1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
登録税法中改正法律案（政府提出）
印紙税法中改正法律案（政府提出）
砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
關税定率法中改正法律案（政府提出）
商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出）
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會議
昭和二年一月三十一日（月曜日）午後一時十九分開議
出席委員左の如し
委員長 武藤金吉君
理事 奥村千藏君
理事 高橋熊次郎君
理事 清水長郷君
小西和君 木檜三四郎君
淺川浩君 神部爲藏君
斯波貞吉君 永田善三郎君
佐藤球三郎君 西脇晉君
堀切善兵衞君 松本眞平君
木暮武太夫君 吉良元夫君
祷苗代君 丹下茂十郎君
増田義一君
同月二十九日委員松浦五兵衞君、佐々木長治君三十一日志村清右衞門君、吉木陽君辭任に付其の補闕として二十九日志村清右衞門君、長田桃藏君、三十一日岩切重雄君、星島二郎君を議長に於て選定せり
同月二十九日商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出）の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 片岡直温君
出席政府委員左の如し
大藏省主税局長 黒田英雄君
司法政務次官 本田恒之君
農林政務次官 小山松壽君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
營繕管財局理事 太田嘉太郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
登録税法中改正法律案（政府提出）
印紙税法中改正法律案（政府提出）
砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
關税定率法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=0
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001・武藤金吉
○武藤委員長 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、前囘ニ引續イテ質問ヲ許シマス、丹
下君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=1
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002・丹下茂十郎
○丹下委員 一寸前以テ司法省ノ政府
委員ノ方ニ御尋致シテ見タイノデア
リマス、凡ソ此自作農程度トシテ認メ
ラレナケレバナラヌ、卽チ地價二百圓
位ノモノヲ所有スル所ノ者ノ土地ノ賣
買ニ關スル登記ノ總計、卽チ件數及ビ
登錄數ト云フヤウナ統計ガ出來テ居リ
マシタナラバ、豫メ御示ガ願ヒタイト
思ヒマス、サウ云フモノハアリマセヌ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=2
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003・本田恒之
○本田政府委員 今手許ニハ持ッテ居
リマセヌ、御必要ガアッタナラバ調ベレ
バ出來ルダラウト思ヒマスカラ、取調
ベテ差上ゲマセウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=3
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004・丹下茂十郎
○丹下委員 此度ノ登錄稅法中改正法
律案外三件、所謂第二次稅制整理案ノ
問題ハ、前議會ノ稅制整理案ヲ受ケマ
シテ、卽チ社會政策的ノ見地カラシテ、
極テ本議會ニ於ケル重要ナ條件デアル
ト信ズルノデアリマス、併シ此社會政
策ト云フコトニ付キマシテ、政府ハ大
ニ考慮サレテ居ルガ如ク承ルノデアリ
マスガ、吾〓ノ見ル所ニ依リマシテハ、
未ダ吾〓ノ希望スルガ如ク考慮サレテ
居ナイヤウナ點ヲ認メルノデアリマ
ス私ハ主トシテ此農村ノ立場ノ上ニ
於キマシテ、數箇ノ疑問ヲ質シタイト
思フノデアリマス、農村ノ現狀ニ鑑ミ
マシテ施設スベキ事柄ハ、洵ニ屈指ニ
遑ナイノデアリマスガ、現在ノ農村ノ
殆ド癌トモ稱セラレテ居ル所ノ小作問
題ノ解決、是ハ最モ現時ノ農村問題ノ
上ニ於テ、極テ急務デアルト考ヘテ居
ルノデアリマス、此小作問題ノ解決ハ、
先以テ自作農ノ保護奬勵、小作法ノ制
定、此二點ヲ以テ殊ニ焦眉ノ急務ト吾
吾ハ考ヘテ居ルノデアリマス、小作法
ノ制定ニ關シマシテハ、今期議會ニ提
出ザレルヤウナ見込デ、小作制度調査
會ノ審議ハ既ニ終了シタト云フヤウニ
承ッテ居ルノデアリマスガ、未ダ提案ノ
運ビニ至ラナイ、之ニ就キマシテハ巷
間種々ノ說ヲ爲ス者ガアリマスガ、此
小作法ノ問題ニ付キマシテハ、更ニ他
ノ機會ニ於テ論議シタイト思ヒマス
ガ、此自作農ノ創定維持、此事ニ付キマ
シテハ、其負擔ノ輕減ヲ圖リ、又所謂自
作地ノ購入資金ノ融通等ガ必要デアル
コトハ言フマデモナイノデアリマシ
テ、吾々ハ前議會ニ於キマシテ、自作農
地租全免ト義務〓育費國庫負擔金增額
ノ二ツノ問題ヲ以テ二大政策トシテ、
幸ニ政府與黨等ノ御賛成ヲ得マシテ、
義務〓育費國庫負擔金增額ト共ニ、地
價、二百圓以下ノ自作農ニ對シテ地租
全部ヲ免除ト云フコトヲ遂行スルコト
ガ出來マシタコトエ付キマシテ、過日
ノ本會議ニ於キマシテ、吉良君ハ一向
地方ニ於テソレ程喜ンデ居ナイト云フ
ヤウナ御說モアッタノデアリマスガ、是
ハ大ナル間違ダト思フノデアリマス、
隨テ今自作農ハ至ル所ニ此恩典ニ浴シ
マシテ、農村ハ安定シ、一面ニハ土地購
入資金ノ融通ト相俟ッテ耕地ノ買入レ、
其他農村ニ對スル所謂執著心ヲ段々持
チマシテ、非常ニ歡迎サレテ居ルコト
ハ事實デアリマス、此義務〓育費國庫
負擔金ノ增額ト共ニ、現在農村ニ於キ
マシテハ、非常ニ謳歌サレテ居ル現象
デアルコトヲ私共信ジテ居ルノデアリ
マス、ソコデ今囘ノ此第二次稅制整理
ニ於キマシテ、此土地ニ關スル登錄稅
ニ付テ、是等ノ自作農ニ關スル事柄ニ
一向考慮ヲ拂ハレテ居ラヌコトヲ、私
共ハ遺憾ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
自作農地ノ地租全免ト云フモノト相俟
ツテ、一面ニハ自作農地ニ對スル登錄
稅ノ全免ヲ圖ルコトガ、最モ今日農村
ノ社會政策トシテハ必要デナカラウカ
ト私ハ考ヘルノデアリマス、先以テ此
自作農ノ相續ニ依ル所ノ土地所有權ノ
取得ノ登記デアルトカ或ハ自作農ノ
目的ヲ以テ遺言其他無償名義ニ依ル土
地所有權ノ取得ノ登錄、又自作農ノ土
地所有權ノ保存登記、或ハ自作農ノ目
的ヲ以テスル土地所有權ノ登記、卽チ
買入ノ登記、是等ニ付キマシテ政府ハ
如何ナル所見ヲ持ッテオヰデニナルカ
ト云フコトヲ御尋ネ致シタイノデアリ
マス、デ此法律ヲ見マスト、第十九條ノ
第八號ニ依リマスレバ、公共團體產業
組合等ヲ通ジテ爲ス所ノ自作農ノ創定
維持事業ニ關スル國庫ノ補助金ヲ受ケ
テ行ヒマス土地所有權ノ登記ニ付キマ
シテハ免除サレテ居ルノデアリマス、
此點ヨリ見マシテモ聊カ矛盾デハナカ
ラウカ、卽チ政府ノ自作農創定維持ノ
資金ヲ利用シテ買入レル者ニ對シテハ
其登錄稅ヲ免除スル、然ルニ自已資金
ヲ以テ買入レル者ニ對シテハ免除スル
コトガ出來ナイト云フコトハ、是ハ大
ナル矛盾デアルヤウニ思ハレル、隨テ
一面ニ於キマシテハ、卽チ政府ノ資金
ノ借入ヲ奬勵スルヤウナモノデアル、
因ヨリ政府ノ低利資金ハ非常ニ低利ニ
シテ、大變ニ便宜ヲ與ヘルコトハ結構
デアリマス、併ナガラ是ノミニ限ッテ登
錄稅ヲ免除スル、自已ノ資金デ買フ者
ニハ免除シナイト云フコトハ、此點ニ
付テ大ニ考慮ヲ要スルコトト思フノデ
アリマス、或ハ之ニ就キマシテハ、果シ
テソレガ自作農ノ目的デアルカ否ヤト
云フコトガ分ラナイト云フヤウナ御議
論モアルカモ知レマセヌ是ナドニ付
キマシテハ、或ハ町村長ノ取調ベタ調
書ニ依テ其證明ヲ取ルカ、何等カノ方
法ヲ以テスレバ其事實ハ明瞭ニナルコ
トト思フノデアリマス、此點ニ付キマ
シテ先ヅ大藏大臣ノ御所見ヲ伺ッテ見
タイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=4
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005・黒田英雄
○黑田政府委員 一應私カラ申上ゲ
マス、自作農ノ奬勵ノ爲ニ政府ノ原案
ニ於キマシテハ、御指摘ニナリマシタ
通リ、自作農ノ維持創設事業ニ關シマ
シテ資金ノ供給ヲ受ケマシタ場合ニ於
キマスル土地所有權ノ取得ニ付キマシ
テハ免稅ヲ致シテ居リマス、ソレカラ
尙ホソレ等ノ土地ヲ擔保ニシテ貸付
資金ヲ拵ヘルト云フヤウナ場合ニ免
除致シマシテ、サウ云フ事業ノ遂行上
ニ於キマシテ之ヲ容易ニスルト云フ爲
ニ登錄稅法ニ於テ自作農奬勵ノ趣旨ニ
合致スルヤウニ致シマスコトハ、唯今
御述べノ通リニ必要ナコトト考ヘルノ
デアリマス、併ナガラ左樣ニ自作農ヲ
奬勵スルナラバ、何故ニモウ少シ進ン
デ自作農ノ持ッテ居ル土地ノ相續ノ場
合ニ於ケル相續ノ登記、或ハ移動ノ場
合ニ於ケル登記等ニ付テ免稅ヲシナイ
カト云フヤウナ御趣旨ニ承ッタノデア
リマス、是等ハ相續トカ移動ト云フヤ
ウナ場合ニ於テハ、又他ノ關係ニ於テ、
詰リ移動ノ場合ニ於テハ、一面ニ於
テ相續稅ニ代ハル登錄稅ニ於テ登錄稅
ヲ納メサセルト云フ風ナコトモアルノ
デス、登錄稅ノ變更ノ時ニモ考ヘテ居
ナイ、又土地ノ相續ノ場合ニ於ケルモ
ノハ、是ハ率ニ於テモ輕イ率ニナッテ居
リマス、一般登錄稅法ノ登錄稅ハ多少
手數料ノ趣旨ヲ其中ニ含ンデ居リマ
ス、一面ニ於キマシテハ交通稅ノ精神
ノ意味カラモ課稅シテ居ルノデアリマ
ス、唯〓最初自作農ニナル爲ニ土地ヲ
所有スル、ソレニハ政府ガ低利資金ヲ
供給シテマデモ此自作農ヲ奬勵シャウ
ト云フ事業ニ對シテハ、成ベク登錄稅
ヲ免除シテ其便宜ヲ圖ルガ適當デアル
ト云フノデ、之ニ限リマシテハ免除シ
テ居ルノデアリマス、是ハ卽チ自作農
ノ創設維持ト云フ一ツノ目的ニ應ジマ
シテ免除致シタヤウナ趣意デアリマ
ス、一般ニ之ヲ以テ總テ免稅スルト云
フコトハ、他ノ關係ニ於キマシテ-
獨リ自作農ノミナラズ、他ノ色〓ノ關
係カラ見テ之ヲ免除スルト云フコトニ
ナリマスルト、其影響スル所ガ非常ニ
廣クナルト考ヘルノデアリマス、然ラ
バ自己資金デ土地ヲ取得シテ自作ヲシ
ヤウト云フ者ニ對スル免稅ヲ何故シナ
イカト云フコト、一應御尤ト思ヒマス、
併ナガラ是ハ當局ニ於キマシテモ相當
ニ〓究ハ致シタノデアリマスガ、自己
資金ハ只今御意見ノ中ニモアリマシタ
通リ、ソレ等ノ土地ヲ果シテ自作ヲシ
テ行クカドウカ、又長ク將來自作ヲシ
テ行クモノデアルカ、他ニ之ヲ賣ッテシ
マフノデハナイカト云フヤウナコト
ガ、取締上非常ニ困難デアリマス、自作
農ノ維持創設ノ利用ニ關シテハ相當ノ
監督モシテ、十分ニ其目的ニ副フヤウ
ニシテ監督ヲシテ參ルノデアリマス、
ソレニ副ハナケレバ之ヲ取上ゲルト云
フ途モアルノデアリマス、十分ニ其目
的ニ副フト云フコトヲ豫期スルコトガ
出來ナイノデアリマスカラ、自己資金
ノ場合ニ於テハソレガ非常ニ困難デア
リマス、其結果トシテ濫ニ斯ウ云フ名
ノ下ニ免稅ヲスルコトニ致シマスト、
一般ノ登錄稅ヲ納メテ土地所有權ヲ取
得スル時分ニ、著シク負擔ノ均衡ヲ失
スルコトニナリマスカラ是ハドウシ
テモ免稅スルコトガ出來ナイト云フ結
論ニナル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=5
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006・丹下茂十郎
○丹下委員 只今黑田政府委員ノ御說
明ガゴザイマシタガ、自作農奬勵ノ趣
旨ニ依テ第十九條ノ八號ニ該當スルモ
ノハ免除スルト云フ御說明デアリマシ
タ、自作農奬勵ノ趣旨ハ自作農ヲ增加
スルト云フコトガ目的デアル、唯〓現
在ノ儘ニ放任シテハ中〓其目的ヲ達ス
ルコトガ捗々シク行カナイカラ、政府
ハ之ニ對シテ資金供給ノ途ヲ開イテ奬
勵シテ居ルノデアル、政府ノ施設ニ依
ルモノデアルガ故ニ、自作農奬勵ノ趣
旨ニ合致シテ居ル、自己資金デ土地ヲ
買入レル者、或ハ他カラ資金ノ供給ヲ
受ケテ買入レタ者ニ對シテハ自作農奬
勵ノ趣旨ニ合ハヌト云フ、サウ云フ道
理ハナカラウト思フノデアリマス唯
取締上政府ノ低利資金ヲ融通シタモノ
ニ對シテハ、ソレ〓〓ノ手續ヲ經テ居
ルカラ取締リ易イ、併シ自己資金其他
ノモノデ買入レタ場合ニハ取締ガ容易
デナイト云フヤウナ御說デアリマシタ
ガ、是ハ方法サヘ立テレバ如何樣トモ
取締ル途ハ付クト思フノデアリマス、
一定ノ年數ニ於テ若シ自作農ヲ廢シタ
場合ニハ追徵ヲスルナリ、或ハ賣却シ
タ場合ニ於テハドウスル、又事實自作
ニ供シテ居ルカドウカト云フヤウナ場
合ニ於テハ、其農家ノ現實ヲ町村長ノ
調査其他ノ方法デ取調べレバ明瞭ニナ
ルト思フ、ソレヲ信ゼラレナイト云フ
コトハ決シテ言ヘナイト思フ、殊ニ相
續稅ノ關係デ幾ラカ考慮シテ居ルト云
フヤウナ御話モアリマシタガ、漸ク小
作者ガ自作農ニナッタ、一反ノ土地ヲ買
入レタト云フヤウナ者ハ、相續稅法ノ
中ニ當箝マルモノデナイ、又手數料ノ
意味モアルト云フコトデアリマスガ、
成程、一般ニ唯〓國ノ收入ノ目的デナ
クシテ-手數料ノ意味ノアルコト
ハ、ソレハ承ルマデモナイ事デアリマ
ス、此位ノ手數料ハ-一面ニ於テハ
自作奬勵事業ト相俟ッテ此手數料ヲ免
除スルト云フ位ナコトハ、洵ニ〓々タ
ルモノデアルト思フ、國ノ收入ノ上カ
ラ考ヘマシテモ大シタ問題デハナイト
思ヒマス、ソレガ小作人ニ對シテハ非常
ナル恩典ニナル、ソコニ所謂農村ノ安
定スル基礎ヲ築クモノデアリマスカ
ラ、此點ニ付キマシテハ尙一應考慮ヲ願
ヒタイノデアリマス、相續其他ノモノ
ニ付キマシテモ同樣デアリマスガ、就
中自己資金ニ於テ或ハ他ノ資金ニ於テ
買入レル土地ハ、政府ノ低利資金ヲ融
通シテ購入セシメルモノト同樣ナ扱ヲ
シナケレバ、卽チ自作農ハドウシテモ
政府ノ低利資金ヲ借入レナケレバ出來
ナイト云フ風ニナリマス、而モ政府ガ
十分ニ彼等ノ要求スルダケノ資金ヲ融
通サレルナラバ、ソレモ結構デアリマ
スガ、今日ノ狀態ニ於キマシテハ、到底
サウ云フ譯ニハ參ッテ居リマセヌカラ、
他ノ方法ニ依テ產業組合或ハ其他ノ機
關ニ於ケル借入ト云フモノト、個人ノ
資金等ニ於テ借入レルモノトアリマス、
又地主ニ對シテ年賦償還ノ手續等ニ依
テ買入レルモノモアリマス、是等ハ矢
張一樣ニ扱ハレルコトガ最モ必要デア
ルト思フノデアリマス、此點ニ付キマ
シテ十分御考慮ヲ願ッテ置キタイノデ
アリマス、引續キマシテ住宅ノ問題ニ
對シテ御尋ヲ致シマス··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=6
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007・武藤金吉
○武藤委員長 一寸丹下サン、大藏大
臣ガマダ外ニ行ク所ガ二ツアルサウデ
スカラ、大藏大臣ニ御質問ノ事ガアリ
マスナラバ御先キニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=7
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008・丹下茂十郎
○丹下委員 私ノ今ノ質問ハ大藏大臣
ニ質問シテ居ルノデアリマスガ、今黑
田君カラ御答辯ニナリマシタカラ、引
續イテ黑田君ノ御答辯デ宜シウゴザイ
マス、私ハ差支アリマセヌカラドウゾ
御歸リ下サイ-住宅問題ニ付キマシ
テハ、社會政策ノ見地ニ於テ政府ハ住
宅ノ緩和ヲ圖ル意味ニ於テ大ニ考慮シ
テ居ルト云フ御陳述ガアッタノデアリ
マス、第十九條ノ第十一號ニ於テ「住宅
又ハ住宅用地ニ付產業組合員又ハ住宅
組合員ガ其ノ所屬組合ヨリノ權利ノ取
得ノ登記」ニハ免除サレテ居ル、然ルニ
產業組合又ハ住宅組合ガ、其目的ノ爲
ニ組合ガ一旦權利ヲ取得スル必要ガア
ルノデアリマスガ、其場合ニ於キマシ
テハ免除サレテ居ラナイノデアリマ
ス、是ハドウ云フ意味デアリマスカ、同
樣ニ矢張產業組合ニモ其權利ヲ取得ス
ル場合ニ於キマシテ免除スルノガ當然
ダラウト思ヒマス、既ニ地方稅等ニ於
キマシテハ或ル程度ニ免除サレテ居ル
ヤウニ承知シテ居リマス、殊ニ利用組
合ノ事業ニ於テハ最モ必要ガアルノデ
アリマス、住宅ハ卽チ住宅組合法及產
業組合法ニ於ケル信用組合ノ事業ニ於
テモ、購買組合ノ事業ニ於テモ、亦利用
組合ノ事業ニ於テモ出來得ルノデアリ
マシテ、一番簡便ナノハ利用組合事業
ニ於テ之ヲ經營シテ、卽チ住宅ヲ利用
セシメルト云フ仕事ガ最モ簡便ナヤウ
デアリマス、然ルニ住宅組合ニハ此住
宅ノ事業ヲ營ム上ニ於テ、權利ヲ取得
スル場合ニ於テ、矢張登錄稅ヲ徵サレ
ルコトニナリマス、一面ニ組合員ガ組
合カラ取得スル場合ニ於テ特典ヲ與ヘ
ルナラ、組合ガ其目的ノ爲ニ取得スル
場合ニ於テモ矢張之ニ對シテハ特典ヲ
與ヘルノガ當然デアラウト思ヒマス、
之ニ對シテハ大藏當局ノ御意見竝農
林省當局ノ御意見ヲ承ッテ見タイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=8
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009・黒田英雄
○黑田政府員 御尋ノ初メノ點、卽チ
自作農ノ問題ニ付キマシテ御希望デア
ツタノデアリマスガ、一應御答ヲ申上
ゲテ見タイト思ヒマス、御述ベニナリ
マシタ通リ、先程私モ御答ヘヲ致シマ
シタガ、自己資金デ自作地ヲ取得スル
ト云フ者モ、是ハ洵ニ奬勵シナケレバ
ナラヌ事デアルト云フコトハ考ヘテ居
ルノデアリマス、併ナガラ之ニ就キマ
シテハ能ク申上ゲテ御了承ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、登錄稅ニ付テハ登記ヲ致
シマス際ニ於テ、其登記ニ付テ色〓ノ
事情ヲ調査致シマシテ登記ヲ致シマス
ト云フコトハ、非常ニ困難ナノデアリ
マイ、是ハ司法省ノ政府委員カラ御答
申上ゲル方ガ適當ト思ヒマスガ、私ノ
事ニモ關係ガアルノデ申上ゲルノデア
リマス、其場合ニ於テ果シテ自作地デ
アルカドウカ、ドウ云フ目的デ使フカ
ト云フコトヲ登記所ニ於テ登記ヲシ
テ、サウシテ其適用ノ稅率ヲ決メルト
云フコトハ、非常ニ當局トシテハ實際
ニ於テ困難ナノデアリマス、而己ナラ
ズ先程申上ゲタ通リ、取締ノ出來ナイ
モノニ付テ或ハ稅率ヲ輕減シ或ハ免除
スルト云フコトニナリマスト、其結果ハ
非常ニ負擔ノ上ニ不公正ヲ來シ、印紙
稅ニ於テモ比例稅ヲ階級定額稅ニ直シ
タ趣旨モ其處ニ一ツハ理由ガアルノデ
アリマシテ、實際ニ於テ法文ノ上ニ如
何ニ整ヘマシテモ、實行ノ上ニ於テ是
ガ左樣ニ參リマセヌモノハ、却テ負擔
ノ不公正ヲ來スト云フコトニナリマス
ノデ、成ベク之ヲ實際ニ合フヤウニシ
テ負擔ノ公平ヲ期サナケレバナラヌ、
印紙稅ニ於テモ同ジヤウナ次第デアリ
マスガ、此場合ニ於キマシテモ先程申
上ゲタ通リ、取締ガ出來キマセヌト云フ
ト、結局ハ負擔ノ公正ヲ失フト云フコ
トニナル、故ニ先程申上ゲタ通リ自作
農ニ利用致シマス、是ハ相當取締ガ出
來マスル、又其土地ガ其目的デ取得サ
レタト云フコトガ甚ダ明瞭デアリマス
カラ、登記ノ場合ニ於テモ取締ノ上ニ
於テモ便宜デアルノデアリマス、ソレ
故ニ之ニ就テハ免除ヲ致シタ次第デア
リマス、ソレカラ住宅ニ付キマシテ、住
宅組合或ハ產業組合ガ取得スル場合ニ
於テ、登錄稅ヲ何故免除シナカツタカ
ト云フ御尋デアリマス、是ハ御尋ノ
通リ住宅組合又ハ產業組合ガ取得スル
場合ニ於テ登錄稅ヲ課ケマシテ、ソレ
ヲ組合員ニ移ス場合ニ於テハ登錄稅ヲ
免除致シテ居リマスガ、是ハ今日ニ於
テハ丁度二重ニナッテ課ケラレルト云
フコトニナッテ居リマスガ、是ハ住宅ノ
供給ト云フコトニ付キマシテモ、成ベ
ク便宜ヲ計ルヤウニスルト云フ趣意ヲ
以チマシテ、組合ノ所有權ヲ移ス場合
ニ於テ免除スルコトニ致シタノデアリ
マス、然ルニ產業組合或ハ住宅組合ガ
取得スル際ニ於テノ免除ヲシナカッタ
ノハ、理由ヲ申上ゲレバ、先ヅ自作農ト
云フヤウナ場合ト住宅ト云フ場合ト
ハ、余程事情ガ違フダラウト考ヘマス
住宅ヲ自分デ取得スルト云フコトハ
自作農ガ自分ノ-卽チソレニ依テ
自分ノ生計ヲ營ンデ行ク目的デアル所
ノ土地、田畑ト云フヤウナモノヲ自分
デ取得スルト云フコトト、多少住宅ト云
フモノヲ持ツト云フコトトハ、其點ニ於
テ幾分カ負擔ノ上カラ見マシテモ違ヒ
ガアルト云フコトモ言ヒ得ルノデアリ
マス、併ナガラソレハ結局取得スル際
ニ於テハ免除ヲ致シテ居ルノデアリマ
スカラ、一面カラ見マスレバ其取得者
ノ負擔ハ輕減ヲサレルノデアリマス
ガ、全部之ヲ免除スルト云フ必要モナ
カラウ、而己ナラズ產業組合若クハ住
宅組合ガ多クハ家屋ヲ建テテ之ヲ組合
員ニ渡スノデアリマスカラ、其建テマ
ス際ニ保存登記ヲスルダケデアリマ
ス、保存登記ノ登錄稅ト云フモノハ、御
承知ノ通リ余リ高率ニハナッテ居ラヌ
ノデアリマス、此程度ノ負擔ト云フコ
トハ、前申上ゲタヤウナ理由カラ適當
ダラウ、又他カラ取得致シマシテ、サウ
シテ土地ナラ土地ヲ買入レマシテ、サ
ウシテ組合ニ渡スト云フコトニナル
ト、場合ニ依ルト住宅組合、產業組合等
ガ住宅土地ヲ他ノ目的デ轉賣スルト云
フコトモ起ルノデアリマス、是等ノ取
締ト云フコトモ困難デアリマス、サウ
云フ場合ニ於テ、若シ之ヲ他ニ賣ルト
云フコトガアルト云フト、是ハ非常ニ
負擔ノ權衡カラ申シマシテモ不權衡ヲ
來スノデアリマス、ソレ故先ヅ是ハ組
合員ガ取得スル際ニ、卽チ移轉ノ登記、
登錄稅ト云フモノヲ免除スルト云フコ
トガ適當デアルト云フヤウニ考ヘタ次
第デアリマス、利用組合ト云フ御話モ
ゴザイマシタガ、若シ利用組合ニ於キ
マシテ家屋ヲ建テマシテ貸スナリスル
場合ハ、是ハ此條文ノ適用ガナイ、負擔
ヲ輕減スル途ガナイデナイカト云フ御
話デアリマシタガ、是等ハ前申又香り
保存登記ト云フダケノ負擔デアリマシ
テ、强イテ之ヲ免除スルト云フ程ノ必
要モナカラウト云フノデ、前申上ゲタ
ヤウニ組合員ガ自分ニ取得スルト云フ
場合ダケヲ免除スルコトニ致シタノデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=9
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010・丹下茂十郎
○丹下委員 只今ノ御說明ヲ聽キマス
ト、ドウモ私ハ要領ヲ得マセヌ、利用組
合ノ場合ニ-先ヅ御答ノ最後ノ分カ
ラ申シマスルト、私用組合ノ場合ニ於
キマシテ單ニ保存登記ダケデアル、大
シタ問題デナイト云フ意味ニ私ハ聽取
リマシタガ、是ハ利用組合ト雖モ土地
ヲ所有シ、ソレニ家屋ヲ建設シテ、之ヲ
組合員ニ利用セシムルコトガ出來ルノ
デアリマス、卽チ其土地ノ權利ノ取得
登記、ソレカラ家屋ノ保存登記、同ジク
土地ニモ關係シテ來ルノデアリマス、
唯〓其負擔ガ僅カデアルカラ、構ハヌ
デハナイカト云フ議論ハ、是ハ間違ッテ
居ヤシナイカト思フ、趣旨ニ於テ當然
必要デアルトスルナラバ、矢張同樣ニ
免除スベキモノデハナカラウカト思
フ、他ニ轉賣云々ト云フコトモアリマ
シタガ、是ハ相當取締ノ途ガアラウト
思フ、殊ニ購買組合ナドデアリマスレ
バ、此組合員外ニ賣却スルト云フコト
ハ出來ナイ、財產處分ノ爲ニハ或ハサ
ウ云フコトガアルカモ知レマセヌ、併
シ其外ノ所ニ於テハ相當ニ取締ル途ガ
アラウト思フ、ソレカラ先ノ自作農ノ
問題デアリマスガ、尙ホ御說明ガアリ
マシタカラ申上ゲマスガ、自已資金ノ
場合ハ取締ガ出來惡イ、政府ノ自作農
維持創定資金ヲ利用スル場合ニハ取締
ガ出來ル、結局自己資金其他ノモノニ
對シテハ取締ガ出來ナイト云フコトニ
承リマシテ間違ガナイデアリマセウ
カ、果シテサウトシマスレバ、政府ノ維
持創定資金ヲ利用スル者ヲ登記スル場
合ニ於テ、是ハ擔保ニスルト云フ意味
ニ於テ明瞭ニ分ルト云フ程度ノモノデ
アラウト私ハ思ヒマス、若シ自己資金
ノ場合ニ於キマシテハ、相當ノ手續ノ
規定ヲ設ケマシテ、其事實ヲ證明スベ
キ書類ヲ添付シテ申請スル手續ヲ執リ
マスレバ、其取締ガ絕對ニ出來ナイト
云フコトハ萬〓アルマイト思フ、此點
ニ付テ尙ホ承ルコトガ出來レバ承ッテ
置キタイト思ヒマス、尙ホ御說明ガナ
ケレバ外ノ事ニ付テ御質問シタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=10
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011・黒田英雄
○黑田政府委員 自己資金ノ場合ニ於
キマシテハ取締ガ出來ナイト云フ點
ハ、極メテ重大ナ理由ニナルト思フノ
デアリマス、單ニソレノミナラズ自己
資金ノ場合ニ於キマシテハ、卽チ他ト
ノ權衡ト云フコトヲ、今申シマシタ通
リ自分デ土地ヲ所得スル力ガアルノデ
アリマス、或ハ他カラ借金ヲシテ買フ
場合モ勿論ナシトハ思ヒマセヌケレド
モ、大體ニ於テ自作農ノ維持創設ノ事
業トシテ致シマスモノハ、是ハ府縣等
ニ於キマシテ、其事情ガ特ニ此低利資
金ヲ供給シテヤッテ、之ヲ助長シナケレ
バ困難デアルト云フ風ナ、サウ云フ程
度ノ資金ヲ比較的必要トスルト云フモ
ノデアラウト思フノデアリマス、サウ
云フ事情ニ對シテ、一面ニ於テハ政府
ハ安イ利ノ資金ヲ提供シテ創設ヲスル
ト云フ場合ニ於テ、之ヲ登錄稅ヲ課ケ
ルノハ、如何ニモソレハ調和ガ取レヌ
ト云フノデ免除シタノデアリマスガ、
サウデハナク自分ノ資金デ自作賃ヲ取
ルト云フコトニナリマスレバ、是ハ單
リ自作農ノ問題デアルノミナラズ、或
ハ產業ノ方面カラ申シテモ、或ハ工業
ニ必要ナル工業地ヲ取得スルト云フコ
トニ付テモ、或ハ免除シナケレバナラ
ヌヤウナ問題モ色〓關聯シテ起ルト思
フ、其仕事自體ガ是ハ良イモノデアル、
奬勵スベキモノデアル、サウ云フ仕事
ニ使フナラバ之ヲ輕減シ、或ハ免除ス
ルト云フコトニナリマスルト範圍ガ廣
クナリマス、自作農ニ付テハ今申シマ
シタヤウニ低利ノ資金ヲ供給シ、國家
ガ色〓世話ヲスルト云フ風ニスレバ、
是ハ特殊ノモノデアッテ、ソレヲ調和ヲ
保ツ爲ニ免除スルト云フ趣旨デ來ルノ
デアリマスカラ、先程申シマシタヤウ
ニ取締ガ出來ナイ、隨テ不權衡ノ結果
ヲ來スト云フコトモ重大ナル問題デア
リマスガ、今申シマシタヤウナコトモ
是モ一ツノ理由ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=11
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012・丹下茂十郎
○丹下委員 更ニ疑問ヲ增シマシタ譯
デアリマス、不公平デアルカラ其調和
ヲ圖ル必要ガアルト云フ御話デアリマ
ス、一體自作農地ヲ買入レタイト思フ
ヤウナ者ハ、悉ク政府ノ維持資金ヲ利
用シナケレバナラヌ立場ニ在ル者バカ
リデアリマス、ソレガ政府ノ其資金ガ
潤澤ニ間ニ合ハナイカラ、已ムヲ得ズ
他ノ方面カラ相當高イ利子デ借入レ、
或ハ地主ニ年賦契約デ買入レル、私ガ
自己資金ト云フコトヲ申シマシタノハ
自分ノ金バカリデナイ、他ノ借入等ヲ
モ云フタノデ、政府ノ低利資金ヲ融通
シテ買フ者以外ハ悉ク金持ガ自分ノ
金デ土地ヲ買フ如ク見テ居ラレルト大
變ナ間違デアリマス、自分ノ資力ガ潤
澤ニアッテ自作地ヲ買フト云フ者ハ極
メテ少ナイ、殆ド無イト言ッテ差支ナ
イ、幸ニ政府ノ低利資金ノ融通ガ出來ル
ナラバ、恐ラク悉ク此融通ニ俟ッテ初メ
テ自作地ヲ買フコトニナルト思フノデ
アリマス、ソレガ出來ナイカラ、外ノ方
デ資金ヲ借受ケテ自作地ヲ買入レル、
其資金ヲ受ケテ居ル者ニハ登錄稅ヲ取
ルガ、政府ノ出ス低利資金ヲ借リタ者
ハ登錄稅ヲ取ラナイ、是ガ不公平デハ
ナイカト思フ、此點ニ對シマシテハ、政
府トシテハモウ少シ御調査ニナラナケ
レバナラナイト思フノデアリマス、ソ
レダケノコトヲ特ニ申上ゲテ置キマ
ス、ソレカラ更ニモウ一ツ御尋致シタ
イノハ產印紙稅法ノ問題デアリマス、
印紙稅法ノ第四條ノ第十號ニ、產業組
合又ハ產業組合聯合會ノ發スル貯金證書
ニハ收入印紙ヲ貼ルコトニナッテ居ル、
ソレカラ第五條ノ第六號ニ於キマシ
テ、貯金ノ通帳ニハ免除サレテ居ル、是
ハ甚ダ矛盾デハナカラウカト思フ、產
業組合ノ事柄ニ付キマシテ、今更私ガ
呶々ヲ費ス必要ハアリマセヌ、既ニ產
業組合ノ諸證書ニ對シテ印紙ノ免除ヲ
シテ貰ヒタイト云フコトハ、產業組合
界多年ノ要望デアリマス、此度貯金通
帳ト云フモノハ免除サレルコトニナッ
タ以上ハ、何ガ故ニ一步進メテ貯金證
書ニ對シテモ同ジヤウニ收入印紙貼付
ノ免除ヲシナイカ、ソレカラ又產業組
合ノ發シマスルト出資證劵、此出資證
劵ニ對シテハ此度免稅サレタノデア
ル、然ルニ產業組合聯合會或ハ重要輸
出品組合聯合會、又ハ輸出組合等ノ是
等ノ出資證券ニ對シテハ課稅スルコト
ニナッテ居ル、是モ矢張同ジ意味同ジ方
針ニ依テ、共ニ免除スルノガ當然デア
ラウト思フノデアリマス、之ニ對シマ
シテ政府ノ御所見ヲ伺ッテ見タイノデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=12
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013・黒田英雄
○黑田政府委員 產業組合ノ發シマス
貯金通帳ニ免除シテ貯金證書ニ免除シ
ナカッタノハ、ドウ云フ譯デアルカト云
フ御尋デアリマスガ、貯金通帳ト云フ
モノハ、申スマデモナク極メテ零細ノ
資金ヲ受入レテ居ルノデアリマシテ、
丁度貯蓄銀行ノ貯金證書ト同ジヤウナ
モノデアリマスカラ、ソレ等ノ貯蓄者
ニ對シテ成ベク負擔ヲ輕減シタイ、有
利ニシタイト云フヤウナ趣旨カラ致シ
マシテ免稅ヲ致シタノデアリマスカ
ラ、貯金證書ノ方ニナリマスルト、丁度
銀行ノ定期預金證書ト云フヤウナモノ
ニ當リマスルノデ、是ハ相當大キナ金
額ニナル、隨分產業組合デモ相當大ナ
ル金ノ預金證書ニナッテ居ルモノモア
ルヤウナ事情ニアルノデアリマシテ、
若シ之ヲ他ノ關係カラ致シマシテモ、
負擔シ輕減スル、殊ニ斯樣ナ免稅ヲ致
シマスニハ、一般ノ關係カラ見マシテ
特ニ或ル目的ノ爲ニ必要デアルト云フ
モノデナケレバ、ドウモ無暗ニ免稅ヲ
スルト云フト負擔ノ權衡ヲ失スルノデ
アリマス、一般ノ他トノ權衡モ考ヘマ
シテ、貯蓄銀行ト同ジヤウナ此零細ナ預
金ヲ受入レルモノニ對シテハ免稅シタ
ノデアリマス、又小貯金ニ對シマシテ
モ大體同ジデアリマス、小貯金ハ產業
組合、住宅組合ノ小貯金ニ免除致シマ
シタガ、產業組合聯合組合ト云フヤウ
ナモノハ、名前ハ組合カラノ出資デア
リマシテ、相當負擔カモ出來テ居ルノ
デアリマス、零細ノ詰リ出資ト云フモ
ノデモナイノデアリマス、是等ハ他ト
ノ權衡上カラ見マシテモ免稅シナイ方
ガ適當デアルト云フ風ニ考ヘマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=13
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014・丹下茂十郎
○丹下委員 大體ノ御說明ヲ承リマシ
タガ、私ハドウモ今ノ御說明デハ了解
致シマセヌ、此證書トカ通帳トカ云フ
コトハ、名稱ニ依テ扱フノカ、實質ニ依
テ取扱フノカ、今ノ御說明ノヤウナコ
トデアリマスレバ、例へバ定期積金證
書ト云フヤウナモノガアッテ、所謂產業
組合ノ零細ナ積金ヲ致シテ居ルモノガ
アル、卽チ或ル一定ノ年度ニ於テ相當
ナル額ニ達スル積金ノ證書等ヲ扱ッテ
居ルコトガアル、併シ之ヲ今御話ノ如
キ定期積金通帳ト云フコトニ變ヘレバ
免稅サレルノデアル、單ニ此名稱ニ依
リマシテサウ云フ分類ヲサレルノデア
ルカ、或ハ實際其金額ガ多イカラ、少イ
カラト云フコトニナリマスト、是ハ中
中ムヅカシイ問題デアラウト思ヒマ
ス、貯金ト云フモノハ勿論零細ナ積金
ニ相違ナイケレドモ、併シ組合員ハ大
體ニ於テハ此貯蓄的預金モ、ソレカラ
金融的ノ預金モ、矢張此貯金ニ入レテ
居ルノデアリマス、隨テ貯金通帳ト云
フコトニ區分ヲサシテ居リマスモノニ
モ、相當ノ大キナ額モアリ、又定期貯金
ト云ッテモ極メテ雰細ナル定期貯金モ
アル、故ニ今ノ御說明カラ考ヘテ見マ
スト云フト、到底其區別ヲスルコトガ
出來ヌ、故ニ寧ロ此事業ノ發達ヲ圖リ、
營利ヲ目的トセザル所ノ法人トシテ取
扱ヒ、總テ免除スルト云フコトガ適當
デハナイカト思フノデアリマス、此點
ニ付キマシテ尙ホ御尋ヲ致シテ置キマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=14
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015・黒田英雄
○黑田政府委員 貯金通帳竝證書ニ付
キマシシテ、唯〓名前ガ通帳ト云ッテ居
リマスレバ總テ免稅ヲスルカト云フ
風ナ御趣旨デアルト思ヒマスガ、是ハ
勿論實質ニ重キヲ置イテ居ルノデアリ
マシテ、貯金通帳ト申シマスレバ、大體
ニ於キマシテ零細ノ資金ヲ受入レ或ハ
引出スト云フ風ナモノデアリマス、度
度受入レテ又度〓引出シ得ル所ノモノ
ヲ貯金通帳ト考ヘテ居リマス、成程貯
金通帳ヲ以テ取引ヲ致ス場合ニ於キマ
シテモ、隨分多額ノモノモアリ得ルカ
ト考ヘルノデアリマスガ、大體ニ於キ
マシテ、是ハ貯蓄銀行ニ致シマシテモ、
產業組合ニ致シマシテモ、極ク零細ノ
金ヲ或ハ每日或ハ每月之ヲ預ケテ行
キ、必要ノ時ニソレカラ引出スト云フ
風ナ性質ノモノデアラウト思フノデア
リマスカラ、大體ハ是ハ零細ノモノト考
ヘマシテ免稅致シタノデアリマス、此
證書ノ方ニナリマスト云フト、兎ニ角
チヤント纒ッタ金ヲ之ヲ一枚ノ證書ニ
記載シマシテ、一定ノ利子ノ契約ニ基
イテ拵ヘルノデアリマス、勿論是ハ非
常ニ多額ノ場合モアリ、或ハ比較的少
額ノ場合モアラウト思ヒマス、兎ニ角
通帳ヲ以テ相當纏ッタモノガ、證書ニ變
ルノガ普通ノ狀態デアリマス、ソレ故
ニ是ハ定期預金ト同ジヤウナ權衡カラ
致シマシテ、之ヲ免稅致サナカッタヤウ
ナ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=15
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016・丹下茂十郎
○丹下委員 此問題ハ恐ラク實際ニ當
リマシテ中〓混雜スル問題デアラウト
思フノデアリマス、貯蓄銀行ノ貯蓄預
金ト組合ノ貯金トハ同ジヤウニ見テオ
ヰデニナルケレドモ、是ハ重大ナル間
違デアリマス、產業組合ノ貯金ハ銀行
ノ普通ノ小口當座ノ預金ト同ジ性質ノ
モノデアル、ソレハ勿論貯蓄ノ趣旨モ
勿論アリマスケレドモ、常ニ出シ入レ
ヲシテ居ルモノデアリマシテ、他ノ貯
蓄銀行ノ貯蓄預金ト趣ヲ異ニシテ居リ
マス、故ニ先程申上ゲタヤウニ、一方月
掛十錢或ハ五錢トカ云フヤウナ細カイ定
期ノ積金ヲシテ居ルヤウナモノモ、今マ
デ定期積金證書トシテ預ッテ居ルト思
フ、是等ハ今ノ御話カラ行ケバ、將來定
期積金通帳ト云フコトニ變ヲテ來レバ、
自然免稅サレルコトニナル、是等ニ對
シマシテ十分御考慮ヲ願ッテ置キタイ、
出來ルナラバ此證書ニハ總テ免稅スル
ト云フコトニ改メラレンコトヲ茲ニ希
望シテ置キマス、更ニモウ一ツ御尋致シ
タイコトハ、關稅定率法ノ改正ノ事デ
アリマス、前議會ニ於キマシテ關稅定
率法ノ改正ガ可ナリ重大ナル問題トシ
テ論議サレタノデアリマス、其中ニモ
相當修正ヲ必要ト認メタモノガアッタ
ノデアリマス、所謂農產物ノ中ノ三目
ヲ初メ其他二十餘目ニ亙リマシテ、多
數ノ意見ガ修正スベキモノト云フコト
ニナッタノデアリマス、然ルニ此度ノ改
正ニ於テ見マスルト云フト、僅ニ砂糖
ト酸化「コバルト」ノ二品種ノ改正デア
リマシテ、他ノ二十餘目ノモノハ遂ニ
其儘ニナッテ居ルノデアリマス、吾〓ノ
前議會ニ主張致シマシタ他ノ二十數箇
目ノ修正ハ、前議會ニ於ケル多數ノ意
見ノ一致シタモノデアリマシタ、併ナ
ガラ衆議院ニ於テ萬一多岐ニ亙ル修正
ヲ見タ場合ニ於テハ、更ニ又貴族院ニ
於テモ相當ニ同樣ノ手段ニ出ラレルカ
モ知レヌ、サウスルト云フト會期ガ切
迫シテ居ルカラ、折角ノ提案ガ遂ニ決
議ヲ見ルニ至ラヌヤウナコトニナルト
遺憾デアルカラ、兎ニ角此關稅常設委
員會ヲ設ケテ、其審議ヲ俟ッテ來ルベキ
議會ニ提案スルト云フ意味デアッタ、所
謂アノ儘-一部ノ小麥、小麥粉、大豆
等ノ三目ヲ除クノ外ハ、政府ハ哀訴嘆
願シテ延期シテ貰ッタモノデアッタ、サ
ウシテ關稅常設委員會ニ付スルコトヲ
條件トシテ切拔ケラレタノデアリマ
スソレデ片岡藏相ハ大體調ノ濟ンダ
モノカラ提出スル、酸化「コバルト」ノ
事デアリマシタカ、生產ガ無クナッタモ
ノデアルカラ、虛心坦懷ニ出シタト云
フ御說デアリマシタガ、果シテ然ラバ
他ノ二十有餘ノ品目ハ如何ニナッテ居ル
ノデアルカ、此關稅常設調査委員會デ
調査ノ結果修正ノ必要ナシト云フコト
ニ決シタノデアルカ、若シサウ云フコ
トデアリマスト云フト、彼ノ時ノ空氣
ハ是ハ諄ク申上ゲルヤウデアリマス
ガ、多數ノ一致シタ意見デアッテ、ソレ
ヲ調査會ニ掛ケテ來年出スト云フコト
ヲ聲明サレテ居ル、而モ此度二品種限ッ
テ提案サレ、後ハ何等ソレニ對スル修
正廢止ノ手段ニ出テ居ナイ、丁度義務
〓育費一千萬圓增サウト云フコトヲ公
約シテ置イテ五百萬圓シカ出サヌト同
ジヤウニ、二十有餘種ヲ改正スルト言
フテ二種類ニ止メタト云フコトハ、共
ニ「ペテン」ニ掛ケタト同樣ナコトト思
フ、此點ニ付テハ、大藏大臣ハ御出デニ
ナリマセヌガ、政府委員ヨリ虛心坦懷
ニ一ツ詳シク說明シテ戴キタイノデア
リマス、殊ニ他ノ品目ニ付キマシテハ
更ニ他ノ方ニ讓ヲテ、私ハ輸出工業品ノ
發達ノ上ニ於テ陶磁器ノ原料デアル金
液、俗ニ言フ水金、此水金ト酸化「コバ
ルト」ノ二種類ニ付テハ、昨年極力削除
ヲ力說シタモノデアリマス、幸ニシテ
酸化「コパルト」ニ付テハ此度削除セラ
ルルコトニナッテ、所謂虚心坦懷ニ削除
サレタノデアリマス、併シ是ハ一年前
ニ旣ニ吾〓ハ主張シテ居ッタ、漸ク常設
委員會ヲ置イテ一箇年間苦心慘憺シテ
調ベラレテ削除シタト云フオ話デアリ
マスガ、吾〓ハ一年前カラ分リ切ッテ居
ル、之ヲ他ノ方面カラ言ヒマスレバ、餘
リニ政府ガ固執シタ爲メ當業者ハ一箇
年非常ニ迷惑ヲ蒙ッタト云フコトニナッ
テ居ルノデアル、更ニモウ一ツノ金液、
卽チ水金ニ付テハ、政府ハドウ云フ見
解ヲ持ッテ居ルカト云フコトヲ承リタ
イ、金液ハ申上ゲルマデモナク、主トシテ
輸出陶磁器ニ加工スル原料トシテ缺ク
ベカラザルモノデアル、我國ニ於キマ
シテハ最近ノ統計ヲ見マセヌガ、約八
十萬圓バカリ消費シテ居リマスケレド
モ內地ノ製產ハ其十分ノ一シカナイ、
而モ其品質ヲ比ベテ見マスレバ、著色
ノ火度ニ於テモ、或ハ粘著力ニ於テモ
色澤ニ於テモ、亦能率ニ於テモ非常ニ
差ガアルノデアリマス、到底比較ニナ
ラナイ、隨テ內地產ノ金液ヲ用ヒマシ
タモノハ、輸出貿易ノ上ニ於テモ非常
不利ヲ來シテ居ルノデアリマス、政府
ハ常ニ貿易ノ發達ヲ圖リ輸出ヲ奬勵ス
ルコトニ力ヲ用ヒテ居ルト言ハレマス
ケレドモ、併ナガラ此金液ノ如キモノ
ハ、政府ハ確ニ輸出貿易ヲ寧ロ阻害シ
テ居ルヤウナ結果ニナリハセヌカト思
フ、是ガ爲ニ當業者ハ非常ナ迷惑ヲ感
ジテ居ルノデアリマス、詰リ此金液ノ
輸入ハ、是ハ輸出品ノ加工原料デアリ
マシテ、成ベク優良ナ品物ヲ安ク當業
者ニ供給シテ、サウシテ輸出品ヲ成ベ
ク低廉ニ出スト云フコトヲ考ヘナケレ
バ、輸出ノ奬勵ニナルマイト·私ハ思フ
ノデアリマス、現在ニ於テハ課稅ノ結
果原料ガ高イカラ勢ヒ輸出品ガ高クナ
ツテ貿易ノ上ニ不利益デアルト云フコ
トハ申スマデモナイ、是ハ國家ノ爲ニ
考ヘナケレバナラヌコトト思フ、此金
液問題ニ付テハ昨年モ色〓述べタコト
デアリマス、私共ハ御承知ノ通リ愛知
縣ニ於ケル瀨戶、及ビ其附近ノ町村數
箇町村ヲ合セテ陶磁器ノ原產地ヲ持ツ
テ居リマス、又名古屋市ハ御承知ノ通
リ輸出陶器ノ非常ニ盛ンナ土地デアリ
マシテ、昨年モ此問題ニハ非常ニ努力
シテ居ルノデアリマス、而シテ名古屋
市ニ於テ只今僅少ナル製產ヲシテ居ル
者ガアル、是ハ何等カ政府ニ運動ヲシ
テ加ヘテ貰ッタト云フヤウナ、巷間ニハ
色ミナ風說ガアリマス、是非トモ金液
モ本年ニ於テハ削除スルコトニシナケ
レバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、之ニ就キマシテ調査ノ結果ナリ現
在ノ我國ニ於ケル金液ノ產額、輸入品
トノ比較問題、其他ドウシテモ之ヲ削
除スルコトノ出來ナイ理由ガアレバ
ソレヲ詳細承ッテ見タイト思フノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=16
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017・黒田英雄
○黑田政府委員 前議會ニ關稅定率法
ガ提案サレタ時ニ於テ、衆議院デ二十數
種ノ品目ニ付キ御希望ノ決議ノアリマ
シタコトハ御述べニナッタ通リデアリ
マス、之ニ就テハ御決議ノヤウニ之ヲ
關稅調査委員會ニ諮問サレテ居ルノデ
アリマス、今日マデ調査委員會ニ於テ
色〓調査〓究ヲ重ネテ參ッテ居ルノデ
アリマス、其中デ酸化「コバルト」ニ付
キマシテハ、只今御述べニナッタ通リ色
色調査〓究ヲシマシタ結果ト致シマシ
テ、是ガ關稅率ヲ撤廢スル方ガ適當デ
アルト云フノデ、玆ニ撤廢ノ提案ヲ致
シテ居ルノデアリマス、其他ハ何處マ
デモソレヲ維持シナケレバナラヌト云
フ考ハ毫モ持チマセヌ、所謂大藏大官
ノ虛心坦懷ニ〓究シテ居ル次第デアリ
マス、勿論調査委員會ハ衆議院ニオヰ
デニナル各派ノ方〓ガ御參加ニナッテ
居ルノデアリマス、色〓公平ナ議論モ
伺ヒツツアル次第デアリマシテ、決シ
テ調査上ニ於キマシテハ、前ノ行掛リ
ト云フヤウナモノヲ固執シテ居ルコト
ハ少シモナイコトヲ十分御了承ヲ願ヒ
タイノデアリマス、然ルニ他ノ品目ニ
付キ一向今囘提案ガナイ、衆議院デ希
望決議シタモノヲ、調査會ニ掛ケテ之
ガ改正案ヲ次期議會ニ出セト云フ趣意
デアッタト云フコトデアリマスガ、私共
ハ左樣ニ承知シテ居ラヌノデアリマシ
テ、是ガ調査委員會ガ十分ニ考究シテ
改正スベキモノガアッタラ、之ヲ他日次
期議會ニ提案スルヤウニト云フ御趣意
デアッタラウト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、併シソレハ何レニ致シマシテモ、兎
ニ角委員會ニ於キマシテ十分考究シ、
出來ルダケ早ク其結果ヲ得マシテ、若
シ直スモノデアルナラバ、一日モ早ク
提案ヲシ直シタイト云フ考ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、然ルニ今日マデ如何
ニナッテ居ルカト云フコトニ付テ、ソレ
以外ニ付テハ總テ變ヘナイト決議シタ
ノカト云フコトデアリマスガ、調査委
員會ニ於テ是等ノ品目ニ付キ、或モノ
ニ付テハ委員會ノ決議ヲ經タモノモア
リマス、是ガ今日ノ狀況ニ於テハ、五十
一議會ヲ通過シテ施行サレテ居ル現行
ノ關稅率ヲ据置クコトハ適當デアル、
併シ尙ホ將來ニ於テ調査考究ヲ重ネル
ガ、現在ニ於テハ此儘ニシテ置クガ宜
カラウト云フコトニ決議ニナリマシタ
モノハ据置キマシタガ、是ハ或ハ關稅
ガ問題ニナリマシタ時ニ御要求ニ依
テ御說明ヲ申上ゲタイト考ヘテ居ッタ
ノデアリマス、ソレ等ノ品目ハ-衆
議院デナカッタカト思ヒマスガ、貴族
院ノ御希望デ小麥ガ据置デアッタト思
ヒマス、ソレカラ魚介類、生絲、印刷抄
紙、鳥獸肉、是等ノモノニ付キマシテハ
据置クト云フ決議ニ委員會デナッテ居
ルノデアリマス、其以外ノモノニ付キ
マシテハ、委員會ガ幹事ニ於テ十分〓
究シテ一應ノ案ヲ作ッテ委員會ニ提案
ヲスルヤウニト云フ御希望デアリマシ
テ、所謂幹事會ニ於テ〓究シテ相當成
案ヲ得テ居ルモノモアリマスガ、未ダ
委員會ノ承認ヲ得テ居ラヌト云フ狀況
デアリマス、其中酸化「コバルト」ニ付
キマシテハ、大藏大臣モ答辯致シマシ
タ通リ、生產ガ出來テ參ッテ、卽チ含銅
硫化鐵礦カラ生產スルト云フコトガ出
來ル、ソレ故ニ之ヲ保護シテ內地ニ於
テ之ガ生產ヲ見タイト云フノデ適當ナ
方法ヲ設ケタノデアリマスガ、ソレモ
御手許ニ差上ゲマシタ表ニモアリマス
通リ價格ガ非常ニ下ッテ參ッテ、到底引
合ハナイト云フノデ、昨年ノ九月以來
之ヲ廢止致シマシテ、當分生產ノ途ガ
再ビ無クナッタノデアリマスカラ、寧ロ
內地デ生產サレヌノヲ稅率ヲ設ケテ置
イテモ、出來ナイモノナラバ寧ロ廢止ス
ルガ適當ダト云フノデ廢シタノデアリ
やく、海外ノ市場ノ狀況カラ致シマシ
テ價格ガ非常ニ下落シタ結果左樣ニナ
ツタ次第デアリマス、酸化「コバルト」
ニ付キマシテ、一年間當業者ガ非常ニ
迷惑ヲシタト云フ御話デアリマスガ、
是ハ實際ニ於テハ私ハ左程迷惑ニナツ
テ居ラナカッタト云フ風ニ考ヘテ居リ
マス、ソレハ價格ニ於テ其以前ヨリ下
落シテ居リマスシ、又輸出品ニ付キマ
シテハ、酸化「コバルト」ノ使用ニ對シ
テ戾稅ヲスルト云フ制度ニ改メタノデ
アリマス、稅ハ戾サレル、サウシテ價格
ガ安クナルト云フノデアリマスカラ、
ソレ程當業者ノ迷惑ニハナラナカッタ
ラウカト考ヘマス、是ハ吾〓ノ觀察デ
アリマス、强テ申上ゲル譯デハアリマ
セヌ、金液ニ付キマシテハ、只今幹事會
ニ於テ幾度カ調査ヲ繰返シテ居ルノデ
アリマス、御話ノヤウニ名古屋ニ於テ
生產ガアル、其生產サレル品物ガ、或ハ
工程ノ程率ノ上カラ見テモ、或ハ色澤
ノ上カラ見テモ、或ハ附著ノ上カラ見
テモ、劣ッテ居ルト云フ風ナ批評ハ屢
耳ニスル所デアリマス、果シテ內地デ
出來ル品物ガ外國カラ來ル製品ニ對シ
テ劣ッテ居ルカ、到底競爭ハ出來ナイモ
ノカドウカト云フ風ナ事ニ付キマシテハ
十分ニ講究ヲシナケレバナラヌト考ヘ
マシテ、愼重ニ調査シテ居ルノデアリ
マス、現ニ本年ニナリマシテモ、是等製
品ニ付テ嚴密ニ試驗ヲシテ居ルノデア
リマス、御述ベニナリマシタヤウナ缺
點ト云フモノハ、以前ハサウ云フコト
モアッタヤウニ吾ミモ聞イテ居リマシ
タ、併シソレハ以前デアリマシテ、昨年
更ニソレ等ノ點ニ鑑ミマシテ改良致シ
タコトガアルト聞イテ居ルノデアリマ
ス、是ハ技術者モ一旦外國ヘ參リマ
シテ色〓事情ヲ調査シテ、サウシテ歸
テ更ニ種々改良ヲ加ヘテ、出來タ所ノ製
品、其製品ニ付テ嚴密ニ調査ヲ致シタ
ノデアリマス、其結果ハ數日前ニ吾〓
ハ報告ヲ聞キマシタガ、ソレニ依テ尙
ホ考究ヲシナケレバナラヌト云フノ
デ、只今相談ヲ致シテ居ル次第デアリ
マスガ、其結果ニ依リマスト、外國カラ
參リマスル所謂「ハーノービア」ノ製品
ニ較ベテ、以前ノ缺點ノアッタ點ハ除カ
レタ、成績ノ上カラ見マシテ、寧ロ或點
ニ於テハ優ッテ居ル點モアルヤウデア
リマス大體「ハーノービア」ノ製品ト毫
モ遜色ガナイト云フ結論ニナッテ居ル
ヤウデアリマス、併シ其試驗ノ製品ガ
何處ノ製品デアルカト云フコトニ付
テ、サウシテ京都ノ陶器試驗場ニ於キ
マシテ實際色〓試驗ヲ致シマシタノデ
アリマス、或ハ伸ビノ點デアルトカ、或
ハ色澤ノ點デアルトカ、或ハ燒付ノ點
デアルトカ、或ハ滲出スカドウカト云
フヤウニ、色〓ナ點ニ付テ試驗ヲ致シ
タノデアリマスガ、其結果ハ只今御述
ベニナリマシタヤウニ、以前ニ幾分カ
サウ云フ缺點モアッタヤウナ點ガ改良
サレマシテ、或點ニ於テハ寧ロ優ルト
モ遜色ガナイト云フ風ナ、區別ガ出來
ナイト云フ風ナ品物ガ得ラレルヤウニ
ナッタヤウニ聞イテ居ル、ソレ故ニ十分
ニ其結果ニ鑑ミマシテ、如何ニ之ヲシ
タラ宜イモノデアルカト云フコトヲ考
究致シマシテ委員會ノ議ニ付シタイト
云フ考ヲ持ッテ調査致シテ居リマス、是
等ノ結果ノ詳細ガ必要デアリマスレ
バ、今日ハ實ハ其報告書ヲ持ッテ居リマ
セヌカラ、次ノ會ニ於テ若シ御必要ガ
アリマスレバ、ドウ云フ點ガ優ッテ居
ル、又ドウ云フ點ニ特色ガアルト云フ
風ナコトヲ、詳細ニ申上ゲテモ宜イト
考ヘマス、大體サウ云フ風ナ事情デア
リマシテ、〓究ヲ盡シテ委員會ニ付シ
テ適當ナ決定ヲ致シタイト考ヘテ居リ
マ×発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=17
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018・丹下茂十郎
○丹下委員 只今縷々御說明デアリマ
シタガ、要スルニ昨年關稅定率法改正
ノ時ノ二十何箇目ノ修正ト云フコト
ハ其時ノ空氣カラ見テ斯ノ如ク修正
サレタモノデアッタノデス、然ルニ政府
ノ便宜ノ爲ニ特ニ調査會ニ掛ケテ來年
度出スト云フコトデアッテ、必ズ全部ヲ
修正スルト云フコトヲ答ヘラレタノデ
ハナイケレドモ、併シソレガ爲ニアノ
空氣ガ緩和ヲサレテ、條件付キデ通過
シタノデアルノデアッテ、ドウシテモ今年
何トカ始末ヲ着ケナケレバナラヌ譯デ
アル、而モ一箇年間委員會ガ出來テ、今
承ルトマダ政府ノ方デモ金液ノ比較ガ
十分ニ著イテ居ナイ、調査未了デアル
隨テマダ委員會ニ掛ケテ居ナイト云フ
風ニ聞イテ居リマス、當業者ハ實際ニ
毎日實際ニ當ッテ試驗シテ居ル、而モ其
品物ノ優劣ガ判明シテ居ルノミナラ
ズ、內地ニ於ケル產額ハ微々タルモノ
デアル、到底其需要ヲ滿タヌコトガ出
來ナイ、隨ッテ輸入品ニ仰グ、其輸入品
ニ課稅サレルト云フコトデアリマスカ
ラ、勢ヒ貿易ニ關係ヲスルコトハ當然
デアリマス、只今承ルガ如ク試驗シタ
程度モ判然シナイ、又今ドウシタラ宜
イカトモ分ラナイト云フヤウナ事ナラ
バ、寧ロ此際是ハ削除シテ、改メテ相當
產額ガ出來テ、內地デ生產ヲ十分ニサ
レル時期ニ於テ課稅スルノガ適當デア
ラウト思フ、是ダケノ事ヲ特ニ申上ゲ
テ打切リマス、尙ホ先程產業組合及住
宅組合ガ其組合員ニ供給スル土地及住
宅ノ登錄稅免除ト、其目的ノ爲ニ是等
ノ組合ガ取得スル場合ニ於ケル登錄稅
ノコトヲ、農林省當局ノ御意見ヲ承ッテ
見タイト云フコトヲ申シマシタガ、幸
ヒ今小山次官モ出ラレマシタヤウデア
リマスカラ、其點ニ付テ農林省ハ一體
ドウ云フ考ヲ持ッテ居ルカ、是デ果シテ
宜イノデアルカ、併セテ印紙稅ノ問題
ニ付キマシテモ、同ジク御見意ヲ承ッテ
見タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=18
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019・黒田英雄
○黑田政府委員 金液ニ付テ未ダ其成
績モ分ラナイト云フヤウナ事情デアル
ナラバ、速ニ之ヲ撤廢シタ方ガ宜イデ
ナイカト云フ最後ニ御言葉ガアリマシ
タノデ、私ノ申上ゲル事ガ未ダ御了解
ヲ得テ居ラヌカト考ヘマスルノデ重
ネテ簡單ニ申上ゲマスガ、金液ニ付テ
ハ、先程申上ゲタ通リ兎ニ角內地デ生
產ガ出來テ、若シ之ヲ撤廢フ致シマス
レバ、內地ノ生產ヲ止メテシマフト云
フコトノ覺悟ヲシナケレバナラヌ、折
角出來テ居ルモノヲ撤廢シテ止メサセ
ル方ガ宜イカ、或ハ此金液ノ生產ヲ兎
ニ角今少シク段々宜イモノガ出來ルナ
ラ續ケテ行ッテ自給自足ヲスルヤウニ
導クコトガ國策ノ上カラ適當カドウカ
ト云フ問題デアリマス、勿論委員會ニ
於キマシテモ詳シク申上ゲタ通リ、金
液ニハ隨分困難デ困ッタ點モアル、輸出
品ニ必要ナルモノヲ外國ニ仰ギマス結
果トシテ、非常ニ困ルヤウナコトモ出
來テ來マスカラ、之ヲ內地デ自給自足
ガ出來ルト云フコトハ極メテ望マシイ
點デアリマス、ソレニ出來テ居ルモノ
ガドウシテモ競爭ガ出來ナイ、惡ルイ
モノナレバ考ヘナケレバナラヌ、併シ
先程申上ゲル通リ輕卒ニ決スルコトガ
出來ナイ、ソレ故ニ幾度カ試驗ヲシテ、
其試驗デ而モ更ニ改良サレテ良イモノ
ガ出來ルト云フ見込ガ付イタノデアリ
マスカラ、其物ガ果シテドウ云フ成績
ヲ得ルカト云フコトヲ十分考究スルト
云フコトハ、是ハ愼重ニ事ヲ決スルニ
必要ナコトト考ヘマシテ、最近ニモ新
ラシイモノニ付テ試驗ヲシテ其結果ハ
得ラレテ居ルノデアリマス、先程申上
ゲタ通リ、若シ必要ガアレバ後日詳シ
ク申上ゲテ宜イノデアリマシテ、兎ニ
角其結果ハ宜イノデアリマス、ソコデ
ソレニ依テ考ヲ定メタイト云フコトヲ
申上ゲタ次第デアリマス、未ダ十分市
場ニ供給ガナイト云フコトデアリマス
ガ、良イ品物ハ昨今市場ニ出初メタ位
ノヤウニ承知シテ居ルノデアリマス、
ソレハ成程今迄ハ其品物ハ餘リ出テ居
ラナカッタカト思ヒマス、併シ改良シテ
良イ物ガ出來テ段々供給サレルト云フ
コトニナレバ、其事實ヲ根據トシテ事
ヲ決シナケレバナラヌカラ、ソレデ實
ハ遲レタヤウナ次第デアリマシテ、私
ガ幹事デアリマスガ、決シテ幹事ニ於
テ怠慢ト云フヤウナ譯デハアリマセ
ヌ、此點ハドウゾ御了承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=19
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020・小山松壽
○小山政府委員 丹下君ノ御質問ハド
ウ云フ趣旨デアリマシタカ、大〓御推
察致シマスカラ其程度デ申上ゲマス、
若シ私ノ斯ウ云フ點ヲ御質問ニナッタ
ノデアラウト推察致シマシタ點ニ相違
ガアリマシタラ、重ネテ御問ヲ願ヒマ
ス、大體此點ダト考ヘマス所カラ申上
ゲマス、登錄稅及印紙稅改正ノ要項ノ事
ニ付テハ、其主管デアリマス大藏大臣
カラ國民負擔ノ均衡竝社會上、經濟
上、成ベク社會政策的ノ効果ヲ擧ゲル
コトニ努メル、併ナガラ稅務行政實行
上ノ便宜モ計ッテ、官民相互ノ手數ヲ省
略スルト云フコトモ含マレテ居ルト云
フヤウニ御說明ニナッタト記憶致シテ
居リマスガ、此趣旨ニ依リマシテ登錄
稅ノ改正ニ付テハ、產業組合ノ意義日
的ガドウ云フ所ニアルカト云フコトヲ
皆樣ニ申上ゲマセヌデモ、旣ニ御了承
ノ通リデアリマシテ、所謂社會政策的
見地ノ上カラ、今囘ノ改正ニ付テハ其
趣旨ヲ達シタイト考ヘルト同時ニ、五
十一議會ニ於テキマシテ議會ノ御協賛
ヲ經マシテ、產業組合法中改正法律案
ソレヲ提議ヲ致シマシタ當時ニ於テ、
產業組合ノ趣旨ヲ達スルヤウニ法律改
正ノ御協賛ヲ得マシテ、隨ッテ此御趣旨
ニ基イテ、地方稅ニ於キマシテハ免除
モセラレルヤウニナリマシタコトハ御
承知ノ通リデアリマス、此故ニ一面ニ
於テ地方稅ヲ免除スル、而シテ國稅ニ
於テ更ニ之ヲ課稅スルト云フコトニナ
リマスレバ、其間ニ矛盾ノ生ズルト云
フコトハ申スマデモアリマセヌ、過去
ニ於テハ登錄稅ハ二重課稅ヲサレテ居
ツタノデアリマスコトハ、丹下君御承
知ノ通リデアリマス、洵ニ不合理千萬
ナ事デアルト思ヒマスカラ、合議ヲ致
シマス大藏[省竝司法省方面トモ篤ト
協議ヲ重ネマシテ、而シテ愼重ニ審議
ヲ致シマシタ結果、第一次第二次ノ二
重課稅ニ付テハ如何ニモ合理的デナイ
ト云フ所カラ、其二重課稅ヲ省クコト
ニ致シマシテ、大體政府案トシテ提出
致シテアリマスヤウナ方針ニ改メマシ
タノデアリマス、住宅組合及其住宅ノ
取得ニ對シマシテハ、出來ルダケ便宜
ヲ圖リ、社會政策ノ趣旨ニ副フヤウニ
ト云フコトデ努メテ居ル次第デアリマ
スガ、過去ノ事カラ見マスレバ、一段ノ
改正ヲ加ヘマシタ事デアリマス、其際
ハ三省合議ノ上其程度ニ於テ、政府案
トシテ提出スルト云フコトニ議ヲ纒メ
マシタヤウナ次第デアリマス、尙ホ印
紙稅ノコトデアリマスガ、此印紙稅ノ
コトハ、只今大藏省ノ政府委員カラ段
段御說明ヲ申上ゲタ通リ。デアリマシ
テ、御了承ニナリマシタコトト思ヒマ
スカ、是ハ登錄稅ノ場合ニモ申上ゲタ
ヤウナ趣旨ニ於テ、農村當局ト致シマ
シテハ、此機會ニ過去ノ色〓不便トシ
不合理ト致シマシタ所ノ趣旨ヲ達スル
爲ニ努力ヲ致シマシテ、今囘ノ改正ヲ
見タ次第デアリマスガ、先刻出資條件
ノ事ニ付テノ御尋ガアッタヤウデアリ
マスガ、是ハ大藏省.政府委員カラモ御
說明致サレマシタ通リ「組合ニ在リテ
ハ五十圓、聯合會ニ在リテハ五百圓ヲ
超ユルコトヲ得ス」ト云フ規定ガアリ
マスノデ、其少額ノモノニ對シテハ先
刻御答辯申上ゲタ通リデアリマスガ、
一方ハ金額ガ大キイノデアリマスカ
ラ、先ヅ此程度デ宜カラウト云フコト
デ、印紙稅モ只今申上ゲマスヤウニ、從
來ヨリハ余程改善サレタ、卽チ社會政
策ノ意味ニ於テ改善サレタモノト認メ
テ居ルノデアリマス、私ノ御答辯申上
ゲマシタノハ、御質問ノ趣旨ニ副フカ
ドウカ知レマセヌガ、推察致シマシタ
點ヲ申シマスレバ、右ニテ御質問ノ趣
旨ニ副ヒハシナイカト思ヒマス、尙ホ
重ネテ御質問ガアリマスレバ御答申上
ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=20
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021・丹下茂十郎
○丹下委員 今ノ御答辯ハ大體中ラズ
ト雖モ遠カラザル所デアリマスカラ、
御尋シタイコトハ、保留シテ次ノ方ニ
讓リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=21
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022・高橋熊次郎
○高橋委員 幸ヒ農林次官ハ出席デア
リマスカラ、御足止メヲセヌヤウニ少
シ懸離レテ居リマスヤウデスガ、大藏ト
農林ノ兩方ニ付テ御尋シタイト思ヒマ
ス、只今丹下君ノ御質問中ニモアッタヤ
ウニ、自作農創定維持ニ付テデアリマ
スガ、表面高調力說セラレテ居ル割合
ニ其精神ニ於テ熱心ノ度ガ缺ケテ居ル
ト云フコトヲ、事實ニ於テ認メルノヲ
遺憾トスルノデアリマス、近頃ノ施設
ノ中デモ國有財產ヲ整理シテ之ニ依
テ額ノ收入ヲ御上ゲニナラウト云フ、
卽チ今マデ捨テ置イタモノカラ金ヲ掘
出スト云フコトハ、國家ノ爲ニ洵ニ結
構ナ事デアル、併ナガラ金ヲ掘出サウ
ト云フコトニノミ努メテ、其結果產業
上ドウ云フ關係ニナッテ居ルカ、自作農
創定ノ一方ニ目論見デ、一方ニ於テ自
作農ヲ苦メルヤウナ事實ノアルコトハ
是ハ例ヘバ雜種地ノ整理ニ於キマシ
テ、從來殊ニ甚シイモノトシテ見テ居
ルノハ、河川ノ敷地ニナッテ居ル部分デ
アリマス、例ヘバ川成、湖水成ト云フヤ
ウナ所デアリマスガ、斯ウ云フ土此ガ
幾十年間河川ノ敷地ニナッテ居ル、併ナ
ガラ山間僻地殊ニ耕地ノ少ナイ所ノ農
家デアリマスガ、斯ウ云フ所ノ川成地
ナドヲ美田トシタイト云フ希望カラ手
ヲ着ケルノデアリマス、所ガ山間僻地
デアリマスカラ、能ク手續等ニ付テモ
辨ヘテ居リマセヌ、自分ノ祖先ノ田地
ガ天災地變ノ爲ニ斯ノ如クナッタノデ
アルカラ、之ヲ舊ノヤウニ致シタイト
云フ考デ、頻ニ勞ヲ厭ハズシテ田畑ニ
開墾シタト云フ事實ガアリマス、殊ニ
是ハ東北地方ニ多イ、然ルニ今囘是等
ノ國有財產ノ處分法ニ基イテ、川成雜
種地ヲ相當ノ價格デ拂下ゲルコトニナ
ツタ、相當ノ價格トハ何ゾヤト云フト
類地ノ時價ニ依テ之ヲ買上ゲヤウト
云フコトデアル、地方民ノ力ニ依テ立
派ナ堤防ガ出來、隨テ水害ノ憂モ少ナ
ク、サウシテ其田地ガ立派ナモノトナ
ツタ、ソレヲ他ノ上田ト比較シテ、上田
ノ價格ヲ以テ拂下ゲルト云フヤウナ
コトヲ、事實ニ於テ致シテ居ル地方ガ
アリマス、殊ニ此例ハ山形縣下ニ於テ
非常ニ多イノデアリマス、山形縣ニハ
最上川ノ一本ノ大キナ河川ガアリマス
ケレドモ、支流ハ洵ニ傾斜ノ度ガ甚シ
ク、洪水ノ度モ多イノデアルガ、例ヲ擧
ゲルト、一反步四百五十圓位ノ價格デ
斯ウ云フ田地ヲ拂下ゲルト云フコトハ
聞イテモ、身ノ毛ガヨダツヤウニ思フ
ノデアリマス、斯ウ云フコトハ自作農
創定ヲヤルト云フ、殊ニ自作農創定ニ
關シテ田地ノ價格ヲ、同縣下ナドデハ
三百圓以上ニ出デヌト云フコトヲ目標
トシテオヤリニナルト云フコトヲ聞イ
テ居リマス、然ルニ斯ウ云フ高イ評價
ヲ御付ケニナルト云フノハドウ云フコ
トデアルカ、斯ウ云フ實例ガアリマス、
再三再四交渉ノ結果、三百圓前後ニナッ
タヤウニ近頃聞イテ居リマスケレド
モ、最初今申シタヤウナ標準デ拂下ヲ
シヤウト云フコトヲ當局ニ於テハ企テ
ラレタ、言フマデモナク山問僻地ニ於
テ、殊ニ川成地ナドヲ開墾シテ田地ヲ
起サウナドト云フ者ハ、最モ貧弱ナ階
級ノ者デ、斯ウ云フ河川ノ危險ヲ冐シテ
マデヤラウト云フ者ハ、耕地ヲ他ニ求
メラレヌカラデアルト思フ、ソレニ對
シテ斯樣ナ過重ナル負担ヲ負ハシムル
ト云フコトハ、自作農創定ノ意思ニ合
致シナイト云フコトハ分リ切ッタコト
デアル、寧ロ自作農ヲ法律ヲ盾トシテ苛
酷ナル取扱ヲスルト云フコトニナルト
思フ、實際ニ於テ私ノ附近ノ部落ノ如
キ、僅ニ數十戶ノ所デ一萬圓內外ノ負
担ヲスルト云フコトデ、靑息吐息デ居
ル所ガアル、年賦償還ニシテ貰ヒタイ
ト云フト、サウ云フ方法ハ無イト云フコ
トデ之ヲ跳付ケテ、オ前ガ拂下ヲ受ケナ
ケレバ競買ヲスルト云ウテ押付ケラレ
テ居ル、是ハ一例デアリマスケレドモ、
斯ウ云フ例ガ山形縣ナドニ非常ニ多
イ、恐ラク秋田縣、福島縣アタリニモ多
イダラウト思ヒマス、關西方面ハ農家ノ
智識ノ程度ガ進ンデ居ルカラ、斯ウ云フ
種類ノ雜種地ハ無イト云フコトヲ聞イ
テ居リマス、然ルニ東北ニハ斯ウ云フ例
ガ多イノデアリマス、私ハ農林當局ガ
熱心ニ自作農維持創定ヲ爲サルコトニ
御努力ヲナサッテ居ル時ニ、斯フ云フ事
ガ我國ニ於テ行ハレテ居ルノデアル、
殊ニソレガ汽車ノ沿線ノ所ニモアリ、
ソレカラ半里カ五六町シカ隔ッテ居ラ
ナイ所ニ斯ウ云フ事實ガアルト云フコ
トガオ分リニナッテ居ナイダラウト思
フ、斯フ斯ウ云フ事實ガアルトスレバ、
法令ハ如何ニアッテモ、斯ウ云フ事實ハ
昭代ノ不詳事デアルカラ、如何ナル方
法ヲ執ッテモ之ヲ防止シナケレバナラ
ヌ、斯ウ云フ御考ヘガアルカ無イカト
云フコトヲ農林當局ニ伺ッテ、更ニ大藏
當局ハ之ニ對シテドウ云フ御考ガアル
カト云フコトヲ承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=22
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023・小山松壽
○小山政府委員 自作農創定維持ニ付
キマシテハ、私ガ申スマデモナイコトデ
アリマスガ、農村ニ於ケル社會問題ノ
解決ノ一端ニ資シ、合セテ一方食糧政策
上ノ重大ナル關係ヲ持チマスル事柄ニ
付テ、多年朝野ノ間ニ唱ヘラレテ居リ
マシタモノガ、其實現ヲ見ザルコトヲ
甚ダ遺憾トシテ、五十一議會ニ於テ此
創定維持ニ關シマスル豫算ヲ提出シテ
御協賛ヲ得マシタ、卽チ昨年御協賛ヲ
得マシタモノガ七百萬圓、只今豫算ニ
提出シテアルノガ三百五十萬圓、更ニ
亞イデ、千五百萬圓、合セテ三億四千萬
圓バカリニナリマス、此利子補給ガ七
千三百萬圓バカリニナリマス、斯ウ云
フ風ニ今頭ヲ出シタ所カラ見マスト、
甚ダ少額、餘リニ不徹底ノヤウナ嫌ガ
アリマスガ、ソレハ裾ニ參リマスレバ、
彗星ノヤウナ風デ、隨分大キナ金額ニナ
リマス、此金額ハ更ニ政府當局トシテ、
財政モ許シ、又其元金ハ簡易生命保險
ノ資金ヲ得ルノデアリマスカラ、多々
益々辯ジタイト思ウテ居リマス、而シラ
只今ノ豫定ハ、全國小作地ノ約三十分
ノ一强ニ當リマスモノヲ、自作農ニシ
テ行カウト云フ趣旨デアリマスカラ、
全國府縣ニ於テ自作農維持創設ニ關シ
マスル農林省令ノ趣旨ニ基キマシテ、
此事業ヲ尙ホ進メテ行キタイト云フコ
トデアリマスレバ、政府當局ハ益努メ
タイト思ヒマス、而シテ只今御尋ノ山
形縣ニ於ケル廢川敷地ノ拂下ノ事ニ付
テ縷々御述ベデアリマシタガ、此點ハ大
藏省所管ノ方面カラ何レ御答モアリマ
セウガ、大體今日ノ農林省ニ於テ各府
縣ニドウ云フ風ニ自作農地ヲ取得シテ
居ルカト云フコトヲ調ベマシタ的確
ナ、一錢一厘モ違ハヌト云フコトデハ
ナイガ、大體ノ標準ヲ申シマスト、一反
當リ購入價格ノ平均ハ、田ニ於テ五百
九十圓、畑ニ於テ四百八十圓、是ハ愛知
縣デアリマス、岐阜縣ニ於テハ畑ニ於テ
四百六十一圓、田ニ於テ五百六十四圓
群馬縣ニ於テハ田ニ於テ四百六十六圓、
畑ニ於テ三百十七圓、熊本縣ハ田ニ於テ
四百九十二圓、畑ニ於テ二百七圓、此一
反當リノ貸付金ノ平均ガ、愛知縣三百
五圓、岐阜縣ガ田畑-二百八十三圓、
群馬縣ガ二百二十二圓、熊本縣ガ三百
二十三圓、斯ウ云フ見當ニナッテ居リマ
ス、而シテ其反別ハ相當ナ反別ヲ自作
農ニ致シテ居リマスカラ、只今ノ廢川
敷地ガ驚クベキ高イ價格デアルト云フ
ヤウナ事ニ付キマシテハ、是ハ自作農
ト云フモノノ本旨ニ全ク添ヒマセヌノ
デ、自作農ノ本旨ハ、御協賛ヲ得マシタ
ヤウニ四分八厘ノ低利資金ニ對シテ三
分五厘ヲ自作タラントスル者ニ支拂ハ
シメ、後ト一分三厘ヲ政府ガ補給スル
ノデアリマスガ、然ラバ三分五厘ハド
ウ云フ所カラ出シタカト申シマスト、
現在自作ヲ致シテ居リマス者ガ自作農
タラントスル場合ニ於テ、現在ノ小作
料ヨリモ其負擔ヲ重カラシメザル程度
ニ於テ、何時ノ間ニカ自作農者ニスル
ト云フコトノ趣旨ガ根本ニナッテ居リ
マスカラ、此趣旨カラ參リマスレバ、廢
川敷地ノヤウナモノガ、非常ナ高イ價
デアルト致シマスレバ、政府ガ一分三
厘ヲ補給シテ三分五厘ヲ自作農ガ負擔
シテ、而シテ現在ノ小作料ノヨリモ高
カラザル程度ニ於テ、何時ノ間ニカ自
作農ニナッテシマウ、卽チ田畑併セテ約
一町步ノ自作農ニナルト云フコトノ趣
旨ニ全ク悖ルノデアリマスカラ、農林
當局ト致シマシテハ、斯樣ナ趣旨ニ悖
リマスルモノニ付キマシテハ、其資金
貸付ノ規則ノ上カラ見マシテ、各府縣
ヲ經由シテ町村若クハ產業組合等カラ
ノ資金融通ヲ求メマス場合ニ於テ、農
村ニシテ既ニ其事ガ甚ダ自作農ノ趣旨
ニ添ハザルコトニ當ルノデアラウト思ヒ
マスカラ、農林當局トシテ萬一ニ左樣
ナ高價ナ、到底自作トシテ其土地ヲ取得
スルコトガ出來ズ、又其負擔ガ重クシ
テ將來維持スルコトガ出來ナイト云フ
ヤウナモノニ對シテ貸付ヲ致シマスニ
當リ、又利子ヲ補給スル場合ニ當リマシ
テ、篤ト詮議ヲ致サナケレバナリマセ
ヌガ、左樣ナコトハ有リ得ヌト思ヒマ
ス、而シテ若シ其土地ヲ利用シ、將來ノ
社會問題ノ解決、食糧政策ノ上カラ見
マシテ、必要アリト云フコトニナッテ參
リマスレバ、農林當局ト致シマシテハ、
出來ルダケ此自作農ノ創定維持ノ精神
ニ添フヤウニ、國有財產管理ノ方面デ
アリマスカラ、其當局トモ宜ク協議致
シマシテ、御趣旨ニ添フヤウニ致シタ
イト思ヒマスガ、只今申上ゲマシタヤウ
ニ大體ノ趣旨ニ於テ御諒承ヲ願イト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=23
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024・黒田英雄
○黑田政府委員 私ハ一寸脇ニ參ッテ
居リマシテ伺ハナカッタノデアリマス
ガ、今御質問ノ趣旨ヲ聞キマシタ所、國
有地ノ拂下ゲノ價格ノ問題デアッタヤ
ウニ思ヒマス(高橋委員「サウデス」ト
呼フ)ソレデハ今日若シ間ニ合ヒマス
レバ申シマスガ、若シ間ニ合ヒマセヌ
ケレバ次ノ委員會ニデモ、他ノ政府委
員カラ御答ヘサセタ方ガ、私ヨリハ適
當カト思ヒマス、宜ク話シテ置キマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=24
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025・高橋熊次郎
○高橋委員 承知致シマシタ、ソレデハ
此問題ハソレデ止メマス、此第二次稅制
整理ノ案ヲ通覽-マダザット見タ所
デアリマスカラ、詳シイ事ハ承知致サ
ナイノデアリマスガ、大體ニ於キマシ
テ政府ハ第二次稅制整理ヲ以テ稅制整
理ノ完璧ヲ期スルト云フヤウナ、非常
ナ、御聲明ガアリマシタ、之ニ依テ國民
負擔ノ均衡ヲ得セシメ、或ル程度マデ
國民生活ヲ安定セシムルニ足ルダケノ
負擔ノ均衡モ致サレテ居ル、斯ウ云フ
風ナ色〓社會政策ヲ加味シタナドト云
フヤウナ効能書ガ澤山アッタ、所ガ現ハ
レタ案ト致シテハ、實ニ吾〓ハ豫想外
ニ思フノデアリマス、マダ〓〓此効能
書ニ相應シイヤウナ御整理ヲ爲サレマ
スニハ、隨分色くナ整理モ此案ノ中ニ
加ヘナケレバナラヌト思ヒマス、又此
整理ノ痕ヲ見マシテモ、始メノ中ハ非
常ナル輕減ヲ租稅ノ上ニ行ッテ、國民ノ
負擔ヲ輕減爲サルト云フヤウナコトヲ
チヨイ〓〓新聞アタリデ見テ居ッタノ
デアリマス、吾〓モ之ヲ喜ンデ居ッタノ
デアリマスガ、殊ニ消費稅方面ニ於キ
マシテ、印紙稅、登錄稅、砂糖消費稅、
ト云フヤウナ方面ニ於テハ、相當ニ負
擔ノ輕減モ爲サル意味ニ於テ整理額ガ
約一千萬圓位ハ計上サレヤウト云フヤ
ウナコトヲ承ッテ居ッタノデアリマス、
然ルニ何時ノ間ニカ斯ウ云フ微溫的ナ
修正ニ相成ッタノデアリマスガ、坊間傳
ハル所ニ依ルト、是ハ義務〓育費ノ國
庫負擔額ヲ、ソノ中一千萬圓ト云フマ
ア御約定デアッタヤウデアルガ、其中ノ
半額ダケデモ此際捻出シヤウト云フコ
トデ、五百萬圓ノ財源ヲ得ル爲ニ斯ウ
云フ微溫的ナモノニナッタト云フヤウ
ナコトヲ世ノ中ニ傳ヘラレテ居ルノデ
アリマス、或ハ吾ミモ此案ヲ見マシテ、
サウ云フコトガ原因ヲナシテ居ルノデ
ハナイカト云フヤウナ感モアルノデア
リマス、斯ウ云フ事ヲ能ク承知シテ居
ラヌト、此案ヲ見ルノニ、理想ニ依テ御
ヤリニナッタノデアルカ、或ハ理想ハ其
處ニアッタケレドモ斯ウ云フ都合デ途
中デマア手加減ヲ致シタト云フコトニ
ナッタノダカラ、餘リヤカマシイ事ヲ言
ハンデ吳レト云フコトニナッテ居ルノ
カ、其邊ノ事ヲ能ク承知致シテ居ラナ
イト、質問モ少シ加減ヲ致サナケレバ
ナラヌト思ヒマスカラ、先ヅ之ヲ第一
ニ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=25
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026・黒田英雄
○黑田政府委員 此問題ハ私ガ御答ヲ
致シマスルヨリハ、大藏大臣ノ方ガ適
當デハナイカト考ヘマシテ、只今一寸
呼ビニ參リマシタガ、一應私カラモ御
答申上ゲテ置キマス、今囘ノ稅制整理
ハ、本會議ニ於テ大藏大臣カラ申上ゲ
マシタ通リ、今日財政ノ狀況ニ鑑ミマ
シテ、許サレ得ル範圍內ニ於キマスル
減稅ト云フコトニナッテ居ルノデアリ
マス、ソレ故ニ若シ財政ノ狀態ガ自由
ニ整理ヲ許ス時期デアリマシタナラ
バ、或ハ多少或ル稅率ニ付キマシテハ、
下ゲルコトモ出來得ルモノモアラウト
考ヘテ居ッタノデアリマス、今日ノ財政
ノ狀況ノ許ス範圍ニ於テ案ヲ立テルト
云フコトニナッテ居ルノデアリマスカ
ラ、今囘提案致シマシタ案ニ相成ッテ居
ル次第デアリマス-丁度大藏大臣ガ
見エマシタカラ、大藏大臣ヨリ述ベラ
レルコトト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=26
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027・片岡直温
○片岡國務大臣 今御質問ノ詳細ハ承
知致シマセヌデシタガ、此處ニ來テ承
ハル所ニ依レバ、最初第二次稅制整
理ハ一千萬圓程ノ減稅ヲスルト云フコ
トヲ傳ヘテ居ッタガ、是ハ〓育費國庫支
辨負擔ヲ五百萬圓計上スルコトニナッ
タノデアルカラ、ソレガ爲ニ斯ウ云フ
風ニナッタノデハナイカト云フヤウナ
意味ノ御質疑デアッタト承知致スノデ
アリマス、若シ違ッテ居リマシタラ又後
デ御尋ヲ願ヒマス、此稅制整理ハ、屢繰
返シマス如ク、大體ニ於キマシテ收入
ヲ非常ニ減サナイ範圍ニ於テ、負擔ノ
均衡ヲ得セシメムルト同時ニ、現社會
ノ實情ニ應ズルヤウニ社會的政策ヲ加
味スル、斯ウ云フ事ニナッタモノデアリ
マシテ、第一次稅制整理ニ於キマシテ
モ、此意味ニ於テ種々ノ減稅ヲヤッタ、
併ナガラソレデハ歲入ノ缺陷ヲ來スノ
デアリマスカラ、其缺陷ヲ補フ爲ニ酒、
煙草、〓凉飮料水、資本利子稅ト云フヤ
ウナモノヲ以テ其補充ニ當テタ、今囘
ノ第二次ニ於キマシテモ、稅制整理ノ
目的ハ今申上ゲタ通リデアリマス、是
ガ爲ニ多少ノ缺陷ヲ生ズル所ノモノ
ヲ、他ノ負擔力ノアルモノニ轉嫁シテ、
甚シキ歲入ノ不足ヲ生ジナイヤウニ、
斯ウ云フ趣旨ヲ以テ編成シタモノデア
リマシテ、財政ノ現狀ニ基キ、許ス限リ
ノ範圍內ニ於テ出來ルダケノ考慮ヲ拂
ツタト云フニ過ギナイノデアリマス、
最初ハ斯ウシヤウト思ッテ居ッタモノ
ヲ、片方カラ要求ガアルカラ、其其方ニ
取ラレテ云々ト云フガ如キ事柄ハ無イ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=27
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028・高橋熊次郎
○高橋委員 ソレヲ承ッテ大變心强ク
感ズルノデアリマス、漸次數項ニ亙ッテ
質問ヲ致シタイト思ヒマスルガ、此印
紙稅ノ方面デアリマスルガ、只今矢張
第一囘ノ稅制整理ノ如クニ收入ノ餘リ
減ラナイヤウナ程度ニ於テ按排ヲ致シ
タト云フヤウナ痕ガ歷然トシテ居ルヤ
ウデアリマス、ソレモマア敢テ深ク咎
メナイト致シマシテモ、併シ此社會政
策ト云フコトヲ高唱サレテ居ル以上
ハ、貧者ニ重クシテ、富者ニ輕イト云フ
ヤウナ取扱ハ、吾ミハ斷ジテ承服出來
ナイ所デアリマス、印紙稅改正ノ痕ヲ
見マシテモ、萬般ニ通ジテ私共ハ是ハ
社會政策ヲ裏切ッテ居ルヤリ方ヂヤナ
イカト思ハレル節ガ多イニ氣付クノデ
アリマス、先ヅ此最初ニ第四條ノ所ヲ
見マスルト此一カラ五マデノ間デア
リマスルガ、是等ノ方面デ見マシテモ
初ハ殊ニ消費貸借ニ關スル證書トカ云
フヤウナモノデアリマスガ、是ハ今マ
デノ御說明ヲ承ッテ見マスルト、從來ハ
比例稅デヤッテ居ッタ、併シ比例稅デハ
思ハシクナイ、何トナレバ手數ガ官氏
共ニ多ク掛ッテ、ソレガ爲ニ印紙稅ヲ補
脫スル者ガ多クナリ易イ、左樣デアル
カラ定額稅ニ改メタイガ、全然定額稅
ト云フ譯ニモ行カナイカラ比例稅ヲ
加味シテ、階段的定額稅ニスルト云フ
コトヲ承ッテ居ルノデアリマス、ソレハ
先ヅ答ムベキコトデナイト致シマシテ
モ、此改正案ニ付イテ見ルト、五十圓
以下ノモノハ二錢デアル、斯ウ云フコ
トニナッテ居ル、サウシテ最高ハ一萬圓
ヲ超エルモノハ一圓デアル、斯ウ云フ
コトニシタ痕ヲ見マスト、今マデハ五
十圓ノモノハドレダケデアルカト云フ
ト、五五ノ二十五デ、二錢五厘ノハ無イ
カラ三錢ヲ貼ル、斯ウ云フヤウナコト
ニナッテ居ッタノデアルガ、五十圓ノモ
ノハ二錢ニナッタカラ一錢減ジタ、一萬
圓ヲ超ユルモノハ一圓ダト云フト、今
マデハ二十萬圓ノモノガ二五ノ十デ百
圓、二十萬圓ノモノハ百圓デアルガ、
改正案デハ二十萬圓デモ一圓デ宜シ
イト云フコトニナル、二十萬圓ノ證書
ヲ作ッタ者ハ一圓デ宜シイト云フコト
ナラバ、二百分ノ一トイフ輕減ニナル、
ソレ以上ノコトヲ算ヘマシタナラバ大
變ナコトニナリマス、左樣デアリマス
カラ、是ハ多クノ取引ヲ致スト云フ、澤
山ノ金額ヲ書イタ者ガ、必ズシモ金持
デアルトハ限リマスマイ、併シナガラ
多クノ金額ヲ取扱フ貧之人ト云フ者ハ
アリハシナイ、貧乏人ハ五百圓以下ノ
者ガ多イト考ヘマス、殊ニ百圓以下ノ
者ガ多イト思ヒマス、一萬圓前後竝
夫レ以上大金ヲ取扱フ人〓ニハ是ハ
大變便利デアルト云フコトハ、社會政
策ヲ加味シタ方法デナカラウト考ヘマ
ス、階段ヲ付ケルト致シマシテモ、五十
圓以下二錢百圓以下三錢デアル、一錢ノ
差デ五割ノ差ガ出來ル、百圓カラ五百
圓ノ間ハ五倍デアッテ見マスレバ、十錢
ノ稅金デハ三倍三步ニナッテ居ル、五百
圓カラ千圓迄ハ二倍デアルカラ、十錢
ガ二十錢ニナッタト云フコトニナリマ
セウ、其外千圓カラ一萬圓、是ハ十倍デ
アルカラ、二十錢ノモノハ二圓ニナル
ベキデアル、是ガ五十錢トナッテ居ル、
ソレ以上ハ一萬圓ヲ超エルモノハ皆一
圓トナル、何處カラ見マシテモ隨分オ
カシナモノデアル、五割宛增シテ行ク
ト云フコトニナッテ行ケバ、色〓ナ面倒
ナコトニモナリマセウケレドモ、是ハ
ドウ云フ割合デ二錢三錢十錢ト云フ割
合ヲ定メタノデアルカ、而シテ金額ノ
多イモノヲ非常ニ安クシテ、金額ノ少
額ノモノヲ輕減ヲサレナイト云フコト
ハ、ドウ云フ趣旨カラ出タノデアリマ
スカ、之ヲ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=28
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029・黒田英雄
○黑田政府委員 洵ニ御尤ナ御質問デ
アルト考ヘマス、是ハ屢申上ゲマシタ
通リ、現行ハ比例稅ニナッテ居リマス、
御質問ノ趣旨カラ申シマスレバ、比例
稅ガ最モ適當デアリマシテ、少イ金額
ノモノニ付テハ少イ印紙稅ヲ拂ヒ、其
金額ガ增スニ比例シテ印紙稅モ增スノ
デアリマスカラ、現行ガ如何ニモ宜シ
イヤウナ御質問デアリマシタ、然ルニ
是ハ實際ノ上カラ見マシテ、極メテ負
擔ノ不權衡ヲ來タシテ居ル、法文ノ上
カラ見マシテハ、成程理想的ノヤウニ
仕組ンデアリマシテモ、實際ニ於テ是
ガサウナッテ居ラヌト申シマスノハ、
比例稅ニナッテ居リマス結果、非常ニ算
出ノ上ニ誤ルコトモアラウト思ヒマス
ガ、又實際ニ於テ是ガ比例稅通リニ行
ハレナイ、甚ダシキハ總ベテ三錢印紙
ヲ貼ル-貼ラナイモノモアリマセウ
ガ、貼ルニ致シマシテモ三錢ノ印紙ヲ
貼ッテ置クト云フヤウナモノモ隨分發
見スルノデアリマス、是ハ唯〓個人間ノ
取換シト云フヤウナ書面デアリマス
ガ、隨分取締ノ上ニ於キマシテモ極メ
テ困難デアリマス、ソレガ爲ニサウ云
フ風ナコトニナリマスト云フト、非常
ニ負擔ノ不平等ガ起リマス、輕イ負擔
ヲスル結果ヲ來タスノデアリマス、實
際ニ於キマシテモ非常ニ負擔ノ不平等
ヲ來タシテ居ルト云フコトヲ認メルノ
デアリマス、取扱上不平等デアルニモ
拘ラズ、實際ニ於キマシテモサウ云フ
結果ヲ來スノデアリマス、是ハ直シテ
官民ノ手數ヲ省キ、同時ニ負擔ヲ成ベ
ク公正ニスル、ソレニハ法ニ規定シテ
居ルコトガ行ハレルヤウニスル、詰リ
法文通リ行ハレテ行クコトニナリマス
レバ、幾分今日ヨリモ負擔ノ公正ヲ期
スルコトガ出來ルト考へマシテ、比例
稅ヲ階級定額稅ニ直シタノデアリマ
ス、然ルニ御話ノ如ク階級ヲ多ク致シ
マシテ、其階級ノ上ルニ從ヒマシテ、或
ハソレニ多少比例致シマシテ印紙稅ヲ
增スコトニナルト云フコトニナリマス
ト、只今御質問ノ御趣意ニモ合フヤウ
ニモ考ヘラレマスガ、是ハ階級ヲ多ク置
ク爲ニ實行ガ困難デアル、又非常ニ高額
ナモノニナルト脫稅ガ行ハレテ困ルノ
デアリマス、ソレ故ニ成ベク之ヲ簡便
ニシテ、是ガ實際行ヘルヤウニシテ、率
ヲ餘リ高クシテ却テ脫稅ヲスルモノガ
出テ、負擔ノ公平ヲ得ラレナイヨリモ、
實行ノ出來易イモノニセナケレバナラ
ヌト云フヤウナ點カラ致シマシテ、階
級ヲ一萬圓ニ致シマシテ、ソレ以上ハ
先ヅ一圓、一圓デアリマスレバ、是ハ實
際ニ於キマシテ貼ルコトモ實行上サウ
困難デナイ、苦痛デモナイノデアリマ
スシ、實際ニ於テモ行ハレルト思フノ
デアリマス、ソレ故サウ云フ趣意カラ致
シマシテ、實際ニ行ハレルヤウニシタ
イ、唯〓徒ニ法文ノ上デ形ダケヲ整ヘ
テモ、實行ガ出來マセヌト、非常ナ不都
合ヲ來タスノデアリマスカラ、實行ガ
出來ルヤウニ致シタノデアリマス、只
今ノ御疑問ノ起リマスコトモ御尤デア
リマス、斯樣ナ次第デ實際ニ於テ負擔
ノ公平ヲ得ルノデアリマシテ、殊更ニ
一萬圓ノモノヲ輕減シヤウト云フノデ
ハアリマセヌ、所謂社會政策上カラ觀
察致シマシテ額ノ多イモノヲ輕減シタ
ト云フ趣旨デナカッタコトヲ御諒承願
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=29
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030・高橋熊次郎
○高橋委員 ドウモ只今ノ御答デハ分
リ兼ネルノデアリマスガ、御說明ヲ伺ツ
テ居ルト、此改正案ノ趣旨ハ脫稅ヲス
ルモノト正直ナモノトノ負擔ノ均衡ヲ
圖ルニアリト云フヤウニ考ヘラレル、
脫稅スルモノガアレバ、印紙稅法上ノ
取締ノ方法モアルノデアルカラ、ソレ
デヤッタラ宜カラウ、今マデノ比例稅ヲ
行フト不便デアルト云フノハ、計算ガ
不便ダト云フノデアリマスケレドモ、
一萬圓トシテ五圓ノ印紙稅ヲ課セラレ
ル、之ヲ覺エテ居レバ一寸メノコ算モ
出來ルシ、算盤ガアレバ尙ホ容易ニ計
算ガ出來ル、ソレガ此階段ニ依リマス
!何果以下ハ何某ト云フ表ヲ一々懷
口ニ入レテ置カナケレバナラヌ、表ヲ
持ッテ居ラナイデ階級ノ分ッテ居ル位ノ
人ナラバ、今ノモノガ不便デアルト云
フコトハナカラウト思ヒマス、サウ云
フ見解カラ申サレマスト、是デハ國民
ハ甚ダ迷惑スルト思フ、前ノ方ガ却テ
面倒ハナイト思ヒマス、之ヲ見テモ百
圓ガ三錢デアル、サウシテ五百圓ガ十
錢デアルト云フヤウナコトニ致シマス
!玆デ、色〓ナ具合ニ之ヲ割リマシ
テ、二ツニモ三ツニモ致シテ、サウシテ
稅金ヲ課シテ貰フト云フヤウナコトモ
出來ナイトモ限ルマイト思フ、サウ致シ
マスト矢張稅金ヲ脫レルコトニ相成ル
ノデハナイカト思ヒマス、而シテ稅金
ヲ脫レルト云フ惡意ノアル者ハ、如何
ニシテモ此位ニ安クマケテヤッタラ不
心得者ハナクナルダラウト思ハレテモ、
幾分カ減ズルカ知ラヌケレドモ、皆無
デアルト云フヤウナコトハ一寸測リ兼
ネルト思フ、ソレデアリマシテカカル
稅金ヲ是ガ爲ニ免カレヤウト云フ者
ト、正直ニヤッテ居ル者トノ間ノ負擔ノ
公平ヲ圖ルナドト云フコトヲ御考ニナ
ルヨリハ、擔稅能力ニ依テ加減ヲスル
コトガ、餘程國家トシテハ考ヘナケレ
バナラヌ、社會政策ト云フモノヲ高調
サレテ現內閣デアリマスカラシテ-
無論現內閣デアリマセヌデモ、時代思
想トシテ社會政策ヲ加味シナイ政治ハ
今日有リ得ベカラザルコトデアリマ
ス、左樣デアリマスカラ、此惡意ヲ以テ
稅ヲ免レントスル者ヲ稅率ノ輕減ニヨ
ツテ直ニ之ヲ絕滅シヤウ、或ハ其惡意
ヲ無クシテシマハウト云フヤウナコト
ヲ御圖リニナルヨリモ、ソレハソレデ
大ニ取締ル方法ヲ講ジラレタラ宜カラ
ウト思フ、今度ハ負擔能力ノ非常ニ旺
盛ト見ラルベキ所ノ多額ノ金額ヲ取扱
フ方面ニノミ非常ナル輕減ヲ致スト云
フヤウナコトハ、是ハ社會政策上由々
シキ大事デハナイカト斯ウ考ヘルソ
レデアリマスカラ此階級ヲ設ケラレタ
コトハ、實際上ノ取扱カラ申シマスル
ト、却テ不便デアル、今迄ハ一萬分ノ五
デアルト云フヤウナ所カラシテ、一寸
算盤ヲ取レバ直グ分ルノニ、今度ハ一
一印刷ヲシタ物カ何カ、或ハ手帳ノ隅
ニデモ之ヲ控ヘテ居ラナケレバ、一寸
マゴツクト云フヤウナコトニ相成ル、
此等ニ付テハ不便デナイト云フヤウナ
仰セデアルケレドモ、吾〓ハ實際不便
デアル、ソレハ不便デアル不便デナイ
ト云フコトハ、ソレハ見込違ヒダト、御
互ノ意見ノ相違ダト云フテ御逃ゲニナ
ルカ知ラヌケルドモ、實際ニ於テ不便
デアル、斯ウ云フコトハ吾〓ハ今參考
ノ爲ニ見テ居ルガ、一寸見ナガラモ時
時間違ヘテ居ル、五百圓以下ノモノ、
千圓以下ノモノナドト云フコトハ、洵
ニ間違ヒ易イ、五百一圓-五百圓一
錢トナルト二十錢ノ稅率ニナル、實ニ
紛ハシイト思ヒマス、便利ニナッタト云
フコトノ理由ハ、ソレデ消滅シハシナ
イカト考ヘマス、ソレカラ脫稅ヲシタ
者ヲ防グ爲ニト云フコトハ、ソレハ理
窟ヲ爲サナイモノデアル、脫稅ヲシタ
者ト脫稅ヲセヌ正直ナ者トノ負擔ノ公
平ヲ圖ルナドト云フコトハ、稅率又ハ
課稅ノ方法ナドヲ改正シテ行フベキ
デハナイ、ソレハ旣ニ其爲ニ國家ハ刑
法モアリ、又罰則ノ法律モ此稅法ノ中
ニモ設ケラレテ居ル、其方デ嚴密ニ爲
スッタラ宜イダラウト思フ、サウ云フヤ
ウナコトニナレバ、實際現政府モ實
行サレテ居ル例モアル、所得稅ノ留保
所得ノ累進稅率ヲ取去ッテシマッタ、ソ
レ故是ハ一方ニ同族會社ノミニ儲ケサ
セルモノデアル、サウ云フモノノ脫稅
ヲ助長スルモノデアルトイフ非難ガア
ル、之ニ屬シテハ同族會社ノ取締ノ方
デ嚴重ナル規定ヲ設ケテ取締ルトイフ
コトヲ、現ニ第一次整理ノ時分ニ爲サッ
タノデアル、所得稅ノ方デハ脫稅ノ風
ヲ助長スル虞ガアルナラバ、其內ニ規
定ヲ設ケテ、ソレデ以テ取締ッテ行カウ
ト云フ、印紙稅ノ方デハ脫稅ヲ稅率ノ
立方ニ依テ之ヲ防ガフナドト云フヤウ
ナコトハ、終始一貫ヲシナイ大ナル矛
盾ノアル御議論デハナイカト思フ、ソ
レデアリマスカラ、サウ云フ事ハ理由ニ
ナラナイ、サウシテ理由ニナラナイコ
トニナルト-今申上ゲタ二ツノ事柄
ガ理由ニナラナイト云フヤウナコトニ
ナレバ、殘ル所ノモノハ唯〓大キナ金
額ヲ取扱フ者ニ便利ニスルト云フガ如
キ爲ニ此法律ノ改正ヲ致シタト云フ外
ニ、吾〓ハ何物ヲモ認メラレナイノデ
アリマスガ、之ニ付テ政府ハ左樣ニ御
認メニナラナイカ、矢張前ニ政府委員
ガ仰セニナッタヤウナ理由ノ下ニ、是ノ
ミニ依テ此改正ヲ行ハレタノカト云フ
コトヲ更メテ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=30
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031・黒田英雄
○黑田政府委員 萬分ノ五ト云フ比例
稅ノ方ガ、却テ階級定額稅ヨリモ便宜
デハナイカ、萬分ノ五ト云フコトデ彈
キ出セバ直グ判ルノデアルカラ、却テ
幾ラ以下ハ幾ラ、幾ラ以下ハ幾ラト云
フ方ガ煩雜デアル、政府ニ於テハ之ヲ
改メテ納稅者ノ便宜ニスルト云フノデ
アルガ、却テ反シテハ居ナイカト云フ
御話デアリマスルガ、是ハ私共ハ今日
ハ反對ノヤウニ實ハ考ヘルノデアリマ
シテ、唯〓考ヘマスレバ、成程萬分ノ五
ト云フ數字デアリマスルカラ、是ハ直
グ判ルデハナイカト云フコトハ言ヒ易
イノデアリマス、併ナガラ實際ニ於キ
マシテ是ガドウナッテ居ルカト云フ、唯
單ニ此形ノ上デ見マセヌデ、實際ノ
働キヲ見マスト云フト、中〓サウ云フ
風ニ想像スルヤウニナッテ居ラヌノデ
アリマス、吾〓デモツイ此机ノ上デ考
ヘマスト、萬分ノ五ダカラ直グ判ルデ
ハナイカ、ソレガ行ハレナイコトハナ
イト云フコトヲ考ヘマスルケレドモ
是ハ所謂机ノ上デ考ヘルコトデアリマ
シテ、實際ニ入ッテ見マスト、中ミサウ
ハ行カナイ、之ヲ單ニ其法文ノ上デナ
ク、取締ノ方デ十分ニヤレト云フ御話
デアリマスガ、洵ニ御尤ノ事ト考ヘル
ノデアリマス、勿論取締ノ方ニ於キマ
シテモ、出來ルダケ之ヲ取締リマシテ、
サウシテ脫稅者ヲ避ケテ、正直ナ者ト
ノ間ニ何等公平ヲ失スルコトノナイヤ
ウニ努メナケレバナラヌコトハ、是ハ
申スマデモナイノデアリマス、併ナガ
ラ法文ノ立前ト致シマシテモ、成ベク
之ヲ行ヒ易イヤウニシテ、成ベク脫稅
ニ導カナイヤウニ制度ヲ立ッテ行クト
云フコトガ必要デアラウト思フ、然ル
ニ此萬分ノ五ト云フコトニシマスト、
金額ガ上ルニ隨ヒマシテ、段々上ッテ行
キマスモノデアリマスカラ、實際ニ於
キマシテハ其通リニ行ハレナイ、サウ
シテ唯〓先程申上ゲマシタ通リ、印紙
ヲ貼ッテモ宜シイト云フノデ、三錢位ノ
印紙ヲ貼ッテ、所謂誤魔化スト云フコト
ガ、實際ニ於テドウモ行ハレ易イノデ
アリマス、ソレ故ニサウ云フコトガア
リマスト、勿論一面ニ於キマシテハ取
締リマスルガ、併ナガラ現行ノ制度ニ
於テ、サウ云フ事ガ行ハレ易イナレバ、
成ベク斯ウ云フ事モ實際ニ於テ行ハレ
ナイヤウニ致シテ、サウシテ違反者ヲ
少クスルヤウニ努メルコトガ、立法ノ
上ニ於キマシテハ考慮シナケレバナラ
ヌ點デアルト考ヘルノデアリマシテ、
ソレニハ是ハ或ル程度ノ餘リ複雜ナ階
級ニ致シマスト、今度ハ今仰セニナッタ
通リ、萬分ノ五ト云フ一律ノモノガ、却
テ階級ガ複雜ニナルト、非常ニ不便ニ
ナリマス、併ナガラ餘リ不便ニナラナ
イ程度デ、而モ餘リ之ヲ階級ヲ少クス
ルト、御議論ノ如ク餘リニ負擔ノ權衡
ヲ得ラレマセヌカラ、其點ヲ調和致シ
マシテ、餘リニムヅカシクナク、サウシ
テ又餘リニ細カクナク、其程度ニ於テ
決メマスト云フト、大體此一萬圓以上
ハ一圓ト云フコトニシマスレバ、是ナ
ラバ實行モシ易イノデアリマス、今迄
二十萬圓ニナルト十圓ノ印紙ヲ貼ラナ
ケレバナラヌ、或ハ五十萬圓ニナルト
二十五圓ノ印紙ヲ貼ラナケレバナラ
ヌ、又其中間ナラ勿論デアリマスガ、色
色多額ノ印紙ヲ貼ル爲ニ、脫稅ヲ誘ヒ
易クナル、脫稅ニ陷ラシメ易イコトガ
起ッテ參ルノデアリマスカラ、之ヲ寧ロ
一圓ニシテ、之ヲ一律ニ皆貼ッテ貰ッタ
方ガ、却テ負擔ノ公平ヲ得ルト云フヤ
ウニ考ヘマシテ、此邊ヲ一圓ニスル、サ
ウスレバ下ノ方ハ先程御述ニナリマシ
タ通リ、負擔ヲ增スコトガアッテハイケ
マセヌカラ、段々是ハ階級ヲ設ケテ來
ル、ソコデ此程度デアリマスレバ、斯ウ
云フモノヲ貼リマスコトニ當リマスモ
ノニ付キマシテハ、サウ其一々印刷物
ヲ始終手ニシテ之ヲ見マセヌデモ、大
體此位ナ階級ナラバ實行モ出來ルダラ
ウト云フ風ニ考ヘマシテ、此程度ニ致
シタノデアリマス、勿論ソレノミヲ以
テ此脫稅ヲ防ギ得ルトモ考ヘテ居リ
マセヌ、併ナガラ今日ノ制度ヨリモ、
此方ガ實行シ易クテ、脫稅ガ少イ1 -
易クスレバ、實際ニ之ヲ行フノデアリ
マス、行ヒ難クシテ脫稅ニモ導クヤウ
ニスルト云フコトハ、成ベク避ケナケ
レバナラヌ、一面ニ於テ取締モゴザイ
マスガ、此中デモ傭船契約トカ、請負ト
カ云フヤウニナッテ來マスト、是ハ營業
ニモ關シマスルシ、取締モ極メテ容易
デアリマスケレドモ、普通ノ貸借ニナ
リマスト、個人間ノモノデアッテ、又
成ベク之ヲ世間ニ出サナイヤウニシテ
取引スルノデアリマスカラ、取締ノ上
ニ於テモ非常ニ困難ガアル、ソレ故ニ
取締ノミニ依テ是ガ是正モ出來マセヌ
カラ、法文ノ上ニ於テハ成ベク行ヒ易
イヤウニシテ、法文ノ通リ行ッテ貰ヒタ
イト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=31
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032・高橋熊次郎
○高橋委員 此問題ハマダ腑ニ落チナ
イコトガアリマスカラ、尙ホ他日ニ保
留致シマシテ次ニ移リマスガ、此約束
手形トカ爲替手形其他ニモアリマス
ガ、殊ニ約束手形ノ如キモノハ、從來三
錢カラ七圓マデノ階級定額稅ニナッテ
居ッタノデアリマスガ、此前ノ改正ノ時
分ニ、斯ウ云フモノハ爲替手形ヲ代用
スル者ガ多イカラ、ソレガ爲ニ是モ同
ジヤウニ三錢ノ定額稅ニシヤウト云フ
ヤウナコトニナッテ居リマスガ、貸借證
書ハ實際ノ所ヲ見マスルト、證書ハ銀
行アタリデモ個人ニシテモ實際ハ少
イ、多クハ手形貸付ニナッテ居ル、サウ
シテ御承知ノ通リ實際ニ餘リ頻繁ニ取
引ノ行ハレナイ方面ニ於テハ、豫メ拒
絕證書ノ作製ヲ免除スルト云フヤウナ
免責條項ヲ、或ハ手形面ニ加ヘテ、其義
務ヲ無クシテ居ル、又一方ニハソレニ
符箋ナドヲ致シマシテ、期限ガ經過シ
テモ、普通ノ債權トシテ取扱フト云フ
ヤウナコトヲ致シテ流通ヲ致シテ居リ
マス、サウ云フヤウナコトニナッテ居リ
マスカラ、只今デハ市中ニ於ケル約束
手形ハ普通ノ借用證書ト何等異ッテ居
ナイ、普通ノ借用ニスレバ高イ印紙稅
ガカカル、手形ニスレバ稅金ガ三錢デ
濟ムト云フコトニナル、其間ニ非常ニ
不公平ガ生ズルト思フ、サウシテ普通
ノ借用證書ニ例ヲ取ルト、借用證書ハ
主ニ不動產ヲ取扱フ方面ニノミ行ハ
レ、普通ノ商業取引ニハ手形ガ行ハレ
n、サウスルト不動產ヲ取扱フ機會ノ
多イ農家方面ニ稅ガ重クナリ、商家ノ
方ハ輕クナルト云フコトデ、負擔ノ不
公平ハ此處ニモ生ズルデアラウデアル
カラ、是等ノモノハ爲替手形モ同ジデ
アリマセウ、株劵モ、債劵モ受取證モ矢
張階級定額制度ヲ御認メニナル以上
二、是亦階級定額制度ニ定メラレテ差
支ナイト思フ、是等ヲ三錢ノ定額稅ヲ
課セラレルト云フコトハ、是ハ矛盾シ
テ居リハセヌカト思フ、若シ理想的ニ
改正ナサラウト云フ時ニハ、サウ云フ
コトモ考慮サルベキデアル、今マデサ
ウデアッタカラ、其儘デ差支ナイト云フ
モノデハアルマイト思フ、負擔ノ衡平
ト云フコトハ、必ズ考ヘナケレバナラ
ヌト思フ、然ルニ約束手形、爲替手形、
株劵、債券、商品切手、受取書等ハ階級
定額稅ヲ課ケナイデ、是デ宜イト云フ
御主旨デ承リタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=32
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033・黒田英雄
○黑田政府委員 一應御尤ノ御意見ト
存ジマスガ、只今御述べニナリマシタ約
束手形以下ノ證書デアリマスガ、是ハ現
行ノ三錢ヲ課シテ居リマス、約束手形
或ハ株劵、或ハ受取證書ト云フヤウナ
モノハ、成程一面カラ見マスレバ階級
定額稅ヲ課スルト云フコトモ、是モ理
論上必ズシモ不都合トハ認メナイト考
ヘマス、併シナガラ原則ト致シマシテ、
屢作製スルモノデアリマシテ、受取證
ノ如キモ屢作ラナケレバナラヌ、或ハ
約束手形ノ如キモノモ、或ハ爲替手形
モ、只今御述ニナリマシタヤウニ、成程
貸付證書ト同ジヤウニ取扱ッテ居ルモ
ノモ勿論アルト考ヘマスガ、大體ニ於
キマシテ是等ハ特殊ノ流通證劵ト認メ
ラルベキモノデアリマスカラ、ソレ等
ノ點ニ考ヘマシテ、現行モ階級定額稅
デアッタコトハ御述ニナリマシタ通リ
デアリマス、之ヲ直シマシタ趣旨モ其
處ニアリマス、現在ノ三錢ヲ特ニ此際
變更スル必要ハナカラウカト考ヘマシ
タ、然ラバ貸借證書ノ方ト權衝ヲ失ス
ルデハナカラウカト云フ御話デアリマ
シガタ、爲替手形ハ成程或ル場合ニ於テ
ハ貸借證書ト同ジヤウナ目的ニ作製セ
ラレル場合モ勿論アルコトヲ承知シテ
居リマスガ、併シ先程述ベマシタ通リ、
大體ニ於テ是ハ特殊ノ流通證劵ト致シ
マシテ作製サレルモノデアリマシテ、
貸借證書ノ如ク原則トシテ、頻繁ニ作
製セラルベキモノデナイ、又相當期間
長期ノモノデアル、ソレ等ノモノトハ
自ラ性質ガ違ヒマスカラ、偶〓同ジヤ
ウナ目的ニ使フコトガアリマシテモ、
其性質上大體カラ見マシテサウ云フモ
ノデハナイカラ、茲ニ區別ガアリマスコ
トモ、差支ナカラウト考ヘマシテ區別
致シタ次第デアリマス、ソレカラ序ニ
先程御尋ネニナリマシタ國有財產拂下
ゲノコトニ付キマシテ、只今政府委員
ガ居リマセヌガ、其方ノ主管ノ方ガ參ッ
テ居リマスカラ、委員長ノ御許ヲ得マ
シテ、其方カラ細カク御答ヲ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=33
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034・武藤金吉
○武藤委員長 許シテ差支アリマセヌ
カ-ソレナラ太田サンカラ國有財產
ニ付テノ說明ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=34
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035・太田嘉太郎
○太田營繕管財局理事 委員長ノ御許
シヲ得マシテ說明致シマスガ、御質問
ノ要點ハ多少伺ヒマシタガ、若シ間違
ヒマストイケマセヌカラ、モウ一度承ツ
タ上御答致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=35
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036・高橋熊次郎
○高橋委員 河成-重ニ河成デアリ
マスガ、ソレガ河川敷地ニ編入サレ
テ居ル、何時河川敷地ニ編入サレタカ、
ソコハハッキリ致シマセヌガ、兎モ角モ
河川敷地ニ入ッタ、ソレガ雜種地ニナッ
テ居タ所ガ、此度ノ國有財產ノ處分ノ
序ニサウ云フモノガ問題ニナッテ、ソレ
ヲ拂下ゲルニ付テハ、無論緣故者ガア
ルノデアリマス、其緣故者ト云フモノ
ニ付テ御調査ニナリマスカ、現在ノ土
地ノ占有者ハ其處ヲ開墾シテ、非常ナ
手數ヲ掛ケテ田ニシタ、サウ云フ士地
ハ主ニ荒川デアル、ソレデアリマスカ
ラ大キナ石ナドモ澤山アル、主ナル石
ノ產地ナドト云フモノハ河川敷ニ多
イ、サウ云フ所ヲ非常ナ努力ヲ拂ッテ開
墾ヲ致シテ、田ヲ作ッタト云フヤウナノ
ガ多イ、ソレガ又川ノ中デアリマスカ
ラ、何時洪水ナドノ爲ニ舊態ニ返ルカ
モ分ラナイ、ソレデアリマスカラ、ソコ
ヘ持ヲテ行ッテ非常ニ金ヲ掛ケテ、村デ
堤防ヲ造ッテ、ソレガ爲ニ土地ガ美田ニ
ナッタコトモ色〓ナコトガアリマス、サ
ウ云フモノヲ今マデノ當局ハ毫モ知ラ
ズニ、勝手ニ其田ノ今ノ成績ヲ見マシ
テ他ノ類地ト比較ヲ致シマシテ、此位
ノ所ハ上田デアル、是ハ中田デアル、是
ハ下田デアル、又是ハ下ノ下田デアル
ト云フ風ニ、四ッ位ニ大キク分ケテ居リ
マス、或ハ三ツニ分ケテ居ル所モアル
ソレガ爲ニ上田ナラバ四百五十圓、此
位ナラバ三百圓ガ相當デアルナドト云
フコトヲ初メトシテ、サウシテ稅務所デ
ハソレ〓〓査定ヲサレテ居ル、民間デ
ハソレニ中ミ應ジナイモノデアリマス
カラ、色ミナ折衝ノ結果、幾分カ下ゲテ
來テ居ル所モアリマス、又四百五十圓
ト唱ヘタモノヲ三百五十圓程度マデ
低下シタ所モアリマス、是ハ種々雜多
ニナッテ居リマスガ、要スルニ普通ノ田
地ト同ジ價格デ以テ其土地ヲ拂下ゲ
テ、之ガ爲ニ此附近ノ自作農ガ非常ナ
ル困難ヲ感ジテ居ル、斯ウ云フコトガ
事實上アルノデアリマス、之ヲドウニ
カシテ救濟ヲ致サナケレバ、其部落ノ
貧農小農ト云フ者ハ全滅ヲスル虞ガア
ル、五六十戶ノ部落ニシテ一萬圓近ク
ノ負擔ヲシナケレバナラヌ、僅カニ三
町步カソコラノ交付地ヲ拂下ンガ爲
:、一萬圓近クノ金ヲ捻出シナケレバ
ナラヌト云フ部落モ生ジテ來ル、ソレ
デアルカラ、玆ニ問題ニナリマスノハ、
サウ云フヤウナ時價デ以テ拂下ヲシナ
ケレバナラヌト云フヤウナ苛酷ナル取
扱ヲスル以外ニハ、政府トシテ斯ウ云
フ特殊ノ事件ニ對シテ取扱ノ方法ハナ
キヤ否ヤ、又他ノ方面ニ付テハ、ソレゾ
レ自作農創定ナドト云フテ、色〓積極
的ニ低利ノ貸付ヲスル、年賦償還ヲス
ルト云フ場合ニ當ッテ、ソレヲ分割シテ
納付スルト云フコトモ出來ナイ、所謂
年賦償還ノ方法モ無イ、一時ニソレヲ
納メナケレバ、オ前ハ權利ガ無イ者ト
シテ之ヲ競賣ニ付スル、サウ云フ方法
ニ依テ處分ヲスルト云フコトハ、餘リ
苛酷デアルガ、是ハ政府トシテサウ云
フ苛酷ナル方法ニ依テ取扱ヲシテ居ル
ノデアルカラシテ、何カモット穩和ニシ
テ、今ノ時代精神ニ適フヤウナ取扱方
法ハナイカト云フ、此二ツデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=36
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037・太田嘉太郎
○太田營繕管財局理事 御質問ノ趣旨
ハ御尤モノコトト考ヘテ居ルノデア
リマスガ、從來惡イ所ノ土地ヲ減ジマ
シテ、良イ所ノ土地ニ致スノハ、一種ノ
開墾ノ意思デアリマシテ、之ニ付キマ
シテハ國有財產法第二十一條ノ規定ニ
依リマシテ、豫メ政府ノ許可ヲ得テ開
墾ニ著手スルコトニナッテ居リマス、其
場合ニ於テハ將來拂下ヲシタ所ノ價格
等ニ付キマシテモ、其際決メテ置クノ
デアリマス、其點ニ於テハ相當低下ナ
ル所ノ價格ヲ以テ拂下ゲルコトニナッ
テ居リマス、所ガ今御話ニナッテ居ルノ
ハ、サウ云フ正式ノ手續ニ依ラズシテ、
向フノ方デ無斷デ政府ノ土地ヲ占有
シ、ソレヲ開墾シテドウシヤウト云フ
コトデハナイカト思フノデアリマス、
サウ云フヤウナコトハ澤山アルノデア
リマス、斯ウ云フ事情ニ於テ酌量スベ
キモノニ付テハ、營費ヲ要シマシタ所
ノ經費ノ如キハ、價格ノ中カラ差引キ
マシテ、素地ノ價格デ拂下ヲ致シテ居
ルノデアリマス、其最モ大キイ所ハ山
形縣ニアリマシテ、山形縣ニハ國有地
ガ非常ニ多イノデアリマス、ソレデ從
來ノ慣例ガ無斷デ國有地ヲ開墾致シマ
シテ、相當ノ値打ノ有ルモノニ付テハ、
拂下ヲ求メテ置キマシタノデアリマス
ガ、其場合ニ於キマシテハ、時價ヲ以テ
拂下ゲマシテハ甚ダ苛酷ト考ヘマス、
ソレ等ノ方ハ開墾費ヲ除キマシタ所ノ
素地ノ價格ヲ以テ拂下ゲテ居リマス、
殊ニ山形縣ニ於キマシテハサウ云フ
所ガ數萬町ニ達シテ居リマスカラ、帝
國議會ノ協賛ヲ經テ、特別ノ整理費ヲ
貰ッテヤッテ居ルノデアリマス、ソレ以
外ノ土地ニ付テハ、一〓ニ申サレマセ
ヌケレドモ、事情ニ於テ酌量スベキコ
トガゴザイマスレバ、開墾ニ對スル所
ノ費用ノ如キモノハ差引イテ居ルノデ
アリマス、併ナガラ事情ニ依リマシテ
酌量スベキ點ガナイ場合ニ於テハ、時
價デヤルモノモアルカト考ヘテ居リマ
ス、具體的ノ問題ニ付テハ、後程能ク調
査シマシテ御答致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=37
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038・高橋熊次郎
○高橋委員 能ク分リマシタガ、是ハ
丁度直接ニ關係ガアリマセヌカラ後程
伺ヒマス、私ハ山形縣ノ例デ、自分ノ足
元ニ起ッタ事情ヲ申上ゲタノデアリマ
ス、ソレデ今尙ホ仰セニナルヤウナコ
トヲヤッテ居ナイノデアリマス、サウシ
テ素地デ拂下ゲルト云フヤウナ方法ヲ
執ッテ居ラナイノデアリマス、一坪ニ對
シテ二人位ノ勞費ハ掛ッテ居ル、所ガソ
レハ冬ノ仕事ノ無イ時ニ開墾ヲシタノ
デハナイカ、デアルカラソレハ「ゼロ」
ト見テ宜イノデハナイカト云フコトデ
採用サレナイ、稅務署ノヤリ方ナドハ
當テニナラナイノデゴザイマス、サウ
云フコトヲシテ澤山賣上ガ出來レバ賞
與金モ貰ヘルカ知レマセヌガ、ソレガ
熱心ナ苛斂誅求ト云フノデアリマス、
是ハ餘計ナコトデアルケレドモ、サウ
云フコトヲ議員諸君ガ頭ニ入レテ置イ
テ、此問題ヲ疎カニ出來ナイト云フコ
トヲ申上ゲテ置キマス、ソレカラ後程
個人トシテ政府委員室ニ伺ヒマシテ、
之ニ付テ私ノ氣付イタ所ヲ述べ、政府
委員ニ伺ヒマス、ソレデ此問題ハ打切
リマス、ソレカラ政府委員ニ承リマス
ガ、此賣買仕切書デアルトカ、或ハ送狀
トカ云フヤウナモノハ、今度ハ免稅ニ
ナルコトニナッタノデアリマスガ、是ガ
免稅ニナルコトハ理論上オカシイト思
フノデアリマス、ソレデ矢張印紙稅モ
消費稅ナドト見レバ宜イノデアッテ、又
交通稅ノ一種ト見テモ宜カラウ、サウス
ルト財產ノ移轉ヲスルト云フコトヲ一
ツノ基本觀念ニ置カナケレバナラヌ、
サウ云フ時分ニ賣買仕切書トカ送狀ト
カ云フモノハ、其稅率ニ當嵌ラナイコ
トハナイト思ヒマスガ、是ハ實際ノ上
ニ於テ
〔武藤委員長委員長席ヲ退キ
奧村理事代リ著席〕
ドウモ疑義ガ多イトカ、紛爭ガ多イト
カ云フヤウナコトハ、一寸吾〓ノ諒解
ニ苦シムノデアリマスガ、是ハ理論上
ドウシテモ免稅ヲスベキ性質ノモノデ
ハナイト思フノニ拘ラズ、之ヲ免稅セ
ラレタト云フ理由ヲハッキリ承リタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=38
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039・黒田英雄
○黑田政府委員 賣買仕切書送狀ニ付
キマシテ、是ハ寧ロ免稅ヲスベキモノ
デハナイト考ヘルノニ、何故ニ免稅シ
タカト云フ御尋デアリマスガ、賣買仕
切書送狀ト云フモノハ、其性質カラ見
レバ、或ハ免稅ヲシナイト云フコトモ
適當ト考ヘラレルノデアリマス、ソレ
故ニ今日マデ之ヲ課稅ヲサレテ居ルコ
トニ相成ッテ居ッタノデアリマス、然ル
ニ此賣買仕切書ハ、申スマデモナク御
承知ノコトト考ヘマスガ、大體是ハ如
何ナルモノデアルカト云フト或ル標
準價格ヲ以テ商品ノ賣買ヲシマシタ場
合ニ、其確定價格ヲ表示シテ精算書ノ
決算ヲ行フト云フヤウナ意味デ解釋サ
レテ居ルノデアリマス、然ルニソレ
ガ實際ニ當リマシテ、一々是ガ左樣
ナ點カラ見マシテ、賣買仕切書デア
ルヤ否ヤト云フコトハ、實際ニ當ルト
其書方ガ色〓デアリマシテ又色〓之
ヲ變更致シマシテ、果シテ是ガ賣買仕
切書ト認メ得ルカ否ヤト云フコトニ付
テ、稅務當局ト納稅者トノ間ニ非常ニ
紛爭ガ絕エナイノデアリマス、唯〓賣
買仕切書ト申シマスレバ如何ニモ明カ
ナヤウデアリマスガ、實際ニ當リマシ
テ、今申スヤウニ果シテ是ガサウ云フ
ヤウナ目的ノモノデアルカ、ソレダケ
ノ目的ヲ達スルモノデアルヤ否ヤト云
フコトニ付テ、非常ニ爭ガアルノデア
リマス、是ハ既ニ御承知デアラウト考
ヘマスガ、此賣買仕切書ニ課稅スルコ
トニナリマシテ以來、長イ間此紛爭ガ
絕ヱナイ、或ハ訴訟トナッテ稅務當局ノ
勝ツコトモアリマスルシ、或ハ時ニハ
稅務當局ノ方ガ敗訴ニナルコトモアル
ト云フノデ、非常ニ之ニ對シマシテハ
爭ガアル、而モ其モノハドウカト云ヒ
マスルト、是ハ日常取引ニ於テ頻繁ニ
發行サレテ居ルノデアリマシテ、而モ
ソレニ對シマスル爭ガ起リ易イノデア
ル、ソレ故ニ-送狀ニ付キマシテモ
同樣デアリマスガ-サウ云フ風ニ成
程其性質カラ見マスレバ、之ニ課稅ス
ルト云フコトモ適當ダラウカト考ヘマ
スガ、實際ノ稅務行政ノ便宜上カラ申
シマシテ、又納稅者ノ便宜ノ上カラ申
シマシテモ、是ハ寧ロ此免稅ヲシタ方
ガ適當デアル、ソレガ卽チ稅務行政上
ノ執行ノ圓滿ト、又官民ノ手數ヲ省略
スルト云フ趣旨デ、此改正ヲシマシタ
一ノ點デアルヽ左樣ナ事情カラ免稅ス
ルコトニ致シタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=39
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040・高橋熊次郎
○高橋委員 登錄稅ノコトニ付テ少シ
伺ツテ見タイノデアリマスガ、此登錄
稅法改正ノ第二條ノ第一號ハ兎モ角ト
シテ、現行法ノ三號デ改正法ノ二號「遺
言、贈與其ノ他無償名義ニ因ル所有權ノ
取得」ト云フモノニ對シテ、今迄ハ千分
ノ六十デアッタノガ千分ノ四十五ニ下
ゲタ、ソレカラ其次ニ「前各號以外ノ原
因ニ因ル所有權取得」ト云フモノハ、今
迄ハ千分ノ三十六デアッタガ三十三ニ
下ゲタ、斯ウ云フコトデアリマスガ、其
遺言贈與其他無償名義ニ因ル所有權ノ
取得ニ對シテ輕滅シタト云フコトニ對
シテハ、吾〓ハ非常ニ不思議ニ堪ヘナ
イノデアル、斯ウ云フモノハ謂ハバ近
頃ノ言葉デ言ヒマスルト、不勞利得
ニモナリマセウ、何等勞セズシテ利得
ヲ得テ居ルノデアル、ソレガ社會公共
ノ爲デアルナラバ格別、是ガ個人ノ所
有ト云フコトニナルト、是ガ道樂スルヤ
ウナ財源ニナラヌトモ限ラナイ、斯ウ云
フモノニ對シテハ私ハ相當ナル稅ヲ掛
ケテ宜シイト思フ、又今ノ稅率ヲモ足
リナイト思ハレル位デ、社會政策上カ
ラシテ斯ウ云フ何等代償ナクシテ無償
デ貰ヘルト云フヤウナモノニハ、租稅
ヲ課シテ差支ナイト思フ、然ルニモ拘
ラズ之ニ對シテ輕減ヲスルト云フコト
ハ、社會政策ト云フヤウナ方面ニ於キ
マシテモ、負擔ノ均衡ヲ圖ル上ニ於キ
マシテモ、私ハ矛盾ハシテ居ナイカト
思フ、此改正ノ理由ヲ知ルニ付テ私共
ハ苦ンデ居ルノデアリマス、此點ヲ伺ツ
テ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=40
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041・黒田英雄
○黑田政府委員 洵ニ御尤ナ御疑問デ
アリマス、ソレ故ニ現行法ニ於キマシ
テモ、有償取得ハ千分ノ三十六デアル
ノヲ、無償取得ハ千分ノ六十ト云フ髙
率ノ課稅ヲ致シタノデアリマス、併ナ
ガラ是ハ非常ニ稅率ガ高イ爲ニ、實際
ニ於テ無償名義デアリマスルモノハ、
無償名義ノ如ク致シマシテ、輕イ稅ノ
適用ヲ受クルト云フ弊ガ生ズルノデア
リマス、是ハ先程カラ屢申上ゲマシ
タヤウニ、法文ノ上デ體裁ヲ整ヘマシ
テモ、實際ニ於テ脫稅ヲ誘致シテ負擔
ノ公正ヲ失スルト云フコトハ、制度ノ
上ニ於テモ避ケナケレバナラヌト先程
申上ゲマシタヤウニ、之モ一ノ例ニナ
ルノデアリマス、無償名義デアルト千
分ノ六十デアル爲ニ、之ヲ賣買名義デ
取得シテ居ルト云フコトガ非常ニ多
イ、ソレガ訴訟ニナッタ結果、之ヲ無償
取得シタト云フヤウナ明カナル事實ノ
モノハ、千分ノ六十ヲ取ラレルノデアリ
マシテ、普通ノ取引ノ場合ニハ、極端ニ
申シマスレバ、殆ド全部有償名義ノヤウ
ナ形デ課稅ヲ受クル弊ヲ生ジテ居ルノ
デアリマス、全部トハ決シテ申シマセ
ヌガ、極端ニ申シマスレバサウ云フ風
ニ無償ノモノモ有償ノ形デ適用ヲ受ケ
ルコトニナッテ居リマス、是デハ負擔ノ
公正ヲ得ラレナイノデアリマス、是ハ
稅率ノ差ガ餘ニ大ナルガ故ニ自然サウ
ナル、ソレデ之ヲ成ベク實際ニ適合ス
ルヤウニシタイ、ソレニハ之ヲ成ベク
接近セシメル、併ナガラ之ヲ全然賣買
ト同ジニスル譯ニハ參リマセヌ、ソレ
デ今囘ハ千分ノ四十五ト云フコトニシ
タノデアリマスガ、之ニ依テ事實ヲ僞ッ
テ賣買ニスルト云フヤウナ弊ヲ少クス
ル、理想ハサウ云フ事ノ無イヤウニシ
タイノデアリマスケレドモ、先ヅ其通
リニナリマセヌデモ、之ヲ少クシテ負
擔ノ公正ヲ得セシムルコトニナリマス
ヤウニ考ヘマシテ、下ゲマシタ次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=41
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042・高橋熊次郎
○高橋委員 サウ致シマスルト、此改
正ノ第二號デアリマスルガ、斯ウ云フ
ヤウナ事實ハ、主ニ父子ノ間デアルト
カ、或ハ親族間デアルトカ、多クハサウ
云フ間ニ是ガ行ハレルノデアリマス
ガ、餘リ緣故ノ遠イ者ノ間ニ左樣ナ無
償名義デ財產ヲ讓渡スト云フコトハ
無イト御認メニナッテ居ルノデアリマ
セウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=42
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043・黒田英雄
○黑田委員 是ハ前申上ゲマス通リ、
實際ニ適用シマス件數ガ非常ニ少ナイ
ノデアリマス、隨ッテ之ニ當ルベキモノ
ハ、ドウ云フモノガ脫稅サレルカト云
フコトニ付テノ調査ハ、極メテ困難デ
アリマスガ、御趣旨ハ無償デサウ云フ
事ヲスルモノハ、何等カ緣故者デアル
カ、政府モサウ認メルカト云フコトデ
アリマスガ、大體ニ於テハ左樣デアラウト
思ヒマス、併ナガラ今日此規定ノ適用ニ
ナッテ居ルモノハ、多クサウ云フ風ナモ
ノデハナイノデアリマシテ-是ハ全
國ニ付テ、實ハ旣ニ申シマス通リ實際
ノ調ハ出來ナイノデアリマシテ、東京
ノハ調ベタコトガアリマシタガ、一寸
此處ニ見當リマセヌガ、親族間ノ場合
デアッタト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=43
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044・高橋熊次郎
○高橋委員 全國的ノモノデナクト
モ、東京邊リニハ多イダラウト思ヒマ
スカラ、明日デモ又其材料ガ若シ印刷
ニデモ出來マスナラバ項載致シタイト
思ヒマス、ソレデナケレバ明日承ッテモ
宜シウゴザイマス、成べクナラバ、簡單
デ宜シウゴザイマスカラ、書付ニデモ
シテ御渡シ下サレバ便宜ダラウト思ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=44
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045・黒田英雄
○黑田政府委員 一寸御注文ハ斯ウ云
フ風ナ御趣意デシタカ、今日現行法第
二條ノ第三號ヲ適用致シテ居リマスモ
ノハ、ドウ云フ場合デアルカト云フ御
尋デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=45
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046・高橋熊次郎
○高橋委員 サウデス、サウ云フ場合
デス-サウ致シマスト只今ノ御說明
ニ依リマスト、現行ノ第三號ト第四號
トノ關係ニ於テ、若シ此第三號ノ稅率
ヲ下ゲナイト云フト、第四號ノ方ニ假
裝致シテ、卽チ假裝賣買ヲ致シテ脫稅
ヲ圖ルト云フヤウナ事ガ多イ、斯ウ云
フヤウナ御趣旨ノヤウデス、若シ斯ウ
云フ事ヲシテ脫稅ヲ圖ラウト云フヤウ
ナ者ガアリトスルナラバ、今囘ノ改正
ニ依リマスト第三號ノ方ハ四十五、第
四號ノ方ハ三十三ニナッテ居ルノハ、
矢張茲ニ十二ト云フ隔リガアル、今マ
デハ非常ニ隔リガ多カッタカラ、斯ウ云
フ不正ナ事ヲヤルノデアルガ、今度ハ
隔リガ少クナッタカラ、假裝賣買ナドヲ
シテ脫稅ヲ圖ルヤウナコトハナカラウ
ト申サルル、然シ乍ラ脫稅ヲ圖カラウ
ナドト云フ者ハ、一錢デモ一厘デモソ
コニ儲カルト云フ事ノ途ガアルナラ
バ、嚴然之ヲ行フト云フヤウナ精神ヲ
持ッテ居ルダラウト思フノデアル、故ニ
兩者ノ間ニ隔リガアル以上ハ、サウ云
フヤウナ事ハ斷ジテ避ケ得ラレナイダ
ラウト私ハ考ヘマスノデ、六十デアッタ
カラサウ云フ脫稅ヲ圖ルガ、四十五ニ
ナッタカラ脫稅ヲ圖ル者ガ無クナルダ
ラウト云フヤウナコトハ、吾〓ハ考ヘ
ラレナイ事デアルノデアリマス、左樣
デアリマスカラサウ云フ意味ニ於テ之
ヲ減額シタトスルナラバ、理由ヲ成サ
ナイ事ダラウト思フ、又此父子兄弟ナ
ドノ間ニ行ハレタル無償ノ贈與デアル
トシタナラバ、若シ是ガ第四號ノ賣買
ヲ假裝シテ登錄ヲ申請シタトスルナラ
バ、多クハサウ云フ場合ニハ小ナイ子
供デアルトカ、或ハ弟デアルトカ云フ
ヤウナ者デ、賣買ノ資金ヲ支拂フダケ
ノ財產ガ無カルベキ筈ノモノガ多イダ
テウト思フ、サウ云フ場合ガ實例デモ
多イダラウト思フ、吾〓ガ耳ニスル所
モ多クハサウデアル、卽チ小サイ子供
デアルトカ或ハ弟デアルトカ云フヤウ
ナ、贈與者財產ヲ相續スベキ者トカ、或
ハ財產ノ分與ヲ受クルトカ云フヤウナ
者ニ、豫メ賣買ヲ假裝シテ登錄ノ申請
ヲナシテ課稅ヲ免レヤウトスル、斯ウ
云フ場合ガ多イヤウニ吾〓ハ聞込ンデ
居ル、サウ云フ場合デアッタナラバ、買
取ルダケノ資力ノ無イ者ニ現金ヲ與ヘ
テ、賣買ヲ致シタト云フ事實ヲ引捕ヘ
テ、茲ニ遺產相續ノ相續稅ヲ課ケルト
イフ道ガアルノデアル、卽チ第四號ノ
賣買ニ關スル課稅以上ノ負擔ヲ負ハセ
ルコトガ出來ルト云フコトニナルダラ
ウト思フ、ソレデアリマスカラシテ假
裝取引ヲ致シタ假裝ナル事實ヲ拵ヘ
テ、實際現行法第三號ニ該當スベキ課
稅ヲ、現行法ノ第四號ノ課稅ヲ受ケテ脫
稅ヲナサントスルモノハ、之ニ依リテ
防止出來ルト考ヘラレマス
〔奧村理事委員長席ヲ退キ武藤
委員長復席〕
而シテ現行法第三號ノ課率ヲ減額シ
テ、今黑田政府委員ノ說明ヲサレタ脫
稅ヲ防止スルト云フコトハ、毫モ意味
ヲ成サヌコトニナッテ、却テ之ヲ下ゲタ
爲ニ更ニ大脫稅ガ行ハルル端ヲ開クコ
トニ相成リハセヌカト思ハレルノデア
リマス、卽チ相續稅ト此改正登錄稅法
兩方對照致シマスル時ニ、相續稅ヲ免
ルルガ爲ニ現行法第三號ノ無償ニ依ル
所有權ノ取得ト云フ此條項ニ當嵌メ
テ、遺產相續ヤ或ハ家督相續ト云フヤ
ウナ事ガ行ハレル場合ガ增シハ致スマ
イカ、登錄稅ノ方ガ稅率ガ少イカラ、相
續ヲスルヨリモ無償贈與トシテ登錄シ
タ方ガ利益デアル、玆ニ大脫稅ガ行ハ
レル、ソレデスカラ私ハ有產階級ノ方
面ニ於ケル脫稅ノ奬勵方法ヲ此デ設ケ
ラレルヤウニシカ思ヘナイ、ソレデア
リマスカラ此結果ヲ此儘デ押通シテ行
ツタナラバ、ドウナルカト申シマスト、
是ハ要スルニ千分ノ四十五以上ノ相續
稅ノ率ガアルトスレバ、ソレ以上ノ大
資產家ト云フモノハ之ニ依テ腦稅ヲ完
全ニスルコトガ出來ルト云フ一ツノ方
法デアル、ソレデアルカラ此課稅ニ依
テ利益ヲ受クル者ハ大資產家デアル、
斯ウ云フ工合ニ解セラレルヤウデアリ
マスカラ、今脫稅ノ方法ヲ防ギ得ルト
云フヤウナ確乎タル見込ガ立タナケレ
バ、却テ私ハ是ハ大富豪ニ對シテ脫稅
ヲ奬勵スル方便ニナル、脫稅奬勵方法
ダ、ソレハ相續稅ノ脫稅奬勵法ニ此法
律ガナルト云フコトノ危險ガアルト云
フコトヲ玆ニ申上ゲナケレバナラヌ、
サウ云フ意味ニ於テ私ノ只今申上ゲタ
所ノ、此稅率ヲ千分ノ六十ト云フモノ
ヲ四十五ニ引下ゲタ爲ニ、假裝ノ賣買
法ノ第四號ヲ適用シテ相續稅ノ脫稅ヲ
圖ルト云フヤウナ行爲ヲ防止スルト云
フヤウナ事ハ、事實不可能デ、却テ是ガ
爲ニ益相續稅ノ脫稅ヲ圖ラシムルヤ
ウナ、相續稅脫稅ノ奬勵法ヲ政府ハ設
ケラレル、斯ウ云フコトニナル危險ガ
アルト思フノデアリマス、果シテ此第
三號ノ稅率ヲ下ゲタガ爲ニ、第四號ノ
假裝賣買登記ト云フモノガ玆ニ絕滅ス
ルコトガ出來ルト云フヤウナ確カナ御
見込ガアルカドウカト云フコトヲ重ネ
テ御伺致シタイト思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=46
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047・黒田英雄
○黑田政府委員 先程申上ゲマシタ調
ガ茲ニ手許ニ在リマシタカラ申上ゲマ
ス、是ハ先程申上ゲマシタヤウニ、東京
區裁所デ實ハ一部分デ調ベタ統計デア
リマスカラ、勿論全國的ニ申上ゲルコ
トハ出來ナイノデアリマス、大正十一
年ニ取扱ヒマシタ件數ハ十三件アリマ
スガ、二件ガ遺言デアリマシテ十一件
ガ贈與デアリマス、ソレ等ノ事實ヲ見
マスト云フト、贈與ガ訴訟和解ニ基ク
モノ、或ハ共有權ノ放棄、是ハ贈與以上
ノ無償名義デアリマス、國有財產ノ無
償拂下ト云フ風ナモノガアルヤウデア
リマス、卽チ十三件ハ遺言二、贈與十一
デアリマス、是ダケシカ實ハ手ニ這入
リセヌカラドウゾ御許シヲ願ヒタイ
ソレカラ此稅率ヲ引下ゲルト云フ結
果、假裝ノ賣買ニ依テ脫稅ヲ圖ル脫稅
ト云フト適當デナイカモ知レマセヌ
ト云フヤウナモノガ無クナッテ、此現行ガ、假裝ノ賣買ヲ絕滅スル考デアルカ
ト云フ御話デアリマスガ、是ハ先程申
シタ通リ是ニ依テ根絕スルコトハ出來
ルト云フコトヲ申上ゲルコトハ出來ナ
イト思ヒマス、ソレハ是デモマダ假裝
ノモノガ絕體ニ無クナルコトハ出來ナ
イト思ヒマス、併シ今日ノ如ク是ガ非
常ニ多イト云フト、非常ニ苦心ヲシテ
迄モサウ云フコトヲスル者ガ出來マス
ガ、之ヲ少クスル、一方ニ於キマシテ、
御心配ニナリマシタヤウナ相續稅ノ關
係ヲ考慮致シマスレバ、丁度四十五ニ
致シマスレ、バ相續稅ヲ誘致スルト云
フ弊モナク、又其差モ相當以前ヨリハ
千分ノ十五モ少クナルノデアリマスカ
ラ、是ナレバ先ヅ實際ノ登記モ相當ニ
殖エテ來ル、負擔ノ均衡ヲ得ラレルト
思ヒマス、勿論是ハサウナレバ相續稅ノ
方ノ脫稅ト云フモノヲ益誘致スルト云
フコトニナリマスカラ、相續稅ニ付テ
相續稅ノ脫稅ヲ誘起シヤシナイカ、實
際ニ於テ取調ヲ能クシテ行ケバ宜イデ
ハナイカト云フ御話モアリマシタガ、
一應御尤ト思ヒマス、此登記ノ場合ニ
於テ其事件ノ內容ニ立入ッテ、色〓調査
ヲスルコトガ實際上ニ於テ困難デアル
ト云フコトハ、先程申上ゲマシタヤウ
ニ司法當局トシテ、非常ニ登記所ノ取扱
ノ上カラ困難デアル、ソレガ爲ニ早ク
シナケレバナラヌ所ノ登記ガ非常ニ遲
レルト云フヤウナコトヲ生ジマシテ、
色〓取引ノ上ニ不便デアリマスカラ、
一々登記所ガサウ云フモノハ實體ニ這
入ッテ調査スルト云フコトガ-或ハ
親族間ナラ宜イデハナイカト云フ御話
モアリマシタガ、是ハ親族デアルカド
ウカト云フヤウナコトハ、或ハ戶籍謄
本ニ依テ調ベルトカ、色こナコトヲシ
ナケレバナラヌガ、ソレハ非常ニ困難
デアルト云フコトモアルノデアリマ
ス、其故ニ、無償名儀ヲ假裝シマシテ或
ハ賣買ニナリマスト、尙ホ之ヲ取締ル
コトガ困難デアリマス、其故ニ法ノ立
前ノ上カラ餘リ差ヲ多クシテ導イテ行
クコトガナイヤウニ、適當ナ程度ニ於
テ止メル必要ガアルト思ヒマス、サウ
考ヘテ斯ウ致シマシタ、之ニ依テ相續
稅ノ、大資財家ヲ輕クシテ此方ニ持ッテ
來ルヤウナ弊ガアリハシナイカト云フ
御話デアリマス、是モ一應御尤デアリ
マスガ、成程非常ナ多額ノ不動產デモ
アリマスレバ、此方ヘ持ッテ來ル方ガ率
ガ少クナルカモ知レマセヌガ、併シサ
ウ云フ風ナ不動產ノ價格ニ依テ此相續
稅ノ如キ稅率ヲ盛ル譯ニ行カヌノデ
アリマスカラ、先ヅ普通ニ行ハレル
中庸ヲ得タル所ヲ見テ行カナケレバナ
ラヌノデアリマスカラ、ソレニハ四十
五位デアリマス、レバ先ヅ適當デアラウ
ト云フ風ニ考ヘマシタ、ソレガ爲ニ非
常ニ登錄稅ノ脫稅ト云フモノヲ之ニ依
テ導クトマデハ考ヘテ居ラヌノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=47
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048・高橋熊次郎
○高橋委員 ドウモ只今ノ御質問デハ
滿足出來マセヌ、何時デモ脫稅ヲ防グ
脫稅ヲ防グト云フノデアリマスガ、稅率ノ
改正デ脫稅ヲ防グト云フコトハ私ハ出來
ナイト思ヒマス、又サウ云フコトヲセ
ヌデモ宜カラウト思ヒマス、脫稅ハ脫
稅ヲ防グ方法ガアル、只今登記所デハ
中ミ容易ニ調ベラレヌト云ハレマシタ
ガ、實際ニ於テ登記所ナドハ普通ノ期間、
又期間ナドノナイモノハ其間際迄引張
ツテ置イテ、色〓ナ交渉ヲヤッテ居ルト
云フコトハ實際ニ於テ見ル所デアリマ
ス、地方等ニ於テハ中〓期間ノ無イモ
ノ、或ハ少シ調ベルコトガアレバ隨分
長イ間取調ベヲ要スルト云フノデ、大
分差支ニナルコトガ多イ、サウ云フコ
トヲ實際ニヤッテ居ルノデアルカラ、殊
ニ斯ウ云フ極ク僅カナル事件ニ對シテ
愼重ニ取調ヲシテモ差支ガナカラウト
思フノデアリマスノデ、實際斯ウ云フ
場合ニ非常ニ取急イデ登記ヲシナケレ
バナラヌト云フヤウナ場合モ、亦實際
ニ於テ尠ナカラウト思フノデアリマ
ス、此相續稅ヲ遣レヤウト云フヤウナ
場合ハ尠カラウト仰セラレルケレド
モ、隨分有利ナ四十五ナドト云フト、家
督相續ノヤウナ場合ニ於キマルト、十
五萬圓ヲ超エルト云フ金額ハ千分ノ四
+、二十萬圓ヲ超ユルト云フコト千分
ノ五十ニナッテ、二十萬圓以上ノ金額ト
云フヤウナモノニ對シテ-其中ニ十
萬圓トカ十五萬圓トカ云フヤウナモノ
ハ此方ニ依テズット稅率ヲ下ゲテ貰ッ
テ、サウシテヤルコトガ出來マセウシ、
殊ニ遺產相續ノ如キニ當ッテモ一番輕
イ方デモ七萬圓デ始メテ千分ノ五十
五五萬圓ヲ超エルト千分ノ四十五ニ
ナル、七萬圓ノ金額デモ既ニ此ノ方デ登
錄ヲシテシマウト後ノ遺產相續ナドハ
シナイデモ宜イト云フコトニナル、隨分相
續稅ノ脫稅ヲ圖ルニ都合ガ好イ、斯ウ
云フ改正ノ結果ト云フモノハ、ドウシ
テモ相續稅ノ方ノ脫稅ヲ、今迄圖ラウ
トシナカッタ者ヲ刺戟シテ、圖ラシムル
ヤウニナルダラウト思フ、先ノ例ニ依リ
マストサウナル、今迄ハ千分ノ六十デ
アッタカラ脫稅ガ多カッタケレドモ、千
分ノ四十五トスルナラバ脫稅ヲ尠ナ
カラシメルト云フ仰セデアル、ソレナ
ラバ今迄此千分ノ六十デ以テ相續財產
ヲ多ウカラシメネバナラナカッタ、千分
ノ四十五迄引下ッタカラ、相續財產ガ少
クテモ脫稅ノ利益ヲ受ケルカラト云フ
ノデ、相續稅ヲ納メル者ガ此方法、假裝
的方法ニ依テ、サウシテ此相續稅ヲ脫稅
致スト云フヤウナ機會ガ多クナルト思
フ、ソレデアルカラ今迄ノ政府委員ノ
御答辯ニ依ルト、登錄稅ノ方面ハ是デ
輕クナッテ、脫稅ノ機會ガ少クナル、稅
率ヲ低クスレバ少クナルト云フヤウナ
論法デアルガ、今度ハ相續稅ノ方ノ脫
稅ヲ刺戟スルト云フ機會ヲ-稅率ヲ
低クシタ爲ニ今度ハ相續稅ノ脫稅者ガ
利益スル所ガ多イ、ソレデアルカラ相
續稅ノ脫稅ヲ今度ハ奬勵スルト云フコ
トニナル、今日相續稅ト云フモノハ稅
務署ニ於テ洵ニ困難ヲ致シテ、稅金ヲ
取立テテ居ルト云フコトハ御承知ノ通
リデアル、登記ヲシナイノデ成べク脫
稅シタイ、成ベク脫稅シヤウト云フガ
今日ノ狀態デアル、サウ云フ時ニ當ッテ
此相續稅ノ脫稅ニ適當スルヤウナ、殊ニ
大ナル資產家ニハ最モ脫稅ノ機會ヲ容
易ニスルト云フヤウナ法律ヲ御定メニ
ナッテ、負擔ノ均衡デアル、或ハ脫稅ノ
防止デアルト云フヤウナ理由ガ何處
ニ在ルカ、之ニ依テ今迄ノ脫稅ヲ防止
スルト云フヤウナ理由ニ依テ此稅率ヲ
御定メニナッタト云フ理由ハ消滅致スコ
トニナルト思フノデアリマス、ソレデ
大資產家擁護ノ爲ニ此稅法ノ改正ヲ行
ツタト云フ事以外ニハ、何等問題ガナ
クナルコトニ相成ルト思ヒマスガ、此
點ニ付テ御說明ガ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=48
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049・黒田英雄
○黑田政府委員 ドウモ先程申上ゲマ
シタノヲ十分ニ御諒解下サラヌノヲ遺
憾ニ思ヒマスガ、相續稅ヲ若シ脫稅ス
ルト云フコトデアリマスレバ、先程申
上ゲマシタヤウニ千分ノ六十ヲ拂ハズ
シテ、之ヲ賣買ニ假裝シテ千分ノ三十
五迄實際ニ於テ行ッテ居ルノデアリマ
ス、千分ノ六十ヲ今迄皆納メテ居ッタ、
其千分ノ六十納メテ居ッタモノガ千分
ノ四十五ニナルト云フコトニナリマス
ト、ソコニ現實ニ千分ノ十五ト云フモ
ノノ輕減ヲシタ、ソレ故ニ之ヲ死亡ス
ル迄持ッテ居ラヌデ、死亡前ニ贈與スル
ト云フヤウナコトニシテ千分ノ四十
五、千分ノ四十五以上ニ當ルモノハ其
場合ニ於テ、死亡前ニ於テ贈與シテ、千
分ノ四十五デ以テ輕減ヲ圖ルト云フヤ
ウナコトニモナリマスガ、今迄申スヤウ
ニ今日ハソレヨリ一步進ンデ千分ノ三
十五迄行ッテ居ル、ソレデ贈與デアルナラ
バ贈與ニ於テ課稅ヲシタイ、ソレニハ適當
ナ稅率ニスルガ宜カラウ、千分ノ四十五
ト云フコトニシテ、今後ハ千分ノ三十
五デ納メテ居ッタノヲ千分ノ四十五ヲ
納メシメヤウト云フ趣旨デアルノデア
リマスカラ、脫稅ヲ助長スルト云フ方
法デハ寧ロナイノミナラズ、此相續稅
ノ方ニ於キマシテ贈與ヲ致シマスニ付
キマシテハ、是ハ髙橋サンノ御話ニナッ
タヤウナ、若シ財產ヲ持ッテ居リマス者
ガ贈與致スト致シマスガ、之ヲ一度ニ
贈與スルト云フコトハ少々行ハレヌノ
デアリマス、分割シテ贈與スルコトガ
屢行ハレルノデアリマス、ソレナラ
バソレヲ相續稅ノ方デ何トカシテ抑ヘ
タナラバ宜イト云フコトニナルガ、是
ハ相續稅ノ方デナク、今日ノ立前デハ
登錄稅ノ方デ來テ居ルノデアリマス
ガ、分割ヲシテ若シ贈與致スト云フコ
トニナリマスト云フト、矢張二十萬圓
ノモノデアリマシテモ、十萬圓宛ヲ贈
與スルト云フヤウニナレバ、十萬圓ト
云フ低イ稅率ニナッテ來ルノデアリマ
ス、サウ云フヤウナコトモアルノデア
リマスカラ、强チ是ガ直ニ今日千分ノ
六十ヲ納ムベキモノデアル、千分ノ六
十ナラバ生前ノ贈與ト云フコトヲ抑ヘ
タノデアルガ、千分ノ四十五ニ至ッテハ
ソレヲ抑ヘズシテ、千分ノ四十五ニ持ッ
テ來テ相續稅ノ方ノ輕減ヲ圖ルト云フ
コトニハ必ズシモナラヌ、其位ノモノデ
アルナラバ、サウ云フ惡イコトヲスル
ナラバ、今迄ハ千分ノ三十ヲ持ッテ來タ
モノデアリマス、ソレヲ成ベク矯正シ
テ行カウト云フコトデ、玆ニ適當ノ稅
率ニ直シマシタノデアリマス、然ラバ
之ニ依テ總テノ脫稅ヲ防止シ得ルカ
ト申シマスト、是ハ先程申シマシタヤ
ウニ、之ヲ以テ絕滅スルト云フコトハ
困難デアリマセウ、併シナガラ成ベク
此法デ以テサウ云フ脫稅ニ導クヤウナ
コトハ避ケテ、之ヲ緩和シテ置イテ、成
ベク實際ニ實行ヲスルヤウニスルト云
フコトガ、立法ノ方カラ見マシテモ注
意シナケレバナラヌコトデハナイカト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=49
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050・高橋熊次郎
○高橋委員 餘リ諄イヤウデアリマス
ガ、私ハ此問題ニ付テハ今黑田政府委
員ノ仰セニナルヤウニ此方デハ理解シ
ナイノデハナイ、理解シテ居ルカラ益
疑問ヲ生ズルノデアリマス、假裝賣
買ニ依テ、詐稱名義ニ依テ、所有權ノ
移轉ト云フコトヲ逃レルト云フヤウ
ナコトノ防止ガ出來ル出來ナイト云フ
コトハ、先ヅ御預リニシテ置イテモ-
-私ハ出來ヌト思フノデアリマスケレ
ドモ、御預リニシテ置イテモ、相續ノ關
係ニ於テハ益相續稅ノ脫稅ト云フコ
トヲ免レルコトハ容易デアルト云フコ
トハ、是ハ政府委員モ御認メデアラウ
ト思フ、今迄モサウデアッタヂヤナイ
カ、其度ガ一層酷クナッタ、斯ウ云フコ
トヲ御認メニナルダラウト思フ、親父
ガ子供ニ以テ行ッテ資產ヲ相續サセル
ト云フ場合ニ當ッテ、相續スルト相續稅
ガ取ラレルカラ、其前ニ當ッテ資產ヲ贈
與スル、無償デヤルト云フコトハ誰ニ
憚ルコトモナイ、公明正大ニ無償デヤ
ル、無償デヤルト四十五ニナル、相續資
產ガアルナラバ四十五デドン〓〓無償
デ贈與ガ出來ル、サウスルト相續資產
價格ガ減ルト云フコトニナル、サウ云
フコトヲ防グト云フナラバ、寧ロ只デ
ヤルヤウナ、無償ノ贈與ハ社會公共ニ
モ關係ガナイ、社會公共ニ關係ガアレ
バ、ソレ〓〓ノ方法デ免稅モサレマセ
ウ、私有財產ヲ無償デヤルト云フコト
ハ、六十デ足ラナカッタナラバ七十、八
十、百ニシテモ何等社會政策上差支ナ
イダラウト思フ、恐ラクハ今日ノ觀念
ニ於テハ寧ロ之ヲ高メテ、サウ云フヤ
ウナ者ノ脫稅ナドヲ防グヤウニスルノ
コソ本當デハナカラウカト考ヘテ居ル
ノデアリマス、况ヤ負擔ノ輕減ト言ッテ
モ物ニ依ル、サウ云フ風ニアナタ方ガ
物ニ依テ上ゲルベキモノハ上ゲ、負
擔能力ノアル者ニ對シテ上ゲテ、ナイ
者ニハ減ズルト云フノガ此改正ノ精神
デアルト言ハレテ居ル以上ハ、此負擔
能力ノアル、只デ貰フヤウナモノハ全
部國家ニ納メテモ仕方ガナイ、サウ云
フ負擔能力ノアル者ニ益稅率ヲ高メ
テ、相續稅ノ脫稅ナドヲ防グト云フコ
トガ私ハ當リ前デハナイカト思フノデ
アリマス、ソレニモ拘ラズ之ヲ耕引下ゲ
テ、サウシテ一方デハアナタ方ノ言ハ
レルヤウニ効果ガ上ルカ上ラナイカ分
ラナイコトヲ致シテ、現實ニ相續稅ノ
脫稅ヲ圖ルニ便利ニ致スト云フヤウナ
形ニナルノデアル、ソレデアリマスカ
ラ之ヲ引下ゲタト云フ理由ハ何等ナリ
ト寧ロ惡イ改正デアル、是デハ此法ヲ
惡化シタト云フヤウニ相成ル危險ガア
ルダラウト思ヒマス、其邊ノ御意見ヲ
伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=50
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051・黒田英雄
○黑田政府委員 先程私ガ申述ベタ中
ニ少シ誤ッテ御解釋ニ相ナッタヤウナ個
所モアッタヤウデアリマスガ、是ハ此度
申述ベル所デ訂正ヲ致シマスルガ、大
體論ト致シマシテ高橋君ノ御述ニナル
所ハ、相續稅ガ課セラレルト云フヤウ
ニナリマスト云フト重クナルカラシ
テ、寧ロ之ヲ贈與ト云フコトデ立派ニ
贈與ノ形デヤッテ、ソウシテ千分ノ四十
五デ以テ課稅ヲ受ケテ、遁レルト云フ
弊ヲ助長スルモノデアルト云フコト
ガ、ドウモ御尋ノ根本ニナッテ居ルヤウ
デアリマス、併シ之ニ付キマシテハ先
程モ申上ゲマシタヤウニ、サウ云フヤ
ウナ態ナラバ今日ニ於テハ千分ノ四十
五デナシニ、千分ノ三十五マデ行ッテ脫
稅ヲシテ居ルト云フモノガアリマスカ
ラ、寧ロ之ヲ千分ノ四十五ニ致シマス
レバ、尙ホ幾分カ之ヲ救ヒ得ルト私ハ
考ヘテ居リマス、成程今日ハマダサウ
云フ千分ノ六十ヲ課セラレテ居ッテ、ソ
レガ千分ノ四十五ナラバ十五ノ輕滅デ
アリマスカラ、先程申シマシタヤウニ、
千分ノ六十ヲ課ケラレテ居ル者ハ極メ
テ少數ナ正直者デアルカ、然ラザレバ
胡魔化シ得ナイ者、或ハ他ニ訴訟ノ結
果デアルトカト云フ風ナ者デアル、隱
シ得ナイ者ガ大多數ヲ占メテ居ルヤウ
ニ聞イテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ
寧ロ之ヲ千分ノ四十五デ以テ實際ニ納
メル方ガ、是ハ相續稅トシテノ權衡ヲ
得ル、相續稅ノ權衡ヲ得ルト云フノハ
ドレト權衡ヲ得ルカト云フ問題ニナル
ノデアリマシテ、是ハ先程私ノ申上ゲ
方ガ少シ適當デナカッタニ氣付イタノ
デアリマスルガ、金錢等ノ贈與ヲ致シ
マシタ場合ニ於テ、是ハ遺產相續トシ
テ課稅ヲシテ居ル、不動產ニ於キマシ
テハ是ハ登錄稅ニ於テ課稅ヲ致シテ居
ル、所ガ此金錢等ヲ贈與致シマス所ノ
傾向ヲ見マシテモ、金錢ノ贈與ト云フ
モノハ、必シモ今日二十萬圓ナラ二十
萬圓ト云フ金錢ヲ一時ニ纏メテ贈與ヲ
致シマスト、重イ稅率ニナルノデ増田.
之ヲ度〓ニ分割シテ贈與スルト云フコ
トガ起ルノデアリマス、是ハ必シモ脫
稅ノ趣旨デハアリマセヌ、子供ニ資產
ヲヤルノニ、自分ノ資產ニ特ニ收入ノ
アッタ時ニ、之ヲ其時々々ニヤルト云フ
コトハ、是ハ必シモ脫稅デナクシテ適
當ノ處置カモ知レマセヌガ、併シソシ
ニ依テモ分割シテヤッタ結果ハ稅率
ガ低イコトニナル、サウ云フコトガ此
相續稅法ノ第二十九條エ於キマシテハ
アリ得ルノデアリマスルカラ、權衡ヲ
見マシテ此不動產ノ登錄稅ヲ決メマス
ル場合ニ於テモ、必シモ此多クノ財產、
纏ッタ財產ナラバソレト同ジ稅率ヲ課
ケルト云フコトデナクトモ、大體此贈
與サレマスル相續ノ場合ニ於テモ起リ
得ル普通ニ多クノ場合ニ中庸ヲ得ル
ヤウニ、權衡ヲ見マシテ決メマシタ方
ガ宜シイカト思フノデアリマス、ソレ
ガ千分ノ四十五ヂアリマスレバ、最モ
多ク起ル所ノ中庸ヲ得タモノデアラウ
ト考ヘマスカラ、千分ノ四十五ノ稅率
ヲ實際ニ於テ行ハレマスナラバ、之ニ
依テ相續稅法ニ於テモ適當ニ權衡ヲ
得ラレマスルシ、又相續稅ノ脫稅ヲ圖
ルト云フコトモ起ラナイト云フヤウニ
考ヘルノデアリマス、ソレカラ今日カ
ラ見マシテモ、千分ノ三十五ノ假裝シ
テ居ルモノハ幾分デモ、全部トハ行キ
マセヌデモ、之ヲ匡正スルコトガ出來
マスレバ、是ハ負擔ノ公平ノ上ニ喜バ
シイ結果デアラウカト云フ風ニ考ヘテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=51
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052・高橋熊次郎
○高橋委員 隨分懇切丁寧ヲ極メラレ
タ御說明デアッテ感謝致シマスケレド
モ、ドウモ一向吾〓諒解スルコトガ出
來ヌノデアリマス、殊ニ今マデ課稅率
ガ六十デアッテ今度四十五ニシタ、今マ
デ相續稅ノ方面デ脫稅ヲ圖ラウトシタ
者ガ、今度ハ四十五ニ下ゲラレタカラ
脫稅ヲ圖ラレナイコトニナルデアラウ
ト云フコトデアリマスガ、サウ云フ御
議論ハ吾〓ハ容易ニハ受取ルコトガ出
來マセヌ、矢張此相續稅ノ方面ニ於キ
マシテハ、下ガレバ下ガル程益脫稅ヲ
圖ル機會ガ多クナル、四十五位ニナッタ
カラ脫稅ヲ圖ラヌデモ宜カラウト云フ
風ニハ必シモ言ヘナイ、是ハ先程モ申
上ゲマシタガ、四十五ト云フノハ五萬
ヲ超ユルモノト云フモノガ一番安イ、
或ハ相續者ノ資格ニ依テハ四萬圓ヲ超
ユルモノモアレバ、或ハ四十五ト云フ
モノハ二萬圓ヲ超ユルモノモアル、ソ
レデスカラ多クノ資產家ハ殆ド大手ヲ
振ッテ脫稅ヲスル、今マデ賣買ニ依リマ
スト、相續稅ノ第二十三條ニ依テ不動
產或ハ船舶以外ノモノガ五百圓以上ニ
ナルト、無償デ贈與シタモノハ遺產相續
ノ例ニ依テ課稅スルト云フヤウナコト
ガ書イテアルカラ、ソレデ取締ルコト
モ出來マセウケレドモ、斯カル相續稅
通脫ノ場合ハ何等取締ルコトガ出來ナ
イ、今度ハドン〓〓相續稅ノ脫稅ヲ圖
ルト云フコトニナルト、法ノ威信モ何
ニモアリハシナイ、サウ云フコトヲ知
ラズシテ法ヲ定メタト云フコトハ粗漏
デアッテ、サウ云フコトヲ知ッテ改正ヲ
行フト云フコトハ、資產家ノ擁護ニナ
ルト言ッテモ辯解ガ出來ナイデハナイ
カト思フ、千分ノ六十ヲ四十五ニ滅シ
タカラ、サウ云フコトハアルマイトノ
仰セデアリマスケレドモ、ソレデハ益
其弊ガ助長サレル、若シ是ガ六十デアツ
タモノヲ百ニシタ、ソレダカラ最早サ
ウ云フ脫稅ヲスル機會ハ小クナルデア
ラウ、斯ウ云フコトデアルナラバ私聞
エルデアラウト思ウガ、ソレヲ脫稅ノ
機會ガ少クナラウト云フコトヲ仰ッシ
ヤルノハ、私ハ異ナコトヲ承ルモノデ
アルト思フ、ソレデ黑由政府委員非
常ニ眞面目ニ御答辯下サル御誠意ニ對シ
テハ私ハ敬意ヲ表スルケレドモ、或ハ
此改正法案ヲ擁護スル爲ニ間違ッタコ
トヲ强辯シテオヰデニナルノデハナイ
カ、私ノヤウナ初陣者ハ此位丁寧ニ言ッ
タラバ頭ガ混亂ニ陷リ、意識ガ錯覺ニ
陷ッテ降參ヲスルデアラウト云フヤウ
ナコトデ、御答辯ヲナスッテ居ラッシヤ
ルノデハナイカト疑ハルルノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=52
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053・黒田英雄
○黑田政府委員 決シテ最後ニ御推察
ナサルヤウナ趣旨デ御答辯致シテ居ル
ノデハナイノデアリマス、御疑ノ點ヲ
只今能ク承ッテ居リマスルト、或ハ斯ウ
云フ所ニ起ッタノデハナカラウカト一
寸感ジタノデアリマス、或ハサウデナ
イカモ知レマセヌガ、登錄稅ヲ千分ノ
百ニデモシタラバ、脫稅ハ防グコトガ
出來ルト云フヤウナ御話モアリマシタ
カラ、サウ云フ威ジヲ懷イタノデアリ
マスガ、相續稅ノ立前ニ於キマシテ
不動產ニ付キマシテハ、第二十三條ニ
依テ贈與シタ場合ニ於キマシテハ、不
動產ニ付テハ登錄稅ヲ課シテ相續稅ヲ
課セナイ、不動產以外ノモノニ付キマ
シテハ遺產相續トシテ相續稅ヲ課スル
ト云フ立前ニナッテ居ルノデアリマス
カラ、不動產ヲ贈與スル、例ヘバ親族間
ニ贈與スル場合ニ於テハ登錄稅ガ課カ
ルダケデ、相續稅ハ課ケナイノデアリ
マス、ソレ故ニ之ヲ千分ノ百ニスルト
カ、或ハ百五十ニスルトカ云フコトニ
ナレバ、是ハ餘程重クナッテ、相續稅ニ
代ハル稅ニナリマスケレドモ、ソレヲ
實際納メテ吳レレバ非常ニ重イ負擔ヲ
ソコニシタコトニナル、高橋君ノ御希
望ノ通リ重イ負擔ヲスルコトニナル、
併ナガラ稅率ガ高イ爲ニソレニ代ハル
ト云フ場合、假裝シテ賣買ニシテシマ
フト相續稅ハ課カラナイ、サウシテ賣
買假裝ノ下ニ千分ノ三十五ト云フ稅ガ
今日謀カルト云フ爲ニ、却テ不動產以
外ノ有價證劵ト云フモノヲ贈與シタ場
合ニ於テハ遺產相續稅ガ課ッテ其間ニ
權衡ヲ失シテ來ルノデアリマスヽソコ
デ此六十ニシテ權衡ヲ取ラウトシマス
ト、六十デハ餘リ開キガアル爲ニ、實際
ニ於テ脫稅ヲ誘致スルコトニナル、又
有價證劵ニシテモ、有價證劵十萬圓持ッ
テ居ルモノガ必シモ之ヲ一時ニ贈典ス
ルノデハナク、ソレヲ假ニ二萬圓本年
贈與スル、又翌年之ヲ二萬圓贈與スル
ト云フヤウナコトニナリマスト、其二
萬圓、二萬圓ノ相續稅ガ課ッテ來マスカ
ラ、十萬圓ノモノヲ贈與スルト致シマ
シテモ、結局ハ此二萬圓ノ稅率ト云フ
コトニナル、サウ云フ相續稅法ニ於キ
マシテモ規定ニナッテ居リマスカラ、不
動產ノ價格ガ非常ニ高ケレバ非常ニ高
イ稅率ヲ登錄稅法ニ於テ課ケルト云フ
マデノ必要ハナイノデアリマス、ソコ
デ此千分ノ四十五デアレバ賣買トノ間
ニモ權衡ガ取レ、サウシテ不動產以外
ノ二十三條ノ贈與ノモノニ付テモ權衡
ガ取レルト思ヒマス、サウ云フ趣旨カ
ラ出來テ來ルノデアリマス、ソレハ繰
返シテ申上ゲタ通リデアリマス、是デ
大體權衡モ取レル、併シ今日絕對ニ防
止出來ルト云フコトハ申シマセヌ、又
絕對ニ防止出來ルトモ私ハ考ヘテ居リ
マセヌガ、之ニ依テソレ等ノ弊ヲ匡正
シテ行クコトガ出來ルダラウト云フ風
ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=53
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054・高橋熊次郎
○高橋委員 只今ノ問題ハ今ノ御說明
ヲ承ッタダケデハ十分ニ諒解出來マセ
ヌガ、又自分モ更ニ考慮致シマシテ-
-今政府委員ノ仰セニナルヤウナコト
バカリニハ參ラヌト思ヒマス、ドウシ
テモ私ハ富豪階級ヲシテ相續稅ヲ脫稅
スル機會ヲ多カラシメル、相續稅通稅
ノ奬勵方法ヲ講ゼラレタト云フヤウナ
コトニシカ考ヘラレナイノデアリマ
ス、尙ホ熟考致シマシテ更ニ御尋ヲ致
シタイト思ヒマス、時刻モ進ンデ居リ
マスカラ簡單ニ御尋ヲ致シテ、後ハ後
日ニ讓リタイト思ヒマスガ、此砂糖消
費稅ハ色〓ニ混雜致シテ一寸說明ヲ承
リ又表ト比較對照致シタダケデハ、私
ニハ能ク分リ兼ネルノデアリマスガ、
之ヲ能ク考察致シ、審議致シマスル必
要上、此稅ガドウ云フ風ニナッテ居ルカ
ト云フコトト、砂糖ハ卽チドノ位我國
ニ於テ消費サレルカト云フヤウナコト
ガ分ッテ居リマスカ、ソレニ對シテ例ヘ
バ第一種ノ甲ノモノト乙ガドレ位ノ輸
入ニナッテ居ルカ、ソレデ只今ノ稅率ハ
ドノ位ニナッテ居ッテ、改正シタ稅率ハ
ドウナッテ居ル、斯ウ云フヤウナコトヲ
能ク比較對照致シタイト思フ、自分デ
作リタイト思ヒマシタケレドモ、暇ガ
ナイカラ作レマセヌデシタガ、政府デ
御作リニナレバ譯ハナイト思ヒマス、
サウ云フ表ヲ至急ニ作ッテ御廻シ願ヒ
タイト思ヒマス、吾〓ノ考ヘマスル所
ニ依ルトドウモ消費ノ多イ砂糖ニハ餘
リ稅率ヲ低メナイデ、消費ノ少イモノ
ニハ稅率ヲ輕減致シテ、サウシテソコ
ヲ一寸濁シタト云フヤウニ見エテ、其
以外ドウモ考ヘラレナイ、或ハ砂糖消
費稅ナドニ付テモ、是ハ消費者ヲ目標
トシテヤルベキ筈デアルガ、之ヲ結果
カラ見ルト、消費ノ最モ多イ砂糖ノ稅
金ガ輕減サレテ居ナイ、卽チ九圓ノモ
ノガ八圓三十五錢ニナッテ、僅カ六十五
錢位デ餘リ輕減ニナッテ居ナイ、ソレデ
アルカラシテ是ハ消費稅ノ整理ト云フ
コトニ名ヲ藉リテ、我國ノ砂糖業者ヲ
保護サレタノデアルカドウカ、サウス
レバ又ソレハ產業ノ保護政策デスカ
ラ、其方ノ大ナル理由モアルダラウト
思フ、併ナガラ消費者ノ負擔輕減ト云
フ點カラ言ヘバ、砂糖ハ普遍的ニ一般
ニ用ヒラレルモノデアル、殊ニ安イ需
要ノ多イ砂糖ニ付テ多ク下ゲテ貰ヘレ
バ宜イガ、其方ハ餘リ下ゲテナイ、尤モ
樽入黑砂糖ハ半分ニモナッテ居ルケレ
ドモ、是ハ需要ガ必シモ多イトハ思ハ
レナイノデアル、又輸入關係カラ見テ
モ、瓜哇ナドカラ來ル「ザラメ」ナドハ
此方ノ關係ガ薄クシテ、內地デ出來ル
モノ、臺灣デ出來ルヤウナモノニ對シ
テソレ〓〓ノ手加減ガサレテアルヤウ
ニ考ヘラレル、斯ウ云フ所カラ見テモ、
消費者ノ利害關係ヲ考ヘラレタヨリ
ハ、寧ロ我國ノ砂糖業者ノ保護ト云フ
モノヲ考慮サレテ稅額ノ改正ヲ爲サッ
タノデハナイカ、ソレカラ關稅ノ關係
モアルガ、ソレト兩方ヲ對照シテ見マ
スト、サウ云フ疑ガアルノデアル、是ハ
私ガ餘リ詳シク〓究シテナカッタ爲ニ、
サウ云フ疑ヲ持ツノカハ知レマセヌ
ガ、ドウモ御說明ヲ承ッテ見テモ、サウ
云フ感ジガスルノデアリマスガ、政府
ハ消費者ノ負擔ヲ輕減スルト云フ考ヨ
リシテ此改正ヲ爲スッタノデアルカ、或
ハ當業者ヲ保護スル爲ニ此改正ヲ爲スッ
タノデアルカ、其點ニ付テ承リタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=54
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055・黒田英雄
○黑田政府委員 先ヅ第一ニ御註文ノ
表ハ早速拵ヘテ差上ゲルコトニ致シマ
ス、御手許ニ輸入ノ數量、或ハ生產ノ數
量ノ數字ノ表ハ差上ゲテハアリマス
ガ、ソレハ數年ニ亙ッテ書イテアルモノ
デスカラ、之ヲ或ル年度デ以テ兩方併
セテ見易イヤウナモノヲ拵ヘテ差上ゲ
マス、ソレカラ砂糖ノ消費稅竝關稅
ニ關係シテ、消費者ノ負擔ニ付テ餘リ
考慮ヲ拂ハズシテ、砂糖ノ產業ノ方ニ
重キヲ置イテ居リハセヌカト云フ御疑
ノ御尋デアリマシタガ、砂糖消費稅、砂
糖關稅ニ付テハ、モウ少シク詳シク全
體ニ亙ッテ御說明申上ゲタイト考ヘテ
居ッタノデスガ、只今マデ大體ノ御質問
ト考ヘテ差控エテ居リマシタガ、只今
デ宜シケレバ申上ゲマスガ、若シ今日
時間ガナケレバ、此次ノ初メニデモ一
應詳シク申上ゲテ御了解ヲ願ヒ、又ソ
レニ付テ御質問ヲ願ヒマセヌケレバ徹
底シナイトモ考ヘテ居リマス、併シ只
今御尋ノ大體ノ點ニ付テ申上ゲマスレ
バ、今囘ノ關稅ニ對シテモ、消費稅ニ致
シマシテモ、是ハ單リ生產者ト云フモ
ノノミニ重キヲ置イテ居ルト云フノデ
ハナクシテ、大體ノ說明ノ時ニモ大藏
大臣カラモ申上ゲタ通リ、近來日本ノ
粗糖ノ生產ト云フモノモ長足ノ進步ヲ
致シマシテ、臺灣ニ於テモ八億斤內外
ト云フ砂糖ノ生產ヲ見ルニ至ッタノデ
アリマス、內地ノ砂糖ノ需要ニ對シテ
モ、全部ヲ生產スル譯ニハ行キマセヌ
ケレドモ、其大部分ヲ滿スト云フ狀況
ニモナッテ居ルノデアル、是ハ今日マデ
ノ關稅、卽チ輸入ノ最モ多クサレマス
ル瓜哇島ノ砂糖ニ對シテ非常ナル關稅
ノ保護、又產業ノ助長等ニ依テ此發達
ヲ見テ居ルノデアリマス、是等ノ粗糖
業ニ對シテハ、今日尙ホ現行ノ保護ノ
程度ハ必要デアラウト云フ見地カラシ
テ、關稅竝消費稅ヲ考ヘテ居リマス、
又精製糖業ニ付テモ、今日殆ド是ハ輸
入ト云フモノヲ妨ギマシテ內地ノ需要
ニ應ジテ居ルノデアリマス、尙ホ內地
ノ需要ヲ滿シマスルノミナラズ、海外
ニ對シテモ年々相當ナル輸出ヲシテ居
ルヤウナ狀況デアリマスカラ、是等ノ
精製糖業ニ付テモ、外國ヘノ輸出ハ成
ベク便宜ニシテ行ク、サウシテ精製糖
ノ事業ニ付テモ適當ノ保護、卽チ今日
出來テ居リマス所ノ、程度ノ保護ハ存
續スルコトガ必要デアラウト云フ見解
ヲ持ッテ居リマス、其上ニ於テ成ベク國
內ニ於ケル消費者ノ負擔ハ出來ルダケ
輕減シタイ、一面財政ノ許ス範圍ト云
フコトモアリマスガ、ソレ等ノ關係ニ
於テ出來ルダケ負擔ノ衡平ヲ圖ルト同
時ニ、成ベク負擔ノ輕減ヲシタイト云
フ趣旨ヲ以テヤッタノデアリマス、併ナ
ガラ消費稅モ、一面ニ於テハ內地ノ砂糖
ノ生產ニモ關係ヲ持ツノデアリマスカ
ラ、ソレ等ノ點モ考慮シテ、ソレ〓〓ノ
種類ニ對シマスル稅率ノ按配ヲシテ居
リマスガ、其根本トシテノ考ハ前申上
ゲマスルヤウニ、粗糖業、精製糖業竝
消費者ト、此三ツノ方面ニ對シテ、前申
上ゲマスヤウナ主義ノ下ニ稅率ヲ盛ツ
タノデアリマス、ソレハドウ云フ風ニ
シテヤッテ居ルカニ付テモ、是ハ詳細申
上ゲタイト思ヒマスガ、相當時間モ掛
カルコトデアリマスガ、只今申上ゲマ
セウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=55
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056・武藤金吉
○武藤委員長 序ニ只今願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=56
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057・黒田英雄
○黑田政府委員 ソレデハ大體砂糖ノ
關稅竝消費稅ニ付キマシテ、今囘ノ
稅率ヲ盛リマシタ點ニ付テ大要御說明
ヲ申上ゲヤウト思ヒマス、先ヅ大體論
トシテハ、旣ニ大藏大臣カラモ申上ゲ
タ通リ、此關稅ヲ設ケマシタ當時、卽チ
明治四十三年ノ當時ニ於キマシテハ、
國內ニ於テモ亦海外ニ於キマシテモ、
砂糖ノ生產ト云フモノハ所謂十五號未
滿ノ砂糖ト云フモノガ出來テ居ッタノ
デアリマス、然ルニ今日ニ於キマシテ
ハ砂糖ノ製造方法モ改善サレマシテ、
今日ニ於テ出來マスル所ノ砂糖ハ二十
一號內外ト云フ砂糖ガ既ニ出來ルノデ
アリマス、サウ云フ狀况ニナッテ參ッタ
ノデアリマス、然ルニ關稅ノ決メ方ガ
御承知ノ通リ十一號未滿、十五號未滿、
十八號未滿、二十一號未滿ト云フ風ニ
分ケマシテ、ソレ〓〓關稅稅率ガ違ヒ
マスカラ、二十一號未滿ト云フ、卽チ今
日ノ四種糖ノ關稅ヲ拂ヒマシテ、四圓
六十五錢ノ關稅ヲ拂ッテ、之ヲ原料トシ
テ精製糖ヲ造ルト云フコトニナリマス
ト、自然精製糖ガ高クナル、隨テ又消費
稅ニ之ヲ見マシテモ、其、品物ヲ直接消
費ニ當テルニ致シマシテモ、是ガ八圓
ノ稅金ガ課カルト云フコトニナリマス
カラ、折角白ク出來タノ所ノ砂糖ニ色
ヲ著ケテ內地ニ持ッテ來ルト云フコト
ニナリマス、二種糖トシテ內地へ持ッテ
來ルノデアリマス、二種糖トシテ持ッテ
來レバ關稅ガ三圓十五錢、直接消費ニ
當リマシテモ五圓ト云フモノニナリマ
スカラ、サウ云フ風ナ不自然ナコトガ
行ハレル、其結果トシマシテ瓜哇デ折
角出來タ世界的商品ト云フモノノ買付
ガ出來ズ、日本ノ商人ハ左樣ニ色著ケ
ヲサレマシタ所ノ第二種砂糖ノ註文ヲ
致スノデアリマスカラ、其消費ノ範圍
モ狹メラレル、隨ッテ何時ニテモ買付ガ
出來ナイ、先物ノ註文ヲシナケレバナ
ラヌ、又御互ニ內地商人ノ競爭ニナッ
テ、日本向トシテ持ニ使ハレマスカラ、
其範圍モ狹メラレマス結果トシテ、元
來ナラバ良ク出來タモノニ不純ナ色ヲ
著ケ不純物ヲ混ゼテ、値段ガ下落シテ
居ルニモ拘リマセズ、其取引價格ハ良
イ所ノ中双ヨリモ高クナル、或ハ中双
ト同ジヤウナ開キノナイ値段ニナッテ
參ル、是ガ爲ニ海外ニ支拂フ代金モ無
益ナ金ヲ拂ハナケレバナラヌコトニナ
ルカラ、非常ニ貿易上ニ於テモ不利益
ヲ來シ、製造上ニ於テモ折角出來タ物
ニ色著ケヲシタ物ヲ以テ、之ヲ原料ト
シテ製造スルノデアリマスカラ、精製
糖ヲ造ル上ニ於テモ非常ナ不利益ガア
ル、精白スル上ニ於テ或ハ骨炭ノ力ヲ
要シ、製造操作ノ上ニ手數ヲ要スル爲
ニ、非常ニ無益ナ經費ヲ要スルト云フ
ヤウナ事情ガアリマスノデ、先ヅ第一
ニ之ヲ除キマシテ、自然狀態デ取引サ
レルヤウニスルコトガ出來ルト云フノ
デ、關稅ニ於テ二種、四種ヲ併セマシ
テ、茲ニ一ツノ稅ヲ課スルコトニ致シ
マシタ、ソレニハ稅率ヲ如何ニ定メル
カト云フコトガ問題デアル、此問題ス
付テ先程申上ゲマスヤウニ、今日ノ臺
灣ノ粗糖業ガ今日ノ稅ニ依テ保護サレ
テ居ルノデアリマスカラ、此程度ヲ變
ヘナイヤウニシタイト云フコトデ稅率
ヲ見タノデアリマス、併ナガラ特ニ
今囘ノ改正ニ依リマシテ、是等ノ製造
業ヲ特ニ保護シヤウト云フ趣旨ハ毫モ
ナイノデアリマス、今日ノ程度ヲ維持
スルニハ如何ナル稅率ガ適當デアラウ
カト云フコトニ付テ、十分考究ヲ致シ
タノデアリマス、然ラバ今日二種、三
種、四種ト分レテ居ッタモノガ、一ツニ
ナレバ、入ッテ來ル砂糖ハドンナモノカ
ト云ヘバ、ソレハ當然瓜哇デ出來ル所
ノ自然ノモノガ來ル、ソレハ今日ノ四
種デアリマス、二十一號內外ノ物ガ來
ルコトニナッタノデアリマス、其物ガ入
ツテ來ル、ソレナラバ、今迄ナラバ色著
ケシマシタカラ、入ッテ來ル原料ニ三圓
十五錢ノ關稅ヲ課ケテ居ル、然ルニ今
度ハソレガ變ッテ四種ノ砂糖ガ來ル、四
種ノ砂糖デアリマスレバ、今日ノ稅率
ニ於テハ四圓二十五錢デアリマスケレ
ドモ、併シ今迄入ッテ來タモノハ三圓十
五錢デアッタ、瓜哇カラ入ッテ來ルモノ
ニ三圓十五錢ノ關稅ヲ課ケテ、今日ノ
臺灣ノ砂糖ガ出來テ居ルナラバ、三圓
十五錢デ宜イノデハナイカト云フ一ツ
疑ガ起ルノデアリマスガ、今日臺灣ノ
砂糖ト云フモノガ瓜哇ノ砂糖ト御互ニ
競爭スル上ニ於テ、臺灣ニ於テモ事實
今日ノ三種、四種ノ砂糖ガ出來ルノデ
アリマス、出來ルニモ拘ラズ、ソレハ矢
張瓜哇ノ砂糖ト競爭スル爲ニ-消費
稅ガ違ヒマス爲ニ、之ヲ色著ケニシテ
二種ノ砂糖ニナッテ居ル、卽チ御互ニ出
來タ其儘デナク、色著ケヲシタ所ノ二
種ノ砂糖トシテ競爭シテ居ルノデアリ
マス、卽チ今迄著物ヲ著テ競爭ヲシテ
居ッタノデアリマス、其競爭ハ三圓十五
錢ノ程度デ適當ニ保護サレテ居ッタ、然
ルニ今度ハ其著物ヲ兩方トモ脫ギマシ
テ裸體ニナッテ、四種ノ砂糖トシテ御互
ニ競爭スルト云フコトニナリマスト、
其著物ヲ著テ居ッタ時代ニ於テハ、其砂
糖ガ瓜哇デ出來ルモノト、臺灣ニ出來
マスモノトノ間ニ、或ハ結晶ノ違ヒ等ニ
依リ、又ソレノ色著ケノ工合ニ依リマ
シテ、ソコニ非常ナル有利ナ點ガアッタ
ノデアリマス、其有利ナ點ガナクナッテ
御互ニ裸體ニナルノデアリマスカラ、
サウナレバ三圓十五錢ノ程度デハ保護
ハ出來ナイ、幾分カ或モノヲ加ヘタ稅
率デナクチヤナラヌ、併ナガラ今日ノ
四種ノ四圓二十五錢ト云フ必要ハナ
イ、ソコデ今度ハ今日ノ稅率ヲ離レマシ
テ、瓜哇ニ出來ル所ノ中双ト、臺灣ニ出
來ル所ノ中双ト云フモノトヲ裸體デ競
爭サセマス場合ニ於テ、ドノ程度ノ
稅率ガ必要デアルカ、卽チソレ等ノ色
色ノ點、或ハ生產ノ點トカ、種ミナモノ
ヲ考究致シマシタ結果、三圓九十五錢
ナラバ丁度今日ノ程度ニ出來ルト云フ
コトデ、三圓九十五錢ニシタノデアリ
やす、サウシテ三圓九十五錢ニ致シマ
スト、ソレガ原料トシテ使ハレル今日
用ヰラレテ居リマス所ノ砂糖、卽チ二
種ガ-三圓十五錢ノ關稅ヲ拂ッテ來
テ居ルモノガ、原料トナッテ是ガ五種ノ
砂糖ニナッテ居ル、サウシテ五種ノ砂糖
ハ關稅ニ於テ四圓六十五錢ノ關稅デ以
テ、丁度海外ノモノト均衡ヲ得テ居ル、
所ガ原料ガ八十五錢上ッテ參ッタノデア
リマスカラ、精製糖ト致シマシテモ、生
產費ニソレダケガ加ハルモノト見ナケ
レバナラヌ、サウナレバ五種ノ關稅ノ
四圓六十五錢ト云フ保護ハ、足リナク
ナルト云フ結果ニナリマスノデ、八十
五錢ヲ加ヘルト云フコトガ直グ來ルノ
デアリマス、併ナガラ關稅ハ八十五錢
上リマシタガ、其結果ト致シマシテ、今
迄ハ色著ケヲシテ居ッタモノガ原料ニ
ナッタガ、今度ハ色ノ著カナイ中双ト云
フモノガ原料ニナッテ來ル、サウナッテ
來ルト製造上ニ於テ生產費ヲ節減スル
コトガ出來ル、卽チ骨炭、濾過ニ於テモ
手數ヲ省キマス爲ニ、原料ニ於テモ節
約ガ出來ルソレ等ノ點ヲ考ヘマスト、
大體六十五錢ダケヲ加へタナラバ宜シ
カラウト云フ結果ニナッタノデアリマ
ス、ソコデ四圓六十五錢ニ六十五錢ヲ
加ヘマシテ五圓三十錢ト云フモノヲ以
テ五種ノ關稅トシタノデアリマス、第
一種ニ付キマシテハ、是ハ今日二圓五
十錢ノ關稅デアルノデアリマスガ、今
日入ッテ參リマスモノモ極メテ極限サ
レ、或ハ比律賓アタリニ出來マスル砂
糖、通俗「灣糖」ト申シテ居ルヤウナ砂糖
デアリマス、斯ウ云フ砂糖トカ云フヤ
ウナモノガ主タルモノデアリマシテ、
直接消費ニ當テラレルモノデアリマス
ガ、是ハ極ク少ナイノデアリマス、一種
ノ砂糖ニ付キマシテハ、消費稅ニ於テ
樽入黑糖ニ付テハ一圓、其他ニ付テ五
十錢ノ輕減ヲ致シテ居リマスルガ、是
ハ消費者ガ主トシテ庶民階級ニ屬スル
ト云フ點カラ致シマシテ、負擔ノ輕減ヲ
圖ラウト云フ際ニ於テ關稅ヲ引上ゲル
ト云フコトニ致シマスト、成程多少海外
カラ入ッテ來ルモノノ防止ニハナリマシ
テモ、其結果或ハ消費者ノ負擔ヲ增スト
云フヤウナコト、卽チ價格ヲ引上ゲルヤ
ウナコトニ相成リマシテハ、折角消費者
ノ負擔ヲ輕減シヤウト云フ趣意ニモ反ス
ルノデアリマスカラ、第一種ニ付キマシテ
ハ現行ノ稅率ヲ据置クト云フコトニ致シ
タノデアリマス、サウシテ此消費稅ノ
方ニ於キマシテ、第一種ニ付キマシテ
ハ、第一種ノ樽入黑糖ハ屢申上ゲマシ
タ通リ、是等ノ消費ハ主トシテ東北トカ
或ハ九州等ニ於テ多ク庶民階級、中產
以下ニ使用サルルモノガ多イノデアリ
マス、ソレ故ニソレ等ノ消費ノ狀況カ
ラ考ヘマシテ、其負擔ヲ輕減スル、一面
ニ於テハ主ナル生產地デアリマス所ノ
沖繩、大島等ノ生產ニモ關係スルト云フ
コトニ相成ルノデアリマスカラ、之ヲ一
般ニ引下ゲテ免稅ニシナイト云フ理由
ハ、既ニ本議場ニ於テモ申上ゲマシタ
ガ、之ヲ免稅ニスルト云フ議論モアリ
マシタガ、免稅スルト云フコトハ却テ
是等ノ生產地ニ打擊ヲ與ヘル、卽チ今
日コソ沖繩、大島等ニ於テ是ハ拵ヘル
ノデアリマスガ、若シ是ガ無稅ニナリ
マシタトスルト、臺灣ニ於キマシテモ、
今日沖繩ノ樽入ニ使フ樽ハ沖繩デ出來
ル木デナイノデアリマス、他カラ持ッテ
來ル木材ニ依ルノデアリマスカラシ
テ、矢張臺灣ニ於テモサウ云フ樽ニ之
ヲ詰メテ樽入黑糖トシテ無稅ニナル、
或ハ外國カラ入リマスモノヲ、之ヲ又
樽ニ詰メテ假置場デ處理致シマスレバ
無稅ニナル、スルトドウ云フコトニナ
ルカト云フト、非常ニ沖繩、大嶋ヲ壓迫
スルコトニナリマシテ、却テ主產地ノ
糖業ニ惡イ影響ヲ及ボスト云フ考カラ
致シマシテ、此樽入ト云フコトハ殘シ
タノデアリマス、樽入白下ニ付キマシ
テモ、是モ矢張或ハ他ノ砂糖ト混ゼマ
シテ今日普通ニ下層階級デ使ハレテ居
リマス所ノ花見デアルトカ、或ハ天光
ト云フ風ナ砂糖トシテ使ハレルノデア
リマス、サウ云フ風ナ事情カラ是モ相
當輕減スル、サウシテ沖繩ノ樽入黑糖
ヨリモ幾分カ、消費ノ階級ガドチラカ
ト言ヘバ、少シ資力ノアル方ニアルト
考ヘマスカラ、其輕減ニ付キマシテモ沖
繩ノ黑糖トハ少シ差等ヲ設ケタノデア
リマス、第一種ノ方ニ付テモ同ジヤウ
ナ趣意デ輕減ヲ致シテ居リマス、二種、
三種、四種ハ、關稅ニ於テノ一ツニ致シ
マシタガ、消費稅ニ於キマシテハ之ヲ
二ツニ分ケテ居リマス、是ハ先ヅ現行
五種ノ方カラ說明ヲ申上ゲタ方ガ便宜
デアリマスガ、現行ノ五種ノ所謂精製
糖ノ方ハ、關稅ノ方ニ於キマシテ六十
五錢高マッタノデアリマス、ソレ故ニ若
シ關稅ト云フモノガソレダケ價格ヲ引
上ゲルモノトモ考ヘマセヌ、此事ハモ
ウ既ニ五十一議會ノ關稅ノ審議ノ時ニ
サウ云フコトヲ申上ゲタノデアリマ
ス、關稅ハ一ツノ障壁デアッテ、必シモ
市價ノ價格ヲ引上ゲルモノトハ考ヘマ
セヌ、併シ假ニ市價ガ上リマシタ場合
ニ於テ、消費稅ヲ其儘ニ据置キマセヌ
ト云フト、消費者ノ負擔ガ增スノデ
アリマスカラ、ソコデ消費稅ハ其限度
迄ハ輕減シヤウト云フ趣旨ヲ以チマシ
テ、六十五錢ダケヲ引下ゲマシテ、九圓
ヲ八圓三十五錢ト云フコトニ致シタノ
デアリマス、ソレニ依リマシテ假ニ關
稅ノ額ガ上リマシテモ、消費者ノ負擔
ニハ現在ヨリ影響ヲ及ボサナイ、然ル
ニ關稅ト云フモノハ一面ニ於テ障壁デ
アリマシテ、必シモ市價ガソコマデ上
ルモノデハナイ、萬一ノ場合ソコマデ
行ッテ競爭スルノデアリマス、ソレヨリ
成ベク下ゲテ來ル、御互ニ內地ノ生產
業ガ競爭シテ下ゲテ參ル、下ゲテ參リ
マシタ場合ニ於テハ-消費稅ノ方ノ
減ッタモノハ直接消費者ノ負擔ヲ輕減
スルノデアリマスカラ、五種ノ砂糖ニ
付テモ今日以上ニ上ラヌノデ、寧ロ下
ゲル傾キヲ持ッテ居ルト云フコトニナ
ルノデアリマス、今日消費者ノ負擔ヲ
輕減シヤウト云フ趣旨モソコニアル、
高橋君ノ御質問ニナリマシタ五種ノ砂
糖ハ一番今日ノ所消費ガ多イ、然ルニ
ソレノ輕減ガ無イト云フ風ナ御議論モ
アリマシタガ、成程今日ノ消費ハ五種
ノ砂糖ガ一番多イノデアリマス、併ナ
ガラ此五種ノ砂糖ニ付キマシテモ、前
申上ゲルヤウニ相當是ハ下ガル力ヲ持
ツモノト考ヘテ居ルノデアリマス、ノ
ミナラズ五種ノ砂糖ハ、今日ニ於キマ
シテハ是等ノ意味デ砂糖ノ消費ガ殖エ
テ參ルト同時ニ、矢張上級ニ向ッテ行ク
傾向ヲ持ッテ居リマス、將來ハ隨分品質
ノ良イモノヲ用ヒルコトニナルト思フ
ノデアリマス、併ナガラ今日ノ現狀カ
ラ見マスレバ、五種ノ眞白ノ砂糖ト云
フモノハ、相當資力ノアル階級ニ於テ
主トシテ消費サレルモノデアリマス、
之ニ就キマシテハ、サウ一種ノ砂糖ホ
ドニ減ズル必要モナカラウト云フ考カ
ラ致シマシテ、之ニ就テハ先ヅ消費稅
ニ於テハ六十五錢ヲ減ズル、ソレカラ
關稅トシテハ成ベク下ガルト云フコト
ノ働キガ出來ルヤウナ餘地ハ與ヘタノ
デアリマス、サウシテ二種、三種、四種
ハ關稅ニ於テ合一致シマシタガ、消費
稅ニ於キマシテハ、現行ノ趣旨ト云フ
モノヲ成ベク尊重致シマシテ、二種、三
種ヲ併セテ、四種ヲ殘シテ稅率ハ盛ッタ
ノデアリマス、是ハ二種、三種、四種ヲ
一ツノ關稅ニ致サウトシテモ、五種ガ
先程申シマシタヤウニ八圓三十五錢デ
アル、一種ノ方ガ二圓五十錢デアルト
云フコトニナリマスト云フト、其間ニ
於テ其稅率ヲ五種ノ方ニ近付ケルト云
フコトニ致シマスト、今日五圓、七圓、
八圓トアリマス消費稅ニ於キマシテ、
五圓ヨリ以上ノ稅率ニスルト云フコト
ニナリマスト、二種ノ砂糖ト云フモノ
ガ高クナル、今日五圓ノ消費稅ヲ取ッテ
居ルノヲ、之ヲ高イ消費稅ヲ取ルトナ
ルト、ソレハ消費者ノ負擔ニナルト思
フ、成程品質ハ良クナリマセウ、品質ハ
良クナリマセウケレドモ、消費者ニ於
テ良イモノヲ使ッテ、サウシテ高イ稅金
ヲ拂フト云フコトニ相成リマスルカ
ラ、寧ロ是ハ適當デナカラウ、然ラバ稅
率ノ五圓ト云フモノヲ引上ゲナイト云
フコトニシマスト云フト、是ハ今日ノ
四種ト云フモノハ五圓ノ消費稅ニナリ
スカラ、今度精製糖ノ方ノ八圓三十
五錢ノ消費稅ノ課カルモノヲ引下ゲテ
行ッテ、消費ヲ下ニ移スト云フ働キガ起
ルコトニナルノデアリマス、デ引下ゲ
ルト云フコトモ、先程モ申シマシタヤ
ウニ、精製糖業ニ付テモ今日ノ程度ヲ
維持シヤウト云フ趣旨カラ言ヘバ、精
製糖業ニ對スル非常ナ脅威ニナッテ來
〓、又其消費モ之ヲ下ノ惡イ方ニ引下
ゲテ來ルト云フ働キモアルノデアリマ
スカラ、是ハ避ケナケレバナラヌ、サウ
云フコトニナリマス、ノミナラズ此臺
灣等ニ於テ出來マス所ノ原料糖ヨリ考
ヘマシテ、寧ロ是ハ四種ヲ一ツ殘シマ
シテ、四種ニ付キマシテハ五圓ノ精製
糖ヲ脅威シナイ程度ニ於テ適常ナ差ヲ
置クト云フ上カラ、今日ノ現行法ト同
ジヤウニ一圓ノ差ヲ設ケマシテ、之ヲ
七圓三十五錢ト致シマシタ、サウシテ
二種、三種ヲ併セマシタモノヲ現行ノ
消費稅ノ五圓ト云フモノニ殘シタノデ
アリマス、ソレ故ニ第二種ノ砂糖ト致
シマシテハ、十五號未滿五圓デアリマ
シタモノガ、十八號未滿デ以テ五圓ノ
消費稅同ジ消費稅デ品質ノ良イモノヲ
使フト云フコトニナリマスハ詰リ消費
者ノ負擔ヲ增サズシテ品質ノ良イモノ
ヲ使ハレルト云フコトニナルノデアリ
マス、又負擔ヲ增サナイノミナラズ、一
種ノ砂糖ガ二圓五十錢ニナリ、サウシ
テ第四種、五種ノ砂糖ガ今日ノ消費稅
ヨリ輕減サレルコトニナッテ、自然ニ價
格ヲ下ゲル働キトシテ見マスト云フ
ト、前ノ二種ノ砂糖モ價格ヲ他ノモノ
ニ比較致シマシテ自然下ゲル働キニナ
ツテ來ナケレバナラヌ思フノデアリマ
ス、サウナリマスレバ成ベク負擔ハ
輕減シテ、サウシテ而モ品質ノ良イ
物ヲ使ハセルト云フコトノ働キヲ生
ズルト考ヘテ居リマス、ソレ以外ノ
モノニ付キマシテハ、是ハ幾分免稅
的ノ主義ヲ加ヘタモノデアリマシテ、
大體今日ノ制度ヲ採ッタノデアリマス、
糖密ニ付キマシテハ第一種ノ砂糖ト
權衡ヲ取ッテ居リマスモノダケハ
一種ノ砂糖ト同ジヤウニ致シマシタ
ガ、其他ハ大體現行ノ稅率デ取ッテ居リ
マス、ソレカラ先ヅ根本ノ問題トシテ、
今日ハ和蘭ノ標本ヲ基礎ト致シマシ
テ、色相ニ依テ區別スルト云フコト
ガ變ヘタラドウカト云フ御議論モ屢
承ッテ居ルノデアリマス、此點ニ付キマ
シテモ當局ハ十分ニ考究ヲ致シタノデ
アリマス、或ハ歐米デ課稅シテ居ルヤ
ウニ、糖度ニ基イテ區別スルト云フコ
トモ考究シテ見タノデアリマス、然ル
ニ今日ノ日本ノ砂糖ノ消費ノ狀況ヲ見
マスルト、黑糖トカ或ハ色ノ著イタモ
ノモアル、分蜜モアル、含蜜モアル、或
ハ白イモノモアル、非常ニ區々ニ亙ッテ
居リマス、歐米ノヤウニ消費ガ揃ウテ
砂糖ガ統一サレテ居ルト云フノト違ヒ
マシテ、サウ云フ狀況カラ見マスト、之
ヲ糖度ニ依テ區別スルト、今日ノ人
ガ良イト思ハレテ居ル白イ所ノ砂糖ガ
却テ糖分ガ少クシテ、サウシテ色ノ著
イテ居ル而モ安イト世人ガ認メテ居ル
砂糖ノ方ガ、糖分ガ多イト云フ風ナ現
象ヲ見ルコトモ多々アルノデアリマ
ス、隨テ糖分ニ依テ區別ヲスルト云
フコトハ實際ニ適シナイ、寧ロ取引ノ
現狀ヲ破壞スルコトニナルト云フ考カ
ラ、是ハ採ルコトガ出來ナイト考ヘタ
ノデアリマス、或ハ製造方法ニ依テ
區別スル、或ハ精白トカ分蜜トカ云フ
ヤウナ區別モ一ツノ方法デアリマス
ガ、是モ今日ノ日本ノ狀況カラ見マシ
テ、是等ノ區別ハ困難デアル、ソレト同
時ニ輸入スル砂糖ニ付キマシテモ、含
蜜、分蜜ト云フコトヲ區別スルコトモ
困難デアリマシテ、之ヲ採ルコトガ出
來ナイ、矢張今日ハ和蘭標本ノ色相ニ
依テ區別スルト云フ原則ニ依リマシ
テ、之ニ對シマシテ前申上ゲマシタヤ
ウナ色〓ノ理由ノ下ニ關稅竝消費稅
ヲ按排致シタ次第デアリマス、極メテ
大要デアリマスガ、大體ノ御說明ヲ致
シマスレバ左樣ナ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=57
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058・武藤金吉
○武藤委員長 如何デセウ-今日ハ
是デ散會致シマス、明日ハ午前十時カ
ラ開會致シマス
午後五時十三分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00319270131&spkNum=58
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