1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年三月三日(木曜日)
午前十時十二分開議
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議事日程 第十七號 昭和二年三月三日
午前十時開議
第一 不良住宅地區改良法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二 國債整理基金特別會計法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 海外移住組合法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 河川法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 産業組合中央金庫法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
去月二十八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又
可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
大正十五年度歲入歲出總豫算追加案(第二號)
昭和元
大正十五元年度各特別會計歲入歲出豫算追加案(特第一號)
昭和
豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一號)
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者
ノ戶籍等ニ關スル法律案
不動產登記法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル船舶職員法改正ノ請願外六件ノ
請願ハ各〓意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日決算委員第一分科會ニ於テ主査ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ男爵北河原公平
君當選セリ
同日豫算委員長ヨリ左ノ如ク分科擔當委員ヲ選定シタル旨ノ報〓書ヲ提出
セリ
第一分科擔當委員
男爵赤松範一君
第五分科擔當委員
吉田羊治郞君
同日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
河川法中改正法律案可決報告書
一昨一日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
計理士法案外二件特別委員會
委員長子爵曾我祐邦君
副委員長和田彥次郞君
輸出絹織物取締法案特別委員會
委員長子爵前田利定君
副委員長淺田德則君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
不良住宅地區改良法案
國債整理基金特別會計法中改正法律案
海外移住組合法案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
產業組合中央金庫法中改正法律案
昨二日請願委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第七囘報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、一昨一日議員從三位動二
等中村是公君薨去セラレマシタ、仍テ弔辭ヲ贈ルコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
北京市立水発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 一昨一日、西野元君、藤山雷太君、何レモ病氣ニ
付キ計理士法案外二件ノ特別委員辭任ノ申出ガゴザイマシタ、之ヲ許可スル
コトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、就キマシテハ兩君ノ補闕
トシテ森平兵衞君並ニ內藤久寛君ヲ指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、不良住宅地區改良法案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會
不良住宅地區改良法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月一日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
不良住宅地區改良法案
不良住宅地區改良法
第一條公共團體ハ不良住宅密集シ衞生、風紀、保安等ニ關シ有害又ハ危
險ノ虞アル一團地ニ付本法ニ依リ改良事業ヲ行フコトヲ得
公共〓體前項ノ規定ニ依リ改良事業ヲ行ハントスルトキハ主務大臣ニ申
請シテ地區ノ指定ヲ受クベシ
第二條主務大臣特別ノ必要アリト認ムルトキハ前條ノ申請ニ依ラズシテ
地區ノ指定ヲ爲シ其ノ地區ノ屬スル公共〓體ニ對シ本法ニ依ル改良事業
ノ施行ヲ命ズルコトヲ得
第三條主務大臣前二條ノ規定ニ依リ地區ノ指定ヲ爲シタルトキハ左ノ事
項ヲ公告スベシ
一地區ノ區域
二改良事業施行者
第四條前條ノ公〓アリタルトキハ事業施行者ハ一年以內ニ改良事業方法
ヲ定メ主務大臣ニ認可ノ申請ヲ爲スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ事業施行者ハ三月以内ニ事業ニ著手スベシ
事業施行者第一項ニ規定スル期間內ニ改良事業方法ノ認可申請ヲ爲サズ
又ハ第二項ニ規定スル期間內ニ事業ニ著手セザルトキハ主務大臣ハ地區
ノ指定ヲ取消スコトヲ得
第五條事業施行者ハ地區內居住者ヲ一時收容スルニ必要ナル設備ヲ設ク
ベシ
特別ノ事情アルトキハ事業施行者ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ設備ヲ
設ケザルコトヲ得
第六條事業施行者ハ地區內ニ於ケル土地ノ區劃形質ノ變更、道路下水ノ
施設、地上物件ノ除去其ノ他地區改良ノ爲必要ナル事業ヲ行フベシ
第七條事業施行者ハ地區內居住者ノ居住ニ充ツベキ住宅ヲ其ノ地區內ニ
建設スベシ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルト
キハ地區外ニ之ヲ建設スルコトヲ得
前項住宅ノ數ハ地區ノ指定アリタルトキ現ニ其ノ地區內ニ居住スル者ノ
世帶數ヲ下ルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八條改良事業ヲ施行シタル公共〓體ハ前條ノ規定ニ依リ建設シタル住
宅ノ管理方法ヲ定メ監督官廳ノ認可ヲ受クベシ
第九條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ事業施行者ニ對シ其ノ事業ノ施行ノ
爲支出スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助ス
第十條本法ニ依ル改良事業施行ノ爲必要アルトキハ事業施行者ハ地區內
ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
第十一條前條ノ規定ニ依リ收用シタル土地ニシテ改良事業トシテ行フ建
物ノ建設及公共ノ用ニ供セザルモノハ第六條ノ事業ノ完了後之ヲ賣却ス
ベシ
前項ノ事業ノ完了ハ主務大臣ノ認定ヲ受クベシ
第十二條前條ノ規定ニ依ル土地ノ賣却ハ左ニ揭グル者ニ對シ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ競爭入札ニ依リ之ヲ行フベシ
-改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ノ全部又ハ一部ヲ其ノ土地收
用ノ際所有シタル者又ハ其ノ相續人
二改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ニ關シ其ノ土地收用ノ際權利
ヲ有シタル者(擔保權者ヲ除ク)又ハ其ノ相續人
三改良事業施行ノ爲收用セラレタル土地ノ上ニ存シタル建物ヲ其ノ土
地收用ノ際所有シタル者
前項ニ揭グル者一人ナルトキハ隨意契約ニ依リ賣却スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依リ賣却スルコトヲ得ザル土地ノ賣却ニ付テハ一般ノ競
爭入札ニ依ルベシ
第十三條第五條ノ規定ニ依ル一時收容設備ノ爲特別ノ必要アルトキハ事
業施行者ハ地區附近ノ土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ヲ使用スルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ使用スル土地又ハ建物其ノ他ノ工作物ハ主務大臣決定
シ之ヲ公〓スベシ
第十四條本法ニ依ル改良事業施行ノ爲必要アリト認ムルトキハ行政廳ハ
地區內ノ建物其ノ他ノ工作物ノ所有者ニ對シ其ノ移轉ヲ命ジ又ハ其ノ占
有者ニ對シ立退ヲ命ズルコトヲ得
行政執行法第五條及第六條ノ規定竝ニ之ニ基キテ發スル命令ハ行政廳ガ
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ强制スル場合ニ之ヲ準用ス
第十五條第十條又ハ第十三條第一項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シテ
ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外土地收用法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依ル土地收用法ノ適用ニ付テハ建物其ノ他ノ工作物ハ之ヲ
土地ト看做ス
第十六條第十條又ハ第十三條第一項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ付テハ
第一條第二項若ハ第二條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ地區ノ指定又ハ第十三
條第二項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ決定ヲ以テ土地收用法第十二條ノ規定
ニ依ル事業ノ認定、第三條又ハ第十三條第二項ノ規定ニ依ル公〓ヲ以テ
土地收用法第十四條ノ規定ニ依ル公告ト看做ス
第十七條第十四條ノ規定ニ依リ移轉又ハ立退ヲ命ゼラレタル者其ノ移轉
又ハ立退ニ因リ損害ヲ受ケタルトキハ事業施行者ハ其ノ通常受クベキ損
害ニ限リ之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ニ依ル補償金ハ收用審査會之ヲ決定ス
第十八條第十四條ノ規定ニ依リ行政廳ノ爲シタル處分ニ對シ不服アル者
ハ訴願ヲ提起シ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提
起スルコトヲ得
第十九條第十七條第二項ノ規定ニ依ル收用審査會ノ決定ニ對シテ不服ア
ル者ノ出訴ニ付テハ土地收用法第八十二條第一項及第二項ノ規定ヲ適用
ス
第二十條公益法人ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ本法ニ依リ改良事業ヲ行フコ
トヲ得
本法ハ第二條ノ規定ヲ除クノ外前項ノ認可ヲ受ケタル法人ニ之ヲ適用ス
但シ第一條及第八條ノ規定ノ適用ニ付テハ同條中公共〓體トアルハ前項
ノ認可ヲ受ケタル法人トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=6
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007・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今上程ニ相成リマシタ不良住宅地區改良法案提出
ノ理由ヲ說明申上ゲマス、住宅政策ハ國民ノ實生活ニ關スル所最モ緊密ナル
モノガアリマスノデ、政府ハ常ニ深ク意ヲ玆ニ用ヰ、各般ノ施設ヲ講ジマシ
テ、社會ノ福社增進ヲ圖ルニ於テ遺漏ナカラムコトヲ期シテ居ル次第デアリ
マン、然ルニ都市ノ人口ノ急激ナル增加ニ伴ヒマシテ、各地ニ不良住宅ノ密
集地區ヲ出現スルニ至ゞタノデアリマス、蓋シ是等ノ地區內ノ居住者ハ、〓
ネ勞働者、日傭人夫、其他ノ少額所得者デアリマシテ、其職業ノ關係上、市
街地ヲ遠ク離レテ居住スル能ハザルノ實情ガアル爲デアリマス、然ルニ是等
ノ地區ハ、多ク地盤ハ低ウゴザイマシテ、爲ニ濕潤ナルヲ免レザルノミナラ
ズ、其通路ハ狹隘錯雜ヲ極メ、建物及居住ノ過密狀態ハ、建物構造上ノ缺陷
及ビ不良ナル管理ト相俟ッテ、地區內ノ居住者ノ生活狀態ヲ益〓不良ナラシ
メ、衞生保安ノ點ヨリ看過スベカラザルモノガアリマスノミナラズ、其精神
上ニ及ボス影響ニ至リマシテハ、眞ニ寒心ニ堪ヘザルモノガアリマス、從ヒ
マシテ一般社會生活ニ及ボス所ノ影響モ亦重大ナルモノガアリマス、而シテ
是等ノ不良住宅ノ密集地區ノ中ニ於キマシテ、約百戶以上集團スルモノガ、
大正十四年六月ノ調査ニ依リマシテ、其地區ノ數ガ二百十七箇所、地區內ノ居
住者世帶數ガ約七万二千餘、其人口カ三十万九千ノ多キニ達シテ居ル次第デ
アリマス、依テ不良住宅密集地區ニ對シマシテ、整理改良施設ヲ行ヒ、其地
區內ニ居住スル勞働者其他ノ少額所得者ノ生活ノ安定向上ヲ圖リ、併セテ社
會ノ福祉ヲ增進スルノ、住宅政策上最モ緊急ヲ要スルモノガアルト云ハナケ
レバナリマセヌ、是ガ本法律案ヲ提出シマシタ所以デアリマスノデアリマス、
而シテ本法律案ノ立案ニ付キマシテハ、曩ニ社會事業調査會ニ諮問イタシマ
シテ、不良住宅密集地區ノ改善方策ニ對スル答申ヲ得マシテ、之ヲ參酌スル
ト共ニ、事業施行上ノ圓滑ヲ期スルコトニ留意イタシタ次第デアリマス、願
ハクハ御審議ノ上御協賛アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官フシテ朗讀ヲ致サセマ
ス
〔山本書記官朗讀〕
不良住宅地區改良法案特別委員
伯爵柳原義光君子爵保科正昭君男爵佐藤達次郞君
澤柳政太郞君靑木周三君金杉英五郞君
工藤八之助君津村重舍君小林嘉平治君
〓〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、國債整理基金特別會計法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、片岡大藏大臣
國債整理基金特別會計法中改正法律案
右政府提出本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月一日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
國債整理基金特別會計法中改正法律案
國債整理基金特別會計法中左ノ通改正ス
第二條ノ二國債ノ元金償還ニ充ツル爲前條ノ繰入額ノ外每年度其ノ前前
年度ニ於テ一般會計ノ歲計上新ニ生シタル剰餘金ノ四分ノ一ヲ下ラサル
金額ヲ一般會計ヨリ國債整理基金特別會計ニ繰入ルヘシ
前項ノ剰餘金ノ計算ニ付テハ之ヲ生シタル年度ヨリ翌年度ニ繰越シタル
歲出豫算ノ財源ニ充ツヘキ額ヲ算入セサルモノトス
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
國債整理基金ハ國債ヲ以テ保有シ又ハ大藏省預金部ニ預入レ之ヲ運用ス
ルコトヲ得
附則
本法ハ昭和二年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣片岡直温君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=9
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010・片岡直温
○國務大臣(片岡直温君) 只今議題トナリマシタ國債整理基金特別會計法中
改正法律案ニ付キ說明イタシマス、曩ニ昭和二年度總豫算ヲ紹介スル際申述
ベマシタル通リ、近年我ガ國債增加ノ趨勢ハ頗ル著シク、最近十箇年間ニ、
我ガ國債總額ハ二倍餘ニ增加シテ居リマス、故ニ將來若シ何等施ス所ナク、從
來ノ趨勢ニ放任シマスルトキハ、我ガ國債額ハ年々累增シマシテ、國庫將來
ノ負擔ヲ過重ナラシムルハ勿論、益、金融市場ヲ壓迫シ、延イテ我ガ經濟界各
方面ニ及ボス影響誠ニ恐ルベキモノガアリマス、故ニ我ガ國將來ノ國債政策
トシテハ、極力起債額ノ減少ニ努メルコトノ必要ナルハ勿論デアリマスガ、
從來ノ國債償還方針ニ更ニ一步ヲ進メマシテ、其償還額ノ增加ヲ計ルコト
ガ、現下ノ最大急務デアルト信ズルノデアリマス、而シテ國債償還額增加ノ
方法トシテハ、現行國債整理基金特別會計法第二條第二項ノ規定ニ依ル、万
分ノ百十六以上ノ償還資金ノ繰入ノ外ニ、歲計ニ剰餘ヲ生ジタルトキハ、之
ヲ國債ノ償還ニ充ツルノ制度ヲ立ツルコトハ、財政政策上最モ妥當ナリト認
メマシテ、昭和二年度ヨリ歲計剰餘ノ一部ヲ國債償還資金ニ充當スル制度ヲ
立テマシタ、而シテ其割合ハ成ルベク多キヲ可トスルコト勿論デアリマスケ
レドモ、歲計剩餘ヲ新規歲出ノ財源ニ充ツルコトハ、我ガ國財政多年ノ慣例
デアリマシテ、今俄ニ之ヲ變更スルコトヲ困難トスル實情デアリマスルカ
ラ、其最低割合ヲ、前々年度ニ新ニ生ジタル純剩餘金ノ四分ノ一トナスコト
ト致シマシタ、而シテ此制度ハ現行ノ確定償還ノ制度ト相俟ッテ將來ニ亙リ
繼續シテ實行スル爲ニ、之ヲ法制トシテ定メ置クノ必要ヲ認メマシテ、茲ニ
國債整理基金特別會計法中改正法律案ヲ提出シタ次第デアリマス、何卒愼重
審議ノ上、速ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
國債整理基金特別會計法中改正法律案特別委員
候爵德川圀順君子爵裏松友光君子爵綾小路護君
神野勝之助君男爵藤村義朗君藤田四郞君
添田壽君小塩八郞右衞門君小林暢君
北京市立小学発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長 公爵德川家達君)日程第三、海外移住組合法案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會、外務大臣幣原男爵
海外移住組合法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月一日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
海外移住組合法案
海外移住組合法
第一條海外移住組合ハ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住
ヲ助成スルヲ以テ目的トス
組合ハ法人トシ其ノ組織ハ有限責任トス
第二條組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ併セ行フ
組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ニ必要ナル資金ヲ
組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ニ貸付スルコト
二組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ニ必要ナル貯金ノ
便宜ヲ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ニ得セシムルコト
三組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ニ必要ナル土地、
建物其ノ他ノ物件ヲ取得シ又ハ借受ケ之ヲ組合員又ハ組合員ト同一ノ
家ニ在ル者ニ讓渡シ又ハ利用セシムルコト
組合ハ前項ニ規定スルモノノ外學校、病院、倉庫其ノ他組合員又ハ組合
員ト同一ノ家ニ在ル者ノ海外移住ニ必要ナル事業ヲ行フコトヲ得
組合ハ第一項ノ規定ニ依リ取得シ又ハ借受ケタル土地、建物其ノ他ノ物
件ヲ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ニ讓渡シ又ハ利用セシムルニ
至ル迄利用スルコトヲ得
第三條組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル
者以外ノ者ニシテ海外ニ在住スル者ニ對シ前條第一項及第二項ノ事業ヲ
行フコトヲ得
第四條組合ハ一區域一個ニ限リ之ヲ設立スルコトヲ得
第五條組合員ハ組合ニ關スル一切ノ行爲ヲ代理スベキ者ヲ定メ之ヲ組合
ニ屆出デタル後ニ非ザレバ海外ニ移住スルコトヲ得ズ
組合員前項ニ規定スル代理人ヲ組合ニ屆出デズシテ海外ニ移住シタルト
キハ組合ノ會議及組合ノ爲ス通知又ハ催告ニ關スル一切ノ權利ヲ抛棄シ
タルモノト看做ス
前二項ニ規定スル代理人ハ當該組合ノ區域內ニ居住スル組合員タルコト
ヲ要ス
第六條組合ノ理事及監事ハ地方長官ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ海外ニ移
住スルコトヲ得ズ
第七條海外移住組合ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲海外移住組合聯合會
ヲ設クルコトヲ得
聯合會ハ法人トシ其ノ組織ハ有限責任トス
第八條聯合會ハ其ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ併セ行フ
一海外移住組合ノ普及、發達及聯絡ヲ圖ルコト
二所屬海外移住組合ニ必要ナル資金ヲ貸付シ及貯金ノ便宜ヲ得セシム
ルコト
三所屬海外移住組合ガ組合員又ハ組合員ト同一ノ家ニ在ル者ニ讓渡シ
又ハ利用セシムベキ土地、建物其ノ他ノ物件ヲ取得シ又ハ借受ケ之ヲ
所屬海外移住組合ニ讓渡シ又ハ利用セシムルコト
第二條第二項、第三項及第三條ノ規定ハ聯合會ニ之ヲ準用ス
第九條聯合會ハ全國ヲ通ジテ一個トシ其ノ設立ハ主務大臣ノ許可ヲ受ク
ベシ
第十條海外移住組合以外ノ者ト雖モ定款ノ定ムル所ニ依リ聯合會ノ會員
ト爲ルコトヲ得
第十一條聯合會ノ理事及監事ハ會員タル海外移住組合ノ理事及監事竝ニ
前條ノ規定ニ依リ會員ト爲リタル者ノ中ヨリ總會ニ於テ之ヲ選任スベシ
但シ特別ノ事由アルトキハ其ノ他ノ者ヨリ選任スルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十二條聯合會ハ主務大臣之ヲ監督ス
第十三條第六條ノ規定ハ聯合會ノ理事及監事ニ之ヲ準用ス但シ地方長官
トアルハ主務大臣トス
第十四條產業組合法第一條、第二條第一項、第四條第一項、第六條ノ二、
第九條第二項、筩十六條ノ六第二項、第四十二條、第四十六條ノ二、第
四十六條ノ三、第四十九條、第五十八條、第六十八條、第七十六條乃至
第七十七條、第七十九條、第八十條第一項、第八十一條但書及第八十二
條乃至第九十二條ノ規定ヲ除クノ外產業組合法中產業組合ニ關スル規定
ハ海外移住組合ニ、同法中產業組合聯合會ニ關スル規定ハ海外移住組合
聯合會ニ之ヲ準用ス但シ海外移住組合聯合會ニ付テハ同法第八十一條ノ
規定ニ依リ準用スル產業組合ニ關スル規定中地方長官トアルハ主務大臣
トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=12
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013・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今議題ニナッテ居リマスル法律案ハ、本邦
人ガ企業ノ目的ノ爲ニ海外ニ移住スルコトヲ便ナラシメムトスルノ趣旨ニ出
デタルモノデアリマス、御承知ノ通リ從來本邦人ノ海外移住ハ、多クハ單純
ナル勞働ヲ目的トセルモノデアリマシテ、企業ノ目的ヲ伴フ移住ハ比較的ニ
少カッタノデアリマス、固ヨリ外國ニ於ケル勞働ノ需用ニ伴ヒマシテ、勞働
移民ノ移住スルコトニ付キマシテモ、ソレ〓〓適當ナル保護ヲ與ヘルベキモ
ノデアリマスガ、是ト同時ニ企業ノ目的ヲ有スル移民ノ爲ニ、其希望ヲ達シ
得セシムルノ途ヲ講ジマスルコトハ、今日ノ急務デアルト考ヘルノデアリマ
ス、近頃ノ傾向ヲ見マスルノニ、小資本ヲ携ヘテ海外ニ赴キ、其地ニ於キマ
シテ企業、殊ニ農業ヲ營マムトスル者ガ追〓多クナッテ參ッタノデアリマス
ガ、此種ノ移住希望者ハ〓ネ中流農家ニ屬スルモノデアリマシテ、相當ノ
〓育ヲ受ケ、移住國ノ社會ニ比較的ニ早ク同化シ得ルノ素質ヲ備ヘ、海外ニ
於ケル本邦移民ノ聲價ヲ自然ニ高メ得ル人〓デアリマス、斯ノ如キ人〓ガ外
國ニ移住イタシマシテ、資本ノ投下ト勞力ノ供給トヲ併セ行ヒマスルニ於キ
マシテハ、移住國ノ經濟生活ニ對シマシテモ、適切ナル貢献ヲナスト共ニ、
其移民ノ從事イタシマスル企業ノ種類及ビ方法ニ依リマシテハ、本邦工業原
料ノ供給ニモ有利ナル事態ヲ作リ得ルモノデアリマシテ、卽チ本國竝ニ移住
國雙方、共存共榮ノ楔トナルベキモノデアリマス、從テ此種ノ移住者ノ增加
ト其將來ノ健全ナル發達トハ、誠ニ望マシイコトト思フノデアリマス、併ナ
ガラ是等ノ移住希望者ハ、渡航先ノ言語竝ニ事情ニ通ジナイ者ガ大多數ヲ占
メテ居リマシテ、又其資金ニモ自ラ限リガアリマスルガ故ニ、希望者個々ノ
獨力ヲ以テ致シマシテハ、其希望ヲ達スルノニ困難ナル狀態ニアルモノデア
リマス、就キマシテハ此際法人格ヲ有スル特別ノ組合ヲ組織イタシマシテ、
協同ノ力ヲ以テ共通ノ困難ニ打勝ツコトヲ得セシムルノ途ヲ開カナケレバナ
リマセヌ、又旣ニ海外ニ移住イタシテ居リマスル勞働者ノ中ニハ、其移住先
ニ於キマシテ、賃金等ノ貯蓄ニ依リマシテ、獨立セル農業者其他ノ企業者ニ
轉ゼントスルノ希望ヲ懷キナガラ、是亦種々ノ事情ニ制セラレマシテ、其目
的ヲ達シ得ズニ居ル者モ各地ニ於テ少クハアリマセヌ、尙ホ今後移住イタス
ベキ勞働者ノ中ニモ、追〓同一ノ境遇ニ立ツ者ガ生ズルニ至ルデアラウト思
ハレマス、斯カル勞働移住者ノ獨立難ヲ救濟スルノ施設ヲ爲シマスコトモ、
亦移民保護上極メテ必要ナルコトデアリマシテ、此法案ハ此種ノ勞働移住者
ノ福利增進ヲ兼ネテ目的ト致シテ居ル次第デアリマス、海外移住組合ハ、產
業組合ト共通ノ性質ヲ有スル事項ヲ含ンデ居リマスカラ、斯ノ如キ事項ニ付
キマシテハ、此法案ニ付キマシテハ產業組合法ノ規定ヲ其儘移住組合ニ準
用スルコトニ致シテアリマスガ、其以外ニ於キマシテ、組合ノ目的ト又活
動ノ範圍トニ至リマシテハ、移住組合ハ一般ノ產業組合トハ大ニ趣ヲ異ニ致
シテ居リマスル所ガ可ナリ多イノデアリマスカラ、自然產業組合法ノ外ニ、
特別ノ法規ヲ設クルノ必要ヲ生ズルニ至ッタノデアリマス、而シテ此法律
案ハ主トシテ是等ノ特別法規ヲ包含スルモノデアリマス、就キマシテハ諸君
ニ於カレマシテモ、何卒本案審議ノ上、幸ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通告ニ依リマシテ今井五介君ニ質疑ノ發言
ヲ許シマス
〔今井五介君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=14
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015・今井五介
○今井五介君 私ハ今囘政府ニ於カセラレマシテ、海外移住組合法案ヲ御提
出ニナリマシテ、既ニ衆議院ヲ通過イタシマシテ、本日本院ノ會議ニ付セラル
ルコトハ、我〓ガ多年國民海外發展ノ爲ニ海外協會中央會ヲ設ケ、進ンデ各
府縣ニ海外協會ノ組織ヲ援助イタシマシテ、更ニ信濃、鳥取、熊本、富山等
各縣ノ移住地建設ノ爲ニ聊カ微力ヲ盡シテ參リマシタ者カラ見マスレバ、本
案ノ如キハ誠ニ時代ニ適應シ、且ツ國民生活ノ將來ヲ安泰ナラシメ、國運ノ
隆盛ト共ニ世界平和ノ爲ニ、至極結構ナル法律案ト存ジマシテ、政府ニ對シ
マシテハ深甚ノ······私ハ勞ヲ多トスル次第デアリマス、從テ此法律案ニ對シ
マシテハ、衆議院ニ於キマシテ、疑義ノ點ニ對シマシテハ十分ニ質問應答ヲ
致サレテ、政府ニ於カレマシテハ十分ニ御研究ヲ爲シ、遺憾ナカランカト私
ハ信ズルノデ、只今外務大臣ノ御說明ニ依リマシテ、私ハ最モ我ガ意ヲ得タ
ルモノト信ズルノデ、別ニ進ンデ御伺ヒ申ス要ハナイヤウデアリマスルガ、
聊カ一二ノ點ニ付キマシテ伺ッテ置キタイト思フノデアリマス、第一ニ、本
案ノ第四條ニ於テ組合ノ區域ニ關スル規定ガアリマス、此點ニ付キマシテモ
衆議院ニ於キマシテ質問ガアッタヤウデアリマス、移住組合經營上、私共ノ經
驗カラ考ヘマスルト、本案ガ實施サレマシテモ、全縣下ニハ悉ク此組合ヲ組
織スルコトガ出來ルデアルカ否ヤト云フコトガ疑問デアルノデアリマス、
從テ組合ノ區域ヲ一府縣ト限ラレテアルノデアリマスカラ、其組合組織ノ若
モ出來ナイ府縣カラ移住者ガアッタ場合ニハ、此法律ノ恩惠ニ浴スルコトガ出
來ナイト云フコトニナリハセヌカト私ハ憂フルノデアル、サウ云フヤウナ場
合ニ於キマシテハ、各府縣ニ於テ組合ガ組織セラレルマデノ間ハ、組合ノナ
イ府縣ノ希望者ヲ此移住組合法案ノ恩惠ニ浴セシムルコトニ付テハ、ドウ云
フ御考デアルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、第二ニ、本案ノ第九條、
第十一條其他ニ於テ、移住組合聯合會ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケネバナラヌト
云フコトニナッテ居リマス、兎角此海外移住ト云フコトニ對シマシテハ、或ハ
外務或ハ內務ト云フヤウナコトデ、兎角其所管ノ判明セザルモノガ旣往ニ於
テアリマシタノデアリマスルカラ、今囘ノ此法案ハ、何レノ省ニ於テ御監督
ニナッテ御施行ニナル御積リデアルカ、伺ッテ見タイノデアル、第三ニハ、本
案ノ如キハ時代ノ趨勢ヨリ考フルニ、旣ニ私ハ遲キヲ感ズルノデアリマス、
ソレ故ニ之ガ實施ト云フコトハ全ク急ヲ要スルノデ、又之ヲ實施スルニ當リ
マシテハ、御用意ハアルコトトハ存ジマスルガ、之ガ施行細則ヲ制定イタシ
マシテ、勅令ヲ仰イデ······施行期日ノ御決定モ速カニ私ハ願ハナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、故ニ政府ニ於カレマシテハ、イツ頃ヨリ此法律ヲ
御實施ニナル御腹案デアリマスルカ、之ヲ併セテ伺ッテ置キタイト思フノデ
アリマス、私ガ申ス迄モナク本案ハ我國トシテ、我民族トシテ、海外發展ノ
史上ニ於テ、劃時代的ノモノデアルト信ジマスルノデゴザイマス、以上ノ三
點ニ付キマシテ、政府ノ御意思ノアル所ヲ伺ヘバ、誠ニ喜ビトスル所デアリ
やくろ私ハ此三點ニ付テ伺ッテ置キタイト思フ
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=15
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016・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今今井君ノ御質問ニナリマシタル第一點
ハ、此法案ノ第四條ニ「組合ハ一區域一個ニ限リ之ヲ設立スルコトヲ得」ト
ナッテ居ルガ、此一區域ト云フモノハ一府縣ヲ指スモノデアルナラバ、府縣
ニ依ッテハ之ヲ設立スルコトヲ得ルモノデアラウガ、或ハ隣縣ニ於テ未ダ之
ヲ設立スルノ運ビニ至ラヌモノガアルデアラウ、サウ云フ場合ニ、其運ビニ
至ラヌ府縣ニ在住イタシテ居ル人〓ニ對シテモ、此法律ノ恩惠ヲ擴張スルコ
トハ出來ナイデアラウカ、ト云フ御質問デアッタヤウニ伺ヒマシタ、此法律
案ニ、一區域一個ニ限ツテ組合ヲ設立スルコトヲ得トナッテ居リマスルガ、
區域ト云フノハ、必ズ一府縣ト云フコトヲ限定致シタノデアリマセヌ、大體
ニ於キマシテハ、一府縣ヲ區域トスルト云フ標準デ取計フ積リデアリマス
ルケレドモ、都合ニ依リマシテハ、二ツノ府縣ガ共同イタシテ一ツノ組合ヲ
拵ヘテモ、其場合ニ依リマシテハ之ヲ許可スルコトモ得ルノデアリマス、併ナ
ガラ組合ニ加入イタシテ居ラヌ者ニ對シテ、組合員ト同一ノ權利義務ヲ有セ
シムルト云フコトハ、是ハ出來得ナイコトデアリマス、第二ニ此法律案中ニ、
認可又ハ許可ト云フ字ガ所々ニ見エテ居ルガ、此認可及許可ハドノ主務大臣
ガ之ヲ行フノデアルカト云フコトデアリマス、是ハ內務大臣ト外務大臣トガ
協議イタシマシテ雙方ノ合意ニ依リマシテ認可許可ヲ與ヘル積デアリマス、
第三ニ施行期日ハ大體イツ頃ノ見込デアルカト云フ御質問デアリマス、今日
ニ於キマシテハ、若シ特別ノ事情ガ起ラザル限ハ、此法律案ガ成立イタシマ
スレバ、五月ノ一日ヨリ施行スルコトニ致シタイト云フ大體ノ見込デ居ルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=16
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017・今井五介
○今井五介君 只今外務大臣ノ御答ニ依リマシテ、私ノ知ラムト欲スル所ハ
了解イタシマシタ、又最モ私ガ希望シテ居ル實施ノ期限ハ、明カニ御答ヲ得
タノデアリマスガ、誠ニ本案實施ノ上ニ付テ喜ブ次第デアリマスガ、兎角各
種ノ法律案ガ貴衆兩院ヲ通過イタシマシテモ、之ガ施行ヲ怠ルト申シマセウ
カ、兎角遷延勝チニ陷ルノデアリマスガ、只今ノ御答ニ依リマスレバ、サウ
云フ心配ハナイト云フコトデアリマス、ドウゾ御聲明ノ通リ、速ニ之ヲ御實
施アラムコトヲ私ハ希望イタシマシテ、私ハ是ニテ御尋ネ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質疑モナイト認メマスカラ、本案ノ特別委
員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
海外移住組合法案特別委員
伯爵柳澤保惠君子爵酒井忠亮君子爵秋元春朝君
大島健一君黑岡帶刀君男爵稻田昌植君
鍋島桂次郞君鎌田榮吉君富安保太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、河川法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、白川子爵ノ登壇ヲ望ミマス
河川法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二年二月二十八日
右特別委員長
子爵白川資長
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵白川資長君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=19
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020・白川資長
○子爵白川資長君 河川法中改正法律案ノ特別委員會ノ經過及結果ヲ御報〓
イタシマス、本委員會ハ二月二十三日、二十五日、二十八日ノ三囘ニ亙リマ
シテ開會ヲ致シマシテ、種々質問應答ヲ重ネマシテ審議ヲ致シマシタ結果、
全部原案ノ通リ可決ニナッタ譯デゴザイマス、ソレデ此改正ノ要點ハ、第六
條ノ「但シ」ト云フ後ニ「主務大臣カ自ラ河川ニ關スル工事ヲ施行シタルモノ
ニ付必要ト認ムルトキ又ハ」ト云フ文句ヲ入レタコトト、第五十八條ノ「此
ノ法律ニ規定シタル私人ノ義務ニ關シテハ命令ヲ以テ云々」ト云フコトト、
第六十六條ヲ削除スルコトト、是ダケノ三點デゴザイマシテ、第五十八條ハ、
刑法ガ改正ニナリマシタ今日、法文ノ整理上已ムヲ得ナイコトデ改正ニナッ
タノデゴザイマス、第六十六條ハ、災害國庫補助ニ關スル法律ガ發布ニナリ
マシタシ、又外國ノ居留地ガ······外國人ノ居留地ガナクナッタ今日ハ其必要
ガゴザイマセヌノデ、削除ニナッタ譯デゴザイマス、ソコデ此第六條ノコト
ニ付キマシテ、色〓政府委員等ノ說明ガゴザイマシタノデゴザイマスガ、此
六條ノ原則ト申シマスルモノハ、府縣行政廳ガ管理スルノガ原則トナッテ居
リマスノデゴザイマスガ、若シ他府縣ニ亙ッテ、他府縣ニ河川ガ跨ッタトキノ
工事、又ハ上流ノ甲縣ニ於テ爲ス事ガ下流ノ乙縣ノ利害ニ關係スルト云フ時
分ニノミ、主務大臣ガ管理修繕ヲ爲スコトデアッタノデゴザイマスガ、一府縣
ノミノ關係デモ、尙ホ內務大臣ガ代ッテ管理維持ヲ爲ス必要ガ起ッタノデゴザ
イマシテ、本案ノ······本條ノ改正ヲ要スル次第ニナッタノデゴザイマス、卽チ
ソレハ越後ノ大河津ノ分水工事ノコトデゴザイマシテ、是ハ大河津ノ地點カ
ラ日本海ノ方ニ放水路ヲ設ケマシテ、其處ニ自在堰、固定堰ヲ設ケ、更ニ信濃
川ノ本流ニ洗堰ヲ設ケマシテ、閘門ヲ作ッテ居リマシテ、非常ナ大工事デアリ
マシテ、東洋一ト云フ御說明デゴザイマス、政府委員ノ說明ニ依リマスト云
フト、此工事ハ東洋ニ於テハ古來アル所ノ三大工事ノ一ツデゴザイマシテ、
卽チ秦ノ始皇帝ノ萬里ノ長城、隋ノ煬帝ノ運河、ソレカラ此大河津ノ分水工
事ダト云フ程ノ大工事ダサウデゴザイマス、從テ之ヲ其一ノ地方廳ノ管理修
繕維持ニ委スト云フコトハ頗ル困難デアルカラ、之ヲ主務大臣ニ於テ管理修
繕ヲスルト云フ所ノ法案デ、頗ル簡單ナモノデゴザイマス、ソレデ委員會ニ
於キマシテハ、全會一致ヲ以チマシテ、總テ原案通リ可決イタシマシタ譯デ
ゴザイマス、唯色〓此河川法ニ付キマシテハ、是ハ明治二十九年ノ發布ノ法
律デゴザイマス爲ニ、今日ノ時代ニ順應シナイ種々ナル缺陷ガゴザイマシテ、
ソレニ付キマシテハ、主務省ニ於テ調查ヲシテ居ルサウデゴザイマスカラ、
追テ本法全部ノ改正ガ行ハレルコトト存ジマス、尙又委員ノ中ニ於キマシテ
ハ此二十條ノ第三號ヲ特ニ善意ニ解釋シテ貰ヒタイ、公益ノミニ之ヲ使ッテ
貰ヒタイト云フコトデゴザイマシテ、政府委員ノ方デハ、十分ニ其點ハ公益
ニノミ使フコトデ、決シテ心配ハナイト云フコトデゴザイマシタ、委員ハ又
希望條件デハナイガ、是非善意ニ解釋シテ貰ヒタイト云フコトヲ述べマシテ、
ソレデ本案ハ原案通リ總テ異議ナク可決ニナリマシタノデゴザイマス、此段
御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=22
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023・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直チニ第二讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=23
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024・吉田清風
○子爵吉田〓風君 贊成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
小寺発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=28
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029・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直チニ第三讀會ヲ開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=29
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030・米津政賢
○子爵米津政賢君 賛成
〔其他「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
北京市公安局発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
南京発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、產業組合中央金庫法中改正法律案、衆
議院提出、第一讀會
產業組合中央金庫法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和二年三月一日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
產業組合中央金庫法中左ノ通改正ス
第十三條第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ加ヘ第二號ヲ第三號ニ改メ以下順次繰下グ
二所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ニ對シ三十箇年以內ノ年賦償
還貸付ヲ爲スコト但シ其ノ金額ハ特別資源ニ依ルモノヲ除キ拂込出資
金ニ付テハ其ノ四分ノ一、產業債劵ニ依ル資金ニ付テハ其ノ二分ノ一
ヲ超ユルコトヲ得ス
同條ニ左ノ二號ヲ加フ
六所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ノ爲ニ國債證劵、地方債證劵
又ハ政府ノ保護セル特殊銀行會社ノ發行スル債劵ノ委託賣買ヲ爲スコ
ト
七所屬產業組合聯合會又ハ所屬產業組合ノ爲ニ有價證劵保護預リヲ爲
スコト
第十四條中「及第二號」ヲ「乃至第三號」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタ
サセマス
〔山本書記官朗讀〕
產業組合中央金庫法中改正法律案特別委員
侯爵松平康莊君服部-三君子爵西大路吉光君
子爵片桐貞央君男爵足立豐君高橋琢也君
五十嵐甚藏君本間千代吉君瀨川彌右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ決定次第御通知イタシマス、本日
ハ是ニテ散會イタシマス
午前十時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01719270303&spkNum=37
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