第56回帝国議会　衆議院　本会議　第23号　昭和4年2月28日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和四年二月二十八日（木曜日）午後一時二十分開議
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  　議事日程　第二十二號
  　　昭和四年二月二十八日
  　　　午後一時開議
  　第一　關税定率法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二　大正九年法律第五十三號中改正法律案（關税法等の朝鮮に於ける特例に關する件）（政府提出）　第一讀會
  　第三　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第四　絲價安定融資補償法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五　大正十一年法律第五十二號中改正法律案（統計資料實地調査に關する件）（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第六　朝鮮簡易生命保險特別會計法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第七　朝鮮簡易生命保險の事務に關する郵便物に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　國寶保存法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　家畜保險法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　家畜再保險特別會計法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　會計檢査院法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十二　同盟及聯合國と獨逸國及其の同盟國との戰爭に因り損害を被りたる帝國臣民の追加救恤に關する法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　癈兵優遇に關する法律案（三浦虎雄君提出）　第一讀會
  　第十四　衞生組合法案（大里廣次郎君外八名提出）　第一讀會
  　第十五　衞生組合法案（田崎信藏君外四名提出）　第一讀會
  　第十六　傳染病豫防法中改正法律案（田崎信藏君外四名提出）　第一讀會
  　第十七　衆議院議員選擧法中改正法律案（二見甚郷君外一名提出）　第一讀會
  　第十八　家祿賞典祿給與未濟に關する法律案（石井次郎君外五名提出）　第一讀會
  　第十九　質屋取締法中改正法律案（鬼丸義齋君提出）　第一讀會
  　第二十　古物商取締法中改正法律案（鬼丸義齋君提出）　第一讀會
  　第二十一　刑法中改正法律案（牧野賤男君外二名提出）　第一讀會
  　第二十二　借家法中改正法律案（小久江美代吉君外二名提出）　第一讀會
  　第二十三　恩給法中改正法律案（山下谷次君外一名提出）　第一讀會
  　第二十四　市制中改正法律案（赤尾藤吉郎君提出）　第一讀會
  　第二十五　町村制中改正法律案（赤尾藤吉郎君提出）　第一讀會
  　第二十六　道路法中改正法律案（菅野善右衞門君提出）　第一讀會
  　第二十七　町村有建物火災保險相互組合法案（岩崎一高君外十六名提出）　第一讀會
  　第二十八　遠洋漁業奬勵法中改正法律案（原耕君提出）　第一讀會
  　第二十九　違警罪即決例中改正法律案（一松定吉君外二名提出）　第一讀會
  　第三十　工場法中改正法律案（千葉三郎君外五名提出）　第一讀會
  　第三十一　勞働組合法案（鈴木文治君提出）　第一讀會
  　第三十二　刑の執行又は勾留に因る補償に關する法律案（宮古啓三郎君外九名提出）　第一讀會
  　第三十三　陪審法中改正法律案（横山勝太郎君外三名提出）　第一讀會
  　第三十四　衆議院議員選擧法中改正法律案（小久江美代吉君外四名提出）　第一讀會
  　第三十五　衆議院議員黨籍變更に關する法律案（小久江美代吉君外四名提出）　第一讀會
  　第三十六　牧野法案（中島鵬六君外一名提出）　第一讀會
  　第三十七　健康保險法中改正法律案（西尾末廣君提出）　第一讀會
  　第三十八　國定教科書官給法案（樋口秀雄君外六名提出）　第一讀會
  　第三十九　會計檢査院法中改正法律案（千葉三郎君提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第四十　恩給法中改正法律案（神部爲藏君外五名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第四十一　恩給法中改正法律案（木下成太郎君外七名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
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• 001・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　諸般ノ報告ヲ致サ
  セマス
  〔書記官朗讀〕
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  肥料管理法案
  肥料管理特別會計法案
  特許法中改正法律案
  實用新案法中改正法律案
  意匠法中改正法律案
  商標法中改正法律案
  (以上二月二十八日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  根室港修築擴張ニ關スル建議案
  提出者
  小池仁郞君山本厚三君
  神部爲藏君淺川浩君
  坂東幸太郞君岡本幹輔君
  湖南鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者石射文五郞君
  東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成所
  獨立ニ關スル建議案
  提出者
  山下谷次君山本愼平君
  高田耘平君東〓實君
  浦河廣尾間帶廣高江間及靜内浦河間鐵道
  敷設速成ニ關スル建議案
  提出者
  板谷順助君松實喜代太君
  岡田伊太郞君檀野禮助君
  新聞記者ノ資格制定ニ關スル建議案
  提出者
  飯村五郞君上條信君
  兵役義務者及癈兵待遇審議會ニ關スル建
  議案
  提出者
  武藤山治君田崎信藏君
  千葉三郞君
  (以上二月二十六日提出)
  野岩羽鐡道速成ニ關スル建議案
  提出者
  齋藤藤四郞君西方利馬君
  石射文五郞君
  柳津小出間及只見古町間鐵道速成ニ關ス
  ル建議案
  提出者石射文五郞君
  柳津野澤間及坂下喜多方間鐵道敷設ニ關
  スル建議案
  提出者石射文五郞君
  磐梯山猪苗代湖ヲ中心トスル國立公園設
  定ニ關スル建議案
  提出者石射文五郞君
  (以上二月二十八日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  猪苗代湖面低下問題ニ關スル質問主意書
  提出者林平馬君
  小運送業者ノ待遇ニ關スル質問主意書
  提出者山邊常重君
  (以上二月二十六日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一去二十六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
  常任委員左ノ如シ
  第七部選出決算委員田邊七六君
  一去二十六日議長ニ於テ選定シタル委員左
  ノ如シ
  產業委員會法案委員
  木下成太郞君田子一民君
  武藤七郞君平賀周君
  松村光三君山本愼平君
  星島二郞君三浦數平君
  石坂養平君本田恒之君
  岡崎久次郞君添田敬一郞君
  前田房之助君深水〓君
  大西正幹君小峰滿男君
  藤原米造君藏園三四郞君
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案委
  員
  高山長幸君池田龜治君
  高橋熊次郞君三井德實君
  三輪市太郞君今井健彥君
  齋藤勝四郞君福井甚三君
  加藤知正君土井權大君
  豊田收君多田勇雄君
  中野猛雄君田中隆三君
  小山松壽君高田耘平君
  小坂順造君川崎安之助君
  西村丹治郞君野田文一郞君
  田昌君中島彌團次君
  井本常作君久野尊資君
  山崎延吉君熊谷五右衞門君
  小野寅吉君
  一去二十六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
  如シ
  六大都市ニ關スル法律案外一件委員
  辭任野田文一郞君補闘前田房之助君
  辭任前田房之助君補闕野田文一郞君
  國寶保存法案委員
  辭任伊藤仁太郞君補闘川島正次郞君
  競馬法中改正法律案委員
  辭任庄司良朗君補闕丹下茂十郞君
  鐵道敷設法中改正法律案委員
  辭任寺田市正君補闘高鳥順作君
  未成年者飮酒禁止法中改正法律案外一件
  委員
  辭任定塚門次郞君補闘山田毅一君
  鑛業法中改正法律案外一件委員
  辭任松村謙三君補闕林平馬君
  信託業法中改正法律案外一件委員
  辭任岸衞君補關土屋〓三郞君
  辭任原夫次郞君補闘作田高太郞君·
  一昨二十七日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第二部選出決算委員中島鵬六君
  一昨二十七日常任委員補闕選舉ノ結果左ノ
  如シ
  第七部選出
  決算委員工藤十三雄君(田邊七六君
  補闘)
  一昨二十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ
  如シ
  產業委員會法案(藤原米造君外七名提出)
  委員
  委員長岩崎一高君
  理事
  三浦數平君岡崎久次郞君
  藤原米造君
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案
  (三輪市太郞君外六十三名提出)委員
  委員長高山長幸君
  理事
  齋藤藤四郞君福井甚三君
  井本常作君中島彌團次君
  小野寅吉君
  一昨二十七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
  如シ
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案委
  員
  辭任今井健彥君補關西村茂生君
  辭任西村茂生君補闕今井健彥君
  產業委員會法案委員
  辭任木下成太郞君補闘石坂豐一君
  辭任石坂豐一君補關岩崎一高君
  賠償金特別會計法中改正法律案外二件委
  員
  辭任中谷貞賴君補關板谷順助君
  辭任牧野賤男君補闕庄司良朗君
  辭任中村亨君補關鈴木安孝君
  辭任庄司良朗君補闘牧野賤男君
  辭任鈴木安孝君補闘中村亨君

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• 002・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　是ヨリ會議ヲ開キ
  關稅定率法中改正法律案
  關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
  第二百八號第二項ヲ左ノ如ク改ム
  二ベタナフトール
  三オキシナフトエ酸及其ノ誘導體
  四其ノ他
  第二百四十五號中「每斤」ヲ削リ「一一·四〇」ヲ「無稅」ニ改ム
  第二百七十三號ヲ左ノ如ク改ム
  二七三綿絲及長十メートルノ重量三グラムヲ超エサル綿線
  -綛造ノモノ(生ノモノ)
  二木製ノ絲卷ニ卷キタルモノ
  三其ノ他
  マス、御諮リ致スコトガゴザイマス、第三
  部選出豫算委員三浦虎雄君、第八部選出豫
  算委員戶澤民十郞君、第九部選出豫算委員
  一宮房治郞君、右常任委員辭任ノ申出ガア
  リマス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　御異議ナケレバ許
  可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ
  行ヒ、御屆出アランコトヲ望ミマス、尙ホ
  御諮リ致スコトガゴザイマス、石井三郞君
  病氣ニ付二月二十八日ヨリ三月十二日迄請
  暇ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議ア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 004・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナケレバ許
  可致シマス、日程第一及第二ハ同種類ノ議
  案デアリマスルカラ、一括議題ト爲スニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 005・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マシテ、日程第一、關稅定率法中改正法律
  案、日程第二、大正九年法律第五十三號中
  改正法律案ノ兩案ヲ一括シマシテ、第一讀
  會ヲ開キマス、三土大藏大臣
  第關稅定率法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會
  百斤一八·七〇
  從每每百斤一〇〇·〇〇
  價三割五分
  每斤三九·二〇
  卷百百
  價共斤七〇·一〇
  從絲每
  三割
  附
  第五百五十七號第一項ヲ左ノ如ク改ム
  ピアノ
  甲平形ノモノ每斤八六·七〇
  百百
  乙其ノ他每斤六〇·九〇
  第六百十二號第一項己ヲ左ノ如ク改ム
  己パイン、ファー、シダー其ノ他ノ針葉樹
  己ノ一長二十センチメートル、幅七セン
  チメートル、厚七ミリメートルヲ
  超エサルシダー無稅
  己ノ二ヒノキ屬(ホワイトシダー及イエ
  ローシダー等)
  イ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー九·八五
  トル
  ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)每立方メー五·四〇
  トル
  己ノ三ネヅコ屬(レッドシダー等)及ツガ
  屬(ヘムロック等)
  イ厚六十ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー六·二五
  トル
  ロ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー五·五〇
  トル
  ハ厚二百ミリメートルヲ超エタルモノ每立方メー三·七〇
  トル
  ニ丸太及割材每立方メー三·三〇
  トル
  己ノ四モミ屬(トドマツ等)、タウヒ屬(エ
  ゾマツ、スプルース等)、マツ屬(紅
  松等)及カラマツ屬(落葉松等)
  厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー一·一〇
  イトル
  ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)無稅
  己ノ五其ノ他(ドグラスファ-等)
  イ厚六十ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー四·五五
  トル
  ロ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ每立方メー三·九〇
  トル
  ハ厚二百ミリメートルヲ超エタルモノ每立方メー二·一〇
  トル
  ニ丸太及割材
  ニノ一長十メートルヲ超エ、末口ノ
  直徑三十センチメートルヲ超
  エサルモノ無稅
  ニノ二其ノ他每立方メー一·二〇
  トル
  則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第二大正九年法律第五十三號中改正
  法律案(關稅法等ノ朝鮮ニ於ケル特
  例ニ關スル件)(政府提出)第一讀會
  大正九年法律第五十三號中改正法
  律案
  大正九年法律第五十三號中左ノ通改正ス
  第一條削除
  第八條中「關稅法、關稅定率法、保稅倉庫
  法又ハ假置場法中大藏大臣又ハ主務大
  臣」ヲ「關稅法又ハ關稅定率法中大藏大
  西二五六
  (別表)
  輸入稅表甲號
  品
  木材(關稅定率法別表輸入稅表第六一二號一ノ己
  ノ四ノイニ該當スルモノ)
  輸入稅表乙號
  品
  木材(關稅定率法別表輸入稅表第六一二號一ノ己
  ノ四ノイニ該當スルモノ)
  備考從量稅率ノ單位ハ圓トス
  〔國務大臣三土忠造君登壇〕

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• 006・三土忠造

  ○國務大臣(三土忠造君)　只今議題ニ供セ
  ラレマシタル關稅定率法中改正法律案ニ付
  キマシテ、大體ノ說明ヲ申上ゲマス、本案
  ノ內容ハ、木材外四品ニ關スル關稅率ヲ改
  正セントスルノデアリマシテ、是等ノ品目
  ニ付キマシテハ、第五十一議會ニ於キマシ
  テ一般關稅改正ノ際、議會二於テ種々ノ議
  論ガアリマシタル結果、更ニ政府ニ於キマ
  シテ、之ガ關稅率ニ付慎重調査ヲ遂グベキ
  希望決議ヲ附シテ可決セラレタノデアリマ
  シタ、ソコデ政府ニ於キマシテハ、其後十
  分ニ調査〓究ヲ進メマシテ、尙ホ關稅調査
  委員會ニ付議致シマシテ、玆ニ成案ヲ得マ
  シタノデ、本改正案ヲ提出致シタ次第デア
  リマス、就中木材ニ關シマシテハ我國林
  業界ノ現狀竝ニ外材輸入ノ情勢ニ鑑ミマシ
  テ、此儘ニ推移致シマスルト、國土保安
  別表ヲ削ル
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  朝鮮ニ輸入スル鹽ニハ昭和五年三月三十
  一日迄仍從前ノ輸入稅ヲ課ス
  朝鮮ニ輸入スル木材ニシテ別表ニ揭グル
  モノニハ本法施行ノ日ヨリ昭和五年三月
  三十一日迄ハ別表ノ輪入稅表甲號ニ依
  リ、昭和五年四月一日ヨリ昭和七年三月
  三十一日迄ハ別表ノ輸入稅表乙號ニ依リ
  輸入稅ヲ課ス
  名單位稅率
  每立方メートル〇·四〇
  名單位稅率
  每立方メートル〇·七五
  上水源涵養上、又治水上ニモ惡影響ヲ招
  來スルノミナラズ、我國木材ノ供給力ヲモ
  減退セシムル虞ガアリマスノデ、玆ニ林業
  政策ヲ確立スルコトハ、國家百年ノ長計ト
  シテ最モ必要ナルモノト認ムルノデアリマ
  ス、故ニ政府ニ於キマシテハ、此際斯業ノ
  保護助長ニ一段ノ力ヲ致シ、造林ノ奬勵竝
  ニ森林利用ノ增進等ニ關スル諸方策ヲ講ズ
  ルト同時ニ、關稅政策上木材ノ關稅率ヲ改
  正シテ、適當ニ之ヲ保護スルノ必要ヲ認ム
  ルノデアリマス、併シ木材關稅ノ引上ハ
  延イテ材價ヲ騰貴セシメ、國民生活ニ影響
  ヲ及ボス虞ガアリマスルカラ、引上率ハ外
  材輸入ヲ調節シ、材價ヲ適當ニ維持安定セ
  シメテ、林業ニ對スル外材ノ壓迫ヲ緩和シ、
  以テ斯業ノ進展ヲ促ス程度ニ止メタノデア
  リマス、而シテ外材ノ爲ニ脅威ヲ蒙リマス
  ルモノハ、針葉樹デアリマシテ、而モ其樹
  種形狀等ニ依リ、脅威ノ程度モ自ラ異ル所
  ガアリマスルカラ、本改正案ハ之ヲ針葉樹
  ノ範圍ニ止メマシテ、且ツ樹種及形狀ニ應
  ジテ稅率ヲ按配スルト共ニ、工業原料、輸
  出品ノ包裝材料等ニ必要ナルモノニ付キマ
  シテハ、特ニ低稅又ハ無稅ヲ配スルコトニ
  致シタノデアリマス、尙ホ詳細ナル點ニ付
  キマシテハ委員會ニ於キマシテ御說明ヲ
  致ス考デアリマス、何卒御審議ノ上、速ニ
  御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
  (拍手)

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• 007・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　池上朝鮮總督府政
  務總監
  〔政府委員池上四郞君登壇〕

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• 008・池上四郎

  ○政府委員(池上四郞君)　只今上程セラレ
  マシタ大正九年法律第五十三號中改正法律
  案ニ付キマシテ大體ノ御說明ヲ申上ゲタク
  存ジマス、本法ハ大正九年朝鮮ニ內地ノ關
  稅制度ヲ布キマシタ際設ケラレマシタ特例
  デアリマス、其特例デアリマスルガ、其後
  著シキ事情ノ變化ヲ見ルニ至リマシタ爲
  ニ、今日ニ於テハ斯ク特例ヲ存置スル必要
  ヲ認メザルヲ得ザルニ至ッタノデアリマス、
  仍テ此際之ヲ廢止致シマシテ、帝國既定ノ
  方針タル內鮮關稅ノ完全ナル統一ヲ實現ス
  ルヲ適當ト信ズルノデアリマス、唯其中木
  材及鹽ニ付キマシテハ、急激ナル變動ヲ避
  クルガ爲メ、適當ニ之ヲ緩和スルコトヽ致
  シタノデアリマス、本案ハ大體以上ノ趣旨
  ヨリ提出シタル次第デアリマス、何卒御審
  議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ切望致
  シマス(拍手·)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=8

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• 009・清瀬一郎

  ○副議長(清瀨一郞君)　日程第一ニ關シ數
  箇ノ質疑ノ通告ガアリマス、通告順ニ依リ
  之ヲ許シマス-三輪市太郞君
  〔三輪市太郞君登壇〕

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• 010・三輪市太郎

  ○三輪市太郞君　私ハ御承知ノ通リ與黨デ
  アリナガラ、玆ニ質問ヲ致サナケレバナラ
  ナイノハ洵ニ遺憾ト致シマス、只今大藏大
  臣ノ御說明ガアリマシタガ、治水ニ關シテ
  此政策ガ宜イヤウナ御說明デゴザイマシタ
  ガ、先ヅ第一ニハ治水、卽チ農業關係ニ付
  テ御尋ヲ致シタイト思フノデアル、第二ニ
  ハ社會政策ニ關シテノ御尋ヲ致シタイノデ
  アル第三ニハ國家經濟ノ見地ヨリ御尋ヲ
  致シタイノデアル、第四ハ對外關係ニ付テ
  御尋ヲ致シタイノデアル、第五ニハ山林伐
  採ノ取締ノコトニ付テ御尋致シタイノデア
  ル以上五項目ニ分ッテ御尋ヲスルガ、成ベク
  私ハ簡單ニ要點ダケヲ申上ゲマス、治水ノ
  爲ニ政府當局ハ此法案ガ必要ナルカノ如キ
  御說明デアリマシタガ、私ハ治水ノ爲ニハ
  寧ロ惡影響ガアリハシマイカト云フヤウナ
  疑ヲ持シテ居ルモノデゴザイマス、其所以ハ
  內地材ノ値段ヲ引上ゲヤウト云フコトガ眼
  目デアル、値段ガ騰レバ自然ト濫伐ト云フコ
  トハ免レナイノデアル、從來ニ於テモ河敷
  ハ年々ニ何レノ河川ト雖モ土砂埋滯ノ爲メ
  川底ガ高クナルコトハ諸君御承知ノ通リ
  デアル、上流ハ激流ノ爲ニ停滯ハ致シマセ
  ヌガ、下流ニ至レバ確ニ停滯スルモノデア
  ル、此點ハ私ハ空論デナイ、各河川ニ就テ
  一々調査シタ實例ヲ示シタイガ、此點ハ政
  府ガ能ク御承知デアラウト思フカラ、私ヨ
  リハ申述ベヌデアリマス、其下流ニ停滯シ
  タル結果トシテハ、自然ニ惡水ノ放流ヲ致
  シテ居ルモノガ、其川底ノ高イ爲ニ自然ノ
  放流ヲ妨ゲテ、餘儀ナク機械的喞筒等ニ依テ
  今日デハ惡水ヲ排除致シテ居ルコトハ、諸
  君御承知ノ通リデアル、其土砂ノ流出スル
  原因ハドウデアルカト云ヘバ、言フ迄モナ
  ク水源地ノ山岳ニアル所ノ樹木ヲ伐採シタ
  結果ガ、土砂ヲ河川ニ流出スルモノデアリ
  マっ、今後木材ヲ濫伐シタナラバ、治水上
  ニ影響スルコトガ多大デアラウト思フノデ
  ゴザイマス、此點ニ付テ政府ハ餘程御調査
  ニナッテ居ルノカドウデアルカ、尙ホ又上流
  ハ排水上差支ナイヤウデアリマスガ、是ハ
  灌漑用水ト云フ問題ニ付テ、餘程影響スル
  ノデアリマス、灌漑用水ノコトニ付キマシ
  テハ現內閣ト言ハズ、歷代ノ內閣ガ隨分
  電力等ノ工業者ニ對シテ、農村ノ利害ヲ愼
  重ニ調査セズシテ許シタ結果ハ、各地到ル
  處デ農村ハ迷感ヲ致シテ居ルト云フコトハ
  事實デアリマス、然ルニ灌漑用水ヲ要スル
  時ト云フモノハ、必ズ旱魃ノ時デアル、旱
  魃ノ時ニ水ヲ保タントスレバ、水源地ノ樹
  木ノ繁茂ト云フコトガ最モ必要デアル、然
  ルニ玆ニ濫伐ヲ致シタ結果ト云フモノハ、旱
  魃ノ時ニハ必ズ水ハ涸レルノデアル、此邊
  ニ付テモ相當ノ御調査ハ出來テ居ルモノデ
  アリマセウカ(此時發言スル者アリ)私ノ此
  質問ニ對シテ批評ヲサレル人ハ、ソレハ唯
  林業者ノミヲ保護スルコトニ偏シテゴザル
  議員デアル、ソレデ排水喞筒等ニ依テ費消
  スル所ノ燃料其他機械代ニ對シテハ、農林
  當局ニ各地ヨリ補助ヲ申請致シテ居ルノデ
  アルガ、此補助ノ必要ハ一層此法案ヲ實行
  サレタル曉ニハ、多額ニ上ルデアラウト思
  フガ、此點ニ付テノ御調査ハ出來テ居ルデ
  アリマセウカ、何時モナガラ農村ニ利害關
  係ノ者ハ餘リ陳情等ニハ出ナイガ、此法案
  ヲ提案サレルニ至リマシタル以前ニハ吾
  吾仄間スル所ニ依レバ、林業ニ關係ノ諸君
  ノ運動ノ目覺シカッタコトモ聞イテ居ルノ
  デコザリマスルガ、農業關係者ガ是等ニ付
  テ陳情ヲ致シタル事實アリヤ、假ニアッテ
  モ、是ハ理由ナキモノトシテ政府ハ認メナ
  カッタカ、其邊ノ消息モ伺ヒタイノデアリ
  さく、第二ニハ、私ハ此米材ノ輸入ノ關稅
  ヲ引上ゲタ結果トシテ米材價格ノ暴騰スル
  コトハ勿論デアル、又内地材モ之ニ伴ッテ
  昇騰スルコトハ、本案ノ目的デアル、ドウ
  シテモ是ハ免レヌコトデアル、内地材ヲ使
  用スル人ハ假令建築ヲ致シマシテモ中流
  以上ノ人デアッテ、敢テ苦痛トスルニハ足ル
  マイト思フノデゴザリマスルガ、中產階級以
  下ノ住宅ニ要スル、所謂借家ノ如キト云フ
  モノハ、其大部分ハ米材ヲ使用スルコトハ、諸
  君ハ御承知ノ通リデアル、然ラバ其建築經
  費ガ米材ノ昇騰ノ爲ニ多額ヲ要スレバ、隨
  テ家賃等ニモ影響スルコトハ否ムコトハ
  出來マスマイ、サウシテ見レバ勞働階級或ハ
  中等以下ノ住民ニ取テテ苦痛トスル所デア
  ルガ、之ガ社會政策ノ意味ニ適フデアリマ
  セウカ、建築費ト云フモノガ、今後此關稅ヲ
  引上ゲタル爲ニ何割增加スルカ、〓略ト雖モ
  御調ベニナッテ居ルカ、御調査ガ出來テ居レ
  バ隨テ之ガ全國的ニドレ程ノ影響ヲ及ボス
  モノト云フコトガ、算出シ得ラレルト田心フ
  ガ、此邊ニ付テノ御調査ハ出來テ居ルカ否
  ヤト云フコトヲ伺フノデゴザイマス、第三
  ニ御尋致シタイノハ、國庫ノ收入トシテハ
  關稅引上ニ依テ相當ノ增收ガ得ラレルデア
  ラウガ、之ニ引換ヘマシテ府縣費ト云フモ
  ノハドウ云フモノデアルカ、先刻申ス如ク
  川底ノ高クナルニ從ッテ堤防ノ增築ト云フ
  コトヲ要スルモノデ、是ハ各府縣共ニ年々
  之ニ費ス所ノ工事費ハ少ナカラヌノデアル
  ガ、一方ニ國庫ノ曾收ヲ圖リマシテモ、府
  縣ニ於テ此經費ノ嵩ムコトヽ對照致シタナ
  ラバ此經濟上ノ關係ト云フモノハ如何ニ
  ナルカ、此邊ノ御調ガ付イテ居ルカ、ドウ
  デアラウカト云フコトモ御尋シタイノデア
  ル、殊ニ又殖林業ヲ營ム人ハ、其大部分ハ
  富豪階級ニアルノデアル、各地ヲ通ジテ植
  林業ガ盛ニナッタト云フノハ、是ハ安全ナ
  資本ノ運用デアッテ、投資家ハ其爲ニ植林
  ヲ到ル處デ行シテ居ルノデアッテ、此法案ニ
  依テ利益ヲ蒙ムルモノハ內地材デ、大部分ハ
  富豪階級ヲ保護スル結果デアッテ、僅ノ山林
  ヲ所有シテ居ルモノハ、假令人數ハ多クテ
  モ、反別ハ僅デアラウカト思フガ、是等ニ
  付テノ取調ハ出來テ居ルモノデアラウカ、
  又現在ノ儘ニシテ置テモ、一方ニ於テハ年
  ヲ經ルト共ニ樹木ガ成長スル、是ガ卽チ最
  初ノ植林ノ目的ニ適フ、自然ニ利殖シテ居
  ルモノト思フガ、此邊ニ付テノ御調査ハ出
  來テ居ルデアラウカト云フコトヲ御尋スル
  ノデゴザイマス、殊ニ又日本ノ面積ノ狹隘
  ナルコトハ諸君御承知ノ通リデアル、今ヤ
  日本材ノ需要ノ途ト一云フモノハ、電燈、電
  話等ノ電柱ニモ要レバ、或ハ鐵道ノ枕木等ニ
  付テモ隨分使用スルモノデアル、此場合ニ
  私ノ卑見ヲ以テ見レバ寧ロ内地材ハ成長
  ヲ爲サシメテ、而シテ外材ノ安イ物ヲ却テ
  輸入致シタ方ガ、私ハ國家ノ利益ト思テ
  居ルノデアル、デ是等ニ付テノ利害關係ト
  云フモノヽ御調査ガ出來テ居ルデアラウ
  カ、之ヲ承レバ仕合ニ思フノデゴザイマス、
  今一ツ對外關係ト申シタノハ是ハ私ガ噂
  ニ聞ク所デアルガ、是ガ噂ニ止ッテ事實ニ現
  レナケレバ、洵ニ我國トシテ幸福デアルガ、
  米國ヨリ來ル所ノ木材ノ稅率ヲ引上ゲル反
  動トシテ、日本ヨリ米國ニ輸出スル所ノ生
  絲ノ關稅ヲ引上ゲル憂モアルノデアルガ、
  此邊ニ付テ心配ノ要ガナケレバ、洵ニ吾々
  モ結構ニ存ズルノデアルガ、此消息モ伺ヒ
  タイノデアル、第五ニ
  〔「簡單々々」ト呼フ者アリ、其他發言
  スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=10

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• 011・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ

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• 012・三輪市太郎

  ○三輪市太郞君(續)　簡單ト言ハレナクテ
  モ、私ハ固ヨリ簡單ヲ望ンデ居ル、私ヲシ
  テ遠慮ナシニ言ハシメレバ長イノデアル、
  私ハ最モ簡單ヲ心掛ケテ居リマス、第五ニ
  ハ山林ノ伐採ニ付テ、自由ニ濫伐ヲサセテ
  置クモノデアルカ、自由ニ濫伐ヲ致セバ、
  必ズ土砂ノ流出ハ一層甚シクナルガ、之ニ
  對シテ取締ノ方法ガ講ゼラレテ居ルカ、其
  腹案ガアルカト云フコトヲ御尋スルノデア
  ル、私ハ强チ反對ノミヲ主張スルノデアリ
  マセヌ、私ノ見ル所ガ誤ッテ居ッテ、此蒙ヲ
  啓クコトガ得ラレルナラバ、洵ニ喜ビニ堪
  ヘナイノデアリマス、ドウゾ再ビ質問ヲ要
  セナイヤウ、ソレ〓〓關係當局ニ於テ御親
  切ナル御答辯ヲ望ミマス

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• 013・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　山本農林大臣
  〔國務大臣山本悌二郞君登壇〕

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• 014・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　三輪君ノ御尋
  ニ御答致シマス、第一ノ御尋ハ關稅引上ニ
  依テ木材ノ內地價格ガ騰貴シタナラバ之
  ニ依テ山林ノ濫伐ヲ促ス憂ハナイカト云フ
  御尋デアリマシタ、之ヲ過去ノ事例ニ徵シ、
  又現在ノ狀況カラ見マシテ、其御心配ハ御
  無用デアラウト思ヒマス、嘗テ大正六年頃、
  最モ材木價格ノ暴騰シタ頃ニ於キマシテ、
  當時盛ニ濫伐ガ行ハレタト云フコトハ事實
  デアリマス、所ガ其後段々ニ材木ノ價格ガ
  下落スルニ從テ、伐採モ亦一時減少ハ致シ
  マシタガ、ソレカラ更ニ更二下落ヲスルニ
  從テ又伐採數量ガ增シテ參リマシテ、此大
  正六年ノ當時ニ於テハ一一十三万町步バカリ
  ノ伐採デアッタモノガ、今日昭和二年ニ於テ
  ハ二十万町步ノ伐採ニ近付付ントシツヽア
  ルノデアリマス、是ハドウ云フ譯カト言フ
  ト、値段ノ高イ時ニハドシ〓〓伐ッテ其利
  益ヲ收メルト云フコトニナリマスノデス
  ガ、値段ガ極端ニ下落致シマスト、値段ノ
  如何ニ拘ラズ、山林業者ハ之ヲ賣ッテミナケ
  レバ其生計ヲ維持スルコトガ出來ナイト
  云フヤウナ者ガ多分ニ生ジマスノデ、値段
  ガ下レバ下ル程仕方ガナイノデ、値段ノ如
  何ニ拘ラズ片ッ端カラ伐シテ賣ラナケレバナ
  ラヌト云フ必要ガアルガ爲ニ、値段ガ下落
  シテサウシテ濫伐ヲ見ルト云フヤウナ、奇
  ナル現象ヲ見テ居ルノデアリマス(「答辯ガ
  矛盾シテ居ル」ト呼フ者アリ)ソレハ現ニ
  統計ノ示ス所デアリマスカラ、チフコトハ
  出來マセヌ、次ニハ木材ノ價格メ貴シタ
  ナラバ、是ガ家賃ノ騰貴ヲ促シテ、社會政
  策上惡イ影響ヲ及ボシハシナイカト云フ御
  尋デアリマシタガ、ソレモ私共ハ左樣ニハ
  考ヘテ居リマセヌ、材木ノ今日ノ引上ハ
  此方面ノ事モ考慮致シテ、卽チ消費者側ノ
  利害モ考慮致シマシテ、適當ノ所ニ稅率ヲ
  定メテアリマスノデ、卽チ無稅ノ材木ヲ除
  イテ、有稅品ノミノ平均ニ致シマスレバ一
  割二分、又全體ヲ包括致シマスト、僅カ一
  割ニ過ギナイ稅率デアリマス、而シテドノ
  位是ガ建築費ノ上ニ影響ヲ及ボスカト申シ
  マスレバ、大體材木ガ建築費全體ノ幾割位
  ヲ占メルカト申シマスト、是ハ建築協會ア
  タリノ調査ニ依リマスレバ、建築費ノ全體
  ノ約三割位ニ過ギナイノデアルソレデ此
  關稅引上ニ依テ米材ガドレダケ影響スル
  カ、其價格ニドレダケ影響スルカト云フコ
  トヲ算出致シテ見マスト、假ニ一坪八十圓
  ノ建築費ノ場合ヲ見マスト、此中デ米材ガ
  約十八圓見當ニナッテ居リマスノデ、此一割
  ト云フモノヲ假ニ曾加致シマシタ、此一割
  ガ騰貴致シマシタモノト見マシテモ、國
  八十錢ニ過ギナイノデアリマスカラ、卽チ
  八十圓ノモノガ八十一圓八十錢トナルニ過
  ギナイト云フヤウナ狀態デ、五十圓位ノ建
  築ナラバ、此影響スル所ガモット少ナイノ
  デアリマス、ソコデ斯樣ナ狀態デアリマス
  ルガ故ニ、坪當リノ關稅率引上ニ依ル影響
  ト云フモノハ、極メテ輕微ナルモノデア
  ル、ソレ程痛苦ヲ與ヘルトハ當局ハ考へ
  テ居リマセヌ、殊ニ況ヤ此家賃ノ騰落ト
  云フコトハ、必シモ建築費ト竝行ハ御承
  知ノ通リ致サヌノデアル、是ハ現ニ都會
  地ニ於テ御覽ニナレバ分リマスケレド
  モ、其需給ノ關係ガ主ヲ成シテ居ルノデア
  ル、需要ガ非常ニ盛ナ時ニ、之ニ應ズベキ
  所ノ家屋ガナケレバ、建築費ノ如何ニ拘ラ
  ズ、家賃ト云フモノハ非常ニ騰貴スルノデア
  ル、其反對ノ場合、需要ノ少イ時ニハ卽
  チ如何ニ高イ建築費デモ、其反對ノ現象ヲ
  見ルト云フコトガアル、現ニ近郊ノ昨今ノ
  樣子ヲ見レバ分リマス、震災當時ニ於テハ、
  非常ニ需要ガ多カッタガ爲ニ、安イ普請ノ
  「バラック」同然ノモノデモ、非常ニ家賃ガ
  騰貴ヲ來シテ居ッタノデアリマスガ、昨今見
  タヤウニ需要ノ少イ時ニハ、相當高イ建築
  費ヲ拂シテ建築シタ相當ノ家屋デモ、其家
  賃ハ決シテソンナ高イモノデハナイト云フ
  狀況ニ今日ハナッテ居ルデハアリマセヌカ、
  卽チ主トシテ家賃ノ騰落ハ、建築費ニアラ
  ズシテ時ノ需給ニアリト當局ハ考ヘテ居ル
  次第デアリマス、其次ノ問題ハ日本ノ森林
  ハ其儘ニシテ置イテ、要ル木材ハ外國カラ
  買フタガ宜イデハナイカト云フ御說デアリ
  マシタガ、是ハ同意致シ兼ネマス、樹木ニ
  ハ各〓樹齡ガアリマスカラ、伐ラズシテ其儘
  置ケバ片ッ端カラ腐ッテシマウ、ソレデサウ
  云フ譯ニハ參リマセヌト云フコトハ詳シ
  キ說明モ要リマセヌト思ヒマス、又外國ニ
  於ケル關係ハドウカ、我ガ生絲業等ニ關係
  ガ有ルカ無イカト云フ御尋デアリマスガ、
  是ハ決シテソンナ心配ハナイ積リデアリマ
  ス
  〔前田房之助君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=14

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• 015・前田房之助

  ○前田房之助君　諸君、私ハ只今ノ議案ニ
  對シマシテ、少シク質問ヲ致シタイト思フ
  モノデアリマス、然ルニ議案ヲ說明ナサレ
  マシタ大藏大臣ガ、貴族院ノ方ニ參ラレテ
  出席ナサレヌノデアリマス、斯樣ナコトハ
  甚シク我ガ衆議院ヲ輕視サレタ嫌ヒガアリ
  マシテ、甚ダ遺憾ト思フノデアリマス拍
  手)併ナガラ已ムヲ得ナイノデアリマスカ
  ラ此際質問ハ致シマス、先ヅ本質的ノ質問
  ヲ致シマスル前ニ、本案ト極メテ密接ナ關
  係ノアリマス所ノ國際貸借ノ改善竝ニ關稅
  政策ニ付テ質問ヲ致シマシテ、其後ニ本案
  ノ本質ニ關スル質問ヲ致シタイト存ジマス、
  田中總理大臣竝ニ三土大藏大臣ハ、屢〓本
  會議竝ニ委員會ニ於キマシテ、我國ノ財界
  ノ不況ハ今ガドン底デアル、將來財界ハ必
  ズ好轉スルノデアル、隨テ政府ノ積極政策
  ノ遂行ニハ支障ヲ來サナイ、又兩稅ヲ委讓
  致シマス時ノ說明ニ於キマシテモ、地方財
  政ノ膨脹ヲ抑制スルト云フコトハ頗ル困難
  デアル、併ナガラ困難デハアルガ、今後財
  界ハ好轉スルノデアルカラ、自然增收モ增
  加ヲスル、隨テ地租ヲ委譲致シマシテ地方
  稅ト致シマシテモ、假令地方財政ガ膨脹致
  シマシテモ、增稅ヲスルコトナクシテ濟ム
  デアラウト云フ說明ヲ再三爲サッテ居ルノ
  デアリマス、之ニ依テ考ヘマスト云フト
  現内閣ノ財政經濟ノ方針ノ根幹ハ、財界ノ
  不況ガ〓ハドン底デアル、今後財界ハ好轉
  スルデアラウト云フ見解ノ下ニ、總テノ政
  策ヲ立テラレテ居ルト云フコトハ確カデア
  ルノデアリマス、隨テ萬一今ガ財界ノ不景
  氣ノドン底デナクシテ、今後尙ホ財界ガ惡
  化スルト致シマスルナラバ、現內閣ノ重要
  ナル所ノ財政經濟ノ諸政策ハ、當然行詰ラ
  ザルヲ得ナイト考ヘルモノデアリマス(拍
  手)諸君、私共ト雖モ決シテ帝國ノ前途ヲ
  悲觀スル者デハアリマセヌ、併ナガラ如何
  ニ考ヘマシテモ、現内閣ノ執ッテ居ラレマス
  ル所ノ財政經濟ノ方針ニ依テ我ガ財界ガ好
  轉シ得ルモノトハ考へルコトガ出來ナイノ
  デアリマス(拍手)財界ノ好轉ヲ期シマスル
  ニハドウ致シテモ國際貸借ノ改善ヲ圖ル
  コトガ必要デアルノデアリマス、如何ニ國
  民相互ノ取引ガ頻繁ニ行ハレマシテモ、國
  際收支ノ上ニ於キマシテ、支拂勘定ヨリモ
  受取勘定ガ超過セザル限リハ、斷ジテ國力
  ノ發展ヲ期スルコトハ出來ナイノデアリマ
  ス、然ルニ我國ハ諸君モ御承知ノ如ク、土
  地極メテ狹小デアリマシテ富源ガ乏シイ、
  其結果〓致シマシテ明治元年カラ
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 016・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　静肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=16

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• 017・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　今日迄海外貿易ヲ見
  マスルノニ、輸入超過ハ實ニ四十二回デアソ
  テ、輸出超過ノ年ハ僅ニ十九箇年ニ過ギナ
  イノデアリマス、昨年ノ如キモ當初ノ豫期
  ニ反シマシテ、國際收支ノ關係ヲ見マスル
  ニ、約一億五千万圓ト云フモノガ支拂超過ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、随テ政府ト致シテ
  ハ、國際貸借ノ改善ニ向ッテハ
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=17

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• 018・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=18

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• 019・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　餘程考慮シナケレバ
  ナラヌニ拘ラズ、昭和四年ノ豫算ヲ見マス
  ト云フト、國際貸借ノ改善ニ向ッテ新ニ要求
  サレテ居ル所ノ金額ハ、僅ニ八十五万圓內
  外ニ過ギナイノデアリマス、斯ノ如ク國際
  貸借改善ニ關スル所ノ新規要求額ガ僅ニ八
  十五万圓デアッテ、總豫算ノ二千分ノ一ニ過
  ギナイト云フコトハ現內閣ガ國際貸借ニ
  對シマシテ熱心デナイト云フコトガ、豫算
  ノ上ニ現ハレテ居ルモノト斷定シテ憚ラヌ
  ト思フノデアリマス、隨テ私ハ政府當局ニ
  御尋ヲ申上ゲマス、政府當局ハ國際貸借ノ
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=19

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• 020・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

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• 021・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　改善ニ付キマシテ、
  豫算面ニ現ハレタル以外ニ尙ホ積極的ノ御
  方針ガアリマセウカ、又準備ガアリマスカ
  ト云フコトヲ第一ニ御尋申上ゲタイト思ヒ
  やっ、第二ハ之ニ關聯ヲ致シマシテ、物價
  ノ問題ヲ御尋申上ゲタイト存ジマス、〓
  ノ物價ハ其國ノ國民經濟ノ實勢ニ伴ウテ
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=21

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• 022・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=22

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• 023・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　調節スル必要ガアル
  ノデアリマス、然ルニ我國ノ物價ハ國際的
  平準ヨリ高イノデアリマス、皆樣モ御承知
  ノ如ク、大正五年ノ七月ヲ基準ト致シマス
  、、昭和三年ノ十一月ノ世界ノ物價ノ指數
  ハ、紐育ハ一五〇·二、倫敦ハ一四九·五、
  東京ハ一八二·五デアルノデアリマス
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 024・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=24

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• 025・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　斯ノ如ク我ガ日本ノ
  物償ハ世界ノ中デ一番高イノデアリマス
  〔此時發言スル者アリ〕

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• 026・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　田崎君、注意シマ
  ス

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• 027・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　金ノ解禁ヲヤルニ
  シテモ、國際的ノ平準ニ迄下ゲル必要ガ
  アラウト思ヒマス、現ニ歐米各國ニ於キマ
  シテモ、金ヲ解禁致シマスル場合ニハ成
  ベク物價ヲ下ゲテ、百五十內外ニ致シテ居
  ル英吉利ノミハ百六十二デ金ノ解禁ヲ致
  シタカラ、非常ナ不況ヲ招來ヲ致シタノデ
  アリマス、隨テ此際我國ノ物價ヲバ國際的
  平準ニ迄引下ゲル必要ガアリト吾々ハ認メ
  テ居ルノデアリマスガ、政府當局ハ左樣ニ
  御考ニナッテ居リマセウカ、此點ニ付テ政府
  當局ノ御意見ヲ伺ヒタイト同時ニ、物價ノ調
  節ニ付キマシテ、政府當局ハ如何ナル所ノ
  對策ヲ御持チニナッテ居ルカト云フコトヲ
  伺ヒタイト存ジマス
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=27

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• 028・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=28

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• 029・前田房之助

  ○前田房之助君(續)　更ニ第三ハ、此場合
  ニ於キマシテ爲替相場ノコトニ付テ御尋申
  上ゲタイト存ジマス、對外爲替相場ハ昨秋以
  來下落ニ下落ヲ重ネマシテ、最近ニハ四十
  五弗ヲ漸ク維持スルト云フ狀態ニナッテ居
  ルノデアリマス、然ルニ政府ハ此對米爲替
  相場ノ下落ナルモノハ、國際貸借ガ惡化シ
  タノデハナイ、貿易關係デハナイ、對支外
  交關係ガ停頓ヲ致シタコト竝ニ英米ノ金利
  高ガ禍ヲ致シテ居ル、隨テ一時的ノ現象デ
  アルカラ、少シモ心配ハ要ラナイト說明サ
  レテ居ルノデアリマスガ、果シテ政府當局
  ハ左樣ナ原因ニ依テ、對外爲替相場ガ下落致
  シテ居ルモノト御考ニナッテ居ルノデアリ
  マスカ、此點ヲ第一ニ御伺致シマス、更ノ
  正金銀行ガ此爲替資金ノ涸渴ノ結果トシ
  テ、ドウシテモ資金ヲ調達スル必要ガアル
  ト思ヒマスガ、聞ク所ニ依ルト、政府當局
  ハ外國ニ在ル所ノ日本銀行所有ノ外貨ノ外
  債ヲバ、此正金ニ融通ヲスルト云フ方針ノ
  下ニ、資金ヲ調達セシメヤウト云フ方策ノ
  ヤウニ伺ヒマスガ、果シテ事實デアリマス
  ル タ、事實ナラバ幾何ノ金額ヲ御融通ニナ
  ル御見込デアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイト
  思ヒマス、同時ニ又爲替相場ニ付キマシテ
  ハ、今後政府當局ハ全然自然ニ放任スルト
  云フ御考デアリマスカ、是モ序ニ御伺致シ
  マット、又正金銀行ニ對シテ爲替資金ヲ調達
  ザレマス結果ト致シマシテ、今後政府ガ人
  爲的ニ之ヲ阻止シナクトモ、正金銀行ノ手
  ヲ通ジテ爲替相場ノ下落ヲ阻止スルト云フ
  ヤウナ結果ヲ招來スルノデハナカラウカ
  ト、吾々ハ見テ居ルノデアリマスガ、之ニ
  對スル政府ノ御所見モ伺テ見タイト思ヒ
  やっ、尙ホ同時ニ現在在外正貨ハ四千九百
  万圓程度ニナッテ居リマスト思ヒマスガ、此
  補充ト云フコトハ、目下非常ニ必要ナルコ
  トデアラウト思ヒマスガ、政府ハ之ヲ補充
  スル御考ガアリマスカ、御考ガアルナラバ、
  如何ナル方法ノ下ニ補充サレル御考デアリ
  マスカ、之ヲ序ニ御伺申上ゲルノデアリマ
  ス、國債貸借ノ改善ニ關シマシテハ以上
  七ツノ點ヲ御尋申上ゲマス、更ニ私ハ本案
  ト密接ナ關係ノアリマス所ノ關稅政策ニ付
  テ御伺申上ゲタイト思ヒマス、諸君モ御承
  知ノ如ク、我國ノ關稅率ヲ定メテ居リマス
  ノハ、收入主義ト保護主義トノ性質ヲ加味
  致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ多年實
  行政シテ來マシタ結果ト致シマシテ、最早
  其産業ニ對シテハ保護スル必要ノナキモノ
  マデモ保護ヲ致シテ居ル、又保護スル必要
  アリト致シテモ、程度ヲ過ギテ保護ヲ致シ
  テ居ル或ハ多年ノ經驗上如何ニ保護致シ
  マシテモ到底發達ノ見込ナキモノマデモ
  保護致シテ居ル斯樣ナモノモ大分アルヤ
  ウニ考ヘラレマス、一方關稅ハ財政ノ上カ
  ラ言ヘバ一種ノ消費稅デアル、此消費稅デ
  アル所ノ關稅ヲ引上ゲルトカ引下ゲルト云
  フコトハ直接社會政策ノ上ニ非常ニ影響
  ヲ及ボス虞ガアルノデアリマスカラ、是等
  ノ見地カラ致シマシテモ、關稅ニ向ッテ根本
  的ノ改正ヲ加ヘル必要ガアラウト思フノデ
  アリマス、前內閣ハ大正十五年多數ノ種目
  ニ亙ッテ改正ヲ致シタノデアリマスガ、未ダ
  其根本ニ觸レタ改正デハナカッタノデアリ
  マス、政府ハ此關稅ニ付テ根本的ノ改正ヲ
  オヤリニナルト云フ必要ヲ認メテ居ラレル
  ヤ否ヤト云フコトヲ、第一ニ質問致スノデ
  アリマス、更ニ自由港ノ設置ニ付テ御伺ヲ
  申上ゲタイト思ヒマス、我ガ日本ノ國ハ土
  地ガ狹クシテ非常ニ富源モ乏シイ結果ト致
  シテ、中繼貿易ヲ盛ニ致シテ、保險トカ、
  運賃トカ、加工トカ、保管トカ、斯ウ云フ
  上ニ於テ國際收支ヲ改善スル必要ガアラウ
  ト思フノデアリマス、世界ノ大勢ヲ按ジマ
  スルニ、歐洲大戰後歐米ノ各國ハ自由港ヲ
  設置致シテ、獨逸ノ「キール」ヲ初メト致シ
  テ、十數箇ノ自由港ヲ設ケテ居ルノデアリ
  マス、又亞米利加ニ於キマシテモ、自由港
  設置ノ運動ガ盛ニナリマシテ、今ヤ亞米利
  加ニ於キマシテハ、貿易地帶法案ナルモノ
  ガ上院ノ委員會マデ通過致シテ居ルノデア
  リマス、政府ハ此世界ノ大勢竝ニ我國ノ國
  際貸借ノ現狀ニ鑑ミラレマシテ、自由港ヲ
  設置スル所ノ必要ヲ御認メニナッテ居ルヤ
  否ヤト云フコトヲ御尋致シタイト思ヒマ
  ス、第三ハ我ガ日本ノ國ハ英吉利、佛蘭
  西、伊太利ト此稅率ニ付テ協定ヲ致シテ居
  ルノデアリマス、此協定ヲ致シテ居リマス
  ル結果ト致シテ、我ガ日本ノ國ガ受ケル所
  ノ利益ヨリモ、被ムル所ノ損害ガ年々數百
  万圓ニ上ッテ居ルノデアリマス、幸ニモ此稅
  率協定ニ關シマスル條約ハ三箇月乃至一
  箇年デ、暫定的デアリマスカラ、更新シ得
  ルノデアリマスルガ、政府ハ現在ノ英吉利、
  佛蘭西、伊太利ト取組ンデ居リマスル此稅
  率ノ協定ニ付キマシテ、モウ少シ我國ノ有
  利ノヤウニ、此稅率ヲバ更新スルト云フ御
  考ガアリヤ否ヤヲ御伺致シマス、更ニ私ハ
  國際貸借ノ改善、關稅政策ヲ立直スト一ムフ
  コトハ我國當面ノ急務ナリト信ジテ居ル
  ノデアリマスガ、之ニ對スル調査ト致シマ
  シテ關稅調査委員會ガアリ、一方ニ於テ經
  濟審議會ガアルノデアリマス、關稅調査委
  員會ハ其範圍ガ餘リ狹イ、經濟審議會ハ其
  範圍ガ餘リニ廣イノデアリマスカラ、此國
  際貸借改善ヲ中心トスル調査會ヲ御設置ニ
  ナッテ、銳意此改善ニ努力スル御考ガアリヤ
  否ヤト云フコトヲ伺ッテ見タイノデアリマ
  ス、以上私ハ國際貸借改善竝ニ關稅政策ニ
  付キ御尋致シタノデアリマスガ、更ニ本案
  ニ付キマシテ本質的ノ質問ヲ少シク致シテ
  見タイト思フノデアリマス、現內閣ガ當初
  豫算ヲ編成サレマス時ニハ、此木材〓稅ノ
  引上ノ價格ハ、約五百五十万圓ト云フコト
  ニナッテ居ッタノデアリマスガ、其後更ニ之
  ヲ急遽六百五十万圓ニ引上ゲラレタノデア
  リマス、斯樣ナ見地ヨリ致シマスルト云フ
  ト、是ハ寧ロ財界ノ必要カラ此案ヲ御立テ
  ニナッタヤウナ嫌ヒガアルノデアリマスガ、
  此點ニ付テ明瞭ナル御答ヲ得タイト存ジマ
  ス、更ニ私ハ只今モ與黨ノ三輪君カラ御質
  問ガアリマシテ、却テ此案ガ實行サレルナ
  ラバ、山林ガ濫伐サレル虞ガアリハシナイ
  カト云フ御質問ヲ爲サッタノデアリマ
  ス、農林大臣ハ之ニ對シテ、値段ガ騰レバ
  決シテ〓伐ハセナイト云フヤウナ御答
  デアッタヤウニ思ヒマスルガ、今ヤ財界ハ
  不況ノドン底デアリマス、値ガ騰レバ
  早ク伐ッテ賣リタイト云フノガ、此山林ニ關
  係アル一般ノ希望デアラウト思ヒマス、私
  ハ農林大臣ノ答ハ是ハ詭辯デアラウト思
  ヒマス、此案ガ通過致シマスレバ、或ル程
  度迄必ズ山林ガ濫伐サレル虞ガアルト思フ
  ノデアリマスガ、改メテ此點ヲ伺ヒタイト
  思フノデアリマス、更ニ山林ニ對シマシ
  テ、私ハ此反社會的ノ關稅引上ヲ爲サルヨ
  リモ、今日迄多額ノ金ヲバ補助金若クハ助
  成金トシテ御出シニナッテ居ル、現ニ本年ノ
  豫算ヲ見マシテモ、二千六百三十一万五千
  百六十圓デアリマスルカ、昭和四年度カラ
  二十箇年間ニ亙シテ補助金ノ交付ヲ爲スト
  云フコトニナッテ居ルノデアリマス、斯樣ニ
  山林保護ニ付テハ助成金若クハ補助金ヲ出
  シテ居ルノデアリマスカラ、反社會的虞レ
  アル所ノ關稅ヲ引上ゲルコトナクシテ、寧
  口此補助金若クハ助成金ヲ增加致シテ、山
  林ヲ保護スル方策ヲ執ラルヽコトガ、現在
  ノ國民經濟ノ實勢ニ照シテ穩當デハナカラ
  ウカト思フノデアリマスガ、此點ニ付テモ
  御答ヲ願ヒタイノデアリマス、更ニ三輪君
  カラ只今質問ガアリマシタガ、如何ニ政府
  ノ諸君ガ辯解ヲサレマシテモ、木材關稅ノ
  引上ニ依テ消費者タル所ノ國民全體ガ非常
  ニ迷感スルト云フコトハ是ハ明ナル事實
  デアラウト思フノデアリマス、ノミナラズ、
  是ハ借家人ガ少シモ困ラヌト仰シヤイマス
  ケレドモ、建設費ガ高クナレバ家主ハソ
  レヲ口實トシテ借家賃ヲ引上ゲテ、庶民階
  級ヲシテ更ニ苦痛ヲ增加セシメルト云フコ
  トハ、明ナ事實デアラネバナラヌノデアリ
  マイ、卽チ現內閣ノ諸君ハ地租委譲ハ社
  會政策ノ爲デアルト一方ニ稱シテ居リナガ
  ラ、一方ニ斯樣ナ反社會的ノ政策ヲ實行サレ
  ルノデアル、卽チ現內閣ノ諸君ハ公ニ國
  民ニ向ッテパンヲ與ヘルト呼號シテ置キナ
  ガラ、事實國民ニ向ッテ石ヲ投ジテ居ルノデ
  アリマス、此點ニ付テ更ニ明瞭ナル御答ヲ
  得タイト存ズルノデアリマス、更ニ私ハ今
  モ質問ガアッタヤウデアリマスガ、此木材關
  稅引上ノ結果ト致シテ、亞米利加ニ於キマ
  シテハ千九百二十二年ノ九月ニ於キマシテ
  新關稅法ヲ發布致シテ、今後他國ガ直接間
  接自國ノ商業ニ對シテ差別的待遇ヲ與ヘル
  場合ニ於テハ、大統領ハ布告ヲ以テ其國ノ
  產業ニ向シテ從價五割ノ附加稅、若クハ新稅
  ヲ賦課スルコトヲ得ト云フ規定ヲ明ニ致シ
  テ居ルノデアリマス、成程今回ノ木材關稅
  引上ハ、米材ノミニハ限定サレテ居リマセ
  ヌケレドモ、事實ハ米材ノミニ限定サレル
  結果ト相成ルノデアリマスルガ故ニ、私ハ
  或ハ恐ル、亞米利加ガ報復關稅ノ手段ニ依
  テ、却テ日本ガ迷惑スルヤウナ時期ガ來ル
  デハナカラウカト心配ヲ致シマス、此點ニ
  付テ改メテ御伺ヲスルノデアリマス、最後
  ニ私ハ朝鮮ノ此木材關稅引上ニ付テ御尋ヲ
  申上ゲタイト思ヒマス、朝鮮ノ木材關稅引
  上、是ハ昭和二年五十二議會ノ時ニ於テ
  モ、既ニ問題ニナッテ議會ニ現ハレタノデア
  リマス、吾々ハ殖民地ノ關稅ヲ統一スルト
  云フコトノ精神ニ向ッテハ、毫モ反對ノ意思
  ハ有シテ居ラヌノデアリマス、併ナガラ臺
  灣ト朝鮮トハ其趣ガ異,テ居ルノデアリマ
  ス、其時期ニ付テハ愼重ナル考慮ヲ廻ラス
  必要ガアルト思フノデアリマス、卽チ現ニ
  安東縣ニハ三千人以上ノ日本人ガ居ノテ、其
  二割以上ハ此材木ニ關係ノアル商業ヲ營ン
  デ、現ニ二千万圓以上ノ投資ヲ致シテ居ル
  ノデアリマス、然ルニ若シ之ガ實行致サレ
  マスト、僅カ對岸ノ新義州ニ居ル所ノ日本
  ノ材木商ハ非常ニ利益ヲ受ケマスガ、滿蒙
  開發ノ大使命ヲ帶ビテ行ッテ居ル安東縣ノ
  邦人ハ、非常ナル苦痛トナラザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、卽チ政府ハ既ニ滿蒙ノ特權
  ヲ維持スル必要ヲ唱ヘラレ、大ニ滿蒙開發
  ノ爲ニ努力スルト云フコトヲ聲明サレテ居
  ルノデアリマスガ、僅カ川ヲ隔テタ新義州
  ノ商人ハ非常ニ利益ヲ得ルガ、滿蒙デ働イ
  テ居ル安東縣ノ邦人ガ非常ニ迷惑スルト云
  フコトハ、滿蒙開發ノ土ニ於テ非常ナル支
  障ヲ來シハシナイカト一云アコトヲ私ハ心配
  スルノデアリマス、此事柄ハ滿蒙一般ノ邦
  人ニ直ニ宣傳サレルノデアリマス、今ヤ滿
  蒙ノ特權ヲ維持シテ、飽迄モ滿蒙開發ノ爲
  ニ大ニ努力スル必要アル際ニ、急遽トシテ
  此案ヲ出サレルト云フコトハ如何デアラウ
  ト思フノデアリマス、尤モ昭和二年ニ御出
  シニナッタ案ハ、全部内地同樣ニスルト云フ
  コトデアッテ、今回ハ過渡的ニ、暫定的ニ、
  順ヲ逐ウテヤルト云フコトニナッテ居リマ
  スケレドモ、其結果ハ矢張五十步百步デア
  ラウト思フノデアリマス、私ハ今直ニ之ヲ
  實行サルヽト云フコトハ、滿蒙開發ノ上ニ
  於テ少ナカラザル支障アリト認メルノデア
  リマスガ、政府當局ハ如何ナル御考ガアリ
  マスルカ、此點ハ非常ニ重大ナル點ト考ヘ
  マシテ、田中總理大臣ノ出席ヲ要求致シタ
  ノデアリマスガ、御出席ニナッテ居リマセ
  ヌカラ、他ノ諸君カラ御答ヲ得タイト思ヒ
  マス、以上十數點ニ對シテ私ハ政府ノ御答
  辯ヲ促スモノデアリマスルガ、最後ニ申上
  ゲタイト思ヒマスルノハ、國際貸借ノ關
  係又關稅政策ト云フモノハ、洵ニ我國財
  政經濟ノ重點ヲ成シテ居ルモノデアリマ
  ス、然ルニ現内閣ハ黨勢擴張ノ爲ニ、放
  漫ナル所ノ豫算ヲ編成サレマシテ、其結果
  ト致シテ、國債貸借改善ノ基調デアル所ノ
  金解禁ノ上ニ一大支障ヲ與ヘテ居ルノデア
  リマス(拍手)ノミナラズ一黨ノ面目ヲ維持
  センガ爲ニ、兩稅ノ委讓ヲ爲サレマシテ、
  其結果財政ノ基礎ヲ危殆ニ陷ラシメテ、遂
  ニ財源ニ窮シタ結果、此木材關稅ヲヤルト
  云フコトニナッタト云フヤウナ疑ガアルノ
  デアリマスカラ、此際特ニ政府當局ハ詳
  細ニ、又卒直ニ御答辯アランコトヲ希望ス
  ル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=29

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• 030・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　大口大藏政務次官
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=30

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• 031・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　只今前田君ヨリ
  極メテ多數ノ御質問デアリマシテ、大藏當
  局關係ノ事ニ對シマシテハ、大藏大臣ヨリ
  御答スベキデアリマスルガ、只今貴族院ノ本
  會議ニ出席致シテ居リマス關係ヨリ、私ヨ
  リ御答辯申上ゲ得マス點ニ對シマシテ、出
  來得ル限リノ御答辯ヲ申上ゲタイト存ジマ
  ス、若シ御不滿足ノ點ガアリマシタナラバ
  ドウカ委員會等ニ於テ更ニ詳細御質問アリ
  マスヤウニ御願致シタイト存ジマス、先ヅ
  第一ニ我國ノ國際貸借ノコトニ付テノ御質
  問デアリマシタガ、此事ハ刻下極メテ重要
  ナ事デアルト存ジマスカラ、只今御意見ノ
  アリマシタ通リ、腹藏ナク意見ノアル所ヲ
  申上ゲテ御批判ヲモ煩ハシタイト考ヘルノ
  デアリマス、我國ハ御承知ノ通リ、世界ノ
  大亂ノ前ニ當リマシテ持シテ居リマシタ所
  ノ正貨ハ、僅ニ三億七八千万圓デアッタト記
  憶致シマスガ、此頃ハ矢張極メテ不景氣デア
  リマシテ、我國ノ經濟界ハ頗ル逆境デアツ
  タト私共ハ信ジテ居リマス、然ルニ此世界
  ノ大亂ハ不思議ニ我國ニ仕合ヲ致シマシ
  テ、僅ノ間ニ二十二億ニ近キ所ノ正貨ヲ得
  タノデアリマスカラ、此割合ニ通貨モ膨脹
  致シマシタ、其結果ガ非常ナル我國ニ景氣
  ヲ持來シタノデアリマスガ、是ガ永ク續ケ
  バ洵ニ結構デアリシタガ、如何セン御承知
  ノ通リ永ク續キマセヌ、世界ノ大戰ガ濟ミ
  マスト同時ニ、貿易ハ益〓逆調ニ相成リマシ
  テ、殊ニ我國ニ於テ最モ輸入超過ヲ多カラ
  シメタノハ何時デアッタカト言ヘバ寳
  大正十三年デ、內地ダケデ六億四千万圓ト
  云フ大ナル輸入超過ヲ來シタノデアリマ
  ス、此時ガ一等我國ノ正貨金貨ガ減ッテ居
  ルノデアリマス、勿論是ニハ御承知ノ通リ
  大震火災ノ關係ガアリマスカラシテ、私共
  決シテ其時ノ内閣ノ遣方ガ惡カッタモノデ
  アルトハ批評ハ致シマセヌ、是ハ誰ガヤリ
  マシテモ、此大震火災ノ結果ト云フモノハ、
  少ナカラザル影響ヲ受クベキモノデアルト
  考ヘテ居リマスガ、此大震火災ノ大影響ト
  云フモノハ、矢張此貿易ノ上ニモ現レテ參ク
  テ居リマス、一方ニ於テサナキダニ輸入超
  過ノ多イ所へ、只今申シマシタ災害ガ伴ヒ
  マシテ、先刻申ス通リ六億四千万圓ト云フ
  大ナル輸入超過ヲ來シテ居リマス、其結果
  我國ノ正貨ハ次第々々ニ減リマシテ、只今
  幾ラデアルカト云ヘバ、先般政府ニ於テ發
  表致シマシタ如ク、嘗テ二十二億ニ近カリ
  シ正貨ハ今約十二億デアリマス、其割合
  ニ矢張通貨モ縮小サレテ居ル譯デアリマス
  カラ、我國ノ經濟界ト云フモノハ、總テガ壓
  迫ヲ受ケマシテ、士農工商共ニ不景氣ヲ感
  ジ、財界ノ困難ヲ感ズルコトハ已ムヲ得ザ
  ルノ狀況ニナッテ居ル、然ラバ之ヲドウシテ
  吾々ハ維持スルカ、吾々日本帝國ノ經濟界ヲ
  將來好轉ニ向ケルニハドウスルカ是ハ矢
  張前田君ガ申サレマシタ通リ、無論此一方
  ニ於テ輸出貿易ガ盛ニナリマシテ、所謂國
  際貸借ノ「バランス」ヲ得テ參ラナケレバナ
  ラヌト云フコトハ、申ス迄モナク私共御同
  感デアリマス、ンコデ前内閣ノ終リガドウ
  ナッテ居ルカト言ヘバ、前田君能ク御承知ノ
  通リ、六億四千万圓ノ大ナル輸入超過ノアツ
  タ時代ハ稍、過ギ去リマシテ、大震火災ノ
  結末モ稍、著イテ參リマシタ結果モ手傳ッ
  テ、昭和元年度ハ三億三千万圓ノ輸入超過
  デ終ッタコトハ御承知ノ通リデアリマス、ソ
  レデ吾々内閣ヲ引受ケルコトニナリマシテ
  カラ、此事ニ對シテハ及バズナガラ出來ル
  ダケノ力ヲ盡シテ居ル積リデアリマス、昭
  和二年ノ貿易ノ計算ニ於キマシテ、是ハ內
  地ダケノ計算デアリマスガ、植民地ヲ入レ
  マシテモ、矢張數字ノ比例ハ稍、同ジデア
  リマス、内地ダケハ今調バッテ居リマスカ
  ラ申上ゲマスト、只今申シタ通リ昭和元年
  ニ於テハ三億三千万圓ノ輸入超過デアリマ
  シタモノガ、昭和二年ニハ一億八千万圓ノ輸
  入超過ニ減シテ居ルノデアリマス、貿易以外
  ノ取リ分ガ比較的多カッタ爲ニ、昭和二年ニ
  於テハ割合ニ我國ノ正貨ガ減シテ居ナイコ
  トハ御承知ノ通リデアリマス、併ナガラ幾
  ラカ滅リマシタ、ソコデ昭和三年度ハドウ
  ナッタカト言ヘバ一昨年ヨリハ稍、逆調
  デアリマシテ、二億二千万圓ノ輸入超過ヲ
  算シテ居ルノデアリマス、ソレデ是ハ一體
  ドウ云フ原因デアルカト吾々考ヘテ見マス
  ルト、申ス迄モナク第一ガ生絲ノ關係、第
  二ガ綿絲ノ關係デアリマス、殊ニ生絲ニ於
  テ三四千万圓ト云フモノガ金額ニ於テ少ナ
  イ、併シ數量ハ能ク賣レテ居ル、是ハ前田
  君能ク御承知デアル、數量ハ賣レテ居ルガ
  割合ニ金ガ取レナカッタ、是ガ非常ナル影
  響ヲ致シテ、若モ生絲ガ前年通リニ參ッタ
  トスレバ、矢張一億八千万圓位ノ輸入超過
  デ濟ンダ譯デアリマス、ソコデ此生絲ト云
  フモノハ何故斯ウナルカト云フコトニ對
  シテハ、商工省、農林省等ニ於テモ十分調
  査致シテ居ルコトヽ信ジテ居リマスガ、大
  藏當局ニ於テモ相當是ハ調査ヲ致シマシ
  テ、此原因ニ溯ッテ十分ナル〓究ヲ致シテ、
  何トカシテ之ヲ一ツ維持シタイト云フコト
  ハ努メテ居ルノデアリマス、此事ニ對シテ
  別ニ法案モ出テ居リマスシ、此處デ申述べ
  ル事デハアリマセヌカラ一々申上ゲラレマ
  セヌガ、私共及バズナガラ多少〓究ヲ致シ
  テ居リマスコトモ聽イテ下サラバ一應申述
  ベタイト思フ點モアルノデアリマス、唯此
  處デハ餘リ複雜ニナリマスカラ私申述ベマ
  セヌ、サウ云フ關係デアリマシテ、昭和元
  年度ニ於テ三億三千万圓ノ輸入超過タリシ
  モノガ、一躍シテ昭和二年ニハ一億八千万
  圓ノ輸入超過デ濟ンダ、ソレガ昨年稍、逆
  調ニナリマシタガ、兎ニ角二億二千万圓ノ
  輸入超過デ濟ンダノデアリマスカラ、此上
  何トカ努力シテ、吾々ハ輸入超過ヲ減ラス
  コトヲ考ヘテ參レバ、段々吾國ノ貿易ハ改
  善サレ、所謂貿易上ノ「バランス」ト云フモ
  ノガ合ッテ參ッテ、我國ノ財界ハ自然ニ安定
  シテ來ルモノナリト確信シテ居ルノデアリ
  マス、其事ニ對シテハ豫算ノ上ニ現ハレテ
  居ル事バカリデナク、總テ私共出來ル限リ
  此方針ニ向ッテ努力ヲ致シテ居リマス、ソレ
  デ今問題ニナッテ居リマス木材關稅ノ事等
  ニ付キマシテモ、先刻大藏大臣カラ述ベラ
  レマシタ理由モアリマスシ、又只今農林大
  臣ヨリ述ベラレタ理由モアリマスルガ、其
  外ニ此貿易ニ關係シマシテモ、私共斯ウ云フ
  考ヲ持ッテ居ル、木材ト云フモノハ全
  體大正六年度ニハ外國カラ幾ラ輪入シ
  タカト申シマスト、前田君ハ無論御承知ノ
  コトヽ考ヘマスガ、三百万圓ニ過ギナカッ
  タノデアリマス、ソレガ大正九年ニハ一千
  五百餘万圓トナリ、大正十三年ニハ一躍シ
  テ實ニ一億一千九百万圓ノ輸入高ヲ見タノ
  デアリマス、是ハ先刻申シマシタ大震火災
  ノ結果モアリマスカラシテ、木材ノ輸入ノ
  殖エタコトハ、或ハ尤ナヤウナ道理モアリ
  マスガ、然ラバ其後減ッタカト云フト、一寸
  減リノ見エタコトモアリマスガ、再ビ又此
  輸入高ハ高マリマシテ、昭和二年ニ於キマ
  シテハ更ニ九千五百餘万圓ノ輸入高ヲ見テ
  居リマス、總テヾ約一億万圓モノ木材ノ輸
  入ニナルノデアリマス、勿論貿易ハ私ガ申
  ス辷モナク、前田君ノ述べラレタ通リ、保
  護致ス必要アルモノト、保護致スドコロデ
  ナク、內地デ絕對ニ產シナイモノハ外國ノ
  安イモノヲ入レ、或ハ原料ノ內地ニ無イモ
  ノハドン〓〓之ヲ入レテ、我國ノ產業ヲ發
  達セシメルコトハ是ハ致サナケレバナラ
  ヌ、然ラバ我ガ日本國ニハ木材ハ無イカト
  云フト、御承知ノ通リ無論我國ニハ農業モ
  大切デアリマスガ、林業ト云フモノモ中こ
  我國ニハ大切デアル、サウシテ相當ニ林野
  モアル、然ルニ外國カラ一億ノ木材ノ輸入
  ヲ見テ居リ、一方ニハ我國ノ正貨ガ減ッテ
  參ルト云フコトヲ目前ニ見テ居ル私共ハ
  或ル程度ニ於テ我ガ內地ノ木材ニ保護ヲ與
  ヘルト同時ニ、一面ニ外國カラ這入ル木材
  ヲ防グダケノ考ハ、國民ニナクテハナラナ
  イト云フコトヲ信ジテ居ルノデアリマス、
  サウ云フコトヲ段々考ヘテ、全體カラ見テ
  參リマスト、木材ノ關稅モ或ル程度ノ引上
  ハ貸借關係ノ上カラモ餘儀ナイモノデア
  ルト確信シテ居ル、是モ此際一ツ申上ゲテ
  置キタイト思ヒマス、ソレカラ又色ミ政府
  ガ執ッテ居リマスル所ノ豫算其他稅制ニ付
  テノ御批評ガアリマシタガ、是ハ豫算モ稅
  制モ既ニ此議會ハ濟ンデ居ルコトデアリマ
  スカラ、私今日强ヒテ御辯明ヲ申上ゲル必
  要ハナイト思ヒマスガ、他ノ事ニ關聯シテ
  一言ダケハ此事ハ御釋明ヲ申上ゲテ置キタ
  イノデアリマス、成程前田君ハ御立場モ違
  ヒマスシ、根本ニ於ケル御考ガ或ハ御違ヒ
  ニナッテ居ルト存ジマスカラ、私ノ考トハ違
  フカモ知レマセヌガ、私ハ曾テ稅制ノ委員
  會ニ於テ前田君ニモ御說明申上ゲマシタ通
  リ、政府ノ財政ハ勿論鞏固デナクテハナリ
  マセヌ、政府ノ財政ガ不鞏固デ宜イト云フ
  ヤウナ議論ガアル譯ハアリマセヌ、ケレド
  モ政府ト云フモノハ言フ迄モナク國家
  ノ機關デアリマス、別段ニ一ツノ團體デモ
  ナケレバ、一ツノ閥デモナイノデアリマス、
  ソレデアリマスカラ政府ハ財政計畫ガ立ッ
  テ、財政ノ基礎危カラズト自ラ信ジタ以上
  ハ、假令自分ハ窮屈デアッテモ、出來ルダ
  ケ自分ノ身ヲ詰メテ、少シデモ多ク國民ヲ
  裕カニスル必要ガアルト云フコトヲ私共考
  ヘテ居ル、ソレデアルカラ是ハ國家ニ有益
  ナ事業デアリ、是ハ國家ノ爲ニ爲スコトガ、
  將來我國ノ產業ノ發展ノ上ニ宜イコトヽ考
  ヘル以上ハ、例ヘバ道路デアリマシテモ、
  港灣デアリマシテモ、鐵道デアリマシテモ、
  盡スダケハ盡シ、費用ヲ投ジテ仕事ヲスル、
  所謂積極的ニ事業ヲ致シマスケレドモ、
  面ニ節約ハセヌデモ宜イカト言ヘバソレ
  ハイケナイ、出來ルダケハ既定經費ノ節約
  シ得ベキモノハ節約致サネバナラヌ、其節
  約高ガ少イト云フ御批評デアレバ、私ハ唯
  其多イト云フコトヲ誇リト致シマセヌ、又
  御攻撃デアレバ吾々色こ申シマスケレドモ、
  此場合政府委員トシテ、ソレハ申上ゲルベ
  キコトデアリマセヌカラ、申上ゲマセヌケ
  レドモ、現内閣ニ於テハ盡スベキ事ハ之ヲ
  盡シ、節約スベキ事ハ節約シ、其殘ノタカヲ
  以テ出來ルダケノ產業ノ發達ヲ圖リ、而シ
  テ國民ニ對シテ減稅ノ意味ニ於テ今囘ノ兩
  稅ノ委讓ヲ致スノデアリマス、絕對ニ增稅
  ニナルトハ考ヘテ居ナイノデアリマスカ
  ラ、是デ吾々ハ宜イト思フノデアリマス(拍
  手)斯ウ云フ政策ニ依テ段々進ンデ行ケバ、
  我ガ內地ノ產業ハ總テノ方面ニ亙ッテ好況
  ヲ及ボシマシテ、其結果ハ必ズヤ我國ノ貿
  易ニ對シテモ「バランス」ガ得ラレル方ニ近
  クナル、何處迄モ是デ進ムコトガ眞ニ國家
  ノ爲デアル、是ガ政府ノ爲ス事ナリト確信
  シテ居ルノデアリマスカラ、此信念ダケ
  ハ此場合申上ゲテ置キタイト思フノデアリ
  マス、ソレカラ外國ト日本トノ物價ノ指數
  ヲ御比較ニナッテ、色〓御論ジニナッテ、政
  府ノ意見ヲ問ハレマシタガ、無論物價ハ安
  イノガ宜イノデアリマス、併ナガラ豫算
  委員會等デ大藏大臣ガ御答シマシタノハ
  我國ハ歐羅巴或ハ亞米利加アタリノ所謂文
  明國ト較ベレバ世界大戰以前ハ日本ハ特
  別ニ安カッタノデアルカラ、其時ノモノヲ本
  ニシテノ指數ヨリ見レバ、ソレハ我國ノ指
  數ガ上ッテ居ル、ソレハ我國ノ總テガ發展シ
  テ來テ、世界ニ於ケル日本ニナッタカラ、戰
  爭前ノ昔ノヤウニ下ゲルト云フコトハ是ハ
  困難デアル、而シテ政府ノ今ノ方針ト致シ
  マシテハ、此物價ヲ安クシマスノニ、或ハ工
  賃ヲ安クシタラ宜カラウト云フ議論ガアル
  カモ知レマセヌガ、ソレハ決シテ將來吾々
  ノ採ルベキ途デナイト考ヘル、寧ロ工賃ハ
  高クアッテモ、所謂能率ノ增進、此方ニ努
  メテ、總テノ工業ノ改良發達ト云フ方ニカ
  ヲ用ヒ、之ニ依テ我國ノ物價ヲ安クスルコ
  トニシナクテハナラナイ、而シテ政府ハ此
  方針デ進ンデ居ルト云フコトヲ御了解ヲ願
  ヒタイト思ヒマス(「了解出來ナイト」呼フ
  者アリ)御了解ガ出來ナケレバ、色〓此處
  デ議論ヲ致サナケレバナリマセヌガ、ソレ
  デハ長クナリマスカラ他ノ時ニ讓リマス、
  ソレカラ根本カラ惡イト思ッテ御反對ニナッ
  テ居ルニハ既ニ根本ガ違フテ居ル以上、如
  何ニ申上ゲテモ議論ニナリマスカラ、此場
  合議論ハ避ケタイト思ヒマス、ソコデ爲替
  相場ガ下ッタニ付テハ、色〓原因ガアルデ
  アラウガ、其中デ現政府ハ支那關係ノ事ノ
  ミヲ見テ居ルヤウダト一云フ御話ガアリマシ
  タガ、是モサウ見テハ居リマセヌ、申ス迄
  モナク爲替相場ノ上ッタリ下ッタリスルノニ
  ハ、種々ノ關係ガアリマス、上海邊リノ投
  機ノ關係モ少ナカラヌ影響ガアリマスガ、
  殊ニ我國ノ在外正貨ノ關係カラ申シテモ、
  貿易ノ關係、貸借對照ノ上カラ申シテモ、
  色ミノ關係ガアリマス、是ハ中こムヅカシ
  イコトデ、一樣ニハ參ラヌコトハ申ス迄モ
  アリマセヌ、唯現在ノ狀態ニ於テハ、支那
  問題ガ最モ多ク關係シテ居ルト云フ意味ヲ
  御答シタコトデアラウ卜思ヒマス、ソレカ
  ラ又近頃爲替相場ガ稍〓下ッテ居ル、之ニ對
  シテ政府ハ何カ對策ヲ講ジテ居ルカ、又之
  ニ對シテ正金銀行ヘ資金デモ貸付ケルカト
  云フ御質問デアリマシタガ、政府ニ於キマ
  シテハ、現在ノ爲替ニ對シテハ强ヒテ小刀細
  工ヲ用ヒルノハ宜シクナイト思ッテ居リマ
  ス、今日ハマダ人爲的ニ之ヲ左右スルコト
  ハ宜シクナイト考ヘテ居リマスカラ、此場合
  强ヒテ政策ハ用ヒナイ積リデアリマス、唯と
  若シ是ガ極端ニ下落シテ參クテ、經濟界ニ惡
  影響デモ及ボスト云フ急變デモ起リマスレ
  バ政府ハ打棄テ置キハシマスマイケレド
  モ、現狀ニ於テハ何等人爲的ノ小刀細工ハ
  用ヒナイ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ居リマスカ
  ラ、御問ノヤウナコトハ無イト云フコトヲ
  申上ゲテ置キタイト思フノデアリマス、ソ
  レカラ正貨補充ノ事デアリマスガ、是ハ誠
  ニ御心配御尤デアリマス、吾々モ此事ニ對
  シテハ日夜愛慮致シテ居リマス、只今モ申
  シマシタ通リ正貨ハ每年々々減ッテ參ッテ
  居リマス、現內閣ガ受取リマシタ時ニハ
  頗ル少イ時代ニ受取ッテ居ルノデアリマス、
  ソレカラ後ニハ正貨ハ餘リ減少シナイ、減
  少ノ割合ガ少クナッタ、併シ只今申シマシタ
  ヤウナ譯デ、在外正貨ノ減シテ來テ居ルコ
  トハ事實デアリマス、而シテ之ヲ補塡スル
  ニ付テノ考ハ吾々持ッテ居ルノデアル、今日
  デモ在外正貨ハマダ相當ニアリマスガ、其
  上ニ玆ニ在外正貨ニ數へテナイ所ノ、我國
  ニハ外國ニ於テ自由ニ出來ルベキ證券等ヲ
  持ッテ居ル、ソレデアリマスカラ萬一ノ場
  合ニハ、之ニ應ジラレルダケノコトハ考ヘ
  テ居リマス、將來ノ遠イ所マデ、ズット先
  キノ將來ニ對シテモ最モ細心ノ注意ヲ拂ツ
  テ、今日〓究處理ヲ致サネバナリマセヌカ
  ラ、之ニ當ッテ居リマスガ、差當ッテハ御說
  ノ如ク憂フベキ程ノコトハナイト實ハ考へ
  テ居リマス、其數字ヲ種々ナルコトニ對シ
  テ此場合公表シテ善イカ惡イカハ、餘程考
  慮ヲ要スル問題デアラウト思ヒマスカラ、
  私ハ是以上ハ只今御答辯致シマセヌ、大體
  今ノ如キ考ヲ持クテ居ルト云フコトヲ御諒
  知ヲ煩シタイト思ヒマス、ソレカラ關稅ノ
  根本改正ノコトデアリマスガ、是ハ御承知
  ノ通リ隨分議論ガアリマス、吾々モ相當ニ
  議論ヲ致シテ居リマスガ、御承知ノ如ク關
  稅ノ會議ニ於キマシテモ、段々ニ改正ヲサ
  レマシテ、殊ニ先年關稅改正ガ此議場ニ上
  リマシタ時ニ、議會カラ種々ナル希望條件
  モアリマシタ、只今其希望サレタ條件ニ付
  キマシテ、著々之ヲ處理シツヽアル場合デ
  アリマスカラ、今日マダ根本的ニドウシヤ
  ウト云フマデノ具體案ハアリマセヌ、併シ
  將來ニ向ッテハ、是ハ相當ニ〓究ヲ致シテ
  行クベキモノデアラウト考ヘテ居リマス、
  ソレ』カラ自由港ノコトニ付テモ御話ガ
  アッタヤウデアリマスガ、是ハ御承知ノ通
  リ別ノ方法ヲ今用ヒマシテ實行中デアリマ
  シテ、次第ニ是ガ效果ヲ生ジツヽアルヤウ
  ニ見エテ居リマスカラ、只今自由港ヲドウ
  スルカト云フヤウナコトニ付テハ深ク考へ
  テ居ナイ、之ニ代ルベキ働ニ付テ今種々ナ
  ル仕事ヲ致シテ居リマス、此仕事ノコトニ
  付キマシテハ實ハ私ハ細カク存ジマセヌ、
  大體ヲ承ッテ居ルダケデアリマス、細カク
  御質問デアリマスナラバ、此事ハ委員會等
  デ尙ホ他ノ政府委員、局長等ヨリ詳シク御
  說明申上ゲタ方ガ宜イカト思ヒマス、其他
  ノ御質問ハ大藏省ニ關係ノナイコト、又是
  ハ內閣ノ方カラデモ御答ヘニナラナイト
  大藏當局タル私共デハ御答ハ出來ナイモノ
  モアリマスノデ、是ダケデ私ハ御答辯ノ責
  ヲ終ヘタモノト思ヒマス、大體是ダケ御答
  ヘ申上ゲマシテ、尙ホ先刻申シマス通リ、
  御不滿足ノ點ガアリマシタナラバ、委員會
  等ニ於テ十分御質問ヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス、出來ルダケ綿密ニ御答辯申上ゲタイト
  考ヘテ居リマス(拍手)
  〔政府委員成毛基雄君發壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=31

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• 032・成毛基雄

  ○政府委員(成毛基雄君)　朝鮮ニ於ケル所
  ノ木材關稅ノ特令ノ廢止ニ付キマシテ、滿
  洲ノ木材營業者ハ大ナル影響ヲ受ケルデハ
  ナイカ、殊ニ一衣帶水ノ新義州ト安東縣ニ
  於テハ、非常ナル所ノ不幸ヲ生ズルデハナ
  イカト云フ御質問デアリマシタガ、是ハ今
  議會ニ法案ヲ提出スルニ當リマシテ、政府
  ガ最モ苦心ヲシテ、調査〓究ヲ致シテ居ル
  所デゴザイマス、此事ニ付キマシテハ御承
  知ノ通リ、先年來重大ナル問題トシテ考慮
  セラレタノデアリマシタガ、併シ此朝鮮ニ
  於ケル特令廢止ト云フコトハ年來ノ問題デ
  アル、暫定的ノ法律デアリマシテ、是非之
  ハ廢止センケレバナラヌト云フ運命ニアル
  ノデアリマス、內地ニ於ケル所ノ關稅ノ統
  一ト云フコトモ、是ハ御承知ノ通リ何時カ
  ヤラナケレバナラヌノデアリマス、ソレデ
  アリマスカラ今囘ノ議會ニ於キマシテ此特
  令ヲ廢止シ、滿洲ト朝鮮ノ利益ノ爲ニ、互
  ニ折衝ヲ圖ルト云フコトハ、最モ當ヲ得タ
  ル時節デアラウト存ジタノデアリマス、ソ
  レデ當局ト致シマシテハ朝鮮ノ特令ヲ廢止
  スルト同時ニ、滿洲ニ對シマシテハ先ヅ初
  年ニ於テハ四十錢ト云フ所ノ輕イ稅ヲ課ス
  ルコトニナッテ居リマス、サウシテ二年目ニ
  於キマシテハ七十五錢三年目モ七十五錢、
  四年目ニ至リマシテ初メテ一圓十錢ト云フ
  所ノ稅ヲ課スルコトニナッテ居リマス、丁度
  是ガ初年一歩、二年二歩、三年二歩、四年
  ニ至ッテ初メテ三步デアルノデアリマス、今
  日滿洲ノ木材ハ內地へ來リマスノハ六步デ
  アリマス、サウシテ是ハ木材價格ノ下落ニ
  依リマシテ、滿洲ノ木材業者ト云フモノハ
  殆ド九步近イ所ノ稅ヲ課セラレテ居ルノデ
  アリマスガ、今囘此關稅ノ改正ニ依リマス
  ルト云フト、滿洲ニ於ケル處ノ木材ハ內地
  ニモ向クコトニナリマスノデ、此點ハ木材
  業者モ非常ニ喜ンデ居ル所デアリマス、ソ
  レデアリマスカラ差引致シマスナラバ、滿
  洲ニ於ケル所ノ木材ニハ大ナル影響ヲ及ボ
  サナクテ濟ムト考へテ居リマス、斯ウ云フ
  コトノ外、又一方ニ於キマシテハ種類モ限
  定致シマシタカラ、彼此レ斯ウ云フ點ヲ考慮
  致シマスルト云フト、大ナル所ノ打擊ヲ與ヘ
  ズシテ濟ムコトヽ信ジテ居リマシテ、當局
  ハ苦心シテ斯ウ云フ所ノ接近シタ所ノ案ヲ
  作ッタ次第デアリマス
  〔國務大臣山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=32

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• 033・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郎君)　只今前田君カ
  ラノ御尋ノ中、私ニ關スル分ノ御答ヲ致シ
  マリ、第一ハ關稅引上ニ付テ木材價格ガ騰
  貴シタナラバ濫伐ガ必ズ起ルデアラウガト
  云フ御尋デアリマス、之ニ對シマシテハ先
  刻三輪君ニ對シテ御答ヲ致シマシタコトヲ
  繰返スヨリ外ハアリマセヌガ、伐採ノ增加ス
  ルノハ材木價格ノ騰貴シタ時ニ勿論行ハレ
  マスガ、材木價格ガ餘リ低落シタ時ニ於テ
  モ亦伐採ノ增加スルコトガアリマス、唯其
  間ニ於ケル山林政策ノ上カラ見タ相違ハ、
  材木ノ下落シタ時ノ伐採ハ所謂濫伐デアッ
  テ、片端カラ後先キ見ズニ仕方ガナイカラ
  伐ッテ賣ル、跡ハ構ハナイ、斯ウ云フコトニナ
  ルノデアリマスガ、之ニ對シテ相當價格ハ
  引合ウガ爲ニ伐ッテ賣ルト云フ場合ニハザ
  ウ云フヤウナ亂暴ナ伐採ノ致方ハ致シマセ
  ス、又跡ノ植付ト云フコトモ亦之ニ隨ッテ
  行ハレテ行クノデアリマス、ソレ故ニ關稅
  引上ノ結果トシテ、多少材木伐採ノ數量ガ
  曾加致シタト致シマシテモ、同時ニ植林ガ
  髓テ行ハレマスルカラシテ、是ハ決シテ
  深ク憂フルニ足ラズト信ズルノデアリマ
  ス、又今日ノ現況カラ見マシテ、此儘ニシ
  テ置クト云フコトガ相成ラヌト云フコト
  ハ山林政策ノ上カラ見テ當然ナルコトデ
  アッテ、獨リ助成金或ハ補助金ト云フ方法ニ
  依テノミ山林ノ作振ノ出來ナイト云フコト
  ハ分リ切ッタコトデアル、ソコデ第二ノ前
  田君ノ御尋ノ點ニ觸レルノデアリマスガ、前
  田君ハ必シモ社會政策ニ關係ノアル所ノ此
  木材關稅ヲ引上ゲナクトモ、補助金若クハ
  助成金ノ方法ニ依テ既ニ山林ノ作振ヲ圖〃
  テ居ルデハナイカ、之ヲ曾額シテ其方面ニ
  依テ山林政策ヲ施行シタラバ宜イヂヤナイ
  カト云フ御說若クハ御尋ガアリマシタガ、
  私共ノ考デハ獨リ山林ニ於テノミナラズ、
  總テノ政策ニ於テ之ヲ助長スル場合ニ、唯、
  一ツノ方法ヲ以テ之ヲ行ハントスルコト
  ハ、決シテ出來ナイノデアリマス、有ユル
  方法ニ依テ之ヲ併セ行フト云フコトデナケ
  ンケレバ一方ノ負擔ト云フモノガ非常ナ
  コトニナッテ來テ、例ヘバ此材木關稅ノ場合
  ニ於テモ關稅ノミニ依テ此保護ヲ施サウト
  シタナラバ、非常ニ高イ關稅ヲ掛ケナケレ
  バナラヌ、サリトテ助成金補助金ノ方法ノ
  ミニ依テ此目的ヲ達シヤウトスレバ、助成
  金補助金ト云フモノハ非常ナ多額ニ上ラザ
  ルヲ得ナイノデアリマス、此助成金ノ方法
  ノミニ依テ山林ノ助長ヲシタラ宜イヂヤナ
  イカト云フ前田君ノ先刻ノ御尋ニ付キマシ
  テハ、私ハ意外千萬ニ思フノデアリマス、
  前田君ナゾハ常ニ財政ノ膨脹ヲシナイヤウ
  ニ、財政ノ緊縮ヲシナケレバナラヌ、歳計
  ヲ少クシナケレバナラヌト云フ御說デアル
  ノデアリマス、若シ助長補助ノ一途ヲ以テ
  山林政策ヲ行ハフト云フコトヲシタナラ
  バ此上何千万圓ノ補助奬勵ト云フモノヲ
  致サナケレバナラヌト云フ結果ニ相成ルノ
  デアリマシテ、其結果ガ全體ノ歳計ノ膨脹
  トナルト云フコトハ明デハアリマセヌカ
  アナタ方ガ歲計ノ膨脹ハシテモ構ハヌ、其
  方法ヲ採レト云フコトデアルナラバ吾々
  ハ又別ニ考ヘヤウモアリマセウト、思ヒマ
  スケレドモ、左樣ナ常ニ緊縮々々ト仰セラ
  レテ居ナガラ、此問題ニ對シテノミ助成金
  ヲ以テ之ヲヤレト云フコトハ少シ御無理
  ヂヤナイカト思フノデアリマス(拍手)又此
  社會政策ニ付テ其次ノ御尋ガアリマシテ、
  是ハ結局家賃ノ騰貴ヲ促スノデアルト云フ
  コトデ、其點ニ付キマシテハ、三輪君ニ對シ
  テ御答致シテ置キマシタカラ更ニ詳シク申
  上ゲマセヌガ、唯2一言私ノ申上ゲテ置キ
  タイコトガアリマス、ソレハ今日ノ山林ノ
  面積ヲ、其大小ニ依テ區別シテ見マスト云
  フト、五段步未滿ノモノガ五割九分アル、
  全體ノ面積ノ五割九分ハ五段步未滿ノ小面
  積デアリマス、二十町步以上ハ僅ニ一「パ
  ーセント」ニ過ギナイ、斯ウ云フ狀態デ、
  今日我國ノ山林面積ト云フモノガ、悉ク小
  サイ經營者ニ依テ大部分經營サレテ居ルノ
  デアリマシテ、其戶數カラ申シマスレバ
  農業ヲ兼營シテ居ル山林家ト云フモノガ四
  六百十万戶アルコトニナッテ居リマス、之ヲ
  假ニ一戶五人宛ノ家族ト見マスルト、其數
  ハ二千三百万、三千三百万ト云フ者ノ利害
  休戚ト云フコトガ、山林ノ能ク行クカ行カ
  ヌカト云フコトニ繫ッテ居ルノデアリマス、
  故ニ此山林ハ相當引合フ程度ニ之ヲ導イテ
  行クト云フコトハ、是ハ大ナル社會政策ナ
  リト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、此四百
  六十万戶ノ中デ、其九割迄ハ此五反步以下
  ノ者デアルト云フコトガ、こ益〓之ニ對スル
  作振ノ政策ヲ講ズルコトガ、卽チ大ナル社
  會政策デアルト私ハ確信致シテ居リマス
  材木ノ價格ハ、價格ノ點カラ他ノ物價ト較
  ベテ見マシテモ甚ダ安イ、比較的安イ位置
  ニ在ルト云フコトモ、亦御諒承ヲ願ハナケ
  レバナラヌノデアッテ、一寸調ベテ見マスル
  ト、昭和三年ノ一般物價指數ト云フモノガ
  二百二十四ト云フモノニ對シテ、木材ノ指
  數ハ百十八ニ過ギナイ、卽チ一般物價指數
  ヨリハ遙ニ少ナイ、材木ハ一般ノ物價ニ較
  ベテ今日低イ位置ニ在ルト云フコトハ、是
  ハ否認スルコトガ出來ナイ、然ラバ一般物
  價ヨリモ安イ材木ノ價ニ甘ジテ、此四百何十
  万戶ノ經營者ガ安イ材木ヲ都市ニ向ッテ供
  給シナケレバナラヌト云フ理窟ハ立ツマイ
  ダラウト思フノデアリマス、ソレカラ報復
  關稅ヲ受ケル憂ガアルデハナイカト云フヤ
  ウナ御尋デアリマシタガ、是ハ先刻申上ゲ
  タ通リ、今日迄ノ當局ノ受ケテ居ル所ノ情
  報ニ依リマスレバ、左様ナ憂ハナイノデア
  リマス、今日位ノ程度ノ關稅ノ引上ゲナラ
  バ、生絲其他ニ向ッテ報復關稅ヲ設ケテ來ル
  ト云フ憂ハ萬々ナイト〓ハハジジ居居リマ
  ス、材木ニ關稅ヲ掛ケテ之ヲ相當保護シヤ
  ウト云フ政策ハ、單リ我國ニ於テ今之ヲ執ツ
  テ居ルノミナラズ、外國ニ於テモ今將ニ執
  ラントシツヽアルコトハ、御承知デモアリ
  マセウケレドモ、米國ニ於テハ加奈陀ヨリ
  輸入シテ來ル所ノ材木ニ對シテ二割ノ關稅
  ヲ課サウトシテ、今其計畫ヲ立テヽ居ルト
  云フ情報ガアリマス、又獨逸ハ自國ノ山林
  保護ノ爲ニ、相當重キ關稅ヲ掛ケル計畫ヲ
  今立テヽ居ルト云フコトモ是亦吾々ハ其
  情報ニ接シテ居ルノデアリマス、我國ガ僅
  カ一割内外ノ關稅ヲ玆ニ增加スルト云フコ
  トハ、ソレ程異常ナコトデナク、ソレ程無
  理ナコトデナイト云フコトガ、他國ニ於テ
  モ亦諒承セラルヽコトデアラウト思ヒマス
  ガ、殊ニ米國ハ、米國自身ガ加奈陀ヨリノ
  輸入材木ニ對シテ關稅ヲ掛ケヤウト云フ際
  ニ、我國ガ僅カ一割カソコラノ關稅ヲ增加
  スルト云フコトニ向クテ、報復關稅ヲ以テ之
  ニ報イントスルコトハ萬々ナイト私ハ確
  信致シテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=33

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• 034・前田房之助

  ○前田房之助君　簡單デスカラ此席カ
  ラ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=34

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• 035・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=35

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• 036・前田房之助

  ○前田房之助君　政府當局カラ縷々御說明
  ニナッタノデアリマスガ、大部分ハ議論デア
  リマスカラ、改メテ質問ハ致シマセヌガ、
  唯〓一點申上ゲマスノハ、只今大藏政務次官
  ハ木材ガ一箇年一億圓內外モ輸入スル、之
  ヲ阻止スルト云フコトハ、國際貸借ノ改善
  ノ上ニ於テモ必要デアルト云フ御答デアリ
  マシタケレドモ、吾々ノ主張スル所ハ、國
  民生活ニ直接關係ノアル所ノ消費稅ヲ增加
  スルト云フコトニ付テハ深甚ナル考慮ノ
  必要アリト認メテ居ルモノデアリマスカ
  ラ此以上ハ意見ノ相違デアルカ知レマ
  セヌケレドモ、此點ニ付テ改メテ政府ノ御
  考慮ヲ煩シマスト同時ニ、只今農林大臣ハ、
  是ハ山林業者ヲ保護スル上ニ於テ必要ナリ
  ト云フコトヲ申述ベラレマシタガ、六百万
  圓ノ山林業者ガ重イフデアルカ、八千万ノ
  國民生活ヲ裕カニスルコトガ重イノデアル
  カ、此點ニ付テモウ一度御考慮ヲ煩シタイ
  卜思ヒマス、細カイ問題ハ委員會ニ於テ申
  述ベマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=36

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• 037・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　永田善三郞君
  〔永田善三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=37

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• 038・永田善三郎

  ○永田春三郞君　諸君、只今本案ニ對シマ
  シテ、大所高所ヨリノ大キナ議論ガ交換サ
  レタヤウデアリマス、私ハ極ク本案ノ內容
  ニ入リマシテ、限定シタ範圍ニ於テ質疑ヲ
  致シタイト思フノデアリマヌ、關稅定率法
  ノ改正ハ、前内閣ガ太正十五年ニ根本的ノ
  大改正ヲ行ッタツデアリマシテ、是ハ當時ノ
  內閣ノ大ナル功績ノ一ツデアルト私ハ思ウ
  テ居ル、明治四十二年以來、永ク打捨テラ
  レテアリマシタ所ノ我國ノ關稅定率法ノ爲
  ニ、十數年ノ間我國ノ產業ハ各方面ニ於テ
  異常ナル發達ヲナシ、又海外ニ於ケル貿易
  關係ガ異常ナル變化ヲ來シテ居クタニ拘ラ
  ズ、之ニ對スル立派ナル〓稅定率法ガ立テ
  ラレテ居ラナカッタノデアリマス、幸ニ大正十
  五年ノ改正ハ、前內閣ノ努力ニ依リマシテ、
  玆ニ新シク定率法ガ確定シテ、漸ク我國ノ
  產業ニ對シマシテ、洵ニ適切ナル所ノ稅ヲ
  見積ルコトガ出來タノデアリマス、其後ニ
  於キマシテ、吾々ノ眼ニ著シク映ズル所ノ
  モノガ澤山アル、製鐵保護ノ如キ其顯者ナ
  ル一ツデアリマシテ、製鐵、製鋼事業ガ此
  二三年ノ間ニ長足ナル進步ヲシテ、我國ノ
  鐵工業ノ前途ニ、從來大ナル暗影ヲ持ッテ
  居シタノヲ一掃シ得タト云フヤウナコトハ、
  洵ニ顯著ナル功績デアルト私ハ思ウテ居リ
  マス、而シテ本日茲ニ本案ガ提案ニナリマ
  シタ其所以ニ遡リマシテモ、卽チ太正十五
  年ノ改正當時ニ於キマシテ、政府ガ異常ナ
  努力ヲ爲シタト雖モ、其費目ガ千五六百種
  類ニ上ッテ居リマシテ、關稅ノ「オーンリチ
  ー」ト言ハレテ居リマス-今日御出席ハ
  アリマセヌガ、大藏省ノ矢部君等ノ隨分御
  熱心ナ〓究ガアリマシタ、併ナガラ尙ホ不
  備ナリト衆議院ガ認メマシテ擧ゲタ所ノモ
  ノガ、二十數點アッタノデアリマス、此當時
  ノ關稅改正ニ對スル衆議院ノ態度ハ、政友
  本黨、政友會、憲政會、共ニ殆ド一致シテ
  之ニ當ッタノデアリマシテ、殆ド黨派ヲ超越
  シタ觀念ノ下ニ之ガ審議ヲ進メマシテ、加
  藤政之助君ガ委員長トシテ、殆ド六十日ニ
  亙リ審議ヲシタノデアリマス、隨テ此時ニ
  定メラレタル所ノ關稅改正定率法ナルモノ
  ハ、殆下黨派ノ觀念ハ加味サレテ居ラナカッ
  タ眞ニ我國ノ產業ノ立場ニ顧ミテ、此處
  ニ出發點ヲ置イテ、各位ガ努力ヲ致シタノ
  デアリマス、而シテ殘サレタル所ノ二十五
  六ノ問題ガ、其後ノ憲政會內閣或ハ引續キ
  ノ内閣ニ於キマシテ、漸欠之ガ解決ヲサレ
  マシテ、隨分其中ニハ改正ヲ施サレタモノ
  ガ澤山アリマスガ、殘ッタ所ノ問題ハ、玆ニ
  出テ居リマス木材、或ハ樂器ノ中ノ「ピアノ」
  デアルトカ、或ハ綿絲ノ中ノ捻絲デアルト
  カ、斯ウ云フ物ガ殘シテ居ッタノデアリマ
  ス、幸ヒ〓囘政府ガ此前內閣以來ノ傳統ヲ
  引繼イデ、玆ニ本案ガ提出ニ至ッタト云フコ
  トハ黨派ヲ超越シテ私ハ大ニ歡迎スル所
  デアリマス、特ニ、私共木材事業ニ關係ノ深イ
  議員カラ見マスルト、積年ノ努力ガ漸ク酬
  ヒラレタ感ガ致スアデアリマスガ、併ナガ
  ラ本案ノ成立ニ至リマスル從來ノ沿革カラ
  申シマスト、餘程本案ノ行方ノ違ッテ居ル點
  ヲ遺憾ト致スノデアリマス、ツレハドウ云
  フ點ガアルカト申シマスト、木材關稅ノ改
  正ナルモノハ、農林關係ノ議員ニ於キマシ
  テハ黨派ヲ超越シテ熱心ニ主張サレタノ
  デアリマシタガ、其聲ハ從來議場ニ徹底致
  サナカッタノデアリマス、然ルニ太正十三年
  ノ夏三派内閣ノ下ニ於キマシテ、當時ノ國
  際貸借改善ニ資センガ爲ニ、人格高潔ナル
  當時ノ濱口大藏太臣ガ、贅澤品關稅ナルモ
  ノヲ突如トシテ制定サレマシテ、組閣後僅カ
  二週間ニ過ギナカッタ此繁忙ノ裡ニ於テ、尙
  且當時ノ國際貸借ノ現狀見ルニ忍ビザルモ
  ノアリトシテ、玆ニ國民ヲ戒飭セントシテ、
  贅澤關稅ナルモノヲ設ケタノデアリマ
  ス、此時ニ於キマシテ、始メテ木材關稅ノ
  改正ニ一ノ新ラシキ理由ヲ加ヘタノデアリ
  やった、從來山林保護ト云フヤウナ立場ニ於
  テ進ンデ來テ居ッタモノガ、贅澤關稅ガ設ケ
  ラレマシテ贅澤品ノ輸入ヲ防遏シヤウト云
  フコトヲ認メルト同時ニ、木材ノ中ノ特殊
  ナル物、卽チ高級本材、杉デアルトカ、檜
  デアルトカ、特ニ建築用材トシテ高級ニ使
  用サルベキ物ハ矢張贅澤〓デハナイカ、
  南洋カラ入ル所ノ床柱ニスルヤウナ贅澤ナ
  木材ニ課稅ヲスルト云フコトデアレバ、矢
  張ソレト同ジヤウナ資格ヲ持シテ居ル杉、檜
  ト云フヤウナ物モ、同ジク贅澤品デアル
  故ニ之ニ課稅スルノガ當然ダト云フ議論ガ
  起リマシテ、玆ニ木材ノ關稅改正ニ有力ナ
  論據ヲ與ヘタノデアリマス、ソレカラ進ン
  デ大正十五年ノ關稅改正ノ時ニ、後日改正
  スベキモノトシテ、希望條件トシテ各派一
  致シテ之ヲ舉ゲタノデアリマス、ソレガ今
  囘此處ニ現レテ來ル基礎デアルト思ヒマス
  ガ、併シ此沿革カラ考へマスト、今回ノ改
  正ニ於キマシテ、只今大藏大臣ノ御話ニナッ
  タ樹ノ種類ニ依ル區別、此事ハ當時ノ沿革
  カラ認メラレルノデアリマス、而シテ次デ
  其容積、大キサト云フコトニ付テ御話ガア
  リマシタガ、太キサニ付キマシテハ、其當
  時ノ沿革カラ申シマスレバ、洵ニ考ガ薄イ
  ノデアリマス、唯樹種ヲ主トシテ考ヘタ
  而シテ其目的トスル所ハ杉、檜デアッテ、松
  材以下ノ物、斯ウ云云物ニハ課稅ヲシナイ、
  成タケシナイ、何トナレバ是等ハ只今質問
  應答ヲ重ネラレマシタ如ク、非社會政策的
  ナモノデアル、國民ノ多數ノ負擔ヲ曾加ス
  ルコトニナル、松材ノ如キハ今日殆ド繩ヤ
  叺ノ如ク使用サレテ居ル、斯樣ナ物ニ稅金
  ガ課カルト云フコトハ、甚ダ宜シクナイト
  云フコトガ、今日迄傳ヘラレテ來タノデア
  リマス、而モ之ニ加フルニ政府ニ於キマシ
  テハ此處ニ大口政府委員モオキデデアリ
  マスガ、實業同志會ト昨年ノ協約ヲ致ス時ニ
  於キマシテ、木材關稅、或ハ鐵ノ關稅ノ引
  上ハシナイト云フ御約東ヲ致シタヤウニ聽
  イテ居ルノデアリマス、武藤君ハ今御見エ
  ニナリマセヌガ、ドウモ政實政策協定ノ中
  ニハ、木材關稅及鐵ノ關稅ト云フモノガ
  入ッテ居ッタノデアリマス、故ニ私ハ其協定
  ヲ見マシタ時ニ、政府ハ護憲三派以來ノ傳
  統的ノ御考ヲ捨テタノダラウカ、或ハ大正
  十五年ノ當時、各派一致デ決メタ所ノ此木
  材關稅ノ引上、之ヲ實業同志會ノ僅カ三名
  カ四名ノ人ノ協定ノ爲ニ、此大キナ政策ヲ
  抛ッタノカト思ウタ所ガ、矢張今回抛タズニ
  玆ニ提案ニナッタノデアル、然ラバ此實業同
  志會トノ約束ハ是ハ放棄シタノデアルカド
  ウカ、私ハ別ニ之ヲ大シタ問題トシテ責メ
  ヤウトハ思ヒマセヌガ、併ナガラ政府ガ一
  度實業同志會ノ諸君トノ約束ハ、ドウデモ
  宜シウゴザイマセウガ之ヲ實業同志會ト
  ノ約束ナリトシテ世間ニ公表シタ、卽チ國
  民ニ斯ウ云フ政策デ進ムゾト言ヒナガラ、
  又漫然トシテ御取消ニナッタ、此態度ニ付テ
  ハ私ハドウシテモ腑ニ落チナイ、故ニ第一
  ニ是等ノ從來ノ沿革カラ來夕木材關稅ノ引
  上、及途中デ變更スルヤウナ顏ヲ爲サッタ
  ノヲ復タ政實協定ヲ破棄シテ茲ニ本案ヲ
  提出ニナリマシタル其理由、之ヲ第一ニ伺
  ヒタイト思フノデアリマス、次ニハ先程來
  ノ質問應答ニ於キマシテモ御詰ガアリマシ
  タガ、本案ニ依リマス關稅ノ牧入、是ガ六
  百五十万圓デアルト云フコトヲ承ッテ居リ
  そう、此金額ニ付キマシテ、私ハ敢テ議論
  ヲ致スノデハアリマセヌガ、兎角地相委讓
  ノ財源ニスルノダトカ、何トカ言ハレ勝チ
  デアル、是ハドウモ甚ダ政府ガ不用意デアツ
  タト私ハ思フ、前ノ如キ沿革ニ依テ來タ案
  デアリマスカラシテ、斯樣ナ疑ヲ受ケルヤ
  ウナ不用意ヲ致サナケレバ、此案ハ洵ニ傷
  ガ付カズニ進行シ得ラレル案デアラウト思
  フ、然ルニ如何ニモ是ガ地租委讓ト大ナル
  關係ガアル如ク見エテ居ル、之ニ對シテハ
  政府ハ如何ニ辯解ヲスルカ、吾々ハ甚ダ此
  點ヲ殘念ニ思ウテ居ルノデアリマス、而モ
  只今農林大臣ノ御話ヲ承ハリマスレバー
  今御見エニナラヌヤウデアリマスガ、木材
  關稅ノ引上ハ社會政策的ダ、斯ウ云フヤウ
  ナコトヲ言ウテ居リマスル、又一方ニハ非
  社會政策的ダト言ウテ爭ッテ居リマスガ、サ
  ウ云フ爭ハ先ヅ止メマシテモ、本材關稅ノ
  引上ガ社會政策ダト云フコトヲ仰シヤル必
  要ハナイ(拍手)是ハ無論國民ノ負擔ヲ-
  消費者ノ負擔ヲ增加スルト云フコトハ分リ
  切ッテ居リマス、是ガドウモ社會政策ニナラ
  ヌト云フコトハ分ッテ居ル、併ナガラサレバ
  ト言ウテ大シテ責メル程ノコトデモナイ、
  國際貸借上必要デアル、或ハ產業振興上必
  要デアル、斯ウシテ見タナラバ、僅カ五、
  六百万圓ノ負擔位ガソレ程大ナル問題デハ
  ナイ、何方ニシテモ爭ヲスル程ノコトデハ
  アリマセヌガ、併シソレニ付テノ農林大臣
  ノ御話ハ、大ニ山林ノ開發ヲスルノダ、-
  本調子デハ中ニ林業政策ノ確立ハ出來ナ
  イ、故ニ一方ニ於テ關稅ノ引上ヲスレバ、
  一方ニ於テハ補助金モヤラウ、若シ民政黨
  ノ諸君ガ宜イト云フナラバ、幾ラデモ錢ヲ
  出スト云フヤウナ〓御話デアリマス、故ニ
  此點ニ付テ伺ヒタイ、幸ニ六百五十万圓ト
  云フ金ガアル、其六百五十万圓ト云フ金ハ、
  地租委讓ノ財源デハナイカト云ウテ世間カ
  ラ疑ハレテ居ル、此際ニ於テ農林大臣ガ、
  君等ハ助成金ヲヤルナラバ、幾ラデモ出シ
  テ宜イト云フナラバ出スゾト、斯ウ云フコ
  トデアルナラバ、ドウカ此六百五十万圓ヲ
  林業開發ノ爲ニ支出シテ戴キタイト思フ、
  今年ノ豫算ヲ見マスト云フト、新シク林業
  ニ對スル施設トシテノ費用ハ幾ラモナイノ
  デアリマス、折角六百五十万圓ト云フ金ガ
  木材關稅ノ引上ニ依テアルノニモ拘ラズ、
  其中カラ使ッテ居ル金ハ、一一百万圓足ラズデ
  アル、後ノ金ハ三土大藏大臣ノ御說明ニ依
  レバ歳人一本ニシテ歲出一本ニシテ見ル
  カラ、何處ニ行ッタカ分ラヌト云フ御話、ソ
  レハ其通リダラウト思フガ、今ノヤウナ農
  林大臣ノ御考ノ通リナラバ、此六百五十万
  圓ノ金ヲ皆山林ノ開發ニ使ッテ貰ヒタイ、若
  シ此金ヲ以テ充テヽ戴クナラバ、卽チ山間
  部ニ於ケル交通ノ便ヲ開キ、或ハ舟楫ノ便
  ヲ開クト、斯ウ云フコトヲスルナラバ、今
  ノ前田君其他多クノ人ノ心配スル非社會政
  策的ノ國民ノ消費ノ負擔曾加ト云フコトモ
  ナク、却テ木材ハ安クナル、安クナッテ斯ウ
  云フモノハ除ヶ得ルノデアル、關稅ト云フ
  消費稅ガ一圓掛レバ一圓ダケ消費者ノ負
  擔ニナルト云フコトハナイコトハ、是ハ明
  ナコトデアル、政府デモ能ク說明ナサル
  ガ、其通リ一圓掛ケテ必ズ一圓ニハナラナ
  ィ、併シ一圓掛ケタ爲ニ二圓ニナル場合モ
  アル、十錢ニナル場合モアルガ、二圓ニナ
  ル場合モアル、併シ今言フヤウニ六百五十
  万圓ヲ年々支出シテ、日本ノ山林ノ開發ニ充
  テルト云フコトニナレバ是ハ期年ナラズ
  シテ木材ハ必ズ安クナル、安クナッテ而シチ
  山林業者ハ收益ヲ得ラレルノデアリマス、
  今ノヤウニ唯稅金ヲ取ル許リニシテ置イタ
  ノデハ、是ハ消費者ノ負擔ト云フモノハ何
  時マデモ繼續スル、木材ニ安ク稅ヲ掛ケ
  テ、ソレデ以テ施設ヲスルナラバ、材木ガ
  安クナリ、初メテ消費者ノ負擔ガ輕クナ
  ル、ドウカ農林大臣ハ〓御留守ノヤウデア
  リマスカラ、東農林次官デモ洵ニ結構デア
  リマスカラ、之ニ對シマスル一ツ政府ノ御
  意見ヲ承リタイト思フ、次ニ本案ハ木材關
  稅其他五六ニ限ッテ居リマスルガ、關稅定率
  法ノ改正法律案ソレ自體ト云フモノハ、此
  千五六百種ニ關スル總テノモノニ對シテ、
  吾ミニハ審議ノ權利ガアルノデアリマス、
  故ニ木材關稅ヲ離レマシテ一、二點伺ッテ見
  タイ、大正十五年ノ希望條件トシテ殘ッテ
  居リマスル中ニ、綿絲布、綿織絲ノ中デ、
  一ノ項ニ屬スルモノ、卽チ細イ絲、太イ絲
  ト世間デ謂ハレテ居ル今日ノ紡績絲デアリ
  マス、總稱シマシテー之ニ對シマスル所
  謂綿絲布關稅ノ撤廢ト云フコトガ議論ニ
  ナッテ居ル、而シテ之ヲ主張致シマシタノ
  ハ、昨年亡クナラレマシタ尊敬スベキ政友
  會ノ武藤金吉君ノ切ナル主張デアル、サウ
  シテ政友會ノ諸君ハ多ク之ニ贊成ヲ表サレ
  テ居リマス、民政黨、憲政會ニ於キマシテ
  モ、之ニ對スル贊成者ハ相當ニアッタノデ
  アリマス、唯當時ノ政友本黨ノ諸君ハ之ニ
  反對デアッタ、故ニ今日ノ此議場ヲ以テ申ス
  ナラバ、衆議院ノ空氣ヲ以テ申スナラバ、
  此綿絲關稅ノ撤廢ト云フコトハ此沿革
  ニ徵シテ當然此政府ニ於テ御實行爲サラン
  ケレバナラヌ點デアルト私ハ思。シテ居ル、然
  ルニ之ニ對シテ少シモ觸レル所ノナイト云
  フコトハ、ドウ云フ御考デアルカ、大藏政
  務次官ハ只今關稅ノ根本的改正マデモ考ヘ
  テ居ルト仰ッシヤル、私共ハ關稅ノ根本的改
  正ナドガ、今日サウ急イデ行フ必要ハアリ
  マセヌ、前內閣ハ極メテ用意愼重ニ此點ヲ
  考ヘテ、關稅調節委員會ヲ設ケテ、年々斯
  ウシテ幾分カノ議案ヲ提出スルコトガ出來
  ルヤウニシテアルト云フコトハ、餘程能ク
  御考ニナッタ案デアル、之ヲ傳統的ニ繼續シ
  テ行ケバ結構デアッテ、別ニ新シク案ヲ御考
  ニナルコトハナイト私ハ思シテ居ルガ、併ナ
  ガラ大藏次官ハ根本的ノ改正ヲシヤウト云
  フ御考デアルト、斯ウ御見識ヲ振リ廻シテ
  居ラレルノデアルカラ、ドウカ其御見識ニ
  依リマシテ、此綿絲關稅ニ對シテ如何ナル
  御見識ヲ發表ナサルカヲ、一ツ御伺シタイ
  ト思フノデアリマス、更ニ私ハ第二ノ朝鮮
  ノ木材關稅ニ付キマシテ、只今東君ノ御答
  辯ガアッタヤウデアリマスガ、本案ハ先年衆
  議院ニ於テモ中ミ審議ヲ愼重ニ爲サレタ案
  デアリマシテ、今囘出サレマシタ案ハ、政
  府ガ愼重審議シタト云フ御話デアルガ、政
  府ガ愼重審議シタノデハナクテ、衆議院ニ
  於テ愼重審議シタ其案ガ出テ居ルノデ、何
  モアナタ方ガ少シモ〓究シタ所ハナイ、ソ
  レヲ其儘出シテ居ル、其儘出シテ居ルガ、
  少シ間ノ拔ケテ居ル點ガアルノデアリマ
  ス、私ハ甚ダ不滿ニ感ズル所デアリマスル
  ガ、是ハ多少外交問題ニ關スルト思ヒマス
  カラ、私ハ委員會デミモ伺ッタ方ガ宜カラ
  ウト思ヒマスガ、政府ガ愼重審議シタト仰
  シヤルガ、一言ドンナ風ニ愼重審議シタカ
  ヲ伺ヒタイト思フ、大體此程度デ私ノ質問
  ハ終シテ置キマス(拍手)
  〔政府委員東武君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=38

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• 039・東武

  ○政府委員(東武君)　永田サンノ御質問ニ
  答辯ヲ致シマス、關稅曾徵ニ依リマシテ、
  六百五十万圓バカリノ曾收ガアリマスガ、
  其曾收ハ山林施設ニ助成ヲシタラ如何デア
  ルカト云フ、斯ウ云フ御議論デアリマスガ、
  吾々ハ此曾牧ガ一般會計ニ這入リマシテ、
  ドノヤウナ使途ニ使ハレテ居ルカト云フコ
  トハ私ハ分リマセヌケレドモ、山林上ノ立
  場ト致シマシテハ、本年ノ如キハ新規要求
  額ト從來ノ施設ヨリハ新シキ費用ヲ增加致
  シマシタモノヲ見マスルト云フト、四年度
  ニ於テ七百二十二万圓新規施設ヲ增加ヲ致
  シテ居リマス、約關稅曾徵ノ六百五十万圓
  以上ノモノハ、此山林ノ政策ニ使ッテ居ル
  ノデアリマス、此點カラ此事ダケハ一言御
  答シテ置キマス、是ガ地租委譲ノ財源デア
  ルトカ、色ミノコトヲ議論致シマスガ、山
  林ノ政策カラ割出シテ、關稅增收ノ費用ハ、
  ヨリ以上山林ノ方面ニ助成、若クハ其他ノ指
  導奬勵施設ニ使ッテ居ルト云フコトヲ御承
  知ヲ願ヒマス、又此金ハ五年度ニ行ケバ、此
  計畫ガ山林政策ノ確立ニ要スル所ノ此費用
  ハ、四年度ガ七百二十二万圓デアリマスガ、
  五年度ニナレバ、九百二十万圓ニナリ、九
  百二十万圓ト云フモノハ、新シク本年吾々
  ガ要求シタ新規施設ニ這入ッテ居ルノデア
  リマス、此點ヲ豫メ御諒承ヲ願ヒマス、ソ
  レカラシテ五十一議會ノ關稅ノ委員會、及
  本會ニ於ケル所ノ意見ニ於キマシテ、木材
  關稅ハ五十一議會ニハ決シテ曾徵ヲシナイ
  ト云フ意見デハナカッタノデアリマス、此曾
  徵スル程度ニ於テ各派ニ相當ノ議論ガアッ
  タ、餘リ關稅ノ檣壁ヲ高クスルト云フコト
  ガ、或ハ消費者ニ轉嫁スルト云フヤウナ虞
  モアルシ、低クケレバ-其低イ稅率ナラ
  バ輸入ニ對シテ餘リ影響ハナカラウト云
  フコトデ、關稅委員會ハ此調査ノ議ヲ決ス
  ルコトガ出來ナクシテ、暫ク是ハ取リ除ケ
  テ置イテ、關稅委員會ニ付シテ、十分ニ愼
  重審議ヲスルト云フコトニナッテ、是ハ留保
  シテ、サウシテ其附帶決議案ヲ附ケテ出シ
  タ、故ニ諸君モ關稅政策ノ委員ノ當時ニ於
  キマシテハ、此木材關稅ヲ或ル程度ニ引上
  ゲルト云フコトニ付テハ、毛頭反對ハナカッ
  タ、寧口是ハ曾徵スルト云フ意見ガ多カツ
  タノデアリマスガ、調査會ニ於テ爾來二箇
  年間愼重審議ノ結果、餘リ大シタ稅率デモ
  ナイ、適當ナル程度ニ於テ關稅率曾徵ノ案
  ヲ玆ニ提出スルト云フコトガ、極メテ適切
  ナコトデアルト吾々ハ考ヘテ居ルノデアリ
  やっ、是ダケヲ御答ヲ致シテ置キマス拍
  手)
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=39

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• 040・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　私ノ方へノ御質
  問ハ極メテ簡單ノヤウデアリマスカラ、
  大要ヲ御答申上ゲタイト思ヒマス、此木材
  關稅ノコトニ關シマシテ、政友會ト實業同
  志會ト協定ヲ致シタコトニ付テノ御問ガ、
  主デアッタヤウニ考ヘマスガ、是ハ只今東農
  林政務次官カラ御答申上ゲマシタ通リ、五
  十一議會ニ於テ此衆議院デ木材關稅、鐵ノ
  關稅ノコトニ付キマシテ、相當ニ議論ノア
  リマシタ結果、更ニ之ヲ關稅委員會ノ手ニ
  掛ケテ調ベルヤウニト云フコトニナッタノ
  デアリマス、斯ウ云フ問題ニナッテ居ッタモ
  ノデアリマスカラ實業同志會ト政友會ト
  協定致シマス時ニ、無論此話ガ出タノデア
  リマス、其時ニモ協定ハ文書デ御覽ノ通リ、
  是ハ極メテ兩方トモ大切ナモノデアルカ
  ラ、輕々シクヤルコトハ困ル、十分ニ考慮
  シテ愼重ナ行動ヲ執ルヤウニト、斯ウ云フ
  意味ノコトデアリマシテ、其通リニ實ハ協
  定書ニモ書イテアルノデアリマス、此協定
  ハ最モ私共ハ之ヲ重ンジマシテ、現政府ニ
  於キマシテモ、所謂是ハ愼重ニ〓究ヲシ考
  慮モシタノデアリマス、而シテ鐵ノ方ニ於
  キマシテハ、今日最早關稅ヲ掛ケル-此
  上高メルコトハ必要ナカラウト云フコト
  デ、今提案ヲ致サナイノデアリマス、ソレ
  カラ木材ニ對シテハ、矢張今東君カラ申述
  ベマシタ通リ、關稅ヲ上ゲルニシマシテモ、
  其程度ト云フモノニ依テ非常ニ影響ガ違フ
  ノデアリマスカラ、此程度範圍ニ付テハ相
  當ニ考慮〓究ヲ致シタ積リデアリマス、其結
  論ト致シマシテ、今囘提案致シマシタ如キ
  モノナラバ、諸方ニ對シテ先以テ宜シイモ
  ノデアル、斯ウ考ヘマシタ結果デアリマス
  カラ、決シテ此協定ヲ無視致シタ遣リ方デ
  ハナイト、私共ハ固ク信ジテ居ルノデアリ
  さく、ソレカラ次ニ綿絲關稅撤廢ノコトデ
  アリマスガ、是ハ其後ノ狀況ガ餘程變シテ
  居ルヤウデモアリマスシ、マズ餘程〓究ヲ
  要スルモノト見テ居リマス、併ナガラ關東
  州ノ特惠關稅ニ付キマシテハ、略〓調査ガ
  濟ンデ居リマスカラ、近キ中ニ決定サレル
  コトガアルデアラウト私ハ考ヘテ居リマ
  ス、是ダケヲ御答致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=40

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• 041・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　太田信治郞君
  〔太田信治郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=41

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• 042・太田信治郎

  ○太田信治郞君　私ハ朝野兩政黨ニ關係ヲ
  持ッテ居リマセヌ、無所屬ノ立場ニ居リマ
  ス者デアリマス、故ニ極メテ公平ニ本問題
  ヲ審議ヲ致シテ、是ハ是、非ハ非トシテ
  賛否ヲ決スル積リデアリマス、併ナガラ只
  今御說明ヲ段々伺ッテ居ル中ニ、私ノ頗ル疑
  感ヲ感ジマシタコトヲ、大藏當局ニ御尋ヲ
  致シ、更ニ工業關係ノコトヲ商工大臣若ク
  ハ商工省ノ方ニ御尋ヲ致シ、森林保護ニ關
  スルコトヲ農林省若クハ農林大臣ノ方ニ御
  尋致シタイト思フノデアリマス、第一ニ御
  伺致シタイコトハ、一體此關稅案ハ收稅ヲ
  目的トシテ-收入ヲハ百數十万圓得ルコ
  トヲ目的トシテ、御提案ニナリマシタモノ
  デアリマスルカ、將又森林ノ保護、所謂林
  業ノ振興ヲ目的トシテ、此關稅改正案ヲ御
  企ニナッタノデアリマセウカ、只今當局ノ御
  說明ニ依リマスト、一億万圓ノ木材ノ輸入
  超過ヲ防止スル爲ニ、森林ノ振興ト共
  ニ-外材ノ値上ニ依テ森林ガ振興シ、輸
  入材ガ防止セラレテ、所謂爲替ノ調節ニモ
  資スルノデアルト云フ結果ニナリ、御說明
  ヲ伺フト森林保護ガ目的ニナル、サウスル
  ト隨テ一億万圓ノ輸入ガ段々減ズルヤウニ
  ナリマス、輸入ガ減ズルヤウニナリマスル
  ト、前ニ御話ノ之ニ依テ六百數十万圓ノ財
  源ヲ得ルト云フコトヽハ此ニ少シク矛盾
  ガ生ジヤシナイカ、六百五十万圓ノ財源ト
  シテ提案ヲシ、一方ニハ其財源ヲ減ラスヤ
  ウナ政策ヲ執ッテ居ルト云フト、六百五十
  万圓ト云フモノハ少シク矛盾ガ感ゼラレ
  ルヤウニ私ハ思フノデアリマス、ソレカラ
  此財源トシテ收稅ヲシタル所ノモノハ、何
  ニ之ヲ使用スルカト云フコトハ、恐ラク國
  家ノ收人ガ一ノ目的ニ向ッテ收入ヲスル次
  第デハアリマスマイ、何レ收入ハ收入、支
  出ハ支出ト、別ニ豫算ヲ立テルモノデアリ
  マスケレドモ、兎ニモ角ニモ兩稅委讓ノ
  結果、財源ニ補塡ヲシナケレバナラナイ必要
  ガ生ジ、其補塡ノ結果、何物カニ財源ヲ求
  メルト云フモノヽ一ツデアルト云フコト
  ハ是ハ免レナイモノデアラウト思フノデ
  アリマス(拍手)サウスルト兩稅委讓ノ財源
  ニ充テタモノデアリ-充テタモノデナイ
  トシテモ、此六百五十万圓ノ牧入ヲ目的トシ
  テアルモノデアルトスルト、先ニ申シタ所
  ト少シク收入ガ減ズレバ、矛盾ヲ來スト私
  ハ考ヘルノデアリマス、(拍手)ソレカラモウ
  一步進ンデ、兩稅委讓案ハ今貴族院ニ於テ
  審議中デアリマスルガ、其結果ハ吾々マダ
  豫測スベカラザル次第デアリマス、若シ兩
  稅委讓案ガ否決トナリマシタトキニ、又本
  案ハ不必要ナルヤウナ感ジガ、此ニ私ハ致
  スノデアリマス、此點ニ對シテハドウ云フ
  御考デアリマスカ、ソレカラモウ一ツハ、
  何ガ故ニ此木材關稅ヲ其費目ニ御選ビニナ
  リマシタカ、關稅改正ハ前年濱口大藏大臣ノ
  時代ニ、大改正ヲセラレタノデアリマス
  ガ、當時ハ生活必需品ニ關稅ヲ低クシテ、
  或ハ無稅ニシテ、或ハ原料ヲ無稅トシテ、
  奢侈品若クハ贅澤品ノ如キ、其他嗜好品ノ
  如キ、或ハ國内ニ於テ商工業ヲ保護シナケ
  レバナラヌモノニハ課稅ヲ重クシテ、原料
  ハ成ベク稅ヲ低クスルト云フ方針ヲ執ッタ
  ノデアリマス、處ガ最モ生活必需品トシテ、
  今日木材ハ必要ナモノヽ一ツデアリマス、
  サウスルト若シ財源ヲ得ルト云フノガ目的
  デアルトスレバ、他ニ求ムベキ、收稅スベ
  キモノガナカッタカ、假ニ關稅ノミト致シマ
  シテモ、私ヲ以テ言ハシムレバ、贅澤品其他
  我國工業ノ助長ヲサスベキ、所謂保護貿易ノ
  趣旨ニ於テ、助長奬勵スベキ趣旨ニ於テ關
  稅ヲ課スベキモノハ、外ニモアッタノデハ
  ナイカ、然ルニ木材ニ稅種ノ費目ヲ御選ビニ
  ナリマシタ理由ハ、如何ナル理由デアリマ
  セウカ、所謂產業保護ノ目的ニ他ニ必要ナ
  モノガナイカラ、木材ガ最モ必要ナリト認
  メテ、之ニ課稅ヲシタト云フ所ノ趣旨デア
  ルカ、之ヲ御伺致シタイ、ソレカラ今度ハ
  工業ノ事ニ付キ御尋ヲ致シタイノデスガ、
  商工省ノ方ハ御出ガナイヤウデアリマスカ
  ラ、後ニ致シマシテ、一ツ農林ノ方ヲ先
  ニ御伺致シマセウ、農林省ノ只今御話ヲ伺
  ヒマスト、此關稅引上ノ結果、森林業ヲ保
  護シ、森林ノ開發、林業ノ振興ヲ圖リ、延
  テハ水源ノ涵養ニマデモ影響ヲ及ボスト云
  フコトニ伺ヒマシタ、是ハ非常ニ結構ナコ
  トデアル、一體我國ノ森林業ガ甚ダ不振ノ
  狀態デアルト云フコトハ、國家トシテ私ハ
  甚ダ憂慮ニ堪ヘナイ、ドウシテモ此林業ヲ
  保護シナケレバナラヌト云フコトハ、申ス迄
  モナイノデアリマス、其點ニ付テハ私共非
  常ニ御同感ヲ感ズル次第デアリマス、但シ
  先刻ノ御話ニ、此木材ノ關稅ノ引上ノ結果、
  木材ノ市價ニ影響ハ甚ダ少イ、是ガ爲ニ家
  屋ノ建築ニ影響ニ及ボスヤウナコトモナ
  〃、何等其影響ヲ受ケル所寡少ナリト云フ
  ヤウナ御話ガアリマシタ、若シ假ニサウデ
  アッテ見ルト、又森林業者ニ利益スル所モ
  少イモノニナリハシナイカト思フ、玆ニ私
  ハ一ツノ矛盾ガ起リハシナイカ、木材ノ需
  要ハ、所謂生活必需品ニ影響ガ甚ダ少イモ
  ノデアッテ、ソレニモ拘ラズ內地ノ森林業
  者ガ、之ニ依テ利益スル所ガ甚ダ多イト云
  フコトハ、私ハ少シク了解ニ苦ムノデアリ
  マッ、ソレカラモウ一ツ木材ハ或ル樹齡ガ
  來レバ腐ッテシマフ、ソコデ針葉樹ヲ保護ス
  ル、斯ウ云フ御話ガアリマシタ、是モ私ハ
  甚ダ了解ニ苦ム、今日亞米利加カラ來ル「シ
  ーザー」ノ如キモノハ、樹齡ガ來テ既ニ腐
  朽ニ近付イテ居ルヤウナモノモ澤山アル、
  日本ノ針葉樹ハ樹齢ガ來テ伐ラナケレバナ
  ラヌト云フヤウナ程、曲豆富ナル大森林ヲ持。シ
  テ居ナイ、針葉樹ニ於テハ、東海道トカ濱
  街道ノ松並木ニハ、漸ク樹齢ガ來テ伐ルヤ
  ウナモノモアルカモ知レナイガ、是ハ私ハ
  强ヒテ伺フ必要ハアリマセヌガ、私ハ一寸
  矛盾シテ居ルヤウニ思フ、但シ林業ノ開發
  ヲスルト云フコトノ爲ニ、之ヲ御設ケニナ
  ルトスルナラバ、保護貿易ニ對立ヲスルモ
  ノガナケレバナラヌ、例ヘバ一時ノ間ハ保
  護貿易ノ結果、需要者ガ多少不利益ヲ感
  ズルケレドモ、將來ニ於テハ利益ヲ得テ、
  其利益ノ結果トシテ國富モ增進シ、需
  要モ大ニ緩和シ、需要供給ノ圓滑ヲ圖
  ル上ニ於テ一時ノ間ノ不便ハ忍ブモ、將
  來ノ利益ノ爲ニ、保護貿易ヲ行ハナケレバ
  ナラヌト云フコトニナリマスレバ、私ハ大
  ニ之ヲ賛成ヲ致サウト思フノデアリマス、
  其意味カラ申シマスト、對立スルモノガナ
  ケレバナラヌ、只今亞米利加カラ來ル所ノ
  亞米利加松ノ如キモノハ三十尺、四十尺
  ト云フ長尺ノモノデアッテ、或ハ加奈陀方面
  カラ來ル「シーザー」ノ如キ、末口四尺ト
  カ、三尺トカ云フ本材ハ內地ニ求メルト
  雖モ、ソレニ對立スベキモノガ少イト思フ、
  我國ノ木材トシテ對立スベキモノハドウデ
  アルカト云フト、外材デ製品トナッテ來ル四
  吋、四吋半、若クハ一吋板ト云フヤウナ小
  サイモノナラバ、我國ニ於テモ對立スベキ
  木材ガ澤山アル、是ハ決シテ供給ガ不足ト云
  フ譯デハナイ、現在ノ針葉樹ハ、日本ノ在積
  ハ約七億六千石ト稱シテ居ル、デアリマス
  カラ、七億六千石モアレバ、其方ノ需要供
  給ニハ我國ノ材ヲ以テシテモ間ニ合フ、但
  シ外材ガ非常ニ低廉チ爲ニ、森林業ガ振ハ
  ナイ、故ニ若シ內地ノ森林業者ヲ保護シ、
  農村ノ振興ヲ圖リ、林業ノ開發ヲシヤウト
  云フニハ、我國ガソレニ對立シテ持ッテ居
  ルモノヲ保護スル必要ガアリハシナイカト
  思フノデアリマス、此見地カラ申シマス
  ↑、今我國ニ在ル所ノ木材ニ對立シテ邪魔
  ニナルモノハ何デアルカト云フト、亞米利
  加カラ來ル木材ノ中ノ、所謂製品ニナッテ居
  ルモノデアル此製品ニナッテ來ルモノガ、
  日本ノ木材界ニ影響ヲ直ニ及ボス、亞米利
  加松ノ如キ長尺材ニ於テ、是ハ建築材トシ
  テ又今日必要ナモノデアル、是等ノモノ
  ニ課稅ヲシタカラト云ッテ、我國ノ森林保護
  ニハ私ハナラナイト思フノデアル、此點ニ
  付テドウ云フ御〓ガアルな、之ヲ一ツ何ヒ
  タイ、ソレカラモウ一ツハ、森林ヲ保護ス
  ルト云フ上カラ行キマシテ、單ニ關稅ノミ
  ヲ以テ之ヲ保護スルコトハ出來ナイ、其他
  ニ種々ナル方法ガアルト云フ御詁デアリマ
  シタガ、私共ハ最モ今森林業者ヲ保護シナ
  ケレバナラヌ、森林ノ奬勵ト云フモノヽ中
  デ、最モ力ヲ注ガナケレバナラヌモノハ
  寧ロ私ハ〓葉樹ニ在ルト思フ、闔葉樹ハ現
  ニ我國ノ內地ダケデモ、十四億六千万石ノ
  多數ヲ有ッテ居ル、其闔葉樹ノ需要ト云フモ
  ノガ、將來段々發達シテ行クノデアル、將
  來大ニ發達シテ行クノデアルガ、ソレニ向ッ
  テ最モ障碍ヲ爲シテ居ルモノハ、南洋材デ
  アル「チーク」「マホガニー」等デアル、要ス
  ルニ是等ノモノハドウカト云フト、堅木ト
  云フ種類ニ屬シテ居ル雜木デアル、此材積
  ガ我國ニハ最モ澤山アルノデ、之ヲ保護奬
  勵シテ、此利用ヲ廣メルコトガ、最モ此林
  業開發ノ上ニ必要デアル、東次官ハ北海道
  ノ方デスカラ、私ガ申上ゲヌデモ御承知デ
  ゴザイマセウガ、北海道ニ於ケル闊葉樹ハ、
  楢デアルトカ、〓デアルトカ、「タモ」デア
  ル、其北海道ノ闔葉樹ガ今日市價ノ價格ガ
  低落シテ、ソレガ爲ニ北海道ニ於ケル森林
  業者ガ最モ苦ンデ居ル、ソレハ何デアルカ
  ト云フト、南洋材ト云フ强敵ガ現ハレタ爲
  ニ、脅威ヲ受ケテ居ルノデアル然ルニ農
  林大臣ハ何故北海道及內地ニ於ケル闇葉樹
  ニ、至大ノ關係ヲ有ッテ居ル所ノ南洋材、其
  他闔葉樹ノ强敵ニ課稅ヲ爲サラナイデ、無
  稅ニ御置キニナッタカト云フコトヲ疑フ、私
  ヲシテ言ハシメレバ、東次官ハ北海道へ御
  歸リニナッテ、大キニ御困リニナリハシナイ
  カト思フ(拍手)最早北海道ノ闊葉樹ハ將
  來內地ニ向。ツテ移出ヲスルコトガ、、頗ル困難
  ニナッテ居ルト云フコトハ、南洋材ノ結果デ
  アリマス、併シナガラ今南洋材ハ頗ル數量
  ガ少ナイト云フ政府ハ御考デアルカモ知レ
  ナイケレドモ、將來多數輸入シテ來ルコト
  ハ明デアル、是ハ丁度日本ノ内地ニ於ケル
  所ノ杉ガ、米杉ニ負ケテ居ルノト同ジ態度
  ヲ執ッテ居ル、同ジ經路ヲ歩ンデ居ル、本年
  ハ二百万石以上輸入ヲスルデアラウト思
  フ、明年ニナレバ更二一層曾大スルダラウ
  ト思フ、此〓葉樹ニ對シテドウ云フ御方
  針ヲ持チ、ドウ云フ御考デアリマスルガ
  (「簡單」ト呼ヒ其他發言スル者アリ)政友會
  ノ諸公カラ簡單ト云フ御話ガアリマシタ
  ガ、農村ノ振興ニハ最モ力ヲ注イデ居ル
  方デアラウト思フ然ルニ農村ニ於テ最モ
  今必要ヲ感ジテ居ルモノハ此雜木林ノ〓
  葉樹林ノ用途ガナクテ困ッテ居ルコトデア
  ル故ニ之ヲ開發スルト一云フコトガ、農村
  振興ノ上ニ私ハ必要ナリト感ジテ居ル、
  (拍手)之ヲ其儘〓度ノ改正案ノ中ニ御入レ
  ニナラヌノハ更ニ時期ヲ見テ追加ヲスル
  御考デアルカ、或ハドウー云フ御考デアルカ、
  此闊葉樹林ニ付テ政府ノ御所見ヲ私ハ
  ツ伺ッテ見タイ、ソレカラモウ一ツハ林業
  政策ニ付テ、ドナタカ補助金云々ノ御話ガ
  出マシタガ、補助金モ色と必要デアリマセ
  ウ、其他ノ政策モ澤山必要デアリマセウ
  カ、私ハ最モ林業ニ於テ必要ナルモノハ
  生產費ノ低下デアル、其生產費ノ中デ最
  モ重キヲ爲シテ居ルモノハ鐵道デアル、
  鐵道ノ運賃ノ引下ト云フコトガ、林產物ノ
  中ノ木材ニ對シテ最モ必要デアル、此鐵道
  ノ運賃ヲ引下ゲナケレバ多少ノ關稅ノ引
  上ヲシテモ、ソレニ依テ以テ農村ガ-日
  本ノ内地ノ森林業ガ作興スルトハ認メラレ
  ナイ、此保護關稅モ勿論一ツノ方法デハア
  リマセウガ、ソレト對立シテ行ク所ノ手段
  ガナケレバナラヌ、之ヲ有ッテ居ナイト云フ
  コトハ、今農林次官モ仰セラレタガ、全ク
  其通リデ、私モ實ニ御同感デアル、流石賢
  明ナルモノト思フ、其一ツデ行カナイトス
  レバ、其對立スベキ手段方法ニ付テハドウ
  ナサル、今日林業ノ金融ト云フモノガ非
  常ニ逼迫シテ居ル、之ニ對シテ林業金融ヲ
  政府ガ目的トシテ居ルノハ植林若クハ造
  林ト云フコトニハ政府ハカヲ注イデ居ラレ
  マセウガ先以テ十四億六千万石ノ闊葉樹
  林ガ改造サレナケレバ森林事業ノ發達ハ
  シナイ、其處ニ引合ハナイ木ガ植ハッテ居
  ル、之ヲ燒拂フ譯ニモドウスル譯ニモ行ガ
  ナイ、是ガ金ニナッテ出テ來テ、其跡ニ植林
  ヲ行ッテ、ソレガ水源ノ涵養ニナル闊葉樹
  ヲ捨テヽ置イテ、町ニ近イ麓ノ方ニ針葉樹
  林バカリ植エテモ何ニモナラナイ、其闊葉
  樹林ヲ改造スル上ニ於テハ、保護ノコトハ
  言ハナイデモヤッテ居リマセウガ、是ハ林業
  ノ實際ニ當ルベキ者ニ對シテハ、特ニ低利
  資金ノ如キモノヲ融通スルコトモ一ツノ案
  ダラウト思フ、或ハ今申ス通リ鐵道ガ特ニ
  林業ノ爲ニ割引ヲスルト云フコトニナッテ、
  初メテ此關稅問題ト相俟テ森林事業ガ振
  興スルノデアル、然ルニ此鐵道ハドウデア
  〓ルカト云フト、益〓鐵道ガ收入ノ不足ヲ感ジ
  ヤシナイカト云フ觀ガアル、ソレハドウカ
  ト云フト、聞ク所ニ依レバ更ニ本年モ現政
  府ハ新線ノ追加ヲシテ、鐵道ノ延長ヲ圖"
  テ居ル延長ヲ圖ルコトハ結構デアリマス
  ケレドモ、是ガ爲ニ鐵道ノ收入ヲ減ズレバ、
  運賃ノ引下ト云フコトハ追〓不可能ニナリ
  ハシナイカト思フ、此場合ニ政府ハ林業ヲ
  保護スルト云フナラバ一層ノコトニ鐵道
  運賃ヲ森林事業ニ限ッテ、特ニ引下ヲナサ
  ル御考ガアルカドウカ、ソレカラモウ一ツ
  ハ工業關係ヲ幸ヒ御出デニナッタカラ商工
  省ノ方ニ御伺シタイ、一體我國ハ原料ニ乏
  シイノデアリマスカラ、ドウシテモ原料ハ
  海外カラ輸入シナケレバナラヌ、木材ノ如
  キモノモ原料トシテハ內地ニ於テ相當供
  給ノ途ガ開ケルト致シマシテモ更ニ必必
  ヲ感ジテ居ル譯ダラウト思フ、處ガ今日ハ
  此原料デナタシテ加工口叩ガ盛ニ輸入セラレ
  テ居ル最モ甚シイモノニナルト、楊子カ
  ラ燐寸ノ軸マデ海外カラ輸入シテ居ル、嘘
  ト思フナラアノ食堂ニ御出デニナッテ御覽
  ナサイ、彼處ニハ海外カラ來タ軸木ガアリ
  マス、サウ云フ風ナ工合デアリマスカラ、
  原料ヲ入レテ工業ヲ發達セシムルト云フコ
  トガ必要デアル、工業ヲ保護シナケレバナラ
  ヌ、處ガ今日ノ此關稅改正案ヲ見マスルト、
  原料品ニ課稅ヲシテ居ルト共ニ、更ニ製品
  ニモ課稅ヲ致シテ居リマスガ、其製品ニ對
  スル課稅ノ率ガ少クテ、原料品ニ對シテハ
  比較的厚ク課稅シタト云フコトハ將來工
  業上ニ非常ナル影響ヲ及ボスモノデアル
  假ニ現在ノ有樣カラ申シマシテモ、內地デ
  外國ノ原料材ヲ以テ製造シテ居ル事業ニ從
  事シテ居ル人ハドノ位アルカト云フト、大
  阪、名古屋若クハ神戶、横濱、東京等ニ於テ
  ハ、殆ド一万人以上ノ職エガ之ニ從事シテ
  居ル、然ルニ原料材ニ對スル課稅ガ餘計ニ
  ナリ、製品ノ方ハ課稅ガ低イト云フコトニ
  ナルト、益〓製品ヲ以テ輸入ヲスルト云フヤ
  ウナ傾向ヲ生ズルサウスレバ折角ノ此政
  府ノ森林保護ノ目的ノ上ニモ、障害ヲ起シ、
  更ニ又失業者ヲ生ズルト云フコトニナル
  ガ、是甚ダ憂フベキ現象デハナイカ、兎ニ
  角先ニ社會政策ト云フ御話ガ出マシタガ、凡
  ソ政治ノ上ニ於テ、社會政策ヲ加味セザル
  モノハアリマセヌ、然ルニ多クノ失業勞働
  者ヲ生ズルト云フコトハ憂フベキコトデア
  ル、日本ハ原料ニ乏シイ國デアルカラ、原
  料ヲ安ク供給シテ、サウシテ之ニ加工シテヾ
  其加工スルト云フコトガ要スルニ勞働者ニ
  生活ノ資料ヲ與ヘル基ニナルノデアリマ
  ス、ソレニ原料ヲ與ヘナケレバ、ソレニ從
  事シテ居ル所ノ無產階級ハ生活ノ資料ヲ
  失ッテ、失業致ス結果ニナリハシナイカト
  思フ、此點ニ付テ政府當局ノ御考ハドウデ
  アルカ、但シ未ダ此案ハ今日此處ニ提出セ
  テレタバカリデ、私モマダ内容ヲ能ク見マ
  セヌガ、多少之ニ付テ其點ヲ御考慮ニナッ
  テ、所謂改善ヲナサル御考ガアリマスカド
  ウガ、此點ヲ御伺致シタイト思ヒマス
  〔政府委員東武君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=42

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• 043・東武

  ○政府委員(末武君)　時間モ段々切迫致シ
  マスノデ、極ク簡單ニ御答ヲ致シマス、太
  田サンノ閣葉樹ノ保護ヲスルコトガ必要デ
  ハナイカト云フ御話デアリマスガ、是ハ勿
  論サウデアル、內地ノ森林ハ國有林ハ大抵
  欝蒼タル美林デアリマスガ、民有林ノ三百
  万町歩ト云フモノハ殆ド關葉樹帶ノ無立
  木地デアル、サウ云フヤウナ所デアリマス
  カラシテ、是等ニ向ッテハ先程申上ゲダ助
  成方法ニ依テ植栽ヲシ、各種ノ天然更新ヲ
  シ、其他種々ノ方法ヲ執ッテ居ルノデアリ
  せっ、矢張此針葉樹ト同時ニ闔葉樹ノ保護
  ヲ致スト云フコトハ當然デアリマス、南洋
  材ニ付テハ是ハ最近輸入ガ現レテ參ッダノ
  デアリマスルガ、是モ多少內地ノ森林ニ影
  響ヲスルノデアリマスガ、併シ此稅率ニ付
  テハ〓漸ク調查ヲ致シテ居ル、ドノヤウナ
  狀況デアルカト云フコトニ付キ、又ドノ位
  ノ關稅ヲ課シテ適當デアルカト云フヤウナ
  コトハ、今調査致シテ居ルノデアリマス、
  此次ニ或ハ提案ヲスルコトニナルカモ知レ
  マゼヌ、ソレカラ原料品ヲ成ベク安クシテ
  製品ノ課稅ヲ高クスル、サウ致サナケレバ
  内地ノ製材業者ト云フモノガ、非常ナ窮地
  ニ陷ルト云フコトデアリマスルガ、是モ立
  案ノ當時ニハ非常ニ考慮ヲ拂シテ居ル、今ノ
  改正稅率ト現行稅率ニ依リマスルモノトヲ
  比較〓シマスルト、其差額ガ、現行稅率デ
  板類ハ每立方ガ三圓十錢デ、一石當リガ八
  十六錢一厘デアルガ、丸太材ハ無稅デアル、
  其差額ガ三圓十錢、一石當リ八十六錢一厘、
  之ヲ此改正稅ト現行稅トヲ比ベマスルト
  改正稅率ハ每立方尺六圓二一十五錢デ、石
  當リガ一圓七十三錢、丸太ノ方ガ每立方三
  圓三十錢、一石當リガ九十一錢七厘、此兩
  者ノ差額ヲ見マスルト云プト每立方尺ニ
  付二圓九十五錢デ、一石當リ八十二錢ノ差
  ガアルソコデ現行稅ト改正稅率ヲ比較ス
  ルト云フト、其開キハ每立方尺ガ十五錢、
  石當リデ一石四錢、製板ニシテ來タモノト
  丸太ニ對スル開キノ差ハ日本ノ石ニ直ス
  ト、一石ニ付キ四錢弱デ、何等憂フル程ノ
  コトハ無イ、是ハ十分吾々ガ立案當時ニ考
  慮ヲ致シタノデアル、ソレカラシテ社會政
  策ト稱シテ、勞働者ガ一万人以上モ居リマ
  シテ是等ガ職ヲ失フヤウナコトガアッテ
  ハナラヌト云フ御說ガアリマシタガ、是等
  ハ十分攻究考慮ノ中ニ入レマシテ、內地ノ
  製板業者モ山林業者モ、是ナラバト云フ適
  當ノ稅率ヲ考ヘテ賦課致スコトニ致シタノ
  デアリマス、又モウ一ツノ御尋ハ、大キナ
  モノニ此稅ヲ課スルノハイカヌデハナイカ
  ト云フヤウナ御尋モアリマシタ、所謂原料
  材デアリマスガ、非常ナ長尺ノモノニ向ク
  テハ、無稅ニナッテ居リマス
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=43

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• 044・大口喜六

  ○政府委員(犬口喜六君)　大藏省ノ管轄ニ
  屬シマスル部分ニ付キマシテ御答辯申上ゲ
  ダイト思ヒマス、此關稅ノ改正ハ收入ヲ目
  的ト致シタモノデハナイ、卽チ先ヅ收入ヲ
  考ヘマシテ、然ル後ニ此關稅ノ改正ヲ計畫
  致シタモノデナイト云フコトヲ申上ゲテ置
  キタイト思ヒマス、隨テ御說ノ如ク每年每
  年幾ラカヅヽ關稅ガ減ッテ參ルト云フコト
  ハ是ハ認メネバナラヌト思ヒマス、ソレ
  故ニ此計算ノ中ニハ、每年々々木材ノ輸入
  ガ減ルト云プコトヲ見積リマシテ、積算致
  シテアルト云フコトヲ申上ゲテ置キタイト
  思ヒマス、ソレカラ何故ニ此木材ヲ選ンダ
  カト云フコトデアリマスガ、是ハ先刻來申上
  ゲテアリマス通リ、第五十一議會ニ於キマシ
  テ、衆議院ニ於テ希望ガアリマシタノデ、其希
  望ニ依リマシテ、段々調査ヲ進メタノデア
  リマス、當時ノ希望ハ太田君モ御承知ノ通
  リ、此木材ノ關稅ハ上ゲナクテハナラナイ
  ト云フ議論ガ大分アリマシテ、一面ニ反對
  論モアッタヤウデアリマスガヾ之ヲ決スルコ
  トヲ關稅委員會ニ委ネラレタヤウナ形ニ
  ナッテ居リマスノデ、何トカ之ヲ決定セネバ
  ナラヌト云フノデ、次第ニ〓究ヲ致シマシ
  テ、一面ニ於キマシテ、先刻來大藏、農林
  兩大臣カラ申シマシタ通リナ理由ニ依テ此
  改正ヲ計畫致シタモノデアリマスガ、併シ
  一面ニ於キマシテハ、國民ノ生活上ニ對シ
  テモ、相當ニ考慮ヲ致サネバナラヌト云フ
  ノデ、範圍竝ニ此稅率ト云フモノニ重キヲ置
  キマシテ、調査〓究ノ結果確定ヲ致シマシ
  テ、是ガ最モ當時ニ於テ適當ノモノナリト
  信ジタ次第デアリマスカラ、右樣御承知ヲ
  願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=44

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• 045・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　以上ヲ以テ質疑應
  答ハ終リマシタ、日程第三、右各案ノ審議
  ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
  第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=45

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• 046・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　本案ヲ一括シテ議長指名九
  名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=46

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• 047・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議アリマセヌ
  か
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=47

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• 048・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
  四、絲價安定融資補償法案ノ第一讀會ノ續
  ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマスー
  委員長生田和平君
  第四絲價安定融資補償法案(政府提
  出第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一絲價安定融資補償法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十五日
  委員長生田和平
  衆議院議長元田肇殿
  〔生田和平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=48

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• 049・生田和平

  ○生田和平君　只今議題ニ供セラレマシタ
  絲價安定融資補償法案ノ委員會ノ經過竝結
  果ヲ御報告致シマス、委員會ハ去ル十四日ヨ
  リ二十五日マデ前後六囘開イタノデアリマ
  スガ、本案ハ今期議會ニ於ケル重要法案ノ
  一ツデアリマス、生絲ハ我國貿易ノ首位ヲ
  占メ、其盛衰ハ直ニ國民經濟ニ影響スル所ノ
  重大問題デアリマスカテ、政府當局ハ固ヨ
  リ、委員諸君ニ於カレテモ、非常ナル熱心
  ト努力ヲ拂ハレテ、質問應答ヲ重ネラレタ
  ノデアリマス、委員會ニ於ケル政府ノ說明
  ハ、大體ニ本會議ニ於ケル說明ヲ詳述セラ
  レダノデアリマスガ、其大要ヲ申上ゲマス
  レバ、本邦蠶絲業ガ對内的ニモ對外的ニモ
  頗ル重要ナル地位ヲ有スルニ拘リマセズ、
  其内容ニ至リテハ幾多ノ缺陷ガアルノデア
  リマス、斯業ノ基礎ガ未ダ鞏固ヲ缺イテ居
  ルノデアリマスカラ、殊ニ人造絹絲ノ發達
  ニ鑑ミマシテ、絲價ノ著シキ變動ニ遭遇シマ
  スレバ、勢ヒ危殆ニ瀕スルノ虞ガアルノデ
  アリマス、此故ニ斯業ノ根本的改善ヲ達成
  セシムル爲ニ暫定的特別ノ施設トシテ、
  本案ノ必要ナルコトヲ力說セラレタノデア
  リマス、此法案ノ骨子ハ非常應急ノ施設ト
  シテ、金融機關ノ製絲業者ノ爲ニスル資金
  ノ融通ニ對シ、三千万圓ヲ限度トシテ損失
  補償ヲ爲スノ途ヲ講ズルト云フ點デアリマ
  ス、委員會ニ於ケル質問應答ノ要點ヲ申上
  グレバ卽チ此補償法ノ精神ガ製絲家ヲ救
  フト云フコトガ中心ニナッテ、養蠶家ニ對シ
  テハ其利益ヲ受ケルコトガ出來ナイノデハ
  ナイカトノ問ニ對シ、政府ハ此法案ガ直接ニ
  養蠶家ヲ救フコトハ、組合製絲位ノ範圍ニ止
  マリマスケレドモ、間接ニハ幾多ノ利益ヲ
  與フルコトニナルノデアルトノ答辯デアリ
  マシタ、次ニ生絲ノ異常ナル低落ニ際シマ
  シテ、當業者ガ投賣又ハ賣崩シ等ヲ爲ス場
  合ニ、之ヲ防止スル爲ニ强制的ニ此法律ヲ
  適用スルノデハナイカトノ問ニ對シ、尙ホ
  大正十五年及昭和二年ノ暴落ノ場合ノ如
  キ、當業者ノ協力ニ依賴シテ傳家ノ寶刀ヲ
  拔クノデハナイカトー云フ問ガアリマシタ、
  前者ニ對シマシテハ、政府ハ此法律ヲ强制
  シナイコト、後者ニ對シマシテハ當業者
  ノ協力ニ依ル場合ノ外ハ、生絲相場ガ不自
  然ナル狀況ヲ呈シ、當業者が非常ナル困難
  ニ陷リマシタ場合ニハ、此法律ヲ適用スル
  ノデアルト云フコトヲ述ベラレタノデアリ
  やっ、次ニハ金解禁ト本法トノ關係、金解
  禁ト蠶絲業トノ關係、此二ツノ問題ニ付キ
  マシテ、小山松壽君外數氏ヨリ熱心ナル質
  問ガアッタノデアリマスガ、政府ノ答辯ハ、
  一ニ對シテハ本案ハ金解禁ト最初カラ關聯
  シテ此法案ヲ作ッタ譯デハナイ、隨テ此法律
  ヲ適用スル場合ハ、金解禁ト其他ノ場合ト
  ヲ決シテ論ジナイノデアル、斯ウ云フコト
  デアッタノデス、二ニ對シマシテハ、政府ハ
  十分ニ〓究モ致シ、考慮モ拂ッテ居ルノデア
  リマスガ、金解禁ガ蠶絲業ニ影響ヲ與フル
  コトガ、最モ少イ時期ヲ選ビタイト思シテ居
  ルトノ答辯デアリマシタ、次ニ本案ヲ適
  用スルニ當リマシテ、實際問題トシテ、絲
  價ガ生產費ヲ割ヲタ場合ニハ、此法律ヲ適用
  スルノデアルカト云フ御問ガアリマシタニ
  對ン、政府ハ生產費ヲ割リサヘスレバ、直
  ニ本法ガ出動スルト云フ譯デハナク、蠶絲
  業ノ基礎ガ甚ダ危クナッタト見タ時ニ、絲價
  委員會ノ議ニ付シテ、生キタ判斷ニ依テ行
  フノデアル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、
  木材關稅ト本法トノ關係ニ於キマシテ、小
  山松壽君ヨリ商工大臣竝大藏、外務ノ政務
  次官ヲ特ニ出席ヲ求メ、木材關稅ト本法ト
  ノ關係ニ付テ、質問ヲセラレタノデアリマ
  ス、小山君ハ米國排日ノ巨頭「ジヨンソン」
  氏ノ昭和二年三月十日ノ「ステートメント」
  ヲ引用セラレマシテ、日本ガ木材關稅ヲ引
  上ゲテ挑戰的態度ニ出ヅルナラバ米國ハ
  日本ヨリ輸入スル生絲ニ對シ、報復的重稅ヲ
  課スノ虞ナキカトノ質問ガアリマシタ、政
  府ハ米國新大統領就任後關稅ノコトハ固ヨ
  リ問題ニナルデアラウト思フノデアリマス
  ルガ、現今ノ米國ノ輿論ニ見マシテモ、木材
  關稅ノ爲ニ生絲ガ報復的手段ニ用ヒラレル
  ヤウナコトハ、全然ナイト云フ考ヲ持ッテ居
  ルト、斯ウ云フ風ナ答辯デアッタノデアリマ
  ス、岡崎委員ヨリ多年抱懷セル經綸トモ云
  フベキ御演說ガアッタノデアリマス、卽チ絲
  價維持ノ必要、人造絹絲論、販賣擴張政策、
  乾繭倉庫增設論等、幾多ノ項目ニ亙ル國
  務大臣トノ間ニ意見ノ交換ガアッタノデア
  リマスルガ、此場面ノ狀況ヲ申上ゲマスレ
  バ、農林大臣ハ、岡崎君ノ御話ハ御同慶ニ
  存ズルトカ、岡崎君ヨリハ今日ノ答辯ハ要
  領ヲ得テ嬉シク思フトカ、根本的ニ政策ヲ
  樹直セバ此絲價安定モ必ズ安定スルトカ、
  兩者ノ間ニハ非常ニ和氣靄々タル狀況ガ見
  ヘタノデアリマス、以上ハ委員會ニ於ケル
  大要デアリマスガ、詳シイコトハ速記錄ヲ
  御覽ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、討論
  ニ至ル迄ハ民政黨ノ態度ハ原案ニ反對ヲス
  ルカシナイカト云フコトガ不明デアッタノ
  デアリマスルガ、最後ノ討論ノ際ハ、民政
  黨ハ遂ニ賛否ヲ保留セラレマシタ、政友會
  ノ委員、新黨ノ小野君、第一控室ノ小山君
  ノ賛成ニ依リマシテ、多數ヲ以テ政府提出
  原案通リニ決シマシタ次第デアリマス、此
  段簡單ニ御報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=49

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• 050・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告ガアリ
  マス、之ヲ許シマス-千葉三郞君
  〔千葉三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=50

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• 051・千葉三郎

  ○千葉三郞君　私ハ本法案ニ付キマシテ、
  極ク簡單ニ農林當局ニ質疑ヲ試ミタイノデ
  ゴザイマス、本法案ノ趣旨トスル所ハ製
  絲業者ニ融通スル所ノ銀行、生絲問屋竝ニ
  帝蠶會社ノ如キモノヲ救濟スルノガ本法案
  ノ骨子デアラウト思フノデアリマスルガ、
  其理由ト致シマシテ、製絲業者ハ輸出貿易
  上重大ナル關係ヲ有スルカラ、此製絲業者
  ヲ救濟スルト云フコトニ相成シテ居ルノデ
  アリマスルガ、若シ農林當局ノ御考へ遊バ
  スガ如ク、此製絲業者ガ貿易上重要物產デ
  アルガ爲ニ、斯ル莫大ナル三千万圓ノ金ヲ
  以テ救濟スルト云フノデアッタナラバ、將來
  重要物產デアル所ノ、例ヘバ綿絲デアルト
  カ、其他ノモノガ一旦悲境ニ陷ッタ場合ニ
  於テ、之ヲモ救濟スルヤウニ相成ルコトデ
  アラウト思フノデアリマス、若シ斯ウシタ
  モノヲ救濟スルヤウニナリマシタナラバ
  我國ノ財政ニ於キマシテハ、如何ニシテモ
  是等ヲ救濟スルノ財源ガナイ、而シテ私ハ
  國家財政ノ基礎ヲ危ウスルニ至ルカモ知レ
  ヌト思フノデアリマス、現ニ此委員會ニ於
  キマシテハ之ニ關聯致シマシテ養蠶業者
  ヲ救濟シナケレバナラヌト云フ御議論ガ
  アッタヤウニ只今承ッタノデアリマスルガ、
  製絲業者ヲ救濟スルノデアッタナラバ、當然
  養蠶業者モ救濟シナケレバナラナイト云フ
  コトハ當然デアリマシテ、愈、今後ハ斯ル業〓
  務ニ從事スル人ガ、農林當局ノ救濟ヲ求ム
  ルヤウニ相成ルダラウト思フノデアリマ
  ス、其爲ニ一製絲業者ヲ助クルガ爲ニ斯ル
  先例ヲ開キマシタル以上ハ、將來日本ノ財
  政ノ基礎ヲ危ウスルニ至ルモノダラウト私
  ハ思フノデアリマスルガ、右ニ對スル農林
  當局ノ御意見ヲ先ヅ承リタイノデアリマ
  ス、第二ニ御何シタイコトハ、農林當局ハ
  動モスレバ救濟々々ト云フコトヲロニスルノ
  デアリマスルガ、我國ノ產業ヲ完全ニ發達
  スルガ爲ニハ此救濟ト云フコトヲ止メナ
  ケレバ私ハ發達ハ出來ナイト思フノデアリ
  マス、卽チ我國ノ多クノ企業者ハ、唯政府
  ニ依賴心ノミヲ以テ居ルノデアリマス、自
  分ノ事業ガ經營宜シキヲ得ザル爲ニ、其事
  業ニ損失ヲ來シマスルト、恰モ外部ニ向ッテ
  ハ其損失ガ天變地變ナルガ如ク吹聽致シマ
  シテ、以テ政府ノ救濟ヲ求メルノデアリマ
  ス、其結果產業ガ悉ク委〓シテ振ハナイト
  云フヤウナ狀態ニ陷ルノデアリマスルガ、
  農林當局ハ我國ノ產業ヲ指導スル地位ニア
  ルノデアリマスルカラシテ、將來我國ノ產
  業ヲ發達スルガ爲ニ、救濟若クハ助長、補
  助金ト云フヤウナコトヲ更ニスル所ノ意思
  ガアルヤ否ヤ、卽チ救濟スルコトニ依テ我
  國ノ產業ヲ發達スルコトノ御見込デアルカ
  ドウカト云フコトヲ承リタイノデアリマ
  ス、第三ニ御伺シタイコトハ此法案ニ依
  テ救濟セントスル所ノ製絲業者ノ狀態デア
  リマスルガ、其製絲業者ハ現在ノ農民ヨリ
  相當ノ利益ヲ得マシテ繭ヲ買ヒ、卽チ大
  正七八年ノ如キ好景氣時代ニ於キマシテ
  ハ彼等ハ莫大ナル利益ヲ得マシタ、サウ
  シテ自己ノ懷中ヲ肥シテ居ルノデアリマ
  ス、卽チ儲ケタ時ニハ彼等ハ資本主義トナ
  リマシテ、自分ノ懷中ヲ肥シ、一旦自分ノ
  經營宜シキヲ得ザル爲ニ損害ヲ被ッタ場合
  ニハ彼等ハ忽チニ豹變致シマシテ社會主
  義トナリ、サウシテ其ノ損失ヲ國民ノ負擔
  ニ歸セシメントスルノデアリマス、故ニ私
  共ハ斯ウシタ製絲業者ヲ救濟スルコトハ、
  我國ノ政治道德、國民道德ヨリ見テ、其將
  來ヲ危ムモノデアリマスルガ、農林大臣ノ
  山本サンハ社會主義的ノ人デハナイト私ハ
  確信シテ居ルノデアリマスルガ、現在此法
  案ヲ提出シタ理由カラ考ヘテ見マシタナラ
  バ農林大臣ハ社會主義的理論ヲ御實行遊
  バス意思デハナイカト思フノデアリマス、
  卽チ此點ニ付キマシテ、私ハ第三ニ御伺シ
  タイノデアリマス、第四ニ御伺致シタイコ
  トハ、此法案ハ將來ノ損失ヲ補償スルガ爲
  ニ設ケテアルヤウニ私拜讀シタノデアリマ
  スルガ、現在製絲業者ハ旣ニ二千數百万圓
  ノ缺損ヲ生ジテ居ルサウデアリマス、若シ
  將來政府ガ製絲業者ニ對シマシテ補償ヲ與
  フル時ニ於キマシテ、現在ノ損失、過去ノ
  損失ヲ銀行ト通謀シ、帳簿ヲ誤魔化シテ、
  將來ノ損失ニ之ヲ記載スル如キコトナキヤ
  ドウカト云フコトヲ怪ンデ居ルノデアリマ
  ス、若シ製絲業者ニシテ帳簿ヲ誤魔化シ、
  過去ノ損失ヲ將來ノ損失ト記載スルヤウナ
  コトガアッタ場合ニ於キマシテハ、農林當局
  ハ如何ナル措置ヲ之ニ對シテ御執リ遊バス
  ノデアルカ、卽チ刑法ノミニ其制栽ヲ一任
  スルノデアルカ、商法、刑法以外ニ於テ何
  カ特別法ヲ出ス御意思ガアルカドウカト云
  フコトヲ承ッテ置キタイノデアリマス、更ニ
  第五點ト致シマシテ、最モ必要ナルコトハ
  此三千万圓ト云フヤウナ大キナ金ヲ以テ損
  失補償ヲスルノデアリマスルカラ、此實
  行方法ノ監督ニ付キマシテハ嚴重ナル監
  督ヲシナケレバナラナイト思フノデアリマ
  スルガ、此點ニ付キマシテ私ハ本法案ノ第
  一條ニ依リマスルト、損失ニ付キ補償スル
  ノ契約ヲ爲スコトガアルト云フ以上ハ、會
  計檢査院法ノ第十三條、卽チ政府ノ補助金
  若クハ特別補償ト云フ文句ガアリマスルカ
  ラ、其文字ニ該當スルモノデアルト思フノ
  デアリマス、故ニ此金ヲ貸出シタル先キニ
  對シマシテハ、正シク會計檢査院ガ檢査ヲ
  スベキモノデアラウト思フノデアリマス、
  デ此法文ノ解釋ニ付キマシテ、大藏當局若
  クハ法制局ノ方ガ御見エニナリマシタナラ
  バ、私ノ考ガ間違ッテ居ルカドウカト云フコ
  トニ付キマシテ、御答辯ヲ煩シタイノデア
  リマス、更ニ私ノ伺ヒタイコトハ、此法案
  ノ第一條竝ニ第四條ヲ見マスルト、蠶絲委
  員會及蠶絲安定融資補償審査會ト云フ重大
  ナル審査會ガ二ツ出來テ來ルノデアリマス
  ルガ、其組織權限ハ勅令ヲ以テ定メルコト
  ニナッテ居リマス、既ニ其組織權限ノ內容ガ
  具體的ニ出來テ居ル筈ダト思フノデアリマ
  スルカラ、若シ此組織ガ出來テ居リマスル
  ナラバ、其內容ヲ一應承リタイノデアリマ
  ス、又斯ル法案ニ付キマシテ種々問題ガ起
  リマスルコトハ、是等ノ委員ニ對スル所ノ
  委員ノ任命デアリマス、若シ此委員ノ任命
  ヲ誤リマシテ、將來政商ニ屬スルガ如キ所
  ノ者ヲ此中ニ入レマシタナラバ、殆ド第二
  ノ震災手形ヲ之ニ依テ醸スト云フコトヲ虞
  レルノデアリマス、故ニ此委員ハ如何ナル
  人ヲ任命スル御意思デアルカト云フコトヲ
  承リタイ、若シ許シマスルナラバ農林當局
  ニ於キマシテハ此委員ノ中ニ大藏省ノ預
  金部資金運用委員會ト同ジク、會計檢査院
  ノ部長ヲ加ヘル所ノ意思ガナキカドウカ、
  又貴衆兩院議員ヲ入レル御意思デアルカド
  ウカ、之ヲモ合セテ承リタイノデアリマ
  ス、右ハ簡單デゴザイマスルカラ、成ルベ
  クハッキリト御答辯ヲ御願シタイノデアリ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=51

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• 052・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　東農林政務次官
  〔政府委員東武君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=52

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• 053・東武

  ○政府委員(東武君)　御答辯致シマス、製
  絲業者ノ救濟デハナイカ、此補償法案ハ製
  絲業者ノ救濟デハナイカ、同時ニ養蠶業者
  ハ如何ニスルノデアルカト云フ御議論デア
  リマス、是ハ委員會ニ於テモ屢其質問ハアツ
  タノデ、詳細ニ答辯ヲ致シテ居ルノデアリ
  マスルガ、若シ速記錄ヲ御覽下サラバ明瞭
  致スノデアリマス、此補償法案ノ立法ノ趣
  意ハ、我ガ〓絲業ハ申スマデモナク輸出ノ
  大宗デアリマス、此製絲業、輸出業ト云フ
  モノニ對シテ、非常ナ變化ヲ來シ、或ハ暴
  落ヲスルト云フヤウナ事ガアリマシタ時ニ
  ハ我ガ國家ノ經濟ヲ根本的ニ攪亂ヲスル
  虞ガアルノデアリマス、從來ノ例ヲ見マシ
  テモ、大正三年大隈内閣當時、或ハ又大正
  九年原內閣ノ當時、或ハ昭和二年度ト云フ
  ヤウナ風ニ、大キナ波ガ三年カ五年ニハ必
  ズ來ルノデアリマス、小サナ波ハ始終アル
  ノデアリマスルガ、兎ニ角現下ノ狀況カラ
  見マスルト云フト、極メテ此不安ノ狀態ガ
  ナイトモ言ハレナイ、ソレデ最初此立案ヲ
  スル時分ニハ、蠶絲委員會ニ於テ各權威者
  ガ集ッテ種々ナ方法手段ヲ研究致シテ、昨年
  中此點ニ付キ〓究ヲ致シタノデアリマシタ
  ガ、矢張最後ニ此補償法案ガ最モ適切デア
  ル、有効適切デアル、若シ國家ガ是ニ援助
  シ、自發的ニ創立シテ、五千万圓位ノ會社
  ヲ拵ヘテ、サウシテ官民一致ノ一ツノ有力
  ナル會社デモ拵ヘタラドウデアルカト云フ
  ヤウナコトガ一番最初ノ議デアッタ、併ナガラ
  是等ノ各方面ヲ考慮致シマシテ、或ハ亞米
  利加ノ關係ヲ考慮シ、種々ナル方面ヨリ考
  慮致シマシテ、結局此補償法案ノ如ク三千
  万圓ヲ今後五箇年間、若シ非常ナ變動ガアッ
  タ場合ニハ、國家ガ其損失ノ補償ノ責ニ任
  ズルト云フコトニ決定シタノデアリマス、
  此蠶絲界ノ狀況ヲ見マスルト不時ニ低落ス
  ル、或ハ蠶絲業ノ基礎ヲ危クスルト云フヤ
  ウナ場合ヲ想像致シマスルト、從來トモ大
  抵ハ金融關係デ主デアル、此金融ニ依テ非
  常ナル投賣ガ行ハレルト云フヤウナ事ノ爲
  ニ、此絲價ノ暴落ヲ來スト云フコトガ屢〓ア
  ルノデアリマスカラ、此金融サヘ付ケレ
  バ、-力サヘ付ケレバ或程度ノ絲價ニ維
  持ガ出來ルト云フコトニ結論ガ一致致シマ
  シテ、此補償案ガ立案サレタノデアリマス
  ガ故ニ、是ハ決シテ此生絲業者ヲ救濟スル
  ノデハナイ、非常ノ場合ニ對シテ補償ヲス
  ルト云フノデアッテ、今困ッテ居ルカラシテ、
  現實ニ困ッタ者ヲ救濟シヤウト云フ如キ考
  ハ毛頭持ッテ居リマセヌ、全ク輸出上ノ狀態
  カラ致シマシテ、我國家ノ狀況カラ考ヘテ
  此案ハ立案致シタモノデアリマス、次ニ若
  モ斯樣ナ補償法案ヲ常時ニ於テ立案ヲ致シ
  テ置カナケレバナラヌト云フコトデアルナ
  ラバ此經濟界ノ變動等ニ依テ、斯樣ナモ
  ノガ他ノ種類ニモ起ル場合ガナイトモ限ラ
  ヌガ、ソレニ對シテハドウスル考デアルカ
  ト云フ事デアリマシタガ、是ハ物ニ依ルト
  考ヘマス、若シ生絲業ノ如キ國家ノ重要ナ
  ル產業ガ破壞ヲサレルト云フヤウナモノガ
  他ニモアッタ場合ニハ、或ハ此補償法案ノヤ
  ウナモノニ依テ國家ノ財政ヲ緩和シ、國民
  ノ生活ヲ安定セシムルト云フコトニ必要ナ
  ル場合ガアルカモ知レマセヌ、併シソレハ
  物ト事實ニ依ラナケレバ玆ニ判斷ハ出來ナ
  イト考ヘテ居リマス、第三點ノ此生絲業者
  ナドハ何時モ依賴バカリ致シテ居ルデハナ
  イカ、國家ニ依賴ヲシテ自分等ノ商賣ヲス
  ルト云フコトハ甚ダ誤シタル觀念デハナイ
  カ、是ハ一應御尤デアリマス、御尤デアリ
  マスガ、我製絲界ノ狀態ハ何分今日ハ多少
  整理ヲシ、統制ヲシ、改善ヲスル必要ガア
  ルトハ考ヘテ居リマスガ、今俄ニ此改善ヲ
  シヤウト言ッテモ、差當リサウ直ニ實效ヲ
  奏スルモノデハナイト考ヘマス、故ニ此點
  ハ吾々モ此法案ヲ立案スル時ニ、國家ニ依
  賴ヲスルト云フノミデハ、此補償法案ト云
  フモノハ貴衆兩院ヲ通過スルコト甚ダ困難
  デアル、故ニ蠶絲業者、當業者ガ自治的自
  發的ノ觀念ヲ玆ニ明白ナラシムルニ非ラズ
  ンバ、此補償法ヲ提案スルコトハ出來ヌト
  云フコトヲ有力ニ私共ハ論ジタ、ソコデ當
  業者ニ於テハ千斤ニ付テ二十五圓宛ノ積立
  ヲスルト云フコトニナッテ居ル、此補償法
  案ヲ貴衆兩院ニ提案スル場合ニハ自發的
  ニ自分等ガ努力シテ、自分等ノ力デ〓後或
  ル時期ニハ國家ノ御世話ニナラヌト云フダ
  ケノ決心ヲ持ツニ非ズンバ此提案ヲ爲ス
  コトハ出來ヌト云フコトデ、千斤ニ付テ二
  十五圓ノ積立ヲスルト云フコトハ、大分苦
  心ヲ致シタノデアリマスガ、全國的ニ是ハ
  矢張結合ガ出來タノデアリマス、之ガ十箇
  年經ツト約三千万圓ト云フモノニナルノデ
  アル、此法案ハ五箇年ヲ一期ト致シテ居リ
  マスガ、已ムヲ得ズンバ十箇年ヲ一期トス
  ルト云フヤウナ考モ致シテ居リマス、故ニ
  此十年間ニ三千万圓位ノ積立ヲ致シ、又帝
  蠶株式會社ノ積立モ大分アルノデアリマス、
  是等ヲ總テ合セテ三千万圓程度ノ積立ヲ致
  シテ自發的ニ國家ノ御世話ニ何時迄モナラ
  ヌト云フコトノ意思ヲ明ニ表明スルト云フ
  コトノ決意ヲ吾々ハ求メタ、サウシテ此法
  案ヲ立案シ提出致シタコトニナッテ居ル、全
  然此蠶絲業者ニ初メカラ自治的ナ觀念ヲ養
  成セズシテ、斯樣ナモノヲ作ッタト云フコ
  トデハナイノデアリマス、第四ニハ將來ノ
  損失補償ヲスル案デアルガ、生絲業者ハ相
  當ニ手傷ヲ多ク受ケテ居ル、故ニ救濟ナド
  モ澤山アルノデアルカラ、此金融ヲスレバ
  救濟ト混淆ヲ致シテ、古傷迄モ此補償法案
  ニ依テ救濟スルヤウニナル虞ハナイカト云
  フ御質問デアリマシタガ、是ハ全然アリマ
  セヌ、若シ金融ヲスル場合ニハ確實ニ生
  絲ヲ擔保ニシテ銀行ニ供スルモノニ非ズン
  バ金融ヲ致サナイノデアル、故ニ救濟ナド
  ニ對シテ全然金融ヲスル筋デハナイノデア
  リマスカラ、其點ハ御心配ハナイコトヽ考
  ヘテ居リマス、監督上ノ點ハドウデアルカ
  ト言ヘバ、是ハ極メテ國家ニ重大ナル責任
  ノ來ルコトデアリマスカラ、極メテ嚴肅ナ
  監督ヲシナケレバナラヌコトハ勿論デアリ
  マス、故ニ此點ニ付テハ、特ニ絲價委員會
  ナルモノヲ設ケ、絲價委員會ハ朝野練達ノ
  士ヲ集メテ組織スルコトニナッテ居ルノデ
  アリマス、御尋ノ會計檢査院部長ノ如キハ
  今考慮中デアリマス、極メテ公平無私ナ練
  達ノ士ヲ選ンデ此委員會ハ組織シタイト考
  ヘテ居リマス、同時ニ損失補償ヲスル場合
  ノ損失ノ決定ニ對シテハ、補償審査會ナル
  モノヲ設ケル積リデアリマス、是ハ丁度日
  本銀行ノ特別融通ノ審査會ト同樣ノ審査會
  ヲ設ケマシテ、之ニ依テ損失ヲ初メテ決定
  ヲスル、極メテ公平ナル方針ヲ執ル積リデ
  アッテ、監督其他ノ點ニ付テハ、極メデ合理
  的ニ且嚴肅ナ方針ヲ執ル考ヲ持シテ居リマ
  ス、是ダケ御答ヲ致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=53

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• 054・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　大口大藏政務次官
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=54

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• 055・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　先刻千葉君ノ大
  藏當局ニ向ッテノ御尋ハ、此法案ニ依テ銀行
  ガ政府ノ補償ヲ受ケタ場合ニ於ケル會計檢
  査院法第十三條トノ關係デアルト承知致シ
  マシタガ、是ハドウモ私共今調ベタ所デハ
  前例ガ之ニビッタリ合フモノガナイヤウデ
  アリマス、隨テ會計檢査院ガドウ解釋致シ
  マスカハ此處デ明言ハ出來マセヌガ、政府
  ノ解釋致シテ居リマス所デハ、其當該取引
  ニ屬シマス決算ニ付キマシテハ、無論檢査ヲ
  要スルモノデアルト解釋致シテ居リマス、
  是ダケ御答致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=55

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• 056・千葉三郎

  ○千葉三郞君　簡單デゴザイマスカラ自席
  カラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=56

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• 057・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=57

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• 058・千葉三郎

  ○千葉三郞君　只今農林當局ノ御答辯ヲ
  承ッタノデアリマスガ、私ハ之ニ關シマシ
  テ非常ニ不滿足ヲ感ジテ居ルノデアリマ
  ス、併シ是以上質問ヲ致シマシテモ多タハ
  意見ノ相違トナリマスノデ、質問ハ申上ゲ
  マセヌガ、唯私共ハ斯ル法案ニ對シマシテ
  主義トシテ反對ヲ致スト云フ立場ヲ明ニ致
  シテ置ク次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=58

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• 059・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑應答ハ終リマ
  シタ、討論ニ入リマス、村上國吉君
  〔村上國吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=59

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• 060・村上國吉

  ○村上國吉君　茲ニ只今上程セラレテ居リ
  マス所ノ絲價安定融資補償法案ハ我國ノ產
  業及經濟上ニ極メテ大切ナル位置ヲ占ムル
  所ノ蠶絲業ノ將來ニ相重要ナル關係ヲ有
  ツ案件デアルト認メマシタカラ、我黨ニ於
  キマシテハ最モ愼重ニ熟慮ヲ重ネ審議ヲ盡
  シマシタ結果、遺憾ナガラ本案ニ反對スル
  コトニ決定致シマシタノデ、私ハ我黨ヲ代
  表致シマシテ其理由ト我黨ノ意ノ在ル所ヲ
  申述ベントスルモノデアリマス、尤モ我黨
  ニ於キマシテハ、絲價ノ安定ト云フ本法制
  定ノ根本趣旨ノ存スル點ニ付キマシテハ
  之ヲ諒ト致シマスガ、併ナガラ我黨ハ我國
  ノ最重要產業デアリマス所ノ蠶絲業ノ將來
  ニ對シテ、此法案ノ如キ暫定的ナ一時的對
  策ヲ試ミルヨリハ、ヨリ完全ナル而シテ又
  ヨリ徹底シタル所ノ根本策ヲ樹立スルコト
  ガ、今日ノ急務デアルト存ズルノデアリマ
  ス(拍手)其根本方策ニ付キマシテハ、我黨
  ニ强キ主張ガアリマス、又其主張ハ必ズ之
  ヲ實現スベキ確信ヲ有シテ居ルモノデアリ
  マスルカラ、此確信ヲ骨子ト致シマシタル
  時ニ、本案ニ反對スルニ至ッタ次第デアル
  ノデアリマス、吾々ノ所見ニ依リマスレバ、
  我國ノ蠶絲業ハ其生產ニ要スル物資、勞力、
  資本ハ寸毫モ國外ヨリ仰グコトヲ要シナイ
  デ、而モ其生產スル所ノ生絲ハ能ク國際貸
  借ノ大支柱トナリ、又我ガ兌換制度ノ基礎
  ヲ爲ス所ノ極メテ重要ナル產業デアリマス
  ルガ故ニ、其健全ナル發達ヲ希フト云フ一
  念ニ至リマシテハ、我黨ハ天下何人ニモ讓
  ラザル所ノ熱情ヲ有スルモノデアルコトヲ
  斷言致シマス、卽チ此一念アルガ爲ニ曩ニ
  憲政會内閣ノ當時ニ於キマシテ、多年時ノ
  政府者ガ實行シ能ハナカッタ所ノ蠶絲局ノ
  設置ヲ斷行シ、又蠶絲業ノ根本的改善策樹
  立ノ爲ニ蠶絲委員會設置ノ計畫ヲ決定致シ
  マシテ、之ニ要スル豫算ヲ計上シテ貴衆兩
  院ノ協賛ヲ受ケタモノデアリマスルコト
  ハゝ諸君ノ熟知セラルヽ所デアルト思フノ
  デアリマス、然ルニ此計畫ヲ繼承シテ蠶絲
  委員會ヲ設置シタル所ノ現內閣ニ於キマシ
  テ、其設置以來殆ド二箇年ニ垂々トスル今
  日ニ及ビマシテ、其委員會デ決定シタル所
  ノ蠶絲政策ナルモノガ、僅ニ暫行的ノ、而
  モ容易ニ運用スベカラザル所ノ此法案アル
  ノミニ止マルガ如キコトハ吾々ガ折角期
  待ヲ懸ケタル所ノ蠶絲委員會ノ活用ニ關シ
  テ現内閣ノ洵ニ無經綸ナルコトヲ表白スル
  モノデアリマシテ、吾々ハ多大ナル遺憾ヲ
  感ゼザルヲ得ナイ者デアリマス、ソコデ此
  法案ニ對スル我黨ノ意目九ニ言及ヲ致シマス
  ルガ、此法案ハ所謂絲價安定ノ全部的、又
  絕對的方策デハナク五箇年間ニ於テ、或
  ハ起ルコトアルベキ絲價ノ著シキ低落ノ場
  合ニ處セントスル絲價ノ暴落防止ノ一助タ
  ラシメントスルニ過ギザルモノデアリマス
  コトハ、本會議及特別委員會ニ於ケル農林
  大臣竝政府委員ノ說明又ハ答辯スル所ニ依
  テ明デアルノデアリマス、而シテ本法ガ絲
  價低落ノ如何ナル場合ニ運用セラルベキカ
  ニ付キマシテ、政府ノ說明スル所ニ依リマ
  スレバ、一般物價ノ變動ニ依ル絲價ノ低落、
  爲替關係ニ依ル低落ノ場合、生絲消費ノ減
  退ニ依ル絲價低落ノ場合等ニアリマシテハ
  本法ハ適用スベキモノデハナイ、唯特殊ノ
  原因ニ基ク蠶絲金融ノ非常ナル逼迫、梗塞
  ニ依テ起ル所ノ絲價ノ異常ナル低落ヲ來シ
  タル場合ニ於テノミ出動シ得ルモノデア
  ルト明ニ制限ヲ致シテ居ルノデアリマス、
  本法ノ出動ニ依ル損失ガ延イテ國民ノ負擔
  ニ歸スルコトアルベキ重大性ヲ有ッテ居リ
  マスル所ノ、非常立法ナル點ニ鑑ミマスル
  時ニハ政府ノ此見解ハ勿論當然デアリマ
  シテ、必ズ斯クアラネバナラヌモノデアル
  ト思ヒマス、サウスルト事實問題ト致シマ
  シテ、此法律ガ其有效期間タル五年內ニ是
  ガ適用サルベキ機會ハ恐ラクアルマイカト
  考ヘルノデアリマス、卽チ此法案ハ其名ハ
  絲價安定ト稱シマスルケレドモ、其實ハ此
  法律ニ依テ絲價ノ安定ヲ見ルガ如キ場合
  ハ、殆ド稀有ニ屬スルモノト解セザルヲ得
  ナイノデアリマス、之ヲ過去ニ於ケル絲價
  救濟ノ事例ニ當嵌メマスルニ、當業者トシ
  テハ、或ハ大正十五年又ハ昭和二年ニ於ケル
  ガ如キ絲價低落ノ場合ニハ無論本法ノ援
  助ヲ受ケ得ルモノト期待致シテ居リマセウ
  ケレドモ、特別委員會ニ於テ此點ニ關スル
  政府ノ答辯ハ大正十五年又ハ昭和二年ニ於
  ケル如ク、政府ノ金融上ノ助力ト當業者ノ
  協力及自制ニ依テ、切拔ケ得ラレル程度ノ
  場合ニ於テハ本法ハ適用スベキモノニ非
  ズト明瞭ニ斷言シテ居ル事實ニ徵シマスル
  ナラバ本法ハ假ニ之ヲ制定シテ置キマシ
  テモ、過去ノ事例ト致シマシテハ大正九年
  ノ如キ眞ニ不可抗力ニ因ル非常特別ナル金
  融逼迫及絲價ノ暴落ノ場合デナケレバ運用
  シ難イ法律デアルノデアリマス、面シテ大
  正九年ノ如キ國ヲ擧ゲテ其救濟ニ當ラナケ
  レバナラヌ場合ニ遭遇致シマシテハ、時ノ
  如何ナル政府ト雖モ、此法律ノ如キハ縱
  令是ガナクテモ其時機ヲ誤ラザルヤウニ、
  速ニ或ハ議會ノ召集ヲスルナリ、又ハ政府
  ノ責任ヲ以テ其損失ヲ補償スル方法ヲ講ズ
  ルナリ致シマシテ、確ニ救濟ノ實ヲ擧ゲ得
  ルモノト確信ヲ致スノデアリマス、又斯ル
  場合ニ於キマシテハ、吾々モ直ニ之ヲ協賛
  スルニ吝ナラザル事、例ヘバ第五十三議會
  ニ於テ日銀ノ特別融資ノ問題ニ關シテ執リ
  タルト同樣ノ態度ニ出ヅルモノデアリマス
  事ヲ玆ニ斷言致シマス、サレバ今必ズ來ル
  カ否カヲ豫期スベカラザル所ノ事柄ノ爲
  ニ、時アッテ、或ハ濫用ノ虞ガアリ、又當業
  者ヲシテ絕エズ或ル期待ヲ懷カシメルガ如
  キ傾向ノ生ジ易キ本法ノ如キヲ、豫メ常備
  スルコトハ避クベキデアルト考ヘルノデア
  リマス、ノミナラズ本法ヲ常備スルノ結果
  ハ當業者ガ動モスレバ此法律ニ賴ルコト
  ニナリマシテ、爲ニ或ハ不謹愼ニシテ放漫
  ナル原料繭ノ競爭買ヲ誘致スルノ虞ナシト
  ハ限ラナイノデアリマス、現ニ大正十四年
  ノ事實ハ製絲業者ガ繭ノ競爭買ヲ致シマシ
  タ爲ニ、慘澹タル損害ヲ招キタル好適例デ
  アリマシテ、其翌大正十五年ニ時ノ政府ガ
  絲價救濟ノ爲ニ、特別ナル努力ヲ致サナケ
  レバナラヌヤウニ相成リマシタル原因ノ主
  ナルモノハ、必シモ爲替相場ノ急激ナル回
  復ノミデハナク、寧ロ前年ニ於ケル製絲業
  者ノ無謀不謹愼ナル原料繭ノ高値競争買
  ヒノ結果デアッタコトヲ想合セマスル
  ナラバ、此法案ノ如キヲ常備シテ、政府
  ガ何時ナリトモ出動シ得ル備ヘヲ爲シテ
  置キマスルコトハ、却テ製絲業ノ不健全ヲ
  招來スル虞レナキニアラズト觀測スルノデ
  アリマス、且ツ本法ヲ常備シ、其出動ニ依テ絲
  價ノ或ル程度ノ低落ヲ防止シ得タト致シマシ
  テモ、之ニ依テ其損害ヲ免レ又ハ輕減シ得ラ
  レタル者ハ、主トシテ製絲業者デアッテ、養蠶
  業者ノ方ハ、假令其利益ヲ受クルコトガアル
  ニ致シマシテモ、ソレハ全ク間接デアリマ
  シテ、製絲業者ト同樣ノ利益ニ均霑スル譯
  ニハ參リマセヌ(拍手)尤モ是ハ事實餘儀ナ
  イ事柄デアルカラ、已ムヲ得ナイノデアル
  ト云ヘバ、ソレ迄デアリマスケレドモ、併
  ナガラ本法ノ出動ヲ要スル程、絲價暴落ノ
  場合ニハ養蠶家ガ爲ニ被ル所ノ損害モ亦甚
  大デアリマスルカラ、政府トシテハ本法ノ
  制定ト同時ニ、斯ル場合ニ於ケル養蠶家ノ
  救濟策ニ付テモ相當考慮スベキ義務ガア
  ルト考ヘルノデアリマス(拍手)然ルニモ拘
  ラズ、其點ニ付テ政府ハ何等ノ考慮モナク、
  而モ絲價ノ低落防止ハ養蠶業者ニモ亦利益
  ヲ與ヘルモノデアルトシテ、恬然トシテ顧
  ミル所ナキハ、洵ニ解シ難キ態度デアルト
  謂ハナケレバナラヌノデアリマス(拍手)此
  故ニ我ガ黨ト致シマシテハ、製絲業者ヲシ
  テ時アッテハ甚ダ放漫不謹愼ナル態度ニ出
  デシムル所ノ原因トモナリ、又其濫用ニ陷
  リ易キ弊アル所ノ、而シテ其結果ガ延ヒテ
  國民全體ニ其損失ヲ負擔セシムルコトニナ
  ル本法ノ如キヲ常備スルコトヲ避ケテ、蠶
  絲業ノ全體ガ健全ナル發達ヲ致スベキ根本
  的改善策、卽チ絲價安定ノ爲ニハ金ノ輸出
  解禁ヲ速ニ斷行シテ、爲替相場ノ變動ヲ防
  ギ、又蠶絲金融ノ充實ヲ期シ、乾繭取引ノ
  普及ヲ圖リ養蠶製絲ノ堅實ナル經營ヲ進
  ノ、繭及生絲取引ノ改善、人造絹絲ノ發達
  ニ對スル對應策ノ講究等、斯業全體ノ安定
  ト其健全ナル發達ヲ促シマシテ、大ニ國際
  貸借ノ改善ニ資スルト共ニ、延ヒテ全國二
  百万戶ノ養蠶業者、及ビ三千ノ製絲業者、
  竝ニ之ニ關係アル一般當業者ノ福利增進ヲ
  圖ルコトガ、最モ急務デアルコトヲ思ヒマ
  シテ、霞ヲ隔テヽ花ヲ見ルガ如キ、效果ノ
  切實ナラザル此法案ニ反對スル者デアルノ
  デアリマス、終リニ臨ンデ特ニ一言致シテ
  置キタイコトガアリマス、ソレハ我ガ製絲
  業者ノ自覺ニ基ク一大奮發デアリマス、製
  絲業者ハ從來動トモ致シマスレバ政府ノ力
  ニ依賴シ、其保護ニ賴ラントスルノ嫌ヒガ
  アリトシテ、時ニハ多少ノ非難モアリマシ
  タ、併ナガラ蠶絲業ハ我國ノ經濟界ヲ支配
  スル最モ重大ナル產業デアリ、而シテ當業
  者ノ自力自營ノ方法ガ完全ニ立ッテ居ナイ
  限リハ、是モ或ル程度迄ハ已ムヲ得ナカッタ
  モノデアラウトシテ、吾々ハ之ヲ諒ト致シ
  さく、然ルニ製絲業者ハ今囘大ニ覺醒スル
  所ガアッテ、數年ノ後ニハ絲價ノ餘程ノ低落
  ノ場合ニモ、政府ノ力ヲ藉ラズ自力ニ依
  テ能ク自衞シ得ルマデニ、更ニ新ナル積立
  金ノ積立ヲ爲スコトニナッテ居ルノデアリ
  やっ、、此積立金ノ積立ハ、從來問屋業者及
  製絲業者ニ依テ行ハレテ居ッタモノデアリ
  マスルガ、其積立額ハ僅ニ百斤三十錢デア
  リマシタノヲ、大正十五年絲價救濟ノ問題
  ノ起リマシタル際ニ一圓ニ增額サレマシ
  テ、ソレガ大正十五年及昭和二年ノ絲價枚
  濟ノ場合ニ役立ッタモノデアリマス、今囘ハ
  更ニ製絲業者組合員ノミノ負擔ニ依リマシ
  テ、百斤二圓五十錢ノ積立ヲスルコトニナッ
  タノデアリマスルカラ、今ヨリ十年ノ後ニ
  ハ是等ノ積立金ハ實ニ三千万圓近クニ達
  スルト云フコトデアリマシテ、是サヘ出來
  レバ最早政府ノ力ニ依ルコトナク、如何ナ
  ル絲價變動ノ場合ニモ、能ク自力ヲ以テ之
  ヲ支ヘ得ルコトニナッテ居リマス、吾々ハ
  當業者ノ此一大奮發ヲ以テ、眞ニ驚嘆ニ値
  スル快擧デアルト信ジマシテ、其完全ナル
  協力ニ依テ、能ク所期ノ目的ヲ達成セラレ
  ンコトヲ切望スルノ餘リ、斯業者ノ此一大
  奮發ニ對シテ深厚ノ敬意ヲ表スル次第デア
  リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=60

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• 061・清瀬一郎

  ○副議長(清瀨一郞君)　山本愼平君
  〔山本愼平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=61

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• 062・山本愼平

  ○山本愼平君　私ハ本案ニ對スル贊成ノ意
  見ヲ申述ブル者デゴザイマス、先ヅ簡單ニ
  村上君ノ御說ニ對シテ、極メテ明瞭ニ御意
  見ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス、先ヅ本案
  ニ對スル反對ノ主タル理由トシテ、民政黨
  ヲ代表セラレタル御話ニ依リマスレバ、ヨ
  リ良キ根本策ヲ政府ハ何故ニ提出シナイ
  カ此根本策ガ出來ル迄ノ間ノ斯樣ナル暫
  定的ノ案ニ對シテバ、賛成ガ出來ナイト云
  フ御話デアリマス、根本的ノ策、之ヲ施ス
  所ノ心持ヲ、更ニ最後ニ村上君ノ御話ニ依
  リマスレバ、或ハ金ノ解禁ヲドウスルトカ
  或ハ人造絹絲ニ對シテハドウスル、或ハ爲
  替相場ニ對シテハ如何ニスルトカ云フヤウ
  +、左樣ナ根本策ノ出來ルノヲ待シテ、更ニ
  養蠶業若ハ製絲業ニ對スル、保護ヲ致スト
  シマスナラバ、百年河〓ヲ待ツヤウナ謗ガ
  アルノデアリマス(拍手)左樣ナ場合ニ立至
  ラズシテ、現在ニ於テハ我ガ製絲業ノ上ニ
  於キマシテハ、少クトモ種々ナ統制ガ缺ケ
  テ居ルノデアリマス、例ヘバ乾繭裝置ガ十
  分デナイトカ、或ハ組合製絲ガ未ダ發達シ
  ナイトカ、種々チ缺點ガアルデアリマシテ、
  製絲業ト云フ家內工業ノ稍〓發達シタモノ
  ハ眞ニ今ノ資本主義組織ニ副フテ居ラヌ
  ノデアリマス、是ガ爲ニ製絲工業ハ我ガ貿
  易ノ大宗コソ成シテ居リマスケレドモ、本
  當ノ整理統制ト云フモノハ製絲業ノ上ニハ
  極メテ幼稚デアリマス、左樣ナ幼稚ノ場合
  ニ於キマシテ、根本策ハ容易ナコトデハナ
  イ、其根本策ノ眞ニ成立ツノヲ待ッテ種々ノ
  策ヲ施スト云フコトハ殆ド容易ニ出來得
  ナイコトデアリマスルカラ、暫ク五箇年間ノ
  期限ヲ切ッテ暫定的ニ製絲業ヲ保護スルト
  云フ、三千万圓ノ補償ヲ提出シタ理由ガ玆
  ニ成立ツノデアリマス(拍手)又第二ハ適用
  ガ何時來ルカ分ラヌヂヤナイカ、殊ニ村上
  君ノ御話ニ依リマスレバ、爲替關係デアル
  トカ、或ハ他ノ物價ノ低落シタ場合デアル
  トカ云フヤウナ場合ニハ本案ノ出動ヲセ
  ナイト云フコトニ對シテ、更ニ村上君ガ委員
  會ニ於テ質問ノ矢ヲ向ケラレタ時ニ、政府
  ハソレニ對シテ大正十五年及昭和二年ノヤ
  ウナ場合ニ於テハ、本案ノ出動ハスルノデア
  ルカシナイノデアルカト云フ村上君ノ御質
  問ニ對シマシテ、種々ノ應各ガアリマシタ
  ガ、最後ノ詰リハ山本國務大臣ニ依テ明白
  ニナッテ居ルノデアリマス、此點ニ重大ナ誤
  解ガアルト私ハ存ズルノデアリマス、昭和
  二年及大正十五年ノヤウナ場合ニ、若シ此補
  償法案ガ出動シナイナラバ、殆ド斯樣ノ案
  ハ必要ガナイデハナイカト云フノガ村上君
  ノ第二ノ重要ナル駁論ノ一ツデアリマス、
  所ガ山本國務大臣ハ之ニ對シテ、斯樣ニ答
  辯ヲ致シテ居ルノデアリマス、「大正十五年
  度昭和二年度位ノ時ハ、金融業者ト當業者
  ノ間ノ金融ノ疏通ニ關シテ政府ガ盡力シ
  テ、而シテ其目的ヲ達スルコトガ出來タノ
  デアルカラ、將來卜雖モ此方法ニ依テ疏通
  ノ途ヲ圖ルコトカ出來ル場合ニハ此法案
  ハ適用シナイノデアル」斯樣ノ答辯デアリ
  マス、故ニ若シ大正十五年若クハ昭和二年
  ノ程度ノ絲價ノ變動デアリマシテモ、御互
  ノ間デ金融業者トノ協定ガ出來マシテ、其
  當時ニ行ハレタ同一ナ手段ガ出來ルナラバ
  本案ハ必要ハナイケレドモ、出動ハシナイ
  ケレドモ、若シ金融業者トノ間ノ話合ガ出
  來ナイ場合ニハ、矢張本案ガ必要デアルト
  云フコトヲ明言サレテ居ルノデアリマス
  殊ニ其內容ナドヲ當時カラ屢〓聞イテ見マ
  スルト、正金銀行ニセヨ、日本銀行ニセ
  ヨ、容易ニ是等ノ問題ガ頻々ト起ルヤウデ
  アッテハ政府ガ補償セラルヽニアラズン
  バ、特資ノ融通ハ出來ナイト云フヤウナ意
  嚮ヲ屢、漏サレテ居ルト云フコトハ事實デア
  リマス、故ニ〓後ニ於テ大正十五年若クハ
  昭和二年ノヤウナ事實ガ起リマシテモ、果
  シテ常時ノヤウナ當業者及政府ノ口添ダケ
  デ、此問題ガ簡單ニ片付クカドウカ分リマ
  セヌ、隨テ本案ノ如キ非常用ノモノヲ備ヘ
  テ、何時斯樣ナ問題ガ起ルカ分ラナイ時
  ニ、直ニ之ヲ適用スルヤウナ豫メノ準備ヲ
  整ヘテ置クト云フコトハ是レ當業者ニ對
  シ、又一般國民ノ養蠶業者ニ對シテ最モ深切
  ナ且ツ適當ナ方法デアルニ違ヒナイノデア
  リマス(拍手)殊ニ五箇年間アルカナイカ分
  ラヌト仰シヤルケレドモ、アルカナイカ分
  ラヌ所ニ本案ノ必要ガアル、アルカナイカ
  分ラナイト云フ不安ノ所ニ斯ノ如キ法案ノ
  必要ガ最モ認メラレルノデアリマス(拍手)
  其他種々ノコトヲ申サレマシタガ、殊ニ重
  要ナ點ハ、製絲業者ニ斯樣ナ常時設備ノ補
  償法ヲ與ヘテ置ケバ彼等ヲシテ繭ノ競爭
  買ヲセシメテ、自ラ自己ノ事業ニ對スル警戒
  ノ念ヲ弛メルモノデアルト云フ御話デアリ
  マシタ、是ハ今日ノ製絲業者ヲ侮辱シタモ
  ノデアリマス(拍手)今日ノ製絲業者ハ左樣
  ニ自ラ救フ途ヲ失スルモノデハナイ、更ニ
  一言申シマス、吾々ハ火災ニ對シテ常ニ喞
  筒ノ用意ヲ致シテ居リマス、若シ喞筒ヲ常
  時設備スルコトハ火事ヲ矢鱈ニ惹起スル原
  因トナルト云フコトヲ御話サレル方ガアリ
  マシタナラバ、吾々ハ何ト之ニ答ヘテ宜イ
  デアリマセウカ(拍手)是ハ簡單ニ是ダケデ
  應酬シ得タト私ハ思フノデアリマス、又其
  次ニ養蠶家ニ對シテハ何等ノ恩惠ガ及バナ
  イヂヤナイカト云フ御話デアリマスガ、此
  點ハ私モ委員會ニ於テ政府當局ニ聞イタノ
  デアリマス、聞キマシタガ、日本ハ現在ノ
  狀態ニ於キマシテハ、此法案ハ直接ニハ養
  蠶家ヲ救フコトハ出來マセヌガ、養蠶家ノ
  持シテ居リマスル繭ハ絲ノ値段ニ伴ウテ高
  低ヲ致スモノデアリマヌ、隨テ絲ノ値段ガ
  騰貴シ、若クハ絲ノ値段ガ安定ヲ致シマス
  レバ、繭ノ値段モ自然ニ安定致シ又騰貴致
  スノデアリマス、唯望ヲ多ク囑シマスルナ
  ラバ、養蠶家ト製絲業トヲ兼備ヘテ居リマ
  スル組合製絲ノヨリ多ク發達シ、更ニ又生
  繭デ販賣スルノデナクシテ、乾燥シタル繭
  ニ依テ販賣スルト云フ生產組織ガ完全ニ
  參ッテ居リマスルナラバ、一層此法案ノ效能
  ハ一般養蠶家ニ及ブノデアリマスガ、不幸
  ニシテ未ダソレマデニ日本ノ養蠶製絲ノ組
  織ガ參シテ居リマセヌ點ニ殘念ノ點ガアリ
  マスガ、ソレ程發達シナイダケ、ソレダケ
  矢張製絲家ニ對シテ相當補償ノ必要ガ生ジ
  テ參ルノデアリマス(拍手)單ニ養蠶家ニ及
  バナイカラ、養蠶家ニ及ブヤウナ設備ヲ同
  時ニ出セト仰ッシヤルヤウデアリマスガ、政
  府モ此點ニ付テハ極メテ明白ナル態度ヲ示
  シテ居リマス、卽チ直接ニハ此法案ノ補償
  ニ依テハ製絲家ダケデアルケレドモ、將來
  繭ノ値段ト絲ノ値段トハ必シモ正比例スル
  モノデナイ場合モアルノデアリマスカラ、
  左樣ナ場合二對スルベク養蠶家ニ對シテ相
  當ノ保護ヲ與ヘル方法ヲ考ヘテ見タイト云
  フコトハ明言シテ居ル、但シ是ハ理論ハ別
  トシテ、實際ノ上カラ申シマスルナラバ
  製絲家ヲ保護スルト一云フヨリハ、寧口養蠶
  家ニ對シテソレヲ補償スルト云フコトハ非
  常ナ實行上ノ困難ガアルノデアリマス、何
  百万ト云フ多數ノ人間ノ養蠶家ヲ相手ニシ
  テ、之ニ或ル金融ノ補償ヲ與ヘルト云フコ
  トハ非常ニ困難ナコトデアリマス、故ニ此
  實行ノ困難ガアリマシテ、ソレガ實現スベ
  ク此補償法案ノ上ニ現レテナイカラト言ッ
  テ、此補償法案ニ反對スル理由ハ少シモ成
  立シナイノデアリマス(拍手)大體私共ハ
  國民ノ六割ノ人口ヲ占ムル農村ノ最大多數
  ノ最大幸福ヲ考ヘルベク、憲法政治ノ中ニ
  立ッテ私共ガ考ヘル時ニ於テ、此ノ如キ法案
  ハ所謂超黨派的ノモノデアリマシテ、寧ロ
  民政黨ノ諸君ナリ無產派ノ諸君ノ擧ゲテ此
  種ノ法案ニハ滿腔ノ同情ト贊意ヲ捧ゲテ下
  サルコトダラウト思ノテ居ッタ(拍手)所ガ一
  方ニ於テハ穀物法ニ對シテハ、超黨派的態
  度ヲ執ルト仰シシヤルヤウナ民政黨ノ方ガ
  アルカト思フト、其心持ハ又變シテ斯ノ如
  キ養蠶家、製絲家、農民全部ニ直接間接ニ
  必ズ影響ヲ及ボスベキ重大ナル法案、所謂
  政策ノ問題ニアラズシテ、眞ニ國民ノ生活
  ニ觸レタ所ノ「パン」ニ關係シタ所ノ、竈ノ
  煙ニ影響ヲ及ボスヤウナ、眞ノ政治ラシイ
  政治ノ法案ガ、徒ニ黨派的ニ、反對センガ
  爲ニ反對スル犠牲トナッテ、之ヲ玩弄スルガ
  如キ態度ヲ執ルコトハ甚ダ遺憾トスル所デ
  アリマス、又一面ニ於キマシテ無產派ノ諸
  君ニ一言申上ゲテ置キタイ、無產派ノ諸君
  ハ動モスレバ無產派ハ一切ノ無產大衆全
  般ノ利害ヲ代表スル如キ御心持ニ於テ、有
  ユル問題ニ對シ、殊ニ階級觀念、階級闘爭
  ト云フ考ヲ中心ノ御心持ト爲サルヤウデア
  リマスガ、斯ノ如キ法案ハ、國民ノ最大多
  數ニ最大幸福ヲ及ボス所ノ、所謂無產派諸
  君ノ主張セラルヽ利害ニ最モ直接ニ影響ヲ
  及ボス所ノ重大ナル國民生活ニ關係シタ法案
  デアリマス、妙ニ抽象的ノ、妙ニ學問的ノ術語
  ヲ使ッテ、ソレダケガ無產派ノ主義政策デア
  ルナラバ兎モ角、本當ニ國民ノ利害ニ觸レ
  ルナラバ、階級觀念ヤ階級闘争ヲ中心トシ
  ナイデ、斯ウ云フ法案ニモ無產派ノ諸君ハ
  賛成セラレルコトヽ信ズルノデアリマス
  (拍手)斯ク致シマシテ總テノ方面ニ於キマ
  シテ、本案ノ如キハ極メテ時宜ヲ得タル適
  切ナルモノデアリマスルカラ、滿場總テノ
  諸君ノ御賛成ヲ得マシテ、本案ハ速ニ通過
  セラレンコトヲ希望シテ止マヌノデアリマ
  ス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=62

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• 063・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　以上ヲ以テ討論ヲ
  終リマシタ、是ヨリ採決ニ入リマス、本案
  ノ第二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=63

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• 064・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　起立多數ト認メマ
  ス、仍テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
  タ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=64

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• 065・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=65

  ---

• 066・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
  キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  絲價安定融資補償法案第一讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=66

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• 067・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌカラ、第二讀會ニ於テハ委員長報告
  ノ通リ決シマス、是ニテ本案ノ第二讀會ハ
  終了致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=67

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• 068・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ第三讀會ヲ開カレンコ
  トヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=68

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• 069・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議ナシト認メマス仍テ直ニ第三讀會ヲ開
  キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  絲價安定融資補償法案第三讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=69

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• 070・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌカラ採決ニ移リマス、本案ノ全部ニ
  賛成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=70

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• 071・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數、仍テ本
  案ハ可決確定致シマシタ(拍手)日程第五、
  大正十一年法律第五十一一號中改正法律案ノ
  第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
  求メマス、內野辰次郞君
  第五大正十一年法律第五十二號中改
  正法律案(統計資料實地調査ニ關ス
  ル件)(政府提出)
  第一讀ノ續(委員長報生ロ)
  報告書
  一大正十一年法律第五十二號中改正法律
  案(統計資料實地調査ニ關スル件)政
  府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十六日
  委員長内野辰次郞
  衆議院議長元田肇殿
  〔內野辰次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=71

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• 072・内野辰次郎

  ○内野辰次郞君　本案ハ御承知ノ如ク從來
  我國ニ於キマシテ、統計調査資料ト致シマ
  シテ勞働「センサス」ダケデアリマシタガ、將
  來ハ農業資料蒐集ノ爲ニ、農業ニ關スル「セ
  ンサス」ヲ加ヘタノデアリマス、委員會ニ於
  キマシテハ適當ナ改正案ト認メマシテ、全
  會一致可決ヲ致シマシタ、右御報告ヲ申上
  ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=72

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• 073・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ討論ノ通告モ
  アリマセヌカラ、直ニ採決ヲ致シマス、本
  案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ガゴザイマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=73

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• 074・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  アト、仍テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=74

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• 075・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
  第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可
  決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=75

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• 076・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  ママ、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  大正十一年法律第五十二號中改正法律
  案(統計資料實地調査ニ關スル件)
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=76

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• 077・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌカラ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長
  報告通り可決確定致シマシタ、日程第六及
  第七ハ同一委員ニ付託セラレタル議案デア
  リマス、仍テ一括議題ト爲スニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=77

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• 078・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、日程第六、朝鮮簡易生命保險特別會
  計法案、日程第七、朝鮮簡易生命保險ノ事
  務ニ關スル郵便物ニ關スル法律案ヲ一括シ
  テ、其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
  報告ヲ求メマス-佐々木長治君
  第六朝鮮簡易生命保險特別會計法案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一朝鮮簡易生命保險特別會計法案(政府
  提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十六日
  委員長佐々木長治
  衆議院議長元田肇殿
  第七朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關ス
  ル郵便物ニ關スル法律案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關スル郵便
  物ニ關スル法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十六日
  委員長佐々木長治
  衆議院議長元田肇殿
  〔佐々木長治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=78

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• 079・佐々木長治

  ○佐々木長治君　朝鮮簡易生命保險特別會
  計法案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致
  シマス、本案ハ別途制令ヲ以テ規定致シマ
  ス朝鮮簡易生命保險ヲ實施セントスルニ
  當リマシテ、内地ノ例ニ慣ッテ、本特別會計
  法ヲ設置セントスルノデアリマシテ、政府
  委員ノ說明ニ依リマスルト、朝鮮簡易生命
  保險ハ朝鮮總督府管理ノ下ニ、朝鮮總督府
  遞信局ニ於テ監督、企畫、契約及原簿ノ
  事務ヲ掌リ、約六百八十ノ郵便局ニ於テ是
  ガ現業事務ノ取扱ヲ爲サシメマシテ、保險
  ノ種類、加入年齡、保險金額、保險料ノ計
  算ノ基礎、其他ノ制度ハ内地ニ於ケルモノ
  ト殆ド同樣デアリマシテ、保險ニ關スル爭
  議ノ審査ニ付キマシテモ、朝鮮簡易生命保
  險審查會規定ヲ設ケマシテ、先ヅ此審査會
  ノ審査ヲ經ベキコトヽ致シテ居ルノデアリ
  マス、唯內地ノ制度ト特ニ異シテ居リマスル
  ノハ、其豫定利率ガ、內地ノ三分五厘ナル
  ニ反シマシテ、朝鮮ノ市場金利ニ鑑ミマシ
  テ、之ヲ四分五厘ト致シタコトデアリマス、
  積立金ハ本特別會計ニ於キマシテ、有利確
  實ニ運用スルコトヲ方針ト致シマシテ、朝
  鮮ニ於ケル公共ノ利益ヲ助長スベキ事業ニ
  投資セント致スノデアリマス、而シテ朝鮮
  簡易生命保險ハ昭和四年十月一日ヨリ之ヲ
  實施致サントスルモノデアリマスガ故ニ、
  初年度ニ於キマシテ、九万八千七百八圓、
  二年度ニ於テ一万六千二百二十三圓ノ歳入
  不足ヲ來ス計算トナリマシテ、兩年度トモ
  此不足ハ朝鮮總督府特別會計ヨリ繰入レル
  必要ガアリマスガ、三年目ヨリハ歳入超過
  ヲ來シ、同年度ヨリ每年度相當ノ剩餘金ヲ
  生ズベキ見込デアルトノコトデアリマス、
  委員會ハ二回ニ亙リマシテ、特ニ内鮮融和、
  鮮人勞働者ノ生活安定ニ關シマシテ、熱心
  ナル質疑應答ガアリマシタガ、本案ニ直接
  關係致シマス事項ニ付テハ、政府委員ノ懇
  篤ナル說明ニ依リマシテ、委員諸君ヨリハ
  特ニ御報告申上グル程ノ質問ヲ見ズシテ採
  決ニ入リマシタ、討論ヲ用ヒズシテ滿場一
  致原案ノ通リ可決致シマシタ、次ニ朝鮮簡
  易生命保險ノ事務ニ關スル郵便物ニ關スル
  法律案ノ委員會ノ結果ヲ御報告ヲ致シマス、
  本案ハ朝鮮簡易生命保險ヲ實施スルニ當リ
  マシテ、是ガ事務ニ關スル郵便物ニ付キマ
  シテハ、内地同樣無料ト爲サントスルモノ
  デアリマス、委員會ハ朝鮮簡易生命保險特
  別會計法ト一括シマシテ審議致シマシタ結
  果、討論ヲ用ヒズシテ滿場一致原案ノ通リ
  可決致シマシタ、詳細ナル點ハ委員會ノ速
  記錄デ御承知ヲ願ヒタイト考ヘマス、以上
  簡單ニ御報告申上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=79

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• 080・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑又ハ討論ノ通
  告ガゴザイマセヌ、仍テ採決ニ入リマス、
  而シテ議題トナリマシ夕兩案ヲ一括シテ採
  決致シタイト思ヒマス
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=80

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• 081・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　兩案ノ二讀會ヲ開
  クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=81

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• 082・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=82

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• 083・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=83

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• 084・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マー、仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  朝鮮簡易生命保險特別會計法案
  第一讀會(確定議)
  朝鮮簡易生命保險ノ事務ニ關スル郵便
  物ニ關スル法律案第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=84

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• 085・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、仍テ第三讀會ヲ省略シテ兩案トモ
  委員長ノ報告通リ可決確定致シマシタ(拍
  き日程第八、國寶保存法案第一讀會ノ續
  ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委
  員長山下谷次君
  第八國寶保存法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一國寶保存法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  昭和四年二月二十六日
  委員長半谷次
  衆議院議長元田肇殿
  〔別紙〕
  國寶保存法案中左ノ通修正ス
  第十四條ニ左ノ一項ヲ加フ
  特ニ必要アルトキハ神社又ハ寺院以外
  ノモノノ所有ニ屬スル國寶ニ付前項ノ
  規定ヲ準用ス
  希望條項
  國實中貴重ナル保護建造物ニ對シテハ政
  府ハ次ノ議會ヘ提出スル豫算中ニ必要ナ
  ル經費ヲ計上シ完全ナル防火設備ヲ施行
  セラレムコトヲ望ム
  〔山下谷次君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=85

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• 086・山下谷次

  ○山下谷次君　國寶保存法案ノ委員會ノ經
  過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、委員會ハ四
  日ニ亙リマシテ開會ヲ致シ、其間委員竝政
  府委員トノ間ニ於キマシテハ熱心ナル、質
  問應答ガ交換サレマシタ、就中武藤山治君、
  川崎克君ノ如キハ専門的見識ヲ以チマシ
  テ、有益ナル質問ガゴザイマシタガ、サウ
  云フ點ハドウカ速記錄ニ於テ御覽ヲ願ヒマ
  ス、ソレカラ討論ニ入リマシテ、福井甚三
  君ヨリ第十四條ニ一箇條加ヘルト云フ修正
  ガ出マシタノデアリマス、ソレハ第十四條第
  二項ト致シマシテ、「特ニ必要アルトキハ
  神社又ハ寺院以外ノモノヽ所有ニ屬スル國
  寶ニ付前項ノ規定ヲ準用ス」ト云フ修正デ
  アリマス、次ニハ武藤山治君ヨリ致シマシ
  テ希望條項ヲ附セラレタノデアリマス、ソ
  レハ「國寶中貴重ナル保護建造物ニ對シテ
  ハ政府ハ次ノ議會へ提出スル豫算中ニ必要
  ナル經費ヲ計上シ、完全ナル防火設備ヲ施
  行セラレンコトヲ望ム」此希望條項ヲ提出
  セラレタノデアリマス、所ガ討論ヲ終リマ
  シテ、此希望條項ハ修正ト共ニ滿場一致ヲ
  以テ可決致シマシタ、此段御報告ヲ申上ゲ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=86

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• 087・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　討論ノ通告ハアリ
  マセヌ、直ニ採決致シマス、本案ノ第二讀
  會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=87

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• 088・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、本案ノ第二請會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=88

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• 089・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「贊成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=89

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• 090・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  國寶保存法案第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=90

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• 091・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀬一郞君)　別ニ御發議モゴザ
  イマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
  通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第九及
  第十ハ同一委員ニ付託セラレタル議案デア
  リマス仍テ一括議題ト爲スニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=91

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• 092・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、日程第九、家畜保險法案、日程第十、
  家畜再保險特別會計法案ヲ一括シテ其第一
  讀合ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
  やっ、委員長内野辰次郞君
  ややか
  第九家畜保險法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一家畜保險法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和四年二月二十七日
  委員長內野辰次郞
  衆議院議長元田肇殿
  第十家畜再保險特別會計法案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一家畜再保險特別會計法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十七日
  委員長內野辰次郞
  衆議院議長元田肇殿
  〔内野辰次郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=92

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• 093・内野辰次郎

  ○內野辰次郞君　家畜保險法案ハ御承知ノ
  如ク牛ト馬ノ生命ニ保險ヲ附シヤウト云フ
  ノデアリマス、委員會ニ於キマシテハ可ナ
  リ多クノ質問ガゴザイマシタガ、其中ノ一
  ツヲ御紹介致シマス、政府ハ將來家畜保險
  ヲ擴張シテ豚ヲ保險スル考ハナイカ之ニ
  對シテ政府當局ト致シマシテハ、理想トシ
  テハ豚ノ保險ハ最モ望ム所デアル又將來
  成ベク斯ノ如キ時代ノ到著ヲ待シテ居ル、併
  シ保險ナルモノハ統計ヲ基礎ニセネバナラ
  又、豚ノ死亡統計ヲ取ルノハ中ミ長時日ヲ
  要スル爲ニ、豚ヲ保險スル迄ニハ前途尙ホ
  遼遠デアルト云フコトヲ承知サレタイト云
  フ答辯デアリマシタ、委員會ニ於キマシテ
  ハ愼重審議ヲ重ネマシタガ、此案ハ農村振
  興ノ爲ニ最モ重大ナル案デアルト致シマシ
  テ(拍手)全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、
  家畜再保險特別會計法案ハ、家畜組合ニ對
  シマシテ政府ガ再保險ヲスル金ノ取扱法デ
  ゴザイマス、是ハ何等ノ質問モナク、委員
  會ハ滿場一致ヲ以テ卽決可決致シマシタ、
  右報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=93

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• 094・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ質疑討論ノ通
  告モアリマセヌカラ、直ニ採決ヲ致シマス、
  此兩案モ亦一括シテ採決シタイト思ヒマ
  ス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=94

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• 095・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マッ、第二讀會ヲ開クニ決シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=95

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• 096・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ヲ一括シテ第二讀
  會ヲ開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
  通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=96

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• 097・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
  部ヲ議題ト致シマス
  家畜保險法案第二讀會(確定議)
  家畜再保險特別會計法案
  第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=97

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• 098・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、第讀三會ヲ省略シテ兩案トモ委員
  長報告ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=98

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• 099・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ日程第三十九乃至第四
  十一ハ日程第十一ト同一委員ニ村託シタル
  議案ナルニ因リ、此際政府ノ同意ヲ求メ、
  繰上ゲ上程ヲ爲シ、日程第十一ト一括シテ
  委員長ノ報告ヲ求メ、速ニ其審議ヲ進メラ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=99

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• 100・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=100

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• 101・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ハ御異
  議ナシト認メマス、而シテ政府ハ日程第三
  十九乃至四十一ノ三案ノ日程變更ニハ同意
  セラレテ居リマス、仍テ日程第十一、會計
  檢査院法中改正法律案、日程第三廾九、會
  計檢査院法中改正法律案、日程第四十、恩
  給法中改正法律案、日程第四十一恩給法
  中改正法律案ヲ一括シテ其第一讀會ノ續ヲ
  開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員
  長淺石惠八君
  第十一會計檢査院法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一會計檢査院法中改正法律案(政府提
  出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年二月二十七日
  委員長淺石惠八
  衆議院議長元田肇殿
  附帶決議
  會計檢査院ノ檢査ノ徹底ヲ期スルハ現時
  內外ノ狀況ニ鑑ミ最必要ナルヲ以テ來年
  度豫算ニハ擴張成案ヲ得テ之ヲ提出スヘシ
  第三十九會計檢査院法中改正法律案
  (千葉三郞君提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一會計檢査院法中改正法律案(千葉三郞
  君提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  昭和四年二月二十七日
  委員長淺石惠八
  衆議院議長元田肇殿
  〔別紙〕
  會計檢査院法中左ノ通改正ス
  第十三條第四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加へ第
  五號ヲ第六號ニ改ム
  五政府ニ於テ重役ヲ任命スル銀行會
  社及組合ノ收支ニ關スル決算
  第二十條ノ二會計檢査院ハ第十三條第
  三號乃至第六號ノ檢査ノ結果ヲ主務大
  臣ニ通知スヘシ其ク不當ト認ムルモノ
  ハ主務大臣ニ移牒シテ相當ノ處置ヲ要
  求スルコトヲ得
  會計檢査院ハ前項ニ依ル移牒ノ內容ヲ
  檢査報告ニ揭載スルコトヲ得
  第四十恩給法中改正法律案(神部爲
  藏君外五名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  第四十一恩給法中改正法律案(木下成
  太郞君外七名提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一恩給法中改正法律案(神部爲藏君外五
  名提出)
  -恩給法中改正法律案(木下成太郞君外
  七名提出)
  右ハ本院ニ於テ兩案ヲ併合シ表題ヲ一包
  給法中改正法律案」トシ別紙ノ通修正ス
  ヘキモノト議決致候此段及報告候也
  昭和四年二月二十七日
  委員長淺石惠八
  衆議院議長元田肇殿
  〔別紙〕
  恩給法中左ノ通改正ス
  第百三條第一項中「屯田兵ノ現役」ノ下ニ
  「及之ニ準スヘキ屯田兵役」ヲ加フ
  附則
  本法ハ大正十二年十月一日ヨリ本法ニ該
  當スヘキ者ニ之ヲ適州ス
  〔淺石惠八君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=101

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• 102・淺石惠八

  ○淺石惠八君　私ハ委員會ノ經過竝結果ヲ
  御報告致シマス
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=102

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• 103・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一　郞君)靜肅ニ願ヒマ
  ス-森保君注意致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=103

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• 104・淺石惠八

  ○淺石惠八君(續)　日程第十一、會計檢査
  院法中改正法律案ハ僅ニ第二條ニ於キマシ
  テ、書記官一名ヲ增員スルト云フ簡單ナル
  法案デゴザイマス併シ會計檢査院ハ御承
  知ノ如ク、憲法上獨立シタル重要ナル機關
  デアリマスルガ故ニ委員會ハ前後六回開
  キマシテ、愼重審議ヲ重ネ、委員會ニ於キ
  マシテハ色ミ質問應答ヲ重ネマシタガ大
  體ノ要領ヲ申上ゲマスレバ政府ニ於テハ
  此際事前檢査ヲ爲スノ意思ハナイカ否ヤ、
  又事前檢査ノ歐米各國ニ於ケル實例如何ト
  云フコト、尙ホ其上ニ機密費ヲ公開スルノ
  意思アリヤ否ヤ、或ハ六大都市ニ對シテ會
  計檢査院ヲシテ、監督セシムルノ意思有リ
  ヤ否ヤト云フヤウナ質問ガアリマシタ、之
  ニ對シマシテハ、政府ト委員トノ間ニ數回
  ノ應答ヲ重ネマシタガ、結局政府ガ會計檢
  査院ノ改善ヲ爲スト云フ意思ニ付キマシテ
  ハ委員全部ニ於テ何等ノ異議ガナカッタ
  ノデアリマス、唯此場合政府ガ僅ニ一人ノ
  人ヲ殖スト云フ位ノコトデハ滿足ガ出來ナ
  イカラ、希望條件ヲ附帶決議ニ致シタイト
  云フコトデ、討論ノ末「會計檢査院ノ檢査ノ
  徹底ヲ期スルハ現時內外ノ狀況ニ鑑ミ最モ
  必要ナルヲ以テ來年度豫算ニハ擴張案ヲ得
  テ之ヲ提出スベシ」トノ附帶決議ヲ添ヘマシ
  テ、滿場一致デ原案ヲ贊成致シマシタノデ
  アリマス、第二ノ御報告ハ議員ヨリ提出ヲ
  致シマシタル同ジク會計檢査院法ノ改正デ
  アリマス、是ハ同法ノ第十三條及第二十條
  ニ追加改正ヲ加ヘントスルモノデアリマス、
  卽チ從來ノ第十三條ニアリマスル以外ニ於
  テ「政府ニ於テ重役ヲ任命スル銀行會社及
  組合ノ牧支ニ關スル決算」斯ウ云フモノヲ
  加ヘテ、會計檢査院ノ檢査ノ範圍ヲ擴張致
  シタイト云フノガ提案者ノ精神デアリマ
  ス、之ニ付キマシテハ色〓質問應答ヲ重ネ、
  政府ノ意思ヲ尋ネマシタ、其結果、計論ニ
  入リマシテ、高木益太郞君ヨリ修正動議ガ
  出マシテ、斯ノ加キ修正ヲスルコトニナリ
  マシタ、卽チ「第十三條第四號ノ次ニ左ノ
  一號ヲ加へ第五號ヲ第六號ニ改ム、五、政
  府ニ於テ重役ヲ任命スル銀行會社及組合ノ
  牧支ニ關スル決算、第二十條ノ二、會計檢
  査院ハ第十三條第三號乃至第六號ノ檢査ノ
  吉結果ヲ主務大臣ニ通知スヘシ其不當ト認ム
  ルモノハ主務大臣ニ移牒シテ相當ノ處置ヲ
  要求スルコトヲ得、會計檢査院ハ前項ニ依
  ル移牒ノ內容ヲ檢查報告ニ揭載スルコトヲ
  得ト云フ修正案ガ出マシタ、是ニハ何等
  ノ異議ガアリマセズ滿場一致デ可決致シ
  マシタコトデゴザイマス、其次ハ恩給法改
  正案デアリマス、此案ハ北海道ノ屯田兵ノ
  豫備役ニ恩給ヲ與ヘルト云フ案デアリマ
  ス、而シテ此案ニ付キマシテハ、二ツ案ガ出
  テ居ルノデアリマシテ、二ツ共ニ一字一句
  モ違ヒノナイ同一ノ案デアリマシタカラ
  委員會ハ之ヲ併合シテ一案トシテ審議ヲ重
  ネマシタコトデアリマス、要スルニ屯田兵
  ノ豫備役ト云フモノガ法制變革ノ爲ニ僅
  ノ間豫備ト云フ名ノ下ニ恩給ニ漏レテ居ル
  コトハ非常ニ同情ニ堪ヘナイノデアル
  又屯田兵ノ豫備ト云フモノハ陸海軍ノ現役
  豫備トハ性質ヲ異ニシテ現役ト殆ド同一
  ノ服務ニ從事ヲシテ居ルモノデアルカラ、
  之ヲ恩給ニ加ヘルト云フコトハ當然ナリト
  云フ意味ニ於テ、提案ヲサレタノデアリマ
  ス、政府ハ之ニ對シマシテ陸海軍豫備トノ
  關係モアリ、今俄ニ御同意ハ出來ヌガ、兎ニ
  角ニ實際ノ狀況ニ付テハ非常ニ同情ヲシテ
  居ルノデアル先年是等ノ者ニ對シテ、慰
  藉金ヲ與ヘントスル計畫ヲ立テタコトガア
  ル位デアルカラ、此法案ノ御趣旨ニ付テハ
  全然御同意ヲ表スルガ、直ニ之ニ御同意ヲ
  スルト云フコトハ申上ゲ兼ルト云フ意味デ
  アリマシタガ、提案者ニ於キマシテハ、政
  府ノ言ハレルガ如キ多數ノ受恩給者ハ此
  法律ニ依テ出來ナイノデアル僅ニ五六百
  人ニ過ギナイノデアルカラ、サウシテ幸ニ
  政府ガ慰藉料ヲ出スト云フマデノ御決心ガ
  アルナラバ、此慰藉料ヲ出スダケノ金ガア
  レバ恩給法ノ改正ヲ爲シテモ敢テ金ノ
  上ニハ狂ヒハナイト云フヤウナコトデアリ
  マシタ審議ノ末全會一致ヲ以テ本案ヲ可
  決致シマシタノデアリマス、願クハ御贊成
  ヲ皆サンニ望ミマス、(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=104

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• 105・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　右四案中先ヅ政府
  提出ニ係ル會計檢査院法中改正法律案ノ審
  議ヲ致シマス而シテ討論ノ通告ガアリマ
  セヌカラシテ、直ニ採決致シマス、本案ノ
  第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=105

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• 106・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=106

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• 107・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
  可決確定セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=107

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• 108・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  會計檢査院法中改正法律案
  第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=108

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• 109・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、本案ハ第三讀會ヲ省略シテ委員長報
  告通リ可決確定致シマシタ(拍手)-次ニ
  千葉三郞君提出ニ係ル會計檢査院法中改正
  法律案ノ審議ニ入リマス、是亦討論ノ通告
  ガアリマセヌ本案ノ第二讀會ヲ開クニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=109

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• 110・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=110

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• 111・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ
  第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確
  定セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=111

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• 112・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
  部ヲ議題ト致シマス
  會計檢査院法中改正法律案
  第二讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=112

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• 113・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌ、本案ハ第三讀會ヲ省略シテ委員長
  報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)-次
  ニ神部爲藏君外五名提出ニ係ル恩給法中改
  正法律案及本下成太郞君外七名提出ニ係
  ル恩給法中改正法律案ノ兩案ヲ一括シテ其
  審議ニ入リマス、討論ノ通告ガアリマセヌ、
  採決ニ入リマス、此兩案ノ委員長報告ハ兩
  案ヲ併合シテ一ツノ案ト爲シ而シテ修正
  議決シタルモノデアリマス、兩案ヲ一括シ
  テ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=113

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• 114・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=114

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• 115・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
  リ修正議決セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=115

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• 116・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議ナシト認メマス仍テ直ニ兩案ノ第二讀
  會ヲ開キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  恩給法中改正法律案第讀會(確定議)
  恩給法中改正法律案第一讀會(確定議)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=116

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• 117・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ第二讀會ニ於テハ委員長ノ報告通
  リ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=117

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• 118・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
  ノ通リ可決確定致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=118

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• 119・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際政府提出肥料管理
  法案、肥料管理特別會計法案ノ兩案ヲ一括
  上程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=119

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• 120・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　原君ノ動議ニ御翼
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=120

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• 121・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異識ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ肥料
  管理法案、肥料管理特別會計法案ノ兩案ヲ
  一括シテ第一讀會ヲ開キマス-山本農林
  大臣
  肥料管理法案(政府提出)第一讀會
  肥料管理法案
  肥料管理法
  第一條本法ニ於テ肥料ト稱スルハ硫酸
  アムモニア石灰窒素及勅令ヲ以テ指
  定スル含窒素化學肥料ヲ謂フ
  第二條政府ハ肥料ノ配給ノ圓滑又ハ價
  格ノ安定ヲ圖ル爲肥料ノ賣渡ヲ爲スコ
  トヲ得
  前項ノ賣渡ヲ爲ス爲政府ハ肥料ノ買
  入交換、加工又ハ貯藏ヲ爲スコトヲ
  得
  第三條政府ハ前條ノ規定ニ依リ肥料ノ
  賣渡ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ム
  ル所ニ依リ豫メ其ノ數量及價格ヲ告〓
  スベシ但シ肥料ノ買換貯藏肥料整理
  ノ爲ニスル賣渡其ノ他必要ト認ムル場
  合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
  前項ノ價格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
  ベシ
  第四條政府ハ肥料ノ配給ノ圓滑又ハ價
  格ノ安定ヲ圖ル爲肥料現在高調査ノ必
  要アリト認ムルトキハ肥料ノ製造業
  者、取引業者、倉庫業者其ノ他占有者
  ニ對シ必要ナル事項ノ報告ヲ命ジ又ハ
  官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ營業所、倉庫
  其ノ他ノ場所ニ臨檢シ帳簿物件ヲ檢査
  セシムルコトヲ得
  第五條前條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
  又ハ當該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ
  妨ゲタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  肥料管理特別會計法案(政府提出)
  第一讀會
  肥料管理特別會計法案
  肥料管理特別會計法
  第一條肥料ノ配給ノ圓滑及ハ價格ノ安
  定ヲ圖ル爲ノ肥料ノ賣渡竝ニ其ノ賣渡
  ノ爲ニスル買入、交換、加工及貯藏ニ
  關スル一切ノ歳入歳出ハ之ヲ一般會計
  ト區分シ特別ノ會計ヲ立テシム
  第二條本會計ニ屬スル經費ヲ支辨スル
  爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ負擔
  ニ於テ借入ヲ爲スコトヲ得
  第三條本會計ニ於テハ借入金、肥料賣
  渡代金及附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入ト
  シ肥料ノ買入代金肥料ノ買入賣渡交換
  加工貯藏及運搬ニ關スル諸費、借入金
  ノ償還金及利子、一時借入金ノ利子、
  事業取扱費其ノ他ノ諸費ヲ以テ其ノ歲
  出トス
  第四條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕
  アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預入ル
  ルコトヲ得
  第五條本會計ニ於テ支拂上現金二不足
  アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ一時借
  入ヲ爲スコトヲ得
  前項ノ規定ニ依ル一時借入金ハ當該年
  度內ニ之ヲ返還スベシ
  第六條第二條ノ規定ニ入ル借入金及前
  條ノ規定ニ依ル一時借入金ノ額ハ通ジ
  テ最高二千萬圓トス
  第七條本會計ニ於ケル歲入總額ノ歲出
  總額ニ超過スル金額ハ之ヲ翌年度ノ歲
  入ニ繰入ルベシ
  本會計ノ每年度歲出豫算ニ於ケル事業
  費ノ支出殘額ハ之ヲ翌年度ニ繰越使用
  スルコトヲ得
  第八條政府ハ每年本會計ノ歲入歳出豫
  算ヲ調製シ歳入歳出ノ總豫算ト共ニ之
  ヲ帝國議會ニ提出スベシ
  第九條本會計ノ收入支出及損益計算ニ
  關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附則
  本法ハ昭和四年度ヨリ之ヲ施行ス
  〔國務大臣山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=121

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• 122・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　肥料管理法案
  竝特別會計法案提出ノ理由ヲ說明致シマ
  ス、食糧ノ充實ヲ圖ルト共ニ、農村經濟ノ
  作興ヲ期シマスルコトハ現下我國ノ國情
  トシテ、最モ緊要ナル事務タルコトハ今更
  申上ゲル必要ハナイト思ヒマス、而シ
  テ··
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=122

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• 123・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　森保君、靜肅ニ願
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=123

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• 124・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)(續)　而シテ此
  食糧ノ充實、農村振興、農村經濟ノ作興ト
  申スコトモ、之ヲ達成スルノ方策ハ固ヨリ
  一ニシテ足リナイノデアリマスルガ、就中
  農業生產上必須ノ資源タル肥料ノ價格ノ安
  定ヲ圖リ、是ガ配給ヲ圓滑ナラシメマシテ
  農家ノ肥料購入上ニ於ケル、障碍ヲ除去シ
  テ、一層便益ヲ與フルノ政策ヲ確立致シマ
  スガ如キハ、其最モ重要ナルモノト存ズル
  ノデアリマス(拍手)御承知ノ如ク我國ノ進
  步ニ伴ヒマシテ、販賣肥料ノ施用ハ頓ニ曾
  加致シマシテ、今ヤ其一箇年ノ消費額ハ三
  億數千万圓ノ巨額ニ達シマシテ、今後益、遞
  增ノ勢ヲ呈シテ居ルノデアリマス、而シテ
  肥料代ハ農產物生產中ノ最モ重要ナル部分
  ヲ占ムルト云フコトハ以前カラ左様デア
  リマスケレドモ、今日ハ尙更其程度ヲ加へ
  テ參ッタノデアリマス、左樣デアリマスカ
  ラ、農產物ノ生產費ヲ遞減致スト共ニ之ヲ
  安定致シテ、仍テ以テ農村經濟ノ作興ヲ圖
  ラント欲スルナラバ、是非共此肥料ノ配給
  ノ圓滑ト、其價格ノ安定ト云フコトノ點ニ
  著眼致サナケレバナラナイト云フコトハ
  理ノ當然デアルノデアリマス(拍手)況ヤ我
  國人口ノ曾加ニ伴ヒマシテ、國民食糧ノ充
  こうえいと
  實ト共ニ、農產物ノ增收ハ一日モ之ヲ忽セ
  ニスルコトノ出來ナイ所デアリマスガ、此
  農產物ノ增收ハ我國ノ國情ニ於テハ懸シテ
  肥料ノ多量施用ト云フコトニ俟タナケレバ
  ナラヌト云フ狀況ニ鑑ミマスレバ肥料問
  題ハ愈〓其重要性ヲ增シツヽアルノデアリマス
  (拍手)扨テ各種販賣肥料ノ中ニ於キマシ
  テ窒素質肥料ハ價格ニ於テ全販賣肥料ノ
  八割餘ヲ占メテ居リマスルガ故ニ、是ガ價
  格ノ安キカ否カト云フコトハ農家經濟上
  ニ及ボス所ノ影響ハ特ニ重大ナルモノガア
  ルノデアリマス、而シテ更ニ此窒素質肥料
  ノ中ニ於キマシテ、硫酸「アンモニア」、石灰
  窒素ノ如キ無機質窒素肥料ハ價格等ノ關
  係ヨリ近時大ニ其需要ヲ增加致シマシテ、
  今ヤ我國ニ於テ消費セラレマスル窒素質販
  賣肥料中ノ窒素總量ノ四割餘ハ、此無機
  質窒素肥料ヲ以テ供給サレツヽアルノデア
  リマス、ノミナラズ今後ニ於テハ其需要ガ
  益こ增加スル傾向ガ明白ナノデアリマス、隨
  テ從來窒素質肥料中ノ首位ヲ占メテ居リマ
  シタ大豆粕ノ如キモ、漸ク其地位ヲ此種ノ
  無機質窒素肥料ニ讓ラントスルノ情勢ニア
  リマスカラ、此種無機質肥料ハ窒素質肥料
  界ノ謂ハバ中樞ヲ成シテ居ルノデアリマシ
  テ、畢竟其價格ハ一般窒素質肥料ノ價格ヲ
  支配スルガ如キ地位ニ今日ハ居リマスルカ
  ラ、此種肥料ノ價格ガ安定シ、配給ガ圓滑
  ナルヲ得マスルコトハ、就中最モ重要ナル
  モノト認ムルノデアリマスル飜テ此種肥
  料ノ價格ガ如何ナル狀況ニアルカ及是ガ配
  給ノ狀態ガ如何デアルカト云フコトヲ見マ
  スレバ、今日マデノ經過ニ徵シマスルニ、肥
  料價格動搖ハ相當激變ヲ致シマシテ、期節
  ニ依リマシテハ往々暴騰ヲ見マスノデ、農
  家ニ對シマシテ非常ナル苦痛ヲ與フルバカ
  リデナク、又折角肥料ノ購入ヲ希望致シツ
  ツアル農家ヲシテ、自然之ヲ斷念スルノ餘
  儀ナキニ至ラシムルヤウナ結果トナリツヽ
  アルノデアリマスル、又其肥料配給ノ方面
  ニ於キマシテモ現在ノ組織上整ハザル所ガ
  アリマスルガ爲ニ、中央市場ニ於ケル肥料
  ノ價格ガ左樣ニ高價ニナラザル場合ニ於キ
  マシテモ、是ガ農家ニ配給セラレマス場合
  ノ價格ハ、結局甚シク不廉ノモノトナリ得
  ルト云フ狀況ニアルノデアリマス、政府ハ
  ご注意ずっ···
  從來肥料ニ關シテ肥料取締法實施ニ依リ
  不正粗惡ナル肥料ノ防遏ニ努ムルノ外、肥
  料ノ改良曾殖及經濟的施用法ノ普及等ニハ
  施設スル所ガアリマシタケレドモ、時代ノ
  要求ハ今ヤ斯ノ如キ程度ノ施設ノミニテハ
  到底滿足ヲ致サナイト云フ狀況ニ鑑ミマシ
  テ、肥料ニ關スル國策ヲ考究スルノ目的ヲ
  以テ、一昨年以來農林省内ニ特ニ肥料調査
  委員會ナルモノヲ設ケマシテ、銳意調査審
  議ヲ進メツヽアルノデアリマスルガ、右調
  査會ニ於テモ以上申述ベマシタガ如キ、無
  機質窒素肥料ノ生產及販賣ノ狀況ハ農村
  現下ノ實情等ニ徵シ、一日モ速ニ其對策ヲ
  講ズルノ要アリト致シマシテ是ガ方策ヲ
  答申スルニ至ッタノデアリマス、仍テ政府ハ
  右答申ノ要綱ニ基キマシテ、更ニ種々調査
  考究ヲ加ヘマシタル結果、肥料管理ノ方策
  ヲ定メマシテ、玆ニ其法律案ヲ提出致シタ
  次第デアリマス、今此兩案ノ内容ニ付キ大
  要ヲ御說明申上ゲマスレバ第一ニ政府ハ
  硫酸「アンモニア」等ノ一定數量ヲ買入レマ
  シテ、之ヲ產業組合ヤ農會ノ如キ團體ヲ通
  ジマシテ、常時計畫的ニ農家ニ配給スルコ
  トニ依リマシテ、農家ヲシテ肥料配給ノ中
  間ニ於ケル餘分ノ負擔ヨリ免レシメルノミ
  ナラズ、之ニ依リマシテ絕エズ市場ヲ牽制
  シ、動モスレバ起ラントスル肥料價格ノ變
  動ヲ防止スルコトニ資セントスルノデアリ
  マっ、第二ニハ又別ニ相當ノ豫備品ヲ貯藏
  致シテ置キマシテ、肥料ノ時價ガ萬一暴騰
  ヲ來ス如キ場合ニ於キマシテハ臨時之ヲ市
  場ニ賣出シマシテ暴騰ノ勢ヲ抑制シ、之ガ
  安定ヲ圖ラントスルノデアリマス、而シテ
  之ガ爲ニ生ジマス政府ノ歲入歳出ハ卽チ之
  ヲ特別會計ト致シマシテ、借入金ニ依テ事
  業ヲ行フコトヽ致シマスノデ、其最高限度
  ヲ二千萬圓ト定メタノデアリマス、以上ハ
  政府ガ今日提案致シマシタ法案ノ大體ノ骨
  子デアリマスガ、政府ハ之ニ依リマシテ、
  啻ニ上述ノ硫酸「アムモニア」無機質窒素肥
  料ノ價格ノ安定及其配給ノ圓滑等ヲ來サシ
  ムルバカリデナク、尙ホ之ニ依リマシテ、
  他ノ一般窒素質肥料等ノ價格ニ對シテモ、
  頗ル好影響ヲ及ボスコトヲ期待致シテ居ル
  次第デアリマス、隨テ之ヲ起因ト致シマシ
  テ、農村經濟ノ甦生上幾多ノ實績ガ生レ來
  タルコトヲ望ミ且ツ信ジテ居ルノデアリマ
  ス(拍手)固ヨリ肥料政策ハ之ヲ以テ決シテ
  盡キテ居ル譯デハアリマセヌ、尙ホ他ニ幾
  多ノ重要ノ施設ガ殘。テ居ルノデアリマス
  ガ本案ノ如キハ就中最モ緊急ノモノデア
  リマシテ、且ツ最モ重要ナルモノト信ジテ
  居ル次第デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ
  御協贅ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=124

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• 125・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　三土大藏大臣
  〔國務大臣三土忠造君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=125

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• 126・三土忠造

  ○國務大臣(三土忠造君)　只今農林大臣ヨ
  リ說明致シマシタル如ク、今囘肥料管理法
  ヲ制定致シマスルニ付キマシテ之ガ運用
  上玆ニ特別會計ヲ設定スルト云フ必要ヲ生
  ジマシテ、玆ニ肥料管理特別會計法案ヲ提
  案致シタ次第デアリマス、肥料管理ノ事業
  ハ借入金、肥料賣却代金等ヲ以テ肥料ノ
  買入代金、肥料ノ買入、賣渡、貯藏及運搬
  等ニ關スル諸費、借入金ノ償還金及利子、
  一時借入金ノ利子、事業取扱費、其他一切
  ノ經費ニ充當セントスルモノデアリマスカ
  ラ、性質上之ガ收支ハ一團トシテ獨立ニ計
  算ヲスルヲ適當ト考ヘマスノデ、本事業ニ
  關スル歳入歳出ハ之ヲ一般會計ト區分致
  シマシテ、特別會計ヲ設定スル必要ガアル
  ノデアリマス本案ハ右樣ノ次第デアリマ
  スカラ、何卒速ニ御協賛ヲ與へラレンコト
  ヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=126

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• 127・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　本案ニ關シ質疑ノ
  通告ガアリマス、仍テ順次之ヲ許シマス-
  高田耘平君
  〔高田耘平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=127

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• 128・高田耘平

  ○高田耘平君　只今御提出ノ肥料管理法ニ
  付キマシテ、二三點御伺申シタイト思ヒマ
  ス、實ハ只今大臣ノ御說明ノ通リ、其目的
  ハ肥料ノ配給ト價格ノ安定ヲ圖ルト云フコ
  トデゴザイマスルカラ吾々モ其目的ニハ
  全然御同意申スコトデアリマス、併ナガラ
  御提案ニナリマシタモノヲ拜見スルト、吾
  吾ガ豫期シタモノヨリモ、非常ニ不徹底ノ
  モノニ相成ッタコトヲ遺憾トスルノデゴザ
  イマス、肥料管理案ハ自作農ノ維持創定案ト
  共ニ、現內閣ノ農村政策ノ主要ナル位地ヲ
  占メテ居ルコトニ吾々モ承知シテ居リマシ
  テ、其目的ニ付テハ何レモ同意スルノデゴ
  サイマス、併ナガラ自作農維持創定案ハ
  最初ノ八千万圓ハ今ハ三千万圓トナッタ模
  樣デゴザイマス、肥料管理案ノ四千万圓ハ
  二千万圓ニ減シタノデゴザイマス、段々減ル
  ト今一月モ過ギルト、或ハ一錢モ無クナ
  ルノデハナイカト、私ハ危惧ノ念ニ堪ヘナ
  イノデアリマス(拍手)要スルニ私ガ左樣ニ
  危惧ノ念ニ驅ラレルノハ政府ガ斯ノ如キ
  重大法案ト見ルベキモノヲ會期ノ初メニ提
  出セズシテ、會期ノ半バヲ終レル、最早一
  月モナイ〓日ニ至ッテ提出シタコトガ、或ハ
  惧ル、八千万圓ガ三千万圓ニナリ、四千万
  圓ガ二千万圓ニナッテ、今一月後ノ議會ノ終
  リ頃ニハ一錢モ無クナルコトニナルノデ
  ハナイカト、私ハ全ク危惧ノ念ニ堪ヘナイ
  ノデアリマス(拍手發言スル者多シ)危惧ノ
  念ニ堪ヘナイノデアリマス
  〔「眞面目ニヤレ斯ウ云フ問題ハ」ト呼
  ヒ其他發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=128

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• 129・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=129

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• 130・高田耘平

  ○高田耘平君(續)　是ハ極メテ眞面目ニヤ
  ル積リデアリマス、故ニ私ハ極メテ眞面目
  ノ案デゴザイマスカラ、眞面目ニ伺フノデ
  ゴザイマス、第一本案ヲ拜見スルト云フト
  第三條ノ第二項ニ於テ、賣渡ノ價格ハ時價
  ニ準據シテ賣ル、而シテ之ヲ產業組合及農
  會等ニ賣ルト云フコトニ承知シテ居ルノデ
  ゴザイマス、是ハ御說明ノ中ニアッタカナ
  カッタカ存ジマセヌガ、サウ承ッテ居ル、ソ
  コデ時價デ產業組合ニ賣ルト云フコト、而
  シテ產業組合ガ時價デ政府ヨリ買入レテ
  之ヲ一般農家ニ賣ルコトニ依テ、果シテ商
  賣人ガ賣ルヨリ安價ニ供給スルコトガ出來
  ルカドウカト云フコトガ頗ル疑問デアル
  ト私ハ思ヒマスカラ、此點ヲ伺フノデゴザ
  イマス(拍手)第一買入ノ點デゴザイマス、
  買入ノ點ニ付キマシテモ、法律ニハドウ云
  フ手順ニ依テ買フトハ書イテア】ママヌ
  ガ私ノ大體承知スル所ニ依レバ、輸入ノ
  場合ニ於キマシテハ指定輸入商ヲ作ルノデ
  アラウト思フ、是ハ政府ガ今日迄外米輸入
  ノ場合ニ於キマシテモ或ハ外米ヲ他ニ賣
  ル場合ニ於キマシテモ、指定ノ商賣人ヲ作リ
  マスカラ、其通リデアリマシテ、政府自身
  ガヤルノデハナイト思ヒマス、斯ウ云フ場
  合デアレバ指定商人アルコト其事ガ、或
  ル程度ノ利益ヲ與ヘナケレバナリマセヌ
  卽チ政府ガ直接ニ買ハズシテ、指定商人ヲ
  經テ輸人スルト云フコトニ依テ、一般ノ東
  京、大阪等ノ商賣人ガ直接ニ外國ヨリ買入
  ルヽヨリモ、此場合ニ於テ指定商人ニ或ル
  程度ノ利益ヲ與ヘナケレバナラヌコトハ當
  然デアルカラシテ、買入價格ガ旣ニ政府ノ
  買フ物ハ、民間ノ大商人ノ買フ物ヨリモ
  幾分高價ニ相成ルト云フコトハ是ハ否定
  シ得ベカラザル事實デアルト私ハ信ジマス
  (拍手)故ニ私ノ見ル所デハ大體ニ於テ買
  入ノ價格ガ旣ニ商賣人ヨリモ政府ガ高イモ
  ノヲ買ハナケレバナラヌ、ソコデ時價デ賣
  ル、時價ト云フノハ何デアルカト云ヘバ、
  要スルニ米穀法ニ依ル時價ト同ジ意味ト存
  ジマス、之ヲ產業組合或ハ農會ニ賣ル產
  業組合、農會ニ賣ルト云フコトデアレバ
  私ノ一ツノ考ハ產業組合ヲシテ東京、大
  阪等ノ大商人ヨリ直接買入シムル方法ヲ政
  府ガ奬勵スル方ガ、一番簡單デアラウト私
  ハ思フ、サウシナイデ、之ヲ政府ガ商賣人ヨ
  リモ高イ値段デ買入レテ、時價デ賣ルト云
  フコトニ於テ、政府ノ品物ガ高クナル、半
  面カラ言ヘバ損ガ出來テ來ルト云フコトニ
  ナル、之ヲ產業組合ニ賣ル產業組合ハド
  ウスル、政府ハ貸賣ハ一切致サヌト云フ方
  針デアルサウデアリマス、全部現金賣デア
  リマス、サウスルト是ニ於テ產業組合ガ、
  果シテ資金ガアルカドウカト云フコトガ疑
  問ニナルト思フ、今ノ狀態ニ於テハ產業組
  合ニ依テハ資金ノ充實シテ居ル產業組合モ
  ゴザイマセウ、併ナガラ多クノ產業組合ハ、
  政府ガ肥料ヲ產業組含ニ賣ラントシテモ、
  其買人ニ要スル資金ヲ持テテルル業業組合
  ハ少イノヂヤナイカト私ハ憂ヘルノデアリ
  マス(「ソンナ心配ハナイ」ト呼フ者アリ)ソ
  レハ意見デゴザイマス、私ハサウデナイト
  思フ吾々ノ見ル所デハ多クノ產業組合ハ
  資金ノ缺乏ニ依テ、政府ガ何カ此途ニ付テ
  ノ低利資金ヲ供給スルノ方法ヲ執ルニアラ
  ザレバ自分ノ自ラノ資金ヲ以テ現金買ヲ
  スルコトハ出來ナイト思フノデアリマス、
  サウスルト是ニ於テ產業組合ハ相當ノ金
  ヲ借入レナケレバナラヌト云フ必要ガ起ッ
  テ來ル、產業組合ガ資金ヲ借入レテ、政府
  ヨリ時價ヲ以テ買ヒ、之ヲ農家ニ供給スル
  場合ニ於テ、產業組合モ相當ノ利益ヲ取リ
  マス、又現金ヲ以テ一般組合員ニ賣ルト云
  フコトハ是モ中ニ今日ノ農家ノ實狀カラ
  シテ不可能デゴザイマスカラシテ是尼
  於テ相當ノ利子ヲ取ッテ賣ラナケレバナラ
  ヌノデゴザイマス、其利子モ、或ハ產業組
  合ノ利子ガ、非常ニ低利デアルカノ如ク存
  ジテ居ル人モアルカモ知レマセヌガ、私ノ
  見ル所デハ產業組合ノ利子モ、場所ニ依テ
  安イノモアリマスケレドモ、相當ニ高イノ
  デゴザイマス、サウスルト產業組合ガ政府
  ヨリ買フ時ニハ、多クノ場合ニ於テ現金ヲ
  借入レ、相當ノ利子ヲ拂フ、而シテソレガ
  爲ニハ或ル場所ニ依テハ倉庫ヲ造ラナケ
  レバナラヌ產業組合モ出來マス、新夕二人
  ヲ雇入レナケレバナラヌ產業組合モ出來マ
  ス、サウシテ相當ノ利益ヲ得ナケレバナラ
  又、相當ノ利息ヲ取シテ貸付ケルト云フノ
  ガ、是ガ私ハ今日ノ產業組合ニ對シテ政府
  ガ賣ル場合ニ於テ當然起ルコトヽ思ヒ
  マチ、斯ウ云フコトニナリマスト云フ
  ト、私ハ恐ル、機敏ナル地方ノ小都市
  ニ於ケル肥料商ガ、政府ヨリ同一ノ値、
  或ハ政府ノ値段ヨリモ安イ値段ヲ以テ買
  入レテ行ッテ、而シテ商賣人ガ之ヲ地方
  ノ農民ニ賣ル、是モ勿論相當ノ利子モ
  取リマセウガ、何方ガ安クナルカ、何方ガ
  高クナルカト云フコトハ、殆ド分リマセヌ、
  私ハ產業組合ガ必ズ一般商人ヨリモ安ク肥
  料ヲ供給スルトハ斷定スルコトハ出來マセ
  ヌガ、政府ハ如何ナル場合ニ於テモ、必ズ
  政府ガ產業組合ニ供給シテ賣ラシメルコト
  ハ一般商人ガ外國ヨリ輸入シ或ハ製造會
  社ヨリ買入レテ、之ヲ販賣スルヨリモ安ク
  供給シ得ルト云フ成算ガ必ズアリマスカ
  ソレヲ伺ヒタイト私ハ思ヒマス、是ハ常時
  賣ノ場合デアリマス、臨時賣ノ場合ハ最モ
  甚シイト思ヒマス臨時賣ノ場合ハドウス
  ルカト云フト、最モ只今ノ御說明ニハアリ
  マセヌガ、私ノ承ル所ニ依ルト、卽チ六月、
  七月ノ頃ガ、最モ今日迄ノ實狀カラ云フ
  ト需要供給ノ關係上肥料ガ暴騰スルガ、
  此場合ノ需要ニ備フル爲ニ、政府ハ新タニ
  二千万圓ノ肥料ノ倉庫ヲ建設シテ、之ニ貯
  藏シテ置イテサウシテ賣出スノデアルト
  言ヒマス、サウデアルト云フト此場合ニ於
  テ、所謂臨時賣ノ場合ニ於テハ常時賣ヨ
  リモ倉敷利子等ヲ相當ニ〓算シナケレバ
  ナリマセヌ結果、私ハ商賣人ノ持シテ居ル
  モノヨリモ高イモノニナルト思フ、政府ハ
  如何ナル場合ヨリモ、臨時賣ノ場合ハ必ズ
  商賣人ノ賣ルモノヨリモ、安ク賣ル確信ガ
  アルカ、ドウカト云フコトヲ、御伺シタイト
  思フノデアリマス、卽チ先程ノ御說明ニ依
  レバ、此法律ノ運用ニ依テ、必ズ商賣人ヨ
  リモ安イ肥料ヲ一般農家ニ供給スルト云フ
  コトハ、私ガ見テハ極メテムヅカシイコト
  ト思ヒマスカラ、此點ヲ御伺致シマス次
  第デアリマス、次ニ先程大臣ノ御說明ノ中
  ニ、或ル時期ニ依テ非常ニ暴騰スルモノデ
  アル、暴騰スル爲ニ臨時賣ヲスルト云フノ
  デゴザイマスガ、私ガ過般豫算分科會ニ於
  テ商工大臣ニ伺ヒマシ夕所ニ依レバ遠カ
  ラザル將來、近キ將來トハ言ハナイ、先ヅ
  六七年ノ內ト云フノデアリマセウ、其内ニ
  日本ニ於テハ外國ノ輸入ヲ俟タズシテ、完
  全ニ自給自足ガ出來ル計畫ガ立ッテアルカ
  ラ、商工大臣トシテハ、五六年ノ内ニ肥料
  ノ内地自給ノ目的ガ完全ニ出來ルト公言シ
  テ居ルノデゴザイマス、此點ハ商工大臣ノ
  見ル所ハ確デアルト私ハ思ヒマス、而シテ
  肥料ガ最盛季節ニ入ッテ行ッテ暴騰ヲ極メタ
  コトハ是ハ數年前デアリマス、最近ニ至ッ
  テ暴騰ノ率ハ段々減少致シマシテ、昭和二
  年及三年等ニ於テ、六月、七月ノ候ニ至ッテ
  騰貴シタル步合ト云フモノハ極メテ僅デ
  ゴザイマシタ、是ハ要スルニ配給ガ漸次充實
  シテ來マシテ、肥料商ガ自由競爭ノ見地ニ
  立ッテ、御互ニ地方々々ニ對シテ配給設備ヲ
  完全ニシタガ故ニ、需要期ニ至ッテ不足ヲ
  來スコトナク、暴騰ノ傾向ガ漸次低下シ來ッ
  タノデアリマス、加フルニ商工大臣ノ明言
  ノ如ク、遠カラザル將來ニ於テ內地ニ於テ
  自給スルコトガ出來レバ是ニ於テ肥料ノ
  公平ト云フモノガ、是コソ圓滿ニ行ハレ、
  配給モ完全ニ行ハレマシテ、今日尙ホ其跡ヲ
  殘シテ居ル最盛期ニ於ケル所ノ一時的暴騰
  ト云フモノハ、絕對ニ無クナルベキモノデア
  ルト私ハ信ジマス、サウスレバ此肥料管理
  法ト云フモノハ無用ニ屬スルノデアリマス
  ガ、此點ニ付テノ政府ノ見解ハ如何デゴザ
  イマスカ、第三ハ產業組合及農會ヲシテ賣
  ラシメルト云フコトデゴザイマスガ、是モ
  全國一般トハ申シマセヌ、地方ノ狀況ニ依
  テ異リマスガ、產業組合ノ普及シテ居ル所
  ハ此法律ノ恩典ニ浴スルコトガ出來ル
  併ナガラ産業組合員ト云フモノハ、地方ニ依
  テ異リマスカ、無資力ノ人ハ產業組合員ト
  ナルコトモ出來ズ、隨テ產業組合ノ恩典ヲ
  受ケ得ナイ農民ガ寧ロ澤山アルト云フコト
  モ、亦御理解シ得ルコトヽ思フノデアリマ
  ス、故ニ斯樣ナル場合ニ於キマシテ、產業
  組合ガ幸ニ商賣人ヨリ買入レルヨリモ、幾
  分安イ肥料ヲ手ニ入レタト致シマシタ所
  ガ之ヲ農民ニ賣渡ス場合ニ於テ、相當ノ
  信用ノアル人ニハ貸賣ヲスル組合ガアリマ
  スガ無資產ナ農民等ニ對シマシテハ〓〓
  業組合ハ決シテ貸賣ハ致シマセヌ(「違フ」
  ト呼フ者アリ)地方ニ依テ違フ、ソレハ全
  部デハアリマセヌ、サウ云フ地方モアル
  サウデナイ地方モアリマス、(「ソレハ連帶
  ダ」ト呼フ者アリ)連帶バカリデハナイ連
  帶ノ出來ナイ所モアリマス、只今申上ゲマ
  ス通リ一方ニ於テハ連帶責任ヲ以テ貸賣
  ヲスル所モアリマス、他方ニ於テハサウデ
  ナイ所ガ產業組合ニ澤山アリマスカラ申ス
  ノデアリマス、斯樣ナ場所ガ澤山アリマス
  カラ、是ニ於テ若シ肥料ガ、幸ニ商賣人ノ
  賣ル肥料ヨリモ、產業組合ノ買〓テ賣ル肥
  料ノ方ガ安イト致シマシテモ、其分配ガ中
  產階級以下ニ及バナイ、無資力ナル者ニ及
  バナイ所ガ澤山出來マス、斯ル場合ニ於
  キマシテハ肥料ノ公平ナル分配ドコロデ
  ハナイ、甚ダ不公平ナル分配ガ此法律案ニ
  依テ生ズルト思ヒマス、ソレトモ政府ハ今
  一二ノ彌次ル人ノ言ウヤウニ、產業組合ガ
  全部貸シテ居ルト斷定シ得ルカドウカ、第
  四ハ先程申上ゲマシタ資金ノ問題デアリマ
  ス、產業組合ニ依テハ資金ノ充實シテ居ル
  モノモアリマスケレドモ、產業組合ノ多ク
  ハ資金ガ充實セズシテ、本法ニ依テ幸ヒ〓
  分カ安ク肥料ヲ供給セント致シマシテモ、
  此資金ガ出來ナイ場合ニハドウスルノデア
  ルカ、斯ル場合ニ於テハ、政府ハ今日ヨリ
  以上ニ是等ノ產業組合ニ向ッテ資金ヲ融通
  スル方法ヲ立テルノ成算アリヤ否ヤ、之ヲ
  伺ヒタイノデアリマス、尙ホ二三細ガイ點
  モゴザイマスケレドモ、以上四點ニ付キマシ
  テ政府ノ御答辯ヲ願ヒマシテ、餘ハ委員會
  ニ於テ伺フコトヽ致シマス(拍手)
  〔國務大臣山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=130

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• 131・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　高田君ノ御尋
  ニ對シテ御答ヲ致シマス、之ニ先ッテ一言申
  シテ置キマスガ、高田君ノ最初政府ハ四千
  万圓ノ資金ヲ計畫シテ居シタヤウデアルガ、
  ソレガ二千万圓ニナッテ行キ、千万圓ニナッ
  テ行キ、遂ニ無クナッテシマヒハセヌカト
  云フ皮肉ナ御尋ガアリマシタガソレハ事
  實ヲ御承知ナイカラデアル、四千万圓ト云
  フコトハ當時其考ヲ致シタコトモアリマ
  スガ、ソレハ十箇年先ニ於ケル窒素肥料ノ
  曾加ヲ見越シマシテ、之ヲ管理スルニ要ス
  ル最高限度ノ資金ヲ四千万圓ト算出致シタ
  ノデアリマス、併ナガラ之ヲ假ニ五箇年先
  ニ管理スベキ最高數量ヲ押ヘテ計算致シマ
  スレバ二千万圓デ足リルデアラウ、隨テ
  管理スル仕事ハ十箇年先ヲ見テ四千万圓
  ノ資金ヲ用意スルノモ五箇年先ヲ見テ二
  千万圓用意スルノモ、仕事ノ範圍ニハ少シ
  モ變動ハアリマセヌカラ、是ダケ御承知置
  キヲ願ヒタイ、ソレカラ其次ノ幾多ノ御質
  問ハ大體政府ガ仕入ヲスル時ニハ高イ物
  ヲ仕入レルニ相違ナイ、サウシテ賣ル時ニ
  ハ產業組合其他ヲ通ジテ、結局普通ノ商人
  ガ賣ルヨリハ高イモノニ付クニ相違ナイ、
  是デアッタヤウニ思ヒマスガ、政府ガ仕入レ
  ルノハ必ズ高イモノヲ仕入レルト云フノ
  ハ、高田君ノソレハ獨斷デアッテ、私共ハ左
  樣ナ方法ハ執ラナイノデアリマス、是ハ委
  員會等ニ於テ審ニ御說明申上ゲルコトガ出
  來ルノデアリマス、又產業組合ヲ通ジテ云
  云ト云フコトガアリマスルガ、大體ニ於テ
  素人考ニ於テモ、常識的ニ考ヘテモ分ルノ
  デアリマス、政府ガ品物ヲ買入レテ而シ
  テ之ヲ產業組合若クハ農會等ヲ通ジテ直接
  ニ消費者へ渡ス、是ハ一階級シカ經テ居リ
  マセヌ、所ガ現在デハ幾多其間ニ階段ヲ經
  テ、初メテ農家ノ手ニ渡ルノデアリマスルカ
  ラシテ、此間ニ於テ兩方ノ方法ヲ比較シテ見
  マスレバ政府ノ手カラシテ一段階ダケヲ
  通シテ直接ニ農家ノ手ニ渡ルノト數段ノ
  而モ營利ヲ目的トスル商人ノ手ヲ通シテ農
  家へ渡ルノト、何方ガ高ク付クカト云フコ
  トハ、常識的ニ判斷出來ルコトダラウト思
  フノデアリマス、其詳シイコトハ委員會ニ
  於テモ御說明申上ゲルコトモ出來マスルシ、
  又必要トアラバ只今政府委員カラ說明ヲ致
  サセマス、ソレカラ内地ノ化學的窒素肥料
  ガ、近キ將來ニ於テ自給自足ヲスルコトニ
  ナルデアラウカラシテ、其曉ニナッタナラ
  バ此臨時的暴騰ト云フモノガ無クナリ、
  隨テ管理ノ必要ガナクナルデアラウト云フ
  ヤウナ、御意見ノヤウナ御尋ノヤウナ御尋
  ガゴザイマシタガ、我國ニ於テ一方ニ於テ
  ハ生產ハ固ヨリ增加致シテ參リマスガ
  方ニ於テハドン〓〓消費ノ方モ增加シテ居
  リマスルカラシテ、卽チ商工大臣ガ申サレ
  タ近キ將來ニ於テト云フコトハ必シモ高
  田君ノ言ハレル三年、四年若クハ五、六年
  ト申サレマシタガ、其問ト云フヤウナ意味
  ニ於テ商工大臣ハ說明シテ居ルノデハアリ
  マセヌ、是ハ併シ吾々モ期待シテ居ル、成ベ
  ク近キ將來ニ於テ自給自足ノ域ニ達シタイ
  トハ考ヘテ居リマスルレドケモ、ソレガ確
  ニ五年ナリ六年ナリノ先デアルト云フガ如
  キコトハ是ハ私共ハ明言致スコトガ出來
  ナイノデアリマス、而シテ其曉ニ於テ自
  給自足ノ出來ル曉ニ於テハ六七月ノ交ニ
  於ケル所ノ臨時的ノ暴騰ハ或ハ無クナルカ
  モ知レマセヌ、然レドモ平時ニ於ケル所ノ
  幾多ノ商人ノ手ヲ經テ農家へ渡ルト云フ其
  間ニ於テデス、季節的ニ月々ニ、而シテ又
  地方的ニ非常ナ價格ノ開キガ生ズルト云フ
  コトハ其後ニ於テモ亦免レ得ベカラザル所
  ノ狀況デアラウト思ヒマスルガ故ニ、矢張
  此方面ニ於テハ相當ノ管理ヲシテ行クト云
  フコトノ必要ガ尙ホアルト私ハ確信ヲ致シ
  テ居リマス、私ハ大體左樣ノ點ニ付キマシ
  テ御答ヲ申上ゲテ置キマスルガ尙ホ政務
  官ヨリ之ヲ補足致シテ說明ヲ致サセマス
  〔政府委員砂田重政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=131

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• 132・砂田重政

  ○政府委員(砂田重政君)　高田君ノ御質問
  ノ中デ、只今大臣ノ御答辯ニナリマシタ點
  ヲ一二補足致シテ置キマス、高田君ノ御
  質問ノ根本ニ於テ、此法案ト全ク相反シテ
  居ル點ガアルヤウニ思フノデアリマス、ソ
  レハ卽チ高田君ハ此政府ガ臨時賣若クハ
  定時賣ヲ致シマスル其肥料ニ依テ是ノ配
  給ダケニ依テ、肥料ノ價格ノ安定ト、サウ
  シテ配給ノ圓滑ヲ期スルト云フ御趣旨ノ下
  ニ質問ヲセラレタヤウデアリマスルガ、政
  府ノ提案致シマシタ肥料管理案ノ要旨ハ
  僅ナモノデハアリマスルガ、政府ガ之ヲ管
  理致スコトニ依テ、農家ニ小賣セラレテ居
  リマスル肥料全體ノ價格ノ暴騰ヲ防止シ、
  而シテ其總テノ配給ヲ圓滑ナラシメルト云
  フコトガ此案ノ目的デゴザイマス(拍手)
  隨テ產業組合ニ交付シタル肥料ガ、極メテ
  少數ノ組合員ノミニ配給ヲセラレテ、其他
  ノ者ニ對シテハ何等ノ效果ナシト云フ御質
  問ハ其根柢ニ於テ目的ガ違フノデゴザイ
  マス(拍手)卽チ政府自ラガ出動ヲ致シテ
  實際今日賣買サレテ居リマスル肥料ノ價格
  ハ東京、橫濱、神戶等ニ於ケル卸賣相場
  ト農村ノ農家ノ手ニ這入リマス時ニハ
  需要ノ時期ニ依テハ一噸ニ付テ五十圓、六
  十圓ノ高イモノガ配給サレテ居ルノデゴザ
  イマス(拍手)斯ノ如キ狀態ニアリマスルガ
  故ニ、之ヲ一部分政府ガ管理ヲシテ、總テ
  ノ價格ノ安定ト而シテ配給ノ圓滑ト云フコ
  トガ目的デアルト云フコトニ御承知ヲ願ヒ
  タイ、ソレカラ今一ツハ、此案ヲ實行スル
  場合ニハ指定商人ヲ置イテ、其指定商人
  ノ爲ニ利益ヲ得ラレテシマフノデアラウト
  云フヤウナコトノ御質問ガゴザイマシタ
  ガ、本案ハ御承知ノ如クニ同一品種ノモノ
  デアリ、同一價格デアレバ日本ノ內地ニ
  於テ生產サレタル肥料ヲ優先買入レヲスル
  ト云フコトガ目的ニ相成。ッテ居リマスルカ
  ラ、出來得ル限リハ內地ノ肥料ヲ買フノデ
  アリマスルカラ、政府ニ於テハ指定商人ナ
  ドヲ置ク考ヲ今日持シテ居リマセヌ、動モス
  レバ之ニ依テ利權ヲドウトカシタト云フヤ
  ウナ反對運動、流言蜚語ヲ放タレル方ガア
  リマスルガ、是ハ左樣ナサモシイ案デハナ
  イノデゴザイマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒ
  マス(拍手)
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=132

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• 133・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=133

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• 134・砂田重政

  ○砂田政府委員(續)　高田君ノ御質問ノ中
  ニ硫安肥料ノ
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=134

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• 135・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=135

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• 136・砂田重政

  ○砂田政府委員(續)　硫安肥料ノ價格ハ、
  値幅ガ段々減シテ來テ、今日デハ餘リ騰落ガ
  ナイト仰セニナリマシタガ、是ハ小賣値段
  ニ於テハ其通リデアリマスルガ、尙ホ今日
  農村ニ對スル實際ノ小賣相場ニ於テハ非
  常ナ暴騰ヲ來シテ居ル事實ハ委員會ニ於
  テ統計ヲ御覽ニ入レテ御說明ヲ申上ゲマス
  (拍手)高田君ノ御質問ノ中ニ產業組合、農
  會ト云フガ如キモノハ場所ニ依テハ非常
  ニ發達ヲシテ居ルガ、場所ニ依テハ殆ド金
  融ノ途ガナイヤウナモノガ澤山アルト云フ
  コトヲ仰セラレマシタ、ソレハ御說ノ通リ
  デゴザイマス、現ニ現内閣ニ代リマシタ當
  時ニ、產業組合中央金庫ニハ、殆ド五千万圓
  ニ近イ遊金ヲ抱イテ居フタ云云フ事實ニ依
  テ見マシテモ、此產業組合ノ機能ガ如何ニ
  發揮セラレテ居ナカッタカト云フコトヲ物
  語,テ居ルト吾々ハ考ヘルノデアリマス(拍
  手)隨テ此機能ヲ發揮セシムル爲ニハ出
  來得ル限リ產業組合ノ改善ヲ期ン、之ニ適
  當ナル資金ノ融通ノ途ヲ與ヘルト云フコト
  ガ、農村ニ對スル重要ナル今日ハ問題デア
  ルト吾々ハ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
  隨テ出來得ル限リノ改善ト面シテ出來得
  ル限リ此產業組合ノ機能ヲ發揮セシムル爲
  ニモ、此肥料管理ヲヤルト云フコトハ必要
  ナ事ナリト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
  尙ホ農村ノ產業組合ニハ、將來此以上ニ資
  金ノ融通ヲ圖ル考ガアルカト云フ御質問デ
  ゴザイマシタ、是ハ此內閣ニナリマシテ以
  來幾度カ地方還元資金其他ノ方法ニ依リ
  マシテ、隨分思切ッタ大キナ金ヲ今日迄ニ融
  通ヲ致シテ居リマス、今後ニ於テモ出來得
  ル限リ農村ノ金融ノ圓滑ヲ圖ルト云フ爲ニ
  ハ全力ヲ擧ゲテ奮鬪致シタイト考ヘテ居
  ルノデゴザイマス、之ヲ要スルニ此肥料管
  理案ハ、極メテ僅ナ窒素肥料ニ限シテ居リマ
  スガ、是ハ總テノ肥料價格ノ中樞ヲ爲シテ
  居ルモノデアルカラ、之ニ管理ヲ行フト云
  フノデアル、其以上尙ホ御分リニナラナケ
  レバ、委員會デ明快ニ御答スルコトガ出來
  ルノデアリマス、是ダケ申上ゲテ置キマス
  (拍手)
  〔高田耘平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=136

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• 137・高田耘平

  ○高田耘平君　大臣ノ御答辯デ大分分ッタ
  點ガアッタガ、、參與官ノ答辯デ少シモ分ラナ
  クナッタ、甚ダ怪シカラヌ話デアル、只今政
  府委員ハ此肥料管理法ヲ大袈裟ニ御吹聽ニ
  ナッタ、僅ニ二千万圓バカリノ金-總肥
  料ハ三億六千万圓ト稱シテ居ル三億六千
  万圓ノ此肥料ノ價額ヲ、僅ニ二千万圓ノ金
  デ是デ何ガ出來ルカ、唯窒素肥料、其窒素
  肥料ノ一部ノ硫安、硫安ノ中ノ僅ニ三分ノ
  一ヲ管理スルノデゴザイマセウ、サウハ言
  ハヌケレドモ-說明書ヲ見ルト、最盛期
  ニ於ケル所ノ肥料ノ半分ヲ管理スルト云フ
  ノデアッテ、全額ノ三分ノ一ノ窒素肥料ヲ管
  理スルノデアル、硫安ノ需要ノ三分ノ一ヲ
  管理スルト云フノガ本案デゴザイマセウ、
  總肥料三億六千万圓、其中ノ窒素肥料、其
  窒素肥料ノ中ノ硫安、硫安ノ中ノ三分ノ一
  ヲ二千万圓ノ金デ運用シテ、是デ肥料全體
  ノ管理ガ出來テ、價格ノ安定ガ出來ルト
  カ、肥料ノ配給ガ完全ニ出來ルトカ云フ、
  何處ヲ突ケバソンナ言ガ出マスカ、宣傳ニ
  モ程ガアル(拍手)噓ヲ言フニモ程ガアル更)
  ニ大臣ヨリ御答ニナッタ、政府ガ買入レテ之
  ヲ產業組合ニ賣ルノニハ、色ミノ機關ヲ經ズ
  シテ簡單ニ賣レルカラ費用ガ少クテ濟ムカ
  ラ、安ク出來ルト云フコトハ是ハ常識デ
  分リサウダト、斯ウ仰シヤル、若シ其通リ
  デ濟ムナラバ產業組合ヲシテ直接製造會
  社ヨリ買ハセル方法ヲ講ズルナラバ何等
  管理ノ必要モナクテ濟ム筈デアルサウデ
  セウ、唯時價ヲ以テ產業組合ニ賣ルト云フ
  コトデアルナラバ、管理法ナドヽ云フモノ
  ハ設ケズニ濟ミハセヌカ、政府ガ肥料ノ獎
  勵ノ方針ヲ別ニ立テヽ產業組合ニ對シテ
  直接ニ肥料商ヨリ之ヲ買ハス、京京、大阪
  ノ大商人ヨリ之ヲ買ハセルト云フ方針ヲ執
  レバ、是デ十分デアッテ、何等國庫ノ金モ一
  錢モ要サナクテ濟ム、若シ其配給ヲ管理ス
  ル必要ガアレバ、官吏ノ二三人デモ置ケバソ
  レデ宜イ、而シテ大臣ハ常識的ニ安クナル
  筈デアルト言フ是デハ分リマセヌ、私ハ此
  肥料管理法ノ目的ハ肥料價格ノ安定デア
  ル、肥料ヲ安ク供給スルト云フコトデア
  ル、若シ此點ガ破レヽバ此法案ハ何ノ效果
  モ無イ、世間ノ多クノ人ミハドウセ士族ノ
  商法デ、政府ガ肥料ヲ買テ之ヲ賣シタ所ガ、
  商賣人ト對抗出來ナイノデアルト云フコト
  ヲ疑念シテ居ル、若シ果シテ政府ガ確ニ商
  賣人ノ賣ルヨリモ、政府ガ買シテ之ヲ產業組
  合ニ賣ラセル方ガ安ク出來ルト云フコトナ
  ラバ玆ニ具體的ニ說明ナサイ、常識ナド
  ト言ハズ、具體的ニドウシテ安ク出來ルト
  云フコトヲ御說明ナサイ、委員會ノ問題デ
  ハナイ、此處ガ根本問題デアル尙ホ砂田
  政府委員ハ外國ノ肥料ヲ輸入セズシテ若
  シ價格ガ同ジナラバ內地ノ硫安ヲ買フト言
  フガ是ハ私此間商工大臣カラモ伺ッタ商
  工大臣ノ答辯ニハ內地デ出來ル硫安モ、
  外國デ出來ル硫安モ品質ハ同ジト云フ、併
  シ是ニハドウモ僞リガアル肥料商ノ多ク
  ノ人ハ、内地製ノ硫安ハ水分ガ多ク、遊離
  酸ガ多クテ、到底今日ノ所デハ外國品ト對
  抗ガ出來ナイノデアルカラ、政府ガ若シ内
  地品ヲ買入レテ而シテ之ヲ若シ臨時賣ノ
  モノニデモ提供致シマシタナラバ、之ヲ貯
  藏シテ臨時賣ト致シマシタナラバ品物ハ惡
  クナル、或ハ其入レテ置ク袋ナドハ全然破
  レテ一袋ニ付テ少カラザル損ヲスルト云
  フコトハ肥料ノ實際ニ通ズル人ノ明ニ知
  ル所デアリマス、尙ホ政府ハ必ズ內地品デ
  間ニ合ハセルト信ズルカ兎ニ角必ズ政府
  ガヤレバ安クナクルト云フコトハ本問題
  ヲ決スル主タル問題デアルカラ、具體的ニ
  此席デ御說明願ヒマス
  〔政府委員砂田重政君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=137

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• 138・砂田重政

  ○政府委員(砂田重政君)　極メテ簡單ニ御
  答ヲ申上ゲマス、肥料ノ管理ガ全然其目的
  ヲ達スルコトノ出來ナイヤウナ、クダラナイ
  モノナラバ全國ノ肥料商人ガ自分等ノ商
  業ノ壓迫ヲ受ケルト云フノデ反對ハシナイ
  ダラウト思フ、吾々ハ之ヲ壓迫スルコトガ
  目的デハアリマセヌガ、ソレダケノ心配ヲ
  サレルト云フコトニ御考へ下サレバ、相當
  ノ效果ガ〓ルト云フコトハ明デアリマス
  〔櫻井兵五郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=138

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• 139・櫻井兵五郎

  ○櫻井兵五郞君　農業生產費ノ大ナル部分
  ヲ占メマスル所ノ肥料ノ問題ニ付キマシ
  テ是ガ現狀ニ照シ國家ハ相當ノ施設ヲセ
  ラレヤウト云フ其精神ニ對シマシテハ
  私ハ何等異存ナイバカリデナク、贊意ヲ表
  スルモノデアリマスガ、唯此案ヲ拜見致シ
  テ、第一ニ最モ大切ナル根本ノ問題ガ見落
  サレテ居ルト云フコトガ一點、ソレカラ今
  一點ハ、斯樣ナ案ニ依リマシテ、果シテ政
  府ノ豫期セラルヽヤウナ效果ガアルカドウ
  カ、此點ニ付テ私ハ多大ノ疑問ヲ抱イタ、
  其第一ノ問題ハ政府ハ價格ノ安定ト一云フ
  コトヲ言ハレル、尤モ私ハ價格ノ安定モ必
  要ナコトヽ思フノデアリマスガ併ナガラ
  私共ハ農業生產ノ上カラ考ヘマシテ、モット
  ソレヨリモ根本的ナー-最モ此價格ノ問題
  モ之ニ關聯シマスガ、根本的ノ問題ハ安
  イ良質ノ肥料ヲ農家ノ手ニ入ルヽト云フコ
  トデアリマス、ソレガ單ニ價格ノ安定ト云
  フコトダケデハ、安イ肥料ガ農家ノ手ニ入
  ラナイト思フ、唯ソレハ一面ノ方法ニ過ギ
  ナイノデアリマスカラ、寧口此現在ノ販賣
  肥料ノ如キモノヲ、何等カノ方法ヲ講ジテ、
  モット生產原價ヲ安クスル、中間商人ノ手ニ
  渡ル前ノ原價ヲモット安クスルト云フ、其根
  本問題ヲ政府ガ見落シテ居ルノデハナイ
  カ、之ニ對シテ政府ハドウ考ヘマスカ、此
  事ヲ考ヘズシテ、單ニ高イ物ガ出テ來レバ
  製造家カラ高イ物ヲ買フ、單ニ中間商人ダ
  ケノ幾分ノ利益ヲ防グト云フダケデハ不
  徹底ナリト私ハ考ヘザルヲ得ナイ、ソレカ
  ラ今一點ハ高田君モ之ニ一寸觸レラレタ
  ヤウデアリマスガ、確カ是ハ四千万圓ヲ以
  テ販賣肥料ノ六、七月ノ需要期ニ於ケル約半
  額ヲ政府ガ扱フ、斯ウ云フ趣旨デアッタト思
  フ私ハ是ガ二千万圓咸ッタノヲ見テ、ソレ
  デハ四分ノ一ノ扱ニナッタノデハナイカト
  云フ疑ヲ持ツノデアリマスガ、農林大臣ノ
  先ノ御答辯ニ依レバ、ソレヲ否定セラル
  ヤウデアリマスカラ、其點ハ强ヒテ御尋ハ
  致シマセヌガ、假ニ半額ト致シマシテモ、
  效果ガ甚ダ疑ハシイ、今參與官ノ御說明
  ニ、肥料商ノ反對運動ガアル肥料商ノ反
  對運動ハ效果アル證據ダト言ハレタガ、肥
  料商ノ反對ハ帳簿ノ檢査マデセラレルノデ
  アルカラ、商人ノ機密ニ關スルコトヲ嫌フ
  ト云フ點モアラウト思フ必シモ參與官ノ
  言ハレル通リデハナイト思フ、ドウモ吾々
  ハ安イ肥料ヲ農家ノ手ニ仕入レルト云フ上
  カラ見マスレバ、斯ノ如キ最需要期ニ半額
  若クハ四分ノ一ニ當ル位ノ方法ヲ以テ、ソレ
  ダケデ此大問題ガ解決セラレルト信ジテ居
  ラレルト云フコトハ如何ニモ此案ニ對ス
  ル御熱誠ガ足リナイ、不徹底デアル、斯樣
  ニ私ハ疑ヲ抱イタノデアリマス、之ニ對ス
  ル政府ノ御答辯ガ伺ヒタイ、ソレカラ今一
  ツハ產業組合ヲ通シテ、是ガ販賣ニ當ラシ
  ムルト云フコトデアリマスガ、是ニハ二ツ
  ノ場合ガアラウト思フ、產業組合ガ之ヲ扱ッ
  テ、サウシテ之ヲ需要家ニ賣ル其代金ニ
  ハ何等ノ心配ガナイト一云フコトモ相當アル
  ニ相違ナイ、併ナガラ農家ノ貧困ナル者ハ、
  肥料ヲ手ニ入レマスニハ中ミ支拂モ一回
  ヤ二囘デハ出來ナイト思フ現ニ肥料高ハ
  色ミナ關係ニ於テ、或場合ニハ五回七回
  ニ亙リ足ヲ運ンデ、漸クニシテ其代金ヲ囘
  收スル、或ハ出來ナイ場合モアルト云フノ
  ガ實狀デアル、ソレ故ニ若シ之ヲ產業組合
  ニ扱ハセル場合ニ於テ產業組合ガ其危險ヲ
  冒シテヤラナケレバナラヌ、產業組合ヲ危
  險ニ陷ラシムルモノデハナイカ、ソレカラ
  產業組合ヲ危險ニ陷ラセズシテ、現金賣ニ
  スルト云フコトニナレバ、ソレハ正シク配
  給上、所謂モウ一ツノ政府ノ目的タル配給
  ノ圓滑ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ、ド
  チラカガ手落ニナルト思ヒマスガ、之ニ對
  スル政府ノ御所見ハドウデアリマスカ、次
  ニ今一ツハドウ考ヘテモ、私ハ本案ハ甚ダ
  不徹底デアル、農家ノ大問題ヲ解決スルニ足
  ラヌ今少シ熱心ニ本氣ニ此案ヲ立テ直サ
  レタラドウカ、現ニ世間デハ是ハ總埋大臣
  ガ肥料ノ公平ナル分配ト云フコトヲ失言セ
  ラレタ、ソレノ何トカ跡片付ヲシナケレバ
  ナラヌカラ、農相ガ斯樣ナ法案ヲ出シタト
  カ言ッテ居ル、農業政策ニ關スル重大問題ニ
  付テ、斯樣ナ疑ヲ懷カシムルト云フコトハ、
  甚ダ好マシカラヌコトヽ思ヒマスケレド
  モ如何ニモ案ノ不徹底ヨリ考ヘテ見マス
  レバ成程或ハサウ云フヤウナコトモアラ
  ウト疑ハレル單ニ上滑リナ御考デ斯ノ如キ
  重大ナ問題ヲ解決セラレヤウトスルナラバ、
  ソレハ飛ンデモナイコトデ却テ農家ノ迷惑
  デアル今少シ突込ンダ完全ナ根本的ナ案
  ヲ提出セラレルナラバ吾々モ十分ニ審議
  ヲシタイト思フノデアリマスガ如何デス、
  敢テ農林大臣ノ答辯ヲ伺ッテ置クノデアリ
  やっ、此四點ニ付テ農林大臣ノ誠意アル御
  答辯ヲ求ムル次第デアリマス
  〔國務大臣山本悌二郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=139

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• 140・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　櫻井君ノ御尋
  ニ簡單ニ御答致シマス、第一ノ點ハ肥料
  ノ生產費ヲ安クサセルト云フコトガ先決問
  題デハナイカ、斯ウ云フ御尋デアリマシタ
  ガ、ソレハ其通リデアリマス、是ハ工業方
  面ニ於テ內地ニ於テ之ヲ供給スルト同時
  ニ、其價格ヲ安クスルト云フコトニ努メナ
  ケレバナリマセヌ、併ナガラ現在ノ狀態デ
  ハドウデアルカト云フノニ、內地デ生產
  スル分竝外國ヨリ輸入シテ來ル分、其價格
  ヲ以テ僅ナ手數料デ農家ニ渡ルナラバソ
  レデ宜シイガ現在ノ狀況ハドウカト云ヘ
  バ原價ハソレ程高クナイモノガ、農家ノ
  手ニ渡ル時ニハ非常ニ高イモノニナッテ
  渡ルト云フ弊ガアルカラ、之ヲ管理ニ依テ
  矯正セントスルノデアリマス、ソレカラ次
  ニハ僅ニ最盛時期ノ半額位デハ管理ノ效
  果ヲ現ハスコトガ出來ナイデハナイカト云
  フヤウナ御意見デアリマシタガ、私等ノ見
  ル所ニ依レバ是ダケノ數量ヲ管理スルコ
  トニ依テ、十分ニ市場ヲ支配スルコトガ出來
  ルト信ズルノデアリマス現ニ米穀法ノ如
  キハ櫻井君モ御承知ノ通リ、六千万石ノ產
  額ノ中デ、市場ニ出ルモノガ假ニ半額ノ三
  千万石ト致シマシテモ、中こ大キナ數量デ
  アリマス、併ナガラ米穀法ニ依テ百万石、
  百五十万石ノ數量ヲ買入レヽバ是ガ直ニ
  市場ニ影響ヲ及ボスノデハアリマセヌカ、
  況ンヤ增加シテ行ク最盛時期ノ半數ヲ政府
  ノ手ニ於テ管理スルト云フコトニナッタナ
  ラバ、其效果影響ハ極メテ大ナルモノガア
  ラウト私ハ信ズルノデアリマス、ソレカ
  ラ產業組合ヲ通ジテハ却テ產業組合ヲ危
  險ニ陷レハシナイカ、斯樣ナ御尋デアリマ
  スガ、私ハ左樣ニハ信ジマセヌ、元來產業
  組合ノ使命ト云フモノハ、斯ノ如キ方面ニ
  向ッテ働カナケレバナラナイノデアル、斯ウ
  云フコトヲ爲シ得ナイ位ノ產業組合ナラ
  バ實ハ產業組合ハ役ニ立タヌノデアル、
  固ヨリ强テ不堅實ナル產業組合ヲシテ之ヲ
  行ハシメヤウト云フノデハアリマセヌ、其
  力アルモノニ力相應ノ仕事ヲサセヤウト云
  フノデアリマス、其力無キ場合ニ於テハ
  市町村ヲ通ジテヤラセルコトモ出來ルノデ
  アル又農會ヲ通ジテヤラセルコトモ出來
  ルヤウニナッテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ
  產業組合ヲ危險ニ陷レルト云フヤウナ心配
  ハナイ積リデアリマス、最後ニ一言申上ゲ
  テ置キマスルガ、此案ハ如何ニモ不徹底デ
  アル、唯總理大臣ガ肥料ノコトニ言及シタ
  其言責ヲ充タスガ爲ニ、斯樣ナモノヲ出シ
  タノデハナイカト云フヤウナ御非難ノヤウ
  十、御尋ノヤウナ、御意見ノヤウナ御言葉
  ガアリマシタガ、是ハ邪推ト申スヨリ外ハ
  ナイノデアリマス、今日誰ガ眼カラ見テモ、
  此肥料界ノ狀態ヲ此儘ニシテ置イテ宜イノ
  デアルカドウデアルカト云フコトヲ、先ヅ
  御考ヲ願ハナケレバナラヌノデアリマス、
  此儘ニシテ置イテ宜イト云フナラパ我又
  何ヲカ言ハンヤデアルガ、此儘ニシテ置イ
  テハナラヌト云フノデアルナラバ總理大
  臣ガ之ニ言及シヤウガスマイガ、當局ト致
  シテハ之ヲ立案致シテ提案スルト云フコト
  ハ當然ノコトデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=140

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• 141・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　以上ヲ以テ本案ニ
  對スル質疑ヲ終局致シマシタ、右各案ノ審
  査ヲ付託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマ
  ス
  右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=141

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• 142・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　兩案ヲ一括シテ、議長指名、
  特ニ二十七名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望
  ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=142

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• 143・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニハ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=143

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• 144・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=144

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• 145・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
  ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=145

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• 146・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニハ
  御異議ナシト認メマス、本日ハ是ニテ散會、
  次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス
  午後六時三十五分散會
  衆議院議事速記錄第二十二號中正誤
  頁段行誤正
  四七〇二二二草案中草案調成中
  同二三九十三年十一年
  四〇

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X02319290228&spkNum=146

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