第56回帝国議会　貴族院　本会議　第31号　昭和4年3月20日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　昭和四年三月二十日（水曜日）
  　　　　午前十時二十四分開議
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  　　議事日程　第三十一號　昭和四年三月二十日
  　　　　午前十時開議
  　　第一　自作農創設維持助成資金特別會計法案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第二　造幣局特別會計法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第三　日本興業銀行法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會
  　　第四　昭和二年度第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第五　昭和二年度特別會計第一豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第六　昭和二年度特別會計豫備費支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第七　昭和二年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第八　昭和二年度特別會計第二豫備金支出の件追加（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第九　昭和二年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第十　昭和三年度第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第十一　昭和三年度豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第十二　昭和三年度特別會計第二豫備金支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第十三　昭和三年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件（承諾を求むる件）（衆議院送付）　會議
  　　第十四　山口縣營軌道及筑後軌道株式會社所屬軌道補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續
  　　第十五　大正十四年法律第二十九號中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十六　蠶絲業法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十七　帝國鐵道會計法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十八　絲價安定融資補償法案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第十九　臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十　健康保險特別會計法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十一　健康保險法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十二　工場法中改正法律案（政府提出衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十三　取引所法中改正法律案（衆議院提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十四　信託業法中改正法律案（衆議院提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　　第二十五　貴族院規則中改正の動議（公爵一條實孝君外六名發議）　會議
  　　第二十六　東亞保民會設立に關する請願　　　　　　　　會議
  　　第二十七　日露漁業條約に關する請願　　　　　　　　　會議
  　　第二十八　三陸沿岸線鐡道速成に關する請願　　　　　　會議
  　　第二十九　小郡、萩間鐵道敷設及停車場設置の請願　　　會議
  　　第三十　金澤、八尾間鐵道敷設の請願　　　　　　　　會議
  　　第三十一　交通行政統一に關する請願　　　　　　　　　會議
  　　第三十二　於福、大田間鐵道敷設の請願　　　　　　　　會議
  　　第三十三　岩見澤、厚田間鐵道敷設の請願　　　　　　　會議
  　　第三十四　北見瀧の上、上川間鐵道敷設の請願　　　　　會議
  　　第三十五　根室臨港線鐵道敷設の請願　　　　　　　　　會議
  　　第三十六　紋別臨港線鐵道敷設の請願　　　　　　　　　會議
  　　第三十七　濱頓別、枝幸間鐵道敷設の請願　　　　　　　會議
  　　第三十八　自動車法制定の請願　　　　　　　　　　　　會議
  　　第三十九　靜岡縣下熱海町大字泉を神奈川縣下湯河原町に編入の請願　會議
  　　第四十　十和田湖を中心とする國立公園設置の請願　　會議
  　　第四十一　雲仙岳、阿蘇山、別府温泉、久住山を國立公園に指定の請願　會議
  　　第四十二　谷田川改修の請願　　　　　　　　　　　　　會議
  　　第四十三　一時金癈兵恩給法改正即行に關する請願　　　會議
  　　第四十四　軍人傷痍記章令中改正の請願　　　　　　　　會議
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
  瀨古書記官朗讀〕
  昨十九日本院ニ於テ承諾スルコトヲ議決シタル左ノ政府提出案ハ即日之ヲ
  奏上シ又承諾スルコトヲ議決シタル旨ヲ衆議院ニ通知セリ
  昭和三年勅令第百二十九號
  同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
  自作農創設維持助成資金特別會計法案
  造幣局特別會計法中改正法律案
  日本興業銀行法中改正法律案
  昭和二年度第一豫備金支出ノ件
  昭和二年度特別會計第一豫備金支出ノ件
  昭和二年度特別會計豫備費支出ノ件
  昭和二年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ
  件追加
  昭和二年度特別會計第二豫備金支出ノ件追加
  昭和二年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算(承諾ヲ求ムル件)
  外支出ノ件追加
  昭和三年度第二豫備金支出ノ件
  昭和三年度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  昭和三年度特別會計第二豫備金支出ノ件
  昭和三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ可決シ奏上
  セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
  明治四十年法律第十一號中改正法律案
  同日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  關稅定率法中改正法律案外一件特別委員會
  委員長子爵八條隆正君
  副委員長男爵斯波忠三郞君
  肥料管理法案外二件特別委員會
  委員長子爵渡邊千冬君
  副委員長男爵東郷安君
  同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
  議院建築速成ニ關スル建議案(發議者公爵近衞文麿君外七名、贊成者公
  爵鷹司信輔君外四十六名)
  青山市立山南京

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ會議ヲ開キマス

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• 003・近衞文麿

  ○公爵近衞文麿君　本員ハ來ル五月來朝セラルヽ英國皇族殿下ノ歡迎ノ件ニ
  付キマシテ、動議ヲ提出シタイト考ヘマス

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• 004・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　近衞公爵ノ登壇ヲ望ミマス
  〔公爵近衞文麿君演壇ニ登ル〕

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• 005・近衞文麿

  ○公爵近衞文麿君　諸君モ御承知ノ通リ、今囘英國皇帝陛下ヨリ、同國最高
  ノ名譽ヲ表彰スル「ガーター」勲章ヲ、我ガ聖上陛下ニ御贈進相成ルコトニ
  ナリマシタ、其爲ニ特ニ第三皇子「グロスター」公殿下ヲ本邦ニ御差遣ニ相成
  リマス、同殿下ガ來ル五月御來朝ニナリマスコトハ、日英兩國ノ親交ガ益〓厚
  キヲ加ヘツヽアルコトヲ示スモノデアリマス、英國皇帝陛下ハ昨年末以來御
  不例ニ渡ラセラレマシテ、御心配申上ゲテ居ッタノデゴザイマスガ、幸ニシテ
  最近外電ノ報ズル所ニ依レバ、著シク御快方ニ向ハセラレタル趣キデアリマ
  ス、此事ハ我ガ國民ノ擧ッテ祝意ヲ表スル所デアリマス、其際ニ、第三皇子殿
  下ノ御來朝ヲ歡迎スルコトハ、兩國ノ交際ノ上ヨリ見マシテ、極メテ慶賀ニ
  堪ヘザル所デアリマス、依テ此際本院ト致シマシテハ、院議トシテ本院ノ同
  殿下ニ對スル歡迎ニ關スル一切ノ處置ヲ、此際議長ニ御一任イタシテ置キタ
  イト考ヘマス、何卒此動議ニ御贊成アラムコトヲ希望イタシマス(拍手起ル)

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• 006・青木信光

  ○子爵靑木信光君　近衞君ノ動議ニ贊成イタシマス
  〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕

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• 007・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　只今ノ近衞公爵ノ御發議ニ對シマシテハ滿腔ノ贊成ヲ表
  スル次第デゴザイマス、英國ト云フコトヲ聞キマスルト直ニ日英同盟ヲ記憶
  イタシマス、是ハ御承知ノ通リニ多年兩國ノ間ニ成立ッテ居リマシタ日英同
  盟ハ、前年華盛頓會議ノ結果終了イタシマシタノデアリマスルケレドモ、兩
  國民ノ精神ノ上ニハ少シモ此同盟ノ時ノ、良好ナル感情ト云フモノハ變ッテ
  居ラヌト云フコトヲ明カニ證明スルモノト思フノデアリマス、ソレ故ニ英國
  ト申セバ直グ日英同盟ト云フコトヲ何人モ思ヒ出スノデアリマス、斯カル兩
  國ノ關係、歐羅巴方面ニ於ケル又亞細亞方面ニ於ケル二大帝國ノ間ノ、斯カル
  良好ナル關係ト申スモノハ、世界平和ノ上ニ實ニ重大ナル、又極メテ大切ナ
  ル結果ヲ齎スモノデアリマス、殊ニ兩帝國ノ御皇室ノ間ニハ、御親厚ナル御
  關係ガ重ナリ重ナッテ居リマスルコトハ誠ニ喜バシイ次第デゴザイマシテ、延
  イテ兩國ノ關係ト云フモノヲ益、親密鞏固ナラシムルモノデアリマスル、只今
  近衞公爵ノ御發議ノ通リニ、來ル五月二日ニ「グロスター」公殿下ガ我國ニ、
  誠ニ目出度イ御使命ヲ持ッテ御出デ下サイマスト云フコトハ、此上モナイ喜バ
  シイ次第デゴザイマスル、唯會期ノ終リマシタ後デアルト云フコトハ、我〓
  貴族院ト致シマシテ非常ニ殘念ニ存ズル次第デアリマス、若シモ會期中ニ御
  出ヲ戴クコトガ出來マシタナラバドノ位我〓ハ喜バシイデアラウカ、殊
  昨年英國ノ開院式ノ當時ニ於キマシテ、皇帝陛下ノ御勅語、又其御勅語ニ付
  テノ討論ノ際ニ、我皇室ノ御卽位大禮ニ付テ、極メテ御懇篤ナル意思ヲ表明
  セラレヽ又英國ノ名士ガ代ル〓〓立ッテ其趣旨ニ賛同シテ居ラレマスト云フ
  コトハ、我〓ノ記憶ニ新タニシテ、當時我〓ハ最モ欣快ニ堪ヘナカッタ所デ
  アリマスル、此度ノ殿下ノ御來遊ニ付テハ、皇室ハ勿論ノコト、國民擧ゲテ御
  歡迎ヲ申上ゲタイ意思ノ極メテ熾ンナルコトヲ今ヨリ想像イタス次第デゴザ
  イマスル、ドウゾ議長閣下ニ於カセラレテハ我〓ノ意思ヲ遺憾ナク徹底セ
  ラレルヤウニ希望イタス次第デゴザイマシテ、謹デ近衞公爵ノ御發議ニ贊成
  イタシマス

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• 008・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今近衞公爵ノ述べラレマシタ來ル五月本邦ヘ英
  國ヨリ「グロスター」公殿下ノ御來朝ニ際シマシテ、同殿下ニ對スル御歡迎ノ
  方法ハ議長ニ一任スルト云フ御趣意ト伺ヒマシタ、近衞公爵ノ動議ニ同意ノ
  諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔總員起立〕

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• 009・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　滿場一致ト認メマス
  宝业후후

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• 010・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第一、自作農創設維持助成資金特別會計法案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會
  自作農創設維持助成資金特別會計法案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  昭和四年三月十九日
  衆議院議長川原茂輔
  貴族院議長公爵德川家達殿
  自作農創設維持助成資金特別會計法案
  自作農創設維持助成資金特別會計法
  第一條自作農創設維持助成資金ノ會計ハ之ヲ特別トシ一般ノ歲入歲出ト
  區分スベシ
  第二條自作農創設維持助成ノ資金ニ充ツル爲政府ハ本會計ノ負擔ニ於テ
  借入ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ借入ヲ爲スコトヲ得ル金額ハ每年度三千萬圓ヲ限度ト
  ス
  第三條政府ハ前條ノ規定ニ依ル借入金ノ額ガ前條ニ規定スル制限額ニ滿
  チザル場合ニ於テハ借入金ト通ジテ其ノ制限額ニ達スル迄自作農創設維
  持助成ニ要スル交付金トシテ交付スル爲本會計ノ負擔ニ於テ農地債券ヲ
  發行スルコトヲ得
  第四條本會計ニ於テハ借入金、自作農創設維持助成交付金ノ償還金及其
  ノ利子其ノ他附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ自作農創設維持助成交付
  金、借入金及農地債券ノ償還金及其ノ利子其ノ他附屬諸費ヲ以テ其ノ歲
  出トス
  第五條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預
  入ルルコトヲ得
  第六條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共
  ニ之ヲ帝國議會ニ提出スベシ
  第七條本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル支出殘額ハ翌年度ニ繰越使用ス
  ルコトヲ得
  第八條本會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ昭和四年度ヨリ之ヲ施行ス
  國債整理基金特別會計法第二條第三項中「臨時國庫證劵」ノ下ニ「、農地債
  劵」ヲ加フ
  登錄稅法第十九條第八號中「北海道府縣市町村」ヲ「國、北海道府縣市町村」
  三段人
  〔國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

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• 011・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　自作農創設維持助成資金特別會計法案提案ノ理
  由ヲ說明申上ゲマス、自作農ノ創設維持ノ助成ハ、農業生產ノ增進ヲ圖リ、
  國民食糧ノ充實ヲ期スル上ニ於テ重要デアリマスルノミナラズ、農地問題殊
  ニ小作問題ノ解決、農村安定ノ對策ト致シマシテ、極メテ必要ナル施設デア
  リマシテ、國家各般ノ政策ノ中ニ付キマシテモ、最モ重要且緊急ナル事項ト
  信ジマスル、從來簡易生命保險積立金ヲ此方面ニ融通イタシマシテ、國家ノ
  補助ト相俟ッテ相當ノ成果ヲ收メツヽアルコトハアリマスルケレドモ、此方法
  ハ元來同積立金運用ヲ主體ト致スノデアリマスルカラシテ、資金還元ノ主義
  ヲ離ルヽコトガ出來ナイノデアリマスル、從ヒマシテ自作農創設維持者ノ選
  擇ニ關シマシテハ、此資金還元ノ性質ニ於ケル制限ノ爲ニ、適當ナル資格者
  ニモ資金ヲ融通シ能ハザル場合ガ生ズルノデアリマス、又資金融通ノ限度、
  即チ年々ノ資金ノ總高ニ付キマシテモ、農村一般ノ要望ニ對シテ到底之ヲ滿
  足セシメ能ハザルノ狀況ニアルノデアリマスル、即チ簡易生命保險積立金ノ
  運用ノミニテハ、其貸付ノ方法及ビ貸付ノ限度ニ於テ、自作農創設維持ノ目
  的ヲ十分ニ達成シ能ハザルノ憾ガアルノデアリマス、玆ニ於テ政府ハ玆ニ恆
  久的ノ制度ヲ立テマシテ、爾今毎年一定ノ資金ヲ以テ自作農創設維持ノ助成
  ニ充用セシメマシテ、相當ノ程度ニ資金ノ需要ヲ滿足セシメルト同時ニ、融
  通ノ按排ニ關スル從來ノ不便ヲ緩和セムトスルノデアリマス、而シテ是ガ資
  金ニ關シマシテハ、毎年度三千万圓ヲ限度ト致シマシテ、借入金ヲ致シマシ
  テ、此自作農創設維持助成ニ要スル交付金ノ支出ニ充當スルノデアリマスガ、
  若シ借入金ノ額ガ三千万圓ニ滿タザル場合ニ於キマシテハ、之ニ滿ツル迄農
  地債劵ヲ發行シテ交付イタシマシテ、之ニ充當スル積リデアリマス、而シテ
  其交付金ノ元利償還金ヲ以テ、右ノ借入金及ビ農地債劵ノ元利償還ニ使用セ
  ムトスルノデアリマス、而シテ是等ノ收支及ビ之ニ附屬スル收入支出ハ
  團トシテ獨立ニ計算スルヲ適當ナリト考ヘマスノデ、本資金ニ關スル歲入歲
  出ハ之ヲ一般ノ會計ト區分イタシマシテ、特別會計ヲ設置セムトスルノデア
  リマスル、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ切望イタス次第デアリマス

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• 012・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通〓順ニ依リマシテ質疑ノ發言ヲ許シマ
  ス、志水小一郞君
  〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕

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• 013・志水小一郎

  ○志水小一郞君　本員ハ總理大臣ニ向ッテ御尋ヲ致シタイノデアリマスガ、御
  出席ニナッテ居リマセヌカラシテ、何レノ大臣デモ宜シウゴザイマスガ、總理
  ノ御代理トシテ御聽取リアラムコトヲ希望スルノデアリマス、本員ノ御尋ハ
  自作農ノ創定ニ關シテ居リマスケレドモ、其案其モノノ內容ヲ是非スルヤウ
  ナコトハ致サヌ積リデアリマス、案其モノニハ却ッテ御同意ヲスルカモ存ジマ
  セヌ、然ルニ此案ノ審査ニ關シテ起リマシタコトニ本員ハ著目ヲシテ居リマ
  シテ、其事及ビ之ニ附帶牽聯スルコトニ付テ御尋ガ致シタイノデアリマス、而
  シテ自作農創定法案ハ本員ノ御尋ノ趣意カラ申シマスト、一ツノ例示ニ當ル
  ノデアリマス、凡ソ現内閣ニ於テ是等ノ重要法案ガ審査セラレマスルヤ、其起
  草ノ時カラ成案ノ時ニ至ルノ間ニ、其審査ノ模樣ガ比較的容易ニ外間ニ漏洩
  スルト云フヤウナ感ジガアルノデアリマス、例へバ此案ニ付テハ、某ノ大臣ト
  某ノ大臣トガ意見ヲ異ニセラルヽ從テ兩省ノ間ニ斯ク〓〓ノ確執ガアルト
  言ハムガ如キコトガ免角聞エル、ソレカラ某ノ大臣ガ仲介ノ勞ヲ執ッタケレド
  モガ、遂ニ協定ヲ得ナカッタトカ、或ハ是ガ爲ニ一ノ折衷案ガ出來タト言ハム
  ガ如キコトガ聞エル、又結局是ハ總理ノ決裁ニ俟ツノ外ナカラムト云フヤウ
  ナコトモ聞エタノデアリマス、關係ノ大臣ガ各〓其立場々々ニ依ッテ主張ヲ爭
  ハルヽノハ無論當然ノコトデアルノデアリマス、ソレ故ニソレ等ハ內部ノコ
  トトシテ機密ガ保タレルナラバ、何人モ好ンデ摘發ヲ.シテ彼此レト申スモノ
  ハナイ筈デアルノデアリマス、所ガ免角其機密ガ保タレズシテ、所謂公然ノ祕
  密トナル傾キガアルノデアリマス、是ガ畢竟世間ノ注意ヲ惹ク所以デアルノ
  デアリマス、法案ガ內部ニ於テ如何ニ論難攻擊セラレマシテモ、之ニ關シテ
  如何ナル捫著ガアリマシテモ、纒リサヘスレバ宜イデハナイカト云フ論モア
  ルノデアリマセウ、所ガ案其モノノ信用、從テ其案ノ運命ニ付テハサウハ參
  ラヌノデアリマス、比較的無難ニ審了セラレタルモノト、波瀾重疊、幾多ノ
  屈曲捫著ヲ經テヤット纒ッタ案トハ大變ナ違ヒガアルノデアリマス、況ヤ其成
  案タルヤ初メノ原案ニ比ブルト非常ナ變體ヲナシテ、殆ド原形ヲ存セヌト云
  フヤウナコトニナレバ尙更デアリマス、抑、如何ナル理由アリテ、斯ク當然
  保タルベキ祕密ガ容易ニ暴露スルノデアリマセウカ、是ハ一ツノ疑問ト本員
  ハ思フノデアル、或ハ暴露シタンデハナイ、宣傳ノ爲ニ特ニ暴露セシメラレ
  タノデハナイカト想像セムトスルノニ、サウ云フ想像ハ許サヌノデアリマス、
  豈ニ其ヤウノコトアラムヤデアリマス、矢張リ暴露スルニ違ヒナイト思フノ
  デアリマス、抑、如何ナル理由ガアリテ斯ク當然保タルベキ祕密ガ容易ニ暴露
  スルノデアリマセウカ、是ハ失禮ナガラ内閣ニ最モ必要デアル所ノ協同一致、
  統制統一ト云フ點ニ幾分カ缺クル所ノモノガアルカラデハアリマスマイカ
  ト、斯ウ疑フノデアリマス、田中內閣ハ多年軍部ニ在ッテ協同一致トカ、統制
  統一トカ云フコトノ最モ必要デアルト云フコトヲ了解シテ居ラレル所ノ田中
  男ヲ戴クノニモ拘ラズ、動モスレバ共同一致、統制統一ヲ缺クノデハナイカ
  ト疑ハレルコトガアルノデアリマスガ、將來內閣ニ累ヲ及ボスモノハ矢張リ
  此點デハナイカト本員ハ思フノデアリマス、本員ハ現下ニ於ケル內外ノ情勢
  ニ鑑ミマシテ、日本帝國ノ中央政府ニ協同一致ヲ缺クトカ、小サナル內訌暗
  鬪ガアルト云フヤウナコトハ斷ジテ許サヌト信ズルノデアリマス、ソレデ私
  ノ此演述ハ其演述ノ進行ニ從ヒマシテ橫道ニ這入ルデハナイカト云フヤウニ
  聞エルカモ知レヌノデアリマス、併ナガラ私ハ好ンデ傍側ニ亙ルヤウナ演述
  ハ決シテ致サヌノデアリマスカラ、ドウカ此演說ノ終局ヲ御覽下サリマシテ
  適當ノ御判斷ヲ願ヒタイノデアリマス、而シテ現内閣ニ或ハ統制統一ニ缺ク
  ルヤウナコトガアルノデハナイカト疑ヒマスレバ、他ニモ幾多ノ其疑ヲ深ウ
  スルコトガアルノデアリマス、此頃ノ出來事デアル所ノ久原遞相ノ起用ヨリ
  起リマシタ所ノ一ノ紛議、是等ハ顯著ナル一例デアリマス、而シテ閣臣間ノ不
  一致ガ窺ハルヽノミナラズ、與黨ニモ亦其弊ガアリマシテ、時トシテハ與黨
  ガ内閣ニ對シテ種々ノ不平ヲ持込ム氣色ガ見エルノデアリマス、本員ハ田中
  首相ノ扱ハレル所ノ人事ノ取扱振ヲ大變能ク知ッテ居ル一人デアリマス、從テ
  首相ガ自己ノ信ズル人物ヲ起用スルニ當リ群議ヲ排シ、殆ド人言何カアラム
  ト云フ意氣込ミヲ以テセラルヽコトヲ、アナガチ非難ハ致シマセヌ、併ナガ
  ラ是ガ爲ニ內閣ノ結束ヲ緩ウシ、遂ニ內閣ノ基礎ヲ危ウスルヤウナコトトナ
  リマシタナラバ、ソレハ即チ內閣ノ弱身デアリマシテ、內閣ノ爲ニ採ラザル
  ノミナラズ、本員等ノ如ク內閣ノ强固ヲ必要トシ、政變ノ頻繁ヲ喜バザル國
  家的見地カラ考ヘマシテモ、ソレハ甚ダ憂フベキコトデアルト思フノデアリ
  マス、尙ホ首相ガ此際是等ノコトニ付テ大イニ考慮ヲ拂ハレナクテハナラヌ
  ト云フ幾多ノ理由ガアルノデアリマス、本員ハ簡單ニ一言以テ首相ノ御考慮
  ヲ煩サネバナラヌノデアリマス、ソレハドウ云フコトデアルカト云フノニ、
  今ヤ此政爭ノ弊害ハ殆ド其極度ニ達シテ居ルノデアリマス、之ガ爲ニ內外重
  要ノ政策モ閑却セラレルデハナイカト思フコトガ幾多モアルノデアリマス、
  從テ我憲政ノ前途モ:

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• 014・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君、本案ニモウ少シ緣ノアル御質疑ダト議長
  ハ喜ビマスガ、大分範圍ヲ脫シテ居リハシマスマイカ、御注意イタシマス、
  又他日其問題ニ付テ總理大臣ニ御尋ニナル機會モアラウト思ヒマス、如何ニ
  モ本案ニ關係ガ段々薄クナルヤウニ考ヘマス····志水君バカリニ御許シ申ス
  コトハ出來マセヌカラ、ドウゾ御注意ヲ願ヒタイ

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• 015・志水小一郎

  ○志水小一郞君　宜シウゴザイマス、ソレデハ簡單ニ······帝國ハ中央政府ノ
  部内ニ今ヤ協同一致ヲ缺クヤウナコトガアッテハナラナイ、斷ジテサウ云フ
  コトヲ許サナイト云フ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス······今申シマシタ··

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• 016・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君、幾ラ簡單デモ何分御許シ申スコトハ出來
  マセヌ、本案ニ直接ニ關係ガアルコトナラ、幾ラ長クテモ私ハ御許シ申ス積
  リデアリマス、又他ノ議員諸君ニ對シテソレガ先例ニナリマスト、議長ガ議
  場ヲ整理スル上ニ於テ··

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• 017・志水小一郎

  ○志水小一郞君　尤モデス······成ルベク

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• 018・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　成ルベクヂヤナイ、ドウゾ範圍ヲ御脫シニナラ
  ヌヤウニ願ヒタイ

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• 019・志水小一郎

  ○志水小一郞君　本員ハ初メニ御斷リ申シテ置キマシタ如ク、自作農創定法
  案其モノノ內容ヲ是非スルノデハアリマセヌ、併シ内閣ニ於テ此審議ニ關シ
  テ起リマシタ出來事ニ憂フベキ.コトガアルカラシテ、寧ロ其點ガ私ノ御尋ヲ
  スル主眼デアルノデアリマスカラ、チヨット道行ハ橫道ニ這入ルヤウデアリ
  マスケレドモガ、本員ノ結論ヲ御聽キ下サレバ能ク御了解デアラウト思ヒマ
  スカラ、暫ク御〓聽ヲ願フト云フコトヲ御斷リシテ置キマシタ、併シ只今議
  長閣下カラ成ルベク傍側ニ這入ラナイヤウニト云フ御注意デアリマスカラ、
  ソレハ服膺イタシマス、服膺イタシマスケレドモ、元〓御尋ノ仕方ガ自作農
  法案ノ其內容ヲ是非シテ其得失ヲ言フノデハナクシテ、之ニ關聯シテ起ッタ
  所ノコトニ心配ヲシテ此御尋ヲスルノデアリマスカラ、其意味ニ於テ簡單ニ
  矢張リ結ビマセヌト云フト、到頭述ベルコトガ出來ナクナルノデアリマスカ
  ラ、ドウカ御了解ヲ願ヒマス
  〔添田壽一君「議事進行ニ付テ申上ゲタイ」ト述フ〕

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• 020・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今志水君ノ發言中デアリマスカラ、暫ク御控ヘ
  ヲ願ヒタイ·
  〔添田壽一君「議事進行ニ付テヾアリマス」ト述フ〕

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• 021・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君、何分御許シ申スコトガ出來マセヌ·······志
  水君、御降壇ヲ請ヒマス······添田君、議事進行ト云フ御言葉デゴザイマシタ
  ガ、只今志水君ニ御降壇ヲ請ヒマシタカラ、添田君ニ發言ヲ許サウト考ヘマ
  ス

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• 022・添田壽一

  ○添田壽一君　私ハ此神聖ナル議場ニ於キマシテハ、議長ノ御意思ニハ絕對
  ニ服從セナケレバナラヌト考ヘマス、其事ニ付テ私ハ甚ダ遺憾ニ感ジマシタ
  カラ申上ゲタノデアリマス

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• 023・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今志水君ハ議長ノ希望通リニ御降壇下サイマシ
  タカラモウソレデ宜カラウカト考ヘマス
  〔男爵小畑大太郞君演壇ニ登ル〕

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• 024・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　只今法案御提出ニナリマシタ理由トシテ農林大臣カラ
  御述べニナリマシタ其內ニ、本案ハ國家政策上最モ重要且ツ緊要ナル事項ト
  信ジマスト御述ベデアリマシタガ、私モ今日ノ農村疲弊、農業者ノ非常ニ困
  憊シテ居ルコトカラ申シマシテ、誠ニ肝要ナコトト確信イタシマス、就キマ
  シテ御尋ヲ申上ゲタイノハ、只今志水君カラ御述ベガアリマシタガ、丁度其
  事ニ關聯スル點デアリマス、此會期切迫、明日ノ祭日ヲ一日休ミ二十四日
  ノ日曜ヲ休ミマシタラ、アトハ二十五日マデニ三日間ヨリナイノデアリマス
  ガ、是程緊要ナコトト思召ス本案ヲ三日ノ內ニ審議セイト仰シヤラレルコト
  ハ如何ナル理由デアルカ、ソレヲ承リタイノデアリマス、ソレカラソレ程急
  イデ審議ヲセヌナラヌ必要ガ今日アラウカト云フコトガ私ハ疑ガアルノデゴ
  ザイマス、其點ガ一點、第二ニ承リタイノハ、是ハ只今御說明ニ依リマスト
  云フト、本案ニ依リマシテ、三十五箇年ヲ通ジマシテ十億何十万圓ト云フ金
  ヲ使フノデアリマス、ケレドモ是ハ全然全部消費スルト云フコトデハアリマ
  セヌ、併ナガラ衆議院ノ委員會其他ノ模樣ヲ拜聽イタシマスルト云フト、最
  初カラ千九百万圓、二千万圓近ノ金ヲ國庫ガ損失ヲスルト云フコトヲ前提ト
  シテ是ガ立ッテ居ルヤウニ思ハレルノデアリマス、今日國費窮乏ノ折柄誠ニ國
  民ニ此上多大ノ負擔ヲ掛ケルト云フコトハ、我〓ハ大イニ考慮セヌナラヌコ
  トデアルト思フ、所ガ私ハ屢、、此演壇カラ申上ゲテ居リマスコトデアリマス
  ガ、一體小作法ヲ何時御立テニナルノデアルカ、小作法ガ立チマシテ地主ト
  小作人トノ農產ノ分配ガ公平ニ行ハレヽバ斯ノ如キ多大ノ國費ヲ使ハズシテ
  解決ガ付クノヂヤナカラウカト思フノデアリマス、其點ヲ伺ヒマス、第三ニ
  伺ヒタイノハ、是ハ先日米穀法案ガ提出ニナリマシタ時ニ、マダ此日本ニ於
  キマシテ農業ノ大本デアル所ノ米作ニ付テノ一向御定見ガナイ、先達ノ米穀
  法案ト云フモノハ一時ノ應急策デアル、今後委員會ヲシテ十分調査ヲスルト、
  斯ウ云フ御話ガアリマシタガ、只今申上ゲマスル通リ、我國ノ農業ノ大本ト
  云フモノハ米作デアリマス、米ノ價格ガ下ッテ居レバ農民ガ非常ニ困憊ヲス
  ルノデアリマス、此方法ガ立タズシテ自作農ヲ立テルト云フノハドウ云フ譯
  デアリマスカ、ソレモ金ヲ使ハズシテ出來ルコトデアリマスレバ、誠ニ小作
  農ニ次ギ自作農ヲ維持スルト云フコトモ必要ナコトデアリマセウ、私モ結構
  ト思ヒマス、サリナガラ其米價ヲ維持スル根本策ガ立タズシテ、末ヲ先ニナ
  サラウト云フノハドウ云フ御考デアリマセウカ、臺灣ニ出來マス蓬萊米、又
  朝鮮ニ出來マス朝鮮ノ米、御承知ノ如ク是ハ內地ト比較イタシマスナラバ生
  產費モ非常ニ安ク出來ル、詰リ米價モ安ウゴザイマスシ、勞銀モ安イノデゴ
  ザイマス、又兩方面トモ內地程肥料ヲ使ハヌノデアリマス、尙ホ其上ニ山本
  滿鐵社長ノ御話ヲ承リマスト云フト、最近ノ中ニ東部滿洲ニ鐵道ガ縱橫ニ敷
  カレマシテ、此土地カラ出來ル米ト云フモノガ五百万石モ出來ヤウト云フ御
  話ガアリマス、是ガ朝鮮ノ鐵道ヲ經由シテ北朝鮮ノ港カラ日本ノ中央敦賀ヘ
  運バレルコトダラウト思ヒマスガ、サウナッタ場合ニバ、殆ド內地ノ農民ト云
  フモノハ立ツ瀨ガナカラウト思ヒマス、ソレ等ニ付テドウ云フ御考ヲ持ッテ
  居ラレルカ、ソレデ果シテ今日ノ此方法デ以テ自作農ノ創定維持ガ完全ニ出
  來ルモノデアリマセウカ、其三點ヲ承リタウゴザイマス
  〔國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=24

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• 025・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　小畑男爵ノ御尋ニ御答ヲ致シマス、第一點ハ斯
  ノ如キ重要ナル內容ヲ有スル法案ヲ、何ガ故ニ斯樣ニ遲延シテ提出スルコト
  ニ相成ッタカ、此御尋デゴザイマシタガ、實ハ此問題ハ一昨年來政府部內ニ於
  テ計畫ヲ立テマシタノデアリマスガ、大體ニ於テ成案ヲ得テ居リマシタケレ
  ドモ、一二可ナリ重要ナル點ニ付キマシテ意見ノ纒ラナイ點ガ殘ッテ居リマ
  シタガ爲ニ、遂ニ成案ヲ得マスルノガ段々ト遲レマシテ、議會ノ開會ノ劈頭
  ニ提案ヲ致シタイト考ヘテ居リマシタ通リニ參ラナカッタノハ、誠ニ恐縮至
  極ニ存ジマス、而シテ議會ニ提案イタシマシテカラ衆議院ニ於キマシテ、衆
  議院ノ議事ノ都合ニ依ッテ更ニ若干ノ遷延ヲ來スヤウナコトニ相成リマシテ、
  其結果本院ヘ〓付サレマスノガ、今日此會期切迫ノ間際ニ至ラザルヲ得ナカッ
  タト云フコトハ、誠ニ遺憾千萬ニ存ジマスルノデ、此會期ガ將ニ盡キントス
  ル間際ニ於テ、斯ノ如キ案ヲ急速ニ御審議ヲ願ハナケレバナラヌト云フコト
  ハ政府ト致シ、特ニ當局ノ私ト致シテハ千萬恐縮ニ堪ヘナイ所デアリマス
  ガ、併ナガラ此案ガ重要デアレバアル程、一日モ早ク之ヲ實行イタシタイト
  云フ誠意ヲ持ッテ居リマスノデアリマスルカラシテ、誠ニ僅少ノ時日ニ於テ審
  議ヲ御迫リ申スヤウナ形ニ相成リマスコトハ恐縮千萬デゴザイマスルケレド
  モ、此邊ノ行キ懸リト政府ノ意ノアル所ヲ御諒知下サイマシテ、御審議下サ
  レムコトヲ御願ヒ申スヨリ外ハナイノデアリマス、次ニ之ヲ速ニ審議シテシ
  マハナケレバナラヌト云フコトハドウ云フ理由デアルカト云フ御尋ガゴザイ
  マシタガ、是ハ一年先ヘ延ビテモ差支ナイト言ヘバ差支ナイノデアリマスル
  ケレドモ、併ナガラ斯樣ナ事柄ハ先へ延バシタラドレダケノ弊害ガアルカト
  云ヘバ、之ヲ具體的ニ斯ウ云フ弊害ガアルト申上ゲル譯ニハ參リマセヌケレ
  ドモ、併ナガラ一日モ早ク斯樣ナコトハ實行スルノガ宜シイト云フダケノ考
  ヘハ持ッテ居ルノデアリマスルカラシテ、御審議ガ願ヘマスレバ一日モ早ク之
  ヲ政策ノ上ニ實現シタイト云フ考ヘニ外ナラヌノデアリマス、次ニハ二千万
  圓程宛年々損失ヲスルヤウナコトニ相成ッテ居ルガト云フ前提ノ下ニ、寧ロ小
  作法ヲ速ニ制定シタナラバドウデアルカト云フガ如キ意味合ノ御尋ト信ジマ
  スガ、是ハ二千万圓ノ年々ノ損失ト云フモノハ小畑男爵ノ何カ御考違ヒヂヤ
  アリマスマイカト思ヒマスノデ、左樣ナコトニハナッテ居リマセヌノデ、三千
  万圓ヅツノ資金ヲ運用イタシマシテ、三十五箇年間ニ十億五千万圓ノ資金ヲ
  運用イタシマシテ此小作農ノ·····自作農ノ創設維持ヲ圖ルノデアリマスルガ、
  大體ニ於テ不可抗力等ニ依ッテ生ズル所ノ損失ハ之ヲ補塡スル所ノ方法ガ立ッ
  テ居ルノデアリマス、其詳細ナルコトハ尙ホ他ノ機會ニ於テ申上ゲマスケレ
  ドモ、此借入金ハ大體預金部カラ借入レルコトニナッテ居リマスルガ、預金
  部カラ借入レル利率ハ四分八厘、之ヲ貸付ケルノハ五分、其間ニ二厘ノ差ガ
  アリマスガ、之ヲズット積立テヽ行キマスト相當ノ大キナ金額ニナッテ參リマ
  スノデ、之ヲ以テ不時ノ災害損失等ニハ備へ得ラレル計算ニナッテ居ルノデ
  アリマシテ、國庫ニ對シテ何等損失ヲ掛ケル計算ニハナッテ居ラナイノデア
  リマシテ、唯年々國庫ヨリ此方法ヲ實行シマスルガ爲ニ五十万圓餘リノ支出
  ヲ仰グト云フコトニハナッテ居リマス、是ハ從來ト雖モ、簡易生命保險積立金
  ノ運用ニ依ッテ自作農ノ維持創設ヲ爲シ來ッテ現在居ルノデアリマス、其場合
  ニ於テモ尙ホ國ハ相當ノ補給ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアルノデゴザイマシ
  テ、今囘ノ此法案ノ結果ト致シ、特ニ國庫カラシテノ支出ヲ新ニ制度トシテ、
  今マデ無カッタコトヲスルト云フ次第デハナイノデアリマス
  〔副議長侯爵蜂須賀正詔君議長席ニ著ク〕
  之ヲ要スルニ損失二千万圓年々ト云フヤウナコトハ絕對無イノデアリマス、
  小作法ヲ······此法案ヲ提出スル前ニ寧ロ小作法案ヲ提出シタナラバト云フ御
  尋デアリマスルガ、小作法ニ付キマシテハ其必要ナルコトヲ當局モ切ニ感ジ
  テ居リマスノデ、併ナガラ一面ニ於テハ非常ニ小作法ノ內容ハムヅカシイノ
  デゴザイマシテ、地主小作ノ間ニ於テデス雙方トモ滿足スルト云フガ如キ成
  案ヲ得ルト云フヤウナコトガ極メテ困難デアリマス、從前ヨリ旣ニ立テラレ
  テ居ル所ノ小作法ノ內案ト云フモノハ在ルノデアリマスルカラシテ、之ヲ土
  臺ト致シマシテ、今全國ノ小作側、地主側ノ方面ニ向ッテ意見ヲ徵シテ居ル
  ノデアリマシテ、是等ノ意見ガ纒リマシタナラバ、之ニ基イテ案ヲ立テマシ
  テ、之ヲ小作調査會ニ掛ケテ其上デ議會ヘ提出ノ運ビニ致シタイト考ヘテ居
  リマスノデシテ、來期議會ニハ願クハ間ニ合フヤウニ致シタイト考ヘテ居リ
  マット、サリナガラ此小作法ト云フモノガ先ニ定マラナケレバ自作農ノ維持創
  設ト云フガ如キコトハ效ヲ爲サヌデハナイカト云フヤウニハ政府ハ考ヘテ居
  リマセヌノデシテ、是ハ別個ノ考トシテ考ヘテ宜シイト思ヒマス、サレバ今
  日ニ於キマシテモ小作法ト云フモノハ未ダ定マッテ居リマセヌケレドモ、簡易
  生命保險ニ依ル所ノ自作農ノ創設維持ト云フモノハズット年來行ヒ來ッテ居ル
  ノデアリマス、是ハ是トシテ之ヲ更ニ擴大イタシ、充實イタスコトガ必要デ
  アルト政府ハ考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレカラモウ一ツハ米穀政策ト云
  フモノヲ確立シナイ前ニハ本案ノ如キモノハ矢張リ效果ヲ齎スコトガ疑ハシ
  イデハナイカト云フ御尋デアッタヤウデアリマスガ、米穀政策ノ中デ米價調節
  ト云フコトニ關シマシテハ、即チ現在行ハレテ居ル所ノ米穀法ト云フモノガ
  アリマスノデアリマスケレドモ、是ガ幾多ノ缺陷ガ經驗上生ジテ來タヤウニ
  思フノデアリマス、又資金ニモ非常ニ不足ヲ來シマシタニ依リマシテ、今囘
  應急ノ方法トシテ取敢ヘズ七千万圓增額ヲ議會ニ要求イタシタヤウナ次第デ
  アリマスガ、併シ此米穀政策ト云フモノハ、唯現在ノ米穀法ヲ多少改良ヲシ
  タ、改正ヲシタ、或ハ多少ノ資金ノ增額ヲ致シタトカ云フ如キダケノ問題デ
  解決ハ出來ナイト思フノデアリマシテ、即チ小畑男爵カラモ述ベラレマシタ
  ガ如キ、滿洲ニ於ケル產米、朝鮮ニ於ケル產米、臺灣ニ於ケル產米乃至ハ輸
  入米マデモ考慮ノ中ニ入レマシテ、全體ヲ包括シテ統一アル所ノ政策ヲ樹立
  イタサナケレバナラヌノデアリマスカラシテ、是ハ政府ノ一存デ急遽立案ヲ
  スルト云フコトヨリモ調査會ヲ設ケテ、此處デ審議ヲシテ然ル後ニ立案ヲ致
  シタ方ガ誤リガナイ·····誤リガ少ナイト、斯樣ニ政府ハ信ジマスルガ故ニ、
  旣ニ其委員會ヲ設ケル積リデ追加豫算ヲ以テ其費用ヲ請求イタシテ居ル次第
  デゴザイマス、斯樣ナ譯デアリマシテ小作法竝ニ米穀法ト云フガ如キモノガ
  改正ナリ或ハ新ニ提案サレナイ前ニハ此自作農ノ維持創設ノ法案ト云フモノ
  ハ何等意義ヲ成サナイモノデハナイカト云フ御尋ニ付キマシテハ十分御諒知
  下サルコトト信ズルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=25

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• 026・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　內容ニ付テモウ一遍御質問申シマスガ、當席カラ、成
  ルベク大キイ聲デ申シマスカラ、發言ヲ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=26

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• 027・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=27

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• 028・小畑大太郎

  ○男爵小畑大太郞君　只今第二ノ點ニ付テ御答ニナリマシタガ、少シ是ハ私
  ガ御尋ヲシマシタコトヲ御聽違ガアリマスヤウデスガ、申述ベマセヌデモ宜
  シウゴザイマスガ、私ガ申上ゲマシタノハ三十五年ヲ通ジテ十億五千万圓ノ
  金ヲ使フノダ、是ガ全然無クナルノデハナイケレドモ、不可抗力其他ニ依リ
  マシテ二千万圓バカリノ金ハ損失ニ對シテモ補償スル準備ガアルト云フヤウ
  ナコトヲ前提トシテ、本案ヲ御立テニナッテ居ルト斯ウ申上ゲタノデアリマ
  ス、今度承リタイノ大臣カラ御說明ガゴザイマシタ通リ、現行法ニ依リマス
  ト云フト四分八厘ノ簡易生命保險ノ借入金デ一分三厘ト云フモノヲ國庫ガ
  補助ヲシマシテ、之ヲ借リマス農家ハ差引キ三分五厘ノ負擔デアルノデゴザ
  イマス、利子ハ······然ルニ今囘ハソレヨリモ利率ガ高イノデアリマス、詰リ
  借入ヲスル農民ハ負擔ガ重ウゴザイマス、ソレカラ今日現行法ハ二十五年デ
  アリマス、然ルニ今度ノ新シナ方法ニ依リマスト、三十五年ニナッテ居リマ
  ス、成程年限ガ長ケレバ年々償還スル金ガ少クテ濟ム譯デハアリマセウケレ
  ドモ、日本ノ死亡率ヲ見マスルト云フト、先ヅ六十歲カラ七十歲迄ガ統計年
  鑑ニ依リマスルト一番數ガ多イノデアリマス、サウスルト農民トシテ勞働ニ
  堪ヘル年齢ト云フモノハ、先ヅ六十歲デアラウト思ヒマス、サウ致シマスル
  ト三十五年ト言ヒマスレバ、二十五歲ニシテ初メテ借リテ六十歲ニ達スル次
  第ト思ヒマス、或ハ債務者ガ債務ヲ果サヌ中ニ死亡スル、子孫ニ憂ヲ貽スト
  云フコトガ今度ノ案ニ依レバ出來ヌトモ申セヌト思ヒマス、果シテ是ガ完全
  ニ本案ノ御趣旨ガ達シ得ルヤ否ヤヲ疑フノデアリマス、此點ヲ御說明ヲ願ヒ
  タイ
  國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=28

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• 029・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　御答へ申シマス、利率ハ現在ノ簡易生命保險積
  立金ノ融通ニ依ル分ト、本案ニ依ル分トハ小畑男爵ノ仰セラルヽ通リ相違ガ
  アリマス、簡易生命保險ノ場合ニ於キマシテハ、政府ヨリ一分三厘ノ補助ガ
  アルノデアリマス、然ルニ本案ニ依リマスト其補助ガ無イノデアリマスカラ
  シテ、本案ガ即チ五分ヲ以テ貸付ケルコトニナッテ居リマスル、從來ノ簡易生
  命保險ノ分ハ農民ノ負擔ト致シテ三分五厘ノ利率ニナッテ居リマス、此相違ハ
  ドウシテ生ズルカト申シマスレバ、即チ簡易生命ノ從來即チ現在ノ分ニ於テ
  ハ、簡易生命カラ借入レル四分八厘ニ更ニ一分三厘ノ政府ガ補助ヲ致シテ、安
  ク三分五厘デ農民ニ渡ルヤウニシテアリマス、此相違ハ存ジテ居リマス、存
  ジテ居リマスルガ、是ハ誠ニ今日ノ財政狀態ノ上ニ於テ已ムヲ得ナイト考ヘ
  マシテ、今囘ノ分ハ政府ノ利子補給ノ無イ立方ニシテアルノデアリマス、理
  想ヲ申セバ政府ガ利子ヲ補給シテ現在ノ簡易生命保險ノ融通金ノ如ク矢張リ
  本案モ致シタイノデアリマスルケレドモ、之ヲ致シマスルト云フト中〓國家
  ノ負擔ガ大キクナリマシテ、現在ノ三千万圓年々ノ程度デモ、先キヘ行キマス
  ト中〓大キナ補給金額ニナリマスルガ、若モ將來ニ於テ三千万圓位ノ規模デ
  ハ中〓需要ニ應ジ切レナイカラシテ六千万圓ニ增額スルトカ、或ハ之ヲ八千
  万圓ニ增額スルトカ云フガ如キ必要ガ生ジテ、法律ノ改正ガ行ハレルト云フ
  時ニナリマスルト、ソコマデ考ヘテ見マスルト、國費ノ負擔ガ若シ今日ノ如
  キ補給利子ヲ以テシマスレバ中〓容易ナラヌコトニナル虞レガアリマスノデ
  ソコデ今囘ハ理想ト致シテ、即チ自作農維持創設ト云フ問題ノミノ立場カラ
  申セバ、補給ヲシテ、サウシテ農民ヘノ利子ヲ安クシタイノデアリマスガ、
  財政ノ現在及將來ノコトヲ考ヘマシテ補給ヲ致サナイ立前ニ致シタ次第デア
  ル、是ハ誠ニ已ムヲ得ナイコトト政府ハ信ジテ居リマス、サテソレガ農民ノ
  側カラ見レバドウ云フ結果ニナルカト云ヒマスルト農民ノ側ト致シマシテ
  ハ年々納メル所ノ年賦金ハ今日ノ簡易生命保險ノ場合ト同ジコトニナルノデ
  ス、唯其故ニ、年限ガ二十五年現在ノモノガ、三十五年即チ十箇年ダヶ年限
  ガ延ビテ居ルノデアリマス、十箇年ダケ年限ヲ延バシテサウシテ年々納メル。
  即チ農民ノ負擔ニ歸スベキ年賦金ハ、今日ノモノト少シモ違ハナイヤウニ致
  シテアルノデス、ソレ故ニ是ガ爲ニ即チ利息ノ高イ爲ニ年賦金ノ負擔ニ堪ヘ
  ラレナイヤウナ狀態ニ農民ガ陷ルト云フ虞レハ無イ積リデアリマス、現在簡
  易生命保險ノ成績ニ徵シテ見マシテモ、殆ド滯納ト云フガ如キコトハ無イノ
  デアリマスルカラ、即チ農民ノ負擔ニ堪ヘナイト云フコトハ無イ、十分ニ負
  擔ニ堪ヘ得ラレルト云フコトハ過去及現在ノ實績ニ徵シテ明カデアルノデア
  リマスルカラシテ、ソレト同ジ程度ノ年賦金ヲ以テスルト云フコトデアッタ
  ナラバ、此法制ニ依ル所ノ資金融通ニ對シテモ農家ハ其年賦金ノ償還ニ苦シ
  ムト云フコトハ少シモ無イ積リデアリマス、サウ致シマスルト殘ッタ問題ハ
  年限ノ問題、是ガ即チ小畑男爵ノ第三ノ御尋ノ點デアリマス、從來及現在ノ
  分ハ二十五箇年、今囘ノ分ハ三十五箇年、三十五箇年間ト云フコトハ餘リ長
  クハナイカト云フ御趣意ノ御尋デアリマシタガ、是ハ現在ノ二十五年ニ比ブ
  レバ勿論長イノデアリマスカラ、若シ二十五年ト云フコトデアルナラバ結構
  デアリマス、ソレヲ更ニ短縮シテ二十年ニスルコトガ出來レバ尙更結構デア
  リマスケレドモ、只今申ス年賦金ノ關係カラ年限ヲ延バサザルヲ得ナクナッ
  テ、三十五年ニ延バシタノデアリマスガ三十五箇年ノ制度ニ致シマシテモ
  決シテ長過ギルトハ私共ハ考ヘテ居リマセヌ、外國ノ事例ヲ申上ゲテ甚ダ恐
  縮デアリマスケレドモ、外國ニハ獨逸、英國、丁抹其他ノ諸國ニ悉ク斯ウ云
  フ方法ガ行ハレテ居リマスノデスガ、年限ハ寧ロ長イノガ多イノデアリマス、
  五十年カラ長イノハ九十年位ノモノモアル譯デアリマス、寧口日本ノ三十五
  箇年ト云フノハ短イ期間ニ屬シテ居ルト思ヒマス、併ナガラ是ガ五十年ト云
  フコトニナリマスルト、若イ中ニ之ヲ取得イタシテモ自分ノ生キテ居ル間ニ
  償還シ切レナイト云フ虞レガ無イデハアリマセヌガ、三十五年位ナラバ先ヅ
  大抵自分ノ生キテ居ル中ニ之ヲ償還スルコトガ出來ルト見テ大差ナカラウト
  斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス
  〔志水小一郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=29

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• 030・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　通〓者ガゴザイマスカラ御後ニ願ヒマス、藤
  澤利喜太郞君ノ登壇ヲ望ミマス
  〔藤澤利喜太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=30

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• 031・藤澤利喜太郎

  ○藤澤利喜太郞君　私伺ッテ見タイコトガ偶然ニモ只今ノ御應答ノ中ニ其端
  緒ガ發セラレテアッタヤウニ思ヒマス、即チ此期限ノコトニ付テデアルノデア
  リマス、此歐洲大戰ガ始マリマスルヨリ遡ルコト約一百年、即チ「ナポレオン」
  戰爭ノ終リマシタ頃迄ト云フモノハ、廣イ世界ニ於キマシテ通貨ノ價ガ最モ
  變ラナカッタ時代デアッタメデアリマス、是ハ私ガ申上ゲマス迄モナク皆樣御
  承知ノ通リ、此約一百年ノ間ニ通貨ノ價値ノ浮沈、上下ト云フモノハ僅ニ三
  割ヲ超エナカッタノデアリマス、今日我ガ日本ニ於キマシテハ是ハ全ク事情
  ヲ異ニシテ居ル、現ニ明治初年ノ當時カラ今日ニ比ベマシタナラバ、通貨ノ
  價値ハ約十分ノ一位ニナッテ居ルト思ハレルノデアリマス、併シ廣ク世界ニ
  通ジマシテハ通貨ノ價値ガ極メテ安定シテ居ッタ時代デアルノデアリマス、
  ソレカラシテ總テノ學問、是等ニ付テノ學理竝ニ諸施設、多分此自作農ガ模
  範トセラルヽ獨逸ニ於ケル施設ノ如キモ、其通貨ノ安定シテ居ッタ時代ノモ
  ノデアラウカト推察スルノデアリマス、從テ此通貨ト云フモノノ價値ハモウ
  變ラヌモノダト云フヤウニ、總テノ人ガ意識スルヤウニナッタノデアリマス、
  ソレデアリマスカラシテ公債ノ償還期限ナドモ、幾ラ長クテモ差支ナイト云
  フヤウナ感ジヲ皆ガ持ッテ居ッタノデアリマス、然ルニ此大戰ガ始マリマシテ
  カラ全然サウ云フコトハナイ、通貨ノ價値ト云フモノハ非常ニ變動スルモノ
  デアル、ドウ云フ風ニ變動スルト云フコトハ、神ナラヌ人間ニ分リヤウハナ
  イ、ケレドモ非常ニソコニ大浮沈ヲ生ズル危險ガアル、ソレ故ニ此長期ノ貸
  借ニ付テハ、餘程注意ヲシナケレバナラヌモノダト云フコトガ考ヘラレツ
  ツアルノデアリマス、尤モ戰爭中ノ國際貸借、英國ト米國トノ間ノ貸借ト云
  フヤウナモノハ又獨逸ノ賠償金ト云フヤウナモノハ、事已ムヲ得ザルガ故
  ニ長期ニ亙ッテ居ルノデアリマス、ケレドモ其他ニ付テハ、公債等ニ付キマシ
  テハ、我國ニモ隨分可ナリ長期ノ公債ガアルノデアリマス、確カ五十年ト云
  フヤウナモノモアルカト記憶シテ居リマス、デ公債ノ期限等ニ付テハ、何等
  人ガ考慮シナカッタノデアリマス、併シ戰後ハ全ク其事情ガ異ッテ居ルノデア
  リマス、前途ノ事ハ分ラヌガ、免ニ角此長期ノ貸借ニ付テ餘リ長イ期間ト云
  フモノハ甚ダ危險デアルト云フコトデアルノデアリマス、唯我〓ガ前ニモ申
  シマシタ通リ、模範トスル所ノ諸外國ニ於ケル諸學說、竝ニ其施設ト云フモ
  ノハ、皆其通貨ノ安定時代ニ、ソレガ當リ前ノコトノヤウニ考ヘラレタ時代
  ニ出來タモノデアルノデアリマス、ソレ故ニ戰後ノ今日ハ、此長期貸借ニ亙
  ルコトニ付テハ大イニ考慮シナケレバナラヌカト思フノデアリマス、公債ノ
  場合ニ於テモ餘リ長イ長期ノ公債ト云フモノハ餘程御控ヘニナッタラ宜カラ
  ウト私ハ考ヘルノデアリマス、サテ此自作農ニ付キマシテハ、只今モ小畑男
  爵ト當局大臣トノ間ニ應答ノアリマシタ如クニ、簡易保險ノ方ハ年限ガ一一十
  五年、利率ガ三分五厘ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、此年限ノ二十五
  年サヘモ私ハ長過ギルト實ハ思ッテ居リマス、且又此土地ノ問題ハ、モット大キ
  ナ問題デアル所謂土地政策ノ問題ト云フモノデ、現ニ英國ナドデハ非常ニ此
  事ニ付テ苦心ヲシテ居リマス、又何事ニモ不自由デナイ米國ニ於テサヘモ
  此南部地方ニ於ケル所ノ土地問題ト云フモノハ今日旣ニ問題ニナッテ居リ、
  又近キ將來ニ問題ニナルベキ傾向ヲ有ッテ居ルノデアル、我國ニ於テモ矢張
  リサウデアラウト察スルノデアリマス、又是非トモサウデナケレバナラヌト
  思フノデアリマス、ソレデ廣汎ナル意味ニ於テノ土地政策ニ對シマシテハ、
  此自作農ト云フモノハマア枝葉ノヤウナモノデアル、又此自作農問題ト致シ
  マシテモ、最初ノ計畫ハモット大キイ計畫デアッタヤウニ承知シテ居リマス、
  確カ今囘ノガ三千万圓、其前ノハ八千万圓程度ノモノデアッタカノヤウニ承
  知シテ居リマス、或ハソレハ私ノ誤解カモ存ジマセヌガ、少クモ新聞紙上ニ
  ハ左樣ニ現レテ居ルト存ジテ居リマス、其邊ヲ考ヘテ見マスルト云フト、
  是ハ廣汎ナル意味ニ於テノ土地政策ノ一小部分ト言ハナケレバナラヌ、一方
  ニハ年限ガ三十五年ニモ亙ルト云フ即チ戰後ノ今日ノ狀況ニ於テ三十五年ニ
  モ亙ルト云フノデアリマスカラシテ、若ヤ將來ノ一般土地政策ヲ施ス上ニ於
  テソレガ如何ヤウナ形ヲ取リマスカト云フコトハ、今日カラ分ラヌ譯デアリ
  マス、累ヲ及ボスヤウナコトハ無イカト云フコトヲ心配スルノデアリマス、
  デアリマスルノデ此點ヲ即チ歐洲大戰前トハ今日通貨ノ價値ノ變動ニ付テハ
  非常ニ狀況ガ變ッテ居ル、從テ歐洲大戰前ノ如ク外國ノモノハ餘リ我〓ノ手本
  ニハナラヌ、從テ此三十五年ト云フヤウナ年限ハ斯ウ云フ何ガシカ試驗的ノ
  性質ヲ有ッテ居ル事柄ニ對シテハ、非常ニ長イ年限デアルト云フコトヲ當局ハ
  御考慮ニナリマシタカ否ヤト云フコトヲ一ツ私ハ伺ヒタイノデアリマス簡
  易保險ノ資金ハ其性質上四分五厘以下デハドウシテモ貸スコトハ出來ナイノ
  デアリマス、最初自作農ニ貸付ケル時ニモ隨分之ニ付テハ種々考慮シタノデ
  アリマス、ドウシテモ一方ニハ小作ト云フモノニ付テ相當ノ計算ヲ立テマス
  ルガ、年三分多クモ三分五厘以上デハ到底計算ガ立タナイ、三分五厘ニシテ
  モ尙且ツ二十五年ト云フヤウナ長期ヲ要スルノデアリマス、ソコデアトノ三
  分三厘補給ト云フヤウナコトガ出來タモノデアリマス、然ルニ今農林當局者
  ノ御說明ニナリマシタ如クニ、國家ニハ損失ヲ掛ケタクナイ、自作農ハ其性質
  上非常ニ低利ノ資金デナケレバ役ニ立タヌ、實ハ何トカソコデ調和ヲシヤウ
  ト云フノデ、調和ト御話ニナッタノデアリマスガ、若シ率直ニ私ノ所信ヲ披瀝
  スルコトヲ御許シニナリマスナラバ、其無理ヲスル爲ニ此年限ヲ長クサレタ
  ヤウニ考ヘラレルノデアリマス、併シ左樣ニ申シマスルト餘リ非難ニ當ルヤ
  ウニ聞エルカ存ジマセヌガ、決シテサウ云フ意味デハナイノデアリマス、
  國家ノ大局カラ將來是非トモ我〓ガ考ヘナケレバナラヌ所ノ土地政策ノ大問
  題ニ對シテ、將來障碍ヲ爲スヤウナコトハ無イカ、如何ナル點ニ於テ有ルカ
  ト云ヘバ、即チ長期貸借ノ性質ヲ帶ビ、長期貸借ニ付テハ今後通貨ノ價値ノ
  變動ノ上下何レニナルヤ存ジマセヌ、存ジマセヌガ必ズヤ頻繁ナラムコトヲ
  眼中ニ置イテ其邊ニ付テ十分ニ御考慮ニナリマシタカ否ヤト云フコトヲ伺フ
  ト同時ニ、前ニ小畑男カラモ御話ノアリマシタ如ク、今期切迫ノ際デアリマ
  スカラ、此案ガ如何ナル運命ニ陷ルカ私ハ存ジマセヌガ、若シ此案ガ出直シ
  テ來ルヤウナ場合ニハ、其點ニ付キマシテ十分ノ御考慮アラムコトヲ序ナガ
  ラ希望イタシテ置ク次第デアリマス
  國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=31

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• 032・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　藤澤君ノ御尋ニ對シテ御答へ致シマス、將來通
  貨ノ變動ガ激シクナルベク豫測サレルガ、斯樣ナ長イ年限ノ貸付ヲシテ差支
  ナイカ、斯樣ナ意味ニ拜承イタシマシタガ、戰爭······世界大戰以來可ナリ通
  貨ノ價値モ變動ガアリマシタガ、將來是ガ更ニドウナルカト云フコトニ付キ
  マシテハ銘々意見ハアリマセウガ、何人モ之ヲ確ト突止メル譯ニハ行キマス
  マイト思フノデアリマス、從ヒマシテ此通貨ノ價値ノ變動ノ爲ニ、ドウ云フ影
  響ヲ斯樣ナ資金融通ガ蒙ルカト云フ點ニ付キマシテハ、唯是ダケノコトヲ考
  慮スレバ宜シイカト思フノデス、通貨變動ノ結果トシテ年賦金ガ納マラナイ
  ト云フヤウナコトガ生ジテ、其結果ト致シマシテ貸付金ニ損失ヲ生ジヤセヌ
  カ、之ヲ考慮イタセバ宜シイカト思ヒマスルノデス、大體ニ於キマシテ年賦金
  ハ一定ノ金額デ決メラレテ居リマスルノデアリマシテ、若シ物價ガ高クナレ
  バ農家ノ收入ハソレダケ多クナリマス、物價ガ低クナッテ、即チ農產物ガ安ク
  ナルト云フ場合ニハ年賦金ノ收入ニ對スル割合ト云フモノガ困難ニナッテ來
  ル、斯ウ云フ結果ハアリマセウト思ヒマス、ガ大體此趨勢ヲ眺メマスルト物價
  ノ大勢ハ明治ノ初年以來、我國ニ於テモサウデアリマスルシ、又外國ノ例ヲ見
  マシテモサウデアリマスルケレドモ、變動ハ爲シツヽモソレガ如何ナル方面
  ニ變動シテ行クカト言ヒマスルト云フト、通貨ノ價値ガ下落シテ行ク方ニ變
  動シテ居ルヤウニ思ハレルノデシテ、ソレ故ニ言葉ヲ換ヘテ言ヒマスレバ物
  ハ高クナル方ニ變動イタシテ來テ居ルヤウニ思フ、現ニ通貨ノ如キハ御案内
  ノ通リ種々波瀾ハアリマスルケレドモ、十年前ニ比ベテハ高イ、二十年前ニ
  比ベレバ尙更高イ、斯ウ云フ狀態ニナッテ參ッテ居リマス、デ將來ノ豫測ハ許
  シマセヌケレドモ、大體若シ變動アリトスレバ通貨ノ價値ガ少シヅツ下落シ
  テ行クト云フ方面ニ變動シテ行キハセヌカト考ヘラレルノデス、サウ致シマ
  スレバ年賦金ニ差支ルト云フガ如キ現象ハ生ゼズシテ、却テ農家ハ今日ノ物
  價ニ於テ年賦金ヲ納メルヨリハ將來ニ於テ納メルコトガ樂ニナッテ來ルト云
  フヤウナコトニ相成リハセヌカト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ此年限
  ノコトデゴザイマスガ、先刻申上ゲマシタ通リ成ルベク短イ方ガ宜シイノデ
  アリマスルケレドモ、ソレハ此自作農ノ維持創設ト云フコトハ極メテ大切ナ
  コトデアッテ、出來ルダケ之ヲ擴充イタシタイ、致スノガ又當然デアルト考ヘ
  マス結果ト致シテ、若シ國庫ノ補給ト云フモノヲスルコトガ出來ヌモノトシ
  マスレバ、即チ十箇年延バスヨリ外ハナイノデサウナッタト云フコトヲ申上
  ゲテ居ル譯デゴザイマス、十年モ延バシテ三十五年ニスル位ナラバ止メタ方
  ガ宜カラウト云フコトデアリマスレバソレハ別デアリマスケレドモ
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  私共ハ今日二十五年ノ年期ヲ三十五年ニ延シマシテモ、矢張リ此自作農ノ維
  持創設ト云フ制度ハ今日以上ニ擴充シテ行クコトガ國ノ爲ニ利益デアルト信
  ジテ居ル譯デゴザイマシテ、又外ニ現ニ公債ニ於テハ將來ノ物價ノ變動如何
  ニ拘ラズ、現在旣ニ五十箇年位マデ發行イタシテ居リマスルシ、將來ト雖モ
  恐ラクハ此年限ヲ短縮スルコトハ、即チ短期公債ヲ多ク發行スルコトハ恐ラ
  ク不可能ノコトデアラウト思フノデアリマス、又勸業銀行ノ年賦貸付等ノ如
  キモ矢張リ同ジコトデゴザイマシテ、十年二十年ニ亙ッテノ長期貸付ヲ行ッテ
  居リマスルシ、是モ將來ト雖モ通貨ノ價値ノ變動ト云フコトガアッタト致シマ
  シテモ、此長期貸付ト云フコトヲ廢止スル譯ニハ行カヌダラウト思フノデア
  リマス、ソレト同ジ意味ニ於キマシテ多少年度ノ差ハアリマスルケレドモ、要
  スルニ三十五年位ノ程度ハ將來物價ノ變動ハ多少アルト致シマシテモ、ソレ
  ガ爲ニ此制度ガ破壞サレルト云フヤウナ憂ハ先ヅナカラウト、私常識的ニ判
  斷ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス、ソレデ吳〓モ申上ゲマスルガ、玆ニ年限
  ヲ延バスノハ非常ノ無理ガアルデハナイカ、無理ヲスルデハナイカト云フヤ
  ウナ御考モアラセラレマスルカ知レマセヌケレドモ、是ハ決シテ非常ノ無理
  ガ此間ニ生ジテ居ルトハ私共ハ考ヘテ居リマセヌノデ、ドウゾ其邊ハ篤ト尙
  ホ御熟考ヲ願ヒタウゴザイマス

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• 033・藤澤利喜太郎

  ○藤澤利喜太郞君　簡單デゴザイマスカラ此席カラ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=33

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• 034・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=34

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• 035・藤澤利喜太郎

  ○藤澤利喜太郞君　只今ノ御話デ公債等モ償還期間ノ五十年ノモアル云々ト
  云フ御話ノ模樣カラ考ヘマスト、矢張リ其通貨ノ價値ノ安定シテ居リマシタ
  時代ノコトニ御考ガ固ッテ居ルヤウニ拜聽シテ居ッタノデアリマス、先刻モチ
  ヨット述ベマシタ如クニ公債ノ場合ニ於テモ成ルベク長期ハ避ケナケレバナ
  ラヌ、五十年ナント云フコトハ是ハドウシテモ避ケナケレバナラヌト云フ···
  ···私ハ是ハ獨リ日本ニ於テノミナラズ、世界ニ於ケルサウ云フ考ガ段々發展
  發達シツヽアルト云フコトヲ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、併シ此事ハ
  現ニ玆ニ提出セラレタ案ニ付テハ旣ニ具體的ノ形ヲ有ッテ居ル、何等申添ヘル
  コトハアリマセヌ、將來ドウ云フ形カデ此案ガ出直シテ來ル時分ニハ、此點
  ニモウ一層ノ御考慮アラムコトヲ希望シテ此質問ヲ打切リマス

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• 036・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君ニ伺ヒマス、今志水君ガ再ビ質疑ヲ爲サレ
  タイト云フコトデゴザイマスガ、先刻議長ガ御注意致シマシタコトハ御忘レ
  デハアルマイト思ヒマス
  〔志水小一郞君「忘レハ致シマセヌ」ト述フ〕

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• 037・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　一先ヅ登壇ヲ促シマシテ、其質疑ノ模樣ニ依ッテ再
  ビ御差止メ申スカモ存ジマセヌカラ、豫メ申上ゲテ置キマス

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• 038・志水小一郎

  ○志水小一郞君　極メテ簡單デアリマスカラ、此席カラ發言ヲ御許シヲ願ヒ
  タイト思ヒマス

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• 039・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

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• 040・志水小一郎

  ○志水小一郞君　私ノ御尋ネ致シマスコトハ極メテ簡單デアリマスガ、先刻
  議長カラ御叱リヲ戴キマシタヤウニ傍側ニ亙ルヤウナコトハナイノデアリマ
  ス、極ク約メテ申シマスト、法律案其物ノ信用ニ關スル、ソレカラサウ云フ
  法律案ヲ制定提出スル其官府ノ權限ニ關スルコトデアリマスカラ、決シテ外
  ノコトデハナイト信ズルノデアリマス、其意味ヲ以テ御尋ヲ致シマス、農林大
  臣ニ御尋ネ致シマスガ、抑、自作農創設ト言ハムガ如キ問題ハ、取リモ直サズ
  農林大臣ノ御主管ト本員ハ信ジテ居ルノデ、ソコデ此問題ハ、本日議題ニナッ
  テ居リマス法案其物デアルカ、或ハ本日ノ法案ノ根本法ニナッテ居ルコトデ
  アリマスカ、世間デ專ラ傳ヘマス所ニ依レバ、主務大臣ノ御手ニ成ラズシテ
  意外ニモ〓育行政ノ主管者タル文相ノ手ニ成ッタト云フコトガ專ラ世間ニ聞
  エルノデアリマスカラ、是ハ唯道路ノ風說ニ止ルノデアリマセウカ、實際デ
  アリマセウカ、實際デアルナラパ斯ウ云フ疑問ガ起ルノデアリマス、成程ソ
  レハ政府部內ノコトデアル、ドウナッテモ差支ナイ、内閣官制ニハ何モサウ云
  フコトハ明文ハナイ、斯ウ御說明ガアルカモ知レマセヌ、併ナガラ各省官制
  通則ノ上カラ讀ンデ見マスルト、凡ソ特定ノ事柄ニ付テ法律ヲ新タニ創定ス
  ル、又ハ旣成ノ法律ヲ改廢スルト云フ場合ニハ、主務大臣ガ案ヲ具シテ內閣
  ニ提出スルト云フ明文ガアルノデアリマス、ソコデ今道路傳ヘマスル如キ、
  自作農ニ關スル重要ナル法律ガ、若シヤ文部當局者ノ手ニ成ッタト云フコトニ
  ナリマスレバ、內閣官制ノ上ニ於テハ非難ガナイト云フ御說明モ出來ルカモ
  知レマセヌガ、只今述ベマシタ各省官制通則ノ、法律ヲ新タニ制定スル既成
  ノ法律ヲ改廢スル時分ニハ主務大臣ガ案ヲ具シテ內閣ニ提出スルト云フ明文
  ニ·、背カヌノデアリマセウカ、是ハ法案其物ノ信用ニ關シ、一ニハ法案ニ
  密接ノ官府ノ權限ニ關スルコトデアリマスカラ御尋ネ致シマス
  國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=40

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• 041・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　御答イタシマス、此成案ヲ得マシテ之ヲ議會ニ
  提出イタシマスル迄ノ政府部内ニ於テノ種々相談ノ行程ニ付テハ、實ハ御尋
  ニ對シテ御答ヲスル限リデハアリマセヌケレドモデス、色〓新聞紙ニモ書キ
  立テタヤウデモゴザイマスルシ、又志水君ノ只今ノ御尋ネモアリマスノデ、是
  ハ御話申シテ置ク方ガ宜カラウト思ヒマスカラ申上ゲマスルガ、此法案ハ無
  論私ノ責任ヲ以テ私ガ立案ヲ致シタノデアリマスルガ、唯關係當局トノ間ニ
  一致セザル點ガアリマシタノデ、ソレヲ總理大臣ガ其一點ヲ定メル譯ニナッ
  テ居リマシタガ、總理大臣ガ其際ニ自分ノ參考トシテデス、自分ノ參考トシ
  テ閣僚ト云フ意味デハアリマスマイガ、文部大臣及ビ其他一二ノ閣僚ノ人〓
  ニ意見ヲ求メタコトガアルノデアリマス、ソレガ何カ今日提案イタシテ居ル
  此法案ガダ、ソレ等ノ、文部大臣初メソレ等ノ手ニ依ッテ成ッタカノ如ク新聞
  紙等ニ傳ヘラレテ居リマスケレドモ、決シテ左樣ナ次第デハナイノデアリマ
  ス、只今申上ゲルダケノ程度ノモノデアッテ、是ハホンノ內々ノ實ハ御話ニ過
  ギナイノデ、此只今出テ居ル所ノ法案ハ、財務當局竝ニ私ニ於テ合議立案ヲ
  致シテ提出ヲ致シタ次第デゴザイマス、左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=41

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• 042・志水小一郎

  ○志水小一郞君　只今ノ農林大臣ノ御說明ヲ聞キマシテ、之ヲ又色〓尋討シ
  テ御答ヲ煩スナドト云フ考ハナイノデアリマス、是ハ政府部內ノコトデアル
  カラ外ニ露顯セシムベキコトデナイト仰ッシヤレバソレデ宜イノデアリマス、
  本員ノ意見ハソレデアル、併ナガラ農林大臣モ、此案ノ起草ヨリ成立ニ至ル
  迄ノ其經緯經路ニ付テノ新聞記事ハ確カニ御記憶デアラウト思ヒマスガ甚
  ダヤカマシイコトヲ言ッタノデアル、是ハ本員ハ窃ニ第三者トシテ憂ヘテ居タ
  ノデアル、ソレデドウシテアヽ云フコトニナルデアラウカ、要スルニ内閣ニ
  意見ノ一致ガ·

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=42

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• 043・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　志水君、志水君ニ伺ヒマスガ未ダ質疑デゴザイマ
  スカ、只今ノ農林大臣ノ答辯ニ對シテ御意見ガマシイコトヲ御申述ベニナル
  コトハ御注意ヲ請ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=43

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• 044・志水小一郎

  ○志水小一郞君　宜シウゴザイマス、本員ガ質疑ヲ致シタル所以ハ斯ク〓〓
  デアルト云フコトヲ申シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=44

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• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　其必要ハゴザイマセヌ

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• 046・志水小一郎

  ○志水小一郞君　ソレヨリ以上ハモウ御尋ネスルコトモゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=46

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• 047・志村源太郎

  ○志村源太郞君　私ノ質疑ハ極メテ簡單デゴザイマスカラ、此席カラ御許シ
  下サラムコトヲ願ヒマス······私ハ本案ニ付キマシテ農林大臣ノ御說明ヲ伺ヒ
  ツヽ疑問ガ出テ參ッタノデアリマス、依テ其點ヲ伺ヒタイト存ジマス、或ハ大
  臣ガ委員會ニ御臨ミニナッテ御說明ノ上デソレヲ拜讀シテモ宜シイカト存ジ
  マス、併シ此法案ノ根本問題ト存ジマスルカラ、當席デ御伺ヲ致シタイト存ズ
  ルノデアリマス、自作農ト云フコトニ付キマシテハ、私ハ大臣ノ御演說ヲ善意
  ヲ以テ極メテ傾聽ヲシタノデアリマス、然ルニ本案ノ御說明ノ御意向ヲ段々
  伺ッテ見ルト年々三千万圓、三十五年十億五千万圓ノ金ヲ此自作農ノ創設ノ
  爲ニ使フノデアル、斯ウ云フ御說明デアリマス、ソレヲ推シ擴メテ私ガ大臣
  ノ御意向ヲ忖度シ、又本案提出ノ趣意等ヲ想像イタシマスルト、頗ル私共ノ
  考ヘテ居ル所ト違フノデアリマス、仍テ能ク本案ノ趣意ヲ了解スルガ爲ニ伺
  ヒタイト存ジマス、自作農ト云フモノノ必要ナルコトハ是ハモウ私モ大臣ト
  意見ヲ同ジクスル者デアリマス、小作ヨリモ宜ク、地主ヨリモ宜ク、農事改
  良ノ爲ニハ精勵スルモノデアル故ニ、此自作農ノ創設ト云フコトハ、私ハ日
  本ノ農業ノ爲ニ滿腹ノ希望ヲスルモノデアリマス、サリナガラ一定ノ額ヲ決
  メテ、必ズ是ダケノ自作農ヲ設定スルト云フ方針ヲ、執ルカ執ラヌカト云フ
  コトハ是ハ別問題デアリマス、自作農ヲ希望スル者ガ土地ヲ得ラレヌガ爲
  二、苦悶シテ居ル者ニ其土地ヲ得ルノ便宜ヲ與ヘルト云フコトハ、大イニ宜
  カラウト思ヒマス、併ナガラ豫メ金額ヲ定メ、期限ヲ定メ、若クハ何十万町
  步ト云フ目的ヲ定メテ、之ヲ必ズ設定スルト云フコトハ別問題ト存ズルノデ
  アリマス、大臣ノ御說明ハ後者ニアル、必ズ是ダケノ金ヲ使ッテ是ダケノ自作
  農ヲ作ルノデアル、斯ウ云フコトニアルカトモ存ズルノデアリマス、ソレデ
  アリマスルト私ハ少シ自分ノ懷抱シテ居リマスル意見ト違ヒマスルカラシ
  テ、何故左樣ナコトヲ今日ノ日本ノ農業デハ爲サラナケレバナラヌト御感ジ
  ニナッタカト云フ點ヲ伺ヒタイノデアリマス、自作農ノ必要ナルコトハ最モ御
  同感デアリマスガ、併シ今日ノ農業界ニ於テ、自作農ガ其立場ヲ維持シ三十
  年モ四十年モ自作農デ殘ッテ居ルト云フコトハ、頗ル困難ナルコトデアリマ
  ス、負擔ノ增加、生活ノ向上、申上ゲル迄モナク、種々ノ壓迫ヲ蒙ッテ自作農
  ト云フモノハ、今日頻々トシテ小作階級ニ堕チテ行クノデアリマス、此場合
  ニ於テ日本ノ農業ノ必要上カラ、成ルベク自作農者ヲ增加シテソレヲ維持シ
  テ行キ、又之ヲ出來ルナラバ增加シテ行カウト云フノハ、何人モ異存ノナイ
  コトダラウト存ズルノデアリマス、何トナレバ、是ガ農業ノ改良上裨益スル
  所大ナルコトハ誰方モ認メルコトダト存ズルノデアリマスガ、政府ガ必ズ是
  ダケノモノヲ作ッテ行クト云フコトヲ決メルトナルト、私ノ虞レマスルコト
  ハ、將來自作農タルノ地位ヲ維持スル熱心ノ考ヘノナイ者モ、其貸付利率ノ
  安イコトト其償還年限ノ長イコト、若クハ政府ノ勸誘、其他四圍ノ事情ニ依ッ
  テ、土地ヲ持チマシテ、而シテ五年カ十年ノ後ニ支ヘ切レズシテ、其自作農ハ
  潰レテシマフト云フヤウナコトガ起リハシナイカト思フノデアリマス、仍テ
  自作農ノ增加ハ希望スルガ自作農タラムトスル熱心ガアリ相當ノ資力ガアッ
  テ、サウシテ相當ノ便宜ヲ持ツ所謂精農、日本ニ於ケル所ノ最モ精密ナ農業
  者、其農業者ヲシテ初メテ自作農タルノ資金ヲ得セシムル、サウシテ其地位
  ヲ維持サセルト云フコトニ努メルガ、此自作農ヲ創設シ、永遠ニ增殖シテ行
  ク所以ト考ヘルノデアリマスルガ、サウデナクシテ豫メ是グケノ自作農ヲ作
  ルノデアル、斯ウ云フ方針デ行キマスルト、或ハ虞ル、斯樣ナ土地ニ於テハ
  或ハ小作爭議ノ起ッタ所ニ於テハ、地主ノ便宜ヲ圖ルガ爲ニ、自作農ヲ設定ス
  ル、依テ是ダケノ土地ヲ小作者ニ買ハセル爲ニ、是ダケノ資金ヲ融通スル、
  斯ウ云フヤウナコトニナリマスルト、眞ニ自作農タラムトスル精神モナク、
  又其準備モナイ人ガ此恩典ニ浴シテ、遂ニ自作農設定ノ目的ニ背反スル結
  果ヲ來スコトヲ虞レルノデアリマス、ソレハ初メ申上ゲマス通リ周圍ノ壓迫
  ノ爲ニ、段々現時ノ狀態ガ自作農ヲ維持スル爲ニ、小經濟ノ爲ニ、其收入ガ
  少イ爲ニ、維持スル上ニ於テ困難ヲ感ズル實情カラ私ハ左樣ニ考ヘルノデア
  リマスルガ、政府ノ只今ノ御說明デアルト、此方針ヲ決メテ是非トモ作ッテ行
  〃、斯ウ云フ御考ノヤウニ私ハ伺ッタノデアリマスルガ、間違デアリマスルカ
  ドウカ、又斯樣ナル形勢ガ我國ニ於テ必要デアルカ、外國ニ於キマシテモ世
  界大戰後或ハ大地主ノ土地ヲ有償、無償ニ買收シ、若クハ取上ゲテ之ヲ小農
  ニ分割シタル制度ヲ採ッテ、所謂土地改革ヲ行ッタコトモアリマスルガ、是ハ
  世界大戰ノ混亂ノ跡ヲ維持スル善後策デアリマシテ、我國ノ如キハ左樣ナ立
  場ニマダ立ッテ居ラヌト思フ、故ニ一定ノ方針ヲ決メテ是ダケノ自作農地ヲ作
  ル、若クハ自作農ヲ作ルト云ッテモソレガ永續スル見込ガ立タヌ以上ハ、是ハ
  著手セヌ方ガ宜イト思フ、寧ロ眞ニ自作農タラムトスル所ノ者ヲ摑ヘテ、ソ
  レニ便宜ヲ與ヘルト云フ方法ガ宜ラカウカト思フ、若シ之ニ分リ易イ爲ニ二
  ツノ名ヲ付ケテ見マシタナラバ、自由ニ、任意ニ自作農タラムトスル者ニ便宜
  ヲ與ヘル方針ト、必ズ自作農ヲ設定スルト云フ歐羅巴ノ「バルカン」諸邦等ガ
  採ッタ所ノ小農設定ノ方針ト、ドチラデアルカト云フコトニ付キマシテ、大臣
  ノ御說明カラ疑ヲ生ジタノデアリマス、故ニ此點ヲ明瞭ニ伺ッテ置キタイト
  存ジマス
  〔國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

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• 048・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　志村君ノ御尋ニ御答ヲ致シマス、自作農創定ノ
  要求ガアルニ應ジテヤッテ行クノハ宜シイガ、豫メ主義トシテ是ダケノモノ
  ヲ必ズ自作農ニスルト云フコトハソコニ非常ナ危險ガ存在シテ居リハセ
  ヌカ、非常ナ無理ガソコニ存シテ居リハセヌカト云フ御尋デアッタヤウデゴ
  ザイマシタガ、私共ノ考ヘハ大體ニ於テ小作スル所ノ農業者ハ、其小作ス
  ル所ノ土地ヲ自ラ所有シテ行クト云フコトガ最モ理想デアルト考ヘテ居ルノ
  デゴザイマシテ、是ハ社會政策ノ上カラ見マシテモ、亦社會組織ノ上カラ見
  マシテモ、亦生產ヲ增殖スルト云フ點カラ見マシテモ、有ラユル方面カラ見
  マシテ人ノ土地ヲ耕シテ居ルヨリハ、自分ノ土地ヲ自分デ耕シテ居ルト云フ
  コトガ、如何ニ宜シイカト云フコトハ、是ハ多言ヲ要セナイ所デアラウト思
  フ、ソレ故ニデス、出來得ル限リ今ノ小作農ヲシテ、自作農タラシメル政策
  ヲ執リタイト思フ、ソコデデス、ソレハ理想トシテ其政策ニ向ッテ進ンデ行ク
  ニ致シマシテモ、ソレダケ小作農ニシテ自作農ニナリタイ者ガ無イ、無イ場
  合ニ無理ニソレヲシヤウトスレバ即チ玆ニ無理ガ生ズル、其點ニ於テハ志村
  君ノ意見ト一致シテ居ル、所ガ現在ノ狀況ヲ見マスルト、ナカ〓〓以テ左樣
  ナ需要ガ無イナドト云フヤウナ狀態デハナイノデアリマシテ、此僅カ一年ニ
  八百万カ、千二百万圓位ノ、少シヅツ簡易生命保險積立金ヲ此方ニ用ヰテ居
  ル現在ニ於テ、到底多額ノモノヲ申込ンデモ、多クノモノヲ申込ンデモ、無
  駄デアッテ借入レルコトガ出來ヌト云フ狀態ノ下ニアッテスラモデス、非常ナ
  申込ガ殺到イタシテ居ルト云フ狀態デ、府縣ニ向ッテ其地方々々カラ申出テ居
  ルモノヲ〓算イタシマシタナラバ、三億カラシテ四億ノ間ニアルダラウト思
  フノデシテ、而シテ其中カラシテ選擇淘汰ヲシテ府縣ガ簡易生命保險ニ向ッテ
  要求スル所ノ金額ガ、藤澤君ナドハ能ク御承知デアリマセウケレドモ、CBC.
  五千万圓ニモ上ボッテ居ルノデアリマス、ソレニ對シテ僅ニ簡易生命保險ノ方
  カラハ千万圓カ千二百万圓シカ融通ガ出來ヌト云フヤウナ、殆ド一割ニモ其
  要求ニ應ズルコトガ出來ヌト云フヤウナ狀態ニアル、是ハ現在僅カ千万圓內
  外ノ融通資金シカナイト云フ、幾ラ申込ンデモ駄目ダト云フ其觀念ノ下ニ於
  テ集リ來ルモノガ尙ホ斯樣ナ狀態、全體カラ云ヘバ三億モ四億モアル、其中
  カラシテ簡易生命保險ノ方ヘ申込ンデ來ルモノガ一億五千万圓モアルト云フ
  狀態デアリマスカラ、ソレガ相當ノ資金ノ融通ヲ受ケルコトガ出來ルモノト
  致シマシタナラバ續々ト此要求ト云フモノハ簇出シテ參ルト私共ハ信ジテ居
  ルノデシテ、從テ私共ノ最初ノ考ヲ申シマスルト、實ハ三割位迄即チ全國
  ノ小作地ノ三割位ヲ自作地ニスルト云フ計畫ヲ立テマシテモ、ソレハ相當ニ
  需要ガアリ相當此計畫ニ附イテ參ルコトガ出來ルト斯樣ニ信ズルノデアリマ
  スルガ、此法案ニ於キマシテハ、更ニ規模ガ小サクナリマシテ、三千万圓ニナッ
  テ居リマスルガ、是デハ全體ノ僅ニ一割三分位ノモノニシカナリマセヌガ、
  全體ノ小作地ノ一割三分何厘位ニシカナリマセヌノデスガ、此位ノ程度ノ需
  要、マア需要ト假リニ申シマセウカ、即チ小作人ガ自作人ニナリタイト云フ
  モノノ割合ハ······此位ノ割合ハ無論十分ニアルト思ヒマス、私共ノ信ズル所
  ニ依リマスレバ、此位デハ到底足リナイト云フ、即チ申込ニ對シテ足リナイ
  ト云フ時期ガ必ズ來ルデアラウ、其時ニハ此法律ノ改正ヲ致シテ、之ヲ增額
  イタサナケレバナラナイヤウナ時期ガ必ズ到來スルト私共ハ信ジテ居ル、ソ
  レ故ニ無理ニ需要ノナイ所、申込ノナイ所、サウ云フ所ニ持ッテ行ッテ無理ニ
  嵌メ込ンデ行カウト云フコトヲスル積リデハナイノデアリマス、其點ハサウ
  云フコトヲ致シマスレバソコニ無理ガ生ズルト云フコトハ、ソレハ志村君ト
  全ク御同感ナンデス、併ナガラ其無理ヲセズ當然起ル需要ニ對シテモ此位ノ
  モノデハマダ足リナイ位ニ當局トシテハ考ヘテ居ル次第デゴザイマスカラ、
  左樣御承知ヲ

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• 049・志村源太郎

  ○志村源太郞君　モウ少々只今ノ御答辯ニ付キマシテ御伺ヒ致シタイ、此場
  合ハ議論ノ場合デゴザイマセヌカラ、御趣意ヲ伺フコトニ致シマスルガ、然
  ラバ請求者ノ中デ三十五年ナリ、四十年ニ亙ッテ自作農タル地位ヲ維持シ得ル
  ト云フ人間ト、サウデナイ人間トノ差別ハドウシテ御付ケニナリマスルカ、
  又第二ニハ自作農資金ヲ貸渡シタ後ニ其人ガ自作農デナクナルト云フコトニ
  付キマシテハドウ云フ豫防ノ方法ヲ御執リニナッテ御實行ニナル御考デアリ
  マスカ、其點ダケヲ伺ヒタイト存ジマス
  國務大臣山本悌二郞君演壇ニ登ル〕

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• 050・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　年賦金ガ拂ヘナイ場合ニハドウスルカ、斯ウ云
  フノガ第二ノ御尋デゴザイマシタガ、第一點ハ何デゴザイマシタカ

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• 051・志村源太郎

  ○志村源太郞君　第一點ハ御話ノ通リ、斯カル需要者ガアル、請求者ガアル、
  其內デ自作農ニ最モ適シタル人間デアル者ヲ選バナケレバナラヌ、ソレニハ
  ドウ云フ御選擇ノ方法ガアリマスカ、又第二ハソレガ自作農デナクナル場合
  ニハドウ御防ギニナルノカ、斯ウ云フノデアリマス

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• 052・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　年賦金ヲ滿足ニ拂ッテ行クダケノ資格ガ有ルカ
  無イカト云フコトヲドウシテ審査ヲスルカト云フコトデアリマスガ、是ハ矢
  張リ從來ト同ジコト、只今マデノ簡易保險ノ資金ヲ融通スル場合ト同ジコト
  ノ立前ニナルノデゴザイマシテ、即チ地方ニソレ〓〓ノ委員會ト云フモノガ
  アリマシテ、此委員會ニ於テ當人ノ資格カラ、土地ノ生產力カラ、ソレ〓
  調ベマシテ、是ナラバ是ダケノ年賦金ハ確ニ償還ノ出來ルト云フ見當ヲ付ケ
  タ者ニ限ッテ融通ヲスルト云フコトニナルノデゴザイマシテ、ソレハ只今マ
  デノ即チ現行ノ簡易生命保險ノヤリ方ト少シモ違ハナイノデゴザイマシテ、
  サウシテ其實績ハドウカト申シマスルト、簡易生命ノ資金ヲ融通シテ以來未
  ダ曾テ年賦金ノ滯納ト云フモノハナイノデアリマスルカラ、恐ラクハ此方法
  デ行キマシタナラバ、將來ト雖モ大體ニ於テハ年賦金ノ滯納ト云フガ如キコ
  トハナイダラウト思フ、併ナガラ第二ノ即チ御尋ハ是カラ起ルノデゴザイマ
  スガ、併シ、萬一支拂ガ出來ナイト云フ者ガ生ジタ場合ニハ、ソレハドウス
  ルカ、ソレハ目今ノ所デハマア差詰メ澤山ノ申込ガ確ニ殺到イタスノデアリ
  マシテ、到底年ニ三千万圓位デハ賄ヒ切レナイノデアリマスカラシテ、年賦
  ヲ拂フコトガ出來ナイ者ガ出來マスレバ、之ヲ直チニデス······一旦ソレヲ引
  上ゲル形ニハ法律上ナリマセウケレドモ、直グ右左ト新タナ要求者ニ對シテ
  之ヲ移スコトガ出來ルヤウニ組立テヽアルノデゴザイマシテ、ソレ故ニ左樣
  ナ場合ニ於テ是ガ手持チニナルト云フヤウナコトハ差詰メノ所デハナイ積リ
  デゴザイマス

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• 053・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ハ肥料管理法案外二件ノ特別委員ニ付託イタ
  シマス、午後一時三十分マデ休憩イタシマス
  午後零時十三分休憩
  山東小山平山東
  午後一時五十九分開議

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• 054・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　書記官ヲシテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
  瀨古書記官朗讀〕
  本日特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
  特許法中改正法律案外三件特別委員會
  委員長子爵東園基光君
  副委員長內田重成君
  酒造組合法中改正法律案特別委員會
  委員長土方寧君
  副委員長男爵北河原公平君
  無線電信法中改正法律案特別委員會
  委員長內田嘉吉君
  副委員長男爵三須精君
  大禮帝室博物館復興翼賛會事業費ノ補助ニ關スル法律案特別委員會
  記念
  委員長子爵前田利定君
  副委員長男爵沖貞男君
  鐵道營業法中改正法律案特別委員會
  委員長侯爵西〓從德君
  副委員長佐竹三吾君
  本日特別委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
  大禮帝室博物館復興翼贊會事業費ノ補助ニ關スル法律案可決報告書
  記念
  東京市

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• 055・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　是ヨリ午後ノ會議ヲ開キマス、日程第二、造
  幣局特別會計法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
  造幣局特別會計法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  昭和四年三月十九日
  衆議院議長川原茂輔
  貴族院議長公爵德川家達殿
  造幣局特別會計法中改正法律案
  造幣局特別會計法中左ノ通改正ス
  第二條ニ左ノ一項ヲ加フ
  貨幣製造ノ準備トシテ必要ナル材料地金ハ資金ヲ以テ之ヲ保有スルコト
  ヲ得
  第二條ノ二製造濟ノ補助貨ニシテ年度內ニ發行ニ至ラサルモノハ資金ニ
  受入レ之ヲ保有スルコトヲ得
  第六條作業上益金ヲ生シタルトキハ之ヲ資金ニ編入シ損失ヲ生シタルト
  キハ之ヲ資金ヨリ補塡スヘシ
  附則
  本法ハ昭和五年度ヨリ之ヲ施行ス
  明治四十五年法律第一號ニ依リ〓國事件費支辨ノ爲繰替使用シタル造幣局
  資金二百二十八萬七百九十七圓五十七錢五厘及大正五年法律第四號ニ依リ
  大正三年臨時事件費支辨ノ爲繰替使用シタル造幣局資金三百五十萬圓ニ付
  テハ之ニ相當スル金額ヲ造幣局資金ヨリ減額シテ整理スルコトヲ得
  〔政府委員大口喜六君演壇ニ登ル〕

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• 056・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　造幣局特別會計法中改正法律案ニ付キマシテ、其
  大要ヲ御說明申上ゲタイト存ジマス、貨幣製造ノ材料タル地金ハ常ニ相當餘
  裕額ヲ保有イタシマシテ、臨時緊急ノ要ニ備ヘテ置クノ要アリマスコトハ申
  スマデモナイト存ジマスルガ、其材料タル地金ハ造幣局資金ヲ以テ保有イ
  タシマスルコトガ、最モ妥當ノ方法デアリマスルカラ、其途ヲ開クノ必要ガ
  アルト存ズルノデアリマス、次ニ補助貨ノ需要ハ財界ノ狀勢ニ伴ヒマシテ消
  長ヲ免カレヌノデアリマスカラ、不況時ニ於キマシテモ相當豫備額ヲ製造イ
  タシマシテ、將來ノ需要ノ激增ニ備フルコトガ造幣作業ノ圓滑ヲ期シマス上
  ニ於テ最モ適當ノ措置デアルト考ヘマス、然ルニ從來ノ如ク製造濟補助貨ヲ
  直チニ發行シマス時ハ、未ダ需要ナキモノニ付キマシテハ、通貨タル作用ヲ
  發揮セザルニ拘ラズ、政府預金ト造幣局資金トヲ膨脹セシムルノ弊ヲ生ズル
  ノデアリマス、仍テ製造濟補助貨ニシテ未ダ需要ヲ生ゼザルモノハ未發行ノ
  儘管資金ヲ以テ保有スルコトヲ得ルノ途ヲ開クノヲ適當ト考ヘタノデアリマ
  ス、又造幣局資金ノ中、明治四十五年法律第一號ヲ以テ〓國事件費支辨ノ爲繰
  替使用イタシマシタルモノ、二百二十八万餘圓、及ビ大正五年法律第四號ヲ
  以テ、大正三年臨時事件費支辨ノ爲繰替使用ヲ致シマシタモノ三百五十万圓
  ニ付キマシテハ從來國庫ニ對シマスル造幣局資金ノ債權トシテ取扱ッテ參ツ
  タノデアリマスガ、資金ニ餘裕ガアリマスル今日ニ於キマシテハ、之ヲ資金ノ
  減額ト致シマシテ、整理ヲ致シマスコトガ適當デアルト考ヘルノデアリマス、
  右ノ趣旨ヲ達シマスル爲ニ、本改正法律案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、
  何卒御協賛アラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=56

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• 057・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本法律案ハ昭和二年法律第十五號中改正法律
  案ノ特別委員ニ付託イタシマス
  喜東方

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=57

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• 058・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正詔君)　日程第三、日本興業銀行法中改正法律案、政
  府提出、衆議院送付、第一讀會
  日本興業銀行法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  昭和四年三月十九日
  衆議院議長川原茂輔
  貴族院議長公爵德川家達殿
  日本興業銀行法中改正法律案
  日本興業銀行法中左ノ通改正ス
  第九條ノ二但書中「拂込資本金額ノ二分ノ一」ヲ「拂込資本金額ノ三分ノ二」
  二段六
  〔政府委員大口喜六君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=58

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• 059・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　日本興業銀行法ハ御承知ノ如ク明治四十四年ノ改
  正ニ依リマシテ日本興業銀行法中ニ第九條ノ二ノ規定ヲ設ケマシテ、工場ニ
  屬シマスル敷地又ハ建物ヲ擔保ト致シマスル貸付等ヲ認メタノデアリマスル
  ガ、其貸付金總額高ハ拂込資本金額ノ二分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ザルモノ
  ト致シテアルノデアリマス、然ルニ其後同行業務ノ發展ニ連レマシテ、本條項
  ニ依リマスル貸出ガ漸次增加イタシマシテ、殊ニ大正十二年ノ大震火災以降
  日本興業銀行ガ中小工業者ニ貸出ヲ致シマスルコトニ力ヲ用ヒルコトニナリ
  マシタコトガ顯著デアリマスル結果、最近ニ於キマシテ將ニ其法定限度ニ達
  セムトスルノ狀況ヲ示シテ居ルノデアリマス、而モ其需要ハ益〓多キヲ加ヘ
  マスル實狀ニアルノデアリマス故ニ、此法定限度ヲ擴張イタシマスル必要ヲ
  認メマシタノデ、本案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協
  贊アラムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=59

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• 060・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本法律案ハ同ジク昭和二年法律第十五號中改
  正法律案ノ特別委員ニ付託イタシマス
  〓吉木小车

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=60

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• 061・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　日程第四ヨリ第十三マデ、承諾ヲ求ムル件、
  衆議院送付、會議
  昭和二年度第一豫備金支出ノ件
  昭和二年度特別會計第一豫備金支出ノ件
  昭和二年度特別會計豫備費支出ノ件
  昭和二年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件追加
  昭和二年度特別會計第二豫備金支出ノ件追加
  昭和二年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件追加
  昭和三年度第二豫備金支出ノ件
  昭和三年度豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  昭和三年度特別會計第二豫備金支出ノ件
  昭和三年度特別會計豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件
  右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ因テ議院法第五十四條ニ依リ及送
  付候也
  昭和四年三月十九日
  衆議院議長川原茂輔
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔政府委員大口喜六君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=61

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• 062・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　昭和二年度第一豫備金支出外九件ニ關シマスル事
  後承諾ヲ求ムル爲ニ玆ニ議案ヲ提出イタシマシタルニ付キシテ、其大要ノ御
  說明ヲ申上ゲタイト存ジマス、昭和二年度第一豫備金ノ豫算額ハ六百万圓デ
  アリマスガ、昭和二年勅令第百六十號ニ依リ、第一豫備金ヨリ補充イタシマ
  シタル主ナル事項ハ、外國在勤俸、檢丁及ビ新兵旅費、市町村交付金、海軍使
  用品購買費等デアリマシテ、豫算金額ヲ支出イタシタノデアリマス、各特別
  會計ニ於キマシテモ、其第一豫備金ヨリ豫算超過支出ヲ爲シタモノガアリマ
  ス、昭和三年一月二十一日、第五十四囘帝國議會ニ於キマシテ、衆議院ノ解
  散イタサレマシタル結果、昭和二年度ニ於テ支出ヲ要スル費途ニ對シテ、政
  府ハ已ムヲ得ズ昭和三年一月二十四日ヨリ同年三月二十八日マデノ間ニ於キ
  マシテ、歲計剰餘金ヲ以テ豫算超過及豫算外ノ支出ヲ致シマシタモノガアリ
  マス
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ著ク〕
  其事項ノ主ナルモノハ警察費連帶支辨金、諸拂戾金及補塡金、恩給、衆議院
  議員總選擧諸費補足、衆議院議員總選擧通信取扱費等デアリマス、其總額ハ
  一千七百二十三万九千八百九十餘圓デアリマス、各特別會計ニ於キマシテモ
  第二豫備金及豫備金外ニ於テ或ハ歲計剩餘金或ハ歲入金ヲ以テ豫算超過及豫
  算外ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス、次ニ昭和三年度第二豫備金支出ニ付
  キマシテ申上ゲマス、昭和三年度一般會計第二豫備金ノ豫算額ハ八百万圓デ
  アリマスガ、其支出ノ重ナル事項ヲ擧ゲマスレバ、支那事件費、同補足、第
  十一囘國際勞働會議參列費等デアリマシテ、豫算全額ヲ支出致シマシタ、昭
  和三年度一般會計第二豫備金豫算拂切リトナリマシタルニ付キマシテ、緊急
  已ムヲ得ザル所ノ費途ニ對シ歲計剩餘金ヲ以テ豫算外ノ支出ヲ爲シタモノガ
  アリマス、其事項ノ主ナルモノハ支那事件費、同補足、海底電信線修繕費、
  各省所管ニ亙ル火災風水害其他ニ依ル復舊及新營費等デアリマス、尙ホ各特
  別會計ニ於キマシテモ、其第二豫備金及豫備金外ニ於テ豫算外ノ支出ヲ爲シ
  タルモノガアリマス、右ハ何レモ衆議院ニ於キマシテハ承諾ヲ與フベキモノ
  ト決定セラレタモノデアリマス、何卒御審議ノ上御承諾ヲ與ヘラレムコトヲ
  希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=62

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• 063・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　通告ニ依リマシテ長尾元太郞君ニ發言ヲ許シマス
  同君ノ登壇ヲ望ミマス
  長尾元太郞君演壇ニ登ル〕

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• 064・長尾元太郎

  ○長尾元太郞君　只今日程ニ上程セラレマシタル所ノ第四ヨリ第十三ニ至リ
  マスル昭和二年度三年度豫備金支出ノ件及豫備金外ニ於テ豫算外支出ノ件ヲ
  議スルニ付キマシテ、此中最モ多額ノ費用ヲ要シマシタル所ノ第十、第十一
  ノ支那濟南事件ニ關シマシテ、第三師團ノ動員出兵ニ付テ、簡單ニ質問ノ要
  點ヲ申述ベマシテ、田中總理大臣兼外務大臣竝ニ陸軍大臣ニ御尋ネシタイ
  ノデアリマスル、會期切迫ノ際デアリマスルケレドモ暫ク御〓聽アラムコト
  ヲ御願ヒ致ス次第デアリマス、今日ハ田中總理大臣ノ御出席ガナイヤウデア
  リマスルカラ、私ノ御尋ネシマスル趣旨ヲ國務大臣カラ代ッテ御答辯ヲ得マ
  シテモ差支ヘナイト思ヒマスルガ、若シソレガ差支ヘデモアリマシタナラバ、
  他日總理大臣カラノ御答辯ガ願ヒタイノデアリマス、昨年ノ春支那濟南事件
  ニ於キマシテ我ガ同胞ノ被害事件ガ起リマスルヤ、第三師團ニ對シマシテ戰
  時的ノ動員ヲ下サレマシテ、大兵ヲ支那山東ニ派遣セラレルコトニナリマシ
  テ、ソレガ爲ニ支那國ニ於キマシテハ排日排貨ノ氣分ガ高マリマシテ、支那
  トノ貿易ハ益〓不振ニ陷リマシテ、此爲ニ不景氣ノ上ニモ一層ノ不景氣ヲ增
  加シタカノ感ガアルノデアリマス、恰モ此三師團ヘ動員令ノ下リマシタ當時
  ハ、此三師〓管下ノ各府縣ニ於キマシテハ農村ノ養蠶ノ時季デアリマシテ、
  又御承知ノ水田ノ植付時季デアリマシタ爲ニ、農民ノ最モ多忙ナル一年ノ生
  活ヲ期スル所ノ大切ナ時期デアッタノデアリマス、此爲ニ豫後備兵ガ召集セラ
  レマシテ、農家ニ於キマシテハ誠ニ苦痛困難ヲ感ジタノデアリマス、丁度其
  時ハ大戰爭ガ起ッテ戰フ時ナレバ、在〓軍人タル者ハ既ニ其出動ヲ豫期イタシ
  マシテ、又其準備モ又出動後ノ家政ニ付キマシテモ準備ヲ爲シテ、動員ノ下
  ルヲ豫期シテ待ッテ居ッタノデアリマセウケレドモ、昨年ノ濟南事件ノ場合ニ
  於キマシテハ是ト異リマシテ、斯ノ如キ移住民ノ守備ノ爲ニ軍隊ガ派出セラ
  レルニ付キマシテハ、マサカ戰時的ノ動員ガ行ハレテ豫後備兵マデモ召集セ
  ラレルト云フコトハ寢耳ニ水デアリマス、何等國民ニ於テハ想像シナカッタト
  存ジマスルガ、是ガ故ニ關係地方ノ農民ハ非常ニ苦痛ヲ感ジタノデアリマス
  ガ、勿論帝國ノ軍人タル以上ハ國家ニ大事件ガアリマスレバ、一死以テ國ニ報
  ズル所ノ覺悟ヲ以テ、直チニ動員令ノ召集ニ應ズルト云フコトハ當然デアリ
  マシテ、之ニ違背スルヤウナ者ハ一人モナイト存ズルノデアリマス、ソレガ故
  ニ昨年ノ五月九日第三師〓ニ動員ノ下リマシタ節ハ、其管下ニ於ケル愛知縣
  ヲ初メトシテ、岐阜縣靜岡縣三重縣ニ於テハ、丁度昔日〓日露ノ大戰爭ガ再現
  シタカノ感ガアッタノデアリマス、或停車場ニハ入營者ヲ見送ル所ノ村民モア
  リマスシ、又兵營ニ行キマスト、面會ニ來ル所ノ父兄ガ澤山アッタノデアリマ
  ス、又停車場ニハ數多ノ團體ガ色〓ノ旗ヲ立テルトカ、又ハ小國旗ヲ手ニ持ッ
  トカシテ、出動軍人ヲ見送ルナドノ、一大戰爭氣分ガ橫溢シタノデアリマス、
  其中ニハ、或ハ出動軍人ノ送別會ヲ催ストカ、又出征軍人ニ對シテ餞別品ヲ贈
  リ、又婦女子ハ彈丸除ケノ御守リヲ作ッテ出征軍人ニ贈ルトカ云フヤウニ、非
  常ナ騷ギヲシタノデアリマシタ、斯樣ニシテ召集セラレル所ノ豫後備兵ハ、
  新聞紙ノ傳フル所ニ依ルト、其中約七八千人ト云フモノハ、動員召集後、唯營
  所ニ僅カ二週間バカリ居リマシタダケデ不用ニ歸シマシテ、歸〓ヲ命ゼラレ
  タト云フコトデアリマシタ、果シテ然リトスレバ、是ハ實ニ意外ノ事デアッタ
  ノデアリマス、ソレガ爲ニ、召集ニ應ジテ歸ッタ所ノ在〓軍人ニ於テハ兵營ニ
  行ッタバカリデ何等ノ御役モ勤メズシテ、唯直ニ歸〓セラレルト云フコトハ、
  是マデ非常ノ見送ヲ受ケ、又餞別ナドヲセラレテ送ラレタ所ノ村民ニ對シテ、
  誠ニ面目ガナイト云フヤウナ意味ニ於テ、甚ダ意氣銷沈シタト云フ者モ多數
  アッタト聞及ンデ居リマス、斯樣ノ事ハ神聖ナル帝國軍人ノ士氣ニ惡影響ヲ及
  ボシハセヌカト云フコトヲ私ハ考フルノデアリマスルガ、此點ニ付テ陸軍大
  臣ハ如何樣ニ御考ヘニナルノデアリマスルカ、又斯ノ如キ新聞紙ノ傳フルコ
  トガ事實デアリマシタトスレバ、多數ノ豫後備兵ヲ召集シテ、僅カ一週間カ二
  週間ノ後ニ歸サレルト云フコトハ、何故ニ斯樣ナ澤山ノ豫後備兵ヲ、必要ノ
  ナイノニ召集セラレタノデアリマスルカト云フコトヲ、我〓ノ疑點ガ了解セ
  ラレル程度ニ御答ガ願ヒタイノデアリマス、又農村ノ多忙ナル時ニ於テ、勞
  働盛リノ靑年ヲ七八千人ヲ召集シテ、又是ガ不用ニ歸シタ爲ニ歸サレルト云
  フコトハ、軍令ノ神聖ヲ疑ハシメハセヌカト云フコトヲ心痛ニ堪ヘナイノデ
  アリマス、又一面ニハ產業生產力ニ多大ナル支障ヲ生ゼシメ、且ツ國家ノ多
  額ノ費用モ費シタコトニ對シテ、當局大臣ハ如何樣ニ御考ヘニナルノデアリ
  マスルカ、之ヲ御伺ヒシタイノデアリマス、而シテ昨年五月下旬ニ支那ニ派遣
  セラレマシタル所ノ第三師團ハ、約十數日ニ亙リマシテ軍用列車ニ依ッテ出動
  シタノデアリマシタ、斯樣ニシテ支那山東ノ靑島ニ上陸スルヤ、約一箇月餘、
  滄口其他ニ駐在シテ、早ヤ全兵員ガ山東ニ駐在スル必要ヲ認メザルニ至リマ
  シテ、七月下旬ニハ豫後備兵ノ一部分ト云フモノハ內地ニ歸還スルコトトナッ
  タノデアリマス、斯ノ如ク······簡單デアリマスガ以上述ベタコトヨリ考ヘマ
  スルト、此動亂ノ場合即チ支那山東事件ニ對シテ我ガ居留民保護ノ目的ノ爲
  ニ出兵スルニ付テハ、矢張リ現役兵ノミヲ以テ守備兵ヲ派遣セラレタ方ガ宜
  シカッタデハナカッタカト云フコトニ考ヘラレルノデアリマス、何故農村生產
  ノ支障マデ顧ミズシテ、戰時動員ノ奏請ヲナサレマシテ、大軍ヲ支那ニ派遣
  シ內地ニ於テハ農產若クハ生產ノ支障ヲ來シ、外ハ、第三國ヨリハ、帝國ガ
  支那ニ何等カノ野心ガアルガ如キ疑念ヲ生ゼシメテ、又支那國ヨリハ排日思
  想ヲ益〓高カラシメテ、濟南事件突發以後、早ヤ一年ニ垂ントスル今日ニ至ツ
  テモ、支那外交談判ハ未ダ解決ヲ告ゲザルヤウナ現狀デアルノデアリマス、
  之ニ對シテ外務大臣ハ、此動員出兵ガ外交上ニ何等カノ支障ヲ來サナカッタカ
  ト云フコトニ御考ヘニハナラナイノデアリマスカ、之ニ對シテ外務大臣ノ御
  所見ヲ御伺ヒシタイノデアリマス、動員令ヲ行ハズシテ、各師團カラ現役兵
  ノミヲ守備兵トシテ派遣セラレタナレバ、第三國ノ疑モ受ケルコトナク、又内.
  地ノ產業ニモ何等支障ヲ來スト云フコトモナカッタト存ズルノデアリマス、何
  ガ故ニ斯カル戰時的動員ヲ奏請セラレテ出兵ヲ行ハレタノデアリマスカ、軍
  機上ニ御差支ノナイ限リ、我〓ノ了解ガ出來ル程度ニ陸軍大臣ノ詳細ナル御
  說明御答辯ガ願ヒタイノデアリマス、尙ホ最後ニ御伺ヒシタイノハ、此處ニ
  總理大臣ハ御出席ニナッテハ居リマセヌケレドモ、首相ニ御伺ヒシタイ點デア
  リマス、第三師團動員出兵ノ必要ヲ生ジタル時ハ、昨年五月、丁度臨時議會
  ガ召集中デアッタト私ハ考ヘマス、即チ議會ハ五月七日ニ閉會式ガアッテ、
  日ヲ經テ、五月九日ニ動員令ハ第三師團ニ下ッタト存ジマス、此出兵費用ノ支
  出ヲ何故ニ昨年ノ臨時議會ニ協賛ヲ求メラレナンダノデアリマスルカ、若シ
  是ガ議會中ニ其手續ガ運ベズシテ僅カ一日ノ後ニ奏請セラレマシタト申サル
  ルカ知リマセヌケレドモ、出兵ノ必要ヲ生ジマシタノハドウシテモ臨時議會
  ノ召集中デアッタト私ハ考ヘルノデアリマス、サウシテ見タレバ、何故ニ臨時
  議會中ニ奏請ノ手續ガ出來ナンダトスレバ、此議會ヲアノヤウナ大切ナ問題
  ニ對シテハ一兩日ノ延期ヲ奏請シマシテ此出兵費ノ協賛ノ手順ヲ取ラレナン
  ダノデアリマスルカ、此點ヲ田中首相ニ御尋ネシタイノデアリマス、以上ノ
  質問ニ付キマシテ各大臣ヨリ私竝ニ國民ガ了解ノ出來得ルヤウナ明確ナル御
  答辯アラムコトヲ切ニ御願イタス次第デアリマス
  〔國務大臣白川義則君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=64

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• 065・白川義則

  ○國務大臣(白川義則君)　只今長尾君ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、昨
  年五月ニ第三師團ニ動員令ガ下ッタ時ハ恰モ農繁期デアッテ、動員令ガ下ッタ爲
  ニ地方ノ農民ハ大層迷惑ヲシタ、ソレカラ又動員令ヲ下シテ置キナガラ間モ
  ナク數千ノ兵ヲ直グニ返サシタ、斯ノ如キハ帝國軍ノ士氣ニ惡影響ヲ及ボシ
  ハセヌカ、斯樣ナ御尋デゴザイマシタ、此第三師團ニ動員令ヲ下サレルコト
  ニナリマシタノハ山東方面ノ狀況ガデス、ドウシテモ戰時ノ一箇師團ノ兵力
  ヲ派遣スル必要ガアル、斯ウ云フ判斷ヲシタノニ基クノデゴザイマス、ソレ
  ナラバ戰時ノ一箇師團ニ相當スル平時編成ノ師團ヲ必要ナダケヤッタラバ宜
  イデハナイカト云フ只今ノ御說デゴザイマシタガ、戰時ノ一箇師團ニ匹敵ス
  ルダケノ平時ノ師團ヲ出シマスト少クモ三箇師團カ四箇師團ハ出サナケレバ
  ナリマセヌ、ソレ程ノ廣イ地域ノ師團ヲ出シマスト寧ロ內地ハ大變ナ騷ギニ
  ナリマス、加之平時ノ師團ト云フモノハ全ク後方ノ機關ヲ持ッテ居リマセヌ、
  糧食ノ補給ニシマシテモ、若シ戰鬪ノ起ッタ場合ノ彈藥ノ補給ニシマシテモ、
  怪我人病人ガ出來タ時ノ傷病者ノ救護ニシマシテモ、ソレ等ノ一切ノ機關ヲ
  持ッテ居リマセヌカラ、戰時ノ一箇師團ヲ出ス必要アリト、斯ウ判斷ヲシマシ
  タ以上ハ、寧ロ動員ヲスルノガ至當デゴザイマス、アノ時ノ狀況デ若シ第六
  師團ガ五月ノ八日カラ活動ヲ始メマシテ、其狀況如何ニ依ッテハ、第六師團ハ
  固ヨリ濟南附近ノ一帶ノ我ガ居留民ガ如何ナル結果ヲ齎スカ知レヌ、是ガ政
  府ニ於テ最モ心配ヲシタ所デゴザイマス、尙ホアノ時ノ狀況ニ於キマシテハ
  山東鐵道ガ屢、、破壞ヲサレテ居リマス、サウシテ見マスルト濟南方面ニ居ル軍
  隊及居留民ノ爲ノ食糧ト云フモノガ甚ダ氣遣ハレル、從テ增援ニ出ス所ノ師
  團ニハ後方機關食糧ヲ携行シ、ソレヲ補充スルモノガ必要デアル、サウ云フ
  ヤウナ關係デドウシテモ動員ノ一箇師團ヲ出スコトガ必要デアルト斯ウ云フ
  コトニナッタノデアリマス、動員ト申シマスルノハ平時ノ狀態ガ戰時ノ狀態
  ニナルノデゴザイマスガ、是ハ宣戰布告ニ依ッテ外國ト戰ヲスル時モアリマ
  ス、又西伯利亞出兵ノ時ニモ第十二師團ハ動員ヲシテ出マシタ、第三師團モ
  動員ヲシテ出マシタ、是ハ宣戰布〓デハゴザイマセヌガ、戰時ノ師團ヲ出ス
  必要アリト斯ウ認メタ結果デゴザイマス、ソコデ動員ヲ行ヒマスノニハ動員
  計畫ト云フノガ四月一日カラ翌年ノ三月ノ盡日マデヲ以テ年度ニシテゴザイ
  マスルガ、其年度ノ一番終リノ翌年ノ三月三十一日ニ於テ、動員ヲシテモ所
  要ノ人員ガ取レルヤウニ召集スルノデゴザイマス、ソコデ第三師團ノ場合ハ
  昭和三年度ノ五月ノ初メデゴザイマシタカラ、即チ年度初メ、年度初メデアッ
  タガ爲ニ召集ヲシタ人員ガ澤山參ッタノデゴザイマス、一方ニハ第三師團地
  方ノ在〓軍人ノ士氣ガ非常ニ振ッテ自分カラ進ンデ召集ニ應ジル、斯ウ云フ關
  係モアリマシタ、ガ多クナル理由ハ年度初メデアッタト云フコトガ召集人員ガ
  餘計ニ來タト云フコトニナルノデゴザイマス、其召集ノ過剩員ヲ動員後間モ
  ナク、三千何百名カヲ返シタノデゴザイマス、是デ大體動員ノ必要デアルト
  云フコトト過剰員ヲ返シタト云フコトハ御了解下サッタラウト存ジマス、尙
  ホ現役兵ノミヲ以テ出スコトニ付キマシテハ、先刻モ申上ゲタヤウニ、少ク
  モ四箇師團位ハ出サナケレバ戰時ノ一師團ノ力ニハ足ラナイ、サウシテ後方
  機關ヲ全ク持ッテ居ラナイ、ソレハ斯ウ云フ場合ニハ適當シナイノデゴザイマ
  ス、ソレカラ總理大臣ヘノ御尋デゴザイマシタガ、私カラ御答ヲシテ御分リ
  ニナルト存ジマスカラ申上ゲマス、アノ動員令ハ五月九日デアル、五月七日
  ニハ特別議會ガ閉院式ニナッタ、サスレバ議會ノ開ケテ居ル間ニ其經費ヲ要求
  シテ、協賛ヲ求メタガ宜イデハナイカ、御尤ナ御尋デゴザイマスルガ、實際
  ノ事情ガ濟南ニ於キマシテ、最初ニ五月三日突發的ニ戰鬪ガ起リマシテ、其
  結果ガドウナルカト思フテ、中央部デモ心配ヲ致シタノデゴザイマス、漸ク
  五月四日ニ濟南ノ商埠地ニ居ル支那軍隊ガ商埠地ノ外ニ出テシマッタ、ソレニ
  付キマシテハ日本軍ノ軍隊指揮官、支那側軍隊指揮官モ努力ヲシタ、ソコデ
  五月五日ニハ先ヅ大體落著イタヤウデアル、斯ウ私共モ思フテ居リマシタ、
  中一日·····六日·····置キマシテ、七日ノ夕方ニナリマシテ、丁度閉院式ノアッ
  タ當日ノ夕方デゴザイマス、第六師團長カラ電報ガ參リマシテ、自衞上ノ必
  要カラ蔣介石ニ宛テ十二時間ノ時間ヲ期シテ、斯樣ナ通牒ヲ出シタト云フ、
  七日ノ夜ニナッテ電報ガ參ッタ、是ニハ實際中央部モ驚イタノデアリマス、電
  報ハ簡ニシテ能ク細カイ事迄ハ分リマセヌガ、自衞ノ必要上出スト云ヘバ是
  ハモウ退ッ引キナラズ、斯ウ云フ通牒ヲ出シタモノデアラウ、斯ウ判斷ヲ致シ
  マシタガ、サウ云フコトヲ問合セル遑ガナイ、翌朝カラ活動ヲ始メル、斯樣
  ナ次第デ陸軍ノ首腦部ハ七日ノ晩ニ會議ヲ開キマシテ、八日ノ閣議ニドウシ
  テモ戰時ノ一箇師團ヲ出ス必要アリト云フコトヲ閣議ニ私カラ提出ヲシテ、
  閣議決定ヲ見タノデアリマス、之ニ付キマシテハ······サウシテ其閣議決定ノ
  翌日ニ九日ニ第三師團ニ動員令ガ下ッタノデゴザイマス、之ニ付テハ衆議院
  ニ於キマシテモ如何ニモ其閉院式ノ當日ニサウ云フ情報ガ來タト云フコトハ
  前カラ分ッテ居ッタノヂヤナイカ、ソレヲ議會ニ出スコトヲ避ケル爲ニ、サウ
  云フ風ニスルノデハナイカト云フ御疑ヲ以テ御尋ガゴザイマシタガ、是ハ全
  ク事實ガ其通リデゴザイマス、七日ノ夜ハ中央部デハ非常ナ緊張ヲ以テ會議
  ヲ開キ、色〓ナ計畫ヲ急イデシタノデゴザイマス、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=65

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• 066・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　小川國務大臣
  〔長尾元太郞君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=66

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• 067・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今小川國務大臣ニ發言ヲ許シマシタ
  國務大臣小川平吉君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=67

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• 068・小川平吉

  ○國務大臣(小川平吉君)　只今總理大臣不在デアレバ他ノ國務大臣ヨリ答辯
  スルヤウニト云フコトデゴザイマスカラ、私カラ御答辯ヲ申上ゲル、山東ノ
  出兵ニ付キマシテハ、當時旣ニ中外ニ向ッテ宣言ヲ致シマシテ、出兵ノ目的ハ
  極メテ明カニナッテ居リマスルノデ、之ガ爲ニ諸外國ノ疑惑ヲ招イタト云フヤ
  ウナコト、又日本ノ野心ヲ疑ハルヽヤウナコトハ少シモ無カッタト考ヘテ居リ
  マス、又此出兵ノ爲ニ排日ガ起ッタノデハナイカト云フ御尋デゴザイマス、是
  モ出兵ノ爲ニ排日ガ起ッタトハ考ヘテ居リマセヌ、排日問題ノ口實ニ之ヲ利用
  スルト云フコトハ有ルノデアリマス、御承知ノ通リ支那人ノ排日ハ時〓種々
  ナ都合上ヨリシテ排日ヲ行ヒマスル、之ガ爲ニ種々口實ヲ作リマスルガ、山
  東出兵ノ爲ニ直接ニ排日ガ起ッタトハ考ヘテ居リマセヌノデゴザイマス、左
  樣御承知ヲ願ヒマス

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• 069・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　長尾君ハ再ビ質疑ヲナサル御希望デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=69

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• 070・長尾元太郎

  ○長尾元太郞君　簡單デゴザイマスカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=70

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• 071・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=71

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• 072・長尾元太郎

  ○長尾元太郞君　只今私ノ質問ニ對シテ、陸軍大臣ノ御答辯ハ稍〓了解ハ致シ
  マシタケレドモ、尙ホ十分ニ了解シ兼ネル點モアリマスケレドモ、會期切迫
  ノ際デアリマスルカラ、此際詳細ノ質問應答ヲスルコトハ、私ハ避ケル積リデ
  アリマスガ、只今首相ニ代ッテ小川國務大臣ガ御答辯ニナリマシタコトニ付
  テ、此山東出兵ガ支那ノ排日思想ニ何等支障シナカッタヤウニ御答ヘニナリマ
  シタケレドモ、是ハ私ハ了解ニ苦シムノデアリマス、他ノ原因デ排日思想モ
  高マッテ居ッタノデアリマスルケレドモ、此外交、濟南事件ニ對シテ外交ノ談
  判ガ長ビキマスルノモ、此出兵ガ、大部分ニシテモ一部分ニシテモ、差支ヲ
  ナシテ居ッタト云フコトハ、世人ガ認メテ居ル事カト私ハ存ジマスルノデアリ
  マスルガ、此點ハ甚ダ私ノ見解ト意見ヲ異ニシテ居ラレルノデアリマス、併
  ナガラ、今日ハ田中首相ノ御出席ガナイノデアリマスカラ、私ノ質問ハ是デ
  止メマシテ、打切リマスルコトニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=72

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• 073・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ朗讀ヲ致
  サセマス
  〔瀨古書記官朗讀〕
  昭和二年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ求ムルノ件)外九件特別委員
  侯爵久我常通君伯爵松平賴壽君子爵毛利高範君
  子爵八條隆正君和田彥次郞君山川端夫君
  男爵矢吹省三君關直彥君平田吉胤君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=73

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• 074・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　都合ニ依リマシテ、暫時休憩ヲ致シマス
  午後二時四十七分休憩
  吴山染毒
  午後三時二十八分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=74

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• 075・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第十四、第一讀會ノ
  續

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=75

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• 076・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=76

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• 077・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=77

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• 078・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=78

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• 079・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=79

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• 080・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=80

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• 081・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  〓win

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=81

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• 082・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案通リデ御異
  存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=82

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• 083・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=83

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• 084・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=84

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• 085・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=85

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• 086・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=86

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• 087・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  ㅎ南

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=87

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• 088・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=88

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• 089・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  平山市ひ호れ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=89

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• 090・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十五、第一讀會ノ續、委員長報告
  大正十四年法律第二十九號中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十二日
  右特別委員長
  子爵片桐貞央
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔男爵赤松範一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=90

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• 091・赤松範一

  ○男爵赤松範一君　只今議題ニ上ボリマシタ大正十四年法律第二十九號中改
  正法律案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、去ル五日及十一
  日ノ二囘ニ特別委員會ヲ開會イタシマシテ政府當局ノ說明ヲ承リマシタ、次
  イデ政府當局ト委員トノ間ニ質疑應答ヲ重ネマシテ質問ヲ終リマシタガ、只
  今是等ヲ綜合イタシテ其大要ヲ御報告申上ゲヤウト思ヒマス、此法律ハ各種
  ノ染料製造補助奬勵ニ關スルモノデ、今囘之ヲ改正スル目的ハ人造藍ノ製造
  ニ對シマシテ保護奬勵セムトスルニアリマスル、染料工業ハ總テノ化學工業
  ノ發達ヲ促ス中樞ヲ爲スモノデアリマスルカラ、我國ニ於キマシテモ此工業
  ノ確立ヲ圖リタイト云フノデ大正四年ニ染料製造保護ノ法律ガ制定サレマシ
  テ、大正五年カラ十箇年ニ亙ッテ國家ハ多大ノ犠牲ヲ拂ッタノデアリマスガ、其
  結果ハ歐洲大戰前マデハ殆ド獨逸ノ獨占工業デアッタモノガ、幸ニシテ我國ニ
  於テモ確立スル見込ガ付キマシタノデゴザイマス、染料ト申シマシテモ澤山
  ノ種類ガアリマスケレドモ、我國デ最モ重要ナルモノトシテ比較的多量ニ使
  用イタシマス所ノモノハ百餘リノ種類デアリマス、其中デ五十種バカリガ此
  十箇年間ノ保護奬勵ニ依ッテ生產セラルヽヤウニナッタノデアリマス、大正十
  四年ニ此保護ノ期限滿了イタシマシタノデ、更ニ法律第二十九號ヲ制定サレ
  マシテ、今度ハ重要染料二十七種ヲ選ンデ製品ニ對シテ補助ヲスルト云フコ
  トニナッタノデゴザイマスル、爾來〓究ニ著手シタモノガ十五種デ、此中デ七
  種ハ既ニ成功シ、其他ノモノモ近キ將來ニ成功ノ見込ヲ持ッテ居ルト云フコト
  デゴザイマス、其外未著手ノモノモ大部分ハソレ〓〓成功スベキ見込デアル
  ト申スコトデアリマス、大體ニ於テ今日マデノ重要ナル染料七十種バカリハ、
  品質ニ於テモ價格ノ上カラ申シマシテモ、先ヅ外國品ニ拮抗スルコトガ出來
  ルヤウニナッタト申スコトデ、即チ國內需要ノ數量ニ於テハ四十五「パーセン
  ト」、金額ニ於テハ五十六「パーセント」ハ自給ガ出來ルヤウニナッタノデアリ
  やくろ、然ルニ人造藍ハ總テノ染料ノ中デ最モ困難ナ工業デアリマシテ、今日
  マデ實驗室內ノ〓究ハ行ハレテ居リマシタケレドモ、マダ工業的ニ實施スル
  域ニハ到達イタシテ居ラナイノデアリマス、而モ人造藍ハ御承知ノ通リ木綿
  ノ紺色染ニ使用スルモノデ、我國ニ於キマシテハ染料中ノ第一位ヲ占メテ居
  リマス所ノ廣ク且ツ多量ナルモノデアッテ、年額一千噸內外、一千三百噸餘ノ
  額ニ達シマシテ、金額デハ二三百万圓ノ額ニ及ブノデアリマス、斯ク重要ナル
  染料デアルニモ拘リマセズ、今日マデ其生產ヲ見ルニ至ラナカッタト云フコト
  ハ、技術上ノ困難ナルノハ勿論デアリマスガ、先ヅ日本ノ今日ノ需要額ノ約一
  千噸ヲ製造シヤウト致シマス設備ニ要シマス所ノ資金トシテハ、七八百万圓
  ノ巨額ナモノヲ持タナケレバナラナイノデ、是等ノ爲ニ容易ニ此實現ヲ見ル
  コトガ出來ナカッタノデゴザイマス、然ルニ近年三井鑛山株式會社ノ三池染料
  部デ段々〓究ヲ重ネマシテ、略、〓此實驗室內ニアリマスル〓究ヲ終リマシテ、
  今度ハ之ヲ工業的ニ移シテモ宜イト云フ所迄ニ漸ク進ンデ參リマシタノデ、
  政府ハ此機會ニ於キマシテ、從來ノ染料工業ノ保護政策ヲ延長イタシマシテ、
  人造藍工業ノ獨立ヲ圖ル爲ニ、此法律ヲ改正シテ、昭和六年迄トアル其補助期
  間ヲ更ニ昭和九年迄延長イタシマシテ、人造藍ニ對シテハ昭和四年度カラ五
  箇年ニ亙ッテ三百四十万圓ノ補助金ヲ與ヘル爲ニ現在「四百万圓以內」トアル
  ノヲ「七百四十万圓以内」ト改メ、一箇年ノ支給額ガ「百万圓以內」トアルノヲ
  「百六十万圓以内」トスルコトニ改メヤウト云フノデゴザリマス、而シテ此補
  助ニ依リマシテ大量生產ヲ爲サシメ、製品原價ノ低下ヲ圖リ、サウシテ海外品
  ニ對抗セシメヤウトスルノデアリマス、尙ホ將來國內ノ生產ヲ見ルニ至リマ
  シタ曉ニハ、從來低率ノ儘ニ据置イタ關稅ノ改正ヲモ行ッテ、保護スベキ必要
  モアルデアラウトノコトデゴザイマス、尙ホ此昭和四年度ノ補助金ハ約十九
  万四千五百圓デアッテ、一般會計ノ歲出豫算ニ計上サレテ居リマス、討論ニ這
  入リマシテハ委員ノ一人カラ人造藍ハ獨逸ニ於テ發明セラレテ以來、二十年
  間〓究ヲ重ネ、約一千万圓ノ〓究費ヲ投ジテ初メテ工業的ニ生產セラルヽヤ
  ウニナッタ位ノモノデ、實ニ容易ナラヌ困難ト多クノ年月ト費用トヲ犠牲ニ供
  シテ居ルノデアルカラ、今日ハ其當時ト勿論比較スベキデハナイガ、其最モ
  困難ナルノハ〓究時代ニアルガ故ニ、政府ガ工業的ニ移シテ大量生產ヲ行ハ
  シメルガ爲ニ補助ヲ與ヘラルヽト云フノハ必シモ不可ナリトハシナイケレド
  モ、此奬勵補助ハ一人一社ト云フガ如キ狹イ範圍ニ限局シナイデ、廣ク〓究
  ノ爲ニ奬勵方法ヲ講ジテ、優秀ナル技術上ノ結果ヲ發揮スルコトニ特ニ考慮
  セラレタイト云フ趣旨ノ希望ヲ述ベラレマシテ、サウシテ本案ニ贊成ノ意ヲ
  表セラレタノデアリマス、而シテ外ニ反對ノ意見モゴザイマセヌノデシタカ
  ラ、直ニ採決ニ這入リマシテ、全會一致ヲ以テ本案ヲ可決イタシタ次第デゴ
  ザイマス、以上御報告申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=91

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• 092・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  [「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=92

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• 093・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=93

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• 094・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=94

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• 095・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=95

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• 096・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=96

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• 097・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  万

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=97

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• 098・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=98

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• 099・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=99

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• 100・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=100

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• 101・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=101

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• 102・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=102

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• 103・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  MAIL囍

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=103

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• 104・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=104

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• 105・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  ###立立平山至

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=105

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• 106・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十六、蠶絲業法中改正法律案、政府提出、
  衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  蠶絲業法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月七日
  右特別委員長
  今井五介
  貴族院議長公爵德川家達殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=106

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• 107・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　今井五介君ノ登壇ヲ望ミマス
  〔今井五介君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=107

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• 108・今井五介

  ○今井五介君　私ハ只今上程セラレマシタ蠶絲業法中改正法律案ニ對スル特
  別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本委員會ハ去ル五日正副委員
  長ノ互選ヲ行ヒ、其後三囘委員會ヲ開キマシタ、委員會ハ先ヅ以テ大臣竝ニ政
  府委員ヨリノ詳細ナル說明ガアリマシテ、又質疑應答ガアリマシタ、私ハ委
  員會ノ内容ヲ省略イタシマシテ本案中ニ於ケル質疑ノ主モナル一二ノ點ヲ申
  上ゲマス、其一ツトシテハ自治檢査實施ノ曉、自由放漫ニ流レ、粗製濫造ニ陷
  ルナキカ、從テ養蠶家ニ累ヲ及ボシ、損害ヲ被ラセルノ虞ナキヤト云フコト
  デアリマシタ、此點ニ對シテ政府ハ愼重ニ調査嚴選ノ上優良ナルモノニ限リ
  許可ヲ與ヘ、監督取締ノ規定ハ現在ヨリモ一層嚴重ニナルト云フ說明ガアリ
  マシタ、又一面檢査ノ自治ヲ認ムルコトハ却テ蠶種製造業者ノ自覺ヲ促シ、其
  責任觀念ヲ深カラシメ、自カラ優良蠶種ノ製造ニ努ムルノ機會ヲ與フル上ニ
  必要デアリト云フ說明ガアリマシタ、他ノ一ツハ當局ガ蠶種製造業者ノ資格
  制限ニ關シ、十万蛾以上ノ製造ヲ條件トスル意嚮ナリヤニ付キ衆議院デ議論
  ガアッタヤウデアルガ、ソレハドウデアルカト云フコトデアリマシタ、此點
  ニ付テ當局ノ從來ノ意嚮ハ規模ノ制限ヲスルトシテモ、現在當業シテ居ル蠶
  種家ニ對シテハ其適用ヲ爲サヌト云フ考ヘデアッタガ、偶·地方ノ當業者及衆
  議院方面デモ其相續人ニハ是ガ適用ヲ除外スベシトノ意見ガ現レタノデ、此
  主張ハ該事業經營ノ實狀ヨリ見テ理由アリト認ムルガ故ニ、施行規則改正ノ
  際ハ右ノ趣旨ニ副フベク取計フト云フコトヲ、政府委員ヨリ言明セラレ、同
  委員會ニ於テモ滿足ノ意ヲ表シ、全會一致ヲ以テ可決シタト政府委員ヨリノ
  答辯ガアリマシタ、斯クテ本委員會ニ於キマシテモ、愼重審議ノ上、本改正
  法案ハ我蠶絲業ノ根幹タル原料ノ品位向上改善ノ最モ適切ナルモノナリト認
  ノ、全會一致ヲ以テ可決シタ次第デアリマス、玆ニ御報告ヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=108

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• 109・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=109

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• 110・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=110

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• 111・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=111

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• 112・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=112

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• 113・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=113

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• 114・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  吉市小吉

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=114

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• 115・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　本案全部ヲ問題ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴ
  ザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=115

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• 116・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=116

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• 117・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=117

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• 118・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=118

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• 119・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開クベシト云フ西大路子爵
  ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=119

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• 120・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス
  薰東北幸

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=120

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• 121・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=121

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• 122・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=122

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• 123・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　日程第十七、帝國鐵道會計法中改正法律案、政府
  提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  帝國鐵道會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月九日
  右特別委員長
  公爵一條實孝
  貴族院議長公爵德川家達殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=123

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• 124・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　一條公爵ノ登壇ヲ望ミマス
  〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=124

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• 125・一條實孝

  ○公爵一條實孝君　帝國鐵道會計法中改正法律案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結
  果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ昨年末ニ陸運ニ關スル監督權ガ遞信省ヨリ鐵
  道省ニ
  〔副議長侯爵蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕
  移管ニナリマシタ結果、帝國鐵道會計法第七條第二項中「鐵道及軌道ニ關ス
  ル監督上ノ諸費用」トアルヲ「鐵道、軌道其ノ他陸運ニ關スル監督上ノ諸費
  用」ト云フコトニ改メ、陸運ニ關スル監督上ノ費用ヲ加ヘルト云フコトニ會
  計法ヲ改正イタシタイト云フノデアリマス、委員會ハ二囘ニ亙リ愼重ニ審議
  ヲイタシマシタ、委員會ニ於テ爲サレタル質問ノ主モナルモノヲ申シマスレ
  バ、第一、陸運ト云フノハ如何ナル範圍ノモノデアルカ、第二、陸運ニ關ス
  ル監督ト云フノハドノ位ノ範圍ニ亙ルノデアルカ、其他監督ノ費用額ニ亙リ
  質問ガアリマシタ、政府ハ之ニ答ヘラルヽノニ第一ノ陸運ト云フノハ廣イ意
  味ニ解釋シテ居ル、第二ノ陸運ノ監督ハ差當リ一定ノ路線ニ依ル自動車ヲ以
  テスル運轉營業ト、索道、此二ツヲ監督セントスル、斯樣ナ答ヘデアリマシ
  タ、尙ホ監督用ノ費用ハ昭和四年度ニ於キマシテ人件費其他ノ爲メ五万六千
  圓ヲ事業費ノ總經費ノ中ニ入レテアル、斯樣ナ次第デアリマシタ、而シテ此
  經費ニテ前申上ゲタル監督モスルシ、又調査モスル、〓究モシテ段々ト方策
  ヲ立テヤウ、斯樣ナコトデゴザイマシテ、討議ニ入リマシテカラ、二三ノ委
  員ヨリ陸運ニ關スル管轄上ノ統一ニ付キ希望ガアリ、又許可ヲサレルニ付テ
  ノ希望ガアリマシテ、ソレ〓〓希望ノ點ハ鐵道大臣ガ答ヘラルヽニハ、大體
  悉ク御尤ノヤウニ考ヘラレルカラ、御希望ニ副フヤウニ十分ニ盡力イタシタ
  イ、斯樣ナ御答ガアリマシタ、採決ニ入リマシテ、全會一致ヲ以テ本案ヲ可
  決イタシタ次第デゴザイマス、右御報告ヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=125

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• 126・辻太郎

  ○男爵辻太郞君　議事進行ニ付テチヨット申シテ置キタイ、只今議題ニ上ボッ
  テ居リマスノハ御所管ハ鐵道省ト思フテ居リマスガ、鐵道大臣御出席ニナッテ
  居リマセヌガ、此儘議事ハ御進行ニナルノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=126

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• 127・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　鐵道大臣ノ御出席ヲ御要求ナレバ交涉ヲ致シ
  マス、政府委員ハ出テ居ラレマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=127

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• 128・辻太郎

  ○男爵辻太郞君　此儘御進行ニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=128

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• 129・蜂須賀正韶

  ○副議長　侯爵蜂須賀正韶君)御質問ガナケレバ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=129

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• 130・辻太郎

  ○男爵辻太郞君　私ハ質問イタシマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=130

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• 131・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=131

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• 132・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=132

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• 133・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=133

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• 134・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=134

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• 135・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=135

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• 136・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正詔君)　御異議ナイト認メマス
  南九三八호

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=136

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• 137・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　原案全部ヲ問題ニ供シマス、原案全部御異存
  ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=137

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• 138・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=138

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• 139・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=139

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• 140・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=140

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• 141・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=141

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• 142・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  市WHOTEL

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=142

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• 143・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=143

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• 144・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正詔君)　御異議ナイト認メマス
  嘉·小호平山卓

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=144

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• 145・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　日程第十八、絲價安定融資補償法案、政府提
  出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  絲價安定融資補償法案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十一日
  右特別委員長
  今井五介
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔今井五介君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=145

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• 146・今井五介

  ○今井五介君　只今上程ニ相成リマシタ絲價安定融資補償法案ノ特別委員會
  ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、本案ハ蠶絲業法中改正法律案ト同一委
  員ニ付託サレマシタ、委員會ハ蠶絲業法中改正法律案ト同ジク前後通ジテ三
  囘開キマシタ、委員會ニ於キマシテハ大臣竝ニ政府委員ヨリ詳細ナル說明ガ
  アリマシテ、更ニ各委員ト政府委員トノ間ニ質疑應答ガアリマシタ、其主モ
  ナルモノノ中、第一ハ本案ニ於テ政府ガ損失補償ノ契約ヲ致シマスル相手方
  ハ、銀行ト產業組合中央金庫トニ限ラレテ居リマスガ、右ノ外例ヘバ當業者
  ガ現在行ッテ居リマスル積立金ヲ利用シテ、或機關ガ銀行ト同樣ニ製絲業者ニ
  對シテ潤澤有利ナル金融ヲ致シマスルヤウナ場合ニハ、政府ハ是等トモ損失
  補償ノ契約ヲ致スコトノ出來ルコトニシテハドウデアルカト云フ問題デアリ
  マシタ、此點ニ付キマシテハ農林大臣ヨリ當業者ノ自發ニ係ル積立金ノ成績
  ヤ色ゝナ方面ノ關係等ヲ愼重ニ考慮ノ上、其積立金ヲ右ノヤウナ場合ニ利用
  イタスコトガ適當且ツ必要デアルト認ムルニ至ッタ場合ニハ、法律ヲ改正シ補
  償契約ノ相手方ヲ其方面迄擴張スルコトニ致シテ差支ナイ考ヘデアルト云フ
  答辯ガアリマシタ、第二ハ會社ヤ組合デナク、個人デ製絲業ヲ經營シテ居ル
  者ニ對シテモ、本案ノ特別ナル融通ガ與ヘラルヽモノデアルカ、又個人製絲業
  者モ積立ヲ實行スルノデアルカト云フコトデアリマシタ、之ニ對シマシテハ
  個人經營者モ勿論本案ニ於テハ銀行ノ特別ナル融通ノ相手方トシテ認メラレ
  テ居ルノデアル、而シテ積立金ノ方法ハ政府ガ之ヲ强制シテ居ルノデハナク、
  當業者ガ自發的ニ之ヲ實行シテ居ルノデアルガ、個人經營者モ之ニ參加シテ
  居ル旨ノ答辯ガアリマシタ、第三ノ點ハ本案ノ如キ法律ガ設ケラレマスルト、
  製絲業者ガ依賴心ヲ起スニ至ル虞レガナイデアラウカト云フコトデアリマシ
  タ、此點ニ付キマシテハ、本案ハ政府ガ製絲業者ニ金融ヲ致シマシタ銀行ニ
  對シテ、一時其損失ヲ補償スルモノデアルガ、之ニ依ッテ銀行ノ製絲業者ニ
  對スル債權ハ消滅スルモノデナク、銀行ハ政府ヨリ補償ヲ受ケタ後ニ於テ其
  債權ノ取立ヲ厲行シテ、其取立金ハ之ヲ政府ニ納付スルト云フ仕組ニナッテ居
  ルノデ、製絲業者ハ其債務ヲ免ゼラレルト云フヤウナ保護ヲ與ヘラレルモノ
  デナイカラ、之ガ爲ニ依賴心ヲ起スヤウナ虞レハナイモノト考ヘラレルト云
  フ答辯ガアリマシタ、本案ハ斯ノ如ク質疑應答ヲ重ネマシテ、最モ愼重審議
  ノ結果、委員會ハ我ガ蠶絲業ノ現狀ニ鑑ミマシテ適切ナルモノト認メ、滿場
  一致ヲ以テ可決決定イタシマシタ、右大要御報告申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=146

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• 147・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=147

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• 148・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=148

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• 149・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=149

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• 150・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=150

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• 151・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=151

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• 152・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイモノト認メマス
  青草市小喜

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=152

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• 153・蜂須賀正韶

  ○副議長侯爵蜂須賀正韶君)　原案全部ヲ問題ニ致シマス、原案全部御異存
  ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=153

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• 154・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=154

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• 155・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=155

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• 156・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=156

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• 157・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正詔君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=157

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• 158・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  冀

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=158

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• 159・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=159

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• 160・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  東京市立호흡

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=160

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• 161・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　日程第十九、臺灣事業公債法中改正法律案、
  政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  臺灣事業公債法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十二日
  右特別委員長
  公爵-條實孝
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=161

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• 162・一條實孝

  ○公爵一條實孝君　臺灣事業公債法中改正法律案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結
  果ヲ御報告イタシマス、本案ノ内容ハ現在臺陽鑛業株式會社ガ所有シテ居リ
  マスル、臺灣北部ノ三貂嶺ト云フ所カラ、靑桐抗ト申ス所マデ、八哩一分ノ鐵
  道ヲ現金百五十万圓、公債ニ直シマシテ百七十万圓デ買收セムトスルノデア
  リマス、政府ノ說明ニ依リマスルト、此地方ハ炭田ガ非常ニアル、推定量約
  三千万噸ト言ハレテ居リマス、一面臺灣總督府ノ鐵道部ニ必要ナ炭ハ、從來
  仔脚亭ト云フ所デ、炭坑ヲ持ッテ居ッタノデアリマスルガ、殆ド掘盡クサレテ
  昭和四年度ヨリハ何レカカラ石炭ヲ買ハネバナラヌ、斯樣ナコトニナッテ
  居リマスルノデ、臺陽鑛業株式會社所有ノ鐵道ヲ買收シテ、其沿線ノ炭田ヲ
  開發セムトスルノデアリマス、質疑應答ニ於テハ、買收後ノ改良費ガドレ位
  掛ルカ、斯樣ナ問ヒガアリマシタガ約二十四万圓ヲ要スル、其他臺陽鑛業株
  式會社ノ內容、買收後ノ收支ノ見込等ニ付テ質疑應答ガアリマシタ、此委員
  會ハ一囘デ終リヲ〓ゲタノデアリマス、採決ニ入リマシテ、全會一致可決ス
  ベキモノト議決致シタ次第デゴザイマス、以上御報告申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=162

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• 163・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=163

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• 164・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=164

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• 165・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=165

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• 166・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=166

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• 167・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=167

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• 168・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  봉투고桌♀

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=168

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• 169・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　原案全部ヲ問題ト致シマス、原案全部御異存
  ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=169

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• 170・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=170

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• 171・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=171

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• 172・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=172

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• 173・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=173

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• 174・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  南小山東重点

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=174

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• 175・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=175

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• 176・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  ¥八山

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=176

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• 177・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　日程第二十、二十一、二十二政府提出、衆議
  院送付、第一讀會ノ續、委員長報告
  健康保險特別會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十四日
  右特別委員長
  嘉納治五郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  健康保險法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十四日
  右特別委員長
  嘉納治五郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  工場法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十四日
  右特別委員長
  嘉納治五郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔男爵佐藤達次郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=177

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• 178・佐藤達次郎

  ○男爵佐藤達次郞君　健康保險特別會計法中改正法律案竝ニ健康保險法中改
  正法律案ニ關シ、委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、委員會ハ便宜
  上兩法案ヲ一括イタシマシテ、二日ニ亙ッテ之ヲ審議イタシマシタ、健康保
  險特別會計法中改正法律案ハ政府ノ管掌スル健康保險事業ニ對スル、一般會
  計ヨリノ繰入金ノ額ヲ、被保險者一人當一年平均二圓以内ニ於テ、每年度豫
  算ノ定ムル所ニ依ルコトトセムトスルノデアリマス、現行法ニ依レバ、被保
  險者一人當一年平均二圓以內ニ於テ、保險給付ニ要スル費用ノ十分ノ一ニ相
  當スル額ヲ繰入レルコトニナッテ居リマスノデ、之ヲ以テ本事業ノ事務費ヲ支
  辨スル見込ト考ヘテ居リマス、然ルニ此算定ノ基礎ヲ保險給付ニ置イテ居リ
  マス關係上、被保險者數及標準報酬ノ增減等ニ依ッテ、保險給付費ノ增減ヲ來
  シ、從テ繰入金額即チ事務費ノ增減ヲ來スコトトナリ、事務ノ運行上支障ヲ
  生ズル場合ガアリマスノデ、毎年度豫算ノ定ムル所ニ依ッテ一定シタ價格ノ繰
  入ヲスルコトニ致シタイト云フノデアリマス、是ハ適當ノ改正ト考ヘラレマ
  スノデ、委員會ニ於キマシテハ、滿場一致ヲ以テ原案ヲ可決イタシマシタ、
  次ニ健康保險法中改正法律案ハ、健康保險ニ關スル諸般ノ事務手續、保險料
  ノ徵收方法、保險給付ノ內容等ニ關シ改善ヲ加ヘ、本事業ノ實行ヲ圓滑ニシ、
  事務ノ簡㨗ヲ圖ラムガ爲メ提案セラレタノデアリマス、委員會ニ於キマシテ
  ハ、第六十一條中改正ニ依ッテ、被保險者ノ著シキ不行跡ニ基因スル保險事故
  ニ對シテハ、傷病手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得ルヤウニイタ
  シマスル點、其他二三ノ點ニ關シテ質問ガアリマシタガ、結局政府ニ於テハ
  健康保險法ノ根本的ノ改正ニ付テモ、御講究中デアルトノ說明モアリマシタ
  ノデ、委員會ニ於キマシテハ之ヲ諒ト致シテ、格別ノ議論モナク滿場一致ヲ
  以テ原案ヲ可決イタシマシタ、詳細ナル點ハ速記錄ヲ御覽願フコトト致シマ
  シテ、以上簡單ニ御報告イタシマス、工場法中改正法律案、此度政府ヨリ提
  案ガアリマシタル此法案ハ、工場ノ就業時間、休日及休憩等ニ關スル規定ノ
  適用範圍ヲ擴張セムトスルモノデアリマス、現行工場法ハ原則ト致シマシテ、
  十人以上ノ職工ヲ使用スル工場ニ適用シテ居ルノデアリマスガ、之ヲ改メテ
  原動機ヲ使用スル工場ニハ、使用職工ノ數如何ヲ問ハズシテ、就業時間制限、
  休日及休憩ノ規定ヲ適用セムトスルモノデアリマス、政府當局ノ云フ所ニ依
  レ、右ハ目下ノ所ニ於テハ織物工場及綿絲工場ニ限ッテ適用セムトスル趣
  意デアリマシテ、織物工場及綿絲工場ニ於テハ、今尙ホ十四五時間又ハ十六
  時間ト云フガ如キ長イ時間ニ亙ル勞働ガ行ハレテ居リマス、小工場ノ衞生上
  遺憾ナル點ガアルノミナラズ、適用工場トノ間ニ不正ノ競爭ガ行ハレルト云
  フコトデアリマス、委員會ニ於テハ篤ト政府當局ノ說明ヲ聽キ、質疑應答ヲ
  重ネマシタ結果、本案ヲ、我國勞働者ノ保護竝ニ產業ノ健全ナル發達ノタメ
  適當ナルモノト認メマシテ、滿場一致ヲ以テ可決シタノデアリマス、何卒御
  審議ノ上、委員會報告通リ可決アラムコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=178

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• 179・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　三案トモ第二讀會ニ移スコトニ御異存ゴザイ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=179

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• 180・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=180

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• 181・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ各案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=181

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• 182・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=182

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• 183・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=183

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• 184・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  새

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=184

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• 185・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　三案全部ヲ問題ト致シマス、全部三案トモ原
  案通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=185

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• 186・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=186

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• 187・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ各案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=187

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• 188・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=188

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• 189・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正詔君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=189

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• 190・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  平山東京uta

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=190

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• 191・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　三案トモ第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=191

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• 192・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  고민호우하호

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=192

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• 193・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　日程第二十三、衆議院提出、第一讀會ノ續、
  委員長報告
  取引所法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十八日
  右特別委員長
  侯爵大久保利武
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔侯爵大久保利武君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=193

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• 194・大久保利武

  ○侯爵大久保利武君　只今付議サレマシタ取引所法中改正法律案ノ特別委員
  會議事ノ經過報告ヲ申述ベマスル、御承知ノ如ク本案ハ衆議院提出ノ法案デ
  アリマシテ條文ト致シマシテハ極メテ簡單デ、第十八條中「二箇月」ヲ「三箇
  月」ニ改ムト云フダケノ法案デアリマシテ、ソレニ經過規定ノ簡單ナ附則ガ
  附イテ居ルノデアリマス、併ナガラ此法案ハ、條文ハ簡單デアリマスガ、頗
  ル重大ナ改正案ト考ヘルノデアリマス、デ本案ハ信託業法中改正法律案ト共
  ニ同一ノ特別委員會ニ付議サレマシテ、特別委員會ハ兩案合シマシテ七囘開
  キマシタ、關係諸省ノ大臣竝ニ政府委員出席ニナリマシテ、愼重ニ審議ヲ致
  シタノデアリマス、本案提出ノ理由ハ衆議院ノ速記錄竝ニ政府委員ノ說明ニ
  依リマスト現行ノ取引所法ハ大正十一年ニ改正ニナリマシタ、其後ノ實況
  ニ照シマシテ、即チ證劵取引ノ期間ガ、十一年ノ改正ニ依リマシテ、三箇月
  ヲ二箇月ニ短縮サレタ爲ニ、實施後ノ成績ニ於テ是マデ五十年以上モ商習慣
  トシテ取引ノ上ニ用ヰタ所ノ期間ガ、俄ニ短縮サレタ爲ニ、取引上非常ニ圓
  滿ヲ缺キ、取引ノ困難ナル結果ヲ來シテ、證劵取引ノ上ニ付テ非常ナ打撃、
  影響ヲ及ボシテ、東京、大阪、名古屋等ノ取引所ニ於テ、限月短縮ノ爲ニ多
  大ノ打擊ヲ蒙リ、殊ニ又十一年ノ改正ノ時ニ短期取引ガ新タニ創設サレタ爲
  ニ、其短期取引ノ方ニ取引ガ移ルヤウニナッテ來タノデアル、而モ其短期取引
  ハ非常ニ弊害ノ多キ結果ヲ來シテ居ル、斯ウ云フ狀態ノ爲ニ、サナキダニ景
  氣ノ惡イ所ニ、大量ノ證劵取引ト云フモノガ、是マデ通リ圓滿ニ取引ガ行ハ
  レズ證劵ノ金融上ニ於ケル是迄ノ便利ガマルデ失セテシマッタノデアル、近時
  證劵ノ發行サルヽ民間事業ノ勃興シタ爲ニ、多大ノ膨脹ヲ致シテ十年每ニ殆
  ド四倍ノ增額ヲ來シツヽアルヤウナ次第デアッテ、非常ニ膨脹シ、證劵ノ發行
  ガ甚ダ發達ヲシテ來タノデアルガ、サウ云フ大量取引ガマルデ澁滯シテ圓滿
  ニ行ハレルコトノ出來ナクナッタ爲ニ、取引所ノ機能ヲ完ウスルコトガ出來ナ
  クナッタ、全ク商習慣ヲ破ッタ爲ニ、即チ是マデ我國ニ行ハレテ居ル所ノ月末
  勘定ト云フヤウナモノト、マルデ沒交涉ニナッテ、銀行トノ關係ト云フモノ
  ガ、此改正ノ爲ニ甚シク阻害サレタ、抑〓十一年ノ改正ガ甚ダ誤ッテ居ッタノ
  デアルカラシテ、速ニ之ヲ改正シテ貰ヒタイノデアル、斯ウ云フ大體ノ趣旨
  ノヤウニ了解イタスノデアリマス、デ委員會ニ於キマシテ、各委員ヨリシテ、
  政府委員ニ連日ニ亙ッテ種々ノ質問ガ行ハレタノデアリマスガ、一々之ヲ申上
  ゲルコトハ時間切迫ノ爲ニ省クコトニ致シマス、何レ速記デモ御覽ヲ願フコ
  トデアリマスガ、極ク極メテ〓括シテ其要點ト申スコトダケヲ申述ベタイト
  考ヘマス、質問ニ多ク出マシタ點ハ、大正十一年ノ改正······法律ノ改正サレ
  タ其趣旨、目的ト云フコトト、其成績ハドウデアルカ、又限月ヲ短縮シタ、
  即チ二箇月ニナッタ、其長期取引ト、改正ニ依ッテ新タニ入ッタ所ノ短期取引ト
  ノ關係、得失ト云フコトト、ソレカラ此改正案ニ對スル政府ノ所見如何ト云
  フコトガ、主タル問題ニナッテ、質疑應答ガ行ハレタノデアリマス、此法律ノ
  改正サレマシタ趣旨及目的ト云フコトニ付テハ、種々質問ガ出マシタガ、當
  時改正ノ趣旨ハ會員組織ニ漸次我國ノ取引所ヲ導イテ行クト云フ趣旨デハナ
  カッタカ、サウシテ成ルタケ限月ヲ短クシテ、歐米ニ行ハルヽ所ノ短イ期限ノ
  ···短期ノ取引方法ニ導イテ行クヤウニスルコトニナッタヤウデアルガ、ドウ
  デアルカト云フ質問ガアッタノデアリマス、ソレニ對シテ政府委員ハサウ云フ
  何モアッタラウ、併シ主タル趣旨ハ當時十一年ノ改正ノ際ハ、恰モ、戰後ノ
  直後デアッテ、十一年前後ハ我國ノ景氣ノ最モ好イ時代デ、株式界ナドハ熱狂
  ノ時代デアッテ、此儘ニシテ置イテハ、我經濟界ハ如何ナル困難紛擾ヲ來スカ
  モ知レヌト云フ、實ニ朝野ヲ擧ゲテ心配ヲシテ居ッタ際デアルノデ、其際投機
  熱思惑ノ思想ヲ抑ヘルコトガ、主タル目的デアッタヤウニ思フト云フ答辯ガ
  アッタノデアリマス、而シテ此短期取引法ヲ初メ、限月ヲ短縮シタ其成績如何
  ト云フ問ヒニ對シテ、政府ノ答辯ニ曰ク、此改正法律案ニハ新ラシク短期ト
  云フ取引法ヲ入レタノデアルガ、此短期ハ一週間ト云フ期限ニ於テ取引ヲナ
  シテ、一週間後ニ於テ雙方合意ノ上ニ於テ一箇月以內ハ之ヲ延バスコトガ出
  來ルト云フ短期取引デアッタノデアルガ、實施後ノ狀況デ見ルト云フト、此短
  期取引ハ初メニ法律改正ノ際ニ豫期シテ居ッタ成績ヲ呈シテ居ラナイノミナ
  ラズ、隨分弊害ノ多キコトヲ政府ニ於テモ認メテ居ルノデアル、デ成程提案
  者ノ言フヤウニ、限月ノ取引ト云フモノハ非常ニ減縮シテ、大阪ノ如キハ短
  期ノ十分ノ一位ニ減ルコトモアル位ノ有樣デアッテ、長期ノ取引ヲ抑制スルト
  云フ目的ハ達シタトモ言ヘルガ、併ナガラ短期取引ニ導イテ行ッテ漸次健全
  ナ取引方法ヲ、我取引界ニ入レタイト云フ其目的ハ達シテ居ラヌノミナラズ、
  寧ロ反對ノ結果ヲ見テ居ルト云フノハ、短期取引ガ甚ダ弊害ガ多イノデ、迚
  モ此短期取引ニ於テ大量ノ證劵ヲ取引スルト云フコトハ、事實今日ニ於テハ
  出來ヌヤウナ狀況デアッテ、其長期取引、短期取引ニ從事シテ居ル仲買ノ素質
  ニ於テモ、亦取引サルヽ證券ノ種類ニ於テモ、同日ノ論デハナイノデ、限月
  取引ノ高ニ於テ減ジタト云フコトハ言ヘルガ、短期取引ヲ置イタ趣旨ト云フ
  モノハ目的ヲ達シテ居ルトハ言ヘナイ、斯ウ云フ數字ヲ示シテノ御答辯デア
  リマシタ、短期取引ト長期取引ノ關係、得失ニ於テハ各〓其利害得失モアラ
  ウガ、今日ニ於テハ前申述ベル如ク短期取引ニ於テモ、非常ニ弊害ヲ認メテ居
  ル狀況デアル、即チ今日ノ成績カラ言ヘバ短期取引必ズ健全デハナイ、隨
  分弊害ガ多イ、又長期取引ト雖モ必シモ弊害多キニアラズ、大量ノ證劵取引
  ニ於テハ、ドウシテモ長期ノ取引デナイト、今日ニ於テハ出來ヌ事實ト認メ
  テ居ルト云フ、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、本案ニ對シテ政府ノ所見如何ト
  云フコトニ付テハ的確ナル贊否ノ意見ハナイノデアリマシテ、政府委員ノ之
  ニ對スル答辯ハ、實施以來未ダ日モ淺イコトデアッテ、此限月、又此短期ノ利
  害得失ニ於キマシテ、未ダ十分ニ是モ的確ナ此利害得失ヲ判斷スルコトノ材
  料ヲ、十分ニ玆ニ申述ベテ論斷スル譯ニハマダ行カナイガ、併ナガラ近時ノ
  狀況ヲ見ルト長期取引必シモ不健全ト云フ譯デハナク、單ニ取引ノ實際ニ
  於キマシテ能ク行ッテ居ルカト云フニ、決シテサウデハナイノデアル、今日ニ
  於テハ限月······此長短ト云フコトハ今日ノ實況ニ於テハ左程重ク見テ論ズル
  コトモ出來ヌヤウデアル、又商工大臣ハ此十一年ノ改正ニ際シテ、此趣旨目
  的ト云フモノハ今日ニ於テハ十分ニ達セラレテ居ルト云フコトハ言ヘナイ、
  此限月問題ノ如キ、多年我國ニ行ハレテ、我國ニ長ク行ハレテ居ル取引方法
  デ、總テ月末勘定ト云フヤウナコトニ合致シテ、今日マデ行ハレテ居ルノデ
  アルカラ、之ヲ俄ニ法律ニ依ッテ之ヲ制限シテ行クト云フコトモ如何ナルモ
  ノデアラウカト云フ疑問ヲ申述ベラレタヤウナ次第デアリマス、ソレデ此問
  題ノ改正案ニ付テ、政府ハ的確ニ贊成ノ意ヲ表シテ居ラレヌノデアリマスガ、
  併ナガラ此案ノ通過ニ付キマシテ反對ノ意見モ申述ベテ居ラレズ、此法案ノ
  通過ニ付テ反對ト云フコトモ申述ベラレヌノデアリマスガ、其點ハ幾度ビ委
  員ヨリシテ御尋ネシテモ的確ナ贊否ト云フコトハ御答辯ガナカッタノデアリ
  マス、尙ホ討論ニ入ル前ニ一ツ申上ゲテ置カナケレバナラヌコトハ、我ガ同
  僚議員ノ中ニ於テ、取引ノ狀態ニ付テ又取引所ニ長ク經驗ヲ·····從事サレタ
  經驗ヲ有ッテ居ラレル、又其取引ト云フコトニ付キマシテ、實際精通シテ居
  ラレル方〓カラシテ一場ノ話ヲ聞イテ貰ヒタイト云フ要求ガアリマシテ、是
  ハ委員會デハアリマセヌデシタガ、委員會室ニ於キマシテ各委員ガ之ヲ聞イ
  タノデアリマス、右樣ナ次第デアリマシテ、討論ニ移リマシタノデ討論ノ內
  容ヲ極ク要ヲ摘ンデ申上ゲタイト思ヒマスルガ、一委員ヨリシテ述ベラレタ
  コトハ此十一年ニ改正ニナッタ現行ノ法律ト云フモノハドウモ其根本ヲ誤ツ
  テ出來テ居ル法律デアルヤウデアル、今日此提出者ノ此法案ノ出來タ理由タ
  ル取引界ノ現況ニ照シテ、限月ヲ元ノ通リニ復舊シテ、三箇月ニ直スト云フコ
  トハ當然ナコトデアラウト云フ意見モ出タノデアリマス、又一委員ヨリシテ
  此改正サレタ現行法ノ法案ト云フモノハドウモ其歐米ノ取引所ノ取引方法ヲ
  本トシテ我國ニ取入レタモノデアルノデ、甚シク我國ノ商習慣ヲ破ッテ銀行
  トノ關係等ノ圓滿ヲ缺キ、迚モ今日ノ取引所ノ狀態デハ其機能ヲ發揮スルコ
  トハ出來ヌカラ此法案ニ贊成スル、又一委員ヨリシテハ此法案ノ如ク改正ス
  ルコトハ折角勅令カラ法律ニ移シテ、三箇月ヲ二箇月ト云フ鄭重ナ手續ニ依ツ
  テ法律ニナッタモノヲ、今日之ヲ又再ビ復舊スルト云フコトハ、如何ニモ法律
  ヲ尊重スル上カラ云フト遺憾デアルガ、併ナガラ既ニ實施後四年ニモナッテ
  居ッテ、ソレデ其實際ノ成績ト云フモノガ今日ニ於テハ明カニナッテ居ルト云
  フテモ宜カラウト思フ、デ此政府委員ノ述べラレル如ク短期取引ガ甚シク弊
  害ヲ呈シテ居ッテ、二箇月ノ限月ノ取引ニ於テハ大量ノ證券取引ト云フモノハ
  行ハレズ健全ナ取引法ト云フモノガ行ハレヌト云フコトデアレバ、之ヲ再ビ
  復舊シテ眞ニ取引所ノ機能ヲ發揮スルニ便ナルコトニスルノモ已ムヲ得ヌヂ
  ヤナイカト思フ、斯ウ云フ賛成ノ意見モ出タノデアリマス、又此法案ニ反對サ
  レル委員ヨリシテ簡單ニ申上マスルト限月ノ可否即チ短カクスルトカ、長ク
  スルトカ、短期トカ云フ問題ノ利害得失ハ色〓アラウガ、自分ノ見ル所デハ、
  改正ノ法律ハ即チ十一年ノ法律ト云フモノハ今日ノ實際ニ照シテ幾分ノ目的
  ハ達シテ居ルヤウニ思フ、尤モ自分ノ主張シタイノハ、折角勅令カラ法律ニ移
  シテ三箇月ヲ二箇月ニ爲シタモノヲ今日俄ニ之ヲ改ムルト云フコトハ法律ヲ
  尊重スルト云フ上ニ付テハドウデアラウカ、此法律ヲ改正スルト云フコトニ
  付テハ重大ナ玆ニ理由ガナケレバナラヌノデアルガ、自分ハドウモ其理由ヲ
  見出スニ付テ是マデノ答辯、〓究ニ依ッテハ遺憾ナガラ之ヲ見出スコトガ出
  來ヌノデ、輕〓シク此法律ヲ改正スベキモノデハナカラウト思フカラシテ、
  現行ノ法律ヲ維持スルト云フコトニ自分ハ重キヲ置カザルヲ得ヌノデ、之ニ
  反對スルト云フコトデアリマシテ、採決ノ結果ハ、當日ハ病氣ノ爲ニ御兩名缺
  席サレタノデアリマシテ、五人ノ賛成デ一名ノ反對デアル、斯ウ云フコトデ
  原案ヲ可決イタシマシタ次第デアリマス、此段議事經過ト結果ヲ御報告申上
  ゲマス
  〔公爵一條實孝君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=194

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• 195・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　一條公爵ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=195

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• 196・一條實孝

  ○公爵一條實孝君　質問ガアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=196

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• 197・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　日程第二十三ニハ質問ノ通〓ガアリマスカ
  ラ、是ヨリ質問ヲ許シマス、上山滿之進君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=197

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• 198・上山滿之進

  ○上山滿之進君　初メノ質問ハ簡單デアリマスカラ此所カラ御許シヲ願ヒマ
  ス、商工大臣ニ御尋ヲ致シマス此質問ハ本案ニ對スル政府ノ所見如何、是ダ
  ケデアリマス、只今大久保委員長ヨリ報告ヲ承リマシテ多少分リマシタケレ
  ドモ、尙ホハッキリ了解ガ出來マセヌノデ、ドウゾ御面倒ナガラ商工大臣カラ
  此問題ニ對スル御說明ヲ願ヒタイ、尙ホ新聞紙等ノ傳フル所ニ依レバ當初商
  工大臣ハ御反對ノ意味ヲ御漏ラシニナッテ、後ニ賛成ノ意味ヲ御漏ラシニナッ
  タト云フコトガ見エテ居ル、必シモ私ハ新聞ヲ全部ヲ信ズル者デハアリマセ
  ヌ、又サウ云フコトガアラウトモ思ヒマセヌガ、サウ云フコトガ現レテ居ル
  ノデアリマスカラ、出來ルダケ明確ニ政府當局ノ御所見ヲ承リタイ
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=198

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• 199・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　只今上山君ノ御質疑ニ御答ヲ致シマス、政府當
  局ガ貴衆兩院ニ於キマシテ御尋ニ應ジテ御答ヲ致シマシタコトハ略、同樣デ
  アリマス、只今大久保委員長ヨリシテ御報告ニナリマシタル政府當局ノ御答
  ヲ申シタコトハ誠ニ能ク委曲ヲ盡シテ居ルト申上ゲテ宜カラウト思ヒマス、
  ソレカラ新聞紙ニ彼此レ近來書イテ居リマスガ、是ハ取引所ニ關係スル問題
  デアリマスルカラ、色〓ノコトヲ新聞ガ每日書ク、恐ラクハ之ニ依ッテ一面ニ
  於テ相場ヲスル者モ澤山アルダラウ、是ハ免レヌコトデアリマスルデ、親シ
  ク御經驗ノアル上山君モ是ハ大抵御推測ノコトト思ヒマス、ソレデ新聞紙ニ
  出テ居リマスコトハ餘リ直ニ御信用ニナラヌヤウニ御願ヲ申上ゲタイト思フ
  テ居リマス、ト言ヒマスノハ衆議院ニ於キマシテハ、極ク要ヲ摘ンデ申上ゲ
  マスト云フト當局ト致シマシテハ、此法案ハ實施以來マダ日ガ淺イノデアリ
  マスルカラ、四箇年······而シテ其間ハ我ガ財界ガ一ニ沈ンデ來タ時デアルノ
  デアリマシテ、沈ンダリ上ッタリシタ時ノ經驗ヲ、マダ此法案自身ハ持ッテ居
  ナイ譯デアリマス、故ニ今日當局ニ於キマシテハ長期ト稱スル二箇月三箇月
  ニ付テハ、一長一短大シタ差ハナイト云フ考ヲ持ッテ居リマスルケレドモ
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  之ニ斷定ヲ下スダケノマダ確カナル材料ヲ十分ニ持ッテ居ルト云フコトヲ申
  上ゲル譯ニイカナイ、斯ウ云フ御答辯ヲ致シテ置キマシタ、ソレカラ又衆議
  院ノ委員會デ若シ此案ガ貴衆兩院ヲ通過シタ場合ニハ政府當局ハドウスル
  カ、斯ウ云フ御尋ガアリマシタノデ、ソレハ只今衆議院ノ一院ノ提出ニナリ
  マシタル······衆議院ノ委員會デアリマスコト故ニ此所デハ答辯ヲスルコトヲ
  差控ヘマス、斯ウ云フ御答ヲシテ置キマシタ、ソレカラ貴族院ニ參リマシテ
  委員會デ段々御話ガアリマシタガ、此御答辯ハソレヨリ謂ハヾ進ンダ御答辯
  ヲ申上ゲテ置キマシタ、其情況ハ只今委員長ヨリ御報告ニナッタノデ誠ニ委
  曲ヲ盡シテ居ルト私ハ申上ゲタイト思フノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事情
  デアリマス、尙ホ御尋ニ應ジテ後トノ御答辯ヲ致シタイト考ヘマス

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• 200・上山滿之進

  ○上山滿之進君　只今商工大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマスト、衆議院ニ於テ爲サレ
  タ御答辯ハ此二箇月限月ノ制度ヲ行フコト日尙ホ淺シ、而シテ其期間ハ景氣
  ノ沈衰シタ時デアルノミデアル、故ニ今二箇月ガ宜イカ、三箇月ガ宜イカ、二
  箇月ガ惡イト云フコトヲ斷定スルダケノ確信ヲ持タヌ、斯ウ云フ風ニ仰セニ
  ナッタヤウデアリマス、其言葉ヲ承リマスト私ノ解スル所デハ既ニ法律上三
  箇月ニシナケレバナラヌト云フ確信ガ付カナイ以上ハ、三箇月ニ戾スコトニ
  ハ反對ト云フコトノ御趣意デアルヤウニ思フ、ソレハサウデアリマスカ、サ
  ウデナイカヲ今一應御迷惑デモ伺ヒマス、ソレカラ貴族院ノ委員會ニ於テナ
  サレタ答辯ハ委員長ノ報〓通リ、斯ウ云フコトデアリマスガ、私ノ席ハ少シ
  遠方デ委員長ノ御聲ガ實ハ十分ニ聞エマセヌデス、尙ホ委員長ノ御取次ニア
  ラズシテ、此席デ中橋商工大臣御口ヅカラ御述べニナル方ガ一般ノ人ニ徹底
  イタシマスカラ、重複イタシマシテモ、商工大臣御口ヅカラ尙ホ御答ヲ伺ヒ
  タイ
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

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• 201・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　只今ノ御問ハ二ツデアルト了承イタシマスガ、
  其第一ノ御質疑ハ衆議院ニ於テ致シタ答辯ハ當局ハ此改正案ニ反對ナリト解
  釋シテ宜シイカト云フ御尋デアリマシタ、當局ノ御答ヲシタノハ之ヲ反對ナ
  リト云フ明瞭ニ御答ヲシテ居リマセヌ、贊成ヲスルカト云フノニハ、賛成ス
  ルノニハ直ニ今是非三箇月ハ二箇月ヨリ宜シイト云フコトヲ斷定スルマデニ
  至ッテ居ナイ、之ヲ躊躇スル、斯ウ云フ答辯ヲ致シテ居ッタノデアリマス、故
  ニ若シ衆議院デソレナラバ反對デアルカ、斯ウ云フ御尋ガ萬一アッタト假定
  イタシマスト、之ニモ是非反對シナケレバナラヌト云フダケノ强イ材料モ持ッ
  テ居ナイ、ト云フ意思デアリマスカラ、其御積リデドウゾ御聽取リヲ願ヒタ
  イ、ソレカラ貴族院ノ委員會ニ於テ申述ベタコトハ先程申シマス通リ委員長
  ノ御報告ノ通リデアリマス、色〓御質問ハ澤山アリマシタガ、其要ヲ摘ンデ
  申シマスレバ、一體三箇月デアッテモ二箇月デアッテモ、是ハ大シタ騒グ程ノ
  問題デナカラウ、大シタ利害ノアルモノデナカラウト云フノガ根據デアルノ
  デアリマス、ケレドモ其實行ノ方法及多少ノ利害得失ハ兩方ニアルト云フコ
  トハ申上ゲテ宜カラウト思ヒマス、ソレカラ短期ニ付キマシテ、新タニ設ケ
  ラレマシタ短期ニ付テモ、是モ先程御報告ニアリマシタ通リニ、初メニ立テ
  ラレマシタル所ノ立法ノ趣旨ノ通リニ今日運ンデ居ルカト申スト、ドウモソ
  レ程デナイカモ知レマセヌ、或點マデハ其日的ヲ達シテ居リマスガ、或點デ
  ハ斯ウ云フコトニハナラナイト思フテ居ッタ點モアルカモ知レナイト云フ考
  モ今日持ッテ居ル譯デアリマス、是等モ或ハ他日改正ヲシテ改善スルト云フ途
  ヲ講ゼヌケレバナラヌカモ知レマセヌ、二箇月、三箇月ト云フ今日長期ト稱シ
  テ居ルモノニ於キマシテハ、以前ノ御當院ノ委員會、其他學者連中ハ色〓ノ論
  ヲ立テラレテ居ルヤウデアリマスケレドモ、果シテ其論ガ肯ニ當ッテ居ルカ
  ドウカ私ハ疑フノデアリマス、現ニ近日ノ新聞紙ノ論調ナドモアリマスケレ
  ドモ、多クハ其論ノ要點ニ觸レテ居ナイ論ガ多イヤウニ感ジマス、大體是レ位
  ヲ申上ゲテ御分リニナリマセウカ、反對トカ贊成トカ明瞭ニ申上ゲロト云フ
  コトニナリマスト、甚ダ當局迷惑ヲ今日ノ所デハ感ズルヤウナ譯デアリマス
  〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=201

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• 202・上山滿之進

  ○上山滿之進君　時刻ノ迫リマシタ所ニ私ハ皆樣ノ御〓聽ヲ汚サザルヲ得ザ
  ル立場ニナリマシタコトヲ謝シマス、私ハ中橋商工大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマシ
  テ誠ニ遺憾至極デアリマス、我〓ハ何故ニ嚴肅ニ眞摯ナル態度ヲ以テ議事ヲ
  進行スルコトガ出來ナイコトニナルノデアリマスカ、政府ハ本案ニ對スル所
  見ヲ瞹昧ニシテ御出デニナリマス、新シク突然起ッタ問題ナラバ兔モ角モ、此
  問題ハ長キ歷史ヲ有シテ居ル、十分ニ當時ノ農商務省、後ノ商工省デハ〓究ヲ
  セラレタ問題デアルノデアリマス、之ニ對シテ衆議院ノ提案ガアリマシテ、
  又貴族院ニ〓ッテ之ニ對シテ當然所見ヲ御述べニナラヌト云フコトハ、私ニハ
  到底理解スルコトハ出來ヌノデアリマス、只今最後ニ迷惑ダト仰セニナリマ
  シタ、其迷惑ト云フ御言葉ハ誠ニ覺リノ惡イ私ニデモ之ヲ理解ハ出來ルノデ
  アリマスケレドモ、是ハ座談ナラバ別トシテ、此演壇ニ於テ、承ルベキ言
  葉デハナイト思フ、何トシテモ之ニ對スル明確ナル御所見ヲ私ハ承ラザルヲ
  得ヌノデアリマス、御承知ノ通リ此限月問題ナルモノハ、曾テハ時ノ農商務
  大臣商工局長其位置ヲ去ラザルヲ得ナイ大事件ノ起ッタ程ノ問題デアリマス、
  其後何人モ、之ニ手ヲ著ケルコトガ出來ナカッタノデアリマス、ソレガ大正十
  一年即チ私ハ政友會ノ、ドナタカノ政友會ノ内閣デアッタト思ヒマスガ、其內
  閣ノ時、時ノ農商務大臣ハ山本男爵デアッタト記憶イタシマス、其時是ハ提案
  サレタ、詰リ長イ間ノ難問題ヲ免モ角モ片付ケテ、斷乎トシテ提案サレタ其
  一ツデアルノデアリマス、若シ政友會ノ主義政策ト云フモノガ斯ノ如キ問題
  モ若シ主義政策ノ一ツデアルナラバ、亦私ハ重大ナル問題デアルカラ其一ツ
  デアッテ、何モ政友會ノ恥デナイト思フノデアリマスガ、ソレナラバ此內閣ハ
  依然トシテ此方針ヲ支持セラルベキ筋合デアル、即チ斯ノ如キ案ニ對シテハ
  斷乎トシテ反對ノ意思ヲ政府ガ表明セラルベキデアル、殊ニ政府與黨ノ政友
  會ガ多數ヲ占メテ居ル衆議院ニ於テ、政友會總裁ハ其與黨ヲ指導サルベキ筋
  合デアルト思フ、サウ云フ性質ノ問題デアリマスガ故ニ、政府ノ明確ナル之
  ニ對スル所見ヲ伺ハザルヲ得スノデアリマス、政府ノ明確ナル之ニ對スル所
  見ヲ伺ハザル以上ハ、議事ヲ進行スルニ甚ダ不便ヲ感ジマス、私ノ解スル所
  ニ依レバ衆議院ニ於ケル中橋商工大臣ノ御答辯ハ二箇月ニシテ惡カッタ、三箇
  月ニシナケレバナラヌト云フコトノ考ヘハマダナイ、殊ニソレニ理由ヲ御附
  ケニナッテ、マダ實施後僅カデアル、更ニ其僅カナ間ガ唯景氣ガ沈衰ノミノ時
  代デアッタト云フコトノ理由マデ御附ケニナッタ、此答辯ハ御迷惑ダカラハッキ
  リ仰セニナラヌノデアッテ、其意味ハ明カニ今法律ヲ改正スル必要ナシト仰セ
  ニナッタ、正シイ御答辯デアル、後トハ言葉ノ綾デハッキリ仰セニナラナカッタ
  ノデアルト、斯ウ云フ風ニ了解スル外途ハナイ、是ハ大變私滿足イタスノデ
  アリマスガ、只今貴族院ニ於テ今日ニナッテハ、又色〓ト此綾ガ附キ過ギテ結
  局地色ガ分ラナクナッタヤウナ事ニナリ、是デハ誠ニ困リマス、何故ニ政府ハ
  ハッキリ御答辯ヲナサラヌノデアリマスカ、ハッキリ御答辯ヲナサラナケレバ
  御答辯ヲナサラナイ理由ヲ伺ハザルヲ得ナイノデアリマス
  〔國務大臣中橋德五郞君演壇ニ登ル〕

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• 203・中橋徳五郎

  ○國務大臣(中橋德五郞君)　此限月問題ニ付キマシテハ、沿革ハ只今上山君
  ガ御述べニナリマシタ通リ、大正十一年ダト記憶シテ居リマスカラ、前ノ原內
  閣ノ當時ニ、時ノ農商務大臣ノ山本達雄君ガ御計畫デ委員會ガ出來テ、之ヲ議
  院ニ提出ニナッタノデアリマス、當時私モ其時ニ居リマシタ、其時ニ此案ハ黨
  ノ政策デアルカドウカト云フ迄ノモノニ迄ナッテ居ッタヤウニ記憶イタシテ居
  リマセヌ、只今上山君モ御話ニナリマシタ通リ、此問題ハ果シテ黨ノ政策ノ
  重要ナル一部トナルベキモノデアルカドウカハ、是ハ銘々ノ見樣デアリマセ
  ウ、ソレカラ之ニ付キマシテ明確ナル贊否ヲ表セナイト云フコトニ付テ誠ニ
  御不滿デアル模樣デアリマスカラ、其點ニ付テハ誠ニ申譯ハアリマセヌデア
  リマスルガ、當局トシテ申述ベマシタ趣意ハ、十一年ノ改正ガ出來マシテ、
  サウシテ短期ヲ實行シテ、ソレカラ長期ノ三箇月ヲ三箇年實行イタシテ延期
  ヲシテ、十四年ヨリシテ初メテ二箇月ノモノヲ實行スルト云フノニハ隨分
  其當時カラシテ苦心ガアッタモノノ樣ニ見受ケマス、果シテドチラガ宜イカト
  云フコトニ付テノ議論モ無論アリマシタラウシ、從來長ク三箇月長期ノ習慣
  デ來タ取引所ノ有力ナル關係者總體ヲ御呼ビニナッテ、其意見ヲ御聽キナサッ
  タノデアリマス、サウシテ中〓長イ習慣ヲ變ヘルニハ迷惑スル者モ多イノダ
  ラウト云フ樣ナコトデアリマシタラウ、三箇年延期ヲ致シマシテ十四年ヨリ
  シテ二箇月ヲ實行シテ、今日迄來テソレガ四箇年、斯ウ云フノデアルノデア
  リマス、四箇年ニナッテ今日衆議院ニ於テ復タ二箇月ヲ舊ノ三箇月ニ延バシ
  タイト云フ、斯ウ云フ案ガ今日出タノデアリマス、當局ガ之ニ反對スルナラ
  バ無論反對、斯ウ云フ譯デアリマス、賛成ヲ致ス意思ガアルナラバ當局ヨリ
  之ヲ提出スル譯デアリマス、併シ當局ト致シマシテ當局ヨリ此案ヲ提出スル
  ト云フコトニハ、モウ少シ時期ヲ與ヘ愼重ニ考ヘタ方ガ宜カラウト云フ考ヲ
  持ッタ譯デアリマス、其答辯ヲ申上ゲタノデスケレドモ、若シ是ガ貴衆兩院
  ニ有力ナル御方、御經驗ニ非常ニ富ンダル御方モ多イノデアリマスカラ、是
  非斯ウシタガ宜カラウト云フコトニナレバ、當局ニ於テハ强ヒテ之ニ反對ス
  ルダケノ强イ理由ヲ持チマセヌノデアリマス、サウ云フ意味ヲ申上ゲテ居ル
  譯デアリマスカラ、ソレ等ノ事情ヲ能ク御察シヲ願ヒタイト云フ考ヘデアリ
  マス
  〔伯爵奥平昌恭君「只今私ガ······」ト述フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=203

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• 204・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　上山君ニ伺ヒマスガ、マダ質問ガ殘ッテ居リマス
  カ

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• 205・上山滿之進

  ○上山滿之進君　宜シイデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=205

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• 206・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマスカ、奧平伯爵

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=206

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• 207・奧平昌恭

  ○伯爵奥平昌恭君　私ガ問ハムト致シマシタノハ、本案ガ貴衆兩議院ヲ通
  過イタシマシタ時分ニハ、政府ハ如何ナル御取扱ヲナスノデアルカト云フコ
  トヲ御尋ヲ致サウト思ッタノデアリマスガ、只今上山君ニ對シテ商工大臣ノ御
  答辯ノ中ニ、當局ハ强ヒテ反對シナイト云フコトデゴザイマスルカラ、私ガ
  御尋ネシヤウト思ッタ點ニ付キマシテハ此中ニ含マレテ居リマスカラ、私ハ質
  問ヲ取消シマス

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• 208・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ニテ質疑ノ通告ハ終リマシタ、是ヨリ討論ニ移
  リマス、通〓ニ依リマシテ上山君ノ發言ヲ許シマス
  〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=208

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• 209・上山滿之進

  ○上山滿之進君　私ハ本案ニ反對スル者デアリマス、本案ハ投機ノ機會ヲ多
  クスル爲ニ法律ヲ濫ニ變更セントスルモノデアリマス、先程質問ノ機會ニ於
  テ申述ベマシタ通リニ、限月問題ナルモノハ取引所ニ於テト申スヨリハ寧
  ロ農商務省、即チ產業省ニ於テ長イ間ノ極メテ厄介ナ問題デアリマシタ、曾
  テハ平田農商務大臣、木內商工局長ハ、此限月ヲ短縮セントシテ蹉跌セザル
  ヲ得ナカッタ程ノ厄介ナ問題デアリマス、私モ暫ク農商務省ニ厄介ニナッテ居
  リマシタ、農商務當局ハ常ニ此限月問題ニ觸ルヽコトヲ丸デ毒蛇ニ逢フヤウ
  ナ態度ヲ執ッテ居ッタノデアリマス、當時限月問題ニ付テハ其主務局デハ相當
  〓究ヲ怠ラナカッタコトモ事實デアリマス、所ガ大正十一年ニ至リマシテ外ノ
  改正モアリマシタケレドモ、其趣意ノ取引所ニ關スル改正ノ中ニ限月短縮ヲ
  入レテ當時ノ政府ハ議會ニ提出シ、サウシテ其成立ヲ見タノデアリマス、私
  ハ當時其特別委員ノ一人デアリマシタ、私ハ此當時ノ取引所法改正ニハ全體
  ニ反對ヲ致シタモノデアリマス、其反對シタ理由ハ此限月問題ニ付テニアラ
  ズシテ外ノ種々ナル改正ヲスル、ソレニ理由ナシトシテ反對イタシタノデア
  リマス、只今、先刻特別委員長カラ御報告ニナリマシタ此短期取引ヲ新シク
  設ケルコトニモ私ハ反對ヲ致シタノデアリマス、其事ハ先ヅ別ト致シマシ
  テ、限月問題ハ斯ノ如キ厄介ナ經過、歷史ヲ有ッテ居ルニ拘ラズ、當時ノ內
  閣ハ〓然トシテ之ヲ提出シ而シテ兩院ノ協賛ヲ經タノデアリマス、其後數年
  間之ヲ實施セズ、其實施シナカッタ理由モ色〓關係者ノ陳情ニ基イタコトデ
  アルト思フノデアリマス、其陳情ヲ又押切ッテ大正十四年ニ遂ニ之ヲ斷行シタ
  ト云フコトガ今日マデノ歷史デアル、誠ニ苦シイ經過ヲ經テ今日ノ制度ハ出
  來テ居ルノデアリマス、若シ取引所ヲ初メカラ設ケル時私ガ二箇月ガ宜イト
  言ヒマスカ三箇月ガ宜イト言ヒマスカソレハ分リマセヌ、ケレドモ私ノ言ハ
  ムトスルノハ斯ノ如キ厄介ナ問題ヲ、斯ノ如キ長キ經驗ヲ經テサウシテ最後
  ニ漸クソレヲ實行シテ、サウシテ實行後僅ニ四年ニシカナラナイ今日、而モ先
  程商工大臣ノ仰セニナル通リ、其四箇年間ハ經濟界ノ沈衰シテ居ッタ時デアリ
  やく、又今日モ沈衰シテ居ルノデアリマス、其短イ而モ變態ナ時ノ經驗ヲ以
  テ、從來ノ歷史ヲモ何モ顧ミズシテ直ニ之ヲ四年以前ト申シマスカ、七年以前
  ト申シマスカ、大正十一年ノ以前ノ昔ニ還サウト云フコトハ、餘リニモ輕率
  ト言ハザルヲ得ヌノデアリマス、先刻特別委員長ノ御報告ノ中ニ、大正十一年
  ニ何故ニ限月短縮ヲシタカト云フ理由トシテ、大正十一年ハ戰爭直後デ景氣
  ノ非常ニ好イ時デアッテ、取引所ガ盛ンニ活躍ヲシテ餘リニモ其覊絆ヲ脫スル
  虞ガアルカラ、限月ヲ短縮シタト云フ風ニ私受取レマシタガ、何人ガサウ云フ
  コトヲ申シマシタカ存ジマセヌガ、戰爭ノ愈〓熄ミマシタノハ······即チ講和
  條約批准寄託ハ大正八年、千九百十九年ノ冬デアリマス、即チ戰爭直後ト申
  セバ大正九年ノコトデアリマス、我東京ノ兜町ノ相場ガ下落シタノハ大正九
  年ノ三月十五日デアルト私ハ記憶シテ居リマス、再度ノ下落ガ四月十五日デ
  アリマシタ、ソレカラモ非常ナ混亂狀態ヲ兜町ハ續ケテ居ル、寧口我ガ經濟界
  ガ盛ニ混亂ノ域ニ陷ッタト云フコトハ是ハ爭フベカラザル事實デアリマス、何
  故ニ大正十一年ガ······下落ノ後二年經ッタ大正十一年ガ非常ナ好景氣ノ時代
  デアッタ、取引所ガ餘リ活躍シ過ギルカラ抑制シナケレバナラヌト云フ時期デ
  アッタト云フコトハ、何處ノ曆ニアルカ私ハ分リマセヌノデアリマス、是ハ全
  然事實デアリマセヌ、ソレハサウヂヤナイ、農商務當局トシテハ限月問題ヲ何
  トカシヤウト云フコトハ長イ問題デアッテ、色〓〓究ニ〓究ヲ重ネタ結果、大
  正十一年ニ是ガ提出サレタト云フノガ歷史デアル、サウ云フ歷史ヲ有ッテ居
  ル此限月問題ヲ元ヘ還サウトスルノデ、玆ニ萬已ムヲ得ザル理由ガナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス、所ガ其理由ハ一切聽クコトガ出來ナイ、成程色〓
  理由ハ文書デ承知イタシマシタ私ハ不幸ニシテ先頃來他ノ特別案員會ノ多忙
  ノ爲ニ、此問題ノ特別委員會ヲ傍聽スル機會モ得マセヌデゴザイマシタカラ、
  極ク詳シイコトハ存ジマセヌケレドモ、書面デハ此賛成ノ理由ヲ一通リ見マ
  シタ、澤山ニ理由ガアリマシタ、必シモ其一々ヲ私ハ否定ハ致シマセヌ、併ナ
  ガラ又此場合ニ其一々ヲ此議場ニ於テ批評シヤウトハ思ヒマセヌ、ソレハ何
  故カト申シマストドウモ現在ノ制度デハ誠ニ苦シクテ困ルト云フコトガ結局
  述ベテアル、私ニ申サセマスト此取引所ニ對スル制限ト云フモノハ苦シイノ
  ガ當リ前ナンダ、苦シクスル爲ニ取引所ノ制度ト云フモノハ設ケテアルノデ
  アリマス、若シ取引所ヲ勝手ニサセヤウト云フナラバ取引所法ハ要ラナイ、全
  國到ル所デ取引シテモ宜イト云フコトナラ要ラナイ、問題ハ苦シサノ程度デ
  ナケレバナラナイ、所ガ三箇月ヲ二箇月ニシテモ苦シサハ忍ベルト言フカラ、
  長イ歷史ヲ有チ長イ〓究ヲ積ンデ初メテ行ッタ此制度デアリマス、私ヲシテ言
  ハシムレバ此道ニ關係ノ有ル人ガ今少シ我慢ヲスルト、必ズ此苦シサニ慣レ
  テ來ルト斯ウ思フノデアリマス、併シ私ハ此道ノコトヲ自分自身デハ何モ知
  リマセヌカラ、私ノ知リ得ナイ範圍ニ於テドウ云フ苦シイコトガアルカ私ノ
  干與スル限リデハアリマセヌ、唯〓大體ニ於テ取引所ト云フモノノ性質カラ申
  スト、相當ニ苦シクナルノガ當然デ、私ハ曾テ「取引所ト遊廓」ト云フ短イ「エ
  ツセー」ヲ公表シタコトガアリマス、比較シタモノガチヨット奇妙ナノデ友
  人カラ忠告ヲ受ケマシタガ、實ハ其內容ハ非常ナ私トシテハ眞面目ナ問題デ
  アル、人慾ノ制スベカラザルコトハ絕對ニ制スベカラザルコトハ是ハ已
  ムヲ得ヌノデアル、ソレガ爲ニ一方ニ於テ遊廓ヲ設ケ、一方ニ於テ取引所ヲ
  設ケルト云フコトハ是ハ仕方ガナイ、尤モ取引所ト遊廓ト比べマスト取引所
  關係ノ人ニ怒ラレルカ知レヌガ、是ハ厭ヤナ意味ニアラズシテ非常ナ眞面目
  ノ意味デサウ思フ、併ナガラ是ハ人慾ヲ滿タス爲デハアリマセヌ、其外ニ大
  キナ目的ガアッテ、遊廓ニハ衞生ヲ完全ニ行フ目的ガアリ、取引所ニハ公定相
  場ヲ作ル大キナル目的ガアル、唯人慾ヲ滿タスダケトハ申シマセヌガ、此人
  慾ヲ滿タス爲ニ已ムヲ得ズ出來テ居ルト云フコトハ、此二ツノ重要ナル著眼
  點デアルト、私ハ固ク信ジテ居リマス、ソコデ已ムヲ得ズ設ケル以上ハ設
  立ノ地域モ區域モ制限ヲシ、サウシテ今度其廓內ニ入ッタラ餘リ小世話ヲ燒カ
  ナイヤウニシナケレバ、取引所ノ目的ハ達シナイト云フノガ私ノ取引所ニ對
  スル根本ノ觀念デアリマス、デ限月ノ如キコトハ其全體ノ取引所ト云フモノ
  ノ上カラ是ダケノ制限ヲシナケレバナラヌト云フコトカラ出來タノデ、其出
  來タ制限ノ範圍デ苦シイノガ當然デ、是ガ苦シクナカッタナラバ困ルノデ、故
  ニ私ハ此提案者及此贊成者ガ縷々トシテ御說明ニナッタ數十箇條ノ一々ニ付
  テ批判シヤウトハ考ヘマセヌ、又私ハ批判スル必要ハナイノデ、私ハ朝令暮
  改ト云フコトガイカヌト云フコトヲ第一ノ反對ノ理由ニ致シマス、次ニハ取
  引所當事者及此取引關係者、斯ウ云フ人〓ガ〓心ニ之ヲ殆ド例外ナク主張シ
  テ居ルヤウデアリマス、御斷リ致シマスガ、之ニ贊成スル人ガ全部サウデア
  ルト云フ其逆ノ「ロジツク」ハ私ハ用ヰルノデハアリマセヌ、特別委員會ニ於
  テ贊成ヲセラレタ諸君ガ何モサウデアルト、斯ウ申スノデハアリマセヌ、唯
  外部カラ或ハ之ヲ提案シ、或ハ之ニ贊成スル意見ヲ發表シテ來ルモノハ、取
  引所當事者及ビ取引關係者デアリマス、他人ノ心事ヲ忖度スルコトハ成ルベ
  ク避クベキコトデアリマス、併ナガラ特定ノ人ヲ指サズシテ、或一定ノ範圍
  ノ人ニ對シテ批評ヲスルコトハ此場合免レヌト思ヒマスカラ、ドウゾ御許シ
  ヲ願ヒタイ、是等ノ人〓ハ何ヲ目的ニシテ此改正ヲ希望スルカ、極メテ簡單デ
  アリマス、取引所ヲ賑ヤカニシヤウト云フコトデアル、サウシテ取引關係者ハ
  成ルタケ自由ニ活躍ヲシテ先達テ配ッテ來マシタ或文書ノ中ニハ、何號ト申シ
  マスカ、大キナ活字デ以テ、是ガ通レバ春相場ハ爆發スルト言ッテ得意ニナッテ
  引札ヲ······引札デハアリマセヌガ、趣意書ヲ寄越シタ人モアリマシタ、是ガモ
  ウ詐ラザル心事デアルト私ハ思フ、民心ノ歸向動モスレバ其方途······其所ヲ
  誤ラムトスル虞ノアル今日ニ於テ、ソレダケノ點カラ申シマシテモ、私ハ不健
  全ナル、好奇心ヲ煽ルガ如キ立法ハ最モ愼マナケレバナラヌト信ズル者デア
  リマス、本來取引所當事者及取引關係者、此人達ハドウ云フ一體考ヘデアル
  ノデアリマセウ、此二箇月限月ト云フコトハ大正十一年ニ始ッタノデアリマ
  ス、大正十一年ニ是ガ議會ニ政府カラ提案ニナッタ時、何故ニ反對ヲシナカッ
  タノデアリマセウカ、輕イ反對ノ響ハ私ノ耳ニモ這入リマシタ、先程モ申上
  ゲマシタ通リニ私ハ當時ノ改正法律案ノ特別委員デアリマシタケレドモ、熱
  心ナ反對ハ當時曾テ私ノ聞キ及バナカッタ所デアリマス、是モ他人ノ心事ヲ
  忖度シテ相濟ミマセヌケレドモ、私ノ推測スル所ニ依レバ、當時ハ第一短期取
  引ト云フモノヲ新ニ設ケラレ、種々投機ノ機會ヲ增加スル制度ガ立テラレタ
  ノデアリマス、其傍ラニ此限月ヲ三箇月カラ二箇月ニ縮メルト云フコトノ制
  度ガ一〓ニ組マレテ出サレタノデ、若シ限月問題ニ猛烈ニ反對シテアノ時ノ
  法律案ガ潰レマシタナラバ、折角投機ノ機會ニナル······機會ヲ多クスルコト
  ニナル他ノ點モ同時ニ潰レナケレバナラヌ、詰リ共倒レニナラナケレバナラ
  え、ソレデ當時取引所當事者取引關係者ハ盛ニ其法律案ノ通過ヲ希望シタモ
  ノデアリマス、私共モ色〓其說ヲ聽カサレマシタ、今日法律ノ施行後僅ニ四
  年、而モ變態經濟ノ時代ヲ經テ來タ······變態ノ經濟ノ時代デアッタ僅カノ四
  年ヲ經テ來タ今日ニ、突如トシテ之ヲ改正シナケレバナラヌト云フコトガア
  ルナラバ、而シテソレガ眞理デアルナラバ、何故ニ大正十一年ニ猛然トシテ
  之ニ反對シナカッタノデアリマセウ、其時ハ過去ニ經驗ガナカッタカラサウハ
  思ハナカッタガ、今日デハ經驗ヲ積ンダカラ改正シナケレバナラヌト若シ言フ
  ナラバ、僅カノ四年、而モ變態經濟ノ四年ガ何ノ經驗ニナルノデアリマスカ、
  而モ限月問題ハ古イ昔カラヤカマシキ經驗ヲ積マレタ問題デアルコトヲ玆デ
  忘レテハナラヌ、此以上心事ヲ忖度スルコトハ避ケマスケレドモ、賢明ナル同
  僚諸君ハ御了解下サルコトト思フノデアリマス、斯ノ如キ動機ノ不純ナル法
  律案ヲ玆ニ議スルト云フコトヲ私ハ甚ダ好マナイノデアリマス、此問題ノ由ツ
  テ來ル一番ノ理由ハ、近來不景氣デアルト云フコトデアラウト思フ、詰リ取
  組高ガドウモ少クテ賑カデナイト云フコトニアルデアラウト思フ、先刻モ特
  別委員長ノ御說明ノ中ニ此限月ガ三箇月カラ二箇月ニナッタカラ、アノ場ガ寂
  レタト云フ風ニドナタカガ述ベラレタト云フコトノ御報告ガアリマシタガ、
  私ノ見ル所デハソレハサウデナクテ、根本ハ全體ノ不景氣ガ取引所ノ場ニ反
  映ヲシテ居ルノデアル、斯ウ云フ風ニドウシテモ思ハレル、ソレハ二箇月ヲ三
  箇月ニスレバ場ガ賑ヤカニナルコトハ當然デ、或當業者ノ趣意書ニ春ノ相場
  ノ爆發ト云フコトヲ大キナ字デ書イテアルノハ即チソレナンデ、ソレナラバ
  何モ二箇月ヲ三箇月ニ、タッタ一箇月値切ラヌデ、之ヲ四箇月ニシ半年ニシ、
  一年ニスレバ、ソレダケ場ハ繁昌スルノハ當然デアリマス、ケレドモソレデ
  ハ困ル、三百六十五日、一年中種々ナ機會ヲ捉ヘテ··
  〔副議長侯爵蜂須賀正韶君議長席ニ著ク〕
  サウシテ思惑ヲ盛ニ長イ期間ニ亙ッテヤルト云フコトガ困ルカラ制限シテア
  ルノデアリマス、其制限ガ苦シイノハ當然デアリマス、唯問題ハ程度、程度
  デスガ、私共ハ矢張リ大正十一年ニ政府ガ斷乎トシテ此改正ヲシタコトノ程
  度ガ適當デアラウ、少クトモ······少クトモ茲十數年此制度ノ下ニ經驗ヲシテ
  サウシテ愈〓イケナカッタ時ハソレハ其時ノ又問題デアリマス、僅カ四年ノコ
  トデ以テ、斯ウ云フ問題ヲ出スト云フコトハ誠ニ遺憾千萬、政府ハ本案ニ對
  シテ意見ヲハッキリ御述ベニナラヌ、私ハ甚ダ不滿足デアリマス、先程モ申シ
  マシタ通リニ是ガ一時ニ煮エ湧イタ問題ナラバ免モ角、長イ問題デアリマス、
  之ニ對シテ何カ意見ガナクテハナラヌ、又商工大臣ハ兩院ヲ通過シタ以上ハ
  ト斯ウ云フコトヲ仰セラレテ居ル、通過シタ時ノコトヲ私ハ伺ッテ居ルノデハ
  ナイ、今通過スルカセヌカト云フ此場合ニ於テ、政府ハ之ニ對シテ一定ノ所見
  ガ無クテハナラヌ、察シテ吳レト仰セニナリマスケレドモ、察スルトカ察セヌ
  トカ云フ問題ハ、是ハ玆ニ至ッテ申上ゲル筋デハアリマセヌ、我〓ハ此法律ニ
  贊否ヲ表スル時ニ、察シタカラ贊成シマシタ、察シタカラ反對シマシタト云ツ
  テ投票スルコトハ議場ノ規則ガ許シマセヌ、察スルコトハ致シマセヌガ、併
  シ察シロト云フ御話デ察スルト、衆議院ニ於テ政府ノ方〓ノ答辯ノ眞意ガ、
  即チ不贊成デアルト云フコトガ政府ノ眞意デアルト私ハ思ハザルヲ得ヌ、貴
  族院ニ參リマシテカラハ、衆議院ガ通過イタシタカラ少シ御言葉ガ軟カクナッ
  テ居ルノデアッテ、矢張リ依然トシテ政府ノ心事ハ御好ミニナラナイモノデア
  ルト私ハ思フノデアリマス、併シ私ハ先刻質問イタシマシテ、皆樣御聽キノ
  通リデ、大〓御理解下スッタコトト思ッテ、私ハ深ク申シマセヌガ、斯カル問
  題ニ對シテ政府ガ態度ヲ明カニサレナイト云フコトニ付テハ、私深ク遺憾ノ
  意ヲ表スル者デアリマス、要スルニ本案ハ投機ノ機會ヲ多クスル目的ヲ有ス
  ルモノデアッテ、其他ニ何等ノ目的ガナイト、私ハ堅ク信ジマス、ドウゾ滿場
  ノ諸君ニ反對ニ御投票下サラムコトヲ切望イタシマス
  〔伯爵奧平昌恭君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=209

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• 210・奧平昌恭

  ○伯爵奧平昌恭君　只今上程ニ相成リマシタ取引所法中改正法律案ニ付キマ
  シテ、上山君ヨリ御反對ノ意見ガゴザイマシタガ、ソレニ付キマシテ私ガ贊成
  意見ヲ述ベマスル中ニ附加ヘマシテ數點申上ゲタイト思ヒマスノデゴザイマ
  ス、私ハ其改正案ニ賛成ノ意見ヲ表スル一人デアリマス、抑〓大正十一年ニ
  於キマスル取引所法ノ改正ハ私ガ申上ゲルマデモナク、皆樣御承知ノ通リニ
  財界ノ最高調時代デアリマシタ大正八九年ノ交ニ設ケラレマシタ、取引所制
  度調査會ノ成案ニ基イタモノデアルト云フコトハ、私ガ申上ゲマセヌデモ、改
  正當時ノ當局ガ聲明イタシテ居ルノデゴザイマス、今日ヨリ私モ之ヲ追想イ
  タシマスレバ、當時皆樣御承知ノ通リ千載未曾有ノ好景氣時代デゴザイマシ
  テ投機熱ノ旺盛デアッタコトハ國ノ內外ヲ問ハズ、實ニ是ハ世界的デアッタノ
  デアリマス、單ニ我國ノミデ申シマシテモ、船舶デアルトカ綿絲、綿布、小麥、
  銅、鐵等ヲ初メト致シマシテ、澱粉、麻袋等ニ至リマスマデ相場ノ昇騰ニ次グ
  ニ昇騰ヲ以テ致シマシテ、是等ノ貨物ノ取引ハ先物ニ次グニ先物ヲ以テ致シ
  マシテ、世ヲ擧ゲマシテ投機熱ニ浮カサレタノデアリマス、尙ホ是等ノ〓ニ浮
  カサレタ感ガアリマシタコトハ私ガ申スマデモアリマセヌ、皆サンノ御記憶
  ニ新タナル所デゴザイマス、從ッテ此投機熱ニ浮サレタト云フコトニ付キマシ
  テ、有價證劵ノ取引ガ殊ニ甚シカッタト云フヤウニ皆サンモ御記憶ニナルノ
  デアリマスルガ、是ハ每日ノ新聞ノ經濟欄ヲ御覽ニナリマシタナラバ、是ハ當
  時ノ單リ株式バカリデナク船舶、綿絲、綿布、小麥、銅、鐵、澱粉、麻袋ニ至ルマ
  デ取引ガゴザイマシテ、相場ノ高低表ガ載ッテ居ッタノデアリマス、併ナガラ
  當時投機ノ節制抑壓ガ世間一般ノ聲デゴザイマシテ其爲ニ有價證劵ノ限月ガ
  二箇月ニ短縮相成ッタコトハ皆サン御承知ノ通リノ次第デゴザイマス、偖テ
  右ノ調査會ガ設置サレマシタ時ヨリ改正現行法案ノ實施サレマシテ四年デゴ
  ザイマス、調査會ガ設置セラレマシテ其調査會ノ調査ニ基キマシタ、現行法
  ノ出マスル此調査會設立當時ヨリ既ニ十年經過イタシテ居ルノデゴザイマ
  ス、彼ノ財界熱狂時代ハ先程上山君ノ申サレマシタ通リニ、大正九年三月ノ
  十五日ヲ堺ト致シテ居タト私ハ記憶シテ居リマス、ソレ以來急轉直下ヲ致シ
  マシテ、各貨物及株式ノ價格ノ急轉直下ヲ致シテ、相場ノ大暴落ヲ來タシマ
  シテ、延イテ關東ノ大震災ニ際シマシテ、經濟界ハ愈〓益〓不況ニ陷リマシ
  タ、搗テヽ加ヘマシテ一昨年ノ金融動亂ヲ招キマシテ、其結果財界ハ益〓沈
  衰ノ極ニ達シタノデアリマス、取引所法ノ改正當時ト比ベマスト云フト、私
  ハ當時大正十一年頃ハ尙ホ未ダ財界ハ好景氣ノ餘燼ガ盛ンノ時デアリマシ
  テ、是ハ二箇月ニ致シマシテ、投機熱ヲ抑壓スルガ適當デアッタト云フコト
  ニ付キマシテモ考ヘハ致シタノデアリマスルガ、併ナガラ今日ニ於キマシ
  テ、之ヲ見マスルト云フトドウモ取引ノ實情ニ於テ、毎月々々ノ勘定ニドウ
  モ合ハナイ點ガアルノデ、是ハ如何ナルモノデアルカト云フコトニ付キマシ
  テモ考ヘテ居リマシタ際ニ、殊ニ大正十一年ノ財界ト今日ノ財界ト比較イタ
  シマスレバ、實ニ兩極端ノ而モ皮肉ノ對照デゴザイマス、戰時ノ最高潮時期ニ
  出來マシタ立法ガ、果シテ財界ノ最モ沈衰シタル今日ニ適應スルノデゴザイ
  マセウカ、世界何レノ國ニ於キマシテモ、戰時中ノ立法ハ戰後ニ於キマシテ
  ソレ〓〓改廢ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、先程上山君ヨリ之ヲ改廢スルコ
  トハ朝令暮改ナリト云フ御話ガゴザイマシタケレドモ、戰時中ニ世界各國ニ
  於キマシテ、立法セラレタモノデ戰後經濟界ニ合ハナイモノハ、ソレゾレ改
  廢シテ居ルト云フコトヲ聞イテ居ルノデゴザイマス、世界ノ大勢ニ後レルコ
  トハ、我國ノ財界ニ取ッテ甚ダ不利益ト言ハナケレバナラヌト考ヘルノデア
  リマス、各國ハ各適應シテ居ル所ノ經濟制度ヲ樹立サレテ居ルト私ハ考ヘテ
  居リマス、殊ニ賣買方法ノ如キ商工業ノ實情ニ立脚スベキモノデアリマシ
  テ、假令一時ノ權道ト致シマシテ、是ニ制限ヲ加ヘテモ法律上不動ノモノト
  致シテ恆久ニ之ヲ束縛スルコトニハ、政府及立法部ノ最モ注意考慮ヲ致サナ
  ケレバナラヌ點デアルト思ヒマス、況ヤ三箇月限月取引ト云フモノハ我國ノ
  經濟界、官界幾多ノ事情ト相融和イタシテ居リマシテ發達シテ來タル
  〔「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ〕
  五十年來ノ習慣デゴザイマス、斯ノ如キ歷史アル習慣ヲ千載一遇ノ財界熱狂
  時代ニ、之ヲ對象ト致シマシテ、之ヲ短縮シ、今後永キニ亙リマシテ恐ラク
  財界ノ沈衰ノ······平時ノ狀態ニ、之ヲ强行シヤウト云フコトハ、財界ノ爲ニ
  當ヲ得ナイヤウニ私ハ考ヘルノデアリマス、次ニ改正當時ニ於キマシテ、政
  府ノ聲明サレタル如ク限月ノ短縮ガ果シテ投機ノ抑制ニ效果ガアッタカト云
  フコトデゴザイマス、元來賣買取引ノ期限、限月ハ投機取引ノ助長ニ關係
  スルト云フコトガ甚ダ私ハ薄イモノデアルト云フコトヲ考ヘテ居ルノデアリ
  やく、之ヲ世界的ニ見マシテモ、紐育ノ株式取引所ハ大部分翌日渡ノモノデ
  アルト云フコトデゴザイマスルガ、賣買期限ハ申ス迄モナク世界中デ一番短
  イノデゴザイマスルガ、其最モ短イ賣買期限ヲ有シテ居ル所ノ紐育ノ株式取
  引所ニ於キマシテモ、其裏面ニ於キマシテハ貸借關係ニ依リマシテ相當ニ繰
  延ラレテ居ルト云フコトヲ聞イテ居リマス、紐育ノ如キ世界第一ノ投機取引
  ガ行ハレテ居ルト云ッテモ宜シイノデゴザイマスガ、又最モ長キ期限ヲ有シ
  テ居ル所ノ伯林ノ株式取引所及ビ巴里ノ株式取引所ニ於キ。マシテハ今日世界
  中デ最モ投機取引ガ沈衰シテ居ルヤウニ私ハ聞イテ居ルノデゴザイマス、論
  ヨリ證據ニ限月ノ長短デハナイト云フコトノ目前ノ事實ガ私ハ玆ニ在ルト思
  フノデゴザイマス、又之ヲ國內的ニ觀察ヲ致シマシテモ、限月ノ短キ短期〓
  算取引ガ却ッテ長期ノ〓算取引ヨリモ、投機取引ノ分子ガ多イト云フコトハ
  衆議院ニ於キマスル反對演說ヲサレマシタ田中代議士ノ引用シテ居ル受渡ノ
  此比率ヲ見マシテモ極メテ私ハ明白デアラウト思フノデゴザイマス、要スル
  ニ投機取引ノ助長ハ賣買取引ノ期限ニ關係スルト云フヨリモ寧ロ經濟界ノ
  事情ニ基クト云フ風ニ解釋スルノガ私ハ至當デハナイカト思フノデゴザイマ
  ス、況ヤ二箇月ノ取引ヲ三箇月ニ致シマシテモ今日ノ財界ニ於キマシテ、殊
  ニ著シキ投機ノ助長ト相成ルト云フ········キキ起スト云フコトニ付キマシテハ
  私共左樣ニハ考ヘ得ラレナイノデゴザイマス、又輿論ノ上ヨリ致シマシテモ、
  我ガ商工界ノ代表機關デアル全國商工會議所聯合會ハ昨年旣ニ三箇月ニ限月
  ノ復舊ノ決議ヲ致シテ居ルノデゴザイマス、又取引所上場ノ有力ナル建株關
  係者モ亦證劵ノ流通上限月ノ復舊ヲ希望シテ居ルト云フコトモ聞イテ居リマ
  ス、又最近ニ於キマスル學者ノ論調ヲ見マシテモ、新進ノ學者ハ〓ネ當事者
  ノ自治ニ一任スベシト云フ論ガアルヤウニ私ハ思フノデゴザイマス、飜ッテ我
  國ノ財界ノ現狀ヲ見マスルノニ有價證劵ノ價格ハ劵面額ハ實ニ三百億以上ヲ
  超エテ居ルノデアリマシテ、我ガ國富上極メテ重要ナ地位ヲ占メテ居リマス
  コトハ私ガ申ス迄モナイコトデゴザイマス、此有價證劵ガ金融上申ス迄モナ
  ク擔保ノ目的物ト相成リ、又資金ガ是等有價證劵ニ投下サレマシテ、所謂證
  劵ノ資金化、資金ノ證劵化ト云フコトガ遺憾ナク表現サレテ居ルノデアリマ
  スルカラ、其流通轉々ヲ圓滑ナラシムルコトハ我ガ財界ノ爲ニ極メテ緊要ナ
  コトデアルバカリデハナク、沈衰シテ居ル所ノ目下ノ財界ヲ振興スルニ付キ
  マシテモ亦一策デアラウト云フコトヲ考ヘマシテ、此點ヨリ見マシテモ私ハ
  限月ノ復舊ハ此際必要デアルト云フコトニ考ヘテ居ルモノデゴザイマス、先
  程三箇月、四箇月、半箇年ニシテ宜シイデハナイカト云フ御議論モゴザイマ
  シタガ、是ハ私ガ申シマスル通リニ三箇月ノ取引ト云フモノハ我國ノ經濟界、
  官界幾多ノ事情ト融和シテ居リマシテ、サウシテ五十年ノ歷史ヲ有ッテ居ルモ
  ノデアリマスルカラ、此歷史上カラ見マシテモ、亦取引ノ慣習上カラ見マシ
  テモ、私ハ矢張リ三箇月ノ方ガ適當デアラウト云フコトニ考ヲ有ッテ居ル一
  人デゴザイマス、要スルニ私ト致シマシテハ斯樣ニ沈衰シテ居ル財界ニ於
  キマシテ、二箇月ヲ三箇月ニ致シマシテ見マシテモ、短期取引ニ既ニ弊害ア
  リト云フコトヲ商工大臣モ先程上山君ノ質問ニ對シテ答ヘラレテ居ルノデゴ
  ザイマス、況ヤ二箇月ヲ三箇月ニ致シマシテモ、左樣ニ烈シク投機熱ヲ煽ル
  ト云フ危險ハ私ハナイモノト信ジマシテ、本案ニ贊成ヲ致シテ居ル次第デゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=210

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• 211・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　志村源太郞君ノ登壇ヲ望ミマス
  〔志村源太郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=211

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• 212・志村源太郎

  ○志村源太郞君　最早時刻モ移リマシタ只今ニ於キマシテ、諸君ヲ御煩シス
  ルコトハ誠ニ恐縮ニ存ジマスルガ、先刻長ク農商務省ニ居ラレマシタ上山君
  ヨリ、此取引所法ノ沿革ニ付テ御話ノアリマシタ中ニ、故平田東助伯、木內
  重四郞氏其他ノ先人諸氏ガ、此事柄ニ付キマシテ大ニ苦心セラレマシタコト
  ヲ想起シマスト、私ト致シマシテハ此儘ニ默過スルコトハ出來マセヌ爲ニ、
  已ムヲ得ズ此壇上ヲ汚シマシタ次第デゴザイマス、何卒御許シヲ願ヒタク存
  ジマス、此問題ハ取引所ノ中ノ一部分、株式取引、株劵ノ取引ニ限ラレタ問
  題デアッテ、而シテ其株劵ノ受渡期限若クハ賣買ノ期限、同ジコトデアリマス
  ルガ其期限ノ問題デアリマス、二箇月デ賣買スルカ三箇月デ賣買スルカ、二
  箇月デ賣渡スカ三箇月デ賣買スルカト云フ問題デアリマスカラ、一見誠ニ小
  サイ問題ノヤウデゴザイマス、併ナガラ經濟界ノ基調、經濟行爲ノ全體ノ働
  キカラ考ヘマスルト、其關係スル所極メテ重大ト思フノデゴザイマス、我ガ
  株劵取引ニ於キマシテ、投機ニ便宜ヲ與ヘルカ、實物取引ニ便宜ヲ與ヘルカ
  寧ロ實物取引ヲ根據トシタル所ノ取引ヲ、我國ノ經濟界ニ於キマシテハ專ラ
  行ハセルカ、若クハ投機ヲ本トスル所ノ取引ヲ行ハセルカト云フ問題ニ關係
  スルノデアリマス、從ッテ社會ノ道德觀念、社會ノ經濟觀念、社會正義ノ觀念
  ノ問題ト考ヘルノデアリマス、玆ニ於テ問題ハ頗ル重大ニナルト存ズルノデ
  アリマス、蓋シ先輩ノ諸君ガ非常ニ此問題ニ考慮イタシマシタノハ、矢張リ
  其關係スル所斯ノ如キモノガアルト云フコトカラシテ、株式取引所ノ方〓ニ
  ハ頗ル迷惑デアルニ拘ラズ大ニ此制限ニ苦心セラレタモノト思ヒマス、株式
  取引ハ、御承知ノ通リ株券ハ既ニ出來テ居ルモノノ取引デアリマシテ、他ノ
  米トカ綿絲トカ云フ物產ノ取引トハ違フノデアリマス、是ハ現在出來テ居リ
  マスル品物ノ外ニ、更ニ又是カラ先ニ造ラムトスル物ノ取引モ致スノデアリ
  マス、故ニ其期限ハ米ニ於テハ三箇月、綿絲等ニ於テハ六箇月、生糸等ニ於テ
  モ六箇月ノ先物ノ賣買ヲ許シテ居ルト考ヘテ居ルノデアリマス、是等ハ現在
  ニアリマスモノ以外ニ將來造ラムトスル物ノ取引ヲモ取引所ニ於テ許スノガ
  價格ノ公正ヲ得ル上ニ於テ必要ト考ヘラレル爲ニ、斯樣ナ長イ期間ヲ與ヘラ
  レテアルノデアリマス、然ルニ株劵ハ將來造ラウト云フモノデハナイ、現ニ存
  立シテ居ル所ノ株劵若クハ公債證書等ノ有價證劵ノ取引デアリマスルカラ、
  是ハサウ長イ期限ヲ設定スル必要ハ斷ジテナイノデアリマス、米ハ三箇月ヲ
  必要ト致スノデゴザイマセウ、是カラ先ニ出來マス所ノ米ノ取引モ取引ノ範
  圍ニ入レルト云フコトガ米ノ價格ヲ安定スルニ必要デアリマス、蠶絲、生絲、
  是ノ如キハ全國ニ於テ作ルノデアリマスカラ、將來六箇月內ニ作ル所ノ品物
  迄モ取引範圍內ニ入レテ初メテ本當ノ比較的平均ノ價格ガ得ラレルノデアリ
  マス、併シ株劵ニ於テハ是カラ造ラウト云フ會社ノ株劵ヲ取引スル必要ハナ
  イノデアリマシテ、而モ取引所ニ於キマシテハ、全國ノ內比較的確實ナル會
  社ノ株劵ヲ選定シテ、ソレヲ所謂上場······場ニ掛ケテ居ルノデアリマスカラ
  最モ確實ニ出來テ居ル所ノ品物ノ賣買デアリマスカラ、是ハ長クスル必要ハ
  ナイト考ヘルノデアリマス、物ノ性質ガ之ヲ然ラシメテ居ルノデアリマス、
  故ニ先刻來度〓御話ノアリマシタ大正十一年ノ委員會ニ於テモ亦其時分ノ論
  議ニ於テモ、或ハ二箇月ガ既ニ長過ギル、一箇月デ澤山デアル、外國ノ如ク
  二週間デ十分デアル、或ハ一週間デモ宜シイ、博識ナル奧平伯爵ガ紐育ノ取
  引ノ例ヲ只今御擧ゲニナッテ、翌日取引ダト仰ッシヤル、斯ノ如ク短ク外國デ
  ハ致シテ居ル、敢テ外國ノ例ヲ珍重スルノデハアリマセヌガ何ノ爲メ外國
  ガ左樣ニ致シテ居ルカト云フト、實物取引ヲ本トシテ取引所ヲ立テサセテ居
  ル、投機取引ヲ本トシテ取引所ヲ經營スベキモノデハ斷ジテナイ、斯ウ云フ
  社會公正ノ觀念カラシテ取引所ヲ經營シテ居ルモノト考ヘルヨリ外ナイノデ
  アリマス、而シテ御承知ノ通リ又先刻來度〓御引合ヒニナリマシタ通リ、我
  國ハ明治三十六年以來即チ平田東助伯ガ農商務大臣デアラレテ此計畫ヲ實行
  シヤウトシタ時以來問題ニナッテ爾後······其時平田氏ハ失敗サレマシタ、株
  式取引所ノ猛烈ナ反對ニ遭ッテ失敗セラレマシタ、而シテ又世間ノ輿論モ左程
  ニ認メラレナカッタ爲ニ、遂ニ農商務大臣ヲ其爲ニ辭職セラレタノデアリマ
  ス、左樣ニ明治三十六年カラ約二十年ノ歲月ヲ經過シタ大正十一年ニ至ッテ、
  此度改正シヤウト云フ所ノ改正案ガ成立ッタノデアリマス、是ハ何デアルカ、
  段々ト世間ノ輿論ガ此株式取引所ト云フモノニ付テノ考ヘガ進ンデ參リマシ
  テ、而モ大正九年ノ世界大戰後ノ好景氣ノ反動ヲ受ケテ、經濟社會ノ人ハ大
  イニ覺醒イタシマシテ、サウシテ大正十一年ニ至ッテ遂ニ株式取引所ノ如キモ
  三箇月ヲ二箇月ニ縮メタ結果ニ相成ッタノデアリマス、然ルニ昭和二年、昨
  年ノ恐慌ヲ經タル今日ニ於テ之ヲ再ビ逆轉ヲシテ又元ノ長期取引的ノ比較的
  投機ノ取引ノシ易イ方法ニ還ルト云フ事柄ハ、大正十一年時分ノ經濟社會ニ
  對シテ實ニ汗顔ノ至リト存ズルノデアリマス、我〓ハドウカ致シマシテ此經
  濟社會ノ働キト云フモノハ段々ト進步向上ヲ致シマシテ、社會道德ノ觀念ニ
  段々近ヅキ、世界ノ共通ノ取引方法ニ近寄ッテ行ク方ニ進マナケレバナラヌト
  存ズルノデアリマス、三箇月制度ヲ二箇月制度ニシタト云フモノハ畢竟其考
  ヘガ本ニナッテ來タノデアラウト思フノデアリマス、然ルニ又玆ニ至ッテ元ノ
  三箇月制度ニ復舊セヤウトスルノハ是レ實ニ退步ト私ハ考ヘルノデアリマ
  ス、啻ニ經濟社會ノ人心ノ退步ノミナラズ、社會道德觀念ノ退步ト私ハ考ヘ
  ルノデアリマス、實物取引ヲ棄テヽ投機取引ニ便宜ナル方法ニ移ラウトスル
  ト云フ事柄ハ、是ハ實ニ憂フベキ現象ト考ヘルノデアリマス、近來單ニ經濟
  界ノミデゴザイマセヌ、政治上ニ於キマシテモ、宗〓上ニ於キマシテモ動モ
  スレバ逆轉ノ形勢ガ頻々トシテ現ハレルノデアリマス、是ハ實ニ我〓現代ニ
  居リマスル者ノ痛歎措ク能ハザル所デアリマス、私ハ此株式取引ノ限月問題
  ハソレ自身一部ノ人ノ利害ニ關係スル所實ニ多イカト思ヒマスルカラ、餘
  リ斯樣ナ事柄ニ喙ヲ挿ムコトハ好ミマセヌノデアリマスルガ、併シ社會的、
  我〓日本國民ノ經濟的及ビ道德的進步ノ上カラ考ヘマスルト、ドウシテモ一
  言セザルヲ得マセヌノデアリマス、株劵ノ三箇月ト云フ事柄ハ我國ノ習慣ダ
  ト云フ御話モアリマス、併シ此株劵ト云フモノノ出來タノハ明治維新後ノ話
  デアリマス、有價證劵ナルモノガ斯樣ニ澤山ニ出來マシタノハ最近ノ事柄デ
  アリマシテ、其所謂慣習ナルモノハ、商習慣ナルモノハ明治維新後ノコトデ
  アリマス、即チ五六十年ノコトデアリマス、而シテ此株劵ノ三箇月制度ト云
  フモノハ、私ノ記憶シマス所デハ、米ノ三箇月制度ニ依ッタモノト思フノデア
  リマス、一番先キニ米商會社ナルモノガ出來テ、米ノ取引ガ出來タノデアリ
  マイク。我國ハ米ノ產地デアリマスルカラ昔カラ米ノ取引ト云フコトニ付テハ
  多年ノ機關ガゴザイマシタ、ソコデ維新後久シカラズシテ米ノ取引所ガ出來
  マシテ、ソレハ三箇月制度デヤッタノデアリマス、其後株式取引所ガ出來テ矢
  張リ無意識ニ三箇月制度ヲ採ッタノデアリマス、然ルニ其當時外國デハモット
  短イ期間ノ取引ヲ致シテ居ッタノガ、不幸ニシテ其事柄ヲ〓究イタサズシ
  テ、唯現在ニアル所ノ米商會社ノ取引制度ノ限月制度ニ倣ッタモノデアリマ
  ス、ソレニ過ギナイノデアリマス、段々〓究シテ見ルト左程ノ長イ期間ヲ要
  シナイ、株劵、有價證劵ト云フモノノ取引ト云フモノハ······此運搬ト云フモ
  ノハ小包郵便デ送ッテモ、銀行ノ荷爲替デ送ッテモ左樣ナ長イ期間ヲ要シナイ、
  日本國中ヘ之ヲ運搬イタスノニ米ノ如キモ今日デハモット以前ヨリハ短イ期
  間デ宜イ、運搬上ハ宜イノデアリマス、米ヲ敢テ私ハ三箇月ヲ止メルト云フ
  ノデハゴザイマセヌガ、其當時一番初メニ三箇月ヲ定メタ時分ヨリハ遙ニ汽
  船ノ便モ、汽車ノ便モ其他ノ便モ非常ニ增シタノデアリマスルカラ、强ヒテ
  日本ガ何時迄モ三箇月制度ヲ米ニモ維持シナケレバナラヌト云フコトハナカ
  ラウト考ヘマス、是モ段々實物取引ヲ基調トシマスル所ノ諸外國ノ制度ト段
  々近寄ッテ行ッテ、トント差支ナイモノト自分ハ考ヘルノデアリマス、此爲ニ
  經濟社會ニ不便ヲ來スナラバソレハ考ヘナケレバナリマセヌガ、何等ノ不便
  ヲ來サヌト思フノデアリマス、先刻來當業者ガ取引ガ大層少イ、斯ウ云フ御
  話ガアリマシタガ、是ハ一般ニ總テノ取引ガ沈衰イタシテ居ルノデアリマス、
  敢テ此限月ガ短イトカ、長イトカ云フコトノ爲ニソレガ少イト云フノデアリ
  マセヌ、現ニ奧平伯爵ノ御擧ゲニナリマシタ紐育取引所ハ翌日受渡シデアル、
  非常ニ短イモノデアルニ拘ラズ、此頃新聞紙ノ傳ヘル所デハ非常ナ大活況ヲ
  呈シテ居ル、其爲ニ準備銀行其他當局ガ之ヲ抑ヘムトシテ非常ニ骨折ッテ居
  ルニモ拘ラズ、依然トシテ非常ナ活況ヲ呈シテ居ルノデアリマスルガ、詰リ
  限月ノ長短ト云フモノハ、決シテ此經濟社會ノ隆盛ト云フモノニ影響スベキ
  モノデナイト、大體ニ申シテ宜カラウト思フノデアリマス、勿論其爲ニ投機
  取引ハ不便ヲ蒙リマス、三箇月ノ期限デアルナラバ此三月ノ今日ニ於テ株劵
  ヲ買ヒマシテ、三箇月先ノ六月渡シノ株劵ヲ買付ケマシテ、サウシテ其間ニ
  其三箇月ノ長イ間ニ株劵ガ騰貴イタシマシタナラバ、私ハ來月ニ於テ之ヲ手
  仕舞ヲ致シテ、所謂買戾ヲ致シマシテ、サウシテ其差金ヲ取ルト云フコトガ
  出來マス、若クハ六月ノ初ニ於テモソレガ試ミラレマス、ソレガ二箇月デア
  レバ其差金ヲ取ル斯間ガ大層短縮イタシマスルカラ、投機ハ不便デアリマス、
  併シ投機ハ是ハ本統ノ取引ノ原則ト致スベキモノデナイト思ヒマス、斯ウ云
  フ株式取引所其他ニ於テ投機取引ヲ絕滅スルト云フコトハ是ハ亦考ヘ物デア
  リマス、大體ニ於テ實物取引ヲ本ト致シマシテ、サウシテ其調合ニ投機ノ取
  引ヲサセルト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ザルコトト存ジマス、財界ニ、經濟
  界ニ見込賣買ト云フコトノ存在シマスル以上ハ、投機ト云フ期間ヲ相當ニ與
  ヘルト云フコトハ必要デアリマスルガ、單純ニ實物ニ限ル、現物ノ賣買ノミ
  ニ限ルト云フコトハ、是ハ却ッテ價格ノ高低ヲ得サセマス上ニ意外ナ反對ノ結
  果ヲ來シマスルカラ、多少ノ投機ノ期限ヲ許シ、多少ノ限月ノ受渡シノ期限
  ヲ緩メルト云フコトハ必要デアリマスルガ、併シソレハ社會ノ道德觀念ト段
  段ト折合ヲ付ケマシテ、其期限ハ相當ニ短縮シ、終ニハ實物ヲ基調、現物ノ
  取引ヲ基調トスル所ノモノヲ段々ト其分子ヲ多クスルコトニ致サナケレバナ
  ラヌト考フルノデアリマス、我國ガ明治三十六年ニ試ミタ計畫ヲ、大正十一
  年ニ於テ實現シテ、是ハ其方ニ向ヒツヽアルノデアリマス、是カラ段々更ニ
  進ンデ一箇月ニナリ、半箇月ニナリ、若クハ十日取引ニナルベキ時ガ來ベキ
  モノト私ハ考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、然ルニ玆ニ單純ニ經濟的ノ不況
  ト云フコトヲ理由ニ致シマシテ、取引所ガ繁昌セヌト云フコトヲ主ナル理由
  ノヤウニ私ハ伺ヒマスガソレヲ理由トシテ之ヲ再ビ元ニ戾スト云フ事柄ハ、
  是ハ經濟界ノ運用ノ上カラ申シ、社會道德觀念ノ上カラシテ正ニ退步ト考ヘ
  ルノデアリマス、故ニ此改正案ハ折角特別委員會ノ御審議ノ結果御可決ニナッ
  テ居リマスルガ、私ハ右ノ理由カラシテ是非トモ是ハ元ノ通リ存置シテ置ク
  ヤウニ願ヒタイト存ズルノデアリマス、又斯ノ如キ問題ハ當業者ノ自由ニ委
  シタラ宜カラウ、斯ウ云フ御考ガ一部ニハアルヤウデアリマス、成程當業者
  ノ自治ノ觀念ノ發達、其自由ヲ束縛セヌト云フコトハ、他ノ場合ニ於テハ必
  要ナコトデアリマスルガ、併シ投機的取引ノ混合シマスル所ノ事柄ニ付テハ
  相當ノ制限ヲ加ヘルコトガ、是非トモ社會通念ノ上カラ必要ト考ヘルノデア
  リマス、況ヤ我國ノ取引所ハ歐米ノ取引所ト違ヒマシテ株式取引所デアリマ
  ス、株式會社デアリマス、歐米ノハ會員組織デアリマス、即チ歐米ノハ自治
  的ノ組合デアル、我國ノハ株式會社ガ取引ヲ盛ニ行ハサシテ、其利益ニ依ッテ
  配當ヲスル營業者デアル、其自治ニ委セルト云フコトハ營業者ノ欲スル儘ニ
  シヤウト云フコトニ流レルノデアリマスルカラ、是ハ外國ノ場合トハ區別シ
  テ考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、斯樣ナコトヲ申シテ居リマスレ
  バ餘リ長クナリマスルカラ、私ハ斯樣ナ意味ヲ以チマシテ、株式取引ノ性質
  上左樣ナ長期ヲ必要トシナイ、益交通運搬ノ制度ノ發達スルト同時ニ此期限
  ハ寧ロ短縮シテ、外國ト同ジヤウナ基調ニ進ムベキモノデアルト斯樣ニ考ヘ
  ル、若シ果シテ然ラバ左樣ナ狀態ニナリマシタナラバ、日本ノ取引所ハ單ニ
  我〓日本人ダケノ取引所デナクナルノデアリマス、外國ノ人モ信賴シテ此取
  引ニ於テ日本ノ有價證劵ヲ自由ニ賣買スルコトノ傾向ガ生ジヤウト思フノデ
  アリマス、然ルニ依然トシテ元ノ舊慣ヲ墨守シテ、外國ノ取引方法ト違ッタル
  制度ヲ何時マデモ維持スルト云フコトハ、我國ガ國際的ニ進步スル所以デナ
  イト考ヘルノデアリマスルカラ、此經濟ノ發達カラ申シマシテモ、國際的ノ
  發達ノ上カラ申シマシテモ、國內ノ發達ノ上カラ申シマシテモ、是ハドウ致
  シマシテモ逆轉スベキモノデナイト考ヘルノデアリマス、論ジテ玆ニ至リマ
  シテ、私ハ中橋商工大臣ノ先刻ノ御答辯ニ對シ甚ダ失望イタス者デアリマス
  中橋君ハ私ハ尊敬ヲ拂ッテ居ル個人トシテ······御方デアリマス、現內閣
  ニ於テ經濟界ニ餘リ干涉セズ、干涉的ナ案ヲ提出セズ、超然トシテ無爲、自
  治ノ方針ニ向ッテ此經濟界ヲ料理シテ行カウト云フ態度ヲ私ハ拜見シマシテ、
  商工大臣ノ今マデノ施設ニ付テハ大イニ感服シテ居ルノデアリマス、餘リ此
  經濟界ノ事柄ヲ現在ノ目前ノ事ニ囚ハレテ、今コヽガ不景氣ダカラ斯ウシヤ
  ウ、米ガドウダカラ斯ウシヤウトカ云フヤウナ、煩瑣ナル事柄ヲ致スコトハ
  是ハ餘程愼ムベキコトト考ヘルノデアリマス、商工大臣ハ今迄左樣ナ提案ハ
  ナサラナカッタヤウニ考ヘテ居リマス、現內閣ニ於テ出色ノ經濟ニ堪能ノ主管
  大臣ト考ヘテ居リマス、窃ニ敬服イタシテ居ッタノデアリマス、然ルニ此取引
  所ノ問題ニ至ッテ餘リ放任ニ過ギタ、餘リニ當業者ノ自由ト申シマスカ、オ前
  達ガ好ムナラバヤラウ、貴衆兩院ガ之ヲ通スナラバ、ソレハ仕方ガナイ、斯
  ウ云フ御考ノヤウデアリマス、是ハドウモ理想ノナイ、社會ガ一旦進ンテ占
  メタ地步ハ退カセナイ、更ニ一層經濟的ニモ道義的ニモ、政治的ニモ向上
  セシメル、斯ウ云フ理想的、指導的政治家ノ立場デアッテ欲シイノデアリマ
  ス、是ガ群衆ニ追隨スル大臣デアッテハ、是ハドウモ現在ノ日本ノ政治上、經
  濟上、宗〓上、其他ニ於テ私ハ十分ナル當局大臣ト申上ゲルコトガ出來ヌノ
  デアリマス、ドウシテモ我國ハ世界各國ノ基調ト殘念ナガラ遲レテ居ル點ガ
  ゴザイマス、殊ニ經濟ノ點ニ於テハ左樣認メザルヲ得マセヌ、此經濟界ニ於
  テハ苟モ一步得タ所ノ地步ハ斷ジテ退カヌ、更ニモウ一步向上セシメルト云
  フ所ノ御見識ガアッテ、之ヲ率ヰテ行クト云フ所ノ當局大臣ガ願ハシイノデア
  リマス、然ルニ商工大臣ハ此取引所ノ問題ニ付テハ誠ニ放任主義、餘リニ理
  想ヲ離レ、餘リニ指導的ノ立場ヲ御取リニナラヌト云フコトハ實ニ私トシテ
  ハ失望セザルヲ得ナイノデアリマス、今マデ商工大臣ノ態度ニ御感服申上ゲ
  テ居ッタダケニ私ハ其失望ノ度ガ强イノデアリマス、ドウカ此點ハ平素ノ御懇
  親ニ甘ヘマシテ宜シク御聽取ヲ願ヒタク存ズルノデアリマス、玆ニ於テ私ハ
  政黨大臣ノ悲哀ヲ感ズルノデアリマス、モウ少シ日本ノ政黨大臣モ、中橋君
  ハ駈出シノ大臣デナイ、モウ相當ノ地步ヲ占メタ所ノ政黨大臣デアルカラシ
  テ指導的ノ立場ニ御立チヲ願ヒタイ、ドウシテモ黨派ヲ御率ヰ願ヒタイ、經
  濟界モ其御所管ノ範圍ニ於テ御指導ヲ願ヒタイト存ズルノデアリマス、今日
  ノ御答辯ニ至ッテハ、私ハ頗ル失望イタシマス、此失望ハ私ハ經濟上及社會ノ
  道義上ノ觀念カラ失望イタシタノデアリマスカラ、甚ダ閣下ニ對シマシテ相
  濟マヌノデアリマスルガ、商工大臣トシテ一言御聽取リヲ願ヒタク、苦言ヲ
  呈スル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=212

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• 213・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立
  ヲ請ヒマス
  〔「聞エマセヌ」「大聲ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=213

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• 214・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クベシトスル諸君ノ起立
  ヲ願ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=214

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• 215・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　多數ト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=215

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• 216・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=216

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• 217・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=217

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• 218・阪本さん之助

  ○阪本釤之助君　讀會ノコトニ付テ意見ヲ申述ベタイト思ヒマス、此案ハ私
  共ニハ非常ニ分リ兼ネルモノデゴザイマシテ、色〓考ヘテ居リマシタガ、今
  日此議場ニ於キマシテノ討論ヲ承ッテ見マスルト、中〓是ハ面倒ナ問題デアリ
  TV.殊ニ主務大臣ノ態度ト云フモノハ決マッテ居ナイ、貴族院ガ通レバ、恐
  ラク通レバ、ソレヲ默過スルト云フヤウナ御考ノヤウニモ思ハレル、或ハ貴
  族院ハ否決スルダラウカラ安心シテ居ルト云フ御考デアルカ、其邊ヲ一應御
  尋ネシタイ、其間自己ト云フモノガナクテ、議院ノ態度如何ニ依ッテ宜シクヤ
  ルト云フ御趣意ノヤウデアリマス、當局ノ大臣スラマダ決マッテ居ナイ問題
  デアル、我〓モ尙ホ審議シ、熟慮スベキ問題デアルト思ヒマスルガ故ニ、之
  ヲ此場合ニ於テ即決ナサルト云フコトハ避ケタイ、貴族院規則第七十五條ノ
  但書ニ依ラズシテ本文ノ、即チ正文ニ依ッテ相當ナ期間ヲ置イテ二讀會ヲ開カ
  レルト云フコトガ至當デアラウト思ヒマス、此意見ヲ提出イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=218

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• 219・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ願ヒ
  マス
  〔「聞エマセヌ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=219

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• 220・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
  マス
  〔「聞エナイ」「大聲ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=220

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• 221・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
  マス
  〔伯爵酒井忠克君「西大路子爵ノ動議ハ旣ニ成立シテ居ル筈デアリマ
  ス」ト述フ〕
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=221

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• 222・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　多數ト認メマス
  南吉吉市

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=222

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• 223・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　原案全部ヲ問題ニ致シマス、原案全部御異議
  ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=223

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• 224・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=224

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• 225・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=225

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• 226・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=226

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• 227・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ······西大路子爵ノ動議
  ニ御異存ゴザイマセヌカ
  異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=227

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• 228・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  南善南亚

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=228

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• 229・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
  異議ナシト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=229

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• 230・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  東京東北京

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=230

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• 231・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　日程第二十四
  信託業法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
  昭和四年三月十八日
  右特別委員長
  侯爵大久保利武
  貴族院議長公爵德川家達殿
  侯爵大久保利武君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=231

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• 232・大久保利武

  ○侯爵大久保利武君　信託業法中改正法律案特別委員會ノ議事ノ經過竝ニ結
  果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ極メテ條文ガ短イノデアリマスルガ、問題ハ
  多少法律上ナリ且ツ實際問題トシテ色〓問題モ少ナカラヌ事デアッタノデア
  リマシテ、モウ時間モ切迫スル事デアリマスルカラシテ、極ク肝要ナ所ヲ摘
  ンデ申上ゲマスレバ、信託業法ニ財產ニ關スル遺言ノ執行ノ事ト、會計ノ檢査
  ノ事ヲ明白ニ信託業法中ニ入レテ、此執行ノ出來ルヤウニ改正シタイト云フ
  趣旨デアリマスルガ、即チ第五條ノ第一項第四號ノ次ニ財產ニ關スル遺言ノ
  執行、之ヲ五トシ、會計ノ檢査、之ヲ六トシテ、以テ此兩問題ヲ解決シタイ
  ト云フノデアリマス、デ此財產ニ關スル遺言ノ執行ハ現行ノ信託業法ノ第二
  條ニ於キマシテ、旣ニ遺言ニ依ッテ信託ヲ行ヒ得ルト云フコトハ規定シテ居リ
  マスルケレドモ、信託會社ガ法人トシテ直ニ其遺言ノ信託ヲ執行スルト云フ
  コトガ法律上ニ疑義ガアッテ、執行ガ出來ヌノデアリマスノデ、本法實施以來
  未ダ一囘モ遺言ノ信託ト云フモノハ無イノデアッテ、之ヲ執行スル爲ニ此改正
  案ヲ求メルコトニナッタノデアリマスルガ、此問題ハ重モニ法律上ニ涉ッテ質
  問ガ多カッタノデアリマス、即チ此我國ノ民法ニ於キマシテハ法人タル信託會
  社ガ此遺言ノ執行ト云フコトハ出來ヌ、自然人デナケレバ出來ヌト云フコト
  ニナッテ居ルノデアリマスル、ソレニ依ッテ此改正案ヲ見ルコトニナリマスノ
  デアリマスガ委員會ニ於キマシテハ司法省ノ政府委員ニ向ッテ、此民法ノ原
  則ニナッテ居ルノヲ、信託業法デ法人ニ此遺言ノ執行ヲスルコトガドウデアル
  カト云フ質問ニ對シテ、政府ハ既ニ遺言信託ノ······遺言信託ヲナシ得ルト云
  フコトニナッテ居ルシ、外國ニ於テモ此法人實在說ガ近時段々擴ガッテ來ルシ
  我國ニ於テモ既ニ鑑定人ハ法人トシテ爲シ得ルコトニナッテ居ルノデアル、又
  殊ニ此信託會社ハ許可主義ニ依ッテ、大藏省ニ於テ嚴重ナル監督ノ下ニ居ル
  シ、又許可ノ際モ信託業法ニ依ッテ、特ニ信用ヲ重ンジ、其信託ノ仕事ニ從事
  スルヤウニナッテ居ルコトデアルシ、又外國ニ居ッテ內地ニ親族故舊ト云フ者
  ノ居ラヌ人〓ニ對シテハ、殊ニ此信託會社ニ遺言ノ信託執行ヲ託スルコトガ
  頗ル便利デアッテ、其執行ノ出來ルヤウニナルト云フコトハ、時世ノ進運上然
  ルベキコトデアラウト思フノデ、敢テ其點ニ差支ナカラウト思フト云フコト
  デアリマスル、又他ノ法律上ノ問題ニ於キマシテハ信託會社ニ遺言ノ委託
  ヲシタ場合ト、又一般遺言執行ヲ信託會社デスル場合ト二ツアラウト思フガ、
  我民法ノ原則ニ依ルト云フト、遺言ハ無報酬デ·····特ニ遺言者ガ定メテ置カ
  ナケレバ、民法ノ原則トシテハ遺言執行者ト云フ者ハ無報酬デヤラナクテハ
  ナラヌト云フコトガ原則ニナッテ居ルガ、其點ニ於テ、財產ニ關スル遺言ノ執
  行ト云フ、單ニ是ダケノ文字デハ、信託會社ニ委託シタ遺言ノ執行バカリデ
  アルカ、又一般ノ遺言ノ執行ノコトモ含ムノデアルカ、是等ガ甚ダ明カナラ
  ヌト云フコトニ對シテハ司法省ノ政府委員ノ說明デハ、是ハ兩者ヲ含ムコ
  トガ適當デアラウト云フコトデアッテ、其場合ニ於ケル民法原則ノ遺言者ノ特
  ニ定メガナケレバ報酬ヲ取ルコトハ出來ヌト云フコトニナル、其場合ニ處シ
  テハ矢張リ此信託業法ノ中デ民法ノ特例ヲ設ケタコトニナルト解シテ宜カ
  ラウト、斯ウ云フ答辯デアリマシテ、其他會社ガ遺言ノ執行ヲスルト云フコト
  ニナレバ我國ノ醇風美俗ヲ紊ル弊ハナカラウカ、即チ遺言ヲ執行スルニ當ッテ
  ハ故人ノ死後ニ於テ色〓ナ財產ヲ取調ベタリスル上ニ付テ、是マデ遺言執行
  ト云ヘバ、親族故舊デ極ク親シク懇親ナ間柄、又信ズベキ人ガ其局ニ當ッテ居ッ
  タノガ、會社トナレバ如何ナル人ガ此遺言信託ニ從事スルカ、其點ヲ考ヘル
  ト甚ダ懸念デハナイカト云フ質問モアッタノデアルガ、政府ニ於テハ現在ノ信
  託會社ノ狀況モ極メテ順調ニ發達ヲシテ居ルシ、信用ヲ重ンジ、其點ニ於テ
  ハサシテ懸念ハ無カラウト思フ、尤モ一二信託會社ノ中ニ於テモ營業不振且
  成績ノ惡イモノモアルケレドモ、大體ニ於テ漸次發達ヲ致シテ居ルシ、主務
  省ニ於テモ頗ル監督ヲ嚴重ニシテ居ルコトデアルカラシテ、サウ云フ懸念ハ
  無カラウト云フヤウナ答辯デアッタノデアリマス、次ニ會計檢査ノコトニ於
  キマシテハ問題ハ重モニ計理士トノ關係デアッタノデアリマス、御承知ノ如
  ク計理士法ハ昨年法律實施ニナリマシテ、特ニ計理士ノ稱號ヲ得テ會計ノ檢
  査ニ從事シテ居ルノデアリマス、ソレヲ今囘其外ニ信託會社ガ新ニ會計ノ檢
  査ヲ實行シ得ルコトニナレバ、折角法律ニ依ッテ保護サレ奬勵サレテ、爲ニ是
  カラシテ芽ヲ吹カムトスル計理士ノ業ヲ奪フテ、發逹ヲ阻止スルヤウニナリ
  ハセヌカ、矛盾スルヤウナコトニナリハセヌカト云フ質問ガアッタノデアリマ
  スルガ、ソレニ對シテ政府ハ決シテサウハ思ハヌ、今日ニ於テモ計理士以外
  ノ人デアッテモ會計ノ檢査ハ爲シ得ルノデアッテ、今囘ノ改正ニ依ッテ信託會社
  ガ會計ノ檢査ヲ爲シ得ルコトニナッテ、會計ノ檢査ト云フコトガ世間一般ニ
  益〓其必要ヲ感ジテ來テ、却ッテ會計ノ檢査ヲ主タル仕事トスル計理士ノ仕事
  ニモ好影響ヲ却ッテ及ボスコトト思フ、殊ニ現ニ今日ノ各信託會社ノ中デモ會
  計ノ事ニ付テハ種々專門家ヲ置イテ居ル、必要カラシテ現ニ信用アル計理士
  ヲ信託會社ニ使ッテ居ル所モ段々アルシ、決シテサウ云フ懸念バ無カラウト思
  フ、又此法案提出ニナリマシテカラ、計理士協會ニ於テモ頗ル將來ヲ懸念シ
  テ、段々此主務省アタリニ於テモ其點モ考慮セラレテ、先頃旣ニ信託會社ト
  計理士協會ト種々御相談ガ行ハレテ居ルヤウナ狀況デアルカラシテ、必ズヤ
  將來計理士竝ニ信託會社トノ間ニ圓滿ヲ缺クヤウナコトハ無イ見込デアル、
  又サウ云フコトガ若シ有リトスレバ、監督官廳トシテ一方ハ商工省、又信託
  會社ノ方ハ大藏省、各、兩省ニ於テ然ルベク妥協シテ圓滿ニ各〓其業ヲ發逹シ
  テ、行クヤウナ道モアラウト思フト云フヤウナコトデアリマシテ、決シテ矛盾
  スルヤウナ憂ヘハ無カラウト云フ答辯デアリマシタ、デ斯ノ如クシテ質問ヲ
  打切リマシテ討論ニ移ッタノデアリマス、デ討論ニ移リマシテカラシテ、種々
  意見ガ出タノデアリマスルガ、委員ノ贊成論者トシテハ、既ニ信託業法ニ於
  テ遺言ノ信託ヲ爲シ得ルト云フ規定ニナッテ居ルシ、又之ヲ實行スル上ニ付テ
  ハ決シテ懸念ノナイト云フ政府ノ答辯モアルシ、且ツ外國邊リニ居ル人ニ於
  テハ頗ル便利ナコトデモアルシ、且ツ醇風美俗ヲ紊ルコトハナイト云フコト
  デアレバ、此遺言信託ノ執行モ法人ガナシ得ルト云フコトニシテモ決シテ差
  支ハアルマイト思フ、ソレカラ之ニ對シテ反對ナ意見ハ遺言執行ト云フコト
  ハ、法理上頗ル疑義ノアルコトデアッテ、我國ノ民法ニ於テハ遺言執行ト云フ
  コトハ極メテ之ヲ局限シテ、成ルベク醇風美俗ノ紊レヌ······破ラレヌヤウニ
  民法ト云フモノハ、制定當時ニ出來テ居ルノデアル、出來ルダケ遺言者ノ資
  格ハ局限シテヤルコトニナッテ居ルシ、又法人モ斯ノ如キ遺言執行ノ如キコト
  ヲヤルト云フコトハ、法律ノ原則ニ悖ッテ居ルノデアッテ、法律ガ現在シテ居
  ル以上ハ之ヲ濫リニ信託會社ニ許スコトハ、法ノ上カラシテヤルベキコトデ
  ハアルマイ、殊ニ信託會社ガ如何ナル人ヲ遺言執行者ニ充テルカ、此使用人
  如何ニ依ッテハ、頗ル懸念ニ堪ヘヌ場合モ想像シ得ルノデアル、殊ニ信託會社
  ト銀行ト關係ノ多イ例ガアルカラシテ、此信託會社ノ遺言ノ執行トハ銀行ハ
  關係ハアリマセヌケレドモ、會計檢査ノ如キコトハ、極メテ不安ナ思ヲ致スノ
  デアル、現ニ又此會計檢査ノ如キハ計理士ト云フモノヲ法律デ認メテ、計理
  士ノ稱號ヲ與ヘテ之ヲ發達スルコトニナッテ居ルノデアルカラシテ、今此立派
  ニ發達セムトスル所ノ計理士ノ業ヲ又信託會社ニ之ヲ託シ得ルト云フコト
  ハ、甚ダ現在ノ信託會社ノ狀況カラシテ懸念スルノデアル、之ニ依ッテ此改正
  案ニハ同意スルコトガ出來ヌト云フ反對ガアッタノデアリマス、結局二名ノ
  病氣缺席者ガゴザイマシタガ、五人ノ賛成デ一名ノ反對ト云フ採決ノ結果ニ
  ナリマシテ、本案ハ可決イタシタノデアリマス、極メテ簡單デアリマスガ、
  右御報告申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=232

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• 233・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザイマ
  セヌカ
  異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=233

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• 234・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=234

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• 235・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=235

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• 236・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　贊成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=236

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• 237・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=237

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• 238・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正詔君)　御異議ナイト認メマス
  〓平章北후

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=238

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• 239・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　本案全部ヲ問題ト致シマス、原案通リデ御異
  存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=239

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• 240・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=240

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• 241・西大路吉光

  ○子爵西大路吉光君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=241

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• 242・清岡長言

  ○子爵〓岡長言君　賛成

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=242

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• 243・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　西大路子爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  「異議ナシ」ト呼フ者アリ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=243

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• 244・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  草堂章새

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=244

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• 245・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　第二讀會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
  異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=245

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• 246・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイモノト認メマス
  北山市立

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=246

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• 247・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　日程第二十五、貴族院規則中改正ノ動議、公
  爵一條實孝君外六名發議、會議
  貴族院規則中改正ノ動議
  右提出候也
  昭和四年三月十八日
  發議者
  公爵條實孝伯爵柳澤保惠大島健
  男爵南部光臣石渡敏松本烝治
  湯淺倉平
  贊成者
  公爵近衞文麿侯爵中御門經恭候爵細川護
  侯爵恒立
  佐佐木行忠侯爵德川賴貞伯爵堀田正
  男爵木越安綱子爵大久保立子爵靑木信光
  子爵大河内正敏子爵藪篤麿子爵渡邊千冬
  嘉納治五郞犬塚勝太郞藤澤利喜太郞
  和田彥次郞石塚英藏小松謙次郞
  內田嘉吉男爵小原駐吉伊澤多喜男
  男爵黑田長和男爵今園國貞男爵藤村義朗
  男爵小畑大太郞男爵高木喜寬藤田四郞
  阪本彭之助添田壽倉知鐵吉
  南弘菅原通敬永田秀次郞
  湯地幸平森平兵衞田村新吉
  小塩八郞右衞門橋本萬右衞門鵜澤總明
  松本勝太郞濱口儀兵衞小林嘉平治
  風間八左衞門
  貴族院議長公爵德川家達殿
  貴族院規則中左ノ通改正ス
  第四條皇族ノ議席ハ議員ノ首斑ニ置キ其ノ席次ハ宮中ノ列次ニ依ル其ノ
  他ノ議員ノ議席ハ議長之ヲ定ム
  〔石渡敏一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=247

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• 248・石渡敏一

  ○石渡敏一君　只今上程セラレマシタ動議ハ、貴族院規則第四條ノ改正ニ係
  リマスルモノデ改正點ハ「皇族ノ議席ハ議員ノ首班ニ置キ其ノ席次ハ宮中ノ
  列次ニ依ル其ノ他ノ議員ノ議席ハ議長之ヲ定ム」斯ウ云フコトニ致シタイ、
  現在ノ貴族院規則第四條ハ御承知ノ如クニ、皇族ヲ首席トシ、有爵者有位者
  ヲ次席トシ、其他ノ議員ヲバ三席トシテ居ッタノデアリマス、此度ノ改正案
  ハ、皇族ノ議席ハ是ハ從來ノ通リニシテ置カウ、文字ハ幾ラカ變ッテ居リマ
  スガ、先ヅ手ヲ著ケヌト云フコトヲ土臺ト致シテアリマス、次席三席ノ議員、
  有爵者、有位者、其他ノ議員ヲ打ッテ一團トシテ席ヲ決メヤウ、斯ウ云フノガ
  改正案ノ趣意ナノデゴザイマス、斯ウ申シマスレバモウ旣ニ大抵其趣意ヲ御
  承知ニナラレルコトト私ハ信ジテ居リマスルカラシテ、理由モ極メテ簡單ニ
  申上マスル、本院規則第四條ノ規定ハ明治二十三年以來一囘モ改正セラレタ
  コトガナイノデアッテ、時勢ノ進運ニ應ズルニ適セザル點ガアリ、且ツ實行上
  不便ヲ感ズル旁〓同條ヲ改正シテ提案ノ如キ規定ヲ以テ之ニ代ヘヤウト云フ
  ノデアリマス、ドウカ皆樣ノ御贊成ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=248

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• 249・志水小一郎

  ○志水小一郞君　簡單デゴザイマスカラ此處カラデ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=249

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• 250・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=250

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• 251・志水小一郎

  ○志水小一郞君　私ノ御尋ハ三段デゴザイマス、先ヅ第一ニ私ガ是マデ伺ッテ
  居リマス所デハ、爵位次第ト云フ規則ガ重要ノ關係ヲ持ッテ居ルト云フコトニ
  承ッテ居ル、爵位次第ナルモノガアレバ、ドウカ斯ウカソレデ步ンデ行ケル
  モノガ、今ヤ爵位次第ハナイ、斯ウ云フヤウニ伺ッテ居リマス、其意味ニ於テ
  御尋ヲ致ス、サウスレバ其爵位次第ト云フモノヲ貴族院議員ノ席次ヲ定ムル
  爲ニ、關係的ニ生カシテ置クト云フコトハ出來ナイノデアラウカト云フノガ
  第一段ノ御尋、是ハ無意義ノコトヲ申ス積リデハアリマセヌデ、幾ラモ其事
  例ガアルノデアッテ、例へバ明治二十一年ノ陸軍治罪法ニハ其第六條ニ普通治
  罪法ノ十七條ヲ引キマシテ、ソレヲ適用スルト云フコトガ書イテアル、ソレ
  カラ其普通治罪法ナルモノハ程ナク刑事訴訟法ニ代リマシテ、從テ內容モ變ッ
  タノデアリマスケレドモ、其普通治罪法ノ規定ガ恰モ軍事治罪法ニ書キ込ン
  デアルカノ如ク讀ミマシテ、廢セラレタルモノハ其廢セラレタ(聽取シ難シ)
  ヲ矢張リ適用スル、ソレカラ内容ガ增減變更セラルレバ追隨解釋ニ依ッテ其增
  減變更ノ規定ニ依ル、斯ウ云フコトヲシテ多年步ンデ參ッタノデアリマス、是
  ハ亂暴ナル解釋ニアラズシテ學說モサウ云フコトニナッテ居ルカノヤウニ思
  ヒマス、ト云フモノハ學者ノ解釋ニ追隨解釋ナドト云フモノガアルカラデア
  リマス、ソコデ伺ヒタイノハ此貴族院議員ノ席次ヲ定ムルニ果シテ爵位次第
  ト云フモノガ必要デアルナラバ、ソレヲ慣例的ニ活カシテ置クコトハ出來ナ
  イカト云フノガ第一段デアリマスソレカラ第二段ノ御尋ハ、今日ノヤウナ狀
  態ニ至リマシタ經路ト云ヘバ仰山デアリマスガ、ドウシテ斯ウ云フ御詮議ニ
  ハナッタカト云フコトヲ伺ヒタイ、固ヨリ貴族院議長ハ貴族院ノ風紀秩序ヲ維
  持スル所ノ御職責ノアル御方ニ違ヒナイ、併ナガラ風紀秩序ノ因テ生ズル所
  ノ議員各自ノ席次ト云フモノハ、議長ノ職權デ御決メニナルト云フコトハ、
  恆例モ何モナイノデアリマス、ソコデ先般來幾多ノ會ヲ重ネテ各派ノ先輩諸
  君ガ御寄合ニナッテ御相談ニナッタナラバ、何カ思ハシイ御名案ガアリサウナ
  モノト、是ハ誰デモ思フノデアリマス、所ガソレガ無クシテ議長一任ト云フ
  コトニハドウシテナッタノデアリマスカト云フコトガ伺ヒタイ、私ハ强チ此動
  議ニ反對ヲ試ミルモノデハナイノデアリマスケレドモ、等シク御同意ヲスル
  ニモ斯ウ云フ狀態ニナッタ經路ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス、ソレカラ此斯
  ウ云フコトニナリマシタ次第ハ、貴族院ノ議員ノ席次ヲ抹殺シテシマフト云
  フヤウナ議論ガ勢力ヲ得テ居ルノデハナイカ、ト云フコトヲ伺ヒタイノデア
  リマス、ト云フモノハ年長順デモ宜シ、籤取リデモ宜シイ、拜命順デモ宜シ
  イ、ト云フヤウナコトガアル、ソレナラバ四角イモノヲ丸クシナケレバイケ
  ナイト云フヤウナコトデ、貴族院議員ノ席次ナルモノガ抑、イケナイト云フヤ
  ウナ議論ノヤウニ思フノデアリマス、其證據ニハ席次ト云フモノガ名稱ガ變ツ
  テ、今度ハ議席ニナル、議スル爲ノ席次ト云フコトニナッテ居ル、私ハ意見ヲ
  述ベルノデハナイノデアリマスケレドモ、我ガ現行貴族院制度ハ讀ンデ字ノ
  如ク、貴族院ガ皇族ヲ首席トシテ、サウシテ公侯伯子男、斯ウ云フ風ニナッテ
  居ルノデアリマス、是ハ立法ノ理由ガ十分アラウト思ヒマス、サウシテ其華
  族ノ最モ主ナル方ノ公候爵ハ互選デハナクシテ世襲ト云フコトニナッテ居ル、
  議院ノ構成組織ガサウ云フ意味デアルカラ、貴族院議員ニ席次ノアルナドト
  云フノハ無論當然ノコトデハナイノデアリマセウカ、席次ガナクテモ宜イノ
  デアリマスカ、是ハ例デアリマスガ、例ヘバ陛下ガ臨御ニナッテ各自ニ拜謁
  ヲ賜ハル、其場合ニ誰デモ宜イ、籖取リデ拜謁ヲ願フト云フヤウナコトノア
  ルベキモノデナイ、ソレカラ一般ノ傾向ガ甚ダ民主的ニ傾イテ來テ居ルノデ
  アリマスカラ、霜ヲ履ンデ堅氷至ルト云フヤウナコトニナリハシナイカ、貴
  族院議員ノ席次ナドト云フモノハ重要ナ關係ガアリハシナイカ、此席次ヲ抹
  殺スルト云フコトナラバ、將來起ラムト欲スル所ノ貴族院改正ト云フヤウナ
  場合ニナリマシタナラバ、固ヨリ公侯伯子男ナドト云フモノハ無用デアル、
  縱シヤ置キマシテモ民選議員ヲ多數ニシナクチヤナラヌナドト云フヤウナ、
  歐羅巴各國ノ多數ノ例ガ輸入シ來ッテ、面倒ナ問題ニナリハシナイカト云フコ
  トヲ本員ハ伺フノデアリマス、ソレダカラシテ、其一段二段ノ伺ヒハ先輩諸
  君ノ御寄合デアルカラシテ、何カ思ハシイ席次ガ決マリサウナモノデアルノ
  ガ遂ニ決マラズシテ、議長ヲ煩スト云フコトニハドウシテナッタノデアリマ
  スカト云フコトガ伺ヒタイノデアリマス、第三ニハ議長ヲ煩シテ議長ノ定ム
  ル所ニ依ルト云フコトハ是ハ絕對的ノ規定デアリマスカ、其出來榮エガドウ
  アッタ所ガ、是ハ皆服從ヲ約シテアルト云フヤウナ意味ニナルノデアリマス
  カ、此三點ガ伺ヒタイノデアリマスガ、御提案者ナリ、御賛成者ノ主ナル力
  ナリニ、ドナタカラデモ宜シウゴザイマス、御答ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=251

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• 252・石渡敏一

  ○石渡敏一君　只今ノ御質問ノ中、若シ陛下ガ臨御遊バサレタナラバ、ドウ
  云フヤウナ取扱ヲスルカ、斯ウ云フ問題ヲ出サレマシタガ、是ハ御取消ニナッ
  テ下サラヌケレバイカヌト思フ、斯ウ云フ問題ニ付テ陛下ヲ御引合ヒニ出
  スト云フコトハ我〓ノ愼シムベキコトト思フノデアリマス、其點ハドウカ···
  ···私ハ御答ヲスルコトハ全ク此點ニ付テハ避ケヤウト存ジマスカラ、アナタ
  ガ御取消シ下サラナケレバ、私ハ此問題ハ御答ヲシナイ積リデ居リマスカラ
  ドウカ其積リデ願ヒタイ、ソレカラ實ハ是ハムヅカシク御言ヒニナル問題デ
  ハナイト思ッテ居ルノデアリマス、是ハ誰ガ先ニ坐ラウト云フコトハ憲法ノ
  五十一條ニハ議院デ勝手ニ定メテ宜イト云フノデアリマス、ソレ故ニ先ヅ私
  ハ物ノ數デナクテモ、皆有力ナ方ガ集マッテ、有力ト云フモオカシイノデスガ
  皆會ヲ代表サレル方ガ集マッテ御拵ヘニナッタノデ、是デ圓ク治ッタノデアラウ
  ト思フ、ソレヲ位ガドウダトカ、爵位ガドウダトカ云フコトヲ言フ必要ハナ
  イヂヤナイカ、是ガ即チ憲法五十一條デ謂フ所ノ規則ダト思ヒマス、ソレカ
  ラ外ニ色〓申シマシタケレドモ、平タク申セバ御互ノ間デ膝ヲ組合セテドウ
  ダラウ、斯ウ云フ席ヲ斯ウ云フ按排ニシタラドウダラウト云フコトカラ、從
  來ハ斯ウダケレドモ今度ハ斯ウ云フコトニヤラウヂヤナイカト云フ程度デ決
  マッタノデアリマス、ソレデ我〓ハ宜イモノト思ッテ居ル、ソレデ此案ガ······
  第四條ガ出來上リマシテ、改正案トシテ、サウシテ議長ハ之ニ依ッテ御定メニ
  ナルモノト考ヘテ居リマス、是ガ成立ッタ徑路ハ色〓アリマセウケレドモ、ソ
  レハ銘々勝手ナコトヲ言ッタト云フコトニ過ギナイノデアリマス、結局玆デ
  治マッタナラバ、ソレデ宜クハナイカト思ヒマス、是ガ結果デアリマス、是ガ
  改正案ノ趣旨デアリマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=252

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• 253・志水小一郎

  ○志水小一郞君　サウスルト石渡君ノ御論ハ今本員ガ聽キマシタ如ク、議長
  ガ定メラレテ、曰ク年配順序ニシヤウ、籖取リニシヤウ、斯ウ云フ風ニ決マ
  リマシタ所ガ御異議ハナイノデアリマスカ、絕對的ニ是ハ服從スルコトノ御
  約束デアリマスカ、ソコヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=253

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• 254・石渡敏一

  ○石渡敏一君　別段ニ御答ヲ致ス必要ガ私ニハ無イト存ジマスカラシテ、別
  段ニ御答ヲ致シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=254

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• 255・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　此改正ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=255

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• 256・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス
  吉克·小王Niotam

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=256

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• 257・蜂須賀正韶

  ○副議長(候爵蜂須賀正韶君)　日程第二十六ヨリ第四十四、請願、會議
  意見書案
  東亞保民會設立ニ關スル件
  東京市赤坂區靑山南町士族金健中外十四名呈出
  右ノ請願ハ滿蒙ノ地ニ移住セル多數ノ朝鮮人ハ其ノ背後ニ〓體的支持ナク
  爲ニ微力ナル彼等ハ愈經濟的壓迫ヲ受ケ〓ヤ悲況ニ沈淪セリ斯クテハ遂ニ
  自暴自棄ニ陷リ思想惡化ノ禍根タラムトスルモノアルハ國策上甚遺憾ナル
  ニ依リ速ニ生業ニ安セシムル爲請願人等ニ於テ之カ保護機關トシテ東亞保
  民會ヲ設立スルヲ以テ適當ニ國家的援助ヲ與ヘラレタシトノ旨趣ニシテ貴
  族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
  リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  日露漁業條約ニ關スル件
  東京市麴町區内山下町帝國水產會會長男爵村上隆吉呈出
  右ノ請願ハ曩ニ成立セル日本、「ソヴイヱート」社會主義共和國聯邦間ノ漁
  業條約第二條末項中ノ鯨及鱈竝特定漁區域内ニ於テ捕獲シ又ハ採取シ能ハ
  サル一切ノ魚類及水產物ノ捕獲ニ關シ右條約ニ伴フ最終議定書ニ依リ近ク
  之カ免許狀受理ニ關スル準據規則ヲ發布スヘキ旨彼ノ聲明アリシニ拘ラス
  未コレ無キハ我邦ニ於ケル工船漁業竝機船漁業發展上遺憾ナルヲ以テ速ニ
  彼ヲシテ發布セシムルヤウ適當ノ方法ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
  院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
  別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  三陸沿岸線鐵道速成ニ關スル件
  岩手縣氣仙郡高田町平民商佐藤文治外六千六百十九名呈出
  右ノ請願ハ未成線鐵道タル大船渡線鐵道及山田線鐵道ノ工事ヲ速成シ岩手
  縣下閉伊郡山田港ヨリ大槌町、盛町ヲ經テ大船渡港ニ至ル豫定線鐵道ヲ敷
  設シテ是等ヲ連絡セシムルハ運輸交通上竝產業開發上至大ノ便益アルモノ
  ナルヲ以テ該未成線鐵道ノ工事完成年度ヲ繰上クルト共ニ豫定線鐵道ヲ速
  ニ起工セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
  議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  小郡、萩間鐵道敷設及停車場設置ノ件
  山口縣美禰郡大田町長大野兵治郞外七名呈出
  右ノ請願ハ山陽本線鐵道小郡驛ヲ起點トシ未成線鐵道小郡線鐵道及山口縣
  下大田町ヨリ同縣下萩町ニ至ル豫定線鐵道ヲ敷設スルハ山陽、山陰及滿鮮
  地方ヲ連絡スルノミナラス沿線地方ニ於ケル農產、林產、鑛產、水產等ノ
  利源多ク適當ノ驛ヲ設ケ以テ其ノ開發ヲ圖ルハ緊急ナルニ拘ラス未起工ナ
  キハ產業交通上竝國防上甚遺憾ナルニ依リ昭和四年度ヨリ工事ニ著手セラ
  レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
  テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  金澤、八尾間鐵道敷設ノ件
  石川縣金澤市長相良步外二十二名呈出
  右ノ請願ハ富山縣婦負郡八尾町ヨリ石川縣金澤市ニ至ル豫定線鐵道ヲ敷設
  スルハ沿線地方ニ於ケル農產、林產等ノ利源ヲ開發シ且軍事上ニモ重要ノ
  線路ナルニ拘ラス未起工ナキハ產業交通竝國防上甚遺憾ナルヲ以テ速ニ之
  カ完成ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
  ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  交通行政統一ニ關スル件
  東京府豐多摩郡代々幡町平民堀内良平外七百七名呈出
  右ノ請願ハ近時我國ニ於ケル自動車營業殊ニ一定路線ニヨル乘合自動車營
  業ノ急激ナル發逹ニ伴ヒ運輸交通ノ情勢大イニ革リ其ノ經濟的價値ハ他ノ
  交通機關ノ遠ク及ハサル所ナリ然ルニ之ト密接ノ關係アル道路、橋梁ノ改
  修或ハ自動車稅、道路損傷負擔金ノ賦課營業認可、交通整理等幾多ノ交通
  行政ニ關シ統一機關ナキハ斯業發展上甚遺憾ナルヲ以テ速ニ交通省ヲ設置
  シ以テ之カ行政ノ統制確立ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
  體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候
  也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  於福、大田間鐵道敷設ノ件
  山口縣美禰郡於福村長津村哲四郞外九名呈出
  右ノ請願ハ美禰線鐵道於福驛ヨリ山口縣美禰郡大田町ニ至ル豫定線鐵道ノ
  沿線地方ハ豐富ナル物資ヲ有シ軍事上緊要ノ地秋吉臺ヲ中心トシテ其ノ附
  近ニハ數多ノ天然記念物等散在シ產業交通上竝軍事上重要ノ線路ナルヲ以
  テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
  キモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  岩見澤、厚田間鐵道敷設ノ件
  北海道空知郡岩見澤町平民公吏佐藤幸助外四百十四名呈出
  右ノ請願ハ室蘭本線鐵道岩見澤驛ヨリ空知郡北村、樺戶郡月形村及石狩郡
  當別村字靑山奥ヲ經テ厚田郡厚田村ニ至ル鐵道ヲ敷設スルハ肥沃ナル石狩
  平野ヲ橫斷シ豐富ナル農產、鑛產等ノ利源ヲ開發スルノミナラス北海道西
  海岸ニ於ケル漁業ノ發展ニ資スル重要ノ線路ナルニ拘ラス未著手ナキハ同
  道拓殖上竝交通連絡上甚遺憾ナルヲ以テ速ニ之ヲ起工セラレタシトノ旨趣
  ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
  五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  北見瀧ノ上、上川間鐵道敷設ノ件
  北海道紋別郡瀧上村農岡本政道外三百二十六名呈出
  右ノ請願ハ豫定線鐵道北見瀧ノ上、上川間鐵道ハ沿線地方ニ於ケル林產、
  鑛產等ノ豐富ナル資源ヲ開發スルノミナラス北見、石狩ノ兩國ヲ連絡シ交
  通上竝國防上ニ資スルコト亦多大ナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ
  旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
  六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  根室臨港線鐵道敷設ノ件
  北海道根室郡根室町長本橋貞呈出
  右ノ請願ハ北海道根室郡根室港ハ海陸產業ノ隆盛ニ伴ヒ貨物ノ輸出入逐年
  增加ノ趨勢ニアルノミナラス近時海產物就中千島方面ノ漁獲物ハ根室本線
  鐵道ノ利用ニ依リ始メテ有利ニ處理セラルヘキ狀態ナルヲ以テ同港築港工
  事ノ進捗ト共ニ同港ト根室驛トヲ連絡スル爲臨港鐵道ヲ敷設セラレタシト
  ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
  第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  紋別臨港線鐵道敷設ノ件
  北海道紋別郡紋別町鑛業藤島三千太郞外百二十六名呈出
  右ノ請願ハ名寄本線鐵道紋別驛ヨリ紋別港ニ至ル臨港線鐵道ヲ敷設スルハ
  同港ニ於ケル豐富ナル海產ノ輸送ヲ迅速ナラシムルノミナラス附近地方一
  帶ノ農產、林產ノ開發上資スルトコ口大ナルニ依リ速ニ之レヲ完成セラレ
  タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
  議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  濱頓別、枝幸間鐵道速成ノ件
  北海道枝幸郡枝幸村長瀧本瑞龍呈出
  右ノ請願ハ未成線鐵道北興濱線鐵道ヲ速成スルハ沿線地方ニ於ケル豐富ナ
  ル農產、林產、鑛產等ノ資源ヲ開發スルノミナラス世界三大漁場ノ稱アル
  「オコツク」海ニ面シ其ノ無限ノ海田ヲ開拓スル將來有望ノ線路ナルニ拘ラ
  ス未其ノ完成ナキハ北海道拓殖上甚遺憾ナルヲ以テ本年度ヨリ起工セラレ
  タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
  議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  自動車法制定ノ件
  東京府豐多摩郡代々幡町平民堀内良平外七百六十六名呈出
  右ノ請願ハ道路網ノ完成ト相俟テ運輸交通機關タル自動車ノ發達ヲ圖ルハ
  我國產業ヲ開發スル所以ナルニ拘ラス未其ノ全キヲ得サルハ國家經濟上甚
  遺憾ナルニ依リ交通省ノ設置ト共ニ自動車法ヲ制定セラレタシトノ旨趣ニ
  シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
  條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  靜岡縣下熱海町大字泉ヲ神奈川縣下湯河原町ニ編入ノ件
  神奈川縣足柄下郡湯河原町長伊藤濱平呈出
  右ノ請願ハ靜岡縣田方郡熱海町大字泉ハ神奈川縣足柄下郡湯河原町溫泉區
  域ニ接續シ人情風習ヲ共ニセルノミナラス輓近溫泉場ノ繁榮ニ伴ヒ恰モ同
  一劃ヲナスニ拘ラス其ノ行政區劃異レル爲警察署、町役場、學校等ノ利用
  上住民ノ不利不便尠カラサルハ甚遺憾ナルヲ以テ同字ヲ湯河原町ニ編入ス
  ルヤウ行政區劃ヲ變更セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  十和田潮ヲ中心トスル國立公園設置ノ件
  靑森縣東津輕郡濱舘村長木村慶司外三十名呈出
  右ノ請願ハ山紫水明ナル十和田湖一帶ノ地ハ山上ノ湖水ヲ始メ奧入瀨川ノ
  溪流、八甲田山ノ雄姿等自然ノ美ヲ鍾メ風景絕佳ナルノミナラス人爲的施
  設亦備ハレルヲ以テ同湖ヲ中心トスル國立公園ヲ設置セラレタシトノ旨趣
  ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
  五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  雲仙岳、阿蘇山、別府溫泉、久住山ヲ國立公園ニ指定ノ件
  熊本縣熊本市熊本縣知事齋藤宗宜外七名呈出
  右ノ請願ハ雲仙岳、阿蘇山、別府溫泉及九州アルプスノ稱アル久住山ハ同
  一徑路ニ接觸シテ點在シ世界稀ニ見ル風光明媚ノ地ニシテ內外人ノ遊覽客
  多キヲ以テ右四箇所ヲ關聯的ニ國立公園ニ指定シ相當ノ施設ヲ講セラレタ
  シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
  院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  谷田川改修ノ件
  群馬縣邑樂郡永樂村平民農塩田〓平外千百二十三名呈出
  右ノ請願ハ群馬縣邑樂郡ノ南部ヲ貫流スル谷田川ハ利根川ニ屬シ半ハ河川
  法施行區域ナルニ拘ラス今ニ何等ノ施設ナク其ノ流域ハ池沼濕潤ノ地多ク
  且屈曲狹隘ノ個所尠カラサル爲降雨每ニ氾濫シ沿岸ノ被害甚大ナルハ地方
  產業ノ發達上甚遺憾ナルニ依リ速ニ國費ヲ以テ之レカ改修ヲ圖ラレタシト
  ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
  第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  一時金癈兵恩給法改正卽行ニ關スル件
  石川縣金澤市中石引町平民商大浦長次外百六十四名呈出
  右ノ請願ハ世態ノ進運ト經濟界ノ推移ニ伴ヒ文武官ノ恩給ハ漸次改正セラ
  レタルニ拘ラス軍人傷痍、者ハ單ニ一時金ヲ受ケタルモノアルモ生活上何等
  ノ保障ナク爲ニ今ヤ窮境ニ陷レルモノ尠カラサルハ國民士氣振興上甚遺憾
  ナルニ依リ速ニ恩給法ヲ改正シ以テ一時金傷痍者及無償傷痍者ニ對シテモ
  優遇安定ノ途ヲ講セシメラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  內閣總理大臣男爵田中義一殿
  意見書案
  軍人傷痍記章令中改正ノ件
  石川縣金澤市上新町平民商水野外次郞外百六十四名呈出
  右ノ請願ハ軍人ニシテ傷痍ヲ受ケ兵役ヲ免除セラレタルハ假令傷痍ノ輕重
  アリト雖兵役義務ニ服シ國家ニ盡スコト敢テ軒輊ナキニ拘ラス軍人傷痍記
  章令ハ軍人傷痍記章受領者ヲ增加恩給受給者ニ限リ一時恩給受給者ヲ除外
  スルノ差別ヲ附シタルノミナラス願出ヲ條件トシタルハ甚遺憾ナルヲ以テ
  速ニ同令ヲ適當ニ改正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
  擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
  昭和四年月日
  貴族院議長公爵德川家達
  内閣總理大臣男爵田中義一殿

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=257

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• 258・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　請願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=258

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• 259・蜂須賀正韶

  ○副議長(侯爵蜂須賀正韶君)　御異議ナイト認メマス、次ノ日程ハ彙報ヲ以
  テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會
  午後六時五十一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005603242X03119290320&spkNum=259