1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年三月九日(水曜日)
午前十時五十四分開議
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議事日程 第十九號 昭和二年三月九日
午前十時開議
第一 銀行法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第二 貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第三 農工銀行法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第四 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第五 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第六 登録税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第七 印紙税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第八 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第九 關税定率法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十 商事非訟事件印紙法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十一 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十二 公益質屋法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十三 水戸鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十四 鐵道敷設法中改正法律案(政府提出衆議院送付) 第一讀會
第十五 不良住宅地區改良法案(政府提出衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 新潟縣中頸城郡谷濱村大字有間川に停車場設置の請願 會議
第十七 東京帝國大學農學部附屬農業教員養成所獨立に關する請願 會議
第十八 私立中等學校國庫補助の請願 會議
第十九 膃肭獸海上獵業の解禁に關する請願 會議
第二十 地先專用漁業權免許に關する請願 會議
第二十一 書道振興奬勵に關する請願 會議
第二十二 帝國在郷軍人會國庫補助の請願 會議
第二十三 天鹽川河口修築の請願 會議
第二十四 天鹽漁港修築の請願 會議
第二十五 上磯鐵道敷設の請願 會議
第二十六 市町村義務教育費國庫負擔金増額の請願 會議
第二十七 國立吃音矯正機關設置に關する請願 會議
第二十八 徳佐、大井間鐵道敷設の請願 會議
第二十九 名張、松阪間鐵道速成の請願 會議
第三十 岩國、日原間鐵道敷設の請願 會議
第三十一 札幌、増毛間鐵道敷設の請願 會議
第三十二 厚田漁港修築の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔山本書記官朗讀〕
去ル五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決
ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
會計檢査院法中改正法律案
輸出絹織物取締法案
同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關スル法律案特別委員會
委員長玉利喜造君
副委員長吉野周太郞君
海外移住組合法案特別委員會
委員長大島健一君
副委員長子爵秋元春朝君
一昨七日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
震災手形損失補償公債法案外一件特別委員會
委員長伯爵林博太郞君
副委員長男爵阪谷芳郞君
土地賃貸價格調査委員會法案特別委員會
委員長子爵西尾忠方君
副委員長男爵長基連君
同日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
不良住宅地區改良法案可決報告書
昨八日請願委員第二分科會ニ於テ副主査ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ男爵金子有
道君當選セリ
同日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
國債整理基金特別會計法中改正法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
銀行法案
貯蓄銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
非訟事件手續法中改正法律案
登錄稅法中改正法律案
印紙稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中改正法律案
關稅定率法中改正法律案
商事非訟事件印紙法中改正法律案
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
公益質屋法案
水戶鐵道株式曾社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便
鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案
鐵道敷設法中改正法律案
小山市発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、通告ニ依リマシテ前田子
爵ニ發言ヲ許シマス······議長ハ聊カ順序ヲ誤リマシタ、前田子爵ガ政府ニ對
シテ緊急質疑ヲナサレタイト云フコトヲ議長マデ申出デラレマシタ、此際許
可スルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイモノト認メマス
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=3
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004・前田利定
○子爵前田利定君 私ハ去ル七日夕刻ニ山陰地方ニ於キマシテ突如トシテ起
リマシタル大地震ニ關シマシテ、政府當局ニ緊急質問ヲ致サウト思フノデア
リマス、風火水、雷、震、所謂天災地異ナルモノハ、未ダ人智ヲ以テ之
ヲ征服シ若クハ防止スルコトノ出來ナイコトハ、誠ニ遺憾ナコトデゴザイマ
ス、去ル大正十二年九月ニ於ケル關東ノ大震火災、續イテ大正十四年但馬城
崎方面ニ於ケル大地震、其後幾許ノ歲月ヲ閱シマセヌノニ、此度山陰地方、殊
ニ奧丹後方面ヲ中心ト致シマシタル大激震ノ悲報ニ接シマシテ、私ハ國家竝
ニ同胞ノ爲ニ大ニ遺憾トスル所デゴザイマス、ソレト同時ニ被害罹災ノ同胞
各位ニ對シマシテ、極メテ眞摯ニシテ且ツ深厚ナル同情ヲ傾倒セザルヲ得ヌ
ノデアリマス、殊ニ私共ニ於キマシテハ、去ル大正十二年ノ九月一日ニ於ケ
ル關東方面ノ大地震ニ直面イタシマシテ、具サニ其悲慘ヲ嘗メ來ッタ者ト致
シマシテハ、切實ニ此度ノ激震ニ際シマシテノ罹災民諸氏ノ上ニ、如何ニ悲
慘ナ境遇ニ彷徨セラレテ居ルノデアラウト云フコトヲ想察致シマシテ、萬斛
ノ同情ヲ禁ジ得ナイノデアリマス、今日未ダ私ハ此大地震ノ正確ニシテ且ツ
詳細ナル報道ニ接シテ居リマセヌケレドモ、今朝マデ讀ミ來リマシタル各新
聞ノ記事、激震地方ヨリノ發信等ノ揭載事項ヲ彼レ此レ照シ合セ、綜合致シ
マシテ考察致シマスト云フト、去ル大正十二年ノ關東ノ大地震ニ較ベテ見マ
シテ、其激震ノ地方ノ範圍ガ或ハ廣クナイカモ知レヌト思ヒマスルケレド
千、其局部的ノ被害ノ程度ニ於キマシテハ、或ハ深刻ノモノガアリハセヌカ
ト思ハレルノデアリマス、況シテ天尙ホ寒クアリマシテ、吹雪ノ中ヲ、家ヲ
失ヒマシタル罹災民諸氏ガ劫火ニ追ハレ、積雪ヲ踏ンデ餘震ニ怖エツヽ、日モ
スガラ夜モスガラ、寒サト飢トニ襲ハレテ、野ニ畑ニ避難彷徨スル所ノ慘狀
新聞ヲ通シテ之ヲ讀ムダニ暗然トシテ淚ノ滲ミ出ヅルヲ抑ヘル譯ニハ參
ラヌノデアリマス、尙又昨今ニ於キマシテハ、倒潰イタシマシタル所ノ地方
ニハ風ト雨トガ見舞ッテ居ルサウデアリマシテ、誠ニソレヲ想ヒマスレバ、
悲慘ノ又悲慘ナル哉デアリマス、尙ホ新聞紙ノ報道スル所ニ依リマスルト云
フト、衆議院議員ノ吉村伊助氏ノ御母堂ハ、峰山ノ自宅ニ於テ亡クナラレタ
ト云フコトデアリマス、私ハ此場合ニ於キマシテ、吉村代議士ニ對シ、親子
ノ恩愛ノ情ヲ考ヘマシテ、玆ニ謹ンデ弔意ヲ表シタイト思フノデアリマス、
尙ホ更ニ又福知山ノ運輸事務所長山本寅彥氏ハ、峰山ニ出張中ニ壓死セラ
レタト云フコトデアリマス、新聞ニハ峰山ハ地震ニ次イデ火災ガ起ッテ、同
市ハ全滅ヲ致シタト云フコトデアリマス、故ニ同氏ノ生死ノ程ハ未ダ明確デ
ハナイト云フコトガ附記サレテアルノデアリマス、私ハ何卒同君ガ幸ニシテ
死線ヲ突破サレテ生存セラレルコトヲ祈ル次第デアルノデアリマス、唯茲ニ
同ジク激震ノ地方ニハ這入ッテ居リマスルケレドモ、神戶、大阪ノ如キ大都府
ガ、サシタル被害ガ無カッタト云フコトハ、誠ニ國家民人ニ取リマシテ、不幸
中ノ幸ト思フノデアリマス、何分ニモ天災地異ニ對シマシテ、私共ハ何處ニ、
誰ニ向ッテ苦情ヲ申込ム所ハナイノデアリマス、サリトテ徒ラニ天ヲ仰ギ地
ニ伏シテ恨ンデモ詮ナイコトデアリマスルノデ、私ハ此際政府當局ニ對シマ
シテ、激震地方ノ人畜其ノ他ノ被害ノ程度ヲ詳細ニ御示シヲ願ヒタイト思ヒ
やく、ト同時ニ罹災民ノ上ニ應急ノ手當ニ遺算ガアルコトナク、今後善後ノ
處置ニ於キマシテモ遺憾ナキヤウニ、親切ニ、此憐ムベキ所ノ罹災民諸氏ニ
對シマシテ、救護保護ノ途ヲ立テラレムコトヲ切ニ望ム次第デアリマス、何卒
各所管大臣ニ於カレマシテハ、此〓ニ些ノ遺漏ナキコトヲ期セラレムコトヲ
望ミマス、而シテ今日マデ政府當局ニ於テハ如何ナル應急ノ手當ヲ爲サレタ
カ、又今後善後ノ處置ニ付キマシテ、如何ナル方策ヲ講ジラレルノデアリマ
スカ、何卒御親切ニ各御所管ニ亙リマシテ、關係各大臣ヨリ詳細ナル御說明
ヲ得タイト思フノデアリマス〔拍手起ル〕
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=4
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005・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今前田子爵カラ關西方面、殊ニ京都府下方面ニ
起リマシタ激震ニ付テノ御質問ガゴザイマシタ、實ハ政府ノ方カラモ此震災
ノ模樣ノ大體ニ付テハ御報告ヲ致サウト考ヘテ居リマシタガ、幸ニシテ御質
問ガゴザイマシタカラ、玆ニ大要ヲ御答ヘ致シマシテ、又善後ノ處分ニ付キ
マシテモ、目下考ヘテ居ルコトヲ申上ゲテ置キマス、此震災ノ模樣ニ付キマ
シテハ、昨日午前頃迄ニ傳ハリマシタ各方面ノ情報ヨリモ、午後ニナリマス
ルト、段々各地方面ノ情況ガ詳カニナリマシテ、所謂京都ノ奧丹後ト申シマ
ス丹後ノ國ノ奧四郡ニ亙リマシテノ災害ハ、餘程ヒドイヤウデゴザイマス、
ソレデ最モ災害ノヒドイ所ガ京都府下ノ奧丹後デアリマシテ、ソレカラ兵
庫大阪方面ガ只今御話ノ通リノ狀態デアリマスガ、其他ハ岡山、島根、鳥
取、滋賀、福井、奈良、三重邊リニ掛ケマシテハ、戶障子ナドガ落ツル、或
ハ戶棚ガ壞レルト云フ位ノ程度デアリマシテ、强震ヲ感ジタダケデゴザイマ
ス、人畜家屋等ノ被害ハアリマシテモ、極々輕微ナ方デゴザイマス、ソレデ
最モ甚シキ所ハ京都府下デゴザイマシテ、昨日、衆議院ニ報〓イタシマシタ
頃マデハ、午前中ノ模樣デゴザイマシタカラ、詳ニナラナカッタノデアリマ
ス、其後到來イタシマシタ報〓ニ基キマシテ、今日玆ニ御報告イタシマスガ、
彼ノ地震ノ報告ニ接シマスルヤ、直チニ内務省ノ方カラ派遣イタシマシタ鈴
川事務官、其人ガ京都カラ大體ヲ纒メマシテ報告シタ電報ガゴザイマス、是
デ大要ハ盡サレテ居リマスカラ、先ヅ此電報ノ意味ヲ御話イタシマス、峰山、
網野、間人、加悅、皆町ノ名デアリマス、此方面ノ被害ガ最モ甚シク、死者
ガ一千六百九十九名ト云フコトデアリマス、燒失倒潰家屋ガ四千五百四十八
戶、海岸方面ハ消息不明、宮津、久美濱、被害輕微、警察官三百名、救護班二
十名ヲ出發セシメテ居ル、食糧、建築材料等續々送付、救護警備ニ努メツ
アリ、是ガ昨晩午後八時四十三分ニ京都ヲ發シタ電報デゴザイマス、是ガ各
方面ヲ出來ルダケ纒メテ總括シタ報告デゴザイマス、報〓ガ重複イタシマス
ケレドモ成ルベク眞相ヲ明カニスル爲ニ、又京都府知事ノ電文モ朗讀イ
タシマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス、京都府知事ノ、昨日ノ午後二時二十
分ニ著シマシタ電報ニ依ルト、管內ニ於ケル震災被害模樣其後判明シタルモ
'與謝郡岩瀧町五百六十八戶ノ內、燒失家屋約五百戶、死者約百名、加悅
町七百戶ノ內、燒失家屋約三百五十戶、石川村四百九十二戶、全村燒失、死
者二十三名、負傷者三十一名、市場村三百五十八戶、全村倒潰、死者二十名、
山田村三百七十六戶、全村燒失、中郡峰山町千戶、全町燒失、死者約千名、
外ニ郡內約五百名ノ死者アリ、與謝郡ノ北部及竹野郡ハ事情詳細不明、當廳
ヨリハ應援警察官更ニ百名ヲ增派スル豫定、此峰山町ハ千戶デ、此人口ハ四
千五百八十五人口ガアリマスガ、其處ニ千名死者ガ······此報〓ノ通リデアル
ト致シマスルト、殆ド約四分ノ一、死者ヲ出シタト云フヤウナ狀態デアリマ
ス、ソレカラ又昨日ノ午後八時五十分ニ參リマシタ電報ニ依リマスルト、管
内震災被害其後判明セルモノ、中郡口大野村三百三十七戶ノ內、倒潰家屋二
百戶、其他完全ナル家屋ナシ、死者三十五、負傷者多數、長善村、常吉村、
吉原村何レモ全村全潰、竹野郡網野町全燒三百七十戶、全潰六百六十戶、半
潰三十戶、死傷者千五百名、鳥取村全燒三十戶、全潰百五十戶、半潰二百戶、
死傷者三百名、島津村全潰二百五十五戶、全燒三百二十戶、死傷者千二百名、
〓村全燒百五十戶、全潰一一百四十戶、死傷者五百名、木津村全潰六十戶、半潰百
戶、浸水六十戶、温泉噴出一箇所、熊野郡久美濱町全潰十五戶、死者三名、
負傷者多數アル見込、神野村全潰三十戶、半潰多數、死者三名、海部村全潰
十六戶、半潰二十六戶、負傷者三名、其他同郡內ハ調査中ナルモ、被害割合
少キ見込、前報ト共ニ今マデニ判明シタルモノノ計、全半潰合計三千五百二
十九戶、全燒三千六百四十六戶、死傷者四千七百七十四名、ソレダケガ京都
府下ノ情報デゴザイマシテ、大阪府知事ノ電報ニ依リマスルト、大阪府下ハ
府下ノ震災ニ付キ精密調査ノ結果、死者二十一、負傷者百二十七、家屋納屋
倒壞百二十一、同ジク半壞百十三、死者ノ內譯、倒壞防火壁ニ壓セラレタル
者三、避難中途樋ニ壓セラレタル者六、多數避難ノ際下敷キトナリテ死シタ
ル者十、避難中心臟麻痺者二、又負傷者內譯、倒壞物ニ依ル負傷三十八、天
井墜落ニ依ル負傷一二階ヨリ飛降リ負傷三、逃ゲ惑ヒ負傷八十三、屋根煉
瓦墜落負傷二、斯ウ云フ報〓デゴザイマス、兵庫縣知事ノ電報ニ依リマスル
!:本縣下ノ震災被害ハ旣報ノ通リ、サマデ大ナルモノニ非ズ、豐岡城崎方
面ニ於ケル狀況ハ、目下判明セル所ニ依レバ、倒壤家屋二三十戶、傷者多少
アルモ、死者ナキ見込、其他全縣下ニ亘リ多少ノ家屋倒壞シ傷者アルモ、新
聞ノ傳フル程ノモノニ非ズ、之ニ反シ京都府方面ハ相當ノ被害アル見込ニ付
キ、應援警察官救護班等ヲ同府下ニ派遣シ救護ニ努メツツアリ、本縣ノ被害ニ
付テモ、事務官、屬、警部等ヲ派遣シテ詳細調査セシメツヽアリ、是ガ兵庫
縣ノ情報デゴザイマス、其他ノ縣ハ格別ノコトハゴザイマセヌカラ、玆ニ御
報告ヲ略シテ置キマス、ソレカラ此救護ニ付テハ、昨朝カラ峰山、網野方面
ノ被害多キ所ニハ、直チニ舞鶴外二警察署カラ警察官ヲ五十五名ダゲ急派セ
シメマシタ、ソレハ一昨晩ノ中デアリマス、昨早朝更ニ警視二名以下百五十
名ノ巡査ヲ派遣シテ、罹災地ノ治安維持竝ニ罹災民ノ救護ニ努メシメテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ内務省ノ方カラハ取敢ズ警保局ノ鈴川事務官、上柳
事務官、又社會局ノ守屋部長、富田書記官ヲ彼ノ地ニ派遣イタシテ居リマ
ス、此度ノ震災ニ付キマシテ、陸海軍ガ多大ノ同情ヲ表セラレマシテ、一方
ナラザル盡力ニナリツヽアリマス、其大要ヲ玆ニ私ハ特ニ御報〓イタシテ置
カウト考ヘテ居リマス、第十六師團長ノ報告ニ依リマスルト、步兵第二十聯
隊ヨリ、大隊長ノ指揮スル步兵二中隊及救護班ヲ直チニ峰山方面ニ出張セシ
メマシタ、ソレカラ舞鶴重砲兵ノ大隊、兵力ハ不明トシテアリマス、是ハ宮
津方面ニ、又京都部隊カラ救護班ヲ久美濱ニ派遣シ、尙ホ飛行隊ヲシテ狀況
ヲ偵察セシム、師團ノ諸隊ニハ大ナル被害ガ無イモノト認ムルト云フコトデ
アリマシタ、ソレカラ其後飛行機ニ依ッテ偵察セラレタ所ノ報告モ參ッテ居リ
マツ、其情報ニ依リマスルト、飛行機ニ依リ震災地ヲ視察セシメタル情況
左ノ如シ、中郡峰山町ハ全燒、竹野郡網野町ハ半燒、其附近部落點々燒
失又ハ倒壞セリ、一、宮津、久美濱、豐岡ハ火災ナシ、是ガ飛行機ノ偵察情
報デアリマス、海軍ノ方ハ幸ニモ第九驅逐隊ガ前日來宮津灣ニ出動訓練中デ
アリマシタ爲ニ、其驅逐隊ヲシテ各方面ニ救援ヲセシメラレタノデアリマ
ス、其大要ガ分ッテ居リマスルガ、三月七日ノ午後六時三十分激震アリ、直
チニ舞鶴要港部ノ司令官ハ、海軍所屬各部竝ニ地方被害ノ狀況ヲ調査シテ、
サウシテ第九驅逐隊竝ニ麾下ノ諸隊ヲ指揮シテ、應急救護作業ニ努メサセ、
丹後與謝郡岩瀧町及加悅町火災全滅ノ報ニ接シ、第九驅逐隊ハ直チニ約
百名ヨリ成ル救護隊ヲ岩瀧方面ニ派遣セリ、二、右派遣隊ノ報告ニ依レバ、
死傷多數ニシテ收容困難ノ狀況ナル趣ナルヲ以テ、舞鶴海軍病院其他ヨリ急
速救護班ヲ編制シ、救護材料ト共ニ派遣方準備中、三、網野、久美濱方面被
害少カラザル模樣ナルヲ以テ、宮津灣ニ在リタル驅逐艦ヲ同方面ニ急派シ、
視察竝ニ救護ニ任ゼシム、四、京都府ヨリ被害地ニ派遣スル應援巡査約五十
名竝ニ救護材料ヲ驅逐艦ニ搭載シ、沿海被害地ニ向ハシム、ソレカラ今日到
來イタシマシタ其海軍ノ行動ノ第二ハ、宮津沖ニ於ケル第九驅逐隊派遣救護
隊ハ、七日夜半來、與謝郡岩瀧町ニ於テ負傷者ヲ收容シ、續イテ山田村ニ進
發救護中、八日正午マデニ同隊ガ猛火又ハ倒壞家屋中ヨリ救助セシ人員二百
五十、治療ヲ加ヘタル者數百ニ達ス、八日ノ午前九時四十分マデ右救護隊ノ
發セル軍用鳩通信ニ依ルニ、岩瀧町ノ戶數七百八十ノ內、八割全壞、死者百
二十、負傷者六百以上、山田村、石川村、石場村ハ殆ド全部燒失セルガ如ク、
加悅町七百戶ノ內、約半數燒失、各村死傷者多數ノ見込ナリ、二、八日午前
三時宮津灣ヲ發シ、被害狀況視察ノタメ丹後北岸ニ急行セル驅逐艦槇ハ、先
ヅ濱詰村ニ達シ、同村ノ家屋三分ノ二倒壞又ハ燒失シ、死者十六名、傷者多
數ノ狀況ヲ見、出來得ルダケノ救護ヲ爲シタル上、午前七時半ヨリ久美濱及
網野ノ調査ニ向フ、當時餘震尙ホ熄マズ、三、八日午前九時舞鶴要港部ニ於
テ準備セル海軍救護班ハ、救護材料、糧食若干携行、宮津方面ニ向フ、四、
同時驅逐艦椿ハ、海軍救護材料、糧食及警官隊ヲ載セ、舞鶴發網野ニ急航ス、
尙ホ今九日更ニ驅逐艦一一隻ヲ增派シ、主トシテ北方ノ救護ニ任ゼシムル豫
定、五、八日午後零時半巡洋艦多摩ハ、救護班竝ニ材料ヲ載セ、宮津灣ニ至
リ、同灣沿岸及其南方罹災地ノ救護ニ任ズ、情況ニ應ジ丹後北岸ニ向フ豫
定、以上ハ只今マデ到來イタシマシタル所ノ情報デゴザイマス、前田子爵ノ御
演說ノ通リ、此度、此不慮ノ天災ニ奥丹後方面ノ人ガ遭ハレマシテ、此悲慘ナ
ル狀況ニアルト云フコトハ、誠ニ同情ニ堪ヘザル次第デゴザイマス、就キマ
シテハ政府ハ成ルベク速ニ此被害ノ程度ヲ取調ベマシテ、而シテ善後ノ處置
ヲシタイト考ヘテ居リマス、又目下ノ應急ノコトハ、出來得ルダケ罹災民ノ救
助ニ關スル手配ハ遺憾ナク努メタイ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
幸ニ只今玆ニ讀上ゲマシタ通リ、陸海軍ノ同情ニ依リマシテ、罹災民ノ救濟
ニ著シキ効果ガ現ハレテ居ルコトハ、私ハ多大ノ感謝ヲ表スル次第デアリマ
ス、幸ニモ海ノ方カラ救援ガ出來マス、土地ハ龜裂イタシマシテ、其龜裂シ
タ土地ノ上ニ雪ガ降ッテ居リマスカラ、ソレデ自動車自轉車ナドノ通行モ自
由ナラヌト云フコトノ報告ヲ得テ居リマス、海ノ方カラノ此海軍ノ驅逐艇ノ
救護材料其他ヲ送ラレマシテ、救助ノ應援ガ出來ルト云フコトハ、誠ニ仕合
セト考ヘテ居ル次第デアリマス、之ヲ要シマスルニ、只今申シマシタ通リノ狀
態デゴザイマスカラ、目下ノ應急ノコトト、ソレト善後ノ處置ニ付キマシテ、
政府ハ最善ノ努力ヲ爲シツヽアリ、又爲ス積リデアルト云フコトヲ御答イタ
シテ置キマス
國務大臣子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=5
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006・井上匡四郎
○國務大臣(子爵井上匡四郞君) 只今ノ前田子爵ノ御質問ニ對シマシテ、鐵
道ニ關スル部分ニ付キマシテ私カラ御答辯申上ゲマス、鐵道ノ被害ハ山陰本
線及宮津線ニ限ラレテ居ルノデアリマス、今朝マデ接手イタシマシタ情報ニ
依リマシテ、被害ノ狀況ヲ申上ゲマスレバ、山陰本線ニ於キマシテハ、鎧
久谷間ニ於キマシテ築堤三千坪バカリノ崩壞ヲ致シタノデアリマスルガ、幸
ニシテ八日午後五時四十分カラ列車ヲ開通スルコトガ出來テ居リマス、居組、
岩美間及岩美、鹽見間ニ於キマシテハ、線路ガ沈下イタシタノデアリマスル
ガ、是モ適當ナ應急方法ニ依リマシテ、前者ニ於テハ八日午後十二時四十五
分、後者ニ於テハ八日午前七時五十分カラ、何レモ列車ヲ開通シ得テ居リマ
ス、又湖山、寶木間、靑谷、泊間ニ於キマシテモ築堤ガ崩壞イタシタノデア
リマスルガ、是モ幸ニシテ八日ノ早朝カラ列車ヲ開通シテ居リマス、依テ山
陰本線ハ今日ハ全部開通シテ居ル次第デアリマス、宮津線ニ於キマシテハ、
丹後由良、宮津間、是ハ起點カラ十哩二十鎻バカリノ所デ山崩レガアッタ
ノデアリマスガ、是モ幸ニシテ八日ノ正午カラ開通シテ居リマス、最モ被害
ノ多クアリマシタノハ宮津以西デアッタノデ、宮津以西網野間六驛間ノ二十
哩ノ區間デゴザイマシテ、昨日午後衆議院ニ於テ報告イタシマシタ時マデ
ハ、此區間ノ狀況ハ不明デアリマシタ、今朝マデノ情報ニ依リマスルト云フ
ト、宮津、岩瀧口間ハ八日ノ午後三時カラ開通イタシマシテ、岩瀧口カラ丹
後山田間ハ本日ノ午前十時三十分開通ノ見込デアリマス、丹後山田、網野間
ハ現在不明デアルノデアリマスル、此山田以西ノ被害ノ大イナルモノハ、山
田、口大野間ノ「トンネル」ニ龜裂ヲ生ジマシテ、補强工事ヲ要スト致シマスレ
バ、相當ノ日數ヲ要シマスルガ、假工事デ濟ミマスモノト致シマスレバ、二三
日中ニ開通ノ見込デアリマスル、今現狀ニ付テ取調中デアリマスル、山田、大
野、峰山、網野各驛トモ驛舍ガ傾斜イタシマシテ、破損イタシテ居リマスル
ガ、辛ウジテ荷物旅客トモ取扱ヒ得ル見込デアリマス、七日震災當時ニ於キ
マシテ、七列車ノ機關車一輛、客車四輛、貨車三輛ハ、網野デ橫倒シニナッタ
ノデアリマスルガ、客ガ旣ニ下車シタ後デアリマシタ爲ニ、幸ニシテ一人ノ
死傷者モ出ダサナカッタノデアリマス、鐵道ノ職員ノ負傷ニ付キマシテハ、
只今前田子爵カラ御話ノ如ク、福知山ノ運輸事務所長山本寅彥ハ、峰山町ノ
万一旅館ニ於テ燒死イタシテ居リマスル、山田驛員死者一名、負傷者一名、
其他幸ニシテ今日マデ職員ノ死傷ハ無イ見込デアリマス、通信ハ宮津マデハ
既ニ復舊イタシ、平常ノ通リニナッテ居リマスル、宮津以西網野マデハ、電
話ハ開通シテ居リマス、鐵道省ト致シマシテハ、昨日ヨリ既ニ救護品及避難
民及救護隊ノ無賃輸送ヲ開始シテ居リマスル、其他將來ニ於キマシテ、鐵道
ト致シマシテ必要ナ手段ハ遺憾ナキヲ期スル積リデアリマスル、右御報〓イ
タシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=6
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007・前田利定
○子爵前田利定君 電信電話ニ付キマシテ遞信大臣ヨリ御答ヲ得タイト思ッ
テ居リマシタガ、只今鐵道大臣ヨリ其一端ヲ合セテ伺ヒマシタカラ、是ハ暫
ク差控ヘマスガ、此度ノ大地震ニ付キマシテノ震源地、又將來此地震ノ趨向
等ニ付キマシテ御調ベガ出來テ居リマシタナラバ、文部大臣ヨリ御答辯ヲ得
タイト思ヒマス
國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=7
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008・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 甚ダ恐縮デアリマスガ、十分ニ御質問ノ要旨ヲ了
解スルコトガ出來マセヌデシタノデ、モウ一應ドウゾ簡單ニ御述ベヲ願ヒタ
ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=8
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009・前田利定
○子爵前田利定君 此度ノ大地震ノ震源地點竝ニ此地震ノ餘波ト申シマス
カ、今後ノ趨勢等ニ付キマシテ、若シ御調ベガオ出來ニナッテ居リマシタナ
ラバ御示シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=9
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010・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 了解イタシマシタ、此事ニ付キマシテハマダ十分
ニ取調ベガ出來テ居リマセヌ、何レ取調ベテ、出來次第御報告イタスコトニ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=10
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011・前田利定
○子爵前田利定君 只今各大臣ヨリソレ〓〓御答辯ヲ得マシテ了承イタシマ
シタ、殊ニ陸海軍ニ於キマシテハ、從來トテモ天災地異ノアリマシタ節其他
ニ於キマシテモ、國民ノ危急ヲ救フベク適當ナ時機ニ御出動ニナリマシテ、
多大ナル御力添へヲ下サルコトニ付キマシテハ、常ニ國民ハ感謝イタシテ居
ルコトデアリマス、此度ノ慘害ニ付キマシテモ、逸早ク陸方面ヨリモ海方面
ヨリモ、ソレ〓〓御措置ヲ御取リ下サッテ、御援助相成リマシタ點ニ付キマ
シテハ、誠ニ感謝スル次第デアリマス、陸海軍ニ對シマシテ、此際國民ノ
員ト致シマシテ深厚ナル敬意ヲ表シマス、又内務大臣ニ對シマシテハ、誠
被害ノ狀況ニ付キマシテ詳細ニ御說明ニナリマシテ、其點ニ付キマシテハ誠
ニ多トスル次第デアリマス、唯併ナガラ應急ノ御措置ニ付キマシテハ、部內
ノ高等官其他ノ吏員ヲ御派遣ニナッテ、治安警察ノコトニ付キマシテハ御手配
ニナッタコトハ、具體的ニ御示シニナリマシタガ、其他ノ點ニ付キマシテハ
抽象的ノ御答辯デアリマシテ、本員ハ少シク物足ラヌ感ジガ致シタノデアリ
マーン尤モ地震發生後、日幾何モ經タヌコトデアリマスルカラ、ソレ〓〓御
調査御考究中ノコトデ、マダ御措置ニハ立至ラヌコトデアラウト拜察イタシ
マスルガ、何卒應急ノ御措置ニ付キマシテモ、寒サト飢ニ懊惱シテ居リマス
所ノ此罹災民諸氏ノ上ニ、被服ニ、糧食ニ、「バラック」ニ、一日モ早ク適當
ナル御措置ヲ御取リニナルヤウニ、出張先ノ吏員ヲ御督勵ニナリマシテ、地
元ノ吏員其他ノ人〓ト力ヲ御合セニナリマシテ、此不幸ナル民人ノ爲ニ十分
ナル救護ノ處置ヲ御取リニナルコトヲ切望スル次第デアリマス、尙ホ當面ノ
應急ノ事ノミナラズ、將來ノ善後ノ御措置ニ付キマシテモ、今日此席デ御說
明ヲ承ハル譯ニ參リマスマイガ、何卒其點ニ付キマシテモ十分ノ御考慮アラ
ムコトヲ望ミマシテ、私ノ質問ハ是デ打切リマス
國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=11
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012・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 先刻御答ヘ致シマス中ニ、今ノ救護ニ關シマスル
コトノ一端ヲ落シテ居リマシタカラ、補足イタシテ置キマス、京都府ニ於キ
マシテ警察官ヲ二百五十名、是ハ御報告申上ゲタト思ヒマスガ、取敢ズ米二
百石、毛布五千枚、「トタン」板四千枚等ヲ送付スルト云フ電報ニ接シテ居リ
ママ、ソレカラ東京ノ方カラモ出來得ルダケ應急ノ事ヲ致シマシテ、毛布
「ベッド」天幕ナドヲ送ル手配ヲ、社會局ノ方デ致シテ居ルノデアリマス、是
ダケ更ニ今ノ御質問ニ對シマシテ補ウテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通〓ニ依リマシテ高橋琢也君ニ發言ヲ許シマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=13
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014・高橋琢也
○高橋琢也君 只今今囘ノ關西地方ノ大震害ニ付キマシテ、前田子爵カラ緊
急ノ御質問ガゴザイマシタ、ソレニ對シテ政府カラソレ〓〓御答辯ガゴザイ
マシタガ、私ハ十分ナ御答辯ガアッタラバ別段ニ質問ヲ致ス積リデゴザイマセ
ナンダ、只今承リマスル所ダケデハ、聊カ物足ラヌヤウニ考ヘマスルデ、之
ニ上リマシタ次第デアリマス、安達內相代理ハ新聞デ傳フル程ノ大キナ被害
デハナイト斯ウ仰シャルヤウニ、先刻私ハ聽取リマシタ、或ハ聽違ヒカハ存
ジマセヌ、併シドノ點ガ新聞ニ書イテアルノガ針小棒大ニナッテ居ルノデアル
カ、唯ソレバカリデハ、矢張リ私等ニハ頭ノ惡イセイカ、之ヲ判斷スルニ苦
ミマスルノデアッテ、ソレガ爲デアルカ、只今御報告ニナリマシタ事柄ハ、
寧ロ一般新聞ニ出テ居リマスルヨリ、餘程簡略ニナッテ居リマスヤウニ思ヒマ
ス、併シ近頃ノ新聞紙ハ極メテ報告ガ確實デアルヤウニ、私ハ認メテ居リマ
ス兎ニモ角ニモ今囘ノ丹後地方ヲ中心トシテ、大阪、神戶、京都、遂ニ奈
良方面ニ至ルマデ、此震災ヲ被ッテ居リマスルト云フコトハ、事實デアラウ
ト思フ、私ハ安政ノ大地震ニモ遭ヒマス、大正十二年ノ九月一日ノ大地震ニ
モ遭ヒマシタ、兩囘ノ慘狀ヲ目擊シテ居リマスルカラ、凡ソ世ノ中ニ地震程
慘害ヲ逞シウスルモノハナクシテ、是位恐ロシイモノハナイ、火事モ親爺モ
恐ロシイデゴザイマセウガ、併シ地震程恐ロシイモノハナイ、ソレ故ニ多少
地震ト聞キマスト、私ノ神經ハ一層過敏ニナリマスカモ知レマセヌ、今囘政
府ハモウ少シ速ニ此議會ニ御報告ヲ爲サル途ハアリハシナイカト思ヒマス、
縱令本會議ガ開カレナイ時デアッテモ
〔副議長蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕
貴族院ノ事務局、議長ノ御手許、何レデモ、各地方カラ報告ニナッタコトヲ
一々之ヲ御移シニナッテモ、大シタ手數デハナカラウト思フ、四百ノ貴族院
議員ノ中ニモ、大阪、京都兩府、兵庫縣、是等カラ出テ御イデナサル方モ
アリ、御親類モ澤山アラウト思ヒマスル、縱シソレガ無イニシテモ、今日彼
ノ同胞ガ非常ナ慘害ニ罹ッタ場合デアルカラシテ、是ハ一々御報告下サルコト
ガ出來ハセヌカ、出來タラ最モ私ハ結構デアラウト思フ、然ルニ去ヌル七日
ノ午後六時三十七分デゴザイマシタカ、其大震ノ出來事ハ新聞紙デハ直チニ
號外ヲ出シテ、我〓ニ之ヲ報〓シテ吳レラレタノデアル、新聞紙ガ無カッタ
ナラ何ニモ分リマセヌ、實ニ新聞ノ有難ミヲ茲デ私ハ殊更ニ感ジタノデアル、
三日目ノ今日、前田子爵ノ御質問ニ依ッテ初メテ御報道ナサル、其御報道モ、
我〓ノ承ル所ニ依レバ、災害其モノハ別ト致シマシテ、之ニ對スル應急ノ策、
善後ノ手段ヲ十分ニ御盡シニナッテアルヤウニ伺ハレナイ、私ハ議會中デナ
カッタナラ内務大臣自ラ飛ンデ御出デナサルデアラウト思フ、其他ノ大臣ニ於
テモ、御自分ノ主管ノ關係カラ御出デナサラニャナラヌ御方モアルデアラウ、
議會中デアルカラ大臣自ラ御出デニナルコトハナラヌニシテモ、少クトモ事
務次官位ハ、六日ノ夜行デ實地ヘ御臨ミニナラナキャナラヌコトデアラウト思
フ、尤モヤッテ居ラッシヤルカモ分ラヌ、只今ノ御報〓ヲ承ッタノデハ、其事モナ
イヤウニ思フノミナラズ、新聞紙ノ傳フル所ニ依ルト、震害地ノ府縣知事ヘ、
救濟ノコトニ付テ、遺漏ノナイヤウニセイ、善後ノ策ハ一任スルト云フヤウ
ナコトガ、新聞紙ニ載ッテ居リマス、果シテサウデアルナラ、隨分冷淡ナ爲
サレ方ト言ハザルヲ得ナイ、地方官ハ政府ノ代官トシテ、平生自分ノ主管シ
テ居ル其地方ノ人民ノ利害休戚ハ、一日一時ト雖モ忘レテ居ル氣遣ヒハナイ、
況ヤ斯ウ云フ大震害、大災害ノ場合、ドウシテ捨テヽ置キマセウ、斯ウ云フ
非常ノ場合ニハ、政府デハ又非常ノ手段ヲ御取リニナルベキ筈デハナイカト
私ハ思フ、サスレバ唯社會局ノ役人ヲ派遣シタト云フ位ノコトデ、直接ニ內
務大臣若クハ內務大臣ノ代理ニ當ルベキヤウナ人モ行ッテ居ラヌヤウデアル、
獨リ內務大臣ノミナラズ、何レ此大災害ヲ被ッタ地方ノ耕地、山林、是等ニ
於テハソレ〓〓租稅モ減免セラルヽニ違ヒナイ、サスレバ是等ノ御取調ニモ
必要ガアル、況ヤ震災地ノ何レガ中心デアル、何レガ最モ甚ダシイ被害デア
ルト云フヤウナコトハ、大阪アタリ迄龜裂ノ生ジタ土地ガ澤山アルト承ッテ居
リマスルカラ、是等ニ向ッテモ、直チニ人ヲヤッテ十分ナ御調ベハナサル筈デ
アラウト思フ、然ルニ應急ノ手當ニ付テ、具體的ノ御話ガ先刻カラ出テ居ラ
ナイ、出テ居ラヌコトハナイ、確カニ米ヲ幾ラヤッタ、其他救護品ヲ何〓送ツ
タト云フヤウナコトハゴザイマス、ソレダケデハ濟ミマスマイ、新聞紙ニ傳
フル所ニ依ルト、雪ト生米ヲ嚙ンデ飢ヲ凌イデ居ルケレドモ、ソレスラ思フ
ヤウニ出來得ナイ、況ヤ此寒氣ノ時、雪ノ中ニ居ッテ燒ケ出サレテ、死ヌヨ
リ外ニ途ハナイト云フヤウナコトニ歸著スル、其人間ヲ見殺シニシテハ相濟
マナイ、國ニ政府ガアリ、地方ニ行政廳ガアル以上ハ、是ハドウシタッテ見
殺シニハ出來ナイ筈デアル、故ニ之ヲ活カス方法ヲ講ジナケレバナラヌト云
フコトハ、論モ何モナイ筈デアル、デ若シ雪デ以テ交通ガ不便デアルナラバ、
橇ヲ仕立テテモ宜シイ、或ハ陸軍アタリノ野營ニ使フ釜ヲ出シテ貰ッテ、ソ
レデ以テ生米ヲ煮テ食ハシテモ宜シイ、色〓手段ガアラウト思ヒマスルガ、
ソレ等ノコトハ御盡シニナッテ居ルカモ知ラヌガ、只今ノ御答辯デハ餘リ御盡
シニナッテ居ラレヌヤウニ思フ、ソレ故ニモウアッタ地震ハ仕方ガナインダカ
ラ、之ヲ前ニ救フト云フコトヂャナイ、既ニ出來タ此大慘害ニ遭ウテ居ル人
民ヲ、一人デモ餘計ニ救フト云フコトガ一番必要デアル、ソレニハ悠々閑々
トシテハ居ラレナイ、當局ノ方ニ於テハ最モ之ニ力ヲ入レナケレバナラヌコ
トデアラウト、私ハ考ヘテ居ル、ガ今後ドノヤウニシテアノ被害民ヲ御救ヒ
ナサル御積リデアルカ、遺憾ナク是等ヲ救濟シ得ル手段ヲ御取リニナル方法
ハ立ッテ居ルノデアルカ、之ヲ私ハ承リタイ、ソレカラ震災地ノ耕地、山林、
是等ニ付テハ無論農林省カラ相當ノ人ヲ派遣シテ御出デニナッテ居ルベキ筈
デアラウト思フ、是等モ前田子爵ノ御質問ニ對シテハ御答辯ガナイ、或ハ未
ダ是等モ御詮議ガナイノカモ知ラヌト思フ、ソレドコロヂャナイ、今前田子
爵カラ通信ニ付テノ被害ノ狀況ハ、遞信大臣ガ此演壇ニ御立チニナッタニモ拘
ラズ、其方ニ向イテハ一言モ御報〓ガナカッタ、是ハ或ハ御調査ガ十分ニ出
來テ居ラヌカモ知レヌガ、是等ニ向ッテ、ドウモ政府ノ爲サレ方ガ如何ニモ
冷淡デアルヤウニ思ハレル、デ國民ハ是デ安心ハ能ウシナイデアラウト私ハ
思フ、故ニドウカ此點ニ於テ國民ノ安心スルヤウナ御答辯ヲ戴キタイト思フ、
今日ハ樣〓ノ議案ガ澤山アルノミナラズ、マダ其上ニ最モ大キナ問題ガ茲ニ
突發シテ出テ來ルデアラウト存ジマスカラ、質問ハ簡單ニシテ打切リマスル、
併シ此際議長閣下ニ一ツ伺ヒタイ、私ハ一向從來ノ事ヲ存ジマセヌガ、斯樣
ナ大震火災ノヤウナコト、兎ニ角非常ノ事ノアッタ場合ニハ、其地方ヘ向ッテ
院議ヲ以テ慰問スルトカ、議員ノ中カラ慰問使ヲ派遣スルトカ云フヤウナコ
トハ、是迄ゴザイマセヌカ、縱シ前例ガナイニシテモ、私ハドウカ是ガ出來
レバ宜シイト存ジテ居リマスルガ、サウ云フコトハ何カ御差支ガアッテ出來得
ナイモノデゴザイマセウカ、此一點ハ議長閣下ヘ伺ヒタイノデゴザイマス、
是デ私ノ質問ハ終リマス
國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=14
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015・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 御答ヘ致シマスガ、私ノ先キニ御報告申上ゲマス
ルノニ、震災ガ格別ナコトデナイヤウナ口調デアッタト云フヤウナ御尋デアリ
マスルガ、サウデハゴザイマセヌ、一昨夜聞込ンダヨリモ、次第ニ情報ニ接
スレバ接スル程、震害ハ大キクアル、反對ニナッテ居リマス、震災ノ程度ハ
大キク認メルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、唯アトデ兵庫縣ノコトハ、
兵庫縣ノ知事ノ報〓ノ中、新聞ナドデ傳フルヨリハ其被害ノ程度ハ······兵庫
縣一部ニ限ラレテノ兵庫縣知事ノ報〓デアリマシテ、震災其モノノ大體ハ、
最初豫想シタヨリモ尙ホ一層大キイト云フコトヲ申上ゲテ居リマス、ソレカ
ラ議會ニ對スル報告ハ、御話ノ通リ政府ノ方カラ先キニ致ス筈デアリマシタ
ガ、前田子爵カラ御質問ガアルト云フコトヲ承リマシタ爲ニ、其御質問ヲ拜
聽シタ上ニ御答ヘシタ方ガ穩當デアラウト考ヘマシタカラ、御質問ノアッタ後
ニ御答ヘシタ次第デアリマス、第三ニ、此救助ノ方法ニ付キマシテハ、政府
トシテ又府縣廳カラ嚮ニ特ニ電報デ參リマシタコトダケヲ御報告イタシマシ
タガ、此外ニ何モセザルカト云フコトデアリマスガ、無論サウデハゴザイマ
セヌ、是ハ御承知ノ通リ各府縣ニ罹災救助基金ガアリマス、京都府ノ如キモ
約百万圓バカリアル筈デゴザイマスカラ、ソレデ府縣知事ハ此金ヲ支出イタ
シマシテ、サウシテ罹災民ノ被服、或ハ焚出、或ハ小屋掛等ノコトハ、是ハ
遺憾ナク縣官ヲ出張セシメマシテ致シテ居ルノデアリマス、ソレカラ遞信省
ノコトハ、先キニ私内務省ノ報〓ヲ主ニシテ御答ヲ致シマシタカラ省キマシ
タガ、遞信省方面ノハ、是ハ特ニ大阪遞信局カラ多數ノ人ヲ被害地ノ方面ニ
派遣イタシマシテ、電信、電話ノ出來得ルダケ速ニ開通スルヤウニ、只今十
分ナル努力ヲ致シテ居ルノデアリマス、其事モドウゾ決シテ等閑ニ致シテ居
ラヌト云フコトヲ御承知ヲ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=15
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016・高橋琢也
○高橋琢也君 只今、安達內相代理ノ御答ニ、政府カラ報告シヤウト思ウタ
ラ、前田子爵ガ先キニ御質問ヲナサッタカラ、ソレデ政府ノ報告ハ後レタト
仰シャルヤウナ御答辯、私ガ先刻伺ッタノハ、今日此議場デ後トカ先トカ云
フ問題デナイ、旣ニ一昨日起ッタ問題デアルカラ、新聞紙デ號外デ報告セラ
レル位ナラバ、直チニ貴族院ノ事務局ナリ、議長ノ御手許ナリヘ報告ガ出來
サウナモノダ、ソレヲセラレヽバ大變好都合デアル、皆ガ知ルコトガ出來ル
ノデアル、サウスレバ一昨日ノ夕方既ニ出來タ、況ヤ昨日一日ヲ經テ居ル、
又社會局ノ人モ一昨日出ヤシナイ、昨日漸ク出テ行ッタト云フヤウナコトデ、
例ハ違フガ、昔ノ侍ト云フヤツハ、一ツ何カ大事ナコトガ起ルト、自分ノ家へ
歸リハシナイ、城內カラ直チニ馬ヲ馳セテ、其大事ナ地方ヘ向ッテ行クト云
フ位ノモノデアル、國家ニ政府ガアッテ役人ガ置イテアルト云フノハ何ノ爲デ
アルカト云フコトヲ考ヘレバ、直グ分ル、ソレヲ悠々閑々トシテ、昨日ニ至ッ
テ社會局ノ者ヲヤリマシタ、況ヤ今京都府ニハ金ガアルカラ······金ガアルカ
ラト云ッテ、果シテソレヲ以テ應急事業ヲ爲シ得ルニ足リルカ足ラヌカ、又
其支出ハ知事ガ實際監督ヲ受ケテ居ルト云フカ委任ヲ受ケテ居ルト云ヘ
バソレデ宜シイノデアリマスガ、受ケテ居ルデセウ、併ナガラ一地方官ナル
モノハ、長野ノ一件デ直グ分ル、現在大疑獄ガ長野ニ起ッタノハ何故デアル
カ、今審理中デアルノハ何デアルカト云フコトヲ考ヘレバ、直グ分ル、當時
ノ知事ハ斯ウ云フ所業ヲ致シタカラ毆ラレタ、或ハ政府モ之ヲ免職スル、毆
ラレタ上ニ免職セラレタ、斯ウ云フコトガ起ッテ來ル、況ヤ今囘ノヤウナ非
常ナ場合ニ、知事ガ居ルカラ、ソレガ善クスルダラウト云フコトハ、ソレハ
中央政府トシテ極メテ冷淡ナ取扱ト云ハザルヲ得ナイ、ソレ故ニ私ハ御尋ネ
シタ、モウ如何ニモ中央政府ノナサレ方ガ冷淡ノヤウニ思ハレル、ソレデ私
ハ例ヲ擧ゲテ伺ッタ
國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=16
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017・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 先刻高橋君ノ御尋ノ中ニ、農林省ニ關係イタシマ
シタ御尋モアリマシタ、玆ニ昨朝以來今日迄、農林省側トシテ執リツヽア
ル點ヲ簡略ニ申シマスレバ、昨日モ取敢ズ山林局カラ、主トシテ民有荒廢ノ
關係ハ······民有林荒廢ノ模樣ハ如何デアルカト云フコトヲ調査スル爲ニ、技
師一名、技手一名ノ兩名ヲ派遣シマシテ、多分今日ヨリ調査イタシテ居ルコ
トト思ヒマス、又震災地方ハ海岸ニ寄リマシタ方面ガ頗ル激烈デアルト承知
イタシテ居リマシタ、故ニアノ邊ニ御承知ノ通リ、漁村ニ對シテ共同施設ヲ
致シテ居ルノデアリマスカラ、其被害ノ程度、將來ノ復舊ニ對スル爲ニ、昨
日技師二名ヲ派遣イタシテ居リマス、又耕地、田畑ノコトハ、高橋君ノ御承
知ノ通リ、收穫ノ濟ンダ後デアリマシテ、將來ノ復舊ノコトニ對シテ相當心
配ヲ致サナケレバナラヌコトガアルト思ヒマスルガ、一日急ヲ爭ッテ調査イタ
ス必要モナカラウト思ヒマシタ故ニ、是ハ降雪ノ······雪ノ季節ガ濟ミマシタ
後ニ取調ベル積リデ、マダヤッテ居リマセヌ、ソレカラ農林省ガ持ッテ居リマ
スル大阪ノ米穀事務所ニ電信ヲ打チマシテ、米穀委員會デ了解ヲ得テ居リマ
スル內地米整理ノ爲ニ賣却スル十七万石及數万石ノ外米ヲ、整理上賣却スル
必要アル部分ガアリマスル故ニ、地方長官ノ希望ガアッタ節ニハ、便宜此內
地米及外米ヲ、從來ノ慣例及法規ニ從ッテ便宜賣却スルコトヲ、電信ヲ以テ
命令ヲ致シテ置キマシタ、又小屋掛、「バラック」等ノ必要アルナラバ、是モ米
穀賣却ト同樣ノ便宜ナ方法ニ依ッテ、地方長官ト協議ノ上ニ然ルベク取計ラヘ
ト云フコトヲ、大阪營林局ニ向ッテ昨日電信ヲ打ッテアル次第デアリマス、大
體御報告イタシマス
國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=17
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018・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 只今高橋君カラ、政府ハ此事件ニ付テ如何ニモ冷
淡デアルガ如キ御口吻ノ御質問ガアッタノデアリマス、私ハ申上ゲルニモ及バ
ヌト思ッテ差控ヘテ居リマシタガ、決シテ冷淡ドコロデナク、出來ルダケノ
手段ハ盡シテ居リマス、文部省ト致シマシテモ既ニ高等官ヲ派遣イタシマシ
テ、隨員ヲ連レテ特ニ出張イタシテ居リマス、又中央氣象臺及震災豫防調査
會ノ兩方面ニ於キマシテ、專門ノ技師ガ技手ヲ引率イタシマシテ、是ハ最モ
迅速ニ出發ヲ致シマシタ、只今時間ヲ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、決シテ
機ヲ過マタヌヤウニ出發ヲ致シテ居リマス、遠カラズ報〓ガアルコトト存ジ
テ居リマス、報〓ガアリ次第又御報告申上ゲルコトニ致シマス、兎ニ角、決
シテ冷淡ニ致シテ居ラヌト云フコトヲ、御承知ヲ願ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=18
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019・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 生憎、德川議長ハ此處ニ居ラレマセヌガ、先
程ノ高橋琢也君ノ御質問ニ御答ヘ致シマス、院議ヲ以テ慰問使ヲ派遣シタト
云フヤウナコトハ是マデゴザイマセヌ、尤モ各議員ニ於カレマシテ決議セラ
レレバ是ハ御隨意ノコトデアリマス、此段御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=19
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020・高橋琢也
○高橋琢也君 私伺ッタノハモウ一ツ、院議ヲ以テ慰問ヲスルト云フヤウナコ
トハアリマセヌデシタカト云フコト、適當ノ機會ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=20
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021・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) ソレハ段々是マデ數〓ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=21
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022・高橋琢也
○高橋琢也君 私ノ質問ハ是デ打切リマス
〔田中館愛橘君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=22
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023・田中館愛橘
○田中館愛橘君 此度ノ地震ニ付キマシテ誠ニ痛歎ニ堪ヘマセヌコトハ、先
程前田子爵ノ御述べニナリマシタコトト全ク感ヲ同ジウスルモノデアリマ
ス、簡單ニ政府ニ伺ヒタイコトガアリマスル、地震ハ斯ノ如キ慘害ヲ起スモ
ノデアルコトハ、其地震ノ起リマシタ當時ハ誰シモ感ジルノデアリマス、是
ハ歷史有ッテ以來、歷史ノ示ス如ク度〓有ルノデアリマシテ、既ニ明治十年
ト存ジマスガ、同僚ノ服部一三君ハ、此地震ノ統計ヲ調査ヲセラレマシテ、
大略五十年ニ一囘位ハ大地震ガ有ル、然ルニ此地震ニ對シテノ研究設備ハ、
政府ニ於テモ民間ニ於テモ、甚ダ怠ッテアルト云フコトヲ說カレマシタ、詳
シイコトハ服部君ガ御出デゴザイマスルカラ、御承知ノコトト思ヒマス、ソ
コデ今日ト雖モ、誰ガ見マシテモ、此地震ハ今囘限リデ後ハ無イトハ考ヘマ
スマイ、常識上考ヘナイダラウ、然ラバ將來ニ對シテ我〓ハドウ云フ覺悟ヲ
セナケレバナラヌカ、此地震ナルモノハ、今日ノ言葉デ申シマスレバ、地球
物理上ノ一ツノ現象デアリマス、地球物理ハ氣象モ兼ネテ居リマスルガ、氣
象學ノ如キハ外科デアリマス、暴風トカ暴雨トカ云フコトノ起ルノハ、外部
ニ起ルノデアリマスカラ、比較的研究ガ樂デアル、今日ハ此豫報モ廣ク信賴
ヲ受クルヤウニナリマシテ、實用上ニ此豫報ヲ使ッテ居ル、所ガ地震ニ於キ
マシテハ、未ダ氣象ノ天氣豫報ノ如ク、之ヲ豫報スル程度ニ達シテ居リマセ
ヌ、是ハ內科ノ病氣デアルガ故ニ、地球ノ內部ノ病氣デアルガ故ニ、其研究
ガ、氣象學ト比較シテハ頗ル困難ナ次第デアリマス、サリナガラ色〓ナ機關
ニ依ッテ之ヲ調べマスレバ、之ヲ豫報スルコトノ出來ヌコトハナカラウト、
本員ハ思フノデアリマス、勿論何日何時ニ地震ノ起ルト云フヤウナコトハ、
非常ニ困難ナコトデアリマスケレドモ、凡ソ何年頃ト云フ位ノ程度ノモノニ
ハ······マア簡單ニ申シマシタナラバ十年內外トカ云フ位ノ程度ニハ、豫報ガ
出來ヤウカトモ思ヒマス、デ其方法タルヤ種々アリマセウガ、此處デ地震學
ノ講演ヲ致シマシテハ相濟ミマセヌ、例ヘバ先達テノ地震ニ致シマシテモ、
此水準ノ變化、外面上カラノ變化ガ、段々段々、或地方ハ下リ或ル地方ハ上ッ
テ行ク、勿論是ハ細微ナ變化ヲ見マスルカラ、精密ナル觀測ヲ遂ゲナケレバ
ナラヌ、次ニ地熱ノ變化、次ニ微動ノ震度、卽チ屢、起ル微動ノ震度及其微
動ノ地方的配布等ノ如キモノヲ研究シナケレバナラヌ、更ニ加ヘテ申シマス
レバ、間接的ニ地磁氣ノ變動、地球磁力ノ變動、尙ホ近頃鑛山等ニ盛ンニ用
ヰマス重力ノ配布等デアリマス、是等ニ依ッテ〓究イタシマシタナラバ、〓
究シ得ラレヌコトハナカラウ、而シテ此地震ナルモノハ、單リ日本ニ限ラレ
タ現象デハアリマセヌ、亞米利加ニ於テモ、南米地方ニ於テモ、伊太利ニ於
テモ、方々ニ有リマス、唯或地方ニ於テハ地震ノ屢〓起リマス所ニハ、學術
機關ガ足ラヌ地方ガアリマスル故ニ、此研究ノ進マヌ所モアリマス、幸ニト
申シテハ語弊ガアリマスガ、日本ノヤウナ國デハ、相當ニ之ヲ研究ヲスル學者
モアリマスル、ソレデ此震害ヲ受ケマスル慘害ノ大ナルコトハ、今議題トナッ
テ居リマスル震災手形、僅ニ其手形ダケデモ大キナ問題ノヤウニ思ヒマスガ、
當時ノ此東京ノ大震害ナドヲ見マシタナラバ、、此豫報ノ大略ノ目安、或ハ其
起ル地方、ドノ地方ガ地震地方デアル、ドノ地方ガ先ヅ安全デアルト云フ位
ノ診斷ガ付キマス丈デモ、國家ニ對シテ非常ニ大キナ利益デアル、又廣ク人
類ニ對スル所ノ利益デアラウト思ヒマス、カルガ故ニ學術〓究會議ナルモノ
ガ文部省ニ設定セラレマシテカラ、此研究機關ヲ設ケルコトヲ建議イタシマ
シタ、確カ二三囘モ建議シテ、直接ニ當局者ニ會ッテ之ガ說明モ致シタヤウ
デアリマスガ、之ガ費用ハ迚モ我〓ノ希望スルダケノ御許シハナイノデアリ
やく、僅ニ我〓ノ希望スル所ノ四分ノ一位ノモノデアリマスガ、此研究所ガ
出來ルヤウニナリマシタ、餘リ喧シイカラマア幾ラカヤラシテ置ケト云ッタ態
度ダラウト思ヒマス、私ノ考デハ、之ニ注グ所ノ此費用ト云フモノハ、直接
ニ金ヲ預ケタカラ利子ガ來ルト云フヤウニ來ル譯ノモノデハアリマセヌ、勿
論是ハ一方カラ見レバ棄テ金デアル、棄テ金ヲ使フノデアル、而シテ其結果
ハ必ズ何時カニ出テ來ルコトト思ヒマス、政府ハ之ニ鑑ミマシテ、將來此地
震〓究機關ニモット力ヲ入レテ完成スル意思ハナイカ、之ヲ確メタイノデアリ
やく、今日ノ貧弱ナルアノ機關ヲ以テ御滿足ナサレルカ、私自身モ濃尾大震
ノ時ニ出張ヲ致シマシテ、暫クノ間大垣、岐阜、名古屋地方ヲ踏查イタシマ
シテ、適切ニ感ジマシタコトハ、此家屋ノ構造デアリマシテ、是ハ震源トカ
地震ノ時期トカト云フ學問上ノ事トハ別ニ、此住宅問題カラ考ヘマシテ、住
宅ノ不良ナルモノガ一軒アレバ、忽チ火災ヲ起ス、而シテ其慘害タルヤ御承
知ノ通デアル、ドウニカ此住宅ニ對スル所ノ法律ヲ設ケテ、此地方ハ是ダケ
ノ丈夫サヲ持タナケレバ建テサセヌ、家ヲ建テサセヌト云フヤウナコトニデ
モシタナラバ、此慘害ハ餘程輕減スルコトガ出來ルデアラウト思ヒマシテ、
同僚ニモ相談シテ評議ヲ致シマシタ、其結果ハ唯〓勸〓ニ止マッタノデアリマ
ス、出版シテ其當時ノ決議モアリマスルガ、家ノ建方或ハ細微ナル所ノ構造
法等モ出シマシテ、詰リ地震地方ニ對スル勸告ニ過ギナカッタノデ、勸告ナ
ドト申シマスルモノハ、熱イモノガ咽喉ヲ通レバ忘レル如ク、直グ忘レテシ
マヒマス、今度ノモノモ二三年經ッタラバ必ズ忘レテシマフダラウ、サウ云
フコトデアリマスルカラ、忘レヌ中ニドウカ此研究機關ヲ完備イタサセタイ
ノデアリマス、今日ノ如ク貧弱ナル有樣ニナサレテハ、又〓同ジ慘害ヲ釀ス
コトニ、我〓或ハ我〓ノ子孫ガ遭遇スル、是ハ明カデアル、政府ノ之ニ對ス
ル御意見ハドウ御考ヘニナリマスルカ、若シ幸ニシテ政府ノ意嚮ガ之ニ向ツ
タナラバ、速ニ此〓究機關ノ整備ト云フコトニ著手セラルル意思ハナイカ、
之ヲ伺ッテ置キマス
國務大臣岡田良平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=23
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024・岡田良平
○國務大臣(岡田良平君) 地震ノ慘害ニ付キマシテハ先刻來段々承リマスル
通デアリマシテ、誠ニ是ハ人間ノ最大不幸ノ一ツデアルト思フノデアリマ
ス、而シテ是ハ或ハ豫知シ、或ハ之ヲ豫報スルト云フコトニ付テ、望ナキニ
アラズト云フ學者ノ說デゴザイマスルニ依ッテ、明治二十五年ノ濃尾震災ノ
直後ニ、震災豫防調査會ト云フモノヲ設ケマシテ、研究ニ從事シテ居ルコト
ハ御承知ノ通デゴザイマス、此研究ノ結果ト致シマシテ、地震學上ニハ餘程
ノ長足ノ進步ヲ致シタト私ハ承ッテ居リマス、卽チ此地震ノ觀測ノ上ニ於キ
マシテ、微動計ノ發達ノ上ニ於キマシテ、著シイ進步ヲ致シテ居ルヤウデア
リマス、又耐震建築ノ研究ニ於キマシテモ、著シイ進步ヲ致シテ居ルヤウデ
アリマス、併ナガラ今日迄ノ程度ニ於キマシテハ、到底此慘害ヲ免レルト云フ
ヤウナコトハ出來マセヌカラ、是ヨリ進ンデ大ニ調査〓究ヲシテ慘害ヲ免レ
ル、若クハ之ヲ少クスルト云フコトニ努力シナケレバナラヌト云フコトハ、
田中舘君モ御述べノ通デアリマス、ソレ故ニ先頃地震ノ研究所ヲ設ケマシ
テ、震災豫防調査會ノ事業ヲ大ニ擴張イタシマシテ、調査ニ從事スルコトニ
致シタノデアリマス、ガ此調査ト云フモノガ、ソレナラバ理想的デアル、完
備シテ居ルカト云フコトデアリマスレバ、研究ニ關係シテ居ル者カラ見マス
ルト云フト、遺憾ナル點ガ多々アルト思フノデアリマス、當局ト致シマシテ
千、尙ホ十分ノ經費ヲ投ジ、設備ヲ致シマシテ研究上遺憾ナキヲ期スルヤウ
ニ致シタイトハ山〓考へテ居ルノデアリマスルケレドモ、是ハ財政上ノ關係
モゴザイマスルシ、ナカ〓〓思フ通ニハ運ビ兼ネルノデアリマスガ、併シ御
質問ノ御趣意ニ對シテハ同感デアリマスノデ、尙ホ將來ニ向ヒマシテモ出來
ルダケ努力ヲ致シマシテ、研究ヲ進メルト云フコトニハ努メタイト考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=24
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025・蜂須賀正韶
○副議長(侯爵蜂須賀正韶君) 休憩ヲ致シマス、午後ハ一時半ヨリ開會イタ
シマス
午後零時二十九分休憩
吉
午後一時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、高倉子爵病氣ニ付
キ會期中、藤田男爵病氣ニ付キ十日間、湯地定基君病氣ニ付キ會期中、藤山
雷太君病氣ニ付キ十七日間、左右田喜一郞君病氣ニ付キ十日間ノ請暇ノ申出
ガゴザイマシタ、何レモ許可スルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
吉星小吉市本発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日左右田喜一郞君病氣ニ付、震災手形損失補償
公債法案外一件ノ特別委員ノ辭任ノ申出ガゴザイマシタ、之ヲ許可スルコト
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、就テハ補缺トシテ山崎龜
吉君ヲ指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 一昨七日、林豫算委員長ヨリ昭和二年度歲入歲出
豫算案外二案ハ審査期限中ニ審査終了セザリシ旨ノ報告書ヲ提出イタサレマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=30
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031・馬場えい一
○馬場鍈一君 只今議長ヨリノ御說明ニ依リマシテ、昭和二年度歲入歲出總
豫算案外二件ガ、過日本院ニ於テ審查期限ヲ定メテ審查ニ付セラレタノデア
リマスガ、審査未了ニ終ッタト云フコトデアリマス、就キマシテハ此善後處
置ト致シマシテ、一ツノ動議ヲ提出イタシマス、卽チ豫算委員ハ本日ヨリ十
日間以內ニ、本豫算案三件ノ審查ヲ爲シ、卽チ來ル十八日マデニ其結果ヲ議
長ニ報告スベシトノ動議ヲ提出イタシマス、諸君ノ御賛成ヲ乞ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=31
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032・青木信光
○子爵靑木信光君 馬場君ノ動議ニ贊成ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通告ニ依リマシテ只今ノ馬場君ノ動議ニ關スル質
疑ヲ許シマス、高橋琢也君
〔高橋琢也君演壇ニ登ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=33
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034・高橋琢也
○高橋琢也君 只今馬場鍈一君ヨリ御提出ニナリマシタ動議ニ對シマシテ、
馬場君ニ御質問ヲ致シタイト思ヒマス、此動議ニ依リマスルト、本日ヨリ十
日間更ニ之ヲ豫算委員ニ再付託ヲシテ之ヲ議了セシムル、斯ウ云フ趣旨ノヤ
ウデゴザイマス、第一ニ承リタイノハ、何ニ基準シテ此動議ヲ御出シニナッ
タノデアルカ、憲法若クハ議院法、議院規則、何レニ基準シテ此動議ヲ御出
シニナッタノデアルカ、之ヲ第一ニ伺ヒタイ、第二ニ、旣ニ今日マデ二十一
日間ノ期日ヲ以テ、所謂審査期限ヲ以テ、其間ニ議了スルコトガ出來得ナ
カッタト、是ハ何ノ爲ニ議了スルコトガ出來ナカッタカ、私モ豫算委員ノ一人
デゴザイマス、其事情ハオ前ハ知ッテ居ルダラウト、斯ウ反問セラレルカモ
知レヌガ、私ニハ私ノ外ノ考ガアル、ソレハ後デ申上ゲマス、併シ二十一
日間ト云フモノハ、嚮ニ豫算案ガ本議院ニ提出セラレタ時ニ決メラレタモ
ノデアル、是ハ二十一日間ニ議了シ得ラルベキ筈ノモノデアルト私ハ信ズ
ル、然ルニ是ガ議了スルコトガ出來ナカッタト、ソレハ何ニ原因シテ居ルノ
デアルカ、其原因ヲ探究セザル以上ハ、今日ヨリ十日ノ後何ヲ以テ確ニ是ガ
議了セラルヽト云フコトヲ御確信ニナッテアルノデアルカ、十八日ニ至リマ
シタガ、マダ審議未了デゴザイマスト、豫算委員長ガ議長へ報告シタラ、其
時ハドウナサル、十日間ナラ必ズ出來ル、斯ウ御認メニナッタ其理由ヲ承リタ
イ、何故ナラバ、今日マデ二十一日間デマダ出來ナカッタモノガ、今度十日
間ナラ出來ル、玆ニ至ルト、此豫算ニ直接關係ヲ持ッテ居ル所ノ法案ガ、其
間ニハ審議ガ出來得ルデアラウ、斯ウ云フヤウナ意味カラ仰シヤルノデアル
カ、十數個ノ法案、殊ニ喧マシイ問題モアルノデスカラ、宗〓法案タッタ一ツデ
スラ、委員付託トナッテドノ位ノ日數ヲ經テ居ルカ、之ヲ見テモ分ル、況ヤ豫
算ニ直接關係ノアル重要ナ法案ガ、ドウシテサウ僅ナ短時日ノ間ニ出來得マ
スルカ、ソレハ斯ク〓〓ノ理由デ出來ルト云フコトヲ仰シヤッテ戴ケバ安心
ヲ致シマスルケレドモ、其御確信ガ付イテ居ルト云フナラ、之ヲ一ツ承リタ
1、一體衆議院ハ、二十一日間デ豫算ヲ議了シテシマフ、貴族院議員ハ何故ニ
二十一日間デ議了スルコトガ出來得ナカッタカ、是ハ馬場君ノ御承知ナサル
コトデナイカモ知レナイ、併シ馬場君ガ此動議ヲ御提出ニナル以上ハ、ソコ
ハ十分ニ御探究ニナッテ居ルデアラウト私ハ信ズル、果シテ然ラバ、衆議院
ハ斯ク〓〓ノ理由デ通過シタラウガ、貴族院デハサウ云フ單簡ナコトデハ、
通過ハ出來ナイノデアル、斯ウ仰シヤルカモ知レナイ、若シサウデアルナラ
バ、最初二十一日ト云フ審議期間ヲ定メテ付託セラレタ時ニ、何故ニ豫算委員
長ハ、ソレハ出來マセヌ、少クトモ三十日ハ貰ハナケレバ出來マセヌト、斯
ウ仰シヤラナケレバナラヌ筈デアル、唯二十一日ト議院ガ定メタカラ、ソレ
デ二十一日トシテ受取ッタノデアル、ソレガ出來ルト出來ヌトハ別ナ問題デ
アルト、斯ウ仰シヤルカモ知レナイ、私ハ之ヲ殊更ニ豫算委員長ニハ伺ハナ
1、何故ナラバ、此動議ヲ御出シニナル以上ハ、是等ノコトハ、事情ヲ內外
表裏共ニ馬場君ハ御承知ニナッテアッテ、初メテ此動議ガ御提案ニナラレル筈
デアルカラ、之ヲ馬場君ニ御尋ネスル、一體、豫算審議期間ト云フモノヲ二十
一日ト云フコトニ定ムル、是ハ旣ニ先般衆議院カラ提出ニナッテ當院へ廻ッテ
來テ、當院ニ於テモ既ニ今、委員付託ニナッテアル、私ハ當時モ申上ゲタ、
衆議院デ二十一日ニ出來ルモノガ、貴族院デ出來ヌト云フ道理ハ無イヂヤナ
イカ、貴族院議員ノ頭ハ如何ニ割引シテ見テモ、衆議院議員ノ頭ヨリモ劣ッ
テ居ルモノトハ私ハ思ッテ居ナイノデスカラ、ソレ故ニ二十一日ナラ出來ル
ト、私ハ信ジテ居ル、併シ法律ノ關係ガアル、斯ウ云フノガ從來ノ貴族院ノ慣
例ニナッテアルヤウデアル、又現ニ今囘ハ、收入支出共ニ關係ガアル法案ガ
アルヤウデアリマス、是ガ決マラナケレバ、實際豫算案ヲ審議シ確定スルコ
トハ困難ナンデゴザイマセウ、サリナガラ、旣ニ衆議院ガ之ヲ決メテ出ス以
上ハ、貴族院モ二十一日デ之ヲ審議シテ、サウシテ豫算案ヲ承認スルナラ承
認シテシマフ、法律ノ結果デ後ニ之ヲ直サナケレバナラヌコトガ起ッテ來ル
トシタラ强ヒテ差支ハ無イヂヤナイカトモ思フ、衆議院ハ其意味ヲ以テ法律
ハ後ヘ殘シテ、先キニ豫算ヲ審議シタモノデアラウト考ヘル、然ルニ總理大
臣ハ〓ニ二十一日ノ審議期間デ是マデ衆議院デハヤッテ來タ、貴族院ニ向ツ
テハ旣ニ五十議會、五十一議會、兩議會トモ政府ハ此審査期限ノ法案ヲ出シ
タノデアル、然ルニ是ハ否決ニナッタ、デ五十二議會ノ今日ニ至ッテ、矢張リ
此豫算審議期間ヲ二十一日ト貴族院デスルノハ、政府デ御好ミニナッテ居ルノ
デアルカ、利害關係ハ如何、之ヲ御尋ネシタノデアル、然ルニ總理大臣ノ御
答ニハ、別ニ差支ハ無イヤウニ思フト云フ、確カ御答デアッタト思フ、御差
支ガ無ケラネバ、イツ迄延バシテモ宜イカモ知レナイ、ソレヂヤ最初ニ二十
一日ト云フ期限ヲ付シタ法律ヲ御提案ニナッタ趣旨ト云フモノハ、全ク無ク
ナッテシマフ、何モ無クナッテシマフ、唯貴族院ノ空氣ヲ見ルト、ドウモ或一
派ノ如キハ、長引カシタ方ガ都合ガ好イカラ、マアソレ等ノ御機嫌ヲ損ハヌ
ヤウニ、別ニ差支ナイト、斯ウ仰ッシヤルノカトモ思フガ、マサカ總理大臣
ガサウ云フ御考デアラウトモ私ハ信ジナイ、ソレ故ニ二十一日ノ審査期限ガ
アレバ出來ルモノト私ハ信ジテ居ル、故ニ私ガ豫算委員ノ補闕ニ選マレマシ
タ場合モ、其積リデ御請ケヲ致シタノデアル、然ルニ御耻シイコトニハ、
二十一日ノ期間ニ此豫算ノ審議ガ終ラナカッタ、ソレ故ニ此審議ノ終ラナカッ
タ事柄ト云フモノハ、少クトモ豫算委員ノ職責ヲ曠シウシタモノデアル、大
ニ其責任ヲ負ハナケレバナラヌコトデアラウト思フ、ナゼナラバ、此二十一
日間、而モ審議未了ニ終ルマデノ間、別ニ大震災ガアッタコトモナイ、大火災
ガアッタコトモナイ、國家ニ重大事ノ起ッタト云フコトモナイ、貴族院議員方
ハ勉メテ皆日々御登院ニナッテアル、其間ニ於テ豫算委員ガ固ヨリ十分ナ勉
强ヲシテヤッテ居ラレタト、私ハ信ジテ居ル、十分ナ勉强シテ居ラレタニ拘ラ
ズ二十一日間ニ是ガ審議ガ出來ナクテ、審議未了ト云フ報〓ヲセラルヽニ
至ッタト云フコトハ、ソレコソ遺憾千萬デアルト思フ、併シ此事ハ遺憾ト云
フバカリデハ濟ムマイト思フ、我〓ハ公ケノ機關トシテ其職責ヲ重ンジナケ
レバナラヌコトハ、論ノ無イコトデアル、ソレ故ニ豫算委員ハ定メシ何レモ
責任ヲ負ウテ、玆デ御辭職ナサルモノト、私ハ信ジテ居ル、私ハ申上ゲル位
デアルカラ無論ノ話デアル、又此事ガ何ニ基因シテ居ルカ知ラヌケレドモ、
若モ議院規則ノ第四十七條ニ依ッテ再付託ニナルノデアラウト云フナレバ、
而モ委員ハ改選スルトアル、誰モ辭職シナイノニ、改選ノシヤウハナイト思
フ、故ニ勿論此法案ノ······條文四十七條ニ依ルト依ラヌトニ拘ラズ、德義上ノ
上カラデモ、此責任ハ取ラナケレバナラナイ、故ニ定メシ委員長ヲ初メ各派
ノ委員ハ皆御辭職ニナルモノデアラウト思フ、然ラザレバ、何等事故ノナイ
時ニ、二十一日ノ審議期間ヲ貰ッテ、サウシテ審議未了デゴザイマスヨト云ウ
テ、議長ヘ報〓スルニ至ッテハ、何ト申シテ宜カラウカ、我〓議政ノ機關トシ
テ、國民ニ對シテ何トモ言ヒヤウガナイ、若モ二十一日デ足ラヌト思ウタラ、
何故ニ土曜日デモ午後カラヤリ、何故ニ日曜モ潰シテオヤリニナラヌ、マダ
ソレノミナラズ、晝ダケデ足ラナカッタラ、夜モオヤリニナッテ宜シイ、其
間ニ審議ガ出來ヌト云フ道理ガナイ、審議ハ出來タニ違ヒナイ、併シ豫算案
ガ審議ガ出來テモ、マダ關係ノ法律案ガ衆議院カラ廻ッテ居マセヌ故ニ、ソ
レハ出來ヌト、斯ウ仰シヤルナラバ別問題デアル、サウスルト審議ハ出來ル
ガ、其間休ンデ居ッタト云フコトニナル、然ルニ二十一日間、······二十一日間
ズット審議ヲ重ネテ來タ點カラ見テ、最終ノ日ニ當ッテ審議未了ニ終ッタノデア
ルカラ、審議ハシテ居ッタノデアル、若シ法律ガ決マラナイ中ハ審議ハ出來
ナイト云フナラバ、其ノ間審議ヲ休マナケレバナラヌ道理デアル、休ンヂヤ
居ラヌヂヤナイカ、チヤントヤッテ居ル、ヤッテ居ッテ出來ナカッタラ、責任ヲ
盡サナカッタト云フコトニ歸着スル、責任ヲ盡サナカッタモノガ、復再ビ之ヲ
付託セラレテモ、恐ラクハ皆宜シウゴザルトモ言ハレマイガ、縱シソレデ宜
シウゴザルト言ハレタ所デ、人ガ信ジマセヌ、世ノ中ガ安心シマスカ、ソレ
ハシマセヌデセウ、國民ハ承知シナイダラウ、成程、向ッテ······オ前サン豫
算委員デアルガ、二十一日間ニアレガ出來ナカッタカイト、向ッテハ言ハヌデ
セウ、言ハヌデセウケレドモ、事實ハ雄辯デアル、玆ニ至レバ仕方ガナイ、
我〓其責ヲ引クヨリ仕方ガナイ、少クトモ私ハ今日限リ豫算委員ヲ辭任イタ
スノデアル、定メシ他ノ諸君モ豫算委員ハ御辭任ニナルコトダラウト思フ、
サウスルト新ニナッタ豫算委員ガ、十日ノ間ニ之ヲオヤリナサイト言ウタラ
出來マスカ、是ハドウモ餘リ安心ハ出來マセヌト私ハ思フ、ソレデモ出來ル
ト云フ御見込デアルナラ、其確タル御見込ノ所ヲ馬場君カラ御答辯ヲ戴キタ
イ、尙ホ御答辯ヲ承ッタ上デ、色〓伺フコトガ重ネテアルカモ存ジマセヌ、
差向キ是ダケノ御答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=34
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035・馬場えい一
○馬場鍈一君 只今ノ高橋君ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、第一ノ御疑
ハ、私ノ提出イタシマシタル動議ハ、憲法、議院法其他如何ナル法規ノ根據
ニ基クモノデアルカ、斯ウ云フ御尋デアルヤウデアリマス、私ノ出シマシタ
動議ハ、憲法、議院法等ニ直接根據ハ持ッテ居リマセヌ、又本院規則ニモ直接
ニ根據アリトハ致サヌノデアリマス、何トナレバ、今囘ノ如キハ、本院ノ今
迄ニ無イ例デアルノデアリマス、全ク新例デアルト思フノデアリマス、從
來豫算ノ審査期限ヲ二十一日ト定メマシテ其期間內ニ審査ヲ終ラザル場合ニ
於テハ、審査期限ノ未ダ盡キザル以前ニ於テ、院議ヲ以テ更ニ延長ヲ可決シ
テ貰ッテ參ッタノデアリマス、今囘ハ不幸ニシテ其機會ヲ失シマシテ、二十一
日間ガ經過セラレタノデアリマス、斯ノ如キ場合ハ未ダ例ガ無イノデアリマ
ス、併ナガラ之ヲ如何ニ措置スルカハ、本院規則ニ準據シテ、本院規則ノ精
神若クハ規定ニ準據シテ、適切ニ之ヲ措置スルノガ、我〓ノ義務デアラウト
信ズルノデアリマス、本院規則ノ四十七條ニハ「議院ハ常任委員會ノ報〓ヲ
受クルノ後再ヒ其ノ事件ノ審查ヲ爲サシメ又ハ委員ヲ改選シテ審査ヲ爲サシ
ムルコトヲ得」ト、斯ウ云フ規定ガアルノデアリマス、是ハ此規定ノ正當ナ
ル解釋ト致シマシテハ、審查ヲ結了イタシタ場合ノ規定デアラウト私ハ思フ
ノデアリマス、併ナガラ或ル論者ハ、此規定ニ準據シテ直チニ私ノ如キ動
議ヲ提出シ得ルトモ言ハレルノデアリマスガ、其議論ハ別トシテ、私ト致シ
マシテハ、必シモ此規定ニ依ラズ、然レドモ此規定ノ精神ニ準據シテ、斯ノ
如キ場合ニ於テハ、所謂豫算委員ニ再付託ヲスルト云フコトガ、最モ適當ナ
方法デアラウト信ジテ出シマシタノデアリマス、第二ノ御質疑ハ、如何ナル
理由ニ依ッテ審査期限內ニ議了シ得ナカッタカ、斯ウ云フコトニ歸著スルト思
フノデアリマス、是ハ高橋君自ラモ既ニ御承知デアルト思ヒマス、豫算委員
ハ決シテ怠ケテ居ッタノデハナイ、卽チ故ナク審査期限ヲ怠ッテ居タノデアリ
マセヌ、併ナガラ議論ハ別ト致シマシテ、本院多年ノ慣例ニ依リマシテ、此
豫算ニ關係アル所ノ法規ノ審査ト相俟ッテ豫算ヲ議了スルト云フノガ、本院
ノ慣例デアリマス、固ヨリ或ル場合ニ、卽チ一二ノ法案ノ未了ナル場合ニ於
テハ、便宜豫算ヲ議決シテ、委員長ヨリ報告セラレテ、議場ノ問題トシテ扱ツ
タコトモ固ヨリ有ルノデアリマス、是ハ便宜ノ問題デアリマス、然ルニ今囘
ノ如クニ、豫算ニ關係ノアル所ノ法律案ハ二十數件アルヤウニ思フ、而シテ
豫算ニ關係ノアル各款項ニ付テ之ヲ見マスレバ、數十ノ多キニ上ボッテ居ル
ヤウデアリマス、斯ノ如キ場合ニ於テハ、豫算委員ト致シマシテ、此豫算案
ヲ扱ヒマスルノニ、關係法律案ノ議了······少クトモ關係法律案ト步ミ寄ッテ
豫算ヲ審議スルノガ、最モ適當ナ方法デアルト信ジテ居ッタノデアリマス、
故ニ若シ幸ニシテ本議場ガ開カレテ居ッタナラバ、三四日以前ニ於テ、此議
場ニ於テ審査期限ノ延長ヲ求メル動議ヲ出シマスコトガ、最モ穩當デアッタ
ト私ハ思フノデアリマス、併ナガラ今日デハ、之ヲ申シテモ詮ナイコトデア
リマス、其機會ヲ失シテ今日ノ場合トナッタ以上ハ、之ヲ如何ニ妥當ニ處理
スルカト申シマスレバ、只今私ノ出シマシタ動議ニ依ッテ、更ニ審査期限ヲ
定メマシテ、豫算委員ニ審査セシムルコトガ、最モ適當デアラウト思フノデ
アリマス、而シテ私ガ十日間ト云フ期限ヲ玆ニ定メマシタガ、高橋君ハ果シ
テ其十日間ニ然ラバ議了スルカ、其確信アルヤ否ヤト云フコトデアリマス、
是ハ當初ノ豫算審査期限ヲ、二十一日ト本院デ定メマシタノモ、一應ノ見込
デアリマス、卽チ凡ソ此期限內ニ審査ヲ結了シ得ルト、各員ガ考ヘラレタ次
第デアルト思フノデアリマス、私ノ十日間ト言ヒマスノモ、私ト致シマシテ
ハ今日ノ場合一應十日間ト決メテ審議シ得ルデアラウ、斯ウ云フ意味ヲ以
テ出シタノデアリマス、故ニ萬一此間ニ審査結了イタサザル場合ニ於テハ、
如何ナル措置ヲ取ルカ、復タ本院ノ御考ヘニナル······各位ノ御考ヘニナル所
ニ依ッテ定ムベキモノデアル、私トシテハ、今日ノ場合、先ヅ十日間ノ期限ヲ
應定メテ、此審査ヲ付託スルコトガ宜シカラウト云フ考カラ出シタノデア
リマス、高橋君ハ責任云々ト云フコトヲ御述べニナリマシタガ、私ト致シマ
シテハ聊カ所見ヲ異ニ致シマシテ、豫算委員トシテ敢テ怠惰ニ審査期限ヲ經
過シタモノトハ思ハナイノデアリマス、私共ノ遺憾ニ思フノハ、寧ロ關係法
律案ノ如何ニモ本院ニ廻ルノガ遲イ、是ハ誰ノ責任デアルカ、私ハ暫ク玆ニ
申シマセヌガ、豫算委員ノ責任ニアラザルコトハ確カデアリマス、故ニ自己
ノ責任ニ歸セザルコトニ付テ、審査期限ガ經過イタシタ場合ニ於テハ、私共
ガ豫算委員ヲ辭スルノ必要ハナイト考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ責任
觀ハ各自ノ御勝手デアリマスカラ、高橋君ガ御辭シニナルニ付テ、私ハ敢テ
反對意見ヲ述ベル必要ハナイノデアリマス、私ノ出シマシタノハ、豫算委員
ハ辭セナイ、自分等ハ辭スベキモノニアラズトシテ、出シマシタ次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=35
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036・高橋琢也
○高橋琢也君 只今馬場君ハ議院規則ノ四十七條ニ據ル、少クトモ其ノ精神
ニ據ッテ云々ト云フ御答ガアッタヤウニ思フノデアリマスガ、議院規則ノ四十
七條ハ、先ニモ私ハ申上ゲマシタガ、常任委員ノ改選ヲ行ハナケレバナラ
ヌ、改選ヲ行フト云ヘバ、現在ノ議員ガ辭職ヲスルカ、辭職セヌデモ、改
選シテ新シク議員ヲ出セバ、先ノハ自然消滅ニナル、馬場君ハ、自分一人ハ
ドコマデモ留マツテヤリタイト、斯ウ仰シヤルカモ知レヌガ、サウハ行カヌ、
ソレ程豫算委員ガ結構ナモノデアルナラバ、辭職セヌデモ宜イダラウト思ヒ
マスガ、責任ヲ考ヘタラ、ソレハ出來ナイコトデアラウト思フノデアリマ
ス、既ニ法律ノ精神ニ依ッテヤッテ行カウト仰シヤルナラバ、少クトモ改選シ
ナケレバナラヌ、改選スルニハドウシテモ以前ノ豫算委員ハ罷メナケレバナ
ラヌノハ、當然ノ事デアリマス、ドコカラ煎ジ詰メテ行ッテモ其結論ハ、是
迄ノ委員ハ辭職スル、責任云々ハ姑ク措クトシテモ、是迄ノ委員ハ罷メルコ
トニナラヌケレバナラナイト思ヒマス、ソレ故ニ私ハ······獨リ私バカリデハ
ナイ、外ノ委員モ御罷メニナラウト思ヒマス、更ニソレデモ馬場君ハ辭セヌ
デモ宜イト斯ウ仰シヤル、サウスルト豫算委員ハ一一重ニ出ル、改選シタ方ノ豫
算委員ト舊豫算委員ト二重ニナッテシマフ、其樣ニマデシテ豫算委員ガ澤山
要ルト云フコトデアレバ、マルデ全員ヲ豫算委員ニシタ方ガ宜シイ、ソレハ
餘リ無責任ナル論デハナイカト私ハ思ヒマス、兎モ角モ今ノ馬場君ノ御論ジ
ニナルコトハ、チヨット立タナイヤウニ思フ、又期限ガ盡キナイ中ニ、二十一
日ノ豫算審查期限、是ガ盡キナイ中ニ出セバ宜カッタノニ、ソレヲ出サナカッ
タノハ遺憾千萬デアルト云ヘバ、恐ラクハ豫算委員長、豫算副委員長ハ何故
サウ言ハレルカ、是ハ是非玆ニ御一言ガナクチヤナラヌト思フ、ソレハ斯ウ
云フ譯デ出サナカッタ、馬場君ニ〓ヘラレテ、實ハ今初メテ氣ガ付イタカラ、
成程出サナカッタノハ惡カッタト仰シヤラヌダラウト思フ、ソコニ矢張リ理由
ガアルダラウト思フ、遺憾千萬デアッタトハ、ドウモ馬場君ノ仰シヤルヤウ
ニ、豫算委員長モ副委員長モ仰シヤラヌデアラウト思フ、ソレ故ニ何故出
サナカッタ、又出スト云フコトハ、恐ラクハ本會議ヲ御開キニナッテモ······二
十億近イ豫算ヲ議決スルト云フ······殆ド此議院ノ仕事トシテハ、是程大キナ
仕事ハナイ、五十二議會ニ於テ此仕事ガ最モ大キナ仕事、重大ナ仕事デアル、
其仕事ヲスル爲ナラ、別ニ會議ヲ請ウテ御出シニナッテモ差支ナイト思フ、
是ハ出來ヌト仰シヤル、何カ(聽取シ難シ)ガアッテ出來ナイ、外ノ會議ノ時
ニ御ツキ合ヒヲシナケレバ、大キナ豫算ノコトハ一切審議スルコトハ相成ラ
ヌト云フコトナラ、遺憾千萬デアル、ソレコソ······サウ云フ譯デアルマイ
ト思フ、ソレヲ御開キニナラナカッタ、ソレハ御出シニナラナカッタ、遺憾千萬
ナハ全ク豫算委員長ノ御手落ト云ハナケレバナラヌ、豫算委員長ガ御手落ヲ
爲サッテモ、矢張リ豫算委員ニ喰付イテ居タイト仰シヤルカ、ソレハ恐ラク
仰シヤラヌデアラウト思フ、ソレ故ニ恐ラクハ馬場君其他ノ御方ハ、皆責任
ヲ負ッテ御辭職ニナルモノダラウト私ハ信ジテ居ル、ソレデアリマスカラ、
馬場君ニ伺ッタノデアリマス、デ馬場君ノ御考ハ全ク豫算委員長ノ御手落デ
アル、サウ云フコトハ出來得ナイモノデアル、遺憾千萬ト云フノモ、手落デ
アルト云フコトモ、其事柄ニ責任ガアルノデアル、果シテ遺憾千萬ナコトヲ
豫算委員長ガ爲スッタトスレバ、確ニ御手落デアッタナラバ、豫算委員長ハ其責
ヲ御負ヒニナルノハ當然ノ話デアル、斯ウ私ハ信ズル、又一方ニ法律案ガマ
ダ定マラヌ、法律案ハ今日初メテ此所へ來テ、マダ會議モ開カレヌ、是カラ
初メテ是ガ議場ニ上ボッテドウ云フ問題ニナリマスカ、マサカ卽決否決ニモ
ナラヌ、ソレハ委員付託ニナリマセウガ、ソレハ當然ナ話デアリマス、サウ
云フヤウナドウモ、數十件ト仰シヤルガ、サウ云フ場合デモナカラウ、十三
四件デアラウガ、其事柄ガマダ實ハ此議題ニマデ上ボラナイ、議長カラ何等
ノ御宣告モナサラナイ、其以前ニ於テ、ドウシテ神樣デナイカラ分ル筈ハナ
イ、ソレニモ拘ラズ、豫算委員ハ每日之ヲ審議シタノデス、併シ此法案ノ來
ナイコトハ分リ切ッテ居ル、此法案ガ、間ニ合ハヌト云フコトモ分リ切ッテ
居ル、其間ニ何故審議ヲ盡サナカッタカ、斯ウ云フ問題デアル、サウスレバ豫
算委員長ハ是ハドウモ審議ガ出來ナイカラ、中止シマセウト言ッテ、議場ヘ
御諮リニナル筈デアル、ソレヲ豫算委員長ガ諮ラナカッタト云フコトモ手落
デアル、馬場君ノ御說カラ行ケバ······ソレカラ馬場君ハ之ヲ議スルト云フニ
當ッテ、十日間ノコトハ見込デアル、先ノ二十一日間ハ確カナ見込デアル、
是ハ大〓間違ヒノナイ見込デアル、間違ノナイ見込ト見テ議院ガ皆許シテ居
ル、其期間デスラ間違デアッタノデアルカラ、今度又關係ノ法律ト云フコトニ
御論ガ涉ッテ居ルガ、關係ノ法律ハマダ玆ニ生レテモ來ナイ中ダカラ、是ハ審
議モ何モ立ツ筈ハナイ、サスレバ寧ロ審議ニハ期間ヲ付セナイト斯ウ仰シヤ
ル方ガ私ハ餘程宜カラウト思フ、何故サウナサラナイ、無期間デ審議シヤウ
ヂヤナイカト云フ動議ヲ何故御出シニナラヌ、歸著スル所ハ全クソコニナク
チヤナラヌ、ソレ故ニ馬場君ノ今仰シヤル所ト實際トハ、私ハドウモ十分ニ
圓滑ニ行ハレテ行クマイト思フカラ之ヲ伺フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=36
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037・馬場えい一
○馬場鍈一君 再度ノ御尋デアリマスカラ申上ゲマスガ、本院規則ノ四十七
條ニ依リ、又ハ四十七條ノ精神ニ依リト申シマシタガ、四十七條ニハ委員ノ
改選バカリヂヤナイノデアリマス、卽チ再ビ其事件ノ審查ヲ爲サシメル再付
託······同一委員ニ再付託ノ場合ト、改選ノ場合ト、兩方アルノデアリマスルカ
ラ、高橋君ハ其點ヲ幾ラカ御讀ミ違ヒニナッテ居リハセナイカト思フ、私
再付託ノ意見ヲ持ッテ居ルノデ、若シ改選セネバナラヌト云フ規定ナラバ、
高橋君ノ仰シヤル通リデアラウカト思ヒマス、併シ改選ニ致シマシテモ、辭
職ヲ要件トスルノデハナイ、改選ヲ必要トスル場合ニハ、前委員ヲ免ジテ新
ナル委員ヲ命ズレバ宜イノデスカラ、辭職問題ハ關係ハゴザイマセヌ、責任
問題ニ付キマシテ、私ノ申シ方ガ足リマセヌ爲ニ、豫算委員長ノ責任ヲ私ガ
云爲シタヤウニ御聽取リニナリマシタガ、私ノ申シマシタ意味ハ、若モ審査
期限內ニ此事ヲ本議場ニ諮ッテ致シマシタナラバ、何等ノ議論ナシニ行ッタコ
トデアッタノデアラウ、ソレヲ諮ラズシテ通過イタシマシタ爲ニ······經過イ
タシマシタ爲ニ、今日議論ヲ惹キ起シタコトハ遺憾デアルト思フノデアリマ
ス、豫算委員長ノ責任ヲ私ハ必シモ問ウテ居ルノデハナイノデアリマス、私
共ハ從テ豫算委員長ニ對シテ······豫算委員長ノ責任ヲ問フ高橋君ノ御趣意デ
アルノデハナイト云フコトヲ御承知願ヒタイノデアリマス、ソレカラ十日間
ト申シタノハ、私ノ一應ノ見込ヲ申シタノデアリマス、而シテ十日間ト云フ
コトニ一應決メラレマスレバ、自ラ關係法律案ハ成ルベク迅速ニ本院ニ廻付
サレル、若クハ本院ニ廻付セラレタモノハ、此審査期限ニ問ニ合フヤウニ審
議ヲ了セラルヽデアラウ、斯ウ私共ハ考ヘマスルガ故ニ、茲ニ一應十日間ト
定メタノデアリマス、併ナガラ萬一重要ナル歲入關係法律案或ハ歲出關係ノ
法律案ヲ、此十日間內ニ議了セザル場合ガ生ジナイトハ私ハ斷言スルノデハ
ナイ、其場合ニハ又豫算委員會ナリ、或ハ本議場ニ於テ、適當ニ御取計ラヒ
ヲ願フト云フコトヲ、前ニモ申シタ次第デアリマス、其意味ニ於テ私ハ一應
十日間ト云フ意見ヲ定メタイ、斯ウ云フ趣旨デアリマス、左樣御了承ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=37
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038・高橋琢也
○高橋琢也君 私ハ先刻此豫算案ヲ報告セラレテ、今旣ニ議場ニ上ボッテ居
ル、サスレバ今日ハ最早豫算委員ノ手ニハ無イノデスカ、議院ニ此法案ガア
ルモノト斯ウ見テ宜シイカ、初メニ私ハ其事ヲ伺ッタ、豫算委員ノ矢張リ
手ニ在ルモノデアルカ、ト云フノハ豫算委員ノ手ニ在ルト云フノデアルナラ
バ再付託ヲスルト云フコトヲ許スト云フ意味デ、豫算委員ヲ選擧セヌデモ
宜イダラウ、旣ニ是ガ豫算委員ノ手ヲ離レテシマッテ本院ニアルモノトスレ
一、物ガ總テ新ニナル、新ニナレバ四十七條、而モ法文ニ依ルト仰シヤッ
タ、法律ノ規則ノ正條ニ依ッテ新ニ委員ヲ選プト云フコトガ、當然デアラウ
ト私ハ思フ、又是ガ豫算委員ノ全ク手ニ在ル、豫算委員ノ手ニ在ルト一云フナ
ラバ、ソレナラバ再付託モ宜シイ、併シ法律ニモ何ニモ私ハ依ラナイゾト云
フコトヲ言ハレタ、サウスルト法律ニモ依ラズ規則ニ依ラズ、無論憲法ニモ
依ラナイ、斯ウ云フコトデアル、サウスルト玆ニ決メタコトガ新ニ法律ニナ
ル、本日決メタコトガ初メテ院議デ是ガ法律ニナルト私ハ信ズル、少クトモ是
ガ先例ニナルニ極マッテ居ル、故ニ只今ノ所ドノヤウニ都合ガ宜クッテモ、勝
手次第ニ、皆シテ定メラレタモノダカラ、是デ宜カラウ、先キハ先キヨト云
フコトハ、議院ノ行動トシテハサウハイカナイ、是ハ一々法律ニナッテ行ク、
法律ニナル以上ハ、貴族院議員トシテハ、大ニ後〓マデノコトモスッカリ考
ヘテヤラナケレバナラヌコトデアラウト私ハ思フ、抑〓議會ノ行動ガ、法律ニ
モ憲法ニモ規則ニモ依ラナイ、何デモ宜イ、多數デ決メサヘスレバ何時デモ
出來ルゾヨト云フコトハ、甚ダ奇怪千萬ナコトト私ハ信ズル、左樣ナ根據ノナ
イコトハ如何ニモ私ハ致シタクナイト思フ、ソレハ若シ期限附キデ以テ付託
セラレタ此豫算、ソレヲ期限內ニ審議シ得ナカッタ、其儘報告シタ、之ガ爲
ニ豫算ガ總潰レニナッテ、審議未了ニナッテシマフト云フ虞ガアルカモ知レ
又、或ハサウナルカモ知レヌ、併シ今日ノ場合他ニ(聽取シ難シ)重大ナ問
題ガ殘ッテ居ル、法律ニ依ッテヤリ得ルコトガアルナラバ、何處マデモ此豫算
案ハ生カシテ行ッテ而シテ承認ヲ與ヘラレルコトナラバ與ヘタイト私ハ思フ、
ソレ故ニ私ハ、馬場君ノ御精神ニハ決シテ反對スルモノデハナイ、併ナガラ
馬場君ノハ唯漠然トシテ、貴族院デ決メサヘスレバ宜イヂヤナイカ、斯ウ仰
シヤルヤウニ聞エル、果シテサウデアルナラバ、議院ト云フモノハ餘リ自由
過ギルモノヂヤナイカト思フ、後ノ禍ヲ考ヘナケレバナラヌ、ソレ等ノ點ハ
少シモ御懸念ニナラナイモノデアルカ、如何デアルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=38
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039・馬場えい一
○馬場鍈一君 御質問デアリマスルカラ御答ヲ致シマス、私ガ劈頭ニ憲法議
院法等ノ明文ニ依ラナイト申シタノハ、明文ニ背イテヤッテ居ルト云フ意味
ヂヤナイ、規定ガ議院規則ニ缺ケテ居ル、併ナガラ私ノ如キ解釋ヲ爲スコト
ガ、憲法、議院法、貴族院規則ノ精神ニ適フ最モ適當ナ處置方法デアラウト
斯ウ見タ精神デアル、決シテ唯〓多數ヲ以テ勝手ナ處置方法ヲ此處デ定メヤ
ウト云フヤウナ輕率ナコトデハナクシテ、勿論是ガ先例ニナルコトト考ヘマ
スルカラ、十分研究イタシマシテ、弊害モナク又法ノ精神ニモ適ッテ、最モ適
切有效ナル方法ト致シマシテハ、斯ク解スルノ外ハナイ、ソレカラ私ガ再付
託ト云フコトヲ申シマシタ、然ル以上ハ、議案卽チ豫算案ハ、議院ノ議場ニ
戾ッテ居ルノデ、豫算委員ノ手ニハ今日ハ無イ、無イカラ再付託デ、有レバ
再付託ヂヤナイ、サウ云フコトニ解シテ居ルノデアリマス、デ私ハ決シテ唯
一時ノ便法トシテ、研究ナシニ斯樣ナコトヲ決メテ先例トスルト云フ趣意デ
ハナクシテ、相當研究イタシテ御答ヲシタ積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=39
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040・高橋琢也
○高橋琢也君 是以上ハ議論ニ涉リマスカラ私ハ質問ハ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=40
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041・花井卓藏
○花井卓藏君 私ハ精神ニ於テ馬場君ノ說ニ贊成セザルヲ得ナイコトニナル
ト思フノデス、ソレハ理論上ノ根據ニ依ルニアラズシテ、實際ノ取扱トシテ
馬場說ノ如キ趣意ニ依ルノ已ムヲ得ザルニ立至ッタコトヲ遺憾ニ感ズルノデ
アリマス、唯二三點、議長及豫算委員長ニ伺ッテ置キタイ點ガアリマス、實ハ私
ノ見ル所ガ間違ッテ居ルカ存ジマセヌガ、只今何ガ議題ニナッテ居ルカト云フ
コトニ迷ヒヲ起シタ、議長ハ自ラ林豫算委員長ノ報告書ノ一部ヲ朗讀セラレ
テ、但シ意味ヲ御朗讀ニナッタ、而シテ馬場君ノ動議ガ起ッタノデアリマスカ
ラ、林豫算委員長ノ報告書ガ只今議題ニナッテ居ルモノト、心得テ居ルノデ
アリマス、サウ致シマスルト、此報告書ニ付テ議長ノ御取扱方ニ疑惑ヲ
持ッテ居ルモノデアリマス、「昭和二年度歲入歲出總豫算案、昭和二年度各特
別會計歲入歳出豫算案、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スヲ要スル件、
右各案ハ議院ニ於テ定メラレタル審査期限中ニ其審查ヲ終了セサルヲ以テ豫
算案議定細則第七條ノ報告書ヲ提出スルコトヲ得ス依テ及報告候也、昭和二
年三月七日、豫算委員長伯爵林博太郞、貴族院議長公爵德川家達殿」トアリ
やく、豫算案ニ添ヘテ此報告書ガ議長ノ所ニ參ッタノデアリマスカ、或ハ豫
算案ハ殘サレテ此一片ノ報告ヲ御受付ニナッタノデアリマスカ、如何デアリ
マスカ、此コトヲ伺ヒマス、然ラザレバ此議場ニ於ケル今ノ議題ハ何デアル
カト云フコトヲ解スルニ私ハ苦シムノデアリマス、第二ニ豫算委員長ニ御尋
ヲ致シマスルガ、此報告書案ハ豫算案ノ報告書トシテ報告ヲナサッタノデア
リマスカ、豫算案ノ報告書ト云フト或ハ御疑議ガアルカ知レマセヌガ、之ニ
依ッテ豫算ヲ解決シタル終局的報告トシテ爲サレタノデアリマスカ、或ハ期
間ハ過ギテ居ルノデアリマスカラ、純理論カラ云ヘバ消滅ト云フコトニ相成
ラネバナラヌノデアリマスガ、豫算委員長及豫算委員ノ考ハ、審査未了ニナッ
タ、之ヲ如何ニスベキカト云フコトヲ院議ニ諮ル爲ニ中間ノ報〓ヲナサッタ趣
意デアリマセウカ、如何デアリマスカ、尙ホ豫算委員長ニ今一遍伺ヒマスガ、
此報告ニハ各案卽チ三ツノ案ヲ添ヘテ議長ニ御報告ニナッタ次第デアリマス
カ、如何デアリマスカ、最終ニ問ヲ添ヘマス、此報告書案ハ豫算委員會ノ議
ヲ經タルモノデアルカドウカ、是ハ速記錄ヲ見レバ分ルノデアリマセウ、豫
算委員會ニ列シテ居ッタナラバ分ルノデアリマセウガ、其事ヲ承知シテ居リ
マセヌカラ、ソレデ御伺ヒヲ致スノデアリマス、馬場君ノ動議ニ付テモ、貴
族院豫算案議定細則ノ上カラ果シテ如何、貴族院規則四十七條ヲ嚴シク解釋
ヲ爲シタナラバ是ハ當ラヌノデアリマス、當ラザルコトハ認メテ居ルノデア
リマス、私ハ此豫算案ニ付テ成ルベク有效ニ、有意義ニ解釋セムトシテ法規
先例ヲ調ベタノデアリマスルガ、之ニ基礎ヲ置キマスルト云フト、甚ダ困難
ヲ感ズルノデアリマス、矢張リ院議ニ於テ一新例ヲ開カレ、但シ此新例ハ將
來ニ斯ノ如キ先例ガアッタト云フノデ襲踏セラレルコトハ眞平御免ヲ蒙ラナ
ケレバナラヌノデアリマスガ、院議ニ於テ合理的、合法的、憲法ノ精神、議
院法ノ精神、豫算協賛ノ根本義ニ副フヤウニ、精神解釋ノ途ヲ取ラレタモノ
デアラウト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、其意味ニ於キマシテ結論ニ於テ贊
成ヲ致スノデアリマスガ、餘リニ問題ガ多數ニ分レ(聽取シ難シ)是等ハ一ツ
議長、豫算委員長ニ於テ御說明ヲ請ヒタイト思フノデアリマス、尙ホ御尋ヲ
致シタイ點ガアルカ存ジマセヌガ、御答辯ニ依ッテ更ニ問ハムト欲スルコト
ガ消滅スルカモ知レマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今、花井卓藏君ノ御質問ニ議長ハ御答ヲ致シマ
ス、議長ハ、豫算案ハ豫算委員會ノ手ニ殘ッテ居ルト解釋イタシテ居リマス、
而シテ豫算案審查未了ト云フ報告ヲ林豫算委員長カラ提出セラレマシタカ
ラ、其事ヲ本議場ニ御報告ヲ致シマシタ、而シテ馬場鍈一君カラ審査期限ニ
關スル動議ヲ提出セラレタモノト、議長ハ認メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=42
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043・花井卓藏
○花井卓藏君 左樣イタシマスルト、只今議題ニ相成ッテ居ルモノハ、林委
員長ノ報告書デアルト云フコトニ解釋ヲ致シ、豫算案ハ議長ノ手許ニハ添付
シテ參ッテ居ラヌト云フコトニ了承イタシテ宜シイノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今議場ノ問題トナッテ居リマスノハ、議長ハ林
豫算委員長ノ報告ニ接シマシタト云フ報告ニ對シテ、馬場鍈一君ヨリ一ツノ
動議ヲ出サレテ、馬場鍈一君ノ動議ガ問題トナッテ居ルト議長ハ了解シテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=44
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045・花井卓藏
○花井卓藏君 能ク了解イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=45
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046・林博太郎
○伯爵林博太郞君 花井君ノ御質問ニ對シテ一應御答ヲ致ジタイト思ヒマ
ス、此報告書ニハ御覽ノ通リ、此「各案ハ議院ニ於テ定メラレタル審査期限中
ニ其ノ審査ヲ終了セサルヲ以テ豫算案議定細則第七條ノ報告書ヲ提出スルコ
トヲ得ス依テ及報〓候也」ト斯ウアリマス、實際ノ事實ト致シマシテ、去
ル三月七日豫算委員會ノ總會ニ於キマシテ、審議ヲ致シマシテ、質問ガ終リ
各分科ノ主査ノ報〓ガ終リマシテ、サウシテ討論ニ入ルベキヤ否ヤヲ諮リマ
シタル所、今日ハ討論ニ這入ラヌト云フコトデ終リマシタ爲ニ、此報告書ガ
出マシタ次第デアリマシテ、此報告ハ卽チ豫算委員長トシテ、二十一日間ニ
於ケル議事ノ整理上出スベキモノト心得マシテ、此報告ヲ議長ニ提出シタ次
第デゴザイマス、次ノ質問ト致シマシテ、玆ニ昭和二年度歲入歳出總豫算案、
各特別會計豫算案、豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ要スル件、右各案ト
云フコトニ付テ、此案モ此處ニ出テ居ルカト云フコトデアリマスガ、此案ニ
關シテ審査期限中ニ審查ヲ終ラナカッタカラ其報告ヲスルト云フ、豫算委員
會ノ經過ノ事實ヲ報〓イタシタ次第デアリマスルカラ、左樣ドウゾ御了承ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=46
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047・花井卓藏
○花井卓藏君 尙ホ一點、委員長ノ御答辯ガ漏レテ居ルノデアリマスガ、只
今ノ御答辯ノ趣旨ニ依リマシテ、議長御說明ノ如ク、豫算案ハ全部豫算委員
會ニ在ルモノト解釋シテ宜シイト思フ、是モ一ツノ問題デアリマス、期間附
付託······期間附付託ト云フ法律行爲、期間ヲ附シテ委託サレテ居ル、基ク所
ハ貴族院豫算案議定細則第二條、而シテ林委員長ノ期間ヲ附スベシトノ動
議之ニ立脚シテ居ルノデアリマス、期間附付託ト分ツベカラザル性質ノモ
ノデアル、故ニ二十一日ヲ經過スレバ、嚴シイ純理論ヨリ申シマシタナラバ、
最早此法律行爲ハ消滅イタスノデアリマス、更ニ切ナル、併ナガラ嚴シイ解
釋ヲ取ッタナラバ、豫算不成立ニナル、併シ只今御說明ノ如ク、左樣ナル關
係ニ於テ此問題ヲ受理スルノ已ムナキニ至ッタノデナクシテ、豫算牽連ノ法
律案ノ揃ハザルガ爲ニ、已ムナク玆ニ至ッタノデアル、斯ウ云フ御說明ハ甚
ダ私ハ之ヲ諒トスルノデアリマスケレドモ、併ナガラ豫算ハ豫算、法律ハ法
律、豫算、法律、對シテ居ルト云フコトハ言フマデモナイコトデアリマス、
豫算ノ審查ノ上ニ於テ不便ヲ感ズルト云フコトハ論ヲ俟タナイ、此點ニ於テ
貴族院ノ從來ノ慣例ハ甚ダ善イト思ッテ居ッタノデアリマスガ、此度ハ其慣例
ヲ履ムコトノ出來ナイコトノ餘儀ナキ事情ニ至ッテ居ル、此餘儀ナクナッタト
申サレマスケレドモ、併シ期間附付託ハ、二十一日ガ過ギルト最早如何トモ
スルコト能ハザル次第デアリマスカラ、玆ニ各豫算案ニ關スル所ノ豫算委員
會ノ、是ハ終局報告トシテ解シナケレバナラヌノデアリマス、之ヲ救フベキ途
如何ト尋ネテ何モノモ無イ、已ムヲ得ズ馬場君ノ說ニ依リテ本院ノ議決ニ俟
ツノ外ハナイト私ハ信ジテ居リマスケレドモ、甚ダ此報〓書ト云フモノハ、
筋ノ、理論的ニハ通ラナイモノノヤウニ感ジテ居ルノデアル、貴族院豫算案
議定細則七條八條等ヲ讀ンデ、殊ニ八條ニ重キヲ置イタラバ、此報〓書ヲ受
領セラレタル議長ノ御趣意ノ在ル所モ、立入ッテ伺ッテ見タイヤウナ心持ガ致
スノデアリマスガ、併シ今之ヲ御尋ヲシテ御答ヲ得テモ、問題ニ實際的ノ影
響ヲ及ボシマセヌカラ差控ヘマスガ、一段ノ御考慮ヲ御拂ヒ下サラムコトヲ
望ムノデアリマス、受取ルベキモノナリヤ、受取ルベカラザルモノナリヤト
云フコトノ······貴族院ノ豫算案議定規則ノ上カラ見マシタナラバ、ソコニ疑
ガアルガ、議院法ニ於ケル條項ニ該當シナイト云フコトハ、是ハ論ハ無イノ
デアリマス、私ハ實ハソレニ依ッテ活路ヲ開キタイ考デアリマスガ、ソレハ
馬場君ノ言ハルヽ趣旨ニ於テ新例ニハナリマスガ、斯カル新例ハ將來先例ト
シテ襲踏セラルヽコトノナイヤウニ、豫算委員竝ニ豫算委員タラルヽ方、竝
ニ將來豫算ノコトニ携ハラルヽ方ニ、私ハ御注意ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒ
マス
〔高橋琢也君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高橋琢也君ハドウ云フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=48
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049・高橋琢也
○高橋琢也君 只今議長ノ花井卓藏君ニ對シマスル御答辯ニ付キマシテ、私
ハ伺ヒタイ、議長ハ只今花井君ニ對シテ、豫算ハマダ豫算委員會ニ在ルト仰
セニナリマシタヤウニ伺ヒマシタガ、左樣デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=50
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051・高橋琢也
○高橋琢也君 然ラバ馬場君ノ先刻來ノ議論ト云フモノハ、全ク根本カラ覆ッ
テシマヒマスカラ、私ハ討論ヲ御許シニナリマスレバ、討論ヲ致シマス、然
ラザレバ議事進行上ドウシテモ一言申サネバナラヌコトデアリマス、ドチラ
カ御許シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高橋君ノ只今御申述べノコトヲ少シ御伺ヒ落シマ
シタガ、モウ少シ明瞭ニ大キナ聲デ御述ベヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=52
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053・高橋琢也
○高橋琢也君 隨分大キナ聲デアリマスガ、是ヨリモ大キナ聲デ申上ゲマス、
只今、議長ハ豫算案ハ豫算委員ノ手ニ在ルト仰セニナリマシタ、是ハ其通リ
ダト御答ニナリマシタ、然ルニ馬場君ハ先刻豫算案ハ豫算委員ノ手ヲ離レテ、
議場ニ在ルノデアル、ソレ故ニ再付託ヲ主張スルノデアルト、斯ウ言ハレタ、
サウスルト議論ハ全ク根柢カラ引繰リカヘッテ來ル、ソレ故ニ討論ヲ御許シ
ニナリマスカト伺ッタ、討論ヲ御許シニナリマセニヤ、議事進行上ドウシテモ、
私ハ更ニ質問ヲセナケレバナラヌコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 高橋ノ御趣意ハ漸ク了解イタシマシタ、議長ニ對
シテ花井卓藏君カラ御尋ガゴザイマシタカラ、議長ノ解釋ヲ申上ゲタノミデ
アッテ、其以上ハ議員諸君ノ御解釋ニ任カセタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=54
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055・高橋琢也
○高橋琢也君 ソレデゴザイマスカラ、討論ヲ御許シニナリマスカト申スノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 無論、討論ハ許シマス、高橋君ハ無論反對說ト考
ヘマスガ、決シテ反對說ヲ御止メヲ願フ考ハゴザイマセヌ、御隨意ニ御述べ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=56
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057・高橋琢也
○高橋琢也君 御許シニナルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 詰リ馬場鍈一君ノ動議ニ反對說ヲ御述べニナルノ
デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=58
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059・高橋琢也
○高橋琢也君 左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 然ラバ御登壇ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=60
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061・高橋琢也
○高橋琢也君 承知イタシマシタ
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=61
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062・高橋琢也
○高橋琢也君 先刻、馬場鍈一君ハ私ノ質問ニ對シテ、卽チ豫算案ハ今豫算
委員ノ手ニ在ルノデアリマスカ、又ハ本院ニ戾ッテ居リマスノデゴザリマス
ルカト、斯ウ伺ッタ、勿論豫算委員ノ手ニ在ルノデナイ、本院ニ戾ッテ居ルノ
デアルカラ、再付託ヲ主張スルノデアル、斯ウ仰シヤッタ、然ルニ今花井君
ノ質問ニ對シテ、議長閣下ハ、豫算案ハ豫算委員ノ手ニ在ルノデアルト仰シ
ヤッタ、而モ私ハ更ニ駄目ヲ押シテ伺ッタ時ニ、私ニ對シテモ其通デアルト仰
セニナッタ、果シテ然ラバ、馬場鍈一君ノ先刻カラ御出シニナッタ御議論、
殊ニ此動議ナルモノハ、根柢カラマルデ覆ッテ居ル、旣ニ豫算委員ノ手ヲ離
レテ居ルノデアルカラ、再付託ヲ主張スルノデアル、斯ウ仰シヤル、所ガ議
長ニ伺ヘバ、豫算委員ノ手ニ在ル、ソレナラ豫算委員ガ辭スルトカ辭セナイ
トカ云フ問題ハ、成程起ッテ來ナイ、事ニ依ッタラ高橋琢也モ辭任ヲ取消スカ
モ知レマセヌ、兎ニ角、甚ドウモ稀代ナ是ハ現象ニナッテ參リマシタガ、ソ
レデモ馬場鍈一君ハ議長ト御爭ヒニナル御元氣ガゴザイマスカ、ソレハ無カ
ラウト思フ、サウスレバ先刻カラノ動議ハ御取消シニナルノガ當然ヂヤナイ
カト思フ、ソレ故ニ私ハ汗ヲ流シテ先刻カラ論ジタノハ、誠ニ無駄ナ骨折デ
アッタ、可哀サウニ八十以上ニモナル老爺ヲ左樣ニドウモ演壇ニ度〓立タシ
タリ、餘計ナコトヲ怒鳴ラシタリスルノハ御止メニナッタラドウカ、ドウカ
御取消シニナルト云フコトナラ、私ハ是以上ハ言ハナイ、誠ニ是ハ極ク簡單
ナ問題デアル、ソレ故ニ私ハ御取消ニナルノハ當然過ギル程當然デアッテ、御
自身モ最早是ハ其非ヲ御悟リニナッタデアラウカラ、別段ニヤカマシイコト
ハ此以上ハ申シマセヌ、時間モゴザイマセヌシ、多數ノ法案モアルコトデア
リマスカラ、ソレ故ニ私ハ御取消シナサルヤウニ御忠告トマデハ言ハヌケレ
ドモ、是ハ當然御取消シニナルダラウト思ヒマスカラ、私ノ討論ハ是デ打切
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=62
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063・阪本さん之助
○阪本彰之助君 本員ハチヨットシタコトデアリマスルガ、先例ニナリマス
ル虞レガアリマスルカラ、念ノ爲ニ豫算委員長マデ伺ッテ置キタイト思フ、
此御報告書ニ依リマスルト「審査期限中ニ其ノ審査ヲ終了セサルヲ以テ」ト
アリマス、審査終了ガ不能デアッタト云フ意味ニ讀マレルノデアリマスガ、
本員モ卽チ豫算委員ノ一人デアリマシテ、豫算委員會ノ狀況ハ能ク存ジテ居
ルノデアリマス、一昨日ハ午後二時ニ愈〓討論ニ入ラウカト云フ時ニ、討論
ニ入ルヤ否ヤト云フコトヲ同議場ニ諮ラレマシテ、討論ニ入ルベカラズト云
フコトガ多數デアリマシテ、遂ニ審查未了ニ終ッタノデアリマス、マダ餘ス
所十時間アルノデアリマス、審査期限ハ十時間餘シテ居ルノニ拘ラズ、ソレ
デ打切ッテ、審査ヲ終了セラレナカッタト云フコトガ言ヘル譯ノモノデアラウ
カドウカ、是ハ豫算委員會ノ大ニ責任ヂヤナイカト思フ、無論事實ニ於テ
ハ、十時間ノ間ニ衆議院ヨリ議案ガ廻ッテ來ルト云フコトハ豫期サレマセヌ
ケレドモ、或ハ一ツヤ二ツ來ルカモ知レナイ、然ルニマダ十時間ヲ餘シテ居
ルニ拘ラズ、討論ニ入ルベカラズト云フコトハ、ドウ云フモノデアリマスカ、
本員ハ頗ル不服デアル、兎ニ角十時間ダケハ討論ヲスベキモノト考ヘマスケ
レドモ、旣ニ多數ヲ以テ入ルベカラズト決セラレタ、尙ホ念ノ爲ニ入ルベシ
ト云フ方ノ決ヲ採ラレマシタケレドモ、矢張リ少數デアッテ、豫算委員會ノ狀
況ハ如何トモスルコトガ出來ナカッタノデアリマスケレドモ、如何ニ之ヲ取
廻サレルカト云フコトハ、其時ニハ疑問デアッタ、然ルニ此報告書ヲ見マス
ルト、豫算委員會トシテハ審査不能ト云フコトニ取レルノデアリマスガ、決
シテ不能デハナイ、マダ十時間ハ可能デアッタノデアリマス、然ルニ斯ノ如キ
報〓ヲ議長ニ出シテ、而シテ延期ノコトヲ玆デ決スルト云フコトハ、如何ナモ
ノデアラウカ、將來或ハ先例トナッテ困ルコトガアリハシナイカト存ジマス
ルガ故ニ、豫算委員長ハドウ云フ解釋ヲ以テ、此處ニ出サレテ差支ナイト云
フコトデアルト云フ御自信ガアリマセウカ、ソレヲ玆デ御言明ニナッテ、後悔
ヲ貽サヌヤウニ致シタイト思ヒマスガ爲ニ御質問ヲ發シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=63
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064・林博太郎
○伯爵林博太郞君 阪本君ノ御質問ニ御答イタシマス、去ル七日總會ノ際ニ
於キマシテ、議事ノ進行ノ上ニ付キマシテハ、只今阪本君ガ申サレタ通デア
リマスルガ、其報〓書ニ「審査期限中ニ其ノ審査ヲ終了セサルヲ以テ」ト云
フコトハ、卽チ事實ヲ其儘ニ御報告イタシタノデアリマス、終了スル能ハザ
ルヲ以テトアレバ、審査不能デアッタノデアリマスガ、終了セザルヲ以テデ
アリマスカラ、終了シナカッタト云フ意味ニ、是ハ私ハ解釋ヲシテ報告イタ
シタ次第デアリマス、ドウカサウ云フ意味ニ御承認ヲ願ヒタイト思ヒマス、
先程高橋君カラノ御話ガアリマシタカラ、一應ソレニ關聯シテ居リマスカラ
申上ゲテ置キマス、何故去ル七日ノ議場ニ報告ヲシテ、而シテ審査期限ヲ延
期セザリシヤト云フ御問デアリマスガ、元來二十一日間ノ審査ハ頗ル順調ニ
進ンデ居ッタト云フコトハ、高橋君モ御承知デアッタト思フノデアリマス、成
程日曜日ハ休ミマシタ、是ハ今年ニ限ラナイ、日曜日ニヤラウトシタコトハ
昨年モ一昨年モアッタノデアリマスガ、如何ニモ政府ニ於ケル屬僚諸君ニ於
テ、日曜ナリトモ少シハ休憩ヲシナケレバ、實ニドウモ毎日夜十二時過マデ
仕事ガアルノダカラト云フコトデアリマスカラ、此會期ハ殊ニ其餘裕ガアル
ト思ヒマシタカラ、日曜ハ開キマセヌ次第デアリマス、七日モ只今阪本サン
ノ仰セラレル通リ餘裕ガアッタノデアリマス、議事ノ終ッタノハ二時デアッタ
ト思フノデアリマス、併シソレ迄ニ於テ關係ノ重要ナ案ガ大部分貴族院ニモ
廻ッテ居ラナイト云フコトデアッテ見レバ、其際ニ於テサウ云フ御考ノ諸君モ
アッタラウト思ヒマス、サウ云フ意味ニ於キマシテ討論ニ只今ハ這入ラナイ、
斯ウ云フ意味デ採決ヲシタ結果、多數デ以テ討論ニ這入ラナカッタト云フ次第
デアリマスノデ、其意味デ玆ニ御報告ヲ議長ニマデ致シタ次第デアリマス、
決シテ怠ケタト云フ譯デナイノミナラズ、七日ニ報告シヤウトシテモ、本議
場ガ無イノデアル、會議ガナイ、會議ガナイ爲ニ報告セムトシテモ出來ナイ、
是ハドウモ所謂不可抗力デ致シ方ガナイ、デ二十一日間ノ期限ノ間、卽チ豫
算委員ト云フモノハ頗ル勉勵、奮鬪努力シテ質問ヲシ、審査モシタト云フコ
トハ、高橋君ハ二日間ニ亙ッテ御質問ヲ爲サッタノデアリマスカラ、其點ハ自
ラ御證明ニナッテ居ルコトデアラウト私ハ考ヘル次第デアリマス、斯ウ云フ次
第デアリマスデ、年々是ハ二十一日目ノ時ニ於テ幸ニ本會議ガアリマスモノ
デスカラ、ソレガ起ラナイ、其際モ夜ノ十二時マデ延バシテ貰ッテ、ソレヲ
種p.關係諸案ガ來ナイカラ、其時ニ初メテ本會議ニ於テ此動議ヲ出スト
云フコトハ先例上無イノデアリマシテ、又常識上ソコマデ致ス必要ハナイト
考ヘルノデアリマシテ、今囘モ矢張リサウ云フ意味デ以テ、此二十一日間ノ
審査ハ未了ニ終ッタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=64
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065・志水小一郎
○志水小一郞君 本員ハ議長ニ向ッテ御尋ヲシタイノデス、ソレハ豫算ノ書類
ハ委員會ノ許ニアル、斯ウ御答ヘニナッタ、サウシテ馬場君ハ能ク承リマセ
ヌデシタケレドモ、反對ノコトヲ言ッテ居ラレルヤウニ思フ、ソレデ高橋君
ガ、大變御議論ガアルヤウデアリマス、本員ハ其御議論ガ分ラヌ、ソレデ議
長ノ少シ御辯明ヲ要スルノデハナイカト思フ、本員ガ察スル所デハ、議長ノ
所謂書類ハ委員會ノ手ニアルト云フノハ、所謂書類卽チ紙ノコトヲ仰シヤッタ
ノデアラウト思フ、併ナガラ其書類ハ最早、法律關係カラ、委員ニ於テ議ス
ルコトヲ得ナイ狀態ニアルノデ、花井君ガ言ッタノハ、書類ハアルケレドモ、
其書類ハソレヲ直チニ審査スルコトヲ得ナイヤウナ狀態ニ置イテアル、斯ウ
云フ意味デアッタニ違ヒナイ、ソレヲ無形ノモノト有形ノモノヲ一〓クタニ、
ゴタ〓〓ニシテ、此何ハ言ハレタ、ソレダカラシテ是ハ一應議長ガ御辯明ニ
ナラヌケレバナラヌト思ヒマス、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 志水小一郞君ニ御答ヲ致シマス、議長ハ何等辯明
ヲスル必要ハナイト認メテ居リマス、又議長ノ花井卓藏君ニ申上ゲマシタ解
釋ト、馬場鍈一君ノ御解釋ト違ッテ居ッテモ、一向差支ナイコトデゴザイマス、
左樣議長ハ考ヘテ居リマスカラ、辯明スル必要ハ認メテ居リマセヌ、又高橋
琢也君ノ御申述ノコトニ付テハ、議長ハ何等申出ル必要ハナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=66
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067・志水小一郎
○志水小一郞君 御辯明ニナラヌデ宜シケレバ宜シウゴザイマス、ソレニ付
テモウ一應伺ッテ置キマス、議長ノ所謂委員會ノ手ニアルト云フノハ、マサ
カ委員會ノ手ニアルカラシテ再ビソレヲ審議シテ宜イト云フ意味デハナカラ
ウト思ヒマスガ、果シテサウデゴザイマスカ、唯紙片ガアルト云フコトデア
ラウト思ヒマス、ソレヨリ外ニハ解釋ハ出來ヌヤウニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 豫算案ノ審查ハ議院ノ決定ヲ待ツヨリ外ニ途ハナ
イト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 採決ヲ致シマス、馬場鍈一君ノ動議ニ同意ノ諸君
ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス
北京市立小行小学校〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ議事日程ニ移リマス、日程第一、銀
行法案、第二、貯蓄銀行法中改正法律案、第三、農工銀行法中改正法律案、
第四、北海道拓殖銀行法中改正法律案、第五、非訟事件手續法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、片岡大藏大臣
銀行法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ衆議院ノ修正文、
ハ同削除ノ符號ナリ
銀行法案
銀行法
第一條左ニ揭グル業務ヲ營ム者ハ之ヲ銀行トス
一預金ノ受入ト金錢ノ貸付又ハ手形ノ割引トヲ併セ爲スコト
爲替取引ヲ爲スコト
營業トシテ預金ノ受入ヲ爲ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス
第二條銀行業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第三條銀行業ハ資本金百萬圓以上ノ株式會社ニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ
得ズ但シ勅令ヲ以テ指定スル地域ニ本店又ハ支店ヲ有スル銀行ノ資本金
ハ二百萬圓ヲ下ルコトヲ得ズ
前項但書ノ規定ニ依リ地域ノ指定アリタル場合ニ於テ其ノ地域ニ本店又
五
ハ支店ヲ有スル銀行ニシテ資本金二百萬圓未滿ノモノハ指定ノ日ヨリ比
年ヲ限リ前項但書ノ資本金ニ依ラザルコトヲ得
第四條銀行ハ其ノ商號中ニ銀行ナル文字ヲ用フベシ
銀行ニ非ザルモノハ其ノ商號中ニ銀行タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フル
コトヲ得ズ
第五條銀行ハ擔保附社債信託法ニ依リ擔保附社債ニ關スル信託業ヲ營ミ
又ハ保護預リ其ノ他ノ銀行業ニ附隨スル業務ヲ營ムノ外他ノ業務ヲ營ム
コトヲ得ズ
第六條銀行ハ左ノ場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一商號ヲ變更セントスルトキ
二資本金ヲ變更セントスルトキ
三支店其ノ他ノ營業所又ハ代理店ヲ設置セントスルトキ
四本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更セントスルトキ
五支店以外ノ營業所ヲ支店ニ變更セントスルトキ
第七條銀行ハ代理店主ヲシテ其ノ代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他
ノ從タル營業所又ハ復代理店ヲ設ケシムルコトヲ得ズ
銀行ノ代理店主ハ其ノ代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他ノ從タル營
業所又ハ復代理店ヲ設クルコトヲ得ズ
第八條銀行ハ資本ノ總額ニ達スル迄ハ利益ヲ配當スル每ニ準備金トシテ
其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシ
第九條銀行ノ營業年度ハ一月ヨリ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第十條銀行ハ營業年度每ニ業務報〓書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出ス
ベシ
第十一條銀行ハ營業年度每ニ主務大臣ノ定ムル樣式ニ依リ貸借對照表ヲ
作成シテ之ヲ公告スベシ
第十二條銀行ノ監査役ハ銀行ノ業務及財產ノ狀況ニ關スル調査ノ結果ヲ
記載シタル監査書ヲ每營業年度二囘作成シテ之ヲ本店ニ備へ置クベシ
第十三條銀行ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ常務ニ從
事セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十四條銀行ノ合併ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生
ゼズ
第十五條銀行ガ合併ノ決議ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條第二項
ノ規定ニ依リテ爲スベキ催告ハ預金者ニ對シテハ之ヲ爲スコトヲ要セズ
第十六條銀行ガ合併ノ決議ヲ爲シタル場合ニ於テ商法第七十八條第二項
但書ノ期間ハ一月迄之ヲ下スコトヲ得合併ニ因ル株式併合ノ場合ニ於テ
商法第二百二十條ノ二但書ノ期間ニ付亦同ジ
第十七條銀行ガ合併ニ因リテ貯蓄銀行法第一條第一項ノ業務ニ屬スル契
約ニ基ク權利義務ヲ承繼シタル場合ニ於テハ其ノ契約ノ完了スル迄仍其
ノ契約ニ關スル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ妨ゲズ
貯蓄銀行法第九條、第十條及第十五條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八條銀行ノ休日ハ祭日、祝日、日曜日其ノ他銀行ノ營業所所在地ニ
行ハルル一般ノ休日ニ限ル
銀行ガ天災其ノ他避クベカラザル事變ニ因リ臨時ニ休業スルトキハ直ニ
其ノ旨ヲ公〓シ地方長官ニ屆出ヅベシ
第十九條銀行ガ預金ノ拂戾ヲ停止スルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ事由ヲ
具シテ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第二十條主務大臣ハ何時ニテモ銀行ヲシテ其ノ業務ニ關スル報告ヲ爲サ
シメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ提出セシムルコトヲ得
第二十一條主務大臣ハ何時ニテモ部下ノ官吏ニ命ジテ銀行ノ業務及財產
ノ狀況ヲ檢查セシムルコトヲ得
第二十二條主務大臣ハ銀行ノ業務又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルト
キハ業務ノ停止又ハ財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ
得
第二十三條銀行ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害
スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ業務ノ停止若ハ取締役、監査役
ノ改任ヲ命ジ又ハ營業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十四條主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命ゼラレタル銀行ニ對シ其ノ整理ノ
狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ營業ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十五條銀行業ノ廢止又ハ銀行ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十六條銀行ガ其ノ目的ヲ變更シ他ノ業務ヲ營ム會社トシテ存續スル
場合ニ於テハ銀行ニ關スル事務ヲ管理スル主務大臣ハ其ノ會社ガ預金債
務ヲ完濟スルニ至ル迄財產ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコト
ヲ得合併ニ因リ銀行ニ非ザル會社ガ銀行ノ預金債務ヲ承繼シタル場合亦
同ジ
第二十條及第二十一條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十七條銀行ガ營業ノ免許ヲ取消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ〓算人ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ裁判
所之ヲ選任ス其ノ〓算人ノ解任亦同ジ
第二十八條前條ノ場合ヲ除クノ外裁判所ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ
職權ヲ以テ〓算人ヲ解任スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ〓算人ヲ解任シタルトキハ裁判所ハ〓算人ヲ選任スル
コトヲ得
第二十九條裁判所ハ銀行ノ〓算事務及財產ノ狀況ヲ檢査シ、財產ノ供託
ヲ命ジ其ノ他〓算ノ監督ニ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第三十條銀行ノ〓算、破產又ハ强制和議ノ場合ニ於テ裁判所ハ銀行ノ檢
査監督ニ從事スル官吏ニ對シ意見ヲ求メ又ハ檢査若ハ調査ヲ囑託スルコ
トヲ得
第三十一條銀行ノ〓算、破產又ハ强制和議ノ場合ニ於テ銀行ノ檢査監督
ニ從事スル官吏ハ裁判所ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第三十二條本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ガ本法施行地內ニ支店、出
張所又ハ代理店ヲ設ケ銀行業ヲ營マントスルトキハ各營業所每ニ代表者
ヲ定メ第二條ノ規定ニ依ル免許ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタルトキハ該營業所ハ本法ノ適用ニ付之ヲ
銀行ト看做ス此ノ場合ニ於テハ第三條乃至第六條、第八條、第十二條乃
至第十七條、第二十五條及第二十七條乃至前條ノ規定ニ拘ラズ命令ヲ以
テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第一項ノ免許ニ付テハ主務大臣ハ特ニ必要ナル制限ヲ附スルコトヲ得
第三十三條主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ銀行業ヲ營ミタル者ハ五千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第三十四條左ノ場合ニ於テハ取締役、監査役、支配人、〓算人又ハ本法
施行地外ニ本店ヲ有スル銀行ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ一年以下ノ
懲役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一業務報告書又ハ監査書ノ不實ノ記載、虚僞ノ公〓其ノ他ノ方法ニ依
リ官廳又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ
二本法ニ依ル檢査ニ際シ帳簿書類ノ隱蔽、不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ
依リ檢査ヲ妨ゲタルトキ
第三十五條左ノ場合ニ於テハ取締役、監査役、支配人、代理店主(代理
店主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社員、取締役其ノ他法人ノ代表
者又ハ外國會社ノ代表者)、〓算人又ハ本法施行地外ニ本店ヲ有スル銀行
ノ本法施行地ニ於ケル代表者ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス但シ其ノ
行爲ニ付刑ヲ科スベキトキハ此ノ限ニ在ラズ
第五條乃至第八條又ハ第十三條ノ規定ニ違反シタルトキ
二第十七條ニ於テ準用スル貯蓄銀行法第九條ノ規定ニ違反シタルトキ
三本法ニ依リ銀行ニ備へ置クベキ書類ノ備付若ハ主務大臣ニ提出スベ
キ書類ノ提出ヲ怠リ、之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不實ノ
記載ヲ爲シタルトキ
四本法ニ定メタル屆出若ハ公〓ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不實ノ屆出若ハ
公〓ヲ爲シタルトキ
五第二十二條、第二十三條、第二十六條又ハ第二十九條ノ規定ニ依リ
主務大臣又ハ裁判所ノ爲シタル命令ニ違反シタルトキ
六本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキ
第三十六條第四條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ過
料ニ處ス
第三十七條銀行ガ本法ニ依リ爲スベキ公告ハ新聞紙ニ依ルベシ
附則
第三十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九條銀行條例ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ營業ノ認可ヲ受ケタル銀行ニシテ本法施行ノ際現ニ存スル
モノハ第四十條及第四十一條ノ定ムル制限ニ從ヒ本法ニ依リテ免許ヲ受
ケタル銀行ト看做ス
舊法ニ依リテ爲シタル認可、處分其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規
定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第四十條前條第二項ノ銀行ニシテ株式會社又ハ外國銀行以外ノモノハ本
五
法施行後比年ヲ限リ仍其ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得
商法施行前ニ設立シタル合資會社ニシテ舊法ニ依リ營業ノ認可ヲ受ケタ
五
ル銀行ガ本法施行後七年內ニ其ノ組織ヲ變更シ又ハ合併ニ因リ株式會社
ト爲リタルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ組織變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
五
第四十一條第三十九條第二項ノ銀行ノ資本金ニ付テハ本法施行後比年ヲ
限リ第三條第一項本文ノ規定ヲ適用セズ第三十九條第二項ノ銀行ノ合併
ニ因リテ設立シタル銀行ノ資本金ニ付亦同ジ
命令ヲ以テ定ムル人口一萬未滿ノ地ニ本法施行ノ際現ニ本店ヲ有スル資
○ニ付テ
本金二十五萬圓未滿ノ銀行○ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ期間經過後
ヲ適用セズ但シ其ノ資本金ハ本法施行後五
年內ニ五十萬圓以上ト爲スコトヲ要ス
更ニ三年ヲ限リ第三條第一項木文ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第四十二條本法施行ノ際現ニ第五條ノ業務以外ノ業務ヲ營ム銀行ハ本法
五
施行後三年ヲ限リ仍其ノ業務ヲ繼續スルコトヲ得
第四十三條第三十九條第二項ノ銀行ノ本法施行ノ際現ニ有スル本店及支
店以外ノ營業所又ハ代理店ハ本法施行後一年內ニ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ之ヲ存續スルコトヲ得ズ
前項ノ認可申請書ハ本法施行後三月內ニ主務大臣ニ提出スベシ
第四十四條本法施行ノ際現ニ銀行ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ニ
シテ他ノ會社ノ常務ニ從事スル者ハ本法施行後一年ヲ限リ主務大臣ノ認
可ヲ受ケズシテ引續キ其ノ會社ノ常務ニ從事スルコトヲ得
第四十五條第三十九條第二項ノ銀行ニシテ株式會社又ハ外國銀行以外ノ
モノノ業務廢止ニ付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十六條本法中取締役ニ關スル規定ハ第三十九條第二項ノ銀行ニシテ
株式會社又ハ外國銀行以外ノモノニ付テハ其ノ營業主(營業主法人ナル
トキハ其ノ業務ヲ執行スル社員)ニ之ヲ準用ス
貯蓄銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
貯蓄銀行法中改正法律案
貯蓄銀行法中左ノ通改正ス
第十六條第一項第三號ヲ削ル
第十七條削除
第二十一條第一項中「銀行條例」ヲ「銀行法」ニ改メ同條第二項ヲ左ノ如ク改
ム
銀行法第十五條又ハ第二十六條ノ規定ノ適用ニ付テハ第一條第一項第四
號ノ規定ニ依ル給付金ハ之ヲ預金ト看做ス
第二十二條中「命令ノ定ムル所ニ依リ營業稅額」ヲ「其ノ納付スヘキ營業收
益稅額」三段人
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
農工銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第五十二條中「明治二十三年法律第七十二號銀行條例」ヲ「銀行法」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
北海道拓殖銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第三十四條中「明治二十三年法律第七十二號銀行條例」ヲ「銀行法」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
非訟事件手續法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
非訟事件手續法中改正法律案
非訟事件手續法中左ノ通改正ス
第三十七條ノ二第百二十九條ノ三及ヒ第百二十九條ノ四ノ規定ハ裁判所
カ法人ノ〓算人又ハ第三十六條ノ規定ニ依リ檢査ヲ爲スヘキ者ヲ選任シ
タル場合ニ之ヲ準用ス
第七十一條ノ六中「第百二十八條」ヲ「第百二十八條、第百二十九條ノ三
及ヒ第百二十九條ノ四」二四八
第百三十六條ノ末尾ニ「銀行ノ〓算ノ監督亦同シ」ヲ加フ
第百三十七條ノ末尾ニ「裁判所カ銀行ノ〓算ノ監督ニ付キ爲シタル命令ニ
對シ亦同シ」ヲ加フ
第百三十八條ノ四ヲ第百三十八條ノ五トシ第百三十八條ノ三ヲ第百三十八
條ノ四トシ第百三十八條ノ二ヲ第百三十八條ノ三トシ同條中「〓算人」ヲ
「〓算人又ハ前條ノ規定ニ依リ檢查ヲ爲スヘキ者」ニ改ム
第百三十八條ノ二裁判所ハ特ニ選任シタル者ヲシテ銀行ノ〓算事務及ヒ
財產ノ狀況ヲ檢査セシムルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
國務大臣片岡直溫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=71
-
072・片岡直温
○國務大臣(片岡直温君) 只今上程ニナリマシタ、第一、第二、第三、第四
ノ法案ニ對シマシテ、一括シテ說明ヲ致シマス、先ヅ銀行法案ニ付テ申上ゲ
マスルニ、凡ソ一國產業ノ發達ハ、金融機關ノ整備ト其機能ノ發揮トニ俟ツ
ベキモノガ頗ル多イノデアリマス、然ルニ我國金融機關ノ現狀ハ、其組織脈
絡必シモ整ヘリト云フコトヲ得ザルノミナラズ、時勢ノ進運ニ副ハナイモノ
モ亦少ナクナイノデアリマス、今ヤ我國財界ノ整理囘復ヲ促シ、產業ノ進步
發展ヲ圖ルノ必要最モ痛切ナルモノガアル時ニ際シマシテ、金融制度ヲ整備
改善スルコトハ、最モ緊要ナコトデアルト信ズルノデアリマス、併ナガラ金
融制度ノ整備改善ノ業タル、誠ニ複雜至難ノ事業デアリマシテ、其方策ノ如
何ハ、我國財政經濟ニ及ボス影響頗ル大ナルモノガアリマスカラ、濫ニ其速
成ヲ求ムベキデハアリマセヌ、宜シク各種金融ノ制度竝ニ實際ニ付キ周到ナ
ル調査ヲ遂ゲ、其缺陷及弊害ノ存スル所ヲ明カニシ、以テ實行上萬遺漏ナキ
ヲ期サナケレバナリマセヌ、依テ政府ハ昨年九月、關係各廳ノ官吏竝學識經
驗ノアル民間ノ人士ヲ以テ組織スル金融制度調査會ヲ設置イタシマシテ、爾
來周到周密ナル調査研究ヲ遂ゲシメ、以テ適切ニシテ且ツ實行的ナル成案ヲ
得ルニ努メテ居リマスル、而シテ政府ハ別ニ大藏省內ニ金融制度調査準備委
員會ヲ設ケマシテ、隨時關係各方面ノ民間人士ヲモ臨時委員トシテ其意見ヲ
徵シ、金融制度調査會ニ付議スベキ事項ノ準備調査ヲ行ハシメ、以テ本事業ノ
完成ニ遺漏ナカラシメンコトヲ期シテ居リマス、玆ニ提出イタシマシタ銀行
法案ハ、以上述ベマシタ手續ニ從ヒマシテ、金融制度調査會ニ於テ非常ナ熱
誠ト努力ヲ以テ、我國普通銀行制度ノ改善ニ付キ、周到精密ニ調査決定イタ
サレマシタ趣旨ニ基キ、立案シタモノデアリマス、抑、我國普通銀行ハ開設既
ニ久シキニ亙リマシテ、其發達モ〓シテ顯著ナルモノガアリ、最近ニ於ケル
全國普通銀行數ハ千四百二十四行、其公稱資本金ハ二十三億九千万圓、預金
ハ八十八億万圓ヲ擁シ、各種產業ニ亙リマシテ、一般的ニ金融ノ任ニ當ッテ居
ルノデアリマスガ、其ノ現狀ヲ見マスルニ、我國經濟界ノ進展ニ適應シテ、
能ク其主要金融機關タルノ機能ヲ發揮セリト云フヲ得ザルモノガアルノミナ
ラズ、其經營モ亦屢〓愼重ヲ缺キ、爲ニ破綻ヲ惹起シテ、一般財界竝ニ多數預
金者ニ損害ヲ及ボスコトモ少カラザルモノガアリマス、依テ今其通弊トスル
所ヲ矯正スルガ爲ニハ、第一ニ銀行資力ノ充實ヲ圖リ、第二ニ堅實ナル經營
ヲ助長スルコト、第三ニ預金者ノ利益ヲ保護スルコト、第四ニ銀行監督ノ周
到ヲ期スルコト、第五ニ不當ノ競爭ヲ防止スルコト、第六ニ銀行整備ノ進捗
ヲ圖ルコト、其他ニ關シテ之ガ改善ノ方策ヲ講ゼネバナリマセヌ、元來普通
銀行ノ業務ノ廣汎ニシテ多樣ナル性質上、改善ノ方策トシテ必要已ムヲ得ザ
ルモノノ外、成ルベク法規ヲ以テ之ヲ正スコトヲ避クルノ方針ヲ取リマシ
テ、本法案ニ於テ銀行業ノ經營主體ヲ株式會社ニ限リ、其資本金ヲ法定スル
コトトシ、或ハ他業ノ兼營ヲ禁止シ、法定積立金ノ割合ヲ增加シ、其他銀行
ノ監督ヲ嚴重ニシ、又預金者保護ノ爲メ必要ナル諸規定ヲ設ケマシタノハ、
皆以上ノ趣旨ト方針ニ依ッタノデアリマス、從テ普通銀行ノ整備改善ニ付キ
マシテハ、本法案ニ規定セラレマシタモノノ外、或ハ群小銀行ノ合同ヲ奬勵
シ、預金支拂準備ノ內容ヲ改善シ、資金運用ノ偏倚ヲ避ケシメ、貸付金ノ固
定ヲ防止スル等、幾多施設スベキ事項ガアリマスルガ、是等ハ法規ヲ以テ律
スルコトヲ適當トセザルモノ、又ハ法規ヲ以テシテハ其目的ヲ達スルコトノ
困難ナルモノガゴザイマスルノデ、是等ニ付キマシテハ先キニ述ベマシタ
金融制度調査會ニ於テ決定シタル普通銀行制度改善ノ要項ニ基キ、政府ノ方
針トスル所ヲ一般ニ指示シ、行政ノ實際ニ當リ適宜當業者ヲ指導監督スルコ
トト致シマシタ次第デアリマス、尙ホ本法案ノ目的ヲ達成シ、我國普通銀行
ノ指導監督ヲ全カラシムル爲ニハ、之ガ檢査監督ノ機關ヲ充實スルノ緊要ナ
ルヲ認メテ、之ニ要スル經費ヲ豫算ニ計上イタシマシタ、尙ホ現在我國普通
銀行ノ準據スル法規デアリマスル所ノ銀行條例ハ、明治二十三年ノ制定ニ係
リ其後數次ノ改正ヲ見タノデアリマスガ、今囘ノ改正條項ハ甚ダ多イノデア
リマスルガ爲ニ、此際寧ロ銀行條例ナルモノヲ廢シマシテ、新ニ銀行法ヲ制
定スルコトヲ便利ナリト認メマシテ、本法案ヲ提出シタ次第デアリマス、終
リニ一言申上ゲテ置キタイコトハ、金融制度ノ整備改善ヲナサムガ爲ニハ、
中央銀行タル日本銀行ヲ初メトシ、金融機關ノ全般ニ亙リ、其改善策ヲ考究ス
ルコトヲ要シ、從テ普通銀行制度ノ改善モ亦、其他ノ制度ノ整備改善ト相俟ツ
テ初メテ完備セシムルコトヲ得ルノデアリマスルガ、是等各種事項ニ關ス
ル成案ノ完了スルノヲ待ッテ、初メテ同時ニ總テ方策ヲ確立セムト致シマス
ルナラバ、最モ急施ヲ要スルモノト雖モ、長ク其實行ノ機ヲ得ザルニ至ル虞
レガアリマス、依テ政府ハ緊急ヲ要シ且ツ之ヲ分離實行スルモ支障ナキモノ
ハ、其成案ヲ得ルニ從ヒ順次提出スル心算デアリマス、本法案ヲ提出シマシタ
ノモ、此趣旨ニ依ルニ外ナラナイノデアリマス、次ニ現行ノ貯蓄銀行法、農
工銀行法及北海道拓殖銀行法中ニハ、銀行條例ノ規定ヲ引用シタルモノガゴ
ザイマスルガ故ニ、此點ニ付テ銀行法ノ制定ニ伴ヒマシテ、是等法律中改正
ヲ要シマスルヲ以テ、是等ニ關シテ貯蓄銀行法以下ノ法律中ノ改正案ヲ提出
シタ次第デアリマス、尙ホ營業收益稅法ノ制定ニ伴ヒ、貯蓄銀行法ノ規定中
字句ノ改正ヲ要スル廉ニ付テモ、併セテ提案ヲシタ次第デアリマス、政府ノ
原案ハ、衆議院ニ於キマシテ、地方既設ノ小銀行ノ實情ニ鑑ミ、最低資本金ノ
法定ニ伴フ經過規定其他二三ノ修正ヲ加ヘラレタノデアリマスルガ、政府ニ
於テモ相當理由アル修正ト認メマシテ、之ニ同意シタ次第デアリマス、何卒
御審議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=72
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073・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 只今日程第五ニ上ボッテ居リマスル非訟事件手續法
中改正法律案ノ提出理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、只今大藏大臣ヨリ說明イタサ
レマシタル如ク、今囘銀行法ノ制定ニ依リマシテ、銀行ノ〓算事務ニ付キマ
シテハ、特別ノ監督規定ヲ設ケラルルコトトナリマシタルヲ以チマシテ、右
ノ監督ニ任ジマスル裁判所ノ管轄、其他之ニ伴ヒマスル必要ナル規定ヲ設ク
ルノ必要ガ生ジテ參ッタノデアリマス、玆ニ於キマシテ非訟事件手續法中ニ改
正ヲ加フルコトト致シテ、本案ヲ提出シタ次第デゴザイマス、御審議ノ上協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタス次第デゴザイマス
〔田中一馬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=73
-
074・田中一馬
○田中一馬君 今囘政府ハ銀行條例ヲ御改正ニナリマシテ、玆ニ銀行法ナル
モノヲ御提案ニナリマシテゴザイマスルガ、從來ノ銀行條例カラ見マスルト、
餘程取締監督ガ嚴重ニナリマシタヤウデゴザイマスル、是ハ現時ノ銀行ノ狀
態カラ鑑ミマシテ、已ムヲ得ナイコトデアラウカト私ハ存ジマスルノデアリ
PV、只今大臣モ仰セニナリマシタヤウデゴザイマスルガ、各種特殊銀行ノ
整理、又特殊銀行法ノ改正ト云フコトモ懸案ニナッテ居ルガ、追テ提出スル
ト云フ御話デゴザイマシタ、併シ此普通銀行ニ付キマシテ······普通銀行類似
ノ業務ト云フモノモ隨分アルノデゴザイマスルガ、是モ矢張リ同ジク取締ラ
ナケレバナラヌカト存ジマスノデアリマス、併シ此營利的ニ普通銀行類似ノ
業務ヲ爲シテ居ルモノハ、總テ銀行ト看做シテ、此法律ニ依ッテ監督ヲシテ
行クト斯ウ云フコトニナッテ居リマスルカラ、是ハ宜シウゴザイマスルガ、
唯一ツ茲ニ此法律ニ依ッテ律セラレナイモノガ一ツアルノデアリマス、ソレハ
卽チ信用組合デアリマス、今囘提出ニナリマシタ銀行法ノ規定ニ依リマスル
ト、銀行ノ資本ノ最小限度ト云フモノヲ御決メニナリマシテ、衆議院ノ修正
モゴザイマシタガ、五十万圓乃至百万圓ト云フコトニナリマシタヤウデゴザ
イマス、私窃ニ政府ノ御意思ノアル所ヲ、是ハ間違ッテ居ルカモ知レマセヌ
ガ、忖度イタシマスルト、是ハ最早田舍ニ於ケル小サイ町村ノ銀行ト云フモ
ノハ必要ガナイノデアル、小サイ町村ノ金融機關ハ信用組合ヲ以テ充テタナ
ラバ宜イノデアルト云フヤウナ、或ハ御考ガアルノヂャナイカト想像イタシマ
スルノデアリマスルガ、若シ斯ウ云フ御考デアッテ、信用組合ヲ以テ田舍ノ
金融ヲ總テ取扱ッテ御イデニナルトシマスレバ、餘程此信用組合ナルモノノ監
督ト云フモノハ嚴重ニ爲サラナケレバナラヌカト思フノデアリマス、昔カラ
農村ニ於キマシテハ、金ヲ借リルト云フコトハ、一種ノ罪惡ノ如ク考ヘテ居ツ
タヤウデアリマシテ、一旦借金ヲスレバ最早終生浮ブ所ガナイト云フ位ニ思
ハレテ居ッタノデアリマス、詰リ商工業ニ於キマシテハ、總テ利潤モ多ウゴ
ザイマシテ、資本金ヲ借入金ニ仰ギマシテモ、利息ヲ拂ヒ尙ホ十分ノ餘裕ガ
アルノデ、元金ヲ返スト云フコトモ容易デアルノデアリマスルガ、農家ノ利
潤ト云フモノハ極メテ少イモノデアリマシテ、若シ農業ノ資本ヲ借入金ヲ以
テ致シマスルトスレバ、是ハ最早利息ヲ拂ヘバ何程モ餘剩ガナイ、イヤ寧ロ利
息サヘモ拂ヘナイヤウナ程度ニアルノデアリマス、ソレ故ニ從來ノ農村ニ於
キマシテハ、借金スル人ハ甚ダ少カッタ、又借金ヲスルコトモ容易デハナカッ
タノデアリマス、所ガ一朝信用組合ナルモノガ出來マシテ、大變此借金スル
ト云フコトガ容易ニナッテ參リマシタ、ソコデ農家ノ人モ知ラズ識ラズニ金ヲ
借リル、初メハ農業ノ資本ニ投ズル積リデアッタカモ知レヌ、又小サイ商業
工業ノ資本ニ投ズル積リデアッテ借リタンデゴザイマセウガ、ソレダケノ利益
ガ上ラナイ、段々、生產的資本デアッタノガ、遂ニハ消費的ノ借金ニ變ッテシ
マッタ、ソレガ爲ニソレハ返スコトガ出來ヌ、益〓深ミニ陷ッテ來ル、遂ニハ
苦シ紛レニ、ドウカ致シマスルト投機ニマデ手ヲ出シテ、遂ニ再ビ起ツコト
ガ出來ヌト云フヤウナコトニ、隨分今日地方デハサウ云フコトニ陷ッテ居ル人
ガ中〓多イノデアル、斯ウナルト云フト、信用組合ノ貸付金ト云フモノハ、
悉ク固定シテシマヒマス、已ムヲ得ズ又預金ヲ吸收スル、預金ヲ吸收スルニ
ハ非常ニアセラナケレバナラヌ、金利ヲ高ク出サナケレバナラヌ、從テ從來
他ノ銀行ノ金利ナンブハ一向顧ミナイデ、ズンズン高イ金利ヲ拂ッテ、而モ
又此金利ヲ以テ······高イ金利ノ金ヲ使フカラシテ、益〓不確實ナ貸出ヲシナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトニナリマシテ、遂ニハ組合ノ破綻ヲ來ス、組合員
全體ニ迷惑ヲ掛ケルト云フヤウナコトガ隨分多イノデアリマシテ、或ハ之ヲ
所謂春秋ノ筆法カラ申シマスレバ、信用組合ノ發達ガ農村ノ疲弊ヲ促進スル、
斯ウ云フヤウナコトヲ言ッテモ過言デハナイカト思フノデアリマス、併シ斯樣
ノ弊害ハ隨分田舍ノ小銀行ニデモ有ルノデアリマス、併ナガラ兎ニ角銀行ノ
經營者ト云フモノハ、大抵其土地ノ財產家デアリマスシ、又其銀行ノ大株主
ガ多イノデアリマシテ、銀行ノ利害ト云フモノハ、直接ニ自分ノ頭ニ掛カッ
テ來ルノデアリマス、又相當金融業ニ對シテハ智識經驗ヲ持ッテ居ルノデアリ
やく、又一方カラハ大藏省カラ嚴重ナ監督モアルノデアリマス、又小サイ銀
行ニハ親銀行ナルモノガアッテ、相當ノ注意モ與ヘルノデアリマス、ソレデ
アリマスカラシテ、隨分甚シイノモアリマスルガ、先ヅ比較的相當ノ注意ヲ
拂ッテ營業ヲシテ居ルモノガ多イノデアリマス、然ルニ此信用組合ノ役員ト云
フモノハ、組合員ノ互選デ、御承知ノ通リナノデアリマスルガ、近頃ニ至リ
マシテハ、信用組合ノ役員ノ選擧ト云フモノガ、矢張リ町會議員トカ村會議
員トカ云フヤウナ選擧ト同ジニナッテ參リマシテ、ナカ〓〓激烈ナ運動ヲシナ
ケレバナラヌ、激烈ナ競爭ヲシナケレバナラヌト云フコトニナッテ居ルノデア
リマスルカラシテ、此組合ノ役員ト云フモノハ、組合員ノ御機嫌ヲ損ジテハ
イケナイ、從テ貸出シ其他ニ付テモ、隨分如何ハシキコトガ行ハレ易イノデ
アル、殊ニ斯ウ云フ人達ハ、金融ニ付テハ餘リ······知識經驗ハ乏シイ人デア
リマスルカラ、斯ウ云フ人ニ相當大キナ金ヲ扱ハシテ、其運用ヲ託スルト云
フコトハ、ナカ〓〓危險千万ナコトナンデゴザイマス、最モ政府ニ於テモ相
當ノ監督ハシテ居ラレルヤウデアリマスルガ、併シ從來ハ產業組合ト云フモ
ノハ成ルベク發達サシタイ、助長サシテ行キタイ、奬勵シテ行キタイ、斯ウ
云フ御考デ以テヤッテ居リマス爲ニ、兎角監督取締ト云フ方ガ幾分カ手ヌルク
ナッテ居ルヤウニ思ハレルノデアリマス、唯統計的ノ數字デ以テ、組合員ノ數
ガ多イトカ、或ハ預金ノ數ガ多イトカ云フコトヲ標準ニシテ、或ハ模範デア
ルトカ何トカ云ウテ表彰シテ居ラレルノデアリマスガ、一向內容ニ於テハ、
一向ニ顧ミテ居ラレナイノデアリマス、其證據ニハ、模範組合トシテ表彰セ
ラレタ組合ガ、僅カ一年カ二年ノ間ニ非常ナ破綻ヲ暴露シテカラニ、組合員
ニ迷惑ヲ掛ケタト云フコトハ、隨分多イノデゴザイマス、元來信用組合ニハ、
市街地ノ組合ト農村ノ組合ト二色ニナッテ居リマスガ、市街地ノハ組合員以
外ノ預金モ取扱フモノデゴザイマスカラシテ、是ハ從來ノ主務省デアル農林
省以外ニ、大藏省カラモ檢查ヲサレマシテ、相當監督ハシテ居ラレマスガ、
是ノ如キモ今日ニ於キマシテハ、殆ド普通ノ貯蓄銀行ト變リハナイノデアリ
マシテ、特ニ信用組合トシテ置イテ置キマス必要ハナイト感ゼラレルノデア
リマス、或ハ貯蓄銀行トシテ御監督ニナル方ガ宜クハナイカト存ズルノデア
リマス、又第二類ノ所謂農村ノ方ニ於キマスル信用組合ハ、是ハ組合員以外
ノ預金ハ扱ハナイ、ソレ故ニ一向其監督モ幾ラカ温カイ、詰リ大藏省邊リハ
一向是ニ御干渉ナサラヌ、農林省デ產業組合ノ一トシテ御監督ニナッテ居ル、
斯ウ云フコトニナッテ居リマス、是ハ併シ表向ダケデアリマシテ、法律ニ或
ハ組合加入ノ豫約トカ、或ハ組合員ト家ヲ同ジウスルモノトカ、何トカ云フ
法律ノ明文ヲ利用イタシマシテ、矢張リ一般ノ預金ヲ受ケテ居ルノデアリマ
ス、又放資ノ方面ニ於キマシテモ、色〓ト法文ヲ潜リマシテ、或ハ手形ヲ買
ッタリ、「コールローン」ヲ出シ、或ハ甚シキハ有價證劵ノ賣買モヤッテ居ルモ
ノガ無キニシモアラズデアリマス、是モ殆ド銀行ト同ジ事ヲヤッテ居ルノデ
アリマスカラ、寧ロ是ハ產業組合トシテ御置キニナルヨリモ、他ノ購買販賣
利用組合ナドト御切離シニナッテ、寧ロ銀行同樣トシテ、銀行ト同ジ監督機
關ヲシテ監督ナサルト云フコトガ、是モ適當カト思フノデアリマス、今日ノ
有樣ニ於キマスト、是等ノ監督ヲスル人ハ、ドウ云フ人ガ檢査ニ行クカト申
シマスルト、主ニ地方廳ノ極ク下級ノ役人ガ參ルノデアリマスガ、一向何等
此金融業等ニ付テ専門ノ知識ヲ持ッタ人デゴザイマセヌノミナラズ、隨分甚シ
イ所ニナリマスト、信用組合ノ檢査ニ行クト云フノハ、詰リ其村ニ酒ヲ飮ミ
ニ行クト言フコトノ代名詞ニナッテ居ル、唯盲判ヲ押シテ、サウシテ御馳走
ニナッテ、サッサト歸ッテ來ル、是位ノ監督ノ仕方デアリマスカラ、決シテ此
監督ノ實ガ擧ゲラレルト云フコトハナイノデアリマス、ソレデ是ハ矢張リ、
其金融業ノ監督ニ非常ニ永年勤メテ居ラレマス、矢張リ銀行監督官、銀行檢
查官ニ於キマシテ、十分ニ監督ヲ爲サッテ行クト云フコトガ、最モ公平デア
リ、且ツ安全ナ途デアラウカト思ヒマスルガ、是ハ銀行許リヲ御取締ニナッテ、
斯ウ云フモノヲ御拔カシニナッテ置クト云フコトハ、寧ロ非常ナ危險ナルコト
ガ起ッテ來ヤシナイカ、農村ヲシテ全ク疲弊サシテシマヒハシナイカト云フ虞
ガゴザイマスノデ、是ハ政府ニ於キマシテモ、急ニ何カ御考ヘニナル必要ガ
アラウカト私ハ信ズルノデアリマス、此點ニ於キマシテ、大藏大臣、農林當
局ノ御意見ガ承リタイト存ジマス
〔國務大臣片岡直温君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=74
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075・片岡直温
○國務大臣(片岡直温君) 只今田中君ノ御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、御質疑
ノ要點ハ、信用組合ノ弊害ヲ、未然ニ防ギ且ツ除去スルヤウニシタイト云フ
御精神ト存ジマスガ、其信用組合中、市街地ニ於テハ、大藏省ノ監督ガ多少
行屆イテ居ルガ、村落ニ於テハ、大藏省ノ監督ハマルデ關係ガナイヤウデア
ル、之ヲ銀行同樣ニ監督スルヤウニシナケレバナラヌト云フ御希望ノ下ニ於
テノ御質疑ト存ジマス、併シ本問題ハ、地方ノ產業組合ハ農林省ノ主管デア
リマシテ、自ラ農林大臣ヨリ御答スルコトガ相當ト存ジマス、サリナガラ金
融上ノコトハ固ヨリ大藏省ノ主管デアリマスガ故ニ、大體御尋ニ對シテ御答
ヲ申上ゲタイト存ジマス、此信用組合ノ現狀ニ付キマシテハ、今御尋ネノ通
ノ事實ガアルト思ッテ居リマス、而シテ將來此儘ニテハ甚ダ懸念少カラザルモ
ノアルト考ヘマス、ソレ故ニ農林省トモボツ〓〓相談ヲ致シテ居リマス、將
來相當ノ研究考慮ヲ加ヘマシテ、弊害ノ起ラヌヤウニ、且ツ相當ノ監督取締
ヲ行フヤウニ考慮イタシテ見タイト存ジテ居リマス、此持ッテ居ル精神ダケヲ
私ヨリ申上ゲマス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=75
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076・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 田中君ノ產業組合中ノ信用組合ノ現狀ニ對スル御
質問ニ對シテ、大藏大臣ヨリモ只今御答ガアリマシタガ、私ノ方ノ主管ニ屬
スル關係上、私カラモ一言申上ゲテ置キマス、信用組合ノ現狀ハ、田中君ノ御
心配ニ相成ラセラレルガ如キ實情ノアル所モ少ナクナイノデアリマス、一万
三四千ヲ數ヘマス信用組合ガ、往々其管理宜シキヲ失シテ居ルト云フコトハ、
遺憾ナガラ左樣ナ事實ハアルノデアリマス、併シ此數年ノ傾向ヲ見マスト、
漸次改良ノ方面ニ赴イテ居ルノデアリマス、初メ出來マシタ時ニモ、農林省
ガ之ノ監督トシテ、地方廳ニ吏員ヲ置キマシテ、監督ハ致シテ置キマシタガ、
手薄デアリマス故ニ、先年御協賛ヲ得マシタ農村振興費ノ中カラ、此監督ノ
經費ヲ幾分增加シテ、相當ナ監督ハ致シテ居リマスモノノ、マダ十分行屆ク
マデノ經費ハ玆ニ得ナイノデアリマス、但シ田中君ノ御質問ノ如ク、農村ニ
於ケル信用組合ノ組織ト、都會ニ於ケル信用組合ノ組織トニ於テ、確カ大隈
內閣當時ト思ヒマス、信用組合法ヲ改正シマシテ、都會ニ於キマシテハ、組
合員以外ノ一般ノ預金者モ之ニ預入レルコトガ出來ルト云フコトニ改正イタ
シタノデアリマス、御承知ノ通リ、當時一面ニハ庶民銀行ヲ作ッテ、多數細民
ノ金融ヲ何トカ便利ニ致シタイト云フ議論ト、之ヲ信用組合ニ委シテ相互相
助クルノ趣意ノ上ニ此制度ヲ發達サセタイト云フ、二ツノ議論ガアリマシタ
ガ、當時之ヲ調和シテ、農村ニ於テハ主トシテ組合員ノ預入レニ依ル信用
組合、都會ニ於キマシテハ組合以外ノ預金モ集メテ、自ラ庶民階級ノ金融機
關トスルト云フ趣意ニ依ッテ、大隈內閣當時ニ此改正ヲ致シタノデアリマス、
農林省ト致シマシテハ、主トシテ農村金融ハ、農村民各自ノ責任ト自覺ニ依。ツ
テ有無相助ケルト云フ、此信用組合ヲ益〓發達セシムルコトヲ希望シテ居ルノ
デアリマス、已ムヲ得ザル場合ニ於テハ之ヲ監督スル必要ガアルガ、相互ノ
責任觀念カラ出來テ居ル此信用組合ニ向ッテハ、將來監督ヲ除イテ、彼等自
身ノ責任ノ下ニ之ヲ發達サセタイト云フ理想ヲ持ッテ居リマス、今日ノ現狀左
樣ニ參ラヌノハ甚ダ遺憾デアリマスルガ故ニ、相當ノ監督ハ致シマスモノノ、
マダ監督ノ及バザル所ニ向ッテハ、一層指導ノ意味ヲ以テ之ヲ監督スル經費ヲ
增シタイ考ヲ持ッテ居リマスガ、理想カラ申シマスレバ、他ノ金融機關ト違ッ
テ、此信用組合ニ向ッテハ、將來政府ノ監督ハ一切無クシテ、彼等ノ責任ノ
下ニ之ヲ發達サセタイト云フ理想ヲ持ッテ居ルコトダケヲ御答ヘシテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=76
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077・田中一馬
○田中一馬君 只今ノ農林大臣ノ御答辯ニ依リマスルト、此信用組合ハ將來
監督ヲ一切無クシタイト云フコトヲ理想トシテ仰シヤッタノデアリマス、ソレ
ハ至極理想トシテハ結構デアリマスガ、是ハ不可能ノコトト思ハレマス、銀
行ノ如キモ、之ニ委カシテ置ケバ發達ヲシナイト云フコトガ、今日ノ現狀ト
思ヒマス、ドウカ此現狀ヲ御覽下サイマシテ、理想バカリデハ行キマセヌ、
現狀ニ於テハ矢張リ之ヲ取締ラナケレバナラヌ必要ガアルト思ヒマス、ドウ
カ尙ホ御研究ヲ願ヒマシテ、御監督ノ制度ヲ設ケラレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀
銀行法案外四件特別委員
子爵吉田〓風君子爵伊東祐弘君小松謙次郞君
内田嘉吉君男爵小畑大太郞君井上準之助君
中川小十耶君藤安辰次郞君濱平右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、登錄稅法中改正法律案、第七、印紙稅
法中改正法律案、第八砂糖消費說法中改正法律案、第九、關稅定率法中改正
法律案、第十、商事非訟事件印紙法中改正法律案、第十一、明治四十年法律
第二十一號中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
登錄稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
小字ハ衆議院ノ修正文、
-ハ同削除ノ符號ナリ
登錄稅法中改正法律案
登錄稅法中左ノ通改正ス
第二條不動產ニ關スル登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ム
ヘン
相續ニ因ル所有權ノ取得不動產價格千分ノ五
遺言、贈與其ノ他無償名義ニ因ル所有權ノ取得
不動產價格千分ノ四十五
但シ神社、寺院、祠宇、佛堂又ハ民法第三十四條ニ依リ設立シタル
法人カ無償名義又ハ寄附行爲ニ因リ所有權ヲ取得シタルトキハ千分
ノ二十五
三前各號以外ノ原因ニ因ル所有權ノ取得不動產價格千分ノ三十三
四所有權ノ保存不動產價格千分ノ五
分割ニ因リテ
五共有物ノ分割受クル不動產千分ノ五
ノ價格
六地上權、永小作權又ハ賃借權ノ取得
存續期間十年以下ノモノ不動產價格千分ノ一
同二十年以下ノモノ不動產價格千分ノ二
同三十年以下ノモノ不動產價格千分ノ四
同五十年以下ノモノ不動產價格千分ノ七
同七十年以下ノモノ不動產價格千分ノ十
同百年以下ノモノ不動產價格千分ノ十五
同百年ヲ超ユルモノ不動產價格千分ノ二十
存續期間ノ定メナキモノ不動產價格千分ノ一
存續期間ノ定メナキモノニシテ民法第二百六十八條若ハ第二百七
十八條ノ規定ノ適用アルモノ又ハ借地法第二條第一項ノ規定ノ適
用アルモノ不動產價格千分ノ四
相續ニ因ル取得ニシテ存續期間三十年ヲ超ユルモノ
不動產價格千分ノ五
權利移轉ニ因ル取得ノ場合ニ於テハ既ニ經過シタル期間ヲ存續期間
ヨリ控除シ其ノ殘期間ヲ以テ存續期間ト看做ス
七地役權ノ取得要役地價格千分ノ一
八華族世襲財產ノ設定不動產價格千分ノ二十五
債權金額又ハ
九先取特權ノ保存又ハ取得不動產工事費千分ノ五·五
用豫算金額
十質權抵當權ノ取得債權金額千分ノ五·五
十一信託ノ登記
所有權ニ付テハ不動產價格千分ノ四
所有權以外ノ權利ニ付テハ不動產價格千分ノ二
十二競賣、强制管理ノ申立債權金額千分ノ五·五
十三假差押、假處分債權金額千分ノ四
十四抵當アル債權ノ差押債權金額千分ノ五·五
十五相續財產ノ分離
所有權ニ付テハ不動產價格千分ノ五·五
所有權以外ノ權利ニ付テハ不動產價格千分ノ一
十六滯納處分以外ノ原因ニ因ル權利ノ處分ノ制限ニシテ特ニ揭ケザル
モノ債權金額千分ノ四
十七抹消シタル登記ノ囘復不動產每一箇金四十錢
十八假登記不動產每一箇金四十錢
十九附記登記不動產每一箇金二十錢
但シ一件ニ付稅額金二圓ヲ超ユルトキハ二圓トス
二十登記ノ更正、變更又ハ抹消不動產每一箇金二十錢
但シ一件ニ付稅額金二圓ヲ超ユルトキハ二圓トス
前項第一號乃至第三號ノ場合ニ於テ共有物持分ノ取得ニ係ルモノハ其ノ
持分ノ價格ニ依ル
第三條船舶ニ關スル登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘ
シ
相續ニ因ル所有權ノ取得船舶價格千分ノ三
二遺言、贈與其ノ他無償名義ニ因ル所有權ノ取得
船舶價格千分ノ三十五
三前各號以外ノ原因ニ因ル所有權ノ取得船舶價格千分ノ二十三
四委付船舶價格千分ノ三
五所有權ノ保存船舶價格千分ノ三
六賃借權ノ取得船舶價格千分ノ一
七抵當權ノ取得債權金額千分ノ五·五
八信託ノ登記
所有權ニ付テハ船舶價格千分ノ三
所有權以外ノ權利ニ付テハ船舶價格千分ノ一
九競賣ノ申立債權金額千分ノ五·五
十假差押、假處分債權金額千分ノ四
+一抵當アル債權ノ差押債權金額千分ノ五·五
十二滯納處分以外ノ原因ニ因ル權利ノ處分ノ制限ニシテ特ニ揭ケサル
モノ債權金額千分ノ四
十三登記證書ヲ提出セスシテ受ケタル特別登記簿ノ登記ヲ登記簿ニ移
ス場合ニ於ケル登記船舶每一箇金一圓
十四抹消シタル登記ノ囘復船舶每一箇金四十錢
十五假登記船舶每一箇金四十錢
十六附記登記船舶每一箇金二十錢
十七登記ノ更正、變更又ハ抹消船舶每一箇金二十錢
前項第一號乃至第三號ノ場合ニ於テ共有物持分ノ取得ニ係ルモノハ其ノ
持分ノ價格ニ依ル
第三條ノ五ヲ削リ第三條ノ二ヲ第三條ノ五トシ同條中「、輕便鐵道抵當原
簿」ヲ削ル
第三條ノ二信託財產タル不動產又ハ船舶ヲ委託者ヨリ受託者ニ移ス場合
ニ於ケル所有權取得ノ登記ニ付テハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
委託者カ元本ノ歸屬權利者ニシテ委託者以外ノ者又ハ委託者ト委託
者以外ノ者トカ收益ノ受益者ナル信託
不動產不動產價格千分ノ四
船舶船舶價格千分ノ三
二委託者カ收益ノ受益者ニシテ委託者以外ノ者又ハ委託者ト委託者以
外ノ者トカ元本ノ受益者又ハ歸屬權利者ナル信託ニシテ信託財產ノ處
分ヲ目的トスルモノ
不動產不動產價格千分ノ四十五
但シ神社、寺院、祠宇、佛堂又ハ民法第三十四條ニ依リ設立シタ
ル法人カ元本ノ受益者又ハ歸屬權利者ナルトキハ千分ノ二十五
船舶船舶價格千分ノ三十五
三委託者以外ノ者又ハ委託者ト委託者以外ノ者トカ元本ノ受益者又ハ
歸屬權利者ニシテ委託者以外ノ者又ハ委託者ト委託者以外ノ者トカ收
益ノ受益者ナル信託
不動產不動產價格千分ノ四十五
但シ神社、寺院、祠宇、佛堂又ハ民法第三十四條ニ依リ設立シタ
ル法人カ元本ノ受益者又ハ歸屬權利者ナルトキハ千分ノ二十五
船舶船舶價格千分ノ三十五
前項第一號ノ信託ニ付信託ノ登記事項ヲ變更シタル爲前項第二號又ハ第
三號ノ信託ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ變更ノ登記ヲ以テ受託者ノ
所有權取得ノ登記ト看做シ前項第二號又ハ第三號ノ規定ヲ適用ス
第三條ノ三前條第一項各號ニ該當セサル信託(委託者カ收益ノ受益者ニ
シテ委託者以外ノ者又ハ委託者ト委託者以外ノ者トカ元本ノ受益者又ハ
歸屬權利者ナル信託ニシテ信託財產ノ管理ヲ目的トスルモノ及委託者カ
信託利益ノ全部ヲ受クヘキ信託)ニ因リ不動產又ハ船舶ヲ委託者ヨリ受
託者ニ移ス場合ニ於ケル所有權取得ノ登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セス但シ
信託ノ登記事項ヲ變更シタル爲前條第一項各號ノ信託ニ該當スルニ至リ
タルトキハ其ノ變更ノ登記ヲ以テ受託者ノ所有權取得ノ登記ト看做シ前
條ノ規定ニ依リ登錄稅ヲ納ムヘシ
第三條ノ四委託者カ收益ノ受益者ニシテ委託者以外ノ者又ハ委託者ト委
託者以外ノ者トカ元本ノ受益者又ハ歸屬權利者ナル信託ニシテ信託財產
タル不動產又ハ船舶ノ管理ヲ目的トスルモノニ付其ノ元本ヲ受託者ヨリ
受益者又ハ歸屬權利者ニ移ス場合ニ於ケル所有權取得ノ登記ニ付テハ左
ノ登錄稅ヲ納ムヘシ
不動產不動產價格千分ノ四十五
但シ神社、寺院、祠宇、佛堂又ハ民法第三十四條ニ依リ設立シタル法
人カ元本ノ受益者又ハ歸屬權利者ナルトキハ千分ノ二十五
船舶船舶價格千分ノ三十五
受託者ヨリ受益者又ハ歸屬權利者ニ不動產又ハ船舶ヲ移ス場合ニ於ケル
所有權取得ノ登記ニ付テハ前項ニ該當スル場合ノ外登錄稅ヲ課セス
第三條ノ六工場財團登記簿、鑛業財團登記簿又ハ漁業財團登記簿ニ登記
ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
一抵當權ノ取得債權金額千分ノ
二信託ノ登記債權金額千分ノ
三競賣、强制管理ノ申立債權金額千分ノ一
四假差押、假處分債權金額千分ノ一
五抵當アル債權ノ差押債權金額千分ノ一
六滯納處分以外ノ原因ニ因ル權利ノ處分ノ制限ニシテ特ニ揭ケサルモ
ノ債權金額千分ノ一
七抹消シタル登記ノ囘復每一件金二圓
八假登記每一件金二圓
九附記登記每一件金二圓
十登記ノ更正、變更又ハ抹消每一件金二圓
第五條削除
第六條中「千分ノ四」ヲ「千分ノ五」ニ、「十五圓」ヲ「二十圓」ニ、「七圓」ヲ「十
圓」ニ、「五圓」ヲ「七圓」ニ、「一圓五十錢」ヲ「二圓」ニ改ム
第六條第一項第九號ヲ左ノ如ク改ム
拂込株金額及
九合併又ハ組織變更ニ因ル會社ノ設立財產ヲ目的ト千分ノ
スル株金以外
ノ出資ノ價格
但シ合併ニ因リ消滅シタル會社又ハ組織變更ヲ爲シタル會社ノ合
併當時又ハ組識變更當時ノ拂込株金額及財產ヲ目的トスル株金以
外ノ出資ノ價格ヲ超過スル金額ニ付テハ千分ノ五
第六條第一項第十號ヲ左ノ如ク改ム
增資拂込株金額
十合併ニ因ル會社資本ノ增加及財產ヲ目的ト千分ノ
スル株金以外ノ
出資ノ價格
但シ合併ニ因リ消滅シタル會社ノ合併當時ノ拂込株金額及財產ヲ
目的トスル株金以外ノ出資ノ價格ヲ超過スル金額ニ付テハ千分ノ五
第六條第一項第十一號ヲ左ノ如ク改メ同項第十一號ノ二ヲ削ル
+一社債又ハ第二囘以後ノ社債拂込
商法第二百四條ノ拂込アリタル
日(賣出ノ方法ニ依リ發行シタ
ル場合ニ於テハ賣出滿了ノ日)每囘拂込金額千分ノ一
ヨリ最終ノ償還期限ニ至ル期間
一年以下ノモノ
同三年以下ノモノ每囘拂込金額千分ノ二
同三年ヲ超ユルモノ每囘拂込金額千分ノ三
但シ產業債劵、農工債劵、北海道拓殖債劵、興業債劵、勸業債劵
又ハ東洋拓殖債劵ニ付テハ千分ノ二
第六條第二項中「登錄稅ヲ納ムヘシ」ノ下ニ「朝鮮、臺灣、關東州、樺太若
ハ南洋群島ニ於ケル法人又ハ外國會社カ登記ヲ受クルトキ亦同シ」ヲ加フ」
第六條ノ二中「七圓」ヲ「十圓」ニ、「三圓」ヲ「五圓」ニ、「一圓五十錢」ヲ「二
四二、「七十錢」ヲ「一圓」ニ改ム
第十條中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ改メ第二項ヲ削ル
第十一條第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ改メ「使用權又ハ」ヲ削リ
第六號ヲ第十號トシ第五號ヲ第六號トシ第四號ノ二ヲ第五號トシ第六號ノ
次ニ左ノ三號ヲ加フ
七代理人ノ選任又ハ代理權ノ登錄每一件金五十錢
八抹消シタル登錄ノ囘復毎一件金五十錢
九假登錄每一件金五十錢
第十一條第二項ヲ削ル
第十二條第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ改メ第六號ヲ第十號ト
シ第五號ヲ第六號トシ第四號ノ二ヲ第五號トシ第六號ノ次ニ左ノ三號ヲ加
フ
七代理人ノ選任又ハ代理權ノ登錄每一件金五十錢
八抹消シタル登錄ノ囘復每一件金五十錢
九假登錄每一件金五十錢
第十二條第二項ヲ削ル
第十二條ノ二第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ改メ「使用權又ハ」ヲ
削リ第六號ヲ第十號トシ第五號ヲ第六號トシ第四號ノ二ヲ第五號トシ第六
號ノ次ニ左ノ三號ヲ加フ
七代理人ノ選任又ハ代理權ノ登錄每一件金五十錢
八抹消シタル登錄ノ囘復每一件金五十錢
九假登錄每一件金五十錢
第十二條ノ二第二項ヲ削ル
第十三條中但書ヲ削リ第二號ヲ第六號トシ第一號ノ二ヲ第二號トシ第二號
ノ次ニ左ノ三號ヲ加フ
三代理人ノ選任又ハ代理權ノ登錄每一件金五十錢
四抹消シタル登錄ノ囘復每一件金五十錢
五假登錄每一件金五十錢
第十四條第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ、「十錢」ヲ「二十錢」ニ改
メ第十三號ヲ第十六號トシ第十二號ヲ第十三號トシ第十一號ヲ第十二號ト
シ第十號ヲ第十一號トシ第九號ノ二ヲ第十號トシ第十三號ノ次ニ左ノ二號
ヲ加フ
十四抹消シタル登錄ノ囘復每一件金四十錢
十五假登錄每一件金四十錢
第十四條第二項ヲ削ル
第十五條第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ、「十錢」ヲ「二十錢」ニ改
メ第九號ヲ第十二號トシ第八號ヲ第九號トシ第七號ヲ第八號トシ第六號ノ
二ヲ第七號トシ第九號ノ次ニ左ノ二號ヲ加フ
十抹消シタル登錄ノ囘復每一件金四十錢
十一假登錄每一件金四十錢
第十五條第二項ヲ削ル
第十五條ノ二第一項中「千分ノ六」ヲ「千分ノ五·五」ニ、「二十錢」ヲ「四十錢」
二、「十錢」ヲ「二十錢」ニ、「請求又ハ申立ニ因リ抹消セラレタル」ヲ「抹消
シタル」ニ改メ第十六號ヲ第十八號トシ第十五號ヲ第十七號トシ第十四號
ヲ第十六號トシ第十三號ヲ第十五號トシ第十二號ヲ第十三號トシ第十一號
ヲ第十二號トシ第十號ヲ第十一號トシ第九號ノ二ヲ第十號トシ第十三號ノ
次ニ左ノ一號ヲ加フ
十四滯納處分以外ノ原因ニ因ル權利ノ處分ノ制限ニシテ特ニ揭ケサル
モノ債權金額千分ノ四
第十五條ノ二第二項ヲ削ル
第十六條法人ノ合併ニ因ル不動產又ハ船舶ニ關スル權利ノ取得ニ付登記
ヲ受クルトキハ左ノ登錄稅ヲ納ムヘシ但シ他ノ規定ニ依リ算出シタル稅
額カ本條ニ依リ算出シタル稅額ヨリ少キトキハ其ノ稅額ニ依ル
不動產又ハ船舶ノ價格千分ノ三
第十六條ノ二債權金額ニ依リ課稅額ヲ定ムル場合ニ於テ一定ノ債權金額
ナキトキハ債權ノ目的タルモノ又ハ處分ノ制限ノ目的タルモノノ價格ヲ
以テ債權金額ト看做シ先取特權、質權、抵當權又ハ處分ノ制限ノ目的タ
ルモノノ價格カ債權金額ヨリ少キトキハ其ノ目的タルモノノ價格ヲ以テ
債權金額ト看做ス但シ抵當アル債權ノ差押ヲ登記又ハ登錄スル場合ニ於
テハ差押ヘラルヘキ債權ノ額又ハ質權若ハ抵當權ノ目的タルモノノ價格
カ債權金額ヨリ少キトキハ其ノ最少キモノヲ以テ債權金額ト看做ス
第十六條ノ三管轄ヲ異ニスル登記所ニ於テ順次ニ不動產登記法第百二十
二條ノ規定ニ依ル登記ヲ受クル場合ニ於テ各登記所ニ於テ受クル登記ニ
付テハ債權金額ヨリ既ニ登記ヲ受ケタルモノノ價格ヲ控除シタル殘額ヲ
以テ債權金額ト看做ス
第十六條ノ四同一ノ債權ノ爲ニ先取特權、質權又ハ抵當權ニ關シ種類ヲ
異ニスル二以上ノ登記登錄ヲ受クル場合ニ於ケル登錄稅ニ關シテハ前條
ノ規定ニ準シ命令ヲ以テ之ヲ定ム
○第八號、第九號、〇、第十二號
第十九條左ニ揭クルモノニハ登錄稅ヲ課セス但シ○第十一號〓及第十四號
ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
政府自己ノ爲ニスル登記又ハ登錄
二社寺若ハ堂宇ノ敷地又ハ墳墓地ニ關スル登記
三北海道府縣市町村其ノ他ノ公共〓體ニ於テ公用ニ供スル不動產ニ關
スル登記
四府縣市町村ノ廢置分合若ハ境界變更ニ因ル府縣市町村ノ權利ノ取得
又ハ其ノ府縣市町村ニ所有權ヲ移スニ付爲ス所有權ノ保存ノ登記又ハ
登錄
五市町村ノ一部ニ屬スル財產ヲ其ノ市町村ニ移ス場合ニ於ケル市町村
ノ權利ノ取得又ハ其ノ市町村ニ所有權ヲ移スニ付爲ス所有權ノ保存ノ
登記又ハ登錄
六市町村又ハ市町村ノ一部ニ屬スル入會權ニシテ二以上ノ市町村ニ亙
ルモノヲ消滅セシムル爲市町村又ハ其ノ一部カ其ノ入會財產ニ付爲ス
權利ノ取得若ハ財產ノ分割又ハ之カ爲ニスル所有權ノ保存ノ登記
七產業組合、產業組合聯合會、產業組合中央會、漁業組合、漁業組合
聯合會、重要輸出品工業組合、重要輸出品工業組合聯合會又ハ輸出組
合ニ付產業組合法、漁業法、重要輸出品工業組合法又ハ輸出組合法ニ
基キテ爲ス登記
ノ爲ニスル
八自作農ノ創設維持事業ニ關スル國庫補助金ノ交付ヲ受ケテ行フ北海
道府縣市町村、產業組合又ハ產業組合聯合會ノ施設ニ依ル個人ノ土地
所有權ノ取得ノ登記
九前號ニ規定スル北海道府縣市町村、產業組合又ハ產業組合聯合會カ
自作農ノ創設維持ノ爲ニスル抵當權ノ取得ノ登記
十北海道府縣市町村、產業組合又ハ住宅組合カ住宅ノ供給ノ爲ニスル
抵當權ノ取得ノ登記
十一住宅又ハ住宅用地ニ付產業組合員又ハ住宅組合員カ其ノ所屬組合
ヨリノ權利ノ取得ノ登記
十二第八號ニ規定スル北海道府縣市町村、產業組合又ハ產業組合聯合
會ヨリ自作農創設維持ノ爲資金ノ貸付ヲ受ケタル者カ其ノ貸付ノ條件
ヲ具備セサルニ至リタル場合ニ於ケル北海道府縣市町村、產業組合又
ハ產業組合聯合會ノ土地所有權ノ取得ノ登記
十三農業倉庫業者又ハ聯合農業倉庫業者ノ農業倉庫若ハ聯合農業倉庫
又ハ其ノ敷地ニ關スル權利ノ取得ノ登記
十四學校經營ヲ目的トスル法人ノ土地、建物ノ權利ノ取得又ハ所有權
ノ保存ノ登記
第十九條ノ二ヲ第十九條ノ四トシ第十九條ノ三ヲ第十九條ノ五トシ以下順
次繰下ク
第十九條ノ二信託ニ因ル財產權取得ノ登記又ハ登錄ニシテ左ノ各號ノ
ニ該當スルモノニハ登錄稅ヲ課セス
委託者カ信託利益ノ全部ヲ受クヘキ信託ニ因リ委託者ヨリ受託者ニ
移ス場合ニ於ケル財產權取得ノ登記又ハ登錄
受益者又ハ歸屬權利者ノ權利取得ノ登記又ハ登錄但シ不動產又ハ船
舶ノ所有權取得ニ付テハ第三條ノ四ニ依ル
三信託ノ受託者更迭ノ場合ニ於ケル新受託者ノ權利取得ノ登記又ハ登
錄
前項第一號ノ規定ハ當該信託財產ニ付受益者(歸屬權利者ヲ含ム)變更
ノ登記又ハ登錄ヲ受クル場合ニハ之ヲ適用セス此ノ場合ニ於テ信託財產
ハ其ノ變更ノ登記又ハ登錄ノトキニ於テ受託者ニ移轉シタルモノト看做
シ登錄稅ヲ課ス
第十九條ノ三登記又ハ登錄ノ抹消又ハ錯誤若ハ遺漏カ當該官吏ノ過誤ニ
出テタルトキハ其ノ囘復又ハ更正ノ登記又ハ登錄ニ付テハ登錄稅ヲ課セ
ス
附則
本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三條ノ二ノ改正規定中第二項、第三條ノ三及第三條ノ四ノ改正規定ハ信
託財產ヲ委託者ヨリ受託者ニ移ス場合ニ於ケル受託者ノ所有權取得ニ付從
前ノ規定ニ依リ登錄稅ヲ課セラレタル不動產又ハ船舶ニ付テハ之ヲ適用セス
印紙稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付依也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
印紙稅法中改正法律案
印紙稅法中左ノ通改正ス
第二條削除
第四條左ニ揭クル證書、帳簿ニ關シテハ證書ハ一通毎ニ、
年以内ノ附込ニ對シ左ノ印紙稅ヲ納ムヘシ
一不動產、鐵道財團、軌道財團又ハ船
舶ノ所有權移轉ニ關スル證書
二消費貸借ニ關スル證書
三請負ニ關スル證書
四運送ニ關スル證書
五傭船契約書
六委任狀
七約束手形
八爲替手形
九銀行預金證書
十產業組合又ハ產業組合聯合會ノ發ス
ル貯金證書
+一產業組合聯合會、重要輸出品工業
組合、重要輸出品工業組合聯合會又ハ
輸出組合ノ發スル出資證劵
十二船荷證劵
十三運送貨物引換證
十四倉庫證劵
十五保險證劵
十六株劵
十七債券
帳簿ハ一册一
記載金高五十圓以下二錢
ノモノ
同百圓以下ノモノ三錢
同五百圓以下ノモノ十錢
同千圓以下ノモノ二十錢
同一万圓以下ノモノ五十錢
同一万圓ヲ超ユルモノ圓
記載金高ナキモノ三錢
二錢
十八相互保險會社ノ發スル基金證劵三錢
十九株式申込證
二十社債申込證
二十一地上權、永小作權又ハ地役權ニ
關スル證書
二十二使用貸借、賃貸借、雇傭、寄託
又ハ定期金ニ關スル證書
二十三信託行爲ニ關スル證書
二十四無盡ニ關スル證書
二十五定款又ハ組合契約書
二十六權利ノ變更ニ關スル證書
二十七追認又ハ承認ニ關スル證書
二十八物品切手
二十九受取書
三十質權、抵當權ニ關スル證書
三十一前各號以外ノ證書
三十二預金通帳
三十三前號以外ノ通帳五錢
三十四判取帳五十錢
證書ニ金高記載ナキモ證書面ニ標記シアル價額ノ單位其ノ他ノ記載事項
ニ依リ其ノ金高ヲ算出スルコトヲ得ルモノハ其ノ總金額ヲ以テ記載金高
ト看做ス
第五條中第六號、第八號、第十一號、第十二號及第十三號ヲ各左ノ如ク改
ム
六產業組合ノ發スル出資證劵若ハ貯金通帳又ハ住宅組合ノ發スル出資
證劵
八貯金通帳、積金通帳又ハ積金證書(貯蓄銀行法第一條ノ貯金又ハ
積金ニ付發スルモノニ限ル
十一賣買仕切書
十二物品又ハ有價證劵ノ賣買契約證書
十三送狀
第五條ニ左ノ五號ヲ加フ
二十一農業倉庫證劵又ハ聯合農業倉庫證劵
二十二質札又ハ質物通帳
二十三勤務通帳
二十四乘車劵、乗船劵又ハ各種入場券
二十五第四條第一號乃至第五號及第三十一號ノ證書ニシテ記載金高十
圓未滿ノモノ
第十條中「帳簿、賣買仕切書、送狀」ヲ「證書、帳簿ニシテ營業ニ關スルモ
ノ」ニ改ム
附則
本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前作成シタル證書又ハ帳簿ノ印紙稅ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
砂糖消費稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
砂糖消費稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中左ノ通改正ス
第三條消費稅ノ割合左ノ如シ
砂糖
第一種砂糖色相和蘭標本第十一號未滿ノ砂糖
甲樽入黑糖百斤ニ付一圓
乙樽入白下糖但シ分蜜シタルモノ、白下糖以外ノ砂糖ニ加工シテ
製造シタルモノ及全部又ハ一部ノ新式機械ニ依リ製造シタルモ
ノヲ除ク百斤ニ付二圓
丙其ノ他ノモノ百斤ニ付二圓五十錢
第二種砂糖色相和蘭標本第十八號未滿ノ砂糖
百斤ニ付五圓
第三種砂糖色相和蘭標本第二十二號未滿ノ砂糖
百斤ニ付七圓三十五錢
第四種砂糖色相和蘭標本第二十二號以上ノ砂糖
百斤ニ付八圓三十五錢
第五種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其ノ他類似ノモノ
百斤ニ付十圓
二糖蜜
第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生スル糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超エサ
ルモノ百斤ニ付三圓
乙其ノ他ノモノ糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル重量百斤ニ付
八圓三十五錢ノ割合ヲ以テ算出シタル金額
第二種其ノ他ノ糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超エサ
ルモノ百斤ニ付圓
乙其ノ他ノモノ百斤ニ付二圓五十錢
三糖水百斤ニ付七圓三十五錢
附則
本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ニ揭クル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
一本法施行前消費稅ヲ課スヘカリシモノ
二本法施行前製造場若ハ保稅地域ヨリ引取リ又ハ製造場外ニ移出シタ
ルモノニシテ砂糖消費稅法第五條第三項、第七條第三項又ハ第十一條
ノ一第三項ノ規定ニ依リ消費稅ヲ徵收スヘキモノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シタルモノ
關稅定率法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第四十號ヲ左ノ如ク改ム
四〇砂糖
一和蘭標本色相第十一號未滿ノモノ每百斤二·五〇
二和蘭標本色相第二十二號未滿ノモノ每百斤三·九五
三其ノ他每百斤五·三〇
第二百四十四號中「每百斤」ヲ削リ「一二八·〇〇」ヲ「無稅」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
商事非訟事件印紙法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
商事非訟事件印紙法中改正法律案
商事非訟事件印紙法中左ノ通改正ス
第一條第二項ヲ削ル
第四條乃至第七條削除
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際未タ終局計算ニ至ラサル破產手續ニ在リテハ財團ノ全部ニ付
印紙ヲ貼用スルコトヲ要セス
大正十五年法律第六十五號第三項ヲ削ル
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四號ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十年法律第二十一號中改正法律案
明治四十年法律第二十一號中左ノ通改正ス
第一條第一項中「三營業稅」ヲ「三營業收益稅」ニ改メ第五號ヲ削リ第六
號ヲ第五號トス
第二條ヲ削リ第三條ヲ第二條トス
附則
本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第一條第一項第三號ノ改正規
定ハ昭和三年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
昭和二年分以前ノ營業稅ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
本法施行前造石數ヲ査定シタル醬油及査定スヘカリシ醬油ニ付テハ仍從前
ノ例ニ依ル
參照
明治四十年法律第二十一號ハ樺太ニ於ケル租稅ニ關スル法律ナリ
國務大臣片岡直温君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=79
-
080・片岡直温
○國務大臣(片岡直温君) 玆ニ議題トナリマシタ登錄稅法中改正法律案外三
件卽チ第六、第七、第八、第九、此四案ニ付キマシテ大體御說明ヲ申上ゲ
マン、我國多年ノ懸案デアリマシタ稅制ノ整理ハ、前期議會ノ協賛ヲ經マシ
テ旣ニ實施セラレ、我ガ國民租稅負擔ノ衡平ヲ得ルニ至リマシタコトハ、諸
君ト共ニ邦家ノ爲ニ慶賀ニ堪ヘヌ所デアリマス、昨年一般的稅制整理ニ際
シ整理ヲ行ハナカッタ租稅ニ付テハ、政府ハ調査考究ノ上、今期議會ニ成案
トシテ提出シタイ希望ヲ述ベテ置キマシタガ、登錄稅、印紙稅及砂糖消費稅ニ
付キマシテハ、政府ハ愼重調査ノ結果、成案ヲ得ルニ至リマシタノデ、玆之
登錄稅法中改正法律案外三件ノ法律案ヲ提出シテ、諸君ノ協贊ヲ求ムル次第
デアリマス、是等諸稅ノ改正ニ當リマシテハ、我國現下ノ財政狀態ニ照シ、
其認容シ得ベキ範圍內ニ於テ國民負擔ノ均衡ヲ圖ルト共ニ、成ルベク社會政
策的ノ效果ヲ擧ゲ、產業ノ發達ニ資シ、且ツ官民相互ノ手數ヲ省略シ、稅務
行政執行上ノ便宜ヲ圖ルコトニ努メタノデアリマス、其結果、平年度ニ於テ
登錄稅ノ改正ニ依リ二百二十三万三千圓、印紙稅ノ改正ニ依リ百四十七万一
千圓、砂糖消費稅ノ改正ニ依リ四百十三万八千圓、合計七百八十四万三千圓
ノ減稅トナル計算デアリマス、尙ホ砂糖ニ付キマシテハ、關稅增徵ノタメ二
百四十八万三千圓ノ增徵ニナリマスカラ、差引百六十五万五千圓ノ減稅トナ
リマスノデ、結局ニ於テ第二次稅制整理及砂糖關稅ノ改正ニ依ッテ、平年度ニ
於テ五百三十五万八千圓ノ減收トナル見込デアリマス、登錄稅ノ改正ニ付テ
ハ現行登錄稅法ハ明治二十九年ノ立法ニ係リマシテ、明治三十二年根本的
ニ改正セラレ、其後日露戰爭ノ當時、非常特別稅ノ增徵ガアリマシタガ、爾
來今日ニ至ルマデ全般的ノ改正ヲ行ナッタコトナク、從テ時勢ノ變遷ニ依リ、
課稅ノ均衡ヲ失スルモノヲ生ジ、相當改正ヲ加フルノ必要アルヲ認メタノデ
アリマス、今囘改正ノ主要ナル點ヲ申シテ見マスレバ、第一、不動產及船舶
ニ對スル稅率ハ、大體過重デアルト認メマスノデアリマス、其所有權ノ移轉、
質權、抵當權ノ取得等、各、ノ場合ニ於テ、相當稅率ヲ輕減スル、又第二、法人
ノ合併ハ我國現下ノ經濟狀態ニ於テハ、之ヲ奬勵スベキモノト認メマシテ、
之ニ對スル稅率ヲ相當輕減スルコトニ致シマシタ、第三、不動產信託ニ付テ
ハ現行法ハ信託ノ當初ニ際シ、高率ナル稅率ヲ以テ課稅イタシマスルガ
爲、十分ニ之ヲ利用スルヲ得ザル虞ガアルノデアリマスルガ、今囘ノ改正ニ
當リマシテハ、信託ノ內容ニ依リマシテ其稅率ヲ區分シ、出來得ル限リ信託
ノ發達ヲ阻害セザラムコトヲ期シタノデアリマス、第四、社會政策的竝ニ公
共的施設遂行ノ場合ニ於キマシテハ、登錄稅ヲ課セザルヲ相當ト認メタルモ
'卽チ自作農ノ創設維持事業ニ關スル場合、農業倉庫建設ノ場合、小住宅
建設ノ場合、部落有財產ヲ其市町村ニ移ス場合、數箇町村ニ亙ル入會權ヲ消滅
セシムル場合、學校經營ヲ目的トスル法人ノ不動產取得ノ場合等ニハ、各〓法
令ノ定ムル所ニ依リ登錄稅ヲ免除スルコトニ致シタノデアリマス、然ルニ衆
議院ニ於キマシテ、自作農ノ創設維持事業ニ關スル場合ノ登錄稅免除ノ範圍
ニ付テ、修正ヲ加ヘラレタノデアリマスルガ、其趣旨ニ於テハ政府ノ原案ト
何等異ナル所ナキヲ認メマシテ、同意ヲ表シタ次第デアリマス、第五、土地
臺帳ノ登錄稅ハ之ヲ廢止スルコトニ致シマシタ、土地臺帳ノ登錄稅ハ稅額僅
少デアルノミナラズ、官民共ニ相當手數ヲ要シマスルノデ、之ヲ廢止スルヲ
適當ト認メタノデアリマス、第六、以上述べマシタ改正ニ依ッテ生ズル歲入
ノ減少ノ一部ヲ補塡シ、且ツ負擔ノ均衡ヲ圖ラムガ爲ニ、商業登記其他ニ付
キ稅率ノ引上ヲ行フコトニ致シマシタ、卽チ合名會社、合資會社ノ設立資本
增加ニ付テハ、之ヲ株式會社ト同樣ノ稅率ニ改正スルコトニ致シマシタ、社
債ノ登記ニ付テハ、償還期限ノ長短ニ依ッテ稅率ヲ區別シ、負擔ノ均衡ヲ得
セシムルコトニ致シ、商業登記其他一部ノ定額稅ニ付テ、相當稅率ノ引上ヲ行
フコトニ致シマシタ、是等ノ定額稅ハ何レモ其稅率實施以來十數年以上ノ歲
月ヲ經過シ、時勢ノ變遷ト共ニ相當之ヲ引上グルモ不可ナシト認メタノデア
リマス、印紙稅ニ付キマシテハ、從來屢〓改正セラレ、大正十二年ニ於テモ、
二三重要ナル改正ガ加へラレタノデアリマスルガ、今囘調査研究ノ結果ハ、
更ニ印紙稅ヲ根本的ニ改正スルノ必要ヲ認メタノデアリマス、第一現行ノ印
紙稅法ハ、比例稅、定額稅ト併用スルノ制度デアリマスルガ、比例稅ハ實際
ニ於テ官民共ニ手數ヲ要スルノミナラズ、知ラズ識ラザルノ間ニ脫稅ヲ誘致
スルノ虞レ多ク、却ッテ負擔ノ公平ヲ得難イノデアリマスカラ、之ヲ改メ、
從來比例稅ヲ課シテ居リマシタ主ナル證書、卽チ不動產移轉ニ關スル證書、
消費貸借ニ關スル證書等ニ對シマシテハ、適當ナル稅率ニ依リ階級定額稅ヲ
課スルコトニ致シマシタ、第二、賣買仕切書、物品又ハ有價證劵ノ賣買ニ關ス
ル證書及送狀ニ付キマシテハ、是等ノ證書ガ證人間ニ於テ頻繁ニ作成セラル
ルノミナラズ、證書自體ニ依ッテ果シテ財產權ノ創設、移轉、變更又ハ消滅
ヲ證明スルモノナリヤ否ヤヲ判定スルコト困難ニシテ、印紙稅ノ可否ニ關シ、
官民間ノ紛爭ヲ絕タザル實況ニアリマスルガ故ニ、是等ノ證書ニ對シテハ、
一切之ヲ免稅スルコトトシ、將來此點ニ關スル官民間ノ紛爭ヲ一掃シタイト
思ヒマス、第三、零碎ナル資金ニ關シ、又ハ社會政策上課稅セザルヲ適當ナ
リト認メラルル貯金通帳、質札、勤務通帳等ニ對シテハ、之ヲ免稅スルコト
ニ致シタノデアリマス、第四、以上述ベタル改正ニ伴フ歲入減少ノ一部ヲ補
塡センガ爲ニ、通帳、判取帳ニ對シ其稅率ヲ引上ゲルコトト致シマシタ、蓋
シ是等ノ帳簿ハ、多數ノ取引事實ヲ記載スルモノデアリマシテ、相當擔稅能
力アリト認メ、其稅率ヲ引上ゲタ次第デアリマス、現行砂糖消費稅ノ稅率ハ、
明治四十三年ノ改正ニ係リ、其後時勢ノ變遷ト糖業ノ發達トニ伴ヒ、之ガ改正
ノ要アルヲ認メ、關稅ノ改正ト相俟ッテ立案イタシタノデアリマス、之ガ立
案ニ當リマシテハ、政府ハ出來得ル限リ國民ノ負擔ヲ輕減スルト共ニ、產業
上ノ支障ヲ除キ、我國糖業ノ發達ニ資センコトヲ期シタノデアリマス、諸君
御承知ノ如ク、砂糖ハ世界的ノ商品デアリマシテ、消費稅ノ改正ハ關稅ノ改
正ト相俟ツノ要ガアリマスルガ、關稅ノ改正ニ付テハ後ニ之ヲ說明スルコト
ト致シマシテ、玆ニハ砂糖消費稅ニ關スル改正ニ付キ、大體ノ趣旨ヲ說明ス
ルコトト致シマス、第一、砂糖ハ色相ニ依リ之ヲ六種ニ分ッテ課稅シテ居リ
やく、其第一種糖ハ主トシテ庶民階級ノ需要品デアリマスノデ、社會政策上
ノ見地ヨリシテ、之ニ對シテハ相當ノ減稅ヲスルコトニ致シマシタ、第一種
糖ノ中樽入黑糖ハ、其大部分ガ沖繩縣及大島ニ於テ生產セラレマスノデ、旁、
同地方ノ經濟上ニモ、相當好影響アルコトト考ヘマス、第二、現行法ニ依ル
第二種糖、第三種糖ハ、之ヲ併セテ同一種別トナシマシテ、現行第二種ノ稅
率ヲ適用スルコトトシ、現行第四種糖ニ對シテハ、稅率ヲ輕減スルコトニ致
シマシタ、現行稅率制定當時ニ於キマシテハ、糖業ノ技術未ダ進步セズ、自
然ニ生產セラルヽ粗糖ハ、主トシテ第二種糖ニ屬シタノデアリマス、然ルニ
其後糖業ハ次第ニ發達シテ、自然ニ上種別ノ砂糖ヲ生產セラルヽニ至ッタニ
拘ラズ、稅法ノ改正之ニ伴ハザルガ爲ニ、故意ニ著色シテ第二種糖トナシ、
輕率ノ課稅ヲ受クルノ弊生ジ、延イテ產業上ニモ支障ヲ來シツツアルノデア
リマス、今囘改正ニ當リマシテハ、是等產業上ノ支障弊害ヲ除去矯正ニ努ム
ルト同時ニ、我國砂糖生產ノ狀況竝ニ各種砂糖ニ對スル稅率ノ按排等ヲ考慮
イタシマシテ、適當ニ稅率ヲ定メタノデアリマス、第三、現行法ニ依ル第五
種糖ニ對シマシテ、一方關稅ニ於テ幾分ノ增徵ヲ致シテ居リマスルケレドモ、
消費稅ニ於テ其稅率ヲ引下ゲ、成ルベク國民ノ負擔ヲ輕減センコトヲ期シタ
ノデアリマス、現行第六種糖ハ、氷砂糖、角砂糖等デアリマシテ、稍〓奢侈
的消費ニ屬シマスノデ、其稅率ハ之ヲ据置クコトト致シマシタ、糖密ニ付テ
ハ、砂糖ノ稅率改正ニ準ジテ稅率ノ改正ヲ加ヘタノデアリマス、次ニ關稅定
率法中改正法律案ニ付キマシテ、大體ノ說明ヲ致シマス、政府ハ昨年第五十
一議會ニ協賛ヲ經マシテ、多年ノ懸案デアリマシタル關稅定率ノ一般改正ヲ
行ヒマシタガ、當時砂糖類ノ關稅率ハ、第二次稅制整理ノ問題タル砂糖消費
稅ト併セテ之ヲ考究スルノ適當ナルコトヲ認メマシテ、之ガ稅率ニ手ヲ觸レ
ナカッタノデアリマス、然ルニ御承知ノ通リ第五十一議會ニ於キマシテハ、
右法律案ノ協賛ニ當リマシテ、貴衆兩院トモニ砂糖類以外ノ數多ノ物品ニ對
シテ、附帶希望又ハ希望決議ヲ附シ、殊ニ衆議院ニ於キマシテハ、數十種ノ
物品ノ關稅率ハ、之ヲ關稅常設委員會ニ付議シ、愼重審議ノ上、之ヲ次期議
會ニ提案シ、適當ニ改正セラレタキ旨ノ希望ヲ表明セラレタノデアリマス、
政府ハ右等ノ經緯ニ鑑ミマシテ、關稅調査委員會ニ對シ、砂糖類及ビ右等ノ
物品ノ關稅率ニ關シマシテ、諮問ヲ致シマシタノデアリマスガ、同委員會ハ
爾來愼重審議ヲ重ネマシテ、砂糖類及ビ右等ノ物品中ノ或種ノ物ニ對シテ
ハ、旣ニ審議ヲ了シ、砂糖及ビ酸化「コバルト」ニ付テハ、其稅率ヲ改正スル
ノ要アリトシ、且ツ其稅率ノ程度ニ付テモ、ソレ〓〓答申スル所ガアッタノ
デアリマス、依テ政府ハ右ノ答申ニ付テ愼重ニ考慮イタシマシタガ、何レモ
適當ナモノト認メラレマシタガ故ニ、玆ニ本改正法律案ヲ提出スルニ至ッタ
ノデアリマス、今本案ノ內容ニ關シマシテ大要說明イタシマスレバ、第一砂糖
ニ關スル現行稅率ハ、明治四十三年ニ、我ガ糖業保護ノ趣旨ニ於テ制定セラ
レタモノデアリマシテ、實施以來既ニ十數年ノ歲月ヲ經過イタシマシタガ、
此間ニ於テ內外ノ糖業ハ著シキ發達ヲ遂ゲマシタト共ニ、其需要ノ狀態ニモ
多大ノ變化ヲ見タノデアリマス、殊ニ我ガ臺灣ノ糖業ハ、領臺以來著シキ發
達ヲ遂ゲ、其產糖額ハ現今八億斤以上ニ達スルコトトナッタノデアリマス、併
ナガラ我國ニ於ケル砂糖ノ需要ハ、未ダ內地產ノミヲ以テ之ヲ充タスコトガ
出來ナイノデアリマシテ、年々多額ノ外國糖ノ輸入ヲ仰グノ實狀ニアルノデ
アリマス、我國砂糖ノ需給ノ狀況ハ、大體右ノ通デアリマシテ、我ガ重要產業
ノ一タル粗糖業及精糖業ニ對シ、共ニ適當ノ保護ヲ加ヘマスコトハ、極メテ肝
要ナル事柄ト信ズルノデアリマス、併ナガラ他面砂糖ハ、元來國民ノ主要食糧
品ノ一デアリマシテ、現ニ其消費額ハ多額ニ上ボリ、而モ將來益~增進スベキ
モノデアリマスカラ、成ルベク之ヲ安價ニ供給セシムルコトモ亦等シク肝要
ナル事項デアリマス、然ルニ砂糖ニ關スル現行稅率ヲ見マスルノニ、和蘭標
本ヲ標準トシテ、之ヲ五種ニ區別シテ、各〓從量稅ヲ課シ、以テ我ガ糖業ヲ保
護イタシマスルト共ニ、他方輸出奬勵ノ趣旨ノ下ニ、輸出糖ノ原料タル輸入
糖ニ對シテ、色相第十八號未滿ノモノニ對シマシテ、其輸入稅ヲ免除スルコ
トト致シテ居ルノデアリマス、而シテ是等外國ヨリノ輸入糖ハ、製糖技術ノ
進步ニ伴ヒマシテ、漸次其色相ヲ高ムルコトトナリ、近時ニ於キマシテハ、
主トシテ第二十一號乃至第二十二號程度ノモノヲ產出スルニ至ッタノデアリ
やく、然ルニ我ガ現行法ハ、色相ニ依ル種別ヲ數多ニ區分イタシ、之ニ對シ
テ各、異リタル從量稅ヲ定メテ居リマスル關係上、輸入者ハ實質上第二十一
號程度ニ屬スル砂糖ニ對シ、關稅ノ輕減ヲ圖ルノ必要上、其色相ヲ降下セシ
ムル爲ニ、殊更ニ不自然且ツ不經濟ナル著色等ノ方法ヲ施スコトトナリ、延
イテ我ガ糖業ノ進步發達ヲ阻碍シツツアルノ實情ニアルノデアリマス、從テ
此際輸入糖ノ實際ニ適應スルヤウ、其色相區分ヲ改メマスト同時ニ、右等ノ
弊害ヲ伴ヘル種別ノ砂糖ニ對シマシテ、一律ニ稅率ヲ按排スルコトハ、最モ
適切ナル措置ト信ズルノデアリマス、而シテ之ガ稅率ノ程度ニ付キ考慮イタ
シマスルノニ、若シ其稅率ガ低キニ失シマスルトキハ、我ガ糖業ニ對シテ打
擊ヲ與ヘルコトトナルノデアリマスルカラ、内地糖業ニ對スル現在ノ保護ノ
程度ヲ變更セザル方針ヲ採用イタシマスルト同時ニ、他面消費者ノ立場ヲモ
十分ニ考慮イタシマシテ、愼重考究ノ上、本改正案ヲ立案イタシタ次第デア
リマス、從テ第一ニ、色相第十一號未滿ノモノノ稅率ハ之ヲ据置クコトト致
シ、第二ニ色相第十一號以上ノモノ乃至第二十二號未滿ノモノハ之ヲ合併イ
タシマシテ、之ニ對シテ生產費其他各種ノ方面ヨリ考察シタル、適當ナル關
稅率ヲ新ニ按排スルコトトシ、第三ニ、第二十二號以上ノモノニ對シテハ、
其原料糖ノ改正稅率ニ對應スベキ相當ノ稅率ヲ配スルコトト致シタノデアリ
やっく。右ノ結果、我ガ精製糖業者ハ、外國市場ニ於キマシテ、原料糖ノ買付
上ニ多大ノ便益ヲ享受スルコトトナリ、且ツ我ガ粗糖業ハ現在ノ利益ヲ擁護
セラルルコトトナルノデアリマス、是ト共ニ右程度ノ課稅ハ、糖價ニ對シ、
サシタル影響ヲ與ヘザルノミナラズ、他面政府ハ同時ニ砂糖消費稅ヲ輕減ス
ルコトト致シマシタガ故ニ、砂糖ノ關稅及消費稅ノ改正ハ、消費者ニ取リ相
當ノ利益ヲ與ヘルモノト思惟スルノデアリマス、次ニ酸化「コバルト」ハ、工
業原料トシテ必要ナルモノデアリマスガ、內地ニ於テハ生產ノ見込ガアリマ
セヌノデ、大正五年ニ其輸入稅ヲ無稅ト致シタノデアリマス、然ルニ大正十
三年ニ至リマシテ、新ニ含銅硫化鐵鑛ノ收銅廢液中ヨリ之ヲ採取スルコトガ
案出サレマシテ、爾來市場ニ其製品ヲ見ルコトトナタッノデアリマス、而シ
テ其原料礦石タル含銅硫化鐵鑛ノ埋藏量ハ、本邦ニ於テハ頗ル豐富デアリマ
スルカラ、之ニ對シテ相當ノ保護ヲ加ヘマスルニ於テハ、自給ノ域ニ達スル
コトガ出來ヤウト云フ見込ノ下ニ、昨年ノ一般關稅改正ノ際、本品ニ對シ現
行稅率ヲ設ケタ次第デアリマスガ、當業者ハ此關稅改正ニ力ヲ得マシテ、昨
年四月以降其製造設備ノ改善ニ努力イタシ、銳意增產ノ準備ヲ爲シタノデア
リマスガ、不幸ニモ同品ノ市價ハ漸次低落イタスコトトナリマシタルガ爲
ニ、當業者ハ損失ヲ重ネマシテ、遂ニ製造ヲ廢止スルノ已ムナキニ陷リマシ
テ、當分其復活ヲ期待シ得ザルノ狀態ニ立至ッタノデアリマス、從テ今日ニ
於キマシテハ、最早本品ノ關稅ヲ存置スルノ必要ヲ見ザルコトトナッタノデ
アリマスルカラ、玆ニ其關稅ヲ撤廢イタスコトトシタノデアリマス、以上ノ
理由ニ依リマシテ、玆ニ本改正法律案ヲ提出シタ次第デアリマス、諸案ニ對
シ何卒御審議ノ上、速ニ御協賛アラムコトヲ希望イタシマス
國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=80
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081・國務大臣(江木翼君)
○國務大臣(江木翼君) 日程第十、商事非訟事件印紙法中改正法律案提出
ノ理由ヲ簡單ニ御說明申上ゲマス、現行ノ商事非訟事件印紙法ニ依リマスレ
バ、破產財團ノ配當ニ當リマシテ、財產ノ數額ニ應ジテ印紙ノ貼用ヲ命ズル
コトニナッテ居ルノデアリマスルガ、元來破產財團ノ金額ハ、〓シテ頗ル小
額ノモノデアリマシテ、債權者ノ受クベキ配當額モ、從テ亦極メテ小額デア
ルノヲ常トスルノガ現在ノ實狀デゴザリマスル、右ノ如クデアリマスルガ故
ニ、印紙貼用ノ爲ニ財團ノ額ノ減少ヲ來スガ如キハ、破產債權者ニ對シマシ
テ如何ニモ酷ナル結果ヲ生スルノデアリマス、依テ今次ノ稅制整理ニ當リマ
シテ、破產財團ノ配當ニ當リマシテ、印紙ヲ貼用イタシマスルノ規定ヲバ、
全然之ヲ廢止スルノ適當ナルヲ認メマシテ、本案ヲ提出スルニ至ッタノデア
リマス、何卒御審議ノ上、協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス
政府委員豐田勝藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=81
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082・豐田勝藏
○政府委員(豐田勝藏君) 只今日程第十一ノ議題ニナッテ居リマスル、明治
四十年法律第二十一號中改正法律案ニ付キマシテ、簡單ニ御說明申上ゲタイ
ト存ジマス、從來樺太ニ於キマシテハ、印紙稅法、砂糖消費稅、織物消費稅、
砂礦區稅、登錄稅等內地ノ諸稅法ニ依リマスルモノノ外、明治四十年ノ法律第
二十一號ヲ以チマシテ權太ニ於ケル租稅ニ關スル件ノ定メル所ニ依リマシ
テ、所得稅其他五種ノ租稅ニ付テ規定サレマシテ、大體ニ於テ內地ノ稅法ニ
準ジテ、賦課徵收シテ來タノデゴザイマスルガ、昨大正十五年度ニ於キマシ
テ、內地ニ於テ稅制ノ整理ノ行ハレマシタ結果、是等トノ權衡ヲ圖リマスル
ガ爲ニ、樺太ニ於テノ現行租稅中改廢ヲ要スルモノアルコトヲ認メタノデア
リマス、而シテ之ガ改正ニ當リマシテハ、一面ニ於キマシテ樺太ニ於ケル特
殊ノ事情ト云フモノヲ參酌イタシマスルト共ニ、他ノ半面ニ於キマシテ內地
稅制整理ノ趣旨ニ順應スルコトヲ期シマシタコトハ、勿論デゴザイマシテ、
其結果、現行租稅中、營業稅ハ之ヲ營業收益稅ニ改メ、醬油稅ハ之ヲ廢止ス
ルト云フコトヲ妥當ト認メマシテ、本案ヲ出シタ次第デアリマス、此兩稅ニ
付テノ改廢ノ趣旨ト致シマスル所ガ、內地ノ兩稅ノ改廢ト殆ド其趣旨ヲ同ジ
クスルノデアリマスル結果、其內容ニ付テモ大體內地法ト殆ド同樣デゴザリ
やく、唯樺太特殊ノ事情ニ鑑ミマシテ、細カイ點ニ付テ二三異ニシタ所ガゴ
ザリマスルガ、其點ハ委員會ニ於テ詳細ニ御說明申上ゲタイト存ジマス、尙
ホ第二條ヲ削除スルコトニナッテ居リマスルガ、此第二條ハ、租稅ノ徵收竝
ニ滯納處分ニ付キマシテ國稅徵收法ヲ準用スル規定デアッタノデゴザリマス
ルガ、大正十一年以來、既ニ國稅徵收法ハ其儘樺太ニ援用施行シテ居リマスノ
デ、此條文ヲ置イテ置クコトヲ必要ト認メマセヌノデ、本法案改正ノ機會ニ
於キマシテ、之ヲ削除シタイト思フノデアリマス、ドウカ御審議ノ上ニ御協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ依リマシテ、森平兵衞君ニ發言ヲ
許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=83
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084・森平兵衞
○森平兵衞君 簡單デアリマスノデ、本席カラ質問シタイト思ヒマス、所謂
第二次稅制整理案ハ、私ハ政府ノ原案ニ對シテ贊意ヲ表スルモノデアルノデ
アリマス、併シ二三之ニ付テ私ノ存ジ寄リガアリマスルノデ、政府ニ御質問
申上ゲタイ、ソレハ第一ニ關稅定率改正法案ノ中ニ於キマシテ、砂糖ノ關稅
ノ幾分ヲ、消費稅ガ安クナッタ爲ニ關稅ヲ御上ゲニナッタト云フコトノ理由ガ、
私ニハ解スルコトヲ得ナイノデアリマス、政府ニ於テ只今大藏大臣ノ說明ニ
依リマスレバ、消費稅ト關稅ト差引イテ、尙ホ百六十有餘万圓ノ減收デアル
ト云フコトノ御說明ノヤウニ承ッタノデアリマス、故ニ尙ホ一歩進ンデ此關稅
ヲ御上ゲニナラズシテ、消費稅ダケヲ何故御下ゲニナラナカッタカト云フコト
ヲ、私ハ御質問申上ゲタイノデアリマス、關稅ノ大體方針ハ政府モ既ニ御承
知ノ通リ、國民生活ノ必需品ハ大體、及ビ工業原料品ト云フモノハ無稅ニス
ル、又半製品ハ輕減スル、又製造品ハ內地ノ產業ノ奬勵ニ依ッテ之ヲ保護ス
ルト云フコトハ、大體關稅ヲオ掛ケニナル所ノ原則ダラウト思フノデアリマ
ス、ソレデ私共ハ、砂糖ト云フモノハ、只今大藏大臣ノ御說明ニアリマシタ
通リ、國民ノ生活必需品中ノ必需品デアル、一日モ缺クベカラザルモノデア
ルノデアル、故ニ成ルベク之ヲ庶民階級又國民一般ニ對シテ安ク供給ヲスル、
安ク消費出來ルト云フコトガ最モ重大ナル要件デアルト思フノデアリマス、
然ルニ消費稅ノ方ニ於キマシテハ、幾分是ハ御下ゲニナッテ居リマスルガ、
一方ニ於テ多少トモ之ヲ增稅ナサッタト云フコトノ理由ハ、唯其色相ノ爲ニ幾
ラカゴマ化シテ、之ヲ輸入スルト云フコトノ爲ニ御上ゲニナッタモノカ、或
ハ消費稅トノ關係上、產業ノ保護ト云フコトノ意味ヲ以テ之ヲ御改正ニナッ
タモノカ、之ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、第二ニハ、酸化「コバルト」
ノ問題デアリマス、是ハ私ハ昨年關稅委員デアリマセナンダガ、關稅委員長
ノ許可ヲ得マシテ、政府委員ニ質問ヲシタノデアリマス、此酸化「コバルト」
ハ從來無稅デアル、然ルニ一躍百斤百二十八圓ト云フ如キ高率ノ稅ヲ課スル
コトニナッタ、是ハ琺瑯鐵器ノ原料デアル、琺瑯鐵器ト云フモノハ南洋諸國
ニ參リマシテ、獨逸品其他ノ方ト競爭ヲシテ居ルノデアル、然ルニ斯ノ如キ
高率ノ稅ヲ課スルト云フコトハドウ云フコトデアルカト云フコトノ質問ヲシ
タノデアリマスガ、幸ニ海外ニ輸出品ノ原料ダケノ稅率ヲ減ズルコトハ、是
ハ御認メニナッタノデアル、其時ニハ私ノ記憶ニ存シテ居リマスル所デハ、
大阪ニ一ツノ生產會社ガアッテ、其會社ヲ保護スル爲ニ御設ケニナッタヤウニ
私ハ思フノデアリマス、斯ノ如キ昨年無稅カラ一躍百二十八圓ト云フ、斯ウ
云フ高率ニ稅ヲ引上ゲ、今日又直チニ之ヲ廢止スル、之ヲ止メテ、之ヲ無稅
ニスルト云フコトハ、餘リ朝令暮改ノ譏リヲ免レナイカト思フノデアリマス、
又最近新聞紙ノ報道ニ依リマスト、朝鮮慶尙北道及威鏡北道ニ於テ特產スル
所ノ鑛石ヨリ、酸化「コバルト」ト云フモノガ出來ルノデアリマス、之ニ付
テハ既ニ總督府ノ燃料研究所ニ於テ之ヲ研究シテ居ルト云フコトニ、私ハ聞
イテ居ルノデアリマス、果シテ斯ノ如ク朝鮮ノ內地ニ於テ製造スルト云フヤ
ウナ見込ガアレバ、今日之ヲ御改正ニナラズシテ、能ク調査シタ上ニ原案ヲ
御提出ニナッタラドウカト思フノデアリマス、之ニ付テ政府ノ御答辯ヲ煩ハシ
タイ、ソレカラ第三ニハ、此所謂贅澤品ノ關稅デアリマス、奢侈品ノ關稅デ
アリマス、是ハ四十九議會ニ於テ御制定ニナッタモノデアリマス、此御制定
ニナリマシタ目的ハ、所謂其時ニハ國民ノ奢侈ヲ抑制スル、又一ツハ輸入
防遏、或ハ在外正貨ノ減少ヲ防止スルト云フ意味ニ於テ、此奢侈品ノ關稅ヲ
御制定ニナッタモノデアルト思フノデアリマス、今日ハ年移リ星變リマシテ、
旣ニモウ國民ノ奢侈抑制ト云フヤウナコトハ必要ハナイ、殆ド經濟界ハ沈淪
シテ不況ニ陷ッテ困ッテ居ルノデアル、之ニ付テ此奢侈抑制ト云フモノハ、既
ニ目的ハ達セラレテ居ル、輸入防遏ト云フコトモ、此關稅ノ障壁ノ爲ニ殆ド
是ハ目的ヲ達セラレタモノデアル、モウ一ツ殘ッテ居ルノハ何デアルカト云フ
!在外正貨ノ減少、是ハモウ私ガ申上ゲル迄モナク、斯ノ如キコトガアリ
マシテモ既ニ在外正貨ハ減少シテ、政府ハドン〓〓正貨ヲ海外ニ御送リニナッ
テ居ルコトハ事實デアル、故ニ此奢侈品ノ關稅ト云フモノハ、今日ニ於テ私
ハ制定ノ必要ヲ認メナイト思フノデアル、然ルニ此五十一議會若クハ五十二
議會ニ於テ、此奢侈品ノ關稅ノ改正ト云フモノヲ御出シニナラヌノデアルガ、
ドウ云フコトデ政府ハ此奢侈品ノ關稅ヲ、如何ナル必要ガアッテ存置セラレル
ノデアルカ、ソレヲ伺ヒタイト思ヒマス、序デニ申上ゲマスガ、我國ノ奢侈
品ノ關稅ノアリマスコトノ爲ニ、海外諸國ニ對シテ少カラヌ惡感情ヲ懷カシ
テ居ルノデアル、此勅令ヲ諄〓申上ゲルコトハ時間ガ掛リマスルカラ、勅令
ハ省略ヲ致シマスルガ、旣ニ昨年ノ九月外務省主催ノ下ニ、貿易發展ノ爲ニ
南洋貿易會議ト云フモノヲ御開キニナッテ、約一週間バカリ此外務省ノ關係ノ
アル所ノ在外ノ會館ノ人〓、又南洋貿易ニ直接從事シテ居ル者、又ハ企業家
及貿易業者、其他船會社或ハ商業會議所、同業組合聯合會ノ代表者ト云フモ
ノヲ御集メニナリマシテ、一週間南洋貿易ノ發展ニ付テ審議ヲシタノデアリ
やく、是ハ決議ト云フモノハシナイト云フ御趣旨デアッタノデアリマスカラ、
決議ニハナッテ居リマセヌガ、其時ノ議論ノ要點ハ、此奢侈品ノ關稅ハドウ
シテモ之ヲ輕減若クハ撤廢シナケレバナヲヌト云フコトニ結論ガ到著シタノ
ハ、既ニ大藏當局ニ於テモ御承知ノコトデアル、然ルニ關稅調査委員會ニ之
ヲ政府カラ御付議ニナッタモノヲ、或ハ何處マデモ此奢侈品ノ關稅ヲ存置スル
ト云フ御見込デアルカ、御伺ヲ致シタイノデアリマス
〔政府委員黑田英雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=84
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085・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 砂糖消費稅ヲ輕減ヲ致シタノデアリマスルガ、關
稅ノ方ニ於テ引上ヲ致シテ居ル、關稅ヲ引上ゲマシタノハ、消費稅ヲ安クシ
テ居ルカラシテ關稅ヲ引上ゲタノデアルカト云フ風ナ意味ノ御質問デアッタ
ト了承イタシタノデアリマス、砂糖ノ關稅ニ付キマシテ、關稅ヲ引上ゲマシ
タ理由ハ、是ハ消費稅ニ於テ輕減ヲ致シタカラ其埋合セニ引上ゲルト云フ意
味デハナイノデアリマス、砂糖ノ關稅ニ付キマシテハ、先程大藏大臣ガ御說
明ヲ申上ゲマシタ通リ、一種ノ砂糖ニ付キマシテハ、關稅ハ其儘ニ据置イテ
居ルノデアリマスガ、二種三種四種ヲ合セマシテ、卽チ二十一號未滿十一號
以上ノモノニ付キマシテ、三圓十錢、······二種ノモノハ三圓十錢、三種ガ三
圓三十五錢、四種ガ四圓二十五錢ト云フ關稅ヲ、之ヲ一ツニ合セマシテ、三
圓九十五錢ト云フコトニ致シタノデアリマス、此點カラ見マスルト云フト、
恰モ今日原料糖トシテ使ッテ居リマス所ノ第二種ノ砂糖ノ關稅ヲ、三圓十錢ヨ
リ三圓九十錢ニ引上ゲタト云フ結果ニ相成ッテ參ルノデアリマス、ソレ故ニ關
稅ニ於キマシテ、今日輸入サレテ居リマスモノガ、先程大藏大臣モ御說明申
上ゲマシタ通リ、自然ニ、外國デ出來マスル、卽チ主トシテ日本ニ輸入シテ
居リマスル所ノ爪哇島デ出來マス所ノ砂糖ハ、二十一號內外ノ砂糖デアリ
マシテ、卽チ其儘這入ッテ參リマスレバ、四圓二十五錢ノ關稅ノ掛ルモノデ
アリマスカラ、之ヲ殊更ニ色付ヲ致シマシテ其色相ヲ出シ、第二種ト致シマ
シテ三圓十錢ノ關稅デ這入ッテ參ッテ居ルト云フヤウナ事情デアルノデアリマ
ス、其爲ニ是等ノ原料糖ヲ買付ケマス所ノ上ニ於キマシテ、非常ニ不便ガア
ル、卽チ特ニ日本ニ於キマスル所ノ砂糖トシテ折角出來テ居ル所ノ世界的商
品ヲ、殊更ニ色ヲ付ケテ日本向キノモノヲ作ルト云フ風ニスル爲ニ、之ガ買
付上先物ノ契約ヲシナケレバナラヌ、或ハ世界的ノ相場ニ支配セラレズシテ、
却テ色付ヲシナイ所ノ砂糖ヨリモ値段ガ高イト云フ風ナ場合モ生ズルノデゴ
ザイマシテ、是等ノ不利ヲ防グト云フ爲ニ、是等ノ色相ヲ一ツニ致シマシテ、
自然ニ出來タ所ノ砂糖ガ輸入サレマシテ、是ガ精製糖ノ原料ニ供セラレルト
云フコトニ相成リマスレバ、我ガ精製糖業ノ爲ニ非常ニ有利ニ相成ルト考ヘ
タノデアリマス、ソレ故ニ是等ヲ一ツニ致シマシテ稅率ヲ盛リマシタ爲ニ、
三圓十錢デ這入ッタ所ノ砂糖ガ、今後ハ三圓九十五錢ノ關稅ヲ拂ッテ這入ル砂
糖ニ相成ル、卽チ出來マシタ自然ノ砂糖ガ這入ッテ來ルト云フコトニ相成リマ
スルカラ、ソコニ八十五錢ノ關稅ノ增收ニナル、其結果關稅ノ收入ノ上ニ於
キマシテ增加ノ結果ヲ來シテ居ルノデアリマスルケレドモ、是ハ其增收ヲ目
的トシテ致シタノデハナイノデアリマシテ、只今申上ゲマスル通リ、内地ノ
精製糖業ヲ保護スルコトノ上ニ於テ便宜ヲ圖ルト云フ點ト、尙ホ一面ニ於キ
マシテハ、先程大藏大臣モ御說明申上ゲマシタ通リ、今日臺灣ノ粗糖業ト云
フモノハ非常ニ發達ヲシテ參ッテ居ルノデアリマス、旣ニ八億斤內外ノ砂糖ガ
年々生產サレルヤウナ狀況ニ相成ッテ居リマス、日本ノ供給ノ大部分ヲ此處デ
以テ致スト云フ風ナ事情デアリマスカラ、是等ノ臺灣ノ粗糖業ト云フモノハ、
一面ニ於キマシテハ今日ノ關稅ニ依ッテ保護サレ、又一面ニハ諸種ノ奬勵保護
ニ依ッテ此現狀ヲ維持シテ居ルヤウナ次第デアルノデアリマスカラ、先程大藏
大臣モ申上ゲマシタ通リ、今日ノ保護ノ程度ヲ維持スルト云フ目的ヲ以テ、
立案ヲ致シタノデアリマス、ソレニ付キマシテハ今日ノ臺灣ノ砂糖ハ、爪哇
カラ這入ッテ來マスル所ノ砂糖ガ、殊更ニ色付ケサレマシタ所ノ二種ノ砂糖ト
シテ這入ッテ來ルノデアリマスカラ、自然臺灣ノ砂糖ニ於キマシテモ、消費
稅等ノ關係ニ於キマシテ、矢張リ色付ヲ致シマシテ、爪哇ノ砂糖ニ競爭スル
ト云フ狀況ニアルノデアリマス、然ルニ今囘關稅ヲ改正イタシマシテ、二種、
三種、四種ヲ一ツノ稅率ニ致シマスト云フト、爪哇カラ這入ッテ參リマスモ
ノハ、卽チ今日ノ四種ニ當ルベキモノガ這入ルノデアリマスカラ、自然砂糖
ガ競爭上、臺灣ニ於キマシテモ、矢張リ自然ニ出來マシタ所ノ二十一號內外
ノ砂糖ト云フモノデ、之ニ競爭スルコトニ相成ルノデアリマス、其場合ニ於
キマシテ、今日ハ三圓十錢ノ關稅デ第二種糖トシテ競爭ヲ致シテ居ルノデア
リマスルガ、是ガ若シ色付ヲ止メマシテ、御互ニ茲ニ二十一號内外ノ砂糖ト
シテ競爭スル場合ニ於テ、如何ナル程度ノ保護ガ適當デアルカト云フコトニ
相成ルノデアリマス、ソレニ付キマシテハ、現在ノ保護ヲ維持スルト云フ考
カラ、臺灣ニ於キマスル生產費其他ヲ考ヘ、又爪哇カラ參リマス砂糖ノ價格
等ヲ調査イタシマスルト云フト、丁度三圓九十五錢程度ガ適當デアルト考ヘ
タノデアリマスルカラ、三圓九十五錢ト致シタノデアリマス、ソレ故ニ繰返
シテ申スヤウデアリマスルガ、關稅ノ引上ハ決シテ增稅ヲ目的ト致シタノデ
ハナイノデアリマス、然ルニ精製糖ノ原料トナリマス所ノ砂糖ガ、今マデ三
圓十錢デアッタモノガ三圓九十五錢ニナリマスト云フト、自然精製糖ニ於キマ
シテ、原料ガ高イダケソレダケ値段ガ上ル傾ヲ持チ得ルノデアリマス、ソレ
故ニ消費者ノ方面カラ考ヘマシテ、消費稅ニ於キマシテ、少クトモ原料糖ニ
於キマスル關稅ノ引上リマシタダケハ之ヲ輕減ヲシタイト云フ考ヲ以チマシ
テ、消費稅ニ於キマシテ六十五錢ノ輕減ヲ致シタノデアリマス、關稅ハ八十
五錢上ッテ居リマスルガ、併ナガラ八十五錢ハ上リマシテモ、從來ヨリハ······
卽チ色付ヲサレテ居ラヌ所ノ砂糖ヲ原料ト致スノデアリマスカラ、精製ノ上
ニ於テ諸種ノ利益ガアルノデアリマス、ソレ等ノ利益ヲ考ヘマスルト云フト、
丁度六十五錢ノ引上ト考ヘマスレバ適當ト考ヘタノデアリマシテ、ソレ故ニ
消費稅ニ於キマシテ之ヲ六十五錢輕減イタス、卽チ九圓デアッタモノヲ八圓三
十五錢ト云フ稅率ニ致シタノデアリマス、ソレニ依リマシテ、若シ關稅ダケ
上ゲルト致シマシテモ、消費者カラ見マスト云フト、從來ヨリモ負擔ガ增サ
ナイコトニナルノデアリマス、併ナガラ此關稅ハ是ハ障壁デアリマシテ、必
ズ關稅ダケ糖價ガ上ルト云フ譯デナイノデアリマスカラ、是ハ御互ニ內地ニ
於キマスル競爭モアルノデアリマス、ソレ故ニ關稅ダケ若シ糖價ガ引上ラナ
イト云フコトニナリマスレバ、消費稅ノ輕減サレマシタダケハ、是ハ直接ニ
消費者ノ負擔ノ輕減ニ相成ル次第デアリマス、ソレ故ニ先程御述べニナリマ
シタ、砂糖ハ必需品デアル、成ルベク是ノ負擔ヲ輕減スルコトガ宜シイト云
フ御議論ニ付キマシテハ、我〓モ左樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、故ニ現在
ノ財政狀態ガ許シマスル範圍ニ於キマシテハ、成ルベク負擔ノ輕減ヲ圖リタ
イト考ヘマシテ、第一種糖ニ付キマシテハ、樽入黑糖ニ於テ半減イタシ、其
他ニ於テモ五十錢ノ輕減ヲ致シ、其他ノ消費稅ノ按排ニ於キマシテモ、成ル
ベク消費者ノ有利ノヤウニ考ヘマシテ、稅率ノ按排ヲ致シタ次第デアリマス、
次ニ酸化「コバルト」ニ付キマシテハ、昨年一般改正ノ際ニ於キマシテ酸化
「コバルト」ヲ無稅ヨリ有稅ニ致シマシタコトニ付キマシテハ、御承知ノ通デ
アルノデアリマス、當時是等ノ生產ガ內地ニ於テ起リツヽアッタノデアリマ
ス、之ヲ相當ノ保護ヲ致シマシタナラバ、輸出品ノ原料トモナル所ノ酸化「コ
バルト」、之ヲ國內ニ於テ供給スルコトガ出來ルト考ヘタノデアリマシテ、ソ
レ故ニ稅率ヲ盛ッタノデアリマスガ、先程大藏大臣モ御述ベニナリマシタ通
リ、其後ノ狀況ヲ見マスト云フト、酸化「コバルト」ノ値段ハ漸次下落ヲ致
シマシテ、折角起リツヽアリマシタ所ノ酸化「コバルト」ノ製造業モ、之ヲ
廢止スルヤウナ狀態ニ立至ッタノデアリマス、而シテ當分是等ガ再ビ起ルト云
フ所ノ見込モ相立タナイノデアリマス、設備ヲ致シテ居リマシタノデアリマ
スケレドモ、其見込ガ立タナイノデアリマスルカラ、是ハ寧ロ此際ニ於テ、
昨年ノ行懸リ等ニ拘泥ヲシナイデ、寧ロ是ハ關稅ヲ撤廢シ、無稅ニシタ方ガ
產業ノ爲ニ適當デアルト云フ風ニ考ヘマシテ、再ビ無稅ニ致シタノデアリマ
ス、只今朝鮮ニ於テ製造ガアリ掛ケテ居ルヤウニ聞イテ居ルト云フ御話デア
リマシタ、私モサウ云フ陳情ヲ受取ッタコトモアルノデアリマス、併ナガラ
是ハ未ダ果シテ出來ルヤウニナルカドウカト云フコトハ、全ク分ラナイヤウ
ニ考ヘルノデアリマス、今日ノ事情ニ於キマシテハ、先程申述べマシタヤウ
ナ理由ニ依ッテ、寧ロ之ヲ無稅ニスルコトガ、內地ノ產業ノ上ニモ、輸出貿
易ノ上ニモ宜シイト考ヘタ次第デアッタノデアリマス、ソレカラ贅澤······所謂
贅澤關稅ヲ廢止スル意思ナキヤト云フ風ノ意味ノ御尋デアッタノデアリマス、
所謂贅澤關稅ヲ掛ケマシタ趣旨ニ付キマシテハ、只今御述べニナリマシタ通
デアリマシテ、當時ノ國民ノ消費ノ狀態カラ考ヘマシテ、是等ノ品物ニ付テ
ハ、成ルベク是等ノ消費ヲ節約スルト云フコトガ適當デアル、消費ヲ抑制スル
趣旨ヲ以テ是等ノ關稅ヲ掛ケルコトニ相成ッタノデアリマスルガ、今日ニ於テ
ハ既ニ爲替相場モ恢復シテ居ル、斯ウ云フ風ノ消費モ亦非常ニ減ッテ來テ居ル
時デアルカラ、最早其目的ヲ達シタカラ之ヲ止メルコトガ適當デハナイカト
云フ風ノ意味ノ御尋デアッタノデアリマス、政府ニ於キマシテハ、今日ニ於
キマシテモ尙ホ是等ノ關稅ハ存置スルコトガ適當デアルト云フ風ニ考ヘマシ
テ、是等ノ改正案ヲ提案イタサナカッタ次第デアリマスルガ、成程是等ノ關
稅ヲ掛ケマシタ以來、是等ノ品目······品物ノ輸入ハ非常ニ減ッテ參ッテ居ルノ
デアリマス、併ナガラ今日ノ事情カラ申シマスト云フト、尙ホ是等ノ消費ハ
節約ヲスルト云フコトガ必要デアリマス、先程外國ノ感情ヲ惡クシテ居ルト
云フヤウナ御話モアリマシタガ、私共ハ特ニ之ガ爲ニ外國ニ於キマシテ報復
的ニ何等ノ施設ヲナサレテ居ルト云フコトハ考ヘテ居ラヌノデアリマス、外
國ニ於キマシテモ御承知ノ通リ、贅澤關稅ト云フモノヲ掛ケテ居ル所ハ此頃
數ケ國アルノデアリマス、併ナガラ是等モ皆ソレ等ノ國ノ必要カラ出來テ居
ルコトト考ヘルノデアリマシテ、殊更ニ日本ニ於キマシテ贅澤關稅ヲ掛ケテ
居ルガ故ニ、特ニ是等ニ對シテ高稅ヲ掛ケルト云フ風ナ趣旨デハナイヤウニ
考ヘルノデアリマス、從テ今日ノ所ニ於キマシテハ、尙ホ之ヲ廢止スルコト
ガ適當デナイ、何レ適當ナ機會ニ於キマシテ、之ヲ廢止スル場合ニ於キマシ
テ、一般關稅ニ對シマシテ適當ナル改正ヲ加ヘタ上ニ、之ヲ廢止シナケレバ
ナラヌト考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=85
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086・森平兵衞
○森平兵衞君 大體ノ要點ハ伺ッタノデアリマスルガ、砂糖關稅ニ付キマシテ
ハ、只今政府委員ノ御答辯ハ、國民ノ消費者ニ付テハ影響ガナイト云フヤウ
ナ御見込ノ說明ノヤウニ私ハ聽取ッタノデアリマス、國民消費者ガ從來ノ砂糖
ヨリハ高イモノヲ買ハナイデモ宜イト云フコトニ了解シテ宜シイカ、念ノ爲
ニ御尋ヲ致シマス、ソレカラモウ一ツハ、此關稅ニ付テハ所謂色相ニ依ッテ
輸入ヲスルノデアル、ソレニ付テハ臺灣ノ產業ノ保護モ一ツノ理由、モウ一
ツハ買付ヲナス爲ニ是ハ餘程便宜デアル、斯ウ云フノガ一ツノ理由ノヤウニ
取りた。私ハサウ云フヤウナコトノ爲デアレバ、寧ロ色相ト云フヤウナモノ
ニ對シテ標準ヲ御置キナサラズニ、砂糖ノ糖度ニ對シテ關稅ヲ御掛ケニナッ
タラドウデアルカ、サウスレバ人ヲゴマカシタリ、色〓ノ方法ヲ講ジテヤル
ト云フヤウナコトハ、私ハ糖分ニ關稅ヲ掛ケルト云フコトニナレバ、豫防出
來ルコトデアラウト思フ、此二點ヲ再ビ御質問申上ゲマス、ソレカラ所謂贅
澤品ノ關稅ニ付キマシテハ、私ハ政府ト所見ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、
一二例ヲ申上ゲマスレバ、印度ニ對スル所ノ莫大小ノ課稅ノ如キ、或ハ昨年
米國ニ於テ綿製品ニ對シテ關稅定率ヲ增加スルト云フヤウナコトノ運動モ
アッタコトハ、事實デアリマス、斯ノ如ク各國ガ日本ノ贅澤品ノ關稅ニ傚ッテ、
向ウノ關稅ヲ高メテ貿易ヲ欲スルト云フコトハ、私ハ天然資源ノ乏シイ、所
謂原料國デナイ日本トシテハ、一番私ハ不利デナイカト思ヒマス、故ニ私ハ
此奢侈品ノ關稅ニ付テ、只今ハ適當ナ時期デナイト云フナラバ、之ニ付テハ實
ハ質問シタイコトガ幾ラモアリマスルガ、玆デハ質問ハ致シマセヌガ、政府
ニ於テ十分御考慮願ヒタイト思ヒマス、私ハ最初ノ關稅ヲ御作リニナッタ目
的ト云フモノハ既ニ達セラレタト思ヒマス、然ルニ尙且ツ之ヲ固執シテ御收
稅ニナッテ居マスト云フコトハ、先刻ノ酸化「コバルト」ノヤウナ······(聽取
シ難シ)斯ウ思フノデアリマス、此點ニ付キマシテ私ハ御伺ヒ致シマス
〔政府委員黑田英雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=86
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087・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 砂糖ニ付キマシテ、消費者ハ從來ノ負擔ヨリモ殖
エナイト云フ說明デアルカト云フコトノヤウニ承ッタノデアリマス、先程モ申
上ゲマス通リ、一種ハ別ト致シマシテ、精製糖ニ付テノ御尋ト考ヘマスカラ、
ソレニ付テ申上ゲルノデアリマスルガ、精製糖ニ付キマシテ、原料糖ノ引上ゲ
ラレマシタ結果、砂糖ノ値段ガ、卽チ消費者ノ負擔ガ增スト云フコトヲ防グ
目的ヨリ致シマシテ、消費稅ヲ輕減イタシタノデアリマスルガ、是ハ若シ關稅
ダケ價格ガ上ルト致シマシタナラバ、消費者ノ負擔ハ從前ノ通リ其儘デアル
結果ニナルノデアリマス、併ナガラ先程モ申シマシタ通リ、今囘ノ改正ニ依
リマシテハ、消費者ノ負擔ハ增サナイ、寧ロ成ルベク下ゲルト云フ傾向ヲ持
タセマスル爲ニ、關稅ハ引上ゲマシタガ、其關稅ダケ上ゲルト云フコトハ、
是ハ必ズ無イノデアリマシテ、互ニ內地ノ製糖業ノ間ニ競爭モアルコトデア
リマスカラ、關稅ノ障壁ノ下ニ、互ノ競爭上ソレヨリモ以下ニ値段ガ下ッテ
來ル、其以下ニ下リマシタ時ニ於テハ、消費稅ガ輕減サレマシタダケハ、是
ハ確實ニ消費者ノ負擔ヲ輕減スルコトニ相成ルノデアリマスルカラ、今囘ノ
改正ハ、從來ヨリモ上ルコトハナク、寧ロ下ル傾向ヲ持ツ結果ニナルト考ヘ
テ居ルノデアリマス、ソレカラ砂糖ノ課稅ヲ色相ニ致シテ居ル結果、買付上
ニ於テモ色付等ノ不便ヲ生ズルノデナイカ、之ヲ糖分卽チ糖度ニ依ッテ課稅ス
ル主義ニ何故改メナカッタカト云フ意味ノ御尋デアッタト考ヘルノデアリマス
ルガ、是ハ今囘ノ改正ニ付キマシテモ、十分ニ考究ヲ致シタノデアリマス、
仰セノ通リ外國ニ於キマシテハ、糖度ニ依ッテ課稅シテ居ル所ガ多イノデアリ
やく、併ナガラ是等ハ外國ト我國トハ其消費ノ事情ガ非常ニ違フノデアリマ
シテ、我國ニ於キマシテハ、樽入黑糖、樽入白下糖、或ハ含蜜、分蜜糖、精
製糖、色〓ナ種類ノ砂糖ガ今日消費サレテ居ルノデアリマス、外國ニ於キマ
シテハ、或ハ甜菜等ニ依ル所ノ精製糖、或ハ其他ノ精製糖ガ主トシテ使ハレ
テ居リマス爲ニ、糖度ニ依ッテ之ヲ區分スルト云フコトガ容易デアルノデアリ
マスルガ、我國ノ如ク非常ニ色〓ナ種類ノ砂糖ガアリマスル所ニ於キマシテ
ハ、糖度ニ依リマスト云フト、今日惡イ砂糖トシテ値段ノ安イ所ノ砂糖ガ、
寧ロ糖分ガ多クシテ、白イ砂糖、今日値モ高ク又上等ナ砂糖トシテ一般消費
者ニ認メラレテ居リマス所ノ砂糖ノ方ガ、却テ糖度ガ低イト云フヤウナ狀況
ニアルノデアリマシテ、ソレ故ニ今日此糖度ノ課稅ニ改メマスト云フコトハ、
我國ノ今日ノ現狀ニ對シマシテハ、非常ナル變化ヲ來スコトニナルノデアリ
やく、ソレ故ニ······其ノ他此糖度ノ外ニ於キマシテモ、或ハ含蜜、分蜜、精
製糖、色〓區別ノ方法モ考究イタシタノデアリマスガ、是等モ皆實行上ニ於
キマシテ極メテ困難デアルノデアリマス、ソレ故ニ今日ノ事情ニ於キマシテ
ハ、色相ニ依テ課稅スル外ハナイト云フ考ヲ以チマシテ、今囘此改正案ヲ立
テマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=87
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088・阪本さん之助
○阪本釤之助君 甚ダ時間切迫ノ場合ニ相濟ミマセヌガ、チヨット一言御尋ネ
シタイ、砂糖消費稅ノコトニ付キマシテ、チヨット伺ヒタイノデアリマスガ、
由來沖繩及奄美大島諸島ノ如キハ、僻陬ノ地ニアリマスル爲ニ、殆ド是マデ
恩典ガ及ンデ居ラヌ有樣デアリマスルガ、此度砂糖消費稅ヲ改正サレマシタ
一部ヲ拜見シマスルト、此改正ノ結果ハ、沖繩及大島諸島ニ幾ラカ恩典ガ及
ブモノノヤウニ思フノデアリマス、定メテ彼等島民ハ此案ガ兩院ヲ通過イタ
シマシタナラバ、非常ニ喜ブコトデアラウト思ヒマスガ、卽チ此改正ノ結果
トシテ、ドノ位ノ稅額ガ減ルノデアリマセウカ、希クハ沖繩縣ト鹿兒島縣ト
御分チニナリマシテ、金額ヲ拜承イタシタイノデアリマス
〔政府委員黑田英雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=88
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089・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 沖繩大島等ニ於テ生產サレテ居リマスル砂糖ハ、
主トシ樽入黑糖デアルノデアリマス、樽入黑糖ノ稅率ハ、今囘二圓ノ稅率ヲ
一圓ニ致シマシタ、卽チ半減イタシマシタノデゴザイマス、兩方ヲ通ジマシ
テ約七十万圓餘ノ輕減ニ相成ルノデゴザイマス、沖繩縣ノ方ハ其中、現今ガ
百十八万圓バカリアリマスルカラ、其半額ガ輕減サレルコトニ相成リマス、
大島ノ方ハ三十四万六千圓バカリアリマスルカラ、此半分ガ輕減サレルコト
ニ相成ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタ
サマス
〔山本書記官朗讀〕
登錄稅法中改正法律案外五件特別委員
子爵牧野忠篤君勝田主計君男爵中島久萬吉君
藤田四郞君添田壽一君市來乙彥君
室田義文君尾崎元次郞君田村駒治郞君
玉山東発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二、公益質屋法案、政府提出、衆議院送
付第一讀會
公益質屋法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ衆議院ノ修正文、
-ハ同削除ノ符號ナリ
公益質屋法案
公益質屋法
第一條市町村又ハ公益法人ハ本法ニ依リ公益質屋ヲ經營スルコトヲ得
公益法人公益質屋ヲ經營スル場合ニ於テハ業務所ヲ定メ地方長官ノ認可
ヲ受クベシ
第二條本法ニ依ル公益質屋ニ非ザレバ其ノ名稱中ニ公益質屋タルコトヲ
示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第三條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內ニ於テ市町村又ハ公益
法人ニ對シ公益質屋ノ設備ニ要スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助ス
十圓五十圓
第四條貸付金額ハ一口ニ付二十圓、一世帶ニ付百圓ヲ超ユルコトヲ得ズ
地方長官ノ認可ヲ受ケタル
但シ命令ノ定ムル所ニ依リ生業資金トシテ貸付ヲ爲ス場合ニ於テハ此ノ
限ニ在ラズ
第五條貸付利率ハ一月ニ付百分ノ一·二五ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ特別
ノ事情アル地方ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ此ノ限ニ
在ラズ
利子ノ計算ニ關スル期間ニ付テハ月ヲ以テ計算シ民法第百四十條乃至第
百四十三條ノ規定ヲ適用ス但シ一月ニ滿チザル日數ガ十六日以上ナルト
キハ之ヲ一月トシ其ノ十六日未滿ナルトキハ之ヲ半月トシテ計算ス
第六條貸付金ニ對スル利子ニシテ一錢未滿ノ端數ヲ生ジタルトキハ其ノ
端數ハ之ヲ切捨ツ其ノ全額一錢未滿ナルトキハ之ヲ一錢トス
第七條公益質屋ニ於テハ其ノ質契約ニ關シ元金及利子ノ外何等ノ名義ヲ
以テスルモ質置主ヨリ金錢其ノ他ノ利益ヲ受クルコトヲ得ズ
第八條流質期限ハ質契約成立ノ日ヨリ四月未滿ノ期間內ニ於テ之ヲ定ム
ルコトヲ得ズ四月未滿ノ期間內ニ於テ之ヲ定メタルトキハ其ノ期間ヲ四
月トス
第九條流質期限到來前ニ於テ質物ノ交換又ハ質物ノ一部ノ受戾ヲ爲シタ
ルトキト雖モ利子ノ計算及流質期限ニ付テハ質契約ノ變更ナキモノト看
做ス
第十條質置主ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一部辨濟ヲ爲スコトヲ得
第十一條流質物ハ競爭入札ニ依リ之ヲ賣却スベシ
特別ノ事情アル場合ニ於ケル流質物ノ處分ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十二條流質物處分前ニ於テ質置主ガ元金、利子及流質期限經過後質契
約ガ存續シタリトセバ支拂フコトヲ要スベキ利子ニ相當スル金額ヲ支拂
ヒタルトキハ流質物ハ之ヲ返還スベシ
第十三條流質物ノ賣却代金ヨリ元金及利子ニ相當スル金額竝ニ命令ヲ以
テ定ムル手數料ヲ控除シタル殘餘金ハ之ヲ質置主ニ交付スベシ
流質物ヲ一括シテ賣却シタル場合ニ於ケル各流質物ニ對スル代金ノ計算
ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條前條第一項ノ規定ニ依リ交付スベキ殘餘金額ハ之ヲ質置主ニ通
知スベシ
前項ノ通知ヲ發シタル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキハ殘餘金ノ交付ヲ請
求スルコトヲ得ズ
第十五條質屋取締法第二條乃至第八條、第十條乃至第十七條及第二十條
ノ規定ハ公益質屋ニ之ヲ準用ス
質屋取締法第十二條ノ規定ハ第十二條ノ流質物ノ返還及第十三條第一項
ノ殘餘金ノ交付ニ之ヲ準用ス
第十六條本法ニ違反スル質契約ニシテ質置主ニ不利ナルモノハ其ノ不利
ナル部分ニ限リ之ヲ爲サザルモノト看做ス
第十七條公益法人ノ經營スル公益質屋ノ監督上必要アルトキハ地方長官
ハ其ノ業務ニ關スル諸般ノ報告ヲ爲サシメ、書類帳簿ヲ徵シ及業務又ハ
會計ヲ檢閱スルコトヲ得
第十八條第二條ノ規定ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準
用ス
第十九條公益質屋ヲ經營スル公益法人ノ理事又ハ從業員左ノ各號ノ一ニ
該當スルトキハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
ー第十五條ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第二條乃至第四條、第五
條第一項第二項、第六條、第七條第一項、第八條第一項、第十四條又
ハ第十七條ノ規定ニ違反シタルトキ
二第十五條ノ規定ニ依リ準用スル質屋取締法第十五條ノ場合ニ於テ虛
僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ故意ニ物品若ハ帳簿ヲ毀損亡失シタルトキ
第二十條本法中町村ニ關スル規定ハ町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村
ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ市町村又ハ公益法人ノ經營スル公益質屋ハ本法ニ依ル公
益質屋ト看做ス
市町村又ハ公益法人ノ經營スル公益質屋ニ於テ本法施行前ニ爲シタル質契
約ハ本法ニ拘ラズ仍其ノ效力ヲ有ス
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=91
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092・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今上程ニ相成リマシタ公益質屋法案提出ノ理由ヲ
御說明申上ゲマス、庶民金融ニ關スル社會的施設ノ普及發達ヲ圖リ、國民生
活ノ安定向上ヲ期スルコトハ、現下社會各般ノ事情ニ鑑ミマシテ、最モ緊要
ナル事柄デアリマス、而シテ我國ニ於ケル庶民金融ニ關シマシテハ、質屋ハ
古來非常ニ利用サレテ居リマシテ、最モ重要ナルモノノ一ツトナッテ居リマス
ルタ、現時質屋營業ノ實狀ヲ見マスルニ、其金融ノ方法ハ、少額所得者ニ對
スル金融ト云フ社會政策的ノ見地ヨリ見テ、遺憾ト爲スベキ點ガ少ナクナイ
ヤノヤウニ思ハレテ居ルノデゴザイマス、是等ノ實狀ニ鑑ミマシテ、近時市
町村、社會事業團體等ニ於キマシテハ、公益質屋ヲ經營スル者ガアルニ至ッ
タノデアリマス、併ナガラ未ダ其施設ハ比較的ニ少ク、經營ノ方法モ亦區々
ニ分レテ居リマシテ、其社會的施設タルノ目的ヲ達成スル上ニ於テ、尙ホ不
十分ト思ハルヽ點ガアルヤウニ考ヘルノデゴザイマス、依テ公益質屋ニ關ス
ル制度ヲ確立イタシマシテ、公益的機能ヲ十分發揮セシムルト共ニ、其健全
ナル發達ヲ圖ルコトハ、我國庶民金融ノ現狀ト少額所得者ノ生活ノ實狀トニ
照シマシテ、最モ急務デアルト申サナケレバナリマセヌ、併ナガラ質制度ニ
關シマシテハ、國民ノ間ニ多年慣行ノ存スルモノガアリマシテ、之ヲ急激ニ
變更スルコトハ、却テ公益質屋制度ノ圓滿ナル發達ヲ期スル所以デナイト考
ヘルノデアリマスルノデ、公益質屋ニ關スル新制度ヲ樹立シマスニ付キマシ
テハ、其狀態ノ大綱ヲ從來ノ質制度ニ取リマシテ、而モ公益的機能ヲ發揮ス
ルニ於テ遺憾ナカラムコトヲ期シ、此少額所得者ノ生活ノ安定、福祉ノ增進
ヲ圖ルヤウニ致スコトガ、最モ時宜ニ適スル策デアルト信ジタ次第デアリマ
ス、是ガ本案ヲ提出イタシマシタ所以デアリマシテ、尙ホ本法律案ノ立案ニ
付キマシテハ、曩ニ金融制度調査會ニ於キマシテ調査決定セラレマシタ、公
益質庫制度要綱ヲ斟酌シ、更ニ制度ノ運用ニ關シテ必要ナル各般ノ事項ヲ定
メタ次第デアリマスノデゴザイマス、御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレムコトヲ御
願ヒ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=92
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093・添田壽一
○添田壽一君 此場合ニ一言政府ニ御尋ネ致シタイト思フノデアリマスガ、
此質屋ノ問題ハ、細民ニ取リマシテハ重大ナ事柄デアリマス、故ニ極ク簡單
ニ要點ヲ政府ニ伺ヒタイノデアリマス、詰リ此公益質屋ト云フ方ハ少數デア
リマス、或地域ヲ限ッテ御設ケニナルノデアリ、多數ノ全國ニ散在イタシテ
居リマシテ、實際細民ニ取リマシテハ實ニ缺クベカラザル金融機關トナッテ居
リマス所ノ、私立ノ質屋ヲ如何ニセラルヽカト云フ問題デアリマス、是ハ成
程此公益質屋ト云フ制度ニ依リマシテ其範ヲ示シ、ソレヲ改良向上ノ軌範
ト致シマシテ、改善セラルヽト云フ御趣意ノヤウニモ拜察イタシマスケレド
モ、多數ノ此質屋業ナルモノヲ此儘ニ御置キニナルト云フコトハ、私ハ此質
屋ト云フ問題ノ解決ヲ爲ス上ニ於テ、甚ダ遺憾ト思フノデアリマス、詰リ監
督シテ、從來ノ弊ヲ矯メル所ハ十分ニ矯正セラレ、更ニ進ンデハ國家ガ必要
ナル援助ヲ與ヘテ、其改善ヲ促スト云フヤウナ點マデ御進ミニナリマシテ、
此公益質屋ト相俟ッテ、兩々相俟ッテ細民ニ取ッテハ缺クベカラザル金融ノ作
用ヲ全ウセシメラルヽト云フ御考ハアリマセヌカ、願クハサウアリタイノデ
アリマス、所謂私立······私立ト云ヒマスカ、私立ノ一般質屋ニ對シテ、政府
ハ如何ナル御考ヲ持ッテ居ラッシャイマスカト云フコトヲ······社會政策ニ付テ
御〓心ナル政府デアリマスカラ、定メテ十分ナル御案ガアラウト考ヘマス、
玆デ伺ッテ見タイノデアリマス
〔政府委員俵孫一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=93
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094・俵孫一
○政府委員(俵孫一君) 只今ノ添田君ノ御質問ニ御答ヘ致シマス、世間デハ
往々今囘提案イタシマシタ公益質屋法案ノ通過ニ依ッテ、私營質屋ガ或ハ其存
立ヲ脅カサレハセヌカト云ッタガ如キヤウナ疑ヲ持ッテ居ル人ガアリマスノデ
ゴザイマスルガ、只今モ添田君ノ仰セノ通リニ、此公益質屋ハ、其設置區域
ハ、極ク極メテ最下級ノ庶民階級ノ者ガ集團シテ居ル區域ニ自然設置セラル
ルコトニ相成ルノデアリマシテ、一般ノ質屋······私營質屋ノ機關ニ依ッテ金融
ヲ受ケテ居ル所ノ者、其階級ニ向ッテハ餘リ十分ニ普及スル譯ニ參リマセヌコ
トハ、論ヲ俟チマセヌノデアリマス、從ヒマシテ私營質屋ノ存立ヲ脅カスガ
如キ憂ハ全ク無イノデゴザイマスガ、併ナガラ只今仰セノ通リニ、現在ノ私
營質屋ナルモノハ、一般ノ庶民階級ノ金融ニハ極メテ必要ナ機關デアルコト
ハ、仰セノ通リデアリマス、其質屋ノ取締ニ關スル規定ハ、御承知ノ通ニ極
メテ餘程以前ニ制定サレタ所ノモノデアリマシテ、今日ニ於テハ其規定ガ甚
ダ不完全デアリマス、從ヒマシテ之ニ關シマシテハ、衆議院ニ於キマシテモ、
此私營質屋ノ規定ヲ十分ニ改善ヲ致シテ、是等營業ノ十分ナル取締ヲ致シ、
以テ一般ノ庶民金融庶民階級ノ金融機關タル其效用ヲ發揮スルヤウニシ
テ貰ヒタイ、ト云フ希望條件モ附イテ居リマスル次第デアリマス、ソレ故ニ
政府ハ、此私營質屋モ公益質屋ト相俟ッテ十分ニ庶民階級ノ金融機關タラシム
ベク、此私營質屋取締規則ニ付キマシテハ、之ガ現在ノ營業ヲ改善イタシマ
スルガ爲ニ、適當ナル改正ヲ致シタイト云フ積リデアリマス、此點ヲ御答ヘ
申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタ
サセマス
〔山本書記官朗讀〕
公益質屋法案特別委員
伯爵川村鐵太郞君嘉納治五郞君男爵松岡均平君
川村竹治君湯池幸平君宮田光雄君
澤田喜彥君小林嘉平治君風間八左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=95
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096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三、水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會
社陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所
屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案、第十四、鐵道敷設法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便
鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便
鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苦小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲政府ハ該買收ニ必要
ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
鐵道敷設法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年三月八日
衆議院議長粕谷義三
貴族院議長公爵德川家達殿
鐵道敷設法中改正法律案
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
別表第八號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
八ノ二岩手縣花卷ヨリ遠野ヲ經テ釜石ニ至ル鐵道
別表第五十號ノ次ニ左ノ二號ヲ加フ
五十ノ二千葉縣我孫子ヨリ埼玉縣大宮ニ至ル鐵道
五十ノ三埼玉縣與野ヨリ東京府立川ニ至ル鐵道
別表第五十五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五十五ノ二新潟縣白山ヨリ新發田ニ至ル鐵道
別表第七十號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
七十ノ二愛知縣岡崎ヨリ擧母ヲ經テ岐阜縣多治見ニ至ル鐵道
別表第百十四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
百十四ノ二長崎縣喜々津ヨリ矢上ヲ經テ浦上ニ至ル鐵道
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=96
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097・井上匡四郎
○國務大臣(子爵井上匡四郞君) 只今議題トナリマシタ法律案ノ說明ヲ致シ
ママ、水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕
便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道ハ、鐵道ノ系絡上國ニ買收
スルノ必要ガアリマスノデ、右ノ買收ノ爲ノ公債ヲ發行スル法律案ヲ提出イ
タシマシタ次第デアリマス、何レ詳細ハ委員會デ說明ヲ致シマスガ、何卒御
協賛アラムコトヲ希望イタシマス、次ニ鐵道敷設法中改正法律案ノ說明ヲ致
シマス、今日提案イタシマシタ鐡道敷設法中改正法律案ハ、花卷、釜石鐵道
外五線ヲ新ニ敷設法別表ニ追加スルモノデアリマシテ、今此各線ニ付テ簡單
ニ御說明ヲ致シマス、先ヅ第一ノ花卷、釜石間鐵道ハ東北本線花卷驛ヨリ分
岐シ、仙人峠ヲ貫キ、東海岸釜石港ニ達スル延長五十四哩餘ノ橫斷鐵道デア
リマシテ、沿道ニ於ケル鑛業···鑛山業ヲ發達シ、東海岸ト東北本線トノ交
通聯絡上極メテ必要ナル線路デアリマス、第二ノ我孫子、大宮間鐵道、第三
ノ與野、立川間鐵道ハ共ニ常盤、東北、中央ノ各線ヲ聯絡シ、一大環狀ヲ構
成イタシマシテ、東京附近ノ輻輳セル輸送ヲ緩和スル爲ニ極メテ必要ナル經
路デアリマス、第四ノ白山、新發田間鐵道ハ、越後鐵道白山驛ヲ起點トシ、
羽越本線新發田驛ニ達スル延長十九哩餘ノ鐵道デアリマシテ、羽越線ト越
後鐵道トヲ介シテ日本海沿岸鐵道ヲ完成イタシ、信越線ニ於ケル客貨輸送ノ
輻輳ヲ調節スル上ニ於テ緊要ナ線路デアリマス、第五、岡崎、多治見間鐵道
ハ、東海道本線岡崎驛ヨリ中央本線多治見驛ニ至ル、延長三十六哩餘ノ鐵道デ
アリマシテ、岐阜、太田、多治見間線路ト相俟ッテ、東海道本線ノ補助線ト致
シマシテ、輸送緩和ノ爲メ緊要ナル線路デアリマス、最後ニ喜々津、浦上間
鐵道ハ、長崎本線喜々津驛ヨリ浦上驛ニ至ル、延長十三哩餘ノ鐵道デアリマ
シテ、長崎市ト密接ナル利用關係ヲ有スル矢上地方トヲ連絡イタシマシテ、
地方產業ノ發達ヲ促シ、且ツ肥前山口ト諫早間鐵道ノ竣工ト相俟ッテ、門
司、長崎間ヲ通ジマシテ、最急勾配百分ノ一ノ緩勾配線路タラシムル上ニ於
テ、最モ必要ナル線路デアリマス、以上說明イタシマシタ如ク、是等ノ線路
ハ鐵道系絡上重要ナル線路デアリマシテ、何レモ國ノ施設ニ屬スベキモノト
信ジマスノデ、今囘之ヲ豫定線路中ニ追加セムトスル次第デアリマス、何卒
愼重ニ御審議ノ上、本案ニ御贊成アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通告ニ依リマシテ、辻男爵ニ質疑ノ發言ヲ許シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=98
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099・辻太郎
○男爵辻太郞君 極ク簡單デアリマスカラ此席カラ伺ヒマス、只今議題ニ上
ボッテ居リマスル鐵道敷設法ノ改正ハ、鐵道施設法ノ第四條ニ依リマシテ鐵道
會議ニ諮詢セラレタノデアリマシテ、此鐵道會議ノ組織ニ付キマシテ少シク
伺ヒタイ、此鐵道會議ハ常任議員、ソレカラ臨時議員カラシテ成ッテ居リマ
スルガ、其常任議員ト臨時議員トノ數ガ、常任議員ハ四十人ノ中官吏ガ十五
人、是ガ丁度三割八分ニ當ッテ居リマス、ソレカラ臨時議員ハ二十二人ノ中
官吏十一人、是ハ五割、總計シマスルト云フト、議員ノ總數六十一一人ノ中ニ於
テ二十六人、四割二分ト云フモノガ官吏ニナッテ居リマス、甚ダソレハ官僚
式ノ會議デアルト思ヒマスガ、之ニ御諮詢ニナッテ居ラレマスガ、詰リ官僚
ノ意見ヲ御採リニナルヤウナ積リデハナイカト思ヒマスガ、大臣ニ於テハ、
今後官僚ヲ御減シニナル、或ハ官僚以外ノ者ヲ御殖ヤシニナル御考ハゴザイ
マセヌカ、ソレヲ伺ヒマス
〔國務大臣子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=99
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100・井上匡四郎
○國務大臣(子爵井上匡四郞君) 辻男爵ニ御答ヘ致シマス、只今ニ於テハ鐵
道會議ノ官制ヲ改革イタサウト云フ、差當ッテノ考ハ持ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=100
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101・辻太郎
○男爵辻太郞君 官制ノ改革ニ付テハ、私ハ何モ質疑ハ持ッテ居リマセヌ、
官制ニハ、鐵道會議ノ官制ノ第三條ニハ「議長ハ鐵道大臣ヲ以テ之ニ充ツ議
員及臨時議員ハ關係各廳高等官及學識經驗アル者ノ中ヨリ鐵道大臣ノ奏請ニ
依リ內閣ニ於テ之ヲ命ス」、此條項ニハ何等違反シテハ私ハ居ラヌト思フ、併
シ人選ノ工合ニハ斯ノ如ク偏頗ニナッテ居リマスカラ、ソレニ付テ今後何カ御
處置ヲ御取リニナルト云フコトハゴザイマセヌカト云フコトヲ、伺ッテ居リマ
ス
〔國務大臣子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=101
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102・井上匡四郎
○國務大臣(子爵井上匡四郞君) 御答ヘ致シマス、議員ノ任命ニ付キマシテ
將來ニ於テ十分ニ考慮イタサウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=102
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103・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀イタ
サセマス
〔山本書記官朗讀〕
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法
律案外一件特別委員
伯爵酒井忠正君子爵新庄直知君子爵瀧脇宏光君
男爵辻太郞君山之內次君川上親晴君
永田秀次郞君平田吉胤君西本健次郞君
J発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=103
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104・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十五、不良住宅地區改良法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、保科子爵
不良住宅地區改良法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
昭和二年三月七日
右特別委員長
子爵保科正昭
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵保科正昭君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=104
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105・保科正昭
○子爵保科正昭君 簡單ニ委員會ノ經過ヲ御報告イタシマス、委員會ハ三月
四日及七日ノ兩日間開會イタシマシテ、各委員ニ於テ愼重審議ヲ重ネラレタ
次第デアリマス、委員會ニ於ケル審議ノ要點ハ、改良事業施行ノ方針、國庫
ノ補助、低利資金ノ融通、住宅建築ノ樣式等デアリマス、大要申シマスレバ、
改良事業施行ノ方針ニ關シマシテハ、先ヅ六大都市及其隣接町村ニ於テ、最
モ事業ニ急ヲ要スル地區ヨリ、財政ノ緩急ヲ圖リマシテ、大體十箇年ヲ期シ
テ、約一万三千世帶ノ改良工事ヲ行ヒ、更ニ他ノ不良住宅密集地區ニ及ボサ
ントスルモノデアリマス、政府ニ於テモ財政ガ許ス範圍ニ於テ、成ルベク速
ニ本事業ノ促進ヲ圖リ、地區內居住ノ生活ノ向上竝ニ社會ノ福社增進ニ努メ
タイト云フコトデアリマス、次ニ國庫補助ニ關シマシテハ、國庫ハ事業費ニ
對シマシテ大體二分ノ一ヲ補助シ、其他ノ二分ノ一ヲ低利資金ヲ融通シ、結
局事業施行者タル公共團體又ハ公益法人ノ負擔ヲ重カラシメズシテ、事業ヲ
遂行シ得ル計畫トナッテ居リマス、又住宅建築ノ樣式ニ付キマシテハ、鐵筋
「コンクリート」建ヲ採ルカ、木造建築ニ依ルカト云フコトニ關シマシテハ、
種々ナル意見モゴザイマスガ、理想ト致シマシテハ、成ルベク我國住宅ノ樣
式ニ從フヲ適當ト致シマス、併シ地積ノ關係等ニ依リマシテハ、必シモ之ニ
依ルコトガ出來ナイ實狀モアルノミナラズ、又防火、保存、管理等ノ點ヨリ
考ヘマシテモ、鐵筋「コンクリート」建ノモノヲ採用スルノ已ムヲ得ザルコ
トモアルヤウニ思ハレルノデアリマス、結局住宅ノ樣式ハ、事業施行者ノ計
畫ニ依ルコトト致シマシテ、其計畫ヲ審査シ、一面地區ノ實情ヲ酌量シ、成
ルベク地區內住居者ノ生活ニ適スルヤウ、十分ノ指導監督ヲ加ヘルコトニナッ
テ居ルコトデアリマス、而シテ鐵筋「コンクリート」建ノ場合ニハ、低利資
金ノ償還ヲ容易ナラシムル爲メ、相當償還年限ヲ延長スルコトニ付キマシテ
千、政府ニ於テ考慮中デアルト云フコトデゴザイマス、不良住宅ノ密集地區
ノ詳細ナル報告ヲ聽取イタシマシテ、本法ニ依ル改良事業ノ實施ガ、社會ノ
福社增進上、誠ニ急務デアルト云フコトハ、委員會ニ於テ十分ニ認メマシタ
次第デゴザイマス、依テ委員會ハ滿場一致本案ヲ可決イタシマシタ次第デゴ
ザイマス、以上委員會ノ經過ノ大要ヲ御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=105
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106・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=106
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107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=107
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108・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=108
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109・五條爲功
○子爵五條爲功君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=111
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112・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=112
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113・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=113
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114・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=114
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115・五條爲功
○子爵五條爲功君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=118
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119・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
새山东発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十六ヨリ三十二マデノ請願、會議
意見書案
新潟縣中頸城郡谷濱村大字有間川ニ停車場設置ノ件
新潟縣中頸城郡谷濱村長靑木不一郞呈出
右ノ請願ハ新潟縣中頸城郡谷濱村大字有間川ハ村內ノ樞要地點ニシテ近時
海陸物資ノ集散夥多ナルニ拘ラズ北陸線鐵道谷濱驛ハ其ノ位置一隅ニ偏倚
シ地理上宜シキヲ得サル爲住民ノ不利不便尠カラサルハ甚遺憾ナルヲ以テ
速ニ同大字ニ停車場ヲ設置セラレタシトノ趣旨ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成所獨立ニ關スル件
長野縣更級郡中津村平民〓員矢田鶴之助外三百名呈出
右ノ請願ハ東京帝國大學附屬農業〓員養成所ヲ獨立セシメ其ノ整備充實ヲ
圖ルハ優良ナル農業〓員ヲ養成シ以テ將來益增加セムトスル該〓員ノ需要
ニ應セシムルモノナルニ依リ速ニ之ヲ實現シ農業〓育ノ普及ヲ圖ラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
私立中等學校國庫補助ノ件
東京府北豐島郡高田町私立日本女子大學校附屬高等女學長麻生正藏外
百八十四名呈出
右ノ請願ハ私立中等學校ハ官公立中等學校ニ比シ職員ノ待遇及其ノ設備ハ
十分ナラス之カ改善充實ノ爲國庫ヨリ相當ノ補助金ヲ交付セラルルヤウ曩
ニ數請願シテ採擇セラレタルニ拘ラス未何等ノ處置ナキハ甚遺憾ナルニ依
リ速ニ其ノ實現ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
膃肭獸海上獵業ノ解禁ニ關スル件
東京市小石川區茗荷谷町漁業角佐五右衞門外十八名呈出
右ノ請願ハ膃肭獸保護條約ハ膃肭獸海上獵業關係者救濟ノ爲之ヲ廢棄セラ
レタク若シ其ノ繼續ヲ必要トセハ蕃殖國分配金ヨリ相當ノ交付金ヲ下賜セ
ラルルヤウ前期議會貴族院ニ請願シ採擇セラレタルニ拘ラス該條約期間旣
ニ滿了シタル今日未何等ノ處置ナキハ甚遺憾ナルヲ以テ速ニ其ノ實現ヲ圖
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
地先專用漁業權免許ニ關スル件
三重縣志摩郡濱島町迫子鹽屋檜山路漁業組合理事上田米吉外一名呈出
右ノ請願ハ三重縣志摩郡濱島町大字迫子、鹽屋及檜山路三區ノ地先水面ニ
於ケル專用漁業權ハ迫子鹽屋檜山路漁業組合ニ對シ免許セラルルカ至當ナ
リシニ拘ラス濱島漁業組合ニ對シ同地域ニ區劃權ヲ免許セラレ爲ニ今ヤ該
區民ノ生業タル眞珠採取業ノ將ニ廢滅ニ歸セムトスルモノアルハ甚遺憾ナ
ルニ依リ速ニ之ヲ同漁業組合ニ免許シ以テ區民救濟ノ途ヲ講セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
書道振興奬勵ニ關スル件
東京府荏原郡大崎町平民僧侶豐道慶中外百十名呈出
右ノ請願ハ書道ハ繪畫ト其ノ起元ヲ一ニシ倶ニ國粹ノ助長、國民品性ノ培
養上重要至大ノ意義ヲ有スルモノナルニ拘ラス繪畫ハ歐米人ノ歡迎アルカ
故ニ奬勵セラレ書道ハ東洋特有ノ藝術ニシテ歐米人ノ理解ニ乏シキノ故ニ
之ヲ輕視シ何等奬勵ノ途ヲ講セラレス斯クノ如キハ國民精神涵養上甚遺憾
ナルニ依リ速ニ繪畫ト等シク書道展覽會ヲ開催シテ斯道ノ振興ヲ圖リ以テ
國民ノ趣味ヲ向上セシメ思想善導ニ資セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
帝國在〓軍人會國庫補助ノ件
東京市下谷區下車坂町平民商新居與作外十三名呈出
右ノ請願ハ帝國在〓軍人會ハ社會的救護事業ニ奉仕スルト共ニ國民思想ノ
善導ニ努力セルノミナラス未〓育補充兵タル靑年ノ指揮訓練ヲ爲ス等國家
ニ貢獻スルトコロ多大ナルニ拘ラス財源寔ニ乏シク爲ニ十分ナル活動ヲ爲
シ得サルハ甚遺憾ナルニ依リ國庫ヨリ相當ノ補助金ヲ交付セラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
天鹽川河口修築ノ件
北海道天鹽郡天鹽町長石村芳太郞呈出
右ノ請願ハ北海道天鹽郡天鹽港ハ著名ノ木材集散地ナルニ拘ラス同港口タ
ル天鹽川河口ハ近時土砂堆積シテ船舶ノ出入至難トナリ爲ニ木材業者ノ蒙
ル打擊尠カラサルハ同道拓殖上甚遺憾ナルニ依リ速ニ該河口ヲ改修セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
天鹽漁港修築ノ件
北海道天鹽郡天鹽町長石村芳太郞呈出
右ノ請願ハ北海道天鹽郡天鹽港ハ著名ノ木材集散地ニシテ且其ノ沖合ハ有
數ノ大漁場ナルニ拘ラス未漁港又ハ船入澗ノ設備ナク爲ニ木材業者竝漁民
ノ不利不便尠カラサルハ斯業發展上甚遺憾ナルニ依リ速ニ同港ニ之ヲ修築
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
上磯鐵道敷設ノ件
靑森縣東津輕郡油川町長西田源藏外九名呈出
右ノ請願ハ豫定線タル靑森、五所川原間鐵道所謂上磯鐵道ハ沿線地方ニ於
ケル豐富ナル海陸ノ資源ヲ開發スルノミナラス國防上竝運輸交通上重要ノ
線路ナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
市町村義務〓育費國庫負擔金增額ノ件
東京市小石川區竹早町帝都〓育會會長伯爵松平賴壽呈出
右ノ請願ハ市町村義務〓育費國庫負擔金ヲ增額シテ小學校〓員俸給費總額
ノ八割ニ達セシムルハ義務〓育振興上至當ノ措置ナルヲ以テ速ニ之ヲ實現
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
國立吃音矯正機關設置ニ關スル件
大阪市東成區林寺町財團法人日本吃音學院長松澤忠太外二十三名呈出
右ノ請願ハ我國民中吃音ナルカ爲天賦ノ能力ヲ發揮シ得サル者頗多數ナル
ニ拘ラス之ニ對シ國家ノ救濟施設ナキハ吃音者自身ノ不幸ナルノミナラス
延テ國家ノ大損失ナルニ依リ國費ヲ以テ吃音矯正機關ヲ設置セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
德佐、大井間鐵道敷設ノ件
山口縣阿武郡德佐村長片山正外八名呈出
右ノ請願ハ山口線鐵道德佐驛ヨリ未成線タル萩線鐵道中大井ニ達スル鐵道
ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル林產、農產等ノ利源ヲ開發スルノミナラス他
日岩國、日原間鐵道ノ完成ト相俟テ交通連絡上ニ資スル重要ノ線路ナルヲ
以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
名張、松坂間鐵道速成ノ件
三重縣一志郡久居町長前川捨次郞外二名呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道名松線鐵道ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル資源ヲ開發
スルノミナラス伊勢神宮ニ參拜スル旅客ニ利便ヲ與フル等產業振興上竝運
輸交通上重要ノ線路ナルヲ以テ速ニ工事ニ著手セシメラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
岩國、日原間鐵道敷設ノ件
島根縣鹿足郡日原村長神崎直三郞外三十一名呈出
右ノ請願ハ豫定線鐵道岩國、日原間鐵道ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル林產
其ノ他幾多ノ資源ヲ開發スルノミナラス日本海沿岸及瀨戶內海沿岸ノ兩地
方ヲ連絡シテ運輸交通上至大ノ貢獻ヲ爲ス重要ノ線路ナルニ依リ速ニ之ヲ
敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
札幌、增毛間鐵道敷設ノ件
北海道厚田郡厚田村平民醫師竹本和太郞外二百十七名呈出
右ノ請願ハ豫定線札幌、增毛間鐵道ハ沿線地方ニ於ケル鑛產、畜產及海產
等幾多ノ豐富ナル資源ヲ開發スルノミナラス宗谷本線鐵道經由ニ比シ札
幌宗谷間ノ㨗徑タル天鹽沿岸線路ノ一部ヲナシ運輸交通上亦裨益スルト
コロ多キヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣若槻禮次郞殿
意見書案
厚田漁港修築ノ件
北海道厚田郡厚田村平民漁業佐藤常三郞外三百五十一名呈出
右ノ請願ハ北海道厚田郡厚田村附近ノ海洋ハ夙ニ鰊漁場トシテ著名ナルモ
其ノ地理的關係上漁期暴風ノ襲來多ク漁業上損害甚大ナルノミナラス將來
有望ナル沖合漁業ノ發展ヲ企圖セムトスルモ何等船舶碇繫ノ設備ナク空シ
ク天與ノ資源ヲ逸スルハ本道拓殖上甚遺憾ナルニ依リ速ニ國費ヲ以テ同村
ニ漁港ヲ修築セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和二年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣若槻禮次郞殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願ハ請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=121
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122・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
桌桌や発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日高橋琢也君、都合ニ依リ豫算委員辭任ノ申出
ガゴザイマシタ、之ヲ許可スルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=123
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124・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、就キマシテハ第九部ニ於
テ補闕選擧ヲ行ハレムコトヲ望ミマス
北京市한発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=124
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125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日請願委員副委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表第八囘報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=125
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126・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及ビマス、本日
ハ是ニテ散會イタシマス
午後五時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005203242X01919270309&spkNum=126
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