第52回帝国議会　衆議院　登録税法中改正法律案（政府提出）外三件委員会　第7号　昭和2年2月15日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　付託議案
  　　登録税法中改正法律案（政府提出）
  　　印紙税法中改正法律案（政府提出）
  　　砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
  　　關税定率法中改正法律案（政府提出）
  　　商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出）
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  　　　　會議
  昭和二年二月十五日（火曜日）午前十時二十七分開議
  　出席委員左の如し
  　　　　　委員長　武藤金吉君
  　　　　　　理事　奥村千藏君
  　　　　　　理事　高橋熊次郎君
  　　　　　　理事　清水長郷君
  　　　　　　　　　木檜三四郎君　淺川浩君
  　　　　　　　　　神部爲藏君　斯波貞吉君
  　　　　　　　　　村山喜一郎君　佐藤富十郎君
  　　　　　　　　　永田善三郎君　西脇晉君
  　　　　　　　　　松本眞平君　山本愼平君
  　　　　　　　　　内田信也君　長田桃藏君
  　　　　　　　　　木暮武太夫君　吉良元夫君
  　　　　　　　　　岩切重雄君　祷苗代君
  　　　　　　　　　丹下茂十郎君　増田義一君
  同日委員吉原義雄君、山本芳治君辭任に付其の補闕として同日村山喜一郎君内田信也君を議長に於て選定せり
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　大藏大臣　片岡直温君
  　　　　　　農林大臣　町田忠治君
  　　　　　　商工大臣　藤澤幾之輔君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　大藏政務次官　武内作平君
  　　　大藏省主税局長　黒田英雄君
  　　　營繕管財局理事　太田嘉太郎君
  　　　　商工政務次官　柵瀬軍之佐君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　　　　大藏書記官　藤井眞信君
  　　　遞信省管船局長　宮崎清則君
  　　　商工省工務局長　宮内國太郎君
  　　　　　　商工技師　平野久保君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　登録税法中改正法律案（政府提出）
  　印紙税法中改正法律案（政府提出）
  　砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
  　關税定率法中改正法律案（政府提出）

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• 001・武藤金吉

  ○武藤委員長　是ヨリ會議ヲ開キマ
  ス、通〓ノ順序ガアリマスケレドモ、順
  序ノ御方ガ御出席ガアリマセヌカラ、
  此際內田信也君ニ發言ヲ許シマス-
  內田君

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• 002・内田信也

  ○內田委員　私ハ印紙稅法ノ改正ニ付
  キマシテ御尋ネ致シタイト思ヒマス、
  卽チ印紙稅法ノ第四條ノ中ノ第五、卽
  チ傭船契約書ト云フコトガ規定シテア
  ル、所デ政府ノ御眞意ハ恐ラク此項ハ
  請負ニ關スル項モアル、卽チ運送ハ一
  種ノ請負契約ダト云フコトカラ、運送
  契約書ヲ其中ニ入レ、同時ニ傭船契約
  ハ運送契約ノ一種ナリ、賃貸借ニ非ズ
  ト云フ御解釋ノ下ニ此第五ヘ入レテ、
  卽チ稅法ヲ五十圓以上トカ、百圓以上
  トカ、金額ノ差別ヲ設ケ、後ノ賃貸借ト
  區別シタモノデアラウト思考スルノデ
  アリマス、蓋シ傭船契約ト云フモノガ
  一ツノ或數量ノ荷物ヲ以テ、契約ノ標
  準トシテ居ラナイ、大體ニ於テ-大
  體デハナイ、實際ニ於テ全部サウデア
  ル、船荷證券ノ如キハ百噸ナラ百噸ノ
  荷物ヲ積ンデシマッテ、而シテ發行スル
  ノデアルカラシテ、隨テ百噸ニ對スル
  五圓ノ運賃ナラバ五百圓ト云フヤウ
  ニ、金額ガ明ニ分リマスケレドモ、傭船
  契約ニ於テハ五百噸トカ八百噸トカ云
  フ、荷物ノ數量ヲ以テ目的トシテ居ラ
  ナイデ、此船滿船約何噸ト斯ウナル、總
  テサウナル、所ガ卑近ナ例デハアリマ
  スガ、自分ノ家ノ重箱へ鮨ヲ詰メタ所
  ガ、此重箱へ鮨ガ幾ツ這入ルト云ッタ
  ラ、二十這入ル時モアレバ、二十八這入
  ルコトモアル如ク、何千噸何萬噸ノ船
  ニ以テ來テ、滿船亞米利加ノ木材ナラ
  米材幾ラ運賃幾ラ、斯ウ云ッタトキニ
  ハ、例ヘバ北海道ノ木材ガ八千石這入
  ル時モアレバ、七千石這入ル時モアル、
  同ジ船デモ其時〓ニ依テ常ニ積高ヲ異
  ニシテ居ル、故ニ其傭船契約ヲ締結ス
  ルニ當ッテ、何〓丸木材滿船、運賃百石
  幾ラ、斯ウアッタ所デ、運賃額ハ或ハ九
  千圓トナルコトモアレバ一萬一千圓
  トナルコトモアル、詰リ船荷證劵ノ如
  キ荷物百噸ニ對シテ發行シタ場合ハ違
  フカラ、其荷物全部幾ラト云フノデナ
  クシテ、滿船シテ運賃ハ百石幾ラ、一噸
  幾ラト云フノデアルカラ、滿船シテ得
  ベキ運賃ノ金額ト云フモノハ、時ニ依
  テ非常ニ一割モ二割モ違フ、普通此違
  ヒト云フモノハ約二割トシテアルノガ
  世界ノ通則デアル、一割位大抵違ッテ居
  ル、サウスルト此第四條ノ項ノ第五
  デト云フモノハ、其金額ニ應ジテ或ハ
  一萬圓以下ハドウスル、千圓以下ハド
  ウスルト云フ、サウスルト金額ノ限定
  ニ依リ印紙稅法ヲ施行スルニ當ッテ、非
  常ニ私ハ矛盾、不便若クハ脫稅ヲ豫期
  シタル印紙ヲ徵スルト云フヤウナコト
  ガアリハシナイカト思フ、其點ニ於テ
  固ヨリ私ハ日本ノ今日ノ商法ニ於テ
  ハ、傭船契約ヲ一種ノ運送契約ナリト
  云フ御見解ノ下ニ御ヤリナサッタト云
  フ、其御方針ハ分ッテ居ルガ、實際ニ當フ
  テ非常ナ不便ヲ來シハセヌカト思フ、
  ソレニ付テノ政府御當局ノ御意見ヲ
  承リタイ

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• 003・黒田英雄

  ○黑田政府委員　傭船契約ニ付キマシ
  テハ內田サンハ專門家デ居ラセラレル
  ノデアリマスカラ、十分之ヲ御承知ノ
  コトデアルノデアリマシテ、詳シク申
  上ゲルマデモナイノデアリマス、此案
  ニ當リマシテハ傭船契約ハ從來ノ立法
  ニ於キマシテハ、二條ノ中ニ入ルベキ性
  質ノモノデアルト考ヘテ居ルノデアリ
  マス、唯〓今日ノ取扱ト致シマシテ傭
  船契約ガ二條ノモノデアルカ、或ハ賃
  貸借ノモノデアルカト云フコトハ其
  趣意ニ依リマシテ隨分色〓ニ見解モ分
  レルヤウニ考ヘルノデアリマス、ソレ
  等ノ負擔ノ點モ考ヘマシテ、今日解釋
  上ニ於テ別ニ取扱ヲ致シテ居ルコト
  ハ、御承知ノ通リデアルノデアリマス、
  今囘改正スルニ當リマシテ是ガ賃貸借
  デアル、或ハ運送契約デアルト云フヤ
  ウナコトニ付キマシテモ、考究ヲ致シ
  タノデアリマスガ、只今內田サンノ仰
  セニナリマス通リ、是ハ何方カト言ヘ
  バ運送契約ニ近イモノデアル、嚴格ナ
  ル意味ニ於ケル運送契約ナリト申サレ
  ナイト致シマシテモ、運送契約ニ準ズ
  ベキモノデアルト云フ風ニ考ヘタノデ
  アリマス、サウシテ今囘ハ二條ノ比例
  稅ヲ止メマシテ、階級定額稅ニ致シマ
  シテ、適當ナル負擔ヲスルト云フコト
  ニ制度ヲ改メマシタ以上、是ハ本來ノ
  性質ノモノトノ權衡カラ見マシテモ、
  之ヲ四條ノ中ニ置キマシテ、階級定額
  稅ヲ掛ケルコトガ適當デアルト考ヘタ
  ノデアリマス、只今御質問ニアリマシ
  タ通リ、傭船契約ノ金額ハ實際ニ於テ
  多少ノ異動ハアルト云フ御話デアリマシ
  タ、是ハ專門家ノ御話デアリマスカラ、
  勿論間違ッテ居ラヌト私ハ考ヘルノデ
  アリマスガ、併シ是ハ玆ニ揭ゲテアリ
  マスル所ノ階級定額稅ハ、大體百圓ト
  カ、五百圓カラ千圓、傭船契約ニナリマ
  スレバ多ク一萬圓ヲ超ユルモノニ相成
  ルカト思フノデアリマス、一萬圓ヲ超
  ユルモノハソレガ五萬圓デアリマシテ
  モ、十萬圓デアリマシテモ、二十萬圓デ
  アリマシテモ、總テ之ヲ一圓トスルト
  云フコトニ致シテ居ルノデアリマスカ
  ラ、多少ノ實際上ニ於キマス異動ト云
  フモノハ、大シテ影響ハ無イヤウニ考
  ヘルノデアリマス、サウシテ一萬圓ヲ
  以テ一圓ト云フ風ニ致シマシテ、一圓
  ト云フ負擔ハ是ハ傭船契約ト致シマシ
  テ、卽チ船舶ノ全部若クハ一部ヲ以テ
  運送契約ノ目的トシタト云フ風ナ場合
  ニ於キマシテハ、一圓ノ負擔ヲスルト
  云フコトハ他ノ不動產ノ移轉トカ、或
  ハ消費貸借トカ、或ハ請負ト云フモノ
  ニ比較致シマシテハ、適當ナル負擔デ
  アルト考ヘタノデアリマス、脫稅云々
  ノ御話モアッタノデアリマスガ、是ハ從
  來ノ比例稅デアリマスト往々シテ其弊
  ガアリマシテ、却テ負擔ノ公正ヲ得ナ
  イト云フ風ノ考カラ、今囘階級定額稅
  ニ致シマシタノデアリマスカラ、此一
  圓ト云フモノノアリマスルコトハ、運
  送契約ニ於キマシテ大シタ負擔デハナ
  イ、適當ノモノデアラウ、隨テ斯樣ニ致
  シマスレバ脫稅等ノ弊ハナイ、法律通
  リ實際ニ行ハルルコトト考ヘテ居ルノデ
  アリマス

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• 004・内田信也

  ○內田委員　只今黑田局長-政府委
  員ノ傭船契約ノ金額ハ運賃總額ガ大體
  一萬圓以上ダト云フコトデアリマシタ
  ガ、是ハ甚ダ政府委員ノ方ヲ素人扱ヒ
  ニシテ相濟ミマセヌケレドモ、船ノ事
  ハ多少素人ガ知リマセヌガ、エテ傭船
  契約ト云フモノハ世間デハ定期傭船ト
  頭ニ浮ンデシマウ、成程定期傭船ハ
  殆ド一萬圓以上デアリマス、併ナガラ
  航海的ノ傭船契約ニ於キマシテハ一萬
  圓以下ガ多イ、例ヘバ門司、橫濱ノ石炭
  ガ標準運賃デアリマスガ、之ニシタ所
  デ五千噸ノ船ヲ使ッテ、今日ハ九十錢、四
  千五百圓デアリマス、近頃大抵ハ一萬圓
  以內、ダカラ運賃ノ金額ハ一萬圓以上
  ニナルト云フ御說ハソレハ失禮デア
  ルケレドモ御間違デアルコトハ私ノ
  申スマデモナク御了承ヲ願ヒタイ、ソ
  レカラ負擔ガ僅デナイカ、ソレハ私ノ
  申スノハ負擔ノ點デ申スノデアリマセ
  ヌ、負擔ノ點ニ於キマシテ私ハ一圓ガ
  高イノ、五十錢ガ高イノト云フ譯デナ
  イ、卽チ實際ノ便不便ヲ言フノデ、國家
  カラ云ヒマシテモ、國庫ノ歲入カラ云
  ヒマシテモ、亦同時ニ大シタ收入ニナ
  ラヌ、日本ノ傭船市場ニ於ケル船舶ガ
  今日六百艘アッテ、門司、橫濱ノ航海ガ
  十五日デアルカラ、普通平均二十日間
  ノ航海ト見ル、一年ニ船ガ定期檢查ヲ
  加ヘテ引括メテ十七航海ガ平均デアリ
  マス、航海度數ガ一年ニ十七航海トス
  ルト、六百艘ノ船ダカラ一萬航海、一萬
  航海ノ船デアルカラ二錢カラ一圓トア
  ルノガ、平均五十錢ニシタ所デ一萬航
  海デ五千圓、政府ノ收入ガ五千圓ニホ
  カナラヌ、我國ノ民間ニ於キマシテ負
  擔ガ少ナイト同時ニ、大シタ問題デナ
  イト同時ニ、政府ノ歲入カラ云ッテモ全
  部デ僅ニ五千圓ニ足ルカ足ラヌモノデ
  アル故ニ、金額ノ負擔ノ事ヲ申スノデ
  ナイ、實際ノ便不便ノ國際慣習カラ申
  スノデアル、御承知デアリマセウケレ
  ドモ、英國ノ海運業ハ「インターナシヨ
  ナル」國際的ノモノデアッテ、而シテ英
  國ノ如キハ船荷證劵ト傭船契約共ニ六
  片貼ッテ居ル、亞米利加ノ如キハ何方モ
  貼ッテ居ナイ、斯ノ如ク比例定額デナ
  1、一ツノ單純ナル定額ニ止ッテ居ル、
  日本デモ從來ハ多少大藏省ノ方ニ御議
  論ガアッタケレドモ、日本船舶始ッテ以
  來三錢ノ定額デヤッテ來テ居ル、ソレヲ
  各國ノ世界ノ三大海運國タル英吉利、
  亞米利加等ハサウシテアルニ拘ラズ、
  日本ダケ比例定額稅デ五錢以下ハドウ
  ダ、三錢以下ハドウダト云フコトニ別
  ケルト云フコトハ、其世界ノ海運ノ習
  慣ヲ無視スル所以デ、又不便ヲ來ス所
  以デアル、殊ニ世界ノ海運ト云フモノ
  ハ所謂海運ニ國境ナシ、卽チ傭船契約
  書ノ方式カラモ、海商法カラモ同一ニ
  シヤウト言ッテ居ル今日ニ於テ、日本ダ
  ケ、歲入ニ對シテ變リガナイニモ拘ラ
  ズ、從來ノ習慣ヲ破リ、英米ノ習慣ヲ無
  視シテサウシテ、斯ノ如キ實行ニ不便
  ナル所ノ比例定額稅ヲ設ケルノハ不便
  ダケアッテ、卽チ害アッテ更ニ益ハナイ
  ト思フノデアリマスガ、其點ニ付テ政
  府ノ御意見ヲ伺ヒタイ

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• 005・黒田英雄

  ○黑田政府委員　傭船契約ノ收入ハ仰
  セノ如クサウ多額ニハ上ルモノデナカ
  ラウト思ヒマス、併ナガラ是ハ他ノモ
  ノトノ負擔ノ均衡カラ致シマシテ、卽
  チ請負デアルトカ、或ハ商事貸借、或ハ
  不動產ノ移轉ト云フヤウナモノトノ權
  衡カラ見マシテ、ソレ等ト同ジヤウナ
  負擔ヲスルコトガ適當デアルト云フ風
  ニ考ヘマシテ、負擔ノ公正ヲ得セシム
  ル目的カラシテ之ヲ同樣ニ取扱ヒマシ
  タ次第デアリマス、是ガ爲ニ非常ニ不
  便デアルト云フ御話デアリマスガ、日
  常ノ取引ニ於テ每日何通モ出ス請取證
  ト云フヤウナモノ、或ハ小切手ト云フ
  ヤウナモノデアリマスレバ、階級定率
  デアリマシテハ不便ノコトモアラウト
  思ヒマス、併ナガラ是ハサウ頻繁ニ每
  日澤山ノ取引ヲスルモノデモナイト考
  ヘマス、其爲ニ餘リ階級ヲ多クスルコ
  トハ却テ繁雜ニナッテ、實際ノ納稅者ニ
  取リマシテハ不便デアルト考ヘマシタ
  ノデ、前ニ御說明申上ゲマシタ階級ヲ
  此程度ニ止メマシタ次第デアリマス、
  此程度デアリマスレバ左程不便ヲ來ス
  コトモナカラウト云フ風ニ考ヘテ居ル
  次第デアリマス、勿論國際ノモノデア
  ルカラ、之ヲ同樣ニスルガ宜シイト云
  フ御意見ハ、是ハ一應御意見トシテ御
  尤ナ次第ト考ヘルノデアリマスガ、併
  ナガラ今日各國ノ租稅ガ違ッヲ、居ル上
  ニ於キマシテ、我國ニ於テ他トノ權衡
  上カラ致シマシテ稅率ヲ盛リマスル
  上ニ於テハ已ムヲ得ナイト云フ風ニ考
  ヘテ居ル次第デアリマス

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• 006・内田信也

  ○內田委員　只今政府委員ハ私ノ申ス
  不便ト云フ點ヲ、每日請取證ノ如ク何
  通モ發行スルモノデナイカラ、不便ハ
  ナイヂヤナイカト云フ仰セデアリマ
  ス、私ハ度數ニ依テ不便ト申シタノデ
  ハナイ、卽チ庸船契約ニ依テ授受スベ
  キ金額ガ不定デアルカラシテ、印紙ノ
  貼リヤウニ困ル、ソレデ不便ダト云フ
  ノデス、卽チ木材ハ八千石百二十五圓、
  今日ノ相場デ云フト丁度一萬圓ニナ
  ル、是ガ七千石ナラバ一圓以下デ濟ム
  ガ、八千石ノ上ニナレバ一圓拂ハナケ
  レバナラヌ、木材ノ如キハ七千石積ム
  コトモアリ、九千石積ムコトモアリ、二
  割位ノ增減ハ始終アル、ダカラシテド
  ノ印紙ヲ貼ッテ宜イカ分ラヌト云フノ
  ガソレガ不便ダト云フノデ、一日ニ數
  ガ多イカラ不便ダト云ノデハナイト云
  フコトヲ御了承ヲ願ヒタイ、他トノ權
  衡ト云フ御話デアリマスガ、私ハ傭船
  契約ト云フモノヲ從來ノ商習慣ノ如
  ク、三錢デ濟ムト云フコトデナクテモ、
  他トノ權衡カラナラバ、之ヲ六錢ニシ
  テモ、若クハ十錢ニシテモ權衡ガ取レ
  ルト思ヒマスノデ、歲入ニ欠陷ヲ生ゼ
  ズ、又他トノ權衡モ取レ、又商賣人モ不
  便デハナイト云フヤウニ考ヘテ御質問
  ヲ致シタノデアリマス、又外國ノ例ハ
  租稅其他ニ於テ違ッテ居ルカラ、是モ違
  フノハ仕方ガナイト云フ御話デアリマ
  スケレドモ、是ハ租稅ハ各國ノ領土內
  ニ於テ別〓デアリマスケレドモ、海運
  ハ「インターナシヨナル」ノモノデアッ
  テ、英吉利カラモ日本ニ入ッテ來ル、日
  本カラモ亞米利加ニ行クコトデアリマ
  シテ、國際的ノ「スタンプ」ト云フモノ
  ハ他ノ領土內ニ於ケル別ナ租稅トハ趣
  ヲ異ニシテ居ルダラウト思ヒマス、是
  ハ英吉利ノ租稅ト比較スルコトハ場合
  ガ違ッテ、傭船契約ト云フモノハ國際的
  デアルカラ、國際的習慣ヲ重ンゼヨト
  云フ意見デアルコトヲ御了承ヲ願フヨ
  リ外ナイノデス、一言··

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• 007・黒田英雄

  ○黑田政府委員　先程不便ト云フ意味
  ハ私ノ御答ヘ申シタノト違フト云フ御
  話デ、只今御述ニナリマシタガ、是ハ先
  程實ハ申上ゲタ積リデアリマシテ、成
  程多少ノ異動ガアルト云フコトハ或ハ
  御話ノ通リデアラウカト思フノデアリ
  マスガ、其爲ニ階級定額ニ致シマシテ
  モ、一萬圓以下千圓、千圓カラ一萬圓ノ
  間ハ五十錢ト云フコトニナッテ居ルノ
  デアリマシテ、極メテ開キガ廣イノデ
  アリマシテ、其間ニ於テ多少ノ異動ガ
  アリマシテモ、五十錢ヲ拂ヘバ宜イト
  云フコトニナル、然ラバ千圓ノ上ニナ
  ルカ下ニナルカト云フコトニナルト、
  面倒ヂヤナイカト云フコトニナリマス
  レバ、ソレハ仰セノ通リニナリマセウ、
  是ハ併シ極メテ少イ場合デアリマシ
  テ、多クノ場合ニ於テハ大體見當ガ付
  クノデアリマス、契約書ニ依テモ見當
  ガ付クノデアリマスカラ、契約書ニ載ツ
  テ居リマス所ノ金額デ以テ貼ッテ行ク
  コトニ致シマスレバ、階級モ少イカラ
  左程不便ハナイト考ヘマス、然ラバ之
  ヲ一率ニシテ一定ノ金額ニシタラ宜イ
  デハナイカト云フ御話モ、一應御尤デ
  アリマスガ、僅カ萬分ノ五ノ比例稅デ
  アル、之ヲ一躍シテ一率ニ致シマスト、
  非常ニ高クスレバ歲入ノ上ニモ或ハ影
  響ナク、又他トノ權衡モ得ラレルカモ
  知レマセヌガ、之ヲ非常ニ低イモノニ
  スルト、多額ノ貸借契約或ハ運送契約
  ト云フモノハ非常ニ低イ稅率ニナル、
  サウスルト他トノ權衡ヲ失スルト云フ
  コトニナリマシテ、是ハ前ニモ御話申
  シタヤウニ、階級定額稅ト云フモノニ
  移ッテ行クコトハ、他トノ負擔ノ權衡カ
  ラ申シテモ已ムヲ得ナイコトノヤウニ
  考ヘルノデアリマス

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• 008・内田信也

  ○內田委員　只今政府委員ノ御話デ
  ハ、從來傭船契約ノ印紙ハ階級定額稅
  デアルト云フ御話デアリマス、ソレハ
  大藏省ノ御見解ハサウデアッタカモ知
  レマセヌガ、實際ニ於テハ總テ三錢ノ
  印紙ヲ全部貼ッテ居ッタト云フコトヲ御
  記憶ヲ願ッテ、以下ハ私ノ議論ニナリマ
  スノデ、討論ニ讓ッテ、質問トシテハ是
  デ打切リマス

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• 009・武藤金吉

  ○武藤委員長　次ハ神部君ノ順序ニナ
  ツテ居リマス、商工省ノ政府委員ガ參ッ
  テ居リマスガ··

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• 010・神部爲藏

  ○神部委員　私ハ昨年ノ議會ニ於テ御
  約束ヲ致シテアル「バタ」ノ關稅改正ニ
  付テ、一二御伺ヲ致シタイノデス、五十
  一議會ニ於テ通過シテ居リマスル關稅
  ノ法律案ノ中ニ、御承知ノ通リ附帶條
  件ガ付キマシテ、昨年決議ニナッテ居ル
  コトハ政府御當局モ能ク御承知ノコト
  デアルト考ヘテ居リマス、卽チ昨年條
  件ヲ付ケマシタ二十何種カノ品目ニ付
  キマシテ、委員會デ猛烈ナ議論ガアッタ
  ノデアリマスガ、政府當局ハ次ノ議會
  デハ再調シタ上ニ提案ヲスルト云フ御
  意見デアッタ爲ニ、其條件ヲ附シテ通過
  ヲ致シテ居ル次第デアルノデアリマ
  ス、然ルニ今囘御提案ニナリマシタ品
  目ヲ調査シテ見マスト、昨年再調スベ
  ク約束ノモノハ僅ニ酸化「ゴバルト」パ
  カリデアリマシテ、他ノ品目ニ付テハ
  更ニ御提案ノナイノヲ甚ダ奇怪ニ存ジ
  テ居ル譯デアル、本年此關稅改正ニ付
  キマシテ大藏大臣ノ御說明ヲ承リマス
  ト、調査審議ノ材料ガ不十分デアッタカ
  ラ、審議未了デアル、故ニ審議ガ終了次
  第再ビ提案ヲスルト云フコトノ御說明
  ヲ承ッタノデゴザイマスガ、之ニ付キマ
  シテ疑ノ點ヲ御伺致シタイノデゴザイ
  マス、先ヅ第一ニ條件付ノ品目中デ、本
  議會會期中ニ審議ヲ終リマシテ議會ニ
  提案ヲ得ル見込ノモノハ如何ナル品目
  デアルカ、之ヲ承リタイノデアリマス、
  第二ニハ吾〓ノ調査ニ依リマスレバ、
  數字ノ上カラ見マシテモ社會政策上、
  又ハ產業政策ヨリ之ヲ見マシテモ一
  點疑フ餘地ノナイ所ノ品目ニ對シマシ
  テ、審議未了ノ名ノ下ニ御提案ノナイ
  コトハ甚ダ私共ノ遺憾トシテ居ルノデ
  ゴザイマス、ソレハ何デアルカト申シ
  マスト、私、又他ノ委員諸君ヨリモ昨年
  ノ委員會ニ於テ申上ゲマシタ彼ノ「バ
  タ」デゴザイマス、從來ノ農業經營組織
  ヲ改メマシテ、立體的ト申シマスカ又
  集約的ト云ヒマシテ、多量ノ生產ヲ圖ッ
  テ食糧問題ヲ解決スルト云フコトガ、
  刻下我國ノ國策ト致シマシテ必要ナル
  コトハ、敢テ多言ヲ要セザル所デアリ
  マス、如上申上ゲマシタル集約的經營
  法ト申シマスノハ色〓アリマセウケレ
  ドモ、「バタ」本位ノ農業ガ其最モ合理
  的經濟農法デアルト云フコトハ、旣ニ
  世間ノ定議デアルヤウデアリマス、從
  ヒマシテ我國ニ於テ「バタ」農業ハ日尙
  ホ淺キニ拘ラズ、官民多年ノ努力經營
  ニ依リマシテ漸次ニ發達シ來ッテ居リ
  マス、「バタ」ノ生產ハ年々增加ヲ致シ
  テ參ッテ居リマス、全國ノ消費量ノ約七
  割ヲ生產シ得ルヤウニ至ッテ居ルノデ
  ゴザイマス、此勢ヲ以テ進ミマスレバ
  本邦ニ於キマシテ全需要量ヲ供給致シ
  マスコトモ、遠キコトデナイト思フノ
  デゴザイマス、斯ウ考ヘテ居リマス、各
  般ノ事情ガ未ダ此實現ヲ爲シ得ナイコ
  トハ甚ダ殘念デアリマスガ、ソレハ何
  故カト申シマスレバ、彼ノ加奈陀、或ハ
  濠洲、新西蘭、此方面ヨリ輸入サレル
  「バタ」ハ原價ガ約八十錢デアリマシ
  テ、現行關稅ガ之ヲ百二十匁一封度ニ
  引直シマスト、二十錢ヲ課シマシテモ
  一圓內外デ我ガ市場ニ現ハレテ來ルノ
  デゴザイマス、此一圓ト云フノハ昨年
  一ケ年ノ平均相場デアリマス、然ルニ
  我ガ國產ノ經濟原價ハドウデアルカト
  申シマスト、一斤ガ一圓二十錢ヲ要ス
  ルノデアリマス、其計算基礎ヲ申シマ
  スレバ、「バタ」一斤ハ御承知ノ通リ牛
  乳七升ガ原料トナルノデアリマス、今
  此一合ノ牛乳ヲ一錢五厘ト見テ、牛乳
  代ガ七升デアリマスカラ一圓五錢掛リ
  マス、ソレニ製造費、加工費ヲ加ヘマス
  ト、加工費ハ十五錢掛ルノデアリマス、
  サウ致シマスルト合計ガ一斤ノ「バタ」
  ヲ拵ヘマスルノニ一圓二十錢ト云フ費
  用ヲ要スル次第デアリマス、故ニ外國
  品ハ一圓デアル國產品ハ一圓二十錢
  ノ生產原價デアリマスカラ、外國品ニ
  壓迫サレルコトハ是ハ已ムヲ得ナイ次
  第デアルノデアリマス、ソコデ國產品
  ヲ對抗上一圓內外デ賣ラナケレバナラ
  ヌト云フ破目ニ陷ッテ居ルヤウナ次第
  デアリマス、國產品ヲ一圓ニ賣ルト致
  シマスレバ、牛乳一合ノ價ハドノ位ニ
  當ルカト申シマスト、製造其他ノ費用
  十五錢ヲ差引キマスト、牛乳原價八十
  五錢ト云フ計算ニナルノデアリマス、
  一合當リガ僅ニ一錢二厘乃至一錢二厘
  五毛位ニシカ原價ガナラヌノデアリマ
  ス、現在ノ農家ハ一合一錢二厘乃至一
  錢二厘五毛位デ「バタ」ヲ製造シテ居ル
  始末デアリマスカラ、是デハ到底經濟
  上引合ハヌト云フコトニナルノデアリ
  マス、此儘デ若シ進ンデ參リマスト、折
  角發達シ掛ケマシタ「バタ」ノ事業ト云
  フモノハ大成スルコトガ出來ナイ、挫
  折スルコトハ火ヲ睹ルヨリ明ナコトデ
  アラウト考ヘルノデアリマス、當局ハ此
  現狀ヲドウ云フヤウニ御考ヘニナッテ
  居ルノデアルカ、一圓內外ノ相場デ農
  家ガヤリ得ルモノト御考ニナルカ、牛
  乳一合一錢二厘ノ價デ農家ガ引合フト
  云フ御考デアラウカ、此點ニ付テ明瞭
  ナル御答ヲ御願シタイト存ジマス、又
  第三ニハ玆三ヶ年ノ「パタ」ノ輸入ノ實
  況ヲ數字ニ依テ見マスノニ、大正十三
  年ハ輸入品ガ八十六萬餘斤入ッテ居リ
  マス、大正十四年ハズット減リマシテ四
  十二萬餘斤、大正十五年度ハ是ハ十一
  月ニ調ベマシタガ、十二月モ加ヘマス
  ト計算ガ少シ違ヒマスガ、九十餘萬斤
  輸入ガアルヤウデアリマス、大正十三
  年ハ大震災ノ善後策ト致シマシテ、輸
  入關稅ノ撤廢ヲ致シマシタ前年度ノ影
  響ヲ受ケマシテ、斯ク多量ニ入ッタノデ
  アリマスケレドモ、十四年度ト是ガ半
  減致シマシタ、何故半減致シタカト申
  シマスト、爲替相場ノ暴落ハ輸入品ノ
  〓騰ヲ來シテ、關稅共ニ一圓二十五錢
  ヨリ一圓三十七、八錢位デアリマシタ、輸
  入不引合トナッテ著シク減ジタノデア
  リマス、然ルニ昨十五年度ハドウデア
  ルカト申シマスト、爲替相場ノ平衡ト
  共ニ、輸入價格ハ二割下落ヲ來シテ參
  リマシタ、前述ノ通リ關稅ヲ併セマシ
  テ一圓內外デ輸入サレタガ爲ニ、更ニ
  輸入ガ激增シテ、一昨年ノ約倍數ニナッ
  タト考ヘルノデアリマス、此三箇年ノ
  數字ダケデモ明瞭ニ國產品ノ壓迫ヲ
  物語ッテ居ルノデアリマスガ、若シ此儘
  デ推維リマスレバ、本年度ハ更ニ多量
  ノ輸入ヲ見ルコトハ明デアリマシテ、
  國產品ハ非常ナ悲境ニ陷ル譯デアリマ
  スルガ、政府ハ此僞リノナイ數字ヲ如
  何ニ御解釋ニナラルルノデアラウカ、
  是モ承ッテ置キタイト思ヒマス、第四ニ
  ハ社會政策ヨリ見マシテ、御尋ネ致シ
  タイノデアリマスガ、「バター」ヲ製造
  スル農家ハドウ云フ農家デアルカト申
  シマスルト何レモ山間僻地ニ住ンデ
  居ル者デアリマシテ、地味モ至ッテ瘦薄
  ナル僻陬ノ地ニ在ル豊村デゴザイマ
  ス、而モ何レモ二頭、三頭ノ牛ヲ飼ウテ
  居ルヤウナ貧民階級ノ小農若クハ小作
  農者デアルノデアリマス、都會ノ近郊
  ノ農家ノ牛乳ハ或ハ市價トナッテ出テ
  居リマス、又或ハ煉乳ノ原料トナリマ
  スルケレドモ、交通不便ノ山間僻地ノ
  農家ノ生產致シマスル牛乳ハ「バター」
  原料トナリマス、都會ノ便利ノ所ハ市
  乳トナッテ出、「バター」トナルモノハ何
  レモ山間僻地ノ小農カラ出マスノデゴ
  ザイマス、私共住ヒシテ居ル北海道邊
  リデハ、市價地帶又煉乳地帶、「パター」
  地帶ト云フヤウニ、都會ヲ中心トシテ
  分ケラレテ居ルノデゴザイマス、此附
  近ニ於キマシテモ、他ノ內地デ申シマ
  スルト、大島トカ、八丈島、又三宅島ノ
  如キ不便ノ地方デ「バター」ガ出來マス
  ノデゴザイマスガ、之ヲ內地デハ大島
  「バター」ト申シテ居ルヤウデゴザイマ
  ス、是等ノ此邊ノ地方カラ出マスノハ、
  大島「バター」ト總稱スルノデアリマ
  ス、斯カル農民中ノ極ク細民ガ搾ッテ居
  リマスル乳牛ヲ原料トシテ、是ガ製造
  ハ大部分農業ノ組合事業デ行ハレテ居
  ルノデ、資本家ハ更ニ此間ニハ介在シ
  テ居リマセヌ、故ニ此小農ノ細民ノ生
  產品デアリマスルノデ、是等ニ付テ保
  護ヲ願ヒタイト云フ譯デアリマス、而
  シテ之ヲ需要スル階級ハドウ云フモノ
  デアルカト申シマスルト、現在ノ日本
  ト致シマシテハ、何レモ「バター」ヲ食
  スル者ハ中流以上ノ階級ガ之ヲ消費シ
  テ居ルヤウナ譯デアリマス、斯ウ云フ
  意味ニ於キマシテ、社會政策ヨリ見マ
  スレバ、關稅ヲ引上ゲテ斯カル可憐ノ
  小農ノ細民階級ヲ救フト云フコトハ當
  然ノコトト私共思ウテ居ル次第デアリ
  マス、ソレモ大シタコトデハアリマセ
  ヌ、僅カ一合ノ牛乳ヲ一錢二厘ノモノ
  ヲ一錢五厘ノ算盤ニシテ戴キタイト云
  フ至ッテ農民、細民ノ悲痛ナル叫デアル
  ノデアリマス、世ノ人ガ動トモ致シマ
  スト此眞相ヲ究メマセヌデ、皮相ノ見解
  ヨリ誤ッタ反對論ヲ唱ヘル者ガアリマ
  シテ、牛乳ヲ高クスレバ「バター」ガ高
  クナルト云フヤウナコトヲ唱ヘル者ガ
  アルノデゴザイマスガ、洵ニ是等ハ農
  村ノ小農ノ者カラ申シマスルト、洵ニ
  聞エヌ話デアリマシテ、洵ニ是等ヲ保
  護スル必要ガアルト思フノデゴザイマ
  ス、右樣ノ譯デアリマスガ、政府ノ社會
  政策ヨリ御覽ニナル所ノ御見解ハドン
  ナモノデアルカ、是モ併セテ承ッテ置キ
  タイト思フノデゴザイマス、僅カノ至
  ツテ小サナ事デアリマスルノデ、之ヲ
  叫ンデ居ルヤウナ次第デアリマスケレ
  ドモ生產者カラ見マスルト洵ニ是ガ
  急務ノ必要ナル叫デアリマスルノデコ
  ザイマスカラ、ドウゾ此邊ヲ御諒承下
  サイマシテ、前ニ申上ゲタコトノ質疑
  ニ對シテ御答ヲ得タイト思フノデアリ
  マス

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• 011・武内作平

  ○武内政府委員　第一ノ前ノ議會ニ於
  テ希望條件附ニナッテ居ル諸案ノ提案
  ノ審査ノ狀況、其中デ如何ナルモノヲ
  提案ヲスルカト云フコトノ御尋ネニ對
  シマシテハ、其後當局ニ於キマシテモ
  頻ニ調査ヲ急イデ居ルノデアリマス
  ガ、其中デ既ニ調査會ヲ經マシテ或モ
  ノハ提案シ、或モノハ此際提案スルニ
  及バズ、斯樣ニ決定致シタモノモアル
  ノデアリマス、併シ御希望ノ條件ノ附
  イテ居リマスルモノニ付キマシテハ、
  無論其御希望ヲ尊重致シマシテ、成ベ
  ク早ク此議會ニ間ニ合フヤウニ詰リ審
  理ノ出來ルヤウナ風ニ提案スベキモノ
  ハ提案ヲスル積リデ準備ヲ急イデ居ル
  次第デアリマス、只今其中ノドウ云フ
  モノヲ提案ヲスル、ドウ云フモノヲ提
  案ヲシナイト云フコトヲ一々一寸申上
  ゲル時期ニ到達ヲ致シテ居ラヌノヲ遺
  憾ト致シマスル次第デアリマス、第二
  ノ「バター」ノ問題デアリマスガ、之ニ
  付キマシテハマダ閣議ノ決定ハ經テ居
  リマセヌガ、卒直ニ申上ゲマスト、關稅
  調査委員會ニ於キマシテハ、幹事會ニ
  提案ヲシテ改正スベキモノト云フコト
  ニ決定ヲ致シテ居リマスカラ、是ハ必
  ズ遠カラヌ中ニ極ク最近ノ中ニ議會ニ
  提案サレルコトト考ヘテ居ルノデアリ
  マス、是ハ御安心ヲ下サッテモ宜イダラ
  ウト思セマス、ソレカラ此輸入ノ狀況
  竝社會政策的ノ見地カラ、北海道ニ
  於ケル牛乳ノ事ニ付テ神部君カラ詳細
  ナ御陳述ガアリマシタガ、此點ニ付テ
  ハ神部君ノ御陳述ヲ事實トシテハ全然
  肯定スルモノデアリマシテ、御互ニ出
  來ルダケ是等ノ方面ノ事ニ努力シナケ
  レバナラヌト思ウテ居ルノデ、「バタ
  ー」ニ付テ最近ニ提案ヲシタイト云フ
  希望ノ如キモ其實現ノ一ツデアルト考
  ヘテ居リマス

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• 012・神部爲藏

  ○神部委員　只今政務次官ノ御答デ大
  ニ滿足ヲ致シマシタ、目下此ノ「バタ
  ー」ニ付テハ幹事會ニ於テ攻究ヲ致シ
  テ居ラレルト云フコトヲ承リマシテ、
  希望ヲ滿ツル時期ガ遠クアルマイト云
  フ御意見ヲ承リマシテ、大ニ滿足ヲ致
  シタ譯デアリマス、私ノ質問ハ是デ止
  メマス

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• 013・武藤金吉

  ○武藤委員長　禱君

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• 014・祷苗代

  ○禱委員　大藏大臣ト農林大臣ノ御出
  席ヲ願ヒタイ、御出席ガアリマシテモ
  私ノハ少シ長クナリハセヌカト思ヒマ
  スカラ、若シ今日御差支ガアリマシタ
  ナラバ次ニ願ヒタイ

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• 015・武藤金吉

  ○武藤委員長　ソレデハ兩國務大臣ノ
  都合ニ依テ禱サンノハ後ニ願フコトニ
  シテ、次ハ西脇君

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• 016・西脇晉

  ○西脇委員　私ハ關稅定率法ノ改正中
  金液ノ問題ニ付テ聊カ質問シテ見タイ
  ト思ヒマス、既ニ此點ニ付テハ同僚ノ
  奧村君カラ詳シク質問ヲサレマシテ、
  大體ハ分リマシタガ、極メテ簡單ニ申
  上ゲタイト思ヒマス、我國ノ狀態デハ
  現在ノ金液ハ必シモ外國ノ品物ト拮抗
  シ得ル程度ニハ行ッテ居ナイヤウニ思
  フノデアリマス、是ハ見方ニ依ルカモ
  知レマセヌガ、染ミヲ出シタリ或ハ其
  含有金量ガ少イガ爲ニ、外國ヘ參ッテカ
  ラ剩ゲル憂ヒガアリハシナイカ、サウ
  云フ危險性ヲ持ツト云フヤウニモ思ハ
  レマスシ、又見タ目モ非常ニ惡イカラ、
  亞米利加アタリヘ參リマシテ、果シテ
  一流ノ店、若クハ紳士ノ家庭ニ使ハレ
  ルト云フコトハ必シモ出來ルモノデハ
  ナイト云フコトヲ承ッテ居ル次第デア
  リマス、ドウモ私共ノ考デハ、マダ〓〓
  之ヲ保護スル程度ニハナッテ居ナイヤ
  ウニ考ヘル次第デアリマス、サウ云フ
  ヤウナ狀態デアリマシテ、一面陶器ノ
  狀況ヲ見マスト、申スマデモナク我國
  デハ輸出品ノ第五位ニ當リマシテ、多
  イ時ハ殆ド三十八百萬圓モ出ルヤウデ
  アリマス、此出ル品物ニ付テハ殆ド金
  液若クハ酸化「コバルト」ガ使ハレテ居
  ルノデアリマス、是レナクテハ殆ド陶
  磁器業ノ生命ハナイト言ッテモ宜シイ
  ノデアッテ、ソレニ斯ノ如キ高イ稅ヲ掛
  ケテ居ッテハ、到底獨逸、英國ノ如キ立
  派ナ品物ト競爭スルコトガ困離デアル
  ト云フヤウニ當業者ハ非常ニ心配ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、マダ陶器業ガ
  幼稚ナ時代デアルナラバ、今暫ク輸入
  稅ヲ撤廢サレマシテ、何等カ他ノ方法
  デ之ヲ御奬勵ナサル方法ガナイカ、而
  シテ當分ノ中金液ニ對スル所ノ輸入稅
  ヲ免除サレル御考ガアルカナイカト云
  フコトヲ大藏御當局ニ御聞キシタイノ
  デアリマス、第二ニハ此金液ニ課稅シ
  テ居ル爲ニ、却テ陶磁器ノ輸出ノ上ニ
  於テ非常ニ影響ヲ及ボシテ居ルト云フ
  ヤウナ實蹟ガアリハシナイカト云フコ
  トヲ商工省當局ノ御考ニ御聞キシタイ
  ノデアリマス、尙ホ若シドウシテモ之
  ニ對シテ輸入稅ヲ免除スルコトガ出來
  ヌト云フナラバ、金液ハ陶器ニ着イテ
  全部外國へ行クノデアリマスカラ、使
  用量ニ對スル戾稅ト云フヤウナ方法デ
  モ御講ジニナルコトハ出來ヌカドウカ
  ト云フコトヲ御聞キシタイノデアリマ
  ス、大ニ勇氣ヲ奮ッテ輸入稅ダケハ全部
  免除シテ他ノ方法デ奬勵スル御意思ハ
  ナイカドウカト云フ此二點ヲ承リタイ
  ノデアリマス

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• 017・柵瀬軍之佐

  ○柵瀨政府委員　西脇君ノ金液ニ對ス
  ル御尋ネハ、先般來商工省ノ實際其方
  面ニ當ッテ居ル當局ヨリ詳シク御說明
  ヲ申上ゲテアル筈デアリマス、昨年ノ
  議會以來此金液ノ問題ニ付テハ種々ナ
  ル御議論ガアリマシタ、我國ニ生產ス
  ル金液ハ外國金液ニ比較シテ甚ダ劣等
  ナモノデアル、之ヲ使フコトニ依テ陶
  磁器ノ輸出ヲ阻害スル虞ガアル、故ニ
  此金液ハ外國品ヲ使フコトガ輸出奬勵
  ノ目的ヲ達スル上ニ於テ便宜デアルカ
  ラ、輸入稅ヲ全廢シテハ如何デアルカ
  ト云フコトヲ熱心ニ御主張ニナッタ方
  ガアリマス、商工省ハ昨年ノ此御主張
  ニ十分敬意ヲ拂ヒマシテ、其後ニ於キ
  マシテモ御承知ノ「センクバイル」ノ製
  造ニ係ル金液ニ付テ、商工省所管ノ京
  都ノ陶磁器試驗所ニ於テ嚴密ナル比較
  〓究ヲ致シマシテ試驗ヲ行ッタノデア
  リマス、此嚴密ナル試驗ノ結果ヲ見ル
  ト、今日外國品トシテ輸入サレテ居ル
  所ノ「ハノービヤ」ノ金液ト何等遜色ガ
  ナイト云フ報〓ヲ得テ居リマスガ故
  ニ、今直ニ昨年ノ御主張ニ基イテ此輸
  入品ニ對シテ無稅ノ政策ヲ執ルト云フ
  コトマデ考ヘテ居ラヌノデアリマス、
  殊ニ「センクバイル」ニ於キマシテハ、
  昨年矢張其方面ニ從事致シテ居ル技師
  ガ海外ヘ參リマシテ、此金液製造ニ付
  テ十分新ナル〓究ヲ積ンデ歸ッタコト
  モ承ッテ居リマスノデ、今後ハ一段ト優
  良ナル製品ヲ市場ニ出シ得ルト云フ確
  信モアルヤウニ承ッテ居リマスノデ、只
  今御希望ノ如ク直ニ外國品ニ對スル輸
  入稅ヲ廢スルト云フ考ハ只今ノ所持ツ
  テ居リマセヌ、尙ホ第二ノ御尋ネノ內地
  品ヲ使フガ爲ニ陶磁器ノ輸出貿易ノ上
  ニ影響ガアルコトヲ認メナイカト云フ
  御尋ネデアリマスガ、只今ノ所デハ別
  段是ガ爲ニ陶磁器ノ輸出貿易ノ上ニ何
  等影響ヲ及ボシテ居ルモノト考ヘテ居
  リマセヌ、第三ニ戾稅ヲ出シテハドウ
  カト云フコトノ御尋ネデアリマスガ、
  是ハ如何ナル分量ヲ此陶磁器ノ上ニ使
  用サレルモノデアルカ、其分量ノ區分
  ガ殆ド付キ難イノデ、一ツノ方法デハ
  アリマスケレドモ、是モ實行上極メテ
  困難ナモノデアルト考ヘテ、戾稅ノ問
  題ニシテモ只今直ニ之ヲ行フト云フ意
  思ヲ持ッテ居ラヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=17

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• 018・木暮武太夫

  ○木暮委員　私ハ最初ニ印紙稅法ノ改
  正ニ付テノ疑點ヲ質シ、次ニ砂糖稅ニ
  付テノ疑點ヲ質シタイト思ヒマス、先
  ヅ御聞キシタイコトハ、記載金額一萬
  圓ヲ超ユルモノノ證書ニ付テハ從來ノ
  ヤウニ比例稅法ヲ適用シナイデ、今度
  ハ十萬圓ニ付テモ二十萬圓ニ付テモ一
  圓ノ印紙稅ヲ貼レバ宜イト云フ改正ノ
  方針デアルト云フ御說明ヲ伺ヒマシタ
  ケレドモ、何處ニ其理由ガアルカト云
  フコトヲ判然私共ハ納得ガ出來ナイノ
  デアリマス、政府ガ私共ニ下サレタ「登
  錄稅法印紙稅法改正綱要」ト云フ小サ
  イ本ノ中ニモ、今度ノ改正ノ方針ト云
  フモノガ三ツノ範圍デアルト云フコト
  ヲチヤント限ッテアル、其一ハ負擔ノ均
  衡ヲ保タシムルコト、其二ハ社會政策
  ノ效果ヲ擧グルコト、其三ハ稅務行政
  上ノ便宜ヲ圖ル爲ト云フ方針ニ出デタ
  モノデアルヲ御說明ニナッテ居リマス
  ガ、記載金額一萬圓ヲ超ユルモノヲ一
  圓ニ改メタト云フコトハ、誰ガ考ヘテ
  モ第一ノ理由ノ負擔ノ均衡ヲ得セシム
  ルト云フコトニ當ラナイ、一萬圓以上
  ノモノハ一圓デアル、二十萬圓デモ三
  十萬圓デモ矢張一圓ト云フ定額デ印紙
  ヲ貼ルト云フコトハ、決シテ負擔ノ均
  衡ヲ得セシムル所以デナイ、ソレデハ
  第二ノ社會政策上ノ效果ヲ擧ゲルモノ
  デアルカト云フト、是モ多言ヲ要セズ
  シテ明カナル如ク、決シテ十萬圓二十
  萬圓ヲ一圓ニシテ比例稅法ヲ適用シナ
  イト云フコトハ、社會政策上ノ效果ヲ
  擧グルモノデナイ、然ラバ第三ノ理由
  トスル所ノ稅務行政財政上ノ便宜ト云
  フコトダケガ改正ノ理由ニナルモノト
  シカ私共ニハ見エマセヌ、併シ實際ニ
  於テ一萬圓以下ノ證書ハ澤山アリマス
  カラ、之ヲ定額稅ニシタコトハ稅務行
  政上ノ便宜ヲ圖ッタ趣旨ニ合フカ知レ
  マセヌケレドモ、二十萬、三十萬、百萬
  ト云フ證書ガサウ一萬圓以下ノ契約書
  ヤ證書ニ比較シテ澤山アルモノデナ
  イ、數ノ點ニ於テ澤山デナイトスレバ、
  必シモ稅務行政上ノ便宜ヲ圖ッタト云
  フ理由モ當ルマイト思ヒマス、シテ見
  レバ此改正ノ理由ハ三ツノ方針ノ何レ
  ニ該當スルモノデアルカト云フコトニ
  付テ第一ニ伺ヒタイ

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• 019・藤井眞信

  ○藤井大藏書記官　只今ノ御尋ネニ對
  シテ便宜私ヨリ御答致シマス、現行印
  紙稅法ハ御承知ノ如ク第二條ノ規定ニ
  依リマシテ、原則トシテ印紙ヲ貼用ス
  ベキ證書ニ付テハ、比例稅ノ萬分ノ五
  ヲ課スルコトニナッテ居リマス、ソレヲ
  今囘改メマシテ全部比例稅ヲ止メマシ
  テ階級定額稅ニシタノデアリマス、其
  階級定額稅ニシタコトガ實際上負擔ノ
  衡平ヲ得ル所以デナイト云フ御質問ノ
  御趣意ノヤウデアリマスガ、理論カラ
  申シマスレバ比例稅ハ適當デナイト云
  フ議論モ出來ルノデアリマス······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=19

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• 020・木暮武太夫

  ○木暮委員　一萬圓ト云フ特定ノモノ
  ニ限ッテ答辯シテ下サイ、議論ガ抽象的
  ニナルト長クナリマスカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=20

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• 021・藤井眞信

  ○藤井大藏書記官　ソコニ說明ヲ持ッ
  テ行ク積リデス、-他ノ機會ニ於キ
  マシテ他ノ政府委員ヨリ御說明申上ゲ
  テ居リマス通リ、現在ノ比例稅ノ制度
  ト云フモノハ、印紙ヲ貼リマス場合ニ、
  其金額ニ對スル比例デ貼用スベキ印紙
  額ヲ計算シナケレバナリマセヌノデ、
  甚ダ不便デアリマス、不便デアリマス
  ノミナラズ、比例稅ノ結果ト致シマシ
  テ、大キイモノニナリマスレバ相當高
  イ印紙ヲ貼ラネバナラヌ、最高百圓ニ
  限ッテ居リマスケレドモ、實際上非常ナ
  不便ガアルノミナラズ、相當高イ印紙
  ヲ貼ラネバナラヌト云フ結果ト致シマ
  シテ、實際ニ於キマシテハ此現行法第
  二條ノ規定ト云フモノハ勵行サレテ居
  ラナイ實例ニアルノデアリマシテ、折
  角規定ハアリマシテモ、ソレハ事實上
  實行サレナイト云フコトニナリマスレ
  バ、決シテ負擔ノ衡平ヲ得ル所以デア
  リマセヌ、不便デアルノミナラズ、結果
  ニ於テ負擔ノ衡平ヲ得ナイト云フコト
  ニナリマスカラ、寧ロ之ヲ改正シテ實
  行ノシ易イヤウニシ、負擔ノ衡平ヲ得
  ルヤウニシタ方ガ宜イデハナイカト云
  フノデ改正シタノデアリマス、記載金
  一萬圓ヲ超ユルモノヲ一圓ト云フコト
  ニシテハ負擔ノ衡平ヲ得ナイデハナイ
  カト云フ御說デアリマスガ、稅務行政
  上ノ實際ノ便宜ト云フ趣旨デアリマス
  カラ、ソレニハ負擔ノ均衡ト云フコト
  ノ意味ガ入ッテ居ルノデアリマス、消費
  貸借ニ關スル證書ハ、舊定額ノ下ニ從
  來ハ萬分ノ五ヲ課セラレテ居ルノデア
  リマス、然ルニ一面ニ於テ約束手形ノ
  如キハ三錢ノ定額稅デアリマス、約束
  手形ヲ發行シテ金ヲ借リル場合ニハ三
  錢デ宜シイ、普通ノ地方ニ於ケル農村
  ノ方〓ガ借用證文デ金ヲ借リルト云フ
  場合ニハ、比例稅デ最高百圓迄ノ印紙
  ヲ貼ラネバナラヌト云フコトハ、必シ
  モ負擔ノ均衡ヲ得テ居ル所以デハナ
  イ、勿論約束手形ノ如キハ發行ノ度數
  モ多イシ、實際ニ於テ頻繁ニ發行サレ
  ルモノデアリマス、借用證文デ消費貸
  借ヲスル場合ト比較シテ、負擔ノ衡平
  ヲ得ル所以デナイト考ヘテ居リマス、
  主トシテ改正ノ理由ハ稅務行政ノ實際
  上ノ便宜ト云フコトト、ソレカラ同時
  ニ負擔ノ均衡ヲ得セシムル爲ニ斯ウ云
  フ改正ヲシタノデアリマス

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• 022・木暮武太夫

  ○木暮委員　只今御說明ヲ聞イテ見ル
  ト、外ノ點ハ兎モ角モトシテ、此一萬圓
  ヲ超ユルモノノ證書ニ對シテ、十萬デ
  モ二十萬デモ總テ一圓ニシテ置イテ、
  從來ノ一萬分ノ五ト云フ比例稅ヲ廢
  シ、全部一圓ノ印紙ヲ貼ルト云フコト
  ハ、御强辯ニナリマシタ如ク稅務行政
  ノ利益ガ主デアルト云フ御話デアリマ
  ス、一萬圓以上一圓ト云フコトハ稅務
  行政上ノ便宜ヲ主トシテ居ルト云フコ
  トハ只今仰セニナリマシタガ、御承知
  ノ通リ登錄稅ト云フモノハ普通ノ財政
  學上ニ於ケル所ノ手數料ノ如キモノト
  違フト云フコトハ、此前黑田政府委員
  ノ御說ノ通リ、一種ノ流通稅ト申シマ
  セウカ、交通稅ト申シマセウカ、財產權
  ノ創設移轉ニ應ジテノ是ハ登錄稅デア
  ルト致シマシタナラバ、近頃ノ稅ノ趨
  勢ハ比例稅サヘモ緩慢デアル、段々累
  進稅マデモ課シテ行カナケレバナラヌ
  ト云フ觀念ガ發達シテ來テ居ルノデア
  ル、稅務行政上ノ便宜ト云フコトヲ主
  タル點トシテ、サウシテ十萬圓、二十萬
  圓ニ悉ク一圓ノ印紙ヲ貼用スルコト
  ハ、今ノ社會政策ノ上カラ云フト負擔
  ノ衡平ヲ得タモノデハナイト私ハ考ヘ
  テ居リマス、此點ハドウデゴザイマス
  カ

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• 023・藤井眞信

  ○藤井大藏書記官　比例稅ヲ廢止致シ
  マシテ階級定額稅ヲ採ッタト云フノハ、
  主トシテ稅務行政實行上ノ便宜ト負擔
  ノ衡平ト此兩方面カラノ理由ガアルト
  云フコトヲ申上ゲタノデアリマスガ、
  稅務行政實行上ノ便宜ト云フコトハ、
  私申シマセヌデモ直ニ御了解下サルコ
  トト思ヒマスガ、先刻モ簡單ニ申シマ
  シタ通リ、比例稅ノ制度ヲ置イテ置キ
  マシテモ、其比例稅ガ實際ニ於テ行ハ
  レナイト云フコトニナリマスレバ、規
  定ノ上ニハ宜シイヤウデアリマスケレ
  ドモ、事實上負擔ノ衡平ヲ得ナイ、況ヤ
  從來カラ定額稅ヲ課シテ居ルモノトノ
  間ニ權衡ヲ得ナイ、斯ウ云フ趣旨ニ於
  キマシテ、今度ノ改正ハ此點ニ關シテ
  矢張稅務行政實行上ノ便宜ト云フコト
  ト、負擔ノ權衡ト云フコトト、此兩方面
  ノ理由ヲ包含スルト斯ウ云フ趣旨ニ於
  テ御答致シタノデアリマス、尙ホ最近
  ニ於ケル租稅制度ノ趨勢ハ、寧ロ累進
  稅ヲ課スルト云フ方面ニ走リツツア
  ル、然ルニ之ヲ定額稅若クハ階級定額
  稅ニ直スノハ、其趨勢ニ反スルノヂヤ
  ナイカト云フ御意見ノヤウデアリマス
  ガ、勿論累進稅率ヲ適用スベシト云フ
  要求ガアリマスノハ、是ハ御說ノ通リ
  デアリマスガ、ソレハ寧ロ所得稅ノ如
  キモノニ於キマシテ、其人ノ所得ヲ全
  部綜合致シマシテ、ソレニ依テ其人ノ
  稅ヲ納ノ得ベキ能力ヲ測定シ、ソレニ
  對シテ累進稅ヲ課スト云フノガ理論ノ
  要求デアリマシテ、例へバ現行ノ日本
  ノ制度ニ於キマシテモ、所得稅ニ對ス
  ル補完稅トシテ設ケテアリマス地租、
  營業收益稅、資本利子稅ト云フヤウナ
  如キモノハ、其人ノ全部ノ力ヲ捉ヘル
  コトハ出來マセヌノデ、其一部分ダケ
  ノ方面シカ出テ居ナイノデアリマスカ
  ラ、之ニ對シテ累進稅ヲ課スルト云フ
  コトハ、大ニ議論ノ餘地ガアルモノト
  私共ハ考ヘテ居リマス、御承知ノ如ク
  日本ノ所得稅ニ對スル補完稅ハ、全部
  比例稅デアリマス、隨ッテ累進稅率ヲ適
  用スル方ガ、其人ノ負擔力ニ應ズルト
  云フ理論ノ立チマス場合ニ於テハ成
  ベク累進稅率ヲ適用スルト云フコトガ
  公正ヲ得ル所以デハアルノデアリマス
  ガ、印紙稅ノ如キニ於キマシテ累進稅
  ヲ用ユルト云フコトハ、是ハ大ニ考慮
  ヲ要スル所デアラウト考ヘテ居リマ
  ス、例ヘバ今度ノ改正ニナッテ居リマス
  消費貸借ト云フモノヲ例ニ取リマシテ
  モ、借金ノ額ガ多イカラソレデ累進稅
  ヲ適用スルト云フコトニナリマスト
  是ハ實際ニ合ハナイコトニナルデハナ
  イカト思ヒマス

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• 024・木暮武太夫

  ○木暮委員　成ベク議論ヲ避ケマス
  ガ、一寸誤解ヲ解イテ置キマス、私ハ印
  紙稅ニ累進稅ヲ適用シロト言ッタノデ
  ハナイノデアリマス、比例稅デサヘモ
  尙ホ緩慢ダト云フノデ、段々累進稅マ
  デモ適用シヤウト云フヤウナサウ云フ
  時勢ニナッテ來テ居ル、其時一萬圓以上
  ノモノハ十萬デモ二十萬デモ一圓ノ定
  額ニシテ置クト云フコトハ、是ハ現在
  ノ社會正義ノ觀念ニ反シハシナイカト
  云フコトデ、何モ具體的ニ印紙稅ニ累
  進稅ヲ適用シロト云フコトヲ申シタノ
  デハナイ、流通稅ノ性質トシテ困難デ
  アルト云フコトハ私モ知ッテ居リマス、
  此處ハ誤解ノナイヤウニ、後ハ議論ニ
  ナリマスカラ此點ニ付テハ御伺致シマ
  セヌ、ソレカラ第二ノ貯金銀行法ノ第
  一條ニ依ル所ノ貯金通帳トカ、積金通
  帳ト云フヤウナモノニ對シテ、印紙ヲ
  今迄貼ッテ居ッタモノヲ廢メタ、此理由
  ハ政府ノ發表シテ居ル所ノ三ツノドレ
  ニ適合シテ居ルカト云フコトヲ伺ヒタ
  イ

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• 025・藤井眞信

  ○藤井大藏書記官　御承知ノ如ク現行
  ノ印紙稅法ニ於キマシテハ、貯蓄銀行
  ノ通帳ヤ積金通帳ト云フヤウナモノニ
  對シマシテハ、他ノ定額稅ハ全部二錢
  若クハ三錢デアリマスノニ、特ニ之ヲ
  一錢ノ低イ稅率ヲ適用シテ居ッタノデ
  アリマス、其趣旨ハ主トシテ斯ノ如キ
  零細ナル資金ニ關スルモノニ對シテ負
  擔ヲ成ベク輕クシヤウト云フ趣旨デ、
  他ノ定額稅ヨリカ特ニ低メマシテ、僅
  カ一錢ノ印紙ヲ貼用スルコトニシテ居
  ツタノデアリマス、其趣旨ヲ更ニ一步
  進メマシテ、寧ロ此際斯ノ如キモノハ
  免稅ヲシタラ宜カラウト云フノデ改正
  ヲシタノデアリマス、今囘第二次稅制
  整理ヲ行ヒマシタ大體ノ方針ト致シマ
  シテ、數箇條ノ點ヲ書イテ居リマスガ、
  此改正ヲ行ヒマス總テヲ此三ツノド
  レニ入レルカト云フ、嚴重ナ意味デ御
  調ベヲ願ヒマスト、或ハ其一ツニ適合
  スルモノモアリマス、或ハ其二ツ三ツ
  ニ適合スルモノモアリ、全部ニ當嵌マ
  ルモノモアリマス、場合ニ依リマシテ
  ハ必シモドレニ這入ルト云フコトヲ明
  瞭ニ申上ゲ兼ルモノモ出來ルノデアリ
  マイ、貯金通帳等ノ免稅ヲ致シマシタ
  ノハ、從來ノ一錢ト云フ特ニ低イ稅率
  ヲ適用シテ居ッタモノヲ、一步進メテ寧
  ロ此際免除シタ方ガ宜カラウト云フ趣
  旨デ左樣ニ致シタノデアリマス

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• 026・木暮武太夫

  ○木暮委員　ドウモ其處ガハッキリシ
  マセヌガ、零細ノ資金ニ對スル負擔ヲ
  輕クスルト云フ意味ハ、ドウ云フ意味
  カ一寸分ラヌガ、アナタノ仰シヤル意
  味ハ此間黑田主稅局長ガ仰シヤッタ通
  リ、此印紙ヲ免稅シテサウシテ貯金ノ
  奬勵ダトカ云フヤウナ意味ニシヤウト
  云フ、斯ウ云フ御意思デスカ、或ハ利子
  ヲ引下ゲルト云フヤウナ御意思デス
  カ、資金ノ負擔輕減ト云フノガ分リマ
  セヌガ

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• 027・藤井眞信

  ○藤井大藏書記官　零細ナル資金ニ關
  スル斯ノ如キ通帳ニ對シテ負擔ヲ輕ク
  致シマスレバ、ソレデ實際上金利ノ方
  面ニ於キマシテモ好影響ヲ與ヘマセウ
  シ、又一面ニ於テハ奬勵ノ趣旨モ此處
  カラ出テ來ルト思ヒマス

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• 028・木暮武太夫

  ○木暮委員　此前モ矢張政府當局ノ方
  ハ此問題ニ付テハ貯金ノ奬勵ト利子ノ
  引下ト云フヤウナコトヲ主トシテ御强
  辯ニナッテ居ルノデアリマスケレドモ
  私共ハ此印紙ヲ免稅シタカラト云ッテ
  貯金ノ奬勵ニナルモノデハナイト考ヘ
  テ居ル.何トナレバ預ケル人ガ貯金通
  帳ニ印紙ヲ貼付スルノデアリマシタナ
  ラバ、貯金銀行ノ預人ハ貼ラナイデモ
  宜イト云フコトニナリマシタナラバ翕
  然トシテ之ニ集ッテ貯金ノ奬勵ト云フ
  コトガ出來マスケレドモ、是ハ預ケル
  人ガ貼ルノデナクシテ銀行ガ貼ルノデ
  アル、唯〓銀行ノ營業費ヲ幾分カ
  ソレモ小使ノ一人ヲ減シタ位ノ程度ノ
  經費ニ對シテ負擔ヲ輕減シテヤルト云
  ヲ意味ニハナリマセウケレドモ、決シ
  テ貯金ヲ奬勵スルト云フコトニハナル
  マイト思フ、ソレカラ利子ヲ引下ゲル
  ト云フコトヲ此前モ黑田サンガ盛ニ論
  ジテ居リマシタケレドモ、利子ヲ引下
  ゲルト云フコトハ印紙稅ヲ一錢位無ク
  シタノデ利子ヲ引下ゲルナラバ、金融
  組織ノ改善モ要ラナケレバ、資金ノ積
  極的供給組織モ要ラヌコトニナル、サ
  ウ云フコトハ私ハ詭辯ニ等シイモノト
  考ヘテ居ル、此貯金銀行ノ通帳若クハ
  積金ノ通帳ナドニ對スル免稅ト云フモ
  ノハ、政府ノ發表シタ社會政策的ノ意
  味デモナク、負擔ノ衡平ヲ得ルト云フ
  意味デモナク、或ハ稅務行政上ノ便宜
  ノ爲デモナイトスレバ、何等ノ方針ガ
  ナクシテ、唯〓貯金銀行ノ歡心ヲ買フ
  程度ニ止マルモノデハナイト私ハ考ヘ
  テ居ル、若シモウ少シ皮肉ナ言葉ヲ以
  テ言ヘバ、此貯金銀行ノ貯蓄ト云フモ
  ノヲ奬勵シヤウト云フ御意見ナラバ、
  寧ロ印紙ヲ廢止スルト云フコトヨリ
  モ、最近頻繁ニ起ッテ居ル大藏當局ノ監
  督緩慢ナル爲ニ、幾多零細ナル貯金者
  ニ對シテ迷惑ヲ掛ケテ居ルコトナドヲ
  嚴重ニ取締ッテ、サウシテ銀行ノ信用ト
  云フモノヲ一般ノ間ニ植付ケテ、安全
  ニ貯金銀行ト云フモノハ政府ガ是ダケ
  骨ヲ折ッテ居ルカラ、安心ダト云フコト
  ヲ宣傳ナサル方ガ貯蓄ノ奬勵ニハ積極
  的ニ效果ガ擧ガルデアラウト思フ、印
  紙ヲ減ラシテモ其印紙ハ預ケル人ガ貼
  ルモノデモ何デモアリマセヌ詰リ資
  本ヲ持ッテ居ル銀行家ガ貼ルベキ印紙
  ヲ免稅シテヤル、斯ウ云フコトハ少シ
  モ利子ノ引下デアルトカ、或ハ貯金ノ
  奬勵ニナルマイト私ハ考ヘマスガ、ド
  ウデゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=28

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• 029・武内作平

  ○武內政府委員　木暮君ノ御意見ハ御
  意見トシテ拜聽シテ置キマスガ、貯金
  帳ノ印紙ガ減レバ、減ルダケ、ソレダケ
  貯金者ニ利益ガアル、成程御說ノ通リ
  非常ナ偉大ナモノデモアリマスマイケ
  レドモ、要スルニ其負擔ハ何處ニ歸ス
  ルカト言ヘバ、矢張貯金者ニ歸スル譯
  デアリマスカラ、幾ラカノ利益ニナル
  ト云フコトハ爭フコトノ出來ナイコト
  デアラウト思ヒマス、サウデアリマス
  ナラバ、成ベク零細ノ金ナドヲ貯金ス
  ル人ニ對シテ、幾ラカノ負擔デモ輕減
  スルト云フコトハ當然執ルベキ問題デ
  アラウト思ヒマス、其他ノ貯金ノ奬勵
  トカ何トカ云フコトニ付テ種々ノ方策
  モアルデアラウ、ソレモ御尤ナ問題デ
  アリマシテ、政府ニ於テハサウ云フ點
  ニ付テ十分考慮スル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=29

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• 030・木暮武太夫

  ○木暮委員　今御名前ハ一寸存ジマセ
  又カ、御若イ方-藤井サンノ御答辯
  ノ中ニ、政府ガ登錄稅及印紙稅改正綱
  要ト云フモノヲ委員ニ吳レマシタ、此
  中ニ今度ノ改正ニ當ッテ三ツノ方針ガ
  明記シテアリマスガ、必シモ今度ノ改
  正ト云フモノハ此三ツノ方針ニ入ラナ
  クトモ差支ナイモノダト云フコトヲ藤
  井サンガ仰シヤッタガ、武內サンモ其御
  意見デ宜イカ、之ヲ承ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=30

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• 031・武内作平

  ○武內政府委員　ソレハドウ云フ風ニ
  書イテアリマスカ、一寸心得マセヌガ
  大體案ノ趣意ヲ大別スレバサウ云フコ
  トニナルト云フ梗〓ヲ以テ申上ゲタダ
  ケデアリマシテ、必シモソレニ適合シ
  ナイモノガナイトモ言ヘナイノデアラ
  ウカト思ヒマスガ、大體ノ上カラ、大局
  ノ上カラ申シマスレバ、大體サウ云フ
  方針ニ依テ法案ガ立案サレタ、斯ウ云
  フ風ニ御諒解ヲ願ヘマスト結構ト思ヒ
  マス

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• 032・木暮武太夫

  ○木暮委員　サウシマスト大體ノ上カ
  ラ言ヘバ、今度ノ改正ハ國民ノ租稅負
  擔ノ均衡ヲ得セシムルコトト、ソレカ
  ラ此社會上、經濟上ノ現況ニ照シテ、成
  ベク社會政策ノ效果ヲ擧ゲヤウ、モウ
  一ツハ稅務行政ノ便宜ヲ圖ラウト云フ
  ノデアルガ、今ノ貯金ノ通帳ヤ、積金ノ
  通帳、其他ノ免稅ト云フモノハ、議論ハ
  只今藤井サンガ仰シヤッタ方ガ好クテ、
  之ヲ減シタガ爲ニ貯金ガ殖エルトカ、
  或ハ貯金ノ奬勵ニナルトカ、利息ヲ下
  ゲルトカ云フコトニナリマセウケレド
  モガ、大摑ミニシタ所デモ、政府ガ此登
  錄稅及印紙稅改正綱要ニ書イテアル三
  ツノ目的ニハ、洵ニ懸離レタモノデハ
  ナカラウカト思ヒマスルガ、サウ解釋
  シテ宜シイノデアリマスカ

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• 033・武内作平

  ○武內政府委員　ソレハ私ガ曩ニ申上
  ゲマシタヤウナ風ニ、零細ナ貯金ヲス
  ル人ノ成ベク負擔ヲ輕減スルト云フヤ
  ウニナレバ、矢張社會政策ノ實行ト云
  フコトニ該當スルモノト考ヘルノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=33

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• 034・木暮武太夫

  ○木幕委員　其點ガ私共ト違フノデア
  リマスガ、社會政策ト云フコトハ御承
  知ノ通リ是ハ經濟上ノ分配論カラ出發
  シテ居ル議論デ、零細ノ金ヲ積ムトカ、
  若クハ資本ノ集積トカ、富ノ集積トカ
  云フコトハ、是ハ謂ハバ資本生產ノ方
  面ニ關スル問題デアッテ、之ヲ貧乏人ノ
  積金ヲ奬勵シタカラト言ッテ、ソレガ社
  會政策ニナルト云フヤウナコトハ少シ
  ク社會政策ニ對スル觀念ノ錯誤デハナ
  カラウカト私ハ考ヘテ居ル、社會政策
  ト云フコトハ寧ロ分配論カラ出發シタ
  モノデアッテ、是ハ今御說明ノヤウニ矢
  張貯金ヲ段々奬勵シテ行ッテ、零細ナ金
  ニ對シテ負擔ヲ輕減シテヤルト云フコ
  トガ社會政策ダト仰ッシヤルガ、其結果
  ト云フモノハ貯金ノ奬勵ニナリ、資本
  ノ集積ニナリ、富ノ集積ニナル以上ハ、
  是ハ善イトカ惡イトカ云フ議論ハ別デ
  アリマスガ、社會政策的效果ヲ擧ゲル
  ト云フ中ニ入レルト云フコトハ少シ
  私ハドウカト考ヘテ居リマスガ、如何
  デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=34

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• 035・武内作平

  ○武内政府委員　前ニ申上ゲタ通リデ
  アリマスカラ、木暮君ガ左樣ニ御解釋
  ニナレバ、ソレハ御意見デアリマスカ
  ラ、此際別ニ木暮君ノ御意見ハ辯駁ス
  ル考ハ持チマセヌガ、私共ハ左樣ニ解
  釋致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=35

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• 036・木暮武太夫

  ○木暮委員　次ノ質問ニ移リマスガ、
  通帳ノ三錢ヲ五錢ニ改メタト云フ點デ
  アリマス、其理由ヲ一ツ伺ヒタイト思
  ヒマス、只今武內サンハ、議論ノ違ヒデ
  アルカラ辯駁ハシヤウトハ思ハヌト云
  フ御話デアリマスケレドモ、前申上ゲ
  タ通リ此一萬圓以上十萬圓二十萬圓ト
  比例稅デ取レバ澤山印紙稅ガ取レルノ
  ニ、サウ云フヤウニ社會政策的效果
  ヲ加味セズ、負擔ノ均衡ヲ得セシムル
  ト云フヤウナ事ヲ加味セズ、唯單ニ稅
  務行政上ノ便宜ト云フコトパカリ著目
  シテ、一圓ト云フ印紙デ十萬圓デモ二
  十萬圓デモ濟マスト云フコトヲ致シ
  テ、ソレカラ又此貯金ノ通帳デアルト
  カ積金ノ證書ト云フヤウナモノハ特
  別ニ何モ之ヲ免稅スルト云フコトノ理
  由ハナイノニ之ヲ免稅シタガ爲ニ缺陷
  ヲ生ジテ、サウシテ此通帳ノ三錢ノモ
  ノヲ五錢ニシタト云フコトニ付テハ
  私共ハ洵ニ改正デナクシテ、改惡デハ
  ナカラウカト考ヘテ居ル、議論ヲ申上
  ゲテ恐入ルケレドモ此質問ヲ致シマ
  スノニ一寸御話ヲ申上ゲマセヌト分リ
  マセヌガ、私共ノ考ヘテ居ルノハ一體
  印紙稅ノ中ニ此通帳ノヤウナ廣ク一般
  ニ行ハレテ居リマスモノノ印紙ノ收入
  ト云フモノハ割合ニ大キイシ、又之ヲ
  上ゲズニ置キマシテモ經濟上ノ取引ガ
  頻繁ニナリ、國民經濟ガ活躍シテ參リ
  マスト、徵稅ノ手數ト云フモノハ掛カ
  ラナイデ國庫ノ收入ト云フモノハ增
  ス、此性質ヲ通帳ノ印紙稅ナドガ持ッテ
  居ルノデアリマス、唯缺點トシテハ此
  通帳ナドノ印紙ト云フモノハ、動トモ
  スルト其轉嫁筋道ガ少シ怪シクナッテ
  來テ、經濟上ニ於テモ弱イ者ノ方ノ負
  擔ニ是ガ轉嫁サレルヤウナ傾キガアル
  ト云フコトガ缺點デアリマス、サウ云
  フ點カラ考ヘテ來ルナラバ、此通帳ノ
  ヤウニ一般的ニ廣ク行ハレテ居ルモノ
  デ、而モ國民經濟ガ活躍シテ取引ガ頻
  繁ニナッテ來レバ、自然ニ收入ガ增シテ
  來テ、徴稅ノ費用ト云フモノハ掛カラ
  ズシテ、而モ是ガ一步誤ヲタナラバ經濟
  上ノ弱者ノ方ニ轉嫁サレルヤウナ、間
  接的ニ惡結果ヲ及ボス通帳ノ印紙稅ト
  云フモノヲ、此際方針ヲ誤ッテ引下ゲタ
  モノノ代リニ上ゲルト云フコトハ、私
  ハ筋道ガ違ヒハシナイカト云フコトヲ
  考ヘテ居リマス、此點ニ付テハ如何デ
  ゴザイマスカ

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• 037・武内作平

  ○武內政府委員　此通帳デスガ、色〓
  細カイ御議論ヲスレバ細カイ議論モ出
  來ルト思フノデアリマスガ、大體ニ常
  識的ニ考ヘマシテ、通帳ノ如キモノハ
  當リ前ノ請取ナドト比較シマスルト、
  請取ヲ十通モ二十通モ書クモノガ玆ニ
  集メテアルノデアリマスカラ、少シク
  高クテモソレガ非常ニ負擔ガ重イト云
  フ譯ノモノデハナカラウト云フヤウナ
  趣意ニ基キマシテ、幾ラカ上ゲテ居ル、
  成ベク安イ方ガ宜イコトハ宜イノデア
  リマスガ、先ヅ大體ソウ云フ考デアリ
  マシタヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=37

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• 038・木暮武太夫

  ○木暮委員　今御說明ヲ聽クト、受取
  證ナドトハ違ッテ澤山書込ガアルカラ
  ト云フヤウナ御話ガアリマシタケレド
  モガ、是ハ武內サンモ御承知ノ如クニ
  印紙稅ト云フモノハ、先程藤井君ノ
  御說明ニ依テモ、之ヲ比例稅ニスル方
  ガ條理ノ上カラ言ッタラ當然デアルダ
  ラウケレドモ、之ヲ今度改メタノハ、ド
  ウモ徵稅ヲ逃ゲラレル傾ガアル、或ハ
  徵稅上ノ色〓ノ便宜上斯ウ變へタト云
  フコトヲ仰シヤッタノデアル、其通リニ
  此印紙稅ト云フモノハ、高クナレバ逃
  ゲル虞ガアリマスカラ、成ベク此通帳
  ノ印紙稅ト云フモノハ低クシテ置イテ
  モ國民經濟ガ活躍シテ取引ガ頻繁ニナ
  ツテ來レバ、是ハ徵稅費ヲ餘計掛ケナ
  クテモ國家ノ收入ハ增スノデアリマシ
  テ、通帳ノ印紙稅ヲ上ゲルト云フ理由
  ハ私ハアルマイト思フノデアリマス、
  サウスルト今日此通帳ノ印紙ヲ上ゲタ
  ト云フノハ、受取證ニ比較シテ非常ニ
  金額ガ澤山書カレテ居ルト云フ御考ダ
  ケデアルガ、併シ是ハ通帳ナドノ印紙
  稅ト云フモノハ、動モスレバ間接稅ノ
  惡イ傾向ヲ持ッテ經濟上ノ弱イ人達ノ
  上ニ轉嫁スルト云フヤウナ虞ガアルト
  云フコトハ御考ニナラナカッタカドウ
  カ之ヲ一ツ伺ッテ置キタイ

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• 039・武内作平

  ○武田政府委員　サウ云フ御說ノヤウ
  ナ場合モ生ジテ來マセウガ、私ノ家ナ
  ンカモ五ツヤ十ノ通帳ガ來テ居リマス
  ガ、又「ハイカラ」ノ店ニナルト一ツ一
  ツ受取證ヲ出シテ居ルノデ、ソレニ三
  錢印紙ガ貼ッテアリマス、通帳ハ一ツ貰
  ツテ置キマスレバ、一箇年ハ一ツデ濟
  ム、ソレデ「ハイカラ」ナ店デ出ス十通
  分二十通分ニ相當スル效力ガアリマス
  カラ、現在ノ所デハ少シ安過ギル、之ヲ
  少シ上ゲテモ其事ガ負擔ノ權衡ヲ失ス
  ル所以デナイト考ヘテ居リマス、ソレ
  ガ何處へ轉嫁スルトカ、轉嫁シナイト
  云フ經濟上ノ問題ハ、非常ニ微妙ナモ
  ノデアリ、復雜ナモノデアリマスルカ
  ラ、色〓御說ノヤウナ事ガ出來テ來ル
  場合モアリマセウケレドモ、サウ云フ
  事ニ非常ニ重キヲ置イタノデナクシ
  テ、只今申シマシタヤウニ大體ソレヲ
  常識的ニ見テ、負擔ノ均衡ヲ期スル上
  カラ是レ位ノ程度ガ相當ト考ヘタ次第
  デアリマス

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• 040・木暮武太夫

  ○木暮委員　大變議論ガ懸離レテシマ
  ツテ居リマスカラ、質問シテモ要領ヲ
  得マセヌカラ、遺憾デアリマスガ印紙
  稅ノ方ハ時間モアリマセヌカラ是デ打
  切ッテ砂糖稅ノ質問ヲ致シマスガ、午後
  モアヤリニナリマスカ

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• 041・武藤金吉

  ○武藤委員長　ヤリマス

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• 042・木暮武太夫

  ○木暮委員　少シ砂糖稅ノ方ハ長クナ
  リマスカラ午前ハ是デ·····

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• 043・高橋熊次郎

  ○高橋委員　管理局ノ方面ノ一事項ダ
  ケ質問ヲ御許シヲ願ヒマスガ、此前主
  ニ山形縣ノ實例ヲ以テ荒蕪地ノ拂下ハ
  頗ル苛酷ノ取扱ヲヤッテ居ル、是ガ爲ニ
  民間ニ於ケル殊ニ小農階級ノ者ガ非常
  ナル脅威ヲ感ジテ居ル、デ斯ウ云フ事
  ハ政府ノ方針トシテ極力避ケテ居ルノ
  デアル、元來荒蕪地ヲ耕地トシテ開墾
  ヲ致スト云フ場合ニハ素地ノ値段ト
  シテ、勞働力等ヲ之ニ加味シタ爲メニ
  土地ノ價格ヲ增加シタノデアルカラ、
  無願開墾ト雖モ其素地ノ値段デ拂下ゲ
  ルト云フコトハ、取扱上ノ原則ト致シ
  テ居ル、斯ウ云フヤウナ大體ノ御答辯
  デアッタノデアリマスガ、ソレニ對シテ
  種々個人的ニ質問應答ヲシタ結果トシ
  テ、山形縣ニ於ケル實狀ハ能ク調査シ
  ナケレバ分ラヌ、ソレデ此御大葬ノ機
  會ニ仙臺ノ管理局長ガ上京スルカラ
  能ク實情ヲ聽取ノ上政府ノ意見ヲ開陳
  スル、斯ウ云フコトニ承ッテ居ッタノデ
  アリマス、私ノ質問ヲ致シタ事項ノ要
  旨ト云フモノハ御分リノ筈デアリマス
  カラ、此處デ繰返サズニ御答辯ヲ求ノ
  マス

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• 044・太田嘉太郎

  ○太田政府委員　御尋ネノ點ニ付キマ
  シテハ、仙臺局長ガ參リマシタカラ、能
  ク話ヲ致シテ置キマシタ、御話ニナッテ
  居リマシタ具體的ノ問題ニ付キマシテ
  ハ、仙臺局長ハ能ク存ジテ居リマセヌ
  ノデアリマシテ、其方ノ事ハ歸リマシ
  テ能ク實施ヲ取調ベル、斯樣ニ申シテ
  歸リマシタノデアリマス、ソレデ山形
  縣ノ方ニ付テハ、旣ニ豫算モ貴衆兩院
  ノ協賛ヲ受ケマシテ成立シタノデアリ
  マスカラ、苛酷ニハ取扱ハナイ方針デ
  アリマス、今御話ニナリマシタ特殊ノ
  問題ニ付キマシテハ、仙臺局長ハ全然
  知ラナイノデアリマスカラ、歸リマシ
  テ篤ト取調ベテ至急報告スルヤウニナ
  ツテ居リマス、左樣御承知ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=44

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• 045・高橋熊次郎

  ○高橋委員　少シモ要領ヲ得ナイコト
  ヲ仰シヤルノデアリマスガ、サウスル
  ト斯ウ云フコトニ解釋シテ宜シイノデ
  アリマスカ、山形縣ニ於ケル實例ト云
  フモノハ、政府ノ方針デナイノデアル、
  偶〓一稅務署長ガ間違ッテ、政府ノ方針
  ヲ誤解ヲ致シマシテ、サウシテ收入主
  義ニ基イテ苛歛誅求ヲヤッタノデアリ
  マシテ、ソレハ本省ノ趣旨デハナイ、斯
  ウ云フヤウナコトデアル、若シ私ノ申
  上ゲタヤウナ事實ガアッタトスレバ、サ
  ウ云フコトニ解釋シテ宜シイノデアリ
  マスカ

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• 046・太田嘉太郎

  ○太田政府委員　ソレハ一般的ノ方針
  ハサウ云フコトデアリマスカラシテ、
  稅務署長ノ取扱ッタコトハ能ク調ベテ
  見マセヌト、其間ニ於テ何カ兩者ノ間
  ニ意思ノ疏通ヲ缺イテ居ラレルカモ知
  レマセヌカラ、個々ノ問題ト致シマシ
  テハ能ク其事情ヲ調ベタ上デナイト
  何トモ申上ゲ兼ネルノデアリマス、
  般的ノ方針ト致シマシテハ只今申上ゲ
  マシタ通リデアリマスカラ、サウ云フ
  方針デ私共ノ方デハソレヲ取扱フ積リ
  デアリマス

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• 047・高橋熊次郎

  ○高橋委員　諄イヤウデアリマスガ、
  ドウモハッキリシナイノデアリマス、個
  個ノ問題ニ付テハ實地取調ヲシナケレ
  バ分ラヌト云フコトハ仰セノ通リデア
  リマス、併ナガラ大藏省管內ノコトデ
  -他ノ農林省ノヤッタコトガ、商工省
  ノヤッタコトデアレバ、己ハ知ラヌト云
  フコトヲ言ハレテモソレハ仕方ガアリ
  マスマイ、併ナガラ大藏省ノ管內デヤッ
  テ居ル事柄デアリマスカラ、サウ云フ
  ボンヤリシタ御答辯ヲ承ッテハ、吾〓ハ
  滿足ガ出來ナイノデアリマス、ソレデ
  此種ノ問題ニ關スル御取扱ノ原則ヲ能
  ク承ッテ置カナケレバナラヌノデアリ
  マスガ、無願開墾地デアリ、其荒蕪地ト
  云フモノハ、多クノ實例ハ河成地デア
  ル、此河成地タル荒蕪地ヲ無願開墾ヲ
  致シタ、今度國有財產ノ整理ニ當ッテ、
  ソレニ向ッテ他ノ類地ト比較ヲ致シテ、
  ソレニ加ヘタル所ノ勞力トカ資本トカ
  ト云フモノヲ考慮セズ、甚シキニ至ッテ
  ハ、其勞力タルヤ冬期アタリノ、仕事ノ
  ナイ時期ノ勞力ヲ以テヤッタノデアル
  カラ、其勞力ト云フモノハ零デアルト
  計算シテ宜シイデハナイカ、ソレデアル
  カラ其勞力ナドハ吾〓ハ考慮ノ中ニ置
  ク必要ハナイ、斯ウ云フヤウナコトデ
  ヤッタト云フヤウナコトデアリマスレ
  ハ、全然其土地ニ加ヘタル勞力トカ資
  本トカヲ認メズシテ、而シテ其附近ニ
  在ル所ノ類似ノ地所ノ想定ノ賣買價格
  ト云フヤウナモノヲ標準ト致シテ、ソ
  レニ依テ現在ノ問題ニナッテ居ル所ノ
  無願開墾地ノ價格卽チ政府ノ拂下價格
  ヲ決定ヲ致シタト云フコトニ事實ハナ
  ツテ居ル、サウ云フコトガ若シ茲ニアッ
  タト致シタナラバ、私ノ申上ゲルヤウ
  ナ事實及事情ヲ御了解ノ上ニ、サウ云
  フ事實ガ實際現實サレタトシタナラ
  バ、ソレハ政府ノ方針ニ基イテ居ルノ
  デアルカ、政府ノ方針ニ某カナイノデ
  アルカト云フコトヲ承ッテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=47

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• 048・武内作平

  ○武內政府委員　只今ノ御尋ネニ付キ
  マシテハ、大體政府委員カラ申上ゲマ
  シタヤウナ風ニ、今急速ニ調査中デア
  リマス、只今御意見モアリマシダケレ
  ドモ、或ル事實ヲ假定シテ、斯ウ云フ事
  實ガアレバソレハ政府ノ方針ニ反スル
  トカ、反セヌトカ云フヤウナコトハ、政
  府トシテ申上ゲ兼ネマス、成ベク急速
  ニ只今御話ニナリマシタヤウナ事實ガ
  アルカナイカヲ調査シタ上ニ於キマシ
  テ、十分ソレハ或ハ方針ニ反スルトカ
  反シナイトカ、是ハ斯ウスベキモノデ
  アルトカ云フ意見ヲ申上ゲルコトニ致
  シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=48

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• 049・高橋熊次郎

  ○高橋委員　ドウモ責任遁レノヤウナ
  御答辯ニナルヤウデアリマスルガ、私
  ハ大藏省ノ御取扱ニナッテ居ル所ノ原
  則ト云フモノガ、吾〓ハ腑ニ落チナイカ
  ラ、實在シタ事實ダト申上ゲルト、又答
  辯ニ支障ヲ生ズルト思ハルルカラ、實
  際ノ事柄ヲ態ト假定的事實ヲ此處ニ申
  上ゲテ、サウシテソレニ付テ御意見ヲ
  承ッタノデアル、サウ云フ事實ヲ認メル
  ヤ否ヤト云フノデナイ、アナタ方ノ御
  取扱ニナッテ居ル方針ヲ吾〓ハハッキリ
  會得スル爲ニ、卽チ責任免レデナク、ハ
  ツキリト御答辯ヲ煩ハス爲ニ、假定的
  事實トシテ御伺ヒ致シタノデアル、若
  シ御分リニナラナカッタナラバ、實際私
  ハアナタ方ノ腑ニ落チルヤウニ說明ノ
  出來ル物件ヲ多數持ッテ居ルカラ、御目
  ニ懸ケテモ宜シイノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=49

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• 050・太田嘉太郎

  ○太田政府委員　實ハ之ニ付キマシテ
  ハ、從來ノ方針ニ於キマシテ、開墾ヲス
  ル場合ニ於キマシテハ、國有財產法ノ
  規定ニ依リマシテ、豫メ先ニ願出ヲシ
  マシテ、サクシテ其開墾成功ノ上ニ於
  テ拂下ヲ受クベキモノノ價格ヲ豫メ定
  メテ居ルノデアリマス、サウ云フ手續
  ヲシナカッタモノニ付キマシテハ、從來
  ノ方針ニ於キマシテハ、ソレハ無斷デ
  ヤッタカラト云フ意味ニ於テ、比較的其
  價格ナドヲ嚴重ニ見マシテ、比較的高
  イ所ノ價格デ拂下ゲタ例ガ大分アッタ
  ノデアリマス、併ナガラ山形縣ノ如キ
  非常ニ多數ニ上ルヤウナ所デハ、ドウ
  モ必シモ之ヲ開墾スル人ノ惡意ト見ル
  ト云フコトモ非常ニ苛酷デアラウト考
  ヘマスノデ、外ノ方面ニ付テハ別デア
  リマスルガ、少クトモ山形縣ノ部分ニ
  付キマシテハ、寬大ニ見ル方針デアリ
  マス、但シソレガ主ナル部分ハ川成デ
  ナク普通ノ原野ニ多イノデアリマス
  原野ノ方ノコトニ付キマシテハ、稅務
  署ノ方ニ於テモ能ク趣意ハ徹底シテ居
  ルコトト思ヒマスケレドモ、川ノ方ノ
  コトニ付テハ或ハコッチノ方ノ趣意ガ
  十分徹底シテハ居ナイノカモ知レヌト
  考ヘルノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ尙サウ云フコトニ付テハ稅務監督
  局長ニ注意致シテ置キマシタカラ、尙
  サウ云フ事情ヲ調ベマシテ、恐ラクハ
  御趣意ニ添フヤウニ取扱フコトガ出來
  ルト思ヒマス、併ナガラ能クソレハ調
  ベテ見マセヌト、斯ウ云フコトハ兩方
  側ノ言フコトヲ聞キ止メテ判斷致シマ
  セヌト、假定的ノ判斷ヲ致シマスト、往
  往ニ誤解ヲ生ズルコトガアリマスカ
  ラ、其邊ノ具體的ノ事ニ付テハ種々調
  ベテ居リマスカラ、其上デ御承知ヲ願
  ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=50

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• 051・高橋熊次郎

  ○高橋委員　調ベルトカ、マダ囘答ガ
  來ナイトカ、マダ調査ガ付カヌト云フ
  ノデ、多クハ議員ナドノ職責外ニナリ
  テ、此議會ナドヲ終ッテカラ、色〓ナ交
  涉ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ恐
  レテ居ルノデアリマス、サウシテ是ハ
  山形縣ニ非常ニ多イ、一萬件以上モア
  ルト云フノデアルガ、以前ハ多ク原野
  山林ノ無願開墾ト云フヤウナモノガ多
  クアリマシタガ、一昨年邊リカラ問題
  ニナッテ居リマスルモノハ、多クハ此最
  上川竝最上川ノ支流ニ生ズル所ノ川
  成地ガ大部分ヲ占メテ居ルノデアリマ
  ス、ソレデ山形縣デハ非常ナル脅威ヲ
  感ジテ居ル、ソレデ今縷々御述デアリ
  マスケレドモ、民間ノ加工タル勞力資
  本ト云フモノヲ稅務署ハ認メナイト云
  フヤウナ方針デ、類地ノ價格ニ比例ヲ
  致シテ、拂下價格ヲ極メルト云フヤウ
  ナ方針ヲ執ッテ居ラレルヤウニ思フノ
  デアリマス、私ハ此所ニ地圖ヲ持ッテ居
  リマス、其附近ノ最近ニ賣買サレタ賣
  買價格ノ登記所ノ寫ヲ此所ニ持ッテ居
  リマス、ソレカラ賣買契約證書ノ原本
  モ持ッテ居リマス、稅務署デ決定ヲ致シ
  テ、是ダケノ納入ヲシロト云フ價格、而
  シテ納入ノ告知書モ此所ニ二三通持ッ
  テ居リマス、サウ云フヤウナ實際ノ物
  件ヲ私ハ押ヘテ此所デ伺ッテ居ルノデ
  アリマス、決シテ吾ミハ何等假空的ノ
  事實ヲ以テ國家ノ問題トシテ之ヲ論議
  致シテ居ルノデハナイ、實際ノ此所ニ
  的確ナル證據書類ヲ持ッテ、サウシテ私
  ハ御尋ネヲ致シテ居ルノデアリマス、ア
  ナタ方ノ方ハ大體監督局長ニ御尋ネニ
  ナッタラ分ル、是ハ今急ニ突發シタ問題
  デナイ、昨年一昨年カラノ引續キノ問
  題デアリマス、唯〓斯ウ云フ問題ガ外
  間ニ顯ハレナカッタノハ此等ノ問題ノ利
  害關係者ハ大地主ト云フヤウナ階級ヨ
  リモ、小農寧ロ貧農階級ニアル、而シテ
  大地主級ノモノハ小農ガ其地所ヲ到底
  買フコトガ出來ヌデ、自分ノ所ヘ頭ヲ
  下ゲテ來ルニ違ヒナイ、サウスレバ其
  地所ハ只轉ンデ來ル、斯ウ云フ事ヲ考
  ヘル者ガ多カッタヤウデアリマス、ソレ
  デアリマスカラ多クハ細民ノ手デ苦ン
  デ居ルダケデ、有資家階級ハ之ヲ問題
  視シナイト云フ所ニ禍ガアル、サウ云
  フ所カラ禍ガ生ジテ來タノデアリマ
  ス、ソレデアルカラ天下ノ人ハ知ラナ
  イノデアリマス、偶〓自分共ガ聞込ン
  デ、而カモ自分ノ足許ニ其一端ハ展開
  シテ來タト云フコトデ、驚イテ自分ハ
  調査シテ見タノデアリマス、サウシマ
  シタラ、サウ云フ事實ガ玆ニ出テ參ッタ
  ノデアリマス、是ハ私ハ非常ニ大キナ
  問題デアッテ、農林當局ノ言ハレル通
  リ、是ハ自作農ヲ創定維持スルト云フ
  方針ニハ適ハヌノデアル、ソレデアリ
  マスカラ政府ト致シテ一方ニ於テハ餘
  リ自作農地ト云フモノノ價格ヲ上ゲシ
  メナイ、又小作人ト致シテモ、其自作農
  地ヲ取得スルニ付テ、之ニ收支計算ノ
  合ハナイヤウナ農家經濟エナラシメナ
  イヤウニト苦心シテ、ソレ〓〓ノ施設
  ヲ爲シテ居ルノデアル、ソレデアルカ
  ラ政府ト致シマシテハ、自ラ拂下ゲベ
  キモノニ、サウ云フ採算ヲ外シタヤウ
  ナ價格デ無理押付ヲスルヤウナコトハ
  之ヲ防止シナケレバナラヌト云フコト
  ヲ、農林當局ハ先般此委員會デ御聲明
  ニナッタノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ是ハ大キナ問題デアラウト思フノ
  デアリマス、故ニ只今ノヤウナ抽象的ナ
  御答辯ヲ承ッテ、御座ナリノ御答辯ヲ承
  ツタダケデハ私トシテハ是ハ滿足ノ田
  來得ナイ事デアリマス、今日是レ以上
  ノ答辯ヲ求ムルト云フコトハ困難ノヤ
  ウデアリマスルカラ、今日ハ是デ此
  質問ハ殊ニ時間モアリマセヌカラ打切
  リマス、尙能ク御考慮下サッテ、此次ノ
  機會ニ於テモウ少シ徹底シタ御說明ヲ
  願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=51

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• 052・太田嘉太郎

  ○太田政府委員　一寸後トデ其書類ヲ
  拜見シタイト思ヒマス、私ノ方ハ勿論
  誠心誠意デ囘答スル積リデアリマス、
  唯〓遠方デアリマスカラ實際能ク分リ
  マセヌ、是ハ後トデアナタ方御承知デ
  アリマシタナラバ、一方ダケノ御意見
  デハ總テノ事ガ中ミ決定致シ兼ネル點
  モアリマスカラ、アナタ方ノ仰シヤル
  事ハ御尤ト考ヘマスカラ、其書類ヲ能
  ク私ノ方デ拜見シタイト思ヒマス、尙
  ホ併シ稅務署ノ意見ヲ能ク聽イタ上
  デ適當ノ解決ヲ與ヘタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=52

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• 053・高橋熊次郎

  ○高橋委員　承知致シマシタ、後程

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=53

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• 054・武藤金吉

  ○武藤委員長　一寸御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=54

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• 055・奥村千藏

  ○奧村委員　先程委員長ハ午後委員會
  ヲ御開キニナルヤウニ御宣告デアリマ
  シタガ、私ハ午後ノ委員會ニ商工省ノ
  宮內工務局長ト、ソレカラ平野技師ト
  ニ是非出席致シマスヤウ。ニ御話ヲ願ヒ
  タイ、ソレハ官紀、綱紀ニ係ハル所ノ一
  大事實ガアルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=55

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• 056・武藤金吉

  ○武藤委員長　マダ午後開クコトヲ宣
  言致シマセヌガ、午後一時カラ續行致
  シマス、改メテ宣告致シマス、平野技師
  ハ政府委員デアリマスカラ、此委員會
  ノ決議ヲ以テ出席ヲ要求シタイト思ヒ
  マスガ、御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=56

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• 057・武藤金吉

  ○武藤委員長　ソレデハ政府委員デハ
  アリマセヌケレドモ、平野技師ニモ宮
  內工務局長ト共ニ出席スルヤウニ要求
  致シマス、是デ休憩致シマス
  午後零時十一分休憇
  午後一時三十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=57

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• 058・武藤金吉

  ○武藤委員長　午後ニ引續キ會議ヲ開
  キマス、農林商工兩大臣ガ見エテ居リ
  マイ、大藏大臣ハ追テ見エルデセウカ
  ラ-禱君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=58

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• 059・祷苗代

  ○禱委員　私ハ只今議題トナッテ居リ
  マス案ノ中、黑糖ニ關スル消費稅ニ付
  テ當局ノ御意見ヲ承ッテ置キタイト思
  フノデアリマス、是マデ政府ノ說明セ
  ラレル所ニ依リマスト云フト、今度ノ
  稅制整理、卽チ第二次稅制整理ハ、第一
  次稅制整理ノ續キデアッテ、同一趣旨ニ
  基イテ現在ノ歲入ニ著シキ變化ヲ及ボ
  サザル範圍ニ於テ負擔ノ均衡ヲ保チ、
  社會政策ノ效果ヲ擧ゲ、竝產業ノ發
  展ニ資スル、是ガ主タル此稅制整理ヲ
  爲シタル目的デアッタ、斯ウ云フ御說明
  デアリマス、所ガ黑糖ニ對シテハ殊ニ
  此意味ヲ十分ニ發揮セシムルベク當局
  ハ努力シタノデアルト云フ御聲明デア
  リマスルガ、私ノ見ル所ニ依リマスト
  何レモ其趣旨ガ此案ニ依リマシテハ努
  力若クハ發揮セラレテ居ナイト云フ考
  ヲ持ッテ居ルノデアリマス、黑糖ノ主要
  產地ハ申ス迄モナク沖繩竝鹿兒島縣
  ノ大島デアリマスガ、其他內地各府縣
  ニモ生產地ガアリマスケレドモ、是、
  農家ノ副業デアリマシテ、鹿兒島縣ノ
  熊毛郡ヲ除クノ外ハ殆ド擧ゲルニ極ク
  僅カナモノデアルト斯ウ考ヘテ居ルノ
  デアリマス、而シテ其主要產地デアル
  所ノ沖繩ニ於ケル此稅金ヲ負擔シテ居
  ル農民ノ一部ニ對シテハ、此稅ヲ撤廢
  セズシテ存續セシメテ置クト云フコト
  ハ、是ハ寧ロ殘酷デアッテ、苛歛誅求デ
  ハナカラウカト私ハ思フノデアリマ
  ス、ソレデハドウ云フ納稅者ガアルカ
  ト申シマスト、其納稅者ノ中ニハ斯ウ
  云フ人〓ガ居リマス、是ハ私一己ノ私
  言デハアリマセズ、寧ロ責任アル沖繩
  ノ產業課長ノ田村浩ト云フ人ガ書イタ
  本ノ中ニハ斯ウ言フコトガアリマスー
  -沖繩ノ農民ノ生活ノコトガ書イテア
  リマス、ソレヲ極ク所〓摘讀致シマス
  ガ「沖繩縣農民ノ生活ハ極テ貧弱デアッ
  テ、其常食ハ芋ヲ以テシ、而モ其不作ナ
  ルトキハ野生ノ蘇鐵ヲ澱粉ト爲シテ飢
  ヲ凌グ」-是ハ食物ノコトヲ言フノ
  デアリマス「而シテ其住民ハ普通以下
  ニアリテハ恰モ堀立小屋ニシテ最モ原
  始的ナル古キ形式ハ寄木デ四圍ヲ繞ラ
  シ萱ヲ以テ屋根ヲ葺キ、ソコニ疊モナ
  ク天井モナク、全ク巢窟ニ類ス、稍進ミ
  タルハ細竹ニテ網代ヲ造リ壁トスル、
  內部ノ構造ハ寄木ノモノニ同ジ、家ニ
  蚊帳ナク夜具蒲團ナク、五六人ノ家族
  此處ニ寢食スル者多ク、跣足ニテ湯浴
  ヲ爲ス者殆トナシ」斯ウ云フヤウナ生
  活狀態ヲ爲シテ居ル農民ガ稍〓一割ニ
  相當スルト云フコトガ書イテアリマ
  ス、沖繩ハ暖イト云フ、成程寒イト言ッ
  テモ東京ナドトハ違ッテ暖カデスガ、矢
  張相當ニ溫度ハ低クナッテ居リマス、ソ
  レニモ拘ラズ斯ル生活ヲ爲シテ居ル農
  民ガ一割以上ヲ占メテ居ル、是ガ正サ
  シク此砂糖消費稅ノ納稅者デアリマ
  ス、私ガ先ヅ第一ニ當局ニ伺ヒタイ、砂
  糖消費稅ノ納稅者中ニハ斯ル悲慘ナル
  生活ヲ爲シテ居ル農民ガアルト云フコ
  トヲ、一體稅制整理ノ審議ヲサレタト
  キニ、其役人ノ中ニ、委員ノ中ニ發言サ
  レタ人ガ多勢アッタデアラウカ、又當局
  大臣ハ斯ル人ガ納稅者デアル、之ヲ全
  廢セズニ存續スル限リニ於テハ、矢張
  之ニ對シテ課稅スルノデアルト云フコ
  トヲ文字其他ニ依テ調ベタノデアリマ
  スカ、調ベテ尙ホ此稅ヲ存續シテ是等
  ノ者カラヲモ搾取サレル-敢テ搾取
  ト云フ詞ヲ用ヒマスカ--搾取スルコ
  トヲ極メラレタノデアリマスカ、第三
  ニハ假ニソレ等ノコトハ今迄知ラナカ
  ツタガ、オ前ノ言フコトニ依テ初メテ
  知ッタト云フコトデアルナラバ、若シ果
  シテサウデアレバ、之ニ對シテノ課稅
  ト云フモノハ、是ハ殘酷デアッテ所謂苛
  歛誅求デアルト云フ考ヲ御持チニナラ
  ナイノデアリマスカ、ドウデアリマス
  カ、先ヅ此點ヲ伺ッテ置キタイノデアリ
  マス

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• 060・黒田英雄

  ○黑田政府委員　御尋ネノ最初ノ分ヲ
  伺ヒマセヌデ、或ハ御答申上ゲマスコ
  トガ間違ッテ居リマシタナラバ、更ニ訂
  正致シマス、御尋ネノ御趣旨ハ沖繩大島
  地方ニ於キマスル樽入黑糖ノ生產者ト
  云フモノガ洵ニ生活程度ハ低ク悲慘ナ
  モノデアル、然ルニサウ云フ者カラ稅
  ヲ取ル、納稅者トスルコトハ果シテ課
  稅ノ上ニ於テ慘酷トハ考ヘナイカト云
  フ風ナ御質問デアッタヤウニ伺ッタノデ
  アリマス、樽入黑糖ノ生產ハ御尋ネノ
  通リ主トシテ沖繩、鹿兒島縣ノ大島地
  方ニ於テ生產サレルノデアリマス、九
  州或ハ內地ノ地方ニ於テモ多少生產サ
  レテ居リマスガ、主トシテ沖繩大島デ
  アルコトハ御說ノ通リデアリマス、而
  シテ是等ノ生產者ハ非常ニ多數ニ上ッ
  テ居ッテ、小規模ノ製造方法ニ依テ製造
  シテ居ルト云フ事モ承知シテ居ルノデ
  ゴザイマス、而モ樽入黑糖ノ生產ト云
  フモノガ近時非常ニ經營上ニ於テ困難
  デアルト云フコトモ能ク承知ヲ致シテ
  居リマス、併ナガラ是等ノ經營上ノ困
  難或ハ經濟上ノ悲境ト云フヤウナコト
  ハ單ニ砂糖消費稅ノ關係ノミデアルト
  ハ考ヘナイノデアリマス、是ハ沖繩縣
  ニ於キマシテモ、其他ニ色〓ナ事情ガ
  アルヤウニ考ヘルノデアリマス、砂糖
  ニ付テ見マシテモ唯是ガ稅金ノミデナ
  〃是等ノ砂糖ノ消費地タル內地ニ之
  ヲ移送シマスル上ニ於キマシテモ、諸
  種ノ不利ガアリ、色〓改善スベキ點ガ
  アルト云フヤウナ諸種ノ原因ニ基クヤ
  ウニ考ヘルノデアリマシテ、砂糖ノ生
  產者ガ決シテ裕福ニ、非常ニ好キ生活
  ヲシテ居ルト云フ風ニ考ヘテ調査ヲ致
  シタノデハナイノデアリマス、ソレ等
  ノ事情ハ當時調査シタ官史ノ中ニサウ
  云フ事ヲ發言シタ者ガアッタカト云フ
  御尋ネデアリマシタガ、是等ノ點ハ十分
  考究ヲサレタノデアリマス、然ラバサ
  ウ云フ狀況ニ在リマスル者ニ付テ砂糖
  消費稅ヲ免稅スルガ宜シイカドウカト
  云フコトニ相成リマスルト云フト、是
  ハサウ云フ事情デアリマスル今日ト致
  シマシテ、之ヲ免稅スルト云フコトハ
  却テ適當デナイト云フコトニ歸著シタ
  ノデアリマス、卽チ砂糖消費稅ハ申上
  ゲル迄モナク製造者ガ負擔スベキモノ
  デハナイノデアリマシテ、消費稅デア
  リマスカラ消費者ガ負擔スベキモノ
  デ、卽チソレ等ノ砂糖ガ主トシテ內地
  ニ於キマシテハ九州ノ山間地方トカ、
  或ハ東北ノ地方ニ於テ消費サルルノデ
  アリマシテ、是等ノ消費者ガ負擔スル
  コトニナルノデアリマスカラ、成ベク
  是ハ輕減スルコトガ適當デアルト考ヘ
  マシテ、其稅金ヲ半減致シタノデアリ
  マス、是ハ單リ消費者ノ負擔ヲ輕減ス
  ルノミナラズ、生產者ニ於テモ非常ニ
  便益ヲ得ルト云フコトハ本議場デモ申
  上ゲタ通リデアリマス、然ラバ尙ホ進
  ンデ何故ニ之ヲ免稅シナカッタカト云
  フコトニナリマスレバ、或ハ斯ノ如キ
  消費ノ方面カラ見マシテモ、主トシテ
  サウ云フ地方ノ中產階級以下ノ階級ニ
  消費サレルモノデアリマスカラ、或ハ
  之ヲ免稅スルト云フコトモ一ツノ御議
  論デアルカト思ヒマス、併ナガラ之ヲ
  免稅致シマスト云フト、消費者ニ於キ
  マシテハソレダケ負擔ノ輕減ニナリマ
  セウガ、一面ニ於テ先程御述ニナリマ
  シタヤウナ事情ニ於キマスル所ノ沖繩
  大島ノ砂糖ヲ造ッテ居リマスル製糖業
  者ノ爲ニハナラナイ、其疲弊ヲ救ッテヤ
  ル目的ヲ以テ假ニ之ヲ致シマシテモ、
  ソレハ却テソレ等ノ生產業者ニ不利益
  ヲ來スト云フヤウニ考ヘタノデアリマ
  ス、其理由ハ過日本會議ニ於テモ申述
  ベマシタ通リ、之ヲ免稅スルコトニ致
  シマスレバ、是等ノ生產ト云フモノガ
  容易ニナリマス、內地ニ於テモ何等ノ
  取締ナク是等ヲ造ルコトガ出來、又他
  ノ砂糖ニ比較シテ消費稅ノ負擔ガアリ
  マセヌカラ、是等ノ生產ハ自然他ノ地
  方ニ於テモ殖エテ來ルコトト考ヘルノ
  デアリマス、ソレノミナラズ生產力ニ
  於テ非常ニ强イ力ヲ持ッテ居リマスル
  臺灣ニ於キマシテハ、其免稅サレター
  -今一種ノ課稅ヲ受ケテ居ルモノガ總
  テ樽入黑糖ニナッテ參ル、或ハ外國カラ
  參ル比律賓ノ砂糖ノ如キ、是等ガ參リ
  マシテ假置場ニ於テ樽入黑糖トシテ出
  テ來ルト云フコトニナリマスト、却テ
  沖繩ノ砂糖ト云フモノガソレ等ノ爲ニ
  糖價ノ下落ヲ來シテ却テ不利益ノ狀況
  ヲ來シ、今日以上ニ困難ナ狀況ニ導ク
  モノデハナイカ、ソレ故ニ吾〓ハ沖繩
  大島等ノ製糖業者ノ今日ノ狀態ニハ洵
  ニ同情ヲ致スノデアリマスガ、其同情
  致シマスル結果トシテ、寧ロ是ハ免稅
  ヲシナイ方ガ宜イト云フコトニ考ヘタ
  ノデアリマス、然ラバ沖繩大島ダケデ
  出來ル砂糖ヲ免稅シテ、臺灣トカ內地
  トカ或ハ外國カラ來ルモノニ消費稅ヲ
  課稅スル方ガ宜イト云フ御議論モ有リ
  得ルカト考ヘマスガ、是ハ消費稅ノ性
  質カラ致シマシテ、消費者ト云フモノ
  ガ內地ニアル、或ハ九州或ハ東北地方
  デアル、斯ウ云フ方ニ消費サレルノデ
  アリマス、其生產地ノ如何ニ依テ之ヲ
  免稅スルト云フコトハ、消費ハ同ジ地
  方ニ消費ナレテ居ッテ區別ガナイニ拘
  ラズ、免稅サレルコトニナリマスレバ
  消費稅ノ本旨ニ對シテ負擔ノ公正ヲ得
  ルコトガ出來ナイノデアリマス、ソレ
  故ニ地方的ニ免稅スルト云フコトハ到
  底制度上出來ナイ事ト考ヘマス、ソレ
  故ニ樽入黑糖或ハ白下糖ト云フモノヲ
  免稅スルト云フコトニナリマスト、却
  テ同情ヲスル如クニシテ爲ニナラヌ、
  不利益ヲ來スト云フ考カラ致シマシ
  テ、課稅ヲ致シテ成ベク輕減スル意味
  ヲ以テ半減シタ次第デアリマス

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• 061・祷苗代

  ○禱委員　只今黑田政府委員カラ答辯
  ガアリマシタガ、私ガ御尋ネ致シタ所
  トハ大分的ガ外レテ居リマス、私ガ質
  問以外ニ殆ド砂糖消費稅ノ全般ニ關シ
  テ答辯ヲサレマシタコトハ問題ヲ複雜
  ナラシムル所以デアルカト思ヒマス
  段々御尋ネスル積リデアリマスカラ
  成ベク質問シタ範圍ニ於テ御答辯ヲ願
  タイ、只今ノ御答ハ私ノ尋ネタ質問ト
  少シ齟齬シテ居ル所ガアリマス、範圍
  外ニナッテ居ル所ガアリマスガ、今御尋
  ネシタ範圍內ニ於テ一ツ農林大臣ノ明
  快ナル御答辯ヲ煩シタイ

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• 062・町田忠治

  ○町田國務大臣　沖繩人民ノ經濟狀態
  竝生活狀態ガ寧ロ禱君ノ御言葉ハハ
  ツキリシマセヌガ、大體ニ於テ生活ノ
  程度モ低シ、生活狀態モ甚ダ困難ナ現
  狀ニ在ルニ拘ラズ、沖繩ニ於ケル殆ド、
  唯一ト申シテハナニカ知ラヌガ、主要
  ナル沖繩ノ人民全體ノ生命ヲ維イデ居
  ル程ノ重大ナル糖業卽チ黑糖等ニ對シ
  テ消費稅ヲ課シテ居ル、此消費稅ヲ課
  スルニ付テ沖繩縣民ノ生活狀態ヲ考慮
  シナカッタカト云フ意味ガ御尋ネノ要
  點デアッタカノヤウニ心得マス、只今黑
  田政府委員カラ御答致シマシタ通リ、
  調査會ニ於キマシテモ其點ハ十分考慮
  サレタノデアリマス、同時ニ私ノ關係
  シテ居ル所デハ禱君ガ略〓御承知ノ通
  リ內地以上ニ沖繩ノ產業ヲ奬勵シテ、
  一般沖繩縣民ノ生活狀態ヲモ改善シ、
  其經濟狀態ヲ改善シテ行カナケレバ、
  內地同樣ニ參ラヌト云フコトニ深ク考
  慮ヲ致シマシタ末ニ、昨年以來產業奬
  勵金ト致シマシテ年々五十數萬圓ヲ五
  箇年間之ヲ出シテ、其中ニハ糖業ノ奬
  勵其他沖繩縣ニ最モ適シタ所ノ產業奬
  勵ノ爲ニ、特ニ斯樣ナ施設ヲスル爲ニ
  年々五十萬圓以上ノ奬勵金ヲ出シテ居
  ルト云フ次第デアリマス、此奬勵金ヲ出
  シテ居ルト云フコトガ、丁度今度ノ稅
  制ニモ關係致シマシテ、黑糖ノ消費稅
  ヲ從來二圓デアッタノヲ、沖繩縣民希
  望ノ如ク之ヲ無稅ニ致スコトハ、黑田
  政府委員カラ御答シタ如ク、動モスレ
  バ臺灣ニ於テ黑糖ヲ奬勵スルコトト相
  成ッテ、其結果却テ沖繩ノ殆ド唯一トモ
  言ハレル主要產業ノ衰退ヲ來スト云フ
  虞アルガ爲ニ一般社會政策ノ見地カ
  ラ消費者ノ負擔ヲ幾分タリトモ輕メタ
  イト云フ意味カラ、黑糖ノ二圓ヲ一圓
  ニスルト同時ニ、之ヲ無稅ニスルコト
  ガ沖繩ノ產業ヲ奬勵スル所以デナイカ
  ト、斯樣ニ考ヘタノデアリマシタガ故
  ニ、此消費稅ノ一圓ヲ殘シテ置イテ、他
  ノ方法、卽チ產業奬勵ノ意味カラ、國家
  ガ相當ノ施設ヲスルガ爲ニ、年々五十
  萬圓ヲ與ヘテ、沖繩全體ノ產業ノ開發
  縣民ノ生活狀態ヲ改良シタイ、此二樣
  ノ趣意カラ此案ガ出來テ居ルノデアリ
  マス御尋ネノ點ガ三點ニ分レテ居リ
  マシタヤウデアリマスルガ、要スルニ
  只今大要中述ベタ所ニ依テ、農林省側
  ガ此案ニ賛成シタ趣意ノ大要ヲ御諒知
  下サルコトト思ヒマス

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• 063・祷苗代

  ○禱委員　サウ致シマスルト、先刻私
  ガ讀上ゲマシタ詰リ沖繩ノ農民ノ一部
  ノ狀態ニ對シテハ、後ニ議論モアリマ
  スケレドモ、沖繩ノ產業ノ發展ヲ阻害
  スル、又沖繩ノ糖業ヲ發展スル所以デ
  ナイト云フ意味カラ、先刻讀上ゲマシ
  タ狀態ノ者ニ對シテモ、尙ホ課稅スル
  コトハ是ハ苛酷デナイ、斯ウ云フヤウ
  ナ詰リ計畫、其處ニ結論ガ歸著シテ此
  案ヲ決メラレタト、斯ウ諒承シテ宜シ
  ウゴザイマスカ、尙ホ一應農林大臣ノ
  御答辯ヲ煩ハシタイ

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• 064・町田忠治

  ○町田國務大臣　禱君ノ只今ノ御言葉
  ガ、相當强イ御言葉ヲ御使ヒニナッタカ
  ラ、私ガ、全然御同意ト云フコトヲ申上
  ゲルコトハ、却テ誤解ヲ惹起ス虞ガ或
  ハアルカモ知レマセヌカラ、他ノ言葉
  ヲ以テ申シマスレバ、沖繩多數ノ糖業
  者ガ、今日生活狀態ニ於テモ、經濟狀態
  ニ於テモ、餘程一般內地ノ縣民ニ較べ
  レバ低イ狀態ニアルカラ、之ヲ改善シ
  之ヲ向上スルト云フコトニ對シテハ、
  禱君ト同樣滿腔ノ同情ヲ沖繩縣民ニ有
  シテ居ルノデアリマス、併シ若シ私共
  ノ解釋ニ依リマスト、此消費稅ヲ全廢
  スルコトガ、寧ロ沖繩縣民ノ、糖業ニ從
  事シテ居ル多數ノ生活狀態經濟狀態ニ
  不利益ヲ與ヘヤセヌカト云フコトヲ頗
  ル憂慮シタノデアリマス、ソレハ黑田
  政府委員カラ言ハレタ如クデス、內地
  ニ於テモ競爭ガ生ジマセウシ、又殊ニ
  臺灣ニ於キマシテアノ氣候其他有利ナ
  地位ニ在ル臺灣ニ黑糖產出ヲ奬勵スル
  コトト相成ッテハ一層沖繩縣民ノ經濟
  狀態ノ改善ヲ妨ゲル虞ガアルト云フコ
  トニ深ク考慮シマシタ末ニ、一圓ノ消
  費稅ヲ殘スト云フコトハ、一面沖繩縣
  民ノ將來ノ經濟ノ改善ニ資スル意味ヲ
  以テ、此一圓ヲ存スルト同時ニ內地ニ
  比ベマシテ、產業狀態ガマダ幼稚ト申
  シテモ宜シイカ、進步ノ程度ノ程度ガ
  薄クアリマスルガ故ニ、昨年來五十萬
  圓宛年々產業助成金ヲ出シテ一般沖繩
  縣民ノ經濟狀態改善ノ爲ニ政府ガ骨折
  ルト云フ計畫ヲ立テタノデ、私ノ答辯
  ハ大體御諒承下サリハセヌカト思ヒマ
  ス

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• 065・祷苗代

  ○禱委員　質問ノ順序ト致シマシテ、
  今御答辯ニ付テ先ヅ質問シタイノデア
  リマスガ、沖繩ノ農民ニ消費稅ヲ課ス
  ルト云フコトハ、ハッキリハ仰シヤイマ
  セヌケレドモ、稍是ハ權衡ガ取レナ
  イ、負擔ノ權衡ガ取レナイケレドモ、其
  代リニ政府ハ產業助成金五十何萬圓ヲ
  出シテ居ッテ、其產業ヲ助成スル方面ニ
  於テ之ヲ救濟スル、斯ウ云フヤウナ御
  答辯デナカッタカト思ヒマス、若シ果シ
  テサウデアリマシタナラバ、沖繩ハソ
  レニ依テ幾ラカ助カリマセウ、私ハ直
  接ニ是ハ細民ガ-先刻讀上ゲマシタ
  細民ノ直接ニ急場ヲ救フ譯ニ行カヌト
  思ヒマスガ、ソレハ別問題ト致シマシ
  テ、沖繩程ニハ成程困ッテ居ナイカモ知
  レマセヌケレドモ、幾ラカ沖繩ト比べ
  マスト生活狀態ハ高イカモ分リマセヌ
  ガ、稍相似タル所ノ隣縣ノ鹿兒島縣
  ノ大島郡、之ニ對シテハ今御聲明ニナッ
  タヤウナ手段ハ政府ハ施シテ居ラレナ
  イト私ハ確ニ承知シテ居リマス、是ハ
  見棄テテモ宜イ、沖繩サヘ助ケタラバ
  此處ハ考慮ノ必要ハナイト云フ御考デ
  極メラレタモノデアリマスカ、若クハ
  今年デモ矢張沖繩同樣ニ助成金ヲ此處
  ニモ支出サルルト云フ御考デアリマス
  ガ、先ヅ此點ヲ伺ッテ置タイノデアリマ
  ス

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• 066・町田忠治

  ○町田國務大臣　大體消費稅一圓ヲ存
  シテ置キマシタ意味ハ、沖繩縣民ノ糖
  業ニ從事シテ居ル多數ノ爲ニ、同時ニ
  隣縣ノ大島郡ノ糖業ニ從事シテ居ル多
  數ノ人ノ爲ヲ考慮シテ、一圓ヲ存シテ
  居ッタ意味ハ双方ノ間ニ區別ハアリマ
  セヌ、同樣ナ趣意カラ出來テ居ルト私
  ハ信ジテ居リマス、而シテ大島郡ニ於
  ケル產業狀態ガ鹿兒島縣ノ中ニ於テモ
  餘程低イカラ、之ヲ國庫ガ產業奬勵ノ
  爲ニ相當ナ國費ヲ投ズルコトガ、沖繩
  ト同樣ニシテ宜カリサウナモノデアル
  ガ、政府ガ之ヲ閑却シテ居リハセヌカ
  ト云フヤウナ意味合ニ御質問ヲ解釋致
  シマシタノデアリマスガ、私ハ左樣ニ
  大島ヲ冷淡ニ取扱フト云フ考ハ勿論持
  ツテ居リマセヌ、是ハ御懇談ノ意味ニ
  委員會ヲ解釋シテ居リマスカラ、極ク
  打解ケタ御話ヲシマスト、禱君ガ沖繩
  ノ產業ノ爲ニ、從來ト雖モ非常ナ御熱
  心デアルト云フコトノ御意見ヲ私モ豫
  テ承ッテ居リマス、殊ニ昨年ノ風水害ノ
  爲ニ、大島郡ノ復舊其他經濟狀態改善
  ノ爲ニ、何等カ地方廳トシテ、若クハ之
  ニ關聯シテ國家トシテモ、何等カノ方
  法ヲ立テルコトガ必要デアル、昨年ノ
  悲慘ナル風水害ノ爲ニ一層其經濟狀態
  ガ今日ハ餘程宜シクナイ現狀ニ在ルト
  云フコトハ、私モ承知シテ居リマス、察
  スルニ鹿兒島縣知事トシテ目下其計畫
  ヲ立テツツアルト私ハ諒解シテ居リマ
  ス、沖繩縣知事ハ縣トシテ復舊及ビ將
  來ノ開發ノ計畫ヲ立テタトキニハ、改
  メテ私ノ方ニ關係アル所ハ農林省ノ方
  ニ協議ニ參ルト云フコトモ承ッテ居リ
  マスカラ、其節ニハ地方官憲ト協力シ
  テ、大島郡ノ昨年ノ非常ナル風水害ヲ
  受ケタ、其復舊ト同時ニ將來ノ開發ニ
  對シテ、相當ナ考慮ヲスルコトハ勿論
  ト斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=66

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• 067・祷苗代

  ○禱委員　大島郡ノ將來ノ開發上ニ對
  スル御意見ヲ承ッテ、非常ニ其處ニ御考
  慮ヲシテ戴クコトヲ私今希望シテ感謝
  ヲシテ置キマス、先程カラ農林大臣モ
  黑田政府委員モ、是ハ本會議ノ御答辯
  中ニモアリマシタガ、之ヲ廢稅スルコ
  トハ寧ロ沖繩竝大島ノ黑糖主要產地
  ノ向上發展ニ資スル所以デナイ、何ト
  ナレバ若シ之ヲ廢稅スルト云フコトニ
  ナレバ、臺灣デモ黑糖ヲ製造スルヤウ
  ニナリ、內地ノ現在砂糖ヲ製造シテ居
  ル所デモサウ云フ傾向ニナッテ來ルト
  寧ロ他ノ方面ニ於テ此需要ノ少イ所ノ
  黑糖ト云フモノガ非常ニ澤山現ハレテ
  寧口壓迫ヲ蒙ル、斯ウ云フ御趣旨カト
  思ヒマスガ、是ハ明確ナル私ハ統計ヲ
  實ハ持チマセヌ、若シ政府ニ此資料ガ
  アリマシタナラバ、是非御提出ヲ煩ハ
  シテ置キタイノデアリマス、今日カラ
  臺灣ノ方カラ私ガ〓究ヲシテ居リ
  マスル範圍ノ事ニ付テ私ノ考ヲ申上ゲ
  テ見タイ、臺灣デハ成程機械製糖以外
  ニ土人ガ小規模ノ壓搾機ヲ用ヒテ砂糖
  ヲ製造シテ居リマスガ、其生產品ハ黑
  糖ニ非ズシテ殆ド赤糖デアルト云フコ
  トヲ聞イテ居リマス、是ハ長イ間臺灣
  ニ居リマシタ東〓代議士カラモ聞イテ
  居リマス、此赤糖ノ今日ノ市場ニ於ケ
  ル販路ノ上カラ、其價格ノ上カラ、之ガ
  黑糖ノ砂糖消費稅ガ全廢セラルルガ故
  ニ、黑糖ニ後戾リシテ黑糖ヲ造ルコト
  ニナルト云フコトハ絕對ニナイト思ヒ
  マス、假ニ之ガアリマシテモ、其生產額
  ナルモノハ極ク小部分デアル、砂糖全
  般カラ見マスルト一割ニモ當ラナイ、
  故ニ是ガ價格ノ上カラ卽チ消費者一般
  ノ需要ノ上カラ、決シテ是ガ轉業セラ
  ルベキモノデナイト思フ、ソレカラ其
  他內地ニ於ケル砂糖製造業者ガ、免稅
  セラルルト云フコトニナレバ段々其方
  ニ轉業シテ來テ、サウシテ生產量ガ增
  シテ、沖繩大島ガ壓迫セラルル、是ハ全
  般ノ方面ハ聞キマセヌ、統計デハ私ハ
  調ベルコトガ出來ナカッタガ、高知縣、
  香川縣、愛媛縣、熊本縣、大島ノコトハ
  私ハ知ッテ居リマス、是等ノ土地ニ於テ
  是ガ主要產物デモナシ、副業デアル、サ
  ウシテ多クハ樽入デハナイ、何ト申シ
  マスルカ、莚ニ包ンデアル、ソレ等ノモ
  ノガ市場ニ今日出テ居ルノデアル、是
  等ハ假ニ全廢セラレタニシテモ、一年
  間ニ於テ百斤一圓下ッタカラ上ッタカラ
  ト云フノデ、其生產費ガ增減セラルル
  ト云フコトハ今日考ヘラレナイ狀況デ
  アル、是ハ尤モ議員ノ素人ノ人〓デス
  カラ正確ナコトデハナイカモ知レマセ
  ヌガ、サウナッテ來レバ輸入品ガ直ニ今
  度ハ包裝ヲ變ヘテ樽ニ入レ替エテ市場
  ニ販賣セラルルヤウニナッテ壓迫セラ
  レル、是モ先達テ本會デノ御答辯デア
  リマシタガ、是ハ考ヘラレナイト云フ
  コトハ、砂糖樽ハ是ハ大量生產ヲシマ
  スルト、マダ安クモナリマセウケレド
  モ、鹿兒島縣大島郡デ此樽ヲ造リマス、
  其生產費ガ幾ラ掛カルカト云フト、約
  一圓五十錢掛カリマス、一圓五十錢ヲ
  成程他ノ砂糖ニシテ置キマスレバ莚其
  他ノモノニ依テ包裝セラレタモノガ、
  樽ニ替エラレルカモ知レマセヌガ、少
  クトモ外國カラ東京大阪其他ノ市場ニ
  持ッテ來ルニハ莚デ持ッテ來ルダラウト
  思ヒマス、ソレヲ樽ニ造リ替エ入レ替
  ユルト云フコトハ、一圓ヲ得スルガ爲
  ニ一圓五十錢ニ相當スル所ノ樽ヲ拵ヘ
  テ市場ニ出スト云フコトハ、到底考へ
  ラレナイコトデアル、ノミナラズ此黑
  糖ハ今日非常ニ利益デアル所ノ事業デ
  アリマシタナラバ、其議論モ立チマセウ
  ガ、沖繩大島ニ依テ見マスレバ、數字的ニ
  ハ分リマセヌガ、大島デハ一段步中等ノ
  畑ヲ用ヰマシテ出來マシタ所ノ砂糖、
  早ク申シマスレバ金ニシテ換算致シマ
  スレバ、十三年ノ統計ニ五十四圓トナッ
  テ居ル、生產費ヲ、男ノ賃銀ヲ七十錢ト
  換算シ女ヲ五十錢ト換算シテ、是ハ高
  イ賃銀デハナカラウト思フノデス、斯
  ウシテ換算シテ行キマスト云フト、七
  十六圓四十四錢トナルノデアリマス、
  サウシテ見ルト一箇年出來タ所ノ一段
  步當リノ砂糖ニ依テ二十二圓四十四錢
  ト云フ損失ヲ招ク結果ニナッテ居リマ
  ス、大島ガ其通リ、沖繩ニ於テモ大同小
  異デアリマス、內地ニ於テ是ガ生產費
  ガ非常ニ減ゼラルル、又內地ノ畑ニ出
  來ルモノハ大島ヨリ非常ニ有利デアル
  ト云フコトハ、氣候ノ上其他ノ方面カ
  ラサウ考ヘラレマセヌ、サウシテ見レ
  バ餘リ有利ナ事業デナイ、是等ノ事情
  ヲ綜合シテ考ヘテ見マスレバ、此一圓
  ヲ、モウ一圓ヲ減額シテ全廢スルコト
  ニ依テ、大島ノ砂糖、沖繩ノ砂糖ガ他ノ
  方面ニ於テ大量生產ヲセラルルガ爲
  ニ、壓迫ヲ受ケルト云フコトハ到底私
  ニハ信ジラレナイノデス、併シ私ガ唯、
  此處デ强ク申上ゲルコトガ出來マセヌ
  ノハ、事實ニ基イテ居ル統計ヲ持チマ
  セヌ、唯〓人ノ話ヲ聞イテ、其人ノ意見
  ニ依テ只今ノ疑問ヲ持ッテ居ルノデア
  リマス、政府ノ方ニ於テハ統計ニ基イ
  テ、技術ニ基イテ、ソレガ誤リデアルト
  云フコトデアリマシタナラバ、謹ンデ
  其事ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=67

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• 068・黒田英雄

  ○黑田政府委員　樽入黑糖ノ課稅ヲ免
  除致シマスト云フコトハ、却テ沖繩、大
  島郡ノ砂糖ノ生產ニ不利益ヲ與ヘルト
  云フコトハ誤ッテハ居ラヌダラウカト
  云フ意味ノ御意見デアッタノデアリマ
  ス、統計ニ付キマシテハ、御要求ノモノ
  ニ付キマシテハ、作リマシテ差上ゲテ
  宜シイト思ヒマスガ、骨子ハ一圓ノ免
  稅ヲスルト云フコトニ依テ、果シテ臺
  灣或ハ內地或ハ輸入糖ガ、樽入黑糖ニ
  變ズルトハ考ヘラレナイ、僅カ一圓ノ
  輕減ニ依リ斯樣ニナラウトハ考ヘラレ
  ナイト云フコトガ根本ノヤウデアッタ
  ノデアリマス、消費稅ヲ免除致シマス
  レバ、矢張一圓ノ輕減ニナリマスルコ
  トハ、是ハ申迄モナイノデアリマスル
  ガ、其上ニ課稅ヲ致シテ居リマスルト
  云フト、非常ニ手數ヲ要スルノデアリ
  マス或ハ監督、取締或ハ課稅上ノ-
  納稅上等ノ手數ト云フモノガ色〓掛カ
  ルノデアリマシテ、ソレ等ノ點ヲ考ヘ
  マスルト云フト、單ニ一圓ト云フダケ
  ノ問題デハナカラウト考ヘマス、內地
  ニ於キマスル砂糖ノ產額ト云フモノ
  ハ是ハ今日ニ於キマシテハ、勿論沖
  繩大島郡ニ比較スル程ノモノデハナ
  イノデアリマシテ、樽入黑糖ダケニ付
  テ見マスルト云フト、沖繩大島郡ヲ除
  キマスル地方ニ於キマシテハ三百八
  十五萬圓、六千萬七千萬斤、沖繩大島ガ
  出來テ居ルノデアリマスカラ、極メテ
  少イノデアリマス、併ナガラ課稅ヲ免
  除サレマシタ場合ニ於キマシテハ、內
  地ニ於テ造ッテ居リマスモノモ、極メテ
  此製造ガ容易ニナッテ來ル取締モ何モ
  受ケナイノデアリマスカラ、容易ニナ
  リマシテ、又一方ハ課稅ヲサレ一方ハ
  無稅ト云フコトニナリマスト云フト
  自然ニ其方ニ移ル、例ヘバ小笠原ニ致
  シマシテモ小笠原ハ樽入白下デアリマ
  スガ、是等ニ於キマシテモ、同ジ樽ニ入
  レテ居ルノデアリマスカラ、是等ヲ樽
  入黑糖ニ變ズルコトモ容易デアラウト
  考ヘルノデアリマス、假ニ內地ニ於キ
  マスル砂糖ガ全部變ジマシテ或ハ第一
  種ノ丙ト云フモノモ內地ニ於テ相當ニ
  出來テ居ルノデアリマシテ、四千九百
  餘萬斤出來テ居ルノデアリマス、是等
  モヤリヤウニ依リマシテハ、之ヲ變ジ
  マシテ何等課稅上ノ取締モ受ケズ、サ
  ウシテ租稅ノ負擔ヲセズニ拵ヘルト云
  フコトニナリマスト、變へ得ルコトト
  考ヘルノデアリマス、併ナガラ是ガ勿
  論沖繩、大島郡ノ砂糖ノ大部分ヲ之ニ
  依テ侵蝕スルト云フコトハ假ニナイト
  致シマシテモ、相當影響ヲシテ來ルコ
  トト考ヘマス、ソレカラシテ臺灣ニ付
  キマシテモ御話ガアリマシタガ、臺灣
  デ今日造ッテ居リマスルモノハ勿論赤
  糖デゴザイマス、樽入黑糖ハナイノデ
  アリマスガ、是ハ臺灣ニ於キマスル消
  費ノ需要ノ關係カラ致シマシテ、ソレ
  ニ應ズル赤糖ヲ拵ヘテ居ルノデアリマ
  ス、ソレガ若シ樽入黑糖ト云フモノガ
  免稅ニナリマシタ場合ニ於キマシテ
  ハ、之ヲ變ジテ黑糖ニ致シマスコトハ、
  是ハ極メテ容易ナモノデアリマス、是
  ハ直グ出來ルヤウニモ臺灣總督府ノ方
  ノ關係官モ申シテ居ルノデアリマス、
  樽ノ事ニ付キマシテノ御話デアリマス
  ガ、沖繩縣ニ於キマシテモ、樽代ト云フ
  モノハ他カラ輸入シテ居ルヤウニ承知
  致シテ居ルノデアリマス、然ラバ之ヲ
  他ノ地方ニ於テ出來マスル場合ニ於テ
  ハ同樣若クハ容易ニ安ク得ラルルヤ
  ウニ相成ラウト考ヘル、生產費ノ上ニ
  於キマシテモ、沖繩縣ノ砂糖ノ生產費
  ガ相當高イト云フコトハ御意見ノ中ニ
  モアリマシタヤウデアリマス、是等モ
  臺灣糖ニ於キマシテハ非常ニ耕作ノ適
  地モアリ、又大量ニ拵ヘ得ルノデアリ
  マスカラ、容易ニ却ッテ有利ニ出來ルト
  云フ風ナ事情モアラウ、輸入糖ニ付キ
  マシテモ相當輸入ガアルノデアリマ
  ス、是等ハ成程今日ニ於テハ稅金ノ關
  係上之ヲ必ズシモ樽入ニスル必要ハナ
  イノデアリマスカラ、自然ニ袋ノヤウ
  ナモノニ這入ッテ居ルト云フコトモア
  ルノデアリマスケレドモ、是ガ若シ無
  稅ニナリ製造ガ容易ニナッテ、何等ノ取
  締モ受ケナイ、取締上ニ於テモ非常ニ
  輕便ニナルト云フコトニナルト云フ
  ト、之ヲ樽ニ致シマスコトモ、是モ亦容
  易ノヤウニ承知致シテ居ルノデアリマ
  ス、左樣ナ點ヲ考ヘマスレバ、全部沖繩
  大島ノ砂糖ニ是ガ變ルト云フコトハ勿
  論考ヘラレナイノデアリマスガ、而モ
  ソレガ安ク出來ルト云フコトニナリマ
  スト、ドウシテモ嗜好ハ勿論消費ノ方
  面カラ申シマシテモ、無稅ニナルト云
  フコトカラ非常ニ消費ガ殖エルカト申
  シマスト、ソレハモウ特殊ノ嗜好品デ
  アリマスカラシテ、必ズシモソレ程增
  加スルコトモナカラウト思ヒマスガ、
  併ナガラ多少免稅ニナリマシテ安ク
  ナルト云フコトニナレバ、或ハ樽入白下
  トカ、或ハ第一種ノ丙ヲ使フト云フ者
  ノ消費ガ其方ニ移ッテ行クト云フコト
  モアラウカト思ヒマス、隨テ此價格ノ下
  落、他ノ供給ト云フコトガアリマスト、
  ドウシテモ此沖繩、大島ト云フモノノ
  砂糖ト云フモノハ、競爭上ニ於キマシ
  テ今日ヨリモ價格ヲ下ゲナケレバナラ
  ヌト云フ風ナコトニ自然ニ相成ッテ參
  ラウト考ヘルノデアリマス、ソレガ沖
  繩大島郡ノ爲ニ却テ不利益ニナルダラ
  ウト云フ風ニ考ヘマス次第デアリマ
  ス、數字ハ御希望ガアリマスレバ後カ
  ラ廻付サセマス

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• 069・祷苗代

  ○禱委員　只今ノ御答辯中ニ消費稅ヲ
  存續セシメテ置クコトハ單ニ一圓デナ
  イ、此一圓ヲ全廢スルニ依テ他ニモ負
  擔ガアルカラ漸次ニ外ノ方面ニモ調和
  ガ出來ル、是ハ大島沖繩ニ對シテモ矢
  張必要ナコトデアルト云フノデアリマ
  スガ、私ガ此廢稅ヲ主張致シマスノモ
  單ニ一圓ノ額ヲ減額スルノミデナイ、
  是ガ爲ニ少カラズ色〓ナル損害ヲ蒙
  リ、其他色ミナル社會上〓育上各方面
  ニ向ッテ惡影響ガアリマスガ故ニ、是ハ
  是非廢稅スベキモノナリトシテ居リマ
  ス、他ノ方面ニ於テソレガ例ニナルカ
  ラ、多クナルト云フダケソレダケ大島
  沖繩ニ於ケル當業者ハ利益ヲ受ケルト
  云フコトニナリハセヌカ、而シテ是ガ
  廢稅ニナルト云フコトニナレバ、輸入
  糖及內地其他ノ詰リ鹿兒島沖繩以外ノ
  各府縣ニ於テ出來ル砂糖ノ生產額ガ殖
  エルニ依テ、沖繩竝大島ノ砂糖ト云フ
  モノガ影響ヲ蒙ル、先日ノ御答辯デハ
  非常ナ壓迫ト云フコトガ今日ハ幾ラカ
  ノ影響ヲ受ケルト云フコトニナリマシ
  タ、私ノ考ヘマス所デハ、其影響タルヤ
  是ハ市場ニ向ッテノ競爭デアリマシテ、
  サウシテ需要ガサウ澤山ナイ所デ、而
  モ黑糖ガ利益ニナル事業デナイト云フ
  コトハ先刻申上ゲマシタ通リデアリマ
  ス、是等ノ方面カラ沖繩大島ハ不利益
  ナガラモ此製糖事業ヲ繼續シテ居ルノ
  デアリマスカラ、內地他府縣ニ於テ此
  不利益ナル事業ガ盛ニナルトハドウシ
  テモ考ヘラレヌ、是ハ結局意見ノ相違
  ニ歸著スルコトデアラウト思ヒマス、
  故ニ此點ニ於テ壓迫ヲ受ケル故ニ沖繩
  ノ產業ニ資スル所以デナイト云フ御議
  論ハ到底承服ハ出出來ヌト云フコトノ
  意思ヲ表明シテ置キタイノデアリマ
  ス、次ニ伺ヒタイノハ、今度ノ第二次稅
  制整理ニ於テ、殊ニ此黑糖ニ於テハ負
  擔ノ均衡ヲ得セシムルト云フコトガ主
  タル改正ノ理由ダ、其外社會政策ノ效
  果ヲ擧ゲルコト竝產業ニ資スルト云
  フコトハ先刻來申シテモ居ラレマス、
  所ガ此黑糖生產業者ガ他ノ農業者ニ對
  シ、又他ノ商工業者ニ對シ負擔ノ均衡
  ト云フモノガ何處ニアリマスカト云フ
  コトヲ私ハ考ヘナケレバナラヌ、何處
  ニ其公平ガアルカ、之ニ課稅セラルル
  ト云フコトハ頗ル不公平ヂヤアリマセ
  ヌカト云フノガ强ク私ノ頭ニアリマス
  疑問デアリマス、統計ニ基イテ申シマ
  スルト、大島ノ方面カラ-私ハ能ク
  知ッテ居リマスカラ、其方面カラ先ニ申
  上ゲタイ、全戶數ガ約三萬八千九百三
  十五、其中ノ農業戶數ニ於テ三萬二千
  バカリアリママ、殆ド農業者ハ製糖業
  者デアリマシタガ、此事業ガ有利ナル
  事業デナイ爲ニ漸次減少致シマシテ、
  大正十三年ノ統計ニ依リマスト、二萬
  二千四百九十三戶ト云フ製糖業者ノ戶
  數デアル、大島ノ同年度ニ對スル砂糖
  ノ生產額ヲ此戶數デ割リマスト、其斤
  量ナドハ面倒ニナリマスカラ金ニ換算
  致シマスト、一戶當リノ一年ノ收益ガ
  ドレダケニナルカト申シマスト、砂糖
  一斤ヲ十錢ト換算致シマス、其全戶數
  デ割リマスト五、八ト云フ數字ガ出テ
  居リマスガ、サウスルト六樽ニハ足リ
  マセヌ、五樽以上デアリマス、サウスル
  ト之ヲ金ニ換算致シマスト一斤十錢ト
  見積リマシテ一樽十三圓ニナリマス、
  五、八デ七十五圓ニ相當スルモノデア
  リマス、農業戶數全部是ノミトハ申シ
  マセヌガ、多クハ此砂糖ガ主要ナル收
  穫デス、金ヲ得ル所ノ農業所謂農家ノ
  收入デアリマス、一年ニ七十五圓、從來
  デアリマシタラ此內十五圓八錢ノ消費
  稅ヲ納メマスト、ソレダケ減額スルコ
  トニナリマス、假ニ改正稅法ニ依リマ
  シテモ七圓五十四錢ト云フ金額ヲ控除
  シマシタモノガ卽チ大島ノ農民ノ一年
  ノ收益デアリマス、斯ウ云フヤウナドッ
  チカト云フト非常ナ收穫ノ少イ年收ノ
  少イ所ノ農家ニ對シテ課稅ヲセラル
  ル、先刻モ御話ガアリマシタカラ私モ
  存ジテ居リマスガ、成程是ハ間接稅デ
  負擔ヲスルノハ消費者デアッテ、生產者
  ガスルノヂヤナイト云フ議論ガアリマ
  スガ、是ハ私ハ少クトモ大島ト沖繩ニ
  於ケル砂糖消費稅ナルモノハ、名ハ消
  費稅デアッテ、其實轉嫁セザル生產稅ナ
  リト私ハ思フノデアリマス、サウシタ
  ナラバ此細民ノ收入ニ對スル此課稅ヲ
  サルルト云フコトハ、所謂自作農創定
  維持ヲ高調セラレテ居ル現政府ノ政策
  ノ實現トシテハ、是ハ矛盾シテ居リハ
  セヌカ、ソレカラ之ヲ他ノ方面ニ比較
  シテ負擔ガ不公平デアル、均衡ヲ得テ
  居ナイ、外ノ農業者デアレバ、如何ニ米
  ヲ澤山作ラウガ、稅金ハ負擔シテ居リ
  マセヌ、ソレカラ假ニ農家ニ於テ同ジ
  業態ノ方面カラ考ヘテ見マスレバ、農
  家ニ於テ芋ヲ澤山作ッテ、餘ッタトキニ
  ハ澱粉ヲ拵ヘル、是モ相當ナ機械ヲ用ヒ
  テ拵ヘル、而モ之ニ對シテハ純益四百圓
  以上ニ上ラウトモ、之ニハ課稅ヲシテ居
  ラレマセヌ、漁業者ガ鰹ヲ釣ッテ來テ、
  サウシテ鰹節ヲ製造サルルニ純益四百
  圓以上ニ上リマセウトモ、之ニ對シテハ
  ハ課稅ハセラレマセヌ、卽チ農業ノ發展
  ニ資スル爲メ、其農業ノ發達ヲ或ハ漁
  業ノ發達ヲ助ケル爲ニ、國家ハ斯ノ如
  ク考ヘテ居ラルルノデアルノニ、何故
  此生產品ガ砂糖デアルガ故ニ、斯ノ如
  キ所謂慘酷ナル稅ヲ負擔サセナケレバ
  ナラヌカト云フノガ第二ノ私ノ疑問デ
  アリマス、成程砂糖ハ生產品ガ、是ハ消
  費稅ノ目的物デアルガ故ニ課稅スルノ
  デアル、澱粉トハ違フノデアル、是ハ此
  前ノ御答辯ニモアリマシタガ、ソレハ
  此國ガ國民ニ對シテ負擔ヲナサシムル
  上ニ於テハ、其業態ニ於テ保護セラル
  ルトキハ、業態ニ向ッテ是ハ小農デアル
  カラ免稅シ、是ハ小資本家デアルカラ
  免稅點ヲ設ケル、斯ウ云フ意味ニ於テ
  免稅點ヲ設ケラレ、又小サナ商工業者
  ニ對シテモ、又小サナ農業者ニ對シテ
  モ、其趣旨ニ於テ免稅點ナリ種々ノ所
  謂社會政策的ノ見地カラ、此資力ノ薄
  弱ナ者ニ對シテハ稅ヲ輕減セラレテ居
  ルノニ、單リ此砂糖消費稅ノミハ其事
  ガ考ヘラレヌノハ何故デアルカ、他ノ
  商工業者、農業者ニ對シテモ、負擔ノ公
  平ヲ得ラレテ居ルノデハアリマセヌ
  カ、尙ホ諄イヤウデアリマスガ、砂糖ハ
  消費稅ノ目的物デアルカラト云フノデ
  アリマスガ、是ハ機械製糖ノ製造業者
  カラ云ヘバ、機械製糖ヲ爲シテ、生產品
  ノ制限ガ自由ニナリ改良ガ自由ニナ
  ル、此大資本ヲ以テ經營セラレテ居リ
  マスル機械製糖ト、原始的ニ家庭的ニ
  經營セラルル所ノ此黑糖製造者ト同一
  ニ取扱ハルルト云フコトハ、是ハ誤ッタ
  ル見解デハアリマセヌカ、斯ウ思ヒマ
  ス、其意味ニ於テ其點ニ於テ一寸此砂
  糖消費稅ヲ設ケラレタ時ノ事情ガアル
  ノデス、是ハ藤澤サンナドモ、町田サン
  ナドモ御承知カモ知レマセヌガ、明治
  三十四年ニ此稅ガ設ケラレルトキニ、
  時ノ沖繩縣知事ノ奈良原繁ト云フ人ハ
  非常ニ自分ノ手柄ニシタ、砂糖消費稅
  ヲ設ケテ、ソレト殆ド同額ノ補助金ヲ
  國庫カラ貰ッテ、サウシテ糖業改良資金
  ニ資スルノデアル、一人々々當業者カ
  ラ取ッテスルト云フコトハ到底出來ヌ
  ノデアルカラト、手柄話ヲシタ、其時ニ
  私ノ方ノ代議士ニ對シテモ賛成ヲ求メ
  ラレタ、其方ガ利益デアルカラト云フ
  テ賛成ヲ求メラレタ、其翌年カラ直ニ
  廢減稅ノ運動ガアッタト云フコトハ御
  記憶ニ新タデアラウト思フ、此時分ニ
  モ議論ガ相當ニアッタ、機械製糖業者
  竝大資本ヲ抱ヘテ居ル所ノ者ガ經營シ
  テ居ラレル所ノ機械製糖ト、是ト同一
  ニ取扱フベキモノデハナイノデハナイ
  カ、一方ハ寧ロソレヨリモ糖業試驗改
  良ノ方ニ使ッタ方ガ有利デアルノダ、斯
  ウ云フ趣旨ニ於テ賛成ヲ求メラレタ、
  能ク今私ガ先刻來述べテ居リマスル、
  所謂社會政策ノ上カラ、所謂產業ヲ發
  達セシメル上カラ、竝負擔ノ均衡ヲ
  得セシムル上カラト云フコトハ考ヘラ
  レズ、此黑糖製造業者ニ課セラレテ居
  ルノデアリマス、斯ウ云フ事情ノ下ニ
  於テ出來タ法律ガ、今日ニ行ハレテ居
  ルト云フコトハ、是ハ甚ダ遺憾千萬ダ
  ト私ハ思フノデアリマス、故ニ私ノ伺
  ヒタイノハ、斯樣ナ事情ニ於テ出來タ
  所ノ事柄ハ一日モ早ク廢止セラルルノ
  ガ當能デアラウ、他ノ農業者ニ對シテ
  モ、他ノ商工業者ニ對シテモ、其負擔ノ
  均衡ト云フモノガ得ラレテ居ナイ、又
  此小農ヲ助ケルト云フ意味カラシテ、
  所謂社會政策ノ效果ヲ擧ゲル上カラモ
  頗ル是ハ不都合ナル稅制デアルト私ハ
  考ヘラ居リマスガ、此點ニ對シテハド
  ウ云フ御考デアリマスカ、先ヅ以テ農
  林大臣ノ此負擔ノ均衡竝產業發達ニ
  資スルト云フコトハ、是デモ言ヘマス
  カ、ドウデスカ、此點ヲ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=69

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• 070・町田忠治

  ○町田國務大臣　縷御意見ヲ加ヘタ御
  尋ネデアリマスガ、先刻來再度大體御
  答ヲシタ以外ニ私トシテハ更ニ禱君ノ
  御滿足ヲ得ルヤウナ答辯ヲ此上ニ致ス
  コトハ、自分トシテ甚ダ困難ト思ッテ居
  リマス、大體ニ於キマシテハ寧ロ此消
  費稅ヲ一圓存シテ置クコトハ、沖繩當
  業者ノ利益デアル、是ハ臺灣其他ニ之
  ヲ全慶シタ結果トシテ、臺灣其他ニ黑
  糖ノ產出ヲ促シテ、沖繩多數民ノ當業
  者ヲ不安ナ地位ニ置クト云フ不利益ノ
  アルト云フコトガ、主トシテ二圓ヲ一
  圓ニ減ジテ一般多數階級ノ需要ニ應ズ
  ル爲ニ社會政策ヲ加味シタト云フ、此
  二點カラ此改正ヲ致シタノデアッテ、同
  時ニ禱君ノ非常ナ御同情アル沖繩縣民
  全體ノ生活狀態ヲ改善シ、經濟狀態ヲ
  增進スルト云フコトニ對シテハ、五十
  議會以來皆サンノ御協賛ヲ經テ、特ニ
  沖繩縣民ノ爲ニ年々五十萬圓ヅツノ產
  業奬勵金ヲ出シテ、其經濟狀態ノ改善
  產業ノ發達ヲ圖ルト云フコトヲ一面ヤ
  ル、此助勢ニ依テ禱君ノ御心配ノコト
  ハ除キ得ラレルト思フノデアリマス、
  消費稅ノ負擔ノ歸著スル所ニ對シテ
  ハ、大藏政府委員ト禱君ノ間ニ御議論
  ガアル、是ハ學者間デモ多少議論ノア
  ルコトハ私モ承知シテ居リマス、併シ
  大體ニ於テハ斯樣ナ稅ハ結局消費者ノ
  負擔ニ屬スルモノデ、生產者ノ負擔ニ
  屬スルモノデハナイ、或特別ナ事情ノ
  下ニハ一時生產者ガ之ヲ負擔シナケレ
  バナラヌ場合アルコトハ私モ承知シテ
  居リマスガ、大體ニ於テ斯樣ナ消費稅
  ハ所謂消費者ノ負擔ニ歸スルモノデア
  ル、此故ニ政府ハ此二圓ヲ一圓ニシテ、
  多數階級ノ消費ニ便ニスル社會政策ヲ
  加味シテ一圓ニシタ、是以上私トシテ
  ハ御滿足ヲ得ル答辯ノ出來タコトヲ甚
  ダ遺憾トシテ居リマス、大體ハ禱君ノ
  御趣意ノアル所モ諒解シタノデアリマ
  ス、遺憾ナガラ是以上ハ意見ノ相違ト
  斯樣ニ御解釋下サッタ方ガ宜カラウト
  私ハ思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=70

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• 071・武藤金吉

  ○武藤委員長　今奧村君ヨリ議員ノ體
  面ニ關シテ商工省ノ官吏ニ特ニ質問ガ
  アルサウデスカラ、質問ノ繼續ハ後デ
  オヤリ下サイ、奧村君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=71

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• 072・奥村千藏

  ○奧村委員　本員ハ午前ノ委員會ノ時
  ニ於キマシテ、委員長ヲ通ジマシテ商
  工省ノ工務局長竝工務局ノ平野技師ニ
  出席ヲシテ戴クコトヲ御願ヒシマシタ、
  幸ヒ只今御出席ノヤウデゴザイマス
  カラ御尋ネヲ致シマス、ソレハ平野技
  師ニ御尋ネヲ致シタイ、一問一答ノ形ニ
  於テ御許ヲ願ヒタイト思ヒマス、平野
  技師ハ長崎英造ト云フ御方ヲ御存ジデ
  アルカドウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=72

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• 073・平野久保

  ○平野商工技師　存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=73

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• 074・奥村千藏

  ○奧村委員　サウシテ東京商業會議所
  ノ議員デアル日下ト云フ人ヲ御承知デ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=74

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• 075・平野久保

  ○平野商工技師　存ジマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=75

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• 076・奥村千藏

  ○奧村委員　御存知アリマセヌカ、昨
  年五十一議會終了直後ニ於キマシテ、
  アナタハ獨逸實業家ヲ代表ノ意味デ渡
  來シテ來テ居リマシタル-ソレハ勿
  論獨逸ト我ガ帝國ト通商條約ヲ締結ス
  ル爲ニ其顧問ノヤウナ立場デ來テ居。ツ
  タ人ダサウデアリマス、「ワイベル」ト
  云フ人ト御會ヒニナッタコトガアルカ
  ドウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=76

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• 077・平野久保

  ○平野商工技師　ゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=77

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• 078・奥村千藏

  ○奧村委員　ソレハ何處デ御會ヒニナ
  リマシタカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=78

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• 079・平野久保

  ○平野商工技師　一寸場所ハ忘レマシ
  タガ、長崎英造君ノ仲介ニ依リマシテ、
  日本橋ノ河岸ニゴザイマス日本料理屋
  デゴザイマシタ、一寸名前ハ忘レマシ
  タ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=79

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• 080・奥村千藏

  ○奧村委員　其席上「ワイベル」氏トア
  ナタトドウ云フ御話ガ交換サレマシタ
  カ、御漏シヲ願ヒタイノデス

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• 081・平野久保

  ○平野商工技師　大分以前ノコトデゴ
  ザイマスカラ、詳シイコトハ忘レマシ
  タガ、大體ニ於キマシテ獨逸ノ「ワイベ
  ル」ガ代表シテ渡來致シマシタ要件ニ
  付キマシテ、專門家トシテノ隔意ナキ
  意見ヲ交換シタト云フコトヲ覺エテ居
  リマス

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• 082・奥村千藏

  ○奧村委員　只今餘リ隔ッタコトデアル
  ト云フ御話デアリマシタガ、ソレハ昨
  年議會ガ終了致シマシタ-マダ滿一
  年ニ達シナイコトデアリマス、今ノ御
  話ニ依リマスト、專門家トシテ專門ニ
  渉ルコトノ話デアッタ、斯ウ云フ御話デ
  コザイマスガ、勿論ソレハ其御〓究ニ
  ナッタカ、或ハ交換ナサレタト云フコト
  ガ、我ガ國家ニ對シテ好イ影響ヲ與ヘ
  タカ惡イカト云フコトハ別問題ト致シ
  マシテモ、其話ノ席上ニ於テ、談偶々染
  料ノ問題ニ這入リマシタラ、「ワイベ
  ル」ト云フ人ガ、日本ノ代議士ハ極メテ
  眞面目ニ非常ニ熱心ニ此染料始メ國策
  ノ問題ニ付テ論議サレテ結構ダ、斯ウ
  云フ意味ノコトヲ「ワイベル」氏ガ言ウ
  タラ、平野氏ハ代議士ハ何モ知ラヌモ
  ンケレドモ、アレハ染料ヲ扱フ輸入商
  側カラ買收サレテ、サウシテヤカマシ
  ク言ウノダ、斯ウ云フコトヲアナタハ
  獨逸ノ實業家ノ其人ニ仰シヤッタト云
  フコトデアリマス、御會見ニナルコトガ
  技術上ノ問題デアル、而モ國際トハ申
  シマセヌケレドモ、獨逸ノ代表的サウ
  云フ人物ト御會ヒニナルノニ、神戶ノ
  鈴木商店ノ長崎何トカ云フ人間ノ紹介
  デ、日本料理屋デ而モ專門ノコトヲ御
  〓究ニナッタカドウカハ別問題ト致シ
  マシテモ、其席上ニ於テ苟モ昨年ノ五
  十一議會ノ大問題デアッタ所ノ、而モ現
  內閣ノ政策ノ重要部分ヲ占メテ居ル所
  ノ關稅定率法中ノ改正案ニ對シテ、議
  員ノ與ヘラレタル權能ニ依テ之ヲ愼
  重審議論議シタルコトヲ、ソレハ輸入
  業者ガ買收シタカラ、議員ハ染料ノコ
  トハ何モ知ラナイノダガ、ワイ〓〓言
  ウタノハソレデアル、斯樣ナコトヲ而
  モ長崎英造ト云フ人ノ口カラ漏レテ居
  ルノデアル、而モ東京商業會議所ノ日
  下ト云フ人カラモ、アナタカラ直接聽
  イタ、斯ウ云フ話ガアルノデアリマス、
  本員ハ最近之ヲ耳ニシタノデアル、之
  ニ對シテアナタガ自已ノ專門以外ノ問
  題ニ付テ、而モ議員ノ身分ニ關スルコ
  ト、帝國ノ信用ニ關スルコトニ付テ左
  樣ナ言ヲ弄シタカドウカ、事實アリヤ
  否ヤ、議院ハ遺憾ナガラ證人ヲ招來ス
  ルコトガ出來ナイノヲ本員ハ甚ダ遺憾
  ニ思ヒマスケレドモ、併ナガラ是ハデ
  ス、又方法ヲ講ジサヘスレバ幾ラモ立
  證方法ガアルノデアリマスカラ、アナ
  タモ相當ノ官吏デアルデセウカラ、男
  ラシク其有無ヲ明確ニ此所デ言明シテ
  戴キタイ

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• 083・平野久保

  ○平野商工技師　私ハ今奥村君ノ私ノ
  言トシテ私ガ申述ベタヤウニ申サレマ
  シタヤウナコトヲ實際信ジテ居リマセ
  ヌ、ソレ故ニサウ云フコトヲ申上ゲル
  コトハナイ筈ダト信ジテ居リマス

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• 084・奥村千藏

  ○奧村委員　一體此平野君ハ、昨年ノ
  議會ニ於テモ染料ノ問題ニ付テ同僚ノ
  倉元君、星島君或ハ飯塚君、吾ミカラ質
  疑ヲ致シ實物ヲ以テ示シマシタトキ
  ニ、何ヲ言フタカト申シマスト云フト、
  輸入商側ノ宣傳ニ迷ハサレテ居ルト云
  フコトヲ議員ニ對シテ言ハレタ、本員
  ハ非常ニ憤慨致シマシテ、同僚ト共ニ
  ソレヲ要求シ、サウシテ速記錄ヲ
  サウ云フ速記錄ヲ削ッタト云フ事實ガ
  アル、併ナガラ今平野技師ガサウ云フ
  コトハ考ヘテ居ラヌトカ、或ハ言フタ
  コトハナイ、斯ウ云フ御話デアリマス
  ルガ、言ハレタトカ言ハヌトカ云フコ
  トニ付キマシテハ、アナタト「ワイベ
  ル」トヲ紹介シタ所ノ長崎君ノ口カラ
  ソレガ出テ居ル、又一面信用スベキ東
  京商業會議所ノ議員ノ日下ト云フ人カ
  ラ出テ居ルト云フコト、又本員ハ其事
  實ヲアナタモ今明言シタルコトヲ一方
  向フノ私ノ耳ニ入レタ人ニ對シテ之ヲ
  調ベマス、此ニ於テ私ハ宮內工務局長ニ
  御尋ネ致シマス、部下ノ平野技師ガ斯
  ウ云フ議院ノ大問題ニナッテ居ル問題
  ヲ、料理屋ナドデ論議サレタ、斯樣ナ事
  ハ何等官紀ノ上ニ於テ差支ナイト思ッ
  テ居ルカドウカ、此一點ヲ御伺ヒシマ
  ス

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• 085・宮内國太郎

  ○宮內商工省工務局長　染料問題ハ洵
  ニ重要ナル問題デアルコトハ、奧村君
  ノ御話ノ通リデアリマス、私共モ此問
  題ニ付キマシテ、若クハ關稅全般ノ問
  題ニ付キマシテ、非常ニ注意ヲ致シテ
  居ル次第デアルノデゴザイマス、成ベ
  ク多數ノ當業者ノ方〓ノ御意見ヲ參酌
  致シマシテ、愼重ニ〓究ヲ遂ゲテ、然ル
  後ニ斷案ヲ下シタイト云フ考ヲ以チマ
  シテ、注意ニ注意ヲ加ヘテ居ル次第デ
  アルノデゴザイマス、私自身ト致シマシ
  テモ、成ベクハ關稅等ニ關スル重要ナル
  問題ハ役所デ會ヒマシテ、サウシテ能ク
  〓究シタイト云フヤウナコトニ始終注
  意ヲ致シテ居ッタノデゴザイマスルガ、
  只今平野技師ガ或ル日本料理屋店ニ於
  テ會ッタト云フヤウナコトハ、ドウ云フ
  何デゴザイマスルカ、私ハ實ハ今日マ
  デ存ジマセヌ、只今伺ヒマスレバ左樣
  ナ事ガアルサウデゴザイマスガ、其席
  ニ於キマシテ果シテ奧村君ノ御話ノヤ
  ウニ、議員ノ體面ニ關シマスルコトニ
  付テ左樣ナ言辭ヲ弄シマシタカ否カ、
  私ハ平野君ノ平生ノ言動カラ徴シマシ
  テ左樣ナ事ハ申ス筈ガナイト考ヘテ居
  ルノデゴザイマス、假定ノ事實ニ基キ
  マシテ適當デアルカドウカト言フコト
  ノ考ヲ申上ゲルト云フコトハ

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• 086・奥村千藏

  ○奧村委員　料理屋デ會ッタコトハド
  ウカ

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• 087・宮内國太郎

  ○宮内商工省工務局長　此場合愼ムベ
  キコトデアルト私考へテ居リマス、尙
  ホ料理屋デ會ッタト云フコトデゴザイ
  マスガ、ソレハ如何ナル所デ御會ヒニ
  ナリマシタカ、如何ナル問題デアリマ
  スカ、ソレモ實ハ私存ジマセヌノデ、其
  點ニ付キマシテハ色〓私交上ノ關係モ
  ゴザイマセウシ致シマスルカラ、ドン
  ナ事デアリマスカ、其點ニ付テ私能ク
  存ジマセヌ、只今伺ヒマシタヤウナ次
  第デゴザイマスノデ、其點ニ付テハ何
  トモ申上ゲルコトガ出來マセヌ次第デ
  アリマス

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• 088・奥村千藏

  ○奧村委員　宮內工務局長ニ希望シテ
  置キマス、只今日本料理店ニ於テ、獨逸
  ノ代表者「ワイベル」ト云フ人ト平野技
  師自ラモ會見シタト云フコトヲ言明セ
  ラレテ居ルノデアリマス、私ハ今宮內
  工務局長ガ誠意アル言葉ニ依テ、常ニ
  誤解ナカランコトヲ期シテ居ルト云フ
  言葉デ、私モ宮內工務局長ハ左樣ナ御
  心得ヲ以テ御扱ヒニナッテ居ルト信ジ
  テ居ル者デアリマス、然ルニ斯ウ云フ
  事實ガ起キマシタ以上ハ、局長ハ部下
  ニ對スル斯ウ云フ事實ニ對シテ、事實
  ヲモット御調ベニナリ、其會見致シタ話
  ノ內容モ調ベテ貰ヒタイト思フ、同胞
  ノ陳情ニ致シマシテモ、何カニ致シマ
  シテモ、會見スルト云フコトガ料理屋
  ナドデアッタト云フコトハ、國民之ヲ聞
  イテ疑ハザルヲ得ナイノデアル、然ル
  ニ獨逸ノ代表者ト會フナドト云フヤウ
  ナコトハ、私ハ日本ノ官吏ノ信用ノ上
  ニ於テモ重大ナ結果ヲ、無形デハアリ
  マスルケレドモ齎シハシナイカト考ヘ
  テ居リマス、ソレデ今平野技師ガ、席上
  ニ於テ議員ノ體面ニ關スルコトヲ話シ
  タコトハ無イト言ハレタアッテモ是ハ
  無イトサウ言ハナケレバナラヌ立場ニ
  今在ルノデアリマスルノデ、或ハドウ
  カモ分リマセヌ、平野技師ナリ宮內工
  務局長ニ於カレマシテハ、昨年關稅定
  率法ノ委員會ニ於テ、本員ト平野技師
  トノ質疑應答ノ速記錄ヲ御讀ミニナッ
  テモ、吾〓ハ-アア云フ不遜ノ言葉
  ヲ使ヒ、サウシテ委員カラ突込マレル
  ト云フト、速記錄ヲ訂正シタリ、速記錄
  ヲ消シタリシタト云フヤウナ事實ガア
  ル、而モ私ハ最モ信用スベキ人カラ此
  事實ヲ聞イタノデアリマス、當ノ平野
  君カラ言ッタ覺エガナイト言ヒマスル
  以上ハ、是ハ當委員會ノミナラズ、立法
  府ノ信用且ツ權威ニモ關スル問題デア
  リマスルニ依テ、同僚諸君ト能ク協議
  ヲ致シマシテ、適當ノ機會ニ於テ政府
  ニ再質問ヲ〓スコトニ致シマシテ、委
  員長、是デ本員ハ此問題ハ打切ッテ置キ
  マス

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• 089・武藤金吉

  ○武藤委員長　丁度藤澤商工大臣モ御
  出席ニナッテ居リマスカラ、此場合只今
  奧村君トノ應答モ御聽取デアリマセウ
  カラ、藤澤サン時代デナイカモ知レマ
  セヌケレドモ、一應商工大臣トシテ所
  感モアルコトデアリマセウシ、議員ノ
  體面ニ關係スル安カラザル御言葉デア
  リマスカラ、一應御取調ヲ願ヒタイト
  思ヒマス、宜シイデスネ-ソレデハ
  サウ云フコトデ保留致シテ置キマス

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• 090・祷苗代

  ○禱委員　先刻來質問應答ニ依リマシ
  テ黑糖ノ廢稅ヲスルト云フコトハ洵ニ
  沖繩竝大島ノ黑糖製造業ヲ發展セシ
  ムル所以デナイト云フ政府度々ノ御說
  明デアリマスケレドモ、私ハ一向之ニ
  承服スルコトガ出來ナイ、是以上ハ所
  謂意見ノ相違カト思ハレマス、農林大
  臣モ意見ノ相違デアッテ、是以上述ベル
  コトモナイト云フ、又是以上追窮致シ
  マシタ所ガ、矢張同ジコトヲ繰返シテ
  聽クニ過ギナイト思ヒマスカラ、農林
  大藏當局ニ向ッテノ質問ハ是デ打切ッテ
  置キマス、續イテ一點ダケデアリマス
  遞信當局ニ極ク簡單ニ伺ッテ置キマス
  ガ、沖繩竝大島ニ今日交通機關トシ
  テ航海ヲ致シテ居リマスル汽船ハ他
  ノモノモアリマスケレドモ、主トシテ
  大阪商船會社ノ船ガ之ニ從事シテ居ル
  ノデアリマス、是ハ稅制ニハ直接ノ關
  係ハアリハセヌケレドモ、砂糖ノ製造
  業者負擔ト云フ點ニ於テ少カラザル影
  響ガアリマスカラ、此點ヲ伺ッテ置キマ
  スガ、此商船會社ガ主トシテ此航海ニ
  從事シテ居リマス、而シテ之ニ對シテ
  ハ國家ハ相當ナル補助ヲ與ヘテ居ラレ
  ル其補助ヲ與ヘルニ付テハ、此航海業
  者ノ運賃、卽チ旅客竝貨物ニ對スル
  運賃ハ、矢張認可制度ニナッテ居ルト私
  ハ承知致シテ居リマス、然ルニ此沖繩
  竝大島ニ對スル運賃ト云フモノハ、
  非常ニ高イ-高イ安イト云フノハ比
  較ノ問題デアリマスガ、今日瓜哇カラ
  神戶ニ、砂糖百斤持ッテ來マスル其運賃
  ガ、確カ十三年度ト思ヒマスガ、四十錢
  ダト思ッテ居リマス、ソレカラ臺灣ト神
  戶間ニ於ケル砂糖百斤ノ運賃ガ二十九
  錢、然ルニ沖繩大阪-起點ガ違ヒマ
  スガ、大阪神戶ハサウ違ヒマセヌカラ、
  大シタ差異ハナイト思ヒマスガ七十錢
  デアル、大島大阪間モ七十錢、大島ノ管
  內デアル沖之永良部、是ハ沖繩ヨリモ
  此處ニ對シテハ近イガ、是ガ一圓四十
  二錢、斯ウ云フ運賃ニナッテ居リマス
  ガ、是ハ色〓ナ事情モアリマセウ、併シ
  是デハ臺灣航路ニ比較シ、瓜哇航路ニ
  比較シ、大島沖繩ハ非常ニ高イ稅金ヲ
  拂ッテ居ル、是ハ產業發展ノ上ニ、又農
  業ノ上カラ見マシテ、負擔ノ上カラシ
  テ非常ナ苦痛ヲ感ジテ居リマスガ、認
  可サレルニ對シテ、是等ノ比較竝產業
  上ニ及ボス影響等ヲ御考慮ナサッテ、
  之ヲ認可サレタノデアリマセウカ、及
  ビ斯ウシナケレバ出來ヌ、將來ハ又之
  ヲ輕減セラルル御方針デアリマスル
  カ、其御見込ガアリマスルカ、ソレダケ
  ノ事ヲ伺ッテ置キタイ

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• 091・宮崎清則

  ○宮崎遞信省管船局長　只今御尋ネノ
  コトデアリマスガ、御承知ノ如ク內地
  ト大島ハ那覇ノ間ニハ、鹿兒島ヲ起點
  トスルモノト、大阪ヲ起點トスルモノ
  ト、此二ツノ定期航海ヲヤッテ居ルガ、
  運賃ガ高イト云フヤウナ仰セデアリマ
  シタガ、私共モ高イトハ思ッテ居リマ
  ス、併ナガラ運賃ガ定リマスニハ、色〓
  ナ事情ガアルノデアリマシテ、譬ヘテ
  申シマスレバ、航路ノ狀況デアルトカ
  配船ノ狀況トカ、又ハ其區間ニ移動ス
  ル物資ノ數量、其他航海ガ定期的デア
  ルカ、不定期的デアルカト云フコトニ
  依テ、色〓變ッテ來ルノデアリマシテ、
  必シモ距離ノ長短ニ依テ定マルベキ
  モノヂヤナイコトハ御承知ノ事ト存ズ
  ルノデアリマス、ソコデ只今仰セノヤ
  ウニ內地ト臺灣、又ハ內地ト爪哇間ノ
  砂糖ノ運賃ニ比ベテ、內地ト大島、又ハ
  沖繩ノ砂糖ノ運賃ガ高イト云フコトハ
  事實デアリマス、唯〓仰セノ數字ハ、私
  ハ具體的ノ運賃表ヲ持ッテ居リマセヌカ
  ラ申上兼ネマスガ、大體御話ノ數ニ近
  イモノト考ヘテ居リマス、ソレデ此航
  路ノ運賃ヲ定メマストキニ、一應ハ私
  共ハ關係ノ縣當局トモ相談ヲ致スノデ
  アリマス、出來ルダケ運賃ノ低減ヲ圖
  ルト云フコトニ努メテ居リマス、併ナ
  ガラ大體現在ノ補助航路ノ遞信省ノ方
  針ト致シマシテハ、先ヅ或ル貨物ガ其
  運賃ニ堪へ得ルト云フ程度ナラバ、特
  ニ是ガ引下ヲ命ズルト云フコトハシナ
  イデ、唯不當ノ引上ヲ爲スト云フ場合
  ニ之ヲ取締ルト云フ大體ノ方針ヲ執ツ
  テ來タノデアリマス、只今ノ沖繩航路
  ノ如キハ、元々此處ガ輸送サルベキ所
  ノ數量ガ非常ニ少イ、而シテ其物資ノ
  多クハ季節的ナ物デアルト云フヤウナ
  コトニナリマスカラ、例ヘバ砂糖ニシ
  マシテモ、或ハ近時沖繩方面カラ出カ
  ケマシタ蔬菜類ニ致シマシテモ、春先
  カラ夏ノ初ニカケテハ相當出マスガ、
  夏頃カラ秋ニカケテハ殆ド荷物ガ無ク
  ナルト云フヤウナ有樣デアリマス、此
  出盛期ニ於キマシテハ、船腹モ相當ニ
  貨物ニ依テ塞ガレルノデアリマスガ、
  季節ガ外レルト殆ド空船ノ儘デ走ラナ
  ケレバナラヌト云フヤウナ實況ニ至ル
  コトモアルノデアリマス、ソウ致シマ
  スト、航海ニ從事スル側カラ見マスル
  ト、先ヅ一年間打込ンデ如何ナル收支
  ノ計算ニナルカト云フコトニ依テ運賃
  ヲ考ヘテ行カナケレバナラヌノデアリ
  マスカラ、是ガ定期的ト不定期的トニ
  依テ非常ニ違フノデアリマス、假ニ是
  ガ不定期デアリマスレバ相當ノ物資ヲ
  集メテ、サウシテ之ヲ何噸ト云フコト
  ヲ見積リマシタ上ニ、之ニ適當スル所
  ノ船腹ヲ以テ運送スル之ヲ運送スルニ
  ハ斯々ノ運賃ナラバ引合ウトカ、引合
  ハナイト云フコト。ニナリマスカラ、自
  然運賃ガ安クナルト云フコトニナリマ
  スガ、沖繩ニハ今申上ゲルヤウニ定期
  的ニ運航シテ居ルノデアリマスカラ、
  今申上ゲルヤウニ、貨物ノ數量如何ニ
  依テ、値ヲ左右スルコトガ出來ナイノ
  デアリマス、貨物ガ無クテモ、矢張相當
  ノ船ヲ出サナケレバナラヌ、サウシテ
  其定期ヲ嚴重ニ維持シナケレバナラヌ
  ト云フコトニナルカラ、諸般ノ點ニ於
  テ船舶ノ運航上經費ガ膨大スル、隨テ
  輸送サルベキ所ノ貨物ノ運賃モ增大ス
  ルト云フコトハ是ハ已ムヲ得ナイ、又
  內地ト大島、內地ト沖繩ガ相當ニ距離
  ガ違フニ拘ラズ運賃ガ同ジデアルノハ
  是ハドウデアルカト云フヤウナ御話デ
  アリマシタガ、是モ只今申上ゲルヤウ
  ニ此方面ノ運送貨物ガ非常ニ少イノデ
  アリマシテ、距離ニシマスレバ、大島ノ
  名瀨ノ如キハ那覇ニ比シテ相當近イノ
  デアリマスケレドモ、假ニ那覇カラ大
  阪ニ物資ヲ輸送スル、或ハ大島カラ輸
  送スルト云フ場合ニ、那覇カラ滿船致
  シマスレバ、名瀨デ積ムコトハ出來ナ
  イ、名瀨デ積ムトナレバ那覇カラ積ム
  コトガ出來ナイト云フコトニナリマス
  カラ、結局名瀨デ積ムト云フ時ニハ那
  覇名瀨間ニ運搬セラレルベキ物資ハア
  リマセヌカラ、此間ハ空ケテ置カナケ
  レバナラヌト云フコトニナルノデ、結
  局其間ノ運賃モ矢張名瀨內地間ノ貨物
  ガ負擔シナケレバナラヌコトニ相成ル
  ノデアリマス、是ハ相當物資ガ豊富デ
  アッテ、船腹ガ如何ナル箇處ニ於テモ滿
  タサレルト云フヤウナ場合ニハ、輸送
  區間ニ依テ運賃ガ量ナルト云フコトハ
  當然ノコトデアリマスケレドモ、只今
  申上ゲルヤウナ實況デアリマスカラ此
  航路ニ於テハ同一運賃ヲ課セラルルト
  云フヤウナコトニナルノデアリマス、
  ソレデハ政府ガ運賃ヲ引下ケルカドウ
  カト云フヤウナ御話モアリマスガ、私
  共モ出來ルダケハ此地方民ノ爲ニ、運
  賃ノ負擔ヲ輕クシタイト思ッテ居リマ
  ス、併シ一面ニ於テハ又、此船舶ノ運航
  ノ關係ヲモ顧慮シナケレバナラヌ、昨
  今ハ沖繩縣當局トモ寄リ〓〓話ヲシマ
  シテ、出來得ル限リ運賃ノ輕減ヲ圖ル
  ヤウニ努力致シテ居リマス

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• 092・祷苗代

  ○禱委員　運賃ノ輕減ヲ實現スベク努
  力セラルルト云フ事デアリマスガ、尙
  ホ一層御盡力ヲ御願スルコトトシテ、
  是デ私ノ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=92

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• 093・永田善三郎

  ○永田委員　商工大臣ニ一ツ、此間岩
  切君カラ御話ガアッタヤウデアリマス
  ガ、此際鋼材ニ對スル關稅ノ引上ヲ、當
  業者ハ盛ニ鐵道協會アタリデ昨年來叫
  ンデ居リマスガ、ソレニ對シテ先般ノ
  御話デハ、只今岩切君モ伺ヒマシタ所
  ガ、不當廉賣ノ規定ニ當箝ラナイ、是ガ
  實行ガ出來ナイト云フ狀態ニナッタナ
  ラバ、鋼材ノ關稅引上ヲスル積リデアル
  ト云フヤウナ御話ガ、此前ノ委員會ニ
  アッタサウデアリマス、ソレニ付キマシ
  テ最近不當廉賣ヲ適用シナイト云フコ
  トヲ省職デ御決メニナッタト云フコト
  ヲ新聞デ拜見致シマシタ、事實サウ云
  フコトガ御決マリニナッタカドウカ知
  リマセヌガ、先ヅ第一ニソレヲ伺ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=93

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• 094・藤澤幾之輔

  ○藤澤國務大臣　製鋼ニ付テ不當廉賣
  ノ法ヲ適用シナイト云フコトヲ商工省
  ガ旣ニ決メタト云フコトヲ聞イテ居ル
  ガ、果シテ然ルヤ否ヤト云フコトノ御
  尋ネデアリマスカ、サウデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=94

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• 095・永田善三郎

  ○永田委員　サウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=95

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• 096・藤澤幾之輔

  ○藤澤國務大臣　不當廉賣ノコトニ付
  テハ、其經過ハ旣ニ御承知ノコトデア
  リマスカラ申上ゲマセヌガ、商工省ニ
  於キマシテハ當業者ノ國體カラ獨逸ノ
  製鋼ガドウモ不當廉賣的ニ這入ッテ來
  テ居ル模樣ガアル、故ニ之ニ對シテ十
  分調査ヲシテ貰ヒタイト云フ注意モア
  ツタノデアリマス、斯ノ如キ事ガアレ
  バ、政府ニ於テ當然註文ガゴザイマセ
  ヌデモ注意ヲ拂ハナケレバナラヌコト
  デアリマスカラシテ、政府ハ十分調査
  ヲ遂ゲマシテ、將ニ其不當廉賣ニ關ス
  ル委員會ノ議ニ附セント致シテ居ルト
  云フ道程デアリマシテ、未ダ御問ノ如
  ク確定致シタ譯デゴザイマセヌ、其中
  途ニ在ルト云フコトヲ御注意置ヲ願ヒ
  マス

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• 097・永田善三郎

  ○永田委員　大臣ノ御說明デ、マダ不
  當廉賣規定ヲ適用スルカ、ゼヌカ、分ラ
  ナイ、其途中デ今考ヘテ居ル所デアル
  ト云フコトデアリマスガ、私ハ今中途
  ニ居ルト云フ問題ハ、結局不當廉賣ノ
  規定ヲ適用ヲシナケレバナラナイサウ
  シテ、其結果ハ鋼ニ對スル關稅ノ引上
  ガ次イデ行ハレルモノデアルト思フ、
  モット惡推量ヲスレバ、直ニ關稅稅上ニ
  持ッテ行クコトハ、昨年作ラレタ製鐵奬
  勵案ニ矛盾シタ結果ニナルカラシテ、
  先ヅ不當廉賣ト云フ玆ニ皮ヲ冠ッタモ
  ノヲ出シテ、ソレカラ是ガイケナイカ
  ラ其代リニ斯ウ轉化シタノデアルト云
  フノデ、此方面ニ進ムノデナイカト私
  ハ考ヘルノデアリマス、但シ私ガ左樣
  ニ考ヘルカラト言ッテ、ソレニ反對ト云
  フノデハアリマセヌガ、併ナガラ昨年
  作ラレマシタ製鐵奬勵案ノ趣旨ハサ
  ウ簡單ニ覆ヘスコトガ出來ナイヤウニ
  當時政府ハ說明シテ居ラレタト思ヒマ
  スガ、若モ是ガサウ簡單ニ覆ヘサレル
  ト云フコトナラバ、私ハ今日鐵ノ國產ノ
  上ニ於テ困ッテ居ル問題ハ、唯〓鋼材ノ
  ミニ限ラナイト思フ、鐵鋼一貫主義ノ
  三圓五圓ト云フ例ノ奬勵法デ行カナク
  ナッテ、鋼材ノ方ニ對シテ特ニ輸入稅ヲ
  課スルト云フコトニナレバ、結局昨年
  政友會ノ山本條太郞君ガ極力論ゼラレ
  タ點ニ落チルノデアル、製鐵國策ヲ維
  持スル上ニ於テハ、奬勵法デハイカヌ、
  ドウシテモ關稅主義ニ依ラナケレバナ
  ラヌト云フ意見ヲ述ベラレタノデアリ
  マス、當時吾〓ハ其趣旨ニハ大ニ賛成
  ヲ表シマシタ、又理由ガアルト信ジタ
  ノデアリマスガ、政府ノ種々ナル御說
  明ニ依テ先ヅ製鐵奬勵案ニ賛成ヲ致シ
  テ居ッタ、其時ニ政府當局ハ是デ屹度行
  ケルノダ、來年ニナッテ變ヘルコトハ決
  シテナイ、是ナラバ十分行ケルト云フ
  コトヲ極力辯明セラレタノデアリマ
  ス、流石ニ山本君モ之ニ對シテ肯定サ
  レタノデアリマス、然ルニ一年經ツカ
  經タナイ中ニ、若モ私ノ推測スル如キ
  結果ニナルトスルナラバ、此製鐵奬勵
  案ハ全ク無用ノ案ガ作ラレタト言ッテ
  モ私ハ差支ナイ、寧ロ此製鐵獎勵法ナ
  ルモノハ撤囘シテシマッテ、銑鋼總テニ
  對シテ關稅主義ニ私ハ一轉スルコトガ
  男ラシイ堂々タル政策デハナイカト思
  フノデアリマス、密ニ承ル所ニ依レバ、
  今度ノ鋼ニ對スル改正ノ稅率ハ約二十
  七八圓或ハ三十圓、サウシテソレハ最
  モ多ク輸入サレテ居ル所ノ二吋以下ノ
  小物ニ限ル、大キイ物ハ現在ニ止メル
  ト云フ、斯ウ云フ案デハドウナリマス
  カ、日本デ今日生產サレテ居ルモノハ
  二吋限リデ、大キナモノハアリマセヌ、
  又此案ノ通リ大キイモノハナイヤウデ
  アリマス、要スルニ此鋼ニ對スル政策
  ハ銑鐵ノ奬勵案カラ離レテシマッテ、關
  稅主義ニ入ッタト言ッテモ私ハ差支ナイ
  ト思フ、斯樣ナ方針デ進マレルト云フ
  コトハ、私ハ善イコトデアルト思フ、反
  對スルノデハナイ、寧ロ更ニ擴張シテ
  銑鐵ニ對シテモ其方法デ進ンデ行カレ
  タラドウカ、商工省ノ方ニ於キマシテ
  ハ、鋼ニ對シテ政策ノ變更ヲスルナラ
  バ、更ニ思切ッテ銑鋼ニ對シテモ關稅主
  義ニ轉化サレタラドウデアルカ、又サ
  ウ云フコトニ迄進ム御考ガ、尠クトモ
  今日芽ヲ吹イテ居ルカドウカト云フコ
  トヲ一應承リマス

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• 098・藤澤幾之輔

  ○藤澤國務大臣　永田君ニ御答致シマ
  スガ、御尋ネノヤウナ御意見ヲ土臺ト
  シテ御論ジニナリマスレバ、過去ノ政
  策ヲ變更シタカノ如クニ御承知ニナル
  カモ知レマセヌケレドモ、決シテ左樣
  ナ譯デハナイノデアリマス、所謂銑鋼
  一貫主義、是ハドウシテモ貫カナケレ
  バナリマセヌ、過日九州製鋼所ノ買收
  ノ豫算ヲ提出シ、又其買收案ヲ提出シ
  タノモ、其主義ヲ全ウセンガ爲デアッタ
  ノデアリマス、然ルニ我國ノ鋼ノ需要
  高ハ御承知ノ通リ百六十萬噸デアッテ、
  內地デ生產スル所ノモノガ百十萬噸ニ
  過ギナイノデアリマスカラ、ドウシテ
  モ四五十萬噸ハ之ヲ外國ノ輸入ニ仰ガ
  ナケレバナリマセヌ、仰ガナケレバナ
  リマセヌケレドモ、併ナガラ不當廉賣
  的ニ輸入ガ行ハレマスルコトニナリマ
  スト、內地ノ製鋼事業ト云フモノハ破
  壞サレテシマフコトニナルノデアリマ
  ス、ソレハ極端ナ言葉カモ知レマセヌ
  ケレドモ、兎ニ角ニ非常ナ惡影響ヲ受
  クルノデアリマスカラ、此輸入ニ付キ
  マシテハ十分ナル注意ヲ拂ハナケレバ
  ナラヌ、卽チ不當廉賣法ノ持出サレタ
  所以デアルノデアリマス、故ニ政府ハ
  其實施ニ當リマシテ、繰返スヤウデア
  リマスガ大ニ注意ヲ拂ッテ、左樣ナ事ノ
  ナカランコトヲ希望シ努力致シテ居ル
  ノデアリマス、然ルニ曩ニ御答致シマ
  シタ如ク、過般製鋼懇話會ノ幹部カラ、
  本邦ニ輸入セラレル獨逸鋼鐵ニ付キマ
  シテ、不當廉賣ノ疑ガアルカラ、ドウカ
  十分ニ調査シテ欲シイト云フコトノ要
  求ガアリマシタ、政府モ曩ニ申上ゲマ
  シタ通リ、勿論左樣ナ事ガアリマシテ
  ハ容易ナラヌ事デアリマスカラ、十分
  ナ注意ヲ拂ッテ、サウシテ只今其調査ガ
  進ンデ居ルト云フコトデアリマス、決
  シテ從來ノ主義ヲ變更致シマシタ次第
  デハナイノデゴザイマス

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• 099・永田善三郎

  ○永田委員　マダソコマデ決マッテ居
  ラヌト云フ假定ノ事實ナラバ、尙ホ斯
  ウ云フ事ガ事實ニナッテ、恐ラク私ハ現
  ハレルダラウト思フ、其節ニ尙ホ御伺
  スルコトニシマス、私ハ是デ打切リマ
  ス

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• 100・武藤金吉

  ○武藤委員長　商工大臣ニ御質問ハア
  リマセヌカ-若シアリマスナラバ此
  機會ニ引續イテ-木暮君ハ······

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• 101・木暮武太夫

  ○木暮委員　大藏大臣ニ伺ヒタイノデ
  スカナ

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• 102・武藤金吉

  ○武藤委員長　ソレデハ高橋君ハ······

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• 103・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私モ主ニ政策ノコトニ關
  係シマスカラ、大藏大臣ニ伺ヒタイノデ
  スガ、政務次官ハ繰合セハ付キマセヌ
  カ

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• 104・武藤金吉

  ○武藤委員長　政務次官ハ見エテ居リ
  PX

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• 105・高橋熊次郎

  ○高橋委員　前ニ色〓質問ヲ致シテ夫
  等ノ御答辯ヲ願ヒ、又同僚諸君カラノ
  質問ニ對シテソレ〓〓御答辯ヲ戴イ
  タヤウデアリマスガ、ドウモ徹底ヲ缺
  イテ居ル、ソレハ主ニ大臣竝政務官ノ
  諸君カラ御答辯ヲ伺フ機會ガナクシ
  テ、事務官ノ御連中カラ伺ッタノデア
  ル事務官ノ方ノ御答辯ニ依ルト云フ
  ト、吾〓ト餘程同感ノヤウナ工合ニ見
  エテ、咽喉ノ所マデサウ云フ聲ガ出テ
  來テ居ルノダケレドモ、一政策ニ關係ス
  ルコトデアルカラト云フノデ、少シ濁
  サレルヤウニ思ハレル、サウ云フ質問
  應答ヲ何時マデ重ネテモ、ドウモ徹
  底ヲ缺クノデアリマスカラ、政府ノ答
  辯ハ成ベク政務官竝大臣ヨリ承リタ
  イト、斯ウ云フ私ノ考デアリマス、ソレ
  デ色〓非常ニ多岐ニ涉ルノデアリマス
  ケレドモ、マア同僚諸君ト餘リ牴觸シ
  ナイ範圍內ニ於テ質問ヲ致シタイト思
  フノデアリマス、登錄稅ノ方面デスガ、
  此前大體ニ於テ質問ヲ致シタノデアリ
  マスガ、自分デマダ疑問ト致シテ居リ
  マスノハ、登錄ノ此第二條改正案ニア
  ル第一號、現行法ニ依リマスト第一號
  第二號トナッテ居リマス、相續ニ因ル所
  有權ノ取得デ、今迄ハ登錄稅法ノ創定
  當時ヨリ二通リニ區別サレテアッタノ
  デアリマス、卽チ普通ノ家督相續ト其
  他ノ家督相續竝遺產相續ヲ區別シテ
  後者ニ對シテハ、特ニ稅率ヲ重クシテ
  アッタガ、途中デ改正ヲ致シテ同率ニ致
  シタノデアリマスケレドモ、當初ハ餘
  程隔リガアッタノデアリマス、左樣デア
  リマスカラ、此遺產ト云フヤウナモノ、
  即チ無償デ贈與サレテ行クヤウナ性質
  ノ遺產相續ト云フヤウナモノニ對シ
  テ、私ハ理論上ドウシテモ是ハ現行法ノ
  第一號普通卽チ法定家督相續ノ場合ト
  別〓ニ區別ヲ致シテ課稅ヲスベキモノ
  ダト思フノデアリマス、殊ニ負擔ノ公正
  ト云フヤウナコトカラ考ヘテ見マスル
  ト云フト、擔稅力豐富ナル者ニ餘計ノ
  負擔ヲ爲サシメルト云フコトハ必ズ實
  現セシメナケレバナラヌモノデアラウ
  ト思フ、左樣デアリマスカラ、是ハ遺產
  相續ノ如キ擔稅力ノ相當ニ豐富ナルモ
  ノニ減稅ヲ致スヤウナ形ニ相成ルノデ
  アリマス、故ニ此ノ度ノ改正ハ負擔ノ
  公正ヲ圖ルト云フヤウナ意味カラ見マ
  ストフト、何等意義ヲ成サナイノデア
  リマス、此點ニ付テ御考慮ヲ拂ハレタ
  カドウカト云フコトヲ承リタイ

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• 106・武内作平

  ○武內政府委員　只今御質問ガアリマ
  シタガ、御質問ノ趣意ハ表面上一通リ
  ノ理由トシテ寔ニ御尤ナ御意見ト思フ
  ノデアリマスガ、徵稅ノ如キモノハ御
  承知ノ通リ中〓完全ニ之ヲ實行スルコ
  トガ困難ナノデアリマシテ、一方ガ非
  常ニ高イト云フト、他ノ色〓ナ方法ヲ
  案出致シマシテ通稅ヲ圖ルノデアリマ
  ス、此場合ニ於キマシテモ、率ガ高イト
  云フト矢張賣買其他ノ方法ニ依テ通稅
  ヲ圖ルト云フノガ、實際ニ於テ非常ニ
  多イノデアリマスカラ、成ベク之ヲ低
  クシテ、サウ云フ不正ノコトヲサセナ
  イデ納稅ヲサセルト云フコトヲ圖ルト
  云フコトガ、徵稅上ノ一ツノ機宜ニ適
  スル方法ダラウト斯樣ニ考ヘタノデア
  リマシテ、只今御質問ノ趣旨ハ至極御
  尤ト思ヒマスケレドモ、實際問題トシ
  テ實行ノ上ニ於キマシテ低減スル方ガ
  宜シイト、斯樣ニ考ヘテ此改正ヲ致シ
  タノデアリマス

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• 107・高橋熊次郎

  ○高橋委員　只今ノ御答辯ハ不徹底極
  マルモノデアリマスガ、後ニ保留シテ
  次ノ問題ニ移リマス、其次ノ第二號ノ
  贈與、無償名義ヲ以テ取得スルモノノ、
  登錄稅デアリマス、マア贈與デ代表シ
  テ置キマセウ-贈與ト云フコトデ申
  上ゲマス、此贈與ニ對スル登記ト、ソレ
  カラ賣買ノ登記トハ、從來二十五ノ隔
  リガアッタ、今マデ政府委員カラ答辯ヲ
  願ヒマシタ所ニ依ルト、其差ガ大キイ、
  ソレデアルカラ賣買ト云フヤウナ形式
  ヲ執ッテ稅ノ通脫ヲ致スノデアル、ソレ
  ヲ防グガ爲ニ此贈與ノ方面ノ登錄稅ヲ
  六十カラ四十五ニ低下シタノデアル、
  サウ致スト云フト其差ガ十二ニナッテ
  低クナルカラ、サウ云フ手數ヲ致ス者
  ハ少クナッテ、通脫ノ弊害ガ除去サレル
  ダラウ、斯ウ云フ意味デ以テ此ノ如キ
  改正ヲ行ッタト云フヤウニ承ッタノデア
  リマス、而シテ私共ガ考ヘマスルノニ、
  斯ウ云フ稅金ヲ逋レヤウト云フヤウナ方
  面ノ人〓ハ、多少デモ其處ニ餘裕ガアレ
  バ、ドウシテモ逋レヤウトスルダラウト
  思フ、是ハ外ノ賣買ヤ其他ノ對象物ヲ目的
  トシテ行フ所取引行爲トハ異ルノデアル、
  登記サヘ濟メバ所有權ガ完全ニ移轉ヲ
  スルノデアル、左樣デアルカラシテ登
  記所ヲ通リ越スト云フコトノミガ問題
  ニナルノデアル、外ノ場合ニハ移轉行
  爲ニ伴ッテ何カ對象物ヲ伺フカラ取ラ
  ナケレバナラヌ、サウ云フコトガアリ
  マスカラ、値段ノ安イモノヨリハ高イ
  モノノ方ガ、後デ値打ガアルカラ其方
  ガ宜カラウト云フヤウナコトモアリ得
  ルコトト考ヘラレマセウケレドモ、此
  登錄稅ヲ拂フト云フ行爲、卽チ登記所
  ニ於テ登記ヲスルト云フ行爲ハ、登記
  サヘ致セバソレデ其全部ガ完了スルノ
  デアリマス、所有權ノ移轉、所有權ノ取
  得ト云フモノハ、ソレニ依テ確認サレ
  ルノデアリマス、ソレデアルカラ斯ウ
  云フ稅ノ通脫ヲ圖リタイト云フヤウナ
  間違ッタ觀念ヲ持ッテ居ル者ハ、モウ一
  錢デモ一厘デモ-極端ニ申上ゲレバ
  其處ニ逋脫ノ途ガアルナラバ、其途ヲ
  執ラウト云フ考ニナルノデアラウト思
  フ、左樣デアリマスカラ、今迄ハ千圓ニ
  付テ二十五圓ノ隔リガアッテ、此度ハ千
  圓ニ付テ十二圓卽チ一萬圓ニ付テハ百
  二十圓、十萬圓デハ千二百圓マダ隔リ
  ガアルノデアリマス、左樣デアリマス
  カラ、サウ云フ慾張ッタ行爲ヲヤラウ
  ト云フ人間ハ、相變ラズソレニ依テ通
  脫ノ途ヲ講ズルデアラウト思フ、ソレ
  デアリマスカラ、サウ云フ方面ニ於テ
  ハ何等御提案ノ趣旨トシテ御述ベニナ
  ツタ脫稅防止ト云フ事實ハ認メラレナ
  イト思フノデアリマス、左樣デアリマ
  スカラ、之ニ付テ贈與ト云フコトヲ六
  十ト云フ率ヲ四十五ニ御下ゲニナルニ
  付テハ、他ニ重大ナル理由ガアッタニ相
  違アルマイ、デ只今申上ゲタ理由以外
  ニ、何カ重大ナル理由ガアリマスレバ、
  ソレヲ承ッテ置キタイ、モウ一ツハ此六
  十ト云フ今迄ノ稅率ヲ設ケタト云フコ
  トハ、先般モ一寸申上ゲタ如クニ、相續
  稅ノ方面ト從來ハ大ナル關係ガアッタ
  ヤウニ思ハレル、左樣デアリマスルカ
  ラ、此登錄稅ヲ前ノ六十ノ率ナルモノ
  ヲ千分ノ四十五ニ御引下ニナルノハ、
  從來政府ニ於テモ考慮サレテ居ッタル
  ガ如クニ、相續稅ノ方面ノ關係ヲ御考
  慮アッタコトト思フガ、其方ノ方面ハド
  ウ云フヤウナ御考デ此提案ヲ爲サレタ
  ノデアルカ、其邊ノコトヲ先ヅ承ッテ置
  キタイト思ヒマス、是ハ大臣ヨリ御答
  辯ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 108・片岡直温

  ○片岡國務大臣　稅制ノ問題ハ大變是
  ハムヅカシイ事柄デアリマシテ、技術
  的ニ涉ルコトハ政府委員ノ方ガ遙ニ詳
  シウゴザイマス、只今大體ニ付テ申上
  ゲマスガ、先刻武內政府委員ヨリモ御
  答辯ヲ致シマシタ如ク、餘リニ一方ガ
  苛酷ニ失スルト云フ嫌ヒガアルト、其
  通稅ノヤウナ企テガ益〓深刻ニナル、
  ソレ故ニ斯樣ニ改正ヲ致シマシタカラ
  ト云ッテ、絕對ニ逋稅ノ途ガ杜絕スルト
  ハ斷言ガ出來難イ事柄デハゴザイマス
  ルガ、此改正ニ依リマシテ比較的其弊
  ヲ矯メ、又芟除スルニ近カラシムルモ
  ノガアルト、斯ウ考ヘタニ過ギナイノ
  デアリマス

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• 109・黒田英雄

  ○黑田政府委員　相續稅ノ關係ヲ如何
  答申上ゲマス、此點ニ付テモ旣ニ高橋
  君トハ數囘問答ヲ申上ゲタノデアリマ
  ス、大體御承知トハ考ヘマスルガ、相續稅
  ニ付キマシテハ御承知ノ通リ二十三條
  ニ於テ、親族間ノ贈與ト云フモノニ付
  テハ、相續稅不動產竝船舶ニ付テハ相續
  稅ヲ課セズシテ、其代リニ登錄稅ノ方
  ニ於テ普通ノ相續稅ヨリ、或ハ又普通
  ノ賣買ヨリモ稅率ヲ高クシテ、相續稅
  ノ代リニ此ノ方デ負擔ヲサシテ居ルト
  云フコトハ、此前申上ゲテ御承知ノ通
  リデアリマス、ソコデ相續稅トノ關係
  ニ於テモ、今日ノ千分ノ六十ト云フノ
  ハ、幾分カ高イヤウニ考ヘルノデアリ
  やじ、此點ニ付テ此前ニ高橋君カラ頻
  ニ御議論ガアリマシタ、之ヲ下ゲルト
  云フコトハ非常ニ多クノ不動產ヲ相續
  サセル者ヲシテ、徒ニ負擔ヲ輕減サセ
  ルモノデアルト云フ風ナ御意見モアッ
  タノデアリマスガ、不動產贈與ト云フ
  場合ニ於テモ、之ヲ分割シテ贈與致シ
  マスト、其稅率ガ高クナルノデアリマ
  ス、高イノモアリ低イノモアリマスガ、
  是等ノ場合ヲ平均致シテ見マスルト、
  先ヅ千分ノ四十五、卽チ賣買ノ場合カ
  ラ申シマスルト千分ノ十高イノデアリ
  マス、普通ノ相續ノ場合カラ申シマス
  ルト、千分ノ四十五デアリマス、大體是
  等ガ適當ナモノデアルト考ヘタ譯デア
  リマス、相續稅ヲ假ニ之ヲ相續稅デ取
  ル、サウシテ登錄稅ノ方ニ於テハ之ヲ
  ニ考ヘタカト云フ點ニ付テハ私カラ御輕クスルト云フ風ナコトモ一ノ方法デ
  アリマスガ、斯樣ニ致シマスト、不動產
  ノ移轉ガアリマシタ場合ニ於テ、是ガ
  親族間ニ行ッタノデアルカドウカ、ソレ
  ガ無償名義デアリ、而モ親族間デアル
  カドウカト云フ風ナコトヲ調ベテ、登
  記所ニ於テモ假ニ相續稅ヲ取リマシテ
  モ、之ヲ千分ノ五ト致シマスト、千分ノ
  五課稅スルカ或ハ千分ノ三十三ヲ課稅
  スルカ、又親族間デナイ場分ニ於ケル
  無償名義ノ贈與ト云フモノノ稅率ヲ、
  假ニ三十三ト致シマスレバ、其何レヲ
  適用スルカト云フ風ナコトヲ登記所ニ
  於テ判斷シナケレバナラヌ、是ガ登記
  所ノ事務トシテ非常ニ困難ナ仕事デア
  ルノデアリマス、此點ニ付テハ司法省
  ノ當局トモ能ク話合ヒヲシマシテ、相
  談ヲシタ結果デアルノデアリマス、非
  常ニ登記所ニ於テハ是ハ困難デアリマ
  ス、ソレ故ニ矢張從前ノ通リ玆ニ登記
  ノ方ニ於テ取ルコトニ致シマシテ、其
  稅率ヲ適當ニ定メル、ソレカラ先程大
  藏大臣カラ申サレマシタ通リ、餘リ高
  クシテ置クト賣買名義ニ名ヲ藉リテ、
  通稅ヲ園ルト云フコトガ行ハレ易イ、
  且ツ負擔ノ均衡ヲ失スルカラ絕對ニ之
  ヲ防ギ得ナイト致シマシテモ、成ベク
  其弊ヲ少クシテ適當ノ負擔ニ致シマス
  レバ、之ヲ負擔スルコトハ納稅者ニ於
  テモ致スベキデアリマス、其點ヲ考ヘ
  テ之ヲ平均シ均衡ヲ保タシノヤウト云
  フノデ千分ノ四十五ト致シタ次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=109

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• 110・高橋熊次郎

  ○高橋委員　大臣ノ御答辯ニ付テモウ
  一應伺ハナケレバナラヌノデスガ、サ
  ウスルト大臣ハ先程武內次官ノ答辯ト
  關聯シテ申サレマシタガ、其理由ハ關
  聯スルヤウデアリマスケレドモ、問題
  ガ違フ、併シソレハ別問題ト致シマシ
  テモ、只今改正ノ重ナル理由ハ稅ノ逋
  脫ヲ防グニアリ、脫稅ヲ防グモノデア
  ルカラ、率ヲ下ゲレバソレデ脫稅ヲ妨
  ゲルダウト云フコトデアリマシタガ、
  無暗ニ警察官吏ノヤウナ頭デ御判斷ニ
  ナリマスト、或ハサウ云フヤウナコト
  モ考ヘラレマセウガ、泥棒ヲ少クシヤ
  ウ、泥棒ヲ捕ヘヤウトシテ、眞實ノ方
  面、本當ノ贈與、假裝ノ贈與デナク、卽
  チ脫稅ガ目的デナイ眞實ノ贈與、負擔
  力ノ十分ナ財產ヲ只貰ハウト云フモノ
  ニ屬シテ徒ニ輕減ヲスルコトトナル、
  此頃東京當リデハ地所ガ高イ、家屋ガ
  高イ、ソレ故家屋ヲ建築シテ次男三男
  ノ名義ニシテ與ヘテヤラウト云フ例ガ
  多イノデアル、是ハ無償贈與デアル、斯
  ウ云フ眞實ノ贈與ト云フモノガ隨分ア
  ルダラウト思フ、サウ云フモノニ安ク
  シテ過度ノ恩典ヲ與ヘルト云フ必要ガ
  何處ニアル、負擔ノ均衡ヲ叫バレル大
  臣ニシテ、コンナ眞實ノ贈與ニマデモ
  輕減ヲスルト云フヤウナコトヲ爲サ
  ル必要ガアルカ、况ヤ吾〓ノ見ル所ニ
  依レバ六十ノモノガ四十五、千圓デ六
  十圓取ラレタモノガ四十五圓ニナッタ
  カラト云ッテ、相變ラズ脫稅ヲ爲シ得ル
  途ハ十分アル、防ゲルト云フ途ハナイ、
  アルトシテモ幾分カ少クナルト云フコ
  ト位デアルガ之レモ當テニナラヌ、ソ
  レデアルカラ一方ニ於テサウ云フ幾分
  カ少クナルダラウト云フ賴リノナイ所
  ニ御賴リニナッテ、實際ニ於テハ却ッテ
  擔稅力ノ豐富ナル者ニ恩典ヲ與ヘルト
  云フコトニ終ルト云フコトハ、負擔公
  正ノ法則ニ依テ此稅制ノ改正ヲ爲サ
  ル、其公正ト云フ文字ニ對シテ私ハ申
  譯ハナカラウト斯ウ思フノデアル、ソ
  レデアルカラ斯ノ如クシテ無用ノ減稅
  ノ恩典ヲ擔稅力ノ豐富ナル純然タル無
  償贈與ニ與ヘテ居ル、是ハ假裝的デモ
  ナケレバ逋脫ノ目的デモナイ、眞實ノ
  無償贈與ト云フモノニ付テ斯ル減稅ノ
  恩典ヲ與ヘルト云フコトハ決シテ社
  會正義ノ上ニ於テ容スベカラザルコ
  トデハナイカト、斯ウ云フヤウニ考ヘ
  ル、其邊ノ事ハ御考慮ガアッタカドウ
  カ、是ハ技術上ノ問題デハナイ、租稅ノ
  根本精神デアルカラ、大臣カラ篤ト詳
  密ナル御說明ヲ煩シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=110

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• 111・片岡直温

  ○片岡國務大臣　是ハ只今政府委員ヨ
  リ御答ヲ致シマシタ所デ、餘程私ハ盡キ
  テ居ルト思ヒマス、詰リ相續稅法ト登
  記稅トノ權衡ヲ考へ、所謂負擔ノ均衡
  ヲ得セシムルニ斯ウシタ方ガ宜シイ、
  併セテ從來ノ弊害ヲ矯正スルニモ利益
  アリ、斯ウ云フ譯デアッテ、双方ノ利益
  ヲ考慮シタニ外ナラヌノデアリマス

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• 112・高橋熊次郎

  ○高橋委員　トンデモナイ見當違ヒノ
  御答辯ヲ承ルノデアリマスガ、サウ云
  フコトデアルト云フト、モウ是ハ黑田
  政府委員ノ御答辯ノ中ニモアリマシタ
  如ク-是ハ混雜致シマスカラ、モウ
  少シ詳シク申シマスルト云フト、相續
  稅ノ此二十三條ト云フモノノ中ニハ、
  船舶竝不動產ト云フモノヲ省カレテ
  居ル、昨年ノ改正ニ依テ千圓以上ノ、船
  舶竝土地ヲ除イタ-土地ト云フト
  語弊ガアリマスガ、不動產ヲ除イタ、其
  他ノ財產ノ贈與ニ對シテ是ハ遺產相續
  ト看做シテ相續稅ヲ課スル、マア學問
  上デ謂フ準遺產相續稅トカ申シマス
  ガ、ソンナヤウナ條項ガアル、ソコデ私
  ハ立法ノ當時ノ事ヲ承ッテ見マスト云
  フト、船舶竝不動產ト云フモノヲ此
  條項ノ中ニ省イテ、主ニ現金デアルト
  カ、有價證券デアルトカ云フモノヲ、千
  圓以上ノ價格ノ物ヲ贈與スル場合ニ
  ハ、之ニ遺產相續稅ヲ掛ケル、ソレニ不
  動產ヲ贈與シタ場合トカ船舶ヲ贈與シ
  タ場合ニハ、何故遺產相續稅ヲ掛ケナ
  イカト云フ疑問ノ起ル場合ニ、當時ノ
  立法ノ趣旨ニ基クト云フト、ソレハ登
  錄稅ノ方デ以テ千分ノ六十ト云フ可ナ
  イ重イ負擔ヲ掛ケテ居ルノデアルカラ
  シテ、此遺產相續稅ヲ掛ケヌデモ相當
  ノ負擔ヲサシテ置クノデアルカラシ
  テ、決シテ其不動產ノ贈與ニ對シテハ
  何等改メテ遺產相續稅ヲ掛ケナクテモ
  負擔ノ公平ヲ期スルコトガ出來ルト、
  斯ウ云フコトニ相成ッテ居ルト吾〓ハ
  聞イテ居ッタノデアル、然ルニ今日ハ相
  續稅ノ方ハズット高クナル、左樣デアリ
  マスカラシテ相續稅ハ其儘ニシテ置イ
  テアッテモ、私ハ此登錄稅ト云フモノヲ
  引下ゲルト云フコトニ付テハ相當ノ考
  ヲ持タナケレバナラヌト思フ、此二十
  三條ヲ制定シタ準遺產相續稅ト云フモ
  ノヲ御設ケニナッタト云フ趣旨ヲ御考
  ニナッタナラバ、當然此登錄稅ヲ引下ゲ
  ルト云フコトソレ自身ニ於テ、私ハ相
  當ノ御考慮アルベキ筈ダト思フ、況ヤ
  今日ハ、昨年ノ改正ニ於テ、相續稅ハ非
  常ナル累加稅率ヲ課セラレテ居ルノデ
  アル、昔日相續稅制定當時トハ殆ド雲泥
  ノ違ヒニナッテ居ルノデアル、ソレデス
  カラ尙更此千分ノ六十ト云フ現行率ハ
  考慮ノ餘地ガ十分ニアル、是デモ今ノ
  二十三條ノ此精神ニ副フベクスルニ
  ハ、此六十ノ稅率ヲマダ/〓上ゲナケ
  レバナラヌト云フコトニ相成ッテ居ル
  ノデアル、左樣デアリマスカラ此相續
  稅ノ第二十三條ト、此登錄稅ノ贈與ノ
  稅率ト云フモノハ、双方相關聯シタモ
  ノデアル、左樣デアリマスカラ當然此
  登錄稅ノ改正ニ當ッテ是ハ考慮シナケ
  レバナラヌ、私ハ寧ロ相續稅ノ改正ノ
  時分ニ、此二十三條ト云フモノニ付テ
  ハ相當ニ御考慮ニナッテ、其時分ニ此登
  錄稅ト云フモノハ考慮ノ中ニ御入レニ
  ナラナケレバナラナカッタト私共ハ考ヘ
  ラレルノデ、是ハ立法上ノ技術デモナ
  ケレバ稅制上ノ技術デモ何デモナイ、
  我國ニ於ケル所ノ終始一貫シタル稅制
  ノ主義デアル、其主義ヲ御變ヘニナッタ
  ノデアルカ、御變ヘニナッタトスレバ、
  ドウ云フ意味ニ於テ其主義ヲ御變ヘニ
  ナッタノデアルカト云フコトヲ責任者
  タル大藏大臣ニ御伺ヒシタイト思フ、
  是ハ立法上ノ技術デモ稅制上ノ技術デ
  モ何デモナイ、從來稅制立法ノ上カラ
  シテ、此主義ト云フモノハ終始一貫シ
  テ居ル、今囘ニナッテ初メテ之ヲ御棄テ
  ニナッタト云フ理由ハ何處ニ在ルカト
  云フコトヲ伺ヒタイ、是ハ重大ナル問
  題ダト思フ、ト云フノハ私共ハ、ドシド
  シ此ノ種ノ登錄稅改正ニ依テ相續稅ト
  云フ方ノ通脫ト云フモノガ行ハレ、現
  政府ハ之ヲ益〓御奬勵ニナルヤウナコ
  トニナルト思フ、相續稅制定ニ於テハ
  此相續稅率ガマダ〓〓ズット低イ場合
  ニ於テサヘ逋脫ノ憂アリトシテ、此二
  十三條ヲ設ケテ居ッテ、ソレニ不動產船
  舶ヲ除イタノハ、之ニ對シテ登錄稅ノ
  方ニ相當ノ重稅ヲ掛ケテアルカラ之ヲ
  除イテ差支ナイ、斯ウ云フコトニナッテ
  居ッタ、然ルニ相續稅ノ方ハ昨年ノ改正
  ニ於テ非常ナル增加ヲ致シタ、假リニ
  其儘ニ据置イテモ此ノ登錄稅率ノ引下
  ニ依テ、此二十三條ノ立法當時ノ意思
  ト云フモノハ、此處デ無クナッテシマッ
  テ居ル、ソレデスカラ矢張其當時惧レ
  ラレテ居ッタ如クニ、矢張ドン〓〓通脫
  ト云フモノハ財產ノ贈與ト云フ形式ニ
  於テ行ハレル、ソレデアリマスカラ之
  ヲ此通リニシテ行クナラ、尙ホ一層其
  弊害ヲ助長スルコトニナル、ソレデア
  ルカラ私ハ之ヲ呼ンデ相續稅逋脫ノ奬
  勵法ナリト稱ヘルモノハ之ニ由ルノデ
  アル、ソレデアルカラ今迄終始一貫シ
  タル所ノ稅制上ノ原則ヲ御破リニナッ
  タニ付テハ、モウ少シ大臣ニ於テ相當
  ナル御考慮ガアッタコトト考ヘテ居ル、
  ソレデ是ハ重大ナ政治上ノ問題デア
  ル、立法技術ナドト云フ單ナル問題ヂ
  ヤナイ、ソレデアルカラ之ニ付テハ責
  任ノ重大ナル大臣トシテハ餘程御考慮
  ニナッタ筈ト思フノデアルガ、之ニ付テ
  大臣ハ實際御考慮ニナッタカ、サウシテ
  御考慮ニナッタナラバドウ云フ理由ニ
  依テ斯ウ云フ大改正ヲ--稅制ヲ通ズ
  ル此大方針ヲ御變ヘニナッタカト云フ
  コトヲ此場合ニ承リタイト思フノデア
  ル

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• 113・黒田英雄

  ○黑田政府委員　御尋ネハ大臣デアリ
  マシテ、大臣何レ御答辯ニナリマスガ、
  只今技術上ノ點ハナイト云フ風ニ御判
  斷ニナッテ御議論ニナリマシタガ、實ハ
  餘程立法技術ニモ關係致シテ居ルノデ
  アリマス、其點ヲ私カラ申上ゲマシテ、
  尙ホ不足デアリマスレバ大臣ニ補ッテ
  戴クコトニ致シタイト思ヒマス、相續
  稅トノ關係デアリマス、是ハ先ニモ私
  ガ御答申上ゲタト思フノデアリマス
  ガ、昨年相續稅法ノ改正ノ際ニ於テ、二
  十三條ヲ改正致シマシタ、是ハ御承知
  ノ通リデアリマス、範圍ヲ少シ擴メマ
  シテ親族間ノ贈與ヲ認メタノデアリマ
  スガ、此際ニ於キマシテ實ハ色〓〓究
  ヲ致シタノデアリマス卽チ此親族間ノ
  贈與ト云フモノニ課稅シテ居リマス、
  今迄ハモット狹ク、直系卑屬ニ行ク場合
  ニ課稅シテ居リマシタガ、ソレヲ擴ゲ
  テ、親族間ニ課稅致シマシタガ、尙ホ之
  ヲ擴ゲマシテ、之ヲ贈與稅ト云フモノ
  ニシテシマウコトガ適當ナリヤ否ヤ
  相續稅ト云フ觀念カラハ聊カ離レマス
  ケレドモ、贈與致シタ場合ニハ遺產相
  續稅ノ如キモノヲ課稅スルコトガ適當
  ナリヤ否ヤト云フコトハ、是ハ尤モナ
  論斷デアリマス、ソレ故ニソレヲ考ヘ
  マシタガ、又之ヲ贈與稅ト云フヤウニ
  廣ク致シマシタコトハ、色〓ナ關係ガ
  アリマスノデ、贈與ニモ種々アリマス
  ガ、親族間ノ贈與ト云フコトニ止メマ
  シタ次第デアリマス、之ヲ若シ今囘登
  錄稅ノ方ニ取ルコトヲ止メマシテ、相
  續稅ノ方デ以テ取ルト云フコトニシマ
  スト、卽チ二十三條ノ船舶不動產ト云
  フモノヲ除外シテ居リマスモノヲ廢メ
  ルコトニナルノデアリマシテ、二十三
  條ニ依テ課稅スルコトニナルノデアリ
  マスガ、廣ク之ヲ相續稅ト云フコトニ
  致シマスト、幾分カ登錄稅ノ方ニ於テ
  モソレニ關聯シマシテ取扱モ便宜ニハ
  ナリマス、併ナガラ親族間ノ贈與ト云
  フコトニ限ッテ居リマス現行ノ稅制ト
  致シマシテハ、登錄ノ場合ニ於テ此三
  號、卽チ今度ノ二號デアリマスガ、二號
  ハ廣ク親族間ノモノモ親族間ニアラザ
  ルモノモ、總テ無償名義ノ移轉ト云フ
  コトヲ規定シテ居ルノデアリマスカ
  ラ、此無償名義ノ場合ニ於テ之ヲ親族
  間ナリヤ否ヤト云フコトヲ登記所デ判
  斷シナケレバナラヌ、是ガ困難デアル
  ト云フコトハ、先程申述ベマシタ通リ
  デアリマス、ソレ故ニ矢張現行ノ制度
  ノヤウニ、登錄稅ニ於テ課稅ヲスル方
  ガ適當デアルト云フ風ニ考ヘテ規定ヲ
  シマシタ、是等ハ寧ロ主トシテ立法技
  術ノ問題カラ參ルノデアリマス、技術
  上サウデアリマスルナラバ、相續稅ト
  ノ權衡ヲ考ヘナケレバナラヌ、是ハ申
  スマデモナイコトデアリマシテ、高橋
  君ノ御心配モ洵ニ御尤ト考ヘルノデア
  リマス、併ナガラ二十三條ハ、相續稅ヲ
  改正シマシテ、昨年稅率ヲ引上ゲマシ
  タ、是ハ御述ニナリマスル通リデアリ
  マス其稅率ヲ引上ゲマシタ際ニ、然ラ
  バ登錄稅ノ方ノ相續稅ニ代ルベキ、卽
  チ登錄稅タル千分ノ六十モ當然引下ゲ
  ルガ當リ前デハナイカト云フ御話デア
  リマス、之ヲ引上ゲナイデ却テ引下ゲ
  ルト云フコトハ前ノ相續稅ヲ改正シ
  タ趣意ニ反スルデハナイカト云フ御話
  デアリマスガ、相續稅法ノ二十三條ニ
  於キマシテハ、是ハ普通ノ遺產相續ノ
  場合トハ違ヒマシテ、遺產相續又ハ家
  督相續ノ場合ト異リマシテ、是ハ何時
  デモ贈與ガ出來ルノデアリマス、ソレ
  故ニ例ヘバ私ガ假ニ茲ニ百萬圓ノ不動
  產ヲ持ッテ居リマシテモ、是ガ家督相續
  デアリマスト、死亡ニ因テ遺產相續ガ
  起ッタト云フ場合ニハ、百萬圓ガ一時ニ
  行クノデアリマスカラ、ソレダケノ稅
  率ガ掛カルノデアリマスケレドモ、贈
  與致シマス場合ニ於テハ、五萬圓或ハ
  二萬圓或ハ一萬圓ト云フ風ニ之ヲ贈與
  モ出來ルノデアリマス、又サウ云フ風
  ニ贈與スルコトガ多イノデアリマス
  ソレ故ニ是等ノ相續稅ニ於キマスル遺
  產相續ノ稅率ガ、凡ソドレ位ニナルカ
  ト云フコトヲ見マスルノハ、必シモ今
  日ノ千分ノ六十ト云フモノデナケレバ
  ナラヌトハ考ヘナカッタノデアリマス、
  今日千分ノ六十ト云フノハ一面ニ於テ
  ハ相當高イ稅デアリマス、隨テ先程モ
  旣ニ述べマシタ通リ今日ニ於テハ三十
  五トノ間ニ二十五ノ開キガアリマスル
  爲ニ、假想致シマシテ賣買ニ名ヲ藉ッテ
  通稅ヲ圖ルト云フコトガ起ル、ソレ故
  ニ若シ之ヲ上ゲルト云フコトニ致シマ
  スレバ、相續稅ノ關係カラ申シマシテ
  モ、之ヲ唯〓遺產相續ノ率ガ上リマシ
  タカラ當然其比例デ上ラナケレバナラ
  ヌト云フ性質ノモノデナカラウト思ヒ
  マハ、假ニ之ヲ其精神ニ依テ引上ゲル
  ト致シマスルト、益其弊ヲ助成致シ
  マシテ、已ムヲ得ナイモノ又正直ナモ
  ノト、不正ノモノトノ間ニ負擔ガ著シ
  ク權衡ヲ失スル結果ヲ起スノデアリマ
  ス、ソレ故ニ相續稅トノ餘リ權衡ヲ失
  シナイ程度ニ於テ、成ベク之ヲ近クス
  ル、其程度ハ程度問題デアリマス、十ノ
  差ガ宜イカ、十五ノ差ガ宜イカ、ソレハ
  程度ノ問題デアリマスガ、相當ナ間隔
  ニ致シテ置キマスレバ、之ニ依テ脫稅
  ヲ防グ、之ハ他ノ稅ニ依テモ多ク起ル
  ノデアリマス、例ヘバ此問題ニナッテ居
  ル砂糖稅ニ致シマシテモ、四分ト五分
  トノ開キヲ幾ラニスルカト云フコト
  ハ、大體ソレニ依テ落付クト云フ所ノ
  開キヲ見ルノデアリマス、ソレ故ニ是
  等モ-殊ニ二號ハ遺產相續稅ヲ課セ
  ラルベキ性質ノモノト、課セラレナイ
  法定ノ贈與、全ク親族關係ノ無イ者ノ
  間ノ贈與モ包含致シテ居ルノデアリマ
  スカラ、是等ノ點ヲ色〓考慮致シマス
  レバ先ヅ是位ノ率ナラバ權衡モ得ラ
  レルシ、又今日起ル所ノ弊害モ是モ相
  當直シテ行クコトガ出來ルト云フ考デ
  致シタノデアリマシテ、是ハ勿論政策
  ニモ關係シタコトデモアリマス、政策
  ノ點ニ付テハ大藏大臣ハ勿論御考ノ上
  デ此案ヲ御定メニナッタコトデアリマ
  スガ、併シ其間ニ於テハ立法上ノ技術
  ノ點ニ付テ非常ニ澤山ノ分ガ這入ッテ
  居ルノデアリマスカラ、私カラ一應御
  說明申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=113

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• 114・高橋熊次郎

  ○高橋委員　大臣ノ御答辯ハ······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=114

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• 115・片岡直温

  ○片岡國務大臣　是ハ先刻申上ゲマシ
  タ通リニ外ナラヌノデアリマシテ、多
  ク御說ヲ承ルト意見ノ相違ノヤウデア
  リマスガ、當局者トシテノ意見ハ先刻
  來申述ベタ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=115

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• 116・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私ハ異ナコトヲ承ルヤウ
  ニ思フノデアリマスガ、意見ナドヲ申
  シテ居ッタノデハナイ、質問ノ要點ヲ申
  上ゲテ居ッタノデアル、私ノ私見ナドヲ
  挾ンダノデハナイ、ソレナラバ大臣ハ
  相續稅制定當時ノ政府ノ意思ト云フモ
  ノヲ私ハ御變へニナッタト思フガ、實際
  御變へニナッタノカ御變ヘニナラヌノ
  カ、其事ヲ判然承ッテ見タイト思ヒマ
  ス、私ハ何モ私見ヲ述ベタノデハナイ、
  相續稅法制定當時ノ政府ノ意見ヲ土臺
  トシテ私ハ述ベテ居ルノデアル、其當
  時ノ租稅上ノ意見ヲ御變ヘニナッタノ
  デアルカドウカト云フコトヲ伺ッテ居
  ルノデアリマス

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• 117・片岡直温

  ○片岡國務大臣　先刻來申上ゲマシタ
  所ノモノハ、少シモ意見ヲ變更シタト
  申シタ覺エハゴザイマセヌ、卽チ從來
  カラ執リ來ッタ所ニ基キマシテ、實際上
  ノ事情ヲ考ヘテ斯ク致ス方ガ適當ノ結
  果ヲ得ルト、斯ウ信ジタニ外ナラヌノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=117

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• 118・高橋熊次郎

  ○高橋委員　只今ノハ屬僚ト申スト失
  禮カモ知レマセヌガ、事務官ノ連中カ
  ラ御答辯ヲ承ルベキ筋ノ範圍ノモノデ
  アッテ、大臣ノ御答辯トシテハ少シ要領
  ヲ得ナ過ギルト私ハ失禮ナガラ思フノ
  デアリマス、サウスルト大臣ハ相續稅
  制定當時ニ於ケル政府ノ御考ハ、ドウ
  云フ方針デ相續稅ヲ制定致シ、而シテ
  議員間トノ質問應答ニ依テ、其當時ハ
  相續稅ノ第二十二條デアッタ、只今ノ御
  二十三條ニアル所ノ親族間ノ贈與ト云
  フヤウナ、或ハ本家ヨリ分家ニ致シタ
  ル所ノ贈與ト云フヤウナモノニ對シテ
  相續稅ヲ課スル準相續稅トモ取ラルベ
  キ所ノ相續稅-昨年改正ニナッタ千
  圓以上、此前ニハ五百圓以上ト云フコ
  トデアッタガ、其當時ニ於テ相當ニ議論
  ノアッタコトデアルガ、其當時ノ事ハ大
  臣ハ御調ベニナラズシテ、此改正案ヲ
  御提出ニナッタノカ、其事ヲ能ク御調べ
  ニナッタ上デオヤリニナッタノカ、此點
  ヲ一ツ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=118

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• 119・片岡直温

  ○片岡國務大臣　勿論、相當ニ考慮シ
  タ結果ニ外ナリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=119

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• 120・高橋熊次郎

  ○高橋委員　其當時ノ事情ヲ考慮ナス
  ツタト云フナラバ、此二十三條ヲ設ケ
  タト云フコトハ、又此二十三條ハ多ク
  ハ現金デアルトカ有價證劵デアルトカ
  云フモノヲ目標トシテ此二十三條ハ
  適用スルコトニナッテ居ル、般舶竝不
  動產ト云フモノヲ除外シタノハドウ
  云フ意味デヤッタノデアルカト云フヤ
  ウナコトハ、其當時明白ニナッテ居ル譯
  デアル、ソレハ登錄稅ヲ之ニ掛ケルカ
  ラ、ソレデ之ヲ除外シタノデアルト云
  フ其當時ノ趣旨デアッタト吾〓ハ記憶
  シテ居ルノデアル、サウスルト云フト
  其時分ノ趣旨ト云フモノヲ十分ニ御考
  慮ニナッタト云フ跡ガ見エナイノデ、ア
  ル、其趣旨ハドウ云フ工合ニ御考ニナッ
  タノデアルカ、其邊ノ事ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=120

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• 121・片岡直温

  ○片岡國務大臣　ドウモ困リマシタ
  ナ、先刻來政府委員ガ反覆申上ゲタ通
  リ、斯ウ云フ風ニ致シタ方ガ便宜デア
  ルカラ不動產船舶等ハ他方面ニ讓ル、
  其讓ッタモノニ對スル方法ヲ今日決メ
  ルノデアリマシテ、別ニ新ラシイ、非常
  ナル新意見ガ玆ニ差挾マレテ居ルモノ
  デモ何デモナイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=121

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• 122・高橋熊次郎

  ○高橋委員　段々迷宮ニ這入ッテ來ル
  ノデアリマスルガ、ソレデハ私ハドウ
  モ、大臣ノ御答辯ハ此トモ理解ガ出來
  ヌノデアリマス、私ノ申上ゲルノハ率
  ノ問題デアル、此二十三條ト云フモノ
  ヲ制定スル當時ニ、不動產、船舶ト云フ
  モノヲ二十三條カラ除イテ、之ヲ贈與
  シタモノハ現金、有價證劵ト云フモノ
  ト同一ニ取扱ハシテ、直ニ之ニ遺產相
  續稅ヲ掛ケナカッタト云フノハ、卽チ登
  錄稅ニ於テ、千分ノ六十ト云フ稅率ノ
  下ニ課稅ヲ致シテ居ルカラシテ、サウ
  云フ脫稅ノ弊害ハナカラウト思フト斯
  ウ云フコトヲ前提トシテ此條項ヲ設ケ
  ラレタノデアル、ソレヲ今度ハ其當時
  デサヘ六十マデ出來タノデアル、六十
  ト云フ稅率ヲ掛ケテ居ルカラシテ、其通
  脫ノヤウナコトハナカラウト思フ、ソ
  レデアルノニ今度ハ四十五ニ下ゲタナ
  ラバ、其當時ヨリハ更ニ其憂ト云フモ
  ノガ多クナルト云フコトニナル、况ヤ
  先程申上ゲタ通リ、相續稅法ハ昨年改
  正ニ相成ッテ、而シテ今日ニ於テハ非常
  ナ高率ニナッテ居ル、益〓其當時ノ心配
  ト云フモノハ、今日ニ於テ一層酷クナ
  ル、サウ云フコトデアルカラ、ソレヲ考
  慮スルト云フコトニナルナラバ、相當
  ニ一時間ニモ二時間ニモ亙ッテ御辯明
  ガナケレバナラヌ、此點ニ付テ以前黑
  田政府委員カラ承ッタ所ガ餘リボンヤ
  リシテ居ルカラ、一體サウ云フ所ハド
  ウ云フ工合デアルカト思ッテ、圖書館へ
  行ッテ其當時ノ速記錄ヲ出シテ見タ所
  ガ、驚クベシ今ノ若槻首相ガ黑田サン
  ト同ジ主稅局長デアッタトキ、議員ノ質
  問ニ對シテ答ヘテ居ル、磯部四郞トカ、
  木村格之輔ト云フヤウナ一騎當選ノ方
  方ヲ向フニ廻シテ、堂々ト御議論ニナ
  ツテ居ル、速記錄ヲ見ルト云フト、吾〓
  ノ心配シテ居ルト同ジ事ヲ當時ノ議員
  ガ心配シテ居ル、之ニ對シテ政府ノ方
  方ハ御心配ニハ及バヌ、ソレハチヤン
  ト登錄稅デ以テ、贈與ノ規程デ以テ千
  分ノ六十デ押ヘテ居ルカラ、サウ云フ
  ヤウナコトハ免レルコトハ出來ヌノデ
  アル、斯ウ云フ御答辯ガアル、立派ニ其
  時ノ特別委員會ノ速記錄ニ載ッテ居ル、
  而モ今ノ總理大臣ノ若槻氏ガサウ云フ
  コトヲ答ヘテ居ルノデアル、ソレデア
  リマスカラ、サウ云フコトヲ今囘片岡
  大藏大臣ハ責ヲ他ニ嫁シテシマッテ、ナ
  ニ若槻輩ノ言フコトガ分ルモンカト云
  フヤウナコトデ御決メニナッタノカ、ド
  ウカ、其當時ノ趣旨ト云フモノヲ根底
  カラ覆サレテ、サウシテ大ナル資產ヲ
  持ッテ居ルトカ、或ハ東京アタリデ不動
  產ヲ持ッテ居テ、子供ノ名義ニ成ベク安
  クシテ置イテヤリタイ、卽チ贈與シテ
  置イテヤリタイト云フヤウナ方面ノ便
  宜ノミヲ御考慮ニナッテ、此改正案ヲ御
  企テニナッタカ、是ハ大臣ノ稅法改革上
  ノ大方針ヲ御決メニナル時分ニハ、既
  ニ斯ウ云フコトヲ御考慮ノ中ニ入レナ
  ケレバナラナイ、私ノ私見デモ何デモ
  ナイ、私ハ其當時ノ若槻主稅局長ガ言
  ハレタコトノ答辯ヲ、土台トシテ申上
  ゲテ居ルノデアル左樣デアリマスル
  カラ、ドウカ其點ヲ誤解ナサラナイヤ
  ウニシテ、御深切ナル御答辯ヲ求メテ
  居ルノデアリマス、若シサウ云フコト
  ヲ、忙シイノデツイ氣ガ付カナイデ盲
  判ヲ押シタノデアルト仰シヤレバ、ソ
  レデモ私ハ-ソレハ別問題ニナリマ
  シテ諒解モ行キマスガ、一カラ十マデ
  能ク心得テヤッタト云フコトデアレバ、
  吾〓モ當惑ヲ致シマス、國民モ亦第一
  次ノ稅制ニ於テ懲リテ居ル、第二次ノ
  稅制ト云フモノハ、果シテドウ云フモ
  ノデアルカ、是亦懲リテハナラヌ、ダカ
  ラ第二次稅制ニ於テハ、餘程的確ナ、餘
  程國民生活ノ現狀ニ副フヤウナ稅制整
  理ガ出來ヤウト期待シテ居ルノデアリ
  マスルカラ、吾〓ハ斯ル稅法上ノ原則
  トモ申スベキ所ハ、是ハ好イ加減ノ素
  通リハ出來ヌト思フノデアリマス、此
  意味ニ於テ吾〓ハ時間ヲ費シテ居ルノ
  デアリマスルカラ、大臣ニ於カケレテ
  モ、其邊ノコトヲ、能ク御考慮下サッテ、
  御深切ニ御答辯ヲ願ヒタイ、分ラヌコ
  トハ分ラヌデ宜シイ、大臣デアルカラ
  何デモ彼デモ分ルトハ言ハナイ、サウ昨
  年云フコトモ吾〓ノ頭ニアル、ソレデア
  リマスカラ、ドウカソレニ付テ、十分徹
  底シタル御答辯、胡魔化シデナイ答辯
  ヲ一ツヤッテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=122

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• 123・片岡直温

  ○片岡國務大臣　御言葉中ニハ當時ノ
  主稅局長若槻君ガ御答辯ヲ申上ゲタ當
  時ノ事實ヲ御擧ゲニナリマシテ、若槻
  風情ノ言ッタ事ハ何トモ顧慮スル必要
  ハナイト云フガ如キ意思ノ下ニ私ガ此
  改正ヲヤッタカト云フ、斯ウ云フ御話デ
  アリマスガ、決シテ左樣デハナイノデ
  アリマス、若槻氏ハ御承知ノ通リ大藏
  省生ヘヌキノ人デアリマシテ、私ナド
  ヨリハ大藏省ノ事務ニ堪能ナルコト
  ハ、是ハ今更申スマデモナイ、併ナガラ
  時勢ト事實ハ始終動イテ變ルモノデア
  リマス、卽チ昨年ニ於テ斯樣ニシテ宜
  シイト信ジマシタモノモ、其後ノ經過
  等ヲ考へ、又旣往ニ遡ッテ考慮シタ結果
  ハ、斯ウシタ方ガ宜シイト云フガ如キ
  コトハ事實上種々ノ點ニ於テ起ルコト
  ハ避クベカラザルコトデアル、卽チ今
  囘ノ改正モ、前ノ方針ヲ覆スデモ何デ
  モナイ、唯前ノ率ニシテ置ケバ斯ウ云
  フ片一方ノ弊害ガ起ル、ソレカラ又一
  方ノ方ト權衡ヲ考ヘテ見ルト、少シ不
  穩當デ、旁〓權衡ヲ考ヘテ弊害ヲ少カ
  ラシムルニハ、斯樣ニ改正ヲシタ方ガ
  宜イ、斯ウ信ジタニ過ギナイノデアリ
  マス、何モ其間ニ他ヲ輕蔑スルナンカ
  ト云フコトハアリマセヌ、固ヨリ私ハ
  九月就職シタノデアリマスカラ、細目
  ノ事ニ至ッテ餘リ詳シイコトハ存ジマ
  セヌガ、大體ノ方針ノ事ニ付テ責任ヲ
  他ニ轉嫁スル考ノ下ニ盲判ヲ押シハ致
  シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=123

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• 124・高橋熊次郎

  ○高橋委員　洵ニ大臣ノ抱負ヲ承ッテ
  非常ニ欣快トスルノデアリマスガ、何
  モ私ハ若槻氏ノ言ッタコトヲ蔑シテシ
  マッタト云フ斯ウ云フノデナクテ、其
  當時ノ終始一貫シタル稅法ノ精神ト云
  フモノガアッタ、其精神ヲ玆ニ抛ッテシ
  マッテ、新シイ方針ノ下ニ此稅制ヲ御立
  テニナル、相續稅モ隨テ新シイ精神ノ
  上ニ今度ハ立テラレタト云フコトニ相
  成ルノデアリマス、ソレデアリマスカ
  ラ是ハ稅制ヲ〓究スル上ニ於テ隨分
  是ハ重大ナ問題デアラウト思フ、恐ラ
  クハ是ハ學者間ナドニ分ッタラ非常ニ
  大キナ問題ニナッテ來ルダラウト思ヒ
  マス、學者間バカリデナク、實際ノ上ニ
  於テ權衡々々ト言ハレルケレドモ、私
  ハ寧ロ是ハ大ナル不權衡ヲ來スノデハ
  ナイカト斯ウ見ル、是ハ私ノ意見デア
  リマス、ソレデアリマスカラ從來相續
  稅法ノ制定當時ニ起ッタ所ノ其事實ト
  今トハソンナニ大シタ變リハナイ、今
  ノ方ガ却テ其當時憂へテ居ラレタヤ
  ウナ脫稅ノ方法ガ行ハレ易イノデアリ
  マス、人情モ亦其時分ヨリハ功利主義
  ニ走ッテ居ル、ソレデスカラ白イモノガ
  黑クナッタ譯デハナイ、時勢ハ變化シテ
  モ白イモノハ白、黑イモノハ黑-多
  少ノ其處ニ變化ハ出來マセウケレド
  モ、大體ニ於テサウ云フヤウナ差別ガ
  アルノデアリマス、其當時脫稅ヲ遁レ
  ルダラウト思ッタモノガ、今日ニナッテ
  時勢ノ變化ニナッテ、脫稅ヲスルヤウナ
  コトハ無クナッタト云フヤウナコトニ
  ハ相成ラヌト私ハ思フノデアリマス、
  ソレデスカラ其當時ハ只今申上ゲル通
  リ此二十三條、其當時ノ二十二條ト云
  フモノヲ拵ヘテ、サウシテ一體ナラバ
  之ヲ只デ以テ人ニ遣ルベキモノデハナ
  イ、遺產相續ナリ其他ノ相續ナリニ致
  シテ、是ハ親族ノ者ニ讓ルベキモノデ
  アル、或ハ本家ヨリ分家ニ讓リ渡スベ
  キモノデアル、然ルニ其途中ニ於テ有
  價證劵ナリ現金ナリヲ贈與スル、ソレ
  デアリマスカラ其贈與ト云フモノニ對
  シテ、當時ハ五百圓以上、只今ハ千圓以
  上ニ亙ルト云フト、是ハ只ノ贈與デハ
  相濟マヌ、是ハ遺產相續稅ヲ掛ケルノ
  デアル、斯ウ云フノデアル、遺產相續稅
  ヲ取ッテ、遺產相續稅ノ通脫ヲ此處デ防
  ガレル、斯ウ云フ心配ガアルト云フナ
  ラバ、何故不動產ノ贈與ト云フモノニ
  對シテ政府ハ心配ヲセヌカ、不動產ヤ
  船舶ニモ矢張同ジヤウナ脫稅ヲ圖ル所
  ノ憂ヒハ無イノデアルカ、斯ウ云フ其
  當時ノ議員ノ心配デアッタノデアリマ
  ス、ソレニ對シテ政府ハサウ云フ心配
  ハアル、アルケレドモ登錄稅ノ方ニ依
  テ無償ノ贈與ト云フモノニ對シテハ
  千分ノ六十ト云フ重イ稅金ヲ掛ケテ置
  クノデアルカラ、其方ノ脫稅ハ防ゲル
  カラシテ、其方ハ特ニ此二十三條ニハ
  加ヘナカッタノデアル、斯ウ云フコトヲ
  ハッキリ其當時ノ若槻主稅局長ガ委員
  會デ答ヘラレテ居ル、斯ウ云フノデ
  アルカラシテ、登錄稅ノ其六十ト云フ
  所ノ稅率ト云フモノハ、相續稅ノ方ト
  大ナル關係ノアルモノデアル、ソレデ
  アルカラ相續稅ノ方ガ動ケバ是モ矢張
  動カナケレバナラヌ、一種ノ「スライデ
  イング·スケール」見タヤウナ形ニナッ
  テ居リハシナイカト思フ、ソレハ登錄
  稅ハ今度ハ其儘デ相續稅ガ上ッタト云
  フ場合ニハ、登錄稅ノ方モ引上ゲルカ
  何カシナケレバナラヌ、ソレガ相續稅
  ノ時分ニ御考ニナラナカッタヤウデア
  ル、ソレデアルカラ今日ニナッテ今度ハ
  御考ニナルベキ筈デアルノニ、マルデサ
  ウ云フ所ノ關係ヲ御考ニナラヌデ、逆
  ニ之ヲ六十ノモノヲ四十五ニ下ゲル、
  サウスルト云フト、益此相續稅ト云フ
  モノヲ脫稅ヲ致シテ、大手ヲ振ッテ此財
  產ノ贈與々々ト云フコトデ以テ登記デ
  行クノデハナイカ、斯ウ云フコトヲ言ッ
  テ居ルノデアリマス、實際東京邊リニ
  於テ-東京バカリトハ限リマセヌガ、
  主ナル都會ニ於テ、殊ニ多イ家屋ヤ土
  地ヲ自分ノ次男ナリ三男ナリニ讓リタ
  イ、又長男ニモ讓リタイ、或ハ自分ノオ
  カミサンニ之ヲ遺シテ置キタイト思フ
  時分ニ、皆其人ノ名前デ以テ建築ヲ致
  シテ家屋ヲ其儘ニ贈與シテ見タリ、或
  ハ不動產ヲ新シク買ヒ、或ハ名義書換ナ
  ドヲシテ、無償ノ贈與ヲ盛ニヤッテ居
  ル、株劵ヤ現金ヲ遣ル時分ニハ、相續稅
  ノ二十三條ニ依テ之ヲ押ヘテ、サウシ
  テ遺產相續稅ヲ千圓以上ナラバ之ニ掛
  ケテ行クト云フ途ガアル、サウ云フヤ
  ウナ現金ヤ有價證劵、其他ノモノノ船
  舶竝不動產ヲ除イタ以外ノモノニ斯
  ウ云フヤウナ重稅ヲ掛ケル方法ヲ存
  シテ置イテ、サウシテ今度ハ不動產ヤ
  ラ船舶ヤラニ持ッテ行ッテ-殊ニ不動
  產ニ持ッテ行ッテ、斯ウ云フヤウナ輕減
  ヲスルト云フ理由ハ何處ニ在ルカ、斯
  ウ云フノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ當時ハサウ云フ相續稅ノ逋脫ヲ防
  ガンガ爲ニ、登錄稅ヲ千分ノ六十ニ致
  シテ居ルノデアルト云フ、當時ノ政府當
  局者ノ立法意思ヲ片岡大臣ハ之ヲ抹殺
  致シテ、サウシテ時勢ノ變遷一點張デ
  以テ改正ヲオヤリニナルトハ思ヘマイ
  ト私ハ考ヘテ居ル、ソレデスカラサウ
  云フコトヲ能ク御考慮ニナッタノカ、御
  考慮ニナラナカッタノカト云フコトヲ、
  私ハ此處デ伺ッテ居ルノデアリマス、時
  勢ノ變遷ナドト云フコトハ、ソンナ事
  ハ分リ切ッテ居ルコトデアル、時勢ノ變
  遷ニ依テモ變ルコトハアルケレドモ、
  コンナモノハ變ラナイノデアル、其當
  時黑イモノハ今日モ黑イノデ白クナリ
  ハセヌ、ソレデアリマスカラ其當時逋
  脫ノ憂ガアッタ原因ト云フモノハ、ソレ
  ヨリハ色ガ濃クナッテモ薄クナリハセ
  ヌ、今日ノ人情、今日ノ思想ト云フモノ
  ハ、益惡化シテ居ルノデアル、サウ云フ
  ノデアルカラ、其當時ヨリモ通脫ノ危
  險ガ多クナッタ、斯ウ云フコトニナルノ
  デアル、ソレヲ御考ニナッタカ、ナラナ
  イカ、サウ云フコトヲ承ッテ居ルノデア
  ツテ、私見ヲ述ベテ居ルノデモ何デモ
  ナイ、ソレデアルカラ時勢ノ變遷ニ依
  テドウノ斯ウノト云フノハ、ソレハア
  ナタノ議論デアラウケレドモ、ソレハ
  說明ニハナラヌト私ハ考ヘテ居ル、ソ
  レデアリマスカラ、サウ云フコトニ非
  ズシテ其當時政府ハドウ云フ答ヲシテ
  居ッタカト云フト、私ハ玆ニ一寸書拔イ
  テアルノデアリマスガ、或ル議員ノー
  -阿部德三郞ト云フ方ノ質問ニ對シ
  テ、不動產及船舶ト云フモノヲ相續稅
  法ノ其當時ハ第二十二條、只今ノ第二十
  三條ヨリ除外シテ、是等ノモノガ贈與
  ト云フ形式ヲ取ッテ相續稅ヲ逋脫セン
  トスル虞ハナイカ、斯ウ云フコトガア
  ル、是ハ此二十三條カラ不動產、船舶
  ト云フヤウナモノヲ取ッテシマッテ、サ
  ウシテ其他ノモノトスルノデアルカラ
  シテ、有價證劵ナリ現金ナリヲ出スコ
  トニナルノダ、ソレダケヲ押ヘテサウ
  シテ此不動產及船舶ト云フモノハ、矢
  張此相續稅カラシテ連脫セントスル憂
  ハナイカト云フ此質問ニ對シテ、當時
  ノ若槻主稅局長ハ斯ウ云フコトヲ答ヘ
  テ居ルノデアル、「不動產ト船舶ニハ登
  錄稅ガアリマスノデ、贈與致シマスト云
  フト千分ノ六十掛カルカラ、此方ハ別
  ニ防ギマセヌデモ逋稅ノ憂ハナイモノ
  ト見タノデアル」斯ウ云フ御答辯ガア
  ルノデアリマス、左樣デアリマスカラ、
  此相續稅ノ逋脫ヲ防グノニハ、矢張此
  登錄稅ノ千分ノ六十ト云フモノハ當時
  ノ比率ニ於テ缺クベカラザルモノデア
  ツタト云フコトハ、此御答辯ニ於テ分
  ルノデアル、時勢ノ變遷ト申シマスル
  ト、ドウ云フ變遷ヲヤッタカト云フト、其
  時分ニハ相續稅ノ累進稅率ト云フモノ
  ハ今ヨリズット低クカッタノデアリマ
  ス、左樣デアリマスカラ今ハ非常ニ高
  クナッタノデアル、若シマダ必要トアル
  ナラバ私ハ此處デ讀上ゲテモ宜イノデ
  アリマスケレドモ、此相續稅ハ昨年ノ
  コトデ其當時大臣ハ大藏大臣デナカッ
  タカラデハアリマスガ、相續稅ガ非常
  ナ勢ヒデ以テ上ゲラレタト云フコトハ
  御分リニナッテ居ルダラウト思フ、ソレ
  デアリマスカラ相續稅ト云フモノハ從
  來遺產相續稅ナドハ、十五萬圓ヲ超ユ
  ル金額ハ千分ノ五十、二十萬圓ヲ超ユル
  金額ハ、十萬圓每ニ千分ノ五ヲ加エ百
  萬圓ニ至ッテ止ムト云フコトニナッテ居
  ツタノガ、今度ハドウナッテ居ルカト云
  フト、五百萬圓ヲ超ユル金額ハ千分ノ
  百八十、十五萬圓ヲ超ユル金額ハ千分
  ノ七十五、トイフノデ十五萬圓ノ相續
  財產ニ對シテハココデ二十五ノ率ヲ增
  シテ居ル、十五萬圓ノ金額ハ千分五十
  ノデアッタモノガ、昨年ノ改正ニ依テ千
  分ノ七十五マデ上ッタ、ソレデアリマス
  カラココデ五割上ッテ居ルノデアルカ
  ラシテ、其當時ノ若槻主稅局長ノ御說
  明ヲ土臺トシテ考ヘルト云フト、此登
  錄稅ト云フモノハマダ〓〓上ゲナケレ
  バナラヌ、千分ノ六十デハ通脫ノ目的、
  阿部德三郞氏ノ言ハレタ心配ト云フモ
  ノハ除去サレナイノデアル、ソレデア
  リマスカラ五割上ッタトシタナラバ、矢
  張ソッチノ方卽チ登錄稅ノ方デ五割上ゲ
  ナケレバナラヌト云フコトニ相成ルダ
  ラウト思フ、斯ウ云フ事實ガ玆ニアル、
  其事實ヲ考慮サレタカドウカト云フコ
  トヲ聞イテ居ルノニ、時勢ノ變遷ダノ
  何ダノト言ハレテ、答辯ニマルッキリ懸
  ケ離レテ、大阪ニ行クノニ北海道ハ今
  雪ガ降ッテ居ルト云フヤウナコトヲ言
  ハレテモ吾〓ハ承知ハ出來ナイコト
  デアリマス、サウ云フ譯デアリマスカ
  ラ、何卒御深切ナル御答辯ヲ得タイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=124

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• 125・片岡直温

  ○片岡國務大臣　若槻主稅局長ノ當
  時、審議ノゴザイマシタ時分ノ相續稅
  ハ寧ロ安カッタノデアリマス、高カッタ
  ノデハナイ筈デアリマス、昨年ノ議會
  ニ於テ引上ゲノ御協賛ヲ願ッタノハ其
  通リデアリマス、ソレカラ又此六十ト
  云フ率ヲ一方デ課スルト云フコトニシ
  テ、連稅等ヲ免レシメヌト云フ其精神ハ
  今モ何モ變ラヌノデアリマス、唯〓六
  十デハ連稅ヲ企テル者ガ多クナル、之
  ヲ幾ラカ引下ゲタ方ガ其弊害ヲ除去シ
  易イ、率ヲ變ヘタト云フダケノ話デアッ
  テ、其率ヲ變ヘタコトガ當不當ト云フ
  コトハ、是ハ見ル所ノ人ニ依テ違ヒマ
  セウ、卽チ高橋君ノ如キハ御意見ガ違
  フカモ知レヌ、當局者トシテハ此方ガ
  宜シイト考ヘタニ過ギナイ、何モ其他
  ニ變ッタコトハナイノデアリマス

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• 126・黒田英雄

  ○黑田政府委員　不動產ト金錢有價證
  劵トノ間ニ如何ニモ著シク權衡ヲ失シ
  テ居ルカノヤウニ御議論ニナリマシタ
  ガ、今日ノ實際カラ見マスト、金錢有價
  證劵ヲ、詰リ二十三條ニ依テ課稅ヲ致
  シテ居リマス平均率ハ、只今一寸此處
  ニ持ッテ居リマセヌカラ後カラ差上ゲ
  テ宜シイノデアリマスガ、是ヨリ低ク
  ナッテ居リマス、千分ノ四十五ヨリハ少
  シ低イ率ニナッテ居ルノデアリマス、ソ
  レ故ニソレトノ權衡カラ見マシテモ、
  四十五必ズシモ低イト云フコトハ申サ
  レテイヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、ソレカラシテ先程大臣カラモ御答
  辯ニナリマシタコトデアリマスルガ、
  相續稅ノ稅率ガ動ケバ、然ラバ此六十
  ト云フモノハ常ニ「スライデイング·ス
  ケール」デ動イテ行クデアラウ、是ハ寧
  ロ今日ノ事情ニ於キマシテ適當ナルモ
  ノデアル、サウ云ウ關係ニアルモノデ
  アリマスレバ、左樣ニ相成ルデアラウ
  ト思ヒマス、併ナガラ此六十ト云フモ
  ノヲ變ヘナケレバナラヌト云フ必要ニ
  付キマシテハ、私モ申上ゲ大臣モ御述
  ベニナリマシタ通リデアリマス、此方
  ガ却テ負擔ノ公平ヲ得セシメ逋稅ヲ少
  カラシムル所以デアルトシテ定メルノ
  デアリマスカラ、是ハ必ズシモ「スライ
  デイング·スケール」ニ行クベキモノデ
  ハナイ、又有價證劵等ニ比較致シマシ
  テ、必シモ此率ガ低イトハ申サレナイ、
  先程私ガ申シマシタ中デ申シ落シテ居
  リマシタ點ヲ御參考マデニ申上ゲテ御
  考ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、相
  續稅ニ於キマシテハ免稅點ガアルノデ
  アリマス、然ルニ此方ハ免稅點ガアリ
  マセヌ、極ク安イ百圓トカ二百圓ノ不
  動產ヲ贈與致シマシテモ、ソレデモ掛カ
  ルノデアリマス、色〓ノ點ヲ考慮致サ
  ナケレバナラヌ、又此登錄稅ノ方ハ是
  ハ一時ノ納付デアリマス、然ルニ相續
  稅ノ方ニ於キマシテハ分納ト云フ制度
  モアルノデアリマス、色〓ノ點ヲ考ヘ
  マシテ、千分ノ四十五デアレバ適當デ
  アルト云フ風ニ考ヘタノデアリマスカ
  ラ、是ハ御參考マデニ申上ゲテ置キマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=126

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• 127・高橋熊次郎

  ○高橋委員　只今ノハ登錄稅ノ二十三
  條ノ實蹟ヲ見ルト云フト、多クハ千分
  ノ四十五以下デアルト申サレマスケレ
  ドモ、相續稅ト云フモノハ昨年初メテ改
  正ニナッテ、非常ナ重イ稅率ニナッタ、有
  價證劵現金ト云フヤウナモノハ中〓通
  脫ノ目的ガ簡便ニ行ハレル、ソレデア
  リマスカラ、ソレヲ潛ッテ行クナドト云
  フコトハ極ク僅カナ例デアラウト思フ
  シ、又切ッテ幾囘ニモ行ケル、ソレデアリ
  マスカラ先程黑田政府委員カラ御述べ
  ノ如クニ、幾ラニモ相續財產ヲ切ッテヤ
  ルト云フコトニナレバ、矢張サウ云フ
  輕イ稅率ニナルデアラウト思フ、併ナ
  ガラ不動產トカ船舶トカ云フモノハ
  殊ニ船舶ノ如キハ是ハ半分ニ立切ッテ
  登記ヲ履ンデ行クト云フ譯ニハ行カナ
  イ、不動產ガ最モ多イ宅地ノヤウナモ
  ノモ中〓サウ云フ譯ニハ行カナイ、ソ
  レデスカラ只今仰セニナリマスヤウナ
  コトハ、矢張私ハ大阪ノ事ヲ言ッテ居ル
  ノニ拘ラズ、北海道マデ行カナイデモ
  仙臺位ノ事ヲ言ッテ居ラレルヤウナ嫌
  ガアルノデス、ソレデ先ヅ第一ニ御尋
  ネシタイノハ、先ニ讀上ゲタ此相續稅
  ノ上ッタ其當時ニ於ケル所ノ若槻氏ノ
  答辯ト云フモノノ趣旨ハ御認ニナラナ
  イノカドウカ、若槻氏ガ誤ッタコトヲ言
  ツタノデアッタ、事實ハサウ云フモノデ
  ハナイノデアル、此二十三條ニ於テ船
  舶竝不動產ト云フモノヲ除外シテモ
  登錄稅ノ千分ノ六十デ押ヘルコトガ出
  來ルカラ、阿部德三郞氏ナドガ心配ニ
  ナルヤウナ登錄稅連脫ノ不動產竝船舶
  ニ對スル危險ハ是デ防止ガ出來ルノデ
  アル、斯ウ云フコトヲ言ハレタノハソ
  レハ間違デアルト御認デアルカドウカ
  ヲ先ヅ豫メ伺ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=127

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• 128・片岡直温

  ○片岡國務大臣　間違デモ何デモナイ
  ト存ジマス、其當時ハ六十デ連稅ヲ防
  止ガ出來ルト信ジタカラ、サウ云フ答
  辯ヲシタニ相違ナイト存ジマス、今囘
  ノ改正ハ矢張其趣旨ハ少シモ變リマセ
  ヌ、唯〓六十ニシテハ多過ギル、之ヲ低
  クシタ方ガ弊害ヲ防ギ納稅ヲ全カラシ
  ムルト斯ウ見タダケノコトデアリマ
  ス、率其モノニ對シテ變更ヲ加ヘルト
  云フダケデ、之ヲ六十ニスレバ連稅ヲ
  逃ゲラレル、或ハ七十ニスレバ逃ゲラ
  レル、片一方ヲ下ゲタナラバ逃ゲラレ
  ナイ、斯ウ云フノデハナクシテ、其當時
  六十ニシテ適當ナリトシタモノガ、實
  際ノ狀況ヲ考ヘテ見ルト云フト、之ヲ
  今囘ノ如ク改正シタ方ガ其精神ヲ貫徹
  スル上ニ利益デアル、斯ウ云フノニ外
  ナラヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=128

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• 129・高橋熊次郎

  ○高橋委員　非常ニ諄イヤウデアリマ
  スケレドモ、ソレデハ少シモ答辯ニナッ
  テ居ナイ、私ハ相續稅ノ方ノ通脫ヲ免
  レンガ爲ニ此千分ノ六十ト云フ高イ稅
  率ヲ掛ケテ居ルノデアルト其當時若槻
  氏ハ御說明ニナッテ居ッタ、ソレヲ今度
  相續稅ノ方ハモット率ガ上ッタノデア
  ル、其當時ハ十五萬圓デ千分ノ五十ダ
  ケ掛ッテ居ッタモノガ、今度ハ千分ノ七
  十七掛カルノデアル、五割增シテ居ル、
  此相續稅ノ方ハ十五萬圓ノ財產ヲ相續
  シヤウト云フコトニナルナラバ、千圓
  ニ付テ今マデハ五十圓掛ッタモノガ、今
  度ハ七十五圓掛カルコトニナル、サウ
  スルト今度ハ贈與ノ方デ登記ヲ受ケル
  ト、登記料卽チ登錄稅ト云フモノハ、今
  マデ千圓デ六十圓掛ッタモノガ、今度ハ
  四十五圓下ッタト云フナラバ、マダ〓〓
  今マデ通リデアッテモ、十五萬圓ノ財產
  トスルナラバソコニ五圓ノ隔リガア
  ル、登錄稅ノ方ハ少イ、ソレダケ相續稅
  ヲ連脫ノ危險ガアル、ソレヲ只今ノ案
  デ七十五ニナッテ、十五萬圓ト云フ金額
  ヲ提ヘテモ、七十五圓トナルト六十圓
  ト致シテモソコニ十五圓ノ隔リガア
  ル、四十五圓ト致シマスレバ、其ノ倍額
  ノ三十圓トイフ大シタ隔リガ出テ來ル
  ト云フコトニナリマス、ソレデアルカ
  ラ登錄稅ヲ下ゲタ方ガ逋脫ノ危險ガ少
  クナルト云フソンナ道理ハ無イデアラ
  ウト思フ、子供ニ今迄ハ一圓ノ札ヲ持
  タシテ居ッタラ無駄遣ヒヲスル、十圓札
  ヲ持タシテ行ッタラ無駄遣ヒヲシナイ
  ダラウト云フ、ソンナ馬鹿ナ話ガ何處
  ニアルカト私ハ思フ、ソンナコトヲ大
  臣ハ取違ヘテ居ルノカ、夫レトモ全然
  分ラヌノカドッチカダラウト思フ、モ
  ウ少シ落付イテ答辯ヲシテ貰ヒタイト
  思フ

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• 130・黒田英雄

  ○黑田政府委員　一應私カラ御答ヲ申
  上ゲマシテ、不十分デアリマシタラ大
  藏大臣カラ申上ゲマス、只今ノ御質問
  ヲ伺ヒマスト云フト、相續稅ヲ掛ケラ
  レル詰リ不動產ヲ持ッテ居ッテ自分ガ死
  亡スルコトニナレバ相續稅ヲ掛ケラレ
  ル、ソレ故ニ之ヲ贈興ヲシテサウシテ
  相續稅ヲ遁レヤウト云フコトニ使ハレ
  ハシナイカ、ソレヲ千分ノ六十デ防ゲ
  タ、然ルニ今日ニ於テハ千分ノ四十五ニ
  シテ下ゲテ置イテ防ゲルト云フコト
  オカシイヂヤナイト云フ風ナ御意見ノ
  ヤウニ今伺ッタノデアリマス、左樣デア
  リマスナラバ、相續稅ヲ掛ケラレルノ
  ヲ遁レル爲ニ千分ノ六十デ防グト云フ
  コトノ立前ニナッテ居リマスガ、千分ノ
  六十ト云フコトハ度〓申上ゲマシタ通
  リ、相當ナ高率ニナッテ居リマスノデ、
  寧ロソレニ參リマセヌデ、之ヲ賣買ノ
  ヤウナ形式ニ依テ千分ノ三十五デ遁レ
  ルト云フコトハ、是ハ屢申上ゲマシタ通
  リ其三十五デ遁レル爲ニソレトソコニ
  公平ヲ失シテ來ル、ソコデソレヲ千分
  ノ四十五ニ致サウト云フノデアリマ
  ス、今日不動產ノ課稅價額ヲ見マスト
  云フト、現行ノ三號ヲ適用シテ課稅ヲ
  シタノヲ見マシテモ、不動產ノ價格ハ
  相當低イノデアリマス、ソレ故ニ是
  ハ丁度平均ヲ取ッテ見マスト云フト、十
  四年度ヲ見マスト一件當リ九百四十七
  圓ニナッテ居リマス、是ハ尤モ平均デア
  リマスカラ、大キイノモアリマス、小サ
  イノモアリマス、千分ノ四十五ト云フ
  コトニ致シマスレバ、是ハ相當ニー
  千分ノ六十デハ稅ノ連脫ヲ誘致シマス
  ガ、千分ノ四十五ナレバ適當デアラウ、
  今ノ相續ニナリマス者ガ免レルト云
  フ場合ニ於キマシテモ、是モ餘リ高イ
  ト云フコトニ致シマスレバ、ソコニ千
  分ノ六十ヲ押ヘマスレバ、相續稅ハ成
  程假ニ權衝ヲ得ルト云フコトニ致シマ
  シテモ、ソコニ行カナイデ高イ爲ニ今
  度ハ三十五ノ方ニ持ヲテ行ッテシマフ弊
  ガ起ルノデアリマス、此三十五ノ方ヲ
  四十五ニ持ッテ來ルノデアリマスカラ、
  却テ其方ガ高橋君ノ御心配ニナル相續
  稅ヲ遁レヤウトスルコトヲ、此稅率ニ
  於テ今日ハ相當防ギ得ルト云フ風ニ考
  ヘテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ登錄
  稅ノ方ノ課稅ニ依テ、相續稅ノ通脫ヲ
  遁レヤウトスル者ヲ防グト云フ精神ニ
  於テハ、依然トシテ少シモ變ラナイノ
  デアリマス、是ガ今日ニ於テハ稅率ハ
  成程多少變更シテ居リマス、必シモ上ッ
  テ居ナイトハ私ハ申シマセヌ、變更シ
  テハ居リマスガ、併ナガラ今日ノ實狀
  カラ見マシテ、四十五デ之ヲ防ギ得ル
  ト云フ考ヲ持ッテ居リマスカラ、精神ニ
  於テハ少シモ變ッテ居リマセヌ

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• 131・高橋熊次郎

  ○高橋委員　サウスルト今政府委員ノ
  御答辯ノ跡ヲ考ヘテ見マスト、今迄ハ
  二十三條ノ船舶竝不動產ヲ除外シタト
  云フコトハ、此登錄稅ノ贈與ノ率ノ千
  分ノ六十デ之ヲ防ゲルト云フ方法ヲ立
  テタ、併ナガラ今日ハソレヨリハ賣買
  ノ形式デ以テ逋脫ヲスル方ガ多イカ
  ラ、今度ハ通脫ノ方法ヲソレヘ向ケテ
  ヤルヤウニ仕向ケタト云フ御意見ニナ
  リマスガ、サウスルト今迄サウ云フ風
  ニ向ケテ居ルガ、賣買ノ形式ニ依ルモ
  ノノ方ガ多イカラ、ソレデアルカラ今
  ノ贈與ノ形式ヲ取ッテ居ルモノガ少カッ
  タ、ソレデアルカラ今度ハ賣買ノ形式
  ニ依ルモノト云フモノガ少クナッテ、贈
  與ノ形式ノ方ヲ取ルモノガ今度ハ多ク
  ナルダラウ、斯ウ云フヤウナコトニナ
  ルノデアリマスカ、サウデセウカ、今ノ
  御說明ハ今迄ハ其二十三條ノ規定ト云
  フモノハドウ云フ工合ニシテ相續ヲ遁
  レタカト云フト、賣買ノ形式ニ依テ三
  十五ノ稅率ヲ掛ケタ、ソレデ以テ皆遁
  ゲテ行ッタ、ソレデアルカラ今度ハソレ
  ト均衡ヲ取レルヤウニ、ソレヲ三十三ト
  致シテ、ソレト均衡ヲ取レルヤウニ六
  十ヲ四十五ニ下ゲタノダ、サウスルナ
  ラバ賣買ノ形式ヲ取ルモノガ今度ハ贈
  與ノ形式ヲ取ッテ行クヤウニナルダラ
  ウ、斯ウ云フヤウナ御見込ノヤウニ思
  ハレル、ソレデアリマスカラ今迄ノ相
  續稅連脫ノ危險ト云フモノハ、今迄ハ
  千分ノ六十ト云フ贈與ノ形式デヤルノ
  ヲ之ヲ防イデ居ッタ、併ナガラ實際ニ於
  キマシテハ賣買ノ形式ハソレヨリモ三
  十五デヤッテ居タ、ソレダカラ今度登錄
  稅ノ六十ヲ四十五ニ下ゲルト、三十五
  デヤッタモノヲ四十五デ今度ハ大手ヲ
  振ッテヤラレルヤウニナルカラ、ソレデ
  ヤルノダト云フ風ニ取レル、ソレデア
  リマスカラ私ノ疑問トスル相續稅ノ通
  脫ト云フコトハ、今ノ御趣旨ニ依テ何
  等防ゲナイ、今ノ御說明ニ依ルト、賣買
  ノ形式ニ依タモノヲ之ヲ轉化シテ、贈
  與ノ形式デヤルヤウニナルノダ、斯ウ
  云フコトニナルカラ、サウ云フコトニ
  スルヤウニ贈與ヲ下ゲタト云フコトニ
  シカナルマイ、私ハ相續稅トノ關係ノ
  說明ハサウシカ取レナイ、唯相續稅ト
  云フモノヲ切離シテ、無償贈與ト云フ
  モノハドウスルカト云フ問題ハ別ノ問
  題デ、相續稅ト比較シテ、相續稅ノ二十
  三條ニ有價證劵竝現金ノミヲ押ヘテ、
  不動產竝船舶ヲ除外シタト云フ其說
  明ニナラヌ、ソレデアリマスカラ、ソン
  ナコトヲ言ッテ-政府委員ノ方モ大
  臣ニ御遠慮ニナッテソンナ事ヲ言ハル
  ルカ知ラヌガ、ソレダカラ私ハ事務官
  ノ御答辯ガ當ニナラヌカラ嫌ヒダト言
  ツテ忌避スル所以ノモノハ其處ニ在
  ル是ハ重大ナ問題デアリマス、今迄ノ
  相續稅ノ立法當時ノ精神ト云フモノ
  ヲ、此第二次稅制整理ニ於テ之ヲ根本
  カラ打壞シテ、新シク片岡案ナルモノ
  ヲ拵ヘテ、片岡主義ナルモノヲ此處デ
  植付ケル、飛ンデモナイコトニナリマ
  ス、ソレデアリマスカラ若槻主義ヲ排
  除シテ片岡主義ニナルコトハ重大ナル
  問題デアリマスカラ、私ハ諄ク此事ヲ
  承ッテ居ルノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ事務官ガ好イ加減ナコトヲ言ッテ、
  後デ己ハ事務官ダカラ責任ガ無イノ
  ダ、後ハ大臣ノ責任ダ、其時ハサウデア
  ツタカ知ラヌト云フコトデ御茶ヲ濁サ
  レテハ困ル、重大ナル問題デアリマス
  カラ大臣ヲ煩スノデアリマス、重大問
  題デナケレバ大臣ノ答辯ヲ促シテ居ナ
  イ、又コンナ大キナ聲ヲ出シテ居ナイ、
  重大問題ダト云フコトヲ少シ御考ヲ願
  ヒタイ

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• 132・黒田英雄

  ○黑田政府委員　相續稅ノ二十三條ヲ
  遁レマスルノヲ千分ノ六十デ防グ、然
  ルニ其千分ノ六十ト云フ稅率ガ高イ爲
  ニ、是ガ千分ノ三十五ト云フノニ參リ
  マジテ、却テ防グト云フ目的ヲ達セズ、
  而モ負擔ノ不均衡ナルト云フ點カラ致
  シマシテ、寧ロ此適當ノ稅率ヲ定メル
  コトガ宜カラウ、ソレデ四十五ニ致シ
  タト云フコトハ繰返シテ申上ゲテアル
  ノデアリマス、決シテ四十五ニシテ相
  續稅ノ課稅サレルモノヲソコニ引付ケ
  テ、相續稅ノ課稅ヲ受ケルヨリモ、登錄
  稅ノ方ニ持ッテ來サセヤウ、サウシテソ
  レ等ノ負擔ヲ輕減サセヤウト云フ趣旨
  デハナイノデス、ソレハ少シ事實ヲ御
  覽下サイマスレバ明瞭ニナルト考ヘル
  ノデアリマシテ、動產等ノ相續稅ト云
  フモノハ多額ニアルノデアリマスガ、
  然ラバ登錄稅法ノ第二條ノ三號ニ依ル
  所ノ稅率ガ多額ニアルカト申シマスル
  ト、是ハ前囘ニモ申下ゲマシタヤウニ、
  今日ニ於テハ非常ニ少イノデス、然ラ
  バ贈與ト云フヤウナ事實ニ於テ移轉ト
  云フモノガ行ハレナイカト申シマス
  ト、賣買ノ形式ニ於テハ行ハレテ居ル
  ト云フ考デアリマスカラ、今日此六十
  ト云フ爲ニ千分ノ三十五ト云フ賣買ノ
  方ニ行クモノヲ、之ヲ適當ニ緩和シテ、
  千分ノ四十五ト云フモノデ課稅ヲ受ケ
  ルヤウニシテ行クト云フコトガ、却テ
  負擔ノ公正ヲ保ツコトガ出來ルト云フ
  風ニ考ヘタノデス、ソレカラ尙ホ當時
  若槻總理ガ御答辯ニナリマシタトキ
  ニ、稅率ガ今度ハ增シテ居ルカラ、ソレ
  ニ準ジテ增スベキモノデアルト云フ御
  話デアリマスガ、御承知ノ通リ其以後
  ニ於テ遺產相續稅ガ減ゼラレタ時ガア
  リマス、其時ニモ矢張千分ノ六十ガ其
  儘存シテ居ッタノデアリマス、必シモソ
  レト伴ッテ增減ハ致シテ居リマセヌヤ
  ウニ考ヘテ居リマス、ソレカラ稅率ハ
  私正確ニチヨット申上ゲラレマセヌカ
  ラ、後カラデモ能ク御懇談申上ゲテ宜
  シウゴザイマスガ、併シ之ニ依テ當然
  下ゲルモノデアルトカ、高クナルトカ
  云フコトヲ申スモノデハナイノデアリ
  マシテ、唯御質問中ニ屢御引用ニナリ
  マスルカラ、一應申上ゲテ御參考ニ供
  シタイト思ヒマスガ、昨年ノ改正ニ於
  テモ、稅率ノ引上ヲ致シマシタ、併ナガ
  ラ是ハ制定當時ニ比較致シマスレバ、
  餘程緩和シタ引上ヲ致シタノデアリマ
  ス、最高ハ當時ノ最高ニ達シテ居リマ
  シテ、其達シマスノハ餘程上ノ方ニ於
  テ達スルト云フコトニナッテ居リマシ
  テ、途中ニ於テハ餘程緩和シテ居ルノ
  デアリマス、併シ是ハ緩和シテ居ルカ
  ラドウノト云フコトハ決シテ申上ゲル
  譯デハナイノデアリマス、唯當時トハ
  多少違ヒマスト云フコトヲ御參考ニ申
  上ゲテ置キマス

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• 133・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私バカリ時間ヲ取ッテモ
  恐縮デスカラ、大〓ニシテ止メテ又他
  日ノ機會ニ讓ラウト思ヒマスルガ、私
  ガ事務官諸君ノ御答辯ヲ嫌フト云フノ
  ハ、御說明ニナレバナル程私ノ言フコ
  トガ、ソレハ高橋ノ言フコトガ本當ダ、
  併ナガラ財政ノ遣繰デ、サウ云フ譯ニ
  行カナカッタト云フコトヲ言葉ノ先デ
  胡麻化サウトバカリ努メテ居ラレル、
  大臣デアルトカ政務官デアルト、政治
  上ノ責任ガ生ジテソンナ胡麻化シハ言
  ヘナイガ、事務官ノ方ハ政治上ノ責任
  ガ無イカラ好イ加減ナ事ヲ言ハレル、
  次ノ內閣ニナレバ大臣ガ違フ、內閣ノ
  方針ガ違ッタカラ斯ウナッタト言ハレ
  ル、私ハ何モ相續稅ガ其後改正ニナッ
  テ、其時分ノ率ガ低クナッタト云フ場合
  ニ、何モ其時分ニ登錄稅ヲ下ゲネバナ
  ラヌト云フ意味デ「スライデイング·ス
  ケール」ト言ッタノデハナイ、段々何デ
  モ下ゲルト云フ意味デハナイ、其登錄
  稅ガ其儘ニ之ヲ千分ノ六十ニシテ置ケ
  バ、相續稅ノ連脫ヲ防ゲルト云フノデ、
  登錄稅率ガ比較的高ケレバ高イ程相續
  稅ハ完全ニ通脫ガ防ゲル、其目的ハソ
  コデ完成スル譯デス、併ナガラ此六十
  ガ高イ安イト云フヤウナ、登錄稅自身
  ノ負擔關係ノ問題ハ別問題デアル、ソ
  レハソレデ以テ自作農ニ對シテハ免稅
  スルトカ、或ハ免稅點ヲ設ケルト云フ
  ヤウナ別ニソレハ外ノ方法デ-面倒
  臭イ地租マデ免稅點ナド設ケテ、役場
  ニ手數ヲ掛ケテ、悲鳴ヲ揚ゲサセテ、ソ
  レマデヤッテ居ル、サウ云フヤウナ方法
  デ不動產登錄稅ヲ改正シタナラバ、サ
  ウ云フヤウナ負擔力ノ薄イ者ニ對シテ
  負擔ヲ輕減スル途ハ幾ラモアラウト思
  フ、又相續稅ガ改正ニナッタケレドモ、
  ソレハ必シモ稅ガ重クナッタノデハナ
  イ、ソンナ事ヲ何處デ言ハレル、免稅點
  ヲ引上ゲタリナンカシタデセウケレド
  モ、財產ヲ持ッテ居ル、相當ノ留保分ヲ
  餘計持ッテ居ルヤウナモノヲ段々引上
  ゲル、ソレダカラ斯ウ云フ逋脫ヲ圖ル、
  又財產ヲ分割シテ而シテ贈與ノ出來ル
  ナドト云フ餘地ノアル者ハ、是ハ相當
  ナ大資產ヲ持ッテ居ル者デナケレバ出
  來ナイ、小ナル資產ヲ持ッテハ、他ニ分
  割シテ遺留財產-遺留財產ト言ッテ
  ハ語弊ガアリマスガ、留保財產ヲ持ッテ
  ソレデ暮シヲ付ケルコトハ出來ナイ、
  ソレデアリマスカラ百萬圓ヲ持ッテ居
  ルナラバ五十萬圓贈與シテ、後ノ五十
  萬圓デ立派ニヤッテ行ケルカラ、斯ウ云
  フ大ナル資產家ガ初メテ出來ル脫稅ノ
  仕方デアル、ソレデ私ハサウ云フ大ナ
  ル資產家、二三十萬圓以上四五十萬圓、
  尙ホ何百萬圓ト云フ財產家ガ、相續稅
  ヲ免レル爲ニ大手ヲ振ッテ無償贈與ニ
  依テ登錄稅法第二條ノ-現行法ニ於
  ケル第三號、改正案ノ第二號ノ稅率ニ
  依テ大手ヲ振ッテ相續稅ヲ免レルト云
  フ方法ガ、大資產家ニ於テ行ハレル、斯
  ウ云フノデス、ソレダカラ大資產家ノ
  脫稅獎勵法ヲ御設ケニナルノデアルト
  云フコトヲ繰返シ繰返シ申上ゲルノハ
  此處ノ理由デアリマス、ソレハ尙ホ能
  ク立法當時ノ政府委員議員間ノ應答ナ
  ドヲ御熟讀ナサッテ御覽ナサイ、其時分
  ニ木村格之輔ナドト云フ熱心ナ議員
  ハ、二十三條ノ方面ノ贈與ト云フコト
  バカリデナク、又阿部德三郞氏モ贈與
  ト云フ所ニ付テ御心配ニナッタケレド
  モ、賣買ノ名義ヲ以テヤルモノハ之ヲ
  縛ル譯ニ行カナイヂヤナイカ、押ヘル
  譯ニ行カナイヂヤナイカ、斯ウ云フコ
  トモアッタ、其時分ニ若槻サンハドウ云
  フ事ヲ言ッタカト云フト、「賣買ノ形デ
  以テ爲シタナラバ、或ハ相續稅ノ目的
  ヲ達セヌト云フヤウナコトガ起リハセ
  ヌカドウカト云フ御尋ネデアリマスガ
  登錄稅法ノ改正案ニ於テ不動產ノ
  稅率ガ上ゲテ御座イマス、ソレハ一方
  ニハ戰時歲入ガ欲シイ爲ニ上ゲタノデ
  アリマスガ、ソレト同時ニ一方ニ相續
  稅ト關聯シテ賣買ノ場合ニ於ケル相續
  稅ヲ課シテアル、此方デ大體ノ取締ハ
  付ケル積リデアリマス、」斯ウ云フコト
  マデ言ッテ居ラレルノデアリマス、斯ウ
  云フコトヲ全然無視シテ此度ノ改正ガ
  行ハレタトシカ吾〓ニハ思ヘナイノデ
  アリマス、ソレデアルカラ大臣ニ於カ
  レマシテモ、能ク其當時ノ事情ヲ御調
  ベニナリマシテ、他日ノ機會ニ於テ改
  メテ明確ナル御答辯ヲ求メテ、私ハ此
  登錄稅ニ關スル此相續稅關係ノ問題ニ
  付テハ今日ハ是デ鳧ヲ付ケマス、其他
  ニマダ十數項ニ亙ル質問ガアリマス
  ガ、他ノ諸君ノ御倦怠ヲ招クノ虞ガア
  リマスカラ、本日ハ是デ私ノ質問ハ中
  止致シマシテ、他日ノ機會ニ讓リマス

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• 134・片岡直温

  ○片岡國務大臣　曩ノ速記錄等ヲ見テ
  篤ト考ヘテ返事ヲセヨト斯ウ云フ御求
  デアリマスカラ、尙ホ調ベテモ見マセ
  ウガ、併ナガラ先刻來申上ゲマス通リ、
  此六十ト云フ稅率ノ爲ニ却テ逋稅ヲ
  行フ者ガ多イヤウデアル、其證據ニハ
  此種ノ收入ガ比較的少イ、必ズ是ハ一
  方ノ稅率ノ安イ三十五デ濟ムヤウナ途
  ヲ講ジテ行キ居ルヤウデアル、ソレ故
  ニ斯樣ニシテ他ノ手續ニ依テ財產ヲ讓
  ラウト云フガ如キ、所謂此法律カラ言
  ヘバ連稅、此通稅ノ途ヲ避ケル爲ニ其
  率ヲ四十五マデニスレバ左樣ナ道行ヲ
  取ル者ガ却テ減ッテ、此稅法ノ精神ヲ
  貫クコトガ出來ルデアラウト云フコト
  ガ、此改正ノ目的デアリマス、別ニ通稅
  者ヲ導クノ何ノト云フコトハナイ、現
  在マデ行ハレテ來タ事實ニ對シテ、逋
  稅者ガドウモ多イヤウニ見受ケラレ
  ル、其多イノハ何故デアルカト云フト、
  片方ハ六十デ高イノデアル、之ヲ片方
  ノ三十五デ濟ム途ヲ取リサヘスレバ、
  ソレデ行ケル、ソレヲ取ッテ行キ居ル傾
  キガアルカラ、之ヲ四十五ニスレバ大
  シタ違ヒハナイ、同ジヤウニスレバ尙
  宜イカモ知レマセヌガ、四十五マデニ
  スレバ其手段ヲ施ス者ハ少クナッテ行ッ
  テ、國民ノ稅ヲ負擔スル上ニ於テ當然
  ノ道行ニ進ミ得ラレル、是ガ卽チ改正
  ノ要旨デアリマス、別ニ今日迄ニ政府
  委員ガ言ッテ來タコトヲ無視シタトカ、
  方針ヲ變ヘタト云フコトハ少シモナイ
  ノデアリマス、尙速記錄等ヲ見テ云々
  ト云フ御注意モアリマスカラ、能ク調
  ベテハ見マスガ、要點ハ之ニ外ナラヌ
  ノデアリマス、念ノ爲メ之ヲ申上ゲテ
  置キマス

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• 135・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私ハ先程此處デ中止ヲス
  ルト云フタガ、大臣ガ間違ッタ考、「デブ
  レヂユデス」ノ下ニ此事ヲ見ラレテ居
  ルト、幾ラ御〓究ニナッテモ分ルマイト
  思フカラ、一言又費ヤサナケレバナラ
  ヌ、大臣モ政府委員モ多少ソンナヤウ
  ナ頭ヲ持ッテ居ラレルヤウデスガ、相續
  稅ノ二十三條ノ通稅ヲ防グト云フヤウ
  ナ方面ノ考ト、ソレカラ一方相續稅ト切
  離シタル無償贈與ト云フモノト、賣買
  トノ關係、是ト兩方ゴッチヤ混ゼニシテ
  居ラレル、アナタノ仰ッタノハ眞實ナル
  贈與ト云フモノト、賣買ノ形式ヲ以テ
  之ヲ逋脫スルモノトノ間ノ關係ヲアナ
  タハ言ハレタノデアル、何等其理窟ヲ
  直ニ押ヘテ相續稅ヲ逋脫スル、相續稅
  ヲ遁レヤウトスル方面ノ關係ニハソレ
  ハ及バナイノデアル、唯其方ノ關係ニ
  應用スルナラバ、今マデハ賣買ノ形式
  ヲ以テヤッタノヲ、今度ハ贈與ノ形式デ
  免カレシメルノト何等變ッタコトハナ
  イ、ソレデスカラソレヲ二ツ混同シナ
  イヤウニ能ク落付イテ御考ニナッテ、サ
  ウシテ私ノ言フコトハ、是ハ何モ攻擊
  ヲスル爲ニ言フノデハナイ、稅ト云フ
  モノハ神聖ナルモノデアル、國民ハ苛
  歛誅求ト云フ聲ヲ今放ッテ居ル、ソレヲ
  サウデハナイ、苛歛誅求デハナイ、是ハ
  實際斯ウ云フ純理ニ基イテヤッテ居ル
  ノデアルト云フコトヲ徹底サセナケレ
  バナラヌ、ソレデ吾〓ハ此問題ヲ高唱
  力說シテ居ルノデアル、是ハ不純ナ動
  機デモ何デモナイノデアルカラ、大臣
  モ餘程頭ヲ冷ヤカニシテ、サウシテ此
  問題ニ付テ-稅制問題ハ他ノ財政問
  題ト違フ、政黨政派ノ問題デハナイ、ソ
  レデアリマスカラ餘程之ニ付テハ深甚
  ナル御考慮ヲ此際煩ハシテ置クノデア
  リマス、ドウゾ其積リデ御考慮ヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005212672X00719270215&spkNum=135

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• 136・武藤金吉

  ○武藤委員長　今日ハ此程度デ散會致
  シマス
  午後五時四分散會

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