第56回帝国議会　衆議院　本会議　第33号　昭和4年3月15日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和四年三月十五日（金曜日）午後一時二十二分開議
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  　議事日程　第三十二號
  　　昭和四年三月十五日
  　　　午後一時開議
  　第一　肥料管理法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二　肥料管理特別會計法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第三　日本興業銀行法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　國際汽船株式會社の整理に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　大禮記念帝室博物館復興翼贊會事業費の補助に關する法律案（政府提出）　第一讀會
  　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第九　關税定率法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十　大正十三年法律第二十四號中改正法律案（贅澤品等の輸入税に關する件）（政府提出）　第一讀會
  　第十一　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十二　造幣局特別會計法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十三　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十四　大正十四年法律第五十一號中改正法律案（關東州の生産品輸入税免除等の件）（政府提出）　第一讀會
  　第十五　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十六　救護法案（政府提出）　第一讀會
  　第十七　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十八　特許法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十九　實用新案法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十　意匠法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十一　商標法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十二　勞働者災害扶助法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十三　酒造組合法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十四　資源調査法案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十五　陪審法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十六　船舶職員法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十七　無線電信法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第二十八　衆議院議員選擧法中改正法律案（二見甚郷君外一名提出）　第一讀會
  　第二十九　家祿賞典祿給與未濟に關する法律案（石井次郎君外五名提出）　第一讀會
  　第三十　質屋取締法中改正法律案（鬼丸義齋君提出）　第一讀會
  　第三十一　古物商取締法中改正法律案（鬼丸義齋君提出）　第一讀會
  　第三十二　刑法中改正法律案（牧野賤男君外二名提出）　第一讀會
  　第三十三　借家法中改正法律案（小久江美代吉君外二名提出）　第一讀會
  　第三十四　恩給法中改正法律案（山下谷次君外一名提出）　第一讀會
  　第三十五　道路法中改正法律案（菅野善右衞門君提出）　第一讀會
  　第三十六　町村有建物火災保險相互組合法案（岩崎一高君外十六名提出）　第一讀會
  　第三十七　遠洋漁業奬勵法中改正法律案（原耕君提出）　第一讀會
  　第三十八　違警罪即决例中改正法律案（一松定吉君外二名提出）　第一讀會
  　第三十九　工場法中改正法律案（千葉三郎君外五名提出）　第一讀會
  　第四十　勞働組合法案（鈴木文治君提出）　第一讀會
  　第四十一　刑の執行又は勾留に因る補償に關する法律案（宮古啓三郎君外九名提出）　第一讀會
  　第四十二　陪審法中改正法律案（横山勝太郎君外三名提出）　第一讀會
  　第四十三　衆議院議員選擧法中改正法律案（小久江美代吉君外四名提出）　第一讀會
  　第四十四　衆議院議員黨籍變更に關する法律案（小久江美代吉君外四名提出）　第一讀會
  　第四十五　牧野法案（中島鵬六君外一名提出）　第一讀會
  　第四十六　健康保險法中改正法律案（西尾末廣君提出）　第一讀會
  　第四十七　國定教科書官給法案（樋口秀雄君外六名提出）　第一讀會
  　第四十八　耕地整理法中改正法律案（三輪市太郎君外十二名提出）　第一讀會
  　第四十九　農會法中改正法律案（三輪市太郎君外十二名提出）　第一讀會
  　第五十　行政執行法中改正法律案（一松定吉君外四名提出）　第一讀會
  　第五十一　膠州灣舊租借地引渡に關する條約實施に伴ふ損害の補償に關する法律案（小谷節夫君外三名提出）　第一讀會
  　第五十二　辯護士法中改正法律案（岡本實太郎君外六名提出）　第一讀會
  　第五十三　司法代書人法中改正法律案（坂本志魯雄君外三名提出）　第一讀會
  　第五十四　未成年者飮酒禁止法中改正法律案（星島二郎君外六名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五十五　未成年者飮酒禁止法中改正法律案（田中養達君外六名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五十六　樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案（沖島鎌三君外二名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第五十七　樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案（小池仁郎君外五名提出）　第一讀會の續（委員長報告）
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• 001・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　諸般ノ報告ヲ致サ
  セマス
  〔書記官朗讀〕
  一今十五日田中內閣總理大臣ヨリ〓瀨副議
  長宛左ノ通發令相成タル旨通牒ヲ受領セ
  リ
  動三等川原茂輔
  議院法第三條ニ依リ衆議院議長ニ任ス
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  大正十四年法律第五十一號中改正法律案
  (關東州ノ生產品輸入稅免除等ノ件)
  救護法案
  (以上三月十四日提出)
  -議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  下仁田三反田間鐵道敷設ニ關スル建議案
  提出者山邊常重君
  名古屋市ニ少年審判所竝矯正院設置ニ關
  スル建議案
  提出者
  椎尾辨匡君鬼丸義齋君
  外客誘致ニ關スル建議案
  提出者
  田中万逸君粟山博君
  岸衞君
  福島市ニ高等蠶絲學校設置ニ關スル建議
  案
  提出者
  粟山博君菅村太事君
  比佐昌平君林平馬君
  川俣浪江間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
  提出者
  粟山博君菅村太事君
  比佐昌平君林平馬君
  奧羽線福島米澤間電化速成ニ關スル建議
  案
  提出者
  粟山博君菅村太事君
  比佐昌平君林平馬君
  野岩羽鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者
  高橋元四郞君佐藤啓君
  菅村太事君林平馬君
  日足鐵道速成ニ關スル建議案
  提出者高橋元四郞君
  日光國立公園設定ニ關スル建議案
  提出者高橋元四郞君
  豫後備兵召集時期ニ關スル建議案
  提出者高橋元四郞君
  農業倉庫相互保險ニ關スル建議案
  提出者
  池田龜治君胎中楠右衞門君
  土井權大君板谷順助君
  用排水幹線改良事業ニ關スル建議案
  提出者
  胎中楠右衞門君土井權大君
  板谷順助君池田龜治君
  相模川左岸用排水改良事業ニ關スル建議
  案
  提出者
  胎中楠右衞門君池田龜治君
  三輪市太郞君板谷順助君
  地租委譲ノ場合ニ於ケル耕地整理施行地
  ノ特典維持ニ關スル建議案
  提出者
  池田龜治君土井權大君
  胎中楠石衞門君板谷順助君
  東京府松江町ニ高等工業學校設置ニ關ス
  ル建議案
  提出者佐藤正君
  聯隊區管轄區域變更ニ關スル建議案
  提出者
  豐田收君土井權大君
  沖島鎌三君
  鳥取縣三朝ニ溫泉治療〓究所設置ニ關ス
  ル建議案
  提出者
  豐田收君沖島鎌三君
  平賀周君
  智頭佐用間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
  提出者
  豐田牧君土井權大君
  原惣兵衞君
  千代川改修工事速成ニ關スル建議案
  提出者
  豐田牧君沖島鎌三君
  (以上三月十四日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  養蠶業竝組合製絲獎勵助長ニ關スル質問
  主意書
  提出者岡崎久次郞君
  (以上三月十四日提出)
  〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一昨十四日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
  議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
  三三五山崎傳之助君
  四三六大西正幹君
  一昨十四日辭任シタル常任委員左ノ如シ
  第四部選出
  豫算委員松實喜代太君
  一昨十四日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
  シ
  衆議院議員選舉法中改正法律案(床次竹
  二郎君外十九名提出)委員
  委員長粕谷義三君
  理事名川侃市君理事中谷貞賴君
  理事戶澤民十郞君理事勝田永吉君
  理事奧村千藏君理事沼田嘉一郞君
  製鹽地整理ニ關スル法律案(政府提出)委
  員
  委員長吉木陽君
  理事岡本實太郞君理事堤〓六君
  一昨十四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
  シ
  衆議院議員選擧法中改正法律案委員
  辭任工藤鐵男君補闕山田毅一君
  辭任作田高太郞君補闘松田竹千代君
  辭任山田毅一君補闘工藤鐵男君
  辭任松田竹千代君補闘作田高太郞君
  肥料管理法案外一件委員
  辭任河崎助太郞君補闘西尾末廣君
  辭任栗原彥三郎君補闘木村小左衞門君
  鐵道敷設法中改正法律案委員
  辭任井上剛一君補闕岸衞君
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案委
  員
  辭任高田耘平君補闕松田竹千代君

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• 002・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　是ヨリ會議ヲ開キ
  マス、諸君、本日川原茂輔君ガ衆議院議長
  ニ勅任ニナリマシタ、仍テ玆ニ御紹介ヲ申
  上ゲマス(拍手)
  〔川原茂輔君登壇〕

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• 003・川原茂輔

  ○川原茂輔君　諸君、私ハ本日議院法第三
  條ニ依リ衆議院議長ニ任ズトノ勅命ヲ拜シ
  マシタ、是レ諸君ノ御推薦ニ基クノデゴザ
  イマシテ、深ク感謝致ス所デアリマス、唯
  微力短才、此重任ヲ全クスルヤ衷心甚ダ懼
  ルヽ所デゴザイマスガ、議院ノ法律規則竝
  典例ニ從ヒ、公半無私ヲ以テ職ニ當ルコト
  ハ神明ニ誓シテ言明致スノデゴザイマス
  (拍手)又議院ノ秩序ヲ保持シ、且ツ議院ノ
  神聖ヲ保チ、權威ヲ高カラシムル、コトニ關
  シマシテハ、私ノ宿志デゴザイマス、此點ニ付
  キマシテハ、固ヨリ議長ニ於テ最善ノ努力
  ヲ致シマスガ、獨リ議長ノミヲ以テ此目的
  ヲ達成スベキモノデハアリマセヌカラ、議
  員各位ニ於カセラレテモ此旨ヲ諒トセラ
  レ、相共ニ協力シ、以テ憲政ノ發達ニ裨益
  シタイト存ズルノデアリマス(拍手)幸ニ諸
  君ノ御助力ヲ仰ギマス、玆ニ就任ノ御挨拶
  ヲ致シマス(拍手)

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• 004・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　川原議長就任ニ付
  キ、年長者ヨリ御挨拶ガアリマス-犬養
  毅君-此場合川原議長ニ御著席ヲ願ヒマ
  ス
  〔〓瀨副議長議長席ヲ退キ川原議長代
  リ著席〕
  〔犬養殺君登壇〕

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• 005・犬養毅

  ○大養毅君　私ハ年長ノ故ヲ以テ、諸君ヲ
  代表致シテ議長ニ御挨拶申上ゲマス、此度
  川原君ガ大多數ヲ以テ議長ニ御當選ナサレ
  マシタコトハ、私共最モ欣幸ニ存ジマス、
  只今川原君ノ御述べニナッタ通リ、最モ重大
  ナル職務、殊ニ近來ノ議會ノ有樣ヲ見マス
  ルト、非常ナル互ノ熱心討論ノ末ガ、動モ
  スルト大紛擾ヲ起ス、此大紛擾ハ或ハ議院
  ノ品位、國ノ品位ニ關係スルコトハナイカ
  ト云フコトハ、御互ニ非常ニ憂慮シテ居ル
  所デアリマス、此際ニ立タレテ此秩序ヲ保
  タレルト云フコトハ、實ニ議長トシテ重大
  ナル責任ト存ジマスル、吾々ニ於テモ勿論
  及ブダケノ力ヲ以テ嚴肅ニ、靜肅二秩序ヲ
  保ツト云フコトヲ致シタイト存ジマス、此
  意味ヲ以テ謹ンデ議長ノ御當選ニ對シ、厚
  ク御挨拶ヲ申上ゲマス(拍手)

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• 006・川原茂輔

  ○議長(川原茂輔君)　議事進行ニ付テ發言
  ヲ求メラレマシタ-原夫次郞君
  〔原夫次郞君登壇〕

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• 007・川原茂輔

  ○議長(川原茂輔君)　原君ノ登壇中デアリ
  マスガ、此際一言致シマス、議長拜命ニ付
  キマシテ、是ヨリ各宮家ニ伺侯致ス爲メ、
  暫時副議長ニ此席ヲ讓リタイト思ヒマス
  〔川原議長議長席ヲ退キ〓瀨副議長代
  リ著席〕

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• 008・原夫次郎

  ○原夫次郞君　諸君、先日本議場ニ於ケル
  颱風一過ノ後ヲ受ケマシテ、本日目出度ク
  議長御就任ニナッタ其當席ニ於テ、私ガ玆ニ
  議事進行ト致シテ申上ゲナケレバナラヌ事
  柄ハ、私ト致シマシテモ甚ダ不本意ノ事デ
  アリマス、併ナガラ事柄ハ當議場ニ於ケル
  去ル十二日、十三日ニ起リマシタル我ガ議
  院政治、立憲政治ノ運行ニ關シテ、最モ重
  大デアル所ノ問題ニ付キマシテ、〓瀨副議
  長ノ處置ニ對シテ、玆ニ發言ヲ致ス次第デ
  アリマス、事柄ハ大體ニ於テ政友會ノ進行
  係デアル所ノ原惣兵衞君ノ、彼ノ一切ノ發
  言禁止ニ關スル動議ノ其處置ノ點デアリマ
  ス、卽チ去ル十二日床次竹二郞君外十九名
  ノ提案ニ係ル衆議院議員選擧法中改正法律
  案ノ議事進行中、原惣兵衞君カラ提案ニ係ッ
  タル此動議ナルモノハ同君ニ依テ當議場
  ニ說明セラレタル所ノモノガアルノデアリ
  マス、卽チ「私ハ現在議題トナッテ居リマス
  ル衆議院議員選舉法中改正法律案ヲ委員ニ
  付託スルマデ委員付託ノ動議、質疑終局ノ
  動議、討論終局ノ動議ノ外議事進行ノ發言、
  身上辯明、緊急質問、懲罰ノ動議、不信任
  決議案、其他一切ノ動議及發言ヲ許スベカ
  ラズト云フコトノ動議デアリマス」此動議
  ヲ提出致シテ置キマシテ、此動議ニ對シマ
  シテハ私カラ反對ノ討論ヲ致ス通告ヲ爲シ
  テ置イタノデアリマス、然ル所原惣兵衞
  君ハ更ニ此動議ニ對シテ「此動議自體ニ對
  シテ再ビ討論ヲシナクテハナラヌト云フヤ
  ウナコトニナッタナラバ、永久ニ動議、決議
  ニ對シ、ソレニ皆討論々々ト言ッタナラバ
  本案ノ趣意ハ全ク空シクナルモノデアルト
  言ハンケレバナラヌノデアリマスカラ、果
  シテ左樣ニ私自身ノ此動議ニ對シテ討論ヲ
  必要トスルカセヌカト云フコトハ、少クト
  モ採決ヲ以テシタナラバ十分デアル、討論
  ノ必要ハ斷ジテナイト私ハ思フノデアリマ
  ス、此意味ニ於テ議長ニ若モ御不審ノ點ガ
  アルナラバ私ノ動議自體ヲ果シテ討論ニ
  付スベキガ至當デアルカ、付シナイノガ至
  當デアルカト云フコトヲ、此場合採決ニ依
  テ其趣旨ヲ明ニセラレンコトヲ願ヒマス」
  ト云フ重ネテノ動議ヲ附加セラレタノデア
  リマス、私ハ此發言封ジノ動議ハ更ニ討
  論ヲ用ヒナイデ之ヲ院議ニ諮ルベシト云フ
  重ネテノ是ハ動議デアルト見ナケレバナラ
  ヌノデアリマス、果シテ然レバ原惣兵衞君
  ノ動議自體ハ、其動議其モノニ明ニ致サレ
  テ居ル如ク、一切ノ動議ハ之ヲ爲スベカラ
  ズト云フ動議ヲ出シテ置キナガラ、之ニ對
  シテ私ガ其動議ニ對シテ討論ノ通告ヲナス
  ヤ否ヤ、更ニ自己自身ニ於テモ發言ノ動議
  ヲ提出スルコトガ出來ナイノニ拘ラズ、此
  動議ニ對シテハ討論ヲ許サナイト云フコト
  ノ重ネテノ動議ヲ提出スルト云フコトハ
  如何ナル矛盾ノ動議デアルカ、又當日〓瀨
  副議長ガ此原惣兵衞君ノ發言封ジノ動議ニ
  對シテ、更ニ討論ヲ許サナイト云フコトノ
  動議ヲ、更ニ提出致スコトヲ看過スルニ至ッ
  テハ、果シテ如何ナル趣意ニ依テ斯ノ如キ
  重ネテノ動議ヲ提出セシメタノデアリマス
  カ、是ガ私カ〓瀨副議長ノ此動議ノ處置ニ
  對シテノ第一點ノ質疑デアルノデアリマス、
  是ハ十三日ノ夜ノ事柄デアリマスルガ、此
  動議ノ處理ニ付テハ〓瀨副議長ハ之ヲ翌
  日ニ廻サレタノデアリマシテ、翌十四日ニ
  私ハ如何ニ是ガ處置セラルヽモノデアルカ
  ト云フコトヲ、心窃ニ議場デ傍觀ヲ致シテ
  居ッタノデアリマスルガ、〓瀨副議長ハ十四
  日ニ於キマシテハ、此動議ノ取扱方ニ付テ
  ハ、原惣兵衞君ノ討論ヲ用ヰナイト云フ後ノ
  動議ハ、矢張私ト同意見デアッテ、ソレハ動
  議トシテ議場へ出スベキモノデハナク、寧
  口是ハ議長ガ職權トシテ、職權ヲ以テ院議
  ニ諮ルト云フコトデ、投票ヲ用ヰラレテ採
  決ヲセラレタノデアリマス、若シ斯ウ云フ
  形式ヲ執ラルヽナラバ、其前十三日ニ於テ、
  原惣兵衞君ガ此討論ヲ用ヰナイト云フコト
  ノ動議ノ趣意ヲ、此本演壇ニ於テ說明セシ
  ムベカラザルコトニ屬スルコトヽ思フノデ
  アル、然ルニ一旦原惣兵衞君ヲ立タシメテ、
  此演壇ニ其二重ノ動議ヲ演說セシメテ置イ
  テ、而シテソレヲ更ニ議長ガ職權ヲ以テ、
  直ニ是ガ採決ヲ議場ニ諮フト云フコトハ、
  是ハ果シテ如何ナル御趣意ニ依テ斯ノ如キ
  處置ヲ執ラレタモノデアルカドウカト云フ
  コトガ、是ガ第二點ノ質疑ニ屬スルノデア
  リマス、以上ハ大體私ノ問ハントスル形式
  ノ點デアリマスルガ、若シ夫レ私ガ本日茲
  ニ最モ力ヲ籠メテ問ハナケレバナラナイ事
  柄ハ、原惣兵衞君ノ第一段ニ於ケル、斯ノ
  如キ發言封ジノ動議ナルモノハ、亂暴至極
  ナル動議デアッテ、我ガ憲法政治ノ上ニ於
  テ、議院政治ノ上ニ於テ斷ジテ許スベカラ
  ザル動議ト考ヘルノデアリマス、此原君ノ
  動議其モノハ、先程讀上ゲマシタガ如ク
  先ヅ委員付託ノ動議デアルトカ、或ハ質疑
  終局ノ動議デアルトカ、或ハ討論終局ノ動
  議デアルトカ、是等ハ假令恕スルト致シマ
  シテモ、又議事進行ノ發言ヲ止ムルト云フ
  コトニ於キマシテハ、之ニ付テハ先例ガア
  ル所デアリマスルカラ、假ニ之ヲ許スト致
  シマシテモ、其他ノ一身上ノ辯明デアルト
  カ、或ハ緊急ノ質問デアルトカ、懲罰ノ動
  議デアルトカ、不信任決議案デアルトカ、
  其他一切ノ動議ヲ提出スルコトハ出來ナイ
  ト云フコトハ、何タル動議デアリマセウ、
  我ガ議院法ノ此先例カラ見マシテモ、斯ル
  似寄ッタル動議ガ-我ガ憲法政治開ケテ
  カラ茲ニ五十六回デアルガ、未ダ曾テ斯ノ
  如キ動議ガ先例ニナッテ居ルモノハ無イノ
  デアリマス、是迄ノ先例ニ依ルト、第三十
  一囘ノ議會ニ於キマシテ、大正三年二月十
  四日、第二休憩後ノ會議ニ於テ、伊藤大八
  君カラ動議ヲ提出致シテ居ル、此動議ニ對
  シテハ質問ヲ許サナイト云フ先例ガアルノ
  デアリマス、又茲ニ右諸案以外ノ一切ノ動
  議ト云フコトガアルガ、是ハ不明ニ屬シテ
  居ル、質問ヲ許サナイト云フコトノ動議ニ
  相成。シテ居ル、次デ又五十一一囘議會、卽チ昭
  和二年三月三日、政府提出ノ震災手形補償
  公債法案外、一件ノ第一讀會ニ於テ、菊池謙
  二郞君、東武君、高橋熊次郞君等カラ、議
  事進行ニ付テ發言ノ通告ニ對シテ、井本常
  作君カラ議事進行ニ付テノ發言ヲ禁止スル
  ト云フコトノ動議ガアルノデアリマス、此
  動議以外ニ於キマシテハ、未ダ先例ノ認ム
  ベキモノハナイ、又ナイ筈デアル、議會政
  治ハ年々歲々向上發展シテ行カナケレバナ
  ラヌ、昭和ノ今日ニ於テ斯ノ如キ非立憲
  極マル吾々ノ言論ヲ抑壓致シテ、一切
  ノ動議ヲ提出スベカラズト致シテ、吾
  吾議員ノロヲ金縛リニ致シテ置イテ、
  サウシテ自分等ノ提案ニ係ル法案ノ議事ヲ
  進行セシメヤウト致ス所ノ非立憲極マル、
  亂暴此上モナイ動議デアルト謂ハナケレバ
  ナラヌ、吾々立法ニ參與シテ居ル所ノ第一
  ノ職責ハ、吾々ハ言論ニ依テ總テノ法律案
  ヲ愼重審議致サナケレバナラナイ重大ナル
  責任ヲ有シテ居ル、故ニ議院政治ヲ稱シテ
  言論ノ府デアルト申シテ居ルノモ、全ク此處
  カラ出テ居ル所デアル、又憲法ノ規定ニ依
  リマスルト云フト、總テ我ガ帝國議會ノ議
  事ノ運行ニ關シテハ之ヲ議院法若クハ議
  院規則ニ譲シテ居ルノデアル、議院法、議院
  規則ヲ見マスルト云フト、例ヘバ懲罰ノ動
  議ノ如キモノハ是ハ縱令議員ガ發言中デ
  アッテモ、何時デモ懲罰動議ハ之ヲ提出スル
  コトガ出來ルト云フ法律ノ規定ガアルノデ
  アル、又其他議事進行ニ致シテモ、或ハ不
  信任案ノ決議案ニ致シテモ、其他苟モ動議
  ナルモノハ、原則トシテ何時デモ是ガ提出
  ガ出來ナケレバナラヌノデアル、然ルニモ
  拘ラズ此一切ノ動議發言ヲ禁止スルト云フ
  ヤウナコトハ、是ハ我ガ憲法ノ規定カラ見
  マシテモ、議院法ノ規定カラ見テモ衆議
  院規則カラ見テモ、卽チ法律ノ規定其モノ
  カラ見マシテモ、亦法律ノ精神カラ見マシ
  テモ、斷ジテ斯ノ如キ亂暴ナル動議ヲ許容
  スベキ事柄デハナイノデアリマス(拍手)私
  共ハ原惣兵衞君ノ斯ノ如キ動議ハ、是ハ根
  本ニ照シテ其動議自體ガ無效ノモノデアル
  ト考ヘテ居ルノデアル(拍手)此根本ニ於テ
  無效ナル動議ヲ提出致シタル場合ニ於テ
  其處ニハ直ニ書記官長ヲ經テ議長ノ手
  許ヘジルノデアル其場合ニ於テ先ヅ書記
  官長ハ其動議自體ヲ宜シク公平ニ判斷ヲ致
  シテ、若シ其動議ガ餘リニ議院法ヲ無視
  シ憲法ヲ無視シ、我ガ憲法政治ヲ賊スル
  ヤウナ動議デアルナラバ之ニ對シテ注意
  ヲ施シ、若シ注意ヲ肯カナケレバ斯ノ如
  キ動議ハ斷ジテ此演壇ニ上スコトハ出來ナ
  イモノデアルト思フノデアル、然ルニ書記
  官長ハ之ヲ看過シ、而シテ議長ニ於テ又更
  ニ斯ノ如キ動議ヲ有效ナルモノトシテ之ヲ
  取扱アニ至。テハ、私ハ田時議長ノ法律的精
  神ガ何處ニアッタノデアルカト云フコトヲ、
  非常ニ疑ヲ持シテ見テ居タノデアリマス、憲
  法議院法、議院規則ニ照シテ、洵ニ其不
  法デアルト云フコトハ明デアルノデアリマ
  ス、更ニ又之ヲ常識ノ上カラ見マシテモ、
  如何ニ常識ノナイ人間デアッテモ、斯ノ如キ
  動議ヲ提出ヲ致シテ、玆ニ法律案ヲ提案ヲ
  致シテ、又極端ニ申セバ今日以後政府案
  若タハ議員提出案ニ付テハ、一切ノ質問モ
  之ヲ爲スコトガ出來ナイ、一切ノ討論モ爲
  スコトガ出來ナイ、唯表決ダケデ以テ之ヲ
  爲スコトガ出來ルト云フ、〓括的ナ決議モ
  之ヲ爲スコトガ出來ルト致シマシタナラ
  バマルデ此議院政治ト一云フモノハ闇ト
  調ハナケレバナラヌ、斯ノ如キドウモ亂暴
  狼藉極マル所ノ動議ヲ、玆ニ吾々ガ看過セ
  ナケレバナラヌト一云フコトハ是ハ何處カ
  ラ出發致シテ居ルカト言ヒマスルナラバ
  是ハ卽チ政友會ト稱スル多數ノ團體ガ、唯
  勢ニ乘ジテ斯ノ如キ亂暴ナル決議ヲ爲スモ
  ノデアルノデアリマス、之ヲ看過スル所ノ
  議長ハ、私共ハ其處置ヲ甚ダ疑感ヲ以テ迎
  ヘテ居ルノデアリマス、之ヲ法律上カラ見
  マシテモ、實際ノ常識カラ判斷ヲ致シテモ、
  今日斯ノ如キ亂暴狼藉極マル所ノ動議ヲ看
  過セナケレバナラヌト云フコトハ洵ニ我
  ガ憲法政治ノ發達ノ上カラ悲マザルヲ得ナ
  イノデアリマス(拍手)昔雷電爲右衞門ト云
  フ相撲取ガアッタノデアル、其雷電ニハ門ト
  云フ手ガアッタ、政友會ハ其門ノ手ヲハメ
  テ、アノ衆議院議員選擧法中改正法律案ヲ
  一擧ニシテ通過セシメント致シタ、斯ウ云
  フヤウナ亂暴ナ手ハ、アノ雷電爲右衞門ノ
  ヤウナカ士ニ對シテハ、相撲道ニ於テモ禁
  物デアッタト云フコトヲ吾々聽イテ居ル(拍
  き·政友會ハ今日多數黨デアル、其多數黨
  ノカヲ以テサヘスレバ何デモ通レルト考ヘ
  テ、亂暴至極ナコトヲヤルト云フコトハ
  果シテ吾々ハ之ヲ看過スルコトガ出來ルカ
  ドウカ、吾々,少數黨ト致シテハ-議院政
  治ノ上ニ吾々少數黨ト致シテハ、其武器ハ
  唯吾々ノ言論デナケレバナラヌ(拍手)又
  多數黨ノ武器ナルモノハ固ヨリ是ハ數デ
  アル、少數黨ノ武器デアル所ノ言論ヲ封ジ
  テ、自己ノ持ッテ居ル多數ノ力ニ依テ、何デモ
  カンデモ此立憲政治ノ逆行ニ棹サヽントス
  ルコトハ、何タル事柄デアルノデアリマセ
  ウカ(拍手起リ發言スル者多シ)現ニ此動議
  ハ衆議院議員選舉法中改正法律案ガ本議場
  ニ提案ニナッタル去ル九日ニ於テ、齋藤君ノ
  質問前ニ於テ、既ニ政友會カラ此亂暴ナル
  動議ヲ提案致シタノデアル、然ル所アノ議
  場ノ大混亂ヲ來スニ至ッテ、遂ニ本議場ハ休
  會ノ已ムナキニ至リ、而シテ各派交涉會ト
  ナッテ、各派交涉會ノ結果、遂ニ政友會ガ此
  提案ヲ致シタルコトノ非ヲ覺シテ、此提案ヲ
  撤回致シタノデアル、是モ明ナル事實デア
  ル(拍手)此撤回ヲ致シタト云フコトハ、政
  友會ガ大ニ良心ニ省ミテ斯ノ如ク撤回ヲ致
  シタノデアル(拍手)此提案ヲ致シテ置イ
  テ、而シテ愈、質疑ニ這入リマスト云フト、
  其提案ノ條件ト致シテハ、相當ナル質疑ハ
  野黨ヲシテ爲サシムルト云フコトノ條件ニ
  依テ、アノ議事ヲ進行セシメタノデアリマ
  ス、然ル所唯僅ニ齋藤君ヲ質問セシメ、亀
  井君ヲ質問セシメ、唯二人ノ質問ニ依テ之
  ヲ打切ラウト致シタ、ソコデ本議場ハ再ビ
  險惡トナッタノデ、其場合ニ又政友會ニ於テ
  ハ先キノ門ノ手ヲ此場合ニ出シタノデア
  ル、洵ニ不信義極シタル提案ノ動機ト謂ハザ
  ルヲ得ナイ、私共ハ此點カラ見マシテモ、
  一事不再議ノ原則カラ見テモ、政友會ノ斯
  ノ如キ動議ナルモノハ亂暴至極ナルモノデ
  アルカラ、我ガ憲法政治ニ副ハナイモノデ
  アルト云フ、良心ノ反動カラ撤回ヲ致シテ
  置キナガラ、改メテ更ニ斯ウ云フ案ヲ出ス
  ト云フコトハ是ハ言語道斷ノコトデアラ
  ネバナラヌ、其一切ノ事情ヲ能ク承知セラ
  レテ居ル所ノ〓瀨副議長ニ於テ、更ニ斯ノ
  如キ動議ヲ取扱フコトニ於テ、普通動議ノ
  取扱ノ如ク之ヲ取扱ッタト云フコトハ、洵ニ
  吾々ハ我ガ衆議院ノ爲ニ悲マザルヲ得ナイ
  事柄デアルノデアリマス、一體我ガ議會政治
  ニ於キマシテ、色ミナ法規典例ガアル、色
  色ナ是迄先例モアル、併ナガラ其先例中デ
  惡先例ガアッタナラバ、宜シク之ヲ議會政治
  ノ進歩ノ爲ニハ、捨テルモノハ捨テ、取ル
  ベキモノハ取シテ、大ニ我ガ憲法政治ノ有終
  ノ美ヲ圖ルコトニ努メナケレバナラヌノデ
  アル、然ルニ〓瀨副議長ノ執ラレタル所ノ
  アノ處置ト云フモノハ吾々ハドウシテモ
  解スルコトガ出來ナイ、若シ斯ノ如キ動議
  ガ先例ト相成ルヤウナコトデアリマスナラ
  バ、遂ニ我ガ憲法政治ハ國民ノ爲ニ呪ハル
  ルコトニナルノデアル憲法政治ノ逆轉是
  ヨリ甚シキハナイノデアル、又我ガ議會政
  治ヲ議員ノ一人ニ依テ、或ハ議員ノ集團ニ
  依テ逆轉ヲ致スト云フコトハ、吾々ハ到底
  忍ブコトガ出來ナイノデアリマス、ソコデ
  此點ニ對シテ、〓瀨副議長ノ執リタル處置
  ニ付テ十分ナル辯明ヲセラレテ、斯ノ如キ
  動議ガ後日先例ニナリマスルト云フコトヲ
  望マザルト同時ニ、此先例ト云フモノハ
  ドウ云フ所カラ出發致シタモノデアルト云
  フコトヲ、十分ニ後ノ人達ニ明ニシテ置ク
  必要上私ガ敢テ此質問ヲ致ス次第デアリマ
  ス

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• 009・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　此際議長ヨリ辯明
  申上ゲマス、原君ノ只今ノ御發言中、初メ
  ノ二點ハ、私ガ原惣兵衞君ノ動議ニ付キ討
  論ヲ許スヤ否ヤニ付テ採決シタコトニ關シ
  テ居リマス、第三點ハ、原惣兵衞君ノ動議
  自體ノ性質ニ關係致シテ居リマス、先ヅ第
  一、第二ノ點ニ付キ併セテ玆ニ辯明致シマ
  ス、議長ハ原君ガ此動議ニ付キ討論ヲ用ヰ
  ズシテ採決ヲ求メラレタ、其要求ニハ應ジ
  ナイノデアリマス、斯ノ如キ要求モ一種ノ
  動議デアリマシテ、原君ノ動議ンレ自身ニ
  反スルコトヽ思ヒマス、併ナガラ原惣兵衞
  君ハ自己ノ出サレタ動議ノ趣旨辯明ノ中ニ
  此種類ノ動議ソレ自身ハ討論ヲ用ヰナイ
  デ採決サルベキ性質ノモノデアルト云フコ
  トヲ、明瞭ニ言ッテ居ラレルノデアリマス、
  而シテ本院ノ規則中ニモ討論ヲ用ヰズシテ
  採決スル動議ハアルノデアリマス、例ヘバ
  衆議院規則百二十條ノ如キハ是デアリマ
  ス、唯併ナガラ原君御提出ノ此動議ニ付イ
  テ-此動議ノ如キモノニ付テ、討論ヲ許
  スベキヤ否ニ付テハ先例モアリマセヌ、而
  シテ是ハ重大ナ事デアリマスカラ、議長ニ
  於テ決シ兼ネマシタ、隨テ之ヲ院議ニ諮ッテ
  其性質ヲ定メタノデアリマス、而シテ原夫
  次郞君ソレ自身モ、此院議ニ付テハ投票ヲ
  サレテ居ルノデアリマス、私ハ間誤ッタ措置
  ヲ爲シタトハ今以テ考ヘテ居リマセヌ、第
  三ノ原惣兵衛君御提出ノ動議其モノヽ合法
  性ニ付テノ御質問デアリマス、議長ハ憲法、
  議院法、衆議院規則ニ定メタルモノヽ外
  ハ本院ノ先例ヲ尊重スルコトヲ以テ信條
  ト致シテ居リマス、尤モ先例中ニ於テモ、
  明ニ憲法ニ反シ又ハ議院法ニ反シテ居ルモ
  ノガアッタナラバソレハ斷然從ハナイ積リ
  デアリマス、併ナガラ原惣兵衞君ノ此動議
  ハ、大正三年二月十四日、昭和二年三月三
  日ノ先例ニ從ッテ居リマス、是ハ原夫大郞君
  今御引用ノ通リデアリマス元來帝國憲法
  第五十一條ニ依リマスレバ、憲法並議院法
  ト牴觸セザル限リハ、内部整理ニ關シテハ
  本院ハ規則ヲ定メル自治權ヲ持ッテ居ルノ
  デアリマス、前記ノ先例ハ此自治權ニ從ウ
  タモノデアリマシテ、規則ノ上ニ於テハ別
  段違法トハ考ヘマセヌ、又他ノ立憲國ノ例
  ヲ調ベマシタガ、矢張是ト類似ノ事ハ何處
  ノ國デモヤッテ居ルヤウデアリマス、尤モ一
  昨日工藤君ノ議事進行ノ御發議ノ際議長ヨ
  リ申シマシタ通リ、立憲政治ハ寬容ノ態度
  ト自制ノ精神ニ依テノミ能ク運用サレルモ
  ノデアリマス、デアリマスカラ此種重大ナ
  ル動議ハ輕々ニ提出セラルベキモノデアリ
  マセヌケレドモ、旣ニ提出サレタ以上ハ、
  議長ハ之ヲ採決セナイ譯ニハ行キマセヌ、
  之ヲ以テ辯明ト致シマス

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• 010・原夫次郎

  ○原夫次郞君　誠ニ御答辯ハ有難ウゴザイ
  マスガ、私ハ此機會ニ議長ノ口ハ今ノ宣言ニ
  對シテ、更ニ極ク簡單ニ一言議事進行トシ
  テ發言ヲ許シテ戴キタイノデアリマス

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• 011・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　許シマス
  〔原夫大郞君登壇〕

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• 012・原夫次郎

  ○原夫次郞君　只今議長ノ御言明ニ相成リ
  マシタル第一點デアリマス、議長ハ先ヅ原
  惣兵衞君ノ發言封ジノ動議ニ對シテ、討論
  ヲ許スベキヤ否ヤト云フコトヲ院議ニ諮ラ
  レタノデアリマス、其院議ニ諮ラレタル場
  合ニ於テ、私モ反對ノ投票ヲ致シマシタコ
  トハ事實デアルノデアリマス、當議場ニ居ッ
  テ此院議ニ諮ラレタ場合ニ、反對デアル以
  上ハ反對ノ投票ヲナスト云フコトハ、是八
  議員ノ議權ニ屬スル、私ガ先程議長ニ御尋
  致シタ所ノ事柄ハ、サウ云フ事デハナイ、原
  君ノ其動議ヲ討論ヲ用〓ルカ用キナイカト
  云フコトヲ議場ニ諮ル其事ガ、議長トシテ聞
  違シタ處置デハナイカト、之ヲ御尋致シテ居
  ル、何トナレバ斯ノ如キ事柄ハ斷ジテ議場
  ニ諮ルベキモノデハナイ(「ソレハ意見ノ相
  違ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)其意見ノ由テ
  來ル所ヲ私ハ議長ニ御專致シテ居ルノデア
  ル、一體議院法、議事規則等ニ依リマスル
  ト議員カラ提出セラレタル動議ニ對シテ
  ハ原則トシテ之ニ討論ヲ許スト云フコト
  ガ當然ナ事デナケレバナラヌ、唯此場合ニ
  於テ提案者タル原惣兵衞君ガ、特ニ此動議
  ノ性質ニ鑑ミテ、此動議ニ對シテハ討論ヲ
  許シテ呉レルナト云フ附加シタル發言ガ
  アッタガ爲ニ、議長ハ之ヲ院議ニ諮ウタ譯
  デアルノデアリマスガ、若シ原君ノ此ノ附
  加シタル動議ヲ無視スルト云フコトデアリ
  マスナラバ議長ハ何デ之ヲ院議ニ諮フ必
  要ガアリマセウ、原則ニ戾シテ、ドウシテモ
  此動議自體ヲ討論ニ付シテ、サウシテ其討
  論ノ結果、更ニ計論ガ宜シキカ、計論ヲ否
  トスルカ、之ヲ議場ニ諮レバ宜シキ順序ニ
  相成ルノデアル、然ルニ議長ガ突如トシテ
  先ヅ討論スルガ宜シイカ、討論ヲシナイノ
  ガ宜シイカト云フコトヲ院議ニ諮ルナドト
  云フコトハ、議長ト致シテ是ハ處置宜シキ
  ヲ得ザルモノト私ハ考ヘテ居ル、之ヲ議長
  ニ御尋致シタノデアル、又實際ノ上カラ言
  ウテモ、斯ノ如キ亂暴ナル動議ヲ出シテ居
  ルノハ、卽チ政友會多數ノ人デアル、之ニ
  對シテ更ニ院議ニ諮ルト言ヘバ、ワシハ矢
  張多數ニ諮フコトニナッテ、其動議自體ガ提
  議ノ如ク決スルヤウナ處置ヲ議長ガ執ッタ
  ト云フコトガ、私ハ何トシテモ不可解デア
  ルト謂ハナケレバナラマノデアリマス(拍
  手)又第二ノ副議長ノ御闡明ト云フモノ
  モ、私ハ遺憾ナガラ一向其意味ガ分ラナイ、
  先例ニ依テヤラレルヨリ仕方ガナイト言フ
  ノデアルガ、先例デモ惡イ先例デアレバ、
  是ハモウ斷乎トシテ斥ケナケレバナラヌ、
  ドウシテモ憲政有終ノ美ヲ遂ゲヤウトスル
  ナラバ、我ガ議院政治モ大ニ進歩發達ヲセ
  シメナケレバナラヌ、議長ハ正シク其責任
  ニ在ル者デアル、デアリマスカラ斯ノ如キ
  亂暴ナル動議ハ、根本ニ於テ能ク議長ノ手
  許ニ於テ之ヲ精査シテ、然ル後之ヲ斥ケナ
  ケレバナラヌ筈ノモノデアルト思フノデア
  ル、此點ニ對シテ更ニ御面倒ナガラ、事ノ
  重大性ニ鑑ミテ、副議長ノ御闡明ヲ更ニ希
  望スル次第デアリマス

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• 013・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ハ重ネテ御發
  議ノヤウデアリマスガ、先刻議長ノ申上ゲ
  タコトニ依テ總テ包含サレテ居ルト思ヒマ
  ス、尙ホ速記等ニ依テ御精讀アランコトヲ
  希望致シマス-日程第一及第二ハ同一委
  員ニ付託シタル議案デアリマスカラ、一括
  議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アサ〕

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• 014・清瀬一郎

  ○副議長(清瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マく、日程第一、肥料管理法案、日程第
  二、肥料管理特別會計法案ヲ一括シテ、其
  第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
  求メマス~委員長松浦五兵衞君
  第肥料管理法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一肥料管理法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月八日
  委員長松浦五兵衞
  衆議院議長元田肇殿
  附帶決議
  曩ニ東洋室素肥料株式會社ノ所有ニ歸シ
  タル「ハーバー」式特許權ニ付同社ハ今尙
  生產ノ企畫ヲ爲サス徒ニ特許料ヲ徵シテ
  巨額ノ利ヲ征シ肥料價格騰貴ノ弊ヲ爲ス
  ニ過キス仍テ政府ハ速ニ相當ノ手段ヲ講
  シテ此ノ弊ヲ改ムヘシ
  第二肥料管理特別會計法案(政府提
  出第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一肥料管理特別會計法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月八日
  委員長松浦五兵衞
  衆議院議長元田肇殿
  〔松浦五兵衞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=14

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• 015・松浦五兵衞

  ○松浦五兵衞君　只今議題ニナッテ居リマ
  ス肥料管理法及其特別會計法、此二案ニ付
  テ委員會ノ經過結果ヲ御報告申上ゲマス、
  委員會ハ去ル四日ヨリ八日迄開キマシテ、
  其間頗ル綿密ニ詳細ニ質問應答ガアリマシ
  タガ、非常ニ是ハ長クナリマスカラ、細カイ
  點ハ總テ速記ニ讓リマスカラ御覽ヲ願ヒマ
  ス、其中極メテ主要ナル問題ト思ハレル所
  ノ三、四ノ點ニ付テ一應御紹介ヲ申上ゲマ
  ス、此委員會中民政黨ノ各位ハ全員殆ド皆
  御質問ニナリマシタ、政友會ヨリモ加藤
  君、永田君等ガ御質問ニナリマシタシ、第
  一倶樂部ノ諸君モ御質問ニナッテ居リマス
  カラ、餘リニ多人數ノ質問デアルカラ、質
  問應答者ノ御名前ハ申上ゲマセヌガ、主要
  ナル點ト思ハレマス先ヅ第一ハ、此肥料管
  理法ヲ何故之ヲ法律デ規定スルカ、法律ニ
  依ラナクテモ出來ルデハナイカト云フヤウ
  ナ意味ノ御質問ガアリマシタ、ソレニ對シ
  テ政府ハ、是ハ旣ニ相當長キニ亙ル所ノ計
  畫的事業デアルカラ、先ヅ其基礎ヲ確立シ
  テ置クコトガ必要デアリ、第二ニハ此規定
  ニ依テ其運用ノ範圍ヲ明確ナラシムルコト
  ガ必要デアルカラシテ、之ヲ法律デ規定ス
  ルト云フ答辯デアリマシタ、尙ホ其管理法
  ノ第一條ノ中ニ、今後管理スベキ含窒素化
  學肥料ニ付テ、之ヲ勅合ニ委ネタト一ムフコ
  トハ、今後興ルベキ此新肥料ノ營業者ニ對
  シテ、一種ノ脅威或ハ營業ノ自由ヲ妨害
  スルモノデハナイカト云フ御質問モアリマ
  シタ、之ニ對シテ政府ハ此含窒素ノ新肥料
  ハ今日以後ニ於テ、大ニ發達スルヤウニハ
  想像サレルケレドモ、併シ現在ニ於テハ極
  メテマダ僅デアッテ、法律デ規定スル迄ノ程
  度ニ達シテ居ラヌカラ、現在ハ之ヲ管理シ
  ナイノデアル、將來必要ナル場合ニハ之ヲ
  管理スルカモ知レヌカラ、其際ニ容易ナル
  爲ニ勅令ニ委ネタノデアルカラ、差支ナイ
  ト信ズル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、ツ
  レカラ次ニ管理スベキ肥料ヲ、主トシテ硫
  酸「アンモニア」ニ限ッタノハドウ云フ譯デ
  アルカ、是ハ近來此硫安肥料ト云フモノガ、
  非常ニ農家一般ニ普遍的ニ行ハレルヤウニ
  ナリ、且ツ今後ニ於テ此肥料ガ、肥料界ニ
  於テ主要ナルモノトナルベキ傾向ガアルノ
  ミナラズ、今後尙ホ大ニ年々曾加スベキ傾
  ガアルカラ、政府ハ先以テ之ヲ主トシテ管
  理スルコトガ適當デアルト信ジテ、斯クシ
  タノデアルト云フ說明デアリマシタ、ソレ
  カラ次ニ、此肥料管理法ノ目的ハ大體肥料
  價格ノ安定ト、及ビ配給ノ圓滑ニ在ル、然
  ルニ此法律ニ依テ、果シテ肥料價格ノ安定
  ガ出來ルカ、又殊ニ安定ト云フ意味ノ下ニ
  ハ價格ヲ下ゲル意味ヲ含ンデ居ルト思フ
  ガ、ドウデアルカ、斯ウ云フ質問ニ對シテ、
  政府ハ矢張ソレハ質問ノ通リ、無論價格ヲ
  成ベク下ゲルコトモ一ツデアル、同時ニ安
  定ト云フコトガ主デアル、而シテ其價格ヲ
  下ゲルニ付テハ、現在ノ市價ニ依テ、ソレ
  ニ政府ノ見込費用三圓八十錢ヲ加ヘテ賣却
  スル積リデアルカラ、現在ノ如ク或ハ問屋、
  或ハ仲買、小賣等、種々ナル手ヲ經テ手數
  料ヲ中間ニ澤山加ヘラレル所ノ現在價格ニ
  比スレバ、確ニ安クナルコトハ明デアル、
  故ニ安ク供給ノ出來ルコトハ當然デアル、又
  同時ニ政府ガ一定ノ數量ヲ自ラ管理シテ、直
  接ニ需要者ニ賣却スルノデアルカラ、其間
  價格ノ安定ハ確ニ出來ル、萬一價格ノ暴騰
  等ヲ來ス場合ニハ、特ニ政府ハ-普通ノ
  時ニ賣ルノヲ常時賣ト稱シ、暴騰ノ場合ニ
  賣ルノハ臨時賣ト稱シテ、特ニ政府ガ或ル
  程度ニ保管シテ居ル所ノ肥料ヲ臨時ニ賣出
  ス、其肥料ハ單リ需要者ノミナラズ、商人
  ニモ之ヲ一樣ニ賣出シテ價格ノ暴騰ヲ防
  ギ、矢張安定策ノ一ニ供スルノデアル、斯
  ウ云フ說明デアリマシタ、次ニ政府ガ肥料
  ノ管理ヲスル場合ニハ、現在ノ硫安肥料ノ
  生產者又ハ商人ノ職業ヲ奪フトカ、其事業
  ヲ壓迫スルコトニナラヌカト云フ質問デア
  リマシタ、之ニ對シテ政府ハ矢張、先ヅ第
  一ニ政府ガ管理スル硫安肥料ハ、是ハ內地
  生產品ヲ主トシテ買上ゲ、不足ノ分ヲ外國
  輸入品ニ俟ツノデアルカラシテ、決シテ生
  產業者ノ壓迫ニハナラヌ、同時ニ商人ニ對
  シテモ、政府ハ政府ガ取扱フベキ數量ト云
  フモノハ、今後年々曾加スルト云フ見込ヲ
  立ッテ居ル、一年五万噸宛曾加ノ豫想ヲシテ
  居リマスカラ、其增加ノ範圍ノ半分ニ於テ、
  政府ガ之ヲ管理シ、賣却シヤウトシテ居ル
  ノデアッテ、而モ是ハ其以引前ニ其價格ヲ公
  表シテ賣出スノデアルカラシテ、隨テ商人
  側ニ於テモ今日迄扱シタ肥料ハ、之ヲ扱フ餘
  地ガアルノミナラズ、政府ガ現ニ賣出ス價
  格モ、事前ニ明ニナッテ居ル譯デアルカラシ
  テ、商人側ニモ決シテ打擊ヲ與フルトカ、
  營業ヲ奪フト云フ如キコトハ、絕對ニナイ
  ト云フ御說明デアリマシタ、然ラバ政府ノ
  手デヤラレル場合ニ、此法律ノ目的ハ、肥
  料ノ配給ヲ圓滑ニスルト云フノニアルガ、
  果シテ政府ノ手一ツデ是ガ十分ニ圓滑ニ各
  地方へ配給ガ出來ルカト云フノデアリマシ
  タガ、之ニ付テ政府ハ、先ヅ主要ナル地方
  四、五箇所ニ出張所ヲ置イテ、其處ニハ民
  間倉庫ヲ借入レテ、肥料ノ保管場ニモシテ
  置クシ、殊ニ此肥料ハ先約ヲ取ッテ、サウシ
  テ各需要者へ渡スノデアルカラシテ、或
  製造地、或ハ輸入地等、其便宜ナ土地ヨリ
  シテ直ニ直接ニ需要者ノ方面へ送出スノデ
  アルカラ、存外容易ク配給ガ行ハレテ、決
  シテ配給ニ差支ヘルコトハナイ積リデア
  ル、殊ニ此肥料ノ需要時期ノ輻輳セル場合
  ニハ、又自ラ鐵道省等ヘモ交涉シチ、鐵道
  ノ運搬ニ於テモ更ニ一層ノ便宜ヲ圖ノテ貰
  フ積リデアリマスカラ、其點モ心配ニ及バ
  ナイト云フ說明デアリマシタ、ソレカラ肥
  料ヲ取扱ハシムルニ、主トシテ各町村地方
  ノ產業組合ニ取扱ハセルト云フコトデアル
  ガ、現在ノ產業組合ハ、洵ニ優秀ナルモノ
  モアラウケレドモ、又頗ル振ハナイモノモ
  アル、此產業組合ガ果シテ其地方々々ノ需
  要ニ對シテ、活動シ得ルダケノ資力ガアル
  カドウカ、是ハ疑問デハナイカト云フ質問
  モアリマシタ、之ニ對シテ政府ハ、勿論主
  トシテ產業組合ニ配給ヲ爲サシメルガ、若
  シ產業組合ノナイ場合ニハ、農會其他ノ機
  關ヲ利用スル、而シテ產業組合ハ現在ニ於
  テモ三價餘圓ノ遊資ヲ有シテ居ルシ、殊ニ
  今日マデ每年肥料ノ買入ノミニ使用シテ居
  ル所ノ產業組合ノ資本モ、五千餘万圓ニ上ッ
  テ居ル、今政府ガ行ハントスルノハ、僅二
  二千万圓デアル、隨テ產業組合ガ此位ノ肥
  料ノ取扱ニ困ルヤウナコトハ先ヅナイノミ
  ナラズ、政府ハ更ニ進ンデ庶民ノ產業組合
  ノ設置及ビ之ヲ助長スルコトニ付テハ、
  層ノ努力ヲスル積リデアルカラシテ、產業
  組合ニ取扱ハシメテ、決シテ不便ハ感ジナ
  イト云フコトヲ答ヘラレテ居ルノデアリマ
  ス、ソレカラ尙ホ最後ニ政府ガ斯ク肥料ヲ
  管理スル所ノ裏面ニハ、或ハ肥料ヲ專賣ニ
  スルトカ、若クハ肥料ノ官營ヲスルトカ云
  フヤウナ腹案ガアルノデハナイカ、斯ウ云
  フ質問ガアリマシタ、之ニ對シテ政府ハ、
  肥料ノ官營若クハ肥料ノ專賣ト云フ如キコ
  トハ、隨分世ノ中ニ色ミナ可否ノ論モアル
  シ、政府モ之ニ付テハ種々調查シテ居ッテ、
  現ニ幾多ノ考ハ持シテ居リマスケレドモ、併
  シ現在ニ於テハ尙ホ之ヲ專賣ニスルトカ、
  官營ニスルトカ云フ意見ハ、定メテ居ラヌ
  ト云フ說明デアリマシタ、大要斯ノ如クデ
  アリマシテ、此肥料管理案及ビ肥料管理特
  別會計法案ハ討論ニ移リマシテ、各別々ニ
  討論ニ移リマシタガ、之ニ對シテ民政黨ヲ
  代表シテ安倍君ヨリハ反對ノ御意見ガ出マ
  シタ、ソレカラ政友會ヲ代表シテ加藤君ヨ
  リハ賛成ノ御意見ガ出マシタ、採決ノ結果
  兩案共十四對十二、卽チ多數ヲ以テ原案通
  リ決定シタノデアリマス(拍手)而シテ其決
  定前ニ政友會ノ加藤知正君ヨリ附帶決議ガ
  出タノデアリマス、此附帶決議ト云フノハ
  斯ウ云フ文句デアリマス、「曩ニ東洋窒素肥
  料株式會社ノ所有ニ歸シタル「ハーバー」式
  特許權ニ付同社ハ〓尙生產ノ企畫ヲ爲サス
  徒ニ特許料ヲ徴シテ巨額ノ利ヲ征シ肥料價
  格騰貴ノ弊ヲ爲スニ過キス仍テ政府ハ速ニ
  相當ノ手段ヲ講シテ此ノ弊ヲ改ムヘシ」斯
  ウ云フノデアリマス、是ハ諸君モ御承知デ
  アリマセウ、日獨戰爭ノ結果トシテ、大正
  十年四月ニ政府ヨリ此「ハーバー」式肥料特
  許權ト云フモノヲ東洋窒素肥料會社ヘ拂下
  ゲタノデアリマス、是ハ四箇年ノ年期デ、
  無論此式ニ依テ我國ニ於テ肥料ヲ生產スベ
  キ條件ノ下ニ許シタノデアリマス、所ガ其
  後生產計畫ハ進行シナイ中ニ尙又期限ガ來
  マシテ、大正十四年四月更ニ改メテ十箇年
  ノ期限ヲ附シテ此權利ヲ與ヘタノデアリマ
  スルガ、而モソレガ今日マデ尙ホ內地ニ於
  テハ生產ノ方法ヲ立テズ、矢張此式ニ依ル
  所ノ生產物ヲ外國カラ輸入シテ、而モ此權
  利ヲ有シテ居ルト云フガ爲ニ、唯輸入シタ其
  輸入商カラ權利代ヲ一年ニ相當巨額此會社
  ガ取ッテ居ルサウデアリマス、是ハ此會社ガ
  自ラ内地ニ於テ生產スベキモノデアルニ拘
  ラズ、其生產ヲ爲サズシテ、唯自分ハ政府ヨ
  リ極メテ安價ニ讓リ受ケタル特許權ヲ利用
  シテ、其特許料ヲ莫大ニ收得シテ居ルト云
  フコトハ、如何ニモ穩當デナイト云フ質問
  應答ガアリマシタ、ソレニ附隨シテ現ハレ
  タ所ノ附帶決議デアリマス、而シテ此附帶
  決議ハ滿場一致ヲ以テ可決サレタノデアリ
  マス、以上御報告申上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=15

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• 016・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告ガアリ
  マス、之ヲ許シマス、小山谷藏君
  〔小山谷藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=16

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• 017・小山谷藏

  ○小山谷藏君　諸君、只今上程サレテ居リ
  マス肥料管理案ノ審議ニ付キマシテ、私ハ
  極メテ重要ナル唯、一點ニ付テ農林大臣竝
  大藏大臣ニ御尋ヲシテ置キタイノデアリマ
  ス、此程來委員會ニ於テ審議ヲ重ネマシタ
  其經過竝ニ結果ニ付キマシテハ、只今委員
  長カラ御報告ノ通リデアリマス、私モ委員
  ノ一人ト致シマシテ其審議ニ參與致シタノ
  デアリマスケレドモ、不幸ニ致シマシテ審
  議ヲ急ガレタ爲ニ、私ガ極メテ重大ナリト
  信ジタ一點スラモ、質問ヲ致ス機會ヲ持タ
  ナカッタノヲ甚ダ遺憾ニ考ヘタノデアリマ
  ス、此機會ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマスル
  ノハ、政府ガ此肥料管理ヲナサレル結果ト
  シテ、或ハ此法案ニ依テ管理サレル所ノ硫
  酸「アムモニア」肥料ト云フモノハ、年々其價
  格ガ低下シツヽアル現狀デアルノニモ拘リ
  マセズ、政府ガ管理スル結果トシテ、其市
  價ノ低下スル傾向ヲ或ハ阻止スルノデハナ
  イカト云フコトヲ憂フルノデアリマス、政
  府ノ御說明ニ依リマシテモ、市價ヲ安クス
  ルト云フコトニハ勿論努メルケレドモ、主
  要ナル目的ハ公平ナル分配卽チ有名ナル田
  中總理大臣ノ公平ナル分配ト云フ所ニ主眼
  ヲ置カレテアルノデアリマス、私ガ何故ニ
  此市價ヲ低下スル傾向ニ在ルモノヲ、政府
  管理ノ結果或ハ之ヲ阻止スルノデハナイカ
  ト云フコトヲ憂ヘルカト云フコトニ付キマ
  シテハ、少シク說明ヲサセテ戴キタイノデア
  リマス、御承知ノ通リ現在ニ於テハ主トシテ
  外國ヨリ輸入ヲ仰ギ、又我國ニ於キマシテモ、
  現今ハ相當ノ生產品ヲ出シテ居ルノデアリ
  マス、而シテ我國ノ生產ハ爰數年ヲ出デズ
  シテ、殆ド自給自足ノ狀態ニ至ルト云フコ
  トモ、是亦明瞭ニナッテ居ルノデアリマス、
  所ガ現在我國ノ生產ニ係ルモノハ現在ノ相
  場卽チ政府ノ管理案ニ現レタル所ノ市價標
  準ヲ見マシテモ、噸當リ百三十圓ト云フモ
  ノヲ押ヘテ居ルヤウデアリマスルガ、現在
  我國ノ生產原價ト申スモノハ凡ソドノ邊ニ
  アルカト云フコトハ、詳細ニ知ルコトハ出
  來マセヌケレドモ、輸入品ガ百三十圓見當
  デ賣買サレルト云フコトニ對照致シマシ
  テ、我國ノ生產品モ亦是ト大同小異ノ相場
  ヲ以テ取引サレテ居ル、而シテ外國ニ於ケ
  ル此種ノ新シキ工業品ハ、私ガ申上ゲルマ
  デモナク日進月步ノ狀態ヲ以テ〓究セラレ、
  生產費ハ低下セラレ、近キ將來ニ百三十圓
  ト云フモノガ百二十圓ニナリ、百圓ニナリ、
  或ハ百圓以下ニナルト云フコトハ決シテ想
  像スルニ難クナイノデアリマス、然ルニ我
  國ノ現在ノ生產狀態ハ、外國ノ特許ヲ輸入
  シテ、而シテ現在ノ生產費ヲ基礎トシタ生
  產機關ガ發達シテ居ラヌノデアリマスカ
  ラ、私ハ遺憾ナガラ外國ノ製造會社ト競爭
  シテ、此新シキ工業品ヲ我國ノ製造會社ハ
  外國ノヤウニ生產原價ヲ低下スルダケノ〓
  究モシナケレバ、設備モナイト云フコトヲ
  憂ヘルノデアリマス、而シテ斯ウ云フ點ニ
  觸レマシテ委員諸君ノ御質問ニ對シ、政府ハ
  ドウ云フ答辯ヲセラレタカト申シマスレバ、
  若シ外國ノ品物ガ-安イ物ガドンし
  ト這入ッテ來ル、或ハ我國ノ產業ト競爭セ
  シガ爲ニ外國品ガ「ダンピング」等ノ競爭ヲ
  スルヤウナコトガアリマシタ場合ニ於テ
  ハ、政府ハ關稅政策ヲ以テ之ニ對抗シテ、
  我國ノ產業ヲ保護スル積リデアルト、斯樣
  ニ御答辯ニナッタノデアリマス、從來我國ノ
  產業政策ト致シマシテ、斯ル場合ニ關稅政
  策ヲ以テ保護シテヤルト云フコトハ、從來
  ノ傾向ニ鑑ミマシテモ、其通リサセル御方
  針デアルト云フコトハ、察スルニ難クナイ
  ノデアリマス、果シテサウナリトスレバ、
  私ハ先程憂ヘマシタ如ク、將來此新工業ノ
  生產原價ヲ大ニ低下サレ、而シテ肥料ノ價
  格ヲ大ニ低下サレナケレバナラヌ筈ノモノ
  ガ、政府ノ肥料管理ノ爲ニ此低下スベキ卽
  チ農民ニ與フベキ利益ハ此法案ノ爲ニ近キ
  將來ニ大ニ阻止サレルノデハナイカト云フ
  コトヲ憂ヘザルヲ得ナイノデアリマス、諸
  君、此關稅政策ト云フコトニ付キマシテハ
  私ハ特ニ大藏當局ニ御尋シタイ、成程重要
  ナル產業ガ外國ノ競爭ノ爲ニ脅威ヲ受ケル
  ト云フヤウナ場合ニ於テハ、保護政策ヲ以
  テ之ヲ保護スルト云フコトモ、或ル場合ニ
  於テハ必要デアルト信ズル一人デアリマス
  ガ、元來此硫安工業ノ如キ新シキ事業ニ、
  事業會社ソレ自身ガ常ニ日進月步ノ工程ニ
  アルト云フコトヲ覺悟シテ、平生生產原價
  ノ低下ト云フヤウナコト、而シテ安イ外國
  品トノ競爭ニ耐ヘルト云フコトニ付テ、其
  事業會社ソレ自身ガ相當ノ準備ヲシ、用意
  ヲ致サナケレバナラヌコトハ申スマデモア
  リマセヌ、外國ニ於ケル斯ウ云フ新シイ工
  業會社ノ狀況ヲ見マスルト、例ヘバ自動車
  工業ニ致シマシテモ、或ハ「ラヂオ」ノ工業
  ノ如キ、或ハ化學工業ノ如キ、彼等ハ日常
  非常ナ熱心ト多大ノ經費ヲ投ジテ、新シキ
  〓究、新シキ發明ニ向ッテ努力ヲシテ居ルノ
  デアリマス、而シテ其利益金ノ大部分ハ之
  ヲ社内ニ保留シテ、其〓究費ニ投ズルコト
  ハ勿論ノコト、他ノ工業會社若クハ外國カ
  ラノ競爭ニ對シテ、平生保留シタル所ノ準
  備金ヲ以テ之ニ對抗シテ、自ラ戰フト云フ
  準備ガナカッタナラバ、其會社ハ成功シタモ
  ノトハ申サレナイノデアリマス、然ルニ我
  國ノ工業會社ハ、或ハ單ニ硫安工業ノミト
  ハ申シマセヌ、總テ全體ニ於キマシテ、斯
  ウ云フ日々ニ新タナル、而シテ三年カ五年經
  テバ其仕事ノ根柢ヲ覆サレルヤウナ進步ノ
  狀態ニアル工業ニ致シマシテモ、只〓御話致
  シマシタガ如ク、自ラ〓究調査ヲ進メルト
  云フヤウナコトニハ餘リ努力ガ乏シイノミ
  ナラズ、十分ナル保留ヲシテ他ノ競爭ニ備
  ヘルヤウナ準備ガ殆ドナイヤウニ見受ケラ
  レルノデアリマス、是ガ私ノ產業政策上殊
  ニ關稅政策ニ關聯致シマシテ、我國ノ產業
  ニ對シテ一大缺陷デハナイカト云フコトヲ
  常ニ憂ヘル所デアリマス、故ニ此關稅政策
  ニ關シテ特ニ大藏當局ニ御尋申上ゲタイノ
  ハ、斯ル場合ニ當ッテ政府ハ事業會社ンレ自
  身ヲ十分ニ御監督ニナリマシテ、只今申上
  ゲタガ如ク此新シキ日進月步ノ工業ハ、會
  社ソレ自身ガ外國ノ競争ニ耐ヘルダケノ準
  備ヲ平生シテ置カナケレバナラヌ筈デア
  ル、其程度ノ監督ハ十分ニ致サナケレバナ
  ラヌ筈デアル、若シ彼等自ラ其準備ヲ平生
  缺キマシテ、政府ノ保護ニ依テ、卽チ關稅
  ノ保護ニ依テノミ彼等ノ生命ヲ繋ガント欲
  スルヤウナ、不心得ナモノヲ默過シテ置キ
  マシタナラバ、獨リ苦ムモノハ農民デアリ
  マス、卽チ關稅保護ニ依テ高イ生產原價ハ
  大ニ低下サレテ居ルノニモ拘ラズ、關稅保
  護アルガ爲ニ高イ肥料ヲ續ケテ買ハナケレ
  バナラヌト云フ結果ニ陷ッテ、折角農林大臣
  御苦心ノ管理法案モ、此市價ノ低下ニ依テ
  安イ肥料ヲ供給スルト云フコトハ、何ゾ知
  ラン農民ニ高イ肥料ヲ供給セシメル結果ト
  ナルノデアリマス、此所謂關稅政策ニ對ス
  ル政府ノ御決心ハ只今御話申上ゲル如ク、
  會社ソレ自身ノ平生ノ事業監督マデ立人ツ
  テ十分ナル用意ヲセシメテ置イテ、而シテ
  尙且ツ外國ノ競爭ニ耐ヘラレザル時ニ於テ
  ノミ行フト云フ御考アリヤ否ヤ、此一點ダ
  ケ此機會ニ政府ニ御尋致シマシテ、私ノ質
  問ハ終ルノデアリマス(拍手)
  〔國務大臣山本悌二郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=17

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• 018・山本悌二郎

  ○國務大臣(山本悌二郞君)　只今小山君カ
  ラノ御尋ハ、我國ノ硫酸「アムモニア」工業
  ハマダ幼稚デアッテ、外國ノ製造ハ日進月步
  ノ勢ヲ以テ生產費ヲ低下シテ來ル勢ガアル
  ニ拘ラズ、我國ノ工業ハ之ニ伴フコトガ出
  來ナイ狀態ニアル、隨テ將來ニ於テハ關稅
  ヲ以テ之ヲ保護シナケレバナラナイト云フ
  コトニ立至ルノデハナイカ、其曉ニ於テハ
  之フ消費スル所ノ多數ノ農民ガ、高イ肥料
  ヲ買ハナケレバナラヌト云フコトニナルノ
  デアルガ、其曉ニ於テハ卽チ此管理案ト云
  フモノガ肥料ヲ安ク配付スルノデナクシ
  テ、却テ高ク配付スルト云フ結果ニ相成ル
  ノデハナイカ、是ガ御質問ノ要點デアッタ
  ヤウデアリマス、小山君ハ我國ノ肥料工業
  ヲ非常ニ悲觀サレテ居ルヤウデアリマスル
  ガ、私ハ左樣ニ今日ノ我國ノ窒素肥料工業
  ガ幼稚ナモノトハ考ヘテ居リマセヌ、隨テ
  外國品ガ漸次其生產費ヲ低下スレバ我國ノ
  工業モ亦之ニ追隨シテ改善ヲ加ヘ、其生產
  費ヲ低下スルコトガ出來得ルモノト見テ居
  リマス、併ナガラソレハ何レニ致シテモ、
  此管理法アルガ爲ニ肥料ガ高クナルト云フ
  コトハ、私ハドウ云フヤウナ連絡デ左樣ニ
  御考ニナルカト云フコトヲ了解致スニ苦ム
  ノデアリマス(拍手)我國ノ工業ガ若シ外國
  ノ工業ニ追隨スル能ハズシテ、關稅ヲ以テ
  之ヲ保護シナケレバナラナイト云フヤウナ
  コトガ到來スル、ソレハ管理法ガアッテモ
  ナクテモ、其必要ガ起ッタ場合ニハ、國家ノ
  政策トシテ之ヲ行ハナケレハナラヌカモ知
  レナイノデアリマス(拍手)假ニ此管理法ガ
  ナイトシテ見テ、外國品ガ澤山ニ、非常ニ
  安ク供給サレテ内地ニ入ッテ來ル、種
  「ダンビング」、一種ノ不當廉賣ヲ我國ニ向ッテ
  施ス場合ヲ想像致シマシタナラバ、我國ノ
  自國ノ產業ヲ保護スル上〓場ノ上ニ於キマシ
  テ、之ニ對スル所ノ方策ハ無論講ジナケレ
  バナリマセヌ、卽チ關稅ヲ以テ之ニ應戰ス
  ルト云フガ如キコトハ、確ニ其一ノ方法デ
  アラウト思ヒマス、其場合ニ假ニ此管理法
  ガナクテモ、ソレハ左樣ナ途ニ出デナケレ
  バナラヌノデアル、アッテモ矢張同ジコトデ
  アル、此管理法ノ運用ハ御承知ノ通リニ外
  國カラ輸入スル物、竝ニ內地デ製造サルヽ
  物ノ其時價ヲ以テ之ヲ購入シテ、ソレニ相
  當ノ金額ヲ附加致シテ、之ヲ農家ニ配付致
  スノデアリマスカラシテ、此管理法ノ爲ニ
  特ニ肥料ガ高クナルト云フコトハ、ドウシ
  テモ考へ得ラレナイノデアリマス(拍手)卽
  チ左樣ナ「ダンピング」ノ如キ場合ニ於テ、
  國ガ關稅ヲ以テ之ニ應戰シナケレバナラナ
  イト云フ場合ニハ、肥料ハ高クナリマスケ
  レドモ、ソレハ管理法ガナクテモ此途ニ行
  カナケレバナラヌノデアリマスカラ、管理
  法ト關稅ノ保護ト云フモノハ、直接ニハ其
  關係ハ何モアリマセヌ、隨テ管理法ト云フ
  法制ガアルガ爲ニ、將來肥料ヲ高クスル虞
  ガアルト云フコトハ、私ハ考ヘテ居リマセ
  ヌ(拍手)
  〔政府委員大口喜六君發壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=18

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• 019・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　小山君ノ大藏當
  局ニ對シマスル御問ハ、最早只今農林大臣
  ノ御答デ盡キテ居ルカト考ヘマスガ、應
  大藏當局ヨリモ御答致シタイト思ヒマス、
  硫酸「アムモニア」ニ對シマシテハ、只今ハ
  强イテ關稅ヲ掛ケテ保護致サナクテモ、我
  國ノ工業トシテ發達スベキモノナリト信ジ
  テ居ルノデアリマス、併ナガラ將來外國ガ
  益"工業ノ上カラ進步致シテ來ッテ、此上安イ
  硫酸「アムモニア」ヲ我國ニ入レルヤウニ
  ナッタナラバ、ドウナルカト云フ場合ニ當リ
  マスレバ、我國ノ工業ノ實際ヲ十分ニ〓究
  致シテ、ドウシテモ我國ノ工業トシテ茲ニ
  一段ノ保護ヲ加ヘナケレバナラヌ、保護ヲ
  加ヘルコトガ我國ノ國家產業ノ發展スル所
  以デアルト信ズレバ、其時初テ關稅ノコト
  ニ考へ及ブコトデアラウト思ヒマスガ、只
  今ハ其必要ナシト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、又委員會ニ於テ御問ノ場合ニ、或ハ政
  府ノ者ヨリ關稅ノコトヲ申述ベタカト存ジ
  マスガ、ソレハ結局外國ガ不當廉賣ヲ我國
  ニシテ參ッタ場合ハドウスルカ、斯ウ云フ意
  味デアラウト思ヒマス、相當ノ價格ヲ以テ
  參ルバカリデナク、不當ノ廉賣ヲシテ參ル
  場合ニハ、是ハ普通ノ國稅トハ御承知ノ通
  リ別デアリマシテ、同ジ關稅定率法ノ中ニ
  規定ガアリマスガ、所謂不當廉賣ニ對スル
  方策ニナリマスカラ、是ガ不當廉賣審査委
  員會ニ掛ケテ、其決議ニ依テ決セラレヽバ
  初メテ關稅ガ掛ケ得ラレルノデアリマス、
  現在大藏當局デハ斯樣ニ見テ居リマスカヘ
  ラ、是デ御答ハ盡キテ居ルト思ヒマス
  〔小山谷藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=19

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• 020・小山谷藏

  ○小山谷藏君　只今私ノ質問ニ對シテ大藏
  當局、竝ニ農林大臣ヨリ御答辯ガアッタノ
  デアリマスルガ、私ノ質問ニ對スル要點ニ
  ハ遺憾ナガラ觸レテ居ラヌヤウニ考ヘルノ
  デアリマス、私ハ「ダンピング」ノ場合ニ對
  スル關稅保護ノコトヲ御導シタノデハアリ
  マセヌ、斯ウ云フ新シイ工業ハ、工業者自身
  平生如何ニシテ生產原價ヲ低下スルカト云
  フコトニ、多大ノ注意ト努力ト經費ヲ自ラ投
  ジテ、外國ノ進歩發達ニ後レザランコトヲ
  努力シナケレバナラヌ筈デアル、然ルニ日
  本ノ工業家ハ外國ノ事業家ニ比較スレバ、
  ソレニ對スル努力ガ足ラズ、勿論經費ヲ支
  出セズ、外國ノ工業家ハ少クトモ三年乃至
  五年ヲ以テ總テ原價ノ償却ヲスルト云フ位
  ノ用意ヲシテ居ルコトハ、政府當局ニ於テ
  モ御承知ノ通リデアル、然ルニ我國ノ資本
  家ハ徒ニ配當ノ大ナランコトヲノミ圖ッテ、
  何等ノ準備ヲシテ居ラヌ、外國ガ非常ニ進
  步シテ安イ物ヲ送ッテ來夕時ニ、平生其準備
  ヲシテ居ラヌカラ、是ニ於テ政府ニ泣付イ
  テ保護政策ヲ執ッテ呉レト云フ結果ニ陷ル
  ノデアル、サウ云フ場合ニ對シ政府ハ如何
  ナサル積リデアルカ、平生斯ル事業家ノ所
  謂配當心理ニ對シテ、ドウ云フ御監督ヲナ
  サルカ、ソレニ對スル政府ノ御決心ヲ御尋
  シタノデアリマス、簡單ニ御各辯ヲ御願申
  シマス
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=20

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• 021・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　只今ノ小山君ノ
  再質問ハ、或ハ商工省ヨリ御答スルガ當然
  デアルト存ジマスガ、便宜私ノ所管ニ於テ
  御答ヲ致シタイト思ヒマス、ソレハ小山君
  ガ申述ベラレタ通リデアルト考ヘマス、我
  國ノ工業ニ對シマシテハ、世界ノ大勢ヲ始
  終見マシテ、世界ノ大勢ニ遲レザランヤウ
  ニ、而シテ此事ハ政府當局ハ出來ル限リ注
  意ヲ致シ、獎勵モ誘導モ致サナクテハナラ
  ヌト考ヘルノデアリマスガ、出來ルダケノ
  コトハ我國デ致シマシテモ、尙且ツ外國ノ
  方ガ進步シテ對抗ガ出來ナイ場合ニ當ッテ、
  我國ノ工業ハ之ヲ捨テヽ宜イカ、捨テルコ
  トハ出來ナイ、何處マデモ之ヲ維持シテ物
  ニシナクテハナラナイト云フ場合ニ當リマ
  シテハ、之ヲ能ク〓究調査ヲ致シテ、是ダ
  ケノ保護ヲ加ヘルナラバ、此工業ハ是マデ
  ニ發達シ得ラレルト見込ミマシタ場合ニ於
  テ、已ムヲ得ズ相當ノ關稅ヲ掛ケルコトニ
  ナルモノト考ヘマス、平生ニ於キマシテノ
  心得ハ小山君御問ノ通リデナクテハナラヌ
  ト考ヘマス、私共モ勿謬其考ヲ持テ居ルモ
  ノト御承知ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=21

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• 022・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　是ニテ質疑ヲ終了
  致シマシタ、是ヨリ討論ニ入リマス
  〔松本忠雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=22

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• 023・松本忠雄

  ○松本忠雄君　私ハ只今上程中ノ現田中內
  閣ノ重要ナル政策ノ一ト謂ハレマスル肥料
  管理法案ニ付テ、反對ノ意見ヲ述ベヤウト
  スル者デアリマス、其私ノ意見ノ冒頭ニ於
  キマシテ、先ヅ私共ノ農村ニ對スル信念ヲ
  明ニ致シテ置キタイト思ヒマス、私共ハ〓
  日ノ農村ノ疲弊困憊ノ實狀ニ對シマシテ
  ハ最モ眞面目ニ之ヲ憂慮致シマシテ、常
  ニ是ガ振興ト救濟ノ爲ニ適當ナル政策ヲ講
  ジマシテ、之ニ依テ農村ノ前途ニ光明アラ
  シメ、農村ノ前途ニ幸福ヲ齎サンコトヲ切
  ニ希望シツヽアル者デアリマス、農村ノ現
  狀ニ付テ憂ヲ致シマスルコトニ付テハ、吾
  吾民政黨ハ斷ジテ政友會ノ諸君ニ讓ルモノ
  ニアラザルコトヲ明ニスルト共ニ、政友會
  ノ諸君モ亦敢テ我黨ニ劣ルモノニアラザル
  コトヲ信ゼント欲スルモノデアリマス、隨
  テ本肥料管理法案ニシテ眞ニ農村ノ利益ヲ
  招來シ、農村ニ福音ヲ齎スモノデアリマス
  ルナラバ、吾々ト雖モ決シテ單ナル黨派ノ
  別ニ依テ、之ニ反對ヲスルコトヲ爲スモノ
  ニアラズ、否爲スコトハ出來ナイ筈デアリ
  マイ、併ナガラ如何ニ農村ヲ想フノ情ガ切
  デアリマシテモ、農村民ノ淳朴ニシテ御シ
  易キヲ奇貨トシテ、徒ニ美名ヲ以テ之ヲ欺
  キ、一時ノ歡心ヲ買フニ急ナルガ如キハ、
  斷ジテ眞ニ農村ヲ想フ所以ニアラズト信ズ
  ルノデアリマス(拍手)今此見地ニ立ッテ、此
  肥料法案ヲ見マスルトキニ、其名ノ麗シキ
  ニ拘ラズ、其口ニ言フ所ノ佳ナルニ拘ラ
  ズ、實質ニ於テハ幾多ノ不備ト缺陷トアリ
  マシテ、却テ農村ノ將來ニ惡結果ヲ來スベ
  キコトガ明瞭ナルニ於テ、私共ハ本案ニ反
  對セザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)今其
  理由ノ大要ヲ申上ゲタイト思フノデアリマ
  スルガ、其前ニ本案ノ、案ノ名稱其モノニ付
  テ一言ヲ費シテ置キタイノデアリマス、我
  ガ日本ノ最近三箇年間ニ於ケル販賣肥料ノ
  消費額ノ平均額ハ、年額正ニ二億八千餘万
  圓ニ達シマス、其中硫酸「アムモニア」ノ消費
  額ハ僅ニ五千餘万圓ニ過ギナイノデアリマ
  ス、卽チ總額ニ較ブレバ五分ノ一ニ達シナ
  イノデアリマス、然ルニ政府ハ我國ノ販賣
  肥料總額ノ五分ノ一ニモ達セザル所ノ此硫
  酸「アムモニア」而モ此硫酸「アムモニア」ノ
  全部ニアラズシテ、將來ニ於テ增加スベキ
  其數量、將來農民ノ需要スベキ全硫酸「ア
  ムモニア」ノ半額、ソレヲ管理スルト云フ
  所ノ案ヲ立ッテ、之ヲ以テ自ラ肥料管理案ト
  稱スルガ如キハ、徒ニ肥料管理案ノ名ヲ僭
  稱スルモノナリト信ズルノデアリマス(拍
  き)政府ノ此案ニ於ケル計畫ヲ拜見致シ
  マスレバ、十箇年ノ計畫ニ於テ其管理スル
  所ノ硫酸「アムモニア」ノ數量ハ、僅ニ百七
  十八万噸ニ過ギナイノデアリマス、十年間
  ニ百七十八万噸ノ硫酸「アムモニア」ノ賣買
  ヲ爲ス案、是ガ肥料管理案ナリト言フナラ
  バ、何ゾ其名ノ大ニシテ其實ノ小ナルヤト
  吾々ハ歎ゼザルヲ得ナイノデアリマス(拍
  手)斯ノ如キ美名ヲ掲ゲテ內容ノ伴ハザル
  案デアルガ故ニ、吾々ハ隨テ本案ニ反對セ
  ザルヲ得ナイノデアリマスルガ、次ニ順次
  吾々ガ本案ニ對スル反對ノ理由ヲ陳述致シ
  やっ、私共ガ本案ニ反對致シマスル第一ノ
  理由ハ、本案ガ肥料調査委員會ノ答申ヲ無
  視シタル點ニ存スルノデアリマス、政府ハ
  本案ヲ議會ニ提出スルニ當ラレマシテ、屢〓
  肥料調査會ノ委員ノ答申ニ基イタト申サレ
  マス、併ナガラ事實ニ於テハ、却テ本案ハ
  該調査委員會ノ答申ヲ蹂躪セルモノデアリ
  やく、嘗テ憲政會內閣時代ニ成立ノ豫算ニ
  依テ、現內閣ノ下ニ組織セラレマシタル肥
  料調査委員會ガ、農林大臣ニ提出致シマシ
  タ答申ナルモノヲ、私共ガ虛心ニ、坦懷ニ
  之ヲ精讀致シマスルトキニ、其内容ガ硫酸
  「アムモニア」等ノ無機質窒素肥料ノ我ガ國
  內ニ於ケル生產ヲ助長スルコトヲ主ト致シ
  マシテ、其生產助長ノ結果トシテ、玆ニ肥
  料ノ管理ヲ提唱セラレタモノデアルト云フ
  コトハ、極メテ明瞭デアリマスルニ拘ラ
  ズ、政府ハ殊更ニ該答申ハ生產助長ト管理
  トノ二箇ニ分離セラレタル內容ヲ有スルモ
  ノナリトシ、其一トシテ此肥料管理ヲ實行
  セラレントスルノデアリマスルガ故ニ、調
  査委員會ノ答申ニ所謂肥料ノ管理ガ生產助
  長ノ結果トシテ生ズベキモノデアリマスル
  ト云フコトハ、答申ヲ見レバ明瞭デアル、
  ソレヲ蹂躪シテ、生產助長ヲ措イテ、
  唯此管理ヲ急ガントスルコトガ吾々ノ反
  對スル第一點デアリマス(拍手)此點ハ
  吾々ガ此肥料調査會ノ答申案ヲ見レバ極メ
  テ明瞭デアリマスルガ、該調査委員會ノ一
  委員デアリ、而シテ學界ノ權威者デアリ、
  又貴族院議員デアル所ノ一委員ガ、私共ニ
  向ッテ語ラレタル所ニ依レバ、其委員ノ解釋
  モ正ニ吾々ノ解釋ノ通リデアリマス、又ソ
  レノミナラズ政友會諸君ノ中ノ本問題ノ權
  威者ニシテ、又此調查委員會ノ一委員デアッ
  タ所ノ齋藤藤四郞君モ、左樣ニ解釋セラレ
  テ居ルヤウデアリマス、昨年政友會ノ政務
  調査會ニ於ア、齋藤藤四郞君ガ演說サレタ
  其演說ヲ、政友會、黨報「政友」ト云フ雜誌
  ニ依テ引證致シマス、齋藤君ハ斯樣ニ申サ
  レテ居リマス、此肥料管理案ノ骨子ハ前述
  ノ通リ無機質窒素肥料ノ大量生產ヲ圖リ、
  而シテ一方ニ於テハ日之等製品ヲ我ガ農家ニ
  低廉且ツ潤澤ニ供給スルヲ以テ目的トスル
  モノデアル、言フマデモナク國內生產ヲ增
  加スルコトハ輸入ノ防遏トナリ、更ニ又進
  ンデ輸出可能ト云フ結果ニナルノデアルカ
  ラ、決シテ生產ヲ度外スルヤウナコトハナ
  イノデアル、又度外シテハ此管理案モ眞ノ
  目的ハ達シ得ラレナイノデアルト、斯樣ニ
  齋藤君ハ政友會ノ政府調査會ニ於テ述ベラ
  レテ居リマス、吾々ハ之ヲ拜見致シマシテ、
  私共ノ此肥料調査委員會ノ答申ニ對スル解
  釋ノ、正ニ妥當ナルコトヲ信ズルノデアリ
  マス、然ルニ現田中內閣ハ、此肥料調査委
  員會ノ答申案ノ中ノ主要ナル内容ヲ成シ、
  肥料政策ノ根本ヲ成スベキ所ノ生產助長ニ
  付テハ、何等ノ施設ヲ講ゼズシテ、獨リ其
  從屬ノ關係ニ在ル管理ノミ急ガントスルノ
  デアリマスカラ、玆ニ大ナル不合理ヲ生ジ、
  玆ニ大ナル無理ガ生ズルノデアリマス、殊
  ニ此答申案ノ中ノ生產助長ニ付テハ、政府
  ノ一擧手一投足ニ依テ直ニ爲シ得ベキ事ノ
  アリマスルニ拘ラズ、ソレ等ハ捨テヽ顧ミ
  ズ、獨リ肥料調査委員會ノ答申ノ中ノ其從
  屬關係ニ在ル管理案ヲ、而モ政友會內閣ト
  實業同志會トノ間ノ政策協定ニ背反サレテ
  マデモ、速ニ之ヲ實行セラレントスル、其
  政府ノ眞意ガ那邊ニ存スルヤヲ知ルコトノ
  出來ナイノハ、是レ吾々ガ本案ニ反對セザ
  ルヲ得ザル第一點ノ理由デアリマス(拍手)
  次ニ私共ガ本案ニ反對セザルベカラザル第
  二ハ、本案ノ內容ノ洵ニ杜撰ニシテ、其目
  的トスル所ノ瞹昧ナル點デアリマス、本案
  第一條ニハ、本案ニ依テ管理スベキ肥料ノ
  名稱ヲ擧ゲテアリマスルガ、其肥料ノ名稱
  トシテハ硫酸「アムモニア」竝ニ石灰窒素ノ
  外ハ、勅令ヲ以テ指定スベキ含窒素化學肥
  料ト總稱スルノミデアリマス、而シテ其勅
  令案ノ內容ニ付テハ、未ダ何等ノ攻究モセ
  ラレテ居ラナイト云フノデアリマス、斯ノ
  如キ商人ノ營業自由ノ領域ヲ侵シマスル立
  法ヲ爲スニ際シマシテ、豫メ此勅令ニ依テ
  指定セラルベキ商品ノ內容ノ大要位ハ吾々
  ニ御而ニナルガ當然デアルニ拘ラズ、此點
  ニ付テ何等ノ〓究モナクシテ、徒ニ商人ニ
  無用ノ沈默ヲシテ、危惧ノ念ヲ深カラシム
  ルト云フコトハ、斷ジテ政府ハ十分ナル〓、
  究ヲ遂ゲタル結果ナリト見ルコトハ出來ナ
  イノデアリマス(拍手)卽チ本案ガ如何ニ杜
  撰デアルカト云フコトヲ立證スル一點デア
  リマス、次ニ本案ノ第二條ハ實ニ肥料管理
  法案ノ目的トスル所ヲ〓スモノデアリマス
  ルニ拘ラズ、其重要ナル條項ハ極メテ意味
  瞹眛デアリマス「政府ハ肥料ノ配給ノ圓滑
  又ハ價格ノ安定ヲ圖ル爲肥料ノ賣渡ヲ爲ス
  コトヲ得」ト認メテアリマス、肥料調査委
  員會ノ答申ヲ拜見致シマスルニ、其肥料調
  査委員會ノ答申ハ常ニ肥料ノ價格ヲ低廉ニ
  シ、且ツ安定ナラシムル爲ト記サレマシテ、
  一方ニ於テハ肥料ノ價格ヲ低廉ニシ、是ト
  共ニ肥料ノ價格ヲ安定セシムルコトヲ目的
  トセラレテ居ルヤウデアリマス、然ルニ此
  肥料管理法案ニ於テハ、其低廉ノ文字ヲ削ッ
  テ、僅ニ安定ノ二字ヲ揭ゲテ居ルニ過ギナ
  イ所ニ、吾々ハ大ナル疑問ヲ持ツノデアリ
  マス(拍手)政府ノ說明ニ依リマスレバ、價
  格ノ安定卽チ價格ノ低廉ナリト言ハレマス
  ルガ、若シ安定ト云フ二字ニ依テ、價格ノ
  低廉ト安定ト云フ二ツノ意味ヲ現ハシ得ル
  モノト致シマスナラバ、何故ニ肥料調査委
  員會ニ於テハ、特ニ低廉ト安定ノ二ツノ文
  字ヲ用ヰラレタルヤヲ、私共ハ解スルコト
  ガ出來ナイノデアリマス(拍手)若シ安定ノ
  二字ニ依テ、低廉ト安定トノ二ツノ意味ヲ
  現ハシ得ルモノト致シマスナラバ、肥料調
  査委員會長山本悌二郞氏ハ、農林大臣タル
  山本悌二郞氏ニ向ッテ提出セラレタル其答
  申中ニ於テ、何故ニ此安定ノ二字ヲ以テ此
  二ツノ意味ヲ現ハサシメズシテ、殊更ニ低
  廉ト安定トノ二字ヲ併セ用キラレタルヤト
  云フコトニ付テ、反問セザルヲ得ナイノデ
  アリマス(拍手)政府當局ハ本案ヲ以テ全ク
  肥料ノ價格ヲ低廉ナラシムルコトヲ目的ト
  スルモノナリト言ハレマスガ故ニ、然ラバ
  政府ハ進ンデ第二條ノ意味ヲ明確ナラシム
  ルガ爲ニ、第二條ヲ價格ヲ低廉ニシ且安定
  ヲ圖ル爲ト云フ風ニ、之ヲ修正スルノ意思
  ハナイカト御尋スレバ、山本農林大臣ハ其
  意思ナシト言明セラレマシタ、政府ハ此點
  ニ付テ立法技術ノ問題ヲ云々致シマスケレ
  ドモ、立法技術ノ問題トシテモ、低廉ト安
  定トノ二ツノ文字ヲ用ヰテモ、吾々ハ決シ
  テ立法技術ニハ支障ヲ來サナイヤニ考ヘラ
  レマス(拍手)現ニ先般政府ガ提出セラレマ
  シタ所ノ蠶絲業救濟ニ關スル所ノ法律案ニ
  ハ異常ナル低落ヲ爲シタル場合ニ於テ其
  價格ノ安定ヲ圖ル爲必要アルトキハト認メ
  ラレテ居リマス、故ニ政府ガ此法律案ニ依
  テ、一方ニハ價格ヲ低廉ニシ、而シテ之ヲ
  安定セシムル意味ガアラセラレルナラバ、
  進ンデ其意味ヲ明瞭ニナサルヽコトガ當然
  デアルト信ズルニモ拘ラズ、山本農林大臣
  ハ自ラ其修正ノ意思ナシト言明セラレマシ
  タ、卽チ私共ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリ
  マス、政府ハ此法案ヲ作ッテ、一方ハ肥料生產
  業者ニ向ッテ、オ前達ノ作ル所ノ肥料ノ値段
  ヲ高ク安定シテ、オ前達ニ利益ヲ與へテヤ
  ルモノナリト稱シ、一方地方ノ農民ニ向ッテ
  ハ、是レ肥料ノ價格ヲ低廉ニシテ、農村ノ
  利益ヲ圖ル法案ナリト稱スル、卽チ一心兩
  體ノ使ヒ分ケヲナサルノ御用意ナルヤニア
  ラザルカト信ゼザルヲ得ナイノデアリマス
  (拍手)政府ハ本案ノ第二條ニハ、價格ノ安
  定ヲ圖ル爲肥料ノ賣渡シヲ爲スト云フコト
  ガアリマスガ故ニ、ソレガ價額ノ引下ヲ目
  的トスルコトハ明デアルト申サレテ居リマ
  ス、併ナガラ假令賣渡ヲ致シマシテモ、若
  シ高イ値段デ賣渡サレルナラバ、是レ卽チ
  肥料ノ價額ノ引上トナリ、肥料生產者
  ノ利益擁護トナルコトハ明瞭デアリマス、
  故ニ吾々ハ唯賣渡トアルガ故ニ、是レ卽チ
  肥料ノ價格ヲ低廉ナラシメルモノナリト
  信ズルコトハ出來ナイノデアリマス、此
  點ニ付テ政府ハ必ズヤ言ハレルノデアリ
  マセウ、本法案ハ斷ジテ生產者ノ利益ヲ保
  護スルモノニアラズ、又私ノ後ニ立タルベ
  キ所ノ本案贊成ノ討論者モ、必ズヤ此點ヲ
  高唱セラレルデアリマセウ、併ナガラ政府
  ガ本案ヲ實行セラレントシテ、國內ノ肥料
  生產業者ガ一人トシテ本案ニ反對スル者ノ
  ナイト云フ事實ハ、多少其間ノ消息ヲ物語
  ルモノニアラズヤト考ヘラレルノデアリマ
  ス(拍手)且ツ砂田君ハ本議場ニ於テ、此法
  案ニ依テ肥料ノ價格ガ安クナルコトハ、全
  國ノ肥料商ガ之ニ反對シテ居ルコトニ依テ
  明瞭ナルニアラズヤト、斯樣ニ申サレテ居
  リマス、若シ此砂田君ノ論法ヲ其儘用ヰ得
  ルモノナリト致シマシタナラバ、此肥料管
  理法案ヲ實行セントシテ、全國ノ肥料生產
  業者中一人ノ反對スル者ノナイト云フ事實
  ハ、卽チ是レ本案ガ肥料生產業者ノ利益ヲ
  擁護セントスルモノナリトモ言ヒ得ルノデ
  アリマス(拍手)卽チ本案ノ最モ重要ナル目
  的ニ關シ、斯ノ如ク重大ナル疑義ガ存シ、果
  シテ農村ノ利益ノミヲ擁護セントセラレル
  モノデアルヤ否ヤノ疑ハシイコトガ、吾々ガ
  本案ニ反對スル所ノ第二ノ點デアリマス(柏
  手)次ニ第三ニ私共ガ本案ニ反對致シマスル
  ノハ、本案ノ效果ニ付テ重大ナル疑問ヲ持
  ツカラデアリマス、政府ハ本案ニ依テ肥料
  ノ配給ノ圓滑ト價格ノ低廉トヲ期スルト言
  ハレマスルガ、眞ニ政府ガ配給ノ圓滑ト價
  格ノ低廉トヲ望マルヽナラバ、他ニ政府ノ
  手ニ於テ直ニ爲シ得べキコトガ存ズルノデ
  アリマス、卽チ政府ガ肥料需要期ニ於ケル
  所ノ鐵道貨車ノ補給ニ支障ナカラシムルガ
  如キ、若クハ又今日ノ不合理ニ高位ニアル
  肥料ノ鐵道運賃ノ引下ヲ行フ如キ、政府ノ
  手ニ依テ直ニ爲シ得ベク、而シテ其效果ノ
  明瞭ナルモノヽ存シマスニ拘ラズ、是等ハ
  舉ゲテ一ツモ實行致シマセズ、本案ノ如キ
  其瞹眛ナル效果ノモノヲ提出シ來ル所ニ、
  吾々ハ現田中内閣ノ肥料政策ニ對スル誠意
  ヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)殊
  ニ本法ニ基ク所ノ肥料ノ賣渡ガ、從來ノ肥
  料取引ノ殆ド全部ノ慣習ヲ爲ス荷爲替取引
  ヲ許サズシテ、現金取引ニ之ヲ限リ、又內
  外ノ生產業者ハ全國各地ニ對スル其生產品
  ノ賣値ヲ殆ド均等ニシテ之ヲ示シ得ルニ拘
  ラズ、政府ノ管理品ガ唯、全國四五箇所ニ於
  ケル、其出張所所在地ノ到著値段ヲ示シ得
  ルニ過ギザルガ如キ狀態ニ於テ、本案ニ依
  テ肥料ノ配給ノ圓滑ヲ期スルガ如キハ、絕
  對ニ之ヲ望ムコト能ハズト信ズルノデアリ
  マス(拍手)政府ガ自ラ一手ニ依テ爲シ得ベ
  キ有效極メテ適切ナルコトハ爲サズシテ、
  此不完全ナル方法ニ依テ肥料ノ配給ノ圓滑
  ヲ期セントスルガ如キハ、是レ田中內閣ガ
  農村ノ爲ニ忠實ナル所以ニアラズト吾々ハ
  斷定セザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)尙
  ホ本案ノ主要ナル目的ヲ爲シマス所ノ價格
  ノ點ニ付テ考ヘマスルニ、本案ノ實施ニ依
  テ農村民ハ果シテ從來ヨリ低價ナル所ノ肥
  料ノ供給ヲ受ケマスルヤ否ヤ、吾々ハ重大
  ナル疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、政府ハ
  利ヲ征スルコトヲ目的トスル商人ガ此間ニ
  介在セサルダケ、ソレダケ肥料ヲ安價ニ供
  給シ得ルト言ハレマス、併シ私共ハ大體論
  ト致シマシテ、卽チ利ヲ征セズト致シマシ
  テモ、形式ヲ重ンジ、嚴格ナル會計法ノ支
  配ヲ受ケ、且ツ兎角計算ヲ度外ニ置カント
  スル官吏ノ商法ガ、果シテ商人ノ營業以上ニ
  少額ノ經費ヲ以テ支辨シ得ベキニ付テ、大
  ナル疑ヲ持ツ者デアリマス(拍手)今之ヲ實
  際ノ計算ニ照シテ見マシテモ、政府ガ吾々
  ニ配付シタル材料ニ依リマスレバ、政府管
  理ノ硫酸「アンモニア」一噸ニ付キ、俸給事
  務費一圓八十錢、事業費二圓三十錢ヲ要ス
  ルコトハ明瞭デアリマス、此外ニ政府ノ說
  明ニ依レバ、地方產業組合ノ手數料ハ大體
  噸當リ四五圓ヲ要スルトノコトデアリマ
  ス、故ニ政府管理ノ肥料ガ地方農村民ノ手
  ニ歸スルマデハ、運賃ヲ差引イテモ尙且ツ噸
  當リ十圓內外ノ諸經費ハ加算セラルベキ計
  算ニナルノデアリマス、仕入値段ニ約十圓ヲ
  加算シタル硫酸「アムモニア」ノ價格ナルモ
  ノハ、果シテ低廉ナルモノナルヤ否ヤト云
  フコトヲ考ヘマスルニ、私共ニ元サレマシ
  タル、政府ノ立論ノ爲ニ最モ便利ナル、過
  去數箇年間ニ於ケル、肥料價格ノ暴騰期夕
  ル五、六月頃ニ於ケル國內地方ノ相場ノ公
  定表ヲ、全部其儘ニ之ヲ是認致シマシテ
  モ、此相場表全部ノ其相場ヲ取調ベタル所
  ノ土地ノ延數ハ正ニ六百七十六箇所アリマ
  ス、其延數六百七十六箇所ノ中、卸値段ヨリ
  十圓以上ノ高値ヲ持シテ居ル地方ノ數ハ三
  百五十一、十圓以下ノ相場ヲ保ツモノガ三
  百二十五箇所デアリマシテ、而モ主要ナル
  肥料取引地ノ如キハ悉ク十圓以下デアリマ
  ス、故ニ政府ガ此管理品ニ對シテ是等ノ諸
  掛リヲ加算シテ農民ニ販賣スルモノト致シ
  マスレバ、少クトモ此從來ノ卸賣値段ヨリ
  モ十圓以下ノ値鞘ヲ以テ肥料ヲ買取ルコ
  トノ出來タ地方農民ニ對シテハ、却テ高價
  ノ肥料ヲ供給スル結果トナルノデアリマシ
  テ、卽チ私共ノ見ル所ヲ以テスレバ、本案
  /如キハ肥料ノ値段ヲ低廉ナラシムルモノ
  ニアラズシテ、却テ肥料ノ價格釣上案ナリ
  ト稱スルコトガ出來ルノデアリマス(拍手)
  之ニ對シテ政府ハ常時販賣致シマスルモノ
  ニ對シテハ一噸三圓八十錢ヲ加算シ、臨時
  賣ノモノニ對シテハ十三圓八十錢ヲ加算シ
  テ賣出スコトデアリマスルガ故ニ、十年間
  ニ百七十八万噸ノ硫安ヲ取扱ヒ、上ニ述ブ
  ルガヤウナ噸當リ一圓八十錢ノ俸給事務
  費、二圓三十錢ノ事業費ヲ拂テモ、尙且ツ
  九十餘万圓ノ利益ヲ擧ゲ得ルト云フ計算ヲ
  示サレテ居リマス、百七十八万噸ノ硫安ヲ
  取扱シテ、九十餘万圓ノ純益ヲ擧ゲ得ルトス
  レバ、其純益ハ正ニ一噸當リ五十錢ニ達ス
  ルノデアリマス、卽チ現田中内閣ハ此肥料
  管理法ヲ行ヲテ、之ニ依テ一噸當リ一圓八十
  錢ノ俸給事務費、二圓三十錢ノ事業費ヲ要
  シテモ、尙且ツ一噸當リ五十錢ト云フ純益
  ヲ占メ得ベキト云フコトヲ、一般肥料商ニ
  示スト共ニ、政府自ラモ之ヲ占メントスル
  ノデアリマス、若シ民間ノ肥料商ニシテ此
  硫酸「アムモニア」ヲ取扱ヒ、俸給事務費其
  他ノ事業費ヲ此政府ノ取扱フモノヨリモ更
  ニ低廉ナラシメ得タナラバ、其低廉ナラシ
  メ得タダケソレダケ五十錢ニ加算シタルモ
  ノハ、卽チ商人ノ利益ニ歸スルコトノ明白
  ナルコトヲ政府自ラ元スモノデアリマス、
  吾々ヲシテ言ハシムレバ、本肥料管理法案ノ
  如キハ硫酸「アムモニア」商人ニ對スル最低
  利益補償法案ナリト稱シ得ルノデアリマス
  (拍手)殊ニ又肥料ノ需要期タル所ノ六、七月
  頃ニ於テハ、政府自ラ其仕入値段ニ對シテ
  十三圓八十錢ヲ加算シタルモノヲ以テ賣出
  シテ、硫酸「アムモニア」一噸ニ對シテ正ニ
  十圓ノ利益ヲ占メ、而シテ自ラ占ムルノミ
  ナラズ、一般肥料者ニ向ッテモ其點マデハ利
  益ヲ占メヨト云フコトヲ示サルヽ案デアリ
  マス、卽チ斯ノ如キハ政府自ラ肥料商トナッ
  テ、一噸當リ十圓ト云フ暴利ヲ貪ルノミナ
  ラズ、一般肥料商ノ旗振トナッテ、農民ニ高
  イ肥料ヲ賣付ケントスル所ノ本案ナリト言
  ハザルヲ得ナイ、卽チ本案ノ如キハ俗ニ所
  謂羊頭狗肉ノ比ニ非ズシテ、羊ノ頭ヲ揭ゲ
  テ鼠ノ肉ヲ賣ルヨリモ甚シイモノト申サヾ
  ルヲ得ナイ案デアリマス、是私共ガ本案ニ
  反對スル、否反對セザルヲ得ナイ所ノ第三
  ノ點デアリマス
  〔此時發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=23

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• 024・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御靜ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=24

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• 025・松本忠雄

  ○松本忠雄君(續)　次ニ私共ガ第四ニ本案
  ニ反對スル所ノ理由ハ、本案ガ他日國庫ニ
  重大ナル負擔ヲ歸スル所ノ虞ガアルカラデ
  アリマス、此計畫ニ依レバ肥料管理ニ要ス
  ル所ノ官吏ノ俸給ヨリ總テノ諸經費、卽チ
  最初ノ一錢カラ、悉ク利息ヲ拂フベキ所ノ借
  入金ニ據ルノデアリマス、斯ノ如キ基礎ノ
  下ニ事業ヲ營ムコトガ、他日甚大ナル損失
  ニ歸スベキコトハ、米穀法案ガ吾々ノ前ニ
  殷鑑ヲ示シテ居リマス、殊ニ其計算ノ如キ
  ハ極メテ杜撰孟浪ヲ極メマシテ、十年間ニ
  百七十八万噸ノ硫酸「アムモニア」ヲ取扱ヒ
  ナガラ、一噸ノ目減リヲモ計上セザルガ如
  キハ、軈テ損失ニ歸スベキコトハ全ク識者
  ヲ待タズシテ知ルベキデアリマス、殊ニ本
  法ニ依ル所ノ肥料賣出ハ、豫メ二三箇月前
  ニ其數量ト價格トヲ公示スルトノコトデア
  リマスカラ、利ニ聰キ商人ハ必ズヤ此政府
  ノ賣ル値段ヨリモ幾分安イ値段、若クハ又
  同一ノ値段デアッテモ、買收人ニ有利ナルベ
  キ賣買條件ヲ以テ、政府ヨリ先ニ是ガ賣付
  ヲ爲スデアラウト云フコトヲ想像シ得ルノ
  デアリマス、斯ノ如ク致シマスルナラバ、
  玆ニ政府ガ仕入レマシタル所ノ肥料ハ手持
  品トナッテ、其儘貯藏セザルヲ得ザルコトヽ
  ナリ、玆ニ多クノ損失ヲ生ズルコトガ明デ
  アリマス、此點ニ對シテ、政府ハ若シ斯ノ
  如クナリマスルナラバ、之ニ依テ本案ノ目
  的ハ十分ニ達シ得ルモノナリト言ハレマス
  ルガ、若シ左樣致シマシタナラバ、之ニ依
  テ肥料ヲ賣出スコトハ能ズシテ、而シテ之
  ニ要スル官吏ノ俸給ハ支拂ハザル能ハズ、
  之ニ要スル事業費ハ支拂ハザル能ハズ、益〓
  以テ國庫ニ對スル負擔ヲ多カラシムル結
  果ニ陷ラザルヲ得ナイノデアリマス、私共
  ハ元來政府ガ濫ニ商人ノ畛域ヲ冒シ、自ラ
  商行爲ヲ營ムガ如キハ、非常特別ノ場合ノ
  外嚴ニ之ヲ愼ムベキモノナルコトヲ信ズル
  者デアリマスルガ、今政府ガ本案ノ如ク其
  效果ノ疑ハシキモノヲ企劃シ、一方ハ商人
  ノ畛域ヲ冒シ、彼等ニ甚大ナル脅威ヲ與ヘ、
  一方ハ國庫ニ多大ノ損害ヲ及ボシ、而モ其
  結果農村ニ對シテ却テ安價ナル肥料ヲ供給
  スル能ハザルガ如キ事態ニ至ルトスルナラ
  バ、吾々ハ本案ニ反對セザルヲ得ナイノデ
  アリマス、是吾々ガ本案ニ反對スル第四ノ
  理由デアリマス(拍手)次ニ第五ニ吾々ガ本
  案ニ反對致シマスル理由ハ、此肥料管理法
  案ヲ見テ、吾々ハ現田中內閣ノ肥料政策二
  對スル本末輕重ヲ誤ルコトヲ思フガ故ニ、
  此點ニ於テ之ニ反對セントスル者デアリマ
  ス、現内閣ハ頻ニ農村ノ事ヲ憂慮セテル
  モノヽ如クデアリマシテ、田中總理大臣ハ
  農村振興策ハ肥料ノ公平ナル分配ニアルト
  言ハレマシタ、斯ノ如ク肥料問題ニ付テハ
  最モ憂慮セラルヽ現田中內閣デアリマスル
  ナラバ、農民ノ爲ニモット的確ニシテ有效
  ナル肥料政策ヲ行ハナケレバナラヌ筈デア
  リマス、現ニ肥料調査委員會ノ如キモ現内
  閣ハ申譯的ニ肥料調査委員會ヲ開クノ實狀
  デアリマシテ、肥料調査委員會設置以
  來、
  〔此時發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=25

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• 026・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=26

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• 027・松本忠雄

  ○松本忠雄君(續)　總會ヲ開キタルコト正
  ニ二囘、而シテ昨年ノ七月以來此調査委員
  會ハ一回モ開催セラレザル實狀デアリマ
  ス、折角肥料調査委員會ヲ設ケツヽ半年有
  餘ニ亙ッテ一回モ之ヲ開カズ、而シテ肥料調
  査委員會ニ對スル其審議ノ如キモ、毫モ之
  ヲ進メズシテ、而シテ肥料政策ニ忠實ナリ、
  農村ニ向ッテ忠實ナリトハ何ニ依テ現内
  閣ハ之ヲ言ヒ得ルノデアリマスカ、更ニ又
  現内閣ハ肥料問題ニ付テ最モ力ヲ致シツヽ
  アリト言ヒナガラ、彼ノ東洋窒素工業會社
  ニ對スル「ハーバー」特許權問題ヲ空シク看
  過シツヽアルガ如キハ、全ク現内閣ハ肥料
  問題ニ付テ忠實ナラザル證據デアリマス
  (拍手)元來「ハーバー」特許權ナルモノハ先
  刻松浦委員長ノ述ベラレタル如ク、日本政
  府ガ獨逸カラノ賠償金ノ一部トシテ之ヲ取
  リ、大正十年四月原內閣常時ニ我ガ日本ニ
  於ケル數氏ノ富豪ニ對シテ、僅カ一万圓ノ
  値段ヲ以テ拂下ゲタモノデアリマス、其
  万圓ヲ以テ拂下ヲ得タル所ノ我ガ日本ノ富
  豪ハ、此特許權ヲ利用シテ一年正ニ六十万
  圓ニ垂ントスル暴利ヲ貪ッテ居リマリ、若
  シ現田中内閣ニシテ眞ニ農民ニ對シテ安價
  ナル肥料ヲ供給セントスルノ誠意ガアラレ
  ルナラバ、何故ニ此「ハーバー」特許權ニ對
  シテ的確ナル所ノ手段ヲ執リ、相當ナル手
  段ヲ行シテ、然ル後ニ本肥料管理案ノ如キ
  ヲ提出シ來ラザルヤヲ反問セザルヲ得ナイ
  ノデアリマス(拍手)此點ニ付テ政府當局ハ
  頻ニ法律問題ヲ云々セラレマス、併ナガラ
  政友會ノ諸君ハ會テ大正六年寺內內閣當時
  ニ、製鋼所ガ東海鑛業會社ニ向ッテ銅片ヲ
  賣渡サントスル其契約ヲ、契約期間內ニ打
  切ラシメタル政友會デアリマス、而シテ自
  ラ農村問題ニ付テハ最モ忠實ナリト言ハレ
  ル田中內閣デアリマス、然ラバ此「ハー
  バー」特許權ノ如キハ速ニ之ニ對シテ適當ナ
  ル方策ヲ立テヽ之ヲ取上ゲルカ、取上ゲル
  コト能ハズトスルナラバ、之ニ依テ是等ノ
  富豪ガ徒ニ特許料ヲ徴スルコトヲ廢セシメ
  テ、日本全國ノ農民ニ向ッテ安價ナル肥料
  ヲ供給サセルベキ適當ナル努力ヲ爲スベキ
  ガ當然デアルニ拘ラズ、之ヲモ爲サズシテ
  而シテ自ラ肥料ノ公平ナル分配ヲ爲サント
  スル、自ラ農村ニ忠貫ナリト言フガ如キハ、
  餘リニ本末輕重ヲ〓倒シタルモノナリト謂
  ハナケレバナラヌ(拍手)吾々ハ斯ノ如キ本
  末輕重ヲ〓倒シタル田中內閣ノ肥料政策ニ
  向ッテ、誠意アリト信ズルコトノ出來ナイ、
  是レ吾々ガ本法案ニ反對セザルヲ得ナイ所
  ノ第五ノ點デアリマス、以上之ヲ要シマス
  ルノニ、政府ガ之ニ依テ企圖セント致シマ
  シタ目的ハ、愈、本案ヲ實行致シマシテモ、
  之ヲ達成スルコトノ出來ナイコトハ明白デ
  アリマス、ノミナラズ却テ累ヲ農村ニ及ボ
  シ、國庫ノ負擔ヲ重カラシムルニ至ル
  コトヲ信ズルノデアリマス、私共ハ農
  村今日ノ實情ニ付テ深憂禁ズル能ハザ
  ルモノガアリマス、併シ是ガ爲ニハ飜ツ
  テ農村ガ今日ノ窮狀ニ至タ其原因ニ立
  戾ッテ考ヘナケレバナリマセヌ、農村ガ
  今日ノ疲弊ニ至リマシタ其原因ハ、固
  ヨリ一ニシテ止マリマセヌ、併ナガラ
  過去ニ於ケル政治家ガ農村ノ爲ニ適切ナル
  政策ヲズルコトヲ怠ッタコトガ、農村ヲ今日
  ノ疲弊ニ陷レタル所ノ重大ナル原因デア
  ルコトハ、吾々ハ之ヲ信ゼザルヲ得ナイノ
  デアリマス(拍手)我國近代ノ政治史ヲ顧ミ
  マスノニ、明治三十三年立憲政友會組織以
  來、今日ニ至ルマデ三十年、其三十年ノ間
  ニ唯僅ニ大正四年ヨリ大正六年ニ至リマス
  間、大正十三年ヨリ昭和三年ニ至リマス此
  二ツノ短期間ヲ除イタ以外ハ、政友會ハ常
  ニ衆議院ノ多數黨デアッテ、或ハ自ラ朝ニ
  立ッテ國政ヲ料理シ、或ハ其當時ノ政府ヲ援
  ケテ自ラノ政策ヲ行ハシメ來ッタノデアリ
  マス、若シ政友會ガ其間眞ニ農村ノ爲ニ適
  當ナル所ノ政策ヲ行ハントスル誠意ガオア
  リニナッタナラバ、此三十年ノ間ニ當然之ヲ
  爲サナケレバナラナカタ〓デアリマス、卽
  チ政友會ノ諸君ガ過去三十年ノ間ニ、口ニ
  ハ農民黨ト稱シテ農村民ノ歡心ヲ買ヒナガ
  う、農村民ノ醇朴ニシテ欺キ易キニ乘ジ、
  口ニ唱ヘル所ヲ手ニ行ハズシテ今日ニ及ビ
  マシタガ爲ニ、農村ハ遂ニ今日ノ疲弊困憊
  ニ陷シタノデアリマス(拍手)卽チ農村ヲ今
  日ノ疲弊ニ陷レタル其政治上ノ責任ハ、諸
  君、政友會ガ正ニ之ヲ負ハナケシバナラナ
  イノデアリマス(拍手)然ルニ政友會ノ諸君
  ガ向自ラ省ルコトナクシテ、斯ノ如ク名ノ
  徒ニ美ニシテ、內容ノ伴ハザル法案ヲ提出
  シ來ッテ、之ニ依テ再ビ農民ヲ欺カントスル
  ハ、益〓其罪ヲ重クスルモノナリト言ハザル
  ヲ得ナイノデアリマス(拍手)昔ハ「儀秋酒
  ヲ作ッテ禹王ニ進ム禹王之ヲ試ミテ甘シト
  ナシテ曰ク後世必ズヤ酒ヲ以テ國ヲ滅ボス
  モノアラント、卽チ儀秋ヲ却ク」ト史ニ記サ
  レテ居リマス、若シ吾々ニシテ今日肥料管
  理法案ノ美名ニ醉ウテ、斷乎トシテ之ヲ却
  ケルノ明ナクンバ、敢テ後世ヲ待ツマデモ
  ナク、近キ將來ニ必ズヤ之ニ依テ農村ニ禍
  シ、國庫ニ累ヲ及ボサンコトヲ恐レザルヲ
  得ナイ、卽チ吾々ハ本案ニ反對セザルヲ得
  ナイノデアリマス、吾々ハ本案ニ反對致シ
  マシテモ農民ヲ愛セザルニ非ズ、農村ヲ思
  ハザルニ非ズ、否眞ニ農村ヲ思ヒ、眞ニ費
  民ヲ愛スルガ故ニコソ、本案ニ反對セザル
  ヲ得ナイノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=27

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• 028・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　土井權大君
  〔土井權大君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=28

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• 029・土井權大

  ○土井權大君　私ハ本案ニ贊成ヲスル者デ
  アリマス、詳細ナル議論ハ私ノ後ヨリ同僚
  加藤君ガ出ラレマシテ述ベラレマスルガ故
  ニ、私ハ(「加藤誰ダイ」ト呼フ者アリ)加藤
  知正君デス(「相手ニハ惜イ」ト呼フ者アリ)
  然ラバ私ガ全部引受ケマシテ討論ヲスルコ
  トニ致シマス
  〔此時發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=29

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• 030・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=30

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• 031・土井權大

  ○土井權大君(續)　諸君、農村振興ノ三大
  要件ハ何デアルカト言ヘバ、第一ニ農家ノ
  收入增加ニ關スル政策ヲ打立テルト云フコ
  トデアルコトハ御承知ノ通リ、第二ハ何デ
  アルカト言フナラバ、農家ノ經費其他支出
  減少ニ關スル政策ヲ立テルコトデアリマ
  ス、是亦御承知ノ通リ、更ニ第三ノ要件ハ
  何デアルカト言ヘバ、農家ノ經濟安定ニ關
  スル政策ヲ打立テルコトデアル、此三ツガ
  取モ直サズ農村振興ノ三大要件デアリマ
  ス、我ガ政友會ニ於キマシテハ常ニ此三大
  要件ニ著眼ヲ致シテ、各般ノ調査〓究ヲ進
  メタノデアリマス、卽チ今囘政府ヨリ提案
  セラレマシタル、今期議會ニ於テ政府ヨリ
  提案サレマシタル米穀買入資金曾加ノ件、
  或ハ絲價安定ニ關スル法案、或ハ家畜保險
  〓、是等ハ如何ナルコトヲ而シテ居ルノデ
  アルト言ヘバ、取モ直サズ農家收入會加ニ
  關スル政策ノ實現デアルト吾々ハ信ズル
  (拍手)更ニ兩稅ノ委譲、卽チ地租委譲、營
  業收益稅ノ委讓(「ソンナコトハ關係ガナ
  イ」ト呼フ者アリ)關係ガナイトハ言ハレナ
  イ、農家ノ支出減少ト致シテ農家ノ負擔輕
  減ニナルノデアル、肥料管理案ハ生產費ノ
  輕減ト相成ルノデアル、取モ直サズ農家ノ
  支出輕減ニ關スル政策ノ實現デアリマス、
  更ニ自作農法、開墾助成法改正ノ如キハ、
  御承知ノ通リ農家ノ經濟安定ニ關スル政策
  ノ實現デアリマス、今日農村ト致シテ如何
  ナル問題ガ最モ根本ノ問題デアルカト言へ
  バ、御承知ノ通リ農村社會問題ト致シテハ、
  一ニ小作爭議、一ニ中堅階級ノ滅亡、一二
  都會集中ノ弊、是ガ唱ヘラレテ居ル、其原
  因ハ何レニアルカ、其原因ハ土地愛著心ト
  云フモノガ無クナリ、土地ノ所有ヨリ離レ
  ルト云フコトモ一大原因ヲ成シテ居ルノデ
  アリマス、諸君、此意味合ヨリ致シテ、農
  家ノ經濟ノ安定ヲ圖ラウトスルニ付テハ農
  家ニ土地ヲ與ヘ、而シテ小作爭議ト云フモ
  ノヲ防止シ、更ニ都會集中ノ弊ヲ打棄テ、
  更ニ中堅階級ノ滅亡ヲ防ギ、是等ノ意味合
  ヨリ致シテ我ガ内閣ニ於テハ自作農、竝ニ
  開墾助成法ノ改正ヲ致シテ居ル、卽チ以上
  ノ如キハ悉ク我黨多年提唱致シテ居ル所ノ
  農村振興ノ三大要件、一ニ曰ク支出ノ輕
  減二ニ曰ク收入ノ增加、三ニ曰ク經濟ノ
  安定、之ニ適ッテ居ル次第デアリマス拍
  手)政友會ガ何カ農民ノ爲ニ盡サナイト言
  フガ如キ御議論ガアリマシタガ、只今申上
  ゲマシタルコトハ論ヨリ證據、如何ニ農村
  振興ノ爲ニ力ヲ盡シテ居ルカト云フコト
  ヲ、如實ニ物語ッテ居ルト謂ハナケレバナラ
  ヌ、特ニ只今ノ議題トナッテ居リマス肥料管
  理案ノ如キハ、農家生產費輕減政策トシテ
  最モ重要ナル案件ト謂ハナケレバナラヌ、
  且又農產物增加ニ資シ、食糧問題解決ノ上
  カラ申シテモ、最モ必要ナル案件ト吾々ハ
  信ズル次第デアル、何故左樣ナコトヲ言フ
  ニ至ッタカト申スナラバ、最近三箇年間ノ統
  計ヲ調査致シマスルニ、販賣肥料ノ我國ニ
  於ケル總消費額ト云フモノハ、一年ニ三億
  一千万圓トナッテ居ル、昨年ノ如キハ三億四
  千万圓ト計上サレテ居ルノデアリマス、而
  シテ此肥料ノ價格ノ狀態ハドウデアルカト
  云フト、年々其價格ハ向上ノ傾向ガアル、
  而モ消費者デアル所ノ農家ノ手ニ入ル場合
  ニ於テハ年々歲々其價格ガ向上サレテ居ル
  傾向ニ相成シテ居ル、之ニ對シテ農產物モ騰
  貴致シテ居ルデアラウカ、安定致シテ居ル
  デアラウカ(「大違ヒ」ト呼フ者アリ)大違ヒ
  デアルト言ハレマスガ故ニ、私ハ昨年ニ於
  ケル米ノ價ト、肥料ノ價トノ比較ヲ申上ゲ
  マイ、昨年卽チ昭和三年一月ヨリ十二月ニ
  至ルマデノ米價高低ノ指數ハ、之ヲ平均致
  シテ見マスルト最高ガ三十二圓、最低ガ二
  十八圓、卽チ米ハ一割二分五厘ノ低落ヲ示シ
  テ居ルノデアル、之ニ反シテ肥料ハドウゲ
  アルカト言ヘバ、大豆粕ハ百斤ニ付最低四
  圓二十二錢、最高四圓四十五錢、卽チ肥料ハ
  五分ノ騰貴トナッテ居ル(「硫安ハドウダ」
  ト呼フ者アリ)硫安ハ御承知ノ通リ窒素肥
  料デアル又豆粕モ御承知ノ通リ窒素ヲ含有
  シテ居ルト云フコトモ御承知ノ通リ(「分ラ
  ヌ」ト呼フ者アリ)分ラヌト云フガ爲ニ私ハ
  言フノデアル-卽チ以上ノ統計カラ致シ
  マシタナラバ、肥料ノ價格ハ段々高クナリ、
  米ハ安クナルト云フ實狀ヲ明ニ示シテ居ル
  ノデアル、此統計ヨリスルナラバ、將米農
  業國策ト致シテ如何ニシテ肥料ヲ安ク農民
  ニ供給スルカ、如何ニシテ配給ヲ圓滿ニス
  ルカ、之ヲ考ヘルコトガ必要デアルト云フ
  コトハ多言ヲ要シナイ所デアリマス拍
  き)然ラバ肥料ノ窒素、燐酸、加里、此三
  要素ガ如何樣ニ使ハレテ居ルカト云フ
  統計モ調ベル必要ガアル、最近三箇年間ノ
  販賣肥料ノ總消費額ハ、只今申マシタ
  如ク三億一千万圓デアル、右ノ內八割ハ窒
  素質ノ肥料デ、之ヲ金目ニスルト二億一千
  八百万圓トナル、而シテ農家生產費中肥料
  代ハ抑、何割ヲ占メテ居ルカ、之ヲ調べ
  テ見ルト三割六分五厘、是レダケ肥
  料代ニ占メラレテ居ルノデアル、而シテ無
  機窒素、所謂硫安肥料、是等ノ使用量ハ幾
  ラデアルカト云フナラバ、最近四十九方噸、
  卽チ窒素肥料總量ノ四割七分、約五割ト申
  シテモ宜シイ、是ガ無機窒素ニナッテ居ル、
  其殘リハ所謂有機窒素ト相成シテ居ル、斯ウ
  云フ統計ニ相成ッテ居ルノデアリマス、以上
  ノ實情以上ノ統計ニ鑑ミマシタナラバ、
  卽チ肥料ノ中樞ハ何デアルカ、人間デ言ヘ
  バ背骨ハ何デアルカ、曰ク窒素肥料デアル、
  此事ハ私ガ言ハズトモ明ニ統計デ元シテ居
  ル、此中樞ヲ制シテ、如何ニシタナラバ肥
  料ノ價格ヲ調節シ、低廉ナル肥料ヲ農家ニ
  供給スルコトガ出來ルカ、是ハ苟モ農村振
  興ノ御精神ノアル方デアルナラバ、必ズヤ
  心ヲ玆ニ及ボサナケレバナラヌノデアル
  (拍手)今囘政府ガ硫酸「アンモニア」石灰窒
  素ヲ管埋シテ、其肥料ノ配給ノ圓滿又ハ價
  格ノ安定ヲ圖ル爲ニ、是等ノ肥料ノ賣捌ヲ
  爲スト云フコトハ、取リモ直サズ食糧ノ充
  寶、農村經濟ノ作興ヲ期スル爲ニ、極メテ
  適切ナル施設ト私ハ考ヘテ居リマス(拍手)
  更ニ農民ノ聲ヲ聽イテ戴キタイ、農民ハ如
  何ナルコトヲ叫ンデ居ルカト云フナラバ、
  御承知デモアリマセウガ、先日全國ノ農會
  長會議ト云フモノガ三會堂ニ於テ開カレ
  タ、其時ニ當シテ如何ナル決議ヲ致シタカ
  ト云フナラバ、肥料管理案ハ農家ノ生產費
  ヲ輕減スル最モ必要ナル施設ナルガ故ニ、
  是非此實行ヲ迫ルト云フ決議ヲ致シテ居ル
  (拍手)蓋シ我黨多年高唱致シテ居リマスル
  所ノ農村振興政策ノ一部實現ニ外ナラナイ
  ノデアリマス、決シテ吾々ハ看板ダケヲ揭
  ゲテ農民ヲ僞ラウ、所謂羊頭ヲ掲ゲテ狗肉
  ヲ賣ラウト云フ陋劣ナル心理ハ毛頭持シテ
  居ラナイノデアル(拍手)然ラバ只今色ニト
  松本君カラ御議論ガアリマシタデ長ク申シ
  マセヌ、唯案件ダケヲ參考ニ申上ゲテ討論
  ニ代ヘマス、管理案ノ名目ガドウデアル、
  斯ウデアルト云フコトヲ言ハレマシタガ、
  中〓名前ト云フモノハ附ケ惡イモノデアツ
  テ、小サナ男ニデモ大吉ト云フ名前ヲ附ケ
  テ居ルコト、モアル(拍手)丁度憲政會ガ內閣
  ヲ組織サレテ居リマシタル時ニ、農業政策
  ノ實現ト致シテ大規模開墾ト云フ文字ヲ書
  イテ居ル、然ラバ幾ラノ經費ヲ要求サレテ
  居ルカト云ヘバ、名前ハ大規模開墾デアリ
  マスガ、僅ニ十万圓デ大規模開墾デアリマ
  ス、其當時私ハ十分政府ニ對シ、當時ノ憲
  政會内閣ニ質問ヲ致シテ置イタコトハ御承
  知ノ通リデアラウト思フ、是ハ抑、何デアル
  カ、卽チ名ヲ附ケルコトノ困難ナルコトハ、
  之ニ依ッテモ明デアルト思フ、ソレカラ肥料
  調査會ノコトヲ第二ニドウトカ斯ウトカ言
  ハレマシタガ、肥料調査會ハ執行機關ニア
  ラズシテ諮詢機關デアルト云フコトハ、松
  本サン御承知デアリマセウ、是ダケ申セバ
  早分リデアル、必シモ是ガ決議致シタカラ
  之ヲ實行シナケレバナラヌト云フ、左樣ナ
  ル官制ニナッテ居ラヌコトハ御承知デアリ
  マセウ、ソレカラ其次ニ內容ガ杜撰デアル、
  第一條ニ硫酸「アンモニア」含有窒素化學肥
  料云々ト云フコトヲ言ハレマシタガ、含有
  窒素ノ化學肥料ト云フモノハ、マダ左程發
  達致シテ居ラヌ、此事ハ能ク肥料ノ實狀ニ
  付テ〓究下スッタナラバ、其事ハ御諒解出來
  ルデアラウト思フ、ソレカラ價格安定ト云
  フコトヲ言ハレマシタガ、此文字ノ使ヒ方
  ト云フモノモ、中ニムズカシイモノデアル、
  例ヘバ急ナ場合デモ、所謂一旦緩急アレバ
  ト使ヒ、或ハ國ガ亡ボサレヤウトスル場合
  ニ、國家存亡ト云フ、存スルト云フ文字ヲ
  使フ、故ニ價格安定ト云フ中ニハ、積極的
  安定ト消極的安定トアル、恰モ財產ニ消極
  的財產ト積極的財產ガアルノト同ジコトデ
  アル(拍手)ソレカラ其次ニ此肥料管理法ニ
  對シ、商賣人ハ反對スルケレドモ生產者ハ
  反對シナイ、ソレガ爲ニ販賣業者ガ反對ス
  ルト云フ以上ニハ、生產業者モ反對シナケ
  レバナラヌ論理ニナルトカ何トカ言ハレマ
  スガ、此管理法案ヲ能ク御讀ミヲ願ヒタイ
  ト云フノハ、卸賣カラ小賣ガ多數ニ介在ヲ
  致シ、消費者タル農家へ持ッテ參ル場合ニ於
  テ、此小賣業者ガ暴利ヲ貪リ、或ハ思感ヲ
  致シ、或ハ賭博ノ目的ト致スト云フガ如キ
  コトガアル爲ニ、此肥料ノ價格ト云フモノ
  ハ、實際消費者ノ手ニ入ル時ニハ高クナル
  ノデアリマス、此賭博、此思惑ヲ牽制シヤ
  ウトスルノデアル、生產者ハ博奕打デハア
  リマセヌ、堅實ナル實業家デアル、ソレカ
  ラ鐵道貨車ノ配給デアルトカ、或ハ運賃ノ
  低下デアルトカ言ハレルガ、是モ勿論必要
  デアリマセウ、併ナガラ管理案ノ大ナル目
  的ハ、只今申シタガ如ク思感投機、之ヲ如
  何ニ牽制スルカト云フコトニ在ルノデアリ
  マスカラ、其事ヲ御考へ下サッタナラバ、運
  賃ノコトモ、貨車配給ノコトモ、自ラ明瞭
  ニナルダラウト思フ、荷爲替ノコトヲ色と
  ト御話ニナッタ、ノデアリマスガ、卽チ此商賣
  ヲ致ス上ニ於テ荷爲替ヲ付ケルト云フノ
  ハ、信用ガナイカラデアル、所謂買手モ信
  用ガナイ、賣手モ信用ガナイ、此場合ニ-
  (「冗談言フナ」ト呼フ者アリ)冗談ヂヤナ
  イ、卽チ信用ハ、諸君、愈信用ガアルト
  スルナラバ、荷爲替ヲ付ケズシテ其儘現送
  致シテ、品物ガ著致シタナラバ、其品ニ對
  シ代金ヲ受ケルコトモ出來ル、更ニ愈〓賣手
  ニ信用ガアルナラバ、荷物ガ著致サズシテ
  前ニ現金ヲ受ケルコトガ出來ル-信用程
  度ノ問題デアルト云フコトハ能ク分ッテ居
  ル、アナタ方ノ講釋ヲ聽カズトモ能ク分ッテ
  居ル、卽チ政府ガ肥料ヲ賣捌クガ爲ニ、政
  府ニ對シテ現金ヲ送ルト雖モ、其現金ヲ奪
  ヒ取ラレハシナイカト云フ心配ハナイ、詰
  ラナイ會社、詰ラナイ商賣人ニ遭フト、現
  金ヲ送レバ其現金ノミヲ取ラレテ、荷物ヲ
  送ラナイト云フコトガアル、併ナガラ政府
  ニ對シテ現金ヲ送レバ、必ズ品物ヲ送ッテ來
  ルト云フ安心、信用ガアル爲ニ、必シモ荷
  爲替ニ依ラズトモ現金ヲ送ルコトハ明デア
  ル-吾々憚リナガラ荷爲替ノコトヲ知ラ
  ズシテ議政壇上ニ起チ、國民ノ代表トナル
  コトハ致シマセヌ(拍手)更ニ價格ガ段々ト
  高クナルデアラウ、政府ノ手數料ガ臨時賣
  ナドノ場合ニ十三圓八十錢取ル、故ニ隨分
  高イモノニ賣ラナケレバナラヌト云フ御說
  デアリマスガ、是亦統計ヲ見ルト直ニ其然
  ラザルコトヲ證明スルコトガ出來ル、昭和
  三年ノ硫安ノ價格ノ表ヲ見レバ、最低價格
  一噸ニ付テ百十八圓ニナッテ居リマス、政府
  ノ手數料ガ十三圓八十錢、然ラバ賣上ト云
  フモノハ百三十一圓八十錢トナルノデアリ
  さい、所ガ一方其當時ニ於ケル所ノ最
  高-假ニ政府ノ持堪ヘル「ストック」ヲ持ッ
  テ居ル場合ニ、政府ハ其時ニ幾ラノ損ヲス
  ルカ利益ヲスルカ、最高トシテ昨年ノ硫安
  價格表ハ一噸百五十三圓五十錢トナッテ居
  ル、卽チ手數料ヲ加ヘテ百三十一圓八十錢
  デ、之ヲ賣捌イテモ尙ホ政府ハ二十一圓七
  十錢ト云フ此利益ガアッタ、斯ウ云フヤウナ
  統計ニ實ハ相成ッテ居ルノデアリマス、其他
  產業組合ノ手數料ガドウデアル、斯ウデア
  ルト言ッテ、色ニノ御心配デゴザイマシ
  タケレドモ、產業組合ハ御承知ノ通リ
  組合組織ニナリ、所謂會社デアルトカ
  何カト違ヒマシテ、極メテ其持分ト云
  フモノガ平均的ニ相成シテ居ル、大キナ
  資本ヲ一人ガ持寄ルコトガ出來ナイ組織ニ
  ナッテ居ルト云フコトハ、松本君モ御承知ノ
  通リデアル、故ニ產業合ガ手數料ヲ取リ組
  マシテモ、其手數料ハ組合員ニ對シテ平等日
  分配サレルヤウナコトニ相成シテ居ル、故ニ
  何等サウ云フモノニ付テ、農民ガ高ク物ヲ
  買フト云フ御心配ハ御無用デアリマス拍
  手)況ヤ他ノ商賣人、他ノ小賣商人ト云フ
  モノハ、所得稅モ支拂ハナケレバナラヌ、
  營業收益稅モ支拂ハナケレバナラヌ、然ル
  ニ產業組合ハ所得稅ハ免除デアル、營業收
  益稅モ免除デアル、此點モ能ク御考願ハナケ
  レバナラヌノデアリマス、政府モ亦稅ヲ取
  リマセヌ、サウ云フ點モ能ク御考ヲ願ハナ
  ケレバナリマセヌ、マア其外一々左樣ナコ
  トヲ申セバ、子供ノ喧嘩ノヤウナコトニナ
  リマスカラ、此程度ニシテ置キマス(拍手)
  唯終リニ申述べテ置キタイノハ、今日ノ農
  村ノ疲弊困憊ハ政友會ノ罪ナリト云フコト
  ヲ言ハレタ(「其通リ」ト呼フ者アリ)斷ジテ
  然ラズ、其通リデアルト云フ人ハ、無學デ
  アルト云フコトヲ證明シテ居ル、御承知ノ
  通リ十八世紀ノ後半期ニ於テ產業ノ革命ガ
  起リ、所謂大規模、大組織資本主義ト云フ
  言葉ガ起ッタコトハ御承知ノ通リデアル、明
  治御維新以來如何ニナッタカト云フニ、所謂
  資本主義制度ト云フ總テノ施設ガ我國ニ行
  ハレタ、然ルニ農村ノミガ尙ホ單獨經濟組
  織ノ下ニ居ルガ爲ニ苦ンデ居ルノデアリマ
  ス、卽チ農村ノ疲弊困憊ハ產業革命ノ結果
  デアル、更ニ進ンデ言ウナラバ、農村ノ經
  濟組織ヲ農民自體ガ自覺致シテ改善ヲ致シ
  テ居ラヌト云フコトニ相成ッテ居ル(拍手)
  是等ノ點ニ付キマシテハ、政友會ト言ハズ、
  民政黨ト言ハズ、御互ニ留意致シテ、產業
  組織ノ改善ト云フコトニカヲ盡サナケレバ
  ナラヌ、農村問題ヲ唯單ニ反對センガ爲ニ
  反對スルト云フガ如キハ、却テ農民ニ對シ
  テ不忠實ナル遣リ方ナリト謂ハナケレバナ
  ラヌ(拍手)以上ノ理由ニ依テ反對ノ論ニハ
  反對ヲ致シ、政府原案ニ滿腔ノ誠意ヲ以テ
  賛成致ス次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=31

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• 032・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　高田耘平君
  〔高田耘平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=32

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• 033・高田耘平

  ○高田耘平君　本案ニ付キマシテ、卽チ肥
  料管理法及肥料管理特別會計法ノ二案ニ付
  キマシテ、甚ダ遺憾デゴザイマスケレドモ、
  反對ノ已ムヲ得ナイ理由ヲ申上ゲテ見タイ
  ト思ヒマス、實ハ本案ハ肥料調査會ニ於テ
  大體ノ成案ヲ得タモノデゴザイマス、而シ
  テ其肥料調査會ナルモノハ、昭和二年度ノ
  豫算ヲ編成スルニ方ッテ、若槻內閣ガ肥料ノ
  如何ガ農村問題ニ極メテ重要ナル關係アリ
  トノ理由ヲ以テ、昭和二年度ノ豫算ニ計上
  シ、其計上セラレタル豫算ニ依テ肥料調査
  會ガ開カレテ立案シタルモノデゴザイマス
  カラ、詰リ前內閣ノ豫算ニ依テ出來タモノ
  デゴザイマスカラ、大抵ノ事ナラバ私ハ贊
  成致シタイト思ヒマス、併ナガラ内容ヲ調
  査スレバスル程、如何ニモドウモ杜撰ノ點
  モアリ、缺點ガ多イガ故ニ、私ハ已ムヲ得ズ
  反對スルト申上ゲルノデゴザイマス(拍手)
  本案ノ目的ハ其說明書ニアル通リ、食糧ノ
  充實、農村經濟ノ振興ノ爲ニ、無機質窒素
  肥料ノ中硫安ヲ管理シテ、其配給ノ圓滑ト
  價格ノ安定ヲ期スルト云フノデゴザイマ
  ス、此目的ヲ達スルコトガ出來レバ無論同
  意致シマス、出來ナイト云フコトヲ知リタ
  ルガ故ニ、私ハ反對スルノデゴザイマス、
  然ラバ吾々ニ意見ガナイカト云ヘバ、ソレ
  ハ或ル場合ニ於テハ國庫ニ損失ヲ來ス虞ガ
  アル、又或ル場合ニ於テハ却テ產業組合ノ
  根本ヲ破壊スル虞ガアルト云フヤウナコ
  ト、而シテ決シテ肥料ノ値段ヲ下落セシム
  ルコトノ出來ナイヤウナ案ヲ以テスルヨリ
  モ、產業組合ヲシテ直接肥料製造會社ヨリ、
  府縣ニ在ル所ノ聯合組合ノ手ヲ通ジテ、或
  ハ全國ノ購買聯合組合ノ手ヲ通ジテ、政府
  ガ斡旋ノ勞ヲ執ッテ、直接ニ製造會社ト、サ
  ウシテ產業組合トノ間ノ賣買ノ斡旋ニ依テ
  完成セシムルコトガ出來マシタナラバ、是
  コンハ政府ガ御世話ヲスル所ノ手數ト費用
  ガ省ケテ、ヨリ以上ニ安キ肥料ヲ農家ニ供
  給スルコトガ出來ルト存ズルカラ反對スル
  ノデアリマス(拍手)私ハ本案ノ結果ハ國
  庫ニ損失ヲ及ボシ-是ハ松本君ガ大體
  申上ゲタカラ申上ゲヌデモ宜カラウト
  思ヒマス、但シ私ハ或ル程度ノ損害ヲ及
  ボシテモ、本當ニ農民ニ安キ肥料ヲ供給
  スルノ見込ガ立ツノナラバ、賛成シテモ宜
  シイト思ヒマス、處ガ政府ノ案ハサウデナ
  イ、政府ハ損ヲシテハイケナイノデアル、
  損ヲシテハイケナイトナレバ、決シテ安イ
  肥料ヲ供給スルコトハ出來ナイコトニ相成
  ルト思ヒマス、其理由ハ後ニ申シマス、更
  ニ配給ノ將ニ圓滑ニ赴カントスルノヲ阻害
  致シマス、而シテ此〓々タル計畫ヲ以テシ
  テハ、ドウシテモ安定ナド期スルコトハ出
  來マセヌ、先程-斯ンナ事ハ申上ゲタク
  ナイノデスケレドモ、土井君ガ農民運動ガ
  肥料管理案ノ通過ヲ要求スルカラ、議會モ
  之ニ共鳴シタラ宜カラウトノ意味ノ事ヲ大
  袈裟ニ吹聽ニナリマシタ、此間農民大會ニ
  左樣ナ決議ノアッタコトヲ吾々モ承知シテ
  居リマスガ、併ナガラアレハ全ク管理案ノ
  内容ヲ知ラナイ府縣ノ農會代表者等ノ數十
  名ガ私ノ所ニ御出デニナッテ、肥料管理案ニ
  贊成セヨト言フ、ドウモ私共ニハ分ラヌケ
  レドモ、今ノ程度デハ私ハ賛成出來ナイー
  アレハ決シテ諸君ノ期スルガ如キ安イ肥料
  ノ供給ノ出來ナイモノデアル、諸君ハ肥料
  管理案ニ賛成セヨト私ニ迫ルガ、然ラバ諸
  君ハ肥料管理案ノ内容ヲ御覽ニナッタカト
  伺ッタ所ガ、內容ハ見マセヌ、唯政府ガ宜イ
  ト云フカラ宜カラウト云フ單純ナモノデア
  リマシタ、決シテ農民ノ大多數ノ者ガ肥料
  管理案ノ內容ニ付テ、嚴重ナル比較〓究ヲ
  遂ゲテ御贊成ニナッテ居ルノデハゴザイマ
  セヌカラ、唯農民大會ニ於テ肥料管理法ヲ
  賛成セヨト云フ御話ガ吾々ニアッタト云フ
  コトニ依テノミ、全日本ノ農民ノ輿論デア
  ルト御考ニナルノハ、極メテ間違タタ判判
  斷デアルト云フコトヲ私ハ申上ゲタイノデ
  アリマス、過般本會議ノ時ニ、私ノ此方法
  ニ依テ果シテ安キ肥料ヲ一般農民ニ提供ス
  ルコトガ出來ルカ否ヤト云フ質問ニ對シマ
  シテ、農林大臣ハ常識的ニサウナルト云フ
  御話ガアッタ、更ニ進ンデ私ハ具體的ニドウ
  云フ御考デアルカト云フコトヲ伺ッタ處ガ、
  大臣ハ御出ニナラヌデ砂田政府委員ガ御
  出ニナッテ、肥料商ガ反對スルノガ其證據デ
  アルト言ッテ居ラレタ、或ル意味ニ於テサウ
  モ取レマスガ、肥料商ノ反對シテ居ルノ
  ハ、私ガ見テハ問屋連中バカリデアリマ
  ス、地方ノ肥料商ハ反對ガアリマセヌ何
  トナレバ斯ンナモノガ有シテモ無クテモ痛
  痒ハ敢テ感ジナイカラデアリマス(拍手)是
  ハ事實デアリマス、成程反對スル人モアル
  カモ知レヌケレドモ、本案ノ無償値ナコト
  ヲ知ラナイ人ノ反對デアル、卽チ本管理案
  ノ運用ニ依テ國家ニ損失ヲ來スト云フ事柄
  ハ、是ハ松本君カラ大體申上ゲマシタカラ
  略シマス、唯機敏ナル商賣人ト其商賣人ノ
  極メテ今日ノ競爭ノ激烈ノ間ニ立ッテ、政府
  ガ果シテ極メテ嚴正ナル法規ノ下ニ於テ商
  行爲ヲ營ンデ、商賣人ト同ジ値段ニ賣ルコ
  トガ出來ルカ否ヤト云フ事柄ハ、是ハ常識
  的ニ御考ニナッテ判斷ノ付ク事デアルト私
  ハ思フ、故ニ政府ガ損ヲシテマデモヤルノ
  デアルト云フナラバ、是ハ意味ガ違ヒマス、
  政府ハ損ヲスルノデハナイ、儲ケルト云フ
  ノデアル、是ニ於テカ私ハ決シテ儲クルコ
  トガ出來ナイノミナラズ、必ズ損ニ歸スル
  ト云フコトハ是ハ斷定致シマスケレドモ、
  政府ハ損ヲシナイデヤルト云フガ、私ハ損
  ニナルト思ヒマス、損ニナル理由ハ玆ニ略
  スルノガ當然ト思ヒマス、私ハ是ヨリ以下
  極メテ簡單ニ反對ノ理由ヲ數點申上ゲテ見
  タイト思フノデアリマス、第一ハ調査ガ不
  十分ナルコトデアリマス、何故調査ガ不十
  分デアルカト言ヘバ先程申上ゲマシタ通
  リ.私ハ政府ガ產業組合ノ手ヲ經テ農民ニ
  供給スルノト、商賣人ガ供給スルノト、値
  段ガ何方ガ安イカ高イカ、政府ハ安ク供給
  出來ルト言フカ、然ラバ具體的ノ數字ヲ擧
  ゲテ御說明ヲ願ヒタイト本會議ニ於テモ申
  上ゲタ、處ガ本會議ニ於テ農林大臣ハ委員
  會ニ於テ詳細ニ申上ゲルト言ノタ、委員會ニ
  於テ更ニ私ハ其内容ヲ伺ヒマシテモ、決シ
  テ具體的ノ答辯ハ一度モゴザイマセヌ、卽
  ヲ是ハ私ハ御調査ノ甚夕不十分ナル理由デ
  アルト申上ゲテモ差支ナイト思フノデアリ
  マス(拍手)第二ハ政府ガ商行爲ヲ營ムノデ
  アル、三千万圓ノ金ヲ利用シテ商行爲ヲ營
  ムノデアルカラシテ、株式會社ニ於ケル所
  ノ企業日論見書樣ナモノガナケレバナラナ
  イデハナイカ、卽チ其内容ニ付テ何處カラ
  ドウ云フ方法デ買シテ、而シテ其費用ガ幾
  ラ掛ッテ、合敷ガ幾ラ掛ッテ、經費ガ幾ヲ掛
  カルト云フヤウナ具體的ノ目論見書ガナケ
  レバナラナイト思ヒマシテ之ヲ要求致シマ
  シタ、處ガ其當時無カッタノデアリマス、ソ
  コデ急遽トシテ作ッタ、其翌日出シタモノハ
  何デアルカト言ヘバ、十箇年ニ亙ル收支豫
  定表、貨借對照表ナルモノヲ御出シニナッタ
  ノデアリマス、面シテ委員ノ中ヨリ松本君
  及ビ其他ヨリ、其經費ノ內容ニ付テ詳細ニ
  承ルト云フト、具體的ノ御答ハ之ニ付テ出
  來ナイノデアリマス、是ガ私ハ調査ノ不十
  分デアルト云フ理由ノ第二デアルト思フノ
  デアリマス、第三ハ肥料管理特別會計法ノ
  第九條ニ「損益計算ニ關スル規程ハ勅令ヲ
  以テ之ヲ定ム」ト書イテアルノデゴザイマ
  ス、小川委員ヨリ此規定ニ關スル勅令ハ大
  抵出來テ居ル筈デアル、是ハ如何ナル場合
  ニ於テモ、省令ニ依ルトカ勅令ニ依ルトカ
  云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、其案ハ政
  府ニ於テ出來テ居ルノデゴザイマス、大抵
  ノ場合ハ出來テ居シテ出スガ當然デアル、此
  要求ヲ致シマシタ處ガ、政府ハ今尙此勅
  令案ヲ御出シニナリマセヌ、是本案ニ付テ
  政府ノ調査ガ不十分デアルト申シマシテモ
  差支ナイ所以ノ第三デゴザイマス、第四ハ
  十箇年間ニ硫安ヲ賣ルト云フ計畫ガ、極メ
  テ基礎薄弱ナル見地ニムユテテルト思フノ
  デアリマス、肥料管理計畫要綱ナルモノガ
  委員ニ配付ニナリマシテ、之ニ御添附ニナ
  リマシタル所ノ表ヲ拜見スルト云フト、需
  要見込額ヲ昭和四年度ヨリ年々五万噸ヅヽ
  增加スルモノト定メタノデゴザイマス、私
  ノ確ニ左様ニ硫安ノ需女ガ將來ニ增加スル
  ノデアルカト云フコトノ質問ニ對シマシテ
  ハ其御各ハ肥料調査會ナドデモ大抵ソレ
  デ宜カラウト云フコトデアル、是以上ニ御
  答ガナイヤウニ存ジマス、殊ニ吾々政府ノ
  御提案ニナリマシタ所ノ各種ノ調査表ヲ拜
  見スルト云フト、此無機質窒素肥料ノ消費
  額ノ統計ヲ見ルト云フト、大正八年ヨリ昭
  和三年迄九箇年間ノ平均ノ消費量ノ增加
  ハ-此九簡年間ニ於テ、一箇年間ノ消費
  量ノ增加ト云フモノハ平均シテ二万二千七
  百噸ニ過ギナイノデゴザイマス、更ニ最近ノ
  三箇年間卽チ昭和元年、二年、三年ノ消費
  額ノ增加ノ狀況ヲ調ベテ見ルト云フト、昭
  和元年ノ消費額ガ約四十万噸-万以下ハ
  略シマス-昭和二年ノ消費額ガ三十八万
  噸昭和三年ノ消費額ガ四十三万噸デゴザ
  イマシテ、其增加ノ趨勢ハ激減シテ、平均
  ヲスルト云フト三箇年間ニ於テ、一箇年ニ
  平均一万五千噸ヅヽシカ增加シナイノデゴ
  ザイマス、他ノ半面ニ於テドウ云フ結果ヲ
  來スカ、ドウ云フ狀況ヲ來スカ、卽チ新肥
  料ト申シマスガ、三要素ヲ具備スル肥料デ
  アルサウデアリマス、私ハ能ク內容ヲ知リ
  マセヌガ、新肥料ガ最近非常ナ勢ヲ以テ增
  加致シマシテ、最近二三年間ハ年々五六割
  ノ增加ヲシテ居ルノデゴザイマス、年々其
  通リニ殖エテ居ル、卽チ硫安ニ代ッテ新肥料
  ガ隨分增加ノ趨勢ヲ著シク呈シタモノデア
  ルト判斷シテモ差支ナイト私ハ思フノデア
  リマス、何故サウナッタカト云フコトニ付キ
  マシテ私能ク存ジマセヌガ、二三ノ御方ノ
  御話ニ依リマスト云フト、是ハ絕對的ノモ
  ノデハアリマセヌガ、硫安ヲ單一肥料トシ
  テ使フコトハ、作物ノ種類ニ依テ、或ハ土
  質ニ依テ、非常ニ惡イ結果ヲ來ス虞ガアル
  ト云フ、是ハ獨逸邊リデハ非常ニ損害ヲ蒙ッ
  タノデアリマスガ、日本ニ於キマシテ、水
  田ニ於テハ害ガ無イトカ色ニナ理窟モゴザ
  イマセウガ、兎ニ角硫安ト云フモノヲ單一
  ニ過量ニ使ヘバ必ズ相當土地ノ荒廢ヲ來ス
  ト云フコトハ學者ノ定論デゴザイマス、故
  ニ知識ノ進ンダル農民ハ、此軍一肥料ヲ使
  フヨリモ三要素ヲ具備シタル新肥料ヲ使
  フト云フコトガ、農家ソレ自身ノ耕作上
  何等危險ノナイモノデアルト云フコトニ
  氣ガ付イテ、所謂硫安ノ消費量ト云フモノ
  ハ、增加ノ運勢ガ激減シテ、之ニ代ッテ三要
  素ヲ具備シタル新肥料、所謂「アンモフオ
  ス」其他ガ急ニ增加シタルニハアラズヤト
  判斷スル所以デゴザイマス、斯樣ナ狀態デ
  アルノニ、昭和四年度ヨリ一箇年五万噸宛
  增加スルノデアルト云フ計畫ハ全體何ヲ
  基礎ニシテ斯樣ニ架空ノ數字ヲ御示シニ
  ナッタノデアルカ、殆ド解スルニ苦シムノデ
  アリマス、卽チ本計畫ハ、一箇年ニ五万噸
  宛增加スルト云フ計畫ヲ御立ニナッタ事柄
  ハ計畫ヲ立テンガ爲ニ斯樣ナ數字ヲ羅列
  シタノデアリマシテ、何等根據ノナイ極メ
  テ薄弱ナル計畫デアルト申上ゲテモ、政府
  當局者ニ於テハ之ニ對スル御答ガ出來ナイ
  ト私ハ思フノデアリマス、假ニ政府ノ御計
  畫ノ通リ五万噸宛增加致スト見タ所ガドウ
  ナルカ、假ニ此計畫ノ通リ肥料ノ需要ガ進
  ムト見マシテ〓究ヲ致シテ見ルト、昭和四
  年度ニハ僅ニ五千噸賣ルニ過ギナイ、昭和
  五年度ニハ三万三千噸ヲ賣ルニ過ギナイ、
  而シテ十年後ニ至ッテ、其當時ノ消費量ガ
  今後一箇年五万噸宛累加スルト見テ、是ガ
  九十五万噸トナッテ、其二制九分ノ約二十七
  万五千噸ヲ管理スルニ過ギナイノデアリマ
  ス、十年後ニ至ッテ僅ニ硫安ノ總消費量ノ
  二割九分ヲ國家ガ管理スルニ過ギナイノデ
  アリマス、此場合ニ於テ私ハ昭和元年度ニ
  農林省カラ發表シタ調査ニ依テ見ルト、全
  窒素系ノ肥料ノ累計ハ、豆粕其他總テヲ合セ
  マスト、二百六十四万七千八百噸ノ多キニ
  達シテ居リマス、而シテ同年ニ於ケル硫安
  ノ消費量ハ四十万噸デアリマシテ、約百分
  ノ十五ニ相當シテ居ルノデアリマス、ソコ
  デ今他ノ窒素肥料ノ需要ハ增加致サナイ
  デ、硫安ノミガ政府ノ豫定通リ增加スルト
  假定致シマシテ、十年後ニドウナルカト云
  ヘバ、計畫通リニ硫安ノミガ增加シテ、他ノ
  窒素系ノ肥料ハ增加シナイト見タ場合ニド
  ウナルカト言ヘバ、卽チ昭和十三年度ニ於
  テ九十五万噸ノ需要ニ對シテ、其管理額二
  十七万五千噸ト云フモノヲ、全窒素肥料ノ
  總噸數二百六十四万七子八百噸ニ比ベル
  +、管理額ハ十年後デモ十分ノ一デアリマ
  ス、是ハ總噸數デゴザイマシテ、窒素ノ分
  量ニ付テ申上ゲテ居ルノデハアリマセヌ、
  窒素ノ分量ニ於テハ是以上ニナルコトガア
  ルデアリマセウ、ケレドモ、兎ニ角總噸數
  ニ付テ申上ゲルト、今後十年後デナケレバ
  十分ノ一ニ達シナイ、是ハ他ノ肥料ハ一切
  增加シナイト假定シテヾゴザイマス、十年
  後ニ至ッテ僅ニ十分ノ一ニ過ギザル所ノ
  肥料ヲ國家ガ管理シテ、ソレデ肥料ノ價格
  ノ安定ト配給ノ公午ヲ得ルト云フコトハ、
  如何ニモ大袈裟ナ吹聽デアルヤウニ私ハ思
  フ、加之前段申上ゲマシタ通リ、五万噸增
  加計畫ハ全然基礎ガゴザイマセヌデ、先程
  申上ゲマシタヤウニ、新肥料ニ對スル農民
  ノ需要ガ今後合理的ニ曾加シテ行クト云フ
  コトハ明デアルト致シマシタナラバ、十箇
  年間ニ此計畫ヲ徐々ニ實行スルト云フヤウ
  ナ此計畫ハ、其途中ニ於テ既ニ必要ナキニ達
  スルト私ハ信ズル次第デゴザイマス、卽チ
  私ハ本計畫ハ極メテ根據ナキ基礎ニ依テ立
  テタル計畫ニシテ、而シテ斯ノ如キ少量ヲ
  以テシテハ、到底肥料ノ配給ノ圓滑ト價格
  ノ安定ヲ期スベカラズト信ズル理由ノ第一
  デゴザイマス、ソコデ起ル問題ハ、政府ハ
  產業組合ノ手ヲ通ジテ果シテ農民ニ安キ値
  段ノ肥料ヲ、商賣人ヨリ以下ノ値段ノ肥料
  ヲ供給シ得ルヤ否ヤト云フ、極メテ具體的
  ノ事實、最モ必要性ノアル問題ニ付テ、私
  ノ所見ノ一端ヲ申上ゲテ見タイト思フ次第
  デゴザイマス、其點ニ付テ政府ノ御答辯
  ハ前申上ゲマシタ通リデアリマスカラ略
  シマスガ、第一此管理法ニ依テ見マシテ
  モ、政府ノ產業組合ニ御賣リニナル値段ガ
  如何デアルカト云フコトデゴザイマス、其
  値段ハ法律ニ元シテ居ル通リ時價デ販賣ス
  ルノデゴザイマス、時價トハ何デアルカト
  言ヘバ、其時ノ東京、大阪等ノ市場ニ於テ、
  問屋ガ各地方ノ商人ニ賣ル値段ト申シテ大
  體差支ナイトノコトデゴザイマス、卽卽其
  當時ニ於ケル所ノ市價ト見テ大體差支ナイ
  ト思フノデアリマス、卽チ時價デ政府ガ賣ル
  ノデゴザイマス、此場合ニ於テ政府ハ確ニ
  損ヲスル、何トナレバ商賣人ガ買入レ、貯
  藏シ、引渡ニ要スル手數ト、政府ガ買入レ及
  其他ヲスル手數トニ於テ、政府管理ノ諸費
  用ト商賣人ノ費用ト其間ニ差ガアルカラ、
  市價デ賣ルコトニ依テ政府ガ或ル程度ノ損
  ヲスルコトハ明瞭デアリマス、併シ私ハシ
  ンナ事ニ付テハ申上ゲマセヌ、損ヲシテモ
  農民ニ安價デ肥料ガ供給出來レバ差支ナイ
  ト云フノガ私ノ意見デアルカラ、或ル程度
  ノ損ハ構ハヌノデアリマス、故ニ時價デ賣
  ルト云フコトデアリマスカラシテ、產業組
  合ニ政府ガ直接賣ル値段モ、問屋筋ガ地方
  ノ商人ニ賣ル値段モ、同ジデアルト申上ゲ
  テ差支ナイノデゴザイマス、併ナガラ其後
  ニ於テノ問題ハドウナルカト云ヘバ、政府
  ガ產業組合ニ賣ル、而シテ商賣人ハ政府ト
  同ジ値投デ問屋カラ買っテ農民ニ賣ル場合
  ニ於テ、何方ガ安ク賣レルカト云フコトニ相
  成ルノデアル、是ニ於テ所調山本農林大臣
  ノ常識判斷ガ必要ニナル、所ガ其當識判斷
  ハ遺憾ナガラ私ノ調査ノ範圍デハ外レタ、
  山本農林大臣ハ常識上安ク賣レナケレバナ
  ラヌト申シマスガ、實際ハサウデゴザイマ
  セヌ、更ニ此誤解ハ農林大臣バカリデハゴ
  ザイマセヌ、實ハ此本會議ニ提案ニナル前ニ、
  昨年デアリマシタカ、二三ノ調査委員會ノ位
  置ヲ占メタ重要ナル人ノ御意見ヲ伺ヒマシ
  タ所ガ、其人ハ斯ウ言ッタ、君ハサウ言フケ
  レドモ、政府ガ儲ケズニ產業組合ニ賣ルノ
  ダカラ、運賃ダケデ濟ムノダ、成程運賃ダケ
  デ濟メバ安イ、併ナガラ是ハ產業組合ノ内
  容如何ヲ知ラザル所ノ誤解ヨリ生ジタルコ
  トデアルト思フ、肥料調査委員ト云フ方々
  ハ、大抵學者トカ政治家トカ、東京邊リニ
  居ラレル人デゴザイマシテ、遺憾ナガラ地
  方ノ產業組合ノ狀況ナドヲ能タ御知リニナ
  ラヌ人ガ多イト思ヒマス、故ニ調査委員ノ
  方々ハ、運賃ヲ加算スレバ、產業組合モ損
  ヲシナクテモ賣レルト思テテララルルノデ
  アルガ、是ハ誤解デアルコトヲ遺憾トスル、
  ソコデ政府ガ產業組合ニ費ラセル場合ニ
  於テ、凡ソ幾何ノ手數料ヲ產業組合ガ肥料
  需要者カラ取シテ差支ナイカト云フ、政府委
  員ノ具體的ノ御說明ヲ拜聽スルト、大體ニ
  於テ購買組合聯合會等ノ費用ヲ入レテ、
  噸ニ付ア四五圓ノ手數料ガ掛ルト答ヘラレ
  タ、成程四五圓掛ルデアリマセウ、ソレ以
  下デハドウシテモ組合ガ立タナイ、手數料
  ハ組合ノ利益デアル、然フバ商賣入ハドウ
  云フ風ニ賣フテ居ルカト云フト、非常ニ特殊
  ノ場合ヲ取除イテハ、現在ニ於テハ內地品
  デ言ヘバ一袋ニ付テ十錢、高イ所デ二十錢、
  十五錢半均位デ大抵賣フテ居ルノデゴザイ
  マッ、一袋十五錢トスレバ、一噸ケ二十六
  袋デゴザイマスカラ、普通ニ商賣人ノ賣ル
  ノハ三圓九十錢バカリノ利益デアリマス、
  卽チ政府ガ產業組合ヲ通ジテ賣ル値段モ、商
  賣人ガ地方ニ於テ賣ヲテ居ル値段モ大體ニ
  於テ違ヒガナイ、サウ申スト政府ノ方デハ
  此表ヲ御出シニナル、卽チ中央市場ノ價格
  ト、地方ニ於ケル小賣ノ價格トノ比較ヲシ
  テ、二十圓モ三十圓モ高イ所ガアルト言ハ
  レル、成程高イ所モアリマセウガ、是ハ季
  節的或ハ場所的ノモノデゴザイマス、先達
  政府ガ委員會ニ御出シニナッタ其表ノ中デ、
  私ノ選擧區ノ栃木縣鹽谷郡ニ氏家町ト云フ
  ノガアルガ、最高ノ小買價格ヲ元シテ居ル
  ノデゴザイマス、殆ド栃木町邊リヨリ三倍
  ノ利益ヲ取シテ居ルヤウニ出來テ居ル、私極
  メテ奇怪ナル現象デアルト存ジマシテ、之
  ヲ詳細ニ調査致シマシタ、所ガ此地方ハ大
  體ニ於テ硫安ヲ使ハナイ地方デアル、畑
  殆ドナク、水田ニハ何故使ハヌカト云フト、
  多量ノ用水ガアル所デ、之ヲ使ヒマシテモ
  流出ノ虞ガアルカラ使ハナイノデアリマシ
  テ、ドウ云フモノニ使フカト言フト、僅ナ
  ガラ野菜畑ニ使フノデアル、一袋ト纏メテ
  買ハナクシテ、一斗トカ、五升、三升ト買
  フモノヲ調ベテ之ガ高イト云フノデアル、
  斯樣ナ實例ガ澤山アル、更ニ季節的ニ高イ
  所モアル、是ハ群馬縣ノ館林町デアリマス
  ガ、昭和三年五月ノ調ニ於テ、其利益ハ一噸
  ニ付テ五十四錢デアル、六月ニナッテ一圓八
  錢、七月ニ至ンテ十二圓六十九錢トナルノデ
  ゴザイマス、之ヲ見ルト、實際ヲ知ラナイ
  御方ハ成程ドウモ商賣人ハ惡イ事ヲスル、
  商賣人ガ暴利ヲ貪ルト誤解ナサルデゴザイ
  マセウガ、實際ハサウデハナイ、卽チ五月、
  六月ハ彼ノ地方ニ於ケル硫安ノ消費時期デ
  アルカラ安イノデアッテ、七月ニナルト殆ド
  需要ガナイノデアリマス、需要ガナイカラ
  品物モ商賣人ノ手許ニナイ、唯野菜ヤ何カ
  ニ使フ爲ニ一升、二升ト買ヒニ來ル、サウ
  スレバ高クナルノハ當リ前デアル、左樣ニ
  肥料ノ無クナッタ場合、肥料季節ノ經過シ
  タ時ニ一袋ト纏ラズ五升、一斗モ買ッタモノ
  ガ非常ニ高イ統計ニ現レテ來テ、地方ハ高
  イノデアル、配給ガ惡イノデアル、商人ハ
  儲ケルノデアルト云フ論斷ハヽ私ハ實際地
  方ノ實情ヲ知ラザル間違タタ意見デアルト
  論斷スル次第デアリマス(拍手)即チ時期ニ
  依テ、場所ニ依ア、非常ニ高イモノガ表ニ現
  レマスケレドモ、是ハ一袋ト纏ノタモノデ
  ゴザイマセヌデ、テト.二升、或ハ一斗ト
  云フヤウナ極メテ少量宛費ルノデゴザイマ
  スカラシテ、斯樣ニ高ク賣フナケレバ商人
  ガ引合ハナクナルノデゴザイマシテ、大體
  ヲ言ヘバ適當ノ時期、適當ノ場所ニ於キマ
  シテハ一噸ニ付キ四五圓ノ純益ヲ以テ賣ル
  モノデアルト云ノコトハ明ナル事實デゴザ
  イマス、サウスレバ政府ガ產業組合ノ手ヲ
  通ジテヾモ、決シテ之ヨリ安ク賣ルコトハ
  絕對ニ出來マセヌ、若シ安ク賣ラセレバ、
  產業組合其モノハ潰レテシマウト諒承シナ
  ケレバナラヌト私ハ思フ(「簡單」ト呼フ者
  アリ)御尤ノ御言葉デアリマスガ、非常ニ
  誤解シテ居ル方ガアリマスカラ、誤解ヲ解
  ク爲ニ多少ノ時間ヲ費スコトヲ御許シヲ願
  ヒタイト存ジマス、過般委員會ニ於テ、產
  業組合ガ果シテ何程位ノ手數料ヲ取シテ農
  民ニ賣ルノデアルカト云フ質問ヲ致シマシ
  タ、所ガ政府委員ハ各方面ノ、極メテ手數
  料ノ少ナイ所ヲ吾々ニ元シタ、或ル場所ニ
  於テハ一圓、或ル場所ニ於テハ一圓五十錢、
  或ル場所ニ於テハ一圓八十錢等デアルト稱
  シタ、ソレハサウ云フ所モアリマス、商賣
  人デモ一圓モ、五十錢モ、六十錢モ損ヲシ
  テ居ル者モ澤山アル、或ル場所ニ依テハ一
  噸ニ付一圓カ或ハ一圓五十錢ノ利益デ供給
  シテ居ル所モゴザイマセウガ、是ハ極メテ
  取除ケデゴザイマス、大體ニ於テ政府委員
  ノ御說明ノ通リ、一噸ニ付四五圓ノ手數料
  ヲ取ルニ非ザレバ、到底組合ノ經營ヲ維持
  スルコトガ出來ナイト云フコトデゴザイマ
  ス、ンコデ私ハ政府ノ產業組合ニ對スル信
  用程度ヲ〓究シテ見タイト思フ、政府ハ
  今度肥料ノ管理ヲ爲スニ當ッテ、非常ニ此
  產業組合ヲ確カナモノデアルカノ如ク言ヒ
  出シタ、主トシテ產業組合ニ賣出サセル、
  農會ニハ成ベク賣出サセヌ、是ハ勿論御尤
  ナ御意見デアルト思フ、日本ニ產業組合ガ
  多數アリマスケレドモ、私共ハ遺憾ナガラ
  產業組合ガ商行爲ヲ敢テシテモ間違ヒナイ
  產業組合ハ、數アル中デ少ナイト思ヒマ
  ス、政府モ其御意見デアルト思フ、私ハ何
  故其意見デアルカト言フナラバ、昨年御承
  知ノ通リ三千万圓バカリヲ低利資金トシテ
  農村ニ御貸付ニナッタ、肥料ノ資金トカ云フ
  名目デ、選擧ノ前頃御貸付ニナラントシタ
  ガ、其金ヲ產業組合ヲ信ズルナラバ、何故
  全部產業組合ヲ通ジテ御貸付ニナラナカッ
  タノデアルカ、三千万圓ノ中デ、產業組合
  ヲ通ジテ貸付ケタモノハ五百万圓位デ、殘
  リノ二千五六百万圓ハ、全然產業組合ヲ
  信ゼズシテ農工銀行及勸業銀行ヲ經由シテ
  高イ步ヲ拂ッテ貸シタデハアリマセヌカ、
  是ハ要スルニ政府ガ產業組合ヲ信ジナイト
  云フ、一ツノ理由ニ相成ルト思フノデゴザ
  イマス(此時發言スル者アリ)ドウゾ砂田サ
  ン、御立腹ナク此演壇ニ登。テ御答ヲ願ヒ
  やっ、假ニ產業組合ヲ通ジテ政府ガ賣ラシ
  メルコトガ幾分ナリ安ク出來ルト假定致シ
  マシテモ、玆ニ如何ナル結果ヲ生ズルカト
  云フコトヲ見ナケレバナラヌノデアリマ
  ス、成程場所ニ依テハ非常ニ-產業組合
  ノ進ンダ所ハ別デゴザイマスルガ、普通ノ
  所ニアリマシテハ、產業組合ト云フモノ
  ハ大體ノ場合ニ於テ無產階級、全然資產
  ノ無イ農民ヲ信ジマセヌ、是ガ卽チ產業組
  合ガ眞ニ其機能ヲ發揮出來ナイ理由ノ一ツ
  デゴザイマス、實際ハ其通リデゴザイマ
  ス、シコデ今度ハ安イ肥料ヲ產業組合ニ政
  府ガ賣ル、ソレガ商賣人ヨリ安ク賣レルト
  假定致シマシタ場合ニ於テドウナル、硫安
  ノ全部ヲ國家ガ管理スルナラバ別デゴザイ
  マス、產業組合ガ賣ラントスル肥料ノ全部
  ヲ供給スルナラバ別デゴザイマスルガ、其
  中ノ僅ヲ供給スル場合ニ於テ、ドウ云フ風
  ニ政府ガ產業組合ニ安ク供給シタル肥料ガ
  分布サレルト思フノデアルカ、私共ハ斯ウ
  云フ結果ヲ生ズルト思フ、多クノ場合ニ於
  テハ、其地方ノ有力者、產業組合ニ直接ノ
  關係アル人、所謂地方ノ有志、實力ノアル
  人ニ多ク此安キ肥料ガ賣渡サレテ、產業組
  合ニ全然關係ナキ貧シキ農民、小作人等ニ
  ハ、幾ラ產業組合ガ供給セント致シマシテ
  モ、富裕階級ノ農民ガ安キ肥料ヲ多ク取ッテ
  シマッテ、貧民階級ニハ一切之ヲ供給スル能ハ
  ザル現狀ハ確ニ事實デアルト私ハ思フ(拍手)
  斯ク申上ゲマスレバ、卽チ是ニ於テ肥料ノ
  公平ナル分配ドコロデハナイ、極メテ不公
  平ナル所ノ肥料ノ分配デアル、地方ノ有志
  ト云フ人、產業組合ニ直接ノ關係アル人ニ
  ハ安イ肥料ヲ供給シ、無產階級及農民ノ
  小作人階級ニハ、商賣人カラ高イ肥料ヲ買
  ハネバナラヌト云フ狀態ニアルノデゴザイ
  マッ、卽チ斯ウ云フコトニ依テ肥料ノ不公
  平ナル分配ヲ來スコトハ明デアリマス拍
  手)更ニモウ一歩讓シテ、安ク相成ルト假定
  致シマシタ場合ニ於テ、モウ一ツ生ズル所
  ノ弊害ハ、產業組合ハ成程其數ハ澤山アリ
  マスルケレドモ、產業組合ノ機能、殊ニ產業
  組合ノ中ノ購買販賣組合ノ機能ヲ充分ニ發
  揮サレテ居ル所ハ、極メテ小部分デゴザイマ
  ス、故ニ若シ商賣人ノ賣ル肥料ヨリモ、產
  業組合ガ政府ヨリ買シテ賣ル肥料ガ安イト
  致シマシタナラパ、極メテ一局部ニハ安イ
  肥料ガ供給サレテ、他ノ大部分ニハ商賣人
  カラ高イ肥料ガ供給サレルト云フコトニナ
  ルノデアリマスルカラシテ、此場合ニ於テ
  モ肥料ノ不公平ナル分配ヲ來スコトハ極メ
  テ明ナル所デゴザイマス(拍手)更ニモウ
  一ツ私共ノ憂フル所ハ、今日マデ地方ノ縣
  農會、郡農會等ニ於テ、肥料ノ共同販賣ヲ致
  シマシタガ、其成績ト云フモノハ中ニ旨ク
  行カナイト云フコトハ、是ハ各府縣ニ於テ
  起シテ居ル事情デアルト思フノデゴザイマ
  ス、勿論全部トハ行カヌデゴザイマセウ
  ガ、大體ニ於テ郡農會ノ共同購入モ、縣農
  會ノ共同購入モ失敗ニ終テ居リマス、何故
  サウ云フ結果ヲ來シタカト言ヘバ、是ハ是
  等ノ機關ト云フモノハ、農民ヨリ申込ヲ取ッ
  テ之ヲ引渡スマデニ相當ノ時間ヲ要シ、其時
  間ヲ要シテ居ル間ニ、肥料ハ非常ニ低落シ
  タト云フヤウナ場合ガ多クアルノデアリマ
  スカラ、其場合ニ於テハ產業組合ハ肥料ヲ
  買受ケタケレドモ、之ヲ一般農民ニ配給ス
  ル頃ハ價格ガ非常二下落シテ、農民ハ他ノ商
  賣人ヨリ買シテシマッテ、農會ガ是ガ處理ニ
  窮シタト云フコトガ多クアルノデゴザイマ
  ス、是ハ勿論產業組合ガ直接商賣人ヨリ買ッ
  テ賣ル場合ニ於テモサウデゴザイマスガ、
  政府ノ遣方ハ極メテ時間ガ掛ル、價格ノ公
  示ヲナス等其他種々ノ理由ニ依テ、政府委
  員ノ答辯ニ依リマシテモ、殆ド二箇月ハ掛
  ルサウデゴザイマス、卽チ申込ヲ受ケテ、
  ソレカラ配給スルマデニハ二箇月掛ルノデ
  ゴザイマス、其間ノ價格ノ變動ニ依テハ、
  變動ノ狀況ニ依テハ、ソレガ爲ニ組合ノ根
  本ヲ破ルト云フヤウナコトニナル虞モアル
  ノデゴザイマス、是ハ勿論產業組合ガ直接
  商人ヨリ買フ場合ニ於テモアル事デゴザイ
  マスガ、商賣人ヨリ產業組合ガ買フヨリ
  モ、政府ノ手ヲ經テ買フトー云フコトガ非常
  ニ多クノ時間ヲ要スル、時日ヲ要スルカラ
  シテ、其時日ヲ要スルダケソレダケ價格ノ
  變動ガ生ジ、或場合ニ於テハ低落シ、ソレ
  ガ爲ニ產業組合ガ大破綻ヲ來スト云フ虞モ
  アルト云フコトハ、是亦看遁スベカラザル
  事實デアルト私ハ思フノデゴザイマス(拍
  き)モウ一ツ私共ノ心配スルノハ、臨時賣
  ノ爲ニ、政府ノ謂フ臨時賣ノ爲ニ、却テ配
  給ヲ不完全ニシ、價格ノ不安定ヲ來スノデ
  ゴザイマス、何故サウ云フ結果ヲ來スカト
  言ヘバ、商賣人ガ何等ノ障害ナシニ自由競
  爭ヲスル場合ニ於テハ其地方々々ノ數年
  來ノ需要消費ノ程度ヲ能ク調査致シマシテ、
  之ニ對スル所ノ必要ナル品物ヲ買入レ、之
  ヲ配給セントスルノデゴザイマスガ、玆ニ
  一ツノ邪魔物ガ出來ルノデゴザイマス、其
  邪魔物ハ何デアルカト言ヘパ政府デゴザイ
  マリ、政府ハ或一定ノ倉庫ニ貯藏シテ置イ
  テ臨時賣ニ供スル、併ナガラ暴騰ノ場合ニ
  於テ賣ルト云フノデアルガ、其暴騰ガ何時
  ダカ分ラヌ、何時ガ暴騰スルカ分リマセヌ
  カラ、是ニ於テ商賣人ガ何處其處ニアル肥
  料ハ何万噸、何千噸アルガ、ドノ相場ニナ
  レバ政府ガ賣出スカト云フコトハ分リマセ
  ヌカラシテ、卽チ商賣人ガ自分ノ賣ル品物
  ノ手控ヲスルコトハ當然デアルト私ハ思
  フ、左様ナ場合ノ起ルコトハ當然デアルガ
  故ニ、自由競爭ニ委シテ置ケバ各地ニ圓滿
  ニ配給サレルモノガ、政府ガ暴騰ノ場合ニ
  於テ之ヲ賣リ渡スト云フコトガアル爲ニ、
  其賣渡スコトニ依テ市價ノ低落ヲ恐レテ、
  卽チ買フベキモノヲ買ハズシテ、其結果ハ
  却テ配給ノ不圓滿トサウシテ價格ノ不安定
  ヲ來スト信ズル次第デゴザイマス(拍手)卽
  チ臨時賣ノ機能ハ政府ガ十分ニ之ヲ運用ス
  ルコト能ハズ、何故運用ガ出來ナイカト言
  バく所謂此計畫ニ現ハレテ居ル通リニ、
  臨時賣ノ場合ニ於テモ、定時賣ノ場合ニ於
  テモ、政府ハ或一定ノ價格ヲ公示シテ賣ル
  ノデゴザイマス、商賣人ノヤウニ直グ賣ル
  コトハ出來ナイノデゴザイマスカラシテ、
  此場合ニ於テ臨時賣ノ機能ヲ十分發揮シテ
  運用スルコトハ出來ナイト同時ニ、其運用
  セントシテ貯藏シテ置ク肥料ノ爲ニ、却テ
  肥料ノ配給ノ不完全ト價格ノ不安定トヲ來
  スト云フ結果ニ相成ルト、私ハ固ク信ズル
  大第デゴザイマス、加之内地ノ硫安ノ内地
  生產ノ狀況ガ、ドウナッテ居ルカト云フコト
  ヲ見ルト云フト、明ニ近キ數箇年ノ中ニ輸
  入ヲ待タズシテ、內地ニ於テノ生產ガ內地
  需要ニ應ジ得ルノミナラズ、進ンデ外國ニ
  向ッテ輸出スベキ數量ガ内地ニ於テ生產サ
  レルト云フコトハ、極メテ現實ナルコトデ
  ゴサイマス、是ハ其途ニ精通スル人ノ話ヲ
  聞クト云フト、各方面ノ事業家ガ、此計
  畫ヲ立テマシテ、昭和十年迄ニハ百万噸ニ達
  スルト云フコトデゴザイマス、サウ致シマ
  スレバ政府ノ計畫ハ、昭和十三年ニナッテ九
  十五万噸デゴザイマス、其三年前ニ百万噸
  ニ達スルト云フコトニ依テ、內地ニ於ケル
  配給ハ完全ニ行ハレルコトニ相成リマシ
  テ、隨テ市價モ安定スルト云フコトハ明テ
  ゴザイマス、此問題ニ付キマシテハ、私極
  メテ重要ナル問題ト信ジマシテ、豫算分科
  會ニ於テ、商工大臣ノ御意見ヲ伺ヒマシタ
  ル所ガ、商工大臣ハ遠カラザル將來ニ於テ、
  必ズ硫安ハ自給自足ノ域ニ達スルト云フコ
  トヲ申サレマシタ、尙ホ委員會ニ於キマシ
  テ、商工省ノ政府委員吉植君ノ說明ヲ求メ
  マシタ所ガ、之ニ對スル答辯ハ先程農林大
  白
  臣及大藏省政府委員ノ御答辯ト違ッタ說明
  ノヤウニ思フノデゴザイマス、卽チ私ガ外
  國物ノ投賣、或ハ外國品ノ非常ニ低落シタ
  場合ニ於テ、政府ハドウシテ内地工業ヲ保
  護スルノデアルカトノ質問ニ對シテ、吉植
  政府委員ハ關稅政策ニ依テ或ル期間、ソレ
  ト對抗出來ル、五年トカ七年トカ云フ年限
  ノ中ニハ同ジ「レベル」ニ迄行ケルト云フ見
  込ガ立ッタラ、其間ダケハ關稅政策デ保護シ
  ナケレバナラヌ、是ハ先刻話シタ通リ此案
  ヲ拵ヘル當時、豫メ商工省ト農林省ト打合
  セテ、大藏省トモ了解ヲシテ居ルガ、サウ
  云フ心配モ起リ得ル、斯ウ云フコトハ想像
  デモ、推定デモ絕對ナコトデハナイト思フ、
  有リ得ルコトヽ思フノデアル、サウ云フ場
  合ニハ此方法デ農林省モ商工省モ大藏省モ、
  議論ナシニ關稅政策ニ依テ是デ行カウ、斯
  ウ云フ風ニ話ヲ付ケテ置イタ次第デアリマ
  ス、若シ〓ノ御話ノヤウナ獨逸ガ不當廉賣、
  「ダンピング」ト云フコトデ、ヤッテ來レバ
  法律デ防グコトガ出來マスガ、左モナクテ、
  ジリ〓〓ト本當ニ持久戰ニナッテ來夕時ニ
  ハ、我國ハ關稅政策ニ依テ是ト鬪ハナケレ
  バナラヌ、斯ウ云フ主管省ノ政府委員ガ明
  言シテ居ルノデゴザイマスルカラシテ-
  但シ是ガ宜イカ、惡イカ、此關稅政策ニ依
  テ製造工業者ヲ保護シテ、而シテ農民ニ高
  キ肥料ヲ供給スルト云フ結果ニ相成ルコト
  ガ宜イカ、惡イカ存ジマセヌ、其議論ハ別
  デゴザイマスルガ、現内閣ハ少クトモ此方
  針ノ下ニ立ッテ居ルト云フコトハ、主管省タ
  ル商工省ノ政府委員ガ明言シテ居ルコトデ
  ゴザイマスカラ、卽チ關稅政策ニ依テ內地
  ノ生產工業ヲ完全ニ保護スルト云フコトガ
  現內閣ノ政策デアルト致シマスレバ、近キ
  將來ニ此百万噸計畫ト云フモノハ必ズ完成
  スル譯デゴザイマス、必ズ完成致スコトハ
  ドウ云フ結果ヲ來スカト云ヘバ、內地ノ需
  要ハ十分ニナリ、配給ハ圓滿ニナリ、サウ
  シテ價格ハ安クナル、安定スルト云フコトハ
  明デゴザイマス、尙ホ價格ノ狀況ガドウナッ
  テ居ルカト云ヘバ、非常ニ最近高低ガ少ク
  ナッテ、價格モ亦非常ニ安クナッタノデゴザ
  イマス、卽チ大正十四年度ニハ二〇三デア
  リシモノガ、昭和三年ニハ一二八二下ッタノ
  デゴザイマシテ、又一年中ノ價格ノ變動ノ
  範圍モ大正十一、二年ノ頃ハ最高ト最低ガ
  四五十「パーセント」デアリシモノガ、昭
  和二年ニハ百分ノ二十三ニナリ、昭和三年
  ニハ一五ト云フ數字ヲ現シタノデゴザイマ
  シテ、非常ニ價格ガ年々下ッテ來タ、而シテ
  高低モ非常ニ少クナッタト云フコトハ
  著明ナル事實デゴザイマス、斯ノ如キ數年
  ノ近キ將來ニ於テ内地ニ於テノ生產ガ十分
  ニナッテ、配給ガ完全ニナリ、價格ハ安定
  スルト云フ場合ニ於テ前申上ゲタヤウニ最
  早硫安ノ肥料消費ノ趨勢ハ非常ニ減クテ來
  タ今日ニ於テ、此法律ヲ出シテ、一面ニハ
  國庫ニ損害ヲ及ボシ、他面ニ於テ各種ノ
  弊害ノ伴フ所ノ法案ヲ玆ニ決議スル必要ハ
  ナイト思フノデゴザイマス、然ラバ是ニ於
  テ一ツノ問題ガアルノデゴザイマス、ソレ
  ハドウ云フ問題デアルカト云ヘバ、產業組
  合ニ御精通アラセラル、所ノ土井君ノ御話
  デゴザイマス、是ハ御尤ノ理富デアル、卽
  チ產業組合ガ賣ルコトニ依テ、土井君ノ御
  話ヲ引用スレバ、假令價格ハ政府ノ賣ルノ
  ト、或ハ又商賣人ヲ經テ農民ガ買フ値段ト
  大差ガナクトモ、產業組合ノ賣ル値段ト、
  商賣人ガ賣ル値段ガ同ジデアッテモ、產業組
  合ハ自分ノ資金デ經營シテ居ルノデアルカ
  ラシテ、一噸ニ付テ四五圓ノ利益ト云フモ
  ノハ產業組合ノ利益ニナルノデハナイカト
  云フ、此點ハ承服致シマス、此點ハ其通リ
  デゴザイマス、併ナガラ此事ヲ實行スルコ
  トニ付キマシテモ、何モ政府ノ手ヲ經ナク
  テモ私ハ出來ルト思フ、現ニ各方面ノ優良
  ナ購買組合ハ政府ノ御厄介ニナラズシテ、
  府縣ノ聯合會ヲ通ジ、或ハ中央ニ於ケル購
  買販賣聯合會ヲ通ジマシテ、直接問屋ヨリ
  安イ肥料ヲ買シテ居ルノデゴザイマス、是ハ
  事實デゴザイマス、政府ガ時價ヲ以テ賣ル
  ト云フコトハ-或ハ時價ヲ以テ賣ルト
  云フコトニスルト、私ハ非常ニ損ヲスルト
  思ヒマスガ、兎モ角モ政府ガ賣ル迄ニハ一
  噸ニ付テ三、四圓ノ經費ヲ要スルノデゴザイ
  マス、政府ガ輸入商ヨリ買ヒ、或ハ製造人
  ヨリ買ッテ之ヲ產業組合ニ賣ル迄ニ三圓ナ
  リ四圓ノ經費ハドウシテモ掛ル、或ハ四五
  圓掛ルカモ知レヌ、斯樣ニ政府ガ危險ヲ冒
  サズシテ產業組合ト製造業者、輸入商賣人
  トノ間ヲ、購買、販賣聯合組合ノ手ヲ通ジ
  テ買ハシメ、其機關ガ本當ニ働カナカッタナ
  ラバ政府ハ農務局ニ適當ナル人ヲ置イ
  テ、サウシテ此聯合組合ト相談シテ、今日
  以上ニ其間ニ立ッテ幹旋ノ勞ヲ執リマシタ
  ナラバ、政府ガ買ッテ賣ルヨリモ、安ク良キ
  肥料ヲ安全ニ供給シ得ルコトハ確デアルト
  私ハ信ズルノデゴザイマス(拍手)私ハ決シ
  テ此問題ニ付テ無碍ニ反對スルモノデハナ
  イ、斯樣ニ政府ガ直接管理セズトモ極メテ
  簡單ナル方法ニ依テ、漸次組合ヲシテ賣ラ
  シムルト云フコトガ、政府ガ賣ルヨリモ安
  イ肥料ヲ賣ラシムルコトガ出來ルト云フコ
  トニ依テ、此問題ハ解決スルコトガ出來ル
  ト思ヒマスカラ、之ニ反對スル次第デゴザ
  イマス、最後ニ申サナケレバナラヌ事柄ハ、
  政府ガ果シテ本案通過ニ付テ誠意アリヤ否
  ヤ、果シテ本案通過ヲセントスルノ御見込
  ガアルカドウカト云フコトデアリマス、去
  九日ニ本案ハ第一讀會ノ續トシテ上程サレ
  テアッタノデゴザイマス、私共ハ無論其九日
  ノ日ニ本案ハ何トカ審議決定サルベキモノ
  デアルト固ク信ジテ居タ、自作農維持創定
  政策ト此政策ハ其內容ハ極メテ貧弱デアル
  ケレドモ、今ノ政府ノ非常ニ重要ナル政策
  トシテ宣傳シタノデアリマス、其宣傳ニ誤
  ラレテ内容ヲ見ズシテ、地方ノ農民ガ共鳴
  シテ居ルノデアリマス、所ガ詮議シテ見レ
  バ斯ノ通リ、若シ政府ガ眞ニ此案ヲ通過セ
  シメタイト云フ誠意ガアルナラバ、何故去
  九日ノ日ニ此案ノ審議ヲ延期セシメタノデ
  アルカ、極メテ時代ニ逆行スル所ノ區制案
  ノ改正案ヲ出シテ、憲法付屬ノ法律ノ改正
  ヲ今頃ニナッテ出シテ、ツレガ爲ニ政府ノ最
  モ重要ナル政策ト云フ一一ツノモノヲ九日、
  十日、十一、十二、十三、十四、ト六日間
  ヲ遲ラカシタ、是ハ要スルニ政府ハ此案ニ
  付テ通過セシムル誠意ガナイノデハナイ
  カ、成程農林大臣及農林當局ハ御熱心ト思
  ヒマスケレドモ、商工「大臣及大藏省ナドハ
  コンナモノハ仕方ガナイカラ、農林大臣ノ
  面目ヲ立テル爲ニ作ノタモノデアルカラ、マ
  アドウデモ宜イト云フ考ガ閣僚ノ中ニ漲。ジ
  テ居ル結果ガ、斯ク相成。タニ非ズヤト私ハ
  信ズル次第デアリマス、卽ヲ現內閣ハ此二ツ
  ノ政策ヲ重要ナリト稱ンナガラ、內閣全體
  ト致シマシテハ之ヲ通過セシムルノ誠意極
  メテ少キモノトシテ、私ハ反對ノ理由ノ一
  ツニ加ヘル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=33

  ---

• 034・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　志波安一郞君
  〔志波安一郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=34

  ---

• 035・志波安一郎

  ○志波安一郞君　本案ニ依テ肥料ノ配給及
  ビ價格ノ安定ヲ實際ニ於テ目的通リ遂行シ
  得ルカト云フコトニ對シテハ、私ハ其趣旨
  ニ固ヨリ異存ハナイ所デアリマスルガ、其
  內容ニ至リマシテ果シテ政府ノ所期ノ目的
  ヲ遂行シ得ルカト云フコトニ付テハ、相當
  不安ヲ持ツノデアリマス(拍手)故ニ私ハ特
  ニ其不安ノ點ヲ警告致シマシテ、本案ニ贊
  成スル者デアリマス、農村問題中ニ於キマ
  シテ最モ重要ナル點ハ、現在其生活ニ泣イ
  テ居ル農民ノ生活狀態ヲ救フベク、努メナ
  ケレバナラヌコトダラウト信ジマス、デア
  リマスルガ、生活ニ最モ深キ關係ヲ持ツモ
  ノハ農民ガ生產スル其生產物ヲ價格ヲ上ゲ
  テヤルカ、若クハ生產費用ヲ低減セシメル
  コトガ是モ必要デアラウト云フコトヲ私ハ
  考ヘル、生產費ヲ低下セシメル方法ハ何ニ
  依テスベキカ、生產費中最モ重キヲ爲スモ
  ノハ卽チ肥料デアリマスルカヲ、此肥料案
  ニ對シテ政府ガ今日此肥料ノ解決ニ向ッテ
  一步ヲ進メタイト云フ場合ニ於テ、吾々其
  內容ニ於テ一部ノ不安ガアリト雖モ、之ヲ
  一蹴シ去シテ否決スル程ノ勇氣ヲ農民ニ對
  シテ持タナイノデアリマス(拍手)農民ノ現
  狀ハ申スマデモナク諸君ノ御承知ノ通リ、
  晨ニ霜ヲ戴イテ出デ、タニハ月ヲ踏ンデ歸
  ルノデス、サウシテ孜々トシテ努力シタル
  結果、果シテ人間並ノ生活ヲ爲シ得ルカト
  言ヘバ、決シテソレハ出來ナイデ居ル、三
  代掛ッテモ尙ホ債務ヲ脫出スルコトガ出來
  ズシテ、遂ニ國民中或ル階級ノ種族ニ屬ス
  ル國民カノ如キ眼ヲ以テ見フレテ居ルト云
  フコトハ、實ニ爲政者トシテ眼ヲ運ラサナ
  ケレバナラヌ點デアラウト云フコトヲ吾々
  ハ考ヘルノデアリマス(拍手)決シテ現在ノ
  ミナラズ、三百年以前カラシテ農民ニ對シ
  テ政治家ガ甚ダ冷淡デアッタト云フコトハ、
  洵ニ遺憾千萬デアリマス(拍手)此狀態ヲ永
  ク續ケテ行ッタト致シマスレバ、國民中多數
  ノ國民デアル其農民ニ思想上ノ惡化ヲ來シ
  タト致シマシタナラバ、政治家ノ貴任ハド
  ウナルデアリマセウカ、今日米穀ノ下落
  ヲ叫ンデ、サウシテ東京マデ旗ヲ押立テヽ
  來ルト云フヤウナ時代ニ、吾々ハ此案ノ幾
  ラカノ缺點ヲ見テ、之ヲ否決スルト云フコ
  トハ、農民ニ對シテ思想惡化ノ誘因トナリ
  ハシチイカー云フコトモ亦考ヘナケレバナラ
  ヌ點デハアルマイカ(拍手)今日ハ最モ窮狀
  ヲ叫ンデ居ル時デアリマス、故ニ吾々ハ玆
  ニ考慮ヲ要スベキ時ダラウト云フコトヲ考
  ヘルノデアリマスルガ、現在ニ於テ此農村
  ヲ吾々ガ巡ッテ視テ能ク分リマスガ、万
  ニ於テハ開墾助成法ト云フモノガアルニ拘
  ラズ、到ル所ニ耕地ガ遊ンデ草茫々トシテ
  居ルト云フコトハ、全ク彼等ノ生活ガ
  今日脅カサレテ、其生活難ノ爲ニ都會
  地ヲ指シテ流込ンダル結果農地ガ荒レテ來
  ル、助成シテ開墾シテ見タトキニハ農民ガ
  居ナクナッタ、其結果ハ遂ニ何モナラナイ、
  〓糧問題モ解決ガ出來ナイト云フコトニナ
  ルデハアリマセヌカ(拍手)斯様ナ有樣ヲ見
  マシタナラバ吾々トシテ一刻モ早ク彼等
  ヲシテ生活ヲ安定セシムベク努メル必要ガ
  アルダラウト云フコトヲ考ヘル故ニ、吾々
  ハ此案ニ若シヤ不安ノル和ガアッタト致シマ
  スナラバ、其點ハ是ヨリ改善スルト云フコ
  ト、唯農村問題ニ付テ肥料ノ解決ニ一步ヲ
  進メタト云フコトニ對シテ、將來改善ヲ目
  的トシテ、サウシテ此案ニ贊成シテ、農民
  ニ同情スベキ時代ガ到達シタノダト云フコ
  トヲ吾々ハ考ヘルノデアリマス、最モ簡單
  ニ私ハ玆ニ二三吾々ノ不安ト思フ點ヲ申述
  ベテ見タイト思フ、此案ハ其趣旨ニ於テハ
  宜シイガ、果シテ二千万圓ト云フ最高限度
  デ以テ、總テノ有機質肥料ニ對シテマデモ、
  其騰貴ヲ防グカヲ有スルヤ否ヤ、二千万圓
  ハ二千万圓ダケノ效果アリトスレドモ、政
  府ガ言フガ如キ總テノ肥料ニ向ッテマデモ、
  ソレヲ抑制スルダケノ力ヲ有スルヤト云フ
  コトハ、是ハ疑問ガアルノデアリマス、ソ
  レハ政府ノ運用宜シキヲ得タナラバ、或ル
  程度マデハ效果ヲ爲スデアリマセウガ、吾
  吾ハ之ヲ以テ十分ニ目的ヲ遂行シ得ル程度
  マデ行カナイト云フコトヲ、私ハ考ヘルノ
  デアリマス、願クハ其運用宜シキヲ得テ農
  民ヲ救濟シ得タナラバ是レ非常ナル幸ゲ
  アルト思フ、次ニハ又此爲ニ國家ニ損失ヲ
  來ス虞ナキヤト云フ問ニ對シテ、左様ナコ
  トハアルマイト云フ御答辯デアリマシタ
  ガ、ドウモ其點ニ付テハ今迄モ御述ニナリ
  マシタガ、甚ダ不安デアルノデアリマス、
  政府ノ費用損失ニ對シテハ臨時賣ノ儲ニ依
  テ之ヲ補塡スルト言ッテ居リマス、而モ十
  年間ノ通算ニ依テ左樣ニ計算ガ出ルノデア
  ルカラ、心配ハナイト仰シヤッテ居リマス
  ガ、臨時賣ヲ爲スベキ時ハ、農民ニ甚ダ苦痛
  ヲ與ヘナケレバナラヌ時デアリマス、詰リ肥
  料ガ騰貴致シマシテ、農民ノ苦痛ヲ感ズル時
  デアリマス、左樣ナコトガ度々參リマシテ
  ハ困リマス、騰貴シタ場合ニ賣出ス、其肥
  料ノ儲ニ依テ政府ノ缺損ヲ補塡スルト云フ
  コトデアルナラバ、一方騰貴スレバ農民ニ
  苦痛ヲ與ヘ、一方騰貴セザレバ政府ノ缺損
  ヲ補塡スル途ガナイト云フコトニナッテ參
  リマス、何レニ致シマシテモ、果シテ豫期
  スル通リニ臨時賣ヲ爲スベキ時機ガ到來ス
  ルヤ否ヤ、若シ來ナカッタナラバ缺損補塡
  ヲスル途ナシト云フコトニモ言ヘルノデア
  リマスカラ、之ヲ以テ完全ナモノデアルト
  云フコトハ、吾々ハ言ヒ能ハヌノデアリマ
  ス、次ニ感ジマスルノハ、肥料商ノ營業ヲ
  壓迫スルコトハナイカ、無機質肥料ノ賣出
  ニ依リマシテ商人ノ營業ヲ壓迫スルトスレ
  バ是亦社會問題ノ一ニナッテ參リマス、是
  カラ段々硫安等ノ供給ガ增加致シマスレ
  バ、一方農民ノ需要ニハ限度ガアリマス、
  其限度內ニ於テハ一ノモノガ殖エレバ他ノ
  方ハ減ズルト云フコトハ當然ノ結果デアリ
  マス、硫安ノ需要ノ增加スルト同時ニ、
  方豆粕等ニ至ッテハ需要ガ減ジテ參リマス、
  是ハ當然肥料商ヲ脅カス所ノ一ノ原因ニナ
  ルノデアラウト考ヘルノデアリマス、尙ホ
  倉庫ニ入レテ置イテ、何時賣出サレルカ分
  ラヌト云フ結果、仕入控ヲ致シマスナラ
  バ、先刻仰シヤッケ通リ其僧格ハ下落シナ
  イデ、或ハ騰貴スル虞ガアル、需要供給ノ關
  係カラ、品不足ニナレバ騰貴スルコトハ勿
  論デアリマスガ、ソレヨリ吾々ガ憂慮スル
  コトハ、若シ田舍ニ於テ品不足ト云フコト
  ニナリマシタ結果、農民ガ施肥スベキ時期
  ニ肥料ガナイト云フコトニナリマスレバ、
  農民ニ取ッテ大ナル苦痛デアルト云フコト
  ヲ感ジマスルガ故ニ、斯樣ナ點ニ於テハ、
  尙ホ餘程注意ヲシナケレバ、從來ヨリモ苦
  痛ヲ感ズルコトガ出來テ來ルデアラウ、其
  次ニ此肥料ハ產業組合ニ向ッテ現金ヲ以テ
  買ハセル、政府ガ賣出スノハ現金デナケレ
  バ賣出サナイト云フコトニナッテ居リマス
  ガ、其賣渡スノニ現金デアルト言ヘバ、今
  日マデノ習慣ハ田舍ニ行ッテ見マスト、皆肥
  料商ヲ相手ニ肥料代ヲ借用シテ、來年ノ出
  來秋ニ於テ支拂フト云フ習慣ニナッテ居ル、
  然ルニ之ニ對シテハ現金ヲ以テ買ヘト云フ
  コトニナルト、實際ニ於テ農民トシテハ其
  目的ニ副フコトガ出來ナイカラ、政府トシ
  テハ當然之ニ低利ノ金ヲ御廻シ下サルモノ
  ト信ズル、又左様ナ意見ヲ持っテ居ラレル
  ト云フコトヲ聞キマスガ、其廻シ方如何ニ
  依テハ、矢張農民ハ此肥料ヲ買取ルコトガ
  出來ナイコトニナリハセヌカト云フコトヲ
  思フノデアリマス、是マデ低利資金ラ迥サ
  レル時分ニ、或ハ府縣町村等ヲ經テ、サウ
  シテ町村ノ名ニ依テ借リタルモノヲ當業者
  ニ轉貸ヲスルト云フ如キ方法ナラバ、或ル
  方面ニ於テハ貸付ガ出來ルケレドモ、或ル
  方面ニ於テハ轉貸不可能ト云フコトニナ
  リ、國民中此恩典ニ浴スル者ト、浴シ得ザ
  ルモノト出來、甚ダ不均一ノコトニナッテ
  參リマスノデ、吾々トシテハ此點ヲ大ニ憂
  慮スルノデアリマスカラ、今後ハ總テノ階
  級ニ向ッテ貸與ヘラレル方法ヲ講ジ、サウシ
  テ之ヲ買ハスヤウニシテ貰ハナクテハ、肥
  料管理法ハ成立チマシテモ、佛造シテ魂ガ
  入ラヌト云フ類ニ陷ルノデアリマス(拍手)
  ドウカ其點ヲ御注意ヲ願ヒタイ、デ申上ゲ
  レバ色ニ不安ノコトモアリマスガ、是マデ
  澤山述ベテ居ラレマスカラ私ハ申シマセ
  又、今近來ノ肥料販賣ヲ見テ見マスト、色
  色ノ點ニ付テ改善スベキ途ガアリハシマイ
  カ、或ハ特約販賣ナドヽ言ッテ、一部ノ人
  ガ利益ヲ〓斷シテ一般ノ商人ノ損失ニナル
  ノミナラズ、延イテハ農民ノ不利トナルト
  云フヤウナコトガアリマス、又今日附帶ノ
  決議トナッテ居ル事ノ如キモソレデアリマ
  ス、總テニ對シテ能ク注意ヲ拂シテ、尙ホ調
  査〓究ヲ致シマシテ、肥料政策ニ對スル根
  本的解決方法ヲ確立スルト云フコトヲシナ
  ケレバ、此案其儘デハ百年ノ大計ガ成立ツト
  ハドウシテモ吾々ニハ思ヘナイノデアリ
  マス、其意味ニ於キマシテ吾々ト致シマ
  シテハ、是ハ兎ニ角肥料問題ニ對シテ第一
  步ヲ踏出シタモノナリトシテ、今申ス如キ
  不安ヲ吾々ハ感ズルノデ、其點ニ向ッテ御
  注意ヲ申上ゲル意味ニ於テ、茲ニ警告ヲ讀
  上ゲテ本案ニ對シ贊成ノ意ヲ表スル者デア
  リマス「一、本案ハ運用其ノ宜シキヲ得ザ
  ルニ於テハ目的ノ達成困難ナルノミナラズ
  國庫ノ損失ヲ招來シ且ツ肥料販賣業者ヲ抑
  壓スルノ虞レアリ政府ハ其ノ實施ニ當リ深
  甚ノ注意ヲ拂ヒ萬遺憾ナキヲ期スベシ、一、
  本案ニ由ル肥料ノ賣渡ニ際シ政府ハ農家ヲ
  シテ其必要トスル資金ノ供給ニ均霑セシム
  ベク最善ノ途ヲ講スベシ、本案ハ肥料
  問題ノ根本的解決ヲナスニ足ラズト認ム政
  府ハ更ニ調査〓究ヲ重ネ速ニ其ノ國策ヲ確
  立スベシ」(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=35

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• 036・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　以上ヲ以テ討論ヲ
  終結致シマシタ、議題トナッテ居リマス兩案
  ヲ一括シテ採決致シマス、兩案ノ第二讀會
  ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=36

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• 037・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數ト認メマ
  ス、兩案トモ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=37

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• 038・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=38

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• 039・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マイ、仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  肥料管理法案第一讀會
  肥料管理特別會計法案第二讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=39

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• 040・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌカラ、兩案トモ第二讀會ニ於テハ委
  員長報告ノ通リニ決シマシタ、是ニテ兩案
  ノ第二讀會ヲ終了致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=40

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• 041・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ノ第三讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=41

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• 042・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  やっ、仍テ直ニ兩案ノ第三讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  肥料管理法案第三讀會
  肥料管理特別會計法案第三讀會
  〔「贊成々々」「反對」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=42

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• 043・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　兩案ニ贊成ノ諸君
  ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=43

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• 044・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數ト認メマ
  ス、仍テ兩案トモ可決確定致シマシタ拍
  手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=44

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• 045・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ此際政府提出米穀需給
  調節特別會計法中改正法律案ヲ議題トナシ、
  委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレン
  コトヲ望ミマス
  〔「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=45

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• 046・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=46

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• 047・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マイ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-米
  穀需給調節特別會計法中改正法律案ノ第一
  讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
  マス-委員長高山長幸君
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一米穀需給調節特別會計法中改正法律案
  (政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月十五日
  委員長高山長幸
  衆議院議長川原茂輔殿
  〔高山長幸君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=47

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• 048・高山長幸

  ○高山長幸君　只今議題ニ上リマシタ米穀
  需給調節特別會計法中改正法律案ノ委員會
  ノ經過竝結果ニ付テ簡單ニ御報告申上ゲマ
  ス、御承知ノ通リ此問題ニ付キマシテハ、
  議員提出ノ法律案ト政府提出ノ法律案ト二
  法律案ガアルノデアリマスルガ、先ヅ最初
  ニ委員會ニ付託サレマシタ三輪市太郞君外
  六十三名ノ提出ニ係ル改正法律案ニ付テ御
  報告申上ゲマス、委員會ヲククトト
  委員諸君ノ中カラ朝鮮、臺灣ニ於ケル產米
  ノ事項、或ハ米穀法運用ノ結果ニ付テノ色
  色ノ御質問ガアリマシタガ、之ニ對シテ國
  務大臣及政府委員カラ答辯ガアリマシタ
  カ、要スルニ法律案ハ米價低落ノ現狀ニ鑑
  地方農民ノ休戚ニ關スル極メテ重要ナ
  ル法案デアリマスルガ、其精神目的ハ極メ
  テ簡單デアルノデアリマス、卽チ運用資金
  ノ限度ヲ增加シ擴張スルト云フコトニ外ナ
  ラヌノデアリマス(拍手)本月四日ノ委員會
  ニ於キマシテ、川崎安之助君ノ御發議ニ依
  テ、特別委員ヲ三名選定致シマシタ、卽チ三
  輪市太郞君、福井甚三君、池田龜治君ノ三君
  ガ此委員トナリマシテ、私委員長トシテ此
  三名ノ委員諸君ト內閣總理大臣竝大藏大臣
  ニ交涉ヲシテ、政府ヨリ速ニ提案ヲスルヤ
  ウニ督促ヲ致シタノデアリマス、今日地方
  農民ノ狀態ニ於テハ、一日モ早ク此問題ヲ
  解決シテ、此農民ノ窮狀ヲ救フト云フコト
  ハ、一日ヲ緩ウスルコトノ出來ナイ必要デ
  アッタト考ヘルノデアリマス(拍手)然ルニ
  偶〓選擧法中改正案ノ議決ガ數日ニ亙ッテ結
  了致シマセナカッタ結果、此問題ハ空シク數
  日ヲ遷延サレテ、漸ク昨日ノ本會議ニ於テ
  委員付託トナッタ次第デアルノハ、甚ダ遺憾
  トスル所デアリマス、本日委員會ニ於キマ
  シテ、此政府提出ノ改正法律案ハ滿場一致
  ヲ以テ可決致シタノデアリマス、隨ヒマシ
  テ曩ニ提出ナリマシタ三輪市太郞君外六十
  三名ノ改正法律案ハ、提出者カラ撤回セラ
  ルル意嚮デアリマス、速ニ議決アラレンコ
  トヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=48

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• 049・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告ハアリ
  マセヌ、是ヨリ討論ニ移リマス-三輪市
  太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=49

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• 050・三輪市太郎

  ○三輪市太郞君　質疑デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=50

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• 051・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　討論デス-質疑
  ノ通告ハアリマセヌカラ、直ニ討論ニ入リ
  マツ、貴方ガ第一順位ノ討論者デアリマス
  〔三輪市太郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=51

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• 052・三輪市太郎

  ○三輪市太郞君　只今議題トナリマシタ政
  府案ニ對シテハ贊成ヲスル者デアリマス、
  御承知ノ通リ此政府案ノ提案サレル以前
  ニ、吾々同志ハ同樣ノ案ヲ多數ヲ以テ提出
  致シマシテ、其數字ハ二億万圓ノ增額ヲ求
  メルノデアリマシタガ、政府案ハ七千万圓
  デアッテ、此數字ハ滿足トハ言ヘナイノデア
  ル、又吾々ノ提出致シタル案ニ付テモ、實
  ハ衆議院ハ多數ヲ以テ通過スルモノト思考
  致シテ居リマシタガ、一面ニハ衆議院ガ假
  ニ通過致シマシテモ、貴族院トノ關係ヲモ
  考慮シ、又政府モ進ンデ玆ニ金額ハ少イト
  雖モ提案サレタ以上ハ、假令吾々ノ案ガ通
  リマシテモ、政府當局ガ此運用上ニ吾々ノ
  望ムガ如キ態度ニ出ラレヌトシテ見ルト、
  其效果ハドウデアルカト云フコトノ疑モ生
  ズルノデアリマシテ、寧口政府案ハ金額ガ
  少クテモ、豫テ聲明サレタ通リニ、來ルベ
  キ五十七議會迄ニハ根本的ノ政策ヲ樹テ
  テ、ソレデ米穀法ノ運用方針ヲ完全ニ樹立
  スルト云フコトノ御方針モ承ッテ居ルノデ
  アルカラシテ、一年間ノ調節トシテハ、玆
  ニ七千万圓ヲ增加サレテ見レバ、其運用宜
  シキヲ得ルニ於テハ差支アルマイカト思ッ
  テ、アソコマデ進ンダ吾々ノ提案ヲ撤回ス
  ルノハ、淚ヲ呑ンデ撤回スルノデアル、此
  上ハ政府ノ誠意アル所ニ信賴シマス、殊ニ
  現今ハ御承知ノ通リ、中農以下卽チ小農ノ米
  ヲ賣ルベキ時期デアルカラシテ、速ニ此政
  府案ヲ通過ナサシメテ、政府ニ宜シク運用
  ヲシテ戴キ、卽チ政府ヲ信賴シテ吾々ノ案
  ハ撤囘スルノデアリマス、併セテ此政府案
  ニ賛成スルノデアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=52

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• 053・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　只今三輪君ガ撤囘
  サルヽト言ハレタノハ、本院ニ於テハ三輪
  市太郞君外六十三名提出、米穀需給調節特
  別會計法中改正法律案ト名付ケタモノヲ指
  スノデアリマス、此撤回ハ他ノ提案者全部
  ヨリモ望マレテ居ルノデアリマス、之ヲ許
  スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=53

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• 054・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  さっ、仍テ前記ノ案ハ撤囘ニナリマシ
  タ-田中隆三君
  〔田中隆三君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=54

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• 055・田中隆三

  ○田中隆三君　私モ同志ヲ代表致シマシ
  テ、本案ニ對スル賛成ノ趣旨ヲ一應申上ゲ
  タイト存ジマス(拍手)昨日本會議ニ於テ
  モ申上ゲマシタ、又今朝委員會ニ於テモ政
  府ノ御趣旨ノアル所ヲ能ク承リマシタ、シ
  テ見マスルト、此法案ハ暫定的ノモノデア
  ル、一時的ノモノデアル、應急的ノモノデ
  アルト云フコトデアリマス(拍手)其暫定
  的應急的、一時的ト云フコトハドウ云
  フコトデアルカト申シマスレバ、米穀法ノ
  運用資金ガ二億七千万圓ナケレバナラナイ
  ト云フ意味デハナイ、二億七千万圓トカ、
  三億万圓トカ云フ、其數字ダケノ運用資金
  ガナケレパナラヌト云フ意味デハナイ、現
  在ニ於ケル運用資金卜一云フモノハ、段々固
  定シタモノモアリ、缺損シタモノモアッテ、
  殘リ少ナニナッテ居リマス、運用シ得ベキ金
  ハ昨日モ申上ゲマシタ通リ三千万圓位シカ
  ナイ、ソコデ其三千万圓ニ七千万圓ヲ加ヘ
  テ、一億圓ノ實力ヲ以テ、米價調節ニ關ス
  ル何等カノ施設ヲスルノ實力ヲ玆ニ備ヘヤ
  ウト云フノガ、此本案ヲ政府ガ提出セラレ
  タ御趣旨デアルノデアリマス、サウ致ンマ
  スレバ、之ヲ條理ヨリ論ズレバ、玆ニ既ニ
  〓損ニナッテ、所謂其實力ヲ缺イテ居ル所ノ
  七千万圓ヲ缺損塡補ニスレバ、ソレデ矢張
  同ジ目的ヲ達スルコトモ出來、又條理ニ適シ
  タコトヽ私共ハ思フノデアリマス(拍手)併
  ナガラ缺損塡補ト致シマシテモ、私ノ勘定
  トハ違ヒマシテ、矢張政府ノ會計ニ關スル
  重大ナル事項デアルトシテ、矢張是ハ法律
  案ヲ提出シテ、法律改正或ハ法律ヲ新設ス
  ル手續ニ依ラナケレバナラヌノデアリマ
  ス、デ會期モ切迫シテ居リマスルシ、重要
  ナル案モ山ト積ンデ居ル此際デゴザイマス
  カラ道理ノ上ニ於テ吾々ハ缺損塡補ノ法案
  ヲ出サウトシテモ、ソレハ今日ノ場合ニ於
  テ無理ナコトヽ思フノデス、甚ダ遺憾ニ存ジ
  マスルシ、政府モ只今申上ゲマシタヤウナ
  風ニ、是ハ暫定的デアリ、便宜的デアリ、
  一時的デアル、法律ノ全般ニ付テハ色ミナ
  說モアリ、根本的ニ遡シテ篤ト其事情ヲ調
  查〓究シテ、改ムベキモノハ之ヲ改メ、場
  合ニ依テハ此法案ヲ廢止スルト云フコトマ
  デモ進ンデ、根本的ノ調査ニ直ニ取掛ルト云
  フ御趣旨デアリマスカラ、其御趣旨ト、只今
  申上ゲマシタ暫定的、便宜的ト云フ所ノ趣
  意ト兩方合セ、又私共ノ心持カラ言ヒマス
  ルト云フト、七千万圓ト云フ缺損ヲ塡補シ
  テ、現在持ッテ居ル餘力ト合セテ一億圓ノ
  實力ニ依テ政府ハ然ルベキ方法ヲ立テヤ
  ウ、但シ其一億圓ト云フモノモ、政府當局
  モ流石ニ御用心モアリ、又御考モアッテ、之ヲ
  使ッテ米ヲ買上ゲルトハ仰シヤイマセヌ、或
  ハ是ハ傳家ノ寶刀トナッテ、此一億圓ノカデ
  市場ヲ睨ンデ、睨ンダダケデ調節ノ目的ヲ
  達スルカモ知レマセヌ、併ナガラ何時其寶
  刀ガ拔カレテ、所謂之ヲ實際ニ用キラレル
  ト云フヤウナコトガアルカモ知レマセヌ、
  是等ハ責任アル政府當局ノ爲サルコトデア
  リマスルカラ、私共ハ靜ニ其成行ヲ見テ居
  リマシテ、次ノ議會ニ於テ又其方策ニ誤リ
  アルナラバ、遠慮ナク攻擊シヤウト思ヒマ
  ス、今日ハ已ムヲ得ズシテ之ニ贊成スルト
  云フ趣旨ダケヲ申上ゲテ置キマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=55

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• 056・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　討論ハ終局致シマ
  シタ、採決致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開
  クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=56

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• 057・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=57

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• 058・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
  リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ノ聲起ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=58

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• 059・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  米穀需給調節特別會計法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=59

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• 060・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報
  告通リ可決確定致シマシタ(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=60

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• 061・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽チ日程第十八乃至二十二
  ハ之ヲ繰上ゲ、順次其審議ヲ進メラレンコ
  トヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=61

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• 062・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　原君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=62

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• 063・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-日
  程第十八乃至二十一ハ同一委員ニ付託セラ
  レタル議案デアリマス、且又牽聯ノ議案デ
  アリマス、仍テ一括議題ト爲スニ御異議ア
  リマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=63

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• 064・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マイ、日程第十八、特許法中改正法律案、
  日程第十九、實用新案法中改正法律案、日
  程第二十、意匠法中改正法律案、日程第二
  十一、商標法中改正法律案、右四案ヲ一括
  シテ其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
  報告ヲ求メマス-委員長鈴木英雄君
  第十八特許法中改正法律案(政府提
  出第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一特許法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月七日
  委員長鈴木英雄
  衆議院議長元田肇殿
  第十九實用新案法中改正法律案政
  府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一實用新案法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月七日
  委員長鈴木英雄
  衆議院議長元田肇殿
  第二十意匠法中改正法律案(政府提
  出第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一意匠法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月七日
  委員長鈴木英雄
  衆議院議長元田肇殿
  第二十一商標法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  -商標法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月七日
  委員長鈴木英雄
  衆議院議長元田肇殿
  〔鈴木英雄君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=64

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• 065・鈴木英雄

  ○鈴木英雄君　只今議題ニ上シテ居リマス
  ル特許法中改正法律案外三件ノ特別委員會
  ノ經過及結果ニ付キマシテ報告ヲ致シマ
  ス、右四件ハ第五十一回帝國議會ニ於ケル
  民事訴訟法ノ改正ニ基クモノデアリマシ
  テ、其主要ナル點ハ審判手續、除斥、忌避、
  證據調、出訴手續、再審等ノ規定ノ改正デ
  アリマス、而シテ其改正ハ民事訴訟法改正
  ノ範圍ヲ基礎トシ、成ベク其趣旨ト步調ヲ
  合セントシタルモノデアリマス、委員會ハ
  前後二回開會シマシテ、各委員ト政府委員
  トノ間ニ質問應答ガアッタノデアリマスル
  ガ、其詳細ニ付キマシテハ速記錄ニ讓リマ
  ス、委員外ノ〓瀨議員ヨリ準備手續、法定
  期間延長ノ權限ヲ有スル者、除斤ノ原因ト
  爲スベキ事項、忌避ニ付テノ決定ニ對スル
  不服ノ申立、其他ノ事ニ關係致シマシテ、
  十一項ニ亙ル意見ノ申出ガアッタノデアリ
  マス、是亦速記ニ載セテアリマスガ、之ハ
  對シマシテハ政府ヨリ答辯ガアリマシテ、
  當局ニハ特許局主管法規ノ根本的改正ノ希
  望ガアル、其調査費ハ來年度ノ豫算ニ計上
  セラレ、旣ニ本院ニ於テ之ヲ可決シテ居ル
  ノデアリマスカラ、〓瀨君御主張ノ諸點ニ
  付キマシテハ、右ノ調査費ニ依テ設ケル委
  員會ニ於テ考慮スルトノ言明ガアッタノデ
  アリマス、仍テ右ノ了解ノ下ニ委員會ハ本
  案ヲ滿場一致可決致シマシタ次第デアリ
  マス、右報告致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=65

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• 066・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　討論ノ通告ハアリ
  マセヌ、此四案ヲ一括シテ採決ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、四案ノ第二讀會ヲ開クニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=66

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• 067・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マッ、第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=67

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• 068・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、
  第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決
  セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=68

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• 069・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  せっ、仍テ直ニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  特許法中改正法律案第二讀會(確定議)
  實用新案法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  意匠法中改正法律案第二讀會(確定議)
  商標法中改正法律案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=69

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• 070・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌカ、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、四案
  トモ委員長報告ノ通リ可決確定致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=70

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• 071・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　日程十八乃至二十二マデ上
  程セラレテアルノデアリマスカラ、二十二
  ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=71

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• 072・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　日程第二十二、勞
  働者災害扶助法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマ
  ス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長三
  輪市太郎君
  第二十二勞働者災害扶助法案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一勞働者災害扶助法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
  ト議決致候此段及報告候也
  昭和四年三月七日
  委員長三輪市太郞
  衆議院議長元田肇殿
  〔小字及-ハ委員會修正〕
  勞働者災害扶助法
  第一條本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル
  事業ニ之ヲ適用ス但シ工場法ノ適用ヲ
  受クル工場ニ於ケル事業及鑛業法ノ適
  用ヲ受クル事業ヲ除ク
  常時十人以上ノ勞働者ヲ使用スル
  砂鑛業、石切業其ノ他土石ノ採掘又
  ハ採取ノ事業
  二土木工事又ハ工作物ノ建設、保存、
  修理、變更若ハ破壞ノ工事ニシテ左
  ノ一ニ該當スルモノ
  (주)土木工事又ハ工作物ノ建設、
  保存、修理、變更若ハ破壞ノ工事
  ヲ爲スヲ業トスル者ノ爲ス工事ニ
  シテ其ノ費用勅令ヲ以テ定ムル金
  額以上ノモノ
  (e)鐵道若ハ軌道ノ事業又ハ水
  道電氣若ハ瓦斯ノ事業ヲ行フ者
  ガ其ノ事業ノ爲ニ爲ス直營工事
  (10國、北海道府縣、市町村其ノ
  他勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ
  爲ス直營工事
  三鐵道又ハ軌道ノ事業、乘合自動車
  ニ依ル運送ノ事業其ノ他勅令ヲ以テ
  指定スル運送ノ事業ニシテ常時十人
  以上ノ勞働者ヲ使用スルモノ
  四船舶ヨリ又ハ船舶ヘノ貨物ノ積卸
  ノ事業、停車場、倉庫業者ノ倉庫又
  ハ保稅地域ニ於ケル貨物ノ取扱ノ事
  業其ノ他勅令ヲ以テ指定スル貨物ノ
  取扱ノ事業ニシテ常時十人以上ノ勞
  働者ヲ使用スルモノ
  第二條事業者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
  勞働者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又
  ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ
  遺族若ハ本人ノ死亡當時其ノ收入ニ依
  リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スベシ
  前項ノ事業者トハ勞働者ヲ使用シテ事
  業ヲ爲ス者ヲ謂フ但シ事業ノ全部又ハ
  一部ガ數次ノ請負ニ依リ爲サルル場合
  ニ於テハ各請負人ハ其ノ請負ヒタル事
  業ニ付之ヲ事業者トス
  前項但書ノ場合ニ於テハ各事業者ハ其
  ノ請負ヒタル事業ノ勞働者ニ付連帶シ
  テ扶助ノ義務ヲ負擔スベシ
  第三條前二條ノ勞働者ノ範圍ニ關シテ
  ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四條勅令ノ定ムル所ニ依リ事業者ハ第二
  條ノ規定、ニ依ル扶助義務ニ付保險契約ヲ締
  結スベシ
  事業者保險業法ノ定ムル所ニ依リ傷害保險
  ヲ目的トスル相互會社ヲ設立シ又ハ之ニ加
  入シタルトキハ前項ノ義務ヲ履行シタルモ
  ノトス
  事業者第二條ノ規定ニ依ル扶助ニ相當スル
  給付ヲ爲スコトヲ目的トスル共濟組合ヲ設
  立シタルトキハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ第一
  項ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
  五
  認識は、行政官廳必要アリト認ムルトキ
  ハ當該官吏ヲシテ事業ノ行ハルル場所
  ニ臨檢セシムルコトヲ得
  六ズ
  :38.18事業者故ナク扶助ノ義務ヲ履行セ
  又ハ第四條第一項ノ規定ニ違反シタル
  ザルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
  七
  第六條正當ノ理由ナクシテ當該官吏ノ
  臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ
  尋問ニ對シ各辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳
  述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ
  處ス
  八
  第七條事業者營業ニ關シ成年者ト同一
  ノ能力ヲ有セザル未成年者若ハ禁治產
  者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ於テハ
  事業者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ法定代
  理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表
  スル者ニ之ヲ適用ス
  九
  第八條事業者ハ其ノ代理人、戶主、家
  族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシ
  テ本法ニ違反スル所爲ヲ爲シタルトキ
  ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其
  ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
  十
  第九條本法中事業者ニ關スル罰則ハ
  國北海道府縣、市町村其ノ他勅令ヲ
  以テ指定スル公共團體ニ之ヲ適用セズ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔三輪市太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=72

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• 073・三輪市太郎

  ○三輪市太郞君　議題トナリマシタ勞働者
  災害扶助法案ノ委員會ノ經過及結果ヲ御報
  告致シマス、此委員會ノ委員諸君ノ中ニハ、
  直接利害ノ關係ヲ有セラレル方モ數名ア
  リ、又本案ノ成立ヲ望マレル委員モ兩三名
  アリマシテ、就中民衆黨ノ西尾委員ノ如キ
  ハ、實ニ詳細ヲ極メタ議論モサレマシタガ、
  一々之ヲ御報告スルコトハ却テ諸君ノ御倦
  怠ヲ招クトモ思ヒマス、結局反對サレル委
  員諸氏モ、亦本案ノ成立ヲ望マレル諸氏モ
  眞劔ニ議論ヲモ戰ハサレマシタシ、〓究モ
  サレマシテ、西村君ノ如キハ雙方ノ意ノ在
  ル所ヲ能ク汲取シテ、種々懇談ノ勞ヲ取ラレ
  シ結果茲ニ一致點ヲ見出シテ、ソレガ修正
  トナッテ現ハレタノガ、諸君ノ御手許ニ既ニ
  配付サレテ居ル修正案デアリマス、之ニ對
  スル說明ハ却テ長クナリ、簡單ト云フ御望
  デアルカラ多クハ申シマセヌガ、唯一言此
  處ニ申上ゲテ置キタイノハ、此修正案ニ類
  似ノ案ガ外國ノ數箇國ニ實施サレテ居ルノ
  デアリマス、是ハ何レ他ノ討論者ニ依テ述
  ベラレルコトヽ思ヒマス、モウ一ツ申上ゲ
  テ置キタイノハ勅令ト云フコトニ付テ一部
  ノ御方ニハ御疑念モアルヤウデアルガ、無
  暗ニ有ユル方面ニ適用スルト云フ意味デナ
  イノデアリマス、是ハ愼重ニ〓究サレテ、
  勅令ニ依テ定ムルト云フノデアルカラシ
  テ、御心配ノナイコトヲ序ナガラ申上ゲテ
  置キマス、結果ニ於キマシテハ修正ノ點モ
  其他ノ政府原案モ滿場一致ヲ以テ委員會ハ
  可決致シマシタ、併シ此滿場一致ト云フコト
  ニ付キ又御議論ガアルトイケナイカラ、
  言申上ゲテ置キマスガ、其滿場一致ノ場合
  ハ政友會ハ勿論民衆黨ノ人モ第一控室ノ方
  モ御出席ニナッテ居テ、討論ニ入ル場合ニ於
  テ民政黨ノ諸君ガ御退場ニナリマシタガ、
  兎ニ角此採決ノ場合ニ其席ニ在ラレタル各
  派ノ委員ニ於カセラレテハ、滿場一致デ決
  シタノデゴザイマス、殊ニ西尾君ノ如キハ
  此修正案ト雖モ滿足トハ言ヘナイガ、サリ
  ナガラ本案ノ成立ヲ望ム爲ニ賛成ヲスルト
  云フ御意見デアリマシタ、要スルニ其場合
  ハ滿場一致ニハ相違アリマセヌ、此段御報
  告ヲ致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=73

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• 074・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告ガアリ
  せっ、枡谷寅吉君-議場ニ居ラレヌヤウ
  デアリマスカラ棄權ト認メマス、討論ニ入
  リマス-末松偕一郞君
  〔末松偕一郎君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=74

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• 075・末松偕一郎

  ○末松偕一郞君　私ハ今議會ニ於ケル唯一
  ノ社會政策デアリ、又勞働立法デアル本案
  ニ對シテ、反對ヲ表明セザルベカラザルコ
  トニナッタコトヲ甚ダ遺憾トスル者デアリ
  アン、私ハ此反對ノ理由ニ入ルニ先チマシ
  テ、委員會ニ於ケル議事ノ經過ニ付テ、此
  議場ニ訴ヘ、併セテ政友會諸氏ノ御反省ヲ
  願ヒタイト思フノデアリマス、實ハ此委員
  會ハ、色〓質問應答ヲ重ネラレマシテ、二
  月十五日ニ於テ質問打切ニナリ、其後ニ於
  テ三月七日マデ委員會ノ開會ガナカッタノ
  デアリマシタガ、三月七日ニ至ッテ突如トシ
  テ委員會ヲ開カレマシテ、而モ此重大ナル
  法案ニ對シテ、多數ノ修正ノ動議ガアッタノ
  デアリマス、其動議ニ對シテ、吾々ハ質問
  ヲシ、而モ數人ノ質問通告者ガ殘ヲテ居ル
  ニ拘ラズ、質問ハ打切ニナッタノデアリマ
  ス、尙又之ヲ直ニ委員會ニ於テ採決シヤウ
  トシタノデアリマスカラ、吾々ハ此重要ナ
  ル法案、而モ其中ノ最モ主ナル點ガ修正サ
  レテ居ル、其修正ニ付テ僅ニ一時間バカリ
  ノ質問應答ニ依リ、而モ吾々ハ民政黨トシ
  テ幹部ニ相談スル機會モナク、又黨議ニ之
  ヲ圖ル機會モナイト云フコトニ於テ、其議
  事採決ノ延期ヲ乞フタノデアリマス、然ル
  ニモ拘ラズ、多數ヲ恃ンデ直ニ此採決ヲ致
  シタト云フコトハ、吾々甚ダ遺憾ニ考ヘル
  ノデアリマス、サウ云フ理由ヲ以チマシテ、
  吾々ハ最後ノ採決ニ於テハ、其意思ヲ表明
  スルコトガ出來ナイ、十分〓究スル機會ガ
  ナイノデアリマシタカラ、退場シタノデア
  リマシテ、此點ニ付テハ私ハ多數ヲ以テ横
  暴ヲヤッタト云フ點ニ付テ、茲ニ遺憾ノ意ヲ
  表シテ置クノデアリマス、而シテ此法案ニ
  付キマシテ色〓缺點ガアルノデアリマスル
  ガ、時間ガ切迫スル爲ニ今日ハ成ベク簡單
  ニ反對ノ趣旨ヲ申シテ置キタイノデアリマ
  ス、本案ハ工場法及工業法ノ權衡上屋外ニ
  於ケル百五十八万ノ此所謂屋外自由勞働者
  ニ對シテ、工業法或ハ工場法ト同ジヤウナ
  保護ヲ與ヘヤウト云フ原案デアリマシテ、
  吾々ハ勞働者ノ保護ニ對シテ、原案ノ趣旨
  ニ於テハ勿論賛成ナノデアリマス、併ナガ
  ラ此案ナルモノガ甚ダ杜撰デアッテ、而モ其
  杜撰デアル案ニ更ニ修正ヲ加ヘ、全ク所謂
  實行不能ノ案ニ致シタノデアリマス、此點
  ニ於テ吾々ハ遺憾ナガラ此案ニ反對セザル
  ヲ得ナイコトニナッタノデアリマス、元來此
  案ガ如何ニ杜撰デアリ、又勞働者ヲ保護ス
  ルト云フヤウナ、所謂贋案デアルカト云フ
  コトハ、山本宣治君ガ本會議ニ於テ、詳シ
  ク申述ベタノデアリマシテ、今日ニ於テハ、
  山本君ノ此本會議ニ於ケル說明ガ洵ニ悲慘
  ナル遺言ニナッテ居ルノデアリマスルガ、山
  本君ノ言フ所ニ依レバ、此政府ノ提案ト云
  フモノハ杜撰極マル、粗製濫造ノ誤魔化シ
  案デアッテ、實行不能ノ疑ガアルト云フコト
  ヲ言ハレテ居ルノデアリマス、而シテ此原
  案ニ於テ最モ不完全ト認メラレテ居ルノ
  ハ、所謂扶助義務者ノ點デアリマス、此法
  案ノ扶助義務者ナルモノハ、卽ヲ各種請負
  人ガ連帶シテ、第一次ノ請負人カラ總テ、
  二次、三次、四次ト云フヤウナ風ニ幾多ノ請
  負ヲスル場合ニ於テ、其悉クノ人ガ連帶シ
  テ請負ヲスルト云フ點ニ於テ、非常ナル缺
  點ガアルノデアリマス、我健康保險法ニ於
  キマシテハ、國家ト事業者ト及勞働者ガ各
  各其危險ヲ分擔シ、其保險金ヲ拂シテ居ル
  ノデアリマスルガ、此法案ニ於テハ、事業
  者ガ全部ノ負擔ヲ致シテ居ルノデアリマ
  ス、而モ其事業ノ全部又ハ一部ヲ數次ノ請
  負ニ依テ爲サレル場合ニ於テハ、各請負人ハ
  其請負ヒタル事業ニ付キ、之ヲ事業者トスル
  ト云フ規定ニナッテ居リマシテ、尙又其第三
  項ニ於テハ、其各事業者ハ勞働者ニ對シ、
  連帶シテ扶助ノ義務ヲ負擔スルコトヽナッ
  テ居ルノデアリマス、之ニ依テ所謂扶助ノ
  義務ト云フモノガ各事業者ニアル爲ニ、資
  力ノナイ所ノ事業者ハ此義務ヲ完ウスルコ
  トハ出來ナイシ、又此連帶ノ關係ニ於テ、
  其義務ノ辨濟ニ付テ如何ニ色ニナル法律問
  題ガ起ルカト云フコトハ、所謂連帶債務ノ
  本來ノ性質デアッテ、殊ニ斯ル事業ニ付テ
  連帶責任ヲ負フト云フコトハ、事實上甚ダ
  困難デアルノデアリマス、連帶義務ヲ負ハ
  シタノハ、元來ハ此五十四議會ニ於テハ、
  單獨ノ第一次ノ請負業者ニ於テ義務ヲ負ハ
  シテアッタノデアリマスガ、ソレデハ直接ニ
  勞働者ヲ使ッテ居ル所ノ事業者ニ對シテ其
  事業者ガ兎角監督ヲ怠ルトカ、各種ノ災害
  ニ關シテ密接ナル關係ガナイ爲ニ、十分ニ
  其義務ヲ盡シ勞働者ガ保護サレナイト云プ
  ヤウナ關係上、之ヲ連帶ニ致シタノデアリ
  マスガ、併ナガラ連帶ニ於テ此案ガ非常ナ
  ル所ノ杜撰ナルモノニナッタノデアリマス、
  是ガ爲ニ當業者ハ猛烈ナル反對ヲシ、尙ホ
  又無產黨ノ人ミモ色ミノ此案ノ杜撰ナル點
  ニ於テ種々ナル質問ヲ致シタノデアリマ
  ス、斯ル狀況ニ於キマシテ遂ニ此案ニ修正
  ヲ加ヘルト云フコトニナリマシテ、先刻御
  話スルヤウニ當業者ノ反對ガアリ、其點ニ
  於テ與黨ノ結束ガ紊レルト云フヤウナコト
  デ一氣呵成ニ此案ヲ通過シタモノト吾々ハ
  認メテ居ルノデアリマス、此點ニ付キマシ
  テ當局者ノ方ニ於キマシテモ、又無產黨ノ
  御方ミモ之ヲ保險ノ制度ニスルト云フコト
  ニ付テ色と議論ガアッタノデアリマスガ、然
  ルニ政府ハ吾々ノ質問ニ對シテ保險制度ハ
  甚ダ宜シクナイト云フコトデ、六ツノ理由
  ヲ以テ、此保險制度ノ不可ナルコトヲ說明
  シテ居ッタノデアリマス、其主ナルモノハ保
  險制度ニ依レバ、災害ヲ防止スルト云フ設
  備ヲスルコトニ於テ當業者ガ不眞面目ニナ
  リ不熱心ニナルト云フヤウナコトヲ主タ
  ル理由トシ、其他保險制度ニ關シテ其不可
  ナル理由ヲ種々擧ゲテ居シタノデアリマシ
  タガ、其理由ノ色〓アッタニ拘ラズ、今回ノ
  修正案ハ之ヲ保險制度ニ依テヤラウト云フ
  コトニ變化シテ來タノデアリマス、而シテ
  此原案ニ於テ色ミノ不備ナル點ガアリマス
  ルガ、是ハ此際省略スルト致シマシテ、今
  回ノ此修正案ニ對スル點ニ付テ私ハ其甚ダ
  杜撰ニシテ實行不能デアルト云フコトヲ述
  ベタイト思フノデアリマス、此修正案ナル
  モノハ三條ノ次ニ四條ヲ持ッテ來マシテ卽
  チ保險ニ依テ之ヲ運用シヤウト云フノデア
  リマス、「勅令ノ定ムル所ニ依リ事業者ハ第
  二條ノ規定ニ依ル扶助義務ニ付保險契約ヲ
  締結スベシ」ト云フコトニナッテ居ルノデア
  リマス、然ルニ御承知ノ如ク此種ノ保險ニ
  付テハ未ダ調査ガ出來テ居ナイノデアル、
  殊ニ災害保險ト云フヤウナモノハ我國ニ於
  テ二三ノ會社ホカナイノデアリマス、此二
  三ノ會社モ而モ火災保險トカ或ハ海上保險
  ト云フヤウナモノヽ兼營デアッテ、基礎ガ甚
  ダ今日ニ於テハ薄弱デアル、ノミナラズ實際
  ニ於テ此種ノ保險ガ行ハレテ居ルカト云ヘ
  バ、是ガ殆ド行ハレテ居ナイノデアリマス、況
  ヤ保險契約ハ自由契約デアッテ、若シ事業者
  ガ保險ヲ附ケヤウト云ウテモ、之ヲ保險業
  者ガ拒ンダ際ニ於テハ、殆ド此法案ナルモ
  ノハ立竦ミニナッテ、ソコニ於テ直ニ實行不
  能ト云フコトガ現ハレテ來ルノデアリマ
  ス、ノミナラズ民營保險ト云フモノハ甚ダ
  其利益ガ少イ爲ニ、保險料ガ高クナルノデ
  アリマス、例ヘバ米國ノ全體ノ傷害保險會
  社ヲ見マシテモ、收納保險料ニ對シテ四割
  五分ト云フヤウナコトニナッテ居ル、又紐育
  ノ十箇ノ傷害保險會社ハ三割七分、其他英
  國ノ三十六箇ノ傷害保險會社ガ千九百十六
  年ニ支拂ノ總保險金ハ、收納保險金ノ四割
  弱ニナッテ居ル、斯ウ云フヤウナ譯デ、兎シー
  角保險料ニ對シテ支拂額ガ非常ニ多クナ
  ル、要スルニ民營トシテハ此種ノ保險ト云
  フモノハ、各國ノ例カラ見マシテモ甚ダ振
  ハナイ、不利益ナ事業デアルト云フコトハ
  明ニナッテ居リマス、之ヲ外國ノ例ヲ取ル迄
  モナク、我國ノ健康保險ノ例ニ取リマシテ
  モ、諸ノ經費ト云フモノハ、外國ノ例ニ
  依リマスルト云フト二割四分モアルノデ
  アリマスケレドモ、我國ノ健康保險ノ實例
  ニ依リマスト、諸經費ハ僅ニ一割ニ過ギナ
  イト云フヤウナコトニナッテ居ル、兎ニ角政
  府ノ事業トシテ保險業ヲ經營スル際ニ於
  テ、如何ニ民營ニ比シテ有利デアルカト云
  フコトハ實例ヲ申上ゲル迄モナク理論上
  明ナ所デアルト思フノデアリマス、又之ヲ
  民營ニスルト云フト、保險金ノ支拂ニ付テ
  色ニノ紛擾ガ起リマス、業務上ノ傷害デアッ
  タカ、或ハ疾病デアッタカト一ムフヤウナ點
  モ起リマセウシ、或ハ成ベク保險金額ノ支拂
  ヲ少クシヤウト云フヤウナコトニ依テ、訴
  訟ト云フヤウナコトモ起ルノデアリマス、
  サウ云フヤウナ次第デ、是ハ民營トシテヤ
  ルト云フコトハ甚ダ困難デアルノデアリマ
  ス、然ルニ此案デハ第六條ニ於テ千圓以下
  ノ罰金ヲ以テ民營保險ニ加入スルト云フコ
  トヲ强制シテ居ル、然ルニ先ニ御話スルヤ
  ウニ此民営保險會社ト云フモノハ、今日
  僅ニ二三デアッテ、是ガ都鄙到ル處ニ起ル所
  ノ請負業、而モ我國ノ土木建築ノ請負業者
  ハ四五万アルニ拘ラズ、實際此義務ヲ負擔
  シテ之ヲ支拂ヒ得ル所ノ能力ノアルモノハ
  僅ニ五「パーセント」デアルト云フコトデア
  リマスカラシテ、此種ノ多數ノ保險ニ加入
  スベキ所ノ事業者ガ、各地ニ於テ如何ニシ
  テ此法律ヲ運用スルノデアリマセウ、私ハ
  此修正案ノ第四條ハ第一項ニ於テ既ニ行
  詰ッテ、到底實行出來ナイト云フコトヲ知
  ルノデアリマス、又第一一項ニ於テ「事業者保
  險業法ノ定ムル所ニ依リ傷害保險ヲ目的ト
  スル相互會社ヲ設立シ又ハ之ニ加入シタル
  トキハ前項ノ義務ヲ履行シタルモノトス」ト
  云フコトニナッテ居リマスガ、從來保險會社
  ノ免許ニ付テハ、政府トシテ多年ノ間一定
  ノ方針ガアルノデアリマス、果シテ此法律
  ノ改正ニ依テ、政府ハ從來定ッテ居ル所ノ
  此方針ヲ變更シテ多數ノ保險會社ヲ、卽チ
  相互會社ヲ認ムルト云フ勇氣アルヤ否
  ヤ、私ハ此點ハ商工大臣ガ果シテサウ
  云フコトヲ認メラレルヤ否ヤト云フコトヲ
  甚ダ疑フ者デアッテ、此點ニ付テモ商工
  當局ノ意見ヲ十分ニ確メタイト思ッタノ
  デアリマシタガ、先ニ御話スルヤウナ次第
  デ、未ダ其意見ハ確メナイノデアリマスケ
  レドモ、恐クハ政府ガ此法案ヲ施行スル爲
  ニ多年ノ問題デアリ、隨分色ニナ沿革ヲ有ス
  ル所ノ保險會社ヲ濫設スルト云フコトヲ許
  スト云フコトハ、到底私ハ出來ナイト思
  フ、故ニ第二項ト云フモノハ明文アッテ到
  底之ヲ實行スルコトハ出來ナイモノデア
  ル又此第三項ニ於テ、共濟組合ヲ設立ス
  ル時ニハ行政官廳ノ許可ヲ受ケテ第一項ノ
  規定ニ據ラザルコトガ出來ルト云フコトニ
  ナッテ居リマス、共濟組合ナルモノハ、是、
  實際土木建築等ノ當業者ガヤッテ居ルノモ
  アリマスケレドモ、是ハ恐クハ非常ナ特例
  デアッテ、斯ル多數ノ事業ニ從事スル者ガ、
  共濟組合ヲ特ニ設ケヤウト云フコトハ、是
  亦共濟組合ノ本質ヲ辨ヘナイモノデアリマ
  シテ、恐ラク是亦實行不能ニ終ルモノト思
  フノデアリマス、申ス迄モナク我國ノ官營
  共濟組合ハ多數アルノデアリマス、殊ニ之
  ニ近イ土木事業從事者ノ共濟組合ノ如キモ
  ノモアリマスケレドモ、是等ハ各〓政府ガ保
  護シテ居ル、其費用ノ三分ノ一以上ヲ政府
  ガ補給シ、而モ是ハ法律上ニ於テモ公共
  團體ト認メテ色ミナ特點ガアルノデアリマ
  ス、斯ル特點ヲ持チ、或ハ政府ノ監督ニ依
  テ初メテ弊害ガナクシテ此種ノ共濟組合ガ
  出來ルノデアッテ、此多數ノ土木建築其他交
  通運輸ニ關スル、卽チ本案ノ目的トスルヤ
  ウナ業者ガ此種ノ共濟組合ヲ作ラウト云フ
  コトハ、私ハ殆ド出來ナイト思フノデアリ、
  萬一出來タナラバ到底勞働者ヲ保護スルノ
  實力ノナイ所ノ共濟組合デアッテ、弊害百出
  殆ド此法律ハ實行ガ出來ナイコトニ終ルモ
  ノト確信スルノデアリマス、元來此法律案
  ハ吾々此政府ニ於テ斯ル法案ヲ成立セシム
  ルト云フコトハ、甚ダ遺憾ニ考ヘルノデア
  リマス、此政府ガ如何ニ時代錯誤ノ考ヲ持
  チ、社會政策或ハ勞働問題等ニ付テ殆ド理
  解ガナク、色ミナ點ニ於テ非立憲ナコトヲヤッ
  タカト云フコトハ、先般我黨ノ諸君ヨリ
  屢〓申サレテ居ルノデアリマス、然ルニ唯一
  ノ法案トシテ此法案ヲ出シタノデアリマス
  ルケレドモ、其内容タルヤ先ニ御話スルヤ
  ウナ風ニ甚ダ杜撰ナモノデアル、又今日聞
  ク所ニ依レバ、昨日所謂救護法ナルモノハ
  提案ガアリマシタガ、此切迫シタル議會ニ
  於テ斯ル提案ヲスルト云フコトハ、要スル
  ニ是ハ恐ラク武藤君ニ對スル申譯デアラウ
  ト思フノデアリマス、サウ云フヤウナ次第
  デアッテ、此政府-卽チ吾々ハ社會政策、
  勞働立法等ニ付テ理解ガナイ此種ノ人ミノ
  多イ所ノ此政府ニ於テ、斯ルモノヲ拵ヘル
  ト云フ、無キニ劣ルコトニナル、吾々ハ出
  來ルナラバ若シ是ガ無キヨリ優ルモノデア
  ルナラバ、之ヲ贊成シテ幾ラカ勞働者ノ保
  護ニ力ヲ致シタイト思ッタノデアリマスル
  ケレドモ、斯ル案ハ無キニモ劣ルノデア
  ル、是ガ出來ル爲ニ恐クハ、數年間ハ勞働
  者ト云フモノヽ保護ガ十分ニ行ハレナイコ
  トニナルデアリマセウ、故ニ吾々ハ斯ル杜
  撰ニシテ寧口勞働者ノ保護ヲヤルニ付テ邪
  魔ニナルヤウナ法案ハ此際葬リタイノデア
  リマス、ノミナラズ吾々ハ之ニ同意シタ所
  ノ社會局ニ對シテ甚ダ氣ノ毒ニ考ヘルノデ
  アリマス、今日社會局ガ此案ニ同意シテ、而
  シテ之ヲ實行シヤウト言ッタナラバ、私ハ玆
  ニ豫言シテ置キマス、恐クハ三年五年ニシ
  テ此案ヲ實行シヤウト一云フコトハ出來ナイ
  ノデアル、三年五年ニ於テ實行スルコトガ
  出來ナイヤウナ案ヲ今日通過スルヨリモ
  マダ一歩進ンダル完全ナル案ヲ拵ヘテ、之
  ヲ議會ニ諮ルト云フコトコン私ハ適當デア
  ルト思フ、唯氣ノ毒ナルコトハ、私ヲシテ
  言ハシムレバ社會局ノ人ハ折角社會局ガア
  ルケレドモ殆ド其業務ガナイノデ、手ヲ拱
  イテ無聊ニ苦ンデ居ル、現內閣ノ如キモノ
  ニ於テハ社會立法等ニ於テハ殆ド社會局
  ハ無用ノ長物ノヤウニ考ヘラレテ居ル、聞
  ク所ニ依レバ現內閣諸公ハ所謂豫算ノ爭奪
  ヲヤル際ニ、常ニ社會局ノ廢止ヲ唱ヘルサ
  ウデアル、社會局ノ廢止ヲ唱ヘテ、社會立
  法ノ何タルヲ知ラヌヤウナ現内閣ノ下
  ニ-吾々ハ斯ノ如キ重大ナル法案ヲ、此
  社會立法ニ於テ理解ノナイ所ノ現内閣カラ
  作ッテ貰フト云フコトハ、勞働者ニ對スル侮
  辱デアルト考ヘルノデアル、寧口完全ナル
  モノヲ拵ヘテ、眞ニ勞働者ヲ保護シタイト
  云フ點ニ於テ、吾々ハ此案ニ反對スル者デ
  アリマス(拍手)
  〔森田政義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=75

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• 076・森田政義

  ○森田政義君　私ハ委員長報告ノ修正案ニ
  賛成ヲ表スル者デアリマス、只今末松君ノ
  理論ヲ承シテ居リマスルト云フト、本法第二
  條連帶ノ規定ニ付テ、數次ノ請負ノ場合
  ニ連帶責任ヲ認メルト云フコトハ、洵二可
  笑ナモノデアルト云フ御議論ニ承リマシタ
  ガ、是ハ事業者側ノ連帶責任ヲ認メタノハ、
  勞働者ノ災害扶助ヲ確實ナラシメンガ爲ニ
  認メタノデアッテ、換言スルト勞働者ノ地位
  ヲ確保シタルモノデアル、是ハ何デ不思議
  ナコトデアリマセウ、連帶債務ノ責任ヲ私
  ハ控除スル必要ハナイト思ヒマスガ、連帶
  責任ノ場合ニハ一箇ノ目的ヲ達スルト數箇
  ノ目的ガ達セラレナイカラ消滅スルノデア
  ル、何等不都合ハナイ、尙又此修正案ハ改
  惡ヲ加ヘタルモノデアルト云フ御議論デア
  ルガ、是ハ怪シカラヌ、吾々政友會ノ委員
  ハ如何ニスルナラバ、事業者ノ方ノ迷惑ヲ
  輕クシテ勞働者ノ方ノ救助ヲ確實ニセンカ
  ト云フコトニ苦慮シタノデアル、全國事業
  主ノ、第一條ノ土木業者ノ數ヲ調ベテ見ル
  ト云フト四万人カラアル、此四万人ノ事業
  主ノ中デ、資本ガ確實ニナッテ何時デモ勞働
  者ガ災害ヲ受ケタ場合二、確實ニ給與ヲ爲
  シ得ル者ハ、一千人デアルト云フコトデア
  ル、シテ見ルト三万九千人ニ抱ヘラレタ所
  ノ勞働者ノ地位ト云フモノガ、極メテ薄弱
  デアル、故ニ吾々ハ一面ニ於テ之ヲ農村ニ
  譬ヘテ見ルト、五段步百姓或ハ一町步内外
  ノ百姓ニ向ッテ、丁度此原案通リノ義務ヲ命
  ズル場合ニハ、一箇年ニ於テ五段百姓、或ハ
  一町步百姓ニ五百圓乃至千圓ノ負擔ヲ命ズ
  ル場合ニ於テハ、農村ハ立ッテ行カナイ、都
  會ニ於ケル所謂五段百姓トモ、一町步百
  姓トモ譬フベキ三万九千人ノ人ニ對シテ災
  害ノ起ッタ場合ニ、一時ニ數百圓、數千圓ノ
  負擔ヲ命ズルト云フコトハ、折角築キ上ゲ
  タル彼等ノ地位ヲ奪フコトニナル、隨テ勞
  働者ノ地位ト云フモノガ確保サレナイ、確
  保サレナイカラ吾々ハ第四條ノ第一項ニ於
  チ之ヲ保險ニ附クベシ、平生ハ僅ノ保險金
  ヲ佛〓テ置イテ、災害アル場合ニ之ヲ一時ニ
  出ス、民政黨ノ委員カラハドウモ保險ニ附
  スルトハ怪シカラヌ、災害ノ危險ヲ保險業
  者ニ移スノデハナイカト云フ御議論モアリ
  マシタガ、保險ノ制度ト云フモノハ決シテ
  サウ云フモノデハナイ、一方ニ於テ危險ヲ
  負擔スルト同時ニ保險料ヲ取ヶテ居ル、災害
  ガナカッタナラバ保險會社ハ丸儲デアル、災
  害ガ出タ場合ニハ彼方此方カラ集シタ金ヲ
  拂フ、相互契約デ、決シテ是ハ危險ノ轉嫁
  デハナイ、從來此自由勞働者ニ對シマシテ
  ハ、今迄法律ハナカッタノデアリマスガ、此
  自由勞働者ハ、所謂我國特殊ノ親分、乾兒
  ト云フ關係ニ依ッテ、勞働者ニ災害ノ起ッタ
  場合ニハ、適當ナル方法ヲ以テ救助シテ
  居ッタノデアリマス、是ニ於テ吾々ハ此美風
  モ考慮シナケレバナラナイ、此美風モ考慮シ
  テ、第四條ト云フ修正案ヲ出シタノデアリマス、
  修正案ニ依リマスト、保險契約ヲ義務的ニ命
  ジテ居ルノデアリマスガ、是ハ決シテ吾々ノ
  ミノ獨創デハナイ、之ヲ世界ノ立法ニ照シ
  テ見マスト、强制保險ノ制度ヲ採ッテ居ルモ
  ノハ數アル中デモ、私營保險會社及事業主
  ノ相互ノ組合ヲ認メテ居ルモノデ、丁抹、
  葡萄牙、智利、玖馬、北米合衆國デハ「ケ
  ンタッキー」州ガ之ヲ認メ、ソレカラ「マサ
  チユーセッツ」州ガ之ヲ認メ「テキサス」州
  ガ之ヲ認メテ居ル、ソレカラ保險會社トシ
  テ、私營保險會社ノミヲ認メテ居ルノガ濠
  洲ノ-南濠太利、西濠太利米國デハ「コ
  ンネクチカット」洲ガ之ヲ認メテ居ル、決シ
  テ第四條第一項ノ强制保險ヲ命ジタノハ、
  吾々政友會員ノ獨創ノミデハナイ、世界ノ
  立法ハ之ヲ認メテ居ルノデアル、何等不思
  議ハナイノデアル、ソレト同時ニ第二項ニ
  於テ、事業主ガ相互ニ保險制度ヲ執ルコト
  モ認メテ居ル、第三項ニ於テ事業主ガ共濟
  組合ヲ作ルコトモ認メテ居ル、第二項第三
  項ヲ置イタト云フコトハ、事業主ノ負擔ヲ
  成ベク輕カラシメ、勞働者ノ地位ヲ確保ス
  ルコトニ、吾々政友會議員ガ努メタト云フ
  コトハ歷然トシテ現ハレテ居ル、是ガ何デ
  不完全ナル法制デアルカ、世界ノ立法ニ照
  シテ恥カシカラヌ立派ナ法制デアルト私共
  ハ考ヘテ居ルノデアル、尙ホ又數万ノ事業
  者ニ悉ク此法律ヲ適用スルト云フコトハ當
  ラナイ場合ガアル、例ヘバ三千圓或ハ四千
  圓ノ仕事ヲシテ居ル請負人ニ直ニ之ヲ命ズ
  ルト云フコトハ、非常ニ不條理デアルカ
  ラ、勅令ニ於テ斯ウ云フ義務ヲ負擔スルモ
  ノハドウ云フ範圍ノ事業者ガ之ヲ負擔ス
  ル、又義務ノ内容ニ付テ病氣ノ場合ハドレ
  ダケ治療費ヲ出シ、又死ンダ場合ニハドウ
  云フ費用ヲ出スト云フコトハ、却テ本法ニ
  規定スルヨリモ勅令ニ委任スルコトガ適當
  ナリト考ヘマシテ、委任スルコトニ致シマ
  シタ、此法案ハ決シテ末松君ノ言ハレルヤ
  ウニ實行不能ノ法案デモナク、又杜撰ナ法
  案デモナイ、最モ實行ヲ容易ナラシムル爲
  第四條第二項第三項ヲ認メテ、勞働者ノ地
  位ヲ確保スルト同時ニ、事業主ノ方ノ負擔
  ヲモ輕減スルコトニ努メタノデアリマス、
  ソレト同時ニ總テノモノニ應用スルト云フ
  コトハ不可能デアルカラ、事業主ノ範圍及
  義務ノ範圍ト云フモノハ勅令ニ讓ルト云
  フ、世界何レノ國へ出シテモ恥シカラヌ法
  ナリト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、ドウ
  カ皆サン社會ノ現狀ニ鑑ミラレマシテ、御
  賛成アランコトヲ希望致シマス
  〔西尾末廣君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=76

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• 077・西尾末廣

  ○西尾末廣君　本案ヲ中心ニ致シマシテ、
  之ニ批評ヲ加へ意見ヲ加ヘル者ニ、民政黨
  ノ末松氏ト政友會ノ森田氏ガアリマシタ
  ガ、私ハ本案ニ對スル批評及意見ト云フ點
  ニ於テハ、大體ニ於テ末松君ト意見ヲ同ジ
  クスルノデアリマス、本案ガ非常ニ立派ナ
  モノダト森田氏ハ申シマスガ、私ハ本案ハ
  非常ニ身窄ラシイモノデアル、非常ニ缺點
  ノ多イモノデアル、而モ政府ノ原案ニ於キ
  マシテハ、政府モソレノ實行ニ付テ確信ヲ
  持ッテ居リマシタカラ、是ノ實施期ニ付テハ
  九月一日カラ實施スルト云フコトヲ明言致
  シテ居リマスルガ、此政友會カラ提出サレ
  夕修正案ニ向ッテハ、政府モ尙ホ自信ヲ缺ク
  ト見エマシテ、其實施期ニ對シテマダ明言
  ヲシナイノデアル、是ハ本案ガ尙ホ實行上
  ニ如何ニ困難ナ問題ガアルカト云フコト
  ヲ、表明スルニ餘リアルト思フノデアリマ
  ス、左様ニ私ハ本案ヲ批評シ、之ニ對スル
  意見ヲ加ヘル場合ニハ、大方ハ末松氏ト意
  見ヲ同ジクスルノデアリマスガ、併シ其結
  論ニ於テハ却テ森田氏ト結論ヲ同ジクス
  ルト云フ奇妙ナ結果ニナルノデアリマス、
  此奇妙ナル結果ニナルノハ、私共ガ勞
  働者、農民ノ利害ヲ代表シテ居ルト云フ
  特殊ノ立場カラ、斯ウ云フ結論ニ達スルノ
  デアリマス、卽チ本案ハ尙ホ吾々カラ見マ
  シテ不十分タリト雖モ、尙ホ是ハ無イニ優
  ルモノデアリマス、是ハ矢張勞働者農民ニ
  幾ラカノ幸福ヲ齎スモノデアル、此不完全
  ニ對シテハ、尙ホ吾々ガ年々歳々議會デ鬪
  フコトニ依テ、尙ホ改善スル途ガアルモノ
  ト思ヒマスガ故ニ、吾々ハ本案ニ贊成スル
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=77

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• 078・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　是ニテ討論ハ終了
  致シマシタ、是ヨリ採決ニ移リマス、本案
  ノ第二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=78

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• 079・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立者多數ト認メ
  ママ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=79

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• 080・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「蠻威」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=80

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• 081・清瀬一郎

  ○斟議長(〓瀧一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  勞働者災害扶助法案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=81

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• 082・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌカラ採決ヲ致シマス、本案ノ委員長
  報告ハ修正デアリマス、討論ニ依テ御了解
  下サッタ通リ、此修正ハ事業者ニ扶助義務ニ
  關スル保險契約ヲ命ズル等ノ點デアリマ
  ス、委員長報告ノ修正ノ部分ニ贊成ノ諸君
  ハ起立
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=82

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• 083・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　多數ト認メマス、
  委員長報告ノ修正ノ部分ハ可決セラレマシ
  タ、其他ハ委員長報告通り御異議アリマセ
  ヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=83

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• 084・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  やっ、仍テ其通リ決シマシタ、是ニテ本案
  ノ第二讀會ハ終了シタハデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=84

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• 085・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=85

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• 086・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  そん、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  勞働者災害挾助法案第三讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=86

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• 087・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、本案ハ第二讀會議決ノ通リ議決ス
  ルニ贊成ノ諸君ハ起立
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=87

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• 088・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數ト認メマ
  ス、仍テ本案ハ可決確定致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=88

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• 089・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　議事日程變更ノ緊急動議ヲ
  提出致シマス、卽ヲ此際日程第二十三乃至
  二十七ヲ順大繰上ゲ議題トナシ、其審議ヲ
  進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=89

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• 090・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　念ノ爲ニ伺ヒマス
  ルガ、日程二十三、卽チ酒造組合法中改正
  法律案ガラ、二十七、無線電信法中改正法律
  案マデミスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=90

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• 091・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　サウデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=91

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• 092・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ハゴザイマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=92

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• 093・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-日
  程第二十三、酒造組合法中改正法律案ノ第
  一讀會ノ續ヲ開キマス委員長ノ報告ヲ求
  メマス-委員長蔭山貞吉君
  第二十三酒造組合法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一酒造組合法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月九日
  委員長蔭由員吉
  衆議院議長元田肇殿
  〔蔭山貞吉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=93

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• 094・蔭山貞吉

  ○蔭山貞書君　本員ハ酒造組合法中改正法
  律案ノ委員會ノ經過及結果ニ付テ極ク簡單
  ニ御報告ヲ致シマス、本案ハ大藏省提出ノ
  法律案デアリマス、其改正ノ要點ハ酒造
  組合ノ改良發達ヲ促進スルト云フコト、ザ
  ウシテ實際ノ實情ニ適當スル、此事デアリ
  マス、其次ニハ酒造組合ノ財的基礎ヲ鞏固
  ナラシメル爲ニ、其經費及過怠金ノ强制ノ
  徴收ノ許スト云フコトデアリマス、是ハ組
  合長ノ請求ニ依テハ市町村ノ桂稅ノ例ニ依
  テ徵收スルト云フコトデアリマス、第三番
  目ニハ酒造組合ノ統制ヲ確實ナラシメル
  爲ニ、酒造維合ノ聯合會ヲ設ケル、是ハ府
  縣ニ三分ノ二以上ノ同意者ガアルトキニ
  ハ他ノ者ヲ之ニ强制的ニ加人セシムル、
  斯ウ云フ事デアリマス、又各府縣ノ聯合組合
  ニ更ニ組合ノ中央會ト云フモノヲ一ソ護ケ
  マシテ、之ヲ以テ其統制スル機關ニ充テル
  ト云フコトト、其次ニハ是等ノ酒造組合或ハ
  聯合會、或ハ中央會、是等ノモノヲ政府ガ監
  督スルコトヲ定メタモノデアリマス、是等
  ノ總テノ規則ハ-是等ノ法律案ハ酒造組
  合ガ多年要望スル所デアリマシテ、大藏省
  ヨリ特ニ周到ナル審査ノ下ニ之ヲ提出サレ
  タモノデアリマス、委員會ハ二囘開キマシ
  タガ、三宅君及中村繼男君ヨリ二、三ノ質
  疑及希望等ガアリマシタガ、其事ニ付キマ
  シテハ此處デ省略ヲ致シマス、兎ニ角全會
  一致可決確定致シマシタカラ、之ヲ御報告
  致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=94

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• 095・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑討論ノ通告ハ
  何レモアリマセヌ、仍テ直ニ採決致シマス、
  本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=95

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• 096・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　御異議ナシト認メ
  マス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
  タ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=96

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• 097・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=97

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• 098・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  やっ、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
  ヲ議題ト致シマス
  溝造維合法中改正法律案
  第一讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=98

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• 099・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モゴザ
  イマセヌ、第三讀會ハ省略シテ、委員長報
  告ノ通リ可決確定致シマシタ-日程第二
  十四、資源調査法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ
  マス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長
  內野辰次郞君
  第二十四資源調査法案(政府提出、
  貴族院送付)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一資源調査法案(政府提出、貴族院送付)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月十二日
  委員長內野辰次郞
  衆議院議長元田肇殿
  〔内野辰次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=99

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• 100・内野辰次郎

  ○內野辰次郞君　資源調査法案ハ、御承知
  ノ如ク資源ヲ調査スルニ當リマシテ、最モ
  圓滿ニ調査ガ出來ルヤウナ手續ノ基礎ヲ定
  メタモノデゴザイマスル、委員會ニ於キマ
  シテハ、各委員、殊ニ横堀君、鈴木文治君ガ、
  最モ熱心ニ且ツ詳細ニ質問ヲ續ケテレマシ
  タ、其中デ最モ大事デアルコト一ツヲ御絡
  介申上ゲマスル、資源調査ト動員許畫トハ
  ドンナ關係ヲ持ツカト云フ質問ニ對シマシ
  テ、政府ハ資源調査ト動員計畫ナルモノ
  ハ、直接ノ關係ハナイ、尤モ動員計畫ニ當
  リマシテ、調査サレタ資源ヲ基調トシテ立案
  サレルト云フコトハ勿論デゴザイマスル
  ガ、資源講査本來ノ目的ハ、我國ニ於ケル商
  業、工業、其他產業ノ進步發展ヲ期スルト
  云フコトガ本來ノ目的デアル、斯ウ云フコ
  トデゴザイマシタ、委員會ニ於キマシテハ
  慎重審議ノ結果、重要ナル法案ト致シマシ
  テ、全會一致ヲ以テ可決ヲ致シマシタ、右
  御報告致シマヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=100

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• 101・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　本案ニ關シマシテ
  ハ質疑若クハ討論ノ通告ハアリマセヌ、仍
  テ直ニ採決ニ入リマス、本案ノ二讀會ヲ開
  クニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=101

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• 102・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナイト認メ
  マス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=102

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• 103・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
  リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=103

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• 104・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議ナシト認メマス、仍テ直ニ第二讀會ヲ開
  キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
  資源調査法案第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=104

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• 105・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌ、仍テ第三讀會ヲ省略シテ、委員長
  報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第
  二十五、陪審法中改正法律案ノ一讀會ノ續
  ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求ムルノデアリマ
  スガ、委員長ガ議場ニ居ラレマセヌカラ一
  時後廻シニ致シマス-日程第二十六及第
  二十七ハ同一委員ニ付託シタル議案デアリ
  マス、仍テ一括議題トナスニ御異議アリマ
  セヌカ
  〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=105

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• 106・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス-第二十六、船舶職員法中改正法律
  案、日程第二十七、無線電信法中改正法律
  案、此二案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キ
  マス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長
  佐々木平次郞君
  第二十六船舶職員法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一船舶職員法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月十三日
  委員長佐々木平次郞
  衆議院議長元田肇殿
  第二十七無線電信法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一無線電信法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月十三日
  委員長佐々木平次郞
  衆議院議長元田肇殿
  〔佐々木平次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=106

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• 107・佐々木平次郎

  ○佐々木平次郎君　船舶職員法中改正法律
  案竝無線電信法中改正法律案、此二案ニ付
  キマシテ委員會ノ經過竝結果ヲ御報告申上
  ゲマス、時間モ經シテ居リマスカラ、極メテ
  簡單ニ申上ゲヤウト思ヒマス、船舶職員法
  ハ明治二十九年、丁度日〓戰爭ノ直後ニ出
  來タノデアリマスルガ、當時我國ノ船舶ハ、
  帆船、汽船ヲ合セマシテ、總噸數ニ於テ約
  三十六万噸ニ過ギナカッタノデアリマス、其
  後明治三十九年ニ一回小部分ノ改正ヲ見タ
  ノデアリマシテ、丁度三十四年ヲ經過致シ
  テ今日ニ至ッタノデアリマス、然ル所今日
  ハ我國ノ船舶ハ、植民地ニ在籍ノ船舶ヲ合
  算致シマスト云フト、約五百万噸ニナッテ
  活ルノデアリマス、然ルニ船舶ノ乘組等ニ
  必要デアル所ノ職員其他ノ事ニ付キマシテ
  ハ、洵ニ今日時宜ニ適セチイ點ガ多イノデ
  アリマス、ソレデアリマスルノデ、民間ヨ
  リモソレ〓〓陳情請顯ニナッテ居リマスル
  ノデ、丁度一昨年ノ末ニ遞信省內ニ船主、
  船員、水產會等ノ代表者、ソレカラ關係者、
  主任等ノ參集ヲ求メマシテ、サウシテ隔意
  ナキ意見ヲ求メマシテ、是等ノ意見ヲ參酌
  シテ今度提案セラレタト云アコトヲ申シテ
  居ルノデアリマス、委員會ニ於キマシテハ、
  今度改正セラレマシタ内容ニ付キマシテ
  ハ、大體非常ナ好意ヲ持シテ御質疑ヲナサ
  レタヤウニ拜聽シマシタガ、唯一言申上ゲ
  テ置キタイト存ジマスルコトハ、船舶職員
  トナリマスルノニ、若クハ此職員トナルガ
  爲ニ、試驗ヲ受ケマス上ニ於テ、破產ノ宣
  告ヲ受ケ、サウシテ之ガ回復シナイ者ハ、
  此資格ガ無イノデアリマス、所ガ委員ノ中
  ノ土屋〓三郎君ハ、何故ニ破產ヲ受ケタ者ニ
  ソレ等ノ資格ヲ興ヘヌノカ、之ニ付キマシ
  テハ大變御熱心ナ御質疑デアリマシタ、政
  府當局ノ申シマスノニハ、船舶ノ職員ハ貴
  重ナル生命財產ノ事ヲ扱フノデアルシ、航
  海中ニハ司法警察權モ興ヘルノデアルシ、
  又人事ニ付テハ出生、死亡等ノ戶籍ヲ取扱
  フ立場ニアル、又近クハ選擧法ノ改正ニ依
  リ、不在投票ノ際ニハ船員ノ投票ノ管理者
  トナルノデアルカラ、相戒ルベクハ缺點ノ
  ナイ、正シイ人々ヲ此職員ニシタイ、斯ウ云
  フコトデ、今之ヲ〓メル意思ハチイ、斯ウ
  云フコトデアリマシタ、十分審議致シマシ
  タガ、多數ヲ以テ原案ノ通リ可決ニ相成リ
  マシタ、次ニ無線電信法中改正法律案ニ付
  テ申上ゲマスガ、是ハ一昨年ノ十一月ニ亞米
  利加合衆國ノ華盛頓ニ於テ開カレタ國際無
  線電信會議ニ、我國ヲ代表シテ出席致シマ
  シタ人ガ調印ヲ致サレテ、ソレデ改正國際
  電信條約、之ニ依テ法律ヲ改メル必要ガア
  ル、近時我國ノ無線電信、電話ガ益、普及
  發達スルニ付キマシテ、通信上ノ取締、シレ
  カラ電波ノ統制ヲ圖ル上ニ於テ、必要サル
  規定ヲ設ケタノデアリマス、是亦審議ノ結
  果原案通リ可決致シマシタ、此段御報告申
  上ゲマス(拍千)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=107

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• 108・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御諮リ致シマス、此
  兩案ヲ一括採決スルニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=108

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• 109・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郎君)　御異議ナシト認メ
  やっ、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=109

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• 110・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=110

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• 111・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「贊成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=111

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• 112・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  さく、仍テ直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
  案全部ヲ議題ト致シマス
  船舶職員法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  無線電信法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=112

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• 113・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議モアリ
  マセヌヤウデアリマス、仍テ兩案ノ第三讀
  會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可決確定致
  シマシタ(拍手)此際先刻後廻シニ致シマシ
  タ日程第二十五、陪審法中改正法律案ノ第
  一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
  メマス-委員長井坂豐光君
  第二十五陪審法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
  報告書
  一陪審法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和四年三月十二日
  委員長井坂豐光
  衆議院議長元田肇殿
  〔井坂豊光君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=113

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• 114・井阪豐光

  ○井坂豐光君　陪審法中改正法律案ノ委員
  會ノ經過竝ニ結果ヲ極メテ簡單ニ御報告致
  シマス、治安維持法ノ罪ハ陪審法第四條ニ
  列記シテアリマス所ノ各種ノ犯罪ノ中デ、
  內亂罪或ハ外患罪及騒擾罪等ト等シク、其
  性質ガ大體ニ於キマシテ陪審手續ニ依テ審
  理スルコトガ不適當デアルト云フノデアリ
  マス、而シテ之ニ付キマシテ、各委員ヨリ
  熱心ナル質疑應答ガゴザイマシタガ、遂ニ
  採決ノ結果、第一控室ノ水谷君ガ反對致シ
  タノミデ、他ハ全部本案ニ賛成致シタノデ
  アリマス、此段御報告致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=114

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• 115・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　本案ニ關シテハ質
  疑ノ通告ト反對論ノ通告ガアリマス、ケレ
  ドモ何レモ議場ニ居ラレマセヌ、仍テ抛棄
  サレタモノト認メマス、卽チ直ニ採決致シ
  マス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君
  ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=115

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• 116・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數ト認メマ
  ス、本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=116

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• 117・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
  キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=117

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• 118・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　只今原君ヨリ直ニ
  第二讀會ヲ開キ第三讀會ヲ省略スルノ動議
  ガ出マシタガ、現ニ本案ニハ反對論ガ通告
  サレテ居リマス、ソレ故ニ直ニ第二讀會ヲ
  開キタイト思ヒマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=118

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• 119・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　仍テ直ニ兩案ノ第
  二讀會ヲ開キ議案全部ヲ議題ト致シマス
  陪審法中改正法律案第二讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=119

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• 120・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌカラ、第二讀會ニ於テハ委員長報告
  通リニ決シマシタ、是ニテ本案ハ第二讀會
  ヲ終了致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=120

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• 121・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
  レンコトヲ望ミマス
  〔「贊成々々」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=121

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• 122・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　別ニ御異議ナイト
  認メマス、仍テ直ニ第三讀會ヲ開キマス、
  議案全部ヲ議題ト致シマス
  陪審法中改正法律案第三讀會
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=122

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• 123・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　本案ニ贊成ノ諸君
  ハ起立
  〔賛成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=123

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• 124・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　起立多數ト認メマ
  ス、仍テ本案ハ可決確定致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=124

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• 125・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　日程變更ノ緊急動議ヲ提出
  致シマス、卽チ此際日程第七乃至第十一及
  ビ第十六第十七ヲ順次繰上ゲテ議題トナ
  シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=125

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• 126・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ日程ハ原君ノ動議ノ如ク變更サ
  レマシタ、日程第七大禮記念帝室博物館復
  典翼賛會事業費ノ補助ニ關スル法律案ノ第
  一讀會ヲ開キマス
  第七大禮帝室博物館復興翼贊會事業
  記念
  費ノ補助ニ關スル法律案(政府提出)等
  第一讀會
  大禮帝室博物館復興翼賛會事業費ノ
  記念
  補助ニ關スル法律案
  昭和四年度ニ於テ大禮帝室博物館復興翼
  記念
  賛會ノ事業費ニ對スル補助金ニ充用スル
  爲造幣局資金ノ內三百五十萬圓ヲ限リ一
  般會計ニ繰入ルルコトヲ得
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=126

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• 127・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　大禮記念帝室博
  物館復興翼賛會事業費ノ補助ニ關スル法律
  案ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ說明致シマ
  ス、今上陛下御卽位ノ大禮ヲ記念致シマス
  ル爲ニ、東京帝室博物館ヲ復興致シマシテ、
  之ヲ帝室ニ獻上シテ、帝室ノ文化的御事業
  ヲ翼賛シ奉ル爲ニ、先般大禮記念帝室博物
  館復興翼贊會ガ組織セラレタノデアリマ
  ス、而シテ其復興ニ要シマスル經費ハ、約
  八百五十万圓ノ見込デゴザイマシテ、內五
  百万圓ハ之ヲ全國有志者ノ寄附ニ俟チ、三百
  五十万圓ハ之ヲ政府ノ補助ニ依リマシテ、
  該事業ノ達成ヲ期セントスルノ計畫デアリ
  マス、民間ニ於ケル寄附ハ確實ノ見込デアリ
  マスカラ、前記補助金額ヲ昭和四年度追加
  豫算トシテ〓囘提案致シマシタ、而シテ其
  財源ハ之ヲ造幣局資金ニ屬シテ居リマス現
  金ヲ以テ充當スルコトヽ致シマシテ、右資
  關稅定率法中改正法律案
  關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
  第三十二號ヲ左ノ如ク改ム
  三m茶
  -紅茶
  二紅茶粉
  三包種茶
  四其ノ他
  第三十六號第二項中「四三·〇〇」ヲ「二六·〇〇」ニ改ム
  金ヲ一般會計ニ繰入ルヽノ途ヲ開クノ必要
  ガアリマシテ、本法律案ヲ提出致シタ次第
  デアリマス、何卒御協賛アランコトヲ希望
  致シマス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=127

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• 128・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告ガアリ
  マス、栗原彥三郞君、是亦不在デアリマス、
  仍テ抛棄ト認メマス、日程第八、右議案ノ
  審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シ
  マス
  第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

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• 129・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　本案ハ議長指名九名ノ委員
  ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=129

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• 130・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=130

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• 131・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
  九及第十ハ同種關聯セル議案デアリマスカ
  ラ、一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 132・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  そう、仍テ日程第九、關稅定率法中改正法
  律案、日程第十、大正十三年法律第二十四
  號中改正法律案、此兩案ヲ一括シテ其第一
  讀會ヲ開キマス、大口大藏政務次官
  第九關稅定率法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會
  百百八八·一〇
  斤斤二九·五〇
  每每每每百
  斤六·〇〇
  百斤一〇·六〇
  第四十四號中「七·二〇」ヲ「二一·六〇」ニ改ム
  第四十六號中「一七·五〇」ヲ「二六·三〇」ニ改ム
  第四十七號中「一三·三〇」ヲ「二〇·四〇」ニ改ム
  第五十四號中「二〇·五〇」ヲ「三九·三〇」ニ改ム
  第七十二號第一項甲ヲ左ノ如ク改ム
  甲塗リタルモノ
  イタンニン鞣ノモノニシテ黑色無地ノモノ從從價價四割
  口其ノ他二割
  第八十四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  八四ノ二ガット(テニスラケット用ノモノ)從價 二割五分
  第三百九十二號第一項ヲ左ノ如ク改ム
  印刷シタルモノ
  甲轉寫用ノモノ百三九·三〇
  從每價斤
  乙其ノ他五割
  第三百九十三號中「三割」ヲ「五割」ニ改ム
  第四百三十九號第二項甲中「碍子」ヲ「電氣用ノモノ」ニ改ム
  第四百五十七號第二項乙ヲ左ノ如ク改ム
  乙其ノ他
  イ電氣用ノモノ從價二割五分
  ロ其ノ他從價四割
  第五百六十號第一項中「毎箇」ヲ「從價」ニ、「七·四〇」ヲ「四割」ニ改ム
  第六百十二號第一項甲ヲ左ノ如ク改ム
  甲ノ一花梨木及黃楊木從價三割
  甲ノ二鐵刀木、紅木、紫檀及黑檀(縞黑檀
  ヲ除ク)每百斤〇·五〇
  同號第二項丁ヲ左ノ如ク改ム
  丁花梨木及黃楊木從價四割
  戊其ノ他從價二割五分
  第六百四十號第一項中「及同附屬品」ヲ「其ノ他ノ戶外運動具及同附屬品」ニ改ム
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  第十大正十三年法律第二十四號中改號第三十六號、第四十四號、第四十六
  正法律案(贅澤品等ノ輸入稅ニ關ス號第四十七號及第五十四號ノ項ヲ削
  ル件)(政府提出)第一讀會ル
  大正十三年法律第二十四號中改正法同第六十九號ノ項中「(兎毛皮竝鞣ササル
  律案綿羊皮及山羊皮ヲ除ク)」ヲ「(犬毛皮、猫
  大正十三年法律第二十四號中左ノ通改正毛皮、兎毛皮竝鞣ササル緬羊皮及山羊皮
  スヲ除ク)」ニ改ム
  別表輸入稅表番號第三十二號、第三十三同第七十二號ノ項一甲中「塗リタルモノ」
  ヲ「塗リタルモノ」(一甲イヲ除ク)」ニ
  改ム
  同第百三十八號、第百三十九號、第三百
  九十一號、第三百九十二號、第三百九十
  三號、第四百十四號及第四百二十四號ノ
  項ヲ削ル
  同第四百三十九號ノ項中「(碍子ヲ除ク)」
  ヲ「(電氣用ノモノ及二乙ノ内素燒ノモ
  ノヲ除ク)」ニ改ム
  同第四百五十七號ノ項中121甲ヲ除
  ク)」ヲ「(二甲及二乙イヲ除ク)」ニ
  改ム
  同第五百六十號ノ項ヲ削ル
  同第六百十二號ノ項ヲ左ノ如ク改ム
  六一二木材
  -單ニ切リ、換キ又ハ割
  リタルモノ(甲ノ一ヲ除
  ク)
  二其ノ他
  戊ノ內鐵刀木、紅木、
  紫檀及黒檀(縞黑檀ヲ
  除ク)
  同第六百四十號ノ内ノ項ヲ左ノ如ク改ム
  六四〇ビリヤート、テニス、クリッ
  ケット、象棋其ノ他ノ遊戲具及同附
  屬品(一ヲ除ク)
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
  〔政府委員大口喜六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=132

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• 133・大口喜六

  ○政府委員(大口喜六君)　大正十三年法律
  第二十四號、卽チ贅澤品等ノ輸入稅ニ關シマ
  スル法律ハ、國民奢侈ノ弊風ヲ抑制スルト
  同時ニ、我ガ國際貸借ノ改善ニ資スル目的
  ノ下ニ制定セラレタモノデアリマシテ、立
  法當時ニ於キマシテハ、課稅品ノ範圍手相
  當廣汎ハ亙ッテ居ッタノデアリマスガ、法律
  實施ノ結果ニ徵シマシテ、大正十四年三十
  數種ノ品目ヲ除外シタノデアリマス、尙現
  在ノ狀況ニ於キマシテ、指定品目中ニハ其用
  途等ヨリ觀察致シマシテ、之ヲ除外スルノ
  ヲ適當ト認ムルモノガアルノデアリマス、
  卽チ茲ニ提案シテゴザイマスル茶其他二十
  有餘ノ物品ハ、〓料品トシテ一般ニ使用セ
  ラレルモノデアリマス、又體育又ハ文化發
  育用ノモノ、又ハ工業的ノ用途ニ供セラル
  ルモノ、或ハ又輸出品ノ原料ニ供セラレル
  モノ等デアリマスノデ、是等ヲ本法指定品
  中ヨリ削除スルノヲ適當ト認メタ次第デア
  リマス、右削除致シマシタ結果ハ、是等ノ
  物品ニ對シマシテハ、一般關稅率ガ適用サ
  レルコトニナルノデアリマスガ、大正十五
  年ニ一般關稅率改正ノ際ニ於キマシテハ、
  十割關稅ノ課稅品ニ對スル稅率ハ中止ノ狀
  態ニアッタノデ、何等ノ改正ヲモ加ヘナカツ
  夕關係上、前述ノ物品中ニハ、其生產輸入
  竝ニ需給ノ狀況等ヲ考ヘマシテ、一般關稅
  率ニ適當ナル改正ヲ加へル必要ノモノガア
  リマス、仍テ茲ニ此兩改正法律案ヲ提出シ
  タ次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛
  アランコトヲ希望致シマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=133

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• 134・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　質疑ノ通告モアリ
  マセヌ、仍テ日程第十一、右各案ノ審査ヲ
  付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第十一右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委
  員ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=134

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• 135・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　兩案ヲ一括シテ議長指名九
  名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
  〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=135

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• 136・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　原君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=136

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• 137・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  アマ、仍テ原君ノ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=137

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• 138・原惣兵衞

  ○原惣兵衞君　殘餘ノ日程ハ延期シ、本日
  ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=138

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• 139・清瀬一郎

  ○副議長(〓瀨一郞君)　御異議ナシト認メ
  さく、仍テ本日ハ是ニテ散會致シマス、次
  會ノ日程ハ追テ公報ヲ以テ御通知申上ゲマ
  ス
  午後六時四十八分散會
  衆議院議事速記錄第三十二號中正誤
  頁段行誤正
  七一八二二六第二十二第二十四
  七一九頁三段大正九年法律第五十三號中改正法
  律案ニ對スル修正案中左ノ通修正スノ次ニ左ノ
  一行ヲ說ス
  「第一條割除」及「別表ヲ創ル」ヲ創ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03319290315&spkNum=139

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