1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二年五月八日(日曜日)午前十時六分開議
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議事日程 第四號
昭和二年五月八日
午前十時開議
第一 國有林野所在府縣市町村に對し交付金下付に關する建議案(八田宗吉君提出)
第二 花卷釜石間鐵道速成に關する建議案(廣瀬爲久君外一名提出)
第三 上越南線群馬總社驛西乘降口開設に關する建議案(井本常作君提出)
第四 國民教育改造に關する建議案(荒川五郎君外四名提出)
第五 製絲資金融通に關する建議案(降旗元太郎君外十一名提出)
第六 臺灣銀行不始末調査査問會設置に關する建議案(武藤山治君外一名提出)
第七 休業銀行の整理救濟に關する決議案(武藤山治君外一名提出)
第八 (特別報告第一號)金鵄勳章受勳者優遇に關する請願 (委員長報告)
第九 (特別報告第二號)癈兵保護に關する請願 (委員長報告)
第一〇 (特別報告第三號)福山、三次間鐵道速成の請願外一件 (委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
日本銀行特別融通及損失補償法案に對する修正案
提出者
武藤山治君 森田金藏君
臺灣の金融機關に對する資金融通に關する法律案に對する修正案
提出者
武藤山治君 森田金藏君
日本銀行特別融通及損失補償法案に對する修正案
提出者 湯淺凡平君
製絲資金融通に關する建議案
提出者
降旗元太郎君 下元鹿之助君
粟山博君 加藤鯛一君
柏田忠一君 傳田清作君
奥村千藏君 星廉平君
戸田由美君 中野寅吉君
深井功君 蟻川五郎作君
休業銀行の整理救濟に關する建議案
提出者
武藤山治君 田中讓君
(以上五月七日提出)
一昨七日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
一八 淺賀長兵衞君
二五 三浦數平君
四〇 島本信二君
四一 加藤鐐五郎君
四五 吉田眞策君
四八 河上哲太君
九六 清水市太郎君
一六〇 齋藤藤四郎君
一七三 大石大君
一昨七日日本銀行特別融通及損失補償法案外一件委員高鳥順作君辭任に付其の補闕として原夫次郎君を議長に於て選定せり発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=0
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001・森田茂
○議長(森田茂君) 是ヨリ會議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=1
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002・井本常作
○井本常作君 暫時休憩セラレンコトヲ望
マス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=2
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003・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=3
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004・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマス、
暫時休憩致シマス
午前十時七分休憩
午前十一時五十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=4
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005・森田茂
○議長(森田茂君) 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=5
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006・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、此際昭和二年勅令第九十六
號承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト爲シ、委員長
ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=6
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007・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=7
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008・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマス、昭和二年勅
令第九十六號承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致シ
マス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長田
中隆三君
昭和二年勅令第九十六號(金錢債務ノ
支拂延期等ニ關スル件)(承諾ヲ求ムル
件)(政府提出)委員長報告
報告書
昭和二年勅令第九十六號(金錢債務ノ
支拂延期等ニ關スル件)(承諾ヲ求ムル
件
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和二年五月八日
委員長田中隆三
衆議院議長森田茂殿
〔田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=8
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009・田中隆三
○田中隆三君 昭和二年勅令第九十六號、
承諾ヲ求ムル件ニ付キマシテ、委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案ニ付
キマシテハ、昨日來先刻マデ委員諸君ノ非
常ナル勉勵ノ下ニ、種々ノ質問應答ヲ重ネ
マシタガ、此法案ハ御承知ノ通リ、政府ノ
參考書ニ依ッテ見マシテモ、或ハ支拂延期令
ト云ヒ、或ハ支拂猶豫令ト云ヒ、名前ハハッ
キリ附イテ居リマセヌ、或ハ又外國ノ言葉
ヲ其儘取ッテ「モラトリユーム」ト云フヤウ
ナコトヲ申シテ居ルヤウデアリマスガ、兎
モ角モ我國ニ於テハ大震災ノ際ニ一度行シ
タコトノアル法案デ、此度ハ二度目ノ法律
案デアリマス、而シテモウ十分御承諾ノ通
リ其影響スル所頗ル重大ナルモノデアリ
マスルガ故ニ、委員會ニ於キマシテハ特ニ
愼重ニ審議致シマシタノデアリマス、其經
過等ヲ是ヨリ御報告申上ゲマスガ、只今マ
デ其會ガ繼續シテ居リマシタノデゴザイマ
シテ、順序ヲ立テヽ御話ヲ申上ゲルコトハ
甚ダ困難デアリマス、或ハ混雜粗漏ニ涉ル
ヤウナ事ガナイトモ申セマセヌカラ、其點
ハ惡カラズ御宥恕ヲ願〓テ置キマス、先ヅ第
一、、此法律案ハ憲法上ノ根據ニ基イテ制
定セラレタルモノデアルカト云フコトニ付
キマシテノ質問應各ガ始マリマシダ、政府
ハ此法案ニモゴザイマス通リ、憲法第八條
ニ依シテ之ヲ交付シタモノデアル、是ハ明瞭
ナコトデゴザイマセウ、所ガ其憲法第八條
ニハ御承知ノ通リ「天皇ハ公共ノ安全ヲ保
持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ
由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ル
ヘキ勅令ヲ發ス」トアル、之ニ基イテ此法
案ハ公布セラレタルモノデアル、斯ウ云フ
御答辯デアリマスガ、恰モ憲法第七十條ニ
「公共ノ安全ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル
場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議
會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依
リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得」ト云フ
又一箇條ガ別ニアルノデアリマス、而モ此法
案ノ以前ニ、前内閣時代ニ於テ-若槻内
閣ニ於テ臺灣銀行ノ救濟ニ關スル緊急勅令
案ヲ出サウトシテ、樞密院ニ御諮詢ニナッタ
ト云フコトハ、諸君御承知ノ通リデアリマ
ス其法案ニ付キマシテ時ノ政友會、卽チ
現內閣諸公ハ、其緊急勅令案ニ御反對ノ御
意見ノアッタコトハ、天下公知ノ事實デアル
ノデアリマス、其勅令案ノ時ニハ反對ナサ
とり、サウシテ自ラ内閣ヲ取ルヤ否ヤ
內閣ヲ組織セラルヽヤ否ヤ、又此勅令案ヲ
御出シニナッタコトハ、前後子盾ノ廉ガナイ
カト云フヤウナ點ニ付テ、疑念ヲ懐カレテ
居ル方ガアルノデアリマス、其意味合ニ於
テ尙ホ此質問ガ、所謂此憲法上ノ根據ト云
フコトニ付テ、色ミノ質問應答ヲ重ネラレ
マシタ、之ニ對スル政府ノ御答辯ニ依リマ
スレバ、若槻內閣ノ時ノ緊急勅令ハ憲法
第七十條ニ依シタモノデアル、而モ七十條ニ
ハ卽チ「內外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會
ヲ召集スルコト能ハサルトキハ」云々トア
ル、當時ノ政友會ノ諸君ハ、卽チ此條件ニ
當嵌ラヌモノト認メテ、之ニ反對セラレタ
ト云フ趣意ニ歸著スルヤウデアリマス、而
シテ此度ノ此勅令第九十六號ノ方ハ、憲法
第八條ニ依ッタモノデアル、八條ニハ只今讀
上ゲマシタ通リ唯、「帝國議會閉會ノ場合
ニ於テ」云々トアルダケデ「內外ノ情形ニ
因リ帝國議會ヲ召集シ能ハサルトキ」云々
ト云フヤウナ文句ハゴザイマセヌ、此區別
ヲ根據トシテ、第七十條ノ方ハ餘程狹ク解
釋ヲシナケレバナラヌモノデアル、反面カ
ラ申シマスルト、第八條ノ方ハ七十條ヨリ
ハ廣クシテ、卽チ召集スルコト能ハザルト
キト云フコトニ當嵌ラヌデモ、憲法第八條
ニ依ッテ斯ノ如キ勅令ヲ出スト云フコトハ
憲法ニ依シテ與ヘラレタル權能デアル、斯ツ
云フ意味デアルヤウデアリマス、質問者ハ
更ニ進ンデ、第七十條ニアル所ノ召集シ能
ハザルトキト云フコトハ、戰亂ニ際シテ事
實ニ於テ議會ヲ召集スルコトガ出來ナイト
云フ時トカ、或ハ解散中ニ屬シテ、議會ノ
存立シテ居ナイ時トカ云フヤウナ絕對ニ無
イ場合ノミナラズ、例ヘバ此度ノ如ク財界
ノ混亂ニ陷ル惧ガアリ、一日ヲ忽ウスベカ
ラザルト云フ情勢ニ迫フ夕時ニハ、矢張七十
ニ依シテ、所謂內外ノ情形ニ因リ帝國議會ヲ
召集スルコト能ハザルト云フコトニ認メ
テ、矢張緊急勅令案ヲ出スコトガ出來ルト
認メルカドウカト云フコトニ質問ガ及ンデ
行キマシタ、ソレニ付キマシテハ、政府ハ
的確ナル答辯ヲ與へマセヌ、唯、先刻申上
ゲマシタ通リ、唯〓七十條ハ狹イ、八條ハ
廣イ、廣狹ノ解釋ヲ繰返サルヽノミデ、其
質問者ノ言フガ如ク、內外ノ情勢ガ迫ッテ、
一日ヲ緩ウスレバ國民ニ多大ノ損害ヲ與ヘ
ルト云フヤウナ緊急ノ場合ガ、所謂議會ヲ
召集スルコト能ハザルト云フ場合ニ當ルヤ
否ヤト云フコトハ適切ナ御各辯ガナクシ
テ、其應答ガ終了致シマシタ、此點ハ甚ダ
遺憾ニ存ジマス、政府ハ此財界ノ混亂ニ際
シテ、應急ノ處理トシテ此法案ヲ提出セラ
レ、卽チ此支拂ヲ二十一日間ニ亙ッテ停止ス
ルト云フ、之ヲ一ツノ應急策トシ、サウシ
テ他ノ一面ニ於テハ、善後策トシテ同時ニ
御提出ニナッテ居リマス所ノ日本銀行ニ關
スル法案、又臺灣銀行ニ關スル法案、此兩
法案ト此支拂猶豫令ト相俟ヲテ、サウシテ
此度ノ時局ヲ匡正セントシテ、此度ノ帝國
議會ヲ召集セラレマシタ事ハ、諸君御承知
ノ通リデアリマス、次ニ此立法ヲ必要トスル法
理上ノ根據ト云フ御言葉ガアリマシタガ、質
問者カラシテ、ドウ云フ譯デ斯ノ如キ、非
常ニ財產權ノ中ニモ最モ適用モ廣ク、利害
關係ノ重大ナル此法案ヲ出サナケレバナラ
ヌノデアルカ、之ヲ出サナケレバナラヌ、
出スト云フ根據ハ何處ニアルカ、尙ホ言葉
ヲ更メテ言ヘバ例ヘバ預金者ガ其預金ノ
拂戾ヲ求メルト云フコトハ、立派ナ法律上
ノ權利デアル、ソレヲ要求スルコトヲ差止
メル、俗ニ或ハ取付騒ギヲ防止スルノ案デ
アルト云フコトヲ言フガ、取付騒ギト云フ
事ハドウ云フ事カト云フト、多數ノ者ガ銀
行等ニ其拂戾ヲ要求シテ行クヤウナ場合ヲ
云ウテ居ルノデアルガ、一體ソレガ何故惡イ
ノカ、ドウ云フ譯デサウ云フ事ヲ、斯ノ如
キ非常立法ヲ以テ防ガナケレバナラヌノデ
アルカ、政府ノ見ル所ヲ聞キタイ、三人五
人要求シテ行クノハ宜シイケレドモ、十人
百人ト要求シテ行クノハイカヌト云フノデ
アルカ、尙ホ或ハ之ヲ法律的ニ云ヘバ權
利ノ濫用、多額ノ預金ヲ持シテ、取出サヌデ
モ宜イヤウナ者マデモ、斯ウ云フ場合ニ要
求ヲシテ、サウシテ少額ノ預金者等ハソレ
ガ爲ニ非常ナ迷感ヲスルト云フコトヲモ顧ミ
ズ、所謂權利ヲ濫用スルト云フヤウナ者ガ
集ッテ來ルト云フコトヲ防ガントシテ、斯ウ
云フ法案ヲ出シタモノデアラウカ、ドウ云
フノデアラウカ、此法案ヲ出サナケレバナ
ラヌト云フ適切ナ法理上ノ根據ヲ聞キタイ
ト云フヤウナ御質問ガ一ツ出マシタ、ソレ
ニ對シテ政府ハドウモ權利ノ濫用ト云フヤ
ウナ、何カ哲學的ト云フ御言葉ガゴザイマ
シタ、哲學的意味ヲ以テ攻究シタノデハナ
イ、唯〓憲法第八條ニ依リ公共ノ安全ヲ保持
スル爲ニ必要ナルガ故ニ此法案ヲ出シタ、
斯ウ云フ事ヨリ外ニ御答ノ仕樣ガナイト云
フコトデ、質問者ノ得ントスル答ヲ矢張得
ラレナカッタヤウナ感ジヲ委員長ハ致シマ
シタ、其次ニ此法律案ノ內容ニ付テ色と質
問應答ヲ重ネラレマシタ、先ヅ第一ニ、是
デハ二十一日間此非常立法ノ效力ヲ及ボサ
セテアル、此二十一日ト云フコトハ長キニ
失シハシナイカ、兎モ角モ此「モラトリユ
ーム」ト云フモノヲ實行セラレタ結果ハ、
全國ノ商工業者ニ取ッテ容易ナラザル影響
ヲ及ボスベキコトハ明瞭デアル、現ニ此度
ノ此法律ノ結果モ、或ル有力ナル人ノ說ニ
依レバ、少クトモ二十億圓ノ損害ヲ我ガ商
工業者ニ與ヘタト云フヤウナ說モアル、其
金高ハ兎モ角トシテ、兎モ角モ商工業者其
他各般ニ涉シテ容易ナラザル影響ヲ及ボシ
タト云フコトハ事實デアリ、又其及ボスベ
キモノデアルト云フコトハ、豫見シ得ベキ
コトデアル、然ラバ是ハ已ムヲ得ザルモノ
トシテモ、出來得ル限リ短期間ニ限ルコト
ハ必要デナイカ、所謂大震災ノ如キ、非常
ナ大事件ノ時デアッテモ、其期間ガ僅ニ三十
日デアッタノヂヤナイカ、此度ノヤウナ場
合ニ於テ、之ヲ二十一日間トシタト云フコト
ハ、ドウ考ヘテモ長イヤウニ思フガドウカ、
其點ニ對シマシテ、政府ノ答フル所ハ、此
議會ヲ召集スル、此處ニ議員ノ御集リヲ願
フ期間ト、又會期ヲ御承知ノ通リ、五日間
ナラ五日間ト致シマスニシテモ、其所デモ
ウ十七、八日ハ掛ル、召集令ヲ發シテ召集
日迄ノ期間ガ十二日ト云フノガ、從來ノ例
ニ依シテ一番短イ期間デアルサウデアリマ
ス其十二日ノ會期ヲ加ヘ、尙ホ又此議會
ノ承認ヲ得テ後、善後法案卽チ此日本銀行
ナリ、臺灣銀行ナリニ關スル諸法案等ノ御
協賛ヲ經テ、サウシテ之ヲ實施スルニ付テ
ハソレ〓〓ノ準備行爲ガ要ル、其準備行
爲ノ爲ニ三、四日間ヲ置イテモ、既ニ二十
一日ト云フ期限ニナル譯デアル、ドウシテ
モ是ヨリ短クシテ此法案ノ始末ヲ付ケ、又
善後處置ニ著手スルト云フコトハ出來ナイ
ガ故ニ、此二十一日ト云フ期限ガ生レタモ
ノデアルト云フ御說明デアリマス、更ニ之
ヲ全國的ニシタノハドウカ、前ノ時ニモ-
尤モ地震ハ場所モ限ラレテ居ッタ譯デアリ
マセウケレドモ、一部分ニ限ッテアル、全國
ニモ平穩ニシテ、斯ノ如キ非常立法ヲ要サ
ナイ所ガ澤山アルニモ拘ラズ、斯ノ如ク全
國ニ一般的ニ此法ヲ實施スルト云フコトハ
ドウ云フ譯カ、斯ウ云フ質問ガ出マシタ、ソ
レニ對シテ、政府ハ、法律ヲ發布スル其瞬間
ノ事情ヲ云ヘバ、御質問ノ如キ狀況ノアッタ
コトハ政府モ之ヲ認メル、併ナガラ或ル
部分ニ此法ヲ實施シテ、或ル部分ニハ其適
用ガナイト云フコトニナリマスト云フト、
其適用ノナイ部分ニ向ッテ、色ミノ金錢等
ノ需要ヲ滿サントシテ、其場所ニ又取付騒
ギヲ惹起スヤウナ虞ガアル、折角平穩ナ所
モ、一部分ニ布イタガ爲ニ却テ波瀾ヲ捲起
ス等ノ虞モアリマスルノデ、之ヲ全國ニ及
ボシタモノデアル、殊ニ又其他ノ事モゴザ
イマスルガ、此法案ハ前列申上ダマシタ通
リ、我國ニ於テ今度ハ二度目デアル、新シ
イ試ミデ-試ミトニロチヤ惡イカ知レマ
セヌガ、兎ニ角モマダ餘リ度々ナイコトデ、
アッテハ困リマスガ、兎モ角モ二度目デア
ルハソレデ此度ハ大體ハ前ノ法案ノ通リニシ
タノデ、其他ヲ除イテハ、此二十一日トカ
或ハ此場所ト云フコトニ付キマシテハ、前
ノ法案トハ違ヒマスガ、此前ノ法案ニ、總
テ形式ヲ採ッタモノデアルト云フコトハ、此
他ノ事項ニ付テノ說明ニモ必要デアリマ
スルカラ、其點ハ豫メ申上ゲテ置キマス、
ソレカラ其次ニ、ドウモ此法案ガ、如何ニ
モ商工業ノ實際ヲ顧ミナイ、洵ニ不都合ナ
箇條ガ段々アル、ソレハ例ヘテ申シマスレ
此勞銀ノ支拂、勞銀ヲ支拂フ場合ニ
ハ此法律ヲ實施シナイ、卽チ勞働者ヲ使ク
テ居ル人ハ、其勞銀ヲ矢張支拂ハナケレ
バナラヌ譯デアル、然ルニソレ等ノ準備
トシテ、此勞銀ノ支拂等ニ要スル金ハ、銀
行等デハ此法律ノ直接ノ適用ヲ受ケマセヌ
テ、サウ云フ必要ナ資金ハ支出シナケレバ
ナラヌコトニハナッテ居リマスケレドモ、實
際ノ商工業者トシテハ自分ノ入用ナ金ヲ
銀行ニ積ンデ置イテ、サウシテ仕事ニ從事
シテ居ルト云フ者ナドハ、滅多ニアルモノ
デハナイ、商業者ニ於テ云ヘバ、拵ヘタ商
品ヲ賣シテ、其代金ヲ得テ、サウシテ勞働
者ノ賃銀ヲ支拂フト云フノガ實況デアル
然ルニ此法律ノ適用カラ云フト、賣ッタ商
品ノ方ノ金ハ取レナイ、サウシテ職工勞働
者ニ拂フ賃銀ハ拂ハナケレバナラヌノデア
ル、サウ云フ實行ノ出來ナイヤウナ、實際
ノ商工業ニ適シナイヤウナ法律案ハ、不都
合デハナイカト云フヤウナ御質疑ガゴザイ
マシタ、ソレニ付キマシテ政府ハ、如何ニ
モ御尤ナル御質問デアル、純理論カラ云ヘ
バ其ノ通リト御答スルヨリ仕方ガナイ、併
ナガラ法律ヲ作リマシタ時ノ趣旨ハ、所謂
勞働者ヲ使シテ居ルヤウナ人ハ、先ツ資力ニ
於テ裕カチ者ト見ナケレバナラヌノデ、サ
ウ云フ不都合ガナイモノト云フ前提ガ一ツ
ト、今一ツハ只今申上ゲマシタヤウニ、兔
ニ角モ非常立法ノコトデモアリ、前囘ニ公
布セラレタ所ノ「モラトリユーム」ノ法案
ト、卽チ大正十二年ニ出シマシタ所ノ法案
ト、總テ同ジヤウニト云フコトニ囚ハレ
テ-成程サウ言ハレテ對照シテ見マスル
ト云フト、一宇一句殆ド變リガナイヤウナ
風ニ出來チ居リマス、其事ガ善イカ惡イカ
ハ別ト致シマシテ、サウ云フヤウナ事情ノ
下ニ是ガ出來タノデ、又所請非常立法、非
常ト云フコトヲ非常ニ廣ク御解釋ニナッテ、
非常ノ場合デアルカラ純理論ニ合ハナイコ
トモ、仕方ガナカラウト云フ意味合デ以
テ、斯ウ云フ法律案ニナッタト云フ御說明
デゴザイマシタ、ソレカラ更ニ隨分細カイ
事ノヤウデアリマスガ、重大ナ事ト思ヒマ
スルカラ此事項ダケヲ申上ゲテ置キマス
ガ、此法案ノ效力トシテ、或ハ利息付債劵
トカ、手形債劵等ノ遲延利息ノ計算ハドウ
ナルカ、遲廷利息ト云フモノハ、斯ウ云フ
場合ニ權利ガアルカナイカト云フヤウナ事
ヤ、或ハ權利保全ノ行爲ハ、此期間ノ時ニ
シナケレバナラヌカ、或ハ此法律ノ結果所
謂二十一日ノ猶豫ヲ置イテ、其延ビタ期間
內ニ於テ、保全行爲ヲシテ善イカ惡イカト
云フヤウナ事、或ハ此四月二十一日以前ニ
辨濟期限ノ到著シタモノモ、矢張此效力ヲ
受ケル、此恩典ニ與カルコトヲ得ルヤ否ヤ
ト云フヤウナ事、又此法律ニ依ル支拂延期
ト云フコトハ辨濟期日ノ變更デアルカ
或ハ抗辯權ノ設定デアルカト云フ事ニ付
テ、詳細ナ御質疑ガゴザイマシタ、是等ニ
付テ司法當局ノ見ル所ノ御答辯ガゴザイマ
シタケレドモ、是等ノ事ハ速記錄ニ就テ、御
承知ヲ願フコトニ致シマシテ、私ハ御報告
ヲ申上ゲマセヌ、ソレカラ次ニ此勅令第九
十六號、此效力ノ期限ハ僅カ數日ノ後ニ迫ク
テ居ル、此期日滿期ノ後ニ財界ノ安定ハ達
シ得ラレルモノト當局ハ認メルヤ否ヤ、若
モ達シ得ラレナカッタ時ニハドウスル積リ
デアルカト云フヤウナ御質問ガゴザイマシ
タ、ソレニ付キマシテ、政府當局ノ見ル所
ヲ以テスレバ、先以テ財界ハ安定スベキモ
ノト認メル、殊ニ此法律ノ效力ヲ失フト共
ニ代ッテ補償法案等ガ-最モ此財界ヲ救
濟スルニ至ル所ノ補償法案等ガ出ルノデア
リマスカラシテ、ソレト是トノ效力ガ相俟>
テ十分ニ財界ノ安定ノ目的ヲ達シ得ラレル
モノト認メル、併ナガラ萬々一ニモ事豫期
ニ違フヤウナコトガアレバ、ソレニ對シテ
相當處置ヲ執ルノ外ハナイ、斯ウ云フ御答
辯デゴザイマシタソレカラ最後ニーン
レカラモウ一ツ重要ナルコトデアリマスカ
ラシテ、御報告申上ゲマスガ、此日銀ノ貸
出高ト云フモノガ、傳フル所ニ依レバ數十
億圓ニモ及ンダ、非常ニ澤山ノ高デアルト
云フコトデアル、ソレヲ聽イテ世間デハ取
付騒ノ頗ル重大デアッタカノ如ク考ヘルケ
レドモ、他ノ一面カラ見レバ、實際取付ケ
ラレタ所ノ高ハ左程大キクナカッタラウ、此
事ヲ聞キタイ、サウスルト或ハ却テ財界ノ
混亂ト云フコトハ所謂疑惧ノ念ヲ持シテ
居ルモノヲ安心セシムル道デモアラウカラ
シテ、日銀ノ貸出高ヲ-又實際ニ預金ノ
支拂等ニ充當シタ所ノ金額ヲ聞キタイト云
フ御質疑ガゴザイマシタケレドモ、政府當
局ニ於テハ、此經濟社會ニ於テ神經殊ニ過
敏ニナッテ居ル時ニ、斯ル數字的ノ說明ヲス
ルコトハ面白カラヌコトヽ思フカラシテ、
是ハ差控ヘタイト云フコトデ御答辯ガゴザ
イマセヌデシタ、最後ニ此重要ナル、所謂
先刻來申上ゲマシタ如ク、見ル人ニ依ッテハ
四十億ノ損害ヲモ此數日間ニ惹起シタト云
フヤウナ、兎モ角モ重大ナル影響アル法案
デアル、又此法案ハ恐ロシキ影響、重大ナ
ル影響ヲ及ボスベキモノト思フノガ當然
デ、何ニモ影響ノナイヤウナモノデアルナ
ラバ、コンナ非常立法ヲ制定スル必要モ何
モナイ、兎モ角モ初カラ此勅令ノ發布後ニ
於テ、商工業ニ對スル容易ナラザル影響ガ
アルト云フコトハ、分リ切ッタコトデアル、
果シテ然ラバ此法案ヲ出スニ付テハ、豫
メソレニ對スル-影響ヲ受クベキ商工業
ニ對スル對策ヲ政府ハ考究シテ居リサウナ
モノダ、其對策ヲ聞キタイ、斯ウ云
フ論ガ出マシタ、尤モ其論ノ出ル前提トシ
テ、影響ガ重大デアルカ否ヤト云フコトニ
付テノ繰返シタ質問ガゴザイマシタ、ト云
フノハ先日當議場ニ於テ商工大臣ノ御答
辯ニハ非常ナ重大ナル影響ヲ及ボシタモ
ノト認メラレナイヤウナ意味ニ聽取ラレタ
御答ガアッタサウデアリマス、私ハ其際ハ
當議場ニ居リマセヌノデ、伺ヒマセヌデシ
タガ、質問者ノ聽取ル所ニ依レバ、格別ナ
ル-重大ナル影響ガナカッタカノ如ク聞
エタ御答辯ガ、商工大臣カラアッタサウデ
ス、本日ハ又商務局長ガ政府委員トシテ御
出席ニナラレマシテ御說明中ニ、餘リ影響
ノ重大ナラザル商工業ノコトニ付テノズッ
ト御話ガアッタノデアリマス、其前ノ議場ノ
御答辯ト、今日ノ商務局長ノ御話トヲ對照
シマスト云フト、如何ニモ影響ガ少ナカッ
タヤウニ聞エタ爲ニ、其點ニ付テ尙ホ念ヲ
八レテ御尋ヲシタ結果、當局責任有ル商工
大臣ハサウデハナクテ、此法案實施ノ結果
商工業其他各般ノコトニ亙ッテ、非常ナ重
大ナル影響ヲ及ボシタト云フ事實ハ認メル
ト云フコトデゴザイマシタ、ソレヲ認メマ
シタナラバ、然ラバ只今謂フ所ノ其善後策
ハ所謂豫期セラレタ結果デアッテ、斯ク有
ルベキコトデアルノニ、ソレニ對スル方策
ノ用意ガアッタカドウカト云フ御質問ニナ
リマシタ所ガ、商工大臣ノ御答ニ、兎モ角
モ此商工業者ノ困ルト云フコトハ、要スル
ニ金融ニ主トシテ關係シテ居ルノデアルカ
ラシテ、或ハ日銀、或ハ正金等ノ銀行等ニ
モ連絡ヲ取シテ、所謂商工業者ノ融通ノ上ニ
色〓御心配ニナッテ居ル點モアル、無論又他
ノ一面ニハ、御承知ノ通リ此補償法案等ガ
出テ居リマシテ、是ト相俟ヶテ商工業者等
ノ安定ヲ圖ル積リデアル、斯ウ云フ御答デ
アリマシタケレドモ、質問者ノ御趣旨ハ、
此金融關係ヤ何カハ、大藏省ニ於テ大藏當局
ノ所謂用意シタ對策デアラウ、金ヲ積ンデ
預金ノ支拂ノ要求者ニ支拂フト云フノハ
ソレハ大藏省ノ方ノ對策デアラウ、商工業
者ノ方ノ對策ハ如何、斯ウ云フヤウナ御
問デアリマシタ、ソレニ對シテハ、政府ハ
ドウモ事急ナ場合ニ此法案ヲ出サナケレバ
ナラヌコトニナッタノデアッテ、其效力結果ガ
的確ニドウナルト云フコトハドウモ分ラナ
ィ、卽チ或ハ銀行ノ動搖ヲ見、又其變化ヲ
見テ、サウシテ各、ノ變化動搖ニ對スル對
策ヲ講ズルヨリ外ハナイ、斯ウ云フヤウナ
コトデ、詰リ見方ニ依リ言方ニ依ッテハ、始
メカラ對策ト云フモノヲ心配シテ居テ、此
法案ヲ出シタト云フ風ニハ言ハレナイヤウ
ニ聽取ラレタ、ケレドモ政府ノ御考ハサウ
デナクシテ、或ハ明瞭ニ話ハ出來ヌケレド
モ、種々ナル對策ノ御持合ガアルト云フ意
味カモ知レマセヌ、此點ハ委員長ハハッキ
リ諒解ハ致シ兼ネタノデアリマス、大要右
申上ゲルヤウナ次第デアリマスガ、尙ホ其
足ラザル所ハ御質疑デモゴザイマスレバ
御答申上ゲマス、デ右様ナ質疑應答ヲ經テ
討論ニ入リマシテ、本案ハ承諾ヲ與フベキ
モノデアルト云フコトニ付キマシテハ、多
數ヲ以テ可決致シタノデアリマス、アリマス
ガ唯〓此際御報告致シテ置カナケレバナラ
ヌ重大ナル一箇條ガゴザイマス、ソレデス、
國民ニ重大ナル影響ヲ及ボスベキモノト云
フコトノ分リ切ッタコト、又現ニ當局大臣ノ
御話ニ依シテモ其豫期-洵ニ惡イ豫期
デアリマスケレドモ、其豫見シテ居ッタ所
ノ影響ヲ現ニ及ボシタト云フコトノ爭ノナ
イ重大ナル法案、斯ノ如キ法案ヲ提出スル
ニ至ッタ、一體責任ハ何處ニ在ルカト云フコ
トハ、質問應答ノ間ニ(拍手)其鋒錠ヲ現ハ
シタノデアリマス、サウシテンレニ對スル
見方ガ兩樣ニ分レテ居。タノデアリマス、
ツハ是ハ全ク其時ノ政友會、只今ノ內閣、
現內閣ガ若槻內閣ノ臺灣銀行救濟案ニ對ス
ル勅令案、其公布ニ付テ反對ヲシタト云フ
コトガ、斯ル事態ヲ惹起シタ原因デアル
(拍手)ソレハ質問デアリマシテ議論デアリ
マスカラ、私ノ意見デハゴザイマセヌケレ
ドモ、御報告トシテ必要ナルコトヽ存ジマ
ス、ドウシテモ其時ニアノ勅令案ガ通過シ
テ居レバ僅カ二億圓デ濟ンダ、然ルニ拘ラ
ズ今日ハ二億ノ上ニ更ニ五億ヲ加ヘテ七億
圓ノ負擔ヲ國民ニ負ハセナケレバナラヌヤ
ウナ重大ナル責任ヲ惹起シ、尙ホ更ニ此法
案ノ結果、先刻來御說明申上ゲタヤウニ、
人ニ依ッテハ數十億ノ損害ヲモ商工業者其
他ニ與ヘタト云フ事態ハ全ク責任其所ニ
在リト云フヤウナ意味ヲ以テ、色こノ質疑
モアリ、御議論ノアッタ方モアリマス、又ソ
レト反對ニ、本日ハ丁度近藤君カラ初メテ
出タノデアリマスルガ、簡單デアリマシタ
カラ詳シク御說明申上ゲル譯ニ行キマセヌ
ガ、近藤君ノ御見方ニ依レバ、此法案ヲ出
スニ至ッタノハ前內閣ノ責任デアル、斯ウ云
フ御話デアリマシタ、併シ其內閣ノ責任デ
アルト云フ理由ノ說明ガナカッタノデア
リマスルカラ、委員長ハ之ヲ御報告申上ゲ
ル譯ニ行キマセヌ、之ヲ以テ御報告ト致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=9
-
010・森田茂
○議長(森田茂君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス通告願ニ依シテ發言ヲ許シマス、工藤
鐵男君
〔工藤鐵男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=10
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011・工藤鐵男
○工藤鐵男君 本案ハ我ガ憲法上極メテ重
大ナル意義ノ伏在シテ居ル重要法案デアリ
マスルカラ、私ハ本案ニ對シ賛成ノ意ヲ表
シマスルガ、其理由ヲ明ニシテ贊成ヲ表シ
タイ一人デアリマス、御承知ノ通リ、本案
ハ政府ガ責任ヲ以テ、非常立法行爲ヲ行ヒ
マシタル其責任ノ解除ヲ求ムル所ノ案デア
リマス、既ニ責任ノ解除ヲ求ムルト致シマシ
タナラバ、如何ナル責任ヲ現内閣ガ有シテ
居ルカト云フコトヲ究ムルノモ、本案ニ對
シ賛否ヲ決スル重要ナル分岐點ナリト信ジ
テ居ルノデアリマス、故ニ本案ニ賛成ヲ致
シ、或ハ反對致シマスルニ付キマシテモ、
其原因ガ明ニナラザレバ、容易ニ最後ノ斷
案ヲ下シ能ハザルコトハ明瞭デアリマス、
私ハ本案ニハ賛成致シマスルガ、本案ヲ提
出スルニ至ッタ其原因ハ、少クトモ政友會
内閣及樞密院其責任アリト言ハザルヲ得ナ
イノデアリマス(拍手)其原因ハ既ニ政友會
モ負ハナケレバナラヌ所ノ數々ハ、本日マ
デ本議場若クハ委員會、竝ニ院外ニ於テ現
レタル所ノ幾多ノ現象ニ依シテ、明々白々
火ヲ睹ルヨリモ明カデアリマス、又本院ノ
意思ト致シマシテハ、昨日大多數ヲ以テ通
過致シマシタル、樞密院ニ對シ不當ナリト
スル決議其モノニ依シテモ、旣ニ明白デアッ
テ現ニ政友會及樞密院ハ財界攪亂ノ元兇デ
アルト云フコトヲ立證シテ居ルノデアリマ
ス、吾々ノ尊敬致シテ居リマスル阪谷男爵
ノ調査致シマシタル所ニ依リマスレバ、前
内閣ハ樞密院ニ對シテ、二億圓ノ補償救濟
金ヲ以テ、財界ノ混亂ヲバ未然ニ防ガント
シタ其案ガ、種々ナル原因ニ依ッテ遂ニ不
成立ニ終シタル其結果ハ、直接間接ニ國民
ニ對シ二十億ノ負擔ヲ强ヒナケレバナラヌ
ト云フコトヲ明ニ聲明シテ居ルノデアリマ
ス、諸君、此「モラトリユーム」ヲ布クニ
至ッタ責任ハ、少クトモ政友會卽チ現內閣
ガ負フベキモノデアルト致シマシタナラ
バ二十億ノ損害、最小限度ニ於テ二十億
ノ損害ヲ國民ニ强ヒ、更ニ七億圓ノ補償救
濟金ヲ出サナケレバナラヌト云フ此大責任
ハ、正ニ政友會諸君ノ雙肩ニ懸レルモノト
覺悟シナケレバナラヌノデアル(拍手)凡ソ
財界ニ於キマスル所ノ斯ノ如キ混亂ヲ防グ
ニ付キマシテハ、種々ナル對策ガアルデア
リマセウ、若シ未ダ大事ニ至ラズシテ消止
ムルコトガ出來マシタナラバ、一杯ノ「コッ
プ」ノ水ヲ以テ尙ホ火災ヲ豫防スルコトガ
出來ルノデアリマス、一杯ノ「コップ」ノ水
ヲ以テ豫防スル手段ガアルニ拘ラズ、遂ニ
蒸氣喞筒ニ非ザレバ火ヲ消サシメルモノデ
ナイト云フ態度ヲ以テ大事ニ至ラシメタル
モノハ、抑〓政政會其責メアリト謂ハナケ
レバナラヌノデアリマス、此「モラトリユ
ーム」ヲ布カナケレバナラヌコト、卽チ非
常立法手段ニ依シテ、此財界ノ救濟ヲシナケ
レバナラヌト云フ此案其モノハ實ニ私共
ト致シマシテハ、大ナル暴案ナリト信ジテ
居ル一人デアリマスガ、遺憾ナガラ事後承
諾ヲ與ヘネバナラヌコトヲ悲ムノデアリマ
ス、其理由ハ本案ヲ假ニ吾々ノ權能ニ依シテ
否決致シマシテモ、本案ノ效力ハ僅ニ二日
間ニ過ギナイノデアリマス、之ニ對シテ贊
成致シマシテモ、反對致シマシテモ、實際
上ノ問題ニ付テハ、大シタル影響ガナイノ
デアリマス、既ニ影響ナシト致シマシタナ
ラバ、多少政府ニ敬意ヲ表シテ徒ニ混雜ヲ
來スヨリカ、淚ヲ呑ンデ此案ニ贊成スルノ
已ムナキニ至ルノデアリマス、吾々ガ一ツ
ノ法案ニ對シテ、案ノ發生シ來ル所ノ原
因ニ對シ、責任ノ究ムベキモノアリトシ
タナラバ、之ヲ究メテ贊否ヲ決スルコトガ
至當ナリト認メタ場合ニ於キマシテハ、吾
吾ハ假令本案ニ賛成致シマシテモ、其理由
ハ自ラ反對ノ地位ニ立ッテ居ル所ノ政友會
トハ違フノデアリマス、政友會ノ代表者ト
モ見ルベキ所ノ中橋君ハ何ト言ヒマシタ
カ、中橋商工大臣曰ク「モラトリアム」ノ勅
令ニ依シテ次第ニ落付イテ參リマシタガ、
此調子デ行キマスレバ、格別ナル影響モ無
クシテ濟ムデアラウト云フコトヲ、數日前
本壇上ニ於テ聲明シタノデアリマス、其影
響ノアルヤ否ヤハ固ヨリ見ル所ヲ異ニスル
カモ知レアセヌケレドモ、此壇上ニ於テ「モ
ラトリアム」ヲ影響ナシトシテ支持シテ居
ル所ノ國務大臣ガ、今日ノ委員會ニ於テハ
明ニ重大ナル影響アリト云フコトヲ告白シ
タノデアリマス、此壇上ニ於テハ「モラト
リアム」ヲ布イタ責任ヲ回避スルガ爲ニ、
何等影響ナシト空嘯イタ所ノ中橋君ハ又
二枚舌ヲ使シテ委員會ニ於テハ、明ニ、重大
影響ガアルト云フコトヲ告白シタデハナイ
カ(拍手)然ラバ此内閣ノ吾々ニ示ス所ノ幾
多ノ施設中、二枚、三枚舌ノアルコトハ
豫メ用心シテ掛ラネバナラヌノデアリマ
ス、此猶豫令ニ關スル過去ノ責任ハ、先刻モ
申上ゲタ通リ政友會ノ責任、而シテ責任ヲ
以テ此猶豫令ヲ布イタ惡影響ニ對シマシテ
ハ是亦政友會ノ責任デアルノデアリマ
ス、故ニ私ハ最モ關係深キ商工界ニ於ケル
所ノ影響如何ト云フコトヲ、委員會ノ席上
ニ於テ追窮スルコトガ、實ニ此法律案ヲ決定
スルニ重大ナル關係ヲ持ッタノデアリマス、
然ルニ初メハ影響ナシト言ヒ、後ニ影響ア
リト言フ、而シテ斯ノ如ク重要ナル非常法
律ヲバ發布スルニ當ッテ、商工界ニ及ボス所
ノ影響ヲ豫メ考慮スル所ナクシテ、之ヲ發
布セルハ大ナル責任ヲ有スル國務大臣ノ職
責ヲ解セザル者ナリト言ハザルヲ得ナイノ
デアリマス(拍手)此點ニ關シ委員ノ席上中
橋大臣ニ對シ數次ノ答辯ヲ求メマシタ所、
事咄嗟ニ趣リ、是ガ對策ヲ遂ニ發見セズシ
テ今日ニ至ッタト白狀シタノデアル、苟モ
政黨內閣ヲ造リ、政策ニ付テ常ニ調査シ準
備スル所ガアリ、而モ其政策ハ必ズ責任ノ
地位ヲ得テ實行スルダケノ用意アルヲ政黨
內閣ノ特質トスルナラバ、「モラトリアム」
ニ依シテ受クル所ノ我ガ產業界ノ影響ニ付
キ、豫メ假定シ想像シ、アリ得ベキ事ヲ推
定シ以テ萬々遺算ナキ對策ヲ立ツルノハ、
立憲政治ニ於ケル政黨及其內閣ノ當然ナル
用意デアルノミナラズ、立憲大官ノ責任デ
アル(拍手)然ルニ何事ゾ「モラトリアム」ヲ
施行シタガ、其影響ニ付テハ咄嗟ノ間ヲ以
テ見當ハ付カヌカラ、其成行ヲ見テ考フル
ト云フコトハ何タル無責任何タル無定見
デアリマセウカ、(拍手)是ニ於テ中橋大臣
ニ對シ質問ヲ致シタノデアリマス、此咄嗟
ニ超ッタ「モラトリアム」ノ影響ハ、如何ニ
轉換スルカハ分ラヌト云フコトハ、吾々ト
シテハ承服ハナラヌ、何故トナレバ「モラ
トリアム」ノ實施セル諸外國ノ實例ヲ、餘
リ遠イ所ニ求ムル必要モナク、近ク大正十
二年ノ震災ニ於テ猶豫令ヲ施行シタル其成
績ハ、政治家若ハ政黨ハ之ニ對シテ相當ナ
ル體驗ヲ經テ戾ル筈デアリマス、既ニ然リ
ト致シマシタナラバ、「モラトリアム」ヲ布
イテ、其影響ガドウ來ルカ分ラヌ、或ハ來
夕後ニ之ヲ考フルナドヽ云フ無責任ナル言
論ハ政友會ノ如キ大政黨ノ有力者大臣ト
シテハ氣ノ毒千萬ナル人デアッテ、現內閣
總理大臣ニ相當セル所ノ商工大臣デアリマ
ス(拍手)此影響極メテ大キイノデアリマ
ス例ヘバ生產ヲ振興セシムルニ付キマシ
テモ、原料ハ必要デアリマセウ、原料ノ買
入ニハ資本ガ必要デアルノデアリマス、又
大工業ヲ維持シテ行ク上ニ於テモ、給料若
クハ俸給ニ對スル例外規定ガアリマスケレ
ドモ、多クノ銀行ニ對シテ其資本ヲ貯藏シ
若クハ融通シナケレバナラヌト云フ時ニ、
此資本ノ源泉ヲ杜絕シテ以テ、商工業、產
業ニ影響ナシトハ實ニ御目出度イ話デアル
ト私ハ信ズルノデアル(拍手)果セル哉東京
市ニ於キマシテモ、或ル米穀問屋ハ、其生
產地ニ向ッテ米ノ廻送ヲ求メタ時ニ、爲替
ハ組メヌカラ米ガ送ラレヌト云フ返辭ハ、
頻々トシテ私共ノ耳ニ入ルノデアリマス、
一ツノ米屋デスラ斯ノ如シ、況ヤ其原料ヲ
消化シテ以テ工業ヲ盛ナラシムルト云フ此
大分ナル時ニ當ッテ、而モ政友會ハ產業立
國ヲ旗印トシ、犬養毅君ノ看板ヲ貰テ、
田中大將日本全國其看板ヲ昇ギ廻"テ居ル
所ノ產業立國ノ旗ハ將來ニ亙リ二十億ノ負
擔ト七億ノ補償ニ依シテ泥土ヲ塗ラレ、政
友會ハ產業ノ基礎ヲ破壞シ、商工業ヲ萎微
セシメ、仍テ以テ產業立國論ハ今正ニ一大
破產ヲ爲シツヽアルト云フコトヲ證據立テ
ルモノデアル(拍手)產業振興ヲ强調シ、產
業立國ヲ看板ニシナガラ、吾國產業ノ根柢
ヲ破壞シ、之ヲ脅威スルガ如キ產業立國策ハ
田中內閣ニ於テ始メテ實施セラレルノデア
リマス(拍手)、是故ニ私ハ此點ヨリ種々ナ
ル考慮ヲ致シマシタル結果、中橋君ノ矛盾
ヲ正シ與黨デハアリマセヌケレドモ、聊カ
進言シタイノデアリマス、卽チ此「モラト
リユーム」ノ結果日本全國ニ及ボシタル影
響ハ、國家トシテハ如何樣ニシテモ之ヲ救
濟セナケレバナラヌ、之ヲ救濟スルニ付テ
ハ何等カノ案ガアルカドウカト聞イタ所
ガ、マダ何ニモ持合ハセガ無イト云フノデ
アル、此惡影響ヲ除去シ、而シテ是ガ對策
ヲ速ニ確立スルノガ當然デアルノニ、「モラ
トリユーム」ノ期間ハ僅カ數日ヲ殘ス今日
ニ、尙ホ此大損害ヲ匡救スベキ法案ノ無イ
ト云フコトハ、何タル無能無經綸ノ大臣デ
アリマス、既ニ影響ナシト致シマシタナラ
バ格別、委員會ニ於テハ兜ヲ脫イデ影響ア
ルト云フコトヲ言ッタ以上ハ、自ラ蒔イタ
種ハ彼レ自身ニ依シテ苅ラナケレバナリマ
セン、商工大臣速ニ是ガ對策ヲ示スベシト
言ウタノハ吾々トシテ當然ノコトデアルノ
デアリマス(「ソンナコトヲ言フノハ憲政會
ノ恥辱ダゾ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)洵
ニ斯樣ナコトヲ申上ゲマスレバ、政友會ノ
一大恥辱ニナルノデアリマス、故ニ彼等ハ
狼狽シクサッテザワ〓〓シテ唯、徒ニ罵詈讒
謗スルノミデアリマス、果シテ彼等何等ノ
正論ガアリマスカ、何等彼ニ國民ノ前ニ直
面シテ此所信ヲ披瀝スルノ勇氣ガアリマス
カ吾々ハ左樣ナ者デバナイ、敵トナリ味
方トナッテモ、此法案ニ依シテ受ケタ所ノ影
響ハ、國民ト共ニ匡救シナケレバナラヌト
云フコトノ見地ニ立ッテ居ルノデアッテ、公
明正大ナル吾黨ノ態度ヲ示シテ居ルノデア
リマス、政友會ハ之ニ對シテザワ〓〓スル
ナドト云フコトハ、何タル不謹愼ナコトデ
アルカ(拍手)斯ノ如ク本案ニ關シマシテ
ハ先ニハ二億圓ノ臺灣救濟案ニ反對致シ
ナガラ今ハ形ヲ變ヘテ一一億圓ノ救濟案ヲバ
本院ニ提出シ、速ニ協賛シテ吳レト言ッテ、
哀訴嘆願シテ居ルノハ政友會デハアリマセ
ヌカ、卽チ臺灣ニ關スル金融ノ救濟案、其
主體ハ其所ニ在ルノデアリマス、斯ノ如キ
彼等ガ無貴任ナルヤ樞密院ト通謀シテ内閣
ヲ破壞シ、破壞シタ後ハ預ケタ金ハ取ル
十、資本ノ融通ハスルナ、生產ノ資本ハ其
儘ニシテ置ケ、斯ノ如キ政治ヲ行フナラ
バ、工藤鐵男一人デ此時局ヲ收拾シ得ルノ
デアリマス(拍手)是ガ卽チ立憲政治國ノ大
臣、大政黨ノ大臣、立憲ノ常道ニ則シタ內
閣斯ノ如キコトヲ竝立テヽ來マシテ、私
ハ昭和ノ新政ニ當ッテ斯ノ如キ總理大臣、
斯ノ如キ大臣、而シテ彼ガ如キ政友會ニ
依シテ支配セラレル現政局コソ、益、混亂ヲ
馴致シ國民コソ實ニ迷感千萬ナリト信ゼザ
ルヲ得ナイノデアリマス(拍手、發言スル
者多シ)最早結論モ近ヅイタカラ御靜ニナ
サイ、諸君ハ必ヤ私ノ結論ニ共鳴スルデア
リマセウ、卽チ本案提出ニ至ッタル動機ハ、
政友會ノ政權ヲ取ルニ急ニシテ、此爾後ノ
影響ヲ救フノ案モナク、何等經綸モナク、
内閣ヲ取ッテ以テ一時ニ金融界ニ向シテ箝口
令ヲ布キ、手ヲ縛リ足ヲ縛ッテ國民ヲ恰モ
罪人扱ヒニシテ、政權ヲ恣ニスル所ノ一ツ
ノ暴案デアルノデアル、シテ見マスレバ此
案ヲ出シタ責任モ重大デアリ、此案ヲ出サ
ナケレバナラナイニ至ッタ政友會ノ責任モ
極メテ大ナルモノガアルノデアリマスル
カラ、私ハ玆ニ斷言ス、政友會ハ樞密院ト
策動シ內閣倒潰ヲナセル結果、本案ヲ以テ
僅ニ一時ヲ糊塗スルニ過ギナイト云フコト
ヲ、玆ニ結論トシテ申上ゲルノデアリマ
ス(拍手)終ニ臨ンデ私ハ一言申上ゲマス、
田中新總裁ノ政策竝ニ其態度ニ對シマシテ
ハ田中內閣卽チ政友會內閣ヲバ國民ハ
斷ジテ信ジテ居リマセヌガ、唯、僅ニ憲政
常道ノ「レール」ニ乘ッタト云フダケニ過ギ
ナイノデアリマス、其「レール」ニ乘ッタ後ニ
ハ大命ヲ拜シテ後三十九度ノ熱ヲ起シ
テ、其職務ヲ執ル能ハズ、其後開院式ニ於
テハ玉座ノ禮拜ヲ忘レ、本會ヲ開イテハ施
政方針ノ演說ヲ爲サズ、一度本壇及委員會
ニ於テハ國務大臣ノ答辯支離滅裂、何等統
一ナク、委員會ノ席上ニハ臨時卽席ノ閣議
ヲ開カナケレバ、答辯ノ出來ナイヤウナ狀
態ハ、憲政常道ノ內閣、果シテ何ノ顏色ガ
アルノデアリマスカ、私ハ個人トシテハ尊
敬スル先輩ノ大臣モアリマスガ、如何ニモ
不統一、如何ニモ憲政非常道デアルト云フ
コトヲ感ジマシテ、本案ニハ賛成致シマス
ルガ、極メテ不滿ナル感情ヲ披瀝シ、此理
由ヲ申上ゲテ、已ムヲ得ズ贊成ハ致シマス
ルガ、其理由ヲ明ニシタ次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=11
-
012・森田茂
○議長(森田茂君) 井上孝哉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=12
-
013・井上孝哉
○井上孝哉君 簡單デアリマスカラ、此席
デ御許ヲ願ヒマス(『登壇々々」ト呼ヒ其他
發言スル者多シ)財界ノ恐慌ニ直面シテ組
織セラレマシタ現内閣ガ、焦眉ノ急ニ處ス
ル爲ニ「モラトリユーム」緊急勅令ヲ發布致
サレマシタコトハ、最モ適當ナル、最善ヲ
盡シタルモノト信ジマシテ、玆ニ本案ニ承
諾ヲ與ヘ賛意ヲ表シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=13
-
014・井本常作
○井本常作君 本案ニ對スル討論ハ此程度
ニ於テ終了セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成賛成」ノ聲起ル」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=14
-
015・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=15
-
016・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ討論ハ終局致シマシタ、是ヨリ採
決致シマス、本案ノ委員長報告ハ承諾デア
リマス、此委員長報告ニ賛成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=16
-
017・森田茂
○議長(森田茂君) 起立多數-仍テ本案
ハ承諾ヲ與ヘルコトニ決シマシタ、此際暫
時体憩致シマス
午後零時五十六分体憩
午後三時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=17
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018・森田茂
○議長(森田茂君) 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス、議事ノ進行ニ關シテ武藤山治君
ヨリ發言ノ通告ガアリマス、此際之ヲ許可
致シマス、武藤山治君
〔武藤山治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=18
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019・武藤山治
○武藤山治君 議事進行ニ付キマシテ議長
ニ伺ヒタイ事ガアルノデアリマス、ソレハ
私共ノ提出致シテ居リマスル臺灣銀行不始
末調査査問會設置ニ關スル決議案、及休業銀
行ノ整理救濟ニ關スル決議案ニ付キマシ
テ、吾々ノ希望スル所ハ、此兩決議案ハ今
囘ノ財界ノ動搖ニ最モ關係ノ有ルモノデア
リマスガ故ニ、政府提出ノ二法案ガ本議場
ニ於テ論議サレ、其決議ヲ見マシタ場合ニ
於キマシテ、直ニ引續キ之ヲ上程セラレ、
論議ヲセラレンコトヲ偏ニ願フ者デアリマ
ス、然ルニ私ノ漏レ承ル所ニ依リマスル
ト云フト、政府提出ノ二法案ガ可決セラレ
タ後ニハ、直ニ休憩ヲ宣セラレテ、吾々ノ
提出シテ居ル所ノ、此財界ノ動搖ニ最モ關
係ノ有ル所ノ此二法案ガ、或ハ場合ニ依ヶテ
ハ定數ヲ缺クヤウナコトニナッテ、此臨時議
會ニ於テ議セラレナイヤウナ結果ニ終リハ
セヌカト云フコトノ疑念ヲ懷クニ至ッタノ
デアリマス、故ニ議事ノ進行上、此二法案
ナルモノハ普通ノ法案ト異リ、最モ此財界
ノ動搖ニ付テ關係ノ有ルモノデアリマスル
カラ、政府ガ提出シタ所ノ二法案デアルカ
ラシテ、玆ニ之ヲ議シ、吾々ノ提出シタ所
ノ二法案デアルガ故ニ之ヲ議了シナイト云
フヤウナコトガアリマスルナラバ私ハ我
國ノ議院政治ノ爲ニ最モ悲マザルヲ得ナイ
ノデアリマス、故ニ私ハ議長ニ御伺致シマ
ス、ドウカ此私ノ希望ハ、政府提出ノ二法
案ガ議了セラレタ後ニ、直ニ引續キ休憩ヲ
宣セラレズニ、吾々ノ提出シタ所ノ此二法
案ヲ議題ニ供セラレンコトヲ御願ヲ致スノ
デアリマス、此點ニ付テ議長ハ政府提出二
法案ガ議了セラレタ後ニ、休憩ヲ宣セラレ
ルコトガナイカドウカ、此點ニ付テ私ハ御
伺シタイ考デス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=19
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020・森田茂
○議長(森田茂君) 武藤君ニ御答ヲ致シマ
ス、只今御心配ノ點ハ、議長ニ於テハマダ
武藤君ガ御心配セラレル程ニ考ヘテ居リマ
セヌ、唯、是カラ先キノ進行ニ付キマシテハ、
武藤君ノ仰シヤリマシタコトハ、承リ置ク
コトニ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=20
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021・井本常作
○井本常作君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、此際政府提出、日本銀行特
別融通及損失補償法案、及臺灣ノ金融機關
ニ對スル資金融通ニ關スル法律案ヲ一括議
題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ
進メラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=21
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022・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=22
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023・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナイト認メマ
ス、仍テ其通リ決シマス、日本銀行特別融
通及損失補償法案、臺灣ノ金融機關ニ對ス
ル資金融通ニ關スル法律案ヲ一括シテ、第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
メマス、委員長町田忠治君
〔「大藏大臣ハドウシタ」ト呼フ者アリ〕
日本銀行特別融通及損失補償法案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一日本銀行特別融通及損失補償法案(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和二年五月八日
委員長町田忠治
衆議院議長森田茂殿
日本銀行特別融通及損失補償法案中左ノ
通修正ス
(小字ハ委員會修正)
○現ニ預金ノ拂戾停止
第一條日本銀行ハ○銀行ヨリ其ノ預金
中ニ非ザル
(定期積金ヲ含ム)ノ支拂準備ニ充ツル爲
資金融通ノ請求アリタル場合ニ於テ財界
ノ安定ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキ
ハ之ニ對シ手形割引ノ方法ニ依リ大藏
大臣ノ定ムル特別融通ヲ爲スコトヲ得
現ニ預金ノ拂戾停止中ノ銀行ニシテ將來營
業繼續ノ見込アルモノニ付テハ前項ノ規定
ヲ適用ス
日本銀行ガ前二項ノ特別融通ヲ爲スニ付テ
ハ特別融通審査會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
特別融通審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
希望條項
一日本銀行特別融通及損失補償法竝臺
灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關ス
ル法律ノ運用ニ付テハ政府ハ損失補償
ヲ減少スルニ努ムルコト
二日本銀行カ特別融通ヲ爲ス場合ニ於
ケル割引歩合ハ國債以外ノ擔保貸付步
合以上タルコト
三日本銀行カ不動產ヲ見返リトシテ融
通スルニ際シテハ成ルヘク其ノ手續ヲ
簡捷ニスルコト
四信用組合中員外預金ハ其ノ制度竝機
能ニ於テ貯蓄銀行ト同一視スヘキモノ
ナルニ依リ產業組合中央金庫ヲシテ特
別融通ノ途ヲ開ク爲政府ニ於テ機宜ノ
處置ノ執ルコト
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關
スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關
スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和二年五月八日
委員長町田忠治
衆議院議長森田茂殿
希望條項
一日本銀行特別融通及損失補償法竝臺
灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關ス
ル法律ノ運用ニ付テハ政府ハ損失補償
ヲ減少スルニ努ムルコト
二日本銀行カ特別融通ヲ爲ス場合ニ於
ケル割引歩合ハ國債以外ノ擔保貸付步
合以上タルコト
三日本銀行カ不動產ヲ見返リトシテ融
通スルニ際シテハ成ルヘク其ノ手續ヲ
簡捷ニスルコト
四信用組合中員外預金ハ其ノ制度竝機
能ニ於テ貯蓄銀行ト同一視スヘキモノ
ナルニ依リ產業組合中央金庫ヲシテ特
別融通ノ途ヲ開ク爲政府ニ於テ機宜ノ
處置ヲ執ルコト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=23
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024・町田忠治
○町田忠治君 本問題ニ對シテハ大藏大臣
ノ出席ガアリマセヌガ、必要ト思ヒマスル
カラ、議長ヨリ大藏大臣ノ出席ヲ促サレン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=24
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025・森田茂
○議長(森田茂君) 大藏大臣ハ只今貴族院
ノ委員會ニ出席致シテ居ルヤウデアリマス
ルガ、直グ見エルト云フコトデアリマスカ
ラ委員長ノ報告ヲ御始メヲ願フタラ如何
カト思シテ居リマス
〔「暫ク待ノタ方ガ良イ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=25
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026・森田茂
○議長(森田茂君) 尙ホ直ニ此事ヲ通告致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=26
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027・町田忠治
○町田忠治君 折角議長ノ仰セデアリマス
ガ、大藏大臣ノ御出席ニナルマデ、差控ヘ
タ方ガ穩當カト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=27
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028・森田茂
○議長(森田茂君) 大藏大臣ハ御出席ニナ
リマシタ
〔町田忠治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=28
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029・町田忠治
○町田忠治君 日本銀行特別融通及損失補
償法案、及臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融
通ニ關スル法律案、此二案ニ對シ、委員會
ニ於キマスル經過竝ニ結果ノ大要ヲ御報告
致シマス(謹聽)特別委員會ハ一昨日午前十
時開會ヲ致シマシテ、不肖委員長ニ選マレ、
鈴木富十彌君、川崎克君、岩切重雄君、山本
芳治君、木暮武太夫君、曾田義一君、此六
名ガ理事ニ推サレマシタ、右二案ハ極メテ
目下ノ財界ニ緊要ナルノ故ヲ以テ、委員諸
君ハ一昨日午前十時ヨリ午後十時半ニ至
リ、更ニ昨日ハ又午前十時ヨリ午後九時半
ニ至ルマデ質問應答ヲ重ネ、誠意ヲ以テ財
界ノ安定ヲ圖ルガ爲ニ、是等ノ法案ガ果シ
テ完全デアルヤ否ヤト云フコトニ向クア十
分ナル審議ヲ盡シタノデアリマス、而シテ
其審議ニ對シマシテ、國務大臣ノ意見及答
辯ノ一致セザル所アルガ爲ニ、二度休憩ヲ
致シマシテ、此間ニ頗ル長時間ヲ要シタ次
第デアリマシタノハ甚ダ遺憾ト致シタ所
デアリマス、而シテ昨日ノ午後九時半ニ於
キマシテ、大體ノ質問ガ終了致シ、今日午
前ニ於キマシテ、各派ノ態度ヲ決定シ、午
後一時ヨリ討論ヲ開キマシテ、玆ニ此二法
案ニ對スル委員會ノ決定ヲ見タル次第デア
リマス、私ヨリ申ス迄モナク、此二法案ハ
勅令第九十六號支拂猶豫令ト共ニ、五十三
議會ヲ召集セラレマシタル主要目的ガ玆ニ
在リマスルガ故ニ、此二法案ニシテ完全ナ
ル成案ヲ得ナケレバ、是ガ爲ニ財界ノ安定
ハ勿論、商工社會、一般經濟社會、延イテ
思想界ニマデモ重大ナル影響ヲ及ボスベキ
コトアルヲ慮ラテ、委員諸君ガ二十數時間ノ
長キニ涉リ慎重審議セラレタト云フコト
ヲ、私ハ玆ニ再ビ繰返シテ申シマス、殊ニ
此案ニシテ一步其處置ヲ誤レバ是ガ爲ニ國
民ニ向ッテ一ツノ法案ハ一五億ノ負擔ヲ負ハ
シメ、一ツノ法案ハ二億ノ負擔ヲ負ハシ
メ、結局國民ニ向ッテ七億ト云ヘル大負擔ヲ
負ハシメル案デアリマスガ故ニ、吾々委員
ハ此法案ヲ完全ニスルト同時ニ、出來得べ
クンバ一切ノ負擔ヲ國民ニ負ハシメズシ
テ、財界ヲ如何ニスレバ安定スルカト云フ
コトニ付テ、非常ナル苦心ヲ拂ッタノデアリ
マス(拍手)或ハ此案ヲ以テ長イ十箇年ノ
間ニ-大正七八年以來財界ノ好景氣ニ乘
ジテ勃興シタル諸事業、諸金融機關ノ不謹愼
ナルガ爲ニ、今日尙ホ全國ニ禍根ヲ貽シテ
居ルモノハマダアリマス、之ヲ整理スルガ
爲ニ此法案ヲ出シタカノ如ク見ユル點モナ
イデハアリマセヌ、併ナガラ私共ノ目的
トスル所ハ、支拂猶豫令ノ期限ガ過ギマス
ルト、來ル十三日ニ於テハ、財界玆ニ全ク
安定シ、大風一過、如何ナル方面ニ於テモ、
一切ノ取付ナドノナイコトヲ希望スルノデ
アリマス、若シ左様ニ相成リマスレバ十
箇年ノ間ニ金融機關ヲ整理スルト云フ大藏
大臣ガ屢〓述べラルヽ副作用ノ爲ニ、此大
法案ヲ作ルト云フコトニ相成リマスガ故
ニ、私共ハ主トシテ目下ノ財界ヲ安定スル
ガ爲ニ此法案ヲ通過シ、而シテ此法案ヲ通
過シタガ爲ニ國民ノ安·心ヲ買シテ、一切ノ財
界ノ動搖ヲ一擧ニシテ避クルコトヲ主眼ト
シテ、審議致シタモノデアリマス(拍手)私
共ハ一昨日以來昨日ノ深更ニ至ルマデ、此案
ノ爲ニ委員會ヲ開キ、今朝九時ヨリ態度ヲ
決シ、成案ヲ作ル爲ニ實ハ寸暇モナカッタノ
デアリマス、此故ニ此際皆サンニ私ヨリ御
報告致スコトハ、首尾貫徹ハ致シテ居リマ
セヌ、切レ々々ニ御報告致スヨリ外ハナイ
ノデアリマスカラ、此點ハ諸君ニ於カレマ
シテモ、私共ノ此二日間ノ立場ヲ諒トセラ
レテ、私ノ御報告申スコトハ何等一貫シテ
居ラヌト云フコトニ對シテハ、御宥怒ヲ願
ヒタイ、唯〓諸君ガ此法案ヲ審議セラルヽ
ニ際シテ、多少御參考ニ相成ルト思ヒマス
四箇條ヲ申上ゲマス(此時發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=29
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030・森田茂
○議長(森田茂君) 御靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=30
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031・町田忠治
○町田忠治君(續) 委員會ニ於キマシテ質
問應答ノ行ハレマシタ第一ハ此案ニ依リ
日本銀行特別融通ノ法案ニ於キマシテ、五
億ヲ負擔スルト云フ計算ノ基礎ハ何レカラ
生ジタカト云フコトガ、屢、問題ト相成ッタ
ノデアリマス、大藏大臣ノ說明スル所ニ依
レバ、日本ノ預金ハ約ソ百二十億アル、之
ヲ大雜把ニ百億ト致シマシテ、其半分五十
億ガ引出サレ、之ニ依ッテ日本銀行ガ特別融
通ヲスルモノト〓算セラレ、其一割ハ場合
ニ依レバ損失ニ相成ルト云】フ〓算ノ上カ
う、五億ノ負擔ヲ國民ニ與ヘルト云フ基礎
ヲ此ニ置イタト云フ說明デアリマス、次ニ
法案ニ於キマシテ特別融通ヲ致シマス期限
ヲ一箇年ト致シテアリマス、新聞紙ノ傳フ
ル所ニ依リマスレバ、斯道ノ經驗家モ一箇
年デハ長過ギル、三箇月ガ宜シイ、或ハ半
箇年ガ宜シイナドト一云フ種ミノ議論モアリ
マシタシ、委員會ニ於キマシテモ、此期限
ニ對シ相當ナ質問應答ガアリマシタ、大
藏大臣ノ說明スル所ニ依レバ、若シ之ヲ三
月トシ、若クハ半年ト致シテ、ソレガ爲ニ
財界ガ十分ニ安定セヌ、再ビ何等カノ機會
ニ於キマシテ金融界ガ恐慌ニ襲ハレタ際
ニ、再ビ斯ル法案ヲ出スコトハ、却テ一層
金融界ノ動搖ヲ來ス虞ガアルガ故ニ、之ヲ
一箇年ト致シタト云フコトデアリマス、殊
ニ之ヲ六箇月ニ致シマスレバ、時恰モ年末
ニ際シテ、何レノ金融機關モ資金需要ノ季
節ニ入ル、此際ニ此問題ト重ナッテ、日本銀
行ニ大キナル需要ヲ來スコトガアッテハ世
間ノ誤リヲ來スガ故ニ、之ヲ一箇年ニシタ
ト云フ大藏大臣ノ說明デアリマス、次ニ貸
付ノ利息ヲシテ國債同樣、極メテ低利ナ步
合ニシタト云フコトニ對シテモ、相當論議
ヲ盡サレタノデアリマス、委員ノ方々ノ質
問ハ、銀行ガ取付ヲ受ケテ、ソレガ爲ニ銀
行ノ營業ヲ維持スルノ爲ニ特別ノ融通ヲ求
ムルナラバ左樣ナ國債同様ノ低利ナ資金
デナクテモ宜イヂヤナイカト云フ質問ガ相
應アリマシタガ、之ニ對シテ大藏大臣ノ說
明ハ、恐慌ヲ來シテ銀行ニ取付ガアルガ故
ニ、此金利ヲ安クスルト云フコトニ對シテ
ハ、何等ノ御說明ハナカッタノデアリマス、
日本千數百ノ銀行中、其基礎ノ鞏固ナラザ
ルモノハ少クナイ、此機會此法案ヲ提出ス
ル必要ニ迫ラレタト同時ニ、其副產物トシ
テ-大藏大臣ノ言葉ハ副產物ト云フ言葉
デアリマス、副產物トシテ之ヲ利用シテ
全國ニアル基礎鞏固ナラザル銀行ヲ救濟整
理致シタイ、ソレガ爲ニハ高イ金利デハ整
理ガ覺束ナイガ故ニ、此利息ヲ公債同樣ニ
安クシタト云フノガ、大藏大臣ノ說明デア
リマス、委員諸君ノ中カラ、若シ斯樣ナ安
イ利息ヲ以テ、特別融通ヲ致シタナラバ、
是ガ爲ニ種ミナル弊害ガ生ズルト云フコト
ニ對シテ、種〓ナル質問ガ力說サレ、遂ニ
十年ノ間此貸付ガ還クテ來ナケレバ、ソレガ
爲ニ勢ヒ通貨ノ膨脹ヲ來シ、是ガ爲ニ物償
ノ騰貴ヲ來シ、是ガ爲ニ貿易ノ逆調ヲ來シ、
是ガ爲ニ中間景氣ヲ生ジ、經濟社會ヲシテ
再ビ變態ニ陷ラシムル虞ガアルト云フコト
ニ付キマシテハ、力說セラレタノデアリマ
ス、大藏大臣ハ之ニ對シテ明快ナル御答辯
ハナカッタノデアリマス、多分何等カノ方法
デ此金ハ囘收サレルダラウト云フダケノ御
話デ、其際如何ナル對策ヲ以テ金融市場、
經濟市場ヲ調節スルカト云フ的確ナル政策
ヲ御而シ下サラナカッタノハ、委員長ハ勿
論、委員諸君ガ頗ル遺憾トサレテ居ッタヤウ
ニ見受ケマス(拍手)唯〓其際大藏大臣ノ言
明サレタコトハ申上ゲテ宜シイ、大藏大臣
ハ屢、新聞ニハ通貨數量說ヲ排シテ、通貨ト
物貨ハ何等關係無シト常ニ唱ヘラレテ居ラ
レル人ノ如ク、世間ニ傳シテ居ルガ、大藏大臣
ハ昨日ノ委員會ニ於テ此對策ヲ質問サレタ
際ニ、其對策ニ對シテハ答ヘヌト云フ言明
ノ下ニ、唯一言附加ヘテ置キタイコトハ、
大藏大臣ハ會テ物貨ト通貨トハ關係無シト
云フ意見ヲ出シタコトハ曾テ無イト云フコ
トヲ言明サレタコトハ、此席デ御報告シテ
然ルベシト私ハ思ヒマス(拍手)次ニ頗ル大
キナ問題ハ、休業銀行ヲ何故ニ此特別融通
法ニ依シテ救濟シナイカト云フ質問ハ、多數
ノ諸君カラ出タノデアリマス、新聞紙ニモ
アリ、多數ノ預金者カラモ屢、此問題ハ熱
烈ニ要求サレ、一歩誤ルト社會問題トハ申
シマセヌガ、社會秩序ノ上ニモ多少考慮
シ、思想問題ニモ考慮ヲセナケレバ重大ナ
ル問題ト、委員諸君ニ於テモ考ヘラレマシ
タト見エマシテ、此問題ニ對シテ、屢〓質
問應答ヲ重ネラレマシタ、然ルニ大藏大臣
ハ既ニ休業シテ居ル銀行ハ、此特別融通法
ニ依ッテ如何トモスルコトガ出來ナイ、ソレ
ニ對シテ委員諸君ノ中カラ、二十二日以後
ニ於キマシテ、日本銀行ガ英斷ニ依ッテ相
當思切ッタ貸出ヲシテ、或ル銀行ニ向ッテ融
通シタト同樣ノ考ヲ以テ、十七八日頃カラ
斯樣ナ態度デアッタナラバ、今日休業シテ居
ル銀行ハ休業セズニ濟ンダノデハナカッタ
カ、甚ダ遺憾デアル、殊ニ今後ノ銀行ハ擔
保其他ニ對シテ餘程緩ヤカナ待遇ヲ受ケル
ニ拘ラズ、既エ休業シテ居ル銀行ハ、日本
銀行ノ條規ニ依シテ定メラレタル嚴格ナル
貸付ヲ受ケテ体業シタノデアル、若シ此寬
大ナル法律ニ依シテ、既ニ休業サレタ銀行
ニモ同樣ノ態度ヲ以テ臨マレルナラバ、其
銀行ハ再ビ恢復スルコトノ餘地ノアル銀行
ハ少クナイト見エル、然ルニ嚴格ナル規定
ノ下ニ僅カバカリノ融通ヲ受ケテ居ッテ休
業シタ銀行ハ之ヲ如何トモスベカラズト
シテ、之ヲ顧ミザルガ如キハ、單リ金融機
關ノ機能ヲ全ウスルコトニ妨ゲアルノミナ
ラズ、數十万預金者ノ爲ニ如何デアルカト
云フ頗ル熱烈ナル質問ガアリマシタ(拍手)大
藏大臣ハ此法案ノ性質ハ左樣デナイ、唯
今休業シテ居ル銀行ガ重役其他自ラ進ンデ
整理ニ努力シテ、ソレガ爲ニ之ヲ復活シ得
ラレル略〓見込ガ付ケバ、政府當局者モ之
ニ援助スルト-此際一言申上ゲテ置キ
マス、當局者ノ援助ト云フ言葉ハ私ガ申シ
タ言葉デアッテ、大藏大臣ノ一言ガ或ハ銀行
ヲ興シ、或ハ銀行ヲ倒ス威力ガアルコトハ
申ス迄モゴザイマセヌガ、當時大藏大臣ノ
使ハレタ言葉ヲ申スト、左樣ナ各重役其他
彼レ自ラ開業ヲ圖ルト云フ銀行ニ對シテ見
込ガアルナラバ政府ハ之ニ力添ヲスルト
云フ言葉ヲ使ハレタノデアリマス、(ノー
ノー)其力添ヲスルト云フコトニ對スル意
味ガ、私ハ此處デ如何樣ナ意味デアッタカ
ハ解釋スル限リデハアリマセヌガ、大藏大
臣ノ御言葉ハ力添ヲスルト云フ御言葉デア
リマシタ、唯其際ニ何故ニ多クノ銀行ガ休
業シタカト云フコトニ對シテハ、種々ナル
原因モアラウガ、遺憾ナガラ重役ガ自分ノ
關係シテ居ル會社ニ向ッテ、銀行ノ資金ヲ多
ク投資シタガ如キハ、此休業ヲ來シタ主ナル
原因ノ一ツデアルト、斯樣ニ申サレテ居ル
コトヲ申添ヘテ、大藏大臣ノ意思ノ在ル所
ヲ御紹介シテ置キマス、次ノ問題ハ信用組合
預金ノ件デアリマス、全國信用組合ハ一万
三千幾ツノ多キニ上ノテ居ルト思ヒマス、此
中ニハ相互救濟ノ意味ヲ持テテルル組合同
志ノ信用組合モアリマス、諸君ガ御承知ノ
通リ、都市其他ニハ組合員以外ノ公衆ノ預
金ヲ預ノテ、一種ノ庶民銀行機關トシテ成立,
テ居ル信用組合モ少クアリマセヌ、故〓
當業者竝ニ之ニ預金致シテ居ル人ノ請求
勿論公平ニ考ヘマシテモ一種ノ貯蓄機
關ト同樣デ、少クトモ組合員以外ノ公衆ノ
預金ニ對シテハ、政府ハ其損失ニ對シテ補
償シテ、支拂ヲ致スガ當然デアラウト云フ
議論ハ澤山ゴザイマシタ、之ニ對シテ大藏
大臣竝ニ農林大臣ハ、低利資金其他ノ方法
ニ依ッテ中央金庫ヲシテ是ガ融通ノ任ニ當
ラシメル、或ハ別途ノ方法ヲ攻究スルト云
フ御答辯ガアッテ、的確ニ如何ナル別途ノ方
法デアルヤト云フコトニ付キマシテ、吾々
委員ハ其具體案ヲ聽クコトヲ得ナカッタノ
デアリマス、但シ委員諸君ノ御尋ハ、低利
資金ニ依シテ信用組合ニ向ッテ融通スルコト
ハ勿論デアルガ、組合員以外ノ公衆ノ預金
ニ對シテハ貯蓄銀行同樣、何等カ、補償ノ
方法ニ依シテ之ヲ補償スルコトノ必要ガア
ルト云フ意味ヲ以テ、屢、御質問ガアッタト云
フコトヲ御紹介シテ置キマス、次ニ商業手
形ノ件デアリマス、是モ委員諸君カラ屢、
御質問デアリマシタ、恰モ此度ノ特別融通
ハ何カ動產、若クハ平生日本銀行ガ取ッテ居
ル其他ノ株劵ヲ擔保トシ、其時價ヲ高ク見
積ッテ特別ナ融通ヲ致シテ、商業手形ニ對シ
テハ從來同樣ノ取扱ヲスルカノ如ク世間
デモ誤解シテ居リ、委員諸君ニ於テモ左様
ナ御考ノ人ガアッタト見エテ、此質問ガ出マ
シタ時ニ、大藏大臣ハ普通銀行ハ擔保貸付
ヲ致シテ居ルモノヽ、其本案ノ使命ハ商工
業ニ向ッテ、所謂商業手形ノ割引ヲスルノガ
銀行ノ本職デアル、此手形ニ對シテモ勿論
此度ノ特別融通法ハ從來ノ嚴格ナル取極ヲ
緩メテ、之ニ向ッテモ特別融通ヲスルト云フ
言明ヲ委員諸君ニ與へラレタコトデアリマ
ス、次ニハ廣ク全國ノ地方銀行ニ關係ノア
ル事ト思ヒマスルカラ、簡單ニ御紹介ヲシ
テ置キマス、地方銀行ニ於キマシテハ、大
藏大臣ノ言ハレタ如ク、普通轉々シ得ル株
劵モ少ク、不動産ノ貸付ガ多キノミナラ
ズ、資力アル人ガ一時ノ便宜ノ爲ニ、所謂
融通手形ニ依シテ地方ノ金融ヲ圖リ、地方銀
行ガ擔保附手形ニアラズ、不動產ノ貸付ニ
アラザル信用ニ依シテ生ズル所ノ手形ヲ以
テ營業シテ居ル者モ尠クナイ、之ニ對シテ
ハ政府ハ如何ナル態度ヲ此法案ニ依シテ執
ルカト云フ質問ニ對シマシテハ、政府ハ大
藏大臣ノ言葉デ言フト、斯ル「アコモデー
シヨンビル」ハ歐米各國ニハ尠カラナイガ、
之ニ對シテハ政府ハ日本銀行ヲシテ相當ノ
考慮ヲサセテ、之ニ向ッテモ特別ナル融通ヲ
セシムル事デアルト云フ答辯ヲ致シマシ
テ、此質問者ヲ滿足セシメタコトヽ私ハ見
受ケマス、特別融通ニ對スル方法ハ如何ニ
スルカト云フ其遣方一ツニ依シテ、此法案ガ
活キ、其特別融通ノ方法宜シキヲ得ザレバ
國民ニ向ッテ五億及二億ノ負擔ヲ負ハセナ
ガラ、財界ノ安定ヲ圖ル目的ハ達セヌ、其
目的ヲ達スルコトハ此融通ノ方法如何ニ依
ル其具體案ヲ示セト云フコトガ一ツノ問
題及損失補塡ノ基準ヲ如何ニスルカト云
フコトノ問ニ對シテ、大藏大臣ハマダ未定
稿デアルガ、大藏省ニハ斯樣ナ意味ヲ以
テ起案中デアル、而シテ是ハ大藏省ノ達ト
シテ公ニスル積リデアルト云フ問題ニ對シ
マシテハ、是ハ重大ナ問題デアリマシテ、
一種ノ法律デ定メベキモノヲバ委任命令
ニ依シテ取定メルモノト委員ハ認ムルガ故
ニ、大藏省ノ達トセズ、之ヲ命令ニスルガ
宜イ、勅令若クハ省令、委員諸君ノ中カ
ラハ其區別ハナカッタガ、何レニシテモ
命令ニ依シテ之ヲ定メルガ當然デアルト云
フ意見ニ對シマシテ、政府當局ノ間ニハ意
見ノ一致セナイ趣ニ議場ニ現レマシタガ、
(ノー〓〓)大藏大臣ハ遂ニ之ヲ命令ニ由ル
ト云フコトニ同意セラレタノデアリマス、
次ニヤカマシイ「コール」ノ問題デアリマ
ス、大藏大臣ハ「コール」ハ預金ニアラズト
云フ原則ヲ採ラレテ居リマス、併ナガラ吾
吾委員ノ中ニハ、此「コール」ハ單リ臺灣銀
行ニ於テノミナラズ、全國百十幾ツノ銀行
ガ、東京大阪ヲ中心トシ、或ハ手形ニ依
リ、或ハ其他ノ方法ニ策ッテ、其銀行ハ現
金ニ亞グ所ノ第二防禦-第二準備トシテ
此「コール」ニ重キヲ置イテ。居ルガ故ニ、
切此「コール」ヲ特別融通カラ除クコトハ、
財界ヲ安定スル所以デナイト云フコトノ質
問ガ相當出マシテ、大藏大臣ハ斯樣ナ「コ
ール」デモ、其銀行が地方銀行-「コー
ル」ヲ放出シテ居ル銀行ガ必要ト見ル場合
ニハ、其銀行ガ取シテ居ル手形其他ノ債劵
ノ模樣ニ依ッテ、之ニ相當ノ融通ヲスルコ
トハ勿論デアルト、斯様ニ答ヘラレテ居ル
ノデアリマス、次ハ是ハ私ヨリ申上ゲズト
モ、速記錄ヲ御覽下サレバ只今私ガ申上ゲ
タコトノ多クハ、私ヨリモ速記錄ノ方ガ宜
シイト思ヒマスケレドモ、速記錄ハマダ出
來テ居リマセヌ、而シテ只今アナタ方ハ此
處デ決議サルヽト云フ、斯ウ云フ場合デア
リマスルカラ、私トシテモ甚ダ斯樣ナコト
ヲ長ク申上ゲルコトヲ本意ト致シマセヌケ
レドモ、更ニモウ少シ内容ヲ申上ゲルノガ
諸君ノ公平ナル決議ヲナサル爲ニハ、必要
カト存ズルノデアリマス(拍手)擔保株式ノ
種類ヲ如何ニスルカト云フ問題ニ對シテ、
大藏大臣ハ、從來ノ日本銀行ガ取ッテ居ル
株式ハ多ク市場ニ掛ッテ居ルモノヽ中カラ、
或ル一部分ヲ取ッテ、日本銀行之ヲ擔保ト
シテ融通ヲシテ居ルガ、今後ハ此擔保ノ範
圍ヲ擴メルノミナラズ、地方株劵ノ如キハ
中央市場ニ於テ現レテ居ラヌ、併ナガラ其
地方ニ於テハ確實トシテ、地方人ノ間ニ信
用ノ多イ株式モ少クナイ、斯樣ナモノハ周
到ニ調ベテ、東京デ分ラズトモ、其地方ニ
於テ確實ナリト認メテ居ル株式ハ、必ズ之
ヲ特別融通ノ中ニ入レテ、出來ルダケハ金
融ノ圓滑ヲ圖リ、由ッテ生ズル所ノ財界ノ
安定ヲ圖ルコトニ全力ヲ盡ス、斯樣ナ誠意
アル御答辯デアリマシタ、玆ニ私ハ最モ大
事ニシテ、且ツ論議セラレマシタ憲法論ヲ
御紹介スルノハ此際ト思ヒマスルガ、事柄
ガ臺灣銀行ニ對スル法案ト關聯致シテ居リ
マスルガ故ニ、私ハ先ヅ玆ニ臺灣銀行ニ關
スル-臺灣金融機關ニ關スル法案ノ大體
ヲ御紹介シテ、最後ニ憲法問題ヲ申上ゲル
、カ、雙方ニ關聯シテ居リマスルガ故ニ、
其方ガ順序ガ宜カラウト斯樣ニ考ヘマスカ
ラ、暫時御〓聽ヲ願ヒマス、臺灣銀行ニ關
スル問題ハ、私共委員ハ一方ノ日本銀行特
別融通ノ問題以上ニ考慮致シタノデアリマ
ス、以上ト申シテハ私ノ言ヒ現シガ惡イカ
モ知レマセヌ、斯樣ナ意味デアリマス、
方ハ大藏大臣ノ說明ニ依ルト、場合ニ依レ
バ五十億ヲ融通シナケレバナラヌガ、或
是ガ爲ニ一割、五億ヲ損失スル虞ガアル、
斯樣ナ損失ハ生ゼヌヤウニ努メルガ、場合
ニ依シテハ斯樣ナ損失ヲ生ズル虞アルガ故
ニ、豫メ立法府ノ協賛ヲ得テ置クト云フ意
味デアッテ、大藏大臣ノ說明ニ依リマシテ
モ、法案ニ依リマシテモ、必シモ國民ニ五
億ノ負擔ヲサセル意味デナイコトハ申スマ
デモアリマセヌ、一方ノ案モ左様デアリマ
ス、唯〓何人ガ見テモ驚クベキモノハ、政
府ノ命令ニ依シテ臺灣ニ對スル特別融通ハ
二億ヲ貸出シテ二億ヲ損失スル場合ガア
ル、斯樣ナ法案デアリマス、若シ此臺灣ニ
關スル法案ノ趣意ヲ以テ-日本銀行特別
融通ノ法案ヲ此意味ヲ以テ假ニ修正スルト
假定スレバ、五十億ヲ特別融通スルガ爲
ニ、場合ニ依レバ國民ニ向ッテ五十億ヲ負
擔サセルコトガアルト云フ法案ト相成ルガ
如キ、臺灣金融機關ニ對スル補償額ト融通
額ト一致シテ居ル程ニ、臺灣金融機關ガ果
シテ微弱ニシテ、斯樣ナ不良ナ事情ニ在ル
カ否ヤト云フコトハ、委員ノ最モ其眞意ノ
在ル所、其事情ノ在ル所ヲ諒解セント努メ
タノデアリマス(拍手)大藏大臣ハ臺灣ニ對
スル法案ノ說明ニ於キマシテ、獨リ臺灣銀
行此ノ爲ノミナラズ、臺灣一般ノ金融機關
ノ機能ヲ發揮セシメテ、臺灣ノ統治ノ必要
よ、此機能ヲ發揮セシムルト同時ニ、帝國
ノ海外ニ於ケル信用ヲ維持スルガ爲ニ二億
ヲ貸出シテ二億ヲ補償スルト云フ此法案ヲ
出シタト云フ大體ノ說明デアリマス、私共
モ此理由書ヲ見テ左樣デアルト考ヘマシ
タ唯〓赤裸々ニ申シマスト、其際ニ於ケ
ル-大藏大臣ハ御承知ノ通リ率直ナ方デ
アルガ故ニ、少シ御說明ガ餘計ニ過ギタヤ
ウニ私トシテ考ヘタノハ臺灣ノ金融機關
ト云フノハ臺灣銀行ノ事カト云フコトニ對
シテ、臺灣ノ金融機關ト云フノハ臺灣銀行
以外、其他金融業ニ關係アル諸銀行ヲモ含
蓄シテ居ルト云フ位ノ御說明ヲ私共ハ希望
シマシタガ、大藏大臣ノ率直ナル臺灣ニ於
ケル本支店銀行ノ名前ヲ一々列擧サレテ、
左樣デハナカッタラウガ、恰モ其他ノ本支
店銀行ガ臺灣銀行同様ノ基礎ノ下ニ在ルカ
ノ如キ誤解ス世間ニ起シテ居リハセヌカト
私ハ心配シテ居ルノデアリマス(「ノウ〓〓」
拍手、其他發言者多シ)私ハ玆ニ、大藏大
臣ノ眞意ハ左樣デハナイ(發言スル者多シ)
大藏大臣ノ眞意ハ左樣デナイ、唯〓大藏大
臣ガ之ヲ言明サレ、大藏大臣:(發言ス
ル者多シ)一寸御聽キナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=31
-
032・森田茂
○議長(森田茂君) 御靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=32
-
033・町田忠治
○町田忠治君(續) 私ハ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=33
-
034・森田茂
○議長(森田茂君) 御靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=34
-
035・町田忠治
○町田忠治君(續) 金融界ノ安定ヲ圖ル誠
意ヲ以テ、新聞ニ現レテ居ル、其誤解ヲ解
クノデアリマス(拍手)新聞ニ現レテ居ル誤
解ヲ解クノデアリマス(「謹聽」「委員長報告
デ宜シイ」ト呼フ者アリ)委員長ノ報告デア
リマス、私ハ臺灣ニ於ケル本支店銀行ハ、
臺灣銀行以外ニ於テハ、此無擔保ニ依シテ特
別融通ヲ政府ニ求メ、是ガ爲ニ政府ニ損失ヲ
來スガ如キ銀行ハ一ツモナイト私ハ玆ニ斷
言シテ、諸君ト共ニ大藏大臣ノ言明ハ左樣
ナ意味デナク、唯、臺灣ニハ斯樣々々ノ銀
行ガアルト云フ善意ノ說明デアッタト解
釋シテ、世ノ中ニ傳ハッテアル誤解ヲ解
キタイト私ハ思フ(拍手)大藏大臣ノ說明ニ
依リマスレバ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=35
-
036・森田茂
○議長(森田茂君) 御靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=36
-
037・町田忠治
○町田忠治君(續) 大藏大臣ノ說明ニ依リ
マスレバ臺灣ニ於ケル金融機關ノ預金ガ
約ソ一億三千万圓、臺灣銀行ノ海外ニ於ケ
ル信用トシテ債務ニ屬シテ居ル臺灣銀行ノ
債務ガ約ソ五千万圓、臺灣銀行ガ紙幣發行
ノ爲ニ負ウテ居ル債務ガ殆ド六千万圓、總計
二億以上ガ臺灣ニ於ケル金融機關ヲ維持シ、
其機能ヲ發揮セシムル爲ニ必要ダト云フ、
二億ノ根柢ガ是カラ出テ居ルト云フヤウナ
御說デアリマス、而シテ此問題ニ相關聯
シマシテ起リマシタノハ、臺灣銀行ハ臺灣
ニ於ケル本店及海外支店ノアルモノハ開業
致シテ居ル、日本內地ニ於ケル臺灣銀行ノ
支店ハ休業致シテ居ル、斯ル狀態ノ銀行ハ
之ヲ開業シテ居ルト見テ宜シイカ、休業シ
テ居ルト見テ宜シイカト云フ問題ハ、實ハ
昨日ノ質問應各ノ半バヲ是ガ爲ニ費シタノ
デアリマス、斯ル問題ノ生ジテ來タノハ一
方ノ法案ノ初メニ、銀行ニ對シテ預金支拂
ノ爲ニ特別融通ヲスルト云フ銀行ノ請求ガ
アレバ致スト云フ、其銀行ハ大藏大臣ノ說
明ニ依ルト休業シテ居ル銀行カラノ請求ハ
之ニ應ゼヌ、營業中ノ銀行ニ限クテ此特別
融通ヲ致スト云フノガ大藏大臣ノ說明デア
リマス、臺灣銀行ハ前申ス通リ本店其他海
外ニ於キマスル一部ハ開業シ、內地ニ於ケ
ル支店ハ休業シテ居ル、之ヲ開業シテ居ル
銀行ト看做シテ融通スルカ、休業シテ居ル
銀行トシテ之ニ融通セザルカト云フ問題
ハ、中〓質問應答ヲ加ヘテヤカマシイ問題
デ、是ガ爲ニ昨日中ニ諸君ニ御報告スルコ
トノ出來ナカッタ一ツノ主ナル原因ト相成"
タコトヲ遺憾ト致シマス、之ニ對シテハ國
務大臣ノ答辯ハ一致シテ居ラナカッタ、大
藏大臣ノ說明ト小川國務大臣ノ說明モ一致
致シテ居リマセヌ、遺憾ナガラ是ガ爲ニ議
事ノ進行ガ捗リマセヌガ故ニ、一旦休憩致
シマシテ、閣議ノ意見ノ一致シタル所ニ
依シテ御說明ヲ得ルコトヽ致シマシテ、昨
日午後五時過ニ再ビ開キマシタノデアリマ
ス、其際ニ又此問題ニ對シテ再ビ閣員ノ間
ノ議論ト、委員ノ間ノ議論ガ不幸ニシテ一
致スルニ至ラナカッタノデアリマス、或ル
國務大臣ハ民法、商法ノ上カラ見レバ、臺
灣銀行ハ一法人格トシテハ休業シテ居ラヌ
ト云フ法律上ノ解釋ヲ主張サルヽ國務大臣
モアリ、大藏大臣ハ經濟的見地ガラ見テ、
臺灣ノ本店ハ開業シテ居ルガ故ニ、是ガ爲
ニ特別融通ハ致スガ、東京其他内地ノ支店
ハ開業シテ居ラザルガ故ニ、之ニ融通セ
又、尤モ大藏大臣ノ心中ハ此法案ガ通過ス
レバ、一兩日ノ間ニ内地ノ臺灣銀行支店モ
開業ノ順序ト相成シテ、臺灣銀行本支店ガ
玆ニ開業シテ、過日來財界動搖ノ源ヲ成シ
タ所ノ臺灣銀行ハ、完全ニ營業ガ出來ルト
云フ信念ガアッテノ御答辯ト、私ハ斯樣ニ
解釋致シテ居リマシタガ、唯、委員會ニ於
ケル法律上其他ノ質問應答ハ、委員諸君ノ
十分ナル諒解ヲ得ルコトガ出來ズシテ、議
事ノ進行玆ニ停頓致シマシタガ故ニ、再ビ
委員會ヲ暫ク休ミマシテ、閣議ニ於テ更ニ
御熟議ヲ願ッタ次第デアリマス(拍手)委員
長竝ニ委員ニ於キマシテハ、出來ルダケ昨
日中ニ此法案ノ質問ヲ終リ、審議ヲ盡シテ
本會議ニ掛ケルノ誠意ヲ以テ致シマシタ
ガ、斯樣ナ行懸リ、行違ヒカラシテ今日ニ
及ンダコトヲ、諸君ニ於テ諒トセラレンコ
トヲ希望シマス(拍手)尙ホ私ハ何カ臺灣銀
行ニ對スル內情ヲ暴露スル意味ニ御聽取ニ
ナッテハ私ハ本旨デアリマセヌ、誠意ヲ以
テー政府當局者ト吾々委員ハ、財界ノ安
定ヲ一日モ早ク圖ルト一云フコトノ誠意ヲ
持シテ居リマス、是ガ爲ニ玆ニ申上ゲマス
ルコトハ-之ヲ申上ゲマスルコトハ却テ
全國ノ財界ヲ安定スル所以ナリト考ヘマス
ルガ故ニ、極ク簡單ニ申シマスルト、臺灣
ニ關スル法案ノ二億貸出ト云フコトハ、單ニ
臺灣內地ノ全融機關ノ機能ヲ全ウスルノミ
ニ非ズ、又海外ニ於ケル日本帝國ノ信用ヲ
維持スルノミニ非ズ、臺灣銀行ガ內地ニ於
テ、私ハ其金額及其債務ノ種類ハ申シマス
テイ、新聞ニハ略。アルヤウデアルガ私ハ
避ケマス、相常ナ金額ハアルノデアリマ
ス此法案一度通過シテ之ヲ實現スル曉ニ
ハ臺灣內地ニ於ケル金融機關ノ機能ヲ全
ウスルガ爲ニ費ス資金、海外ノ信用ヲ維持
スルガ爲ニ費ス資金ヨリモ、內地ニ於ケル
臺灣銀行ノ債務ヲ決濟シ、內地ニ於ケル臺
灣銀行ノ信用ヲ維持スルガ爲ニ使用スル金
額ハ、ソレ以上大キナモノデアルト云フコ
トハ、私ハ斷言出來ルト思フノデス(拍手)
此點ニ對シテ小川委員ヨリ詳細計數ヲ擧ゲ
テ御話ニナッタニ對シテ、大藏大臣ノ卒直
ナル、理論上大體左樣デアルト云フ御答ヲ
得タガ故ニ(拍手)諸君ガ御承知ノ通リ更ニ
此問題ニ對シテ質問ヲ進メラルヽ委員諸君
ノ御希望モアリマシタニ拘ラズ、委員長ハ
財界ノ爲ニ此質問ハ此程度デ打切ルコトガ
必要デアルト思ヒマシテ、ソレ以上ノ質問
ニ對シテハ委員長之ヲ差止メタ次第デアリ
マス、更ニ憲法上ノ問題ニ向ッテ、前内閣
ガ財界ノ動亂ヲ避クルノ必要上、憲法第八
條竝ニ七十條ニ依シテ緊急勅令ヲ奏請シ、
之ニ依シテ今日生ジテ居ルガ如キ財界ノ大
動亂ヲ避クルノ誠意カラ、緊急勅令ヲ發布
スル手段ニ出デマシタガ、不幸ニシテ是ガ
敗レマシタ、之ニ對スル憲法上ノ意見ノ相
違政友會ノ總裁トシ、現內閣ノ總理大臣
トシテ之ニ對スル御答ガアリマシタ、事頗
ル重大ニシテ且ツ長クナリマスルガ故ニ、
此問題ニ對シテハ我黨カラ出マスル討論者
ニ讓リマシテ、私ハ之ヲ省キマス
〔「憲政會ノ委員長カ」「我黨トハ何ダ」
ト呼ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=37
-
038・森田茂
○議長(森田茂君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=38
-
039・町田忠治
○町田忠治君(續) 次ニ斯ル質問應答ノ末
ニ、委員會ニ於キマシテハ、修正案ガ出マ
シテ、多數ニ依シテ其修正案ガ可決サレマ
シタ、其修正案ハ既ニ議長ノ手許ニ參ッテ
居リマスルガ故ニ之ヲ省キマス、尙ホ此法
案ヲ完全ニ實行シ、其效果ヲ完カラシメテ、
一日モ早ク財界ヲ安定セシムルノ誠意ヨ
リ、吾々委員ノ多數ハ、日本銀行特別融通
法及臺灣ニ關スル特別融通法案ニ對シテ、
四箇條ノ希望ヲ述べテ居リマス、此希望モ
旣ニ委員會ニ於テ申シ、又議長ノ手許ニア
リマスルガ故ニ、其詳細ハ齊シク我黨ノ討
論者ニ讓リマス、大體ハ斯樣ナコトデアリ
マスガ、若シ必要デアルトスレバ、玆ニ朗
讀致シマス〔「我黨ト何故言フノダ」ト呼ヒ
其他發言スル者多シ〕只今議長カラ承ルト、
既ニ其修正案及希望條件ハ、諸君ノ御手許
ニ廻ッテアルト云フコトデアリマスルカラ、
私ハ玆ニ之ヲ省略致シマス-私トシテ諸
君ニ甚ダ御詫ヲ致サナケレバナラナイコト
ハ、私ハ申上ゲタ積リデアリマシタガ、斯
樣ニシテ修正案及希望條件ハ、多數ヲ以テ
可決セラレタト云フコトヲ御報告致シマス
(拍手)
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=39
-
040・森田茂
○議長(森田茂君) 御靜ニ願ヒマス、委員
長ノ報告ニ對シテ質疑ノ通告ガアリマス、
順次之ヲ許シマス、岡田溫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=40
-
041・岡田温
○岡田溫君 私ハ極ク簡單ナ質問デアリマ
スルカラ、失禮デアリマスガ此席ヨリ委員
長ニ御尋致シタイト思ヒマス
〔「聽エナイ」「登壇々々」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=41
-
042・森田茂
○議長(森田茂君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=42
-
043・岡田温
○岡田溫君(續) 私ノ質問ハ日本銀行特別
融通ニ依ル損失補償法案ノ委員會ノ修正案
ノ希望條項ノ第四ニ付テ御伺スルノデア
リマス、此第四ヲ見マスト、信用組合中員
外ノ預金ヲ預ッテ居ルモノハ、中央金庫ヲシ
テ特別ノ融通ヲシテ云々ト云フ希望ガアリ
マスガ
〔「分ラヌ」「分ラヌ」「登壇々々」ト呼フ
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=43
-
044・森田茂
○議長(森田茂君) 岡田君登壇ヲ求メマス
〔岡田溫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=44
-
045・岡田温
○岡田溫君 第四デアリマスガ、其第一ノ
御尋ハ員外預金ト云フノハ、組合員ノ家族
ノ預金及役場ノ公金ナドヲ預ッテ居ルノヲ
員外預金ト看做スノカ、看做サヌノデアル
カト云フコトデアリマス、ソレカラ第二ニ
ハ之ヲ伺ヒマスト、信用組合モ銀行ノヤウ
ナ金融ヲシテ居ル關係上、今度ノ問題ト相
似夕取付等モ起ル、併シ補償法デハドウス
ルコトモ出來ナイラシイカラ、產業組合中
央金庫ヲ通ジテサウ云フコトニ出會シタナ
ラバ、救濟スルヤウニト云フコトノ希望ノ
ヤウデアリマス、若シ此補償法ニ割込ムト
云フノナラ、又其割込ノ爲ニ員外ノ預金ト
云フコトノアルガ爲ニ、斯ル事デモ言フノ
ナラバ、是ガ別ニナルノモ宜イガ、既ニ此
四ト云フモノハ三マデトハ關係ノナイ他
ノ方法デスル希望デアルノデアリマス、旣
ニ日本銀行ヲシテ運用ヲサスト云フノデナ
クシテ、他ノ方法ニ依シテ居ルト云フノナ
ラバ、一般ノ產業組合ヲ扱シテ宜イ筈ナン
デアリマス、何モ員外ノ預金ヲ預ッテ居ル
モノニ限シテト云フヤウニ扱フ必要ハナ
シ、理由モ無イヤウニ思ハレマス、委員會
デハ大分此問題デ御議論ノ御〓究ガアッタ
コトヲ承ッテ居リマスガ、吾々トシテ多大ナ
疑問ヲ起スノハ何トカシテ組合ノ一部分
ニデモ割込ンダラ宜イガ、ソレトハ無關係
ニ、唯〓精神上ノ連續ニ依シテ、組合ニ斯ウ
シテ吳レト云フ希望ヲ出ス場合ニ於テ、衆
議院ノ希望トシテハ、一般銀行ノコトハ少
シモ見エナイ、政府ニ其意見アルトカ何ト
カト云フコトハ聞キマスケレドモ、ソレハ
別ノ事デアリマシテ、個々ノ決議ノ精神ト
シテ現ハスト云フコトニ見エナイト云フコ
トハ、非常ナル誤解ガ起ラウカト思フノデ
アリマス、ドウ云フ譯デ特別ニ扱フ、補償法
トハ違ヲタ方法デ扱フノニ、唯〓定款ニー一
條項ニアルコトノ爲ニ、斯ウ云フ風ニ別
ニ員外ノ預金ヲ扱シテ居ルモノノミヲ特別
扱ニスルヤウニ見エルヤウニ爲シタリト云
フノハ、ドウ云フ譯デアリマセウカ、此二
點ヲ御伺シタイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=45
-
046・町田忠治
○町田忠治君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=46
-
047・森田茂
○議長(森田茂君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=47
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048・町田忠治
○町田忠治君 岡田君ノ御質問ハ實ハ私ニ
ハ十分聽取レヌデアリマシタガ、平生ノ岡
田君ノ信用組合ニ對スル御議論ノ御主張カ
ラ察シマスト云フト、信用組合ニ對シマシ
テ、特別銀行同樣適用スルカト云フ御質問
デアリマスカ、左樣デアリマセヌカ、左樣
デアリマスカ
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=48
-
049・森田茂
○議長(森田茂君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=49
-
050・岡田温
○岡田溫君 サウ云フ意味ト少シ違フノデ
アリマス、中央金庫ヲシテ機宜ノ處置ヲ執
ラスナラバ、總テノ產業組合ニモ執ラスヤ
ウナ風ニト云フ希望ヲ附ケタ方ガ穩當デア
ラウ、適當デアラウト斯ウ思フノニ、ソレ
ガ無イト云フノハドウ云フ譯デアルカト云
フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=50
-
051・町田忠治
○町田忠治君 私ハ岡田君ノ御質問ノ全部
ニ付テハドウカ知ラヌガ、此第四條ヲ斯樣
ニ書イタ趣意ハ御答辨致シマス、私共ハ相
成ベクハ、信用組合ハ組合員自身ノ相互ノ
助力ニ依シテ成ダケ政府ノ援助ヲ求メズ、組
合自ラノ力ニ依シテ發達スルコトヲ信用組
合ノ理想トシテ居ルノデアリマス、只今ノ
法律ハ組合員以外ニ一般公衆ノ預金ヲモ之
ヲ取扱シテ、一種ノ庶民銀行同樣ノ働ヲ致
シテ居リマスルガ故ニ、斯樣ナモノニ對シ
テハ、政府ハ啻ニ預金部カラノ低利資金ニ
依リ中央金庫ヲシテ貸出サシムルノミナラ
ズ、更ニ其點ヲ考慮シテ相當ノ處置ヲ執
ル、場合ニ依レバ此法案以外ニデモ、政府ガ
相當ノ補助ヲスル方法モ出來ルモノト思ヒ
マス、其方法ハ政府ノ責任ト致シ、吾々ハ
一種ノ庶民銀行ト同樣ノ機關ト見ルベク、
公衆ノ預金ニ對シテハ、政府ハ唯、低利資金
ノミナラズ、他ニ相當考慮ヲ致セトー云フ希
望ヲ述ベタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=51
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052・岡田温
○岡田溫君 モウ一度、委員會ハ
〔「分ラヌ」「分ラヌ」ト呼ヒ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=52
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053・森田茂
○議長(森田茂君) 田淵豊吉君
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=53
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054・森田茂
○議長(森田茂君) 靜粛ニ願ヒマス
〔田淵豊吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=54
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055・田渕豊吉
○田淵豊吉君 私ハ金融ノコトヽハ非常ニ
緣ノ遠イ方デアリマスガ、委員會ニモ出ラ
レズ、此處デ委員長ノ報告ニ付テ尙ホ聞キ
タイコトガアリマスカラ、ドウカ的確ニ言
ウテ戴キタイ、極ク素人デスカラ、諸君ハ
御笑ニナル點ガアルデセウガ、私ハ聞キタ
イ、一體此財源ヲドウスルト云フ議論ガア
リマシタヤウデスガ、私ハ此處ニ居ナカ,
タデスガ、前ニ議論ガアッタノデスカ、此財
源ヲデスナ、何所カラ取ッテ、ドウスルト云
フ見込ガナクシテ、唯〓必要ダカラヤッタト
云フノデスカ、其財源ノ點ヲ何所カラ取ッ
テ、ドウシテヤルト云フ大體腹案ガ斯ウダ
ト云フコトヲ、御聽キニナッタカドウカ、ソ
レガドウ云フヤウニ向イテ行クカ、此結果
ト云フモノハ、ドウ云フヤウニ向イテ行ク
カト云フコト、天氣豫報ハ上海ニ起。タモ
ノガ日本へ來テ、此處デ梅雨ニナッテ、揚子
江ノモノガ日本へ落チルト云フコトガ、チ
ヤント分ッテ居ル、故ニ是ガドウ云フヤウナ
方向ニ、何所カラドウ取ッテ、ドウ向イテ行
クカ、一般租稅カラ取ルカ、又ハドウ云フ
ヤウナ方法デ取ルカ、六三五ノ消費稅カラ
取ルカ、三六五ノ直接稅カラ取ッテ行クカ、
重大問題ハ此處ニ潜ンデ居ル、此處ニ金塊
ガヒヨコト出タラ、六億ガ百億デモ譯ハナ
イ問題デアルガ、其財源ニ付テハ、單ニ是
迄ニ言ウタ事ダケデナクシテ、ドウ云フヤ
ウナ的確ナ法則カラ之ヲ取ルト云フノデア
ルカト云フコトヲ、政府及委員會ニ御質問
ニナッタカドウカ、之ヲ的確ニシナケレバ、
國民ノ負擔ノ均衡負擔ノ公平ト云フコトハ
出來ナイト思フカラ、此點ヲ聞キタイト思
フノデアリマス(「和製ソクラテス」ト呼フ
者アリ)ソレカラ第二ニ、是ハ言ウテ居ル
カ知レヌ、又私ノ聞違ヒカ知レマセヌガ、
休業銀行ヲ含ムトカ、含マヌトカ言ッテ居
ル、政府ノ方ハ含マヌト言ッテ居ル、野黨ノ
方デハ含ムト言ッテ居ル、今之ヲ見マスルト
「現ニ」ト云フ、此現ト云フコトハ私ニハチヨッ
ト分リ難イガ、休業銀行ヲ含ムト云フコト
ニナッテ居ルカ、ナッテ居ラヌカ、大分議論
ハアッタヤウデアリマスガ、此事ヲ此處デ
明ニシテ戴キタイト思フ、私ガ聽漏シタノ
ナラバ、ソレデ宜シウゴザイマス、ソレカ
ラ私ハ諄イカ知レマセヌガ、銀行ノ預金ノ
總額ハモウ何遍モ聽イタヤウデアリマスガ
ハッキリシナイ、今少シ瞹眛デアル、モン
ハッキリ覺エテ置ケルヤウニ聽]イテ置キタ
イ、總額ノ數ト銀行ノ數ト、休業銀行ノ數
!、ソレカラ人數ガ幾人、預金ヲシテ居ル
人數ヲ聽イテ置キタイ、唯、數百万人トカ
數十万人トカ云ッテ居ルガ、サウ云フヤウナ
コトデ此豫算ノ賛否ヲ決スルコトハ出來ナ
ィ、全體デ幾ラデアルト云フコトヲハッキ
リ聽イテ置キタイ、ソレカラ次ニ或ハ百圓
以上ノモノガ幾ラアル、千圓ガ幾ラアリ、
万圓ガ幾ラト云フ、サウ云フ正確ナル金額
ノ調査ヲ委員會ハ爲スッタカ、或ハ爲サラナ
カッタカト云フコトヲ聞キタイ、ソレカラ
人數ダケガ分ッテモ、其金額、又之ニ充テル
財源、サウ云フコトガ分ッテ居ラヌデハ、吾
吾審議スル上ニ於テ非常ニ困ル、斯ウ云フ
コトヲ除ケタナラバ、他ノ事ヲ幾ラヤッテ
モ何ニモナラナイト私ハ思フ、サウ云フコ
トハ問題ニナッテ居ナカッタカ、ナッテ居タ
カ、ソレカラ是ハ言ハナカッタカ知レマセ
ヌガ、或ハ言フタカモ知レヌ、財界ノ安定
ト云フ商工業ニ關係ヲ持シテ居ルガ、此農村
ノ振興、農村ト云フモノハ此問題ト如何ナ
ル所ノ關係ニ立ッテ居ルモノデアルカ、農村
振興ハ如何ナル關係ニュ立ッテ居ルカ、社會政
策ト如何ナル關係ニ立ッテ居ルカ、此點ニ付
テノ明カナル所ノ「デベード」ガアリ、討論
ガアッタカ、ナカッタカト云フコトヲ聞キタ
イ、農村振興ヲ一方ニヤッテモ、一方ニ取ッ
テシマフト云フヤウナ、農村振興ガ現内閣
ノ手デ行ハレルコトニナッテハ非常ニ工
合ガ惡イ、又一方ニ社會政策ヲ行シテ居ル
ガ、一方ニ資本的社會政策ガ行ハレテ居
ル、此點ニ重大問題ガ潜ンデ居ルト思フカ
ラ、之ヲ明ニ御報告ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、ソレカラ五億ノ負擔ニ歸スルノデナイ
ト云フガ、ドウ云フヤウナ點カラ、五番の一
負擔ニ歸スルノデナイト云フコトヲ、モウ
少シ的確ニ言ッテ戴キタイト思フ、ツレカラ
紙幣ノ增大ト云フコトニナッテ居リマスガ、
ドウ云フヤウニ是ガ制限外發行ニナリ、或
ハ金解禁アタリトドウ云フ關係ヲ持シテ是
ガ送レルカ、送レヌカト云フ點ニ付テ爲替
ノ點、其他ノ點ニ付テノ議論ガアリマスレ
バ之ヲ聞キタイト思フノデアリマス、以
上
〔「無用々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=55
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056・森田茂
○議長(森田茂君) 答辯ハアリマセヌカ-
答辯ガ無イト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=56
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057・田渕豊吉
○田淵豊吉君 議長々々発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=57
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058・森田茂
○議長(森田茂君) 答辯ハアリマセヌ-
答辯ハアリマセヌ、先ヅ日本銀行特別融通
及損失補償法案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=58
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059・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ、次
ニ臺灣銀行金融機關ニ對スル資金融通ニ關
スル法律案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮
リ致シマス、御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「反對」ト呼ク者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=59
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060・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ガアリマスカラ
採決致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ贊
成ノ諸君ノ御起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=60
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061・森田茂
○議長(森田茂君) 多數ト認メマス、仍テ
第二讀會ヲ開クニ決シマシタ、是ニテ兩案
トモ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=61
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062・井本常作
○井本常作君 直ニ兩案ヲ一括シテ其第二
讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=62
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063・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=63
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064・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス、直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
日本銀行特別融通及損失補償法案
第二讀會
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關
スル法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=64
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065・森田茂
○議長(森田茂君) 第一案ニ對シマシテ
ハ、委員長報告ハ修正デアリマス、尙又湯淺
凡平君及武藤山治君外一名ヨリ修正案ガ提
出サレテ居リマス、又第二案ニ對シテハ武
藤山治君外一名ヨリ修正案ガ提出サレテ居
リマス、順次其趣旨辯明ヲ許シマス、湯淺
凡平君
日本銀行特別融通及損失補償法案ニ
對スル修正案
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年五月七日
提出者湯淺凡平
日本銀行特別融通及損失補償法案中左ノ
通修正ス
第一條中「其ノ預金(定期積金ヲ含ム)」ノ
下ニ「其ノ他」ヲ、「認ムルトキハ」ノ下ニ
「第四條ノ契約ニ因リ」ヲ加フ
第二條中「一年」ヲ「六箇月」ニ改ム
第三條中「十年」ヲ「五年」ニ改ム
第四條本法ニ依リ特別融通ヲ受ケムト
スル者ハ政府ニ對シ特別融通金額ノ百
分ノ七ノ割合ニ於ケル保證料ヲ支拂フ
コトヲ要ス
本法ニ依リ特別融通ヲ受ケタル者其ノ
融通ヲ受ケタル日ヨリ五年以内ニ特別
融通金額ノ全部又ハ一部ノ辨濟ヲ爲シ
タルトキハ日割計算ヲ以テ前項ノ保證
料ノ拂戾ヲ受クルコトヲ得
政府ハ本法ニ依ル特別融迪ニ因リテ日
本銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ同行ニ
對シ同行ガ融通ヲ爲シタル金額ノ一割
ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル標準ハ大藏大臣
之ヲ定ム
第六條第四條ノ保證料ノ收入其ノ拂戾
竝政府ノ負擔スヘキ損失補償ノ支拂ハ
一般會計ト區分シテ之ヲ整理ス
第七條前條ノ特別會計ノ收入金ハ日本
銀行ヲシテ之ヲ運用セシムルコトヲ得
第八條ヲ削ル
〔湯淺凡平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=65
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066・湯淺凡平
○湯淺凡平君 私ハ第一案ニ對シテ修正ヲ
試ミント欲スル者デアリマス、但シ其修正
ノ箇條、是ハ印刷ニ付シテ既ニ諸君ノ御手
許ニ配付シテアリマスカラ、其本文ニ付テ
ハ申上ゲマセヌ、唯〓此修正ヲ爲シマス所
ノ理由ヲ聊カ述べテ見タイ思フ者デアリマ
ス本案ハ約百二十億ニ垂ントスル所ノ預
金ニ對シテ、其內五十億万圓ヲ日本銀行ヲ
シテ融通セシメ、ソレニ依ッテ生ズベキ損
失約五億圓ヲ、國家ニ於テ負擔ヲスルト云
フ案デアル、日本開闢以來恐クハ斯ノ如キ
厖大ナル所ノ數字ガ實際ノ問題トシテ取扱
ハレマシタノハ初メト致スノデアリマス、
而シテ國民全體ノ負擔ニ依シテ、曩ニハ震災
手形ニ依シテ二億七百万圓、今又此法案ニ
依シテ五億圓、更ニ臺灣金融ニ關シテ二億万
圓合セテ九億七百万圓ト云フガ如キ巨額
ノ負擔ヲ、今日ノ一般ノ國民ニ課セント欲
スル所ノ議安アアルガ故ニ、極メテ重大ナ
ル所ノ問題デアルト私ハ考ヘル隨テ其審
議ハ最モ愼重ニ致サナケレバ相成ラナイ、
諸君、本案ハ要スルニ預金フ爲シタ所ノ其
預金者ヲ救齊スルノガ目的デアリマス、政
府ノ說明ニ依リマシテモ、銀行ヲ救濟スル
ニ非ズシテ、預金者ヲ救濟スルガ目的デア
ルト申サレテ居リマス、併ナガラ今日我國
ノ國民ノ預金ヲ爲シテ居ル所ノ者ト、預金
ヲ爲シ能ハザル所ノ者トヲ分類致シマスレ
預金ヲ爲シタル所ノ者ハ多少トモ生活
ニ餘裕ノアル所ノ國民デアリマス、面シテ
其數ハ預金ヲ爲シ能ハザル所ノ國民ニ比較
スレバ極メテ少數デアル、其少數ノ預金
ヲ爲シタル所ノ國民ノ今日ノ困難ヲ、預金ヲ
爲シ能ハザル所ノ者ニ依シテ救濟ヲスルト
云フノデアリマスガラ、救濟ヲサレル側ノ
者ガ、却テ救濟ヲ爲サネバナラヌト云フガ
如キ實ニ世相ノ變動トハ申シナガラ、理論
カラ申シマスレバ極メテ矛盾ナル所ノ法案
デアルノデアリマス、尤モ資產ヲ有シテ居
ル所ノ銀行、預金ヲ有シテ居ル所ノ、生活
ニ餘裕ノアル者、之ニ對シテ今日ノ生活ニ
モ困難ヲ致シ、寧口救濟ヲサレネバナラナ
イ階級ノ者マデガ、之ヲ救濟スル所ノ責任
ヲ分擔ヲシナケレバナラヌカト云フコトニ
付テハ、其間ニ明確ナル理由ガ無クテハナラ
ヌ筈デアリマス、故ニ其理由ヲ政府ニ尋ネ
マシタ所ガ、大藏大臣ノ說明ニ依リマスレ
バ、本案ニ依シテ預金ニ關係無キ者ガ、相當
ノ責任ヲ負フト云フコトハ、極メテ道理ニ
反スルガ如キ感アリト雖モ、而モ世ノ中ハ
資金アッテコソ事業ガアルメデ、事業アッテ
始メテ生活ガアルノデアル、ソレ故ニ預金
者ヲ救濟スルコトハ、卽チ資金ヲ集メ
ル-資金ヲ救濟スルノデアル、資金ヲ救
濟スルコトハ事業ヲ救濟スルノデアル、隨
テ其事業ニ依シテ衣食スル所ノ無產者ヲモ
救濟スルノデアルト云フ御答辯ヲ得マシ
ケ洵ニ大藏大臣ノ遺憾ナキ資本主義ノ御
發揮振ニ私共ハ一驚ヲ喫シタ次第デアリマ
ス、而シテ是ト同時ニ現內閣ノ社會觀-
社會ニ對スル所ノ觀念ノ何レノ點ニ在ルヤ
ヲ、吾々ハ窺フコトガ出來タノデアリマス、
若シ左樣ナル觀念ヨリ致シテ、今日ノ國民
生活ノ問題ヲ處理サレルト云フコトニナリ
マスナラバ、其結果如何相成ルカト云フコ
トヲ、私共ハ憂ヘザルヲ得ナイノデアリマ
ス、併ナガラ今日左樣ナコトヲ論議スル場
合デハアリマセヌカラ、兎ニ角政府ハ左樣
ナル解釋ノ下ニ、本案ヲ提出致シタリト云
フコトヲ吾々ハ承知致シタ、併シ私共ハ斯
樣ナ見地カラ此本業ヲ取扱フト云フコト
極ノテ我國ノ國民思想ノ上ニ於キマシ
テ、由々シキ一大事デアルト考ヘルノデア
リマス、私兵ハ決シテ此今日ノ少數ノ預金
者ヲ救濟スルト云フモ我ハ一般國民ト致
シテハ持シテ居リマセヌ、況ヤ一部ノ銀行ヲ
救濟スルト云フガ如キ責任ハ斷ジテアリマ
セヌ、唯、吾々ガ此本案ヲ修正致シテミ
モ、通過ヲ圖ラント欲スル所以ノモノハ、
其處ニ重大ナル理由ガアル、理由トハ何デ
アルカ、財界ノ安定デアル、財界ノ安定ヲ
致ス、財界ノ安定ハ卽チ國民一般ノ生活ニ
關係ヲ持シコトデアリマスカラ、財界ヲ安定
スルガ爲ニハ、吾々ハ相當ノ努力ヲ爲サナ
ケレバナラヌ、又相當ノ犧牲ヲ拂ハナケレ
バナラヌ、吾々カ本案ノ通過ヲヲル所以ノ
モノハ此理由ニ基クノデアル、既ニ財界ノ
安定ヲ期スルト云フ見地カラ出發致シマス
ルナラバ、此本案ノ效果ハ最モ公平常デナケ
レバナラヌ、此公平ノ點カラ申シマスレバ、
單リ營業ヲシテ居ル所ノ銀行ノ預金者ダケ
ヲ救濟ヲ致シテ、閉店ヲシテ居ル所ノ銀行
ノ預金者ハ、其儘ニ見殺ニスルト云フガ如
キコトハ不公平ノ甚シキモノデアルト思
フノデアリマス、若シ財界ノ安定ヲ圖ルナ
ラバ、休業ヲシテ居ル所ノ銀行ノ預金者ヨ
リハ、寧口閉店ヲシテ居ル所ノ銀行ノ預金
者ヲ、先以テ救濟ヲシナケレバ意味ヲナサ
ナイト私共ハ考ヘル、殊ニ既ニ斯ノ如ク致、
シテ、公平ニ總テノ預金者ヲ救濟スルト云
フナラバ、救濟サルヽ所ノ者ハ救濟スル
所ノ者ニ對シテ相當ノ義務ヲ有シテ居ルコ
トハ申スマデモアリマセヌ、隨テ此法案ニ
依シテ預金者ガ救濟ノ恩惠ヲ受クルナラバ、
ソレニ對シテ何等カノ義務ヲ盡サナケレバ
ナラナイ、卽チ吾々ガ此特別融通ヲ爲ス上ニ
於テハ、ソレニ相當ノ保證料、卽チ吾々國
民ハ預金者ニ代シテ、日本銀行ニ對シテ債務
ノ補償ヲ爲スノデアリマスルガ故ニ、之ニ
對シテ保證料ヲ拂フノハ當然ノ義務デアル
ト考ヘルノデアリマス、國家ガ公債ヲ募集
致シマシテモ、其國家ノ公債ヲ募集スル時
ニ當ノテモ、相當ノ手數料ヲ現ニ拂シテ居ル
ノデアル、憐ムベキ今日ノ無產者ニ對シ
テ、是ダケノ義務ヲ角擔セシメテ、何等ノ
手數料ヲ拂ハナイト云フ譯ノモノデハナカ
ラウト私ハ思フ、更ニ吾々ガ補償ヲ爲シタ
ル其結果ト致シテ、國民ニ對シテ損失ヲ負
擔セシムルト云フコトノアルベキ筈ノモノ
デハアリマセヌ、併ナガラ財界安定ノ爲ニ
ハ相當ノ犠牲ヲ拂ハナケレバナリマセヌ
カラ、是ガ爲ニ一般國民モ亦相當ノ犧牲ヲ
拂ハナケレバナリマセヌガ、其犧牲ハ此法
案ノ爲ニ非常ナル所ノ通貨ノ膨脹ヲ來シ、
通貨ノ膨脹ハ物價ノ騰貴ヲ招來シ、物價ノ
騰貴ハ國民生活ノ脅威ヲ促スト云フコトハ
當然デアル、斯ノ如キ恐ルベキ犧牲ヲ吾々
ハ忍ンデ居ル以上ハ、此上ニ物質上、金錢
上ノ負擔マデモ此國民ニ課スルト云フコト
ハ實ニ慘刻極マル所ノ處置ト謂ハンケレ
バ相成ラヌ、ソレ故ニ吾々ハ此融通、卽チ
補償ニ依リマシテ、ソレガ爲ニ一錢ノ損失
ヲモ負擔スベキモノデハ斷ジテナイト、思
フノデアリマス、更ニ又全體斯ノ如キ法律
ヲ制定スル以上ハ、吾々ハ寧ロ之ニ依ノテ非
常ナル所ノ利益ヲ求メルト云フ觀念ヨリ
ハ、主トシテ之ニ依シテ生ズル所ノ弊害ヲ防
止スルト云フ立場ニ立タナケレ、バナラヌコ
トヽ思フノデアリマス、由來之ニ類スル所
ノ法律ハ、幾度カ制定サレマシタケレド
モ其法律ノ濫用、惡用ノ結果、國民ニ非
常ナル所ノ迷惑ヲ被ムラシメタ所ノ事例ハ
一二ニシテ足リマセヌ、元來特殊銀行ノ制
度其モノガンレデアリマス、是迄此特殊銀
行ノアルガ爲ニ、吾々ハ如何ナル迷惑ヲ被ク
タノデアリマセウ、更ニ又アノ震災手形ノ
問題モソレデアリマス、斯樣ナ次第デアリ
マスルカラ、苟モ五億万圓乃至七億万圓ト
云フガ如キ、巨額ノ損失ヲ負擔シナケレバ
ナラヌト云フガ如キ此法案ヲ制定スルニ當
リマシテハ如何ニスレバ吾々ハ此法律ニ
依シテ、弊害ヲ被ムルコトヲ防止シ得ベキカ
ト云フコトヲ先以テ考慮致サナケレバ相成
ラヌ、ソレ故ニ吾々ハ本案ニ對シ、貸付ノ
年限ヲ原案ニ一箇年トアリマスノヲ、之ヲ
縮メテ六箇月ト爲シ、償還年限ノ十箇年ト
アリマスノヲ、短縮致シテ五箇年ト致シマ
シタノモ是ガ爲デアル、卽チ此法律ノ運用
サレルコト長ケレバ長キ程、國民ノ負擔ガ
ソレダケ長ク殘ル譯デアリマスカラ、出來
ルダケ之ヲ短クシタイト云フノガ吾々ノ修
正ノ本意デアリマス、而シテ此保證料ノ問
題デアリマス、如何ニシテ保證料ヲ取ルコ
トガ出來ルカ、假ニ政府ノ說明スルガ如
ク五十億ノ特別融通ヲ爲スト致シマスレ
バ、之ニ對シテ吾々ハ百分ノ七ノ手數料ヲ
先以テ天引ヲ致ス、然ラバ五十億万圓ニ對
シ、五七ノ三億五千万圓ト云フ卽チ損失補
償ノ基金ヲ積立テルコトガ出來マス、而シ
テ此三億五千万圓ノ基金ヲ、融通シタル五
箇年ノ間、特別會計ニ依テ利殖致シマスレ
バ元利ニ於テ丁度五億圓位ノ金額ニ達ス
ルコトハ誠ニ易イコトデアリマス、之ヲ
基金ト致シテ置キマスナラバ-尙ホ詳シ
ク申シマスレバ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)
簡單ニハ參リマセヌ、此大豫算ヲー-諸君、
今日市中一般ノ金利ハ一箇年八分ニ廻ッテ
居ル、然ルニ此積立金ノ運用ニ依リマシ
テ、年六朱ニ利息ヲ見積ルコトハ易イコト
デアリマス、斯ノ如クナリマスレバ、玆ニ
二分ノ相違ガアリマス、卽チ一般ノ銀行ガ
特別融通ヲ受ケマシテ、五分乃至六分ノ利
子ガ借入レテ、而シテ八分ニ廻シマスレ
バ、茲ニ二分ノ利益ヲ存スルコトガ出來ル、
之ヲ五箇年ニ見積リマスレバ一割ノ利益ガ
アル一割ノ利益ガアルノデアルカラ、其
中カラ七分ノ保證手數料ヲ拂ヒマシテモき
借リタ方ニ於テハ決シテ損失ハアリマセ
又、併ナガ天引ヲ致シマシテ、而シテ之ヲ
最後ノ五箇年迄借入レル者モ、一年デ以テ
償還スル者モ同樣ニスルト云フ譯ニ參リマ
セヌカラ、早ク返シタル者ニ日割ニ應ジ
テ、前ニ天引シタル所ノ、其保證料ヲ割戾
シヲスルト云フコトニ致シマスレバ、借ル
方ノ人モ損ヲスルコトナク、而シテ是ガ爲
ニ早ク特別融通資金ノ囘收ヲ圖ルコトガ出
來ルト云フ便宜モアルノデアリマス、要ス
ルニ當然支拂ッテ差支ナイ、又拂フダケノ
能力ノアル此保證料ト云フモノヲ積立ッテ
置キマスレバ、之ニ依シテ万一融通シタル
所ノ金ノ回收ガ出來マセヌデモ、國民ハ決
シテ迷感スルコトハナイノデアル、斯樣ナ
方法ニ依ッテヤリタイト云フノガ此精神デ
アリマス、サウシテ今一點ハ、損失ノ限度
ヲ原案ニ依リマスレバ約五億圓ト定メテア
ル-五億圓以内ト定メテアリマス、併ナ
ガラ若シ五十億万圓ノ融通ヲ爲スナラバ、
其一割ノ五億圓ハ恐クハ-約一割ハ或ハ
損失ニ歸スルデハナイカト云フ原案ノ趣旨
ト心得テ居リマス、然ラバ初メヨリ五億万
圓ト云フ金額ニ限ラズシテ、寧口融通資金
ノ損失ノ一割ト規定ヲ致シマシタ方ガ至當
デナカラウカト思フ、若シ斯樣ニ規定ヲ致
シマセヌト、五十億圓ニ非ズシテ、幸ニ致
シテ〓日ノ融通資金ガ十億万圓若クハ二十
億万圓デ濟ムカモ知レナイ、二十億万圓デ
濟ムナラバ一億万圓乃至二億万圓ノ損失ニ
止ルデアラウ、而モ五億圓以內ト書イテア
ル以上ハ、日本銀行ハ是ガ爲ニ或ハ放漫ナ
ル所ノ貸付ヲ爲サントハ請合ハレナイ、日
本銀行ノ當事者ハ左樣ナ事ハ爲シマスマイ
ケレドモ、是迄ノ經驗ニ依シテ見マスト、得
テ時ノ官憲ト關係ノアル所ノ特殊銀行ハ
斯ノ如キ所謂營業以外ノ壓迫ニ餘儀ナクサ
レテ、種々ナル所ノ弊害ヲ惹起ス事ガアリ
マスカラ、成ベク此損失補償ノ金額ハ實際
ニ差支ノナイ程度ニマデ引下ゲテ置クト云
フコトガ相當デアリマスカラ、此故ニ吾々
ハ金額ヲ五億圓ト限ラズシテ、特ニ損失ノ
一割ト之ヲ規定スルコトヲ相當ト考ヘルノ
デアリマス、サウシテ是等ノ基全ノ會計ヲ
如何ニスルカ、收支ヲ如何ニスルカ、特別
會計ノ組織ヲ確立致シテ、之ニ依シテ此資金
ノ運用ヲ爲ス、場合ニ依リマシテハ之ヲ
日本銀行ノ運用ニ委セルト云フノモ一ツノ
方法デアラウト思フ、斯ノ如ク致シマシテ
一般會計ト區別シテ、之ヲ特別會計ノ計算
ニ移シ、サウシテ此融通ヲ圖リマス、而モ
之ニ依シテ不幸ニ致シマシテ、五十億圓ガ六
十億圓ニナリマシテモ、七十億圓ニナリマ
シテモ、其損失ハ一割マデハ天引ヲ致シテ
保證ガ附ケテアリマスカラ、何等國民ノ迷
感ヲスル事ハアリマセヌ、斯ノ如クニ致シ
テ、少シモ此損失ヲ國民ニ轉嫁セシメズ、
而シテ融通ヲ受ケル所ノモノハ開業シテ居
ル銀行デアルト、開業ヲセザル所ノ銀行デ
アルトヲ問ハズ、苟モ預金ノ引出準備ノ爲
ニハ總テノモノヲ此法律ニ依ッテ救濟ヲス
ルト云フコトニ致シマスナラバ、私ハ原案
ニ比較致シマシテ、吾々ノ修正案ノ方ガ遙
ニ優ッテ居ルト確信ヲ致ス者デアリマス、而
シテ斯クナリマスレバ、吾々ハ決シテ之ヲ
臺灣ト內地トニ區別スル必要ハアリマセ
ヌ、臺灣ノ銀行モ內地ノ銀行モ、一様ニ此
法律ニ依リ、此方法ニ依ッテ救濟シテ差支ナ
ィ、殊ニ只今ノ特ニ臺灣ニ關スル所ノ金融
ノ此法律ハ、是ハ所謂日本銀行ノ補償ハ內
地ノ銀行ヲ救濟スルトハ、遙ニ違クテ居】ル
コトハ、御承知ノ通リ、臺灣ノ金融機關ヲ
救濟スルト申シマスルケレドモ、事實ハ臺
灣銀行ノ枚濟デアルコトハ申ス迄モナイ、
而モ此臺灣銀行ハ目下其整理ニ付テ調査ノ
進行中デアリマス、果シテ此銀行ハ救ハレ
ルモノデアルカ、救ハレナイモノカ分ラナ
ィ、斯樣ナ銀行ニ對シテ、二億圓ト云フ巨
額ノ金ヲ投ズルト云フコトハ、是ヨリ外ニ
方法ガナケラネバ知ラヌ事、只今申ス吾々
ノ修正案ニ依ッテ、內地ト臺灣トヲ區別スル
コトナク、同ジク資格ノ供給ヲ致シマスル
ナラバ、極メテ公平ニ其救濟ノ目的ヲ達シ
得ラレマス、殊ニ又臺灣ノ、事實ニ於テ臺
灣銀行ヲ救濟スルガ爲ニ、二億万圓ノ融通
ヲ爲シテ、其二億万圓全部ヲ損失補償トシ
テ國家ガ負擔スルコトニナリマシテモ、是
ハ貸付ケルニアラズシテ、殆ド贈與スルト
少シモ變ラナイト思フ、斯樣ナル所ノ危險
ナル、斯樣ナル所ノ無謀ナル方法ヲ執ラズ
トモ、必ズ今日ノ臺灣銀行ニ關スル所ノ對
外信用ヲ維持シ、臺灣ニ於ケル所ノ預金者
ヲ救濟ヲ致シマシテ、由テ以テ臺灣ノ統治
ヲ維持スルコトハ、決シテ困難デナカラウ
ト思フノデアル、要スルニ世間ノ議論ガ唯、
此財界ノ安定ヲ圖ルガ爲ニ預金者ヲ救濟ス
ル、銀行ヲ救濟スル爲ニ金ヲ貸ス、金ヲ融
通スルト云フ事ニ付テノ議論ハ、相當承ッテ
居リマスケレドモ、此金ヲ貸シタガ爲ニ損
失ノ負擔ニ任ジナケレバナラヌト云フ一般
國民ノ立場ヨリ行ハレタル所ノ議論ノ極メ
テ薄弱ナ事ヲ私ハ遺憾トセザルヲ得ナイノデ
アル(拍手)諸君、今日ノ我ガ國民經濟ノ大
體ヲ考ヘテ御覽ナサイ、今日ノ巨額ナル苛
歛誅求、非常ナル所ノ租稅ノ重キガ上ニ、
尙ホ十億ニ近イ今日ノ損失ノ負擔ガ實際ニ
吾々ノ頭ニ懸ルト云フコトニナッテ、吾々ノ
生活ハ如何ナリマスカ、之ヲ考ヘテ見マス
レバ吾々ハ救濟サレル者ノ立場ハ、目下
焦眉ノ問題トシテ大ニ考慮ヲ致サナケレバ
ナリマセヌケレドモ、同時ニ之ヲ救濟スル
所ノ犧牲トナル一般國民、預金ナドト云フ
事ハ夢ニモ考ヘテ居ラナイ所ノ多數ノ無產
者ノ爲ニモ、吾々ハ寧ロ進ンデ一層考慮ス
ルコトガ必要デアラウト思フノデアリマ
ス、是ガ卽チ私共此修正案ヲ出シマシタル
所ノ根本ノ理由デアリマスルガ故ニ、諸君
ノ態度ハ既ニ決定致シテ居ルトハ云ヒナガ
ラ、決シテ今ノ内閣ノ面目ニアラズ、今ノ
預金者ノ問題ニアラズ、今ノ銀行ノ問題ニ
アラズシテ、廣ク六千万國民ノ立場ヲ御考
ヘ下サイマシテ、願クハ吾々ノ修正案ニ御
賛成アランコトヲ希望スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=66
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067・森田茂
○議長(森田茂君) 森田金藏君
日本銀行特別融通及損失補償法案ニ
對スル修正案
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年五月七日
提出者武藤山治
外一名
日本銀行特別融通及損失補償法案中左ノ
通修正ス
第一條中「其ノ預金」ノ下「(定期積金ヲ含
ム)」ヲ「(定期積金ヲ含ミ兩建ノ預金ヲ含
マス)」ニ改ム
第二條日本銀行ガ前條ノ特別融通ノ爲
ニスル手形割引ノ步合ハ割引最初ノ三
月間ハ日本銀行國債保證手形割引歩合
ト同一トシ以後ハ日歩一一錢二厘乃至二
錢七厘トス
日本銀行ハ前項ノ割引料ト公定割引料
トノ差額ヲ國庫ニ納付スルヲ要ス
第二條ヲ第三條ニ改メ同條中「一年」ヲ
「三月」ニ改ム
第三條ヲ第四條ニ改メ同條中「十年」ヲ
「三年」ニ改ム
第四條ヲ第五條ニ改メ同條第二項ヲ左ノ
如ク改ム
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第五條ヲ第六條ニ改メ以下順次繰下グ
第十條第一條ニ依リ資金ノ融通ヲ受ケ
タル銀行ノ役員ニシテ其ノ資金ヲ目的
以外ニ使用シタルトキハ五年以下ノ懲
役ニ處ス
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ
關スル法律案ニ對スル修正案
右成規ニ據リ提出候也
昭和二年五月七日
提出者武藤山治
外一名
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關ス
ル法律案中左ノ通修正ス
第一條中「金融機關ニ對シ」ノ下ニ「預金
支拂準備資金トシテ」ヲ加フ
第二條中「一年」ヲ「三月」ニ改ム
第三條中「二億圓」ヲ「一億二千六百六十
萬圓」二段人
第四條中「第五條」ヲ「第六條」ニ改ム
第五條中「第三條、第四條第二項及第六
條乃至第八條」ヲ「第四條、第五條第二項
及第七條乃至第九條」ニ改ム
第六條第一條ニ依リ資金ノ融通ヲ受ケ
タル金融機關ノ當事者ニシテ其ノ資金
ヲ目的以外ニ使用シタルトキハ五年以
下ノ懲役ニ處ス
〔森田金藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=67
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068・森田金藏
○森田金藏君 私ハ今議題トナッテ居リマ
スル二法案ニ付テ、私共ノ修正意見ヲ皆樣
ノ前ニ發表シタイト思フノデアリマス、此
二案ニ付キマシテハ我ガ實業同志會トシ
マシテハ愼重審議、如何ニシタラバ宜シイ
カト云フコトニ付テ種々考ヘタノデアリマ
ス、就キマシテハ私共ハ此二案ニ付テハ縷
纎申上ゲタイ事ガアリマス、ケレドモ大體
ニ於テハ皆樣ガ既ニ御承知デアリマス、故
ニ私ハ此條項ニ付テ極ク簡單ニ修正ノ要領
ダケヲ申上ゲタイト思ヒマス、ドウカ御〓
聽ヲ願ヒマス、日本銀行特別融通損失補償
法案ニ對シマスル私共ノ修正ハ、日本銀行
特別融通損失補償法案中ノ第一條ニー之
ヲ御比較ヲ願ヒタイノデアリマスガ、原案
ノ第一條ニ、「日本銀行ハ銀行ヨリ其ノ預
〓其下ニ括弧ガアリマシテ「定期積金ヲ
含ム」トアリマス下ニ、斯ウ云フ事ヲ加ヘ
タイノデアリマス、「定期積金ヲ含ム」ノ下
ニ「定期積金ヲ含ミ兩建ノ預金ヲ含マス」ト
致シマス、此「兩建ノ預金ヲ含マス」ト私共
ガ玆ニ修正ヲ加ヘマシタ譯ハ一ツノ銀行
ニ一方デ預金シテ居ッテ、一方デ其銀行カ
ラ借リテ居ル人ガアリマシダ場合ニ、借リ
テ居ル方ハ措イテ、預金ノ方ダケヲ出スト
云フ虜ガアリマスカラ、此兩建ト云フ文字
ヲ附加ヘタノデアリマスゾレカラ第二條
トシテ新ニ一條ヲ私共ハ加ヘタイノデアリ
マズ「第二條、日本銀行ガ前條ノ特別融通
ノ爲ニスル手形割引ノ步合ハ割引最初ノ三
月間ハ日本銀行國債保證手形割引歩合ト同
一トシ以後ハ-其三箇月過ギテ後繼續シ
テ割引スル場合ハ日歩二錢二厘乃至二錢七
厘トス、」斯ウ云フ風ニ確定シテ置ク事ガ此
法案ノ意義ヲ正シクスルモノト思フノデア
リマス、斯ノ如キ案ヲ一箇年モ置クト云フ
事ハ甚ダ宜シクナイト私共ハ考ヘル、併シ
斯樣ナ火急ノ場合デアリマスカラ、三箇月
間ハ此國債保證手形ノ割引步合ト云フコト
ニ致シマシテ、ソレカラ後、萬一必要ガアッ
テ融通ヲ受ケル者ハ、必ズ日步ヲ二錢二厘
乃至二錢七厘ト云フコトニスルコトガ囘收
ヲ早クシ、サウシテ融通資金ヲ〓大ナラシ
ムル虞ヲ防グコトニナルト考ヘタノデアリ
マス、ソレカラ其次ニ「日本銀行ハ前項ノ
割引料ト公定割引料トノ差額ヲ國庫ニ納付
スルヲ要ス」ト云フコトヲ加ヘタイト思フ
ノデアリマス、日本銀行ガ斯ウ云フ場合ニ
高利ヲ貸シテ、サウシテ日本銀行ノ取得ト
セズ、斯ノ如キ法案ニ依ケテ剩餘金ノ出タ
モノハ之ヲ國庫ニ納付スルト云フコトハ
當然ノコトデアラウト、私共ハ考ヘルノデ
アリマス、ソレカラ今玆ニ第二條ヲ加ヘマ
シタカラ、第二條ヲ第三條ト改メマス、サ
ウシテ同條中ノ「一年」トアルノヲ、私共ハ
之ヲ「三月」ト改メタイト思フノデアリマ
ス、此問題ハ縷々委員會デモ述ベラレマシ
タシ、政府ノ御意見モアリマスガ、之ヲ一箇
年モ長ク置クト云フヤウナ例ハ、各國何レ
モ斯ウ云云場場ノ恐慌ノ起ヲタ時ノ例ヲ見
マシテモ、甚ダ少イノデアリマス、我國ノ
外國ニ對スル信用ヲ維持スル上ニ於キマシ
テモ、斯ノ如キモノヲ一箇年モ置クト云フ
コトハ道理ガナイト私ハ考へタノデアリ
マシタ、-ソレデ順次條ガ變ッテ一條ヅ
ツ延ビマシテ、政府案ハ八條デアリマスガ、
私ノ修正案ニ依ルト是ガ十條ニナルノデア
リマス、是ハ御承知ヲ願ヒタイ-ソレカ
ラ改正案ノ第四條、政府ノ法案デハ三條デ
アリマスガ、其三條ニ「十年」トアルノヲ、私
共ハ之ヲ「三年」ト改メタイト思フノデアリ
さく、大藏大臣ハ之ニ付テ縷々御意見ガア
リマシタ、併ナガラ斯ノ如キ融通金ヲ十箇
年モ置カナケレバ、我國ノ經濟事情ハ是ガ
緩和セヌデアリマセウカ、私共ハ決シテサ
ウデハナイト思フ、此度ノ恐慌ナルモノ
ハ決シテ「ネーシヨン」全體ノ恐慌デハ
ナイ、或ル預金者ノ恐怖心カラ超タ夕所ノ
モノデアリマスカラ、政府ガ玆ニ之ヲ三年
保障スルト云フコトニ依テテ、必ズ是ハ安
定スルモノデアルト確信スルノデアリマ
ス、我ガ「ネーシヨン」ノ經濟事情ガ鞏固デ
アルト云フコトハ、諸外國ガ認メテ居ル所
ノ信用デアリマス、此信用ヲシテ十箇年モ
危惧ノ念ヲ持タシメルト云フコトハ、法律
ノ精神ニ於テ甚ダ私ハ取ラヌ所デアルト思
フノデアリマス、ソレカラ第五條ノ二項ニ
斯ウ云フコトヲ加ヘタイノデアリマス、原
案ノ四條デアリマスガ、原案ノ四條ニハ「前
項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大臣之ヲ定
ム」トアルノヲ、私共ハ是ハ今日ノ大藏大
臣ハ、曩ニ委員長モ御報告ニナッタ如ク虛
心坦懷、洵ニ赤裸々ニ心情ヲ發表サレマシ
テ、サウシテ誠意ヲ披瀝サレテ居リマスカ
ラ、私共ハ今日ノ大藏大臣ハ何等疑フ點ハ
アリマセヌガ、併シ政府ガ何時更ルカ分リ
マセヌカラ、如何ナル大藏大臣ガ出來ルカ
分ラヌト云フコトヲ考ヘル時ニ、之ヲ大藏
大臣ニ一任シテ置タコトハ危險デアルト考
ヘルノデアリマス、故ニ私共ハ「前項ノ損
失ヲ決定スル基準ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」
ト改メタイト思フノデアリマス、ソレカラ
後ハ同ジ事デアリマシテ、最後ノ九條デ政
府案ハ終リマスガ、私共ハソレニモウ一條
ヲ加ヘテ十條ト致シタイノデアリマス、十
條ニドウ云フコトヲ書クカト申シマスト
「第一條ニ依リ資金ノ融通ヲ受ケタル銀行
ノ役員ニシテ其ノ資金ヲ目的以外ニ使用シ
タルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス」斯ウ云
フ法律ヲ定メテ置キタイト思ス、是ハ皆サ
ンガドウ御考ニナルカ知リマセヌガ、今日
ノ放漫ナル貸出ヲシ、放漫ナル融通ヲシタ結
果ガ、皆サンノ御存知ノ如ク今日ハ七億圓
ト云フ大ナル金ヲ吾々ノ負擔ニ歸セナケレ
バナラヌ、國民ガ之ヲ捻出シナケレバナラ
ヌト云フヤウナ危險ニ遭遇シタノデアリマ
スカラ、今申シタ一箇條ヲ加ヘタイト思フ
ノデアリマス、私ハ是ハ法理上何處カラ出
タカト御尋ガアルナラバ申上ゲマス、是一
背任行爲ヲシダ者ハ、刑法二百四十七條ニ
依ヶテ定メラレテ居ル所デゴザイマスかラ、
當然此背任行爲ヲシタ時ノ罰則ハ置クベキ
モノデアルト云フコトヲ考ヘテ、銀行當事
者ガ愼重ナル考ヲ以テ、多數ノ委任者、預
金者及政府ノ命令ヲ大切ニスルガ爲ニハ、
斯ノ如キ法文ガアルト云フコトハ今日ニ
於テ七億ノ負擔ヲ國民ニ課スル上カラ、ド
ウシテモ是位ノモノハ定メテ置クコトガ當
然デアルト考ヘタ次第デアリマス(拍手)是
ハ私共此日本銀行特別融通及損失補償法案
ニ修正ヲ致シタイト思ッタモノヲ述ベタノ
デアリマス、其次ニハ臺灣ノ金融機關ニ對
スル資金融通ニ關スル法律案デアリマス
之ニモ私共ハドウシテモ修正ヲ加ヘナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、是モ前段ハ
申上ゲマセヌ、モウ既ニ議論ハ盡キテ居リ
ママ、故ニ私ハ逐條ニ付テ私共ノ斯タ改メ
ナケレバナラヌト思フ所ヲ簡單ニ申上ゲマ
ス、第一條中「金融機關ニ對シ」、其下ニ「預金
支拂準備資金トシテ」ト云フコトヲ加ヘタ
イノデアリマス、是ハ原案ト違ッテ居ル所
ハ既ニ御存知ノ通リデアリマスガ、原案
ノ第一條ニハ斯ウナッテ居ルノデアリマス
「政府ハ臺灣統治ノ必要上臺灣ニ於ケル金
融機關ヲシテ其ノ機能ヲ維持セシムル爲又
ハ海外ニ於ケル帝國ノ信用ヲ維持スル爲必
要アリト認ムルトキハ日本銀行ヲシテ臺灣
ニ於ケル金融機關ニ對シ手形割引ノ方法
ニ依リ二億圓ヲ限リ資金ノ融通ヲ爲サシ
ムルコトヲ得」斯ウ書イテアルノデアリマ
ス、併ナガラ私共ハ之ヲドウシテモ此外
ニ、何ニ之ヲ使フカト云フ規定ノ無イコト
ハ、甚ダ遺憾トスルノデアリマス、大藏大
臣モ度と御說明ニナッ夕如ク、此二億圓ハ
法ガ出來タミケデ或ハ使ハナイデモ宜イカ
モ知レナイ、此法が出來テ臺灣ニ於ケル統
治上、臺灣ニ於ケル預金者ガ悉ク安心ヲス
ルナラバ、是ハ使ハナイデモ宜イカモ知レ
ナイ、海外ノ信用ガ囘復スルト云フト、使
ハナイデモ宜イカモ知レナイト云フコトヲ
言明爲ザッテ居ルノデアリマス、故ニ此金ハ
必ズ預金支拂ノ準備資金トシテヾナケレバ
使ハヌト云フコトヲ定メテ置クコトハ、當
然ノ事デアラウト考へルノデアリマス、左
樣御承知ヲ願ヒタイ、ソレカラ第二條中ニ
「一年」トアルノヲ、之ヲ三月ト私共ハ改メ
タイ、是ハ前ノ法案ト同ジ意咏デアリマス
カラ、說明ハ致シマセヌ、ソレカラ第三條
中ニ「二億圓」トアリマスノハ、是ハ前ニ委
員長ノ御報告ニナッタ如ク、二億圓ノ
支拂補償ヲシタモノヲ、全部支拂〓テ
シマフト云フ法案ハ、實ニ私共カラ見
テ、又將來此五十三議會ニ出タ此法案
ヲ國民ガ見マス時ニ、甚ダ不備ナル法案
デアルトノ念ヲ持ツト、私共ハ思フノデア
リマス、例ヘバ二億圓ノ保證ヲシテ、億
圓拂シタトカ、三億圓保證ヲシテ二億圓拂→ン
タト云フコトデアルナラバ、マダ理窟ガア
ルノデアリマス、ケレドモ二億圓ノ補償ヲ
シタモノヲ、二億圓償ハナケレバナラヌト
云フコトハ、甚ダ此法ノ手續上、又法ノ體
面カテ見テ、洵ニ宜シクナイト思フ、此
點ハ曩ニ縷々申述ベマシタ委員長ト同意見
デアル、故ニ私ハ改メテ其金額ヲ減サウト
思フノデアリマス、其金額ハ「一億二千六
百六十万圓」ニ減ジタイト思フノデアリマ
ス、之ニ付テ諸君ハ如何ナル起算ノ基礎ガ
アルカト御尋ニナルト思ヒマスガ、私ハ此
起算ノ基礎ハ、明ニ申上ゲテ置キタイト思
7、臺灣銀行ガ島內ニ於ケル預金ガ、私共
ノ調ベタ所ニ依レバ三千三百万圓、華南銀
行ノ預金ガ三百六十万圓、而シテ其外ニ臺
灣島内ノ他ノ金融業者ノ預金ガ五千二百万
圓臺灣銀行ノ海外預金ガ一一千八百万圓、
海外債務ガ一千万圓デアリマシテ、其合計
ガ一億二千六百六十万圓トナルノデアリマ
ス、而シテ玆ニモウ一ツアリマスノハ私
ハ此紙幣發行ノ六千二百万國ヲ省キタイノ
デアリマス、如何トナレバ紙幣發行ヲ爲ス
斯ノ如キ銀行ガアリマス時ハ、是ハ銀行條
例ニ依シテモ、其發行ニハ相當保證ガアル
譯デアッテ、之ヲ此度全部デ六千何百万圓
ヲ償フト云フヤウナコトハドウモ理窟ガ
當然アル筈ハナイト思フ故ニ之ヲ全部私
共ハ省キタイノデアリマス、ソレデ私共ノ
省キタイノハ三十四銀行ガ預ヲテ居リマ
スル千三百七十万圓モ省キタイノデアリマ
ス、ツレカラ勸業銀行ガ預ッテ居リマスル
百六十万圓モ省キタイノデアリマス、斯ノ
如ク致シマスルト、實際ノ預金カラ考ヘル
ナラバ一億二千六百六十万圓ト之ヲ改メ
ルコトハ數字ノ上カラ穩健ナル改善デ
アツテ、之ヲモ大藏大臣ノ御說明通リナラ
要ラヌノカモ知レナイガ、若シ要ツタ場合
ニハ是ダケノモノヲ支辨スルト云フコト
ハ當然デアル、サウシテ此法律ノ意義ガ正
シクナルト考ヘル次第デアリマス、ソレカ
ラ第四條中-是ハ四條中ニ「五條」トアル
ノハ、先ノ法案ヲ一條宛殖シマシタカラ
「六條」ニ改メルノデアリマス、又第五條中
「第三條、第四條第二項及第六條乃至第八
條ヲ第四條、第五條第二項及第七條乃至
第九條」ニ改メル、是ハ當然ノ先ニ改メマ
シタ結果デアリマス、面シテ同ク此臺灣ニ
對シマスル法案ニモ、私ハモウ一條ヲ加へ
テ、第六條ニ同ジ文句ヲ入レタイト思フノ
デアリマス「第一條ニ依リ資金ノ融通ヲ受
ケタル金融機關當事者ニシテ其ノ資金ノ目
的以外ニ之ヲ使用シタルトキハ五年以下ノ
懲役ニ處ス」ト云フコトハ、先ニ申上ゲマ
シタ理窟ト同ジコトデ、其當事者ガ其職責
ヲ完ウセンガ爲ニ、又責任ヲ深ク感ズルガ
爲ニ、斯ノ如ク改正ヲスルト云フコトハ
私ハ當然ナコトデアルト思フ、先ニ私ガ二
億圓ヲ一億二千六百六十万圓ニ切下ゲタコ
トニ付キマシテハ、皆サンハ之ヲサウ云フ
必要ハナイデハナイカト御考ニナルカモ知
ラヌガ、最近英國ニ於ケル例ヲ御覽ニナレ
バ分リマス、彼ノ英獨戰爭ノ當時、英國ノ
政府ガ丁度今日ノ我ガ政府ガ爲サルガ如キ
方針ヲ採タテ、其當時英國政府ガ實行シタ
ル唯"數字ダケヲ申上ゲテ置キマスガ、英
國ハ之ニ對シテ其預金者ノ債權トナル銀行
ニ對スル債權額ノ二割ヲ保障シタノデアリ
マス、其二割ヲ保障シタ金額ハ二十二億五
千万圓トナッテ居ルノデアリマス、而シテ
英國家ガ其間ニ支拂出シマシタノハ、タ,
タ一億三千万圓デ濟ンダ、卽チ今日政府ガ
御執リニナッタト同ジ趣意デ、政府ガ責任
ヲ持ツト云フ爲ニ、英國ニ於ケル金融界ガ
非常ニ安定ヲ致シテ、政府ガ二十二億五千
万圓マデ保障シタモノガ、一億三千万圓デ
濟ンダト云フコトカラ考ヘマスレバ、大藏
大臣ガ屢。此度ノ二億圓ヲ保障シテモ、是
ガ全部要ラヌノデハナイカト仰セラレタコ
トガ證明サレルモノデアルト思フ、斯ノ如
キ結果デアリマスカラ、私ハ第三條ノ二億
圓ヲ一億二千六百六十万圓ト改正シタ次第
デアリマス、此事ニ付キマシテハ、我ガ實
業同志會ニ於テ三晝夜ノ間苦心致シマシ
タ、而シテ此案ヲ提出スルニ付テ種々ナル
努力ヲ拂ッタノデ、其理由ヲ委シク申述べ
タイノデアリマスガ、時間ヲ取ルベキコト
ヲ恐レマスカラ、ドウカ私共ノ修正ノ眞意
ノ在ル所ヲ御諒察下サッテ、皆樣ガ御賛成
アランコトヲ切ニ願ッテ止マナイノデアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=68
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069・森田茂
○議長(森田茂君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告願ニ依クテ其發言ヲ許シマス、川
崎克君
〔川崎克君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=69
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070・川崎克
○川崎克君 今囘御提出ニナリマシタ日本
銀行特別融通及損失補償法案、臺灣金融機
關ニ對スル資金融通ニ關スル法律案、此兩
案ヲ審議致スニ當リマシテ、私共此案ヲ提
出シナケレバナラナイ事情ニ至リマシタコ
トヲ、國家ノ爲ニ悲ム者デアリマス、大體
今囘ノ財界動亂ノ近因ハ、臺灣銀行ノ休業
ニ在ッタト云フコトハ、何人モ否定スベカ
ラザル事實デアリマス、臺灣銀行ノ休業ガ
何ガ爲ニ起ヲタカト云フコトハ五十二議
會ノ閉會後、臺灣銀行ノ「コール」ノ取付ガ
起リマシテ、本年ノ四月九日マデノ間ニ、
議會閉會後約一億二千數百万圓ノ引出ガ行
ハレタノデアリマス、尙ホ臺灣銀行ハ二億
圓ノ「コール」ノ取付ヲ受クベキ筋合デアリ
マシタ爲ニ、此危險ヲ如何ニ豫防スベキカ
ト云アコトガ問題トナッタノデアリマス、
此危險ヲ如何ニシテ防グベキカ、脚下ニ
起シテ居ル波ヲ如何ニ排スルカト云アコト
ガ、重大ナ問題デアリマシテ、之ヲ排セン
ガ爲ニハ緊急勅令ヲ以テ臺灣銀行ヲ救濟
スルニアラザレバ、若シ臺灣銀行ニシテ一
朝破綻ノ運命ニ瀬スルナラバ、臺灣銀行ノ
背後ニ在ル所ノ關係アル四十有餘ノ銀行
ガ、悉クトハ申シマセヌガ、其影響ヲ被ラ
ザルヲ得ヌ、一波起ッテ萬波之ニ伴フ結果
ハ、財界ニ非常ナ變動ヲ起スデアラウト云
フコトハ、當時想像ニ難カラザリシ事實デ
アリマス(拍手)是アルガ爲ニ當局者ハ豫知
シ得ベカリシ此危險ヲ避ケンガ爲ニ、緊急
勅令ヲ出シテ臺灣銀行ヲ一時救濟シテ、此火
ノ手ヲ止メテ置キサヘスレバアトデ起ル
所ノコトハ如何ナルコトガ起ルカモ知レマ
セヌガ、今脚下ニ起ル問題ヲ片付ケナケレバ
ナラヌト云フ關係カラ、其災厄ヲ避ケンガ
爲ニ、公共ノ安全ヲ維持セシムル爲ニ、緊
急勅令ニ依ルノ處分ヲ執ル外ハナイト云フ
コトガ、其當時ノ狀況デアッタノデアリマ
ス、然ルニ之ニ對シマシテ、樞密院諸公達
竝ニ在野黨デアリシ政友會ノ幹部諸公ハ
緊急勅令不可ナリ、臨時議會ヲ開カザルベ
カラズト云フ主張ニ立タレタノデアリマ
ス、此御議論ニ對シマシテハ、憲法上ノ解
釋トシテハ、各自議論ハアリマセウ、唯と
財政上ノ處分ノ見地ト致シマシテハ、當時
ノ事情ドウシテモ其途ヲ取ラナケレバ外ニ
途ハ無イ、果シテ財政上ノ處分ノ外ニ途ガ
アルカト云フナラバ先ヅ第一ニ日本銀行
ヲシテ非常貸出ヲヤルト云ア途ガアリマセ
ウ、併ナガラ日本銀行ハ當時既ニ二億五千
万圓ノ金ヲ臺灣銀行ニ出シテ居ッテ、普通
ノ擔保力デハンレ以上ノ貸出ハ困難デアツ
タ、若シ其以上ニヤルト云フコトデアレ
バ今日ヤッテ居ルガ如キ非常貸出ヲヤル
ナラバ出來マセウケレドモ、ソレハ出來ナ
イ、ソレナラバ外ニ途ガアルカト云ヘバ剩
餘金ヲ以テスル、當時剩餘金ノ殘リハ千九
百九十万圓ニ過ギナカ,タノデアリマスカ
ラ、到底二億ノ火ヲ消スコトハ出來ナイ
ソレナラバ外ニ途ガアルカト云ヘバ、是ハ
外ニ途ガアルナラバ、預金部ノ金デモ使フ
ヨリ仕方ガアリマセヌガ、預金部ハ御承知
ノ通リ大正十四年度ニ償還確實ナル事業ニ
シテ公益ノ爲デナケレバ使ヘヌト云フコト
ニナッテ居リマスルカラ、一朝損ヲスル憂
ノアル所ノ臺灣銀行ニハ出シ得ナイ、サウ
スレバドウシテモ財政上當時ノ處分トシテ
ハ緊急勅令ニ依フテ此處分ヲ爲スヨリ外ニ、
避クベキ途ハナカッタノデアリマスニ拘ラ
ズ、之ヲ反對セラレタ爲ニ、今日ノ動亂ノ
大原因ヲ爲シタノデアル(拍手)之ニ對シマ
シテ委員會ニ於テハ、屢、田中總理大臣及
大藏大臣等ト、此問題ニ付テ質問應答ヲ重
ネマシタ所、極メテ卒直ニ御話ニナッタコ
トヲ、私共ハ非常ニ滿足ヲ致スノデアル、
田中總理大臣ハ如何ニ言ハレタカト云ヘ
バ先ヅ是ハ一體五十二議會ヲ終ッタバカ
リノ事デアリ、左樣ナ事ヲシテ緊急勅令ヲ
出サナイデモ宜イダラウト思ッテ居ッタ、斯
樣ニ仰シヤッタ、出サナイデ宜イダラウト
仰シヤッタノハ三月二十五日以降ニ起ッタル
財界ノ事情ヲ御究メニナラナカッタ爲デナ
イカト云フコトヲ申上ゲタ所ガ、ソレハ當
時自分ハ責任ノ衝ニ居ナカッタカラト云フ
御話デアッタ、成程大藏當局トシテ或ハ內
閣員トシテハ其責ニ居ラレナカッタデアリ
マセウケレドモ、公黨ノ總裁トシテ苟モ其
責ニ居ラレル以上ハ、政治家ハ朝ニ在ルト
野ニ在ルトヲ問ハズ、其主張ト其政策ニ對
シテハ、何レノ場合ト雖モ內外ノ責任ヲ負
ハナケレバナラヌト云フコトハ當然デアル
(拍手)御調ベガ足ラナカッタ爲ニ、斯樣ナ
妄斷ヲ爲サレタノデハナイカト云フコトヲ
私共ハ申上ゲタノデアル、若シ御調ベガ足
ラズシテヤッタンデナケレバ、故意デアル
ト謂ハナケレバナラヌガ、私共ハ故意デア
ルトマデハ申上ゲナイ、更ニ臨時議會ヲ召
集シテ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=70
-
071・森田茂
○議長(森田茂君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=71
-
072・川崎克
○川崎克君(續) 臨時議會ヲ召集シテ此問
題ヲ解決スルト云フコトニ御心配ニナルノ
ナラバ四月十八日カラ四月二十二日マデ
ノ間ニ起ッタ所ノ財界ノ此動搖ハ、如何ニ
シテ避ケルカト云フ問題ガ起ッテ參ルノデ
アリマス、四月十七八日カラ四月一一十二日
マデニ起タル所ノ此財界ノ大動搖ハ、田中
總理大臣ノ仰シヤルヤウニ、臨時議會ヲ開
クニ暇ガナイノデアル、事實上時間ノ上ニ
於テハ暇ガナイノデアル若シ臨時議會ヲ
開カウトスレバモウ火ハ燃エテ來ルノデア
ル、如何ニスルカ、此事ニ對シテハ總理大
臣ハ昨日卒直ニ又斯樣ニ仰セラレタノデア
ル、斯樣ナ場合ハ卒直ニ言ヘバ、先ツ支拂
猶豫令デモヤッテ置イテ、サウシテ臨時議會
ヲ開イタラ宜カッタト思ウタト仰シヤルノ
デアル、私ハ實ニ亂暴ナル御言葉デアルト
思フノデアリマス(拍手)臺灣銀行ノ取付ガ
アルカラト云ッテ、直ニ支拂猶豫令ガ出シ
得ラレル狀況デアッタカ否カト云ヘバ、到底
左様ナコトハ許サナカッタデアリマセウ、支
拂猶豫令ヲ出ス所ノ危險ト損害ト、片一方
ニ僅カ二億圓デ濟ム損害ト兩者ヲ比較スレ
バ何レガ重ク何レガ輕イカ明デアル、現
在支拂猶豫令ヲ實施シテ今日ニ至ルマデノ
損害幾億万圓ト稱セラレテ居リマスルカ、
阪谷男爵ノ計算ニ依レバ二十億万圓ト稱セ
ラレテ居ル、二十億万圓或ハ二十億万圓以
上デアルカモ知レマセヌ、總テノ商工業ヲ
一時中止ノ狀態ニ置クベキ所ノ此支拂猶豫
令ヲ行ウテマデモ、尙且ツ吾々ガ主張シタ
ル臺灣銀行救濟ノ勅令案ヲ不可ナリト爲サ
ルノデアルカ、其輕重利害ヲ辨ヘザルモ甚
シキ議論ナリト謂ハネバナラヌ、更ニ本案
ノ立案ノ根本ニ付キマシテハ、私共甚ダ遺
憾ノ點ガ多イノデアリマス、如何ナル點ニ
於テ遺憾ノ點ガ多イカト申シマスレバ、此
法案ノ生レテ居ルノハ財界ノ安定ノ爲デア
ル、金融機關ノ軌路ヲ滑ニスルガ爲デアル
ト言ハルヽノデアリマス、之ヲ救濟センガ
爲ニ、安定セシメンガ爲ニ國民ノ負擔ヲ七
億要求致シテ居ルノデアリマス、銀行業者
預金者ハ此法案ノ外ニ何等カノ負擔ヲスル
カト云ヘバ此法案ノ外ニハ何等ノ負擔モ致
サナイノデアル、自分ノ家ガ燃ヱテ居ル、
自分ノ家ガ燃ヱテ居ルナラバ、自分自ラ火
ヲ消シテ、足ラザルヲ他人ニ仰グハ當然デ
アルニモ拘ラズ、銀行業者預金者ハ手ヲ拱
イテ、國民總テノ手デカヲ盡シテ火ヲ消サ
ナケレバナラヌト云フノハ、純理ノ上ニ於
テ、相容レザル所ノ思想デアルト謂ハナケ
レバナラヌノデアル、何トカシテ是ハ方法
ガ無カラウカト云フコトヲ御尋致シタ所
ガ之ニ對シ大藏大臣ハ、此點ニ付テハ自
分モ考ヘテ居ルガ、方法ハムヅカシイト伸
シヤマタ、成程方法ハムヅカシイデアリマ
セウ、ムヅカシイデアリマセウケレドモ、
休業銀行ニ之ヲ利用スルナラバ、直ニ出來
マス、先ヅ減資減配ヲ行フ、預金者ハ自ラ
預金ノ割合ヲ制限シテ來ル、而シテ自分ノ
負擔ノ出來ルモノダケハ負擔シテ、國民ニ
後ノ負擔ヲ仰グト云フ途モアルノデアリマ
ス、然ルニ、是等ノ方法ヲ取リ得ナイノミ
ナラズ、第一今度ノ救濟案ノ骨子トナッテ
居リマスル金利ニ至リマシテハ、私共希望
條件ノ中ニ述べテ置キマシタ通リ、ドウシ
テモ此金利ノ安イト云フコトハ甚ダ同意シ
兼ルノデアル、一體斯樣ナ非常ナ場合ニ於
ケル金ヲ借リルト云フ必要ノ起ッタ時ニハ、
多少ノ高イ金利ヲ拂ヲテモ必要ガアルノデ
アリマス、英吉利アタリノ例ヲ調ベテ見マ
スルノニ、斯樣ナ場合ニハ何時デモ高イ金
利デ出シテ居ルノデアリマス、日本獨リ最
低利子-國債ヲ擔保トスル最低利子デ以
テ、一錢七厘ト云フヤウナ安イ利息デ貸ス
ト云フヤウナコトヲスル例ハ、私共不敏
ニシテ知ラナイノデアルガ、是デモ幾ラカ
高クシテ國民ニ負擔ヲ間接ニデモ、直接ニ
デモ避ケ得ラレル途ヲ執ラレルト云フコト
ハ當局者トシテ本案ニ對スル最モ深切ナ
ル處置デアルマイカト私ハ思ウテ居ルノデ
アリマス、此意味ニ於キマシテ先ヅ金利ヲ
少シク高クスルト云フコトヲ主張シナケレ
バナラヌノデアリマスルガ、金利ガ安ケレ
バ囘收力ガ鈍イト云フコトハ明デアリマ
ス安イ金利デ金ヲ借リテ、而モ不動產抵
當デ金ヲ借リテ之ヲ固定スルノデアル、大
藏大臣ノ仰シヤル所ニ依ルナラバ、百二十
億ノ預金中先ヅヤット百億ト見テ、後ノ五十
億ハ貸出スモノト豫知セラレルノデアルカ
ラ直ニ五十億ト出ルモノトハ見マセヌケ
レドモ、漸次五十億ハ出テ行クモノト見ナ
ケレバナラヌノデアリマスガ、斯樣ニ出テ
行クナラバ、通貨ハ勢ヒ膨脹セザルヲ得マ
セヌ、其膨脹シタ通貨ハ大藏大臣ノ言葉ニ
依レバソレハ溜メテ居ルダケデアル、死
藏シテ居ルダケデアッテ、市場ニ現レナイカ
ラ膨脹ニナラヌト仰シヤルケレドモ、兌換
ノ增發ニナルコトハ明デアリマス、兌換ノ
睡眠狀態ト申シテ宜カラウカ、少クトモ睡
眠狀態ハ續クノデアル、今日支拂猶豫令ヲ
ヤッテ居ッテスラモ、今日通貨ハ十六億デア
ル、此十六億ノ收縮ハマダシナイノデアリ
マス、若シ此支拂猶豫令ヲ明ケタナラバ、
必ズ二十億以上ニナルト云フコトハ是ハ
明ニ見ラレル例デアル、此通貨ガ膨脹シテ
收縮力ヲ失ッテ、所謂彈力性ヲ失ッテ、通貨
ノ效用ヲ失フ所ノ睡眠狀態ヲ來スト云フコ
トハ經濟上最モ不健全ナル狀況ヲ誘致ス
ベキモノナリト謂ハナケレバナラヌノデア
リマス、兌換ノ增發ハ直ニ物價ノ騰貴ニナ
ルトハ申シマセヌケレドモ、必ズ物價ノ騰
貴ヲ誘致致シマス、物價ノ騰貴ヲ誘致致シ
マスルナラバ、輸出入ノ關係ハ漸次惡クナ
リマセウ、而シテ爲替ノ關係モ亦良クナイ
デアラウト思ヒマス、其國民ノ國際經濟ノ
關係ハ惡クナリ、國民ノ負擔力ガ段々增加
シテ參ルト云フ狀況ヲ呈スルノデアリマス
カラシテ、斯樣ナ狀況ハ避ケ得ラレルダケ
避ケテ置クコトガ必要デアルト思ヒマスル
爲ニ、斯樣ナ見地ニ立ッテ、金利ハ最低利子
ヨリモ高カルベシト云フ議論ヲ立テルノ
ハ、此見地ニ立ッテ唱ヘルノデアリマス(拍
手)更ニ此日本銀行ノ特別融通法案及臺灣
ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル此兩
案ヲ見マスルト、成程多少目的モ違ヒマス
ケレドモ、兎ニ角財界安定ト云フコトヲ主
眼トシテ打立テラレテ居ル、此兩案ガ餘リ
ニ矛盾ヲ極メテ居ルコトニ驚キマス、先ヅ
第一ニ日本銀行枚濟案ヲ見マスルト云フ
ト、是ハ預金者救濟デアルト云フ立前カラ
立案セラレテ居ルノデアル、片一方ノ臺灣
銀行ハドウ云フ立前デ來テ居ルカト云ヘ
バ、是ハ金融機關ノ機能ヲ維持スルト云フ立
場ニ立ッテ居ル、全ク其立前ハ違フノデア
リマス、若シ日本銀行救濟案ノ主眼トスル
所ガ、預金者救濟ト云フ立前デアルナラ
バ預金者ハ現在營業シテ居ル預金者モ、
營業ヲ止メテ休業狀態ニアル所ノ預金者
モ、共ニ救濟スベキモノデアッテ、兩者ノ間
ニ差別待遇ヲ設ケルベキモノデハナイト云フ
ノガ、吾々ノ議論ノ骨子デアリマス(拍手)
此議論ニ對シマシテハ、大藏大臣ハ日本銀
行特別融通補償案ハ、現在休業狀態ニアル、
卽チ現ニ預金ノ拂戾ノ停止中ニアル所ノモ
ノニ對シテハ這入ラナイノデアル、斯樣ニ
仰セラレタノデアリマスルガ、此事ハ昨日
ノ委員會ニ於テ段々ニ論議ヲ重ネラレテ、
此法文ヲ正面解釋ヲ致スナラバ、大藏大臣
ノ御解釋ハドウシテモ法律上ノ議論トシ
テハ當箝ラナイ、日本銀行ハ銀行ヨリ其預
金ノ支拂準備ニ充ツル爲ト云フコトニナッ
テ居リマスカラ、休業シテ居ル銀行ト雖モ
法人格ヲ備ヘテ、破產ノ宣告ヲ受ケテ銀行
ガ無クナッテ居ラナイ以上ハ、是ハ支拂準
備ニ充ツルガ爲ニ、預金ノ充當ヲ爲スト云フ
コトノ働ヲ爲スコトハ當然デアッテ、此法文
直接ノ解釋カラ言ッタラドウシテモ此銀行ハ
休業銀行ヲ含マズト云フヤウナ議論或ハ立
法者ノ解釋ハ、一體全體ノ法文ノ解釋ノ原
則論ノ上カラ許スベキ事デハナイノデアリ
マスルカラシテ、之ニ對シテハ委員會ニ於
テ申上ゲタ如ク、「現ニ預金ノ拂戾ノ停止中
ニアラザル」ト云フ文字ヲ加ヘテ、所謂休
業銀行ヲ含マナイト云フ意味ヲ明ニシマシ
テ、サウシテ最後ニ於テ休業中ノ銀行、卽
チ現ニ預金ノ拂戾ヲ停止中ノ銀行デアッテ
モ、將來營業ノ繼續ノ見込アルモノニ付テ
ハ卽チ之ヲ救濟スル、補償ヲスルト云フ
コトノ意義ヲ明ニ致シタノデアリマス、第
二ニ此臺灣ノ金融機關ノ問題デアリマス、
臺灣ノ金融機關トハ、如何ナルモノヲ指ス
ノデアルカト言ヘバ、第一臺灣銀行、第二
ハ臺灣ニ支店ヲ有シテ居ル所ノ諸銀行、第
三ハ信用組合ト云フコトヲ言ハレタノデア
ル、金融機關ノ中ニハ、臺灣ニハ明ニ信用
組合マデ包含セラレテ居ッテ、日本內地ノ
方ハ信用組合ヲ除外サレテ居ルト云フコト
ハドウシテモ矛盾シタ立法ノ精神デ、吾
吾理解出來ナカッタノデアル、最後マデ此事
ハ諒解出來ナイデ濟ンデシマッタコトヲ、
私共ハ遺憾トスルノデアリマスガ、斯樣ナ
事ニナッテ居ルノデアリマス、言葉巧ニ臺
灣銀行、統治上臺灣ニ於ケル金融機關、
其機能ヲ維持スルト云フコトヲ仰シヤル
ケレドモ、是ハ主トシテ臺灣銀行救濟デ
アル、臺灣銀行救濟ト云フコトヲ表面カ
ラ名乘リマスレバ、前ニ臺灣銀行ノ救濟ニ
反對シタ立場ガアルモノデアルカラ、頭隱
シテ尻隠サナイ所ノ弊ニ陷ッテ居ルノデア
ル(拍手)明ニ臺灣銀行救濟デアッテ、其臺
灣銀行救濟デアルト云フコトハ、後デ申述
ブル數字ニ依シテ明ニナルノデアル、又此
日本銀行ノ方ハ金ハ貸スケレドモ、貸出ハ
致スケレドモ、或ハ五十億モ出スケレド
モ、其補償ヲスルノハ五億ニ限ル、國民ト
シテ負擔ヲスルノハ五億圓ニ限ル、然ルニ
臺灣銀行ノ分ニ至ッテハ、是ハ無擔保貸付
デアリマシテ、貸出スダケガ損失ニナルノ
デアル、全部ガ損失ヲ初メカラ豫期シテ居
ルノデアル、是ハ實ニ亂暴ナル貸付、此亂
暴ナル貸付ハ何ヲ狙ッテ居ルカト言ヘバ
臺灣銀行ヲ狙ハズニ、是ハ起リマセヌ、卽
チ臺灣銀行ヲ救濟スルト言ヘバ反對ヲ受
ケ、又前ニ反對致シタ立場カラ、之ヲ態、、
御避ケニナルノデアリマセウケレドモ、事
實ハ臺灣銀行ノ救濟デアル、而シテ「コー
ルハ別デアルト仰シヤル、財界ノ大變動
ヲ起シタ第一ノ導火線ハ何デアッタカ、地
雷火ハ何デアッタカ、「コール」デアッタ、其
一番危ナイ「コール」ヲンッチ除ケニシテ置
イテ、定期預金ノ方ヲ返シテ行クト云フヤ
ウナ案、ソレ白身自ラヲ僞シテ居ル案ト言
ハナケレバナラヌノデアル(拍手)モウ少シ
正直ニ仰セラレタ方ガ私ハ宜イト思フ、先
程鷲野君ノ計算ニ依リマスルト云フト、臺
灣銀行救濟ダケハ一億二千六百万圓モアレ
バ足ルト云フコトデアリマス、私共ノ計算
デモ、矢張此數字ト餘リ違ハナイ數字ガ出
テ來ルノデアル、此細カイ數字ハ豫算委員
會ニ於テ、數字ヲ擧ゲテ御尋致シタノデアリ
マスケレドモ、此御尋ニ對シテ二重ノ貸付ニ
ナルノデハナイカト云フコトヲ申シタノニ
對シテ、大藏大臣ノ御答辯ガ明瞭ヲ缺イテ
居ッタ、是ハアンナコトヲシテモ、臺灣ノ
本店ヲ先ヅ生カシテ置イテ、之ヲ助ケテ置
イテ、サウシテ助ケタ餘力ヲ以テ、支店ニ
在ル所ノ「コール」ヲ一部拂ッテ置クト云フ
コトハ、小川君ノ昨日ノ御質問ニ對シテ
モ、頭隱シテ尻ヲ隱サナイ所ノ本案ハ明瞭
ニ其事實ヲ告白シタモノト云ウテ不可ナラ
ヌト思フノデアリマス(拍手)左樣ニナテテ
居リマスルガ、更ニ私共希望條件トシテ申
述べマシタ中ニ、此產業組合ニ對シマスル
所ノ組合員外ノ貯金ニ對シマスル貸付ノ方
法ニ付テ希望條件ヲ述タノデアリマスル
ガ、之ニ對シテハ先程岡田君カラ委員長ニ
御質問モアリマシタカラ、此際私カラ趣意
ヲ明カニシテ置キタイト思ヒマス、一體此
產業組合ハ御承知ノ通リ相互組織ノモノデ
アリマシテ、組合員ハ相互ノ間ニ成立ッテ
居ルト云フコトハ是ハモウ明カナコトデ
アッテ、銀行トハ其點ニ付テハ性質ヲ異ニ
致シテ居リマス、唯、產業組合中ニ於キマ
シテ、此組合員外ノ預金ヲ預カッテ居ルモ
ノガアルノデアリマス、卽チ組合員ノ家族
ノモノデナク、又組合員ノ公共團體ノモノ
デナク、單ニ組合外ノ預金、此預金ハ幾ラ
アルカト言ヒマスト、約一千三百万圓程ア
ルノデアリマス、此一千三百万圓アリマス
ル此預金ハ、是ハ貯蓄銀行法ニ依リマシテ
四分一ノ供託ヲ致シテ居ルノデアリマス、
同時ニ普通ノ信用組合ト違ヒマシテ、是ハ
無限責任デアリマス(發言スル者アリ)終リ
迄御聽キナサイ、無限責任デアリマス、卽
テ其機能ニ於テハ庶民銀行ノ働キヲ爲シテ
居ルモノデアル、此庶民銀行ノ働キヲ爲シ
テ居ル所ノモノガ取付ヲ受ケル、取付ヲ受
ケタ所ノ事實モアリマスガ、ソンナコトハ
今申上ゲル必要ハナイ、明ニ事實ガアル、
神戶ニ於テ、大阪ニ於テ、東京ニ於テ其事
實ガアル、更ニ今度若シ之ニ對シテ何等ノ
處置ヲ執ラナカッタ時ハ、財界ノ不安ヲ除
クコトヲ目途トシテ居ル所ノ此法律ノ精神
ヲ滅却スルノデアル、財界ノ不安ヲ除クニ
ハ先ヅ金融機關ヲ整理スルト云フ趣意カ
ラ行キマスト云フト、臺灣ニ於テハ、組合
ニ對シテ金ヲ出シテ居ルノデアルカラ、ド
ウシテモ此金ヲ出スコトガ合理的デアルト
思フノデアルガ、之ニ對シテハ大藏大臣ハ
中央金庫トシテ金ハ出ルト云フ、成程中央
金庫ハ出シマス、出シマスケレドモ中火金
庫ハ擔保ノ問題ニ付テハ不動產貸付ハ致サ
ナイ、信用組合ハ不動產ハ澤山持ッテ居ル
ケレドモ、ソレヲ抵當ニシテ金ヲ借ル譯ニ
行キマセヌ、此法律精神カラ行ケバ、不動
產ノ見返擔保デ貸シテ貰ヘルノデアル、此
法律カラ除外サレルト云フコトハ、組合員
ニ取ッテハ甚ダ遺憾デアルカラ、此中二入
レタイケレドモ、法律ヲ修正シナケレバナ
ラヌカラ、訓令カ何カデ以テ之ヲ助ケル途
ヲ造リタイト云フノガ、卽チ私共希望條件
ヲ附シタ所ノ理由デアリマス、以上ノ理由
ニ依リマシテ、私ハ本案ヲ修正スレバ、先
程カラ申上ゲタ通リ、其根本ニ於テ修正ヲ
シナケレバナラヌ、中ニハ矛盾撞著ヲ極メ
タ事モ多數アルノデアッテ、之ヲ短期間ノ
間ニ修正シ、之ヲ直スト云フコトハ容易
ナ事デナイノデアリマスカラ、先程申上ゲ
タ修正ノ上ニ、四箇ノ希望條件ヲ附シマシ
テ、本案ニ賛成ヲ致ス所以デアリマス拍
き発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=72
-
073・森田茂
○議長(森田茂君) 秦豐助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=73
-
074・秦豐助
○秦豐助君 簡單デアリマスカラ、此席カ
ラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=74
-
075・森田茂
○議長(森田茂君) 登壇ヲ願ヒマス
〔秦豐助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=75
-
076・秦豐助
○秦豐助君 我國ノ未曾有ノ金融界ノ動
搖洵ニ憂フベキモノガアッタノデアリマ
ス、然ルニ田中內閣組織以來、直ニ支拂猶
豫令ヲ執行致シマシテ、暫ク人心ノ鎮靜ヲ
得タノデアリマス、而シテ玆ニ臨時議會ガ
開カレマシテ、日本銀行特別融通及損失補
償法竝ニ臺灣ニ於ケル金融機關ニ對スル特
別融通法案ガ提出セラレマシタ、之ヲ見ル
ニ此日本銀行ノ特別融通ニ付キマシテハ、
從來取引ヲ致シテ居ル所ノモノ以外ノ總テ
ノ銀行、又從來認メテ居ル所ノ證劵以外ノ
證劵、其他不動產、又財團ヲ擔保トスル所
ノ債權、サウ云フヤウナモノニマデモ、此
見返品ノ範圍ヲ擴大致シマシテ、サウシテ
其ノ超過額ノ國債ニ付テハ時價一割、又地
方債、社債ニ付テハ九掛半、株卷ニ付テハ
九掛ト云フヤウナ從來ニ見ザル所ノ特別ノ
融遁ヲスルト云フコトニ致シテ居ル、而シ
テ此預金支拂ノ爲ニスル所ノ此貸出ニ付キ
マシテハ、其利率ハ國債ヲ擔保トスル所ノ
最低率ヲ以テスルト云フ考デアルト云フヤ
ウナ說明ヲセラレマシタ、之ニ依リマスル
ト云フト、或ハ場合ニ依クテハ十億、二十
億三十億、五十億位ノ金マデモ、必要ナ
ラパ特別融通ヲ致シマシテ、サウシテ此預
金者ノ心ガ非常ニ不安ニ驅ラレテ居クタト
云フヤウナ場合、之ヲ安定ヲ致シ、進ンデ
ハ我國ノ金融機關ノ整備ヲ茲ニ期スルト云
フ所ノ趣意ガ十分ニ現レテ居リマシテ、且
ツ之ニ依レバ其通リ實效ヲ期スルコトハ明
白デアルト吾々ハ信ズルノデアリマス、故
ニ私ハ此法案ノ施行ニ依リマシテハ、大體
五十億圓ノ一割、五億圓ノ損失ガ假ニアル
モノトシテ此法案ハ出來テ居リマスケレド
モ、實際ニ於テ此經濟界ノ人心ガ安定致シ
マスルナラバ、決シテソレダケノ取付モナ
〃、又貸出モナクシテ濟ムノデアリマシ
テ、隨テ之ニ依ル所ノ損失ヲ五億圓ト見
積ッテ居ルノハ最高限度デアッテ、或ハソレ
ガ千万圓デ濟ムカ一億圓マデモ出サナイカ
モ知レヌト吾々ハ信ズルノデアル、要スル
ニ今日ハ樞密院デドウシタ、此動搖ノ原因
ハ何所カラ來タ、ソンナ過ギタ昔ノ事ハ、
此議會以外ノ所デ緩々私ハ述ベテ宜カラウ
ト思ヒマス、私ハ此所ニサウ云フ事ヲ述べ
マセヌ、唯〓此實際ノ目的ヲ達スル爲ニハ、
此法案ハ極メテ適切ナル法案デアルト云フ
コトヲ深ク信ジマシテ、此案ニ賛成ヲ表ス
ルコトヲ言明スル次第デアリマス(拍手)而
シテ此希望條件ト致サレマシテ提出サレテ
居ル中、、金利ヲ高メ夕方ガ宜イ、貸付利子
ノ步合ヲ高メタ方ガ宜イト云フノガ、是ガ
新黨倶樂部ノ諸君ノ意見デアリマスガ、吾
々ハ矢張大藏大臣ノ考ヘテ居ラルヽ通リ、
國債ノ貸付、是ノ最低利率ガ最モ適當デア
ル、成ベク此貸付歩合ハ安クスル方ガ宜シ
イト考ヘル次第デアリマス、何トナレバ之
ニ依ッテ、一面ニハ銀行ガ立行イテ整頓ヲ
シテ行ク上ニ於テ、最モ此利子ガ安クナケ
レバ出來ナイコトデアル、唯、此利子ヲ高
クスルト云フコトニ付テノ御考ハ、ソレハ
科子ガ安ケレバソレガ爲ニ高ク利子ヲ拂ク
テ、吸收シテ居ル預金ノ方ヲ返シテ、サウ
シテ此金ノ方ヲ借リテ居ルト云フヤウナ不
正ナコトガアリハシナイカ、或ハ兌換劵ガ
膨脹スル虞ガアルカラシテ、ソレヲ吸收ス
ル爲ニ必要ナモノデアルト云フ色こノ點カ
ラ考ヘラレタモノデアルト思フノデアル、
併ナガラ吾々ハ此問題ハ、此金融ノ整理ヲ
期スルト云フコトガ副產物トシテ、ドウシ
テモ必要デアルノデアリマスカラシテ、此
金利ヲ成ベク安クスルト云フコトガ適切デ
アルト云フコトハ、實際上ノ目的カラシテ
確ニサウデアルト云フコトヲ確信シテ疑ハ
ヌノデアリマス、又信用組合ノ點ニ付キマ
シテハ、是ハ市街地ノ信用組合ノ組合員以
外ノ貯金、ソレノ引出ニ對スル所ノ特別融
通ノ途ヲ開クト云フコトハ、固ヨリ必要デ
アルト吾々モ信ズルノデアル、併ナガラン
レダケデハ駄目ダ、財界動搖ノ影響ヲ被ッ
タモノハ、單リ市街地ノミニ限ラヌ、又組
合員以外ノ貯金バカリニハ限ラヌ、故ニ一
般信用組合ノ組合員ノ貯金ノ引出ニ對シマ
シテモ、又各種產業組合ノ資金調達難等ニ
關係シマシテ、相當資金ノ融通ヲ圖ル爲
ニ、殊ニ都會及農村ノ庶民金融ノ途ヲ開ク
爲ニ、此一般ノ信用組合ニ對シテモ、中央
金庫ヲシテ其融通ノ途ヲ開カシムルヤウ
ニ、吾々ハ希望スル次第デアリマス(拍手)
又臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關ス
ル法律案ニ付キマシテハ、帝國ノ海外ニ於
ケル經濟信用ヲ維持スル爲ニモ又臺灣ノ統
治上ニモ極メテ必要デアルト云フコトハ
是ハ言フマデモナイコトデアル、而シテ之
ニ關シマシテハ、彼ノ若槻内閣ノ緊急勅令
案、「コール」ノ回牧ニ對スル爲ニ、アノ二
億圓ノ緊急勅令案ヲ出シマシタガ、彼ト此
トハ結果ニ於テ同ジデアルト云フヤウナ御
意見モアッタヤウデアル、併ナガラ是ハ全
ク誤ッタル見解デアル、ソレ故ニ此點ニ付
キマシテハ、私ガ詳シク申上ゲルマデモナ
ィ、十分ニ此事ハ分シテ居ルコトヽ思ヒマ
スカラシテ、單ニ若槻內閣ノ緊急勅令案ト
ハ絕對ニ目的ヲ異ニスルト云フコトヲ述
ベマシテ、是亦最モ時局ニ適切ナル案トシ
テ之ニ贊成ノ意ヲ表スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=76
-
077・森田茂
○議長(森田茂君) 中村啓次郞君
〔中村啓次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=77
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078・中村啓次郎
○中村啓次郞君 諸君、極メテ簡單ニ委員
長ノ報告ヲ支持スル者デアリマス、我國ノ
經濟界ハ大正九年ノ反動以來、漸次不振ニ
陷リマシテ、之ニ加フルニ大正十一一年ノ關
東震災ノ不幸ニ際會致シマシテ、不景氣ノ
嘆聲ハ閭巷ニ滿ツルニ至ッタノデアリマスい
比時ニ方リマシテ、眞ニ此經濟界ヲ整理シ
テ景氣ノ挽回ヲ策シマスル者ハ、何人モ其
當時カラ橫ヲテ居リマスル經濟界ノ二ツノ
大キナ妖雲ヲ排除シナケレバナラナイト心
掛ケタノデアリマス、其經濟界ニ橫シテ居
リマスル妖雲ノ其一ツハ何デアルカト申セ
バ西原借款デアル、此西原借款ヲ整理シナ
ケレバ興業銀行、臺灣鐵行、朝鮮銀行ハ疾
ノ昔ニ破綻ヲ致シテ居ルノデアリマス、卽
チ今日ノ經濟界ノ動亂ハ今日ニ見ルニアラ
ズシテ、昨年ニ之ヲ見テ居ルノデアル、當
時卽チ五十一議會ニ於キマシテ、此整理ガ
行ハレタ、其後ニ殘ッテ居リマスル一ツノ
妖雲ハ何デアルカト申セバ、震災手形ノ問
題デアル、此震災手形ヲ處理致サナケレバ、
經濟界ノ恢復ト云フモノハ出來ナイノデア
ル、ソコデ、前議會ニ於キマシテ此震災手
形ノ處理法案ガ議會ニ繫屬致シタノデアリ
さく、此震災手形サヘ完全ニ處理セラレタ
ナラバ、經濟界ハ安全ニ相成ッテ、景氣ハ恢
復サレタ譯デアルノデアリマス、然ルニ此
案ガ議會ニ繫屬致シマシタル場合ニ、帝國
議會ニ於キマシテ、種、論議ガ上下サレマ
シテ、其言論ノ爲ニ、極メテ過敏ナル經濟
界ヲ刺戟致シテ、遂ニ經濟界ヲ大混亂ニ陷
レタ、故ニ已ヲ得ズ玆ニ議會終了後、一億
ノ金ヲ出シテ臺灣銀行ヲ救濟シナケレバナ
ラナイト云フ破目ニ立至ッタノデアル、春
秋ノ筆法ヲ以テ致シマスレバ、議會ノ言論
ガ國民ニ對シテ二億ノ負擔ヲ負擔セシメル
ニ至ッタコトニ相成ッタノデアリマス、而シ
テ此二億ノ負擔ヲ負擔セシムル所ノモノ
ハ、帝國議會ノ閉會中デアリマスルガ故ニ、
茲ニ緊急勅令案トナッテ樞密院ニ繫屬致シ
タノデアル、然ルニ樞密院ノ諸公ガ、古キ
憲法ノ解釋論-憲法ノ古キ解釋論又ハ敵
本主義ノ反對論ニ依リマシテ、玆ニ又國民ニ
對シテ、五億ノ負擔ヲ重荷シナケレバナラ
ナイコトニ相成ッタノデアル、是ハ此二法案
ノ上ニ現レマシタ數字デアリマスルガ、七
億ト云フ數字ハ、此法案ノ上ニ現レマシタ
數字デアリマスガ此七億ノ外ニ國民ノ被ク
タル損害ハ擧ゲテ數フルベカラザル所ノモ
ノガアルノデアル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=78
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079・森田茂
○議長(森田茂君) 靜〓ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=79
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080・中村啓次郎
○中村啓次郞君(續) 上ハ新帝陛下ノ御宸
襟ヲ惱シ奉リ、下ハ現在ニ於ケル國民ヲ禍
シ、將來ニ於ケル國民ニ大ナル負擔ヲ歸ス
ルニ至リマシタル者ノ責任ヲ問フベキコト
ハ必ズ國民ノ糺彈ニ俟ツベキコトヲ信ジ
テ疑ハナイノデアリマス、併ナガラ今日ハ
國民ノ糺彈ヲ代ッテ私共ガ致シマスル時機
デハナイノデアル、國民ノ糺彈ハ必ズ或ル
時機ニ於テ行ハルヽコトヲ信ジズルノデア
ル、併シ今日ハ責任ヲ問フノ時ニアラズシ
テ、此目前ニ横ッテ居リマスル經濟界ヲ一
日モ早ク安定シナケレバナラナイト云フコ
トヲ攻究スル時デアルノデアリマスルガ故
ニ、私共ハ此責仕ヲ問フコトヲ敢テ致サナ
イノデアリマス專ラ此經濟界ヲ安定スルコ
トニ對シテ、攻究ヲ進メテ參クテ居ルノデ
アリマス、私共ハ此法案ヲ受取リマシテ之
ヲ審議致シマスノニ、此法律ノ形式ニ於キ
マシテモ、內容ニ於キマシテモ、隨分〓究ヲ
重ネタイ點ハ澤山アルノデアリマス、併ナ
ガラ今ヤ經濟界ノ動亂ハ焦眉ノ急デアリマ
ス、故ニ澤山ノ時間ヲ持チマセヌカラ、少
クトモ此法文ノ上ニ餘リニ不明ニ過ギル點
ダケヲ玆ニ明ニ致シ、卽チ第一條ノ「日本
銀行ハ銀行ヨリ其ノ預金」云々、銀行ト云
フ中ニハ休業銀行モ含ムコトハ明デアリマ
ス、併ナガラ政府ハ此中ニハ休業銀行ヲ含
マナイト云フガ故ニ、此點ヲ明ニ致シマシ
テ、現ニ預金拂戾シ停止中ニアラザルト云
フ修正ヲ致シテ、此意義ヲ明ニ致シタノデ
アリマス(拍手)而シテ尙ホ休業銀行卽チ現
ニ支拂停止中ノ銀行ニシテ將來營業繼續ノ
見込アルモノニ付キマシテハ前項ノ規定
ヲ適用スルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス、是モ政府ノ原案ニハナカッタノデアリ
さく、政府當局ノ說ク所ニ依シテ、其意思
ヲ忖度スルコトハ出來マシタケレドモ、此
法支ニハ明ニナッテ居ナカッダノデアリマ
ス、而シテ此金ノ使ヒ拂ヒヲ致スノニ杜撰
ニ使ハレマシテハ國民ガ堪ッタモノデハア
リマセヌカラ、是ハ特ニ此特別融通ヲ爲ス
ニ付キマシテパ、特別融通審査會ノ議ヲ經
ルト云フコトニ致シタノデアリマス、此外
幾多ノ修正ヲ試ミタイト思フ事ガゴザイマ
スルシ、内容ニ付キマシテモ幾多ノ審議ヲ
進メタイト思ヒマスルケレドモ、今日議論
ヲ上下致シマシテ此案ヲ完璧ニ致シマスル
ニヨリ、此案ヲ完璧ニスルガ爲ニ試ミラレ
マスル言論ガ、又再ビ經濟界ニ或ル衝動ヲ
與ヘマシテ、曩ニ衆議院ノ雄辯家、或ハ樞
密院ニ於ケル所ノ博辯宏辭ノ爲ニ、國民ノ
蒙ッタル損害ヲ考ヘマシタル場合、此前者
ノ苦キ經驗ヲ考ヘマシタル場合ニ於テハ
吾々ハ總テ言フベキ事ヲ言ハズシテ、腹藝
ヲ爲スベキ時デアルト確信致スノデアリ
マス(拍手)吾々ノ此腹一ツデ財界ガ安定
シ、吾々ノ腹一ツデ國民ガ生活ノ安定ヲ得
ルナラバ、吾々ハ是レ程良イ事ハナイト考
ヘマスルガ故ニ、言ハント欲スル所ノモノ
ハ總テ之ヲ言ハズ、而シテ此案ニ賛成ヲ致
サウトスルノデアリマス(拍手)先程來承リ
マスルト、此案ガ六時半マデニ濟シマスレ
貴族院ニ參リマシテ、貴族院ハ之ヲ通
過サセルト云フコトデアリマス、本法案ニ
關シマシテ、衆議院ガ愼重審議致シマシタ
其結果、貴族院ガ之ヲ無條件ニテ衆議院ノ
修正通リ容レルト云フコトデアルナラバ、
是程結構ナコトハナイノデアル(拍手)卽チ
玆ニ金錢法案ニ付テハ貴族院ガ衆議院ノ意
見ヲ尊重スルト云フ算外ノ利益ヲ收メテ、
而シテ此壇ヲ降ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=80
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081・森田茂
○議長(森田茂君) 是ニテ討論ハ終結致シ
マシタ、是ヨリ採決ニ入リマス、兩案ニ對
シテハ、修正案モ出テ居リマスカラ、各案
每ニ採決ヲ致シマス、先ヅ日本銀行特別融
通及損失補償法案ニ對スル修正中、湯淺凡
平君提出ノ修正案ニ付キ採決致シマス、湯
淺君ノ修正案ニ賛成ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=81
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082・森田茂
○議長(森田茂君) 起立少數、仍テ湯淺君
提出ノ修正案ハ否決サレマシタ、次ニ武藤
山治君外一名提出ノ修正案ニ付キ採決致シ
マく、武藤君ノ修正案ニ贊成ノ諸君ハ起立
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=82
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083・森田茂
○議長(森田茂君) 起立少數、仍テ武藤君
外一名提出ノ修正案ハ否決サレマシタ、次
ニ委員長ノ報告ニ付キ採決致シマス、委員
長ノ報告ハ修正デアリマス、此修正ノ部分
ノ委員長報告ニ賛成ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=83
-
084・森田茂
○議長(森田茂君) 起立多數、仍テ修正ノ
點ハ委員長報告ノ通リ決シマシタ(拍手)其
他ノ點ハ原案通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=84
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085・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ガナケレバ其通
リ決シマス、是ニテ第一ノ案ハ委員長報告
通リ修正可決セラレマシタ(拍手)次ニ臺灣
ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關スル法律
案ニ對スル修正案ニ付キ採決致シマス、武
藤山治君外一名提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君
ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=85
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086・森田茂
○議長(森田茂君) 起立少數、仍テ武藤君
外一名提出ノ修正案ハ否決サレマシタ、次
ニ本案ノ委員長報告ニ付キ採決致シマス、
本案ハ委員長報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=86
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087・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ本案ハ委員長報告通リ決定シマシ
タ(拍手)是ニテ兩案共第二讀會ヲ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=87
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088・井本常作
○井本常作君 直チニ兩案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=88
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089・森田茂
○議長(森田茂君) 別ニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=89
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090・森田茂
○議長(森田茂君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマス、直ニ兩案ノ
第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマ
ス
日本銀行特別融通及損失補償法案
第三讀會
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關
スル法律案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=90
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091・森田茂
○議長(森田茂君) 別ニ御異議ガゴザイマ
セヌカラ、兩案共第二讀會議決ノ通リ可決
確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=91
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092・井本常作
○井本常作君 暫時休憩セラレンコトヲ望
ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=92
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093・武藤山治
○武藤山治君 私ハ只今ノ休憩ノ動議ニ反
對デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=93
-
094・森田茂
○議長(森田茂君) 只今ノ休憩動議ニ武
藤山治君カラ反對ガアリマス、武藤山治君
〔武藤山治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=94
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095・森田茂
○議長(森田茂君) 暫ク御著席ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=95
-
096・武藤山治
○武藤山治君 諸君私ハ井本常作君ノ休憩
ノ動議ニ反對ノ意見ヲ陳述致シマス、反對
ノ意見ト申スヨリモ、寧ロ私ハ御懇談申上
ゲタイト考ヘルノデアリマス、兩三日來、
諸君ガ財界救濟ノ爲ニ政府ヨリ提出セラレ
タル法案ノ御審議ノ爲ニ、晝夜非常ナル御
努力遊バサレタコトニ付キマシテハ
〔發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=96
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097・森田茂
○議長(森田茂君) 静肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=97
-
098・武藤山治
○武藤山治君(續) 今日皆樣ハ非常ナ御疲
勞ヲ御感ジニナッテ居ルト云フコトヲ深ク
感ズルノデアリマス、故ニ此際休憩ノ動議
ヲ御提出ニナリマシタコトニ付キマシテハ
一應御尤デハアリマスルケレドモ、玆ニ私
ガ皆樣ニ申上ゲタイノハ、若シ玆ニ皆様ガ
御休憩ニナルト致シマスレバ、只今中村啓
次郞君カラ此壇上ニ於テ御述べニナリマシ
タ通リ、政府提出ノ二法案ハ貴族院ニ廻付
サレマシテ、思フニ貴族院ニ於キマシテハ
極メテ速ニ本法案ヲ議決セラルヽコトヽ私
ハ考ヘルノデアリマス、斯ク致シマスルト
最早本會議ハ再ビ開カレズシテ、休憩ノ
儘流會スルノデハナイカト私ハ思フノデア
リマス、若シ斯ノ如クナル爲ニ-或ハ斯
ノ如クナランコトヲ私ハ恐ルヽガ爲ニ225
御疲勞ノ後デハアリマスルケレドモ、僅ニ一
時間ノ時間ヲ皆樣ガ御貸シ下サイマスルナ
ラバ、私共ノ提出致シテ居リマスル財界ノ
動搖ニ最モ關係ノアル所ノ臺灣銀行ノ不始
末ヲ調査スル所ノ査問會ヲ設置スル議案、
及ビ休業銀行ヲ救濟スル爲ニ大藏大臣ニ
向ッテ希望ヲ表スル所ノ決議案ハ、皆サン
ノ御討議ヲ願フコトガ出來ルノデアリマ
ス、不幸ニシテ若シ皆サンガ玆ニ休憩セラ
レマシタナラバ、私ハ必ズヤ定數ヲ缺イテ
再ビ本會議ハ開カレルコトガナクシテ、私
共ノ提出シテ居ル此二法案ハ葬リ去ラレル
コトヽナリハセヌカト憂ヘルノデアリマ
ス、私共ノ提出シテ居リマスル所ノ此二法
案ナルモノヽ實ニ重大ナルコトヲ皆樣ガ御
考へ下サイマシタナラバ、私共ガ議會ニ於
テ少數デアルガ爲ニ、此議場ニ於テ諸君ガ
論議スラセズニ、此最モ大切ナル財界動搖
ニ關係アル所ノ此二法案ヲ葬リ去ラレルガ
如キ卑怯ナル態度ヲ御執リニナラヌデアラ
ウト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)諸君私
共ノ提出致シマスル所ノ第一ノ法案ハ、臺
灣銀行ノ不始末ニ付テ其責任ノ所在ヲ明ニ
センガ爲ニ、査問會ヲ開カントスル所ノ決
議案デアリマス(拍手)諸君、僅ニ百万圓ノ
商船ヲ沈沒セシメテモ、其船長及乘組員ハ
査問セラルヽノデアリマス(拍手)而シテ其
處ニ何人ガ責任ヲ執ルカト云フコトヲ公ニ
セラルヽノデアリマス、今ヤ數億圓ノ國民
ニ損害ヲ與ヘマスル所ノ臺灣銀行ノ不始末
ヲ查問セズシテ、其責任ノ所在ヲ明ニセズ
シテ、諸君ハ選擧區ニ歸ッテ何ト有權者ノ
前ニ述ベラレルカ諸君ハ今ヤ幾億圓ノ損害
ヲ諸君ノ有權者及全國民ニ負擔セシムル所
ノ法案ニ賛成セラレタノデアリマス(拍手)
シテ見マスレバ一方ニ於テ、何人ガ斯ノ如
キ國民ニ損害ヲ與ヘルニ至ッタカト云フコ
トノ其貴任者ヲ明ニスル此査問會ヲ設クル
所ノ吾々ノ決議案ヲ、此議場ニ於テ論議ス
ルコトスラ避ケントセラレルガ如キコトニ
付テハ、私ハ斷然反對致シマス(「ヒヤ〓〓」
拍手)殊ニ私共ノ提出シテ居リマス所ノ休
業銀行ノ整理救濟ノ議案ハ、私共ハ東西ノ
大銀行ガ苟モ銀行團ヲ拵ヘテ、預金利子マ
デ協定シテ居リナガラ、今日ノ如キ場合ニ
斯ノ如キ國民ニ負擔ヲ破ラシムルナラバ
宜シク東西ノ大銀行ハ自ラ犧牲ヲ拂ッテ、日
本銀行ト相共ニ相當ノ一大整理銀行ヲ設置
シテ、休業シテ居ル特ノ銀行ヲ救フヤウ
ニ、大藏大臣カラ懇談セラレタイト云フ議
案デアリマス(拍手)斯ノ如キ重要ナル二大
決議案ガ諸君ノ御手許ニ廻ッテ居ルニモ拘
ラズ、今ヤ諸君ハ休憩ノ動議ニ賛成セラレマ
ジタ、遂ニ定數ヲ缺イテ本會議ガ再ビ開カ
レナカッタヤウナコトガアリマシタナラバ、
諸君ハ此最モ大切ナル場合ニ於テ、此財界ノ
最モ必要ナル議案ヲ審議スルコトヲ避ケラ
レタ者デアルト云フ國民ノ非難ヲ私ハ避ケ
ルコトガ出來ナイデアラウト思フノデアリマ
ス(拍手)故ニ私ハ此井本常作君カラ御提出
ニナリマジタ所ノ休憩ノ動議ニハ、此際反
對致シマス、僅ニ諸君ガ一時間ノ時間ヲ御
耐忍ニナレバ、此二法案ハ審議サレルノデ
アリマス、願ハクバ休憩ヲ一時間御延シニ
ナッテ、此二法案ヲ此議場ニ於テ、審議セラ
レムコトヲ私ハ偏ニ御願ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=98
-
099・森田茂
○議長(森田茂君) 井本君ノ休憩動議ニ反
對ガアリマシタ、仍テ採決致シマス、井本
君ノ休憩動議ニ贊成ノ御方ノ起立ヲ願ヒマ
ス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=99
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100・森田茂
○議長(森田茂君) 多數ト認メマス、仍テ
休憩致シマス
午後六時二十六分休憩
午後十時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=100
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101・森田茂
○議長(森田茂君) 休憩前ニ引續キマシテ
會議ヲ開キマス、只今內閣總理大臣ヨリ議
長宛ノ通牒ヲ受領致シマシタ、卽チ之ヲ朗
讀致シマス
通牒
本月九日貴族院ニ於テ帝國議會閉院式執
行被仰出候
此段御報告申上ゲマス(拍手)而シテ本日ハ
御承知ノ通リ非常ニ時刻モ切迫致シマシタ
カラ、他ニ若干ノ議案モアリマスケレドモ、
此儘デ終了スルコトニ致シマス(武藤山治
君「議長々々」ト呼フ)此際議長ニ於テ一言
御挨拶申上ゲマス、諸君、第五十三回帝國
議會ハ本日ヲ以テ終了致シマシタ、御承知
ノ通リ今期議會ハ臨時議會デアリマシテ、
會期僅ニ五日ニ過ギマセナンダガ、財界安
定ニ關スル重要法案提出セラレ、本會議委
員會共連日開會シテ頗ル多忙ヲ極メマシタ
ガ、愼重審議ノ上之ヲ議了致シマシタコト
ハ國家ノ爲ニ洵ニ慶賀ニ堪ヘナイ次第デゴ
ザイマス(拍手)是レ諸君御勵精ノ結果デア
リマス、玆ニ諸君連日ノ御勞劬ヲ謝シマス、
是ニテ散會致シマス
〔拍手起ル〕
午後十時三十八分散會
〔參照〕
本會議ニ於ケル議案ノ總數及結果
承諾ヲ求ムル議案一件、承諾ヲ與フ
政府提出法律案二件、可決
上奏案一代、可決
建議案五件、未決
決議案一件、可決
二件、未決
重要動議一件、可決
請願六件、本會議ニ上ラス
內
特別報告アリタルモノ四件
特種報告アリタルモノ一件
審査未了ノモノ件
緊急質問十件
内
口頭ニテ答辯アリタルモノ九件
撤回シタルモノ件
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一今八日日本銀行特別融通及損失補償法案
外一件委員佐藤實君橋本喜造君辭任ニ付
其ノ補缺トシテ中原德太郞君奧村千藏君
孰レモ議長ニ於テ選定セリ
一今八日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通
牒ヲ受領セリ
日本銀行特別融通及損失補償法案
臺灣ノ金融機關ニ對スル資金融通ニ關ス
ル法律案
一今八日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ議案ニ對シ承諾スルコトヲ議決シタル
旨同院ヨリ通牒ヲ受領セリ
昭和二年勅令第九十六號
衆議院議事速記錄第三號中正誤
頁段行誤正
四ニ五見タイ貰ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005313242X00519270508&spkNum=101
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