發言
ヲ許シマス
〔森平兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=10
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011・森平兵衞
○森平兵衞君 只今上程ニナリマシタ商工會議所法ニ付キマシテ、少シク政
府ニ御尋ヲ致シタイノデアリマス、商工大臣ノ御說明中ニ會議所本來ノ機能
ヲ發揮セシメルタメ、今囘此改正案ヲ提出シタト云フコトデアリマスガ、私
ハ其會議所本來ノ機能ヲ發揮スル如ク改正ニナッテ居ラヌト思フノデアリマ
ス、唯名稱ヲ、商業會議所ヲ商工會議所ト云フ看板ニ塗替へ、內容ノ充實ガ
甚ダ貧弱デアル、商業會議所ノ聯合會ヲ、帝國商工會議所ト云フ名前ニ變へテ
法人ト認メタ位デアッテ、本來ノ會議所ノ機能ヲ發揮セシムルダケノ改正ノ點
ガ甚ダ少イノヲ、私ハ遺憾ト思フノデアリマス、先ヅ第一ニ政府ニオ伺ヒシ
タイ點ハ、政府ハ本案ヲ御制定ナサルニ付テ、商工會議所ノ機能ト權威ヲ保持
セシメ、以テ商工業ノ改善發達ニ資スル爲、從來ノ諮問ト決議ノ機關ヨリ、
更ニ積極的ノ實行機關、卽チ商事行政事務ノ一部デアリマス、ソレヲ併有セ
シムルノ御意思ガナカッタノデアルカドウカヲ、第一ニ伺ヒタイノデアリマ
ス、固ヨリ今囘ノ商工會議所法ニ依リマスト、第一條ニ目的、及ビ第七條ニ商
工會議所ノ行ヒ得ベキ事業ヲ列記シテアルノデアリマス、而シテ商工會議所
ガ或ル程度マデ實行機關タルコトヲ認メラレテ居ルコトハ、幾分ノ進步デハ
アリマス、併シ之ヲ海外諸國ノ商業會議所ニ比較イタシマスレバ、實行機關
タル所ノ實質ニ缺クル所ガ尙ホ多イト思フノデアリマス、今海外先進諸國ノ
實例ヲ二三申上ゲマスレバ、獨逸「プロシヤ」ノ商業會議所法ニ於テハ、行
政事務施行ノ權限ヲ商業會議所ニ對シテ付與シテ居ルノデアリマス、一ニハ
商工仲立人ヲ任命スルコト、二、取引所ノ監督及其他商業ニ關スル公共營造物
ノ監督、三ニハ商業鑑定人ノ任命等ヲヤッテ居ルノデアル、又獨逸「ハンブ
ルグ」商業會議所ニ於キマシテハ、港灣及船舶ニ關スル行政事務ヲ執行シテ
居ルノデアル、更ニ澳太利ノ商業會議所ニ於キマシテハ、商標及商號ノ登錄
事務ヲ委ネラレテ居ルノデアリマス、更ニ進ンデ佛蘭西ノ商業會議所法ニ於
キマシテモ、亦商業會議所ニ對シテ商事行政事務ノ權限ヲ認メテ居ルノデア
リマス、其重ナルモノハ取引所ノ監督、商業旅行人ノ身分證明書及原產地證
明書ノ下付、商品仲立人ノ選任、稅關鑑定人ノ選任、商品檢査所ノ設置、斯
ウ云フヤウナ點デアリマス、而シテ巴里商業會議所ノ如キハ、稅關ヲモ管理
シ、各種ノ組合ノ本部ヲ會議所內ニ設置シテ、之ガ指導監督ヲナサシメテ居
ルノデアリマス、「リヨン」ノ商業會議所ハ、生絲檢査所ヲ附設シテ、生絲檢
査事務ヲ施行サレテ居ルヤウナコトデアル、英國米國ニ於キマシテハ、會議
所法デナクシテ、所謂自由ノ會員組織ニ依ッテ、會議所ト云フモノガ出來テ居
ル、斯クノ如ク會議所法ノ無イ英國米國ニ致シマシテモ、尙ホ原產地證明ノ下
付及商業旅行人ノ身分證明書ノ下付、更ニ商事調停及ビ仲裁ノ事務ヲ執行サ
シテ居ルノデアリマス、殊ニ倫敦ノ商業會議所內ニハ三十三種ノ同業組合ノ
事務所ヲ設置シテ、之ガ指導監督ヲ爲シツヽアルト云フコトデアリマス、亞
米利加ハ旣ニ政府モ御承知ノ通リ、各都市ノ至ル所ニ會議所ヲ設立イタシマ
シテ、又合衆國ノ會議所ト申シマシテ有力ナルモノガアル、是モ無論會員組
織デアリマシテ、華盛頓ニ其本部ヲ置イテ居ル、一年ニ八十万弗以上ノ經費
ヲ使ッテ、亞米利加各都市ノ商業會議所及實業團體竝ニ有力ナル所ノ個人實業
家ガ入會シテ居ルノデアリマス、而シテ其機能タルヤ、產業政策ハ勿論、移
民、拓殖、鐵道、保險、天然資源ノ調査、關稅政策ヨリ各都市ノ市政改良ニ
マデ研究調査ヲ進メテ居ル實狀デアリマス、故ニ政府ニ對シテモ此合衆國商
業會議所ハ非常ナ權威ヲ持ッテ居リマシテ、其決議シタル事項ガ若シ政府ニ
於テ其意見ヲ採用シナカッタナラバ、亞米利加ノ全實業家ニ反對スルモノデ
アルト云フ證明ニナルノデアリマス、故ニ政府ニ於キマシテモ、成ルベク其
決議ヲ尊重シテ、其方針ノ下ニ政治ヲ行フコトニナッテ居ルト聞クノデアリ
やく、斯ノ如ク海外諸國ノ商業會議所ハ、何レモ商事行政事務ノ一部ヲ委任
セラレテ居ッテ、多大ノ實績ヲ擧ゲツツアルノデアリマス、我國ノ商業會議所
ハ、從來ハ法規ニ於テ十分認メラレテ居ル所ガナカッタ爲ニ、遺憾ナガラ其
機能ヲ發揮スルコトガ出來ナッカタノデアル、然ルニ根本ニ今囘名稱內容ノ充
實ヲ計ル爲ノ御改正ガアルナラバ、一步進ンデ內容ノ充實ヲセラレ、先進國
ノ範ニ倣ッテ、商事行政ノ一部、卽チ同業組合ノ指導監督竝ニ輸出品ノ檢査、
其他商工業ノ或ル種ノ取締等ニ關スル所ノ事務ヲ、此商工會議所ニ御委ネニ
ナルト云フコトニシテ、以テ實行機關ノ本能ヲ全ウセシムルコトニ爲サッテ
ハドウカト思ヒマス、殊ニ此佛蘭西ノ商業會議所ノ實際ヲ見マスルノニ、先
刻來申上ゲマシタ通リ、港灣ノ修築改良及海陸聯絡設備ノ改善、商品陳列館
ノ經營及監督、圖書館ノ設立、商業〓育、工業〓育及其他實業〓育ノ施設、
庶民銀行ノ經營、小額紙幣ノ發行等、極メテ多方面ニ商工業發展ノ促進ノ施
設ヲシテ居ルノデアリマス、而シテ是等廣汎ナ施設ヲナス財源ト致シマシテ
ハ、賦課金ノ徵收ノ外ニ、更ニ公債發行ヲモ認メテ居ルサウデアリマス、是
等ノ事情ヲ考ヘマスルト、我國ノ商業會議所ヲシテ一層有力ナル所ノ商工業
者ノ代表機關タラシムル爲ニ、政府ハ内容ノ充實ト云フコトニ付テ少シモ御
考ヘガナカッタカドウカ、此事ヲ第一ニオ伺ヒシタイト思ヒマス、第二ハ、
政府ハ將來、此商工會議所ヲシテ重要ナル商工業者ノ諮問機關タラシムベ
〃商工業ニ關スル法規ノ制定ニ付テハ、之ヲ商工會議所ヘ必ズ諮問スルコ
トニナス御意思ガアルカドウカ、尙ホ進ンデ申シマスレバ、法案中ニ必ズ斯
ウ云フ條項ニ限ッテハ諮問ヲスルト云フ明文ヲオ加ヘニナル意思ガアルカド
ウカヲオ尋ネシタイノデアリマス、我國商業會議所ノ、商工業者ノ代表機關
デアルト云フコトハ、既ニ識者ノ認ムル所デアリマシテ、商工業發達ノタメ
法案ノ調査、之ニ關スル法規ノ制定、改廢、施行ニ對シマシテハ、商工業者
ノ意見ヲ行政官廳ニ開陳シ、若クハ其諮問ニ應ズルコトガ、今日マデハ主ナ
仕事ニナッテ居ッタノデアリマス、是ハ內國的ノ仕事デアリマス、國際的ニモ
商業會議所ハ活動シテ居ルノデアリマス、國際商業會議所ト云フモノガアリ
マシテ、國際經濟界ノ圓滿ナル發達ヲ圖ル爲ニ、實業家ノ國際的常設機關ヲ
設ケ、實業ニ依ル世界平和ノ確保ヲ圖ルヲ目的トシテ居ルノデアリマス、斯
ノ如ク商業會議所ガ重要ナル使命ト責任ヲ以ヂマシテ、將來一層活動セムト
スルニモ拘リマセズ、從來政府ハ商業會議所ニ餘リ重キヲ置カレナカッタノ
デアル、政府ノ御都合ノ宜シイ時ニハ、商工業ニ關スル法規ノ御諮詢モナサ
ルコトモアリマセウ、併シ御都合ノ惡イ時分ニハ、ソレヲ省略ナサルト云フ
コトガ往々アルノデアル、ソレカラ何等商工業者ノ意見ヲモ尊重セズ、又徵
サレズニ、直グニ御制定ニナルヤウナコトモ、往々私ハ見受ケルノデアル、
佛蘭西ノ商業會議所法ニハ、第十二條ニ斯ウ云フコトガ明記シテアルノデア
リマス、「左ノ事項ニ關シテハ商業會議所ノ意見ヲ諮問スルコトヲ要ス、
商習慣ニ關スル法規ニ關スル事項、其ノ地區內ニ於テ新商業會議所及商品陳
列所ノ設立、株式仲立人及海運仲立人ノ營業所ノ設置、商事裁判所及工業調
停委員會ノ設置、佛蘭西銀行支店ノ設置、公設倉庫及商品競爭市場ノ設置ニ
關スル事項、其ノ地區內ニ於ケル官廳ヨリ特許セラレタル運輸機關ノ運賃ニ
關スル事項、以上ノ外特別ノ法規ヲ以テ定メラレタル事項、特ニ其ノ地區內
ニ於テ施行スベキ公共事業ノ有益ナルヤ否ヤ、及其ノ事業ノ費用ヲ支辨スル
爲ニ徵收スベキ租稅又ハ手數料ニ關スル事項、五監獄ニ於ケル囚徒ノ勞働
賃銀ニ關スル事項」ト云フコトニ、佛蘭西ノ商業會議所法ニハ、斯ノ如キコ
トハ必ズ商業會議所ニ諮問スルト云フ明文ヲ法規上ニ設ケテアルノデアル、
我國ニ於キマシテモ、官署ニ依リマシテハ既ニ此諮問機關ガアルノデアリマ
ス、聞ク所ニ依リマスト、文部省ニハ文政審議會ガアリ、內務省ニハ藥事
衞生ニ關スル所ノ法規ニ對シテハ、中央衞生會ト云フ如キ諮問機關ガアルヤ
ウニ承ッテ居ルノデアル、然ルニ只今デハ全國ニ八十有餘ノ會議所ガ設立ニ
ナッテアルニ拘ラズ、此重大ナル商工業者ニ對スル所ノ法規ノ制定ニ付テハ、
此會議所ニ何等ノ諮問ガナイト云フコトハ、私ハ政府ガ會議所ヲ活用セラレ
ヌコトニナッテ居ルノヂヤナイカト思フノデアリマス、故ニ今囘ハ進ンデ斯
ノ如キ事項ヲ法文ノ上ニ加入スルト云フコトニ付テノ御意思ガアルヤ否ヤト
云フコトヲ御質問シタイト思フ、第三番目ニハ、政府ハ議員ノ定數ヲ五十人
以下ニ限定セラレタノデアル、現在モ五十人デアル、現在ハ五十人デアリマ
スガ、其五十人ハ全部選擧ニ依ッテ選出セラレル所ノ議員ガ五十人デアル、
今囘ハ五十人ニ限定ヲシテ置イテ、其內十人、詰リ五分ノ一以內ハ同業組合
カラノ代表者ヲ選べ、假ニ之ヲ十人ト見ルト、從來ノ選擧セラレタ議員ヨリ
十人減ルノデアル、私ハ何故ニ斯ノ如ク議員ノ數ヲ御減ラシニナッタカト云
フコトヲ伺ヒタイノデアル、主ナル都市ニ人口ガ集中ヲ致シマシテ、年々其
數ヲ增シテ居ルト云フコトハ、國勢調査ニ依ッテ明カナ事實デアル、府縣
會議員及市町村會議員ハ、其人口ノ比例ニ應ジテ適當ニ人ヲ按排シテ以テ其
議員ノ數ヲ增加シテ居ル、然ルニ政府ハ今囘ノ改正ニ對シテ、百万以上ノ都
市モ、十万位ノ人口ノアル所モ、矢張リ五十人ト限定ヲシテ居ラレルト云フ
コトハ、私ハ其當ヲ得タモノト思ハヌノデアル、何故ニ政府ハ五十人以下ト限
定セラレタカ、又モウ一步進ンデ御尋ヲスレバ、此百万以上ノ大都市ニ對シ
テハ特例ヲ設ケテ、商工大臣ニ於テ必要ト認メタル場合ニ於テハ增加ヲスル
ト云フ御意思ノアルモノカ否ヤヲ御尋ヲ致スモノデアリマス、四項ニハ政
府ハ商工會議所法中ニ會社重役·····從來ハ人頭稅ヲ賦課シテ居ッタモノデア
リマス、ソレノ選擧權ヲ削除セラレタノデアリマスガ、此理由ヲ私ハ承リタ
イト思フノデアリマス、ソレトモウ一ツハ、此會議所ノ營業收益稅ニ對スル
所ノ納稅額ノ制限ハ、是ハ命令ヲ以テ御定メニナルト云フコトデアリマスル
ガ、併シ現行法ノ程度ニ於テ之ヲ御認メニナルカ、或ハ低下サスカ、是ハ此
法案ヲ審議ヲ致シマスルニ付テ重大ナ關係ガアルノデアリマス、故ニ本會ニ
於テ、成ルベク此稅金額ハドノ位ノ程度ト云フコトノ御內意ヲ承リタイノデ
アリマス、ソレデ前項ニ申シマシタ會社重役ニ對シテ選擧權及被選擧權ヲ御
認メニナラヌ理由ハ、如何ナルモノデアルカト云フコトニ付テ、此大都市ニ
在ル所ノ會社ノ重役ト云フモノハ、商工業界ニ於キマシテ、獨立ノ勢力ヲ有
シテ居ルモノデアル、而シテ此實業上ノ知識經驗ト云フモノヲ具備イタシマ
シテ、商工會議所ノ機能ヲ發揮スルニハ尠カラヌ、今日マデノ事蹟ニ依リマ
スト便益ガアルノデアル、ノミナラズ此會議所ノ經費ノ負擔モ、矢張リ此會
社取締役ニ付テ、十分擔稅力ノ能力ヲ持ッテ居ルノデアル、故ニ此會議所ノ
經費ヲ賦課スルニ付キマシテモ、人頭稅ヲ掛ケルト云フコトニ付テハ非常ニ
容易ナノデアル、然ルニ之ヲ削除ナサイマシタ御理由ヲ承リタイ、ソレカラ
モウ一ツハ、今囘役員中ニ、役員ヲ議員ヨリ之ヲ互選スルヲ原則トハシテア
ル、併シ特別ノ場合ニ限ッテ、會頭副會頭ハ他カラ雇ッテ來テモ宜イト云フ特例
ガアルノデアリマス、私ハ斯ノ如キコトハ商業會議所ノ自治ノ精神ヲ破壞ス
ルモノデハナイカト思フノデアル、或一部ニ於テ、會頭選擧ニ忌ハシキ風聞
ノ漏レタコトモナキニシモ非ズデアリマスガ、是ハ八十有餘ノ會議所中、僅
ナモノデアル、今日府縣會、市町村會議員ガ、議員外カラ議長ナリ副議長ナ
リ持ッテ來ル所ハ何處ニアル、サウシテ其雇ッテ來タ所ノ會頭、副會頭ト云フ
モノハ、議員ノ權能ガ無イノデアル、然ルニ總會ニ於テ議長トナッタトキニ
ハ可否同數トナッタトキハ如何ナサレマスカ、是ハ特例デアリマスガ、斯
ノ如キ特例ヲ設ケテ置クト云フコトハ、自治ノ精神ヲ破壞スルモノデハナイ
カト私ハ思フノデアリマス、政府ハ何故ニ斯ノ如キ特例ヲ御設ケニナッタカ、
之ヲ御尋ネ致シタイト思ヒマス
〔國務大臣藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=11
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012・藤澤幾之輔
○國務大臣(藤澤幾之輔君) 森君ノ御問ニ對シテ御答ヲ致シマス、第一ハ商
業會議所ヲシテ執行機關トスル上ニ付テノ御問デアリマシテ、而モ各國ノ例
證ヲ御引キニナッテ御意見ヲ御述べニナリマシタノデアリマスガ、我國ノ商
工會議所ハ、私カラ申上ゲマス迄モゴザイマセヌ、當業者ノ團體デアリマシ
テ、沿革上モ政府ノ諮問機關トシテ發達シ來ッタ所ノモノデアリマス、之ニ
商事ニ關シマスル所ノ國ノ行政ノ一部ヲ委任イタシマシテ、而モ之ガ執行ノ
任ニ當ラシムルコトハ、他ノ產業ニ關スル同種ノ機關トノ權衡ノ上ニモ關係
イタシテ居ルノデアリマスルカラ、大ニ考慮ヲ致シマセヌケレバナラヌコト
デアリマス、從テ今囘モ未ダ其時機ニ達シナイモノトシテ、國ノ行政ノ事務
ノ一部ヲ委任スルヤウナコトハ致サナカッタノデアリマス、併ナガラ其執行
機關ト致シマシテハ、法案ニ揭ゲテアリマスル、第七條乃至第十條ニ揭ゲテ
アリマスル如クニ、御述べニナリマシタ大部分ハ、是等ノ箇條ノ中ニ包含サ
レテ居ルト信ズルノデアリマスカラ、ドウカ是ハ、其箇條、其範圍等ハ委員
會ニ於テ十分ニ意見ノ交換ヲ致シタイト考ヘルノデアリマス、第二ノ御問ハ、
是〓ノモノハ必ズ商工會議所ニ諮問ヲスルト云フコトノ規定ヲ設クル意思ガ
有ルカ無イカ、詰リ諮問ヲスルコトノ義務ヲ政府ガ持ツカ持タヌカ、斯ウ云
フコトニ付テノ御尋ノヤウデアリマスガ、政府ニ於キマシテハ左樣ナ義務ヲ
法律ノ上ニ規定イタシマスル必要ハ、今日ノ所ニ於テ認メテ居リマセヌノデ
ゴザイマス、併ナガラ過去ニ於キマシテモ、御尋ノヤウナ事柄ニ付テ必要ア
リト認メマシタ時ニ於テハ、常ニ諮問モ致シ來ッタノデアリマスルカラ、將
來ハ一層是等ノ點ニ重キヲ置カウト考ヘテ居リマス、ソレカラ議員ノ員數ノ
コトニ付テ御尋ガアリマシタガ、議員ノ定數ハ現在通リ五十名以內ト致シタ
ノデアリマシテ、唯其五分ノ一ヲ業種別議員トシテ加ヘタノデアリマス、併
ナガラ五十名ト云フノハ大體ノ見當デアリマシテ、現在モ矢張リ五十名デア
リマス、東京、大阪、神戶等ノ大都會ハ五十名ノ數ヲ滿タシテ居リマスルケ
レドモ、小都會ハ現ニ二十名デアルトカ三十名デアルトカ云フコトニナッテ
居リマス、故ニ今日ノ程度ニ於キマシテハ、五十名以上ニ致シマシテ、大都
會ハ、卽チ東京、大阪ノ如キハ尙ホ是ヨリ增加スル例外規定ヲ設クル必要ガ
ナイカト云フ御尋デアリマスガ、ソレハ只今申上ゲマシタヤウナ次第デアリ
マスカラ、當分ノ所、其必要ガナイト認メテ居ルノデアリマス、尤モ人ノ數
ガ多カッタカラト云ッテ、必シモ其機能ヲ十分ニ發揮シ得ルモノヂヤナイノデ
アリマシテ、五十名位ガ却テ適當デナイカト思フノデアリマス、費用其他ノ
點ニ於キマシテモ考慮ヲ致サヌケレバナラヌノデアリマスカラ、是等ノ點ニ
付テモ、尙ホ詳細ナコトハ委員會ニ於テ申上ゲテ見タイト思フノデアリマス、
第四ノ御問ハ、選擧資格ノコトデアリマスガ、是ハマダ確定イタシテ居リマ
セヌ、併ナガラ時勢ニ鑑ミマシテ、是ハ幾分其程度ヲ低ク致ス積リデアリマ
ス、ソレカラ第五ノ御尋デアリマスガ、會頭副會頭ヲ議員外カラ選擧スルト
云フコトハ、自治ノ精神ニ背クモノデハナイカト、斯ウ云フ御尋デアリマス、
是ハ一應御尤ナ御意見デアリマスガ、併ナガラ本法ノ規定ハ所謂許可法デア
リマシテ、必シモ議員外カラ選バナケレバナラヌト云フ意味デハナイ、議員外
カラ尙ホ選ブコトガ出來ル、ト斯ウ云フ意味デアルノデアリマス、實際ノ上
カラ申シマシテ見マスト云フト、近來屢、ソチコチニ現ハレテ居リマスヤウ
ニ、商業會議所亦ナカ〓〓競爭ナドガ盛ンデアリマシテ、黨派ノ爭ヲ商業會
議所ニ於テモ尙ホ見ルヤウナ實狀モナイデハナイノデアリマスカラ、左樣ナ
爭ガアリマシテ其纏リガ付カナイデハ、却テ會議所ノ爲ニ宜シクナイト云フ
ヤウナ場合ニ於テ、此議員以外カラ會頭副會頭ヲ選ブト云フヤウナコトモ亦
アリ得ルコトニ思フノデアリマス、ソレカラ又商業會議所ノコトハ、國際商業
會議所ニ矢張リ關係イタシマスヤウナコトモ、事實ニ於テ近來ハアルノデア
リマスカラ、左樣ナコトヲ考ヘマシタ時ニ當ッテ、學識經驗ノアル者ヲ會頭ニ
擧ゲテ、サウシテ之ニ參列セシムルナドト云フヤウナコトモアッテ然ルベキ
コトデアルカトモ考ヘルノデアリマスカラ、是モ左樣ニ致サヌケレバナラヌ
意味デナクシテ、斯樣ナ場合ニハ斯樣ナコトガアッテモ宜カラウ、斯ウ云フ
意味デ所謂許可主義デ、斯ウ云フ法ヲ制定イタシタノデアリマス、尙ホ色〓
御意見ガアリマシタケレドモ、詳細ナコトハ委員會ニ於テ申上ゲタイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=12
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013・森平兵衞
○森平兵衞君 只今ノ商工大臣ノ御答辯ノ中ニ一箇條拔ケテ居リマシタガ、
商工會議所法中ニ會社重役、詰リ人頭稅ヲ從來賦課シテ居ッタ者ノ選擧權ヲ
御削除ニナリマシタ、ソレハドウ云フ理由デ御削除ナサッタカト云フコトガ、
御答辯中ニ拔ケテ居ッタヤウニ思ヒマス、ソレトモウ一ツ序ナガラ御尋ヲ致
シタイノハ只今大臣ノ御答辯ニ依リマスレバ、商工會議所ニハ未ダ商事行政
ノ事務ノ一部ヲ委任スル時機デナイト云フ御答辯ノヤウニ承ッタノデアリマ
ス、果シテ斯ノ如キ我國ノ商工業者ノ地位、知識ガ向上シテ居ラヌト云フ思
召デ、此事務ノ一部ヲ御委任ニナラヌモノデアルカ、假ニ其商事行政事務ノ
一部ヲ、詰リ實行機關ヲ會議所ニ認メタナレバ如何ナル弊害ノアルト云フコ
トヲ御認メニナッテ居ルノカ、是モ序ナガラ御伺ヒ致シタイ
〔國務大臣藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=13
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014・藤澤幾之輔
○國務大臣(藤澤幾之輔君) 御答ヘ致シマス、會社ノ取締役ニ選擧權ヲ與ヘ
ルコトヲ廢シマシタノハ、會社ト申シマシテモ大小色〓アルノデアリマカラ、
一ツノ會社ニ有力ナ重役ガ幾人モアルト云フヤウナ會社モアルノデアリマシ
テ、取締役ニ選擧權ヲ與ヘルト云フコトニナリマスト、法人ニ選擧權ヲ與ヘ
テ居ル外ニ、尙ホ幾人カノ代表者ガ出來ル、斯ウ云フヤウナコトニナルノデ
アリマスカラ、此度ノ改正ニ於テハ、個人ト法人トニ選擧權ヲ與ヘテ、其會
社ノ取締役ニ選擧權ヲ與ヘルト云フヤウナコトヲ控ヘタノデアリマス、ソレ
カラ行政事務ノ一部ヲ委託スルト云フコトヲ爲サナイコトニ於テハ、是ハ國
國ニ依ッテ各〓違フノデアリマシテ、我國ノ現狀ニ於キマシテハ、矢張リ從來
ノ如ク、國ト商業會議所トノ關係ハ諮問機關トシテ進ミタイ、斯ウ云フ考デ
斯樣ニ致シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=14
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015・森平兵衞
○森平兵衞君 甚ダ御答ニ付テハ滿足セナイ點モアリマスルガ、他ノ機會ニ
質問ヲ致スコトトシテ、今日ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ曩ニ選定イタシマシタ計理士法案外一件ノ
特別委員ニ付託イタシマス
嘉兴〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、輸出絹織物取締法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會
輸出絹織物取締法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年二月二十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
輸出絹織物取締法案
輸出絹織物取締法
第一條輸出絹織物ハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸出絹織物檢査所ノ檢査ニ合
格シタルモノニ非ザレバ營利ノ目的ヲ以テ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ但シ
特別ノ事情ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第二條主務大臣ハ輸出絹織物ノ聲價ノ維持向上ヲ圖ルガ爲輸出絹織物ニ
關スル增量ノ制限禁止、品質品種ヲ識別スベキ表示其ノ他ノ事項ニ付取
締上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第三條輸出絹織物ノ精練業ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受
クルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第四條主務大臣ハ輸出絹織物ノ精練又ハ染色ニ關スル工場設備、作業方
法、使用材料其ノ他ノ事項ニ付輸出絹織物ノ聲價ノ維持向上ヲ圖ルガ爲
必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第五條輸出絹織物ノ精練業者其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シ
タルトキハ主務大臣ハ第三條ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第六條當該官吏取締上必要アリト認ムルトキハ工場、店舗、倉庫其ノ他
ノ場所ニ臨檢シ物品、帳簿其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得此ノ場合
ニ於テハ其ノ證票ヲ携帶スベシ
第七條輸出絹織物ノ檢査ニ關シ之ニ附シタル輸出絹織物檢査所ノ印章又
ハ記號ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ抹消、除却又ハ隱蔽スルコトヲ得ズ
前項ノ印章又ハ記號ヲ抹消、除却又ハ隱蔽シタル輸出絹織物ハ之ヲ輸出
スルコトヲ得ズ
第八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第一條又ハ前條第二項ノ規定ニ違反シ輸出絹織物ヲ輸出シ又ハ輸出
セントスル所爲ヲ爲シタル者
二第三條又ハ前條第一項ノ規定ニ違反シタル者
三第二條ノ規定ニ依ル命令又ハ第四條ノ規定ニ依ル命令若ハ處分ニ違
反シタル者
第九條正當ノ理由ナクシテ第六條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢査ヲ拒
妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ
爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條輸出絹織物ニ關スル營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
雇人其ノ他ノ從業者ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ
爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰
ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十一條本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違
反シタルニ依リ輸出絹織物ニ關スル營業者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ
法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未
成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ
關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
輸出羽二重精練業法ハ之ヲ廢止ス
本法施行ノ際現ニ輸出羽二重精練業法ニ依リ許可ヲ受ケ輸出絹織物ノ精練
業ヲ營ム者ハ第三條ノ許可ヲ受ケタルモノト看做ス
本法施行前ニ府縣ノ輸出絹織物檢査所ノ檢査ニ合格シタル輸出絹織物ハ第
條ノ規定ニ拘ラズ之ヲ輸出スルコトヲ得
本法施行前ニ製織シタル輸出絹織物ニシテ前項ノ規定ニ該當セザルモノハ
本法施行ノ日ヨリ一月內ニ輸出絹織物檢査所ノ認定ヲ受ケ本法施行ノ日ヨ
リ六月間第一條ノ規定ニ拘ラズ之ヲ輸出スルコトヲ得
〔國務大臣藤澤幾之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=17
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018・藤澤幾之輔
○國務大臣(藤澤幾之輔君) 本案ノ提出ノ理由ヲ申上ゲマス、絹織物ハ我國
輸出品ノ大宗タルニ拘ラズ、其多クハ中小機業家ノ製產ニ係リマスガ爲ニ、
動モスレバ粗製濫造ノ譏ヲ免レマセヌ、依テ政府ハ、曩ニ或ハ輸出羽二重精
練業法ヲ制定シテ、其精練ニ關スル弊害ノ矯正ヲ圖リ、或ハ輸出羽二重取締
規則ヲ發布シテ、不正ノ增量ヲ取締リ、或ハ又其主要ナル生產地及輸出港所
在ノ府縣ヲシテ輸出絹織物ノ檢査ヲ厲行セシムル等、本邦輸出絹織物ノ聲價
ノ維持向上ニ努メテ居ッタノデアリマシタ、併ナガラ尙ホ時勢ノ進步ハ是等
ノ施設ノミヲ以テ滿足イタシマセヌ、依テ政府ハ從來府縣ノ行ナッテ居リマ
シタ檢查ヲ國ニ移シマシテ、其統一ト嚴正、公平トヲ期スルト共ニ、輸出絹
織物ノ檢査取締ニ關スル從來ノ諸法規ヲ整備補正イタシマシテ、益〓我絹織
物ノ海外ニ於ケル聲價ノ維持向上ヲ圖ラムト致シマスノデアリマス、卽チ本
案ヲ提出イタシマシタ所以デゴザイマス、何卒御審議ノ上ニ御協贊ヲ願ヒタ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタ
サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
輸出絹織物取締法案特別委員
侯爵鍋島直映君子爵前田利定君子爵鍋島直繩君
淺田德則君橋本圭三郞君菊池恭三君
今井五介君橫山章君田中一馬君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今、日程第六ノ本案ノ政府委員ハ、衆議院ニ出
席シテ居リマシテ、只今呼ビニ出シマシタガ、マダ出席セラレマセヌカラ、
御異議ガナケレバ便宜上日程第七、第八ヲ先ヘ議題ニ致シタイト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
t生意事W+発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內
地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者ノ戶籍等ニ關スル法律案、第七、不動產登
記法中改正法律案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長報告、寺島伯爵
王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者
ノ戶籍等ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二年二月二十五日
右特別委員長
伯爵寺島誠一郞
貴族院議長公爵德川家達殿
不動產登記法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
昭和二年二月二十五日
右特別委員長
伯爵寺島誠一郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵寺島誠一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=21
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022・寺島誠一郎
○伯爵寺島誠一郞君 二十五日ニ此委員會ノ組織ヲ終リマシテ、直チニ此委
員會ハ開會審議イタシタ次第デゴザイマス、司法大臣ノ御言葉ヲ借リマシテ、
此王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公族家ニ入リタル者
ノ戶籍等ニ關スル法律案外一件、卽チ不動產登記法中改正法律案ノ大要ヲ御
說明申上ゲマス、韓國合併條約並ニ其折ニ煥發サレマシタ所ノ詔勅ニ於キマ
シテ、朝鮮ノ王公族ハ悉ク皇族ノ待遇ヲ以テ······禮ヲ以テ遇セラルルト云フ
コトガ御定メニナタッノデアリマス、而シテ之ニ關シマスル所ノ特別ノ規範ヲ
モ御制定ニナルト云フコトニ、御仰セ出ニナッテ居ッタノデアリマス、而シテ大
正十五年ノ十一月三十日ニ、法律第八十三號ト云フノヲ以チマシテ、昨年此
議會ニ於テモ協賛ヲ與ヘラレテ居リマスル所ノ、王公族ノ權義ニ關スル法律
ガ發布サレタノデアリマス、此法律ニ基キマシテ、只今申上ゲマシタ所ノ王
公家規範ナルモノガ御制定ニナリマシテ、昨年ノ十二月二十一日ヨリ施行セ
ラルルコトニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、是ハ皆サン御承知ノ通リデアリ
やす、而シテ皇室典範、皇族身位令、皇族財產令、皇室親族令等ニ傚ヒマシ
テ、王族公族ノ襲系、身位、財產、親族等ニ關スル規定ガ設ケラレタノデゴ
ザイマス、而シテ自然ト······御制定ニナラレマシテカラ、此王公族ノ御家ヨ
リ內地ノ家ニ入ラレ、又內地ノ家籍ニ在ル者ガ其家籍ヲ去ッテ王公族家ニ入ル
ト云フコトガ、自然ニ生ジテ參リマスノデゴザイマス、此場合ニ於ケル入籍、
除籍、復籍、一家創立、廢絕家再興、其他ニ關スル規定ヲ設クルノ必要ガ自
然相生ジタノデゴザイマス、是ハ丁度皇室典範、皇族身位令、皇室親族令ニ
依リマスル身分上ノ變更ニ關シマシテ、明治四十三年ノ法律第三十九號ガ制
定セラレテ居リマスル、其趣旨ト全然同一ノモノデアリマシテ、本法律案ハ
大體四十三年ノ法律第三十九號ニ傚ッテアリマスモノデ、其規定ガ出來タノ
デゴザイマス、其內容ハ極ク簡單ナモノデアリマシテ、第一第二、第三、
第四、第五ト云フ風ニ分ッテゴザイマス、ソレヲ極ク簡單ニ申上ゲル筈デゴ
ザイマスガ、御手許ニゴザイマス案其モノモ至ッテ簡明ナモノデゴザイマシ
テ、ソレニ一度御眼ヲ御通シニナリマスレバ、其點ハ明瞭ニナルンデゴザイマ
スカラ、省イテ申上ゲマセヌ、ソレカラ不動產登記法中ノ法律案ノ方ハ······改
正法律案ハ、新ニ王公族家ニ於カセラレマシテ世襲財產ト云フモノガ出來マ
スノデ、其世襲財產ノ設定、增加、又解除ノ場合ニ、不動產ニ付キマシテハ
登記ヲシナケレバナラヌト云フコトノ必要ヲ、登記法ヲ改正スル、是ダケノ
コトナンデス、此兩案トモ至ッテ簡明ナモノデゴザリマシテ、多少ノ質問應
答ハゴザリマシタ、極ク簡單ノ質問デ、ドウ云フコトニ付テノ質問デアッタカ
ト云フコトヲ一應申上ゲテ置カウト存ジマス、ソレハ大體ニ於テ此王公族ヨ
リ內地ノ家ニ入ラセラレタル者、又內地ノ家ヲ去ッテ王公家ニ入ラレタル者ノ
復歸セラレル、元ノ家ニ戾ラレル、斯ウ云フ場合ニ於ケル法理ニ付テ多少ノ
質問應答ガアッタノデアリマス、又復歸セラレル場合ノ屆出等ニ付テ、二三
ノ質問ガゴザイマシタ、應答モアッタノデアリマス、ソレカラサウ云フ場合
ノ又戶籍法ノ適用ト此法律トノ關係ニ付キマシテノ質問應答ガゴザリマシ
タ、次ニ襲系ノ順序ト此法案トノ關係ニ付テ、質問應答ガアッタノデアリマ
ス、是等ハ法理ト致シマシテハ中〓面倒ナモノノヤウニ伺ヒマシタケレドモ、
大體ニ於テ至ッテ簡單ナルモノデアッタノデゴザリマス、斯ノ如キ次第デアリ
マシテ、全員一致兩案トモ可決サレタ次第デゴザリマス、玆ニ大略ヲ御報〓
申上ゲル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案トモ第二讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=24
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025・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開カレンコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=25
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026・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
小山市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題ト致シマス、原案ニ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=30
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031・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=31
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032・櫛笥隆督
○子爵櫛笥隆督君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
やすLive発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
玉山発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關
スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年二月二十六日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案
第一條北海道ニ於ケル御料地ニ屬スル未開地ヲ開拓シテ拂下ヲ受ケ又ハ
之ヲ開拓シ若ハ素地ノ儘使用スルノ目的ヲ以テ拂下ヲ受ケ民有ト爲リタ
ル土地ニ對スル地租ハ民有ト爲リタル年ノ翌年ヨリ起算シ十年ヲ經過シ
タル後ニ非ザレバ之ヲ賦課セズ
第二條前條ノ拂下地ニ付テノ拂下ニ因ル所有權取得ノ登記ニハ登錄稅ヲ
免除ス但シ所有權取得後六月內ニ登記ノ囑託ヲ請求セザルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第一條ノ規定ハ本法施行前拂下ヲ受ケ民有ト爲リタル土地ニシテ本法施行
ノ際未ダ地價ノ設定ヲ爲サザルモノニモ亦之ヲ適用ス
第二條ノ規定ハ前項ノ規定ニ該當スル土地ニシテ本法施行ノ際未ダ拂下ニ
因ル所有權取得ノ登記ヲ受ケザルモノニモ亦之ヲ適用ス此ノ場合ニ於テハ
六月ノ期間ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
〔政府委員武內作平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=37
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038・竹内作平
○政府委員(武內作平君) 御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案
ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ說明イタシマス、北海道ニ於ケル國有未開地ノ
處分ニ付キマシテハ、北海道國有未開地處分法ニ依リマシテ、拓殖法ノ見地
ヨリ地租及登錄稅ノ免除ヲ致シテ居リマスルガ、等シク北海道拓殖開發ノ爲
ニ拂下ゲラレマスル御料地ニ付キマシテハ、免除ヲ致シテ居ナイノデアリマ
ス、卽チ地租登錄稅ノ免除取扱ニ付キマシテ、御料地ト國有地トノ間ニ權衡
ヲ得テ居ナイノデアリマスカラシテ、此權衡ヲ得マスルヤウ、北海道ニ於
ケル御料地ノ拂下ニ付キマシテモ、國有未開地ニ準ジマシテ、地租及登錄
稅ヲ免除スル法律ヲ制定イタシタイノデアリマシテ、ソレガ爲ニ本案ヲ提出
イタシタ次第デアリマス、御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレンコトヲ御願イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
サセマス
[瀨古書記官朗讀]
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案特別委員
伯爵奧平昌恭君子爵大浦兼一君子爵舟橋〓賢君
玉利喜造君男爵周布兼道君仁尾惟茂君
中川小十郞君西久保弘道君吉野周太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、權太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル
法律案、衆議院提出、第一讀會
樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル法律案
右本院提出案及送付候也
昭和二年二月二十四日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法ハ之ヲ樺太ニ施行ス
選擧區及選擧スヘキ議員ノ數ハ左ノ如シ
選擧區議員數
樺太二人
附則
本法施行ニ關スル規定竝期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル法律案特別委員
公爵二條厚基君子爵豐岡圭資君岡喜七郞君
伊澤多喜男君男爵關義壽君石井省一郞君
永田秀次郞君湯地幸平君金子元三郞君
ル心南北山発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十、議院法中改正法律案、衆議院提出、第
一讀會、通告ニ依リマシテ高橋琢也君ニ質疑ノ發言ヲ許シマス
議院法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和二年二月二十六日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
議院法中左ノ通改正ス
第四十條ニ左ノ一項ヲ加フ
豫算案カ貴族院ニ移サレタルトキハ豫算委員ハ其ノ院ニ於テ受取リタル
日ヨリ二十一日以內ニ審査ヲ終リ議院ニ報告スヘシ
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=42
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043・高橋琢也
○高橋琢也君 只今日程ニ上リマシタ議院法中ノ改正法律案、御承知ノ如ク
本案ハ衆議院ノ提出ニ係リマシテ、本院ヘ廻リマシタモノデゴザイマス、豫
算ノ審査期間ヲ衆議院ト同一ノ二十一日間デ貴族院デモ豫算ヲ審議スルヤウ
ニシタイ、斯ウ云フ極ク簡單ナル法案デゴザリマス、案ハ極メテ簡單デゴザイ
マスルケレドモ、是マデ確カ二囘ト思ヒマスル、衆議院デ此案ガ出マシテ、
貴族院ヘ廻シテ參リマシタケレドモ、貴族院ニ於キマシテハ、是マデハ通過
イタシマセナンダヤウデゴザイマス、ドウ云フ理由カラ是ガ通過イタシマセ
ナンダノカ、私詳シイコトヲ存ジマセヌガ、此點ニ付キマシテハ、尙ホ豫算
審議ノコトニ付テ御熟練ノ方ニ伺フコトモアラウト思ヒマスガ、先以テ政府
ノ御所見ヲ私ハ伺ヒタイ、先般衆議院ニ於テ此案ガ出マシタ時分ニ、委員會
デゴザイマシタカ、若槻總理大臣ハ御贊成ノ意ヲ表明ナサッタト云フコトデ
アル、勿論政府トシテハ御不便ノナイコトデアラウト存ジマス、故ニ是ヘ御
贊成ナサッタト云フコトハ當然ノ事デアラウト存ジマスル、併シ議院法ノ第
四十條ニ依リマスルト、衆議院へ豫算ヲ提出シタル場合、衆議院ノ委員ガ···
···衆議院ノ豫算委員ガ之ヲ受取リタル日ヨリ二十一日間ニ此審議ヲ終ッラ議
會ニ報告スルヤウニト云フコトハゴザイマス、殊更ニ此明記ガアルニ拘ラズ、
貴族院ノコトハ何等ノ制限ガゴザイマセヌ、デ當初、議院法ガ制定セラレマ
スル場合ニ、ドウ云フ意味デ貴族院ノ方ダケハ豫算ノ審査期限ガ無制限ニナッ
テ居リマシタモノデゴサイマシタカ、私ハ此意味ヲ能ク存ジマセヌ、之ヲ無
制限ニシテアルノニハ、何カ無制限ニシナケレバナラヌト、此法律ヲ定メル場
合ニ十分ナル熟慮ヲシテ斯ノ如ク無制限ニセラレタモノデアラウカト存ジマ
ス、サスレバ是ハ政府ノ便否ニ關係スルカ、或ハ貴族院ノ審議上ノ便否ニ關
係ヲ致シマスルカ、何カ有ルダラウト存ジマスルガ、其邊、一向不案內デゴ
ザイマス、政府ノ本案ニ對シマスル御所見ヲ改メテ伺ヒマスルト同時ニ、今
一ツハ法ノ精神ニ付キマシテ、政府ノ御覽ニナッテ居ル所ヲ承リタイト存ジ
やく、又今一ツハ、政府ハ衆議院ニ於テ贊成ハ爲サッタケレドモ、併シ是マ
デ實際ハ貴族院デ二十一日デ報告セラレタモノハ少イ、稀デアル、斯ウ云フ
結果ニナッチヤ居ラヌカト存ジマスルガ、ソレニハ果シテ貴族院側一方デ之
ヲ早ク審議シ能ハナカッタト云フ理由デゴザイマスカ、政府ニモ何カ之ガ爲ニ
便利ニナルコトガアッテ、兩方ノ意思ノ疏通シタ上カラ或ハ延ビテ居ルト云フ
ヤウナ事實デゴザイマスルカ、又此一方ニ於テハ、貴族院ノ豫算審議ノ上ニ
何事カ有ラウト存ジマスルガ、是ハ別ニ私ハ御尋ネ致ス積リデゴザイマス、
先以テ右ノ三點ハ、總理大臣ヨリ御答ヲ戴キマスレバ最モ結構デアリマス、
ソレカラ豫算委員長ヲ永ラク御擔當ニナッテ居ラレマスル林伯爵ニ御尋ヲ致
シタイト存ジマス、豫算委員長トシテ御答ヘ下サルト云フコトハ或ハ御迷惑
ナコトデアラウト存ジマス、是ガ御差支ゴザイマスルナラバ、御一己ノ御所見
トシテ御答ヲ戴キマスレバ最モ結構デゴザイマスガ、併シ事柄ガ貴族院全體
ニ關係シマスルコトデゴザイマスルカラ、或ハオムヅカシカラウカト存ジマ
スガ、一應申上ゲテ見マスル、今囘ノ豫算委員ノ總會ハ既ニ去ヌル二十六日ヲ
以テ終了シマシテ、遂ニ追加豫算マデモ此間ニ於テ議了ニナッタト云フ位デ
アリマス、流石ニ名豫算委員長ノ御手際ニ誠ニ敬服ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、此位ニ出來得マスルノデゴザイマスルカラ、殊更ニ衆議院ヨリ之ヲ延バ
サニヤナラヌト云フコトハ無イヤウニ詰リ考ヘラレマスルガ、ソレハ私等ノ
ヤウナ單純ナ頭デ考ヘマスルコトデ、實際ハ中〓サウハ參ラヌト云フコトガ
アルカモ存ジマセヌ、併シ今囘ノ御手際ヲ拜見イタシマシテモ、サノミ二十
一日デ之ヲ議了スルコトハ出來得ナイ、議會ニ報告スルコトハムヅカシイト
云フヤウニ思ハレマセヌ、ソレ故ニ從來ドウ云フ譯デアノヤウニ永ク掛リマ
シタモノデゴザイマスルカ、是ハヤリ方デ縮メレバ矢張リ縮メ得ラレルモノ
デハナイカ知ラヌト、私ナドハ思ヒマスルノデスガ、林伯爵ニハ如何ニ御考
ヘ遊バシマスカ、又是マデ二囘モ通過イタシマセナンダ其理由ハ何レニゴザ
イマセウカ、或ハ斯ウデハナカッタラウカト云フヤウナ點デモ、御氣付ノ廉ガ
ゴザイマシタラバ伺ヒタイト存ジマス、是モ或ハオムヅカシイコトトハ存ジ
マスル、若シ御答ヲ得マスルコトガ出來レバ、之ニ增シタルコトハゴザリマ
セヌ、體衆議院デ議了シ得ルモノ、衆議院議員ハ貴族院議員ヨリモ別ノ
頭ヲ持ッテ居ル譯デハナイ、違ヒハナイ、矢張リ同ジ人間ガシテ居ル、貴族
院議員ハ衆議院議員ノ頭ヨリ劣ッテ居ルカ、決シテ劣ッテ居ナイ、寧ロ私ハ優ツ
テ居リハセヌカト思ヒマス、是ハ最負目デゴザイマス、先ヅドッチモ同ジヤ
ウニ、人間トシテ同ジヤウナ頭ヲ持ッテ居ル、ソレトシテ見テモ、貴族院ノ方ニ
ハ段々政府ノ仕事ニ永ラク關係シテ居ッタ人ガ居ラレル、而モ多ク居ラレマ
ス、豫算ナルモノハ如何ナルモノ位ナコトハ、四百ノ貴族院議員一人モ分ラ
ヌ御方ハ無イ位ニ私ハ思ッテ居ル、ソレ故ニ衆議院ヨリモ時日ガマダ少イト
モ、審議ニ差支ナイデハナカラウカ、今一點ハ、衆議院デ既ニ二十一日間審
議ヲシテ居ル、其間ニ貴族院デ以テ十分ニ豫算ヲ研究スルコトガ出來ルト思
ヒマスル、或場合ニハ、其各派ノ所ヘ政府カラ大藏省ノ豫算ノ關係ノ人ニ出
テ貰ッテ話ヲシテ貰フト云フコトモ、イト易イコトデアラウト思ヒマス、サ
ウシマスルト、衆議院ヨリハ兎ニ角四十一日間長ク、コチラデハ研究ガ出來
ルノデゴザイマス、此點カラ見テモ、矢張リ二十一日間······四十一日間ハ間
違ヒマシタ、二十一日間ヨリ長イ時間ヲ要シナイデハアルマイカト思ヒマス
ル、之ニ付テハ政府デハ、私ハ早イ程御便利デアラウカト思ヒマスルガ、若
シサウデアルナラバ、政府ハ早ク貴族院ノ方ノ議員ニ、豫算案ノ豫算ヲ請求
スル說明書、參考書類ヲ十分ニ御廻シニナッテ居ッテ、研究シテ貰ッテ居レバ、
決シテ衆議院ヨリ餘計ノ時日ヲ費サナケレバナラヌト云フコトモナカラウ、
是ハ以前ノコトハ存ジマセヌガ、時勢モ段々變ッテ參リマシテ、國民ノ頭モ餘
程進步シテ來テ居リマス以上ハ、貴族院ヘ行ッタラ豫算ハイツデモ長イ間掛
ルト、斯ウ云フヤウナコトニナリマスルト、色〓ノソコニ疑ガ起ラウカト思
ヒマスル、其疑ヲ起サセルト云フコトハ、誠ニ貴族院トシテモ不利益ノ話デ、
今日ノ貴族院ノ議員諸公ハ、最モ品性ノ高潔ノ方バカリデ、斯ウ云フ高潔ノ
方〓デアルカラ、少シモ豫算審議等ニ付テ國民ガ疑ヲ挾ムヤウナコトノアラ
ウ道理ハゴザイマセヌケレドモ、ドウカスルト地方ノ議會ナドニハ、豫算ヲ
質ニ取ッテ置イテ、其間ニ色〓ノ難題ヲ持出シタリ、當局者ヲ困ラシタリ、
或ハイヂメタリスルト云フヤウナコトガアル、帝國議會ニハ未ダ曾テ斯樣ナ
不都合ナ事ノ有ッタコトヲ聞キモ致シマセスガ、又有ッテ濟ム譯ノモノデナ
イ、此點ハ申ス迄モアリマセヌケレドモ、長ク掛レバ色〓國民ニ疑惑ガ起ッテ
參ラウカト存ジマス、デ私ハ矢張リ衆議院ト同ジヤウナ時日ヲ以テ之ヲ審議
シテ出ス方ガ、餘計ナ疑惑ヲ國民ノ頭ニ起サセヌ點ニ於テモ利益デアラウ、
政府モ亦一日モ早ク審議シテ貰ッタ方ガ都合ガ宜カラウト思ヒマス、唯豫算
ニ關係シタ法律案ガ、イツデモ衆議院ニ先キニ出マスル、是ハ豫算ガ衆議院
ニ先キニ出ル以上ハ當然ナ話デアラウト思ヒマスル、然ルニ關係ノ法案ガ衆
議院デ遲々トシテ審査ガ進ミマセヌ、是ハ衆議院ノ色〓ナ事情ガゴザリマセ
ウカラ、貴族院ニ於テモ何トモ言フコトハ出來モセズ、又私モ之ヲ彼此レ言
フノデハゴザリマセヌガ、政府ハ十分ニ衆議院ノ豫算委員ノ方〓ニ諒解ヲシ
テ貰ッテ、早ク此法案ノ決定ヲシマシテ貴族院ヘ廻ルヤウナ手筈ヲ御取リニ
ナルコトヲ私ハ希望スルノデ、サウスレバ貴族院デモ、豫算ヲ審議スル場合
ニモ安心ヲシテ審議セラレヤウト思ヒマスル、從來ノ例ニ依ルト、法律ガ何
時デモ後カラ廻ッテ來ル、貴族院トシテハ完全無缺ニ之ヲ審議シヤウト云フノ
ニ、マダ衆議院ニ斯ウ云フ案ガ殘ッテ居ルカラ、此案ガ廻ッテ來テカラデモ
宜イヂヤナイカ、別ニ制限ハナイカラト、斯ウ云フヤウナコトヲ考ヘル人モ
無イニモ限ラナイ、曾テハ或人ガ今晩ノ十二時ヲ過ギレバモウ豫算ハ不成立
ニナル、俺ハソレマデ待ッテ質問ヲスルヨト、オドケヲ言ッタ人ガアリマシタ
コトヲ私ハ覺エテ居ル、是ハオドケダカラ宜シウゴザイマスガ、眞ニサウ云
フ人ガ出來タラバ是ハ非常ナ······政府ヂヤナイ、國民マデモ迷惑スルコトニ
ナラウト思ヒマスル、サウ云フヤウナコト迄モスレバ出來ルト云フ餘地ヲ與
ヘテ置クヨリハ、シテモ出來ナイト云フヤウニシテ置イタ方ガ、私ナゾハ宜
カラウト斯ウ思ヒマスル、之ニ依ッテ私ハドウカ······是マデノ事情ハ、ドウ云
フコトガアッテ之ヲ二囘マデモ本院ヲ通過シナカッタカ存ジマセヌガ、今囘ハ
ドウカ是ガ通過シテ、貴族院モ衆議院ト同一ナ期間ヲ以テ審議ガ出來ルト
云フヤウニナリタイモンダト思ヒマスル、之ニ付キマシテ、私ハ議長閣下ニ
一ツ願ヒタイコトガゴザイマス、此議案ニハ限リマセヌ、從來本院デ出シマ
シタ法案ガ衆議院ニ行ッタ場合、衆議院デ出シマシタ法案ガ本院ヘ來タ場合
ニ、誰モ之ヲ擔當シテ說明スル人ガ無イ、法ノ精神ヲ聽カウト思ウテモ、質
問ヲスル當テガナイ、是ハ兩院トモ不便デアラウ、此機關ノ缺ケテアルコト
ハ如何ニモ審議上雙方ノ便宜ヲ缺クコトト思ヒマスルデ、此點ニ付キマシテ、
本院ト衆議院······是等ノ說明ヲ擔當スル人ヲ、本院トシテハ衆議院ノ何カ適
當ノ人ヘ依賴ヲスル、衆議院ハ本院ノ議員ノ中デ向ウノ好ム所ノ人ニ擔當セ
シムルト云フヤウナ手段ヲ御取リニナルコトハ出來得ナイモノデゴザイマセ
ウカ、何カ議院法デモ改正シナケレバ出來ヌガ、改正スレバ斯ウ云フ方法ガ
出來ヤウト云フヤウナコトヲ、御考ヘニナッテ居ルコトガゴザリマセヌデセ
ウカ、私ハ雙方ノ便宜ノ爲ニ、何カ此間ニ、政府ノ外ニ之ヲ······法案ヲ出シ
マシタ方ノ質問應答ノ出來ルヤウナ資格ヲ備ヘル人ヲ、所謂一ツノ機關ヲ拵
ヘルト云フコトガ出來ハ致シマスマイカ、何カ玆ニ又本院ハ本院限リデ、簡
便ニ斯ウシタラ宜カラウト云フヤウナコトハゴザイマスマイカ、之ヲ伺フコ
トガ出來マスルナラバ、議長閣下ニ伺ヒタイト存ジマス、又縱シ伺フコトガ
出來マセヌト致シマシテモ、私ハ何カ斯ウ云フ事ノ出來マスルコトヲ希望イ
タシテ居リマスルカラ、併セテ自分ノ希望モ申上ゲテ置キマス、私ハ是デ終
リマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=43
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044・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今議題ニナッテ居リマス議院法中改正法律案
ハ衆議院ノ提出デアリマス、是ト同樣ナ法律案ヲ、政府ハ一昨年竝ニ昨年
ノ議會ニ提出イタシタノデアリマス、只今高橋君ノ御述べニナリマシタ通リ、
一昨年ハ貴族院ニ於テ審議セラレツヽアル間ニ會期ガ終了イタシマシテ、議
了ニナラナカッタノデアリマス、昨年ハ貴族院ニ於テ政府ノ提出シタル法律
案ハ否決セラレタノデアリマス、今囘衆議院ノ提出ニ係リマス此法案ハ、當
時政府ノ提出イタシマシタモノト內容ハ全ク同樣デアルト私ハ思ウテ居リマ
ス、現行法ノ通リデアリマシテハ、豫算ノ審議ノ上ニ政府ガ困ルコトガアル
カト云フコトノ御尋モアッタヤウデアリマスガ、政府ハ現行法ノ通リデモ一
向困リマセヌノデアリマス、政府ガ便宜ヲ得タイ爲ニ此法律案ヲ提出スルト
云フ趣旨デハアリマセヌノデ、現行法ノ通リデ豫算ノ審議ノ上ニ於テハ一向
不便ハ感ジマセヌケレドモ、衆議院ト貴族院トノ間ニ於テ、同ジク豫算ヲ審
議セラルヽノニ、衆議院ノ方ニハ一定ノ日限ノ制限ガ有リ、貴族院ノ方ニハ
是ガ無イト云フノハ、何トナク兩院ノ間ニ差別ガアルヤウニ見エルノデアリ
ママト。是ハ人間ノ感ジデアリマセウケレドモ、兩院ノ間、成ルベク總テノ事
ガ平等ニアリタイト思フノガ、一般ノ人情デアラウト思ヒマシタ故ニ、兩院
ノ間ニ、其間、違ッテ居ルト云フノデハ、何トナク衆議院ニ於テノミ制限ヲ受
ケテ居ルヤウナ感ジガ致スコトニ相成ルノデアリマスカラ、其間ヲ同一ノ取
扱ニナルノガ相當デアラウト云フノガ、政府ノ提案シタ所以デアリマシテ、
今日モ亦政府ハ其考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、審議ノ上ニ不便ヲ感ズルト
云フ意味デハアリマセヌ、ソレ故ニ政府ニ向ッテ、此案ニ對シテドウ云フ意見
カト云フ質問ヲ衆議院デ受ケマシタカラ、政府ハ一昨年モ本案ト同樣ナ法律
案ヲ提出シ、昨年モ亦同樣ナ案ヲ提出シタ位デアリマスル故ニ、固ヨリ此法
案ニ付テ反對スベキ理由ハ無イノデ、政府ハ賛成シテ居ル、斯ウ云フ答辯ヲ
致シタノデアリマス、高橋君ハ現行法制定ノ理由ヲ御尋ネニナリマシタ、現
行法ハ衆議院ノミニ制限ガ有ッテ、貴族院ニハ日限ノ制限ノ無イノハ、ドウ
云フ譯カ、私ハ立法當時ノ事由ハ能ク承知イタシマセヌ、併シ私ハ議院法
ヲ讀ンデ理解シテ居ル所ハ、豫算ハ衆議院ニ先ヅ提出セヌケレバナラヌコ
トニナッテ居ル、其先ニ審議ヲセラルヽ衆議院ニ於テ、永ク審査ヲシテ居ラ
ルヽト云フコトハ、貴族院ニ於テ審議ヲセラルヽ期間ガ大變短クナル虞レ
ガアル、ソレ故ニ先キニ議セラルヽ衆議院ニ於テ、一定ノ期間內ニ豫算委員
會ヲ終ラルヽヤウニシテ、豫算ノ審議ヲ兩院トモ相當ニ愼重審議ナサルヤ
ウニスルト云フノガ、議院法今日ノ規定ノ精神デアルノデハナカラウカト私
ハ思フノデアリマス、併シ立法當時ノ考ガ如何ニナッテ居リマシタカ、私ハ
能ク承知イタシマセヌ、政府ニ御尋ネニナッタ點ニ付テハ是ダケ御答ヘ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=44
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045・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今豫算委員會ノ會期ノ點ニ付テ高橋君ヨリ御質問ガア
リマシタガ、豫算委員長デナク個人トシテモ御答ヲ願ヒタイト云フヤウナ御
話デアリマシタガ、私ハ豫算委員長トシテ關聯シタ點ヲ御答ヘ致シテ、委員
長ヲ離レタ個人トシテノ御答ハ、先例モ無イコトデアリマスカラ、致シマセ
ヌ積リデ居リマス、豫算委員會ノ會議ノ整理ハ委員長ノ責任デアリマスカラ、
之ニ關シタコトハ御答ヘシナケレバナラヌト考ヘマス、卽チ總會モヤリ方ニ
依ッテハ伸縮自在デハナイカト云フ御質問ガアリマシタガ、是ハ伸縮自在デ
ハナイト私ハ考ヘマス、又現ニ豫算委員長トシテ責任ヲ取ッテ致シテ居リマ
ス以上、强ヒテ之ヲ延バシ、强ヒテ縮メルト云フヤウナコトハ、私ハ致シテ
居リマセヌ積リデゴザイマス、是ガ延ビマスノモ延ビマセヌノモ、愼重審議
ノ經過如何ニ依ルモノデゴザイマシテ、又延バス場合ニハ必ズ豫算委員會ノ
總會ニ御諮リヲ致シマシテ、其決ヲ俟ッテ審議ヲ延バシテ居リマスノデ、委員
長ノ獨斷ニ依ッタコトハナイト考ヘル次第デゴザイマス、又二十一日間ニ之ヲ
議了スルト云フコトニ決メテアルノデハナイコトハ、此今囘ノ只今上程シマ
シタ議院法改正ガ······審査期限ノ改正ガ出テ居リマスノデ分ッテ居リマスノ
デアリマスガ、イツモ延ビルカト云フト、必シモサウデナイヤウデアリマス、
帝國議會開ケテカラ、大分貴族院ニ於テ期限ヲ付セズ審議シタ場合モアリ、
又期限以內ニ之ヲ審議シ終ッタコトモアルノデゴザイマス、必ズ延ビルノガ
例デアルト云フヤウナ譯ニハナッテ居ラナイノデアリマス、例ヘバ第三十議
會ニ於テハ、期限ヲ付セズシテ豫算ノ會議ヲ開イテ居ッタ例モアルノデアリ
ママ、大體此二十一日ニナッタト云フコトハ、第四十議會以來ノコトニ屬シ
テ居リマシテ、其以前ニハ或ハ十七日、或ハ二十日、二十二日ト云フ風ナコ
トモアリマシタノデアリマス、是ハ大體無期限デ以テ審議ヲスルト云フコ
トハイカヌト云フノデ、委員長ハ慣例ヲ以テ二十一日間トシテ審議シタイト
云フコトデ動議ヲ出シマシテ、是モ委員長ノ獨斷デハナク、貴族院ノ諸君ニ
御諮リヲシテ······本議場ニ於テ二十一日ト云フコトニ大體決マッテ、豫算委
員ニ審議ガ廻ッテ居ル次第デゴザイマス、ソレガ其愼重審議ノ結果延ビル場
合ハ己ムヲ得ナイノデアリマスガ、是モ同樣、大體先程總理大臣ヨリモ
高橋君ヨリモ御說明ガアリマシタ如ク、此豫算審議ト云フモノガ、衆議院デ
二十一日デアレバ、貴族院ニ於テモ二十一日デアッテ宜カラウヂヤナイカト
云フコトハ、是ハ一ツハ時期ニモ關係スルト思フノデアリマス、卽チ豫算ガ
前ニ廻ルノト後ニ廻ルノトハ、大體ニ於テ三箇月ノ議案審議ノ期間ガアリマ
スノデ、期限ガ極ッテ居リマスカラ、是ハ大變ナ違ヒデアルト思フノデアリマ
ス、二月ヲ一月ニスル譯ニハ行カナイノデアリマス、二月ニナッテ初メテ是
ガ豫算委員會ニ移ッテ參ルノデアリマスカラシテ、議院ガ段々忙シクナリマシ
テ、豫算ニ關聯シタル重要ナル案ノ如キハ、往々ニシテ此最後ニ廻ッテ付議サ
レテ來ルノデアリマス、サウ云フ次第デアリマスカラ、第一ニハ、總會ニ於
ケル愼重審議ノ結果已ムヲ得ズ延ビル場合ト、第二ニハ、時期ノ前後ニ依リ
マシテ、此貴族院ノ豫算審議ガ後ニ廻サレテ居ル爲ニ、且又衆議院ヨリ送付
サレル豫算ニ關聯シタル案ガ、期限ノ迫ッテ居ル時期ニ廻ッテ來ルト云フヤウ
ナ場合ガアリマスノデ、其爲ニ已ムヲ得ズ今日マデ遲レテ居ルヤウナ次第デ
アラウト、私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此二ツノ理由ニ依ッテ、二十一日間
デハ最近ニ於テハ審議ガ出來テ居ラナイコトト考ヘルノデアリマス、一ツハ
我國ノ豫算ガ、今囘ニ於キマシテハ御承知ノ如ク十七億ニモナッテ居ル次第
デアリマシテ、政治モ複雜ニナリ、從テ豫算モ複雜ニナッテ居リマスノデ、
サウ簡單ニ、衆議院ニ於テハ二十一日デアルカラ、其時期如何ヲ顧ミズ、
貴族院ニ於テモ二十一日デ之ヲ議了スベシト云フ譯ニハ、或ハ行カナイノデ
アラウト考ヘル次第デアリマス、大體御質問ノ御趣旨ニ對シマシテノ御答辯
ハ是デ終リタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高橋琢也君ニ議長ハ伺ッテ見タイト存ジマス、只
今高橋君ノ演壇ニ於テ御述ベニナッタコトハ、各院ノ提出議案ノ說明ニ關ス
ル何カ便利ノ方法ハナイカト云フコトヲ、議長ノ意見ヲ御尋ネニナッタト了解
シテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=46
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047・高橋琢也
○高橋琢也君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 然ラバ議長ハ高橋君ニ御答ヘ致シマス、現在ノ法
規ノ上カラ申シマシテハ、各院ノ議員諸君ノ相互ノ御申合セニ依リマシテ、
議場ニ於テノ說明者ヲ便宜御引受ケニ相成ルヨリ外ニ途ハナイト考ヘマス、
左樣御了承ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=48
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049・高橋琢也
○高橋琢也君 先刻若槻總理大臣ノ御答ハ大體了承イタシマシタガ、其中デ
議院法ノ制定ニナッタ時ノコトハ知ラナイ、其精神ガ何レニ在ルカ、ソレハ分
ラヌト仰シヤルヤウナ意味デゴザイマシタガ、旣ニ第五十議會デモ第五十一
議會デモ政府ガ御提案ニナタット同一ノ、本日ノ議案デゴザイマスト云フコト
ハ既ニ若槻總理大臣モ御述ベニナッテ居ル、サスレバ此御提案ニナリマス
ル前、而モ五十議會デ否決ニナッタカラ、五十一議會デハ殊更ニ愼重ナル御調
査ヲナスッテ御提出ニナッタト云フコトハ、當然ノコトト存ジマス、二囘マデ
モ政府デ法案ヲ御出シニナッテ御改正ニナラウト云フノニハ、元ノ法律ノ出
來タ精神ハドウ云フコトデアルカ、卽チ現在ノ議院法ノ精神ナルモノハ此所
ニ在ルノデアルト云フヤウナコトハ、政府デ篤ト御調ベニナッタ筈デナイカ
ト存ジマスガ、先刻ノ御答辯デハ、ドウモ其邊ガ私ハ少シ了解シ兼ネマスノ
デ、今一應御答辯ヲ煩ハシタイ、ソレカラ林伯爵ハ、個人デナク豫算委員長ト
シテ御答辯ヲ下スッタト云フコトハ、誠ニ私ハ滿足イタシマシタ、就キマシ
テハ法案ガ段々日時ガ遲レルト同時ニ貴族院ニ輻湊シテ來ル、輻湊シテ來レ
バ、從テ法案ノ方ノ委員會ガアルカラ、豫算委員ノ方ニモ自然影響スルト仰シ
ヤルヤウナ意味ノ御答デアッタヤウニ拜承イタシマスル、是ハ尤モ千萬ナコ
トデゴザイマシテ、私等モ其點ヲ考ヘヌデハゴザイマセズ、議員ノ職責ト致
シマシテ、或ハ時間ヲ延バシ、或ハ土曜日ハ終日ヤッテ日曜日ハ半日ヤル位
ニ、豫算委員會ノアル間位ハ特別ナ皆樣ノ御勉强ヲ戴クト云フコトモ、是ハ出
來易イコトト存ジマスノデ、出來得ル限リ議員諸君ノ御勉勵ニ依ッテ、成ル
タケ期日ヲ定メテ其期日內ニヤリ付ケルト云フ御覺悟アラムコトヲ、私ハ茲
ニ希望イタシテ置キマス、ソレカラ議長閣下ノ只今ノ御答モ誠ニ私ハ滿足イ
タシマシタ、尙ホ此上兩院ノ提出案ニ對シマスル說明者竝ニ答辯ヲ爲ス資格
ノアルモノニ付キマシテ、便宜ナ方法ガゴザイマシタラ御取計ラヒヲ願ヒタ
イ、是ハ希望ヲ申上ゲテ置キマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=49
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050・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 高橋君ハ議院法立法ノ理由ヲ御尋ネニナッタヤ
ウニ思ヒマスノデ、私ハ當時ハ關係シテ居リマセヌカラ、ソレ故ニ先程ノ御
答ヲ致シタノデアリマス、併シ政府ガ議院法ノ精神トシテ解釋シテ居ル所ハ
何處ニ在ルカト云フコトハ、先程申上ゲタ通リデアリマス、卽チ衆議院ニ先
ヅ豫算案ヲ提出スルコトニナッテ居ル、先ヅ豫算ヲ審議スル所デ長ク審査ヲ
セラレテハ、貴族院ノ審査ニ十分ナ期間ノナイヤウニナッタンデハ宜シクナ
イト云フ趣旨ニ於テ、衆議院ノ審查ニ期間ヲ付シタモノデアラウ、斯ウ私ハ
議院法ノ精神ヲ解釋シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高橋琢也君ガ、議長ニ於テ將來便宜ヲ計レト云フ
ヤウナ御言葉ガアッタト存ジマスガ、議長ニ於テハ現在ノ法規ノ許ス範圍內
ニ於テ、何カ御話合デモゴザイマシタラバ、成ルベク御便利ヲ計リタイト考
ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=51
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052・高橋琢也
○高橋琢也君 了承イタシマシタ、私ハ是デ質問ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本釤之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=53
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054・阪本さん之助
○阪本釤之助君 本員ハ只今ノ案ニ付キマシテ政府ノ意思ヲ聽キタイト考ヘ
テ居リマシタガ、高橋君ガ縷々御質問ニナリマシテ、政府ノ意思ノアル所ハ
分リマシタカラ、別ニ質問ハ致シマセヌ
〔中村純九郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=54
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055・中村純九郎
○中村純九郞君 私ハ去ル十七日ニ、議院法第四十條ノ現行法ノ審查期間二
十一日ヲ延長セラルヽノ意思ハナキヤト云フコトヲ御尋ネ致シマシタ、本來
私ノ理想カラ申シマスルト、此議院法第四十條ト云フモノハ、餘リ憲法上カ
ラ良イ法律デハナイト信ジテ居リマス、御承知ノ通リ憲法ノ議會ニ與ヘラレ
テ居ル大政參贊權ト云フモノハ、容易ニ是ガ繰上ゲラレタリ、短縮セラレタ
リスベキモノデナイ、停會カ解散カニ依ッテ初メテ此議權ヲ失フヤウナ譯デ、
此性質論ト云フモノハ、餘程議會······議院トシテハ大切ナモノデアル、此議
會開會中ト云フモノハ、銘々貴衆兩院諸君ハ格別ナル保護ヲ得テ居ル、現行
犯ニ非ザレバ逮捕監禁モサレナイ、又議院內ニ於ケル言動モ、外ニ發スルコ
トヲ除クノ外ハ是モ亦勝手ニ······勝手ニト云フト少シ語弊ガアリマスケレド
モ、隨分自由ナル發言權ヲ憲法ハ保護シテアリマス、大切ナル權限ヲ與ヘラ
レテアリマス、ソレヲ法律デ以テ參贊權ヲ縮小スルト云フコトハ、憲法上餘
程避ケベキコトデアルト云フコトヲ信ズルノデアリマス、憲法上······違憲デ
ハナイカト云フ感ジモアリマスルガ、唯斯ウ書イテアリマス、豫算委員ノ審
査權ヲバ二十一日ニスルト云フノデスカラ、豫算委員ト云ヒマスレバ六十三
名ノ豫算委員デスカラ、其豫算委員ノ審查スルノハ、申サバマア下審査、下
審査ト云フヤウナモノデ、本審査デハナイノデアルカラシテ、僅ニ······憲法上
違反ノ法律デハナイト云フコトガ僅ニ言ヘルカモ知レマセヌ、何レノ國······
外國ノ例ヲ見マシテモ、何レノ國ノ例ニモ、此審査期間ヲ設ケタモノハ蓋シ
無イト存ジマス、有ラルベキコトデハナイノデス、十分ニ議會開會中ニ豫算
ヲ審議スルノ權ヲ持ッテ居ル、大體ニ於テカラ申シマスルト、此議會政治ト
云フモノハ、豫算ニ始マッテ豫算ニ終ルトモ云フベキ、豫算ノ審議ト云フモノ
ハ議會ノ骨子デゴザイマス、之ヲ縮小スルト云フコトハ、言ヒ換ヘテ見ルト
議員ニ對スル篏口法ト云フコトニモナリマセウ、何故ニ衆議院及政府ハ之ニ
期間ヲ設クルコトヲセラルルカ、只今總理大臣ノ御答辯ニ依ルト、感ジガ······
感ジガ惡イ、衆議院ニ二十一日ノ制限ヲシテアルノニ、貴族院ニ二十一日ノ
制限ヲ置カナイト云フノハ、何ダカ感ジガ······公平ナ立場カラ感ジガ惡イヤ
ウデアル、妙ナ御答デアルト私ハ存ジマス、卽チ不自由ヲバ銘々二ツニ分ケ
テ、其不自由ヲ折半シタラ宜イヂヤナイカト云フヤウナ、斯ウ云フヤウナ話、
總理大臣ハ豫算審査ニ付テハ、政府ニハ一向不便宜ナコトハナイ、二十一日
デ宜シイ、サウデゴザイマセウ、是ハ政府ノスルコトデナイ、豫算ヲバ議會ガ
審議スル、審查スルコトデスカラ······、所ガ非常ニ議會ハ此審査ノ期限ノ短
キノニ不自由ヲ感ジテ居ルノデス、不自由ヲ感ジテ居ルカラ、衆議院ハ停會
中ハ豫算審査期限ニ入レナイトカ、或ハ停會後ハ豫算ヲ撤囘シテ、モウ一遍
出シ直シテ吳レト云フヤウナ譯デ、卽チ二十一日ノ審査期限ヲ成ルベク用ヰ
ヤウト云フ所カラ、大變不自由ヲ感ジテ居ル、貴族院モ只今委員長カラ報〓
セラレタ通リニ、大抵此二十一日ト云フ、衆議院ノ先議權ノ二十一日ト云フ
日限ヲ尊敬シテ、矢張リ二十一日ニヤッテ居ラレマス、ソレデ衆議院ガ三十
日ニ改正ニナッテ延長セラレテ、衆議院ガ三十日ニ御決メニナルナラバ、貴族
院ノ豫算審議ヲスルノニ、誠ニユックリニナッテ宜シイ、四十日ニナレバ尙ホ
宜シイ、尙ホソレニシテモ會期ガ九十日間ノ期間ハアリマス、四十日デ、例
ヘバ同ジヤウニ、貴族院モ衆議院ノ通リ同ジヤウナ日子ヲ要シタトシマシテ
干、八十日デアリマス、先程申シマシタ通リニ、是ハ此議院法四十條ト云フ
モノハ、豫算委員會デ豫算ノ仕事ヲスルノ便宜ノヤウナモノデ是ハゴザイマ
スカラシテ、矢張リ貴族院ノ豫算議定細則ト云フモノガアルガ、アレガ誠ニ
賢明ナル貴族院規則デアルト私ハ信ジマス、矢張リアヽ云フモノニ依ツ
テ、サウシテ各議院々々各〓ノ、自カラ自己ノ内規トシテ取決メルノハ宜シウ
ゴザイマスガ、之ヲ法律ヲ以テヤルト云フコトハ聊カ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=55
-
056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) チヨット中村君ニ申シマスガ、政府ニ對スル質問デ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=56
-
057・中村純九郎
○中村純九郞君 政府ニモ御尋ネシマスシ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=57
-
058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 意見ノ御演述ハ御差控ヘヲ願ヒマス、只今ハ御意
見ヲ御述べニナル機會デハナイノデアリマスカラ、單ニ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=58
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059・中村純九郎
○中村純九郞君 ハイ······ト云フヤウナモノデゴザイマシテ、政府ノ今ノ感
ジノ、卽チ不自由ヲ折半スルト云フヤウナ御意見ハ、甚ダ私ニハ了解ニ苦ム
所デゴザイマシテ、又政府ニ御尋ネシマスノハ、寧ロ之ヲ延長セラレルカ、
少クトモ······此議院法四十條ヲ全廢セラレルカ、少クトモ二十一日ヲ延長セ
ラレテハドウデアラウカト云フコトノ御意見ヲ政府ニ伺ヒマス、モウ一ツ今
延長カ若クハ廢止セラレルコトヲ希望イタシマスルノハ、只今此現行法ノ二
十一日ト云フノハ、豫算ノ總額ガマダ極ク少イ時分ニ決メラレタモノデゴザ
イマシテ、今ヤ本年度ノ豫算ハ十七億三千万圓ト云フモノヲ突破シテ居ル、
尙ホ特別會計ノ計數ヲ入レマスト、三十三億万圓以上カラニナリマス、斯ウ
云フヤウナ尨大ナ金額ヲ見積ラレマスト、從テ其事務モ複雜、又審査ノ期間ヲ
要スルト云フコトハ當然ナコトデゴザイマス、ソレヲ何時マデモ二十一日デ
之ヲ喰ヒ止メルト云フコトハ、豫算ノ審議ヲシテ粗漏ナラシムルト云フヤウ
ナコトニ陷ル外ハナイ、人間ノ能力トシテハ、八千万圓臺ノ審査ヲ行ナッテ
居ッタ人ガ、今日八十倍、百倍ニ近イ計數ヲ審査スルト云フコトハ、到底人間
ノ能力デハ出來ナイト云フコトノ結論ニナリマス、故ニ私ハソレニ持ッテ來
テ······ソンナ狀態デアリマスニ持ッテ來テ、サウシテ貴族院ヲモ亦其不自由
ヲ感ゼシメテ、貴族院ニ於テ迄モ其期限ヲ設ケムト欲スルト云フコトハ、何
ノ理由デアルカト云フコトヲ私ハ重ネテ政府ニ伺ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=59
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060・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 憲法ニ依リマスト云フト、議會ノ通常會ハ三箇
月ト云フコトガ期限ニナッテ居リマス、而シテ豫算ハ通常議會ニ於テ審議セ
ラレルト云フコトニナッテ居リマスカラ、議會ノ會期ニ限リガアリマス以上
ハ豫算ノ審査ニ於テモ、凡ソ限リガアリマセヌト云フト、三箇月ノ期間ニ兩
院トモ愼重ニ審議ヲサレルコトガ出來ナイデアラウト存ジマス、此意味ニ於
テ政府ハ、豫算審査ノ此議院法ノ規定ヲ廢止スルト云フ考ハ持タナイノデア
リマス、又當初ハ是ガ二週間デアリマシタモノガ、今日ハ三週間ニナッテ居
リマス、是ガ短イ故ニモウ少シ長クシタラドウカト云フ中村君ノ御意見ノヤ
ウデアリマスガ、今日迄ノ實際ノ經驗ニ依リマシテ、二十一日間ガ短クテ審
議ガ盡セナイト云フ事情ニナッテ居ルト存ジマセヌ故ニ、只今政府ニ於テ此
期間ヲ延長スル考ヲ持タヌノデアリマス、衆議院ガ貴族院ニ於テモ審査期間
ヲ設ケムトスルコトニ、政府ハ同意シタノハドウ云フ譯デアルカト云フ御質
問ニ對シテハ先程高橋君ニ答ヘマシタ通リ、兩院ノ間、同ジ取扱ニナッテ居
ルト云フコトガ宜シカラウ、其間ニ差別ガアルト云フヤウナ考ヲ懷カシムル
コトハ宜シクナカラウ、斯ウ云フ趣旨ニ依ッテ政府ハ賛成ヲシテ居ルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=60
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061・小野塚喜平次
○小野塚喜平次君 極メテ簡單ニ、質問ヲ此席カラ總理大臣ニ致シタイト思
ヒマスノデスガ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=62
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063・小野塚喜平次
○小野塚喜平次君 此問題ニ付テノ貴族院ノ態度ハ、昨年ノ態度ハ感心シナ
イト思ヒマス、何トナレバ一昨年ト其態度ヲ異ニシテ居ルカラデアリマス、其
理由ヲ明カニセズシテ異ニシテ居ルト云フ點ニ於テ、貴族院ノ態度ハイケナ
イト思ヒマス、併シ貴族院ノ主張ハソレ自身、審査期限ヲ政府及衆議院ノ言
フガ如クニ制限スルノハイケナイト云フ內容的ノ理由、ソレハ相當ニ尊重ス
ベキ理由ヲ持ッテ居ルト思ヒマス、然ラバ之ニ反對スル所ノ衆議院及政府ノ
言フ所ハ無理デアルカト申シマスト云フト、私ハソレニモ相當ノ理由ガアル、
謂ハバ五分五分デアルト思フノデアリマス、而シテ此問題ソレ自身ガ左樣ニ
重要デアラウトハ思ヒマセヌ、併シ三度其問題ガ、衆議院ガ全會一致デ可決
シテ此方ニ廻ッテ來タ、ソレヲ如何ニスベキカト云フ點ニ於テ、此問題ノ重要
サガ非常ニ增シテ來ルト思フノデアリマス、其點ニ付キマシテ貴族院ノ諸君
ガ能ク、眞ニ深甚ナル考慮ヲ以テ此問題ヲ如何ニスベキカト云フコトヲ御考
ヘニナルノガ必要デアリ、又ソレハ御考ヘニナルデアラウト思フノデアリマ
ス、デ私ハ其諸君ガ御考ヘニナッタ結果ガドウナルカト云フコトハ、少シモ
分リマセヌガ、假ニ斯ウナル、斯ウナルトシタナレバ政府ハドウ云フ御考デ
アラウカト云フコトヲ質スコトハ、私ガ此問題ニ對シテ態度ヲ決メルコトニ
非常ニ關係ガアルカラ、總理大臣ニ御尋ヲシタイノデアリマス、假ニ貴族院
ガ但書ヲ附ケテ、貴族院ノ決議ニ依ッテ幾ラカ延バスコトガ出來ル、一昨年
一週間以內ト云フ但書ヲ付ケタヤウデアリマスガ、是ガ二週間モ三週
間モト云フコトニナリマスト、別ノ問題ニナリマスガ、例ヘバ三日トカ五
日トカ云フコトヲ限ッテ、原則トシテハ原案デ宜シイ、但シ特別ノ事情アリ
ト貴族院ガ認メタトキニ於テハ、其決議ヲ以テ一週間以內ノ間ニ於テ······ソ
レハ正確ニハ決議ノ時ニ決マリマセウガ、ソレ丈ノ期日ヲ延バスコトガ出來
ルト云フコトニ致シマシテ、同時ニソレト同ジヤウナ規定ヲ此議院法四十條
ニ加ヘマシテ、衆議院ニ於テモ矢張リ同ジヤウナ特別ノ事情アリトシタトキ
ニ·衆議院ノ決議ヲ以テ貴族院ト同ジ期間、例ヘバ五日ナラ五日ト云フモ
ノヲ延バスコトガ出來ルト云フ修正ヲ、假ニ貴族院ガ可決イタシタト致シマ
ス、其場合ニ村テ三ツノ事ヲ御尋ネ致シタイト思ヒマス、第一ハ、サウ云フ修
正ニ政府ハ御賛成デアリマセウカ、サウ云フコトガ假ニ可決ニナッタトシタ
トキニ·······第二ニハ······第一ニ單ニ御贊成デアリマセウカ、同意サレルノデ
アリマセウカト云フコトデアルガ、第二ニ御尋ネシタイコトハ、其同意ガ消
極的ニサウナレバ仕方ガナイ、ソレデモ宜イト云フコトニ止マラズシテ、政
府ハ更ニ一層積極的ニ、此問題ヲ何時マデモ此儘ニシテ放置シテ置クト云フ
コトハ面白クナイカラシテ、何トカシテ纒メヤウ、謂ハバ妥協シテ圓滿解決
ヲ付ケヤウト云フ御考ヲ以テ、全力ヲ盡シテ、衆議院ヲシテ貴族院ノ修正ニ
同意セシムルコトニ積極的努力ノ態度ヲ執ラレルノデアリマセウカ、ドウデ
アリマセウカト云フコトガ第二ノ點デアリマス、第三ノ點ハ、積極的態度ヲ
執ラルヽト致シマシテ、卽チ第二ノ問ヲ肯定サレマシテ、其次ニ起ル御問デ
アリマスガ、政府ハ全力ヲ盡シテ御盡力ナサレマシタ結果、衆議院ハソレニ
同意セラレルデアリマセウカ、ソレハ衆議院ノコトデアリマスカラシテ、總
理大臣ト雖モ、今カラシテ御確答ハムヅカシイコトデアラウト思ハレマスガ、
只今總理大臣ノ御考ニ於テハ、非常ニ色〓ノ事情ガ錯綜シタリ、新ナル事件
ガ起ルト云フヤウナコトニナレバ、是ハ別問題デアルガ、只今ノ事情ノ下ニ
於テ、今ノ政府ノ考デハ、政府ハ全力ヲ盡シテ何トカ妥協的ニ解決シヤウ、
貴族院ハ幸ヒサウ云フ態度ニ出タト云フ時ニ於テ、全力ヲ盡サレマシタトシ
テ、衆議院ハソレニ同意スルデアリマセウカ、ソレトモ衆議院ハ尙ホ「ノー」
ト云フ風ナ態度ヲ執ッテ行クデアリマセウカト云フ、總理大臣ノ只今ノ御見込
ヲ伺ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣若槻禮次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=63
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064・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 只今ノ御質問ハ、假定ノ下ニ於テ御質問ニ相成ツ
タンデアリマスガ、其意味ニ於テ私モ御答辯ヲ申上ゲタイト思フノデアリマ
ス、議院法ニ於テ、衆議院ニハ二十一日ト云フ期限ガアル、貴族院ニモ亦之
ヲ同樣ニ期限ヲ設ケヤウトスル、斯ウ云フコトニ對シテ政府ハ同意ヲシテ居
ル、其場合ニ若シ貴族院、衆議院共ニ、其二十一日ニ何カ必要ナ事情ガアッタ
ナラバ一週間ナリ五日ナリ延長スルコトガ出來ルト云フ但書ヲ加ヘルト云フ
コトニナッタラバ、政府ハソレニ同意スルヤ否ヤ、私ハ左樣ナ但書ヲ附加ヘラ
レテ參リマシテモ、兩院ノ間ガ同樣デアリサヘスレバ宜シカラウト考ヘテ居
ルノデアリマス、併シ是ハ假定ノ問題デアリマス、貴族院デサウ御議決ニナ
リマスカドウカ存ジマセヌガ、サウナリマスナラバ、私共モソレデ一向差支
ナイコトト思フノデアリマス、又貴族院デサウ云フヤウニ可決セラレタ場合
ニ、衆議院ニ於テ其貴族院ノ議決ニ對シテ贊成スルヤウニ政府ハ努力ヲスル
カ、ソレハ固ヨリ說明ヲ致シマシテ、貴族院ノ意ノアル所ヲ十分ニ述ベテ、
衆議院ノ人ガ了解セラルヽヤウニ努メルコトハ、固ヨリ左樣イタス積リデ居
リマス、衆議院ハ果シテ之ヲ容ルヽデアラウヤ否ヤ、此點ダケハドウモ、假
定ノ上ニ於テ更ニ又一段ノ假定ヲ加ヘテ居ルノデアリマスカラ、私ハ玆デ何
トモ申上ゲ兼ネルノデアリマス、併シ兩院ノ間ガ同ジヤウナ規定デアリマシ
タナラバ、衆議院ニモ大シテ異論ハナイデナカラウカト想像イタシマスケレ
ドモ、玆デ何トモ申上ゲ兼ネル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質疑モ無イト認メマスカラ、本案ノ特別委
員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
議院法中改正法律案特別委員
公爵近衞文麿君侯爵佐佐木行忠君子爵靑木信光君
男爵阪谷芳郞君小野塚喜平次君倉知鐵吉君
南弘君馬場鍈一君土田萬助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十一ヨリ第十七マデ、請願會議
意見書案
船舶職員法改正ノ件
大阪市港區市岡町乙種船長成本新平外千五十一名呈出
右ノ請願ハ船舶職員法制定以來本邦海運界ノ進步發展著シキモノアルニ拘
ラズ其ノ間何等著シキ改正ナク加之近時小型船舶漸減ノ結果ハ乙種船長以
下ノ免狀行使範圍ヲ益狹少ナラシメ延イテ多數職員ヲ悲境ニ陷レシムル等
將來ニ惡影響ヲ及ス虞尠カラサルハ甚遺憾ナルヲ以テ時勢ニ順應スルヤウ
速ニ同法ヲ改正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スベ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
靑森縣西津輕郡稻垣村ニ登記所設置ノ件
靑森縣西津輕郡稻垣村長長內長五郞呈出
右ノ請願ハ靑森縣西津輕郡稻垣村ハ地域廣大ニシテ戶口亦多ク登記事務繁
多ナルニ拘ラス管轄登記所ヲ距ルコト遠ク且通路不便ノ爲村民ノ困難尠カ
ラサルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ同村及隣村ノ一部ヲ管轄スル登記所ヲ同村
ニ設置セラレタク所要ノ敷地ハ寄附スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
屯田兵ノ恩給ニ關スル件
北海道札幌郡琴似村士族中島德次郞外七十二名呈出
右ノ請願ハ屯田兵ハ北疆ノ警備及開拓ニ任シ多大ノ辛勞ヲ爲シタルニ拘ラ
ス恩給法改正ノ結果現役期間ハ其ノ後公務員トナリタルモノノミ其ノ在職
年ニ通算セラルルニ至リタルモ他ニ通算セラルヘキ在職年ナキ者ノ何等ノ
恩典ニ浴シ得サルハ權衡上甚遺憾ナルニ依リ公務員ニ職ヲ奉セサル者ニ對
シ一時恩給ヲ付與セラルル等實行セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
鹿兒島縣揖宿郡喜入村ニ登記所設置ノ件
鹿兒島縣揖宿郡喜入村長前田慶吉呈出
右ノ請願ハ鹿兒島縣揖宿郡喜入村ハ近時不動產ノ登記事項夥多ナルニ拘ラ
ス管轄知覽區裁判所ヲ距ルコト遠ク殊ニ境界地方ハ山岳起伏セル爲村民ノ
不便不利尠カラサルハ甚遺憾ナルヲ以テ同村ニ登記所ヲ設置セラレタク所
要ノ敷地及廳舍ハ無償提供スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
江差、本〓間竝厚澤部、上磯間殖民軌道敷設ノ件
北海道檜山郡厚澤部村平民官吏關川盛外百九名呈出
右ノ請願ハ北海道檜山郡江差町ヨリ同郡厚澤部村ヲ經テ函館本線鐵道本〓
驛ニ至ル殖民軌道竝厚澤部村ヨリ分岐シ同村大字館村ヲ經テ上磯線鐵道上
磯驛ニ至ル殖民軌道ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル農產、林產等ノ資源開發
上至大ノ貢獻ヲ爲スモノナルニ依リ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
福山、三次間鐵道敷設ノ件
廣島縣福山市長代理助役菊田謙次郞外五十四名呈出
右ノ請願ハ豫定線福山、出雲今市間鐵道中殊ニ福山、三次間ハ山陰、山陽
ノ兩道地方ト四國地方トノ交通連絡上至大ノ便益ヲ與フルノミナラス沿線
地方ニ於ケル富源ヲ開發シ地方發展上重要ノ線路ナルヲ以テ之ヲ敷設セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
鍼灸師法制定ノ件
大阪市北區南森町士族車戶喜一郞外千九百八十三名呈出
右ノ請願ハ鍼灸師ハ其ノ職責重大ナルニ拘ラス斯業ニ關スル法制ノ未整備
セラレサルハ國民保健上甚遺憾ナルニ依リ速ニ鍼灸師法ヲ制定シテ其ノ資
格資格試驗竝同師會ノ設置等其ノ他ノ事項ニ關シ請願人等所案ノ如キ要
項ヲ具備セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願ハ請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、次ノ議事日程ハ決定次第
御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後零時十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01619270228&spkNum=68
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