1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二年三月十五日(火曜日)午後一時二十七分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第二十五號
昭和二年三月十五日
午後一時開議
質問
一 米國に於ける排日行爲に關する質問(加藤十四郎君提出)
二 地方自治の政黨政治化に關する質問(三浦數平君提出)
三 司法部の機密に關する質問(加藤鯛一君提出)
四 鐵道電化に關する質問(河崎助太郎君外一名提出)
五 滋賀縣縣農會、農業倉庫竝信用組合等に於ける背任横領事件簇出に付善後策に關する質問(平井光三郎君外一名提出)
六 國産奬勵に關する質問(宮島幹之助君提出)
七 下關漁港修築に關する質問(秋田寅之介君提出)
八 電氣事業に關する質問(原惣兵衞君提出)
九 馬政に關する質問(八田宗吉君提出)
十 國際體育競技補助金に關する質問(平沼亮三君提出)
十一 帝都復興計畫に關する質問(横山勝太郎君提出)
十二 國定教科書翻刻に關する質問(加藤知正君提出)
十三 飛行事業竝補助艦に關する質問(長岡外史君提出)
━━━━━━━━━━━━━
第一 防火地區内借地權處理法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 保税倉庫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 保税工場法案(政府提出) 第一讀會
第五 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 商工會議所法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 國有財産整理資金特別會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 國産奬勵の爲の會計法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 兌換銀行劵整理法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 商法中改正法律案(三浦數平君提出) 第一讀會
第十二 恩給法中改正法律案(長峰與一君外三名提出) 第一讀會
第十三 恩給法中改正法律案(松實喜代太君外三名提出) 第一讀會
第十四 恩給法中改正法律案(一柳仲次郎君外六名提出) 第一讀會
第十五 恩給法中改正法律案(山枡儀重君外八名提出) 第一讀會
第十六 治安警察法中改正法律案(山枡儀重君外四名提出) 第一讀會
第十七 大正十四年法律第四十七號衆議院議員選擧法中改正法律案(坂東幸太郎君外三名提出) 第一讀會
第十八 架空索道の抵當に關する法律案(清瀬一郎君提出) 第一讀會
第十九 被害水田改良事業助成法案(星廉平君外二名提出) 第一讀會
第二十 金鵄勳章年金に關する法律案(古川清君外二名提出) 第一讀會
第二十一 北海道御料拂下地免租年期に關する法律案(東武君外三名提出) 第一讀會
第二十二 借地法中改正法律案(作間耕逸君外二名提出) 第一讀會
第二十三 大正十五年法律第七十四號中改正法律案(市制中改正の件)(坂東幸太郎君外五名提出) 第一讀會
第二十四 大正十五年法律第七十五號中改正法律案(町村制中改正の件)(坂東幸太郎君外五名提出) 第一讀會
第二十五 大正十五年法律第七十六號中改正法律案(北海道會法中改正の件)(坂東幸太郎君外五名提出) 第一讀會
第二十六 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(福田五郎君外八名提出) 第一讀會
第二十七 「ローマ」字を小學校教科目中に加ふることに關する法律案(松本君平君提出) 第一讀會
第二十八 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(竹原樸一君外十六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 造林助成法案(川崎安之助君外十一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 京都市に關する法律案(森田茂君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 横濱市に關する法律案(平沼亮三君外二名提出 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 大阪市に關する法律案(武藤山治君外十一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十三 神戸市に關する法律案(折原巳一郎君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十四 名古屋市に關する法律案(加藤鐐五郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十五 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(横山勝太郎君外八名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=0
-
001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第一號)昭和二年度歳入歳出總豫算追加
案
(第二號)昭和二年度歲入歳出總豫算追加
案
(特第一號)昭和二年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案
(特第二號)昭和二年度各特別會計歲入歳
出豫算追加案
(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
(以上三月十二日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
有珠岳洞爺湖登別溫泉羊蹄山定山渓支笏
湖ヲ抱擁スル國立公園設定ニ關スル建議
案
提出者
手代木隆吉君一柳仲次郞君
澤田利吉君山本厚三君
神部爲藏君小池仁郞君
淺川浩君
雄物川改修工事速成ニ關スル建議案
提出者
田中隆三君榊田清兵衞君
池田龜治君井出繁三郞君
村山喜一郞君鹽田團平君
信太儀右衞門君
尼港事變殉難者遺族及被害者ノ損害賠償
ニ關スル建議案
提出者
池田泰親君志波安一郞君
中村嘉壽君藤井敬愼君
向井倭雄君砂田重政君
黑住成章君一柳仲次郞君
横手本莊間鐵道ヲ鐵道網編人ニ關スル建
議案
提出者
村山喜一郞君田中隆三君
池田龜治君鹽田團平君
信太儀右衞門君
衞生行政機關ノ統一改善ニ關スル建議案
提出者
宮島幹之助君宜保成晴君
八木逸郎君大城幸之一君
加藤鐐五郎君山谷德治郞君
土屋〓三郞君
岡山縣ニ國立種禽場設置ニ關スル建議案
提出著
高草美代藏君岡田忠彥君
小橋藻三衞君星島二郞君
難波〓人君
璋春被害民救濟ニ關スル建議案
提出者.
戶澤民十郞君荒川五郞君
一柳仲次郞君砂田重政君
中村嘉壽君
(以上三月十二日提出)
別府市ニ關西美術學校設置ニ關スル建議
案
提出者
三浦數平君元田肇君
松田源治君金光庸夫君
福岡壹岐對馬長崎間電話開設ニ關スル建
議案
提出者
牧山耕藏君則元由庸君
森肇君志波安一郞君
中林友信君
長崎五島佐世保間電話開設ニ關スル建議
案
提出者
牧山耕藏君則元由庸君
森肇君志波安一郞君
中林友信君寺田市正君
五島珊瑚採取業奬勵ニ關スル建議案
提出者
牧山耕藏君則元由庸君
森肇君志波安一郞君
中林友信君寺田市正君
大石大君原田佐之治君
(以上三月十四日提出)
議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
蠶絲業政策ニ關スル質問主意書
提出者二木洵君
(以上三月十二日提出)
專門學校卒業生ノ學士號ニ關スル質問主
意書
提出者山下谷次君
(以上三月十四日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
加藤十四郞君提出米國ニ於ケル排日行爲
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
三浦數平君提出地方自治ノ政黨政治化ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
加藤鯛一君提出司法部ノ機密ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
河崎助太郎君外一名提出鐵道電化ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
平井光三郞君外一名提出滋賀縣縣農會、
農業倉庫竝信用組合等ニ於ケル背任横領
事件簇出ニ付善後策ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
秋田寅之介君提出下關漁港修築ニ關スル
質問ニ對スル答辯書、
原惣兵衞君提出電氣事業ニ關スル質問ニ
對スル答辯書
八田宗告君提出馬政ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
横山勝太郞君提出帝都復與計畫ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
加藤知正君提出國定〓科書翻刻ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
(以上三月十五日受領)
米國ニ於ケル排日行爲ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十五日
提出者加藤十四郞
米國ニ於ケル排日行爲ニ關スル質問主
意書
本期議會劈頭ニ於ケル外相ノ對外演說中
日米問題ニ關スル點ハ頗ル簡單ニシテ且
抽象的ナル爲遺憾トスヘキモノ尠シトセ
ス是レ左項ニ關シテ其ノ所見ヲ要望スル
所以ナリ卽チ
外相ハ千九百二十四年ノ米國移民
法中日本人ニ對スル差別待遇ハ遺憾
乍ラ未タ解決ニ至ラスト說述サレシ
カ該差別待遇ノ根元ハ決シテ米國憲
法又ハ中央議會ノ制法ヨリ發源スル
ニアラスシテ全然人種的僻見ニ基因
セル妄動ナリトハ思惟セラレサルヤ
若然ラストセハ他ニ眞ノ原因アリ
ヤ
二凡ソ國際關係資格ハ對手雙方共必
ス國家タルヲ要スルモノニシテ人種
又ハ民族ハ國際對手タルヘキ資格ア
ルモノニ非ス從テ對等條約ヲ締結セ
ル日米兩國關係ハ如何ナル點ヨリ見
ルモ人種的僻見ノ故ヲ以テ差別待遇
ノ基調ト爲スヘキモノニ非ス是ヲ以
テ米國ノ排日行爲ハ國際主體無視ノ
モノトハ思惟セラレサルヤ
三米國ノ制定法中露骨ニ排日的明文
ノ正條ヲ具有スルニ非サルニ彼ノ州
法中ニ「市民トナリ又ハ歸化シ能ハ
サル外國人」ナル語句アルヲ奇貨ト
シ彼ノ判官カ在米邦人ノ爲ニ不利益
ニ之ヲ解釋シ同國內或州法廷ノ判決
ヲ以テ國際最上法タル對等條約ヲ凌駕
スルノ力アリトスルカ如キハ尠クモ
國際禮誼ヲ蹂躪スルモノナリトハ思
惟セラレサルヤ
四外相ハ米國ノ制度ハ特殊ニシテ國
情亦同シカラサルカ故ニ相互ニ理解
ヲ持ツコト必要ナリト說述サレシカ
原來相互ノ理解ナルモノハ雙務的ナ
ルヲ要スルカ故ニ締約諸國中ニハ我
カ國ト制度及國情ヲ異ニスルモノ多
キニ拘ラス我ニ對シテ差別的待遇ヲ
爲スモノ稀レナリ而シテ我カ國ハ米
國ニ對シ十分ノ理解ヲ有シ國籍法中
ノ歸化事項其ノ他公私一般ノ關係ニ
於テモ米國ニ對シテ寸毫ノ差別待遇
ヲ爲ササルニ關セス締約國中獨リ米
國ノミ我カ國ニ對シテ差別的待遇ヲ
敢テスルハ倒行逆施モ亦甚シトハ思
惟セラレサルヤ
五過般外電ノ報スル所ニ依レハ布哇
出生邦人ニシテ且米國軍役ニ服セル
者ハ當然市民權享有ノ資格者ナルニ
拘ラス彼ノ法廷ハ近時斯權否認ノ判
決ヲ下セリト傳ヘラルルカ是レ果シ
テ事實ナリヤ若事實ナリトスレハ既
得權侵害ナリトハ思惟セラレサルヤ
六外相ハ近時米國ニ於テ日本ニ對ス
ル正シキ同情的理解著シク進ミ來レ
リト說述サレシカ我カ政府タルモノ
袖手傍觀自然ノ成行ニ一任シ米國ノ
反省ト自制ヲ待ツカ如キハ計ノ得タ
ルモノニ非サルカ故此ノ際進ムテ積
極的ニ適當ノ手段ヲ講シ彼ニ對シ有
爲ノ啓發行爲ヲ試ムルコト甚タ必要
ナリトハ思惟セラレサルヤ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員加藤十四郞君提出米國ニ於ケ
ル排日行爲ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤十四郞君提出米國ニ於
ケル拼日行爲ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
千九百二十四年ノ米國移民法中日本
人ニ對スル差別待遇條款ノ規定セラル
ルニ至リタル事情及動機ニ付テハ大正
十三年七月一日帝國議會ニ於ケル外務
大臣演說中ニ詳細セリ政府ハ今日ニ於
テモ同一ノ見解ヲ有ス
二質問第二點ニ付テハ亦前顯外務大臣
ノ演說ヲ參照セラレムコトヲ望ム
三未國各州ノ制定スル法律ノ解釋ハ同
國ニ於ケル管轄裁判所ノ判決ヲ待ツノ
外ナシ各州ノ法律ト國際條約トノ關係
ニ付テハ合衆國憲法ニ依ルモ亦同國內
何レノ裁判所ノ判決ニ依ルモ各州ノ法
律カ國際條約ヲ凌駕スルノ效力アルコ
トヲ認メタルモノナシト思惟ス
四本邦ノ法制ニ於テ米國ニ對シ何等差
別的待遇ヲ爲ササルニモ拘ハラス米國
ノ法制力我ニ對シ差別待遇ヲ爲スハ遺
憾ナリ是レ帝國政府カ大正十三年五月
三十一日米國政府ニ宛テタル公文中明
ニ抗議セル要點ニシテ其ノ抗議ハ今日
ニ於テモ維持スル所ナリ本問題ニ關ス
ル帝國政府ノ主張ニ付テハ右公文ヲ參
照セラレムコトヲ望ム
五布哇出生人ハ米國軍役ニ服セルト否
トヲ問ハス米國市民權ヲ有スルハ米國
憲法ノ規定スル所ニシテ米國法廷カ之
ヲ否認スルノ判決ヲ下セルコトアルヲ
聞カス帝國領土內ニ於テ出生シ後テ帝
國ノ國籍ヲ有スル者ハ過般歐洲大戰中
米國ノ軍役ニ服セル場合ト雖之カ爲米
國ニ歸化スルノ權能ヲ取得スルモノト
解釋スルコトヲ得ストノ判決アリタル
事實ナリ
六他國民ノ反省ト理解トヲ得ルニハ自
然ナル順序ニヨルヲ要スヘク政府ハ從
來ノ態度ヲ持續スルヲ最善ノ策ト思考
ス
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
外務大臣男爵幣原喜重郞
地方自治ノ政黨政治化ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十七日
提出者三浦數平
地方自治ノ政黨政治化ニ關スル質問主
意書
市町村ハ地方公共〓體中最下級ノ自治體
ナルヲ以テ其ノ施政ノ方針白ラ國府縣ト
其ノ趣ヲ異ニシテ専ラ一地方ノ康寧利福
ヲ基調トス卽チ市町村ニ於テハ市町村行
政ノ執行機關タル市町村長ノ選任ヲ議決
機關ノ權限ニ一任シ且其ノ所用ノ經費ヲ
住民ノ負擔タラシメタルカ如キハ固ヨリ
自治ノ本質上當然ノ制度ト謂ハサルヘカ
ラス然ルニ近時其ノ運用ノ方法漸ク國府
縣ト其ノ軌ヲ一ニシテ政黨政治ノ色彩頗
ル濃厚ト爲リ或ハ黨ヲ樹テ派ヲ設ケテ相
爭フノ結果輙モスレハ倒行逆施ス政府モ
亦其ノ勢ヲ助長セムトス而モ猶自治ノ制
度ハ炳乎トシテ存ス故ニ市町村ノ當局者
ハ現ニ其ノ歸趣ニ述フテ岐路ニ佇立ス政
府ハ果シテ此ノ現象ヲ如何ニ觀ルカ
惟フニ從來歷代ノ政府ハ市町村ノ自治ヲ
政黨政治ノ圈外ニ置キテ平和穏健ノ發達
ヲ企圖シ學者モ亦其ノ自主獨立ヲ力說ス
ル所アリシカ現政府ハ遽ニ其ノ態度ヲ一
變シテ其ノ機關ノ構成ニ際シテハ一黨一
派ノ爲ニ聲援ヲ與へ或ハ其ノ向背ニ依リ
テ監督ヲ一三ニスルカ如キ事例多シ是ヲ
以テ所在ノ市町村長及議員ハ自ラ黨爭ヲ
事トシ延テハ爲政者ニ迎合スルノ已ムヲ
得サルニ至ル斯クシテ地方ノ自治ハ日一
日滅亡ニ傾キ其ノ前途寔ニ憂慮ニ堪ヘス
乃ヲ政府ノ所見ヲ糺ス所以ナリ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員三浦數千君提出地方自治ノ政
黨政治化ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
[別紙]
內務省閣地第六號
衆議院議員三浦數平君提出地方自治ノ
政黨政治化ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
市町村行政ノ監督ニ付テハ政府ハ一黨一
派ニ偏スルカ如キコトナク至公至平其局
ニ當リ以テ自治ノ圓滿ナル發達ヲ庶錢シ
ツヽアリ從テ質問者ノ謂フカ如キ事實ナ
シ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
內務大臣濱口雄辛
司法部ノ機密ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十七日
提出者加藤鯛一
司法部ノ機密ニ關スル質問主意書
昭和二年一月十九日衆議院本會議議場ニ
於テ議員鳩山一郞君ハ「政府ハ朴準植、
金子文子ニ對スル減刑奏請ノ書類竝同人
等ニ對スル檢事總長ノ減刑奏請申立書及
其ノ添附書類ヲ提出スヘシ」トノ決議案
ノ說明演說中判事懲戒法ニ依リ絕體秘密
タルヘキ今村東京地方裁判所長ノ懲戒栽
判ノ內容ヲ論述シタリ卽チ
朴烈-吉益檢事正ガ千葉ニ居ツテ
調ベタトキニハ五月二日ニ非ズト云フ
コトノ明言ヲ吉益檢事正ガ言ッタデハ
ナイカ云々
二立松判事ガ言葉ニ代ヘテ出シタト云
フ所ノモノハ殆ド虚僞デアルト云フコ
トヲ、神聖ナル裁判所ニ於キマシテ證
言シテ居ルノデハナイカ云々
右ノ如クムハ或ハ懲戒裁判所ノ當該係官
カ鳩山一郞君ト內通シテ居タルニハアラ
サルカト國民ニ疑ヲ抱カシム若又內通ノ
事實ナシトスレハ鳩山一郞君ハ故意ニ司
法部ノ威信ヲ失墜セシメムトシテ荒唐無
稽ノ言ヲ弄シタリトノ結果ニ至ルヘシ
右ニ關シ司法部ハ機密ヲ漏洩シタルコト
ナキヤ
右及質問也候
昭和二年三月十五日
内閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員加藤鯛一君提出司法部ノ機密
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤鯛一君提出司法部ノ機
密費ニ關スル質問ニ對スル答辯書
東京地方裁判所長今村恭太郞ニ對スル懲
戒裁判ニ關シ關係官吏ガ官ノ機密ヲ漏洩
シタル事實ヲ認メス
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
司法大臣江木翼
鐵道電化ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十七日
提出者河崎助太郞
外一名
鐵道電化ニ關スル質問主意書
政府ハ鐵道電化ノ大方針ヲ立テ東京市
內.郊外線、横須賀線、信越線中橫川輕
井澤間、中央線中東京甲府間ノミナラス
大幹線タル東北線中上野大宮間及東海道
線中東京沼津間ノ電化ニ著手シ漸次延長
シテ東海道線其ノ他主要幹線ヲ電化セム
トスル計畫ナルカ如シ果シテ然リトセバ
陸軍大臣及鐵道大臣ニ對シ左ノ質問ヲ爲
ス
一陸軍大臣ハ鐵道幹線ノ電化ハ國防上危
險ナシト考ヘラルルヤ
一鐵道大臣ハ經濟上如何ナル根據ニ依リ
鐵道幹線ノ電化ヲ計畫シ且實行シツツ
アリヤ
鐵道ノ電化ハ既ニ歐米ノ鐵道ニ普及シ
テ我カ國ノミ取殘サレ居ルモノニ非ス
世界各國中其ノ國鐵道ノ幹線ヲ電化シ
居ルハ只僅ニ米國ノ「シカゴ、ミルウオ
ーキー」鐵道ノ四百餘哩ニ過キス加之
同鐡道會社ハ曩ニ破產シテ昨今整理〓
算中ニ屬ス而シテ歐米諸國ニ於ケル鐵
道ノ電化カ單ニ支線又ハ涵養線ニ限ラ
レルハ畢竟スルニ歐米大陸ニ於テハ主
トシテ國防上ノ見地ヨリ米國ニ於テハ
主トシテ經費ノ點ヨリ電化ヲ否認スル
結果ナルカ如シ若獨佛ノ諸國カ其ノ鐵
道幹線ヲ電化シ居リタラムニハ彼ノ世
界大戰ハ半歲ナラサルニ勝敗カ決セラ
レタルヘシトハ萬人ノ等シク首肯スル
所ナリ何トチレハ飛行機等ニ依リ攻擊
カ發電所ニ集中スレハ其ノ破壞ハ甚タ
容易ナルニ反シテ其ノ修理ニ幾多ノ日
子ヲ要シ之カ爲軍隊ノ輪送ハ全ク杜絕
シ作戰上大ナル支障ヲ生スヘカリシカ
故ナリ
電化鐵道ノ缺點ハ一ハ送電線カ長距離
間縦横ニ架設セラレ且深山大澤ノ間ヲ
通過シ居ルカ故ニ故障類繁ニ起ルノミ
ナラス監視警護上非常ニ不便ニシテ微
微タル故障モ全線メ運轉ヲ遮斷スル點
ニアリテ有事ノ際ニ於ケル不安實ニ寒
心ニ堪ヘサルモノアリ
若斯ル場合ニ蒸氣機關車ヲ代用セムト
スルモ咄嗟ヲ場合養成ニ少クモ三箇年
ヲ要スル多數ノ運轉手ヲ集メルコトハ
困難ニシテ到底實行不可能ナリ
斯ル不利不安アルヲ以テ機械應用ノ先
進國タル歐洲各國殊ニ獨逸ニ於テハ電
氣業者及電氣機械業者カ盛ニ鐵道ノ電
化ヲ高唱シタルニ拘ラス陸軍參謀本部
ハ國防上ノ見地ヨリ斷乎トシテ之ニ應
セサリシ爲幹線鐵道ノ電化ヲ見ルニ至
ラスシテ聯合國ヲ相手トシテ大戰五年
ノ久シキニ堪ヘ得タリシナリ
米國ハ歐洲諸國ト異リ國防ハ主トシテ
海上ニ在ルヲ以テ軍事上ヨリ鐵道ノ電
化ヲ躊躇スルニ及ハサルモ經費ノ上ニ
於テ電氣機關車ハ蒸氣機關車ノ約二倍
ヲ要スルノミナラス發電所送電線等ノ
設備費ニ多額ヲ要シ且危險率大ナルヲ
以テ利害相償ハサルモノトシテ幹線電
化カ實現セラレサルモノナリ
右ノ如ク鐵道ノ電化ハ國防上ニ於テモ設
備費經費等經濟關係ニ於テモ將又危險
率ニ於テモ蒸氣鐵道ニ比シ不利不得策
ナルコト明白ナルニ拘ラス我カ國鐵道當
局者ハ鐵道電化ノ利益トシテ僅ニ輸送
カカ蒸氣鐵道ニ比シ若干優レルコトト
媒煙ナク旅客ニ快感ヲ與フルコトヲ擧
ケ且我カ國石炭含有量少ク水力電氣カ
豐富ナルヲ口實トスルモ炭層ノ壽命ハ
豫測ヲ裏切リ水力電氣ノ代價亦低廉ヲ
豫期シ難キ實情ニアルヲ顧慮セサルハ
甚夕了解シ難キ所ナリ政府ハ國防上竝
經濟上如何ナル根據ニ依リ我カ國鐵道
幹線ノ電化ヲ計畫シ且實行シツツアリ
ヤ明確ナル答辯ヲ求ム
右及質問候也
昭和二年三月十五日
内閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三君
衆議院議員河崎助太郞君外一名提出鐵道
電化ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員河崎助大郞君外一名提出鐵
道電化ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一鐵道ノ電化ハ敵國航空機ヨリノ爆擊等
ニ對シ比較的危害ヲ蒙ルノ虞多キハ免
レ得サル所ナリ然レトモ是カ實現ニ方
リ前記ノ不利ヲ極少ナラシムル如ク平
時ヨリ發電所等ノ數ヲ多クシ之ヲ適當
ノ位置ニ分散シテ配置シ且電力轉換供
給ノ方法ヲ策シ又蒸汽機關車ヲ利用ス
ル等輸送杜絕ニ應スルノ方法ヲ講シ得
ルヲ以テ其不利タルヤ絕對永續的ノモ
ノニアラス尙戰時必要ナル防護ノ方法ヲ
講スレハ現在政府ノ企畫シアル電化計
畫ハ國防上支障ナキモノト認ム
一國有鐵道ノ電化ハ動力ヲ經濟的使用、
輸送力ノ增加其他鐵道經營上ノ得失、
旅客竝從業員ノ待遇等ヲ考慮シ其ノ計
畫ヲ決定スルモノニシテ現在ニ於テハ
都市附近、勾配區間及隧道多キ區間ノ
電化ヲ實行シツツアルモノナリ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
陸軍大臣字垣成
鐵道大臣子爵井上匡四郞
滋賀縣縣農會、農業倉庫竝信用組合等
ニ於ケル背任横領事件簇出ニ付善後策
ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月十九日
提出者平井光三郎
外一名
滋賀縣縣農會、農業倉庫竝信用組合等
ニ於ケル背任橫領事件簇出ニ付善後策
ニ關スル質問主意書
滋賀縣縣農會役員某外數名ハ大正十
三年以來互ニ共謀シ縣農會附屬農業倉
庫ニ依託保管セル保管米約數千俵ヲ橫
領賣却シタルコト發見目下檢事局ニ於
テ取調中ナルモ其ノ被害高約十數萬圓
ノ巨額ニ達セリ更ニ縣下各地方農業倉
庫竝各信用組合ニ横領背任等ノ犯罪事
件續續暴露シ縣下ノ人心恟恟タルモノ
アリ之カ結果トシテ各銀行ノ預金取付
ヲ爲ス等財界ニ非常ナル惡影響ヲ及ホ
シ若善後處置ヲ誤ラムカ重大ナル結果
ヲ招來スヘキハ明ナリ斯ノ如キ不祥ナ
ル出來事畢竟農林省當局ノ監督其ノ宜
シキヲ得サリシ結果ニシテ其ノ責任ノ
重大ナルコト言ヲ俟タス農林大臣ハ如
何ナル責任ヲ執ラルルヤ
二縣農會ヲ解散スルノ意思ナキヤ否ヤ
三滋賀縣縣農會農業倉庫ハ賠償ノ能力
ナシ而シテ目下郡農會ニ責任ノ分擔ヲ
命シ郡農會ハ各町村ニ賠償金ノ割賦ヲ
命シツツアリ斯クテハ地方町村ヲ苦シ
マシムルコト甚シキモノアリ爲ニ自治
體ノ混亂ヲ招致スルコト當然ナリ此ノ
點ニ付如何ナル處置ヲ執ラルルヤ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員平井光三郞君外一名提出滋賀
縣縣農會、農業倉庫竝信用組合等ニ於ケ
ル背任橫領事件簇出ニ付善後策ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員平井光三郞君外一名提出滋
賀縣縣農會、農業倉庫竝信用組合等ニ
於ケル背任橫領事件簇出ニ付善後策ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
農會、產業組合及農業倉庫事業ニ關
シテハ農林大臣及地方長官ニ於テ夫々
監督シツヽアルモ本件ノ如キ事件ヲ未
然ニ防止スルヲ得ザリシハ甚ダ遺憾ト
スル所ナリ仍テ將來ハ一層監督ノ方法
ヲ嚴重ニシ督勵ノ機關ヲ充實シ以テ指
導監督上遺憾ナキヲ期セムトス
滋賀縣下ノ產業組合中ニハ本事件ニ關
聯シ組合長か販賣代金橫領ノ疑アリト
シテ目下大津地方裁判所檢事局ニ於テ
取調中ノモノ一件、地方農林主事監督
ニ際シ會々不正事件ヲ發見シ目下其ノ
善後處置ヲ講シツヽアルモノ一組合ア
ルモ之等ノ事實ニ因リ縣下ノ財界カ攪
亂セラレ各銀行カ取付ニ逢ヒタルカ如
キ事實ハ之ヲ認メス
二本件ハ縣農會使用入ノ不正行爲ニ係
ル刑事々件トシテ目下取調中ナルヲ以
テ其ノ結果犯罪ノ內容、損害ノ程度等
事情判明スルヲ候チテ善後處置ヲ講ス
ヘク今遽ニ縣農會ニ解散ヲ命スヘキニ
アラスト認ム
三縣農會ノ責任範圍未タ分明セス而シ
テ自下縣農會ハ郡農會ニ責任ノ分擔ヲ
命シタル事實ナシト認ム然レトモ其ノ
責任負擔ノ如何ハ各方面ニ重大ノ影響
アルヘキヲ以テ愼重調査ノ上適當ノ措
置ヲ講シカメテ自治體ノ混亂ヲ招致ス
ルカ如キコトナカラシムヘシ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
農林大臣町田忠治
下關漁港修築ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月二十六日
提出者秋田寅之介
下關漁港修築ニ關スル質問主意書
下關漁港ノ修築ニ關シテハ大正八年以來
屢建議ヲ呈出シ又質問ヲ重ネタル所ニシ
テ政府ニ於テモ夙ニ其ノ必要ヲ認メラレ
早晩之カ施設アルヤニ仄聞シタルモ過般
ノ關東大震災ノ影響ヲ蒙リ又財政緊縮等
ノ爲遷延シテ今日ニ及ヒタルハ洵ニ遺憾
トスル所ナリ而シテ本員ハ此ノ世界有數
ノ漁港ノ將來ニ關シテ默視スル能ハス玆
數年來同漁港修築問題ニ關シテ政府當路
者ニ交渉セシコト一再ナラス漁業ノ振興
產業ノ發展國家〓糧問題解決ノ爲同港修
築ノ一日モ速ナラムコトヲ期シタル結果
政府ニ於テモ之カ施工ノ意アリ先年來下
關市ヨリ農林省ニ委託セラレタル調査モ
既ニ完了シ居ルモノト信ス然ルニ財政緊
縮等ノ爲荏苒今日ニ及ヒタルモノナルモ
本年度豫算ニ之カ修築調査費トシテ三万
七千圓ヲ。上上アアハハ固ヨリ無ニ優ルモ
ノトシテ下關市民及全國海產業關係者ハ
本件ノ成行ニ關シ深甚ナル注視ヲ拂ヒツ
ツアリ
玆ニ於テ本員ハ左記事項ニ關シテ政府當
局ノ所見ヲ求メムトス
第下關漁港修築ニ關スル調査ハ本年
度中ニ完了ノ意ナリヤ又バ繼續的ニ之
ヲ爲スモノトスレハ幾年ヲ要セラルル
考ヘナリヤ更ニ調査完了ノ上ハ直ニ修
築豫算ヲ編成シテ之カ修築ニ著手セラ
ルル意ナリヤ否ヤ
第二下關漁港修築ニ關シテハ農林省ニ
於テ數年前ヨリ調査セラレ既ニ其ノ完
了ヲ告ケ第五十囘議會ニ際シ農相ヨリ
豫算編成ノ上閣議ニ提出セラレタルモ
財政緊縮ノ結果藏相ニ於テ之カ豫算ヲ
拒マレタル爲否決セラレタリヤニ仄聞
スルモ本員ハ財政緩和ト共ニ既定計畫
ニ依リ進捗スルモノト考へ居レリ而シ
テ今回調査費ヲ編成セラレタル點ヨリ
考察シ以下數項ニ關シ農林當局ニ質問
セムトス
(+)所謂外港(玄海ニ面スル武久海
岸方面ノ調査ヲセラルル考ヘナリ
ヤ否ヤ
(ロ)所謂內港(下關、竹崎、新地、
伊崎各町ヨリ彥島海岸)方面ヲ調査
セラルル考ヘナリヤ否ヤ
(1)右以外ノ地點ヲ調査セラルル考
ヘナリヤ此ノ場合其ノ地點ハ何處ナ
リヤ
第三仄聞スル所ニ依レハ農林省ノ調査
豫算額ハ七百万圓内外ナルニ對シ內務
省ノ調査豫算額ハ約五百万圓内外トノ
コトニテ之カ爲今囘調查セラルルコト
ト爲リタル由ナルカ其ノ眞否如何
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員秋田寅之介君提出下關漁港修
築ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員秋田寅之介君提出下關漁港
修築ニ關スル質問ニ對スル答辯書
下關漁港ハ銚子漁港ト對立シ本邦樞
要漁港ノ一ニシテ政府ニ於テモ之カ修築
ハ漁業ノ發展上極メテ〓要ナルヲ認ム
ルヲ以テ同港ノ調査ハ成ル可ク短期間
ニ完結セムトスル意意ニシテ大體昭和
二年度內ニ終了セシムル豫定ナリ
修築補助費ヲ豫算ニ計上スルコトニ付
テハ調査ノ結果ヲ俟チテ考究セムトス
二調査區域ハ農林省ニ於テ曩ニ市ノ申
請ニ基キ所謂外港万面ノ修築地區ニ付
旣ニ之カ調査ヲ行ヘルモ今回ハ後段ニ
述フルカ如キ理由ニ依リ所謂內港方面
ノ地區ニ亙リテモ調査ヲ行フ豫定ナリ
三前記ノ如ク農林省ハ曩ニ市ノ申請ニ基
キ所謂外港ノ地點ニ付調査設計スル所
アリタルモ所謂內港ノ修築ヲ希望スル
向アルヲ以テ萬全ヲ期スル爲兩者ノ調
査設計ニ付比較考究ノ上之カ決定ヲ爲
サムトスルモノニシテ内務農林兩省ノ
關係ニ依リ調査ヲ爲サムトスルモノニ
非ズ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
農林大臣町田忠治
內務大臣濱口雄幸
電氣事業ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月一日
提出者原惣兵衞
電氣事業ニ關スル質問主意書
遞信大臣カ許可シタル電氣事業ノ附帶命
令中ニ
イ國又ハ供給區域ヲ管理スル公共團體
ニ於テ電氣事業ノ全部又ハ一部ヲ買收
セントスルトキハ會社ハ之ヲ拒ムコト
ヲ得ス
前項ノ買牧セントスル事業ノ範圍ニツ
キ爭アルトキハ遞信大臣之ヲ定ム
ロ前條ニ依ル買收價格ハ當事者ノ協議
ニヨリ之ヲ定ムヘシ
前項ノ協議調ハサル場合ニ於テハ遞信
大臣ハ地方長官買收者及會社ヲシテ各
三名ノ評價委員ヲ選定セシメ其委員ノ
意見ヲ徴シ買收價格ヲ定ム
ノ二條項アリ之ニ關聯シテ左記數個ノ疑
問ヲ質サムトスルモノナリ
ー初期ニ於テ許可セラレタル電氣事業
ニハ前記命令條件ナシ中期ニ於テ許可
セラレタル電氣事業ニハ前記命令條件
アリ而シテ最近許可セラレタル電氣事
業ニハ前記條件中「又ハ供給區域ヲ管
理スル公共團體」ノ文字ヲ削除シ國カ
買收スル場合ノ條件ノミナリ
斯ノ如ク許可命令ヲ變更シタルニハ其
ノ當時相當ノ理由アリタルモノナルヘ
シ其ノ變更シタル理由如何特ニ最近許
可セルモノニ「供給區域ヲ管理スル公
共團體」ノ文字ヲ除キタル理由ヲ詳細
ニ說明ヲ求ム
二國家カ電氣事業ヲ監督スルニ當リテ
ハ各事業者ニ對シ平等公平ナルヘキハ
論ヲ俟タサル所ナリ然ルニ遇其ノ許可
ノ年時ノ相違ノ爲其ノ附帶命令ノ不統
一ヲ來シタルモノナルヲ以テ法規ノ手續
ニ於テ支障ナキ限リ最近ノ許可命令ニ
統一スルノ意思ナキヤ又許可命令ヲ統
一セストスルモ其ノ取扱ハ最近許可セ
ル電氣事業ト出來得ル限リ同一トスル
意思ナキヤ
三前記附帶命令「ロ」ノ第一一項ニ於テ遞
信大臣カ買收價格ヲ裁定スルニハ供給
區域ヲ管理スル公共〓體カ其ノ電氣事
業ヲ買收スル意思ノ確定ヲ前提トセサ
ルヤ換言セハ「供給區域ヲ管理スル公
共團體」カ其ノ電氣事業ヲ買收ノ意思
確定セサルニ試ニ遞信大臣ニ其ノ電氣
事業ノ買收價格裁定ヲ上申セル場合ニ
モ遞信大臣ハ附帶命令「口」ノ第二項ニ
依リ價格裁定ニ著手スルモノナリヤ
四前記附帶命令「ロ」ノ第一一項ニ依リ遞
信大臣カ買收價格ヲ裁定スルニ當リテ
ハ總テノ電氣事業者ニ適用シ得ヘキ一
般的價格算出ノ基準ナカルヘカラス該
算出ノ基準ノ有無ヲ問フ
五右基準アリトセハ詳細ニ其ノ基準ヲ
示サレタシ
六右基準ナシトセハ基準ノ確定スル迄
附帶命令ニ依ル遞信大臣ノ買收價格裁
定ヲ爲ササルモノナリヤ
七將來遞信大臣ニ於テ買收價格ヲ栽定
シタルトキハ其ノ算出ノ方法及計算ハ
要求アル場合被買收電私事業者ニ之ヲ
明元セラルルヤ
八前記算出ノ計算ニ萬一數理上ノ誤謬
アリタル場合被買收電事事者ハ其ノ
價格裁定ノ訂正ヲ求ムル途如何
九前記買收價格算出ノ基準ヲ法律ヲ以
テ規定スルノ意思ナキヤ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員原惣兵衛君提出電氣事業ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
監第一一七八號
衆議院議員原惣兵衛君提出電氣事業ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
第事業ノ初期ニ於テ買收ニ關スル命
合條件ナカリシ理由ハ當時未タ電氣事
業ノ公共的性質ニ著目セラルルコト顯
著ナラサリシ爲ト思ハル其ノ後許可命
令書ノ一項目トシテ「國又ハ供給區域
ヲ管轄スル公共團體ニ於テ事業ヲ買收
セムトスルトキハ事業者之ヲ拒ムコト
ヲ得ス」ナル條項ヲ定メタルハ電氣事
業ノ公共的性質ニ鑑ミ國家自ラ經營シ
又ハ公共團體ヲシテ經營セシムルヲ適
當ト認メタル場合ニ於テハ國家ハ事業
者ニ對シテ事業ノ買收ニ應スヘキヲ命
シ事業者ニ之ヲ拒ムコトヲ得サル義務
ヲ負擔セシムルノ主旨ニ外ナラス然ル
ニ近時半業者ニシテ此ノ命令條項ヲ以
テ公共團體ニ强制買收ノ權利ヲ認メタ
ルモノノ如ク誤解シ如何ナル場合ト雖
公共團體ノ事業買收申出ニ應セサル可
カラサルモノト考ヘテ危惧ノ念ヲ抱ク
モノアルノミナラス一面公共同體中ニ
モ同樣ノ誤解ニ基キ會社ノ强制買收ヲ
企テ相互ノ間ニ事端ヲ繁カラシメムト
スルノ勢ヲニシシ公共〓體ノ字句アルカ
爲却テ電氣事業ノ健實ナル發達ヲ阻害
スルノ虞アルニ依リ最近ハ命令條項中
「又ハ供給區域ヲ管轄スル公共〓體」ノ
字句ヲ削ルニ至レリ
第二許可命令書ヲ如何ニ統一スルカハ
電氣事業ノ根本問題ノ決定如何ニ關連
スルヲ以テ近ク電氣事業調査會ヲ組織
シテ衆智ヲ集メ學理及密際ニ徵シ嚮往
スル處ヲ明カニシ其ノ歸結ニ基キ適當
ノ方策ヲ樹ツル意向ナリ
第三遞信大臣カ價格ノ裁定ヲ爲スハ供
給區域ヲ管轄スル公共團體ニ於テ其ノ
電氣事業ヲ買收スルノ意思確定セルコ
トヲ前提トスルモノトス
第四第五、第六、買收價格ハ評價委員
ノ意見ヲ參考トシ各其ノ電氣事業ノ狀
況竝當時ニ於ケル經濟事情其ノ他各般
ノ事情ヲ參酌シ愼重精査ノ上之ヲ栽定
スルモノトス
第七其ノ必要アリト認メタルトキハ之
ヲ示スコトアルヘシ
第八行政處分ノ一般ノ例ニ依リ其ノ場
合ニ就キテ考慮シ適當ニ處理スヘシ
第九第二ニ述ヘタル處ト同樣ノ意味ニ
依リ電氣事業調査會ノ調査ニ俟テ適當
ノ方策ヲ定ムル意向ナリ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
遞信大臣安達謙藏
馬政ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月二日
提出者八田宗吉
馬政ニ關スル質問主意書
農林大臣ニ對スルモノ
一馬匹改良方針ニ關スル件
我カ國馬匹改良ノ方針ハ明治三十九年
ニ樹立シ三十箇年ヲ期シ之カ事業ノ完
成ヲ爲サムトスルモノニシテ其ノ改良
ノ要旨ハ我カ固有ノ產馬ニ外國種馬ノ
血液ヲ交配シ體軀ノ發達ト能力ノ向上
ヲ圖リ以テ時代ノ要求ニ順應セムトセ
リ而シテ改良ノ道程ハ旣ニ其ノ三分ノ
二ヲ經過シ〓後ハ之カ整理時代ナルヘ
シト信ス然ルニ軍馬トシテ國防ノ立脚
地ヨリ見レハ今日ノ產馬ヲ以テ足レリ
トセス尙益之カ改良ヲ要求スル所急ナ
リト聞ク飜テ總馬數中過半數ヲ占ムル
農馬ヨリスレハ必スシモ軍馬ノ要求ス
ル體格及能力ト一致セサル如シ農林大
臣ハ軍部ノ要求ヲ充タシ且農家ヲ滿足
セシムル馬匹改良方針ニ付如何ニ此ノ
間ニ處セムトスルヤ具體的ノ答辯ヲ望
ム
陸軍大臣ニ對スルモノ
一馬政ニ關スル件
馬政局ノ陸軍省ノ手ヲ離レ農林省ノ
課ニ移管セシ以來種馬牧場及種馬所ヲ
廢減シタルカ輓近ニ至リ全國總馬數竝
生產數ハ漸次遞減ノ傾向アリ又馬疫ハ
益蔓延セムトス陸軍大臣ハ今日ノ馬政
ニ對シ滿足ヲ表スルモノナルヤ若今日
ノ馬政ヲ以テ滿足セストセハ陸軍大臣
ハ將來如何ニ國防ノ要求ニ適フ馬政ヲ
布カムコトヲ望ムヤ且陸軍省ト農林省
ト平時馬政ニ村如何ナル聯絡ヲ保チ又
ハ了解ヲ遂ケツツアルヤ之カ聯絡ヲ將
來密接ニスル意思ナキヤ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員八田宗吉君提出馬政ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員八田宗吉君提出馬政ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
一馬匹改良方針ニ關スル件
現行馬匹改良方針ハ軍部トノ協調ニ依
リ立案セラレタル馬政三十年計畫ノ後
半ニ屬スル馬政第二期計畫ニ據ルモノ
ニシテ其ノ實施ニ付テハ國防上ノ要望
ヲ充タスト共ニ產業上ノ要求ヲモ考慮
シ優良乘馬ノ生產ヲ企圖スルハ勿論ナ
ルモ馬產業ヲシテ努メテ經濟的基礎ニ
立脚セシムル爲軍事產業兩方面ニ於テ
最モ多數ヲ要スル輓用型中間種ノ多產
ヲ主眼トシ又之カ改良ニ付テハ其ノ持
久力ニ重キヲ置キ中等體尺者ノ使用ニ
適セシムルヲ標準トシ尙輸入種畜ノ馬
種ヲ限定シテ血種ノ統一ヲ圖リ或ハ種
牡馬檢査員心得及特選牝馬取扱規程ヲ
制定シテ改良上ノ規準ヲ元シ以テ馬ノ
體型ノ整理ヲ行ヒ專ラ地方ニ適應スル
種類固定ノ基礎ヲ確立スルニ努メツツ
アリ故ニ現行馬匹改良方針ノ遂行上ニ
於テハ軍事及產業兩者ノ要求ニ不適合
ヲ來スカ如キ虞ナカルヘシト信スルモ
此點ニ付テハ今後尙一層努力スル所ア
ラムトス
一馬政ニ關スル件
我國總馬數竝生產頭數漸減ノ傾向ニ在
ルハ國防上洵ニ憂慮ニ堪ヘサル所ナルモ
這ハ既ニ十數年來ノ現象ニシテ馬政局
移管後特ニ顯著ナル減退ヲ見ルニ至レ
ルモノト認ムル能ハス然レトモ近時經
濟上ノ壓迫竝馬疫ノ蔓延等ヨリ及ホス
諸種ノ影響ハ一層馬產不振ノ素因ヲ醸
成セムトシツツアルヲ以テ本邦内地、
朝鮮及關東州ニ於ケル馬政振興ノ急
務ナルヲ感スルヤ切ニシテ常ニ農林當
局其他ト連絡ヲ密ニシ専ラ事態ノ改善
ニ努力シアリ而シテ又馬政上將來ノ施
設ニ關スル具體的方策ニ就テハ今後尙
引續キ〓究スル所アラムトス
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
農林大臣町田忠治
陸軍大臣宇垣成
帝都復興計畫ニ關スル質問主意書
右法規ニ據リ提出候也
昭和二年三月四日
提出者橫山勝太郞
帝都復興計畫ニ關スル質問主意書
第去ル二月二十四日ノ本會議ニ於テ
復興局長官ハ復興豫算ノ不足ヲ生シタ
ルヲ以テ「帝都復興計畫ノ根幹ニ關シ
マシテハ-計畫ノ根本ニ付キマシテ
ハ飽迄是ガ貫徹ヲ圖ル積リデアリマ
ス、復興計畫ノ根本ニ支障ヲ來サナイ
範圍ニ於キマシテハ、其一部ヲ變更ス
ル-」「赤坂溜池附近ノ第二十七地區
及深川平久町鹽濱町ノ六十地區ノ一
部是等ハ何レモ土地ノ關係ガ、外ノ
區劃整理ノ地區トハ隔絕シテ居ルノデ
アリマシテ、從來街衢ノ關係モ比較的
整ツテ居リマシテ、區割整理ヲ廢シマシ
テモ、復興計畫ノ根幹ニ支障ヲ來スト
云フ虞ハナイノデアリマス」ト言明セ
リ之レ明ニ復興計畫ニ對スル從來ノ方
針ヲ變更シタルモノニシテ之ヲ單ニ復
興豫算ノ不足ニ歸セムトスルハ容易ニ
首肯スル能ハサル所ナリ政府ハ其ノ眞
相ヲ明ニセムコトヲ望ム
第二復興局長官ノ所謂復興計畫ノ根幹
トハ如何
第三又根幹ニ支障ヲ來ササル範圍トハ
如何ナル場所ヲ意味タルヤ
第四又所謂豫算ノ不足ヲ生シタルハ如
何ナル理山ナリヤ
第五他ノ不足分ハ如何ニシテ之ヲ補充
セムトスルヤ更ニ一層區劃整理ノ一部
ヲ廢止シ又ハ之ヲ延期スルノ必要ナキ
ヤ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長頼谷義三殿
衆議院議員橫由勝太郞君提出帝都復興計
畫ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員橫山勝太郞君提出帝都復興
計畫ニ關スル質問ニ對スル答辯書
第今回復興計畫ノ一部ヲ廢止セント
スルハ既定ノ計畫ヲ其ノ儘遂行スルニ
於テハ豫算ニ多大ノ不足ヲ來スヘキモ
ノアルヲ認メタルニ依リ計畫ノ根幹ニ
支障ヲ來ササル範圍ニ於テ既定計畫ノ
一部ニ變更ヲ加ヘ以テ經費ノ節約ヲ圖
リテ其ノ不足ヲ補ハントスルカ爲メニ
シテ其ノ他ニハ何等特別ノ事由ナシ
第二街路、運河、土地區劃整理、公園
等復興計畫ニ獨スル諸般ノ事業中ニハ
個々ノ計畫ニ付キテ見ルトキハ比較的
緊切重要ナルモノアリ又比較的然ラサ
ルモノアリ復興計畫ノ根幹トハ卽チ其
ノ比較的緊切重要ナルモノヲ指稱シタ
ルニ過キス
第三又復興計畫ノ根幹ニ支障ヲ來ササ
ル範圍トハ計畫其レ事體カ比較的緊切
重要ナラサルノミナラス之ヲ廢止スル
モ他ノ緊切重要ナル計畫ノ執行ニ支障
ヲ來スコトナキモノヲ指シタルモノニ
シテ今回特別都市計畫委員會ニ提案シ
タル赤坂溜池附近及深川平久町附近ノ
土地區劃整理ノ廢止、幹線第十八號路
線幹線第四十八號路線及大島川ノ改
修計畫ノ一部ノ廢止竝旣ニ決定シタル
幹線第一號路線及神田川ノ計畫變更ノ
如キ之ニ屬ス
第四復興事業費豫算ニ不足ヲ生シタル
ハ主トシテ震災後ニ於ケル東京及橫濱
ノ復興ニ付キ豫算編成當時正確ナル豫
想ヲ下スコト能ハサリシ事情ニ基クモ
ノナリ
第五復興事業費豫算ノ不足ハ政府及橫
濱市長ニ於テ執行スル事業ニ付キテハ
本議會ニ提案セル豫算ノ追加ヲ以テ足
リ東京市長ニ於テ執行スル事業ニ付キ
テハ昭和二年度豫算ニ於ケル千六百万
圓ノ追加ノ外尙後年度ニ於テ不足ヲ來
ス見込ナルモ之ニ對シテハ愼重調査ノ
上後年度ニ於テ其ノ解決ニ付キ善處セ
ントスルモノナリ尙將來更ニ區劃整理
ノ一部ヲ廢止又ハ延期スルノ意思ナシ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
內務大臣濱口雄幸
國定〓科書翻列ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月七日
提出者加藤知正
國定〓科書翻列ニ關スル質問主意書
ー明治四十二年十月文部省告〓第二百
五十四號ニ依レハ國定〓科書ノ編纂ハ
文部省自ラ之ヲ行フモ其ノ翻刻ハ東京
書籍株式會社、日本書籍株式會社、大
阪書籍株式會社ノ民間三會社ヲ特定シ
テ之カ權利ヲ付與シ他ニ如何ニ健實ニ
シテ優秀ナル印刷業者アルモ全然之ニ
關與セシメサルノ規定ナリ之レ果シテ
如何ナル理由ニ基クモノナルヤ
二大正十三年一月前記特許三會社ト文
部省卜契約改締期切迫セルヲ以テ東
京大阪等ノ此ノ特許三會社ヨリモ確
實ニ一割以上ノ安價ヲ以テ國定〓科書
翻刻ノ任ニ當ルヘキニ依リ廣ク之カ翻
刻請負ノ途ヲ開放セラレタシト陳情セ
ルモ遂ニ之ヲ許ササリシ理由如何
三尙此ノ當時文部省ト前記特定三會社
トノ契約期間三箇年ナリシモノヲ更ニ
延長シテ六箇年トシ昭和五年三月迄ト
セラレタル理由果シテ如何
四國定〓科書ノ翻刻竝之カ販賣ヲ一部
ノ出版業者ニノミ委スヨリハ廣ク之ヲ
開放シテ全國ノ基礎確實ニシテ設備ノ
完全ナル印刷業者ノ團體ヲモ加フルト
キハ啻ニ其ノ翻刻費カ安價ニ仕上カル
ノミナラス其ノ印刷製本等モ亦迅速ニ
爲シ得ラルルヲ以テ學齢兒童ニ〓科書
缺乏ノ不便ヲ與フルコトナク其ノ國民
ヲ利スルコト頗ル甚大ナルモノアリト
信ス文部當局ノ所見如何
五若文部當局ニシテ吾人ト其ノ所見ヲ
同シウスルモノアラハ前記特定三會社
トノ契約滿了ノ際文部省告示第二百五
十四號ノ規定ヲ改メ全國ノ基礎確實ニ
シテ設備ノ完全ナル印刷業者ノ〓體又
ハ出版業者ノ團體ヲモ新規ニ之ニ加フ
ルノ意思ナキカ
右及質問候也
昭和二年三月十五日
內閣總理大臣若槻禮次郞
衆議院議長粕谷義三殿
衆議院議員加藤知正君提出國定〓科書翻
刻ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員加藤知正君提出國定〓科書
翻刻ニ關スル質問ニ對スル答辯書
明治四十二年文部省告而第二百五十
四號ハ文部省ト現在特許會社トノ間ニ
締結セラレタル契約ノ約款タルニ上リ
國定〓科書ノ翻刻發行ニ關スル恆久的
一般原則ヲ規定セルモノニアラス
二大正十三年四月現在ノ特許會社ト契
約ヲ締結シタルハ出願人中現在ノ會社
ニ特許スルヲ以テ國定〓科書ノ完全ナ
ル供給ヲ爲スニ付キ最モ確實ナリト認
メタルニ因ル
三特許會社トノ契約期間ハ六箇年ヲ以
テ一期トスルヲ常例トス而シテ大正十
年契約締結ノ際ニ限リ特ニ三箇年ト爲
シタルハ翻刻發行制度調査上ノ必要ニ
因リタルモノナリ隨テ大正十三年契約
締結ノ際ニ於テ殊更ニ期間ヲ延長シタ
ルモノニアラス
四現在ニ於ケル國定〓科書ノ供給狀況
ハ大體ニ於テ完全ナリト認ム而シテ翻
刻發行ヲ廣ク開放スルハ事業ノ性質上
必スシモ供給ノ完全、價格ノ低廉ヲ期
スル所以ニアラス
五現在ノ特許會社トノ契約滿了スル場
合ニ於テハ更ニ愼重ニ調査考究ノ上適
當ナル措置ヲ取ルヘシ
右及答辯候也
昭和二年三月十五日
文部大臣岡田良平
一去十二日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ議案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通牒ヲ
受領セリ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關ス
ル法律案(政府提出)
國際整理基金特別會計法中改正法律案
(政府提出)
土地賃貸價格調査委員會法案(政府提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去十二日辭任シタル常任委員左ノ如シ
第三部豫算委員倉元要一君
一去十二日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
大正十二年法律第五十二號中改正法律案
(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關スル件)
(横山勝太郞君外八名提出)委員
委員長榊原經武君
理事
手代木隆吉君永井作次君
義務〓育年限延長ニ關スル建議案(曾田
義一君提出)外三十一件委員
委員長東〓實君
理事
內ケ崎作三郞君山下谷次君
三浦數平君
明治六年地相改正條例ニ依ル土地丈量立
替費用償還ニ關スル建議案(土屋〓三郞
君提出)外二十件委員
委員長三善〓之君
理事
蟻川五郞作君難波〓人君
宜保成晴君
能代港ニ臨港線敷設ニ關スル建議案(信太
儀右衞門君外三名提出)外三十一件委員
委員長井上利八君
理事
谷口宇右衞門君藤川〓助君
兼田秀雄君
南隅鐵道速成ニ關スル建議案(津崎尙武
君外二名提出)外三十六件委員
委員長小屋光雄君
理事
栗延敬太郞君嶋居哲君
逆瀨川仁次郞君
一去十二日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關ス
ル法律案(政府提出)委員
理事神崎動君(理事安保庸三
君今十二日辭任ニ付其補
闕)
一去十二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
王公族ヨリ内地ノ家ニ入リタル者及內地
ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者ノ戶籍等
ニ關スル法律案外一件委員
菅原英伍君西脇晋君
江藤榮吉君杉宜陳君
渡邊祐策君菅原傳君
原夫次郞君神村吉郞君
武藤嘉門君
土地收用法中改正法律案委員
高木正年君木檜三四郞君
齋藤太兵衛君靑木知四郞君
竹内友治郞君西澤定吉君
佐々木文一君藏園三四郞君
原夫次郞君
大正十三年度第一豫備金支出ノ件外十一
件(承諾ヲ求ムル件)委員
樋口秀雄君田中万逸君
〓水留三郞君加藤鯛一君
金田平兵衞君村上紋四郞君
澤田利吉君磯部尙君
齋藤藤四郞君松實喜代太君
米原於菟男君庄司良朗君
古林新治君坂梨哲君
小川〓太郞君岩切重雄君
森肇君〓瀨一郞君
一去十二日銀行法案外四件委員川崎安之助
君辭任ニ付其ノ補關トシテ村上國吉君ヲ
御料地拂下地ノ地租及登錄稅免除ニ關ス
ル法律案委員安保庸三君辭任ニ付其ノ補
闕トシテ神崎動君ヲ大正十四年法律第四
十七號衆議院議員選舉法中改正法律案外
一件委員小池仁郞君辭任ニ付其ノ補闕ト
シテ齋藤隆夫君ヲ大正九年法律第五十三
號中改正法律案(關稅法等ノ朝鮮ニ於
ケル特例ニ關スル件)委員小池仁郞君辭
任ニ付其ノ補闕トシテ小島七郞君ヲ未成
年者飮酒禁止法中改正法律案委員加藤鐐
五郞君辭任ニ付其ノ補闕トシテ山谷德治
郞君ヲ水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式
會社、陸奧鐵道株式會社、苫小牧輕便鐵
道株式會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬
鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案外
一件委員工藤十三雄君辭任ニ付其ノ補闕
トシテ西澤定吉君ヲ孰レモ議長ニ於テ選
定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=1
-
002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諮問事項ガアリマス、第五部選出豫算委
員橋本喜造君、第七部選出豫算委員吉川吉
郞兵衞君、第四部選出豫算委員山本勝次君、
右諸君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガアリマ
ス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=2
-
003・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ
補闘選擧ヲ行ヒ、御報告アランコトヲ望ミ
マく、議事ノ進行ニ關シテ發言ヲ求メラレ
テ居リマス、之ヲ許シマス、海原〓平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=3
-
004・海原清平
○海原〓平君 私ノ議事進行ニ關スル質問
ハ政府殊ニ大藏大臣ニ對スル答辯ニ關ス
ルコトデアリマス、故ニ大藏大臣ノ出席ア
ルマデ保留致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=4
-
005・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今出席ヲ求メテ居
リマス
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=5
-
006・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス、只
今海原君ハ、大藏大臣ノ出席ヲ必要トセラ
ルヽサウデアリマス、而シテ大藏大臣ノ出
席マデ、之ヲ保留シタイト云フコトデアリ
マスカラ、次ノ通告者ノ議事進行ニ關スル
發言ヲ許シマス-大藏大臣ガ見エマシタ
カラ、海原君ノ發言ヲ許シマス
〔海原〓平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=6
-
007・海原清平
○海原清平君 私ハ玆ニ議事進行ニ付テ、
政府殊ニ片岡大藏大臣ニ對シテ、吾々議員
ノ質問ニ對スル大藏大臣ノ答辯ノ責任ニ關
シテノ意見ヲ申上ゲ、且ツ國務大臣ノ答辯
ニ關スル責任問題ニ付テ、大藏大臣ノ答辯
ヲ頰シタイ、卽チ一昨々日ノ議場ニ於テ、我
黨ノ東君ヨリ彼ノ震災手形法案ノ貴族院ノ
委員會ニ於ケル經過ニ付テ、衆議院ト貴族
院トニ付テ大藏大臣ハ其態度ヲ二三ニシ
タ、而モ國民ニ直接關係ノアル衆議院ニ於
テ、其內容ノ一切ヲ秘密ニ致シタニモ拘ラ
ズ貴族院ニ於テハ其内容ニ立入ッテ說明ヲ
致シタ、卽チ衆議院ノ議員ノ審議權ヲ侮辱
シ、大藏大臣トシテハ洵ニ失當ノ次第デア
ル、而モ此事ヲ當議場デ質問致シタ時ニ、
片岡君ハ一切貴族院デ言ハナイト云フコト
ヲ言ッタ、所ガ貴族院ノ懇談會ニ於テハ、此
震災手形法案ハ鈴木商店ト臺灣銀行トノ手
形ノ關係モ含マレテ居ルト云フコトヲ言明
シテ居ル、卽チ此手形法案ノ裏面ノ魂膽ガ
何デアルカト云フコトハ、今日既ニ定評ガ
アル、片岡君ガ如何ニ言葉ヲ麗ハシク、國
家一般經濟界ノ安定ノ爲ニ緊急措ク能ハザ
ル所ナリト說明シテモ、此事實ハ決シテ國
家ノ財政ノ問題デモナケレバ、又一般民人
ノ利益ノ爲デモナイ、固ヨリ法律ヲ制定シ
テ之ヲ適用スルト云フノデアルカラ、此條
件ニ該當スルモノヽ二三ガ共ニ其恩典ニ浴
スルコトモアルデアラウ、併シ此法案ノ主
タル目的ハ、取モ直サズ神戶ニ本店ヲ有ス
ル鈴木商店ノ利益ヲ保護スルモノデアル、
其證據ニハ此法案ガ一度衆議院ニ現ルヽ
ヤ、各議員ヨリ屢〓質問ヲ致シ、內容ノ說
明ヲ要求致シテモ、大藏大臣ハ名ヲ財界攪
亂ノ虞ニ藉ッテ、努メテ其質問ヲ避ケテ答
辯ヲ囘避致シタ、若シ諸君、此震災手形ノ
內容、震災手形ノ內容ト單ニ此手形ヲ所持
スル所ノ銀行ダケヲ表〓ヲ致シテ手ヲ拱ク
ト云フコトニナレバ、或ハ片岡君ノ心配ス
ルヤウナ財界ノ一部ニ不安ヲ與ヘル懸念モ
ナイデモアリマスマイ、併シ此震災手形ノ
內容ヲ精査シ、之ヲ政府ノ力ニ依シテ適當ニ
救濟スルト云フノデアルカラ、若シ一度政
府ガ其内容ヲ發表シテ、國民ニ向ッテ其整理
ノ方針ヲ示スナラバ、今迄疑雲ニ包マレタ
財界ハ却テ安定ヲスル(ヒヤ〓〓)何ヲ苦ン
デ是ガ爲ニ財界ヲ攪亂スルカ、然ラバ昨日
ノ豫算總會ニ於テ、片岡君ハ我黨ノ吉植君
ノ質問ニ對シテ、一面ニ於テハ財界ノ攪亂
ヲ非常ニ恐レ、當然國務大臣トシテハ、說
明ヲ爲スベキ義務ノアル質問ニ對シテモ、
其答辯ヲ回避シタ、切ニ財界攪亂ノ虞ヲ懷
キナガラ、一面ニ於テハ彼自ラ財界ヲ攪亂
致シテ居ル(ヒヤ〓〓)卽チ渡邊銀行ノ破綻
ト云フコトハ、昨日豫算總會ニ於テハ何人
ヨサモ質問シナイ、何人ヨリモ質問ヲ致サ
ナイ事項ニ付テ、却テ大藏大臣自ラ其破綻
ヲ言明シタ、而モ昨日ノ渡邊銀行ハ未ダ破
綻ハ偖テ措イテ、支拂停止ノ事實モナイ、
卽チ同日渡邊六郞君ガ大藏省ニ田次官ヲ訪
問シテ、最近ノ渡邊銀行ノ內容ヲ具サニ說
明ヲシテ、餘程危殆ニ瀕シテ居ルカラ、此
際何トカ救濟ノ途ガアルマイカ、若シ救濟
ノ途ガ付カナケレバ、或ハ斯樣ナ結果ニ至
ルデアラウト云フコトヲ申シタ、所ガ大藏
大臣片岡君ハ、輕卒ニモ是ガ救濟ノ手段ニ
付テ何等ノ考慮ヲ拂ハズ、直ニ彼ハ破綻シ
タモノデアルト云フ言明ヲシタ(ヒヤ〓〓)
爲ニ渡邊銀行ソレ自身ガ、此藏相ノ言明ニ
依シテ事實上ノ支拂停止ヲシナケレバナラ
ナイト云フ立場ニナッタ、實ニ財界監視ノ任
ニ在ル大藏大臣ハ、一面ニ於テハ議會ニ於
テ
〔「何ガ議事進行ダ」「議長注意セヨ」ト
呼ヒ其他發言者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=7
-
008・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=8
-
009・海原清平
○海原〓平君(續) 議會ニ於テ當然爲スベ
キ義務アル質問ヲ回避シ、名ヲ財界攪亂ノ
虞ニ藉ノテ、故ラニ其答辯ヲ囘避シナガラ、
一面ニ於テハ何等ノ關係ナキ事項ニ付テ、
而モ其渡邊銀行ノ破綻ガ兎ニモ角ニモ、現
時ノ我國ノ財界ニ相當ノ波動ヲ與ヘル、殊
ニ此問題ニ付テハ、何等議員ニ於テ質問ヲ
致サヌ、實ニ片岡藏相ノ矛盾撞著、殆ド言
語ニ絕シテ居ル、故ニ此案ガ我ガ衆議院ヲ
無事ニ通過致ス筈デハナイ、斯樣ナ理不盡
ナル、內容ノ一切ヲ說明セズ、斯樣ナ非立
憲ノ態度ニ於テ、決シテ衆議院ヲ通過致ス
モノデハナイ、然ルニ事實ハ通過ヲ致シタ、
甚ダ遺憾至極デハアルケレドモ、我ガ衆議
院ヲ通過致シタ、是ハ諸君、憲政會單獨ノ
カデハナイ、此醜惡極マル震手法案ガ衆議
院ヲ通過致シタノハ、政友本黨ノ意外ナル
態度ノ豹變ニ依ルノデアル
〔「不謹愼ナ事ヲ言フナ」「議事進行デハ
ナイ」ト呼ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=9
-
010・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=10
-
011・海原清平
○海原〓平君(續) 私ハ政友本黨ノ總裁床
次君トハ、相當ノ情誼ヲ持テテ居ル、故ニ
私ノ立場カラ見レバ、政友本黨ノ行動ニハ
餘リ多クノ批評ヲ加ヘタクハナイガ、今回
ノ本黨ノ態度コソハ、實ニ言語道斷(ヒヤ
ヒヤ)啻ニ本黨ガ將來ノ方針ヲ誤ルバカリ
デハナイ、我國ノ政黨政治ノ將來ニ尠カラ
ザル波動ヲ與ヘルモノデアル、啻ニ政黨政
治ノ將來バカリデハナイ、我ガ國民思想ノ
全體ニ影響ヲ與ヘル態度ノ豹變デアル〓
ヤヒヤ)卽チ本期議會ノ開會ニ先ダッテ床次
君ハ、若槻内閣ガ組織サレテ以來今日マデ
ノ間ノ失政ノ數々ハ擧ゲテ算フルニ遑ガナ
イ、取分ケテ彼ノ朴烈問題ニ付テハ、國民
トシテ皇室ニ對スル觀念ヲ異ニスルト云フ
事マデ極論セラレタ、凡ソ我ガ帝國ノ國民
トシテ皇室ニ對スル觀念ヲ異ニスルト云フ
コトハ、絕對的ノモノデアラネバナラヌ、
(拍手)故ニ若槻內閣ノ存在ハ-若槻内閣
ノ存在ハ、我ガ國家一日ノ損害デアル、若
槻内閣ハ須ラク葬ラザルベカラズト云フノ
デ我黨ノ總裁ト提携シテ、互ニ野黨トシテ
共同ノ戰線ニ立ッタノデアル、然ルニ床次
君ハ
〔「ソレガ議事進行カ」「議長々々」ト呼
ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=11
-
012・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス、
-海原君、議事進行ニ付テ御述ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=12
-
013・海原清平
○海原〓平君(續) 何等此共同戰線ノ問題
ヲ解決ハセズ、其中途ニ於テ自己ノ率ユル
政黨ノ利害ヲ判斷ヲシテ、其立場ニ於テ突
如トシテ一夜ノ中ニ共同動作ヲ變ヘタト云
フコトハ何事デアルカ、殊ニ昨日西園寺公
ヲ訪問サレテノ歸途、政友會カラハ今更不
義理呼ハリヲサレル覺エハナイ、三問題ニ
付テノ協定ハ既ニ今日打切ッテ居ルト言ハ
レテ居ルガ、何ヲ根據ニ打切ッテ居ルノデ
アルカ、三黨首ノ會見ハ三問題ニ對スル若
槻内閣ノ責任ヲ問フ道程デアル、手段デア
ル、未ダ此三黨首ノ會見ノ目的ハ、事實ニ
於テ解決致サレテ居ラナイ、此間ニ於テ其
態度ヲ豹變セラレタ事ハ、實ニ遺憾至極デ
アリマス、併ナガラ兎ニモ角ニモ、斯樣ナ
情勢ニ於テ我ガ衆議院ハ此震手法案ヲ通過
致シタ、併シ貴族院ニ於テハ、斯樣ナ政府
ノ無理解ナル非立憲ナル態度デハ、決シテ
本案ハ通過ヲ致サヌ、致サヌガ爲ニ特別委
員會ニ付スルト云フト、直ニ色こナ質問ガ
出タ、而モ純然タル政府ノ與黨ヲ持タナイ
貴族院ニ於テ、如何ニ頑冥ナル片岡藏相ト
雖モ、衆議院ニ於ケル態度デハ及バヌ、最
初カラ或ル程度ノ懇談ヲ致ス覺悟ニ出テ居
ル、是ガ抑、藏相トシテハ甚ダ不謹愼千萬
デアルト云フ、而モ懇談會ノ劈頭ニ於テ、
斯樣ナ程度ノ釋明ヲシタデハナイカト云フ
我黨ノ束君ノ質問ニ對シテ、片岡君ハ飽迄
モ白ヲ切ッテ何等一言モ言ハヌ、又實業同志
會ノ森田君ノ質問ニ對シテハ、一向言ウタ
覺エガナイガ、何レ速記錄ヲ見テカラ-
何ト云フ巫山〓夕事ヲ此壇上ニ於テ言フカ
(「ヒヤ〓〓」拍手)苟モ貴族院ニ於テ、貴族
院ノ議員ノ質問ニ對シテ、國務大臣タル責
任ニ於テ爲シタル答辯ガ、其翌日ノ衆議院
ノ此議場ニ於テ、藏相ハ斯樣ナ程度ノ釋明
ヲシタデハナイカト云フ質問ニ對シテ、
何ヲ言ッタカ覺エヌガ、何レ速記錄ヲ見テ
カラ-斯樣ナ不謹愼不都合、我ガ衆議院
ヲ侮辱スルバカリデナク、同時ニ貴族院ノ
議員ヲ侮辱シテ居ルノデアル(拍手)面モ懇
談會デアルカラ、片岡君ハ最初カラ言責ヲ
執ラレヌコトヲ承知シテ居ル、ダガラ速記
錄ガ無イカラト云フコトヲ楯ニ、萬一此問
題ガ衆議院ノ問題ニナッタ場合ニ於テハト
云フノデ、最初カラ準備シテ掛ッテ居ル、
ダカラ果シテ衆議院カラ質問ガ出タ時ニ
ハ速記錄ガ無イカラト云フコトデ之ヲ逃
ゲタ、然ルニ引續イテ我黨ノ東君ガ、貴族
院委員會ノ速記錄ヲ朗讀シテ、之ヲ引用シ
テ重ネテ答辯ヲ要求シタ、所ガ退"引ナラナ
イ東君ノ最後ノ追究ニハ遂ニ一言モ發シ
ナイ、當然速記錄ニ依ッテ出スベキ答辯、國
務大臣ガ吾々議員ノ而モ貴族院ノ速記錄ヲ
引用シテノ質問ニ對シテハ當然答辯爲ス
ベキ責任ガアル、然ルニ何等一言ノ答辯ヲ
致サヌト云フコトハ、飽迄モ我ガ衆議院ヲ
侮辱シテ居ルノデアリマス、故ニ私ハ茲ニ
片岡藏相ガ果シテ貴族院ノ懇談會ノ席上ニ
於テ、如何ナル議員ト質問應答ヲ致シタカ
ト云フコトヲ最モ赤裸々ニ諸君ニ訴ヘテ、
重ネテ藏相ノ責任アル答辯ヲ煩ハスト云フ
ノハ是ガ爲デアル(拍手)先ヅ片岡藏相ハ貴
族院ノ特別委員會ノ要求ニ對シテ、只今申
述ベタヤウナ責任回避ノ考カラシテ、故ラ
ニ無責任ナル懇談會、他日速記錄ヲ殘サナ
イ懇談會ノ開會ヲ要求致シ、其席上ニ於テ
震災手形ニ關係ヲ有セザル銀行、例ヘバ三
菱銀行、三井銀行、第一銀行、斯樣ナ震災
手形ニ關係ヲ有セザル銀行ヲ述ベタ、然ラ
バ大藏大臣ノ述ベザル以外ノ特殊銀行竝ニ
相當ノ銀行ハソレ〓〓震災手形ニ關係ノ
有ル銀行デアルト云フコトヲ說明ヲ致シテ
居ル、然ルニ公正會ニ屬スル或ル議員ハ此
簡單ナル藏相ノ說明デハ滿足ヲ致サズ、進
ンデ斯樣ナ質問ヲ藏相ニ致シタ、卽チ臺灣
銀行モ特殊銀行トシテ我國ノ重要ノ地位ヲ、
占メテ居ル、是ガ破綻ニ導クヤウナ事ガア
ルナラバ、財界ノ爲ニハ由々シキ大事デア
ルカラ、相當ノ保護、相當ノ整理ヲ致スト
云フコトハ尤デアルト同時ニ、鈴木商店ト
雖モ亦今日ハ相當ノ根據ヲ持ッテ居ル商店
デアル、若シ臺灣銀行ノ整理ヲ致シテ、其
結果鈴本商店モ同時ニ救濟サレルト云アコ
トナラバ、必シモ政府ノ所見ニハ反對ヲ致
サヌ、併シ此程度ノ誠意無キ政府ノ說明ニ
對シテハ、鈴木商店ヲ保護シ之ヲ救濟シ、
臺灣銀行ノ整理ニ贊成ヲシヤウトシテモ贊
成ガ致サレナイ、故ニ我ガ誠意ヲ諒トシテ
大藏大臣ハ今少シク程度ノ進ンダ說明ヲス
ル意思ハナイカ、斯樣ナ質問ヲ致シタ場合
ニ於テ、大藏大臣ハ貴方ノ方デ左樣ナ御考
ガアルナラバ、何モ別ニ祕密ニスル譯デハ
ナイ、私ノ方モ相當ニ御話ヲ致ス、實ハ世
間デ彼此レ言ハレル通リ、此震災手形二億
七百万圓ノ中ニハ、或ル程度ノ臺灣銀行對
鈴木商店ノ關係ノ手形ガ含マレテ居ルノデ
アルト言明シテ居ル、此言明ヲ致シタ、然
ルニ一昨々日ノ議場ニ於ケル我ガ東君ノ質
問ニ對シテ、未ダ會テ一言モ發シナイ、何
ダカ夢ノヤウナ話デアルト云フ無責任極マ
ル答辯ヲ致シテ居ル、實ニ此震災手形ノ內
容ヲ-此震災手形法案ガ抑〓衆議院ニ提
議セラレル當時··
〔此時發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=13
-
014・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=14
-
015・海原清平
○海原清平君(續) 吾々·····啻ニ吾々バカ
リデハナク、全國民ノ一般ガ非常ナル疑ヲ以
テ此案ヲ迎ヘタ、此案ハ今貴族院ノ委員會
ニ於テ片岡藏相ノ口親シク鈴木商店ニ關
係アリト云フ言明ヲ得タ、實ニ比鈴木商店
ノ問題、此問題ヲ衆議院ノ審議ニ際シテ說
明ヲスルナラバ必ズヤ一世ヲ擧ゲテ非常
ナル非難攻擊ヲ受ケルデアラウ、受ケタナ
ラバ本案ノ成立ヲ見ルコトハ覺束ナイカラ
ト云フノデ逃ゲテ、絕對ニ答辯ヲ回避シタ
ノハ是デアル(拍手)而モ貴族院ノ委員會ニ
於テハ、遂ニ大藏大臣モ包ムコトガ出來ズ、
或ル程度ノ關係ヲ言ッタ、而モ大正九年ノ鈴
木商店ノ臺灣銀行ニ有スル手形ノ金額ハ七
千万圓、ソレヨリ色こナ金利關係ヲ包含シ
テ每年三千五百万圓宛ノ增加ヲ致シテ居ル
ト云フ、此增加率マデ片岡君ハ承認シタノ
ダ(拍手)然ルニ席上ガ貴族院ノ懇談會デア
ルト云フコトヲ奇貨トシテ、此壇上ニ於テ
吾々議員ノ質問ニ對シ、飽迄モ言ハズ語ラ
ズト云フ口調ヲ以テ答ヘルト云フコトハ
抑、責任アル國務大臣ノ行動デハナイノデ
アル、而モ昨日ノ豫算總會ニ於テ我黨ノ吉
植君ハ、重ネテ斯樣ナ質問ヲ致シタ、兎ニ
モ角ニモ此震災法案ガ益、一世ノ疑惑ヲ受
ケル所以ノモノハ、要スルニ鈴木商店ノ關
係ダ、故ニ若シ銀行ノ方ニ於ケル震災手形
ノ額ガ言ヘナケレバ、鈴木商店ノ有ズル手
形ノ總額デモ述べテ、而シテ此震災法案ト
ノ關係ヲ說明スルナラバ、或ハ世ノ中ノ疑
ヲ解キ得ルデアラウト云フコトニ對シテ、
大藏大臣ハ非常ナル脫線ヲサレタ、實ニ非
常ナ脫線ヲサレテ、左樣ナ事ハ國民ニ一切
關係が無イト言明シタ、甚ダ不可解千萬ナ
コトデ、其意味ハ-大藏大臣ノ意味ハ一
億圓ハ正ニ既定ノ政府ノ責任デアル、殘ル
一億七百万圓ハ現ニ政府ガ貸付ケテアル、
ソレヲ公債ニ借換へルノダカラ、一厘ノ損
益モ無イカラ國民ニ關係ガ無イト云フ意味
デ答辯サレタ、是ガ非常ナ錯誤デアル、是
ガ國民ニ對スル大ナル侮辱デアル、損益ノ
勘定ニ於テ負擔ガ無イカラ國民ニ關係ガ無
イト云フ答辯ヲ、敢テ豫算總會ノ席上デ試
ミルト云フコトハ不見識千萬、若シ大藏大
臣ノ如クニ衆議院ニ關係ヲ有セズ、國民ニ
關係ヲ有セザル議案ガ豫算案ニシテモ、法
律案ニシテモ、我ガ衆議院ニ付議セラレル
ト云フ理窟ハ無イ筈ダ衆議院ニ付議セラ
レル以上ハ其內容ガ算盤ノ上ニ於テ、損益
勘定ニ於テ零デアルカラ國民ニ關係ガ無イ
ト云フヤウナコトハ、政黨政治家ノ正ニ言
フベキ事デナイ、而シテ大藏大臣ガ貴族院
ノ懇談會ノ席上ニ於テ、今申述ベタヤウナ
事柄ニ付テ其内容ヲ發表シナガラ、昨日ノ
豫算總會ニ於テ、若シ大藏大臣ガ飽迄モ貴
族院ニ於テ辯明ヲ致シタコトガナイト云フ
ナラバ、之ヲ聽イタト云フ議員ガ出タ場合
ニ於テ、果シテ大藏大臣ハ如何ナル責任ヲ
執ルノデアルカト云フ、我黨ノ吉植君ノ質
問ニ對シテ、吾輩ハ絕對ニ言ウタ覺ガナイ
カラ、聽イタ者ガ出夕時ノ責任ニ付テ答辯
ヲスル必要ガナイト云フノデ、最後マデ白
ヲ切ッタ、飽迄モ與黨ノ橫暴ヲ恃ンデ理不盡
ナルコトヲー本議案ガ此衆議院ニ審議セ
ラレル時ハ、先日ノ東君ノ意見ノ如ク、衆
議院ノ豫算先議權ノ精神ヲ沒却サレ、貴族
院ニ於テ却テ詳細ノ說明ヲスルコトハ、我
ガ衆議院ヲ侮辱スルコトノ最モ甚シイモノ
デアルト同時ニ、片岡君ハ-片岡君ハ實
ニ議會ノ開會ノ劈頭ニ於テ兩院議員ニ降シ
賜ヘル、陛下ノ勅語ニ違背シデ、實ニ非立
憲-卽チ聖旨ニ依レバ吾々議員ハ愼重
ニ審議ヲ致ス-然ルニ議員ノ吾々ガ愼重
ニ審議ヲ致サウトスルモノヲ、故意ニ其愼
重審議ヲ妨ゲルコトノ行爲ニ出タノデア
ル、取モ直サズ片岡君タル者ハ、正ニ違勅
ノ責ニ歸スベキモノデアルト云フコトノ評
論ガアッテモ、致方ガナイ結果ニ立至ルノデ
アル、故ニ政府ハ此際至誠仁慈ノ聖勅ヲ拜
シテ、滿腔ノ誠意ヲ披瀝シテ此議場ニ臨ム
ニ非ズンバ、到底吾々ハ今日以後ノ議事ニ
付テ、國務大臣トシテノ答辯ヲ認ムル譯ニ
ハ行カナイノデアル、故ニ政府ハ此點ニ付
テ果シテ如何ノ責任ヲ有セラレルカ、最モ
明瞭ニ御答ヲ願フノデアル、併セテ若シ片
岡君ノ答辯ニ付テ尙ホ貴族院ノ懇談會ノ自
己ノ說明ヲ否認サルヽナラバ、重ネテモウ
少シ進ンダ程度ニ於テ其事實ヲ指摘シテ、
飽迄モ片岡君ノ言明ヲ聽クニ非ズンハ、私
ハ降壇致サナイ者デアル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=15
-
016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡大藏大臣
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=16
-
017・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今海原君ヨリ
議事進行ノ必要トシテ私ノ答辯ヲ提ヘテ御
質疑デアッタガ、議事進行ト云フヤウナコト
ハ頓ト分リマセヌデス、併ナガラ問題ハ目
下國民ノ最モ注意ヲ惹イテ居ル所ニ觸レテ
居リマスカラ、假令質問ノ內容ガ如何ニア
ルト致シマシテモ、大體御答ヲスル必要ガ
アルト思ヒマス、全體ニ就テ御答ヲ致シマ
スル前ニ、特ニ機會ガアレバ申上ゲタイト
思ッテ居ッタ位ナ事柄ガ其中ニ在リマスカラ、
ソレヲ先ヅ先キニ申上ゲマス、ソレハ昨
日吉植君ノ豫算委員會ニ於ケル質問中、銀
行ガ破綻ヲ致シタ時ニハ如何ニスルカ、此
震災手形ノ處理法ニ依ッテ銀行ヲ救濟スル
ナラバ他日銀行ガ破綻ヲ起シ夕時ニ復斯
ンナ事ヲシナケレバナラヌヤウニセネバナ
ラヌガ、如何ニスルカ、此趣旨ノ下ニ御質
疑ヲ蒙ッタノデアリマス、凡ソ銀行ノ破綻ヲ
來シマシタ場合ニ於キマシテハ、何レカ後
援ヲ致スベキ所ノ銀行ヲ見附ケマシテ、サ
ウシテ其破綻ヲ來シタ所ノ銀行ノ内容ヲ整
理シテ、其整理ノ出來タモノヲ、其後援ヲ
致ス銀行ニ移シテ經營サセルカ、其破綻ヲ
來シタ銀行ノ整理ヲ告ゲタ所ノ跡ノ始末ヲ
サセルカト云フコトヨリ、他ニ方法ハ無イ
ノデアル、斯樣ニ申上ゲタ、本日東京渡邊
銀行ガ破綻ヲ致シマシタ、是ハ(發言者多
シ)大切ナ事柄デアリマスカラ聽クコトダ
ケハ聽イテ、後デ御意見ガアレバ如何ヤウ
ニモ爲サッテ戴キタイ、此銀行ハ相當預金
ヲ持シテ居ルト云ッテ、其時ニハ預金ノ數字
モ申シマシタ、此際私ハ態ト申シマセヌ、
預金モ持ッテ居ルノデアリマスカラ、洵ニ遺
憾千萬デアル、是ハ何トカ救濟ノ方法ヲ講
ジナケレバナリマセヌガ、前段申上ゲタヤ
ウナ方法ニ依ラナケレバ救濟ノ途ガ無イノ
デアリマス、斯ウ云フコトヲ申上ゲタノデ
アリマス、然ル所東京渡邊銀行ハ午後ニ於
テ-午後三時頃ニ漸ク手形交換所ノ帳尻
ニナリマシタ所ノモノヽ決濟ヲ致シタ····
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=17
-
018・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=18
-
019・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君)(續) 是ニ於テ疑
問ガ起ルノデアリマス、私ハ其〓末ヲ糺シ
テ見タノデアリマス、私ガ豫算委員會デ申
シマシタノハ、當日大藏次官ヨリ「東京渡
邊銀行本日午後一時過ギ三十三万七千圓手
形交換尻ヲ決濟スル能ハズ遂ニ支拂ヲ停止
ス」、此事ハ渡邊六郎-渡邊銀行ノ渡邊六
郞專務取締役ノ內藤恒吉、此兩氏ガ大藏
省ニ見エマシテ種々ノ御心配ヲ下サッタノ
デアルガ、遂ニ此始末ニ至リマシタカラ支
拂停止ヲ致シマス、ソレハ何時發表シナケ
レバナラヌヤウニナリマスカト、斯ウ申シ
マシタラ、是ハ最早致方ガアリマセヌ、本
日發表ヲ致シマス、是ハ重大ナ事デアルカ
ラ、議會ニ居ル國務大臣ニモ報告ヲセンケ
レバナリマセヌカラ、是ヨリ私ハ議會ニ參
リマス、斯ウ申シタラバ、渡邊六郞氏ハ、
私ハ未ダ曾テ斯樣ナ場合ニ遭遇シタ事ハゴ
ザイマセヌガ、今後ノ處置ハ如何ニシテ宜
イカ御考ヲ承リタイト云フコトデアリマシ
タサウデス、是ニ於テ事務次官ハ、ソレハ普
通銀行課長ニ打明ケテ御相談ニナッタ方ガ
宜シウゴザイマセウト言ウテ、其席ニ立會ッ
テ居ル原田事務官ヲシテ、普通銀行課長ニ
引合セヲサセテ置イテ、本院ニ參ッテ此書
面ヲ私ニ提出シタノデアリマス、然ルニ午
後ニ至ッテ此決濟ガ出來ルナラバ、門戶ヲ
締メナクテモ宜イト云フ疑ガ起リマスカ
ラ、卽チ昨夜議會ヲ終リマシテ、官邸ヘ原六
郞氏ヲ招イテ承シテ見マスルト、銀行ハ(「原
六郞ヂヤナイ」ト呼ヒ其他發言者アリ)是ハ
一體民間ニ關係ノアル事デスカラシテ、能
ク御聽下サルコトガ必要デアリマス
〔此時發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=19
-
020・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=20
-
021・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君)(續) 渡邊銀行ハ
最早行詰リヲ生ジタノデアリマスカラ··
〔此時發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=21
-
022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=22
-
023・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 綱一旦門戶ヲ
締メマシテ、卽チ支拂停止ヲ致シマシテ、
渡邊ハ幸ニ不動產ヲ澤山持ッテ居リマスカ
ラ之ヲ資金化スル方法ヲ執リマシテ、預
金者等ニ迷感ヲ致サセナイヤウニ致シタ方
ガ宜カラウト決心ヲ致シマシタカラ、先
ヅ支拂停止ヲ致スト云フコトニ決意ヲ致シ
マシタ、然ルニ手形交換所ノ尻三十三万七
千圓ヲ其儘ニシテ門戶ヲ締メマスルト、是
ハ交換所ノ組合ノ銀行ニ非常ナ累ヲ及ボシ
マス、此點ハ銀行ニ御經驗ノ方ニハ、能ク
分リマセウガ、每日手形交換所へ手形ガ輻
輳シテ、其輻輳シタモノヲ是ハ是へ支拂フ
是ハ此所へ決濟スルト云フ風ニ組合セヲス
ルモノデ』アリマス、其組合セヲシタモノ
ガ、組合セヲシタモノヽ中ニ、支拂ノ出來
ヌモノガアルコトニナリマスルト、一ツ其
事柄ガ生ジタ爲ニ、當日總テノ取組ガスッ
カリ壞ハレルコトニナルノデアリマス、%
レ故ニ此手形交換所デ組合セヲシタモノ
ヲ其儘ニシテ、決濟ヲセズニ翌日ニ繰越シ
マスルト、翌日ニ於テ其組合セヲ解イテ戾
シ入レルト云フコトノ爲ニハ、可ナリ財界
ニ波動ヲ及ボスモノデアリマス、ワレ故ニ
東京渡邊銀行ハ、斯ルコトヲ致シテ同業銀
行者ニ非常ニ累ヲ及ボシ經濟界ニ波瀾ヲ惹
起スヤウナコトヲ致シテハ相濟マヌノデア
ルカラ、全力ヲ擧ゲテ之ヲ決濟シテ置イテ、
サウシテ前段申上ゲマシタヤウニ、一旦支
拂停止ヲシテ、自分ノ財產ヲ提供シテ、ソ
レヲ資金化スルヤウニ致シ、之ニ依シテ日
本銀行等ノ援助ヲ得マスルナラバ、預金者
等ニ迷惑ヲ掛ケズニ終ルコトガ出來ルト信
ジマシタカラ、卽チ此決意ヲ以テ、本日支
拂停止ヲ致スコトニシタノデアリマス、斯
ウ云フ申立デアリマシテ、此手形交換所ノ
決濟ニ努メタト云フコトハ、銀行業者トシ
テ、洵ニ見上ゲタ處置ヲ致シタモノト、私
ハ稱讃ヲ致シテ居ルノデアリマス(拍手)斯
ノ如キ注意深キ仕方ヲ致シマシタ爲ニ、今
日ニ相成リマシテモ
〔此時發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=23
-
024・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=24
-
025・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 豬財界ニハ何
等ノ不安ヲ惹起スコトナク····
〔此時發言者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=25
-
026・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 生方君ニ注意致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=26
-
027・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) (織)東京方面ニ
於ケル
〔此時發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=27
-
028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 生方君····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=28
-
029・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) (續)經濟界ハ何
等是ガ爲ニ不安ノ〓ヲ惹起シマシテ、銀行
取付騒ギ等ヲ起スヤウナ狀態ノナイコト
ガ、洵ニ仕合セデアル、又ソレガ當然デア
ルト思シテ居ル(拍手)ソレ故ニ昨日ノ質問
ニ對シテ、應答致シマシタ結果トシテ、此
事ヲ以テ御尋ヲ蒙リマシタカラ、財界全體
ノ安心ヲ致シマスル上ニ於テ必要ト存ジマ
スルカラ、併セテ此事ヲ御報告旁、御答ヲ
スルノデアリマス(拍手)其次ハ束武君ノ御
質問ニ致シテ、私ガ御答致シマシタ所ノモ
ノニ違ヒガアル貴族院ノ震災手形處理法
案ノ委員會等ニ於テハ懇談會ヲ開イテ、衆
議院ニ於テ言ハザリシコトヲ言ウタノデア
ルト云フコトヲ屢、御繰返シニナル、然ル
ニ貴族院ニ於テ懇談會ト云フヤウナ形式ヲ
取ッタ會ハマダ開ケタコトガゴザイマセ
又、成程委員會ヲ開イテ居ル中ニ、食事ノ
時間十二時近クナッタ時ニ當リ、前ヨリハ早
ク委員長ガ、今日只今是ニテ休想ヲ致シ、
午後一時ニカラ-一時半ト言ヒマシタ
カ-一時半カラ再會致シマスト宣告致シマ
シタ、其場合ニ於テ速記者等ガ立ッテ行ッテ、
其後ニ委員諸君ノ殘ラレテ居ル者ガ多分ア
ル時ニ、雜談的ニ色ニノ話ノアッタコトハ
アリマス、是ハ何所デモアルコトデアル
之ヲ名ケテー之ヲ名ケテ懇談會ト云フナ
ラバ
〔「懇談會ヂヤナイカ」ト呼ヒ其他發言
者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=29
-
030・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=30
-
031・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) (株)懇談會ト言
ウテモ宜シウゴザイマセウ、併ナガラ委員
長ヨリ懇談會ヲ是ヨリ開キマスト云フ宣告
ナ下ニ、開カレダ例ハナイノデアリマス(拍手)
〔「開イテ居ルヂヤナイカ」ト呼ヒ其他
發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=31
-
032・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜粛ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=32
-
033・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君)(續) 抑〓本案ヲ
議スルニ當ッテ、成ベク公々然トシテ意見ヲ交
換スルコトガ、一番世間ノ感ヲ生ジナクテ
宜シイノデアル、ソレ故ニ祕密會ト云フガ
如キコトヲ避ケ、故ラニ懇談會ヲ開イタト
云フガ如キ名前ヲ吹聽スルコトヲ避ケテ居
ルノデアル、ソレ故ニ屢〓懇談會ニ於テ云
云ト言ハレマスルガ、貴族院ノ非公式ノ話
ハ、斯ウ云フ形式ノ下ニアッタト云フコト
ヲ申上ゲテ置キマス、ソレカラ其時ニ衆議
院ニ言ハザリシ所ノ內容ヲ打明ケタト斯ウ
仰セラレル、是ハ本院ニ於キマシテモ、成
ペク此案ニ對スル御理解ヲ得ルヤウニ何等
カノ方法ニ依リ、何等カノ機會ニ於テ、御
會得ノ行クヤウニ努メマスルト云フコトヲ
私ハ屢、言ウタ、又委員會ニ於テモ其手段
ヲ執ッタコトハ同ジコトデアル、所ガ此案其
モノハデス、元々財界ノ安定ヲ圖ルト云ム
コトガ目的デアリマス、經濟界ノ安定ヲ期
スルト云フコトガ目的デアル、而シテ其一
ツノ目的ハ金融ノ梗塞ヲ疏通セシムト云フ
コトガ、補償法案ノ成立ッ夕所ノ根本デア
リマス、ツレ故ニ今囘ノ補償法案竝ニ處理
法案ハ銀行ヘ向。テ貸ス、其銀行ノ方ハ手
形振出人ト年賦償還ノ約束ヲ結ブ、其年
賦償還ノ約束ニ基イテ拂フ利息ハ、日本
銀行カラ借リタ公債ノ利息トシテ之ヲ拂
フ、元金ハ卽チ年賦トシテ本人ヨリ銀行
ヘ納メルモノヲ以テ之ニ當テル、而シテ
ソレヲ監督スルハ日本銀行之ニ當リ、傍ラ
又大藏省之ニ當ル、其方法ハ勅令若クハ省
令ヲ以テ大體定メ得ルコトハ定メル、而シ
テ其事ノ處置決定ハ調査委員會ニ於テ評議
ヲシテ、不公平ナカラシムルヤウニスル
本案ノ表モ裡モ是デアリマス(拍手)別ニ個人
ヲ救濟スルノドウノト云フガ如キコトハ
此案ノ性質デモナケレバハ問題デモナイノ
デアリマス、ソレ故ニ屢、諸君ハ鈴本商店ガ
ドウダトカ、何某ガドウダトカ云フコト仰
セラレマスガ
〔此時發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=33
-
034・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜粛ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=34
-
035・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) (주)何某ト云フ
ガ如キ個人ハ此目的ノ中ニハナイノデアリ
マス、銀行其モノガ目的デアリマス、金融
機關其モノガ目的デアリマス、ソレ故ニ貴
族院ノ非公式ノ場合ニ於キマシテモ、御尋
ノヤウナコトハ起ラヌノデアリマス、又起
リマシテモ、之ニ答ヘルノ必要ハ無イノデ
アリマス、斯樣ナコトガ案ノ性質デゴザイ
マスカラ、衆議院ニ於テ言ハザリシ所ノ個
入ノ關係等ノコトヲ、貴族院ニ於テ云々シ
タト云フガ如キコトガ起ラウ筈モナケレ
バ、又起ステモ言フ必要ハナイ筈デアリマス
(拍手)ソレ故ニ東君ノ御尋ニ對シテ、東君
ハ頻ニ金額ヤ名前ナドヲ列擧セラレマシタ
ガ左樣ナコトハ貴族院ニ於テノ御質疑中
ニモ無カッタシ、言フタコトモナイト云フコ
トヲ明ニシテ置キマス(拍手)是ニ於テ衆議
院ヲ侮蔑スルノ、貴族院ヲ尊ブノト云フ差
別ガ何所ニ起ルノデアリマスカ、起リヤウ
ハ無イノデアリマセヌカ、豫ネ々々申上ゲ
マスル通リ、私モ衆議院議員ノ一人デアリ
マス、自ラヲ侮辱スルヤウナ行動ハ決シテ
致スコトノ出來ルモノデハアリマセヌ(拍
手)ソレカラ森田金藏君ノ此間ノ御尋ニ對
シテ、左樣ナコトヲ言ウタヤウニ思ハヌガ、
速記錄ヲ見テ御答ヲ致シマセウト云フコト
ヲ申上ゲテ居リマス、サウシテ此事ハ豫算
委員會ニ於テ質問ガ起リマシテ申上ゲマシ
タシ、今ノ海原君ノ質問ニモ、吉植君ニ對
シテ斯ウ答ヘタト云フコトマデ仰シヤルカ
ラモウ御承知ニナッテ居ル筈ト思ヒマス
ケレドモ、森田君ニハ御答シタヤウナ譯ニ
ナッテ居リマセヌカラ、改メテ申上ゲマス、
速記錄ヲ見マスト、斯ウ書曰イテアリマス、「十
二年カラ今日マデ經過致シマシテ、其間ニ
ハ種々ノ不幸ヲ蒙シタ者モゴザイマセウシ、
且又日本銀行ニ割引ヲ請求シテ見タ所ガ、
オ前ノ方ハ震災其モノガナイノヂヤナイ
カ、シレヲ此震災ニカコ付ケテ融通ヲ求メ
ルト云フコト八、是ハドウモ日本銀行トシ
テハ應ズル譯ニハ行カヌ、ト云フテ拒マレタ
ヤウナ者モ多少アリマセウサウ、云フ風ノ人
ハ〓幸ニ体倖ヲ得テ、相當ノコトニナッテ居
リマスレバ別デアリマスガ、矢張今尙ホ苦
痛ヲ續ケテ居ルト云フガ如キ立場ニ在ル者
ニ於キマシテハ、種々ノ非難ノ聲ヲ發スル
ト斯ウ云フヤウナコトガアリマスルシ、又
從來取引ノ關係ニ於テ、彼奴ハドウモ憎イ
奴デアッテ、何カ仇討ヲシタイト云フヤウナ
風ノ者ガアリト假定致シマスルト、其者ガ
震災手形ノ爲ニ苦シンデ居ルト云フコトヲ
利用シテ、之ニ惡聲ヲ浴セ掛ケルト云フガ
如キ事情モ生ジ、又單純ナル經濟問題トシ
テ、是ハ處理スベキモノデアリマスルガ、
御承知ノ通リ多少此政治化シテ來タヤウナ
風ガアリマシテ、問題ヲ殊更ニ面倒ニシ來
タト云フヤウナ嫌モアルノデアリマス」卽
チ本問題ヲ說明スル前提トシテ、今日ノ狀
態ヲ述ベル時ニ斯ウ云フコトヲ言ッタコト
ガアリマス、何モ衆議院ノ人ヲ指シテ之ヲ
言ッタノデハナイ、總テノ空氣ガ斯ウ云フ空
氣ニナッテ居ルト云フ時ニ、之ヲ言ッタノデ
アリマス(拍手)何等衆議院ヲ侮蔑スルト云
フガ如キコトハ無イノデアリマス、以上申
上ダマシタ所ニ依シテ、明ニ貴族院ト衆議院
トノ差別ヲ考ヘテ居ラナイト云フコトガ分〃
タト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=35
-
036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ吉植庄一郞君
〔吉植庄一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=36
-
037・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 片岡大藏大臣ハ昨日豫算
總會ニ於テ吾々ノ問ハザリシニ拘ラズ渡
邊銀行破綻ノ御報告ヲ、殊更ニ本員ニ對ス
ル應答ノ中ニ加ヘラレダ、大藏大臣ガ何ノ
意味ヲ以テアノ委員會ニ於テ、誰モ問ハナ
イ渡邊銀行ノ問題ヲ言ハレタカト云フコト
ハ甚ダ不思議ナ事ダト思ッテ居ル、然ルニ
委員會ヲ終テテ屋屋返クテ見ルト、其事ハ
僞リデアル、是カラ大藏省ハ渡邊銀行及日
本銀行ノ人〓ナドヲ集メテ、殆ド夜ノ十一
時マデ善後策ヲ如何ニスルカト云フコトニ
付テ、或ハ大藏省ヨリ聲明書ヲ發スルカラ
ト云フテ、多クノ新聞記者ヲ大藏省ニ待セテ
置カレタ、サウシテ到頭聲明書ヲ出サズニ、
是ハ渡邊銀行ガ自發的ニヤッタノデ、大藏省
ニハ責任ノ無イ形ニ話合ヲ付ケタト云フ
コトガ、昨夜中ニ吾々ニ明瞭ニ分ッタ(拍手)
併ナガラ昨日ノ豫算總會ニ於ケル國務大臣
ノ御言葉ハ頗ル重大ナル意味ヲ含ンデ居
ルノデアリマスカラ、片岡君ハ今日議員ヨ
リ問ハレズトモ、自ラ進ンデ議會ニ向ッテ
昨日ノ質問ニ答ヘタ所ノ事ガ、偶ハ不謹慎
極マル事デアッテ、財界ニ一大「シヨック」ヲ
與ヘタ(「ノウ〓〓」拍手)常ニ口ニスル所ノ
財界ノ安定ノ爲ニ、震災手形ヲ出シタノダ
ト云フコトヲ繰返シ繰返シ言ウテ居ル大藏
大臣ガ、自分ノ失言ノ爲ニ、マダ死ンデ居
ナイ銀行ニ死刑ノ宣告ヲ先ニシテシマッタ
(拍手)潰レテ居ナイ銀行ヲ潰シタト言ッテ
居ル、而シテ三千七百万圓ノ預金ガアル、
斯ウ言ッテ居ル、然ルニ今日此處デハ預金ノ
數ハ遠慮シテ申上ゲナイ-何ヲ言ウテ居
ルカ潰レルカ潰レナイカ分ラナイモノデ、
誰モ聞カナイノニ豫算總會ニ於テハ金額ハ
三千七百万圓ダ、之ヲ救ッテヤリタイケレ
ドモ引受人ガナケレバ如何トモスルコトガ
出來ナイトマデ、速記錄ニチヤント書イテ
アルデハナイカ、ソレヲ今日ニナッテ何ト言
フカ、之ヲ申スコトハ「シヨック」ヲ與ヘル
カラト云フ、既ニ壞レテシマッテ、社會ニ此
眞相ガ明カニナッタ後ニナレバ、物ヲ言ハ
ヌマダ壞レナイトキニハ其內容ヲ素,破
拔イテ居ル、是レ卽チ銀行ヲ殺シタモノハ
片岡君デアル(拍手)故ニ如何ニ銀行者ガ昨
夜ニナッテカラ相談ヲシテモ、一國ノ大藏
大臣、而モ財界ノ安定ト云フコトヲ繰返シ
繰返シ宣言シテ居ル大藏大臣ニ依シテ、帝國
議會ノ豫算總會ニ於テ堂々ト此銀行ハ破綻
致シマシタト、此明言ヲ受ケタ後ニ於テ、
銀行業者ハ、抛ッテ置ケバ今朝ハ黑山ノヤウ
ニ預金取付カ來ルニ相違ナイ、斯ウ云フヤ
ウナ狀況ニ置カレヽバ、如何ナル銀行デモ休
業セザルヲ得ナイコトニナッテ來ル、此重大ナ
ル責任ヲ貴方ハ何ト思フカ、而シテ此議會ニ
向ッテ謹愼ヲシテ己レノ失言ヲ詫ビテ、其失言
ヲ謝スノカト思シテ居レバ、何タル事デアル、
當リ前ノ事ヲシタカノヤウニ、此處ニ白々
シクモ自分ノ責任ヲ感ズルノ色ナクシテ、
報告スルニ至ッテハ、何タル厚顏無恥デア
ルンカ斯ノ如キ者ガ一國ノ藏相トシテ、之
ニ財界ノ安定ガ出來ルト思フカ、凡ソ今迄
責任ヲ知ラザル大臣モ隨分多カッタケレド
モ、凡ソ片岡君ノ如ク責任ヲ知ラザル大臣
ハ今迄一人モ無イ、故ニ吾々ハ此問題ニ對
シテ、現內閣ノ聲明シテ居ル所ノ財界安
定、財界安定ヲ口ニシテ、之ヲ殆ド自分ノ
專賣ノ如クニ言ウテ居ル此内閣ガ、此銀行
問題ニ對シテ、其眞相ヲ僅ニ、渡邊銀行ノ
自發的ノ行動ノ如ク言ヒ做シテ、自分ガ未
ダ門ヲ締メテ居ナイ銀行ヲ、昨日ノ午後一
時半ニ議會ニ於テ是ハ既ニ破綻シタト言ハ
レタ、而シテ其預金ハ三千七百万圓アル、
其破綻ノ上ニ、死骸ノ後片付デモ考へテ居
ルヤウナコトヲ言ッテ居ルデハナイカ、是ハ
渡邊銀行ガ大藏省ノ一部官僚ニ向ッテ何カ
言ウタ、是ハ正ニ醫者ニ駈付ケタノデア
ル、駈付ケテ治シテ貰ハフト思ッテ、藥ヲ
貰ハウト思ッテ駈付ケタ者ニ向ッテ、直ニ死
ノ注射ヲシタモノデアル、凡ソ狼狽、ウロ
タヘ者ト云ウテモ、此位ノウロタヘ方ハナ
ィ、命ヲ助ケテ貰ヒタイカラ大藏省ニ行シ
タノデアル(「ソレガ議事進行ニ關係ガアル
カ」ト呼フ者アリ)大ナル關係ガアル、此震
災手形ノ問題ニ對シテ、今日豫算總會ノ吾々
ノ手ニ四百万圓ノ震災手形ノ利子ノ豫算
ガ提出サレテ居ル、其進行ノ上ニ於テ大藏
大臣ガ斯ノ如キ態度ヲ執ッテ、自分ノ責任
ヲ全ク棚ニ上ゲテ、財界ヲ自ラ攪亂ヲシ
テ、是デ財界安定ノ爲ニ震災手形ノ整理ガ
必要ナリト云フ、此一點ニ付テハ、全久破
壞シテ居ルノデアルカラシテ、吾々ハ此總
テノ議事ヲ進行スル上ニ於テ、現內閣ノ大
臣ガ斯ノ如キ不信ノ行動ヲ改メテ、議會ニ
陳謝シテ、自分ノ輕卒ニシテ、思慮ノ足ラ
ナカッタコトヲ謹ンデ國民ニ謝シテ、然ル後
吾々ハ許スベキハ許シテ、國務ノ審議ニ入
リタイト思フ、之ヲセズシテ居レバ、議會
ハ全ク此內閣ニ向ッテ不信任ノ決議ヲシナ
ケレバナラナクナッテ來ル、吾々ハ昭和新
政ノ初ニ於テ三黨首會合ノ趣旨ヲ諒トシ
テ、一旦出シタ不信任案ハ撤回シタ、併ナ
ガラ、斯ノ如キ不信ノ行動ヲ敢テスルナラ
バ、而シテ改ムルコトヲ知ラナケレバ、吾
吾ハ最後ノ決心ヲシナケレバナラヌ、此意
味ニ於テ議事ノ進行ニ重大ナ關係ガアルガ
故ニ、願クハ冷靜ニ沈著ニ能ク考ヘテ、サ
ウシテ大臣トシテノ本義ニ鑑ミテ、此問題
ニ對シテ茲ニ私ノ質問ニ明瞭ナル答ヲ與ヘ
ラレンコトヲ希望スル
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=37
-
038・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今ノ吉植君ノ
御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、先刻モ申上ゲ
マシタ如ク、東京渡邊銀行常務取締役二名
ガ大藏省へ出頭致シマシテ、支拂停止ヲ致
シマス、卽チ本日之ヲ發表致シマス、斯ウ
申出デタノデアリマス、ソレカラ手形交換尻
ヲ決濟ヲ致シタト云フコトハ、前刻モ申上
ゲタ通リ、自分ハ支拂停止ヲスルニシテ
モ、是ガ爲ニ財界ヲ攪亂スルト云フガ如キ
コトヲ致シテハ、銀行トシテ整理ニモ困リ、
人モ困ラセルカラ、是ノ無イヤウニシヤウ
ト云フ爲ニ、深甚ノ努力ヲ拂ウテ、ーファ
決濟ヲ圖シテ、サウシテ門戶ヲ締メルコト
ニ致シタ、斯ウ云フ申出デアリマス、何モ
政府當局ガ作爲シタノデモ何デモアリマセ
又、卽チ銀行ノ當務者ガ支拂停止ヲ致シマ
スト云フコトヲ申シテ來マスル以上ハ、之
ヲ信ズルヨリ外ハ何モナイノデアリマス、
(拍手)併ナガラ是ガ爲ニ、財界ニ動搖ヲ來
スヤウナコトガアッテハナラヌノデアリマ
スカラ、私ハ日本銀行ノ役員ヲ集メマシ
テ、善後處理法トシテ、財界ノ動搖セヌヤ
ウニ、萬一動搖ヲスル場合ニ於テハ日本
銀行トシテハ相當ノ途ヲ執ラナケレバナラ
又、斯ウ云フ相談ハ確ニ致シタ、其致シタ
結果トシテ、財界ハ確ニ安定ヲシテ居ル、
日本銀行ハ一般ノ金融界ニ對シテ相當ノ援
助ヲシナケレバナラヌ時ニハ、援助ヲスル
ト云フ覺悟ヲ致シテ居ル、之ニ依シテ財界ニ
ハ只今マデ何等ノ動搖ハ無イノデアリマ
ス洵ニ任合セデアルト思フノデアリマス、
渡邊銀行ガ支拂停止ヲ致スコトガ突然ニ
起ッタナラバ、吉植君ノヤウナ議論ガ起リマ
セウ、是ハ今日マデニ、成タケ銀行當局者
トシテ玆ニ至ラヌヤウニ努メタコトハ、容
易ナラザル事デアリマス、又政府當局者ト
シテモ玆ニ至ラヌヤウニ努メマシタ事モ、
容易ナラザル事實デアリマス、併ナガラ已
ムヲ得ザル境遇ニナリマシタナラバ、- 一
門戶ヲ締メテ置ク、サウシテ幸ニ渡邊銀行
ハ不動產ヲ澤山持ヲテ居リマス、此不動產ヲ
資金化スルヤウナ方法ヲ講ジマスレバ、開
店モ早ク出來マセウシ、預金者ニ迷感ヲ掛
ケルヤウナコトガ少クナリマセウカラ、其
方法ヲ執ルヤウニ致シタト云フコトハ、賢
明ナル致方デアルト考ヘテ、私ハ同情ヲ申
シテ居ル、是レ以上ハ別ニ申上ゲナクテモ
宜イト存ジマス
〔吉植庄一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=38
-
039・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 只今幾ラカ御眞面目ニ
ナッテ眞面目ナ御答ガアルカト存ジマシタ
ラ(「質問デハナイ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=39
-
040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 國務大臣ノ答辯ニ關
スル質疑デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=40
-
041・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君(續) 只今ノ御答辯ハ全ク
現内閣ノ此問題ニ對シテノ責任ヲ轉嫁シタ
ル御意見デアリマス、既ニ昨日未ダ閉店モ
シヂケレバ、公ニ閉鎖ヲ發表シテ居ナイ銀
行ヲ、議會ニ於テ大藏大臣--監督ノ位置
ニ在ル所ノ大藏大臣ガ之ヲ議會ニ發表シ
タ天下公衆ニ發表シタ、凡ソ今日体業ニ
ナッタト云フコトヲ、昨日大藏大臣ガ午後一
時半ニ之ヲ發表スルトハドウ云フ譯ダ、死
ンデ居ナイ人間ヲ一日早ク既ニ今日死ンデ
シマッタト報告スル、是ハ貴方ノ屬僚ニ誤ラ
レタト云フナラバ、其屬僚ハ重大ナル責任
ヲ負ハナケレバナラヌ、同時ニ其屬僚ノ話
ヲ信用サレタ大藏大臣ノ輕率誰モ聞キモシ
ナイノニ故ラニ之ヲ報告シテ-吾々ガ若
シ渡邊銀行ガ怪シイト一云フ評判ガアルガ、
大藏大臣ハ何カ監査デモシテ居ルカ、注意
シテ居ルカトデモ聞イタナラバ、其質問ニ
答ヘル爲ニ、少々話ガ行キ過ギタト云フナ
ラバ寬恕スル、何等之ニ對シテ質問ノ起
ラヌノニ、木ニ竹ヲ接イダヤウナ所へ持シ
テ行フテ、渡邊銀行ハ今日休業スルト言ッタ、
是ハ〓ニ-如何ニ强辯曲解致サウトシテ
モ、銀行ガ發表セヌノニ休業スルト云フコ
トヲ發表シタ、今日發表シテ居ルノデアッ
テ、昨日銀行ハヤッテ居ル、現ニ衆議院ニ於
テ大藏大臣ガ此發表ヲシタコトヲ新聞記者
ガ聞イテ、直ニ電話ヲ以テ之ヲ本社ニ言ウ
タ(發言者多ク議場騒然)妨害セズニ能ク聽
キ給へ-昨日大藏大臣ガ
〔發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=41
-
042・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス
〔發言者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=42
-
043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=43
-
044・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君(續) 諸君、昨日豫算委員
總會ニ於テ、大藏大臣ガ午後一時半此發表
ヲシタコトヲ、新聞記者ガ本社ニ向,テ電
話ヲ掛ケタ、此事ガ漏レルヤ否ヤ、渡邊銀
行ニ向シテハ取付ケ-渡邊銀行ニ取付ガ
行ッタデハナイカ
〔發言者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=44
-
045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス
〔發言者多ク議場騒然、拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=45
-
046・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス-
只今吉植君ノ發言中ニ、原惣兵衛君ハ議長
ノ許可ヲ得ズシテ議席ヲ離レラレテ、憲政
會諸君ノ議席ノ方ニ進マレタ(「交渉ニ行ッ
タ」ト呼フ者アリ)併ナガラ同君ハ-同君
ハ別ニ何等ノ行動ニモ出デラレテ居ナイノ
デアリマス(發言者多ク議場騒然)暫ク御聽
ヲ願ヒマス、併ナガラ-併ナガラ議事中
ニ恣ニ議席ヲ離レマスコトハ、甚ダ此議場
整理ノ上ニ於テモ差支ヘルノデゴザイマス
(ヒヤ〓〓)ソレ故ニ議長ト致シマシテハ、
原君ニ將來嚴ニ斯ノ如キ事ノナイコトヲ警
告シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=46
-
047・吉植庄一郎
○吉楠庄一郞君(續) 諸君、昨日豫算委員
總會ニ於テ片岡大藏大臣ハ、只今渡邊銀行
ガ破綻致シタト云フコトヲ告白セラレタ、
其利那ニ於テ各新聞社ヘ之ヲ通報シタ、新
聞社ニ是ガ傳ッタノデアリマスカラ預金
者-三千七百万圓ノ預金者ノ中ニハ此話
ヲ聽イテ、渡邊銀行ヲ曰指シテ、渡邊銀行
ニ午後四時マデ取付ニ行フタト云フ事實、之
ヲ滅却スル事ハ出來ナイ、卽チ昨日ハ大藏
大臣ノ失言ノ爲ニ、是ガ因ヲ爲シテ預金者
ハ恐怖ノ念ヲ起シテ、是ガ取付ニ行シテ居
ル渡邊銀行ハ午後四時マデ支拂ヲシテ居
ルト云フ此活キタル事實ヲ、大藏大臣ハ何
ト御認ニナルカ(拍手)是ガ破綻シテ、死ン
デシマッタ銀行デアルカ、此事實-此事
實ヲ否認セザル以上ニハ、アノ銀行ガ昨日
ノ午後一時半ニ於テ既ニ破綻シテ、三千七
百万圓ノ預金者ノ此後始末ニ付テハ云々ト
云フコトハ、ドウシテモ言ハレルコトハ出
來ナイ
〔發言者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=47
-
048・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉植君-吉植君、
一寸-御質問ノ要旨ヲ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=48
-
049・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君(續) ソレデ、是等ノ事實
ニ對シテ、大藏大臣ハ飽迄モ强辯ヲ以テ、
自分ノ責任ヲ、少クトモ如何ニ善意ニ吾々
ガ諒解シテモ、最大ノ失言デアル、最大ノ
輕率デアル、甚シキ不謹愼デアル、此點ダ
ケハ、如何ニ善意ニ、與黨ノ諸君ガ之ヲ辯
護セントシテモ、此以上ノコトハナイ、之
ニ對シテ一言モ陳謝ノ言葉ガナイ、自分ノ
輕率ヲ-恬然トシテ、當然以上ノ事ヲシ
タト云アヤウナ顏ヲシテ居ル大臣ハアリマ
スカ(拍手)吾々ハ此事實ニ鑑ミテ重ネテ今
一度-大藏大臣ガ、今震災手形ノ問題ハ、
貴族院ノ特別委員ノ手ニ係ッテ、天下囂々
トシテ、反對ノ聲ヲ以テ埋ッテ居ルデハナ
イカ、此時ニ於テ大藏大臣ガ、財界安定ヲ
唯一ノ目的トシテ、震災手形ノ問題ヲ處理
セントシテ居リナガラ、自分ノ爲シタ失言、
不謹愼ノ爲ニ、財界ニ大波動ヲ起シテ、而
シテ是ガ爲ニ-今ニナッテ俄ニ此處デ銀
行ハ大丈夫デゴザルナドト云フコトヲ、如
何ニ大キナ聲ヲ出シタッテ、ソレハ何ノ役ニ
モ立タヌ、体業前ニコソ其言葉ハ大變有效
ナ事デアルガ、一度破綻ヲ表明シテ体業ノ
札ヲ貼ッタ以上ハ、大藏大臣ガ口先デ此銀行
ハ資本ガアルカラ大丈夫ダト云フ、ソンナ
言葉ヲ以テ此銀行ハ助カルモノデハナイ、
吾々ハ大藏大臣ガ此議會ニ提案サレテ居ル
重大法案ノ將來ノ進行ニ鑑ミ、又出シテア
ル豫算ノ通過ヲ切望セラレルナラバ己レ
ノ過ヲ過トシ、己レノ失策ハ失策トシ、
明正大ニ此國民ノ面前ニ其眞實ヲ物語シテ、
以テ國民ニ眞ノ諒解ヲ與ヘルト云フコトニ
シナイノデアルカ、重ネテ此一言ヲ勸告シ
テ降リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=49
-
050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡大藏大臣
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=50
-
051・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今吉植君ハ午
後一時半ト仰セラレマシタガ、私ガ豫算委
員會ニ於テ御話ヲ致シタヤウニ仰セラレマ
シタ、之ヲ當日大藏省事務次官ヨリ私ガ報
告ヲ受ケマシタ時ハ午後一時四十五分位ナ
時デアリマス、ソレハ銀行法案ノ議事ヲ致
シテ居ル時ニ、其委員會ノ席上へ田次官ハ
今ノ報告書ヲ持ノテ參リマシタ、ソコデ答辯
ヲ終テテ大臣室へ引揚ゲタトキニハ、事務
次官ガ大臣室へ入ッテ來テ、今渡邊六郞君ヤ
內藤恒吉君ガ斯樣々々ニ言ッテ屆ヲ致シタ
ト云フコトヲ詳細ニ申シタノデアリマス、
ソレカラ豫算委員會ニ私ガ出席ヲ致シマシ
タノガ、午後二時過ギデアリマス、確カ當
日ノ午後ノ委員會ハ二時カラ開カレタト思
ヒマス、今一時半ト仰セラレマシタガ、ー
時半ニハ豫算委員會ハ開ケテ居ナカッタト
思ヒマス、ソレカラ私ガ今ノ答辯ヲ申上ゲ
タコトハ午後四時一寸前デアッテ、四時ニ垂
ントスル時デアッタト思ヒマス(拍手)銀行
ガ今ノ交換尻ノ決濟ヲ致シマシタ時ハ、昨
日ノ丁度午後三時ヲ打ッタ時デアル、若シ三
時ヲ打ツコト遲レマシタナラバ、當日ノ間
ニ合ハナカッタノデアリマス、其所マデー
一體ハ午後一時ニ決濟スベキモノガ、午後
三時マデニナルコトヲ待ッタノデアリマス、
私ガ豫算委員會ニ御話ヲ致シタヨリシテ取
付ガ始ッタト仰セラレマスガ、其時刻ニハ銀
行ハ最早定刻ニ門ヲ締メテ居ル時デアル、
其後ニ門ヲ開イテ居ッテカラニ取付ガ行ッタ
ト云フ事實ガアルカ否ヤハ、是ハ調ベテ見
ヌト分リマセヌガ、銀行ノ營業時間ハ過去,
タ後デアリマス(「其通リ」ト呼フ者アリ)私
ハ銀行ノ責任ノ地位ニ在ル者カラ報告ヲ受
ケテ、報告ヲ受ケタコトヲ諸君ノ御心配ニ
ナッテ居ル席上ニ於テ御話ヲスルト云フコ
トハ、不都合デナイノミナラズ、諸君-
吉植君ノ質問ト云フモノガ、銀行ノ破綻ヲ
來シタトキニハ如何ニスルカト云フコトヲ
問ハレテ、ソレヲ答ヘテ行キ居ル時ニ御話
ヲシテ居ルノデアッテ、木ニ竹ヲ接イダヤウ
ナ御話ハシテ居ラヌノデアリマス、固ヨリ
私ハ責任ノアルコトナラバ少シモ辭シマセ
ヌ、併ナガラ此行動ニ於キマシテハ何等
私ハ失態ヲ致シテ居ルトハ思ハヌノデアリ
やく、是ダケヲ申シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=51
-
052・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 吉植庄一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=52
-
053・吉植庄一郎
○吉植庄一郞君 大藏大臣ハ少シモ自分ノ
責任ヲ知ラナイ、何等本員ノ質問ニ付テ耳
ヲ傾ケナイ、是レ以上ハ本會場デハ私ハ重
ネテ此質問ヲ試ミマセヌ、豫算總會ニ於テ
質問ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=53
-
054・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ノ議事ニ
入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=54
-
055・川原茂輔
○川原茂輔君 是ヨリ豫算委員會ヲ開キマ
ス豫算委員ノ諸君ハ豫算委員室へ御參集
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=55
-
056・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本日ノ日程ニ揭グマ
シタ質問ノ中六、+、十三ノ三ツノ外ハ何
レモ政府ヨリ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍
テ日程ヨリ之ヲ省キマス、尙ホ質問十ハ提
出者ヨリ趣旨辯明ノ延期ノ申出ガアリマシ
タ、仍テ玆ニ質問第六國產獎勵ニ關スル質
問ノ趣旨辯明ヲ許シマス、宮島幹之助君
六國產獎勵ニ關スル質問(宮島幹之助
君提出)
國產獎勵ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年二月二十三日
提出者宮島幹之助
國產獎勵ニ關スル質問主意書
科學ノ〓究ヲ實地ニ應用シ以テ國產ノ發
達ヲ計リ海外貿易ヲ促進スルハ我ガ國是
トスル所ナリ然ルニ近時動モスレハ政府
ニシテ國產獎勵ヲ裏切ラムトスルノ所爲
少カラス今其ノ一例トシテ養殖眞珠ニ關
スル件ヲ擧ケテ政府ノ所見ヲ問ハムトス
我ガ國特產品ノ一タル養殖眞珠ハ長年月
ニ涉ル生物學的〓究ト多大ノ努力トニ依
リテ完成セラレタル一大發明品ニシテ其
ノ性狀及品位ニ於テ天然產ノ眞珠ト何等
異ル所ナシトハ本邦及歐米ニ於ケル斯道
專門學者ノ異口同音ニ稱讃スル所ナリ然
ルニ外務省通商局編纂海外商報第七四九
號(昭和二年二月二十一日發行)上ニ通商
局ノ名ヲ以テセル「眞珠ノ將來ト日本養
殖眞珠」ト題スル記事アリ之レ我カ特產
養殖眞珠ノ價値ヲ全然非認セルモノナリ
右ハ國產ノ奬勵ヲ常ニ高唱シツツアル現
政府ノ意思ト相反スル所ナキカ
右及質問候也
〔宮島幹之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=56
-
057・宮島幹之助
○宮島幹之助君 國產獎勵ニ關スル質問ノ
趣旨ヲ陳述致シマシテ、政府ノ所信ヲ御伺
致シタイノデアリマス、科學ノ研究ヲ實地
ニ應用致シマシテ、國產ノ發達ヲ圖リマシ
テ、海外貿易ヲ促進スルト云フコトハ、何
人モ御異存ノナイ所デアラウト思フノデア
リマス、然ルニ近頃動モスルト政府ノ御遣
リニナル事ガ、此國產獎勵ノ趣旨ニ相反スル
ンデハナイカト云フ疑ヲ起スコトガ少クナ
イノデアリマス、私ハ今其一例ト致シマシ
テ、日本ノ養殖眞珠ニ關スル事柄ヲ述ベマ
シテ、政府ノ御意見ヲ承リタイト思フノデ
アリマス、諸君ノ御承知ノ如ク我國ハ水產
業ノ最モ發達シタル國デアリマス、其水產
業中眞珠養殖ノ事業ト申シマスルモノハ、
生物學ノ應用ニ基キマシテ起ッタモノデア
リマシテ、今ヤ我國デハ三重縣下ヲ始メト
致シマシテ、和歌山縣下、四國、九州等ノ
沿岸ニ約二十有餘箇所ノ眞珠養殖場ガアル
ノデアリマス、而シテ此養殖眞珠ノ一年ノ
貿易額ハ、現今デハ五六百万圓ノ少額ニ過
ギマセヌケレドモ、將來ハ一千万圓以上ニ
上ルベキ所ノ我國特有ノ產物ナノデアリマ
ス、然ルニ我ガ外務省通商局デ編纂致サレ
マシタ海外商報ノ第七百四十九號、卽チ昭
和二年二月二十一日ノ發行ニ係リマスル此
商報ヲ見マスルト、其第三頁ニ於キマシテ
「眞珠ノ將來ト日本產養殖眞珠」ト題スル記
事ガゴザイマス、此記事ハ特ニ通商局ノ名
ヲ以テ出サレテ居ルノデアリマス、此記事
ハ「レオナルド、ローゼンタール」ト云フ人
ノ著書ヲ紹介シタル所ノ一部分デアリマシ
テ、其冒頭ニ於テ、此著書ニ對シテ有ユル
讃辭ガ呈シテアルノデアリマス、且又其末
文ニ於テ、我國ノ特產デアル養殖眞珠ニ對
シテ斯ル記事ガ載ッテ居リマズ(「議長定足
數ヲ缺イテ居ル」ト呼フ者アリ)卽チ「日本
產眞珠ト稱スルモ寧口支那產眞珠ト稱スベ
キモノトス、何トナレバ支那人ハ古ヨリ眞珠
養殖ヲ實行セリ、養殖法ハ先ジ牡蠣ニ少量
ノ蠟ヲ與フルニ在リ、然ラバ御木本及池田
兩氏ノ發明モ左程新シキモノニアラズ、天
然眞珠ノ眞珠質層ハ甚ダ集中的ナルモ日本
眞珠ハ然ラズ、卽ヲ日本眞珠質層ハ平行セ
リ、故ニ光線ノ反射妨ゲラレ眼ニ感ズル所
ハ天然眞珠ニ異ナリ、其艶暗クシテ亂レア
リ、銀器ヲ以テ比較スルニ正ニ「ロールヅ」
ノ純銀器ニ對スルガ如シ」斯樣ニ書イテア
ルノデアリマス(「議長々々」ト呼フ者アリ)
此記事ハ尙ホ續イテ居リマス、卽チ「日本
產眞珠ノ賣行ハ惡シ、何トナレバ久シク之
ヲ所持シ、之ガ廣損シタルトキ更メテ之ヲ
琢磨スル、能ハズ、卽チ細工スル間ニ粉末シ
了ル、其化學的、成分ニ異リナシト雖、其
構造組織ヲ異ニセリ、此點最重要ナリ、「イ
ルバーン」〓授ノ謂ヘル如ク、日本眞珠ト
天然眞珠トハ恰モ金ヲ被セタルモノト純
金製トノ相異ノ如シ」斯樣ニ批評シテアル
ノデアリマス、此記事ハ飽迄モ日本特有ノ
產物デアル養殖眞珠ヲ讒謗罵詈致シマシ
テ、之ヲ無用ノ物ト致シタイト云フ考デ書
カレテ居ルコトハ明デアリマス、然ルニ此
外務省ノ通商局發行ノ「海外商報」ハ、特ニ
斯樣ナ日本品ヲ非難致ス所ノ文書ニ對シ
テ、圈點マデ附ケテサウシテ何等ノ之ニ批
評ヲ加ヘテ居ラヌ事デアリマス、又此日本
ノ養殖眞珠ニ付テハ、夙ニ日本內及外國ノ
此筋ノ〓究家ガ皆色とナ學問上ノ批評ヲ致
シテ居ルニ拘ラズ、是等ノ學者ノ說ヲモ此
ニ引イテハナイノデアリマス、恐ラク是ハ
外務省通商局ハ、此書物ハ何人ノ書イタモ
ノデアルカ、卽チ此書物ノ着者ハ如何ナル
人間デアルカ、又此著書ハ如何ナル目的ノ
爲ニ成サレタモノデアルカト云フコトヲ
御承知ナイ爲デアラウト思フデアリマス、
抑〓我國ノ養殖眞珠ハ、生物學ノ應用ト過
去三四十年間ノ努力ニ依テ成功致シマシ
タ所ノ一大特產物デアリマシテ(「議長定數
ガアリマセヌ」ト呼フ者アリ)日本ハ勿論、
歐米ノ斯道ノ學者ノ皆齊シク稱讃シテ居ル
所デアリマス此養殖眞珠ハ其實質ニ於テモ
天然眞珠ト全ク異ナラナイノデアリマス、
唯〓其異ナル點ハ眞珠ノ中心ニナリマス
ル核ガ、自然ニ眞球貝ノ中ニ紛レ込ンダモ
ノデアルカ、或ハ人工的ニ之ヲ入レタノデ
アルカノ點ニ存スルノデアリマシテ、何等
其間ニ差異ガナイノデアリマス、隨テ佛蘭西
ノ有名ナル水產學者ノ「ブータン」、或ハ英
國ノ水產學者ノ「シプレー」或ハ「ゼームソ
ン」、又北米デ有名ナル水産學者ノ「ジヨル
ダン」博士ナドハ皆異口同音ニ此日本ノ
養殖眞珠天然物ト全ク異ナルモノデアルト
云フコトヲ稱讃シテ居ルノデアリマス、然
ルニ大正十一年日本デ出來マシタ養殖興珠
ガ、初メテ歐羅巴ノ市場ニ現レタノデアリ
マッ、其當時佛蘭西及英國ニ於キマシテハ
一大恐慌ヲ起シマシタ、就中巴里ノ眞珠寶
石商等ノ「シンヂケート」ハ、極力此日本ノ
養殖眞珠ノ排斥ヲ企テタノデアリマス、卽
チ此養殖眞珠ハ或ハ僞造品ダト申シ、或
ハ鍍金細工ニ等シイモノダト申シテ、色こ
非難攻撃ヲ致シ、之ヲ極力排斥セントシタ
ノデアリマス、所ガ當時巴里ノ我ガ帝國
ノ大使館ハ其日本品ガ佛蘭西ノ市場ヨ
リ排斥サレルコトヲ憤慨致シマシテ、佛蘭
西政府ニ對シテ抗議ヲ致シタ、其結果佛蘭
西政府ハ、日本帝國政府ノ主張ヲ容レマシ
テ、遂ニソレマデノ眞珠輪入ノ許可權ト
云フモノハ眞珠寶石「シンヂケート」ノ手
ニ在リマシタモノヲ、態々取上ゲテ之ヲ稅
關ノ手ニ移シ、日本ノ養殖眞珠ヲ天然眞珠
ト同樣ニ取扱フコトニナッタノデアリマス、
又我國ノ中ニ於キマシテモ、帝國發明協會
ハ特ニ日本ノ特產物、殊ニ發明ヲ奬勵致
サンガ爲ニ、此養殖眞珠ヲ最モ早ク始メ、
又其規模ノ最モ大ナル三重縣下ノ御木本眞
珠養殖場ニ就キマシテ、専門ノ學者ニ依賴
ヲ致シ、其調査ヲ致シタノデアリマス、其
調査ノ結果ハ。英文及佛文ニ飜譯致サレマ
シテ、世界各國ニ之ヲ振撒キ、此國產品ノ
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席〕
名聲ヲ發揚スルコトニ努メタノデアリマ
ス斯ノ如ク在外ノ外交當局者、又外國ノ
學者、或ハ內國ノ學者ガ極力日本特產物デ
アル養殖眞珠ノ眞價ヲ稱揚シ、又國內ノ發
明協會ノ如キガ、態ニ調査ヲ致シテ、日本
發明品ノ奬勵ヲ致シテ居ルニ拘ラズ、外務
省ノ而モ外國貿易ヲ掌。テ居ル所ノ通商局
ガ、此反對ノ而モ商人ノ頭目デアル「ロー
ゼンタール」ト云フ人ノ書イタ書物ヲ、其
意味ヲ知ラズニ紹介ヲ致シ、而モ恰モ稱讃
シテ居ルガ如キ態度ヲ以テ、一種ノ公報ト
モ云フベキ此海外商報上ニ掲ゲタト云フコ
トハ本員トシテ驚カザルヲ得ナイノデア
リマス、此日本ノ養殖眞珠ナルモノハ、帝
國發明協會ノ會頭阪谷男爵ガ此序文ノ中ニ
モ申サレテ居ル如ク(「議長定數ハ認メルノ
デスカ」ト呼フ者アリ)我國ノ眞珠養殖事業
ト云フモノハ、實ニ我國ノ最モ重要ナル養
蠶業ト同樣ナル將來ヲ有スル所ノ有望ナモ
ノデアルト云フコトヲ云ハレテ居リマス
ガ、其通リデアリマス、民間ノ事業家ガ多
年刻苦努力致シマシテ、斯ノ如ク立派ナ生
產物ヲ出シ、又ソレガ追々ト海外ニモ販路
ヲ擴メツヽアル今日ニ際シマシテ、通商局
ガ恰モ國產品ヲ非難スルガ如キコトヲ致サ
レルコトハ、果シテ是ハ國產獎勵ノ意味ニ
適フモノデアルカドウカ、私ハ多大ノ疑ヲ
持ツ者デアリマス、併ナガラ私ハ此公報上
ニ斯ノ如キ記事ガ出テ居リマシテモ、之ヲ
取扱ヒマシタ一二ノ官吏ノ失態ヲ攻擊スル
者デハナイノデアリマス、何トナレバ私ハ
外務省ノ官吏ガ、多クハ海外ニ駐在致シマ
シテ、而モ若イ所ノ外交官ハ、殆ド終日暗
號電報ノ飜譯ニ沒頭致シ、僅ニ夜ノ暇ヲ割
イテ駐在國ノ國語ヲ勉强スルヤウナ實情デ
アルノデアリマス、實ニ同情ニ堪ヘナイノ
デアリマス、斯樣ナ外交官ガ歸朝ヲ命ゼラ
レルヤ、直ニ本省ニ戾リマシテ、各部ニ配
置サレ、倉皇トシテ事務ヲ執ルノデアリマ
スカラ、內地ニ於ケル產業ノ狀態ナドヲ知
ルコトノ出來ナイコトハ、當然デアルト私
ハ考ヘルノデアリマス、隨テ日本ノ中デ如
何ナル事業ガ起ッテ居ルカ、如何ナル事ガ
有望ナ事業デアルカト云フコトノ分ラヌノ
ハ是ハ無理カラヌコトデアリマス、斯様
ナ記事ノ海外商報上ニ現レルコトハ、是ハ
此事務ヲ取扱"タ所ノ一二ノ役人ノ失態デ
ハナイ、寧ロ是ハ組織ノ缺陷ニ歸サナケレ
バナラヌト、私ハ信ズルノデアリマス、ソ
コデ私ハ御尋致シタイ、斯樣ナ工合ニ兎角
外務省ノ通商局ニ於テハ、外交事務ニ忙殺
サレ、中〓產業ノ調査マデハ行屆カナイ、
此行屆カナイ所ニ於テ、斯樣ナ事務ヲ御取
扱ニナルコトガ、と抑、ノ間違デアル隨テ日
本ノ海外貿易ヲ將來益、發展セシメント欲
スレバ宜シク商工省ニ貿易局ト云フヤウ
ナモノヲ御置ニナリマシテ、此通商貿易ニ
關スル事務ヲ統一スルコトガ、最モ必要デ
アルダラウト信ズルノデアリマス、此點ニ
關シテ私ハ特ニ政府ノ御所見ヲ伺ッテ、私
ノ質問ヲ終リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=57
-
058・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 野村政府委員
〔政府委員野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=58
-
059・野村嘉六
○政府委員(野村嘉六君) 只今宮島君ハ、
貿易關係ニ於テ行政ノ統一ガ取レテ居ナ
イ、隨テ發展上非常ニ困難ヲ來ス、斯ウ云
フ御趣旨ノ御質問デアリマシタガ、當局ニ
於キマシテモ、今日ノ行政系體ハ、商工省
ト外務省ト兩系ニ分レテ居ル、御趣旨ノ考
ト當局モ同一ナル考ヲ以チマシテ、今回行
政調査會ノ特別委員會ニ於キマシテ、是等
ノ點ヲ考慮シテ、商工省ニ貿易局ヲ置イテ、
サウシテ行政ノ統一ヲ保ツ考デ居ルノデア
リマス、何レ此特別委員會ノ決議ガ更ニ本
會議ニ上ッテ、希望通リニ決セラレルコトダ
ラウト思ッテ居リマス、本日ノ程度ニ於キマ
シテハ特別委員會ニ於テ御趣旨ト同一ノ
程度ニ運ンデ居ルト云フコトヲ、御報告申
シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=59
-
060・宮島幹之助
○宮島幹之助君 政府委員ノ只今ノ御答辯
デ滿足スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=60
-
061・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 暫時休憩ヲ致シ
マス
午後三時十三分休憩
午後四時七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=61
-
062・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 休憩前ニ引續キ
會議ヲ開キマス、長岡外史君
十三飛行事業竝補助艦ニ關スル、質問
(長岡外史君提出)
飛行事業竝補助艦ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月十日
提出者長岡外史
飛行事業竝補助艦ニ關スル質問主意書
昨年中ニ於ケル列國特ニ米露兩國飛
行界ノ發展ハ驚クヘキモノアルニ對シ
政府ハ陸軍ノ航空擴張年限ヲ繰上クル
ノ必要ヲ感セサルカ
二我カ海軍ハ補助艦建造ニ沒頭シテ航
空施設ヲ等閑ニスルノ傾アリ新聞ノ傳
フル所ニ依レハ昭和二年度ニ於テ航空
隊二隊半ヲ曾設スヘキ豫定ナリシカ之
ヲ半隊ニ止メ航空母艦「加賀」ノ建造ヲ
止メ艦載飛行機ノ調辨ヲ所期ノ四分ノ
一ニ減シタリト謂フカ果シテ事實ナル
カ
三陸軍ニ於テハ兎モ角昨年度ヨリ四個
師團ヲ減シ其ノ剩シ得タル經費ノ大部
分ヲ以テ飛行設備ヲ擴張セムトスルニ
反シ海軍ニテハ豫定ノ航空充實ヲ取リ
止メ莫大ノ費用ヲ掛ケテ補助艦ヲ造ル
ト謂フコトハ如何ニシテモ統制アル同
一政府ノ下ニ在ル陸海軍トハ思惟セラ
レス政府ノ所見如何
四我カ海軍ノ飛行機ハ其ノ數甚夕少シ
政府ハ帝國海軍ノ有スル六十餘万噸ノ
艦船ヲ敵ノ空中攻撃ニ對シテ果シテ掩
護シ得ルモノト考フルカ
又我カ海軍ノ飛行機ノ威カハ(耐波力、
時速、航續力ハ)之ヲ隣邦ノ其ニ較ヘ
テ著シク劣等ナリ政府ハ尙遠洋ニ於テ
敵ニ對抗シテ偵察通信綱ヲ確實ニ保持
シ得ヘキ成算アルカ
五艦砲射擊ノ命中ハ甚タ困難ナリ縱令
中ルモ今日ノ進歩シタル戰艦ヲ擊沈ス
ルコトハ至難ナリ之ニ反シ飛行機ヨリ
投下スル爆彈ハ容易ニ軍艦ニ致命傷ヲ
與フルコトハ內外ノ試驗ニ於テ明瞭ナ
リ政府ハ補助艦ヲ大抵ニ切上ケ航空機
ヲ多ク造ルコトカ國防ノ爲ニ有利ナリ
ト考ヘサルカ
六飛行船ハ我カ邦ニ於テハ驚クヘキ幼
稚ナリ政府ハ之ヲ國防ニ用ヰルノ意思
ナキカ
七我カ邦飛行機ノ製造能率ハ極メテ貧
弱ナリ戰時ハ一二箇月ヲ出テスシテ補
充供給ノ途杜絕スヘシ政府ハ戰時自給
自足ノ法ヲ如何ニ考フルヤ
八有力ナル航空輸送會社ノ設立ハ空中
文明ヲ進メ空防ノ第一線勢力ヲ作ル爲
ニ必要ナリトシテ歐洲列國ハ戰後直ニ
國營的ニ著手シ其ノ成績驚クヘキモノ
アリ然ルニ我カ政府ニ於テハ來年度ノ
爲ニ漸ク僅少ノ調査〓究費ヲ積算シタ
ルニ過キス列國ニ於ケル斯業發達ノ經
緯其ノ經營振等ハ政府ハ能ク承知シ居
レル筈ナリ內地ニ創設スル爲ノ方法收
支等モ亦承知シ居ル筈ナリ政府ハ何ト
カ工風シテ來年度早早有力ナル空輸會
社ノ設立ヲ媒助スルノ意思ナキヤ
九我ガ民間ニ於テハ空中輸送ノ不振ヲ
憂ヘ數年前ヨリ私財ヲ投シテ内地竝外
國ニ迄空輸ヲ實施シツツアルモノアリ
其ノ義擧ハ嘆賞スヘシ而モ其ノ經營難
ニハ深ク同情セサルヲ得ス若モ有力ナ
ル航空輸送會社ノ設立カ一年又ハ其ノ
以後ニモナル見込ナレハ政府ハ過渡期
間右ノ私設團體ニ對シ一層踏入リテ補
助スルノ意ナキカ又政府ハ新會社ノ設
立及其ノ準備ニ關シ前記舊私設團體ノ
事業ヲ考慮ノ中ニ置ク意思ナキヤ若考
慮ノ中ニ置ク意思ナシトセハ其ノ事由
如何
十我カ國ニ於ケル飛行機製作ノ不振ハ
造船獎勵法的ノ國定法ナキニ俵ルコト
明ナリ政府ハ航空機製造獎勵法ヲ設ク
ルノ意思ナキカ
十一我カ邦ニ於ケル航空行政ハ甚シク
不統一ナリ政府ハ航空行政中統一機關
ヲ設クルノ意思ナキヤ
右及質問候也
〔長岡外史若登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=62
-
063・長岡外史
○長岡外史君 私ハ飛行機ト補助艦ニ關係
致シマシテ、政府ニ質問ヲ申上ゲタイノデ
ゴザイマスル、第一ニ昨年度ニ於ケル列國
ノ航空進歩ハ驚クベキモノデゴザイマス
極ク大略ヲ申上ゲマスルト、亞米利加ノ軍
用飛行機ガ二千三百臺、其外ニ約五千ノ商
業飛行機ヲ持。シテ居リマス航空年鑑、前
ノ報告ニ依リマスルト亞米利加ノ戰時ノ飛
行機臺數ハ八百十六、將校ノ數ガ-飛行
將校ガ一万七千五百十六人ト申シテ居リマ
ス、盛ナ有樣デゴザイマス、西隣リノ露西
亞、是ガ昨年ノ末マデニ世界ノ航空第一級
國ニ進ミ行ッタト云フコトハ、各國ノ共ニ
認メル所デゴザイマス、其軍用飛行機ガ千
三百乃至五百臺、其外ニ尙ホ澤山ノ商業飛
行機ヲ持シテ居リマスルガ、例レモ「ユンケ
ル」「ホツカー」式ノ最新、最良ノモノデゴ
ザイマス、是モ亦驚入ッタ盛ナモノデゴザ
イマス、昨年ニ至リマシテ更ニ注意スベキ
ハ飛行機ガ非常ニ大キクナッタ、四十人乘
デ寢室モアレバ食堂モアリ、「ダンスホー
ル」マデアルト傳ヘラレテ居リマスル、尙
ホ大キナノニナルト、百三十人乘ノ飛行機
モ設計中デゴザイマスル、更ニ注意スベキ
ハ是ノ無著陸距離ガ非常ニ大ニナッテ、
六千「キロメートル」ニマデ只今ハ「レコー
ド」ヲ持シテ居リマスル、諸君、斯ノ如ク飛
行機ガ大キクナリ、無著陸距離ガ延ビタト
云フコトハ取モ直サズ日本ヲ包ム所ノ大
陸竝ニ海上カラ從前ヨリモ澤山ナ爆彈、照
彈、毒瓦斯ヲ積ンデ、從前ヨリモ容易ニ日
本ノ各都市ニ到着スルト云フコトヲ物語ル
モノデゴザイマスル、是等ノ驚クベキ進歩
ニ對シテ、日本ノ空防ハ頗ル危險ヲ感ズル
次第ニ相成リマシタニ對シテ、政府ハ陸軍
ノ航擴張ノ年限ヲ確カ六箇年之ヲ短縮シ
テ.其完成ヲ御急ギナサル必要ハ御認メナ
サラナイカ、第二問、海軍ハ艦ヲ造ルコト
ニ沒頭ヲシテ、航空施設ヲ等閑ニ遊バス嫌
ガアル、新聞ノ報ズル所ニ依リマスレバ
來年度ニ航空二隊半ヲ擴張スル筈デアッタ
ノヲ、唯〓、半隊ニ止メタ、航空母艦加賀ノ
建造ヲ廢メタ、艦載飛行機ヲ初期ノ四分ノ
一ニ減ジタ、果シテ是ハ事實カ、若シ事實
デナイトスルナラバ是等ノ完成期ハ何年
何月デアルカ伺ヒタイ、第三、陸軍ニ於テ
ハ兎モ角昨年四箇師團ヲ減ジテ是ガ爲ニ
剩シ得夕所ノ費用ノ大部分ヲ以テ空中ノ施
設ニ振向ケタ、之ニ反シテ、海軍ハ豫定ノ
計畫マデヲ縮メテ艦ヲ造ルト仰シヤルド
ウシテモ統制アル所ノ同一政府ノ下ニ在ル
陸海軍トハ考ヘラレナイ、平仄ノ合ハヌコ
ト夥シイ、政府ノ御所見如何、第四、海軍
ノ飛行機ノ數ハ甚ダ少イ、多分三四百臺デ
アラク、新ノ如キ堇ナ空中勢力ヲ以テ、海
軍ノ目下持ノテ居ル所ノ六十四万噸ノ軍艦
竝ニ横須賀、吳佐世保等ノ造兵造艦ノ根
據地ヲ援護スルニ足ルト御考ナサルカ、亞
米利加ノ艦隊ニ於テハ、今日ハ約三百臺ノ
飛行機ヲ載セテ、容易ニ之ヲ海上ヲ運搬ス
ルコトガ出來ル、殊ニ戰時ニ於テハ尙ホ陸
上ヨリ數百臺ノ飛行機ヲ飛バシテ、連日連
夜空中攻擊ヲ續行スルモノト覺悟シナケレ
バナラヌ、之ニ對シテ海軍ノ空中勢力ハ微
弱ニハ過ギナイカ、艦隊ハ數十日ヲ費サナ
ケレバ日本ノ近海ニ到著スルコトハ出來ナ
イガ、飛行機ハ宣戰布告ノ卽日ニ日本ノ何
レノ都市ニモ殺到スルコトガ出來マスル
海軍ニ於テハ軍艦ノ比率五、五、三、之ニ
對シテハ甚シク神經ヲ御尖ラシナサルガ
隣國ノ三分ノ一乃至四分ノ一ホカナイト云
フ空中勢力ニ對シテハ甚ダ御冷淡ノヤウ
ニ考ヘラレルガ、如何、更ニ注意スベキハ
海軍ノ飛行機ハ其數ニ於テ少イノミナラ
ズ其質ニ於テモ亦兩隣國ノソレニ遜色ガ
アルト考ヘル、現ニ臺灣ノ如キ少シ荒海ニ
於テハ先年來ノ演習甚ダ不結果デハゴザ
イマセヌカ、小笠原島マデ行クコトハ屢〓、企
テラレタヤウデアルガ、今日マデマダ小笠原
島マデニモオヰデナサラヌデハゴザイマセ
ヌカ、斯ノ如キ有樣ニ於テ一旦戰時トナツ
テ、布哇若クハ比律賓ノ方向ニ對シテ、遠
洋ノ上ニ十分ナル活動ガ御出來遊バシマス
デゴザイマセウカ、之ニ對シテ偵察竝ニ通
信網ヲ確實ニ御張リナサル所ノ力ガアルト
御考ナサルデゴザイマセウカ、一寸玆デ御
斷リ申シマスルガ、私ハ海軍ニ御世話ニコ
ソナレ、何等不平ノナイ一事、何ダカ私ガ
海車ニ小言ヲ云フヤウダガ、是ハ科學ノ進
步ガ私ヲシテ斯ク言ハシメルト御承知ヲ願
ヒマスル、第五、軍艦カラ擊ツ所ノ大砲ハ
中ミ當リ惡イ、當ッテモ今日ノ進步シタ所
ノ軍艦ヲ叩キ付ケルコトハ出來ナイトハ言
ハヌガ、極メテムヅカシイ、先年「ジヤット
ランド」ノ英獨ノ海戰ニ於テ、獨逸ノ「サ
イドリッド」號ニ英吉利ノ艦隊カラ集メタ大
口徑砲彈二十四發ガ當,テ、艦内ノ將卒ニハ
死傷ハ起シタガ、軍艦ハビクトモシナイ、
其速力ニ少シノ變リモナカッタト云フ實戰
的〓訓ヲ、海軍デハ握ッテオキデナサル筈
デアル、ソレニ反シテ飛行機カラ打出ス爆
彈ニ對シテハ、軍艦ハ一溜リモナイト云フ
經驗モ亦海軍デハ御持チナサッテ居ル、兒島
砲臺ノ昨年ノ破壞演習ニ於テ、海軍ノ飛行
機カラ投付ケタ爆彈ハ八十「プロセント」
ノ命中ヲ得テ居リマスル、是ニ於テ私ハ言
葉ヲ改メマシテ、海軍大臣ニ向ヒマシテ、
海軍ノ爆彈投下術ガ斯クマデニ進歩致シタ
ト云フコトニ付キマシテ、深厚ナル謝意ヲ
閣下ニ捧ゲマスル、又此演習ニ參加シタル
飯塚、岡田、佐々木、丸山其他以下ノ將卒ニ
向ッテ、一國民ノ聲トシテ、議會ヲ通ジテ御
禮ヲ申上ゲタイノデゴザイマス、併シ氣ノ
毒ダガ軍艦ニ向ヒマシテハ、科學ノ進步
ガ大ナレバ大ナル程、君達ノ壽命ハ危險ナ
ルモノト御諦メナサイ、其影漸次暗クナル
モノトノ御悔ミヲ申上ゲンケレバナリマセ
ヌ海軍ノ軍人中ニハ帝國海軍ハ攻勢防
禦ヲ取ラナケレバナラヌソレガ爲ニ莫大
ノ補助艦ヲ要スルト說キ廻ル者ガアル甚
シキハ新聞ニマデ出シテ國民ヲ迷ンハサント
スル者ガアル、驚人ッタコトデアル(ヒヤ〓〓)
帝國海防ノ根本主義ハ、何所マデモ大和
民族ガ平和ヲ愛好スルト云フ傳統的ノ國
民性ノ發露トシテ、專守防禦デアラネバナ
ラヌ布哇ヤ比律賓ヤ新嘉坡ニ向ヲテ、ノソ
ノソ出掛ケテ行クノデハナイ日露戰爭
間、東〓サンハ此主義ヲ遺憾ナク徹底ナサッ
テ居ル、卽チ敵ヲ對馬海峽ニ邀へ逸ヲ以
テ勞ヲ討チナサッタ爲ニ、斯ノ如キノ古今未
曾有ノ大勝利ヲ御占メニ相成。若モ東
〓サンガ、攻勢防禦ナント云フ馬鹿議論ニ
迷ハサレテ、ノン〓〓出掛ケテ行タナラ
バ、勝敗ハ或ハ逆サマニナッタカモ分リマセ
ヌ、酷イ目ニ御遭ヒナサッタカモ知レナイ、
海軍ガ果シテ東〓サンノ趣旨ニ從ッテ、專守
禦ヲ御執リナサルナラバ、日本ノ海防ハ極
メテ容易デアル、卽チ「ラヂオ」無線電信、
水雷、潜航艦、飛行機、飛行船等ヲ發達サ
シテ、是等ヲ統制ヲシテ、其全智全能ヲ盡
シタナラバ日本海軍ガ支那海、竝ニ日本
ノ領海ヲ侵スベカラザルノ域ト爲スコト
ハ、サウムヅカシクハアルマイ、是ガ卽チ
國防ノ經費ヲ最小限ニ減ジテ、却テ國防ヲ
堅クスル所以デハゴザイマセヌカ、政府ノ
所見如何、次ニ飛行船、飛行船ハ日本ニ於
キマシテハ甚シク幼稚デゴザイマスル
政府ハ之ヲ軍用ニ用ユル御考ハナイノデア
ラウカ、然ルニ歐米諸國ニ於キマシテハ、
軍用トシテモ大ナル進歩デゴザイマスル、
民間ニ於テモ亦サウデゴザイマスル、先般
北極探檢ニ成功シタル「ノルゲ」號ノ如キ其
一例デアル、斯ノ如クニ外國ニ於テハ、非
常ナル進步デアルノニ、日本デハ漸ク昨年
伊太利ニ於テ、半硬式ノ飛行船ヲ御誂ヘニ
ナッタニ過ギナイ、只今ハ霞ヶ浦ニ於テ其
組立中デアル、陸海軍ガ飛行船ニ對シテ熱
度ノ足ラナイコトハ右ノ如キモノデゴザイ
マスル、何カ政府ニハ深イ御考ガアルノデ
アラウカ承リタイ、次ハ飛行機ノ製造能率、
是ガ日本ニハ甚ダ幼稚デゴザイマスル、少
ウゴザイマスル、三箇月致シマシタラ
戰時ニ於テ補給ノ途ガ杜絕スルデハゴ
ザイマスマイカ、飛行機ノ壽命ハ御承知ノ
通リ甚ダ短イ戰時ニ於キマシテハ百五
十時間位デアラウ、卽チノベツニ使ッタナ
ラバ五日カ六日デ廢物ニナルノデアル
大多數ノ補給ヲ要スルノデゴザイマスル
是ガ各國政府ガ苦心慘憺トシテ居ル次第デ
ゴザイマシテ其趣ハ政府ニ於カレマシテ
モ能ク御承知ノ筈デアル戰時自給自足ノ
法如何、第八、輸送會社ノ設立ハ空中ノ文
明ヲ進メ、空軍ノ第二線ヲ形ヅクル爲ニ必
要ナリト致シマシテ戰爭ノ終ルヤ否ヤ、
各國共ニ殆ド國營的ニ獎勵ヲ致シテ居リマ
スル其有樣ハ竝ニ今日ノ營業振及之ヲ日
本ニ持來ルトシテ、其牧支計算マデモ航
空局デハ確ニ御分リニナッテ居ル筈、然ルニ
今年僅カ一万二千圓ノ調査〓究費ヲ御積算
ナサッタニ過ギナイ、此間モ貴族院ノ鎌田榮
吉君ガ暹羅ニ行ッテ、「ジングラ」カラ盤谷ニ
渡ラウト云フノニ、生憎汽船ノ都合ガ惡
イ、ソコデ政府ノ大官ノ言フニハ宜シイ、
飛行機デ御送リ致シマセウ、然ラバ船ナラ
バ二日間ダガ、飛行機ナラバ七時間デ行ケ
ルカラサウナサイ、斯ウ言ッタ時ニ、其節
ノ話ニ私ノ國ハ山ガ多ク且ツ高ク、交通不
便ナル其山奥ニ、此間激烈ナ疱瘡ガ流行ッ
タソコデ醫者ト疱瘡種ヲ飛行機ニ乘セテ
送リ屆ケテ、瞬ク間ニ叩キ付ケテシマッタ
ト云フコトガゴザイマスル、暹羅國旣ニ然
リデアル、英米其他諸國ノ航空輸送ノ驚ク
ベキ進步モ政府デハ能ク御分リニナッテ
居ル何トカ政府ハ議會明ケ早々種々ナ差
繰ニ於テ、此輸送會社ノ設立ヲ媒助ナサル
ト云フ御考ハナイカ第九トシテ御尋ヲ致
シタイノハ(「早ク願ヒマス」ト呼フ者アリ)
成ベク「スピード」ヲ掛クテ全速力デ早ク
ヤッテシマヒマス、後トモウ二ツデス-
私財ヲ投ジテ、空中輪送ノ不振ヲ憂フル爲
ニ内地ハ無論外國マデ航空路ヲ張フテ居
ル所ガアル若モ新ニ立ツ所ノ輸送會社ガ
餘リ晩イヤウナラバ此間ノ過渡期ノ方法
トシテ何トカ御考ハナイカ第十、政府ハ
飛行機ノ製造奬勵法ヲ表向キ御立テニナル
御考ハゴザイマセヌカ(「終リ」ト呼フ者ア
リ笑聲起ル)西洋諸國ニ於テハ之ニ非常ナ
ル金ヲ掛ケテ奬勵ヲ致シテ居リマスルニ、
我國デハ何等其方法ガナイ、若シアルト言
フナラバ只今陸海軍デ民間ノ飛行機ヲ御買
上ゲニナル其代價ガ、倫敦、巴里ニ註文ヲ
シテ運賃ヲ掛ケテ取寄セ夕其代價ヨリモ、
約一倍位御高イ、ソレハ内國產ノ保護ト仰
シヤルガ、政治ハ明ルシカラ明ルミニ出サ
ナケレバナラヌ、斯ノ如キ微溫的ナ、姑息的
ナ方法ヲ止メテ、國民ヲ通ジ、議會ヲ通シ
タル所ノ奬勵法-造船獎勵法的ノ方法ヲ
御立テナサル御考ハナイカ第十一ハ飛行
行政ハ頗ル亂雜不統一デ、陸軍デヤリ海
軍遞信、文部ノ四省ニ渉テ副業的ニ寄ツ
テ掛ッテ突ツイテオヰデナサル、是ガ日本
ノ飛行界ノ不進歩ノ最大ノ原因デゴザイマ
ス(ヒヤヒヤ)政府ハツレヲ一纏メニシテ
航空省ノ下ニ總テ航空ニ關スル行政ヲ統一
遊バス御考ハナイカ昨年宇垣陸相ハ爾カ
スルト屋上ニ屋ヲ架スルノデアルカラ、同
意ガ出來ヌト御答辯ニナリマシタガ、〓
只今陸軍、海軍文部、遞信ノ持クテ居ル
チッポケナアノ廂ノ上ニ、更ニ屋根ヲ拵ヘヤ
ウト云フノデハゴザイマセヌ是等ヲ皆打
壤シテ更ニ航空省ト名ケル一大鐵傘下ニ
總テノ航空行政ノ事務ヲ集メヨ然ラバ人
ガ少ク、金モ少クテ濟ム而シテ事務ガ統
一サレテ能率ガ擧ルノミナラズ戰時ニ於
テハ空軍首將一任ノ指揮ニ屬シテ、或ハ陸
軍、或ハ海軍ト照應シテ全智全能ヲ盡ザシ
ムルコトガ出來ル、是ガ戰ニ勝ツ所ノ唯一
ノ方法デゴザイマスル之ニ對スル政府ノ
御所見如何、伺ヒタイモノデゴザイマス(拍
き)
〔國務大臣宇垣一成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=63
-
064・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 只今長岡君カラ
空中國防ニ關シテ、色〓御高見ヲ拜聽致シ
マシタ爲ニ啓發スル所頗ル大デアルト存
ジマス、今後ノ施設ニ付テハ相當ニ攻究モ
致シテ見ル考デアリマス、尙ホ只今御質問
ノ各點ハ能ク攻究致シマシテ、追テ書面ヲ
以テ御答辯申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=64
-
065・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 海軍大臣ヨリ答
辯ハアリマセヌカラ、是ニテ質問ハ終了致
シマシタ佐藤富十郞君外三名ヨリ政府ノ
答辯書ニ對スル意見陳述ノ申出ガアリマシ
タガ是ハ他日ノ機會ニ讓リマシテ、直之
是ヨリ日程ノ議事ニ入リマス-井本常作
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=65
-
066・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス、卽チ政府提出電氣事業法中改
正法律案ヲ特ニ上程シ委員長ノ報告ヲ求
メ其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=66
-
067・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス仍テ動議ノ如ク日
程ヲ變更シ電氣事業法中改正法律案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長竹内友治郞君
電氣事業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一電氣事業法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和二年三月十五日
委員長竹内友治郞
衆議院議長粕谷義三殿
希望條項
現行電氣事業法ハ時運ノ發達ニ適應セス
事業者ノ不便ヲ感スルコト尠カラサルト
共ニ一般需用者ノ利益ヲ擁護スル點ニ於
テ不備ナルモノアリ政府ハ速ニ電氣事業
法全般ニ亙リ改正ヲ企テ國民ノ要望ニ副
フヘシ
〔竹內友治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=67
-
068・竹内友治郎
○竹内友治郞君 電氣事業法中改正法律案
ニ關スル特別委員會ノ經過及結果ヲ報告致
シマス、委員會ハ前後五回ニ亙リマシテ
十分周到ニ審議致シタノデアリマスガ、其
中主ナルモノト認メラルベキ二三ノ點ヲ
玆ニ御報告致シマス、其質問應答ノ趣旨ヲ
明ニスルニ付テ、此改正法律案ノ極ク筋ヲ
荒ッポク申上ゲマスルト云フト、商法第一百
條ニ依リマシテ、總テノ株式會社ハ拂込資
本金ダケヨリ外社債ヲ募ルコトガ出來ヌト
云フコトニナッテ居ルノデゴザイマスルガ、
之ニ對スル除外例ヲ、殊ニ電氣事業會社ニ
向ッテ認メルト云フコトガ、卽チ本案ノ要旨
デゴザイマス、其所デ此電氣事業法中一體
改正スベキ事項ハ澤山アルノデゴザイマス
ルガ政府ハ此點ニ付テ一般的ニハ來ル
ベキ調査會ニ於テ調査シタ末提出スル考
ヘデアルガ玆ニ提案シタル殊ニ社債ノ制
限ヲ緩メテ拂込資本ノ二倍マデ募ルコトガ
出來ルヤウニスルト云フコト卽チ電氣事
業會社ガ殊ニ澤山ノ資金ヲ固定サセルト云
フコトカラ考ヘテ而モ現在我國ニ於ケル
產業發達ノ上ニ於テ電氣料金ヲ低減シナ
ケレバナラヌト云フコトハ社會一般ニ痛
切ニ感ジテ居ル所デアル此料金ヲ低クス
ルト云フ方法ハ色とアルガ其中最モ大切
ナル一ツハ卽チ安イ金利ノ金ヲ使ハセルト
云フコトデアル其意味ニ於テ此改正ハ極
メテ緊急デアルガ故ニ殊ニ切離シテ提出
シタノデアルト云フコトガ第一ニ說明セラ
レタ所デアリマス、所デ然ラバ斯ウ云フ風
ニ社債ヲ募リタイト云フ會社ガ一體ドノ位
アルカト云フコトノ質問ガ出マシタル所、
大略今日電氣事業會社ハ七百以上アリマス、
其中現ニ社債ヲ持シテ居ル會社ト云フモノ
ハ僅ニ四十八シカアリマセヌ、此點カラ
見ルト云フト斯ノ如ク法律ヲ改正致シマ
シテモ極メテ僅ノ會社ダケガ利用出來ル
ニ過ギナクシテ、大多數ノ會社ニ對シテハ
效能ガ無イモノデハアルマイカト云フコト
ノ疑ガ起ッタノデアリマス、之ニ對スル政府
ノ說明ハ如何ニモ會社ノ數ハ少イ、例へ
バ其四十八會社ノ數ハ少イケレドモ、實質
的ニハ此會社ガ殆ド電氣事業ノ大勢ヲ支配
シテ居ル之ヲ拂込金カラ見マシテモ、全
資本額二十二億圓餘ニ上ル此中ノ六割四
分ト云フモノハ此四十八ノ會社デ占メテ居
ル又日本全國ニ於ケル發電力總テガ今日
二百万馬力以上ニナッテ居リマスガ、其中ノ
矢張七割バカリト云フモノハ殆ド此四十八
會社デ以テ供給シテ居ルノデアルデアル
カラ會社ノ數ハ少イケレドモ、此大會社等
ガ便益ニナレバ卽チ日本ノ電氣事業大體
ノ爲ニ便益ニナルト云フコトデアルト云フ
說明デアリマシタ、次ニハ反對ノ方面カラ、
多分本黨ノ三浦君ト考ヘマシタガ然ラバ
政府ハ會社ニ向ッテサウ云フ便益ヲ與ヘル
ハ宜シイケレドモ、如何ニモ此會社ヲ取締
ル方面ガ甚ダ不十分デアル、相當ニ被害ガ
起ルカモ知レヌト云フ狀態サヘモ尙ホ打棄
テ居ル場合ガ屢〓アル、況ヤ約束シタル電
氣ノ光力、十六燭ト云ッテ十二燭位シカ明
リガナイ電燈ヲ點ケサセルト云フガ如キコ
トガ屢〓アルニ拘ラズ、之ニ對スル政府ノ
取締ガ甚ダ緩慢デアルガ此點ハドウデア
ルカ之ニ對シテハ政府ノ答辯スル所ニ依
レバ如何ニモ取締ノ點ニ付テハ十分ニ心
得テ居ル實際問題トシテ屆カヌ所ガアラ
ウカ知ラヌケレドモ、日取モ「ベスト」ヲ盡シテ
此點ヲ壞締ノテ居ルノデ、將來ニ付テハ益2
此取締ハ十分ニ致ス考デアルト云フコトノ
答辯デアリマシタ、尙ホ今一ツハ斯ノ如ク
社債ヲ募ルコトノ特典ヲ與ヘテ電氣料金ヲ
安クスルト云フコトヲ、政府ハ眼目トシテ
居ルト云フ話デアルガ、然ラバ將來一體理
想的ニ何所マデ料金ヲ安クスルト云フコト
ノ目安ヲ立ッテ居ルノデアルカト云フ質問
ハ矢張三浦君ト考ヘマス、之ニ對スル政
府ノ答辯ハ是ハ具體的ニハ御答スルコト
ハ出來ナイケレドモ少クトモ今日我國ニ
於ケル特別ノ狀態ノ下ニ、水力電氣ニ上カ
其水力電氣ハ火力、卽
チケッポンタンチヂケル、電氣ヨリモ安クスルヤウニ
スル事ヲ以テ、理想的標準ニ致シテ居ルト
云フコトノ答辯デゴザイマシタ、大體斯ノ
如キ主ナル質問應答ノ結果ト致シマシテ、
大體本案ハ可決スベキモノナリト云フコト
ノ意向ニ相成リマシタル所ガ、各派一致ノ
希望ト致シマシテ、一ノ希望條件ヲ付ケタ
イ、其希望條件ハ左ノ通リデゴザイマシテ、
之ヲ讀上ゲマス「現行電氣事業法ハ時運ノ發
達ニ適應セス、事業者ノ不便ヲ感スルコト尠カ
ラサルト共ニ一般需要家ノ利益ヲ擁護スル
點ニ於テ不備ナルモノアリ政府ハ速ニ電氣事
業法全般ニ亙リ改正ヲ企テ國民ノ要望ニ副
フヘシ」ト云フ希望條件ヲ附ケタイト云フ
コトデゴザイマシタ是ガ討論ノ際政友會
ノ植原君カラ提議サレマシテ各派一致ヲ
以テ此希望條件然ルベシト云フコトノ下ニ、
本案ハ原案ノ儘可決致サレマシタノデゴザ
イマス此段御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=68
-
069・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=69
-
070・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=70
-
071・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シ、委員長報告通リ可
決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=71
-
072・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス仍テ直ニ第二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
電氣事業法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=72
-
073・副議長(小泉又次郎君)
○副議長(小泉又次郎君) 別ニ御異議ガア
サマセヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ、委員
長報告通リ可決致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=73
-
074・井本常作君
○井本常作君 重ネテ議事日程變更ノ動議
ヲ提出致シマス此際日程第八第九第
十ノ各案ヲ繰上ゲ逐次議題トナン委員長
ノ報ロヲ求メ其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=74
-
075・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
ハ御異議ナシト認メマス仍テ日程ハ變更
セラレマシタ、卽チ日程第八及第九ハ同一
委員ニ付託シタル議案デアリマスカラ
括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=75
-
076・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス仍テ日程第八國有財產整理資金
特別合計法ノ特例ニ關スル法律案日程第
九國產獎勵ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關スル
法律案ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ開
キ委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長池
田龜治君
第八國有財產整理資金特別會計法ノ
特例ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一國有財產整理資金特別會計法ノ特例ニ
關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月十二日
委員長池田龜治
衆議院議長粕谷義三殿
第九國產獎勵ノ爲ノ會計法ノ特例ニ
關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
國產獎勵ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關スル
法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月十二日
委員長池田龜治
衆議院議長粕谷義三殿
〔池田龜治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=76
-
077・池田龜治君
○池田龜治君 只今上程サレテ居リマスル
所ノ國有財產整理資金特別會計法ノ特例
ニ關スル法律案外一件ノ委員會ノ經過ノ大
體ト其結果ヲ御報告致シマス此國有財產
整理資金特別會計法ノ特例ニ關スル法律案
ト云スノハ帝都復興事業費ヲ、昭和二年度
ノ豫算計畫ニ於キマシテ、昭和三年度ニ於
テ四百万圓、昭和四年度ニ於テ千九百万
圓合計二千三百万圓ヲ追加スルコトニナ
リマシタ其財源ヲ復興局廳舍新營費、又
ハ帝都復興事業費ヲ以テ建築又ハ購入シタ
ル國有財產、卽チ土地建物船舶等ノ不用ニ
歸シタルモノヲ賣却シタル其收入ヲ以テ充
テタイト、斯ウ云フノデアリマスルガ元
來現行法ノ國有財產業理事会特別會計法は
ルモノヽ其規定ニ依リマスルト
ニ於テ國有財產ノ整理處分ニ依ル收入ハ
之ヲ國有財產ノ整理資金ニ組人レテ其費
途ハ營繕費若クハ國有財產ノ整理處分ニ限
定セラレテ居リマスガ故ニ、此本法律ヲ制
定致シマシテ其收入金ヲ帝都復興事業費
ニ充テ得ルコトニ致シタイト云フノデアル
サウデアリマス、ソレデ委員會ニ於キマシ
テハ種々ナル質問應答ヲ重ネマシタ其極
ク大體ヲ申上ゲマスルト、最初購入シタル
時ノ價格ト、現在此法律案ニ依テ一千九
百万圓ト云フモノヽ出來ル原因トヲ對照致
シマスルト土地ノ價格又ハ賃貸金ナドニ
對シテハ餘程買入レタ當時ヨリ高價ニ見
積ッテ居ルヤウデアリマスルガ、船舶若ク
ハ建物ニ至リマシテハ、是ハ非常ニ安ク見
積シテ居ルヤウデアリマス、併ナガラ其雙方
對照致シマスルト云フト、買入レタル當時
ニ比シマシテ、餘程是ガ高クナッテ居ルヤ
ウデアリマスルガ然ラバ其豫定ノ金額ノ
一千九百万圓ト云フモノヲ超過シタル場合
ニ於テハドウナルカト云フ質問ニ對シマ
シテ、政府委員ノ答辯ニハ其場合ニ於テ
其必要以上ニ之ヲ一般會計ニ組入レル
ノ必要ガアリマセヌカラ其時ハ原則ニ戾
リマシテ、國有財產整理資金ニ繰入レル積
リデアリマシテ此法律案ハ一千九百万圓
ヲ限度トシタノデアル、斯ウ云フコトデア
リマス、尙ホ此超過シタ場合ニハサウナル
ノデゴザイマスケレドモ只今ノ政府ノ見
ル所デハ格別過不足ハナイト)斯ウ云フ答
辯デアリマシタ次ニ國產奬勵ノ爲ノ會計
法ノ特例ニ關スル法律案デアリマスルガ
是ハ我國經濟界ノ現狀ニ於キマシテ、最モ
重要ナル問題トナッテ居リマスル所ノ、國際
貸借ノ改善ニ付キマシテハ、政府ニ於キマ
シテモ種々方策ヲ講ジテ居ルサウデアリマ
スルガ、要スルニ國際貸借ノ改善ト云フコ
トハ一方ニ於キマシテ輸入ヲ出來ルダケ
減少シ、他方ニ於テ輸出ヲ奬勵スルト云フ
コトニ論ハ一致シテ居ルヤウデアリマス
而シテ此輸入ノ抑制ト云フコトニ付キマシ
テハ結局國產品ヲ奬勵スルコトガ最モ㨗
徑デアル故ニ此點ニ付キマシテ、我國ニ
於テ最モ大ナル消費者ノ地位ニ在ル所ノ政
府ガ先ヅ之ヲ始メヤウ、從來政府ニ於テ物
品ヲ購入スル場合ニ於テハ、内外ノ區別ナ
クヤッテ來タノデアリマスル故ニ、隨テ輸入
ノ金額ト云フモノハ莫大ニ上ッテ居ルソレ
デ將來ハ出來ルダケ國產品ヲ使用シテ、外
國品ヲ使用シナイト云フコトニ致シマシ
テ、所謂大消費者タル政府ニ於テ範ヲ示ス
ト云フ見地カラ致シマシテ政府ニ於テ各
省ノ主任官ヲ以テ組織セル各省海外拂節
約協議會ト云フモノヲ設ケマシテ一昨年
以來官廳デ買ヒマスル物品ニ付テハ成べ
ク國產品ヲ使用シ、外國品ヲ出來ルダケ使
用シナイト云フヤウナコトデアッタサウデ
アリマス然ルニ現行會計法ノ下ニ於テ
ハ國產品ノ購入使用等ヲ奬勵スベキ特殊
ノ制度ハ缺ケテ居ルノデゴザイマシテ、結
局其施設ノ實效ヲ擧ゲル上ニ於テハ不十分
ナ點ガ多々アルノデアリマス、仍テ今回國
產振興委員會ニ對シ商工大臣ノ諮問シタ
ル官廳用品國產品充用ニ關スル方策ニ付
キ、同委員會ノ爲シタル答申ヲ採擇シテ
會計法ノ特例ヲ設ケテ官廳用品ノ購入等
ニ國產品タルコトヲ指定シテ契約ヲ爲シ
得ルノ途ヲ開クコトガ適當デアルト認メラ
レマシテ本案ヲ提出シタ次第デアルト斯
ウ云フコトデアリマス、尙ホ本制度ノ實施
ニ當リマシテハ各官廳ノ用品ニ付キ、廣
ク外國品ヲ充用スルモノヽ種類ヲ調査シ
其內國產品ヲ以テ代ヘ得ルコトヲ得ル範圍
ヲ〓究シ且ツ國產品充用ニ關スル適切有
效ナル實行方法ヲ設ケ、以テ所期ノ目的ヲ
達スルニ遺憾ナキコトヲ期シタイ、斯ウ言ッ
テ居リマス委員會ニ於キマシテハ右兩
案ニ對シ、各派ノ委員諸君ヨリ種々熱心適
切ナル質問應答ガアリマシタガ既ニ委員
會ノ速記錄モ出來テ御手許ニ廻シテ居ル筈
デアリマスカラ其他ノ事ヲ省略致シマス
カラ、何卒速記錄ニ就テ御覽ヲ願ヒタイノ
デアリマス最後ニ結果ヲ御報告致シマス
ガ本案ハ兩案共通當ナルモノト認メマシ
テ、滿場一致可決致シタ次第デゴザイマス、"
此段御報告申上ゲマヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=77
-
078・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=78
-
079・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=79
-
080・井本常作君
○井本常作君 直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=80
-
081・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス仍テ直ニ兩案ノ第
二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
國有財產整理資金特別會計法ノ特例ニ
關スル法律案第二讀會(確定議)
國產獎勵ノ爲ノ會計法ノ特例ニ關スル
法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=81
-
082・副議長(小泉又次郞君)
○副議長(小泉又次郞君) 別ニ御發議ガア
リマセヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案
トモ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシ
タ、日程第十、兌換銀行劵整理法案ノ第一
讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス委員長小野義一君
第十兌換銀行券整理法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一兌換銀行劵整理法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月十四日
委員長小野義
衆議院議長粕谷義三殿
〔別紙〕
兌換銀行劵整理法案中左ノ通修正ス
第一條中「昭和十七年」ヲ「昭和十四年」ニ
改ム
第二條中「昭和十七年」ヲ「昭和十四年」ニ
改ム
希望條項
本法ニ依リ國庫ニ歸屬シタル利得ハ之ヲ
社會政策的施設ニ使用スルモ亦一方法ナ
リト信スルカ故ニ此ノ點ニ關シテ政府ハ
將來考究セラレムコトヲ望ム
〔小野義一君登壇〕
○小婿義一君本案提出ノ眼目ナリトシ
テ政府當局ノ說明セラルヽ所ニ依リマス
ト、從來發行セル兌換劵ノ中ニテ、關束ノ震
災ヲ初メ、其他非常事變或ハ又個人ノ紛失、
忘失等ニ依シテ、其數額ハ明デナイケレド
モ相當巨額ナル滅失ガアリタルモノト認
ムベキモノデアル而シテ其額ハ甚ダ大雜
把ナル推算デアルガ三千万圓乃至四千万
圓デアルト云フヤウニ說明ガアッタノデア
リマス、兎モ角モ日本銀行ノ現在發表致シ
テ居リマスル兌換劵發行高ノ中ニハ是等
ノ滅失セリト認ムベキモノヲ包含ヲ致シテ
居ル故ニ發表高ト現在ノ流通高ハ一致致
シテ居ラナイ、然ルニ兌換劵發行高ハ經濟
界ノ實勢ヲ知ルニ於テ、將又金融政策ノ決
定セラルヽ上ニ於テ、基礎數字デアルガ故
ニ發表高ト實際ノ流通高ヲ一致セシムル
コトハ大切ナル事デアル此見地ニ基イテ
今囘整理ヲ致サウト云フノガ此案ノ骨子デ
アリ眼目デアルト云フ御說明ガアッタノ
デアリマス、而シテ此趣旨ニ對シマシテ
委員諸君バ勿論何等御異存ハ無カッタ
ノデアリマス質問應各ニ於テ特ニ諸君ニ
御紹介申上ベキモノト思ハレルノハ三點
アッタノデアリマス、第一ハ本黨ノ原夫次郞
君ニ依シテ最モ熱心ニ論ゼラレタル所ノ
卽チ滅失兌換劵ニ因ル所ノ利得ハ現行法ノ
解釋トシテハ之ヲ日本銀行ノ有ニ歸スベ
キモノデハナイカ、又今回法律ヲ設ケテ之
ヲ國庫ニ歸屬セシムルト云フコトハ法理
上果シテ正當ナリト云フ、最モ根本的ノ御
議論デアッタノデアリマス、之ニ付キマシテ
ハ委員諸君ノ中ニモ又政府當局トノ間ニ
於テモ、懇談會ヲ催スニ至リマシテ、種々
論議サレタノデアリマスルガ、結局ニ於テ
政府ノ執ラルヽ所ノ御見解ハ現行法ノ解
釋トシテハ-現行法ハ此點ニ於テ何等規
定スル所無シ、故ニ今囘本案ヲ以テ決定ス
ルノデアル而シテ事ハ既得權ノ侵害ニア
ラザルガ故ニ之ヲ國庫ニ歸屬セシムルコ
トハ、法理上正當デアルト云フコトデアッタ
ノデアリマス此點ニ付テハ結局原委員ハ
之ヲ諒トセラレタト私ハ認メタノデアリマ
ス、次ニハ整理期限ノコト御承知ノ如ク
整理期限ハ昭和十七年三月三十一日、卽ヲ
向フ十五年箇年ト云フコトニナッテ居ルノ
デアリマスガ、之ニ付テハ豫テ本會議ニ於
テモ、星島君若クハ增田君等ニ於テ御主張
ニ相成ッタ如ク餘リ長過ギハシナイカ、之
ヲ十年ニ短縮スルガ然ルベキデハナイカト
云フヤウナ御議論ガ盛ニ繰返サレタノデア
リマス、而シテ結局ニ於テハ後程述ブル所
ノ修正案ガ生レマシタ此修正案ハ御手許
ニ囘付シテアル筈デアリマス、其次ニハ所
謂希望條項トシテ現レタ點デアリマスガ
本案ノ第四條將來整理サレタ後ニ之ヲ國
庫ニ歸屬セシムル、而シテ之ヲ國債整理基
金會計ニ入レルー云フコト、此點ニ付テノ
御議論デアッタノデアリマス、然シテ何ガ故
ニ十五年先キノ事マデモ、今日泡喰ッテ之
ヲ規定スル必要ガアルカト云フ頗ル常識
的ノ質問ニ對シテ、政府當局ノ御辯明ハ
若シ之ヲ其儘ニ致シテ置ケバ一般會計ニ流
入スル然ルトキハ歲計膨脹ノ端ヲ啓クノ
虞ナシトセズ、而シテ今日ニ於テ將來ノ事
ヲ考ヘルナラバ兎モ角、我國ノ國債ハ減
ズルコトハナイ、曾スノデアラウト思ハレ
ル、故ニ此點ニ重キヲ置キ、震災手形補償
公債ニ特ニ此利得金ヲ向ケルノデアルト云
フ御說明ガアッタノデアリマス、然ルニ之
ニ對シテハ本黨ノ小川〓太郞君等ヨリ
政府ハ震災手形補償公債ノ償還ニ充テルト
言ハレルガ併ナガラ法文ニハ見エナイデ
ハナイカ、果シテ其意思ガ貫徹シ得ルノデ
アルカドウカト云フ質問ガアッタノデアリ
マス之ニ對シ政府當局ハ卽チ行政上ノ方
針ヲ示セルニ過ギナイ斯ノ如キ御答辯デ
アッタノデアリマス、然シテ是等ノ質問應各
ヲ重ネタル後ニ、結局討論ニ入リマシタ
ガ其際小川委員ヨリ修正案トナッテ居リ
マス所ノ事項、卽チ原案ノ「十五箇年」ヲ
「十二箇年」トスルト云フコトニ相成シタノ
デアリマス、其埋由トシテ同君ノ御述ニナッ
タ所ヲ簡單ニ御紹介致シマスレバ第一ニ
成ベク早ク國庫ニ入レルコトガ財政上ノ
見地ヨリ見テ歡迎スベキコトデアル又次
ニ印刷能力製造ノ工程竝ニ從來ノ兌換劵ノ
發行停止トナッテ回收セラレタ實蹟ニ徵シ
テ十五年ハ長過ギル寧口十二年位デモ
大丈夫デアル、是ガ爲ニ國民ニ迷惑ヲ掛ケル
コトハナイ殊ニ第一條ニ於テ但書ヲ設
ヶ、政府及日銀ニ於テ受人レル場合ハ强制
通用力ガ有ルノダカラ、秀、以テ宜シイデハ
ナイカト云フコトニナッタノデアリマス、之
ニ付テハ政府ハ贊成ノ意ヲ表セラレマシ
タ又希望條件トシテ-第四條ニ關聯ス
ル希望條件トシテ、社會事業ニ此利得金ヲ
使フコトモ、是亦一ツノ價値アル方法デアラ
ウト思フ、之ニ付テ政府ハ將來折角攻究セ
ラレタイト云フ希望條項ガ生レタノデアリ
マス、是亦御手許ニ回付シテアル筈デアリ
さく、以上ガ大體ノ要點デアルト私ハ考へ
ルノデアリマス尙ホ此委員會ニ於キマシ
テハ本案ニ直接關係ノ無イ事ニ付テモ御
議論ガアッタノデアリマスガ是ハ一切省
略致シタイト思フノデアリマス、以上御報
告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=82
-
083・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ付テ贊成
ノ通告ガアリマス、嶋居哲君
〔嶋居哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=83
-
084・嶋居哲
○嶋居哲君 私ハ此兌換劵整理法案ニ付キ
マシテ、極ク簡單ニ私ノ主張シ夕希望條件
ニ關スルコトヲ申述べテ見タイト存ジマス、
今囘提出サレマシタ兌換劵整理法案ノ根本
ニ付テ之ヲ整理スルト云フコトニ付テハ
是ハ何等異議ノ無イコトハ當然ノ事デアリ
マシテ、且ツ之ニ對スル修正ガアリマシタ
ガ、此點ニ付キマシテモ吾々ハ全ク同シ意
見ヲ持ッテ居ルノデアリマス、併ナガラ此
法案ニ付キマシテ、片岡大藏大臣及政府當
局ノ說明スル所ニ依リマスト其根本觀念
ニ於テ滅失シタル其金ガ政府ノ利得ニナ
ル其金額ニ對スル政府ノ費途ニ對スル觀
念ニ付テハ根本的ニ私ハ反對ノ意見ヲ有
スル者デアリマス御承知ノ通リ此兌換券
ノ整理ニ當リマシテ、是ガ明治十八年五月
ヨリ今日ニ至ル間ニ、其累計ニ於テ五十七
億ニ達スル兌換券ガ發行サレタ、其兌換劵
ノ中デ今日マデニ滅失毀損サレテ通用シナ
クナッタモノヽ額ト云フモノハ洵ニ尨大
ナル額ニナッテ居ルノデアリマス、殊ニ此
滅失シタル中ノ重大ナル額ト云フモノ
ハ-例ノ關東ノ大震災ニ於テ燒失シタル
額ト云フモノハ是ハ驚クベキ額ニ達シテ
居ルノデアリマス此點ニ對シテ私ハ政府
當局ニ其數額ニ付テ意見ヲ尋ネテ見マシタ
ケレドモ政府ハ的確ナル材料ノ下ニ、之
ニ對シテ明答ハ與ヘラレナイ唯、政府ノ
考トシテ約四千万圓位ノ程度ノモノデア
ラウト御答辯ニナッテ居ルノデアリマスル
が、是ハ勿論何等ソコニ材料統計ニ基礎ヲ
置イタ數字デアリマセヌノミナラズ私ノ
考ヘル所デハ此滅失シタル額ト云フモノ
ハ政府ノ利得トナル金ト云フモノハ
七八千万圓程度ニ上ルデハナカラウカト思
フノデアリマス、此長キ間ニ於テ吾々ガ經
驗シテ居ルモノヲ見マシテモ四万ニ足ラ
ザル小額紙幣ヲ發行シテ居ルガ是ガマダ
引換殘額ガ一千四白二十方圓程度殘シテ居
ルノデアリマス、勿論是ハ徐々ニ減ジテ行
クト云フコトハ事貫デアリマスルケレド
モ、此累計五十七億ニ達スル、此四十何年
間ト云フ間ニ失ハレタル額、此中ニハ殊ニ
關東大震災ト云フモノガ含マレテ居ルノデ
アリマスルカラ私ハ此額ノ總計ニ於テハ
厖大ナル額トナッテ來テ居ルト云フコトヲ
信ジテ疑ハナイ者デアリマス、此額ノ内容
ヲ精細ニ調ベテ見マスレバ卽チ震災以外
ニ消滅シタル-平年度ニ滅失シタルモ
ノヽ內容ヲ調査シマスト日頃現金ヲ取扱
フト云フ者ハドチラカト云ヘパ中産久
庶民階級ニ屬シテ居ルノデアリマシテ上
流階級資本者階級ト云フモノハ會計係ヲ
置クトカ小切手ノ使用下云フヤウナ風ノ
モノデ、直接現金ハ取扱ハナイノデアリマ
ス、例パ銀行ニ實際現金ガ無クナッタ、斯
ウ云フ場合ニ其現金ノ無クナッタ責任ハ誰
ガ負フカト云フト重役ガ負フノデモナク
頭取ガ負フノデモナク、又銀行ノ損デモナ
イ其銀行ノ使用人デアル者ガ白分ノ手
落トシテ之ヲ賠償シナケレバナラヌト云フ
現狀ニ在ルノデアリマシテ斯樣ナルコト
ヲ考ヘテ見マスルト兌換劵其モノヲ滅失
或ハ毀損スル程度ノ人ハ寧ロ中產以下ノ
方ニ多イト云フコトハ是ハ見易キ理デア
ルノデアリマス、殊ニ震災當時ニ於キマシ
テ其現狀ヲ見マスル時ニハ所謂金持デ
アルトカ資本者デアルトカ云フ方々ハ
日頃カラ十分其用意ヲ致シテ居リマスルカ
ラ-金庫ノ備へヲ爲ストカ或ハ地下室
ニ堅牢ナル物ヲ造シテ居ルトカ其外色こ
ナル方法ニ於テ兌換劵ヲ保護スル上ニ於テ
ハ十分ナル設備ヲ持テ、居ルノデアリマス、
シレデアリマスルカラ、此震災ニ於テモ十分
ナル設備ニ於テ、其滅失毀損ヲ免レタ人ガ
隨分多イノデアリマス、併ナガラ金庫ノ場
合ニ於キマシテモ、斯ンナ大事ニ遭遇シタ
ノデアリマスカラ、時ニハ金庫ガ燒ケテシ
マッタト云フ場合モアル卽チ左樣ナル用
意ヲシタルモノガ役ニ立タナカッタ場合ガ
アルノデアリマス、ケレドモ其役ニ立タナ
カッタ場合ト雖モ、其中ニ殘シテ居ッタ燒爛
レタ所ノ紙幣、燒爛レタ所ノ證劵ト云フモ
ノヲ其儘ニ日本銀行へ持)テ行ッテ、換へ
テ貰シタト云フ事實ガ澤山ニアルト云フロ
ト是ハ銀行局長ノ言明ニ見テモ明デア
Nデアリマスルカラ假令サウ云フ災害ニ
罹シテモ、左樣ナ設備ノアル者ハ兌換劵
ノ交換ニ依シテ、其滅失毀損ヲ免レタ例ハ
澤山ニアルノデアリマスカラ、日頃左樣ナ
用意ノ無イ者ハ身一ツデ逃ゲテ出夕者
ハ、ソコニ多クノ庶民階級、貧民階級ガ、此
震災ニ依テー大部分ガ是等ノ人ニ屬シテ
失ハレタト云フコトハ是ハ見易キ理由デ
アルノデアリマス、此見易キ理由テアル庶
民階級及中產階級以下ノ貧民階級ノ失ハレ
タル大部分ノ金ヲ今度政府當局ガ說明ス
ル所ニ依リマスルト、是ハ震災手形主
トシテ震災手形ノ此振當ニ行フ國債ノ償還
ニ充テルト云フニ至ッテハ私洵ニ驚イタ
次第デアルノデアル卽チ言葉ヲ平タク申
シマスレバ貧乏人ヨリ集メタ金ヲノテ
資本家或ハ富豪ノ尻拭ヲスル結果トナルト
言ハレテモ强チ之ヲ否定スルコトハ出來
ナイデアラウト思フノデアリマス、私ハ事
實ヲ明ニスル爲ニ、其當時本會議デ大藏大
臣ガ其事ヲ演說ナサッテ居リマスカラ、私ハ
速記ニ依シテ之ヲ讀ンデ見タイト思ヒマス、
「右繰人ニ依ル償還スル國債ハ主トシテ震
災手形ノ爲メ震災手形整理ノ爲メ發行セル
國債ト爲スノ方針デアリマス」斯ウ云フコ
トヲ最初ニ述べラレテ、ソレカラ其後ニ於
テハ色〓ト其滅失サレタルコトヲ述ベラレ
タ其後ニ「然ラバ國ガ負擔スル所ノ彼ノ震
災手形ハ一億ノ内ニ之ヲ充當スルト云フコ
トハ震災手形其モノハ今囘ノ大震火災ヨ
リ生ジテ來タモノデアリマスカラ是ガ一
番妥當ナリト信ジタニ過ギマセヌ」ト申サ
レテ居ルノデアリマス、卽チ此大震火災ニ依ッ
テ生ジタル此貧民階級、下層階級カラ其大
部分ヲ占メラレテ居ル此滅失ノ額ハ卽チ
此震災手形ト稱スル政府ガ補償スル一億
ノ其震災手形ノ償還ニ充ツルノガ震災ト
云フモノカラ生レテ居ルノデアリマスカ
ラ、是ガ一番妥當ナリト云フコトヲ大藏大
臣ガ玆ニ言明サレテ居ルノデアリマス、私
ハ此言明ヲ見テ實ニ驚イタノデアリマス、
成程震災ト云フコトヲ取板ッテ、サウシテ之
ニ關聯ヲ持タシメルト云フコトハ或ハ關
聯ガナイトハ申サレマセヌガ卽チ震災デ
失ハレタ此金ト云フモノハ被服廠跡ニ於
テ多クノ慘憺タル狀況ヲ呈シ、或ハ有ユル
悲慘ナル震災ニ遭シタ入ミガー此實ニ燐
ムベキ狀態ノ人ミノ金ヲ以テ此一億ノ震災
手形ニ充ツルト云フコトハ此震災手形ト
云フモノガ、近來如何ニ世間デ眺メラレテ
「居ルカト云フコトヲ見ル時ニ全ク貧民階
級ノ淚ノ金ヲ以テ富豪ノ尻拭ヲシ且又政
商輩ノ臭イ〓ノスル震実手形ノ解決ノ資ニ
當テントスルニ至ッテ私ハ全ク驚カザ
ルヲ得ナイ炎第デアルノデアリマス(拍手)
私ハ斯樣ナ次第デアッテ此法案ノ其根本
義ニ於テ勿論此金ノ入タコトヲ考へ
テ其性質カラ見テ私ハ之ヲ相當ニ使用
セネバナラヌ卽チ無民ヨリ入リタルモノ
庶民ニ返サナケレナラヌ斯ウ云ア
信念ノ下ニ此金ハドウシテモ社會政策ニ於
テ之ヲ使用シナケレバナラヌト云フコトヲ
信ジテ疑ハナイ者デアリマス、卽チ斯ウ云
フ金ト云フモノハ震災ニ遭シテ非常ニ困ツ
テ居ル人とガ下層ニ於テ呻イテ居ルノデ
アリマスカラ斯樣ナ金ガアルナラバ之
ヲ以テ其下層ノ人ヲ助ケル爲ニ有ユル施
設有ユル社會政策的事業ニ之ヲ投資ス
ル、デナカッタラ國民ノ怒ハ必ズ內閣ニ
來ルト言フコトヲニロハレテモ私ハ何等辯明
ノ餘地ハナカラウレ思フノデアリマス故
ニ種ハ此法案ニ對シテ若シ此金ガ今事實
ニ於テ滅失ハ致シテ君リマスケレドモ、計
算ニ於テ之ヲ直ニ使用スルコトガ出來ナイ
ノデアッテ、是ハ十二年後ニ其數字ガ明ニ
ナルノデアリマスカラ假ニ今此法案ヲ暫
ク認メテ置キマスケレドモ此法案ハ將來
必ズ改正スベキ時機アルコトヲ期スルガ故
ニ玆ニ希望條件ヲ附シテ之ニ賛成シタノ
デアリマス卽チ吾々ハ此震災ノ悲慘ナル
所ヨリ集タタ此此金額ニ對シテ政府ハ宜
シク之ヲ社會政策的見地ニ於テ卽チ慈善
的或ハ色ニナルサウ云フ人ノ爲ニナルコト
ニ此金ヲ使ブベシト云フ希望條件ヲ附シテ
本案ニ賛成シタノデアリマスカラ吾々ノ
希望條件ハンコニ重大ナル意義ヲ存スルモ
ノデアルト云フコトヲ中上ゲテゝ私ガ賛成
ニ代ヘル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=84
-
085・小泉又次郎
○翻議長(小泉又次郞君) 是ニテ討論ハ終
結致シマシタ本案ノ二讀會ヲ開クニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=85
-
086・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイモノ
ト認メマス仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=86
-
087・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通り可決
セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=87
-
088・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
兌換銀行券警理法案第二讀會(確定議)
異議ナシ」ト呼ア者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=88
-
089・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議アリマセ
ヌカラ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)次ニ日程弟
防火地區內借地權處理法案ノ第一讀會
ヲ開キマス、江本司法大臣
第一防火地區內借地權處理法案(政
府提出)第一讀會
防火地區內借地權處理法案
防火地區内借地權處理法
第一條本法ニ於テ借地權ト稱スルハ建
物ノ所有ヲ目的トスル地上權及土地ノ
賃借權ヲ請フ
第二條市街地建築物法ニ依リテ指定セ
ラレタル甲種防火地區內ニ於テ同法第
十三條ニ基夕命令ニ定メラレタル建物
以外ノ建物ノ所有ヲ目的トスル借地權
ヲ有スル者ガ其ノ土地ニ建物ヲ築造セ
ントスル場合ニ於テ借地條件ノ變更ニ
關シ當事者間ニ協議調ハザルトキハ裁
判所ハ當事者ノ申立ニ因リ防火地區内
借地委員會ノ意見ヲ聽キ借地權ノ殘存
期間、從前ノ借地條件、土地ノ狀況
借地ニ關スル從前ノ經過等一切ノ事情
ヲ斟酌シテ借地條件ノ變更其ノ他當事
者間ノ衡平ヲ維持スル爲相當ノ措置ヲ
命ズルコトヲ得甲種防火地區外ニ互リ
子楷地權ヲ有スル者其ノ境界線ヲ超エ
テ建物ヲ築造スルノ必要アル場合亦同
ジ
前項ノ申立ハ其ノ事件ニ付先ヅ借地借
家講停法ニ依ル調停ノ申立アリテ其ノ
講停ノ成ラザリシ場合ニ非ザレバ之ヲ
爲スコトヲ得ズ
第三條前條ノ裁判ヲ爲ス場合ニ於テ裁
判所ハ當事者ノ申立ニ因リ相當ノ出捐
其ノ他適當ノ條件ニテ借地權ノ消滅ヲ
命ズルコトヲ得
第四條本法ノ裁判ハ借地ノ所在地ヲ管
轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法
ニ依リ之ヲ爲ス
第五條防火地區內借地委員會ハ五人以
上ノ委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第六條防火地區內借地委員ハ特別ノ知
識經驗アル者其ノ他適當ナル者ニ就キ
每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者
又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタ
ル者ノ中ヨリ各事件ニ付裁判所之ヲ指
定ス
第七條防火地區內借地委員會ノ決議ハ
委員ノ過半數ノ意見ニ依ル
第八條防火地區內借地委員會ノ評議ハ
祕密トス
第九條防火地區内借地委員ニハ旅費、
日當及止宿料ヲ給ス其ノ額ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第十條本法ノ裁判ニ對シテハ卽時抗〓
ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間
トス
前項ノ卽時抗告ハ執行停止ノ效力ヲ有
ス
第十一條本法ノ裁判ニシテ財產上ノ給
付ヲ命ズルモノハ執行力ヲ有スル債務
名義タルノ效力ヲ有ス
第十二條本法ノ〓判ノ費用ニ付テハ民
事訴訟費用法第十六條及民事訴訟用印
紙法第十六條ノ規定ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=89
-
090・江木翼
○國務大臣(江本翼君) 市街地建築物法ニ
依リマシテ指定セラレタル甲種防火地區内
ニ於キマシテハ建物ノ構造ニ付キ著シキ
制限ガアルノデアリマシテ借地權者ガ是
等ノ地區内ニ於テ建物ヲ築造セントスル場
合ニハ從來ノ借地契約通リニテハ幾多
ノ支障ヲ生ズルモノガアルノデアリマス
仍テ此際適當ノ方法ニ依リマシテ當該借
地權ヲ變更シ一面惜地關係ヲ公平ニシ
テ且ツ圓滿ナル解決ヲ計ルト共ニ他面
ニ於テハ防火地區計畫ノ進捗ヲ圓滑ナラシ
ムルノ必要ヲ認メマシテ本案ヲ提出致シタ
ノデゴザイマス何卒御審議ノ上速ニ御
協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=90
-
091・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通告ガアリマス髙木益太郞君
〔高木益太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=91
-
092・高木益太郎
○高木益太郞君 防火地區內借地權處理
法之ニ付キマシテ復興計畫ノ當局者ニ對
シテ御尋致シタイノデアリマス第一ニ此
復興計畫ト云フモノハ凡シ何億デ仕土ゲ
ル御見込デアルカ、前ノ復興局長官ハ十三
檍七千五百万圓ヲ以テ杜上ゲル斯ウニムア
御見込デアリマシタガ今日ノ復興局長官
ハ勞働賃金モ下ッテ居リマスシ、物價モ低落
シテ居ルノデアリマスガ凡シ十何億ヲ以
テ仕上ゲル見込デアルカ、之ヲ第一ニ御尋
ヲシタイ、第二ニ御尋ヲシタイ事ハ吾々
ハ昨年ノ丸月一日同志ト共ニ政務調査會
ニ於テ、今日ノ假建築ト云フモノハ十年延
バスガ適當デアラウ斯ウ云フ考デ復興局
長官ニ交渉ヲ致シタノデアリマス又横濱
ノ方面カラモ同樣ノ請願ガ政府ノ方へ出タ
ト云フコトヲ聞イテ居ル大體此請願ノ趣
旨ニ向ッテハ復興局ハ異議ガナカッタヤウ
デアリマス卽チ大正十二年勅令第四百十
四號、報建築存續期間ト云ヌモノヲ向ふ
十年昭和十三年マデ延長ヲスル、斯ウ云フ
點ニ付テハ御異議ガナカッタヤウデアリマ
ス然ルニ九月十月、十一月十二月
殊ニ是ハ羅夫民デアリマス隨テ建物ヲ或
ハ銀行方面デ融通ノ用ニ供スルトカ經濟
上種々ナル都合ガアル事デアリマヌカラ
愈鼻ノ突ク大正十七年ノ八月三十一日ニ
ナッテ延期シタ日ニハ何モナラヌカラソ
レヨリ一年前ナラバ一年前ニ、豫メ十箇年
ナラ十箇年、五箇年ナラ五箇年延期スルト
云フ事デアレバ金融上便利モ少カラヌト
云フノデ、段々復興局へ交涉シタノデアリマ
ス、ソレカラ何日經ツノデアリマスカ既ニ
暮モ過ギテシマッテ、、三月デ、今日マ
デ此勅令ノ第四百十四號ト云フコトニ付テ
何等延期ノ御沙汰ガ無イノデアリマス、是
ハ勅令ノ四百十四號ヲ出ス內幕ノ話ニ付テ
ハ伯爵ノ伊東已代治閣下ヨリシテ詳シタ
聞キマシタ此勅令四百十四號ヲ拵ヘル時
ニハ電氣モ點カズ瓦斯モ無イカラシ
テ、内閣カラシテ蠟燭ヲ取寄セテサウシテ
此四百十四號ノ案ヲ書イタ案ヲ書クト直
ダソレヲ實行シタ然ルニ此四百十四號ノ
案ヲ延バスノニ、段々利害關係人カラノ懇
願ガアリマスカラシテ、我黨同志ガ昨年九
月ニ政務調査會ヲ開イテ復興局モ段々懇
願ヲシテ其懇願ノ趣意ハ反對デナイ今
日行政事務ノ簡㨗ヲ尙ンデ事務ヲ敏活ニ
シナケレバナラヌ趣意ガ分ッテ居ルモノヲ
丸月カラ七箇月モ八箇月モ、何故延期ノ御
沙汰ヲ早ク發表ナサラヌノデアリマスカ
其次第ヲ一ツ同ヒタイ、又吾々ノ主張スル
ガ如ク兎ニ角東京横濱附近ノ町村ヲ入レ
ニ e五百万ノ人口ヲ持シテ居ル其所ノ
罹災民ノ三十万戶ニ關スル問題デアリマ
ス、ンレニ付テ假建築ノ存續期ヲ延長スル
ト云フ事デアレバ何モ急イデ此建物ヲ打
壞スト云フ必要ハナイ、折角血ノ出ルヤウ
ナ金ヲ以テ拵ヘタル建物デアリマスカラシ
テ、サウシテ此郡部ト比較スルト、今火事
ハ羅災地ハ少ナイ却テ震災地以外ノ方ガ
火事ガ多イノデアリマスカラ、急イデ之ヲ
打壞ス必要ハナイ、然ラバ此勅令ノ四百十
四號ノ假建築ヲ十年延バスト云フコトデア
レ/隨テ今日ノ建物モ其取壞シト云フモ
ノハ厲行スル理由ハナイノデアリマスカラ
シテモウ少シ此民力ノ恢復スル迄待ツノ
ガ當然デハナイカ假建築ノ期限バカリ十
年延長シタ所ガ、其建物ヲドン〓〓打壞シ
夕日ニハ何ニモナルモノヂヤナイ、ソコデ
兩三日前ノ朝日新聞ヲ見ルト云フト、復興
局長官ノ意見トシテ出テ居ル所ニ依
ルト區劃整理ニ全力ヲ注イデヤルト
云フコトヲ御發表二十ツテ居リマスケレ
ドモ是ハ餘程私ハ御考違ヒデハナイカ
ト考ヘル是ハ勿論政治ノ大方針ニ關スル
コトヂヤナイ工事ヲドウスルカト云フ極
タ小サイ問題デアリマス、區劃整理ヲヤッタ
所ガ、東京ノ經濟財政、防火、衞生、交
通運輸ヽ是が本來此復興計畫ノ目的ナン
デアル片ヶ方ノ假建築、間口二間半ノモノ
ヲ二間ニ爲シ二間ノモノヲ一間半ニシタ
所ガ何ノ甲斐ガアル結局ハ只今司法大臣
ノ仰セノ如タ、本建築ヲスルト云フコトガ
目的デハナイカ動モスレバ復興局長官ハ
新闘ヲ宣傳ノ材料ニシテ何戶打壞シタ、何
戶打壞シタト言ハレルケレドモ、「パラック」
ヲ壞スト云フコトガ目的デハナイ「パラ
ク」ハ折角出來タ、地震ニ遭シテ無ケナシノ
金ヲ以テ.バラック」ヲ拵ヘテ、其二間ノ間
ロノモノヲ一間半ニシテソレヲ殘シテ置
イテ何ニナルカ結局ノ目的ハ本建築ヲス
ルノガ目的デハアリマセヌカ其本建築ヲ
スルノガ目的デハアリマセヌカ其本建築
ハ何軒出來タト云フノデアリマスカ、千四
十八万坪ノ震災地ノ中ニ、何軒本建築が出
來タメデアリマスカ復興局長官ハ其行キ
道ノ假建築ニ囚ハレテ居ッテ、本來ノ目的ノ
本建築ガ幾ラ出來タカト云フコトニ付テ
ハ何等新間ニ發表セラレテ居ラヌノデア
リマス是ハ本末ヲ〓倒シ冠履ヲ間違へ
デ居ル譯ヂヤナイカ、ソレ故ニ只今私ハ本建
築ガ何軒出來タカ、本建築ガ千四十八万坪
メ中デ何坪出來タカト云フコトヲ一ツ說
明シテ戴キタイ、是ガ眼目デアリマス、次
ニ過日親友ノ橫山勝太郞君カラシテ、復興
計畫ニ付テノ質問ノ際ニ復興局長官ハ現
在ノ復興計畫ヲ段々進行シテ見タ所ガ一
優三千万圓豫算ニ不足ヲ致シタト云フコト
ヲハ此議會ニ於テ初メテ言ハレタ一億
三千万圓ノ不足ト言へバ大變ナ話デアリマ
大、今本黨ノ諸君、憲政會ノ諸君ガ、〓育
費ノ問題ニ付テ頭ヲ苦シメテ居ルノデアリ
マスガソンナ金高ドコロデハナイ、一億
三千万圓ノ不足ガアッタト云フコトデアレ
バ大變デアリマス、其一億三千万不足ヲス
ルカラシテ、既定ノ計畫ノ中デ、赤坂溜池
ノ藝者町ノ一角ヲバ區劃整理ノ計畫ヲ廢メ
テシマフ第二ニハ洲崎ノ側ノ平久町及鹽
濱ノ區劃整理ヲ廢メテシマフ神田日本
橋ノ境ニ在ル所ノ橋本町ノ公園ノ計畫ヲ廢
メテシマフソコデドノ位ノ金ガ浮クカト
云フト過日復興局長官ノ御話ニ依ルト
二百五十万圓浮クト云フノデアリマス、
億三千万ニ對シテ二百五十万ハ、九牛ノ一
毛トハ申サレマセヌケレドモ、甚ダ僅カデ
アリマス、アト一億二千何百万圓ト云フ缺
損額ニ對シテハドウシテ補充ナサルノデ
アリマスカ、吾々ハ臨時議會以來、又五十
議會、五十一議會ニ於テモ確ニ此豫算ハ
不足ヲ生ズルト云フコトヲ徹頭徹尾復興局
ノ當局者ニ向シテ警告ヲシテ居ル、(「簡單」
ト呼フ者アリ)一億三千万圓ノ問題デアリ
マスカラ中々サウ輕々ニ論ズル譯ニハ行キ
マセヌ(拍手)其一億二千五百万圓ト云フモ
ノヽ不足ハ、如何ナル方法ヲ以テ補充スルノ
デアルカ(「シンナコトハ委員會デヤレ」ト
呼フ者アリ)吾々ハ委員デハアリマセヌ、
其一億万圓以上ノ不足ト云フモノヲ如何ナ
ル方法デ補充スルカ、是ハ東京市民ハ勿論、
天下ノ入ガ悉タ聞カントスル所デアル又
四年モ五年モ經シテ不足デアルト言ハレタ
日ニハ大變デアル、ソコデンレハ財源ヲ能ク
決メナイカラデアリマス、本來ノ計畫ガ無
理デアルト云フコトハ千四十八万坪ノ震
災地ニ對シテ、百七十万坪ノ計畫ヲ基礎ニ
シテ立シテ居ル、幾ラ東京ガ震災ニ遭ッタカ
ラト云ッテ、本員ノ如キハ翌朝四時ニハ又元
ト住マッタ所ニ歸ヘテ來タノデアリマスカ
ラドンナニ人間ガ考へタ所デ、千四十八
万坪ニ對シテ百七十八万坪ダケノ算盤ヲ採
ルト云フコトハ非常ナル誤リデアリマス、-
割强ノ算盤デアリマス、然ルニ今日ニナッテ
見ルト、マルデ其算盤ト云フモノハ空ナ算
盤ニナッテ居ル一坪ガドノ位ノ單位デ算盤
が採シテアルカト云フト、二百圓デアル東
京ノ街ガ二百圓テ買ヘルカ買ヘヌカト云フ
コトハ推測が出來ル譯デアリマス、面シテ其
地上ニ於ケル所ノ建物ドノ位デアル女
ト云ヘバ一坪二十七圓五十錢ヲ貸家主ト
借家主トガ分ケル、貸家主ハ二十圓取〃テ借
家主ハ七圓五十錢ヲ取ルコンナ馬鹿ナ算
盤デ限テ行ケルカ行ケヌド云フコト頭
カラ分ヲ切シテ居ルソレ故ニ吾々ハ四十九
議會ニ於テ之ヲ警告シタコンナ聞違シタ算
盤デ以テ東京ノ區劃整理ヲヤルト云フコト
ハ根本カラ誤ッテ居ル、果シテヤッテ見ル
ト云フト約倍ノ違ヒニナッテ居ル、ソレガ
今日四ツノ議會ヲ經テ初メテー是迄ハ不
足ナクヤル不足ナクヤルト言ウテ置イテ、
今日ニナッテドウモ一億三千万圓ノ不足ガ
アンテ、ソコノ中デ赤坂外二箇所デ二百五
十万圓ダケ補足スル後ハ分ラナイソレ
デハ代議士トシテ此計畫ニ安心シテ協賛ヲ
表スルコトガ出來ルか出來ヌカ、地位ヲ考
ヘテ貰ヒタイ復興局ノ當局者ハ-是ハ
決シテ黨派ヤ何カノ考ヲ持テ言フノデハ
ナイ算盤ノ示ス事デアル然ルニ一昨日
ノ新聞ヲ見ルト其不足ヲバ今度市ノ方ニ
負ハシテシマッタ、東京市ノ方ニ負ハシテシ
マンタ東京市ノ方へ負ハシテ道路費ノ
中カラ六割强ト云フモノハ區劃整理ノ方へ
運用ヲ圖ラウト云フコトノ是ハ唯。新聞
ノ記事デアリマスケレドモ、復興局ガサウ
云フ計畫ヲ立ッテ居ルト云フコトヲ聞イタ、
果シテ然ラバ大變ナ騷ギデアリマス東京
ノ道路ノ狀態ガ如何ナル狀態デアリマス
カ其道路ノ修繕ヲスル所ノ道路ノ鋪裝
ヲスル所ノ費用ヲ以テ、區劃整理ヲヤッタ
日ニハ大變デアル道路ハソレダケ非常ナ
惡結果ヲ生ジテ、往來交通ノ上ニ於テ不便
危險ヲ生スルト云フコトハ論ヲ俟タヌ譯デ
アリマス是ハ復興局長官ハドウ云フ御計
畫ヲ持シテ御出デアリマセウカ
ガ悉タ聞カント欲スル所デアリマス只
横山勝太郞君ニ對スル答辯書ヲ見ルト云SHARPON SITCH BOX
ト後年ノ計畫ニ付テハ
分ッテ居ルガお昼に至り
ハ善處スルト書イテアル是ハ私ハ一二
興局ニ對シテハ散々鼻ヲ突イテ弱タノ
デアリマスカラ唯後年ノ計畫ハ善處ス
ルダケデハ承諾スルコトハ出來ナイ、既ニ
復與局長官ハ監督楷ヲ以テ東京市長カラ
ハ東京市ノ十年經濟ノ調査表ト云フモノヲ
御取リニナッテヽ東京市ノ將來ノ十年ト云
フモノハドウ云フ經濟デヤルカト云フ調
査表ヲ御取リニナッテ居リマス。吾々東京
市民ノ一人トシテ、尙ホ監督權ヲ用ヒテ貰
ヒタイト云フノハ此經濟ノ士臺デアル市
ノ稅ト云フモノハ二千万圓取ッテ居ル
東京市ノ負擔ト云フモノハ將來中々多クナ
ルノデアリマスガ是ハ如何ナル方面カラ
取ルノデアルカ如何ナル方面ニ讓スノデ
アルカ、尚ホ明後年カラハ一時政府ガ立替
ヘタ復興ノ負擔金トニフフノノ東京市民
ガ年賦デ償還シナケレバナラナイ此金ナ
ドモ如何ニ負擔セシムルノデアルカ罹災
民ノミエ課スノデアルカ、山ノ手方面ノ人
ニモ課スノデアルカ、是ハ東京市長ノ十年
許畫ノ中ニ書イテナイ、然ラバ監督權ヲ用
ヒテ内務省ハドウ云云工合ニ負擔ヲ命ズル
考デアルカ(「古イ々々」「時勢遲レダ」ト呼フ
者アリ)横山君ノ質問ニ對シテハ具體的ニ答
辯ガナカッタ、只今ドナタカヽラ古イ々々ト
云フ御言葉ガアリマシタガ、此問題ハ橫山
君ノ答辯書ヲ見テ始メテ驚イタ、來年ノ計畫
ハ成程諸君ト共ニシテ居ルガ再來年ノ計
畫ニ付テハ善處スルト書イテアッテ、具體的
ニ計畫ヲ書イテナイノデアリマス吾々市
民トシテハ束京デ生レ、東京デ死ヌノデア
ル隨テ此利害關係ハ非當ニ大キイ大井イ六本作
パカリデチ砂ズムー再來年モ其翌
ノデアルカ是ハ十分理
由ヲ聞キタイノデアリマス大體是ハ復興
局長官ニ御尋スルノデアルガ問題
當局ニ御尋シタイノハ地面ノ
リマシタケレドモ、地面ノ上ニ建テル共同
建築ノ問題ハ御提案ガ無イ折角地面ノ問
題ガ決マッテモ、上ニ建テル物ニ付テ一ツノ
案ガナケレバナラヌデアラウト考ヘル卽
チ共同建築ト云フコトニ付テハ復興局ガ
豫テ描イテ居ル所ノ復興計畫ノ一ツデアラ
ウト思フ、何故此案ヲ御提案ニナラヌノデ
アルカ又斯ウ云フヤウナ案ハ是ハ黨派
ノ問題デモ何デモナイ、卽チ各黨各派ヲ通
ジテ改正案ヲ既ニ出シテ居ル位ノ次第デア
リマスカラ、政府ガ斯ウ云フ案ヲ立テルノ
ニ豫メ各政黨ノ政務調査會ニデモ掛ケ
テ政府ハ斯ウ云フ考ガアル機密ノ問題
デハナイノデアリマスカラ下ノ地盤ノ關
係が決マッテモ上ノ建物ノ關係ガ決マラナ
ケレバ何モナラヌノデアリマスガ共同建
築ニ關スル法案ト云フモノハ何時御出シニ
ナルノデアルカ、又其問題ガ決マラナケレ
バ徒ニ罹災民ヲ鞭撻シテ、今日ハ何軒毀
シタ明日ハ何百軒移轉命令ヲ發シタト言
ウタ所ガ何等ノ效果ガアルモノデハナ
イドノ位困難スルカ分ラナイ、其問題ガ
決マッテ、始メテ此計畫ガ進行スベキモノデ
アラウト思フ其問題ニ付テ政府ハ何時御
提案ニナル次第デアルカ其御提案ヲ爲サ
ルマデハ區劃整理ハ中止シテハドウカ、今
日ノ不景氣ト云フモノハ區劃整理ニ依シテ
總テノ者ガ不安ノ裡ニ居ッテ、材料ハ山ノヤ
ウニ積ンデアル職工ハ手ヲ遊バシテ總テ
ノ事ガ進行シナイノデアルカチシテ、大體
ノ此法律案が出來ルマデ區劃整理ヲ御中止
ニナッテハドウデアルか、ソレカラ今度ノ案
ヲ見マスト云フト此局ニ當ル人ニ付テ廻
避及忌避ノ規定ガアリマセヌ、今迄此區劃
整理ノ問題ニ付テ一番ノ缺陷ハ何デアルカ
ト云フト其局ニ當ル者ハ例ヘバ區劃整
理委員ノ如キ者ガ御手盛ヲヤルコトデア
リマス一番東京デ弊害ノ多カッタノハ何
デアルカト云ヘバ區劃整理委員ノ御手盛
デアル自分ハ區劃整理委員ニナッタカラ
良イ場所ヲ取リ、第二番目ノ地位ノ者デモ
角店ニナルト云フコトデ區劃整理委員ト
區劃整理委員トガ結託シテ非常ナ不都合ガ
生ジテ居ル然ルニ〓度ノ提案ヲ見ルト云
フト擔當人ノ廻避忌避ノ規定ト云フモノ
ガ無イ是ハ甚ダ時勢ノ要求ニ副ハナイ事
デハナイカ凡ソ其局ニ當ル者ハ公平無
私ニ仕事ヲシナケレバナラヌノニ、御手盛
ヲシテヤルト云フコトニナレバ是程弊害
ノ生ズルコトハナイ、現ニ土地收用法ニ付
テハ自分ノ親族、自分ガ會社ノ代表者デ
アレバ其會社ノ重役ハ自分ノ會社ノ問題
ニ付テハ關與スルコトハ出來ナイコトニ
ナッテ居ル、然ルニ今度ノ法案ヲ見ルト云フ
!、其事ヲ擔當シタ者ニ對シテ、廻避忌避
ノ規定ガ無イノデアリマス、是ハ不都合ナ
事柄デ此結果ト云フモノハ必ズ公平ナ積
リデヤッタモノニ、或ハ親族ノ關係ダトカ
或ハ會社ノ重役ノ關係ダトカ云フヤウナ色
色ノ私ハ非難ガ起ルト云フコトハ疑ヒナ
イ總テノ法律ヲ見ルト刑事訴訟法ヲ始
メ廻避忌避ノ規定ノナイモノハナイ、土
地收用法ニシテモ一昨日審議シタノデア
リマスガ、是ガアリマス然ルニ此本案ニ
付テハ是等ノ規定ガ無イト云フコトハドウ
云フ譯デアラウカ、ノミナラズ凡ツ他人ノ
住居營業ニ關スル問題デアリマスカラ、場
合ニ依ッテハ協議ガ調ハナカッタ時ニハ憲
法ノ規定ニ依テ對審、公開、卽チ辯論ヲ
シテ雙方ノ言フコトノ事實ヲ聽イテ其所
デ調ベテ、シコデ栽判ヲスルノガ當リ前デ
アルノニ、此規定ヲ見ルトサウームフ方法ヲ
執ラナイ、書面審理デアル書面審理デア
レバ證人ヲ調ベルコトモ出來ナケレバ
甚ダ靴ヲ隔テヽ痒イ所ヲ搔クヤウナ感ジヲ
持ツノデアル、況ヤ當リ前ノ事デアレバ
大審院へ持シテ行クコトガ出來ルノニ、今度
ノ規定デハ持ヲテ行クコトガ出來ナイノハ
是モ甚ダ私ハ時勢ニ後レタヤウナ感ジヲ持
ツノデアリマス要スルニ復興局長官ニ對
シテ吾々ノ望ム所震災地ニ向ッテハ成
ベク負擔ヲ輕クシテ震災地ニ於ケル人間
ニ樂ヲサセテ、サウシテ勉强ヲサセテ、經
濟ノ復興ヲ圖リ、金儲ケヲサセルト云フコ
トガ政策ノ第一デアラウ、決シテ今日ノ內
閣バカリヲ責メルノデハアリマセヌ是ハ
今日ノ內閣ハマダ上ノ方ノ方々ハ吾々ノ同
志ガ出テ居ルケレドモ實際事務ニ當ル人
ハ吾々ノ同志デモ何デモナイ、隨テ五代前
ニ決メタ此惡イ習慣ヲ其儘踏襲シテ居ルノ
デアル法律ノ施行ノ上ニ於テ非常ニ東京
市民ハ困難ヲ訴ヘテ居ルノデアリマス、是
ハ眞ニ訴ヘテ居ル、若シ復興局長官ガ私ノ
言フコトガ嘘デアルト云フナラバ震災地
ノ每戶ニ就テ御覽ナサイ、非常ナ不平ヲ訴
ヘテ居ルノデアリマス、ドウカ之ニ付テ
豫テ吾々ハ非常ナル前途有望ナル良イ長官
ヲ得タト思シテ歡迎シテ居ル譯デアリマス
カラ、深切ニ算盤ノ關係ヤ何カニ付テ御說
明願ヒタイ、東京市民ハ此速記錄ヲ見マシ
タナラバ、非常ニ安心スルコトガ出來ルコ
トデアラウト私ハ考ヘマスカラ、十分深切
ナル御說明ヲ仰ギタイノデアリマス
〔政府委員堀切善次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=92
-
093・堀切善次郎
○政府委員(堀切善次郞君) 本法ノ審議ヲ
スルマデ區劃整理ヲ中止スベシト云フ根本
ノ御考ノ下ニ色〓御質問ニナリマシタガ
根本ノ御質問ニ付キマシテハ政府ハ甚ダ
遺憾ナガラ御所見ヲ異ニ致シマスルコトヲ
洵ニ遺憾ニ存ジマス、復興計畫ハ-復興
事業ハ何億ヲ以テ仕上ゲル積リカト云フ第
一ノ御問ニ付キマシテハ復興計畫ハ御承
知ノ通リ約五億七千万圓ノシレニ對シテ此
本議會ニ於テ既ニ衆議院ノ可決ヲ經マシタ
金額二千三百万圓デアリマス尙ホ此外ニ
廣イ意味ニ於キマシテノ復興ト申シマスレ
バ各個人ノ本建築等ノ費用ヲ抱含スルコ
トヽ存ジマスガ、是ハ所謂帝都復興事業ノ
計畫ノ中ニハ入レテ居リマセヌノデスカ
ラ私カラ申上ゲルコトヲ略シマス第二
段ノ御質問ノ「バラック」令、-所謂「バラッ
ク」令ノ延期ノ問題ニ付キマシテハ大體
御考ハ同感デアリマシテ、ソレニ基キマシ
テ審議ヲ進メ得タノデアリマスガ最近成
案ヲ得マシテ、目下進行中デアリマスルガ
故ニ近日中ニ公布ニナル運ニナッテ居リ
マスカラ、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、復興豫算ノ不足ノコトニ付キマシテハ
出來ルダケ整理節約ヲ圖リマシテ、ソレデ
モ尙ホ不足ノ點ニ付キマシテハ前ニ御決
議ヲ經マシタ二千三百万圓ノ外、尙ホ東京
市ノ興復シマス仕事ニ付テ幾分ノ不足ヲ生
ズルノデアリマスガ、ソレニ付キマシテハ
横山君ノ質問ニ對シテ書面ヲ以テ御答ヲ申
上ゲタ通リデアリマス(拍手)共同建築法
案ヲ何故提案ヲシナイカドウナッテ居ル
カト云フ御問ニ對シマシテハ共同建築ニ
關シマスル法案ハ此防火地區內借地權處
理法案トハ全然別問題ト考ヘテ居リマス
是ニ關聯シナイト考ヘテ居ルノデアリマ
ス此法案ニ付キマシテハ〓究ヲ愼重ニ進
メテ居リマスガ、未ダ成案ヲ得ルノ程度ニ
達シテ居リマセヌ現行法ノ儘ヲ以チマシ
テモ民法ノ組合ノ規定、或ハ商法ノ會社
ノ規定等ニ依リマシテモ幾分カ目的ヲ達
スルコトガ出來ルノデアリマスガ更ニ尙
ホ獨立ノ共同建築法案ヲ作ルト云フコトニ
付キマシテハ未ダ成案ヲ得ルノ時機ニ達
シテ居リマセヌガ、御質問ノ要點ハ大體只
今御答シタ點デアルト考ヘテ居リマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=93
-
094・高木益太郎
○高木益太郞君 本員ガ第一ニ御尋ヲシマ
シタ點ハ政府ノ出ス費用ニ付テ御尋ヲシ
テ居ルノデハナイ苟モ復興局長官トシテ
ハ東京市民ガドノ位ノ負擔ヲシテサウ
シテ復興計畫ノ法令ノ命ズル建築ガ出來ル
カト云フ問題デアルソコデ前ノ長官ハ十
三億五千万圓デ仕上ゲル今ノ長官ハ何億
デ仕上ゲル計畫デアルカ是ハ十三億五千
万圓ナリ十五億ニナッタナラパソレヲ何
年間ニヤルカト云フ問題デアル其使フ人
間其材料ヲ何處カラ取ルカト云フ問題ニ
ナッテ來ルサウスルト來年デヤリ上ゲル
ト云フコトハマルデ空想ニナル復興局長
官ガ「パラック」デスラモ一割五分シカ出來
ナイ後八割五分ハマダ手ガ著カナイヂヤ
ナイカ此不景氣ノ時代ニ、商賣ヲ休ンデ
家ヲ壞シテコッチニ假建築ヲ拵ヘルサ
ウシテ之ヲ又壊シテ本建築ヲヤラスト云フ
コトニナル大變ナ事デアル、ソレデアル
カラ復興局ノ當局ハ此計畫ヲ何時マデニ
ドノ位ノ金デ仕上ゲルカト云フ計畫ガナケ
レバナラヌ、復興當局トシテ大體ノ計畫ヲ
シテ居ルト云フナラバ、其大體ノ計畫ヲ聽カ
ウト云フノデアルソレデ吾々ノ提案ヲシ
タノハ少クトモ黨派ノ如何ヲ間ハズ東
京市ノ代議士ハ連名デ出シテ居ルノデアリ
マス、又東京ノ問題ヲ研究スルニ付テハ
私ヲ除ク外横山勝太郞君其外ノ名士ガ悉
ク商賣モ見テ居ル經濟ノ關係ナリ何ナリ
民間ノ關係ヲ實際ニ能ク知ッテ居ル其人
ガ東京市ノ代議士ガ殆ド揃ッテ出シタ
此改正案ニ對シテ、能ク審議モシナイデ頭
カラ反對スルト云フコトハ何事デアル能
ク審議シテ、委員會ヲ開イテ相手ノ言フコ
トヲ聽イテ、良イ案デアッタナラパ手ヲ擧
ゲテ賛成シタラ宜イヂヤナイカ、然ルニ何
ゾヤ頭カラ東京市ノ立憲政治ノ中デ、東京
ノ問題ニ付テ東京市ノ代議士ガ揃テテ案
シテ居ルモノヲ卽席ニ反對スルト一ムフノ
ハ何タルコトデアルカ甚ダ私ハ官僚式ノ
不都合千萬ナ事デアルト思フモウ少シ氣
ヲ落付ケテ考ヘテ然ルベキコトダラウト思
フ御再考アランコトヲ望ムノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=94
-
095・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 堀切政府委員
靜肅ニ願ヒマス
〔政府委員堀切善次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=95
-
096・堀切善次郎
○政府委員(堀切善次郞君) 只今ノ再應ノ
御質問ニ對シマシテハ民間ノ復興ガ幾ラ
デ上ルカト云フコトニ付キマシテハ、一定
ノ計畫ハ持ノテ居リマセヌ、復興局ト致シマ
シテハ所謂復興計畫デ復興事業ヲ管掌シ
テ居リマスノデ其點ニ付キマシテ例へ
バ東京ノ防火建築ヲ建築物业管理有限公司歐健康佮
上ゲルトシマスレバ
スルト云フ調ハアリマスルガ是ハ何時マ
デニドウ云フ風ニシテヤッテ行クカト云フ
コトニ付テハ計畫ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=96
-
097・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第二、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=97
-
098・井本常作
○井本常作君 本案ハ横山勝太郞君外一名
提出借家法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=98
-
099・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク
決シマス、日程第三及第四ハ關聯セル
議案デアリマスカラ、一括議題ト爲スニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=99
-
100・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第三、保稅倉庫法中改正
法律案、第四、保稅工場法案ヲ一括シテ第
一讀會ヲ開キマス武内政府委員
第三保稅倉庫法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
保稅倉庫法中改正法律案
保稅倉庫法中左ノ通改正ス
第一條中「外國ニ輸出スヘキ」ヲ「命令ノ
定ムル所ニ依リ」ニ改ム
第一條ノ二保稅倉庫ニ於テハ稅關長ノ
許可シタル範圍內ニ於テ貨物ノ改装、
仕分其ノ他ノ手入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ手入ノ材料トシテ内
國貨物ヲ外國貨物ニ、外國貨物ヲ內國
貨物ニ使用セムトスルトキハ稅關ノ承
認ヲ受クヘシ
第三條保稅倉庫ニ藏置シタル外國貨物
ノ輸入稅ハ輸入ノ時ノ性質及數量ニ依
リ之ヲ徵收ス但シ命令ノ定ムル所ニ依
リ庫入ノ際稅關ノ檢査ヲ受ケタルモノ
ニ付テハ其ノ輸人稅ハ庫入ノ時ノ性質
及數量ニ依リ之ヲ徴收ス
前項ノ檢査フ受ケタル外國貨物ガ其ノ
藏置中災害ニ因リ滅失若ハ變質シ又ハ
稅關ノ承認ヲ經テ滅却セラレタルトキ
ハ其ノ現存スル部分ニ付輸入ノ時ノ性
質及數量ニ依リ輸入稅ヲ徴收ス
第五條、第十八條、第二十四條及第二十
六條中「主務大臣」ヲ「稅關長」ニ改ム
第五條ノ二保稅倉庫ニ貨物ヲ庫入シ又
ハ保稅倉庫ヨリ貨物ヲ庫出セムトスル
トキハ稅關ノ許可ヲ受クヘシ
第七條中「滿二箇年」ヲ「三年」ニ改ム
第九條中「當該官廳」及「政府」ヲ「稅關」ニ
改ム
第一章中第九條ノ次ニ左ノ三條ヲ加フ
第九條ノ二保稅倉庫ニ藏置シタル貨物
カ藏置期限ヲ經過スルモ引取ラレサル
トキハ稅關ハ利害關係者ノ費用及危險
ノ負擔ニ於テ其ノ貨物ヲ收容シ又ハ庫
主ヨリ其ノ輸入稅ヲ徵收ス
第九條ノ三稅關長ハ取締上必要アリト
認ムルトキハ藏置貨物ノ手入ノ停止又
ハ庫出ヲ命シ其ノ他必要ノ處分ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ規定ニ依リ貨物ノ庫出ヲ命セラ
レタル者之ヲ庫出セサルトキハ稅關ハ
其ノ者ノ費用及危險ノ負擔ニ於テ其ノ
貨物ヲ收容スルコトヲ得
第九條ノ四關稅法第三條中收容ニ關ス
ル規定竝同法第四十七條、第四十八條
及第五十條乃至第五十二條ノ規定ハ本
法ニ依リ收容シタル貨物ニ之ヲ準用ス
第十二條及第十七條中「當該官廳」ヲ「稅
關」ニ改ム
第十六條削除
第十九條及第二十七條中「當該官廳」ヲ
「稅關長」ニ改ム
第二十三條削除
第三十條中「主務大臣」ヲ「稅關長」ニ、「重
罪輕罪ノ刑」ヲ「禁錮以上ノ刑」ニ改ム
第三十一條第一條ノ二ノ規定ニ違反シ
テ貨物ノ手入ヲ爲シ又ハ貨物ヲ使用シ
タル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ
處ス
第三十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
許可ヲ受ケスシテ保稅倉庫ニ貨物
ヲ庫入シ又ハ保稅倉庫ヨリ貨物ヲ庫
出シタル者
二認可ヲ受ケタル貨物保管規則ニ依
ラスシテ貨物ノ取扱ヲ爲シ又ハ認可
ヲ受ケサル庫敷料ヲ徵シタル者
三第二十五條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ケ又
ハ忌避シタル者
第三十三條私設保稅倉庫ノ庫主又ハ輸
出若ハ輸入ソ業ヲ營ム者ノ代理人又ハ
使用人カ其ノ業務ニ關シ第三十一條又
ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セラルヘキト
キハ其ノ庫主又ハ營業者ヲ處罰ス但シ
庫主又ハ營業者カ其ノ代理人又ハ使用
人ノ監督ニ付相當ノ注意ヲ爲シタルコ
トヲ證明スル場合及稅關貨物取扱人カ
貨物ノ取扱ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
稅關貨物取扱人ノ代理人、雇人其ノ他ノ
從業者カ其ノ業務ニ關シ第三十一條又
ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セラルヘキト
キハ稅關貨物取扱人ヲ處罰ス
第三十四條前條ノ場合ニ於テ庫主、營
業者又ハ稅關貨物取扱人カ未成年者又
ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人
ヲ處罰ス但シ業務ニ關シ成年者ト同一
ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ
限ニ在ラス
第三十四條ノ二本法ヲ犯シタル者ニハ
刑法第三十八條第三項但書、第三十九
條第二項、第四十條、第四十一條、第
六十三條及第六十六條ノ例ヲ用ヒス但
シ第三十二條第三號ノ罪ヲ犯シタル者
ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三十四條ノ三犯則事件ノ調査及處分
ニ關シテハ關稅法ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前主務大臣カ私設保稅倉庫、藏
置貨物ノ種類、貨物保管規則又ハ庫敷料
ニ付爲シタル特許、認可其ノ他ノ處分ハ
稅關長ノ爲シタル特許、認可其ノ他ノ處
分トシテ本法施行後仍其ノ效力ヲ有ス
本法施行前ヨリ引續キ保稅倉庫ニ藏置シ
タル貨物ニ付テハ其ノ藏置期限ハ最初ノ
庫入許可ノ日ヨリ三年トシ其ノ輸入稅ハ
仍從前ノ例ニ依リ之ヲ徴收ス
第四保稅工場法案(政府提出)
第一讀會
保稅工場法案
保稅工場法
第一條保稅工場ハ外國貨物ニ加工シ若
ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ爲シ又ハ外國
貨物ノ改裝、仕分其ノ他ノ手入ヲ爲ス
工場トス貨物ノ混合ハ之ヲ貨物ノ製造
ト看做ス
第二條保稅工場ニ於テハ稅關長ノ許可
シタル範圍內ニ於テ内國貨物ニ加工シ
又ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ爲スコトヲ
得
第三條保稅工場ニ於ケル作業ノ原料ニ
ハ內國貨物ト外國貨物トヲ使用スルコ
トヲ得
前項ノ規定ニ依リ內國貨物ト外國貨物
トヲ使用シタル貨物ハ之ヲ外國貨物ト
ス
第四條保稅工場ニ於ケル作業及貨物ノ
種類ハ稅關長之ヲ定ム
第五條保稅工場ノ外國貨物ノ輸入稅ハ
輸入ノ時ノ性質及數量ニ依リ之ヲ徵收
ス但シ命令ヲ以テ指定シタル外國貨物
ニシテ作業ノ際其ノ原料ニ付稅關ノ檢
査ヲ受ケタルモノノ輸入稅ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ檢査ノ時ノ原料ノ性質及
數量ニ依リ之ヲ徴收ス
前項但書ノ場合ニ於テハ徴收スベキ輪
入稅ノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ利
子ニ相當スル金額ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ徵收スル金額ハ之ヲ
輸人稅ト看做ス
第六條保稅工場ノ貨物藏置期間ハ移入
許可ノ日ヨリ一年トス但シ稅關長ハ特
別ノ事由アリト認ムル場合ニ於テハ更
ニ一年ヲ超エザル期間內ニ於テ之ヲ延
長スルコトヲ得
前項ノ期間ハ他ノ保稅工場ヨリ移入シ
タル貨物ニ付テハ最初ノ移人許可ノ日
ヨリ之ヲ計算ス
第七條稅關官吏ハ取締上必要アリト認
ムルトキハ保稅工場ニ出入スル者ノ身
邊搜索ヲ爲スコトヲ得
第八條私設保稅工場ヲ設置セントスル
者ハ稅關長ノ特許ヲ受クベシ
第九條私設保稅工場ノ使用規則及使用
料ハ稅關長ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ムベシ
第十條保稅倉庫法第五條ノ二、第九條
ノ二、第九條ノ三、第十九條、第二十
條及第二十五條乃至第三十條ノ規定ハ
保稅工場ニ之ヲ準用ス
第十一條關稅法第三條中收容ニ關スル
規定竝同法第四十七條、第四十八條及
第五十條乃至第五十二條ノ規定ハ本法
ニ依リ收容シタル貨物ニ之ヲ準用ス
第十二條第二條又ハ第四條ノ規定ニ違
反シテ作業ヲ爲シタル者ハ三百圓以下
ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
許可ヲ受ケズシテ保稅工場ニ貨物
ヲ移入シ又ハ保稅工場ヨリ貨物ヲ移
出シタル者
二第七條ノ搜索又ハ第十條ニ於テ準
用スル保稅倉庫法第二十五條ノ檢査
ヲ拒ミ、妨ダ又ハ忌避シクル者
三認可ヲ受ケタル使用規則ニ依ラズ
シテ保稅工場ヲ使用セシメ又ハ認可
ヲ受ケザル使用料ヲ徵シタル者
第十四條私設保稅工場設置ノ特許ヲ受
ケタル者又ハ輸出若ハ輪入ノ業ヲ營ム者
ノ代理入又ハ使用人ガ其ノ業務ニ關シ
第十二條又ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セ
ラルベキトキハ其ノ特許ヲ受ケタル者
又ハ營業者ヲ處罰ス但シ特許ヲ受ケタ
ル者又ハ營業者ガ其ノ代理人又ハ使用
人ノ監督ニ付相當ノ注意ヲ爲シタルコ
トヲ證明スル場合及稅關貨物取扱人ガ
貨物ノ取扱ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ
稅關貨物取扱人ノ代理人、雇人其ノ他
ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十二條又
ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セラルベキト
キハ稅關貨物取扱人ヲ處罰ス
第十五條前條ノ場合ニ於テ特許ヲ受ケ
タル者、營業者又ハ稅關貨物取扱人ガ
未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ
法定代理人ヲ處罰ス但シ業務ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第
三十八條第三項但書、第三十九條第二
項第四十條、第四十一條、第六十三
條及第六十六條ノ例ヲ用ヒズ但シ第十
三條第二號ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ
此ノ限ニ在ラズ
第十七條犯則事件ノ調査及處分ニ關シ
テハ關稅法ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム假
置場法ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ特許セラレタル私設假置場
ハ之ヲ本法ニ依リテ特許セラレタル私設
保稅工場ト看做シ舊法ニ依リテ認可セラ
レタル貨物藏置規則及庫敷料ハ之ヲ本法
ニ依リテ認可セラレタル使用規則及使用
料ト看做ス
舊法ニ依リテ爲シタル處分及手續ハ本
法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テ
ハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタル者ト看做
ス
舊法ニールシティニャルケルシックリークリージカル
置期間ハ最初ノ移入免許ノ日ヨリ一年
トス但シ之ヨリ長キ期間ヲ認メラレタ
ル貨物ニ付テハ其ノ期間ニ依ル
前項ノ貨物ノ輸入稅ハ仍從前ノ例ニ依
リ之ヲ徵收ス
他ノ法令中稅關假置場又ハ假置場トア
ルハ保稅工場トス
〔政府委員武內作平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=100
-
101・武内作平
○政府委員(武內作平君) 只今議題ニ上リ
マシタ保稅倉庫法中改正法律案及保稅工場
法案ニ付キマシテ大體ノ說明ヲ致シマス、現
行保稅倉庫法ハ明治三十年ニ、同ジク假置
場法ハ明治四十五年ニ制定セラレタノデア
リマスルガ、我ガ經濟界ハ其後長足ノ進步
發達ヲ遂ゲ貿易等ノ狀況モ矢張變化致シ
マシタルガ爲兩法共ニ現下ノ實情ニ適應
セザル點ヲ生ズルニ至タノデアリマス
仍テ政府ニ於キマシテハ諸般ノ事情ニ付愼
重審議ヲ遂ゲ且ツ當業者ノ切ナル希望ノ
存スル所ヲモ考慮致シタル結果、現行法ヲ
改正スルハ適當ト認メ、玆ニ保稅倉庫法中
改正法律案及假置場法ニ代ル保稅工場法案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス今保稅
倉庫法中改正ノ主ナル事項ニ付キマシテ簡
單ニ申述べマスレバ第一ニ貨物ノ外國ヘノ
積戾及內地輸入ノ利便竝ニ倉庫設置ノ利用
ノ點ヲ考慮致シマシテ、保稅倉庫内ニ於テ
モ或ル範圍内ニ於テ新ニ貨物ノ改裝仕
分其他ノ手入等ノ比較的簡單ナル作業ヲ爲
シ得ルコトヽ致シ第二ニ保稅倉庫ヨリ內
地ニ引取ラルヽ貨物ニ對スル輸入稅ハ現
行法ニ於キマシテハ其貨物ノ庫入ノ時ノ性
質及數量ニ依マテ課稅スルコトヽナッテ居リ
マスガ改正法ハ普通ノ輸入貨物ト同樣ニ
原則トシテ其貨物ノ輸入ノ時ノ性質及數
量ニ依シテ課稅スルコトヽ致シ、第三ニ貨
物ノ倉置期限ヲ一年間延長シテ三年トシ
第四ニ、保稅倉庫ノ設置、其他ニ關スル諸と
ノ手續ハ成ベク之ヲ簡單ナラシムルコ
トヽ致シタノデアリマス、次ニ保稅工場法
案ニ付キ說明致シマスルガ本法ハ現行ノ
假置場法ニ代レルモノデアリマシテ,法律
ノ名稱ヲ特ニ保稅工場法ト改メマシタノ
ハ假置場ナル名稱ガ單ニ沿革的ノ理由ニ
基クニ過ギズシテ現在ニ於キマシテハ
貨物ノ加工製造ヲ其本質ト致シテ居ル假置
場ノ實態ヲ表示スルニハ極メテ不適當ノ
名稱ト認メマスルノミナラズ、此制度ハ專
ラ我ガ加工貿易ヲ助長スベキ施設ノ一トシ
テ、今後更ニ一層其機能ヲ發揮セシムル所
ノ必要ヲ認メマスルガ故ニ、其名實ヲ相一
致セシムルニ在ルノデアリマス而シテ本
案ノ内容ト致シマシテハ第一ニ保稅工場
ニ於テ加工製造、其他ノ作業ヲ加ヘマシタ
ル外國貨物ヲ內地ニ輸入致ス場合ニ於キマ
シテ、現行法ハ輸入ノ時ノ性質及數量ニ依ツ
テ課稅スル制度、所謂製品課稅主義ヲ採ツ
テ居ルノデアリマスガ其結果ハ豫期セザ
ル事情ニ依ッテ、製品ノ一部ヲ內地ニ輸入セ
ントスル場合ニ其輸入稅ノ負擔ヲ增加ス
ルコトヽナリ爲ニ製品全體ノ生產費ヲ高
メマシテ、延イテ加工貿易ヲ阻害スル如キ
結果ヲ招來スルノ虞ガアルノデアリマス
仍テ本案ハ斯ル弊ヲ除キ當業者ニ利益ヲ
與ヘル趣旨ヲ以テ、特定ノ物品ニ對シマシ
テハ例外的ニ其原料ニ課稅シ得ルコト、
致シマスルト同時ニ他面原料課稅ノ內地
產業ニ及ボス影響ヲ考慮致シマシテ、此種
ノ課稅品ニ付テハ保稅工場ヲ利用セザル
モノヽ課稅上ノ權衡ヲ保タシムル爲ニ、其
原料ノ輸入稅ニ對スル利子額ヲ徵スル等、
適當ノ措置ヲ講ズルコトヽ致シタノデアリ
マス第二ニ貨物ノ倉置期間ヲ六箇月間延
長シテ一年トシ、第三ニ保稅工場ノ設置其
他ニ關スル商手續ヲ簡軍ナラシムルコトヲ
以テ主要ナル事項ト致シマス、之ヲ要シマ
スルニ兩法案ハ努メテ本邦ノ貿易及商収
引等ノ實情ニ適應セシメントスルト同時
ニ、關稅取締上支障ナキ限リハ、手續其他
ノ之ニ關スル當業者ノ負擔ヲ成ベク輕減致
シ以テ我ガ貿易ノ振興ニ寄與セントスル
趣意ヲ以テ提案致シタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ土速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=101
-
102・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 日程第五、右各
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第五右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=102
-
103・井本常作
○井本常作君 兩案ヲ一括シテ、議長指名
特ニ十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望
ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=103
-
104・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=104
-
105・井本常作
○井本常作君 議事日程變史ノ動議ヲ提出
致シマス此際政府ノ同意ヲ得テ日程第三
十五、大正十二年法律第五十一一號中改正法
律案ヲ議題トシ、委員長ノ報告ヲ求メ、其
審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=105
-
106・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス-政府モ同意セラ
レマシタ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ
卽チ日程第三十五大正十二年法律第五十
二號中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、
委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長榊原經武
君
第三十五大正十二年法律第五十二號
中改正法律案(司法官試補及辯護士
ノ資格ニ關スル件)(橫山勝太郎君外
八名提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一大正十二年法律第五十二號中改正法律
案(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關ス
ル件)(横山勝太郞君外八名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月十二日
委員長神原經武
衆談院議長粕谷義三殿
(小字及ーハ委員會修正)
大正十二年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一項中「本法施行後五年內」ヲ「昭和七
ム
年十二月三十一日迄」ニ改メ司項ノ次ニ
左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ニ依ル試驗ノ筆記試驗ニ合格シ
タル者ハ翌年ニ限リ其ノ筆記試驗ヲ免ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔榊原經武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=106
-
107・榊原經武
○榊原經武君 私ハ大正十二年法律第五十
二號中改正法律案ニ付キマシテ委員會ノ
經過ト結果ヲ御報告致シマス、委員會ニ於
キマシテハ審議ノ末ニ本改正案ノ第二項
ヲ削除スルコトノ修正決議ヲ致シマシテゴ
ザイマス、此第二項ヲ削除致スコトヲ決議
致シマシタノハ政府委員ノ說明ニ依リマ
スルト、既ニ此種ノ試驗制度ノ改正ヲ計畫
サレテ居リマシテ、其改正案ガ不日制定公
布セラレントスル運ビニ進ンデ居ル趣デア
リマス、而シテ其改正案二依リマスルト
單リ辯護士ニ限ラズ筆記試驗ニ及第致シ
マシタ者ハ翌年ニ於テ其筆記試驗ヲ免除
スルコトニナッテ居ルサウデアリマス、隨テ
特ニ辯護士ニ限リマシテ此第二項ヲ設ケテ
置ク必要ガナカラウト云フ政府委員ヨリ注
意的說明ヲ受ケタノデアリマス、委員會ハ
其政府委員ノ說明ヲ信用致シマシテ卽チ
此第二項ヲ削除スルコトニナッタノデアリ
ママ、隨テ本案ハ斯樣ニナリマス、第一項
中「本法施行後五年內」ヲ「昭和七年十二月
三十一日迄」ニ改ム、斯樣ナ修正ニナリマ
ス次第デアリマス、而シテ本案バ申スマデ
モナク、辯護士試驗規則ニ依シテ試驗ヲ出願
致シマシタ受驗者二千數百名ノ本人ト其
家族トヲ生活ノ不安ヨリ救濟ヲ致シマス所
ノ最モ社會政策ニ適シテ居ル其一ツデアリ
マス以上ノ理由ニ依リマシテ委員會ハ
全會一致ヲ以テ修正可決致シマシタ次第
デアリマス、以上御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=107
-
108・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=108
-
109・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=109
-
110・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シ、委員長報告通り可
決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=110
-
111・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス仍テ直ニ第二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
大正十二年法律第五十一一號中改正法律
案(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關ス
ル(作)第二讀會(確定議)
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼ヲ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=111
-
112・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告通リ可決確定セラレマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=112
-
113・井本常作
○井本常作君 殘餘ノ日程ハ延期セラレン
コトヲ望ミマヌ
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=113
-
114・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス仍テ動議ノ如ク決
シマシタ、次回ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知
致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時九分散會
衆議院議事速記錄第二十四號中正誤
頁段行正
五六四四二四微笑美醫
五七四三神韻神韵
衆議院議事速記錄第二十五號中正誤
頁段行誤正
六二一~二式昌武昌
六二七三七釣鈞
六二八四二月十四日二月二十四
日
六二九一一第二第四発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02619270315&spkNum=114
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。