第52回帝国議会　衆議院　本会議　第9号　昭和2年1月29日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和二年一月二十九日（土曜日）午後一時十三分開議
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  　議事日程　第八號
  　　昭和二年一月二十九日
  　　　午後一時開議
  　第一　計理士法案（政府提出）　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　水戸鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　震災手形損失補償公債法案（政府提出）　第一讀會
  　第六　震災手形善後處理法案（政府提出）　第一讀會
  　第七　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第八　朝鮮事業公債法改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第九　臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十　關東州事業公債法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十一　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十二　商事非訟事件印紙法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十三　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十四　九州製鋼株式會社の工場等の買收代金に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十五　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十六　鐵道敷設法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十七　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十八　大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案（林田龜太郎君外一名提出）　第一讀會
  　第十九　大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案（東武君外二名提出）　第一讀會
  　第二十　北海道農地特別處理法案（丸山浪彌君外六名提出）　第一讀會
  　第二十一　政治運動の爲金品供與の制限に關する法律案（尾崎行雄君提出）　第一讀會
  　第二十二　政治結社加入勸誘方法の制限に關する法律案（關直彦君提出）　第一讀會
  　第二十三　議員の職務に關する法律案（増田義一君提出）　第一讀會
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• 001・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　諸般ノ報告ヲ致サセ
  マス
  〔書記官朗讀〕
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  民法施行法中改正法律案
  提出者大石大君
  地租條例中改正法律案
  提出者大石大君
  破產ノ身上效果ニ關スル法律案
  提出者土屋〓三郞君
  (以上一月二十七日提出)
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
  擧法中改正法律案
  提出者
  小池仁郞君一柳仲次郞君
  山本厚三君澤田利吉君
  神部爲藏君手代木隆吉君
  淺川浩君
  議院法中改正法律案
  提出者
  鷲野米太郞君武藤山治君
  (以上一月二十八日提出)
  京都高等蠶業學校ニ製絲科設置ニ關スル
  建議案
  提出者
  村上國吉君川崎安之助君
  市町村ノ整理改善ニ關スル建議案
  提出者荒川五郞君
  稅務官ノ待遇改善ニ關スル建議案
  提出者
  大島要三君紺野九右衞門君
  菅村太事君中野寅吉君
  比佐昌平君金澤安之助君
  佐藤富十郞君粟山博君
  國有林野不要存置林拂下價格ニ關スル建
  議案
  提出者
  大島要三君菅村太事君
  紺野九右衞門君佐藤富十郞君
  中野寅吉君金澤安之助君
  比佐昌平君粟山博君
  澁川長野原間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者木檜三四郞君
  我カ國國號ノ統一顯正ニ關スル建議案
  提出者由谷義治君
  丸龜港改築國庫補助ニ關スル建議案
  提出者三善〓之君
  川內川改修速成ニ關スル建議案
  提出者
  寺田市正君兒玉實良君
  東〓實君陣軍吉君
  逆瀨川仁次郞君
  農漁村ノ金融ニ關スル建議案
  提出者
  床次竹二郞君松田源治君
  松浦五兵衛君田中隆三君
  八木逸郞君櫻内幸雄君
  中村啓次郞君三輪市太郞君
  小川〓太郞君牧山耕藏君
  金光庸夫君小橋一太君
  森肇君
  小作農保護ニ關スル建議案
  提出者
  床次竹二郞君松田源治君
  松浦五兵衞君田中隆三君
  八木逸郞君櫻內幸雄君
  中村啓次郞君三輪市太郞君
  小川〓太郞君牧山耕藏君
  金光庸夫君小橋一太君
  東郷實君
  尾道港第二種重要港灣指定ニ關スル建議
  案
  提出者
  嶋居哲君佐々本長治君
  家產制度制定ニ關スル建議案
  提出者浦野謙朗君
  四國循環鐵道阿土南海岸線敷設速成ニ關
  スル建議案
  提出者
  谷原公君大石大君
  原田佐之治君
  阿波池田、川之江間鐵道速成ニ關スル建
  議案
  提出者
  小野寅吉君原田佐之治君
  大石大君谷原公君
  阿波池田、山田間鐵道工事速成ニ關スル
  建議案
  提出者
  大石大君原田佐之治君
  小野寅吉君谷原公君
  佐川松山間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者
  大石大君小野寅吉君
  伊野宇佐間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者大石大君
  崎山、江川崎間鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者大石大君
  福三鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者
  平田民之助君原夫次郞君
  小野寅吉君大石大君
  原田佐之治君
  高砂港修築ニ關スル建議案
  提出者多木久米次郞君
  加古川改修工事完成ニ關スル建議案
  提出者多木久米次郞君
  帖佐入來間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者
  寺田市正君東郷實君
  兒玉實良君逆瀨川仁次郞君
  帝國在〓軍人會國庫補助金曾額ニ關スル
  建議案
  提出者
  倉元要一君篠原和市君
  市町村吏員優遇ニ關スル建議案
  提出者八田宗吉君
  國稅徵收交付金會額ニ關スル建議案
  提出者八田宗吉君
  (以上一月二十七日提出)
  消防組經費國庫補助竝消防組員優遇ニ關
  スル建議案
  提出者
  倉元要一君高橋熊次郞君
  志賀和多利君
  (以上一月二十八日提出)
  柳津小出間及只見古町間鐵道速成ニ關ス
  ル建議案
  提出者
  中野寅吉君關矢孫一君
  (以上一月二十九日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  三黨首妥協ノ條件ニ關スル質問主意書
  提出者〓瀨一郞君
  (以上一月二十七日提出)
  長野縣警察事件ニ關スル質問主意書
  提出者篠原和市君
  (以上一月二十八日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一去二十七日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第二部豫算委員山口左一君
  第七部豫算委員松井郡治君
  第九部豫算委員井出繁三郞君
  一去二十七日議長ニ於テ選定シタル委員左
  ノ如シ
  河川法中改正法律案委員
  神谷彌平君黑田重兵衞君
  傳田〓作君齋藤珪次君
  竹原樸一君加藤知正君
  寺田市正君小島善作君
  富永孝太郞君
  登錄稅法中改正法律案外三件委員
  小西和君木檜三四郞君
  淺川浩君神部爲藏君
  斯波貞吉君吉原義雄君
  佐藤富十郞君永田善三郞君
  奧村千藏君佐藤球三郞君
  西脇晉君武藤金吉君
  堀切善兵衞君松本眞平君
  山本愼平君高橋熊次郞君
  兼松寅太郞君吉木陽君
  佐々木長治君木暮武太夫君
  吉良元夫君松浦五兵衞君
  禱苗代君〓水長〓君
  丹下茂十郞君沼田嘉一郞君
  曾田義一君
  國債整理基金特別會計法中改正法律案委
  員
  松田三德君平沼亮三君
  中谷貞賴君中野實君
  由谷義治君江藤榮吉君
  濱口吉兵衞君浦山助太郞君
  大口喜六君中村〓造君
  高井商二君吉津度君
  齋藤藤四郞君櫻內幸雄君
  井坂豐光君森肇君
  佐藤重遠君畔田明君
  市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律
  案委員
  〓水留三郞君金澤安之助君
  建部遯吾君蟻川五郞作君
  戶澤民十郞君山枡儀重君
  羽田彥四郞君上埜安太郞君
  山崎達之輔君安藤正純君
  山下谷次君松本君平君
  廣瀨爲久君八木逸郞君
  熊谷五右衞門君浦野謙朗君
  丸山浪彌君土屋〓三郞君
  一昨二十八日若槻内閣總理大臣ヨリ左ノ通
  發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  內務省地方局長潮惠之輔
  内務省所管事務政府委員被仰付
  鐵道省建設局長男爵中村謙
  鐵道省工務局長後藤佐彥
  鐵道省所管事務政府委員被仰付
  一昨二十八日衆議院規則第十五條但書ニ依
  リ議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
  四二靜岡縣第五區選出議員
  七吉村伊助君
  一三九吉木陽君
  二三六中村貞吉君
  二四五齋藤仁太郞君
  三二八山口嘉七君
  一昨二十八日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第五部豫算委員三好榮次郞君
  第五部豫算委員作間耕逸君
  第四部豫算委員吉植庄一郞君
  第五部豫算委員下元鹿之助君
  一昨二十八日常任委員補關選擧ノ結果左ノ
  如シ
  第二部選出
  豫算委員松山兼三郞君(山口左一君
  補闘)
  第七部選出
  豫算委員山田又司君(松井郡治君補
  關
  第九部選出
  豫算委員柏田忠一君(井出繁三郞君
  補闕)
  一昨二十八日委員長及理事互選ノ結果左ノ
  如シ
  何川法中改正法律案(政府提出)委員
  委員長神谷彌平君
  理事加藤知正君
  登錄稅法中改正法律案(政府提出)外三件
  委
  委員長武藤金吉君
  理事
  奧村千藏君高橋熊次郞君
  〓水長〓君
  國債整理基金特別會計法中改正法律案
  (政府提出)委員
  委員長松田三德君
  理事
  由谷義治君高井商二君
  森肇君
  市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律
  案(政府提出)委員
  委員長八木逸郞君
  理事
  山枡儀重君山下谷次君
  丸山浪彌君

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• 002・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ會議ヲ開キマ
  ス

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• 003・松田三徳

  ○松田三德君　只今ヨリ國債整理基金特別
  會計法中改正法律案ノ特別委員會ヲ開キタ
  イト思ヒマス、御許シヲ願ヒマス

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• 004・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　只今松田君ヨリ申出
  ノ委員會ノ開會ノコトハ、御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 005・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ許可致シマス、尙ホ河川法中改正法
  律案ノ委員長ヨリ、本日本會議中ニ委員會
  開會許可ノ申出ガアリマシタ、之ヲ許可ス
  ルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 006・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ許可スルコトニ致シマス、尙ホ諮
  問事項ガアリマス、第一部選出豫算委員富
  田愿之助君、第四部選出豫算委員宮崎友太
  郞君、右兩君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガア
  リマシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 007・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス仍テ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ
  補闕選擧ヲ行ヒ屆出アランコトヲ望ミマ
  ス、尙ホ高橋是〓君ヨリ病氣ニ付、一月二十
  九日ヨリ二月十一日マデ請暇ノ申出ガアリ
  マシタ、是亦許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 008・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ許可致シマス、日程第一、計理士
  法案ノ第一讀會ヲ開キマス、藤澤商工大臣
  第一計理士法案(政府提出)第一讀會
  計理士法案
  計理士法
  第一條計理士ハ計理士ノ稱號ヲ用ヒテ
  會計ニ關スル檢査、調査、鑑定、證明、
  計算、整理又ハ立案ヲ爲スコトヲ業ト
  スルモノトス
  第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ計理士タ
  ル資格ヲ有ス
  -帝國臣民又ハ主務大臣ノ定ムル所
  ニ依リ外國ノ國籍ヲ有スル者ニシテ
  私法上ノ能力者タルコト
  二計理士試驗ニ合格シタルコト
  計理士試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  第三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前
  條第一項第二號ノ規定ニ拘ラズ計理士
  タル資格ヲ有ス
  會計學ヲ修メタル經濟學博士又ハ
  商學博士
  二帝國大學若ハ大學令ニ依ル大學ニ
  於テ會計學ヲ修メ學士ト稱スルコト
  ヲ得ル者又ハ專門學校令ニ依ル專門
  學校ニ於テ會計學ヲ修メ之ヲ卒業シ
  タル者
  三主務大臣ニ於テ前號ニ揭グル學校
  ト同等以上ト認ムル學校ニ於テ會計
  學ヲ修メ之ヲ卒業シタル者
  第四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ計
  理士タル資格ヲ有セズ
  禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但
  シ二年未滿ノ懲役若ハ禁錮ニ處セラ
  レタル者ニシテ刑ノ執行ヲ終リ若ハ
  其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リタ
  日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル者
  又ハ陸軍刑法若ハ海軍刑法ニ依リ一
  年未滿ノ禁錮ニ處セラレタル者ハ此
  ノ限ニ在ラズ
  二前號ニ該當スル者ヲ除クノ外第十
  一條又ハ第十二條ノ罪ヲ犯シ刑ニ處
  セラレタル者但シ刑ノ執行ヲ終リ又
  ハ其ノ執行ヲ受クルコトナキニ至リ
  タル日ヨリ起算シ三年ヲ經過シタル
  者ハ此ノ限ニ在ラズ
  三破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
  四計理士ノ業務ノ停止ノ期間中其ノ
  業務ヲ廢止シ未ダ其ノ期間ノ經過セ
  ザル者
  五計理士ノ業務ノ禁止ノ處分ヲ受ケ
  タル者但シ其ノ處分ヲ受ケタル日ヨ
  リ起算シ三年ヲ經過シ主務大臣ニ於
  テ改悛ノ情顯著ナリト認メタル者ハ
  此ノ限ニ在ラズ
  第五條計理士タラントスル者ハ計理士
  登錄簿ニ登録ヲ受クルコトヲ要ス
  計理士ノ登錄ニ關スル事項ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第六條計理士ノ登錄ヲ受ケントスル者
  ハ登錄料トシテ二十圓ヲ納付ズヘシ
  第七條計理士ハ其ノ業務ヲ公正ニ行フ
  ニ支障アリト認メラルル事項ニ付計理
  士ノ業務ヲ行フコトヲ得ズ
  第八條計理士ハ主務大臣ノ監督ニ屬ス
  第九條計理士本法ノ規定ニ違反シタル
  トキ又ハ品位ヲ失墜スベキ行爲若ハ業
  務上不正ノ行爲ヲ爲シタルトキハ主務
  大臣ハ計理士懲戒委員會ノ議決ニ依リ
  之ヲ懲戒スルコトヲ得
  計理士懲戒委員會ニ關スル事項ハ勅令
  ヲ以テ之ヲ定ム
  第十條計理士ノ懲戒處分ハ左ノ四種ト
  ス
  -譴責
  二千圓以下ノ過料
  三一年以内計理士ノ業務ノ停止
  四計理士ノ業務ノ禁止
  前項第二號ノ過料ヲ完納セザルトキハ
  主務大臣ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス
  非訟事件手續法第二百八條ノ規定ハ前
  項ノ規定ニ依ル執行ニ付之ヲ準用ス
  第十一條計理士又ハ計理士タリシ者故
  ナク其ノ業務上取扱ヒタル事項ニ付知
  得タル祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シタルト
  キハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰
  金ニ處ス
  前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ズ
  第十二條計理士タル資格ヲ有セズシテ
  計理士ノ業務ヲ行ヒタル者ハ六月以下
  ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  第十三條計理士タル資格ヲ有スルモ其
  ノ登錄ヲ受ケズシテ計理士ノ業務ヲ行
  ヒタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過料
  ニ處ス
  非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
  八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用
  ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ノ適用ニ付テハ明治十三年第三十六
  號布告刑法ノ二年ノ禁錮以上ノ刑ニ處セ
  ラレタル者ハ二年ノ懲又又ハ禁錮以上ノ
  刑ニ處セラレタル者ト看做ス
  本法施行ノ際迄引續キ一年以上會計ニ關
  スル檢査、調査、鑑定、證明、計算、整理又ハ
  立案ノ業務ニ從事シタル者ハ本法施行ノ
  日ヨリ六月以内ニ出願シタルトキニ限リ
  第二條第一項第二號ノ規定ニ拘ラズ計理
  士試驗委員ノ鈴衡ヲ經テ計理士タルコト
  ヲ得
  帝國大學、大學令ニ依ル大學若ハ専門學
  校令ニ依ル專門學校又ハ主務大臣ニ於テ
  之ト同等以上ト認ムル學校ニ於テ經濟ニ
  關スル諸學科ヲ修メ定規ノ課業ヲ卒ヘタ
  ル者ニシテ引續キ三年以上會計ニ關スル
  檢査、調査、鑑定、證明、計算、整理又ハ立
  案ノ業務又ハ職務ニ從事シタル者ハ本法施
  行ノ日ヨリ五年以内ニ出願シタルトキニ
  限リ第二條第一項第二號ノ規定ニ拘ラズ
  計理士試驗委員ノ銓衡ヲ經テ計理士タル
  コトヲ得
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

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• 009・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　計理士法案ノ
  提案ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、經濟界ノ
  發達ト共ニ、會計ニ關スル事務ハ各種事業
  ノ經營上、極メテ重要ノ價値ヲ有スルニ至
  リマシタ、而モ漸次複雜多岐ニ亙リツヽア
  ルノデアリマス、隨テ是ガ爲ニハ特ニ専門
  ノ知識竝ニ經驗ヲ有スル者ノ力ニ俟タンケ
  レバナラヌモノガ少クナイノデゴザリマ
  ス、現ニ此種ノ事業ヲ職トシテ居リマス者
  ガ年ヲ逐ウテ增加致シマスル趨勢ニ在ルノ
  デアリマス、故ニ此際計理士法制度ヲ法制
  ノ上ニ認メマシテ、其資格ヲ一定スルト共
  ニ、其職責ノ重大ナルニ鑑ミ、其職務ノ執
  行ニ付テモ、適當ナル統制監督ヲ行フコト
  ガ至當デアルト云フノデ、此法案ヲ提出致
  シマシタノデアリマス、ドウカ御審議ノ上
  ニ御協賛ヲ賜リタク願上ゲマス

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• 010・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　本案ニ對シテ質疑ノ
  通告ガアリマス、順次之ヲ許シマス、谷原
  公君
  〔谷原公君登壇〕

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• 011・谷原公

  ○谷原公君　私ハ只今上程セラレマシタ計
  理士法案ニ付キマシテ、其根柢ニ涉ル一、
  二ノ問題ヲ簡單ニ御聞キシタイノデアリマ
  ス本法ニ於キマシテ此計理士ノ自治ヲ公
  認シテナイト云フ理由ハ那邊ニ在ルカト云
  フコトガ、先ヅ第一ニ承リタイノデアリマ
  ス、只今御提案ノ理由ヲ聞キマスルト、所
  謂其統制竝ニ監督ノ上ニ於テ本法ヲ制定ス
  ル必要ガアルト云フコトヲ言ハレテ居ルノ
  デアリマス、統制監督ノ上ニ於テ本法ガ必
  要デアルト致シマシタナラバ、此計理士御
  互ノ間ニ於キマシテ、自治的ノ組織ヲ以テ
  常ニ相〓究シ、或ハ相共ニ地位ノ向上ヲ圖
  リ、又其品位ヲ保持スルコトニ、相互共同
  的ニ努メナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、斯樣ナ制度ハ古イ辯護士法ニ規定サレ
  テ居リマスルコトハ勿論、大正十年ニ出來
  マシタ辨理士法ニ於キマシテモ明ニ認メラ
  レテ居ルノデアリマス、デ統制或ハ監督ニ
  付キマシテ、事件或ハ問題ガ起ヲテカラ後
  ニ之ヲ監督スルガ如キハ、甚ダ價値權威ノ
  少イモノデアリマス、事前ニ於キマシテ御
  互ガ相共ニ切磋琢磨シ、而シテ其技術ノ方
  面ニ於キマシテモ、或ハ地位品位ノ上ニ於
  キマシテモ、共ニ相戒メテ參リマシタナラ
  バ、ソレデ立派ナ監督ニナル、其監督タル
  ヤ日常不斷ノ監督デアリマスルガ故ニ、價
  値モ權威モ亦多イコトヽ思フノデアリマ
  ス、然ルニ拘ラズ本法ニ於キマシテハ計理
  士會、卽チ計理士ノ自治組織ニ關スル規定
  ガ全然無イノデアリマス、是ハ計理士ガ計
  理士會ヲ組織スルダケノ、或ハ能力ガナイ
  ト云フノデ斯樣ニサレタノデアリマセウ
  カ、若クハ其必要ナシトシテ闕如ヲサレタ
  ノデアリマセウカ、此點ニ付キマシテハ甚
  ダ私ハ疑ヲ持ツノデアリマス、殊ニ辨理士法
  ノ如キハ辨理士會ヲ法人トシテ人格ヲ認メ
  テ居ルノデアリマス、此計理士法ニ於キマ
  シテ計理士會ト云フモノニ、法人格ヲ與へ
  ルト云フヤウナコトニ迄ナリマシタナラ
  バ、或ハ財產ヲ所有スルコトモ出來マセウ
  シ、又其會ノ運用ノ上ニ於キマシテモ多大
  ナ便利ガアルコトヽ思フノデアリマス、互
  ニ〓究スルト云ヒマシテモ、今日ノ經濟制
  度カラ考ヘマシタナラバ、矢張財的要件ガ
  必要ナノデアリマス、財的ノ要件ガ必要ト
  シマスルナラバ、御互ノ〓究ノ爲メ、地位
  ノ保持ノ爲ニハ、矢張其團體ノ人格ヲ以テ
  財產ノ所有支配ガ出來ルヤウナ組織ニスル
  コトガ、最モ時宜ニ適シタコトヽ思フノ
  デアリマス、然ルニモ拘ラズ其點ガ本法ニ
  於テハ全然缺ケテ居ルノデアリマスカラ、
  斯樣ナ制度ヲ認メナイ、詰リ自治ノ組織ト
  云フモノヲ本法ニ於テ公認シナイ所ノ根本
  理由ニ付テ伺ヒタイノガ一點デアリマス、
  次ニ今一點、此計理士ヲ司法若クハ行政ノ
  方面ニ於テ、補助機關トシテ色とナ事務ニ
  從事サス必要ヲ政府ハ認メルノデアルカ、
  或ハ認メナイノデアルカ、今日ノ經濟上ノ
  取引ハ頗ル複雜デアリマスカラ、先程大臣
  ガ言ハレマシタヤウニ、色ニノ方面ニ於テ
  計理士ヲ利用スル所ノ必要ガアルノデアリ
  さっ、殊ニ此民事、刑事ノ方面ニ於キマシ
  テハ、計理士ノ知識ト技術ヲ借ルコトガ頗
  ル多イノデアリマス、例ヘバ破產事件ノ如
  キ、或ハ又會社ノ檢査ノ如キ、是ハ從來多
  ク辯護士ヲ以テ當テヽ居リマスルケレド
  モ、計數上ノ問題ニ付キマシテハ、辯護士
  ハ頗ル疎イノデアリマス、寧ロ此計理士
  ヲ利用スルコトニ依リマシタナラバ、十分
  其目的ヲ貫徹スルコトガ出來ルト思フノデ
  アリマス、尤モ破產法等ノ規定ニ依リマス
  レバ管財人ニ任命サレタ者ハ、是ハ故ナ
  クシテ辭スルコトガ許サレテハ居リマセヌ
  ケレドモ、此會社ノ檢査役ノ如キデアリマ
  シタナラバ、任命セラレマシテモ、必シモ
  之ニ服セナケレバナラナイト云フ義務ハナ
  イノデアリマス、デアリマスカラ計理士ヲ
  斯樣ナ場合ニ利用スルコトヲ、若シ豫定セ
  ラレルナラバ、計理士ノ登錄ト同時ニ、矢
  張官公署ノ命令或ハ囑託ニ對シマシテハ
  此命令服從ノ關係ニ於テ、當然事務ヲ執行
  シナケレバナラヌ所ノ義務ヲ、本法ニ於テ
  課シテ置ク必要ガアルト思フノデアリマス、
  他ノ法制ヲ見マシテモ、矢張其命令服從ノ
  關係ニ於テ、義務的ノ囑託或ハ命令ヲ受ケ
  ナケレバナラヌヤウナコトニナッテ居ルノ
  デアリマスガ、本法ニ於キマシテハ單ニ普
  通ノ營業者ナルガ如ク、別ニ左樣ナ義務ヲ
  認メテナイノデアリマス、尤モ懲戒ノ規定
  ハアリマスルケレドモ、ソレハ唯、秩序罰
  トシテ認メタノミデアリマシテ、其根柢タ
  ル所ノ立法事項ガ見エナイノデアリマス、
  是ハ若シ計理士ト云フ者ヲ今迄述べマシタ
  ヤウナ場合ニ、命令囑託等ニ依リマシテ、
  當然義務トシテ執務ヲサスノデアリマシタ
  ナラバ、ソレ等ニ對スル法制ガ必要ト思ヒ
  マスルノデ、是等ニ對スル政府ノ御意見ノ
  在ル所ヲ承リタイノデアリマス
  〔國務大臣藤澤袋之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=11

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• 012・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　谷原君ニ御答
  ヲ致シマス、第一ニ御質問ハ計理士ヲ辯
  護士若クハ辨理士ノ如クニ一ツノ團體トシ
  テ之ヲ認メシメル、卽チ辯護士會ノ如クニ
  計理士會ヲ設クルコトヲ何故ニ許サヌノデ
  アルカ、或ハ許スカ否カト云フヤウナ意味
  ニ於テノ御尋デアッタト思ヒマス、然ルニ
  辯護士或ハ辨理士ト一云フモノハ、御承知ノ
  通リ各地方裁判所デアルトカ、或ハ特許局
  デアルトカ云フ中心ノ場所ヲ持シテ居ルノ
  デアリマス、所ガ計理士ト云フモノハ各
  都市ニ散在シテ居ルノデアリマシテ、大キ
  イ都市ニハ相當ニアリマスケレドモ、小サイ
  都市ノ如キ若クハ田舍ナドニ至リマシテ
  ハ有ル所モアリ、無イ所モアリ、ソチコ
  チニ散在致シテ居ルノデアリマスカラ、强
  制的ニ計理士會ヲ設ケサセルト云フヤウナ
  コトハドウモ今日ノ所ニ於テハ無理ダト
  考ヘテ居ルノデアリマス、追ミ世ノ中ガ進
  ミマシタナラバ、或ハサウ云フ時期ガ到來
  スルヤウニナルカモ知レナイト存ズルノデ
  アリマスガ、今日ノ所デハ之ヲ認メナイコ
  トニ致シテ居ルノデアリマス、ソレカラ第
  二ノ御尋ネ、司法行政ノ補助機關トシテ之
  ヲ用ヒルカ否カト云フ點ニ付テノ御尋デア
  リマスガ、是モ矢張同ジヤウナ御答ヲス
  ルノデアリマスガ、今日ノ場合ニ於キマシ
  テハ、未ダ之ヲ考慮シテ居リマセヌノデア
  リマス、他日ハ別ノ事デアリマス、是ダケノ
  コトヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=12

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• 013・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　土屋〓三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=13

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• 014・土屋清三郎

  ○土屋〓三郞君　簡單デアリマスカラ此席
  カラ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=14

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• 015・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=15

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• 016・土屋清三郎

  ○土屋〓三郞君　第四條ノ三、破產者ニシ
  テ復權ヲ得ザル者ニ對シテハ計理士タル資
  格ヲ與ヘナイト云フコト、是ハ如何ナル理
  由カラデアリマスカ、此點ヲ御尋ネ致シタ
  イノデアリマス
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=16

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• 017・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　此第四條ニ付
  テノ御尋デアリマスガ、是ハ色ニナ消極的
  資格條件ヲ規定致シテ居ルノデアリマス
  ガ、破產者ニシテ復權ヲ得ザル者ト云フ箇
  條ハ、是ハ辯護士法其他色ミナ法律ニ、斯
  樣ナ性質ノモノニハ、復權致シマセヌ以上
  ハ其資格ヲ與ヘナイコトニ致シテ居ルノデ
  アリマシテ、要スルニ計理士法ト一云フモノ
  ハ御承知ノ通リ、會社其他他人ノ財產ニ立
  入ッテ是等ヲ檢査スル等ノ重要ナル職務ヲ
  持ッテ居ルノデアリマスカラ、破產ヲ致シ
  マシテ、サウシテ尙ホ是ガ復權ヲ受ケテ居
  ナイト云フヤウナ者ハ、ドウモ信用ノ上ニ
  於テ闕如シテ居ル所ノモノガ少クナイノデ
  アリマスカラ、斯樣ナ者ニ斯樣ナ資格ヲ與
  ヘルト云フコトハ穩當デアルマイ、斯樣ナ
  意味デ之ヲ無資格者ノ中ニ入レテ居ルノデ
  アリマス
  〔土屋〓三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=17

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• 018・土屋清三郎

  ○土屋〓三郞君　只今大臣カラノ御答辯ニ
  對シマシテ、私ハ現内閣ノ思想ニ對シテ聊カ
  疑ヲ生ジマシタガ故ニ、改メテ玆ニ御尋ヲ
  致シマス、申上ゲルマデモナク破產者ニ對
  シテ公私ノ權利能力ヲ剝奪スルト云フコト
  破產ニ對シテ懲戒主義ヲ執リ來ッタ所
  ノ羅馬法以來ノ舊思想ニ基ヅクモノデアリ
  マシテ、此思想ニ支配サレテ會テハ我國ノ
  舊商法、破產編モ亦此懲戒主義ニ基イテ立
  法セラレテ居リマシタコトハ申スマデモナ
  イコトデアリマス、併ナガラ近世ニ至リマ
  シテ、破產手續ハ總テノ債權者ノ利益ノ爲
  ニ、債務者ノ一切ノ財產ニ對スル一般强制
  執行デアルト云フ意義カラ致シマシテ、懲
  戒主義ヲ捨テヽ破產ノ爲ニ身分上ノ效果ニ
  影響ヲ及ボサナイト云フコトガ、近代ノ立
  法ノ思想ニナッテ居ルト承ッテ居リマス、現
  ニ獨逸ノ新破產法、又先年公布セラレタル
  所ノ我國ノ破產法モ此主義ノ下ニ立法セ
  ラレマシテ、舊法ニ依シテ破產ノ宣告ヲ受
  ケマシタ者モ、特別ノ法令ニ依ル規定ヲ除
  クノ外ハ、當然是ガ爲ニ身上ノ效果ニ影響ヲ
  及ボサナイコトニナッテ居ルノデアリマス、
  元來破產ナルモノハ今日ニ於テハ社會上避
  クベカラザル所ノ現象デアリマシテ、其原
  因ハ必シモ破產者其者ノ不都合カラバカリ
  デハアリマセヌ、天災地變避クベカラザル
  所ノ災厄、或ハ經濟上ノ急激ナル變化ニ依
  リマシテ、何等其人ニ過失ガ無イニモ拘ラ
  ズ、遂ニ破產スルト云フガ如キ、其事情ニ
  於テハ洵ニ同情スベキ憐ムベキモノガ少ク
  ナイノデアリマス、隨テ之ニ對シテ直接ノ
  效果トシテ其者ノ公私ノ權利能力ヲ剝奪ス
  ルト云フコトハ不當モ亦甚シイト私ハ信
  ズルノデアル、殊ニ今日普通〓育ガ最良ノ
  成績ヲ以テ普及セラレ、恒產無キ者恒心無
  シト云フコトハ今日ニ於テハ言ハレナイ
  ノデアリマス、況ヤ普通選擧ガ布カレタ結
  果トシテ、貧困ニシテ公私ノ救助ヲ受クル
  者ヲ除キマシテハ、等シク國政ニ參與スル
  所ノ資格ヲ得テ居リマスル今日、斯ノ如キ
  舊思想ノ遺物タル懲戒主義ノ立法ト云フモ
  ノハ、斷然之ヲ排斥シナケレバナラヌト考へ
  ルノデアリマス、私ハ此意味ニ於キマシテ
  現ニ本日破產ノ身上效果ニ關スル法律案ヲ
  提出致シマシテ、舊思想ノ遺物タル所ノ、
  懲戒主義ノ下ニ立案セラレタル破產上ノ影
  響ヲ一切抹殺シヤウト考ヘテ居リマスル此
  矢先キ、偶、政府ヨリ之ヲ提出セラレマシタノ
  デ、玆ニ之ヲ質サミルヲ得ナイノデアリマ
  ス、問題ハ唯、一計理士ノ身分ニ關スルモ
  ノヽミデハアリマセヌ、普通選擧ノ思想ト
  全ク相扞格シタル所ノ時代錯誤ノ立法デ
  アルト考ヘルノデアリマス、現內閣ガ眞ニ
  普通選擧ノ主義ヲ理解シ、且ツ之ヲ徹底セ
  ントスルナラバ、須ラク斯ノ知キ箇條ハ之
  ヲ削除シテ然ルベキデアリマス、政府ハ更
  ニ反省サレテ之ヲ削除スル所ノ御意思ガ無
  イカドウカ、改メテ御尋ヲ致スノデアリマ
  ス
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=18

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• 019・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　破產者ハ一般
  ニ社會ノ信用ヲ缺イテ居ルモノデアルコ
  トハ申スマデモナイ事デアリマス、併ナガ
  ラ只今御意見ノ如クニ、破產者ノ中ニハ全
  ク憐ムベキ者、氣ノ毒ノ者ノアルコトハ
  ソレハ相違ナイコトデアリマスケレドモ、
  併ナガラ是等ハ例外ニ屬スベキコトデアル
  ノデアリマス、苟モ計理士法ヲ玆ニ制定致シ
  マシテ、其資格ヲ一定シテ社會ノ信用ヲ一
  層高メントスル時ニ當ッテ、破產者ガ尙ホ
  其資格ヲ有スルト云フコトニ致シマスコト
  ハ如何ナモノデアラウカト云フコトハ、
  是ハ當然起ラナケレバナラヌ所ノモノデア
  リマシテ、政府ハ是ハ資格ノ中カラ除ク方
  ガ穩當デアル、適當デアラウ、斯ウ云フ意
  味デ之ヲ除イタノデアリマス、只今承リマ
  スレバ、全ク一家ノ御意見デアリマシテ、
  傾聽ニ値スルモノデナイ譯デハアリマセヌ
  ケレドモ、政府ガ此法ヲ制定シタノハ、只
  今申上ゲマシタ趣旨ニ依ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=19

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• 020・吉良元夫

  ○吉良元夫君　極メテ簡單デアリマスカラ
  議席ヨリ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=20

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• 021・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=21

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• 022・吉良元夫

  ○吉良元夫君　政府ガ此度御提出ニナリマ
  シタ計理士法案ハ洵ニ明瞭ナモノデアリ
  マシテ、第一條ニ規定セラレテ居リマスル
  通リニ、會計ニ關スル檢査、調査、鑑定、
  證明、計算、整理又ハ立案ヲ爲ス者ヲ稱ス
  ルノデアリマス、然ルニ此計理士ト申シマ
  スル字面ハ、私不肖ニシテ國語、漢文等ニ
  於テ通例ノ場合多ク見マセヌ字デアリマ
  ス、此計理ノ文字ハ陸軍等ニ於テハ、經濟
  ノ經ノ字ヲ書イテアルノデアリマス、又
  般斯ノ如キ場合ニ用ユル文字ハ會計ト稱シ
  テ、之ヲ一般的ニ稱シテ居ルノデアリマ
  ス、凡ソ國法ヲ立テマスルニハ、國民ノ普
  通ノ人ガ一見シテ直ニ明瞭ニ了解シ得ベ
  キ文字ヲ用ユルノガ、國法ヲ立ツルニ當ッテ
  至當ナコトヽ私ハ信ズルノデアリマス、政
  府ハ何故ニ此新字面、卽チ普通ノ場合ニ於
  テ多ク國民ガ見ナイ計理士ト云フ、計算ノ
  計ノ字ヲ書イテ、下ニ理學士ノ理ノ字ヲ書
  イタ計理士ト云フ法案ヲ御出シニナッタノ
  デアルカ、私共ガ考ヘル所ニ依リマスレバ、
  此法案ヲ優美ニ見レバ、經濟ノ經ノ字ヲ書
  イテ、下ニ理ノ字ヲ書イタ方ガ優美ニ見エ
  ル、又率直ニ考ヘル所カラ云ヘバ會計士
  ト云ウテ立派ニ意味ガ通ズルノデアル、極
  ク平凡ナ事デアリマスケレドモ、法律ハ極
  メテ普通ノ人ガ了解スル文字ヲ用ユルノガ
  至當デアルト思ヒマスカラ、此疑點ヲ御尋
  スルノデアリマス
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=22

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• 023・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　吉良君ニ御答
  致シマス、會計士ト云フ職名ガ旣ニ廣ク用
  ヒラレテ居リマス、ソレデ今此法案ニ於テ
  會計士ノ名稱ヲ直ニ採テ稱號ト致シマス
  ト云フト、ソレト衝突スル虞ガアルソレ
  バカリデ御答スルノデハナイ、ソレハ會
  計士ト云フ、唯、名ノ上ニ付テ簡單ニ一言
  致シタニ過ギナイノデアリマスガ、計理ト
  云フ言葉ハ世ノ中ニ用ヒラレテ居ルノデア
  リマシテ、計理ノ意味ハ單ニ計算ト云フ意味
  ト違シテ居リマシテ、會計學ノコトヲ商科
  大學等デハ計理學ト現ニ稱ヘテ居ルヤウナ
  譯デアルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリ
  マシテ、今日新ニ法制ヲ出シマスニ當リマ
  シテ、現ニ世ノ中ニ行ハレテモ居リ、又學
  校等デモ計理學ノ名前ヲ用ヒテ居ルモノモ
  アル、ソレカラ會計士ト云フノハ他ニ世ノ
  中ニ廣ク用ヒラレテ居ルノデアルカラト云
  フコトモ、彼此レ參酌致シマシテ計理士ト
  致スノガ一番適當デアルノデ、斯ウ云フコ
  トニ致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=23

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• 024・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ニテ質疑ヲ終リマ
  シタ、日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベ
  キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=24

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• 025・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=25

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• 026・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　砂田君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=26

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• 027・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第三、
  水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸
  奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社、
  及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲
  公債發行ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キ
  ママ、井上鐵道大臣
  第三水戶鐵道株式會社、越後鐵道株
  式會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧
  輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株
  式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ
  關スル法律案(政府提出)第一讀會
  水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會
  社、陸奥鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
  道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社
  所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル
  法律案
  水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
  陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式
  會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買
  收ノ爲政府ハ該買收ニ必要ナル額ヲ限度
  トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=27

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• 028・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　只今議題
  トナリマシタル法律案ノ說明ヲ致シマス
  水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸
  奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社、
  及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道ハ、鐵道
  ノ繫絡上國ニ買收スル必要ガアリマスルノ
  デ、右買收ノ爲メ公債ヲ發行スル法律案ヲ
  提出致シマシタ次第デアリマス、何レ詳細
  ハ委員會デ說明致シマスガ、何卒御協賛ア
  ランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=28

  ---

• 029・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ質疑ヲ許シマ
  ス大園榮三郞君
  〔大園榮三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=29

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• 030・大園榮三郎

  ○大園榮三郞君　本案ニ付キマシテ二三ノ
  點ニ關シ、政府當局ノ御意見ヲ承リタイト
  思フノデアリマス、第一ハ本五鐵道買收法
  案ト、政府ノ提出セラレテ居ル所ノ鐵道敷
  設法中改正法律案トノ關係ニ付テヾアリマ
  ス政府ハ本案ト前後シテ鐵道敷設法中改
  正法律案ヲ提出セラレマシテ、現ニ本日ノ
  日程ニ揭上サレテ居リマス、卽チ之ニ依ッ
  テ見レバ、政府ハ新ニ六本ノ鐵道線路ヲ選
  擇シテ、之ヲ豫定線ニ繰入レントスル計畫
  デアルノデアリマスガ、此買收鐵道ト只今
  申シマシタル所ノ六本ノ線路ノ中ニハ、密
  接離ルベカラザル關係ガアルト存ズルノデ
  アリマス、例ヘバ越後鐵道株式會社ノ鐵道
  ノ買收ニ付テハ、政府ノ豫定線トセラレン
  トスル所ノ、新潟縣白山カラ新發田ニ至ル
  鐵道ノ如キモノハ、最モ密接ナル關係ヲ有
  スルト信ズルノデアリマス、而シテ是等ノ
  六本ノ鐵道ハ、果シテ今日ニ於テ豫定線ニ
  之ヲ選擇スルノ可否ニ付テハ、隨分議論ノ
  存スル所ガアルデアラウト信ズルノデアリ
  マス、例ヘバ只今ニ於テ新潟ヨリ新發田ヲ
  經由シ村上ニ至リ、酒田、秋田ニ通ズル幹
  線ハ、是ハ裏日本ニ於ケル一大交通ノ根本
  線トナッテ居リマスルガ、政府ハ新ニ信濃
  川ニ長大ナル鐵橋ヲ架ケ、白山ヨリ新發田
  ニ直通スル線路ヲ豫定線ニ入レヤウトシテ
  居ルノデアリマス、昨年ノ議會ニ於テ下諏
  訪鹽尻間ニ、二百三十餘万圓ヲ投ジテ新ニ
  直通線ヲ設ケヤウトシタル政府ノ計畫ニ付
  テハ當衆議院ニ於テ隨分ヤカマシイ問題
  トナッタコトハ諸君ノ御記憶ニ新タデア
  ラウト信ズルノデアリマス、此下諏訪鹽尻
  間ニ比シテ、尙ホ急務トモ認ムベカラザル
  所ノ白山新發田間ノ直通線ヲ、四百六十二
  万圓ノ豫算ヲ以テ之ヲ建設セントスルノ
  果シテ是ガ鐵道現今ノ狀態ニ於テ、急
  施ヲ要スル事柄デアルヤ否ヤ、頗ル疑問卜
  スル所デアリマス、故ニ私ハ第一ニ政府ニ
  伺ヒタイノハ、若シ衆議院ニ於テ鐵道敷設
  法中改正法律案ヲ否決シタル場合ニ於テ、
  尙ホ政府ハ本買收法案ヲ實行セント欲スル
  カ、將又直ニ之ヲ撤回スルノデアルカ、之
  ヲ第一ニ伺ヒタイノデアリマス、第二ニハ
  政府ノ豫定線路中、此建設ニ著手センガ爲
  ニ、別ニ建設費ノ協賛ヲ求メテ居ル線路ガ
  アル、ソレ等ノ線路ト此買收鐵道會社所屬
  ノ鐵道ト、密接ノ關係ヲ有セルモノガアリ
  マス故ニ、議會ニ於テ政府ノ建設線路ヲ不
  急ノ事業ト認メテ、此豫算ヲ削除シタル場
  合ニ於テハ、同ジク政府ハ本買收法案ヲ撤
  囘スベキモノー信ズルノデアリマスルガ、政
  府ハ果シテ之ヲ撤回ナサルヽカ、或ハ又豫
  算ノ運命如何ニ拘ラズ、尙ホ買收ヲ實行セ
  ントスル御考デアルカ、之ヲ第二ニ伺ヒタ
  イノデアリマス、第三ニハ鐵道會計ノ現在
  ノ狀態、政府ノ鐵道公債ニ對スル政策、竝
  ニ本鐵道實收ノ爲ニ交付スベキ所ノ公債ト
  '此三者ノ關係ニ付テ伺ヒタイノデアリ
  マっ、昨年ノ議會ニ於テ、私ハ政府ノ鐵道
  豫算ノ編成ガ頗ル杜撰ナルガ爲ニ、卽チ公
  債ノ額ヲ成ベク少額ナラシメンガ爲ニ、益
  金ヲ過太ニ見積リ、是ガ爲ニ數年ニ亙ル繼
  續事業年度割ノ劈頭ニ於テ、鐵道收入ニ於
  テハ一千六百万圓ノ缺陷ヲ生ジ、隨テ益金
  ニ一千万圓ノ減收ヲ見ルニ至リタル、をつ
  付テノ政府ノ所見ヲ質シマシタ、所ガ時ノ
  鐵相仙石君ハ、十四年度ノ豫算ハ、特ニ他
  ノ年度ニ比シテ滅收ヲ來シテ居ル、是ハ甚
  ダ不思議ナ現象デアルガ、次年度ヨリハ
  的確ニ、世ノ經濟-世間ノ經濟狀態ニ適
  合シ、且又收支ノ計算ノ齟齬セザル所ノ
  豫算ヲ作ルコトニ努力スルト云フコトヲ述
  ベラレタノデアリマス、然ルニ本年度ノ收
  支ノ見込ハ如何デアリマセウ、減收ニ次グ
  ニ減收ヲ以テシテ、現在ニ於テ既ニ收入豫
  算ニ於テ、二千三百万圓ノ缺陷ヲ生ジテ居
  ル益金ニ於テ一千百万圓、若クハ二百万
  圓ノ減收ヲ見ナケレバナラヌコトニナッテ
  居ルノデハアリマセヌカ、且又政府ノ、鐵
  道ノ公債ニ對スル政策トシテハ、成ベク此
  公債額ヲ減少スルト云フコトヲ以テ、現內
  閣ノ方針トセラレテ居ルノデアリマス、然
  ルニモ拘ラズ、今不急ノ鐵道買收ノ爲ニ、
  約二千万圓ノ巨額ノ公債ヲ以テ、是ガ買收
  ヲ實行セントスルノハ、果シテ政府ノ鐵道
  政策ニ付テ矛盾スル所ガナイデアリマセウ
  カ、此點ニ付テ政府ノ所見ヲ伺ヒタイノデ
  アリマス、次ニ去ル五十議會ニ於テ、政府
  ハ鐵道建設ニ對スル在來ノ計畫ヲ變更シ、
  八十有餘ノ線路ニ對シ、大ナル變更ヲ加へ
  タノデアリマス、或モノハ著手期限ヲ延長
  ジ或モノハ竣工期限ヲ繰下ゲ、或モノハ
  又著手竝ニ竣工期限ヲモ繰下ゲテ今日ニ及
  ンデ居ルノデアリマス、故ニ國民ノ要望ス
  ル所ハ、政府ニ於テ公債ノ募集ニ容易ナル
  時、或ハ又他ニ資金ノ融通ノ途ガ付イタ時
  ニハ是等ノ線路ノ著手若クハ竣工ヲ繰上
  ゲラレンコトヲ希望スルノハ、是ハ國民ノ
  當然ノ要求デアル、政府トシテモ亦是等ノ
  線路ニ對シテンレ〓〓適當ナル方法ヲ講ズ
  ルノガ、是亦政治上ノ德義デアルト信ズル
  ノデアリマス、然ルニモ拘ラズ、一面ニ於
  テハ不急ノ事業ノ爲ニ一一千万圓以上ノ公債
  ヲ募集シテ、民間ノ經營スル所ヲ、之ヲ政
  府ノ手ニ移ス何ノ國民ガソレニ對シテ
  痛痒ヲ感ズルデアラウカ、水戶鐵道株式會
  社ガ安田ノ手ニ於テ經營サレテ居クテモ、或
  ハ之ヲ政府ノ手ニ移シテ國民ニ何ノ關係ガ
  アルカ、越後鐵道ガ新潟縣下ノ富豪ノ手ニ
  依シテ經營サレテ居ルモ、之ヲ國有ニ移シテ
  國民ニ何ノ利益ガアルカ、斯ノ如キ無用ノ
  政策ヲ實行セントスルノハ政府ノ方針ト
  シテ斷然誤ヲタモノト見ナケレバナラヌト
  存ズルノデアリマス、最後ニ信濃川ノ發電
  所ノ計畫ニ付テハ、昨日豫算委員會ニ於テ
  ハ或ハ若宮君、或ハ岩切君ヨリ質問ガアソ
  テ、政府ガ之ニ答ヘラレタ所ヲ承知シテ居
  リマスガ、尙ホ此際此議場ニ於テ政府當局
  大臣ノ明確ナル御答辯ヲ得タイト思フノデ
  アリマス、卽チ政府ハ來年度ヨリ五十万圓
  ヲ支出シテ、信濃川ノ發電所ノ建設ニ著手
  セラレル計畫デアリマスルガ、全額ニ於テ
  ハ約八千万圓ヲ要スル大事業デアルト信ズ
  ルノデアリマス、昨今民間ニ於テ或ハ電力
  過剩ノ點ヨリ、或ハ又資本二重投下ノ點ヨ
  リ、或ハ又民業壓迫ノ見地ヨリ反對ノ議論
  ガ囂々タルヲ見テ居リマスガ、政府ハ是等
  ノ民間ノ反對論ニ耳ヲ藉サズシテ、其趣旨
  ヲ實行セラレントスル考デアルヤ否ヤ、以
  上ノ諸點ニ付テ特ニ鐵道大臣ノ明確ナル御
  答辯ヲ煩シタイト思フノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=30

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• 031・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　井上鐵道大臣

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=31

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• 032・工藤鐵男

  ○工藤鐵男君　豫算委員會ヲ開キマスカラ
  ドウゾ委員室ニ御參集ヲ願ヒマス
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=32

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• 033・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　只今ノ大
  園君カラノ御質問ニ御答申上ゲマス、第
  ノ御質問ハ本日提出セントスル所ノ敷設法
  中改正法律案ガ否決セラレマシタ場合、第
  二ノ御質問ハ、政府ハ豫算案ニ提出致シテ
  居リマス所ノ昭和二年度ノ豫算ガ通過セザ
  リシ場合ヲ御想像ニナッテノ御質問デアル
  ノデアリマスガ、先ヅ第一ニ政府ハ鐡道敷
  設法中改正法律案ハ十分ナ理由ヲ持ノテ居
  ルモノト確信シテ居ルノデアリマスルカ
  ラ必ズ通過致シマスコトヽ確信シテ居リ
  マス次第デアリマス(拍手)又建設ニ對スル
  豫算ニ付キマシテモ、確乎タル根據ノ下ニ
  計畫シテ居ルノデアリマスルカラ、是モ必
  ズ當議場ヲ通過スルモノト確信シテ居ルノ
  デアリマス(拍手)隨テ御質問ノ要旨ハ敷設
  法ガ通過致シ、豫算ガ通過致シマシタ場合ニ
  於キマシテハ、當然消滅致シマスモノト考
  ヘルノデアリマスルガ、今假ニ折角ノ御質
  問デアリマスルカラ、斯ノ如キ事ガアリト
  致シマシタ場合ニ於キマシテ、政府ノ所信
  如何ト云フノ御質問デアリマスルカラ、ソ
  レニ付テノ私ノ考ヲ申上ゲテ見タイト考へ
  マス、第一ノ御質問デアリマスル所ノ白山
  新發田間ノ建設線ヲ削除サレマシタ場合ニ
  於キマシテモ、政府ハ尙ホ此越後鐵道ヲ買
  收スルノ意思アリヤ如何ト云フ御質問デア
  ルト考ヘマス、幹線ニ準ズベキ地方鐵道
  ハ鐵道國有法ノ精神ニ基キマシテ、順次
  之ヲ買收シテ國有鐵道ノ統系ノ中ニ編入致
  シマスト云フコトハ是ハ國有鐵道ノ規定
  ノ大方針デアルト考へルノデアリマス拍
  手)羽越線ガ開通致シマシタ以來、裏日本
  ノ交通狀態ハ實ニ其趣ヲ變ヘマシテ、昔日
  ノ比デナイノデアリマスル、殊ニ上越線ノ
  開通ハ目睫ノ間ニ迫ッテ居リマシテ、從來東
  北線、奧羽線、東海道線等ニ依リマシテ、
  關東ト關西トノ間ノ交通ノ潮流ハ其距離ノ
  短縮ニ伴ヒマシテ、順次裏日本ヲ通シテノ
  交通ニ移リツヽアルノデアリマスル、隨テ
  此實情ニ適應シマスル爲ニ、此方面ノ運
  輸狀態ノ改善ニ付キマシテ相當ノ考慮ヲ
  拂フ必要ニ迫ラレテ居ルノデアリマスル、
  此目的ヲ達シマスル爲ニ越後鐵道ヲ買收致
  シマシテ、一ツノ東北カラ西南ニ達シマス
  ル所ノ海岸幹線ヲ完成シマシテ、交通ノ完
  壁ヲ期セント考ヘテ居ルノデアリマス拍
  手)殊ニ越後鐵道ノ買收ハ白山新發田間ノ
  豫定線計上ト共ニ四十四議會以來、殆ド每
  議會ニ於テ請願及建議ヲ可決採擇シテ居ル
  ノデアリマス、政府ハ此院議ヲ尊重致シマ
  シテ、今囘本鐵道ノ買收ヲ致シマスルト共
  ニ、白山新發田線ヲ豫定線ニ追加スル計畫
  ヲ立テマシテ、本議會ニ提出シテ居ル次第
  デアリマス、若シ御質問ノ如ク、白山新發田
  間豫定線ヲ御認メナサラザル場合ニ於キマシ
  テハ政府ハ現在ノ新潟驛ト白山トノ連絡ヲ
  計リマシテ、前ニ述べマシタ如キ運輸ノ改
  善ノ目的ニ副ハント考ヘテ居ルモノデアリ
  マッ、隨テ白山新發田間ノ豫定線ノ追
  加ヲ認メラレザル場合ニ於キマシテモ、越
  後鐵道ノ買收ハ是非實現ノ必要アルモノト
  認メテ居ルノデアリマス(拍手)第二八建
  設線ト只〓ノ買收法案トノ關係デアリマシ
  テ、卽チ北海道ノ苫小牧浦河間ノ敷設ヲ削
  除セラレマシタ場合ニ於キマシテモ、尙ホ
  苫小牧鐵道及日高拓殖鐵道ヲ買收スル意思
  アリヤ否ヤト云フ御質問デアリマス、北海
  道ノ拓殖計畫上ノ必要カラ苫小牧浦河間ノ
  新線建設ニ伴ヘルモノ、卽チ同鐵道ヲ敷設ス
  ル上ニ於キマシテ、苫小牧及日高拓殖鐵道
  ノ買收ヲ必要トスルノデアリマス、故ニ苦
  小牧浦河間ノ鐵道新線ノ敷設ヲ必要トセザ
  ル場合ニ於キマシテハ當然苫小牧日高拓
  殖鐵道ノ買收ノ必要ハナイモノト政府ハ認
  メテ居リマス、第三ノ御質問ハ鐵道豫算
  ト鐵道財政及交付公債ニ付テノ關係デアリ
  マっ、政府ノ鐵道財政ハ最近甚ダ好マシカ
  ラヌ結果ヲ現シテ居ルノデアルガ、此場合
  二千万圓以上ノ交付公債ヲ發行シテ、尙ホ
  斯ノ如キ地方鐵道ノ買收ノ必要アリヤ、甚
  ダ疑ナキヲ得ヌト云フ御質問ノ趣旨ト考へ
  マッ。鐵道經濟ノ最近數年間ノ結果ノ宜シ
  クアリマセヌコトハ、大園君ノ御承知ノ通
  リデアリマス、併ナガラ此買收ニ應ジマ
  ス所ノモノハ、卽チ交付公債デアルノデ
  アリマシテ、此交付公債ヲ發行スルカラ
  ト申シマシテ、此財源ヲ直ニ建設改良ノ方
  ニ振向ケルコトノ不可能デアリマスコト
  私ガ玆ニ申上ゲル必要モナイノデアリ
  マス、又一方ニ於キマシテハ、只今議題ト
  ナッテ居リマス所ノ各地方鐵道ハ相當ノ收
  益ヲ擧ゲテ居ルモノデアリマス、交付公債
  ハ五分ノ利子ヲ以テ發行致シマスモノデア
  リマシテ、此位ノ收益ハ何レモ今囘買收致
  シマスル鐵道ハ上ゲ得ルモノト信ジテ居ル
  ノデアリマス、又此中ノ二三ノモノハ-
  何レ詳シイコトハ委員會デ申述べタイト思
  ヒマスガ、國有鐵道ノ間ニ介在シテ居リマ
  シテ、其國有鐵道ノ一端ハ年々建設濟ニナッ
  テ營業ヲ開始シテ行キマシテ、其時期ガ遲
  レマスルト云フト、益、買收ノ價格ヲ高ク
  スルモノデアリマス、卽チ買收ノ時期ガ遲
  ルヽニ伴ヒマシテ買收ノ價格ハ高クナルト
  云フ性質ノモノデアリマス、又地方鐵道ヲ
  買收致シマスルト云フト、國有鐵道ノ大
  統系ノ中ニ入レテ總テノ營業ヲ統一的ニ
  致スコトニナルノデアリマスカラ、總テ
  ノ機關卽チ車デアリマストカ、機關車デ
  アリマストカ、其他總テノ機關ヲ有效ニ
  利用スルコトガ出來ルヤウニナリマシテ、
  國家ノ見地カラ見マシテモ亦利益デアル
  ノデアリマス、第四ノ御質問デアリマス
  ル所ノ、五十議會ニ於キマシテ繰延ベラ
  レタ數十線ノ線路ヲ、若シ公債ヲ發行スベ
  キ餘裕ガアルナラバ、先ヅ此方ニ振向ケル
  ベキデアルデアラウト云フ御質問デアリマ
  スルガ、是ハ既ニ第三ノ御質問ニ對シテ御
  說明申上ゲマシタ、卽チ今回發行致シマス
  モノハ交付公債デアルノデアリマシテ、此
  交付公債ヲ以テ直ニ建設及改良費ニ振向ケ
  ルコトハ出來ナイ性質ノモノデアリマス、
  第五ノ御質問ノ信濃川水力ハ民間ノ電力過
  剩若クハ資本ノ二重投下、民業ノ壓迫等ヲ
  モ無視シテ政府ハ斷行スルノデアルカト云
  フ御質問デアルノデアリマスルガ、昨日モ
  豫算總會デ申述べマシタ如ク、政府ハ近キ
  將來ニ於キマシテ民間ノ電力過剩ヲ認メテ
  居ラナイノデアリマス、是ハ電力ノ需要供
  給ノ關係ニ於キマシテハ鐵道省ノ所管デハ
  ナイノデアリマスルカラ、當局ニ御質問下
  サル方ガ適當ト考ヘルノデアリマスルガ、
  勿論鐵道省ト致シマシテハ、遞信省卜十分
  交涉ヲ進メマシテ、此過剰デナイト云フコ
  トヲ確メマシテ、鐵道省ガ自ラ經營スル必
  要ヲ認メテ居ルノデアリマス、成程資本ノ
  二重投下デアリマスコトハ、是ハ或ル意味
  ニ於テハサウ云フ御見解モ出來ルコトヽ考
  ヘルノデアリマスルガ、併ナガラ政府ト致
  シマシテ、低廉ナル確實ナル多量ノ電力
  ヲ得ルコトノ見込ノアリマセヌ現在ノ場合
  ニ於キマシテハ、已ムヲ得ズ自ラ此電カヲ
  開發スルヨリ他ニ方法ガナイノデアリマシ
  テ、電力ガ過剰ナラザル理由カラ、決シテ
  今囘ノ鐵道省ノ信濃川水力ノ計畫ハ民業ヲ
  壓迫スルモノトハ政府ハ考ヘテ居ラナイノ
  デアリマス、大體御質問ニ對シテ御答致シ
  マシタ積リデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=33

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• 034・加藤知正

  ○加藤知正君　簡單デアリマスカラ此席上
  カラ質問ヲ御許シヲ願ヒタウゴザイマ
  ス-只今鐵道大臣ノ大園君ニ御各ニナリ
  マシタ第一節ニ付キマシテ、少シク疑問ガア
  リマスカラ御尋ネ申上ゲタイ、ソレハ白山
  カラ柏崎ニ至リマスル間ノ五十哩ニ亙ル越
  後鐵道ヲ買收ナサル御理由ト致シマシテ、
  信越線ハ無論ノコト羽越線ハ既ニ貫通シ、
  軈テハ上越線モ完成スルノデアッテ、交通上
  ノ完璧ヲ期スルニハ、是非共之ヲ國有ニセ
  ナケレバナラヌト云フ御理由デアッタヤウニ
  思ハレマスガ、私共ハ全ク是ト反對ノ考ヲ
  持シテ居ル、詰リ磐越線ナリ、羽越線ナリ、
  土越線ナリガ、全部完成致シマスレバ省
  線トシテハ只今ノ處先ヅ完璧ヲ期シタモノ
  ト云ハネバナラヌ、サレバ今之ヲ强イテ國
  有ニ爲サラズトモ、交通上何等ノ妨ゲハナ
  イノデアリマス、何故ニ是ヲ省線ニ致シ國
  有ニセネバ交通上ノ完全ヲ期スルコトガ
  出來ナイト云ハルヽカ、吾々ハ其理由ヲ解
  スルニ苦シムモノデアリマス、又昨日豫算
  總會ノ席上ニ於テ、岩切君ノ質問ニ對シ
  鐵道大臣ノ御答ニハ、創設當時ノ生產狀態
  ハ數年若クハ十數年後ニハ非常ニ發達ヲス
  ル、生產狀態ガ發達スレバ、之ヲ國有ニス
  ル必要ヲ認メル云々ト云フ御答辯デアッタ
  ノデアリマス、果シテ然ラバ越後鐵道ニ
  屬スル地方ノ生產狀態ハ越後鐵道ガ創設
  セラレタル當時ノ生產狀態ト今日トハ、ド
  レダケノ進歩ヲ發達ヲ致シマシタカ希クハ
  之ヲ數字上ニ於テ御說明ヲ願ヒタイ、御承
  知ノ如ク彼ノ石油鑛業ノ如キ、今日ニ於テ
  以前ノ如キ俤ヲ存シテ居リマセヌ、又農產
  業ノ狀態ヲ見マシテモ、大イシタ變リハ
  ナイノデアル、其他ニ於キマシテモ是レト
  云フ生產上ノ進歩ヲ認ムルコトガ出來ナイ
  ノデアリマス、斯樣ナ生產狀態デアルノニ
  對シテ鐵道大臣ハ越後鐵道創設當時ヨリモ
  今日ノ生產狀態ガ非常ニ進歩致シテ居ルカ
  ラ、之ヲ買收シナケレバナラヌト云ハルル
  ナラバ吾々ニ了解ノ出來ルヤウ之ヲ數字的
  ニ御說明ヲ願ヒタイ、勿論私ハ之ヲ國有ニ
  ナサルコトニ於テ、決シテ反對ヲスル者デ
  ハアリマセン、併ナガラ今日政府ノ財政狀
  態ハ如何デアリマセウカ、去五十一議會ニ
  於テ、本黨ノ諸君ト御公約ニナッテ居リマ
  スル所ノ、彼ノ義務〓育費ノ如キ、吾々ハ
  必ズヤ今期議會ニハ千万圓ヲ計上セラルヽ
  モノト信ジテ居ッタノデアル、然ルニ曷ゾ知
  ラン僅ニ其半額五百万圓シカ御計上ニナッ
  テ居ラヌデハアリマセヌカ、政府當局ノ御
  說明ヲ伺ヒマスト如何ニモ政府ノ財政狀態
  ガ遣繰ノ出來ナイ狀態ニナッテ居ルカラ、已
  ムヲ得ヌト云フコトデアルノデアリマス、本黨ノ
  諸君ト公約ヲ致シタル所ノ義務〓育費サヘ、
  約束通リノ金額ヲ計上スルコトノ出來ナイ
  今日ニ於テ、今俄ニ買ハネバナラヌ必要ニ
  迫テ居ラナイ、此鐵道ヲ、强イテ買收ナサラナ
  ケレバナラヌ理由ガ何處ニ在リマセウカト
  云フコトヲ、伺ヒタイノデアル、而モ之ヲ
  公債政策ニ依シテ、借金政策ニ依シテ之ヲ買
  收スルト云フ所ノ御提案ハ、吾々ガドウシ
  テモ承服ノ出來ナイ點デアル、此點ニ付テ
  ドウゾ吾々國民ノ諒解ノ出來ルヤウナ御說
  明ヲ伺ヒタイノデアリマス
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=34

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• 035・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　加藤君ニ
  御答致シマセウ、羽越、上越、信越等ノ諸
  線ガ開通致シマシテ、交通上ノ完璧ヲ期ス
  ル爲ニ越後鐵道ノ買收ノ必要ナシト云フヤ
  ウナ御考ノ御質問ノヤウデアッタノデアリ
  マスルガ、此越後鐵道ト云フモノハ、申ス
  マデモナク新潟市ヲ中心トシタ鐵道デアル
  ノデアリマス、新潟市ノ現在ノ交通狀態ハ
  信越線カラ新津ニ行キマシテ、更ニ新津カ
  ラ新潟ニ到達シテ居ル、然ルニ柏崎、新津間
  ハ越後ノ最モ雨雪、殊ニ冬季ニ雪ノ害ノ多
  イ所デアリマシテ、此區間ニ於キマシテハ、
  年々雪ノ害ノ爲ニ列車ノ混亂ヲ來シマシ
  テ、系統的ノ運輸ヲ困難ナラシムル狀態ハ、
  御承知ノ通リデアリマスル、或時ニ於キマ
  シテハ、新潟方面トノ交通ガ杜絕スルコト
  マデモアルノデアリマスル(「答辯ニナッテ
  居ナイヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)又新潟港
  ノ狀態ハドウデアルカト申シマスルト云フ
  !、漸次築港モ完成致シマシテ、貨物ノ集
  散モ曾加スル狀態デアリマシテ、又信濃川
  ノ改修モ大體ニ於テ實現サレテ、新潟市ト
  新潟驛トノ連絡モ可能性ヲ帶ビテ來テ居ル
  ノデアリマスル、デ申スマデモナク新潟市
  ハ裏日本ノ最モ重要ナル都市ノ一ツデアリ
  マスルガ、此鐵道ガ日本ノ幹線ノ上ニ橫ハッ
  テ居ラヌト云フコトハ、是ハ鐵道ノ系統上
  カラ非常ナ缺陷デアルト考ヘテ居ルノデア
  リマス、新津新潟間ノ線路ノミデアリマシ
  テハ、十分ナル輸送ノ責任ヲ果スコトガ出
  來マセヌノデ、殊ニ冬季ニ於テ長岡柏崎間、
  若クハ長岡新津間ハ、非常ニ雪害ガ多イノ
  デアリマス、之ニ反シテ現在全通シテ居リ
  マスル所ノ越後鐵道ハ、柏崎ヨリ海岸地方
  ヲ通ジマシテ、冬季ト雖モ雪害ガ殆ド無イ
  地方デアリマス、之ヲ-此完全ナル線路
  ヲ買收シマシテ、國有鐵道トシテ運轉致シマ
  シテ、交通ノ完璧ヲ圖ルト云フコトハ、新
  潟市ヲ中心トシタ交通政策ノ上カラ必要ト
  スル所デアルト考ヘルノデアリマス、又地
  方鐵道ノ買收ノ條件トシテ、生產狀態ガ發
  達スルニ從クテ國有トシテ行クト云フコト
  ヲ、昨日私ガ豫算總會デ申上ゲタガ、此越
  後鐵道ノ生產狀態ハ如何デアルカト云フ御
  質問デアルト承知致シマスルノデアリマス
  ルガ、此新潟市ノ發達セザリシ原因ト云フ
  モノハ、是ハ信濃川ノ改修ガ完全セザリシ
  コトヽ、及新潟港ノ築港ガ完全セザリシコ
  ト等ガ主ナル原因デアッタト考ヘルノデア
  リマス、又陸ノ方面ニ於キマシテハ、此海
  運ヲ直チニ輸送スル所ノ運輸機關ガ不完全
  デアリマシタノデアリマス、デ水ノ方面ニ
  於テハ、最近ニ於テ殆ド信濃川ノ改修及新
  潟港ノ築港ト云フコトモ完成致シマスルト
  同時ニ、陸上ノ之ニ對スル輸送ヲ完全ニス
  ルト云フコトハ必要ナコトデアルノデアリ
  マシテ、之ニ依シテ越後鐵道ノ將來ノ狀態
  ト云フモノハ、益〓改善サレルコト、考へ
  ルノデアリマスル、御話ノ如ク-加藤君
  ノ御話ノ如ク、現在迄ノ狀態ニ於キマシテ、
  必シモ越後鐵道ガ非常ニ最近地方的ノ發達
  ヲシテ居ルト云フコトハ、私モ是ハ決シテ
  衰微シツヽアルトハ考ヘナイノデアリマス
  ルガ、著シク發達シツヽアルトモ私ハ申シ
  マセヌノデアリマス、併ナガラ此越後鐵
  道-地方鐵道ヲ買收シマスル所ノ理由ノ
  一地方ノ產業發達ト云フコトヲ昨日例
  ニ述ベタノデアリマスルガ、必シモソレノ
  ミガ絕對ノ條件デモナイト思ヒマス、地方
  ノ發達ヲ助長スル目的ト云フコトガ、又地
  方鐵道買收ノ大ナル目的ノ一ツデアルト考
  ヘマスル殊ニ新潟市ノ如キ東北ニ於ケル
  有數ナル都市ノ交通機關ヲ完全ニスルト云
  フコトハ、必要ナコトデアルト思フノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=35

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• 036・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　加藤君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=36

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• 037・加藤知正

  ○加藤知正君　吾々新潟縣民ト致シマシテ
  ハ交通上ノ完璧ヲ期シテ戴キマスコトヲ
  深ク感謝スル次第デアリマス、併シ是ガ買
  收ニ關スル、鐵道大臣ノ只今ノ御辯ニ對シ
  テハ、ドウモ感服スルコトガ出來ナイノデア
  リマス、何トナレバ只今雪害ノ御話モゴザ
  イマシタ、事實ハ大ニ之ニ反スル點ノアル
  ノヲ私ハ深ク遺憾ト致シマス、又生產狀態
  ノ如キモ只今大臣ガ御述ニナッタヤウナ有
  様デアル、シテ見ルト御述べニナリマシタ
  理由ト云フモノハ此鐵道ヲドウシテモ買收
  セネバナラヌ理由トシテハ受取レナイノデ
  アル、サレバ之ニハ必ズヤ他ニ重要ナル所
  ノ言フニ言ハレヌ意味深重ノ點ガアッテ、
  其處ニ買收ト云フコトガ生レタノデアラ
  ウ、是ガ卽チ國民-少クトモ我々懸民ニ
  疑惑ノ存スル所デアル、ソレモデス、政府
  ノ財政狀態ニ餘裕ガアッテ買收シテ下サル
  ナラバ、寔ニ有難ク思フト共ニ、越後鐵道
  ノ買收ドコロカ其他ノ鐵道モ買收シ、又新
  タニ何本モ架ケテ戴キタイ、吾々縣民ノ私
  情トシテハ、進ンデ此事ヲ御願ヒ致シタイ
  ノデアリマス、併ナガラ今、此財政狀態窮
  迫ノ場合ニ於テ、今俄ニ買收セナクモ何等
  差支ナイ所ノ鐵道ヲ理由ニナラヌ處ニ强イ
  テ理由ヲ御附ケニナッテ、買收ナサラウト
  スルカラ、玆ニ國民ノ疑惑ガ生ズルノデア
  リマス、然ルニ若シ强イテ之ヲ買收ナサラ
  ウトスルト政府ノ爲ニモナラズ、又憲政會
  ノ爲ニモナラヌト思フ次第デゴザイマスカ
  ラ、此事ハ〓少シク良イ時機ノ到來ヲ御待
  チニナッテ、詰リ政府ノ財政ニ餘裕ノ生ズ
  ル時ヲ待ノテ御買收ヲナサッテハ如何デゴザ
  イマスカ、マダ申上ゲタイコトモゴザイ
  マスケレドモ、此上御尋ヲ致シマシテモ吾
  吾ノ滿足スル答辯ハ得ラレヌト思ヒマスカ
  ラ、是デ私ノ質問ハ打切リト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=37

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• 038・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　次ハ田中讓君
  〔田中讓君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=38

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• 039・田中讓

  ○田中讓君　本案ニ對シマシテ鐵道大臣ノ
  御說明ハ至極簡單デアリマシテ、詳細ハ委
  員會ニ於テ御述ニナルヤウデアリマスル
  ガ、元來鐵道ノ新設トカ、或ハ買收等ハ國
  民ガ非常ニ疑惑ノ眼ヲ仄ッテ居ル問題デア
  リマス、故ニ此機會ニ是等ノ疑感ヲ一掃ス
  ル爲ニ、先ヅ第一ニ是等鐵道ニ對シマシテ
  ハ何レ政府ヨリ補助金ガ出テ居ルコトヽ
  思ヒマスガ、其補助金ヲ差引イテ各會社別
  ニ何程ノ純益金ヲ上ゲテ居ルカ、詳細承リ
  タイノデアリマス、第二ト致シマシテ、右
  買收セラレルニ付キマシテハ、其價額ハ何
  ヲ標準トシテ定メラレルモノデアリマスル
  カ、右ノ鐵道ノ上ニハ全ク利益ヲ上ゲテ居
  ラヌモノモアルヤウニ聞イテ居リマスル
  ガ、民間デハ利益ノナイモノニ對シ投資ス
  ルト云アヤウナコトハ絕對ニ致シマセヌ、
  或ハ利益ノ無イノハ、其會社ニ於テ、經營
  ノ宜シキヲ得ナカッタ結果デアルト考ヘル
  カ知レマセヌガ、鐵道ノ事業ヲ營利ニ汲々
  タル營利會社ガ經營シテサヘ旨ク行カナイ
  モノヲ、政府ガオヤリニナッテ果シテヨリ
  以上ノ成績ヲ上グル事ハドウデアラウカ、
  甚ダ困難ナ事デナカラウカト思フノデアリ
  さっ、要スルニ牧支償ハヌ鐵道ヲ買收サレ
  ルノハ如何ナル理由ニ依ルモノデアルカ、
  之ヲ併セテ承リタイノデアリマス
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=39

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• 040・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　御答致シ
  マス、第一ノ質問ハ買收セントスル鐵道
  ハ如何ナル純益ヲ上ゲツヽアルカト云フ御
  質問ノヤウデアリマシタ、詳シイ數字ハ委
  員會ニ讓リタイト思ヒマスガ(「ドウゾ此處
  デ願ヒマス」ト呼フ者アリ)水戶鐵道ニ付テ
  御話ヲ致シマスルト、十二年下半期六万六
  千四百八十四圓、十三年上半期八万四千三
  百八十八圓、十三年下半期七万七千九圓、
  十四年上半期七万五千三百十六圓、下半期
  七万三千百九十七圓、十五年上半期七万三
  千四百八圓、合計四十四万九千八百二圓、越
  後鐵道ハ前ニ述べマシタ期間ニ於ケル合計
  ノミヲ是カラ御話ヲ致シマス、百五十六万
  六百五十五圓、陸奧鐵道四十五万三百八十
  九圓、苫小牧輕便鐵道百十万四千四百十五
  圓日高拓殖鐵道、是ハ十三年下半期ヨリ
  十五年上半期迄デアリマスガ、二万七千三
  百三圓ト云フ純益ヲ上ゲテ居ルノデアリマ
  ス、買收價額ヲ算定スル標準デアリマス
  ガ、是ハ法律ニ定メテアルノデアリマシテ、
  計算ノ詳シイ事ハ政府委員ヨリ御說明ヲ致
  サセマス、何故斯ノ如キ鐵道ヲ買收スルカ
  ト云フコトニ付キマシテハ、昨日來御述べ
  申シタ理由ニ外ナラヌノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=40

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• 041・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　他ニ御質疑ハアリマ
  セヌカラ次ノ日程ニ移リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=41

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• 042・中野寅吉

  ○中野寅吉君　今ノ問題ニ付テ質疑ガアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=42

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• 043・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　質疑デスカ-中野
  寅吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=43

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• 044・中野寅吉

  ○中野寅吉君　簡單デアリマスカラ此席デ
  鐵道大臣ニ
  〔「登壇」「登壇」ト呼フ者アリ〕
  〔中野寅吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=44

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• 045・中野寅吉

  ○中野寅吉君　私ハ冒頭ニ於テ申上ゲマス
  ガ、政治生活ヲシテ居リマスカラ、常ニ黨
  議ハ重ンジマス、此問題ハ憲政會ノ黨議デ
  決メタノカドウカト云フコトヲ幹部ニ御尋
  シタ所ガ、敢テ黨議ヲ以テ決メタデハナ
  イ、斯ウ云フコトデアルカラ、私ハ自由問
  題ト致シマシテ、玆ニ政府ニ質疑ヲ致シマ
  ス、斯ウ云フ大問題ヲ議場ニ諮ル前ニ、先
  ヅ憲政會ナラバ黨議ヲ以テ決シテ置クト云
  フコトガ當然ダト思フ、然ルニ此問題ニ付
  テ先ヅ聞キタイコトハ-憲政會デアッテ
  モ何モ政府案ニ盲從シナケレバナラヌト云
  フ理窟ハナイ(拍手)政府案ガ正シケレバ政
  府案ニ贊成スルガ、政府案ガ間違ッテ居ル
  ト思ヘバ、質疑ヲスルノハ當リ則デアル、
  又質疑ヲスルト云フコトハ不贊成ノ意味デ
  ハナイ、大臣ノ答辯ノ仕方ニ依シテハ、私
  モ賛成スルカモ知レナイノデアル、贊否何
  レニ決シナイ中ニ餘リ早合點シテ、吾輩ノ
  言論ヲ壓迫スルヤウナコトデアッタナラバ、
  私ハ容赦勘辨相成ラヌト思フ、先ヅ鐵道大
  臣ニ私ハ聞キマス、鐵道大臣ハ-特ニ私
  ハ越後鐵道ニ付テ申上ゲマス、水戶鐵道、
  苦小牧鐵道日高拓殖鐵道ノ買收案、是ハ
  私ハ賛成スル、併シ此越後鐵道ダケハ何ト
  シテモ私ハ質疑ヲセヌ以上ハ賛成出來ナイ
  (「八百長」ト呼フ者アリ)八百長デモ何デモ
  ナイ、鐵道大臣先刻ノ大圜君ノ質疑ニ答ヘ
  ラレタ所ニ依レバ、交通問題ヲ獨リ陸ニノ
  ミ限フテ居ルヤウナ傾ガアル、交通ト云フ
  コトハ獨リ陸ニノミ限ラヌ、陸ト海ト連絡
  シテ行クト云フコトガ最モ必要デアル、日
  本ノ如キ四面環ラスニ海ヲ以テスル國ニ於
  テハ、先ヅ其處ニ著眼シナケレバナラヌ、
  何モ東北及北陸地方ノ人及物ヲ遙々東海道
  線ニ依ラサケレバナラヌ、阪神地方ノ線ニ
  依ラナケレバナラヌ、中國方面ヲ迂廻シナ
  ケレバナラヌト云フ理窟ノモノデハナイ、
  何故ニ新潟縣ノ前面ニ在ル所ノ、アノ大富
  源ノ朝鮮咸鏡北道、咸鏡南道及間島、寧古
  丹、或ハ琿春方面、又ハ三性海林ヨリ哈爾
  賓(「莫斯科」ト呼フ者アリ)莫斯科ナドハ違
  フ、莫斯科ナドハマダ先ノ話デアル、サウ
  云フ下ラヌコトヲ言ハナイデ、モスコーシ
  〓究シテ掛ッタ方ガ宜イデハナイカ(笑聲)
  サウシテ此新潟市ノ開發シナイト云フコト
  ハ、此交通機關特ニ汽車ガ旨ク行カナカッ
  タト云フコトヲ鐵道大臣ガ言ッタガサヴ
  デハナイ、新潟市ノ開發ヲ見ザルノハ、海
  ノ向フヲ見ナイ爲メデアル、現在ノ磐越東
  線西線ニ依シテ、太平洋尾ノ小名濱ヨリ平ヲ
  通リ、サウシテ日本海ノ越後ニ通ッテ居ル、
  一昨年九月ノ二十一日ニ、羽越線全通シテ
  山形、秋田、靑森地方ノ物資ガ新潟ニ皆集
  中スル、又近キ將來ニ於テ村上ヨリ山形ニ
  出デ、山形ヨリ宮城ニ達スル鐵道ニ依シテ、
  宮城縣ノ物資モ此所ニ集中スル、又北陸線
  ニ依シテ富山、石川、福井方面ノ物資ガ來
  テ居ル、長野山梨雨縣ノ物資ハ現在ノ信越
  線ニ依リテ來テ居ル、大正十八年ノ末ニハ
  群馬縣ト新潟縣ノ間ヲ隔テヽ居ル茂倉山フ
  隧道ガ貫通シテ、群馬縣、栃木縣、千葉縣
  茨城縣、埼玉縣及大東京市、神奈川縣等、
  關東一圓ノ大勢力ナルモノガ、日本海ノ側
  ニ顏ヲ出スト云フコトヲ承知シテ、鐵道計
  畫ヲ立テナケレバナラヌト思フノデアル、
  何故ニ之ヲ信濃川ノ西ニ在ル所ノ、越後鐵
  道ヲ買收シ、莫大ナ架橋費ヲ掛ケナケレバ
  交通機關ガ完備セヌト云フヤウナコトハ
  鐵道當局ハ洵ニ考ガ違。テ居ルト私ハ思フ
  ノデアル、卽チ幹線ヲ信濃川ノ西ニ移ス
  !、現在ノ如ク束側ニ置クトカ獨リ新潟ノ
  將來ノ大發展ヲ阻害スルノミナラズ大陸連
  絡上由々シキ關係ガアルノデアリマス、況
  ヤ新潟市ノ發達ハ今日ノ新潟市デハイカナ
  イ、新潟市ノ發達ハ先ヅ沼垂ニ發展シ、ソ
  レカラ龜田、アハ好クバ新津方面ヨリ大陸
  ニ通ズル所ノ呑吐港トシテ、之ヲモット擴
  ゲナケレバナラヌ、然ルニ廣島カラ獲ッテ
  來タ牡蠣程モナイ程ノ小ポケナ白山浦ニ
  持シテ行ッテ、サウシテ、交通機關ノ連絡ヲア
  スコデヤリ、大陸發展ヲスルト云フヤウナ
  コトヲ夢ミテ居ルニ至ッテハ、寧口私ハ鐵
  道當局ノ計畫ノ小サナコトヲ憐レマナケレ
  バナラヌト思フノデアリマス、信濃川ノ難
  工事ナドハ經驗モアラウケレドモ、更ニ阿
  賀川モ難工事、ソノ傍ヲ流レル所ノ小阿賀
  野川ノ難工事ヲ始メ、大小ノ鐵橋ガ何十架
  カルカ分ラナイ新發田カラ新潟市ニ廻ハシ
  タナラバ、萬代橋ノ五百間以上ノ、アノ川
  ノ鐡橋デモ大變デアル、是ハ經濟上カラ云ッ
  テモ又日本帝國ガ更ニ大陸ニ發展スル所ノ
  足掛リノ上カラ云ッテモ、斯ウ云フ鐵道ヲ
  買收シテハ相成ラヌト思フノデアル、之ニ
  對スル正當ナル考ガアレバ承リタイ、ソレ
  カラ新潟ノ港ハ完成シタト仰セラレタガ、
  一寸モ完成シテ居ナイ、昨年中十月十九、二
  +、二十一日ノ三日間土木局長ノ次田氏ガ
  行ッタカラ、私モ其際新潟ニ行ッテ見夕、沼
  垂ノ前ハ水深二十五尺シカナイデハナイ、
  カ、二十五尺デハ五千噸ノ船ヲ入レルニ足
  ラナイ、對岸ノ朝鮮ノ咸鏡北道ノ〓津ナリ、
  又咸鏡北道ノ雄基ナラバ、優ニ少シノ工費
  ヲ加ヘレバ五千噸級ノ船ヲ入レルニ足ル、
  然ルニ對岸ノミ完成シテモ、日本內地ヨリ
  連絡スルアノ新潟ガ寒ッテ居ルナラバ、日本
  ノ食糧問題モ人口問題モ解決スルコトハ
  不可能ト私ハ思フノデアリマス、故ニ先ヅ
  斯ウ云フ私設鐵道ノ買收ニ金ヲ掛ケルヨリ
  モ、宜シク新潟ノ築港ニ大金ヲ掛ケテ、沼
  垂ノ前面ノ二十五尺ヲ更ニ掘下ゲテ二十七
  尺トナシ、且ツ信濃川ヨリ海ニ出ル所ノ十
  六尺ヲ更ニ二十七尺ニ掘下ゲテ、五六千噸
  級ノ船ガ浦鹽斯德ナリ、或ハ雄基ナリ、清
  津ナリ、元山ナリニ自由自在ニ交通シテ有
  リ餘ル所ノ人口ヲ海外ニ移シ、不足セル所
  ノ食糧ヲ先方ヨリ取ッテ來テ、此日本帝國
  ノ太キクナルコトヲ圖ルノガ、政府當局ト
  シテノ責任ト私ハ思フノデアリマス、此港
  ノ經營ノ遣方如何ハ、實ニ我ガ〓糧問題ノ
  解決ト人口問題ノ解決トヲ、容易ニスルカ
  困難ニ陷ラシムルカノ岐レル所ト確信致シ
  さっ、之ニ對スル鐵道當局ノ御說明ヲ承リ
  タイ、私ノ合點ガ行クヤウニ說明ヲシテ吳
  レタナラバ賛成スルケレドモ、若シ合點ノ
  行カヌヤウナ說明ヲシタナラバ、吾輩政府
  與黨ナリト雖モ、唯、一人デモ反對スル決
  心デゴザイマス、重大問題ダカラ愼重ノ御
  考慮ヲ願ヒマス
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=45

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• 046・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　只今中野
  君カラ、中野君ノ大ナル御經綸ニ付テノ御
  話ガアリマシタ、私モ大體ニ於テ政府ノ財
  政ガ許シマスナラバ、ヨリ完全ナル交通機
  關ヲ完備致シタイコトハ、寧口中野君ノ御
  希望ニ劣ル者デハナイト考ヘマスルガ、現
  在ノ政府ノ許シマスル財政計畫ニ於キマシ
  テハ、遺憾ナガラ今囘政府ガ提出致シマシ
  タ程度以上ニ出ルコト能ハザルコトハ甚ダ
  遺憾ニ考ヘル次第デアリマス、新潟港ノ築
  港ハ私完成シタトハ申サナカッタ積リデア
  リマス、略〓完成致シタト申シマシテ、漸
  次貨物ノ集散モ增加シツヽアルト申シタ
  積リデアリマス、新潟港ノ築港ガヨリ完全
  ニナリマスコト、卽チ深水ノヨリ深クナ
  リ、ヨリ大ナル船ガ自由ニ出入スルコトガ
  出來ルヤウニナリマスコトハ、私共中野君
  ト御同感デアリマスルシ、築港ノコトハ申
  スマデモナク鐵道省ノ所管ニ屬セヌコトデ
  アリマスノデ、單ニ玆ニ希望ノミヲ述ベテ
  置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=46

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• 047・中野寅吉

  ○中野寅吉君　今ノ大臣ノ說明ハ私ガ一生
  懸命ニナッテ質問シタノニ對シテ、大演說
  ナドト云フノハ冷ヤカスヤウナモノデア
  ル、私ハ陣笠デハアルケレドモ、日本ヲ思
  フコトハ寧ロ井上君ノ人後ニ落チナイ、私ハ
  眞面目ニ去年モ一昨年モ一昨々年モ、草鞋
  穿キニナッテ、アノ對岸奧地間島、琿春地
  方ヲ視察シ、其內地ノ足溜リハ新潟ニ置カ
  ナケレバナラヌト思ッタ、ソレニハ現在ノ
  新潟市ダケデハ狭イカラ、沼垂ヤ龜田方面
  ニ大擴張ヲシテ、大陸大發展ノ策源地トセ
  ネバナラヌ、斯ウ云フ眞面目ナ演說ニ對シ
  テ、大演說トカ何トカ言ッテ冷評半分ノ答
  辯ヲスルト云フヤウナコトデハ私ハ反對ス
  ル、私ハ豫言致シマセウ、此鐵道ノ中、他ノ
  鐵道ノ買收ハ通過スルカモ知レナイケレド
  モ、大陸發展ノ國策ヲ度外視シタ、此越後
  鐵道買收ダケハ、議院ノ空氣カラ推シテ私
  ハ大多數ヲ以テ否決サレルト云フコトヲ豫
  言致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=47

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• 048・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　尙ホ質疑ノ通告ガア
  リマス、田淵豐吉君
  〔田淵豐吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=48

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• 049・田渕豊吉

  ○田淵豐吉君　私ハ能ク鐵道ノコトハ知ラ
  ナイノデスガ、紀州邊リニモ矢張買收ノ鐵
  道ニ於テ、ソレヲ半分使フトカ使ハヌトカ
  云フ問題ガアル、一體是ハ鐵道大臣ガ知ッテ
  居ルカ、失禮デスガ私ハ極ク有リノ儘一般
  的ノコトヲ聞キタイノデス、私ハ鐵道ノ委
  員會ニ出ラレナイノデスカラ一寸御尋シタ
  ィ、若シ御尋ニ對シテ御答辯ガ出來ナケレ
  バ後デモ宜イ、一ツ文書デモ構ハヌデスカ
  ラ願ヒタイ、二三思付キマシタガ私ハ國有
  鐵道、獨逸ハ元ト全然國有鐵道デナカッタ、
  併シ事實上ハ國有鐵道デアッタ、法律上ハ
  國有鐵道デハナカッタノデアリマス、所ガ
  日本ハ國有鐵道デアッテ、私ハ法規ハ知ラ
  ナイガ、國有鐵道ト私設鐵道トノ關係如何
  ト云フコトヲ聞キタイ、演說スル筈デハナ
  カッタガ、中野君ノ御話デ此私設鐵道ト云
  フモノハ何年カノ後ニハ國有鐵道ニ悉クナ
  ルモノカナラヌモノカト云フコトヲ聞キタ
  1、ソレニ依シテ吾々ノ態度ガ餘程違ッテ來
  ル、詰リ緩急ノ別ガアルカラ、今ソレヨリ
  モ是ガ宜イト云フノカ、ドチラカラ見テモ
  買ハナケレバナラヌノデアッテ唯、前後ノ
  問題デアルカ、其點ヲ明ニ聞キタイ、ソレ
  デドウ云フ風ニ、政府ガ國有鐵道ト私設鐵
  道ノ關係ヲ如何ナル所ニ置イテ居ルカ、新
  聞デ見テ居リマスガ、シッカリ分ラヌ、詰リ
  私設鐵道ヲ成ベク能クヤラシテ、山間ニ架ケ
  テモ「レンターブルデ」デヤッテ、ソレデ相
  當ニ利益ガアルモノデアッタラ取ラウト云フ
  ノカ、サウ云フ風ナ政策ガ分ラヌ、新聞デ
  見テ居ルケレドモ、サウ云フ國有鐵道ノ政
  策ト私設鐵道ノ政策ト、其關係如何ト云フ
  大前提ガ分ラナケレバ、吾々問答ガ出來ナ
  イト思フ唯、緩急輕重ノ區別シカ出來ナ
  ィ、ハッキリ分ラヌ、ソレヲ明ニシテ置キ
  タイ、ソレカラ第二ニハ國有鐵道ノ延長ト
  私設鐵道ノ延長トガドノ位、私設鐵道ノ延
  長ト云フモノガドレ位アルカト云フコトヲ
  聞キタイ、其哩數、ソレカラ買收價格ハド
  ウ云フ標準ニ依ルカ、其時ノ値段ニ依ル
  カ、或ハ造タタノノ段段ニ依ルカト云フヤ
  ウナ標準ヲ明ニシテ貰ヒタイ、ソレデナイ
  ト政黨政派ノ問題ガ起ッテ、鐵道問題デ金
  儲ケヲヤラウトカ何トカシテ、惡イ「レー
  ル」ヲ使ヒ、ガタ汽車ヲ使ッテ成ベク高ク
  買ヲテ貰フト云フ惡イ例ガ出テ來ルト思ヒ
  ママ、斯ウ云フ風ナ弊ヲ正シタイト思ヒマ
  ス、故ニ買收價格ノ標準ハ如何ナル所ニアル
  カ、御聞キシタイト思ヒマス、明ニ此公開
  ノ席上デ言ッテ戴キタイ、ソレデ私ハ中野
  君ノ痛烈ナル所ノ演說ヲ聽イタ、私ハ此問
  題デ喙ヲ容レルノハ失禮カモ知レマセヌ
  ガ、唯一ツノ例デナークシテ、全體ノ日本
  ノ私設鐵道ノ計畫如何、之ヲ如何ニ爲サル
  カト云フ大前提ヲ決メナケレバ此問題ニ這
  入ルコトガ出來ナイ、如何ニモ私ノ考ハ幼
  稚デアルカモ知レヌケレドモ其報告ヲ願ヒ
  タイ
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=49

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• 050・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　田淵君ニ
  御答ヲ致シマス、地方鐵道ハ地方ノ交通ヲ
  目的トシタモノデアルノデアリマシテ、國
  有鐵道ハ帝國ノ主要ナル幹線ノ部分ノ交通
  ヲ主トシタモノデアルノデアリマス、此區
  別ハ甚ダ不明瞭デアリマス、昨日モ申上ゲ
  マシタ如ク、地方鐵道トシテ、地方ノ交通機
  關トシテ免許致シマシタモノモ、其地方ノ
  文化、經濟狀態ノ發達ニ依リマシテ、國有
  鐵道トスル必要ガ起ルノデアリマス、國有
  鐵道ト私設鐵道トノ延長デアリマスルガ、
  大體ノ數字ヲ申上ゲマスト、國有鐵道ハ約
  八千哩、私設鐵道ハ約三千哩デアリマス、
  買收ノ價格ハ地方鐵道法規、法律デ規定シ
  テアリマスノデ、其法律ノ規定ニ依ッテ計
  算スルノデアリマス(田淵豐吉君「ソレヲ
  言ッテ戴キタイ」ト呼フ)ソレハ後デ文書デ
  差上ゲタ方ガ宜イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=50

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• 051・田渕豊吉

  ○田淵豊吉君　一寸一言私ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=51

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• 052・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　一寸御待下サイ-
  尙ホ質問デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=52

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• 053・田渕豊吉

  ○田淵豊吉君　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=53

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• 054・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　田淵豐吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=54

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• 055・田渕豊吉

  ○田淵豐吉君　國有鐵道ガ幹線デアッテ、地
  方鐵道ハ支線デアルト申サレマシタガ、其
  關係ガ私ノ頭ニ分ラヌ、全國ノ國有鐵道ハ
  悉ク帝國ノ政府デヤル、國有鐵道ニ引直ス
  ト云フコトヲ二十年間ノ中ニ考ヘテ居ルノ
  カ、ソレハ百年經ッテモ、千年經ヲテモ、矢
  張地方鐵道ヲ其儘存シテ置クノガドウカ、
  原則ガ國有鐵道デアルカラ、國有鐵道ダケ
  デヤラナケレバナラヌノデアルカ、其法律
  ノ關係、或ハ其政府ノ方針ハドウナッテ居
  ルノカ、地方ノ鐵道、幹線鐵道ト云フモノ
  ハ大抵出來テ居ル、其區別ガ如何ニモ明瞭
  ヲ缺イテ居ル、法律上ノ規定トカ、或ハ鐡
  道省ノ何ハドウ云フコトヲ云フノカ、ハッキ
  リ分ラナイ、其點ヲハッキリ御說明ヲ願ヒ
  タイ
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=55

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• 056・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　地方ノ局
  部ノ交通ヲ目的トシタモノハ地方鐵道ト考
  ヘルノデアリマス、併ナガラ又同時ニ幹線
  ノ榮養線トナルベキヤウナ線ハ是ハ又國
  有トスル必要ガアルノデアリマス、大體サ
  ウ云フコトヨリ御答ガ出來ヌト思ヒマス
  〔田淵豐吉君「モウ一言、モウ一言····」
  ト呼ヒ、其他發言スルモノ多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=56

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• 057・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ニテ質疑ヲ終了致
  シマス、仍テ日程第四、右議案ノ審査ヲ付
  託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=57

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• 058・砂田重政

  ○砂田重政君　委員ノ數ヲ二十七名トシ、
  議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=58

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• 059・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　砂田君ノ動議ニ御異
  議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=59

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• 060・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
  五、第六ハ關聯セル議案デアリマスカラ、
  一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=60

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• 061・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ日程第五、震災手形損失補償公債
  法案、日程第六、震災手形善後處理法案ノ
  第一讀會ヲ開キマス、片岡大藏大臣
  第五震災手形損失補償公債法案政
  府提出)第一讀會
  震災手形損失補償公債法案
  震災手形損失補償公債法
  第一條大正十二年勅令第四百二十四號
  及大正十四年法律第三十五號ニ依ル契
  約ニ基キ政府カ日本銀行ニ對シテ支拂
  フヘキ損失補償金ハ五分利附國債證券
  ヲ以テ之ヲ交付ス
  第二條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
  ル爲一億圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコト
  ヲ得
  第三條前條ノ規定ニ依リ發行スル公債
  ノ交付價額カ一億圓ニ達セサルトキハ
  其ノ差額ヲ補塡スル爲前條ノ制限以外
  ニ公債ヲ發行スルコトヲ得
  第四條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
  交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
  ヲ定ム
  第六震災手形善後處理法案(政府提
  出)第一讀會
  震災手形善後處理法案
  震災手形善後處理法
  第一條本法ニ於テ震災手形ト稱スルハ
  大正十二年勅令第四百二十四號第一項
  第四號ニ該當スル手形ヲ謂フ
  第二條政府ハ昭和二年九月三十日ニ於
  テ日本銀行ヨリ震災手形ノ割引ヲ受ケ
  居ル銀行(以下震災手形所持銀行ト稱
  ス)ニ對シ該震災手形ノ整理ヲ爲サシ
  ムル爲本法ノ定ムル所ニ依リ貸付金ヲ
  爲スコトヲ得
  前項ノ貸付金ハ五分利附國債證劵ヲ以
  テ之ヲ交付ス
  第三條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
  ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發
  行スルコトヲ得但シ其ノ總額ハ震災手
  形損失補償公債法ニ依リ發行スル公債
  ト通シテ二億七百萬圓ヲ超ユルコトヲ
  得ス
  第四條前條竝震災手形損失補償公債法
  第二條及第三條ノ規定ニ依リ發行スル
  公債ノ交付價額カ通シテ二億七百萬圓
  ニ達セサルトキハ其ノ差額ヲ補塡スル
  爲前條ノ制限以外ニ公債ヲ發行スルコ
  トヲ得
  第五條本法ニ依リ公付スル國債證劵ノ
  交付價格ハ時價ヲ參的シテ大藏大臣之
  ヲ定ム
  第六條第二條ノ貸付ハ震災手形所持銀
  行カ其ノ震災手形債務者トノ間ニ其ノ
  手形債務ヲ更改スル爲十年以內ノ年賦
  償還貸付契約ヲ締結シタル場合ニ非
  サレハ之ヲ爲サス
  第七條第二條ノ貸付ノ期限ハ十年以内
  トシ其ノ利率ハ年五分以上トス
  前項ノ外貸付金ニ關シテハ大藏大臣之
  ヲ定ム
  第八條第二條ノ貸付ノ辨濟金ニ相當ス
  ル金額ハ國債整理基金特別會計法第二
  條ノ規定ニ依ル繰入ノ外本法ニ依リ發
  行シタル。公債ノ償還ニ充ツル爲之ヲ一
  般會計ヨリ國債整理基金特別會計ニ繰
  入ルヘシ但シ本法ニ依リ發行シタル公債
  ノ前年度首ニ於ケル未償還額ノ萬分ノ
  百十六ニ相當スル金額ニ付テハ此ノ限
  ニ在ラス
  第九條第二條ノ貸付ニ關スル事務ハ日
  本銀行ヲシテ之ヲ取扱ハシム
  前項ノ事務ノ取扱ニ要スル經費ハ日本
  銀行ノ負擔トス
  第十條震災手形所持銀行ニ對シ第二條
  ノ貸付確定前ニ於テ日本銀行カ昭和二
  年十月一日ヨリ同年十一月三十日迄ノ
  間ニ於ケル滿期日ヲ有スル震災手形ヲ
  割引キタルトキハ該震災手形ニ關シテハ
  大正十四年法律第三十五號ヲ準用ス
  前項ノ規定ニ依ル契約ニ基キ政府カ日
  本銀行ニ對シテ爲スヘキ損失補償ニ關
  シテバ第三條及第四條ノ規定竝震災手
  形損失補償公債法ヲ準用ス
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=61

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• 062・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今議題トナリ
  マシタ震災手形損失補償公債法案及震災手
  形善後處理法案、此二案ニ付キマシテ一括
  シテ御說明ヲ申上ゲマス、大正十二年關東
  地方大震災直後ニ於キマシテ、金融界ハ御
  承知ノ如ク大梗塞ニ際會致シタノデアリマ
  シテ、之ニ對スル非常ノ施設トシテ、大正
  十二年勅令第四百二十四號ヲ以テ、震災手
  形ニ對シ特別ノ融通ヲ爲スノ制度ヲ設ケマ
  シテ、日本銀行ヲシテ時局ノ急ニ應ゼシ
  ノ、幸ニ財界ニ動搖ヲ來スコトヲ防止シ得
  タノデアリマス、而シテ其際政府ハ日本銀
  行ガ是ガ爲ニ多大ノ損失ヲ蒙リ、我ガ中央
  銀行トシテノ地位ヲ危殆ナラシムルガ如キ
  事ナカラシムル爲ニ、震災手形ノ割引ニ依
  リマシテ、日本銀行ガ受クルコトアルベキ
  損失ニ對シ、一億圓ヲ限リ是ガ補償ヲ爲ス
  コトヽナリマシテ、同行ト補償契約ヲ締結
  シタノデアリマス、併ナガラ我ガ財界ノ震
  災ニ因リテ蒙リマシタ損失ノ復舊ハ、洵ニ
  容易ナラヌモノガアルノデアリマシテ、已
  ムヲ得ズ勅令所定ノ融通期限ヲ、大正十四
  年法律第三十五號及大正十五年法律第三十
  三號ヲ以テ、再度延長シ、期限ヲ本年九月
  三十日迄ト致シタノデアリマス、隨テ又日
  本銀行ニ對スル補償ノ契約ヲモ變更シタノ
  デアリマス、然ルニ最近一般財界ノ狀態
  ハ其整理漸ク進捗シ來リマシタガ故ニ、
  益〓此整理ノ趨勢ヲ助長促進セシメ、速ニ
  財界ヲ常道ニ復歸セシメル必要ハ愈、切實
  ヲ加ヘテ參ッタノデアリマス、而シテ此財
  界ノ常道復歸ノ爲ニハ、政府ハ種々ノ方策
  ヲ講ジナケレバナリマセヌガ、右ノ非常施
  設タル震災手形ノ特別融通制度ヲ更ニ延期
  存續サセマシテハ、却テ財界整理ノ進捗ヲ
  妨ゲ、其堅實ナル恢復ヲ期スル所以デナイ
  ト認メマシテ、之ヲ今後ニ於キマシテ繼續
  致サヌコトニ決定シタノデアリマス、其結
  果日本銀行ト契約致シマシタル、補償契約
  ニ基キマシテ、日本銀行ガ震災手形ノ割引
  ニ因リ受ケタル損失ヲ補償スベキ時期ニ近
  ク到達致スノデアリマス、而シテ日本銀行
  ノ損失ニ歸スル金額ハ、今日ニ於テハ之ヲ
  明確ニ致スコトハ出來ナイノデアリマスル
  ガ、政府ガ日本銀行ニ對シテ支拂フベキ損
  失補償金ハ、國債ヲ以テ之ヲ交付スルコト
  ガ財政上妥當ノ處置デアルト考ヘマスルガ
  ラ、玆ニ補償ノ最大限度タル一億圓ヲ限リ
  マシテ、國債ヲ發行交付スル爲メ、震災手
  形損失補償公債法案ヲ提出致シタノデゴザ
  イマス、又此震災手形ニ對スル特別融通ノ
  制度ヲ繼續致サミルコトニ決定致シマスル
  ニ付キマシテハ、愼重ニ其善後方策ヲ講ズ
  ル必要ガアルノデアリマス、蓋シ震災ニ因
  リマシテ一般金融界及多數震災手形ノ債務
  者ガ蒙リマシタ瘡痍ハ頗ル深刻デアリマシ
  テ、昭和元年十二月末ノ現在、卽チ震災後
  三年四箇月ヲ經過シマシタ時ニ於キマシ
  テ、日本銀行ノ割引シマシタ震災手形ノ決
  濟セラレズニ殘ッテ居ル金高ハ、約二億七百
  万圓ノ巨額ヲ算スルト云フ狀況ニ在ルノデ
  アリマスカラ、機宜ニ適ヘル善後處理ノ方
  策ヲ講ゼズシテ、單純ニ此非常施設ノ廢止
  ヲ敢行致シマシテハ、財界ニ重大ナル影響
  ヲ與ヘルコトヽナルノデアリマス、斯樣ノ
  次第デアリマスルカラ、其善後處置ヲ講ズル
  ガ爲ニ、玆ニ震災手形善後處理法案ヲ提出
  致シタノデアリマス、次ニ本案ノ要領ヲ簡
  單ニ說明ヲ致シマスレバ、回收不能ニ陷リ
  マシテ日本銀行ノ損失ニ歸スル震災手形ニ
  付キマシテハ前ニ說明致シマシタ震災手
  形損失補償公債法ニ依リマシテ、政府ガ補
  償スル爲メ公債ヲ發行交付スルノデアリ
  マスルガ、囘收不能ト決定セズ從テ日本
  銀行ノ損失ニ歸セナカッタ震災手形ニ付キ
  マシテハ之ヲ日本銀行ヨリ割引ヲ受ケテ
  居ル銀行ニ對シマシテ、政府ハ震災手形ノ
  額ト同金額以内ニ於キマシテ、卽チ震災手
  形損失補償公債ト通ジマシテ二億七百万圓
  ノ範圍內ニ於テ、十箇年以内ニ於テ此公債
  ヲ發行交付シテ貸付金ヲ爲スノデアリマス
  カラ、銀行ハ震災手形ノ代リニ此公債ニ依
  リマシテ、日本銀行ヨリ金融上ノ便宜ヲ受
  ケ得ルノデアリマス、又震災手形ノ債務者
  ハ銀行トノ間ニ手形債務ヲ更改スル爲メ、
  十箇年以內ノ年賦償還貸付契約ヲ締結シマ
  シテ、支拂能力ヲ恢復スル機會ヲ與ヘラル
  ルコトヽ相成リマシテ、震災手形ノ整理ヲ
  致スコトガ出來ルノデアリマス、次ニ日本
  銀行ハ政府トノ補償契約アルガ爲ニ、初メテ割
  引クコトガ出來ルヤウナ異例ノ手形ノ割引
  ヲスルコトガ無クナリマシテ、今後ハ
  國債ヲ擔保トシテ手形ノ割引ヲスルト云フ
  常軌ニ復スルコトニナルノデアリマス、更
  ニ政府ハ未決濟ノ震災手形中、本年九月三
  十日ニ於テ回收不能ニ陷リ、日本銀行ノ損
  失ニ歸スルモノアリト認メラルヽモノ
  前述ノ通リニ補償致シマシテ、其以外
  ノ比較的宜シイ手形ニ付キマシテハ、愼重
  ニ調査シテ適當ノ條件ヲ以テ銀行ニ對シ貸
  付ケルノデアリマスカラ、今後十年間ニ於
  テ其貸付金ノ囘收ハ圓滿ニ行ハレ、國庫ニ
  負擔ヲ負ハシムルコトハ無イト信ジマス、
  又貸付ノ爲ニ國債ヲ發行交付スルノデアリ
  マスガ、國債利子ノ負擔ハ貸付金ノ利子ノ
  收入ニ依リマシテ完全ニ補塡スルコトヲ得
  ル筈デアリマス、尙ホ最後ニ一言致シマス
  ガ、此國債發行ニ依リマシテ一時ナガラ
  モ、震災手形損失補償公債ト通ジテ二億七
  百万圓ノ範圍內ニ於テ、公債發行額ノ曾加
  ヲ生ズルノデアリマスケレドモ、漸次貸付
  金ノ辨濟ガアルニ伴レマシテ、之ヲ國債整
  理基金ニ繰入レマシテ、本法ニ依リ發行シ
  タル公債ノ減額ヲ圖ルコトヲ工夫致シタ次
  第デアリマス、震災手形ニ對シテ斯ノ如キ
  善後處理ノ方策ヲ講ジマスルコトハ、現下
  財界ノ狀勢ニ鑑ミ、最モ機宜ニ適ヘル處置
  デアリマシテ、多年懸案トナッテ居リマス
  ル所ノ、所謂財界ノ癌ト稱セラルヽ震災手
  形ノ整理問題ヲ解決スル最上ノ方法デアル
  ト信ズルノデアリマス、以上兩法案ニ付キ
  何卒愼重御審議ノ上、御協賛アランコトヲ
  希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=62

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• 063・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　是ヨリ質疑ヲ許シマ
  ス、星島二郞君
  〔星島二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=63

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• 064・星島二郎

  ○星島二郞君　私ハ本案ノ提出ノ精神ニ對
  シマシテハ、未曾有ノ大震災ノ直後ノ經濟
  界ヲ處理スルニ付キマシテ、適當ナモノト
  思フノデアリマスガ故ニ、濫ニ所謂條規ニ
  拘泥シテ小サイ事ハ問ハナイ積リデアリマ
  ス、唯、本案ハ本期議會ニ於ケル經濟上或
  ハ社會思想上ニ及ボス重大ナル案件デアリ
  マスルカラ、不審ト思フ二三ノ點ニ付キマ
  シテ御尋ヲ申シテ見タイト思フノデアリマ
  ス、震災手形損失補償法ハ先程大藏大臣ノ
  御說明ノ如ク、震災直後ニ於ケル一時ノ方
  便ト致シマシテ、當時ノ井上大藏大臣ガ思
  切ッテ、卽ヲ一億圓ヲ率ト云フ場合ニハ日
  本銀行ノ損害ヲ補償シヤウト、斯ウ云フ法
  律デアリマシテ、當時多クノ人ハ之ヲ洵ニ
  名案トシテ歡迎致シタノデアリマシタ、併
  シ後デ考ヘテ見ルト隨分俄ニ出來タモノデ
  アリマスルカラ、多クノ不審ノ點ガ起ルノ
  デアリマスガ、之ヲ今囘此補償法ニ依リマ
  シテ解決シヤウト云フ、此點ニ付キマシテ
  ハ私ハ大シタ疑義ハ持ッテ居ラナイノデ
  アリマス、唯〓共ニ出マシタ此震災手形善
  後處理法、是ハドウ云フ數字デ、又其內面
  ニ一體ドウ云フ精神ガ含マレテ居ルカ、之ニ
  付キマシテハ可ナリ私ハ疑義ヲ持ノテ居ル
  ノデアリマス、只今大臣ノ說明ニ依リマス
  レバ、現在日本銀行ノ有スル所謂「スタン
  プ」手形ト云フモノハ二億七百万圓デアル
  ト斯ウ申サレマシタガ、私ハ改メテ實際今
  日日本銀行ガ有スル總震災手形ノ債權ハ、果
  シテ二億七百万圓限リデアルカ、之ヲモウ
  一度ハッキリ御說明ヲ願ヒタイト思フノデ
  アリマス、而モ若シ出來ルナラバ其內容ガ
  各銀行ノ信用ニ-公表スルコトニ依リマ
  シテ、御差支アレバ或ハ祕密文書デモ宜シ
  ウアリマスガ、御互ガ之ヲ審議スルニ取リ
  マシテ一體何銀行ガ如何程債務ヲ有シテ居
  ルカ、或ハ其中デモ特殊ナ銀行ガ殊ニ大キ
  ナ數字ヲ持シテ居ルト一ムフコトヲ承ッテ居
  ルノデアリマスガ、或ハ一千万圓以上ヲ有
  スルヤウナ銀行ハ何々銀行デアルカト云フ
  コトヲ、參考トシテ承シテ置キタイト思フ
  ノデアリマス、ドウシテサウ云フコトヲ御
  尋スルカト申シマスレバ、苟モ經濟界ヲ平
  和ナラシムルニハ、勿論特殊ナ手段モ必要デ
  アリマセウガ、今日ノ時勢少クトモ政府ガ常
  ニ唱ヘラルヽ社會政策、或ハ今日御互ガ最
  モ危險ヲ感ズル政府ガ極端ニ恐レラレル危
  險思想、斯ウ云フ思想ハドウ云フ方面ニ胚
  胎スルカト云ヘバ、特殊ナル資本家ヲ擁護
  シテ、一般民衆ヲ擁護シナイ所カラ起ルト
  思ヒマス、私ハ其數字ニ依リマシテハ篤ト
  御互ニ考慮シナケレバナラヌト思フノデア
  リマス、噂ニ聞キマスレバ、某々特殊銀行
  ヲ救濟スル爲ニ震災手形ノ美名ヲ藉リガ、
  大穴ノアル長イ間ノ懸案デアッタ、震災
  ガナクテモ既ニ整理ヲ要スベキ銀行、或
  ハ其銀行ヲ背景トシタル某々一一三ノ銀行
  ノ整理ヲヤルド云フコトハ、卽チ震災ノ美
  名ヲ藉リテ之ヲヤルモノデアリマスカラ、
  吾々洵ニ不審ニ堪ヘナイ、私共ハドウセ傷
  ガアル銀行デアルナラバ徹底的ニヤリタイ
  ト思フ、何モ震災ト云フ名ヲ藉リナイデ、
  特殊銀行整理法案デモ出サレタナラバ、誠心
  誠意協賛スルノデアリマス、唯〓震災ノ名
  前ヲ藉リマシテ、バラット之ヲ胡麻化シテ
  行クト云フコトハ、政治ノ公明ヲ唱ヘル現
  內閣ノ仕振トモ見エナイノデアリマス、次
  ニ私ハ今回ノ所謂整理法案ト云ヒマスカ、
  其内面的背景ガ所謂大資本家ノ擁護トナ
  リ、特殊銀行ノ擁護トナッテ、一般罹災者
  タル庶民階級ニハ洵ニ緣遠イモノデアリマ
  ス、其點ニ付キマシテ政府ハ特ニ他ニ何カ
  御考慮ガアルヤ否ヤ、ソレニ付キマシテハ
  別ニ方法ヲ講ジテ居ル、卽チ直接罹災シテ
  居ル者ニ對シテハ今日尙ホ政府ガ多年奬勵
  ヲサレ、指導ヲサレ、低利資金ヲ貸付ケテ
  以テ之ヲ督勵サレテ居リマスル所謂產業組
  合、信用組合、是ハ未ダ創立早々極メテ〓
  微タルモノデアリマシテ、罹災者ノ數、金
  額ハ小サイケレドモ、銀行モ利用シナイヤ
  ウナ小サイモノデアリマス、斯ウ云フモノハ
  全然今日マデ大藏省ハ抛ッテ置イテ、サウ
  シテ數字ノ大キイ、多ク資本家階級、特權
  階級ノ銀行ニ關係アルモノヽミヲ此樣ナ非
  常ニ負擔ノ掛ルモノヲ設ケラレテ俄ニ解決
  シヤウ、私ハ大藏當局ニ此市街地信用組合、
  斯ウ云フモノヲ奬勵シツヽアリナガラ、尙
  ホ今日何等方法ヲ講ゼナイト云フコトハ、
  卽チ政府當局ノ腹ノ中ニ庶民階級ヲ認メナ
  イト云フ精神ガアル、私ハ是ヨリ所謂危險
  ナル思想ハナイト思フノデアリマス、聞十一
  思想ハ不平ヲ持ツト云フコトデアル、此點ニ
  付キマシテ政府ノ御所見ヲ承リタイ、一旦一
  斯ウ云フ案ヲ出サレタ以上ニハ、斯ウ云フ
  方面モ〓究シテ欲シイ、之ヲドウシテ吳レ
  ト云フヤウナコトハ色こアルト思ヒマス
  ガ、殊ニ保險會社ハドウナサル御積リデア
  ルカ、アノ當時ニ半分ハ貰ヘル、或ハ一割
  ハ貰ヘル、到頭當局ノ御調停ニ依リマシテ
  五分ヲ貰シテ、サウシテ保險會社ハ八千万圓
  ト云フ資金ヲ政府カラ借リテ居ルノデアリ
  マスガ、銀行ノミ一億圓位只デ遣ル、保險
  會社ハドウシテ吳レルカト云フ聲ガ必ズ起ッ
  テ來ルト思ヒマス、政府ハ斯ウ云フ方面
  ニ對シテドウ云フ御所見ガアルカ(拍手)尙
  ホ〓囘此法案ニ關聯シタ事ニ付キマシテ新
  聞紙ニ揭載スレバ、政府ハ之ヲ揭載禁止ス
  ルト云フコトデアリマス、或ハ直接此案ノ
  批評、內容ニ觸レタト云フコトデナクトモ、
  之ニ關聯シテ何カ某商店ガ殊更ニ特殊銀行
  カラ借リテ居ルト云フヤウナコトヲ書ケ
  バ直ニ禁止サレルト云フヤウナコトガア
  ルト云フコトヲ聞イタノデアリマスガ、サ
  ウ云フ事ガアレバアル程、私共實ニ不審ニ
  思フノデアリマス、詳シク案ノ內容ヲ徹底
  的ニ調ベナケレバナラヌ必要ガ起シテ來ル
  ノデアリマス、最後ニ私ハ今一ツ一寸此問
  題ニハ少シ緣遠イノデアリマスルカラ、私
  ガ斯ウ考付キマシタ一ツノ思付キデ、此機
  會ニ政府ニ御尋シテ見タイト思フノデアリ
  マスルガ、ソレハ先般來新聞ニモチヨコチ
  ヨコ見エテ居リマスル一圓紙幣ノ發行換、
  ソレデ相當所謂燒ケタリ廢レタリシマシテ
  利益ガ擧ルト云フコトデアリマス、尙ホ日
  本銀行ノ報告ヲ見マスト、多年使ッテ居リマ
  シタ小額紙幣ノ-モウ今日ハ發行ガ止ン
  デ居リマスルガ、アレデモ二千四百万圓以
  上モ換ヘニ來ナイ人ガアルト云フ數字ガ現
  レテ居ルノデアリマスガ、政府ハ進ンデ一
  圓紙幣或ハ小額紙幣ノ整理ノミナラズ、震
  災デ澤山ノ紙幣ガ燒ケタ、或ハ長イ間日
  本銀行兌換劵ガ流通シテ居リマス爲ニ、
  或ハ無クシタリ燒ケタリシマシテ、隨分私
  ハ想像モ付キマセヌガ、小額紙幣ハアノ僅
  ノ年限ノ間ニ大シタ數字デナイ流通デ、是
  ハ今日二千万圓以上モ、モウ換ヘニ來ナイ
  人ガアルコトニナリマスレバ、日本銀行始
  マッテ以來、兌換劵ノ流通ニ依リマシテ必
  ラズ數字上、或ハ一億圓位ノ私ハ此實際今
  日流通紙幣トシマシテ數ヘラレテアルケレ
  ドモ、本當ハサウ云フモノガ無クナッテ居
  ルモノガアルノデハナイカ、是ハ日本銀行
  株主ノ一體利益ニナルノデアルカ、政府ハ
  特別ノ法案デモ出サレテ、之ヲ國庫ノ收入
  トサレル意思ガ有ルカ無イカ、勿論私ハ日
  本銀行ハ默。ツテ是ダケノモノハ自分ノ所有
  ニ歸スルト云フコトハシナイト思ヒマス
  ガ、政府ハ此際或ハ小額紙幣ノ所謂利益
  金或ハ一圓紙幣ノ發行外ニ生ズル利益、
  或ハ進ンデ日本銀行法ヲ改正サレマシテ、
  此紙幣全體ヲ整理サレマシテ、若シ一億
  圓位デモ得マスレバ、ソレモ何時カ多分加
  藤友三郞內閣ノ時カト思ヒマスガ、銀貨改
  鑄益金ニ依リマシテ先ヅ事業ヲ大ニヤル、
  或ハ其金ノ一部分ガ〓育ノ方面ニ使ハレマ
  シタ事デアリマスガ、サウ云フ法案ヲ出サ
  レマシテ、徹底的ニ整理サレマシテ、若シ
  一億圓位出レバ、其出タ金デ斯ウ云フモノ
  ヲ整理サレルコトハ如何ニモ自然デアル、
  サウ云フ御意思ハアルカナイカ、既ニ〓究
  サレテ居ルカドウカ、或ハサウデナクト
  モ、燒ケタリ廢タレタリシタ金ナラバ、ン
  レヲ以テ大ニ社會事業ヲ振興スルト云フヤ
  ウナ御意見ハナイカ、其點モ丁度好イ機會
  デアリマスカラ併セテ御答辯ヲ得タイト思
  フノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=64

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• 065・粕谷義三

  ○議長(粕谷義三君)　片岡大藏大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=65

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• 066・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今星島君ノ御
  質疑ハ洵ニ御尤ト存ジマス、之ニ御答ヲ申
  上ゲマスガ、此銀行ノ數、手形ノ持主ト云
  フヤウナ風ノコトマデ申上ゲルコトガ、御
  理解下サルニハ極メテ㨗イ道デアリマス、
  併ナガラ此經濟界ノ實狀ハ御承知下サル通
  リ、機微ノ間ニ可ナリ衝動ヲ與ヘルモノデ
  アリマシテ、今此內容ヲ公開ノ席デ申上ゲ
  ルト云フコトハ、是ハ遠慮スベキコトヽ思
  ヒマス、又割引手形ノ發行ノ今殘ンテ居リ
  マス二億七百万圓ニ對スル割引ノ件數ハ、
  約三千四百位ナモノデアリマスガ、ソレナ
  ラ唯、三千四百人ダケト見テ宜シイカト申
  シマスト、斯カル場合ノ手形ニハ御承知ノ
  通リ保證トカ裏書トカ云フモノガ必ス、三四
  人ハサレテ居ル筈ノモノデアリマス、ソレ
  故ニ手形每ニ調ベマセヌケレバ、確ナ數ハ
  申上兼ネマスケレドモ、約一万前後ノ關係
  數デアラウト存ジマス、今星島君ハ資本家
  ノ爲ニ極メテ力ヲ盡スト斯ウ仰セラレタノ
  デアリマスガ、銀行ノ如キハ資本家ガ資本
  ヲ卸シテ設立シテ居ルモノニ相違ゴザイマ
  セヌガ、併ナガラ其銀行ニ多クノ預金ヲ提
  供シテ居ッテ、若シ其銀行ガ破綻ニ陷ルト
  云フガ如キ事ガアレバ、玆ニ非常ナ庶民階
  級ノ人ミニ迷惑ヲ與ヘテ居ルコトハ御承知
  ノ通リデアリマス(拍手)是等ニ關係ガ無イ
  ト仰セラレルト云フコトナラバ、財界ノ實
  狀ガマダ少々御分リニナッテ居ラヌノデア
  リマス、是ハ御分リニナラナケレバ御協賛
  モ出來ヌコトト存ジマスルカラ、成ベク此
  委員會ニ於キマシテ、何等カノ方法ニ依》
  テ人ノ名譽ヲ害セズ、サウシテ直接ニ影響ヲ
  與フルコトナクシテ、成程已ムヲ得ザルモ
  ノナリト云フ御諒解ヲ得ルヤウニ努メテ見
  タイト思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手
  起リ又「不公明、此際公明ニ明瞭ニ大藏大
  臣發表スベシ」「モウ明瞭此上モナイ」ト呼
  フ者アリ)是ハ最初ニモ申上ゲマシタ如ク、
  銀行名ヲ舉ゲ、手形ヲ發行シテ居ル者、保證
  人ノ名前等ヲズット表ニ作ッテ差出シマスレ
  バ是程ソレニ對スル明カナモノハナイノ
  デアリマス、併ナガラソレハ其人ノ信用ニ
  關シ、其事柄ガ却テ世人ノ不安ヲ惹起スト
  云フコトニナリマシテハ相成ラヌノデアリ
  マス(「ヒヤ〓〓其通リ」ト呼フ者アリ)而シ
  テ其手形ノ所有者ノミガ此財界ノ整理ニ關
  スルカト申シマスルト、是ガ整理シナケレ
  其波動ノ及ブ所ノ範圍ハ私ハ極メテ廣
  イト思フ(拍手)實ニ此間題ハ私ハ當局者ト
  シテ可ナリ頭ヲ痛メテ居ル問題デアリマ
  ス、決シテ諸君ノ言ハルヽガ如ク一部ノ資
  本家ヲ救濟スルガ爲ニ、斯樣ナ事ヲ爲スト
  云フガ如キモノデハナイノデアリマス(拍
  手)或ハ其結果トシテ資本家モ自然助カル
  ト云フ影響ハ受クルノデアリマセウ、是ハ
  自然ノ事デアッテ、又嘉スベキコトデアラ
  ウト思ヒマス(拍手)若シ之ヲヤレバ保險會
  社ハドウスルカト云フコトモ一ツノ御質疑
  デアリマス、成程震災當時ニ於テ保險會社
  ノ保險金-火災保險會社ノ保險金支拂ニ
  付テ問題ニナリマシタコトハ、今此處デ申
  上ゲル必要モナイト存ジマス、其結果トシ
  テ政府ガ金ヲ貸シテ、サウシテ保險會社ハ
  其保險金ノ幾分カヲ被保險者ニ吳レタ、ソ
  レヲ以テ其問題ハ解決シタノデアリマス、
  當時ノ此遣方ガ善イカ惡イカト云ヘバ、是
  ハ私ハ議論ノ餘地ガアルト存ジマスガ、是
  ハ〓更論ジテモ仕方ガナイ、兎ニ角左樣ニ
  シテ其當時ノ問題ハ解決シタノデアリマ
  ス、而モ是ハ保險會社ト政府、又被保險者
  相對的ノ間ニ於テ相談ガ熟シテ、ソレニ
  決ッタモノデアリマシテ、今其決ッタコトニ
  對シテ各保險會社ハ履行シツヽアル所デア
  リマシテ、其履行ニ差支ガ起ッタ時ニハド
  ウスルカト云フガ如キコトニナリマスレ
  バ、又、問題トナリマセウガ、此問題ト此震
  災手形ノ處理法案トハ同一ノモノトハ見ラ
  レヌノデアリマス、ソレカラ此震災手形ノ
  コトニ關シテ新聞紙ニ書ケバ、之ヲ禁止ス
  ルヤウナコトヲスルサウダガト云フコトデア
  リマスガ、是ハ私ハ一向存ジナイ事柄デア
  リマス、ソレハ恐ラク昨年ノ暮ニ於テ臺灣
  銀行ノコトヲ記載致シテ、財界ニ多少ノ動
  搖ヲ與ヘルト云フガ如キ虞ヲ抱イタコトガ
  アルト思ヒマス、之ヲ內務省ニ於テ安寧ヲ
  維持スル爲ニ、其記事ヲ止メタト云フ如キ
  コトガアルト承ッテ居リマス、併ナガラ此震
  災手形ト云フモノニ關シテ、私ハ左樣ナコ
  トヲ警視廳ニモ內務省ニモ請求シタ覺モナ
  ケレバ、又其必要ハ更ニナイ、段々書イテ
  居ルノデアリマス、此自由ヲ抑ヘルト云フ
  コトナドハ少シモ必要ハナイト思ッテ居リ
  さっ、次ニ一圓紙幣ノ整理ヲスル考ハナイ
  カ、延イテ一般ノ貨幣ノ整理ヲスル考ハナ
  イカ、或ハ此考ガアリトセバ多少ノ滅失シ
  タモノガアルニ違ヒナイガ、ソレ等ヲ以テ
  是等ノ金ニ當テルト一ムフコトハ、少シモ考
  慮シテ居ラヌカト云フ御尋デアリマス、如
  何ニモ御說ノ通リ我國ノ貨幣制度ハ古キ時
  代ヨリ其儘ニ繼續シテ來テ、今日ニ至ッテ
  居ルノデアリマス、殊ニ東京初メ外數縣
  ニ亙ッタアノ震災火災ニ際シマシテハ、大キ
  ナ金ハ或ハ滅失シタモノハ少イカモ知レマ
  セヌガ、小紙幣ニハ可ナリ多カラウト思ッ
  テ居リマス、又大キナ部分ニモ必ズアルト
  思シテ居リマス、併シ〓玆ニ御述ニナリマシ
  タヤウニ、果シテ一億圓アリヤ否ヤト云フ
  コトノ斷定ハ付キマセヌ、併シ多少アルニ
  相違ナイト考ヘマス、ソレ故ニ近日金融調
  査委員會ノ決議ヲ得マシタナラバ、此議會
  ニ貨幣整理ノ法律案ヲ提出スル積リデアリ
  マく、其結果トシテ多少日本銀行ノ帳面ニ
  存シ、市場ニ流通シテ居ルモノト認メラレ
  テ、流通シテ居ラザルモノガ現ハレテ來ル
  ト思ヒマス、其金ハ斯ル、公債ノ一億圓ノ
  補償ヲシタト云フガ如キモノニ對シテ、之
  ヲ減債基金ニ繰入レルト云フガ如キコトハ、
  一ツノ方法デアラウト存ジテ居リマス、恐
  ラク此事柄ハ國民一般モ同一ノ考ヲ持クテ
  居ラレルト存ジマスカラ、委員會ニ於テモ
  サウ審議ニ暇取ルモノトハ考ヘテ居リマセ
  ヌ、唯、少シク玆ニ問題トナリマスルノハ、
  一圓紙幣ト云フモノハ是ハ金貨ヲ以テ交換
  スルモノニナッテ居ラヌ、一寸我國ノ貨幣
  制度ノ上カラ申シマスト頗ル不完全ナモノ
  ニ在ルノデアリマス、ソレデ今之ヲ新ニ一
  ツ手法ヲ變ヘマシテ、此準備ヲ置クコトニ
  付テ銀準備ニスルカ、或ハ金準備ニスルカ
  ト云フコトニ付テ、多少學者間ニモ議論ガ
  アル事柄デアリマスガ、此議論ノ外ニ恐ラ
  ク實質ニ於テハ議論ガナイト存ジマスカ
  ラ、成ベク此議會ニ速ニ提出シテ御協賛ヲ
  仰ギタイト考ヘテ居リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=66

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• 067・星島二郎

  ○屋島二郞君　今一點重要ナ點ヲ御答辯ヲ
  御忘レニナリマシタカラ、重ネテ御尋致シ
  マス、私ハ銀行ノ救濟ハ決シテ惡イトハ思
  ハマ、一般預金者ニ迷惑ヲ及ボスコトデア
  ルカラ、出來ルダケ救濟セラレタイノデア
  リマスガ、唯〓本案ノ內容ニ於テ如何ニモ庶
  民階級ヲ重ンジナイデ、唯ヘ特殊ナ主ナル
  人ヲ救フガ如ク見エハシナイカト思フノデ
  アル、其一例トシテ例ヘバ大藏省ノ所管ニ
  屬スルモノカ、或ハ農林省ト共同ノ所管ニ
  ナッテ居ルカ知リマセヌガ、彼ノ信用組合
  ノ如キ、普通銀行ト同ジヤウニ矢張震災手
  形ヲ持ッテ居ッテ、其額ハ二百万圓ノ多キニ
  及ビ、人數モ五千人以上ニ達シテ居リマ
  ス、然ルニ斯ウ云フモノガ考慮セラレズニ
  居ルノデアル、ソレ故ニ是等ニ付テモ今後
  考慮ヲセラルヽ御考デアルカドウカト云フ
  コトヲ、先程御尋シタノデアリマス
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=67

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• 068・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ御質疑ハ
  先刻モ御述べニナリマシタガ、私ハ其御趣
  旨ノ在ル所ヲ少シ了解致シ兼ルノデアリマ
  ス、信用組合ニ對シテ何等カ施設保護スル
  考ガアルカト云フ若シ御問デアリマスナラ
  信用組合ハ今ノ儘デハ前途懸念ヲ致シ
  テ居リマス、相當ノ手法ヲ講ジナケレバナ
  ラヌト存ジマスガ、是ハ所管ガ只今ノ所デ
  ハ違ヒマシテ、私ノ方ノ所管デハナイノデ
  アリマスケレドモ、ソレニ拘ラズ相當意見
  ノ交換ヲ致シテ居ル所デアリマス、又只今
  說明ヲ致シマシタ事柄が、庶民階級者ニ何
  等ノ關係ガナイヤウニ田岩スカ知レマセヌ
  ガ、震災手形ノ處理法其モノハ其通リデアリ
  マスケレドモ、併ナガラ是ガ極マリマスト
  同時ニ、金融界ニ對シテ相當ノ整理ヲ付ケ
  サセナケレバナラヌ、是ガ解決シナイト云
  フト、其整理ノ目的ガ達シ得ラレヌト思ッ
  テ居リマス、其達セラレナイ所ノ結局ハ何
  處ニ行クカト云ヘバ、庶民階級ノ人ヒヲシ
  テ甚シク苦痛ヲ感ゼシムルヤウニナッテハ
  相成ラヌト考ヘテ居リマス、此際ニ於テ庶
  民階級者ニ對シテ何等ノ考ヲ持フテ居ラナ
  イト云フ思召ガアルヤウデアリマスカラ、
  一言添ヘテ置キマスガ、是モ金融調査會ノ
  決定ヲ見ナイ內ハ少シ早過ギマスケレド
  モ、ドウシテモ地方ノ各町村ノ庶民階級ニ
  對スル金融ノコトヲ考ヘナケレバナラヌト
  思シテ居リマス
  〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
  リ著席〕
  是ハ或ハ地方ニ於ケル信用組合トノ聯絡ヲ
  取ルト云フコトモ必要デアリマセウガ、大
  體ハ預金部ノ低利資金ヲ供給シテ、其目的
  ヲ達シサセヤウト云フ積リデ居ルノデアリ
  さっ、是モ本議會ニ於テ御協贊ヲ願ヒタイ
  ト存ジテ居リマス、併シ案ノ出來ナイ中カ
  ラ堅イ御約束ハ出來マセヌケレドモ、私ノ
  考ヘテ居ル所ヲ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=68

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• 069・星島二郎

  ○星島二郞君　ドウモ御答辯ガ甚ダ要點ニ
  觸レマセヌカラ、モウ一言申述べマス、
  般ノ庶民階級ヲ根本ニ置イテ考慮セラレタ
  イノデアルガ、銀行ノ救濟手形ヲ斯ウ云フ
  風ニシテ整理ナサルノカ、大藏省ノ所管ノ
  事デアッテ、信用組合ノ主ナル仕事ハ手形ノ
  割引デアル、サウシテ凡ソ銀行ト同ジヤウ
  ニ矢張震災手形ヲ持シテ居ル、ツレハ二百万
  圓ソコ〓〓ノ金額デ、而モ人數ハ五千人モ
  アル、斯ウ云フモノヲ顯ミズシテ、單ニ此銀
  行ノミヲ救濟ナサルト云フコトハ、片手落
  デハナイカト思フ、殊ニ僅ノ銀行ヲモ利用
  出來ナイヤウナモノガ、大藏省デ阻止サレ
  ツヽ信用組合ヲ利用シテ居ルノミデアル、
  斯ウ云フモノヲ顧ミラレナイト云フノハ、
  所謂大藏大臣ノ腹ガ資本家ノミヲ支持サレル
  御考カドウカ、今後ニ於テ庶民金融機關ニ付
  テモ此震災手形ハアルノデアル、而モ人數
  ハ多クシテ、金額ハ少クトモ斯ウー云フモノ
  ニ付テ考慮サレテハ居ナイノカ、此點ヲ質
  問致シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=69

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• 070・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　片岡大藏大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=70

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• 071・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　先刻ノ御質疑ヲ
  私ハ十分ニ其眞意ヲ能ク呑込メナクッテ御
  答致シタ所ヨリ違ッタノデアリマス、想フニ
  御尋ノ要點ハ震災地ノ信用組合ト云フガ
  如キモノヲ顧ミナイノハ甚ダ宜シカラヌヂ
  ヤナイカト云フ御趣旨ダラウト思フ、ソレ
  ナラバ、震災地ノ產業組合モ、復興資金ト
  シテ預金部ヨリ五百四十万圓、復興債劵募
  集ヨリ百万圓ヲ融通シテ居ル、全ク願ミテ
  居ラヌト云フノデハナイノデアリマス(「ソ
  レハ震災手形トハ違フ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=71

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• 072・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又大郞君)　岩切重雄君
  〔岩切重雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=72

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• 073・岩切重雄

  ○岩切重雄君　只今星島君カラ大藏大臣ニ
  對シテノ質疑ヲナサレダノデアリマスガ、
  私モ二三ノ點ニ付テ質問致シタイノデアリ
  マス、聞キマスル所ニ依ルト、大藏大臣ハ
  自分ノ在職中ニ於ケル仕事トシテ震災手形
  ノ整理、金ノ解禁ノ如キ、重大問題ヲ解決
  シタイト云フヤウナ御希望ガアルト云フヤ
  ウナコトヲ承ッタコトガアルノデアリマス、
  是ハ本當カ嘘カ、傳へ聞イタ所デアリマス
  ガ、假ニサウ云フ重大ナル問題トシテ之ヲ
  整理シタイト云フ御考ガアルナラバ、星島
  君ガ質問致シマシタヤウニ、世間ノ一種ノ
  疑或ハ疑問ト云フ如キモノハ最モ國民ニ
  了解アル方法ヲ執ラレテ、サウシテ此案ノ
  成立ヲ促サレルコトガ、大藏大臣ノ名譽ノ
  爲ニ一層善イ事デハナイカト私ハ思フノデ
  アリマス(拍手)是ハ單ニ吾々ハ大藏大臣ガ
  出サレタカラ反對スルトカ、質疑ヲスルト
  云フノデパナクシテ、經濟界ニ及ボス影響
  ガ極メテ重大ナルモノデアルト云フコトヲ
  言ハレテ居ルダケ、吾々ハ斯ウ云フ問題ハ
  愼重ニ吟味ヲシ、質問シタイ所ヲ十分質シ
  テ置カナケレバ、大藏大臣ニ對シテモ不深
  切デアルト思ヒマスカラ、是等ノ點ヲ更ニ
  質問ヲ申上ゲルノデアリマス、此震災手形
  ハ色ニナル意味ニ於テ經濟界ニ影響ガア
  ル、第一ハ公債政策ト云フ一ツノ大キナ經
  濟政策ノ中ニ、此震災手形ノ整理ト云フモ
  ノガ割込ンデ來テ、玆ニ一ツノ意味ヲ持,
  テ來ル、第二ニハ震災手形自身ガ如何ナル
  モノデアルカト云フコトノ經濟上ノ意味ガ
  アル、ソレカラ若シ大藏大臣ノ金ノ輸出解
  禁ニ對シテハ經濟界ヲ整理シテ準備シテ
  置カナケレバナラヌト言ハレルノデアリマ
  スガ、若シ是ガ準備ニ必要ノ行爲デアリト
  スルナラバ、此意味ニ於キマシテモ震災手
  形ト云フモノヽ整理ガ、經濟界ニ非常ナ重
  大ナル意味ヲ持シテ來ルノデアリマス、私
  ハ先ヅ順序ト致シマシテ、震災手形ソレ自
  身ガ經濟界ニドウ云フ影響ヲ持チ、如何ナ
  ル疑點ヲ持ツカト云フ點ヲ先ヅ質問スルノ
  デアリマス、第一ト致シマシテハ只今大藏
  大臣ノ御說明ニモアリマシタ如ク、震災手
  形ナルモノハ大正十二年ノ大震災ノ際ニ於
  ケル俄カナル處置トシテ、震災手形ノ損失
  補償令ナルモノニ依ッテ此事ハ行ハレテ來
  タノデアル、然ルニ其後二囘モ延期サレマ
  シテ、今年ノ九月ニハドウシテモ之ヲ整理
  シナケレバナラナイト云フコトニ相成シテ
  來タ、其計數ニ於キマシテハ.所謂「スタン
  プ」ヲ捺シマシタ所ノモノガ四億三千万
  圓以上アッタモノガ、其中カラ二億万圓以
  上ノモノガ整理サレテ、殘リノ二億万圓
  ト云フモノガ今日茲ニ殘ッテ居ルカラ、
  之ヲドウ云フ風ニシナケレバナラヌト云フ
  ノガ、此震災手形ノ所謂整理案デアル、ソ
  コデ吾々ハ疑問ドシ、又世間一般ノ思想ノ
  上カラ此處ヘ一ツノ疑が起リ、又問ハント
  欲スル問題ノ起ッテ、來ルノハ、若シ此震災
  手形ナルモノガ、ドヴシテモ是ハ整理ノ付
  カナイモノデアルガドウカ、既ニ二億圓ト
  云フモノハ銘々ノ力ニ依テ之ヲ返シテ整
  理シタモノモアルノデアル、所ガ今日ノ經
  濟界ニ於テハ、動モスレバ先刻星島君ノ質
  問ニモアリマシタ如ク、經濟界ノ成リ來リト
  云フモノガ政府ニ賴ル、何カ運動スレバ救
  濟ガ出來ルト云ウヤウナ一種ノ氣持ガ經濟
  界ニアル、最モ下級ニ在ル者ハ中々サウ云
  フ手ガ屆カナイケレドモ、銀行デアルトカ
  其他ノ資本家團體ニナリマスト、整理ガ出
  來ルモノモ政府ニ何トカ賴ッテ行ケバ旨イ
  コトガ出來ヤシナイカト云フヤウナ考ガ
  アッテ、不眞面目ニ整理ヲ其儘殘シテ置クト
  云フヤウナコトガアルノデアリマス(「ヒヤ
  ヒヤ」)ソコデ一面ニハ二億圓ノ整理ヲシタ
  所ノ眞面目ナ事業家モアル、或ハ小サナモ
  ノハ銀行カラギウ〓〓詰メラレルカラ、已
  ムヲ得ズソレハ返シタカモ知レナイ、押付
  ケル者ノナイ所メ反撥力ノ强イモノガ却テ
  後ヘ殘ノテ居ッテ、ソレガ銀行ニ依シテ殘シテ
  行クト云フヤウナモノガ、若シアリトスレ
  バ是ハ一體震災手形整理ノ上カラ考ヘ
  テ、極メテ不公平ニナリハシナイカト云フ
  疑問ガ玆ニ起ルト云フコトハ、當然デハナ
  イカト私ハ思フノデアリマス、併シ是ハ兎
  ニ角、大藏大臣ノ目的ハ經濟界ノ整理デア
  ル、將來ニ於ケル金ノ解林ニ對スル準備デ
  アル、其目的ト其行動ハ惡クハナイノデア
  リマスカラ、此立派ナ計畫ヲ完全ニスル爲
  ニハ、此疑問ヲ解キ、更ニ未ダ整理シナイモ
  ノデモ尙ホ九月迄ニハ時間モアルノデアル
  カラ、此間ニ於テ飽迄モ整理シテ公債ノ交
  付額ノ少クナルト云フコトハ結局理想デ
  ハナイカト私ハ考ヘルノデアリマス、之き
  對シテハ果シテ大藏大臣ハドウ云フ考ヲ
  持ッテ居ラレルカ、是ガ私ノ質問ノ第一デア
  ル、ソレカラ其次ニ第一一第三ハ、星島君ノ質
  問サレタコトヲ申上ゲヤウト思ッテ居シタノ
  デアリマスガ、是ハ既ニ星島君ニ依シテ問ハ
  レマシタカラ申上ゲマセヌ、卽チ震災手形
  ノ內容、是ハ委員會デ聽カレルト云フコト
  デアリマス、其次ハ保險會社其他ノ未整
  理、マダ震災ト云フモノニ依ッテ影響ヲ受ケ
  タモノハ澤山アル、是ハ決シテ銀行バカリ
  ヂヤナイ、無形ノ救ハレザル所ノ間ニ、或
  ハ財產ヲ潰シ、自分ノ家ヲ燒キ、色ヒナモ
  ノガアル、斯ウ云フモノガドウ云フ考ヲ斯
  ウ云フモノデ起スカト云フコトモ、私聞キ
  タイ一ツデアリマシタガ、是ハ星島君ガ聞
  キマシタカラ、私ハ此問題ハ聞キマセヌ
  今一ツハ貸付ニ依シテ向フ十箇年間ニ交付
  公債ヲ爲スト云フノデアリマスガ、是ハ私
  ハ考ヘヤウニ依シテハ、整理ヲ延バスト云フ
  コトニナリハシナイカト思フノデアリマ
  ス成程今日整理ガ此處デ行詰シテ來タカ
  ラ、何トカシナケリヤナラヌ、ナラヌガ公
  債ヲ貸付ケテ十箇年デオ前ハ之ヲ返シテ行
  ケト云フナレバ、整理ヲ十年延スト云フヨ
  トニナルガ、十年後ニ於キマシテ、此貸付
  ケタ一億圓ト云フモノガ果シテ返シテ來ル
  カドウカト云フコトニ私ハ疑問ヲ持ツノデ
  アリマス、若シ是ガ返ラナイ、政府ノ追窮
  ガソレ程マデ行カズシテ、此儘ニ貰シタト
  云フヤウナ氣持デ、整理ヲ怠ルト云フコト
  ニナレバ、結局此一億圓ト云フモノハ誰ノ
  負擔ニナルカト云ヘバ、國民ノ負擔ニナッテ
  來ルノデアル、公債ヲ募ラナイト一ムフコト
  ガ現內閣ノ題目デアリナガラ、交付公債が
  幾ラモ殖エテ來ルト一云フコトノ非難ガアル
  ノモ、是モ一ツノ私ハ問題ニナッテ來ルノ
  デハナイカト思フノデアリマス、此點ニ對
  シテハ大藏大臣ハ如何ニ御考ニナルカ、其
  次ハ此補償公債ヲ交付ナサレマスノニ付キ
  マシテハドウ云フ基準ニ依ッテ之ヲ交付
  サレルカト云フコトデアリマス、唯、誰ニ
  ドンナ風ニシテ其一億圓ト云フモノヲ渡ス
  カト云フコトデアル、之ニ付テ色ミナ場合
  ガアルダラウト思ヒマスガ、若シモデス、
  支拂能力ヲ缺ク所ノ銀行ニ對シテ、之ヲバ
  交付スルトスルナラ、支拂能力ヲ缺クト云
  フ銀行ハ一體ドウ云フ銀行デアルカ、如何
  ニシテソレヲ認定スルカ、拂ヒ得ル銀行ニ
  ヤル必要ハナイ、拂ヘナイ銀行デアレバ潰
  レルカモ知レナイ、潰レル銀行デアレバ返
  サナイカモ知レナイ、支拂能力ガアッテ、而
  モ潰レルト潰レナイトノ境ニアルヤウナモ
  ノデナケレバ、其整理公債ト云フモノガ交
  付サレナイヤウニモ私ハ思ヒマスガ、是ハ
  私ノ考ガ誤ッテ居ルカモ知レマセヌガ、此
  疑問ヲ大藏大臣ニ一ツ解イテ貰ヒタイト云
  フノガ質問ノ一ツデアリマス、最後ニ此問
  題ガ震災手形ソレ自身ニ經濟界ノ價値ヲ有
  スルノミナラズ、大キナル意味ニ於ケル公
  債政策ト云フ立場カラ、非常ナ意味ヲ持ッテ
  居ルト云フコトヲ私申上ゲタイノデアリマ
  スガ、此點ヲ一言私ハ附加へテ置キタイト
  思フ、是ハ現内閣ハ組織以來公債ヲ募ラナ
  イト云フコトヲ以テ、非常ナ立派ナル看板
  トシテ揭ゲテ來ラレタノデアリマス、今年
  度ニ於キマシテハ、剩餘金ヲ以テ四千四百
  万圓ヲ公債ニ返ス、減債基金法ノ外ニ是ダ
  ケヲ餘計ニ返スカラシテ、公債ヲ少クスル
  ト云フヤウナコトガ、非常ナ誇トシテ執ラ
  レテ居ルノデアリマスルガ、併シ事實ニ於テ
  ハ現ニ一億五千万圓ト云フ公債ガアル、是
  ハ度〓此演壇ニ於テ、或ハ豫算會議ニ於テ
  論議サレタ所デアリマスガ、一方ニ減債基
  金ノ外ニ四千四百万圓ヲ加ヘタモノヲ引イ
  テシマッテモ、尙ホ一億五千万圓ト云フモ
  ノガ公債トシテアルノデアルカラ、差引ハ
  矢張公債ガ殖エルト云フ議論ヲシテ居ル、
  所ガ其他ニ又玆ニ震災手形ナルモノガ二億
  圓增シテ來ラレルト云フコトニナルト云フ
  ト、國債ノ全體ノ上ニハ矢張是ダケハ殖エ
  テ來ルト云フ是ハ算盤ニナル、其外尙ホ段
  段案ガ出テ來ルノヲ見マスト、或ハ九州製
  鋼所ヲ買收スルト云フ案モアリ、私設鐵道
  ノ買收ト云フ案モアル、是モ定メシ交付公
  債ニ依ルト云フコトニナルダラウト思ヒマ
  スガ、然ラバ交付公債ナルモノハ幾ラデモ
  殖エテ來テ、今年度全體ノ公債ノ增加スル
  額ト云フモノハ、蓋シ何億圓ト云フモノニ
  ナルデアラウト考ヘマスガ、是等ハ現内閣
  ノ公債政策ノ上カラ考ヘテ、一部ノ矛盾ヲ
  玆ニ表明シタモノデハナイカト私ハ考ヘル
  ノデアリマス(拍手起ル)此點ニ付テハ直接
  震災手形ソレ自體ノ問題デハアリマセヌケ
  レドモ、經濟政策ノ全體ノ上カラシテハ
  到底此點ニ付テ考ヲ及ボサミルヲ得ザル點
  デアルト考ヘマスカラ、之ヲ御尋スルノデ
  アリマス、簡單ニ一言申上ゲマスレバ、金
  ノ解禁ニ對スル準備ノ爲ニ、事業界ノ整理ガ
  必要デアルト言ハレルガ、是ハ非常ナ大キナ
  問題デアッテ、是レ一ツバカリデ金ノ解禁
  ノ準備トモナラナイガ、是ガ大海ノ一滴ニ
  デモナレバ、ソレモ仕合セデアリマスガ、
  其他ノ整理ト云フコト、是ハ昨日委員會デ
  モ申上ゲタノデアリマスガ、整理ニ對スル
  大藏大臣ノ考ト云フモノガ、時々私ハ違フ
  ヤウニ思フ、眞面目ナ活キルモノハ活カシ
  テ行ク、滅ンデ行クモノヲ此經濟不況ノ時
  代ニ飽迄助ケテ行カナケレバナラヌト云フ
  理由ハナイ、眞ニ經濟界ヲ整理シヤウト思
  フナラバ、寧口活キルベキ命ノアルモノハ
  育テヽ行クケレドモ、然ラザルモノハ潰シ
  テ行クコトガ、却テ經濟界ノ整理ニナルト
  云フコトハ、是ハ前大藏大臣ノ濱口藏相ニ
  依シテ私ハ〓ヘラレテ、而モソレガ正シイ
  ト私ハ思クテ居ル一人デアリマスカラシテ、
  此點ガ如何ニモ先日カラ言フ如ク、色ニナ
  會社デアルトカ、色ミナ銀行ニ對スル整理
  ガ二三ニナルト云フコトハ、事業界ノ整理
  ノ爲ニハ餘リ宜シクナイ結果ヲ來シテ居
  ル、金ノ輸出解禁ノ準備ト云ヒナガラ、而
  モ整理ガダラ〓〓ニナッテ、死ニ掛ッタモノ
  ガ半バ活キテ來ルト云フコトニナルカラ、
  是ハ宜シクナイデハナイカト云フ點ヲ言
  申上ゲテ、私ノ質問ヲ終リマス(拍手)
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=73

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• 074・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　第一ノ御質問
  ハ之ヲ整理スルト云フガ却テ整理ヲ延ス
  モノヂヤナイカト云フコトガ御主眼デアッ
  タト存ジマス、如何ニモ我ガ國民性ノ多分
  ト申シテハ少シ害ガアルカモ知レマセヌ
  ガ、一部ニ政府ニ寄リ縋ルト云フ嫌ノアリ
  マスルコトハ、御論ノ通リデアリマス、是
  ハ餘リ褒ムベキコトデハナイト存ジマス、
  併ナガラ、此今度ノ處理法案ナルモノガ、
  政府ニ賴ッタナラバ結局免ルヽコトガ出來
  ルカト云ヘバ、支拂能力ノアル者ハ免ルヽ
  コトハ出來ナイノデアリマス、卽チ手形ヲ
  發行シテ居ル者ハ、其割引ヲシテ貰シテ居
  ル銀行ニ向ッテ、今度ハ手形デナクシテ借
  用證文ニスル、其借用證文ニスル場合ニ於
  テ、最長期ガ十年デアリマスカラシテ、其
  人ノ身代ノ狀況ニ依シテ三年モゴザイマセ
  ウ、五年モゴザイマセウ、要スルニ手形ガ
  今度ハ借用證文ニナル、年賦ノ借用證文ニ
  ナル、其借用證文ヲ以テ日本銀行へ持ッテ
  參リマシタ時ニ、今度ノ協賛ヲ得マシタナ
  ラバ、公債ヲ貸シテヤルノデアリマス、而
  シテ之ニハ利息ヲ拂ハナクチヤナラナイ、
  約束ノ年賦ノ償還ハシナクチヤナラヌ、而
  シテ之ヲ取扱フ所ガ日本銀行デアリマシ
  テ、日本銀行ハ卽チ一般ノ銀行ノ中樞トシ
  テ、常ニ日本銀行ニ對シテハ信用ヲ維持シ
  テ行カナケレバナラヌモノデアリマスカ
  ラ、是等ノ取扱ニ對シテ日本銀行ノ信ヲ失
  フヤウナ仕向ケハ出來ナイ筈デアル、如何
  ニ政府ニ依賴シタカラト云ッテモ、政府直接
  ノ貸借ヲスルモノデハナクシテ、日本銀行
  ヲシテ取扱ハシメル、日本銀行ヲシテ何故
  取扱ハシムルカト云フト、今日マデ日本銀
  行ガ「スタンプ」ヲ捺シテ割引ヲシテ居ル關
  係ニ於テ、サウアルコトガ實際ノ情況ヲ知
  ルコトニ於テ便宜デアリマス、斯ウ云フコ
  トヲスレバ、一時デモ兎ニ角公債ト云フモ
  ノデ、日本銀行デ金ヲ借レルヤウニナルカ
  ラ、延ルヂヤナイカト云フ御懸念デアリマ
  スガ、今申上ゲル通リ結局拂ハナクチヤナラ
  ヌ、サウシテ斯ウ云フ借リ方ヲシテ居ルコ
  トガ、吾人ニ取ッテモ決シテ名譽ノモノヂヤ
  ナイ、ソレ故ニ避ケ得ラルヽ限リハ避ケル
  コトデアリマセウガ、何分今直グトシテハ
  困ル、相當立派ナ様子ヲシテ居リマシテモ、
  內面ニ於テハ苦シイ時代ハ誰シモアルコト
  デアリマス、サウ云フ場合ニ於テ幾ラカ年
  賦ノヤウナ方法ニスレバ、體面ヲ損セズシ
  テ借リルコトガ出來ルト云フ部分ノ人モ多
  少アリマス、今迄ニ囘收ノ出來易イモノハ
  囘收サレテ居リマス、卽チ其結局ノ殘リガ
  二億七百万圓ニナッタ譯デアリマスガ、其
  二億七百万圓ノ手形ノ中デ、回收不能ト云
  フモノニナルベキモノヽ見込ガ私ハ一億圓
  ヲ出マイト思フ、サウシテソレハドウシテ
  ヤルカト云フ今御尋モ中ニアッタノデアリ
  マス、是ハ結局御尋ノ通リ、會社デ申シマ
  スレバ積立金モ滅ラス、或ハ資本ノ銷却モス
  ル而モ之ヲ拂ハウトスレバ潰レルノ外ハ
  ナイ、所謂支拂ノ能力ガモウナイ、是ニ至ッ
  タモノデナケレバ補償ハシナイノデアル、
  此補償ヲスル場合ニ於ケルコトハ、極メテ
  公明正大デ、且ツ公平デナケレバナラヌノ
  デアリマス、是ハ現ニ今日モ內規ガアリマ
  スケレドモ、更ニ官民ノ中ヨリシテ相當此
  調査機關ナルモノヲ置イテ、此決議ニ依ッ
  テ實行致サウト思ッテ居リマス、此御尋ノ
  精神ハ質問者ト同ジコトデアリマス、而シ
  テ延ビハセヌカト云フコトニ對シテハ、今
  申上ゲタ通リノ事柄デアリマシテ、是ガ爲
  ニ延スト云フコトニ付テ幾ラカ便宜ガアリ
  マセウガ、結局延シテ其損ニナラヌヤウニ
  仕遂ゲルコトガ出來ルカト云フト、損ニナ
  ル部分ハ此二億七百万圓ノ中カラ選リス
  グッテ、損スルノハ損スル、回收ノ出來ベ
  キモノニ對シテ其手形ノ割引者ノ能力如何
  ヲ見テ、貸付ノ處置ニ出ルノデアリマスカ
  ラ、是ハ損ニナルベキモノデハナイ筈デア
  リマス、而シテ一體公債政策ノ根本ヲ打壞
  スヂヤナイカ、矛盾ヂヤナイカト云フ御說
  デアリマスガ、如何ニモ斯樣ナコトデ公債
  ヲ增加スルト云フコトハ、私ハ好ミマセ
  ヌ、一般ノ財政計畫ノ立方トシテハ、彼ノ
  大震大火ノ生ジマシタ以來、約一億五千万
  圓位ノ限度ヲ以テ公債ヲ發行シテ行シテ、
  此震災ノ片付クマデハ已ムヲ得ヌト云フコ
  トハ、是ハ常時ニ立テタ計畫デアリマス、
  其方針ハ狂ハシテハ居リマセヌガ、サリト
  テ此財界ノ整理其他必要ノ事實ヲ進メマス
  ニハ、交付公債ノ必要ノ起ルコトハ是ハ
  已ムヲ得ヌ、殊ニ此二億七百万圓ノ中ノ一
  億圓ハ既ニ諸君ノ御協賛ニナッテ居ル、
  國ガ補償スルト云フコトノ決ッタ部分デア
  ル唯、補償ノ方法ガ何モ備テテリリセセヌ
  カラ、方法ヲドウシタラバ宜イカト云フコ
  トヲ考ヘテ見ルト、今日ノ我國ノ財界ニ於
  テハ、此公債ニ依ルヨリ外ニ途ハナイノデ
  アリマス、是ハ現內閣ノ政策ノ上ニ固ヨリ
  生レタコトデハナクシテ、其以前カラ一億
  圓ト云フモノハ、ドウニカシテ負擔ヲシナ
  ケレバナラヌト云フコトハ國家ガ既ニ之
  ヲ承認シテ居ル、其殘リノ一億七百万圓ト
  云フモノハ、今申上ゲタ部分ニ屬スルノデ
  アリマスガ、之ヲ何故貸シテヤルト云フ金
  ヲ玆ニ開カナケレバナラヌト申シマスル
  ト、二億七百万圓ト云フ玆ニ震災手形ガアッ
  テ割引ヲサレテ居ル、國ガ一億圓ノ補償ヲ
  スル、其補償スルト云フモノハ、ドノ部分
  ニ補償サレテ居ルカ世間ハ知ラナイ、シレ
  故ニ「スタンプ」ノ捺シテアル手形ナルモノ
  ガ、多少ノ信ヲ持ノテ居ルノデアリマス、
  不完全ナガラモ不安ナガラモ幾ラカ、何日
  モ圓滑デハアリマスマイガ、日本銀行ガ取
  リモ直サズ之ニ對シテ割引ヲシナケレバナ
  ラヌコトニナッテ居リマスカラ、割引ヲシ
  テ居ル、是ガ今度一億圓ト云フモノガ、唆リ
  上ゲテ、此部分ハ國ガ所得トシテ、サウシ
  テ今度殘リノ一億七百万圓ト云フモノハ、
  モウ此部分ニハ補償シテヤル途モ何モナイ
  ゾト、斯ウ明ニナリマスト、此手形ナルモ
  ノハ忽チ行當リダラウト思フ、是ニ於テ其
  行當リヲ生ジナイヤウニシテヤルト云フコ
  トニ付テ、國ガ損ヲシナイ方法デ、何トカ
  途ヲ考ヘテヤルコトガ出來ルカト云フコト
  ヲ考究シテ見ルト、今玆ニ整理法案ヲ出シ
  マシタヤウニ、本人ノ方ハ借用證文ニ對ス
  ル年賦ノ借用證文ガ出來夕時ニ至フテ、其
  銀行ヨリシテ公債ヲ借リタイト云フコトニ
  ナレバ、其モノガ擔保ニ供セラレテ公債ガ
  貸サレルノデアリマス、而シテ其公債ノ利
  子ハト云ヘバ、是ハ本人カラ拂フ利子、ツ
  レカラ元金ノ償還ハト云ヘバ是ハ年賦デ
  拂ッテ來ルモノヲ繰込ンデ行クノデアリマ
  ス、國家ハ大體信用狀ヲ發行シテ來ルヤウ
  ナ性質ノモノニ屬スルト思ヒマス、併ナガ
  ラ此遣方ヲ誤シテ柱撰ニナリマスレバ、御
  懸念ノヤウナコトガ生ゼヌトモ言ヘヌコト
  デアリマスカラ、是ハ之ニ關スル調査機關
  ハ別ニ作リマシテ、決シテ日本銀行バカリ
  デモヤラズ、大藏省ノ考ダケデモヤラズ、
  他ニ經驗アル、信用スベキ人ヲ混ゼテ一ツ
  ノ機關ヲ作ッテ、是ノ評議ノ決定スル所ニ
  從ッテ處理ヲシヤウ斯ウ云フ考デアルノ
  デアリマス、殊ニ公債ヲ滅スト云フコトヲ
  口ニシナガラ直グ殖スヂヤナイカ、是ハ如
  何ニモ御非難ノ通リデアリマスガ、實際政
  治ノ進行ヲ圖リマス上ニ於テ、今申上ゲル
  ヤウナ事實ガ茲ニ横ハッテ居ル時ニ、之ヲ
  解決シヤウトスレバ、何等カノ方法ヲ講ジ
  ナケレバ解決ノ法ガ附カナイノデアリマ
  ス、ソレデハ解決方法ヲ付ケズニ濟ムカト
  云ヘバ財界ハ今ヤ諸君ハドウ御覽ニナッ
  テ居ルカ知レマセヌガ、私共サウ云フヤウ
  ナ安心ノ出來ナイ部分、所謂癌腫ナルモノ
  ガ玆ニアルト思フ、之ヲ整理スルト云フコ
  トヲ怠ッテ、是ガ爲ニ他ニ波動ヲ及ボスヤウ
  ナコトヲ生ジテハナラヌト云フコトヲ、私
  ハ深ク憂慮シテ居ル者デアリマス、扨其憂
  慮ヲ解キ放サウトスレバ、玆ニ何等カ施設
  ヲシナケレバナラヌ、何等カノ施設ヲスル
  ト云フコトニ付テハ、今申上ゲルヤウナ國家
  ガ成ベク損ヲシナイヤウ十工夫ヲシナケレ
  バナラヌ、ンレト同時ニ從來ノ儘ニナッテ
  居ルモノニ依シテ金ヲ生ミ出ス途ガアルカ
  ト云フガ如キコトモ、一方ニ考ヘナケレバ
  ナラヌ、卽チ貨幣ノ整理ヲ一方ニハヤル、
  貨幣整理ノ結果トシテ、滅失シタ部分ガ分ッ
  テ來マスレバ、其所ニ生マレテ來ル金ガ生
  ズル筈デアリマス、サウ云フモノハ私ハ差
  向キ此公債、一億圓ハ既ニ補償ヲサレテ居
  ルモノデアリマスケシドモ、斯ウ云フモノ
  ニ充テルコトガ最モ相當デアラウカト思ッ
  テ居リマス、又一方ニ公債ヲ募ッテ、一方
  ニ償還ヲスルコトヲ計畫スルト云フコトハ
  矛盾デアル、是モ一應形式カラ見マシテサウ
  云フ論モ立チマス、併ナガラ我國ノ公債ハ
  屢、當席ニ於テ說明致シマシタ通リ、近來
  コヽ十年間ニ二倍ニモナッテ居ル、本年御
  協賛ヲ求メテ居ル所ノモノトヲ數ヘ入レマ
  スレバ、殖エル一方デアル、凡ソ物ハ需要ト
  供給ノ關係ヲ考ヘテ見マシテ、供給スル方
  ノ分量ガ殖エテ來レバ、隨テ値ガ下ルコト
  ハ當リ前デアル、公債ト雖モ同ジコトデア
  ル、ソレ故ニ此公債ヲシテ一方ニ價ヲ保タ
  シムル方法ヲ考ヘナケレバ非常ニ不利ニ陷
  ル、是ハ先日ノ本會議ニモ申上ゲタ通リ、
  今迄募シテアル公債ガ極メテ短期デアル、
  此公募公債ナドト云フモノハサウ短期デハ
  ナイ、無性ニ公債ハ短期ニ募レナイ、而モ
  三年、五年、七年ト云フ期限ノモノデアリ
  マスカテ、之ヲ借換ヘル爲ニ非常ニ損ヲシ
  テ借換シテ居ル、今後ニ於テハ長期ノ公債
  ガ募レルヤウニ考ヘナケレバナラヌ、此現
  在ノ公債ト云フモノ、借換ヲ短期ニ繼續シ
  テ借換ヘテ行キマスナラバ、其損失ヲ重ネ
  ルコト夥シイモノデアル、其損失ハ卽チ國
  家ノ負擔トナリ、利子ノ支拂モ亦國家ノ
  負擔トナル、ソレ故ニ今ノ減債方法ヲ考究
  スルト云フト、公債ノ市價ヲ確ニ恢復スル
  コトガ出來ル、恢復ノ出來テ居ル事實ハ市
  場ノ相場ヲ見テモ分ル、面シテ之ニ依ッテ外
  國ノ信用ヲ高メマシタコトハ、是亦蔽フベカ
  ラザル事實デアル、是等ハ金解禁ニ對シテ
  實行致シマスル時機ヲ考ヘマスルト、頗ル
  有利ナ事デハナイカ、ソレ故ニ金ノ解禁ヲ
  致サウトシテモ、財界ノ癌腫ヲ其儘ニシテ
  ヤルト云フコトハ無論出來マセヌ、サリト
  テ此金ノ解禁ヲセズシテ爲替相場ノ異動ヲ
  時々見テ、サウシテ商業ノ發達ヲ期スルナド
  ト云フコトノ出來ナイコトモ分リ切ッテ居
  ル、然ラバ片端カラ片付ケルモノハ片付ケ
  テ行クト云フコトヲ進メテ行クニ付テハ、
  是ハ已ムヲ得ヌコトデアル、好ンデ何モ公
  債ヲ增加スルノデハアリマセヌガ、萬已ムヲ
  得ザルコトデアルト云フコトハ御諒知下サ
  ルコトデアラウト思フ、ソレカラ今一ツ現
  大藏大臣ノ遣リ方ハ潰スベキモノマデ活カ
  シテ行クヤウナ事ヲヤルカラ洵ニイカヌ
  斯ウ云フ御話デアリマシタガ、私ハ潰スベ
  キモノヲ潰スト云フコトニ付テ何等異議ハ
  アリマセヌ、併ナガラ潰スベキモノヽ潰レ
  ル事ニ依シテ、他ノ潰シテ相成ラヌモノニ大
  影響ヲ與ヘルト云フガ如キコトヲ見遁スコ
  トハ出來ヌト思フ、是ハ苟モ財界ノ局ニ當ッ
  テ居リマスル者ハ(「冗談ダ」ト呼フ者アリ)
  之ヲ冗談ダト云ウテ玆ニ事實ヲ語ル者ガア
  リマスガ、之ヲ冗談デアルト云フ程ニ財界
  ニ理解ガナクテハ實ニ恐レ入ッタモノデア
  ル問題ノ起ッタモノソレ自身ガ潰レルコト
  ハ問題デハナイ、其潰レルモノヽ爲ニソレ
  ニ從來關係シテ居ル者ガ、ソレガ爲ニ波動
  ヲ起シテ大ナル破綻ヲ來スヤウナコトヲ見
  テハナラヌト云フコトガ、私ノ心配シテ今
  日マデヤッテ來タコトデアルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=74

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• 075・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　千葉三郞君
  〔千葉三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=75

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• 076・千葉三郎

  ○千葉三郞君　星島、岩切兩氏ノ質問ニ依
  リマシテ、私ノ大藏大臣ニ問ハントスル所
  ハ略、明瞭ニナッタノデアリマスルガ、本法
  案ハ實ニ國民ニ取シテ重大ナルモノデアリ
  マスカラ、一應其不徹底ナル答辯ニ付キマ
  シテ、更ニ質問ヲ申上ゲタイノデアリマ
  ス、星島氏ヨリ震災ノ手形所持銀行ノ內容
  及其額ニ付テ明瞭ニセンコトヲ求メラレタ
  ノデアリマス、然ルニ大藏大臣ハ之ヲ委員
  會ニ讓ッタノデアリマスルガ、私ノ見ル所
  ニ依リマスレバ、此内容ハ一日モ速ニ國民
  ニ知ラシメルノガ必要デハナイカ、斯ウ考
  ヘルノデアリマス、若モ本法案ヲ審議スル
  ニ當リマシテ、二十日-十九日政友本黨
  ノ小川博士ノ指摘シタルガ如ク、諸方ノ銀
  行ニ澤山ノ震災手形ヲ所持スルト云フ事實
  ガ眞デアリト致シマシタナラバ、殆ド多ク
  ハ囘收不能デアリマシテ、此一億七百万圓
  ト云アモノハ又國民ガ全部負擔スルト云フ
  コトニナッテ來ルノデアリマス、故ニ此内容
  ヲ明ニシテ賞ヒタイ、併シ多クヲ言フノデ
  アリマセヌ、坊間傳フル所ニ依リマスルト、
  朝鮮銀行ガ果シテ二千万圓ノ震災手形ヲ御
  持チニチッテ居ルカ、尙ホ〓灣銀行ハ八千
  万圓ヲ持シテ居ルカドウカ、此事實ガ-此
  風評ガ眞ヂアルカドウカト云フコトヲ承リ
  タイト思フノデアリマス、第二ニ伺ヒタイ
  コトハ此震災手形善後處理法案中ニ於キ
  マシテ、償還ノ保證ニ關スル規定ハ僅ニ六
  條一項デアリマシテ、此六條ニ依リマスト
  私共ハ償還ヲ保證スルコトニ付テ、非常ニ
  薄イヤウデアリマス、大藏大臣ハ果シテ此
  六條一項ノミヲ以テ囘收ヲ確保スルコトガ
  出來ルヤドウカト云アコトモ承リタイノデ
  アリマス、第三ニ伺ヒタイノハ、第七條ノ
  二項デアリマシテ「前項ノ外貸付金ニ關シ
  テハ大藏大臣之ヲ定ム」トアリマスルガ、
  大藏大臣單獨ヲ以テ貸シ得ル此標準ガアリ
  マスナラバ明ニ之ヲ示シテ戴キタイ、此
  三ツノ事ヲ極ク簡單デゴザイマスカラ、御
  答辯ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=76

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• 077・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　片岡大藏大臣
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=77

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• 078・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今ノ御質問ニ
  答ヘマス、第六條ノ規定ニ依シテ償還ハ不
  安デナイカト云フ思召デアリマスガ大體
  公積ニ對シテハ一般ノ規定ガアリマシテ、
  此公債ニ對シテハ此條項デ十分デアルト思
  フノデアリマス、ンレカラ第一ノ質問デア
  リマス、臺灣ノ銀行ニ幾ラアル、朝鮮銀行
  ニ幾ラアルト云ウテ御舉ゲニナリマシタ數
  字ハ、違ッテ居ル點ガアリマスルガ、併ナガ
  ラ災害ノ整理ガ目的デアッテ、一般ニ不安ノ
  念ヲ惹起サシメルト云フガ如キ誤解ヲ惹起
  サシメルト云フコトハ、宜シキヲ得タモノ
  デナイ、是ハ何等カノ方法ニ依ルト申シマ
  シタ、其何等カノ方法ニ依ッテ其人ノ名譽
  ヲ損セズ、サウシテ一般ニ不安ノ念ヲ惹起
  サナイヤウニシテ御利用ニチルヤウニ努メ
  テ見タイト申上ゲタノデ(「申味ヲ言ハナケ
  レバ分ラナイ」ト呼フ者アリ)是ガ爲ニ委員
  會ガアルノデアリマスカラ、十分ニ御調査
  ニナルコトデアラウト存ジマス、ソレカラ
  次ニ第七條ニ對シテ大藏大臣之ヲ定ムルト
  云フ、是ハ前申上ゲマシタヤウニ、委員會
  メ組織デアル、其他此取扱ニ關スル事項ヲ規
  定スルノデアリマス、今此處ニ案ヲ具ヘテ
  居ル譯デハゴザイマセヌガ、國民ノ疑惑ヲ
  生ズルコトナク、又實際ニ於テ不都合ヲ生
  ジナイヤウナ規定ヲ定ムルコトノ必要ガア
  ルト思ッテ居リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=78

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• 079・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　質疑ハ終了致シ
  マシタ日程第七、右各案ノ審査ヲ付託スベ
  キ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
  第七右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=79

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• 080・砂田重政

  ○砂田重政君　委員ノ數ヲ十八名トシ議長
  ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=80

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• 081・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
  シマシタ-日程第八乃至第十ハ同種ノ議
  案チルニ依リ、一括シテ議題トナスニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=81

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• 082・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ日程第八、朝鮮事業公債法改
  正法律案、目程第九、臺灣事業公債法中改
  正法律案、日程第十、關東州事業公債法中
  改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、片岡大
  藏大臣
  第八朝鮮事業公債法改正法律案政
  府提出)第一讀會
  朝鮮事業公債法改正法律案
  朝鮮事業公債法
  第一條朝鮮ニ於ケル事業費ヲ支辨シ且
  煙草專賣制度ノ實施又ハ私設鐵道買收
  ニ要スル交付金トシテ交付スル爲政府
  ハ從前募集シタルモノヲ通シテ六億三
  百七拾万圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又ハ之
  カ繰替支辨ノ爲借入ヲ爲スコトヲ得
  第二條前條ノ規定ニ依ル公債ノ發行價
  格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ
  於テハ前條ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ
  又ハ借入ヲ爲スコトヲ得
  附則
  本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  第九臺灣事業公債法中改正法律案
  (政府提出)第一讀會
  臺灣事業公債法中改正法律案
  臺灣事業公債法中左ノ通改正ス
  第一條中「一億三千三百八十萬圓」ヲ「一
  億五千三十萬圓」ニ改ム
  附則
  本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  第十關東州事業公債法中改正法律案
  (政府提出)第一讀會
  關東州事業公債法中改正法律案
  關東州事業公債法中左ノ通改正ス
  第一條中「三百十萬圓」ヲ「七百八十萬圓」
  二〇人
  附則
  本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣片岡直溫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=82

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• 083・片岡直温

  ○國務大臣(片岡直溫君)　只今議題トナリ
  マシタ朝鮮事業公債法改正法律案、臺灣事
  業公債法中改正法律案及關東州事業公債法
  中改正法律案ニ付キマシテ一括シテ說明ヲ
  致シマス、朝鮮總督府ニ於キマシテ、朝鮮
  產業ノ振興ニ資スルガ爲メ交通機關ノ普
  及、殊ニ鐵道ノ敷設ヲ促進スルノ必要ヲ認
  メマシテ、新ニ圖偶線外四線ノ新線建設ノ
  計畫ヲ立テマシテ、又右新線ノ建設ニ伴ヒ
  マシテ、幹線鐵道ノ間ニ介在スル私設鐵道
  ヲ買收シ、規格ノ統一其他ノ改良ヲ加フル
  ノ計畫ヲ立テマシタノデアリマス、而シテ
  其經費支辨ニ付キマシテハ朝鮮總督府
  特別會計ノ現況ニ鑑ミマシテ、公債財源ニ
  依ルノ外ナク、隨テ起債法定額ノ曾加ヲ必
  要ト致ス次第デアリマス、次ニ臺灣ニ於キ
  マシテハ同島ノ產業ノ發展ニ伴ヒマシテ、
  交通運輸ノ施設ヲ充實致ス爲ニ、縱貫鐵道
  複線ノ敷設及線路ノ改良等ノ工事ヲ行フノ
  計畫ヲ立テタノデアリマス、又臺灣電力株
  式會社所屬ノ鐵道ヲ買牧スルノ必要ヲ認メ
  タノデアリマスガ、是ガ財源及買收代金ニ
  付テハ、朝鮮ト同樣臺灣事業公債法ノ起債
  法定額ヲ增加スルノ必要ヲ生ジマシタ、又
  關東州ニ於キマシテモ、大連ニ於ケル上水
  道ノ擴張ヲ行フ計畫ヲム丑テマシタ所、其經
  費支辨ニ付テハ是亦公債財源ニ待シテ外ア
  リマセヌノデ、關東州事業公債法ノ起債法
  定額ヲ改訂スルノ必要ヲ生ジタノデアリマ
  ス、以土ノ理由ニ依リマシテ朝鮮事業公債
  法改正法律案、臺灣事業公債法中改正法律
  案、及關東州事業公積法中改正法律案、此
  三ツヲ提出致シタ次第デアリマス、何卒御
  審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマ
  ヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=83

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• 084・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第十一、右
  各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題
  ト致シマス
  第十一右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

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• 085・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ委員ノ數ヲ十八名ト
  シ議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマ
  ズ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 086・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
  シマス-日程第十二、商事非訟事件印紙
  法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、司
  法政務次官本田恒之君
  第十二商事非訟事件印紙法中改正法
  律案(政府提出)第一讀會
  商事非訟事件印紙法中改正法律案
  商事非訟事件印紙法中左ノ通改正ス
  第一條第二項ヲ削ル
  第四條乃至第七條削除
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ際未タ終局計算ニ至ラサル破
  產手續ニ在リテハ財團ノ全部ニ付印紙ヲ
  貼用スルコトヲ要セス
  大正十五年法律第六十五號第三項ヲ削ル
  〔政府委員本田恒之君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=86

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• 087・本田恒之

  ○政府委員(本田恒之君)　商事非訟事件印
  紙法中改正法律案提案ノ理由ヲ御說明申上
  ゲマス、商事非訟事件印紙法第四條乃至第
  七條ハ、破產ノ配當ニ當リマシテ印紙ノ貼
  用ヲ命ジマスル規定デアリマスガ、破產財
  團ノ額ガ極メテ僅少ノ場合ガ多イノデアリ
  マシテ、右印紙貼用ノ爲ニ財團ノ額ノ減少
  ヲ來サシメマス事ガ往々アリマス、斯ノ如
  キハ實ニ破產債權者ニ對シテ酷ナル結果ヲ
  生ジマスルノミナラズ、今次ノ稅制整理ノ
  趣旨ニ鑑ミテ、此制度ハ之ヲ廢止スルヲ適
  當ト認メテ之ヲ提案致シタ次第デアリマ
  ス何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希
  望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=87

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• 088・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第十三、右
  議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題
  ト致シマス
  第十三右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=88

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• 089・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ政府提出登錄稅法中
  改正法律案外三件ノ委員ニ併託セラレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=89

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• 090・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議ハナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク
  決シマス-日程第十四、九州製鋼株式會
  社ノ工場等ノ買收代金ニ關スル法律案ノ第
  一讀會ヲ開キマス、商工大臣藤澤幾之輔君
  第十四九州製鋼株式會社ノ工場等ノ
  買收代金ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會
  九州製鋼株式會社ノ工場等ノ買收代
  金ニ關スル法律案
  第一條政府ハ九州製鋼株式會社所屬ノ
  工場構內ニ於ケル一切ノ設備及其ノ敷
  地竝其ノ地先埋立地ノ買收代金ヲ五分
  利附國債證劵ヲ以テ交付スルコトヲ得
  第二條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
  ル爲六百四十六万八千九百圓ヲ限リ公
  債ヲ發行スルコトヲ得
  公債ノ交付價額カ前項ノ金額ニ達セサ
  トルキハ其ノ差額ヲ補塡スル爲前項ノ制
  限以外ニ公債ヲ發行スルコトヲ得但シ二
  十五圓未滿ノ端數ハ之ヲ額面二十五圓
  トス
  第三條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
  交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
  ヲ定ム
  第四條本法ニ依リ發行シタル公債及之
  カ借換ノ爲起債シタル國債ハ製鐵所特
  別會計ノ負擔トス
  附則
  本法ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=90

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• 091・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　現今我國ニ於
  ケル鋼材需用高ハ平均年額約百六十万理デ
  アリマス、之ニ對スル內地ノ製出高ハ大正
  十四年度ニ於テ百十万瓲ニ達シテ居ルノデ
  アリマス、然レドモ尙ホ年額五十万理内外
  ハ之ヲ輸入ニ仰ガナケレバナラヌ狀態ニ在
  ルノデアリマス、故ニ鋼材生產增加ノ必要
  ト云フモノハ益〓緊切ヲ加ヘテ居ルノデアリ
  マス、九州製鋼株式會社工場ハ大正九年ノ
  建設ニ係ルモノデアリマシテ、其設備ハ當
  時ノ米國ノ最新式ノモノヲ採用致シタモノ
  デアリマス、建設後試運轉ヲ致シマシタバカ
  リノ、未ダ一回モ其作業ヲ行ッタコトハナ
  イノデアリマスケレドモ、常ニ十分ナル手
  入ヲ施シマシテ、恰モ新設當時ノ狀態ヲ維
  持シテ居ル有樣デアリマス、サレバ今日ニ
  於テモ尙ホ本邦工場中稀ニ見ル新式製鋼所
  タルヲ失ヒマセヌ、故ニ本工場ヲ買收致シ
  マシテ、製鐵所現存ノ工場ト能ク聯絡ヲ保
  チマシテ作業ヲ行ヒマスルニ於テハ相當
  ニシテ而モ有利ニ鋼材ノ生產ヲ爲スコトガ
  出來ルノデアリマス、而シテ九州製鋼株式
  會社ノ買收ニ關シマシテハ、同社財產ノ中、
  製鋼所ノ作業上必要ナルモノニ付キマシテ
  數名ノ評價委員ヲ舉ゲマシテ之ヲ評價致サ
  セマシテ、其得タル所ノ評價額ヲ以テ之ヲ
  買收セント致スノデアリマス、此支拂代金
  ハ製鐵所特別會計ノ經理上現金ノ交付ニ代
  ヘマシテ、五分利附國債證劵ヲ以テ之ヲ交
  付スルノガ最モ適當デアルト認メタノデア
  リマシテ、卽チ本案ヲ提出致シマシタ所以
  デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アラン
  コトヲ希ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=91

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• 092・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シ質疑
  ノ通告ガアリマス、羽室庸之助君
  〔羽室庸之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=92

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• 093・羽室庸之助

  ○羽室庸之助君　今囘政府カラ御提出ニナ
  リマシタ此九州製鋼株式會社ヲ買牧スルト
  云フ案、是程國民ノ疑惑ヲ起ス所ノ案ハナ
  イノデアリマス、此國民ノ疑惑ヲ除キ去ルト
  云フコトガ、最モ必要デアルト信ジマスガ
  故ニ、私ハ此疑感ニ對シテ、政府當局者ニ
  三ツノ質問ヲ致シタイノデアリマス、御承
  知ノ通リ此九州製鋼會社ナルモノハ、歐洲
  大戰亂ノ時、鐵ノ最モ高價ナル時ニ、安川
  氏ガ計畫サレタモノデアリマス、而シテ安
  川氏ハドウシテモ日支親善ノ實ヲ擧ゲルニ
  ハ支那ノ資本ト提携シテ事業ヲ經營スル
  コトガ必要デアルト云フ立派ナル考カラ、
  支那人ノ方カラ五百万圓出シ、安川氏ノ方
  カラ五百万圓、都合一千万圓ノ資本ヲ出シ
  合ッテ、而シテ支那人ノ方カラハ自國ニ產出
  スル所ノ銑ヲ供給シ、安川氏ハ自分ノ御所
  有ノ石炭山カラ石炭ヲ供給スルト云フコト
  デ、此モノガ成立ッタノデアリマス、然ルニ
  今回此議案ヲ見テ見マスルト、實ニ私ハ驚
  イタノデアリマス、要スルニ此議案ノ結果
  ハドウナルカト云フト、一會社ノ損失ヲ全
  部國民ニ負擔サセルト云フ結果ニナルノデ
  アリマス、何故デアリマスカト一云フト、此
  安川氏ノ製鋼所ナルモノハ、今日マデ何ガ
  故ニ火ヲ入レナンダノデアリマスルカ、要
  スルニ火ヲ入レテモ引合ハヌト云フ、此點
  ノ爲ニ今日マデ是ガ錆ダラケニナッテ抛棄
  セラレテ居ルノデアリマス、何ガ故ニ政府
  ハ之ヲ買牧スルト云フコトニナッタカ其
  事ニ付テドウ云フ話ノ經過ヲ迪ヲテ〓今日マ
  デニナッタノデアルカ、安川氏對政府、同時
  ニ八幡ノ製鐵所、此三ツノ關係ニ付キマシ
  テ話ノ進行ノ程度ヲ御聞キ致シタイノデア
  リマス、私ガ之ヲ玆ニ申上ゲルノハ、安川
  氏ハ御承知ノ通リ人格ノ御方デアリマス、
  私ハ安川氏ノ人格ヲ信ズルガ爲ニ、安川氏
  ハ自分ノ損ガ行ッタト一云フ爲ニ、此立派ナ
  ル設立ノ當時ノ精神ヲ忘レテ、政府ニ屈シ
  テ之ヲ買上ゲテ吳レナドト云フ不都合ナコ
  トヲ强要サレタコトハナイト私ハ信ズルノ
  デアリマス、故ニ寧ロ是ハ政府ノ方ガラ、
  斯ウ云フ所ノ理由ニ依テ安川氏ニ之ヲ强
  要サレタモノデナイカト思フノデアリマ
  ス、ツレハドウ云フ理由カト云フト、折角
  安川氏ガ一千万圓ノ資本ヲ投ジテ、支那人
  ト提携シテ日支親善ノ實ヲ擧ゲヤウト云
  フ、其事ニモ拘ラズ、之ヲ唯、抛棄シデ置
  イテ、サウシテ之ヲ錆ダラケニシテ、玆ニ
  鐵ノ生產-鋼鐵ノ生產ヲ曾スコトノ出來
  ナイト云フコトハ、國家ノ製鋼業ノ上ニ大
  ナル損失デアルガ故ニ、之ヲドウシテモ政
  府ガ買收スルト云フコトハ相互ノ爲ニ便
  利デアルト云フ、此一般ノ〓念カラ或ル技
  術家ノ爲ニ騙マサレテ、之ヲ政府ガ買上ゲ
  ルト云フコトヲ强要サレタモノデナカラウ
  カト、私ハ左樣ニ推察ヲ致スノデアリマ
  スル、併ナガラ推察-矢張想像ハ想像デア
  リマスカラ、私ハ之ヲ皆サント共ニ政府當
  局者ニ御伺致シタイノハ、ドウ云フ關係
  デ此處マデ此話ガ進行致シタカ、安川氏
  對政府、對八幡ノ製鐵所、此關係ニ付テ、
  其經緯ノ話ノ進行ノ程度ヲ、最モ明瞭ニ說
  明ヲ願ヒタイノデアリマス、次ニ私ハ政府
  當局ニ御伺致シタイノハ是迄事業ノ性質
  ニ於キマシテ、政府ガヤッテ損ノ立ツモノ
  ヲ、民間ノ經濟ニ依シテ之ヲ行ヘバソレ
  ガ有利ニ展開スルト云フ狀態ニ在タノデ
  アリマスル、然ルニ此安川製鋼所ニ限ノテ、
  安川氏ガ火ヲ入レタラバ損ガ行クガ、政府
  ガ火ヲ入レタラバ茲ニ引合フト云フ、ドウ
  云フ計算ニ依シテ、其引合フト云フコトヲ
  御證明下サルカ、私ハ其計算ノ基礎ヲ御伺
  致シタイノデアリマス、次ニ私ハ此八幡メ
  製鐵所ナルモノヽ將來ノ經營ノ大方針ヲ承
  リタイノデアリマス、此八幡ノ製鐵所ナル
  モノハ、今日唯、徒ニ鋼鐵ノ分量ヲ殖スト云
  フ、其分量ヲ殖スト云フ一點ノ爲ニ、經濟
  ヲ無視シ借金ヲシテ、唯製鐵所ノ分量ヲ殖
  シサヘスレバソレデ宜イト云フ、洵ニ放慢
  ナル遣方ニ付テ今後事業ヲ經營スルノデア
  リマスルカ、或ハ今日ノ製鐵所ナルモノハ、
  民間ノ製鐵所ト同ジ所ノ仕事ヲ爲シテ、民
  間經營ノ仕事ニ妨害ヲ與ヘルト云フコトニ
  ナッテ居リマスカラ、是ハドウシテモ作業分
  野ノ點ニ於テ、民間ノ事業ト衝突ヲ來サヌ
  ヤウニ、互ニソコヲ整理シテ、整理ノ曉ニ
  ドウシテモ八幡ノ製鐵所ヲ擴張シナケレバ
  ナラヌカラ、此論點ニ到著シタ時ニ、八幡
  ノ製鐵所ノ儲ケタル所ノ金ニ依シテ自然ニ
  擴張サレルコトヲ、私ハ希望致スノデアリ
  マス、其大方針ニ付キマシテ、今日マデ八
  幡ノ製鐵所ハドウデアリマスルカ、今日八
  幡ノ製鐵所ニ投ジテ居ル所ノ金ハ一億四千
  万圓デアリマスル、而シテ其上ニ約五千万
  圓ノ借金ヲ背負ウテ居ルノデアリマス、故
  ニ國民ノ懷カラ二億万圓ト云フ金ヲ搾リ出
  シテ、之ヲ八幡ノ製鐵所ニ注込ンデ居ルノ
  デアリマス、而シテ其二億万圓ノ資本ヲ投
  ジテ三十年ノ經歷ヲ持チ、其間一文ノ營業
  稅モ拂ハズ、所得稅モ拂ハズシテ、サウシ
  テ今日幾何ノ利益ヲ擧ゲテ居リマスカ、其
  利益ハ僅ニ百二十万圓デアリマス、之ヲ民
  間ノ經營ニ依シテ考ヘマスレバ、五千万圓
  ノ資本ナルモノハ政府ノ低利資金デアルガ
  故ニ、茲ニヤット帳面ヅラニ於テ百二十万
  圓ノ利益ヲ出シテ居ルノデアリマス、併ナ
  ガラ是ガ吾々民間事業ノ其借金ノ利子ヲ相
  當ニ拂フナレバ儲カルドコロデハナイ、
  損ノ行ク計算ニナッテ居リマス、斯樣ナ所ノ
  放漫ナル遣方ヲシテ、今日マデ八幡ノ製鐵所
  過去ノ歴史ニ於テ何ヲ爲シテ居リマス
  カ、此東京ノ所謂實業家ナルモノガ、アノ八幡
  ノ近邊ニ東洋製鐵所ナルモノヲ拵ヘ、而シ
  テ其東洋製鐵所ニ火ヲ入レテ見タナラバ、
  茲ニ約一日一千圓ト云フ損ガ行ク爲ニ、何
  トカシテ此點ヲ這レルト云フ爲ニ、無理ヤ
  リニ此東洋製鐵所ナルモノヲ委託經營ト云
  フ所ノ名ニ依シテ、八幡製鐵所ニ引繼イデ
  シマッテ、而シテ最近ニ至ッテハ其惡辣ナル
  所ノ實業家ナル者ガ僅ニ自分ノ損失ヲ這レ
  テ、其上ニ今回ハ政府カラ三十万圓宛此八
  幡製鐵所カラ搾取シテ居ルノデアリマス、
  斯樣ナル所ノ不都合ヲ爲シ、サウシテ其上
  ニ今回ハ又ソレニモ懲リズシテ、此引合ハ
  ヌ所ノ八幡ノ製鐵所ガ、此引合ハヌ所ノ九
  州製鋼所ナルモノヲ、國民ノ資本ヲ取上ゲ
  テ-其資本ハ六百何十万圓ト云フ資本ヲ
  注込ンデ、サウシテ玆ニ放漫ナル所ノ遣方
  ヲ再ビ繰返スト云フコトハ、之ニ對シテ政
  府當局者ハドウ云フ御考ヲ持クテ居ラレマ
  スカ、私ハ此點ニ付テ政府當局ノ最モ明瞭
  ナル所ノ答辯ヲ承リタイノデアリマス、御
  承知ノ通リ名ヲ國家產業ト云フモノニ隱レ
  テサウシテ惡イ資本家ナル者ガ惡イ政治
  家ト結託シテ、サウシテ自分ノ懷中ヲ肥サン
  ガ爲ニ、自分ノ此仕事ヲ唯、徒ニ國家產業
  トカ奬勵トカ、保護トカ、斯樣ナ所ニ名ヲ
  藉ッテ、斯ウ云フ惡イ事ヲスルト云フコト
  ハ國民ノ思想ヲ最モ惡化スル所ノ動機デ
  アリマス、而シテ今囘此九州製鋼株式會社
  ナルモノヲ買收スルニ付テハ、六百ナンボ
  ト云フ所ノ公債ヲ御出シニナルト云フコト
  デアリマス、今日現政府ハ何ヲ爲シテ居ラ
  レマスカ、今日マデ此國民ノ一番肝腎ナル
  所ノ〓育ノ基礎ナル所ノモノニ對シテ、五
  百万圓ヲ出スト云フコトマデ御約束ニナッ
  テ居ルニモ拘ラズ、其五百万圓ト云フ金ヲ
  御出シナサラズ、今日ハ財政困難ノ狀態デ
  アルト仰シヤッテ居リマス、併ナガラ御承
  知ノ通リ今日此日本ノ國ニ於キマシテ、同
  ジ稅金ヲ出スナラバ最モ愉快ナル稅金ヲ出
  スノガ國民ノ喜ブ所デアリマス、最モ愉快
  ナル稅金ハ何デアルカト云フト、他人ノ子
  及自分ノ子供ヲ〓育スル〓育費、此〓育費
  ガ最モ愉快ナル所ノ稅金デアリマス、然ル
  ニ此愉快ナル所ノ稅金ヲ出サズシテ、サウ
  シテ一番不愉快ナル稅金ハ何デアルカト云
  フト、警察費ト監獄費ガ最モ不愉快ナノデ
  アリマス、此國民ヲ惡化スルト云フ所ノ問
  題ハ、警察費ト監獄費ヲ負擔サス所ノ結果デ
  アリマス、故ニ私ハ此邊ノ事ヲ能ク御考ヲ
  願ヒタイ、幸ニ若槻首相ハ此處ニ居ラッシ
  ヤイマセヌケレドモ、此間ノ施政方針ノ第
  一日ニ於テ、政治ノ公明ヲ叫バレタ人デア
  リマス、正義ヲ主張サレタ人デアリマス、
  其御方ガ今日ニナッテ萬一國民ノ疑惑ヲ解
  カズシテ、サウシテ此案ガ通過スルト云フ
  コトニナッタナラバ、國民ハ如何ナル疑惑ヲ
  持チマスルカ、是ハ必ズ若槻君ガ到頭行掛
  ケノ駄賃トシテ火事場泥棒ヲシタ(「火事場
  泥棒トハ何ダ」ト呼フ者アリ其他發言スル
  者多シ)此非難ヲ受ケ、此疑惑ヲ受取ルナ
  ラバ、洵ニ若槻首相ノ爲ニ遺憾ニ堪ヘマセ
  ヌ、故ニ私ハ此案ニ付テドウシテモ斯樣ナ
  ル事ノナイト云フコトヲ····(「火事場泥棒
  トハ何ダ」ト呼フ者アリ其他發言スル多シ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=93

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• 094・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　暫ク御靜肅ニ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=94

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• 095・羽室庸之助

  ○羽室庸之助君(續)　能ク聽キナサイ、若
  シ國民カラ斯ウ云フ疑惑ヲ受ケタ時ニハ
  若槻首相ノ爲ニ甚ダ遺憾デアルト云フコト
  ヲ私ハ言ハウトシタノデアリマス、然ルニ
  其言葉ノ終ラヌ先ニ皆サンガ妨害ヲサレタノ
  デアリマス、斯樣ナル所ノ疑惑ヲ萬一若槻君
  ガ受取ルト云フコトデアッタナラバ、洵ニ
  若槻君ノ爲ニ之ヲ殘念ニ思フノデアリマ
  ス、同時ニ又國民ノ疑惑ヲ解カズシテ、此
  案ガ通過スルト云フコトニナッタナラバ、
  安川翁ノ名譽ノ爲ニモ甚ダ遺憾デアリマ
  ス故ニ私ハ幸ニ憲政會ノ四十何人ト云フ
  若手ノ方ガ、ドウモ年寄ノ腰ガ弱イカラド
  ウシテモ其腰骨ヲ押サナケレバナラヌト云
  フコトデ非常ニ奮勵サレテ居ルト云フコト
  ヲ承リマシタカラドウカ其勇氣ヲ御持チ
  下サルナラバ、此案ヲ否決スルヤウニ極力
  御骨折ヲ下サランコトヲ切ニ願ヒマス、今
  日ハ此三箇條ニ付テ政府ノ最モ明確ナル答
  辯ヲ承リタイト思ヒマス
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=95

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• 096・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　羽室君ノ御質
  問ニ對シテ答辯ヲ致シマス、唯〓併ナガラ
  御質問中頗ル御熱心ニ御述べニナッタ其勢
  ガ走ッテ、火事場泥棒ト云フヤウナコトマ
  デニ及ンダノデアリマスガ、併シ是ハ敢テ
  本問題ニ直接ノ關係ノナイ事デアリマスカ
  ラ、全ク要點ダケニ付テ私答辯ヲ致シマ
  ス、羽室君ノ冒頭ニ御述べニナッタ所ヲ承
  リマスト云フト、本問題ノ提出ニ付テハ
  何カ國民ノ大ナル疑惑ヲ招イタカノ如ク御
  述ベニナッテ居リマス、私ハ左樣ニハ全ク考
  ヘマセヌノデアリマス、併ナガラ既ニ疑惑
  ヲ懷ク者ガ、國民ト云フヤウナ大キイ包括
  的ノ言葉ハ兎ニ角ト致シマシテ、羽室君御
  一人ガ旣ニ疑感ヲ懷イテオキデニナル以上
  ハ其疑惑ヲ解クコトハ最モ肝要ノコトノ
  ヤウニ思フノデアリマス、併シ一々御述べ
  ニナッタコトニ對シテ議論ヲ致シマスコト
  ハ、徒ニ時間ヲ費スニ過ギヌノデアリマス
  カラ、詳細ノ點ニ付テハ委員會デ遺憾ナク
  說明ヲ致シタイト思フノデアリマス、第一ニ
  一體此製鋼所ノ工場ノ賣買ハ安川氏カラ言
  出シタノデアッタノデアラウカ、又ハ政府
  側カラ言出シタノデアルカ、斯ウ云フ御尋
  デアルノデアリマスガ、是ハ私ハ就職以前
  ノ事柄デアリマスカラ、正確ナコトハ申サ
  レマセヌケレドモ、只今私承ル所ニ依ルト、
  製鐵所ノ必要上製鐵所ノ方カラ相談ヲ始メ
  タノデアルト云フコトニ承リマシタカラ、
  今日ノ程度ニ於テハ其如クニ御承知置キ下
  イマシテ差支ガナイノデアリマス、ソレカ
  ラ又安川氏ノ人格ノ高潔ナルコトニ付テ御
  述べガアリマシタガ、私安川氏トハ別ニ交
  際ガナイノデアリマシテ、全ク面識ノ無イ
  間柄デアリマスガ、併ナガラ個人ト致シテ
  私モ安川氏ノ人格ノ高イ方デアルト云フコ
  トヲ傳聞致シテ居リマス、是ハ後ニ何ノ關
  係モ無イヤウデアリマスケレドモ、買收ニ
  關シテ自ラ諸君ノ御參考ニナリ得ル性質ヲ
  持ッタ事柄デアリマスカラ、序ナガラ申シ
  テ置キマス、ソレデ此疑ヲ解クニハ實際ノ
  モノ、價格等ノコトヲ先ヅ以テ明ニ致シマ
  セヌケレバ、唯〓空ニ辯解ヲ致シタノデハ
  御分リニナリマセヌ、故ニ少シ時間ヲ費ス
  ヤウニナリマスケレドモ、極ク簡單ニ而モ
  早ク時間ヲ費サナイ方法デ申上ゲマスカ
  ラ、ドウカ御承知置キヲ戴キタイ、本工場
  ノ實體ト云フモノハ一體ドウ云フモノデア
  ラウカ、又其投資額ト云フモノハドノ位ノ
  モノデアッタデアラウカ、斯ウ云フコトヲ先
  ニ申上ゲナケレバナリマセヌ、本工場ハ曩
  ニモ說明致シマシタ如ク、大正九年ノ建設
  ニ係リマシテ、其設備ハ當時ノ米國ノ最新
  式ノモノヲ採用致シタノデアリマス、建設
  後試運轉ノ外一回モ作業ヲ行ヒマセヌ、常
  ニ十分ノ手入ヲ施シマシテ、新設當時ノ狀
  態ヲ維持シ來シタコトハ曩ニ申上ゲマシタ
  〓リデアリマス、此製鋼所ノ設備、大要ハ
  ドウ云フコトニナッテ居リマスカト申シマ
  スト、五十〓平爐ガ三基デアリマシテ、此
  鋼塊製造力年額約九万瓲、次ニハ鋼板壓延
  機此鋼板製造力ト云フモノハ年額約三万
  瓲)、其次ニ條鋼壓延機、此條鋼製造力ハ年
  額約四万五千畦デアリマス、只今申上ゲマ
  シタ鋼塊製造力ヨリ致シマシテ、本工場ノ
  鋼材製造能力ト云フモノハ年額約七万〓ニ
  ナルノデアリマス、次ニ前記設備ニ對シマ
  スル建設物、及其他ノ附屬設備、右ノ外作
  業用品及貯藏物品等ヲ合セマシテ、其投資
  額ハ實ニ八百十四万九千七百八十五圓、ソ
  レカラ本工場ノ數地竝ニ附屬用地ハ十万九
  十六坪デアリマシテ、外ニ工場所在地先ノ
  埋立地ガ一万二千三百坪アルノデアリマ
  ス、是等ノ土地ニ對スル投資額ハ二百五
  十万八千二百五十二圓トナルノデアリマ
  シテ、投資總額合計ハ一千六十五万八千三
  十七圓餘トナリマス、之ニハ維持費デアル
  トカ、或ハ金利等デアルトカ云フモノハ一
  切含マッテ居リマセヌ、ソレカラ然ラバ此
  一千六十五万八千三十七圓餘投資シタ、其
  工場敷地ヲ買牧スルニ當ノテハドウ云フ方
  法ヲ以テ買收シタノデアルカ、斯ウ云フコ
  トニ付テ、卽チ本工場買收價格決定ノ標準
  ニ付テ申上ゲタイト思フノデアリマス、只
  今申上ゲマシタ會社所有ノ諸物件及土地ノ
  中製鐵所ニ於テ作業上必要ナルモノヽミヲ
  實地ニ就テ選擇致シマシタルニ、之ニ該當
  スルモノハ曩ニ申上ゲマシタ一カラ四マデ
  ノモノデアリマス、ソレカラ又土地ハ全部
  デアリマセヌデ、其土地ノ中ノ七万二千七
  百坪デアリマス、此分ノミヲ買收スルコト
  ト致シマシテ、其他ハ買收ヲ致シマセヌノ
  デアリマス、勿論是ハ土地ノ外ハ大シタモ
  ノハ除カレテ居ラヌノデアリマス、前記買
  收見込諸設備、及土地ニ對スル會社ノ投資
  額ハ曩ニハ總テノ投資額ヲ申上ゲマシタ
  ガ、今度ハ買收見込ノ分ニ付テノ會社ノ投
  資額ノコトヲ申上ゲルノデアリマスガ、ソ
  レハ九百六十一万八千九十四圓トナルノデ
  アリマス、本工場ノ買收價格ハ數名ノ評價委
  員ヲ設ケマシテ、之ヲ評價セシメタルモノ
  デアリマシテ、其評價ノ方法ト云フモノ
  ハ全然會社ノ投資額ニ依シタモノデハゴ
  ザイマセヌ、買收見込ノ諸設備ニ付テハ
  先ヅ以テ今日製鐵所ニ於テ新ニ是ト同樣ノ
  モノヲ建設スルトシタナラバ、ドノ位ノ金
  ヲ要スルノデアラウカト、斯ウ云フ風ニ見
  タ後、相當ノ値引ヲ行ッテ、以テ最モ妥當
  ナル評價方法デアルト一云フコトヲ認メマシ
  テ、其現場等ニ依リマシテ詳細ニ調査見積
  ノ結果、其金額ハ九百六十一万八千九十四
  圓投資シタモノヲ、六百二十六万八千六百
  三十五圓餘ニ一應評價致シタノデアリマス、
  然ルニ是ハ製鐵所ガ今玆ニ之ヲ新設セント
  スルニハ、ドノ位ナ金ヲ掛ケレバ宜イカト云
  フ點カラ來タノデアリマスルガ、然ルニ曩
  ニ大體ニ於テ說明申上ゲタ時ニ申述べマシ
  タ通リニ、成程此工場ハ新設當時ノ狀態ヲ
  維持シテ居ルニ相違ゴザリマセヌ、此處デ
  一寸附加ヘテ置キマスルガ、政府ハ錆ダラ
  ケノ工場ヲ買シタト、斯ウ仰シヤイマスガ、
  是ハ常識ニ於テ御考ニナリマシテモ、私ハ
  斯道ニ於テハ甚ダ素人デアリマスケレド
  モ、此機械ナルモノハ總テ、何デモモウ總
  テ手入レヲ怠タタラバ順次ニ腐レガ進ン
  デ行シテ、全ク用ヲ爲サヌヤウニナル、ツレハ
  何デモサウナルサウデアリマス、殊ニ斯ウ云
  フ大金-千万圓モ掛ケタモノヲ今用ヒナ
  イカラト云ッテ打遣シテ置イテハ、モウ腐ッ
  テ役ニ立タナクナル、ソレダカラドウシテ
  モ是ハ手入ト云フモノハ怠シテハナリマセ
  ヌ、其時既ニ抛棄シテシマフ、大勇氣ヲ持ッ
  テ居リマス場合デアリマスレバ、後ニ自分
  ガ之ヲ用ヒルヨリハ、賣ッテ金ニシヤウカト
  云フ考ノアル者ハ、錆ダラケナドニシテ打
  遣ッテ置クモノヂヤナイサウデアリマス、
  是ハ私素人デアリマスカラ分リマセヌガ、
  聽イテ居ル所ヲ念ノ爲ニ申上ゲテ置キマス、
  今申上ゲマシタ通リ新シイモノト同樣デア
  ルガ兎ニ角古イト云フ點ニ於テハ同ジデア
  ル、何年カ先ニ拵ヘテサウシテ用ヒナイモ
  ノダト云フコトガ事實デアリマスカラ、之
  ヲ今拵ヘタモノト同ジ値段デ買フト云フコ
  トハ、ドウシテモ面白タナイカラ、何モ茲ニ
  附ゲ込ンダ譯デモ何デモアリマセヌケレド
  モ、相當ノ考ヲ以チマシテ、兎ニ角古物デア
  ルンダカラ値段ノ如何ト云フヨリモ、先ヅ
  古物ト云フ點カラ二割引クガ穂當デアラウ、
  斯ウ云フコトデ算盤ヲ採リマシテ現ハレタ
  所ノ金額ハ五百一万四千九百八圓ト査定サ
  レタノデアリマシタ、ソレカラ次ニ前記ノ
  所有土地七万二千七百坪ニ付テハ、其坪當
  リ價格ヲ二十圓ト致シマシテ、百四十五万
  四千圓トナリマス、-百四十五万四千圓、
  二十圓坪當リデアリマス、其總額ガ六百四十
  六万八千九百圓、斯樣ニ評價致シマシテ、政
  府ハ此評價ヲ以チマシテ當ヲ得タモノトシ
  テ、此價格デ買收スルコトニナッタノデア
  リマス、元々安川氏等ガ投資致シマシタ時
  ヨリハ、半額ニモ當ラヌ金額デ買收致スノ
  デアリマス、而モ古イトハ申シナガラ、拵
  ヘタバカリデ未ダ使用シ夕事ガナク、サウ
  シテ十分ニ手入ガサレテ、恰モ新シイモノ
  ト同ジヤウナモノデ、我國ノ現在ニ於ケル
  工場中ノ最新式ノ製鋼所ト言ッテ差支ナイ
  位ナモノデアリマスカラ、私共ハ高イ價格
  トハ思ハレマセヌ、此評價委員ノ結果ヲ容
  レテ、安川氏等ガ應諾シタト云フノハ要
  スルニ安川氏等ノ人格ノ然ラシムル所モ、其
  一原因ヲ成シテ居ルノデハナイカト考ヘル
  コトデアリマス、ソレカラ次ニ答辯致サン
  ケレバナラヌコトハ、一體政府ガヤッテ儲
  ケノナイモノヲ、民間デヤレバ儲ケガアル、
  然ルニ安川氏等ガヤッタ此會社ノ事業ガ、
  今日マデ實際ニ行ハレナイデ居ッタモノヲ、
  政府ガヤレバ有利ニナルト云フコトハ、
  體曩ニ御話ニナリマシタ政府ガヤレバ損ガ
  アッテ、民間ガヤレバ得ガアルト云フ、此原
  則ヲ吾々ハ從來承ッチ居フタ、自分等モ亦サウ
  云フコトヲ唱ヘタコトモアリマスガ、サウ
  云フ點カラ云ヘバ成程御說ノ通リノ結論ヲ
  見ルニ至ルヤモ知レマセヌガ、併ナガラ是ハマ
  ルデ違フ、其譯ハ九州製鋼株式會社ガ本工
  業ヲ獨自ニ自分デ創業セント致シマシテ
  モ、其原料タル銑鐵ヲ得ルコトガ甚ダ困難
  デアル、何等特殊ノ便宜ヲ持,テ居リマセ
  ヌ、且又本工業ノ如キ小規模單獨ノ設備デ
  ハ、古ク甚ダ狹イモノデアリマスルカラ、
  此關係カラ致シテ從來操業困難デアッタノ
  デアリマスケレドモ、之ヲ官設製鐵所ト
  合同作業ヲ爲スニ於キマシテハ、銑鐵ハ製鐵
  所デハ自分デ造ルノデアリマス、ソレカラ
  又借入作業中ノ東洋製鐵所戶畑工場ニ於テ
  モ銑鐵ノ生產ヲ致シテ居リマス、ソレカラ
  漢冶萍、滿鐵等方々カラ製鐵所デハ遺憾ナ
  ク此銑鐵ヲ今日ノ所ニ於テハ供給ヲ受ケテ
  居ルノデアリマシテ、此九州製鋼所ノ如キ
  原料ノ不如意ニ陷ッテ居ルト云フヤウナコ
  トハ全ク無イノデアリマス、然ルニ此製鐵
  所ニ於キマシテハ私マダ向フニ參ッテ見マ
  セヌ、參シテ見タク思シテ居リマシタケレドモ
  實行ガ出來兼ネテ居リマス、此實際ノ場所
  ハ丁度海ニ面シテ、眞中ニ政府ノ製鐵所ガ
  在ッテ其右ノ方ニハ直接シテ東洋製鐵所ガ
  アル、ソレカラ左ノ方ニハ是モ直グ接壤シ
  テ何等其處ニ隔リガナクシテ唯、往來一ツ
  隔テヽ九州製鋼所ト云フモノガアル、東洋製
  鐵所、政府ノ製鐵所、製鋼所、斯ウ云フヤ
  ウナ一ツノモノニナッテ居ルノデーアリマヌ
  カラ、製鋼ヲ致シマスニ付テモ銑鐵ヲ熔カ
  シタ儘ニ、直グ機械デ以テ向フニ持シテ行
  クコトモ出來ルト云フ(笑聲起ル)實際サウ
  ダサウデアリマス、是ハ私ノ考デハナク
  テ、唯〓私ハ受賣ヲ致シテ居ルノデアリマス
  (拍手)サウ云フヤウナコトニナッテ居リマ
  シテ色ミナ便宜ガアリ、又大量ノ生產デア
  リマスカラシテ、製鐵所デヤリマスト云フ
  ト、ドウシテモ算盤ガ採レナケレバナラヌ
  モノヲ、今申シマシタヤウナ製鋼所ガ單獨
  デヤッタンデハ、是ハドウシテモ今日ノ場
  合ニハ算盤ガ採レナイ、ソコデドウセ政府
  ノ方ニ於キマシテハ、製鐵所ノ擴張ノ結果
  トシテ斯ウ云フモノガナクチヤナラヌ、ナ
  クチヤナラヌコトニ迫タタノノアアリマス
  カラ、安川氏ノ方ニ相談ヲ致シマシテ、サ
  ウシテ之ヲ買收スルコトニナル、安川氏ハ
  アヽ云フ人格者デアリマス以上、ソレハ未
  練ガ無カッタ譯デハアリマスマイケレドモ、
  國家ノ爲ニモナルコトデアリマスカラ-
  併ナガラドウセ寶ノ持腐レト云ッチヤ相濟
  ミマセヌケレドモ、事實ドウモ持得ナイモ
  ノニ對シテ金ヲ掛ケテ行ッテ居ルノデアリ
  マスカラ、是ハモウ矢張安クテモ仕方ガナ
  イ、寧口政府ノ要求ニ應ジ夕方ガ宜イ、斯
  ウ云フ考ヲ以テ應ゼラレタノデハアルマイ
  カト思フ、詰リ斯ノ如クスルコトハ全ク政
  府ノ必要上カラ起シテ居ルノデアリマス、是
  ニ於テ私羽室君ニ一言申上ゲタイコトガア
  ルノデアリマス、製鐵所ノ今後ニ於ケル施
  設方針ノ事ニ付テ御尋ニナリマシタガ、
  實ハ是ハドウモ簡單ニ述ベルコトハムヅカ
  シイ、駈足的ニ申述べテモ差支ナイノデア
  リマスケレドモ、世ノ中ノ疑惑ガ掛ッテ居
  ル、此疑惑ヲ解キタイト云フ御精神ト云フ
  ヤウナコトハ只今申上ゲタヾケデ最早
  御分リニナッテ居ルノヂヤアルマイカト思
  1、御分リニナラナイナラバ、ソレハ別ト
  センケレバ、直グ是ガ問題ニナリマスカ
  ラ-此方針トカ何トカ云フヤウナコト
  ハ時間ニ制限ノナイ委員會ニ於テ十分ノ
  御尋ヲ戴イテ、ソレニ對シテ遺憾ナク御答
  スルコトヲ申上ゲテ、此位ノ答辯ニ止ムル
  コトノ御承諾ヲ得タイト思フノデアリマス
  ガ如何デアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=96

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• 097・羽室庸之助

  ○羽室庸之助君　議長

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=97

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• 098・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　羽室君御質問デ
  ゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=98

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• 099・羽室庸之助

  ○羽室庸之助君　演壇ニ登ッテモウ一遍ヤ
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=99

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• 100・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　羽室庸之助君
  〔羽室庸之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=100

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• 101・羽室庸之助

  ○羽室庸之助君　只今藤澤商工大臣カラ說
  明ヲ聽キマシタ、併ナガラソレハ全ク商工
  大臣ガ技術家ノ言フコトニ騙サレテ居ラッ
  シヤルノデアリマス、技術家ト云フ者ハ玆
  ニ一ツノ癖ヲ持ッテ居リマス、ソレヲ能ク
  御承知ヲ願ヒタイ、ドウ云フ癖デアルカト
  云フト、自分ノ仕事ト云フモノハ成ベクチツ
  トデモ殖シタイト云フ一念ノ爲ニ、經濟ヲ
  無視スルト云フコトガ技術家ノ癖デアリマ
  ス、此技術家ノ癖ニ商工大臣ハ騙サレテ居
  ラッシヤルノデハナイカト思フ、何故ナレ
  バ今此價格ヲ定メルコトニ付テハ明細ノ說
  明ガアリマシタ、私ハ嚴格ナル當路者ハ、
  價格ハ公平ニオヤリニナルト信ジマス、唯、
  私ガ玆ニ質問ヲ致シタイノハ、安川君ガ
  火ヲ入レタラ損ガ行クト云フ、ソレヲ何故
  ニ製鐵所ガヤッタラ得ガ行クカト云フ、其
  計算ノ基礎ヲ御而シヲ願ヒタイ、五十瓲「フ
  アーネス」三基ヲ以テ製鐵所ガヤッテ引合フ
  ト云フコトナラバ、安川氏ガヤッテ引合フ
  ノデアリマス、今日製鐵所ノ最モ急務ナル
  點ハ、作業分野ト云フコトニ進ムノガ一番
  良イ方法デアリマス、何モ總テノ事ヲ製鐵
  所ガヤル必要ハナイノデアリマス、總テノ
  民間ニ於ケル所ノ製鐵所ガ、共々發達スル
  ト云フ分業ノ作用ニ進ムト云フコトガ、是
  ガ製鐵所ノ活キル所以デアリマス、故ニ此
  製鐵所ナルモノハ、自分ノ造ル銑デ引合フ
  ト云フナラバ、其銑ヲ何故ニ安川氏ニ供給
  セヌノデアリマスカ、斯ウ云フ點ニ於テ私
  ハ今商工大臣ノ御說明ニナッタ點ニ付テハ、
  其製品ノ價格、銑ノ價格、其他ニ付テ何等
  計算ノ數字ガ出テ居ナイノデアリマス、唯、
  買入レタ所ノ價格ガ斯ウデアルカラ是デ
  宜イト云フコトデアリマスガ、凡ン物ハ引
  合ハヌ所ノ仕事ナルモノハ只デ貰シテモ
  吾々ハ御斷リヲスルノデアリマス、唯〓引合
  フト云フ計算ガ出テ、ソコニ初メテ價格ト
  云フモノガ出ルノデアリマスカラ、ドウカ
  商工大臣ハ斯ウ云フ基礎ニ於テ今日賣ル値
  段カラ勘定シテ銑ヲ是ダケ、鋼ハ是ダケ、之
  ヲ製品ニ伸セバ斯ウナッテ、之ヲ賣レバ斯
  ウ云フ利益ガアルカラ、其利益カラ計算シ
  テ玆ニ單價ガ斯ウ出タト云フ御說明ヲ願ヒ
  タイノデアリマス、是ハ商工大臣ガ若シ此
  處ニ於テ答辯ガ困難デアルト云フコトデア
  リマシタナラバ、次ノ委員會ニ於テミモ差
  支アリマセヌ、唯〓此問題ヲ最モ明瞭ニシ
  テ國民ノ疑惑ヲ解クト云フコトガ、政治更
  新ノ第一步デアリマスカラ、私ハ疑惑ヲ解
  ク所ノ點ニ於テ、何處マデモ之ヲ追究ヲ致
  シタイノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=101

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• 102・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　曩ニ申上ゲタ
  ヤウナ趣旨デアリマスカラ、詳細ノ事ハ委
  員會デ申上ゲルコトニ致シタイノデアリマ
  ス、唯〓曩ニ申上ゲテ置イテアッタナラバト
  思フコトガ一ツアリマスガ、御參考ニモナ
  ラウト思ヒマスカラ、一寸申上ゲテ置キタ
  イノデアリマス、斯ウ云フ風ナ價格デ買ク
  テ、サウシテ之ニ依シテ作業ヲ行フテ、行ッタ
  結果買受代金ニ對スル所ノ始末ハドウナル
  デアラウカト云フヤウナコトヲ御話スルコ
  トハ、御參考ニモナリ、又若モ疑惑ヲ懷イ
  テ居ル方ガアッタナラバ之ニ依シテ其疑ヲ
  解カレル一端トモナラウカト思フノデアリ
  マく、只今ノ御質問中御述べニナッタ御言
  葉ノ中ニモ、勿論安川氏ト云フヤウナ人格
  者ガ相手デアリマスカラ、胡麻化シノコト
  ノアル筈ハナイノデアリマスカラ、相當ノ
  委員ガ定メタ價格デアルナラバ、是ハ相當
  ト見ナケレバナラヌケレドモト云フ御言葉
  ガアッタ位デアリマスカラ、私ハ此點ニ付テ
  ハ稍〓滿足致シテ居リマス、ソレデ交付公
  債ハ曩ニ申上ゲタ通リ年利五分ノ公債デア
  リマシテ、五十五年償還トシテ發行スルノ
  豫定デアリマス、公債ノ發行價格ハ、勿論
  其發行當時ニ於ケル金融市場ノ狀況ニ依ッ
  テ定マルモノデアリマスカラ、今日ニ於テ
  ハ茲ニ明ニ豫定スルコトハ出來マセヌケレ
  ドモ、今假ニ之ヲ八十六圓三十錢トシテ計
  算致シマスト、公債額面ノ總額ハ七百四十
  九万五千八百五十圓トナリマス、之ヲ五年
  間据置キマシテ、爾後五十年間ニ年々等額、
  平均ニデス、等額元利償還スルモノト致シ
  マスレバ、當初ノ五年間ハ利子ガ年額三十
  七万四千七百五十三圓宛ニナリマス、爾後
  ハ元利年賦額ガ四十一万五百九十八圓宛ト
  ナルノデアリマス、サウシテ本工場ノ操業
  ニ依ル所ノ鋼材生產ハ、曩ニ申上ゲマシタ
  通リ七万瓲デアリマスカラ、之ニ對シマシ
  テ現況ニ依シテ之ヲ計算致シマスト云フト、
  甦當リガ約十一圓、總額約七十七万圓ノ利
  益卜云フモノハ之ヲ期待シ得ルノデアリマ
  スカラ、優ニ只今申上ゲマシタ利子又ハ元
  利年賦金ハ之ヲ償還致シマシテ、相當ノ餘
  剰ヲ生ズベキモノデアリマス、支拂ヒマス
  ルモノハ四十一万五百九十八圓、ソレカラ
  利益ノ方ハ七十七万圓、斯ウナルノデアリ
  マスカラ、之ヲ以テ十分ニ償却シ得ベキモ
  ノト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ瓲
  當リ幾ラ、何ガ幾ラト云フコトヲ此處デ云
  フコトガ出來ナカッタナラバ、委員會デモ宜
  イト云フコトノ仰セデアリマスガ、是ハ出
  來ルトカ、出來ナイトカ云フコトハ別ト致
  シマシテ、委員會ニ御願ヲ致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=102

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• 103・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　古良元夫君
  〔吉良元夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=103

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• 104・吉良元夫

  ○吉良元夫君　私ハ只今議題ニナッテ居リ
  マスル九州製鋼株式會社工場ヲ買收スル政
  府ノ御提案ニ付キマシテ、先刻我國ニ於テ
  最モ此事業ニ於テハ經驗ノアラレル大阪府
  ノ羽室庸之助君カラ熱心ナル御質問ガアツ
  タノデアル、私ハ羽室君ト云フ方ハ噂ニハ
  承シテ居ルケレドモ、初メテ議場デ拜顏ノ榮
  ヲ得タノデアリマスガ、私ハ有體ニ自白致
  シマス、製鐵業ナドト云フコトハ全クノ門
  外漢デ、更ニ存ゼヌノデアリマス、併ナガ
  ラ吾々專門家ニ非ズト雖モ、斯ノ如キ重要
  ナルコトニ付テハ、吾々ノ常識ニ於テ及ブ
  ダケノ注意ト〓究ヲ以テ、此案ガ果シテ國
  家國民ノ爲ニ利益アリヤ否ヤト云フコトヲ
  考察致サンケレバナラヌ責任ノアルト云フ
  コトヲ自覺シテ居ル者デアリマス、故ニ私
  ハ決シテ此政府ノ御提案ノ間ニ疑ヲ挾ムヤ
  ウナ、疑惑ヲ生ズルヤウナモノガアルモノ
  デアルト云フヤウナ、サウ云フ考モ持タヌ
  ノデアリマスケレドモガ、實ニ不思議ナル
  提案デアルト私ノ常識ニヨリ思フノデアリ
  マス、私ハ九州ノ者デゴザイマシテ、此九
  州製鋼株式會社モ數囘拜見ヲ致シタコトガ
  アルノデアル、最近ニ於テハ昨年七月ニモ
  仔細ニ拜見致シタコトガアルノデアリマ
  ス、私ハ斯ウ云フモノヲ拜見スルコトハ至ッ
  テ好キデアリマスカラ、分ラヌナガラ拜見
  ヲ致シマシテ、其組織ノ廣大ニシテ其大規
  模ノ機械ナルコトハ、米國ニ於ケル彼ノ大
  製鐵所ニ稍、髣髴タルモノデアルト云フヤ
  ウナコトモ拜見ヲシタノデアリマスガ、政
  府ガ今俄ニ此會社ヲ御買ニナランケレバナ
  ラヌト云フ必要何レニ在ルヤト云フ點ニ於
  テ、私ハ甚ダ私ノ常識デハ分ラヌノデアリ
  マス、此會社ナルモノハ御承知ノ通リニ尊
  敬スベキ人格ヲ持シテ居ル安川氏其他ガ、製
  鐵業ノ盛ニナリ、我國ノ益〓進步發展スル機
  會ヲ狙ハレテ、大正九年御計畫ヲ立テラレ
  テ非常ナ注意ト努力ヲ拂ハレテ、而モ非常
  ニドウモ放膽的ニ御計畫ニナッタノデアリ
  マスガ、不幸ニシテ其志ガ時勢ト逆行致シ
  マシテ、折角ノ設備ハ出來夕ケレドモガ、
  遂ニ放膽的ニ組織ガ增大デアッタ爲ニ、火
  ヲ入レテモ燃料ヲ要スルコトガ非常デアツ
  テ、到底引合ハナイト云フ爲ニ、是ガ折角
  ノ計畫ガ立チ、廣大ナル總テノモノハ出來
  テ居ルケレドモ、遂ニ事業ヲ中止スルノ止
  ムナキニ至ッテ居ルト云フコトヲ承ッテ居ル
  ノデアリマス、之ヲ政府ガ此五十二議會ニ
  ナッテ、是非共購入致サンケレバ今日ノ場合
  ドウ云フ差支ガアルノデアルカ、私ハ其點
  ガ分ラマノデアル、サナキダニ私ハ甚ダ
  私ノ常識デ分ラヌコトガ澤山アル現內閣
  ノ諸公ガ曾テ政友會内閣ノ時分ニ、事ヲヤ
  リ過ギタ爲ニ放漫政策デアル斯ウ云フコ
  トヲ言ハレテ攻擊サレテ居ルノデアル、其
  結果トシテ金ガ足ラヌカラシテ、公債ヲ募ン
  テ居ル其公債ノ增募ト云フコトハ大變ニ
  國家ノ爲ニ不利益デアル、此公債ヲ增募シ
  タ爲ニ、公債償還ト云フコトニハ、國民ニ
  容易ナラヌ負擔ヲ曾大スルコトデアルカラ
  シテ、公債ト云フヤウナコトハ打切ッテ募
  ラヌノデアル、募ッテハナラヌノデアルト
  高調力說セラレテ居ッタノデアル、而シテ現
  內閣ノ命脈モ將ニ燈火ノ消エントスルヤウ
  ナ有樣ニナッテ居ルノデアル(「ノウ〓〓」)
  是ハ左樣ナコトヲ申セバ、憲政會ノ御方ハ
  腹ヲ立テラレルデアリマセウガ、日本國民
  ハ皆サウ云フ風ニ觀察シテ居ルノデアル
  (「ヒヤ〓〓」ト呼ヒ「直(面目ニヤレ」ト呼
  フ者アリ)眞面目ニヤルノデアル、現ニ今
  △日ノ日程ニ上ッタ分デモ驚クデハナイカ、震
  災手形損失補償公債法案、或ハ朝鮮事業公
  債法改正案、臺灣ニ於テモ關東ニ於テモ、
  此公債法中ニ改正ヲシテ公債ヲ增募シヤウ
  ト云フ案デアル、而シテ又財政ノ餘裕ナキ
  場合ニ於テ國帝ヲ費シテ、無慮七百万圓ニ
  上ラントスル、斯ノ如キモノヲ購入シヤウ
  ト云フノデアル、是ハ甚ダ私ハ不可思議ニ
  感ズルノデアル、凡ン自己ノ内閣ニ於テ、
  誠心誠意仰シヤッタコトハ政治家ハ實行シ
  ナケレバナラヌ、仰シヤッタコトヲ裏切ル
  ヤウナ行ヒガ若シアリトスレバ、所謂ソレ
  ハ嘘吐キ內閣トカ云フヤウナ惡評ガ出來テ
  來ルノデアル(笑聲)私ハ勿論製鋼事業ト云
  フヤウナコトハ、國家進運ノ爲ニ、益〓盛
  ニヤルベキコトデアルト云フコトニ於
  テハ敢テ反對スル者デナイノデアリマ
  スルガ、突如トシテ、又ゾロ公債ヲ募ッテ
  斯ノ如キコトヲヤラネバナラヌト云フ、ソ
  レ程ノ切迫セル事情ニ付テ、私ハ如何ニ常
  識デ考ヘテモ、考ヘ得ナイノデアル、先刻
  羽室君ガ詳シク御述べニナリマシタ通リ、
  恐ラクハ之ヲ御買ニナルト云フコトノ時價
  ニ於テモ、私ハ決シテ餘リ無法ナル高イモ
  ノトモ思ハヌノデアル、大分放資ナサッテ
  居ル御方ハ二割以上若クハ三割以上ニモ
  及バレル損失ヲ是ハ認メテ居ラレルデアラ
  ウト思フノデアリマスガ、決シテ實價ノナ
  イモノヲ無法ニ高ク買フトモ、其樣ナ癖シ
  根性ニ見テ居ルノデハナイノデアリマス、
  之ヲ國家ガ引受ケテヤシテ御覽ニナッタナラ
  バ屹度御損失ノ行ク事業デアルト私ハ信
  ジテ疑ハヌノデアリマス、是ハ觀察若クハ
  想像ニ過ギマセヌカラ、私ノ如キ門外漢ガ
  左樣ナコトヲ申シマシテモ、ソレハ根據ノ
  無コトニ終ルカモ知レマセヌケレドモガ、
  素人ノ見ルコトガ却テ公平ヲ得ルモノデア
  ル、私ハ此場合政府ガ之ヲ御買上ニナッテ、
  オヤリニナッタ結果ニ於テハ、必ズ收支相
  償ハヌコトデアッテ、國民ニ非常ナ負擔ヲ
  擔ハスルモノデアルト確信シテ居ルノデア
  ル、之ヲ政府ハ決シテ左樣ナコトハナイ、
  斯ウ仰シヤルノデアルカ、其明確ナル答辯
  ヲ承リイノデアル、昨年ノ稅制整理ノ如キ
  ニ於テモ、政府ノ仰シヤッタコトハ悉ク實
  際ヲ裏切ッテ居ルノデアル(「ヒヤ〓〓」「簡
  單」ト呼フ者アリ)私ハ決シテ辯ヲ好ム者デ
  ハナイ、最早羽室君ガ大體ノ趣旨ハ御問ニ
  ナッテ居ルケレドモガ、私ハ先刻藤澤商工
  大臣が斯樣ナコトヲ仰セラレタニ付テ、尙
  ホ是非共伺ハナレバナラヌ爲ニ登壇シタノ
  デアル、此機械萬端總テノ物ハ米國最新
  式ノ物デアッテ、實ニピカ〓〓シテ居ッテ、
  何トモ云ヘヌ立派ナ物デアルト云フコトデ
  アッタガ、貴方ハ何時ソレヲ御覽ニナッテ、左樣
  ナコトヲ仰シヤッタノカ、私ハ素人デアルカ
  ラ、錆ダラケノ物デ、役ニ立タヌ物デア
  ルト云フコトハ申上ゲマセヌケレドモ、今
  政府デ之ヲ御引受ニナッタナラバ、思ハザ
  ル支障ガ參テテ來ルモノト私ハ信ジテ居ル
  者デアリマス、現在或ル部分ニ於テハ、非
  常ニ錆ガ入ッテ居ルノデアリマス、又非常
  ニ不完全ナ部分ガ、吾々ノ素人ノ眼ニモ見エ
  ルノデアリマス、其點ニ於テハ先刻ピカ
  ピカシテ居マテ、總テノコト、保存耐久ノ
  爲ニ、一般ノ手入萬端ハ行屆イテ居ルト云
  フ御話デアルケレドモガ、私ノ昨七月ニ拜
  見シタ模樣ニ於テハ一全ク商工大臣ノ仰セ
  ラレルコトハ反對ノ結果デアッタノデア
  リマス、其後ハ無論私ハ見マセヌケレドモ、
  七月ノ後ニ又磨イテ非常ナ手入ヲシタカモ
  知レマセヌケレドモガ、澤山ナ資本ヲ卸シ
  テアッテ、日々使ハヌアノ大機械ヲ如何ニ
  シテ掃除ヲ砂シマスカ、アノ掃除ヲ致シマ
  ス爲ニハ、無慮數百人ノ人夫ト、容ナラ
  ヌ藥品ト、種々ナ材料モ要シテ、大變ナ費
  用ガ掛ルモノデアルト私ハ思フノデアル、
  私ノ考ヘル所ニ依リマスレバ、全ク政府ハ
  此御提案ヲナサッタ爲ニ、政府ノ御提案ハ國
  家ノ爲ニ有利ナルコトヲ御計畫ニナッタト
  云フコトヲ仰シヤルガ爲ニ、ピカ〓〓シテ、
  實ニ立派ナモノデアルト云フコトヲ仰シヤッ
  タニ過ギヌノデアッテ、要スルニ其仰セラレ
  タコトハ、實際トハ甚ダ齟齬シテ居ルコト
  デアルト信ズルノデアリマスガ、ソレハ齟
  齬致サヌノデアリマスカ、マダ承リタイ事
  ガ山ミアリマスケレドモガ、私ハ此邊デ止
  メマス、要スルニ斯ノ如キ事ハ今日ノヤウ
  ナ國庫ノ財政甚ダ急ヲ告ゲ、國民ハ非常ニ
  困ッテ居ル時代ニ、此樣ナ事ヲヤルベキ時
  代トハ私ハ存ゼヌノデアル、ソレデ政府ノ
  御提案ニ付テハ吾々ハ遺憾ナガラ、ドウモ
  賛成ハ出來惡イノデアル(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=104

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• 105・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　藤澤商工大臣
  〔國務大臣藤澤幾之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=105

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• 106・藤澤幾之輔

  ○國務大臣(藤澤幾之輔君)　御答致シマ
  ス、曩ニ上ゲマシタ通リ、現ニ五十万独內
  外ノ製鋼ノ不足ノアルト云フコトハ、是ハ全
  ク御異論ノ無イ所ト思フノデアリマス、サ
  ウ致シマスレバ政府トシテ、殊ニ製鐵所ト
  致シマシテハ、何トカシテ勿論一時ニハ是
  ハ出來ルモノデハアリマセヌケレドモ、成タ
  ケ國內カラ產出スルモノデ、國內ノ需要ヲ
  滿シタイ、斯ウ云フ考ヲ持タンケレバナリ
  マセヌシ、又持ツベキ筈デアルノデアリマ
  ス、ソウシテ其結果ト致シマシテハ、五十
  万瓲内外ニ對スル價額ノ輸入ガ起シテ來ル
  ノデアリマスカラ、ソレデ此輸入超過ニ憂
  ヘテ居ル我國ト致シマシテハ、成タケ出來
  ルダケ早クソレダケノ施設ヲシテ、其需用
  ヲドウカ滿シテ行キタイ、サウシテ輸入超
  過モ成タケ減少シタイ、斯ウ云フコトハ是
  ハ當然ノ事デアルノデアリマス、製鐵所ハ
  御承知ノ通リ、今日ハ特別會計ノ下ニ作業
  ヲヤッテ居ルノデアリマスガ、現在迫ヲテ居
  リマスモノハ此製鋼、ソレカラ壓延工場ノ
  施設ノコトデアリマシテ、是ハドウシテモ
  之ヲ曾設致シマセンケレバ所期ノ目的ヲ
  達スルコトガ出來ナイノデアリマス、然ル
  ニ偶、接著致シタ所ニ九州製鋼株式會社ノ
  工場ガアルモノデアリマスカラ、幸ニシテ
  之ヲ買牧セント致スノデアリマス、全ク國
  家必要上此ニ出デタノデアリマシテ、何モ
  今日突如トシテ斯ノ如キ事ヲ考ヘテ、之ヲ
  議會ニ提出致シタノデハアリマセヌ、製鐵
  所ハ前々カラ右ノ方ノ東洋製鐵所ノコトニ
  付テモ考ヘ、左ノ方ノ製鋼所ノコトニ付テ
  モ〓究調查ヲ致シマシタ結果、今日ニ出デ
  タノデアリマスカラ、ドウカ此所ハ誤解ノ
  無イヤウニシテ戴キタイノデアリマス、
  ソレカラ公債ノ發行ニ付テ御述べニナリ
  マシタガ、此公債ハ公募公債ナドヽ違ヒ
  マシテ、曩ニ申上ゲマシタ如クニ、製鐵
  所ノ特別會計ノ經理上、此方ガ持ヲテ居ル
  金出スヨリハ便宜デアル、持ッテ居ル
  金ヲ一時ニ出シテシマヘバ運用資金ニ困
  ルヤウニナリマスカラシチ、此方法ヲ執ッ
  テヤッテ行クノガ最モ賢明ナル方法デア
  ル、斯樣ニ考ヘマシテノ事デアリマシ
  テ、他ノ公債トハ是ハ全ク違フノデアリ
  アマ、ソレカラ此事業ヲヤッテ行ッタ結
  果ハ屹度損失ヲスルト云フコトノ仰セデ
  アリマシタガ、此點ニ付テハ御意見ハ御意
  見ト致シマシテ、政府ノ方ニ於キマシテハ
  曩ニ申上ゲマシタヤウナ計算ヲ立テヽ居ル
  ノデアリマス、併ナガラ斯樣ナ御意見ノア
  ルコトハ他山ノ石ト致シマシテ、事ニ從フ
  者ノ爲ニハ洵ニ結構ナコトデアルト思シテ
  私ハ伺ッタ位デアルノデアリマス、ソレカラ
  又此機械ガ錆ビテ居ル、俺ハ見テ居ルガオ
  前ハ何時見タカト云フ仰セデアリマシテ、
  私間違ッテ居ルコトハアリマスケレドモ、進
  ンデ嘘ヲ吐クト云フコトハシタクナイ積リ
  デアリマシテ、先刻モ自分ハ行ヲテ見タイ
  積リデ心懸ケテ居ッタケレドモ、今日マデ
  行ッテ見ルコトハ出來ナカッタト云フコトヲ
  申シテ居ッタノデ、是ハ或ハ其當時御席ニ
  オキデニナラナカッタカ何カデ御聽取リ下
  サラナカッタト思フノデアリマスガ、實
  私ハ見マセヌ、ソレデ現ニ御覽ニナッテ居ッ
  タ貴方ノ御意見ニ反對スルヤウナ事ヲ申シ
  テハ見ナイ者ノ口カラハ可笑シイ話デア
  リマスケレドモ、本來常識カラ考ヘテ、斯
  ウ云フ貴イ機械ヲ錆ノ儘ニシテ置クト云フ
  コトハ、私ハドウシテモ考「ラレマセヌ
  シ、其上ニ私ハ見マセヌデモ、政府ト云フ
  モノニハ色ニナ機關ガアルノデアリマス、
  言換ヘレバ手足ガアルノデアリマス、隨テ
  眼モ多ク持ノテ居ラナケレバナラヌ理窟ニ
  ナッテ居ルノデアリマスカラ、ソレ等ノ者
  ノ關係調査ノ結果ヲ私モ申シテ居ルノデア
  リマスカラ、ドウカ御諒解下サルヤウニ御
  願ヲ致シタイノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=106

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• 107・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第十五、右
  議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題
  ト致シマス
  第十五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=107

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• 108・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=108

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• 109・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=109

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• 110・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程
  第十六、鐵道敷設法中改正法律案ノ第一讀
  會ヲ開キマス、鐵道大臣子爵井上匡四郞
  君
  第十六鐵道敷設法中改正法律案政
  府提出)第一讀會
  鐵道敷設法中改正法律案
  鐵道敷設法中左ノ通改正ス
  別表第八號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  八ノ二岩手縣花卷ヨリ遠野ヲ經テ釜
  石ニ至ル鐵道
  別表第五十號ノ次ニ左ノ二號ヲ加フ
  五十ノ二千葉縣我孫子ヨリ埼玉縣大
  宮ニ至ル鐵道
  五十ノ三埼玉縣與野ヨリ東京府立川
  ニ至ル鐵道
  別表第五十五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  五十五ノ二新潟縣白山ヨリ新發田ニ
  至ル鐵道
  別表第七十號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  七十ノ二愛知縣岡崎ヨリ擧母ヲ經テ
  岐阜縣多治見ニ至ル鐵道
  別表第百十四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  百十四ノ二長崎縣喜々津ヨリ矢上ヲ
  經テ浦上ニ至ル鐵道
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=110

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• 111・井上匡四郎

  ○國務大臣(子爵井上匡四郞君)　今囘提案
  致シマシタ鐵道敷設法中改正法律案ハ花
  卷釜石間鐵道外五線ヲ新ニ敷設法ノ別表ニ
  追加スルノデアリマシテハ今此各線ニ就テ
  簡單ニ御說明ヲ致シマス、先ツ第一ニ花巷
  釜石間鐵道ハ、東北本線花卷驛ヨリ分岐
  シ、仙人峠ヲ貫キ、東海岸釜石港ニ達スル延
  長五十哩餘ノ構斷鐵道デ、東海岸ト東北本線
  トノ交通連絡上極メテ必要ナル線路デアリマ
  スガ、途中ニ仙人峠ノ險ガアリマスノデ、私
  設鐵道デハ到底之ヲ貫通スルコトガ困難デ
  アリマスカラ、今回之ヲ豫定線ニ編入シ、
  將來國ニ於テ敷設セントスルモノデアリマ
  ス、第二ノ我孫子大宮間鐵道、第三ノ與野
  立川間鐵道ハ共ニ常磐、東北、中央ノ各線
  ヲ連絡シ、第一大環狀ヲ構成シマシテ、東
  京附近ノ輻湊セル輸送ヲ緩和スル爲ニ極メ
  テ必要ナル線路デアリマス、又第四ノ白山新
  發田間ノ鐵道ハ、越後鐵道白山驛ヲ起點ト
  シ、羽越本線新發田驛ニ達スル延長十九哩
  餘ノ鐵道デアリマシテ、羽越線ト越後線ト
  ヲ介シテ日本海沿岸鐵道ヲ完成セシメ、信
  越線ニ於ケル百貨輸送ノ輻湊ヲ調節スル上
  ニ於キマシテ緊要ナ線路デアリマス第五、
  岡崎多治見間鐵道ハ東海道本線岡崎驛ヨリ
  中央本線多治見驛ニ至ル延長三十六哩餘ノ
  鐵道デアリマシテ、岐阜、太田、多治見間
  線路ト相俟ッテ東海道本線ノ補助線トシテ輸
  送緩和ノ爲メ緊要ナル線路デアリマス、最
  後ノ喜々津浦上間鐵道ハ、長崎本線喜々津
  驛ヨリ浦上驛ニ至ル延長十三哩餘ノ鐵道デ
  アリマシテ、長崎ト密接ナル利害關係ヲ有
  スル矢上地方トヲ連絡セシメ、以テ地方產
  業ノ發達ヲ促シ、且ツ肥前山口諫早間鐵道竣
  成ト相俟シテ、門司長崎間ヲ通ジテ最急勾配
  百分ノ一ノ緩勾配線路タラシムル上ニ於テ
  ハ、極メテ必要ナ線路デアリマス、以上說
  明致シマシタ如ク、是等ノ線路ハ鐵道系絡
  上重要ナル線路デアリマシテ、何レモ國ノ
  施設ニ屬スベキモノト信ジマスノデ、今囘
  之ヲ豫定、鐵道線路中ニ追加セントスル次
  第デアリマス、何卒愼重ニ御審議ノ上、本
  案ニ御贊成アランコトヲ希望致シマス(拍
  手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=111

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• 112・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　日程第十七、右
  議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題
  ト致シマス
  第十七右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=112

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• 113・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ日程第三、水戶鐵道
  會社外四鐵道會社所屬鐵道買收ノ爲公債發
  行ニ關スル法律案ノ委員ト同一委員ニ併託
  セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=113

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• 114・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  ハ御異議ガナイト認メマス、仍テ砂田君ノ
  動議ノ如ク決シマシタ、日程第十八及第十
  九ハ同種議案ナルニ依リ、一括議題トナス
  ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=114

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• 115・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程第十八、大正十四年法律第
  四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案、
  日程第十九、大正十四年法律第四十七號衆
  議院議員選擧法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
  開キ、各別ニ提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、
  提出者林田龜太郞君
  第十八大正十四年法律第四十七號衆
  議院議員選擧法中改正法律案(林田
  龜太郞君外一名提出)第一讀會
  大正十四年法律第四十七號衆議院議
  員選擧法中改正法律案
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
  擧法中左ノ通改正ス
  別表中北海道第五區ノ次ニ左ノ一項ヲ加
  フ
  樺太二人
  附則
  本法施行ニ關スル細則竝期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  第十九大正十四年法律第四十七號衆
  議院議員選舉法中改正法律案(東武
  君外二名提出)第一讀會
  大正十四年法律第四十七號衆議院議
  員選擧法中改正法律案
  大正十四年法律第四十七號衆議院議員選
  擧法中左ノ通改正ス
  別表中北海道第五區ノ次ニ左ノ一項ヲ加
  へ「本表ハ十年間ハ之ヲ更正セス」ヲ削ル
  樺太六
  附則
  本法施行ニ關スル細則竝期日ハ勅令ヲ以
  テ之ヲ定ム
  〔林田龜太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=115

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• 116・林田龜太郎

  ○林田龜太郞君　私ハ只今日程ニ上ッテ居
  リマス大正十四年法律第四十七號衆議院議
  員選擧法中改正案ノ說明ヲ致シタイノデア
  リマス、本案ハ昨年ノ議會ニモ提出致サレ
  マシテ、其節說明ヲ致シマシタシ、委員會
  デモ全會一致ヲ以テ之ヲ可決致シマシタル
  關係上、本會期ニ於テハ定メシ皆樣ノ御同
  意ヲ得ルコトヽ存ジテ居リマス、故ニ至ッ
  テ短簡ニ說明ヲ致シタイト思フノデアリマ
  ス、第一ニ私ハ樺太ニ選擧權ヲ與フル必要
  ガアルト云フコトヲ歷史ノ上カラ考察シテ
  見タイト思フ、樺太ハ何時頃カラ日本ノ領
  有ニナッタカ、是ハ漢トシテ分リマセヌ、記
  錄ニ依リマスト今カラ四百七十五年前卽チ
  後花園天皇ノ享德元年ニ松前家ノ祖先武田
  信廣トカ云フ人ガ此土地ニ初メテ手ヲ染
  ノ、其後三百五十五年間ハ松前家ノ領有ニ
  屬シテ居ッタヤウナ形デアリマシタガ、文
  化四年卽チ西曆千八百七年、幕府カラ上地
  ヲ命ゼラレタ、所ガ丁度其時分ニ露西亞人
  ガ此方面ヲ覬覦致シテ、非常ニ事ガ多クナッ
  タノデ再ビ松前家ニ歸リタリ取戾シタリ
  シタガ、露西亞人ノ跋扈ガ年ヲ逐ウテ益〓
  甚シイ爲ニ、安政ノ元年下田條約ニ依ッテ
  遂ニ露西亞ト共同管理ト云フヤウナコト
  ニナッタノデゴザイマス、同管理、實ニ日
  本ノ領土ガ共同管理トー云フコトハ憤慨ニ耐
  ヘマセヌガ、實際サウ云フコトニナッタノデ
  ス、明治三年ニ至リマシテ樺太開拓使ヲ拵
  、、兵部大丞黑田〓隆ヲ開拓使ノ次官ニ任
  ジ經營致シマシタガ、恰モ廢藩置縣ニ引續
  キ、征韓論デ內閣ハ分裂スル、臺灣事件デ
  支那トハ葛藤ヲ生ズル、佐賀ノ亂デ人心ハ
  沸騰スルヤウナ有樣デアリマシタ爲ニ、我
  ガ威力モ十分ニ樺太ニ及バズ、遂ニ明治
  八年ニ至リマシテ、千島ト交換ト云フ名義
  ニ依シテ遂ニ樺太ヲ露國ニ取ラレテシマッタ
  ノデアリマス、其後三十年ニシテ日本ノ領
  土ニ再ビ歸リマシタガ、サウ云フ關係上樺
  太ハ元カラノ日本ノ領土デアリマシタカ
  ラ、此處ニ住ンデ居ル人ノ風俗、人情、悉
  ク內地ト同樣デアルコトハ申スマデモナ
  "、故ニ樺太ハ他ノ新領土、卽チ臺灣或ハ
  朝鮮ナドヽハマルキリ趣ヲ異ニシテ居ルノ
  デアリマス、故ニ私ハ歷史上カラシテ、此
  處ニドウシテモ内地同樣選擧權ヲ與フル必
  要ガアルト云フコトヲ主張スルノデアリマ
  ス、第二ハ人種ノ方カラ觀察シマスルニ、臺
  灣デハ人口ノ百分ノ四·八ハ日本人デアッ
  テ九五·二ハ臺灣人デアリマス、朝鮮ハ百
  分ノ二·三ダケガ日本人デ、殘リ九七七ハ朝
  鮮人デス、然ルニ樺太ハ百人ノ中ニ九十九
  人マデハ日本人デアリマス、北海道デサヘ
  モ百人ノ中九三·四ハ日本人デ殘リ六·六ダ
  ケハ土人デアリマス、斯ウ云フヤウナ關係
  デアリマスカラ、旣ニ北海道ニサヘモ參政
  權ヲ與フル以上ハ、ドウシテモ樺太ニ輿へ
  ナイ譯ニハ行カヌト思フノデアリマス(「簡
  單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)第三ニ文化ノ
  點カラ考ヘテ見マスルニ-文化ノ程度ヲ
  計ルハ就學兒童ノ數ヨリ顯著ナルモノハア
  リマセヌ-第四十五回ノ統計年鑑ニ依ル
  ト沖繩縣ハ九七·七一、北海道ハ九九·六
  二、樺太ハ九九·六七デアリマシテ、全國
  ノ平均九九·二三デアリマス、サレバ樺太
  ハ全國ノ平均ヨリモ尙ホ文化ハ進ンデ居ル
  ノデアリマス、故ニ文化ノ點カラ見テモ樺
  太ニ選擧權ヲ與フル必要ガアラウト思ヒマ
  ス、第四ニ經濟方面カラ言テ見マシテ
  モ必要デアリマス、樺太ハ內地ノ十分ノ一
  ヨリモ少シバカリ小サク、臺灣ヨリモ少シ
  大キイノデアリマス、而シテ此樺太ニ產ス
  ル所ノ石炭ハドレ位アルカト云フト、永井
  長官ノ說ニ依ルト二億噸モアルト云フコト
  デアッテ、其炭質モ夕張ヨリモ良イト云フ
  コトデアリマス、日本ニ石炭ガ乏シイ今日
  ニ於テ、斯ウ云フコトガ發見サレルト云フ
  コトハ、誠ニ心强ク感ズルノデアリマス、
  ソレカラ水產、林產、農產、鑛產、サウ云フ
  ヤウナ方面ニ付キマシテモ莫大ノ產額ガア
  リマシテ、一年ニ七千万圓ヲ超エルト云フ
  コトデアルシ、特ニ「パルプ」ノ如キハ年額
  十万噸ニ上リ、內地ニ要スルモノハ殆ド樺
  太カラ供給シテ居ルト云フヤウナ有樣デア
  リマス、又材木モ一年ニ一千万石以上ハ樺
  太カラ送リ出スト云フコトデアリマス、又
  近頃北樺太ニ於テ產出スル石油ハ、今日日
  本ノ海軍ガ要スル三分ノ一ハ供給シ得ルト
  ノコトデアリマスガ、尙ホ海軍大臣ノ說明
  ニ依ルト、設備ガ完備シマシタラ海軍所要
  ノ全部ヲ供給スルコトガ出來ルト云フ有樣
  デアリマス、斯ウ云フ次第デアリマスカラ
  經濟上ノ點カラ見マシテモ、樺太ハ實ニ我
  邦ニ取リテ大切デアリマス、第五人口調
  節ノ上カラモ必要デアリマス、樺太ノ人口
  ハ一平方里ニ付テ僅ニ八十七人デスガ、
  内地ハ二千四百十七人ニナッテ居リマス、
  內地ト同ジヤウナ密度ニスルニハ五百六十
  五万人、臺灣同樣ニ致シマシテモ四百万
  人、朝鮮同樣ニスレバ三百一一十万人ガ之ニ
  移住ガ出來ル、内地ノ半バニ致シマシテモ、
  殆ド三百万人近クノ人口ガ此處ニ住ムコト
  ガ出來ルノデアリマス、故ニ人口調節ノ上
  カラ見テモ、樺太ハ非常ニ必要デアリマ
  ス、最後ニ國防ノ方カラモ必要デアリマス、
  樺太ハ我國ノ北方ノ鎻鑰デアル、此處ニ立
  派ナ人口三百万人モ植付ケラレテ、其三百
  万ノ人口ガ經濟上ノ確乎タル基礎ヲ有スル
  ヤウニナリマシタナラバ恐ラクハ北方ヨ
  リ窺ハレルヤウナ危險ハ避ケ得ルダラウト
  思ヒマス、ト云フノハ今日三百万人內外ノ人
  ロヲ持シテ居レバ、歐洲ニ於テモ一ノ强國
  デアリマス、現ニ瑞西モ、芬蘭モ、丁抹モ
  三百万臺、諾威ノ如キハ二百万臺ノ人口ヲ
  有スルニ過ギマセヌ、又廣袤ノ點カラ見マシ
  テモ、樺太ヨリモ小サイ國デ、立派ニ獨立國
  ノ體面ヲ保チツヽアル國ハ澤山アリマス、
  サウ云フヤウナ關係カラ樺太ヲ開發シ、相
  當ノ人口ヲ植付ケルト云フコトハ、我ガ國
  防ノ上カラ云ッテ見テモ洵ニ必要ダラウト
  思ヒマス、然ルニ樺太ノ利害ト一云フモノハ
  議會ニ於テ少シモ代表セラレナイ、隨テ樺
  太ノ利害ガ如何ニ重大デアリマシテモ、之ヲ
  辯護スル人ガ議會ニ無イカラ、隨テ樺太在住
  ノ二十万ノ損失ハ申スマデモナク實ニ國家
  ノ損失デアリマス、之ヲ要スルニ今樺太ニ
  ハ法律ハ殆ド盡ク行ハレテ居ルシ、租稅モ
  百三十万圖ダケ負擔シテ居ルシ、徴兵令モ
  行ハレテ居ル、斯ウ云フ次第デアリマスカ
  ラ、樺太ヲシテ我ガ憲政ノ恩澤ニ浴セシ
  ノ、我ガ內地同樣ニ選擧法ヲ施行シ、其別
  表ノ中ニ二人ダケ加ヘタイト思フノデアリ
  ママ、二人ト云フノハ人口ガ一一十万三千五
  百アルカラデアリマス、而シテ何時ヨリ之
  ヲ施行スルカト云フコトハ勅令ニ委シタイ
  ト思フノデアリマス、施行期日ヲ勅令ニ委
  シタ例ハ北海道及沖繩ニ在リマス、卽チ明
  治三十三年第十四議會ニ法律ガ通過シマシ
  タガ、北海道ハ四年ノ後、沖繩ノ方ハ十二
  年ノ後ニ施行サレタノデアリマス、ソレハ
  行政廳ト致シマシテモ相當ノ準備ヲ要スル
  カラデアリマス、斯カル次第デアリマスカ
  ラ、願クハ委員會ニ付セラレマシテ、完全
  ナ法律ニ致サレ、本會ニ於テ速ニ協賛ヲ與
  ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手)

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• 117・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　石坂豐一君
  〔石坂豐一君登壇〕

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• 118・石坂豐一

  ○石坂豊一君　極メテ簡單ニ提案ノ理由ヲ
  申上ゲマス、只今林田君ヨリ各種ノ方面ヨ
  リ論ジ盡サレマシタ通リデアリマシテ、北
  雪冱寒ノ中ニ拓地植民ノ第一線ニ立ッテ居
  ル我同胞ハ、政治生活ノ安定ヲ得ントシテ
  每年此案ノ提案ヲ希望シテ居ルノデアリマ
  ス、サウシテ此普選ニ直面ヲ致シマシテカ
  ラ、一層此希望ガ深刻トナリマシテ、昨年
  モソレ等ノ民意ガ此議會ニ現レマシテ、委員
  會マデ通過致シテ居ル本案デアルノデアリ
  マス、北海道ニ選舉法ガ施行サレタノハ憲
  法實施後十年ヲ經テ、卽チ明治三十年ニ施
  行サレテ居ルノデアリマス、ソレト比較ヲ
  致シマシタナラバ、今日樺太ニ選擧法ヲ施
  行スルト云フコトハ、旣ニ時期遲キ感ガア
  ルノデアリマス、希クバ皆様ニ於カレマシ
  テハ、本案ノ施行ニ付テ十分ノ御同情ヲ賜
  ハリマシテ、何レ委員會ニ付議ノ際ニ提案
  者ヨリモ尙ホ詳シク說明ヲ致シマスルカ
  ラ、ドウゾ御協賛アランコトヲ偏ニ希望致
  シマス

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• 119・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、田淵豊吉君
  〔「早クヤレ」「簡單」ト呼フ者アリ〕
  〔田淵豊吉君登壇〕

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• 120・田渕豊吉

  ○田淵豊吉君　非常ニ短カイカラ聽イテ
  吳レ給ヘ(「簡單」ト呼フ者アリ)重大問題
  グ.

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• 121・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　私語ヲ禁ジマス

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• 122・田渕豊吉

  ○田淵豊吉君(續)　私ハ政府····(「委員會
  デヤレ」ト呼フ者アリ)私ハ委員會ニ出ラレ
  ナイ、政府ノ意見ハドウ云フモノデアルカト
  云フコトヲ私ハ聞キタイ、是ハ當然私ハ入
  レナケレバナラヌモノデアルト思フ、然ル
  ニ何故入レヌカト云フ理由ガ薄弱デアル場
  合ハ、當然私ハ入ルベキモノト確信シテ疑
  ハヽ、日本帝國ノ領土デアッテ、面シテソレ
  ガ土地的ニ極ッテ居ル、ソレデ日本人デア
  ル、然ラバ樺太ヲ入レヌト云フノハドウ云
  フ譯デアルカ、壹岐デモ對馬デモ皆ヤッテ
  居ル、ドウ云フ譯デ之ヲヤラヌカ、是ハ的
  確ナ理由ヲ擧ゲラレナケレバ當然入レナケ
  レバナラヌモノト確信シテ疑ハヌ(「早クヤ
  レ」ト呼フ者アリ)諸君ハ早ク々々ト云フ
  ガ、何ヲ言フカ、重大問題デハナイカ、內
  地ニ於ケル所ノ朝鮮人ハ一箇年デモ内地ニ
  居レバ選擧ガ出來ルト云フコトヲ言ッテ居
  ルデハナイカ、然ラバ京城ニ居ル所ノ人ハ、
  土地的ニ違フケレドモ、人口ガ十万二十万
  アレバ一人位出シテモ宜イ、靑島モ欲シイ
  ト云フヤウナコトヲ言ッテ居ル、詰リ是ハ屬
  人主義ト屬地主義トヲ混淆シテ居ル點デア
  ルト思フ、ケレドモ屬人主義モ屬地主義モ異
  ニシテ居ル所ニ於テ、何故選擧法ヲ施行シ
  ナイカ、是程重大問題ハナイ(「何ヲ怒ッテ
  居ル」ト呼フ者アリ)僕ノ十分ノ時間ガ何ダ
  (「皆贊成シテ居ル」ト呼フ者アリ)然ラバ早
  ク通スガ宜イ、ソレデ海員デモ色こ廻リ步
  イテ居ル、卽チ「フローテイング」スル人デ
  モ、一定ノ住居ガアレバヤルト云フコトニ
  シタガ宜シイ、チヤント出來テ居ルノニ何
  故之ヲヤラヌカ、ソレニ對シテ政府ハドウ
  云フ見解ヲ持ヲテ居ルカト云フコトヲ聞キ
  タイ、ソレカラ第二ニ是ハ少シキツイカモ
  知レマセヌガ、樺太ノ人口ハ現在ハ幾人ア
  ルカ、サウシテ其曾加率如何ト云フコトヲ
  聞キタイ、日本ノ人口ノ曾加率ト選擧區ノ
  增加率ハドウカト云フコトヲ聞キタイ、卽
  チ定員ヲ二人ニスルカ一人ニスルカ、是ガ
  基點ニナル、ソレヲ明ニシナケレバナラ
  又、中々十万デハナイ、ズット大キナ所ニ
  居ル-增加率ガ非常ニ大キイ所ナラバ
  今カラヤッテモ二人デモ宜イト思フ、一方此
  點モ明ニシナケレバ、他ノモノト少シ權衡
  ガ取レヌ點ガアルト思フ、私ハ樺太ノアヽ
  云フ所ニ成ベク多ク置ク、二人デモ三人デ
  モ置クト云フコトハ賛成デアリマスケレド
  モ、選擧法ト云フモノハソンナモノデハナ
  イ、權衡、均衡ト云フモノガアル、王子邊
  ハ非常ニ多イト云ッテ淺賀君ナドハ零シテ
  居ルト云フ狀態デアル、サウ云フ工合ニ他
  ノ權衡モ能ク見テ、人口ノ增加率モ見テ適
  切ナコトヲヤルト云フコトガ嚴正ナ法律ノ
  命ズル所デアルト思フ、政府及提出者ノ意
  見如何ト云フコトヲ問ウテ此壇ヲ下リマス

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• 123・石坂豐一

  ○石坂豐一君　此席デ一言提案者トシテ辯
  明致シマス

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• 124・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　許可致シマス

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• 125・石坂豐一

  ○石坂豐一君　僧加率ノ御質問デアリマス
  ガ、目下彼地ニ於ケル人口ハ大正十四年ノ簡
  易國勢調査ニ於テ我ガ同胞ガ二十万三千人
  居ルノデアリマス、其中男子ガ十二万五千、
  女子ハ八万デアリマシテ、其比率ハ男子
  六割、女子四割ト云フコトニナッテ居ルノ
  デアリマス、其男子ノ中デ二十五歲以上ノ
  者ガ七万三千人許リ居ルノデアリマシテ、
  是ハ恰モ內地ノ各選舉區ニ於ケル所ノ有權
  者ノ二人位ニ相當シテ居ルノデアリマス、
  故ニ別表ニ二人ト云フ計算ヲ以テ此法案ヲ
  編成致シタノデアリマス、尙ホ人口增加率
  ハ是モ國勢調査ノ旣往五箇年間ノ成績ニ依
  ルト、一万八千乃至二万ノ增加ニ相當スル
  ト考ヘテ居リマス、之ヲ以テ答辯ト致シマ
  ス

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• 126・田渕豊吉

  ○田淵豊吉君　日本ノ人口總數ヲ四百六十
  四人デ割クタ時ニハ其數ガ幾ラデアルカ
  (「ソンナコトハ割レバ分ル」ト呼フ者アリ)
  ソレデ一番聞キタイ所ハ此選舉區ヲ二人ト
  シテ居ラレルガ、人口ガ幾人アルカト一ムフ
  コトヲ的確ニ承リタイ、私ハ是ハ一人デ宜
  イノデナイカト云フ疑ガアルカラソレヲ明
  ニシタイ、疑ガアリマスカラ御尋スルノデ
  アリマス

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• 127・林田龜太郎

  ○林田龜太郞君　人口十三万人ニ付一人デ
  スカラ、十九万五千人以上アレバ四捨五入デ
  二人トナルノデス、卽チ樺太ノ人口ハ二十
  万三千五百人アリマス、又選擧人ハ內地デ
  ハ三万六千人デ一人ノ割、樺太ハ二人ニシ
  テモ三万六千人ヨリ少シ上ニナルカト思フ
  ノデアリマス

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• 128・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ
  〔田淵豐吉君「議長々々」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=128

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• 129・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ニ發言ヲ
  許シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=129

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• 130・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ議長指名十八名ノ委
  員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=130

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• 131・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議ガアリマセヌカラ、動議ノ如ク決シ
  マシタ、日程第二十北海道農地特利處理法
  案ノ第一讀會ヲ開キ、提出者ノ趣旨辯明ヲ
  許シマス-丸山浪彌君
  第二十北海道農地特別處理法案〓
  山浪彌君外六名提出)第一讀會
  北海道農地特別處理法案
  北海道農地特別處理法
  第一條政府ハ北海道拓殖ノ爲自作農業
  者ヲ扶植シ土地ノ利用ヲ增進スル目的
  ヲ以テ勅令ノ定ムル所ニ依リ必要ナル
  土地ヲ買入若ハ收用シ又ハ之カ賣拂ヲ
  爲スコトヲ得
  第二條前條ノ規定ニ依ル買入又ハ收用
  ノ場合ニ於テ土地所有者其ノ他關係人
  ニ支拂フヘキ對價又ハ補償金ハ勅令ノ
  定ムル所ニ依リ國債證券ヲ以テ之ヲ交
  付スルコトヲ得
  第三條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
  ル爲六千万圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコ
  トヲ得
  前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差滅
  額ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ
  前項ノ制限以外ニ公債ヲ發行スルコト
  ヲ得
  第四條本法ニ依リ處理スヘキ土地ノ選
  定、買入、收用、整理改良又ハ賣拂ニ
  關スル事項ハ北海道農地特別處理委員
  會ノ議ヲ經テ北海道廳長官之ヲ決定ス
  ヘシ
  北海道農地特別處理委員會ニ關スル規
  程ハ勅合ヲ以テ之ヲ定ム
  第五條第一條ノ規定ニ依ル土地ノ收用
  ニ關シテハ土地收用法ヲ適用ス但シ前
  條第一項ノ規定ニ依ル決定ヲ以テ土地
  收用法ニ依ル事業ノ認定ト看做ス
  第六條本法ニ依リ賣拂ヲ爲ス土地ノ面
  積及土地ノ買受人ノ資格ハ命令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  第七條土地ノ買受人ハ土地代金ノ百分
  ノ十以上ヲ支拂ヒタルトキハ其ノ所有
  權ノ移轉ヲ求ムルコトヲ得但シ殘額支
  拂ノ擔保トシテ其ノ土地ニ抵當權ヲ設
  定スヘシ
  第八條土地ノ買受人ハ土地代金ノ全額
  ヲ支拂ヒタル後ニ非サレハ其ノ土地ニ
  質權、抵當權、地上權若ハ永小作權ヲ
  設定シ又ハ其ノ土地ヲ貸付若ハ讓渡ス
  コトヲ得ス但シ北海道廳長官ノ承認ヲ
  得タル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  第九條土地ノ買受人カ土地代金ノ全額
  支拂前ニ前條ノ規定ニ違反シ又ハ買受
  條件ニ違反シタルトキハ之ヲシテ直ニ
  土地ヲ返還セシメ又ハ土地代金ノ殘額
  ヲ一時ニ支拂ハシムルコトヲ得
  第十條本法ニ依ル土地ノ買入、收用又
  ハ賣拂ニ關シテハ印紙稅及登錄稅ヲ免
  除ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔丸山浪彌君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=131

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• 132・丸山浪彌

  ○丸山浪彌君　本案提出ノ理由ヲ極メテ簡
  單ニ申上ゲタイト思ヒマス、理由ハ簡單デ
  アリマスガ、本問題ノ解決ハ實ニ我國現下
  ノ國難救濟政策トシテ至大ノ關係ヲ持クテ
  居ル問題デアリマス、而シテ既ニ今日ノ日
  程ハ此問題デ終リマスガ故ニ、暫クノ間御
  〓聽ヲ願ヒタイト思フノデアリマズ、諸君
  御承知ノ如ク本案ハ既ニ當議會ニ現ハレマ
  シタルコト年旣ニ久シ、再三再四ノ建議案
  トナリ、又法律案ドナッタノデアリマシテ、
  殊ニ昨年ノ五十一議會ニ於テハ委員會ハ之
  ヲ可決シタ法律案デアリマスケレドモ、不
  幸ニシテ會期切迫ノ爲ニ通過スルコトガ出
  來ナカッタ、其時ニ於テ政府委員ノ俵內務
  次官ハ本問題ハ實ニ同感デアル、賛成デア
  ルト云フ意思ヲ表示セラレタコトモ御承知
  ノ通リデアリマス、唯、今ヤ北海道ノ第二
  次拓殖計畫案ガ目ノ前ニ樹立ノ際デアルガ
  故ニ、此計畫案樹立ニ於テ十分ニ明瞭スル
  カラ、此議會ニ於テ成立セシムルノ必要ガ
  ナイト云フ御意見ヲ以テ反對セラレタノデ
  アリマス、然ルニ諸君今度ノ豫算案ニ於
  テ、第二次拓殖計畫案ハ果シテ北海道ノ農
  地ヲ有利ニ處理スル上ニ於テ適切ナル案ガ
  立テラレテアルカ如何デアリマセウ、私ガ
  申上ゲルマデモナク、農林省ニ於ケル所ノ
  自作農ノ創定ニ於テ、府縣同樣ニ取扱ハレ
  テ居ルト云フコトハ、實ニ吾々ノ遺憾トス
  ル所デアリマス、隨テ本法案ノ提出ノ已ム
  ヲ得ザル場合ニ立至ッタノデアリマス、諸
  君、北海道ノ農地ノ價格ハ幾ラデアルカ、
  私ノ申上ゲルマデモナク、府縣ニ於テノ田
  ノ平均ハ一段六百二三十圓ノモノデアリ、
  畑ガ三百二三十圓デアル、北海道ハ田ガ百
  二三十圓デアリ、畑ガ三十圓内外デアル、
  此北海道ニ於ケル所ノ民有未墾地、或ハ過
  大農場トモ云ヒ、或ハ不在農場トモ云フモ
  ノガ實ニ莫大ナル面積ヲ有シ、其數百二十
  万町步ヲ超エテ居ルコトハ諸君ノ御承知ノ
  コトデアリマス、此機會ニ於テ我國人口政
  策、食糧政策ト共ニ社會政策ヲ解決スル上
  ニ於テモ、此北海道ノ民有未墾地ヲ有益ニ、
  有利ニ拓殖スルト云フコトハ實ニ現下ノ
  帝國ノ重大ナル問題デアルニモ拘ラズ、此
  政府案ハ府縣同樣ニ、北海道ノ自作農ニ向ッ
  テハ甚ダ冷淡デアリシコトヲ、私ハ遺憾ト
  シテ玆ニ本案ヲ提出致シタル者デアリマ
  ス、マダ澤山ノ理由ヲ申上ゲテ御參考ニ供
  シタイト思ヒマスケレドモ、時間ノ關係上
  遺憾ナガラ簡單ニ此程度ニ於テ止メマスル
  ガ、尙ホ質問者ガアルサウデアリマスガ故
  ニ、更ニ私ヨリ答辯スルカ、或ハ他ノ提出
  者ヨリ答辯ガアル筈デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=132

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• 133・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　本案ニ對シテ質
  疑ノ通告ガアリマス、坂東幸太郞君
  〔坂東幸太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=133

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• 134・坂東幸太郎

  ○坂東幸太郞君　只今丸山君カラ北海道農
  地特別處理法案ニ對スル御說明ガアリマシ
  タ、私ハ此法案ニ付テハ多クノ疑ヲ持ッテ
  居リマス者ナルガ故ニ、簡單ニ二三ノ點ニ
  付テ御伺ヲスルノデアリマス、丸山君ノ御
  說明ノ如ク北海道ノ開拓ガ我國ノ人口食糧
  政策上、極メテ緊要ナモノデアルト云フコ
  ドニ付テハ、全ク同感デゴザイマス、ソレ
  デアルガ故ニ彼ノ第一期拓殖計畫ハ昨年度
  ヲ以テ終了致シ、第二期拓殖計畫ハ卽チ昨
  年民間委員モ加ヘテ、調査會ニ於テ完全ニ
  調査ガ完子シ、今ヤ本議會ニ提案セラレテ
  居ルノデゴザイマス、ソレ故ニ此第二期拓
  殖計畫ト此法案ト云フモノハ、多少矛盾ス
  ル嫌ガアルト云フ點ヲ第一ニ御伺スルノデ
  アリマス、只今丸山君ハ第二期拓殖計畫中
  ニハ、未利用地ノ開發ト云フコトハナイト
  云フ御說ガアリマシタガ、ソレハ多少間違ッ
  テ居ルヤウニ思ヒマス、私モ民間委員ノ一
  人デアリマカラ、先ヅ其點ヲ明瞭ニシタ
  ィ、卽チ未利用地ノ開發ニ付テハ、拓殖計
  畫ノ中ニ於テ約五千万圓ノ程度ニ於テ、土
  地ヲ買入レル場合ニハ低利資金ヲ供給ス
  ルト云フ所ノ特權ヲ與ヘテアルノデアリマ
  ス、而シテソレニ對スル低利資金ノ利息ノ
  四分八厘ハ、其中三分五厘ハ土地買受人ノ
  負擔トナシ、一分三厘ハ拓殖費カラ之ヲ負
  擔スト云フコトニナッテ居リマシテ、其經
  費ガ卽チ七百七十五万圓ト云フモノガ計土
  セラレテ居ルノデアル、言換ヘマスレバ五
  千万圓ヲ以テ、北海道ノ未利用地ハ之ヲ開
  發スルト云フ所ノ方針ガ、第二期拓殖計畫
  ノ中ニ於テ明瞭トナッテ居ルノデアル、然
  ラバ北海道ノ未利用地ハドレ程アルカト申
  シマスレバ、恐ラク二十万町步内外デアリ
  マセウ、未利用地デアリマスルカラ、或ハ
  一反二、三十圓ノ相場デアリマセウガ、此
  未利用地ニ對スル政策ト云フモノハ、第二
  期拓殖計畫ニ於テ明瞭ニナッテ居ルト私ハ
  考ヘルノデアル、隨テ此法案ニアルガ如ク、
  政府ハ六千万圓ノ程度ヲ以テ未利用地ヲ買
  上ゲルト云フコトハ、是ハ屋上屋ヲ架スル
  ガ如キモノデアル、卽チ第二期拓殖計畫ノ
  根本ヲ破壞スルモノデアラウト本員ハ考ヘ
  テ居ルノデアル、隨テ此點ニ付テ先ヅ御尋
  ヲシテ見タイノデアリマス、又此法案ノ
  中ニハ六千万圓ヲ限ッテ公債ヲ發行シテ土
  地ヲ買フト云フコトニナッテ居リマスガ、而
  モ其公債ノ利子ト云フヤウナ點ヲ少シモ書
  イテナイノデアル、然ラバ土地ヲ買フ場合
  ニ若シモ發行價格ガ非常ニ安イ時ニハ、此
  公債ガ或ハ七千万圓トナリ、八千万圓トナ
  ルカモ知ラヌ、極メテ不明瞭ナル規定ト謂
  ハナケレバナラヌノデアル、此點ニ付テモ
  御考ヲ聞キタイノデアリマスルガ、又土地
  ノ價格ニ付テハ卽チ第五條ニ依シテ土地收
  用法ヲ適用スルト云フ規定ガゴザイマス、
  是ハ第五十議會ニ御提案ニナッタ時分ニハ
  其規定ガ無カッタ、其提案ニ反對ガアッタ
  カラソレヲ補フ爲デアリマセウガ、併シ吾
  吾ガ憂ヘルノハ、土地ヲ買フ場合ニ非常ニ
  價格ヲ釣上ゲルト云フコトヲ第一ニ虞レル
  ノデアリマス、是ガ世上ニ於テ、其法案ハ
  大地主ノ救濟策デアルト云フ非難ガアル根
  本ノ原因デアル、然ラバ土地收用法ヲ適用
  スレバ價格ガ安ク買ヒ得ルカト申セバ、御
  承知ノ通リ土地收用法ハ收用スルト云フ法律
  デアリマシテ、價格ノ强制ト云フコトハ事
  實ニ於テハ出來ナイノデアル、然ラバ現在
  例ヘバ一反歩二十圓ノ土地ガ買上ゲント
  スル場合ニ三十圓トナリ、或ハ五十圓ト
  ナルト云フヤウナ虞ガアル、斯カル危險ナ
  ル事ヲ冒シテ、サウシテ第二期拓殖計畫ノ
  施設ノ所謂系統ヲ破壞シテマデモ、斯カル
  法律ヲ拵ヘル必要ハナイヤウニ私ハ考ヘル
  ノデアリマス、又次ニ御伺シタイノハ、土
  地ノ買受ハ土地代金ノ百分ノ十ヲ支拂ハナ
  ケレバ所有權ノ移轉ヲ求メルコトガ出來ヌ
  ノデアリマスガ、然ラバ政府ハ六千万圓ノ
  國庫證劵ヲ地主ニ與へ、サウシテ土地ヲ買っ
  タ場合ニソレガ百分ノ十以上ニ-言換ヘ
  マスレバ或ル代金ノ拂込ガナケレバ所有權
  ヲ與ヘナイトシタナラバ、卽チ政府ハ多ク
  ノ土地ヲ買込ンデ、而シテ其處分ニ窮スルト
  云フヤウナ結果ニナルト云フコトヲ私ハ憂
  ヘルノデアリマス、此點ニ付テモ御伺シタ
  イ、又丸山君ハ北海道ノ開拓ニ付テ非常ニ
  急施ヲ叫ンデ居ルガ、ソレ程此法案ニ依ッテ
  開拓ガ促進サレルナラバ、何故ニ附則ノ本
  法ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ定ムト云フコ
  トヲ書イテアリマスカ、卽チソレ程急グナ
  ラバ、直ニ之ヲ施行スルト云フノガ當然ノ
  如ク思フガ、政府ヲ絕對ニ信任シタ結果デ
  アルカ知リマセヌガ、餘リニ生溫イ附則ノ
  ヤウニ考ヘル、此點ニ付テモ提案者ノ御考
  ヲ聞キタイ、又政府ニ向ッテモ伺ヒタイ次
  第デアル、卽チ政府ノ今現ニ提案シテア
  ル、拓殖計畫ト卽チ矛盾スル所ノ法案デア
  リ、又公債政策トモ矛盾スル法案デアリマ
  スルカラ、之ニ對シテ政府ハ如何ナル御考
  ヲ持ッテ居ルカト云フコトモ、併セテ御伺
  シタイノデアリマス

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• 135・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　丸山浪彌君
  〔丸山浪彌君登壇〕

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• 136・丸山浪彌

  ○丸山浪彌君　極ク簡單デスガ、只今坂東
  君ノ御質問ニ對シテ拓殖第二期計畫案ト矛
  盾セラルヽト云フ御說デアリマスガ、勿論吾
  吾ハ第二期拓殖計畫案ニ賛成ノ意見ヲ持シ
  テ居ラヌ者デアル、此故ニ屋上屋ヲ架スルモ
  ノデアルト云フガ、此法律案ガ通過シタル
  時分ニハ、自然ニ拓殖計畫案ノ豫算ニ變更
  ヲ來スト云フコトハ何等ノ差支ナキコトデ
  アル、又此調査會ニ於テ、民間ノ委員ノ人
  ガ入ッテ拵ヘタ拓殖計書案デハナイカト云
  フヤウナ御意見ガアリマシタガ、斯ノ如キ
  事ハ寧ロ私ガ答辯シナイ方ガ質問者ノ御趣
  意ニ合ヒハシナイカト私ハ思ヒマスルガ故
  ニ、斯樣ナ事ニ向ッテハ敢テ答辯ノ必要ヲ
  感ジマセヌ、唯、第二次拓殖計畫ハ極メテ
  今日ノ國家政策ノ上ニ消極政策デアルガ故
  ニ吾々ハ積極的ニ國家ガ土地收用法ヲ利
  用シテ、此荒廢地ヲ買上ゲテ、サウシテ積
  極的ニ自作農ヲ創設シヤウト思フノデアル
  ガ、此第二次拓殖計畫案ナルモノハ、北海
  道ヲ拓殖地タルコトヲ忘レテ府縣同樣ニ取
  扱シテ居ルト云フコトガ、甚ダ私ガ其意ヲ
  得ヌ所デアル、諸君、此問題ハ殊ニ質問者
  ハ御承知ノ筈デアルガ、前長官土岐君、又
  現長官中川君モ吾々ト共ニ此趣旨ニ於テ立
  案セラレタモノガ、中央ニ來シテ政黨的關
  係卽チ此非募債主義ト云フ根本的反對ノ
  關係ヨリシテ、吾々ノ希望ト云フモノガ、容
  レラレナイト云フコトモ坂東君ハ御承知ノ
  筈デアル、殊ニ北海道ニ於テハ、道會ニ於
  テハ政黨政派ヲ超越シテ憲政會モ政友會モ、
  政友本黨モ滿場一致ヲ以テ吾こガ主張セル
  所ノ此法案ノ成立ニ、建議案ヲ提出シテ居
  ルト云フコトモ御承知デアルダラウト思
  フ、決シテ此法案ハ大地主救濟策デアルト
  云フガ如キ一部ノ者ガ讒誣中傷ヲ爲スヤウ
  ナ吝臭イ法案デハナイ、眞ニ此法案ハ國家
  國策ノ上ニ立脚シテ居ル所ノ法案デアル、
  唯〓坂束君ハ委員ニハ當ラレヌカモ知レマ
  セヌガ、委員デナクテモ委員會デ質問ヲ爲
  スコトガ出來マス、唯〓採決ニ加ハルコトガ
  出來ナイ、質問ハドウゾ委員會ニ於テセラ
  レンコトヲ希望致シマス
  〔政府委員俵孫一君登摘〕

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• 137・俵孫一

  ○政府委員(俵孫一君)　坂東君ヨリ政府ノ
  法案ニ對スル意見ノ御尋デアリマシタカラ
  シテ簡單ニ申上ゲテ置キマス、本案ニ付テ
  ハ御趣意ハ自作農創定ノ御趣意デアルノ
  デ、此御趣意ニ反對ナキノミナラズ極メテ
  賛成デアリマス、併シ本案ガ果シテ其御趣
  意ノ通リ實行出來ルカドウカハ大ナル疑問
  ガアリマス、殊ニ本案ニ付テハ、其本案ノ
  目的タル通リニ出來ルカドウカニ付キマシ
  テハ未ダ直ニ出來ルト云フコトヲ申上ゲ
  能ハザルモノガアリマヌノデ、其理由ハ何
  レ委員會ガ開ケルダラウト思ヒマスカラ、
  委員會ニ於テ詳シク意見ヲ申上ゲタイト思
  ヒマス、大體ニ於テ俄ニ本案ニ政府ハ賛成
  ガ出來ナイト云フコトダケノコトヲ申上ゲ
  テ置キマス

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• 138・砂田重政

  ○砂田重政君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

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• 139・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 140・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=140

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• 141・砂田重政

  ○砂田重政君　殘餘ノ日程ニ對シテ延期ノ
  動議ヲ提出致シマス

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• 142・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　砂田君ノ動議ニ
  御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=142

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• 143・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナイト認
  メマス、仍テ動議ノ如ク決シマス、此場合御
  諮リ致スコトガアリマス、第四部選出豫算委
  員田崎信藏君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガア
  リマス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X00919270129&spkNum=143

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• 144・小泉又次郎

  ○副議長(小泉又次郞君)　御異議ナケレバ
  許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧
  ヲ行ヒ、御屆出アランコトヲ望ミマス、次
  囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
  日ハ散會致シマス
  午後六時十八分散會

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