1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四年二月十九日(火曜日)午後一時十九分開議
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議事日程 第十八號
昭和四年二月十九日
午後一時開議
質問
一 山岡宮崎縣知事の失政に關する質問(二見甚郷君提出)
二 議員の特權に關する質問(横山勝太郎君提出)
三 思想善導の政策に關する質問(三宅磐君提出)
四 宮崎市騷擾事件に關する質問(三浦虎雄君外一名提出)
五 資源竝食糧問題に關する質問(葛原猪平君提出)
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第一 工場法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 健康保險法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 登録税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 大正十一年法律第五十二號中改正法律案(統計資料實地調査に關する件)(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 朝鮮簡易生命保險の事務に關する郵便物に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 馬の傳染性貧血に罹りたる馬の殺處分に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 鐵道敷設法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 政治運動の爲金品供與の制限に關する法律案(大竹貫一君外一名提出) 第一讀會
第十四 政治結社加入勸誘方法の制限に關する法律案(大竹貫一君外一名提出) 第一讀會
第十五 議員の職務に關する法律案(大竹貫一君外一名提出) 第一讀會
第十六 衆議院議員選擧法中改正法律案(大竹貫一君外一名提出) 第一讀會
第十七 衆議院議員選擧法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第十八 府縣制中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第十九 北海道會法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十 市制中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十一 町村制中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十二 裁判所構成法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十三 辯護士法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十四 公證人法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十五 辨理士法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十六 計理士法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十七 商工會議所法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十八 取引所法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第二十九 水先法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第三十 民法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第三十一 商法中改正法律案(土屋清三郎君提出) 第一讀會
第三十二 産業委員會法案(藤原米造君外七名提出) 第一讀會
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001・元田肇
○議長(元田肇君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
登錄稅法中改正法律案
大正十一年法律第五十一一號中改正法律案
統計資料實地調査ニ關スル件)
朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關スル郵便物
ニ關スル法律案
(以上二月十六日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
質屋取締法中改正法律案
提出者鬼丸義齊君
古物商取締法中改正法律案
提出者鬼丸義齋君
衞生組合法案
提出者
田崎信藏君平賀周君
鈴木吉之助君吉津度君
加藤鐐五郞君
傳染病豫防法中改正法律案
提出者
田崎信藏君平賀周君
鈴木吉之助君吉津度君
加藤鐐五郞君
(以上二月十六日提出)
刑法中改正法律案
提出者
牧野賤男君名川侃市君
遠藤柳作君
(以上二月十八日提出)
鹿兒島縣垂水町ニ専賣局分工場設置ニ關
スル建議案
提出者永田良吉君
(以上二月十六日提出)
沖繩縣營鐵道國營移管ニ關スル建議案
提出者
龜割安藏君竹下文隆君
沖繩縣下ニ燈臺設置ニ關スル建議案
提出者
龜割安藏君竹下文隆君
(以上二月十九日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員二見甚〓君提出山岡宮崎縣知
事ノ失政ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員橫山勝太郞君提出議員ノ特權
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員三宅磐君提出思想善導ノ政策
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員三浦虎雄君外一名提出宮崎市
騒擾事件ニ關スル質問ニ對スル答辯書
(以上二月十九日受領)
山岡宮崎縣知事ノ失政ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和四年一月三十一日
提出者一意甚〓
山岡宮崎縣知事ノ失政ニ關スル質問主
意書
宮崎縣知事山岡國利ハ著任以來現內閣及
其ノ與黨タル政友會ノ走狗ト爲リ地方事
務官タル其ノ本務ヲ顧ミス任地宮崎縣ニ
於ケル政友會ノ堂勢擴張ニ狂奔シタル事
實歷然タリ
昨年二月擧行セラレタル衆議院議員總選
擧ニ際シ政府與黨タル政友會ノ候補者カ
僅ニ一名ヲ除キ全部落選スルヤ山岡知事
ハ野黨議員ノ誘惑ヲ試ミムト欲シ其ノ機
會ノ到來ヲ窺ヒ居タル所偶都城市地方ニ
於テ現在宮崎市ニ在ル縣立女子師範學校
ノ都城移轉ヲ希望シ居ル事實ニ著目シ女
子師範學校移轉及都城外浦線ノ國有鐵道
豫定線編入ヲ將來ノ條件トシテ當時無所
屬タリシ都城市及北諸縣郡地方選出縣會
議員數名竝同地方ヲ主タル根據地トシテ
選出セラレタル當時民政黨所屬衆議院議
員一名ヲ政友會ニ入黨セシメムトシテ遂
ニ其ノ目的ヲ達成セリ
元來右入黨條件ノ一トシテ利用セラレタ
ル女子師範學校ハ現在宮崎縣管內ニ一校
ヲ存スルノミニシテ縣〓育上ノ見地ヨリ
スルモ亦他ノ諸般ノ關係ヨリ見ルモ之ヲ
縣ノ中央ニシテ且縣廳所在地タル宮崎市
ニ存置スルヲ至當トスルコト勿論ナリ故
ニ山岡知事ニ本校移轉ノ底意アルコト一
度世上ニ傳ハルヤ宮崎市民ハ固ヨリ移轉
先タル都城市竝北諸縣郡ヲ除ク他地方ノ
縣民ハ擧テ其ノ不法ヲ叫ヒ縣當局カ神聖
ナルヘキ〓育機關ヲ一政黨ノ黨勢擴張ノ
具ニ供セムトスルノ不當ナルヲ訴へ專ラ
該移轉計畫ノ阻止ニ努メ殊ニ現在同校所
在地タル宮崎市ニ於テハ山岡知事カ强テ
同校ノ移轉ヲ行ハムカ或ハ地方ノ治安モ
爲ニ維持困難ニ至ルヘキ不穩ノ狀況ヲ呈
スルニ至レリ
是ヲ以テ本員ハ屢內務當局ニ面會ヲ需メ
右女子師範學校ノ移轉計畫カ甚夕失當ナ
ル所以ヲ陳ヘ縣治ノ將來ニ鑑ミテ之ヲ中
止セシメラレムコトヲ希望シ殊ニ本件ノ
發案者タル山岡知事ニ對シテハ客年十二
月十一日東京市外千駄ケ谷町原宿ニ於ケ
ル同人ノ私宅ニ於テ縣〓育竝一般縣治上
ノ見地ヨリ切ニ本計畫ヲ中止セムコトヲ
勸告シ置キタリ
右ノ如ク縣民輿論ノ反對アリ且本員等ニ
於テ好意的忠告ヲ試ミタルニ拘ラス山岡
知事ハ該移轉計畫ヲ强行セムトシ之カ所
要經費ヲ昭和四年度追加豫算ニ編成シ客
年十二月十五日開會ノ宮崎縣會ニ付議シ
タル爲地方民ノ感情ヲ激成シ遂ニ宮崎市
內ニ於テ置縣以來未夕嘗テ經驗シタルコ
トナキ一大騒擾事件ヲ誘發スルニ至レリ
右騷擾事件ノ結果縣會ハ一時本件ノ審議
ヲ延期シタルモ政友會所屬議員ノ多數ナ
ルヲ恃ミ遂ニ客年十二月二十七日「宮崎
都城兩市ノ融和ヲ計リ人心安定ヲ待テ執
行ス」トノ條件ヲ附シテ本案ヲ可決スル
ニ至リタルカ右附帶決議ノ趣旨ハ何レノ
場合ヲ豫想スルモ之カ實現ヲ期スルコト
不可能ナリ
女子師範學校ノ移轉カ懸治諸般ノ見地ヨ
リ失當ナルコトハ論ヲ俟タサル所ナルカ
騷擾事件發生ノ當日ハ恰モ宮崎市ニ於ケ
ル消防器具點檢ノ常例日ニ當リ且平常器
具試用ノ爲ニ使用スル用水池ハ縣會議事
堂ヲ距ル僅僅數十間ヲ出テス加之斯ノ如
キ四圍ノ事情ヲ無視シ該用水池ト縣會議
事堂ノ中間ニ位スル縣所有ノ公會堂ヲ當
日移轉反對ノ爲ニ開催セル縣民大會場ト
シテ使用ヲ許可シタルカ如イハ治安警察
ノ當局者トシテ當時ニ於ケル宮崎市民ノ
空氣ニ顧ミ其ノ職務執行上怠慢アリタル
コトハ否定シ能ハサル所ナルヘシ
山岡知事カ宮崎縣ニ於ケル政友會ノ地盤
擴張ノ爲ニ奔走セル事實ハ單ニ上記ノ問
題ニ止マラス或ハ金融機關ニ干涉シテ特
ニ政友會員ニ便宜ヲ與へシメムト試ミ又
ハ地方有志者ヲ勸說シテ政友會ニ入黨セ
シメタルカ如キ又管內土木計畫ヲ利用シ
テ地方民ノ政友會入黨ヲ誘致セル等殆ト
枚擧ニ遑アラス
本員ハ敍上ノ事實ヲ基礎トシテ左ノ各項
ニ關シ政府ノ所見ヲ聽カムト欲スルモノ
ナリ
-政府ハ山圖知事ノ行動ヲ以テ地方官
トシテノ職務ヲ解怠シ且甚シク官紀ヲ
紊亂スルモノト認メサルヤ否ヤ
二政府ニ於テ前問ヲ肯定スルニ於テハ
山岡知事ヲ處分スルノ意思ヲ有スルヤ
否ヤ
三前記縣會ノ決議ニ基キ山岡知事カ女
子師範學校移轉ノ認可ヲ申請セル場合
政府ハ之ヲ却下スルノ意思ヲ有セサル
ヤ否ヤ
右及質問候也
昭和四年二月十九日
內閣總理大臣男爵田中義に
果凍院議長元田肇殿
衆議院議員二見甚〓君提出山圖宮崎縣知
事ノ失政ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員二見甚〓君提出山岡宮崎縣
知事ノ失政ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
宮崎縣ニ於ケル女子師範學校移轉ニ關シ
テハ同縣ノ財政及〓育上ノ見地ヨリ年來
ノ問題ヲ解決シタルモノニシテ其ノ間何
等黨派的ノ偏見ニ出テタルモノニアラス
其他ノ事項ニ就テモ同縣知事ハ地方官ト
シテ職務ヲ懈怠シ又ハ官紀ヲ紊亂シタル
モノト認メ難シ又女子師範學校移轉認可
ニ關シテハ目下調査中ナリ
右及答辯候也
昭和四年二月十九日
內務大臣望月圭介
文部大臣勝田主計
議員ノ特權ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和四年一月三十一日
提出者横山勝太郞
議員ノ特權ニ關スル質問主意書
第衆議院議員小俣政一君昭和三年十
一月二十日以來拘禁セラレ帝國議會召
集セラレタルニ拘ラス今尙之ヲ釋放セ
サルハ妥當ナラスト認ム政府ノ所見如
何
第二兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ內亂
外患ニ關スル罪ヲ除ク外會期中其ノ院
ノ許諾ナクシテ逮捕セラルルコトナシ
トハ憲法第五十三條ノ明掲スル所ニシ
テ之レ議員ノ身體ニ關スル保障ニシテ
最重大ナル特權ノ一ニ屬ス先例ニ依レ
ハ會期前卽チ帝國議會召集前ニ於テ逮
捕セラレタル場合ハ此ノ明文ニ抵觸セ
スト解釋シ其ノ院ノ許諾ナクシテ所謂
逮捕ヲ繼續シタルハ議員ノ特權ヲ輕視
スルノ甚シキモノナリ政府ハ憲法第五
十三條ノ保障ニ關シ正條ノ精神ヲ尊重
シ適當ナル措置ヲ採ルノ意思ナキヤ
右及質問候也
昭和四年二月十九日
內閣總理大臣男爵田中義
衆議院議長元田肇殿
衆議院議員橫山勝太郞君提出議員ノ特權
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員橫山勝太郞君提出議員ノ特
權ニ關スル質問ニ對スル答辯書
-衆議院議員小俣政一君ノ拘禁ハ豫審
取調上ノ必要ニ基クモノニシテ已ムヲ
得サルモノト認ム
二憲法第五十三條ハ議員カ帝國議會召
集前ニ逮捕セラレタル場合ニ適用ナキ
モノト解スルハ正當ニシテ政府ハ此解
釋ノ先例ヲ變更スヘキモノニ非スト思
料スルモ司法行政監督權ノ範圍內ニ於
テ出來得ル限リ適當ナル措置ヲ執リ刑
事手續上ノ運用ニ付注意ヲ爲スヘシ
右及答辯候也
昭和四年二月十九日
司法大臣原嘉道
思想善導ノ政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和四年一月三十一日
提出者三宅磐
思想善導ノ政策ニ關スル質問主意書
-政府ハ思想善導特ニ靑年學徒ノ思想
善導ニハ最善ノ努力ヲ致シツツアリト
謂フモ其ノ努力ハ如何ナル方針ノ下ニ
如何ナル方法ヲ以テ爲シツツアル乎
二思想問題ニ關聯シテ近年惹起シタル
累次ノ不祥事件ニ於テ官立大學其ノ他
文部省直轄學校ノ學生生徒カ常ニ多數
ヲ占メ居ル事實ニ對シ政府ハ之ヲ如何
ニ考ヘツツアル平
三金力政治ハ思想善導ノ聲明ト兩立セス
政府ハ世論ニ省ミ其ノ非難ヲ一掃スル
ニ必要ナル措置ヲ講スルノ意ナキ乎
右及質問候也
昭和四年二月十九日
內閣總理大臣男爵田中義
衆議院議長元田肇殿
衆議院議員三宅磐君提出思想善導ノ政策
ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員三宅磐君提出思想善導ノ政
策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
政府ハ現下ノ世相ニ鑑ミ靑年學生其
ノ他ノ思想善導ノ最モ急務ナルヲ認メ
種々ノ方策ヲ講究實施シツヽアリト雖
モ其ノ根本方針ハ國體觀念ノ理解、國
民精神ノ涵養ヲ圖ルコトニ在リ而シテ
各種〓育ノ制度竝内容ノ改善ヲ必要ト
スルヲ以テ先ツ中學〓育ノ改善案ヲ立
テ目下文政審議會ニ諮詢中ニシテ尙引
續キ師範〓育小學〓育其ノ他諸般ノ〓
育制度ノ改善ニ及フヘキ計畫ナリ
尙直轄學校ニハ新ニ專任ノ學生主事、
生徒主事ヲ置クコトトシ校長〓官ト相
俟テ學生生徒ノ思想善導上遺憾ナカラ
ンコトヲ期セリ又文部省ニハ學生課ヲ
設ケ思想問題ニ關スル事項ヲ〓究調査
セシメ各學校ト相連繫シテ思想善導ニ
資スヘク銳意努力シツツアリ其ノ他男
女靑年一般國民ノ思想善導ニ資スル爲
メ社會〓育ノ方面ニ於テモ成人〓育講
座ノ施設、善良ナル讀物及フィルムノ
供給、靑年指導者ノ養成等漸次其ノ施
設ヲ充實シ且〓化團體等ノ活動ヲ促ス
方法ヲ講シツツアリ又國民ノ思想ヲ善
導セシムルニハ宗〓家ノ努力ニ俟ツコ
ト大ナルモノアルヲ以テ其ノ活動ヲ促
スコトニ努メツツアリ
二官立學校ヨリ左傾的學生生徒ヲ出シ
タルハ最モ遺憾トスルトコロナリ政府
ハ前項ニ述ヘタルカ如ク目下銳意學生
生徒ノ訓育ニ力メツツアリ
三政府ハ御質問ノ如キ金力政治ノ事實
ヲ認メス
右及答辯候也
昭和四年二月十九日
文部大臣勝田主計
宮崎市騒擾事件ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和四年一月三十一日
提出者三浦虎雄
外一名
宮崎市騒擾事件ニ關スル質問主意書
現內閣成立以來宮崎縣下各地ノ地方的施
設ハ如何ニ緊切當然ノ事項ト雖政友會宮
崎支部ノ諒解支持ヲ受クルニ非サレハ縣
當局ハ之ヲ捨テテ顧ミルコトナシ之ヲ以テ
同縣下町村ノ中ニハ何等政友會ノ主義政策
ニ共鳴スルニ非スシテ只一途ニ其ノ地方
施設ノ實施貫徹ヲ翹望スル上ヨリ其ノ入
黨ヲ餘儀ナクセラルル實情ニ在リテ入黨
スルトセサルトニ拘ラス此ノ枉屈ニ對ス
ル宮崎縣民鬱積憤懣ノ情ハ蓋想像ノ外ニ
在リ然ルニ此ノ如キ雰圍氣ノ間ニ政友系
縣會議員支持ノ下ニ山岡縣知事ニ依テ現
在宮崎市ニ在ル縣立女子師範學校カ宮崎
市ニ比シ〓育上何等優越ノ點ナキ都城市
ニ移轉改築セラレムトシ之ト相前後シテ
都城市附近選出縣會議員四名都城市會議
員二十七名ハ十月十七日政友會ニ入黨シ
水久保代議士又十二月ニ入リ政友會ニ入
黨シタル事實トハ山岡宮崎縣知事竝政友
會宮崎支部從來ノ行動ニ徴シ宮崎市民カ
之ヲ以テ神聖ナルヘキ〓育機關ヲ黨勢擴
張ノ具ニ供シタリト思惟シ其ノ感情憤激
ノ極度ニ達シタルハ蓋當然ナリト謂フヘ
シ斯ノ如キ宮崎市民ノ否認反抗ノ險惡ナ
ル輿論ニ對シ何等之カ理解氷釋ノ手段ヲ
執ルコトナク山岡知事ト政友系縣會議員
トハ其ノ壓倒的勢力ニ倚賴シテ正義ト條
理ト民意トヲ無視シテ此ノ女子師範學校
移轉案ヲ强行議決セムトシテ十二月十五
日竟ニ此ノ騒擾事件ヲ惹起セルモノナ
リ
右事實ニ對シ
第總理大臣ハ自己力總裁タル政友會
ノ黨勢擴張ニ原因シテ斯ル重大ナル事
態ヲ惹起シタルコトニ對シ何等政治上
ノ責任ヲ痛感セサルカ
第二總理大臣ハ國民悉ク歡喜ニ滿チタ
ル御卽位式ノ直後ニ於テ宮崎市及岐阜
縣下ニ於テ相踵テ直接行動ニ出テ騒擾事
件頻發セルハ現政府ニ對スル國民ノ政
治的絕望ナリト考へサルカ
第三文部大臣ハ宮崎女子師範學校ノ都
城市移轉ヲ以テ必要且正當ノ措置ナリ
ト考フルカ
第四内務大臣ハ古宇田事件直後ニ於ケ
ル宮崎縣知事ノ人選ハ重大ナルニ拘ラス
休職中ノ山岡國利ヲ起用シテ此ノ騷擾
事件ヲ惹起シタルコトニ對シ人事行政上
ノ不用意ト責任トヲ自覺セサルカ
第五內務大臣ハ女子師範學校移轉カ縣
政上ノ問題トナリテヨリ騒擾勃發迄數
箇月ノ期間ヲ有シタルニ拘ラス何等對
策ヲ講スルコトナク荏苒經過シ此ノ事
件ヲ惹起シタルコトニ對シ職務怠慢監
督不行屆ノ責任ヲ感セサルカ
第六內務大臣ハ宮崎縣知事カ明白ナル
民意ノ反抗ヲ無視シ御卽位式ノ直後
而モ中等學校生徒御親閱ノ其日ノ時刻
ニ於テ〓育機關移轉ノ問題ニ關シ此ノ
騒擾ヲ惹起シタルハ「國民和合」ノ御
聖旨ニ背戾シタルノミナラス又時期ヲ辨
ヘサル不謹愼ノ措置ナリト認メサルカ
右及質問候也
昭和四年二月十九日
內閣總理大臣男爵田中義
衆議院議長元田肇殿
衆議院議員三浦虎雄君外一名提出宮崎市
騒擾事件ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員三浦虎雄君外一名提出宮崎
市騒擾事件ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
宮崎縣ニ於ケル女子師範學校移轉ニ關シ
テハ同縣ノ財政及〓育上ノ見地ヨリ數年
來ノ懸案タリシ問題ヲ解決セントスルモ
ノニシテ其ノ間何等黨略的ノ動機ニ出ツ
ルモノニ非ス、移轉問題ノト程當日偶々
騒擾ノ惹起シタルハ洵ニ潰憾トスル所ナ
ルモ爾來移轉理由漸次縣民ノ諒解スル所
ト爲リ人心亦平靜ニ歸シタリ又現任知事
ノ任用ハ失當ト認メス
右及答辯候也
昭和四年二月十九日
內閣總理大臣男爵田中義
內務大臣望月圭介
文部大臣勝田主計
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去十六日理事補闘選擧ノ結果左ノ如シ
未成年者飮酒禁止法中改正法律案(星島
二郞君外六名提出)外一件委員
理事蔭山貞吉君(理事西岡竹次郞君
本月十五日委員辭任ニ付其ノ
補闕)
一去十六日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
朝鮮簡易生命保険特別會計法案外三件委
員
佐々木長治君高橋熊次郞君
遠藤佛作君野田俊作君
小谷節夫君坂東幸太郞君
飯塚知信君堤康次郞君
河し丈太郞君
信託業法中改正法律案外一件委員
鈴木隆君平賀周君
松岡俊三君大橋亦兵衞君
著本太吉君磯野庸幸君
福井甚三君金光庸夫君
鈴木安孝君田中隆三君
山邊常重君定塚門次郞君
原夫次郞君臼田久內君
森峰一君岸衞君
檀野禮助君崎山武夫君
六大都市ニ關スル法律案外一件委員
吉津度君中井一夫君
鈴木吉之助君加藤鐐五郞君
赤尾藤吉郞君津雲國利君
國枝捨次郞君立川太郞君
岸田正記君森田茂君
野田文一郞君小山松壽君
戶井嘉作君枡谷寅吉君
吉川吉郞兵衞君櫻內辰郞君
田崎信藏君鶴岡和文君
一去十六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
賠償金特別會計法中改正法律案外二件委
員
辭任崎山武夫君補關志波安一郞君
辭任小野重行君補闕原夫次郞君
競馬法中改正法律案委員
辭任佐藤啓君補關菅村太事君
辭任今井健彥君補闕水久保甚作君
辭任平川松太郞君補闘大里廣次郞君
一昨十八日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第三部選出豫算委員二神駿吉君
一昨十八日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第一部選出
豫算委員橫山勝太郞君(藤井啓一君
補闕)
第一部選出
決算委員丹下茂十郞君(郡谷照一郞
君補闕)
第六部選出
懲罰委員森田政義君(木本主一郞君
補關)
第八部選出
豫算委員高木益太郞君(神田正雄君
補闕)
第八部選出
豫算委員村松恒一郞君(西脇音君補
關
一昨十八日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
朝鮮簡易生命保險特別會計法案(政府提
出)外三件委員
委員長佐々木長治君
理事小谷節夫君理事飯塚知信君
信託業法中改正法律案(若宮貞夫君外四
名提出)外一件委員
委員長金光庸夫君
理事名川侃市君理事岸衞君
一昨十八日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
六大都市ニ關スル法律案外一件委員
辭任鶴岡和文君補關沼田嘉一郞君
辭任櫻內辰郞君補闘瀨川光行君
辭任戶井嘉作君補闘三宅磐君
辭任枡谷寅吉君補關森保祐昌君
信託業法中改正法律案外一件委員
辭任平賀周君補關赤尾藤吉郞君
辭任福井甚三君補關板谷順助君
辭任大橋亦兵衞君補關松村光三君
辭任松岡俊三君補闘名川侃市君
辭任磯野庸幸君補闕今井健彥君
辭任今井健彥君補闕磯野庸幸君
府縣制中改正法律案外三件委員
辭任淺川浩君補關坂東幸太郞君
會計檢査院法中改正法律案委員
辭任齋藤太兵衞君補闕神部爲藏君
鐵道敷設法中改正法律案委員
辭任肥田琢司君補闘小山寛藏君
朝鮮簡易生命保險特別會計法案外三件委
員
辭任野田俊作君補闕中井一夫君
辭任遠藤柳作君補關松野鶴平君
賠償金特別會計法中改正法律案外二件委
員
辭任奧山龜藏君補闕寺島權藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=1
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002・元田肇
○議長(元田肇君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮ヲ致シマス、昭和三年勅令第百二
十九號治安維持法中改正ノ件、承諾ヲ求ム
ルノ件、及若宮貞夫君外四名提出、信託業
法中改正法律案委員長ヨリ、本日ヨリ本會
議中ト雖モ、委員會開會ノ許可ヲ得タイト
云フ申出ガアリマス、之ヲ許スニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=2
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003・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メマシ
テ、之ヲ許可致シマス、本日ノ日程ニ揭ゲ
マシタ質問一ヨリ四迄ハ、政府ヨリ答辯書
ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ之ヲ省キ
マス、尙ホ質問五ハ、提出者ノ申出ニ依リ、
之ヲ延期致シマス質問ニ對スル政府ノ答
辯ニ關シマシテ、意見陳述ノ申出ガアリマ
ス、議案輻湊シテ居リマスカラ、適當ノ時
機ニ之ヲ許スコトニ致シマス、議事日程第
一ニ入リマス、工場法中改正法律案ノ第一
讀會ヲ開キマス-秋田內務次官
第工場法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
工場法中改正法律案
工場法中左ノ通改正ス
第二十四條中「第九條」ヲ「第三條、第四
條第七條乃至第九條」ニ改メ同條ニ左
ノ但書ヲ加フ
但シ第三條ノ規定ヲ適用スル場合ニ於
テハ其ノ適用後二年以內同條ノ就業時
間ヲ一時間以内延長スルコトヲ得
〔政府委員秋田〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=3
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004・秋田清
○政府委員(秋田〓君) 本案提出ノ趣旨ヲ
申上ゲマス、現行工場法ハ、原則トシテ常
時十人以上ノ職工ヲ使用スル工場ニ適用致
シテ居ルノデアリマスガ、織物業等ニ於キ
マシテハ力織機普及致シ、且ツ能率ガ曾
進致シタ結果トシテ、職工十人未滿ノ工場
ニ於キマシテモ、多數ノ力織機ヲ備へ、其
組織形態ニ於テ、工場法適用ノ工場ト少シ
モ異ラナイモノガ多イノデアリマス、而シ
テ是等ハ就業時間ノ制限ヲ受ケナイガ爲
ニ、舊來ノ慣習ニ依リマシテ、甚シク長時
間ノ作業ヲ致シ、勞働者ノ衞生上遺憾ノ點
ガ少クナイノデアリマス、加之工場法適用
工場トノ間ニ於キマシテ、洵ニ不公平、不
權衡ガ甚シクシテ、適用工場ハ一種ノ不正
競爭ヲ受ケルコトヽナルガ如キ有樣デアリ
マス、故ニ工場法ヲ改正致シマシテ、原動
機ヲ使用スル工場ニハ特ニ必要アル業務
ニ付キ、使用人員ノ如何ニ拘リマセズ、工
場法ノ就業時間、休日、休憩ニ關スル規定
ヲ適用シタイト考ヘルノデアリマス、改正
ノ要旨ハ只今申述べマシ夕次第デゴザイマ
ス、何卒御協賛ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=4
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005・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス、通告
ガアリマス-栗原彥三郞君-登壇ヲ望
ミマス
〔栗原彥三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=5
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006・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 只今日程ニ上リマシタ工
場法中改正法律案ニ付キマシテ、本案ニ關
聯致シマシテ一點ト、本案ニ就テ二點ノ、
極ク簡單ナル質問ヲ致シタイト考ヘルノデ
アリマス、本案ニ關聯シタ所ノ質問ト致シ
マシテハ、機業地ニ於キマシテハ、何レノ
機業地ニ於キマシテモ、昔カラ賃機業ト云
フモノガ澤山アッタノデアリマスルガ、近來
工場機業ノ發達、竝ニ機械機業ノ發達ニ連
レマシテ、賃機業者ト云フモノハ非常ナ
生活上ノ脅威ヲ受ケテ居ルバカリデナク、
二年後、或ハ三四年ノ後ニ於キマシテハ、
賃機業ト云フモノハ、殆ド全滅シナケレバ
ナラナイト云フ狀態ニ陷リマシテ、賃機業
ニ從事致シテ居リマス所ノ、全國百三四十
万ノ人〓ハ、是ガ爲ニ、全ク生活ノ途ヲ失ッ
テ、社會問題ノ上カラ容易ナラザル事相ヲ
惹起サントシテ居ルノデアリマスルガ、
政府ハ此賃機業者救濟ニ付テ、如何ナル御
考慮ヲ持ッテ居ラレルカ、如何ナル方策ヲ
講ゼントシテ居ラルヽカ歐羅巴各國ニ於
キマシテハ機械工業發達ノ爲ニ、手織業
者ノ生活ヲ失ッタ際ニ於キマシテハ、相當之
ガ救濟ノ策ヲ講ジタノデアリマスルガ、我
ガ政府ニ於テモ、之ガ救濟ニ付テ相當ニ御
考ニナッテ居リマスルナラバ、其御考ニナッ
テ居リマスル要點ヲ、御漏シヲ願ヒタイノ
デアリマス、又本案ニ關係致シマスル所ノ
二ツノ質問ノ第一ハ、只今政務次官ノ提案
ノ御說明、及提案理由書ヲ拜見致シマスル
1、今日マデ工場法ノ適用ヲ受ケテ居ラナ
カッタ所ノ、十人以下ノ職工ヲ使用シテ居
リマス小サナ工場ニ對シテ、工場法ヲ適用
セントスルノガ、本改正案ノ主要ノ目的デ
アルヤウニ思フノデアリマス、工場法ヲ改
正致シマシテ、從來工場法第三條、第四條、
或ハ第七條、第九條ノ適用ヲ受ケナカッタ
小工場ニ働イテ居リマスル所ノ、卽チ十人
以下ノ小サイ工場ニ働イテ居リマスル少年
及女子勞働者ニ對シテ、其保健衛生ノ上
ニ、相當ナ保護ヲ加ヘルト云フコトハ、最
モ必要ナル事デアリマシテ、私共之ニ對シ
テハ相當贊成ノ意ヲ表シタイ者デアリマ
ス、併ナガラ玆ニ一ツ御注意ヲ願ハナケレ
バナラナイコトハ、十人以下ノ工女ヲ使ッテ
居リマス所ノ工場ノ如キモノハ、卽チ大體ニ
於テ自ラ機業ヲ營ム者デナクシテ、大體ニ
於テ賃機業ヲ營ンデ居ル所ノ者デアリマス、
近來機業ガ、非常ニ不景氣ガ續イテ居リマ
スル爲ニ、工場法ノ適用ヲ受ケナイデ、十一
時間或ハ十二時間働イテ居リマシテモ、其工
賃ニ依リマシテ、生活ヲ維持シテ居ルコト
スラ、非常ニ困難デアルノニ拘ラズ、今急
激ニ工場法ノ適用ヲ受ケマスル爲ニ、是等
ノ小工業者ハ殆ド其業ヲ繼續スルコトガ出
來ナイデ勢ヒ廢業スルヨリ外ナカラウト思
フノデアリマスガ、若シ左様ナコトニ相成
リマスルト、全國ニ於ケル機業ト云フモノ
ハ一大打撃ヲ受ケ、產業上相當困難ニ遭
遇シナケレバナラナイト考ヘルノデアリマ
スガ、政府ハ只今本案ニアル所ノ、此但書白
ノ適用ヲ、地方長官ガ宜シイト認メマスル
ナラバ、十一時間マデ宜シイト云フノデア
ルカ、之ヲ十二時間、今一時間、暫クノ時
奮發シテ、此賃機業者-小サイ工業家ガ
受ケル所ノ打撃ヲ緩和スル所ノ御考ハナイ
カドウデアルカト云フノガ、本案ニ關スル
質問ノ第一點デアリマス、第二點ハ斯樣
ニ急激ニ工場法ノ適用ヲシテ、小サイ工業
家ニ、大工業家ト同ジヤウナ負擔ヲ負ハシ
メルト云フコトハ、小工業家ニ對スル壓迫
ニハナラナイカドウカ、社會問題ノ上カラ、
相當ニ〓究ヲシテ行カナケレバナラヌト考
ヘルノデアリマスガ、政府ノ御所見ハ如何
デアリマスカ、以上ノ三點ニ付テ、明快ナ
ル御答辯ヲ要求スル次第デアリマス(拍手)
〔政府委員長岡隆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=6
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007・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 只今ノ栗原君
ノ御質問ニ付テ御答申上ゲマスガ、當今賃
機業ガ、所謂產業革命ノ脅威ヲ受ケテ、其
維持ニ困難ヲ感ジテ居ルト云フコトニ付キ
マシテハ、洵ニ御說ノ通リト考ヘテ居リマ
ス、併ナガラ此賃機業者ニ脅威ヲ與ヘ、其
將來ニ向シテ暗影ヲ投ジテ居リマスルノハ、
今囘工場法ノ改正ニ依テ取締ヲ受ケマスル
所ノ、所謂小工場デゴザイマシテ、此小工
場ハ、少ナキモノハ十三四時間、多キモノハ
十七八時間勞働者ヲ、所謂虐使シテ居ルト
申シテ宜イ位ニ使シテ居リマスル爲ニ、從來
ノ賃機業者ガ、非常ナ苦ミヲ受ケテ居ルノ
デアリマスカラ、今囘工場法ノ改正ニ依リ
マシテ、只今栗原君ノ御示ノ賃機業者ノ如キ
ハ寧口之ニ依テ利益ヲ受ケルコトニ相成
リハシナイカト考ヘマス、併ナガラ此產業
革命ノ振起ニ依テ、斯ル家內工業、小工業
家ハ、次第ニ大工業ノ壓迫ヲ受ケル、之三
對スル救濟策ヲドウスルカト云フ御質問ニ
對シマシテハ、實ハ今日商工省ノ政府委員
モ出席シテ居リマスカラ、此方面ヨリ適當
ナ御答ヲ申上ゲルコトデアラウト考ヘテ居
リマス、ソレカラ第二ニ工場法ノ適用ヲ賃
機業ニ及ボスト云フコトハ如何デアラウカ
ト云フヤウナ御質問デアリマシタガ、只今
御示ノヤウニ、工場法ノ全部ヲ是等ノ小工
場ニ適用スルノデハゴザイマセヌノデ、單
ニ勞働時間及ビ救恤ニ關スル規定ヲ適用ス
ルダケデアリマスルノミナラズ、賃機業者
ノ多クハ、一家家內工業的ノ遣方ニ依リマ
シテ、他ニ職工ヲ雇ハズ、勞働者ヲ雇ハズ、
一家ノ中ニ於テ仕事ヲシテ居ル者ガ多イノ
デアリマス、是等ノ職工ヲ雇ハズ、他人ヲ交
ヘズシテ、家内工業的ニヤッテ居リマスル者
ニ付キマシテハ、工場法ノ適用ハゴザイマセ
ヌカラシテ、ソレ等ノモノニ付キマシテハ、
御心配ノヤウナコトハナカラウカト考ヘテ
居リマス、第三ノ急激ナル壓迫ヲ小工業者
ニ與ヘル危險ガナイカト云フ御質問ニ對シ
マシテハ從來地方廳ニ於キマシテ-或
ル地方ニ於キマシテハ、或ハ十二時間、或
ハ十三時間ト云フヤウニ、地方廳ノ命令ニ依
リマシテ此勞働時間ヲ制限致シテ居リマ
ス、今日之ヲ十二時間ニ制限致スト云フコ
トニ依ッテ、非常ナ急激ナ壓迫ヲ小サイ工場
ニ與ヘル危險ハ無イト考ヘテ居リマス、寧
ロ從來ノヤウニ、非常ニ勞働者ヲ虐使スル
ト云フコトニ依テ受ケル利益ヨリモ、相當
ノ時間ニ之ヲ制限シテ、其間ニ勞働力ヲ涵
養シ、又能率ノ增進ヲ圖ルト云フコトハ
產業上ノ利益トナルコトヽ信ジテ居ル次第
デゴザイマス
〔政府委員吉植庄一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=7
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008・吉植庄一郎
○政府委員(吉植庄一郞君) 只今栗原君ノ
御質問ハ、賃機ノ問題ニ付テ、政府ハ何カ
之ニ對シテ計畫シテ考ヘテ居ルコトガアル
カト云フコトデアリマスガ、御同感デアリ
やっ、一方機械工業ノ發達ニ伴ノテ、賃機
ヲ持シテ居ル者ニ脅威ヲ與ヘルコトハ、已ム
ヲ得ナイコトデアリマスケレドモ、サラバ
ト云フテ、唯〓之ヲ見殺ニシテ居ルト云フコ
トハ甚ダ宜クナイ、何トカシテ之ヲ救ハナ
ケレバナラヌト思シテ居リマス、其方法ハ今
色ニ考究ヲ致シテ居リマスガ、或ハ組合ノ
ヤウナモノヲ組織セシメテ、ソレデ機械ヲ
買ハセテヤラセルヤウニスルカ、何カ方法
ヲ一ツ考究シナケレバナラヌト思シテ、折角
商工省ニ於テモ今考慮中デアリマス、是ダ
ケ御答ヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=8
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009・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 諒承シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=9
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010・井上剛一
○井上剛一君 本員ハ只今ノ問題ニ付テ、
質問ノ通告ヲ致シテ置キマシタガ、只今栗
原君ノ質問ニ對スル御答辯ヲ伺ヒマスト、
其趣旨ハ私ト大同小異デアリマスカラ、私
ハ其煩ヲ省イテ、委員會ニ於テ詳細ニ亙ル
コトヲ伺ヒタイト思ヒマス
〔鈴木文治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=10
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011・鈴木文治
○鈴木文治君 私ハ此機會ニ於キマシテ、
我國ノ工場法ノ全般ニ關シテ、約五點ニ付
テ御伺ヲ致シタイノデアリマス、私ノ御尋
致シマスルコトハ、立法技術ニ關スルコト
ヨリモ、寧口政務ニ關スルコトデアルト思
フノデアリマスカラ、出來ルナラバ內務大
臣ノ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマスガ、此
席ニ御見エ無イヤウデアリマスカラ、政務
次官カラ御答辯ヲ御願致シタイノデアリマ
ス、第一ハ勞働時間ニ關スル問題デアリマ
ス、工場法ノ第三條ニハ「工業主ハ十六歲
未滿ノ者及女子ヲシテ一日ニ付十一時間ヲ
超エテ就業セシムルコトヲ得ス」ト規定シ
テアルノデアリマシテ、卽チ一日ノ作業時
間十一時間ト云フモノヲ、我國ノ標準勞働
時間トシテ居ルノデアリマス、併ナガラ更
ニ其第二項ニ於キマシテ「主務大臣ハ業務
ノ種類ニ依リ本法施行後十五年間ヲ限リ前
項ノ就業時間ヲ二時間以內延長スルコトヲ
得ト云フコトニナッテ居ルノデアリマシ
テ、場合ニ依リマスレバ十三時間マデ、勞
働時間ヲ課スルコトガ出來ルヤウナ規定ニ
ナッテ居リマス、然ルニ御承知ノ通リ、勞働
時間ノ問題ニ付キマシテハ、既ニ千九百十
九年亞米利加ノ首府華盛頓ニ於テ開カレマ
シタ、第一回國際勞働會議ニ於ケル所ノ、
八時間勞働時間制條約案ト云フモノガ規定
シテアルノデアリマス、卽チ勞働時間ヲ國
際的ニ八時間ニ限局シヤウト云フ案デアリ
マシテ、此案ハ多數ヲ以テ通過致シタノデ
アリマスル、卽チ三分ノ二以上ノ多數ヲ以
テ通過致シタノデアリマスガ、其際我國ト
印度トハ、互ニ提携ヲ致シマシテ、特殊國
ノ待遇ヲ要求シテ居ルノデアリマス、卽チ
我國ノ氣候風土ノ關係、產業ノ發達ガ未熟
デアルト云フヤウナ關係、其他ヲ考慮シテ、
我國ニ於テハ、原則トシテハ八時間勞働時
間制ニハ贊成デハアルケレドモ、併ナガラ
日本ノ現狀ヨリ鑑ミテ、直ニ八時間勞働制
ノ厲行ハ覺束ナイト云フコトカラ、是非之
ヲ九時間半ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ要
求シ、印度ハ十時間制ト云フコトヲ要求シ
タ、日本ト印度トハ特殊國ノ待遇ヲ受ケル
コトニシテ、印度ノ勞働時間ハ十時間、我
國ハ九時間半ト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマス、然ルニ印度ハ、千九百二十一年
ニ於テ、本條約案ノ批准ヲ致シテ居リマ
ス、批准ヲ致シテ居リマスノミナラズ、其後
厲行ヲシテ居ルト云フノデアリマス、然ル
ニ其際、我國ト印度トハ約束ノ上ニ於テ、
特殊國ノ待遇ヲ要求シ、日本ノ九時間半ニ
對シテ、印度ガ十時間ト云一フコトニナッテ
居リマシテ、印度ハ逸早ク千九百一一十一年
以來、此條約ヲ批准シ、厲行シテ居ルニ拘
ラズ、日本ハ依然トシテ此問題ニ付テハ何
等ノ措置ヲ執ッテ居リマセヌ、何等ノ措置ヲ
執ッテ居リマセヌノミナラズ、千九百十九年
ニ於テ、八時間制勞働條約案ニ對シ、九時間
半ノ特殊待遇ヲ受ケテ置キナガラ、其後三
年ヲ經マシタ大正十二年三月二十九日、法
律第三十三號ノ改正ト云フコトニナッテ居
リマスガ、此法律ハ依然トシテ原則十一時
間、場合ニ依レバ十三時間マデ時間ノ延長
ヲスルコトガ出來ルヤウニナッテ居ルノデ
アリマス、其結果ト致シマシテ、國際勞働
會議ノ、近年ノ傾向ヲ見マスルナラバ、爰
數年引續イテ、印度ノ資本代表竝政府代表
等ハ、日本ガ印度ト約束ヲシテ、アヽ云フ
提案ヲシテ置キナガラ、印度ハ逸早ク、千九
百二十一年以來實行シテ居ルニ拘ラズ、日
本ハ依然トシテ、此時間制ノ條約案ヲ批准モ
セズ、厲行モシナイデ居ル、其結果印度ノ
工業殊ニ纖維工業ハ、日本ノ同ジ工業ノ爲
ニ「アンフエアー、コンペチシヨン」不
正ナル競爭ヲスル結果トナリ、印度ノ紡績
業ハ非常ナル打撃ヲ被ッテ居ルノデアル、日
本ハ既ニ先年、此問題ニ付テ印度ト協定ノ
上ニ於テ、同ジク特殊國ノ待遇ヲ受ケナガ
ラ、此對手方ノ印度ガ既ニ之ヲ實行シテ居
ルニ拘ラズ、日本ハ之ヲ實行シナイデ、所
謂不正ナル競爭ヲヤルコトニ依シテ、他國
ノ工業ノ發達ニマデ打撃ヲ加ヘテ居ルコト
ハ國際信義ノ上ニ於テ無視スルコトノ出來
ナイコトデハナイカト云フコトヲ申シマシ
テ、殆ド每年ノヤウニ繰返シ繰返シ、國際勞
働會議ニ於テハ、印度ノ資本代表、政府代表
ハ交、立テ日本ノ不信ヲ責メルノデアリマ
ス、國際勞働會議ニ參列致シマシタ人ハ、
誰デモ同樣ノ感ヲ持ツノデアリマシテ、非
常ニ肩身ガ狹イヤウナ感ジガスルノデア
ル、日本ノ政府代表ハ大童ニナッテ、色ニノ
方面カラソレニ駁擊ヲ試ミテ居ルノデアリ
マスガ、其會議ニ列スル世界多數ノ國ニノ
人ニハ殆ド嘲笑、若クハ冷笑ノ態度ヲ以
テ觀テ居ルノデアリマシテ、日本ノ代表者ト
シテ此會議ニ列スル者ハ、常ニ冷汗ヲカヽ
ナケレバナラナイヤウナ狀態ニナッテ居
ルノデアリマスルガ、政府ハ一體此時間
制勞働條約ニ付テ、ドウ云フ考ヲ持ツノデ
アリマセウカ、工場法ニ於テハ十一時間ト
云フ原則ヲ決メテ居ル、然ルニ此改正案ノ
出來ル前ノ、千九百十九年ニ於テハ、九時
間半制ノ勞働條約ト云フモノヲ、八時間制
勞働條約案ノ一種ノ例外的ノ規定ト致シマ
シテ、サウ云フコトヲ要求シテ居ルノデア
ル其時ニ同ジ約束ヲシタ所ノ印度ハ、逸
早ク實行シテ居ルノニ、何故實行シナイカト
云フコトヲ、日本人ハ常ニ責メラレテ居
ル、然ルニ之ニ對シテ依然トシテ八時間
制勞働條約ニ對シテハ、批准促進ノ態度
方法ヲ執ッテ居ルヤウニハ思ハレヌノデア
リマス、是ハ私ハ國內ノ問題トシテモ、重
要ナル問題デアルト信ジマスガ、國際的ノ
立場カラ考ヘマシテモ、非常ナ重要ナル問
題デアルト信ズルノデアリマス、其當時ノ
日本ノ政府代表ハ、現樞密顧問官ノ鎌田榮
吉氏ト、岡實氏デアリマシタガ、資本代表
ハ此議席ニ列シテ居ラレル所ノ武藤山
治氏デアラレタノデアリマス、日本ノ
勞働代表ハ桝本卯平氏デアリマシタ
ガ、日本ノ三代表ハ悉ク其案ニ對シテ
ハ賛成ノ投票ヲシテ居ルノデアリマ
ス、賛成ノ投票ヲシテ居ルノミナラズ、
三分ノ二以上ノ大多數ヲ以テ通過シテ居ル
ノデアリマスカラ、此問題ニ付テハ、日本
ハ之ヲ國内ニ於テ勞働立法ノ形ニ於テ履
行スベキ所ノ道德的及條約上ノ責任ヲ有ス
ルモノデアルト信ズルノデアリマス、而モ
此勞働時間制ノ條約ト云フモノハ、十年ノ
間ニ於テ其成績ノ思ハシカラザル場合、其
他ノ事情ノ發生シタル時ニ於テハ此條約
案ハ改正スルコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、今年ハ丁度其十年目ニナッテ居ルノデ
アリマシテ、恐ラク今年ノ國際勞働會議ニ
於テ、改訂案ガ出ルダラウト考ヘルノデア
リマス、此際日本ノ政府ハ、如何ナル態度
ヲ以テ此國際勞働會議ニ臨マレルノデアル
カ、世界ニ對シテ不信ノ申開キヲ如何ニセ
ントスルノデアルカ、或ハ勞働時間制ノ問
題ニ付テハ、改正スルノ御考ヲ有ッテ居ラ
レルカ、若クハ所謂八時間制勞働條約案ニ
對シテ、御批准ヲ奏請スルヤウナ御準備ヲ
御持チニナッテ居ルノデアルカ、此點ヲ私
ハ御質シ申シテ置キタイト思フノデアリマ
ス、其次ニハ工場法ニ依ル、所謂扶助問題
デアリマス、此扶助問題ニ付テハ三點御
伺致シタイノデアリマスガ、色こ細イコト
ヲ御尋致シタイト思ヒマスケレドモ、是一
委員會ニ讓リタイト思ヒマス、大マカナ點
ダケ、扶助ノ問題ニ關聯シテ三點ヲ御伺致
シマス、工場法施行令第四條ニ依リマスト
云フト「職工業務上負傷シ疾病ニ罹リ又ハ
死亡シタルトキハ工業主ハ本章ノ規定ニ依
リ扶助ヲ爲スヘシ但シ扶助ヲ受クヘキ者民
法ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタ
ルトキハ工業主ハ扶助金額ヨリ其ノ金額ヲ
控除スルコトヲ得」ト云フコトヲ規定致シ
テ居リマス、卽チ私ノ御尋致シタイト思ヒ
マス所ノ第一ノ要點ハ、職工ガ業務上ノ負
傷ヲシタ場合、又ハ疾病ニ罹リ死亡シタル
場合ニ於テ、工業主ガ其職工ニ對シテ手當
ヲ與ヘルト云フコトハ、是ハ扶助ト御考デ
アルカ、或ハ賠償ト御考デアルカト云フコ
トデアリマス、若シ是ガ扶助デアッテ、損
害賠償デナイト云フ考デアルト致シマシタ
ナラバ此工場法施行令第四條ノ扶助ヲ受
ケタル者ガ、損害賠償ニ依テ、扶助ノ金額
以上ノ金額ヲ受ケタ時ハ扶助金額ヲ控除
スルト云フ、此考ハ間違デナケレバナラヌ
ト思ヒマス、扶助ト賠償トハ違ッタ觀念デ
アッテ、工場法ノ認メテ居ルノガ扶助デアル
ト致シマスルナラバ、扶助ト認メラレタル
者ハ同時ニ損害賠償ノ請求ヲ爲スコトガ
出來ル筈デアリマス、損害賠償ニ依テ得タ
ル金額ノ中ヨリ、扶助ニ依テ得タル金額ヲ
〓除スルト云フコトハ、其理由ヲ爲サヾル
モノト認ムルモノデアリマス、一體我國ノ
勞働立法關係ニハ、扶助ト云フ言葉ガ方々
ニ使ッテアル、鑛夫勞役扶助規則、或ハ只今
御提出ニナッテ居リマス勞働者災害扶助法
案卜云フガ如キ、扶助ト云フ言葉ヲ使ッテ
居ルノデアリマスガ、扶助ト云フ言葉ハド
ウ云フ意味ヲ有ッテ居ルト考ヘテ御出デニ
ナルノデアルカ、私ハ先日此勞働問題ニ關
スル質問ヲ申上ゲマシタ際ニ於テモ、今日
新シキ時代ノ觀念ノ下ニ於テハ、勞働問題
ノ解決ハ慈惠恩惠救恤ノ如キ考ヲ以テス
ベキデハナイ、サウ云フ考ヲ以テスルコト
ハ誤リデハナイカト云フコトヲ申上ゲタ
ノデアリマスガ、若シ扶助ト云フコトガ、
同盟、救恤、情ケ、憐レミト云フコトヲ意
味シマスナラバ、是ハ差別的ノ考デアルノ
デアリマシテ、是ハ勞働問題解決ノ、新シ
イ時代精神ニ相違シテ居ルモノト考ヘザル
ヲ得ナイノデアリマス、故ニ私ハ先ヅ工場
法ニ於ケル所謂扶助ト云フ言葉ガ、言葉ハ
扶助デアルケレドモ、實ハ損害扶助ノ意味
デアルカ、ドウカト云フコトヲ御尋致シタ
イノデアリマス、現ニ政府ハ勞働者災害扶
助法案ニ關聯致シマシタ參考書類等ニ於テ
モ、外國ノ勞働立法例ニ關スル數多ノ參考
書ヲ御出シニナッテ居ルノデアリマスガ、
其參考書ニ依テ見マシテモ、世界各國ノ本
問題ニ關スル、卽チ勞働者ノ災害ヲ扶助ス
ル場合ニ於ケル-救濟スル場合ニ於ケ
ル、其言葉ト云フモノハ、多クハ卽チ賠償、
若クハ補償ト云フ言葉ヲ使ッテ居ル、卽チ
「コンペンセーシヨン、ロー」トカ「コンペ
ンセーシヨン、アクト」ト云フコトデ、扶
助ト云フヤウナ言葉ヲ使ッタ諸外國ノ立法
例ハ見ナイノデアリマス、日本ニ於テハ特
ニ同ジ場合ニ於テ、扶助ト云フ言葉ヲ使ハ
ナケレバナラヌト云フ、特殊ノ事情ガアル
ノデアリマスカドウカト云フコトヲ、此機
會ニ御尋ヲ致シテ置キタイノデアリマ
ス、次ニ扶助ニ關スル第二點ハ、扶助ノ
金額ニ關スル問題デアリマスガ、是モ細
カイコトハ委員會ニ讓リタイト思ヒマス
ルケレドモ、〓括的ニ申上ゲマスナラ
扶助ノ金額ハ、卽チ此本工場法ヲ制
定スル當時ニ定メラレ、其後多少ノ改正
モアッタヤウデアリマスケレドモ、其當初
ノ金額ト云フモノハ、今日ノ物價ノ情
勢カラ見マスナラバ、其金額ハ少イデハ
ナイカ、殊ニ扶助ノ規定ニ付キマシテ
ハ勞働者ノ日給賃(銀ト云フモノガ基礎
ニテッテ居リマスガ勞働者ノ賃銀ハ、大正
十二年頃ト比べマシテ、餘程下ッテ居ルノ
デアリマス、物價竝賃銀ノ關係カラ考ヘテ
見マシテ、賃銀ガ餘程下ッテ居ルノデアリ
マシテ、其割合ハ、今正確ニ申上ゲラレマ
セヌケレドモ、東京方面ニ於ケル鐵工關係
ノ賃銀ヲ見マスナラバ、私共ノ經驗ノ範圍
ニ於キマシテ、約三割位低下シテ居ルノデ
アリマス、而モ扶助金額ノ起算ノ工合ハ、
何デアルカト申シマスナラバ、賃銀ニ依ル
ノデアリマスカラ、賃銀何日分、何百日分
ト云フ規定デアリマスカラ、扶助金額全體
ガ少クナル、私ハ是ハ今日ノ情勢カラ見マ
スナラバ、此金額ヲ增サナケレバナラナイ
必要ガアルモノト認メルノデアリマスガ、
此點ニ對スル政府ノ御考ガドウデアルカヲ
御伺致シタイノデアリマス、尙ホ扶助問題ニ
付テ、打切扶助料ト云フモノガ規定シテア
リマシテ、是ハ同施行令第十四條ニ、五百
四十日分ト云フ規定ガアルノデアリマス
ガ、五百四十日分ト云フ打切扶助料ト云フ
モノヽ金額ガ、餘リ少ナ過ギルヤウニ感ジ
ラレルノデアリマスガ、此點ニ對シ改正ノ
御考ガナイカドウカト云フコトヲ御伺致シ
タイノデアリマス、ソレカラ同ジ扶助ノ問
題ニ付テ一點御尋致シマスガ、ソレハ此工
場法ニ依リマスルト云フト、扶助料ヲ支給
スベシト云フコトガ書イテアリマスケレド
モ、扶助料ヲ何時支給セヨト云フ、扶助料支
給ノ期間ニ關スル規定ガアリマセヌ、隨テ
實際ノ場合ニ於テ、サウ云フ經驗ハモウ幾
十囘トナクアルノデアリマスルガ、工場主、
事業主等ノ中ニハ扶助規定ニ從テ扶助スル
コトハ認メマスケレドモ、扶助金額ノ交付
ヲ非常ニ怠リマシテ、殊ニ其扶助ヲ受クベ
キ職工ガ、尙ホ依然トシテ其工場ニ就業中
ノ場合ニ於テハ、中々其扶助金額ヲ渡サナ
イ、强テ請求致シマスト、解雇ヲ以テ脅カ
スヤウナコトガアリ、或ハ退職ノ場合、解雇
ノ場合ニ出スカラ、ツレデ宜イヂヤナイカト
云フヤウナコトヲ申シマシタリ致シマシ
テ、結局扶助ノ義務ヲ免レヤウトスル場合
ガアリ、免レテ居ル實例モ少クハナイノデア
リマス、故ニ私ハ、例ヘバ扶助スベキ事實ガ發
生シテ、扶助ノ義務ガ確定シタ場合、其時
カラ、例ヘバ二週間以内ニ支給スベシトカ、
一ケ月以内ニ支給スベシトカ云フ、扶助金額
ヲ交付スベキ期間ノ定メヲスル必要ガアル
ト考ヘルノデアリマスガ、此點ニ付テ政府
ハドウ云フ御考ヲ持ヲテ居ラレマスカ、御尋
致シタイノデアリマス、ソレカラ第三ニハ
工場寄宿舍ニ關スル問題デアリマス、工場
寄宿舍ニ關スル問題ニ付キマシテハ、政府
ハ昭和二年四月六日內務省令第二十六號ヲ
以チマシテ、工場附屬寄宿舍規則ト云フモ
ノヲ制定サレテ居リマス、サウジテ工場ノ
保安、衞生、火災ノ豫防其他ニ關スル設備
ノ義務ヲ工場主ニ負ハセテ居ルノデアリマ
スルケレドモ、此工場附屬寄宿舍規則ナル
モノハ、此規則發布以前ニ出來マシタ寄宿
舍ニハ及バナイノデアリマス、其以前ニ出
來マシタ工場ノ寄宿舍ハ、如何ニ古イモノ
デアリマシテモ、如何ニ不完全ナモノデア
リマシテモ、依然トシテ其儘ニナッテ居ルノ
デアリマシテ、或ハ改築、增築、新築等ノ
コトガ起ルノデナケレバ、此新シイ寄宿舍
規則ニ依ル所ノ制裁ヲ受ケナイノデアル
取締ヲ受ケナイノデアリマス、然ルニ事實
ニ於テハ新シク出來ル工場寄宿舍等ニ於
テハ、段々時勢モ進歩シテ參リマスルカラ、
衞生ナリ、保安ナリ、危害ノ豫防ナリニ付
テ注意致シテ來ルヤウナ傾向ニアリマス
ルケレドモ、實際工場ノ寄宿舎等ニ於テ不
備缺陷、甚シイモノハ、寧ロ此寄宿舍規
則ガ出來ル以前ノモノニ相當アルヤウニ思
フノデアリマス、ソレモ一樣ニハ申サレマ
セヌケレドモ、先ヅ大體サウ云フヤウナ傾
向ガアルト思ヒマスガ、此寄宿舍ニ關スル
規則ハ、此規則ノ出來マスル以前ノ寄宿舍
ニモ及ボサウト云フ御考ハ無イノデアル
カ、是ハ工業主、事業主等ノ經濟上ノ負擔
ナドニ對スル政府ノ御斟酌モアラウカトモ
考ヘマスルガ、併ナガラ此一旦工場ノ寄宿
舍ニ伴フ所ノ慘害等ガ起リマスルナラバ
事人道問題デアル、現ニ御承知ノ通リ、本
月ノ十日靜岡縣御殿場ノ製絲工場ニ於キマ
シテハ、其日ノ午前零時過ニー-午前零時
五分ト新聞ハ報道致シテ居リマスルガ、其
工場ノ寄宿舍ニ、二十六人ノ女工ヲ收容シ
テ居リマシタ其工場ノ寄宿舍ニ火災ガ起
リマシテ、二十六人ノ女工ノ中デ十三名ノ
女工ハ遂ニ燒死致シタノデアリマス、又其
火災ニ罹リマシタ女工ヲ救濟スル爲ニ、工
場ノ中ヘ飛込シデ行ッタ一人ノ男工モ死ニ
マシタシ、其後生殘ッタ十三名ノ女工ノ中
ニ於テ、死ンダ女工ノ身內ノ者ナドカラ、
樣々ノ非難ヲ被ルコトニ堪エズシテ、遂ニ
鐵道轢死ヲ遂ゲタト云フヤウナ事實モアル
ノデアリマシテ、斯ウ云フヤウナ事實ガア
ルノデアリマスルガ、ソレヲ其縣ノ工場監
督官補ノ高橋ト云フ人ガ、實地ニ就テ〓究
シタコトガ、新聞ニ色ミ出テ居ルノデアリ
マス、其工場監督官補ノ談デアルト云フノ
ヲ總括的ニ見マスルト云フト、此工場ニ於
テハ十一時以後ノ勞働ヲヤラシテ居ノタ、勞
働時間ノ規定以上ノ勞働時間ヲ課シテ居〃
タ、ンレカラ此製絲工場ノ作業所ノ二階ヲ
其儘寄宿舍ニ充テヽ居ッタ、階段ハ三尺足ラ
ズノモノガ、只一ツシカ無カッタ、非常口ノ
設ケガナカッタ、ソレカラ殆ド監獄ニ等シイ
ヤウナ-工場監督官補自身ノ言葉デアリ
マスガ、監獄ニ等シイヤウナ、牢獄ノ如キ
格子窓ヲ嵌メテ居シタト、斯ウ云フヤウナコ
トヲ言ッテ居ルノデアリマスガ、更ニ私ガ此
當時ニ於ケル所ノ狀況ヲ色ヒト想像シテ見
マスルノニ、恐ラク此寄宿舍ハ、其出口
ヲ、外カラ鍵ヲ掛ケテ居タノヂヤナイカト
思ハレル故ニ内側カラハ外ニ出ルコトガ
出來ナカッタト云フヤウナ狀態デハナカッタ
カト想像サレルノデアル、サウ致シマスル
ナラバ細カイ話デアリマスルガ、同ジ工
場付屬寄宿舍規則ノ第四條ニモ反クコトヽ
思フノデアリマス、斯ウ云フヤウナ重大事
件ガ起ッタノデアリマスルカラ、非常ニ是ハ
人目ヲ引キマシテ、殊ニ此新聞ノ記事
ガ、紀元節ノ朝ノ新聞ニ出テ居リマシ
テ、此紀元節ノ朝ノ朝刊社會部ノ記事ノ
大半ヲ、此無慘ナル燒死事件ノ記事デ埋メ
テ居ルト云フヤウナル有樣デアリマス、斯
ウ云フヤウナコトハ滅多ニアルベキコト
デモナシ、又アッテハ困ルノデアリマスル
ケレドモ、斯ウ云フヤウナ實情ガアルノデ
アリマスカラ、是ハ一ツハ此工場附屬寄宿
舍ニ關スル規則ハ、其規則發布以前ニ遡ラ
シメテ十分ナ取締ヲ爲スベキモノヂヤナイ
カト思ハレマスト同時ニ、此工場附屬寄宿
舍規則ニ違反シタ場合ニ於テ、制裁ノ規定
ガナイノデアリマス、或ハ他ニアルカ知リ
マセヌガ、私ノ調ベタ所ニ依レバ、制裁ノ
規定ガ無イノデアリマス、制裁ノ規定ガナ
ケレバ工場監督官ガ、縱シバ道德的ニ工
場主ノ反省ヲ促シテモ、工場主ガ忠告ニ從
ハナイ場合ニハ、如何トモスルコトガ出來
ナイ、而モ往々ニシテ、人道上ノ大問題ヲ
起スヤウナコトニナル次第デアリマスカ
ラ、此點ニ對シテ政府ハ工場附屬寄宿舍規
則ニ關聯シテ、同時ニ之ヲ犯ス者ニ對シテ
ハ嚴重ナル制栽ヲ以テ臨ムベキモノデア
ルト信ズルノデアリマスガ、其點ニ對シテ、
何等カノ考慮ガアルノデアリマスカ、無イ
ノデアリマスカ、其點ヲ御伺致シタイノデ
アリマス、更ニ其次ハ工場監督官ニ關スル
問題デアリマス、此問題ニ付テハ三點御
尋致スノデアリマスガ、第一ニ御尋致シタ
イト思ヒマスコトハ工場監督官ノ地位ヲ
獨立セシメテ、其地位ヲ保障スルノ御考ガ
ナイカト云フコトデアリマス、是ハ工場法
運用ノ上ニ於テ、重大ナル影響ヲ與フルモ
ノデアリマシテ、現ニ地方ノ狀況ヲ見マス
ナラバ工場監督官ハ地方ノ警察部長ノ
下ニ隷屬ヲシテ、其監督ヲ受ケテ居ルデア
リマス所カラ、往々ニシテ工場監督官ガ、
獨立ノ立場ニ於テ其權限ヲ行ハントスルヤ
ウナ場合ニ於テ、地方ノ政治的ノ勢力、或
ハ政黨的ノ勢力ノ爲ニ、十分ニ工場監督官
ガ、其權限ヲ行ヒ得ザル例ガ今迄ニ幾ラモ
アルノデアリマス、私ハ其事實ヲ握シテ居
ルノデアリマスガ、ソレハ委員會等ニ於テ
確實ニ實例ヲ申上ゲテ、政府ノ御意見ヲ伺
ヒタイト思フノデアリマシテ、此機會ニ於
テハ、唯〓サウ云フ事實ガアルト云フコト
ダケヲ申上ゲルノデアリマス、尙ホ又工場
監督官ガ、工場法違反ノ事實ヲ發見致シマ
シタ場合ニ於テモ、工場監督官ハ司法警
察官ノ資格ガ無イノデアリマスカラ、一 一
歸廳致シマシテ上司ノ、卽チ警察部長ニ報
告ヲシテ警察部長ノ栽量如何ニ依テ、此
工場法違反ノ事件ト云フモノガ摘發サレル
ノデハナイカト云フ風ニ思ハレル、間違ガ
アリマシタナラバ御訂正ヲ願ヒタイノデア
リマスガ、サウ云フ風ニ考ヘラレマス結果、
工場法ノ厲行ト云フモノガ、ドウモ兎角有
耶無耶ノ間ニ葬ラレル例ガ少クナイ、デア
リマスカラシテ、若シ此工場監督官ト云フ
モノヲシテ、十分ニ其職務ヲ執行セシメテ、
工場法制定ノ本旨ノ實現ニ努カシヤウトス
ル誠意ガアルナラバ寧口工場監督官ノ地位
ヲ獨立ニ保障スル方法ヲ講ズルト同時ニ、
進ンデ勅令ニ依テ工場監督官ニ、司法警察
官トシテノ資格ヲ認メテハドウカト云フコ
トヲ御伺致シタイノデアリマス、御承知ノ
ヤウニ、刑事訴訟法ノ第二百五十條ニ依リ
マスナラバ勅令ニ依テ檢事ノ指揮命令ヲ
受ケテ活動シテ居リマス所ノ普通ノ司法警
察官以外ニ、勅令ニ依テ司法警察官ヲ定メ
ルコトガ出來ルヤウニナッテ居ルコトヽ心
得ルノデアリマスガ、卽チ勅令ニ依テ工場
監督官ニ司法警察官ノ資格ヲ與ヘ、工場監
督官ガ工場法違反ノ事實ヲ知ルヤ否、直立
遲滯ナク、司法警察官トシテ、卽チ此罰則
ノ適用、又機宜ノ處置ヲ執ルコトガ出來ル
ヤウニスル必要ガナイカト考ヘルノデアリ
マスガ、其點ニ對スル政府ノ御所見ヲ御伺
致シマス、次ニ工場監督官ノ人數ヲ增ス、
卽チ增員ヲ爲スト云フ御考ハアリマセヌ
カ、工場監督官ハ、中央ノ社會局ニ於ケル
工場監督官ノ數モ決シテ多イトハ言ヘナイ
ト思ヒマスガ、殊ニ地方ノ工場監督官ノ如
キモノハ、非常ニ少イ、工場監督官補ヲ合
セマシテモ、其數ガ極メテ少イノデアリマ
シテ、地方ノ工場等ニ於テハ、年ニ一囘位
シカ工場監督官ノ巡察ヲ受ケナイヤウナ工
場ガ澤山アル、二年三年引續イテ、一段先に
工場監督官ノ視察ヲ受ケナイト云フ工場ハ
ナイヂヤナイ、ソレデハ如何ニ完備シタ工
場法ガアリマシテモ工場法ヲ厲行スル人
間ノ活動ガ不十分デアリマスナラバ、何等
ノ效用ヲ爲サナイト信ズルノデアリマスガ
此點ニ對シテ政府ハドウ云フヤウナ御考ヲ
持ッテ御出デニナリマスカ、若クハ工場監督
官ノ人數ヲ增サナクテモ、他ノ適當ノ方法
ニ依テ、工場法ノ厲行ニ付テ御考ヲ持テ居
ルカ、ドウカト云フコトヲ、併セテ御伺致
シタイノデアリマス、尙ホソレニ關聯致シ
マシテ、婦人ノ監督官ヲ御設ケニナル所ノ
御考ハナイカト云フコトヲ序ニ御伺致シマ
ス、是ハ國際勞働條約、其他國際勞働關係
ニ於テ、婦人監督官ヲ設ケルコトハ、モウ
旣ニ決マリ切ッテ居ルコトデアリマスガ、マ
ダ我ガ日本ニ於テハ、其運用ガナイヤウデ
アリマス、而モ我國ノ工場勞働者ノ數ヲ見
マスナラバ男子ノ勞働者ノ方ヨリモ、婦
人ノ數ノ方ガ多イノデアリマス、昭和二年
社會局ノ發表ノ工場勞働者ノ數ヲ見マスト
云フト、男子ノ勞働者ノ數ノ七十三万四十
五人ニ對シテ、婦人ノ勞働者、卽チ適用工
場ニ於ケル婦人ノ勞働者ノ總數ハ八十五万
四千百四十九人デアリマス、卽チ婦人ノ勞
働者ノ方ガ、遙ニ男子ノ勞働者ヨリモ多イ
ヤウデアリマスガ、此多數ノ婦人ノ勞働者
ヲ有ッテ居リマス日本ノ工場ノ狀態ノ下ニ
於テ、工場法ヲ適用シテ、遺憾ナカラシメ
ントスルコトノ爲ニハ婦人ノ監督官ガ必
要ナコトヽ信ズルノデアリマス、婦人ノ問
題ニ付テハ、男子デハ十分手ノ行屆カナイ
所ガアルデアラウコトハ深ク說明ヲスル
マデモナイコトデアリマス、而モ其點ニ對
スル御考慮ガアルカモ知レマセヌガ、其任
命ヲ見ナイノデアリマスカラ、此點ニ付テ
ドウ云フ御考ヲ持シテ居リマスカ、此點ヲ明
ニシテ戴キタイト思フノデアリマス、最後
ニ私ハ、工場法違反ノ制裁ニ關スル問題、
處罰ニ關スル問題ニ付テ簡單ニ一言申上ゲ
タイト思フノデアリマス、工場法違反ノ場
合ニ於ケル際ニハ、色〓ナ制裁ガアリマシ
テ、其極刑ハ千圓以下ノ罰金卜云フコトニ
ナッテ居リマスガ、是ハ罰金刑ヲ以テシテ
ハ不十分デハナイカ、法ノ厲行ヲ期スル爲
ニハ、不正ナル方法ニ依テ脫法的ノ行爲ヲ
爲シテ憚カラザル工場主、事業主ニ對シテ
ハ極刑トシテハ寧ロ體刑ヲ以テ臨ム必要
ガアルノデハナイカト一云フ風ニ考ヘルノデ
アリマス、私ハ法律ノコトハ素人デアリマ
スケレドモ、刑罰法ニ關スル一般ノ傾向デ
アルト云フコトヲ伺ヒマスニ、體刑ヨリ罰
金刑ニ向フ趨勢ガアルト云フコトヲ聞イテ
居ルノデアリマス、現ニ獨逸ノ刑法改正案
ノ如キモ、體刑ヨリ罰金刑ニ向フ傾向ガア
ルト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマヌ
ガ、併シ是ハ場合ニ依リケリデアリマス、
事業主、工場主ト云フ-假令何十人デモ、
何百人デモ、勞働者ヲ使用シテ、資本ヲ有ッ
テ事業ノ經營ニ當ル人ハ、相當資力ニ餘裕
ノアル人デアリマスカラ、斯ウ云フ資力ノ
アル人ニ對シテ、罰金刑ヲ以テ臨ンデモ、大シ
タ效果ヲ發揮スルコトハ出來ナイデアラウ
ト思ヒマス、現ニ吾々ノ經驗ノ範圍ニ依リ
マシテモ、悉クデハアリマセヌガ、工場主
中ニハ罰金刑ヲ課セラレテモ、高ガ多クテ
モ千圓ダ、千圓位罰金ヲ拂ッテモ、工場法ノ
違反ヲシヤウ、工場法ヲ潜ッタ方ガ得ダト
云フヤウナコトヲ放言ヲシテ居ル工場主モ
澤山アリマス、私モサウ云フ事實ヲ能ク知ッ
テ居ルノデアリマス、此點カラ申スナラバ、
私ハ此制裁法規ト云フモノガ、頗ル不十分
デアルノミナラズ、可ナリ不正ナル所ノ工
場主ノ爲ニ、工場法ハ翻弄ヲ受ケテ居ルモ
ノト言ハナケレバナラヌ、斯クテハ單リ工
場法全體ノ意義ヲ全ウスルコトガ出來ナイ
ノミナラズ、工場法ナル法ノ威信ニ關スル
問題デアルト信ジマス、故ニ私ハ此問題ニ
付テハ、進ンデ悉ク是ハ體刑ヲ以テ臨メト
ハ申シマセヌ、併ナガラ極刑トシテ千圓以
下ト云フ位ナ、手緩イ制裁ノ方法ニ依ラズ、
進ンデ體刑ヲ以テピシット堪ヘルヤウナ方
法ニ依テ制裁ヲ行フニ非ズンバ、工場法ノ
存在スル意義ガアルマイト信ズルノデアリ
さく、現ニ昭和二年ノ一月ヨリ十二月ニ至
ル一ケ年ニ於ケル所ノ、工場法違反ノ處罰
ヲ受ケマシタ人數ガ六百二十五件デアリマ
ス、六百二十五件デアリマスルガ、是ハ先
刻モ申上ゲマス通リ、工場監督官ノ數ガ甚
ダ少ナイノデアリマス、隨テ各工場ヲ十分
ニ見廻ルコトガ出來ナイノデアル、二五、
一遍廻ルコトガ出來ルカ出來ナイカ位ノ有
樣デアリマシテ、而モ尙ホ工場法ノ違反ヲ
敢テシ、處罰ヲセラレタ者ノ件數ノ六百二
十五件ト云フコトガ、社會局發表ノ勞働時
報ニ載ッテ居ル、斯ウ云フヤウナ事實ヲ以
テ見マスレバ、實際ノ工場法ノ違反者ト云フ
モノハ、恐ラク十倍、二十倍、三十倍ニ達
スルモノト思ハレルノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ狀態デハ、私ハ此工場法ナルモ
ノガ假ニ出來テ居ッテモ、十分ナル其效果
ヲ期スルコトハ出來ナイ、況ヤ現行ノ工場
法ソレ自身スラ、不備不完全ナルニ於テヲ
ヤデアリマス、此點ヨリ考ヘマシテ、私
此處罰ノ問題ノ如キモ體刑ヲ以テ臨ムト云
フ位ノ極刑ヲ科スルノ必要アルモノト考ヘ
ルノデアリマス、之ニ付キマシテノ政府ノ
御考ハドウデアリマスカ、御伺致シタイノ
デアリマス、都合、以上五點ニ付キマシテ
政府ノ御答辯ヲ御願致シマス
〔政府委員長岡隆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=11
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012・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 鈴木君ハ私ノ
答辯ヲ御忌避ニナリマシテ、政務次官ノ答
辯ヲ煩シタイト云フノハ自分ノ質問ハ多
ク政務ニ關スル事デアルカラ、事務官ニハ
分ルマイト云フヤウナ御趣意デアリマシタ
ガ、伺ッテ居リマスルト、仲〓細カイ事務的
ノ問題モアリマスヤウデスカラ、一應私カ
ラ御答申上ゲマシテ、尙ホ御不滿デゴザイ
マスレバ、政務次官ヨリ御答スルコトニ致
シテ、ソレデ御滿足ヲ得タイト思ヒマス、
第一ハ華盛頓條約ニ於ケル勞働時間ニ關ス
ル御質問デゴザイマス、是ハ鈴木君ガ御示
ノ如ク、當然我ガ日本政府ヲ代表シテ華盛
頓ニ參リマシタ鎌田、岡兩代表ハ、確ニ華
盛頓會議ニ於テ九時間半ノ勞働條約ヲ日本
ハ實行スル誠意ガアルト云フコトヲ申シタ
ニ違ヒアリマセヌ、此事ニ付キマシテハ
今日色〓强辯ガマシイ事ハ申上ゲマセヌ、
又若シ其當時ノ產業ノ狀態ガ〓日マデ續イ
テ居リマシタナラバ、恐ラクハ日本政府ハ、
此華盛頓條約ノ勞働時間制ヲ批准シテ居ッ
タラウト考ヘマス、併ナガラ鈴木君モ御承
知ノ通リ、華盛頓會議ノ翌年ニハ、我國ニ
於テハ空前ノ產業界ノ不景氣ガ參リマシ
テ、幾多ノ銀行、幾多ノ事業家ガ破產ヲ致
シテ居リマス、其後又一二年ヲ經マシテ、
我國ニ於テハ未曾有ノ大震火災ト云フヤウ
ナ豫期セザル問題ガ起リマシテ、產業界ガ
再ビ容易ニ短イ時間ニ於テ癒スベカラザル
打撃ヲ受ケテ居リマス、斯ウ云フヤウナ事
ガ無カッタナラバ、恐ラクハ鎌田、岡兩代表
ノ約束シテ參リマシタ勞働時間制ト云フモ
ノハ、日本ハ批准シテ居リマシタラウケレ
ドモ、其後日本ノ產業界ハ、斯ノ如キ豫期
セザル色ミナ事情ガ起リマシテ、產業上色
色ナ打撃ヲ受ケテ居リマスカラ、遺憾ナガ
ラ今日迄ハ此時間制ヲ批准スルコトガ出
來ナカッタノデアリマス、只今鈴木君ハ、此
問題ニ付テ勞働會議ノアル度ニ、世界各國
代表ノ冷評ヲ受ケル、又世界ニ對シテ不信
任ヲ示スト云フヤウナ、銳イ御意見デアリ
マシタガ、是ハ鈴木君ノ御承知ノ通リ、日
本ハ特殊國ノ例外ヲ認メテ居リマスケレド
モ、特殊國ノ例外ヲ認メテ居ナイ五大產業
國ニ於テモ、八時間ノ勞働制ト云フモノハ
未ダ完全ニ批准サレテ居リマセヌ、是ガ完
全ニ批准サレテ居リマス所ハ、白耳義其他
ノ小サイ國ダケデアリマシテ、佛蘭西其他
ノ大產業國ニ於キマシテハ、是ハ唯〓條件
附批准ト云フヤウナコトニナッテ居リマシ
テ、英國ガ之ニ付テ批准ヲ致サナイ限リ
佛蘭西其他ノ國ニ於テモ八時間制ニ付
テ批准ヲシナイヤウナ狀態ニナッテ居リマ
ス私ガ英國ノ議會ノ速記錄ヲ見マスト、
昨年ノ十一月二十日ノ上院ニ於ケル工部大
臣ノ答辯ヲ見マスト、英國ニハ當分此八時間
制ヲ批准スルト云フヤウナ模樣ハアリマセ
又、隨ヒマシテ八時間制ヲ約東シテ歸リマ
シタ所ノ產業國ニ於キマシテモ、マダ此勞
働時間制ヲ批准シテ居ナイ國ガ多イノデア
リマスカラ、鈴木君ガ世界ノ冷評ヲ御受ニ
ナリ、若クハ世界ノ不信任ヲ受ケラレル必
要ハナカラウト考へテ居リマス、ソレカラ
第三ノ工場法ニ關スル御質問デゴザイマス
ガ、工場法ノ第四條ノ扶助カ賠償カト云フ
問題ニ付キマシテハ、是ハ御承知ノ通リ、
學者ノ意見ノ岐レル所デアリマシテ、民法
上ノ故意過失ニ依ルモノダケヲ賠償スルガ
宜イカ、若クハ企業家其モノニ相當ノ危險
ノ伴フモノデアルカラ、企業者ソレ自身ガ
賠償ノ責任ヲ負フベキカト云フコトハ、是
ハ學者ノ議論ノ岐レル所デアリマシテ、私
今日之ニ付テ兎ヤ角學問上ノ議論ハ致シマ
セヌ、唯、民法上ノ損害ノ賠償ヲ受ケタ場
合ニ於キマシテモ、猶且ツ工場法ノ扶助ヲ
受ケル方ガ適當デアルト云フ御意見デアル
ナラバ、左樣ナ修正案ヲ議員ノ御權限トシ
テ御提出ナサル方ガ宜イト思ヒマス、其次
ノ扶助ノ金額ニ付テハ、是ハ非常ニ少イト
云フ御質問デゴザイマスガ、是ハ見方ノ問
題デアリマシテ、工場法令ガ發布サレマシ
タ後ニ、大正五年七月一日工場法令ノ改正
ニ依リマシテ、相當扶助ノ金額ヲ增加致シ
テ居リマス、鈴木君ノ御意見カラ言ヒマス
レバ是デハ尙ホ不十分カハ存ジマセヌケ
レドモ、政府ハ產業ノ將來ノ狀況ヲ考慮致
シマシテ、產業ノ狀況ガ許スナラバ、將來ニ
於テモ扶助ノ金額ヲ成ルベク增加致シタイ
ト考ヘテ居リマス、ソレカラ扶助料ノ支給
ガ遲滯スルト云フヤウナ御意見デゴザイマ
シタガ、是ハ成ベク扶助料ノ支給ハ遲滯ナ
ク支給スルト云フコトハ、希望致シテ居リマ
スケレドモ、慥カ法ニ於キマシテモ、資力
無キ工場主ニ於キマシテハ之ヲ分割シテ
支給シ得ルト云フヤウナ規定ヲ設ケテ居
リマス筈デゴザイマス、其次ニ工場寄宿
舍ノ規則ニ付キマシテ、昭和二年四月六
日發布以前ノモノニ付テハ、此法令ノ强
制ハ及バナイカラ、其發布以前ノ古イ工
場寄宿舍ニ付テモ、此規則ヲ遡ヲテ及ポシ
テ吳レト云フヤウナ御議論デゴザリマシ
タガ、是ハ鈴木君ハ、此工場附屬寄宿舍取
締規則ヲ大シテ能ク御覽ニナラナカッタノ
デハナイカト、失禮ナガラ考ヘルノデアリ
マシテ、是ハ勿論、將來ノ新築、增築、改
築ト云フモノニハ適用ハゴザイマスルガ、
其規則ノ或ルモノニ付キマシテハ、舊來ノ
寄宿舍ニ付キマシテモ猶豫期間ハ設ケテア
リマスガ、二年若クハ三年ノ猶豫期間ガ經
過致シマスレバ當然此工場附屬寄宿舍取
締規則ノ適用ヲ見ルノデアリマス、全然舊
來ノ寄宿舍ニハ適用ガナイト云フノデハア
リマセヌ、猶豫期間ハ設ケテアリマスガ、
此點ニ付キマシテ多少千慮ノ一失デ、御見
間違ヒニナッタノデハナイカト考ヘマス
ソレカラ制裁ノ規定ガ工場寄宿舍ノ取締規
則ニ無イガ、制裁ノ無イ規定ガ何ノ權威ガ
アルカト云フ御質問デゴザイマスガ、是モ
甚ダ失禮ナコトヲ申上ゲマシテ御氣ニ觸ル
カ存ジマセヌガ、工場法ノ本法ニ「本法若
ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ
爲ス處分ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ罰
金ニ處ス」ト云フ規定ガアリマスノデ、工
場附屬寄宿舍取締規則ハ工場法ニ基イテ
發スル命令デアリマスカラ、當然本法ノ千
圓以下ノ制裁ガアルノデアリマス、前ニ申
述ベラレマシタヤウニ、是ガ體刑デナイカ
ライカヌト云フヤウナ御議論デアリマスレ
バ、是ハ別ト致シマシテ、制裁ノ規定ハ
工場法ノ本法ニアルノデアリマシテ、最モ
失禮ナガラ御見間違ヒニナッタノデハナイカ
ト存ズルノデアリマス、ソレカラ工場監督
官ノ位置ニ付テ、今少シク之ヲ向上致シ
其位地ヲ保障スル必要ハナイカト云フコト
ハ是ハ洵ニ御同感デアリマシテ、獨リ工
場監督官ノミナラズ、一般事務官ノ地位ヲ
向上致シ、若クハ其保障ヲ致スト云フコト
ハ洵ニ望マシイコトデアリマシテ、私共
モ被害者ノ一人デゴザイマスカラ、之ニ付
キマシテハ出來得ルコトナラバ、其地位ヲ
保障スルト云フコトハ望マシイコトデアル
ト考ヘテ居リマス、私共ハ能ク存ジマセヌ
ガ、一般事務官ノ地位ノ保障ニ付テハ、只今
行政審議會等ニ於キマシテ、著々其審議ヲ
進メラレテ居ルコトヽ考ヘマスカラ、獨リ
工場監督官ノミナラズ、吾々事務官ノ地位
ノ保障ニ付テモ、遠カラズ相當ノ規定ガ設
ケラレルコトヽ考ヘテ居リマス、ソレカラ
工場監督官ノ人員ノ增員ニ付キマシテモ、
是モ豫算ノ許ス限リ-只今ノ人員ヲ以テ
シテハ不十分ト考ヘテ居リマスノデ、財政
經濟ノ許ス限リ、將來相當ノ增員ヲ要求致
シタイト考ヘテ居リマス、尙又婦人ノ監督
官ノ問題デゴザイマスガ、之ニ付キマシテ
ハ從來其例ヲ見ナカッタト云フヤウナ御質
問デゴザイマスガ、是ハサウデハアリマセ
ヌ、嘗テ大阪府ニ於テモ、婦人工場監督官
補ヲ任命致シマシタシ、又現在社會局ニ於
キマシテモ、婦人工場監督官補ヲ任命シ
テ、現ニ職務ヲ行ッテ居リマス、唯〓殘念ナ
コトニハ婦人ヲ任命致シマシテモ、直グ
オ嫁ニ參リマスノデ、永續キガシマセヌ、
ソレハ甚ダ殘念デゴザイマスガ、出來得ル
ナラバ將來婦人ノ監督官ヲ現在ヨリモ增員
致シタイト考ヘテ居リマス、最後ノ御質問
ノ工場法違反ニ付テ、罰金デハ甚ダ不十
分デアル、體刑ヲ科スルガ宜シイト云フ點
ニ付キマシテハ、是ハ御意見ヲ尊重致シマ
シテ、御希望通リ參リマスカドウカ御約
束ハ出來マセヌケレドモ、將來ニ於テ篤ト
考慮ヲ致シタイト考へテ居リマス
〔鈴木文治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=12
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013・鈴木文治
○鈴木文治君 大體御親切ナ御答辯ガアリ
マシテ、大分諒承致スコトガ出來タノデア
リマス、併シ尙ホ不十分ナ點モアリマス
シ、更ニ色と質問應答ヲ重ネナケレバ、ハツ
キリシ得ナイヤウナ點ナドモアルノデアリ
マスガ、ソレ等ハ委員會ニ於テ、重ネテ一
問一答ノ形ニ於テ御尋申上ゲタイト考ヘマ
スカラ、本議場ニ於テハ申上ゲマセヌ、唯と
一言勞働時間制ノ問題ニ付テ、八時間制勞
働條約案ハ、英吉利モヤッテ居ラヌカラ、日
本ハ別ニソレニ付テ心配スル必要ハナイデ
ハナイカ、世界列國ノ冷評ヲ氣ニスル必要
ハナイデハナイカト云フ、多少逆襲的ノ御
答辯デアリマシタケレドモ、是ハ社會局長
官長岡君自身ガ先年政府代表トシテ自ラ國
際勞働會議ノ議場ニ臨ンデ、今答辯サレタ
ヤウナ内容ニ付テノ釋明ヲセラレテ、非常
ニ自ラ困シテ居ラレタコトヽ信ズルノデア
リマス、私ハ社會局長官ヲ、此意味ニ於テ
此席ニ引出スコトハ如何カト思ヒマシタカ
ラ、實ハ控ヘテ居ッタノデスガ、自ラ買ッテ
答辯サレタ以上、一言申上ゲナケレバナラ
ナイノデアリマス、英吉利ガ批准ヲシテ居
ラナイト云フコトハ、八時間制勞働條約案
デアリマス、日本ハ八時間制勞働條約案ノ
原則ヲ認メタ、ケレドモ特殊國ノ待遇ヲ要
求シテ、九時間半制ノ勞働時間ニシタノデ
アリマス、而モ此九時間半ノ勞働時間ニ對
シテ、印度ハ十時間ノ勞働時間ニシテ貰ヒ
タイト云フコトヲ賴ンデ、日本ノ約束ヲシ
テ、特殊國ノ待遇ヲ受ケタノデアリマス、
印度ハ英吉利ノ屬國デハナイカ、英吉利ノ
屬國タル印度ト、僅カ半時間位シカ違ハヌ
所ノ、九時間半制ヲ日本ガ要求シテ、幸ニ
シテソレハ容レラレタガ、而モ其際ニ於テ、
御承知デモアリマセウガ、佛蘭西ノ勞働代
表「ジューオー」ハ、日本ハ斯ノ如キ特殊國
ノ待遇ヲ要求スルコトハ不都合デアル、日本
ハ今後數年ニシテ八時間勞働時間、制條約案
ヲ採用スルコトガ出來ル筈デアルト云フ決議
案ヲ提出シテ、ソレガ四十五票對四十二票
1僅カ三票ノ差ヲ以テ破レタ、此事實カ
ラ見ルナラバ第一回國際勞働會議ニ於ケ
ル大勢ガドウデアルカト云フコトハ能ク
御承知ノ筈デアリマス、八時間制勞働條約
案ヲ批准シナイコトニ付テ、英吉利ガ批准
シナイカラ日本ガシナクトモ不都合アルマ
イト云フコトハ、私ハ諒承致シ兼ネマス、
日本ハ特殊國ノ待遇ヲ要求シ、ソレガ認メ
ラレテ九時間半制ノ勞働時間ガ認メラレ
ク、其時ニ約束ヲシタ英吉利ノ屬國タル印
度ハ、千九百二十一年ニ既ニ批准シテ厲行
シテ居ルノニ、尙ホ日本ガヤッテ居ラヌト
云フコトガ、世界列國ガ日本ノ反動的ノ狀
勢ニ對シテ、冷笑的氣分ヲ持ツ所以デハナ
イカト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、是ハ
何レ〓年ノ國際勞働會議ニ於テ、此條約改
訂ニ關スル問題ガ出ルダラウト思フ、其際
何レ問題ニナルデアラウト思ヒマスケレド
モ、私ハ英吉利ガヤラナイカラ日本ガヤラ
ナイデモ宜イト云フコトハ、議論ニナラナ
イモノト思フ、併シ是ハ意見ノ相違ニナル
コトデアリマスカラ申上ゲマセヌ、其他ノ
點ニ付テ、御親切ノ御答辯ノアッタコトニ
付テハ感謝申上ゲマスガ、甚ダ不十分ノ
點モアリマスカラ、重ネテ委員會ノ席上ニ
於テ詳シク政府當局ニ對シテ御質問申上ゲ
タイト思ヒマシテ、此質問ハ是デ打切リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=13
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014・岡崎久次郎
○岡崎久次郞君 議長ノ答辯ニ關聯シテ、
簡單ニ質問致シタイ卜思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=14
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015・元田肇
○議長(元田肇君) 通告ガマダ河上丈太郞
君ガアリマスカラソレヲ許シ、其後デ何デ
スカ承リマセウ、河上丈太郞君
〔河上丈太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=15
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016・河上丈太郎
○河上丈太郞君 私ハ工場法ノ改正ニ關
シ、局限サレタコトニ、對スル質問ヲシタ
イト思シテ居リマス、鈴木君カラ改正ニ關ス
ル以外ノ根本ノ問題ニ付テノ質問モ濟ンデ
居リマスカラ、此度ノ深夜業廢止、及ビ救
恤ノ規定ヲ小サナ工場ニモ適用スルト云フ
改正案デアリマスガ、ソレニ付キマシテ私ハ
三點ノ疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、第一
ハ工場法ノ規定ニ於テハ、十時カラ五時マ
デガ、矢張國際勞働條約ノ規定ニ依テ深夜
ト決ッテ居ッテ、ソレヲ日本ノ政府ガ直譯的
ニ採用シテ居ルノデアッテ、日本ノ政府ノ
大體ノ哲學、殊ニ社會問題ニ關スル哲學
ハ日本ハ特殊制デアルト云フ哲學ヲ持ツ
テ御出デニナル、然ルニ國際條約ノ規定、
十時カラ五時ト云フ風ナ規定ヲ、單純ニ、
直譯的ニ之ヲ採用シテ居ルガ、日本ノ氣候
ノ關係ヤ、緯度ノ關係ヤ、或ハ勞働者ノ各
種ノ條件カラ見ルナラバ、之ヲ少シ變ヘテ
ハドウデアルカ、變ヘテ欲シイト云フヤウ
ナ勞働階級ノ要求ガ實際ニアルト私ハ信ジ
テ居ルノデアリマス、ドウ云フ風ニ變ヘル
カト云フナラバ、夜ハモウ一時間位延バシ
テモ宜イガ、朝ヲ六時頃マデニシテ貰ヒタ
イト云フ要求ガアル、斯ウ云フ風ナ特殊的
ナ關係ニ付テ、政府ハドウ云フ風ニ考ヘラ
レテ居ルカト云フ點デアリマス、第二ニハ
深夜業ノ廢止ヲ實行スルニ當ッテ、或ル「モ
スリン」會社ノ如キハ、七月カラ實行サレル
ニモ拘ラズ、之ヲ實行シナイト云フ風ナコ
トニ決ッテ居ルト云フ噂ヲ私ハ聞イテ居ル、
其理由ハ何デアルカト云フナラバ、今日ノ
工場法ノ罰則ノ規定、鈴木君ガ今批判セラ
レマシタ規定デアリマスガ、假令工場法ノ
深夜業廢止ニ違反シテモ、罰金ハ千圓デア
ルカラ、千圓罰金ヲ納メテモ損ハナイト云
フ、功利的ナ立場カラ、深夜業廢止ニ殊更
ニ違反シテ行カウト云フヤウナ傾向ガアル
ト聞イテ居ル、此千圓以下ノ罰則ノ規定ニ
付テハ、鈴木君ガ今申上ゲマシタノデ、玆
ニ色こ議論スルコトヲ避ケマスケレドモ、
此處ニモ工場法ノ罰則ノ規定ノ缺陷ノ一ツ
ガ、深夜業廢止ノ七月一日カラ行ハレル所
ノ事情ニ依テ、罰則ノ缺陷ガ暴露スルト考
ヘヘ是等ノ點ニ對スル政府ノ所見ハドウ
デアルカト云フ點デアリマス、第三ハ所謂
深夜業ノ廢止ニ依テ、勞働時間ノ短縮ガ來
リ、隨テ賃銀ノ引下ト云フコトガ、各會社
ニ依テ行ハレル樣子ヲ聞イテ居ル、所謂深
夜業手當ノ廢止其他ニ依テ、勞働ノ賃銀ガ
引下ゲラレル、若モ深夜業ノ廢止ト云フコ
トガ社會政策ニ立脚シテ居ル立法デアッテ、
其結果勞働者ノ賃銀ノ引下ニナルト云フコ
トハ、是ハ子盾スル結果ヲ生ズルノデアツ
テ、今日ノ勞働階級ハ、深夜業ノ廢止ニ對
スル絕大ノ要求ガアルケレドモ、其結果ト
シテ、賃銀ノ引下ゲラレルト云フコトニ對
シテハ、絕大ノ不安ヲ感ジテ居ルノデアリ
マス、政府ノ所見ハ如何デアルカ、此點ニ
付テ伺ヒタイノデアリマス、若モ深夜業廢
止ノ結果トシテ、勞銀ノ引下ガ起ルナラバ、
是ハ由々敷キ問題ヲ發生スルト思フノデア
リマス、賃銀値上ノ要求、勞働時間ノ短縮
ト云フモノハ兩立シ要求サレル所ノ勞働
階級ノ基本的要求デアルト私ハ思フノデア
リマス、然ルニ今日ノ工場法ノ規定ナリ、今
日ノ日本ノ事情カラ見ルナラバ、當然相共
ニ主張サルベキ所ノ勞働時間ノ短縮ト、賃
銀ノ値上ト云フコトガ、此七月一日以後ノ
深夜業廢止ノ結果、分裂シテ來ル、逆ニナツ
テ來ルト云フヤウナ事情ヲ發生スル處ノ虞
ガ十分ニアルデアラウト思フノデアリマ
ス、是等ノコトニ對スル政府ノ所見ト對策
ハドウデアルカ、私ハ簡單ニ以上ノ三點ニ
付テ、長岡サンデ結構デゴザイマスカラ御
親切ナル御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=16
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017・元田肇
○議長(元田肇君) 長岡政府委員
〔政府委員長岡隆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=17
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018・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 河上君ノ御質
問ニ對シマシテ、簡單ニ御答申上ゲマス、工場
法ノ深夜業ヲ午後十一時ヨリ午前五時トセ
ズシテ、午後十二時ヨリ午前六時トスルガ
適當デハナイカト云フコトニ付キマシテ
ハ、現在之ニ對シテハ色こノ陳情、若クハ
要求ガ提出サレテ居リマス、併シ只今マデ
御承知ノ通リ、深夜業ノ禁止ハ本年ノ七
月一日デゴザイマスガ、紡績會社ノ或モノ
ハ旣ニ今日ニ於テ深夜業ヲ禁止シテ居リ
マスガ、午前五時ノ出勤ガ非常ニ職工ノ爲
ニ困難デアラウト云フ豫想ヲ、裏切リマシ
テ、午前五時ノ出勤ト云フモノハ冬期ニ
於テモ左程困難デナイ五時ノ出勤ハ遲刻ガ
非常ニ少イト云フ統計ヲ示シテ居リマス、
寧口午後十一時ヲ午後十二時ニ延長致シマ
スナラバ、午後十二時マデ作業致シマシ
テ、寄宿舍ニ歸リ、若クハ自宅ニ歸レバ
就寢時間ハ午前一時頃ニナル、此方ガ苦痛
ガ多カラウト云フコトニ、只今ハ意見ガ傾
イテ居リマス、併ナガラ是ハ只今迄ノ經驗
デアリマシテ、當局者ハ決シテ現在マデ得
マシタ經驗ヲ楯ニ取リマシテ、行掛リ上之
ヲ主張スルト云フヤウナ、サウ云フサモシ
イ意見ハゴザイマセヌカラ、此事ニ付キマ
シテハ尙ホ篤ト將來攻究致シタイト考へ
さん、第二ノ深夜業禁止ニ付テ、七月一日
カラ强制サレルニ付テモ、ソレハ處罰ガ罰
金刑デアルカラ、千圓ノ罰金ヲ引續イテ納
メテモ、尙且ツ深夜業ヲ法ノ規定ニ背イテ
行フモスリン會社モアル、是ハドウデアル
カト云フ御質問デアリマスガ、是ハ罰金ヲ
科シテモ尙且ツ深夜業ヲ改メナイモノハ、是
ハ行政執行法ニ依テ强制スル途ガアリマス
カラ、七月一日ニ至ッテ、尙且ツ法ノ規定ニ
背イテ、深夜業ヲ行フ「モスリン」會社ガア
リマスナラバ只今申シマシタ行政執行法
ノ規定ニ依テ、斷手トシテ嚴罰致ス積リ
デゴザイマス、尙ホ第三ニ、深夜業禁止ニ
依テ賃銀ヲ引下ゲルト云フ危險ハナイカト
云フ御質問デゴザイマスガ、今日マデ法ノ
執行以前ニ實行致シマシタ數箇ノ紡績會社
ニ於キマシテハ事實上職工ノ賃銀ハ引下
ゲテ居リマセヌ、又私共紡績聯合會ノ幹部
等ト會ヒマシテ、只今マデノ話合ニ依リマ
シチハ、今日マデノ勞働賃銀ハ、引下ゲズ
シテ、深夜業ノ禁止ヲ實行致シタイト云フ
コトガ、多クノ紡績業者ノ意見ノヤウデア
リマスカラ、河上君ノ御意見ノヤウニ、深夜
業ノ禁止ニ依テ、職工ノ賃銀ガ低下サレル
ト云フヤウナ危險ヲ見ズシテ、滑ラカニ實
行シ得ルモノト考へテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=18
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019・元田肇
○議長(元田肇君) 岡崎久次郞君
〔岡崎久次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=19
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020・岡崎久次郎
○岡崎久次郞君 極メテ簡單ニ勞働時間制
ノ問題ニ付キマシテ、局長ノ御答辯ニ對シ
テ更ニ質問ヲ致シタイト思ヒマス、華盛頓
會議以來十年、尙ホ〓日我國ガ九時間半制
度ノ時間制サヘ勵行スルコトガ出來ナイト
云フ鈴木君ノ質問ニ對シテハ、本員モ洵ニ
遺憾ニ考ヘル所デアリマス、而シテ今日マ
デノ經驗ニ徵スルニ、其能率ニ於テ、或
總テノ條件ニ於テ、必シモ時間ヲ延シテ行
カナケレバナラヌト云フ必要ニハ迫ラレ
テ居ラナイト私ハ信ズルノデアリマス、局
長ノ意見ハ、或ハ企業者ノ多クノ意見ヲ代
表シ、資本家ノ意見ヲ多ク代表シテ、マダ
此際九時間半ニスル、或ハ短縮スルト規定
スルト云フコトハ、無理デアルト云フ御考
デアルノデアラウト思ヒマスガ、私ガ多ク
ノ企業家ヲ訪ヒ、意見ヲ聽キ、工業倶樂部
アタリノ多クノ相當ナ人ノ意見ハ、今日既
ニ規定サレテ實行サレテモ、敢テ差支ハナ
イト云フ意見ノ方ガ寧ロ多イカノヤウニ感
ズルノデアリマスガ、政府ノ見ル所ハ、尙
ホ今日マダ尙早デアッテ、マダ相當ノ年限
ヲ經ルニアラザレバ、此時間制ヲ確定スル
ト云フコトハ早イ、斯ウ云フ御考デアルヤ
否ヤ、此點ヲ直接簡明ニ承リタイ、斯樣ニ
考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=20
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021・元田肇
○議長(元田肇君) 長岡政府委員
〔政府委員長岡隆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=21
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022・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 只今岡崎君ヨ
リ、勞働時間制ヲ卽時斷行致シテモ、我日
本ノ產業界ニハ、大シタ打擊ハナカラウ、
寧ロ之ヲ卽行スル方ガ宜カラウト云フヤウ
十、非常ナ進步的ノ御意見ヲ伺ヒマシタコ
トヲ感謝致シマス、併シ當局者ノ見ル所ニ
依リマスレバ、日本ノ產業狀態ハ前後二
囘ノ恐慌ト、大震災ノ影響トガマダ全快致
シテ居リマセヌカラ、此勞働時間制其他ノ
勞働條件ノ改善ノ如キハ、漸ヲ逐ウテ產業
界ノ恢復ト共ニ進ミタイト云フ考ヲ持ッテ
居ルノデゴザイマス、唯、只今ノ御言葉ノ
中ニ、私ガ資本家ノ意見ヲ代表シテ云々ト
云フ御言葉ガアリマシタガ、私ハ資本家ノ
意見ヲ代表シテ申上ゲルノデハアリマセ
又、政府ハ資本家ノ意見ヲ代表モ致シマセ
ヌケレバ、勞働者ノ意見モ代表致シマセ
ヌ、國家ノ公僕ト致シマシテ、兩者ノ間ニ
立ッテ、中正ノ穩健、公平、無私ナル考ヲ
申上ゲテ居ル積リデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=22
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023・元田肇
○議長(元田肇君) 之ニテ通告ハ濟ミマシ
タ-日程第二ニ移リマス、日程第二、右
議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題
ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=23
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024・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出鑛業法中改
正法律案外一件ノ委員ニ併セ付託セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=24
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025・元田肇
○議長(元田肇君) 右動議ニ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=25
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026・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ、
右ノ動議ハ可決サレマシタ、日程第三、健
康保險法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-秋田政府委員
第三健康保險法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
健康保險法中改正法律案
健康保險法中左ノ通改正ス
第八條保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
被保險者ヲ使用スル事業主ヲシテ其ノ
使用スル者ノ異動、報酬等ニ關シ報告
ヲ爲サシメ又ハ文書ヲ提示セシメ其ノ
他健康保險ノ施行ニ必要ナル事務ヲ行
ハシムルコトヲ得
第十一條保險料其ノ他本法ノ規定ニ依
ル徵收金ヲ滯納スル者アルトキハ保險
者ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スベシ
前項ノ規定ニ依リ督促ヲ爲シタル場合
ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手
數料及延滯金ヲ徵收ス
第十一條ノ二前條ノ規定ニ依ル督促ヲ
受ケタル者其ノ指定ノ期限迄ニ保險料
其ノ他本法ノ規定ニ依ル徴收金ヲ納付
セザルトキハ保險者ハ國稅滯納處分ノ
例ニ依リ之ヲ處分シ又ハ滯納者若ハ其
ノ者ノ財產ノ在ル市町村ニ對シ之ガ處
分ヲ請求スルコトヲ得但シ保險者ガ國
稅滯納處分ノ例ニ依リ處分スルコトヲ
得ルハ政府ガ保險者ナル場合ニ限ル
保險者ガ前項ノ規定ニ依リ市町村ニ對
シ處分ノ請求ヲ爲シタルトキハ市町村
ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ
場合ニ於テハ保險者ハ徵收金額ノ百分
ノ四ヲ當該市町村ニ交付スベシ
前二項ノ規定ニ於テ町村トアルハ町村
制ヲ施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズ
ベキモノトス
第十一條ノ三保險料其ノ他本法ノ規定
ニ依ル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町
村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徴收金ニ
次ギ他ノ公課ニ先ツモノトス
第十一條ノ四保險料其ノ他本法ノ規定
ニ依ル徴收金ニ關スル書類ノ送達ニ付
テハ國稅徴收法第四條ノ七及第四條ノ
八ノ規定ヲ準用ス
第十三條中「工場法ノ適用ヲ受クル工場」
ヲ「工場法第一條ノ規定ニ依リ同法ノ適用
ヲ受クル工場」ニ改ム
第十六條中「工場法」ヲ「工場法第一條ノ
規定ニ依リ同法ノ適用ヲ受クル工場」ニ
改ム
第二十條中「喪失ノ日前一年內ニ於テ百
八十日以上被保險者タリシモノ又ハ」ヲ
削ル
第二十七條健康保險組合ハ事業主及其
ノ事業ニ使用セラルル被保險者ヲ以テ
之ヲ組織ス
第三十五條第二項ヲ削ル
第四十七條療養ノ給付及傷病手當金ノ
支給ハ同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ
發シタル疾病ニ付其ノ保險給付ヲ始メ
タル日ヨリ起算シ百八十日ヲ經過シタ
ルトキハ之ヲ爲サズ
第四十九條第一項中「二十日」ヲ「三十日」
ニ、「二十圓」ヲ「三十圓」ニ改ム
第六十一條中「鬪爭若ハ泥醉」ヲ「闘争、
泥醉若ハ著シキ不行跡」三六九
第八十一條保險料其ノ他本法ノ規定ニ
依ル徵收金ノ賦課又ハ徵收ノ處分ニ不
服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ又ハ行政
栽判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十二條前條ノ規定ニ依ル訴願ノ提
起アリタルトキハ主務大臣ハ第三次健
康保險審査會ノ審査ヲ經テ栽決ヲ爲ス
ベ
第八十四條第十一條ノ二ノ規定ニ依ル
處分ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願シ
又ハ行政栽判所ニ出訴スルコトヲ得
第八十五條第三項中「民事訴訟法ノ證據
調ニ關スル規定」ノ下ニ「及民事訴訟費
用法第九條及第十一條乃至第十三條ノ規
定」ヲ加フ
第八十六條中「若ハ裁決書」ヲ削リ「第百
六十七條及第百七十四條乃至第百七十七
條」ヲ「第百五十八條第一一項及第百五十九
條」ニ改ム
第九十二條事業主營業ニ關シ成年者ト
同一ノ能力ヲ有セザル未成年者若ハ禁
治產者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ於
テハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
中事業主ニ適用スベキ罰則ハ其ノ法定
代理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代
表スル者ニ之ヲ適用ス
第九十三條事業主ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニ
シテ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令
又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタル
トキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以
テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但
シ第八十六條ノ改正規定中民事訴訟法ノ
規定ノ準用ニ關スル部分ハ大正十五年法
律第六十一號施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員秋田〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=26
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027・秋田清
○政府委員(秋田〓君) 只今議題ト相成ク
テ居リマス健康保險法中改正法律案ノ提案
ノ主旨ヲ申上ゲタイト存ジマス、健康保險
ノ事業ハ、御承知ノ如ク昭和二年一月一日
ヨリ實施セラレタノデアリマスルガ、政府
ニ於キマシテハ此事業ガ小額所得勤勞者
ハ固ヨリ、產業界ニ對シテモ密接ナル關係
アルニ鑑ミマシテ、其施行ニ當シテハ、常ニ
十分ノ注意ト努力ヲ拂ッテ居ル次第デアリ
マイ、而シテ今日マデノ經過ニ徵シマスレ
バ、大體ニ於テ相當ナル成績ヲ擧ゲテ居ル
モノト存ズルノデアリマス、唯、健康保險法
實施以來、經驗ヲ重ネマスルニ從ヒ、諸般
ノ事務ノ手續、保險料ノ徵收方法、保險給
付ノ内容等ニ關シマシテ、尙ホ多少ノ改善
ヲ加へ、以テ本事業ノ施行ヲ圓滑ニシ、事
務ノ簡捷ヲ圖ルノ必要アリト認メマス、仍
テ茲ニ健康保險法中改正ヲ要スル部分ニ付
テ、本改正案ヲ提出致シタル次第デゴザイ
さっ、何卒御審議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラ
レンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=27
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028・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス-本
案ニ付テハ別ニ通告ガアリマセヌカラ日程
第四ニ移リマス、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=28
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029・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出、朝鮮簡易
生命保險特別會計法案外三件ノ委員ニ併セ
付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=29
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030・元田肇
○議長(元田肇君) 原君ノ動議ニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=30
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031・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ可
決致シマス-日程五第、登錄稅法中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、大口大藏政
務次官
第五登錄稅法中改正法律案(政府提
山上第一讀會
登錄稅法中改正法律案
登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條ノ四ヲ第十九條ノ五トシ以下順
次繰下ク
第十九條ノ四外國カ其ノ大使館、公使
館又ハ領事館ノ數地又ハ建物ニ關シテ
受クル登記ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ
登錄稅ヲ免除ス但シ當該國カ帝國ノ大
使館、公使館又ハ領事館ノ敷地又ハ建
物ニ關スル登記ニ付同樣ノ免稅ヲ爲サ
サル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員大口喜六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=31
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032・大口喜六
○政府委員(大口喜六君) 只今議題ト相成
リマシタ登錄稅法中改正法律案ニ付キマシ
テ、極メテ簡單ニ其提案ノ趣旨ヲ御說明申
上ゲタイト存ジマス、外國ノ大公使館及領
事館ノ敷地建物ニ關スル登錄稅ハ、我國ノ
現行登錄稅法上ニ於キマシテハ、免稅ヲ行
フノ途ガアリマセヌ、ソレ故ニ國際交誼上
不便トスル所ガアリマスノデ、此不便ヲ除
キマスルガ爲ニ、相互條件ノ下ニ於テ免稅
スルノ途ヲ開カントシマスルノガ本案ノ趣
意デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ協賛ヲ
與ヘラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=32
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033・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス-別
ニ通告モゴザイマセヌカラ、議事日程第六
ニ移リマス、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=33
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034・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出、地租條例
廢止法律案外十六件ノ委員ニ併セ付託セラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=34
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035・元田肇
○議長(元田肇君) 原君ノ動議ニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=35
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036・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ可
決致シマシタ-日程第七、大正十一年法
律第五十二號中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス-下條政府委員
第七大正十一年法律第五十二號中改
正法律案(統計資料實地調査ニ關ス
ル件)(政府提出)第一讀會
大正十一年法律第五十二號中改正法
律案
大正十一年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第一條中「政府ハ」ノ下ニ「農業及」ヲ加ヘ
「實地調査ヲ行フ」ヲ「本法ニ依ル實地調
査ヲ行フコトヲ得」三六人
〔政府委員下條康麿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=36
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037・下條康麿
○政府委員(下條康麿君) 只今日程ニ上リ
マシタ大正十一年法律第五十二號中改正法
律案ノ提案ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲタイト存
ジマス、此法律案ハ御承知ノ如ク各般ノ政
策施設ノ基本資料トスベキ、最モ正確ナル
統計ヲ得ル目的ヲ以チマシテ特別ノ實地調
査卽チ所謂「センサス」ヲ施行スル爲ニ制定セ
ラレテアルモノデアリマス、而シテ現在ニ
於キマシテハ、此法律ハ單ニ勞働事情ニ關
スル「センサス」ノ施行ノ場合ニノミ限ラレ
テ居ルノデアリマスルガ、時勢ノ進運ニ伴
ヒマシテ、農業統計ノ刷新改善ヲ圖ル爲
ニ、所謂農業、「センサス」ヲ施行スルノ必
要ガアルニ至ッタノデアリマス、此農業「セ
ンサス」ニ關シマシテハ政府ハ昨年中央
統計委員會ニ諮問致シマシテ、其答申ヲ得
マシタカラ、明年度カラ是ガ實施ニ著手セ
ント致シテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ
此法律ノ適用範圍ヲ擴張致シマシテ、單ニ、
勞働事情ニ關スル「センサス」バカリデナク
農業「センサス」ニ適用致シタイト考ヘルノ
デアリマス、是ガ本案ヲ提出致シマシタ理
由デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛アラ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=37
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038・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス、別ニ
通告ガアリマセヌカラ、日程第八ニ移リマ
ス-右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
擧ヲ議題ト致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=38
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039・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出、馬ノ傳染性
貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ關スル法律案
外三件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=39
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040・元田肇
○議長(元田肇君) 原君ノ動議ニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=40
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041・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ可
決致シマス-日程第九、朝鮮簡易生命保
險ノ事務ニ關スル郵便物ニ關スル法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス-池上政府委員
第九朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關ス
ル郵便物ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關スル郵
便物ニ關スル法律案
朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關スル郵便物
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ無料ト爲ス
コトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員池上四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=41
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042・池上四郎
○政府委員(池上四郞君) 玆ニ本案提出ノ
理由ヲ極メテ簡單ニ申上ゲタク存ジマス、
昭和四年度ヨリ、朝鮮ニ於テ簡易生命保險
ヲ實施スル見込デアリマシテ、之ガ特別會
計ニ關スル法律案ハ既ニ提案ニナリマシタ
次第デアリマス、サウ致シマシテ、朝鮮簡易
生命保險ノ事務ニ關スル郵便物ニ付キマシ
テハ、內地ノ簡易生命保險ノ例ニ做シテ、之
ヲ無料ト爲スコトヲ得ルノ特點ヲ認メルノ
必要ガアルノデアリマス、朝鮮簡易生命保
險ニ關スル一般ノ規定ハ制令ニ依ル見込デ
アリマス、右郵便物無料ニ關スル規定ハ、
法律ニ依ラナケレバナラヌノデアリマス、
ソレデ本案ヲ提出致シマシタル次第デアリ
マスカラ、何卒御審議ノ上御協賛アランコ
トヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=42
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043・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス-別
ニ通告ガアリマセヌカラ日程第十ニ移リマ
ス-右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
擧ヲ議題ト致シマス
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=43
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044・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出朝鮮簡易生
命保險特別會計法案外四件ノ委員ニ併セ付
託セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=44
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045・元田肇
○議長(元田肇君) 原君ノ動議ニ御異議ハ
アリマスマイ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=45
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046・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ可
決致シマス-日程第十一、馬ノ傳染性貧
血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ關スル法律案ノ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
求メマス-內野辰次郞君
第十一馬ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬
ノ殺處分ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一馬ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分
ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和四年二月十六日
委員長內野辰次郞
衆議院議長元田肇殿
〔內野辰次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=46
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047・内野辰次郎
○內野辰次郞君 本案ハ御承知ノ如ク馬ノ
傳染性貧血ニ罹ッタ場合ニ、縣知事ガ命令
ヲ以テ之ヲ殺サセル、其代リニ之ニ相當ノ
手當ヲヤラウト云フノデアリマシテ、案モ
非常ニ必要デゴザイマスシ、又法律モ極メ
テ簡明ニ出來テ居リマスガ爲ニ、委員會ヲ
開キマスコト一囘、委員會ニ於テモ茲ニ特
別ニ御報告申上ゲルヤウナ質問モゴザイマ
セズ、委員會ハ全會一致デ卽決可決致シマ
シタ、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=47
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048・元田肇
○議長(元田肇君) 討論ヲ許スノデアリマ
スガ、通告ガアリマセヌ、隨テ採決ヲ致シ
やっ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=48
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049・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メテ第
二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=49
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050・原惣兵衞
○原惣兵衞君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ
第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通り可決確
定セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=50
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051・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=51
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052・元田肇
○議長(元田肇君) ソレデハ直ニ本案ノ第
二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ニ供シマス
馬ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分
ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=52
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053・元田肇
○議長(元田肇君) 三讀會ヲ省略致シマシ
テ決定スルコトニ致シマス、別段ニ討論モ
ゴザイマセヌカラ御異議ナイモノト認メテ
宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=53
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054・元田肇
○議長(元田肇君) ソレデハ御異議ナク可
決シタモノト認メマス-三讀會ヲ省略シ
テアリマスカラ委員長報告通リニ可決シタ
ト云フコトヲ念ノ爲ニ申上ゲマス-日程
第十二、鐵道敷設法中改正法律案ノ第一讀
會ノ續ヲ開キマス委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長若宮貞夫君
第十二鐵道敷設法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和四年二月十六日
委員長若宮貞夫
衆議院議長元田肇殿
〔若宮貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=54
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055・若宮貞夫
○若宮貞夫君 鐵道敷設法中改正法律案ノ
特別委員會ノ經過竝結果ヲ御報告ヲ申上ゲ
マッ、此案ハ御承知ノ通リ鐵道敷設法中ニ
定メテアリマスル所ノ豫定線ノ中ニ、新ニ
二十六線ヲ追加シヤウトスルモノデアリマ
ス、委員會ハ去ル四日以來數囘會合ヲ致シ
マシテ、其間ニ幾多ノ質疑應答ガ行ハレタ
ノデアリマスルガ、其中デ先ヅ本案ニ直接
ノ交涉ヲ有シテ、サウシテ重要ナリト認メ
マシタ所ノ、三四ノ事項ニ付テ其梗〓ヲ要
約ヲ致シテ、玆ニ簡單ニ御紹介ヲ申上ゲテ
置キタイト思ヒマス、其一ツハ鐵道ト自動
車トノ關係ニ關スルコトデアリマスルガ、
近來白働車ノ發達ガ著シク、外國ニ於テ
モ其發展ニ伴ッテ、地方的ノ鐵道ナリ電車
ナリガ、著シク經營ガ困難ニ陷ッテ居ルト
聞クノデアル、我國ニ於テモ地方的ノ鐵道
ト自動車ノ間ニハ、動モスレバ競爭ヲ生ズル
所ノ傾向ガアッテ、或ハ之ガ爲ニ二重投資ノ
弊ニ陷ル所ノ虞モナイデハナイ、殊ニ短距
離ノ場合ニ於テハ、寧ロ自動車道路ヲ修築
ヲ致シテ、之ニ依テ貨客ノ輪送ニ充ルコト
ノ方ガ便トスルノデハナイカ、今度ノ二十
六線ヲ追加セラルヽニ付テモ、政府ハ自動
車トノ關係ヲ、ドウ取扱フ積リデアルカト
云フ意味ノ質問ガ、繰返サレテ質疑サレタ
ノデアリマス、之ニ對シテ政府ニ於テハ
常ニ自動車ノコトハ考慮ニ入レテ居ル、殊
ニ我國デハ、旅客ニアッテハ十五哩以內、
貨物ニアッテハ凡ソ二十哩以內位ノ短距離
ニ於テハ、地方鐵道ハ大分自動車ノ爲ニ脅
威ヲ感ズル所ノ事實ガアルガ故ニ、國有鐵
道ニ關シテモ、將又地方鐵道ヲ免許スル場
合ニアッテモ、此事柄ハ十分ニ考慮ノ中ニ
入レテ取扱シテ居ルノデアル、而シテ自動
車ト鐵道トハ、其ノ働ノ範圍ヲ同ウスル場
合モアリマスルケレドモ、併ナガラ又其間
ニ於テモ、自カラ機能ヲ異ニスル點モアル
ノデアッテ、產業ノ開發ノ上カラ、國防ノ
充實ノ上カラ、竝ニ又鐵道系統ノ連絡ト云
フコトノ上カラ見テ、自動車ダケデハ滿足
スルコトガ出來ナイ、ドウシテモ鐵道ノ敷
設ヲ必要トスル所ノ部面ガアルノデアル、
今囘追加セントスル所ノ各線路ハ、何シモ
此見地ヨリ見テ、極メテ必要ナルモノデア
ルト云フコトヲ辯明ヲ致シテ居ルノデアリ
せく、其二ハ二十六線ヲ選定スルコトニ關
スル質問デアリマシテ、鐵道ノ敷設ハ、其
效能ノ大ナルモノカラ之ヲ先ニ致シテ、其
效能ノ少イモノニ及プト云フコトハ自然
ノ順序、原則デアラナケレバナラヌ、就テ
ハ此二十六線ヲ選ブトー云フコトニ付テハ
恐ラクハ多クノ線路ヲ調査シタ結果、其中
ヨリ之ヲ摘ミ出シタト云フコトデアラネバ
ナラヌト思フガ、果シテドレ程ノ線路ヲ調
査シタモノデアルカ、又曩ニ第五十二議會
ニ於テ六線ヲ追加セラレタ、ソレ以來僅ニ
三年シカ歲月ヲ經過シテ居ラヌニ拘ラズ、
固ヨリ其間ニハ幾分經濟上ノ變化アリシコ
トヲ認ムルガ、此三年ノ間ニ俄ニ二十六線
ヲ追加セネバナラヌト云フヤウナ、激變ア
リシトモ思ハレナイノデアルガ、其邊ハ如
何デアルカト云フ趣意フ質問ガ繰返サレタ
ノデアリマス、之ニ對シデ政府ハ從來豫定
線以外ニ於テ、或ハ請願トナリ、或ハ建議
トナリ、政府ニ地方ヨリ要求シ來シテ居ル
所ノモノガ、實ニ百數線ヲ算シテ居ル次第
デアル、其中デ震災以來昨年末迄ニ至ル間
ニ調査ヲシタ所ノモノガ、八十六線アル、
此八十六線ノ中カラ、第五十二議會ニ於テ
既ニ六線ノ追加ヲセラレ、又更ニ今囘其八
十六線ノ中カラシテ、二十六線ヲ追加セン
トスル次第デアルノデアリマシテ、此今回
ノ二十六線ヲ選ンダト云フコトハ、第五十
二議會以後ニ俄ニヤッタ所ノ細工デハアリ
マセヌデ、以上申述ベル如ク、震災後昨年
末ニ至ル迄ノ間ニ調査シタル、卽チ五十二
議會ニ追加セラレタル所ノ六線ト前後シ
テ、調査致シテ居ル所ノモノヽ中ヨリ、其
必要ナリト認ムル所ノモノヲ選擇シタ所ノ
次第デアルノダ、而シテ政府ニ於テハ、調
査ガ完了スルニ從ッテ、其中可ナリト認メ
ルモノニ付テ之ヲ追加致シテ、以テ社會國
民ノ必要ニ應ジテ行キタイト云フ趣意ニ外
ナラヌノデアルト云フ意味ヲ、辯明致シテ
居ルノデアリマス、其三ハ交通系統、諸機
關ノ統一ニ關スル質疑デアリマシテ、文化
ノ發展ニ伴ッテ、鐵道海運ハ云フ迄モナク、
其他或ハ自動車、或航空機、種々ナル所
ノ交通機關ガ產業振興ノ爲ニ必要デアル、
是等ノ種々ナル機關ヲ綜合統一シテ、活動
セシムルト云フコトガ、產業ヲ開發スル上
ニ於テ極メテ必要デアルガ、政府ハ是等ノ
諸機關ヲ統一シテ、交通省ヲ設置スルト云
フ所ノ議ハ有ルノデアルカ、無イノデアル
カト云フ意味ノ質疑ガアリマシタ、之ニ對
シテ政府當局ヨリシテ、極メテ同感デア
ル蓋シ行政審議會等ニ於テ相當攻究セラ
レテ居ルコトデアルト信ズル旨ノ答辯ガア
リマシタ、其四ハ私設鐵道ノ許可ノ方針
ニ關スル事柄デアリマスルガ、私設鐵道ハ
國有鐵道ニ比較シテ設備ガ不良デアル輸
送力ガ乏シク、而モ運賃ガ不廉デアルコト
ヲ常例ト致シテ居ルノデアル、此事柄ハ國
家ニモ、國民ニモ共ニ不利ヲ來ス所ノモノ
デアルガニ故、鐵道國有ニスルト云フコト
ノ主義ニモ、或ハ背反スル所ノ嫌ガナイデ
モナイ、政府ガ私設鐵道ヲ許可スル所ノ方
針ハ、ドウ云フモノデアルカト云フ意味ノ
質問ガアリマシタ、之ニ對シテ政府ニ於テ
ハ信用ガ確實デアッテ、資金ヲ蒐集スル
所ノ實力ガ十分デアルモノガ私設鐵道ノ免
許ヲ出願シテ、此者ニ許可スルコトガ、地
方ノ交通機關ヲ速成セシムル上ニ於テ可
ナリト認ムル場合ニアッテハ、之ヲ許可
スル所ノ方針ヲ執ッテ居ルト云フコトヲ辯
明ヲセラレテ居ルノデアリマス、其五ハ改
良費ニ關スル質疑デアリマスルガ、此改良
費ニ關スル質疑ハ其性質ガ全ク相異シテ
居ル所ノ二樣ノ質疑ガ、數回發セラレタノ
デアリマス、卽チ其一方ハ今度ノ計畫ヲ見
ルト、改良費ヲ減ジテ居ルガ、一面五年度
以後ニ於テハ、或ハ減債基金、或ハ恩給ト云
フヤウナモノヲ繰入レテ居ル、此繰入ヲ爲
スガ爲ニ、改良費ヲ減ジテ居ルノデハナイ
カ否ヤ、竝ニ改良費ヲ減ジテ居ルコトノ結
果トシテ、若モ輸送ガ激增ヲスルト云フヤ
ウナ事態ガ發生シタナラバソコニ突如ト
シテ運輸上ニ支障ヲ生ズル虞ガアルデハナ
イカト云フ意味ノ質疑ガ一方ニアリマス、
又一方ニ於キマシテハ今日ノ我國ノ時勢
ニ照ラシテ見テ、改良ト云フコトヨリモ尙
ホ一層建設ト云フコトニ、カヲ注ガナケレ
バナラヌノデハナイカ、建設ニ力ヲ注グト
云フコトガ、卽チ地方產業開發ニ資スル所
ノ今日ノ急務デハナイカト云フ意味ノ質
疑此全ク性質ノ相異ル所ノ二樣ノ質疑ガ
繰返サレマシタ、之ニ對シテ政府ニ於テ
ハ曩ニ立テヽ居ッタ所ノ改良計畫ハ、旅客
貨物ガ激會スルト云フコトヲ豫想シテ、之
ヲ立テヽ居シタ計畫デアル、然ルニ近年ノ事
實ハ全ク之ニ反シテ、豫期ノ通リノ曾加ヲ
見ナイノデアル、ソレアルガ故ニ、今日ノ實
情ニ適應スル如クニ改良計畫ヲ組直シテ、
其必要ノナイモノハ之ヲ減ジタ、併ナガラ
一面ニ於テハ線路ノ保安ノ上カラ、又輸送
ノ便宜ヲ曾ス上カラシテ、或ハ線路ヲ取換
へ或ハ橋桁ヲ取換へ、或ハ又鐵道ヲ電化
スルト云フガ如キ、必要ナリト認ムル所ノ
改良費ハ增加ヲ致シタ、卽チ實際ノ必要ニ
應ジテ曾減變更取捨シタ所ノ結果ガ、是ニ
及ンデ居ルノデアッテ、而モ鐵道ノ現在ノ輸
送力竝ニ設備ト云フモノハ、相當ノ彈力ヲ
持ノテ居ルガ故ニ、玆ニ或ル程度ノ輸送ノ增
加ガアッタトコロデ、之ガ爲ニ支障ヲ生ズル
ト云フヤウナ虞ハ決シテナイノデアルト云
フコト、竝ニ改良ト云フコトハ、廣イ意味
カラ申セバ建設ト云フコトヽ全ク同ジデ
アル、建設ノミ致シテ、適當ナル改良ヲ
怠ッテ行ッタナラバ、茲ニ輸送力ガ減退シテ、
却テ困難ヲ生ズルノデアルカラ、改良ヲ止
メテ建設ノミニ力ヲ注グト云フコトモ不可
能デアルト云フ意味ノ辯明ヲセラレテ居ル
ノデアリマス、其外或ハ建設ノ順序ニ關
シ、又或ハ鐵道ノ電化ニ關シ、又或ハ公債
ノ償還ノコトニ關シ、又或ハ既定線路ヲ變
更スル所ノ計畫ガアルヤ否ヤト云フ點ニ關
シ、又或ハ名古屋驛ノ改築工事ニ關シ、其
他各線路ノ細目ニ亙ッテ、幾多ノ質疑應答ガ
重ネラレタノデアリマスルガ、其詳細ニ付
テハ之ヲ省略ヲ致シテ、速記錄ニ就テ御覽下
サレンコトヲ玆ニ願フノデアリマス、而シ
テ討論ニ關シマシテハ、其結論ハ極メテ簡單
デアル、卽チ何レモ原案ニ贊成ヲスルト云
フ議論デアリマスカラシテ、特ニ之ヲ此處
ニ申上ゲル迄ノ必要ガナイカモ知レマセヌ
ガ討論者カラシテ本議場ニ於テ報告セラ
レタイト云フ、取分ケ御要求ガアリマシタガ
故ニ、私ハ各討論者ノ要旨ヲ極メテ簡單ニ
御紹介ヲ申上ゲテ置キタイノデアリマス、
先ヅ政友會ノ安原仁兵衞君カラシテ、各線
何レモ相當ナ理由ガアリ、產業ノ開發上、
文化ノ進展上、極メテ適當ナル措置ト認ム
ルカラシテ、原案ニ贊成ヲスルト一云フ趣旨
ノ陳述ガアッタノデアリマス、次ニ民政黨ノ
工藤鐵男君カラシテ、二十六線ハ其緩急ト
輕重ヲ誤レルモノガアルカノヤウニ見受ケ
ラレル、黨勢擴張ニ付テ關係アルモノモア
ルヤウニ認メラレル、吾々ハ鐵道政策ノ上
カラ見テ、豫定線ヲ出來ル限リ完成スルト
云フ事ニ付テハ、政友會ト敢テ意見ヲ異ニ
スルモノデハナイ、唯此線路ヲ選ブニ當ッ
テ、黨弊ガ蟠ルト云フコトヲ恐レルノデア
ル、併ナガラ政府ハ、是ハ一ツノ理想デア
ル之ヲ實行スル場合ニハ更ニ相當考慮
スルト云フコトヲ申ス以上ハ吾々ハ之ニ
對シテ贊成ヲシ、實行ノ際ニ相當考慮スル
機會ガアルモノト認メテ原案ニ贊成ヲス
ル、但シ之ニ對シテハ左ノ意味ノ警告ヲ附
シテ置キタイ、卽チ今囘提出セラレテ居ル
所ノ鐵道豫定線ノ追加ニ付テハ、政府當局
ノ措置其宜シキヲ得ナイ、之ヲ黨略ニ利用
シ、綱紀紊亂ノ虞アルモノガ少シトシナ
イ、殊ニ之ガ爲メ既定豫定線ノ速成ヲ遲延
セシムルニ至ルカラシテ、政府ハ將來豫定
線ノ建設ニ當ッテハ特ニ慎重ナル注意ヲ
拂,テ其前後緩急ヲ誤ラザルコトヲ期セラ
レタイ、斯ウ云フ意味ノ警生ロヲ附シテ原案
ニ贊成ヲスルト云フ意味ノ陳述ガアッタノ
デアリマス、而シテ其際工藤君ハ、今申シ
タ警告ナルコトノ文案ヲ以テ、之ヲ讀上ゲ
ラレマシタガ故ニ、委員長カラシテ注意
ヲ致シマシタ、書面ヲ以テ報告スルト云フ
コトデアルナラバ、本委員會ノ決議ヲ要ス
ルノデアルガ、果シテ決議ヲ求メラルヽ趣
旨デアルヤ否ヤト云フコトヲ確メマシタ所
ガ、工藤君ハ、決議ヲ求ムル所ノ趣意デハ
ナイ、斯ウ云フ警告ヲ附シテ賛成ヲスルト
云フ意味ヲ、委員長ヨリ報告セラルレバ以
テ足ルト云フ趣旨ヲ言明セラレタノデアリ
マッ、次ニ新堂倶樂部ノ寺田市正君カラシ
テ、各線ヲ行細ニ吟味ヲシテ見タナラバ、
或ハ工藤君ノ所謂黨色ノ嫌ノアルモノガナ
イデモナイカモ知レナイ、併ナガラ敷設法
ノ改正ヲスル場合ニ當テテ、
立場ニアル者ハ同樣ノ非難ヲスルノガ常
例トナッテ居ルノデアル、現ニ憲政會內閣ノ
際ニハ、政友會諸君カラシテ、同樣ナル意
味ヲ申サレタルヤウニ記憶ヲ致シテ居ルノ
デアル、吾々ハドノ內閣デアッテモ、純眞ナ
立場カラシテ決定セラレンコトヲ希フモノ
デアッテ、今度ノ線路ノミガ黨略ノ嫌アリ
トハ申サナイノデアル、眞ニ國家ノ鐵道政
策カラ適當ナル所ノ措置ヲ執ラレタイト云
フコトノ、此希望ヲ附シテ原案ニ贊成スル
モノデアル此希望ヲ有スルト云フ事ヲ、
特ニ委員長ヨリ報告セラレタイト云フ意味
ノ陳述ガアッタノデアリマス、而シテ採決ノ
結果ハ、委員全部ガ出席シテ居リマシテ、
全員一致ヲ以テ、原案ヲ可決スベキモノナ
リト決定セラレタノデアリマス、此段御報
告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=55
-
056・元田肇
○議長(元田肇君) 質疑ヲ許シマス-大
里廣次郞君-登壇ヲ望ミマス
〔大里廣次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=56
-
057・大里廣次郎
○大里廣次郞君 私ハ只今提案ニナッテ居
リマスル案ニ付キマシテハ贊成ヲ表スル
一人デアリマス、其前提ト致シマシテ、玆
ニ一ツノ質疑ヲ持ッテ居ルノデアリマスカ
ラ、此質疑ニ付キマシテ鐵道當局ノ御說明
ガ仰ギタイノデアリマス、凡ソ鐵道政策ヲ
遂行致シマスル上ニハ固ヨリ黨略、政略
ガ之ニ加ハルト云フコトハ絕對ニイケナイ
コトハ、申ス迄モナイノデアリマス、鐵道
ノ能率ヲ高メ、鐵道經濟ヲ滑カニ致シマス
ル上ニハ、鐵道ノ豫定線ヲ決メマスル場合
ニハ、或ハ建設改良ヲ致シマスル場合ニ
極メテ深甚ナル所ノ考慮ヲ致サンケレ
バナラヌコトモ勿論デアリマス、殊ニ鐵道
ノ縱ノ線ト橫ノ線ガ極メテ都合好ク結ビ付
ケラレマスルト同時ニ、幹線ニ連絡サレマ
スル所ノ支線ガ、其連絡ノ公平ヲ缺クト云
フコトハ、鐵道政策ノ上ニ最モ考ヘネバナラ
ヌコトヽ思フノデアリマス、此見地カラ見マ
シテ、今回二十六線ガ豫定線ニ入ッチ居リ
マスルガ、我ガ九州ニ於キマシテ、現在ノ
鐵道ノ狀態更ニ此鐵道新線圖面ニ依テ窺ヒ
マスルト甚ダ矛盾ヲ致シテ居ルヤウナ感
ジガ致スノデアリマス、殊ニ筑豐ノ省線ニ
於キマシテハ此感ガ愈"深クナッテ居ルノデ
アリマス、其第一ヲ申シマスルト云フト、
今回新設サレマスル豫定線ノ中ニ添田日田
間ノ鐵道ガアルノデアリマス、此鐵道ガ假
ニ完成致シマシタ場合ハ、目下工事中デアリマ
スル所謂冷水線ナルモノガ此五月ニハ開通
致スノデアリマス、此冷水線ノ開通ト、今
回組入レラレマシタ所ノ日田添田間ノ鐵道
ニ依リマシテ、始メテ九州ニハ東ト西ニ海
岸線ヲ通ッテ居リマス省線ノ外ニ、九州ノ縱
斷線ガ二箇出來ルノデアリマス、現在ハ遺
憾ナガラ九州デハ一ツモ中央ノ縱斷線ハナ
イノデアリマス、卽チ冷水線ノ完成ニ依リ
マシテ、僅ニ一ツノ縱ノ貫通線ガ出來ルコ
トニナルノデアリマス、又橫ノ線ヲ見テ見
マスルト云フト、御承知ノ通リニ鹿兒島カ
ラ宮崎ニ通ジテ居リマスル既成線、更ニ目下
工事中デアリマスル久留米大分間、大分熊
本間、此線路ガ完成致シマシタ時ニ至ッテ、
始メテ橫ノ三ツノ幹線ガ出來ルコトニナッ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ九州デ最モ
殷盛ナル土地卽チ北九州ヲ始メト致シマシ
テ、筑豐炭田ノ中央デアリマスル筑豊線ノ
橫クテ居ル此方面ニ於キマシテハ、今尙ホ完
全ナル所ノ橫ノ線ガ無イノデアリマス、縱
令此處ニ二ツノ縱ノ線ガ出來マシテモ、九
州デ最モ大切ナル筑豊線ニ、今尙ホ橫ニ貫通
シタル所ノ線路ガ出來ナイト云フコトハ此
地方ニ於ケル產業上或ハ國防上ニ大ナル缺
陷ガ來ルノデアリマス、而モ此橫ノ線ヲ貫
通致シマスルコトハ、非常ニ見易イコトニナッ
テ居ルノデアリマス、其一ツヲ申シマスル
ト云フト、只今申上ゲマシタヤウニ、添田、
日田間ノ豫定線ニ接續致シマスル添田ノ次
ノ停車場デアリマス後藤寺ト云フ停車場、
是ハ豐前ノ中ニアルガ、此豐前ト筑前トノ
連絡ヲスル横線ノ所謂筑豐線ノ上山田電車
ト田川線ノ後藤寺驛トノ間ハ僅ニ三哩弱
デアリマス、三哩ニ達シナイヤウナ近イ場
所デアリマス、此場所ハ三菱、三井大鑛山
ガアリマスルト同時ニ、幾多ノ鑛山ガ〓繞
致シテ居ルノデアリマス、而モ極ク近イ中
ニ三菱ハ此上山田カラ一哩半許リノ所ニ引
込線ヲ拵ヘルコトニナッテ居ル、然ラバ
後ノ殘リマス所ハ僅ニ一哩弱デアル、
此一哩弱ノ鐵道ガ出來マシタナラバ、
豐前ト筑前トノ橫斷線トガ綺麗ニ貫通
ガ出來ルノデアリマス、而モ此土地ハ山
モ無ク河モ無ク、僅カ二十万圓足ラズノ
工費デ此目的ヲ達スルコトガ出來ヤウト
思フノデアリマス、斯ル必要ナル鐵道ガ今
日尙ホ其儘ニナッテ居ルノデアリマス、此鐵
道ガ出來ナイ限リハ、假令縱ノ線ヲ拵ヘマ
シテモ、其縱ノ線ガ活キテ參ルコトハ出來
ナイノデアリマス、第二ニハ矢張是ハ筑豐
線ノ橫ノ線ニ結付ケラルヽ一ツデアリマス
ルガ、既ニ此線ハ豫定線ニ這入ッテ居リマ
ス、人之ニ大分鐵道ト云フ名稱ヲ下シテ居
リマスルガ、此大分鐵道ノ速成ハ此地方ト
シテハ非常ニ熱望致シテ居ルノデアリマ
ス、又此鐵道ガ出來ナイ限リハ、假令上山
田、後藤寺間ガ連續致シマシテモ、完全ニ
筑豐ノ橫ノ線ヲ拵ヘルコトハ出來ヌノデア
リマス、御承知ノ通リ本年內務省ハ博多灣
築港完成ノ爲ニ過分ノ補助ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、又仄ニ聞ク所ニ依リマスレバ、
博多灣鐵道ガ政府ニ買收サレントシツヽア
ルノデアリマス、此博多灣鐵道ナリ、博多
築港ナリヲ意義アラシムルニハドウシテ
モ、大分鐵道ノ完成ヲ見ナケレバ其效ハナ
イノデアリマス而モ此大分鐵道ハ哩數ニ
於キマシテ僅ニ十二一二哩ト思フノデアリマ
ス、卽チ冷水線ノ接續ニナッテ居リマスル
長尾線ト、篠栗線トノ間ノ鐵道デアリマス、
此鐵道ニ結付ケラレマシテ始メテ束ノ福岡
カラ西ノ海岸行橋ニ至ル迄完全ニ横ノ線ガ
出來ルコトニナルノデアリマス、未ダ此線
路ノ完成ヲ見ナイ爲ニ、此地方殊ニ筑豐線
ノ中央デアリマスル飯塚直方ノ如キハ鐵
道ノ利用ガ出來マシタナラバ僅カ四十分デ
行クベキ所ヲ、三時間モ掛ッテ居ルノデス、
卽チ鍋ノ弦ヲ通ッテ居ルノデアリマス、御承
知ノ通リ飯塚、直方地方ハ筑豐デ最モ石炭
ノ產地デアリマスカラ、隨テアノ地方デハ
鐵道ノ運輸ハ人ニアラズシテ石炭デアルト
マデ申サレテ居ルガ、ソレダケアノ地方
デハ鐵道ノ利益ヲ石炭ガ擧ゲテ居ル、日本
ノ鐵道ノ中デ北海道ノ一部ト、我ガ筑豐ノ
一部ノ鐵道程利益ヲ擧ゲテ居ル所ハナイト
思フノデアリマス、今日此鐵道ノ完成ガナ
イ、而モ大正八年ニ豫定線ニ這入ッテ居ル
ニモ拘ラズ、今尙ホ工事ノ著手ヲ見ナイ爲
ニ、此地方ノ人ハ非常ナ不便ヲ致シテ居ル
ノデアル、險岨ナル所ノ八木山峠ヲ五分每
ニ自動車ヲ通ジテ、日ニ數千人數万噸ノ貨
物ガ辛ウジテ運搬サレテ居ルノデアリマ
ス、更ニ今一ツハ八幡ノ製鐵所ニ石炭ヲ運
搬致シテ居リマスル二瀨驛カラ、先程申シ
マスル冷水線ノ一部ニナリマス所ノ長尾驛
ニ通ジマスル所ノ鐵道ノ如キモ、矢張僅ニ
二哩强デアリマス、八幡ノ製鐵所ノ一ツデ
アリマスル二瀨ノ出張所ハ、是亦一日ニ二
瀨ノ驛ダケデ每日千圓以上ノ鐵道ノ利益ヲ
擧ゲテ居ル、斯樣ニ僅ナ哩數デアリマシテ、
其僅ナ哩數ガ接續サレマスレバ、玆ニ始メ
テ一ツノ筑豊ノ横斷線ガ出來ルノデアル、
斯樣ナ實際ノ問題ヲ其儘ニシマシテ、玆ニ
更ニ豫定線ヲ拵ヘラレマシタケレドモ、其
豫定線ハ到底活キテ行クコトハ出來ナイト
思フ、丁度佛ヲ造ッテ魂ヲ入レヌヤウナ狀
態ニナリヤセヌカト思フ、此點ニ付キマシ
テハ第五十議會ニ滿場一致ヲ以テ、建議案ハ
本院ヲ通過致シテ居リマス、其後吾々ノ同
僚、殊ニ政友會選出ノ代議士諸君カラシテ、
年々歲々是等ノ鐵道ノ速成ノ建議希望ヲ出
シテ居ル次第デアリマス、故ニ當局ニ於カ
レマシテハ此見易イ所ノ事實、又今回元
サレマシタ所ノ鐵道網圖ニ付テ御覽下サレ
バ明ニ此鐵道ガ必要デアルト云フコトガ
分ルノデアリマス、此必要ナルモノヲ措キ
マシテ、更ニ玆ニ豫定線ヲ拵ヘルト云フコ
トハ、餘程是ハ考ヘナクテハナラヌノデア
リマス、併ナガラ此豫定線ガ出來ルト同時
ニ、直ニ横ノ線ガ接續セラレマシテコソ、
初メテ此地方ノ便益ガ得ラレルノデアリマ
ス、此點ニ付キマシテ當局ノ御考ヲ承リタ
イノデアリマス
〔政府委員男爵中村謙一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=57
-
058・中村謙一
○政府委員(男爵中村謙一君) 只今御質問
ニ相成リマシタ上山田、後藤寺間、及ビ二
瀨長尾間ノ線路ニ付キマシテハ、從來議
會ニ於ケル請願及建議案ニ基キマシテ調査
〓究ヲ續ケテ居ル次第デゴザイマスガ、其
地方ノ線路系絡上ノ見地カラ致シマシテ、
マダ其解決ニ到達ヲ致シテ居リマセヌ次第
デゴザイマス、隨ヒマシテ今後尙ホ調查〓
究ヲ續ケテ行キタイト考ヘテ居リマス、次
ニ長尾、篠栗間ノ鐵道ハ今回ノ改訂建設
計畫ニ於キマシテ昭和六年度著手、同ジク
十二年度完成ト致シマシテ豫算ヲ要求シテ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=58
-
059・元田肇
○議長(元田肇君) 討論ニ移リマス-岡
本實太郞君
〔岡本實太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=59
-
060・岡本實太郎
○岡本實太郞君 私ハ本案ニ對シテ贊成セ
ントスル者デアリマス、由來鐵道ノ建設ハ
其地方ノ文化ノ促進ニ重大ナ關係ガアリ、
又地方ノ產業開發ニ極メテ重大ナ關係ヲ致
シテ居リマスガ故ニ、如何ナル地方ト雖モ
此建設ヲ翹望セザル所ハナイ、極メテ重要
ナ關係ヲ持チマスノデアリマス、況ヤ現鐵
道敷設法ニ揭ゲテアル未成線ノ中、百二十
何線ト云フモノハ、未ダ工事ニモ著手シテ
居ナイノデアリマス、是等ノ路線ハ一日モ
早ク速成ヲ希望スルト共ニ、玆ニ本案ガ新
ニ二十六線追加サレルト云フコトニ付キマ
シテハ、各地方ニ重大ナ關係ヲ持チマスガ
故ニ、又吾々愼重ニ之ヲ審議シナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、先刻委員長ノ御
報告ニモアリマシタ如ク、鐵道當局ノ御答
辯トシテハ、自動車デ事足ルモノハ之
ニ依テ支ヘ、自動車ニ依テ支ヘルコト
ノ出來ナイモノハ此鐵道ノ建設ヲ爲スト
言ハレタノデアリマス、將來自動車ト地
方鐵道トノ關係ハ最モ注意ヲ要スルコ
トヽ思フノデアリマス、吾々ハ今揭ゲラ
レタル二十六線ノ中ニハ、一々巨細ニ審議
シ來ッタナラバ、自動車デ事足ルモノモ中ニ
ハアルト思フノデアリマス、併シ自動車ノ
事柄ハ鐡道省所屬ニナッテマダ月ガ新タデ
アル、漸ク昨年ノ八九月ノ頃カラ此方ト云
フコトデアリマス、御調査モ不十分デアル
隨テ是等ニ對スル材料ノ御提供等モ十分出
來ナイガ故ニ、吾々ハ遺憾ナガラ之ヲ判斷
スルノニハ材料ガ乏シカッタノデアリマス
ルガ、姑ク此點ハ政府當局ノ三葉ヲ信用致
シマシテ、先ヅ此二十六線ニ就キマシテ、
自動車トノ關係ハ別ニ保留致シテ置クコト
ニ致シマス、更ニ先刻委員長ヨリ報告ガア
リマシタ通リ、政府當局ノ御說明ニ依レバ、
震災後ニ於テ既ニ調査サレタモノハ八十六
線此中デ六線ハ五十二議會ノ時ニ決定致
シ、更ニ六線ハ調査ノ結果必要ナシト認メ
ラレタモノガアル、此度一一十六線ヲ附加ヘ、
合セテ三十八線玆ニ確定致シマスルカラ、
殘リマスモノガマダ調査濟ノモノデアッテ、
本議場ニ現ハレザルモノガ四十八線アル、
此四十八線ノ中ニハ、再調査ヲ要スルモノ
モアルト云フコトデアリマスカラ、幾分差
引カレマシテ尠クモ三四十線ト云フモノハ
玆ニ調査ガ出來テ、マダ提案サレナイモノ
ガアルノデアリマス、此三四十線ノ調査濟
ノモノト、此度提案サレタ二十六線ヲ比較
對照致シマシタナラバ、或ハ提案サレザル
モノヽ中ニ、ヨリ以上必要ナルモノガアリ
ハセヌカト疑フノデアリマス、又此二十六
線ノ中ニモ、中ニハ提案サレザルモノヨリ
モ劣ッタモノガアリハシナイカト推量モ致
サレルノデアリマス、斯様ナル線モ此中ニハ
アルデアラウ、幾分含マレルデアラウト云
フコトハ、誰シモ推量シ得ルコトデアリマ
ス、卽チ此路線ヲ見マシテモ、磯部、中込
間ノ如キ、一哩當リ四十八万圓餘リ掛ルノ
デアル、或ハ野澤、柳津間ノ如キモ四十四万
圓餘リ掛ルノデアル、·山口縣ノ德佐、廣瀨
間ノ如キ四十三万圓餘リ掛ルノデアリマ
ス、資本ニ對スル利廻計算カラ見マシテモ、
瀧川、濱益間ノ如キハ〇·〇〇〇八ト云フ
ノデアリマス、極メテ小サイ利廻ニナッテ居
リマス、或ハ摺澤、大原間ノ如キモ〇·〇
〇二一、斯樣ナ小サナ數字ニナッテ居リマ
ス、建設ニ多大ノ費用ヲ要スルノデアル
山口縣ノ德佐、廣瀨間ノ如キ、利廻ニ於テ
モ○·〇〇四〇、斯ウ云フ計算ニナッテ居ル
ノデアリマス、是等ノ路線ハ未ダ提出サレ
ザル調査濟ノ三四十線ノ中ノモノト較ベ
テ、果シテドウデアラウカト云フコトハ、多
少疑ハナケレバナラヌノデアリマス、地方
ニ極メテ重大ルナ關係ヲ持チ、而シテ玆ニ提
案サレタモノト、提案サレザル調査濟ノモ
ノト比較シテ來マスルト、斯樣ナ疑モ生ジ
マスルカラ、茲ニ兎角鐵道ニ就キマシテハ
或ハ黨利黨略ノ爲ニ之ガ爲サルヽノデナイ
カト云フガ如キ、噂ヲ生ズルノモ止ムヲ得
ヌノデアリマス、私ハ單ニ抽象的ナ黨利黨
略ノ言葉ノミデハアリマセヌ、二三ノ例ヲ
申シマシテモ、誰言フトナク坊間傳フル所
ニ依レバ、或ハ鐵道建設ニ對シテ、又追加
線ヲ加ヘルコトニ付キマシテ、小川春日合
名會社ナドヽ云フヤウナ、洵ニ面白クナイ
ヤウナ噂ノ言葉モ出タコトガアルト記憶致
シテ居リマス、內容ノ說明、詳細ハ省イテ
置キマスガ、兎ニ角是ハ面白カラヌ噂デア
ルノデアリマスガ更ニ北海道ノ鐵道ノ數
線アル中ノ、余市ヨリ余別ニ至ル鐵道ノ如
キハ曾テ憲政會內閣當時ニ建議案或ハ請
願等モ屢、通過サレ、其當時最早是ハ追加線
ニ入レラレルト云フコトハ殆ド定ッテ居ッタ
狀況デアリマシタガ、唯書類ガ完成シナ
カッタト云フノデ延期致シテ居ッタノデア
ル、政友會內閣ニナリマスト共ニ書類ハ完
成シ、玆ニ議會トシテ初メテ完全ナ議會ガ
開カレルニ當リ御提案ニナッタノデアリマ
ス、是ニ於テカ偶、之ヲ政友會側ノ方カラ
利用サレテ、恰モ政友會內閣ニ於テ、政友
會デアルカラ之ヲ特ニ建設線トシテ追加ス
ルト云フ如キ宣傳ヲ爲サレテ居ルト云フコ
トヲ聞イテ居ルノデアリマス(「馬鹿ナコト
ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)又當局其人ノ如キ
ハ親シク出張サレテ此種ノ言葉ヲ弄セラ
レタコトガアルト聞イテ居ルノデアリマ
ス、此路線ノ沿道ニ亙リマシテ、我ガ黨員
ノ前ノ代議士澤田君ノ如キハ、非常ナ重大
ナル打擊ヲ受ケ、千何票ト云フモノヲ、之
ガ爲ニ失ッタト云フコトモ聞イテ居ルノデ
アリマス(拍手)左樣ナ事實ガアリマスル
ト、玆ニ黨利黨略ナドヽ云フ言葉ガ自然出
テ來易イノデアリマス、或ハ何ノ必要アツ
テカ、一昨年九月普通選擧トシテ初メテ施
行サレタ縣會議員ノ選擧ノ時ニ當ッテ、小川
鐵道大臣ハ私ノ選擧區ノ岡崎市へ態、參,
テ、多クノ有志ト面會ヲシテ居ラレル、又
愛知縣トシテハ片田舍デアル擧母ト云
フ土地ニ到リ、多數ノ有志ヲ集メテ、
態、此縣會議員ノ選擧ノ眞最中ニ、多クノ
人ト面接ヲ遂ゲテ居ラレルノデアリマス、
瀨戶町ニモ參ラレテ同樣ナコトガアッタト
聞イテ居リマス、擧母ト瀨戶町ノ中間ノ保
見村、此戶數八百戶バカリノ所ニ鐵道大臣
ノ代理トシテ態〓某參與官ガ參ラレタサウ
デアル、純朴ナル農村ノ者ハ羽織袴デ出迎
ふつ、其時ニ、百八十何名ノ入黨者ガ纏,
タト聞イテ居リマス、左樣ナ事實ガ現ニア
リマスルカラ、黨利黨略ト云フ言葉ノ出テ
來ルノハ無理カラヌコトデアル、更ニ岐阜
縣ノ東部ニ於キマシテハ大井掛川線ノ明
知大井間ノ路線ハ既ニ建設ニ著手致シテ
居ルモノヲ、或ハ變史セントスルガ如キコ
トヲ言觸シテ、多クノ黨員ヲ募集シ、大井
ノ地點ヲ改メテ、或ハ瑞浪ト云フ所ニ直サ
ントスルト云フ如キコトヲ以テ、利用サレ
テ、其附近ノ多クノ入黨書ヲ纒メテ居ル
縣トシテハ違ヒマスガ、隣リノ所マデ入黨
書ヲ纏メテ居ルト云フ事實ガアルノデアリ
マス、斯樣ナコトガ私ノ知ル範圍內ニ於テ
モ既ニ四五箇所アリマスルカラ、玆ニ鐵道
問題ニ付テ、黨利黨略ト云フガ如キ兎角噂
ガ出テ來ルノモ、已ムヲ得ヌコトデアリマ
ス(拍手)斯ルコトガ事實アルト致シマシ
タナラバ、洵ニ綱紀紊亂ノ甚シキモノト謂
ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、殊
ニ此調査濟ノ路線デアッテ、而シテ此度提案
サレザルモノヽ四十八線ニ付キマシテ、私
ハ委員會ニ於テ、之ヲ御提出ヲ願ヒマシタ
所.當初政府委員ノ御一人ハ、ソレハ提出
ハ出來ナイト拒絕ヲサレタノデアリマス、
然ルノニ後日小川鐵道大臣ニ之ヲ質問致シ
タ所、小川鐵道大臣ハ、ソレハ提出スルト
云フ御話デアッタノデアリマス、速ニ提出
アルデアラウト私等ハ待ヲテ居リマシタガ、
遂ニ是ハ提出ガナクシテ、質問ガ打切ニナ
リ、委員會トシテ決定致シタノデアリマ
ス、出來ルナラバ吾々ハ此調査濟ノモノモ
御提出願ッテ、而シテ細カク審議致シタカッ
タノデアリマスガ、其餘日ノナカッタノヲ
甚ダ遺憾ト致スノデアリマス、是ニ於テカ、
黨利黨略ノ如キ疑モマダ懷イタ儘、茲ニ委
員會ヲ終結スルコトニナリマシタ、先ニ申
シマシタ如ク新ニ此二十六線ヲ追加サレマ
シタニ付テハ、既ニ敷設法中定ヲテ居リ、未
ダ工事ニ著手セザル百二十線餘ノ路線ニ付
キマシテハ何時此鐵道ガ建設サレルカト
云フコトニ付テ、一段深キ疑惧ノ念ヲ懷ク
コトデアラウト思フノデアリマス、是ニ於
テカ、此二十六線ニ付キマシテハ、私等ハ
勿論無イヨリハ有ル方ガ宜シイノデアル、
有ハ無ニ勝ルノデアル、箇々ノ路線ヲ捉へ
來レバ勿論相當何レモ必要ナ理由ハ之ヲ
了解致シマシタガ故ニ、之ニ付テ贊成ヲ致
シマス者デアリマスガ、併ナガラ一面未著
手ノ百二十何線ニ對シテ、疑惧ノ念ヲ懷カ
シメルト云フコトニ付テハ大ニ此點ヲ防
ガナケレバナラナイ、殊ニ鐵道ノ建設ハ、
前後緩急ト云フコトガ最モ大切デアル、急
ナルモノヨリ先ニシ、緩ナルモノヲ後ニス
ルト云フ前後關係ガ最モ大切ナルガ故ニ、
此二十六線ノ建設ニ對シテハ、將來最モ深
キ注意ヲ要スルモノデアル、若シモ此二十
六線ノモノヲ强ヒテ早ク建設ニ著手ヲシ、
先ニ定メテ居ル百二十何線ノモノヲ後週ニ
サレルト云フガ如キコトガアルナラバ、是
コン又再ビ黨利黨略ニ供シ、綱紀紊亂ト云
フガ如キコトヲ招來スルガ故ニ、此前後緩
急ハ最モ注意ヲ致シテ貰ハナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、此趣旨ニ於キマシテ、
吾々ハ先刻委員長ヨリ報告モアリマシタ如
ク警告トシテ「今囘提出セル鐵道豫定線
ノ追加ニ付キテハ政府當局ノ措置宜シキヲ
得ズ、之ヲ黨略ニ利用シ、綱紀紊亂ノ虞ア
ルコト尠ナシトセズ、殊ニ是ガ爲メ既定豫
定線ノ速成ヲ遲延セシムルニ至ルヲ以テ、
政府ハ將來豫定線ノ建設ニ當リテハ特ニ愼
重ナル注意ヲ拂ヒ、其前後緩急ヲ誤ラザラ
ンコトヲ期スベシ」斯樣ナ警告文ヲ附シタ
所以デアリマス(拍手)最後ニ更ニ一言附
加ヘテ置キマス、鐵道財源表ヲ見マスレバ、
昭和五年度カラ減債基金繰入トシテ千八百
万圓ヲ一般會計ニ繰入レラレルノデアル
昭和六年度カラ減債基金トシテ一千九百万
圓更ニ恩給基金トシテ一一百七十万圓、六
年度ニ於テ合セテ二千百七十万圓ト云フモ
ノヲ、此特別會計カラ一般會計ニ繰入レル
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、四年
度迄ハ一般會計ニ少シモ入レズシテ、五年
度ニ千八百万圓、六年度ニ二千百七十万圓ト
云フモノヲ、新ニ繰入レラレルト云フ前例
ヲ作ラレルト云フコトハ何ト辯解サレテ
モ、兩稅委讓ノ結局是ガ財源ニナルデアラウ
ト云フコトハ、明デアル(拍手)而モ是ガ
爲ニ改良費ニ多大ノ減ノ計畫ヲ爲サナケレ
バナラナイ、卽チ四年度ニ於テハ四千五百
五十八万五千百二十圓、五年度ニ於テ二千
七百三十三万六千八百八十圓、六年度ニ於
テ三千五百三十六万七千圓、是ダケノ減額
ノ計畫ガ出來テ居ルノデアリマス、一面幾
分ノ曾額モアリマスケレドモ、差引キマシ
テ餘程多大ナ減額ノ計畫ヲシナケレバナラ
ヌ、斯ウ云フ財源表ニ計數ヲ揭ゲラレテ爲
サラナケレバナラヌト云フコトニナッタガ
故ニ、玆ニ建設ニ付キマシテモ、改良ニ付
キマシテモ、兩稅委讓ノ犠牲トナッテ遲ラ
サナケレバナラナイ、斯ウ云フ事情ガ生ズ
ルノデアリマス、新ニ二十六線ヲ附加ヘナ
ガラ、一面ニ於テハ建設モ改良モ共ニ遲
延スルト云フ、玆ニ計畫ヲシナケレバナラ
ヌト云フガ如キ、鐵道當局ニ矛盾ガアリハ
シナイカト思フノデアリマス、是ニ於テカ
二十六線ノ追加ニ付テハ、先刻申シマスガ
如キ警告ノ愈〓必要ナルヲ感ジタ次第デア
リマス、卽チ是ガ私等ガ警告ヲ附シテ、
本案ニ對シテ賛成セントスル所以デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=60
-
061・元田肇
○議長(元田肇君) 木檜三四郞君
〔木檜三四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=61
-
062・木檜三四郎
○木檜三四郞君 只今議ニ上ッテ居リマス
鐵道豫定線追加案デアリマス、是ハ所謂現
內閣ノ鐵道政策トモ申スベキ問題デ、是ガ
爲ニハ世間色ミノ噂ガ上ッテ居ル、併ナガラ
此鐵道敷設追加ト云フモノニ對シテハ、何
時ノ議會デモ、是ハ政友會ガ野黨デアッタ時
代デモ、吾々ガ與黨デアッテ五十二議會ニ
六線路ヲ出シタ、僅ニ六線路デアリナガラ、
是ニハ黨略アリトシテ盛ニ反對セラレタノ
ハ現在ノ政府與黨デアリマセウ、而シテ
只今委員長ガ述ベラレタ所謂其六線路ヲ、
五十二議會ニ於テ政友會ガ贊成スルニ當ッ
テモ、矢張警告ヲ御附ケナサッタ、吾々ハ政
友會ガ附ケタヤウナ警生ロデハナイ、尙ホモツ
ト意味ノアル警生ロヲ茲ニ附ケタノデアリマス
(拍手)我黨内閣ノ時ニ僅カ六線デアッテモ、
而モ之ニ難癖ヲ付ケテ面シテ贊成ヲ致シ
タ、今日ハ二十六線ノ多キニ達シテ居リマ
ス、現在ノ鐵道敷設法ニアリマスル線路ノ
數ダケデモ百四十九アル、百四十九線ノ上
ニ二十六線路ヲ加ヘタノデアリマス私共
ハ此二十六線路ナルモノハ、直ニ國費ヲ要
スルノデハナイ、斯樣ナ意味合カラ議會ニ
於テ皆樣ガ建議ヲナサレタ、サウシテ當局
ニ之ヲ採擇セヨト絕叫致サレタ線モアリマ
セウ、政府自ラ自發的ニ計畫致シタ線モア
リマス、何レニ致シテモ、二十六線路ガ玆
ニ現レタ以上ハ之ヲ建設スル時ニハ國費
ヲ要シマスルカラ、前後緩急ハ調査致サナ
ケレバナラヌ、併ナガラ假令黨略デアラウ
ガ、二十六線ノ多數デアラウガ、此處ニ出
シタ以上ハ、兎モ角現在只今國費ヲ要シナ
イノデアルカラ、先ヅ吾々ハ將來ヲ警メテ
之ニ贊成ヲ表スルノデアリマス、是ハ議員
トシテ當然ナ立場デアル、諸君ガ野黨デアツ
タ時ニハ、今少シク生溫イ警告ヲ附ケタノ
デアルガ、吾々ハ二十六線ニ對シテハ、將
來前後緩急ヲ誤ラザルヤウ、更ニ建設ノ上
ニ惡影響ヲ及ボサナイヤウニト云フ警告ナ
ノデアリマス、此點ハ諸君ニ於テモ特ニ御
注意ヲ願ヒタイ、何モ野黨デアル、或ハ與
黨デアルカラト申シテ、此問題ヲ簡單ニ片
付ケル譯ニハ參リマセヌ、二十六線路ヲ玆
ニ採擇スル迄ニ至ッタ經路モ考ヘテ見テ、
當局ニ誤レルモノアレバ、之ヲ正シウシテ
將來ヲ警メルノハ、是ハ吾々議員トシテ當
然ノ役目デアリマス(拍手)賛成、反對ハ前
辯士ガ申上ゲマシタヤウニ、假令贊成致シ
マスニ付テモ、間違タ處置ヲ致スト云フ
コトハ國家ノ上
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=62
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063・元田肇
○議長(元田肇君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=63
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064・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) 國家ノ上ニ多大ノ迷
感ヲ致スガ故ニ、此點ヲ警メンガ爲デアリ
マス、是ハ當然デアル、卽チ政友會ガ曩ニ
執ラレタ其點ニ反省セラレテ、吾々ノ申ス
コトヲ御聽キ下サイ、此豫定線路ニ載セラ
レタモノヲ見マスルト、私共意外ニ驚クト
申スノハ、前ニ岡本君モ申サレマシタガ、
今日ノ狀態デハ短距離ニ於テハ自動車ヲ
使ッテ、寧ロ鐵道ヨリハ有利デアルノニ、此
度ノ追加豫定線ヲ見ルト、或ハ五哩トカ、
或ハ七哩ト云フヤウナ短距離ノモノヲ採用
シテマデモ、此二十六線路ノ中ニ入レテア
ルト云フコトハ將來餘程考慮ヲ要サナケ
レバナラヌト思フ、ソレハ一例ヲ擧ゲルナ
ラバ、福山、鞆間ノ如キハ僅カ七哩八分デ
ス、七哩八分デアッテ、此間ニハ現在鞆鐵道
ガアル、乘合自動車モアル此交通ノ便利
ガ圖ラレテ居ルニ拘ラズ、政府ガ國費ヲ投
シテ七哩八分ノ場所ニ、福山鞆間ノ鐵道ヲ
敷設セントスル此案ハ、如何ニモ時代ヲ裏
切ッテ居ル遣方デアルト私共ハ思フ、是等ノ
點モ將來敷設スル場合ニハ餘程考ヘネバナ
ラヌ、斯ウ云フ事例ハ澤山アル、若シ斯ウ
云フヤウナモノヲ敷設法ニ入レルナラバ
全國幾ラデモアリマス、(「反對シタラ宜イヂ
ヤナイカ」ト呼フ者アリ)御默リナサイ、併
ナガラ茲ニ計上セラレタ以上ハ斯ウ云フ
誤レル線ガアリマスカラ、建設ノ場合ニ前
後緩急ヲ誤ラザルヤウト云フ言葉ヲ入レテ
當局ヲ警メルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ
モノヲ載セルト云フノハ、結局如何ナル譯
デアルカト言ヘバ、矢張其反面ヲ顧ミマ
スルト、黨勢擴張ノ政略ト云フモノガ玆ニ
胚胎シテ居ル(拍手)更ニ又此中ニ揭ゲラレ
テアル長野縣カラ群馬縣ニ通シマスル中込
磯部線ノ如キモノヲ見ルト、是等ノ如キハ
前內閣ノ時代ニ測量ヲ致シマシテ、測量ノ
結果ガ磯部中込線ガ適當ナリト前內閣時代
ニ判定シタ、而モ此方面ニハ三本アッタ、
而モ此線路ノ現内閣ニナッテ確定的ニ採用
ニナッタノデアル、而モ是ハ一昨年ノ十二月
ノ鐵道會議ニ諮問ヲシテ、確定的ニ大體ナツ
タノデアリマス、然ルニ昨年ノ九月ニナッ
テ、此磯部中込間ノ沿道關係町村ノ者ガ、小
川鐵道大臣ノ所へ、此鐵道敷設法ニ編入ノ
コトノ陳情ニ參リマスト、小川鐵道大臣ハ
當時官舍ニ於テ何ヲ語ッタカ、長野縣竝群
馬縣ノ關係町村ノ者ノ陳情ヲ聽イテ、彼ガ
申スヤウ、長野縣ハ中込線サヘ通レバ群馬
縣ハ何處ノ線路ヲ通ッテモ宜イ、斯ウ云フ答
辯ヲサレタ、而モ鐵道當局ニ於テハ磯部中
込線ガ適當ナリトシテ、技術上ノ測量ヲシテ
アル、而モ前年ノ十二月ニ鐵道會議ニ鐵道
大臣ハ案ヲ具シテ決定サシテ置キナガラ、
沿道關係ノ者ノ陳情ガアレバ決定セザルガ
如キ言語ヲ弄シテ、關係町村ノ者ニ心配ヲ
掛ケテ居ル、是ハ何ヲ意味シテ居リマスカ、
私共ハ斯ウ云フヤウナコトハ政黨員トシテ
ハ宜シウゴザイマセウガ、進ンデ内閣大臣
トナッタ以上ハ、斯樣ナル取扱ヲ致スコトハ
甚ダ宜クナイコトデアルト思フ、況ヤ當時
小川鐵道大臣ハ何ト申シタカ、其關係ノ陳
情ニ來リタル人民ニ向ッテ、此磯部ハ憲政會
ノ地盤デハナイカトマデ言ッテ居ル、當時磯
部ノ村長竝ニ他ノ者一人ガ、私ハ以前カラ
政友會員デゴザイマスト答ヘタラ、小川鐵
道大臣ハ曰ク、一名ヤ二名ノ政友會員ガ何
ニナルト、斯ウ言フテ居ル、町村ニ於ケル
一名ニ二名ノ政友會員ガ何ニナルカト
言シテ一喝シ去ッタノデアリマス、斯樣ニシ
テ政友會ニ全部入ラナケレバ此方面ニ鐵
道敷設法ノ追加ハ爲サラヌト云フコトヲ半
面ニ語シテ居ル斯樣ナ次第デアリマスカ
ラ、彼等ハ〓里ニ歸リマシテ役場ノ手ヲ使ッ
テ.、區長若ハ役場ノ者ガ其部內ノ者ニ向ッテ
入會書ヲヤッテ、サウシテ黨員ヲ募集シ
テ、初メテ此問題ノ完成ヲ圖ルト云フコ
トニ努力シテ居リマス、私ハ此事ニ付
テハ諸君モ一度進ンデ大臣ニナッタ
時ノ御心得ニモナルカラ御考ナサイ、政友
會デアラウガ、民政黨デアラウガ、一度進
ンデ大臣ニナッタナラバ、人民ガ陳情ニ
參リマス、而モ其事柄ガ決定シテ居ルモノ
ヲ、決定セザルガ如クニ挨拶ヲ致スト云フ
コトハ人民ニ不安ノ念ヲ與ヘル、此位大
臣トシテ爲スベカラザル行ヒハアルマイト
思フ、苟モ大臣トシテハ地方人民ガ陳情ニ
參リマシタナラバ、此事既ニ決定シテアル
ナラバ、態ミ其事デ來ルナラバ、既ニ前年
ノ十二月ニ確定シテ居ル、アナタ方ハ夫等
ノコトニ心配ナサラヌデ、歸シテ職務ニ努力
ナサイト親切ニ言フノガ、是ガ國務大臣ノ
當然爲スベキ途デアリマセウ、然ルニ決定
シテ居ルモノヲ決定セザルガ如ク言ヒナシ
テ、而シテ此處ハ憲政會ノ地盤ナリトシ
テ、政友會ノ黨勢擴張ヲ暗默ノ間ニ申渡ス
ト云フコトハ甚ダ宜シクナイ遣方デアル
ト私ハ思フ、政友會デアラウガ、民政黨デ
アラウガ、苟モ一國ノ大臣トナレバ眼中黨
派ハアリマセヌ、所ガ小川サンニハソレガ
アルカラ宜クナイト言フノデス、殊ニ此問
題ハ大臣トシテ斯樣ナ行動ヲ致シテ居リマ
シタガ、而モソレハ昨年ノ九月デアリマシ
タ、而モ其翌月ニナリマストドウナッタカ、
卽チ翌月ニナリマスト小川鐵道大臣ガ沿道
關係ノ陳情ニ來夕者ニ向ッテ一喝ヲ喰ハシ、
而シテ彼等ガ歸シテ政友會ノ黨勢擴張ニ努
力ヲシ全村擧ゲテ入黨スルヤ、其翌月ハ
群馬縣ノ其土地カラ選バレタ縣會議員ノ民
政黨ニ屬スル者ヲ、政友會ニ奪ハントシテ
策動シタデハナイカ、兎ニ角其事實ハ昨年
ノ十月二十七日ノ束京朝日ニ載セテアル、
群馬縣ノ都木縣會議長ガ語ッテ居リマス、ソ
レニ斯ウ云フコトガ書イテアル「祕密ニヤッ
テ居ッタガ遂ニ知レタカネ、彼ノ問題ハ支部
トシテハ手ヲ著ケズ、長野ノ篠原代議士ト
本部ノ島田幹事長トデ計畫シテ、磯部中込
線沿道關係六箇町村ノ入黨書ヲ纏メ、ソレ
ヲ携ヘテ磯部ノ荻原村長ガ來タカラ、本尊
ノ宮田縣會議員ハ入黨シテ居ルカト聞イタ
ラ入黨セヌト云フカラ、ソンナラ此入黨
書ガ十万人分アラウトモ反古同樣デアル」
斯樣ナ次第デ、中央ニ於テハ大臣ガ陳情ニ
參ッタ人民ニ對シテ、決定シテ居ルモノヲ決
定セザルガ如クニシ、而シテ其人民ノ態度
ニ依テハ此問題ヲ敷設案ニ入レテヤル、斯
ウ云フ風ニ暗默ナ狀態ヲ示シ、而シテ翌月
ニナリマスト縣會議長ト政友會ノ島田幹事
長ガ共ニニ結託シテ、地方ノ縣會議員一名
ヲ民政黨カラ政友會ニ轉籍セシメントシテ
努力シタノハ事實デアリマセウ、事ハ少サ
ウゴザイマスガ、如何ニ黨派出身ノ大臣デ
アラウトモ、苟モ職權ヲ濫用シテ黨勢擴張
ヲナサルト云フコトハ、事柄ガ宜シクナイ、
政治ハ公明正大デス、假令政友會デアラ
ウトモ、一度大臣トナッタナラバ公平ナ態
度ニ依テ政治ヲ料理スルノガ當然ノ道デア
リマセウ、然ルニ斯樣ナル行ヒヲ致スカラ
宜シクナイ、而モ此動機ハ今ヤ此敷設法案
ノ一線ニ現ハレテ居ルガ、閣議竝ニ鐵道省
ニ於テ決定シテ居ルモノヲ、セザルガ如キ
態度ヲ以テ、斯ル行ヒヲ爲シタル國務大臣
トシテノ行動ガ、非ナリトシテ將來ヲ警メ
ルノデアリマス(拍手)殊ニ私共ハ此警告書
ニモアリマス通リ、斯ウ云フ風ニ澤山ニ追
加トシテ鐵道線路ヲ加ヘルノハ宜シウゴザ
イマスガ、之ガ爲ニ既設計畫ニマデモ禍ヲ
致シ、更ニ進ンデ新線路ノ建設ヲ致ス場合
ニ、前後緩急ヲ誤ルコトガ宜シクナイト云
フ意味合カラ特ニ此點ヲ加ヘタノハ、現內
閣ハ旣ニ今年度ニ於テ仙石大臣ガ確定的ニ
決メタ年度割サヘモ、今ヤ變更迄致シテ居
リマス、一例ヲ擧ゲルナラバ、名古屋停車
場ノ改築問題ノ如キ其一例デス、此問題ノ
如キハ仙石大臣ノ時代ニ昭和六年度ニ於テ
完成スルモノヲ、此度ハ昭和十年度ニ拵ヘ
ルト云フコトデ繰延ヲ致シテ居リマス、是
ハ如何ナル譯デアルカ知リマセヌガ、苟モ
鐵道ヲ計畫スル以上ハ、殊ニ名古屋ノ如キ
交通ノ樞區デアル場所ハ一日モ早ク完成
ヲ致シテ、民衆ニ利便ヲ與ルト共ニ、鐵道
收入ヲ圖ルノガ、是ガ鐵道當局トシテ爲ス
ベキ途デアル(拍手)然ルニ鐵道事業ヲ起シ
テ、態、有ル金ヲソレヲ取去シテ、他ノ方
面ニ振撒イテ、事業ノ完成ヲ圖ラヌト云フ
コトハ鐵道收入ヲ圖ル上ニ於テ大ナル間
違デアリマス、此點ニ付テハ、名古屋ノ如
キ場所柄ガ交通頻繁ノ場所ダケニ、多クノ
人ガ非常ニ心配セラレ、更ニ此點ニ付テハ
鬼丸代議士ノ如キハ、當局大臣ニ向ッテ注
意マデ拂ハレテ、年度マデモ十年度ニ延バ
シタノハ甚ダ迷感デアルカラ、成ルベク繰
上ゲテヤッテ貰ヒタイト云フコトデ、心配セ
ラレタト云フコトハ、私共當時ノ新聞ヲ見
テ知ッテ居リマス、而モ昭和四年度ノ名古屋
驛ノ改築費ハ二百五十万圓ノモノヲ、現內
閣ニ於テ昭和四年度ハ八十万圓ニ減ラサレ
チシマッタ、前ノ計畫デハ五年度ニハ三百
五十万圓、六年度ニハ百七十九万六千圓デ、
是デ完成スルモノヲ、十年度迄延スコトニ
致シタカラ、四年度ニ八十万圓、五年度ニ
三十八万圓ト云フヤウニ減額ヲシテ參リマ
シタ、是ガ爲ニ民衆ノ多數ノ者ノ交通ノ便
ヲ良クシ、及ビ貨物ノ集散ト云フコトガ、
其改築工事ガ出來ナイ爲ニ不便ヲ感ズルノ
デアル、斯ウ云フヤウナ次第デアリマスカ
ラ、此名古屋ニ關係ノアル鬼丸代議士ノ如
キハ、特ニ心配セラレテ、不信任案上程ノ
九日ニ小川鐵道大臣ニ膝詰談判ヲシテ、此
名古屋驛改築問題ハ六年度迄ノモノヲ十年
ニ延シタト云フコトハ困ルカラ、ドウゾ之
ヲモット繰上ゲルヤウニト云フ談判ヲ致シ
タト云フコトサヘ私共傳ヘ聞イテ居ル、小
川鐵道大臣モ此不信任案上程ノ日ニ膝詰談
判ヲ食ッテ、若シ之ニ相當ノ考慮ヲ致シ、而
シテ金ヲ噌シテ下サラナケレバ不信任案上
程ノ日ニ缺席スル、鬼丸君ガ缺席スレバ他
ノ憲政一新會ノ人モ缺席スルト云フコト
ナノデ、小川鐵道大臣ハ是ガ爲ニ五年度、
六年度、七年度ニ百万圓ヅヽ三百万圓ヲ支
出ヲ致シテ、八年度ニ完成スルコトニスル
ト云フ言明ヲ與ヘタト云フコトデス、是ガ
爲ニ鬼丸君ハ不信任案上程ノ日ニ議會ニ出
席ヲシテ、我ガ民政黨提出ノ不信任案ニ反
對ヲ表シタト言ッテ居ル(拍手)此問題ニ付
キマシテハ、私ハ鐵道委員會ニ於テモ質問
ヲ致シマシタ、而モ當時昭和四年·
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=64
-
065・元田肇
○議長(元田肇君) 靜ニ願ヒマス-静ニ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=65
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066・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) 私ハ當時鐵道委員會
ニ於テ、證據書類トシテ昭和四年二月十二
日ノ名古屋新聞ヲ提ゲテ質問ヲ致シタ、其
名古屋新聞ニ揭ゲテアリマス一節ヲ申シマ
ス、其名古屋新聞ハ、二月十二日デアリマ
ス、ソレニ斯ウ云フコトガ掲ゲテアル、名
古屋驛ノ改築問題ニ付テ鬼丸代議士ノ談デ
アリマス、吾々名古屋人ガ政黨政派ヲ超越
シタ大問題デ貴紙ノ如キモ輿論喚起ニ大ニ
努力セラレタイ、僕モ去ヌル九日此問題ニ
付キ、小川鐵相、八田次官ニ會見シテ頑强
ニ談判シタ結果、鐵道大臣ヨリ四、五、六
ノ各年度ニ百万圓宛豫算ヲ增額スル旨ノ言
質ヲ得タ、之ニ依リ名古屋驛改築ハ昭和八
年度迄ニハ完成スル運ビニナッタ、小川鐵相
ハ色〓言ッテ居ルガ、名古屋驛改築ハ現
内閣ノ政略ノ犠牲トナッタト云フコトハ事
實爭ハレヌト書イテアリマス(拍手)而モ是
ハ名古屋新聞デアリマス、(「ソレハ小山松
壽ガ書カセタノダ」ト呼フ者アリ)其通リ
デアリマス、更ニ今一ツ政友會ノ機關新聞
ヂアリマス新愛知ハ、同二月十二日ノ新聞
ニ斯ウ云フコトガ書イテアリマス、是モ亦
鬼丸代議士ノ談デス、名古屋市選出鬼丸代
議士ハ名古屋驛改築問題其他議會ニ於ケ
ル狀況報告ノ爲十一日朝歸名シタガ、東區
武平町ノ自宅ニ落著イタル所ヲ訪問スルト
左ノ如ク語ル、名古屋驛ノ改築ニ付テ、加
藤鐐代議士ヲ始メ關係代議士ガソレ〓〓分
科會デ質問シタリ、又ハ直接當局ニ促進運
動ヲシタリシタガ、僕モ本市ニ取ッテハ事
頗ル重大ナ問題ナノデ、不信任案上程ノ九
日名古屋驛改築ニ對シ、具體的ニ誠意ヲ示
サレナケレバ缺席スルト頑張ッタ所、僕ガ缺
席スレバ他ノ憲政一新會ノ者モ全部缺席ス
ルコトニナッテ居ル關係上、政府デモ重大視
シ、政府ハ昭和四、五、六ノ三年度ニ他ノ
改良費ヨリ三百万圓ノ豫算ヲ流用シ、每年
百万圓宛曾額スルコトヲ言明シタノデ、議
會ニ出席シテ不信任案ニ反對シタノデアル
ト書イテアル(拍手)是ハ新愛知デ、政友
會ノ機關新聞デアリマス、私ハ此政友會ノ
機關新聞、民政黨ノ機關新聞ガ各〓同ジ事
實ヲ揭ゲテ居リマスカラ、此事實ヲ捉ヘテ
小川鐵相ニ聞イタ、然ルニ小川鐵相答ヘテ
曰ク、左樣ナコトハ、百万圓ナド三箇年出
スト云フコトハ出來ル筈ハナイデハナイカ
ト言ハレテ居ル、私ガ申シマスノニ、ソレ
ハ改良費カラ出スト言ッテ居ルヂヤナイカ、
當局大臣ガ出スト言へバ出サナイコトモア
リマスマイト私ハ逆襲シタ、然ルニ之ニ向ッ
テ小川鐵道大臣ハ否認スルカト言ヘバ否
認モシナイ、考慮スルト云フコトデアル、
其考慮ノ中ニハ百万圓ト云フ金額ガアルカ
ドウカハ小川鐵道大臣ハ申シマセヌガ、此
點ニ付テ政府ニ於テモ十分考ヘテ居ルト云
フノデアルカラ、鬼丸代議士ノ申ス事ハ嘘デ
ハナイト私共ハ思ヒマス(拍手)而モ鬼丸代
議士ニ向ッテ、此事ヲ同ジ委員デアリマスカ
ラ質問スルト答ヘナイ、判斷ハ皆樣ノ御
自由ト言ッテ居リマス、然ラバ鬼丸代議士之
ヲ否認セズ、小川鐵道大臣ハ、三百万圓ト
云フ金ガ何處カラ出ルカト云フコトヲ仰セ
ラレタガ、兎モ角面會シテ考慮スルト言ハ
レタコトハ小川鐵道大臣ガ肯定シテ居ル所
ヲ見レバ、卽チ是ハ新聞ニアルヤウニ、名
古屋驛改築問題ヲ利用シテ、所謂政略ノ具
ニ供シタト云フ確實ナル證據デアリマセウ
(拍手)私共ハ斯ウ云フコトヲ憂フルノデア
リマス、今後改築ヲスルニ當ッテ、若クハ
鐵道ヲ建設スルニ當シテ、豫定線ガ澤山殖エ
テ來マス、其殖エタモノヲ是カラ採擇ヲ致
シテ建設スル場合ニ、今迄ノ小川鐵道大臣
ノ如キ考ヲ以テ採擇ヲ誤リマシタナラバ
自動車ノ便ニ浴シテ十分デアル所ヘ、國費
ヲ澤山使クテ短距離ノ場所ニ鐵道ヲ敷設ス
ルトカ、或ハ黨勢擴張ノ關係カラ早ク完成
スベキモノヲ、態、年度ヲ長ク延シテ、其間
ノ金ヲ他ノ方面ニ流用シテ、黨勢ノ擴張ヲ
致スト云フヤウナコトガアリマシテハ將
來國策ヲ遂行スル上ニ於テ甚ダ宜シクナ
イ、吾々ハ此意味カラ過去ニ於ケル、卽チ
現在迄ニ小川鐵道大臣ガ爲サレタ遣方ハ、
鐵道ノ豫定追加線路ヲ入レルコトニ付テサ
くも、決定シタモノヲ決定セザル如ク言
ヒ、又名古屋驛改築ニ付テハ、所謂既定豫算
ヲ改メテ、六年ノモノヲ十年ニ致シテ、其
間ノ金ヲ彼此レ流用シテ政略ノ具ニ供スト
云フコトハ甚ダ國家國民ニ取シテ善クナ
イ行爲ナリト吾々信ズルノデアリマス(拍手)
斯樣ナ意味デアリマスカラ、小川鐵道大臣
モ相當ナ學問知識ヲ持ッテ居ラレル方デア
リマスカラ、此點ヲ注意致スノデアリマ
ス
〔此時發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=66
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067・元田肇
○議長(元田肇君) 靜肅ニ願ヒマス、尙ホ
贊成ノ理由ヲ述ベラレルナラバ、何卒贊成
ノ理由ヲ述ベテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=67
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068・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) 述ベテ居リマス
〔此時元田議長木檜君ニ對シ何事カ注
意スルモノヽ如クナルモ議場喧騒甚シ
ク聽取スル能ハス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=68
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069・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) 鐵道追加豫定線路ノ
問題ハ政友會ノ問題デハアリマセヌ、國家
ノ問題デス、諸君ハ自ラ我黨内閣ノ時ニ、
六線路ヲ追加スル時デサヘモ、諸君ハ警告
ヲシタデハナイカ、況ヤ二十六線路ニ上ル今
日、吾々ハ國家ノ爲ニ警告スルハ當リ前デ
アリマス、吾々ハ小川鐵道大臣ガ一個ノ辯
護士デアリ、一個ノ代議士デアレバ何モ申
シマセヌ、今日ハ國務大臣デアルカラ、是
ダケノ注意ヲ與ヘテ、過去ニ於ケル誤レル
點ヲ改メテ、將來國家國策ノ遂行ニ善處ス
ルコトヲ希望スル意味ニ於テ、小川鐵道大
臣ニ注意スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=69
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070・元田肇
○議長(元田肇君) 小川鐵道大臣
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=70
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071・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 只今小檜君ノ御
演說中ニ、私ニ關係ノアルコトノ御陳述ガ
アリマシタカラ、之ニ對シテ一言述ベテ置
キタイト思フノデアル、只今御話ノコトハ、
先般ノ敷設法委員會ニ於テモ、木檜君ヨリ
御話ガアッタノデアル、其當時モ御答ヲ致
シテ置イタノデアリマスガ、彼ノ中込磯部
線ノ如キハ一昨年ノ暮ノ鐵道會議ニ於テ
私自身ガ提案ヲシテ、議決ニナッテ居ル線
路デアリマス、其線路ニ對シテ、私ガ昨年
ノ九月ニ於テ、是ガ未ダ確定セザルモノデ
アルガ如キ言議ヲ爲スト云フ理窟ハナイノ
デアリマス、又私ハ其當時モ述べタノデア
リマス、木檜君ガ磯部ニ於テ選擧區ヲ持ッ
テ居ラルヽト云フコトモ、今囘始メテ承ッ
夕次第デアル、此地方ニ對シテ黨勢ノ擴張
ノ協力ヲスルナドト云フコトハ少シモ無イ
ノデアリマス、又道理上ヨリ考ヘテ見マシ
テモ、此鐵道會議ヲ經テ、而シテ昨年ノ春
ノ議會ニ提案ヲシタモノニ對シテ、昨年ノ
秋ニ私ガ如何ニ間違ヒマシタト申シマシテ
モ、ソレガ確定セザルモノト言フヤウナ氣
遣ハナカラウト思フ、又之ヲ信ズル人ガド
ウシテアルノカ、一向私ハ譯ガ分ラナイ、
何ニ依テ之ヲ確定セヌト云フコトヲ信ズル
ノデアリマスカ、道理上カラ申シテモ是ハ
全ク違ッテ居ルコトデアル、私ハ此點ニ付テ
ハ全然關係ガ無イト云フコトヲ御答シテ置
イタ、然ルニ又今日同ジ事ガ出タ、私ハ其
趣意ガドノ邊ニ在ルカ、一向了解ガ出來ヌ
ノデアリマス、又先般鬼丸代議士ニ關スル
云々ト云フコトハ是ハ全然無根ノコトデ
アリマス(拍手)先般ノ委員會ニ於テモ篤ト
申上ゲテ置イテアルノデアル、此建設ノ委
員會ノ以前ニ於テ、豫算ノ分科會ニ於テ、
此關係地方ノ選出ノ議員ノ諸君ノ中カラ御
尋ガアリマシタカラ、其點ハ篤ト考慮ヲシ
マスト云フコトヲ豫算ノ會議ニ於テ御答ヲ
シテ居ル、鬼丸代議士ヨリ其後其點ニ付テ
御話ガアッタト心得テ居リマスガ、矢張是
ハ考慮ヲスルト云フダケノ御答ヲシタノデ
アル、來年何十万圓出ストカ、何百万圓出
ストカ、サウ云フコトハ言ヒ得ラレル筈ガ
ナイ、何トナレバ木檜君モ御承知ノ通リ、
改良費ト云フモノハ豫算ガ決ッテ居ル、ソレ
ヲ此決"タ豫算ノ中カラ、殊ニ名古屋ニ向ッ
テ五十万、百万ト云フ大金ヲ每年續ケテ出
スト云フコトニナリマスレバ、是ハ他ノ方
面カラ種々ナ差繰ヲシテ、金ヲ集メテ來ナ
ケレバ出來ナイノデアリマス、ソレヲドウ
シテ百万圓宛三箇年出スト云フヤウナコト
ヲ答辯スルコトガ出來マセウ、私ハ決シテ
左樣ナコトハ毛頭モ申シタコトハナイト云
フコトヲ委員會ニ於テ十分ニ申上ゲテア
ル、又彈効案ニ付テ、私ガ此場合ニ於テ彈
効案ニ贊成ヲシテ吳レトカ吳レルナトカ、左
樣ナコトハ私ハ、鬼丸君ハ、勿論、如何ナル人
ニ向ッテモ一言モ申シタコトハナイノデア
ル、此事モ委員會ニ於テ明ニ申上ゲテ置イ
テアル、然ルニ木檜君ハ、如何ナル御考ヲ
以テ、又同ジコトヲ此壇上ニ於テ御繰返シ
ニナルノデアルカ、紳士トシテ、如何ニ言
論ノ自由ナル議會トハ申セ、少シハ此言論
ニ付テ責任アル考ヲ以テ御愼ミニナッタラ
宜カラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=71
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072・元田肇
○議長(元田肇君) 吉木陽君
〔吉木陽君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=72
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073・吉木陽
○吉木陽君 私ハ只今上程ニナッテ居リマ
スル鐵道敷設法中改正法律案ニ對シテ、賛
成ノ意ヲ極メテ簡單ニ表明スル者デアリマ
ス、鐵道敷設法ガ初メテ制定セラレマシテ
以來、既ニ十數年ヲ經過致シテ居ルノデア
リマス、其間ニ於キマシテ、五十二議會ニ
於テ憲政會ノ方面ヨリ六線ノ追加ガアッタ
ノデアリマス、憲政會內閣ノ當時アッタノ
デアリマス、斯樣ナ狀態デアリマスカラ、
現在ノ百數十線ト云フモノハ、既ニ十數年
前ニ定メラレタノデアリマス、其後交通、
產業等ノ方面ニモ、非常ナル地方ニ變遷ガ
アッタノデアリマス、隨テ之ニ改慶ヲ要ス
ル-改良ヲ要シ、追加ヲ要スルト云フコ
トハ極メテ當然ノコトデアルノデアリマ
ス、年々多數ノ鐵道敷設ニ對シテ或ハ陳情
シ、或ハ建議案等ガ出ルト云フ事實ニ徴シ
テモ、極メテ明瞭デアルノデアリマス、斯
樣ナ事情デアリマスカラ、政府ニ於カレマ
シテモ是等ノ建議案、是等ノ陳情書等ヲ參
酌致シテ、調査〓究ノ結果、玆ニ二十六線
ヲ追加スルノ必要ヲ認メタノデアリマス、
而シテ本案ガ此議會ニ提出セラレマスルマ
デニハ、本省ニ於テ十分ナル調查ヲ遂ゲラ
レタコトハ勿論、鐵道會議ニモ付セラレテ
通過ヲ致シテ來タノデアリマス、而シテ其
鐵道會議ニ於キマシテハ、斯界ノ「オーソ
リチー」ヤ、又衆議院議員ノ中ニ於テモ、
啻ニ我ガ政友會ノ中カラバカリデナク、民
政黨ノ諸君モ、ソレ等ノ會議ニ這入ッテ居
ラレル、是等ノ人ミモ、何等之ニ對シテ訂
正變更等ノ發言ガナカッタノデアリマス、此
事ハ此新ニ提案セラレタル路線ガ、極メテ
適切公正ナモノデアルト云フコトヲ證明シ
テ餘リアルモノデアルト思フノデアリマス
(拍手)委員會ニ於キマシテモ、亦連日ニ亙シ
テ審議ガ重ネラレタノデアリマス、サリナ
ガラ反對黨ノ方面ニ於キマシテモ、此路線
ニ對シテ變更シヤウトカ、訂正シヤウトカ
云フヤウナ意見ハ更ニ無カッタノデアリマ
ス、此方面カラ考ヘテ見マシテモ、此路線
ガ極メテ適切ナモノデアルト云フコトヲ、
立證シテ居ルト申シテ宜イデアラウト思ヒ
マス(拍手)反對黨ノ諸君ハ此問題ニ關シ
テ、或ハ黨略ガ含ンデ居ル、或ハ黨勢擴張
ノ具ニ供シタナドト云フ御意見ガアルヤウ
デアリマス、サリナガラ其品質ノ好イト云
フコトハ、御認メニナッテ居ル、若シ品質
ガ惡イト云フコトナラバ、御反對ニナラナ
ケレバナラヌ、故ニ此路線ガ-二十六線
ガ正シイモノデアルト云フコトハ、明ニ諸君
ガ認メラレテ居ルト謂ハナケレバナラヌノ
デアル(拍手)諸君、民政黨ノ諸君ハ或
暴露戰術ナドヽ稱シ、政府ノ爲スコトハ
カラ十マデ反對シ來ッテ居ラレルコトハ、是
ハ明ナル事實デアル、既ニ政府ノ爲スコト
ヲ、色眼鏡ヲ以テ眺メテ居ラレルコトハ極
メテ明瞭デアル、斯ノ如キ色眼鏡サヘ以テ
見テモ、尙且ツ正シイ線デアルト云フコト
デアルナラバ、如何ニ此線ノ正シイト云フ
コトハ立證シテ餘リアルト謂ハナケレバナ
ラヌト思ヒマス(拍手)此問題ハ黨勢擴張ノ
具ニナッタト云アコトハ偶、此路線ガ適切
デアッテ、地方民ノ翹望ニ合致シテ居ルガ故
ニ、地方民ハ此政友會ノ政策ガ是ナリトシ
テ、入黨者續出スルノデアル、當然ノ結果
デアル、啻ニ鐵道敷設法バカリヂヤナイ、
政友會ノ有スル政策ガ正シイカラ、總テノ
政策ニ共鳴致シテ、入黨者ガ續々出ルト云
フコトニナル、斯ノ如キコトガ黨勢擴張デ
アルナラバ、甘ンジテ政友會ハ其風評ヲ受
ケルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事情デ
アリマスガ故ニ、黨勢擴張ノ具ニ供シタナ
ドト云フコトハ、唯弱者ノ悲鳴デアルト吾
吾ハ考ヘテ居ルノデアリマス、其他色〓擧ゲ
ラレタ所ノ問題ニ付テハ、小川鐵道大臣カ
ラ極メテ適切ナル辯明ガアッタ通リ··
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=73
-
074・元田肇
○議長(元田肇君) 哲ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=74
-
075・吉木陽
○吉木陽君(續) 事實無根デアルコトハ明
白ニナッタカラ、之ニ對シテ私ハ一々辯明
スルノ必要ヲ認メマセヌ、斯樣ナ次第デア
リマシテ、本案ハ極メテ國家ノ爲ニ適切ナ
ル路線デアルト云フコトヲ認メマシタガ故
ニ、玆ニ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス
〔木檜三四郞君「小川國務大臣ノ發言ニ
關聯シテ····」ト呼ヒ此時發言スル者
アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=75
-
076・元田肇
○議長(元田肇君) 討論ノ通告ハ是デ終了
致シマシタ··
〔「議長々々」ト呼ヒ其他發言スル者多
シ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=76
-
077・元田肇
○議長(元田肇君) 靜ニ-靜ニ-私語
ハ許シマセヌ-討論ノ通告ガ終リマシタ
カラ討論ハ終結致シタモノト認メマス、故
ニ採決致シマス、本案ノ二讀會ヲ開クニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=77
-
078・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議無イモノト認メ
マス、仍テ第一一讀會ヲ開クコトニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=78
-
079・原惣兵衞
○原惣兵衞君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=79
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080・元田肇
○議長(元田肇君) 原君ノ動議ニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=80
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081・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナイモノト認メ
せっ、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キマス
〓〓
鐵道敷設法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=81
-
082・元田肇
○議長(元田肇君) 第三讀會ヲ省略シテ、委
員長報告ノ通リ可決確定致シタイト思ヒマ
ス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=82
-
083・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ガアリマセヌカ
ラ鐵道敷設法中改正法律案ハ可決致シマシ
タ-日程第十三乃至第十六ハ提出者同一
ノ議案ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=83
-
084・元田肇
○議長(元田肇君) 御異議ナシト認メマス、
一括シテ議題ニ供シマス-大竹貫一君
第十三政治運動ノ爲金品供與ノ制限
ニ關スル法律案(大竹貫一君外一名
提出)第一讀會
政治運動ノ爲金品供與ノ制限ニ關ス
ル法律案
第一條左ノ一ニ該當スル會社、組合其
ノ他ノ團體又ハ個人ハ政治運動ニ關シ
直接タルト間接タルトヲ問ハス金錢、
手形、物品其ノ他財產上ノ利益ノ供與
ヲ爲シ又ハ供與ノ約束ヲ爲スコトヲ得
ス
-政府ノ特許セル事業ヲ營ムモノ
二政府ヨリ補助金其ノ他財產上ノ保
護補償若ハ保證ヲ受クルモノ
三政府ニ於テ理事又ハ決議機關ノ全
部又ハ一部ヲ任免スルモノ
四政府ヨリ特權ヲ付與セラレタルモ
ノ
五政府ノ請負ヲ爲スモノ
第二條前條ニ規定スル會社、組合、團
體ノ理事、取締役其ノ他ノ役員ニシテ
個人名義ヲ以テ前條ノ行爲ヲ爲シタル
者ハ該會社、組合、團體ノ行爲ナリト
推定ス
第三條何人ト雖政治運動ニ關シ第一條
ニ現定スル者ニ對シ直接タルト間接タ
ルトヲ問ハス金錢、手形、物品其ノ他
財產上ノ利益供與ノ申込ヲ爲シ又ハ供
與ヲ受クルコトヲ得ス
第四條前三條ノ規定ニ違反シタル者ハ
三年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲
ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキ
ハ一年以上十年以下ノ懲〓ニ處ス
會社ノ行爲ニ關シテハ理事、取締役其
ノ他ノ役員、組合其ノ他ノ團體ノ行爲
ニ關シテハ其ノ供與ノ決議ニ加ハリタ
ル役員其ノ責ニ任ス
第五條政治ニ關スル結社ニシテ金錢、
手形、物品其ノ他財產上ノ利益ヲ受ケ
タルトキハ主幹者ハ其ノ收受ノ日ヨリ
七日以内ニ官報ニ公告スヘシ但シ所定
ノ會規、會則ニ依ルモノハ一括シテ其
ノ總額ヲ公告スヘキモノトス
第六條政治結社ノ主幹者ハ每年一回一
定ノ時期ニ其ノ收支計算ヲ官報ニ公告
スヘシ
議員ノ選擧アリタルトキハ其ノ終了後
一月以内ニ選擧ニ要シタル費用ノ收支
ヲ官報ニ公告スヘシ
第七條前二條ノ規定ニ違反シタル者ハ
六月以下ノ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金
二四六、
第八條政治結社ニシテ本法ニ違反スル
コト三囘以上ニ涉ルトキハ內務大臣ハ
其ノ團體ノ解散ヲ命スルコトヲ得
前項ノ處分ニ不服アル者ハ行政栽判所
ニ出訴スルコトヲ得
第十四政治結社加入勸誘方法ノ制限
ニ關スル法律案(大竹貫一君外一名
提出)第一讀會
政治結社加入勸誘方法ノ制限ニ關ス
ル法律案
第一條鐵道敷設、道路、港灣、橋梁、
河川ニ關スル事業竝學校、官公署ノ設
置移轉其ノ他公費ヲ以テ施行スル事
業又ハ政府ノ權限ニ屬スル認可、許可
其ノ他特殊ノ利害關係ヲ利用シテ政治
結社ニ加入シ又ハ加入セサルコト若ハ
政治結社ヨリ脫退スヘキコトヲ勸誘シ
タル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ二千圓以
下ノ罰金ニ處ス
前項ノ勸誘ノ仲介又ハ周旋ヲ爲シタル
者亦同シ
第二條行政官廳ノ處分カ前條ノ利害關
係ノ利用ニ基クト認ムへキ理由アルト
キハ關係者ハ其ノ取消ヲ行政栽判所ニ
請求スルコトヲ得
第三條官吏ニシテ情ヲ知リテ第一條ノ
犯罪ヲ構成スルニ至ラシメタルトキハ
五年以下ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金
二度大、
第十五議員ノ職務ニ關スル法律案
(大竹貫一君外一名提出)第一讀會
議員ノ職務ニ關スル法律案
第一條本法ニ於テ議員トハ貴族院議員
竝衆議院議員ヲ謂フ
第二條議員ニシテ辯護士タル者ハ政府
ノ爲其ノ業務ニ從事スルコトヲ得ス
第三條議員ハ政府ニ對スル營利事業ノ
請負人ノ代理人タルコト又ハ政府ノ事
業ヲ請負フヘキ者ヲ政府ニ紹介スルコ
トヲ得ス
第四條議員ハ何等ノ名義ヲ用ウルヲ問
ハス政治運動ノ爲全品供與ノ制限ニ關
スル法律第一條ニ揭クル會社、組合其
ノ他ノ團體ノ役員タルコトヲ得ス其ノ
發起人又ハ贊助者タルニ付亦同シ
第五條議員ハ投機ニ從事シ又ハ何等ノ
名義ヲ以テスルヲ問ハス投機ニ關係ア
ル會社、組合其ノ他ノ團體ノ役員タル
コトヲ得ス
第六條議員ハ金錢、物品、手形又ハ財
產上ノ利益ノ供與ニ依リ政治團體ニ加
入シ若ハ政治〓體ヨリ脫退スルコトヲ
得ス
何人ト雖前項ノ行爲ノ勸誘ヲ爲スコト
ヲ得ス
第七條第二條乃至第六條ノ規定ニ違反
シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス因テ
不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲
ササルトキハ一年以上十年以下ノ懲役
二段六、
第十六衆議院議員選擧法中改正法律
案(大竹貫一君外一名提出)第一讀會
衆議院議員選舉法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第五條中「二十五年」ヲ「二十年」ニ、「三
十年」ヲ「二十五年」ニ改ム
第六條第一項第五號及第六號ヲ削リ第七
號ヲ左ノ如ク改ム
五犯罪ニ依リ刑ニ處セラレ其ノ執行
ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ
至ル迄ノ者
第十八條總選擧ハ議員ノ任期終リタル
日以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行
フヲ例トス
議會開會中又ハ議會閉會ノ日ヨリ二十
五日以內ニ議員ノ任期終ル場合ニ於テ
ハ總選舉ハ議會閉會ノ日ヨリ二十五日
以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行
フ
衆議院解散ヲ命セラレタル場合ニ於テ
ハ總選擧ハ解散ノ日ヨリ二十五以後ニ
於ケル最近キ日曜日ニ之ヲ行フ
總選擧ノ期日ハ勅命ヲ以テ之ヲ定メ少
クトモ二十五日前ニ之ヲ公布ス
第四十九條中「投票區毎ニ」ヲ削ル
第六十八條中「二千圓」ヲ「五百圓」ニ改ム
第七十九條第五項中「二十日以內ニ」ヲ
「十五日以後ニ於ケル最近キ日曜日ニ」
二郎A
第八十四條第百三十六條ノ規定ニ依リ
當選ヲ無效ナリト認ムル選擧人又ハ議
員候補者ハ當選人ヲ被告トシ第七十二
條第一項ノ告示ノ日ヨリ三十日以内ニ
大審院ニ出訴スルコトヲ得
第八十八條選擧ニ際シ候補者ノ政治上
ノ意見ノ發表ニ必要ナル演說會場ハ市
町村ニ於テ之ヲ設備スヘシ
市町村長ハ右演說會ノ期日ヲ市町村内
ニ告知シ同時ニ各候補者ニ通知スヘ
シ
第八十九條市町村長ハ議員候補者ノ履
歷竝政治上ノ意見ヲ市町村ノ揭示場ニ
揭示スヘシ揭〓場ノ數及掲示ノ期間ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十條議員候補者ノ政治上ノ意見ハ
政府ニ於テ之ヲ印刷シ通常郵便ヲ以テ
選擧人一人ニ付一通ヲ限リ無料ニテ配
布スヘシ意見書ノ字數及其ノ屆出竝配
布ノ時期ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第九十一條何人ト雖第八十八條乃至第
九十條ノ方法以外ノ方法ニ依リ選擧ノ
運動ヲ爲スコトヲ得ス
第九十二條削除
第九十三條削除
第九十四條削除
第九十五條削除
第九十六條削除
第九十七條削除
第九十八條削除
第九十九條削除
第百條削除
第十一章削除
第百一條削除
第百二條削除
第百三條削除
第百四條削除
第百五條削除
第百六條削除
第百七條削除
第百八條削除
第百九條削除
第百十條削除
第百二十九條第九十一條ノ規定ニ違反
シタル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第百三十條削除
第百三十一條創除
第百三十二條削除
第百三十三條削除
第百三十四條削除
第百三十五條削除
第百三十六條當選人其ノ選舉ニ關シ本
章ニ揭クル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレタル
トキハ其ノ當選ハ無效トス
第百三十八條ノ二一ノ市町村ニ於テ一
囘ノ選擧ニ際シ本法第百十二條又ハ第
百十三條ニ依ル刑ニ處セラレタル者選
舉人名簿確定ノ日ニ於テ之ニ記載セラ
レタル者ノ總數ノ十分ノ一ニ達スルト
キハ其ノ市町村内ノ總テノ住民ハ該選
擧ノ日ヨリ五年間衆議院議員ノ選擧權
ヲ行使スルコトヲ得ス
第百四十條削除
第百四十八條削除
〔此時議長元田肇君議長席ヲ退キ副議
長〓瀨一郎君代リ著席〕
〔大竹貫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=84
-
085・大竹貫一
○大竹貫一君 只今議題ニナッテ居リマス
ル第十三乃至十六、此四案ヲ一括致シマシ
テ私ヨリ提案ノ理由ヲ單簡ニ申上ゲテ置キ
タイト思ヒマス、元來議員ト致シマシテ、
斯樣ナ法律案ヲ提出スルト云フコトハ如
何ニモ己レ自身ヲ輕蔑スルヤウナ感ガアリ
マシテ、如何ニモ時シシタノデアリマス、
サリナガラ今日ノ政治界ノ情勢ヲ見マスル
ト本案ノ提出ハ寔ニ必要ナリト深ク信ジ
タ爲ニ、玆ニ忍ンデ四ツノ案ヲ提出シタ譯
デアリマス、諸君モ御承知ノ通リ、當議會
ガ開ケマシテ以來、本院ニ於キマシテモ、
貴族院ニ於キマシテモ、每日討論セラルヽ
コトハ何デアルカト申シマスルナラハ、始
終政治部面ノ醜惡ナルモノガ標的トサレ
テ、異口同音ニ論議サレテ居ルノデアリマ
ス、只今モ鐵道敷設法案ニ於テ、諸君御聽
キノ通リ如何ニモ聽キ苦シイ所ノ議論ガ行
ハレツヽアルノデアリマス、私共ハ今日政
治ヲ革新スルコトニ付キマシテハニチニノ
是ハ忽ニスベカラザルコトヽ考ヘマシテ、
前年以來唯此政治ノ革新ヲノミ目的トシ
テ、革新黨ナルモノヲ結ンデ天下ニ向ッテ
結黨致シテ居ルノデアリマス、故ニ第一ニ
有ユル方面ノ先決問題ト致シテ、此方面ヨ
リ手ヲ著ケルコトガ非常ニ必要ナリト思フ
ノデアリマス、此爲ニ五十二議會以來、先
輩ノ尾崎君初メ其他ノ人々ガ本案ヲ提唱サ
レタノデアリマス、ソレニ次イデ此處ニ私
ガ提唱スルノデアリマス、扨ソレナラバ如
何ニシテ政治部面ノ革新ヲ圖ルカト申シマ
スルナラバ、第一ニハドウ致シテモ國民ニ
政治的ノ良心ノ覺醒ヲ促サネバナラヌト思
フノデアリマス、併ナガラ、此政治的良心
ノ覺醒ヲ促スト云フコトハ、容易ナ事柄デ
ハアリマセヌ、サリナガラ是ハドノ方面カ
ラ見マシテモ、此國民ノ政治的良心ノ覺醒
ガ第一必要デアリマス、此外ハ政治上ニ於
キマシテ法律ヲ以テ、若シ之ヲ革正シ得ル
ナラバ革正シ得タイト思フノデアリマス
ガ、有ユル方面ノ法律ノ缺陷ヲ補正致シマ
シテ、サウシテ是等ノ途ヲ革正ヲシテ見タ
イト思フノデアリマス、故ニ第一ノ法案ト
致シマシテハ日程第十三ニアリマス所ノ
政治運動ノ爲金品供與ノ制限ニ關スル法律
案、此案ヲ出シタノデアリマス、是ハ所謂
政黨ノ黨費ノ問題ニ關係スル所デアリマシ
テ、始終此問題ナルモノガ天下ノ疑問ト
ナッテ居ルノデアリマス、政黨ナルモノハ一
年ニ過分ノ費用ヲ使フ、如何ニシテ此政費
ヲ調達スルノデアルカ、又如何ニシテ調達
サレタ所ノ費用ガ使ヒ途ガコナサレテ居ル
事デアルカ、天下萬民ノ疑惑トナッテ居ル所
ノモノデアリマス、故ニ此方面カラ致シマ
シテ先ヅ手ヲ著ケテ見タイ、之ニ付キマシ
テモ諸君御承知ノ通リ、澤山ナル所ノ疑獄
事件ガ起ッテ居リマス、サリナガラ、此疑獄
事件ヲ一々私ガ玆ニ例證ヲスル必要ハナイ
ノデアリマス、故ニ、先ヅ第一ニハ政府ノ
特許セル事業、例ヘバ電氣ナリ鐵道ナリ、
其他政府ヨリ補助金ヲ受ケ、他ノ財產上ノ
方面ノ補助金ヲ受ケル者、例ヘバ郵船會社
ノ如キ、商船會社ノ如キモノ、又ハ政府ニ
於テ理事又ハ決議機關ノ全部、又ハ一部ヲ
任命セラレル東拓ノ如キ、滿鐵ノ如キ、日
銀ノ如キモノ、斯樣ナモノカラシテ、絕對
ニ政黨ハ寄附金ヲ受ケルコトハ出來ナイ、
此寄附金ノ行爲ヲ禁ズルノガ第一ノ趣意デ
アリマス、既ニ受ケタ以上ハ、之ヲ天下ニ
公開ヲシナケレバナラヌ義務ヲ持タセルノ
ガ、卽チ此今申上ゲマシタ所ノ第十三ノ日
程ノ主要ナル所ノ事項デアルノデアリマ
ス、而シテ此第二ニハ政治結社加入勸誘
方法ノ制限ニ關スル法律案、是ハ詰リ只今
モ鐵道敷設法ニ於テ諸君ノ論議サレタ通リ
デアリマシテ、始終諸君御承知ノ通リ、地
方ニ參リマスト云フト、鐵道ノ敷設或ハ港
灣、道路、橋梁等ノ修築、或ハ學校、或ハ
病院ノ新築若クハ移轉ニ付キマシテ、某政
黨カラ加入ノ勸告ヲ受ケタリ、或ハ脫退ヲ
强要サレルコトガアルノデアリマス、斯樣
ナモノヲ絕對ニ禁止スル所ノ案デアルノデ
アリマス、是等ト云フモノハ此案卜前申
上ゲマシタ第一案ハ既ニ昨年五十五議會ニ
於キマシテ、既ニ殆ド滿場一致ノ諸君ノ御
賛同ヲ得マシテ、五十五議會ニ於テ可決サ
レタモノデアリマス、併ナガラ政府ハ怠慢
ニ致シマシテ、之ニ對スル所ノ法案ヲ政府
ハ此議會ニ提出セナンダノデアリマス、故
ニ已ムヲ得ズシテ本年同志諸君ノ力ヲ得マ
シテ、玆ニ此法律案ヲ提出シタ所以デアリ
マス、又第三ニハ、議員ノ職務ニ關スル法律
案デアリマス、此法律ハ議員タルベキモノ
ハ衆議院タルト貴族院タルトヲ問ハズ、政
府ト特殊關係ノ契約ヲ爲スコトヲ禁ズルモ
ノデアリマス、又議員ト致シマシテ金錢上
ノ關係カラ自分ノ黨籍ヲ離脫シ、或ハ加入
スルト云フコトヲ禁ズルモノデアリマス、
單簡ニ申シマスナラバ、斯樣ナ議員ハ卽チ
瀆職罪同樣ニ取扱ヒタイノガ本案ノ趣旨デ
アルノデアリマス、ソレカラ第四ニハ選擧
法ノ改正ヲシタイノデアリマス、此選擧法ハ
既ニ昨年初メテ諸君ト共ニ行クテ、其缺點ノ
アルコトハ諸君モ御同樣ニ御承知デアリマ
セウ、此改正ヲスルコトニ付テ、私共二ツ
ノ考ヲ持ッタノデアリマス、一ツハ卽チ此普
選ノ意義ヲ十分擴充スルコトデアリマス、
一ツハ選擧ナルモノヲ卽チ公營ニシタイト
云フコトデアリマス、此普選ノ意義ヲ擴充
スルコトニ付テハ、單簡ニ其要領ダケヲ五
ツ六ツ列ベテ申上ゲテ見マスナラバ、第
ニ選擧權二十五年以上トアリマスノヲ、二
十年以上ト直シマス、又被選擧權三十年以
上トアリマスノヲ、二十五年以上ト改正ス
ルノデアリマス、ソレカラ、成タケ多クノ
人ガ投票シ得ルヤウニ、日曜日ヲ以テ投票
日ト定メルノデアリマス、又今日ノ選擧法
ハ卽チ無記名投票デアリマス、然ルニ諸君
ノ御承知ノ通リ、投票區ニ於テ又開票スル
ノデアリマス、是ハ殆ド無記名投票ト致シ
テハ意義ヲ爲サヌノデアリマスガ、故ニ、
投票所ニ於テハ開票ヲヤリマセヌデ、郡
ニ於テ開票ヲスルト云フコトニ制度ヲ改メ
タイノデアリマス、又保證金ノ二千圓ト云
フコトハ、有爲ノ士ヲ得ルニ餘程困難デア
リマスガ故ニ、是ハ五百圓ニ低下スルノデ
アリマス、ソレカラ此選擧ニ於キマシテ時
時違反者ガ出マス、此違反者ガ出ルコトニ
付キマシテモ、選擧人名簿ニ載ッタ者ノ十
分ノ一其地方ニ於テー投票區域內ニ於テ
違反者ガ起ッタ時分ニハ、其投票區ノー
選擧區ノ投票所ノ區內ニ於キマシテハ、五
箇年間選擧ヲ停止スルノ案デアリマス、是
ガ大體ニ於キマシテ選擧法ノ擴充ヲスル所
ノ私見デアリマス、今一ツハ卽チ選擧ヲ公
營ニシタイト云フノデアリマス、今日ノ選
擧ハ諸君ノ御承知ノ通リ、半公半私ト申シ
マセウカ、御承知ノ如クニ、一番經費等ノ
掛リマスモノハ郵便稅或ハ演說會場ヲ開ク
爲ノ諸經費デアリマス、所ガ諸君御承知ノ
通リ、政府ノ郵便デ無料配達ガ出來ルノデ
アリマス、之ヲ一步進メマシテ、一切ノ事
ヲ政府ニヤラセル、卽チ議員ガ例ヘバ今日
ノ選擧區ニ於テ五人ノ定員ガアリマスト、
必ズヤソレニ倍數ナル所ノ十名ノ候補者ガ
出來マセウ、十名ノ候補者ガ出來マシタ時
分ニ於テハ、政府ニ於キマシテ其十名ノ候
補者カラ、政見卽チ政治上ノ意見ヲ徵スル
ノデアリマス、是モ餘リ長イ紙數デハ見ル
者モ困難デアリマスガ故ニ、私ノ考デハ先
ヅ今日ノ官報四頁位ノ間ニ於テ政治所見ヲ
書カセタイト思フノデアリマス、然ラバ十
人ノ候補者ガ出マシテモ四十頁デアリマ
ス、此十人ノ候補者ハ各、四頁、卽チ四十頁
ト云フモノハ政府ガ全部印刷致シマシテ、
全選擧人ニ配付スルノデゴザイマス、今日
デハ御承知ノ通リ、十名候補者ガアリマス
ナラバ、郵便局ハ十回郵便ヲ配達シナケレ
バナラヌノデアリマス、所ガ政府ガ取纏メ
テ配付シテ呉レマスナラバ、只ノ一回デ濟
ムノデアリマス、諸君ノ御承知ノ通リ、選
擧人名簿ト云フモノハ澤山ニ政府ガ印刷シ
テ、各候補者ニ十册宛配ルノデアリマスガ、
此制度ガマルデ無クナッテシマフノデアリ
マス、ソレカラ演說會場ト云フモノモ町村
ノ役場ニ於テ心配サレマシテ、各小學校ニ
於テ演說會ヲ開ク、之ヲ卽チ町村ニ於テ一
切ノ世話ヲスル、十人ノ候補者ガアリマス
ナラバ其小學校ナラ小學校ニ十人一緒ニ
演說會ヲスルノデアリマス、十人ガ到底一
日デ出來マセナカッタナラバ、二日乃至三
日公平ニ籤引ヲ致シマスナリ致シマシテ、
一ツノ學校ニ於テ演說ヲスル、然ラバ其演
說ヲ聽講ニ參リマス所ノ選擧人ト致シマシ
テハ恰モ立會演說ヲ聽ク如クニ、各候補
者ノ意見ヲ一場ニ於テ聽クコトガ出來マス
ガ故ニ、選擧人ニ於テモ非常ナ便宜ヲ得ル
ノデアリマス、此何月何日ニ某ノ學校ニ於
テ演說會ヲ開クト云フヤウナコトハ卽チ
役場カラ其區內ニ通告ヲ致シマス、又候補
者ノ方ニモ通知ヲスルノデアリマス、尙ホ
又町村ノ役場ノ揭兩場ニ於キマスルナリ、
或ハ學校ノ揭而場ニ於キマシテモ、其大體
候補者ノ履歷ナリ、或ハ政見發表ノ簡單ナ
ル趣意書ヲ作リマシテ、何人モ閱覽シ得ル
ヤウナ便宜ヲ計リマス、斯樣ナコトニ致シ
マシタナラバ、選擧人モ、候補者モ、政府モ、
非常ナル是ハ便宜ナルコトデアラウト思フ
ノデアリマス、全體今日ノ政治方面ノ極端
ナル腐敗ガ年々歲々曾シテ來ルト云フコト
ハ此選舉ニ當リマシテ各候補者ガ多大ナ
ル所ノ費用ノ掛カル爲デアリマスガ故ニ、
其根柢タル所ノ此經費ヲ全然無クスル、申ス
ナラバ各候補者ニ對シマシテハ錢厘タリト
モ經費ヲ掛ケナイヤウニスルノガ最第一ノ
今日ノ此腐敗墮落ノ根源ヲ除クコトニモナ
ランカ知ラヌト思ヒマシテ、斯樣ナコトニ
致シタノデアリマス、モウ一ツ選擧ニ當リ
マシテ一切ノ運動ヲ止メルノデアリマス、
又候補者ガ從來ハ諸君ノ御承知ノ通リ選擧
長デアルトカ、事務員デアルトカ、選擧委
員デアルトカ云フ、斯樣ナモノハ絕對ニ要
ラナイコトニナリマスガ故ニ、全部廢シテ
シマフノデアリマス、私ノ意見ニ依リマス
ナラバ、各候補者ニ祕書ヲ一人置クダケニ
止メマシテ、其他ハ絕體ニ置カナイ、選舉事
務員デアルトカ或ハ奔走スル者ヲ全然廢シ
チシマフノデアリマス、斯樣ニ致シマシタ
ナラバ此經費ヲ全然省キ、如何ニ運動ヲシ
タイ、如何ニ人ヲ誘ヒタイト申シマシテモ、
候補者ノ運動ヲスルコトヲ絕對ニ止メルノ
デアリマスシ、又選擧委員モ、或ハ事務員
も、或ハ選擧長モアリマセヌ、然ラバ運動
シタクテモスルコトハ出來ヌノデアリマ
ス、斯ノ如ク致シマシテ前申上ゲマシタ十三、
十四、十五、ノ各法律案ト相俟チマシタナ
ラバ、今日ノ如キ選擧界ノ腐敗、又政治部
面ノ墮落、金權萬能ノ此醜惡ナル事ヲ政治
上カラ排除スルコトガ出來得ルダラウト私
ハ信ズルノデアリマス(拍手)旁、本案ヲ提
出シタノデアリマスルカラシテ、願クハ滿
堂諸君ノ御賛成ヲ得マシテ、本案ノ一日モ早
ク成立スルヤウニ、諸君ノ御努力ヲ請ヒタ
イノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=85
-
086・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 本案ニ對シテ質疑
ノ通告ガアリマス、之ヲ許シマス-藤井
達也君
〔「議長々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=86
-
087・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 藤井君ニ許シマシ
タ
〔此時工藤鐵男君「此大事ナ議案ヲ議ス
ル時ニ政府委員ガ一人モ居ラヌト云フ
コトハ實ニ不都合極マルト思ヒマスカ
ラ、此點ハ特ニ政府ニ御注意ヲ願ヒタ
イト思ヒマス」ト呼フ〕
〔藤井達也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=87
-
088・藤井達也
○藤〓達也君 洵ニ重大ナル法案デアリマ
シテ、工藤君仰セノ通リデアリマスルガ、
提案贊成者ノ中ノ鶴見祐輔君ト云フヤウナ
有數ナ方モ、尾崎行雄君ト云フヤウナ是亦
憲政ノ神樣ト謂ハレル御方ガ御出席ナイコ
トモ、是亦遺憾ト思フノデアリマス、諸君
私ハ此問題ニ關シマシテ二三ノ事項ヲ提案
者ニ御尋シテ見タイト思フノデアリマス、
ンレハ政治運動ノ爲、金品供與ノ制限ニ關
スル法律案ニ關シテ第一ニ御尋シテ見タイ
ト思フノデアリマス、洵ニ此法案ハ理想ト
致シマシテハ結果ナコトデアリマスケレド
モ、此實行ニ當リマシテハ、殆ド空文ニ等
シクアリハセヌカト考ヘルノデアリマス、
現在現選擧法ニ於キマシテスラ、議員諸君竝
ニ國民ノ多數ガ長イ間掛リマシテ、之ヲ以
テ金科玉條、理想ナリト考ヘマシタル現行
ノ選擧法ニ於テスラ、全ク吾々ガ考ヘマシ
タルヤウナ理想ガ實現サレテ居ルヤ否ヤト
考ヘマスナラバ、先ヅ多數ノ人ハ之ニ向ッ
テ其良心ヨリ之ヲ述ベマス時ニハ「ノウ」ト
言ハザルヲ得ナイノデアリマス、然ルニ之
ヲ超越シ「ユートピヤ」カ若クハ「パラダイ
ス」デモ實現サレナケレバ、殆ド實行サレ
ナイヤウナ此法案ヲ提案サレマシテ、此法
案ヲ實行シヤウト御考へニナリマスコトハ、
其理想トシテハ結構デアリマスケレドモ、
全ク空理、空論ニシテ、空文ナリト私ハ申上
ゲル次第デアリマス(拍手)故ニ提案者ニ對
シマシテ、先ヅ私ハ御尋シテ見タイト思フ、
現行ノ選擧法ト云フモノガ、國民多數ガ期
待スル如ク、完全嚴正ニ實行サレテ居ルト
御考ヘニナッテ居リマスルカ否ヤト云フコ
トヲ、第一御尋シテ置キタイト思フノデア
リマス、第二ニ御尋申上ゲタイノハ、政治
結社ニ加入ノ制限ニ關スル法律案デアリマ
ス、此法案ガ若シ實行サレルヤウナコトニ
立到リマシタナラバ、洵ニ吾々政黨員ト致
シマシテハ政府黨ト云ハズ、野黨ト云ハ
ズ、嘸カシ御迷惑ノコトデアリ、又天下國
民ニ向ヒマシテ吾々ノ抱懷シテ居リマス國
利民福ノ主張ト云フモノヲ、之ヲ世間ニ發
表シ、此發表ニ從ヒマシテ政友會ガ現在ニ
於テ其政策宜シキヲ得マスカラ、多數ノ黨
員ガ之ニ相共鳴シ、國民亦相追隨致シマシ
テ、黨勢ガ隆々トシテ洵ニ驚クベキ大擴張
ニナッテ居ルノデアリマス、之ニ反シマシテ
民政黨ノ如キハ、全國ノ黨員諸君ガ次第次
第ニ雲散霧消スルバカリデナク、代議士諸
君自ラガ次第々々ニ失ハレテ居ルト云フコ
トハ、如何ナル現象デアリマスカ、是在野
黨ノ諸君ノ言動行動ト云フモノガ、國家國
民ヲ忘レタルガ故ニ、是ニ於テ國民ガ愛想
ヲ盡カシタ結果デアルト考ヘルノデアリマ
ス(拍手)是皆銘々政黨ト云フモノガ立憲治
下ニ於キマシテハ其黨勢ヲ擴張スベキハ
政黨員ノ當然ノ務ト思フノデアリマス、故
ニ民政黨ノ如キ民意ヲ無視シ、或ハ對支外
交ニ關シマシテハ恰モ支那人同樣デアルカ
ノ如キ疑ヲ懷カシメルヤウナ事ヲヤッテ居
リマスルカラ、次第々々ニ黨勢ト云フモノ
ガ衰微致シマシテ、現在諸君ノ叫ンデ居リ
マス反對ノ聲ナドハ恰モ曳カレ者ノ小唄
ト同然ナリト私ハ思フノデアリマス(拍手)
皆政黨政治ニ於キマシテハ此主義主張、地
方ノ幸福、利害得失ニ關係致シマシテ、地
方民ガ之ニ共鳴ヲ與へマスカラ、立派ナル
政治ヲ行ヒマスル政黨ハ黨勢ノ擴張トナ
リ、民政黨ノ如ク國家國民ヲ無視スル政黨
ハ次第々々ニ衰微スルモノデアルト考ヘル
ノデアリマス(拍手)此意味ヨリ考ヘマスル
時、大竹先生ヤ尾崎先生ノヤウニ、勿論革
新倶樂部ト致シマシテハ僅ニ遺憾ナガラ大
竹先生ガ御一人デアリマス、尾崎先生ハ是
迄嘗テ憲政ノ神様ト稱ヘラレマシタケレド
モ、遺憾ナガラ現在ニ於キマシテハ全ク孤
立自主獨往ト云フコトヲ爲シテ御在デニ
ナッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ
境遇ニ御在ニナリ、狀態ニ御在ニナリマス
所ノ衆議院議員竝ニ政黨デアリマスルナラ
黨勢ノ擴張ヲ爲サント致シマシテモ、
唯理想ニ馳セ妄斷ニ馳セルノデアリマスカ
ラ、御賛成ガナイカラ堂勢擴張ニハナラヌ
ノデアリマスカラ、御心配ハナイト存ジマ
スケレドモ、苟モ一國ノ政治ヲ行ヒマス政
友會ト云フヤウナ大政黨、民政黨ト云フヤ
ウナ日ニ日ニ憐ムベキ狀態ニ立至ッテ居リ
マス政黨ト致シマシテモ、現在ハ內閣ヲ取
リマセヌガ、政友會ガ內閣ヲ罷メマシタ際
ニハ、先ヅ當然諸君等ニ其政權ガ渡ルモノ
ト見ネバナラヌノデアリマス、此政權ガ來
ルベキモノデアルコトヲ豫期セラレマス諸
君カ、現在ニ於テ此法案ニ多數ノ御賛成ガ
アルヤウニ見受ケマスガ、若シ一朝內閣ヲ
取ッタ時ニハ、諸君等ハ此態度ヲ豹變セラ
レマシテ、矢張政友會ノ主義主張ト云フモ
ノヲバ尤デアル、此樣ナ法案ニ贊成スベキ
モノデナイト云フコトヲ必ズ御覺悟爲サル
コトヽ私ハ申上ゲタイノデアリマス、斯ウ
考ヘマスルト、提案者ニ御質問ヲスルノデ
アリマス、勸誘ヲスルト云フコトノ意義ハ
如何ナル意義デアリマスカ、若シモ自發的
ニ政友會若クハ民政黨ノ主義政策ニ共鳴
シ、鐵道ノ敷設、道路、港灣、橋梁、河川
ノ修築、其他萬般政府ノ援助、若クハ關係致
シマスヤウナ事業ニ向ヒマシテ、政友會ノ
政策ハ是デアル、民政黨ノ主張ハ非デアル
ト致シマシテ、政友會ニ續々ト入黨ヲ申込
ンダ際ニ、暗默ノ間ニ承認シテ、政友會ニ
加入スルヤウナコトガアリマシタ際ニハ、
勸誘ト御考ニナリマスルヤ否ヤ、又演說會
等ニ於キマシテ、政談演說會ニ於テ、地方
問題ヲ論義シ、更ニ演說ノ結果トシテ、其
地方ノ方ガ多數ニ之ニ入黨スルコトニナリ
マシタナラバ演說會ノ言論ハ一種ノ勸誘
デアリマス、此勸誘ニ依テ入黨スルノデア
リマスカラ、是亦此法案ニ牴觸スルモノト
シテ處罰ヲ受ケネバナラヌト考ヘマスガ、
演說會等ニ於キマシテ、此地方問題ヲ論議
スルコトヲ御禁止ニナルヤ否ヤ、御考ヲ伺
ヒタイト思フノデアリマス、ソレカラ第二
段ハ、此法案ニ向ッテ勸誘ト云フ意味ノ間
ニ、政府ノ直接之ヲ免許シ、若クハ拒否ス
ルコトモゴザイマセウケレドモ、間接ノ
政府ノ力デナケレバ是又認可又ハ許可スル
コトノ出來ナイ事項ハ、其多クハ縣政ノ上
ニ、若クハ自治體ノ上ニ多數アルノデアリ
マス、斯ウ云フヤウナ問題ガ生ジマシタ際
ニ、是亦直接デアルカラ非デアル、間接デ
アルガ故ニ是デアルト云フヤウナ問題ガ起
ルト思ヒマスガ、是亦提案者ニ伺ッテ御尋
シテ置ク次第デアリマス、以上簡單ニ申述
ベマシタ事項ニ付キマシテ、提案者ノ御說
明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
〔大竹貫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=88
-
089・大竹貫一
○大竹貫一君 只今御質問デアリマスガ、
此案ハ理想的ナ案デ甚ダ宜シイ、併ナガラ、
殆ド空理空論デ施スニ途ガ無イト云フコト
デアリマス、併ナガラ今日ノ滔々タル濁勢
ヲ見マシタナラバ、ドウシテモ一ツノ理想
ガ無クテハ廓〓ガ出來ナイノデアリマス
諸君ガ現實主義、力トカ金トカ言フコトニ
ノミ沒頭サレマスカラシテ、此尊イ理想ガ
諸君ノ頭ニ閃カヌノデアリマスドウシテ
モ今日ハ此尊イ所ノ理想ニ從ッテ、如何ニ
シテカ今日ノ腐敗墮落ノ天下ヲ救ハナケレ
バナラヌノデアルソレカラ抽象的ニ御質
問ニナリマシタ、現在ノ選擧法ヲ相當ト認
メルヤ否ヤト云フコトノ御質問デアリマシ
タガ、不可ナリト申上ゲマス、不可ナルガ
故ニ、先刻申上ゲタガ如キ改正案ヲ提出シ
タノデアリマス、又間接トカ直接トカ云フ
ヤウナ御話ヲ爲サレマシタガ、貴方モ選擧
場裡ニ長イ間馳驅爲サッタ方デアリマスカ
ラシテ、其呼吸ハ既ニ私以上ニ御承知ノ筈
デアリマス是ハ直接デアルカ間接デア
ルカ勸誘デアルカト云フコトハ政治上
ノ頭ヲ持ッテ居ル者ナラバ、何人デモ大抵直
覺的ニ理解シ得ル筈デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=89
-
090・原惣兵衞
○原惣兵衞君 四案ハ一括シテ政府提出府
縣制中改正法律案外十八件ノ委員ニ併セ付
託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=90
-
091・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 原君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=91
-
092・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 原君ノ動議ニハ御
異議ナシト認メマス仍テ動議ノ如ク決シ
マシタ、此際議長ヨリ一言申上グルコトガ
アリマス、去ル二月十六日ノ本會議ニ於キ
マシテ、議員藤井達也君ノ演說中其言論
ニ付キ議員岡本實太郞君ヨリ議長ノ處分ヲ
求メラレタノデアリマス、副議長ハ當時速
記ヲ調査シタル上、相當ノ處分ヲ爲スベキ
旨ヲ答ヘテ置キマシタ、其後速記ヲ調査致
シマシタガ右藤井君ノ同日卽チ十六日ノ
演說中ニハ特ニ取消ヲ命ジ又ハ釋明ヲ
要求シナケレバナラヌ程ノモノハアリマセ
ヌ但シ此際藤井君ニ特ニ御希望申上ゲマ
スルガ、本院ノ品位ヲ保ツ爲ニハ何卒此
演壇上ノ用語ニハ御注意アランコトヲ望ミ
マス尙ホ同君ノ本日ノ演說中ノ言葉ニ付
テハ更ニ調査致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=92
-
093・原惣兵衞
○原惣兵衞君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=93
-
094・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 原君ノ動議ニハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=94
-
095・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
マス
〔「異議アリ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=95
-
096・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 多數ト認メマス
〔「異議アリ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=96
-
097・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 原君ノ動議ニ付テ
議長ハ多數ト認メマシタガ御異議ガアリ
マス、而シテ此御異議ニハ成規ノ贊成ガア
リマスルカラ、是ヨリ記名投票ヲ行ヒマ
ス、一言申上ゲマス、原君ノ動議ニ賛成ノ
諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ靑票ヲ持參セラ
レンコトヲ望ミマス-閉鎖-氏名點呼
ヲ行ヒマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=97
-
098・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ-投票漏ナシト認メマス、投票函閉
鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=98
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099・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 投票ノ結果ヲ書記
官ヨリ報〓致サセマス
〔田口書記官朗讀〕
投票總數二百三十一
可トスル者白票百三十
否トスル者靑票百
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=99
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100・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郎君) 右ノ結果、原君ヨ
リノ散會ノ動議ガ可決サレマシタ
〔參照〕
原惣兵衞君提出ノ動議ヲ可トスル議員ノ
氏名左ノ如シ
石井次郞君石射文五郞君
石坂豐一君岩崎一高君
岩本武助君岩川與助君
磯部尙君磯野庸幸君
伊坂秀五郞君井口延次郞君
井出繁三郞君池田龜治君
今井健彥君板谷順助君
出井兵吉君惣兵衞君
林鳩山一郞君宗吉君
受 料大大土八原權大君
富田/ 猱内直火第四
大橋亦兵衞君〓作君
小川平吉君小野寺章君
岡田伊太郞君沖島鎌三君
若宮貞夫君渡邊德助君
加藤知正君川口義久君
川島正次郞君河上哲太君
蔭山貞吉君粕谷義三君
上條信君金澤安之助君
菅野善右衞門君吉木陽君
橫山泰造君高橋金治郞君
竹內友治郞君竹內鳳吉君
胎中楠右衞門君多田勇雄君
津雲國利君中村亨君
中島鵬六君中川原貞機君
中谷貞賴君名川侃市君
永田良吉君向井倭雄君
武藤七郞君內野辰次郞君
上埜安太郞君上塚司若
植原悅二郞君野田俊作君
熊谷巖君熊谷直太君
久山知之君久原房之助君
郡谷照一郞君倉元要一君
工藤十三雄君山本唯次君
山本悌二郞君山本愼平君
山口恒太郞君山崎猛君
山下谷次君矢野力治君
矢本平之助君松本君平君
松野鶴平君牧野賤男君
前田米藏君前田政八君
枡谷音三君藤井達也君
福井甚三居二神駿吉君
兒玉右二君遠藤柳作君
靑木雷三郞君靑木精一君
安藤正純君赤尾藤吉郞君
佐々木久二君佐々木長治君
佐々木平次郞君佐藤實君
佐竹直太郞君坂本志魯雄君
木村〓治君木本主一郞君
岸田正記君宮古啓三郞君
宮澤裕君宮川一貫君
三土忠造君三井德寶君
島田俊雄君嶋居哲君
庄司良朗君庄
〓水銀藏君平賀學習書
平井信四郞君廣
廣瀨爲久君匹田
森田政義君鈴木吉之助現地電鉄道路線(株)
鈴木英雄君鈴木隆
鈴木五六君鈴木
鈴木安孝君砂田
須之內品吉君田崎米信
檀野禮助君藤原
守屋榮夫君沼田嘉一郞君
熊谷五右衞門君森肇君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
井本常作君井上剛一君
石塚三郞君飯塚知信君
池田敬八君伊禮肇君
原夫次郞君酉林社平馬君
坂東幸太郞君丹治郞君
西英太郞君本田英作君
本田恆之君戶田由美君
富田幸次郞君小野重行君
小俣政一君小峰滿男君
小久江美代吉君小山倉之助君
大里廣次郞君岡本實太郎君
岡本幹輔君奧山龜藏君
長內則昭君川崎安之助君
川崎克君勝田永吉君
神田正雄君加藤鯛一君
漢那憲和君橫山勝太郞君
橫山金太郞君高橋元四郞君
高島兵吉君田中千代松君
田中養達君田中隆三君
賴母木桂吉君谷口源十郞君
土屋〓三郎君中村啓次郞君
中野正剛君永井柳太郞君
村上國吉君紫安新九郞君
海野數馬君內ケ崎作三郞君
臼田久內君野田文一郞君
野中徹也君野村嘉六君
則元由庸君栗原彥三郞君
工藤鐵男君山田又司君
山田毅一君山邊常重君
八木逸郞君松田竹千代君
松田源治君松尾四郞君
牧山耕藏君曾田義一君
町田忠治君藤井啓一君
福田五郞君深水〓君
小山松壽君小泉又次郞君
小西和君小橋一太君
木檜三四郞君海老澤爲次郞君
田昌君安倍邦太郞君
安達謙藏君淺川浩君
佐藤正君佐藤與一君
佐藤啓君佐竹庄七君
齋藤隆夫君作田高太郞君
澤本與一君岸衞君
三浦虎雄君斯波貞吉君
下元鹿之助君定塚門次郞君
平川松太郞君松定吉君
廣瀨德藏君森峰一君
森田茂君鈴木富士彌君
鈴木憲太郞君菅原英伍君
菅村太事君杉浦武雄君
末松偕一郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=100
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101・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 次囘ノ日程ハ公報ヲ
以テ通知致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X01919290219&spkNum=101
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