1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年三月二十二日(火曜日)午後一時十九分開議
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議事日程 第二十八號
昭和二年三月二十二日
午後一時開議
質問
一 國際體育競技補助金に關する質問(平沼亮三君提出)
二 蠶絲業政策に關する質問(二木洵君提出)
三 専門學校卒業生の學士號に關する質問(山下谷次君提出)
四 商船學校生徒遭難の件竝遠洋航海練習船に關する質問(三善清之君提出)
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第一 花柳病豫防法案(政府提出)第一讀會の續(委員長報告)
第二 農會法中改正法律案(植原悦二郎君提出) 第一讀會
第三 公娼制度制限竝廢止に關する法律案(松山常次郎君外五名提出) 第一讀會
第四 關税定率法中改正法律案(東武君外七名提出) 第一讀會
第五 意匠法中改正法律案(清水市太郎君外五名提出) 第一讀會
第六 實用新案法中改正法律案(清水市太郎君外五名提出) 第一讀會
第七 特許法中改正法律案(清水市太郎君外五名提出) 第一讀會
第八 商標法中改正法律案(清水市太郎君外五名提出) 第一讀會
第九 食糧債劵發行に關する法律案(星廉平君外二名提出〕 第一讀會
第十 地租條例中改正法律案(熊谷五右衞門君提出) 第一讀會
第十一 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(荒川五郎君外十名提出) 第一讀會
第十二 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(本田義成君外二名提出) 第一讀會
第十三 違警罪即決例中改正法律案(横山勝太郎君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 信託業法中改正法律案(牧野良三君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(佐々木平次郎君外十五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 議院建築速成竝附屬設備の計畫促進に關する建議案(齋藤隆夫君外八名提出)
第十七 秋田市に國立園藝試驗場設置に關する建議案(信太儀右衞門君外三名提出)
第十八 千曲川河畔に園立養鯉試驗場設置に關する建議案(篠原和市君外七名提出)
第十九 農漁村振興上必要なる法律制定に關する建議案(山本勝次君提出)
第二十 國有林の文化的施設に關する建議案(村山喜一郎君提出)
第二十一 民林局設置に關する建議案(村山喜一郎君提出)
第二十二 不要存置國有林野整理處分に關する建議案(大島要三君外七名提出)
第二十三 農漁村の金融に關する建議案(床次竹二郎君外十二名提出)
第二十四 小作農保護に關する建議案(床次竹二郎君外十二名提出)
第二十五 森林法中改正に關する建議案(川崎安之助君外十一名提出)
第二十六 公有林野官行造林事業促進に關する建議案(川崎安之助君外十一名提出)
第二十七 林野基本調査の速行に關する建議案(川崎安之助君外十一名提出)
第二十八 農林保險に關する建議案(小西和君外一名提出)
第二十九 森林火災保險に關する建議案(川崎安之助君外十名提出)
第三十 國立水産試驗場設置竝地方水産試驗場統一に關する建議案(小西和君外一名提出)
第三十二 自作農創設及維持資金に對する利子補給に關する建議案(村上國吉君外四名提出)
第三十三 自作農維持創設資金制度確立に關する建議案(加藤政之助君外十九名提出)
第三十四 宮城縣に國立米穀倉庫設置に關する建議案(内ヶ崎作三郎君外三名提出)
第三十五 森林政策根本方針確立に關する建議案(太田信治郎君外一名提出)
第三十六 七尾港又は伏木港に生牛檢疫所設置に關する建議案(石原正太郎君外二名提出)
第三十七 雨龍原野土地改良に關する建議案(神部爲藏君外六名提出)
第三十八 萬國海事水産會議竝内國海事水産博覽會開催に關する建議案(小池仁郎君外五名提出)
第三十九 海事水産金融制度に關する建議案(中村啓次郎君外五名提出)
第四十 海務省設置に關する建議案(内田信也君外五名提出)
第四十一 宮崎縣に國立種禽場設置に關する建議案(長峰與一君外四名提出)
第四十二 森林道路法制定に關する建議案(永田善三郎君堤出)
第四十三 郡市町村農會技術員費國庫補助増額に關する建議案(加藤政之助君外十九名提出)
第四十四 岡山縣に國立種禽場設置に關する建議案(高草美代藏君外四名提出)
第四十五 五島珊瑚採取業奨勵に關する建議案(牧山耕藏君外七名提出)
第四十六 廣島縣に競馬場設置に關する建議案(金田平兵衞君外一名提出)
第四十七 鹿兒島縣に國立種禽場設置に關する建議案(寺田市正君外九名提出)
第四十八 愛知縣に國立種禽場設置に關する建議案(丹下茂十郎君外四名提出)
第四十九 米麥搗精の取締及制限に關する建議案(荒川五郎君外九名提出)
第五十 漆樹栽培奨勵に關する建議案奨勵に關する建議案(寺島權藏君外一名提出)
第五十一 堺水族館國榮に關する建議案(中林友信君提出)
第五十二 市町村吏員優遇に關する建議案(篠原和市君外三名提出)
第五十三 市町村吏員優遇に關する建議案(八田宗吉君提出)
第五十四 市町村吏員優遇に關する建議案(清水長郷君提出)
第五十五 市町村吏員優遇に關する建議案(金光庸夫君外一名提出)
第五十六 市町村の整理改善に關する建議案(荒川五郎君提出)
第五十七 府縣會議員優遇に關する建議案(金光庸夫君外三名提出)
第五十八 新聞記者待遇に關する建議案(篠原和市君外八名提出)
第五十九 村落に關する制度の調査及整備に關する建議案(富永孝太郎君外一名提出)
第六十 地方財政根本改革に關し調査會設置に關する建議案(馬場義興君提出)
第六十一 北海道一二級町村制改正に關する建議案(澤田利吉君外六名提出)
第六十二 那賀川改修速成に關する建議案(谷原公君外一名提出)
第六十三 小貝川第二期改修速成に關する建議案(來栖七郎君外一名提出)
第六十四 肝屬川改修速成に關する建議案(津崎尚武君提出)
第六十五 川内川改修速成に關する建議案(寺田市正君外四名提出)
第六十六 加古川改修工事完成に關する建議案(多木久米次郎君提出)
第六十七 木津川改修工事速行に關する建議案(長田桃藏君外一名提出)
第六十八 木津川改修工事急施に關する建議案(川崎安之助君外一名提出)
第六十九 由良川改修工事速行に關する建議案(長田桃藏君外一名提出)
第七十 淀川低水工事促進に關する建議案(長田桃藏君外一名提出)
第七十一 澱川低水工事改良に關する建議案(川崎安之助君外四名提出)
第七十二 吉井川改修に關する建議案(清水長郷君提出)
第七十三 利根川及荒川改修工事速成に關する建議案(神谷彌平君外二名提出)
第七十四 鶴見川改修速進に關する建議案(小野重行君外三名提出)
第七十五 筑後川改修工事に關する建議案(加藤十四郎君提出)
第七十六 筑後川改修工事に伴ひ兩縣聯絡架橋に關する建議案(加藤十四郎君外一名提出)
第七十七 矢部川改修工事に關する建議案(坂梨哲君外三名提出)
第七十八 北上川改修に關する建議案(廣瀬爲久君外二名提出)
第七十九 土器川改修速成に關する建議案(三善清之君提出)
第八十 雄物川改修工事速成に關する建議案(田中隆三君外六名提出)
第八十一 大淀川架橋に關する建議案(長峰與一君外四名提出)
第八十二 河川使用許可に關する建議案(川崎安之助君外十一名提出)
第八十三 福井三國間水運利用に關する建議案(猪野毛利榮君提出)
第八十四 河川法中改正に關する建議案(加藤十四郎君提出)
第八十五 八丈島に於ける漁港修築に關する建議案(高木正年君外二名提出)
第八十六 高砂港修築に關する建議案(多木久米次郎君提出)
第八十七 濱田港漁港修築に關する建議案(原夫次郎君外二名提出)
第八十八 濱益漁港修築に閣する建議案(一柳仲次郎君外六名提出)
第八十九 北海道漁港竝船入澗築設に關する建議案(黒住成章君外三名提出)
第九十 魚津漁港修築に關する建議案(寺島權藏君提出)
第九十一 沼津港修築に關する建議案(庄司良朗君外一名提出)
第九十二 丸龜港改築國庫補助に關する建議案(三善清之君提出)
第九十三 岸和田港修築費國庫補助に關する建議案(井阪豐光君提出)
第九十四 岸和田港修築費國庫補助に關する建議案(山口義一君提出)
第九十五 堺港修築費國庫補助に關する建議案(中林友信君外一名提出)
第九十六 尾道港第二種重要港灣指定に關する建議案(嶋居哲君外一名提出)
第九十七 尾道港第二種重要港灣指定に關する建議案(横山金太郎君外三名提出)
第九十八 徳山港を第二種港編入に關する建議案(横山金太郎君外一名提出)
第九十九 大淀川河口築港に關する建議案(長峰與一君外四名提出)
第百 福井縣和田港に運河開鑿竝避難港築設に關する建議案(山口嘉七君外二名提出)
第百一 北海道追直漁港修築に關する建議案(栗林五朔君外四名提出)
第百二 青森築港國榮に關する建議案(工藤鐵男君外六名提出)
第百三 浮島沼整理に關する建議案(小泉策太郎君外一名提出)
第百四 大利根引水事業國營に關する建議案(今井健彦君外一名提出)
第百五 鵜戸神社昇格に關する建議案(津崎尚武君提出)
第百六 尾張戸神社昇格に關する建議案(丹下茂十郎君提出)
第百七 尾張戸神社昇格に關する建議案(西脇晉君外一名提出)
第百八 官幤中社水無瀬宮昇格に關する建議案(植場平君外二名提出)
第百九 廣島市に明治聖帝記念館設立竝明治神宮分社造營に關する建議案(江藤榮吉君提出)
第百十 香取神宮神苑擴張に關する建議案(今井健彦君提出)
第百十一 孝明天皇の神宮造營に關する建議案(川崎安之助君外六名提出)
第百十二 水道費國庫補助金増額に關する建議案(倉元要一君外一名提出)
第百十三 消防組經費國庫補助竝消防組員優遇に關する建議案(倉元要一君外二名提出)
第百十四 消防組經費國庫補助竝消防組員優遇に關する建議案(秋田寅之介君提出)
第百十五 大日本聯合青年團國庫補助に關する建議案(秋田寅之介君提出)
第百十六 兵庫縣警察費國庫下渡金増額に關する建議案(土井權大君外六名提出)
第百十七 京都府警察費國庫下渡金増額に關する建議案(森田茂君外六名提出)
第百十八 大阪府警察費國庫下渡金増額に關する建議案(筒井民次郎君提出)
第百十九 移動警察制度完備に關する建議案(原夫次郎君提出)
第百二十 報徳社普及奨勵に關する建議案(山宮藤吉君外九名提出)
第百二十一 滿十五歳未滿兒童映畫一般觀覽禁止に關する建議案(原惣兵衞君外一名提出)
第百二十二 古物商取締法改正に關する建議案(山本芳治君外九名提出)
第百二十三 北海道舊土人保護に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百二十四 日西交通發祥地を史蹟名勝指定地と爲すの建議案(森矗昶君外五名提出)
第百二十五 淺間山國立公園設定に關する建議案(篠原和市君外六名提出)
第百二十六 久須夜岳を中心とする國立公園設定に關する建議案(山口嘉七君外二名提出)
第百二十七 濱名湖を中心とする國立公園設定に關する建議案(倉元要一君提出)
第百二十八 吉崎及東尋坊を中心とする國立公園設定に關する建議案(熊谷五右衞門君提出)
第百二十九 鎌倉葉山を中心とする國立公園設定に關する建議案(川口義久君提出)
第百三十 潮來十六島を中心とする水郷國立公園設定に關する建議案(今井健彦君外三名提出)
第百三十一 琵琶湖を中心とする國立公園設定に關する建議案(兼松寅太郎君外二名提出)
第百三十二 多摩國立公園設定に關する建議案(小島證作君外一名提出)
第百三十三 霧島山國立公園設定に關する建議案(逆瀬川仁次郎君外八名提出)
第百三十四 阿蘇山を中心とする國立公園設定に關する建議案(藤井敬愼君提出)
第百三十五 平泉を中心する國立公園設定に關する建議案(志賀和多利君提出)
第百三十六 赤城榛名妙義の三山を中心とする國立公園設定に關する建議案(青木精一君外一名提出)
第百三十七 國立公園調査に關する建議案(小西和君提出)
第百三十八 朝鮮金剛山國立公園設定に關する建議案(牧山耕藏君外四名提出)
第百三十九 黒部峽谷國立公園設定に關する建議案(寺島權藏君提出)
第百四十 國立癩療養所設置に關する建議案(中林友信君外五名提出)
第百四十一 大阪府泉北郡に於ける癩療養所設置指定取消に關する建議案(中林友信君提出)
第百四十二 癩療養所國庫補助に關する建議案(木檜三四郎君提出)
第百四十三 醫師の國家試驗制度に關する建議案(宮島幹之助君外四名提出)
第百四十四 脚氣病研究に關する建議案(中原徳太郎君提出)
第百四十五 衞生行政機關の統一改善に關する建議案(宮島幹之助君外六名提出)
第百四十六 鹿兒島縣大島郡の振興計畫樹立に關する建議案(田中隆三君外三名提出)
第百四十七 官業共濟組合法人組織即時實施に關する建議案(渡邊伍君外三名提出)
第百四十八 堺郵便局昇格に關する建議案(山口義一君提出)
第百四十九 小諸郵便局昇格に關する建議案(篠原和市君外一名提出)
第百五十 天鹽國初山別村字茂築別に無集配郵便局設置に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第百五十一 電話加入區域擴張に關する建議案(三浦數平君提出)
第百五十二 石川縣舳倉島に燈臺設置に關する建議案(佐藤實君提出)
第百五十三 室蘭港に海事部出張所設置に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百五十四 下關海事部出張所永久存置に關する建議案(秋田寅之介君提出)
第百五十五 福井市に遞信局設置に關する建議案(土生彰君外二名提出)
第百五十六 日本海内航路設定に關する建議案(石原正太郎君外三名提出)
第百五十七 福岡壹岐對馬長崎間電話開設に關する建議案(牧山耕藏君外四名提出)
第百五十八 長崎五島佐世保間電話開設に關する建議案(牧山耕藏君外五名提出)
第百五十九 北海道鵡川村に飛行場設置に關する建議案(手代木隆吉君外一名提出)
第百六十 府縣立商船水産學校練習船建造に關する建議案(寺田市正君外十名提出)
第百六十一 移民政策の徹底に關する建議案(湯淺凡平君提出)
第百六十二 尼港漁業者の損害救濟に關する建議案(佐々木平次郎君外一名提出)
第百六十三 外務省に駐支學務官を置くの建議案(江藤榮吉君提出)
第百六十四 新潟港に露國領事館設置に關する建議案(松井郡治君外八名提出)
第百六十五 華府會議條約の結果被りたる損害囘復に關する建議案(清水市太郎君外一名提出)
第百六十六 尼港事變殉難者遺族及被害者の損害賠償に關する建議案(池田泰親君外七名提出)
第百六十七 琿春被害民救濟に關する建議案(戸澤民十郎君外四名提出)
第百六十八 滿蒙開發に關する建議案(永田善三郎君外三名提出)
第百六十九 官吏の行爲に因る國家の賠償責任に關する法律制定に關する建議案(清瀬一郎君提出)
第百七十 司法制度刷新に關する建議案(清瀬一郎君提出)
第百七十一 家産制度制定に關する建議案(浦野謙朗君提出)
第百七十二 司法權獨立の保障に關する建議案(田中讓君外一名提出)
第百七十三 刑餘者に對する法令の差別待遇撤廢竝之か救治に關する建議案(原夫次郎君提出)
第百七十四 帶廣區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(小池仁郎君外六名提出)
第百七十五 室蘭區裁判所に地方裁判所支部設置に關する建議案(手代木隆吉君外六名提出)
第百七十六 北海道空知支廳管内に區裁判所設置に關する建議案(神部爲藏君外六名提出)
第百七十七 朝鮮人の訴訟代理業者に辯護士資格付興に關する建議案(田中萬逸君外一名提出)
第百七十八 刑務所に於ける印刷作業撤廢に關する建議案(岡田忠彦君外一名提出)
第百七十九 剩餘金豫算編入に關する建議案(馬場義興君提出)
第百八十 織物消費税法廢止に關する建議案(青木精一君外一名提出)
第百八十一 宇野開港に關する建議案(高草美代藏君外八名提出)
第百八十二 司法代書人の課税廢止に關する建議案(三浦數平君提出)
第百八十三 青年團及處女會指導機關設置に關する建議案(倉元要一君外一名提出)
第百八十四 太陽觀測所設立に關する建議案(中村嘉壽君提出)
第百八十五 書道振興奬勵に關する建議案(東武君外二名提出)
第百八十六 圖書館普及に關する建議案(青木精一君外一名提出)
第百八十七 靜岡市に商科大學設置に關する建議案(松浦五兵衞君外一名提出)
第百八十八 別府市に關西美術學校設置に關する建議案(三浦數平君外三名提出)
第百八十九 建築士法制定に關する建議案(小西和君外二名提出)
第百九十 特許審判廳創設に關する建議案(原夫次郎君提出)
第百九十一 空中窒素工業に關する建議案(齋藤藤四郎君外二名提出)
第百九十二 地方商工會法制定に關する建議案(湯淺凡平君提出)
第百九十三 正米市場法制定促進に關する建議案(作間耕逸君外二名提出)
第百九十四 煙毒防止水源涵養に關する建議案(武藤金吉君外五名提出)
第百九十五 取引所制度調査會設置に關する建議案(中山貞雄君提出)
第百九十六 舊韓國將校待遇に關する建議案(林田龜太郎君外三名提出)
第百九十七 故金玉均表彰に關する建議案(志賀和多利君外五名提出)
第百九十八 印刷業者保護に關する建議案(林田龜太郎君外二名提出)
第百九十九 朝鮮に於ける砂防事業促進に關する建議案(川崎安之助君外十名提出)
第二百 戰死公病死者及癈兵の遺族扶助料増額に關する建議案(蟻川五郎作君外一名提出)
第二百一 軍人傷痍記章令中改正竝一時賜金癈兵に對する恩給支給法制定に關する建議案(倉元要一君提出)
第二百二 寒河江、富澤間鐵道敷設に關する建議案(齋藤金吾君外三名提出)
第二百三 米澤日中間鐵道速成に關する建議案(齋藤金吾君外二名提出)
第二百四 大船渡線速成竝大船渡港重要港灣指定等に關する建議案(志賀和多利君外一名提出)
第二百五 大船渡線速成竝大船渡港重要港灣指定等に關する建議案(工藤鐵男君外三名提出)
第二百六 横手本莊間鐵道を鐵道網編入に關する建議案(村山喜一郎君外四名提出)
第二百七 邊別驛美瑛驛間に停車場設置に關する建議案(淺川浩君外六名提出)
第二百八 鯖大鐵道建設速成に關する建議案(猪野毛利榮君提出)
第二百九 福井驛擴張速成に關する建議案(猪野毛利榮君提出)
第二百十 四國縱貫鐵道速成に關する建議案(三善清之君外二名提出)
第二百十一 新潟縣に鐵道局設置に關する建議案(山田又司君外十五名提出)
第二百十二 山田大杉間鐵道敷設速成に關する建議案(大石大君提出)
第二百十三 愛媛縣寒川村に停車場設置に關する建議案(村上紋四郎君提出)
第二百十四 八幡濱、近永間鐵道速成に關する建議案(村上紋四郎君提出)
第二百十五 部落問題の國策確立に關する建議案(望月小太郎君外十八名提出) (委員長報告)
第二百十六 大藏省令第二十八號を癈止し之に代るへき法律制定に關する決議案(武藤山治君提出)
第二百十七 決議案(政府委員任命に關する件)(牧山耕藏君外九名提出)
第二百十八 内務當局者の責任に關する決議案(羽室庸之助君提出)
第二百十九 決議案(雪害地方の鐵道改良の件)(佐藤實君外三名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=0
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001・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 諸穀ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
瘀兵優遇ニ關スル法律案
提出者
三橋四郞次君兒玉實良君
石坂豐一君
帝國ノ富力調査ニ關スル建議案
提出者作間耕逸君
高麗神社昇格ニ關スル建議案
提出者神谷彌平君
民間飛行奬勵ニ關スル建議案
提出者神谷彌平君
埼玉縣ニ國立種禽場設置ニ關スル建議案
提出者
小鳥善作君神谷彌平君
松本眞平君
細島港第二種重要港灣指定竝修築速成ニ
關スル建議案
提出者佐藤重遠君
五ヶ瀨川竝大瀨川國費支辨〓修速成ニ關
スル建議案
提出者佐藤重遠君
東海港國費支辨改修ニ關スル建議案
提出者佐藤重遠君
寺泊港マ築ニ關スル建議案
提出者高島順作君
石卷女用間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
齋藤仁太郞君内ケ崎作三郞君
菅原英伍君
(以上三月十九日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去十九日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
九丸山浪彌君
三九京都府第五區選出議
員
五八石川長右衛門君
七五山本賴平君
一四二藤田包助君
二〇五米原於菟勢君
三四一村松甚藏君
四三四大城幸之一君
一夫十九日理事補關選舉ノ結果左ノ如シ
水戶鐵道株式會社、越後鐵道株式會社、
陸奧鐵道株式繪社、苫小牧輕便藏道株式
會社及日高拓殖鐵道株式會社所屬鐵道買
收ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府提
也外一件委員
理事岡田伊太郞君(理事工藤十三雄
君本月十二日辭任ニ付其ノ補
關
一去十九日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案委員
川崎安之助君村上國吉君
由谷義治君吉村伊助君
長田桃藏君若宮貞夫君
井坂豐光君前田房之助君
田崎信藏君
一去十九日市町村義務〓育費國庫負擔法中
改正法律案委員丸山浪彌君辭任ニ付其ノ
補闘トシテ小野寅吉君ヲ大正十三年度
第一豫備金支出ノ件外十一件(承諾ヲ求
ムル件)委員澤田利吉君辭任ニ付其ノ補
闕トシテ齋藤仁太郞君ヲ保稅倉庫法中改
正法律案外一件委員生方大吉君辭任ニ付
其ノ補關トシテ谷口宇右衛門君ヲ能代港
ニ臨淮線敷設ニ關スル建議案外三十一件
委員岡本實太郎君辭任ニ付其ノ補關トシ
テ澤田利吉君ヲ不良住宅地區改良法案委
員肉ケ崎作三郎君作間耕逸君福田五郞君
寺島權藏君辭任ニ付其ノ補闘トシテ福田
五郎君寺島權藏君内ケ崎作三郞君作間耕
逸君ヲ孰レモ議長ニ於テ選定セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=1
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002・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス議事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレテ居
リマス、之ヲ許シマス、原惣兵衞君
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=2
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003・原惣兵衞
○原葱兵衞君 本員ハ玆ニ議事進行ニ關シ
マシテ、議長ニ御尋致シタイ點ガアルノデ
アリマス、ソレハ去ル二月二十二日ニ、憲
政會ヨリ横山勝太郞君、齋藤隆夫君、高木
益太郞君ヨリ決議案ガ提出サレタノデアリ
マイ、而シテ其決議案ノ內容ハ如何ナルモ
ノデアルカト云ヘバ「議員近藤達兒君ハ東
京市對東京瓦斯株式會社間ノ報償契約改訂
ニ關シ去ル二月十士日ノ本會議ニ於テ衆議
院議員中ニ同會社ヨリ新株式ヲ受領シタル
者アルガ如キ演說ヲ爲セリ若シ之レアリト
セハ其ノ姓名ヲ明兩スベシ、右決議ス」ト
云フ內容デアルノデアリマス、御存知ノ如
クニ是ハ東京市ノ有名ナ瓦斯報償契約ノ改
訂ニ關シマシテ、憲政會所屬、殊ニ其黨員
ヲ以テ組織スル所謂革新會ナルモノ五十有
餘名ニ依シテ、東京市ノ瓦斯報償契約ノ改
訂ヲシテ、サウシテ一部瓦斯會社ヨリ或ル
利益ノ提供ガアッタト云フコトガ、東京市全
體及此自治團ヲ中心トシテ、全國ニ響ケル
所ノ大キナ問題デアッタノデアリマス(ヒヤ
ヒヤ)此大問題ニ關シテ、果シテ東京瓦斯
會社ガ如何ナル關係ヲ持ノテ居ルカ、吾々
聞ク所ニ依レバ、東京瓦斯會社ト此革新會、
殊ニ憲政會ノ所屬代議士ニ或ル醜聞アリト
云フコトガ、果シテ有リヤ否ヤト云フ問題
ニナリマシテ、其時ニ我ガ同僚ノ近藤達兒
君ハ、之ニ對シテ憲政會ノ代議士中ニハ一
人モ無イト云フコトハ斷言スルノ勇氣ガナ
イ、此各辯ニ對シテ憲政會ハ今言フ決議案
ヲ出シテ、其姓名ヲ明ニスベシ、斯樣ナル
決議案ヲ上程スル結果ニナッタノデアリマ
ス而シテ此決議案ヲ苟モ憲政會數十名ノ
人ガ集シテ提出シテ、正ニ一箇月モ之ヲ有
耶無耶ニシテ置クト云フコトハ、如何ナル
譯デアルカ、憲政會ガ此姓名ヲ飽迄名乘ツ
テ貰ヒタケレバ,何故一箇月餘リモ之ヲ捨
テヽ置イタカト云フ點デアリマス(「ヒヤヒ
ヤ」拍手)吾々ハ苟モ院ノ決議ヲ以テ上程ス
ルマデニ至ッタル所ノ此決議案ガ、今日マデ
捨テヽ置イテアル、之ヲ要求セナイト云フ
コトハ寧口憲政會内部ニ暗イ所ガアルノ
デハナイカト吾々ハ思フノデアリマス、凡
ソ決議案ノ性質上之ヲ一箇月餘リモ置クベ
キモノデナイ、然ルニ之ヲ依然トシテ捨テ
テ置クト云フコトハ、如何ナルコトデアル
カ、之ニ對シテ議長ヨリ明確ナル御答辯ヲ
御願シタイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=3
-
004・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 原君ニ御答ヲ致シマ
ス、只今御尋ノ決議案ガ今日マデ上程スル
ニ至リマセヌコトハ議長モ甚ダ遺憾ニ感
ジマス、併ナガラ御承知ノ通リ議案ガ非常
ニ輻輳シテ居リマシテ、現ニ今日ノ日程ニ
於キマシテモ、佐藤君御提出ノ決議案ハ-
月ノ提出デアッタト思ヒマス、ソレガ漸ク
今日上程セラレルト云フヤウナ始末デゴザ
イマシテ、議長ノ處置ト致シマシテハ、別
ニ何等ノ意味ノアル譯デハナイノデアリマ
ス、唯。議案輻輳ノ故ヲ以テ今日ニ至ッテ
居ルト云フコトヲ御答致シマス、尙ホ成べ
ク早ク上程スルヤウニ致シタイト思ヒマ
ス、是ヨリ質問ノ日程ニ入リマス、質問第
一ニ對シマシテハ、政府ヨリ答辯書ヲ受領
致シマシタカラ、之ヲ日程ヨリ省キマス、
次ハ質問第二、蠶絲業政策ニ關スル質問ノ
趣旨辯明ヲ許シマス、二木洵君
二蠶絲業政策ニ關スル質問(二木洵
君提出)
蠶絲業政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月十二日
提出者一示洵
蠶絲業政策ニ關スル質問主意書
我カ國產蠶絲業ハ官民一致ノ根本政策ノ
下ニ施設經營セラルルヲ至當トスルニ拘
ラス今日ニ及ムテ未夕其ノ根本策ノ樹立
ヲ見ス政府ハ將ニ設ケムトスル蠶絲委員
會ニ一切ヲ期待スルモノノ如シ此ノ如キ
悠長ナル方策ハ逆運ニ當面セル蠶絲業ヲ
挽囘シ得ルヤ頗ル寒心ニ堪ヘス敢テ政府
ノ所見ヲ問フ
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=4
-
005・二木洵
○二木洵君 農林大臣ノ御出席ヲ要求シテ
下サイ
〔二木洵君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=5
-
006・二木洵
○二木洵君 私ハ蠶絲業政策ニ關スル質問
ノ趣旨ヲ辯明セントスル者デアリマス、御
承知ノ通リ我國ノ蠶絲業ハ既ニ伊佛ヲ淩駕
シ、又支那ヲ押ヘテ、今日ニ於キマシテハ
世界ニ於ケル唯一ノ供給國デアルノデアリ
マス、其狀況カラ申シマスレバ、我國ノ輸
出貿易ノ大部分ヲ擔ッテ居ルト云フ點カラ
致シマシテ、實ニ其勢ハ隆々タルガ如ク見
エルノデアリマスルガ、飜テ其前途ヲ考ヘ
テ見マスレバ、人造絹絲ノ發達ガ、實ニ恐
ルベキ徴候ヲ示シテ居ルノデアルガ、識者
ノ間ニハ既ニ其用途ガ各、異ナルト云フ觀
察ヲ下シテ、前途ニ相當ニ樂觀ヲ持ヲテ居
ル者モアルノデアリマスルガ、併ナガラ米
國需要地ニ於キマスル所ノ狀態ハ、決シテ
樂觀スベキモノデハナイノデアリマス、殊
ニ之ニ關シマシチハ各位ノ御存知ノ通リ
本年ニ於キマシテ、絲價ノ暴落ト云フコト
ガ非常ニ地方一般ノ養蠶家ニ悲觀ヲ傳ヘテ
居ルノデアリマス、此原因ニ付キマシテハ
既ニ豫算委員會等ニ於キマシテ、同僚ヨリ
種々質問モ出テ、應答モ盡シテ居ルノデア
リマスケレドモ、質問應答ノ速記錄ヲ詳細
ニ讀ンデ見マシチモ、私ノ首肯シ兼ル點ガ
多々アルノデアリマス、故ニ此會期切迫ノ
場合ニ於キマシテ、各位ニハ御迷惑デアリ
マセウガ、之ニ對シテ一言政府ノ根本政策
ヲ導ネヤウト思フノデアリマス、極メテ簡
單ニ致シタイト思ヒマスガ、簡單ト申シマ
シテモ要領ヲ得ルダケノ事ハ申述ベル積リ
デアリマスカラ、左樣ニ御承知ヲ願ヒタイ
ノデアリマス、先ヅ第一ニ伺ッテ置キタイ事
ハ此蠶絲業ニ對スル法規デアリマス、蠶
絲業法ノ發布セラレマシタノハ御承知ノ通
リ明治四十四年デ、ソレカラ大正六年ニ於
キマシテ一部ノ改正ヲ加ヘラレ、既ニ其後
十年ヲ經過致シテ居ルノデアリマス、此經
過致シマシタル所ノ十年ノ間ノ我國蠶絲業
ノ進步ノ道程ハ如何デアリマセウ、實ニ著
シイ進歩デアルノニモ拘リマセズ、法ハ依
然トシテ舊套ヲ脫セナイ、實際ニ適合スル
コトノ出來ナイ所ノ非常ニ徑庭アル所ノ
法、其法ヲ遵守シテ居ラナケレバナラナイ
所ノ當業者ノ不利不便不都合ト云フコト
ハ幾何バカリデアッタカ知レナイノデア
リマス、其法發布當時ニ直ニ不備不整ノ點
ハ指摘セラレマシテ、政府當局ニ於テモ伺ン
テ居ル筈デアリマスルニモ拘ラズ、後年カ
經チマシテモ荏苒今日ニ及ンデ、未ダ會テ
蠶絲業法ノ改正案ヲ提出シナイノハ如何ナ
ル譯デアルカ、此蠶絲業法ノ問題ノ如キハ、
餘リ重要デナイト云フヤウナ意見ヲ以テ閑
却セラレテアルモノデアリハシナイカト思
フノデアリマス、私ヲ以テ之ヲ見テモ、又
國民ノ心アル者ノ多數ガ之ヲ見テモ、決シ
テ閑却スベキ所ノ輕々ナル問題デハナイノ
デアリマス、農林省ニ於キマシテモ既ニ之
ニ付テハ年々調査ヲセラレテ、立案セラレ
テアルヤウデアリマスガ、每年出來テ居ル
ヤウニ承ッテ居リマスルガ、ソレヲ少シモ提
出シナイ、昨年ニ於テモドウシテ提出シナ
カッタカト申シマスレバ、矢張色こノ案件ノ
都合デアリ、殊ニ昨年ニ於テハ輸出生絲檢
査法ノ提出ガアリマシテ、ソレガ爲ニ之ニ
全力ヲ盡シテ居ルト云フヤウナコトモ仄聞
致シマシタガ、輸出生絲檢査法ヲ提出致シ
マシタカラト致シマシテモ、必要ナル蠶絲
業法ノ改正案ヲ、ソレガ爲ニ提出ヲ阻止ス
ルト云フコトノ理由ニハナラナイノデアリ
マツ、蠶絲業法ノ改正ノ後レテ居ル爲ニ、
當業者ノ不利、不便、卽チ事業ノ發達ヲ阻
止スルコト至大ナモノデアリマシタ、本年
ニ於キマシテモ吾々同僚カラ其所以ヲ質問
致シマシタルニ對シテノ政府ノ答ハ、蠶絲
委員會ヲ開イテ諮問ヲシテ然ル上ニ立案ヲ
スル、斯ウ云フ事デアリマスケレドモ、
ソレデハ本年ノ間ニモ合ハナイ、來年ニ於
テ漸ク出來ルカ否ヤト云フヤウナ狀態デア
ルノデアリマス、是程輕々ニ見ルベキ問題
デハナイト思フノデアリマスルガ、當局ノ
意見ハ果シテ如何デアリマセウカ、此業法
ノ改正ガ一年後レヽバ後レルダケ不利不便
ヲ見ルコトデアルト私ハ信ジテ、此法ノ一
刻モ早ク御提出ニナルコトヲ希望スルノデ
アリマスルガ、本年ニ於キマシテハ最早遺
憾ナガラ其機會ノ無イト云フコトヲ私ハ痛
歎スル者デアリマス、次ニ伺ヒタイ事ハ
此蠶絲業ニ對スル根本ノ政策ト云フモノハ
如何ナルモノガ立ッテ居ルカ、是ハ質問應
答ノ中ニ當局ノ御意見ノ片鱗ヲ伺フコトガ
出來ルカト期待致シマシテ、仔細ニ調ベテ
見マシタケレドモ、未ダ曾テ片鱗ドコロデ
ハナイ、隻影モ認メルコトガ出來ナイノハ
頗ル遺憾ニ堪ヘナイ次第テアッテ、遂ニ私ヲ
シテ會期切迫ノ今日、此壇上ニ立タシメタ
ル所以ハ實ニ其所ニ在ルト信ズルノデアリ
マス、此蠶絲業ノ關係ト云フモノハ御承知ノ
通リ、此暴落ノ原因ハ主トシテ爲替關係ニ
在ルノデアリマス、爲替關係ガアノ恢復ガ
ナカッタナラバ、今日ト雖モ依然二千圓附近
ノ價格ハ保持シテ居ルモノデアリマス、是
ガ米國ノ需要地ノ關係カラ申シマシテモ、
確ニ間違ノナイ事デアルノデアリマス、然
ルニ千四百五十圓附近ニ低落致シマシタ主
タル原因ハ、何ト申シマシテモ爲替關係ニ
在ルノデアリマス、國家ハ國家ノ爲ニ有利
ナル方法ヲ執ルトシマシテ、此爲替關係ノ
恢復ヲ希望スルコトハ固ヨリ當然デアリマ
スケレドモ、是ガ爲ニ蠶絲業ニ對シテハ多
大ナル犠牲ヲ拂ハセナケレバナラナイト云
フコトハ、政府モ相當ニ考慮セラレテ然ル
ベキモノデアルト考ヘルフデアリマス、然
ルニモ拘ラズ蠶絲業者ガ悲境ニ沈淪スル時
ニ當リマシテ、政府ノ爲ス所ノ方策ハ如何
デアルカト申シマスレバ、當業者自ラ爲ス
ベシト云フ態度ヲ執ッテ居ルノデアリマス、
現ニ横濱ニ於キマシテ保管ヲ致シマス場合
ニ於キマシテモ、成ベク政府ハ當業者ニ自決
セシムベキ所ノ意見ヲ持テ居リマシテ、多
大ノ援助ヲ與フルコトニ躊躇シテ居ル姿デア
ルノデアリマス、辛ウジテ日本銀行、正金
銀行ヲ通ジマシテ二千二百五十万圓ノ低資
ヲ支出致スコトニ相成ッタノデアリマスケ
レドモ、此狀況ハ辛ウジテ投賣ヲスル者ニ
對スル一種ノ防止ニ過ギナガッタノデアリ
マく、ソレ以上ノ援助ト云フモノヲ與フル
コトガ出來ナカッタノデアリマス、而モ之ニ
對スル誠意ノ如何ト云フヤウナコトマデ調
ベテ見マスルト、最近ニ於キマシテ、金利
ノ引下ニ當リマシテ、此金利ニ對シテモ當
然ソレダケノ引下ヲシテ然ルベキカト吾々
ハ考ヘルニモ拘リマセズ、其措置ニ出デナ
イコトハ頗ル遺憾デアリマス、一面是ハ爲
替關係デ國家ノ爲ニ犧牲トナリ、他ノ一面
ニ於テ之ヲ救濟スル場合ニ、誠意ガソレ程
屆イテ居ラナイ、之ヲ觀察致シマスト、私
ヲシテ此蠶絲業ニ對スル政府當局ノ誠意何
所ニ在リヤヲ疑ハシムルモノデアリマス
所謂迫害スルコト甚シイト言ハナケレバナ
ラヌノデアリマス、何等カ他ノ方法ヲ設ケ
テ此國家ノ爲ニ犠牲ニナル事柄ニ對シテ相
當ニ之ヲ補塡スルトカ、補償ヲスルトカ
云フ方法ヲ執ルコトハ固ヨリ當然ナル事デ
アルト思フノデアリマス、若シ然ラズ致シ
タナラバ、又蠶絲業ノ將來ニ付テモ、相當
ノ根本策ヲ樹立致シマシテ、サウシテ之ニ
依シテ長キ間安定スルノ途ヲ得セシムルト
云フコトモ一ツノ方法デ、確ニ將來ニ於キ
マシテ、最モ必要ナル一ツノ方法デアルト
思フノデアリマス、然ルニ之ニ付テハ何等
ノ方策ヲモ私ハ聞イテ居ラナイ、唯〓蠶絲
委員會ノ名目ニ隱レテ、委員會ヲ開クカラ
定メテ衆智ガ集ッテ、良イ意見ガ出ルデアラ
ウカト云フコトハ頗ル心細イ感ジヲ致スノ
デアリマス、蠶絲委員會ト致シマシテハ、ソ
レハヤッテ見ナイコトデアルカラ分リマセ
ヌケレドモ、從來ノ慣例ニ依リマスト、サウ
云フ諮問機關ト云フモノハ、美辭麗句ヲ竝ベ
極メテ融通ノ付ク文句ヲ羅列シテ答申シ
テ、其中カラ選擇スルヤウナ方法ニ出ルコ
トガ從來ノ慣例デアル、斯樣ナコトデアッタ
ナラバ相當ノ識見ヲ持っテ居ル當局デナイ
限リハ、何等得ル所ハナイト思フノデアリマ
ス、私ハ是等ニ付テモ頗ル心細ク感ズル者
デアリマス、此根本政策ニ關シテ、政府!
御考ニナッテ居ル所ハ如何デアルカ、現在ニ
於キマシテハ蠶絲ニ關スル資全ノ融通ノ
如キ問題ハ頗ル面倒デアルケレドモ、是モ
政府ノ施設方法ノ如何ニ依リマシテハ、決
シテ困難ナルモノデハナカラウカト思ヒマ
ス、卽チ養蠶家ト製絲家ノ間ノ聯絡ノ缺ケ
テ居ルコト、利害ノ異ルト云フヤウナコト
ニ對シテ、卽チ先年ニ於キマシテ、政府ノ
計畫セラレタル乾繭倉庫ノ必要ナル如キ、
是等ハ實ニ其聯絡ノ缺ケテ居ル所ヲ補フニ
於テ一種ノ方法ニナルケレドモ、其用ヒ方
ノ如何ニ依リマシテハ、決シテ助ケニモナ
ラナイ、或ル場合ニ於キマシテハ生繭ノ投賣
防止ノ爲ニ造ラレタル乾繭倉庫ガ其機ヲ失
シマシテ、徒ニ貯藏致シマシタ場合ニ於キ
マシテハ、、絲價ノ低落ノ爲ニ非常ナル損害ヲ
招クコトガアルノデアリマス、農林當局ハ
曩ニ維持スル場合ニ於キマシテノ計算ヲ示
シテ、乾繭倉庫ノ利益ハ斯ノ如シ、斯ク斯
クデアルト言ッテ其計數ヲ示シテ、新聞ナド
ニ於テ大分御自慢ニナッタ時モアリマシタ
ケレドモ、此時期ヲ過シマシテ徒ニ貯藏致
シタ場合ニ於キマシテ、今日ニ於テ之ヲ計算
致シマスルト、非常ナ損失ニナッテ居ッテ、當
局ヲ怨ンデ居ルト云フヤウナ場合ガ澤山ア
ルノデアリマス、斯樣ナ實況カラ參リマスル
ト、斯ノ如キ乾繭倉庫ノ方法ナドノ如キハ、
極メテ姑息ナモノデアリマシテ、之ニ依。ッ
テ大體ノ蠶絲業ノ一ツノ救濟ヲ爲スト云フ
ヤウナ眼目ニモナラナイノデアリマス、其
製絲家卜養蠶家ノ聯絡ヲ取ルト云フ爲ニ
ハ、組合ノ制度モアリマセウシ、又分配ノ
方法モアリマセウシ、種々ナル方法ガアル
ノデアリマシテ、利害ノ反スルモノト雖モ
此方法ヲ盡シマスレバ、橋メテ圓滿ニ聯絡
ガ取レルノデアリマス、之ヲ理想的ニ言ヒ
マスレバ、組合制度ノ如キハ正ニ一ツノ現
レデアッテ、是デアリマスルト養蠶家ガ製絲
家ヲ爲シ、直ニソレヲ又分配ヲスルト云
フ機關マデ造上ゲテ行キマスルノガ、眞ノ
理想デアルノデアリマス、是ガ聯絡統一ア
ル所ノ理想ノ方法デアルノデアリマス、斯
ク致サナクト雖モ、製絲家ト養蠶家ノ聯絡
ノ方法ハ色ミアルテ、今日ニ於キマシテハ
大製絲家ハ苦心致シテ居ルノデアリマス、
政府モ宜シク之ニ著眼セラレマシテ、此法
ヲ助長奬勵ヲ致シマシタナラバ、玆ニ金融
ノ圓滿ヲ圖リ、莫大ナル季節的資金ヲ要ス
ルコトヲ免レルコトガ出來テ、非常ナ便法
ニナルノデアリマス、又一面ニ金融方法ヲ
講ジ、一方ニ於キマシテハ、又貿易市場ノ
改善ヲ圖ル所ノ政府ノ意思ハ、此所ニモ金
融機關ノ設定ヲ致シマシテ、サウシテ兩々
相對シマシタナラバ此金融機關ハ圓滿ニ
行クコトデアルト思フノデアリマス、政府
ハ昨年生絲檢査法案ヲ御提出ニナリマシ
テ、全力ヲ注イデ此通過ヲ圖ラレマシタル
コトハ、極メテ多トスル事デアリマスル
ガ、其最大目的タルヤ、横濱市場ノ生絲取
引ノ改善ヲ圖ルト云フコトガ主タルモノデ
アッタル事ハ、疑ヲ容レザル所デアリマス
ルガ、此目的ヲ達成スル爲ニ、折角政府デ
立案セラレマシタル所ノ生絲檢査法ト云フ
モノガ、今以テ實施スルコトニ至ラズシ
テ、唯、棚ノ上ニ委ネラレテ居ルト云フコト
ハ極メテ遺憾ナル事デアリマスルガ、ド
ウカ政府ハ此横濱市場取引ノ改善ノ爲ニ著
手セラレタル所ノ此意向ヲ以チマシテ改
善スベキ事ニ著手スベキコトハ多々益〓アル
ノデアリマスケレドモ、事ニ依ルト此一ツ
ノ問題ノ爲ニ、多クノ爲スベキ施設ヲ御忘
レニナッテ居リハシナイカト思ハレル感ジ
ガアルノデアリマス、卽チ申スマデモナク
格付ノ制定ト云フコトニ、更ニ步ヲ進メナ
ケレバナラナイノデアリマス、徳承知ノ通
リ生絲ノ格付ト云フモノハ、極メテ慣習カ
ラ生レタル所ノ據ロノナイモノデアリマス
ルカラシテ、之ヲ一定不變ノ據ロノアルモノ
ニ致スト云フ方法ヲ執ラナケレバナラヌノ
デアリマスルガ、前途極メテ遼遠デアルト
云フヤウナ感ジヲ以チマシテ、之ニ著手ス
ルコトガ極メテ遲々タル狀況デアルノハ
是亦以テ遺憾トスル次第デアリマス、政府
ハドウ云フ考ヲ持クテ居ラレルノデアルカ、
是等ノ舊來ノ多年ノ陋習ヲ打破シテ行カウ
ト云フ所ノ事ニ當リマシテハ、相當ナル强
キ確信ヲ以テ進マナケレバナラヌ事デアル
ト思フノデアリマスガ、之ニ對シマシテ政
府ノ今日マデ執リ來ラレル所ノ狀態ヲ見マ
スレバ、當業者ニ對シテ御機嫌ヲ伺ッテ居
ルノデアルカ何デアルカ、一定ノ意見ガ立ッ
タナラバ、直ニ之ヲ何所マデモ斷行スルト
云フ勇氣ヲ以テ行カナケレバ、此商取引ノ
改善、生絲貿易ノ改善ヲ圖ルコトハ出來ナ
イデ終リハシナイカト思フノデアリマス、
(拍手)折角ノ御計畫ガソンナ事デ終ルト云
フコトデハ頗ル遺憾デアリマス、百尺竿頭
更ニ一歩ヲ進メマシテ、生絲取引ノ改善ニ
關スル事ハ、遲滯ナク進捗セラレルコトヲ
希望スル次第デアリマス、尙又内地ニ於キ
マシテ此生絲ノ將來ニ考ヘテ、極メテ良品ヲ
廉賣スルト云フ方針ヲ執ルト致シマシタナ
ラバ其原料ノ改良ト云フコトニ、十分ニ
意ヲ注ガレナケレバナラヌト思フノデアリ
さく、此原料改良ノ方法ニ付キマシテ、政
府ハ如何ナル考ヲ持ッテ居ラレルカト云フ
コトモ、甚ダ疑ハシイ次第デアリマス、私
ヲ以テ之ヲ觀マスレバ、此原料ノ改良ト云
フモノハ、最近十年以前ニ比べマスト、非
常ニ進歩ハ致シマシタケレドモ、マダ改良
スベキ餘地ハ澤山アルノデアリマス、十年
以前ニ比較致シマスルト、生絲百斤ニ對ス
ル生產費ハ、非常ニ增加シテ居リマスケレ
ドモ、一釜當リノ能率ト云フモノハ倍加シ
テ居ルヤウナ狀況デアルノデアリマス、然
レドモ尙又品種ノ改良ヲ致シマシテ、更ニ
此製品ノ度合ノ宜シイ所ノモノヲ用ヒマシ
タナラバ、解舒歩合ハ良好ニナリマシテ、
更ニ能率ヲ增進スルコトガ出來ルノデアリ
さく、最近十箇年前ト比較ヲ致シテ見マス
レバ、其解舒步合ハ非常ニ進ンデハ居リマ
スルケレドモ、更ニ之ヲモウ一歩進メルコ
トガ出來マシタナラバ、其差額ハ實ニ非常
ニ著シイモノデアルノデアリマス、斯樣ニ
致シマシテ品質ヲ改良致シマシテ、是ガ能
率ノ曾進ヲスル所ノ方法ヲ講ジテ行クナラ
パ生產費ヲ低減シテ、サウシテ優良ナル
モノヲ供給スルコトガ出來ルト云フ、所謂
理想ノ方法ニナルノデアリマス、之ニ對シ
マシテ政府ハ執ルベキ所ノ方策ヲ、遲滯ナ
ク執ッテ戴クコトヲ切望スル譯デアリマス
ルガ、遺憾ナガラ今日マデソレニ對スル具
體的ノ方法ヲ耳ニスルコトヲ得ナイコト
ハ、頗ル殘念デアリマス、ドウカ蠶絲業ニ
對スル根本政策ト云フモノヲ確實ニ樹立致
シマシテ、サウシテ吾々蠶絲業ニ關スル者
ノ向フ所ヲ明ニシ、將來ニ向ッテ安定ヲス
ル所ノ策ヲ與ヘテ戴キタイコトヲ、國家國
民ノ爲ニ切ニ希望スル所デアリマス(拍手)
私ハ此眞面目ナル御話ヲ此壇上ニ申述ベマ
シテ、サウシテ我國ノ蠶業發達ノ爲ニ將來
ヲ祈ル次第デアリマス、聊カ所見ノ一端ヲ
述ベマシテ、サウシテ政府ノ御所見ヲ伺ヒ
タイト思フノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=6
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007・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 小山政府委員
〔政府委員小山松壽君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=7
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008・小山松壽
○政府委員(小山松壽君) 只今二木君カラ
蠶絲業ノ根本政策ニ付テ、政府ハ何ト見テ
居ルカト云フ御尋デアリマス、大分多岐ニ
渉ッテ居リマスガ、一通リ御答申上ゲマス、
第一蠶絲業法ノ改正ハ最モ緊急ヲ要スル
ノデアルガ、何ガ故ニ提出シナイカト云フ
御導デアリマス、當局ニ於キマシテハ、御
說ノ通リ本法律案ハ極メテ重大デアリマス
シ、且又我國蠶絲業ノ將來ノ爲ニ改善スベ
キ幾多ノ必要ヲ認メマシテ、略〓其成案ハ
得テ居ルノデアリマス、併ナガラ昭和二年
度ノ豫算ニ於テ既ニ御協賛ヲ得マシタ蠶絲
經營ニ關スル委員會ノ設置ガ、此年度變リ
ニ於テ行ハレルノデアリマスカラ、只今御
說ノ如キ蠶絲業ノ經營ニ對スル所ノ斯樣ナ
重要法案ハ、衆智ヲ集メタル同委員會へ諮
問シチ、而シチ愼重御審議ノ答申ヲ得マシ
チ、此精神ニ依シテ本法律案ヲ改正スルト
云フコトガ、最モ立憲的デアリ、且ツ至當
デアルト考ヘマシタカラ、之ヲ提出致サナ
イノデアリマス(拍手)次ニ蠶絲根本ノ政策
ニ付テノ御話デアリマスガ、只今色〓御述
ニナリマシタガ、從來我國ノ蠶絲業ガ我ガ
輸出貿易ノ中、八億十億ト云フガ如キ巨額
ニ達シテ居ル、然ルニ其行政ノ統一ハ未ダ
全キヲ得テ居リマセヌ、帝國議會ニ於テハ
囘ヲ重ネテ是ノ行政統一ノコトニ付テ、常
ニ滿場一致ヲ以テ御建議ニナッテ居ッタニ拘
ラズ、歷代ノ內閣ハ此建議ニ副フヤウナ努
力ヲ致シテ居リマセヌ、是ニ於テ私共ハ只今
申上ゲマスヤウニ、如何ニモ我國ノ貿
易業ノ上カラ見テモ、國際貸借ノ上カラ
見テモ、又農家ノ唯一ノ副業ト云フ點カ
ラ考ヘマシテモ、此行政ヲ統一スルト云
フコトニ付テハ深ク考慮ヲ拂ヒマシテ、
昭和二年度ノ豫算ニ於テ二木君ノ御認ノ通
リ、初メテ玆ニ蠶絲局ヲ置クコトニナリマ
シテ、其行政ノ統一ニ努力シテ居ルト云フ
コトハ、御認デアラウト思ヒマス(拍手)且
ツ我國ノ養蠶業ヲ見マスレバ、既ニ春蠶ノ
經營ニ付キマシテハ餘程其〓究ガ積ミマシ
テ、是レ以上改善施設ヲ致シマシテモ、其
效果ヲ擧ゲルト云フコトノ餘力ハ薄イノデ
アリマス、唯〓此將來蠶絲業ニ付テノ最モ
力ヲ致スベキハ何デアルカト申セバ、夏秋
蠶ノ問題デアリマス、而シテ夏秋蠶ハ是迄
ノ實蹟ニ依リマスルト、多クハ不作ノ場合
ガ處々ニ認メラレルノデアリマスカラ、此
夏秋蠶ノ不作ヲ救濟スルト云フコトガ、我
國蠶絲業ノ最モ當面急ヲ要スベキコトヽ考
ヘマシテ、是又昭和二年度ノ豫算ニ於テ夏
秋蠶不作ニ對スル〓究費ヲ計上シ、幸ニ御
協賛ヲ得テ居リマス、而シテ製絲金融ノ御
尋デアリマスガ、是ハ洵ニ御尤ナコトデア
ル、當業者ハ昨年絲價ノ低落ニ際シマシ
テ、政府ニ此善後ノ處置ヲ御相談ニナッタ
ノデアリマス、其當業者ノ御意見ハ過去一
囘二回ノ帝蠶會社ニ依ッテ其救濟ヲシタト
云フ事ト此度ハ意味ヲ異ニシテ、當業者モ
自治的ニ蠶絲ノ絲價低落ニ對スル將來ノ善
後策ヲ講ジタイト云フ、洵ニ結構ナル御申
出デゴザイマシテ、是ニ於テ從來ノ一梱六
百五十圓ヲ七百五十圓ニ金融ノ途ヲ得タ
イ、之ニ依リ二万梱乃至五万梱ノ共同保管
ヲ致シタイノデ、差當ッテ、二千二百五十万
圓ノ低利ナル資金ヲ得タイト云フノ御相談
デアリマシタカラ、政府ハ自治的ニ此施設
ヲオヤリニナルト云フ精神ハ最モ結構デア
ルト考ヘマシテ、傍カラ御援助申上ゲ、日
本銀行ヨリ正金銀行ヲ經テ、無手數料ヲ以
テ既ニ二万梱バカリノ-道程ニアリマス
斯ノ生絲保管ニ向シテ其事業ヲ進メテ居ル
ト云フコトハ御承知ノ通リデアリマス、更
ニ我國ノ生絲ノ將來ヲドウ考ヘルカ、一方
ニ人造絹絲ガアルノニ政府ハ唯〓等〓ニ付
シテ居ルノデアルカト云フヤウナ御尋デア
リマシタ、人造絹絲ガ「デニール」百五十カ
ラ今日七十迄ノ細物ニ至シタト云フ進步ハ、
實ニ驚クベキモノデアリマス、是ニ於テ一
方ニ人造絹絲ノ發達ト生絲ノ今後ヲ如何ニ
見ルカト申シマスレバ、要スルニ良絹廉價
政策ヲ執ルヨリ外ニ途ハナイト思ヒマス、
良絹廉價政策ヲ執ルニハドウスルカト云ヘ
バ其根本ハ繭ノ問題デアリマス、生絲ノ
原料ノ約八割ニモ該當シヤウト云フ繭ノ問
題ニ付テ、此ノ格付品種ノ統一改良、是等ニ
付テ十分努力致サナケレバナラヌコトハ、
私カラ申上ゲルマデモナイ事ト思ヒマス、
斯ク如クニシテ良品廉價政策ヲ執ルトスレ
バ如何ナル施設ヲシナケレバナラヌカト
云ヘバ、先ヅ以テ只今御話ノ通リ一釜ノ生
產量、一梱ノ上リ高、是等ニ對シテハ出來
ルダケ生產費ノ低下ヲスルト云フコトデナ
ケレバ、良品廉價政策ガ執レナイノデアリ
マシテ、而シテ人造絹絲ト云フモノヽ此脅
威カラ脫スルコトガ出來ナイト云フコト
ハ、申スマデモナイ事デアラウト思ヒマス、
更ニ正量取引ノ御尋デアリマシタガ、正量
取引ハ議會ノ御希望ニ依リマシテ、七月一
日以後ニ於テ實施シタイト云フコトノ希望
條件ニ從ヒマシテ、七月一日ヨリ實施スル
事ニ致シ、勅令及其施行細則マデモ發布シ
テ居リマス、而シテ正量取引實施ノ將來
ハ、如何ヤウニ當業者ニ響イテ參ッテ居ル
カト申シマスト、三月一日ノ新甫立會、卽
チ七月一日ノ取引先物ニ掛リマス所ノ絲價
ヲ御覽ニナリマスナラバ、直ニ分ルト思フ
ノデアリマス、正量取引實施ト云フ事ノ爲
ニ、横濱市場ニ於ケル絲價ハ之ニ依シテ高
低致シタト云フ-幾分ノ絲價ノ騰貴ヲ
見タト云フコトニ付テハ爭ヘナイ事實デア
ラウト思ヒマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)
而シテ更ニ生絲ノ格付ノ御尋デアリマシ
タ、生絲ノ格付ハ委員會等ニ於テモ申上ゲ
マシタ通リ、數年來非常ナ努力ヲ致シマシ
テ、殊ニ此問題ハ亞米利加ニ於テモ-我
ガ生絲ノ得意タル亞米利加ニ於テモ此問題
ハ多年〓究サレ、農林省所管ニ於テモ橫濱
生絲檢査所ニ於テ是ハ多年研究致シテ居リ
さく、而シテ其材料ヲ略、得マシタ、當時
誠ニ不幸ナ事ニハ大正十二年九月一日ノ
大震火災ニ當ッテ其資料ヲ大部分失ヒマシ
タ、爾來努力致シマシテ、最早遠カラザル
内ニ此格付ニ付テノ成案ヲ得ヤウト考ヘテ
居リマス、而シテ此頃追加豫算ニ依シテ御
認ヲ得マシタ亞米利加ノ當業者ト我ガ當業
者トガ今秋-秋ノ頃ニ於テ生絲格付ニ對
スル日米兩國間ノ協議ヲ爲スト云フ點マデ
進ンデ居リマスカラ、此問題ハ餘リ遠カラ
ザル將來ニ於テ、御心配ノ如キ我國生絲格
付ノ重大問題ノ規格ヲ玆ニ定メルコトガ出
來ヤウト思ヒマス、尙ホ共同繭倉庫、乾繭
倉庫ニ付テ御非難ガアッタヤウデアリマス
ガ、我國ノ蠶絲業、我國ノ農村ニ於ケル養
蠶業ノ何ガ一番缺陷デアルカト申シタラ、
生繭取引デアルコトハ申スマデモナイ事デ
アリマス、生繭取引ハ短キ間ニ多クノ金融
ヲシナケレバナラヌト云フ此不便モ補ヒマ
セウ、又或ル場合ニハ農家ガ繭ノ買入問
屋、若クハ其買入等ヲ爲ス者ノ使用人ニ依ツ
テ、繭ノ値ヲ叩キ買ニサレルト云フヤウナ
事カラ免レシメルコトモ出來ルデアリマセ
ウ、是ハ農村振興費ノ中六十万圓ヲ以テ繭
ノ共同施設、乾繭装置ヲスルト云フ事ニ付
キマシテハ、議會ハ滿場一致ヲ以テ御協賛
ニナリマシテ、其趣旨ニ基イテ政府ハ折角
努力致シテ居ルノデアリマス、而シテ共同
繭倉庫ニ繭ヲ入レタ所ガ、絲價低落ノ爲ニ
此處ニ保管シタ物ニ付テ、洵ニ今日困ッテ居
ル者ガアルト云アヤウナ事例ヲ擧ゲテノ御
話デアリマス、成程昨年ノ絲價ノ動搖、低落
ノ爲ニ、共同繭倉庫ニ入レテ居リマシタ所ノ
新春蠶ハ太體良カッタヤウデアリマスガ
夏秋蠶ガ多少ノ打擊ヲ受ケタコトハ當局モ
認メマス、併ナガラ是雄、一時ノ事デア
ル、而モ政府ハ之ニ對シテ中央金庫ヲ通シ
テ、約二百万圓ノ低利資金ヲ此方ニ廻シテ
救濟スルコトニ致シテ居リマス、併シ是ハ
一年ヲ通ジ、數年ヲ通ジテ其結果ヨリ御覽
ニナリマスレバ、僅ニ夏蠶、秋蠶ノ其場合
ノ作ガ偶〓打擊ヲ受ケタカラト申シマシテ
モ、是ハ春蠶デ補ヒ、又ハ翌年デ補フト云
フコトノ終始一貫シタル所ニ於テ御認ヲ願
ヒマスルナラバ、共同繭會庫ト乾繭裝置ガ
如何ニ我國ノ蠶絲業ノ根本策ニ觸レテ居ル
施設デアルカト云フコトハ、御認ヲ願フコ
トガ出來ヤウト思ヒマス、以上ハ大體ノ施
設ヲ申上ゲタノデアリマスガ、要スルニ我
國ノ蠶絲業ノ根本策ト致シマシテハ、桑園
ノ改良及繭ノ統一、品種ノ改良、而シテ生
絲ニ於テハ、人造絹絲等ニ對シマスル關係
よ、良品廉價政策、生產費ノ低下、之ヲ努
メナケレバナラナイト思フノデアリマシ
テ、只今申上ゲマシタヤウニ御協賛ヲ得マ
シタ豫算ノ成立ヲ見マスレバ、政府ハ直ニ
是等ノ根本策ニ對シテソレ〓〓其委員會ニ
諮問シ、答申ヲ得テ、由テ以テ、其御意見
ノ在ル所ニ從クテ努力致シタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、大體ノ御答ヲ申上ゲマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=8
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009・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質問第三、專門學校
卒業生ノ學士號ニ關スル質問、山下谷次君
三專門學校卒業生ノ學士號ニ關スル
質問(山下谷次君提出)
專門學校卒業生ノ學士號ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月十四日
提出者山下谷次
專門學校卒業生ノ學士號ニ關スル質問
主意書
專門學校卒業生ニ對シ其ノ待遇同一ナラ
サルハ如何ナル理由ナルヤ左ノ各項ニ付
之カ答辯ヲ求ム
-大學令施行以後ハ各專門學校ニ對シ
學士號ヲ付與セサル方針ナリヤ
二大學令施行以後各專門學校卒業生ニ
對シ學士號ヲ付與セサル方針ナリトセ
ハ何故ニ左記ノ専門學校ニハ之ヲ許ス
カ
日本大學齒科學專門部
九州齒科醫學專門學校
東洋女子齒科醫學專門學校
東京女子齒科醫學專門學校
三前記各專門學校卒業生ノ學士號ヲ既
ニ許シタリトセハ〓治藥學專門學校其
ノ他ニ對シ何故學士號ノ付與ヲ許ササ
ルカ
四大學令施行以後ニ許シタル各専門學
校卒業生ノ學士號ハ今後如何ニスル考
ヘナリヤ
五同一程度ノ學校ニ對シ一ハ學士號ヲ
許シ他ハ之ヲ許ササルハ不公平ナラス
ヤ
右及質問候也
〔山下谷次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=9
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010・山下谷次
○山下谷次君 私ノ質問ハ文〓ニ關スル質
問デアリマスルガ、生憎文部大臣ガ見エテ
居リマセヌノデ、次ニ延期致シタイノデア
リマスケレドモ、期日切迫致シテ居リマス
カラ、已ムヲ得ズ政務次官ノ御答辯ニ滿足
ヲシナケレバナラヌノデアリマス、先ヅ現
政府ガ本議會ニ對スル態度ニ付キマシテ
ハ、私甚ダ諒解ニ苦ム所ガアルノデアリマ
ス、何トナレバ、國民ノ六割カラ占メテ居
ル此農村ノ平和ノ安定ヲ期スル所ノ小作法
問題ハ、何故提出シナイノデアルカ、又都
會ニ於ケル所ノ勞働者、資本家ヲ調和スル
所ノ勞働組合法案ハ、何故出サナイノデア
ルカ、斯ノ如ク重要法案ハ出シテモ之ヲ握
潰スヤウナ方策ヲ執ルカ、或ハ出サナイ、
サウシテ置イテ、二三ノ者ニ關係ノ有ル所
ノ震災手形ノ如キモノニ全力ヲ注イデ居
ル、殊ニ枝葉末節タル所ノ黴毒デアルトカ、
賣淫デアルトカト云フコトヲ此議場デ以テ
喋ルヤウナ、實ニ國民トシテ聞クニ忍ビナ
イヤウナ法案ニ全力ヲ注イデ、國民全體ニ
重大ナ關係ノアル所ノ法案ヲ提出シナイト
云フコトハ、私非常ニ殘念ニ思フノデアリ
マく、而シテソレ等總テノ法案ヲ超越致シ
マシテ、〓育ノ根本改善ニ關スル所ノ意見
ノ一端モ見ルコトガ出來ナカッタト云フコ
トハ洵ニ殘念至極デアルノデアリマス、
世ヲ改メ、國ヲ改ムル所ノ、遠クシテ、而
シテ近キ道ハ〓育ノ改善ニ在ルト云フコト
ハ、諸君御承知ノ通リデアル、然ルニ唯、
昨年ノ議會ニ於キマシテ師範〓育ノ一部ノ
改善ヲ唱ヘテ、ソレニ關スル所ノ經費ヲ要
求シタノミデアル、本年ノ議會ニ於キマシ
テハ、〓育ノ根本改善ニ關スル所ノ經費ノ
如キモノハ、一厘モ要求致シテ居ラヌノデ
アリマス、而シテ憲政會ト云ハズ、本黨ト
云ハズ、〓育ノ根本改善ニ關スル所ノモノ
ハ政綱ノ一ニ擧ゲテ居ルノデアリマス、又
我ガ政友會ニ於キマシテハ、前々ヨリシテ
此具體的根本改善ノ方策ハ定メテ、社會ニ
公表致シチ居ルノデアリマス、而シテ〓育
ノ根本改善ニ關スル所ノ政府ノ御所見ハ如
何デアリマスカ、ソレヲ御尋致シテ見タイ
ノデアリマス、今日〓育ハ盛ニナッテハ居
ルト雖モ、實ニ〓育ヲ受ケテ困ル人ガ非常
ニ多クナッテ居ルノデアリマス、卽チ大學ヲ
卒業シテ生活ニ困難致ス者ガ、實ニ比々皆
然リト云ウテ宜イ位デアル、〓育ヲ受ケン
ガ爲ニ澤山ノ經費ヲ使ヒ、時間ヲ使ウテ、
サウシテ卒業シテ後ニ生活ニ困難スル、是
ハ〓育ノ根本方針ガ惡イノデアルカラシ
テ、特ニ文部省ト致シマシテハ、〓育ノ根
本ノ改善ヲ圖ラナケレバナラヌノニ、本年
ノ議會ニ於テモ其片鱗ヲモ認メルコトガ出
來ナカッタト云フコトハ、誠ニ殘念ニ思フノ
デアリマスガ、文部省ニハ果シテ〓育ノ根
本ヲ改善スル意思ガアルカ否ヤ、若シアリ
トスレバ、ソレニ關スル所ノ御意見ノ一端
ヲ此議場ニ於テ御陳述ノ程ヲ願ヒタイノデ
アリマス、次ニ私學ニ對シテノ奬勵ノ問題
デアリマス、文部省ハ常ニ吾々ノ層問ニ對
シテ私學ハ決シテ之ヲ撲滅シヤウトカ、或
ハ虐メテハ居ラヌ、飽迄モ奬勵スルト申シ
テ居ルノデアリマスケレドモ、事實ガ證明
シテ居ルノデアリマシテ、文部當局ハ私學
ノ壓迫ノミヲ圖シテ居ルノデアリマス、甚ダ
御迷惑千萬デゴザイマセウケレドモ、其項目
ノ二、三ヲ申上ゲマシテ、諸君ノ御判斷ヲ
一ツ願ヒタイト思フノデアリマス、只今小
學卒業以上ノ者、卽チ中學校ヨリ以上ノ學
校ニ學ンデ居ル學生ハ、先ヅ百二十万ゴザ
イマス、其半分ハ官公立デ〓育ヲ致シテ居
ルノデアリマス、卽チ六十万餘ハ官公立デ
〓育致シテ居ル、其殘リノ六十万バカリハ
是ハ私學デ〓育致シテ居ルノデアリマス、
然ルニ此六十万バカリノ官公立デ〓育シテ
居ル所ノ學生ヲ〓育スル爲ニ、政府ハ一億ノ
金ヲ使シテ居ルノデアリマス、ソレハ中學校
ト高等學校、或ハ專門學校、大學ヲ合計致
シマシテ、年額一億ノ經費ヲ使ッテ居ル
其半分ノ六十万ノ學生ヲ〓育致シテ居ル所
ノ私學ニ對シテハ、何程ノ補助デモシテア
ルカ、僅カ私立大學二十校ノ中ノ七校ニ對
シテ年額二万五千圓宛、合計十七方五千圓
ノ補助ヲシテアルノミデアリマス、是デ以
テ私學奬勵デアルト言ハレルデセウカ、ド
ウデセウカ、而シテ又事實ニ於キマシテノ
壓迫ハ私立學校ヲ建チヤウト致シマスト云
フト、政府ハ法人デナケレバイカヌト云ウ
テ許サヌノデアリマス、或ハ若干ノ金ハ積
ンデアルカト云フヤウナコトヲ聞イテ、法
人ナラバ許スケレドモ、個人デハ許サヌ、
中江藤樹先生ガ出ヤウト雖モ、福澤諭吉先
生ガ出ヤウト雖モ、法人デナケレバ學校ヲ
許サヌト云フ、人物ニ許スノデナクシテ、
財產ニ許スノデアルト一云フ文部當局ノ意見
デアリマス、是ハ果シテ國民ノ聲デアル
カ、如何デアルカヲ聞イテ見タイノデアリ
マく、次ニハ私立學校奬勵ト云ウテ居リマ
シテ、今日ハ私立學校ガ校舍ヲ建テマシテ、
是ノ登記ヲ致シマスレバ、一部ノ取得稅ハ
取ラレ、其上ニ保存登記料ヲ取ラレテ居ル
ノデアリマス、サウシテ甚シキニ至リマシ
テハ、此頃所得稅ヲ課シテ居ル、其所得稅
ノ課シ方ハドウデアルカト申シマスト、總
體ノ收入ノ一割乃至一割五分、是ハ設立者
ノ純益ト看做シマシテ、ソレニ稅金ヲ課ケ
チ居ルノデアリマス、借金ガアラウガアル
マイガ、ソンナ事ハ構ハズニ、總體ノ收
入ノ一割乃至一割五分ハ設立者ノ純益ナリ
ト看做シテ、之ニ所得稅ヲ課シテ居ルノデ
アリマス、實ニ慘酷千萬(拍手)是等ニ對シ
シテ、文部當局ハドウ云フ御意見ヲ持シ
テ居ルノデアリマスカ、又此私立大學ヲ建
チマス時ニハ、供託金ト云フノヲ無理ヤリ
ニヤラシテ居ルノデアリマス、一大學ヲ設
立スルニ付キマシテハ、五十万ノ金ヲ積マ
ナケレバナラヌ、一分科ヲ殖ス度每ニ十万
トカ十五万、其金ヲ供託シナケレバ學校ヲ
建チルコトガ出來ヌ、言換ヘテ見マスレバ、
保證金ヲ納メテ學校ヲ拵ヘルト云フコトデ
アル、國家育英ノ事業ヲヤルノニ保證金ヲ
納メテヤル必要ハ毛頭ナイ、斯ノ如ク大學
設立ニ對シマシテハ、供託金ヲ撤廢スル意
思アリヤ否ヤヲ聞イテ見タイノデアル、次
ニハ優待ノ話ハ聞キマスケレドモ、此私立
學校ノ創立者竝ニ〓職員ニ對シマシテ、ド
ウニラ一體優待ヲ致シテ居リマスカ、優待
ト云フコトハ少シモナイ、金錢ノ優待ヲ吾
吾此私學ヲ經營致シテ居ル者ハ要求シテ居
ル人ハ少イノデアリマス、其精神上ノ優待
デスラ少シモヤッテ居ラヌ、敍位敍勳ニ與ッ
タ者ガ幾人アリマセウ、片手ノ指ヲ屈スル
ニ過ギナイノデアリマス、而モソレハ明治
維新前ヨリ〓育ニ從事致シテ、國家ノ人材
ヲ出スコト實ニ莫大ナ人ニシテ、二三年前
ニ動六等ノ動章ヲ貰シタノデアリマス、維新
前カラ〓育ニ從事致シテ居リ、サウシテ僅
ニ動六等、而モツレガ東京ニ於キマシテモ
三人ヂアリマス、斯ノ如キ事デハ私ハ此私
學ノ中ニ奔走盡力ヲ致シテ居ル御方ミノ優
遇ノ途ニハナラヌト思ヒマスカラ、金錢ノ
優遇ヨリハ先ヅ以テ先ニ精神上ノ優遇ヲシ
テ、此政府ノ給料ヲ與ヘテ居ル〓職員ノ優
遇ヨリハ、自分ノカデ以テヤッテ居ル所ノ
私學ノ〓職員ノ奬勵、之ヲ先ニスルノガ當
然デアラウト思フノデアル(拍手)若シ又政
府ニシテ口ニ言ハルヽガ如ク、私學獎勵ノ
意思ガアルトスルナラバ、宜シク私學ノ金
融ノ途ヲ圖ルコトガ當然デアルノデアラウ
ト思フ、私立學校ノ苦ムノハ、所得稅、登
記稅或ハ供託金ト云フガ如キ種々ナルモノ
ニ苦ミマスケレドモ、最モ苦ンデ居リマス
フハ、私立學校ノ金融ノ途ガ無イノデアリ
マス、何トナレバ苦心慘澹致シマシテ、建
設致シマシタル校舍ハ、民法ノ關係上、完
全ナル擔保ニナラヌノデアリマス、ソレニ
乘ジテ高利貸ノ如キ者ガ、此私立學校ノ校
舍ヲ擔保トシテ、高キ利息ヲ以テ金ヲ貸シ
テ居ルノデアリマス、政府ガ若シ私學奬勵
ノ意思ガ少シデモアルトスルナラバ、別ナ
ル法律ヲ設ケマシテ、此私學ノ建物ガ完全
ナル擔保ニナルヤウニ、別表ヲ拵ヘテ貰ヒ
タイト思フノデアリマス、之ニ對スル政府
ノ御意見ハ如何デアリマスカ、其次ニハ專
門學校ノ卒業生ニハ從來學士號ヲ稱ヘルコ
トヲ許シテ居ッタノデアリマス、所ガ新大學
令ガ出來テ以來、從來ノ專門學校ノ卒業生
ニハ學士號ヲ稱スルコトヲ許スガ、此頃出
來ル所ノ專門學校ノ卒業生ニハ、何々學士
ト云フコトヲ稱スルコトヲ許シテ居ラナイ
ノデアリマス、所ガ全體ノ專門學校ノ卒業
生ハ、學士ト云フコトヲ稱スルコトヲ許サ
ヌトスルナラバ是ハ又宜シイ、然ルニ昔アッ
タ所ノ專門學校卒業生ニハ、何々ノ學士ト
云フコトヲ稱ヘルコトヲ許シテ居ッテ、近頃
出來夕所ノ專門學校ハ內容ガ如何ニ充實シ
テ居ラウトモ、〓員ガ如何ニ立派デアラウ
トモ、之ニハ卒業生ニ學士ヲ稱スルコトヲ
許サヌノデアリマス、ソレハドウ云フ一體
御意思ニ出テ居ルノデアリマスカ、政府ノ
明瞭ナル御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス、
私ノ質問ハ之ヲ以テ終リマス(拍手)
〔政府委員山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=10
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011・山道襄一
○政府委員山道襄一君) 只今ノ御質問ニ
對シ謹ンデ拜聽ヲ致シマシタ、〓育ノ根本方
針ニ關シマスル問題、或ハ學校ニ對シマス
ル所得稅ノ問題、或ハ又私學奬勵ニ關シマ
スル問題等ニ付テノ御意見ハ確ニ拜聽ヲ致
シマシタ、十分ニ考慮ヲ致シマス積リデア
リマス、尙ホ本日ノ御質問ノ御要旨ニ對シ
マシテハ、大臣自ラ御答ヲ致スベキ筈デア
リマスケレドモ、只今貴族院ノ豫算委員會
ニ出席ヲ致シテ居リマスノデ、大臣ノ出席
シ得ザルコトヲ甚ダ遺憾ト致シマス、尙ホ
重大ナル御質問デアリ、且ツ多大ノ條項ニ
亙ッテノ御質問デアリマスノデ、改メマシテ
書面ヲ以テ詳細ニ御答ヲ申上ゲタイト考ヘ
マツ、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=11
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012・山下谷次
○山下谷次君 只今政府委員ノ御答辯ハ
書面ヲ以テ委細御答下サルサウデアリマス
ガ、ドウカ只今マデノ御答辯ノ如キヤウデ
ナクシテ、眞ニ實力ノアル御答辯ヲ願ヒタ
イ、御世辭一遍ノ答辯デハ本員滿足致シ難
イノデアリマス、ドウカ此點ヲ大臣ニ御傳
ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=12
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013・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ノ質問ニ移リマ
ス、商船學校生徒遭難ノ件竝遠洋航海練習
船ニ關スル質問、三善〓之君
四商船學校生徒遭難ノ件竝遠洋航海
練習船ニ關スル質問(三善〓之君提出)
商船學校生徒遭難ノ件竝遠洋航海練習
船ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年三月十五日
提出者三善〓之
商船學校生徒遭難ノ件竝遠洋航海練習
船ニ關スル質問主意書
一我カ帝國ハ四面環海ノ島國ニシテ國
民ノ海洋航海術ノ養成ハ極メテ緊要ノ
政策ニ屬ス隨テ小國民ノ海事思想ヲ惹
起シ之カ専門ノ學校ヲ旺盛ナラシムル
コトハ政府ノ最注意努力スヘキ問題ナ
リトス然ルニ政府ハ東京神戶ノ直轄學
校以外ニ於ケル道府縣立商船學校ノ〓
育ヲ其ノ眼中ニ入レス之ヲシテ道府縣
費ノ施設ニ放任シ之カ爲ニ縣立商船學
校ノ遠洋練習ニ適當ナル帆船ヲ使用ス
ル能ハス且練習費缺乏ノ爲ニ練習船ヲ
シテ不當ナル貨物ノ賃取ヲ爲サシメ從
來ノ成績ニ於テ悉ク難破船ト爲リ將來
ノ海國男子トシテ洵ニ血氣旺盛ノ少年
ヲシテ屢海洋ノ藻屑トシテ魚腹ニ葬リ
タリ卽チ今囘鹿兒島縣立商船學校練習
船難破事件ノ如キハ全然其ノ使用セル
帆船ノ不適當ナルニ基因セリ此ノ件ニ
關シ政府ハ其ノ失態ヲ國民ニ對シテ陳
謝スルヤ否ヤ
二更ニ小國民海事思想ノ養成ノ爲ニ相
當ノ施設ヲ爲スヤ否ヤ
三明治四十三年及大正十一年ニ於ケル
香川縣立粟島航海學校ノ生徒多數ヲ海
底ニ葬リ魚腹ヲ肥シタル其ノ實況竝死
者ノ姓名及人員ヲ示サレタシ
四本年二月出帆シテ南洋ヲ航海シ貨物
積載セル霧島丸ノ船體竝噸數等遠洋航
海練習船ニ適當ト認ムルヤ否ヤ
五霧島丸遭難ハ全ク不適當ノ船舶ヲ使
用シタルコトニ基因セルコトヲ認ムル
トセハ將來ニ對スル政府ノ商船學校ニ
對スル施設等其ノ政策如何
六霧島丸ノ生徒ノ人名竝死者人員ヲ示
サレタシ
右及質問候也
〔三善〓之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=13
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014・三善清之
○三善〓之君 諸君、私ハ商船學校生徒ノ
遭難ノ件竝ニ遠洋船ノコトニ對シテ文部大
臣、大藏大臣、內務大臣ニ對シテ質疑ヲ致
シタイノデアリマス、鹿兒島縣々立商船學
校ノ生徒ガ、積年螢雪ノ功ヲ積ンデ最早卒
業證書ヲ附與サルヽ間際ニ於キマシテ、今
月九日ニ太平洋上練習地ニ於テ、狂瀾怒濤
ノ爲ニ三十名ノ生徒及職員等ガ千尋ノ海底
ニ葬ラレ、而シテ前途有望ナル靑年ヲシテ
鰐魚ノ餌食ニ供シマスル悲慘ナル此事柄
ガ、將來我ガ小國民ノ海事思想ヲ養成スル
上ニ於キマシテ、非常ニ士氣ノ沮喪ヲ來ス、
此失態ハ正ニ政府ノ責任ナリト私ハ考ヘタ
ノデアリマス、諸君、我國ハ四面環海ノ島
國デアリマシテ、國際交通上ヨリ見マスル
モ、又國防上ヨリ考ヘマスルモ、我ガ小國
民ノ海事思想ヲ大ニ養成致シマシテ、海國
ノ男子ヲ造リマスコトガ、最モ緊要ナルモ
ノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス、彼ノ
普通中學生ヤ普通高等學生ガ、父兄ノ貴重
ナル學費ヲ受ケマシテ遊學ヲ致シテ居リマ
スル者ノ中ニハ、男性的ノ勇氣モナク、洵
ニ惰弱ニシテ、頭ニ油ヲ塗ヲテ俳優ノ化物
見タヤウナ者ガ、澤山此帝都ニゴロ〓〓シ
テ居ル、斯ル世ノ中ニ於テ薄ヶペラナ船底
坂一枚ヲ死生ノ境トシテ、士氣凛然トシテ
萬里ノ遠洋ニ航シ、狂瀾怒濤ト相戰フ所ノ
其勇氣コソ眞ニ大和民族ノ强キ、所謂帝國
男子デアルト考ヘルノデアリマス、我ガ政
府ハ斯樣ナル〓育ノ上ニ大ニ缺陷ノアル
此缺陷ヲ補充致シマセヌガ爲ニ、屢、斯樣
ナ悲慘ナル失態ヲ起スノデアリマス、諸君、
我ガ香川縣立商船學校モ、矢張政府ノ此〓
育上ノ設備缺陷ノ爲ニ、前途有望ナル多數
ノ靑年ノ生命ヲ奪ハレタコトガ二回アルノ
デアリマス、卽チ明治四十三年十一月六日、
我ガ香川縣立商船學校ノ生徒十一名ト〓員
四名ガ、日本海ニ向ッテ練習ニ出掛ケマシ
タ、其航海中、島根縣長濱ト敦賀ノ間ニ於テ、
狂瀾怒濤ニ出會ヒマシテ、其練習船諸共ニ
生徒ハ行方不明ニナッタノデアリマス、更ニ
大正十一年四月二十一日ニ於キマシテ、同
ジク私ノ香川縣ノ商船學校生徒十五名ト〓
員三名ガ對馬海峽ヲ練習航海中ニ於テ、是亦
船ト諸共行方不明ニナリマシテ、未ダ其死
體スラ分ラヌノデアリマス、斯樣ナル士氣
凛然タル海國男子ヲ養成致シマスル大切ナ
ル學校デアル、而シテ今日デハ全國ニ此商
船學校ガ十一箇所アル是皆靑年殺シノ學
校デアリマス、卽チ富山縣立商船學校、三
重縣、廣島縣、山口縣、香川縣、岡山縣、
愛媛縣、島根縣、佐賀縣、函館ト、今回ノ
鹿兒島ノ遭難ノト、卽チ十一校デアリマス、
何故縣立商船學校ガ、屢〓斯樣ナル失態ヲ
致スコトデアルカト云フコトヲ、私ハ文部
省ニ就テ取調べマシタ所ガ、ソレハ學校當
局ノ失態デモナイ、又府縣知事ノ失態デモ
ナイ、全ク大藏省ガ惡イノデアル、斯樣ナ
ルコトノ言明ヲ得マシタノデアリマス、其
理由ト致シマシテハ、遠洋航海ヲ致シマス
ル練習船ハ、少クトモ二千四五百噸ノ物デ
ナケレバイカヌ、而モ堅牢ノ物デナケレバ
危險デアル、ソレガ故ニ、文部省直轄ノ東
京神戶ノ商船學校ニ於テハ、卽チ二千四百
噸ノ練習船ヲ備付ケテアル、サウ云ス譯デ
アルカラ神戶及東京ノ商船學校ニ於テハ
未ダ曾テ生徒ヲ殺シタコトハナイ、然ルニ
府縣ノ商船學校ニ於テハ、斯樣ナ船ヲ備付
ケテ置カヌカラ、斯ウ云フ失態ガ出來ルノ
デアル、斯ウ云フ言明ヲ得タノデアル、然
ラバ何故文部省トシテ之ヲ早ク救ハヌカ、
文部省トシテハ立案ガアル、卽チ二千四百
噸ノ練習船二隻、一隻ガ百万圓デアル二
隻二百万圓ノ臨時費ト、一隻ノ運航費ガ一
年十三万圓、二隻デ二十六万圓、此二隻ガ
アレバ、全國ノ十一箇所ノ商船學校ニ對シ
テ、此立派ナ練習船ヲ以テ無事ニ順番ニ其
練習ヲ爲シ得ルノデアルト云フ、斯樣ナ誠
ニ容易ナ問題デアリマス、決シテ財政上大
問題デハナイノデアリマス、然ルニ大藏省
ガ之ヲ拒絕スル爲ニ屢、斯樣ナ失態ヲ來シ
テ居ルコトハ、事實ガ明ニナリマシタノデ
アリマス、ソレ故ニ府縣デハ府縣費デ百万
圓ノ練習船ヲ造ルコトが出來ナイ、隨テ一
千噸バカリノ小型ナ而モ破船ヲ雇ッテ、遠洋
航海ヲ致ス經費モナイ、府縣ニナイカラ商
人カラ色ミノ貨物ヲ賃取リシテ澤山ニ滿載
シテ、サウシテ太洋ニ出掛ケル、左樣ナ次
第デアリマスカラ、太洋ニ出掛ケレバ忽チ
狂瀾怒濤ニ遭ウテ、浸水シテ直ニ〓覆シ
テ、生徒モ船モ諸共ニ行方ガ分ラナクナル、
斯樣ナ實際デアリマス、誠ニ悲慘ナ事デア
リマス、府縣立商船學校ハ冒險的〓育ヲ致
シマス爲ニ、屢〓生徒ヲ殺スノデアリマシ
テ、隨テ今後ハドウシテモ二隻ノ練習船ト
運航費ノ二十六万圓ト云フモノハ、政府ガ
ドウシテモ出サナケレバ、海國男子ヲ養成
スルコトハ絕對ニ出來得ナイト私ハ考へ
ル、誠ニ必要ナル〓育上ノ機關デアルト考
ヘルノデアリマス、然ルニ大藏大臣ハ鈴
木商店ニ對シテハ一億万圓ニ近イ金ヲ出シ
テモ之ヲ援ケルガ、全國數百人ノ海國男子
ヲ養成スル此學校ノ設備ノ爲ニハ、僅カ二
百万圓ノ少金額ヲ拒絕スル、サウシテ十一
校ノ生徒ヲ先繰ニ殺シデ行クノハ、怪シ
カラヌ事デアルト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、是ニ對シテ文部大臣ハ今後如何ナル考
ガアルカ、如何ニ大藏大臣ガ拒ンデモ、文
部大臣トシテ之ヲ要求シナイヤウナ者ハ
實ニ無能極ル、無責任ナル文部大臣デア
ル、而シテ之ヲ出サナイ大藏大臣ハ尙ホ惡
イ、兩人其極メテ無責任、實ニ國家ニ對シ
テ極メテ不忠實ナルモノデアルト斷言シテ
憚リマセヌ、隨テ文部大臣ハ今後府縣立商
船學校ニ對シテ、此失態ヲ如何ニ救濟スル
カト云フコトヲ、玆ニ確言シテ貰ヒタイト
思ヒマス、ドウカ國民ヲシテ安心セシメ、而
シテ海國男子ヲ造ルコトハ最モ必要ト考へ
ル、大藏大臣ハ何故ニ斯ル少額ナル金ヲ出
サヌデ、大切ナル海事〓育ノ設備ヲ拒絕シ
タカ、此理由ヲ明ニ此壇上ニ於テ說明シテ
貰ヒタイト思ヒマス、内努大臣ニ對シテハ
今日府縣費ノ多端ナル際ニ於テ、府縣ガ百
万圓出シテ練習船ヲ造リ、一年十三万圓掛ケ
テ運航費ヲ出スコトハ出來ナイト思フ、果
シテ出來ルカ出來ナイカ、責任アル答辯ヲ
茲ニ聽キタイノデアリマス、之ヲ要スルニ
大藏大臣ハ文部大臣ノ要求ヲ容レテ、僅カ
二百万圓ノ臨時費ト經常費二十六万圓、之
ヲ明年度カラ出シテ、サウシテ全國ノ府縣
立商船學校ヲ大ニ保護シテ、而シテ此遠洋
航海ノ練習ヲ遂行スルコトヲ十分サセル決
心ガアルカ、此明答ヲ伺ヒタイト思ヒマス
〔政府委員山道襄一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=14
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015・山道襄一
○政府委員(山道襄一君) 只今ノ三善君ノ
御質問ノ答辯ハ、大臣ニ爲スベキヤウ御要
求ガアッタノデアリマスガ、先刻申述べマ
シタ如ク、今日大臣ノ出席スルコトノ出來
マセヌコトヲ誠ニ遺憾ト致シマス、尙ホ只
今ノ御質問ノ御趣旨ハ十分ニ拜聽ヲ致シマ
シタ、商船學校ノ生徒ト云ハズ、日本帝國
ノ國民ニ對シマシテノ海事思想ノ養成ニ關
スル、又商船學校ノ〓育ヲ受ケマシタ者
ハ將來ニ於キマシテハ海軍ノ將校ト致シ
マシテ、幹部ト致シマシテノ活動ヲ爲スベ
キ人物デアル、是等ニ對シマスル品性ノ陶
冶ノ上ニ付キマシテモ、御說ノ通リ、私共
御尤ノ御意見ト考へテ居リマス、唯、是等
ニ對シマシテノ施設ニ付キマシテハ、文部
省ト致シマシテハ度々種々ナル計畫ヲ立テ
マシタケレドモ、事情之ヲ許シマセヌガ爲
ニ、今日マデ其計畫ハ實現ヲサレナイコト
モ亦吾々甚ダ遺憾ニ感ズルノデアリマス、
將來ニ於キマシテモ十分ニ御質問ノ御趣旨
ノアル所ニ鑑ミマシテ、相當ナル考慮ト相
當ナル計畫ノ實行ニ努メル考デアリマス、
尙ホ大臣ノ責任等ニ對シマシテ、又其他ノ
詳細ニ涉ッテノ御質問ニ付キマシテハ、改メ
テ其機會ヲ得マシテ、別ノ方法ニ依リマシ
テ御答辯申上ゲルコトニ致シタイト思フノ
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=15
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016・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ヨリ日程ニ入リマ
ス-日程第一及第十三ハ同一委員ニ付託
サレタル議案デアリマスカラ、日程第十三
ヲ繰上ゲテ、之ヲ一括議題ト爲スニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=16
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017・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一、花柳病豫防法案、日程
第十三、違警罪卽決例中改正法律案ヲ一括
シテ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ
求メマス-委員長作間耕逸君
第花柳病豫防法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一花柳病豫防法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月十八日
委員長作間耕逸
衆議院議長粕谷義三殿
花柳病豫防法案中左ノ通修正ス
第七條花柳病ニ關スル賣藥ハ其ノ容器
又ハ被包ニ其ノ成分及分量、成分不明
ナルモノハ其ノ本質及製造法ノ要旨ヲ
記載スルニ非ザレバ之ヲ發賣スルコト
ヲ得ズ
賣藥營業者前項ノ規定ニ違反シタルト
キハ地方長官ハ其ノ發賣ノ免許ヲ取消
スコトヲ得
第八條前條第一項ノ規定ニ違反シタル
者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
附則ニ左ノ一項ヲ加フ
花柳病ニ關スル賣藥ニシテ本法公布前
ヨリ發賣シ來レルモノニ關シテハ當分
ノ間第七條ノ規定ヲ適用セズ
希望條項
政府ハ花柳病豫豫ノノ的的ヲ達スル爲左記
各項ヲ實施スヘシ
速ニ本法第二條ノ適用範圍ノ擴張ニ
努メ殊ニ賣淫者以外一般男女、乳兒、
乳母等ニモ及ホスヘク將來本法ヲ改正
スルコト
ニ市若ハ公共團體ノ設立ニ係ル診療所
ニ於テハ公衆ニ對シテ花柳病ニ關スル
相談竝診斷ノ需ニ應スルコト
三醫師會ニ於テ必要上花柳病ニ關スル
從來ノ賣藥ニ就テ其ノ成分及分量ヲ問
合セタルトキハ政府ハ速ニ之ヲ囘答ス
ルコト
四花柳病ニ關スル賣藥ノ誇大ナル廣告
ノ取締ヲ勵行スルコト
五民間ノ花柳病豫防團體ノ事業ヲ援助
スルコト
第十三違警罪卽决例中改正法律案
(橫山勝太郞君提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
-違警罪卽決例中改正法律案(横山勝太
郞君提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年三月十六日
委員長作間耕逸
衆議院議長粕谷義三殿
(小字及-ハ委員會修正)
違警罪卽決例中左ノ通改正ス
第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
場合ニ於テ言渡
前項ノ言渡ヲ爲シタル時ハ之ト同時ニ
ヲ受ケタル者未成年者禁治產者準禁治產者
又ハ妻ナル時ハ言渡ト同時ニ之ヲ其法定代
理人保佐人又ハ夫
刑事訴訟法第百十五條ニ揭クル者ノ內
適當ト認ムル者ニ通知スヘシ
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ正式裁判ノ請求ハ被告人ノ爲ニ
前條第二項ノ者ヨリモ亦之ヲ爲スコト
ヲ得
十第九條又ハ第十條ニ依リ警察
第七條ノ二警察官署ニ檢束引致セラレ
官署ニ留置セラレ
タル者及ヒ拘留處分ヲ受ケタル者ノ接
見及ヒ信書ニ關シテハ刑事訴訟法第四
十五條第百十一條第百十一一條監獄法及
ヒ監獄法施行規則中接見及ヒ信書ニ關
スル規則ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔作間耕逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=17
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018・作間耕逸
○作間耕逸君 先ヅ政府提出、花柳病豫防
法案ノ方ノ委員會ノ經過結果ノ御報告ヲ簡
明ニ致シマス、本案ハ國民ノ保健狀態ノ改
善上、花柳病ヲ豫防スルノ目的ヲ以テ、一
方ニ於テハ業態上傳播ノ虞アル者ニ備ヘマ
ス爲ニ、公共團體中ニ診療所ヲ設置シ、又
ハ公立ノ診療所ヲ之ニ代用セシメテ、之ニ
對シテ國費ヲ以テ相當ノ補助ヲスル、又他
方ニ於テバ患者ガ自覺シナガラ審ニ接スル
行爲ヲ嚴罰シ、同時ニ其傳染防止ニ付テ相
當ノ方法ヲ講ジタ者ハ刑ヲ輕クシ、尙ホ醫
師ガ該患者ヲ診斷ノ際ニハ、傳染防止ノ方法
等ヲ指示セシムル義務ヲ負ハシメタノガ大
體ノ內容デアリマシテ、委員會ニ於キマシ
テハ主トシテ其方面ノ專門家ノ方ミカラ、
衞生、保安、風〓、殊ニ賣藥事業トノ關係
等ノ方面ニ渉リ、意義ノ多イ御質問ガ出マ
シタガ、其政府トノ應答ヲ唯〓綜合考覈致シ
マシテ、之ヲ要約致シマスト云フト、本案
ハ公娼存廢ニハ關係ガナイ、專ラ花柳病ノ
傳染豫防ヲ主眼トスルモノデアッテ、公娼ニ
モ本案ニ該當スルモノアレバ之ヲ適用ス
ル、獨リ私娼ニ對スルバカリデハナイ、私
娼ハ徹底的ニ檢擧シテ其撲滅ヲ期スル方針
ニ變リハナイノデアルガ、唯、密淫賣ノ事犯
ト云フヤウナモノハ、事實トシテ之ヲ否定
スルコトハ出來ナイカラ、本案ハ事實トシ
テ密淫賣ノ存スルコトヲ看過ハ致シチ居ラ
ナイケレドモ、ソレガ爲ニ私娼其モノヲ決
シテ認メタノデハナイノハ勿論デアル、又
公設ノ豫防的診斷若クハ診療ノ設備ト施設
ハ、理想トシテハ之ヲ國民一般、殊ニ少クモ
勞働者ノ家族位マデニハ及ポシタイノデア
ルケレドモ、現下ノ我ガ國情ト經費トハ俄
ニ之ヲ容シ難イノヲ遺憾トスル、仍テ本案
ハ業態主義ヲ取ッテ接客業者ヲ主體トシタ
ノデアル、實際ニ於テハ多クハ女子ニ適用
サレルノデアルケレドモ、男子ト雖モ之ヲ
除外スル趣旨デハナイノデアル、尙ホ本案
ハ主義トシテハ强制檢診ハ認メテ居ラナイ
ノデアル、唯ハ接客業者ニハ之ヲ爲スコト
ガアルケレドモ、是ガ爲ニ私娼ヲ認ムルコ
トニハナラナイノデアル、之ニ對シテ、卽
チ私娼ニ對シテハ自衞的ニ之ヲ爲スト云フ
コトヲ命ズルヨリモ、本案ノ如ク一方ニハ
自ラ患者タルコトヲ知ッテ賣淫ヲ爲シ、或ハ
其幇助ヲシタル者ヲ嚴重ニ處罰ヲ爲シ、
方ニハ其豫防ニ付テ或ハ適當ノ施設ヲ爲
シ、卽チ簡便ナル診療所ヲ設ケル、而シテ
又處罰ヲ爲ス場合ニモ其豫防方法ヲ講ジタ
ル者ノ刑ヲ輕ウスル、斯ウ云フ工合ニシテ
以テ表裏ノ兩方面カラ此法ノ目的ヲ達セン
トスルモノデアル、斯ウ云フコトデアリマ
シタ、私ハ其方面ノ専門家デハアリマセヌ
カラ、是レ以上ノコトハ速記錄ヲ御覽ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス、唯〓特ニ一言
ヲ添ヘテ置キマスル必要ノアルノハ本案
ハ花柳病向ノ賣藥ヲ認メタノデハナイ、卽
チ賣藥トハ直接何等ノ關係ナキ法案デアリ
マスルガ、委員會ニ於キマシテハ此點ガ中
中問題トナリマシテ、結局花柳病ヲ始メ賣
藥ノ調劑成分ヲ公表セシムルコトニ付テ
ハ政府ハ篤ト〓究ノ上成べク速ニ適當ノ
立案ヲ致シタイト云フコトデアリマシタ、
是ダケヲ申添ヘテ置キマス、討議ニ入リマ
シテ小委員會ヲ設ケラレマシタ、サウシテ
御手許ニ配付サレマジタル報告書ニ印刷ノ
通リノ修正案ガ提出セラレマシテ、同時ニ
又希望條項ヲモ附帶決議ノ案トシテ報告ヲ
セラレマシタ、是ハ此際既ニ御手許ニ廻シテ
居ルコトデアリマスルカラ朗讀ハ略シマ
ス、又委員ノ一部、卽チ星島君カラモ別ニ
修正案ガ出マシタ、是ハ改メテ少數意見ト
ハナッテ居リマセヌケレドモ、諸君ノ御手
許ニ廻リマシタ報告書ニハ入ッテ居リマスマ
イカラ、一應此處ニ此分ダケハ朗讀ヲ致シ
テ置キマス、卽チ星島委員ノ提出ノ花柳病
豫防法修正案、第五條ヲ左ノ通リ改ム「傳染
ノ虞アル花柳病ニ罹レルコトヲ知リ又知ル
ベクシテ性交ヲ爲シタル者ニハ三箇月以下
ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス本條ノ
刑罰ハ相手方ノ告訴ヲ待ッテ之ヲ論ズ」其第
六條「傳染ノ虞アル花柳病ニ罹レルコトヲ知
リ又知ルベクシテ賣淫ヲ爲シ又ハ賣淫ノ媒
合又ハ容止ヲ爲シタル者ハ六箇月以下ノ懲役
又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス但シ傳染防止
ニ付相當ノ方法ヲ講ジタル者ハ其ノ刑ヲ減
免ス」斯樣ナ案ガ出タノデアリマス、此星島
君カラノ修正案ニ付キマシテハ、宮島、土
屋信太ノ諸君カラモ、案ノ精神ニハ賛成デ
アルケレドモ、案自體ニ對シテハ今遽ニ同
意ヲ表シ難イ、斯ウ云フ御意見ガ出タノデ
アリマス、又政府ノ意見ハ委員會ノ方ノ
修正案ニハ是ガ兩院ヲ通過スルコトデア
ルナラバ同意ヲ表スル、又委員會カラ出タ
所ノ希望條項ニ對シテハ成ベク御希望ニ
副フヤウニ努力スル、斯ウ云フコトデアリ
マシタ、討論ノ結果、星島君ノ修正案ハ少
數否決、委員會ノ修正案ハ多數可決、修正
以外ノ政府ノ原案及小禾員會ノ希望條項タ
ル附帶決議ハ、全會一致ヲ以テ可決セラレ
タノデアリマス、ソレカラ一括上程ヲ致サ
レマシタ橫山勝太郞君提出、違警罪卽決例
中改正法律案、此委員會ノ御報告ヲ申上ゲ
マリ、此案ハ-現行違警罪卽決例ハ、何
分憲法發布以前ノ制定デアリ、マシテ、今日
ノ時勢ニハ適合シナイ點ガ多イ、爲ニ其適
用ニ當リ、往々ニシテ人權蹂躪ノ聲ヲ傳ヘ
ラレル、又實際ニ於テハ、此卽決例アルガ
爲ニ、却テ警察犯ノ發生ヲ刺戟スル結果ト
ナル場合モアル、ソレデ本案ノ御趣旨ハ
差當リ國民ノ堪へ難イ所ノ不備缺陷ヲ補ヒ
マスルガ爲ノ改正案デアリマシテ、一、卽
決例ニ依ッテ警察官署ニ留置セラレタル者
ガアリマシタ時ニハ其警察官署ヨリ之ヲ
本人ノ家族ノ中デ通當ト認ムル者ニ通知ヲ
スルニ、ンレ等ノ者ヨリモ卽-チ其通
知ヲ受ケタル家族中ノ適當ナル者ヨリモ、
本人ノ爲ニ正式裁判ノ申立ヲ爲シ得ルコト
三.警察官署留置中ノ者ニ對シテモ、刑
務所ニ於ケル所ノ刑事被告人ト同樣ニ面會
接見又ハ文書ノ通信ヲ許スベキコト、大體
斯ウ云フ三箇條ノ改正案ノ事項デゴザイマ
シタガ、委員會ニ於キマシテハ、委員ト提
案者又ハ政府ト質問應答ヲ重ネマシタ結果
一、二ノ一般入民ニ對シテ留置致シタ時ニ、
總テ其本人ノ家族ノ中適當ト認ムル者ニ通
知ヲスルト云フヤウナコトハ出來ナイケレ
ドモ、其本人ガ未成年者カ、禁治產者カ、準
禁治產者カ、又ハ妻デアルト-所謂法律
上ノ無能力者ノ場合デアルナラバ其保護
煮卽チ親權者、後見人、保佐人、或ハ夫、
是等ノ者ニ通知スルコト、是等ノ者カラハ
ソレ等無能力者本人ノ爲ニ、矢張正式栽判
ノ申立ヲ爲シ得ルコトニ改メラレル、是位
ノ程度デアルナラバ、政府モ此案ニ同意ヲ
表シテ宜シイト云フコトデアリマシタカラ、
ソレデ改メテ私カラ只〓今申上ゲタヤウナ趣
旨ノ修正案ヲ提出致シマシテ、其修正案ガ
全會一致ヲ以テ可決セラレタ次第デアリマ
ス、而シテ修正ニ係ラザル部分ハ横由君
提案ノ原案通リ、ンレ等ノ條項ハ總テ印刷
ヲシチ、成文ガ御手許ニ廻タテ居リマスカ
ラ、只今此所ニ於テ一ヒ朗讀〓スコトダケ
ハ略シテ置キマス、以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=18
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019・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今委員長ヨリ御報
告ニナリマシタ兩案ニ付キマシテハ、何レ
ニモ質疑及討論ノ通告ガアリマス、敵ニ先
ヅ花柳病豫防法案ノ議事ヲ進メテ參リマス、
此案ニ對シテ質疑ノ通告ガアリマス、其發
言ヲ許シマヌ、吉良元夫君
〔吉良元夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=19
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020・吉良元夫
○吉良元夫君 私ハ此花柳病豫防法ニ付テ
ハ政府ガ御提出ノ際ニ、大要ノ質疑ヲ致
シテ置イタノデアリマスガ、其後委員會
ニ於キマシテ、篤ト此案ニ付テ調査御攻究
ニ相成リマシタ結果ト致シマシテ、只今委
員長ヨリ御報告ニナリマシタル如ク、此本
案ニ付テ第七條及第八條ト云フモノヽ修正
案ヲ出サレタノデアリマス、是ニ於テ篤ト
私共拜見ヲ致シテ見マスルト云フト、是ハ
成程此委員會ニ於テハ、最モ直接ノ御關係
ノアル醫學ノ大家諸先生ガ御在リニナッタ
カラシテ、其調査攻究ノ結果、斯ノ如キ修
正案ヲ御作リニナッタモノト、私共ハ信ジ
マスノデアリマス、併ナガラ此花柳病豫防
法案ノ骨子ト云フノガ何所ニル在カト申シ
マスレバ、只今委員長ガ御報告ニナリマシ
タ如ク、本案ノ第二條及第三條ニ骨子ガアル
ノデアルト私共考へルノデアル、故ニ此七
條八條ノ如キコトハ、全ク本案ニ於テ斯ノ
如キ規定ヲ致シマセヌデモ、次シテ吾々ハ
差支ナイモノデアルト云アヤウニ考ヘル者
デアリマス、卽チ立法ノ體裁カラ考ヘマシ
サモ、此修正案ハ實ニ本ニ竹ヲ接イダヤウ
ナ法案ニナッテシマウテ居ルノデアリマス
(ノウ〓〓)「ノウ〓〓」ト云フ御說モアリマ
セウガ、私ハサウ云フヤウニ考ヘルノデア
リマス、何故ト申シマスタニ、賣藥ナルモ
ノハ-吾々ハ賣藥ト云フモノニサウ贊成
スル者デモナケレバ、賴ル者デモアリマ
セヌ、併ナガラ賣藥ナルモノハ、現行ニ於
テ是ハ其主成分及效能等ヲ能ク其筋ニ屆出
マシテ、サウシテ其疾病治療ノ目的ニ適合
スルモノデナケレバ、絕對二許可ニナッテ
居ナイノデアル、然ルニ此度此七條ノ規定
ノ如キ、「其ノ容器又ハ被包ニ其ノ成分及分
量、成分不明ナルモノハ其ノ本質及製造法
ノ要旨ヲ記載スルニ非ラザレバ之ヲ發賣ス
ルコトヲ得ズ」ト云フヤウナ規定ヲ玆ニ作ッ
テ、ンレガ實社會ノ花柳病患者ニ對シテド
レ程ノ貢献ヲ爲シ得ルノデアルカ、私共ハ
一向疑ヒニ堪ヘヌノデアル、本法ノ骨子タ
ルモノハ全ク此品行ノ正シイ人デアッテ、
智德ガ向上シタ人デアレバ花柳病ナドト云
フモノハ自制克己ヲヤレバ決シテソンナモ
ノニ罹ル筈ハナイ、所ガ此實社會ノ中ニハ
其情慾ヲ制スルコトガ出來ヌ人方ガ過ッテ
罹ルノデアルカラシテ、之ヲ救ヲ爲ニ診療
所ヲ設ケテ、サウシテ之ニ特別ノ國家ガ保
護ヲ爲シテ、其ヤウナ不幸ナ人ヲ救ウテ、
此花柳病ノ害毒ヲシテ社會ヨリ根絕セシメ
タイ、根絕スルコトガ出來ヌマデモ、大ナ
ル害毒ヲ流サセタタナイト云フノガ骨子デ
アルノデアリマス、然ルニ此賣藥ト雖モ
今日ニ於テ無效ノ物モアルカモ存ジマセヌ
ガ、多少有效ノ物モアルノデアラウト思フ、
之ヲ斯ノ如キ法ヲ規定致シマシテモ、藥學
ニ於テ專門ノ知識ノナイ者ガ、包被ニソン
ナ事ガ書イテアッテモ、其實質本體ガ如何
ナル物デアルカト云フコトヲ鑑別シ得ル程
ノ知識ト云フモノハ無イノデアル、ソレヲ
是非書カネバナラヌト云フ理由ハ何所ニ在
ルノデアルカ、吾々ニ於テハ一向分ラナイ
ノデアル、デ私共ノ手許デ吾々ガ總テノ法
案ヲ〓究致シマスニ付キマシテハ、當業者
カラ吾々ニ出シテ居ル所ノモクヲ、一應參
考トシテ能ク見ル必要ガアル、ソレデ吾々
ハ參考トシテ見ルノニ、是ハ賣藥者側カラ
言ハセルト云フト、或ハ醫者ガ立法ヲシテ
賣藥防禦ノ豫防線ヲ張ッタノダト云フコト
ヲ、賣藥業者ガ言ウテ居ル、成程其様ニモ
解セラレル、併ナガラ本法ヲ作ル上ニ於テ
ハサウ云フ御精神デハナカッタラウト私
ハ考ヘル、併ナガラ此法ヲ立テル骨子ガ全
ク二條三條ニ置イテアル以上ハ、之ニ今度
修正シテ、賣藥ノ包被ニ其成分ヲ書カセル
トカ云フヤウナ事ヲシテ、頰瑣ナ取扱ヲス
ルト云フコトハ、ソレハ賣藥法其モノヽ規
定ニ俟ツベキモノデアッテ、全ク此花柳病
豫防ノ本法ニハ不必要ナルコトヽ私共ハ
信ジテ居ルノデアリマス、此點ニ於テ明確
ナル御說明ヲ顯ヒタイト思フ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=20
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021・作間耕逸
○作間耕逸君 簡單デアリマスカラ、此席
カラ御答スルコトヲ御許ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=21
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022・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=22
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023・作間耕逸
○作間耕逸君 此法案ハ只今吉良君ノ御質
問中ニアリマシタ如ク、全ク診察又ハ治
療或ハ處罰、又ハ減刑等ヲ目的トシテ、
花柳病ノ傳播ヲ豫防スルコトヲ趣旨トスル
法案デアリマシテ、賣藥若クハ賣藥業法ト
ハ何等關係ノ無イ法案デアリマス、唯〓花
柳病ニ關スル賣藥モ、世間ニ可ナリ行ハレ
テ居ルト云フ事實ニ基イテ、委員會ニ於テ
色と專門家ノ委員諸君カラ、ソレ等ノ方面
ノ議論モ出マシテ、其結果ガ只今ノヤウナ
修正案、或ハ附帶決議マデヲモ可決セラレ
タノデアリマス、一々御議論ノ內容等ハ御
紹介ハ出來マセヌ、ソレハ速記錄デ御覽願
ヒタイノデアリマス、大體委員長トシテ只
今申上ゲタヤウニ考へテ居リマス、其外何
等御答スルコトハ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=23
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024・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ福井甚三君
〔福井甚三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=24
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025・福井甚三
○福井甚三君 只今委員長ヨリ御報告アリ
マシタル修正案ニ付テ、私共ハ政府ニ一言
御尋致シタイト思フノデアリマス、只今モ
吉良君ヨリ委員長ニ御尋ニナリマシタガ如
"、本案ノ修正案ノ第七條ニ記載セラレタ
ル條項デアリマス、此第七條ニ記載セラレ
タ條項ハ、委員長ハ報告ノ便宜上省略セラ
レタノデアリマシテ、諸君ノ御手許ニアル
如ク、卽チ第七條「花柳病ニ關スル賣藥ハ
其ノ容器又ハ包被ニ其ノ成分及其ノ分量、
成分不明ナルモノハ其ノ本質及製造法ノ要
旨ヲ記載スルニ非ザレバ之ヲ發賣スルコト
ヲ得ズ、賣藥業者前項ノ規定ニ違反シタル
時ハ地方長官ハ發賣ノ免許ヲ取消スコトヲ
得」此條項ニ對シテ政府ニ御尋致シタイト
思フノデアリマス、此修正セラレタル眞意
ニ村キマシテハ、本員疑ヒヲ起シテ居ル一
人デアリマシテ、此修正ニ依リマシテハ、
一面賣藥業者ヲ脅威スルガ如キ感ジヲ致ス
ノデアリマス、又特ニ是等ノ修正ヲ此花柳
病法案ニ對シテ附加シテ、修正シナケレバ
ナラヌト云フコトハ、何所ニ在ルカト云フ
コトヲ私ハ疑フノデアリマス、是等ノ法案
ヲ修正スルナラバ、寧口賣藥業者ニ對シテ
花柳病ニ對シテ非常ノ缺陷ガアリト致シマ
シタチラバ政府ニ於テハ賣藥法ノ改正ニ俟
タナケレバチラヌト思ヒマス、又委員諸君
ノ修正ヲ爲サル生ニ於テモ、賣藥法ノ修正
ヲ爲サルノガ當然デアラウト思フノデアリ
マス、此花柳病ノ豫防ノ取締ニ付キマシテ
ハ、中ヒ非常ニムヅカシイモノデアリマシ
テ、一ツノ賣藥ノミニ制裁ヲ加ヘタカラ、
此花柳病ハ完全ニ取締ノ出來ルモノトハ敢
テ言ヘナイノデアリマス、故ニ政府ハ之ニ
同意ヲ爲サレタヤウデアリマスガ、同意ナ
サレタ御趣旨ハ何所ニ在ルカト云フコトヲ
御尋シタイノデアリマス、本案ノ如キハ確
ニ賣藥業者虐メノ一端デアルト思ヒマス、
又次ニ政府ニ御尋致シタイノハ、是ハ希望
條項デアリマスカラ、强ッテトハ申シマセ
ヌガ、希望條項ノ第三ニ現レテ居ル條項デ
アリマス「醫師會ニ於テ必要上花柳病ニ關
スル從來ノ賣藥ニ就テ其ノ成分及分量ヲ問
合セタルトキハ政府ハ速ニ之ニ回答スルコ
ト」斯ウ云フ條項ガ附イテ居ルノデアリマ
ス、是ハ醫師會ト云フモノハ、吾々ハ素人
デアリマスルケレドモ、全ク諮問機關デア
ラウト思フノデアリマス、醫師會ニ於テ必
要上ト云フヨリモ、醫師ニ於テ必要上ト云
フノガ相當デアラウト思ヒマス、會ノ權限
ヲ以テ賣藥業者ヲ監督スルト云フヤウニ一
寸見エマスノデ、之ニ對シテ政府ノ御考ヲ
承リタイノデアリマス、又前段申上ゲマス
ル修正ノ事業ノ如キハ、由來賣藥ハ出願ス
ルニ際シマシテハ、當該官廳ノ專門的技術
者ノ嚴密ナル調査認識ヲ得テ、有效ニアラ
ザルモノハ許可セラレナイト云フコトニ
ナッテ居ル、又此調劑ヲ致ス者ノ資格ト云
ハイ醫師若クハ藥劑師デナケレバ出來ナ
イト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、
故ニ此花柳病ノ豫防法案ニ對シテ殊更此修
正案マデ附ケテ出スト云フコトハドウデ
アラウカト私ハ思フノデアリマスカラ、之
ニ對シテ政府ノ御同意ヲ爲サレタ所ノ眞意
ハ何レニ在ルカ、又愈〓之ニ修正爲サレタ
方ガ適當デアルト云フ御考デアッタナラバ、
近キ中ニ賣藥法ノ改正ヲ爲サル意思アリヤ
否ヤト云フコトヲ伺ッテ置キタイノデアリ
マス
〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=25
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026・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 只今福井君ノ
御質問ニ對シマシテ御答ヲ致シマス、御說
ノ通リ賣藥ニ關スルコトハ矢張賣藥法ノ改
正ニ俟ツガ相當デアラウト思フノデアリマ
ス、併ナガラ委員會ニ於キマシテ、宮島君其
他ノ方ヨリ熱烈ナル修正ノ御意見ガアリマ
シテ、小委員ヲ選ビマシテ審議ノ結果、小
委員會ハ此七條、八條ヲ挿入スル、更ニ附
則一箇條ヲ設ケルト云フコトニナリマシ
テ、委員會ハ可決セラレル運ビニナッタノ
デアリマス、政府ト致シマシテハ、相成ベ
ク是ハ賣藥法ノ改正ニ俟ツ方ガ宜カラウト
云フ意見ヲ持シテ居リマシタノデアリマス
ケレドモ、段々ノ御意見デアリ、且ツ御承
知ノ通リ昨年賣藥稅廢止法律案ノ審議セラ
レル際ニ當リマシテ、宮島君其他ノ方ヨリ
內容公示ニ關スル質問ガアリマシタ、其際
大臣ヨリ致シマシテ、其問題ハ將來適當ノ
時機ニ適當ナル立法ヲスル、斯フ云フ答辯
ヲ致シテ居リマス、ソレニ付キマシテ宮島
君ヨリ、何故ニ早ク之ニ著手シナイカト云
フ御意見デアリマシタガ、政府ハ政府ノ都
合デ今日マデ著手ガ出來ナカッタノデアリ
さく、幸ヒ此法律ガ出夕以上ハ、賣藥ノ中
デモ最モ弊害ノ甚シイモノハ花柳病デア
リ、花柳病ニ關スル賣藥デアル而シテ最
近特ニ某「ドラック」ト云フヤウナ事件モ起ッ
タ際デアルカラ、此際之ヲ挿入シテ置クガ
適當デアリ、而シテ花柳病ヲ豫防スル上ニ
於テハ、成ベク此手療治ヲヤラセヌト云フ
コトガ一番效能ノアルモノデアル、斯ウ云
フヤウナ御意見デアリマシテ、此修正案ガ
遂ニ委員會ヲ通過致シタ次第デゴザイマ
ス、之ニ先チマシテ政府ノ意見ヲ求メラレ
マシタカラ、政府トシマシテハ貴衆雨院ガ
之ヲ認メルト云フコトデアレバ同意スルノ
外ハナイ、斯樣ニ答辯シタ次第デアリマス
カラ、其邊ハ惡シカラズ御諒承願ヒタイノ
デアリマス、ソレカラ醫師會ノ件ニ關シマ
シテハ、是ハ希望條件デゴザイマス、差支
ノナイ限リ便宜ヲ圖リ得ルナラバ御便宜ヲ
圖ル、斯樣ニ答ヘテ置キマシタ次第デゴザ
イマス、尙ホ御尋ノ件ガゴザイマシタ
カ-大體是ダケデ引退リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=26
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027・福井甚三
○福井甚三君 簡單デアリマスカラ此席ヨ
リ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=27
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028・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=28
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029・福井甚三
○福井甚三君 只今鈴木參與官ヨリ御答辯
ガアリマシタガ、本員ノ質問ニハ御觸レデ
ナイヤウデアリマス、此修正案ノ通過致シ
タコトハ各専門ノ委員諸君ガ御集リニナ〃
テ、而シテ小委員會ヲ開イテ御協議ニナッ
タ結果デアルト云フコトデアリマシテ、政
府ガ之ニ同意ヲ御與ヘニナッタカドウカト
云フコトヲ御尋シタノデアリマス、同意ヲ
御與ヘニナルノハドウ云フ考デ御與ヘニ
ナッタカト云フコトヲ本員ハ御尋シタノデ
アリマス、ソレニ對シテ御答ガナカッタヤ
ウデアリマス(「アッタアッタ」ト呼フ者アリ)
一應御願シテ置キマス、御意見ガアレバ承ッ
テ置キタイト思ヒマス
〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=29
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030・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 只今ノ點ハ實
ハ御答ヲ致シタノデアリマスガ、丁度何カ
御側デ御話ヲ爲スッテイラッシヤイマシタカ
ラ、御聽漏シカト存ジマス、大體小委員會
ノ意見ハ是ハ已ムヲ得ナイモノトシテ同
意ヲ致シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=30
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031・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是デ質疑ヲ終リマシ
タカラ討論ニ移リマス、通告順ニ其發言ヲ
許シマス-星島二郞君
〔星島二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=31
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032・星島二郎
○星島二郞君 私ハ本案ノ提出サレマシタ
ル其精神ニ付キマシテハ、洵ニ同意ヲ致ス
者デアリマシテ、卽チ法律案ノ名目カラ致
シマシテ、花柳病ヲ豫防シヤウト斯ウ云フ
ノデアリマスカラ、之ニ異議アル筈ハナイ
ト思ヒマス、唯、名前ハ花柳病ヲ豫防シヤ
ウト斯ウ云フノデアリマシテ、其政府ノ提
案ノ趣意モ誰一人之ニ反對スル者ハナカラ
ウト思フノデアリマスルガ、唯〓此法案ノ
爲ニ折角近來ノ傾向トシマシテ將ニ男女平
等、婦人ノ人格ガ漸ク男竝ニ認メラレント
シツヽアル今日ニ於キマシテ、僅カノ一賣
淫婦ノ業者ニ於ケル花柳病ヲ豫防センガ爲
ニ、其法律ヲ作ルガ爲ニ、折角將ニ擡頭セ
ントシツヽアル此婦人ノ所謂人格ヲ無視ス
ル如キ法案ガ出マスルナラバ、ソレノ損害
1、病氣ヲ少々癒サウト云フコトヽ、何レ
ガ重キカト云ヒマスレバ、私ハツレニハ堪
ヘラレナイ(ヒヤ〓〓)本案ノ第五條ヲ見マ
スト、色ミ委員會ニ於キマシテモ說明ガア
リマシタガ、是ハ實ハ題目カラシマシテモ
花柳病豫防法ヂヤナイ、賣淫婦花柳病豫防
法ト書改メナケレバナラヌ、總テニ亙ッテメ
花柳病豫防法ト云フノハ、內容カラ見マス
ト是ハ少シク題目ガ大キ過ギル、ソコデ私
ハ色ニ-隨分此委員會ハ熱心ニ審議サレ
マシテ、餘リ熱心ノ餘リニ格鬪マデ始マル
程熱心ニヤラレタノデアリマスガ、ドウシ
テモ此際ニ於キマシテ、若シ眞ニ政府ガ花
柳病ヲ根絕シヤウト云フナラバ、男子モ女
子モ平等ニ之ヲ取締ラナケレバナラナイ
(ヒヤ〓〓)殊ニ獨リ賣淫婦ノミヂヤナイ、
一般ノ賣淫婦以外ノ男ニモ女ニモ之ヲ通用
スルヤウニシナケレバ、法ノ目的ハナイヂ
ヤナイカ(拍手)ソコデ我ガ政友會ニ於キマ
シテハ、此法ノ精神ガ若シ修正出來ルナラ
バ、其所マデ徹底シヤウト云フノデ、先程
委員長ヨリ御朗讀ニナリマシタ如ク、獨リ
賣淫婦業者ノミナラズ、一般ノ男モ女モソ
レヲ知リ、又ハソレヲ知ルベキ狀態ニナッ
テ性交シマシタ場合ニ於キマシテハ之ヲ嚴
罰スル、尤モ獨逸其他ノ立法例ヲ見マスル
ト、一年カラ三年ト云フ隨分嚴罰ガアル、
ソレヲ餘程輕クシマシテ僅カ三箇月、而モ
ソレニ罰金刑ヲ加ヘマシテ、マダ最初ノ事
デアリマスカラ其程度デ宜カラウト、斯ウ
云フ工合ニ實ハ修正致シタノデアリマス、
ソコデ私ハ本來此法案ニ付キマシテ殊更興
味ヲ持チマシタ點ハ、此法律ヲ段々ト改正
シ、善クシ、若シ此法律ヲ始メカラ政府ハ
完全ナモノヲ出シテ吳レマスレバ、私共ハ
多年度々問題ニナッテ居リマス所ノ公娼制
度ノ問題ノ如キハ、此法律デ取締ラレル、
其所マデ一體進ミタイ、ダカラ私ハ政府ハ
長イ間調査〓究サレ、或ハ保健調査會、或
ハ醫師會、或ハ賣藥業者等各方面ヲ斟酌サ
レテ、兎ニ角ヤットノコトデ此程度ノ案ガ
出サレタ其苦心ハ洵ニ御察シスルノデアリ
マスケレドモ、今日此時代ニ出サレル法案
トシテハ、餘リニソレハ時代遲レノ法案ト
言ハナクチヤナラナイ、私ハ精神ニハ贊成
スルケレドモ、遺憾ナガラ本案ニハ反對セ
ザルヲ得ナイノデアリマス、成程先程御二
人ノ御質問ニモアリマシタ通リ、若シ花柳
病豫防法ヲ徹底的ニシマスレバ今囘修正
ノ意見ガ出マシタ通リニ、或ハ賣藥其物マ
デニ、又ンレ以上ニモット干渉スル必要ガ
アルカモ知レマセヌケレドモ、是ハ獨リ花
柳病ノミナラズ、或ハ結核病者、其他今日
ノ賣藥ヲ取締ルベキロトハ勿論多々アル
事ト思フノデアリマシテ、是ハ別ナ所謂賣
藥法規ニ依リマシテ、私共ハ單ニ內容ヲ示
ス位デハ滿足シナイ、彼ノ「ドラック」ノ如
キ誇大ナル廣告ヲシテ、弱イ人ヲ感ハスト
云フヤウナコトハ嚴ニ是ハ取締ルベキ必
要ガアラウト思フノデアリマスカラ、是ハ
一ツ出直シテ賣藥業、賣藥取締法、斯ウ云
フモノヲ以テ出サレルノガ、本當デアルト
云フノデ、此修正意見ニハ私ハ同意スルコ
トハ出來ナカッタノデアリマス、ソコデ尙ホ
私共ハサウ此所デ急イデ此缺陷ノ多イモノ
ヲ通シマスルヨリモ、本當ニ花柳病ヲ完全
ニ豫防スル爲ニハ、單ニ賣淫婦ノミナラズ、
私共實見シマシテ非常ニ感ジマスルコト
ハ頑是ナイ子供ガ花拂病ニ罹ル、是等ハ
花柳病ノ乳母ガ子供ニ乳ヲ飮マセタリ或
ハ子供ニ感染シテ居居、ソレニ又病氣ノ無
イ乳母ガ乳ヲ飮マスコトニ依シテ乳母ニ傳
染スルト云フヤウナコトガアリマスノデ、
本當ヲ言ヒマスレバ乳兒、或ハ乳母、或
看護婦トカ、サウ云フ者ニマデ此法案ハ十
分徹底的ニ及ボスヤウニシナケレバ完全ナ
モノデナイ、之ニ付キマシテハ勿論政府當
局ノ方モ異議ナイ筈、唯、極端ニ俄ニ進ム
コトガ出來ヌカラ、此生溫イ程度ノモノニ
シタ、斯ウ云フコトヲ御說明ナサレテ居ル
ノデアリマスケレドモ、殊ニ本案第五條ハ
刑罰法規トシマシテ甚ダ徹底ヲ缺イテ居ル
コトハ賣シタ者ガ惡イカ、買シタ者ガ惡イ
カ、サウシテ是ハ賣ッタ者ダケヲ罰スル、而
モソレハ單ニ女子ト云フコトハ明示シテナ
イケレドモ、結果ハドウシテモ女ダケヲ罰
スルコトニナッテ居ル、是ガ今日既ニ先程
モ申シタ如ク、正ニ婦人參政權、或ハ婦人
ノ公民權、或ハ公娼制度ノ全廢ノ精神カラ
シマシテモ、今更斯シナ舊イモノヲ此處ニ
出サレルト云フコトハ、洵ニ殘念ニ堪ヘナ
イ、サウ云フ意味合カラ本法提案ノ趣意ニ
ハ賛同シマスガ、モット完全ナモノトシテ出
直シテ御越シナサイ、吾々ハ愼重審議シテ
之ニ賛成スルニ決シテ吝デハナイ、斯ウ云
フ意味合カラ之ニ反對スルノデアリマシ
テ、唯、宮島君其他ノ提案ニナリマシタ希
望條項ガ多イ、此僅ノ三條カ四條ノ簡單ナ
豫防法案ニ、五箇條モ六箇條モ希望條項ガ
アルノハ、如何ニ此法案ガ不完全デアルカ
ト云フコトヲ明示シテ居ルモノデアリマシ
テ、アノ希望條項ヲ御讀ミニナリルマスレ
バ是ハ非常ニ缺點ガ多イ、政府ハ早ク之
ヲ改正セヨト云フノデアリマシテ、私共ハ
此希望條項ニ反對スル理由ハ見出サヌ、故
ニ私ハ此希望條項ニハ替同ヲ表シタ一人デ
アリマス、故ニ此意味ヲ徹底シマスレバ、
要スルニ改メテ出直シタラ宜シカラウ、此
一言デ盡キルト思フノデアリマス、簡單ニ
是ダケ申述ベテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=32
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033・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 土屋〓三郞君
〔土屋〓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=33
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034・土屋清三郎
○土屋〓三郞君 私ハ只今ノ委員長ノ報告
ニ對シマシテ、賛成ノ意見ヲ表明致シタイ
ノデアリマス、花柳病ハ人間ノ本能ニ基ク
所ノ病デアリマシテ、是ガ爲ニハ姙娠シタ
ル者ガ流產トナリ、男女ヲ通ジテ不姙症ヲ
起シ、種族ノ繁殖ヲ妨ゲルノミナラズ、
面ニハ精神病ノ原因トナリ、他面ニハ毒ヲ
子孫ニ傳ヘテ、民族退化ノ重大ナル原因ト
ナッテ居ルコトハ、各國識者ノ齊シク認ムル
所デアリマシテ、隨テ是ガ豫防撲滅ハ實ニ
我國ニ於キマシテモ重大ナル問題デアリマ
ス、併ナガラ花柳病ハ他ノ傳染病ト違ヒマ
シテ、主トシテ性交ニ依シテ傳播スルモノ
デアリマスルカラ、是ガ豫防ハ從シテ又他
ノ傳染病ト異〓テ居リマシテ、卽チ性交ヲ擅
ニスル所ノ病者ヲ取締リ、病者ヲ治療シ、
公衆ヲ誤ル所ノ藥品其他ノ物ヲ取締リ、公
衆ヲ〓育、啓發スルコトニ依シテ其目的ヲ
達シ得ラレルト思フノデアリマス、委員長
報告ノ修正案竝ニ附帶決議ハ、大體以上ノ
見解ノ下ニ作製セラレタルモノデアリマシ
テ、卽チ第二條、第三條及第四條ニ依ッテ、
賣淫市場ニ於テ其取引ニ從事スル者ノ病ヲ
治療シ、第五條ニ於テ病者ノ性交ヲ取締
リ第七條及希望條件ニ依リマシテ公衆ヲ
誤ル所ノ賣藥ヲ取締リ、第六條及希望條件
ニ依リマシテ患者及公衆ヲ啓發シ、相俟シテ
豫防ノ目的ヲ達セントスルモノデアリマ
ス只今星島君カラ本案ニ對シテ反對ノ御
意見ガ出マシタ、之ヲ承リマスルト本案ハ
主トシテ密賣淫婦ヲ取締ルモノデアル、他
ノ一般ノ人ニハ及バナイ、獨逸ノ豫防法ヲ
見レバ、獨リ密賣淫婦バカリデナク、般
ノ人ニ於キマシテモ病毒ヲ有シテ性交スル
者ヲ取締リ、又夫婦間ニ於テモ之ヲ取締リ、
病アルコトヲ知シテ之ヲ相手方ニ告ゲズシ
テ結婚シタル者ニ對シテモ、之ニ制栽ヲ加
ヘハ然ルニ本法案ハ唯、密賣淫婦ノミヲ
取締ルモノデアッテ、甚ダ不徹底デアルト
云フ御意見ト承ッタノデアリマス、成程一應
理想トシテハ尤デゴザイマスルケレドモ、
由來刑罰ハ手段デアッテ目的デハアリマセ
又、況ヤ主トシテ性交ニ依シテ傳染スルモ
ノデアリマスルガ故ニふ公衆ヲ指導啓發ス
ルコトニ依シテ互ニ相警戒セシムルナラバ、
之ニ依シテ相當ノ效果ガアルト云フコトハ
申スマデモアリマセヌ、星島君ノ御意見ハ
前申シマシタ通リ、獨逸ノ花柳病豫防法案
ヨリ御引用ニナッタヤウニ承リマシタガ、丁
度數日前受領致シマシタ通信ニ依リマスレ
バ獨逸ニ於テハ只今星島君ノ御引用ニナ
リマシタ所ノ豫防法案ト云フモノハ理想
案トシテ今日マデ遂ニ成立ヲ見ナカッタノ
デアリマス、然ルニ去ル二月九日獨逸議會
ヲ通過致シマシタ花柳病豫防法ニ依リマス
レバ、同第五條、及第六條ニ依シテ、花柳病
ニ罹ッテ居ルコトヲ知ッテ性交ヲ爲シタル者
ハ之ヲ處罰スル、夫婦間ニ於テモ同ジデア
ル、但シ是等ハ何レモ訴ヲ待。テ其罪ヲ斷
ズル、卽チ親〓罪ト致シテ居ルノデアリマ
ス、蓋シ斯ノ如ク改マリマシタコトハ、先
ノ案ハ餘リニ理想ニ走っテ居ッテ到底實際ニ
疎イモノデアルト云フガ爲ニ、斯ノ如ク訂
正サレタモノト思フノデアリマス、固ヨリ
星島君ノ御意見ハ理想トシテ結構デアリマ
ス、私モ今日只今此案ヲ以テ將來ニ亙シテ
完全無缺ナルモノトハ考ヘマセヌケレド
モ、千里ノ道モ矢張一里ヨリシナケレバナ
リマセヌ、今日我國ニ於テ初メテ此法ガ施
行セラルヽ場合ニ於キマシテハ先ヅ此程
度ニ於テ相當デアラウト斯樣ニ考ヘルノデ
アリマス、次ニ星島君ハ修正案タル第七條
ノ賣藥ノ內容公示ニ付テ御意見ガアリマシ
ク、同君ノ申サレルニハ賣藥ノ内容公元
ト云フコトハ全然吾々ハ賛成デアル、事
ロ進ンデ彼ノ賣藥ノ誇大ナル廣告ヲ取締リ、
賣藥全般ニ亙ッテ徹底的ニ之ヲ取締ラナケ
レバナラヌ、併ナガラ是ハ賣藥法ノ改正ニ
依シテ其目的ヲ達スベキモノデアッテ、花柳
病豫防法ニ於テ之ヲ規定スルト云フコトニ
ハ反對デアルト云フ御意見デアリマシタ、
是モ一應御尤デアリマス、私共ハ昨年來賣
藥ハ其性質上兎角公衆ヲ誤リ易キモノデア
ルカラ、是ガ取締ハ一層嚴重ニシナケレバ
ナラヌ、其意味ニ於テ祕密藥ト云フモノハ
絕對ニ許スベキデナイ、内容公示ハ當然デ
アルト云フ意見ヲ持シテ居シタノデアリマス
カラ、只今政友會ヲ代表セラレタル星島君
ノ御意見ヲ承リマシテ、他日賣藥法改正案
ガ其意味ニ於テ本院ニ現ハレマシタ場合ニ
ハ、政友會ノ諸君ハ必ズヤ擧ッテ之ニ御贊成
下サルモノト承知ヲ致シマシテ、後日ノ證左
トシテ同君ノ御意見ニ深ク敬意ヲ表スルノ
デアリマス、以上大體ニ於テ星島君ノ反對
ノ御意見ニ對シマシテハ略〓、盡キタト考へ
マスガ、終リニ私ハ一言ヲ附加ヘマシテ、
特ニ政府ノ御注意ヲ仰ギタイト思フノデア
リマス、政府ガ國民多年ノ希望デアッタ所
ノ本病豫防ニ指ヲ染メテ、本法案ヲ御提
案ニナラレテ、本病ノ豫防ニ對シテ相當ノ
施設ヲセラレ、可憐ナル、賣ラレ往ク所ノ
群ノ人ミヲ保護シテ、後世子孫ニ亙ッテ、我
ガ民族ノ健康ヲ保護シヤウトスル御趣旨ニ
對シテハ、私ハ滿腹ノ敬意ヲ表スルモノデ
アリマス、併ナガラ由來此種ノ事業ハ單リ
法律ノ力ニ依ッテノミ之ヲ達スルコトハ出
來マセヌ、官民相俟フテ初メテ其目的ヲ達
スルコトガ出來ルト思フノデアリマス、殊
ニ花柳病豫防ノ如キ事柄ニ至リマシテハ
最モ其必要ヲ感ズルノデアリマス、幸ニ我
國ニハ現代世界ノ黴毒藥タル「サルヴァル
サン」ノ共同發見者トシテ、世界人類ニ向,
テ無窮ノ恩惠ヲ垂レテ居ル所ノ秦佐八郎博
士ガアル、政府ノ考ニ依リマシテハ、此驅
黴藥ヲ一層安價ニ提供スルコトガ出來ヤウ
トモ考ヘルノデアリマス、又豫防運動ニ付
キマシテハ、本邦性病學ノ權威デアル土肥
慶藏博士ヲ會頭トスル所ノ日本性病豫防會
ガアリマシテ、同博士ハ昨年是ガ爲ニ態こ
私費ヲ以テ萬國性病會議ニ登ラレマシタ、
加之又此運動ヲ徹底センガ爲ニ少カラザル
私財ヲ此會ニ投ジテ、獻身的ニ此豫防撲滅
ニ努力ヲ致サレテ居ルノデアリマス、其他
民間ニハ幾多之ニ關係アル所ノ團體ガ相當
ニアルノデアリマス、願クハ本法實施ノ曉
ニ於キマシテハ、政府當局ハ宜シク是等ノ
關係機關ヲ援助シテ、是ト提携シテ、相俟シ
テ豫防ノ目的ヲ達セラレンコトヲ切望シ、
此意味ニ於テ本案ガ速ニ通過セラレンコト
ヲ切望シテ此壇ヲ下ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=34
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035・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、仍テ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クニ賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=35
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036・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數ト認メマ
ス、仍テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=36
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037・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=37
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038・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=38
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039・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議
題ニ供シマス
花柳病豫防法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=39
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040・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御發議ガアリマ
セヌカラ採決ヲ致シマス、本案ノ委員長報
告ハ修正デアリマス、此委員長報告ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=40
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041・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ委員長報告ノ通リ決シマシ
タ、是ニテ本案ノ第二讀會ヲ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=41
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042・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=42
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043・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異藏ナシト認メマス、仍テ第三讀會ヲ開キ
議案全部ヲ議題ト致シマス
花柳病豫防法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=43
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044・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 別ニ御發議ガアリマ
セヌカラ採決ヲ致シマス、委員長報告ノ通
リ、卽チ第二讀會議決ノ通リ、贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=44
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045・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 起立多數デアリマ
ス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手)次ハ違警罪卽决例中改
正法律案ノ議事ヲ進メマス、本案ニ對スル
質疑ヲ許シマス、橫山勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=45
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046・横山勝太郎
○橫山勝太郞君 簡單デアリマスカラ此席
ヨリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=46
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047・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=47
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048・横山勝太郎
○横山勝太郞君 本案ノ修正ハ、提案者ト
シテハ甚ダ遺憾千萬デアリマスガ、併シ此
場合已ムヲ得ヌコトヽ存ジマス、政府ハ此
修正案竝ニ原案ニ御同意ヲスルノデアリマ
スカドウカ、此點ダケヲ確メテ置キマス
〔政府委員鈴木富士彌君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=48
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049・鈴木富士彌
○政府委員(鈴木富士彌君) 修正案ニ同意
ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=49
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050・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ハ原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=50
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051・原夫次郎
○原夫次郞君 私ハ只今橫山君竝ニ鈴木君
ノ間ニ質問應答ノアッタコトニ牽聯ヲ致シ
テ、政府當局ニ御尋ヲ致スノデアリマス
ソレハ此改正ノ第十條ノ二ノ原案ヲ修正致
シテ、「第九條又ハ第十條ニ依リ警察官署ニ
留置セラレタル者」云々ト、斯ウ修正ニ相
成ッテ居ルノデアリマス、ソコデ先ヅ私ハ
二點ダケヲ御尋致シタイト思フノデアリマ
スガ、其第一點ト致シテハ、此第十條ノ二
ノ改正條項ナルモノハ是ハ實ハ蛇足デアッ
テ、今日ノ刑事訴訟法ノ本旨カラ申シテ、
拘留處分モ矢張刑事處分ノ一種デアル、サ
ウデアルトスルナラバ是ハ當然未決拘留者
若クハ既決囚ニ對シテハ、刑事訴訟法竝ニ
監獄法ノ適用上、當然適用ヲ受クルモノデ
アッテ、今日現ニ各警察署デハ之ヲ楯トシ
テ、ドウシテモ接近ヲ許サナイト云フ譯ニ
ハ參ラナイノデ、サウ云フ風ナ取扱ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、然ルニ本法ニ於テ更
ニ是等ノ者ヲ刑事訴訟法ト同樣ノ改正規定
ヲ設ケルト云フ本旨ハ何處ニ在ルノデアル
カ、是ガ第一點デアリマス、ソレカラ第二
點ト致シテ、只今ノ此修正ノ「第九條」ハ宜
シイガ、「第十條ニ依リ警察官署ニ留置セラ
レタル者」ト云フ改正ニナッテ居ル、然ル所
此第十條ハ卽チ拘留ノ言渡ヲ受ケテ、其言
渡ガ未ダ確定セザル間ニ、拘留一日ニ對シ
テ一圓ノ割合ヲ以テ保證金ヲ納メタナラ
バ、正式裁判ヲ受クルコトガ出來ルト云フ
此規定ガ十條ニ致シテアルノデアリマス、
是ニ於テカ此修正ノ箇條ト云フモノハ、被
告人ガ拘留ノ處分ノ言渡ヲ受ケテカラ以後
ノコトニ屬スル所ノ被告人ノ關係デアリマ
ス、然ルニ違警罪卽決例ノ第二條ノ規定ニ
依ルト云フト、先ヅ警察官署ガ此拘留ニ處
スベキ人ヲ引張シテ來テ、色〓取調ヲ爲シ、
或ハ證據ヲ蒐集致シテカラ、然ル後ニ拘留
處分ノ言渡ヲスルコトニ相成ッテ居ル、サ
ウスルト此改正案ノ趣意カラ申スト云フ
ト言渡ノ前ニ拘留處分ヲ受ケテ居ル所ノ
者ニ對シテハ、本法ノ適用外ニ屬スルト云
フコトニナルノデアリマス、斯ノ如キ改正
ト云フモノハ洵ニ當ヲ得ナイ改正デアルノ
ミナラズ、此改正ヲ爲シタガ爲ニ、此違警罪
卽決例ト云フモノハ、折角本則タル刑事訴
訟法ニ於テ、總テノ未決拘留者、若クハ
既決拘留者ニ對シテ、接見又ハ信書ノ取次
等ヲ許スト云フコトニナッテ居ルニ拘ラズ、
コンナ拙イ改正ヲ爲シテ、而シテ未ダ言
渡ヲ受ケザル者ニハ本法ハ適用シナイ、斯
ウ云フ結果ニ相成ルノデアリマス、是ハ定
メシ此改正案ノ討議ノ際ニ於テ、政府當局
者ガ唯、漫然ト、此提案者ノ本義ヲ能ク解シ
ナイデ、輕卒ナル同意ヲ致シタモノト思フ
ノデアリマス、仍テ此第二點ニ對シテハ
委員長竝ニ政府委員ニ對シテ、何故ニ斯ウ
云フ改正ヲ爲スノデアルカ、斯フ云フ點ヲ
御尋致ス次第デアリマス
〔政府委員本田恒之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=51
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052・本田恒之
○政府委員(本田恒之君) 原君ノ御質問ニ
御答申上ゲマイ、原君ノ御質問ハ二點ニ
ナッテ居ッタヤウデアリマス、第一ハ刑事訴
訟法ガ違警罪卽決例ニ適用サレルノデアル
カラ、刑事訴訟法ニ書イテアル事柄ヲ、故ラ
ニ更ニ修正スル必要ガナイト云フヤウナ御
意見ノヤウデアリマシタケレドモ、御承知
ノ通リニ刑事訴訟法ハ違警罪卽決例ニハ適
用ガナイノデアリマス、申上ゲルマデモア
リマセヌ、違警罪卽決例ハ司法處分デゴザ
イマセヌ、行政處分デアリマス、警察ノ命
令ヲ執行スル爲ニ、一ツノ行政處分ヲヤリ
マスノガ違警罪卽決例デアリマスカラ、之
ニ對シテ刑事訴訟法ノ適用ガアリマセヌ
隨テ此卽決例ニ刑事訴訟法ト同一ナル規定
ヲ設クル必要ガアレバ、矢張卽決例ノ中ニ
書イテ置キマセヌケレバ、其運用ガ出來ナ
イト云フコトハ申上ゲルマデモアリマセ
又、第二點ニ付キマシテモ、矢張原君ガ前
提ニ於テ御意見ガ違フ結果デアリマス、例
ヘバ若シ今度ノ修正案ノ如キモノガアルナ
ラバ、或ハ信書ノ往復、面接、其他刑事訴
訟法ニ於テ許サレテ居ル總テノ事ガ出來ル
モノヲ、態〓修正シテ其途ヲ塞イデシマッ
テ居ルデハナイカ、甚ダ不都合デハナイカ
ト云フ御意見デアリマスケレドモ、サウデ
ハゴザイマセヌ、刑事訴訟法ノ適用ト云フ
モノハ、違警罪卽決例ニハ最初カラ無イト
云フ前提ニ於テ修正サレテ居ルノデアリマ
ス、一二點共ニ原君ノ御意見ハ、政府ノ見
ル所ト根抵ニ於テ違シテ居ルト云フコトヲ
申上ゲテ御答辯ニ代ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=52
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053・原夫次郎
○原夫次郞君 委員長ガ御答ガナイナラ
バモウ一度此處カラ本田政府委員ニ御尊
致シタイノデアリマス、本田政府委員ハ、
能ク意義ヲ明ニシナイデ御答ニナッテ居ル
ヤウデアリマス、先ヅ第一點ノ違警罪卽決
ナルモノハ矢張裁判デアル、裁判ト云フコ
トハ動スベカラザルコトデアリマスカラ、
此裁判ヲ爲ス所ノ特別法デ特別ニ規定シテ
アル所ノモノハ適用上其特別法ガ勝ヲ制
スルノデアリマス、此特別法ニ規定ノナイ
部分ニ付キマシテハ、一般ノ栽判ノ原則ヲ
定メタル所ノ、刑事訴訟法ノ適用ヲ受クル
ト云フコトハ、是ハ當然ナコトデアリマス、
ソコデ第十條ノ二ノ改正案ニ付テ私ガ質疑
ヲ致シタノデアリマス、ケレドモ之ニ對ス
ル本田君ノ御答辯ハ、能ク私ノ問ハントス
ル所ノ意義ヲ御了解ニナラナイヤウナ御答
辯デアル、又第二點ノ御答辯ニ至っテハ、是
ハ洵ニ以テノ外ノ御答辯デアリマス、第十
條ノ改正、是ハ刑事訴訟法ヲ離レテ、此違
警罪卽決例其モノニ付テダケノ改正デアリ
ママ、サウスルト違警罪卽決例中、拘留處
分ノ言渡ヲ受ケタ以後ノ者ニ付テハ、此刑
事訴訟法ノ規定ヲ適用スルガ、未ダ言渡ヲ
受ケナイデ、而モ警察署ニ連レテ行カレ
テ、拘留處分ヲ受ケテ居ル所謂未既拘留者
デアル、此者ニ對シテ何故ニ刑事訴訟法ノ
規定ヲ適用シナイカ、斯ウ云フ質問デアル
ノデアリマス、更ニ本田政府委員ノ御答辯
ヲ煩ハシテ置キマス
〔政府委員本田恒之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=53
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054・本田恒之
○政府委員(本田恒之君) 重ネテ御答申上
ゲマスガ私ハ原君ノ御質問ノ趣旨ヲ取違へ
テ申上ゲタ譯デハアリマセヌ、只今ノ原君
ノ御說明ニ依ッテ、原君ノ御議論ノ根據ガ分
リマシタガ、原君ハ違言非卽決例モ、一ツノ
裁判デアル、裁判デアル以上ハ刑事判決ヲ
運用スル所ノ刑事訴訟法ト云フモノヽ適用
ヲ受ケルノハ當然デアルト云フ御議論ガ第
一點デアルヤウニ思ヒマス、ケレドモ政府
ノ見ル所ニ於キマシテハ違警罪卽決例ト
云フノハ、一ツノ行政處分デアリマシテ、
司法處分デハアリマセヌ、違警罪卽決例ノ
處分ヲ受ケタ者ハ、本人ガ承服シタル場合
ニ於テノミ效力ヲ生ズル、假令本人ガ警察
ノ處罰ヲ受ケマシテモ不服ノ場合、承認ヲ
與ヘナイ場合ニハ效力ハ無イノデアリマ
ス、確定ヲ致サナイノデアリマス、是ハ
體左樣ナル行政處分ニ付シテ置クノガ宜シ
イカ、司法處分ニ付スノガ相當デアルカト云
フコトハ、是ハ別ノ問題デアリマスガ、只
今現ニ我國ニ行ハレテ居リマス、違警罪卽
決例ハ、行政處分デアリマシテ司法處分デ
ハナイノデアリマス、隨テ司法處分、司法
刑事處分ノ運用ヲ致シマス所ノ刑事訴訟法
ノ適用ハ當然無イノデアリマス、此譯デア
リマスカラ、之ヲ强テ司法處分ニ移スコト
ガ出來ルカドウカト一云フ點ハ、只今御議論
ガアリマセヌデシタケレドモ、實ニ重大ナ
問題デアリマシテ、一年ニ四五十万モアリ
マス所ノ違警罪卽決事件ヲバ、正式ナル裁
判ニ移スト云フコトニナリマスト、是ハ容
易ニ出來ル仕事デアリマセヌカラ、已ムヲ
得ズ今日ハ行政處分ニ委シテ居ルノデアリ
マイ、併ナガラ之ニ不服ノ人ハ、區裁判所
ニ正式ナル裁判ヲ求メルコトガ出來ルノデ
アリマス、是ハ區裁判所ガ第一審ノ裁判ニ
ナルノデアリマスカラ、決シテ行政處分デ
アルカラト言ッテ、ソレガ爲ニ司法權ノ侵
害ヲ受ケテ居ル譯デハアリマセヌ、第一點
ハ原君ト根本ノ意見ガ違ヒマスカラ、隨テ
御議論ノ結果ニ於テ相違ヲ生ズルノハ已ム
ヲ得マセヌガ、政府ハ何處マデモ違警罪卽
決例ハ裁判デナイ、一ツノ行政處分デアル
ト云フ見地ヨリ御答辯ヲ申上ゲテ居ル次第
デアリマス、第二點ニ付キマシテハ是、
違警罪卽決處分ヲ受ケタル後ニ、今度修正
ニナリマシタ所ノ刑事訴訟法ノ準用ガアリ
マスノデ、其前ニ於キマシテハドウデアル
カト云フ御話デアリマスガ、是ハ行政處分
ノコトデアリマスカラ、行政廳ノ都合ニ依ッ
テハ、面會モ通信モ許サナケレバナリマセ
ヌ、併ナガラ御承知ノ通リ此違警罪ニ付テ
拘留ヲ致シマシタ場合ハ、翌日ノ日沒以上
拘留スルコトノ出來ナイコトモ、既ニ規定
致ス所デアリマスカラ、大〓ノ場合ハ假令
面會ヲ拒絕致シマシテモ、或ハ面會ガ事實
上出來ナイト云フコトニナリマシテモ、實
際上ニ於テ差支ナイノデアリマス、併ナガ
ラ之ヲ理窟ノ上デ申上ゲレバ、行政處分ト
シテ警察ニ拘留シテ居ルノデアリマスカ
ラ、正當ナル理由ガアレバ、面會通信ヲ拒
ム道理ハナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=54
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055・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 是ニテ質疑ヲ終リマ
シタ、仍テ討論ニ入リマス、通告ニ依ッテ
其發言ヲ許シマス、原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=55
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056・原夫次郎
○原夫次郞君 只今私カラノ質問ニ對シ
テ、本田君カラ御答ニナッタ所ノ其政府ノ所
見ニ付テハ、全然不同意ヲ表スル者デアリマ
ス、又本案ノ此改正案ニ付テモ、是亦其根
本ニ於テ全然反對ヲ致ス者デアリマス、先
程申上ゲマシタ私共ノ所見ニ依ルト云フ
ト、一體此違警罪卽決例ナルモノハ、我ガ
帝國議會開設ノ前、卽チ明治十八年ニ發布
ニナッタル立憲政治以前ノ遺物デアリマシ
テ、今日ノ我ガ法治國家ノ上カラ申シマス
ト云フト、コンナ舊式ナル人權蹂躪ノ種ヲ
始終作ル所ノ、斯ウ云フ法律ヲ存シテ置ク
コトハ、洵ニ是ハ我國家ノ恥辱ト考ヘルノ
デアリマス、一體違警罪卽決例ノ實際ノ運
用如何ト云フナラバ、是ハ諸君モ既ニ御承
知ノ如ク、又政府當局者ニ於テモ熟知致シ
テ居ラレル如ク、是ハ名前ヲ違警罪ト云フ
コトニ藉リテ、其實犯罪捜査ノ用ニ供スル
ノデアリマス、路傍ニ居ル所ノ人ヲ唯、違警
罪ニ名ヲ藉シテ之ヲ拉致シ來シテ、而シテ之
ヲ警察署内ニ留置致シテ置イテ、サウシテ
他ノ犯罪ヲ搜査スルノデアリマス、又科料
モ矢張同樣ノ事デアリマス、是ニ於テカ我
國ノ此違警罪卽決例ニ依ッテ處分ヲ受ケテ
居ル所ノ者ガ年々增加致シテ、四十年以來
ノ統計ヲ此處ニ持フテ居ルノデアリマスガ、
既ニ合計五十万二千二百三十七件、是ガ四
十二年ノ統計デアリマス、其內ノ拘留處分
ヲ受クル者ガ殆ド六万人、其他科料ニ處セ
ラレル所ノ者ガ四十五万人近クデアリマ
ス、是等ノ件數ヲ上シテ居ル所ノ事柄ハ、
其實際ノ違警罪ニ觸レタル所ノ人ミハ殆ド
是ノ百分ノ幾人ニ當リマセウカ、極メテ寥
寥タル數デアリマス、ソコデ先程政府當局
者ガ言ハレタ如ク、成程此違警罪卽決例ニ
依ッテ是等ノ事件ヲ取扱フ、右手ニ警察官
ガ同行ヲ求メ來リ、左手ニ於テ其同一警察
官ガ處分ヲ爲ス、斯ウ云フヤウナ遣方デアリ
マシテ、是ハ一種ノ行政處分デアルト云フ
政府當局ノ御意見デアッタノデアリマスケ
レドモ、是ハ唯〓法文ノ文字ノ上カラ論ズ
ル所デアリマシテ、今日吾々ノ名譽、財產、
生命、身體等ヲ託スルノニハ憲法ノ上デ十
分ナ保障ガアッテ、誰シモ此法律ニ依ルニ
アラザレバ是等ノ權利ヲ侵スコトハ出來ナ
イ、又法律ニ依シテ處罰セラルヽ場合ニ於
テハ、是ハ天皇ノ名ニ於ケル所ノ司法權
デナケレバイカヌト一云フコトハ、是ハ洵ニ
明ナ事デアリマス、ンコデ形式ノ如何ニ拘
ラズ、實質ニ於テハ是ハ一種ノ栽判デアリ
マシテ、一日以上三十日以下ノ拘留處分ヲ
受ケテ警察ノ拘留所ニ留メラレル所ノ人間
ハ、之ヲ何トシテ裁判ト見ナイコトガ出來
マセウカ、況ヤ此言渡ニ對シテハ正式裁判
ヲ求ムルコトガ出來ルト云フ規定ノアル
其規定自體ニ於テモ、是ガ警察官廳デ言渡
ヲ受ケタル所ノモノガ、殆ド不確定ノ處分
デアッテ、其處分ハ正式ニ裁判ヲ受ケレバ
ソレガ正式ニ確定スルト云フ意味合ノ下ニ
出來テ居ル、此法律ト云フモノハ、根本ニ
於テ是ハ一種ノ變態的裁判ト謂ハザルヲ得
ナイノデアリマス、斯ノ如キ苟モ此裁判デ
アル以上ハ、今日段々進步シテ參ッテ警察
ノ機能モ發達致シテ居リマス今日デハ、段
段此刑事訴訟法ノ本旨ニ從ァテ、關係書類ヲ
作製スルトカ、或ハ接見禁止ノ箇條ヲ適用
スルトカ云フコトノ實際ニナッテ居ルノデ
アリマス、サウ云フヤウナ次第デアルノデ
アリマスガ、吾々ハ其根本義ニ於テ、先ヅ
違警罪卽決例ナルモノハ、是ハドウシテモ
我ガ法治國家ノ條規ニ反スル、原則ニ反ス
ル法令デアルガ故ニ、先ヅ政府ト致シテ
ハ、速ニ簡易ナル違警罪裁判所ヲ設置致シ
テ、之ニ備フル所ガナケレバナラヌト云フ
コトヲ、年々力說シテ居ルノデアリマス、
殊ニ今日ハ既ニ陪審制度マデモ制定セラレ
テ居ル今日デアリマス、斯ウ云フドウモ人
權蹂躪ヲ常ニ行フ所ノ、又最モ弱イ者虐メ
ヲスル所ノ此違警罪卽決例ナルモノハ、ド
ウアッテモ吾々有識者ノ間デ之ヲ解決シナ
ケレバナラヌ問題ト思フノデアリマス、實
際今日ノ社會ニ於テ、弱者程同情セナケシ
バナラヌ、此違警罪卽決例ニ罹ル所ノ者
ハ實際ニ於テハ左程聲ヲ大ニシナイ、又
此苦痛ト云フモノヲ世間ニ訴ヘナイノデア
リマスケレド、是等ノ處分ヲ受ケル年々五
十万近クノ者ガ、全ク是ハ法律ノ力ニ依^
テ、又法律ノ名前ニ隱レテ、警察官ガ實際
ニ人權ヲ蹂躪スルノデアリマス、デ是等ノ
事柄ト云フモノハ、是ハ一面カラ言フト、
大キナ社會ノ財政若クハ經濟問題ニモ相成
リ、吾々ガ年々協賛ヲ與ヘテ居ル所ノ此豫
算中ニ於キマシテモ、年々五六万ニ餘ル所
ノ此拘留者ヲ養フ爲ニハ多大ノ國帑ヲ費
シテ居ルノデアリマス、若モ是グ正式ニ檢
事ノ手ニ依シテ起訴セラレ、正式ナル裁判官ノ
下デ栽判ヲ爲スナラバ、此件數ト云フモノ
ハ殆ド百分ノ一カ二ニモ足リナイ件數ニ
止マルコトハ、洵ニ明デアルノデアリマ
ス、斯ノ如キ關係デアリマシテ、横山君ノ
提案ニ係ル此改正案ト一云アモノハ、其根本
義ヲ開却シテ、既ニ非憲法的、非刑事訴訟
法的ノ此法律ヲ土臺トシテ、其枝葉ニ向ッテ
二三ノ修正、改正ヲ加ヘントスル所ノ法律
デアルノデアリマス、吾々ハ斯ル姑息ナル
法案ニハ全然反對致シ、根本ニ於テ此違警
罪卽決例ナルモノハ、之ヲ速ニ廢止シテ、
之ニ代ル所ノ法律ヲ政府竝ニ吾々ノ手ニ
依ァテ之ヲ作ランコトヲ希望スルノデアリ
マス、其意味ニ於テ反對ヲ致スノデアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=56
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057・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀
會ヲ開クニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=57
-
058・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 起立少數デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=58
-
059・井本常作君
○井本常作君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=59
-
060・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=60
-
061・井本常作君
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=61
-
062・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 只今ノ宣告ヲ致シマ
ス、只今ノハ起立少數デアリマスカラ、本
案ハ第二讀會ヲ開カザルニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=62
-
063・井本常作君
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス、此際政府提出、王公族ヨリ內地ノ
家ニ入リタル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ
入リタル者ノ戶籍等ニ關スル法律案、及不
動產登記法中改正法律案ヲ一括議題トシ、
委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=63
-
064・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ日程變更ノ
動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=64
-
065・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、卽チ茲
ニ政府提出、王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタ
ル者及內地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者
ノ戶籍等ニ關スル法律案、及不動產登記法
中改正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會
ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長武藤嘉門君
王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內
地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者ノ戶
籍等ニ關スル法律案(政府提出)(貴族
院送付)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
-王公族ヨリ内地ノ家ニ入リタル者及
内地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者ノ
戶籍等ニ關スル法律案(政府提出、貴族
院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和二年三月二十二日
委員長武藤嘉門
衆議院議長粕谷義三殿
不動產登記法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一不動產登記法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月二十二日
委員長武藤嘉門
衆議院議長粕谷義三殿
〔武藤嘉門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=65
-
066・武藤嘉門君
○武藤嘉門君 私ハ私共委員ニ付託サレマ
シタル、王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者
及內地ノ家ヨリ王公家ニ入リタル者ノ戶籍
等ニ關スル法律案、及不動產登記法中改正
法律案、此二件ノ委員會ノ經過ト結果ヲ御
報告致シマス、委員會ハ數日ニ亙リマシテ、
愼重ニ審議致シマシタ、委員ノ原夫次郞君
カラ專門ニ涉ル所ノ詳細ナル御質問ガアリ
マシタ、而シテ委員會ニ於キマシテハ、全
會一致ヲ以テ原案ヲ可決致シマシタ、此段
御報告シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=66
-
067・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 此ノ兩案ニ對シマシ
テハ、何等ノ發言ノ通告モアリマセヌ、仍
テ直ニ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=67
-
068・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=68
-
069・井本常作君
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=69
-
070・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ナシト認メマス、仍テ直ニ兩案ノ第二讀
會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ニ供シマス
王公族ヨリ內地ノ家ニ入リタル者及內
地ノ家ヲ去リ王公家ニ入リタル者ノ戶
籍等ニ關スル法律案第二讀會(確定議)
不動產登記法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=70
-
071・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 別ニ御發議アリマセ
ヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=71
-
072・井本常作君
○井本常作君 再ビ議事日程變更ノ動議ヲ
提出致シマス、卽チ政府提出、震災被害者
ニ對スル租稅ノ免除猶豫等ニ關スル法律案
ヲ上程シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ
進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=72
-
073・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=73
-
074・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ヲ變更セラレマシタ、卽チ茲
ニ政府提出、震災被害者ニ對スル租稅ノ免
除猶豫等ニ關スル法律案ノ第一讀會ノ續ヲ
開キ、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長井
坂豐光君
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月二十二日
委員長井坂豐光
衆議院議長粕谷義三殿
〔井坂豊光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=74
-
075・井坂豐光君
○井坂豐光君 震災被害者ニ對スル租稅ノ
免除猶豫等ニ關スル法律案ノ委員會ノ結果
ヲ簡單ニ御報告致シマス、本月七日ノ震災
ニ因リマシテ、其震災地ノ被害者ニ對シ租
稅ヲ免除シ又ハ徵收ヲ猶豫スル等ノ必要ヨ
リ、此法案ガ提出セラレタノデアリマス、
各委員ニ於カレマシテ、此罹災地ノ復舊及
復興ニ關シマシテ種々有利ナル所ノ質疑應
答ガアッタノデアリマス、其詳細ナル點ハ
速記錄ニ依シテ御參照アレバ委シク分ルノ
デアリマス、其結果滿場一致ヲ以チマシテ
此法案ハ可決セラレタノデアリマス、此段
御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=75
-
076・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ別ニ
質疑討論等ノ通告ガアリマセヌ、仍テ直ニ
採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=76
-
077・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ
1井本常作君直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
き、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=77
-
078・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=78
-
079・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ニ供シマス
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案(政府提出)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=79
-
080・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 別ニ御發議ガアリマ
セヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=80
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081・井本常作君
○井本常作君 三度議事日程變更ノ動議ヲ
提出致シマス、卽チ日程第十六及第二百十
五號ヲ繰上ゲ逐次議題トナシ、其審議ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=81
-
082・議長(粕谷義三君)
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ日程ハ變更セラ
レマシタ、日程第十六、議院建築速成竝附
屬設備ノ計畫促進ニ關スル建議案ヲ議題ト
致シマス、齋藤隆夫君
第十六議院建築速成竝附屬設備ノ計
畫促進ニ關スル建議案
(齋藤隆夫君外八名提出)
議院建築速成竝附屬設備ノ計畫促進
ニ關スル建議案
議院建築速成竝附屬設備ノ計畫促
進ニ關スル建議
議院建築工事ハ曩ニ本院ノ建議ニ鑑ミ其
ノ竣功年度及年割額ヲ繰上曾額シタルモ
現議院ハ大正十四年火災後ノ假建築ニ係
リ其ノ不便不利尠少ナラサルノミナラス
議院建築竣功ニ伴ヒ之ニ附隨スヘキ室內
竝屋外設備及議院事務室圖書館倶樂部室
其ノ他ノ附屬建築物等ニ付未タ具體的計
畫ヲ樹ツルニ至ラサルハ甚タ遺憾トスル
所ナリ依テ政府ハ技術上能フ限リ議院建
築ノ速成ヲ期シ併セテ附屬設備ノ具體的
設計ヲ樹テ迅ニ之カ實現ニ努メラレムコ
トヲ望ム
右建議ス
議院建築速成竝附屬設備ノ計畫促進ニ
關スル建議案理由書
議院建築速成ノ議ハ數年前ヨリ本院ノ要
望アリシモ大正十四年度豫算ニ於テ財政
整理ノ結果其ノ竣功年度及年割額ヲ繰延
減額セラレタリ玆ニ於テ本院ハ第五十回
議會中全院一致ヲ以テ政府ニ對シ議院建
築速成ニ關スル建議ヲ爲スニ至リ爾來政
府ハ之カ繰上增額ヲ行ヒ其ノ速成ニ努メ
タルモ尙之ヲ以テ十分ナリト認メ難ク且
現議院ハ大正十四年初秋火災ノ厄ニ遇ヒ
僅ニ三箇月ノ短時日ヲ以テ落成シタル假
建築ナルヲ以テ諸設備ニ缺クル所多キハ甚
タ遺憾トスル所ナリ依テ政府ヲシテ技術上
能フ限リ更ニ其ノ速成ニ努メシメムトス
而シテ新議院建築工事豫算中ニハ室內裝
飾費備品費及庭園設備費等ヲ包含セサル
趣ナルヲ以テ議院建築ノ進捗ニ伴ヒ是等
附屬ノ經費ニ付政府ハ至急豫算ニ計上ノ
要アルモノト認ム殊ニ所謂第二期計畫ト
シテ施工ヲ要スヘキ議員專用事務室、圖
書館、倶樂部室、大食堂、議長官舍等其ノ
他議院ニ附隨スル必要ナル諸設備ニ至リ
テハ未タ何等具體的計畫ノ立案セラレタ
ルヲ聞カサルノミナラス本計畫ニ關シテ
ハ明治四十三年議院建築調査會ニ於テ第
二期工事ハ第一期工事中適當ノ時期ニ豫
算ヲ編成シ著手スヘキ旨決議シタルノ沿
革ヲ有シ最近ニ於テモ本院ハ院議ヲ以テ
議員事務室設置ニ付政府ニ對シ之カ實現
ヲ督勵シタルニ拘ラス是等施設ニ關シ今
尙實行ノ緒ニ就カサルハ最遺憾トスル所
ナリ依テ政府ヲ促シテ速ニ其ノ具體的設
計ヲ樹立セシメ之ニ關スル豫算ヲ編成シ
少クトモ昭和三年度ヨリ之カ實行ニ著手
シ新議院竣功ト同時ニ之ヲ完成セシメ以
テ議院設備ノ完全ヲ期セムトス是レ本案
ヲ提出スル所以ナリ
〔齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=82
-
083・齋藤隆夫君
○齋藤隆夫君 議題トナッテ居リマスル議
院建築速成竝附屬設備ノ計畫促進ニ關スル
建議、是ハ各派一致ノ上ニ提出致シタ議案
デアリマス、先ヅ其本文ヲ朗讀致シマス「議
院建築工事ハ曩ニ本院ノ建議ニ鑑ミ其ノ竣
功年度及年割額ヲ繰上增額シタルモ現議院
ハ大正十四年火災後ノ假建築ニ係リ其ノ不
便不利尠少ナラサルノミナラス議院建築竣
功ニ伴ヒ之ニ附隨スヘキ室內竝屋外設備及
議員事務室圖書館倶樂部室其ノ他ノ附屬建
築物等ニ付未タ具體的計畫ヲ樹ツルニ至ラ
サルハ甚夕遺憾トスル所ナリ依テ政府ハ技
術上能フ限リ議院建築ノ速成ヲ期シ併セテ
附屬設備ノ具體的設計ヲ樹テ迅ニ之カ實現
ニ努メラレムコトヲ望ム」理由ハ理由書ニ
記載シテ、諸君ノ御手許ニアリマスルニ依ッ
テ御覽ヲ願ヒマス、又此理由ヲ口頭ヲ以テ
敷衍スル積リデゴザリマスルケレドモ、今
日ハ是ヨリ數多ノ議案ガアリマス、法律案
ガ十數件、緊急質問其他二百件以上ノ建議
案ガ上程セラレテ居リマスニ依ッテ、時間ヲ
省キマスルガ爲ニ、議長ノ御許可ヲ得テ此
說明ノ原稿ヲバ速記錄ニ揭載スルコトヲ許
サレマシテ一切省タ積リデアリマス、ドウ
カ滿場御賛成ノ上可決アランコトヲバ希望
致シマス(拍手)
〔補足〕
本建議案ハ本院各派一致ノ提案デアリマ
シテ其理由ニ就キマシテハ理由書ニ詳細
ヲ盡シテ居リマスガ私ハ提案者ノ一人ト
シテ簡單ニ說明申上ゲタイト思ヒマス
議院建築ハ御承知ノ通リ現在ニ於キマシ
テハ豫算總額二千餘万圓ヲ以テ昭和七年
度ニ竣功致スコトニナッテ居リマスガ之
ハ一昨年第五十回議會ノ當時全院一致ヲ
以テ速成ノ建議ヲ致シマシタ結果デアリ
マシテ尙來年度豫算ニ於テモ年割額ヲ五
十万圓繰上ゲ曾額致シテ居リマス併シ乍
ラ吾々ハ此國家ノ代表的建築物ノ一日モ
速カニ竣工スルコトヲ祈ルモノデアリマ
シテ殊ニ現在ノ此議院ハ一昨年火災後ノ
假建築デアリマス故諸君ニ於カレテモ尠
カラズ不便不利ナルコトヲ痛感セラレテ
居ルコトト存ジマス依テ更ニ政府ヲ促シ
テ財政上技術上許ス限リ其竣功年度ヲ速
メルヤウニ致シタイト云フノガ本建議案
前段ノ趣旨デアリマス
次ニ諸君ニ御紹介致サナケレバナラヌコ
トハ現在ノ豫算ヲ以テ新議院ガ竣功致シ
マシテモソレハ眞ノ完成デハアリマセヌ
卽チ現在ノ議院建築ノ豫算ハ只本館ノ建
築工事ダケデアリマシテ各室ハ工事ガ出
來上リマシテモ室內ノ裝飾トカ椅子卓子
等ノ調度類ハ全ク未ダ見積ノテアリマセ
ヌ故眞ノ完成ト云フコトハ出來ナイノデ
アリマス又議院ハ出來テモ周圍ノ庭園設
備等モ全ク缺ケテ居ルワケデアリマスカ
ラ是等ニ就テモ議院完成迄ニハ豫算ヲ追
加計上シテ眞ノ完成ヲ期サナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス
殊ニ是等議院本館ノ建築ト相俟シテ議會
制度ノ運用ヲ圓滑ニシ各議院ノ職貴ヲ
完全ニ遂行セシムル爲ニ所謂第二期計畫
トシテ施工シナケレバナラヌ所ノ議員專
用事務室ヲ始メトシテ圖書館、議員倶樂
部大食堂、議長官舎等ノ如キ附屬建築物
ハ未ダニ何等具體的ノ設計ガ出來テ居ラ
ナイノハ甚ダ遺憾千萬ナコトデアリマス
之ニ關シテハ明治四十三年議院建築調査
會當時ニ於キマシテモ第二期工事ハ第一
期工事中適當ノ時期ニ豫算ヲ編成シテ著
手スルコトニ決議シタ事實モアリマス又
議員事務室設置ニ就テハ第四十六回及第
五十一囘議會ニ於テ建議若ハ決議トシテ
本院ヲ通過致シテ居ル次第デアリマシテ
今ヤ此等計畫ノ促進ニ就テハ全院一致ノ
熱烈ナル要望トナッテ居ル狀況デアリマ
ス
依テ吾々ハ政府ガ是等ノ絕對的必要ナル
附屬ノ諸設備ニ關シテ速カニ其具體的設
計ヲ立案シテ之ニ要スル豫算ヲ編成セム
コトヲ望ムモノデアリマシテ恐ラク相當
多額ノ豫算ヲ要スルコトトハ思ヒマスケ
レトモ前申ス通リ議院本館ノ建築ト相
俟シテ絕對ニ必要ナル施設デアリマスカ
ラ其完成時期ヲ誤ラヌヤウ遅クトモ昭和
三年度ヨリ其實行ニ著手シテ議院全部ノ
諸設備ノ完全ナラムコトヲ切望シテ止マ
ナイ次第デアリマス之ガ本建議案後段ノ
趣旨デアリマス願ハクハ本案ヲ速カニ御
審議ノ上御賛成アラムコトヲ希望致シマ
ス
〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=83
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084・井本常作
○井本常作君 本案ハ卽決可決セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=84
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085・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ノ如ク
卽決可決ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=85
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086・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決セラレマシタ(拍手)次
ハ日程二百十五、部落問題ノ國策確立ニ關
スル建議案ヲ議題ト致シマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス、小久保喜七君
第二百十五部落問題ノ國策確立ニ關
スル建議案(望月小太郞君外十八名
提出)(委員長報告)
報告書
一部落問題ノ國策確立ニ關スル建議案
(望月小太郞君外十八名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月九日
委員長小久保喜七
衆議院議長粕谷義三殿
〔小久保喜七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=86
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087・小久保喜七
○小久保喜七君 只今ノ建議案ハ部落問題
ニ關シマスル根本的國策確立ノ建議案デア
リマス、是ハ各派一致ノ提案ニ係ッテ居リ
マスルモノデ、而モ內外ノ情勢カラ鑑ミマ
シテ、方今ノ重大問題ト考ヘマシテ、會ヲ
開キマスルコト三囘、而シテ內務大臣其他
關係政府委員ノ出席ヲ求メマシテ、質問應
答ノ結果、政府ニ於キマシテモ大體賛成ノ
意ヲ表サレテ、滿場一致ヲ以テ可決ヲ致シ
マシタノデアリマス、何卒諸君ニ於キマシ
テモ滿場一致可決アランコトヲ深ク希望致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=87
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088・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ハ委員長報告ノ
通リ可決スルコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=88
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089・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決セラレマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=89
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090・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス、此際日程第百九十七ヲ引上ゲ上
程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=90
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091・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ日程變更ノ
動議ニハ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=91
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092・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
百九十七、故金玉均表彰ニ關スル建議案ヲ
議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シ
ママ、荒川五郞君
第百九十七故金玉均表彰ニ關スル建
議案(志賀和多利君外五名提出)
故金玉均表彰ニ關スル建議案
故金玉均表彰ニ關スル建議
故金玉均ニ對シテ相當ナル表彰ノ途ヲ講
シ且其ノ子孫ヲシテ天恩枯骨ニ及フノ至
澤ニ浴セシムルハ昭和ノ新政ニ當リ極メ
テ機宜ヲ得タルノ處置ナルヲ信ス政府ハ
速ニ之ニ對シテ適當ナル措置ヲ爲サムコ
トヲ望ム
右建議ス
故金玉均表彰ニ關スル建議案理由書
朝鮮改革黨ノ首領故金玉均ハ夙ニ世界ノ
大勢ニ察スル所アリ始メ我カ國ニ依リテ
本國ノ稅政ヲ改革シ支那蠶食ノ勢ヲ制シ
以テ東方平和ノ基礎ヲ確立セムコトヲ期
シ挺身之カ爲ニ竭ス所アリ不幸ニシテ一
朝兇刃ニ斃レタリト雖其ノ結果帝國ヲシ
テ日〓戰争ニ依リ東方平和ノ基礎ヲ確立
シ今日ノ隆運ヲ啓クニ至ルノ機會ヲ與ヘ
シメタルノ遺績ト其ノ精忠苦節トハ宜シ
ク之ヲ顯彰セサルヘカラサルモノナルヲ
信ス
惟フニ我カ帝國カ維新ノ宏謨ヲ大成シ國
光ヲ中外ニ宣揚シ臺灣ヲ領シ樺太ヲ復シ
更ニ韓國ヲ併合シテ今日ノ隆運ヲ啓キタ
ル所以ノモノハ種種ノ原因アリト雖實ニ
主トシテ日〓日露兩大戰役ノ結果ニ由來
セスムハアラス蓋日〓戰役ノ大㨗ハ日露
戰役ノ前驅ニシテ前役ノ效果ナクムハ後
役ノ勝敗倅ニ斷スヘカラサルモノアリシ
モ未タ知ルヘカラサリシナリ當時此ノ兩役
ニ於テ擧國一致敵愾ノ精神ヲ鼓舞シ王師ノ
嚮フ所海ニ陸ニ戰ヘハ必ス勝チ攻ムレハ
必ス取リ終ニ能ク開戰ノ目的ヲ達スルヲ
得タリト雖我カ國ヲシテ此ノ大捷ヲ博シ
以テ東洋平和ノ基礎ヲ確立スルノ機會ヲ
得セシメタルハ金玉均カ春申浦頭ニ濺キ
タル鮮血實ニ日〓開戰ノ導火線ト爲リシ
ニ依ルモノナルコト亦タ疑ヲ容レサル所
ナリ
金玉均夙ニ本國ノ衰弊ヲ慨シ我カ國ニ依
リテ改革ノ實ヲ擧ゲ其ノ頽勢ヲ挽回セム
ト欲シ明治十七年同志ト共ニ事ヲ謀リ計
敗レテ我カ國ニ逃レシヨリ流離困苦或ハ
南島ノ瘴癘ニ臥シ或ハ北海ノ風雪ニ苦シ
ミ逆境ニ處スルコト十餘年此ノ間此カ國
朝野ノ人士ト交遊シテ書策スル所アリ終
始一貫其ノ志ヲ渝ヘス之カ達成ヲ期ス明
治二十七年朝鮮東學黨ノ事變起ルヤ日夕
其ノ動靜ヲ窺ヒ以テ風雲ノ會ヲ待チタリ
シカ時恰モ大院君ノ密使アリ玉均之ニ依
リテ大ニ爲ス所アラムトス適〓〓國直隷
總督李鴻章父子朝鮮ノ形勢漸ク急ナラム
トスルヲ看取シ以爲ラク玉均ノ日本ニ在
ルハ虎ヲ野ニ縱ツカ如シト百方計ヲ講シ
韓人洪鐘宇ヲシテ之ヲ上海ニ誘殺セシメ
剩ヘ死屍ヲ軍艦操江號ニ載セテ朝鮮ニ致
送シ韓廷ヲシテ梟首ノ嚴刑ニ處セシメタ
リ事既ニ三十餘年ノ舊ニ屬スト雖其ノ慘
狀ハ今尙世人ノ記憶ニ忘ルル能ハサル所
ナリ而シテ此ノ〓國及朝鮮カ國際上ノ儀
禮ヲ無視シ我カ國保護ノ下ニアル玉均ニ
加ヘシ暴虐ノ措置ハ大ニ我カ國民ヲ憤激
セシメ事態紛糾幾多ノ懸案交渉ト爲リ遂
ニ日〓ノ大戰ヲ開始シ延テ日露戰役ノ原
動力ト爲リタルモノナリ
曩ニ朝鮮併合ノ大業成リ舊韓ノ功臣各既
ニ顯彰セラレ八道ノ人民熙熙トシテ我カ
皇一視同仁ノ下ニ優渥ナル恩澤ニ浴シタ
ルノ時獨リ此ノ東洋平和ノ犧牲者タル故
金玉均ノ精忠苦節ト其ノ遺績トヲ埋沒セ
シムルハ豈ニ我等國民ノ忍フ所ナラムヤ
況ヤ此ノ際金玉均ヲ表彰シ其ノ子孫ヲシ
テ長ヘニ天恩枯骨ニ及フノ至澤ニ浴セシ
ムルハ啻ニ玉均一人ノ爲ノミニアラス寔
ニ新附ノ民ヲシテ同化セシムルノ要道ニ
外ナラサルヘキモノアルニ於テオヤ故ニ
以テ同志某等ハ曩ニ大隈內閣及寺內朝鮮
總督ニ對シテ建言スル所アリ次テ第三十
八囘議會ニ於テ貴衆兩院ノ院議ヲ經テ政
府ニ建議スル所アリタルモ何等省セラル
ル所ナク今日ニ至レリ今ヤ昭和新政ノ始
ニ當リ此ノ德澤ヲ布クハ誠ニ時宜ヲ得タ
ルモノナルヲ信ス是レ本案ヲ提出スル所
以ナリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=92
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093・荒川五郎
○荒川五郞君 簡單ニ當席ヨリ說明致シマ
ス.
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=93
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094・荒川五郎
○荒川五郞君 諸君、申上ゲルマデモナク
諸君御承知ノ通り故金玉均氏ハ我ガ近世ニ
於ケル東洋ノ志士デアリマシテ、東洋平和
ト云フ此重大ノ事ニ對シテ、金氏ハ身ヲ挺
シテ此難局ニ當リマシテ、其苦節慘澹タル
奔走努力バ、洵ニ吾々ノ尊敬シ敬慕スル所
デアリマス、然ルニ遂ニ不幸ニシテ一朝兒
刄ニ殪レラレマシタケレドモ、其志ハ竟ニ
成ッテ日韓合併モ行ハレ、今日ノ東洋ノ平和
ヲ見ツヽアリマスコトニ付キマシテハ、金
氏ノ平素ノ熱誠努力ノ效果ハ洵ニ少クナイ
ト認メマスル、(拍手)今日斯カル天下ノ志
士ニ對シテ、我ガ聖世ノ恩澤ヲ其子孫ニ及
ボスト云フコトハ最モ至當ノ措置ト考ヘマ
ス、又御同樣ノ責任デアルト思ヒマス、希
クバ其遺族ヲシテ聖世ノ恩澤ニ浴サシメラ
ルヽヤウ、其志ヲ表彰致シタイ、是レ本案
ヲ提出致シマシタ大第デアリマス、滿堂ノ
諸君ノ有力ナル御賛同ヲ切ニ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=94
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095・志賀和多利
○志賀和多利君 本案ハ三十八議會ニ於テ
本院ヲ滿場一致ヲ以テ通過致シマシタル案
デアリマス、爾來幾多ノ事態ノ爲ニ此表彰
ガ遲レテ居ルコトハ極メテ遺憾トスル所デ
アリマス、今日ハ正ニ時機到來シタルモノト
信ジマスルガ故ニ、何卒滿場一致ヲ以テ本建
議案ヲ卽決可決セラレンコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=95
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096・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今ノ志賀和多利君
ノ卽決可決ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=96
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097・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ卽決可決セラレマシタ拍
き日程第二ハ延期ノ申出ガアリマシタ、
之ヲ許スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
購稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第六百十二號第一項己及癸ヲ左ノ如ク改ム
己針葉樹(廣葉杉ヲ除ク)
己ノ一長二十センチメートル、
トル、厚七ミリメートルヲ超エサルシダー
己ノ二其ノ他
イ厚六十ミリメートルヲ超エサルモノ
ロ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
ハ厚二百ミリメートルヲ超エタルモノ
ニ丸太、割材及其ノ他
癸其ノ他
イ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)
〔村山喜一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=97
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098・粕谷義三
○村山喜一郞君 只今上程セラレテ居リマ
ス關稅定率法中改正法律案、卽チ木材關稅
ニ關シテ其改正案ノ趣旨ヲ辯明致シタイト
思ヒマス、御承知ノ如ク曩ニ第五十一議會
ニ於キマシテ關稅定率法改正案ガ提出セラ
レマシタ時ニ、木材關稅ニ關シマシテハ
政友會ヨリ政府案ニ對スル條正案ガ出テ居
ルノデアリマス、私共ハ之ニ對シテ相當意
見ヲ持ッテ居リマシタナレドモ、單ニ木材ノ
ミナラズ、他ノ品目ニ對シテモ相當修正ヲ
加フベキモノガアルト認メタノデアリマ
ス、併ナガラ當時會期切迫ノ折柄、十分ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=98
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099・井本常作
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ延期致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=99
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100・粕谷義三
○井本常作君 日程第三ノ審議ハ後廻シニ
サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=100
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101・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=101
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102・村山喜一郎
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ後廻シニ決シマシタ-日程第四
關稅定率法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マっ、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、村山
喜一郞君
第四關稅定率法中改正法律案(東武
君外七名提出)第一讀會
幅七センチメー
無稅
立七·二五
1ト方ル方
メ每メ毎メ毎立四·一〇
1トル
立方二·五〇
1トル
每立方二·六五
メ1トthe
從價一割二分
從價五分
是ガ審議ヲ遂グル時日ガ無カッタが爲ニ、
木材モ他ノ品目ト併セテ、政府ガ近ク設置
セラルベキ關稅ノ常設委員會ニ、其審議ヲ
託シタノデアリマス、而シテ政府ハ當議會
ニ其成案ヲ提出スルコトデアラウト、私共
ハ深キ期待ヲ持ノテ居〓タノデアリマスガ
今日ニ至ルマデ政府ハ之ヲ提案スルノ運ニ
到ラナイノデアリマス、卽チ私共ハ各派有
志ノ聯合ヲ以チマシテ、本案ヲ提出スル次
第ニ至ッタノデアリマス、御承知ノ如ク我國
ノ地勢ハ森林國デアリマシテ、本材生產ヲ
以テ十分ニ立チ得ル素質ヲ持シテ居ルノデ
アリマス、若モ政府ガ森林政策ニ對シテ的
確ナル政策ヲ立テマシタナラバ、單ニ自給
自足シ得ラレルノミナラズ、進ンデ木材輸
出國タル所ノ素質ハ、十分ニ具ヘテ居ルト
私共ハ信ジテ居ル者デアリマス(拍手)然ル
ニ近年ノ趨勢ヲ見マスレバ、滔々トシテ極
メテ安キ外國產木材ガ毎年ノ如ク其輸入ガ
激曾致シツヽアルノデアリマス、六大都市
デアリマスル所ノ東京、横濱、神戶、大阪、
名古屋等ノ本材消費地ハ勿論ノ事、内地ノ
木材生產地帶デアリマスル所ノ、山間僻落
ニ到ルマデモ、今日米材ト云フモノガ到ル
處ニ侵入シテ、内地材ヲ壓迫シツヽアルト
云フ現象ハ諸君ノ御承知ノ通リデアラウト
思ヒマス、是ガ爲ニ内地ノ林業家竝ニ内地
木材ノ加工竝ニ製材ニ從事シテ居ル所ノ當
業者ノ、苦痛困憊ノ情ハ實ニ名狀スベカラ
ザル、慘憺タル悲況ニ陷ッテ居ルノデアリマ
ス、而モ諸君、我國ノ原始產業デアリマス
所ノ農業方面ニ於テ、關稅政策ハ如何樣ニ
運用セラレテ居ルカト申シマスレバ、園民
生活ノ必要品デアル所ノ米及ビ籾、小麥、
若クハ小麥粉、大小豆、牛肉、鳥卵、「バ
タ」「ミルク」斯ノ如キ農產物ニ對シテ、悉
ク從價一割乃至二割ノ保護關稅ヲ以テ內地
ノ農業ヲ保護シテ居ルノデアリマス、林產
モ亦農業ト其性質ヲ同ジウスルモノデアリ
マシテ、土地ヲ基本トシテ勞カガ之ニ加ハ
ル所ノ原始產業デアリマス(拍手)若モ農業
ヲ保護スルト云フ精神ガ林業ニモ及ブモノ
デアリマスルナラバ、當然此本材關稅ト云
フモノハモット高キ所ニ置カナケレバナラ
ヌ筈デアリマス、御承知ノ如ク昨年政府ハ
木材關稅ニ關シテ、僅カナガラ改正ヲ致シ
マシタナレドモ、大藏省ノ昨今發表致シテ
居リマス所ノ昨十五年度ニ於ケル外國產木
材ノ輸入額ト云フモノハ、其金額ニ致シマ
シテ總額一億三百六十一万三千圓デアリ
マス、此中有稅品トシテ、卽チ課稅ヲ受ケテ
居リマスルモノハ約其二割、二千二百二十
一万八千圓デアリマシテ、殘リ八千百三十
九万圓ト云フ巨額ノモノハ、無稅品トシテ
輸入シツヽアルノデアリマス、卽チ私共ハ
此無稅品ニ對シテ此儘差措クト云フコト
ハ、內地林業保護ノ意味ニアラズ、斯ウニ云
フヤウナ見地ニ立チマシテ、二百「ミリ」以
上ノ角材ニ對シテハ每立方「メートル」二圓
五十錢、竝ニ丸太及ビ割材其他ノモノニ對
シテハ每立方「メートル」二圓六十五錢、卽
チ從價ニ致シマシテ約八分ニ相當スル課稅
ヲセントスルモノデアリマス、卽チ此結果
ト致シマシテ、從來ノ有稅品デアリマス所
ノ稅率ニ對シテモ亦相當ノ引上ヲ要スルノ
デアリマス、卽チ厚サ六十「ミリメトトル」
ヲ超エザルモノニ對シテハ七圓二十五錢、
厚サ二百「ミリメートル」ヲ超エザルモノニ
對シテ四圓十錢ニ改メタイ、斯ウ云フ考デ
アリマス、卽チ私共ハ之ニ依シテ木材ノ市
價ヲ、約平均シテ一割ダケハ引上ゲルコト
ガ出來ルデアラウ、其結果外材ノ輸入ハ約
二割ヲ減ズルコトニ相成リハシナイカト思
フノデアリマス、卽チ內地木材市價ノ一割
ノ引上ハ、山元ニ於ケル立木ト致シマスレ
バ約二割ニ相當スルノデアリマス、卽チ
ソレダケガ山林所有者ノ收入ヲ曾スト云フ
コトニ相成ルノデアリマスルカラ、之ニ依ッ
テ更ニ内地ノ造林事業ニ對シテ、餘程刺戟
ヲ與ヘルモノデアラウト存ジマス、卽チ內
地林業ヲ保護スルト同時ニ、延テ農村振興
ノ爲ニ少ナカラザル裨益ヲ與フルモノデア
ラウト存ジマスルガ故ニ、本案ヲ提出シタ
ル次第デアリマス、何卒御賛成アランコト
ヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=102
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103・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス、三輪市太郞君
〔三輪市太郞君登壇〕
〔「三輪君反對カ贊成カ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=103
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104・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 質疑デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=104
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105・三輪市太郎
○三輪市太郞君 議題トナリマシタル關稅
定率法中改正法律案ニ對シテ、私ハ大體ニ
於テ反對ノ意見ヲ有スル者デアリマス、然
レドモ或ハ私ノ見ル所ニ誤リナキヤヲ慮リ
マシテ、玆ニ提案者ニ其疑點ヲ質シタイト
思フノデアリマス、私ノ第一御問ヲ致シタ
イノハ、只今提案者ハ終リニ臨ミマシテ、
本案ハ農村振興ノ一助トナルガ如キ御說明
デアリマシタガ、私ハ寧口正反對ノ考ヲ持シ
テ居ルノデゴザリマス(拍手)ソレデ其疑ノ
要點ト致シマシテハ、本案ノ目的ガ木材卽
チ內地ノ本材ノ値段ヲ引上ゲルト云フコト
デアリマスルガ、値段ガ上レバ從ッテ由林ヲ
間伐ニ止ムベキモノモ、遂ニハ値段ニ釣ラ
レテ濫伐スルト云フコトハ是ハ自然ノ結
果デアラウト思ヒマス、今ヤ各府縣共ニ砂
防工事ヲ獎勵サレマシテ、漸クニ砂防ノ效果
顯レ、又水源地ノ溷渴ヲ免シル時代ニ到ル
タメデアリマス、然ルニ玆ニ由林ヲ濫伐致
ス結果トシテハ、再ビ土砂ノ流失スルコト
モ亦疑ナキヲ得ヌノデアル、土砂ノ流失ハ
卽チ河川ノ河底ヲ高メ、隨テ自然ニ惡水排
除ノ出來得ルモノモ、此河底ノ嵩ム爲ニ、
遂ニハ惡水排除ヲ阻害スルト云フ結果トナ
ルコトハ恐ラク異論ヲ唱ヘルノ餘地ハアル
マイト思ヒマス(「ヒヤ〓〓」拍手)加之既ニ
年々ノ此河底ノ嵩ミマシタル爲ニ、近來到
ル所ニ惡水ノ排除機械ガ据付ケテアルトハ雖
モ、是トテ此上河底ガ嵩マレバ、排除ノ能
率ト云フモノハ滅ズル、隨テ之ニ要スル燃
料モ亦增加セザルヲ得ナイノデアッテ、結局
農村ト云フモノヽ困憊ハ、現在ヨリモ一層
甚大スルデアラウト私ハ信ズルガ、提案者
ハ如何ナル所見デアルカ、是ガ第一ニ伺ヒ
タイ、第二ニハ此法案ガ通過シ、實施ヲ見
ル曉ハ、社會政策ト矛盾シヤセヌカト云フ
コトノ私ハ疑ヲ持シテ居ルノデゴザリマス、
既ニ此案ガ議會ニ提案サレマシタルト共
ニ、市場ニ於ケル本材卽チ輪入ノ本材値段
ト云フモノハ約二十分ノ一卽チ五分ノ騰
貴ヲ見タノデゴザリマス、恐ラタ之ヲ實施
サレル場合ニ於テハ、此趨勢ヨリ判斷シタ
ナラバ、一割五分乃至二割ノ價格ガ暴騰ス
ルコトハ疑ノ餘地ハサイノデゴザリマス、
然ルニ此米材等ヲ使用スル需要者ハ何人デ
アルカト云ヘバ、何レモ中產階級以下ノ者
ガ需要スルノデアリマス、假ニ上流ノ人ガ購
求スレバ借家用デアリマス、上流ノ建築ニハ
恐ラク斯ル輸入材ヲ使用スル人ハ少カラウ
ト思フ、其結果トシテハ、小借家等ノ借家
賃ガ暴騰スルコトモ明カデアル、惡家主ヲ
シテ玆ニ家賃上ノ口實ヲ與フルノ材料トナ
ルモノデアッテ、是ガ社會政策ノ上ニ關係ガ
無イト云フ御意見デアラウカ、之ニ反シテ
造林業卽チ植林ヲ爲シテ居ル所ノ人ヒト云
フハ先ヴ中產以上、寧口富豪級ニ屬スル
人ガ多イノデ、恐ラク由林ヲ持シテ居ルベ
キ人ニ中產以下ノ人ハ無イノデアラウト思
フノデゴザイマス、近來政府若ハ議員ヨリ
提案サレル所ノ案ヲ見マスルニ、隨分財產
階級ノ保護ハ色ミ提案サレルヤウデゴザリ
マスルガ、斯ウ云フ細民ヲ苦メル卽チ小借
家等ニ住居スル所ノ下級ノ者ヲ苦シメル結
果ヲ招クガ如キ法案ハ、如何デアラウカト
思ヒマスガ、提案者ハ本案ハ社會政策ニ背
反スルモノデナイト云フノ御考デアルカ
是ガ承リタイノデアル、第三ニハ元來我國
ハ申迄モナク四面環海ノ地デアッテ、總テノ
モノハ自給自足ノ方針ヲ執ラサケシバナラ
チイデアラウト思フノデゴザイマス、然ルニ
現今輸入木材ガ幸ニ比較的相場ガ廉價ニ維
持サレテ居ルカラシテ、此機會ニ大ニ樹木
ヲ繁茂爲サシメレバ洵ニ結構デアル、ノミ
ナラズ樹木ノ生長ニ因テ相當利殖トナル、
若シ山林ヲ濫伐シタ結果ハ水源地ガ旱魃ノ
場合ニ溷渴致シタナラバ、水力事業等ニモ
影響スルコトハ多大デアル、斯ウ云フ場合
ニハ幸ニ山林ヲ所有スル所ノ人ヒハ、何シ
モ富豪階級デアルカラシテ、之ヲ濫伐爲サ
シメズニ、此所數年ノ間ニ一層繁茂ヲ致シ
タナラバ、卽チ自給自足ノ國家ノ根本方針
ニモ適フモノデアッテ、ドウシテモ此場合
所謂濫伐ト云フコトハ防ガナケレバナラヌ
時代ニ、斯ル富豪級一部ノ人とヲ保護スル
ガ如キ法案ハドウデアラウカト思フ、是ガ
國家ノ根本方針ト私ハ背反スルガ如タ思フ
ノデアルガ、提案者ハ如何ナル所見デアル
力、併セテ伺ヒタイ、若シ是ガ國家ノ根木
方針ニ觸レヌトアルチラバ、今ヤ電氣事業
ハ隨分盛ニナッテ、電柱等ニ要スル木材モ多
大デアリ、或ハ交通機關ノ爲ニ枕木等モ隨
分要ルノデアル、今日我國ノ面績中ノ山林
ハ六割アルト云フコトガ理由書ニアリマシ
タガ、如何ニモ六割アリマシテモ、元來我
國ノ本土ハ狹イノデアリマシテ、是ハ僅ノ
面積デアル、此面積ニ依ッテ若シ一朝有事
ノ場合自足ノ途ガ立ツデアリマセウカ、立
ツト云ヲ御意見ナラバ私ハ進ンデ御伺シタ
イノハ、卽チ年々薪炭ニ費ス所ノ此噸數及
建藥材、若クハ電柱或ハ枕本等、斯ウ云フ
費消ノ噸數ト、年々繁殖生長スル所メ此木
材ノ噸數ヲ、雙方比較シタ數字ガ御分リニ
チッテ居居ナナバ、私ハ承リタイノデアル、
已ニ我ガ日本國ノ石炭等ハ今後六十年ニシ
テ盡キルト云フコトハ其道ノ調査シタ人
人ノ異口同音ニ唱ヘテ居ル所デアル、此機
會ニドウシテモ繁茂サセナケレバナラヌ、
況ヤ其山林所有者ヲ保護スルノ途トシテ
ハ此頃通過致シタル造林助威法案ト云フ
モノヲ、吾々ハ雙手ヲ擧ゲテ贊成ヲ致シタ
ノデアル、是ガ卽チ水源モ溷渴セナイ、卽
チ一方ニ其造林者ヲモ保護スルノ途デアッ
テ、堤防營築費モ減少スルノデアル、造林
法案ガ通過シタ以上ハ造林業者ハ之ニ甘ン
ジテ可ナリノモノデアル、今亦斯ル案ヲ出
スノハ隴ヲ得テ蜀ヲ望ムガ如キモノデアラ
ウト思フ、ドウカ今申ス如夕私ノ意見ト幸
ニ一致スレバ結構デアルガ、提案者ガ全タ
私ト見ル所ヲ異ニシテ居ラレルナラ、只今
御尋シタ噸數ニ付テ御說明ガ願ヒタイ、尙ホ
此機會ニ私ハ政府ニ對シテモ御尋ヲ致シタ
イノハ米穀ニ對スル〓稅ノ撤廢ヲ此頃實
行ヲ致サシマシタ、當時私ハ委員ノ一人ト
シテ隨分議論モ致シマシタガ、是ハ此處デ
言フベキ筋合デナイト思ヒマスルガ、秀
角アノ關稅ヲ撤廢サレタル結果ガ、小作入若
タハ小地主ガ米ヲ賣ルベキ此時季ニ現在ノ
如ク安イ値段デアル、然ルニ是ハ餘事ノ問
題ニ渉リマスカラ、此米穀ノ關稅撒廢問題
ニ付テハ御尋致シマセヌガ、政府自ラ進ン
デ此小作人若タハ小地主ノ賣ル値段ニ影響
スルガ如キ〓稅撤廢ヲサレル、卽チ需要者
ノ保護ヲサレル政府トシテ、此木材關稅稅
率ヲ改正スルト云フガ如キ法案ニ對シテ
ハ、恐ラク御同感ノアルベキ筈ハナイト信ジ
マスルガ、念ノ爲ニ政府ノ御所見ヲ私ハ承ッ
テ置キタイノデゴザイマス、尙又只今提案
者ニ對シテ御尋ヲ致シタ年々ノ費消ノ噸數
ト曾殖生長スル所ノ噸數ノ此比例ノ數字
ガ、若シ提案者デ御說明ノナイ場合ハ、政
府ヨリ併セテ承リタイノデゴザイマス、此
程度ニ止メマス(拍手)
〔村山喜一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=105
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106・村山喜一郎
○村山喜一郞君 只今三輪君ヨリ本案ニ付
テ御質疑ガアリマシタ、第一、第二、第三
ト御導ニナリマシタナレドモ、私多少聽漏
シタ點モアルカモ存ジマセヌカラ、成ベク
簡單ニ申上ゲマス、本材關稅ヲ引土ゲルト
木材市價ノ騰貴ガ之ニ依シテ起ル、若シ木材
市價が騰貴シタナラバ、山林所有者ハ其價
格ノ植上ニ釣込マレテ、從來ヨリモ尙ホ一
層多ク伐ルデアラウ、卽チ〓伐ノ弊ヲ惹起
スガ故ニ、是ガ爲ニ國土保安ヲ害シ、水源
涵養ヲ損フ、卽チ農村ニ取シテ却テ疲弊ノ
基デアル、斯樣ニ御尋デアリマス、是ハ見
方ニ依リマシテ如何ニモ左樣ニ見ラレル點
モナイデハナカラウトハ存ジマスケレド
モ、御承知ノ如タ山林所有者ト云フモノ
ハ、山ヲ住立テルト云フコトハ卽チ桟綵ガ
目的デアリマス、伐採ニ依ッテ金ヲ得ル、卽
チ農家ガ来ヲ作ッテ收穫ヲ得ル、之ヲ金ニ換
ヘルト云フコトヽ何等相違ガナイノデアリ
ママ、若シ何時マデモ我ラヌデ居シタナラ
バ、水源涵養ガ結構ニ出來ルカラシテ戚ベ
タ伐ラセヌ方ガ宜イデハナイカト云フ御說
ノヤウニ承リマシタガ、ソシナラバ林業ト
云フモノハ根柢ニ於テ成立タヌノデアリマ
ス、卽チ私共ノ考ヲ以テスレバ、今日安イガ
爲ニ或ル價格ヲ取ルコトガ出來ナイガ爲
ニ、假ニ一石十圓ノ價格デアルナラバ、-
町步伐ッテ間ニ合フト思フモノガ、今日五圓
ニ低落シタガ爲ニ一町步ヲ伐ラナケレバ、
林業家ガ生活ガ出來ナイト、斯樣ナ狀況ニ
相成ッテ居ルト思ヒマス、卽チ山林所有者モ
其伐採ニ依シテ得タル收入ヲ以テ生活スル
モノトスルナラバ、安イガ爲ニ却テ面積ヲ
餘計伐ラナケレバナラヌコトヽ相成ルノデ
アリマスルカラシテ、其點ニ於テハ高クナレ
バ却テ餘計伐ルト云アコトハ反對ノ結果
ニ相成ルト思フノデアリマス、更ニ申上ゲ
テ見タイコトハ、借家賃ノ問題デアリマス、
是ハ見方ニ依リマシテ、成程木材ノ高イト
云フコトハ家屋ノ建築費ガ高クナルノデ
アリマスカラ、借家賃ニモ多少ノ影響ハア
ルト、斯ウ云フコトニ見ラルヽノデアリマ
ス併ナガラ私共ノ調査ニ依リマスレバ、
今日東京市內ニ於テ、中流以上ノ方ノ住居
スル家屋ノ建築費ト云フモノハ、約一坪ニ
付キ二百圓ト承ッテ居ルノデアリマス、而シ
テ此二百圓ノ內、木材ト云フモノハ、一體
ドレ位要ルカト申シマスルト、其三分ノ一
デアリマシテ、殘リノ三分ノ二ト云フモノ
ハ勞銀其他ノ材料ノ爲ニ消費セラレルノ
デアリマス、卽チ二百圓ニ對シテ六十六圓
ノ木材ヲ要スル、是ガ一割上ッテ見マシタ
所ガ六圓六十錢デアリマス、二百圓ノ建築
費ニ對シテ六圓ノ値上ト云フコトハ百分
ノ三ニ相當スルノデアリマスカラ、是レ位
ノコトデハ格別家賃ニハ私ハ影響シナイモ
ノデアラウト思ヒマス、隨テ中產以下ノ方
ノ生活ヲ脅スト云フコトハ、全然之ニ依ッテ
惹起サレル問題デハナイ、斯樣ニ信ジマス
ル譯デアリマス、右御答致シマス(拍手)
〔政府委員小山松壽君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=106
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107・小山松壽
○政府委員(小山松壽君) 只今ノ三輪君ノ
御尋ニ御答致シマス、木材關稅ニ付キマシ
テハ、五十一議會ニ於テ、政府ハ板類卽六
十五「ミリメートル」ヲ超エザル物ニ課稅致
シテ居リマシタモノヲ擴メマシテ、小角材
百五十「ミリメートル」ヲ超エザル物ニマデ
課稅ヲ致スコトニ致シマシタ、卽チ前者ニ
アッテハ六分、三圓十錢、後者ニアッテハ六
分、一圓九十五錢ニ改メマシテ、御協賛ヲ
經マシテ實行致シテ居ルノデアリマスガ、
只今村山君ヨリ御提出ニナリマシタ此關稅
率改正ヲ見マスルト、工業原料ト認メラレ
マスル物マデモ課稅ス、要スルニ鉛筆材ヲ
除キマスル外ハ、全部課稅スル案デアリマ
ス、而シテ政府ハ單ニ木材ノ課稅ノミヲ以
ヲ我國森林政策ノ意義ヲ達シヤウト致シマ
スレバ、只今三輪君ノ御尋ノ如キ、社會政策
上ニ相當考慮致サナケレバナラヌ〓究問題
ガ起テウト考ヘマス、仍テ政府ハ五十一議
會ニ於テ改正致シマシ夕程度ノ內、更ニ進
メマシテ「シダー」ダケヲ別ニ分類ヲ致シ、
卽チ樹種ヲ分チマシテ、「シダー」ハ米材ノ
杉、檜デアリマシテ、之ヲ輸入スルニ於テ内
地林業ヲ壓迫セズ、而モ輸入ヲ阻止セザル
程度ニ於テ、尙ホ此稅率ヲ考究スル必要ア
ルコトハ之ハ認メマス、サリナガラ只今御
提案ノ如キ、右申上ゲマスルヤウナ鉛筆材
ヲ除キマス以外ノ工業原料マデモ課稅スル
ト云フコトニ付キマシテハ相當ニ考慮シ
ナケレバナラヌモノデアルト考ヘマス、而
シチ政府ヘ御尋ニナリマシタ建築用材及薪
炭材ノ現在ノ數字及將來ノ需給關係等ハ如
何デアルカト云フ數字上ノコトハ、何レ委
員會デ御答申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=107
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108・三輪市太郎
○三輪市太郞君 簡單デアリマスカラ自席
カラ御間致シマス、只今提案者ニ對シテ質
疑ヲ致シマシタ其第三點ニ對シテハ何等
御答ナカッタノデアルガ、此御答ガ承ルコ
トヲ得レバ幸デアル、而シテ第一問ニ對シ
チハ、要スルニ是ハ見方ノ違デアラウト思
フノデアリマス、提案者ハ安ケレバ一町デ
宜イモノヲ遂ニ二町ヲ伐採スルヤウニナル
カラシテト、斯ウ云フヤウナ語調ガアリマ
シタガ、是ハ實際問題トシテハ寔ニ遠ザカ〃
タ議論デ、今日ノ森林業ヲ營ンデ居ル所ノ
人ト云フモノハ、大部分ノモノハ富豪デア
ル、實際問題トハ遠イヤウデアルガ、是ハ
モウ意見ノ相違デアリマスカラシテ、此以
上ハ御專ネ致シマセヌガ、向ホ私ハ委員會
ノ時ニ御答ヲ願ヒタイト思フコトハ私ハ
今農村問題、社會政策及國家ノ根本問題ノ
三問題ニ分チマシタガ、今一點質疑ヲ追加
致マスノハ、貧富ヲ論ゼズ一般ノ需要缺クベ
カラザル紙ト云フモノガ、此木材ノ値上ノ
爲ニ製紙原料ニ影響スルト云フコトモ、是
モ一ツノ問題デアルカラ、ドウカ今御答ガ
願ヘレバ幸ヒ、若シ御答ガ願ヘナカ,タナ
ラバ、第三問題ノ御答ト併セテ委員會ニ於
チ十分御調ベノ上ニ御答辯アランコトヲ望
ンデ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=108
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109・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 次ノ質疑ヲ許シマ
ス、佐藤富十郞君
〔佐藤富十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=109
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110・佐藤富十郎
○佐藤富十郞君 諸君、只今上程ニナッテ
居リマス所ノ木材關稅ニ關シテ提出者ニ質
問シタイト思フノデアリマス、今三輪君カ
ラ相當ニ質疑ガアッタヤウデアリマスガ、其
無イ所ダケ質問シタイト思ヒマス、偖テ
此木材ニ對シマシテハ全國ノ河川ヲ御覽ニ
ナッタ時ニ如何ニ御覽ニナリマス、既ニ土
砂ハ大ニ押出シテ川床ハ埋リ、川床ノ埋フ
タ關係上、水害ノ場合ニハ堤防ヲ越シ、サ
ウシテ非常ナル水害ヲ起シテ居ルコトガア
ル、其證據ニハ各河川ノ工事費カドウナッ
テ居リマスカ、諸君ハ既ニ御承知デアリマ
セウ、年々歲々河川工事ノ費用ガモウ中央
地方ヲ通シマシテ如何ナル狀態ニナッテ居
ルカヲ考ヘタ時ニ、此原因ハ如何ニ在ル、
此森林濫伐ニナケレバ何處ニ此因緣ガ存在
シテ居ルノカト云フト、言フ迄モナク是ハ
森林濫伐ヨリモ起ル所ノ弊害デアルト云フ
コトハ、諸君モ既ニ御承知デアラウト思
7、斯ウ云フヤウナ次第デアリマシテ、又
東京ノ震災ニ於キマシチハ米國ヨリ送リ
來ル所ノ輸入材ガナカッタナラバ、此復興ヲ
如何ニシテ成スコトガ出來タデアラウ、又
價格ハ今ノ所ガ高イモノナリヤ安イモノナ
リヤヲ論ジタナラパ、見樣ニ依ッテハ違ヒ
マスケレドモ、復興ニ要スル木材ハ多々必
要デアル、此場合ニ木材ノ稅ヲ上ゲルナゾ
ト云フコトハ、大變ナ違ヒダト思フノデア
ル、是ハ森林所有者ト云フモノハ全國ニ何
人モアリハシナイ、洵ニ指ヲ折ッテ勘定ヲ
スル程ノ者モナイ、此大金ヲ上ゲテ少數ナ
ル地所持山林家ヲ助ケテ、數多ノ國民ヲ苦
シメルト云フヤウナ案ヲ御提出ニナッタト
云フコトハ、村山君ニモ似合ハヌ所ノモノ
ナリト私ハ斷定シナケレバナラヌ、詳細ハ
委員會ニ於テ質問スルト致シマシチ、村上
君ニ此少數ノ人ノ持ッテ居ルモノカ、多數ノ
人ガ山ヲ持ッテ造林ヲシテ居ルモノカヲ、
一應御答ヲ願シテ置キタイト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=110
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111・村山喜一郎
○村山喜一郞君 此席デ三輪君竝ニ佐藤君
ノ御尋ニ答辯スル筈デアリマスケレドモ、
時間ヲ節約スル意味ニ於テ、詳細ハ委員會
ニ於テ御答スルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=111
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112・井本常作
○井本常作君 本案ハ湯淺凡平君提出、營
業收益稅法中改正法律案外四件ノ委員ニ併
セテ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=112
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113・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニ御異
議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=113
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114・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-砂田重
政君ヨリ議事進行ニ關シテ發言ヲ求メラレ
テ居リマス、之ヲ許シマス、砂田重政君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=114
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115・砂田重政
○砂田重政君 簡單デアリマスカラ此席カラ
御許シヲ願ヒタイ-本日今朝新聞紙ニモ
現レテ居リマスル通リ、東京市内多數ノ銀
行ニ非常ナル動搖ヲ來シテ居ルト云フコトハ
我國經濟界ノ大問題デアリマス(「ヒヤヒ
ヤ」拍手)此重大ナル問題ヲ控ヘテ居リマス
ルガ故ニ、此財界動搖ニ對シテハ大藏大臣
ヨリモ最モ明断ナル答辯ヲ得テ、此議會ヲ
通ジテ國民ヲシテ財政的、經濟的ニ安定ヲ
與ヘルコトガ最大急務ナリト信ジマシテ
(拍手)本日吾々ノ同僚堀切君ヨリ緊急質問
ノ通告ヲ致シ、而シテ各派トモ之ニ賛成ヲ
サレテ、本日日程ヲ變更シテ上サレル筈ニ
ナッテ居ルノデアリマス、然ルニ先刻ヨリ
大藏大臣ノ出席ヲ求メテ居リマスルケレド
モ、或ハ貴族院ノ討論中ナリト稱シ、或ハ
又他ノ銀行家ト會見ノ必要アリト云フガ如
キ言葉ノ下ニ、本日ノ此緊急質問ニ出席ヲ
シテ答辯ヲスルコトヲ避ケラルヽガ如キ感
ヲスルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手「ノー
ノー」)此重大ナル「時機ニ方ッテ、此重要ナ
ル問題ニ對シテ責任ヲ囘避ザレルガ如キコ
トハ吾々ハ斷ジテ許ス事ガ出來ナイノデ
アリマス(拍手)又憲政會ノ大臣ノ方ヨリ
モ、特ニ質問ヲ止メテ貰ヒタイト云フ御依
賴ガアッタノデアリマス、併ナガラ吾々ハ
此經濟界ノ安定ノ爲ニ質問ヲスルノデアル
以上ハ、絕對ニ止メルコトハ相成ラヌト御
斷リヲ申シタノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍
手)願クハ議長ニ於テ直ニ大藏大臣ニ正式
ニ御交涉下サッテ、本日此席ニ出テ緊急質
問ニ答辯ヲスルヤ否ヤト云フコトヲ確答ヲ
得テ、直ニ御報告アランコトヲ望ミマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=115
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116・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 只今砂田君ヨリ御要
求ノ次第ハ、其旨早速大藏大臣ニ通ジマ
ス、其上御挨拶ヲ致スコトニ致シマス
〔「議長ソレマデ休憩ヲ願ヒマス」「休
憩」「ノウ〓〓」「進行々々」ト呼フ者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=116
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117・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 議事ヲ進メル事ニ御
異議ナシト認メマス-日程第五乃至第八
ハ提出者同一ノ議案デアリマスカラ、一括
議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=117
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118・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第五、意匠法中改正法律案、
日程第六、實用新案法中改正法律案、日程
第七、特許法中改正法律案、日程第八、商
標法中改正法律案、右各案ヲ一括シテ其第
一讀會ヲ開キマス、提出者〓水市太郞君
第五意匠法中改正法律案(〓水市太
郞君外五名提出)第一讀會
意匠法中改正法律案
意匠法中左ノ通改正ス
第二十一條ノ二願書、圖面又ハ說明書
ノ訂正ヲ命セラレタル場合ニ於テ出願
人カ之ニ應セサルトキハ審査官ハ其ノ
出願ヲ拒絕スヘキモノト認ムルコトヲ
得
第二十四條ノ二第二十一條ノ二ノ規定
ハ拒絕ノ査定ニ對スル抗告審判ニ付之
ヲ準用ス
第二十五條中「第七十二條、」ノ下ニ「第七
十三條第一項、」ヲ加フ
第三十二條辨理士ニ非スシテ特許局ニ
對シ意匠ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理ヲ
爲シ又ハ業トシテ其ノ手續若ハ處理ヲ
爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ書類作成ヲ業トスル旨廣告、看
板又ハ印刷物ニ依リ表示シタル者亦同
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ繫屬スル出願、請求其
ノ他ノ手續及其ノ處理ニ付テハ本法ニ依
ル本法施行ノ際納付ヲ怠リタル登録料ニ
付テハ仍舊法ニ依ル
第六實用新案法中改正法律案(〓水
市太郞君外五名提出)第一讀會
實用新案法中改正法律案
實用新案法中左ノ通改正ス
第二十一條ノ二登錄實用新案カ第三條
各號ノ一ニ該當スルコト又ハ登錄實用
新案ノ說明書若ハ圖面ノ訂正ヲ要スル
コトヲ理由トスル場合ニ限リ何人ト雖
其ノ登錄實用新案ヲ揭載シタル實用新
案公報發行ノ日ヨリ二月以内ニ登錄異
議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二十四條ノ二第十四條ノ許可カ同條
第二項又ハ第十五條ノ規定ニ違反シタ
ルコトヲ理由トスル場合ニ限リ何人ト
雖其ノ許可セラレタル登錄實用新案ヲ
揭載シタル實用新案公報發行ノ日ヨリ
二月以內ニ限リ許可異議ノ申立ヲ爲ス
コトヲ得
第二十六條中「第五十六條、」ノ下ニ「第五
十六條ノ二、」ヲ加ヘ「第七十一條乃至第
八十三條、」ヲ「第七十一條乃至第七十三
條第七十四條第二項乃至第五項、第七
十五條、第七十六條、第八十條乃至第八
十三條、」ニ改ム
第三十三條辨理士ニ非スシテ特許局ニ
對シ實用新案ニ關シ爲スヘキ事項ノ代
理ヲ爲シ又ハ業トシテ其ノ手續若ハ處
理ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ書類作成ヲ業トスル旨廣告、看
板又ハ印刷物ニ依リ表示シタル者亦同
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ繫屬スル出願、請求其
ノ他ノ手續及其ノ處理ニ付テハ本法ニ依
ル但シ出願又ハ審判請求ノ公告決定アリ
タルモノノ公告及異議ノ手續竝處理ニ付
テハ此ノ限ニ在ラス
本法施行ノ際納付ヲ怠リタル登錄料ニ付
テハ仍舊法ニ依ル
第七特許法中改正法律案(〓水市太
郞君外五名提出)第一讀會
特許法中改正法律案
特許法中左ノ通改正ス
第十條但書中、「出願公ロアリタル場合ニ
於テハ出願公告ノ日ヨリ三十日ヲ」ヲ削
ル
第十一條中「其ノ特許ヲ無效トスル」ノ下
ニ「査定若ハ」ヲ加ヘ、同條但書中(五八)
特許ノ出願公告」ヲ「其ノ特許發明ヲ掲載
シタル特許公報發行」ニ、「審決確定シ若
ハ」ヲ「査定若ハ審決確定シ又ハ」ニ改ム
第二十條辨理士ニ非サレハ特許局ニ對
スル事項ノ代理ヲ爲シ又ハ其ノ手續若
ハ處理ヲ業ト爲スコトヲ得ス但シ法定
代理人カ本人ノ爲ニスル場合ハ此ノ限
ニ在ラス
第二十四條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ無效ト爲シタル場合ハ其ノ旨通知
スヘシ
同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ規定ニ依リ無效ノ通知ヲ受ケタ
ル者ハ期間滿了後一年以內ニシテ通知
ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ其ノ手
續ト共ニ免除ノ請求ヲ爲シ懈怠ノ結果
ヲ免ルルコトヲ得
第二十五條但書中「第七十四條ニ規定ス
ル特許異議ノ申立期間」ノ下ニ「及第百七
條ノ二ニ規定スル許可異議」ヲ加フ
第四十三條第一項中「出願公告アリタル
場合ニ在リテハ其ノ出願公告ノ日ヨリ、
出願公告ナカリシ場合ニ在リテハ」及同
條第二項ヲ削リ、同條第三項中「第一項」
ヲ「前項」ニ改メ「出願公告ノ」ヲ創ル
第五十六條ノ二第七十五條第四項ノ特
許無效査定確定シタルトキハ特許局長
官ハ其ノ特許ヲ無效ト爲スヘシ
第六十九條第一項中「第六十五條ニ規定
スル特許料ノ二倍ニ相當スル」ヲ「一月又
ハ其ノ未滿每ニ第六十五條ニ規定スル特
許料ニ其ノ十分ノ一ヲ加ヘタル」ニ改ム
第七十二條ノ二明細書又ハ圖面ノ訂正
ヲ命セラレタル場合ニ於テ出願人カ之
ニ應セサルトキハ審査官ハ其ノ出願ヲ
拒絕スヘキモノト認ムルコトヲ得
第七十三條第一項中「出願公告ヲ爲スヘ
キモノト決定スヘシ」ヲ「特許査定ヲ爲ス
ヘシ」ニ改メ、同條第二項及第三項ヲ削
リ、同條第四項中「出願公告」ヲ「特許公
報ノ發行」ニ改メ、同條第五項及第六項
ヲ削ル
第七十四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
特許發明カ第四條各號ノ一ニ該當スル
コト又ハ特許發明ノ明細書若ハ圖面ノ
訂正ヲ要スルコトヲ理由トスル場合ニ
限リ何人ト雖其ノ特許發明ヲ掲載シタ
ル特許公報發行ノ日ヨリ二月以内ニ特
許異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
同條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
特許異議ノ申立ニ關スル證據ハ特許出
願前作成セラレタル公文書又ハ特許出
願前帝國內ニ頒布セラレタル刊行物ニ
限ル
第七十五條特許異議ノ申立アリタルト
キハ審査官ヲシテ之ヲ審査セシム但シ
此ノ場合ニ於テ第九十一條第六號ノ規
定ハ之ヲ準用セス
審査官ハ特許異議ノ申立カ判然許スヘ
カラサルモノ、法令ニ定メタル方式ニ
適セサルモノ、期間ヲ經過シタルモノ
ナルトキ又ハ理由ナシト認メタルトキハ
其ノ申立ニ對シ却下ノ決定ヲ爲スヘシ
審査官ハ特許異議ノ申立ヲ理由アリト
認メタルトキハ特許權者ニ對シ其ノ理
由ヲ示シ期間ヲ指定シテ之ニ意見書提
出ノ機會ヲ與ヘ又ハ訂正ヲ命スヘシ
前項ノ期間經過後審査官ハ特許異議ノ
申立カ理由アリト認メタルトキハ其ノ
旨ノ決定ヲ爲スト同時ニ特許無效査定
ヲ爲シ、特許異議ノ申立ヲ理由ナシト
認メタルトキハ其ノ申立ニ對シ却下ノ
決定ヲ爲スト同時ニ特許權者ニ對シ其
ノ旨通知スヘシ
特許發明ノ明細書若クハ圖面ノ訂正ヲ
要スルコトヲ理由トスル特許異議ノ申
立ニ於テ特許權者カ審査官ノ命スル訂
正ニ應シタル場合ハ審査官ハ特許異議
消滅ノ決定ヲ爲スト同時ニ特許權者ニ
對シ其ノ旨通知スヘシ
本條ノ決定ニハ理由ヲ附スヘシ
本條ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ス
第七十七條削除
第七十八條削除
第七十九條削除
第百條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ、同
條第三項中「前二項」ヲ「前三項」ニ改ム
證據保全ノ申立ハ審判請求前ト雖特許
局又ハ裁判所ニ對シ之ヲ爲スコトヲ得
第百七條ノ二第五十三條ノ許可カ同條
第三項又ハ第五十四條ノ規定ニ違反シ
タルコトヲ理由トスル場合ニ限リ何人
ト雖其ノ許可セラレタル特許發明ヲ揭
載シタル特許公報發行ノ日ヨリ二月以
內ニ限リ許可異議ノ申立ヲ爲スコトヲ
得
第百八條第一項中「第七十二條、第七十
三條第一項第二項第四項第六項及第七十
四條乃至第七十七條」ヲ「第七十二條乃至
第七十三條、第七十四條第二項乃至第五
項第七十五條及第七十六條」二枚人
第百十三條第二項中「第七十三條乃至第
七十九條」ヲ「第七十二條ノ二及第七十三
條ニ改メ但書ヲ削ル
第百十五條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
辨理士ハ本條ノ出訴ニ付テハ代理人タ
ルコトヲ得
第百二十九條第一項第三號及第四號ヲ削
ル
第百三十五條辨理士ニ非スシテ特許局
ニ對シ特許ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理
ヲ爲シ又ハ業トシテ其ノ手續若ハ處理
ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千
圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ書類作成ヲ業トスル旨廣告、看
板又ハ印刷物ニ依リ表〓シタル者亦同
シ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ繫屬スル出願、請求其
ノ他ノ手續及其ノ處理ニ付テハ本法ニ依
ル但シ出願又ハ審判請求ノ公告決定アリ
タルモノノ公告及異議ノ手續竝處理ニ付
テハ此ノ限ニ在ラス
本法施行ノ際納付ヲ怠リタル特許料ニ付
テハ仍舊法ニ依ル
第八商標法中改正法律案(〓水市太
郞君外五名提出)第一讀會
商標法中改正法律案
商標法中左ノ通改正ス
第二十一條ノ二願書、商標見本又ハ說
明書ノ訂正ヲ命セラレタル場合ニ於テ
出願人カ之ニ應セサルトキハ審査官ハ
其ノ出願ヲ拒絕スヘキモノト認ムルコ
トヲ得
第二十一條ノ三登錄商標カ第二條第一
項各號ノ一ニ該當スルコト又ハ第三條
ノ規定ニ反スルコトヲ理由トスル場合
ニ限リ何人ト雖其ノ登錄商標ヲ揭載シ
タル商標公報發行ノ日ヨリ二月以內ニ
登錄異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二十三條ノ二第二十一條ノ二ノ規定
ハ拒絕ノ査定ニ對スル抗告審判ニ付之
ヲ準用ス
第二十四條中「第四十五條、」ノ下ニ「第五
十六條ノ二、」ヲ加へ「第七十三條第一項
第二項第四項、第七十四條乃至第七十七
條、」ヲ「第七十三條、第七十四條第二項
乃至第五項、第七十五條、第七十六條、」
ニ及但書中「第七十三條第一項第一一項第
四項及第七十四條乃至第七十七條」ヲ「第
七十三條、第七十四條第一一項乃至第五項、
第七十五條、第七十六條」三八
第三十八條辨理士ニ非スシテ特許局ニ
對シ商標ニ關シ爲スヘキ事項ノ代理ヲ
爲シ又ハ業トシテ其ノ手續若ハ處理ヲ
爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ書類作成ヲ業トスル旨廣告、看
板又ハ印刷物ニ依リ表示シタル者亦同
シ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ繫屬スル出願、請求其
ノ他ノ手續及其ノ處理ニ付テハ本法ニ依
ル但シ出願公告決定アリタルモノノ公告
及異議ノ手續竝處理ニ付テハ此ノ限ニ在
ラス
〔〓水市太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=118
-
119・清水市太郎
○〓水市太郞君 只今上程セラレマシタ特
許、意匠、登錄、實用新案ノ四法律ニ對ス
ル改正案、其趣旨ニ於テ精神ニ於テ殆ド一
致シテ居リマスカラ、四案ヲ一括致シマシ
テ說明ヲ申上ゲル方ガ時間ヲ省略スル便ガ
アリマスカラ、左樣ニ致シマス、現行法ニ於
キマシテハ實行上極メテ法ノ不備ヲ感ズル
點ガ多々アルノデアリマス、凡ソ工業所有
權ニ關スル法規ハ、歐米各國ニ於キマシテ
ハ一般人ノ容易ニ扱ヒ得ルヤウニスルガ爲
ニ、極メテ簡單明瞭ナル法規デアッテ、而シ
テ又此特許權ノ速ニ確定スルヤウナ風ニ、
而シテ出願人ノ權利ヲ伸張シ、完全ニ目的
ヲ達スルヤウニ規定サレテ居ルノデアリマ
ス、然ルニ現行法ハ是等ノ點ニ於キマシテ
極メテ不備ヲ威ズルノデアリマス、ソコデ
現ニ世間ニ於テ此業務ニ從事シテ居ラレル
所ノ辨理士、竝ニ實用新案等ヲ出願スル者
ガ考ヘマシテ、サウシテ今囘ノ改正案ヲ必
要トシテ提出シタ次第デ、各派申合セノ上
デ何レモ御贊成デ、滿場一致デ是ハ御贊成ヲ
明る、特急デ進行ノ手續ヲ執ラレンコト
ヲ希望スルモノデアリマス、只今簡單ニ二
三改正ノ點ヲ申上ゲマスレバ、第一ニ出願
公告ヲ爲シマスノニ、審査官ガ此許特ハ拒
絕スル事ガ出來ナイ、卽チ特許ヲ與フベキ
モノト略、、、メメタ時ニ出願公告ヲサセマシ
テ、其出願公告ガ出テカラ六箇月以內ニ異
議ノ申立ヲ一般ノ人ガ爲スコトガ出來ル、
斯ウ云フ規定ニナッテ居リマスガ、斯ノ如ク
致シマスルト、特許ガ何時迄モ確定致サナ
イ、特許ニナラヌ、異議ガ六箇月以內ニ出
テ來ル間ハ不安ノ狀態ニ居ルノデアリマス、
故ニ出願人ニ同情ヲ以テ金主トナルヤウナ
人ガ、金主タル事ヲ躊躇スル虞ガアル、此
點ヲ改正致シマシテ、卽チ第七十三條ヨリ
第七十五條ニ亙ッテ改正ヲ致シマシテ、出願
公告ヲ廢シマシテ、特許ヲ與ヘルモノト爲
シタ以後ニ於テ、卽チ特許ガ與ヘラレル事
ニナッタ以後ニ於テ、六箇月內ト云フ期間ニ
異議ヲ申立テル事ニシタナラバ、略〓安堵シ
テ、特許ガ既ニ許可サレテ居ルカラ金主ガ
附キ易イト云フ便宜ヲ計ッタノデアリマス、
又最モ大切ナ改正ハ、辨理士ガ自分ノ出願
ヲ扱ヒマシタ事件ニ付テ、只今デハ大審院
ノ審判請求ノ代理人タル事ガ出來ナイ事ニ
ナッテ居リマスガ、是ハ自分ガ扱シテ能ク事
實內容ヲ詳悉シテ居リマスカラ、大審院ニ
出マシテ代理人タル事ヲ得セシムル方ガ便
利デアルト云フ改正ヲ致シマシタ、又特許審
判請求前ニ於キマシテ證據保全ト云フコト
ヲヤル必要ガアル、卽チ證據ノ湮滅ヲ防グ
ガ爲ニヤランナラヌコトガアリマスガ、只
今デハ出來マセヌカラ、之ヲ第百二十四條
第三項ヲ加ヘマシテ、サウ云フ審判請求前
ニ於テモ證據保全ノ出來ルヤウニ致シマシ
ク、最後ニ最モ是ハ必要デアルト考ヘマシ
タ點ハ、出願人ガ代理人ヲ以テ代理人ト言
ハズシテ、出願人ノ名義ノ下ニ他ノ者ガー
素人ガ出願ノ手續ヲスルノデアリマス、斯
ノ如クスル時ハ幾多ノ弊害ガアリマシテ、
甚シキハ相手方ノ依賴モ兩方一緒ニ受ケマ
シテ、背任不信ノ行爲ヲ爲シテ、意外ナ出
願人ノ不利ヲ來スヤウナ虞モアルノデアリ
マツ、斯ノ如キ點ヲ防禦スル爲ニ、出願人
ノ不利ヲ完全ニ保護スル爲ニ、辨理士ニアラ
ザレバ出願ノコトヲ爲スコトガ出來ナイ、
若シ之ニ背イタ者ハ相當ノ罰ニ處スルト云
フ規定ヲ致シタノデアリマス、凡ソ斯ノ如
キ改正ハ、極メテ必要大切ナ點デアッテ、凡
ソ文明國タルモノハ、工業權所有權ニ對スル
法律ノ完備不完備ニ依シテ文明ノ程度ヲト
スルニ足ルト云フ程必要ナモノデアルカラ、
ドウカ各派申合セノ上、出來マシタ提案デ
アリマスカラ、願クハ滿場一致速ニ慎重審議以
テ可決セラレンコトヲ切望スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=119
-
120・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ、別
ニ何等ノ通告モアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=120
-
121・井本常作
○井本常作君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=121
-
122・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=122
-
123・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ動議ヲ提出
致シマス、此際堀切善兵衛君提出、財界ノ
動搖ニ關スル緊急質疑ヲ上程シ、其審議ヲ
進メラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=123
-
124・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス、仍テ議事日程ハ變更
セラレマシタ、玆ニ財界動搖ニ關スル緊急質
問ノ趣旨辯明ヲ許シマス-堀切善兵衞君
財界動搖ニ關スル緊急質問(堀切善
兵衞君提出)
〔堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=124
-
125・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君 諸君、此處數日來金融界
ニ於キマシテハ甚ダ不穩ナル形勢ヲ呈シテ居
リマシタガ、シレガ今日ニ至リマシテ更ニ甚
シキヲ加ヘタヤウニ私ハ考ヘテ居ル、之ニ對
シマシテ大藏大臣ノ御意見ヲ承シテ、國民ニ
對シ吾々ハ安心ヲ與ヘタイト考フルノデアル、
決シテ此事局ノ重大ニ鑑ミテ大藏大臣ノ所見
ヲ肥羅剔抉シテ、サウシテ惡意ヲ以テ左樣
ナ質問ヲ致スト云フ考ハ毛頭ナイノデアリ
マス、是ハ能ク御諒承ヲ願ッテ置キタイノ
デアル、今日ノ各新聞ヲ見マスルト云フト、
大藏大臣ハ財界ノ此波動ニ對シ、一片ノ注
意ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、是ハ各新聞
ニ出テ居リマスガ、私ハ國民新聞ヨリ之ヲ
指摘致シマス、財界恢復ニ資スベク立案セ
ラレタル震災手形關係法案ニ對シ、圖ラズ
モ之ヲ政治化スルモノアルニ至リ、爲ニ同
案通過ニ關シ、人心動搖スルニ至リタルハ
余ノ最モ遺憾トスル所ナリ先ヅ斯樣ニ申サ
レテ。居ル、苟モ政府ガ(發言スル者多シ)諸君
此問題ハ極メテ愼重ニ冷靜ニ吾々ハ論議シ
ナケレバナラヌ問題ト思ヒマスノデ、暫ク
御〓聽ヲ願ヒタイノデアリマス、私共ハ去
ル十九日ニモ此處デ申上ゲタ通リ、斯ノ如
キ問題ハ決シテ經濟上ノ問題トバカリ之ヲ
考察スル譯ニハ參ラヌ、政治上、社會上、
國民道德上ニ甚大ナル影響ヲ持ツモノデア
ルカラ、之ニ對シテ吾々ハ單ニ經濟上ノ考
バカリヲ以テ之ヲ論ズル譯ニハ參ラヌト、
斯樣ニ申シタノデアリマス、苟モ政府ガ
ツノ法案トシテ此議會ニ提出シテ、國民ノ
協賛ヲ求メル以上ハ、是レ政治問題ニアラ
ズシテ何デアル、況ヤ此法案ニ對シテ吾々
ハ追加豫算ニ於テ僅カ四箇月半ノ利息トシ
テ四百三十万圓ヲ協賛致シテ居ルノデアリ
マス、剩餘金ヨリ之ヲ支出シテ居ルノデア
リマス、苟モ政府ガ斯ノ如ク金錢ニ關スル法
案ヲ議會ニ御出シニナッタ以上ハ、質問モシ
ナケレバナラヌ、可否ノ討論モシナケレバ
ナラヌノデアリマス、而シテ之ニ付テ意見
ヲ述ベル、是ガ政治問題ニアラズシテ何デ
アリマス、片圖家一個ノ臺所ノ問題ナラバ、
是ハ政治問題デナイト申スコトガ出來ルカ
モ知レマセヌガ、斯ノ如キ問題ヲ世ノ中ニ
提供スル議會ニ提案シタト云フコトハ、既ニ
此問題ヲ片岡君ガ政治化シタモノニアラズ
シテ何デアリマス(拍手)此問題ニ付キマシ
テハ過日モ申上ゲタ通リ、經濟上ノ方面バカ
リ見テ、ソレ以上ニ貴重ナルモノ、崇高ナル
モノ、尊イモノガ世ノ中ニアルコトヲ知ラナ
イ者ハ、猶太人ノ如キ考デアル、今後ノ政局
ヲ擔當スル資格無キ者デアルト云フコトヲ
私ハ申上ゲタノデアリマスケレドモ、大藏
大臣ハ依然トシテ是ハ經濟上ノ問題ダケデ
アッテ、政治ニ關係ノ無イ問題ト左樣ニ御
考ニナッテ居ルカドウカ、又私共ハ此問題
ガ議會ニ提出サレ、政治問題トシテ之ヲ取
扱フ所ノ一番ノ開祖ハ片岡君其人ナリト
斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ此
點ニ付テ片岡君ハ果シテ新聞ニ出テ居ル
ヤウナ御考ヲ持ッテ居ルカドウカ、之ヲ御
伺致スノデアリマス、ソレカラ斯樣ナ問題
ヲ御提出ニナッテ、ソレモ吾々カラ見レバ、
色ミナ方面ニ缺點ノアル法案デアッタ、之
ニ對シ吾々ガ質問ヲシ、或ハ議論ヲ致スノ
ニ對シ、片岡君ノ說明ハ甚ダ了解ニ苦ンダ
ノデアル、答辯スベキ點モ答辯セズ、答辯
スベカラザル點、或ハシナイ方ガ宜イヤウ
ナ事マデ、質問モ無イノニ政府自ラ之ヲ御
話ニナッタ、其結果卽チ渡邊銀行ノ破綻ト
云フヤウナコトニナリ、今日財界ヲ動亂セ
シメタ第一步ニナッテ居ルト云フコトヲ吾
吾ハ信ズルノデアリマス(拍手)片岡君ハ震
災手形ハ財界ノ癌ナリト云フ、震災手形果
シテ財界ノ癌デアルカドウカ、私共ノ考へ
ル所ニ依レバ、預金ノ取付ナドヽ云フコト
ハ一時ノ流行病ニ罹ッタヤウナモノデア
ル、流行病ニ罹ッタ、其流行病「ペスト」カ
何カノ根源ヲ數キ散シタ者ハ果シテ誰デ
アッタカ、國民ハ之ヲ冷靜ニ考ヘナケレバ
ナラヌト思フ、吾々斯ノ如キ重大ナ問題ハ、
何モ急イデ不完全ナ提案ヲスルニ及バナ
カッタデアラウ、既ニ一億園ノ補償ハ吾々
ノ同意ニ依シテ與ヘラレテ居ルノデアル、此
補償ヲ今後何年間段々ト引伸バシテ、時ヲ
以テ自然ニ之ヲ解決セシメルコトガ一番適
當ナ方法デハナカッタカト思フ(拍手)現ニ
其御考ノ爲ダラウト思フ、濱口君ノ如キ世
ノ中ニ名聲ノ聞ヘテ居ル人ガ、數年間大藏
大臣ニ居ラレマシタガ、此問題ニハ依然ト
シテ其儘ニ手ヲ御染メニナラナカッタノデ
アル、早速君ノ如キ愼重ナ考ヲ持タレル人
ガ大臣ニナラレマシテモ、尙ホ之ニ手ヲ觸レ
ラレナカッタ、然ルニ片岡君ガ卒然トシテ
斯ノ如キ問題ヲ御出シニナッタ、私ハ甚ダ
之ニ對シ片岡君ノ勇氣ニ感心致スノデアリ
マス、ケレドモ、併ナガラ斯ノ如キ勇氣
ハ、是ハ盲滅法ノ勇氣ト申スヨリ外ハ仕方
ガナイノデアル(拍手)亞米利加ノ有名ナル
「ホーマーリー」ト云フ人ガ、世ノ中デ一番
恐ロシイモノハ何デアルカ、「ベーラー·オ
ブ·イグノランス」無學者ノ勇氣程世ノ中
デ恐ロシイモノハナイト申シタ、單ニ經濟
上ノ點バカリ考慮シテ、有ユル點ニ十分ニ
目ヲ配バルコトヲ爲サズシテ、輕率ニモ又
大膽ニモ、斯ノ如キ不完全ナルモノヲ出シ
テ世ノ中ニ大波瀾ヲ起サシメタ責任ハ、全
ク片岡君ニ在ルト私ハ信ズルノデアル(拍
手)而シテ政府ハ今朝ノ新聞ニモ種々之ニ
付テ考慮ヲ費シ、財界ニ動搖ナカラシムル
コトヲ期スル、是ガ爲ニ財界ハ何等動搖ヲ
致シテ居ラヌト云フコトヲ今日マデ言明シ
テ居ッタ、此間モ豫算委員會ニ於テ三土君
ノ質問ニ對シ、渡邊銀行ノ騷ギノアッタ後
デ、何ト申シテ居リマスガ、是ハ速記錄デ
ゴザイマス「ソレト同時ニ善後策ハ相當ニ
講ジタ、是ガ爲ニ今財界ニハ何等ノ惡影響
ヲ惹起シテ居ラヌノデアリマス」ト片岡君
ハ斷言致シテ居ッタノデアリマス、其後段
段惹起シテ居ラヌ所デハナイ、波瀾重疊日
ニ益〓大ヲ加ヘントスルガ如キハ、全ク片
岡君ノ此說明ヲ裏切ッテ居ル所ノ現象ナリ
ト認メザルヲ得ナイ、此點ニ付キマシテハ
片岡君ノ十分責任アル今後ノ對策ヲ吾々ハ
承ラナケレバナラヌ、今ニナッテハ唯〓單リ
片岡君ノ責任ヲ責メタバカリデハイカヌト
思フ、片岡君一人ハ洵ニ輕イモノデアルケ
レドモ、日本ノ經濟界、十万ノ預金者、
億五六千万圓ノ其預金、是ガ爲ニハ中ニハ
生死ヲ賭スルヤウナ不幸ナル者モ起ッテ來
ルカモ知レナイノデアル、是等ノ社會的關
係ヲ考察スル時ニ、是ハ單ニ片岡君、若槻
君バカリヲ責メテ自ラ快トスル如キハ國
民ニ對シテ相濟マヌデアラウト思フ、隨テ
片岡君ヨリドウシテ〓後之ヲ鎭靜ニ歸セシ
メルカ、之ニ付テ具體案ヲ承ランコトヲ希
望スルノデアル、今ノヤウニ單ニ抽象的ニ
財界ハ動亂シナイ、攪亂ハサセナイ、今現
ニ騒イデ居ナイト云フ抽象的ノ說明ダケデ
ハ國民ハ最早滿足スルコトハ出來ナイノ
デアリマス、如何ナル方法ヲ以テ之ヲ防止
スルカ、之ヲ救濟スルカ、之ニ付テ具體的
ノ御說明ヲ承リタイノデアル(拍手)片岡君
ハ「一兩日中ニ財界ニ關スル所見ヲ詳細ニ
亙リ言明スベク、世上一切ノ疑威ハ之ニ
依ッテ一掃セラルベシ」ト云フコトヲ今日ノ
新聞ニ出シテ居ル、今日ノ財界ノ有樣ハ果
シテドウデアルカ、私ガ此處ニ申上ゲルマ
デモナイ、片岡君十分御承知デアラウ、今
日ノ此經濟界ノ狀況ヲ目ノ前ニ控ヘテ、
兩日中ニ何トカ言明スベシト云フコトハ
何タル是ハ非常識ノ事デアルカ、斯樣ナ呑
氣ナ考ヲ持ヲチ居レバコソ、益、此波動ガ
大ナラントスルノデアル、今日只今直ニ如
何ナル對案ヲ以テ之ラ處理シテ行クカト云
フコトニ付チ、丁寧ナル御說明ヲ私ハ希望
致スノデアル、此說明ヲ聽イテ尙ホ私ハ更
ニ御伺ヲ致スカモ知レマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=125
-
126・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡大藏大臣
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=126
-
127・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=127
-
128・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今ノ堀切君ノ
御質問ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマス、昨
今二三ノ銀行ノ休業ヲ致スコトニ相成リマ
シタ狀態ニ對シマシテハ、千萬遺憾ノ至リ
ニ存ジテ居リマス、此點ニ對シマシテハ政
府ハ責任ヲ以テ全力ヲ盡シテ安定ヲ圖リマ
スル積リデアリマス、又圖リツヽアルノデ
アリマス、日本銀行モ亦-卽チ中央銀行
タル日本銀行モ亦此趣旨ニ依リマシテ最善
ノ努力ヲ致シツヽアルノデアリマス、此點
ニ付キマシテハ言葉ハ簡單デゴザイマス
ガ、今申上ゲマシタ政府竝ニ日本銀行ノ協
カヲ以チマシテ、此財界ノ安定ニ對シマシ
テハ全力ヲ盡ス積リデアリマス、又盡シツ
ツアリマス、目下財界ノ狀態ニ於キマシテ
ハ今御述ニナリマシタコトニ對シ、私ノ意
見ヲ申上ゲルト云フガ如キコトハ、却テ安
定ヲ圖ル所以デナイト思ヒマス、卽チ前段
申上ゲマシタ趣旨ヲ御酌取リ下サレマスル
コトヲ切ニ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=128
-
129・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 堀切善兵衞君
〔堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=129
-
130・堀切善兵衞
○堀切善兵衞君 只〓片岡君ヨリノ御答辯
ヲ承リマシタガ、左樣ナ意味ノ御答辯モア
ルカト思シテ私ハ豫メ念ヲ押シタ、左樣ナ
抽象的ノ御答辯デハ吾々ハ滿足スルコトハ
出來ナイト云フコトヲ申上ゲテ置イタ、果
シテ斯ノ如キ-政府ハ何ト申サレマシ
タ、責任ヲ以テ全力ヲ盡シテ安定ニ努メル、
日本銀行モ亦最善ノ努力ヲヤル、斯樣ナル
コトヲ今日マデ片岡君ハ何囘之ヲ繰返サレ
タノデアリマス、全然其效果ハ現レテ居ナ
クッテ益〓惡クバカリナルカラ、左樣ニ抽象
的ノ御言葉デハ吾々ハ滿足スルコトハ出來
ナイト申スノデアル、具體的方法ニ依ッテー
是レ〓〓ノ具體的ノ方法ニ依ッテ救濟シツ
ツアルト云フコトヲ承ラナケレバ、國民ハ
決シテ安心スルコトハ出來ナイノデアル、
ソレカラ終リニ臨ンデ、自分ガ何カ意見ヲ
述ベルト云フト財界ヲ安定セシメズシテ、
却テ之ヲ紊スヤウニ考ヘラレルカラ意見ヲ
述ベヌト言ハレタガ、國務大臣トシテ何タ
ル考デアルカ、國務大臣トシテ日本ノ經濟
界、財政界ニ對シ意見ヲ述ベルノガ、財界
ヲ紊ルガ如キコトヲ自ラ御認ニナッテ居ル
以上ハ、潔ク此際責任ヲ執ッテ野ニ下ッテ、國
民ニ對シ之ニ申譯ヲ爲サルノガ立憲政治家
トシテ當然ノ處置デアルト考ヘル、重ネテ
片岡君ニ對シ、之ニ對シ如何ナル御考ヲ御
持チニナルカヲ御尋ネ申サントスルノデア
リマス
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=130
-
131・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ願ヒマス、只
今ノ堀切君ノ重ネテノ御質疑ニ對シテハ
御答辯ガナイヤウデアリマス、尙ホ玆ニ東
武君ヨリ質疑ノ通告ガアリマス之ヲ許シマ
ス、東武君
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=131
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132・東武
○東武君 今囘ノ財界ノ動搖ハ、私共最近
數十年間嘗テ見ナイ我ガ經濟界ノ一大不安
ノ事實ヲ現出シタト考ヘテ居ル(伯手)(發
言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=132
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133・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=133
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134・東武
○東武君(續) 大正七年ニ寺內內閣ノ當時
ニ於キマシテ、米ノ暴騰ガアリマシテ、仲
小路農務商大臣ガ米價調節ヲ誤シタガ爲ニ、
遂ニ東京京阪地方ニハ、米騒動ト稱スル燒
打事件ガ起ッタコトガアリマス、私ハ此時ニ
於キマシテ、此燒打事件ナルモノハ我ガ帝
國ニ上ニ於テ非常ナ不詳事デアルト考ヘテ
居リマシタガ、寺内內閣ハ直ニ責任ヲ執リ
マシテ、總辭職ヲ致シテ、遂ニ此騒動ハ安
定致シタノデアリマス(拍手)今日ノ此財界
動亂ハ、アノ當時ノ米ノ暴騰ヲシテ、生活
ガ困難ヲシタト云フ以上ノ、非常ナ帝國ニ
深刻ノ影響ヲ與ヘテ居ルモノト吾々ハ考へ
テ居ル(拍手)殆ド私ハ玆ニ巨額ナ事ヲ申ス
コトハ憚リマスルケレドモ、帝都ニ於キマ
シテ相當ナ銀行ガ每日將棋倒シニナルト云
フヤウナコトハ、我ガ帝國ノ財界ノ中ニハ、
嘗テ無イ非常ナル不詳ナル事件デアルト私
ハ考ヘテ居ル(拍手)此事ノアルコトハ只今
堀切君ガ質問ヲ致シマシタノデアリマスル
ガ、震災手形ト云フ斯樣ナ不純ナル法律ヲ
出シテ、而モ之ヲ議會ニ說明セズ、漸次是
ガ明ニナルト云フト、社會上思想上ニ大影
響ガアッテ、遂ニ-ト云フコトヲ、私ハ其
當時ニ於テ斷言シテ居ルデハアリマセヌカ
(拍手)此壇上ニ於テ私ハ豫メ斯様ナ言葉マ
デ申シテ居ル(拍手)「-トハ何ダ」ト呼
フ者アリ)起リマス、斯樣ナ不純ナル法案
ヲ無理槍ニ通スナラバ國家ニドノヤウナ
コトガ起ルカ、アナタ方ハ考ヘテ見タコト
ガアルカ(拍手發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=134
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135・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=135
-
136・東武
○東武君(續) 斯樣ナ偏頗ナ二三ノ政商
ヲ二億万圓以上ノ巨額ヲ國民ノ血稅ヲ榨ッ
テ、斯樣ナ不法ナ法案ヲ通スト云フコトニ
ナッタナラバ、國家ニドンナ影響ヲ與ヘルカ
ト云フコトハ、アナタ方ハ之ヲ考ヘルダケ
ノ能力ガナイノデハアリマセヌカ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=136
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137・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 東君··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=137
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138・東武
○東武君(續) 諸君ニ御斷リ致シマス、私
ガ只今申シマシタ-ト云フコトハ、議長
ノ注意モアリマシタカラ、是ハ此處デ取消
シテ置キマス、併シ私ハ危激ナ言葉ヲ弄ス
ルヤウデアリマスルガ、私ハ其當時此演壇
ニ立ッタ時ニ、旣ニ左樣ナ議論ヲ致シテ居
ル、然ルニ此事ガ洵ニ不祥ナルコトデハア
リマシタガ、私ガ其當時此演壇ニ立ッタト
同様ノ事實ヲ今日來シテ居ルト云フコトハ
何タル事デアリマセウカ(拍手)諸君ガ責任
ヲ負ウテ斯樣ナモノヲ不當ナル法案ヲ通シ
タト云フコトハ、諸君ガ全般ノ責任ヲ負ハ
ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)而シテ
此法案ガ偶。動機トナリマシテ、片岡大藏大
臣ハ是ガ政治化シタト斯樣ニ言ッテ居ル、是
ハ堀切君ノ言ウタヤウナコトデ、多ク說明
ヲスル必要ハナイガ、帝國議會ニ提案シタ
モノガ是ガ政治問題デナクシテ何ガ政治問
題デアルカ、是ハ殆ド說明ヲ要シナイ、(拍
手)是ハ申上ゲマセヌガ、私ハ此財界ニ動
亂ヲ生ジタ所ノ原因ハ何デアルカト申シマ
スルト、此片岡藏相ガ震手法案ヲ議會ニ提
出シテ、帝都五十何行ノ大小銀行ノ悉クガ
震災手形ヲ澤山抱イテ居ッテ、サウシテ是
ガ說明ヲスレバ直グ其銀行ガ倒レル、此五
十幾ツノ銀行ハ皆不安ニ駈ラレテ、押セバ
倒レ、吹ケバ飛ブヤウナモノデアルト云フ
コトヲ屢、此壇上ニ於テ說明ヲ致シタト云フ
コトガ、財界ニ動亂ヲ與ヘタ原因デアルノ
デアリマス(拍手此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=138
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139・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=139
-
140・東武
○東武君(續) 諸君、財界ハ極メテ機微ナ
間ニ動クモノデアリマスルガ、斯樣ナ問題
ヲ以テ每日答辯ハ、今日言フタコトヽ明
日言フコトヽ常ニ言ヲ左右ニシテ、殆ド瞹
味ナル事ヲ言ッテ、唯、財界ガ不安ニナル、
財界ヲ安定スル、是ガ通ラナカッタナラバ
財界ハ非常ナ恐慌デモ起ルベキコトヲ以テ
一種ノ脅喝ヲシテ、サウシテ吾々ニ臨ンダ
ト云フコトガ、此財界動亂ノ原因ヲ成シタ
ノデアリマス(拍手)私ハ先日此所ニ片岡藏
相ノ責任ヲ論ズル時ニ於キマシテ、此財界
動亂ノ責任ハ、吾々在野黨デナクシチ、此
全般ハ現政府ノ責任デアルト云フコトヲ私
ハ豫メ言フテ居ッタノデアリマス、然ルニ今
日ハドウデアリマスカ、アノ時ハ渡邊銀行
一ツノ破綻ニ止ッタノデアリマスガ、ソレ
ニ引續イテ、或ハ中井銀行デアルトカ、或
ハ其他ノ中澤銀行ト云フヤウナ風ニ、各所
ニ飛火ヲシテ來テ、益〓蔓延ヲシタト云フ
コトハ、是ハ私ガ其當時演說ヲシタコト以
上ニ段々傳播ヲ致シタト云フコトハ是ハ
何人ノ責任デアルト御考へ爲サルノデアリ
マスカ、私ハ大藏大臣ノ此無責任ナル言動
ガ、斯樣ナコトニナリ至ッタト云フコトハ、
殆ド一點疑フベキモノガナイト考ヘテ居リ
マス(拍手)而シテ此財界ノ安定ヲスルノニ
如何ナル對策ガアルカト云フコトヲ私
ハ御尋スルノデアリマス、此所デ大藏大臣
ハ每日銀行局長、日本銀行ノ人、或ハ其他
井上準之助君デアルトカ云フヤウナ在野ノ
有志者ヲ集メテ、此對策ヲ協議爲サッテ居
ルト云フコトデアル、斯樣ナ待合ヤ穩密ノ
間ニ、斯樣ナ事ヲ論議シテモ畫策シテモ、
ソレデハ財界ハ安定致シマセヌ、若シ財界
ヲ安定シヤウト云フナラバ、大藏大臣ガ堂
堂トシテ此議會ヲ通ジテ、國民ニ斯樣ナ理
由デアルカラシテ、財界ハ安定スベキモノ
デアルト云フコトヲ言明致スト云フコト
ハ是ヨリ以上ノ良案ハナイト考ヘテ居ル
ノデアリマス(拍手)然ルニ片岡大藏大臣
ハ此壇上ニ於テ、斯ル明白ナ事實ニ向テ
天下ニ公言スルコトヲ致サヌト云フコト
ハ是ハ何タルコトデアリマセウカ(「ヒヤ
ヒヤ」、拍手)大藏大臣ハ此所ニ於テ堂々ト
所信ヲ披瀝シテ、此財界ノ安定ヲ爲スト云
フコトノ責任ヲ、此議會ノ壇上ニ於テ國民
全般ニ知ラスト云フコト、是ヨリ良案ハナ
イノデアリマスガ、之ヲ避ケルト云フコト
ハドウ云フ理由デアルカ、之ヲ御伺シタ
ィ、又モウ一ツハ此動搖ハ昨今ノ所ニ於キ
マシテモ、吾々ノ知リ得ル範圍ハ餘程廣イ
ノデアリマス、是ガ何處マデ波及スルカ、
殆ド燎原ノ火ノ如キコトノナイコトヲ、私
ハ期待致スノデアリマス-期待ヲ致スノ
デアリマスガ-無イコトヲ吾々ハ期待ヲ
致スノデアリマスガ、大藏大臣ハ是ヨリ以
上ニ、最早安定ヲ致スト云フコトノ見境ガ
付イタノカ否カト云フコトヲ私ハ御伺致ス
ノデアリマス、而シテ最早財界ハ安定スベ
キモノデアルト云プコトヲ、私ハ大藏大臣
ニ此壇上ヨリシテ御說明ヲ願ヒタイト考ヘ
テ居ル、ソレガ出來ルカ否ヤ、其點ヲ御伺
致シタイ、第一點ハ是デアリマス、第二點
ハ斯樣ナ事實ハ私ハ非常ナ不祥事デアル
ガ、斯樣ナ不祥事ヲ現出シタ責任ニ對シ
テ、大藏大臣ハ此責任ヲ自覺スルヤ否ヤト
云フコトヲ、極メテ明瞭ニ御答ヲ戴キタイ
ノデアリマス、(拍手)此二點ヲ御伺シテ此
壇ヲ下ル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=140
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141・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 片岡大藏大臣(發言
スル者多シ)靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=141
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142・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今東君ノ御質
問ニ御答ヲ申上ゲマス、先刻堀切君ノ御尋
ニ御答致シマシタ如ク、政府ハ責任ヲ持ッテ
全力ヲ擧ゲテ財界ノ安定ヲ期スルヤウニス
ルト、斯ウ申上ゲタ、言葉ハ簡單デアリマ
スガ、確ニハッキリ致シテ居ル筈デアリマ
ス(拍手)而シチ··
〔此時發言スル者アリ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=142
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143・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=143
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144・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 積日本銀行モ
亦此政府ノ趣旨ト同一方針ヲ以テ安定ニ努
メル-努メツヽアル、斯ウ申上ゲタノデ
アリマス、此以上ノコトヲ兎ヤ角申上ゲマ
スコトハ、今日ノ經濟界ニ於テハ却テ私ハ
宜シクナイト思フ(拍手)東君ハ私ノ今ノ答
辯デハ御不滿足デゴザイマセウガ、財界ノ
實情ヲ深ク御考下サレマシテ、只今ノ所ニ
於テハ此程度デ御辛棒ヲ願ヒタイノデアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=144
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145・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田崎信藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=145
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146・東武
○東武君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=146
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147・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田崎君一寸御待チ下
サイ-東武君
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=147
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148・東武
○東武君 私ノ質問ニ對シテハ、全ク不得
要領デアリマシテ、何等得ル所ハアリマセ
ヌ、斯樣ナコトハ每日委員會等ニハ承ッテ居
リマス、今更此壇上ニ私ハ更ニ質問ヲスル
必要ハナイ、財界ニ對シテハ最善ノ努力ヲ
拂ヒ、財界ノ動搖ヲ防グト云フヤウナコト
ハ度〓此壇上ニ於キマシテモ豫算總會ニ
於テモ每日承シテ居ル、唯、今日ノ具體的ノ
事實ニ付テ、財界ガ安定ヲスルヤウナコト
ニ付テ、大藏大臣ノ所信ヲ伺ヒタイト云フ
ノデアルガ、其所信ヲ聽クコトヲ得ザリシ
コトヲ遺憾ニ考ヘル、遺憾ニ考ヘルガ、恐
ラク此財界ヲ安定スル所ノ具體的ノ案ハナ
イデアラウト私ハ考へテ居ル(拍手)若シ左
樣ナ信任ガアリ、若シ左樣ナ信用ガアル大
藏大臣デアルナラバ、今日マデ斯樣ナ財界
ノ動搖スルヤウナコトハ斷ジテ無イノデア
リマス(拍手)此大藏大臣ガ就任スル當時ヨ
リシテ財界ノ識者、若クハ世間ノ具眼者ハ
片岡大藏大臣ガ就職スレバ、何力財界ニ仕
出カスダラウト云フヤウナ不安ハ大藏大
臣就任當時カラシテ、財界ノ一ツノ不安ト
ナッテ居ッタノデアル(拍手)大藏大臣就任ス
ルト同時ニ、直ニ骨董物ナドノ御賣拂ヲ致
シテ、サウシテ御用商人其他ノ政商ニ骨董
物ナドヲ賣ルヤウナ大藏大臣、左樣ナ大藏
大臣ハ一國ノ財政ヲ信任スルニ足リナイ
ト云フヤウナコトヲ、當時識者ハ皆考ヘテ
居ッタノデアル、第二ノ私ノ質問ニ對シテ
大藏大臣ハ責任ヲ負フカドウカト云フコト
ヲ私ハ御伺シタ、之ニ對シテ十分明快ナル
御答辯ヲ伺フコトガ出來ナイノデアリマ
ス私ハ强テ大藏大臣ニ對シテ信任ヲ問フ
ト云フヤウナコトヤ、或ハ引責辭職ヲ勸告
スルト云フヤウナコトハ致シマセヌガ、此
財界ノ安定スルノニハ、如何ナル方針ノ下
ニ於テヤルカト言ヒマスレバ、私ノ考フル
所ニ依レバ-東心ヨリ私ハ我ガ財界ノ爲
ニ考フル所ヲ卒直ニ申上ゲマスレバ、甚ダ
非禮デハアルカモ知ラヌガ、現內閣ガ直ニ
總辭職ヲスル、大藏大臣ガ直ニ引責スル
ト云フコトニ於テ、財界ハ直ニ安定スルト
吾々ハ考ヘテ居ル(拍手)此大藏大臣ガ就任
シテ、言ヲ左右ニ托シテ、尙ホ自己ノ詭辯
ヲ弄シテ彌縫スルト云フヤウナコトヲ致シ
テ、致セバ致ス程財界ノ安定ヲ缺イテ、財
界ヲ不安ニ陷ルヽ虞ガアルノデアリマスル
カラ、内閣總辭職ヲスルト云フコトノ其前
提ニ於テ、片岡大藏大臣ガ財界動搖ノ責任
ヲ負ッテ、直ニ辭職ヲスルト云フコトニナレ
バ此財界ハ翌日カラ一天平靜ノ如クナル
ト私ハ考ヘテ居ル(拍手)此點ニ於テ片岡大
藏大臣ハ責任ヲ-端的ニ責任ヲ負フト云
フコトノ御覺悟ガアルカ無イカト云フコト
ヲ私ハ伺ッタノデアリマス
〔「答辯ノ必要ナシ」「答辯ヲシナイカ」
ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=148
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149・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 東君ノ重ネテノ御質
疑ニ對シテハ大藏大臣ノ答辯ガアリマセ
又、故ニ更ニ次ノ通告者ニ許シマス、田崎
信藏君
〔田崎信藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=149
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150・田崎信藏
○田崎信藏君 私ハ先刻政友會ノ堀切君ノ
御質疑ヲ承リ、大藏大臣ノ御答辯ヲ承リ
大藏大臣ノ御答辯ニ對シマシテ一二質疑ヲ
致シタイノデアリマス、過日本院ヲ通過致
シマシテ、只今貴族院ノ委員會ニ於テ可決
サレマシタ所ノ震災手形法案ハ我國ノ財
界ノ安定ヲ期スベキ法案デアルト大藏大臣
ヨリ承ッテ居シタノデアリマス、然ルニ今日
我國ノ財界ハ如何ナル狀態ニ在ルカト云フ
コトヲ冷靜ニ考ヘマスレバ、銀行ハ休業致
ジ、支拂停止ヲ爲シタルモノハ渡邊銀行
ヲ初メ中井銀行、中澤銀行、八十四銀行、本
日ハ村井銀行ガ營業停止ヲ致シタコトヲ本
員ハ耳ニ致シタノデアリマス(「左右田銀行
モアル」「中野銀行モアルヂヤナイカ」ト呼
フ者アリ)マダ落チテ居ル所ハ只今御注意
ヲ得マシタ如ク、其他ニ澤山アルカモ知レ
マセヌ、財界ノ安定ヲ期スベキ手形法案ガ、
却テ我國ノ財界ニ不安ヲ招來セシメタコト
ハ如何ナル皮肉デアルカ、本員ハ唯〓天
ノ配意ハ恐ロシイモノデアルト云フコトヲ
痛感スルモノデアル(拍手)ソレハ何故デア
ルカト申シマスレバ、此震災手形法案ナル
モノハ何時ノ時ニ於テモ我國ノ現在ノ如
キ經濟組織ニ於キマシテハ斯樣ナコトハ
再三繰返サレルノデアリマス、其理由ヲ簡
單ニ申シマスレバ、澤山ノ人々ヲ捨テヽ置
イテ、二三ノ人々ヲ常ニ救濟スル所ノ我國
ノ現在ノ資本制度ニ大ナル缺陷ガアルコト
ヲ、私ハ深ク信ズルノデアリマス、震災ノ
爲ニ非常ナ困難ヲ致シマシタ人々ニ對シ
テ、震災手形法案ナルモノヲ以テ日本銀行
ガ一億圓ノ補償ヲ致スコトヲ政府ハ認メ
タ、然ルニ二年ヲ經過シ三年ニナラムトス
ル時ニ於テ、之ニ加フルニ、一億七百万圓
ノ大金ヲ一二政商ノ爲ニ此救濟ニ充テタト
云フヤウナコトガ世論ノ高イ所デアリマ
ス、然ルニ此震災手形法案ノ救濟ノ如キモ
カ、過去ノ日本ノ經濟上ノ實際、政治上
ノ實際カラ申シマスレバ、再三繰返サレテ
居ルコトヲ、本員ハ最モ遺憾ニ思フノデア
リマス、私ハ此問題ニ付テ兎ヤ角、今此處
デ申スノデハアリマセヌガ、此震災手形法
案ガ其宜シキヲ得ザルコトハ提案其時ニ
方法ヲ過チ、又大藏大臣ノ說明其モノガ不
十分デアッタカラデ、大藏大臣ガ詳細ニ其
內容ヲ說明スルナラバ、衆議院ヲ通過シ、
又貴族院ヲ通過スルコトハ、敢テ私ハ不思
議ヲ持タナイノデアリマス、然ルニ僅ノ言
葉ノ行違ヒヨリシテ今日ノ如ク經濟界ノ恐
慌ヲ來シタコトハ、本員最モ遺憾トスルモ
ノデアリマス、此震災手形法案ガ未ダ貴族
院モ通過シナイ時ニ於キマシテ、財界ノ恐
統ヲ來シ、其預金ノ金額一億五千万圓デア
ルサウデアリマス、又預金者モ十万ノ上ニ
アルト云フコトヲ耳ニスルノデアリマスガ
私ハ此預金者ノ救濟ノ爲ニ大藏大臣ニ問フ
ノデアリマス、一億五千万ノ大金ヲ銀行ニ
預ケタ十万ノ預金者ハ、帝國議會ガ開會中
デアリマスルガ故ニ、セメテモ議會ニ於テ
此救濟具ガ具體化サレルモノトシテ、或ハ
衆議院又ハ貴族院ニ期待スル所大ナリト私
ハ思フノデアリマス、然ルガ故ニ衆議院ノ
使命トシテハ、大藏當局ヲイケナキモノハ、
イケナキモノトシテ、叱咤スルモ宜シイ、
鞭縫スルモ宜シイガ、若シンレ此震災手形
法案ガ衆議院ニ於テ通過シタル後ニ於テ、
貴族院ニ於テ少シク紛糾ガアルト云フコト
ヲ利用シテ、之ヲ政治問題ニ〓シテ煽動ス
ルガ如キ者アリト致シマスレバ預金者コ
シハ實ニ迷惑ヲスルノデアリマス(拍手)私
ハ今申シマシタ如ク、一億五千ノ大金ヲ預
〓〓シタ十万餘ノ人々ハ、此銀行ガ仕拂停
北ヲ致シタ爲ニ、如何ニ精神的、物質ノ
苦痛ヲ感ジテ「活ルカヲ考慮致ス時ニ於テ、
衆議院ハ愼重ニ總テノ事ヲ冷靜ニ考慮シ
サ、我國ノ財界ノ爲ニ救世主トナルコトガ
當然デアラウト思フノデアリマス(拍手)然
ルニ前刻ヨリノ質疑ヲ承レバ、大臣ノ責任
ヲ問フト云フノデアリマスガ、私ハ此救濟
策ヲ先ニスルコトガ本院ノ使命デアラネバ
ナラヌト思フノデアリマス(發言者多シ)冷
靜ニ御聽キナサイ吾輩ニハ眼中政黨モナケ
レバ、感情モナイ、冷靜ニ私ハ問ハントス
ル者デアル、若シ政友會ノ諸君ガ彌次ラレ
ルト、〓奮居士ハ〓奮致シテ、脫線措ク能
ハザル爲、諸君ハ迷惑スルデアラウト思フ
者デアリマス(拍手)此問題ガ社會問題デア
ルト堀切君ノ言ハレル如ク、私ハ此問題ハ
重大ナル人道問題デアラネバナラヌト思フ
ノデアリマス、私ハ常ニ此事ヲ口ニスル者
デアリマスルガ、政治ヲ以テ民ヲ殺スト云
フ諺ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=150
-
151・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 田崎君、田崎君ニ一
〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=151
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152・田崎信藏
○田崎信藏君(續) 政治ヲ以テ民ヲ殺スト
云フノデアリマス、政治ヲ以テ民ヲ活スノ
ガ、卽チ活人政治デアラネバナラヌ、爲政
者ハ此事ニ最モ留意シナケレバナラヌノデ
アリマス、然ルニ政治ヲ以テ民ヲ殺スガ如
キ事ヲ爲スナラバ一大臣ノ失態ノミデハ
サイ、本院全體ノ面目ニ關スルコトデアル
ガ故ニ、諸君ハ冷靜ニ聽クノガ當然デアル
ト思フノデアリマス(拍手)私ハ其意味ニ於
キマシテ現在閉メラレテ居ル所ノ銀行ノ預
金者ノ救濟ニ付キマシテ、本日ノ新聞ヲ見
マスルト、日本銀行ハ現在ニ於テ破綻シタ
ル其以外ノ殘留セル銀行ニハ、無制限ニ貸
出ヲスルト言ハレテ居リマス、大藏大臣モ
亦出来ルダケノ救濟ヲスルト言ハレテ居リ
マスガ、今銀行ヲ閉メラレテ精神的ノ大苦
痛ヲ爲シテ〓ルモノハ、私ガ申シマスレバ
人間ノ細胞ノ中ノ臼血球ガ、或ル一ツノ驚
愕ノ爲ニ五万六万ヲ殺セバ必ズ其人ハ近キ
中ニ死スルト云フノデアリマス、此意味ニ
於テ現在十万ノ預金者ノ救濟ニ付テ、大藏
大臣ハ如何ナル御考ヲ持テ居ラレルカ、現
在閉メタモノハ、銀行其モノヽ內容ガ宜シ
クナイトシテ、日本銀行ガ救濟シチカッタ
タガ爲ニ、營業停止ヲシタノデアル、今後
殘ッテ居ル所ノ銀行ハ、內容ガ充實シテ居
ルカラ、日本銀行ト大藏省トガ交涉シテ、無
制限ニ貸出ヲシテ我國ノ財界ヲ救濟スルト
言ハレルノヂアルガ、私ハ此機會ニ於テ、
太藏大臣ニ御問シタイコトガモウ一ツア
ル、ソレハ何デアルカト言ヘバ現在ノ銀行
ノ銀行組織デアッア、現在ノ如キ大藏省ノ
監督デハドノ銀行ガ惡イカ、此銀行ガ良
イト云フヤウナ内容ガ果シテ如何ナル點ニ
於テ之ヲ見出スコトガ出來ルカ、僅ニ五入
足ラズノ監督者ヲ以テ居ル、是ハ總テ今日
マデノ既設政治家ノ罪デアル大藏省生レテ
以來銀行ノ監督ヲ緩ニシテ、餘リニ放慢ナ
ル貸付ヲ爲シタコトヲ承認致シタ所ノ過去
ノ政治家ニモ、亦其一半ノ罪ガアルト私ハ思
フ、此意味ニ於キマシテ大藏當局ハ、銀行
ノ實際ヲ調ベルト云フコトハ出來テ居ルノ
カ、出來テ居ラヌノデアルカ、大藏當局ヲ
信ズレバ將來此預金者ノ迷臧ヲスルガ如キ
コトハナイ、〓殘クテ居ル所ノ銀行ハ必
ズ日本銀行ガ救濟スルガ如ク監督シテ居ル
結果ハ立派ナル内容ヲ持ッテ居ルト云フ
コトヲ言明出來ルカドウカ、旣ニ停止ヲ致
シタ所ノ銀行ニ付テ、本員ハ特ニ京都ニ籍
ヲ有スル關係上、此震災ノ爲ニ總テノ物ヲ
無クシタノデアリマス、其上ニ天災ノ爲ニ
雪、風ナドニ惱マサレテ、天ヲ呪ウテ居ル
所ノ國民ガ万ニ近クアルノデアリマス、此
材井銀行ノ破綻ノ爲ニ、其不幸ナル人ガ一
層不幸ニ陷ルコトヲ考慮致シマスル時ニ、
私ハ今囘ノ銀行ノ支拂停止ハ、實ニ人道上ノ
重大ナル所ノ責任ガアルト思フノデアリマ
ス、故ニ現在ノ預金セル十万ノ人ヲ救フ所
ノ具體案ガ有ルカ否ヤ、又現在殘シテ居ル
取付ニ遇ハナイモノハ完全ナル銀行デアル
ト云フコトヲ、此處ニ於テ言明出來ルカ否
カヲ、私ハ大藏太臣ニ御問スルノデアリマ
ス私ハ最後ニ本院ニ御願スルノハ何デア
ルカ、此問題ハ今申シマスル如ク、人道上
重大ナル社會問題化セントシテ居ルノデア
リマス、徒ニ煽動スルガ如キ、感情ニ支配
サレテ此問題ノ爲ニ紛糾ヲ來サヾランコト
ヲ、私ハ切ニ懇願シテ已マナイ次第デアル
ノデアリマス
〔國務大臣片岡直溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=152
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153・片岡直温
○國務大臣(片岡直溫君) 只今ノ田崎君ノ
御質疑ニ御答ヲ申上ゲマス、先刻來堀切君
ニ御答ヲ申上ゲマシタ如ク、政府竝ニ日本
銀行ハ、全力ヲ擧ゲテ此財界ノ安定ニ努メ
ツヽアル、斯ウ云フコトヲ申上ゲタノハ
卽チ今後ニ於テ破綻ヲ見ルヤウナコトノ無
イヤウニ、出來得ル限リノ力ヲ盡スト云フ
コトヲ明ニシタモノデアリマス、昨今三四
ノ銀行ガ休業ヲ致シマシタ、ソレガ爲ニ預
金者ガ非常ニ苦痛ト心配ヲ致シテ居ルト云
フコトハ、洵ニ御同情ニ堪ヘナイ、是等ノ
銀行ニ對シマシテハ、財界ノ安定ヲ圖ルト
同時ニ、一日モ速ニ開店セシメ、預金者ノ
迷惑ヲ無クスルヤウ努メル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=153
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154・井本常作
○井本常作君 大臣ノ答辯ニ對スル質疑
ハ此程度ニ於テ終了セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=154
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155・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=155
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156・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ堀切君提出ノ緊急質問ハ、是ニテ
打切ニナリマシター日程第九、食糧積劵
發行ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ヌ、提出者原夫次郞君
第九食糧債劵發行ニ關ヌル法律案
(星廉平君外二名提出)第一讀會
食糧債劵發行ニ關スル法律案
第一條被害水田改良事業助成金貸與金
支出ニ必要ナル經費支辨ノ爲政府ハ一
億圓ヲ限リ食糧債劵ヲ發行シ又ハ之カ
繰替支辨ノ爲借入金ヲ爲スコトヲ得
食糧債券ノ種類發行價格其ノ他ノ細目
ニ付テハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條前條ノ規定ニ依ル公債ノ發行價
格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ
於テハ前條ノ制限以外ニ食糧債劵ヲ發
行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ被害水田改良事業助成法施行ノ日
ヨリ之ヲ施行ス
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=156
-
157・原夫次郎
○原夫次郞君 本案ニ付キマシテ、私カラ
提案ノ理由ヲ極ク簡單ニ說明ヲ致シマス、
曩ニ委員ニ付託セラレ居リマス所ノ被害
水田改良事業法案ト聯絡スル法案デアリマ
シテ、我ガ國列下ノ緊切ノ重大問題デアリ
マス、食糧政策ヲ解決セントスルモノデア
リマシテ、卽チ被言水田改良事業ノ施行ニ
要スル資金タル助成金竝ニ貸與金ノ財源ヲ、
食糧債券ノ發行ニ依リテ得ントスルモノデ
アリマス、一億万圓ノ債券ノ發行ハ、見
巨額ノヤウデアリマスガ、外米一箇年ノ買
入額ノ半分ニモ足リマセヌ金額デアリマシ
テ、改良事業ニ依シチ一箇年一千二百万石
乃至一千八百万石ノ增加ノ確信ヲ得ルト云
フ點カラ見マシタナラバ、洵ニ些少ナ金額
デアルノデアリマス、詳細ハ何レ委員會ニ
於テ申述べマスガ、何卒愼重審議御協賛ア
ランコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=157
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158・粕谷義三
○議長(粕谷義三君) 本案ニ對シテハ何等
發言ノ通告ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=158
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159・井本常作
○井本常作君 本案ハ星廉平君外二名提出
被害水田改良事業敗成法案ノ委員ニ併セテ
付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=159
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160・粕谷義三
○議長(粕各義三君) 井本君ノ動議ニハ御
異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ、日程第十、地租條例中改正法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ
許シマス-熊谷五右衞門君
第十地租條例中改正法律案(熊谷五
右衞門君提出)第一讀會
地租條例中改正法律案
地租條例中左ノ通改正ス
第十三條ノ二ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ニ依リ地租ヲ徴收セラレサル場合
ト雖特別地稅ヲ納ムル者ニ對シテハ他
ノ法令ニ於ケル續稅資格要伴ニ億テハ
其納稅額ヲ以テ之ヲ本法ニ依リ微牧セ
ラレタルモノト看做ス
〔能谷五右衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=160
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161・熊谷五右衞門
○熊谷五右衞門君 只今上程ニナリマシタ
地租條例中改正法律案ノ理由ヲ一言申述べ
マス本案ハ昨年制定ニナリマシタ自作農
地和免除ニ關スル問題デアリマシテ、地租
ヲ免除致シマスル爲ニ
〔粕谷議長議長席ヲ退キ小泉副議長代
リ著席]
今後陪審員ノ資格ヲ失フコトニナッテ來タ
ノデアリマス、〓テ此資格ヲ與ヘンが爲
ニ、此改正ヲ致スノデアリマスガ、詳細ハ
委員會ニ於テ申述ベマスルデ、何卒皆樣ノ
協賛ヲ望ム次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=161
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162・井本常作
○井本常作君 本案ハ土屋〓三郞君提出、
明治六年地租改正條例ニ依ル土地丈量立替
費用僕還ニ關スル建議案外二十件ノ委員ニ
併セテ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=162
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163・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
ハ御異議ナイト認メマス、仍テ動議ノ如ク
決シマシタ、日程第十一及第十二ヲ一括議
題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=163
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164・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナイト認
メマス、仍テ日程第十一、朝鮮私設鐵道補
助法中改正法律案、日程第十二、朝鮮私設
鐵道補助法中改正法律案ヲ一括シテ議題ト
致シ、各提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-
荒川五郞君
第十一朝鮮私設鐵道補助法中改正法
律案(荒川五郞君外十名提出)
第一讀會
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ拂込資本金ニ對スル
益金ノ百分ノ二ヲ限度トシ會社ノ毎營
業年度ニ於ケル益金ノ二分ノ一ハ之ヲ
益金ヨリ控除ス
第十二朝鮮私設鐵道補助法中改正法
律案(本田義成君外二名提出)
第一讀會
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ拂込資本金ニ對スル
益金ノ百分ノ二ヲ限度トシ會社ノ每營
業年度ニ於ケル益金ノ二分ノ一ハ之ヲ
益金ヨリ控除ス
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=164
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165・荒川五郎
○荒川五郞君 諸君朝鮮ニ於ケル鐵道ノ問
題ハ、唯〓單ナル交通機關ノ問題タルニ止
リマセヌ、勿論何レノ鐵道ト雖モ、諸般ノ
殖〓典業其他全般ノ進歩發達ニ重大ノ關係
アルハ申スマデモアリマセヌガ、朝鮮ニ朝
鮮ニ於テハ其重大サニ於テモ、更ニ特段ノ
意義ヲ有シテ居リマシテ、朝鮮統治ノ問題
ハ實ニ帝國ノ存立及東洋ノ平和ノ爲ニ、
最モ大切緊要デアリマス、若シ一歩ヲ談
リ、又一日ヲ緩ウセバ其被ムル不幸損害
ハ測リ知レナイ程デアリマス、既ニ是マヂ
モ警備其他事有ル每ニ、多大ノ失費ヲ要シ
テ、而モ其受ケシ直接間接ノ打撃損害ハ如
何程デアリマシタカ、卽チ一方ニハ有用入
施設ヲ借ンデ、他方ニハ多大ノ死金ヲ使〓
テ居ルコトハ少クナイノデアリマス、而シ
テ其朝鮮統治上第一ニ施護なベキハ是等
交通機關デアリマシテ、中樞神經ノ指呼ニ
依リ、直ニ全般ニ活動ヲ與へ、又敏速ニー
呼應スルヤウニ、平常ノ準備ヲ要スルメデ
アリマス、是レ訴議會ニ於テ我が衆議院が
全院一致致シテ、朝鮮鐵道ノ普及促進ニ關
シテ有力ナル建議ヲ致シタバカリデハアリ
マセヌ、極メテ重大ナル場合ノ外、苟モセ
ス慣例ノ貴族院スラ、一致建議致シテ、是
ガ急要ヲ絕叫セラレタ程デアリマス、(「簡
單」ト呼フ者アリ)洵ニ天下何人モ異論メナ
イ所デアリマス、政府ハ本年度ヨリ十二箇
年ニ亙ッテ、三億二千万圓ヲ投ジテ、朝鮮ニ
於ケル國有鐵道八百六十哩ノ敷設計畫ヲ提
案セラレテ、本院ハ旣ニ協賛ヲ與ヘタモノ
デアリマス、三億二千万圓ト云ヘバ相當巨
額ノヤウデアリマスルガ、併シ此大使命ノ
上カラ言ヘバ、マダ〓〓十分トハ言ヘナイ
ガ、併シ財政ノ現況ニ顯ミマシテハ今日
ノ狀況デハ政府トシテハ大英斷トシテ吾
吾ハ此計畫ヲ多トスルモノデアリマスガ、
是ト同時ニ民間ニ於テモ私設鐵道ノ進捗ヲ
圖クテ、政府民間一致シテ是ガ目的ヲ達成ス
ルコトニ努力セネバナリマセヌ、政府ノ此
大詐畫ニ伴クテ、民間施設ガ各方面ニ起クテ
首尾一貫セネハ此政府大豫算ノ計畫モ其
效果ヲ殺グコトガ少クナイノデアリマス
ソコデ此政府計畫ニ伴ウテ、內地其他ヨリ
是等資金ヲ誘致スルノ方法ヲ立ツルコト
ハ最モ必要ヲ感ズルノデアリマス、然ル
ニ現行私設鐵道敷設法ハ、內地ノソレニ比
シテ一見保護ガ厚イヤウデアリマスガ、內
地ノ補助法ハ建設費ニ對シテ五分ヲ與フル
ノ外、收益ノ二分ヲ限度トシテ補助ヲ加フ
ルコトガ出來ルヤウニ、ゾレガ資本ト經營
如何ニ依シテ、將來伸縮スベキ彈力性ヲ帶ビ
テ居リマス、此點ガ大ニ有利ニ出來テ居リ
マスルノニ、朝鮮鐵道デハ八分ノ釘附補助
デアリマスカラ、鐵道會社ハ〓損セヌ限リ
ハ、會社登記ノ日カラ十五箇年間、年八分
ノ補助ヲ得テ居ルノニ、其株ノ價ハ多ク撿
込ノ六七掛内外ヲ出ヌ狀況デアリマス、故
ニ中途カラ株ヲ持ツ人ハ、利廻リガ一割二
三分ニモナリマスチレドモ、發起拂込ノ者
ハ其利ヲ得マセヌ、卽チ企業家ヲ利セズシ
テ、株的資本家ヲ利スルニ止フテ居リマス、
ゾレデハ折角ノ補助モ其效ヲ全ウスル能ハ
ナイ憾ガアリマスルカラ、成ベタ企業家ヲ
誘ヒ、企業資本ヲ注入スルヤウニ、ソレヲ
招來スルノ方法ヲ講ゼネバナリマセヌ、出
來タ株ヲ買フ者ヲ利スルヨリモ、株式ノ拂
込ヲ有利ニナラシメネバナラスノデアリマ
スソレニハ會社ノ經營宜シキヲ得タ場合
ニハ、其收益ノ二分ヲ限度トシテ、會社ノ
營業ヲ奬勵スベク、政府ガ補助ヲ加算スル
コトガ出來ル途ヲ開クコトガ必要デアリマ
ス斯クスレバ其配當ハ僅カ五分カ六分位
ノ曾加ニ止マリマスガ、株ノ價ノ上ニ八著
シク彈力性ヲ生ジテ、會社ノ信用モ高マ
リ今日高步ノ社積又ハ借入金等ニ依シテ
敷設シ延長シテ居ル現在ノ變態的ナル經營
方法ヲ改メテ、株式ノ拂込ヲ容易ナラシ
ノ、拂込ニ依フテ事業ヲ漸次進捗セシムル
コトガ出來マスル、是ガ本改正案ノ要旨デ
アリマス、爲ニ幾分か補助スル國費ヲ增加
スルモ、其額ハ極メテ些々タルモノデアリ
マジテ、其結果ハ非常ニ多大ナルモノガア
ル、其影響スル所ヘ極メテ重大デアリマ
ス、殊ニ其爲ニ緩急呼應スルコトノ敏捷等
ノ爲ニ、今日要シツヽアル警備等ノ政策的
:
ノ國費ハ漸次容易ニ之ヲ減ズルコトガ出來
マス(簡單)朝鮮統治ノ目的ヲ達成シ、却テ
國費ハ之ヲ減ズルノ利ヲ見ル所以デアリマ
ス、故ニ本案ノ趣旨ハ國民全般ノ要望ニ依
リ、又朝鮮統治ノ大目的ヲ擧グルニ最モ適
切ノモノト信ジマスルカラ、會期切迫ノ今
日ナルモ、來議會ヲ待ツコトハ出來マセヌ、
玆ニ各派一致ノ御賛同ヲ以テ提案致シタ次
第デアリマス、何卒滿場諸君ノ御賛成ヲ希
望致シマス、本案ハ荒川五郞一個ノ案デア
リマセヌ、各派ノ案デアッテ責任アリマス
ルカラ、必要ノコトダケハ玆ニ辯明シナケ
レバナラナカッタ所以デアリマス
〔本田義成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=165
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166・本田義成
○本田義成君 本案ハ荒川君ガ述ベラレタ
案ト同一案デ、辯明ヲ申上ゲナクテモ、諸
君ハ滿場御賛成ノコトヽ存ジマス、尙ホ又
色と御質問ガゴザイマスレバ、委員會ニ於
テ十分申上ゲマスカラ、ドウゾ滿堂御贊成
アランコトヲ願シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=166
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167・井本常作
○井本常作君 日程第十一、第十二ノ兩案ハ
信太儀右衞門君外三名提出能代臨港線敷設
ニ關スル建議案外三十一件ノ委員ニ併セテ
付託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=167
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168・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナイト認メマス、仍テ其通リ決シマ
シタ-日程第十四信託業法中改正法律案
ノ第一讀會ノ續ヲ開キ委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長若宮貞夫君
第十四信託業法中改正法律案(牧野
良三君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一信託業法中改正法律案(牧野良三君外
二名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月十七日
委員長若宮貞夫
衆議院議長粕谷義三殿
〔若宮貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=168
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169・若宮貞夫
○若宮貞夫君 本案特別委員會ハ前後一回
開會審議ヲ致シマシテ、其結果多數ヲ以テ
本案ハ可決セラルベキモノナリト決議セラ
レタノデアリマスガ、其經過ノ詳細ハ速記
錄ニ就テ御覽ヲ願ヒタイノデアリマス、此
段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=169
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170・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ニ對シ再付
託ノ動議ノ發言ノ通告ガ出テ居リマス-
原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=170
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171・原夫次郎
○原夫次郞君 只今委員長カラ御報告セラ
レマシタル此信託法案ハ、委員會ニ於テ質問
應答ヲ爲スコト一時間半ニシテ本案ガ解決
セラレタノデアリマス、私ハ玆ニ此委員會
ニ於テ可決セラレタル所ノ本案ヲ更ニ同一
委員會ニ再付託相成ルベキモノト云フ動議
ヲ提出致スノデアリマス(ヒヤ〓〓贊成)
其理由ト致シマシテハ一一點アルノデアリマ
え一ツハ此信託法ナルモノハ極メテ重大
ナル法律デアリマシテ、本案ハ其信託法ノ
改正案デアリ、マスガ、提案者ノ述べラレタ
ル所ハ、主トシテ英米ノ信託法ヲ本ト致シ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ信託法ノ改
正案ト云フモノハ左程ニ單純ナモノデハナ
クシテ、前途我國ニ起ラントスル所ノ信託
會社ナルモノガ、一致シテ我ガ民法ニ規定
致シテ居ル所ノ遺言ノ執行者ニ此信託會社
ガナラウト云フ改正案デアリマス、所ガ日
本ノ遺言執行者ト云フコトニハ、英米ノソ
レト異ナッテ家族制度ヲ取ッテ居ル所ノ日本
デハ、此事柄ハ極メテ重大ナル意義ヲ有ス
ルモノデアリマシテ、先ヅ財產ノ整理以外
ニ於テ、我ガ日本ノ遺ミ〓執行者ナルモノハ、
或ハ視族會議ニ懸ケテ色こ密接ナル親族相
續ノ關係ヲ解決シナケレバナラヌ重大ナル
責務ガアルノデアリマス、ソレヲ信託會社
ガ英米ノ如ク、我ガ日本ノ家族制度ノ中ニ
入ッテ包括的ナ遺言執行者ニナラウト云フ
法案デアリマスルガ故ニ、私共ハ極メテ重
大ナル改正法案ト心得テ居ルノデアリマ
ス、ソコデ此本案ガ第一回ニ於テ質問セラ
レマシタトキニハ提案者タル牧野良三君
ガ政府者ニ說明セラレ、又委員外ノ山内確
三郞君ヲ同行シ來ッテ、此委員會デ質問セ
ラレタノデアリマスガ、其提案者ノ質問、
政府ノ應答ト云フモノガ僅ニ一時三十分間
デ終了ヲ致シタノデアリマス、第二回ニ於
テ私ガ質問スル順序ニ相成シテ居ッタノデア
リマスガ、是ハ私ハ提案者カラ依賴ヲ受ケ
テ何トカシテ此改正案ヲ我カ民法ト調和ス
ルヤウニ活カシテ貰ヒタイト云フコトデ、
其委託ノ下ニ私ハ質問ヲ發スルト云フコト
ニナッテ居ッタ所ガ、提案者カラ別ニモウ質
問スルニ及バヌト云フ政友會側カラノ委員
ガ頻ニ妨害ヲセラレタノデアリマス、ソコ
デ私ハ質問ヲ爲サナイコトニ致シタノデ
アリマス、ソレカラ第二ニハ此委員ガ甚ダ
重大ナル失態ノアルコト、之ヲ理由ト致シ
マシテ、本案ノ如キ重大ナル法案ノ改正ニ
當ッテハ唯、提案者ダケノ言ヲ聽キ、而カシ
テ無雜作ニ各派ノ交渉ヲ破ルト云フヤウナ
コトヲ致シテ、卽決可決ヲスルト云フヤウ
ナコトハ、甚ダ失當ノコトデアル、是ガ私
ガ委員再付託ノ動議ヲ出シタ所以デアリマ
ス、ドウゾ御賛成ヲ願ヒマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=171
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172・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 採決ヲ致シマ
ス-原夫次郞君ノ再付託ノ動議ニ賛成ノ
諸君ノ起立ヲ望ミマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=172
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173・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 起立多數デアリ
マイ、仍テ再付託スルコトニ決シマシ
タ-日程第十五大正九年法律第五十六號
中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ、委員
長ノ報告ヲ求メマス-委員長岡田伊太郞
君
第十五大正九年法律第五十六號中改
正法律案(北海道拓殖鐵道補助ニ關
スル件)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一大正九年法律第五十六號中改正法律案
(北海道拓殖鐵道補助ニ關スル件)(佐々
木平次郞君外十五名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年三月十九日
委員長前田米藏
衆議院議長粕谷義三殿
〔岡田伊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=173
-
174・岡田伊太郎
○岡田伊太郞君 玆ニ上程セラレマシタノ
ハ大正九年法律第五十六號中ノ改正案デア
リマス、是ハ北海道ノ拓殖鐵道ガ十箇年デ
補助期限ガ切レルノデアリマスガ、北海道
ノ現狀ニ照シマシテ、十箇年ノ年限ニ之ヲ
打切ルト云フコトハ到底拓殖鐵道ヲ普及ス
ル所以デナイト云フコトデアリマシテ、之
ヲ十五箇年ニ延期シテ戴クノデアリマス、
之ガ爲ニハ各派ノ協定ニ依シテ提出セラレ
タル本案デアリマスルガ、審議ニ當リマシ
テハ政府當路卽チ鐵道内務兩省ノ政府委員
ノ間ニ於キマシテ、愼重ニ種々ノ質問應各
ガ交ハサレタノデアリマスガ、結果ハ政府
ニ於カレテハ全然ノ同意デハアリマセヌ、
併シ委員會ハ滿場一致ヲ以テ之ヲ原案通リ
可決シタノデアリマス、何卒御賛成ヲ願ヒ
やく、詳細ハ速記錄ニ依シテ御承知ヲ願ヒ
マス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=174
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175・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=175
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176・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=176
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177・井本常作
○井本常作君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可
決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=177
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178・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會
ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
大正九年法律第五十六號中改正法律案
(北海道拓殖鐵道補助ニ關スル件)
第二讀會(確定議)
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=178
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179・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報告通リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=179
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180・井本常作
○井本常作君 殘餘ノ日程ハ延期セラレン
コトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=180
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181・小泉又次郎
○副議長(小泉又次郞君) 井本君ノ動議ニ
御異議ナシト認メマス、仍テ動議ノ如ク決
シマス、明日ハ定刻ヨリ本會議ヲ開キマス、
其ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是デ散會致シマス
午後六時二十一分散會
衆議院議事速記錄第二十八號中正誤
頁段行誤正
七〇九四三〇採擇採決
同同三請願請求発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005213242X02919270322&spkNum=181
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