1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年三月八日(火曜日)午後一時二十二分開議
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議事日程 第二十一號
昭和二年三月八日
午後一時開議
質問
一 人口食糧政策に關する質問(小橋藻三衞君提出)
二 鐵道運輸に關する質問(伊坂秀五郎君提出)
三 北海道拓殖に關する質問(松實喜代太君提出)
四 對支顧問及之か改善に關する質問(兒玉右二君提出)
五 郵便貯金法規に關する質問(加藤十四郎君提出)
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第一 勞働組合法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 大正十四年法律第五十一號中改正法律案(關東州の生産品輸入税免除の件)(政府提出) 第一讀會
第四 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 鑛業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 土地收用法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 王公族より内地の家に入りたる者及内地の家を去り王公家に入りたる者の戸籍等に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十一 不動産登記法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十二 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 銀行法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 農工銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 登録税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 印紙税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 商事非訟事件印紙法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 公益質屋法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 水戸鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奥鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 鐵道敷設法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 商法中改正法律案(三浦數平君提出) 第一讀會
第二十八 恩給法中改正法律案(長峰與一君外三名提出) 第一讀會
第二十九 恩給法中改正法律案(松實喜代太君外三名提出) 第一讀會
第三十 恩給法中改正法律案(一柳仲次郎君外六名提出) 第一讀會
第三十一 治安警察法中改正法律案(山枡儀重君外四名提出) 第一讀會
第三十二 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(坂東幸太郎君外三名提出) 第一讀會
第三十三 架空索道の抵當に關する法律案(清瀬一郎君提出) 第一讀會
第三十四 被害水田改良事業助成法案(星廉平君外二名提出) 第一讀會
第三十五 金鵄勳章年金に關する法律案(古川清君外二名提出) 第一讀會
第三十六 北海道御料拂下地免租年期に關する法律案(東武君外三名提出) 第一讀會
第三十七 著作權法中改正法律案(内ヶ崎作三郎君外六名提出) 第一讀會
第三十八 借地法中改正法律案(作間耕逸君外二名提出) 第一讀會
第三十九 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(横山勝太郎君外八名提出) 第一讀會
第四十 民法施行法中改正法律案(大石大君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十一 地租條例中改正法律案(大石大君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十二 商法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
山梨縣第一區選出議員若尾璋八君辭職ニ
付其ノ補闕トシテ村松甚藏君當選セラレ
タリ
一去五日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ受
領セリ
輸出絹織物取締法案(政府提出)
會計檢査院法中改正法律案(政府提出)
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鑛業法中改正法律案
(以上三月五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
「ローマ」字ヲ小學校〓科目中ニ加フルコ
トニ關スル法律案
提出者松本君平君
(以上三月四日提出)
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式
會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買
收ノ爲公債發行ニ關スル法律案ニ對スル
修正案
提出者
志賀和多利君植原悅二郞君
(以上三月八日提出)
新潟港ニ露國領事館設置ニ關スル建議案
提出者
松井郡治君吉原義雄君
建部遯吾君石黑大次郞君
中村貞吉君石塚三郞君
關矢孫一君佐藤富十郞君
山田又司君山田助作君
新潟縣ニ綜合大學設置ニ關スル建議案
提出者
松井郡治君建部遯吾君
石黑大次郞君中村貞吉君
山田助作君山田又司君
石塚三郞君吉原義雄君
關矢孫一君
日西交通ノ發祥地ヲ史蹟名勝指定地ト爲
スノ建議案
提出者
森高昶君鈴木隆君
濱口吉兵衛君今井健彥君
吉植庄一郞君木村政次郞君
(以上三月四日提出)
北海道甜菜糖業補助ニ關スル建議案
提出者
松實喜代太君岡田伊太郞君
東武君黑住成章君
北海道河川治水工事促進ニ關スル建議案
提出者
岡田伊太郞君黑住成章君
松實喜代太君東武君
孝明天皇ノ神宮造營ニ關スル建議案
提出者
川崎安之助君森田茂君
村上國吉君木戶豐吉君
長田桃藏君森伊助君
鷲野米太郞君田崎信藏君
(以上三月五日提出〕
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
國定〓科書翻刻ニ關スル質問主意書
提出者加藤知正君
(以上三月七日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員中山貞雄君提出熊本縣大矢野
原陸軍廠舍水道引込ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
(以上三月七日受領)
衆議院議員小橋藻三衞君提出人口食糧政
策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員伊坂秀五郞君提出鐵道運輸ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓殖
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員兒玉右二君提出對支顧問及之
カ改善ニ關スル質問ニ對スル各辯書
衆議院議員加藤十四郞君提出郵便貯金法
規ニ關スル質問ニ對スル答辯書
(以上三月八日受領)
熊本縣大矢野原陸軍廠舍水道引込ニ關
スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十日
提出者中-山貞雄
熊本縣大矢野原陸軍廠舎水道引込ニ關
スル質問主意書
目下重大問題化シツツアル熊本縣大矢野
原陸軍演習場ニ於ケル廠舎用ノ水道引込
工事問題ハ嘗テ園田及手島二氏カ上益城
郡長タリシ時代陸軍ヨリ交涉ヲ受ケ其ノ
取入口トシテ豫定セラレタル御船川上流一
帶ニ付實地調査ヲ遂ケタル結果其ノ流域
ナル九瀧、木倉、瀧尾各村ノ水利ニ重大ノ
關係アルニ鑑ミ計畫ハ一時立消トナリシ
カ昨年九月二十三日陸軍ハ再ヒ其ノ計畫
ノ音行ヲ企圖シ用水關係ノ有無ニ付七
瀧、木倉、瀧尾三箇村普迪水利組合ニ照
會スル所アリ同組合管理者古閑文起ハ直
ニ其ノ關係ノ至大ナル所以ヲ說キ工事計
畫ノ放擲ヲ要求セリ茲ニ於テ陸軍ハ高壓
的手段ニ出ルノ外其ノ目的ヲ達スル方法
ナシト思惟シ縣廳ニ對シ其ノ承認方ノ交
涉ヲ開始セシニ懸廳ハ川端縣技師ノ誤レ
ル調査ヲ基礎トシ用水關係ナク流域村民
ニ何等異議ナシト認メ遂ニ承認ヲ與フル
ニ至レリ
上記水利組合關係村民ハ陸軍カ突然其ノ
工事ヲ開始シ非常ナル速度ヲ以テ工程ノ
進行シツツアルニ驚キ(目下既ニ七分通
完成セリ)本年一月六日及同二十四日ノ
二回ニ亙リ强硬ナル抗議ヲ提起セル結果
去ル二月三日財部主計正川端縣技師等ハ
水利組合本部ニ臨ミ川端縣技師ヨリ其ノ
調査ノ疎漏ヲ陳謝シ財部主計正ハ相互ノ
妥協點ヲ求ムルコトニ努力シタルモ水利
組合ノ主張カ絕對的ノモノタルヲ以テ遂
ニ解決ヲ見ルニ至ラス而シテ縣當局ノ不
誠意ニ對スル關係村民ノ激昂熾烈ヲ極メ
事態頗ル重大化シツツアリ
元來御船川ノ水量ハ流域各村ノ灌漑用ニ
供シテ年年不足ヲ生スル結果水利組合ニ
テ用水配給ノ方法ヲ定メ區域ヲ上流下流
ニ分チ配水ヲ書夜交互ニ行フコトトシテ
纔ニ其ノ用ヲ充シ來レル狀態ナレハ陸軍
今囘ノ擧ハ關係村民ニ致命的ノ影響ヲ與
フル所以ナレハ縣廳ハ其ノ承認ヲ取消シ
陸軍ヲシテ工事ヲ中止セシムルノ外解決
ノ方途ナキモノト思惟ス
我カ國情ヨリ本問題ノ如キハ單ニ一縣下
ノ問題トシテ取扱フヘキニ非ス地方一二
吏僚ノ體面ヲ顧慮シテ其ノ非ヲ遂ケシム
ルカ如キ俑ヲ作ルコトハ將來ノ農政上ニ
重大ナル影響ヲ齎スモノナリ殊ニ現在ノ
形勢ヨリスレハ今年農季ニ際シ用水不足
ノ事實ニ直面セル關係村民ハ窮餘或ハ直
接行動ノ如キ非常手段ニ出テ昭和新政ノ
初頭ニ大不祥事ヲ勃發セシムル懼レナシ
トセス內務大臣ハ地方官監督ノ責任上速
ニ縣當局ヲ戒飭シテ承認ノ取消ヲ爲サシ
ムルヲ至當ナリトス
政府ハ以上ノ事實ニ鑑ミ縣當局ヲシテ其
ノ承認ヲ取消サシムル意思ナキヤ或ハ縣
吏ノ體面ニ顧慮シ縣技師ノ疎漏ナル調査
ニ基キタルコト明ナル該承認ヲ看過スル
意思ナリヤ
右及質問候也
昭和二年三月七日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員中山貞雄君提出熊本縣大矢野
原陸軍廠舍水道引込ニ關スル質問ニ對シ
別紙答辯書差進候
〔別紙〕
內務省閣土第八號
衆議院議員中山貞雄君提出熊本縣大矢
野原陸軍廠舍水道引込ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
右質問ノ要旨ハ熊本縣知事カ大矢野原
陸軍廠含用水トシテ綠川支川御船川小
支八勢川上流溪谷ヨリ取水スルコトヲ
承認シタルハ下流ニ於ケル七瀧、木倉、
瀧尾各村ノ灌漑水利ニ惡影響ヲ及ホス
モノト認メラルルカ故ニ內務大臣ハ地
方官監督ノ責任上其ノ承認ヲ取消スヲ
至當ト認ムルモ之ヲ取消スノ意思ナキ
ヤ否ヤト云フニアリ
然ルニ右河川ハ河川法ノ適用若ハ準用
ノ河川ニアラス從テ本件ハ知事ノ專決
處分ニ委任シアルヲ以テ當初内務省ノ
關知セサリシ事項ナリ然ルニ最近之ニ
關シ調査ヲ爲シタルニ陸軍ノ廠舍ハ阿
蘇外輪山ノ高原ニ在リ飮料水ヲ得ルコ
ト頗ル困難ノ狀態ナルヲ以テ演習期間
ニ於ケル飮料水、トシテ僅ニ每秒〇、0
五七立方尺ノ引水ヲ承認シタルモノニ
シテ之ヲ下流各村ノ灌漑水量四十立方
尺ニ比スレハ其ノ七百分ノ一ニ當ル而
テ知事ハ其ノ承認ヲ爲スニ當リ陸軍ニ
對シ下流ノ灌漑用水ニ不足ヲ來ササル
樣考慮スヘキ條件ヲ附シタルモノニシ
テ其ノ處分ハ失當ニアラス又陸軍カ本
件河水引用ニ就キ高壓的手段ニ出タリ
ト云フハ全ク事實ニ反シ陸軍ニ於テハ
下流水利組合ニ對シ其ノ施設ノ〓要河
水引用ノ程度及其ノ緩和策、水源涵養
等金圖ノ詳細ヲ明元シ地方灌漑ニ對シ
十分ノ考慮ヲ拂ヒツツアル旨ヲ說明シ
タルニ組合ニ於テモ之ヲ諒トセルモノ
ナリ
之ヲ要スルニ本件知事ノ處分ハ下流灌
漑ニ支障ナカラシムル様適當ニ考慮シ
タル處分ナルヲ以テ之ヲ取消スノ要ナ
シト認ム
右及答辯候也
昭和二年三月七日
内務大臣臨時代理
遞信大臣安達謙藏
陸軍大臣宇垣成
人口食糧政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十日
提出者小橋藻三衞
人口食糧政策ニ關スル質問主意書
限リアル國土ニ限リナク累加繁殖スル人
口問題ヲ處理シ其ノ食糧ニ不足ナカラシ
メ以テ其ノ生存ヲ安定セシムルハ國家最
大ノ政策タリ政府ハ之ニ對シテ調査會ヲ
設置セムトス其ノ基礎的所見如何
右及質問候也
昭和二年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員小橋藻三衞君提出人口食糧政
策ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員小橋藻三衞君提出入口食糧
政策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
我邦人口ノ增加ハ近時頗ル著シキモノア
リ然カモ〓糧ノ增加之ニ伴ハス年々巨類
ノ外國產米麥ノ輸入ヲ見ルノ狀勢ナルヲ
以テ將來永ク國民生活ノ安定ヲ期セント
スルニ於テ一面人口ノ配置ヲ適當ニ處理
スルノ計畫ヲ講シ他面國土ノ利用ヲ全フ
ズルノ施設ヲ爲スノ要アリ乃チ此兩方面
ニ於ケル有效且適切ナル方策ヲ樹ツルハ
刻下ノ急務ニシテ而モ之カ爲調査〓究ヲ
要スル事項ハ極メテ廣汎ニシテ重要且困
難ナリ隨テ是等諸事項ニ關シ根本的ノ調
査ヲ遂ケ以テ具體的成案ヲ得ルカ爲ニ朝
野ノ有識者ヲ網羅シタル調査會ヲ設ケ之
ヲシテ各般ノ事項ニ亙リ銳意調査攻究ヲ
盡サシメサルヘカラス是レ政府カ今囘特
ニ人口食糧問題調査會ヲ設置スル所以ナ
リ
右及答辯候也
昭和二年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
農林大臣町田忠治
鐵道運輸ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十日
提出者伊坂秀五郎
鐵道運輸ニ關スル質問主意書
政府ハ小運送賃金ヲ低廉ニセムカ爲運送
業者ノ合同ヲ策セムトス斯ノ如キハ果シ
テ其ノ所期ノ目的ヲ達スルヲ得ルノ確信
ヲ有スルヤ之ニ對スル所見如何
右及質問候也
昭和二年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員伊坂秀五郞君提出鐵道運輸ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員伊坂秀五郎君提出鐵道運輸
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
現在小運送費ノ一般鐵道船舶等ノ大運送
ニ比較シテ著シク高價ニシテ且ツ不公正
ナルハ明ナルカ其ノ主タル原因ハ信用乏
シキ多數ノ業者カ分立シ各自ニ資本ヲ投
下シ各別ニ經營ヲ行ヒ之カ爲メ巨額ノ資
本ヲ死藏シ冗費ヲ重ネ惹イテ小運送費ノ
高額ト不公正ヲ生スルモノニシテ如何ニ
鐵道運賃ニシテ低廉公正ヲ持シ比較的恒
久性ヲ維持スルモ之ニ倍加スル小運送賃
ヲ現狀ニ放任スルニ於テハ交通運ニニ
ル產業、生活ノ安定ハ得テ期スヘガラス
運輸交通改善ノ要ハ畢竟物資ヲ戶口ヨリ
戶口ニ又ハ生產地點ヨリ加工若クハ消費
地點ニ最モ迅速、低廉、正確ニ運送スル
ニ在リ之カ爲メニハ獨リ鐵道自體ノ運輸
ノ改善ヲ以テ足レリトセス小運送機關ノ
改善ニヨリ經濟的共同ノ連絡ヲ謀リ以テ國
家產業生活ノ進展ヲ期セサルヘカラス、
然ジテ此ノ目的ヲ達セムガ爲メニハ現在
ノ多數ノ業者ヲ其ノ自由意思ニ基キ合同
セシメ以テ資本ノ利用ト經濟ノ能率トヲ
擧クル外ナシ
卽チ運送業者ノ合同ハ彼ノ銀行、船舶其
他ノ經濟、交通界ニ於ケル合同カ一般的
ニ好成績ヲ以テ迎ヘラルル所以ト全ク其
ノ理ヲ同シクスルモノナリ、或ハ運送取
扱業者ノ合同ハ競爭心ヲ減殺シ獨占ノ弊
ヲ來スヤノ疑ヲ有スル者アルカ如キモ合
同ノ結果贅費ヲ省キ運搬作業ヲ簡易ニシ
諸掛ヲ輕減シ得ルヲ以テ當然運賃料金ノ
低廉ヲ來スヘキノミナラズ其ノ信用ノ確
保ハ以テ幾多ノ不正取坂ヲ防止シ經濟界
ノ健全ナル發達ヲ助成スヘキハ明ナリ且
ツ目下其ノ小運送料金ハ荷主關係公衙其
他ノ關係者ヨリ成ル協議機關ニヨリ之カ
公正ナル標準ヲ得ムトシツツアリ、從ツ
テ運送業者ノ合同ヲ以テ小運送賃金ヲ公
正低廉ナラシムル目的ヲ達成シ得ルモノ
ト信ス
右及答辯候也
昭和二年三月八日
鐵道大臣子爵井上匡四郞
北海道拓殖ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十日
提出者松實喜代太
北海道拓殖ニ關スル質問主意書
人口ノ移植、土地ノ開墾竝產業ノ開發ハ
拓殖ノ根本義ナルハ言ヲ俟タサル所ナリ
政府ハ第二期北海道拓殖計畫策定ニ方リ
北海道ニ於ケル人口、農牧地、米ノ產額
竝各種生產物年總額ヲ何程ニ達セシムル
ヲ目標ト爲シ且將來拓殖完成ノ曉ニハ幾
何ニ達スルノ見込ナルヤ政府ノ所見ヲ問フ
右及質問候也
昭和二年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓殖
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
內務省閣地第五號
衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓
殖ニ關スル質問ニ對スル答辯書
北海道ニ於ケル農牧適地ハ約二百五十五
万町步ニシテ將來人口ハ約六百万人米產
額ハ約七百万石ニ達セシメ得ヘク又各種
生產物年總額ハ現在ノ約六億圓ニ對シ三
倍ヲ下ラサルヘシ第二期北海道拓殖計畫
ハ右ノ狀勢ヲ促進セシムルヲ以テ其ノ目
的トセリ
右及答辯候也
昭和二年三月八日
內務大臣臨時代理
遞信大臣安達謙藏
對支顧問及之カ改善ニ關スル質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十五日
提出者兒玉右二
對支顧問及之カ改善ニ關スル質問主意
書
帝國臣民ニシテ中華民國ニ常住シ親シク
顧問トシテ大官ノ輔導ニ獻替スル人人ノ
責任ヤ重ク厥ノ任務ヤ切ナリ大ニシテハ
東洋文化ノ盛衰ニ關シ黄色人種ノ存亡ニ
係ル然ルニ公私ノ顧問ナルモノヲ看ルニ
此ノ抱負ニ出發シテ東洋民衆ノ慈愛ニ貢
獻シ得ルヤ疑ヒナキ能ハス此ノ點ニ付テ
ハ列擧擧證スルモ外務陸軍兩大臣ノ答辯
ヲ求ム
右及質問候也
昭和二年三月八日
内閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員兒玉右二君提出對支顧問及之
カ改善ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員見玉右二君擾〓對支〓問及
之カ改善ニ關スル質問主意書ニ對スル
答辯書
政府ハ支那ニ於テ現ニ北京政府及各地方
當局ニ傭聘セラレ居ル邦人顧問ハ何レモ
誠實ニ其ノ當然ノ職貴ヲ盡シツツアルモ
ノト認ム
右及答辯候也
昭和二年三月八日
陸軍大臣宇垣成
外務大臣男爵幣原喜重郞
郵便貯金法規ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十五日
提出者加藤十四郞
郵便貯金法規ニ關スル質問主意書
我カ國ノ郵便貯金法規ハ特定重要事項ニ
關スル條文粗笨ナル爲殆ト犯罪行爲ヲ防
止スルニ足ラス其ノ徵力ナルコトハ宛然
トシテ結繩ノ政以テ亂秦ノ俗ヲ治メムト
スルニ類ス此レ貯金關係ノ被害件數率遙
ニ歐米ヲ凌駕スル所以ナリト信ス是ニ於
テ乎我カ政府ハ貯金制度中例ヘハ通帳ノ
盜難紛失若ハ改印等ノ特定事項ニ對シテ
ハ立證力微弱ナル印影ノミヲ以テ足レリ
トセス更ニ先進國ノ慣例ヲモ採酌シ貯金
者本人ノ筆跡ニ重キヲ措キ(本人自署シ
能ハサル場合ハ代人トシテ其ノ直系、傍
系尊卑屬親ノ白署)印影自署提示複本位
主義ノ下ニ法規ヲ改正シ犯罪行爲其ノ他
凡百ノ弊源ヲ一掃シ三千有餘万十二億餘
圓ノ貯金者及多數局員ノ安定ト信用ヲ維
持シ益郵貯制度ノ完全ト隆昌ヲ講スルノ
意思ナキヤ
右及質問候也
昭和二年三月八日
內閣總理大臣若槻禮次郎
衆議院議長粕谷義三君
衆議院議院加藤十四郞君提出郵便貯金法
規ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
貯第四五號
衆議院議員加藤十四郞君提出郵便貯金
法規ニ關スル質問ニ對スル答辯書
我國ノ郵便貯金法規ハ大體ノ範ヲ歐洲諸
國ニ採リタルモ預入及拂戾ノ方法等ニ於
テハ特ニ預入者ノ利便ヲ考慮シタルヲ以
テ一面之ニ伴ヒテ生スルコトアルヘキ犯
罪其ノ他ノ事故ノ防遏ニ關シテハ常ニ充
分ナル〓究ヲ怠ラサル所タリ例示ノ印影
自署提示複本位主義ノ如キニ付キテハ我
國ノ一般慣習、預入者ノ自署能力ト其ノ
手數、筆蹟判斷ニ伴フ困難其ノ他アラユ
ル利害ヲ參酌シ一層講究ニ努ムヘシ
右及答辯候也
昭和二年三月八日
遞信大臣安達謙藏
〔左ノ〓告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去五日衆議院規則第十五條但書ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ通指定變更セリ
九石川長右衞門君
一五埼玉縣第三區
選出議員
二七多木久米次郞君
四四岡田溫君
五七堤〓六君
五八米原於苑男君
一〇五村松甚藏君
去五日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
國有財產整理資金特別會計法ノ特例ニ關
スル法律案(政府提出)外一件委員
委員長原田藤次郞君
理事
阿由葉勝作君中島守科君
一去五日水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式
會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬
鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案外
一件委員隅田豐吉君辭任ニ付其ノ補闕ト
シテ廣瀨爲久君ヲ電氣事業法中改正法律
案委員森〓昶君小屋光雄君辭任ニ付其ノ
禧闕トシテ田邊七六君武藤嘉門君ヲ九州
製鋼株式會社ノ工場等ノ買收代金ニ關ス
ル法律案委員吉田磯吉君平川松太郞君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ平川松太郞君平井
光三郞君ヲ銀行法案外四件委員高鳥順作
君菅原英伍君佐藤寛君山本厚三君辭任ニ
付其ノ補闘トシテ前田房之助君淺川浩君
永田善三郞若佐藤富十郞君ヲ孰レモ議長
ニ於テ選定セリ
一昨七日理事補闕選擧ノ結果左ノ如シ
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式
會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買
收ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府提
出)外一件委員
理事關矢孫一君(理事金澤安之助
君二月二十三日辭任ニ付其ノ
補鬪)
一昨七日水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式
會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬
鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案外
一件委員今井健彦君大津淳一郞君山本厚
三君辭任ニ付其ノ補闕トシテ志賀和多利
君近藤重三郞君松田三德君ヲ造林助成法
案委員宮崎友太郞君辭任ニ付其補關トシ
テ中村四郞兵衛君ヲ部落問題ノ國策確立
ニ關スル建議案委員坂井大輔君村上國吉
君辭任ニ付其ノ補闘トシテ山口義一君荒川
五郞君ヲ公益質屋法案委員櫻内幸雄君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ田中隆三君ヲ徵兵
令改正法律案委員田口文次君辭任ニ付其
ノ補關トシテ宜保成晴君ヲ出版物法案委
員今里準太郞君兼田秀雄君辭任ニ付其ノ
補闕トシテ篠原和市君森肇君ヲ孰レモ議
長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リヲ致ス事ガアリマス第一部選
出豫算委員板野友造君、第二部選出決算委
員關俊吉君、右兩君ヨリ常任委員辭任ノ申
出ガアリマシダ、許可スルニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=2
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003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ
補闕選擧ヲ行ヒ、御報告アランコトヲ望ミ
マス、尙ホ平山爲之助君病氣ニ付、三月八
日ヨリ三月十五日マデ、請暇ノ申出ガアリ
マシタ、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=3
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004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス、議事進行ニ關シテ
發言ヲ求メラレテ居ル諸君ガ多數ゴザイマ
ス、願次之ヲ許シマス、田淵豊吉君
〔田淵豐吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=4
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005・田渕豊吉
○田淵豊吉君 私議事進行ニ付テ發言ヲ致
シタイト思ヒマス、此前ノ本會議デ聞ク積
リデゴザイマシタガ、時計ガ間違ヲテ半時
間遲レマシタノデ、其間ニ合ハナカッタ次
第デゴザイマス、今日ハ之ヲ議長ニ問ヒタ
ィ、又井本君ニモ問ヒ、議員諸君及黨員諸
君ノ反省ヲ求メタイト思ヒマス、是デハ議
事ガ旨ク行カナイト私ハ思ヒマスカラ、第
一ニ餘計ナコトカモ知レマセヌガ、聽イテ
置キタイト思フ、議長ハ議事ノ進行、議事
ノ整理、議場ノ整理、其他ニ關シテ議場ニ
警告スルコトガ有ルカ無イカト云フコトガ
聞キタイ、窃ニ各派交渉會ヲ開イテヤルサ
ウデアリマスガ、議長ガ憲法或ハ議院法ノ
規定ニ基キ、其他一切ノ事柄ニ關シテ、各
派交渉會其他議會ノ議員ニ警告ヲ與ヘルコ
トが有ルカ無イカト云フコトヲ聞キタイ、
詰リ議長ノ權限ガ非常ニ縮小サレタト云フ
コトヲ思フノデアリマス、故ニ議長ハ宜シク斯
ノ如キ場合ニ、唯、動議ニ動議ヲ以テ動亂ヲ
來スト云フコトナクシテ、議長ハ儼然起フテ
議會ニ大ナル警告ヲ發シテ、國民ニ之ヲ知
ラシメルト云フコトガ、議長ノ責務デハナ
イカト思フノデゴザイマス、ソレデナイト
議場ガ旨ク治マラヌデハナイカト思フ、是
ガ第一ノ質問デアル、第二ノ質問ハ、是ハ
議事規則ニ據クタノデアリマスカ、或ハ慣
例ト云フヤウナモノガア,テカ、此前ニ三十
一議會ニ地租、營業稅改正ノ時ニアッタト
云フヤウナコトデアリマス、ツレヲ楯ニ取ッ
テ井本君ハヤッテ居ルラシイ、議長モ亦任
方ナク之ニ贅同シテ居ルト云フヤウナ狀態
デドシナ無理ナ事デモ、黨員ノ出席者ガ
多數デアレバ通スコトガ出來ルト云フ例ニ
ナッテ居ルラシイノデゴザイマス、果シテ是
ガ全然サウシナケレバナラヌモノデアル
カ、商ホ議長ハ之ニ反對シ得ル權能ヲ持ク
テ居ルカドツカト云フコトヲ明ニシテ置キ
タイ、第三ニ聞キタイノハ過日震災手形
ク二法案ニ付キマシテ、其内容ニ付テ委員
會デ言ッタ事ト、此所デ大臣ガ言ッタ事ト違
ヒマスカラ、其内容ヲ明ニシタイト云フコ
十二村テハ此所ニ登ッテ其質問ヲシヤウト
思シタラ、シレヲ禁止シタト云フヤウナ
例ガアリマス、ツレカラ私等議事進行ニ付
テ、何故サウ云フヤウナ事ヲスルカト云フ
コキヲ聞カフトシタラバ、ツレヲ禁ジテシ
マッタ、井本君ガ動議ヲ出シテ、此二法案ガ
通ルマデハ一切ノ發言ヲ許サヌト云フヤウ
ナコトニサッテ、マルッキリ此所デ-議場
ガ表決ヲシテ、少數デアルカ多數デアルカ
起立ニ問ウテ、八囘モ九回モヤッテ居ルト
云フヤウナ事デゴザイマシタ、其後或人ガ
闖入ヲシテ、議員ニ非ザル人ガ此內ニ入フ
テ居ッタト云フヤウニ聞キマシタ、ソレヲ警
務課デ取調ベテ居シタ事實ヲ聞イタノデア
リマスガ、其時ニモ議長ハ尙ホ議事進行ニ
付テ私ノ發言ヲ禁止シタノデゴザイマス、
祕書課ノ或人ガ私ノ議事進行ニ付テノ發言
ヲ受付ケナカッタノデゴザイマス、詰リ此
二法案ガ通過シナイ間ハ暴漢ガ闖入シヤウ
ガ、人殺シガアラウガ、一切議事進行ニ付
テ發言ヲ止メ得ルモノデアルカナイカト云
フコトヲ聞イテ置キタイノデゴザイマス、
是ハ今日バカリノ問題デナイ、他ノ動議ハ
ドウデアッテモ、議事進行ダケハ相當ニ許
サナケレバ、啞ト啞トガ喧嘩ヲスルヤウナ
工合デ、唯〓寄ッテヤルト云フヤウナ狀態
デ、實ニ私ハ議場ノ整理ニ不都合ナ狀態デ
ハナイカト思フノデゴザイマス、故ニ議長
ハ何ガ故ニ再ビ私ガ間ウタ時ニ、之ヲ祕書
課ノ入ガ受付ケナカッタカ、又ハ書記官長ニ
人ヲ通シテヤッタノデアリマスガ、議長ハ
今目ハイカヌト言フ、其次ハイケルカイケ
ヌカ分ラヌト言ハレタ、私ハ遲レタ爲ニ、
其時ニ問フコトガ出來ナカッタノデ、今日問
フノデゴザイマス、何ガ故ニサウ云フヤウ
ナ亂暴ナ動議ガ出テモ、多數デアレバ議長
ハ何デモ之ニ從ハナケレバナラヌカサウ
云フ場合ニハ議長ハ辭表ヲ突付ケテ、議場
ヲ整理スルコトガ出來ナイト云フ費ヲ負ウテ
引クガ宜シイト思フ>議長ハ必シモ諸君ノ
不信任ノ結果ヲ恐レテヤル必要ハナイト思
フ、議長ハ斷然職ヲ退イテ議場ノ反省ヲ求
メル必要ガアルト思ヒマス、議長ハ果シテ
斯ノ如キ態度ヲ執リ得ルヤ否ヤ、執ルガ宜
イカドウカト云フコトヲ、議會及國民ニ向。
テ言明シテ戴キタイト思フノデゴザイマ
ス、抑〓井本君ノ言フノハ、非常ニ物ヲ重
大視シ、非常ニ敵黨ガ絡ンデ來ルノヲ恐レ
タ結果デハナイカト思フノデゴザイマス、
諸君ヨ、私ハ斯ノ如キ事ハ何故起ヲテ來タカ
ト申シマスト、私ハ能ク內容ハ知リマセヌ
ケレドモ、先ニハ朴烈問題ニ付テ三黨首ノ
申合セガ起シテ、不信任案ガ直グ撤回サレ
テシマッテ、隨テズーット豫算ガ通過シテシ
マフト云フコトデ、サウシテ來年度再來年
度マデ、四五年モ十年モ續ク、減債基金ノ
四分ノ一ノ問題ニ付テモ、一時的ノ三黨首
ノ申合セニ依シテ、昭和ノ初年ニ於テ行フ
施設ノ爲ニ、遂ニ何年マデモ其影響ヲ蒙ラ
ナケレバナラヌト云フヤウナ狀態デアリマ
ス、私ハ小川〓太郞君ガ之ヲ承認スルニ
困ッテ居ッタコトヲ委員會デ見タノデアリマ
ス、サウ云フヤウナ工合デ、一時ノ便宜ノ爲
ニ非常ナル議事ノ進行ヲ妨ゲ、或ハ委員會ノ
進行ヲ阻止シ、サウシテ此間モ實ニ議事ガ停
滯シテ居ッタ、ソレハ憲政會ガ應ジナイカラ
デ、應ジナケレバ許サヌゾト言ッテ本黨アタリ
デ叱責シテ居ッタ、所ガ圖ラザリキ、二黨ガ
聯盟スルト云フコトニナッテ直グニ通ッタト云フ
コトハドウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ事ガ
根本ニナッテ居リマスカラ、委員會ノ審議、
或ハ勞働法案ノ提出モ遲レテ居ルト云フヤ
ウナ事デアルラシイノデゴザイマスガ、總
テノ點ニ付テ如何ニモ不眞面目デアルト思
フノデゴザイマス、斯ウ云フヤウナ事デハ
迚モ旨ク行カナイト私ハ思フノデゴザイマ
ス、今囘ノ震災手形デモ私等ハ素人デゴザ
イマスケレドモ、金ヲ借リル者ハ銀行名位
ハ言ウテ宜シイ、金額モ宜イ、或ハ何分デ
借リルト云フ利子モ附ケテ置カナケレバナ
ラヌ、果シテ是ハ返セルモノカ、返セヌモ
ノカ、疑問ガアルナラバ其疑問ヲ明ニスル
必要ガアルト思フヲデアリマス、然ルニモ
拘ラズ政友會ハ贊成シナガラ、ポカット反對
スル、本黨ハ反對シナガラポカット贊成シ
テシマフ、故ニ世間ハ疑ッテ居ルノデゴザ
イマス、彼等ハ一分ノ「コンミッシヨン」ガ
アレバ百万圓、二分チラ二百万圓ノ金ヲ以
テ選擧民ニ臨ムノデハナイカト云フ疑惑ヲ
持ッテ居ルト云フヤウナ狀態デゴザイマス、
斯ウ云フヤウナ世間ガ疑威ヲ持シテ民心ガ
安定シチイノデアル、黨員が安定シナイノ
デアル、故ニ憲政會デモ本黨デモブウ〓〓
言ッテ居ル者ガ大分アルト云フコトヲ聞イ
テ居ルノデアリマス、先ニハ朴烈問題ヲ笠
ニ被テ、サウシテ一緒ニヤッテ來タ、今回
ハ支那問題ヲ楯ニ取ッテ、支那ガ重太デアル
カラト云フコトデ威カシテ、サウシテ二黨
ガ合併シヤウト云フヤウナコトヲスル、支
那問題ハ政友會モ擧國一致デヤレバ宜イノ
デアル、何モ本黨卜憲政會ト組ンデヤラナ
クテモ支那問題ノ解決ハ出來ル、サウニムフ
事ヲ看板ニシテ國民ヲ威カシ、旨クヤルト
云ッテ片ッ方デ變ナ事ヲヤルト云フヤウナ狀
熊デアル、震災手形ニ反對シタモノガ直グ
ニ贊成シテシマフ、ドウスル爲デアルカ、
政權獲得ノ爲ニ、地盤擁護ノ爲ニ、自己ノ
面目ヲ立テンガ爲ニ、非常ナル所ノ混亂ヲ
議會ニ及ボスト云フコトハ、ドウ云フ譯デ
アルカ、是ハ卽チ其問題ガアルカラ斯ウ云
フ事ガ起ッテ來ルノデアリマス、サウ云ウ事
ハ私ハ非常ニ慎ムベキ問題デハナカラウカ
ト思フノデアリマス、詰リ床次君ハ非常ニ
好イ人デ、私ハ其窮狀ハ實ニ察スルニ餘リ
アル、淚ノ零レルヤウナ點モアリマス、併
ナガラ之ヲ公ニシテ民心ヲ安定シテ、國家
百年ノ長計ヲ爲スト云フ氣ニナレバ、姑息
ナル所ノ妥協苟合ニ依ラズシテ、正義ノ在
ル所ニ邁進シナケレバナラヌト思フノデゴ
ザイマス、床次君モ正義ヲ高調シテ居ル、
然ルニモ拘ラズ申合ヲ三黨者トシ、又二黨
首トヤッテ居ル、サウシテ何ト言ッタカ要
スルニ政黨ノ提携ト云ウテモ兩方ノ互ノ心
カラノ賛成ト納得トガナケレバ眞ノ效果ハ
無イモノト言ウテ逃ゲテ居ル、斯ウ云フ狀
態デアル、サウ言フ譯デ今床次君ハ氣ノ毒デ
アル旨ク行ケバ床次君ノ爲ニハ宜イカモ
知レヌ、惡ク行シタナラバ非常ナル所ノ窮
境ニ立ッテ、彼方ヘ行ッテモイカヌ、此方ヘ行ッ
テモイカヌト云フヤウナ狀態ニナルコトヲ
私ハ非常ニ衷心カラ氣ノ毒ニ思フノデゴザ
イマス、諸君ヨ、私ハ思フノデゴザイマ
ス、今日ノ政局ノ安定乃至進步ト云フモノ
ハ、主義政策ニ忠實ニシテ、政權ク維持或
ハ獲得ヲ後ニスルニアルト私ハ思ヒマス、
國家國民ヲ先ニシテ其後ニ黨アリ、其黨ニ
黨主アリ、周圍ノ人ヲ最後ニスルコトガ必
要デアルト思フノデゴザイマス、然ラズン
バ遂ニ民心ノ安定ヲ得ズ、黨員ノ安定ヲ得
ズ政黨ノ安定ヲ得ズ、故ニ政局ノ安定ヲ
期スルコトガ出來ナイト思フノデゴザイマ
ス故ニ諸君ガ一時ノ法案ヲ通シテ、サウ
シテ貴族院デ又阻止セラレルト云フヤウナ
狀態ガアッテ、諸君ハ諸君ノ政權獲得ノ爲
ニ政策ガグラ〓〓ト動イテ、其爲ニ委員會
モ、ヤルモノモヤラナンダリ、一氣呵成ニ
ヤルベカラザルモノヲヤッタリ、本會議デ
阻止シタリ、議事進行ヲ止メタリ、質問ノ
内容ヲ明ニシナカッタリシテ、サウシテ國
民ニ疑惑ノ念ヲ懷カセ、三黨首二黨首ガ會
合シテ、其周圍ノ四五人ニ、グル〓〓ト其
黨員ガ後ニ仕方ナク跟イテ行カナケレバナ
ラヌト云フヤウナ不平不滿ガ其處ニ生ズル
ト思フノデゴザイマス、斯ウ云フヤウナ日
本ノ狀態デハ、到底公明ナル正義ノ政治ハ
出來ナイノデゴザイマス、若槻君モ此處ニ
居ラレルガ、其點ニ大ニ注意ヲシテ、唯
單ニ日本ガ今日デ終シテシマフ日本デハナ
イ、支那問題モ大ニヤラナケレバナラヌ、
諸政策モヤラナケレバナラヌ、諸政策ノ合
致ニ依シテ其所ニ政綱ガ出來ル、主義ガ出
來ルノデアル、二人寄ッテ一寸拵ヘタ政策
ハ又離レタラドウカ、其私生兒ハ遣リ場ニ
困ルデハナイカ、サウ云フヤウナ具合ニ辻
褄ノ合ハヌ政策、法律ヲ澤山拵ヘテ民ヲ害
スルト云フコトハ諸君ノ意思デハナカラ
ウト思フ、故ニ權勢慾ヲ絕シテ、國民ノ正義
觀念、政治道德ノ上ニ於テヤルコトガ最モ
必要デアル、故ニ私ハ井本君ノ發議ニ對シ
テ、政友會ノ人〓ガ二三人來テ、懲罰ノ動
議ヲ田淵カラ出セトニロッタケレドモ、私ハ控
ヘテ居ッタ、サウ云フコトヲ度々セラレル
ト云フコトハ非常ニ議會ノ神聖ヲ汚ス、
諸君ノ體面ヲ汚スモノデアリマスカラ、井
本君ニモ警告シ、及若槻君、床次君ニモ警
告シタイ、殊ニ議長ニ對シテハ此三問題ニ
對シテ、明確ナル答辯ヲ國民ニ徹底スルヤ
ウニ願ウテ、議事ノ神聖ナル進行ヲ致シ
テ、サウシテ國家百年ノ爲ニ、吾々ガ何時
死ヌカ分ラヌ所ノ身ヲ以テ、奮勵努力シテ
居ル所以ヲ諸君ハ自ラ能ク鑑ミテヤラナケ
レバ、政局ノ安定ハ出來ナイ、政治ノ安定
ハ出來ナイ、民心ノ安定ハ出來ナイノデア
リマス、三黨首ノ申合セニ依ッテ裏切ッタコ
トニ依ッテ、國民ガ憤激ノ眼ヲ開イテ居ル
ト云フコトハ明ナ事實デアリマス、今聊盟
ガ成ラントシテ居ルヤウナ狀態、-成ル
カ成ラヌカ分ラヌト云フヤウナ狀態ニ在
ル、諸君ハ此正義ノ眼ヲ以テ總テノ政治ヲ
ヤッテ行クト云フ大ナル確信アルニアラズ
ンバ、議事ヲ混沌セシメテ何等得ル所ガナ
イ、辻褄ノ合ハヌ法案ヲ出シテ、旨ク行カ
ナイト云フヤウナ現狀ヲ來ス、諸君ハ宜シ
ク猛省シテ、國民ヲ愚ニセザランコトヲ望
ム次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=5
-
006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田淵君ニ對シテ御答
ヲ致シマス、只今田淵君ノ御連ニナリマシ
タコトハ、頗ル多岐ニ涉ッテ居ルヤウデアリ
マス、其中ニ於テ議長ニ對シテ御述ニナリ
マシタコトハ、議長モ謹ンデ傾聽致シマシ
ク、尙ホ此田淵君ノ御發言ハ、要スルニ過
日ノ本會議ニ於キマシテ、田淵君ノ議事進
行ノ發言ヲ許サナカッタコトニ起因致シテ
居ルヤウデアリマスルガ、當時ハ田淵君既
ニ御述ニナリマシタ如ク、井本君ノ御發議
ニ依リマシテ、當時上程ニナッテ居リマシ
タ幾多ノ法案ノ議了致シマスマデ、一 リノ
議事進行ノ發言ヲ許サナイト云フ動議ガ提
出ニナッテ、サウシテ是が可決ニナッテ居シタ
ノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマスカラ、
遺憾ナガラ田淵君ノ議事進行ノ發言ヲ許可
致サナカッタノデアリマス、而シテ井本君ノ
提出サレマシタ所ノ動議ハ、果シテサウ云
フモノヲ多數ヲ以テ決メルコトガ善イカ惡
イカト云フコトニ付テ、議長ノ意見ヲ御尋
ニナッタヤウデアリマスルガ、議長ト致シマ
シテハ總テノ動議ガ法規慣例ニ牴觸シテ居
ラナイモノハ而シテ成規ノ手續ヲ履ンデ
提出ヲサレマシタ以上ハ、之ヲ受理致サヌ
譯ニハ參ラヌノデアリマス、既ニ之ヲ受理
致シマシテ、サウシテ御承知ノ如ク院議多
數ヲ以テ之ヲ決セラレタノデアリマシテ、
議長ハ之ヲ以テ違法ノ決議ナリトハ認メテ
居ラヌノデアリマス、左樣ナ次第デアリマ
シテ、其結果トシテ田淵君ノ議事進行ノ發
言モ、遂ニ之ヲ許可セザリシ譯デアッタノ
デアリマス、尙ホ是等ニ付キマシテモ田淵
君ノ御意見ハ、議長ニ於キマシテモ大ニ考
慮スル點モゴザイマス、是ダケノコトヲ御
答ヲ致シテ置キマス-此際新ニ議席ニ著
カレマシタ議員ヲ御紹介致シマス、其姓名
ヲ讀上ゲマシタナラバ御起立ヲ願ヒマス、
第二百五番、山梨縣第一區選出議員村松甚
藏君
〔村松甚藏君起立〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=6
-
007・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ニハ森田金藏君
〔森田金藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=7
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008・森田金藏
○森田金藏君 私ハ簡單ニ議事進行ニ付テ
皆様ニ御相談ヲ申上ゲテ見タイ事ガアルノ
デアリマス、ソレハ既ニ私共カラ一月二十
五日ニ提出シマシタ決議案デアリマス、
月二十五日デゴザイマスカラ、決議案ヲ提
出シマシテカラ既ニ三箇月目ニナッテ居ル
ノデアリマス、而シテ其問題ハ我國海外貿
易ニ對シテ最モ重要ナル問題デアリマス、
卽チ金貨輸出ノ問題デアリマス、金塊及
金、地金輸出ヲスル、其法律ニ對シテ決議
案ヲ提出シタノデアリマス、是ハ皆樣御承
知ノ通リニ大正六年ニ大藏省令ニ依シテ改
正サレタモノデアリマスガ、斯ノ如キコト
ハ大藏省令ニ依シテ爲スベキモノデナイ
ト私共ハ考ヘタノデアリマス、故ニ之ヲ改
正サルベキ案ヲ政府ニ於テ提出サレンコト
ノ決議案ヲ提出シタノデアリマス、而シテ
今日金貨輸出ヲ禁ジテアル爲ニ、其爲替ハ
高低常ナラズシテ安定スル所ヲ知ラナイノ
デアリマス、而シテ近時爲替ハ餘程恢復致
シマシタケレドモ、新聞紙ノ報ズル所ニ依
レベ大藏大臣ハ六月或ハ七月ニ之ヲ實施
スルカモ知レナイト云フヤウナコトヲ言ウ
テ居ルノデアリマス、故ニ斯ノ如キ大切ナ
ル問題ガ一月二十五日カラ當議場ニ決議案
トシテ出テ居リマスルモノガ、何等ノ方式
ニ依シテモ是ガ議場ニ上ラナイ、議セラレ
ナイ、斯ウ云フコトハ國民ハ非常ナ疑惑ヲ
以テ考ヘナケレバナラヌコトニナルト思ヒ
マス、殊ニ最モ大切ナル海外ノ輸出貿易ニ
及ボス所ノ影響ハ甚大デアルノデアリマ
ス、此場合ニ大藏省ガ明ニ何時何日ニ金ヲ
輸出スルト云フヤウナコトヲ明言サレタナ
ラバ兎モ角モ、然ラザレバ此議場ニ於テ此
爲ニ種々意見ヲ交換シ、此決議案ガ通リマ
シテ、サウシテチヤント法律ニナッテ出マ
シタナラバ、國民ハ之ニ依シテ據ル所ガア
ルト云フコトヲ確信スルコトガ出來ルノデ
アラウト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)斯
ウ云フ問題ヲ何時マデモ抛ッテ置カレルト
云フコトハ、議員ト致シマシテ私共ガ職貴
ヲ全ウセヌコトニナル虞ガアルト思フノデ
アリマス、故ニ今日私ハ玆ニ議事進行ニ付
テ此事ヲ皆サンニ御要求致シマシテ、サウ
シテ此一月二十五日ニ提出致シマシタ大藏
省令第二十八號ヲ廢止シ、之ニ代ルベキ法
律案ヲ制定セラレンコトノ決議案ヲ出シテ
居ルノデゴザイマスカラ、是非皆サンハ速
ニ此問題ヲ上程セラレテ、此金貨輸出ノ問
題ガ此議場ニ於テ如何ニ重ク考ヘラレテ居
ルカト云フコトヲ國民ニ知ラシメルコト
ハ最モ大切ナル職務デアルト考ヘルノデ
アリマス、故ニ之ヲ議事進行ニ依テ皆樣
ニ御考ヲ煩シタイト思テ提出シタ次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=8
-
009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今森田君ノ御述ニ
ナリマシタコトニ對シテハ、別段議長ニ對
スル御尋トモ考ヘマセヌガ、一應決議案上
程ノ遲延致シテ居リマス事情ヲ御答辯致シ
さっ、此決議案ガ今御述ニナリマシタ如ク
頗ル重要ナ案デアルト云フコトハ、議長モ
承知ヲ致シテ居リマス、併ナガラ御承知ノ
如ク議案ノ上程、卽チ日程ノ作製ノ順序ト
致シマシテハ、法律案、建議案、決議案ト
云フヤウナ順序ニナッテ居リマス、而シテ法
律案ノ如キモノモ御承知ノ如ク政府提出案
モマダ多數殘ッテ居リマス、議員案モ多數
殘ッテ居リマス、建議案ハ三百件以上、
件モマダ此議事ニ上ラヌト云フヤウナ始末
デアリマシテ、隨テ御提出ノ決議案ノ如キ
モノモ、今日マデ上程スルニ至ラナイノデ
アリマス、是ハ議長モ洵ニ遺憾ニ感ジテ居
リマス、ドウカ議事ガ進捗致シマシテ、是
等ノ重要ナ幾多ノ議案ガ速ニ上程サレマス
コトヲ、議長ハ希望致シテ居ル次第デアリ
マス-次ハ安藤正純君
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=9
-
010・安藤正純
○安藤正純君 私ハ簡單ニ議事進行ニ付キ
マシテ發言ヲ致シタイノデアリマス、政府
竝ニ與黨ハ此頃議會ノ會期ガ段〓切迫スル
ニ拘ラズ、重要法案ガ頗ル捗ラナイ、ソレ
ハ何カ野黨ガ議事ノ進行ニ熱心ナラザルガ
爲ニ、此重要法案ノ進行ガ捗ラナイト云フ
ヤウナ考ヲ持タレマシテ、頻ニ焦シテ居ラ
レルヤウデアリマス、併シ是ハ決シテ野黨
ノ罪デハナクシテ、其貴ハ寧ロ政府及與黨
ニ在ルト私ハ思フノデアリマス(「ヒヤ
ヒヤ」拍手)何トナレバ今迄ノ議會ニ於キマ
シテハ、豫算關係ノ重要法案ナルモノハ〓
ネ豫算ト前後シテ、餘リ遲レナイデ提出ヲシ
テ居ルノデアリマスルガ、本年ノ議會ニ限
リマシテハ、豫算關係ノ重要法案ナルモノ、
及其他ノ重要法案ニ至リマシテモ、其議院
ニ提出スル時日ガ餘程遲レテ居ルノデアリ
マス(拍手)既ニ提出ガ遲レテ居リマスルカ
ラ、本院ニ上程スルコトモ亦當然遲レルト
云フコトデアッテ、其本源ヲ尋ネテ見レバ、
議事進マザル所以ハ野黨ノ責ニアラズシ
テ、寧口政府及之ヲ援ケル所ノ與黨ノ責任
ニ歸セザルヲ得ナイト思フノテアル、而モ
其影響ハ單リ本院バカリデハアリマセス、
貴族院ニ及ビマシテ、貴族院ニ於キマシテ
ハ豫算審議ノ終了ニ際シテ、豫算關係ノ
法律案ガ決定セザル間ハ。單獨ニ豫算ノミ
ヲ決定スルコトハ出來ナイト云フ理由ヲ以
チマシテ、遂ニ豫算ノ決議ヲシタガ、其決
議ヲ議長ノ手許ニ保留スルト云フコトニ
ナンタノデアリマス、而モ是ハ重大ナル關
係ヲ將來ニ及ボス事デハナカラウカト思
1、卽チ吾々ガ唱道シテ居リマス所ノ貴族
院改革ノ其一部デアル貴族院ノ豫算審議期
間、之ヲ衆議院ト同一ニセシメルト云フ此
事ガ、今囘ノ貴族院ノ豫算審議ニ當ノテ重
要法案ガ廻クテ來ナイ、豫算關係ノ重要法
案ノ決リガ付カナイカラシテ、豫算ハ決ツ
タガ、議長ノ手許ニ保留セザルヲ得ナイ、
卽チ衆議院カラ廻クテ來ルノガ遲イ、是ニ
於テ此豫算ノ審議期間ハ衆議院ト同一デア
ルガ如クシテハ到底行フコトガ出來ナイ
ト云フ理由ヲ將來ニ貴族院ニ與ヘマシテ、
卽チ此重大ナル貴族院ノ豫算審議期間ヲ決
定スルト云プコトヲ玆ニ阻ム所ノ一理由ト
ナッテ、所謂貴族院ヲ正當ニ時代的ニ改革ヲ
シナケレバナラナイト云フ所ノ、其前途ニ
一ツノ大キナ障碍ヲ投ジタモノト謂ハナク
テハナルマイ、是ハ皆政府及與黨ノ爲ス所
ノ責デアリマシテ、決シテ吾々野黨ノ責デ
ナイト云フコトハ明ナ事デアラウト思フノ
デアリマス(拍手)現ニ最近ニ於キマシテ代
リマシタ前、政友會ガ議事進行ヲヤッテ居
リマス其當時ニ於キマシテ、本會議ノ散會
ト云フコトハ政友會ノ方デ自ラヤッタコト
ハナイ、與黨タル憲政會ノ請求ニ應ジテ、
其都度本會議ノ散會ト云フコトヲ要求ヲ致
シタノデアル、尙ホ現ニ重大法案ハ澤山ア
リマス、私ガ特ニ此所デ言ッテ置カナケレ
バナラヌコトハ勞働組合法案デアル、勞
働組合法ナルモノハ國民ニ取ッテノ最モ重
大ナル法案デアリマス、最早議會ノ會期ハ
二週間ソコ〓〓シカナイノデアリマスカ
ラ、斯ノ如キ國民ニ重大關係アル法案ノ如
キハ、一日一刻ヲ急イデ上程ヲシナケレバ
ナラナイノデアルノニ、之ニ反シテ三日ニ
上程ヲシテ今日ニ延バサレ、而モ今日ノ日
程ノ劈頭第一ニ揭ゲテ居ルニ拘ラズ、吾々
政友會ニ於キマシテハ、斯ノ如キ國民ニ重
大關係アル所ノ法案ハ早ク之ヲ上程シテ、
審議ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ主張
スルニ反對ヲ致シマシテ、之ヲ與黨ノ諸君
ガ後廻シニセラレタト云フニ至ッテハ其
意ヲ解セザル者ト謂ハナクテハナラヌノデ
アル、若シ政府ニシテ勞働組合法案ヲ早ク
通過ヲシテ、勞働階級ノ利福ヲ圖リ、其保
護ヲ助長スルト云フ誠意ガアルナラバ、努
力ヲ致シテモ宜シイ筈デアル、與黨ハ政府
ト一緒ニナッテ一刻モ早ク之ヲ上程審議ヲ
スルト云フコトニ努メナケレバナラヌノ
ニ、却テ反對ニ後廻シ後廻シニスル所ヲ見
マスルト、是ハ勞働組合法案ナルモノヲ政
府ガ提出シテ勞働階級ノ歡心ヲ徒ニ買ヒ、
而シテ資本家ニ阿ランガ爲ニ寧ロ之ヲ握リ
潰サウト云フ眞意ガアルノデハナカラウカ
ト思フ、是ハ今日バカリデハアリマセヌ
現ニ昨年ノ勞働組合法案ノ審議ヲ見レバ明
ニ分ル、御承知ノ通リ昨年ハ他ノ二案ト共
ニ出テ、勞働立法委員會ガ組織サレタガ、
同ジヤウニ皆質問ハ終了シテ居ルノニ、態〓
組合法案ダケヲ後ニ殘シテ、握リ潰シニ
シテシマッタノハ、是ハ明ニ政府與黨ノ責
任、卽チ故意ノ握リ潰シ、態ト握リ潰シヲ
致シタノデアリマス、本年モ亦其顰ニ倣シ
テ態〓之ヲ握リ潰シテ、徒ニ勞働者ノ爲ニ
美名ダケハ買シテ置カウト云フ趣意デアル
ナラバ、是ハ容赦ナラヌ不誠意ノ行動ダト
謂ハナケレバナラヌノデアリマス(拍手)政
府竝ニ與黨ハ此議事ノ遲レルト云フ其責ヲ
他人ニ歸スル前ニ、先ヅ自ラ顧ミテ努カス
ルガ適當デハナカラウカト思フノデアル、
(拍手)是等ノ點及勞働組合法案、果シテ之
ヲ早クヤル誠意ガアルカナイカ、國民ノ爲
ノ重大問題デアリマスカラ、御出席ノ總理
大臣ニ御答ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣若槻禮次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=10
-
011・若槻禮次郎
○國務大臣(若槻禮次郞君) 議事ノ進行ノ
問題デアリマシタケレドモ、政府ニ答辯ヲ
御求メニナリマシタ爲ニ、其事柄ニ付テ一
言申上ゲテ置キタイノデアリマス、只今安
藤君ハ豫算關係ノ法律案ノ提出ガ非常ニ遲
レタヤウニ御述ヘニナリマシタガ、併ナガ
ラ關係シテ居ル法案ノ二、三ハ後カラ出シ
マシタケレドモ、本日ノ議事日程ニ上ッテ
居リマス法律案ノ如キハ當初カラ矢張議
會ニ提出シテ居ルノデアリマス、ドウカ衆
議院ニ於テ一日モ速ニ御議決アランコトヲ
望ンデ居リマシタケレドモ、今日マデ左様
ニ參ラナカッタノハ、私洵ニ遺憾千萬デア
リマス、願クハ成ベク速ニ御協賛ヲ與ヘラ
レンコトヲ、此機會ニ特ニ申上ゲテ置キタ
イノデアリマス、勞働組合法ニ付テモ政府
ハ決シテ是ガ成立ニ不熱心デアル次第デハ
アリマセヌ、提出ノ遲レマシタコトハ安藤
君御指摘ノ通リ、又私是ハ成ベク早ク提出シ
夕方ガ宜シカッタト存ジマス、今囘提出致シ
マシタモノハ昨年ノ法律案ト略、こ同樣デア
リマス、ソレデアリマスカラ、モット早ク提
出出來サウナモノダト云フ御考ガアラウト
存ジマスガ、政府ニ於テハ昨年議會ニ於ケ
ル御議論ヲ參酌致シマシテ、ドウカ兩方ノ
御議論ヲ折衷シテ、サウシテ何レノ御賛成
モ得ルヤウナ法案ヲ立案シタイト云フガ爲
ニ、調査ニ遲レタ次第デアリマス、併シ政
府ハ此法案ノ成立ヲ望ンデ居ルノデアリマ
スカラ、矢張一日モ速ニ御審議ニ上ランコ
トヲ希望スルノデアリマス、唯、豫算關係
ノ法律案ハ豫算ト伴フモノデアリマスカ
ラ、何レヲ先ニ決議ヲ願フカト云ヘバ、願
クハ豫算關係ノ法律案ヲ成ベク速ニ御協賛
アランコトヲ願フ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=11
-
012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=12
-
013・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 私ハ再ビ立ッテ議事進行
ニ對シテ發言ヲ求ムルノハ、重ネ々々ノ不
幸ト感ズルノデアリマス、私ハ是ガ爲ニ議
事ヲ妨害スルナドト云フコトハ以テノ外デ
アル、私ノ發言中ニ色ニト妨害シヤウト云
フヤウナロ氣ガアルト、自然長伸ビルト云
フコトハ私ハ再々申上ゲテ居ルノデアル、
私ハ初陣ノ者デアッテ、氣ガ小サイ、ソレ
デ彌次ラレルト逆セ上ルト云フコトハ度
度言ッテ居ルノデアル(笑聲、拍手)サウ云
フ事ノ無イヤウニ、豫メ御願致シテ置ク次
第デアリマス、總理大臣モ幸ニ御出席デア
リマスカラ、途中デ此前ノヤウニ逃出サレ
タリスルト-是ハ總理大臣ガ逃出シタト
云フノデハナイ、大藏大臣ノコトヲ言フノ
デアルガ、又其顰ニ傚シテ逃出サレヌコト
ヲ豫メ希望シテ置ク次第デアリマス、私ハ
玆ニ伺ヒタイノデアリマスガ、タレハ主ニ
大藏大臣ニ對シテ、議事進行ニ對シテ伺,
テ置クノデアル、ソレハ大藏大臣ハ貴族院
ニ於テ過日發言サレタ中ニ、吾々ガ非常ニ
諒解ニ苦ムコトガ多々アルノデアリマス、
就中本議場ニ於ケル所ノ、去ル三日ニ於ケ
ル混亂ノ事實ニ付テ、貴族院ノ高橋琢也氏
ヨリ、銳キ御質問ガアッタノデアル、然ルニ
此御質問ニ對シテ、大藏大臣ハ嘘言ヲ吐カ
レタト云フコトニナッテ居ルノデアリマス
(〔ヒヤ〓〓」拍手)苟モ神聖ナル議場ニ於
テ、嘘言ヲ吐カルヽト云フコトハ、吾人ノ
見遁スベカラザル重大ナル事件ナリト思フ
ノデアル、左樣デアルガ故ニ果シテ何ノ爲
ニ-殊ニ貴族院ニハ玉座ヲ背ニ負ウテ登
壇ヲ致シテ居ラルヽ筈デアル、玉座ノ前ニ
於テ嘘言ヲ吐クナドト云フコトガアッタナ
ラバ皇室ニ對スル心事ヲ疑ハレテモ致方
アルマイト云フコトニ相成ルノデアル(拍
き)ソレデ貴族院ニ於テドウ云フコトガ質
間ヲサレ、ドウ云フコトヲ應答サレタカト
云フト、此官報ノ號外ノ速記錄ニ載シテ居
ル所ヲ見ルト云フト、高橋琢也氏ハ質問ノ
終リ頃ニ於テ、斯ウ云フコトヲ申サレテ居
ルノデアル「今回ノ衆議院ニ起ッタ事柄ハ
最モ奇怪至極デアルノミナラズ、當時大藏
大臣ガ議事中ニ御缺席ヲ爲サッタト云フヤ
ウナコトデ、エライ騒ギヲシテ居ルト云フ
コトハ新聞ニモアル、マサカ貴族院デハサ
ウ云フコトハ爲サラヌデアラウケレドモ、
矢張帝國議院トシテハ、十分ニ是等モ國民
ノ安心スルヤウナ行動ヲ御執ニナリ、又假
令多數ヲ賴ンデ、御自分方ニ御都合ノ好イ
コトガ出來ルニシテモ、議會其モノニ向ク
テハ十分ナル敬意ヲ拂,テオヰデナサラネ
バナラヌコトデアラウト思フ、是ハ綱紀肅
正ノ上ニ關係ガアルカラ、私ガアレモ是モ
擧ゲテ伺フノデアル、デ今囘ノアノ衆議院
ノ騒動ニ對シテハ、如何ナル御感想ヲ總理
大臣ハ御持チニナッテ居ルカ、之ヲ伺ヒタイ
ト思フ」斯ウ云フコトヲ御述ニナッタノデア
ル、ソレニ總理大臣ハ不得要領ナコトヲ、
例ニ依シテ御述ニナッテ居ルガ、大藏大臣ハ、
ハッキリ仰シヤッテ居ルノデアル、ソレハ大
藏大臣ノ勇氣ハ大ニ嘉スルケレドモ、嘘言
ヲ吐カレタト云フコトニ付テハ吾々ハ許サ
レヌ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ居ルノデア
ル、大藏大臣ハエライ手前味噌ヲ御述ニ
ナッテ居ル、手前味噌デアルカラエライ鹽
ガ辛イト見エテ、箸ニモ棒ニモ掛ラヌヤウ
ナ手前味噌ヲ列ベラレタ後デ「唯ヘ終リニ一
言ヲ致シテ置キマス、私ガ衆議院ニ於テ議
席ヲ外シタ、不謹愼ナ遣方デアルト云フコ
トヲ御咎メニナリマシタ、是ハ西方ト云フ
人デゴザイマシタカ、名ヲ忘レマシタガ」
ト斯ウ言ウテ居ル「議事進行ノ問題ヲ提出
シテ、長キ演說ヲシテ居リマシタ、此震災
手形ヲ議スル時デハナイノデアリマス、議
事進行デアリマシテ、國務大臣ニ直接ノ關
係ノアルモノデアリマセヌ」斯ウ云フ嘘ヲ
言ッテ居ル「ノミナラズ午後一時カラシテ、
ズット續ケザマニ席ニ著イテ居ルノデアリ
マシテ、少々私モ用足シヲシナケレバナリ
マセヌノデ」斯ンナコトヲ言ッテ居ル同尺、
已ムヲ得マセヌ」何ガ巳ムヲ得ナイ「之ヲ
寸外シタ所ヲ、議院ヲ無視シテ敬意ヲ失シ
テ居ルヤウナ御咎メヲ蒙リマスルコトハ
甚ダ遺憾ニ存ジマス、惡カラズドウカ御諒
察ヲ願ヒマス」ナドト言ッテ、最後ニハ平身
低頭ヲ致シテ居ル(「議長、議事ノ妨害ヲシ
テハイケマセヌ」ト呼フ者アリ)ソレデ此西
方氏ノ發言ト言フモノハダ、何モ議事進行
デハナイノデアル、サウ云フコトヲ御間違
ニナルト云フ筈ハナイノデアル、アヽ云フ
重大ナル法案ガ現レテ、誰某ガドウ云フ事
ヲシタカト云フ位ノコトハ、ハッキリ頭ニ覺
エテ居ラレナイヤウナ低能振デ、ドウシテ
國務大臣ガ勤マルカト、私ハ大ナル疑問ヲ
懷カザルヲ得ナイノデアル(「議長々々、議
事ノ妨害ヲシテハイケマセヌ」ト呼フ者ア
リ)西方氏ノ御提議ニナッテ居ル所ハ議事進
行デモ何デモナイ、決議案デアル、此速記
錄ヲ見テモ明デアル、西方氏ハ「決議案、西
方利馬君提出、政府ハ大正十二年勅令第四
百二十四號第一項第四號ニ該當スル震災手
形ノ振出人及個人裏書人、竝其ノ手形金額
ヲ明示スヘシ、右決議ス」斯ウ云フコトデ
アル、而シテ西方氏ハ發言サレテ居シテ、大
藏大臣ガ居ナイト云フノデ(「議長、大藏大
臣ヲ呼ンデ下サイ」ト呼フ者アリ)斯ウ云フ
ヤウニナッテ居ル、議長ガ言ハレルニハ「只
今出席セラレマス、「大藏大臣ガ來テカラヤ
レ、政務次官ガ居ルデハナイカ」ト呼ヒ其
他發言スル者多シ、議長、靜肅ニ願ヒマス、
西方利馬君、重大問題デアルカラ大臣ノ出
席ヲ求メテ居ルノデス」斯ウ云フコトヲ、
言ハレテ居ル、其時分ニハ大臣ハ二囘目ニ
大臣席カラ外サレタ時デアル、議事進行ニ
付テハ西方氏ナドハ一言モ發言サレテ居ラ
ナイ、議事進行ト決議案ト取違ヘラレルト
云フヤウナコトハ、此議會ニ吾々ノヤウ
ニ初メテ出テ來夕者ナラバ、サウ云フコト
モアルデアリマセウ、併ナガラ大藏大
臣ハ數度出ラレテ、而モ選擧區ナドハ
四五回モ御變ヘニナッテ、サウシテ出ラ
レタ强者デアル(「餘計ナコトヲ言フナ」
ト呼フ者アリ)サウ云フヤウナ人ガ、議
事進行ト決議案ト取違ヘ、殊ニ自分ニ重
大ナ關係ノアル案デアル、此決議案ノ趣
旨トハ何ゾヤト申シマスルト、震災手形
ノ內容ガ分ラナイ、內容ガ分ラナイカラ、
其内容ヲ示セト云フノデアル、サウ云フヤ
ウナコトヲ發言サレテ居ルノデアルカラ、
之ヲ忘レルト云ッテモ忘レルコトガ出來ナ
イ問題ト吾々ハ考へテ居ル、ソレヲ西方氏
ガ議事進行ニ付テ發言ヲ爲サレテ居ル、議
事進行デアルカラ、直接議案ニハ關係ガ無
イト云フヤウナコトヲ、白ミシイ嘘ヲ言ハ
レルト云フコトハ、議院ノ神聖ヲ汚スモノ
デハナイカト云フコトヲ、私ハ伺ッテ居ル
ノデアル(拍手)若シモ貴族院ニ起リマシ
夕事デモ、衆議院ニ起リマシタ事デモ、苟
モ議院ニ起キタル事ハ、兩院ニ於テ之ヲ
糺彈シナケレバナラヌト吾々ハ考ヘテ居
ルノデアル(拍手)ソレカラ又第二段ニ伺ヒ
マスルノハ、斯ウ云フヤウナ態度デ以
テ、斯ウ云フヤウナ文句ヲ使っテ發言ヲ爲
サルト云フノハ、議員ヲ侮辱シテ居ルモノ
デナイカト云フコトヲ吾々ハ伺フ、議員ヲ
若シ侮辱シタル行爲デアルト云フコトハ、
吾々決シテ議院ノ體面ノ上カラ之ヲ疎カニ
出來ヌト斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、左
樣デアリマスカラ此點ニ付テ贅言ヲ費ス次
第デアルノデアリマス、而シテ先程モ朗讀
致シマシタル如クニ、貴族院ニ於テ連ベラ
レタコトハ、ドウデアルカト云フト、是ハ西
方ト云フ人デゴザイマシタカ、名ヲ忘レマ
シタガト云フヤウナコトハ、餘計ナコトデ
ハナイカ、西方氏ナラ西方氏ト言ッタラ宜
イデハナイカ、西方トカ云フ人ナンテ何ヲ
指シテ居ル、斯ウ云フヤウナコトハ、議員
同士デアッテモ斯樣ナ無禮ナ言葉ハ發セラ
レナイノデアル、斯ウ云フヤウナコトハ人
ヲ侮辱シテ居ル、驕慢ナ態度デハナイカ(拍
手)斯ウ云フヤウナ無禮ナ言葉ヲ、而モ衆議
院ノ議員ノ名前ヲ貴族院ニ於テ發表スルノ
デアル、衆議院デアッテ、御互同士ナラマダ
之ヲ許スベキデアル、上院ニ於テ、而モ貴
族院ハ嚴肅ヲ以テ尊ンデ居ル、莊嚴嚴肅ヲ誇
トシテ居ルノデアル、然ルニ玉座ノ前デ斯
ノ如キ衆議院議員ノ名前ヲ述ベルニ、西方
ト云フ人ナドト名前ヲ忘レタリスル、忘レ
タナラバ政友會ニ屬スル一議員トカ、衆議
院ノ一議員デ宜シイデハナイカ、何モアヤ
フヤナヤウナ名前ヲ言フ必要ハナイデハナ
イカ、斯ラ云フヤウナ無禮ナ言語ヲ發スル
ト云フコトハドウ云フ信念カラ出デラレ
タノデアルカト云フコトヲ、此場合明確ニ
大藏大臣ヨリ承ラナケレバナラヌ(拍手、
發言者多シ)而シテ私ハ議長ニ御願ヲ致シ
マス、私豫メ諒解ヲ得テ居ルニ拘ラズ、私
ノ發言ヲ議事進行デナイトカアルトカ、ヤ
カマシク頻ニ詮議立ヲシテ居ルノデアル、
私ハ身分ニ關スル辯明モ宜シイ、是ハ總テ
議事進行ノ一ツノ事柄デアルト云フノデ
ヤッテ居ルノデアル、甚ダヤカマシク三ロッ
テ居ルノデアリマスカラ、サウ云フコトハ
間違ノ無イヤウニ、議事規則ヲ見タリ、或
ハ先例ナドモ調ベナイ人デアルト思ヒマ
スカラ、豫メ諒解スルヤウニ御宣言ヲ煩シ
タイト思フノデアリマス、ソレデ議長ニ御
求メシタノデアリマスケレドモ本員ノ發言
中デアリマスカラ、追テ議長カラ宣言ヲサ
レルコトヽ思ヒマスカラ、私ハ私ノ發言ヲ
繼續致シタイト思フノデアリマス、若モ議
事進行デアッタカラ、自分ハ缺席ヲシテモ差
支ガナイト云フコトデ、西方ト云フノト高
橋熊次郞ト云フノヲ間違ヘタト云フコトナ
ラバ、又玆ニ一ツノ問題ガ生ズルノデアル、
高橋熊次郞モ能ク御記憶ノ通リデアルダラ
ウト思フ、屢、委員會アタリニ出テ、質問
應答ヲ重ネテ居ルノデマサカ高橋ヲ忘レル
ヤウナコトハアルマイト思フノデアリマ
ス、屢、御目ニ懸ッテ居ル、又西方利馬氏ハ
震災手形ノ委員會ニ於テハ、數日ニ亙ッテ
痛烈ナル質問應答ヲ、一騎打デアナタ方ト
爲サッタノデアル、斯ウ云フヤウナコトヲ
爲シテ居ルノデアリマスカラ、西方氏ナド
ハモウ忘レルコトノ出來ナイ人物デアル、
斯ウ云フコトヲ取違へルヤウナ、ソンナ不
確カナ頭デドウスルカト云フコトモ私ハ考
ヘテ居ル、故意ニ間違ヘタトハ吾々ニハ思
く 、議員ヲ侮辱スル爲ニ故意ニ之ヲ取違
ヘタト云フヨリ外思へナイ、ソレデナケレ
バ第一ニ質問シタル如クニ、是ハ唯〓責任
逃レヲシテ、一時貴族院議員ヲ瞞過シ去ラ
ウト致シテ、是ハ議事進行デアルト云フヤ
ウナ、敢テ他ヲ言フガ爲ニ斯ウ云フ言辭ヲ
弄シタカ、ソレデナケレバ何ガ故ニ高橋
熊次郞ト西方利馬ヲ間違ヘルヤウナ、サウ
云フ疎忽カシイコトヲサレタカ、若シサウ
云フ疎忽カシイコトヲサレタノハ生理上ノ
關係デアルカ、或ハ故意デアルカト一ムフコ
トヲ承ラナケレバ、吾々之ニ關係シテ居ル
者ハ、非常ニ憤懣ニ堪ヘヌノデアルカラ、
其邊ヲ能ク伺ッテ見タイ、故意ニ間違ヘタ
ト云フコトナラバ、吾々ハ大ナル侮辱ヲ感
ズルノデアリマスカラ、之ニ付テ又改メテ
吾々ハ相當ノ手續ヲ取ッテ、ソレ〓〓ノ發
言ヲ致サナケレバナラヌト云フコトニナ
ル、ソレカラ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=13
-
014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 高橋君-高橋君、
簡潔ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=14
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015・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) ソレカラ百步ヲ讓フ
テ-度と議長ハ簡潔トカ何トカ言ハレル
ノデアリマスガ、簡潔ト云ッタ所ガ、私ノ趣
旨ヲ述ベルニハ、ソンナニ簡潔ニ直線ニ飛
行機デ走シテ行クヤウニハ行カヌノデアリ
マス、ソレデアルカラ一方ニ於テ私ハ頭ヲ
冷靜ニシテヤレバ、餘程速力ガ早ク行クノ
デアルガ、一部ノ連中ガ頻ニ妨害ヲサレル
カラ、尙ホ停滯ヲ致スト云フコトニ相成ル
ノデアル、ドウゾ此事實ヲ御諒承ヲ願ヒタ
イト議長ニ御願スル次第デアリマス、而シ
テ最後ニ議事進行ト言フコトヲ言ハレテ居
ル、議事進行デアルナラバ、何ガ故ニ大
臣ハ出席セヌデモ宜シイカト云フコトヲ伺
ヒタイ、私ハ他ノ方ニモ伺ヒタイト云フノ
ハ總理大臣ヲ主ニ指シタノデアル、幸ヒ
大藏大臣ガ政府委員席ニ居ラルヽノデアリ
マスカラ、私ハ安心シテ此發言ヲスルト云
フコトヲ言ッタラバ、事實ニ於テ大藏大臣
ハ風呂敷包ヲ抱ヘテ行カレタ、其後ニ貴族
院デ述ベラレタ第二段ニ於テ、用ヲ達シタ
クナッタカラ、一時カラ此政府委員席ニ著イ
テ居ッテ、健康上許サナイカラト云フヤウ
ナ意味デ、貴族院ニ諒解ヲ求メテ居ル、便
所二立ッテ行クニ何ガ風呂敷包ガ要ルノデ
アル(拍手)幾ラ世間デハ其風呂敷包ノ中ガ
臭イト云フカラ、便所ニデモ持シテ行ッタラ
宜カラウト云フコトデアルカ知ラヌケレド
モ(拍手、笑聲)サウ云フヤウナ白々シイ嘘
ヲ吐クト云フノハドウ云フ譯デアルカ、
本員ガ何ヲ言フカ分ラナイト思ッタカラ、ン
レデ自分ハ議員ノ前デ赤面ヲシタラ大變ダ
ト云フノデ、逃出シタト云フコトニナルデ
ハナイカ、斯ウ云フ見エ透イタ嘘ヲ神聖ナ
ル議場ニ於テ發セラレルト云フコトハ果
シテ庶民政治ヲ高調サレル憲政會ノ内閣ガ、
庶民政治ヲ謳歌シテ居ル所ノ此內閣ノ大臣
ニ、而モ重要ナル椅子ニ坐ラレテ居ル大藏
大臣ガ、何ガ故ニ斯ノ如キ議員ヲ侮辱スル
ヤウナ、又ハ議員ヲ瞞著スルヤウナ虚偽ノ
事實ヲ平然トシテ吐イテ居ル、殊ニ衆議院
議員ヲ侮辱スルヤウナ言辭ヲ貴族院ニ於テ
發言ナサルト云フコトハ決シテ平素主張
スル庶民政治ト云フコトヲ冒頭ニ揭ゲラレ
テ居ル其内閣ノ國務大臣トシテハ、洵ニ吾々
怪訝ニ堪ヘナイ次第デアルノデアリマス、左
樣デアリマスカラ、大藏大臣ガドウ云フ信
念ニ基イテ、貴族院ニ於テ以上四項ニ亙ル
ヤウナ發言ヲナサレタカト云フコトヲ、率
直ニ明快ニ御答辯ヲ願ヒタイノデアル、而
シテ其答辯ニ依ッテハ、總理大臣ガ之ニ對
シテ補足セラレンコトヲ希望致シテ、一先
ヅ此壇ヲ降ル次第デアリマス
〔「答辯ノ必要ナシ」ト呼フ者アリ〕
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=15
-
016・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今ノ高橋君ノ
ハ議事進行ノ御演說カモ知レマセヌガ、私
ニ向ッテ御尋ヲ蒙リマシタカラ、極ク簡單
ニ御答ヲ致シマス、高橋君ヨリ質問ヲ受ケ
マシタ其言葉中ニ、議會二對シテ敬意ヲ缺
クガ如キ御咎メノ御言葉ガアッタノデアリ
さっ、ソレハ卽チ衆議院ニ於テ議事中ニ席
ヲ外シタト云フ事柄デアリマス、私ハ席ヲ
外シタコトハ事實デゴザイマスト中シタ、
而シテ當時衆議院ノ議事ハ議事進行中ノ發
議中デアル、其發議ヲシテ居ル人ニ對シ
テ、西方君デアッタカ、ソレヲ忘レマシタガ
ト云フコト、斯ウ云フコトヲ言ッタ、(「速記
錄ヲ見ヨ」ト呼フ者アリ)ソレハ速記錄ニア
ル通リデアリマス、或ハ今日ヨリ之ヲ顧ミ
レバ、一議員ト申シタ方ガ宜カッタカト思
ヒマス、併ナガラ貴族院デハ西方君デアッ
タカ、名前ハ忘レマシタガ、ソレハ其人ガ
値打ガナイカラ名ヲ忘レタト云フ意味デナ
ィ、其演說ヲシタ其時ノ人ヲ忘レタト云フ
ノデアリマス、ソレカラ議事進行中デアン
タコトハ、別ニ私ガ此處デ說明シナクテ
モ、議事進行中ニ國務大臣ガ居ラナクテモ
宜イデナイカト云フガ如キ議論ハ、各所ニ
行ハレテ居ッタ時デアリマシテ、現ニ私ガ
用ヲ足シテ歸ッテ來ル時ニ、今何モ俄ニ行
カナクテモ宜イデナイカト云フコトマデ
言ッタ人サヘアリマス、議事進行モ場合ニ
依ッテハ國務大臣ガ居ラナケレバナラヌコ
トモアリマセウ、併ナガラ此間ノ時ハ議院
中ニ色ミノ論難ガ行ハレテ、其議院中ノ行
動ニ關スル議事進行ノコトデアッテ、議案
其モノニ對スル關係デナカッタノデアリマ
ス、ソレ故ニ其場合ニ席ヲ外スコトハ、不
敬デモナケレバ、何等ノ妨ガナイト信ジタ
ノデアリマス、ソレカラ風呂敷ヲ持ッテ行ッ
タノハ何ノ用ガアッテカト仰セラレル、私ハ
當時風呂敷包ヲ持シテ此席ニ参ッテハ居リマ
セヌ(「嘘ヲ言ヘ」ト呼フ者アリ)恐ラク此言
葉ガ嘘ト云フコトデ咎メラレルナラ、今
高橋君ノ言ハレタコトガ嘘デアリマス、而
シテ罫紙ニ書イテ當時議會ノ應答ノ參考ト
シテ持ヲテ居シタ、ムキ出シノ書類ヲ持シテ
居ッタノデアリマス、席ヲ外ス時ニムキ出シ
ノ書類ヲ彼所ニ置クコトハ、甚ダ職務ニ不
忠實ナル譯デアリマスカラ、持シテ出タニ
違ナイ、洵ニ尤ラシク仰セラレタガ、事實
ハ其通リデアリマス、別ニ侮辱致シタコト
モナケレバ、事實ハ今申上ゲル通リデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 安達內務大臣代理ヨ
リ發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=17
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018・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 私ハ昨夕關西地
方ニ起リマシタル震災ニ付テ、其〓要ヲ御
報告シテ置キマス、先ヅ帝國大學ノ地震學
〓室ニ於ケル今村博士ガ、昨夕ノ震災ニ付
テ發表セラレタル意見ヲ御紹介ヲ致シマシ
テ、而シテ各地ノ狀況ノ大要ヲ御報告申上
ゲマス、尤モ今日ノ午前ニ到來致シタモノ
ヲ基礎ト致シテ作リマシテ、只今議席ニ出
マス頃、最近ノモノガ參リマシタカラ、併
セテ御報告ヲ致シマス、多少重複ノアル所
ヲ御用捨ヲ願ッテ置キマス、昨日ノ午後六
時二十九分四十五秒、但馬、丹後地方ヲ中
心ト致シマシテ强震ガアリマシタ、今村博
士ノ發表ニ依リマスト、初期微動繼續時五
十七秒デアッテ、其震度ガ、卽チ震幅ガ十五
「ミリメートル」、s繼續時間ガ約五十分、地
震ノ態樣ガ水平動デアル、震源地ハ詳細明
瞭ナラザルモ、多分兵庫縣下丸山川、豊
岡城崎附近ガ中心デアルダラウ、之ヲ大
正十四年ノ五月二十三日ニ於ケル所ノ但馬
地方ノ地震ニ比較スレバ、其態樣ハ前回ト
極メテ似テハ居ル、併シ其震度ハ前回ニ略、
倍ヲシテ居ルト云フコトデアリマス、之ニ
依リマスト、其被害ハ同博士ノ發表ニ依リ
マスレバ、但馬丹後ハ花崗岩地帶デアリマス
カラシテ、震度ハ前回ノ二倍デアリマスケ
レドモ、被害ハ必シモ二倍シテ居ルト云フコ
トハ斷言シ難イ、與謝半島海岸地帶ハ比較
的地質ガ軟弱デアリマスカラ、此部分ニ於
テハ被害ガ顯著デアルダラウト云フ發表デ
アリマス、而シテ其被害及範圍ニ付テ、各
方面カラ集リマシタ所ノ通信ヲ綜合致シマ
スルト、被害ノ最モ甚シキ所ハ、今村博士
ノ發表ト全然一致ヲ致シマシテ、京都府與
謝郡及中郡地方ノ一帶デアリマシテ、兵
庫、鳥取縣ノ日本海岸地方及大阪府下之ニ
亞イデ居リマス、前囘ノ被害激甚ナル地方
デアル所ノ城崎、豐岡ハ被害ガ比較的少
キ見込デアリマス、其他岡山、島根、鳥
取、滋賀、福井、奈良、三重縣等ニ於テモ、
戶又ハ障子ナドガ外レマシテ、戶棚ノ物ガ
下ニ墜ツルヤウナ程度ノ强震ヲ感ジマシ
タケレドモ、人蓄及家屋等ノ被害ハ極ク
輕微ナル見込デアリマス、最モ激シキ所
ハ京都府下デアリマスガ、此京都府下ノ
震災ノ激震地ハ、丹後ノ國ノ五郡ノ內、
與謝、中、竹野、熊野ノ四郡デアリマシ
テ、同方面ニ對スル通信、交通機關ガ杜
絕致シマシタ爲ニ、未ダ死傷者ノ數、倒壞
家屋ノ數等ハ、確報ヲ得テ居リマセヌ、是
ハ先刻申上ゲタ通リ、後ノ報告ニハ此中確
報ニ接シタ所ガアリマス、後デ御報告致シ
さっ、其被害ノ地方ハ何處カト申シマス
ト與謝郡ニ於キマシテ崇乱町、此處ガ人
ロガ四千百十一人位居ル所デアリマス、又
同郡ノ加悅町ガ人口四千百三十、又同郡ノ
石川村ガ人口二千三百六十四、同郡山田村
ガ人口二千五、此各方面ガ最モ被害ガ多ク
アリマシテ、多數ノ家屋が倒壊シ、火災ヲ
起シテ殆ド全滅ニ近イ所モアルヤウデアリ
マス、死傷者モ午前中相當ニアル見込ト云
ウテ參ッテ居リマシタ、午後若干分ッテ居リ
マス、ソレカラ中郡ニ於キマシテ峰山町
人口四千五百八十五、竹野郡網野町人口五
千八百三十六、同ジク間人町人口ガ三千百
五十三アリマス、此各地方ニ於キマシテ、
倒壞セル家屋ガ多クアリ、死傷者モ亦相當
多數ニ上ル見込デアル、峰山町ハ全滅ニ近
シト云ウテ居ルケレドモガマダ明カナラ
ヌト云フノガ午前中ノ報告デアリマ
ス、ソレカラ熊野郡久美濱町人口二千
九十六ノ所デアリマス、是ハ前囘ノ震
実ニ最モ激甚ナル地方デアリマシタ
ガ、此久美濱町ニ於キマシテハ本日
ノ午前一時頃、火災デ燃エツヽアルト云フ
報告デゴザイマスケレドモ其被害ガマダ
詳カナラヌト云フコトデアリマス、以上ノ
被害各地ハ何處モマダ雪ガ積ンデ居リマシ
テ、罹災民ハ雪上ニ避難シ居ルト云フ狀況
デゴザイマス鐵道ハ丹後ノ由良、栗田驛
間ノ隧道、是ガ崩壊シテ居リマス、又峰山
方面モ列車ガ不通トナッテ居リマシテ、電
信電話モ共ニ宮津町以北ハ不通トナッテ居
リマシテ、交通、通信機關全ク杜絕スルニ
至ッテ居リマス、道路ハ舞鶴以北ハ道路ニ
龜裂ヲ生ジテ居リマシテ、與謝郡奧地ニ至
リマシテハ積雪ノ多クアリマス爲ニ、亀
裂ノアル上ニ積雪ガアリマスカラ、自動車
ノ通行ガ不能トナッテ居リマス、救護ノ狀況
ニ付キマシテハ峰山、網野方面ノ最モ被
害ノ多大ナル地方ニハ警戒救護ノ爲、直
ニ其附近ノ舞鶴外二警察署ヨリ、警察官五十
五名ヲ災害地ニ急ニ派遣セシメマシテ、又
今日ノ早朝、更ニ警視二名以下百五十五名
ヲ派遣致シマシテ、罹災地ノ治安維持竝ニ
罹災民ノ救護ニ努メツヽアルノデアリマ
ス、尚ホ右地方ニ對シマシテハ、宮津港ニ
碇泊中ノ驅逐艦カラ、救護隊ヲ上陸セシメ
マシテ、擔架十五臺ヲ以テ死傷者ノ收容救
護ニ努メツヽアルノデアリマス、其詳シキ
事モ後デ海軍省ノ報告ニ接シテ居リマスカ
ラ、御報告致シマス、ソレカラ内務省カラ
ハ取敢ヘズ罹災地ノ狀況視察ノ爲ニ警保局
ノ鈴川內務事務官、社會局ノ富田書記官ヲ
現場ニ急派セシメタ次第デゴザイマス、大
阪府ハ今日午前マデニ人畜、家屋ノ被害ノ
判明セルモノハ死者ガ十五名、傷者ガ百六
名デアリマス、家屋ノ全潰セルモノガ三十
二戶、半潰ノモノガ五十四戶デアリマス、
其死傷者ハ多クハ家屋倒潰等ノ際ニ起シタ
モノデゴザイマス、ソレカラ大阪府下ノ管
內ニ於キマシテ、火災ノ生ジタルモノハナ
イ、鐵道電信電話モ通ジテ居リマスカラ、
人心ハ一般ニ安定シテ居ルト云フ報〓デア
リマス兵庫縣ニ於キマシテハ、多少ノ被
害ガアリマスケレドモガ、目下調査中ナル
モ、差シタルコト無キ見込ト書イテアリマ
ス、七日夜、鐵道省ニ達シタル情報ニ依リ
マスレバ豐岡町ニ全半潰十數戶ト、橋梁
墜落ガ一箇所アッタト云フ報知デアリマス、
鳥取縣ハ目下電報デ照會中デゴザイマスケ
レドモ、鐵道省ニ達シタル情報等ニ依リマ
スト、被害ハ極ク少イ見込デアリマス、ソ
レカラ今日ノ午後零時ニ發シマシタ京都府
知事ノ電報ニ依リマスト、目下通信聯絡ノ
アル所ハ宮津町バカリデアル、宮津町ノ警
察署長ノ報告ニ依リマスト、與謝郡岩瀧町
ハ燒失家屋ガ二百戶、死傷者ガ八十名、同
郡ノ石川村ノ死傷者ガ五百四十名、燒失セ
ル家屋ガ六戶デアリマス、同郡ノ市場村ノ死
傷者ガ二十名、同郡ノ山田村ノ燒失家屋ガ
八十戶、死者が六十名、中郡ノ峰山町、竹
野郡網野町ハ殆ド全壞シタル後、火災ヲ起
シテ全燒シタ、斯ウ云フ報告デアリマス、其
他中、竹野、與謝三郡ノ各村落家屋殆ド倒
壞シ、火災起リテ今尙ホ燃エツヽアリ、死
傷者多數アル見込ナルモ道路龜裂崩壞等ノ
爲メ、交通通信杜絕シ、詳細不明ト云フコ
トデ、熊野郡ハ右三郡ニ次グ被害ガアッテ、
一昨年丹後地方ノ震災ニ比シテ死傷其他ノ
被害ガ十數倍ニ達スル見込ト云フコトデア
リマス、京都府廳ヨリハ、應援警察官二百
五十名、救護班員事務官屬ヲ派遣スルト共
ニ、取敢ヘズ米二百石、毛布五千枚、亞鉛
四千枚ヲ送付スルノ準備中ナリ、ソレカラ
陸軍ノ十六師團長カラ本省ニ參リマシタ報
告ニ依リマスト、歩兵第二十聯隊ヨリ大隊
長ノ指揮スル步兵二中隊及救護班ヲ昨夜夜
半ニ峰山方面ニ出發セシメテ居リマス、舞
鶴重砲兵大隊兵力不明、此重砲兵大隊ヲ宮
津ニ、京都部隊ヨリ救護班ヲ久美濱ニ派遣
セリ、尙ホ飛行機が京都附近ニ居リマスカラ、
飛行隊ヲ以テ今日ノ狀況ヲ偵察セシムル
簀團下ノ諸隊ニ大ナル被害ナキモノヽ如
シ、是ガ陸軍ノ方ノ報告ロアリマス、ソレ
カラ前ニ御話致シマシタ海軍ノ方カラ、海
岸ニ起クタ震災デアリ、マスカラ、驅逐艦ヲ
以テ〓護ニ非常ニ盡力サレテ居リマスル
ガ、其報告ノ大要ヲ申シマスルト、「舞鶴要
港司令官ハ直ニ先ツ海軍所屬各部竝ニ地方
被害ノ狀況ヲ調查シ、刻々無線電信ヲ以テ
之ヲ東京ニ報告スルト同時ニ、前日來宮津灣
ニ出動訓練中ノ第九驅逐隊竝ニ麾下諸隊ヲ
區處シ、應急救護作業ニ努メツヽアリ、卽
チ丹後與謝郡岩瀧町及加悅町、火災全滅ノ
報ニ接シ第九驅逐隊ハ直ニ約百名ヨリ成ル
救護隊ヲ岩瀧方面ニ派遣セリ、右派遣隊ノ
報告ニ依リテハ、死傷多數ニシテ收容困難ノ
狀況ナル趣ナルヲ以テ、舞鶴海軍病院其他ヨ
リ急速救護班ヲ編制シ、救護材料ト共ニ派遣
方準備中、網野、久美濱方面被害尠カラザル
模樣ナルヲ以テ、宮津灣ニ在リタル驅逐艦
ヲ同方面ニ急派シ、視察竝ニ枚護ニ任ゼシ
ム京都府ヨリ被害地ニ派遣スル應援巡查
約五十名竝ニ枚護材料ヲ驅逐艦ニ搭載、沿
海被害地ニ向ハシム、尙ホ右派遣驅逐艦ノ
報告ニ應ジ曾援方手配中ナリ」只今マデ手
許ニ到來致シマシタ各方面ノ報〓ハ、右報
告致シマシタ通リデゴザイマシテ、昨夕突
然起リマシタ此震災ニ付キマシテ、彼ノ地
方罹災民我ガ同胞ノ人〓ニ對シマシテ、洵
ニ同情ニ堪ヘザル次第デゴザイマス、此善
後ノ處置ニ付キマシテハ、能ク被害ノ程度
ヲ調査致シマシタ上ニ、ソレ〓〓機宜ノ處
置ヲ執ル積リデゴザイマス、此段御報告致
シテ置キマス(拍手)
〔國務大臣子爵井上匡四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=18
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019・井上匡四郎
○國務大臣(子爵井上匡四郞君) 鐵道ニ關
スル被害ヲ申上ゲマス、鐵道ニ關スル被害
ハ山陰線及宮津線ニ局限サレテ居ルノデア
リマス、其中、山陰線ニ於ケル『被害ハ
鎧久谷間築堤約三千坪崩壊致シマシタ、
九日正午開通ノ見込デアリマス、居組、岩
美間、岩美、鹽見間ニ於キマシテ線路ノ沈
下シタモノガアリマス、是ハ本日正午マデ
ニ開通ノ見込デアリマス、湖山、寶木間、
靑谷、泊間ニ於ケル損害ヲ受ケタノデアリ
マスガ、是ハ既ニ今朝開通ヲ致シマシタ、
次ニ宮津線ニ付キマシテハ、丹後由良カラ
栗田間、由良カラ約十哩二十鎻附近ニ於キ
マシテ、山崩ノ爲ニ線路ガ埋沒致シマシ
ク、本日正午マデニ開通ノ見込デアリマ
ス、宮津以西綱野マデ六驛約二十哩ノ間
ハ道床沈下、線路ガ下リマシタ、種々損
害ヲ受ケテ居リマスガ、通信機關ハ不通デ
アリマス、其詳細ヲ知ルコトハマダ出來ナ
イノデアリマス、諸所ニ龜裂及崩壞ガアリ
マシテ、尙ホ驛舍ノ崩壞セルモノガアリマ
ス、此區間ニ於ケル開通ノ見込ハ今日未ダ
不明デアリマス、幸ニシテ列車ノ乘客ニハ
一人ノ死傷者モ無イノデアリマス、鐵道省
ハ救恤品、避難民及救護班ニ對シテノ無賃
輸送ヲ開始シテ居リマス、右御報告ヲ致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=19
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020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ震災ニ關スル
政府ノ報告ニ對シマシテ質疑ノ通告ガアリ
やっ、順次之ヲ許シマス、長田桃藏君
〔長田桃藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=20
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021・長田桃藏
○長田桃藏君 只今內務大臣ヨリ、丹後及
但馬方面ニ於ケル昨夜ノ震災ニ對シテ、詳
細ナル御報告ヲ受取リマシタ、其御報告ニ
依リマシテ、震災ノアリマシタ場所ガ極メ
テ狹イノデアリマスケレドモ、其損害ノ程
度ノ極メテ深イト云フコトヲ聽キマシテ、
諸君ト共ニ深ク罹災民ニ同情ヲ致ス次第デ
アリマス、而シテ其機宜ノ處置トシテ交通
及通信機關ノ破壞サレテ居ル此場合、極メ
テ適當ニ、舞鶴要港部ヨリハ驅逐艦ガ派遣
セラレテ相當ノ救護ニ盡力セラレ、陸軍ニ
於テモ强行軍ヲ以テソレ〓〓地地ノ治安
維持ノ爲ニ、兵卒ヲ派遣サレタト云フコト
ニ對シテ、深ク感謝ヲ致サネバナラヌト考
ヘマス、又政府當局殊ニ京都府ハ、罹災地
帶トシテ適當ニ食糧等ヲ送ッテ居リマスノ
デ、是亦罹災者トシテハ深ク感激ヲシテ居
ル所ト存ジマス、此罹災ノ御報告ヲ受取リ
マスト、岩瀧ヨリ山田、石川、加悅方面及
蜂山、口大野、間人、網野、久美濱、此諸
方面ニ對シテハ殆ド全部ノ滅失トデモ言フ
ベキ狀態ニ在ルカノ如ク承ッタノデアリマ
ス、殊ニ峰山ヨリ竹野間ノ綱野町方面ニ對
シテハ殆ド全部火災ニ依シテ滅失サレタ
ト云フ御報告デアリマス、又其人畜ノ損害
モ極メテ多イト云フノデアリマス、此罹災
地デ最モ御報告中ノ慘害ノ大キイ場所ハ
諸君ノ御承知ノ通リ縮緬機業地デアリマシ
テ丁度春ノ機ヲ始メマス時デアリマスカ
ラ、機織リノ女工等ガ皆參ッテ居リマスノ
デ、其女工等ガ不幸ニモ此犧牲ニナッタモ
ノガ多カラウト云フコトヲ考ヘマシテ、吾
吾ハ此報告ヲ聽イテ、膚ニ粟ヲ生ズルヤウ
ニ考ヘルノデゴザイマス、而シテ此方面ハ
勿論デアリマスガ、丸山川ヲ越エマシテ豐
岡城崎方面モ亦此損害ヲ受ケタト云フコ
トデアリマスルガ、同地方及今囘ノ丹後方
面ノ罹災地ハ、御承知ノ如クニ大正八年ニ
アノ驚クベキ水害ニ見舞ハレタノデアリマ
シテ非常ナ損害ヲ受ケテ、其損害モマダ
十分ニ癒ユルコトノ出來ナイヤウナ狀態ニ
居ルノデアリマス、サウシテ十四年ノ五月
ニ又震災ヲ受ケマシテ、城崎及豐岡、久美
濱方面ニ於テハマダ其震災ノ善後策ガ完全
ニ出來テ居ラヌト云フヤウナ狀態ニ居リマ
スサウシテ今又此不幸ナル大震災ヲ受ケ
タノデアリマス、其上ニ御承知ノ如クニ、
京都府ノ地方財政ハ極メテ行詰ッタ狀態ニ
居リマシテ、此屢〓起ル所ノ災害ニ對シ
テ、十分ナル機宜ノ處置ヲ執ルト云フコト
ハ到底出來ナイ狀態ニ居ルノデゴザイマ
ス、故ニ此罹災地ノ不幸ナル方々ニ對シテ
應急ノ救護ヲ致スニ付テハ、如何ニ致シマ
シテモ、仁俠ナル我ガ國民同胞ノ同情ニ愬
ヘルト云フコトハ、又政府ガ極メテ時機ヲ
誤ラザル機宜ノ處置ヲ執ッテ下サルト云フ
コトニ依ッテ、始メテ救護サルヽモノト信ジ
テ居ルノデゴザイマス、私共ハ只今ノ御報
告ヲ受取ッテ-政府ハ適當ナル處置ヲ執
ルト云フ御報告デゴザイマスルカラ、之ヲ
全ク信ジタノデゴザイマスルケレドモ、此
羅災地ノ人民ハ如何ニシテ如何ナル方法
デ、適當ナル處置ガ執ラレルノデアルダラ
ウカト云フコトヲ、一日モ早ク之ヲ聽イテ
安心ヲシタイト考ヘテ居ルト思ヒマスカ
ラ、政府ニ於カレテハ此點ニ對シテ御示
下サルコトノ出來ル範圍ヲ、玆ニ御示下サ
ルコトガ必要デアルト私ハ考ヘルノデアリ
アド、今一點ハ昨日ノ都下ノ新聞ニ或ル
技師ノ說ト云フコトデ、今回ノ震災ノ元ハ
宮津灣方面ニアルト思ハレル、而シテ此震
災ハ昨夜ノ震災ダケニ止ラズ、今後尙ホ連
續起ル虞ガアルト思ハレルト云フコトガ書
イテアリマシタ、之ニ依リマスト、マダ斯
ノ如キ震災ガ屢〓起ルカノ如ク考ヘラレマ
シテ、啻ニ罹災地ノ者ノミナラズ、吾々其
地方ヲ同ジクシテ居ル者カラ考ヘマスト、
恐怖ハ矢張繼續致シテ居リマスノデ、罹災
地ノ者ハ生存ヲ脅カサレル上ニ、避難スル
場所モナク、非常ニ恐怖致シテ居ルト考へ
マスガ、政府ハ此災害ガ果シテ連續シテ尙
ホ起ルト云フコトデゴザイマスルナラバ
之ニ對スル防護ノ方法ヲ速ニ示サレテ、安
心ヲ與ヘラルヽト云フコトガ、極メテ必要
ナル處置ナリト考ヘルノデアリマス、又斯
樣ナ事ノナイ-是デ後ニハ大キナモノハ
續イテ來ナイ調査デアルト云フコトナラ
が此點モハッキリト御示下サッテ、罹災住
民ニ十分ノ安心ヲ與ヘルコトガ必要デアル
ト思ヒマス、ドウカ此點ニ對シマシテ、十
分ニ御調査ヲ賜ハリマシテ、能ク此東京ノ
地震其他ノ地震ニ付テモアリマシタヤウ
ニ、國民ノ根本カラ安心ノ出來ルヤウナ御
調査ヲ成ベク速ニ御發表サルヽコトヲ切ニ
希望スルノデアリマス、此兩點ニ對スル政
府ノ御意見ヲ伺ヒタイト考ヘル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=21
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022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 安達內務大臣代理
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=22
-
023・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今長田桃藏君
カラ此度ノ災害地方面ノ事ニ付キマシテ、
御質問デゴザイマシタ、災害地方面ニ深キ
御關係ヲ有セラルヽ同君トシテ御尤ナ事ト
考ヘマス、同君ノ御質問ノ通リ、彼ノ地ハ
縮緬機業ノ本場デアリマスガ、其到ル處此
縮緬業ハ全滅シテ居ルダラウト云フ想像ヲ
懷イテ居ル次第デアリマス、其損害モ頗ル
大ナルモノガアルト考ヘテ居リマスガ、只
今ノ御質問ノ要旨ハ、此救濟ニ付テドウ云
フ善後策ヲスルカ、其程度如何、ソレガ分ッ
テ居ッタラバ、此所デ元シテ吳レロト云フ
コトガ、第一ノ質問デゴザイマスケレドモ
ガ、是ハ昨晩突發致シマシタ事デゴザイマ
シテ、マダ只今續々被害ノ模樣、其程度ニ
付キマシテハ電報ナドニ接シテ居ル次第デ
アリマスカラ今日此所デ善後策ヲ如何ニ
致スト云フコトヲ、其輪廓デモ申上ゲル譯
ニハ參ラヌノデアリマス、當局者ト致シマ
シテハ細心ノ注意ヲ拂ヒマシテ、薄薄
調查ノ見込ヲ付ケマシテ、相當ノ措置ヲ執
ルト云フコトヲ今日ハ御答ヲ致シテ置クヨ
リ外ハナイト考ヘマスカラ、ドウゾ左樣ニ
御承知ヲ願シテ置キマス、第二ノ御質問ノ此
地寢學ニ關スルコトハ是ハ私輕々ニ何ト
モ申上ゲラレマセヌガ、學說上カラ〓究出
來ルコトハ、出來得ルダケ調査〓究ヲシタ
イト考ヘテ居リマス、又地方人民ニ對シマ
シテ妄ニ不安ノ念ニ襲ハレナイヤウナコト
ニ最善-最大ノ努力ヲシタイ、斯ウ云フ
希望ヲ持シテ居ルト云フコトヲ申上ゲテ置
キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 筒井民次郞君
〔筒井民次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=24
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025・筒井民次郎
○筒井民次郞君 昨夜突然關西地方ニ於キ
マシテ、大震火災ノ起リマシタコトハ洵
ニ諸君ト共ニ遺憾ニ堪ヘザル次第デアリマ
ス、只今内務大臣代理ヨリ、其被害ノ程度
ヲ詳細ニ御液告ニナリマシタノデアリマス、
又私ガ御尋致シタイト思ヒマシタコトヲ、
只今長田桃藏君ヨリ色こト御尋ニナリマシ
テ、又ソレニ對シマシテ内務大臣代理ヨリ
是亦詳細ニ御答ニナッタノデアリマス、私
ハ再ビ此事ヲ繰返スト云フコトハ、時間ノ
都合ニ依シテ避ケタイト思フノデアリマス、
唯〓此罹災者ニ對シテ先程内務大臣ノ言ハ
ルヽ所ニ依リマスルト、此罹災者ハ今猶雪
上ニ在ルト云フコトヲ承ッタノデアリマス
洵ニ返ス〓〓モ御氣毒千萬デアルト思フノ
デアリマス、斯ノ如キ罹災者ニ對シ、-
モ迅速ニ、深切ニ、此機宜ノ處置ヲ執ラレ
ンコトヲ、政府當局ニ御願ヲ致ス次第デア
リマス、之ヲ以テ私ノ質問ノ打切ト致シタ
イノヂアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=25
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026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス、本日ノ日程ニ揭ゲマシ夕質問一ヨリ五
ニ至ルモノハ、何レモ政府ヨリ答辯書ヲ受
領致シマシタ、仍テ日程ヨリ之ヲ省キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=26
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027・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス此際日程第十三乃至二十六ヲ繰
上ゲ、逐次議題ト爲シ、各委員長ノ報告ヲ
求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=27
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028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセマカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=28
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029・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
十三乃至第十七ハ同一委員ニ付託シタ議案
デアリマスカラ、一括シテ議題トナスニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=29
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030・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第十三、銀行法案、日程第十
四、貯蓄銀行法中改正法律案、日程第十五、
農工銀行法中改正法律案、日程第十六、北
海道拓殖銀行法中改正法律案、日程第十七、
非訟事件手續法中改正法律案ヲ一括シテ第
一讀會ノ續キヲ開キマス、委員長小野義一
君
第十三銀行法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一銀行法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
銀行法案中左ノ通修正ス
第三條第二項中「七年」ヲ「五年」ニ改ム
第四十條中「七年」ヲ「五年」ニ改ム
第四十一條第一項中「七年」ヲ「五年」ニ改
メ同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
命令ヲ以テ定ムル人口一萬未滿ノ地ニ
本法施行ノ際現ニ本店ヲ有スル銀行ニ
付テハ第三條第一項本文ノ規定ヲ適用
セズ但シ其ノ資本金ハ本法施行後五年
內ニ五十萬圓以上ト爲スコトヲ要ス
第四十二條中「三年」ヲ「五年」ニ改ム
希望條項
銀行監督ノ徹底ヲ期シ且銀行檢査官
ノ任用ニ付テハ特別任用ノ途ヲ開カレ
ムコトヲ望ム
二普通銀行ノ不動產資金化ニ就キ適切
ナル方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
三本法規定ノ最低資本金額ニ達スル爲
資本ノ增加ヲ行フ場合ニハ特ニ實際ノ
狀況ニ鑑ミ適切ニ認否ヲ決セラレムコ
トヲ望ム
第十四貯蓄銀行法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
第十五農行銀行法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一農工銀行法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
第十六北海道拓殖銀行法中改正法律
案(政府提出)
第一讀ノ續會(委員長報告)
報告書
一北海道拓殖銀行法中改正法律案政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
第十七非訟事件手續法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一非訟事件手續法中改正法律案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
〔小野義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=30
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031・小野義一
○小野義一君 只今議題トナッテ居リマス
ル五ツノ法律案、其中デ銀行法ヲ除キマシ
タル四ツノ案件ハ、銀行法案ニ伴ヒマスル
寧口當然ノ結果ト認メラルヽノデアリマシ
テ、隨テ委員會ニ於キマシテハ、此四ツノ
案件ニ付キマシテハ左マデノ議論ハナカツ
タノデアリマス、隨テ私ハ主トシテ議論ノ
中心トナリマシタル銀行法案ノ議事經過ニ
付テ、諸君ニ御紹介致シタイト考ヘルノデ
アリマス、本案提案ノ理由トシテ、政府當
局ノ御說明ニナリタル所ハ大要左ノ趣旨デ
アッタノデアリマス、銀行資力ノ充實ヲ圖ル
コト其一ナリ、堅實ナル經營ヲ助長スルコ
ト其二ナリ、預金者ノ利益ヲ保護スルコト
其三ナリ、銀行監督ノ周到ヲ期スルコト其
四ナリ、不當ノ競爭ヲ防止スルコト其五ナ
リ、銀行整備ノ進捗ヲ圖ルコト其六ナリ、
大體左樣ノ趣旨ヲ御說明ニ相成シタノデア
リマス、而シテ委員諸君ハ何レモ此御說明
ニ對シテハ之ヲ諒トセラレタリト私ハ認メ
タノデアリマス、偖テ本案ハ私ガ特ニ申上
ゲルマデモナク、洵ニ地味ナル問題「デアリ
マシテ、何等政治的ニ取扱ハルベキ性質ノ
モノデハナイノデアリマシテ、隨テ委員會
ニ於キマシテモ、最モ地味ニ、最モ眞面目
ニ、而シテ最モ熱心ニ最モ愼重ニ、審議セ
ラレタト云フコトヲ、特ニ此際諸君ニ御紹
介致シテ置キマス、而シテ此間行ハレマシ
タル御意見ハ、根本問題タル銀行ノ觀念ト
ハ何デアルカ、銀行ノ定義トモ申スベキ事
柄ニ關スル所ノ質問、或ハ金融機關ノ體系
脈絡ニ關スル所ノ質問ト云フガ如キ、根本
理論ヨリ出發ヲ致シ、而シテ經濟界、金融
界ノ實際ニ立脚セル事實問題ニモ亙リタル
コトハ勿論デアリマス、而シテ其質問應答
ハ微ニ入リ細ヲ穿ッタノデアリマス、私
玆ニ一々之ヲ諸君ニ紹介致シマスルコトハ
差控ヘマスルガ、併シ少クトモ法案ニ直接
ノ關係ヲ有シ、且ツ最モ委員諸君ノ問ニ御
議論ノ多カリシト認メラルヽ點ノミハ
通リ御聽キニ入レマスコトガ、私ノ義務ナ
リト信ズルノデアリマス、隨テ多少之ニハ
時間ヲ要シマスルケレドモ、其點ハドウカ
御辛抱下サルヤウ豫メ御願ヲ致シテ置クノ
デアリマス、先ヅ第一ニ起リタル問題ハ、
銀行ノ觀念ト云フコトデアリマス、之ニ付
キマシテ政府當局ノ御說明ハ、現在ノ銀行
條例ノ下ニ於テハ、信用ヲ與ヘル所ノ行
爲、卽チ興信行爲ノミデアッテモ銀行業デ
アルト見タノデアルケレドモ、今囘提出セ
ル銀行法ハ、第一條ニ示スガ如ク、政府ハ
興信行爲ト信ヲ受クル行爲、卽チ受信行爲
ヲ併セ營ムモノヲ銀行業ト看做ス、斯ウ云
フ御答辯デアッタノデアリマス、次ニハ先
程申ス點ヨリ申シマスルト云フト、銀行業
ノ定義觀念ニハ這入ラナイノデアルガ、併
シ預金者保護ノ必要ヨリシテ、營業トシテ
預金ノ受入ヲ爲ス者ノミヲモ銀行業ト看做
ス、而シテ銀行法ノ全部ヲ適用スルト云フ
コトノ御說明デアッタノデアリマス、第三
ハ從来ノ銀行條例ニ於テハ、手形ノ割引ノ
ミヲ業トスル者モ銀行業ト致シテ居ッタニ
拘ラズ、今囘ハ之ヲ除外セル理由如何ト云
フ質問ニ對シテ、政府ハ先程申ス通リ之ガ
卽チ興信行爲デアル、興信行爲ノミデアル
ガ故ニ、之ヲ除外スルノデアル、併ナガラ
手形割引ト云フコトハ是ハ決シテ政府ニ於
テ是ガ取締助長ヲ抛棄スルモノデハナイ、
特別ノ法規ノ下ニ於テ將來成ベク早ク是ガ
取締其他監督方法ヲ講ズル考デアルト云フ
答辯デアッタノデアリマス、第四ニハ手形ノ
割引ヲ主トシテ爲シテ、預金ノ受入ヲ從ト
シテ爲スト云フ、此場合ニ於テハ是ハ銀行
デハナイノデアルカト云フ此質問ニ對シ
テ、政府當局ハ預金ト手形割引トヲ併セ爲
スベキモノニ於テハ、此間主タリ從タルノ
區別ハ爲サナイノデアル、此間ニハ主從ノ
關係ハ生ジナイカラ銀行業デアル、斯ウ云云
御明答デアッタノデアリマス、第五ニハ近頃
新聞等デ頻ニ喧シク議論ノ種トナッテ居リマ
シタ「ビルブローカー」銀行、是ハ銀行トナ
ルノデアルカ、又ハ銀行トシテハ取締ラナ
イノデアルカト云フ質問ニ對シテ、政府當
局ノ答辯ハ、我國デハ所謂「ビルブロー
カー」ト稱スルモノガ種々アル、自己ノ計算
ニ於テ爲ス者ト或ハ他人ノ計算ニ於テ爲ス
者ト、卽チ「ランニング·ビルブローカー」
トノ別ガアル、「ランニグン·ビルブロー
カー」是ハ銀行業トハ何人モ言ヒ得ナイ、併
シ自己ノ計算ニ於テ爲ス者ノ中デモ、「コー
ル·マネー」ノ如キ、而シテ其實質ニ於テ、
預金ヲ運用シテ行フ者ニ於テハ、之ヲ銀行
業ト爲スヲ當然デアルト云フ御說明デアッ
タノデアリマス、轉ジマシテ、其次ニハ新
銀行法ハ、銀行業ヲ營ム者ハ株式會社ニ限ッ
テ居ルト云フコトデアル、是ハドウ云フ譯
デアルカ、現在ノ個人銀行、合名會社、合
資會社ノ組織ヲ、何故ニ否認スルカト一ムフ
質問デアッタノデアリマス、之ニ對スル答
辯ハ株式會社ハ現代的ノ企業形式デアルノ
ミナラズ、內部ニ監査役、或ハ株主總會ト
云フ機關ガアル、内部檢査ノ行ハレルト云
フ事實ヨリ見テモ、將又資本金ヲ容易ニ集
メ得ルト云フ點カラ見テモ、信用機關デア
ル所ノ銀行ニ取ッテハ最モ適當ナル組織ト
認メテ居ルカラデアル、現ニ貯蓄銀行及信託
會社ニ於テモ、此意味ヲ以テ議會ノ協贊ヲ
經テ居クテ、現行法トナッテ居ルノデアル、
ト云フ說明デアッタノデアリマス、其次ニ
ハ最低資本金額、之ヲ原則トシテ百万圓ト
定メタル理由如何、此事ハ實ニ委員會ニ於
テ最モ熱心ニ委員諸君ガ議論ヲサレタ點デ
アッタノデアリマス、政府ノ御答辯ハ最低
ノ資本金ニ關スル所ノ信託業法、或ハ貯蓄
銀行法ノ規定ヲ見テモ、前者ハ百万圓、後
者ハ五十万圓ト云フコトニシテ居ル、是亦旣
ニ議會ノ同意ヲ經テ確定法律ニナッテ居ル
ノデアル是等ノ法制ト共ニ、又現在政府
當局ニ於テ銀行ヲ認可スル場合ノ內規ノ標
準カラ照シテ見テモ而シテ今日經濟狀態
ノ推移カラ考ヘテ見テモ、寧ロ百万圓以上
トスルコトガ妥當ナリト云フ御說明デアツ
タノデアリマス、然ルニ此點ニ關シマシテ
ハ成程原則トシテ百万圓ハ諒トスルトシ
テモ、極ク小サイ町村ニマデ此原則ヲ强制
スルコトハ如何ナモノデアルカト云フコト
ノ議論ガ盛ニ行ハレマシテ、遂ニ時ニハ懇談
會ニモ移リ、成ベク意思ノ疏通ヲ圖リ、政
府當局ト頻ニ意見ヲ交ヘマシタ結果、後程
申上グル通リノ修正案ガ生レタノデアリマ
ス、次ニハ本條ノ規定ノ結果、或ハ曾資ガ
不能ニナリ、若クハ合同ヲ無理ニ致スト云
プコトニ依シテ、地方ニ於テハ銀行ノ數ガ或
ハ少クナリハシナイカ、サウ致スト云フ
ト、地方產業ノ金融ノ上ニ於テ障碍ガ來ル
ノデハナイカト云フ御心配ノ質問ガアリマ
シタ、之ニ對シテ政府當局ハ、我國ノ普通銀
行ハ實ハ非常ニ多過ギルノデアル、是ガ爲
ニ不當ノ競爭モ起ルノデアル、今囘增資資
本ニ付テノ最低金額ヲ先程申ス通リ定メタ
リト雖モ、之ニ依シテ或ハ多少銀行ノ減少
ヲ來シタ所ガ、由テ以テ地方ノ產業ガ阻碍
サレルト云フ心配ハナイ積リダト云フ御答
辯デアリマシタ、其次ニハ之ニ關聯ヲ致シ
マシテ、若シ斯ノ如ク百万圓ト決メルト云
フト、株主ガ配當ノ減少ヲ承認セザル限リ
ハ銀行ノ經營ガ困難ニ陷ルヤウナ憂ハナ
イカ、之ニ對シテ政府當局ハ、是ハ意見ノ
相違ニナルカモ知レヌガ、自分等ノ考デハ
御質問ノ如キ憂ハ先ヅナカルベシト思フト
云フコトデアッタノデアリマス、其久ニハ矢
張同ジク資本ノ規定ニ關聯致シマスル質問
デアリマシタガ、資本曾加ニ依シテ强制的ニ
合併セシムルト云フヤウナ不自然ノ結果ヲ
生ジ、是ガ爲ニ非合併會社ノ壓迫トナルヤ
ウナコトモアリハシナイカト云フ、御心配ノ
質問ガアッタノデアリマス、之ニ關シテモ政
府當局ハ吾々ハ斯ル心配ハナイト思フト云
フコトデアリマシタ、其次ニヤカマシク論
議サレマシタノハ所謂附隨業務、銀行業ニ
附隨スル所ノ業務トシテ法律ノ認メントス
ル所ノモノ、竝ニ禁止セントスル所ノ他
業、此區別ハドウデアルカト云フ質問ガ起ッ
タノデアリマス、而シテ附隨業務ト云フコ
トノ觀念トシテ、政府當局ハ銀行業務ヲ行
フニ必要若クハ有用ナルモノヲ附隨業務ト
云フノダ、他業ト云フノハ銀行業トハ緣ノ
無イ、別箇ノ業務デアルト云フ說明デアッタ
ノデアリマス、更ニ進ンデ附隨業務ト云フ
ノハ性質ノ問題デアルノカ、分量ノ問題デ
アルノカト云フ質問、之ニ對シテ政府ノ答
辯ハ、附隨業務デアルト否トハ大體ハ性質
ニ依ッテ決定スルモノト思フガ、併シ其結
果ハ多ク分量ニ現ハルヽヲ通例トスルコト
ヲ認メルト云フコトデアリマシタ、其次ニ
ハ事實問題トシテ、先ニ不始末ヲ演ジタル
所ノ帝國實業貯蓄銀行、或ハ最近ノ共榮貯
蓄銀行、此善後策ニ付テ政府ハ如何ナル事
ヲ爲シテ居ルカト云フヤウナ質問ガアリマ
シタ、之ニ對シテ政府當局ハ本會議其他ニ
於テ御答辯ニナッタト同ジヤウニ、政府トシ
テハ極力預金者ノ利益ヲ保護センガ爲ニ、
種々攻究シ且ツ努力中デアルト云フ答辯デ
アリマシタ、其次ニヤカマシクナッタル問
題ハ、銀行ノ常務ハ將來他ノ法人ノ常務ト
ナルコトヲ得ズト云フ規定デアリマス、之
ニ付テハ常務トハ一體ドウ云フコトヲ云フ
ノデアルカ、政府ノ答辯ヲ簡單ニ申上ゲマ
スレバ、常務ト云フノハ實際其業務ニ携ハッ
テ居ルト云フ、其事實ニ依クテ判斷スルノ
デアル、其名稱ノ如何ハ問ハナイノデアル
ト云フ御答辯デアリマシタ、其次ニ起リマ
シタル質問ハ、政府ハ銀行ノ合同ヲ奬勵シ
テ居ラルヽ、而シテ其奬勵ヲセラルヽ標準
トシテハ、成ベク地方的ニ合同ヲセシメル
ト云フコトデアルガ、其地方的ト云フ意味
ハドウ云フコトデアルカト云フ質問デアリ
マス、之ニ對シテ政府ハ、經濟狀態ノ同一
狀態ニ置カレタル地方ハ、成ベク其地方ノ
ミデ合同ヲ爲シ、以テ眞ニ地方的ノ發展ヲ
爲サシメヤウ、斯ウ云フ意味合デアルト云
フ答辯デアリマス、其次ニ起リマシタルコ
トハ檢查監督ニ關聯スル質問、日本銀行ニ
檢査ノ權能ヲ與フルノ意思ハナイカト云フ
質問デアリマシタ、之ニ付テハ政府當局
ハ日本銀行ハ兎モ角モ營利會社デアル、
營利法人デアル、之ヲシテ檢査權ヲ實行セ
シムルト云フコトハ法制上面白カラヌト思
フ、併シ日本銀行ト取引ヲ爲ス所ノ銀行ニ
付テハ當該銀行ト日本銀行トノ契約ニ
基イテ檢査ヲセシムルコトト致シタイ、斯
ウ云フ答辯デアリマシタ、續イテ銀行檢査
官ハ現在ハ役人ノミヲ採用シテ居ル、官廳
育チ其儘ノ役人ヲノミ任用シテ居ルノデア
ルだ之ニ付テハ特別任用ノ途ヲ開クノ意
思ハナイカ、依テ以テ檢査監督ノ實際的デ
アリ、且ツ徹底的ナルコトヲ得ル所以デハ
ナイカ、斯ウ云フ質問ニ對シテ政府當局
ハ此點ハ十分〓究中デアルト云フコトデ
アリマス、而シテ此點ニ關聯致シマシテ、
最後ニ述べマスルガ如キ希望條項ガ生レ出
タノデアリマス、尙ホ似寄リノ質問トシ
テ、今囘計理士法案ガ通過ヲ致シタガ、銀
行ノ檢査ニ計理士ヲ採用スルノ意思ハナイ
カ、是ハ時期尙早ナリト思フト云フ御答辯
デアリマシタ、次ニハ今囘ノ銀行法ノ規定
ヲ熟讀致スト云フコト、他ノ法令例へバ刑
法或ハ商法等ニ比較ヲ致シテ、罰則ガ過重
ニナッテ居ルヤウニ思フガ、是ハドウデア
ルカ、而シテ此罰則ニ關シマシテハ、特ニ
商法刑法ト本法內ノ各條文ト比較對照サレ
テ、頗ル綿密ナル質問ガ行ハレタノデアリ
ママ、之ニ關シテ政府當局ノ答辯ノ大體ヲ
搔摘ンデ申上ゲマスルト云フト、時勢ノ變
化竝銀行ガ公共的機關デアルト云フ性質ニ
鑑ミテ、今回ノ罰則ヲ設ケタノデアッテ、
是ハ決シテ過重ナリトハ認メナイト云フコ
トデアリマス、而シテ此點ニ於テハ、數時
間ニ亙ッテ論難攻擊若クハ質問應答ガ行ハ
レマシタガ、結局委員諸君ニ於テモ、此點
ハ諒トセラレタノデアリマス、而シテ次ニ
ハ先程申ス通リ、他業ノ兼營ハ禁止スルト
云フコトニナルガ、之ヲ原案ノ如クニ三年
ト云フノハ、ドウモ短カ過ギハシナイカ、
是ガ又非常ニ議論ノ中心ト相成ッタノデア
リマス、而シテ此點モ亦種々政府當局ト折
衝ノ結果、遂ニ後程述ブルガ如ク、五箇年
ニ延長スルト云フ修正案ガ生レ來ッタノデ
アリマス、其次ニハ本會議若クハ委員會等
ニ於ケル政府ノ御說明ニ依ルト云フト、
我國ノ金融組織、金融體系ニ關シテハ大改
善ヲ圖ラントスルト云フ意氣込デアラルヽ
ヤウデアルガ、然ラバ其改善ノ要領ハドウ
デアルカ、又銀行法案ノミヲ先ヅ提出ヲ致
シ、中央銀行タル日本銀行、其他不動產金
融等ニ關スル事、或ハ特殊銀行ニ關スル
事、是等ノモノヲ後廻シニ致シタノハ、ド
ウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ意味デアッタ
ノデアリマス、之ニ對シテ政府當局ハ、改
善ノ方針ト致シテハ、各種ノ金融ニ付テ其
金融上缺陷ノ存スル所ヲ先ヅ〓究調査ヲス
ル、而シテ其缺點ガ金融機關ノ改善ニ俟ツベ
キモノアリト云フコトヲ認メタナラバ、其
金融機關ノ改善ヲ施ス考デアル、而シテ目
下折角朝野ノ有識者ヲ集メテ、金融調査會
ヲ開イテ審議中デアル、併ナガラ先ヅ銀行
法案ヲ今回提出セル所以ノモノハ、金融機
關ノ全般ニ關スル調査ノ全部完了スルコト
ヲ待ツトキハ、非常ノ時日ヲ要スル、加之普
通銀行ハ各種ノ金融ニ關シテ最モ普遍的ノ
モノデアル、又急務デアルト認メルガ故
ニ、今回幸ヒ其成案ガ出來タカラ、兎モ角
モ逸早ク之ヲ提出スルノデアル、併シ他ノ
金融機關ニ付テハ又案ノ成リ次第ニ協賛ヲ
求ムル考デアルト云フ綿密ナル答辯ガアッタ
ノデアリマス、其次ニ尙ホ重要ナリト認メラ
レル一二ノ質問應答ヲ御紹介致サナケレバ
ナラヌト思ヒマス、預金者保護ノ爲ニ資本
金ヲ法定スル、或ハ準備金ノ引上ヲ行フト
云フコトハ結構デアルガ、其以外ニ尙ホ預
金保證制度ノ如キモノ、之ヲ採用スルノ意
思ナキカト云フコトニ付テ、政府當局ハ斯
ノ如キハ寧ロ金融業者ノ自治ニ俟ツベキモ
ノデアル、政府ニ於テハ法規ヲ以テ之ヲ律
スル考ハ先ヅナイト云フノデアリマス、次
デ資金ノ運用ニ關スル所ノ制限デアリマ
ス、之ニ關シテ資金ノ運用ガ一人若クハ一
事業ニ偏スルト云フコトハ洵ニ面白クナ
イ、之ニ付テハ何等カ監督ノ方針ハナイカ
ト云フコトニ付テハ政府トシテハ、法律
ニハ之ヲ明定シナイゲレドモ、行政ノ手心
又施行細則等ニ於テ出來ルモノハ其標準ニ
依リ、又監督等ニ付テ是ガ實行ヲ期シタ
イ、斯ウ云フ風ナ答辯ガアッタノデアリマ
ス、而シテ尙ホ地方銀行ハ現在ハ不動產ノ
貸付ニ偏倚シテ居ル、隨テ是ガ爲ニ資金ノ
固定ニ苦ンデ居ルガ、勸業銀行等ノ間ニ金
融上ノ聯絡ヲ圖ル考ハナイカ、卽チ不動產
資金化ノ問題ガ起ッタノデアリマス、之ニ
關聯シテ又後程述ブル所ノ希望條項ガ生レ
出デタト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、其
他重要ナル質問應答ハ洵ニ多イノデアリマ
シテ、私ト致シマシテハ、何レヲ重シト
シ、何レヲ輕シトシテ、取捨撰擇スル譯デ
ハアリマセヌガ、併シ先ヅ議論ノ多カリシ
モノハ、如上ノ點デアッタヤウニ考ヘマシ
タノデアリマス、而シテ尙ホ手形割引ニ關
シ手形ノ流通ヲ圓滑ニスルガ爲ニ、政府
ハ官民合同ノ手形引受會社ヲ設置スルノ意
思ナキヤト云フ質問ニ對シテ、手形割引ノ
流通ヲ好クスルト云フコトハ、政府ハ勿論
努ムル考デアルガ、御質問ノ如キ今會社ヲ
造ルト云フコトニ付テハ、直グニハ其意思
ハナイ、斯ウ云フ應答デアッタノデアリマ
ス、斯クテ過グル五日討論ニ入リマシテ、
小川委員ヨリ先程來申述べマシタヤウナ趣
旨ニ依シテ、修正案ガ出タノデアリマス、
其要領ヲ申上ゲマスレバ、本法案ノ第三條
ニ依レバ、原則トシテ銀行ノ資本ハ、最低
限度百万圓トスルコトハ結構デアラウ、併
ナガラ人口一万未滿ノ小町村ノ銀行ニマデ
之ヲ適用スルコトハ、餘程無理デアラウト
思フカラ、之ニ付テハ五十万圓ト云フコトニ
致シタイ、又增資ノ猶豫期間、是ハ原案デ
ハ七年ニナッテ居ルガ、五年ニ短縮シテモ出
來ルコトデハアルマイカ、兼業禁止ノ猶豫
期間、是ハ三年トナッテ居ルガ、是ハ少シ無
理デアルカラ、五年ニ統一シテハドウデア
ルカ、又株式會社ノ組織ヲ變更シナクチヤ
ナラヌ、是ガ猶豫期間七年トアルノヲ五年
トシテ、要スルニ是等ノ期間ハ、五年ヲ以テ
統一スルコトガ宜シクハナイカ、斯ウ云フ
趣旨ヨリシテ、只今御手許ニ回付シテアリ
マス所ノ修正案ガ生レタノデアリマス、次
デ木暮委員ヨリ、是亦御手許ニ回付シテア
リマス通リ、銀行監督ニ關スル事、不動產
資金化ニ關スル事、又曾資ニ付テノ政府當
局ノ扱方、是等ニ付テモ希望條項ガ出タ
ノデアリマス、右修正案及希望條項ハ、全
員一致ノ賛成ヲ得ダノデアリマシタガ、之
ニ對スル政府當局ノ所見ヲ質シマシタル
所、片岡大藏大臣ハ修正案ニ對シテハ
政府ハ同意ヲスル、又希望條項ハ何レモ無
理カラヌコトヽ思フ、特ニ銀行檢査官ノ特
別任用ト云フコトニ付テ、政府ハ成ベク特
殊ノ官職ハ別デアルガ、成ベク特別任用ノ
途ヲ一般ノ官吏ニ開キタイト云フ考デアッ
テ、折角攻究中デアルガ、併シ樞密院ノ關
係モアルカラ、直ニ是ガ實現スルモノトハ
明言ハ出來ヌケレドモ、御希望ハ洵ニ無理
カラヌ事デアルト云フ御答辯デアリマシ
ク、斯クテ採決ニ入リマシテ、修正案ハ全
員一致可決確定致シ、又希望條項モ全員ノ
賛成ヲ得タノデアリマス、而シテ本法ヲ施
行スル所ノ時期、是ハ御承知ノ如クニ勅令
ヲ以テ定ムト云フコトニナッテ居リマスガ、
政府當局ハ明年ノ一月一日ト云フコトニ豫
定シテ居ルト云フコトデアリマス、次デ貯
蓄銀行法中改正法律案、農工銀行法中改正
法律案、北海道拓殖銀行法中改正法律案
非訟事件手續法中改正法律案、是亦全部政
府原案通リ全員一致ヲ以テ可決致シタノデ
アリマス、以上ヲ以テ私ハ御報生ロヲ終ルノ
デアリマスルガ、私ノ御報告ノ或ハ誤レル所、
或ハ足ラザル所ガアリマシタナラバ、何卒
特別委員諸君及政府ノ御答辯ニ關スル事ニ
付テハ、政府當局ヨリ御補正下サルコトヲ
御願致シマシテ報告ヲ終リマス、長ク御〓
聽ヲ汚シマシタコトヲ感謝致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=31
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032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス、土屋〓三郞君
〔土屋〓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=32
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033・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 只今ノ委員長ノ報告ニ關
聯致シマシテ、簡單ニ政府ニ御尋ヲ致シタ
イノデアリマス、本案ニ於テ銀行ヲ株式會
社ニ限ルコトニシタ其理由ハ、第一ニハ資
金ヲ集ムルコトノ容易ナル爲、第二ハ監督ヲ
十分ニスルコトノ出來ル爲、此二ツノ點カ
ラ合名會社ナドヲ廢シテ株式會社ニ限ルコ
トニシタト云フコトデゴザイマス、若シ果
シテ此精神カラシテ銀行ハ。株式會社デナ
ケレバナラナイト云フナラバ、更ニ一歩ヲ
進メテ此目的ヲ十分ニ徹底スルガ爲ニ、現
行商法中ノ株式會社ニ關スル規定、株式ノ
金額ヲ五十圓以上ニ制限シテ居ル所ノ此規
定ヲ撤廢致シマシテ、假令一株一圓ノ株式
ヲ以テシテモ、五圓ノ株式ヲ以テシテモ、
之ニ依シテ銀行ヲ設立スルコトノ出來ルヤ
ウニスル考ハナイカドウカ、既ニ吾々ハ普
通選舉ノ主義ニ依ッテ、選擧法ヲ改正シテ、
庶民階級ヲシテ、等シク政治ニ參與スル所
ノ機會ヲ與ヘタノデアル、果シテ然ラバ產
業ニ於テモ同樣ニ、庶民階級ヲシテ其經營
ニ參加スル權利ヲ認メルト云フコトハ當然
デアラウト思フノデアリマス、現ニ此意味
ニ於テ米國ニ於テハ一株ノ金額一弗ノ銀行
ガ出來テ居クテ、勞働階級、庶民階級ノ人〓
ガ、之ニ依クテ自ラ銀行ヲ設立シテ、庶民
階級ノ金融機關ト致シテ居ルノデアル、政
府ガ偶〓此法案ヲ制定スルニ當ッテ、資金
ヲ集ムルニ容易ナルコト、監督ヲ十分ニス
ルコトガ出來ルト云フ、其趣旨ニ付テハ私
ハ大ニ贊成デアル、卽チ之ヲ更ニ徹底スル
ガ爲ニ、此商法ノ株式ノ金額ニ對スル制限
規定ヲ廢止スル所ノ御意思ガナイカドウ
カ、明白ナル御說明ヲ得タイト思フノデア
リマス
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=33
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034・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 土屋君ノ御尋ニ
御答申上ゲマス、只今ハ御述ニナリマシタ
ヤウナ改正ヲ致サウト一云フ考ヲ持シテ居リ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=34
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035・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 委員長ノ報告ニ對シ
テ贊成ノ通告ガアリマス、此際之ヲ許シマ
ス-木暮武太夫君
〔木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=35
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036・木暮武太夫
○木暮武太夫君 私ハ只今議題ニナッテ居
リマスル案ニ對シマシテ、委員長ノ報告ニ
賛成ヲ表スル者デアリマス、特ニ銀行法案
ハ御承知ノ通リニ、我ガ經濟界ノ一般ノ意
嚮ニ依シテ出マシタモノデアリマシテ、此
際修正事項ニ付キマシテモ、希望事項ニ付
キマシテモ、贊成意見ヲ表明シテ置クコト
ガ、議員トシテ極メテ私ハ適富ナコトデア
ルト考ヘマシテ、議案輻輳ノ今日恐入リマ
スガ、暫クノ間時間ヲ頂戴スル次第デアリ
マス、政府ノ原案ニ依リマスルト、晩カレ
早カレ相當ノ年限ノ後ニ於キマシテハ、我
國ノ津〓浦〓ニ於テハ公稱資本百万圓ニ致
スベシト云フコトデアリマス、而シテ此資
本金百万圓ト云フコトヲ法定スルコトガ、
卽チ委員會ニ於キマシテ重大ナル問題ト
ナッタノデアリマス、而シテ從來ハ內規ニ
依リマシテ、新設ノ銀行ニ付テハ五十万圓
ト云フコトヲ以テ、行政ノ手段ニ依ッテ資
本ノ充實ト銀行信用ノ擴張ト云フコトヲ
圖ッテ居リマシタモノヲ、今回法定シテ、明
ニ百万圓以上ト致シマスルコトニ付テハ
是ハ重大ナル問題デアル、殊ニ普通銀行ニ
於キマシテ、經營上、內資金ノ需要供給ヲ
調節致シマスルニ付テハ、大體ニ於テ營利
統制ニ一任スベキモノデアルニ拘ラズ、此
資本全ノ充實ノ爲ニ公稱資本ヲ百万圓ニス
ルト云フコトハ餘程實狀ニ合致致シマセ
ヌケレバ、或ハ之ヲ恐ル、將來ニ於キマシ
テハ、所謂大銀行支店主義ノ弊ニ墮シ、或
ハ合同主義ノ弊ニ墮スルト云フコトハ、常
ニ考ヘテ居ッタノデアリマス、面シテ若シ
例ヘバ人口一万人未滿ノ町村ノ如キ小地域
ニ於キマシテモ、百万圓ノ公稱資本ヲ以テ
スルニアラザレバ銀行ヲ造ルコトガ出來ナ
イト云フヤウナコトニ相成リマシタナラ
バ先ヅ第一現在ノ銀行ト云フモノハ强制
的ニ合併ヲ致サナケレバナラナイヤウナ、
一ツノ方法ヲ執ラナケレバナラナイノデア
リマス、此結果ト致シマシテハ、都會ニ於
ケル所ノ大キイ銀行ノ支店ガ、地方到ル處
ニ瀰漫致シマシテ、サウシテ動モスレバ今
日世間ノ問題トナッテ居リマスル所ノ、地
方金融ノ壓迫ト云フコトニ相成シテ、而モ
大都會ニ於キマシテ、段々證劵ノ放資ト云
フコトガ盛ンニナッテ來ル、隨テ定期預金
ト云フモノモ少クナッテ來ル、サウシテ信
託預金ト云フモノガ盛ニナッテ來ルナラバ、
銀行ハ今日資金ノ中樞トシテ求メテ居ル所
ノ定期預金ト云フモノヲ禁ジナケレバナ
ラヌ、或ハ庶民金融ガ盛ニナッテ來ル、貯
蓄銀行ガ盛ニナッテ來レバ、我國ノ銀行ノ
資金ノ大部分ヲ成シテ居ル所ノ、所謂特別
口座ノ預金ト云フモノガ、都會ニ於テハ減ッ
テ參ル、此結果ハ地方ニ於テ零細ナル金ヲ
集メテ、都會ニ參ラヌケレバナラヌト云フ
ヤウナ趨勢ニ、今日ナッテ居リマスニ當ッ
テ、尙更此合同主義、所謂大都會ニ在ル大
銀行ノ支店ト云フモノガ、地方ニ散布スルコ
トハ、洵ニ私共ハ危險デアル、ドウシテモ
一万未滿ノ町村ニ於キマシテハ、五十万圓
位ノ公稱資金ヲ以テ許サナケレバナラヌト
云フノガ、私共ノ賛成致シマスル第一ノ理
由デゴザイマス、而シテ第二ニハ此强制的
ニ合併ヲ致シマセヌデ、資本ヲ自ラ增加致
シマスル場合ニ於テ、銀行ノ預金モ增加シ
ナイ、或ハ貸出モ增加致サナイ、卽チ從來
ト銀行ノ營業ノ狀況ト云フモノガ變リマセ
ヌノニ、法律デ玆デ百万圓ト云フ公稱資本
ヲ決定シタ爲ニ、增資ヲ致シマシタナ.ラ
バ勢ヒ株主ハ配當率ノ低減ヲ忌ム餘リ、
銀行當局ニ之ヲ掛合ッテ銀行ノ當事者ト云
フモノハ止ムヲ得ズ焦躁苦慮致シマスル結
果ハ、不堅實ナル營業ヲ行フヤウニナッテ、
金融制度ノ改善トハ全ク其趣旨ガ違ウヤウ
ナ結果ニナルコトヲ私共ハ虞レテ居ルノデ
アリマス、更ニ第三ノ理由ト致シマシテハ、
御承知ノ通リニ何モ銀行ノ拂込資本ト云フモ
、カ、必シモ普通銀行ニ於ケル資金ノ中樞
ヲ爲シテ居ルモノデハナイノデアリマス、
御承知ノ通リニ銀行ノ資金ノ主ナルモノハ
要求拂ノ債務ヲ負ウテ、之ヲ轉換シテ手形
ノ割引ヲスルモノデアリマス以上ハ、万
人以下ノ町村ナドニ、百万圓以上ノ公稱資
本ヲ强制スルト云フコトハ積極的ニ何等
ノ理由ハ無イト私共ハ考ヘテ居ルノデアリ
マっ、此三ツノ點カラ致シマシテ、此一万
人以下ノ人口ヲ持ッテ居リマスル所ノ町村
ニ於テ、五十万圓ノ公稱資本ヲ以テ銀行ヲ
作ルコトヲ許スト云フ此修正ハ、洵ニ私ハ
時宜ニ合ッテ、事情ニ合ッテ、動モスレバ我
國ノ地方金融ヲ壓迫セントシテ居ル所ノ、
大銀行支店主義ノ弊ニ墮センコトヲ、救フ
モノデアルト私共ハ信ジテ居ルノデアリマ
ス、更ニ私ハ是ヨリ希望條件ニ付テ申シマ
スルナラバ、先ヅ第一銀行ノ監督ト云フコ
トハ、御承知ノ通リニ預金者保護ノ立場カ
ラ見マシテモ、或ハ又銀行ノ健全ナル發達
ノ立場カラ見マシテモ、洵ニ必要デアルコ
トハ勿論デアリマス、併ナガラ從來ハ銀行
ノ監督ト申シマスルト、所謂定款ニ違ッタ
モノデアルトカ、或ハ法規ニ違反シタモノ
ヲ爬羅別抉シテ、若イ官吏ガ一時ノ快ヲ貪
ルト云フコトガ、銀行ノ檢査デアッタト云
フコトハ、是ハ洵ニ歎ハシイコトデアル、
銀行ノ檢査ト云フモノハ、寧ロ其銀行ノ其
地方ニ於ケル金融機關トシテノ機能ヲ、十
分ニ發揮シテ居ルカドウカト云フコトヲ能
ク調ベテ、常業ノ健全ナル發達ヲ助成スル
意味ニ於テ、檢査ヲシ、監督ヲスルト云
フコトガ必要デアラウト考ヘル、此儉
査ヲ徹底致シマスルノニハ、從來ノ如
クニ唯、法規典例ニ詳シク、或ハ高等
文官ヲ通ッタト云フヤウナ方ニノミ待
テ、本當ノ檢査ノ實ヲ擧ゲ、銀行業ノ健
全ナル發達ヲ達成スルト云フコトハ、蓋シ
至難デアルト私共ハ考ヘテ居ル、此意味ニ
於テ、地方ノ事情ニモ通ジ、銀行ノ從來ノ
事情ニモ能ク精通致シマシタ人ヲ、特別任
用ニ依ッテ選任致シマシテ、サウシテ此大
目的ヲ達成スルコトニ遺憾ナキヲ、私共ハ
希望致シテ居ルノデアリマス、更ニ第二ノ
希望條件ト申シマズルコトハ、所謂普通銀
行ノ擔保不動產ヲ資金化スルト云フコトデ
アリマス、御承知ノ通リ我國ニ於テ銀行政
策ト申シマスレバ、從來ハ銀行ノ分野ヲ相
定メテ、言葉ヲ換ヘテ申シマスルナラバ
勸銀、農銀ハドウ云フ方ニ力ヲ盡ス、興業
銀行ハドウ云フ方ニ力ヲ盡ス、而シテ所謂
普通銀行ト云フモノハ、政府當局ガ辯明ス
ルガ如クニ、英國流ニ預金銀行主義ニ依ッ
テヤルト云フ、分野ヲ分ケルト云フ從來
ノ方針デアッタノデアリマス、併ナガラ是
ハドナタガ御考ニナッテモ分ル通リ、此趣
旨ヲ十分ニ達成致シマシテ、分野ヲ明ニシ
テ置クコトハ出來ナカッタ、卽チ勸業銀行法
ヲ改正シ、農工銀行法ヲ改正シテ、サウシ
テ普通銀行ノ中ニモ、是ガ入ッテ行カナケ
レバナラヌ、ト云フヤウナ狀態ニ立至ッテ
居ルノデアリマス、而シテ政府當局ノ方ハ
從來ノ事ヲ御考ニナッテ、將來ニ於テモ亦此
分野ト云フモノハ、相當ニ分ケテ置ク必要
ガアラウト云フヤウナ御考デアリマスケレ
ドモガ、私共ハ是ハ洵ニ困難デアルト思
7、何トナレバ日本銀行ノ條例ヲ改正シ
テ、サウシテ商業手形ニ對シテ幾多ノ優遇
ヲ與ヘマシテ、商業手形ヲ普通銀行ニ於ケ
ル所ノ手形割引ノ材料トスルト云フヤウナ
コトハ、洵ニ理論ト致シマシテハ結構デア
リマスルガ、英吉利ノ如クニ貿易ノ中心ト
ナッタ爲ニ、幾多ノ善良ナル手形ガアルナ
ラバイザ知リマセヌ、我國ノ如ク殊ニ地方
ニ於テハ、商業手形ノ善良ナルモノト云フ
モノハ洵ニ少イ、殊ニ善良ナル地方ノ有價
證劵ト云フモノモ亦少イ、普通銀行ト雖モ
矢張不動產ノ金融ニ其大體ノ資金ヲ投ジナ
ケレバナラヌト云フコトハ是ハ事實上止
ムヲ得ナイコトデアリマス、此事實ニ直面
致シマシタ場合ニ、唯、理窟ノ上カラ普通
銀行ヲ英國流ニ預金銀行主義ニ依ッテヤッテ
行クト云フヤウナコトヲ仰セラレテモ、是
ハ何ニモナラナイ、今日普通銀行ハ十五億
万圓ヲ投ジテ居ル所ノ此不動產ヲ、一朝財
界ニ事有ル場合ニ於キマシテハ、直ニ見返
リ擔保ニシテ、サウシテ勸銀ナリ、農工銀
行ナリト有機的ノ連絡ヲ附ケ、脈絡ヲ附ケ
マシテ、此十五億万圓ノ不動產ノ資金化ト
云フコトヲ努メナケレバ、恐ラクハ地方ノ
金融ヲ救フコトハ出來ナイト私ハ考ヘテ居
ル、此意味デ希望條件ヲ附シタノデアリマ
ス、更ニ第三ノ希望條項ト致シマシテハ
從來ハ新シク作ル所ノ銀行ダケニ對シマシ
テ、內規ニ依シテ五十万以上ト云フ公稱資
本ニ致シテ居ノタモノヲ、今度ハ將來ノ銀
行ノ資本ヲ百万ナリ、五十万ナリニスルコ
トハ勿論、或ハ既設ノ銀行ニ於キマシテ
モ、相當ノ年限ノ後ニ於テハ、矢張法律デ
定メタ所ノ公稱資本ヲ持タセナケレバナラ
ヌト云フ、可ナリ營利統制ヲ無視シタ、强
制的ノ法律デアリマスルガ故ニ、此最低ノ
法定ノ資本金ニ達シマスルマデ、儈資ヲ致
シマスル際ニ於キマシテハ、相當ニ政府ニ
於テ手心ヲ加ヘテ、寛大ナル取扱ヲシテ貰
フノガ、蓋シ當然デアルト私共ハ信ジテ居
ルノデアリマス、以上ヲ以チマシテ簡單ニ
此修正條項竝ニ希望條項ニ對スル私ノ賛成
ノ意見ト致シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=36
-
037・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ發言ノ通〓ハア
リマセヌカラ、討論ハ是ニテ終局致シマシ
夕、銀行法案ノ委員長報告ハ修正デアリマシ
テ他ノ四案ハ凡テ可決デアリマス、先ヅ銀
行法案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=37
-
038・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=38
-
039・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
銀行法案第二讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=40
-
041・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ガアリマ
セヌカラ採決シマス-本案ノ委員長報告
ノ修正ノ點ニ、賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=41
-
042・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立總員デアリマ
ス、仍テ委員長報告ノ修正ノ點ハ可決サ
レマシタ、次ニ其他ノ部分ハ、原案ノ通リ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其他ノ部分ハ總テ原案ノ通リ決シ
マシタ、是ニテ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=43
-
044・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=44
-
045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
銀行法案(政府提出)第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=45
-
046・粕谷義三
○議長(粕各義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手起ル)-續イテ貯蓄銀
行法中改正法律案外三案ハ、委員長報告ハ
何レモ可決デアリマス、仍テ四案ヲ一括シ
テ、第二讀會ヲ開クコトニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=46
-
047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ此四條ノ第二讀會ヲ開クコトニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=47
-
048・井本常作
○井本常作君 此四案ハ一括シテ直ニ其第
二讀會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員
長報告ノ通リ可決セラレンコトヲ望ミマ
ス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=48
-
049・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、議案全部ヲ議題
ニ供シマス
貯蓄銀行法中改正法律案
第二讀會(確定議)
農工銀行法中改正法律案
第二讀會(確定議)
北海道拓殖銀行法中改正法律案
第二讀會(確定議)
非訟事件手續法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ四案トモ委員長報告ノ通リ可決確
定致シマシタ、是ニテ全部終了致シマシ
タ-次ハ日程第十八乃至第二十三ハ、同
一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、括
シテ議題ニ供スルコトニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=50
-
051・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第十八、登錄稅法中改正法律
案、日程第十九、印紙稅法中改正法律案、
日程第二十、砂糖消費稅法中改正法律案、
日程第二十一、關稅定率法中改正法律案、
日程第二十二、商事非訟事件印紙法中改正
法律案、日程第二十三、明治四十年法律第
二十一號中改正法律案、樺太ニ於ケル租稅
ニ關スル件、右各案ヲ一括シテ議題ニ供シ
第一讀會ノ續ヲ開キ委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-武藤金吉君
第十八登錄稅法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一登錄稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
(小字及-ハ委員會修正)
登錄稅法中改正法律案中左ノ通修正ス
第十九條左ニ揭クルモノニハ登錄稅ヲ
○第八號、第九號、〇、第十二號
課セス但シ○第十一號〓及第十四號ニ
付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
政府自己ノ爲ニスル登記又ハ登錄
二社寺若ハ堂宇ノ敷地又ハ墳墓地ニ
關スル登記
三北海道府縣市町村其ノ他ノ公共團
體ニ於テ公用ニ供スル不動產ニ關ス
ル登記
四府縣市町村ノ慶置分合若ハ境界變
更ニ因ル府縣市町村ノ權利ノ取得又
ハ其ノ府蒸市町村ニ所有權ヲ移スニ
付爲ス所有權ノ保存ノ登記又ハ登錄
五市町村ノ一部ニ屬スル財產ヲ其ノ
市町村ニ移ス場合ニ於ケル市町村ノ
權利ノ取得又ハ其ノ市町村ニ所有權
ヲ移スニ付爲ス所有權ノ保存ノ登記
又ハ登錄
六市町村又ハ市町村ノ一部ニ屬スル
入會權ニシテ二以上ノ市町村ニ亙ル
モノヲ消滅セシムル爲市町村又ハ其
ノ一部カ其ノ入會財產ニ付爲ス權利
ノ取得若ハ財產ノ分割又ハ之カ爲ニ
スル所有權ノ保存ノ登記
七產業組合、產業組合聯合會、產業組
合中央會、漁業組合、漁業組合聯合
會、重要輸出品工業組合、重要輸出品
工業組合聯合會又ハ輪出組合ニ付產
業組合法、漁業法、重要輸出品工業組
合法又ハ輸出組合法ニ基キテ爲ス登記
ノ爲ニスル
八自作農ノ創設維持事業ニ關スル國
車補助金ノ交付ヲ受ケテ行フ北海道
府縣市町村、產業組合又ハ產業組合
聯合會ノ施設ニ依ル個人ノ土地所有
權ノ取得ノ登記
九前號ニ規定スル北海道府縣市町
村、產業組合又ハ產業組合聯合會カ
自作農ノ創設維持ノ爲ニスル抵當權
ノ取得ノ登記
十北海道府縣市町村、產業組合又ハ
住宅組合カ住宅ノ供給ノ爲ニスル抵
當權ノ取得ノ登記
十住宅又ハ住宅用地ニ付產業組合
員又ハ住宅組合員カ其ノ所屬組合
ヨリノ權利ノ取得ノ登記
十二第八號ニ規定スル北海道府縣市
町村、產業組合又ハ產業組合聯合
會ヨリ自作農創設維持ノ爲資金ノ
貸付ヲ受ケタル者カ其ノ貸付ノ條
件ヲ具備セサルニ至リタル場合ニ
於ケル北海道府縣市町村、產業組
合又ハ產業組合聯合會ノ土地所有
權ノ取得ノ登記
十三農業倉庫業者又ハ聯合農業倉庫
業者ノ農業倉庫若ハ聯合農業倉庫
又ハ其ノ敷地ニ關スル權利ノ取得
ノ登記
十四學校經營ヲ目的トスル法人ノ土
地建物ノ權利ノ取得又ハ所有權
ノ保存ノ登記
〓
第十九印紙稅法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長起告)
報告書
一印紙稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
第二十砂糖消費稅法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一砂糖消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
A
第二十一關稅定率法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
第二十二商事非訟事件印紙法中改正
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一商事非訟事件印紙法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
第二十三明治四十年法律第二十一號
中改正法律案(樺太ニ於ケル租稅ニ
關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一明治四十年法律第二十一號中改正法律
案(樺太ニ於ケル租稅ニ關スル件)(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月五日
委員長武藤金吉
衆議院議長粕谷義三殿
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=51
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052・武藤金吉
○武藤金吉 只今上程サレマシタ登錄稅外
五件ノ委員會ノ成績ヲ報〓ヲ致シマス、特
別委員會ハ小委員會マデ開イテ、囘ヲ重ネ
ルコト十九回、詳細ニ質問應答ヲ試ミマシ
テ、愼重ナル審査ヲ致シマシタ、此各案ニ
對シテ大體ノ質問應答ノ要旨ヲ申上ゲマス
レバ、此案ハ所謂第二次ノ稅制整理ト稱セ
ラレ、政府ハ現下ノ財政狀態ニ鑑ミテ、認
容セラルベキ範圍ニ於テ國民和稅ノ負擔ノ
均衡ヲ圖ルト云フコトガ一ツデアリマス、
又社會政策上、經濟上カラ我國ノ現況ニ照
シテ、社會政策ノ效果ヲ擧ゲルコトニシタ
イト云フノガ、此目的ノ一ツデアリマス、
又稅務行政ノ實行ノ上カラ、官民ノ便利ヲ
圖ヲテ無駄ナ手數ヲ省クト云フコトモ一ツ
デアリマス、此目的ヲ以テ出來タ此稅制整
理ニ付テノ大體ノ質問ハ、此案ヲ調ベテ見
レバ何處ニ國民負擔ノ均衡ガ擧ゲラレテ
居ルカ、何處ニ社會政策ノ施設ガ現ハレテ
居ルカ、產業上ニ重大ナル關係ガアルト云
フノハ、ドノ點ヲ指スノデアルカト云フ質
問ニ對シマシテ、政府ハ其内容ヲ見レバー
確ニ其負擔ノ均衡ト社會政策ガ現ハレテ居
ルト云フコトヲ答ヘラレマシタ、次デ此稅
制整理案ハ、登録稅、印紙稅ニ於テ說明サ
レテ居ルガ、中產以下一般社會ニハ恩典ガ
少クシテ、大會社若クハ大取引ヲスル富豪
階級ニハ非常ニ便利ノヤウデアルガ、般
國民ノ消費ニ關スル砂糖消費稅ノ如キハ
洵ニ其ノ負擔ノ均衡ヲ得テ居ナイバカリデ
ナイ、外ノ稅ニ較ベテ、消費稅ノ中デモ砂
糖ハ世界各國ニ類例ノナイ程高イ稅デア
ル、斯樣ナル事實ニ付テノ痛烈骨ヲ刺ス質
問完膚ナキニ至ッタノデアリマス、政府
ハ社會政策ヲ考慮シタト言フガ其理由ハド
ウカト尋ネタ所ガ、社會政策ニ留意シタト
云フ點ハ、例ヘバ住宅ヲ拵ヘル場合ニ於テ
二重課稅ヲセラレテ居ルノヲ、今度ハ之ヲ
止メタ、砂糖消費稅ノ如キハ第一種ヲ半減
ニシタ、第一種トハ樽入黑糖-黒砂糖デ
アリマス、之ヲ二圓ノモノヲ一圓ニサレタ
ノデアリマス、之ヲ申スノデアリマス、第
一種ハ半減ニシタ、財政ガ許スナレバ消費
稅ハ皆廢シタイノデアルケレドモ、サウ云
フ譯ニイカナイ、財政ガ許スナラバ皆消
費稅ヲ無稅ニシタイト云フコトマデモ言ハ
レタガ、サウ云フコトニハ出來ヌト云フ御
話マデアリマシタ、此第二次稅制整理ヲ見
マスルト、僅ニ登錄稅、印紙稅、砂糖消費
稅砂糖ノ關稅ニ付テ提案シタダケデ、第
二次稅制整理ナドヽ云フ大看板ヲ懸ケルナ
レバ何故ニ其外ノ鑛業稅、砂鑛區稅、兌
換銀行劵發行稅、テ取引所稅、狩獵免許稅等
ニ付テ、何故ニ此整理ノ中ニ加ヘナカッタ
ノデアルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府
ハ是ハ今改正シナケレバナラヌ必要ヲ認メ
ナイ、斯ウ云フ譯デアリマス、更ニ要領ヲ
得ヌ答辯デアリマシタ、又昨年第一次ノ稅
制整理ノ際ニ、衆議院ニ於テ議員ノ調ベタ
ル關稅收入ノ統計、煙草値上ニ關スル統計、
酒稅ノ增額ニ對スル數字、營業收益稅及所
得稅等ニ付テ見積ッタ所ノ金額ト云フモノ
ハ衆院ニ於テ議員ノ而シタ數字ガ其通
リ的確ニナッテ居ルデハナイカ、而シテ政
府ガ豫定サレタル所ノ數字ハ悉ク誤リデ
アッタガ、政府ハ今日此數字ノ不正確デアッ
タコトヲ認メルカ、實蹟ニ徵シテドウ云フ
感ジヲ持ツ、又今囘ノ第二次稅制整理ニ付
テモ此所ニ收支ノ數字ガ盛ッテアルガ、此數
字ハ大藏大臣ハ責任ヲ以テ之ニ當ルノデア
ルカト云フ質問ニ對シマシテ、大藏大臣ノ
答辯ハ洵ニ明答ヲ委員會デ與ヘテ居リマ
ス、餘リノ明答デアリマスカラ、私ハ其通
リ報告致シマス「當局トシテハ當時何等ノ
據ロナクシテ隱匿シタノデハナイガ、當局
トシテハ責任觀念ノ動ク所カラシテ、用心
ヲシタ嫌ハアルカモ知ラヌガ」ト極メテ瞹
味ノ答辯ヲ以テスルノミナラズ、「第二次稅
制整理ニ於キマシテハ、ソレデアリマスカ
ラ、アナタ方ハアナタ方自ラ御卓見ト御決
メニナレバ、卓見デナイトハ私ハ申上ゲマ
セヌ、政府ノ立場トシテハ前段申上ゲタ通
リデアリマス」餘リノ御答辯デアリマスカ
ラ、是ハ其以上ハ問ヒマセナカッタガ、第一
次稅制整理、今囘ノ第二次稅制整理、而モ
收支ノ數字ニ付テ斯樣ノ質問應答ガ行ハレ
タト云フコトヲ、特ニ私ハ聲ヲ大キクシテ玆
ニ御報告致シテ置キマス、次ハ國稅收入ノ中
デ直接稅、間接稅ノ割合ハ、近年著シク間
接稅ノ割合ガ殖エテ參ッタ、本年度ニ於テ
ハ直接稅ハ「コンマ」三十ハ五、間接稅ハ「コン
マ」六三五、百ノ中ガ斯ウ云フ風ノ比例ニ
ナッテ居リマス、然ルニ此度ノ第二次稅制
整理ヲ行フニ付テハ益〓此間接稅ヲ殖ヤ
ス傾向ガアリマスカラ、試ニ數字ニ當ッテ
見マスレバ、直接稅ハ「コンマ」三五二、間接
稅ハ「コンマ」六四八、斯ウ云フ風ニナッテ、
一般國民ノ負擔ト云フモノハ消費稅ニ於テ
間接稅ノ負擔ガ多クナリ、益〓一般國民ハ
重稅ヲ負ウテ、一部ノ富豪階級、特權階級
ハ輕クナルト云フ傾向ガアルガ、此事ヲ考
慮シタカ如何デアルカト言ッタ所ガ、是一
折角此登錄稅、印紙稅ニ付テモ十分ニ考慮
シテ、是ハ立案ヲシタモノデアルト云フ答
辯デアリマシタガ、詳細ノ事ハ十九回ニ
亙ッテ審査ヲ致シテアリマシテ、大分速記
錄モ浩澣ニナッテ居リマスケレドモ、是ハ是
非諸君ニ於キマシテモ、國民負擔ニ關スル
大切ナル稅制ノ事デアリマスカラ御覽ヲ願
ヒタイト思ヒマス、右樣ノ次第デアリマシ
テ大體ノ質問ヲ終シテ-更ニ各案ニ付テ
申シマスレバ、大體ハモウ是デ畫キテ居ル
ノデアリマスガ、先ヅ以テ問題ニナリマシ
タノハ登錄稅デアリマス、登錄稅ハ相續稅
ト均衡ヲ得ナイト云フコト、ソレカラ又脫
稅通稅ノ虞ガアルト云フコト、此中デ登錄
稅ノ質問應答ハ最モ時間ヲ要シタノデアリ
マー、最モ時間ヲ要シタノデアリマスガ、
大藏大臣、政府委員ノ答辯ガ婉曲デアリマ
シテ、要領ヲ得ナイ點ガ澤山アッタ、故ニ高
橋熊次郞君ヨリ最後ニ書〓ヲヲテリテ質問ヲ致
シマシタ、又政府モ之ニ對シマシテ、書面
ヲ以テ回答サレタノデアリマス、餘リ長イ
モノデハアリマセヌカラ、只今此處デ申
上ゲルコトヲ略シマシテ、速記錄ニ御
許ヲ得テ載セテ置クコトガ却テ便宜ト
思ヒマスルカラ、ドウゾ御許ヲ願ヒタ
イ、次ハ砂糖消費稅デアリマス、砂糖消
費稅ニ付テ問題トナリマシタノハ、沖繩、
大島ノ樽入黑糖ノ課稅ニ付テノ問題デア
リマス、其他稅ノ盛リ方等ニ付テモ大分
議論ガアリマシタガ、詳細ハ速記錄ヲ御覽
ヲ願ヒタイ、次ハ印紙稅デアリマス、印
紙稅ニ付キマシテハ登錄稅ト同ジク從來ノ
印紙稅法ト權衡ガ取レナイバカリデナク、
殊ニ議論ノ起リマシタノハ傭船契約、傭船
契約ト賃貸價格ノ權衡、又備船契約ニ付テ
ハ國際的ノモノデアルニ拘ラズ、日本ダケ
ガ之ヲヤルノハドウ云フ譯ダト言ッテ、內
田代議士カラモ専門ノ御質問ガアリマシ
タ、尙又之ニ書イテアリマセヌ保證金ノ納
入書、報償金ノ契約書、賣買契約書等ニ印
紙ヲ貼ラナイノハドウダト云フヤウナ質問
モアリマシタ、更ニ問題トナリマシタノハ
社會政策ヲ行フ爲ニ預金通帳ノ印紙ダケハ
免稅シタガ、其他ノ通帳ハ免稅ヲシナイ、
免稅ヲシナイデ元三錢ノモノガ却テ通帳ハ
五錢ニナッテ居ル、又判取帳ト云フモノヲ
舊法ハ二十五錢デアッタモノガ、此新法ハ
五十錢ニナッテ居ル、是等ニ付テモ大分激
シイ質問ガアリマシタガ、小委員會ニ於キ
マシテ成立シマセヌデ、小委員會ニ於キマ
シテハ唯、マ一點登錄稅法中ニ對シテ第十九
條ノ但書ヲ左ノ如ク改ム「但第八號、第九號、
第十一、第十二號及第十四號ニ付テハ命令
ノ定ムル所ニ依ル」第十九條、第八號ヲ左ノ
如ク改メ、第九號中「前號ニ規定スル」ヲ第
十二號中「第八號ニ規定スル」ヲ削ル「八、自
作農ノ創設維持ノ爲ニスル北海道府縣市町
村、產業組合又ハ產業組合聯合會ノ施設ニ
依ル個人ノ土地所有權ノ取得ノ登記」左樣
ニ修正スルコトニナッタ、此理由ハ多年是
ハ農政〓究會等デ〓究サレタ問題デアリマ
シテ、多年主張サレタ問題ガ偶〓此修正ノ
理由ニナリマシテ、三派共ニ意見ガ一致シ
マシテ之ヲ認ムルコトニナッタノデアリマ
ス、更ニ砂糖ノ稅ニ付キマシテハ、沖繩縣
竝ニ鹿兒島縣ノ大島ガ非常ニ悲慘ナ狀況ヲ
政府ハ認メラレ、委員會ニ於キマシテモ政
府ニ交渉ヲ致シマシタ結果、禱委員ノ質問
ニ對シマシテ大藏大臣ノ聲明ガアリマシ
タ、政府ハ沖繩縣及大島ニ於ケル糖業ノ現
狀ニ鑑ミ、是ガ保護助長ノ爲ニ、昭和三年度
以降同地方ニ於ケル樽入黑糖ノ消費稅總額
ヲ下ラザル經費ヲ豫算ニ計上スヘシ、此意
味ハ約八十万圓程ノ砂糖ノ消費稅金ヲ拂フ
サウデアリマスガ、之ヲ超エナイ範圍ニ於
テ、產業奬勵ノ爲ニ政府ハ昭和三年度以降
ニ於テ補助ヲスル、斯ウ云フ意味デアリマ
ス、御委託ニナリマシタ登錄稅外五案ノ審
査成績ハ斯ノ如クデアリマス、尙ホ附加ヘ
テ此處デ申上ゲテ置カネバナラヌコトハ
昨年ノ五十一議會ニ於テ政府ニ要求サレ
マシタ關稅定率ノ改正ニ付テ、尙ホ此關
稅定率法ガ出テ居リマッラ、關聯シテ質
問應答ガアッタ、何故ニ政府ハ是ダケ砂糖
ノ關稅ト、又其外ニ酸化「コバルト」ダケヲ
出シテ、外ノモノヲ出サヌカ、斯ウ云フコ
トデアリマス、マダ調査ガ出來ナイ、マダ
關稅委員會議デ審議中ノモノガアル、斯ウ
云フコトデアリマシタ、之ヲ分ケテ申シマ
スレバ、金液ト言ヒマシテ瀨戶物ニ塗リマ
スル金液ハ何故出サヌカ、政府ニ於テハ、
モウ一年待ッテ吳レマスレバ、立派ナ成績
ガ擧ルカラ、ソレマデ待テ吳レト云フノデ、
大分ヤカマシイ論議ガアリマシタガ、是ハ
一年待シテ貰ヒタイト云フコトニナッタ、ソ
レカラ「オレーン」デアリマス「オレーン」ハ
最近ニ提出スル、ソレカラ木材デアリマス、
木材ハ目下關稅會議ニ付シテアル、又一面
ニハ我ガ帝國ノ森林行政ノ上カラモ見ナケ
レバナラナイ、水源涵養ノ點カラモ見ナケ
レバナラナイ、國土保安ノ點カラモ考慮シ
ナケレバナラナイ、本年ハ遺憾ナガラ提出
スルコトガ出來ナイカモ知レヌ、併ナガラ
此點ニ付キマシテハ、輸入材木ト內地ニ於
ケル樹木ノ成長力ト、植林ノ比較ト各般ニ
亙ッテ是ハ調査シナケレバナラナイ事デアル
カラ、マダ定ムルコトガ出來ナイト云コト
ガ、此木材ニ關スル政府ノ答辯デアリマス、
又綿絲ニ付キマシテハ、政府ハ綿絲關稅ハ
撤廢ニ反對ダ、反對ノ理由ト云フモノハ四
五點アリマスルガ、紡績會社ガ不良會社ガ
アル、五十一アルガ不良會社ガアル、其不
良會社ガマダ十分デナイカラ良クシナケレ
バナラヌト云アコトガ一ツノ理由デス、所
ガ政府カラ出シタ統計ト、綿製品者ノ提供
シタ統計ニ依ルト、綿製品者ノ出シマシタ
統計ハ不良會社ガアッテモ百分ノ四ニシ
カ當ッテ居ナイ、其経ノ程度、不良ノ程度
ハ百分ノ四ニシカ當シテ居ナイ、政府ノ出
シタ方デハ其數字ハ明デアリマセヌケレド
モ、不良會社ハ十幾ツニ當テ居ルト云フコ
トヲ言ハレテ居リマス、又其外ニ支那ノ特
惠關稅ト綿絲ノ關係ニ付テ、今日ハ支那カ
ラ綿絲ガ這入ッテ來マシタナラバ防ゲヌカ
ラ、同意スルコトガ出來ナイ、ソレカラ又
追テ深夜業ノ廢止-深夜業ノ廢止ヲ行ハ
ナケレバナリマセヌカラ、之ヲヤルト云フ
ト能率ニ關係ヲ持ツカラ、此撤廢ガ出來ナ
イト云フノガ理由ノ一ツ、尙ホ其外印度ノ
關稅ニ對スル誓約、種々ノ理由ヲ附ケテ此
綿絲關稅ノ撤廢ニハ不同意デアルト云フコ
トヲ、政府ハ聲明サレタノデアリマス、大
藏省、商工省ハ綿絲關稅撤廢ヲ多年主張サ
レタ、政府當局ノ方ミガ責任ヲ持シテ其衝
ニ當フレテ、前日ト方針ガ變ルノ甚シキヲ
委員會ニ於キマシテハ遺憾トシタ次第デア
リマス、尙ホ其他御報告ヲ申サナケレバナ
ラヌ事柄ハ澤山アリマスケレドモ、商工省
ニ於テ平野ト云フ一技師ガ、昨年ノ關稅改
正ノ時分ニ於テ、議員ヲ侮辱セルヤウノ行
動ガアッタト云フコトヲ、憲政會ノ奧村千
藏君ヨリ御發議ガアリマシタ、其委員會ハ
調査ヲスルコトハ出來マセヌガ、ソレ〓〓
取調ヲ致シマシテ、委員會ニ於キマシテハ、
別段之ニ對シテ決議ハ致シマセヌガ、藤澤
商工大臣ハ責任ヲ持テ、不都合ノコトガア
ルナレバ取調ベテ戒防ヲスルト云フコトヲ
聲明サレマシタ、議員ノ信用ニ關係シ、議
員ノ體面ニ關係スル放言ヲ爲シタ事實デア
リマスルガ、藤澤商工大臣ハ責任ヲ取ル、
責任ヲ持テ事實アリトスレバ相當ノ處分ヲ
スルト云フコトヲ聲明サレマシタカラ、委
員會ハ左樣諒承致シマシタ次第デアリマ
ス、右〓要御報告ニ及ビマス(拍手)
〔參照〕次回ノ速記錄ニ揭載ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=52
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053・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス之ヲ許シマス、田淵豊吉君
〔田淵豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=53
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054・田渕豊吉
○田淵豊吉君 一寸一言政府ニ問ヒタイ、
全部問ヒタイノデスケレドモ、私ハ後ガ
纏テ居リマセヌカラ砂糖消費稅ノ事ヲ特
ニ問ヒタイ、若シ外ノ事デモ答辯シテ下
サレバ少シ聞キタイコトモアリマス、私モ
少シ稅制ヤ財政ノ事ニ付テ議論シタイノデ
スケレドモ、十分ニ調ベテナイノデスカ
ラ、成ベク控ヘテ居ルヤウナ次第デアリマ
スガ、後來生キテ居クテ議員デアリマスレ
バ、財政及稅制ニ付テ諸君ト意見ヲ鬪ハシ
テ見タイト云フ意見モ持ッテ居ルノデゴザ
イマス、故ニ私ハ大藏大臣ノヤウナ人トハ
少シ考ガ違ッテ、モウ少シ根柢カラ財政經
濟ヲヤラナケレバイカヌト云フ考ヲ持シテ
居ル、故ニシッカリヤレバ大ニヤル所デア
リマスガ、是マデハ控ヘテ居ッタ、唯〓小川
〓太郞君、大口君等ガヤッテ居ル狀態デア
ル、吾々ガ飛出ノスハ四五年ノ後カモ知レヌ、
勞働黨其他ノ者ガ議員ニ出テ來タラ尙ホ違ッ
夕財政稅制ノ上カラ立ッテ行クデアラウト
思ヒマス、此點ニ諸君ハ思ヲ致サレンコト
ヲ願フノデアリマス、私ハ第一ニ-斯ウ
云フ事ヲ聞イテ宜イカ知リマセヌガ、今ノ
直接稅、間接稅ノ問題デアリマス、果シテ
今言ッタノハ本當デアルカ、嘘デアルカト
云フコトヲ明カニシテ戴キタイ、ソレカラ
間接稅トハ何ゾヤ、直接稅トハ何ゾヤト云
フコトニ付テ、今答辯ガ出來ナケレバ、後
デモ宜シイ、速記錄ナリ、文書ナリ、何ナ
リヲ通シテ、一ツ十分ニ的確ニシテ戴キタ
イ、詰リ財政學上ニ謂フ、稅制學上ニ謂フ
間接稅ト直接稅ト、政府ノ言ッテ居ル所ト
違フノデアリマスカ、此點モ明ニシテ、サ
ウシテ願クハ各國ノ-列國ノ、或ハ十ト
カ十五トカアル、國ニノ中ノ間接稅直接稅
ト云フモノヲ、日本ノ〓念ニ直シテ列擧シ
テ戴キタイノデアリマス、若シ是ガ出來レ
バ非常ニ結構ナコトデアッテ、參考ニ資スル
コト非常ニ大デアルト思フノデアリマス、
話ガ橫ニ外レマスガ、若槻君ハドウモ佛蘭
西流ノヤウデアル、能ク知リマセヌガ、登
錄稅、印紙稅ノヤウナモノハ、佛蘭西ニテ
多ク取シテ居ッタ、佛蘭西ハ農業國デアル、
日本ガ農業國デアッタ時ハ宜イカモ知レマ
セヌ、貧富ノ懸隔ガ盛デナイ時、或ハ共產
主義ヲ露國ガ敷クトカ云フヤウナ工合ニ、
貧富ノ懸隔ガ無イ時ニハ、所得稅トカ相續稅
ヲ取ナラクトモ宜イ、消費稅デ宜シイト思
フ、農業時代デ各、同ジヤウナ生計ヲシテ
居ル時ニハ、所得稅トカ、相續稅トカ云フ
モノハイカヌ、消費稅デ結構デアル、所ガ
富豪ガ起リ、資本家ガ起リ、國家社會主義
ガ起リ、補助金ガ起リ、工業資金ガ起リ、
色ミナ事ガ起ヲテ、「インダストリー」ノ時
代ニ這入ッテ來ルト、玆ニ經濟上、財政上
ノ「レヴォリウション」ガ起シテ來ルト思ヒ
マス、元ノ佛蘭西ノヤウナ「チムニー」ノ無
イ煙突ノ尠イ貯金ニ依ッテ生キテ居ル狀態、
始末ニ依シテ生キテ居ルノデナク、日本ノヤ
ウナ今日ノ大ナル工業、資本家ガ起ッテ、
海外貿易ガ盛ニナリ、大企業、「トラスト」
ガ起ルト云フ時代ニ當テハ、此所得稅ト
カ、或ハ累進所得稅トカ-佛蘭西ハ永ク
所得稅ヲ好マナカッタ、平等主義カラ、稅
ハ皆ナ一割ナラ一割ト云フコトデアッタ、
平等主義デアッタ、之ニ對シテ負擔能力說
ト云フモノガ起ッテ來タ、故ニドウシテモヤ
ラナケレバナラヌガ、英吉利ハ何億ト云フ
相續稅ヲ取シテ居ル、日本ハ極ク少ナイ、サ
ウシテコンナ馬鹿ナ砂糖ノ-黑砂糖ノ消
費稅ヲ取シテ居ルノハ根本的ノ誤リデアル、
コンナモノヲ以テ第二次ノ財政整理ナント
云フコトハ烏滸ガマシイト思フノデアリマ
ス、怒ル譯デハナイガ、私ハ武藤委員長ノ直
接稅ハ〇·三六五、間接稅ハ〇·六三五トカ云
フタノハ果シテ本當カ、内容ハ何デアルカ
ト云フコトヽ各國ニ於ケル所ノ狀態トヲ
比較〓究スル爲ニ各辯ヲシテ戴キタイ、是
ハ切ニ願フ、世界ノ學者ニモ都合ガ好イト
思フ、後來ノ政治家ニモ都合ガ宜イト思フ
ノデアリマス、ソレデ是等ノ所謂勞働者、
中產階級ノ國民、元ノ國民黨トカ言フモノ
ノ案ト、今ノモノト比較〓究シタイ、サウ
シテ財政整理、行政整理ニ當ッテ權衡ガア
リマスカラ、特ニ之ヲ聞キタイノデゴザイ
ママ、ドウカ私ハ斯ウ云フ小サイ稅ヲ成ベ
ク止メテ、大キナ所デ取ッタラ宜カラウト
思フ、相續稅デモ、相當ニ取ラナケレバナ
ラヌト思フ、日本ノヤウナコトハイカヌト
思フ、第二ニ問ヒタイ所ハ、砂糖消費稅デ
アリマス、私モ能ク調ベテ見テ居ナイ、ダ
カラホンノ思付デアル、私ハ砂糖ハ文明國
ニ於テハ、非常ニ餘計食フ、日本モ段々食シテ
來タ、砂糖ハ後ニ機會ガアレバ言ヒマスル
ガ、非常ニ此支明ノ人間ニハ早ク「カロ
リー」ヲ取ルコトガ出來テ、四十八ノ「ア
トーメン」カラ成シテ居ルト云フコトヲ聞イテ
居ル、非常ニ早イ胃ノ中デ溶解性ヲ持ノテ
居ル、故ニ子供ヤ又遠足スル時ナドニ非常ニ
砂糖ガ必要ニナッテ來ル狀態ニアル、時·チ
ハ「アルコール」ノ代リヲ爲ス狀態デアル、
サウシテ黑砂糖ト云フモノハ、日本ニ於テ
ドウ云フヤウナ原料ニ使ハレテ居ルカ、ソ
レヲ聞キタイ、サウシテ黑砂糖ト云フモノ
ハドノ工業ニ使ハレテ居ルカ、或ハ食物
ノドンナモノニ使ハレテ居ルカ、或ハドウ
云フ階級ガ食べテ居ルカ、何處デ生產サレ
テ、何處ニ販賣サレテ居ルカト云フ狀態モ
聞キタイ、委員會デ質問ガアッタカモ知レ
ナイガ、私ハ委員會ニ出ラレナイ、サウ云
フヤウナ狀態デ、吾々ノ小サイ時ニ、猫ノ
糞トカ云フヤウナモノガアッタ、アヽ云フモ
ノヽ中ニ入レテ、最モ貧民ノ食フ所ノモノ
デアル、子供ノ營養デアル所ノ菓子、嗜好
品デアル所ノモノデ、アレハ最モ貧困ノ者
ガ食ベテ居ル、今日黑砂糖ナンカヲ使フノ
ハ獨逸トカ日本ノ如キ下等民族ノ國デア
ル、良イ所ノ亞米利加、英國ナンカハ比較、
的少イト思ヒマス、量ハ知リマセヌガ-
故ニ斯ウ云フモノヲ食ベルノハ、蕎麥ト
カ、麥トカヲ食シテ居ルヤウナモノト思フ、
私ハ素人考デゴザイマスケレドモ、斯ウ云
フモノハ一切免稅シナケレバナラヌ、財源
ガ無イカラト云フヤウナ、コンナ馬鹿ナコト
ハナカラウト思フ、財源ハ幾ラデモアル、
其根柢ヲ誤クテ居ルカラデアラウト思フ、
故ニ私ハ黑砂糖ト云フモノハドウ云フ方向
ニ使ハレテ居ルカ、何万圓デ何貫ノ砂糖ガ
使ハレテ居ルカト云フコトヲ聞キタイ、又
ドウ云フヤウナ方向ニ黑砂糖ガ使ハレテ居
ルカト云フコトヲ聞キタイ、サウシテ大島
トカ沖繩トカ云フヤウナ方面ニ於テ、日本
全國ニ於ケル何割ノ量ガ生產サレテ居ルカ
ト云フコトヲ聞キタイ、ソレカラ私ノ政府
ニ問ヒタイ所ハ、黑砂糖ト云フヤウナモノ
ハ、貧氏ガ食ベテ居ル、子供ガ食べテ居ル、
尤モ白砂糖ハ今日文明國ニ於テ大體-獨
逸ニモ黑砂糖ガアリマスルガ、黑砂糖ニモ
色ニナモノガアル、赤イヤウナモノ「ブラ
ウン」ノモノ、黑イモノモアル、溶解シタ
モノモアリマセウ、能ク知ラヌガ色ミアリ
マセウケレドモ、之ヲ大體ドノ標準ニ依ッ
テ黑砂糖ト云フノカ、是ハ委員會ノ問題デ
スケレドモ、其黑砂糖ト云フモノハ大體
ニ於テ私ハ無稅ニスル方ガ社會政策上最モ
必要デアルシ、又日本ニ於ケル今日ノ財政
政策ノ上カラ見テモ必要デアルト思フノデ
アリマス、政府ノ考ハドウカト一云フコトヲ
聞キタイ、第二ニ聞キタイノハ總額ノ八十
万圓ヲ沖繩トカ、アヽ云フ所ニヤルト云フ
ノハ、ドウ云フ譯デサウ云フ金ヲヤルカ、
唯、本黨ガサウ云フコトヲ云ウテ來タカラ、
ソレデ妥協スル爲ニ、サウ云フヤウナ胡麻
化シ的ノコトヲヤルノカドウカ(「違フ
違フ」ト呼フ者アリ)マア怒リ給フナ、ソレ
モハッキリシテ置キタイ、此八十万圓ヲ何
年間ヤルノデアルカ、又私ノ聞キタイノ
ハ沖繩ト云フ所ノ砂糖ハ何軒ノ人ガ造ッ
テ居ルカト云フヤウナ割合、其沖繩ニ於ケ
ル所ノ砂糖ノ生產者ノ人間ト、或ハ消費者
ト云フモノト、ドウ云フ關係ニナッテ居ル
カト云フコトモ聞キタイ、例ヘバ或人ガ
言ッテ居ルヤウナ-森田君等モ言ッテ居
ル、生產者ニ其金ヲヤッタ所ガ、生產者ガ
取ッテシマッテ、サウシテ外ノ一般ノ消費ス
ル所ノ人ニハ砂糖ノ稅ガ掛ッテ居ルデハナ
イカ、是デハ果シテ徹底的ノモノデアルカ
ナイカト云フヤウナ、差別觀念ガアルダラ
ウト思フ、是ハドウ見テ居ルカドウカ或
ハ又黑砂糖ノ稅ハ、卽チ轉嫁ヲスルモノデ
アラウト思フガ如何、酒ノ稅ナドハ轉嫁シ
ナイノデ酒屋ガ困ルト云フヤウナコトモア
ルガ、此黑砂糖ト云フモノハ轉嫁シナイガ
ドウカ、外ノ物トノ競爭ニ文明ノ進歩ガ早
"白砂糖ヲ澤山食フノデ黑砂糖ガ賣レナ
イノデアルカ、ドウ云フ譯デ賣レナイノデ
アルカ、生產費ガ償ハナイカラ此補助ヲヤ
ルノカ、黑砂糖ハ日本ニ必要デアルケレド
モ、其生產費ガ高ク掛ルノデ現代デハ用ヒ
テ吳レヌカラ仕方ガナイカラト云フノデ、
其黑砂糖ヲ生產スル必要アルガ爲ニ金ヲヤ
ルノカ、ソレヲ聞キタイ、故ニ其奬勵ト云
フモノハドウ云フ意味デ奬勵スルノカ、獎
勵シナケレバ黑砂糖ガ出來ナイノカドウ
カ、之ヲ聞キタイ、ソレデナケレバ何ノ爲
ニ八十万圓ノ金ヲヤルノデアルカ譯ガ分ラ
ナイ、故ニ私ハ其點ヲ明ニシテ戴キタイ、
サウシテ若シ假ニ私ハ能ク知リマセヌガ、
沖繩トカ或ハ大島邊リノ人ガ、自身ニ黑砂
糖ヲ作ラナイ人モアラウ、或ハ作ッテモ賣
ルダケノモノハ無イト云フ人ガアルカモ知
レヌ、買ウテ食ベル人ハ矢張砂糖消費稅ヲ
取ラレルデハナイカ、困リハシナイカ、ソ
レカラソレヲ他ノ內地ノ國とへ賣出スノニ
不便デアルト云フノカドウカ、或ハ租稅ノ
轉嫁が出來ナイト云フノカドウカ、或ハ砂
糖ハ其處ノ生產物デアルカラ、貧民ノ-
貧窮デアル所ノ島國デアルカラ、成ベク其
所ニ出來ル所ノ物ヲ產業ヲ發展セシメタイ
ガ、其處ニハ黑砂糖ヨリ外ニナイカラ黑砂
糖ニ補助ヲヤラウト云フノデアルカ、其意
味ガハッキリシナイノデアル、サウ云フヤウ
ナ意味ノハッキリシナイモノハ吾々ハ分ラナ
イ、政友本黨ノ諸君ハ顏ガ立ツカ知ラヌガ、
八十万圓ヤルト云フ意味ガハッキリシナイ
ト、何ノ爲ニヤッタカト云フコトノ扞格ガ生ズ
ルト思ブ、私ハ寧口之ヲ免稅スルト云フ方
ガ宜イ、唯〓單ニ沖繩、大島ニ限ラズ、全
國ニ對シテ斯ノ如キモノニ對シテ課稅スル
程、日本ハ現ニ貧窮デナイ、其證據ニハ震
災手形ノ法案デ二億万圓ノ金モ諸君ハ貸シ
テ居ルデハナイカ、サウ云フ役ニ立タヌモ
ノニ、二億圓ノ金ヲ貸スト云フコトガ出來
ルノニ、黑砂糖位免稅ガ出來ナイト云フコ
トハナイト思フ、ソレダカラ諸君ハ若シ政
友會ト組ンデ徹底的ニ黑砂糖ヲ免稅シロト
云フノデ政府ニ向ッタナラバ、政府ハ一遍
ニ參ッテシマフノデアル、故ニ私ハ大藏大臣
ニ向ッテ、如何ナル意味デ以テ此金ヲヤル
ノデアルカト云フコトヲ聞キタイ、又黑砂
糖ト云フモノハ免稅スベキ性質ノモノデナ
イカドウカト云フコトヲ聞キタイ、先ヅ第
一ニ許シテ吳レルナラバ、前ノ消費稅ト直
接稅トノ割合、及其如何ナル稅ガ直接デア
ルカ、如何ナル稅ガ間接デアルカト云フコ
トヲ聞キタイ、ソシテ列國ニ於ケル所ノモ
ノト日本ノ統計ヲ、若シ數日中ニ出シテ戴
ケレバ非常ニ結構ダト思ヒマス、私ハ尙ホ
其他ノ稅制問題ニ付テモ意見ガアリマスケ
レドモ、私ハ特ニ黑砂糖ヲ擧ゲテ、貧民階
級ト云フモノニ付テ十分ノ理解ヲ以テ、憐
ムベキ地方ニ於ケル特殊的恩惠デハナク
テ、眞ニ國策ノ上カラ之ヲヤルト云フコト
ハ最モ必要デアルト云フコトヲ信ズル一
人デゴザイマスカラ、此點ニ付テ政府ニ直
接突掛ッテ政府ノ答辯ヲ促ス次第デアリマ
ス
〔政府委員黒田英雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=54
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055・黒田英雄
○政府委員(黑田英雄君) 第一ノ御尋ノ
點卽チ直接國稅ト間接國稅トノ分類竝ニ
其步合ガ、ドレ位ニナッテ居ルカト云フ御
質問デアッタノデアリマスルガ、直接國稅、
間接國稅ト申シマスルモノハ、申上ゲルマ
デモナク學者ノ間ニ於キマシテ、色〓區別
ノ標準ガアルノデアリマス、ソレ故ニ吾々
ハ之ヲドウ云フ風ニ區別ヲスルカト云フコ
トヲ申シマスルヨリモ、寧ロ各稅ニ付キマ
シテ國民負擔ノ均衡ヲ得ル上ニ於テ、如何
ニ其稅率ヲ按排シ、又課稅ノ方法ヲ如何ニ
致スカト云フコトヲ〓究致スノデアリマ
ス、ソレ故ニ殊更ニ直接國稅、間接國稅ト
云フモノニ分ケマシテ、之ヲ現ハスト云フ
コトハ致シテ居ラヌノデアリマス、ソレ故
ニ若シ御希望ガ、ドウ云フモノヲ直接稅ト
見、ドウ云フモノヲ間接稅ト見ルカト云フ
コトデアリマスルナラバソレニ基キマシ
テ早速表ヲ拵ヘマシテ、御手許ヘ差上ゲル
ヤウニ致シマス、併ナガラ吾々ハ前申ス通
リノ見解ヲ持クテ居リマスカラ、今日ソレヲ
作ッテハ居リマセヌ、ソレカラ砂糖ノ問題
ニ付キマシテ、黑糖ノ生產竝ニ消費ノ狀況
ガドウ風ニ在ルカト一云フコトデゴザイマ
シタガ、黑糖ト御話ニナリマシタノハ
或ハ多少廣ク御話ニナッタノデアルカト思
ヒマスガ、其中デ只今主トシテ問題ニ爲サ
レテ居リマス樽入黑糖ニ付キマシテハ、是
ハ大正十四年度ニ課稅致シマシタモノハ
七千三百万斤アルノデアリマス、サウシテ
其生產ハ主トシテ沖繩竝ニ鹿兒島縣ノ大島
郡ニ於テ其大部分ガ生產サレテ居ルノデア
リマス、而シテ其地方ニ於ケル生產ノ中、
殆ド九割餘ハ島外ニ移出サレテ居ルノデア
リマス、ソレカラ消費ノ狀況ハ過日モ申上
ゲマシタ通リ、是ハ主トシテ中產階級以下
ニ用ヒラレテ居ルノデアリマス、或ハ直接
之ヲ使ヒ、或ハ之ヲ菓子ニ用ヒルト云フ風
ナコトモアルノデアリマス、ソレカラ廣イ
意味デ色ノ著イタ砂糖ト云フ意味デ御話ニ
ナリマシタナラバ更ニ樽入白下モアリマ
スルシ、或ハ第一種ノ丙モアルノデアリマ
スルガ、此樽入白下ノ如キ、或ハ丙ノ如
キ、是等ハ白イ砂糖ト交ゼマシテ、主トシ
テ關東地方ニ用ヒテ居リマス花見、天光等
ノ砂糖ヲ製造スルニ用ヒテ居ルヤウデアリ
さっ、併ナガラ勿論是ハ直接ニモ消費ヲ致
シテ居ルノデアリマス、ソレカラ獎勵費等
ノコトニ付キマシテハ、是ハ大藏大臣カラ
御答ニナリマス
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=55
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056・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今御尋ノ中、
昭和三年度ヨリ奬勵金ヲ下付スルト云フコ
トヲ致シタノハ、如何ナル理由ニ依ルカト
云フ御尋デアリマス、是ハ極メテ重大ノ關
係ノアル事デアリマスカラ、私ヨリ御答ヲ
申上ゲテ置キマス、御尋ノ如ク或ル政黨ノ
一部ヨリ要求セラレタカラ、ヤルコトニシ
タカト云フガ如キ御言葉デアリマスガ、左
樣ノコトハアリマセヌ、之ヲ委員會ニ於テ禱
代議士ヨリ御質問ノアリマシタ時ニ御答ヲ
致シマシタコトガ、先刻委員長ノ報告ニヲツ
テ居ルノデアリマスガ、沖繩縣ハ先年來
金融機關ナドモ殆ド全滅致シテ居リマシ
ク、一時縣廳ニ於テ俸給ノ支拂ニ差支ヘタ
ト云ア程ノ事情ニ遭遇シタ縣デアリマス、
爾來相當ノ救濟法ハ講ジテ來タノデアリマ
ス、又沖繩縣ニ於ケル產業ノ上ニ於テモ、
成立ツベキモノニ對シテハ助成ヲ致シテ居
リマスコトモ、豫算案ノ內容ヲ御覽下サッ
タナラバ分ルト思ヒマス、昭和二年度ノ豫
算ニ於キマシテモ、產業奬勵費トシテ約五
十万圓程ノモノヲ計畫シテ居ルノデアリマ
ス併ナガラ到底ソレ等ノモノヲ以テ沖繩
縣ノ將來ヲ恢復スルト云フコトハ、中ヒム
ヅカシイノデアリマス、別ニ何等カノ手段
ヲ施シテ貰ハナケレバナラヌト云フコトノ
要求ハ、有識者ヨリモ、又縣廳ノ方面ヨリ
モ申立テヽ居ルノデアリマス、併ナガラ金
融機關ノ如キモノハ今尙ホ開店ヲシテ經
營ヲスルト云フガ如キ運ニ參ラヌ位ノコト
デアリマスカラ、之ニ資金ヲ貸スト云フコ
トモ、中〓行ハレナイノデアリマス、元こ
玆ニ到リマシタノハ誰ノ罪デモナイノデ
アリマセウ、畢竟內地ト同ジヤウニ町村制
ヲ布キ、府縣制ヲ布キ、今日同ジヤウニ取
扱ッテ來タ所ヨリシテ、其間產業ハ勃興セ
ズ負擔ハ唯、徒ニ重イ、斯ウ云フコトニ
ナッタ結果ガ此處ニ到ッテ居ルノデアリマ
ス、左樣ナ次第デアリマスカラ、何等カノ
救濟ヲシナケレバナラヌト存ジテ居ル所
ニ、此稅制整理ノ法案ヲ提出致シマシタ際、
糖業ノ經營困難ナル事情ヲ具ニ承ッタノデ
アリマス、是ハ沖繩縣及大島ノ狀態カラ申
シマスト、免稅ニシタ方ガ宜イコトモ一ツ
ノ意見デアリマスガ、サウ致シマスト樽入
黑糖ノ如キモノハ比較的製造ノ仕易イモ
ノデアリマスガ爲ニ、御隣リノ臺灣カラ之
ヲ造ッテ壓倒ヲスルノ嫌ガアリマス、是ニ
於テ免稅ハ大變結構ニ聞エルガ、其實他ノ
壓倒ヲ受ケテ立行カヌト云フコトニナリマ
ス、ソレト免稅ニナレバ取締ノ方法ガ付カ
ヌノデアリマスカラ、此壓倒ヲ受ケル際ニ
於テノ困難ハ一層デアリマスノミナラズ
沖繩方面ニ於テハ分密糖ノ發達ヲ漸ク見
ツヽアルノデアリマス、黑糖ニ對シテ免稅
ヲ行フナラバ忽チ分密糖ニ影響致シテ來
ルノデアリマス、是ニ於テ免稅ト云フコト
ハイケヌ、免稅ト云フコトハイカヌガ、沖
繩ノ全體ノ狀態ハ今申上ゲル通リデアリマ
スソレ故ニ一方豫算ニ對シテ、產業奬勵
ノ費目ハ出テ居リマスガ、向フノ產業ニ於
テハ糖業ナルモノハ最モ大切ナモノデア
リマスソレ故ニ之ニ對シテハ樽入黑糖
ノ消費稅ノ總額ヲ下ラザル所ノ程度ノモノ
ヲ以テ此糖業ヲ奬勵スルノ必要ガアルト
云フコトヲ信ジタノデアリマスカラ、其事
ヲ聲明シタ譯デアリマス
〔田淵豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=56
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057・田渕豊吉
○田淵豊吉君 先ヅ大藏大臣ニ御尋シテ見
タイ、詰リ產業上ニ金ガ要ッテ金融ノ梗塞
ヲ來シテ居ルカラ、ソレヲ救フ途ガナイカ
ラ今度製糖業者ガ言ッテ來タカラ丁度好
イ按排デアル、ソレニハッキリト當嵌ラヌ
ケレドモ、ソレヲヤッタト仰シヤルノデア
ルカ、ソレナラバ餘程話ガ違。テ來ヤセヌ
カト思フ、話ハ橫ニ這入リマスケレドモ、
此前ノ賣藥稅デモサウデアリマス、賣藥稅
ヲ廢メタ結構デアルト思フ、所ガ其賣藥
稅ハ少シ箱位ヲ直シテ、サウシテ中味ヲ良
クシタト云フガ、却テ高クシタヤウナモノ
ガアル、製藥會社ガ取ッテシマフヤウナコ
トガ起ラヌトモ限ラヌ、是デモサウデア
ル、大體私ハ何百人、何千人作ッテ居ルカ
ト聞キマシタガ、答ハナカッタ、此問題デ
モ、其受ケル所ノ利益ハドウナルカ分ラ
又、此一般ノ金融事業ノ整理ハドウ爲サル
ノデアルカ、之ヲ聞キタイアナタノ答ノ
半分ハ宜イケレドモ、半分ハ間違シテ居ル
ノデハナイカ、ソレカラ第二ニ聞キタイノ
ハ、縣民ハ尙ホ〓日ハ無稅ノ方ガ宜イト云
フコトヲ主張シテ居ル、是ハドウ云フ意味
デアルカ、沖繩縣ノ人ガ短見者流デ、深ク
見ルコトガ出來ナイノカ、或ハ大藏大臣ガ
間違ッテ居ルノカ、其處ガ聞キタイ、何故カ
ト云フト、臺灣カラ來ル所ノ黑砂糖デモ、
吾々ハ黑砂糖トシテ內地デ消費スルナラバ、
悉ク之ヲ免稅シテシマッテ宜イト云フノデ
アル、故ニ臺灣ニ後來壓倒サレルヤウナ大
島デアルナラバ或ハ沖繩デアルナラバ、
コヽ五年七年後ニハ非常ニ壓倒サレテシ
マフ事ガアルカドウカ、其時ニ僅カナ奬勵
金ヲ以テ沖繩トカ大島ノ砂糖ノ奬勵ヲスル
ノカドウカ、其處マデ徹底シテ考ヘヌト、コ
コ三年ヤ二年ノ間ハ何ニモナラヌト思
フ、日本ノ內地ニ於テ消費スル所ノ黑砂
糖之ヲ使フ所ノ人ニ免稅シテヤッテ、サ
ウシテ其力ニ依シテ彼等ノ產業ヲ維持シテ
行クト云フコトガ、根本的ノ解決デナカラ
ウカ、若モ臺灣ヲ恐レルト云フナラバ臺
灣トノ關係ヲ能ク知ッテ置カナケレバナラ
又、然ルニ沖繩縣民ハ何故其點ヲ明カニシ
ナイノカ、其處ガ大藏大臣ガ違テ居ルノ
カ、沖繩縣民ガ淺見デアルノカト云フコト
ヲ、私ハ疑フノデアル、サウ云フヤウナ點
デ、產業ノ奬勵費ナラバ何故產業全體ニ之
ヲヤラヌノデアルカ、或ハ貧窮デ困シテ居
ルナラバ何故見舞金ヲヤラヌカ、東京ノ
震災デ非常ニ困ッタ、震災手形デ二億圓ノ
金ヲ貸シテ居ルノデアル、何故沖繩縣ヲ救
ハナイノデアルカ、邊鄙デアルカラ救ハヌ
ト云フコトハナイ、ソレヲ違ッタ所ノ費目
ヲ以テ埋合セヤウトスルカラ、豫算トカ稅
制ガ常ニコンガラカッテ、少シモ聯絡統一ノ
ナイ豫算ノ編成ニナルノデハナカラウカト
思フ、私ハ此點ニ於テ藏相ノ猛省ヲ促スノ
デアル而シテ明確ナル御答辯ヲ願ヒタイ
ノデアリマス、(「答辯無用」ト呼フ者アリ)
無用ナコトハナイ、ソレカラ前ニ、間接
稅直接稅ト云フモノハ關係ガナイト言ハ
レテ居ル、併ナガラ是ハ矢張消費ノ租稅ノ
轉嫁ノ點ニ於テ、本人ニ掛カルカ、或ハ他
ノ者ニ掛カルカト云フ點ニ於テ、非常ニ貧
富ノ懸隔ノ上ニ於テ違フノデアル、消費稅
ト云フモノハ露西亞ノ一部デ行ヲテ居ル
カ知ラヌケレドモ、餘計使ヲタ者ニ餘
計掛ケルト云フヤウナ事ヲヤッテ居ルカモ
知レヌ併シ一般消費稅ハ、皆平等デアル
所得稅ト云フモノハ不平等デアル、故ニ平
等ト不平等ノ直接稅、消費稅ト云フコト
ガ、分ラズシテドウシテ稅制ヲ立テルコ
トガ出來ルカ、此譯ガ分ラズシテドウシテ
出來ルカ、故ニ此間接稅、直接稅ガ分ラナ
イヤウナコトデハ此稅制ノ根本義ヲ立テ
ルコトハ出來ナイノデアル、片方ハ平等デ
アル、片方ハ不平等デアル、此關係ガ分ラ
ナイデ、ドウシテ、稅制ヲ立テルコトガ出
來ルカ、唯學問上ト實際上ノ關係ノ上ニ於
テ、ソレガ明カニナッテ居ナイト云フダケ
ノ話デアラウト思フ、稅制ヲ按排スルト云
フガ何ヲ以テ按排スルコトガ出來ルカ、
コンナコトデハ日本ノ國ハ何處ニ廻ッテ
見テモ分ラナイノデアリマス、日本ハ統計
ニ依シテ、是〓ノモノガアル、是々ノ財產ガ
アル、一々消費カラ生產費、此分配ト消費
ノ關係ヲ決定シテ、ソレカラ初メテ色ニナ
統計ヲ割出シテ、如何ニスレバ社會政策ニ
ナルカト云フコトニ依ッテ、初メテ稅制整
理ガ起ッテ來ルノデハナイカト私ハ思フノ
デアリマス、ソレヲ知ラズシテ唯、稅制ノ
按排ヲスルト云フガ、何ヲ以テ按排スルカト
云フ標準ガナクシテ、何處ニ按排スルコト
ガ出來ルカ、故ニサウ云フヤウナ考デアル
ナラバ到底私ハ駄目デアルト思フ、直接稅
間接稅ト云フモノハ何物デアルカ、或ハ學
者ガドウ云フコトヲ言ッテ居ルカ、世界各國
ハドウ云フヤウナ狀態ヲ取ッテ居ルカ、日本
ハ是マデドウ云フヤウナ狀態デアッタカ、又
後來ノ社會政策、其他ノ點ニ於テ良クスル
ノニハ、如何ナル點ヲ採ラナケレバナラヌ
カ、ト云フコトガ重大ナル問題デアルト思
フソレヲ白バクレテ居ル、能ク知ッテ居
ルノデアル、故ニサウ云フ點ヲ胡麻化サナ
イデハッキリ言ッタラトウデスカ、知ラナ
イノデハナイ、知ッテ居ルノダ、故ニ間接
稅直接稅ト云フコトヲ明カニシテ戴キタ
ィ、何方デモ宜イト云フヤウナ、サウ云フ
頭デ大藏當局ガヤラレタナラバ此日本ノ
不利益デアリ、當局ノ責任デアルト云フコ
トヲ斷言シテ憚ラナイノデアル、故ニモウ
少シ眞面目ニ此砂糖消費稅ニ付テヤカマシ
ク言ッテ失禮デアリマシタケレドモ、斯ウ
云フ點、其他ノ點ニ付テ諸君ハ根本カラ〓
究シテ出發セラレンコトヲ切ニ願ヒタイノ
デアリマス、卽チ大臣及政府委員ニ質問ヲ
致シテ此壇ヲ降ルノデアリマス
〔「無用々々」ト呼フ者アリ「田淵豐吉君
馬鹿ヲ言ヘ」ト呼フ〕
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=57
-
058・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 田淵君ノ再度ノ
御尋ニ御答ヲ申上ゲマス、御言葉ハ隨分澤
山アッタノデアリマスカラ、之ニ一々應答シ
タラ非常ニ時間ヲ費シマス、要スルニ奬勵
其モノハ產業デアルカ、產業ナラ產業デ云
云ト云フヤウナ御言葉デアリマシタガ、是
ハ糖業ニ對シテ奬勵ヲスルノデアル、沖繩
及大島ノ糖業ニ對シテ獎勵金ヲヤル、斯ウ
云フノデアリマス
〔武藤金吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=58
-
059・武藤金吉
○武藤金吉君 御手許ニ配付致シマシ夕報
告書ノ中ノ十九條ノ十一號、其次ニ十二號
ト云フノガ脫ケテ居リマス、又十二號ノ中
ノ第八號ニ規定スルト云フコトガ削ッテア
リマセヌ、私ガ先刻報告致シマシタノハ何
等一字一句間違ハナイノデアリマスガ報
告書ガ誤ッテ居リマスカラ、此處ニ謹ンデ
訂正ヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=59
-
060・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 委員長報告ニ賛成演
說ノ通告ガアリマス、丹下茂十郞君
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=60
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061・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 諸君、私ハ只今武藤委員
長ヨリ御報告ニナリマシタ登錄稅法中改正
法律案外五件ニ對シマシテ、主トシテ修正
ニナリマシタ箇所ハ卽チ修正ノ通リ、其他
委員會ニ於テ決定サレマシタ通リ贊成ノ意
思ヲ表スルト共ニ、此問題ニ關聯致シマシ
テ二三ノ所見ヲ申述ベテ政府當局ニ要望
致シテ置キタイト思フノデアリマス、專ラ
農村ノ問題ニ關係シマスル事柄ニ付テ聊カ
所見ヲ申述べタイト思フノデアリマスルガ、
今回提案ニナリマシタ登錄稅法中改正法
律案ニ於キマシテ、登錄稅免除ノ規定ノ中
ニ政府ハ自作農地ニ對シマシテ、一部ノ登
錄稅免除ノ原案ヲ出サレタノデアリマス
此政府案ニ對シマシテハ固ヨリ吾々贊意
ヲ表スル者デアリマス、然ルニ此政府原案
ハ政府ノ自作農創設維持事業ニ關シマスル
所ノ國庫ノ補助金ヲ受ケテサウシテ行ヒ
マスル北海道、府縣、市町村、或ハ產業組合、
產業組合聯合會等ノ其施設ニ依ル所ノ個
人ノ土地所有權ノ取得ノ登錄稅ヲ免除スル
ト云フコトデアリマス、然ルニ彼ノ小作農
家ノ人ガ所謂粒々辛苦、僅ニ貯へ得マシタ
所ノ資金ヲ以チマシテ、之ニ依シテ自作地
ヲ買入レマシタ者ニ對シテハ登錄稅ヲ免
除致サナイト云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、此政府ノ原案ハ私共甚ダ不公平デ
アリ、不徹底デアリ、又不條理デアルヤウ
ニ考ヘタノデアリマス、少クトモ自作農ノ
保護奬勵ノ趣旨ノ一貫シナイコトヲ甚ダ遺
憾ニ感ジタノデアリマス、前者ノ方ハ政府
ノ助成ニ依ルモノデアリマシテ、資金ニ於
テ四分八厘ノ低利ノ融通ヲ受ケ、又之ニ加
フルニ少カラヌ利子ノ補給モ受ケテ居ルノ
デアリマス、卽チ特典ニ重ネルニ特典ヲ以
テシテ居リマス者ニ對シテ、更ニ又登錄稅
ヲ免除スルノデアル登錄稅免除ニハ何等
異議ハナイ、固ヨリ免除ヲ希望スル者デ
アリマスガ、斯ノ如ク特典ヲ重ネテ居ル者
ニ對シテ、尙且ツ登錄稅ヲ免除スルト云フ
ノデアルニモ拘ラズ、後者ハ何等ノ恩典ヲ
受ケテ居ナイ、前ニ申シマスル通リ營々ト
シテ土ニ親ンデ眞面目ニ働キマス所謂粒々
辛苦、勤儉力行、漸ク一段二段ノ僅ナル自
作地ヲ買入レルモノデアリマシテ、前者ニ
比べマシテハ寧口此方面ニ登錄免除ノ恩
典ヲ與ヘルコトガ至當デアルト私ハ信ジテ
居ル者デアリマス、而モ是等ノ自己資金或
ハ其他ノ資金ニ依シテ買ヒマスル所ノモノ
ニ於キマシテモ悉ク政府ノ低利資金ノ融
通或ハ利子ノ補給ヲ希望シテ止マナイ者
デアリマス、現ニ本年度ニ於キマシテ、政
府ニ要望致シテ居ル統計ヲ見マスレバ補助
金附ノ低利資金ノ貸付ノ要求ガ約二千四百
万圓ニナッテ居ルト云フノデアリマス、之ニ
對シマシテ政府ノ貸付資金ハ僅ニ七百万圓
デアリマス、其要求ノ四分ノ一ニ充タナイ
ヤウナ有樣デアルノデアリマス、故ニ此要
求ガ通ラナイ、已ムヲ得ズ僅ナル自己資
金ニ對シテ產業組合、或ハ其他ノ團體若ク
ハ地主等ニ、特ニ年賦償還等ノ手續ヲ取。ツ
テ貰シテ、漸ク僅ナル自作農地ヲ買入レル
モノデアリマスガ故ニ、之ヲ除外スルト云
フコトハ、誠ニ謂レナイコトヽ思フノデア
リマス、農村ノ救濟、農村ノ振興ニ對シマ
シテハ、幾多ノ施設ヲ要スルコトガアルノ
デアリマスガ、現在ノ農村ニ於キマシテモ、
最モ重大ナル問題ハ、私ハ小作問題デアラ
ウト信ズルノデアリマス、小作問題ハ御承
知ノ通リ益、複雜ニ、益、紛糾致シ、愈、傳
播ノ虞ガアルノデアリマシテ、隨テ農村ノ
安定ヲ脅カサレルコトハ頗ル遺憾ニ感ジテ
居ルノデアリマス、此小作問題ノ解決シタ
んや、吾々ハ先ヅ以テ小作法ノ制定ヲ叫ブ
者デアル、之ニ依リマシテ地主小作間ノ權
利義務ヲ明確ニ定メ、小作者ヲシテ其經
濟的、社會的地位ノ向上ヲ圖リ、其生活ノ
安定ヲ期スルト云フコトヲ致シマスルト同
時ニ、一面ニハ地主ニ對シテモ亦相當其安
定ノ途ヲ與ヘナケレバナラヌト信ズル者デ
アリマス是ト同時ニ所謂勤勉ニシテ眞面
目ナル小作農家ヲ、保護奬勵ヲ致シマシテ、
之ヲ自作農家タラシメ、更ニ動モスレバ年
年減少致サントスル所ノ自作農家ヲ保護獎
勵シ、之ヲ維持シテ以テ健全ナル農村ノ中
堅ヲ養ハナケレバナラヌト信ズル者デアリ
マス、吾人ハ此見地ニ立脚致シマシテ、過
グル第五十一議會ニ於キマシテモ、自作農
家ノ負擔ノ輕減ヲ圖ル爲ニ、自作農地ノ地
租ノ全免案ヲ以テシ、一面ニハ義務〓育費
國庫負擔金ノ曾額トヲ以テ、吾々ノ二大政
策トシテ其遂行實現ニ努力致シタノデアリ
マス、隨テ地方農村ニ於キマシテハ幸ニ
自作農地ノ地租全免ト云フ恩典ニ浴シ此
施設ニ依リマシテ、著々トシテ農村ノ安定
ヲ期シツヽアルコトハ今更申上ゲル迄モナ
イノデアリマス、吾人ハ更ニ此自作農地ノ
地租全免ト共ニ、低利資金ノ融通ニ依リマ
シテ、又利子ノ補給ニ依リマシテ、益〓小
作農家ノ發達ヲ助成致シタイト云フコトヲ、
要望致シタノデアリマス、卽チ此自作農ノ
發達充實ニ依リマシテ、農村ノ基礎ノ安固
ヲ圖リタイト云フコトヲ希望スル者デアリ
マス、隨テ此度ノ所謂第二次稅制整理ニ於
キマシテ、少數ノ自作農地ノ壹錄稅免除
ノ提案ヲ見タノハ洵ニ結構デアリマス
ガ尙ホ其他ノ幾多自作地ニ對シテハ何
等顧ミルコトノ無カッタト云フコト
ハ例へバ龍ヲ描イテ一點ノ晴眼ヲ忘レ
タモノダト思ハレルノデアリマシテ、
吾々ハ洵ニ此點ニ付テ遺憾ニ感ジタ者
デアリマスソレ故ニ吾々ハ委員會ニ於
キマシテ、自ラ小作ヲ爲ス目的ヲ以テ
土地ヲ買入レマシタ、其所有權ノ移轉登錄
稅ハ總テ免除スルト云フ修正案ヲ提出致
シマシテ、種々政府ニ對シマシテモ質疑應
答熟議ヲ重ネタノデアリマス、然ルニ政府
ニ於キマシテモ、矢張吾々ト同ジク此趣旨
ニ於キマシテハ、極メテ贊成ヲサレテ居ル
ノデアリマス、唯、立法技術ノ上ニ於キ
マシテ、又他ノ關係ニ於キマシテ、今直
ニ私共ノ希望ノ通リ、悉クニ登錄稅ヲ免
除スルト云フコトガ、甚ダ不可能デアルト
云フコトデアリマシテ、吾々ハ洵ニ遺憾ヲ
感ジタ者デアリマス、併ナガラ只今委員長
ノ御報告ニナリマシタ通リ、單ニ政府ノ助
成ニ依ル公共團體及產業組合ノ事業ニ依ル
バカリデナク、公共〓體及產業組合自體ノ
事業ニ依ッテ、自作農創定維持ノ事業ニ對
シマシテモ、同ジク登錄稅ヲ免除スルト云
フコトニ擴張サレタノデアリマス、卽チ吾
吾ノ要求ノ全部ハ通ラナカッタノデアリマ
スケレドモ、大體ニ於テ私共ノ主張ガ貫徹
シタコトデアリマシテ、唯〓今後政府ニ於
キマシテハ速ニ調査〓究ヲ遂ゲラレマシ
テ、是等ノ公共團體及產業組合等ノ事業ニ
依ルモノノ外、所謂前ニ申シマスル自己資
金其他自ラ土地ヲ買入レマスル所ノ自作
農家ニ對シマシテモ、矢張登錄稅ヲ免除ス
ルヤウニ、成ベク速ニ是ガ實現スベク努力
セラレンコトヲ希望スル者デアリマス更
ニ今一ツ登錄稅ノ中ニ於テ要望致シタイノ
ハ產業組合ノ事業及住宅組合ノ事業ニ依
リマシテ住宅及住宅用地ノ供給ノ事業ニ
關スルコトデアリマス、此度ノ登錄稅法ノ
改正案ニ於キマシテハ、產業組合及住宅組
合ヨリ、其組合員ガ住宅又ハ住宅用地ノ權
利ヲ取得スル場合ニ於テハ登錄稅ヲ免除
サレルト云フコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、然ルニ產業組合又ハ住宅組合ガ住宅及住
宅用地ヲ組合員ニ供給スル目的ノ爲ニ、一旦組
合ガ權利ヲ取得スル場合ニ於テハ登錄稅
ヲ徴收スルト云フ案デアリマスガ、產業組
合又ハ住宅組合ハ固ヨリ營利ノ團體ト違フ
ノデアリマス、卽チ此住宅供給ト云フモノ
ハ言フ迄モナク、社會政策ノ上ニ於キマ
シテ住宅ノ緩和、是ハ寔ニ必要ナル事業デ
アリマス、此事業ノ益〓發達ヲ圖ラントス
ルナラバ、產業組合及住宅組合ヲ獎勵致シ
マシテ、此事業ノ伸展ヲ圖ラナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、此意味ニ於キマシ
テ今後產業組合又ハ住宅組合ガ、一旦權利
ヲ取得スル場合ニ於テモ、矢張登錄稅免除
ノ手續ヲ取ルベク政府ニ於キマシテハ速
ニ調査〓究ヲ遂ゲラレンコトヲ希望スルノ
デアリマス、更ニ印紙稅法ノ中ニ付キマシ
テ、私ノ希望ヲ申述べテ置キマス、ソレハ
印紙稅法ノ中ニ於キマシテ、產業組合ノ發
シマスル貯金ノ通帳ニ對シテハ印紙稅ヲ
免除スルコトニナッテ居ル、然ルニ貯金ノ
證書ニ對シテハ、收入印紙ノ貼用ヲ命ジテ
居ルノデアリマス、此產業組合ノ貯金通帳
或ハ貯金證書ノ收入印紙貼用免除ト云フ問
題ハ十數年前ヨリ組合界ノ切ナル要求デ
アリマシテ、先年漸ク貯金通帳ニ對シマシ
テハ、一錢ノ收入印紙ヲ貼用スルコトニ改
正サレタノデアリマス、此度ハ貯金ノ通帳
ニ對シテ免除シタ、然ルニ貯金證書ニ對シ
テハ尙ホ未ダ免除スルコトガ出來ナイノデ
アリマス、之ニ對シマシテ政府ノ所見ヲ伺
ヒマスレバ、貯金ノ通帳ハ極メテ零細ナル
資金デアル、貯金證書ハ相當ニ額ガ大キイ
ノデアルカラ、擔稅能力ガアル、斯ウ云フ
意味ノ說明デアリマスガ、是ハ實際ニ甚ダ
踈イ話デアリマス、內容ニ於キマシテハ貯
金ノ通帳ニ記載サレルモノニモ相當額ノ大
キイモノガアル證書ニ記載サレル定期
ノ貯金ニ於キマシテモ極メテ零細ナルモノ
ガアル、其内容ニ於キマジテハ是ハ區別ス
ルコトハ出來ナイノデアル唯〓產業組
合ト云フ團體ノ此貯金ノ通帳及證書ニハ
總テ免除スルト云フ一貫シタ主義ヲ取ッテ
御願シタイト思フノデアリマス、殊ニ營利
會社デアル貯蓄銀行ノ貯金通帳ハ矢張免
除スルコトニナッテ居ル、營利ヲ目的トセ
ザル產業組合ノ貯金證書ニ對シテ免除スル
コトハ當然ノ事ト信ズルノデアル要ス
ルニ時間モ迫ッテ居リマスカラ、私ハ極メ
テ簡單ニ申上ゲマス、唯〓約メテ申セバ
自己資金ニ依ル所ノ自作農家ニ對シテモ、
登錄稅免除ノ方法ヲ取テ貫ヒタイ、產業
組合及住宅組合ガ組合員ニ住宅及住宅用地
ヲ供給スル目的ヲ以テ、一旦取得スル其權
利ニ對シテハ、登錄稅ヲ免除シテ貰ヒタイ、
更ニ產業組合ノ貯金ノ通帳及證書、之ニ對
シマシテハ同ジク免除シテ貰イタイ、尙ホ
關稅ノ問題ニ付キマシテ聊カ所見ヲ述ベタ
イト思ヒマスガ、マダ關稅ノ問題ハ後ニ殘ッ
テ居リマスカラ、適當ナ機會ニ於テ意見ヲ
述ベタイト思フノデ之ヲ以テ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=61
-
062・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 他ニ發言ノ通告ガア
リマセヌ是ニテ討論ハ終局致シマシタ、
採決ニ付テ一言致シテ置キマス、登錄稅法
中改正法律案ノ委員長ノ報告ハ修正デアリ
マス、他ノ五案ハ總テ可決デアリマス、先
ヅ登錄稅法中改正法律案ニ付テ採決ヲ致シ
マッ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=62
-
063・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=63
-
064・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=64
-
065・粕谷義三
○議長(粕谷義三君)」 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス仍テ直ニ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ニ〓シマス
登錄稅法中改正法律案第二讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=65
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066・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ採決ヲ致シマス、本案ノ委員長報
告ノ修正ノ點ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=66
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067・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ委員長報告ノ修正ノ點ハ可決致シ
マシタ、次ニ其他ノ部分ニ付テモ原案通リ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=67
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068・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 異議ナシト認メマ
ス、仍テ他ノ部分ハ原案ノ通リ決シマシタ、
之ニテ第二讀會ヲ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=68
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069・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=69
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070・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=70
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071・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ議案全部ヲ議
題ト致シマス
登錄稅法中改正法律案第三讀會
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=71
-
072・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ-本案ハ第二讀會議決ノ通リ可
決確定致シマシタ次ニ印紙稅法中改正法
律案外四件ノ委員長輩〓ハ何レモ可決デ
アリマス、五案ヲ一括シテ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=72
-
073・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=73
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074・井本常作
○井本常作君 直ニ各案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=74
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075・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ五案ノ第二讀會ヲ
開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
人
印紙稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
砂糖消費稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
關稅定率法中改正法律案
第二讀會(確定議)
商事非訟事件印紙法中改正法律案
第二讀會(確定議)
明治四十年法律第二十一號中改正法律
案(樺太ニ於ケル租稅ニ關スル件)
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=75
-
076・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、五案全部ヲ
委員長報告ノ通リ、可決確定致シマシタ、
次ニ日程第二十四、公益質屋法案ノ第一讀
會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス
橫山勝太郞君
第二十四公益質屋法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一公益質屋法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報生〓也也
昭和二年三月七日
委員長橫山勝太郞
衆議院議長粕谷義三殿
(小字及-ハ委員會修正)
公益質屋法案中左ノ通修正ス
十圓
第四條貸付金額ハ一口ニ付二十圓、
五十圓
世帶ニ付百圓ヲ超ユルコトヲ得ズ但シ
地方長官ノ認可ヲ受ケタル
命令ノ定ムル所ニ衣リ生業資金トシ
テ貸付ヲ爲ス塲合ニ於テハ此ノ限ニ在
ラズ
希望條項
本案ヲ施行スルニ當リ政府ハ公益質
屋ヲ普及擴張シ庶民金融機關ノ整備ニ
資スルコト
二政府ハ速ニ質屋取締法ヲ根本的ニ改
正シ質置主ノ利益ヲ保護シ庶民階級金
融機關ノ機能ヲ完ウセシムルコト
〔橫山勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=76
-
077・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 公益質屋法案ハ政府ノ施
設ノ一端デゴザイマシテ其精神ノアル
所、及法文ノ内容ハ本會議ノ經過及委員
會ノ詳細ナル質問應答ニ依ッテ、極メテ明瞭
デゴザイマスカラ之ヲ省略致シテ置キマ
ス、審議ノ結果、政友本黨ノ大麻君ヨリ修
正ガ提出セラレマシタ、其要旨ハ本案ノ第
四條中「貸付金額ハ一口ニ付二十圓、世
帶ニ付百圓ヲ超ユルコトヲ得ズ」トアリマ
ス點ヲ、「一口ニ付十圓、世帶ニ付五十
圓」斯ウ云フコトニ修正ヲ致シ、同條ノ但
書ニ「但シ命令ノ定ムル所ニ依リ生業資金
トシテ貸付ヲ爲ス場合ニ於テハ此限ニ在ラ
ズ」トアリマス、點ヲ「但シ地方長官ノ認可
ヲ受ケタル場合ニ於テハ此限ニ在ラズ」斯
ウ云フコトデアリマス、次ニ政友會ノ安藤
君ヨリ同ジク修正ガ提出セラレマシタガ
第四條ノ一項ニ關スル修正ハ、大麻君ト全
然同一デアリマス、但書ノ點ニ於テ其趣
旨ヲ異ニ致シテ居リマスガ、其要旨ハ但シ
出產、死亡、疾病等其他特別ノ場合ニ於テ
ハ此限ニ在ラズト云フコトデゴザイマス、
此趣旨ガ問題トナリマシテ、採決ノ結果、
滿場一致ヲ以テ大麻君提議ノ如ク決定致シ
マシタ)此場合一言致シテ置キタイ點ハ
但書ノ「地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ニ
於テハ此限ニ在ラズ」トアル場合ニ、原案
ノ但書ニアリマス所ノ、生業資金ナルモノ
ヲ含ムカドウカト云フ問題デアリマシタ
ガ、是モ當然含ムト云フ提案者ノ趣旨デア
リマス、委員全體モソレヲ諒トシタ次第デ
アリマス、此修正案ヲ可決シ、其他ノ條項
ニ付テハ原案通リ全會一致ヲ以テ可決致
シタ次第デアリマス、次ニ憲政會ノ工藤君
ヨリ希望事項ヲ提出セラレマシタ、ソレヲ
朗讀致シマス、「希望條項、一、本案ヲ施行ス
ルニ當リ政府ハ公益質屋ヲ普及擴張シ、庶
民金融機關ノ整備ニ資スルコト、二、政府
ハ速ニ質屋取締法ヲ根本的ニ改正シ、質置
主ノ利益ヲ保護シ、庶民階級金融機關ノ機
能ヲ完ウセシムルコト」是亦全會一致ヲ以
テ可決シマシタ、次第デアリマス、以上御
報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=77
-
078・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテ何等發
言ノ通告ハアリマセヌ、仍テ直ニ採決ヲ致
シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=78
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079・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第一一讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=79
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080・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=80
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081・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
公益質屋法案第二讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=81
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082・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス-發言ノ通生ロガアリマセヌカラ、
採決ヲ致シマス、本案ノ委員長報告ハ修正
デアリマス、此委員長報告ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=82
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083・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ委員長報告ノ通リ決シマシタ、之
ニテ第二讀會ヲ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=83
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084・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=84
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085・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=85
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086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
公益質屋法案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=86
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087・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御異議ナシト認
メマス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ、
可決確定致シマシタ、次ニ日程第二十五、
及第二十六ハ同一委員ニ付託シタル議案デ
アリマスカラ一括議題トナスニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=87
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088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、卽チ日程第二十五、水戶鐵道株式會
社越後鐵道株式會社、陸奧鐵道株式會
社、苫小牧輕便鐵道株式會社、及日高拓殖
鐵道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ
關スル法律案、日程第二十六、鐵道敷設法
中改正法律案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開
キマス委員長ノ報告ヲ求メマス、理事工
藤十三男君
第二十五水戶鐵道株式會社、越後鐵
道株式會社、陸奧鐵道株式會社、苦
小牧輕便鐵道株式會社及日高拓殖鐵
道株式會社所屬鐵道買收ノ爲公債發
行ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會
社陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所
屬鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月七日
委員長前田米藏
衆議院議長粕谷義三殿
第二十六鐵道敷設法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月七日
委員長前田米藏
衆議院議長粕谷義三殿
警告
鐵道豫定線ノ選定竝建設ノ順序等ニ付政
府當局ノ措置遺憾ノ廉尠ナカラス現行鐵
道敷設法ニ定ムル豫定線ハ何レモ之カ速
成ヲ要望セルニ拘ラス其ノ大部分ハ未タ
建設ニ著手セラレサル實況ニ鑑ミ政府ハ
宜シク敷設法ノ變更ニ付テハ周到ナル調
査ヲ遂ケ建設ニ付テハ前後緩急ヲ衍ラサ
ル樣深ク注意ヲ加フヘシ
右警告ス
〔工藤十三男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=88
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089・工藤十三雄
○工藤十三男君 只今議題トナリマシタ水
戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、陸奧鐵
道株式會社、苫小牧鐵道株式會社、日高拓殖
鐵道株式會社所屬ニ關スル鐵道買收ニ關
シ、公債發行ノ法律案竝ニ鐵道敷設法案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ニ付テ、前田委員長
カラ御報告スベキ筈デアリマスガ前田委
員長ニハ風邪ノ爲メ咽喉ヲ害セラレ、ソレ
デ私カラ此經過ヲ簡單ニ御報告申上ゲマ
ス此委員會ハ回數ヲ重ヌルコト七回、其
間各委員諸君ニ於テハ非常ニ恪勤精勵、愼
重審查ヲ遂ゲラレタノデアリマス、先ヅ順
序ト致シマシテ鐵道買收法案ヨリ質問ヲ開
始致シマシテ、最初ニ井上鐵道大臣カラ、
此買收法案提出ノ理由ニ付テ、御說明ガ
アッタノデアリマス、其大要ヲ申上ゲマス
レバ、水戶鐵道ト陸奧鐵道ハ現在國有鐵道
ノ間ニ介在シ、尙ホ現ニ列車竝ニ貨車ヲ直
通運轉シテ居ル狀態デアルカラ、一日モ早
ク之ヲ買收セナケレバナラヌ必要ガアル
ソレカラ苫小牧鐵道、日高鐵道ノ兩鐵道
ハ大正二年度ニ於テ政府ハ豫算ヲ要求シ
テ居ル所ノ苦小牧、浦川間ノ鐵道線路ニ該
當シテ居ルモノデアルーカラ、之ヲ買收シ
改築利用スルコトハ、最モ利益デアルト云
フ見地カラ是ガ買收ヲ爲スノデアル、又更
ニ越後鐵道ニ於キマシテハ羽越鐵道ノ完
成ニ依ッテ裏日本ノ交迪狀態ニ非常ナ變化
ヲ及ボシ、近ク又完成スベキ上越線ノ開
通ニ依ッテ、裏日本ノ東北、關東、關西方
面ニ於ケル交通狀態ノ變化ヲ來スノデアル
カラ、此實狀ニ應ジテ之ヲ買收シテ以テ、
裏日本ノ幹線トシタイト云フ希望カラ、此
案ヲ提出致シタノデアルト、斯ノ如キ說明
デアリマシタ、之ニ對シテ質問ノ大體ヲ申
上ゲマスレバ、第一ニ各鐵道ノ買收ノ價格
竝ニ交付公債ニ關スル件デアリマシテ、而
シテ政府ノ之ニ對スル答辯ニ依リマスト
鐵道買收價格ハ最近ノ價格ノ會社ノ決算ヲ
標準ト致シマシテ、過去三年ニ於ケル會社
ノ收益ノ割合ヨリ打算シマスレバ其價格
ハ水戶鐵道ニ於テ三百二十二万餘圓、陸奥
鐵道ニ於キマシテハ三百十三万餘圓、越後
鐵道ニ於キマシテハ一千二百四十万圓餘、
苫小牧鐵道ニ於キマシテハ百三十六万圓
餘日高鐵道ニ於キマシテハ六十九万圓
餘此外ニ尙ホ越後鐵道ニ於キマシテハ
本年ノ七月ニ竣工スベキ區間ニ對スル建設
費ノ實費ガアルノデアリマシテ、其額ハ約
三十三万圓ニ達シテ居ル、又日高鐵道工事
中ノ部分ニ對スル建設費ハ前ニ述べマシタ
以外ニ、十五万圓餘アル爲ニ、總計二千百
三十五万圓ニ達スルト云フ答辯デアリマシ
タ、而シテ交付公債ニ付テハ五十五箇年
滿期ノ五分利附公債ヲ以テ之ニ充テルノデ
アルト云フ御答デアリマシタ、ソレカラ其
次ニ、質問ト致シマシテハ水戶鐵道、陸奧鐵
道、苫小牧鐵道、日高鐵道ニ對シテハ其
線路ニ對シテハ別段大シタ議論モナカッタ
ノデアリマスカラ、之ヲ省略致シマス、越
後鐵道ニ對シテハ、其質問ハ非常ニ多岐ニ
渉リマシテ、第一ニ井上鐵道大臣ガ本會議
ニ於テ說明シタ所ニ依リマスト、越後鐵道
買收後ニハ之ヲ裏日本ノ幹線トスルト云
フ御說明デアッタガ、此鐵道買收後ニ於テ
ハヽ從來ノ裏日本幹線タル新津ヨリ長岡ヲ
經柏崎ニ至ル其線ヲ幹線トスルコトヲ
廢シテ、此越後鐵道ノ通過スルモノヲ以テ
幹線トスル意思デアルカ、其邊ヲハッキリ
御答辯ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ質問デアリマ
シタ、之ニ對スル委員會ニ於ケル政府ノ御
說明ハ多少瞹眛ノ嫌ガアッタヤウニ思ハ
レマス、サウシテ其御答辯ニ依リマスト
是ハ兩方共直通ノ列車ガ通ルコトト思ハレ
ルガ、此點ニ付テハ將來ノ事ニ屬スルコト
デアルカラ、只今ノ所確ト決定シテハ居ラ
ヌ、斯ウ云フ御答デアリマシタ、其御答カ
ラ見マスルト必シモ越後線ヲ幹線トスル
ト云フ意思デモナイヤウデアリ、又越後線
ヲ幹線トセズ、從來ノ儘ノ新津長岡ヲ經由
シマシテ、柏崎ニ至ルモノヲ幹線ト云フ、
サウ云フハッギリトシタ御意思モナイヤウ
ニ、頗ル瞬眛ニ聽カレタノデアリマス、第
二ノ質問トシテハ此別ニ提出シテアル所
ノ數設法ノ改正法律案ニアル、白山、新發
田間ノ新線路ガ若シ不幸ニシテ議會ノ承認
ヲ得ナカッタ場合、其場合ニハ政府ハ越後
鐵道ト連絡スル爲ニ、新潟ト白山トヲ連絡
スル新ナル計畫ヲ立ツル意思ガアルヤ否
ヤ、斯ウ云フ質問デアリマシタ、之ニ對シ
テ政府ハサウデアルト云フ御答デアリマ
ス、ソレカラ第三ノ質問ト致シマシテハ
從來地方鐵道ノ買收ハ例ヘバ橫濱鐵道、
成田鐵道、足尾鐵道ノ如キ、是等ノモノハ
必要已ムヲ得ナイモノニ限ッテ、買收スルト
云フ方針デアッタヤウニ思ハレル、而シテ
國有鐵道法實施以來今日マデ二十箇年ニ達
シテ居ルガ、其間ニ買收シタ地方鐵道線ト
云フモノハ僅カ十數線ニ過ギナイ其金
額モ二千數百万圓ニ過ギナイヤウニ記憶シ
テ居ルガ、政府ハ此度一時ニ五線ノ鐵道ヲ
買牧シ、而シテ之ニ對シテ二千數百万圓ノ
公債ヲ發行スルト云フコトハ、政府ノ執ッテ
居ル所ノ緊縮方針カラ見テモ、或ハ又現在
ノ經濟狀態カラ見テモ、甚ダ喜バシキモノ
デナイデハナイカ、然ルニ之ヲ提出シタ理
由ハ如何ト云フ質問デアリマシタ之ニ對
スル政府ノ答辯ハ地方鐵道買收ノ線路ハ
十五線デアッテ、其金額ハ二千六百三十万圓
デアル、又今囘此五線ヲ買收シタ理由ハ
先ニ申上ゲマシタ所ノ鐵道大臣ノ御說明ト
同樣ナル御各辯ヲ爲サレタノデアリマス、
ソレカラ第四ノ質問ト致シマシテハ、越後
鐵道買收後ニ於ケル改良費ノ問題デアリマ
ス、サウシテ之ヲ買收シタ後ニ、直通列車
ヲ運轉スル爲ニドレダケノ改良費ヲ要スル
カ、斯ウ云フ問題デアリマシタガ、之ニ對
スル政府ノ御答辯ハ、停車場ノ擴張費ニ二
十万圓餘、橋梁ノ改良費ニ約六十八万圓餘
ト云フ御答デアリマシタ、又第五ノ質問ト
致シマシテハ、越後鐵道株式會社ノ査金竝
ニ買收ニ依シテ、此會社ガ利益スル額、次ニ
買收後收入ノ減收ガアルコトハ必定デアル
ガ、公債トノ利廻關係如何ト云フ問題デア
リマシタ、ソレニ對スル政府ノ答辯ハ越
後鐵道ノ資本金ハ四百五十万圓デアッテ
全額拂込ニナッテ居ル、其以外ニ借入金四百
二十万圓ヲ持ッテ居ルカラ、合計八百七十
万圓、面シテ若シ之ヲ假ニ千二百万圓ニ買
收スルトスレバ會社ノ利益ハ三百三十万
圓トナル計算デアルト御答ニナッタノデア
リマス、ソレカラ買收後ニ於ケル鐵道ノ減
收ハ約五十一万圓ノ減收ノ見込デアル、併
ナガラ買收後ハ重役ノ賞與金其他營業費ノ
節減等ガアルカラ、多少其邊ニ於テ補充ガ
出來ル爲ニ、假ニ買收價額ヲ千二百万圓ト
假定シ、之ニ百万圓ノ改良費ヲ投ジタ
モノトシタ場合ニハ國營直後ニ於テ
モ、其利廻ハ二歩二厘三毛ト云フ計算
ニナル斯ノ如クデアルカラ、勿論差當
リ公債ノ利息ヲ支辨スルコトハ出來ナイ
ケレドモ、二三年ノ後ニアッテハ他ノ
例ニ照シテ見テモ、漸次其收益ヲ層シテ
公債ノ利息ヲ支辨シテ餘リアルヤウナ狀態
ニナルコトハ必然デアルカラ決シテ將來
ノ御心配ハナイト云フ御答デアリマシタ
以上ハ質問應答ノ大要デアリマス、次ニ鐵
道敷設法中改正法律案ノ質問應答ニ付テ、
極ク簡單ニ申上ゲマス、質問ノ主ナルモノ
ハ主トシテ白山新發田線ニ集中サレタノ
デアリマス、サウシテ先ヅ第一ノ質問トシ
テハ、鐵道買收方法ヲ議スル質問ノ際ニ、
政府ノ答辯スル所ニ依レバ、新發田白山間
ノ敷設法ガ議會ニ於テ認メラレナイ場合ニ
ハ政府ハ新ニ白山新潟ヲ連絡スル新線ヲ
提案シテ、以テ越後鐵道ト連絡ノ意思デア
ルト云フコトデアルガ、此白山新發田間ニ
ハ、信濃川、阿賀川ト云フ二大河川ガアッテ、
其工事モ中ニ難工事デアル、ソレ故ニ寧ロ
此際信濃川ノ架橋ヲシテ白山新潟ヲ結付ケ、
ソレヨリ新津ヲ經テ國有線ト連絡スルコト
ヲ計畫スル方ガ、却テ五十万圓内外ノ工費
デ間ニ合フト云フコトデアルカラ、此線
ヲ選ンダ方ガ宜イデハナイカト云フ意味ノ
質問デアリマシタ、之ニ對スル政府ノ御答
辯ハ、新發田白山間ノ工費ハ、御說ノ如ク
澤山ノ費用ヲ要スルノデアルカラ、先ヅ此
線ハ認メラレテモ、第一番ニ著手スルモノ
ハ白山新潟間ノ連絡デアルカラ、事實上
只今委員ノ質問サレタヤウナ方法ニ依ッテ、
暫ク幹線ト連絡スル順序ニナルデアラウ
併ナガラ此白山新發田ヲ選ブコトハ鐵道
經略上カラ見テ通當デアルト考ヘタ爲ニ
此敷設法改正案ヲ出シタノデアル、斯ウ云
フ答デアリマシタ、ソレカラ次ノ質問ハ
國費多端デアッテ不十分ナル場合ニハ、此鐵
道ノ如キ文化的施設モ、成ベク效果ノ大
ナルモノ、必要ノ迫"テ居ルモノカラ著手
スル、卽チ前後緩急ヲ圖シテ著手スベキモ
ノデアルト思フノデアルガ、政府ハ-地
方ノ人ミガ議會ニ對スル請願若クハ建議案
ニ依シテ、多數ノ線路ヲ要望シテ居ルノデア
ル、然ルニ特ニ此六線ダケヲ選擇シテ、サ
ウシテ玆ニ豫定線ニ加ヘタト云フ二廿一
ハ十分ナル理由ガアルダラウガ、其理由
ハ如何デアルカ、斯ウ云フ御尋デアリマシ
タソレニ對スル政府ノ答辯ハ曩ニ鐵道
豫定線百四十九線ヲ選擇シタノハ、大正五年
迄ノ調査ニ基イタモノデアッテ、ソレ以後
モマダ調査ヲ繼續致シテ居ルガ、其中カラ
調査ノ出來上ッタモノヽ中必要ト認メタモ
ノヲ、今日選ンデ上程ヲシタノデアルト斯
ウ云フ御答デアリマシタ、尙ホ又此外ニ將
來調査ノ結果、只今提案シタル六線ト同等
以上ノ線路モ澤山アルト思フカラ、ソレハ
調査ノ完了次第、鐵道網ノ完璧ヲ期スル上
ニ於テ、追加提案スル方針デアルト云フ御
答デアリマシタ、最後ニ政友本黨ノ大園君
カラ政府ノ御答辯ニ依ルト、全國ニ涉ル
鐵道ノ調査ハ、四五年後ニ終了スルト云フ
御話デアルカラ、寧口今俄ニ此六線ヲ決定
スルヨリモ、四五年後ニ於テ、全部ノ調査
ガ完了シ、比較對照ガ出來ル時ニナッテ、敷
設法ノ改正ヲ行ッタ方ガ宜イデハナイカ、斯
ウ云フ大園君ノ御質問デアリマシタ、之ニ
對スル政府ノ御答辯ハ是モ多少明瞭ヲ缺
イタヤウデアリマス、其要旨ニ曰ク、敷設
法ノ改正、新線ノ追加ハ必シモ全部ノ調査
ヲ俟シテカラスル必要ハナイ、調査ガ完了シ
次第、必要デアルト認メタモノハ之ヲ隨
時追加シテ差支ナイト云フ考デアル、尙ホ
將來ト雖モ此意味ニ於テ、此經路ヲ取ッテ、
鐵道綱ノ完成ヲ期スルコトハ適當デアルト
思フト云フ御答デアリマシタ、是ハ敷設法
中改正法律案ノ質問ノ要旨デアリマス、サ
ウシテ斯ノ如クニシテ、質問應答ハ終了シ
マシテ、順序トシテ先ヅ鐵道買收法案ノ討議
ニ入リマシタ、此討論ニ付テハ後程吾々ノ
同志カラ詳シク申上ゲルダラウト思フカ
ラ、極ク簡單ニ、其委員會ニ於ケル狀況ヲ
申上ゲマス、第一ニ若宮貞夫君カラ、此買
收法案ヲ修正シテ、越後鐵道ダケヲ削除ス
ルト云フ提議ヲ出シマシタ、其理由トシテ
ハ、元來本案全部ニ對シテ、世間デハ隨分
何レモ不急デアルト云フ議論ガアルノ
デアルガ、陸奧鐵道、水戶鐵道、若クハ日
高鐵道、苫小牧鐵道ハ何レモ現ニ直通列車
ヲ運轉シテ居ルトカ、又ハ政府ノ新線ト同
ジ所ノ線路デアルカラ、是ハ已ムヲ得ナイ
トシテ認メルガ、越後鐵道ハ是ガ買收ニハ
約千二百万圓以上ヲ要スルノデアルカラ、
昭和二年度ニ於テ政府ハ各種ノ名義ニ於テ
約五億ノ公債ヲ發行スルノデアル是ハ國
民トシテハ十分斯ル多額ノ公債ヲ發行スルコ
トニ付テハ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌ、
其意味ニ於テ遺憾ナガラ原案ヲ修正シテ、
不急デアル所ノ越後鐵道ダケヲ削除スルト
云フ、斯ウ云フ議論デアリマシタ、之ニ對
シデ憲政會ノ工藤鐵男君カラ原案維持ノ御
說モアリマシタ、又次デ採決ヲシタ所、修
正案ハ小數ヲ以テ否決ニナリ、原案ハ政友
會委員カラハ修正說ヲ保留致シマシテ、之
ニ贊シタノデアリマス、次デ敷設法中改正
法律案ノ討論ニ入リマシテ、憲政會ノ工藤
鐵男君ハ無條件デ原案ヲ賛成スルト云フ
贊成說ヲ出サレ政友會ノ若宮貞夫君カラ
ハ「鐵道豫定線ノ選定竝建設ノ順序等ニ付
政府當局ノ措置遺憾ノ康尠ナカラス現行敷
設法ニ定ムル豫定線ハ何レモ之ガ速成ヲ要
望セルニ拘ラス其ノ大部分ハ未タ建設ニ著
手セノレサル實況ニ鑑ミ政府ハ宜シク敷設
法ノ變史ニ付テハ周到ナル調査ヲ遂ケ建設
ニ付テハ前後緩急ヲ衍ラサル樣深ク注意ヲ
加フヘシ、右警告ス」ト云フ警告文附デ之
ヲ可決シタイト云フ說デアリマシタ、之二
對シテ憲政會ノ岡本質太郞君カラ、無條件
贊成論ガアリマシタガ、採決ノ結果、政友
本黨諸君ノ賛成ヲ得マシテ、警告附可決ト
云フコトハ多數ヲ以テ可決致シマシタ、其
警告ヲ附スル理由ニ付キマシテハ、後デ吾
吾同志カラ十分御說明アルコトヽ思ヒマス
カラ、是デ報告ヲ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=89
-
090・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 鐵道敷設法中改正法
律案ニ對シテ、贊成演說ノ通告ガアリマス、
此際之ヲ許シマス志和多利君
〔志賀和多利君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=90
-
091・志賀和多利
○志賀和多利君 極メテ簡單ニ鐵道敷設法
中改正法律案賛成ノ趣意ヲ述べマス、由來
鐵道ノ建設ニ付キマシテハ屢、黨略線ト云
ア聲ヲ聞クノデアリマス、鐵道ヲ一度地方
ニ通ジマスレバ、其地方ハ是ガ爲ニ文化普
及シ、産業發達シ、由テ以テ其地方ノ福利
ヲ增進スルガ爲ニ、各地方共ニ之ニ賴ラン
トスル念慮ガ、卽チ所謂黨略線デアルト云
フ言葉ヲ發スルニ至リタル原因デアルト信
ズルノデアリマス、斯樣ナ立場ニ於キマシ
テ、今日此鐵道敷設法ヲ改正致シマス場合
ニ於テハ、果セル哉現ニ提案ニナッテ居リ
マス所ノ、此問題モ黨略線デアルト云フ聲
ヲ沸々トシテ間イテ參タノデアリマス、此
故ニ委員會ニ於キマシテモ、何ガ爲ニ現在鐵
道網ノ中ニアル所ノ百四十何線ト云フモノ
ガ各地方共悉ク地方產業發達ノ爲ニ速ニ
敷設シテ貫ヒタイト云フコトヲ希望シテ居
ルニ拘ラズ、ソレヲ先ヅ著手ガ出來ナイ線
ガ大多數ナルニモ拘ラズ、玆ニ數設法ヲ改
正シテ之ヲ入レルト云フ理由ハ-新線路ヲ
敷設法中ニ入レルト云フ理由ハドウ云フ
譯デアルカト云フコトハ非常ナ問題ニナツ
タノデアリマス、政府當局ノ答ヘマスル所
ハ一トシテ要領ヲ得ナイ、唯〓調査ガ出
來テ是ガ必要ダト思フカラ人レテ置クノデ
アルト云フノデアリマス、斯樣ナル答辯ニ
依リマシテハ如何ニモ此線路ト云フモノ
ヲ黨略線ト世人ガ唱ヘルノモ無理デハナイ
ト云フ考ヲ抱カザルヲ得ナイノデアリマス、
諸君、併ナガラ今回ノ提案ニ付キマシテ、
唯、一ツ黨略ニアラズト私ノ斷言スル所ノ
線路ガアルノデアリマス、ソレハ卽チ敷設
法中ノ改正法律案ノ初ニゴザイマスル巖手
縣花卷ヨリ遠野ヲ經テ釜石ニ至ル鐵道ト云
フノガアルノデアリマス、此線路ハ鐵道當
局モ說明シ能ハザル程ノ事柄ニ依。シテ鐵道
網ノ中ニ漏レテ居ッタノデアリマス、第四
十九議會ニ於キマシテ私及他ノ二人ノ諸君
ガ提案者ト相成リマシテ之ヲ建議案トシ
テ當議場ニ提案ヲ致シ、滿場諸君ノ御賛成
ヲ得テ通過ヲ致シマシタ案ナノデアリマ
ス、是ガ若シ憲政會ガ黨略上ニ於テ此線路
ヲ使フト云フコトデアルナラバ偶〓私ヲ
シテ先見ノ明ヲ爲サシメルコトニ相成ル
ノデアリマスカラ、是ハ黨略ニハ相成ラヌ
ノデアリマス、幸ニ此案ガ玆ニ提案セラル
ルニ至ッタト云フ所以ノモノハ、畢竟スルニ
當時私ガ說明致シマシタ通リ今交通機關
ノ關係ニ於テ、日本海ト太平洋沿岸トヲ通
ジマシテ最大捷徑ノ路線ト致シマシテ、現
內閣モ之ヲ御認ニナッテ、黨略問題以上ニ
超越シタル神聖ナル御考ヲ以テ提案セラレ
タルコトト考ヘルノデアリマス、果シテ左
樣デアルト致シマスレバ、他ノ此敷設法ノ
中ノ案、例ヘテ申シマスナラバ、愛知縣岡
崎ヨリ擧母ヲ經テ岐阜縣多治見ニ至ル、世
ニ稱シテ所謂古屋慶隆案卜稱スルモノヽ如
キ、或ハ又新潟縣白山ヨリ新發田ニ至ル鐵
道ノ如キ、卽チ越後鐵道ヲ買收スルト云フ
爲ニ殊更ニ作ッタ如ク見エル案ノ如キ、斯
樣ノ案ト云フモノハ實ハ黨略案トシテモ
排斥セラルベキ値打ガナイモノデハナイカ
ト思フ程ノ事柄ナノデアリマス、唯〓併シ
竝ニ私ノ前ニ提唱致シマシタル巖手縣花卷
ヨリ釜石ニ達スル鐵道ト云フ神聖ナル線路
ガアルガ故ニ、纔ニ其命脈ヲ存スルコトガ出
來ルト云フコトニ相成ルノデアリマス、諸
君、私共ハ實際ヨリ申シマスナラバ卽チ
現在當局者ガ此鐵道ニ對シテヤッテ居リマ
スル事柄ニ付テ遺憾ノ點ガアルノデアリマ
スソレハ今言ウタ所ガ詰リマセヌカラ之
ヲ申シマセヌガ、兎ニ角將來ニ於キマシテ
モ、此鐵道ノ建設、鐵道網ノ變更等ニ付キ
マシテ、現在ノ遣方ノヤウナコトヲヤリマ
スト、結局鐵道當局ト云フモノハ國民ノ
間ニ信任ヲ失フ結果ニ陷ルデアラウト憂フ
ルノデアリマス此故ニ先程委員長代理ヨ
リ報告セラレマシタル通リ、將來ノ鐵道建
設將來ノ鐵道網變更ニ付テハ十分愼重ナ
ル審議ヲ盡シテ、今日ノ如ク所謂黨略線ト
目スルヤウナモノヲ餘リ拵ヘナサラヌヤウ
ニナサレンケレバイケナイト云フ警告ヲ附
シテ、此鐵道敷設法中改正法律案ニ贊成ス
ル次第ナノデアリマス、是ダケ申シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=91
-
092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 之ニテ討論ハ終局致
シマシタ先ヅ水戶鐵道株式會社外四件ノ
買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案、此案ニ
付テ採決致シマス、該案ノ二讀會ヲ開クニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=92
-
093・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=93
-
094・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=94
-
095・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=95
-
096・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ直ニ第一一讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス、本案ニ對シテハ志賀和多
利君外一名ヨリ修正案ガ提出サレテ居リマ
ス此際其趣旨辯明ヲ許シマス、志賀和多
利君
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵道株式
會社、及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道
買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
第二讀會
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
理著席〕
〔志賀和多利君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=96
-
097・志賀和多利
○志賀和多利君 諸君、再ビ此壇ヲ汚シマ
ス只今提出致シマシタル修正案ハ卽チ
本法ヨリ「越後鐵道株式會社」ト云フ八字ヲ
除キマシテ、越後鐵道會社ノ線路ヲ買收シ
ナイト云フコトニ致シタイト云フ修正案ナ
ノデアリマス、鐵道國有法實施以來、政府
ガ地方鐵道ヲ買收致シマシタ數ガ十五アル
ノデアリマス、是ハ政府當局ノ明言スル所
ニ依ッテ極メテ明白デアル、其金額ハ二千
六百餘万圓、二十年間此方鐵道ニ於テ必要
ナリトシテ買受ケマシタル鐵道ハ十五二
千六百万圓ノ範圍内デアシタ、然ルニ財政緊
縮ヲ標榜スル此現內閣ハ昭和二年度ニ於
キマシテ遽然トシテ鐵道ヲ買收スル案ヲ提
出致シマシテ、只今討論ニナッテ居リマス
ル水戶鐵道、陸奧鐵道、苫小牧鐵道、日高
鐵道及越後鐵道ノ五ツノ線ヲ買牧シテ其總
額二千六百万圓、既往二十年間ニ涉ル鐵道
買收ト略、同額ナル金額ヲ支辨セントスル
ノデアリマス、此大體ノ見地ヨリ見マシ
テ、何ガ故ニ憲政會内閣ハ其財政々策ノ緊
縮ヲ標榜シ、非募債ヲ標榜シナガラ、縱シ
ヤ交付公債トハ言ヒナガラ一時ニ二千六百
餘万圓ノ金額ヲ此鐵道ノ爲ニ出スコトニ
ナッタノデアルカソレ程必要ノ鐵道買收
デアルカト云フコトヲ吟味致シテ見マスル
ト云フト、水戶鐵道、陸奧鐵道、其他ノ鐵
道ノ如キハ暫ク措キマシテ此越後鐵道ニ
於テハ毫末モ急要ナル理由ヲ發見スルコト
ガ出來ナイノデアリマス、鐵道當局ガ必要
ナル理由トシテ曰ク、裏日本ノ產業ノ開發
ハ裏日本幹線ヲ必要トスル御尤デアリマ
ス、吾々之ニ反對ヲ致シマセヌ、併ナガラ
此越後鐵道ヲ買收スルト云フニ至リマシテ
ハ越後鐵道ノ新潟方面ニ於ケル終點ノ白
山ヨリシテ、今日ノ信越本線ノ新潟驛ニ達
スル間ニ於ケル信濃川ノ架橋ガ完成致シマ
セヌケレバ幹線タル目的ヲ達シナイト云
フコトハ政府當局既ニ之ヲ言明シテ居リ
さく、現在ニ於テ此架橋工事ガマダ計畫サ
ヘサレテ居ラナイノデアリマス、架橋未ダ
計畫セラレズシテ、面シテ此ヤクザ鐵道デ
アルト稱セラレル所ノ此越後鐵道ヲ買收致
シマシテ、白山マデ汽車ヲ-官設ノ汽車
ヲ運ビマシタ所ガ、何ニ依ッテ裏日本幹線
鐵道タル用ヲ爲スコトガ出來ルノデアリマ
セウカ(拍手)此橋ガ出來夕上デ、橋ガ出來
テシマッタ今日ハ交通機關ノ關係上、裏日本
ノ鐵道ヲ幹線ニスル必要ガアリト云フナラ
バ吾々ハ諒トスルノデアル、マダ橋モ架
ケナイ、マダ橋ヲ架ケル設計モ致サヌ、殊
ニ此鐵道敷設法ニ於テハ、白山ヨリ新潟ニ
達シ、及ビ新發田ニ達スル線ト云フモノハ
今日初メテ議案トシテ議會ニ現ハレタダケ
デ、其計畫ノ前提デアル所ノ鐵道敷設法サ
へ完成サレテ居ラザル今日ニ於テ、先ヅ北
越鐵道全部ヲ買收シテ國有ニシナケレバナ
ラナイト云フ理由ハ、急グベキ理由ハ毫モ
是レナキノミナラズ、却テ此事實、卽チ不
急ナルコトヲ證明シテ居ルモノデアルト
斷言シテ憚ラヌノデアリマス(拍手)然ラバ
此不急ノ鐵道ノ爲ニ、ドレ程〓金ヲ出スノ
デアルカ、此鐵道買收ノ爲ニ、二千六百餘
万圓ヲ要スル、其中一千二百万圓ト一云フモ
ノハ此越後鐵道ニ支拂フト云フノデア
ル何ノ爲ニ支拂フノデアルカ、憲政會ノ
委員諸君ノ中ニハ質問ヲナサレマシテ、
政府當局ヨリ御答ヲ得テ滿足サレテー居ッタ
ヤウデアリマスガ、是ハ今買ヲテ置ケバ、大
變安グ買ヘル、今ハ不景氣デ、實ハ鐵道ノ
收入ガ足リナイ時代デアルカラ、此地方鐵
道ノ買收規程ニ依ッテ買ハテテククハハ變安
イ安イカラ今買シテ置ク方ガ宜イ、大分
日本ノ政府ガ鐵道ヲ買シテ何カ儲ケヤウト
云フヤウナ御考デアルヤウナ趣旨ニ御取リ
ニナッタ方モアルヤウデアルシ、政府モ左様
ナロ吻ヲ漏サレテ居ル、日本政府ノ鐵道
ハ商賣品トシテ買受ケル品物デハナイノ
デアル、而モ況ヤ幾ラカ安クナルデアラウ
カドウカト云フコトヲ實際ニ考ヘマスルト
云フト、鐵道ガ買收サレルト云フ場合ニ當ルト
別ニ特別ニ配當ハ高ク致シマスマイケレド
モ又配當ヲ安クシテモ居ラヌノデアル
配當ガ下リマセヌ以上ハ地方鐵道買收法
ノ規定ニ依シテ、當然或ル一定ノ値段ニ於
テ買收セラルベキモノデアッテ、本年之ヲ
買收スルト、明年之ヲ買收スルト、何等ノ
差違ハナイノデアリマス、其差違ナキノミ
ナラズ、千二百餘万圓ノ交付公債ノ利子
ハ本年之ヲ拂ハズシテ濟ム、ソレダケ高
ク買フ積リデアッタナラ實ハ明年、明
後年、卽チ前ニ申上ゲマシタ通リ白山、
新潟間ノ架橋工事ノ完成シテ後ニ買ヒマ
シテモ、未ダ遲シトセザル鐵道ナノデアリ
マス(拍手)諸君、昨日憲政會ヲ代表致サレ
マシテ、工藤鐵男君ハ吾々ニ非常ニ安心
ヲスルベキ、吾々ヲ非常ニ喜バスベキ消息
ヲ傳ヘラレタ、工藤君ハ憲政會ヲ代表シ
テ、本案委員會ニ於テ斷言シテ曰ク、鐵道
ト云フモノハ積極政策デ行クベキモノデア
ル、鐵道ハ原內閣以來借金ヲシテモ架ケナ
ケレバナラヌト言ッテ居ッタデハナイカ、吾
吾モ鐵道ト云フモノハ積極政策デ行カナケ
レバナラヌモノデアルト思フ、果シテ積極
的政策デ行クコトガ原內閣以來、政友會ノ
傳統的政策デアル、而シテ又鐵道省ノ傳統
的政策デアル、此政策ヲ吾々ハ宜イト信ジテ
之ヲ支持スルノデアルガテ、諸君ハ原內閣
ヨリ引續イテアル政友會デアル、何故反對
スルカト云フヤウナ口吻ヲ以テ、盛ニ積極
政策ヲ讃美サレタノデアリマス、私ハ之ヲ
聞イテ非常ニ喜ンダノデアル、併ナガラ諸
君、政友會ノ積極政策ト云フノハ、不要ナ
モノヲ早ク買ッテ、金ヲ使フト云フコトバ
積極政策デハナイ、政友會ノ積極政策ハ
必要ナルモノハ借金ヲシテモ早ク買ッタ方
ガ宜シイト云フ積極政策ナノデアリマス、
不要ナモノヲ高イ金ヲ出シテ買シテ、ソレデ
積極政策デアルト考ヘラルヽニ至ッテハ
積極政策ノ履キ違ヒデアリマスカラ、此點
ハ宜シグ御〓究アッテ然ルベキモノト思フ
(拍手)尤モ今夜ハ政友本黨ノ諸君ト、帝國
「ホテル」デ御會合ガアルサウデアリマス
政友本黨ノ諸君ハ原內閣以來積極政策ノ支
持者デアルコトヲ確信致シマス、工藤君竝
ニ憲政會ノ幹部諸君ハ宜シク政友本黨ノ
幹部諸君カラ、積極政策ノ眞髓ヲ御聽キ下
サッテ、斯樣ナ事ヲオヤリニナラヌヤウニ
ナサル方ガ宜シイコトヽ考ヘルノデアリマ
ス(拍手)諸君、斯ノ如ク不急ナル鐵道ヲ、
何ガ故ニ千二百万圓ノ大金ヲ出シテ買收ス
ルノデアルカ、何人モ之ヲ疑フ所デアリマ
セウ、坊間傳ヘテ曰ク、北越鐵道會社ノ社
長久須美氏ハ憲政會員デアル「ガスケー
ド」トカ稱スルモノニ資本ヲ出シテ、非常
ナル窮況ニ在ル、憲政會員ヲ助ケルノハ憲
政會ノ義務デアルト稱シテ、此人ヲ助ケル
爲ニ斯樣ナ鐵道ヲ買收スルコトニ決定シ
タ、坊間又傳ヘテ曰ク、北越鐵道會社ノ株主
ハ憲政會員ガ大多數デアル今月買牧シナ
ケレバ、明日ハ憲政會内閣ハ倒レテシマ
ス、其時ニハ北越鐵道ハ浮ブ瀨ガナイノデ
アルカラ、今日ニ於テ買收シナケレバナラ
ヌ(拍手)坊問又傳ヘテ曰ク、昨年ノ新潟市
割烹店ニ於テ酒池肉林美妓ヲ擁シテ非常
ナル樂ミヲ爲シテ居ッタモノガアル何人
デアルカト尋ネテ見タ所ガ、鐵道政務次官
佐竹三吾君ノ御視察ノ途中デアル、是レ北
越鐵道會社ノ大ナル御馳走デアルト云フコ
トヲ傳ヘタ者モアル(拍手)諸君、私ハ斯樣
ナル風說ハ悉ク虛僞デアルト云フコトヲ信
ズルノデアリマス、僞デアルト云フコトヲ
信ズルノデアリマス、併ナガラ斯ノ如キ虛
僞ナル風說ヲ流布セラレルト云フコトハ
何ニ依シテ然ルカト申シマスレバ卽チ斯樣
ナル不急ナル鐵道ヲ大金ヲ出シテ買フト云
フ點ニ國民ノ疑惑ヲ受ケルカラシテ、斯樣
ナル風說ガ出ルノデアリマス、吾々ハ鐵道
買收等ニ付テ斯樣ナル風說ノ起ルコトヲ望
ミマセス斯樣ナル風說ヲ聞クコトヲ甚ダ
厭フノデアリマス、併ナガラ此現内閣ノ遣
方ハ此風說ノ起ラザラント欲スルモ能ハ
ザルニ至ッテ、洵ニ氣ノ毒千萬ト謂ハザル
ヲ得ナイノデアリマス(拍手)私ハ是等ノ趣
意ヲ以チマシテ、憲政會諸君ノ爲ニモ、此
越後鐵道株式會社ノ八字ヲ除ク方ガ、御爲
デアラウト考ヘマスルガ故ニ、私ハ玆ニ修
正案ヲ提出シタノデアリマス、若シ諸君
憲政會ニ於ケル硬骨男子中野寅吉君ハ如何
トサッタノデアリマセウカ、現ニ提案理由說
明ノ際ニハ大分大言ヲ發セラレタヤウデ
アリマスガ、今御見エニナラヌ所ヲ見ル
수、矢張憲政會魂デ何處カへ行テテ御御席
ガナクナリマシタノデアリマセウガ、私ハ
憲政會ノ志アル人ナラバ必ズ吾々ノ修正
案ニ御賛成ニ相成ルモノデアラウト確信ヲ
致シマシテ、此壇ヲ降ルコトニ致シマス、
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=97
-
098・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 修正案ニ反對ノ
通告ガアリマス、工藤鐵男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=98
-
099・工藤鐵男
○工藤鐵男君 最早本議場ノ大勢モ定クテ
居リマスカラ、此席ヨリ簡單ニ私ノ意見ヲ
申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=99
-
100・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=100
-
101・工藤鐵男
○工藤鐵男君 越後鐵道ノ買收ハ四十四
議會以來、屢〓本院ノ問題ニナリマシタ、
サウシテ只今御反對ニナッタ政友會ノ有力
者ニ依シテ、屢。本院ノ意思ヲ表示サレテ
居ルノデアリマス、志賀和多利君ハ(此
時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=101
-
102・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=102
-
103・工藤鐵男
○工藤鐵男君(續) 志賀和多利君ノ演說中
ニハ私ノ氏名モ引用致サレマシタカラ、
私ハ此處ニ極メテ簡單ニ修正案ニ反對ノ意
思ヲ表示シマス···(發言スル者多シ)第一
ニハ地方民ノ希望デアルト云フコト、第二
ニハ本案ノ意思ハ卽チ政友會内閣ニ於テ
屢、主張シタル買收案デアルト云フ點、第
三ニハ北日本開發ニ關スル點、第四ニハ鐡
道ノ運轉系統ヲ正シクスルト云フ點第五
ニ於キマシテハ、今之ヲ買牧シナケレバ漸
次高クナルト云フヤウナ虞ガアルト云フ
點又第六ニハ此連絡上必要ナル所ノ此
鐵道ヲバ早ク完全ニ致シテ、以テ十分ニ其
軌道ヲ發達セシメナケ、レバナラヌト云フ點
デアリマス、此六ツノ點ニ於キマシテ私ハ
委員長報告ニ對シ贊成ノ意思ヲ表示致
シテ·(「約束ガ違フ」ト呼ヒ其他發言ス
ル者多シ)速ニ····セラレンコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=103
-
104・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=104
-
105・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜〓ニ願ヒマ
ス-高橋君ニ發言ヲ許シテ居リマス、御
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=105
-
106・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 我黨ニ於テハ此問題ニ對
シテ討論ヲ致サナイコトニ三派ノ交渉會ニ
於テ決定致シタト云フコトヲ聞イテ居ッタ
ノデアリマス、左樣デアリマスルカラシ
テ、吾々ハ其決議ヲ重ンジテ、德義上之ヲ
控ヘテ居ッタノデアリマス、然ルニモ拘ラ
ズ討論ニ涉ルヤウナ議論ヲ只今間イタノデ
アリマスヽ左様デアリマスルカラ吾々ハ志
賀君ノ修正說ニ賛成ノ意見ヲ申述べタイト
思フノデアル(發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=106
-
107・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=107
-
108・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 (株)而シテ吾々ハ斯ノ如
キ各派ノ申合セハ議事ノ進行ニ最モ好都
合ナリトシテ吾々ハ之ヲ守リツヽアルノ
デアル、嚴肅ニ守リツヽアル左樣デアリ
マスルニモ拘ラズ斯ウ云フ德義ヲ破シテ、
而シテ自ラ論議ヲ重ヌルト云フヤウナ不德
義ナコトハ私共ハ許スコトハ出來ナイノ
デアル而シテ此越後鐵道ト云フモノハ既
ニ天下ニ問題ガアル諸君ハ-先程モ志
賀君ガ此處デ言ハレタル如ク、中野君ノ如
クハ是ハ死ヲ賭シテモ頑張シテ斯ンナモノ
ハヤラヌト言ッタヂヤナイカ、サル程左樣ニ
此問題ハ不純ナ分子ヲ含ンデ居ルノデア
ル臭氣紛々タル分子ヲ含ンデ居ルノデア
ル(拍手)而シテ君達ハ斯ウ云フヤウナコト
ヲーサウシテ中野君ハ此處ニ居ラレヌノ
デアル、恐ラクハ御病氣力何カデアルダラ
ウト思フノデアルサウ云フヤウナル不純
ナ分子ヲ含ンデ居ル所ノ此案デアルノデアル、
左樣デアルカラシテ此案ニ付テハ各派ニ
於テ相當ニ議論ガアッタノデアル、ツイ此頃
迄ハ-此自由結婚ガ行ハレヤウトスル前
マデハ既ニ此越後鐵道ト云フモノハ本
黨アタリデモ大分不贊成ノ議論ガ多カッタ
ノデアル、何時ノ間ニカ是ガ雲散霧消シテ
シマッタト云フコトニ相成ルノデアル、ザウ
シテ恐ラクハ是ハ本日帝國「ホテル」アタリ
デ自由結婚式ガ行ハレルナント云フコトガ
新聞ニ書イテアル、私ハ其如何ナルモノナ
ルヤヲ知ラナイノデアリマスケレドモ斯
ウ云フコトガアルト云フカラ、忽チ斯ウ云
フモノヲ其御土產トシテマア賛成ヲスルト
云フコトニ致シダンデセウ、私ハ議場ガ賛成
カ不賛成カマダ分ラヌガ、工藤鐵男君ハ此
議場ノ空氣ハサウナッテ居ルト此處デ宣言
サレルカラ、或ハソンナコトカト吾々ハ思ッ
テ居ルノデアリマス、先程モ言フ通リニ(「委
員會デ極マッテ居ル」「委員長ハ何ト言ッタカ」
ト呼フ者アリ)マダ此鐵道ト云フモノハ完成
ヲシナイト云フコトニナル、卽チ橋ヲ架ケ
ナケレバ渡レナイト云フ事デハナイカ、サ
ウ云フヤウナ鐵道ヲ今ニ於テ買收ヲスルナ
ドト云フコトハ何ンニモナラナイト云フ
コトデアル、サウ云フ譯デアル、積極政策
ナドト云フコトハ是ハ人氣ガ好イカラナド
ト思ッテ、適當ナ政策ダトカ何トカ言ッテ、
色こナ事ヲ拵ヘテ、サウ云フ鵜ノ眞似ヲ烏
ガヤルト云フト、溺レルト云フノハコヽノ
道理ナノデアル、ソレデアルカラ斯ウ云フ
事ニ付テハ能ク愼重ニ考ヘナケレバナラ
ヌ、幾ラ慌テヽモ-德義ヲ守ラナイナド
ト云フ所カラ、斯ウニ云フ事ノ臭イ物ナド
「バイシユー」トハ何ダ、黴ノ臭ト云フ字
ヲ書イテアル、コンナ物デアル、斯ウ云
フヤウナ事ガ新聞ニ言ハレルノデアル、ソ
レデアルカラ憲政會モ德義ヲ重ジナイト云
フト、議事ハ中ミ進行シナイ(「重ジテ居ル」
ト呼フ者アリ)重ンゼズ、三派交涉ノ其事
ヲ忽チ直グ裏切ッテ居ル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=109
-
110・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 段々此人ノ風ヲ見
習ッテ、約束ナドヲ反古ニスルト云フト、世
間デハソレデモ風〓上宜シクナイト言ッテ
居ル、此頃人ノ約束ヲ反古ニスルコトヲ何
ト言ッテ居ルカ、サウー云フ事ヲ-今此妥協
苟合シタ事ヲ其儘スルコトヲ、私ハ本黨ニ
ハ御氣ノ毒デアルガ、吾々ガ平素尊敬ノ念
ヲ置カナカッタ所ノ床次氏ヲ時〓問題ニ出
サレル、僞リヲ吐ク解釋ニ床次ト書イテ嘘
ヲ言フノヲ床次ッチヤイケナイ、或ハ竹二ッ
チヤイケナイト云フコトガ、此頃世ノ中ニ
言ハレテ居ル、諸君ハ其眞似ヲシテ、サウ
シテ三派ノ申合ヲ破ッテ、而シテ討論ヲナサ
ラウト云フコトハ甚ダ見下ゲ果テタル事
ダト世間デハ不評判ニ至ランコトヲ吾々ハ
恐レテ居ルノデアリマス、(「本案ニ何ノ關
係ガアルカ」ト呼フ者アリ)本案ニ大ニ關係
ガアル、左樣デアルカラ、斯ウ云フヤウナ
ソレ程左樣ニ德義迄モ破ッテ、世間ヲ壓迫
シナケレバ是ガ問題ニナリ兼ネルト云フヤ
ウナコトニナッテ居ル、私ハ斯ウ云フ事ニ付
テ、ソレ〓〓諸君ハ大ニ反省サレテ、將來
斯ノ如キ事ノナイヤウニ希望ヲ致シテ、只
今志賀君ノ提出サレタル所ノ修正案ニ贊成
ヲ致シテ此壇ヲ降ル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高鳥順作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=111
-
112・高鳥順作
○高鳥順作君 簡單デアリマスカラ此席ヨ
リ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=112
-
113・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=113
-
114・高鳥順作
○高鳥順作君 水戶鐵道株式會社外四會社
ノ私設鐵道ヲ買收スルト云フ此案ニハ贊成
スル者デアリマス、只今此反對ノ理由トシ
テ志賀君ガ(「登壇々々」ト呼ヒ其他發言
スル者多シ)何等ノ根據ハナイト思ヒ
マス
〔「登壇々々」ト呼ヒ發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=114
-
115・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=115
-
116・高鳥順作
○高鳥順作君(續) 私ハ此鐵道ノ買收····
〔「登壇々々」ト呼ヒ發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=116
-
117・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 高鳥君御登壇ヲ
願ヒマス
〔高鳥順作君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=117
-
118・高鳥順作
○高鳥順作君 只今志賀君ガ此鐵道ヲ白山
マデ通シテモ何等ノ理由ガ無イ、意義ガ無
イト云フコトヲ言ウテ居ラレルノデアリマ
ス私ハ此鐵道ハ北陸ノ大都市タル新潟港
ニ連絡致シマシテ、海陸交通機關ノ完全ヲ
圖ル爲カラ、此鐵道ヲ買收スルノ目的デア
ラウト思フノデアリマス、又一方ニハ本州
ノ束北地方ヨリ、西南ニ達スル所謂裏日本
ノ海岸線ヲ完成スルガ目的ノ一ツダラウト
思フノデアリマス、此意味カラ極メテ重大
ナル案デアルト考へルノデアリマス、果シ
テ然リトスレバ只今志賀君、高橋君ノ言ハ
レルヤウニ、唯〓黨略ノ爲ニ爲シタモノデ
ナイト云フコトハ御分リニナルダラウト思
フノデアリマス、更ニ又〓囘鐵道網ニ追加
セラレテ居ルモノハ白山ヨリ新發田ニ通
ズル、新ニ追加シテ居ル鐵道ガアルノデア
リマス、是ガ通ジマスルト、眞ニ此越後鐵
道ガ活用スルコトニ相成ルノデアリマスカ
ラ、私共ハ寧ロ政府ニ一ツノ希望ヲ附シ
テ、此案ニ贊成スルノデアリマスガ、ソレ
ハ本鐵道ノ買收案ガ通過致シ、又鐵道網ノ
追加案ガ通過致シマシタ上ハ、政府ニ於カ
レマシテハ速ニ白山ト新發田間ノ線路ヲ
御調査ニナリマシテ、適當ノ案ヲ立テラレ
マシテ、速ニ提案セラルヽコトヲ希望致シ
マシテ、本案ニ賛成スル者デアリマス拍
き
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=118
-
119・加藤知正
○加藤知正君 私ハ(發言者多シ)何ヲ言
フ、默シテ居口-私ハ此越後鐵道ノ買收
ニ付キマシテハ、幾多ノ疑問ヲ持ヲテ居リ
マシタカラ、先日此壇上ニ於テ二、三ノ質
問ヲ致シタノデアリマス、其後豫算分科會
ニ於キマシテモ、更ニ此鐵道ニ付テ、愈
不審ニ堪ヘナイ點ガ澤山アリマシタカラ、
ソレヲ御尋シタ所ガ、御尋ヲスレバスル
程鐵道大臣ノ御答辯ハ要領ヲ得マセヌ、
私ヲシテ滿足セシムルダケノ御答辯ヲ得ル
コトガ出來ナカッタノデアリマス、併ナガラ
私ハ自分ノ縣ノ鐵道ヲ政府ガ買收シテヤラ
ウト云フノデアリマスカラ、自分ノ私情カラ
〓ヲ申シマスルナラバ洵ニ有難ク喜ブ一
人デアリマス、吾々ハ此處ニ居ラレル所ノ
憲政會ノ代議士諸君、イヤ我縣ノ憲政會
ノ代議士諸君ト共ニ、此案ニ付テ建議案ヲ
出シテ居ル一人デアル故ニ吾々ハ私情ニ
於テハ一日モ早ク此鐵道ヲ買收シテ貰ヒタ
イト云フコトヲ冀シテ已マザル所ノ一人デ
アル之ヲ熱望スルコトハ第一與黨ノ諸君
ヤ、第二與黨ノ諸君ニ一步モ讓ラザル者デ
アル而而私が此私情ヲ捨テ、此案ニ反對
スル所以ノモノハ何ノ爲デアルカ、吾々ハ
國家ヲ憂フルノ一念溢レテ、之ニ反對セ
ントスルノデアル、反對シナケレバナラヌ
所ニ立至ッタコトヲ、深ク遺憾トスル者デア
リマス、吾々ハ一地方ノ選出ニ係ル代議
士デハアルケレドモ、國政ヲ談ズル所ノ代
議士デアルカラ、事苟モ國家ノ爲ニイケナ
イト信ズル以上ハ、私情ヲ抛ッテモ、之二
斷々乎トシテ反對ヲセナケレバナラヌノデ
アル、而モ諸君、吾々ガ此鐵道買收案ニ反
對スレバ選擧區ニモ大ナル影響ガアルノ
デアルケレドモ吾々ハ選擧區ト云フモノ
ヲ顧ミルノ遑ガナイノデアル、眞ニ國事ヲ憂
フルノ餘リ反對ヲスル一人デアル然ラバ
何故之ニ付テ反對ヲスルノデアルカ、若シ吾
吾ノ尋ネタル質問ニ對シテ鐵道大臣ガ、吾
吾ガ滿足ヲスルダケノ答辯ヲ與ヘラレタナ
ラバ、私ハ決シテ之ニ反對スル者デハナ
イ然ルニ鐵道大臣ノ答辯ハ一トシテ本
員ニ滿足ヲ與ヘルダケノモノガナカッタノ
デアリマス(「金儲ケバカリシテ居ルカラ
ダ」ト呼フ者アリ)金儲ハ諸君ノコトダ(「賣
名ト利權取リダ」ト呼フ者アリ)賣名ト利權
取リハ諸君ノコトダ、自分ヲ顧ミヨ、然ラ
バ私ガ鐵道大臣ニ對シテ、第一ニ此壇上ニ
於テ質問ヲシタノハ何デアルカ、ソレハ鐵
道ヲ買收ナサラナケレバナラヌ所ノ御理由
ハ如何ト御尋ヲシタノデアルガ、鐵道大臣ノ
答ラルヽ所ハ、一ツハ雪ノ關係デアル、雪
ガ降ルカラ其爲ニ交通機關ニ非常ナル所ノ
障碍ヲ與ヘルニ依シテ、之ヲ買收セナケレバ
鐵道幹線ノ完全ヲ期スルコトガ出來ナイ、
是ガ一ツノ理由デアルト言ハレタノデアリ
マス諸君、雪ノ害ヲ緩和スル爲ニ、此鐵
道ヲ買牧セナケレバナラヌト云フ所ノ御理
由デアッタ、所ガドウデアリマス皮肉ニモ
先般ノアノ大雪ノ障碍ハ如何デアッタデア
リマセウカ、柏崎カラ長岡ヲ經テ、新潟ニ
至ルマデノ間ハ雪ノ害ガアッテ交通ガ社
絕スル所ノ憂ヒガアル之ヲ以テ此柏崎カ
ラ白山ニ至ル所ノ鐵道ヲ買收セナケレバナ
ラヌト云フ御理由デアッタニモ拘ラズ、先
般ノ彼ノ大ナル雪害ニ對シテハ如何デアツ
タデアリマセウカ、卽チ此柏崎カラ長岡ニ
至ル間ハ、不通ニナラナイニモ拘ラズ、海
岸線デ緩和セナケレバナラヌト仰シヤッタ
所ノ此柏崎ト白山ノ間ノ越後鐵道ガ不通ニ
ナッタデハアリマセヌカ、是ハ抑〓一體ドウ
云フコトデアリマセウカ、如何ニモ皮肉ノ
話デアル、斯樣ナ鐵道ヲ買收致シテ、ドウ
シテ此雪害ヲ緩和スルコトガ出來ルト言ハ
レマセウカ、私ハ此事ヲ豫算分科會ニ於テ
鐵道大臣ニ言ッタノデアル(「分ラヌ分ラヌ」
ト呼フ者アリ)分ラヌコトハナイ、分ラヌ
ナラバ何遍デモ言フ、二遍デモ三遍デモ申
シマセウ、詰リ此柏崎カラ長岡ヲ經テ新潟
ニ至ル間ハ、雪ガ非常ニ障碍ヲ爲スノデ、
之ヲ買收シナケレバ此鐵道幹線ノ完璧ヲ期
スルコトガ出來ナイカラ柏崎ヨリ新潟ニ至
ル越後鐵道ヲ買收シナケレバナラヌト言ハ
レタノデアル、所ガアベコベニ、先度ハ柏
崎カラ長岡ニ至ル間ハ、アノ大雪ニ於テ左
シタル障碍ヲ受ケザルニ拘ラズ、却テ柏崎
カラシテ白山ニ至ル間ノ越後鐵道ガ運轉中
止ノ障碍ヲ起シタデハナイカ(「分ラヌ」「分
ラヌ」ト呼フ者アリ)分ラヌナラバ何遍デモ
言フ幾ラデモ繰返シマセウ
〔「モウ一遍」ト呼ヒ其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=119
-
120・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=120
-
121・加藤知正
○加藤知正君(續) 若シ此鐵道大臣ノ言フ
コトヲ以テスルナラバ、アノ通リ先日柏崎
カラ直江津ヲ經テ富山ニ至ル間ノ海岸線
ガ、非常ノ雪碍ヲ受ケタノデアル、是ガ爲ニ
交通ハ杜絕シタノデアル、食糧ハ缺乏シタ
ノデアル、多クノ人ガ非常ナル苦ミニ陷。ッ
タノデアル、此害ヲ緩和スル爲ニハドウ
シテモ更ニ一本ノ補助線ヲ設ケナケレバナ
ラヌコトニナルデハナイカ、其補助線ハ何
處ニ設ケルカ、現在ノ位置カラ云フト、旣
ニ之ヲ設クルダケノ餘地ガナイノデアル、
然ラバ此鐵道幹線ノ完王期期ルルニハ更
ニ海底ニ」デモ向ッ設ケルヨリ外ニ途ガ
無イコトニナルノデハナイカ、鐵道大臣ニ
ハ果シテ此海底鐵道ヲ設クルダケノ勇氣ガ
アルカドウカ、幹線ノ完璧ヲ期スルニハ
更ニソレダケノ事ヲナサラナケレバ、到底
其目的ヲ達スルコトガ出來ナイコトニナル
ガ、如何デアリマスカト御尋シタトコロ、
ソンナ考ハ特ノテ居ラヌト云ハレタノデア
ル果シテ然ラバ單ニ越後鐵道ダケ買收シ
テ、而シテ北陸線ノ幹線ノ完璧ヲ期サウト
云アコトニナルカラ、此點ガ吾々共ガ御尤
ナリトシテ承服スルコトノ出來ナイ所以デ
アルノデアリマス、是ガ一ツ、更ニ鐵道敷
設當時ノ生產狀態ト、今日トハ大變ニ違シ
テ居ル、言ハミ施設當時ニ於テノ貨物ノ輪
送ハ極メテ少イモノデアルケレドモ今日
ハ大ニ曾加シタカラ之ヲ買收シサウシテ以
テ滑ニ貨物ノ輪送ヲ圖ラナケレバナラヌト
云フ所ノ御理由デアッタノデアル、所ガ曷ゾ
知ラン、其鐵道ヲ敷設致シマシタ當時ノ生
產狀態ト、今日ノ生産狀態トハ依然トシテ
變ラヌノデアリマス、否、寧ロ石油事業ノ
如キハ今日ニ於テハ昔ノ俤ガナイノデア
ル、何ヲ苦ンデ之ヲ買收ナサランケシバナ
ラヌノデアルカト云フコトヲ吾輩ハ御尋シタ
ノデアル、若シ生產狀態ガ數設當時ト大ニ
變ッテ居ルカラ買牧セナケレバナラヌト云
フナラバ、冀クハ其數量ヲ明ニ御兩ヲ願ヒ
タイト云フコトヲ申上ゲタノデアルガ、途
ニ其數量ノ御雨ガナイノデアル、又元スコ
トガ實際ニ於テ出來ナイデアラウト思フノ
デアリマス、然ラバ生產狀態云々ト云フコ
トモ是亦何等越後鐵道ヲ買收セナケレバナ
ラヌト云フ理由ニハナラヌノデアル、上越
線ガ完成スル羽越線モ既ニ完成シテ居
ル故ニ之ヲ買收セナケレバナラヌト云フ
ヤウナコトヲ仰シヤッタ、所ガソレ等ハ吾々
ヲシテ首肯セシムルニ足ル理由ニハナラヌ
ノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマスカ
ラ、他ニ有力ナル理由ヲ吾々ハ承リタイト言
フコトヲ申上ゲタノデアル、所ガ大臣ノ御話ニ
ハ新潟ノヤウナ彼ノ大都會ガ、鐵道幹線
ノ中ニ這入ッテ居ラナイ所ハナイノデアルヽ
デアルカラ新潟市ノ發展ヲ圖ル爲ニハえ
ヲ買收セナケレバチラヌト云フコトヲ仰シ
ヤッタノデアル、併ナガラ現在ニ於キマシ
テ新潟市ノ發展セヌト云フ理由ハ他ニ在
ル鐵道幹線ノ中ニ這入ッテ居ラナイカラ
シテ發展セヌト云フノハ理由ニナラヌノデ
アル、此點ニ於キマシテハ憲政會ノ中野
君ガ滔々ト此壇上ニ於テ述ベラレタ次第デ
アリマス、今日此越後鐵道ナルモノガ在ツ
テスラモ發展スルコトガ出來ナイト云フ新
潟市ナラバ之ヲ官有ニ致シタ所デドレダ
ケノ發展ガ出來ルノデアルカ、新潟市ノ發
展セヌト云フ理由ハ、鐵道ヲ官有ニセヌ爲
ニアラズシテ、他ニ理由ガ存スルルノデジア일
%
ル、其理由ハ中野君ガ滔々トシテ述ベラレ
タノデアル、卽チ此日本五港ノ一ツデアル
ト言ハルヽ所ノ新潟港ガ深水淺クシテ、大
船ヲ繫グニ足ル所ノ港デハナイノデアル、
斯樣ナ關係カラシテ新潟市ト云フモノハ十
分ノ發展ヲセナカッタノデアルカラ、若シ
新潟市ノ眞ノ發展ヲ祈ルナラバ、何故ニ此
港ト云フモノニ對シテ十分ノ施設ヲセナイ
ノデアルカ、而シテ彼ノ對岸ノ露西亞ヲ相
手ニシテ、新潟市ガ十分ニ發展シ得ルヤウ
ニスルナラバ、今日鐵道ヲ完全ニスルトセ
ザルトニ拘ラズ此港一ツガ完全ニナレバ
今日ヨリモ、ヨリ以上ノ發展ヲスルト云フ
コトハ中野君ガ此壇上ニ於テ述ベラレタ所
デアル然ルニ政府當局ノ爲ス所ハド
ウデアルカ、此港ト云フモノニ對シテ
ハ、決シテ十分ナル施設ヲ致シテ居ルト云
フコトハ出來ナイノデアル、成程今日
マデ大ニ力ハ入レテ貰,テ居リマス、ケ
レドモ之ヲ以テマダ十分ト言フ譯ニハ
至ラヌノデアル、大船巨舶ヲ繫グニ足ラヌ
ノデアリマス、デアリマスカラシテ吾々共
ハ此越後鐵道ヲ買收スル所ノ金ガアルナラ
其金ヲ以テ新潟築港ニモウ一層ノ力ヲ
注イデ貰ヒタイト云フコトヲ希望スルノデ
アル(拍手)左樣ナ次第デアリマシテ、政府
當局ノ辯明ト云フモノハ吾々ヲシテ一モ
滿足セシムルニ足ルダケノ御答辯デハナ
カッタノデアリマス、併シ吾々ヲシテ滿足
セシムルニ足ルダケノ御答辯ガナイニ致シ
タ所デ、之ニ對シテ他ニ何等弊害ヲ認メナ
ケレバ、私ハ默シテ止ムノデアリマス、否、
寧口穩カニ致シテ謹ンデ是ガ買收ヲ御願ス
ル次第デアリマス、併ナガラ諸君、此買收
ト云フコトガ一度發表セラルヽヤ如何ナル
噂ガ世間ニ傳ッテ居ルノデアリマスカ、此事
ニ付テハ今同僚ノ志賀和多利君ガ滔々トシ
テ此所ニ述ベラレタノデアルシレガ卽チ
私共ヲシテ遺憾ナガラ此鐵道買收ヲ今日爲
サルト云フコトニ反對セザルヲ得ヌコトニ
シタノデアリマス、然ラバ諸君、如何ナル
噂ガ〓間ニ傳フテ居ルカ、卽ヲ先刻志賀君
ノ言ハレタ通リ、此越後鐵道ノ社長ハ久須
美君デアル、久須美君今日ノ經濟狀態ハド
ウデアルカ、之ヲ今日救フニアラザレバ、彼
ハ破產ヲシテシマフ、之ヲ救濟スル爲ニ此
越後鐵道買收案ナルモノハ提案サレタモノ
デアルト云フ噂ガ專ラ値タッテ居ルノデアル
(拍手)又今秋ニ於テハ縣會議員ノ選舉ガア
"、明年ニ於テハ國會議員ノ選擧ガアル、
其選擧ニ對シテ憲政會ニハ選擧費用ガ無イ
カラ、此越後鐵道ヲ買收シテ貰シテ、其金ヲ
以テ來ルベキ選舉ニ臨ム魂膽デアルト云フ
所ノ噂サヘアルノデアル、勿論是ハ一片ノ
噂ト思ウテ居リマス、噂ト思ウテ居リマス
ルガ、併ナガラ此噂ガイケナイノデアリマ
ス、斯樣ナ噂ノアル所デ以テ、此鐵道ヲ買收
致シタナラバ如何デアリマセウ、是ガ卽チ
一ツハ既成政黨ノ信用ニモ非常ナル影響ヲ
與ヘル、一ツニハ官ノ威信ニモ關係スル
是ガ私ノ此越後鐵道買收ニ反對スル所以デ
アルノデアリマス現內閣ガ憲政會內閣デ
ナイナラ宜シイノデアル、併ナガラ現内閣
ハ憲政會內閣デアル而シテ此鐵道ノ社長
ハ憲政會ノ黨員デアル、此鐵道ノ株主ノ大
部分ハ憲政會員デアル、斯樣ナ狀態ニ在リ
マスルカラ、之ヲ買收スルト云フ其所ニハ
何等カノ魂膽ガナケレバナラヌト云フコト
ヲ世人ニ想像セラルヽノハ、是ハ當然ノ歸
結デアルノデアル、
〔小泉副議長議長席ヲ退キ粕谷議長復
席
デアリマスルカラ、既成政黨ト云フモノハ
實ニ信用スルニ足ラヌモノデアル、惡イ事
ノミヲヤッテ居ルモノデアル、斯ウ云フ工
合ニ多クノ人ニ大ナル誤解ヲ與ヘシムルト
云フコトシ、吾々ハ政黨員トシテ實ニ之ヲ
遺憾ニ思フノデアリマス、尤モ今日此内閣
ノ爲ス所、憲政會諸君ノ爲ス所、政友本黨
諸君ノ爲ス所ヲ見テ、國民ハ既ニ愛想ヲツ
カシテ、如何ニモ臭氣紛々今日ノ政府ヤ政
黨ナドニハ鼻向ケモナラヌト云フヤウチ噂
ヲ致シテ居ル者ノ多イ今日デアリマスルカ
ラ、現政府ガ此越後鐵道ヲ買收スル位ナコ
トハ何デモナイコトデアルカモ知レナイ、
ケレドモ純眞無垢ノ吾々ノ五場カラ之ヲ見
ルト云フト、斯樣ナ噂ノアル所へ持ッテ來
テ、之ヲ買收スルナドト云フコトハ、宜シ
クナイ實ニ政黨ノ信用ニ大ナル影響ヲ與へ
ルコトニナリマスカラ、私ハ憲政會ノ爲、
政友本黨ノ爲、否、既成政黨ノ爲ニ此鐵道
ヲ買收スルト云フコトニ大ナル反對ヲスル
一人デアルノデアリマス、又斯樣ナ事ヲ致
シマスルナラバ、政府ニ對スル信用、官ニ
對スル信用ト云フモノガ全然地ニ墜ルコト
ハ言フマデモナイ話デアル、序デニ私ハ我
ガ縣民ノ間ニ於テ斯樣ナ噂ヲ致スコトガ
決シテ無理カラヌコトデアルト云フ其一例
ヲ申上ゲテ置キタイ、先年小原知事ガ在任
中ノコトデアリマス、其當時實業學校ノ整
理問題ガ現レタノデアル、其際憲政會ノ
諸君ハ如何ナル態度ヲ執ラレタカ、憲政會
ニ入黨セヨ、入黨ヲセナケレバソコノ學校
ハ潰シテシマフト云フヤウナ態度ヲ取ッタ
ノデアル(「オ前達ガヤッタノダ」ト呼フ者ア
リ)オ前達ガヤッタト云フナラバ、尙ホ其事
實ヲ私ハ申上ゲマセウ、ソレハ新潟縣古志
郡栃尾町ニ農商學校ト云フ學校ガアルノデ
アル、其學校ヲ存置致シタイト云フノデ土
地ノ者ガ非常ナル心配ヲ致シテ、奔走ヲ致
シタ其當時ニ於テ新潟縣ニ於ケル憲政會
ノ或ル有力ナル縣會議員ノ一人ト看做サレ
ル所ノ某ナル者ガ、此學校ヲ眞ニ存置セシ
メタイナラバ宜シク憲政會ニ入黨セヨ
少クトモ五十名以上ノ堂員ヲ募レト云フコ
トヲ申シタノデアル、純眞無垢ナル土地ノ
者ハ是非共此學校ヲ存置シテ貰ヒタイト云
フ考カラ、一生懸命デ黨員ヲ募集シタ、五十
名足ラズノ黨員ヲ募集シテ行ッタ所ガ、是デ
ハ募集ノ仕方ガ足リナイ、ドウモ之ヲ存置
シテヤル譯ニハ參ラヌカモ知レヌト云フヤ
ウナ態度ヲ示シタノデアッタガ、何ゾ知ラ
ン其當時ニ於テハ既ニ此學校ハ存置スル
ト云フコトニ定ッテ居ッタノデアル、サウ云
フコトデアッタニモ拘ラズ、白々シクモ入
黨ヲ强イテ、サウシテ五十何名ノ者ヲ入黨
セシメタノデアリマス、又一昨年ノ縣會カ
ラ昨年ノ縣會ニ掛ケマシテ、道路問題ガ現
レタノデアル橋梁問題ガ現レタノデア
ル處ガ憲政會ニ入黨スレバ其道路ヲ付ケ
テヤル憲政會ニ入黨シナケレバ此橋ハ架
ケテヤラナイト云フヤウナ態度ヲ取リ中蒲
原郡ノ小合村ト臼井村トノ間ニ在ル橋ノ爲
ニ、二百餘名ノ憲政會入黨者ヲ强イテ募集
サシタノデアリマス、斯樣ナ遣方ヲシテ
居ルノデアルカラ、自然縣民ノ疑ガ今囘ノ
越後鐵道買收ノ土ニモ掛ルノデアル斯樣ナ
事ヲ致シマスルカラ政黨〓云フモノニ對シ
テノ信用ガ今日地ニ墜チ行クノデアリマ
ス、私ハ此信念ノ下ニ今日此越後鐵道ナル
モノヲ買牧セラルヽト云フコトニ反對セザ
ルヲ得ヌ者デアル、若シ之ヲ買收セントナ
サルナラバ既成政黨ノ信用ノ爲ニ、官ノ威
信ノ爲ニ、所謂諸君ノ言ハルヽ通リ、何故政
友會内閣ノ時ヲ待テ買收サセルヤウニセナ
イノカト言ヒタイデアル、ノ政友會内閣ノ時
ニ買收ヲサセルナラバ、誰モ惡イ噂サヲス
ル者ハナイノデアリマス、卽チ社長ガ憲政
會ノ黨員デアリ、大部分株主ガ憲政會ノ黨
員デアル、其鐵道ヲ政友會内閣ノ時ニ買收シ
テ貰フト云フコトデアルナラバ是程公平
ナコトハナイデハナイカ、又今一ツ私ハ之ニ
反對スル所ノ理由ガ他ニアル、現內閣ハ今
日ノ財政頗ル窮之ヲ告ゲテ居ル、先般私ガ
質問ヲ致シタ際ニ、政友本黨ノ諸君ハ拍手
ヲ以テ迎ヘラレタガ、彼ノ義務〓育費ノ問
題ハドウデアルカ、一千万圓ト云フコトヲ
約束シテ置キナガラ、僅ニ五百万圓サヘ計
上シナイデハナイカ、而シテ其理由ヲ問ヘ
卽チ財政ニ餘裕ガ無イカラ、無イ袖ハ
振ラレヌニ依シテ、五百万圓サヘ計上スルコ
トガ出來ナイト言ッテ居ルデハナイカ、公約
ヲシテ置キナガラ、結束ヲ反古ニスルヤウ
ナ今日ノ政府デアルカラ、此ノ如ク信用ス
ルニ足リナイ政府デアルカラ、ドノヤウナ
事ヲシテモ吾々ハ之ヲ攻撃スルダケノ勇氣
ガ無イヤウナモノヽ併ナガラ苟クモ堂々
タル政府デハナイカ、其政府ガ今日天下ノ
公黨ニ對シテ一千万圓ノ約束ヲシテ置キナ
ガラ、ンレヲ實行セズシテ僅ニ五百万圓サ
へ之ヲ計上セヌノデアル、而シテ其理由ヲ
問ヘバ、卽チ財政ニ餘裕ガ無イカラ已ムヲ
得ナイト云フノデアル財政ニ餘裕ガナイ
ト申シテ居リナガラ、今日此不急ノ越後鐵
道ヲ千二百万圓モ投ジテ買收スルトハ何事
デアルカ、今日之ヲ買收シナケレバナラヌ
ト云フ急ヲ要スル所ノ關係ガアリマスナラ
バ私ハ決シテ異存ハ申シマセヌ、併ナガ
ラ今日之ヲ急イデ買ハナクテモ、何等交通
上ニ差支ハナイノデアリマス、交通上ニ於
テ差支ガナイ所ノ此不急ノ鐵道ヲ無イ袖ハ
振ラレヌト申シテ居リナガラ、强イテ一千
二百万圓ノ大金ヲ投ジテ買收スルト云フ其
御意思ガ分ラヌノデアル、殊ニ非募債主義
ヲ唱ヘテ居リナガラ、公債政策ニ依テテ
ヲ買收シヤウナドト云フコトハ、實ニ矛盾
モ甚シイト謂ハナケレバナラヌノデアリマ
ス(拍手)サウ云フヤウナ關係ガアリマスル
カラ、私ハ縣民ノ一人トシテハ、希クハ一
日モ速ニ買收シテ戴キタイト云フ熱情ヲ
持ッテ居ル者デアリマスケレドモ、官ノ威
信ノ爲、既成政黨ノ信用ノ爲ニ是ハ暫クノ
間御撤回ニナル方ガ相當デアルト云フ考ヲ
以テ本案ニ反對スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=121
-
122・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 原惣兵衞君
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=122
-
123・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本員ハ玆ニ修正案ニ賛成ヲ
致シタイト思フノデアリマス、先ヅ其前提
ト致シマシテ、議場ガ斯樣ナル混亂ノ狀態
ニ陷ッタト云フコトニ付キマシテ、諸君ノ
前ニ其實情〓末ヲ御報告致シマス、本日ハ
御存知ノ如クニ或ル用事ガアル爲ニ、特ニ
此程度デ以テ總テヲ打切ル志賀君ノ演說
ガ濟ンダ時ニ於テ(發言者多シ)御聽キナサ
イ、此時ニ平野光雄君ガ我黨ニ參リマシ
テ、簡單ニ議席カラ此修正案ニハ反對デア
リマスト云フコトダケヲ言フカランレデ
堪ヘテ吳レ、ソレヲ吾々ハ諒トシタノデア
リマス然ルニ拘ラズ工藤君ハ此處ニ沼々
ト反對ノ演說ヲシタ、所謂反對デアルト云
フ意味デナイ反對ノ演說ヲ爲シタト云フコ
トガ此原因ヲ成シテ居ルト云フコトヲ知
ラナケレバナラヌノデアル(拍手)卽チ有ユ
ル場合ニ嘘ヲ吐クノハ憲政會ノ特前デアリ
マス(「ヒヤし〓」拍手)而モ今日ハ反對ノ演
說ハセヌ議席カラ反對デアルト云フコト
ダケヲ言フカラト言ッテ置イテ、サウシテ堂
堂ト演說ヲ始メタト云フコトカラ、此狀態
ニ陷レタト云フコトハ自ラ其信義ヲ破シ
タノデアルト謂ハナケレバナラヌ(拍手)斯
クナル以上ハ此重大ナル鐵道法案ニ對シ
テハ簡單ニ濟マス譯ニハイカナイカラ
吾々腕ノ續タ限リ、時間ノ續ク限リ、之ニ
對シテ討論ヲ試ミント思フ者デアリマス、
(拍手)爾來鐵道法案ト云フモノハ御存知ノ
如クニ、地方ノ生活狀態竝ニ支化ノ發展ニ
重大ナル關係ヲ持クテ居ルノデアリマス
隨テ此問題ニ付テハ餘程地方的ノ黨勢ノ
擴張デアルトカ、或ハ本當ニ支化ノ發展ノ
爲ニスルノデアルトカ、愼重審議〓究シナ
ケレバナラヌ問題デアルノデアリマス、本
問題ガ一番初ニ提案サレタ時ニ於テ、果シ
テ鐵道大臣初メ佐竹次官-政府ガ此案ニ
贊成デアッタカト云フト決シテ贊成デハナ
カッタ、全ク憲政會ノ黨員ノ壓迫デ是非ナ
タヤッタノダト云フコトヲ、政府委員自ラ
言ッテ居ルデハナイカ、而モ亦之ニ對シテハ
政友本黨モ全ク反對デアッタノデアリマス
ルガ、一朝憲本聯合ノ野合ガ成立スルヤ、
是非ナク之ニ引摺ラレテ行ッタノデアリマ
ス(拍手)全ク是ハ憲政會ノ或ル一部ノー
先刻志賀君ガ御報告シタ通リニ、憲政會ノ
黨員ノ爲ニ是非アレヲ附ケテヤラナケレバ
ナラナイト云フ黨勢擴張ヨリ以外ニ、本案
ハ何モノモナイト云フコトヲ吾々ハ喝破ス
ル者デアル、斯樣ナ重大ナル問題ニ付テ今
ヤ諸君、憲政會ガ其信義ニ悖ルヤウナコト
ヲスル以上ハ吾々此問題ガ如何ナル經過
ニ依ッテ行シタカト云フコトニ付テ、私ハ少
シク速記錄ヲ參考ニシテ、諸君ノ前ニ反對
論ヲ述ベテ見タイト思フノデアリマス、先
ヅ此鐵道法案ト云フモノハ特ニ重大デアリ
マスカラ、委員會ニ掛ケルニ付キマシテ
も、單ナル九名トカ十六名トカ十八名トカ
言ハズニ、特ニ二十名ノ委員ニ付シタト云
フ點ニ於テモ、本案ガ非常ニ重大デアッタ
ト云フコトガ十分ニ分ルノデアリマス、而
シテ此問題ニ付キマシテ政府委員ノ連中
バ其會ニ於キマシテ如何ナル事ヲ答ヘテ
居ルカト云アコトニ付テ、私ハ少シク述べテ
見タイト思フノデアリマス、國務大臣丼上
子ハ本案提出ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマス
ト言ウテ、其理由ヲ述べテ居リマスガ、「先
ヅ水戶鐵道ト陸奧鐵道ハ國有鐵道ノ連絡
上、一日モ速ニ之ヲ買收スルノ必要ガアリ
マス」、斯樣ニ述べテ居リマシテ、サウシテ
此鐵道ノ必要ヲ御說キニナッテ居ルヤウデ
アリマスガ先刻申上ゲマシタ通リ、井上
鐵道大臣ノ御演說ニ依ッテ見マシテモ、左程
熱心ニ此法案ヲ通過サセタイト云フ御意思
ガ無イコトハ、明白ニ分ッテ居ルノデアリマ
スサウシテ先ヅ裏日本交通ノ狀態ハ、昔
ニ比シテ大ニ其趣ヲ異ニシテ居ル斯樣ニ
ズット說明ヲシテ來テ居リマスガ、此鐵道
ダケガ、必シモ唯一ノ鐵道デチイ、先ニ申
シマシタ通リ全ク大臣トシテハ,斯樣ナ鐵
道マデモ買救スル必要ハナイト云フ御意想
ガアッタノデアリマスルカラ、餘儀ナタ玆
ニ述ベテ居リマスルケレドモ、私等ハ必シ
モ買收ノ必要ハ無イト信ジテ居ルノデアリマ
ス、而シテ此問題ニ付キマシテ先ヅ大臣ガ
斯樣ニ答ヘラレタ、之ニ對シテ今井委員ハ
質問ヲ試ミマシテ「政府ガ私設鐵道ヲ買收
致シマス方針ハ、大體ニ於テ國有鐵道ノ幹
線ニ連絡スルト云フコトニ目的ガアルト解釋
致シマス、所ガ私共地方ニ於テ實際是ハ政
府ガ買收シタ方ガ宜イデアラウト思フ鐵道
ガ殘サレテ居リ、是ハ寧口支線トシテ民有
ニ委シテ置イタ方ガ宜イト思フモノガ官
有ニサレル場合ガ多イ、例ヘバ」ト斯樣ニ
言ッテ居ル隨テ斯樣ナ今申上ゲタヤウチ
此支線、サウ云云ヤヤナ鐵道ヲ國有鐵道ニ、
猫モ杓子モシテシマハナクトモ-民間ノ
事業ノ壓迫ト云フコトニモ重大ナ關係ヲ
持ッテ居リマス、殊ニサウ云フヤウナ支線
デアリマシクナラバ是ハ支線トシテ其儘
放任シテ置ク方ガ、又民間ノ事業ヲ壓迫シ
ナイト云アコトニモナル、寧ロ自由競爭ノ
上カラ見テモ是ガ宜イト思ウテ居ルノデア
リマス(「ヒヤ〓〓」拍手)隨テ何故之ヲ私有
鐵道ノ範圍トシテ기左樣ナ方面ニ置イテ置
カナイカト云フ質問ヲ、先ヅ試ミテ居ラレ
マス、ソコデ尙ホ今井委員ハ質問シテ言フ
ニハ「例ヘバ今囘政府ノ敷設法ニ出テ居リ
やっ、我孫子カラ向フヘ行ク鐵道ガ出來
テソレガ成田ニ結付クノデアリマス、所
ガ此先ニ多古ノ鐵道ト云フノガアリマス
ツレヲ其儘ニシテ一方ダケ國有ニスルト云
フコトハドウデセウカ、ヤルナラバ一層全
部ヲ國有ニシタ方ガ便利デハナイカ、ドウ
モ私共政府ノヤラレマスヤウニ、唯一部
ダケヲ買收ニナッテモ駄目ダト思ヒマス」諸
君、斯樣ニ苟モ支線ヲ買收スルト言ヒ
而モ地方的連絡ガアル所デアッタナラバ、此
今井委員ノ言フ通リニヤルナラバ、何故總
テ此外ノ支線ヲ買收シナイカト云フコトニ
ナルノデアリマス、然ルニ拘ラズ、之ニ對、
シテ一方ダケノ買牧ヲ試ミルト云ヲコトニ
付テハ先ニ申シマシタ通リ政府モ反對シ
テ居レバ、本黨モ反對シテ居クタト云フ點
デモ、曖昧デアルト云フコトハ明白デナイ
カト吾々ハ言ハナケレバナラヌノデアリマ
ス(拍手)而シテ尙ホ今井委員ハ續イテ「今
迄千葉ノ縣營鐵道ハ成田ト多古間デアリマ
ス、ツレガ旣ニ八目市場マデ連絡サレ、成
田線及總武線ニ連絡サレテ居リマス、ワレ
ガ我孫子カラ埼玉縣方面ニ連絡サレルコト
ニナレバ尙更ニ必要ダト思ヒマスガ、サ
ウ云フ方面ニ何等カ御考ガアリマスカ、將
來又ソレハ縣營ニスル御考ヲ持クテ居ラレ
マセヌカ」斯ウ云フ次ニ所謂參考的ナ質問
ヲ試ミテ居リマス、之ニ對シテ井上鐵道大
臣ハ、今井君ノ質問ニ對シテ「大體政府ノ
私設鐵道買收ノ方針ニ付テ申上ゲタイト思
ヒマスガ、本會議以來廔、ソレハ申述ベテ
居リマス、又今井君モ只今御質問ノ中ニ、
政府ノ方針ヲ既ニ御述ニナッテ居ルノデアリ
そく、勿論國ノ鐵道ノ系絡上幹線タルベキ性
質ヲ持ッテ居ルモノハ順次調査ヲ進メ、之
ヲ買救シテ行クノデアリマス」斯樣ニ言ッテ
居ル(拍手)併ナガラ諸君、此順次ト仰セニ
ナリマスケレドモ、支線ノ買收ヲスルト云
フコトハ何レガ先デアルカト云フコトニ
付テ、鐵道ガ順次買收スルト云フコトニ付
テ、左樣ナ鐵道ダケ早クシタト云フコト
ハ正ニ是レ重大ナ怪シイ關係ガアルト言
ハナケレバナラヌノデアル」(拍手)斯樣ニ述べ
マシテ、又其次ニ進ンデ言ハレルニハ、「其
後歳月ヲ經ルニ從テ、其地方ノ產業狀態ガ
發達致シマシタ爲ニ、地方的ノ性質ヲ失ヒ
マシテ、随テ國有ニ編入スルノ必要ガ生ズ
ルモノガアルノデアリマス、是等ノ理由ガ
政府ノ地方鐵道買收ノ方針デアルノデアリ
マス勿論今回提案〓シマシタモノガ地
方鐵道トシテ買收スベキ全部ノモノデナイ
コトハ勿論デアリマス、其他重要ナ地方鐵
道ガ多々アルノデアリマス」斯樣ニ言ッテ居
ル併シ私等ニ言ハセタナラバ左樣ナ重
大ナ地方鐵道ノアルニ拘ラズ、今言ウタ通
リ政府自身モ反對ダト言ヒ、吾々全體ガ反
對ダト言ヒ、又本黨モ反對ダト言ッテ居ル
ノニ玆ニ出タト云フコトハ左樣ナ重大ナ
案ガ他ニ在ルノニ、其方ノ案ヲ早クシナイ
デ、之ヲ早クシタカト云フ點デアリマス、
(「ヒヤ〓〓」拍手)今井委員ハ之ニ對シテ質
問ヲシテ曰ク「私ガ只今申上ゲタ千葉縣ノ
縣營鐵道ハ現在縣營デ經營致シテ居リ
マシテ、半分ダケハ完成シテ今運轉シテ
居リマス、後ノ半分ハ日露戰爭ノ當時
ノ戰利品ニ依ッテ架ケタ、極ク簡單ナ
輕便鐵道デアリマシテ、鐵道ノ機能ヲ全ク
具備シテ居ラナイ、縣ニ於テモ經費ハ四十
万圓位ハ持ッテ居ルガ、將來ニ於テ此短距
離ノ鐵道ヲ經營スルノニ、縣ハ非常ニ困難
ヲ感ジテ居ル、若シ國有ニシテ、國トシテ
計算致シマシタナラバ鐵道收益ノ上ニ於
テモ格別ノ損失ハナカラウト思フソレヲ
今日縣デヤッテ居リマスルガ、縣ガ若シ之
ヲ政府ニ無償デ提供スルト云フ場合ニハ
將來之ヲ引受ケ、又ハ調査シヤウト云フ御
考デアリマスカ」諸君所謂此鐵道ニ付キマシ
テ今井委員ハ曰ク若シモ左樣ナ鐵道ヲ先
ニ買收サレル位ナラバ、此鐵道ヲバ無償デ
縣ガ政府ニ提供致サウト云フ場合ニハ政
府ハ之ニ對シテドウスルカト言ハレテ居ル、
無償デ提供スル鐵道ヲ後ヘ殘シテ置クト云
フコトハ如何ナルコトデアルカ(拍手)而
シテ之ニ對シテ佐竹政府委員ハ曰ク、「千葉
縣ノ縣營鐵道ハ三呎六吋ニ改築工事中デア
リマス、此鐵道ハ御話ノ如ク收支相償ハナ
イノデ、縣デモ隨分持餘シテ居ルト云フコ
トヲ前カラ聞イテ居ル、ソレデ先刻鐵道大
臣カラ、將來國有トスル大體方針ハ申上ゲ
ラレタノデアリマス」ソコデ私ハ言ヒタイ、
所謂私設ノ鐵道ニ於テ、收支ガ償ウトカ償
ハヌトカ云フコトヲ以テ政府ガ買收方針ヲ
立テルノデハナイ、全ク政府ハ何處マデモ
國家ノ交通機關トシテ、我ガ國内ノ總テノ
交通政策カラ之ヲ買牧シナケレバナラヌ、
今言フタ無償デ以テ飽マデ之ヲ提供スルト
云フヤウナ此鐵道ヲ殘シテ置イテ、今言ウ
タヤウナ憲政會ノ一黨員ノ爲ニ、斯樣ナ鐵
道ヲ買收スルト云フコトハ斷ジテ不可デ
アルト思フノデアリマス、而シテ今井委員
ハ尙ホ之ニ對シテ追究シテ曰ク「政府委員
ノ今ノ御話ハ今マデ極ク簡單ナ輕便鐵道ガ
尻切蜻蛉ニナッテ居ル、成田、多古、此間ノ
御話ノヤウデリマスガ、今ハ多古ヨリ延長
シマシテ、八日市場ノ總武線ガ之ヲ縱貫シ
テ居ル唯一ノ鐵道デアルノデアリマス、サ
ウ致シマヌレバ、國有トシテ幹線ト幹線ヲ
結ビ付ケル總武線、房州線、或ハ銚子方面
ヨリ致シマシテ、一直線ニ是ガ東北本線ニ
連絡スルノ途ガ開ケルノデアリマス」先刻
政府委員ノ云ッタコトハホンノ一部ノコト
ヲ云ッテ居ルノデアリマスガ、斯樣ナル幹
線ト幹線ヲ結付ケテ居ル所ノ鐵道デアル
隨テ尙ホ言葉ヲ續ケテ云フニハ「今尻切蜻
蛉ノ不完全ナル鐵道デアッタ時代ニ於テハ
或ハサウ云フ譏ガアッタカモ知レマセスガ、
是ガ普通ノ本鐵道ト同ジク、此八日市場、
成田間ガ貫通セル上ニ於テハソレダケノ
缺損ノ補ヒ、之ヲ遠距離線ニ結付ケルト採
算上現在ノ狀態トハマルデ一變スルデア
ラウト思フ政府ニ於キマシテハ今マデノ
狀態ノミヲ御覓ニナラナイデ、將來ニ於テ
現在改良ヲ加ヘツヽアル狀況ヲ見ナケレバ
イケナイ」、政府ハ尻切蜻蛉ニナッテ居ル所
ノアノ一部ノ鐵道ダケヲ見テ、損デアル
缺損デアルト言ッテ居ルケレドモ、今言フタ
通リ幹線ト幹線ヲ繋ギ合ハスヤウナ重大ナ
鐵道ニナッテ、全ク鐵道ガ改良セラレテ、而
シテ此重大ナル交通機關ニナッテ居ル、斯
ウ云フ鐵道ヲ棄テヽ置イテ、之ヲ買牧スル
ト云フコトハ如何ナルコトデアルカ(拍手)
而シテ之ニ對シテ佐竹政府委員ハ又斯樣ナ
コトヲ言ッテ居リマス、「從來之ヲ政府ニ買收
シテ吳レト云フ建議案、請願ハナカッタカ
ト考ヘテ居リマス」重大ナルコトデアリマ
スカラ、諸君能ク御謹聽ヲ願ヒタイノデア
リマス、「之ヲ今囘買收致シマスノハ先刻
大臣カラ御說明アリマシタ如クニ水戶ヨリ
郡山ニ至ル鐵道ガ現ニ工事中デアリマス、
其關係カラ此鐵道ヲ國有トスル必要ガアル
ソレカラ越後鐵道ニ付テハ、第四十四、四
十六、四十八、此三議會ニ於テ請願ナリ
建議案ノ形ニ於テ、越後鐵道ヲ買收スルト
共ニ、白山、新發田間ニ新ニ線路ヲ設ケテ
吳レ、斯ウ云フコトガ衆議院ニ於テ三囘採
擇可決ニナッテ居リマスソレカラ陸奧鐵
道ハ是モ議會ニ請願或ハ建議トシテ現ハ
レタコトハナイノデアリマスガ、水戶鐵道
ト同樣ニ、五所河原、能代間、五能線ノ一
部ニ當ッテ居リマシテ、此鐵道ヲ經由シテ、
更ニ國有線ノ先キニ延ビテ居ルノデアリマ
スカラ、是モ水戶鐵道ト同樣ニ買收ノ必要
ガアル」斯樣ニ述べテ尙ホ最後ニ「此豫算
ガ通過致シマスレバ、此鐵道ヲ利用シテ
國有線ノ工事ヲ致スト云フコトハ最モ適當
ト考ヘマシテ、提案ヲシタノデアリマス、
隨テ此二鐵道ハ豫算ニ關係ノアル買收鐵道
デアリマス」斯樣ニ佐竹政府委員ガ述ベラレ、
ソレカラ之ニ對シテ工藤君ハ如何ナルコト
ヲ質問シテ居ルカ、是ハ憲政會ノ工藤君ガ
述べタ點ヲ私ハ反駁シ且ツ賛成スル所ハ賛
成シテ見タイト思フノデアリマス、工藤君
ハ「大體其點ハソレデ宜シウゴザイマスガ」
ト云フ點カラ工藤委員ハ尙ホ繼續致シマシ
テ「此錄道ヲ政府ハ買上ゲテ以テ、經濟的
ニ、或ハ交通ノ統一ナドニ付テノ方途ヲ御
立テニナルコトハ洵ニ結構ナコトヽ考ヘマ
ス」今言ッタ通リ本黨ノ反對シ、我ガ政友曾
モ反對、政府自身モ實ハ嬉シクナカッタ此
案ニ對シテ頭カラ此鐵道ヲ政府ハ買上ゲ
テ經濟的ニ、又交通ノ統一ナドニ付テノ方途
ヲ御立テニナルコトハ洵ニ結構デアルト
ハ、洵ニ驚キ入ッタコトデアルト吾々ハ言
ハナケレバナラヌ(拍手)「此陸奧鐵道ニ對
シテ、政府ノ買收方針ト云フモノハ唯〓
單ニ此陸奧鐵道買收ト云フコトノミデハ此
鐵道ノ働ヲ十分ナラシムルコトハ出來ナイ
ト考ヘマス、此鐵道ハ御承知ノ通リ、陸奧
鐵道ノ起點トナッタ五所河原カラ秋田ニ通
ズル、日本海ノ沿岸ヲ通ル鐵道デアッテ、若
シ其線ガ完成シタ場合ニ於テ、此陸奧鐵道
ノ買收下同時ニ、豫定線ノ五所河原カラ小
泊ヲ經テ、サウシテ靑森ニ於テハ上磯地
方ト此豫定線ト相俟シテ働ヲナスモノト考
ヘテ居ル」斯樣ニズット說明シテ、サウシテ
「更ニ大釋迦方面ニモ最モ連絡ヲ宜クスル
ト云フコトモ一ノ方法ト考ヘテ、居リマス、
豫算分科會ニ於テ多少材料モ拜見致シマシ
タガ、此機會ニ於テ此働ヲ完全ナラシムル
意味カラ、左樣ナ點ニ付テドウ云フ考ヲ持ツ
テ居ルカ、一ツ御尋申シタイ」斯様ナ事ヲ
先ヅ質問ヲ致シテ居リマス、サウシテ之ニ
對シテ佐竹政府委員ハ(「簡單々々」ト呼フ
者アリ)簡單ニヤル積リデアリマスケレド
モ委員會ノ此經過竝ニ之ニ對スル應答ハ。
マダ十枚カラアリマス、モウ少シ御辛棒ヲ
願フコトニ致シタイト思ヒマス、速記錄ト
云フモノヲ標準ニ、サウシテ此イケナイ所
ヲ反駁スルト云フコトガ、所謂討論ノ價値
デアルト私ハ思ッテ居ル、之ニ對シテ佐竹
政府委員ハ「只今ノ御質問ノ第一點デアリ
マス、靑森カラ小泊ヲ經テ五所河原へ參リ
マス豫定線デアリマスガ」云々ト答辯シタノ
ニ對シテ、工藤君ハ簡單ニ「大體是デ止メマ
ス、他ノ人ノ質問ヲ妨ゲマスカラ」ト言ッテ
居ル、卽チ憲政會ノ委員ハ斯ウ云フ鐵道ノ
買收法案ヲ頭カラ鵜呑ミニシテシマウト云
フコトハ贅辯ヲ費ス工藤君ガ、何ニモ他
ニ言ウテ無イ點カラ見テモ是ハ明白デア
ルト思フ、而シテ栗林委員ガ「參考書類ガ
交付ニナッテ居リマシテ、買收價格ハ記載
シテアリマスガ、勿論是ハ地方鐵道ノ
買收規程ニ依シテ割出スコトハ容易デ
アルガ、各自ガ割出シマスノハ一寸勝
手ガ惡ウゴザイマスカラ、御手許ニ各
鐵道ノ買收價格ノ御調ガアリマスレバ
ソレヲ御〓ヲ願ヒマス」斯樣ニ言ッテ、本黨
ノ栗林君ガ之ニ對シテ詳細ナル調査ヲ遂
ゲンコトヲ申出タノデアリマス之ニ對シテ
佐竹政府委員ハ「地方鐵道法ノ買收價格ニ
關スル計算ノ標準ガ定。テ居ルノデアリマ
シテ、最近ノ會社ノ決算期ヲ本トシテ過去
三年間ノ收益ノ割合ニ依テ勘定ヲ致スノデ
アリマスガ、ソレデアリマスカラ此案ガ可
決サレマスレバ、こ愈〓之ヲ實行スルニ當リ
マシテ、買收ノ時期ガ何時ニナルカト云フ、
其時期ノ決メ方ハ會社ニ依テ-會社ノ決
算期ガ」云々ト云フノデ、此狀態ヲ大體ニ
報告ヲシテ居リマス、之ニ對シテ栗林君ハ
「尙ホ御尋致シマス」ト云フノデ此決算ノ狀
態ノ報告ニ對シテ、斯ウ云フ質問ヲ致シテ
居リマス、「公債ハ何分利デ、額面デスカ市
價デスカ」、之ニ對スル佐竹政府委員ノ答辯
ハ「此公債ハ十五箇年滿期ノ五分利公債デ
アリマス」云々トナッテ居リマスガ、此時
ニ工藤君カラ「買收價格ノコトニハ暗イノ
デスガ算定ノ基礎ハドウナッテ居リマス
カ」云々ト云フ質問ヲ試ミテ居リマス」斯
ウ云フ點ニ於キマシテ、果シテ買收價格ト
云フモノハ今言ウタ市價デアルカ或
如何ナル所ノ買收方法ヲ爲スノデアルカト
云フヤウナ點ニ付キマシテモ怪シイ幾多
ノ點ガアルカラ之ヲ追窮シタノデアッテ
是ハ全ク今言フ通リ、價格ノ算定、或ハ決
算期ノ問題、其報告ノ問題、有ユル問題ニ
付テ栗林君ノ質問ノ要旨ハ何處ニアルカト
言ッタナラバ、全ク此價格ノ定メ方ガイカ
ヌト云フコトガ、此買收ニ重大ナル關係ヲ
持ッテ居ツタト云フコトハ內部的ニ爭フベ
カラザル事實デアルト思シテ居リマス、是ダ
ケノ質問ヲ爲シテ、之ニ對シテ佐竹政府委
員ハ、大體ノ說明ヲ致シテ居リマス、其利
益ノ點ニ付テノ說明「地方鐵道法ノ三十一條
ニ、其買收ノ計算方法ガ定マッテ居リマス」
斯樣ニ云ウテ買收方法ニ付テ大體述べラレ
テ居リマスガ、「五分ノ收益ノ會社ナラバ
丁度建設費ダケデ買フ尤モ其金ハ公債ノ
額面デ交付致シマスカラ、會社ノ百圓ノ公
債ガ九十圓カ九十二三圓デアリマスカラ、
ソレダケハ建設費ノ中ニ入レルノデス」斯
様ニ云ッテ居ル、併ナガラ此現在ノ會社ノ百
圓ノ公債ガ、果シテ九十圓ノ價値ガアッタ
カ否ヤカト云フコトヲ、吾々ハ先ヅ第一
ニ疑ッテ居ルノデアリマス、斯樣ニシマシ
テ、尙ホ續イテ工藤君ガ「モウ一ツ伺ヒマ
ス」(「大キイ聲デ願ヒマス」ト呼フ者アリ)
此位大キイ聲デヤッテ居レバ、大抵聞エル
ト思ヒマス、而シテ尙ホ之ニ對シマシテ、
佐竹政府委員ハ「水戶鐵道ノ場合ヲ申シマ
スト、會社ノ資本金ハ五十万圓デアリマシ
テ、全額拂込デアリマスガ、會社ノ建設費
ハ、大正十五年ノ上半期末ニ於テ八十万三
千圓餘ニナッテ居リマス、其八十万三千圓
ト云フノガ、買收ノ時ニ於ケル建設費ト致
シテ居ルノデアリマス」斯樣ニ言ッテ居ル
(「大キイ聲デヤレ」ト呼フ者アリ)爾來私ハ
演說ニ於キマシテモ相當大キイ聲デアルノ
デアリマスカラ、願クハ、諸君ガ謹聽セラ
レタナラバ能ク分ルト思ヒマスカラ、御靜
肅ニ願ヒタイト思フノデアリマス、(「政友
會ダカラ議長ガ許スノダラウ」ト呼フ者ア
リ)何ナラ議長ノ交代ヲ願ッテ十二時マデ
ヤリタイト思ヒマス、水戶鐵道ノ此場合ノ
大體ニ付テ、佐竹政府委員カラ說明ガアツ
タ、吾々ハ此速記錄ヲ基礎ニシテ、此法案
ハ如何ニ重大デアルカト云フコトヲ、申述
ベルノデアリマス、吾々ハ速記錄ヲ見ルト
云フコトガ最モ時宜ニ適シ、又討論ノ基礎
ヲ成スト思フノデアリマス(「速記錄ハ家デ
讀メ」ト呼フ者アリ)速記錄ヲ家デ讀シデ
ハ速記ニ載ラナイカラ仕方ガナイ、議會
デヤラナケレバ討論ニナラナイノデアリマ
スカラ、暫ク御〓聽ヲ願ヒタイ、斯樣ニ致
シマシテ、佐竹政府委員ハ、大體之ニ對シ
テ說明ヲ試ミテ居ル、是ハ數字ニ關スル點
デアリマスカラ多ク述ベマセヌ、併ナガラ、
工藤委員ハ之ニ對シテ斯樣ニ述ベテ居リマ
ス「陸奧鐵道ハ自分ノ〓里デスカラ能ク鐵
道ノ狀態ハ分シテ居リマスガ(此時發言スル
者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=123
-
124・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=124
-
125・原惣兵衞
○原惣兵衛君(續) 「〓シテ私設鐵道ト云
フモノハ成ルベク金ヲ使ハズニ、利益ヲ擧
ゲテヤッテ居ルカラ、國有鐵道ニ比スレバ設
備ハ非常ニ惡クナッテ居ル、故ニ此五線ヲ買
牧シタ後ニ於テ、必ズ政府ハ相當ノ改良費
ヲ掛ケテ、他ノ國有鐵道ト同樣、若クハソ
レニ準ズル所ノ設備ヲスルデアリマセウ
ガ、ソレニ對スル採算上ノ調査デモ出來テ
居リマスカ」(此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=125
-
126・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=126
-
127・原惣兵衞
○原惣兵衞君(續) 諸君然ラバ之ニ對スル
工藤委員ノ說ヲ申述ベルト此鐵道ハ國有
鐵道ニ比スレバ設備ハ非常ニ惡クナッテ居
ル此私設鐵道ガ惡クナッテ居ルカラ將
來大ニ改革スル必要ガアリマスカト、斯樣
ニ鐵道ノ惡イコトヲ知リ、價値ノナイ鐵道
ヲ買上ゲタト云フ點ニ付テ、吾々ハ反對セ
ザルヲ得ナイノデテル、(拍手)或ハ之ニ對
シテ議事ノ妨害デアルト仰セニナルケレド
モ、吾々ハ飽クマデ此鐵道法案ニ對シテ反
對ノ意見アルヲ述ベルコトニ於テ、言論ノ
自由ヲ持シテ居ルノデアルカラ、今夜ノ十
二時マデ續ケルト云フコトヲ覺悟シテ掛シ
テ居ルノデアル、諸君、斯樣ニシマシテ此
工藤鐵男君ノ質問ニ對シテ、佐竹政府委員
ハ此樣ナ事ヲ言ッテ居ル「買收後ノ改良費ニ
付テハ先刻モ御答申シマシタガ····」(「議事
ヲ妨害シテ居シテ何ダ」ト呼フ者アリ)吾々
ハ正義ノ觀念デ約束ヲ守ッテヤッテ居ル、吾
吾ガ言論ノ續ク限リ討論ヲスルノガ何ガイ
ケナイノデアル、吾々ハドコマデモ之ヲ土
臺ニシテ討議ヲスルト云フコトニ於テ差
支ナイノデアル「買收後ノ改良費ニ付テハ
先刻モ御答申シマシタガ大體斯ウ云フ事ニ
ナッテ居リマスト佐竹政府委員ハ言ッテ居ル
ノデアリマス、「現ニ水戶鐵道ハ三錢餘ニ
ナッテ居リマスガ、國有鐵道ハ二錢五厘デ
アリマスカラ、其方デ收入ガ減リマスケレ
ドモ、併シ之ヲ國有トシテ經營致シマスレ
バ車輛或ハ其他ノ鐵道營業上ノ營業費ノ
節約ガ出來ル云々」ト斯樣ニシテ之ヲ說イ
テ居ルノデアリマス、「鐵道ハ二年三年ノ後
ニハ段々利益ガ殖エテ來マスカラ」斯樣ニ
言ッテ居リマス、而シテ工藤委員ハ之ニ對
シテ、一モ二モナクドコマデモ政府委員ノ
意見ニ贊成ヲシテ居ルノデアリマスカラ、
私共ハ全ク本案ガ之ヲ見マシテモ黨勢擴張
ノ爲メノモノデアルト云フコトハ明瞭デア
ルト思フノデアリマス(拍手)而シテ之ニ續
キマシテ、松井委員ハ「先程ノ越後鐵道ノ
事ニ付テ伺ヒマスガ、越後鐵道ハ四十四議
會ソレカラ四十六議會、四十八議會此
三囘ニ建議ガ出テサウシテ衆議院ヲ通過シ
テ居ル、四十四議會、四十六議會ノ時提案
者ハドナタデアリマシタカ一寸聞キタイ」
斯ウ云フ質問ヲ先ヅ致シテ居リマシテ、而
シテ岡本委員ハ「餘リ素人ノヤウナ御尋デ
アリマスガ、先刻工藤君カラノ御質問ノ御
答辯ニ付テ一寸念ノ爲伺シテ置キタイト思
ヒマスガ、買收價格ノ基礎ニナル建設費
ハ、會社ノ利益步合ニ依ッテ算出シタ相當
ノ費用ヲ加算シタモノガ買收價格ニナル、
斯ウ云フヤウナ御答ニ承ッタ、サウシマスト
買收價格ノ基礎ノ建設費ノ事デアリマス
ガ、此間ノ經過年限ノ多イ少イモアリマセ
ウ、物價ノ高低等モアリマヤウ、或ハ現在
御調査ニナッタヤウナ建設費ト會社ノ財產
目錄ニアルヤウナモノト、色ニ喰違ガ出來
ルヤウニ思ヒマスガ、ソレハドウ云フ標準
デ建設費ト云フモノハ決リマスカ」斯樣ナ
質問ヲ試ミテ居リマス、斯樣ニシテ本案ノ
內容ニ付テハ、今言ウタ通リ先ヅ松井委員
ガ御尋致シマシタ、此買收ニ付テハ幾多ノ
建議案ガ出、請願ガ出テ居ルノデアルガ、
一體ソレハドウ云フ人ガ出シタノデアルカ
ト云フ質問ニ對シテ、政府委員ハ不用意ニ
モ之ニ對シテ何等答辯ヲ與ヘル事ガ出來ナ
イヤウナ狀態ノ本案デアル、私等ハ之ヲ見
マシテモ十分ニ其理由ガ分ルト思フノデア
リマス、而シテ工藤鐵男君ハ曰ク「私ハ買
收價格ノ事ニハ暗イノデスガ、算定ノ基礎
ハドウナッテ居リマスカ、例ヘバ資本額ヲ押
ヘテヤルノカ、羽越鐵道ハ全部拂込ニナッ
テ居ル、越後鐵道ハ借入金ガ四百何万圓ト
ナッテ居ルガ、其算定ノ基礎ヲ御示ヲ願ヒ
マス」工藤君ナドハ今モ反對演說ヲサレマ
シタガ、私ハ買收價格ノ事ハ暗イノデス、
所謂分ラナイ人ガ吾々ノ修正案ニ反對スル
ト云フコトハ何タル事デアルカ、其調査自
體ノ內容モ分ラナイ人ガ、我黨ノ志賀君ノ
修正案ニ反對スルコトハ、本當ニ鐵道自體
ニ對スル買收ニ贊成デナクシテ、全ク黨派
的カラ來タ所ノ賛成ナリト吾々ハ論斷セザ
ルヲ得ナイ(拍手)之ニ對シテ佐竹政府委員
ハ曰ク「地方鐵道ノ第三十一條ニ其買收ノ
計算方法ガ定シテ居リマス」ト計算方法ヲ
ズット述ベテ居ルノデアリマス、斯樣ニ致
シマシタ點カラ見テモ、請願ヲ誰ガシタカ
モ政府ガ知ラナイ、或ハ價格ノ問題ヲ知ラ
ナイ、斯ウ云フ工藤君ノ此委員會ノ報告、
而シテ此反對ノ演說ニ對シテ、吾々ハドコ
マデモ反對ヲシナクテハナラヌノデアリマ
ス、而シテ先刻工藤君カラノ御質問ノ御答
辯ニ付テト云フノデ岡本君ガ「念ノ爲伺ッテ
置キタイト思ヒマスガ買收價格ノ基礎ニ
ナル建設費ハ會社ノ利益步合ニ依テ算
出シタ相當ノ費用ヲ加算シタモノガ買收價
格ニナル斯ウ云フヤウナ御答ニ承ッタ、サ
ウシマスト買收價格ノ基礎ノ建設費ノ事デ
アリマスガ北間ノ經過年限ノ多イ少イモ
アリマセウ、物領ノ高低等モアリマセウ、
或ハ現在御調査ニナッタヤウナ建設費ト會
社ノ財產目錄ニアルヤウナモノト色と喰違
ガ出來ルヤウニ思ヒマスガ、ソレハドウ云
フ標準デ建設費ト云フモノハ決リマスカ、
念ノ爲ニ伺ッテ置キマス」斯樣ニ言ッテ居リ
マスガ、要スルニ本案ヲ是カラ說明ヲ致シ
マスレバマダ到底〓夜ノ十二時マデヾハ
盡キナイト思ッテ居リマス、併ナガラ其工藤
君竝ニ井本君ガ自分ノ惡イコトガ分ッテ
御謝リニナルナラバ敢テ私ハ此討論ヲ續ケ
ナイデ降壇致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=127
-
128・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 討論ハ終結致シマシ
タ、採決ヲ致シマス、先ヅ志賀和多科君外
一名提出ノ修正案ニ付テ採決ヲ致シマス、
之ニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
(贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=128
-
129・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマ
ス、仍テ修正案ハ否決サレマシタ、次ニ本
案ノ委員長報告ハ可決デアリマス、委員長
報告ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=129
-
130・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ本案ハ委員長報告ノ通リ可決致シ
マシタ、之ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=130
-
131・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=131
-
132・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=132
-
133・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
一水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
陸奧鐵道株式會社、苦小牧輕便鐵道株
式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵
道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=133
-
134・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手)次ニ鐵道敷設法中改正
法律案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致
シマス-第二讀會ヲ開クニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=134
-
135・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=135
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136・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委貝長報告通リ可
決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=136
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137・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
〓、議案全部ヲ議題ニ供シマス
鐵道敷設法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=137
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138・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=138
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139・砂田重政
○砂田重政君 本日ノ交涉ニ於テ更ニ緊急
質問ヲヤル豫定ニナッテ居ッタノデアリマス
ガ、之ヲ次ノ會議ノ劈頭ニ於テ爲スト云フ
コトノ條件ニ於テ、本日ハ此程度ニテ散會
セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「反對」ト呼ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=139
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140・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 砂田君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ヒ其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=140
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141・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 暫ク御待チ下サイ
砂田君ノ動議ニ御異議ナシト認メマス
仍テ動議ノ如ク決シマシタ、諮問事項ガア
リマス、第八部決算委員山田助作君、第九
部決算委員本暮武太夫君ノ兩名ヨリ常任委
員辭仕ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=141
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142・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行
ヒ、御漫〓アランコトヲ望ミマス、次囘ノ
日程ハ追テ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會
午後七時三十二分散會
衆議院議事速記錄第二十一號中正誤
頁段行誤正
四六一一二五聲ヲ聲ニ
四四一二二〇守ルト守ルナト
同三二政府政務発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02219270308&spkNum=142
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