1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年五月八日(日曜日)
午後二時八分開議
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議事日程 第二號 昭和二年五月八日
午後二時開議
第一 昭和二年勅令第九十六號(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和二年勅令第九十六號(承諾ヲ求ムル件)
새우손事発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會議ヲ開キマス、日程第一、昭和二
年勅令第九十六號承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、玆ニ於テ諸君ニ御諮
リヲ致シタイコトガゴザイマス、本會期中御異議ガナケレバ通牒文ノ朗讀ハ
省略イタシタイト考ヘマス
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
[左ノ通牒文及議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
昭和二年勅令第九十六號
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送
付候也
昭和二年五月八日
衆議院議長森田茂
貴族院議長公爵德川家達殿
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項
ニ依リ私法上ノ金錢債務ノ支拂延期及手形等ノ權利保存行爲ノ期間延長ニ
關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年四月二十二日
內閣總理大臣男爵田中義一
兼外務大臣
大藏大臣高橋是〓
鐵道大臣小川平吉
海軍大臣岡田啓介
陸軍大臣白川義則
商工大臣中橋德五郞
內務大臣鈴木喜三郞
文部大臣三土忠造
農林大臣山本悌二郞
遞信大臣望月圭介
司法大臣原嘉道
勅令第九十六號
第一條昭和二年四月二十二日以前ニ發生シ同日ヨリ同年五月十二日迄ノ
間ニ於テ支拂ヲ爲スベキ私法上ノ金錢債務ニシテ勅令ヲ以テ指定スル地
區內ニ住所又ハ營業所ヲ有スル債務者ノ負擔スルモノニ付テハ二十一日
間其ノ支拂ヲ延期ス但シ債務者ガ其ノ地區外ニ他ノ營業所ヲ有スル場合
ニ於テ該營業所ノ取引ニ關スル債務ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二條左ニ揭グル支拂ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用セズ
ー國府縣其ノ他ノ公共團體ノ債務ノ支拂
二給料及勞銀ノ支拂
三給料及勞銀ノ支拂ノ爲ニスル銀行預金ノ支拂
四前號以外ノ銀行預金ノ支拂ニシテ一日五百圓以下ノモノ
第三條手形其ノ他之ニ準ズベキ有價證券ニ關シ昭和二年四月二十二日ヨ
リ同年五月十二日迄ノ間ニ第一條ニ規定スル地區內ニ於テ權利保存ノ爲
ニ爲スベキ行爲ハ其ノ行爲ヲ爲スベキ時期ヨリ二十一日內ニ之ヲ爲スニ
因リテ其ノ效力ヲ有ス
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔阪本釤之助君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本君ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=3
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004・阪本さん之助
○阪本釤之助君 議事日程ニ先ダチマシテ、議事ノ進行ニ付テチヨット申述べ
タイコトガアリマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事ノ進行ト云フノハドウ云フコトデゴザイマス
カ、御申述べヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=5
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006・阪本さん之助
○阪本彰之助君 議長ニ御伺ヒシタイコトガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御述べヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=7
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008・阪本さん之助
○阪本釤之助君 此度ノ此案件ノ急ヲ要スルコトハ固ヨリ十分ニ了解ヲ致シ
テ居リマスガ、唯、一應伺ッテ見タイト存ジマスノハ、議事日程ガ其日ニ決定
セラレテ、直チニ僅カナ時間ヲ隔ッテ會議ヲ開カレタト云フ先例ガアリマス
ルカ、斯ウ云フコトヲ一ツ······此本院ノ規則ノ六十一條ニ「凡テ議院ノ會議
ニ付スヘキ事件及次序竝開議ノ日時ハ之ヲ議事日程ニ記載スヘシ」、是ハ別ニ
前日ニ極メロトモ何トモゴザイマセヌガ、自ラ是マデノ慣例ニ依ッテ議事日
程ナルモノハ前日ニ極メラレマシテ、翌日ノ會議ヲ豫〓スルコトニナッテ居
ルト心得テ居リマスガ、卽時ニ日程ヲ極メラレテ卽時ニ會議ヲ開クト云フコ
トハ、今迄ノ慣例ニ於テ有リ得ルカドウカ、而シテ此六十三條ニ「議事日程
ハ官報ニ揭載シ及議員ニ配付スヘシ」トアリマスルガ、只今御配付ニナリマ
シタ本院ノ議事日程ノ外ニ、官報ノ號外ヲ發セラレテ居リマスカ、少クトモ
六十三條ノ條文ニ依リマスルト、官報ニ揭載セラレルト云フコトガ、議事日
程ノ決定ノ必要條件ノヤウニ心得マスガ、其手續ハ履行サレテ居リマスカ、
其二ツニ付テ一應伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪本釤之助君ニ御答ヲ致シマス、只今御申述ベニ
ナリマシタコトハ、是マデ先例ハ無イト考ヘマス、而シテ開院式ノ節賜ハリ
マスル勅語ニ對スル奉答書案ノ議事ヲ、議事日程ニ載セズシテ議事ヲ開イタ
コトモアリマス、官報ニ揭載セズニ議事ヲ開イタコトモゴザイマス、本日ハ
日曜日デゴザイマスノデ、官報ニ揭載シヤウガ無イノデゴザイマス、且ツ此
臨時議會ハ實ニ特別ナル場合デゴザイマスカラ、議長ニ於テ便宜ヲ計ラヒマ
シタコトト御承知ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=9
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010・阪本さん之助
○阪本釤之助君 定メテ斯樣ナ御取計ラヒト心得テ居リマスガ、將來急グカ
ラト云フノデ、日程ガ俄ニ生レテ來マシテ、官報ニ載セラレル必要條件ナク
シテ日程ガ極マルト云フヤウナ例ヲ御開キ下サルコトハ、甚ダ遺憾ニ存ジマ
スノデアリマス、官報ニハ、日曜ト雖モ號外ヲ發スル例ハ幾ラモアルノデアリ
マシテ、日曜ト雖モ官報ノ號外ヲ發セラルルガ相當デナイカト思ヒマスガ、
兎ニ角少クトモ此議場ニ議員ガ集マリマシタ以上ハ、此度ハ特例ヲ以テヤル
ト云フヤウナコトヲ議場ニ御尋ネニナルノガ相當デハアルマイカ、是ガ恒例
ニナリマシテハ·······如何ニモ議長ノ處置ヲ非難スルヤウニ當リマシテ恐縮
デアリマスガ、本員ノ意見ヲ述べマシテ、諸君ノ御批判ヲ請ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此度議長ノ執リマシタル處置ハ、或ハ規則ニ、嚴
格ニ申セバ反スルコトモアルカ存ジマセヌガ、總テノ議員諸君ハ、此際已ム
ヲ得ザル方法ト御解釋下サルコトト議長ハ信ジテ居リマス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=11
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012・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今上程ニナリマシタ昭和二年勅令第九十六號ノ
事後承諾ヲ求ムル件ニ付キマシテ、簡單ニ說明ヲ致シマス、我財界ハ三月中
旬以來銀行ノ休業續出ノ影響ヲ受ケマシテ、去ヌル四月二十日前後ニ於ケル
人心ノ不安其極度ニ達シタコトハ、既ニ御承知ノ通デアリマシテ、若シ此事
態ヲ其儘ニ放置スルトキハ、我金融界ハ如何ナル大混亂ヲ惹起スルヤモ測ラ
レザル狀態ニ相成ッタノデアリマス、政府ハ此事態ニ鑑ミ、立法手段ニ依リ
之ガ安定策ヲ講ズル爲メ、急速帝國議會ヲ開クコトニ決シタノデアリマスル
ガ、帝國議會ノ開會ニハ相當ノ時日ヲ要シ、而モ事態ノ急ハ一刻モ之ヲ緩ウ
スルコトヲ許シマセヌノデアリマス、右ノ對策ヲ講ズルマデ取敢ズ應急ノ措
置トシテ、本緊急勅令、卽チ所謂支拂延期令ノ公布ヲ仰イダノデアリマス、
今本令規定ノ大要ヲ說明イタシマスレバ、四月二十二日以前ニ私法上ノ金錢
債務ヲ負擔シタ債務者ハ、其支拂日ガ四月二十二日ヨリ五月十二日マデノ間
ニ到來スル場合ニ限リ、其支拂日ヨリ三週間支拂ヲ延期スルコトガ出來ルノ
デアリマス、併ナガラ國、公共〓體ノ債務ノ支拂、勞銀給料ノ支拂、勞銀給
料支拂ノ爲ニスル銀行預金ノ支拂、一日五百圓以下ノ銀行預金ノ支拂ニ付テ
ハ、其性質カラ見、又實際ノ必要上、例外トシテ之ガ延期ヲ認メナイノデア
リマス、尙ホ手形等ノ權利保存行爲ニ付キマシテモ、三週間之ヲ延期スルコ
トガ出來ルノデアリマス、幸ニシテ本令實施後漸次人心ノ平靜ニ歸スルト共
ニ、財界モ亦安定セムトスルニ至リマシタコトハ、誠ニ喜バシイコトデアリマ
ス、而シテ別ニ只今衆議院ニ提出シテアリマスル所ノ、日本銀行特別融通及
損失補償法案ガ實施ニナリマシテモ、銀行ハ支拂資金調達等ノ爲ニ、相當期
間ノ準備ヲ必要ト致シマスルガ故ニ、本令ハ當初豫定イタシマシタル期間、
之ヲ繼續セシムルコトガ必要デアリマス、因テ憲法ノ條章ノ定ムル所ニ從ヒ
マシテ、本令ノ事後承諾ヲ求ムル次第デアリマス、何卒審議ノ上速ニ御承諾
アラムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣男爵田中義一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=12
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013・田中義一
○國務大臣(男爵田中義一君) 諸君不肖大命ヲ拜シテ內閣ヲ組織イタシマシ
テ、玆ニ臨時議會ニ於テ諸君ト相見ユルノ機會ヲ得マシタコトハ、私ノ光榮
トスル所デアリマス、我ガ財界ハ大震火災ノ餘禍ヲ受ケマシテ、爾來產業、
貿易何レモ不振ヲ免レヌノデアリマス、從テ經濟界一般ニ尙ホ不況ノ狀態ニ
アルノデアリマス、殊ニ去ル三月中銀行休業ヲ動機ト致シマシテ、次第ニ財
界ノ安定ヲ失ヒマシテ、四月ニ入ッテ一層不安ノ氣分ヲ增進シタ跡ガアルノ
デアリマス、而シテ偶、臺灣銀行救濟ニ關スル緊急措置ニ付テ、政局ノ今次
ノ展開ヲ餘儀ナクスルニ至リマシタコトハ、諸君旣ニ御承知ノ通デアリマス、
因テ政府ハ改メテ財界ノ不安ニ對スル精密ナル考察ト愼重ナル判斷ヲ遂ゲマ
シテ、臺灣及南洋諸島ヲ除キマシタル帝國ノ各地方ニ亙リマシテ、支拂猶豫
ノ制ヲ實施イタシ、一面ニハ人心攪亂ノ虞アル流言蜚語ノ防遏ニ努メタノデ
アリマス、全國各銀行モ政府ノ方策ニ順應イタシマシテ、ソレ〓〓善處ノ方
法ヲ執リ、相助ケテ財界ノ安定ニ努力ヲ致シ、政府ニ於テハ又支拂猶豫期間
中、財界ノ根本的救濟方法ヲ講ズル爲ニ、直ニ臨時議會開會ノコトヲ決定イ
タシマシタ結果、財界人心共ニ平靜ニ歸シマシタコトハ、國家ノ爲ニ眞ニ慶
幸トスル所デアリマス、私ハ此機會ニ於テ、我國民ガ互ニ自重シテ財界ノ圓
滑ナル進展ニ貢獻セラレムコトヲ切望ノ至ニ堪ヘマセヌ、政府ハ支拂猶豫制
ニ引續キマシテ、更ニ財界ノ安定、海外ニ於ケル帝國ノ信用維持、竝ニ臺灣
統治ノ必要上、日本銀行ヲシテ特別資金ヲ融通スルノ途ヲ講ズルノ急務ナル
ヲ認メマシテ、之ニ關スル法律案ヲ今期議會ニ提出イタシ、又支拂猶豫ニ關
スル緊急勅令ノ事後承諾ヲモ求ムル次第デアリマス、御承知ノ通ニ、此法律
案ハ目下衆議院ニ於テ審議中デアリマス、後刻本院ニ送付セラレルコトト存
ジマス、其他一般ノ事項ニ關シマシテハ、次囘ノ通常議會ニ於テ所信ヲ陳述
イタシ、案ヲ具シテ諸君ノ御協賛ヲ請フ積リデアリマスルカラ、右今期議會
ノ提案ニ付テハ、現下ノ事情御洞察ノ上ニ速ニ御協賛アラムコトヲ希望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ御質疑モナイト認メマスカラ、日程第二ニ移
リマス
吴玉꼬깔호発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 右議案ノ審査ヲ付託スベキ特別委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=15
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016・八條隆正
○子爵八條隆正君 昭和二年勅令第九十六號承諾ヲ求ムル件ノ特別委員ハ其
數ヲ二十七名トシ、議長ニ於テ指名セラレムコトヲ望ミマス、尙ホ特別委員
ノ選擧ハ本議會中、特別ノ場合ヲ除キマシテ、議長指名ニ一任イタシタク存
ジマス、右動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成
〔其他「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 八條子爵ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
起立者多數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマス······特別委員ノ氏名ヲ、書記官
ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昭和二年勅令第九十六號(承諾ヲ求ムル件)特別委員
伯爵松平賴壽君子爵靑木信光君子爵牧野忠篤君
子爵前田利定君子爵八條隆正君子爵渡邊千冬君
子爵裏松友光君石原健三君男爵阪谷芳郞君
和田彥次郞君石塚英藏君小松謙次郞君
內田嘉吉君男爵中島久萬吉君男爵郷誠之助君
男爵松岡均平君男爵藤田平太郞君南弘君
森賢吾君菅原通敬君馬場鍈君
佐竹三吾君大橋新太郞君尾崎元次郞君
菊池恭三君太田〓藏君津村重舍君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御承知ノ通リ本會期モ本日一日デゴザイマスカ
ラ、只今議長ノ指名イタシマシタ特別委員諸君ニ於カレマシテハ、成ルベク
速ニ委員長副委員長ヲ互選セラレマシテ、議長へ御申出ヲ請ヒマス、尙ホ申
上ゲタイコトハ、是ニテ議事日程ハ終リマシタガ、尙ホ衆議院ニ於テ審議中
ノ法律案モアリ、又只今指定イタシマシタ特別委員ニ付託シタル議案ニ付テ
モ、本日中ニ報告セラレルコトモアルカトモ存ジマスカラ、其御含ミヲ以チ
マシテ、何時本議場へ御集マリヲ願ヒマシテモ差支ノナイヤウニ御注意ヲ請
ヒマス、暫ク休憩ヲ致シマス
午後二時三十一分休憩
午後六時四十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日昭和二年勅令第九十六號(承諾ヲ求ムル件)特別委員會ニ於テ當選シタ
ル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵靑木信光君
副委員長男爵阪谷芳郞君
本日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和二年勅令第九十六號(承諾ヲ求ムル件)可決報告書
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
日本銀行特別融通及損失補償法案
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、只今書記官ヨリ報〓イタ
サセマシタ通リ、衆議院ヨリ日本銀行特別融通及損失補償法案、臺灣ノ金融
機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案ノ兩案ヲ受領イタシマシタ故ニ、此際
右兩案ノ第一讀會ヲ開キタイト考ヘマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
日本銀行特別融通及損失補償法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付
候也
昭和二年五月八日
衆議院議長森田茂
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ衆議院修正文)
日本銀行特別融通及損失補償法案
日本銀行特別融通及損失補償法
○現ニ預金ノ拂戻停止中ニ非ザル
第一條日本銀行ハ○銀行ヨリ其ノ預金(定期積金ヲ含ム)ノ支拂準備ニ充
ツル爲資金融通ノ請求アリタル場合ニ於テ財界ノ安定ヲ圖ル爲必要アリ
ト認ムルトキハ之ニ對シ手形割引ノ方法ニ依リ大藏大臣ノ定ムル特別融
通ヲ爲スコトヲ得
現ニ預金ノ拂戻停止中ノ銀行ニシテ將來營業繼續ノ見込アルモノニ付テハ前項ノ規定ヲ適用ス」
日本銀行ガ前二項ノ特別融通ヲ爲スニ付テハ特別融通審査會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
特別融通審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條日本銀行ガ前條ノ特別融通ノ爲ニスル手形割引ヲ爲スコトヲ得ル
期間ハ本法施行ノ日ヨリ一年トス
第三條第一條ノ特別融通ノ爲ニスル手形ノ書換ノ爲ニ振出シタル手形ノ
割引ニ依ル特別融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四條政府ハ本法ニ依ル特別融通ニ因リテ日本銀行ガ損失ヲ受ケタルト
キハ同行ニ對シ五億圓ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得」
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大臣之ヲ定ム
第五條本法ニ依ル特別融通ニ因リテ日本銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ
特別融通損失審査會之ヲ決定ス
特別融通損失審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條第四條第一項ノ契約ニ基キ政府ガ日本銀行ニ對シテ支拂フベキ損
失補償金ハ五分利附國債證劵ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第七條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ
發行スルコトヲ得
第八條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大
臣之ヲ定ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和二年四月二十二日ヨリ本法施行ノ日ノ前日迄ニ日本銀行ノ爲シタル手
形割引ニ依ル融通ニシテ第一條ノ特別融通ニ相當スルモノハ之ヲ第一條ノ
特別融通ト看做ス
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和二年五月八日
衆議院議長森田茂
貴族院議長公爵德川家達殿
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案
第一條政府ハ臺灣統治ノ必要上臺灣ニ於ケル金融機關ヲシテ其ノ機能ヲ
維持セシムル爲又ハ海外ニ於ケル帝國ノ信用ヲ維持スル爲必要アリト認
ムルトキハ日本銀行ヲシテ臺灣ニ於ケル金融機關ニ對シ手形割引ノ方法
ニ依リ二億圓ヲ限リ資金ノ融通ヲ爲サシムルコトヲ得
第二條日本銀行ヲシテ前條ノ融通ノ爲ニスル手形割引ヲ爲サシムル期間
ハ本法施行ノ日ヨリ一年トス
第三條政府ハ本法ニ依ル融通ニ因リテ日本銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ
同行ニ對シ二億圓ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
第四條本法ニ依ル融通ニ因リテ日本銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ日本
銀行特別融通及損失補償法第五條ノ特別融通損失審査會之ヲ決定ス
第五條日本銀行特別融通及損失補償法第三條、第四條第二項及第六條乃
至第八條ノ規定ハ本法ニ依ル融通、之ニ因ル日本銀行ノ損失及其ノ補償
ニ關シ之ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=23
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024・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今議題トナリマシタル日本銀行特別融通及損失
補償法案ニ付キ御說明ヲ申上ゲマス、財界ノ狀況ニ付キマシテハ、先ニ申上
ゲマシタル通ノ次第デアリマス、蓋シ今囘ノ如キ財界大動搖ノ場合ニ於キマ
シテハ、之ガ安定ヲ期スル爲ニハ、先以テ金融機關ニ對スル預金者ノ不安ノ
念ヲ除キ、人心ヲ平靜ナラシムルヲ必要トスルノデアリマス、依テ政府ハ茲
ニ本法案ヲ提出シタル次第デアリマス、卽チ日本銀行ハ、他ノ銀行ヨリ、其
預金ノ支拂準備ニ充ツル爲、資金融通ノ請求ガアリマシタ場合、預金者ヲ安
堵セシメ、財界ノ安定ヲ圖ル爲メ必要デアルト認メタルトキハ、日本銀行ガ
常規ニ依ラザル貸出ヲ爲シテ、以テ銀行ノ預金支拂準備金ヲ充實セシムルト
共ニ、他方之ニ因テ日本銀行ガ損失ヲ被リ、爲ニ其中央銀行トシテノ地位ヲ
危クスルガ如キコトナカラシメムガ爲、日本銀行ニ對シ國家ガ其損失ヲ補償
スベキコトヲ約束イタシマスルコトハ、此際誠ニ必要已ムヲ得ザルノ處置ト
考ヘル次第デアリマス、又其損失決定ヲシテ公正ナラシムル爲、勅令ヲ以テ
特別融通損失審査會ヲ置クコトニ致シ、而シテ日本銀行ニ對スル補償ハ、公
債交付ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得ル途ヲ開キマシタ、本案ハ斯ノ如ク預金者ヲ
安堵セシメ、財界ノ安定ヲ期スルコトヲ目的トスルモノデアリマスカラ、特
ニ日本銀行內ニ特別融通ニ關スル委員ヲ設ケマシテ、本案ノ精神ガ十分行ハ
レマスヤウ致ス考デアリマス、尙ホ日本銀行ニ對スル命令書其他ヲ以テ、本
案ノ運用ニ萬遺漏ナキヲ期スル考デアリマス、又日本銀行ハ支拂延期令公布
ノ日カラ、既ニ本法ニ規定シテアリマスト同樣ナ特別融通ヲ行ナッテ居ルノ
デアリマスルカラ、之ニ對シテモ亦本法ヲ適用シテ損失ヲ補償スルコトガ出
來ルモノトスルノヲ適當ト認メマシテ、其適用ヲ同日マデ遡ラシメタル次第
デアリマス、尙ホ衆議院ニ於キマシテ本法案ノ一部ニ付キ修正ノ決議ガアリ
マシタガ、政府ニ於キマシテハ、原案ノ趣旨ニ反セザルモノト認メマスカラ、
該決議ヲ尊重シテ同意ヲ致シタイト思ヒマス、何卒御審議ノ上速ニ御協賛ア
ランコトヲ切ニ希望イタシマス、臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル
法律案提出ノ理由ヲ說明イタシマス、本年三月中旬以降ニ起リマシタル內地
財界動搖ノ影響ヲ受ケマシテ、臺灣ニ於ケル金融機關モ極メテ不安ノ狀態ニ
在ルノデアリマス、若シ是等金融機能ヲ維持スルコトガ困難トナリマスレバ、
臺灣ノ經濟界ハ極度ニ混亂セラレ、臺灣統治ノ全局ニ重大ナル影響ヲ及ボス
コトトナルノデアリマス、又特殊ノ銀行タル臺灣銀行ハ、海外各地ニ支店ヲ
設置シテ、我國ノ外國爲替銀行トシテ重要ナル任務ニ從事イタシテ居ルノデ
アリマス、故ニ同行ノ海外各店ニ於ケル債務ノ支拂ハ、我ガ對外信用ヲ維持
スル上ニ於テ、極メテ必要ナルコトデアリマシテ、從來政府モ屢〓之ヲ聲明
シ來ッタノデアリマス、以上二ツノ理由ニ基キマシテ、政府ハ玆ニ日本銀行
ヲシテ臺灣ニ於ケル諸金融機關ニ對シ、資金ノ融通ヲ爲サシメムトスルノデ
アリマス、而シテ其融通金額ノ限度ハ、是等ノ諸金融機關ノ預金、其他ノ債
務及銀行劵發行額ヲ斟酌ヲシテ、二億圓ト致シマシタ、政府ハ之ニ依ッテ所
期ノ目的ヲ達シ得ルコトト信ジテ居ル次第デアリマス、尙ホ臺灣銀行ノ根本
的整理ニ至リマシテハ、專ラ臺灣銀行調査會ノ成案ヲ俟ツ次第デアリマシテ、
右調査會ニ於テ速ニ成案ヲ得ムコトヲ期待シテ居リマス、何卒御審議ノ上、
本案ニ對シ速ニ協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=24
-
025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓ニ依リマシテ菅原君ニ質疑ノ發言ヲ許
シマス
〔菅原通敬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=25
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026・菅原通敬
○菅原通敬君 私ハ健康ガ未ダ囘復イタシテ居リマセヌノデ、此演壇ニ立ッ
テ十分其要領ヲ言ヒ盡スコトヲ得ルヤ否ヤニ付テ危ンデ居ルノデアリマス
ガ、此財界ノ安定案ハ頗ル重要ナル問題デアリマス故ニ、私ハ敢テ冐シテ少
シク政府ニ御尋ネ致サウト思フノデゴザイマス、昨日來本案ヲ本日中ニ議了
シ終ルヤウニト云フノデ、種々諒解運動ガ各方面ニ行ハレテ居ッタト云フコ
トデアリマス、斯カル重要ナル問題ヲ三時間ヤ五時間ノ間ニ議了セシムルト
云フヤウナコトハ、甚ダ御無理ナ御注文デアルト私ハ考ヘルノデゴザイマス、
ソレ程事情ノ切迫イタシテ居リマスルモノデアリマスルナラバ、寧ロ緊急勅
令ニ依ラレタ方ガ然ルベキデハナイカト思フノデゴザイマス、サリナガラ本
件ハ緊急ヲ要スル問題デアリ、會期ノ極メテ切迫シテ居ル折柄デアリマスカ
ラ、私ハ成ルベク簡單ニ······議事ノ進行ヲ妨ゲザル程度ニ於テ、成ルベク簡單
ニ其要領ヲ述ベルコトニ致シタイト思フノデアリマス、先ヅ私ハ財界多端ノ
此場合ニ於キマシテ高橋藏相ガ身ヲ挺シテ出廬セラレマシテ、此時局ノ匡救
ノ大任ニ御當リナサレマシタコトノ、其御忠誠ト御抱負トニ對シマシテハ、
多大ノ敬意ヲ表スル者デゴザイマス、藏相ノ御風懷ト御襟度ニ付テハ、國民
ノ齊シク欽仰スル所デアラウト思フノデゴザイマス、此度ノ財界ノ變動ハ誠
ニ非常ノ事變デアリマシテ、別ニ大ナル戰爭ガアルト云フデモナシ、又別ニ
大ナル災害ガ起ッタト云フノデモナク、而モ財界ハ段々整理ヲ遂ゲラレテ略、
其〓ニ就キ、財界恢復ノ曙光ト云フモノモ旣ニ現ハレマシテ、金ノ輸出解禁
ノ如キ近キ將來ニ於テ特ニ行ハレムトスル此時ニ當リマシテ、突如トシテテ
財界ノ大波瀾ト云フモノヲ捲起シ、遂ニ全國ニ亙ル所ノ「モラトリアム」ヲ
施行イタサネバナラヌト云フヤウナ、此危機ニ陷ラシムルニ至リマシタト云
フコトハ、國家ノ大不祥事ト致シマシテ、甚ダ歎カハシイコトデアルノデア
リマス、尤モ彼ノ場合ニ於キマシテ「モラトリアム」ヲ施行セラレマシタト
云フコトハ、誠ニ機宜ヲ得タルモノデアリマシテ、私ハ之ニ對シマシテハ贊
意ヲ表スル者デアルノデアリマスガ、兎モ角斯カル場合ニ於テ全國ニ亙ッテ
「モラトリアム」ヲ施行スルト云フヤウナコトハ、時ノ古今、洋ノ東西ヲ問ハ
ズ、誠ニ類例ノナイコトデアリマシテ、我國ノ國民經濟ノ上ニ、又國家產業
ノ上ニ於テ、非常ナル損失影響ヲ受ケタト云フコトハ申ス迄モナク、其國際
信用ノ上ニ大ナル汚點ヲ印シマシテ、之ニ依ッテ受ケタル所ノ我國ノ恥辱ト
云フモノニ付テ思ヒマスル場合ニ於キマシテハ、實ニ痛歎ノ至リニ堪ヘナイ
ノデゴザイマス、斯カル財界ノ變動ヲ起スニ至リマシタ其原因動機ノ如何、
又ハ其責任ノ所在等ニ付キマシテハ、大ニ論議スベキモノガアルト思フノデ
アリマスガ、私ハ今玆ニ之ヲ論議スベキ場合デナイト思フノデアリマス、之
ヲ論議スルニハ、別ニ人アリ、又時アリト思フノデアリマス、只今ハ藏相ノ
言ハルヽガ如ク、朝野一致ノ努力ニ依リマシテ、此財界安定ヲ圖ルヲ以テ最
モ急務ナリト信ズルノデアリマス、併ナガラ此度ノ財界ノ變動ハ、財界ノ不
健全デアルト云フ其事實以上ニ、人心ニ不安ヲ與ヘタルガ爲ニ外ナラヌノデ
アリマスカラ、財界安定ヲ圖ラウトスルニハ、先以テ人心ノ安定ヲ圖ルト云
フコトノ必要ナルコトハ、固ヨリ其通デアルノデアリマス、而シテ其人心ヲ安
定ナラシメムト欲シマスレバ、此世間ノ疑惑ヲ解キ、危惧ノ念ヲ去ラシムル
ト云フコトノ必要ナルコトハ勿論デアリマスガ、之ガ財界安定ノ方策ヲ立ツ
ルニ當ッテ、其方策ナルモノハ公正ニシテ一方ニ偏スルコトナク、眞面目ニ
シテ駈引ナク、總テ合理的デアッテ、一般國民ヲシテ之ヲ能ク承認セシメ、又
能ク其趣意ヲ徹底セシメマシテ、將來ニ於ケル所ノ不安ノ念ト云フモノヲ懷
カシムルコトノナイヤウニスルト云フコトガ、必要デアラウト思フノデアリ
やく、而シテ又此財界安定ノ方策ハ、結局國庫ノ負擔ヲ免レヌコトニナラウ
ト思フノデアリマルカラ、其國庫ノ負擔トナルベキモノハ、成ルベク之ヲ最
小限度ニ止メシメルコトニ、十分ノ注意ヲ要スルコトデアラウト思フノデア
リマス、卽チ或ハ銀行ノ預金者、株主、其他銀行ニ利害關係ヲ持ッテ居ル者ニ
ハ各相當ノ犧牲ヲ忍バセナケレバナラヌコトモ必要デアリマセウシ、又或
ハ銀行ノ經營者モ其責任者モ、各、相當ノ負擔ヲ分タナケレバナラヌト云フ
必要モアラウト思フノデアリマスガ、兎モ角國家獨リ其全部ヲ負擔スルト云
フヤウナコトノ無イヤウニスルト云フコトガ、最モ必要ナコトデアラウト思
フノデアリマス、要スルニ財界ノ安定ハ焦眉ノ急務デアルノデアリマシテ、
私モ是非本案ノ一刻モ早ク通過スルヲ必要ナリト希望スル者デアリマスガ、
サリナガラ鹿ヲ逐ウテ山ヲ見ズト云フガ如ク、其急ニ應ゼムガ爲ニ、國民
ノ負擔ニ及ボス影響ガドウデアルトカ、國家財界ニ及ボス關係ハドウナルト
カ、乃至ハ此兌換制度ニ關スル影響ガドウナルカト云フヤウナ、主要ナル問題
ヲ閑却シテハナラヌト思フノデアリマス、就キマシテハ成ルベク本案ヲシテ
完璧ノモノナラシメテ、:現在ニ善ク處スルコトガ出來ルト同時ニ、將來ニ患
ヲ貽スコトノナイヤウニ、深甚ナル考慮ヲ費スコトガ必要デアラウト思フノ
デアリマス、以上ノ前提ノ下ニ私ハ質問イタシタイト思フノデアリマス
〔「餘リ長イノハ·······」ト呼フ者アリ〕
第一、國庫ノ負擔ハ十億圓以上ヲ激增スルコトトナル、之ニ對スル財政計畫又
ハ公債政策ニ關スル所見如何、ト云フノガ第一デゴザイマス、今囘提案セラ
レマシタ日銀融通法ニ依ルモノガ五億圓、臺灣金融法ニ依ルモノガ二億圓、
合セテ七億圓デアリマシテ、此七億圓ヲ要スルニ至リマシタ原因ニ付テハ、私
ハ今玆ニ申述ブルコトヲ致シマセヌ、其七億圓ニ前囘制定ニナリマシタ震災
手形法ニ依ルモノガ一億圓、更ニ此臺灣銀行ノ整理ヲスルト云フコトニナリ
マシタナラバ、必ズ少カラヌ所ノ國費ヲ要スルコトニナルダラウト思フノデ
アリマシテ、ソレヲ假ニ二億圓ト致シマスト云フト、合計十億圓ト云フモノニ
ナルノデアリマシテ、卽チ此財界安定ニ要スル國庫ノ負擔ト云フモノガ、最惡
ノ場合ヲ以テ見マスト云フト、十億圓ト云フモノニナルノデアリマス、此十億
圓ヲ公債ヲ以テ交付スルト致シマスルト云フト、其八·六掛ケト致シマシテ、
十一億六千万圓ト云フモノニナルノデアリマシテ、之ガ利息及其減債基金ノ
繰入ト云フモノヲ合セマスト云フト、七千百万圓ヅヽト云フモノハ每年國庫
ヨリ支出イタサナケレバナラヌト云フコトニナルノデアリマス、此每年要ス
ル所ノ七千餘万圓ト云フモノノ財源ヲ如何ナル所ニ御求メニナラウト云フ御
考デアルノデアリマスカ、今日未ダ一般財政ノ計畫ヲ御立テニナラヌ場合デ
アルノデアリマスカラ、之ヲ只今御尋ネ致シマスト云フコトハ、少シク御
無理デアルカモ知レマセヌノデアリマスガ、サリナガラ斯樣ナ種類ノ歲出デ
アルカラ、其財源ハドウ云フヤウナモノカラ求メルガ相當デアラウト云フ位
ノ御考ハ御持チニナッテ居ルコトデアラウト思ヒマスカラ、ソレ等ニ關スル
大體ノ御考案ヲ伺ッテ置クコトヲ得タナラバ仕合セデアルト思フノデアリマ
ス、又公債政策ニ付キマシテハ、前內閣ノ所謂非公募主義ナルモノヲ廢サレ
マシテ、事業資金ヲバ廣ク公債財源ニ求ムル方針デアラルルトカ云フヤウナ
說ガ傳ハッテ居ルノデアリマス、若シ果シテサウ云フコトニナリマスト云フ
ト現ニ今五十一億圓以上ノ公債ヲ持ッテ居ル我國トシテ、公債ノ整理ト云
フモノガ財政經濟ノ上ニ於テ最モ必要、又急務ナリト看做サレテ居ル此場合
ニ於テ、今又十數億ノ公債ヲ增加シ、更ニ又一般財政計畫ノ上カラ公債ヲ增
加スルト云フヤウナコトニナリマシタナラバ、到底國民ノ負擔ノ堪フル所デ
ナカラウト思フノデアリマスガ、是等ニ關シマシテノ御所見ハ如何デアルカ、
併セテ承リタイノデゴザイマス、ソレカラ第二ハ、五十二億圓ノ特別貸出ヲ
爲スト云フコトニナッテモ、兌換制度ノ基礎ヲ動搖セシムル虞ハナイカ、又通
貨膨脹、物價騰貴ニ關スル御所見ガ如何デアルカト云フノデゴザイマス、日
銀融通法ニ依ル所ノ五億圓算出ノ基礎ハ、預金總額百億圓ト見テ、其五割ハ
取付ケラルルモノト假定シテ、其一割ガ日銀ノ損失ニ歸スルモノト推定シタ
モノデアルト云フコトノ御說明ヲ伺ッテ居ルノデアリマス、固ヨリ見込ノコ
トデアリマスカラ、的確ナ數字ヲ捉ヘルコトノ出來ナイト云フコトハ、申ス
迄モナイコトデアリマスガ、ソレニ致シマシテモ此五億圓ノ計算ノ基礎ト云
フモノハ、甚ダ大雜把ニ過ギルヤウニ考ヘルノデゴザイマス、デ斯カル大雜
把ナ數字ヲ示スヤウデアリマシテハ、國民ハ之ヲ眞面目ニ承認スルデアリマ
セウカ否ヤ、國民ニ安心ヲ與ヘムトシテ、却テ不安心ヲ感ゼシムルヤウナ虞
ガ無イデアラウカト心配サレルノデアリマス、序デニ玆ニ申シマスガ、此五
億圓ト云フ數字ハモット之ヲ減ラスコトノ出來ナイモノデアリマセウカ否ヤ、
此額ヲ大キクシテ置クト云フコトハ、或ハ鳴物入ノ看板デアルト云フヤウナ
御考デアルノカモ知レマセヌケレドモ、斯樣ナ大キナ數字ヲ見セテ置キマス
ト云フト、勢ヒ其貸出ト云フモノガ放漫ニ流ルルト云フコトヲ免レヌダラウ
ト思フノデアリマス、殊ニ此日銀融通法ト云ッテ居リマスモノデス、日銀融通
法制定ノ御立案ノ場合ニ於キマシテハ、未ダ臺灣ノ金融法ト云フモノヲ後カ
ラ御提出ニナラウト云フコトハ御豫想ニナッテ居ラナカッタト云フコトヲ伺ツ
テ居ルノデアリマス、是ノ豫想ガ無クシテ、サウシテ五億圓ト云フ數字ガ定
マッタモノデアルト致シマシタナラバ、今日此臺灣金融法ナルモノガ出來ル
ト云フコトニナレバ、理論上臺灣ニ於ケル銀行ニ對スル貸出分ト云フモノ、
又ハ其損失分ト云フモノハ、此五億圓ノ中カラ控除サレテ然ルベキモノデア
ルト思フノデアリマス、又銀行預金中ニハ、其半額以上定期預金ナルモノガ
アルノデアリマシテ、其定期預金ナルモノハ、旣ニ期限前ニ支拂ヲ致サヌト
云フ申合セガ銀行ニ成立ッテ居ルト云フコトデアリマスル故ニ、此金額ノ如キ
ハ、支拂準備金ノ計算ノ中カラ控除セラレテモ宜シイモノデハナイカト思フ
ノデアリマス、殊ニ「コールマネー」ニ付キマシテハ、取立猶豫ノ了解ガアル
カラト云フノデ、此數字計算ノ基礎カラハ除カレテ居ル關係モアルノデアリ
マスカラ、矢張リ此定期預金ノ如キモ、此數字ノ中ヨリ控除サレル方ガ至當
デハナイカトモ考ヘルノデゴザイマス、ソレハ暫ク政府ノ言フ所ヲ信ズルト
致シマシテモ、日本銀行ハ日銀融通法ノ爲ニ、五十億圓ノ貸出ヲスルコトニ
ナルノデアリマス、又臺灣金融法ノ爲ニ二億圓ヲ貸出スト云フコトニナルノ
デアリマス、卽チ五十二億圓ト云フモノハ之ヲ貸スコトヲ日本銀行ハ覺悟シ
テ居ラナケレバナラヌノデアリマス、從テ日本銀行ハ五十二億圓ノ兌換劵ヲ
發行スルト云フコトモ覺悟シテ居ラナケレバナラヌコトデアラウト思フノデ
アリマス、玆ニ於テ私ノ伺ヒタイノハ、果シテ日本銀行ニ五十二億圓ノ兌換
劵ヲ發行スル準備又ハ保證ト云フモノヲ持ッテ居ルノデアルカ、五十二億圓
ノ兌換劵ヲ發行スル場合ガアリトシテモ、兌換制度ノ基礎ヲ動搖セシムル虞
ハ無イノデアルカ否ヤ、是ハ何人モ疑ヲ起ス所デアラウト思フノデアリマシ
テ、獨リ國內ニ於テノミナラズ、或ハ海外ニマデモ其疑惑ヲ懷カシムルヤウ
ナコトニナリハシナイカト思フノデアリマス、果シテサウ云フコトニナリマ
シタナラバ、是コソ由々シキ大事デアルト申サナケレバナラヌノデアリマ
ス、日本銀行ガ特別融通ノ爲ニ見返リトシテ取ッテ居リマス所ノ不動產デア
ルトカ、或ハ其他新ニ、新規ニ擴張セラレマシタ其見返品ノ如キヲ、準備ニ
致ス譯ニモ、保證ニ致ス譯ニモ參ラヌノデアリマス、斯樣ニ見マスト云フト、
ドウモ五十二億圓ニ對スル準備又ハ保證ト云フモノヲ、安心シテ日本銀行ガ
持ツコトニナルヤ否ヤト云フコトニ付テハ、ドウ致シテモ懸念ヲ致サナケレ
バナラヌノデアリマス、而シテ此五十二億圓ノ兌換劵ガ增發セラレマスト云
フ場合ニ於テハ、非常ナル通貨ノ膨脹ヲ來スコトニナルノデアリマスカラ、物
價ハ著シク復タ騰貴スルコトニナルダラウト思フノデアリマス、此通貨膨脹
及ビ之ニ依テ伴フ所ノ物價騰貴ト云フコトニ付テ、ドウ云フヤウナ御考ヲ御
持チニナッテ居ラルルノデアルカ、其御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレ
カラ第三ニハ、不動產、株劵、鑛山、船舶等ヲ特別融通ノ見返リトナスト云
フコトニナッテモ、日本銀行條例ヲ改正スルノ必要ガナイノデアルカドウカ、
非常ナ恐慌ノ場合ニ於ケル特別ノ融通デアリマスカラ、見返リヲ擴張シ融通
ニ便ズルト云フコトハ固ヨリ必要ナコトデアリマシテ、私ニモ異論ハナイノ
デアリマス、併ナガラ日本銀行條例ノ第十一條ヲ見マスト云フト、手形ノ割
引ニ付テハ、政府發行ノ手形、爲替手形、其他商業手形ト限定セラレテ居ル
ノデアリマス、又貸金ニ付テハ、金銀貨又ハ地金銀ノ抵當ト限定サレテ居ル
ノデアリマス、又當座勘定貸、定期貸ニ付テハ、公債證書、政府發行ノ手形、
其他政府ノ保證ニ係ル各種ノ證劵ノ抵當ト限定セラレテ居ルノデアリマス、
而シテ其第十二條ニ依リマスレバ、不動產及株劵ヲ抵當トスル貸金ト云フコ
トハ出來ナイト云フコトヲバ嚴禁セラレテ居ルノデアリマス、サウ致シテ見
マスト云フト、不動產、株劵、鑛山、船舶等ニ日本銀行ガ之ヲ擔保又ハ見返
リトシテ貸金ヲ致スト云フコトハ、明カニ日本銀行條例違反デアルト思フノ
デアリマス、或ハ手形割引ヲスルノデアルカラ、其手形ハ政府ノ保證ニ係ル
各種ノ證劵ト云フ中ニ含メテ解釋スルコトモ出來ルト云フヤウナコトニ言ハ
ルルカモ知ラヌノデアリマスケレドモ、ソレハ甚ダ當ラヌコトデアルト思フ
ノデアリマス、デ政府ニ於キマシテハ、從來ノ慣例モアルコトデアルカラ、
別ニ日本銀行條例ヲ改正スルノ必要ナシト言ハレテ居マスガ、法律ニ明ラカ
ニ違反シテ居ル慣例、而モ此度ハ今迄ノ事柄ト違ヒマシテ、貸付ノ範圍モ廣
〃、又其金額モ多イノデアリマスカラ、斯カル違法ヲ其儘敢行シテ行クト云
フコトハ、甚ダ宜シクナイト思フノデアリマス、政府ハ地方銀行ニ對シマシ
テ、銀行條例若クハ今度出來マシタ所ノ銀行法ヲ勵行セシムベク、種々嚴重
ナル監督ヲセラレテ居ルノデアリマセウガ、日本銀行條例違反ノコトヲヤッ
テ居ルモノヲ、其儘許シテ置クト云フヤウナコトデ、如何ニシテ地方銀行ノ
監督ガ出來ルデアリマセウカ、果シテ日本銀行條例改正ノ御意思ガ無イノデ
アルヤ否ヤ、ソレヲ伺ヒタイノデアリマス、第四ニハ、今囘立テラレタ政府
ノ財界安定策ナルモノハ、將來ノ危險ヲ防止セムトスルニアリマシテ、旣ニ
起リタル危害ヲ除キ去ルト云フコトニハ及ボサレテ居ラヌヤウニ思フノデア
リマス、斯ノ如クシテ財界ノ安定ト云フモノガ果シテ期シ得ラレルモノデア
ルヤ否ヤ、此日銀融通法ノ第一條ニ依レバ、銀行ノ支拂準備ニ充ツル爲メ資
金融通ノ請求アリタル場合ニ於テ、日本銀行ヨリ特別融通ヲナスト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマスカラ、將來ニ起ルベキ銀行取付ノ危險ニ備ヘント
スルモノデアルノデアリマス、從テ既ニ起リタル破綻銀行、卽チ「モラトリ
アム」施行ノ前提トナツタ渡邊銀行、外二十七八行ノ銀行ニ付テハ、何等救
濟ノ方法ト云フモノガ立テラレテ居ラヌノデアリマス、勿論、此銀行ノ中ニ
ハ、日本銀行ノ特別貸付期間中ニ開業スルモノモ有ルデアリマセウ、其開店
イタシマシタルモノハ其恩典ニ浴スルコトモ出來ルノデアリマセウケレド
干、其期間內ニ開店スルコトノ出來ナイモノハ、何等救濟援助ヲ受クルコト
ガ出來ナイノデアリマスカラ、彼ト是トノ間ニ於テハ、非常ナル幸、不幸ト
申シマスカ、不公平ガアルノデアリマス、斯ノ如クシテ果シテ財界ノ安定ヲ
期シ得ラレルモノデアリマセウカ、疑ナキ能ハザルモノデアリマス、此問題
ニ關シマシテ、衆議院ニ於テモ大ニ議論ガ起ッタ模樣デアリマシテ、休業銀
行デモ開店ノ見込アルモノニ付テハ其恩典ニ浴スルコトガ出來ルト云フヤウ
ニ、法案ヲ修正シ、政府ニ於テモ之ニ同意セラレタト云フコトデアリマスガ、
此開店ノ見込アルヤ否ヤノ認定ト云フモノハ、頗ル困難デアラウト思フノデ
アリマス、又問題ハ玆ニ紛起スルヤウナコトニナリハシマイカト云フコトヲ
恐レルノデアリマス、要スルニ休業銀行ノ整理援助ニ關シマシテ、政府ニ財
界安定策ナルモノハ何等方法ヲ立テヽ居ラレヌガ爲ニ、玆ニ此問題ヲ起スニ
至ルノデアリマス、「モラトリアム」施行前休業シタル所ノ銀行ト、「モラトリ
アム」施行ノ爲ニ辛ウジテ休業スルコトヲ免レタ銀行トノ間ニハ、實體上ニ
於テハ大シタ相違ハ無イニ拘ラズ、此間ニ非常ニ懸隔シタル所ノ差別待遇ヲ
致スト云フコトハ、決シテ公正ヲ得ルモノデハナイト思フノデアリマス、政府
ニ於テハ、此日銀融通法ナルモノハ銀行ヲ救濟スル爲ニアラズシテ、預金者
ノ利益ヲ擁護スル趣意デアルト說明セラレテ居リマスガ、是モ甚ダ私ハ不徹
底デアルト思フノデアリマス、預金者ノ利益ヲ擁護スル趣意デアルナラバ猶
更ノコト、「モラトリアム」施行前ニアルモノト、施行後ニアルモノトノ間ニ、
唯間髪ヲ容レザルモノニ、大ナル隔タリヲ付ケテ差別待遇ヲ致シ、一ツノ方ハ
預金ノ全部ノ拂戾ガ出來ルト云フコトノ恩典アルニ拘ラズ、一ツノ方ハ一文
モ拂戾ヲ受クルコトガ出來ナイト云フヤウナコトニナルト云フコトハ、甚シ
キ不公平デアルト信ズルノデアリマス、又政府ニ於テハ、一部休業シタル臺
灣銀行ニ付テハ徹底的整理ヲスルガ、其他ノ銀行ニ付テハ自力ニ依ッテ整理
スベキモノデアルト言ハレテ居ルノデアリマス、自力ニ依ッテ整理スルコト
ガ出來ル程ノコトデアルナラバ、休業ハシナカッタデアラウト思フノデアリ
やく、又假ニ休業イタシマシタ所ガ、疾クニ開始ヲ致シテ居ル筈デアルト思
フノデアリマス、是等ノ銀行ヲ其儘何等ノ援助モ與ヘズ、放置イタシテ置キ
マシテ、果シテ財界ノ安定ト云フモノガ期シ得ラレルモノデアリマセウカ、
必ヤ政府ニ於テハ相當援助救濟ノ考案ヲ御待チニナッテ居ルコトデアラウト
思ヒマス、ソレ等ノコトニ付テ御考案ガアルナラバ、此場合伺ッテ置クコト
ガ必要デアルト思フノデアリマス、第五ニハ、政府ノ財界安定策ハ預金支拂
準備資金ヲ融通セシメムトスルノデアッテ、其他ノ資金ニ付テハ何等考慮スル
所ガナイヤウデアルガ、斯ノ如クシテ果シテ財界ノ安定ヲ期シ得ベシト信ゼ
ラレルノデアルカト云フノデアリマス、政府ノ御考ハ、預金者ヲ保護スルト云
フコトガ財界安定ノ全部デアルト云フヤウニ考ヘラレテ居ルヤウニアルノデ
アリマス、併ナガラ財界ノ安定ハ、預金ノ支拂ヲシテ預金者ノ利益ヲ擁護ス
ルト云フコトダケデ以テ圖ルコトガ出來ナイト思フノデアリマス、卽チ金融
機關タル所ノ銀行ノ機能ヲ十分ニ維持セシメテ行クト云フコトニ依ッテ、初
メテ此財界ノ安定ガ出來ルコトヂヤナイカト思フノデアリマス、銀行ノ中ニ
ハ、預金ノ外ニ「コールマネー」其他ノ借入金、又ハ社債等ヲ以テ營業資金ト致
シテ居ルモノモ有ルノデアリマス、ソレデ預金ノ支拂準備金ガ間ニ合ヒマシ
テモ、其他ノ「コールマネー」、其他ノ借入金ノ支拂資金ガ缺乏スルト云フコ
トニナリマシタナラバ、銀行ハ卽チ支拂ノ停止ヲ致サナケレバナラヌト一ムフ
コトニナルノデアリマシテ、殷鑑遠カラズ臺灣銀行ノ東京支店ノ休業ニ在ル
ノデアリマス、商業會議所聯合會ガ、商工業資金融通ノ必要アル場合ニモ、
特別融通ヲ受クルコトガ出來ルヤウニシタイト云フ希望ヲ申述ベテ居リマス
ガ、其說ノ可否ハ暫ク措キマシテ、此銀行ノ營業上ノ機能ヲ維持セシメルニア
ラザレバ、財界ノ安定ハ期スルコトガ出來ナイト云フ見方ハ、至當デアルト思
フノデアリマス、要スルニ政府ガ預金者保護ヲ以テ財界安定ノ全部ナリトス
ル、其根本ノ理由ニ付テハ、了解スルコトガ出來ナイノデアリマス、假令預金
者ハ救濟サレマシテモ、銀行ガ破產イタシタナラバ、財界ハ安定スルコトハ出
來ヌノデアリマス、之ニ反シテ銀行ガ救濟サレマスレバ、預金者モ助カリ財界ハ
安定スルノデアラウト思フノデアリマス、若シ政府ガ言ハレルガ如ク、預金者
ノ利益ヲ保護スルコトガ日銀融通法ノ主眼デアルト致シタナラバ、社會政策
ノ上カラ見マシテモ、前ニ申シマシタ通リ、休業銀行ノ預金者ノ利益ヲモ保護
シテヤラナケレバナラヌコトニナラウト思フノデアリマス、然ラザレバ不公
平デアリ不徹底デアルト云フ非難ヲ免レナイト思フノデアリマス、然ルニ之
ヲ開業銀行ノ預金者ノミニ限ルト云フノハ、其銀行ノ營業ヲ繼續セシメルト
云フ御趣意デアルト解スル方ガ寧ロ至當デハナイカト考ヘルノデアリマス、
大藏大臣ハ昨日衆議院ニ於テ、臺灣金融法ハ見方ニ依ッテハ臺灣銀行ノ救濟
法デアル、「コール」ノ支拂資金モ貸シテヤルノデアルト云フコトヲ申サレタ
トカ云フコトデアリマスガ、銀行ノ機能ヲ維持セシメムトサレルナラバ、正
ニ左樣ニナラナケレバナラヌト思フノデアリマシテ、單ニ預金ノ支拂資金ノ
ミヲ供給スルト云フダケデハ、銀行ノ救濟ハ出來ズ、從テ財界ノ安定ヲ〓グ
ルコトハ出來ヌダラウト思フノデアリマス、殊ニ此「コールマネー」ノ如キハ、
段々御話モ伺ッタ通リ、其放出銀行ハ、預金支拂準備金トシテ現金同樣ニ取
扱ッテ居ルト云フノデアリマス、其銀行ノ預金支拂準備トシテ、結局日本銀
行ガ特別融通ヲ與ヘテヤラナケレバナラヌト云フモノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、寧口最初カラ之ニ對シテ特別融通ヲ與ヘテヤルト云フコトニ致
シマシタナラバ、「コール」受入銀行ノ爲ニモナリ、又「コール」放出銀行ノ爲
ニモナリ、又合セテ其銀行ノ預金者ノ爲ニモ利益ヲ與ヘルト云フコトニナル
ノデアリマスカラ、左樣ニ致ス方ガ極メテ合理的デハナイカト思フノデアリ
マス、第六ニ、此臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通法ト云フモノニ依リマス
所ノ此資金融通ヲ、臺灣銀行ニ限ルト云フコトニシテハ如何デアリマスカ、
ト云フコトヲ御尋ネシタイノデアリマス、此日銀融通法ハ預金者ノ利益ヲ擁
護スルガ爲デアルト御說明ニナッテ居ル、而シテ臺灣ノ金融機關ニ對スル資
金融通ニ關スル方ハ、是ハ銀行ヲ救濟スルモノデアルト云フコトニナッテ居
リマシテ、此二ツノ間ニハ主義ノ矛盾ガアルノデアリマス、是ハ臺灣統治ノ
必要上、臺灣ニ對シテハ、金融機關ニ對シテ救濟シテヤラナケレバナラヌト
云フ理由ガアルノデアルト云フコトニ御說明ニナルデアラウト思フノデアリ
やく、サリナガラ此臺灣ニ於ケル財界ノ不安定ト云フモノハ、臺灣銀行ノ機
能ニ缺陷ヲ生ジタガ爲ニ外ナラヌノデアリマス、他ニ原因ハ無イノデアリマ
ス、而モ臺灣ニ於ケル金融機關ト云フモノハ、總テ臺灣銀行ヲ親銀行トシテ
營業イタシテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカラ、臺灣銀行サヘ十分ニ
其機能ヲ發揮スルコトヲ得タナラバ、臺灣ニ於ケル他ノ金融機關ト云フモノ
ハ、皆之ニ追從シテ來ルモノデアラウト思フノデアリマス、殊ニ此第一條ニ
揭ゲテ居ル所ノ海外信用維持ノ爲メ云々ト云フコトガアリマスガ、此海外信
用維持ノ爲ニ必要デアルト云フコトハ、臺灣銀行ニ限ルコトデアラウト思フ
ノデアリマス、而シテ臺灣銀行ニ付テハ、政府ニ於テモ徹底的ニ之ヲ救濟ス
ル、十分ナル整理ヲ遂ゲシメルト云フコトヲ企圖セラレテ居ルノデアリマス
カラ、尙又此臺灣金融法ニ依ル所ノ二億圓ノ貸出ト云フモノハ、大部分臺灣
銀行ニ關スルモノデアラウト思フノデアリマスカラ、此臺灣ニ於ケル金融機
關ト云フモノヲ臺灣銀行ト云フモノニ限ッテモ、何等實害ガ無イト思フノデ
アリマス、而シテ却テ内地一般ノモノトノ權衡ヲ得ルコトニナラウト思フノ
デアリマス、卽チ臺灣ニ於ケル所ノ銀行ハ······臺灣銀行以外ノ銀行ハ、日本
銀行特別融通及損失補償法ノ下ニ於テ資金ノ借受ヲ受クルコトガ出來ルノデ
アリマスカラ、內地銀行トノ間ニ權衡ヲ得ルコトニナルノデアリマス、其他、
此日本銀行特別融通及損失補償法中、此特別融通ノ貸付期間、其償還ノ年
限損失決定ノ基準、審査會ノ組織及權限、其他此貸付ノ利子步合等ニ付テ
種々御尋モ致シタイノデアリマスガ、是等ノ問題ニ付テハ既ニ衆議院ニ於テ
モ色〓論議ガアッタヤウニ伺ッテ居ルノデアリマスカラ、時間ヲ儉約イタス爲
ニソレハ省略スルコトニ致シテ置キマス、以上ノ諸點ニ付テ何卒御深切ナル
御答辯ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス
國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=26
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027・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今菅原君ヨリ數箇條·····殆ド十箇條ニ亙ッテノ
御質問デアリマシテ、誠ニ御親切ニ一々御意見ヲ加ヘラレテノ御質問デアリ
マシタ、或ハ其中ニ私ノ聽キ違ヒ若クハ聽キ落シガアルカモ知レマセヌデア
リマスカラ、サウ云フコトガアリマシタラ、又更ニ御尋ヲ煩ハシタイノデア
リマス、第一ニハ此度ノ補償法案ニ依ッテ政府ガ損失ヲ補償スル時ニ、其財
源ヲドウ云フ風ニスルカ、其計畫ガ無イト云フ御趣意ノヤウデアリマス、成
程政府ハ補償ヲスルト云フコトハ······國家ニ於テソレダケノ損失ハ結局補償
ヲスルト云フコトハ·······定マッテ居リマスルケレドモ、併ナガラ五億ノ補償
ヲスルト申シテ、必ズ五億ノ損失ガソコニ現ハレルト云フコトハ今日分ラヌ
ノデアリマス、其分ラヌ所以ト申シマスノハ、此日本銀行ノ補償法ニ依ッテ
貸出シマスモノニ對シテハ、必ズ擔保ガ附クノデアリマス、擔保ト申シマス
カ、或ハ見返リ品ト申シマスカ、兎ニ角抵當ト見ルベキモノガ必ズ添ウテ居
ルノデアリマス、唯其見返リ品ナルモノガ、從來日本銀行デ平日取扱ッテ居
リマス所ノモノ以外ニ、價値ノアル擔保品ガ世ノ中ニハ有ルノデアリマス、
ソレ等マデ擔保ノ範圍ヲ擴張シテ行ク、此特別融通法ニ依ッテ貸出シマス所
ノ金ノ擔保ニ限ッテ、從來ノ内規ニ於テ定メテアル所ノ見返リ品以外ニ、價値
ノアルモノハ、之ヲ擔保トシテ受入レルコトニ幅ヲ擴ゲル、又擔保ノ價格ノ
見積リ方ヲ、日本銀行ガ從來自分ノ營業トシテ見積ッタモノヨリモ、モット緩
ヤカニ見積ッテヤル、斯ウ云フコトガ現在ノ日本銀行ノ取扱ト違フ〓デアリ
マシテ、ソレガ卽チ日本銀行ノ常規ニ依ラザル貸出方法ニナルノデアリマス、
而シテ此擔保ノ數アル中ニハ、今後十年ヲ期シテ決濟スルト見マスト云フ
ト、今日ヨリ若シ日本ノ經濟界ノ力ガ衰耗シテ、國トシテ其經濟力ノ發達ヲ
見ルコトガ出來ナイト云フコトヲ假定シマスレバ、十年ノ今後ニ於キマシテ
ハ今日ヨリ總テノモノガ値ヲ低下スルト云フコトハ、豫想ガ出來ルノデア
リマス、併ナガラ私ハサウハ考ヘナイノデアリマス、今後十年經ッテ後ノ我
ガ經濟界ハ如何ニナルカト申セバ、今日ヨリ向上スルトモ低下スルコトハナ
イ國力デアルト私ハ信ジテ居ル、ソレ故ニ今日取ッタ所ノ擔保品ハ、十年ノ
後ニハ或ハ全額ノ値ヲ持ツコトニナルカモ知レナイ、或ハ其以上ニナルコト
モアリマセウ、其場合ニハ擔保ノ缺陷ト云フモノハ······擔擔價格ノ缺陷ト云
フモノハ無クシテ濟ムコトニモナリ得ルノデアリマス、又擔保ノミデハナ
イ、此融通ヲ受ケル所ノ銀行ハ、手形割引ノ方法ニ依ッテ、九十日目、九十日
目ニ割引料ヲ納メテ融通ヲ受ケルコトニナルノデアリマス、其割引料ガ、政
府ノ考デハ、擔保付割引料ノ一番先ヅ低イ所ノ利息デ貸サウ、斯ウ考ヘテ居
ルノデアリマス、ソレガ今日デハ確カ一錢七厘トカ八厘ノ日步デアリマス、
シテ見マスルト云フト、日本銀行デ此金ヲ貸シマス爲ニ、年ニ六分餘ノ利息
ヲ債務者カラ取ル譯デアリマス、而シテ日本銀行ノ實費ト申シマスモノハ、
兌換劵ノ製造費及發行稅ヲ納メテ、先ヅ相當事務費ヲ引イテ、年二分アレバ
足リル見當ト私ハ推測シテ居ル、サウシテ見マスト、六分ニ貸シテ、二分ノ
實費ヲ引クト、玆ニ四分ノ利益ガ出ルノデアリマス、此利益ハ日本銀行ノ利
益トシテ與ヘズ、之ヲ國ニ歸屬スルヤウニ、日本銀行ト契約ヲスル考デ居ル
ノデアリマス、シテ見レバ是等モ矢張リ一旦國ガ其利息ヲ國庫ニ入レテ、出
スノデアリマスケレドモ、此利息ナルモノハ即チ新ナル國ノ收入デアリマシ
テ、卽チ五億ト云フ補償ヲシテ居ル金ノ是ハ材料ニナルノデス、資源ニナル
ノデス、ソレ是ヲ考ヘテ見マスト云フト五億ト云フ補償ヲスルコトニ致シ
テハ居リマスルガ、愈〓決濟ヲスル場合ニ於テハ、果シテドノ位ノ缺損ガ出
ルノデアルカ、或ハ缺損ナクシテ濟ムノカ、或ハ又抵當ニ取ッタル所ノ價格
ガ高マッタ爲ニ、騰貴シタ爲ニ、常ニ受入レテ國庫ニ納メタ所ノ其利息ノ餘
リト云フモノガ、國ノ却テ利益ニ幾分ナルコトニナルカ、其邊ハ今日カラ聢
ト定メルコトノ出來ナイモノデアリマスルカラ、其分ラナイモノニ對シテ、
今日カラ財源ノ計畫ハ致シ兼ネルノデアリマス、又致ス必要モ無カラウト思
フノデス、其時ニ於テ如何ナル財源カラ······若シ國庫ガ損ヲスルト云フコト
ガ事實ニ於テ現ハレタル場合ニハ、如何ナル財源カラ之ヲ出スカト云フコト
ハ、其時ノ問題デ宜カラウト思フ、第二ニハ公債政策ノコトデアリマスガ、
前內閣ハ非公募······公債非公募主義ヲ執ッテ居ッタガ、今度ハ又一般ニ募集ス
ルノカト云フヤウナ意味ノ御尋ノヤウニ私ハ了解ヲ致シマシタ、此公債政策
ト云フコトニ付キマシテハ、唯公募トカ、非公募トカ云フコトハ、實ハ私ニ
ハ能ク分ラヌ、世間傳フル所ニ依リマスト、銀行家ニ公債ノ募集ヲ請負ハシ
テ、サウシテ銀行家ノ手ヲ經テ、一般ニ募集スル公債ヲ以テ公募ト云フ、郵
便局ノ窓口デ以テ公衆ニ公債ヲ買ハセルノハ、是ハ非公募ダト、斯ウ云フヤ
ウナコトニ私ハ聞及ンデ居リマスルガ、是ハドチラニシテモ公募ニ違ヒナ
1、若シ預金部ナラ預金部ニ餘ッテ居ル金デ公債ヲ引受ケルトカ、或ハ資本
家ガ一手ニ之ヲ引受ケテ、市中ニ賣出サナイデ、自分ガ金庫ニ納メテ居ルト
云フナラ、是ハ公募デハアリマセヌ、銀行ノ手ヲ經テ一般ニ募集スルノモ、
郵便局ノ窓口デ一般ノ人ヲ相手ニシテ應募サセルノモ、是ハ等シク公募ニ違
ヒナイ、併ナガラ日本デハ兎ニ角銀行ノ手ヲ經テ公債ヲ募集シナケレバ、是
ハ非公募主義ト云ハレテ居ルヤウデアリマス、併シ實際ニ於テハ、私ハ何等
變リハナイト思フ、其他ノ公債政策ト云フコトニ付キマシテハ、如何ナル費
途ニ公債ヲ募集スルトカ云フコトニナリマスト、是ハ之ニ關係ガアリマスマ
イシ、又此事ヲ述べマスト色〓ノ方面ニ涉ッテ意見モ述ベネバナリマセヌカ
ラシテ、公債ノコトニ付テハ、唯非公募ト云フ意味ガ私ノ解スル所デハ一向
分ラヌ、郵便局デ募集スルノモ公募デアリマス、銀行ノ手ヲ經テ募集スルノ
モ公募デアリマスト、是ダケヲ申シテ置キマス、第三ニハ兌換制度、ソレニ
次イデ物價騰貴、ソレハ畢竟澤山ノ金ヲ、預金支拂準備ノ爲ニ五十億モ貸ス
ト云フ、其基礎ノ下ニ五億圓ト云フ補償ト云フコトガ出來テ居ルカラシテ、左
樣ニ兌換劵ガ出タナラバ、第一ソレデ兌換制度ノ擁護ガ出來ルカ、ソレニ依ツ
テ物價ノ騰貴スルコトハナイカ、斯ウ云フ點ニ付テノ御尋ト拜察スルノデ
ス、而シテ斯樣ナコトヲシタナラバ却テ國民ニ安心ヲ與ヘルドコロデハナ
イ、却テ不安心ヲ與ヘヤシナイカ、ソレデ五億圓ト云フヤウナコトハ餘リ大
雜把ダカラシテ、之ヲ減ラス方ガ宜クハナイカ、補償ノ高ガ多ケレバ勢ヒ貸
出ガ放漫ニナル、一應御尤ノ御懸念デアリマス、是ハ衆議院ニ於テモ度〓申
シマシタガ、五億圓ト云フコトハ聢トシタ的確ナ基礎ガアッテ定メタモノデ
ハナイ、併シ之ヲ數字上ニ基礎ヲ求メラレヽバ、我國ノ全體ノ預金ノ高ハ、
今日百二十億足ラズデアリマスルガ、之ヲ假ニ百億ト見ル、普通銀行ノ取付
ハ預金ノ三割五分ニ及ブコトガアリマスルガ、ソレハ一局部ノ取付、一都市
若クハ一州內ノ取付ノ場合デアリマス、今囘ノ如ク九州カラ北海道ニ至ルマ
デノ全國ニ亙ッテノ取付ナドト云フコトハ、是ハ餘リ例ノナイコトデアリマ
ス、ソレ故ニ通常ノ取付ノ標準トナッテ居ル三割五分ヨリハ之ヲ餘計ニ見ル
ガ安全デアラウ、故ニ百二十億ノ預金ヲ假ニ百億ト定メ、其半額マデ取付ガ
アリ得ルモノト考ヘ、而シテ其五十億ノ一割ガ損失ニ歸スルモノト、數字的
ノ基礎ヲ御尋ネニナレバ、斯クノ通リデアルト私ハ述ベタ、併シ其數字的ノ
基礎ハソレデアリマスルケレドモ、要スルニ今囘ノコトハ、一般預金者ニ潜
在シテ居ル所ノ不安ノ念ヲ除去スルト云フノガ、第一ノ目的デアリマスルカ
ラシテ、一般民衆心理ノ上ニ於テ、數字ノ基礎モ何モ問ハズ、五億圓ト云フ
コトハ、之ヲ三億トスルヨリハ不安ノ念ヲ除去スル力ガアル、民衆心理ニ如
何ニ映ズルカ、印象ヲ與ヘルカト云フコトヲモ顧慮シテ斯ク定メタモノデア
ルト、斯樣ニ御承知ヲ願ヒタイノデス、ソレカラ後ニモ物價騰貴ニ關シテノ御
尋ガアリマスガ、此通貨ト······通貨ガ殖エル、物價ガ騰貴スル是ハマア色〓議
論ノアルコトデアリマスルガ、其議論ニハ入ラズ、斯ノ如ク若シ取付ニ依ツ
テ兌換劵ガ一時增發サレル場合ニ於テ、是ガ永久ニ續クモノデハナイ、卽チ
人心安定スレバ又元ニ戾ルノデアル、今日日本銀行ニ於テ未ダ戾ラズニ居ル
モノガ澤山アリマスケレドモ、是ハ「モラトリアム」ノ期限ガ來タナラバ又引
出シニ來ルト云フコトヲ、皆銀行者ハ考ヘテ居ル、一流銀行ノ如キハ其懸念ナ
クシテ、或ハ却テ預金ガ殖エルト云フ考ヲ持ッテ居ル銀行者モアリマセウガ、
併シ二千近クノ我國ノ銀行者ト云フモノハ或ハ「モラトリアム」ノ期限ガ完了
シタナラバ又引出シニ來ルダラウト考ヘテ居リマスルカラ、既ニ日本銀行其
他カラ借入レタ所ノ金ハ、今日祕藏シテ店ニ持ッテ居ル、用意ノ爲ニ······其
他ハ他ノ銀行ヘ移ッタモノモアルシ、郵便貯金ニ殖エタモノモアリマスケレ
ドモ、アノ當時ト云フモノハ、御覽ニナッタ御方モアリマセウガ、預金者ニ安
心ヲセシムル爲ニ一千万圓ノ預金ヲ持ッテ居ル銀行ハ、其處へ一千五百万圓モ
札束ヲ店ニ飾ッテ、之ヲ取付ニ來ル人ニ見セテ安心セシムルト云フコトニ皆
ヤッタノデアリマス、必要以上ニ皆紙幣ヲ備ヘテ、ソレガ爲ニ日本銀行ノ發行
元ガ不足シテ、御承知ノ如ク俄ニ粗雜ナル紙幣ヲ拵ヘテ、一日ニ七億圓位ヅ
ツ、アレデ拵ヘル積リデアッタノデス、ソレカラ臺灣ノ預金、日本銀行ノ融
通法案ヲ作ル時ニハ、臺灣ノ預金ナドハ想像シテ居ナカッタラウ、ソレダカラ
是等ハ除イテ宜カラウ、又同ジク預金ノ中ニ定期預金ハ期限ガアル、而モ此頃
ハ銀行ガ相談ヲシテ期限前ニ支拂ヲセヌト云フコトヲ決メタト云フコトガ新
聞ニアル、ソレダカラソレ等ハ差引イテ宜イデハナイカ、卽チ私ガ假定シタ
所ノ引出シ五十億トカ、或ハ元ノ百億カラソレダケノモノハ引イテ見テ宜イ
デハナイカト云フ御議論、是ハ衆議院ニ於キマシテモ同一ノ議論ガアッタ、臺
灣銀行ノコトニ付キマシテハ、最モ預金高ノ多イ所ノ臺灣本島ニ於テハ、臺
灣ノ本支店ハ申ス迄モナク、臺灣島內ノ他ノ金融機關ハ、平日ノ如ク營業シ
テ居ルノデアリマス、而シテ臺灣ニ於ケル所ノ預金ハ、本島內ニ於テ一番多
クアルノデアリマス、ソレ等ハ勿論皆考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ其金
高ガ假令一億デアラウト、八千万圓アラウト、サウ此大計畫ニ付テハ影響ハ
ナイノデアリマス、又定期預金ハ期限前ニ返サヌト云フコトヲ銀行ガ決メタ
カラ是等ヲ差引イテ宜カラウ、是等ハマダ私ハ銀行カラハ聞キマセヌ、或ハ若
シサウ云フコトヲ相談シタナラバ、矢張リ今囘「モラトリアム」デモ明キマシ
テ、又再ビ預金ヲ引出シニ來ルト云フヤウナ場合ニ於テ、銀行互ニ一致シテ、
甲ノ銀行ガ拂フガ乙ノ銀行ハ拂ハヌト云フヤウナ、サウ云フ不統一ノ働キヲ
シテ銀行間ニ預金者ニ不信用ヲ與ヘルコトナクシテ、銀行ガ斯クノ如クデア
ルカラ拂ハヌ、何處ノ銀行デモサウ云フコトヲシテ一致ノ行動ヲシヤウト云
フ相談ガ出來タモノデアラウト思ヒマス、然ラバ此相談ト云フモノハ、此度
ノ特別ノ事情ニ對シテ、一時的必要ナル相談ヲシタモノト私ハ考ヘル、永久
ニ斯ノ如キコトハ銀行者トシテ爲シ得ザルコトデアル、銀行ノ定期預金
者ハ、銀行ニ取ッテハ大切ナ華客デアリマス、華客ガ一年ノ定期預金デ金ヲ
預ケテ、斯ク〓〓ノ必要ガアッテ期限前ニ出サナケレバナラヌト云フ、宜シ
ウゴザイマスト云ッテ拂ハナケレバナラヌト云フノガ、內外ノ銀行ノ取扱ノ
常デアリマス、故ニソレ等ヲ引クト云フコトハ、私ハ穩當デナイト思フ、又
ソレ程ニ細カニ目ノ子算用シテ定ムベキモノデナカラウト私ハ考ヘル、ソレ
カラ日銀ガ愈〓預金ヲ貸出ス時ニハ、總テ內地デ五十億、臺灣デ二億、五十
二億トナル、斯樣ナ兌換劵ヲ發行スルニ其準備ヲスル保證如何、斯ウ云フ御
質問デ、是モ御尤デアリマス、併ナガラ假ニ五十億ノ兌換劵ガ一時ニ日本銀
行カラ出ルヤウナ場合ガアリマシテ、其場合ト云フモノガ永久繼續スル狀態
デアリマセウカ、或ハ戰爭ガ起ッタト云フ場合ナラ或ハ無イトモ限リマセヌ
ガ、何等平生ノ狀態ニ異ナラヌ、唯異ナルノハ預金者ガ銀行ノ金融機關ニ對
スル信用ノ基礎ガ動搖シタ爲ニ、風聲鶴唳ニ動カサレテ一時取付ト云フ爲ニ
出ル譯デアリマスルカラ、人心安定スレバ一旦取ッテ來タモノハ再ビ何處カニ
持ッテ行ッテ納メナケレバナラヌ、昨日モ私ハ衆議院デ申シタ通リ、最早銀行
ニ預ケルナリ郵便局ニ預ケル、印度人ノヤウニ瓶ノ中ニ入レテ土ニ埋メルト
云フコトガアレバ、或ハ出ッ放シニナルカ知ラヌ、併ナガラ我ガ國民ハ左樣ナ
コトハ致シマセヌ、故ニ是等ハ一時的ノコトデアリマスカラ、左程御心配ニ
ナル必要モナカラウ、戰爭ノ爲ニ出ルノハ是ハ皆不生產的ニ費サレテシマ
フ、其場合トハ違フノデス、度々御意見ノ中ニハ、通貨膨脹、物價騰貴ト云
フコトニ御話ガ涉リマシタガ、是ハ私ハ此席ニ於テハ、通貨膨脹、物價騰貴
ト云フ問題ニ付テハ、御意見ハ御意見トシテ伺ヒマスガ、私ハ玆ニ又自分ノ意
見ヲ述ベテ菅原君ノ御高見ト爭フト云フコトハ此際控ヘタイト思フ、日本銀
行ノ條例ノ改正ノ必要ナキヤ否ヤ、ソレハ條例第十一條ニハ種々ノ貸付ノコ
トガアル、又第十二條ニハ不動產ニ貸スコトハ出來ナイト云フコトガアル、是
ハ今日ノ經濟界ノ情勢カラ見マシテ、日本銀行條例ハ何シロ古イコトデアリ
マスカラ、古ク作ラレタモノデアルカラ、改正ノ必要ガアラウト思ヒマス、
併シ今囘ノコトノ爲ニ特ニ此條例ヲ改正スルト云フ必要ハ認メナイノデアリ
ママ、從來ト雖モ矢張リ時勢ニ連レテ、條例、定款ノ解釋上、許ス限リハ時
勢ニ依ッテ條例モ定款モ解釋ニ依ッテ進ンデ居ル、成長シテ居ル、其範圍內ニ
於テ今日ヤッテ居ルノデアリマシテ、ソレト變ラヌノデアル、卽チ此土地ナ
ドヲ直接抵當ニシテ、或ハ擔保ニシテ金ヲ貸スト云フコトハ、是ハ條例ノ禁
ジテ居ル所デアリマスケレドモ、土地ヲ見返リトシタ手形ニ融通スルト云フ
コトハ、是ハ非常貸出ノ場合ニハ從來ト雖モヤッテ居ルノデ、故ニ今日ノ場
合ニ於テハ、條例ノ文字通ニアラズシテ、文字ニ依ッテ解釋ノ出來得ル限リ、時
勢ノ進步ト共ニ、此日本銀行ノ條例、定款モ運用上進步シテ來テ居ルノデア
リマス、其今日ノ取扱ハ變ルコトハナイト思ヒマスカラシテ、決シテ條例違
反トハ認メマセヌ、第四ト仰シヤッタノハ卽チ第八點ニ私ノ方デハナリマス
ガ、是ハ法律ノ適用期間ハ一年間デアル、其一年ノ間ニ開店シ得ザルモノ
ハ此法律ノ恩惠ト申シマシスカ、利益ニ浴スルコトハ出來ナイ、ソレデ財
界ノ安定ガ出來ルカ、畢竟休業銀行ノ救助ニ付テハ何等救濟ノ途モ立ッテ居
ナイヤウニ思ハレル、休業シテ居ル銀行ト今日營業シテ居ル銀行トノ間ニ、
其預金者ニ對シテ差別取扱ヲスルト云フコトハ穩當デハナイ、斯ウ云フ譯デ
休業銀行ニ對シテモ何カ救濟方法ガアルベキ筈デアル、差別スベモノデナイ
ト云フ御意見デアリマスルガ、モト〓〓今囘ノ特別融通法ナルモノハ、今囘
ノヤウナ銀行ニ對シテノ取付騷ギヲ再ビ起サシメヌ爲ノモノデアリマシテ、
現ニ休業シテ居リマス所ノ銀行ノ預金者ハ、取付ニ······店ガ閉メテアルノデ
最早取付ニハ行カナイ、營業シテ居ル銀行ノ預金者ニシテ取付ト云フコトガ
出來ルノデアル、預金者トシテハ情ニ於テハ誠ニ忍ビナイ譯デアリマス、休
業シテ居ル銀行ノ預金者ハ此恩惠ニ與カラヌト一口ニ申セバ誠ニ氣ノ毒デア
リマス、併ナガラ其銀行ガ店ヲ開クト云フコトニナレバ、矢張リ此銀行ノ
今日營業シテ居ル銀行ノ預金者ト同ジ立場ニナルノデアリマス、唯店ヲ開キ
得ルヤ否ヤト云フコトデアル、ソレニ付テ衆議院ノ修正モ起ッタ譯デアリマ
シテ、其趣旨ハ政府ノ考ヘテ居ル所ト少シモ變リマセヌカラ、文字ガ這入ツ
テ明カニナレバ却テ結構ダト思ヒマシテ、多數ノ意見ヲ尊重スルト云フ意味
ニ於テ、決議ニナッタ以上ハ政府モ同意スル譯デアリマス、此休業銀行ニ對
シテハ、實際店ヲ開ク、店ヲ開クト云フ······今デモ皆重役其他ガ頻ニ心配ヲ
シテ、何ントカ店ヲ開キタイト云フコトデ努力シテ居ルノデス、是等ハ皆自
分ノ信ズル所ニ依ッテ開店スル設備ガ出來タト思ヘバ、先以テ之ヲ日本銀行
ニ內示シ、日本銀行ニ內示シテ是デ日本銀行ガ宜シイ、店ヲ開イタラ預金準
備ノ金ヲ出シテヤルト云フ內諾ヲ得テ開ク譯ノモノデアリマス、卽チ其方針
デアリマスルカラ、今日其モノガ衆議院ノ修正ニ依ッテ法律文ニ、其方針ヲ文
ニ表ハシタト云フコトニナルノデアリマスカラ、別ニ不都合ハナイノデアリ
Pv,8決シテ此休業銀行ニ付テ何等考慮シナイ······初メニハ能ク除外スルト
カト云フヤウナ當ラナイ言葉ヲ以テ批評サレタ向キモアリマスルガ、決シテ
サウ云フ譯デハナイ、政府トシテハドコ迄モ銀行ヲ成ルベク活カシテ行キタ
イト云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ又第五ニハ唯預金バカリ··
預金者ヲ保護スル、預金ノ支拂ノミニ特別ノ融通ヲシタ所デ、他ノ一般ノ資
金ノ融通ガナケレバ、世ノ中ハ安定セヌヂヤナイカ、是ハ商業會議所其他ニ
於テモ、往々其請求ガ此場合ニ於テ起ッテ來テ居ル、何カ預金者ヲ救フト云
フ、保護スルト云フコトガ起ルモノデスカラ、矢張リ商工業者共ニ自分ノ今
日不自由シテ居ル所ノ資金ノ充實ヲ圖ラムトシテ、皆其融通ヲ受ケタイト云
フ考ヲ起シテ、盛ニ運動ヲ致シテ居リマス、併ナガラ政府ノ見ル所デハ、其
方マデ·····產業資金、商業資金、サウ云フモノマデ之ヲ救濟シナケレバ財界
ノ安定ガ得ラレヌトハ考ヘテ居ラナイ、畢竟此預金者ハ貯蓄シタ金ヲ銀行ニ
預ケル、其貯蓄ガ銀行ニ集マッテ初メテ商工業者ノ間ニ資本トナッテ出テ、働
キヲ爲スノデアリマスカラ、此貯蓄ト云フモノガ卽チ資本ノ源泉デアリマス
ルカラシテ、其源泉ヲ成シテ居ル所ノ預金者ノ不安ノ念ヲ除クト云フコトガ
財界安定ノ根本デアリマスルカラ、其根本ガ安定スレバ卽チ財界ハ平生ニ復
スルノデアル、平生ニ復シテ、平生ノ如ク銀行ノ機能ヲ發揮スルコトガ出來
ルノデアリマス、要スルニ平生ノ狀態ニ復スルコトガ目的デアリマス、ソレ
故ニ預金者ヲ保護シテ一般商工業者ヲ保護シナイト云フノハ、甚ダ不公平ダ
ト云フコトヲ論議セラレル人モアリマスルガ、政府ノ趣意ハ左樣ナ譯デアリ
マスルカラシテ、決シテ不公平ダナドト云フ考ハ、是ハ起ス方ガ無理ダト考
ヘマス、ソレカラ「コール」ノ問題、「コール」ヲ何故預金トシテ扱ハナイカ
ト云フコトモアル、菅原君ノ御說モダ、「コール」ト云フモノハ支拂準備ニシ
テ居ルモノデ、何時デモ取入レルコトガ出來ルカラ卽チ「コール」、「コール·
モネー」、成程其通リニ違ヒナイ、果シテ支拂準備金ノ爲ノ「コール」デアル
ナラバ、其「コール」ト云フモノハ、其期日ナリ、或ハ「コール」ナリ、何
時デモ望ム時ニ直グニソレガ金ニナッテ戾ルダケノ確カナモノガ玆ニ無ケレ
バナラヌ、外國デハ「コール」ヲ出スノニ、信用デ「コール」ヲ出スト云フ
コトハ私ハ聞キマセヌ、正金銀行アタリデ、倫敦デ「コール」ヲ出シマシタ
所デ、必ズ一流ノ有價證券ヲ擔保ニ取ッテ、サウシテ「ブローカー」ニ金ヲ渡
シテヤル、ト云フモノハ其筈デス、銀行自ラ金ヲ使フノナラ、借リニ來ル人
ガ能ク分ッテ居ル、其人ガ如何ナルコトニ金ヲ使フカ、其人ノ人格ハドウデ
アルカ、其人ノ營業ノ狀態ハドウデアルカ、事業ノ狀態ハドウデアルカ、知ツ
テ居ル人ニ金ヲ貸シテ、其人ガ使フノデアリマス、然ルニ「コール」ヲ出ス
ト云フコトハ、何人ガ使フノカ、如何ナル方面ニ使ハレルノカ、ソレハ其出
ス方ガサツパリ分リマセヌ、故ニ「コール」ヲ出スト云ヘバ玆ニ確カナ擔保
ガナケレバナラヌ譯デス、擔保ガアッテ初メテ仕拂準備ノ資格ヲ持ツノデア
ル、不幸ニシテ我國ノ「コール」ハサウデハナイノデアリマス、遺憾千萬デ
アリマス、故ニ「コール」ヲ以テ預金ト同樣ニ見ル譯ニ行カヌ、又「コール」
ハ「コール」、「デポジット」ハ「デポジット」、確カニ區別ハアルモノデアル、
臺灣銀行トシテハドウカ、臺灣ノ金融機關ニ對スルト云フ······イッソ臺灣銀
行ヲ救濟スルノダカラ、臺灣銀行トシタラ宜イヂヤナイカト云フ御說、是ハ
日本銀行ノ特別融通ノ法案ト、此臺灣銀行···臺灣ノ金融機關ニ對スル融通
法トハ、抑〓其目的モ用意モ違ッテ居ルノデアル、此臺灣ノ金融機關ノ機能ヲ
維持スル爲ニ設ケマシタ融通法ノ二億圓ハ、是ハ臺灣統治ノ必要ヨリ起リ、
大藏大臣ガ日本銀行ニ命令シテ出サセル金デアル、是ハ全ク營業上ニ日本銀
行ガ自カラ擔保ヲ調べ價額ヲ調ベテ出スト云フノトハ全ク違フノデアル、臺
灣銀行ノコトハ、御承知ノ如ク臺灣銀行調査會ト云フモノガ出來タ、此調査
會ノ決定ヲ待タザレバ、如何ニシテ此臺灣銀行ノ機能ヲ發揮セシムルカト云
フコトハ分ラヌノデアリマス、而シテ臺灣銀行ノ今日ノ狀態ハドウデアルカ、
御承知ノ如ク臺灣本島內ニ於テハ本支店トモ不斷ノ如ク營業シテ居ルニ拘ラ
ズ、海外ノ支店、內地ノ支店ハ取引ヲ休ンデ居ル、而シテ是マデ政府ハ屢、
臺灣銀行ナルモノハ特殊ノ銀行デアル、政府ノ嚴重ナル監督ノ下ニアル臺灣
銀行ニ付テハ、何等債權者ハ危惧ノ念ヲ懷クニ及バズト云フコトヲ、島民及
海外ノ債權者ニ向ッテハ屢、聲明シ、外務省ヲ經テ領事モ之ヲ聲明シテ居ル、此
聲明ヲ裏切ルヤウナコトガアリマシテハ、日本ノ經濟上ノ信用ヲ損ズルコト
夥シイノデアリマス、既ニ今日正金銀行ナドハ、此南洋方面ニ於キマシテハ
多少其惡イ影響ヲ受ケテ居ル、又臺灣銀行ノ今日ノ有樣ハ、或ル一部ノ人ガ、
紐育ナリ、倫敦ナリ、南洋ナリ、或ハ內地ニシテモ、之ヲ本店ニ迫ッテ訴デモ
起シタナラバ、直チニ是ハ休マニャナラヌ、先刻菅原君モ仰セラレタル如ク、
臺灣銀行ハ臺灣ノ中央銀行デアリマス、他ノ種々ノ金融機關ハ、之ヲ親銀行
トシテ營業シテ居ルノデアリマス、一朝此金融機關ガ機能ヲ失ッタ場合ニハ、
其事ヲ想像イタシタラドウデアリマセウ、金融界ハ暗黑ニナリ、直チニ島民
ノ生活ニモ及ンデ來ル、臺灣銀行ノ發行劵ノ價ニ及ンデ來ル、統治上如何ニ
ナルカ、三十年來平和的ニ新附ノ民ヲ撫育シテ居ラレマスルガ、ナカ〓〓マ
ダ同化ニハ遠イ所ノ臺灣島人デアル、ソレ等ヲ多ク言フ必要ハナイ、サウ云
フモノニドウ云フコトニナルカ、苟モ我ガ統治ノ權威ヲ損ズルヤウナコトハ、
是ハ如何ニ大ナル犧牲ヲ拂ッテモ、國トシテ左樣ナコトニ陷ラシメテハ相成
ラヌト私ハ心得マス、此見地カラシテ臺灣金融機關ニ對スル融通法ト云フモ
ノガ出來タノデアリマシテ、全ク他ノ日本銀行特別融通法トハ、目的モ其用
意モ違ッテ居ルノデアリマスカラ、ソコヲ能ク御了解ヲ願ヒマス、大〓御質
問ニ對シテハ御答ヲ致シタ積リデアリマスルガ、マダ御尋ガアリマスルナラ、
他ノ機會ニ於テ御尋ネ下サレバ仕合セト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=27
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028・菅原通敬
○菅原通敬君 大藏大臣ヨリ御懇切ナル御答辯ヲ承ハリマシタコトニ對シマ
シテ感謝イタシマス、マダ了解シ兼ネル點モアルノデゴザイマスガ、又滿足
イタシ兼ネルノデアリマスガ、本日ハ御答辯ヲ承リ置キマシタニ止メマシテ、
質問ハ打切ルコトニ致サウト思ヒマス、謹ンデ高橋藏相ニ對シ是ダケノ御挨
拶ヲ申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質疑モナイト認メマス、只今議題ト相成リ
マシタ兩案ハ、先ニ議長ガ指名イタシマシタ昭和二年勅令第九十六號承諾ヲ
求ムル件ノ特別委員ニ付託イタシマス、特別委員會トノ關係ニ依リマシテ、
此際暫時休憩ヲ致シマス
午後八時二十七分休憩
山东小山
午後十時九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日特別委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
日本銀行特別融通及損失補償法案可決報告書
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案可決報告書
生事発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、此際昭和二年勅令第九十
六號承諾ヲ求ムル件ノ會議、日本銀行特別融通損失補償法案、臺灣ノ金融機
關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案ノ各第一讀會ノ續ヲ開キ、三案一括シテ
委員長ノ報告ヲ求ムルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、特別委員長靑木子爵ノ登
壇ヲ求メマス
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ載錄ス〕
昭和二年勅令第九十六號
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二年五月八日
右特別委員長
子爵靑木信光
貴族院議長公爵德川家達殿
日本銀行特別融通及損失補償法案
右可決ス·ヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二年五月八日
右特別委員長
子爵靑木信光
貴族院議長公爵德川家達殿
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報〓候也
昭和二年五月八日
右特別委員長
子爵靑木信光
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵靑木信光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=32
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033・青木信光
○子爵靑木信光君 勅令第九十六號承諾ヲ求ムル件外二件特別委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ報告イタシマス、此委員ハ選定サレマシテ直チニ正副委員長ノ選
擧ヲ行ヒマシテ、不肖ガ委員長ノ席ヲ汚スコトニナリマシタノデ、直チニ委
員會ヲ開キマシテ、質問應答モ濟ミマシテ、直チニ討論ニ入リマシテ、此三案
トモ原案通リ衆議院ノ廻付案ノ通リ可決ニナリマシタ次第デゴザイマス、是
ヨリ順序ヲ逐ヒマシテ所問ノアリマシタ要點ヲ申上ゲヤウト思ヒマスガ、實
ハ御承知ノ通リ種々ナル質問モ出マシタ、委員長トシマシテ之ヲ整理スル遑
モゴザイマセヌ、御報告ノ順序等ハ〓倒スルヤモ圖ラレマセヌカラ、豫メ御
了承ヲ願ッテ置キマス、此勅令九十六號ノ承諾ヲ求ムル件ニ於キマシテ、質
問ガ六點程ゴザイマシタ、第一ハ「モラトリアム」ノ外ニ何カ財界ノ恐慌ヲ
鎭靜スルノ良策ハナカリシヤト云フ質問デゴザイマシタ、政府ニ於キマシテ
ハ、結論トシテ、組閣當時ノ財界ノ狀況ニ鑑ミ此儘放任シ置カバ、國家ノ金
融機關ニ對スル信用上ノ不安ガ益、增大ヲシテ、遂ニ玉石混淆、ドノ位休業
銀行ガ出ルカ測ラレヌ、此火ヲ消ス手段トシテ先ヅ支拂猶豫令ヲ布クヨリ外
ニ途ハナイト考ヘマシタカラ、此勅令ヲ奏請シタ次第デアルト云フコトデゴ
ザイマシタ、第二ハ「モラトリアム」ノ期間二十一日ハ長キニ失セザリシヤ、
其答ニ、「モラトリアム」ノ期間ハ二十一日ハ長過ギルト云フ御不審ハ御尤デ
アルケレドモ、斯樣ナ時ニ少シヅヽ刻ミ刻ミ期限ヲ附スル時ハ、不安ヲ增シ
マシテ人心ヲ安定スルコトハ出來ナイ、卽チ政府ノ意思ガ一貫シナケレバ不
安ヲ防ギ難イ、一度斷行シタナラバ、其目的ヲ達セネバナラナイ、且ツ臨時
議會ヲ開クニ付テハ、少クトモ召集ヨリ開會マデニ十二日位ヲ要スルノデア
ル、而シテ會期ヲ今日ノ如ク定メ、法律ヲ執行スルニ付テハ、相當ノ時ガナ
ケレバナラナイノデアル、ソレ故ニ二十一日ハ適當ノ期間ト信ジタノデアル
ト云フコトデアリマシタ、第三ハ支拂猶豫期間中商工業者ノ蒙リタル損害ハ
甚大ナリト思フ、其狀況ハ如何ト云フコトデアリマシタ、此「モラトリアム」
ノ施行後、經濟界ノ影響ハ甚シク、其損害モ頗ル大ナルモノノアリシナラムト
考ヘタカラシテ、直チニ相當人ヲ派シテ商工業界ニ及ボセシ狀況ヲ視察セシ
メタガ、中小商工業者ニハ少カラザル困難ヲ感ゼシメタリト思フケレドモ、
大ナル商工業者ニハ、今日マデ想像スル程ノ困難ハナイコトト思ウテ居ル、
斯ウ云フコトデアリマシタ、第四ハ財界ノ恐慌ノ原因如何、之ニ關スル政府
ノ所見ハ如何、種々原因ニ付キ觀察ハ出來ルケレドモ、極メテ近キ事情ハ、
渡邊銀行ノ休業ヨリ次第ニ不安ニ傾イテ、臺灣銀行、十五銀行ノ休業ニ至リ
テ人心ガ益、不安ニ傾イテ參ッタ、ソレ故ニ······是ハチヨット間違ヒマシタ、傾
イタ原因ハソレニ起因シテ居ルト思フト云フコトデアリマシタ、第五ハ其恐
慌ノ事實、恐慌ノ現狀ハ、四月二十二日前後ノ〓況ノ調べニ依レバ、物價ニ付
テモ大體ニ變動ナク、小賣値段ニ至ッテモ同樣ナ有樣デアリマシタ、唯鑛山地
方ニ於テハ、小鑛業ハ相當ノ苦痛ヲ感ジマシタケレドモ、幸ニ大鑛業家ニハ影
響ガナク、十三日ノ「モラトリアム」ガ明ケマシテモ、幾分カノ變動ハアルカ
モ知レナイガ、幸ニ此特別融通及損失補償法案ガ通過スレバ、大シタル變動
ハナイモノト思フト云フコトデアリマシタ、第六ハ臺灣ニ「モラトリアム」
ヲ施行セザリシ理由如何、臺灣ニ「モラトリアム」ヲ布カザリシ理由ハ、此
島內ノ人心ヲ考ヘタカラデアッテ、島民ニ惡影響ヲ與ヘザルヤウ留意シタ爲
デアルト云フコトデアリマシタ、是等ノ質問ガ終了イタシマシタノデ、討論
ニ入リマシタ所、某委員ヨリ贊成ノ理由トシテ、見樣ニ依リテハ他ニ適當ノ
手段モアラウト思フガ、最早ソレハ過去ノコトデアッテ、今日我〓ノ執ルベ
キ手段ハ、政府ノ財界安定ノ藥ノ效用ヲ增スヤウニスルノガ一番必要デアラ
ウト思フ、且ツ會期モ切迫ノ場合デアルシ、又反對黨多數ノ衆議院ニ於テス
ラ此案ヲ可決シテ廻付サレタルモノデアルカラシテ、速ニ之ニ承諾ヲ與ヘタ
方ガ宜カラウ、斯ウ云フコトデアリマシタ、又某委員ハ、本勅令發布當時ノ
財界恐慌ノ狀況ニ鑑ミ、緊急已ムヲ得ザル處置デアリ、憲法ノ條項ニモ適ヘ
ルモノト思フ、又今日ニ於テモ尙ホ之ヲ存續セシメル必要ガアルト認メマス
カラ、之ニ對シテ承諾ヲ與ヘテ然ルベキモノト思フトノ意見ニテ、本案ヲ承
諾スベシト云フコトノ說ニ贊成ヲ表サレマシタ、而シテ採決ニ入リマシテ、
全會一致ヲ以チマシテ此案ニ承諾ヲ與フベシト議決イタシマシタ次第デゴザ
イマス、是ヨリ日本銀行特別融通及損失補償法案外一件ノ經過ヲ御報告イタ
シマス、日本銀行特別融通及損失補償法案、臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通
ニ關スル法律案、此委員會ニ於キマシテ、質問ガ大凡主モナルモノハ七ツト
存ジテ居リマス、第一ニ休業シタル銀行ノ整理ニ對シテ、大藏大臣ハ何等カ
ノ援助ヲ與フルノ意思ハナキカ、答ハ國庫ノ補助トカ國家ノ負擔ニナラザル
「モーラル·サッポート」ハ十分ニ之ヲ爲ス積リデアルト云フ答デアリマシタ、
第二ハ損失決定ノ基準ハ如何ニシテ定ムルヤ、答、大藏省ト日本銀行ト協議
ノ上之ヲ定ムル考デアル、第三ハ特別融通審査會ノ組織ハ如何ナルモノナリ
や、答、日本銀行重役ト大藏省官吏若干ヲ以テ組織スル積リデアル、第四、
衆議院ノ希望條件ニ關シ質問ガアリマシテ、其條件ヲ當局ヨリ朗讀ヲセラレ
マシタ、第五、日本銀行特別融通及損失補償法案ニハ、臺灣銀行ニ對スル融
通ハ除イテアルヤウニ聞イテ居ルガ、如何デアルカ、答、除イテハナシ、臺
灣銀行ニモ之ヲ適用スル積リデアル、第六、銀行ノ監督制度ニ缺陷ハナキカ、
答、監督ニ付テハ從來ハ不十分ノ點ガアリタリト認ムルケレドモ、將來ハ之
ヲ改善厲行スル積リデアルト云フコトデアリマシタ、七、預金者ニモ或ル程
度ノ負擔ヲナサシメル必要ガアリト認メルガ、政府ノ考ハドウデアルカ、答、
銀行ノ株主及重役ハ損失ノ責ニ任ズベキガ當然デアルケレドモ、預金者ニハ
何等罪ノナイモノデアルカラシテ、之ニ損失ヲ分擔セシムルノハ無理ナコト
ダト思フ、斯ウ云フ答デアリマシタ、其他質問ガゴザイマシタガ、時間モゴ
ザイマセズ、整理ヲ致ス間モゴザイマセヌノデ、此邊デ質問ノ報〓ハ終リタ
イト存ジマス······ソレヨリ討議ニ入リマシテ、某委員ヨリ、此兩案共全幅ノ
贊成ヲ表スルガ、併ナガラ本案ノ實行ニ付テハ、政府ニ重大ナル責任ノアル
コトヲ自覺セラレテ、細心ノ注意ヲ以テ事ニ當リ、遺憾ナキヲ期セラレタイ、
殊ニ此三案ハ各、錯綜シテ居ッテ、隨分拔穴ガアルヤウニ思フノデアル、度
其運用ヲ誤レバ國家ニ重大ナル不利益ヲ來スカラシテ、政黨ノ利權ニ利用セ
ラルルコトノナキヤウ、又委員會ノ人選等ニ付テモ最善ノ注意ヲ拂ヒテ、恰
モ暴風ノ怒濤ニ乘出シタ親船ガ途中ニ沈沒セザルヤウ、十分ノ誠意ヲ以テ實
行ニ當ラレムコトヲ希望ス、ソレガ故ニ一字一句ノ修正ナク、衆議院ノ囘付
通リ贊成ヲ表スルモノデアルト云フコトデゴザイマシタ、而シテ採決ニ入リ
マシテ、矢張リ前案ト同ジク全會一致ヲ以テ可決ニナリマシタ次第デアリマ
ス、甚ダ簡單デアリマスガ、以上ヲ以テ報告ヲ終リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員長ノ報告ハ三案トモ一括セラレマシタ
ガ、此際議題ト致シマスノハ、昭和二年勅令第九十六號承諾ヲ求ムル件ノミ
ト御承知ヲ請ヒマス······別ニ發言者モナイト認メマスカラ採決ヲ致シマス、
本案ニ承諾ヲ與フベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
總員起立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全會一致ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ハ殘リノ兩法案ヲ一括シテ議題ト致シマス、是
亦別ニ發言者モナイト認メマスカラ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二讀會ヲ開ク
コトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ「ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=37
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038・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=38
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039・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
草発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=43
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044・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=44
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045・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス
〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案トモ第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認メマス、是ニテ散會イタシマス
午後十時二十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005303242X00219270508&spkNum=49
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