1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四年三月十六日(土曜日)午後一時二十二分開議
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議事日程 第三十三號
昭和四年三月十六日
午後一時開議
第一 救護法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 競馬法中改正法律案(政府提出、貴族院囘付)
第四 國寶保存法案(政府提出、貴族院囘付)
第五 日本興業銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 國際汽船株式會社の整理に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第九 造幣局特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 大正十四年法律第五十一號中改正法律案(關東州の生産品輸入税免除等の件(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 地方鐵道法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 軌道法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 非訟事件手續法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 衆議院議員選擧法中改正法律案(二見甚郷君外一名提出) 第一讀會
第十七 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(石井次郎君外五名提出) 第一讀會
第十八 質屋取締法中改正法律案(鬼丸義齋君提出) 第一讀會
第十九 古物商取締法中改正法律案(鬼丸義齋君提出) 第一讀會
第二十 刑法中改正法律案(牧野賤男君外二名提出) 第一讀會
第二十一 借家法中改正法律案(小久江美代吉君外二名提出) 第一讀會
第二十二 恩給法中改正法律案(山下谷次君外一名提出) 第一讀會
第二十三 道路法中改正法律案(菅野善右衞門君提出) 第一讀會
第二十四 町村有建物火災保險相互組合法案(岩崎一高君外十六名提出) 第一讀會
第二十五 遠洋漁業奬勵法中改正法律案(原耕君提出) 第一讀會
第二十六 違警罪即決例中改正法律案(一松定吉君外二名提出) 第一讀會
第二十七 工場法中改正法律案(千葉三郎君外五名提出) 第一讀會
第二十八 勞働組合法案(鈴木文治君提出) 第一讀會
第二十九 刑の執行又は勾留に因る補償に關する法律案(宮古啓三郎君外九名提出) 第一讀會
第三十 陪審法中改正法律案(横山勝太郎君外三名提出) 第一讀會
第三十一 衆議院議員選擧法中改正法律案(小久江美代吉君外四名提出) 第一讀會
第三十二 衆議院議員黨籍變更に關する法律案(小久江美代吉君外四名提出) 第一讀會
第三十三 牧野法案(中島鵬六君外一名提出) 第一讀會
第三十四 健康保險法中改正法律案(西尾末廣君提出) 第一讀會
第三十五 國定教科書官給法案(樋口秀雄君外六名提出) 第一讀會
第三十六 耕地整理法中改正法律案(三輪市太郎君外十二名提出) 第一讀會
第三十七 農會法中改正法律案(三輪市太郎君外十二名提出) 第一讀會
第三十八 行政執行法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第三十九 膠州灣舊租借地引渡に關する條約實施に伴ふ損害の補償に關する法律案(小谷節夫君外三名提出) 第一讀會
第四十 辯護士法中改正法律案(岡本實太郎君外六名提出) 第一讀會
第四十一 司法代書人法中改正法律案(坂本志魯雄君外三名提出) 第一讀會
第四十二 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(星島二郎君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十三 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(田中養達君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十四 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案(沖島鎌三君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案(小池仁郎君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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001・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一昨十五日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ
通牒ヲ受領セリ
昭和四年度歳入歳出總豫算案竝昭和四年
度各特別會計歲入歳出豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
公娼制度廢止ニ關スル法律案
提出者
安部磯雄君内ケ崎作三郞君
星島二郞君箸本太吉君
建築士法案
提出者
岡田忠彥君熊谷直太君
小西和君山口恒太郞君
俵孫一君野村嘉六君
井坂豐光君
衆議院議員選擧法中改正法律案
提出者
兒玉右二君葛原猪平君
庄晉太郞君岩川輿助君
(以上三月十五日提出)
北海道伏古別漁港修築ニ關スル建議案
提出者
板谷順助君岡田伊太郞君
北海道登別溫泉ヲ中心トスル國立公園設
定ニ關スル建議案
提出者
板谷順助君岡田伊太郞君
公娼制度廢止ニ關スル建議案
提出者
三重七磐君星島二郞君
栗原彥三郞君加藤鯛一君
杉浦武雄君
恩給法中改正ニ關スル建議案
提出者
櫻內辰郞君定塚門次郞君
瀨川光行君海野數馬君
有珠岳洞爺湖及登別溫泉ヲ中心トスル國
立公園設定ニ關スル建議案
提出者
岡本幹輔君山本厚三君
神部爲藏君小池仁郞君
淺川浩君坂東幸太郞君
室蘭港臨港鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
岡本幹輔君小池仁郞君
山本厚三君淺川浩君
神部爲藏君坂東幸太郞君
札幌市ニ高等師範學校設置ニ關スル建議
案
提出者
山本厚三君小池仁郞君
淺川浩君神部爲藏君
岡本幹輔君坂東幸太郞君
北海道ニ高等學校設置ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君小池仁郞君
淺川浩君神部爲藏君
圖本幹輔君坂東幸太郞君
北海道ニ高等工業學校設置ニ關スル建議
案
提出者
山本厚三君小池仁郞君
神部爲藏君岡本幹輔君
(以上三月十五日提出)
北海道帶廣町ニ第七師團步兵一箇聯隊移
轉設置ニ關スル建議案
提出者小池仁郞君
(以上三月十六日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十五日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第四部選出懲罰委員武富濟君
第七部選出懲罰委員齋藤巖君
一昨十五日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第四部選出
豫算委員森正則君(松實喜代太君
補闕)
一昨十五日理事補闢選舉ノ結果左ノ如シ
肥料管理法案(政府提出)外一件委員
理事鈴木文治君(理事河崎助太郞君
本月十四日委員辭任ニ付其ノ
補闕)
衆議院議員選擧法中改正法律案(床次竹
二郞君外十九名提出)委員
理事工藤鐵男君(戶澤民十郞君本月
十四日理事辭任ニ付其ノ補
關
一昨十五日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
大禮帝室博物館復興翼賛會事業費ノ補助
記念
ニ關スル法律案委員
山下谷次君矢野鉉吉君
石坂養平君鳴海文四郞君
小池仁郞君飯塚春太郞君
佐竹庄七君重松重治君
田崎信藏君
關稅定率法中改正法律案外一件委員
高橋熊次郞君橫堀治三郞君
平賀周君佐藤實君
平井信四郞君前田房之助君
田昌君西脇晉君
志村〓右衞門君
一昨十五日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
衆議院議員選擧法中改正法律案委員
辭任松實喜代太君補闕林路一君
鐵道敷設法中改正法律案委員
辭任小山寛藏君補闕菅野善右衞門君
辭任山下谷次君補闕坂本志魯雄君
府縣制中改正法律案外三件委員
辭任林路一君補闕豊田收君
辭任西方利馬君補闕田子一民君
辭仕磯部〓吉君補闕加藤鐐五郞君
辭任川島正次郞君補闕木暮武太夫君
肥料管理法案外一件委員
辭任蔭山貞吉君補闕水久保甚作君
一昨十五日提出者ニ於テ撤回シタル議案左
ノ如シ
北海道帶廣町ニ第七師團歩兵一箇聯隊移
轉設置ニ關スル建議案(小池仁郞君提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=1
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002・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、救護法案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-望月內務大臣
第救護法案(政府提出)第一讀會
救護法案
救護法
第一章被救護者
第一條左ニ揭グル者貧困ノ爲生活スル
コト能ハザルトキハ本法ニ依リ之ヲ救
護ス
-六十五歳以上ノ老衰者
二十三歳以下ノ幼者
三姙產婦
四不具癈疾、疾病、傷痍其ノ他精神
又ハ身體ノ障碍ニ因リ勞務ヲ行フニ
故障アル者
前項第三號ノ姙產婦ヲ救護スベキ期間
竝ニ同項第四號ニ揭グル事由ノ範圍及
程度ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條前條ノ規定ニ依リ救護ヲ受クベ
キ者ノ扶養義務者扶養ヲ爲スコトヲ得
ルトキハ之ヲ救護セズ但シ急迫ノ事情
アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第二章救護機關
第三條救護ハ救護ヲ受クベキ者ノ居住
地ノ市町村長、其ノ居住地ナキトキ又
ハ居住地分明ナラザルトキハ其ノ現在
地ノ市町村長之ヲ行フ
第四條市町村ニ救護事務ノ爲委員ヲ設
置スルコトヲ得
委員ハ名譽職トシ救護事務ニ關シ市町
村長ヲ補助ス
第五條委員ノ選任、解任、職務執行其ノ
他委員ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三章救護施設
第六條本法ニ於テ救護施設ト稱スルハ
養老院、孤兒院、病院其ノ他ノ本法ニ
依ル救護ヲ目的トスル施設ヲ謂フ
第七條市町村救護施設ヲ設置セントス
ルトキハ其ノ設備ニ付地方長官ノ認可
ヲ受クベシ
私人救護施設ヲ設置セントスルトキハ
地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第八條前條第二項ノ規定ニ依リ設置シ
タル救護施設ハ市町村長ガ救護ノ爲行
フ委託ヲ拒ムコトヲ得ズ
第九條本法ニ定ムルモノノ外救護施設
ノ設置、管理、廢止其ノ他救護施設ニ
關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第四章救護ノ種類及方法
第十條救護ノ種類左ノ如シ
-生活扶助
二醫療
三助產
四生業扶助
前項各號ノ救護ノ範圍、程度及方法ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條救護ハ救護ヲ受クル者ノ居宅
ニ於テ之ヲ行フ
第十二條幼者居宅救護ヲ受クベキ場合
ニ於テ市町村長其ノ哺育上必要アリト
認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ幼
者ト併セ其ノ母ノ救護ヲ爲スコトヲ得
第十三條市町村長居宅救護ヲ爲スコト
能ハズ又ハ之ヲ適當ナラズト認ムルト
キハ救護ヲ受クル者ヲ救護施設ニ收容
シ若ハ收容ヲ委託シ又ハ私人ノ家庭若
ハ適當ナル施設ニ收容ヲ委託スルコト
ヲ得
第十四條市町村長ハ救護ヲ受クル者ノ
親權者又ハ後見人ガ適當ニ其ノ權利ヲ
行ハザル場合ニ於テハ其ノ異議アルト
キト雖モ前條ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十五條救護施設ノ長ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ施設ニ收容セラレタル者
ニ對シ適當ナル作業ヲ課スルコトヲ得
第十六條第十三條ノ規定ニ依リ收容セ
ラレ又ハ收容ヲ委託セラレタル未成年
者ニ付親權者及後見人ノ職務ヲ行フ者
ナキトキハ市町村長又ハ其ノ指定シタ
ル者勅令ノ定ムル所ニ依リ後見人ノ職
務ヲ行フ
第十七條救護ヲ受クル者死亡シタル場
合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋葬ヲ
行フ者ニ對シ埋葬費ヲ給スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ埋葬ヲ行フ者ナキト
キハ救護ヲ爲シタル市町村長ニ於テ埋
葬ヲ行フベシ
第五章救護費
第十八條救護ヲ受クル者同一市町村ニ
一年以上引續キ居住スル者ナルトキハ
救護ニ要スル費用ハ其ノ居住地ノ市町
村ノ負擔トス
第十九條救護ヲ受クル者左ノ各號ノ一
ニ該當スル者ナルトキハ其ノ居住期間
一年ニ滿チザル場合ニ於テモ救護ニ要
スル費用ハ其ノ居住地ノ市町村ノ負擔
トス
夫婦ノ一方居住一年以上ナルトキ
同居ノ他ノ一方
二父母其ノ他ノ直系尊屬居住一年以
上ナルトキ同居ノ子其ノ他ノ直系卑
屬
三子其ノ他ノ直系卑族居住一年以上
ナルトキ同居ノ父母其ノ他ノ直系尊
族
第二十條前二條ニ規定スル期間ノ計算
ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十一條救護ニ要スル費用ガ前三條
ノ規定ニ依リ市町村ノ負擔ニ屬セザル
場合ニ於テハ其ノ費用ハ救護ヲ受クル
者ノ居住地ノ道府縣、其ノ居住地ナキ
トキ又ハ居住地分明ナラザルトキハ其
ノ現在地ノ道府縣ノ負擔トス
第二十二條第十七條ノ規定ニ依ル埋葬
ニ要スル費用ノ負擔ニ關シテハ前四條
ノ規定ヲ準用ス
第二十三條委員ニ關スル費用ハ市町村
ノ負擔トス
第二十四條第二十一條及第二十二條ノ
規定ニ依リ道府縣ノ負擔スル費用ハ救
護ヲ爲シタル地ノ市町村ニ於テ一時之
ヲ繰替支辨スベシ
第二十五條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ左ノ諸費ニ對シ其ノ一一分ノ一以內ヲ
補助ス
第十八條乃至第二十三條ノ規定ニ
依リ市町村又ハ道府縣ノ負擔シタル
費用
二道府縣ノ設置シタル救護施設及第
七條第一項ノ規定ニ依リ市町村ノ設
置シタル救護施設ノ費用
三第七條第二項ノ規定ニ依リ私人ノ
設置シタル救護施設ノ設備ニ要スル
費用
道府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ左ノ諸
費ニ對シ其ノ四分ノ一ヲ補助スベシ
第十八條乃至第二十條、第二十二
條及第二十三條ノ規定ニ依リ市町村
ノ負擔シタル費用
二第七條第一項ノ規定ニ依リ市町村
ノ設置シタル救護施設ノ費用
三第七條第二項ノ規定ニ依リ私人ノ
設置シタル救護施設ノ設備ニ要スル
費用
第二十六條救護ヲ受クル者資力アルニ
拘ラズ救護ヲ爲シタルトキハ救護ニ要
スル費用ヲ負擔シタル市町村又ハ道府
縣ハ其ノ者ヨリ其ノ費用ノ全部又ハ一
部ヲ徴收スルコトヲ得
第二十七條救護ヲ受ケタル者枚護ニ要
シタル費用ノ辨償ヲ爲スノ資力アルニ
至リタルトキハ救護ノ費用ヲ負擔シタ
ル市町村又ハ道府縣ハ救護ヲ廢止シタ
ル日ヨリ五年以內ニ其ノ費用ノ全部又
ハ一部ノ償還ヲ命ズルコトヲ得
第二十八條救護ヲ受クル者死亡シタル
トキハ市町村長ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ遺留ノ金錢ヲ以テ救護及埋葬ニ要ス
ル費用ニ充當シ仍足ラザルトキハ遺留
ノ物品ヲ賣却シテ之ニ充當スルコトヲ
得
第六章雜則
第二十九條救護ヲ受クル者左ニ揭グル
事由ノ一ニ該當スルトキハ市町村長ハ
救護ヲ爲サザルコトヲ得
-本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ市町村長又ハ枚護施設ノ長ノ
爲シタル處分ニ從ハザルトキ
二故ナク救護ニ關スル檢診又ハ調査
ヲ拒ミタルトキ
三性行著シク不良ナルトキ又ハ著シ
ク怠惰ナルトキ
第三十條第七條第二項ノ規定ニ依リ設
置シタル救護施設ガ本法若ハ本法ニ基
キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處
分ニ違反シタルトキハ地方長官ハ同項
ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第三十一條道府縣、市町村其ノ他ノ公
共〓體ハ左ニ揭グル土地建物ニ對シテ
ハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得
ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ
對シテハ此ノ限ニ在ラズ
-主トシテ救護施設ノ用ニ供スル建
物
二前號ニ揭グル建物ノ敷地其ノ他主
トシテ救護施設ノ用ニ供スル土地
第三十二條詐僞其ノ他ノ不正ノ手段ニ
依リ救護ヲ受ケ又ハ受ケシメタル者ハ
三月以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第三十三條本法中町村ニ關スル規定ハ
町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ町村ニ
準ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定
ハ町村長ニ準ズベキ者ニ之ヲ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
左ノ法令ハ之ヲ廢止ス
明治四年太政官達第三百號
明治六年太政官布告第七十九號
明治六年太政官布告第百三十八號
明治七年太政官達第百六十二號恤救規
則
〔國務大臣望月圭介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=2
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003・望月圭介
○國務大臣(望月圭介君) 國民生活ノ安定
ヲ圖リ、是ガ保護向上ヲ期スル爲ニ、各種ノ
社會政策ヲ實行スルコトハ現下ノ社會狀
態ニ鑑ミ洵ニ必要ナルコトヽ存ズルノデア
リマス、就中貧困ニシテ生活能力ナク、而
モ扶養者ノナキ老者、幼者、病者等ニ對シ、
保護ノ方法ヲ講ズルガ如キハ最モ緊要適
切ナル事柄デアルト信ズルノデアリマス
然ルニ我國ニ於ケル現行救貧制度ト致シマ
シテハ、明治四年太政官達棄兒養育米給與
法及明治七年太政官達恤救規則等ガアルニ
過ギナイノデアリマス、而シテ其規定ノ内
容ハ極メテ不備デアリマシテ、今日ノ實狀
ニ適セナイノデアリマス、到底救護ノ目的
ヲ達スルコトガ出來ナイ狀況ニアルノデア
リマス、仍テ是ガ根本的改善ノ趣旨ニ基キ
マシテ、玆ニ提案致シマシタルガ如キ救護
法ヲ制定セントスルモノデアリマス、本法
案ニ關スル主要ナル事柄ヲ略說致シマスレ
バ、第一、本法ニ依テ救護ヲ受ケル者ハ、
六十五歳以上ノ老衰者、十三歲以下ノ幼
者、姙產婦、不具癈疾、疾病、傷痍等ニ因
リ勞働ヲ爲スニ著シキ故障アル者ニ限リ、
且ツ是等ノ者ガ貧困ノ爲ニ生活スルコト能
ハザル場合ニ止メ、眞ニ救護ノ必要止ムヲ
得ザル者ニノミ救護ヲ行フノデアリマス、
第二、救護ハ救護ヲ受クベキ者ノ居住地ノ
市町村長ヲシテ行ハシムルヲ原則トシ、居
住地ナキカ又ハ分明ナラザルガ如キ特殊ノ
場合ニ於キマシテハ現在地ノ市町村長ヲ
シテ行ハシムルコトニ致シタノデアリマ
ス、尙ホ濫救、漏救ノ弊害ヲ除去シマシテ、
救護ノ適正ヲ期スルガ爲ニ、救護ニ關スル
委員ヲ置キ、救護事務ヲ補助セシメルコト
トシタノデアリマス、第三、救護ノ方法ハ
救護セラルヽ者ノ居宅ニ於テ行フコトヲ原
則ト致シマシテ、例外ノ場合ニハ、道府縣、
市町村又ハ私人ノ設置シマシタル養老院、
施療病院、育兒院等ノ救護施設ニ收容シ、
又ハ委託シテ救護ヲ行フノデアリマス、是
等ノ救護施設ニ對シマシテハ、一面國庫補
助租稅免除等ノ特典ヲ與ヘテ、之ヲ助成
スルト共ニ、他面委託ヲ拒否スルコトヲ得
ザル等、相當ノ制限ヲ設ケタノデアリマ
ス、又救護ノ種類ト致シマシテハ、一、生
活扶助、二、醫療、三、助產、四、生業扶助
ノ四種ト致シマシタガ、就中主要ナルモノ
ハ生活扶助ト醫療トデアリマス、第四、救
護ニ要スル費用ハ市町村ノ負擔ト致シマ
シテ、特別ノ場合ニ限リ道府縣ノ負擔ト爲
シ、之ニ對シ國庫ヨリハ道府縣及市町村ノ
負擔シタル費用ニ對シ其二分ノ一以內ヲ、
道府縣ハ市町村ノ負擔ニ對シ其四分ノ一ヲ
補助シ、道府縣市町村又ハ私人ノ設置シタ
ル救護施設ニ對シテモ、國庫及道府縣ヨリ
ソレ〓〓補助ヲ爲スコトヽシタノデアリマ
ス、以上ハ本案ノ大體デゴザイマスガ、尙
ホ申上ゲマス迄モナク、我國ニ於キマシテ
ハ古來ノ美風タル家族制度及隣保扶助ノ情
誼ガ存シテ居リマスノデ、本法案ハ實ニ是
等ノ淳風美俗ヲ尊重致シマスト共ニ、更ニ
進ンデ現在社會ノ實情ニ適應セル制度ヲ確
立致シ、其及バザルヲ補ウテ、以テ國民生
活ノ不安ト思想ノ動搖ヲ防止スルニ努メン
トスル趣意ニ外ナラナイノデアリマス、何
卒御審議ノ上速ニ御協贊アランコトヲ切望
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=3
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004・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 質疑ヲ許シマス-
松田竹千代君
〔松田竹千代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=4
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005・松浦五兵衞
○松浦五兵衛君 自作農ノ委員會ヲ開キマ
スカラドウゾ御集リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=5
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006・松田竹千代
○松田竹千代君 只今議題ニ供サレマシタ
救護法案ニ對シテ質疑ヲ試ミタイト思フノデ
アリマス、私共多少共救護ノ實務ニ當ッテ參
リマシタ者ニ取リマシテハ此法案ノ如キ
モノニ對シテハ御伺致シタイ點ハ多々アル
ノデアリマスルケレドモ、最早會期切迫ノ
折柄デアリマスルカラ、如何ナ反對黨ト雖
モ多少ハ政府ノ御心持、與黨ノ御方ノ御氣
分モ參酌シテ、出來得ルダケ簡單ニシテ長
談義ヲ差控ヘナケレバナラヌト思ヒマス、
併シ私共此救濟事業ニ關係シテ來タ者ハ、
本案ノ提出ニ方リマシテ悲喜交ミ至ルト云
フヤウナ感ジヲ持ツノデゴザイマス、一面ニ
於テハ、本案ヲ御提出ニナリマシタコトニ
對シテハ洵ニ喜バシイコトデアル、此法案
ニ依テコソ多數ノ非常ニ困シテ居ル-或
ハ諸君ノ一部分ノ御方ニハ到底想像モ出來
ナイ程度ニマデ窮迫シテ居ル、生キナガラ
ノ地獄ノ生活ヲ送ッテ居ル人〓ガ、此法案ニ
依テ直ニ幾ラカデモ救ハレルト云フコトヲ
思ヒマスル時ニハ、洵ニ非常ナル喜ビヲ感
ゼザルヲ得ナイノデアリマス、併ナガラ他
面ニ於テハ、斯ル法案ニ依テ我國ニ於テモ
遂ニ極貧者ヲ救濟シナケレバ外ニ途ガナ
イ、之ニ依ラナケレバドウニモ仕樣ガナイ
ト云フヤウナ社會狀態ニ陷ッタコトヲ思ヒ
マスル時ニ、洵ニ悲マザルヲ得ナイノデア
リマス、決シテ救貧制度トカ救護法トカ云
フモノハ喜バシイモノデハナイノデアリマ
ス、已ムヲ得ザル制度デアリマス、併ナガ
ラ今日ノ情勢デハ、最早一日モ忽セニスル
コトノ出來ナイ情勢ニユ〓到シテ居リマス、政
府ノ御當局ノ御提案ノ御說明ニモアリマシ
タ通リ、又此理由書ニモゴザイマスル通リ
ニ、今日ニ於テハ此法案ハ非常ナル今日ノ
社會不安ヲ一掃スル爲ニ、最モ必要ナル喫
緊事デアルト言ハレテ居ルノデアリマス、
而モ私ノソコデ御伺致シタイコトハ、左樣
ニ窮迫シタル、切迫シタル所ノ此法案ヲ、
會期ガ將ニ終ラントスル今日、ヤット玆ニ提
案スルト云フコトハ果シテ社會政策ヲ高
唱シ、社會政案ヲ本當ニ眞劔ニ遂行シヤウ
トスル者ノ態度デアリマセウカドウカ、私
ハ伺ヒタイノデアリマス(拍手)政府ハソレ
程喫緊事デアルト思ハレルナラバ議會ノ
冒頭ニ於テ之ヲ提案シ、通常一般豫算ノ上
ニ其豫算ヲ取入レルコトノ出來ルヤウニ、
何故ニ準備サレナイノカ、洵ニ不審ニ堪ヘ
ナイノデアリマス、私ハ此點ニ對シテ内務
大臣ハ責任ヲ以テ、如何ナル事情ガ伏在シ
テ居ッテ、今日ノヤウナ將ニ會期ガ終焉ニ近
付カントスル際ニ出サレタノデアルカ、斯
樣ナ態度デハ諸君、如何樣ナコトヲ申サレ
テモ、政友會ハ現政府ハ社會政策ヲ飜弄
スルモノデアルト言ハレテモ、何等ノ辯解
ノ辭ハナイデアラウト私ハ思フノデアリマ
ス(拍手)政府御當局ハ更ニ本案ノ提案理由
書ニ於キマシテ、此法案ヲシテ有效ニ働カ
シムル爲ニハ、ドウシテモ一般ノ防貧的ノ
施設モ共ニ行ハナケレバナラヌト云フコト
ヲ主張致シテ居リマス、果シテ今日此法案
ヲ提出シ、之ヲ通過セシメ、之ヲ施行スル
ニ至リマシテモ、此法案ニ依テ十分ニ救
護ノ、救貧ノ目的ヲ達スル程度ニマデ、
般防貧的政策ガ、併行シテ行ハレテ居ル
カドウカ、私ハ防貧的施設ノ方ガ遙ニ
遲レテ居ルデハナイカ、成程政府ニ於テ
モ、相當社會政策ノ項目ダケハ幾ツモ竝
ベテ居リマスケレドモ、實際ニソレ〓〓
ノ項目ノ內容ヲ吟味スル時ニ、ソレハ餘リ
ニモ貧弱デアルト云フコトヲ感ゼザルヲ得
ナイ(拍手)斯ノ如キ狀態デアル、例へ
バ極貧者ヲ最モ多ク出ス所ノ失業ノ狀態
ハ今日如何ニ酷イ狀態ニ立到ッテ居ルカ、
而モ失業者ニ對スル對策ハ何ガアルカ、唯
僅ニ職業紹介所ヨリ外ニナイデハナイカ、
職業紹介所機關ニ依テ果シテ幾ラノ失業者
ノ救濟ヲ爲シ得テ居ルカ、斯ノ如キ狀態デ
ハ甚ダ本案ガ施行サレマシテモ、十分ニ
其目的ヲ達スルコトハ出來ナイノデハナイ
カト虞レザルヲ得ナイノデアリマス、次ニ
私ハ救護ノ客體、卽チ被枚護者ニ付テ御伺
致シタイト思フノデアル、御當局ハ被救護
者ノ算定ヲ如何ナル基礎ニ依テ爲サレテ居
ルノデアリマスルカ、老衰者、幼者、姙婦
其他不具、癈疾、是等ノ人ミハ現在ドレ程
アルノデアリマスルカ、之ニ對シテ-例
ヘバ生活ノ扶助ニ對シテ、最高ドレ位ノ扶
助ヲ爲シ得ルモノデアリマスルカ、御伺致
シタイト思フノデアリマス、殊ニ又此老衰
者ノ年齡ヲ六十五歳ト云フ標準ニ依テ、是
以上ノ者ト云フコトニ定メラレテ居リマス
ルガ、是ハ年齢ガ高キニ過ギナイカト思フ
ノデアリマス、我國ノ大學ノ停年制ノ如キ
モ六十ヲ以テ期限トシテ居ルデハナイカ、
併ナガラ諸君、實際ノ實務ニ當リマシテハ、
六十デハナイ、マダ〓〓ソレ以下ノ五十臺
デモ、實際ニ於テハ老衰シテ、到底體力ガ
鈍クテ働キニ耐ヘナイ者ガ實際ニアル、斯
ウ云フ固イ年齢ノ規定ニ依テ決メテシマフ
ト云フヤウナコトデハ、到底救護ノ目的ヲ
達スルコトハ出來ナイノデアリマス、諸君、
救護ノ仕事ハムヅカシイノデアリマス、總
テ救濟ノ仕事ハ非常ニムヅカシイ、御役人
ノ杓子定規デハイカナイノデアリマス、ソ
コデ私ハ御當局ニ御伺シタイノハ、此年齡
ヲモット低下シテ、一面ニ於テハ成タケ進ン
デ救護シテ貰フト云フヤウナ精神ヲ起サナ
イヤウナ運動ヲスルト共ニ、出來ルダケ範
圍ヲ廣クシテ、サウシテ救護ノ此法案ニ對
シテ一ツノ彈力性ヲ與ヘテ、幾ラカ伸縮自
在ニスルヤウニシナケレバ、非常ニ窮迫シ
夕人ニヲ救濟シテ行クト云フ、此法案ノ精
神ヲ本當ニ徹底スルコトハ出來ナイト思フ
ノデアリマス(「議論ニ亙ラヌヤウニ」「簡單
簡單」ト呼フ者アリ)成ルベク簡單ニヤリマ
ス-モウ一ツ此被救護者ノ規定ニ對シテ
幼者ノ點デアリマスルガ、之ヲ何故ニ政府
ハ十三歳トナサッタノデアリマスルカ、今日
兒童保護ノ一般ノ施設ハ、最低十四歳ヲ以
テ限度トシテ居ルノデアル、ソレニ十三歳
ト云フノハドウ云フ譯デアリマスカ、十三
歳デハ未ダ六箇年ノ義務〓育サヘ終ヘナイ
者ガ多イノデアリマス、救貧ノ家族ニ於テ
最モ大事ナコトハ、其親達ハ最早仕方ガナ
イケレドモ、其子供ダケハ切メテ十分ニ〓
育ヲ施シテ、次代ニハ其家族ガ極貧者ノ群
カラ脫却スルコトガ出來ルヤウニ、切メテ
子供ニ對シテハ最低六箇年ノ義務〓育位ハ
施シテヤラナケレバナラヌト云フコトハ
是ハ誰シモ感ゼザルヲ得ナイ事デアリマス
(拍手)義務〓育ヲ徹底セシメルト云フコト
ハ是ハ色ミノ意味ニ於テ少年者保護、兒
童保護ノ精神ヲ徹底セシメル爲ニ最モ必要
ナ事デアル、今日ヤカマシイ兒童ノ虐待デ
アルトカ、或ハ幼年勞働ノ問題デアルト
カ、是等ノモノヲ一舉ニ解決シ得ル所ノモ
ノハ義務〓育ノ徹底デアル、少クトモ學校
ニ行ッテ居ル間ダケハ、其子供ハ虐待モサレ
ズ、又酷イ勞働モサセラレナイ、學校ト云
フモノハ、卽チ學校ニ居ル間ノ兒童ヲ保護
シテ行ク、卽チ一石二鳥三鳥ヲ占メル所ノ
モノハ此義務〓育ノ徹底デアル、然ルニ此
法案ニ依テ年齡ヲ十三歲ニ決メタト云フコ
トデハ。貧困者ノ子弟ハ六箇年ノ義務〓育
ヲ終ヘナイデ、中途退學シテシマハナケレ
バナラヌト云フコトニナル、斯樣ナコトデ
ハ此法ノ精神ニ反スル結果ニナリハシナイ
カト私ハ思フノデアリマス、次ニ私ハ扶養
義務者ノ範圍ニ付テ御伺致シタイノデアリ
マス第二條ニ「前條ノ規定ニ依リ救護ヲ
受クベキ者ノ扶養義務者扶養ヲ爲スコトヲ
得ルトキハ之ヲ救護セズ」トアリマスガ、
我國ノ民法上ノ扶養義務者ノ範圍ハ、直ニ
採シテ本案ニ適用サレルモノデゴザイマス
カ、若シサウデアルトシマシタナラバ、私
ハ其範圍ガ餘リニ廣過ギハシナイカト思フ
ノデアリマス、實際救護ノ實務ニ當リマス
!、扶養者ガアルコトハ知ッテ居リマシテ
モ、遠方ノ所ニアルヤウナ場合ハ到底間ニ
合ハナイ、其手續上非常ナル煩雜ヲ來スノ
デアリマシテ、實際問題トシテハ、餘リニ
懸離レタ扶養義務者ニ其扶助ノ義務ヲ負ハ
セルト云フコトハ、實際問題トシテ出來ナ
イノデアルデアリマスカラ之ヲ何トカ縮
小シテ、出來得ルナラバ直系尊卑族ノ兄弟
位ノ程度ニ縮メタイト思フノデアリマスガ、
政府ノ御考ハ如何デアリマスカ、又此救護
ヲ要スル場合ニ、一旦扶助ヲ致シマシテ後
ニ、其資格ナキコトヲ發見致シマシタ時
ニ、其扶助シタ金額ヲ償還スル、其本人カ
ラ新ニ之ヲ徵收スルト一云フコトガ二十六條
ニアリマス、本人ガ救助ヲサレヌデモ宜イ
ヤウナ地位ニアルコトヲ發見シタ時ニハ
其者ヨリ金ヲ取返スト云フコトガ二十六條
ニアリマスケレドモ、其他ニ之ヲ扶助者カ
ラモ、又ハ當人モ一旦ハ公ノ救助ヲ受ケマ
シテモ、他日生活狀態ニ變化ヲ來シ、サウ
シテ自分ガ救助ヲ受ケタ額ニ對シテ、之ヲ
償還スルト云フヤウナコトガ出來ル時ニ於
テ、償還ノ規定ヲ設ケルト云フコトハ
面ニ於テ救助ト云フコトニ對シテ、國家ガ當
然ノ義務トシテ、極貧者ニ對シテ救助スル
ト云フ反面ニ、其者ガ救濟サレヌデモ宜イ
ト云フ時代ニナッタ時ニハ、其者カラ其救助
ノ金額ヲ償還スルト一ムフコトハ人格ヲ認
メル上ニ於テ當然爲サナケレバナラヌコト
デアルト思フノデアリマス、此規定ハ無イ
ノデアリマスルガ、政府當局ハ此點ニ對シ
テ如何ニ御考ニナルノデアリマスルカ、次
ニ私ハ第二章ノ救護機關ニ付テ少シク御伺
致シタイノデアリマス、私共ノ考ト致シマ
シテハ、本案ハ大體ニ於テ行政機關ニ餘リ
ニ重キヲ置キ過ギルノデハナイカ、殊ニ市
町村ニ重キヲ置キ過ギルノデハナイカト云
フヤウナ感ジヲ持ツノデアリマス、大體本
案ニ對スル根本方針トシテ、政府ハ地方分
散主義ヲ御執リニナッテ居ルノデアルカ、或
ハ中央集中主義ヲ御執リニナッテ居ルノデ
アルカ、或ハ金額ノ點カラ窺ヒマスルト云
フト、半々ト云フヤウデアリマスケレドモ、
ソレデハ果シテ十分ナル統制力ヲ、ソレニ
依テ持ツコトガ出來ルカドウカト云フコト
ヲ怪ムノデアリマス、更ニ、救護機關トシ
テ、英國ノ如キハ最モ長イ間此救貧制度ニ
付テ苦ンダ國デアリマスルガ、救貧區卽チ
〓區ヲ設ケテ、〓會區ニ依テ或ハ〓區聯合
區ニ依テ救護機關ノ主ナルモノト致シテ居
ルノデアリマスルガ、我國ニ於テモ矢張斯
ウ云フヤウナ救護區ヲ設ケル必要ハナイノ
デアルカ、獨逸ノ如キニ於キマシテモ、最
近幾多ノ救貧制度ノ整理ヲ致シマシテ、今
日デハ此救貧機關トシテハ、救護機關トシ
テハ幾多ノ委員會ヲ設ケテ居リマス、卽チ
地方救貧委員會デアルトカ、或ハ州救貧委
員會デアルトカ其他兒童救貧委員會、衞
生委員會、或ハ勞働委員會、住宅委員會、
或ハ〓育擴張事業委員會、是等ノ幾多ノ委
員會ガアル外ニ、地方市町村ニ於キマシテ
モ、ンレ〓〓〓〓委員會ヲ設ケマシテ、社
會事業家ヤ或ハ醫師ヤ衞生委員ト云フヤウ
ナモノガ之ニ參加シテ、一ツノ委員會ヲ組織
シテ、ソレニ依シテ救護ノ實務ヲ執ッテ居ル
ト云フコトデアリマスカラ、其救護ノ實務ガ
徹底シテ、サウシテ個別的ニ如何ナル方面
ノ窮貧者デモ、之ヲ救濟シテ行クト云フヤ
ウナコトガ出來テ行ッテ居ルヤウニ思フノ
デアリマス、日本ノ田舍ノ方ノ町村ニ於テ
ハ唯單ニ町村ノ吏員ニ面倒ナル救護ノ事
務ヲ擔當セシムルト云フヤウナコトデハ、
到底出來ナイト思フ、固ヨリ救護委員モゴ
ザイマスルガ、ソレデハ尙ホ不十分デアル
ト私ハ思フノデアリマス(「簡單ニヤレ」ト
呼フ者アリ)私ハ最小限度ニ自分ノ話ヲ縮
メル積リデアリマスガ言フダケハ言ハシ
テ戴キマス、次ニ私ノ御伺致シタイノハ
今度此法案ニ依テ御設ケニナル救護委員
ト、現在日本ニ存在スル方面委員トノ關係
ハドウ云フ風ニナルノデアリマスカ、大
正十三年度ニ內務當局ガ全國ニ奬勵サレテ、
方面委員制度ヲ各地ニ設ケラレ、今日デハ
確カ一道三府二十九縣ニ及ンデ、殊ニ大阪
ノ如キハ大正七年カラ方面委員制度ヲ設ケ
テ、今日デハ委員ノ數ダケデモ約千名ニ達
シテ居リ、又莫大ナル基金ヲ擁シテ居ル、
ソレ位ニマデ全國的ニ發達ヲシ、全國的ニ
普及シ、サウシテ既ニ十年餘ノ實際的經
驗ヲ經テ來テ居ル所ノ方面委員制度ガ今
日現存シテ居ルノニ、何故ニ政府ハ此方面
委員制度ヲ利用セズシテ、新ニ救護委員ヲ
御設ケニナルノデアリマスカ、救護委員ヲ
御設ケニナッタラ、其方面委員トノ關係ハド
ウナルノデアルカ、斯樣ナモノヲ幾ツモ拵
ヘルコトニ依テ、却テ救護ノ重複ヲ來シ、
遂ニハ濫救ニ陷リ、其結果本案ノ如キ法制
ノ最モ恐ルベキ、警戒スベキ、卽チ惰民ヲ
養成スルト云フヤウナ結果ヲ生ズルコトニ
ナリハセヌカ、次ニ救護施設ニ付テ御伺シ
タイノデアリマスガ、是ハ現存シテ居ル救
護施設ハ公私共ニ幾ツモアルノデアリマス
ガ、是等ハ矢張新ニ認可ヲ受ケテ本案ニ依
ル救護施設トサレルノデアリマスルカ、ソレ
トモ有名ナルモノハ他ノ救護施設ト御認メ
ニナルノデアリマスカ、內務大臣ノ御說明
ニモアリマシタヤウニ、原則トシテハ居宅
救助ヲ本質トスルト云フ御話デアリマスガ、
併シ第六條、第七條、第八條ニ依テ見マス
ル、相當ニ此救護施設ト云フモノニモ重
キヲ置イテ居ルヤウデアリマスガ、是ハ寧
ロモウ少シ徹底的ニ個人的ナル救助ト云フ
コトニシテ、院内救助ヲ廢スルヤウナ方針
ヲ執ラレルコトガ、今日ノ時代精神ニ合フ
モノデハナイカト私共思フノデアリマス、
如何ニ完備セル所ノ救護施設ヲ設ケマシテ
モ、救護施設ト云フモノハ、結局多クノ集
團的ノ救護ニナルノデアリマシテ、其結果
ハ如何ニ處遇方法ニ付テ注意致シマシテ
モ、長イ間ニハ結局ソレハ非人道的ニナリ、
非人格的、物的取扱ヲ受ケルヤウニナルノ
デアリマスカラ、寧口此救護施設ハ之ヲ奬
勵スルト云フヤウナコトハナク、出來ルダ
ケ限度ヲ縮メテ、此個人的ノ院外主義ヲ採ッ
テ御進ミニナルト云フコトニサレタイト思
フノデアリマスガ、其點ニ付テノ御考モ伺
ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=6
-
007・吉木陽
○吉木陽君 鹽田地整理委員會ヲ開キマ
ス、委員ノ方ハ御集リヲ願ヒマス、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=7
-
008・松田竹千代
○松田竹千代君(續) ソレカラ次ニ救護費
ノ點デアリマスガ、救護費ハ市町村ガ半額
負擔スルト云フコトニナッテ居リマス、面倒
ナル救護ノ事務ヲ執リナガラ、其救護費ヲ
半分迄負擔スルト云フコトニナリマシテ
ハ其地方ノ市町村ノ權力者ハ救護ヲ忌避
スルト云フ結果ニナリハシナイカ、殊ニ要
救助者ノ認定ヲ市町村長ニ委セルヤウナ法
文デアリマスカラ、尙更其憂ガ多イト思フ
ノデアリマス、若シ本法案ノ如ク左樣ニ多
クノ負擔ヲ地方ニ負ハセル、殊ニ被枚護者
ガ何處ノ者デアッテモ、兎モ角其現住所ニ於
テ先以テ救護サレルト云フコトニナッテ
居リマスカラ、尙更其處ノ市町村長ガ救護
ヲ忌避スルト云フ結果ニ陷ルデアラウト思
フノデアリマス、又政友會ノ內閣ハ、今日地
方ノ財政ノ輕減ヲ圖ル點カラ、彼ノ兩稅委
讓マデ斷行サレテ居ルノデアリマスガ、左
樣ナ點カラ考ヘマシテモ、此救護ノヤウナ
事ニ對シテ、地方ニ半額迄モ負擔サセルト
云フヤウナコトハ矛盾デハナイカ、是ハ國
家ガ大部分其責任ヲ持,テ、自ラ之ヲ行フト
云フコトニスルノデナケレバ、好結果ヲ得ラ
レナイノデハナイカト思フノデアリマスガ、
如何デアリマスカ、又更ニ詐欺手段ヤ或ハ
不正手段ニ依テ救護ヲ受ケタ者ニ對スル罰
則ハアリマスケレドモ、故意ニ救護ノ任務
ヲ怠ッタ者ニ對スル罰則ノナイノハドウ云
フ譯デアリマスカ、此點モ御考慮ヲ煩シタ
イト思フノデアリマス、(「長イヂヤナイカ
簡單ニシロ」「詳細ハ委員會デヤレ」ト呼フ
者アリ)成ベク簡單ニ致シマス、條文ヲ一
一ヤリマスレバマダ三十何箇條モアリマ
スガ、併シ成ベク簡單ニ切上ゲマス(「簡單
ニヤレ」ト呼フ者アリ)ダカラ私ハ逐條的ニ
ハ申シマセヌ、次ニ此法案ヲ愈。こ實施スル
ニ當リマシテハ此法案ト色〓關係ヲ持ツ
所ノ他ノ法案ノ擴充ト、其整理ヲ必要トシ
ナイカ、無論愉救規則ダケハ廢止スルト云
フコトハ、法文ノ終リニアリマスケレドモ、
其外ニ現在救濟的ノ法案トシテハ、我國デ
ハ罹災救助基金デアルトカ、或ハ水難救助
法或ハ行路死亡人取扱法トカ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=8
-
009・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=9
-
010・松田竹千代
○松田竹千代君(續) 軍事救護法、癈兵院
法、又病者ニ對シテハ癩豫防ニ關スル法律、
結核豫防法、精神病者ニ對スル監護法ト云
フヤウナモノヲ持ッテ居ルノデアリマスガ、
此內軍事救護法ヲ除イテハ極メテ消極的
ナモノバカリデアリマス、デアリマスカラ、
是等ノ法案ト今度ノ此法案ト均衡ヲ得ル點
ニ於テ、又重複ヲ避クル點ニ於テ、更ニ是
等ノ諸法律ノ擴充ヲ圖リ、整理ヲスル必要
ハナイカト思フノデアリマス、殊ニ行旅病
人竝ニ行路死亡人ノ取扱法、是ダケハ直ニ
改正スルノ必要ガアルト思フノデアリマス
ガ、如何デアリマスカ、固ヨリ行旅病人ニハ
貧困者デナイ者モアリマスケレドモ、大體
ニ於テハ矢張極貧者ト云フコトニナル、併
シ現在ノ行旅病人ノ取扱法ニ依ル取扱ト云
フモノハ、極メテ非人道的ナ、洵ニ虐待見
ルニ忍ビナイモノガアルノデアリマスカ
ラ、此法律ノ如キハ本案ノ施行ニ當ッテハ、
ドウシテモ改正サレナケレバナラヌト思フ
ノデアリマスガ、政府御當局ハ如何思召デ
アリマスカ、ソレカラ思フニ救護法ヲシテ
本當ニ其目的ヲ達セシメヤウトスルナラ
バ卽チ國家ノ非常ナルカガ一方ニアリ、
一方ニハ國家ヲ通ジテ各行政官廳ハ固ヨリ
デアリマスガ、其第一線ニ立ッテ働ク人、救
護委員若クハ一般篤志家、卽チ被枚護者ノ
手ヲ握ル人達、此人達、此兩極端ニ重キヲ置
カナケレバナラヌト田心フノデアリマスガ、
此法案ニハ其二ツノ兩端ニ對シテ、寧口冷
淡デアルカノヤウニ思フ、一番大切ナ點ハ
却テ疎マレテ居ルヤウニ思フノデアリマス
ガ、國家ノ統制力、ソレト第一線ニ立ッテ、
一番先ニ被救護者ノ手ヲ握ル、其尖端ニ對
シテモウ少シ注意ヲ拂ハナケレバナラヌノ
デナイカト思フノデアリマス、要スルニ本
法ハ老衰者保護法ト兒童扶助法、不具癈疾
其他精神及身體ニ障碍アル不能力者ノ保護
法ヲ包容スル所ノ、或意味ニ於テハ一ツノ
統一的法制トモ見ルコトガ出來ル大キナ法
典デアリマス、併シ救貧制度ト云フモノハ
最モ社會立法ノ中デモムヅカシイモノデア
ル、中〓旨ク行カナイ、英國ノ如キハ何百
年ト云フモノヲ此法制ノ爲ニ苦シメラレ、
ツイ先年ハ閣議ニ於テ一旦之ヲ廢止シテシ
マハウト云フヤウナ所マデ行ッタノデアリ
せっ、ケレドモドウスルコトモ出來ヌ、-
旦之ヲ施行スルナラバ、こ益〓重荷ガ掛ッテ來
ルバカリデアル、而モ其運用宜シキヲ得ナ
イナラバ何等效果ヲ舉ゲ得ナイ、現ニ英
國ガ幾多ノ救護制度ニ依テ、年々何億ト云
フ巨費ヲ投ジテ居ルケレドモ、矢張今日英
國ノ貧民窟へ行ケバ、其處ニハ跣ノ子供ヤ、
或ハ襤褸ヲ纏タ夕供、新聞紙カラタ食ヲ
貪リ食シテ居ル所ノ人〓ヲ見ルコトガ出來
ルト云フヤウナ狀態デアリマシテ、此救貧
ト云フ問題ニ對シテハ、餘程愼重ニ而シテ思
切ッテ國家ガ力ヲ盡サナケレバ是ハ到底駄
目デアル、其點カラ申シマスルト、本案ノ
如キハマダ〓〓生溫イノデアリマス、斯ノ
如キ事デハ到底十分ナル目的ヲ達スルコト
ガ出來ナイト思ヒマスカラ、政府ノ是等ノ
點ニ對シテ御答辯ヲ伺ヒマシテ、更ニ又御
伺ヒ致シタイト思フノデアリマス
〔國務大臣望月圭介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=10
-
011・望月圭介
○國務大臣(望月圭介君) 政府ガ本案ヲ提
出シテ各位ノ御協贊ヲ受ケタイト云フコト
ハ私ノ既ニ申シテアル通リデアリマス、
而シテ此會期ノ迫ッタ場合ニ於テ、斯ノ如キ
コトハ甚ダ注意ヲ缺クデハナイカト云フ御
言葉ガアリマシタガ、政府トシテハ此成案
ヲ得ルニ付キマシテハ、種々ニ調査ヲ積ミ
〓究ヲ重ネタノデアリマス、流石多年社會
事業ニ從事シテ居ラルヽ斯道ノ知識デア
ル松田君ガ、種々箇條ヲ擧ゲテノ御質問デ
アリマスガ、御舉ゲニナッタ中デノ項目ニ付
テハ、是等モ種々議論ガアリ、隨分御擧ゲ
ニナッタ數項ニ付キマシテハ、吾々モ餘程熟
慮ヲシタ譯デアリマス、旁〓以チマシテ、
此會期ノ迫ッタル今日之ヲ提案シタト云フ
コトハ、政府トシテモ甚ダ遺憾ニ存ジテ居ル
ノデアリマス、此案ハ先程說明ヲ致シマシ
タ通リニ、是非實行ヲシタイト云フ考ヲ持ッ
テ居ルノデアリマスカラ、會期ノ迫ツタ今日
デアリマスケレドモ、是非審査ヲ遂ゲラレ
テ、速ニ御協贊ヲ得タイノデアリマス、其
他項目ヲ擧ゲテノ御質疑ニ對シマシテハ
政府委員ヨリ詳細御各ヲ致サセマス
〔政府委員長岡隆一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=11
-
012・長岡隆一郎
○政府委員(長岡隆一郞君) 只今松田君ノ
御質問ノ中、其要項ニ關シマスルコトハ
只今内務大臣カラ御答申上ゲマシタリ通
リ、其外事務的ノ方面ニ亙リマシテ、仔細
ノ御質問ガゴザイマシタガ、御質問ガ多岐
ニ亙ッテ居リマスル爲ニ、或ハ私ガ聽漏ラシ
テ御答ヲ漏ラスコトガアルカモ存ジマセ
又、其點ガゴザイマシタナラバ、重ネテ御
質問ヲ承リマシテ御答申上ゲタイト考ヘマ
ス、松田君ノ御質問ノ中ニ、救護ノ客體ガ
狹キニ失スル、卽チ老者ニアッテハ六十五
歲ト云フコトガ少シク適當デナイ、幼者ニ
アッテハ十三歳ト云フコトガ適當デナイト
云フヤウナ御意見ガゴザイマシタガ、現行
法ニ於キマシテハ、老人ニ付キマシテハ七
十歲ト云フ制限ヲ置イテアリマス、又幼者
ニ付キマシテハ十三歲ト云フ制限ヲ置イテ
アリマス、之ヲ十四歲ニスルガ宜シイカ、
或ハ十五歲ニスルガ宜シイカト云フト、要
スルニ是ハ程度ノ問題デゴザイマスガ、格
別之ニ付テ數學的基礎ハゴザイマセヌケレ
ドモ、先ヅ老者ニアッテハ六十五歳以上、
幼者ニアッテハ十三歳以下ト云フコトヲ適
當ト考ヘタ次第デゴザイマス、其次ニ扶養
義務者ノ範圍ニ付テ御質問デゴザイマシタ
ガ、扶養義務者ノ範圍ハ、松田君ノ御質問
ノ通リ、民法ノ範圍ト大體同ジデアリマス、
唯御質問ノ中ニゴザイマシタ、之ヲ民法ノ
扶養義務者ト解スル結果、扶養義務者ガ遠
方ニ居ルヤウナ場合ニハ、扶助ガ行屆カヌ
デハナイカト云フヤウナ御懸念ガゴザイマ
シタガ、是ハ本案ノ第二十七條中ニ其點ヲ
慮リマシテ「窮迫ノ事情アル場合ハ此ノ限
ニアラズ」ト云フコトニ致シマシテ、其救
濟ノ途ヲ開イテ居ル譯デゴザイマス、イヤ
是ハ第二十七條デハゴザイマセヌ、他ノ條
文デゴザイマスガ、被救護者ガ窮迫ナ事情
ニアル場合ニハ扶養義務者ガアリマシ
テモ、之ヲ扶助スルト云フコトニ致シテア
リマスカラ、御懸念ノ點ハナカラウト思ヒ
マイ、ソレカラ今一ツ被枚護者ガ救護ヲ要
セザル狀況ニナッタ時ニ、之ニ償還ノ義務ヲ
負ハシムルト云フコトハ本人ノ人格ヲ尊
重スル意味ニ於テ適當デハナイカ、斯ウ云
フ御懸念デゴザイマスガ、是モ松田君ノ御
懸念ノ如ク、本法案ノ二十七條ニ於テ、被
救護者ガ費用ノ辨償ヲ爲ス資力アルニ至リ
マシタ時ニハ、辨償ヲ命ズルト云フコトノ
規定ハ致シテゴザイマスカラ、丁度松田君
ノ御懸念ノ點ハ、之ニ依テ救ハレテ居ルコ
トヽ考ヘマス、次ニ救護機關ヲ市町村ニ限ツ
タト云フコトハドウデアラウカ、英國、獨
逸等ノ例ヲ擧ゲテ、色〓特別ノ區域ヲ設定
スル必要ガアルト云フヤウナ御懸念デゴザ
イマシタガ、我國ノ事情ト致シマシテハ
英獨ノ事情ト異シテ、斯ル問題ハ第一ニハ家
族制度、第二ニハ隣保相助ノ風習ヲ尊重ス
ル、然ラザル者ハ公費ニ依テ救護スル立前
ニナッテ居リマス、是モ市町村ノ行政區域ニ
依ルト云フノガ適當ト信ジタ次第デゴザイ
マス、其次ニ本法ニ枚護委員ト云フ者ヲ
置イテアルガ、從來ノ方面委員ト如何ナル
關係ヲ持ツカト云フ御質問デゴザイマス
ガ、本法ニ救護委員ト云フ名稱ハゴザイマ
セヌガ、特ニ委員ト書イテアリマシタノハ、
從來ノ方面委員ノ制度ヲ其儘本法ニ取入レ
ル積リデアリマス、從來保護ノ規定ガナイ
ニ拘ラズ、相當發達シテ居リマシタ方面委
員ノ制度ヲ打壞シテ、新ニ特別ノ委員ヲ作
ルト云フヤウナ意思ハ毛頭ゴザイマセヌ、
現在存在シテ居リマス所ノ方面委員ニ對シ
テ、之ニ法律的ノ根據ヲ與ヘテ、其儘此法
案ノ中ニ取入レタイ、斯ウ云フ考デゴザイ
マスカラ、本案ノ趣旨ハ松田君ノ御意見ト
殆ド一致シテ居ルコトヽ考ヘマス、其次ニ
ハ院內居住、居宅居住ト云フヤウナコトニ
付テ御質問デゴザイマシタガ、是ハ先程內
務大臣カラ提案ノ說明ノ中ニ申上ゲマシタ
通リ、居宅居住ト云フコトヲ原則ト致シタ
イト考ヘテ居リマス、併ナガラ老人ガ兒童
ヲ虐待スル常習ノアル者卽チ居宅救護ヲ不
可トスルヤウナ事情ノアル者ニ對シマシテ
ハ已ムヲ得ズ例外トシテ院內救護ヲ認メ
タイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、其次ニハ市
町村ニ半分ノ費用ヲ負擔サセテ居ルト云フ
コトハ、少シク無理デハナイカト云フヤウ
ナ御質問デゴザイマシタガ、是ハ決シテ言
葉ノ揚足ヲ取ル意思デゴザイマセヌガ、市
町村ニ半分ノ支出ヲ命ジテハ居リマセヌ、
市町村ニハ約四分ノ一ノ負擔ハ命ジテ居リ
マス、卽チ府縣ト市町村トヲ加ヘルト約半
額ニナリマスガ、全額ヲ國ノ事業トシテ、
國庫デ之ヲ受持ツト云フコトモ、一ツノ見
方デハゴザイマスケレドモ、併ナガラ市町
村ガ之ニ付テ、財政的ニ何等ノ關係ガナイ
ト云フヤウナ態度ニ出デマスト、松田君ノ
御心配ニナルヤウナ、濫救ノ弊ヲ生スル虞
ガアリマスカラ、市町村ソレ自體ニ、救助
民ニ對シマシテハ市町村デ四分ノ一位ノ費
用ヲ負擔スルゴトガ適當デアラウ、是ガ亦
濫救ト云フヤウナ弊ヲ防グ一ツノ理由ニモ
ナラウカト云フコトガ、提案ノ趣旨デゴザ
イマス、其次ニ故意ニ救護ヲ怠。タ吏員ニ
對スル制裁ノ規定ガナイト云フコトハド
ウデアルカト云フ御質問デゴザイマスガ、
是ハ行政官廳ノ內部ノ監督官ニ依テ相當ニ
處理シ得ル見込デゴザイマスカラ、特ニ制
裁ノ規定ヲ置キマセヌデゴザイマス、最
後ニ他ノ法令ノ整理ヲ要スル必要ガナイカ
ト云フ御質問デゴザイマスガ、罹災救助法、
水難救護法ノ如キモノハ、特別ノ災難ノア
リマシタ場合ニ、臨時ノ救護ヲ目的ニ出來
マシタ法律デゴザイマシテ、本案ニ關係ハゴ
ザイマセヌ、又軍事救護法、癈兵院法ノ如
キハ、是ハ特ニ國家ニ功勞ノアリマシタ遺
家族ニ關スル救護法デアリマスカラ、般
ノ救護法ヨリ厚ク扱フト云フコトハ、已ム
ヲ得ザルコトヽ考ヘテ居ルノデアリマス、
行旅病人ノ保護ニ付テ、或ハ改廢ヲ要スル
點ガアルカト考ヘマシテ、御示ノ點ハ篤ト
考慮致シマシタケレドモ、行旅病者、行旅
死亡人ニ付キマシテハ、其救濟スル目的對
象ハ聊カ異ノテ居リマスカラ、今日ニ於テハ
此法令ヲ改正スル必要ハナイト云フ結論ニ
到著シテ居リマスガ、此點ニ付キマシテハ
尙ホ篤ト考慮致シタイト思ヒマス、尙ホ御
答ガ漏レテ居リマシタ所ガアリマシタナラ
バ委員會等ニ於テ詳細御答致シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=12
-
013・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 內ケ崎作三郞君
〔內ケ崎作三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=13
-
014・内ヶ崎作三郎
○内ケ崎作三郞君 本案ハ極メテ重大ナル
法案デゴザイマシテ、劃時代ノ社會政策ノ
法案デアルト思フノデアリマス、内務省社會
局ニ於カレマシテハ多年此法案ヲ調査〓
究セラレマシテ、一昨年頃旣ニ本案ノ大綱
ハ社會事業調査會ニ於テ確定致シテ居ッタ
ノデゴザイマスガ、此度愈〓法案トナッテ議
會ニ提出ニナリマシタルコトハ吾々ノ深
ク喜ビト致ス所デアリマス、然ルニ此法案
ハ殆ド我國ニ於キマシテハ空前ノ社會政
策的立法デアルニ拘ラズ、俄ニ御出シニナ
リマシタル爲デアルカ、又東京市會ノ選擧
ナドノ煩ヲ受ケマシタル爲デアルカ、國民
生活ニ對シテ多大ナル意義ヲ有スル所ノ此
重要ナル法案ガ、案外ニ社會的ニ反響ヲ惹
起サナイト云フコトヲ見マシテ、吾々甚ダ
遺憾トスル所デアリマス(拍手)仍テ私ハ聊
カ本案ニ對シテ質疑ヲ致シマシテ、幾分ナ
リトモ國民ヲシテ、此法案ノ重要ナル所以
ヲ理解シテ貰ヒタイト云フ考デゴザイマス
(拍手)要スルニ立法府ノ席末ヲ汚シテ居ル
所ノ一人ト致シマシテ、此重要ナル本案ニ
對シテ敬意ヲ表スル意味ニ於テノ質問デア
リマスカラシテ、暫クノ間御〓聽ヲ賜ラン
コトヲ希望スルノデアリマス(拍手)コヽ一
兩年ノ新聞ヲ見テ居リマシテモ、自殺者ノ
多イコトハ驚ク程デゴザイマシテ、或ハ家
族ヲ擧ゲテ自殺ヲスルトカ、或ハ夫婦デ、或
ハ親子デ自殺ヲスルナドヽ云フ悲劇ハ、頻
頻トシテ全國到ル處ノ新間ニ散見致シテ居
ルノデゴザイマシテ、其原因何レニアリヤ
ト言ヘバ、要スルニ貧乏ガ禍ヲ爲シテ居ル
ト思フノデアリマス、殊ニ年寄ノ自殺者ノ
多イコトハ案外デゴザイマシテ、昭和二年
度ノ自殺者ノ總數ハ一万二千八百四十五人
デアリマス、其中老人ノ自殺者ノ統計ヲ調
ベテ見マシタ所ガ、六十歲カラ六十九歳マ
デノ自殺者ハ一千五百七十九人、七十歲力
ラ七十九歳マデノ自殺者ハ一千百六十四人、
八十歳カラ八十九歲マデノ自殺者ハ三百五
人九十歳以上ハ十二人アリマス、何ノ爲
ニ此樣ニ高齡ノ人〓ガ自殺ヲスルカ、自殺
ヲシナクトモ追ッテ死ンデ行カナケレバナ
ラナイノニ、何故死ヌカト言ヘバ、要スル
ニ貧乏ノ爲デアリマス、ソレデアルカラシ
テ扶養者ノナイ所ノ年寄ヲ、國家社會ガ救
助ヲスルト云フコトハ當然ノ事デアルト
思フノデアリマス、又貧乏ガ〓育ニマデ影響
ヲ及ボシテ居ルト云フコトガ、近頃ノ新聞
ノ社說ニ出テ居ルノデアリマスガ、文部省
ガ最近發表シタル壯丁〓育程度調査ニ依リ
マスレバ、我國ニ於テハ大正十五年カラ平
均五万人ノ無學者ヲ見出シツヽアル、全國
民ニ對シテ一割ノ六百万人ノ多數ニ上ルダ
ラウト云フコトデアリマス、何故ニ斯ノ如
キ多數ノ無學者ガアルカト云ヘバ、近頃文
部省ガ全國ニ其答申ヲ求メマシタル所、各
府縣ノ囘答ノ平均數ニ依リマスト、無學者
ノ原因ハ貧困ニ因ルモノデアルト云フノガ
多イト云フコトデゴザイマス、シテ見マス
ルト貧乏ト云フコトガ、壯丁ノ學問知識ニ
モ影響ヲ及ボシ、國民ノ知識ニモ影響ヲ及
ボシマシテ、國民總動員ニ多大ナル影響ガ
アルト思フノデゴザイマスガ故ニ、ドウシ
テモ積極的ニ此貧乏ト云フモノヽ原因ヲ取
去ラナケレバナラナイト思フノデアリマ
ス、而シテ私ヨリ申上グル迄モナク、社會
主義ノ方デハ貧乏ノ原因ト云フモノハ資
本ガ勞働ヲ榨取スルカラデアルト云フヤウ
ナ說ヲ立テヽ居ルノデアリマシテ、ソレハ
一面確ナコトデアルトモ思フノデアリマス
ケレドモ、其他個人的、主觀的或ハ遺傳的、
先天的ノ原因ガゴザイマシテ貧乏ト云フモ
ノガアリマス、ソコデ此貧乏ヲ一面ニ於テ
ハ豫防スルコトガ必要デアリ、他面ニ於テ
ハ之ヲ救濟スルコトガ必要デアリマスカラ
シテ、救護法案ト云フモノハ、一日モ早ク
成立シテ居ラナケレバナラナカッタノデア
リマシテ、寧口政府ガ今日ニ於テ提案セラ
レタト云フノハ、餘リニ遲イコトヲ吾々ハ
遺憾トスルノデアリマス(拍手)私ハ本案ニ
對シマシテ總理大臣、內務大臣、大藏大臣、
文部大臣ニ御尋致シタイノデアリマスガ、
政府ノ御都合ニ依リマシテ、總理大臣若ク
ハ文部當局ガ御出席ニナルコトガ出來ナイ
ナラバ內務大臣ナリ、大藏大臣ナリ、國
務大臣トシテ御答辯アランコトヲ希望致シ
マス、又私ハ相成ベク大キナ問題ヲ御尋致
シタイト思フノデアリマス、尙ホ若シ微細
ナ點ニ亙ルヤウナコトガゴザイマスルナラ
バ社會局長官ノ御答辯ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、私ハ只今申述ベマシタルガ
如ク、本案ニハ雙手ヲ擧ゲテ贊成ヲ表シテ
居ル一人デゴザイマスガ、唯茲ニ氣ニ懸ル
ノハ財源問題デゴサイマス、此事ニ付キマ
シテ腹藏ナキ御意見ヲ承リタイト思フノデ
アリマス、昨年四月八日、大口大藏政務次
官ガ態、大阪マデ御下リニナリマシテ、武
藤實業同志會長ト政策ノ協定ヲヤラレタノ
デアリマス、其時ニ御申合ニナリマシタル
筒條ノ中ニ、社會政策ニ關係ノアルヤウナ
コトヲ、一寸記憶ヲ新ニスル爲ニ讀ンデ見
マスルガ、陸海軍下士兵卒ノ待遇改善、戰
死者遺族、癈兵及傷病兵ノ手當及恩給ハ成
ベク厚クスルヤウニスル、財源ガ不足スル
時ニハ裕福ナル人ノ所得稅若クハ相續稅ノ
累進稅ヲヤル、是ガ一項目デアリマス、扶
養者ナク一定ノ收入ナクシテ生活スルコト
ノ出來ナイ老年者、不具癈疾者等ニハ救助
ノ方法ヲ講ズル、是ガ一ノ項目、前記二項
目中勅令ニ關スル分ノ外ハ、來ル通常議會
ニ法律案ヲ提出スルコト、卽チ此五十六議
會ニ法律案ヲ提出スルコト、行政財政ノ整
理財政計畫ノ變更ヨリ捻出スル部分竝ニ
增收、約四千万圓程度ニ依テ以上ノ費用ヲ
支辨スルト云フヤウナコトヲ御申合ニナツ
タノデアリマシテ、政府當局ト武藤サンガ
社會政策ヲ實行シタイト云フ誠心誠意ヨリ
シテヽ斯ウ云フ協定ヲセラレタコトデゴザ
イマシテ、洵ニ是ハ結構ナコトデアルト思
フノデアリマス、ソコデ政府ハ救護法案ナ
ルモノヽ骨子ト云フモノ或ハ條文マデモ疾
ウニ社會局長官ノ手許ニ於テ作製サレテ
居ッタ筈ナノデアリマスカラシテ、武藤サン
トノ約束モアルカラ、幾ラデモ早ク本議會
ニ御出シニナルコトガ出來タ筈デアルト思
フノデアリマス、所ガ松田君モ申サレマシ
タガ、最早此議會モ終ラントスル場合ニ
斯ノ如キ重要ナル意義ト使命トヲ有スル所
ノ本案ガ提出セラレマシタト云フコトニ付
テハ、一面ニ於テハ吾々ハ協贊ヲ申上ゲタ
イノデアルガ、一面ニハ愼重審議ヲスルノ
時間ヲ十分ニ與ヘラレナイト云フコトヲ考
ヘマシテ、松田君ト共ニ悲喜交〓至ルト申サ
ナケレバナラナイノデアリマス、一體此社
會政策ヲ實行致シマスニ付テ、政府ニ於テ
ハドレダケノ費用ヲ御考ニナッテ居ルノデ
アリマスカ、兩稅委讓特別委員會ニ於テ、
政府當局ハ或場合ニ於テハ一千二百万圓位
掛ルデアラウ、ソレカラ又或場合ニハ八百
万圓位アレバ間ニ合フダラウト云フヤ
ウニ仰セラレタト云フコトデゴザイマスル
カラシテ、先ヅ八百万圓ガ必要ナモノデ、
其中國庫ヨリ四百万圓ノ補助ヲスル、府縣
ヨリハ二百万圓、市町村ヨリハ二百万圓ヲ
支出スレバ、此八百万圓ト云フ金ガ出テ來
ル譯デアリマス、然ルニ政府ニ果シテソシ
ダケノ財源ガアリマスカドウデアルカ、モ
ウ自然會收ノ見込ガナイトモ言ハレテ居
リ、又行政整理ハ既ニ度々繰返シテアルノ
デアルカラシテ、此上サウ有效ナ整理ヲ爲
ス餘裕ハナイトモ仰シヤッテ居ルノデアリ
マスルシ、又或委員ニ對スル政府委員ノ答
辯ノ中ニハ追加豫算ニ千七百万圓程要ス
ルノデアルケレドモ、政府ノ持ッテ居ル剩餘
金ノ中ニハ一千百万圓位シカナイノデアル
カラ、若シ木材關稅ノ六百五十万圓ガ否決
サレルヤウナ場合ニハ、追加豫算スラモ出
スコトハ出來ナイト云フヤウナ、打明ヶ話
ヲナサレテ居ルト云フコトヲ承知致シテ居
ルノデアリマシテ、政府ニ於テハ全ク財政
困難ノ場合デアルノデアリマスガ、斯ウ云
フ際ニ政府ハ何レヨリ此四百万圓ト云フ金
ヲ捻出セラレントスルノデアリマスカ、先
ヅ第一之ヲ承リタイ、而シテ是ト關聯シ
テ、此大仕掛ノ救護法案ナルモノヲ徹底的
ニ行フ場合トナリマスルナラバ最初ハ四
百万圓位デ濟ムカモ知レナイノデアルケレ
ドモ、是ハ年々增加致シマシテ、或ハ政府
デ何千万圓ト云フヤウナ金ヲ御出シニナラ
ナケレバナラヌヤウニナルカトモ思フノデ
アリマス、是ハ私ハ單ニ空想カラ申上ゲテ
居ルノデハナイノデアリマシテ、多少據ル
所ガアルノデゴザイマス、私ノ調ベマシタ
ル統計ニ依リマスト、大正十四年ノ窮民救助
ニハ、老癈保護ニハ團體數ガ五十二活動致
シマシテ、收容及救助人員ハ二千百十四
人、其經費ハ百六万五千三百二十九圓、又
窮民ノ救助ノ方ハ團體數ガ百三十五デ、收
容及救助人員ガ四十六万一千七百餘人ヲ收
容シテ居ルト云フヤウナ譯デゴザイマシ
テ、現ニ非常ニ緊縮的ノ方法デ、濫校ニ陷
ル所デハナイ)救助ニ漏レテ居ル人ガ多イ
ト云フ際ニ於テモ、是ダケノ金ハ掛ッテ居ル
ノデアリマス、又棄兒ヲ養育シタル費用ハ、
大正十四年度ニ於テ八百二十九件アリマシ
テ、總額十万二千七百一圓ヲ要シテ居リマ
シテ、國庫ハ一万三千八百四十八圓シカ使
ヒマセヌケレドモ、地方費ヨリノ補給ハ七
万三千七百五十五圓、地方費ハ一万二千八
百四十八圓、ソレカラ大正十四年ノ醫療保
護ハ團體數二百二十三デアリマシテ、無料
診療ノ費用ハ五百三十一万八千六百四十
圓寶費診療ハ百二十四万八百七圓デアリ
マツ、ソレデアルカラ、私ハ斯ウ云フ詳シ
イ事ハ俄ニ調ベタノデゴザイマシテ、私
ノ調ベタ方ガ杜撰デアルカモ知レナイノデ
ゴザイマシテ、社會局ノ方デハ十分斯ウ
云フ事ハ、痒イ所ニ手ノ屆タヤウニ御調ベ
ニナッテ居ル筈デハゴザイマスルケレドモ、
是ダケノ數字ヲ申上ゲマシタヾケデモ、將
來此法案ト云フモノヲ行ウテ參リマスル場
合ニ於テハヽ政府ヨリノ年々四百万圓位ノ
費用デハ濟マナイヤウニナリハシナイカト
思フ、其例ニ英吉利ノ例ヲ引イテ見タイト
思フノデゴザイマスガ、御承知ノ通リ、英
國ノ救貧法ハ一千六百一年ヨリ始レテ居居ノノ
デゴザイマシテ、一千八百三十七年カニ修
正セラレマシテ、其後又改正サレタト云フ
ヤウナ、永イ歷史ヲ有シテ居ルノデゴザイ
マシテ、無論我國ト國情ヲ異ニ致シテ居リ
マスルシ、經濟事情ヲ異ニシテ居ルノデゴ
ザイマスルカラ、何モ英吉利ノヤウニ日本
ガ金ヲ掛ケナケレバナラヌト云フコトヲ申
ス譯ハゴザイマセヌケレドモ、併ナガラ、
此枚貧事業ト云フモノハ、案外大金ヲ食フ
モノデアルト云フ參考ニナルカト思ヒマス
カラ、暫ク此數字ヲ御謹聽ヲ願ヒタイノデ
ゴザイマス、愛蘭ハモウ獨立致シマシタカ
ラ、愛蘭ハ入レマセヌデ英蘭ト「ウエルス」
ト蘇格蘭トデ··
〔「外國ノ例ハ必要ナシ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=14
-
015・内ヶ崎作三郎
○内ケ崎作三郞君(續) 併ナガラ是ハ參考
ニナリマスカラ暫クノ間御辛抱ヲ願ヒマ
ス(拍手)大不列〓ノ人口ガ四千五百万入デ
アリマスガ、其中效助ヲ受ケテ居ル所ノ人
ガ、英蘭「ウエルス」蘇格蘭デ百五十五万三
千三百二十三人、是ハ大正十四年ノ統計デ
アリマス、面シテ其費用ハ四千八十七万六
千九磅デアリマス、ソレデアルカラ、之ヲ
日本ノ金ニ直シマストー云フト四億圓以上ニ
ナルノデアリマス、シコデ御承知ノ通リ、
英國ニハ、救貧稅ト云フモノガゴザイマシ
テ、中々高イ稅金ヲ取ラレテ居ルノデ、千
九百年ノ統計シカ私持ッテ居リマセヌガ、倫
敦デ一人ノ救貧稅ノ負擔ハ、八圓三十錢ニ
ナッテ居ルノデアリマス、倫敦以外ハ幾ラカ
安イヤウデアリマスケレドモヽ斯ウ云フヤ
ウニ致シテ、中々此事業ヲ達成スルニハ尠
カラザル金ガ掛ルノデアリマスカラ、內務
當局ハ四百万圓モ一年ニアレバ、此法案ノ
精神ヲ達成スルコトガ出來ルト云フヤウニ
御考ニナッテ居ルカモ知レナイケレドモ、段
段之ヲヤリ始メルト云フト、四百方圓ガ八
百万圓トナリ或ハ一千六百万圓トナリ、
何千万圓ト云フヤウニナルカモ知レナイノ
デアリマスカラ、ソコデ愈、此法案ヲ行フト
云ア場合ニ於キマシテハ非常ナル決心ガ
必要デアルト思フノデアル、ソコデ此法案
ト云フモノハ實ハ兩稅委讓法案ト離シテ
考フルコトハ出來ナイノデゴザイマシテ、
兩稅委讓案ト共ニ竝行シテ之ヲ考慮シナケ
レバナラナイ筈デアリマシタケレドモ、兩
稅委讓案ト之ヲ一緒ニ出シマスト、救護法
案ノ財源ガナイヂヤナイカト突込マレルコ
トヲ御心配ニチッテ、ソコデ今日迄離シテ置
イタノデハナイカ、吾々ガ何ダカ政府當局
ヲ邪推申上ゲルヤウデゴザイマシテ、私ノ
性質トシテモサウ云ムコトハ甚ダ厭ナコト
デアルケレドモ、併ナガラ事實サルヲ如何
センヤト私ハ申上ゲナケレバナラナイノデ
アリマス(「邪推スルヤウナ〓員ハ値打ガナ
イ」ト呼フ者アリ)大口大藏政務次官ガ總理
大臣ノ代理者トナラレマシテ、武藤サント
政策協定ヲヤラレマシタ時ニ、四千何百万
圓ト云フ曾收ノ方ヲ、其方ニ向ケルト云フ
ヤウニ御約束ニナッタヤウデアリマスケレ
ドモ、ソレハ兩稅委讓ノ穴埋ニ使ッテシマッ
夕筈デアリマスカラ、今ノ所デハ此社會政
策ニ振向ケル金ハ無クナッテ居ルデハナイ
カト思フノデアリマス、サウスルト折角立
派ナ案ヲ御出シニナリマシテモ、之ヲ實行
スルコトガ出來ナイコトニナリマス、ソコ
デモウ一ツ私ハ又邪推ヲシテハイケナイト
御叱リヲ蒙ルカモ知レマセヌケレドモ、附
則ニ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム」トアリマス、ツレデアルカラシテ、假
ニ此法律案ガ成立致シマシテモ、何時カラ
實行スルカ、直ニ實行スル譯ニハ參リマセ
又、噂ニ依ルト昭和六年度ヨリ實行スルノ
デハアルマイカト云フコトガ、風ノ賴リデ
吾々ノ耳ニ入ッテ來ルノデアリマス、是デ武
藤サンハ御滿足ニナルノデアリマスカ、武
藤サンニモ御聽キ致シタイノデアリマス
ガ、サウスルト政府ニ財源ガ無イカラシ
テ、良イ法律デアルカラ成立ハサシテモ、
自分等ハ之ヲヤラナクテモ宜イ、尤モ田中
總理大臣ハ相成ベク居据テ、嚙リ付テ昭和
六年度迄モ居續ケタイ考デアルカモ知レナ
イケレドモ、政界ノ波瀾ト云フモノハ朝
ニタヲ測ラレザルモノデアリマスカラシ
テ、ドウ云フ事ガナイトモ限ラナイノデア
リマス、サウスルト次ニ政府ノ責任者ニ
ナッタ者ハ、兎ニ角自分等ガ出シタ法律案デ
ハナイケレドモ、實行ハシナケレバナラヌ
ト云フ責任ダケヲ冠セラレルコトニナリハ
シナイカト思フノデアルカラシテ、ソコデ
政府ガ是ダケノ重要ナル意義ヲ有スル法律
案ヲ提出シタル以上ニハ早速勅令ヲ以テ
其實施ノ期日ハ明示致シマシテ、武藤山治
君ト約束シタルコトハ、必ズ近キ將來ニ於
テ、一日モ速ニ實行スル誠心誠意アリト云
フコトヲ表明セラレンコトヲ希望スルノデ
アリマス(拍手)
〔「馬鹿ナコトヲ言フナ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=15
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016・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=16
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017・内ヶ崎作三郎
○內ケ崎作三郞君(續) 私ハ此事ハ決シテ
馬鹿ナ事デハナイト思フノデアリマシテ、
諸君ノ中デ馬鹿ナ質問ダト言フ人ガアッテ
モ、國民ノ代表者中ハ決シテ馬鹿ナ事ト考
ヘテ居ラナイト信ジテ疑ハナイノデアリマ
ス(拍手)次ニ内務大臣ニ對シテ御伺致シタ
ノデアリマスガ、是ハ必シモ內務大臣ト云
フ譯デハアリマセヌ、又必シモ現内閣ノ諸
公ニ對シテノミトモ限ラナイノデアリマシ
テ、斯ウ云フ重要ナル法律案ヲ議會ニ提出
スル時ニハ先ヅ國民ノ輿論ヲ動カシマシ
テ、國民ノ注目ヲ惹イテ、サウシテ出サナ
ケレバ、餘リ利キ目ハナイト思フノデアリ
マス、然ルニ出スノカ出サヌノカ分ラナイ
ノデアリマシテ、國民ノ方ハモウ會期モ切
迫シテ居ルカラシテ、御出シニナラナイノ
カモ知レナイト云フヤウナ風ニ思ッテ居ル
時ニ、數カラ棒ノヤウニポカット此處ヘ出サ
レルモノデアリマスカラシテ、ソコデ國民
ハ案外本案ニ對スル所ノ意見ヲ發表シテ居
ラナイト思フノデアリマシテ、斯ウ云フコ
トハ所謂我國代々ノ政府當局ガヤッテ來タ
所ノ官僚主義方法ト云フ、御役人式ト云フ
モノデゴザイマシテ、望月內務大臣モ今迄
ノ習慣ニ依テ御遣リニナッテ居ルノカモ知
レナイノデアリマスガ、少クトモ斯ウ云フ
ヤウナ、國民生活ノ安定ニ關スル所ノ重大
ナル法案ヲ提出セラルヽ時ニハ國民ノ心
ノ中ニ抉リ込ムヤウニ、徹底的ニ其趣旨ヲ
宣傳セラルヽヤウナ方法ヲ執ルニアラザレ
バ政黨内閣ト云フコトハ出來ナイ(拍手)
又政黨出身ノ内務大臣トシテ吾々ハ尊敬ス
ルニハ、稍〓惜シイヤウナ氣モ致スノデアリ
マス(拍手)次ニ御尋致シタイコトハ委員
制度ニ關シテヾゴザイマス、只今委員制度
ノコトニ付テ、同僚松田君カラノ質問モアツ
タノデゴイマスガ、此委員制度ハ方面委
員制度等ヲシテ兼ネサセラレルト云フコト
デゴザイマシテ、是ハ其點ニ於テハ私共ノ
疑問ハナイノデゴザイマスケレドモ、嘗テ
岡山縣ニ於テ濟世委員トカ云フヤウナモノ
ヲ設ケラレタコトモアッタヤウデアリマス
ガ、多分此委員制度ハ獨逸ノ「ヱルバーフ
イルド」市ニ於テ試ミラレタル、「ヱルバー
フイルド」式ニ基ク所ノ式ヲ御參考ニナッテ
御作リニナッタコトデアルト思フノデアリ
マスガ、大阪市ノ方面委員ハ一通學區域
ヲ一區ト致シマシテヽ二百七十戶ニ對シテ
一人ノ委員ガ立ッテ居ルト云フヤウナ風ニ
ナッテ居ルノデアリマスガ、「ヱルバーフイ
ルド」市ハ人口十七八万ニ過ギナイノヲ四
十區ニ分チマシテ、各區ニ十三四人ノ委員
ヲ設ケマシテ、全體デ六百人ノ委員ガアリ
マシテ、一委員ニ付テ三百人宛ヲ割當テ
アルノデアリマス、委員ノ中ニハ宗〓家、
實業家、銀行家、資產家、醫師、辯護士、
官公吏ナドガアルノデゴザイマス、殊ニ「ヱ
ルバーフイルド」市ニ於テハ、千九百二年
カニ始メラレタノデアリマスガ、一區ニ付
テ三人ヲ超エザル婦人ノ保護委員ヲ任命シ
テアルノデアリマスガ、本救護法案ニハ救
護ノ種類及方法ノ第三項目ニ助產卜云フコ
トガゴザイマスルノデ、今度ハ產婦ヲ保護
スルト云フヤウナコトヲ御遣リニナル譯デ
アリマスカラシテ、ドウシテモ婦人ノ委員
ヲモ、併セテ任命スルヤウニナラナケレ
此委員制度ガ其功績ヲ舉ゲルト云フコ
トハ不可能デアルカト思フノデアリマス
ガ、内務當局ニ於カレマシテハ、果シテ此
婦人委員ヲ助產ノ方ニ保護ヲ及ポス爲ニ任
命セラレタイト云フ御意見デアリマスカ、
先般ハ婦人公民權ハマダ早イト仰セラレタ
ノデアリマスカラシテ、或ハ又婦人委員ヲ
任命スルノモ早イト云フヤウナ御考ヲ御持
チニナッテ居リハシマイカト氣遣ハレルカ
ラシテ、改メテ御尋ヲ致スノデゴザイマス、
次ニハ之ニ關聯致シマシテ、防貧ノ方法ニ
關スルコトヲ御尋致シタイト思フノデアリ
やっ、救護法案理由書ノ中ニハ「一面防貧
的施設ノ普及ヲ圖ルベキハ言ヲ俟タザル所
ナルモ」云々ト申サレテアルノデゴザイマ
シテ、政府當局ニ於カレマシテモ、勿論
防貧的施設ノコトハ御考ニナッテ居ルノ
デゴザイマス、何故ニ此防貧的施設ト云
フモノガ本案ト伴ハナケレバナラナイカ
ト申上ゲマスルナラバ防貧ノ設備ガ十
分ニ整ハナケレバ、此救貧ノ仕事ガ益〓多
クナルバカリデゴザイマスルカラシテ、救
貧事業ニ對シテ、此救護法ノ目的ヲ達成ス
ル爲ニ必要トスル所ノ金額ヲ追々ト減スヤ
ウニスル爲ニハ是ト竝行シテ防貧的設備
ヲ致スト云フコトハ經對ニ必要デアルト
私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)而シテ政府
當局ハ防貧ノ施設ニ付テハ、何等カノ方法
ヲ御考ヘニナッテ居ルノデアリマスカ、其事
ヲ承リタイト思フノデアリマス、倫敦ノ貧
民窟ノ調査ヲシテ名高キ「チヤールス·ブト
ス」ト云フ人ガ、貧窮ノ原因ニ付テハ二十三
ノ原因ガアルト云フ、犯罪、惡癬、飮酒、息
慢、窮民相互ノ交際、遺傳、精神薄弱、短慮、
無能力、早婚、係累過多、奢侈浮薄、獨
身、遺棄、疾病、兩親ノ死亡、不運、老衰、
不時ノ災厄、職業ノ失敗、職業ノ缺乏等、此
二十三ガ貧窮ノ原因ヲ爲シテ居ルト云アノ
デアリマシテ先ヅ中ラズト雖モ遠カラザル
モノガアルト考ヘマス、サウスルト斯ノ如
キ原因ヲ除キ去ル爲ニ、國民トシテモ無論
デゴザイマスルケレドモ、政府當局トシテ
モ餘程御考慮ニナルト云フコトガ、本案ノ
目的ヲ達成スル時ニ於テ必要ナルコトデア
ルト思フノデアリマス、又千九百五年ニ英
國ニ於テ····(「議事ノ妨害ヂヤナイカ」ト
呼ヒ其他發言スル者多シ)決シテ議事ノ妨
害デハアリマセヌ、本案ニ對スル敬意ヲ表
スル爲デアリマス、諸君ハ誤解サレテハ困
ル、此樣ナ重大ナル法案ニ對シテ大切ナル
質問ヲモ出サナイデ、サウシテ委員會ニ廻
スト云フコトハ、衆議院ノ名譽ニ關係スル
コトデアルト思フカラシテ、暫クノ間御謹
聽アランコトヲ希望スル(拍手)一千九百五
年ニ救貧法ノ改正ノ爲ニ、英國ニ欽定調査
會ナルモノガ設ケラレマシテ、十八名ノ相
當ナ大家ヲ綱羅シタノデゴザイマシテ、ソ
レ等ノ人〓ガ三年ノ間調査〓究ヲ致シマシ
テ、多數派ト少數派ト各〓報告ヲ出シタノ
デアリマスガ、多數派ノ出シマシタル所ノ
報告ノ中ニ、貧窮豫防方法トシテ勞働紹介、
少靑年ニ對スル實業上ノ訓練及實習、勞
力調節、失業保險機關ヲ設ケルト云フヤウ
ナコトガ書イテアルノデアリマス、私ハ是
ハ實ハ文部當局ニ御尋ヲシタイト思フノデ
アリマスガ、少靑年ニ對スル實業上ノ訓練
及實習ト云フコトハモウ一層盛ニスルト
云フコトガ必要デアルト思フノデアリマ
ス、今日ハ實業補習學校ノ制度モゴザイマ
シテ、實業〓育及訓練ニハ相當力ヲ注イデ
居ルノデアリマスケレドモ、マダ〓〓足ラ
ナイノデアリマスカラシテ、モウ少シク靑
少年ニ實業上ノ訓練及實習ヲ與ヘル爲ニ、
小學〓育、補習〓育ト申シマセヌ、義務〓育
ノ中ヨリシテ、サウ云フヤウナ方面ノ準備
ヲ致スト云フコトハ必要ダト思フノデアリ
マス
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=17
-
018・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=18
-
019・内ヶ崎作三郎
○内ケ崎作三郞君(續) マダ此法案ニ付テ
御尋ヲシタイ事ガゴザイマスルガ、第二十
九條ノ三號ノ「性行著シク不良ナルトキ又
ハ著シク怠惰ナルトキ」其時ニハ「市町村長
ハ救護ヲ爲サザルコトヲ得」ト放任主義ヲ
此處ニ明記シテアルノデゴザイマスルガ、
今日設備ガアリマセヌカラシテ、サウ云フ
不良性ヲ有スル貧窮者ニ對シテハ、放任主
義ヲ執ルト云フコトモ已ムヲ得ナイカモ知
レナイノデアリマスケレドモ、相成ベクハ
斯ル消極的ノ態度ヲ執ラズシテ、積極的ノ
態度ヲ執ラレルヤウナ方法ハナイカト思フ
ノデアリマス、又外國ノ例ヲ引クト云フト、
何ノカンノ批評ガアリマスケレドモ、併ナ
ガラ是ハ大切ナル實例デゴザイマスカラシ
テ、モウ一度引クコトヲ御許シアランコト
ヲ希望致シマスガ、獨逸ノ「エルベーフイ
ルド」市ニ於テハ、飮酒、餘リ酒ヲ飮ミ過
ギル、浪費、餘リ使拂ヒヲシタ、サウ云フ事
ガ原因ニナッテ貧窮ニ陷ッテ、救助ヲ申請ス
ル者ニ對シテハ、一應戒〓ヲスルケレドモ、
改心ヲシナイナラバ救助ヲ拒絕スル、ノミ
ナラズ市ノ救貧官吏ノ手許ニ於テ六週間以
內强制勞役場へ送付スル一種ノ刑務所ノ
ヤウナ所デアリマセウガ、サウ云フ所ニヤッ
テ、サウシテ其者ノ心持ヲ直スト云フヤウ
ナ、積極的ノ方法ガアルノデアリマスルガ、
我國ニ於テハ今遽ニ斯ノ如キ積極的方法ヲ
行フト云フコトハ難カシイカモ知レナイコ
トデアリマスルガ、何レ追ッツケ矢張斯ウ云
フヤウナ積極的制度ヲ執ラレマシテ、苟モ
日本國民デアリマスルナラバ、其者ガ不良
デアリマシテモ、改過遷書シテ立派ナ人間
ニナルヤウニ、國家ガ一ツ面倒ヲ見テヤル
ト云フヤウナ、サウ云フ寬容ノ精神ヲ併セ
テ〓サルヽト云フコトガ必要デアルマイカ
ト思フノデアリマス、又本法ノ理想ヲ達成
スル爲ニハ、尠カラザル金額ヲ將來要スル
コトヽ思フノデアリマシテ、今日ノ吾々ハ
其樣ナ金ノ捻出スル所モ無サヽウデアリマ
スルカラシテ、若シ何處カラ金ヲ引出スカ、
徹底的ニ此救護法ナルモノヲ實行スル爲ニ
ハ、莫大ナル所ノ費用ヲ捻出スルカト云フ
コトニナレバ、或ハ軍備ノ一部ヲ制限デモ
シテ、其費用ヲ向ケルヨリ外ハナイカトモ
思フノデアリマシテ、斯ル重要ナル法案ヲ
提出シタル政府當局者ハ、萬々一ノ場合ニ
ハ軍備マデモ或程度マデモ縮小シテ、此
法案ノ精神ヲ貫徹スルト云フ誠意誠心アル
ヤ否ヤヲ御尋シタイノデアリマス、斯ノ如
ク本案ハ非常ニ重要ナル多クノ問題ヲ含ン
デ居リマスルガ故ニ、出來得ルダケ是ハ衆
議院ニ於テ、委員會ニ於キマシテモ、十分
ニ審議ヲスルト云フコトガ必要デアリマス
ケレドモ、遺憾ナガラ日數ガ至ッテ少ナイ
ノデゴザイマス、近頃新聞ヲ見マスト云フ
1、政府ハ貴族院ニ於ケル兩稅委讓案ハ握
潰サレテモ仕方ガナイケレドモ、何トカシ
テ選舉區制改正法案ダケハ是非トモ通シタ
イカラシテ、三日カ若クハ五日會期ヲ延長
スルカモ知レヌト云フヤウナコトガ書イテ
アルノデアリマス、總理大臣ガ玆ニ御出席
ニナッテ居リマセヌカラシテ、總理大臣ニ御
尋スルト云フコトノ出來ナイコトヲ私ハ遺
憾トスルノデアリマスガ、若シ選擧區制ヲ
改正スル爲ニ、改正案ヲ無理ニモ兩院ヲ通
過セシメタイ爲ニ、三日ナリ若クハ五日ナ
リ會期ヲ延長スルト云フヤウナ心持ガ、政
府當局者ニ假ニアリト致シマスルナラバ
併セテ此救護法案ノ事ヲモ御考ヲ願ヒタイ
ノデアル(拍手)一體救護法案ガ大切デアル
カ、選擧法改正案ガ大切デアルカ、秤ニ掛
ケテ較ベテ御覽ナサイ、何方ガ大切デアル
カ(拍手)選舉區制ニ對シテハ、現ニ此議場
ニ於テモ大分反對ノ意見ガ猛烈デアルノデ
アリマシテ、今度ハ院外ニ於ケル所ノ國民
ノ空氣ヲ測ッテ見マスルナラバ、恐クハ過半
數ハ選擧區ノ改正ニハ反對デアルト思フノ
デアル、之ニ贊成スルノハ政友會ノ諸君ト、
新黨倶樂部ノ諸君ガアルノミデアル、然ル
ニ之ニ反シテ救護法案ニ對シテハ恐クハ
天下六千万ノ蒼生雙手ヲ擧ゲテ贊成スルコ
トデアラウト思フノデアリマス(拍手)ソコ
デ吾々ハ選擧區制ノ改正ノ爲ニ會期ヲ延長
スルト云フコトハ、意味ノ無イコトデアル
ケレドモ、此救護法案ヲ練リニ練テ、國民
ヲシテ十分ニ了解セシムルコトノ出來ル程
度ニ於テ、衆議院及貴族院ニ於テ愼重審議
スル爲ニハ、三日デモ五日デモ延長シテ差
支ナイト思フノデアリマスガ、政府當局ハ
果シテ此覺悟アリヤ否ヤヲ伺ヒタイノデゴ
ザイマシテ、腹藏ナクザックバランニ御意見
ヲ發表セラレンコトヲ希望スルノデアリマ
ス、一體今日議會ノ形勢ハ如何ニナッテ居ル
カト申シマスナラバ、私カラ申上ゲル必要
ハナイカモ知レヌケレドモ、政府カヲ提出
セラレテアル所ノ法律案ト云フモノハ八十
九件アリマス、其中昨日迄ニ兩院ヲ通過シ
タル所ノ法律ト云フモノハ、僅ニ十七件シ
カナイト私ハ記憶致シテ居ルノデゴザイマ
シテ、マダ〓〓六七十件ト云フモノガ兩院
ヲ通過シテ居ラナイノニ、斯ウ云フ重大ナ
ル所ノ法案ガ吾々ノ前ニ出サレマシテ、十
分ニ愼重審議ヲスルコトノ出來ナイコトハ
甚ダ遺憾デアル(拍手)何故カナラバ、此法
案ト云フモノハ(此時發言スル者アリ)諸君
ガ幾ラ騒ガレタ所ガ、私ハ決シテ惡イコト
ヲ言ッテ居ルノデハナイ、正シイコトヲ言ッ
テ居ルノデアルカラシテ、アナタ方ガ騒グ
ナラバ吾輩何時間デモ此處ニ立ッテ居ルデ
アリマセウ、サウ云フ意地惡イコトハシナ
イノデアルカラシテ、マアモウ暫ク御辛抱
ヲ願ヒタイ、何故ニ此救護法案ヲ吾々ガ議
會ニ於テ十分ニ愼重審議シナケレバナラナ
イカト申セバ、此法案ガ動機トナリマシテ、
將來我國ニ於テ多クノ社會政策、新シイ社
會政策ヲ實行シナケレバナラナイヤウニナ
ルダラウト思フカラデアリマス、ソレニハ
委員會ニ於テモ、或ハ又衆議院ヲ通リマシ
テ貴族院へ參リマシテモ、貴族院ニ於テモ
十分ニ是ハ愼重審議シナケレバナラナイノ
デアリマス、然ルニ遺憾ナガラ期日ガナイ
ノデアリマシテ、私ガ此重要ナル法案ニ對
スル敬意ヲ表スル意味ニ於テ、僅カ一時間
位ノ質問ヲシテ居ルノニ、ソレニ對シテサ
ヘモ皆樣方ガ我慢ガ仕切レナイト云フコト
ハ此法案ヲ侮辱スルモ甚シイト謂ハナケ
レバナラヌノデアル(拍手)苟モ此法律案ハ
諸君ノ支持スル所ノ現政府ガ提出シタル法
律案デアッテ、吾輩ハソレニ對シテ十分ニ敬
意ヲ表シテ質問スルノデアルカラ、諸君ハ
宜シク溫和シクシテ聽イテ居ル所ノ義務ガ
アルト思フノデアル、諸君ガ吾輩ノ演說ヲ
妨害セラレルト云フコトハ要スルニ自繩
自縛デアッテ、諸君ノ提出シタル所ノ法案ヲ
傷クルモノト謂ハナケレバナラズノデアル
(拍手)此重要ナル所ノ法律案ヲ愼重審議ス
ル暇ガナイト云フノハ、要スルニ遲レテ出
シタト云フコトガ政府當局ノ手落デアルバ
カリデナイ、一體此議會ノ會期三箇月ト云
フモノハ短過ギルノデゴザイマシテ、政府
ハ斯ル重要ナル法案ヲ愼重審議スル爲ニ
ハ合法的ニ三日ト言ハズ、五日ト言ハズ、
或ハ一箇月ナリ、二箇月ナリ、三箇月デモ
宜イカラシテ、會期ヲ延長シテ、十分ニ愼
重審議スル例ヲ示スト云フ決心アリヤ否
ヤ、併セテ之ヲ承リタイト思フノデアリマ
ス(拍手)
〔政府委員大口喜六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=19
-
020・大口喜六
○政府委員(大口喜六君) 只今內ケ崎君ノ
御質問ニ對シマシテ、大藏當局關係ノ事ヨ
リ御答ヲ致シタイト存ジマス、私ノ御答致
シマス以外ノ事ニ付キマシテハ、追テ內務
當局ヨリ申述ベル筈デアリマスカラ、右樣
御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、內ケ崎君ハ
英國ノ例ヲ御引キニナリマシテ、大分此救
護法ニ對シテハ、將來大ナル金ガ要ルモノ
デアルト云フコトヲ、先ヅ述ベラレタノデ
アリマスガ、此點ハ大藏當局ノ見マス所ト
ハ、稍、趣ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、成
程英國ノ事情ハ只〓申述ベラレタ如クデア
ラウカト存ジマスガ、私共ハ我ガ日本帝國
ニ於ケル此救恤ノコトハ英國ノヤウニ致
シタクナイト云フ考ヲ最初カラ持ッテ居ル
ノデアリマス(拍手)ドウモ此救恤ト云フコ
トハ、非常ニ善イコトデアッテ、善政ノ一ツデ
アルニ相違ナイノデアリマスガ、事柄ガ善
イダケソレダケ遣リヤウニ依リマシテハ
又弊害モ極メテ大ナルモノデアルト私共考
ヘテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ此法ヲ行
フニ當リマシテハ、我ガ日本國ニ於キマシ
テハ、出來得ル限ヲ我ガ國情ニ適シタルモ
ノヲ玆ニ立テマシテ、此弊害ヲ大ナラシメ
ナイコトヲ最初カラ考ヘネバナラヌト思フ
ノデアリマス、凡ソ人ヲ救フト云フコトハ
非常ニ善イコトデアルガ、先刻モ何誰カ御
話ガアリマシタガ如ク、國家ガ救ッテ吳レ
ル、助ケテ吳レルト云フコトニノミ依賴致
シテ、萬々一ニモ遊情ノ民ガ殖エルト云フ
コトニナッテハ、是ハ國家ノ爲ニ非常ニ宜シ
クナイコトデアル、ソコデ其邊ヲ能ク調和
致シマシテ、我國情ニ合フコトヲ考ヘナケ
レバナラナイト私共田心シテ居ルノデアリマ
ス、御承知ノ如ク我國ニ於キマシテハ、此
救恤ノコトハ古來カラ有ルノデアリマス、
內ケ崎君ハ能ク御承知ノ通リ、旣ニ我國ニ
ハ大寶令ヲ布キマシタ時カラ、隣保相助ク
ルノ制度ガアリマス、德川時代ニ於キマシ
テハ御承知ノ通リ五人組ノ制度ガ最モ能
ク發達致シテ居ッタノデアリマス、殊ニ寬政
三年ニ白河樂翁公ガ江戶ノ自治體ヲ完成サ
レマシタ時代ニ於キマシテハ最モ此隣保
相助クル制度ニ力ヲ用ヒラレテ居ルノデア
リマス、ソレガ明治以後ニナリマシテ自治
制ガ布カレマシテ、明治七年ニハ如何ニナツ
テ居ルカト云ヘバ、御承知ノ通リ恤救
規則ト云フモノガ布カレテ、其恤救規則ハ
今尚ホ生キテ働イテ居ルノデアリマス、卽
ヲ我國ニ於テハ、自治體ヲ發達セシメテ出
來ル限リ隣保相助ケテ、此仕事ヲ爲サナ
ケレバナラヌト云フコトガ中心ニナッテ居
リマスカラ、六大都市ノ如キ所ニ於キマシ
テハ只今此事ガ十分ニ參リマセヌ結果ト
シテ、洵ニ遺憾ノ點ガ多イノデアリマスガ、
全國ヲ達觀致シマシテ、市町村ノ間ニ於テ
ハ相當ニ此恤救規則ガ働イテ居ルノデアリ
そう、只今モ市町村ニ依テ支出サレテ居ル
所ノ金額ハ約二百万圓、是ダケハ兎ニ角不
完全ナガラ隣保相助ケテ救恤ノ制度ガ實行
サレテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ將來行
フ上ニ於キマシテモ、地方自治體ト云フモノ
ニ矢張重キヲ置キマシテ、日本古來ノ歷史
ノ上ニ美シキ風ガ殘ッテ居ル我國ノ美風ヲ
何處マデモ存續致シテ、地方自治體ガ先ヅ
隣保相助ケル、ソレニ向ッテ國家モ力ヲ盡
ス卽チ國家ト自治體ガ相俟シテ此救恤ノ
制度ヲ全カラシメテ、英國ノ如キ弊害ヲ造
ラセタクナイト云フノガ吾々ノ考デアリマ
ス、ソレ故ニ私共ハ只今御引キニナッタ例ノ
如ク、大ナル金ガ要ルヤウナコトニハナラ
セタクナイノデアリマス、ソレデ吾々トシ
テハ只今相當ノ考ヲ以テ進ンデ居ルノデア
リマスガ、成程只〓御申述ニナリマシタ如
〃、吾々只今立テヽ居リマスル所ノ財政計
畫ニ於キマシテハ、昭和四年度ニ之ニ充ツ
ベキ財源ハ財政計畫ニ無イコトハ私申サヾ
ルヲ得ヌノデアリマス、併ナガラ我國ノ財
政計畫ノ立テ方ハ能ク諸君モ御承知ノ通リ
デアリマス、吾々モ屢〓申述ベタ通リデアリ
せっ、此〓計表ニ依テ定メテアリマス所ノ
モノハ是カラ新ニ這入ッテ來ル所ノ金額
ハ認メテアリマセヌ、同時ニ是カラ新シク
仕組ム所ノ事業モ此計畫ノ中ニハ無イ、ソ
レデアルカラ今ノ財政計畫カラ行ケバ何モ
殘ルモノガ無イト言ヘバ來年度カラ何モ
出來ナイヤウニ見エルノデアルガ、ソレハ
決シテサウデハナイ、來年度ニ於テ更ニ計
畫ヲ致ス時ニハ如何ニスルカト言ヘバ、無
イト申シマシテモ相當ノ剰餘金ハ出テ參リ
マス、又我國ハ自然增收ハ少イト申シマス
ガ、將來吾々ノ政策ガ次第ニ行ハレ、又世
ノ中ノ總テノ有樣ガ良クナッテ參レバ、矢張
我國ハ進展スル國デアッテ、自然增收ハ相
當ニ出テ參ルト云フコトハ吾々信ジテ宜シ
イ、ソレノミナラズ自然增收モ少ク、剩餘金
モ少イトスレバ、將來ノ計畫ハドウシテモ既
定經費ノ節約ヲ一層十分ニ致サネバナラヌ
ト吾々ハ決心ヲ致シテ居ルノデアリマス、
斯ノ如キ財源ニ依リマシテ、將來ノ計畫ヲ
立テマスル以上ハ、此救護法ニ對シマシテ
相當ニ財源ヲ考慮シ得ルモノナリト確信ヲ
致シテ居ルノデアリマスカラ、是ダケ御答
致シテ置キマス
〔國務大臣望月圭介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=20
-
021・望月圭介
○國務大臣(望月圭介君) 政府ハ會期延長
ノ意思ヲ持ッテ居ルカドウカト云フ御尋デ
アリマシタガ、サウ云フコトハ考へテ居リ
マセヌ、ソレカラ特ニ私ヨリト銘ヲ打ッテ
ノ御尋ノ方面委員ニ婦人ヲ用ヒルノ考ハ
ナイカ、婦人公民權ニ對シテ尙早デアルト
言フ內務大臣ハ、是モ尙早ト言フカト云フ
御尋ガアリマシタガ、斯樣ナ社會事業、方
面委員ト云フヤウナモノニ對シテ婦人ヲ用
ヒルト云フコトハ、最モ良イコトデアラウ
ト思フノデアリマス、唯其人ヲ得ルヤ否ヤ
ト云フコトガ問題デアリマスガ、或ル場合
ニハ夫婦デ斯樣ナ仕事ニ從事セラレルト云
フヤウナコトハ、最モ望ム所デアルノデア
リマス、故ニ決シテ之ニ付テハ尙早ト云フ
コトハ申シマセヌ、其他ハ一ツ委員會ニ御
讓リヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=21
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022・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ニ對スル質疑ハ之ヲ以
テ終局セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=22
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023・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 原君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=23
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024・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議アリマスカ
〔「異議アリ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=24
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025・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議ガアレバ、起
立ヲ求メマス、原君ノ動議ニ贊成ノ諸君ノ
起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=25
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026・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 多數デアリマス、是
ニテ質疑ハ終局致シマシタ、日程第二ニ移
リマス、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=26
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027・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ坂東幸太郞君他三名
提出衆議院議員選舉法中改正法律案外十三
件ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=27
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028・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 原君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=28
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029・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議ナイト認メマ
ス、原君ノ動議ノ如ク決シマシタ、次ハ日
程第三競馬法中改正法律案、貴族院回付ヲ
議題ト致シマス
第三競馬法中改正法律案(政府提出、
貴族院回付)
競馬法中改正法律案(政府提出、貴
族院回付)
(小字及-ハ貴族院修正)
競馬法中左ノ通改正ス
第二條第二項中「四日」ヲ「六日」ニ改ム
四
第八條第一項中「百分ノ一」ヲ「百分ノ三」
三段人
附則第二項中「十一」ヲ「十六」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=29
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030・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 貴族院ニ於ケル修正
ノ箇條ハ印刷シテ御手許ニ配付シテアリマ
スカラ御存知ノコトヽ思ヒマス、囘付案、卽
チ貴族院ノ修正ニ同意スルヤ否ヤヲ御諮リ
致シマス、宮古啓三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=30
-
031・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 極メテ簡單デアリマスカ
ラ當席ヨリ發言スルコトヲ御許ヲ願ヒマ
ス、本案ニ付キマシテハ此場合貴族院ノ修
正ニ同意シタイト思ヒマス、諸君ノ御賛成
ヲ仰ギマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=31
-
032・松田源治
○松田源治君 本案ハ貴族院ニ於テ法人ノ
數ヲ削除シタノデアリマス、增加ヲ認メナ
イ、ソレカラ納付金ヲ修正シタノデアリマ
ス、是ハ此爲ニ兩院協議會ヲ開ク程ノコト
モアリマスマイ、且ツ此修正ハ其一部ハ吾
吾ノ主張ニ近付キ來ッタノデアリマスカラ、
贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=32
-
033・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 採決致シマス、貴族
院ノ修正ニ同意ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=33
-
034・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 多數デアリマスカ
ラ、貴族院ノ修正ニ同意スルコトニ決シマ
シタ、日程第四、國寶保存法案、貴族院回
付案ヲ議題ト致シマス
第四國寶保存法案(政府提出、貴族
院回付)
國寶保存法案(政府提出、貴族院囘
付
(小字ハ貴族院修正)
國寶保存法案中貴族院囘付ノ箇所左ノ如
シ
第十三條神社又ハ寺院ノ所有ニ屬スル
國寶ハ之ヲ處分シ、擔保ニ供シ又ハ差
押フルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ許可ヲ
受ケ處分シ又ハ擔保ニ供スルハ此ノ限ニ在
ラズ
主務大臣前項ノ規定ニ依ル許可ヲ爲サント
スルトキハ國寳保存會ニ諮問スベシ
主務大臣ノ許可ヲ受ケズシテ神社又ハ寺院
ノ所有ニ屬スル國寳ヲ處分シ又ハ擔保ニ供
シタルトキハ之ヲ無效トス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=34
-
035・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 貴族院ニ於ケル修正
ノ箇條ハ印刷シテ御手許ニ配付シテアリマ
スカラ御承知ノコトヽ思ヒマス、回付案卽
チ貴族院ノ修正案ニ同意スルヤ否ヤヲ御諮
リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=35
-
036・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 本案モ前案同樣····(「何
ダ俺ノ方ガ先ニ發言ヲ求メテアルデハナイ
カ」「議長議長」其他發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=36
-
037・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 宮古君ヨリ通告ガア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=37
-
038・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 此場合此貴族院ノ修正ニ
同意致シタイト思ヒマス、諸君ノ御贊成ヲ
願ヒマス
〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=38
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039・松田源治
○松田源治君 貴族院ノ修正ハ「神社又ハ寺
院ノ所有ニ屬スル國寶ハ之ヲ處分シ、擔保
ニ供シ又ハ差押フルコトヲ得ズ」ノ次ニ「但
シ主務大臣ノ許可ヲ受ケ處分シ又ハ擔保ニ
供スルハ此ノ限ニ在ラズ」トアリ、又「主務
大臣前項ノ規定ニ依ル許可ヲ爲サントスル
トキハ國寳保存會ニ諮問スベシ」、其他手
續上ノ改正デアリマスカラ、是亦兩院協議
會ヲ開イテ爭フ程ノコトハアリマセヌカラ
同意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=39
-
040・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 採決致シマス、此貴
族院修正ニ同意ノ諸君ハ起立
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=40
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041・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 大多數-貴族院ノ
修正ニ同意スルコトニ決シマシク発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=41
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042・原惣兵衞
○原惣兵衞君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程ヲ變更シ、大
禮記念帝室博物館復興翼贊會事業費ノ補助
ニ關スル法律案ヲ議題トシ、委員長ノ報告
ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=42
-
043・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 原君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=43
-
044・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 異議ナシト認メマ
ス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、大禮記
念帝室博物館復興翼賛會事業費補助ニ關ス
ル法律案ノ一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス-委員長山下谷次君
大禮記念帝室博物館復興翼賛會事業費
ノ補助ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
大禮帝室博物館復興翼賛會事業費ノ補
記念
助ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和四年三月十六日
委員長山下谷次
衆議院議長川原茂輔殿
〔山下谷次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=44
-
045・山下谷次
○山下谷次君 大禮記念帝室博物館複興翼
賛會事業費ノ補助ニ關スル法律案ノ委員會
ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、此委員
會ハ本日午前ニ開キマシテ、先ヅ委員長竝
ニ理事ノ選擧ヲ行ヒ、引續イテ議事ニ移リ
マシテ、委員長ヨリ此問題ハ皇室ニ關スル
コトデアルカラシテ、質疑竝ニ討論ヲ要セ
ズシテ卽決可決スルノガ適當デアルダラウ
ト云フコトヲ御相談致シマシタラバ、滿場
一致ヲ以テ卽決可決ニナッタ譯デアリマス、
此段御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=45
-
046・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=46
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047・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=47
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048・原惣兵衞
○原惣兵衞君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=48
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049・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 原君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=49
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050・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 異議、ナシト認メマ
ス直ニ第二讀會ヲ開キマス、議案全部ヲ
議題ト致シマス
大禮記念帝室博物館復興翼賛會事業費
ノ補助ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=50
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051・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
リ可決確定致シマシタ-日程第五、日本
興業銀行法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-三土大藏大臣
第五日本興業銀行法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
日本興業銀行法中改正法律案
日本興業銀行法中左ノ通改正ス
第九條ノ二但書中「拂込資本金額ノ二分
ノ一」ヲ「拂込資本金額ノ三分ノ二」ニ改
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=51
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052・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 日本興業銀行法
ハ明治四十四年ノ改正ニ依リマシテ、其法
律中ニ第九條ノ二ノ規定ヲ設ケマシテ、工
場ニ屬スル數地又ハ建物ヲ擔保トスル貸付
等ヲ認メタノデアリマスルガ、貸代金總高
ハ拂込資本金額メ二分ノ一ヲ超過スルヲ得
ザルモノト致シタノデアリマス、然ルニ其
後同行業務ノ發展ニ速レ、本條項ニ依ル貸
出ハ漸時增加致シマシタ、殊ニ大正十二年
ノ震災以後、日本興業銀行ガ中小工業貸出
ニ力ヲ用ヒルコトニ至リマシテカラ、顯著
ナ增加ヲ來シテ參リマシタ、最近ニ於キマ
シテハ正ニ其法定限度ニ達セントスルノ狀
況ヲ元シマシタ、其需要ハ益、多キヲ加フ
ルノ實狀ニアルノデアリマス、仍テ此法定
限度ヲ擴張スルノ必要ヲ認メマシタノデ
本案ヲ提出シタ次第デアリマス、何卒速ニ
御協賛アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=52
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053・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 質疑ヲ許シマス-
小山谷藏君
〔小山谷藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=53
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054・小山谷藏
○小山谷藏君 諸君、只今政府ヨリ御提出
ニナリマシタ日本興業銀行法中改正法律案
ハ案ンレ自身ハ極メテ簡單デアリマス
而シテソル自體ノ包含スル問題モ亦極メテ
小ナル問題デアリマス、併ナガラ此問題ハ
我國ノ不動產金融制度ノ根幹ニ關聯ヲ致
シ更ニ特殊銀行ノ運用ニ關聯ヲ致シマシ
テ、卽チ金融制度ノ上カラ申シマスルト云
フト、極メテ重大ナル問題デアルト考ヘル
ノデアリマス、故ニ本員ハ此機會ニ於テ少
シタ不動產金融制度、竝ニ特殊銀行監督ニ
關スル政府ノ態度ニ付キマシテ、少シク質
問ヲ致シテ置キタイト斯樣ニ考ヘルノデア
リマス、先ヅ第一ニ政府ニ御尋ヲ致シタイ
ト思ヒマスノハ、此興業銀行法中九條ノ但
書ヲ變更致シマスルコトニ依テ、只今大藏
大臣ノ御說明ニナリマシタ如ク、興業銀行
ニ僅カ八百万圓若クハ八百三十万圓許リノ
資金ヲ、現在朝野ノ中小商工業者ガ緊切ニ
要求シテ居ル所ノ、其資金ノ運用ニ充當セシ
メルト云フ御趣旨ノヤウニ拜聽致シタノデ·
アリマスルガ、果シテ其緊切ナル目的ヲ達
威セシムルニ十分ナリト御考ヘニナッテ居
ルノデアリマセウカ、如何デアリマスカ、
元來、此不勤產ニ關スル金融機關ト致シマ
シテハ、私ガ申ス迄モナタ、他ニ勸業銀行
アリ、又農工銀行等ガゴザイマシテ、專門
ニ其仕事ヲシテ居ルコトハ申上ゲル迄モア
リマセヌ、然ルニ興業銀行モ亦不動產擔保
ノ金融ニ當ラシメ、其取扱ヲサセルト云フ
こ必要ハ抑、何レニアルノデアリマセウ、玆
マデ論ジテ參リマスト云フト、私ハ更ニ進
ンデ、一體日本興業銀行ノ本來ノ陸命ハ何
レニアリヤト云フコトヲ御尋致サナケレバ
ナラナイノデアリマス、興業銀行ノ條例ヲ
拜見致シマスト云フト、興業銀行法第九條
ニ「日本興業銀行ハ左ノ事務ヲ營ムモノト
ス、第一、國債證劵、地方債證劵、社積券
及株劵ヲ質トスル貸付、第二、國債證劵、
地方積證劵、社債劵ノ應募又ハ引受、第
三、預リ金及保護預リ、第四、擔保付社債
ニ關スル信託事業、第五、手形ノ割引、第
六、爲替及荷爲替、第七、法律ノ規定ニ依リ
設定シタル財團ヲ抵當トスル貸付、第八、十
五年以内ニ於ケル年賦借還又ハ五年以内ニ
於ケル定期償還ノ方法ニ依リ船舶又ハ製造
中ノ船舶ヲ抵當トスル貸付、第九、造船材
料又ハ船舶屬具ヲ擔保トスル貸付、第十、
國債證券、地方債證劵、株劵若ハ株劵ノ應
募其拂込金ノ受入又ハ其ノ元利金若ハ配
當金ノ支拂ノ取扱」卽チ興業銀行ハ只今讀
上ゲマシタ十項目ノ、銀行トシテハ極メテ
廣汎ニ亙ル有ユル仕事ヲ取扱シテ居ルト云
フコトハ明瞭デアリマス、此興業銀行法第
五條ノ營業ノ種類ヲ一瞥致シマシテ、興業
銀行ト云ア銀行ハ、一體如何ナル目的ヲ以
テ、政府ノ特殊銀行トシテ御設立ニナッタノ
デアルカト云フコトハ、甚ダ不明瞭デアルノ
デアリマス、少シク其歷史ニ遡シテ考察ヲ致
シマスルト云フト、先ヅ最初我國財政經濟
ノ制度ヲ樹立サレタ松方公ガ、貽サレタ
所ノ明治財政史ニ其由來ガ明記シテアルノ
デアリマス、卽チ興業銀行ハアノ佛蘭西ノ
「フレデイーモビリエー」卽チ動產證劵ノ擔
保ヲ主トシテ扱ハシムル、之ヲ擔保トスル
貸付ヲ爲サシメルト云アコトガ、興業銀行
設立ノ最初ノ目的デアッタノデアリマス、不
動產ハ勸業銀行及農工銀行ヲシテ之ヲ取扱
ハシメ、動產ハ興業銀行ニ取扱ハシメルト
云フコトガ、日本興業銀行設立ノ目的デアッ
タト思ハレルノデアリマス、然ルニ興業銀
行ハ只今銀行條例ヲ朗讀致シマシタ如ク
普通ノ銀行業務不動產擔保ノ仕事、其他證
劵有ユル方面ニ跨シテ、何ガ主體デアルカト
云フコトヲ、疑ハレル程廣汎ナル營業權ヲ
握ッテ居ルノデアリマス、我國ノ特殊銀行ト
シテハ斯ノ如キ偉大ナル特權ヲ持テル銀行
ハ他ニ多ク其例ヲ見ナイト申シテモ決シ
テ不當デナイト考ヘルノデアリマス、然ル
ニ興業銀行ノ從來ノ營業狀態ヲ見マスルト
云フト、先ヅ最初ニ於キマシテハ設立ノ當
初ニ於テハ證劵金融ヲ主トシテ營業ノ主
體トシテ居ッタト思フノデアリマスルガ、其
後其營業ガ銀行當初ノ目的ニ副フ能ハザル
狀態ニナッテ參リマシタ時ニ、外資輸入ヲ企
テタノデアリマス、日露大戰後我國ノ世界
的信用ガ躍進致シマシテ、而シテ外資輸入
ノ事業モ相當ニ必要ヲ感ジ、又繁昌シマシ
タ時分ニハ、興業銀行ハ主トシテ外資輸入ノ
事業ニ當ラレタノハ興業銀行ノ歴史ノ特
筆大書スベキ一ツノ「レコード」デアリマ
ス、其後其事業ガ意ノ如ク進マヌヤウニナ
リマシタ時ニハ、更ニ工場財團擔保ト云フ、
卽チ工業ノ發展ニ伴ウテサウ云フ方面ノ事
業ガ大ニ朝野ノ要求スル所トナッタ時分ニ
ハ主トシテ工場財團擔保ニ關スル營業ヲ
營ンデ參ッタノデアリマス、處ガ民間ノ諸種
ノ金融財團或ハ保險會社デアルトカ、信託
會社デアルトカ云フヤウナ財團ガ此方面ニ
進出致シテ參ッタ時分ニハ、興業銀行ハ其事
業ヲ又斯ウ云フ方面ニ奪ハレテ、其後勝田
大藏大臣ノ時代デアッタト記憶スルノデア
リマスガ、盛ニ支那ニ活躍シタモノデス、
外國放資ヲ興業銀行ノ主タル營業種目トシ
テ居ルノデハナイカト疑ハシメルヤウナ活
動ヲ致シタコトハ、三土大藏大臣ノ御承知
ノ通リデアル、所ガ此支那ニ對スル外資放
資ノ興業銀行ノ取扱シタ其仕事ノ結果ハ
果シテ如何ニ成行イタノデアルカ、外資輸
入ノ失敗ヲシ、又工業財團ノ取扱ニ失敗ヲ
シ、殊ニ最後ノ所謂外國放資運動ニ對シテ
ハ、寔ニ取返ノ付カヌヤウナ大失敗ヲ來シ
タノデハナイカト、私共ハ疑ヲ持ツノデア
リマス、斯ノ如ク我國ノ特殊銀行中他ニ類
例ヲ見ザル所ノ特權ヲ持っテ居ル興業銀行
ニ、更ニ不動產擔保ノ金融ノ取扱ヲ爲サシ
ムルト云フコトハ果シテ適當ナル政府ノ
監督權ノ行使上支障ナキヤ、甚ダ疑ハザル
ヲ得ナイノデアリマス、元來此不動產擔保
ト金融ト云フコトハ、金融事業ト致シマシ
テハ最モ困難ナモノデアルト云フコトハ
申上ゲル迄モアリマセヌ、興業銀行ハ嘗テ
此興業銀行法ノ許シタル範圍内ニ於テ、不
動產擔保ノ金融ヲ多年取扱シテ居ツタノデア
リマス、所ガ銀行自身ガ其經驗ニ乏シク適
當ナル業務擔當員ヲ得ル能ハズ、全然失敗
ニ歸シタ結果、興業銀行ト不動產擔保ノ金
融ハ一時中止シテ居ッタト云フコトハ、顯著
ナル事實デアリマス、然ルニ今此法律ノ改
正ニ依テ、更ニヨリ大ナル所ノ資本ヲ銀行
ニ持タシメテ嘗テ其仕事ノ失敗ニ懲リ
シテ、自分ノ方ノ自分ノ御得意ノ取引先カ
ラサウ云フ種類ノ申込ノアッタモノハ、殆ド
之ヲ勸業銀行若クハ農工銀行等ニ移牒シテ
居ッタ業務ヲ復活シテ、更ニ其資金ノ曾額ヲ
要求シテ居ルト云フコトハ、是ハ興業銀行
自體ノ發意ニ依テ其資金ノ必要ヲ感ジタデ
アリマスカ、或ハ又政府ガ現在大藏大臣ノ
只今ノ御說明ニナリシ如ク、大正十二年ノ
震火災、續イテ一昨年ノアノ金融界ノ大動
亂後ニ於テ、中小以下ノ商工業者ノ信用ハ
根柢カラ破壞セラレ、非常ナ苦境ニ陷クテ、
不動產ヲ擔保ニシテモ、如何ナル物ヲ擔保
ト致シマシテモ、其資金ヲ得ラレナイデ、
其必要ガ緊切已ムヲ得ザルモノアリト云フ
理由カラ致シマシテ、政府ガ興業銀行ヲシ
テ其取扱ヲセシムルト云フ、卽チ政府ノ發
議ニ依テ此銀行法ノ改正ノ必要ヲ認ムルコ
トニナッタノデアリマスカ、此點ヲ明ニシテ
置キタイト思フノデアリマス、只今御話致
シタ如ク、興業銀行ハ最初證券擔保ノ金融
ヲスルト云フコトガ、主ナル目的トシテ設
立セラレ、其後營業ノ主眼ハ幾多變遷ヲ致
シマシテ、今日又不動產擔保ニ手ヲ著ケチ
ケレバナラヌト云フヤウナ苦シイ狀態二五
到ッタ、其原因ヲ少シク〓究シテ見マスト云
フト、私ハ日本銀行ガ目本銀行條例ヲ無視
シテ、興業銀行設立ノ根幹ノ目的トシタル
所謂證券擔保、卽チ動產擔保ノ仕事ヲ日本
銀行ニ奪取ラレテシマッテ、興業銀行ノ仕事
ガ無イカラ、斯ノ如ク變遷ヲ致シマシテ、
最後ノ果ニ、嘗テ銀行自身ガ失敗ヲシテソ
レカラ全然手ヲ引イテ居。タ、其不動產擔保
ノ仕事ヲシナケレバナラヌト云フ苦シイ狀
態ニ陷ッタノデハナイカト云フ疑ヲ持ツノ
デアリマス、卽チ日本銀行條例ニハ其第十
一條ニ「日本銀行ノ營業ハ左ノ如シ、第39.
政府發行ノ手形、爲換手形其他商業手形等
ノ割引ヲ爲シ又ハ買入ヲ爲ス事(五)。地
金銀ノ賣買ヲ爲ス事、第三、金銀貨或ハ地
金銀ヲ抵當トシテ貸金ヲ爲ス事、第四、豫
テ取引約定アル諸會社銀行又ハ商人ノ爲メ
ニ手形金ノ取立ヲ爲ス事、第五、諸預リ勘
定ヲ爲シ又ハ金銀貨貴金屬竝諸證劵類ノ保
護預リヲ爲ス事、第六、公債證書政府發行
ノ手形其他政府ノ保證ニ係ル各種ノ證劵ヲ
抵當トシテ當座勘定貸又ハ定期貸ヲ爲ス
事」卽チ日本銀行ノ營業ハ只今朗讀致シマ
シタ第十一條ノ日本銀行條例ニ明記シタ通
リデアリマス、更ニ第十二條ニ至リマシテ
「日本銀行ハ第十一條ニ記載スル事業ノ外
左ニ揭クル件々ハ勿論其他諸般ノ營業ニ
關涉スルコトヲ得ス、第一、不動產及ヒ銀
行又ハ諸會社ノ株劵ヲ抵當トシタ貸金ヲ爲
ス事、第二、本銀行ノ株劵ニ對シテ貸金ヲ爲
シ又ハ此株劵ノ買戻ヲ爲ス事、第三、諸工業
會社ノ株主タルハ勿論直接間接ヲ問ハス工
業ニ關係スル事、第四、本支店出張所ヲ開設
スル爲メ必要ナル者ノ外一切他ノ不動產ノ
所有主タル事」卽チ第十二條ニハ日本銀行
トシテハ斯ノ如キ事業ニ自ラ關係スルコト
ヲ禁ジテアルノデアリマス、其禁ジタ第一
項ニ「不動產及ヒ銀行又ハ諸會社ノ株劵ヲ
抵當トシテ貸金ヲ爲ス事」現在日本銀行ガ
彼ノ所謂見返擔保ト稱シテ、此十二條ヲ以
テ明ニ禁止セラレタル所ノ業務ヲ、所謂見
返擔保品ト云フ形式ヲ以テ盛ニ其營業ヲシ
テ居ルコトハ、天下周知ノ事實デアリマス、
大藏當局ハ此日本銀行條例ノ違反ヲ如何ニ
監督ヲシテ居ラレルノデアルカ、若シ此監
督ガ十分ニ徹底シテ居ッタナラバ、興業銀
行ヲシテ只今御話シタ如キ、或ハ外國ニ放
資ヲシタリ、外資ノ輸入ヲシタリ、工場財
團ヲシタリ、遂ニ最後ニハ僅ニ八百何十万
圓ノ資金ヲ得ンガ爲ニ此法律ノ改正ヲ要求
シン、不動產ノ擔保ト云フ、曾テ自ラ手ヲ
燒イテ凝リ〓〓シテ居ル所ノ、斯ル營業ニ
手ヲ染メナケレバナラヌト云フ苦境ニ陷ル
氣造ヒハナイト思フノデアリマス·此點ニ
關スル政府當局ノ特殊銀行監督ニ對スル態
度ニ對シ、吾々多大ノ疑ヲ特タナケレバチ
ラナイノデアリマス、日本銀行ハ果シテ只
今申上ゲマシタ所謂證劵擔保ノ金融ヲ興業
銀行ノ設立ノ目的デアッタ其主ナル仕事ヲ、
日本銀行ニ奪取ラレ、日本銀行ハ其條例ヲ
無視シ、違反シテ、興業銀行ヲ今日ノ窮地
ニ陷レタト云フ此事ニ付キマシテ、政府ハ
如何ニ御取扱ヲ爲サレル御方針デアルカ、
此點ヲ併セテ御尋申上ゲルノデアリマス、
第三ニハ、興業銀行ガ不動產擔保ノ金融ヲ
各方面カラ切實ナル要求默シ難ク、本法律
案ノ改正ヲシナケレバナラヌト云フ政府ノ
御說明デアリマシタガ、成程不動產擔保ノ
金融ニ對スル要求ハ、御說明ノ通リデアル
ト云フコトハ、本員モ信ズルノデアリマス、
我國ニハ不動產擔保ノ金融ヲ專門ト致シマ
ス所ノ勸業銀行ガアリ、農工銀行ガアリ、
又現在ニ於キマシテハ、信託會社其他民間ノ
諸會社モ相當ニ發展ヲ致シマシテ、隨分是
等ノ機關モ相當ノ便宜ヲ圖ッテ居ルコトハ、
言フ迄モアリマセヌ、併ナガラ政府ガ多大
ノ特權ヲ與ヘ、多大ノ保護ヲ加ヘテ居ル所
ノ勸業銀行及農工銀行等ノ不動產專門銀行
ガ、如何ニ不十分デアルカ、ソレ等ノ活動
ガ如何ニ民間ノ需用ニ應ジ兼テ居ルカト云
フ證據ヲ、此度ノ改正法律案ガ自ラ證明シ
テ居ルデハナイカト、本員ハ考ヘルノデア
リマス、斯ル不動產專門ノ特權銀行ガアリ
マシテモ、不動產金融制度ニハ多大ノ
缺陷ガアルノデハナイカト云フコトヲ考
ヘルノデアリマス、試ニ勸業銀行ノ發表
致シマシタ不動產抵當債務ノ我國ノ現
狀ヲ見テ見マスト云フト、大正十四年
ニ我國ノ不動產ヲ抵當ト致シマシタ債務
ノ總額ハ、五十一億七百餘万圓ニ上ッテ居
ルノデアリマス、其中勸業銀行ガ卽チ不
動產專門銀行ト致シマシテ、勸業銀行及
農工銀行ハドレダケノ活動ヲ致シテ居ルカ
ト云フコトヲ見マスルト、勸業銀行ハ其中
僅ニ五億二百十六万四千圓、ソレガ總額ニ
對スル僅カ九·八三「パーセント」、農工銀行
ハ四億二百八十二万九千圓、ソレガ總額ニ
對スル七·八九「パーセント」卽チ政府ガ不
動產ヲ取扱ハシメル目的ヲ以テ、多大ノ保
護ヲ與ヘテ設立シテ居ル所ノ此不動產銀行
ハ總額ニ於キマシテ僅ニ九億四百餘万圓ノ
貸出ヲ爲シ、而シテ不動產抵當債務總額ニ
對シテハ僅ニ十七·七二「パーセント」ダケ
シカ出シテ居ラナイノデアリマス、飜ッテ民
間ノ之ニ對スル貸出ヲ見マスルト云フト、
普通銀行及個人、合計致シマシテ三十九億
二百餘万圓、卽チ總額ニ對シテ八十二·二
八「パーセント」ノ貸出ハ、何等政府ノ保護
ヲ受ケナイ、民間ノ普通銀行及個人ノ手カ
ラ出テ居ルト云フ現狀デアリマス、是等民
間ノ銀行若クハ個人ノ不動產ニ對スル金融
ハ、勿論可ナリ高利ヲ取テテルルデデリマ
シテ、勸業銀行ヤ農工銀行ヲ設立致シマシ
テ、不動產ヲ擔保トスル金融ノ便宜ヲ圖リ、
而シテ其金利ヲ成ベク安クセシメルト云フ
目的デ設立サレタコトハ申スマデモアリマ
セヌ、然ルニ斯ノ如ク所謂特殊ノ銀行ノ不
動產擔保ニ對スル金融ノ活躍ハ僅ニ總額
十七「パーセント」餘ト云フヤウナ、洵ニ驚
クベキ貧弱ナル働ヲ爲シテ居ルノデアリマ
シテ、是ハ卽チ興業銀行ニ對シテ、民間カ
ラ只今政府ノ提案ニナリシ法律案ノ改正ヲ
要求スルト云フモノモ、斯ル狀態デアルト
云フコトヲ知ッタナラバ、決シテ無理カラヌ
狀態デアルト云フコトハ、直ニ承認シ得ラレ
ルノデアリマス、是ダケノ事實ヲ明瞭ニ致
シマシテ、如何ニ我國ノ所謂不動產金融制
度ノ不完全ナノデアルカ、卽チ其目的ヲ以
テ設立サレタル所ノ勸業、農工銀行ナルモ
ノガ、如何ニ時代ノ要求ニ副フ能ハザルモノ
デアルカト云フコトヲ、明ニ知ルコトガ
出來ルト考ヘルノデアリマス、是ニ於テ私
ハ政府ニ御尋ヲ致シタイ、政府ハ此不動產
金融制度ヲ根本的ニ刷新シテ、而シテ時代
ノ要求ニ應ズル制度ヲ新ニ御立ニナル御考
アリヤ否ヤ、若シアリトスルナラバ、ソレヲ
ドウ云フ風ニ立直セバ宜シイト云フ御腹案
アリヤ否ヤ、私ハ現在我國財界ノ最大ノ問
題ハ、此問題デアルト云フコトヲ信ズル者
デアリマス、諸君、我國ノ富ノ總額ハ半バ
以上不動產デアルト云フコトヲ知ッタナラ
バ、而シテ此不動產金融制度ガ、只今御話
致シマシタ如ク斯ノ如キ不完全デアッテ、不
備ナルモノデアルト云フ事ヲ知ッタナラバ、
如何ニシテ之ヲ資金化スルカ、如何ニシテ
之ヲ證劵化スルカト云フコトハ、財界ノ最
モ大ナル問題デナケレバナリマセヌ彼ノ
獨逸ガ歐洲大戰ノ結果、彼ノ如ク悲慘ナル
狀態ニ陷ッテ、而シテ彼ノ馬克紙幣ノ如キハ
殆ド反古同樣ニ陷ッタ時ニ、不動產證券銀行
ガ卽チ「レンテン·マーク」ヲ擔保トシテ米
國ヨリ二億弗ノ資金ヲ借入レテ、是ガ原動
力トナッテ、今日獨逸復興ノ基礎ヲ作ッテ居ル
デハアリマセヌカ、換言スレバ獨逸ノ不動
產金融制度、不動產銀行ノ活躍ガ、彼ノ歐
洲大戰ノ爲ニ荒廢ノ極ニ陷ッタ獨逸ノ財界
ヲ恢復セシメタ根本ノ原因ヲ成シテ居ルト
云フコトヲ知ッタ時ニ、不動產金融制度ハ之
ヲ私ハ必シモ獨逸ニ倣ヘト言フノデハアリ
マセヌ、我國最大ノ富ガ不動產ニ固定シテ
居ッテ、而シテ之ヲ資金化スル所ノ途ヲ講
ズルト云フコトハ、最モ大ナル問題デナケ
レバナラヌト云フ事ヲ信ズルノデアリマ
ス、是ニ於テ私ハ更ニ政府ニ御尋ヲ致シタ
イ、私ノ信ズル所ヲ以テスレバ此不動產
金融制度ニ付テハ、政府モ相當御〓究ニナッ
テ居ルト云フコトハ豫テ承知シテ居ルノ
デアリマスガ、唯單ニ一、二ノ特權會社ノ
ミニ之ヲ取扱ハシムルコトヲセズシテ、何
故ニ信託會社デアルトカ、或ハ信用アル土
地會社デアルトカ云フヤウナ相當ノ機關ヲ
シテ、現在亞米利加ノ財界ヲ潤ホス最モ大
ナル原動力トナッテ居ル彼ノ不動產證劵ノ
發行ヲ許可スル制度ヲ御立テニナラナイ
ノデアルカ、米國ニ於ケル不動產證劵ハ、
每年少クトモ十億弗カラ十五億弗位ノ活躍
ヲシテ、我國ノ興業銀行及勸業銀行ガ、設
立以來約三十年ノ長イ間ニ十億足ラズノ貸
出ヲ爲シタト云フ此現狀ト、米國ニ於ケル
不動產擔保證劵ガ多イ年ニハ二十億弗モ發
行シテ、而シテ不動產ヲ資金化シ、サナキ
ダニ金貨ノ洪水ト謂ハレルヤウナ、アノ財
界ニ如何ニ不動產ヲ貨金化シテ大ナル貢獻
ヲ爲シテ居ルカト云フコトヲ知ッタ時ニ、何
故ニ相當信用アル所ノ信託會社、或ハ其他
ノ會社ヲシテ、此不動產金融制度ノ根幹ヲ
成ス不動產擔保證劵ノ發行ヲ自由ニセシム
ルト云フ制度ヲ御採リニナラナイノデアル
カト云フコトヲ、御尋シテ置キタイノデア
リマス、第五ニ最近新聞紙上ニ屢、散見スル
問題デアリマスルガ、勸業銀行總裁馬場鍈
一君ハ其首唱者トナッテ、不動產取引所ヲ開
設スルト云フ問題ガ、屢、財界ニ唱道サレテ
居ルノデアリマス、大藏大臣ノ監督下ニ在
ル所ノ不動產專門銀行ノ總裁ガ、不動產取
引所ヲ開設シヤウト云フ事ニ付テハ、私爾
ク不思議ハ懷カナイノデアリマスルガ、併
シ政府ハ此特殊銀行ヲシテ不動產取引所ヲ
開設セシムルト云フ事ニ付テ、如何ナル御
考ヲ持ッテ居ルカ、此事ヲ御尋シテ置キタイ
ノデアリマス、聞ク所ニ依レバ此不動產取
引所ナル問題ハ、端ヲ日本銀行ヨリ發シテ、
アノ日本銀行特別融通法案ニ依テ、日本銀
行ガ脊負込ンダル所ノ不動產ヲ處分シヤウ
ト云フノガ目的デアルト、斯樣ニ傳ヘラレ
テ居ルノデアリマス、果シテ其通リデアルノ
デアリマセウカ、又是ト密接ナル關聯ヲ持ツ
昭和銀行ト云フ銀行ガ設立サレタノデアリ
マスルガ、昭和銀行モ中小商工業者ニ對ス
ル金融ヲ圖ルト云フ目的ヲ以テ立テラレ
タ、所ガアノ銀行ノ破綻當時ニ、救濟若クハ
買收シタル所ノ銀行ハ、總テソレ等ノ資金
ハ不動產ニ固定シテシマッテ居ル、其銀行ヲ
買收シタリ或ハ救濟シタト云フ關係カラ、
昭和銀行ガ目的トシタル所謂中小以下ノ商
工業者ニ對スル資金ハ全部不動產ニ固定ヲ
シテ、今ヤ手モ足モ出ナイト云フヤウナ窮
境ニ陷ッテ、之ヲ救ハンガ爲ニ日本銀行ニ泣
付テ(「本案ニ關係ナイ」「餘計ナコトハ止
セ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)密接ナル
關係ガアルノデアリマス、斯ル日本銀行及
昭和銀行ガ眞實ノ主唱者デアッテ、而シテ不
動產金融制度ニハ勸業銀行ノ總裁デハアリ
マスケレドモ、比較的ニ素人デアル馬場鍈
一君ヲ動カシテ、馬場鍈一君ハ不動產ニ關
スル知識モ餘リ存ゼナイ爲ニ、其煽テニ乘ツ
テ其主唱者トナッテ進ンデ參シタノガ今日ノ
現狀デアル、斯樣ニ私共ハ信ジテ居ルノデ
アリマス、而シテ更ニ驚クベキハ、最近傳
フル所ニ依レバ、窪田四郞君ガ此不動產取
引所ノ理事長タルベク、創立委員長タルベ
キ所ノ日本銀行ノ總裁ヨリ態〓依依シテ、其
運動ヲシテ居ルト云フコトヲ承知シテ居ル
ノデアリマス、諸君、若シ日本銀行總裁ガ
斯ル運動ニ參加ヲシ、或ハ之ヲ勸誘スルト
云フコトガアッタナラバ、是モ明ニ日本銀行
條例ノ違反デアリマス、卽チ此不動產取引
所問題ト相關聯シテ、日本銀行總裁ハ又日
本銀行條例違反ヲヤッテ居ルノデハナイカ
ト云フコトヲ吾々ハ疑フノデアリマス、此
點ニ關シテ大藏大臣ハ如何ナル御監督ヲ爲
サレテ居ルカ、又不動產金融制度ニ對スル
制度ノ不備竝ニ政府監督ノ不備ヨリ、斯ル
重大ナル問題ガ起ッテ居ルト云フコトヲ、洵
ニ失禮デハアリマスルガ、(發言スル者多
シ)今本員ハ說明ヲシテ居ルノデアリマス、
暫ク御謹聽ヲ····寬クリヤリマスカラ何卒
暫ク御辛抱ヲ御願致シマス(拍手)私ハ最後
ニ大藏大臣ニ御尋ヲ致シテ置キタイノデア
リマスルガ、此不動產金融制度ハ先程カラ
モ繰返シテ申シマシタ如ク、極メテ困難ナ
ル業務デアリマス、而シテ最近ニ於キマシ
テ三土大藏大臣ハ、多年勸業銀行ノ總裁ト
シテ勸業銀行ヲ今日ノ地位ニ立到ラシメタ
ル、前梶原總裁ニ代フルニ、馬場新總裁ヲ
以テ致シタト云フ、此所謂人事行政ニ關シ
テヾアリマス、大正九年以來我國ノ財界ハ
御承知ノ如ク大動亂ヲ致シマシタ·
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=54
-
055・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 靜肅ニ-靜肅ニ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=55
-
056・小山谷藏
○小山谷藏君(續) 御騒ニナルト長クナル
バカリデスカラ、何卒暫ク御〓聽ヲ願ヒタ
イ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=56
-
057・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=57
-
058・小山谷藏
○小山谷藏(續) 由來金融ノ業務ニ當ル人
ハ豐富ナル經驗トソレダケノ財界ニ於ケ
ル經驗ガ最モ必要デアリマス、而シテ殊ニ
不動產金融ト云フコトニ關聯致シマシテ
ハ此財界金融ノ中心ニ立ツ人ハ、最モ豐
富ナル經驗ト信用ガ必要デアルコトハ申ス
マデモアリマセヌ、而シテ勸業銀行ハ諸君
モ御承知ノ通リ、彼ノ一昨年ノ銀行大騒動
ノ際ニ於キマシテモ、或ハ大正九年ノ反動
ノ時ニ於キマシテモ、亦大正十二年ノ大震
火災ノ創痍ニ關係致シマシテモ微動ダモシ
ナイ、卽チ我國特殊銀行中私ハ唯一デアル
ト信ズル、唯一ノ健全ナル基礎ノ上ニ立
テラレタル所ノ銀行デアリマス、面シテ此
勸業銀行ヲ斯ル健全ナル基礎ニ築上ゲタ
其功勞者ハ何人デアルカト言ヘバ申上ゲ
ルマデモナク營業方針宜シキヲ得テ、指導
宜シキヲ得夕所ノ、其衝ニ當ッシテ居ッタ總裁、
殊ニ副總裁柳谷卯三郞君ノ功勞デアルト云
フコトハ天下周知ノ事實デアリマス、果
セル哉三土忠造君ガ大藏大臣ニ御就任ニナッ
タ時ニ、丁度柳谷副總裁ノ任期ガ滿了致シ
マシタノデ、大藏大臣ハ特ニ柳谷副總裁ノ
留任ヲ懇請シ、而シテ柳谷君ノ任期ヲ新ニ
シテ副總裁ヲ繼續サレンコトヲ懇請シ、而
シテ柳谷君ハ慥カ一昨年ノ四月カ五月頃マ
デ留任スルコトニ決定ヲ致シタノデアリマ
ス、然ルニ馬場新總裁ガ勸業銀行ニ入ッテ
來テ、何ノ爲カ此多年ノ功勞アリ、而シテ
勸業銀行ノ信用ヲ天下ニ繫イデ來ッッタ功勞
者デアル柳谷君ヲ、何ノ理由アッテカ馘ラレ
タノデアリマス、實ニ柳谷君ハ不動產金融
ノ上ニ於テモ重大ナル功勞者デアル、而シ
テ更ニ不動產銀行デアル所ノ勸業銀行ヲシ
テ、今日ノ基礎ノ上ニ置イタ所ノ功勞者デ
アル、一體此銀行ノ業務ノ如キハ制度其モ
ノモ大切デアルガ、又人ノ力モ大切デアル、
人ノ信用ニ依テ保ッテ行カナケレバナラヌ
ト云フコトヲ信ズルノデアリマス、然ルニ
斯ノ如ク忠實ニ仕事ヲシ、眞面目ニ業務ニ
携ハリ、而シテ多年ノ功勞アル人ヲ故ナク
シテ、馘シテ、而モ其後ニドウ云フ人ガ參ッ
タカト申セバ曾テ朝鮮銀行東京支店ノ營
業部長トシテ、朝鮮銀行ヲシテ今日ノヤウ
ナ狀態ニ陷レタ、卽チ財界ニ於テ財界ノ前
科者ト排斥セラレタ所ノ石井滿雄君ガ其後
ヲ襲フト云フニ至ッテハ、眞ニ財界ノ爲ニ驚
カザルヲ得ナイ處置デアル、斯ノ如キコト
ヲシテ如何ニシテ銀行ノ監督ガ出來マス
カ、私ハ大藏大臣トシテ所謂特殊銀行監督
ノ責任ガ、果シテ之ニ依テ完ウサレルヤ否
ヤト云フコトヲ、御尋シナケレバナラヌノ
デアリマス(「脫線」ト呼フ者アリ)餘リ脫線
シ過ギテモ諸君ニ相濟マヌト思ヒマスカ
ラ、此程度デ私ノ質問ヲ終リマス(拍手)
〔「議長定足數ヲ缺イデハ居リマセヌカ
調ベテ下サイ」ト呼フ者アリ〕
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=58
-
059・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 小山君ノ御質問
ノ特殊銀行ノ變遷ニ付キマシテハ大體ニ
於キマシテ御意見ノ通リデアリマス、卽チ
各特殊銀行トモ最初設立ヲ致シマシタ當時
トハ、非常ニ事情ノ變遷ガ起ッテ參リマシ
タ爲ニ段々業務ヲ追加シ、其追加サレタル
業務ガ主ナル業務トナッテ行クヤウナ特殊
銀行ガ出來テ參ッタノデアリマス、是ハ金融
機關ノ自然ノ發達ニ伴フ已ムヲ得ザル結果
ト考ヘマス、特殊銀行ノ監督ニ付キマシテ
振返シテ考ヘテ見マスルト云フト、政府トシ
テ甚ダ遺憾ノ點モアッタヤウニ思ハレルノデ
アリマス、卽チ特殊銀行例ヘバ臺灣銀行ノ
如キガ、アノヤウナ狀態ヲ呈シタコトハ遺
憾デアル、併シ其間ニハ又財界ノ變動等
ノ、申サバ不可抗力ニ類スルヤウナコトモ
アッテ、誰ノ罪トモ申スコトハ出來マセヌ、
併ナガラ將來ニ向ッテ私ハ十分ナル監督宜
シキヲ得テ、ソレ〓〓其任務ヲ發揮セシメ
タイト考ヘテ居リマス、不動產金融ハ我國
ノ金融制度トシテ最モ重大ノ問題デアリマ
スコトハ御心配ノ通リデアリマス、併ナ
ガラ亞米利加ニ於テ行ッテ居ル如キ、不動產
擔保紙幣ヲ發行スル如キコトハ、果シテ圓
滑ニ行ハレルヤ否ヤト云フコトハ疑問デア
リマス、不動產ノ金融ニ付キマシテハ、是
ハ餘程重大問題ト考ヘマシテ、他ノ一般金
融問題ト同様ニ、只今金融制度調査委員會
ニ於キマシテ銳意〓究致シテ居ル次第デア
リマス、何トカシテ目下ノ不安ナル不動產
金融ヲ幾分ナリトモ緩和スルヤウニシタイ
ト政府ハ考ヘテ居ルト云フコトヲ申上ゲ
テ置キマス、ソレカラ不動產取引所ノ問題
デアリマス、是ハ決シテ勸業銀行ガヤッテ
居ルノデハナクシテ、各方面ノ銀行家竝ニ
他ノ富業家ガ相寄シテ、殊ニ最近ノ金融界
恐慌以來ノ不動產ノ賣買ニ付テハ非常ニ
困ッテ居ル狀態ニ鑑ミ、何トカシテ玆ニ活路
ヲ開カナケレバナラヌト云フ必要ヲ皆認メ
マシテ、玆ニ財界ノ有力ナル人ミ、殊ニ不
動產ニ付キマシテ最モ利害關係ノアル人〓
ガ集シテ、不動產取引所ヲ設立セントシ、今
幹旋盡力中デアリマス、馬場勸業銀行總裁
ハ決シテ勸業銀行總裁トシテヾナク、矢
張不動產金融ノコトニ付テ心配スル一人
トシテ之ニ關係シテ居ルヤウデアリマス、
勸業銀行總裁ノ更迭ノコトニ付キマシテ、
人事上ノ問題ヲ私ハ此處デ申スノヲ好ミマ
セヌ前總裁モ立派ナ總裁デアリマシタ、
勸業銀行總裁トシテ相當ノ成績ヲ擧ゲテ居
リマシタコトハ私ハ認メテ居リマス、併
シ勸業銀行ニ付キマシテハ、其營業ノ方針
ニ變更ヲ希望スル向ガ隨分多イノデアリマ
ス、依テ此際寧ロ外界カラ入ッテ、異ノタ目
デ見テ行クコトモ必要デアラウト考ヘマシ
タカラ、丁度任期滿了ノ際ニ於キマシテ私
ハ馬場君ヲ推薦シタノデアリマス、馬場君
ガ推薦サレマシタ時分ニ、財界ノ一部ニ於
キマシテハ、金融業者デナイ人ガ斯ノ如キ
重大ナル金融機關ノ總裁ニナルコトハ宜シ
クナイト云フ非難ヲ致シ夕人モアリマシタ
ガ、私ハ左様ニ思ハヌノデアリマス、馬場
新總裁ハ力量手腕ニ於テ申分ノナイ人デア
ル、此人ノ頭ヲ以テ勸業銀行ヲ別ノ方カラ
見テ行ッタナラバ、新ナル方面ニ於テ活躍
シヤセンカト云フコトヲ考ヘテ居ッタノデ
アリマス、果シテ豫期ニ違ハズ、一時非難
ヲシタ人モ今日ニ於テハ馬場君ノ手腕力量
ニ敬服シテ居ルヤウデアリマス、私ハ前總
裁ニ對シテモ其力量竝ニ功勞ニ對シテ十分
感謝スルト同時ニ、新總裁ニ對シテモ期待
スル所ガ頗ル多イノデアリマス(拍手)
〔小山谷藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=59
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060・小山谷藏
○小山谷藏君 只今大藏大臣ノ御答辯ヲ拜
聽致シタノデアリマスガ、私ガ大藏大臣ニ
御尋ヲ致シマシタ最モ重大ノ一ト信ジテ居
リマス日本銀行ノ、所謂條例違反ノ問題ニ
對シテハ、一言ノ御答辯モナカッタノデアリ
せっ、卽チ日本銀行ハ日本銀行條例第二十
二條ヲ以テ、其第一項ニ明記シタル卽チ株
劵若クハ其他ノ證劵ニ貸出スルコトヲ得ズ
トアル、此條項ノ違反ヲ盛ニヤッテ居ルデハ
ナイカ、之ニ對スル取締ヲ如何ナサルノデ
アルカ、現在ハ見返擔保ト云フヤウナ名前
ヲ以テ、而シテ又一般財界カラハ、更ニ其
見返擔保品ノ擴張ヲ要求シテ居ルト云フヤ
ウナ現實ノ事情ハ、大藏大臣モ御承知ノ通
リデアル然ルニ何ゾ知ラン、此現實ノ取
扱ハ日本銀行條例ノ明文ニ違反シテ居ル所
ノ行爲デアル、又日本銀行ガ此條例ニ違反
シタ行爲ヲシテ營業ヲヤッテ居ル爲ニ、興業
銀行ハ先程御話致シマシタ如ク種々轉々シ
テ、自分ノ營業ノ主體ガ何處ニ置イテ宜イ
ノデアルカト云フコトヲ、自ラ知ルコトモ
出來ヌト云フヤウナ狀況ニ陷ッテ居ルト云
フコトヲ知ッタナラバ、此取扱ヲ如何ニスベ
キカ、是ハ大藏大臣トシテハ餘程御考ニナ
ラナケレバナラヌ財界ノ重大ナル問題デア
ルト本員ハ信ズルノデアリマス、ソレニ對
スル一言ノ御答辯ガナイノハ、或ハ大藏大
臣ガ御忘レニナッタカト思フノデアリマス
ルカラ、更ニ之ニ對シテ明快ナル御答辯ヲ
御顧申上ゲルノデアリマス、更ニ不動產取
引所ノコトニ付テ、是ハ勸業銀行總裁ガ勸
業銀行總裁トシテヤッテ居ルノデハナイ、私
ハ玆ニ失禮ナガラ斷言スルコトヲ憚リマセ
又、若シ現在ノ如キ制度デ進メルナラバ、
勸業銀行ソレ自身モ、亦財界各方面ノ人達
モ多大ノ迷惑ヲスル、卽チアノ計畫ハ全然
失數ニ終ルモノデアルト云フコトヲ-元
來不動產取引所ト云フ問題ハ、失禮ナガラ
私ガ主唱致シマシテ、數年前大藏省ニ斯ル
機關ガ最モ必要ナモノデアルト云フコトヲ
提言致シタ其主唱者デアリマス、先年米國
ニ參リマシテ、全體斯ウ云フ機關ガ如何ナ
ル活動ヲシテ居ルモノデアルカト云フ、其
調査モ聊カ試ミタノデアリマス、嘗テ紐育
ニ於テ不動產取扱ヲ主業トシテ居ル所ノ
「ストラウス·ハウス」トカ、或ハ大キナ不
動產金融會社ガ相集シテ、卽チ財界ノ首脳者
ガ相集ヶテ一大不動產取引所ヲ作テント欲
スル計畫ガ殆ド成立シテ居ッタノデアリマ
スルガ「ストラウス·ハウス」デアルトカ、
或ハ「ガランテイ·ツラスト·カンパニー」ト
云フヤウナ、財界巨頭連中ガ勢力爭ヒノ爲
ニ遂ニアレハ失敗ニ終タ而シテ彼等ハ
言ッテ居ル、若シ財界ノ有ユル勢力ヲ網羅シ
テ、其力ヲ一ツノ下ニ集メルコトガ出來夕
ナラバ、取引所トシテ或ハ成功スルカモ分
ラヌ、一部ノ者ガヤッタノデハ何モ役ニ立タ
又、此勢力爭ヒノ爲ニ紐育ノ不動產取引所
ハ其儘今日尙ホ成立シテ居リマセヌ、現在
我國ノ不動產取引所ノ主唱者ハ、財界ノ主
ナル人ト大藏大臣ハ言ハレテ居ルケレド
モ、日本銀行ノ一部、昭和銀行ノ一部、竝
ニ勸業銀行等ノ素人ガヤッテ居ルノデアリ
マス財界ノ巨頭連中ハ悉ク後デ舌ヲ出シ
テ笑ッテ居ルノデアル、其營業ガ若シ斯ノ如
キ者ニ依テ出來ルト云フヤウナコトデアリ
マシタナラバ、必ズヤ失敗スルコトハ火ヲ
睹ルヨリモ明ナリ、假令個人ノ名義ヲ以テ
シテモ、勸業銀行總裁ガ携ハルト云フコト
ハ監督上如何デアルカ、重ネテ此事ヲ御尋
申上ゲテ置クノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=60
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061・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 三土大藏大臣
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=61
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062・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 日本銀行ノ問題
ハ、私ハ御質問ト思ハナカッタノデ御答シナ
カッタノデアリマスガ、只今改メテ御質問デ
アリマスルカラ御答申上ゲマス、御述べノ
通リ日本銀行條例第十二條ニ於キマシテ、
株券等ノ擔保ニ對シテ融通スルコトハ營
業トシテハ禁止シテアリマス、併ナガラ是
ハ明治二十年代ヨリシテ、所謂見返ト致シ
マシテ、法律上ノ擔保ト云フ形ヲ取ラズシテ、
實際ノ必上融通シテ參ッテ居ルノデア
リマス、故ニ法律ノ條文ヲ變ヘルカ、實際
生キタ壓史ヲ尊ブカトー云フ問題ニナッテ來
テ居ルノデアリマス、是ハ歷代內閣ニ於キ
マシテモ、今日迄發達シテ來テ居ルアノ遣
方、アレヲ止メルト云フコトハ餘程財界
ニ多大ノ影響ヲ及ボシマスルカラ.常ニア
ノ儘ニシテ居ルノデアリマス、嚴格ナ法律
論カラ申シマスト或ハイカヌカモ知レマ
セヌガ、又或理窟ヲ以テ致シマスルト云フ
ト·擔保デナクシテ唯見返ト云フ名前デヤッ
テ居ルノデアリマス、實際ノ必要上ヤッテ居
ルノデアリマスカラ、吾々モ在來ノ歷史ヲ
尊ンデ、其儘見テ居ル譯デアリマシテ決
シテ日本銀行ニ對スル監督ヲ等閑ニ致シテ
居ル譯デハアリマセヌ、不動產取引所ノ設
〓、私ハ深ク存ジマセヌケレドモ、大體ニ
於テ相當ナ人ガ寄ッテヤッテ居リマスルシ
斯様ナ機關ハ日本ノ今日ニ於テ必要デアラ
ウト思ッテ、切ニ其設立竝ニ營業ノ圖滑ニ
行ハレルコトヲ希望致シテ居リマス、是ガ
旨ク行クカ行カヌカト云フコトハ、或ハ小
山君ノ御見込ト吾々ノ見テ居ル所トハ是
ハ見込ガ違フ、是ハ結果ヲ見ルヨリ仕方ガ
アリマセヌガ、斯樣ナ問題ニ對シテ日本銀
行トカ勸業銀行トカミ相談ヲ受ケルナラ
バ一臂ノ力ヲ貸シテヤルコトハ私ハ一向
差支ナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=62
-
063・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 日程第六、右議案ノ
審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シ
マス
第六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=63
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064・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ政府提出關稅定率法
中改正法律案外一件ノ委員ニ併セ付託セテ
レンコトヲ望ミマス
〔「賛成」「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=64
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065・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 右動議ニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=65
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066・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第七、
國際汽船株會社ノ整理ニ關スル法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス-三土大藏大臣
第七國際汽船株式會社ノ整理ニ關ス
ル法律案(政府提出)第一讀會
國際汽船株式會社ノ整理ニ關スル法
律案
第一條大藏省預金部ガ國際汽船株式會
社ニ融通スル爲引受ケタル興業債券ニ
關シ日本興業銀行ニ對シテ有スル左ノ
各號ノ債權ハ一般會計ニ於テ之ガ讓渡
ヲ受クルコトヲ得
第百一囘興業債券額面二千九百二
十萬圓
二前號ノ興業債劵ニ對スル昭和四年
三月三十一日ニ於ケル經過利息百六
十萬千八百圓四錢
第二條前條ノ場合ニ於テ一般會計ハ同
條ノ債權額ニ相當スル金額ヲ額面金額
ニ依リ三分利附國債證劵ヲ以テ大藏省
預金部ニ交付ス但シ國債證劵ノ額面金
額ニ滿タザル端數ハ現金ヲ以テ之ヲ交
付ス
第三條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第四條國際汽船株式會社ガ資本ノ增加
ヲ爲ス場合ニ於テハ政府ハ第一條ノ規
定ニ俵リ一般會計が大藏省頭金部ヨリ
譲渡ヲ受ケタル日本興業銀行ニ對スル
債權及其ノ利息債權ヲ債權額ヲ以テ拂
込ニ充テ國際汽船株式會社ノ株式ヲ引
受クルコトヲ得
第五條前條ノ規定ニ依り政府ガ國際汽
船株式會社ノ株式ヲ引受ケタルトキハ
政府ハ國際汽船株式會社ノ業務ヲ監督
ス
國際汽船株式會社ハ定款ノ變更及每營
業年度ノ決算ニ付主務大臣ノ認可ヲ
受クベシ
主務大臣ハ國際汽船株式會社ノ業務ニ
關シ監督上必要ナル命令ヲ發スルコト
ヲ得
第六條國際汽船株式會社ノ決議又ハ取
締役若ハ監査役ノ行爲法令、定款又ハ
主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキハ主
務大臣ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ取締役
若ハ監査役ノ改選ヲ命ズルコトヲ得
附則
本法ハ昭和四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=66
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067・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 國際汽船株式會
社ハ其創立當初ニ於キマシテハ營業狀態
モ相當良好デアリマシタガ、大正九年下半
期頃ヨリ海運界不況ノ爲メ、營業ガ次第ニ
困難トナリマシテ、昭和二年末ニハ繰越損
失金ガ千四百餘万圓、債務總額ガ七千五百
餘万圓ニ上リ、又會社ノ資產ハ船價低落ノ爲
メ著シク減損ヲ來シマシテ、同年ニ於キマ
シテハ借入金ノ利子スラ完全ニ返濟ヲ履行
スルコトガ出來ナイヤウニ立至ッタノデア
リマス、而モ昭和三年カラハ社債元金ノ外
多額ノ借入金ノ年賦償還ガ開始セラレマス
ノデ、會社ノ資金狀態ハ一層窮迫ヲ告ゲマ
シテ、若シ此儘デ推移致シマスルニ於キマ
シテヽ、會社ハ結局破產ノ外ナキ窮ニ陷ン
テ居ルノデアリマス、是ニ於テ同會社ハ其
債務ヲ整理シ、經營方針ノ刷新ヲ圖リ、以
テ更生ノ途ヲ講ズル此根本的整理ヲ企テ、
同時ニ一時債權者タル大藏省預金部ハ、銀
行ニ對シ昭和二年十二月以降其借入金ノ元
利支拂ノ猶豫ヲ請ウタノデアリマス、同會
社ハ大正八年創立以來幾多ノ難關ヲ凌イ
デ、其船舶ヲ世界ノ各地ニ運航セシメ、我
ガ海運業ノ發展竝ニ國際貸借ノ改善ニ貢獻
スル所ガ頗ル多カッタノデアリマス、然ルニ
今同社ニ於テ其債務辨濟ノ爲メ約五千万噸
ニ上ル所有船舶ヲ一時ニ賣却スルガ如キ事
ガアリマシタナラバ、船價及船腹ノ需要ニ
激變ヲ來シ、一般海運界ニ甚シキ惡影響ヲ
及ボスノミナラズ、旣往ニ於ケル官民ノ努
力ヲ全然水泡ニ歸セシムルモノデアリマス
ルガ故ニ、斯ル事ハ極力之ヲ避ケナケレバ
ナリマセヌ、仍テ政府ニ於キマシテモ會社
ノ整理ニ相當援助ヲ與ヘテ、其目的ヲ達成
セシムルノ必要ガアルト考ヘマシテ、預金
部貸付金ノ元金支拂猶豫ヲ認メタノデアリ
マー、而シテ其根本的整理ト致シマシテ、
政府及銀行ノ貸付金ハ之ヲ株式ニ引直シ、
會社ヲシテ利拂ノ壓迫ヨリ免レシメ、且ツ
資本金ハ相當ナル程度ノ減資ヲ爲スノ外ハ
ナイノデアリマス、然ルニ政府貸下金ハ當
初主トシテ國策遂行ノ必要ニ出デタモノデ
アリマスカラ、今日ノ整理ニ基ク犧牲ノ全
部ヲ預金部ニ負擔セシムルコトハ、預金部
ノ本質ニ照シ穩當ニアラズト考ヘマスガ故
ニ、適當ナル條件ヲ以テ將來貸下金ニ對ス
ル債權ヲ預金部ヨリ一般會計ニ讓渡セシ
ノ、一般會計ノ責任ニ於テ整理ヲ遂行セシ
ムルコトガ適當デアルト信ズル次第デアリ
マス、右ノ如キ理由ニ依リ本案ヲ提出シタ
ノデアリマスカラ、何卒御審議ノ上速ニ御
協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=67
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068・川原茂輔
○議長(川原茂輔君) 質疑ヲ許シマス-
堤康次郞君
〔堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=68
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069・堤康次郎
○堤康次郞君 第一ニ大藏大臣ニ質疑ヲ致
シマス、政府ノ債權二千九百二十万圓ニ付
テハ、有力ナル銀行ガ保證ヲシテ居ルノデ
アルカラ、少シモ心配ガナイデハナイカ、
何故ニ其銀行ニ保證債務ノ要求ヲシナイノ
デアルカト云フコトガ、第一ノ質疑ノ要點
デアリマス、只今大藏大臣ノ御說明ニ依リ
マシテモ、ドウカ此國際汽船會社ヲ助ケタ
ィ、此儘ニシテ置クト破產ノ外ハナイカラ
ト、斯ウ云フコトデアリマス、併シ私ハ是
ハ到底助カラヌモノデアルト思フ、現在國
際汽船會社ノ狀態ト云フモノハドウナッテ
居ルカト云フト、資本金ガ八千万圓、資本
金ノ外ニマダ債務ガ八千万圓アル、資產ハ
ドレダケアルカト云フト約五十万噸、此噸
當リ七十圓ト致シマシテ三千五百万圓ヨリ
ナイ、サウシテ先ヅ資本金ヲ「ゼロ」ニシテ
シマッテモ、マダ八千万圓ノ債務ヲ償フコト
ハ出來ナイノデ、「マイナス」、四千五百万
圓ト云フ會社デアル、普通ノ商事會社デアフ
タナラバ資產ヲ處分シテ負債ヲ償却スル
コトガ出來ヌト云フ場合ニ立到ッタナラバ、
取締役ナルモノハ自ラ栽判所ニ對シテ破產
ヲ申請シナケレバナラヌコトニナッテ居ル
ノデアリマス、政府ノ御聲掛リデモナカソ
タナラバ、裁判所カラ相當ノ制栽ヲ受ケ
ルベキ性質ニナッテ居ルノデアル、斯ルモノ
ヲ今度三千万圓ノ公債ヲ發行シテ、政府ガ
此新株ヲ引受ケ、而シテ之ヲ活カシタ所ガ、
是ハ到底活キル見込ハナイ、全クモウ死ン
デシマッテ居ル私ハ數日前ノ新聞ニ、死ンダ
人ヲ活カス法ニ成功シタト云フ見出ヲ見
テ、實ハ驚イテ能ク見ルト、是ハ「モスク
ヴア」大學〓授ノ「アンドレーフ」ト云フ人
ガ、或ル注射液ヲ注射スルト心臟ガ動キ出
ス、併シ是ハ二十分位動イテ居ルガ、死ン
ダ者ヲ完全ニ活カスコトハ出來ナイノデア
ル、政府ノ今度ノ救濟案ハ、此「アンドレー
フ」〓授ノ注射液ノ如キモノデアッテ、到底
活カス見込ノナイモノデアルト信ズル、大
體遣方ガ非常ニ複雜デアル、今ノ國際汽船
會社ノ八千万圓ノ資本金ヲ減資ヲシテ八百
万圓ニスル、而シテ新ニ六千万圓ノ增資ヲ
スル、而シテ政府ノ此預金部貸付金ノ二千
九百二十万圓ヲ一般會計ニ肩替リヲスル、
ソコデ預金部ニ對シテ三千万圓ノ公債ヲ發
行スル、一般會計ノ持ヲテ居ル二千九百二十
万圓ニ對シテハ、新タニ引受ケル增資株ノ
拂込ニ充テヽ增資ヲスルト云フノデ、洵ニ複
雜デアッテ、幾ラ頭ノ良イ者デモ中こ分ラナ
イ、頭ガ良クテ餘程遣繰リニ慣レタ者ガ五
六遍說明シテ貫ハナケレバ此遣方ハ分ラ
ナイト思ヒマス、此會社ノ救濟ノ爲ニ非常
ニ苦心ヲシテ御遣リニナルノデアルガ、是
ハ洵ニ意味ヲ爲サナイモノデアッテ、只今此
債權ヲ一時ニ取ルト、サウスルト或ハ財界
ニ動搖ヲ來スト云フ御說明デアリマシタ、
政府ハ公債ヲ發行シテ此會社ヲ救濟シテ
ヤッタナラバ、救濟セラレタ會社ハ一時復活
スルカモ知レナイ、又一部分ノ海運界ト云
フモノハ整理セラレルカモ知レナイ、併
ナガラ、斯樣ナ事ヲ繰返シテ居ッタナラバ、
實ニ是ハ我ガ帝國ノ財政ヲ破壞スルモノト
謂ハナケレバナラナイノデアル、斯ノ如キ
コトマデモシテ、此會社ヲ救濟シテヤルト
云フコトハ全ク意味ヲナサナイ、併シ現在
貸シテ居ル所ノ二千九百一一十万圓ト云フモ
ノハ、全然貸倒レニナルノデアルカラ、先
ヅ貸倒レニナルヨリ之ヲ株ニ振替ヘテ置カ
ウト云フコトナラバ、是ハ別デアリマスケ
レドモ、此政府ノ貸金ノ二千九百二十万圓
ト云フモノニハ立派ナ保證人ガ附イテ居
ル、少シモ心配ハナイ、何故此保證人ニ對
シテ保證債務ノ要求ヲシナイノデアルカ、
吾々ハ是ガ判斷ニ苦シム、此國際汽船株式
會社ガ大正十四年頃非常ニ困ッタ時ニ、預金
部ノ貸付金ニ對シテハ條件ノ緩和ヲ要求シ
テ來タ、其當時我黨ノ總裁濱口雄幸氏ガ大
藏大臣デアッタノデアル、ソコデ事情已ムヲ
得ズトシテ、六分ノ利子ヲ三分ダケ直グニ
納メヨ、殘リ三分ダケハ拂ヘル時マデ待ッテ
ヤラウ、元金ハ大正三十六年迄ノ間ニ年賦
デ償還ヲセヨ、斯ウ云フヤウニ條件ヲ緩和
セラレタノデアリマス、當時反對黨ノ人〓
ハ濱口大藏大臣ハ何故ニ此條件ヲ緩和ス
ルノデアルカ、甚ダ不都合デアルト言ウテ
非難ヲ致シタ、併ナガラ濱口雄幸ト云フ人
ハ人カラ非難ヲ受ケルヤウナコトノ出來
得ルヤウナ人デハナイノデアル、其代リニ
チヤント條件ヲ附ケタ、其條件ト云フモノ
ハ、若シ國際汽船會社カラ元利ノ支拂ヲ停
止シタ場合ニ於テハ、日本興業銀行ガ代ヲ
テ政府ニ對シテ責任ヲ負フ、斯ウ云フコト
ニセヨト云フ條件ヲ附ケラレタ
〔川原議長議長席ヲ退キ〓瀨副議長代
リ著席〕
是ガ預金部ノ運用委員會ニ掛シタ時、運用委
員會デハ更ニ又條件ヲ提出シタ、ト云フノ
ハ日本興業銀行ダケノ保證デハ足リナイ、
故ニ第一銀行ト十五銀行トガ三分ノ一ヅヽ
ハ矢張共同シテ其責任ヲ負へ、斯ウ云フ條
件ヲ出サレタ、之ヲ主張シタノガ阪谷男爵
デアル、尤モ是ハ良イコトデアリマスカ
ラ、政府ニ於テモ異議ノアラウ筈ハナイ、
直ニ是ハ政府ト預金部ノ委員トノ滿場一致
デ以テ此條件ガ決定シタノデアル、阪谷男
爵ハ第一銀行ト密接ナ關係ノアル人デア
ル、然ルニモ拘ラズ、預金部運用委員會
ノ委員ト云フ公人ノ立場ヲ考ヘテ、第一銀
行トノ私情ヲ顧ミズシテ、國家ノ爲ニ此債
務ニ對シテ保證ノ地位ニ立タシメラレタト
云フ公明正大ナルコトニ對シテ、吾々ハ滿
腔ノ敬意ヲ表サヾルヲ得ナイノデアル、是
程マデニ預金部運用委員ト當時ノ濱口大藏
大臣トハ苦心ヲ致シマシテ、立派ナ保證人
ヲ付ケラレタノデアル、其保證人カラ今度
之ヲ要求シタナラバ、何モ此國家ノ二千九
百二十万圓ノ貸金ニ對シテハ心配ハナイノ
デアル、ソコデ政府ハ是ノ整理ヲスルニ當
リマシテ、其銀行ニ對シテ保證債務ノ要求
ヲセラレタカドウカ、若シセラレナイトス
ルナラバ何故、此保證債務ニ對シテ要求ヲ
セラレナイノデアルカ、セラレタトスルナ
ラバ、日本興業銀行、十五銀行、第一銀
行-十五銀行ハ姑ク問ハヌ、日本興業銀
行デモ、第一銀行デモ、優ニ此保證債務ヲ
辨濟スル力ノアル銀行デアル、如何ナル返
事ヲシタカ、拂フ義務ガナイト言ッタカ、或
ハ拂フ義務ハアルケレドモ拂フ金ガナイト
言ッタカ、如何ナル返事ヲシタカト云フコト
ヲ伺ヒタイノデアル(拍手)是ガ質疑ノ第一
點デアル、ソレカラ第二ハ、是モ矢張大藏
大臣ニ對シテノ質疑デアリマス、今度發行
スル三千万圓ノ公債ニ對シテノ利子ヲ豫算
ニ計上シテ居ナイノハドウ云フ譯デアル
カ、此三千万圓ニ對シテハ早速利子ガ九十
万圓要ル、万分ノ百十六ト云フ減債基金ノ
繰入ヲ入レルト云フト、百二十万圓ト云フ
金ガ年々要ルノデアル、然ルニ是ハ豫算ニ
計上セラレテ居ナイ、ノミナラズ將來ノ財
政計畫ノ中ニモ計上セラレテ居ナイノデア
ル、過般豫算第三分科會ニ於テ、我黨ノ田
君カラ質問ヲセラレタノニ對シテ、大口政
府委員ハ未定ノ問題デアルカラ八レナカツ
タ、斯ウ云フ答辯ヲシテ居ラレマス、參考
ニ一寸讀シデ見マス、「三千万圓ノ公債ガ出
ルコトガ確定ニナッテ居ルヤウデス、ソレカ
ラ鹽田整理案ニ付テモ相當公債ガ出ルヤウ
ニナッテ居リマスヤウデスガ、是等ノ今年
ノ議會ニ出マス公債ニ付テノ元利支拂ノ計
算ハ先日頂戴シマシタ〓計表ノ中ニ當然
這入ッテ居ルト思ヒマスガ、念ノ爲ニ伺ヒ
マス」大口政府委員「未定ノ問題デアリマス
カラ、マダ〓計表ノ中ニハ這入ッテ居リマセ
ヌ」斯樣ニ答辯ヲシテ居ラレルノデアル、
併ナガラ此整理案ト云フモノハ近頃出來タ
モノデハナイ、モウ旣ニ半年モ前ニ此整理
案ト云フモノハ、新聞ニ其大要ガ出テ居ッタ
ノデアル、未ダ決ラナイ問題デハナイ、チ
ヤント決ッタ問題デアル、今日ノ御說明ニ依
リ、更ニ吾々ニ配付セラレマシタ案ノ内容
ヲ見マシテモ、新聞ノ記事ト少シモ變リハ
ナイノデアル、半年モ前ニ既ニ決ッテ居ル
モノヲ、何故ニ豫算ニ計上シナイノデアル
カ、又財政計畫ニモ何故計上シナイノデア
ル や、或ハ又此議會ガ通過スルカ通過シナ
イカ分カラヌカラト云フコトデアルナラバ、
然ラバ競馬法ハドウシタノデアルカ、競馬
法ハ貴衆兩院ヲ通過スルカシナイカ分ラヌ
モノデアルニモ拘ラズ、其收入ハチヤント
百六十万圓ヲ入レテ居ルデハナイカ(拍手)
サウスルト牧入トナルベキモノハ未確定ノ
モノデモ入レテ、支出トナルモノハ之ヲ差
控ヘテ、無理ニ歲入歳出ノ「バランス」ヲ繼
合セタト云フコトニナルノデアル、詰リ地
租委譲ヲヤッテ缺陷ガ生ジタ、ソレヲ無理ニ
繼合セタモノガ、斯ウ云フ所デ綻ビガ現ハ
レテ居ルモノデアルト見テ宜イカドウカ
(拍手)是ガ第二ノ質疑デアリマス、ソレカ
ラ今度ハ遞信大臣ニ對シテノ質疑デアリマ
ス、只今大藏大臣ノ說明ニ依リマシテモ、
此船ヲバラ〓〓ニ賣ルト云フコトニナル
!、船ノ時價ニモ影響ヲスルシ、海軍界ニ
モ動搖ヲ來スト云フコトデアッタノデア
ル、併シ私ハ其心配ハ少シモナイト思フ、
大體國際汽船會社ト云フモノハ、一定ノ航
路ガアッテヤッテ居ルノデハナイ、例ヘバ日
本郵船會社トカ或ハ大阪商船會社トカ、
定ノ航路ガアッテ海運ヲヤッテ居ルモノデア
ルナラバ、相當ノ船ハ矢張準備シテ置カナ
ケレバナラヌノデアリマスガ、國際汽船ト
云フノハ此處ニ荷物ガアルト云フト、其
處ニ船ヲ廻シテ其荷物ヲ積ンデ運ビ、彼處
ニ荷物ガアルト云フト、其處ニ船ヲ廻シテ
其荷物ヲ積ンデ運ブト云フ工合ニ、丁度之
ヲ白動車デ言ッタナラバ「圓タク」ト云フヤ
ウナコトヲヤッテ居ルノデアル、乘合自動車
デアルナラバ、數臺ノ車體ト云フモノガ要
ルノデアルガ「圓タク」ハ一臺デ宜イ「ハン
ブルグ」紐育ノ間ニ定期航路ガ一ツアルガ、
其他ハ準定期ト云フヤウナモノガ一二ア
ルヤウデアリマスガ、大部分ハ是ハ自動車
ノ「圓タク」ノ如キ、卽チ「チヤター」ヲ
ヤッテ居ルモノデアル、斯樣ナモノハ今之ヲ
救濟シナカッタナラバ此會社ハドウナルカ
ト云フト、此船ハ債權者ノ手ニ渡ル、債權者
ノ手ニ渡レバ、債權者ノ手デバラー〓ニ賣
ラレル、賣ラレタ所デ是ハ少シモ影響ハナ
イノデアル、何故ニ之ヲ救濟セナケレバナ
ラヌノカ、吾々ハ其眞意ヲ解スルニ苦シム、
マダ質疑ハ殘ッテ居リマスガ、先ヅ是等ノ
點ニ對シテ御答辯ヲ願ヒタイノデアル(拍
き
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=69
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070・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 堤君ノ第一ノ御
質問ハ、預金部ノ二千九百二十万圓ト云フ
債權ニ對シテ三銀行ガ保證シテ居ルノデア
ルカラ、保證債務ヲ履行サセレバ斯樣ナコ
トヲスル必要ハナイ、斯ウ云フ御意見デア
リマシタ、而シテ其保證債務ハ、大正十四
年ノ前內閣ノ時、卽チ濱口君ガ大藏大臣ノ
御在任中ニサウ云フ風ナコトヲ決メテア
ル、其通リヤレバ宜イヂヤナイカ、斯ウ云
フ御意見デアリマシタガ、大正十四年ノ濱
口君ガ保證債務ヲ決メマシタ時分ノヤウナ
狀態ガ續イテ居リマスレバ文句ハ無イノデ
アリマス、所ガ御承知ノ通リ其後金融界ノ
恐慌ノ爲ニ十五銀行ハ潰レタノデアリマ
ス、アノ通リノ狀態デアリマシテ、之ヲ救
濟シナケレバナラヌト云フヤウナ狀態デア
リマスカラシテ、三銀行ト申シテモ、番
確カナ銀行ハ第一銀行デアリマス、是等ノ
銀行ニ對シテ、若シ保證債務ヲ履行セシメ
マスト、三銀行ハ已ムヲ得ズ會社ニ迫ッテ破
產處分ヲスルヨリ外ナイ、破產處分ヲスル
ト云フト三十万噸近イ船ガ一時ニ市場ニ
出マスノデ、之ヲ賣捌キマスト云フト、先
刻申シマシタ通リ、船價ニ非常ナ激變ヲ來
シ、船腹ニ非常ナ激變ヲ來ス、是ガ我國ノ
海運界ニ非常ナ影響ヲ及ボスコトハ申ス迄
モナイコトデアリマス、是ハ吾々ハヤリダ
クナイ、今日ノ海運界ニ於キマシテ左樣ナ
處分ヲ致シマスト云フト、非常ナ事件ガ起
リマス、其故ニ國家政策トシテ考ヘマスレ
バ我帝國ノ如ク海運業ヲ以テ將來立ッテ
行カナケレバナラヌ國ニ於キマシテハ單
リ定期航路船ノミナラズ、所謂社外船、社
外船ガ發展シナケレバナラヌノデアリマ
ス、卽チ世界各國中海運業ノ發達シテ居ル
國ハ、皆社外船ノ發達シタ國デアル、社外
船ノ發達ヲ必要ト致シマス以上ハ、吾々ハ
折角出來テ居ル此會社ガ、若シ何等カノ方
法ニ依テ成立シ得ラレルナラバ成立セシメ
タイ、預金部資金ノ回收ヲ確實ニスルト云
フヤウナコトヨリモ、寧口海運政策カラ考
ヘマシテ、此會社ヲ存立致サセタイト云フ
ノデ此案ヲ立テタノデアリマス、卽チ只今
御述べノ通リ非常ナ債務ヲ帶ビテ居ル、此
債務ヲ無クシテ身輕ク致シマスレバ、此會
社ハ成立シテ行クト思フノデアリマス、殊ニ
最近ニ於キマシテハ、段々「チヤター」料モ高
クナッテ參リマシタ、此向キデ行キマスト云
フト、相當ニ蘇ッテ行ケルト思フノデアリ
マス、ソレデ會社ヲ潰スカ潰サヌカト云フ
問題デアリマス、潰ストスレバ、預金部ト
致シマシテハ三銀行ニ對シテ保證債務ヲ履
行セシメナケレバナラヌ、三銀行ハ國際汽
船會社ニ對シテ債務ヲ履行セシメル、サウス
レバ無論破產デアリマス、破產スレバ今申
スヤウナ影響ヲ及ボスノデゴザイマスカラ
吾々ハ海運政策トシテ左樣ナコトハ致シタ
タナイト云フノデ、此救濟策ヲ講ズルノデ
アリマス、又此問題ハ餘程前ニ決ッテ居ル
ノデアルカラ、何故ニ之ニ伴フ公債ノ元利
拂等ノ豫算ヲ總豫算ニ入レナカッタカト云
フ御心配デアリマス、是ハ成程早ク決ッテ居
リマシタケレドモ、此決。ツ夕方針ニ依テ色ミ
ナ處分ヲシナケレバナラヌコトガアッタノ
デアリマス、卽チ御承知ノ通リ川崎造船會
社或ハ鈴木商店等ノ保護債務カラ免除スル
ト同時ニ、總テノ株劵ヲ提供セシメタノデ
アリマス、其株劵ガ御承知ノ通リ大體擔保
ニ這入ッテシマッタ、其擔保ヲ拔イテ、サウ
シテ之ニ提供セシメマスルニハ相當ノ日子
ヲ要スル、斯樣ナ手續ヲ致シテ居シタ爲ニ遲
レタノデアリマス、而シテ議會ノ當初ニ提案
スルコトガ出來マセヌノデ、今頃出シマス
ル結果トシテ、止ムヲ得ズ之ニ要スル經費
ト云フモノハ追加豫算トシテ、卽チ昭和四
年度ノ追加豫算ト致シマシテ、最近ニ提案
致ス積リデアリマス其中ニ含マレテ居リ
マス、第三ノ問題ハ久原遞信大臣ニ對スル
御質問デアリマスルガ私ノ申上ゲタ所デ
明瞭デハナイカト考へマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=70
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071・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 久原遞信大臣
〔國務大臣久原房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=71
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072・久原房之助
○國務大臣(久原房之助君) 定期航路ハ御
話ノ通リニ確定シテ居リマスルノハ紐育
漢堡間約二週一回、併ナガラ此定期ニ準ズ
ルモノガアリマス、卽チ伊太利紐育間航路
每月一回以上、紐育日本間航路每月二回以
上、歐洲日本間航路年約九囘、比律賓紐育
間航路每月一囘以上日本孟買間航路往航
年約二回復航年約十二囘日本濠洲間航
路約三箇月ニ一囘日本北米西海岸間航路
約每月一囘、日本北米西海岸歐洲間航路年
約十六囘、要スルニ此會社ノ收入ハ年ニ二
千二百万圓程デアリマスルガ其內千三百
万圓程ガ外國ト外國ノ間ヲ航行シテ居ルモ
ノヽ收入デアリマス、ソレカラ七百万圓程
ガ外國ト日本トノ間ヲ航行シテ居リマスル
收入、サウシテ純日本近海ダケヲ航行シテ
居リマスル爲ニ牧入シマスルモノハ僅ニ二
百万圓、卽チ全體ノ收入ノ一割ニ足リナイ
ノデゴザイマス斯ウ云フ風ニ海外ヲ主ト
シテ收入ヲ得テ居ル譯デアリマス、デ茲ニ
此會社ガ潰レマスレバ今迄斯樣ニシテ築
上ゲマシタ航權ヲ失墜シナケレバナリマセ
ヌノデ、自ラ其收入モナクナリマスル次
第ソレデ其船ガ勢ヒ日本ヘ歸ッテ來ナケ
レバナラヌヤウニナリマシテ、詰リ今ノ收
入ノ大部分ヲ失ッテ、而モ尙ホ其船ガ日本近
海へ歸リマシテ、日本ノ近海ノ航路ヲ脅ス、
斯ウ云フ狀態ニナル譯デアリマス、幸ニ其
船ト航權ノ儘讓受ケル者ガアリマシタナラ
洵ニ都合ノ宜シイ譯デゴザイマスケレ
ドモ、是ハ望ンデ得惡イモノデアリマス、
若シソレガアリマスルナラバ、此會社此儘
ニ引受ケテモ宜イト云フ譯ニナルノデゴザ
イマスガ、各〓皆仕事ニハ殊ニ堤君ナド
ハ能ク御承知ノ通リニ、皆ソレ〓〓生立ッタ
徑路モアリマスル爲ニ、違ウタ者ニ引受ケ
ロト申シテモ、是ハ中〓出來ナイ譯デアリ
マス、要スルニ引受手ガナイ譯デゴザイマ
ス、其儘デ引受手ガアリマスレバ洵ニ結
構デアリマスガ引受手ナシニ此會社ガ潰
レルトナリマスレバ今申ス通リニ航權ヲ
失ヒ、卽チ海外カラノ收入ヲ失ッテ、其船ハ
日本近海へ皆蝟集シテ來ル、茲ニ收入ヲ失ッ
タバカリデナシニ、日本ノ近海ノ航運ニ大
キナ變動ヲ起ス、斯ウ云フ風ニナリマスル
爲ニ、何トカ之ヲ救フ途ガアレバ救ハナケレ
バナラヌト云フ必要ハ、確ニアル譯デゴザイ
マス、一寸其狀態ヲ申上ゲテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=72
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073・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 堤康次郞君
〔堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=73
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074・堤康次郎
○堤康次郞君 只今ノ大藏大臣及遞信大臣
ノ御答辯ヲ綜合シテ見マスルト云フト此
ニ千九百二十万圓ノ債務ニ對シテ、銀行ニ
對シテ保證債務ノ履行ヲ要求スルト云フ
ト銀行ハ其代リニ會社ノ破產ヲ要求スル、
サウスルト云フコトガ、外國ヘ行ッテ稼デ居
ル其船ガバラ〓〓ニナッテ、而シテ內地ノ
此海運界ヲ脅スト云フコトニナッテ、海運政
策上宜クナイカラ助ケテ行ク、斯ウ云フ意
味ノ御說明デアリマシタ、是ハ確ニ間違ッテ
居ル、今三土大藏大臣ノ御說明ニ依リマス
ト云フト大正十四年當時ノ財界トハ現在
ハ違フ、金融界ニ動搖ガアッタ爲ニ、今中〓
銀行ハ苦シイカラ、此債務ヲ要求スルト
其銀行ハ其擔保品ヲ抱イテ居ナイデ、直ニ
破產ヲ申請スルト云フ意味デアリマシタ、
併ナガラ此點ニ付テハ三土大藏大臣デモ、
久原遞信大臣デモ、世ノ中ノ實際ノ經濟界
ノ事情ニ通ジテ居ラレル方〓デアルカラ、
左樣ナコトガアリ得ヤウカ、アリ得マイカ
ト云フコトハ、直ニ想像シ得ラレル筈ダ、
決シテ左樣ナコトハナイ、若シ政府ガ此ノ
保證債務ノ要求ヲシタナラバ銀行ハ必ズ
代シテ拂シテ、其船ヲ纏メテ抱イテ居ルニ違
ナイ、要スルニ政府ガ直接此船ノ會社ヲヤ
ルカ、銀行ガヤルカ、斯ウ云フ點ニ岐レル
ノデス、而シテ又此銀行ガ今資力ガナイト
カ云フヤウナコトデアリマシタケレドモ、
併シ此銀行ト云フモノハ、非常ニ確實ナル
モノデアル、日本興業銀行ハ此二千九百二
十万圓ノ債權ニ對シテハ全部ノ責任ヲ負ウ
テ居ル、其三分ノ一ダケヲ十五銀行ガ負ヒ、
三分ノ一ダケヲ第一銀行ガ負ウテ居ルノデ
アルカラ、十五銀行ニ支拂能力ガナイトス
レバ十五銀行ノ分ハ日本興業銀行ガ拂ハ
ナケレバナラヌ、ソコデ其分ヲ日本興業銀
行ニ負擔サストシテ、日本興業銀行ト云フ
モノハ二千万圓ノ債務ノ支拂ガ出來ルカ出
來ヌカト云フコトハ議論ノ岐レ路デアリマ
スガ、私ハ優ニ出來ルト思フ、卽チ日本興
業銀行ノ資本額ト云フモノニ、少シモ疵ガ
付カナイデ現在二千万圓以上ノ積立金ヲ
持ッテ居ル、積立金ト云フモノハ斯ウ云ム時
ニ出スノガ積立金デアル、預金部ノ金ヲ六
分ニ預ッテ七分ニ貸シテ、一分宛利鞘ヲ取ル
ノデ年ニ二十九万二千圓宛ノ純益ガ上ル、
若シ間違ッタ時ニハ責任ヲ負ハナケレバナ
ラヌ、ソコデ日頃ノ純益ノ中カラ積立金ヲ
シテ居ルノデアル此積立金ダケデ優ニ支
拂ガ出來ルノデアル、興業銀行ニドノ位積
立金ガアルカト云フト損失補塡準備金ガ
千二百六十七万四千圓、配當平均準備金二
百八十九万圓、別途積立金二百八十五万圓、
當期利益金三百五十六万六千圓、當期ノ利
益金ハ配當シテモ、次ニハ是ダケノ利益ハ
アルノデアリマスカラ、是ハ保證債務ノ履
行ハ優ニ拂ヒ得ルモノデアル又第一銀行
ハドウデアルカト云フト、第一銀行ハ一千
万圓位ノ債務ニハ決シテ驚カナイ第一銀
行ノ法定準備金ハ五千六百七十五万圓デ
別途準備金ハ四百八十万圓、當期利益金ダ
ケデモ六百四十二万三千圓アッテ、合計ガ六
千七百九十七万三千圓ト云フ莫大ナル積立
金ヲ持シテ居ル、此六千万圓カラ持シテ居ル銀
行ガ千万圓位ノ保證債務ヲ履行シ得ナイト
云フコトヲ誰ガ信用致シマセウカ、履行シ
得ルニ極ッテ居ル、斯ウスレバ少シモ問題ハ
ナイノデアル、殊ニ又遞信大臣ハ此船ガバ
ラバラニナルコトガ困ルトノ御答辯デアリ
マシタ、大藏大臣モ此點ヲ非常ニ心配シテ
居ラレル、ケレドモ現在國際汽船會社ノ船
ハ會社自ラノ手デバラ〓〓ニシツヽアルノ
デアル、此事實ヲ大藏大臣モ遞信大臣モ御
存知ニナラヌ、現ニバラ〓〓ニシテ居ル
何故バラ〓〓ニシテ居ルカト云フト、金ガ
ナイカラバラ〓〓ニ賣ルバカリデハナイ、
船ガ古イ、ソコデ海外ノ海運市場ニ立ッテ競
爭ガ出來ナイカラ、新造船トノ買替ヲ現ニ
ヤッテ居ルノデアル、最近ノ東京日々新聞
最モ信用スベキ東京日々新聞ニ此記事ガ出
テ居ル參考ニ讀ミマス「新船乘換資金ハ
現在ノ所有船舶ヲ賣却シテ之ニ充テルコト
ヽシ、昨年加州丸(八七四六重トン)ヲ、本
年ハ「エトナ」丸(一〇六八一重トン)ヲ賣却シ
タガ、又最近ニ泰山丸(四九五二重トン)ヲ
大家善太郞氏ニ「トン」當リ七十八圓五十錢
デ賣渡シ「テキサス」九(一〇六八一重トン)
モ目下某汽船トノ間ニ賣船交渉中ダガ、價
格ノ點デ目下行惱ミ中、尙同社新造計畫中
ノ一万「トン」「ディーゼル」船ノ据付機關
モ大體「ヘッセルマン」ト決定シ本月末
マデニハ註文ヲ發スル段取ニナラウ」ト斯
ウ書イテ居ル私ハ唯新聞記事ダケヲ以テ
論ズルノデハナイ、此事實ハ十分ニ確メマ
シタカラ、何レモ間違ノナイト云フコトヲ
責任ヲ以テ斷言シ得ルノデアル、卽チ旣ニ
三艘賣ッタ、一艘ハ將ニ賣ラントシテ居ル
是モ金ガナイカラ已ムヲ得ズヤルト云フナ
ラバ別デアリマスケレドモ其代リニ「ディ
ーゼル」船ヲ註文シテ居ル斯ウ云フモ
ノヲ今救濟スルト云フコトハ全ク意味ガナ
イ、最前カラチヨイ〓〓其邊カラ色〓御批
評ノ言葉モ聽エマスケレドモ、是ハ諸君ガ
十分御存知ニナラナイカラダト私ハ思フ
此眞相ヲ十分〓究シテ戴キタイ、是ハ洵ニ
重大ナル問題デアルト私ハ信ズル而シテ
又十五銀行ノ分ニ對シテ、全部興業銀行ニ對
シテ取ルト云フコトモ、苛酷ナコトデアル
ト云フナラバ多少國家ニ於テ損ヲ致シマ
シテモ-損ハ預金部積立金カラ拂ッタナ
ラバ少シモ差支ナイ、現在預金部デハチヤ
ントサウ云フ時ノ規定ガ出來テ居ル、預金
部ノ特別會計法ノ第三條ニ「預金部資金ニ
屬スル運用資產ニシテ價格ノ減損ヲ生ズル
モノアル時ハ本會計ノ決算上生シタル剩餘
又ハ積立金ヲ以テ之ヲ償却スヘシ」ト書イ
テアルンコデ現在ドノ位預金部ノ利益ガ
アルカト云フト豫算委員會ニ於テ政府委
員ノ答辯ニ依リマスト二億三千六百万圓
ト云フ金ガ斯ウ云フ時ノ用意ニ積立テヽア
ル、又年々純益ガ一千万圓アルノデアリマ
スカラ、多少國家ニ〓損ガアッタナラバ是デ
補ヘバ宜イ、何モ面倒ナ法案ヲ出シテ、特ニ
此會社ヲ救濟スル必要ハナイ、現ニ預金部
ノ貸付金ニ於テモ、安田銀行ガ日本紙器會
社ニ對シテノ貸付金ニ對シテ保證シテ居
ル併ナガラ安田銀行ニ對シマシテハ嚴重
ニ政府ガ請求ヲ致シマシテ、安田銀行ハ信
用ヲ重ジテ代ッテ此六百万圓ニ對シテハ元
利共ニ拂ッテ、預金部ニ少シモ迷惑ヲ掛ケテ
居ナイ安田銀行ニノミ保證債務ヲ履行セ
シメ、而シテ他ノ銀行ニ對シテハ何故保證
債務ノ履行ヲ要求シナイノデアルカ、洵ニ私
ハ其眞意那邊ニアリヤ解スルニ苦シム、第
一銀行ノ如キハ實ニ立派ナ銀行デアル、今ノ
佐々木頭取ナドハ銀行家トシテハ理想的ナ
ル人デアルト云フノデ非常ナ信用アル銀
行デアル、此銀行カラ一千万圓ノ位ノ金ヲ
拂ッテモ少シモ影響ハナイト思フ、是ハ斯ウ
云フヤウニ處置ヲ執ルト云フコトガ、最モ
適當ナルモノデアルト私ハ信ジテ疑ハナ
イ、又遞信大臣ハ政府デ之ヲヤルト云フヤ
ウニ御說明ニナリマシタガ、併シ大體政府
デ船會社ヲヤルト云フコトハ間違ッテ居ル、
寧ロ此債權者デアル銀行ニ委シタ方ガ政
府デヤルヨリモ成績ガ擧ルト云フコトハ
是ハ何人デモ分ルコトデアル、大體政府事業
ト云フモノハ事業組織トシテ極メテ弱イ
ノデアッテ、事業組織ニ於テ一番强イノハ個
人事業デアル直接利害關係ガ頭ニ來ル
其次ハ合資會社デアリ、株式會社デアル、
株式會社デアル、政府事業ト云フモノハ
番弱イ組織デアル、引合ハナイモノヲ昔ハ
士族ノ商法ト言ッタケレドモ、今ハ御役所
ノ商賣ガソレデアル、今度此株ヲ半分持ツ
ト云フコトハ、卽チ半分御役所ガ仕事ヲス
ルト云フコトニナルノデアル日本ハ現在
ニ於テモ官業ト云フモノガ多過ギル、郵便、
電信、電話カラ鹽、砂糖、樟腦ノ專賣ヲ
初メトシテ、鐵道モヤッテ居レバ植林
モヤッテ居ル、製材モヤッテ居リ、又鐵ノ製
造モヤル毛織物ノ製造モヤルト云フヤウ
ナ譯デ、官業ト云フモノガ餘リ多過ギルノ
デアル、英國邊リデハ官業ト云フモノハ極
メテ少イノデアリマシテ、郵便、電信、電
話ノ外ニハ何モヤッテ居ナイ、米國ノ如キハ
郵便ノ外ニハ電信、電話モ全部之ヲ民業ニ
移シテ居ル、ドウシテモ將來ハ民業ニ段
段移シテ行カナケレバナラナイト云フ形勢
デアルニモ拘ラズ今度又官業ヲヤラレル
ト云フコトハ假令助ケル理由ガアルトシ
テモ、根本ニ於テ時代ニ逆行シテ居ルモノ
ト謂ハナケレバナラヌ、政府ハ社會主義ト
云フト、非常ニ恐レテ居ルケレドモ、ヤッテ
居ル此官業ノ多イ狀態ヲ見マスルト國家
社會主義者ノ主張其儘デアル、此位官業ノ
多イ國ハ世界デモ「ソヴヱット」露西亞ノ外
ニナイノデアル、ソレニ今度此船ノ會社ヲ
ヤルト云フコトハ、洵ニ時代錯誤デアルト謂
ハナケレバナラヌノデアル此點ニ付テモ
更ニ遞信大臣ノ答辯ヲ願ヒタイノデアル、
ソレカラ又モウ一ツ大藏大臣ニ··(此時
發言スル者多シ)能ク御聽キナサイ、諸君
ガ御騒ギニナルト緩リヤリマスゾ-現在
ノ狀態デハ公債ノ發行ト云フモノヲ出來ル
ダケ少クシナケレバナラナイノニ、特ニ此
會社ノ爲ニ三千万圓餘ノ公債ヲ發行シテ株
劵ヲ持ツト云フコトハ私ハ其意味ガ分ラ
ナイ、斯樣ナコトヲ致シテ居リマスルカ
ラ、日本ノ爲替ト云フモノハ段々下ッテ來
ル現在四十四弗八分ノ五デアルケレド
モ、是ハ遠カラズ四十四弗ヲ割ルベキ形勢
ニナッテ居ル、政府ハ之ニ對シテ爲替ノ相場
ヲヤルカラ困ルト言ヒマスケレドモ併シ
人ノ投機心ト云フモノハドウシテモ抑ヘル
コトハ出來ナイ浮浪ノ徒ハ丁半ヲヤル
又少シ高尙ナ者ニナルト或有名ナ政治家デ
モ八々ヲヤルト云フコトデアル國際金融
業者、國際貿易業者ガ爲替ノ相場ヲヤルト
云フコトハ止メルコトハ出來ナイ、勿論今
日ニ於テハ佛蘭西ハ金解禁ヲ致シテ居ルカ
ラ「フラン」ノ相場モ出來ナイシ、伊太利
モ金解禁ヲシテ居ルカラ「リラ」ノ相場モ出
來ナイ、單リ日本ノ圓ダケ取殘サレテ居ルカ
ラ、日本ノ圓ト云フモノハ國際的ニ金融業
者及貿易業者ノ〓博ノ玩弄物ニナッテ居ル
ト云フ、洵ニ慨嘆スベキ狀態ニナッテ居ルノ
デアル(「金解禁ノ質問力」ト呼ヒ其他發言
スル者アリ)金解禁ニ影響ガアルノデアル、
之ヲ一日モ早ク解禁シナケシバナラヌト云
フノガ國民ノ要望デアルニモ拘ラズ、又今
度斯ウ云フ無意味ナ公債ヲ發行スルト云フ
ノハ何事デアルカ、亞米利加ノ銀行家ガ最近
日本ノ爲替相場ガ下落スルト云フノハ日
本ノ國力ガ不信用デアルカラデアルト言ツ
タサウデアリマスガ、日本ノ國力ト云フモ
ノハ決シテ左樣ナモノデハナイ、金解禁ヲ
爲シ得ルノデアリマス憲政會內閣ノ末期
ニ於テ爲替ハ四十九弗四分ノニマデナツ
タノデアル、解禁スルコトニ少シモ差支ナ
カッタ、今日ニ於テモ日本ノ國力ハ少シモ
變シテ居ナイ、解禁ニ堪ヘルノデアリマス
ガ唯、爲替ガ暴落スルト云フ根本ノ理由
日本ノ國力ニ對スル不信用ニアラズシ
テ、是ハ實ニ現內閣ノ惡政ノ反映デアルト
吾々ハ斷言シテ憚ラヌ、斯様ナ無意味ナコト
ヲヤッテ、本案ガ通過シタナラバ又爲替ガ下
落スルコトナキニシモアラズト憂ヘザルヲ
得ナイノデアリマス吾々ノ希望シテ居ル
金解禁ヲ現內閣ガ實行スルコトニ於テ洵
ニ誠意ノナイコトハ慨嘆ニ堪ヘナイノデア
リマス、又斯ウ云フ國際汽船會社ノ救濟ナ
ンカヲヤルト云フコトハ國民思想ノ上ニ
惡影響ヲ及ボスヤウナコトガナイカ、此點
ヲ私ハ内務大臣ニ-內務大臣ガ御出ニナ
ラナケレバ内務次官カラ御答辯ヲ願ヒタ
イ先程大藏大臣ノ說明ニモ是ハ今日マ
デ海運界ニ貢獻シタト云フ意味ノ御說明ガ
アリマシタガ、併シ此會社ハ海運界ニ貢獻
ヲシタ、デアルカラ之ニ對シテ預金部カラ
金ヲ貸シテ援助シテヤラウト云フノデ出來
タノデハアリマセヌ、ソレハ根本ガ非常ニ
間違シテ居ル、大體歐洲戰後船成金ガ出來テ
非常ニ金ヲ儲ケタ、儲ケタ調子ニ乘ッテ段々此
事業ヲ擴張シタ所ガ、獨逸トノ講和條約ガ締
結セラレタ、大正七年十一月十一日ニ講和條
約ガ締結ニナルト同時ニ、船ノ相場ガ急轉
直下シテシマッタカラシテ、之ヲ助ケテヤラ
ウト云フノデ出來タノデアリマス、當時船
成金ノ救濟ノ爲ニ金ヲ貸スト云フコトデ出
來夕會社デアリマシテ、今日救濟スル前マデ
ニ海運界ニ貢獻シタノデモ何デモナイ、而モ
其當時救濟サレタモノハ何デアルカト云フ
ト、極ク一部ノ····(「質疑ヂヤナイ」ト呼ヒ其
他發言スル者多シ)質疑デアル、御聽キナ
サイ(「ハツキリシナイ」ト呼フ者アリ)ハツ
キリシテ居ルデハナイカ、其當時ノ船成金
ノ中デモ全部ノモノガ援助セラレタト云フ
ノデハナイ、援助セラレタモノハ極ク一部
分ノ大頭株ダケデアリマスガ如何ナル連
中ガ船ヲ提供シテ國際汽船會社ヲ拵ヘタノ
デアルカト云フコトヲ、質疑ノ順序トシテ
玆ニ言ハナケレバナラナイ、國際汽船會社
提供者割當、一番大キナモノハ川崎造船デア
ル川崎造船及汽船ノ松方幸次郞ガ二十七
万五千百噸ヲ提供シテ百十万株ヲ引受ケ
テ、現金ハ四千八百十四万一一千五百圓ヲ受
取ッテ居ル、ソレカラ鈴木商店ノ金子直吉ガ
八万四千四百噸ヲ提供シテ、三十三万七千
六百株ヲ引受ケ、千四百七十七万圓ヲ受取ッ
テ居ル淺野造船所ノ淺野總一郞ガ五万二
千五百噸ヲ提供シテ、十八万三千七百五十
株ヲ引受ケテ、九百十八万七千五百圓ヲ受
取シテ居ル、橋本喜造ガ二万五千噸ヲ提供シ
テ、十万千六百株ヲ引受ケ四百三十七万
五千圓ヲ受取ッテ居ル、山下龜三郞ガ二万二
千五百噸ヲ提供シテ、九万株ヲ引受ケ三
百九十三万七千五百圓受取ッタ、內田信也ガ
一万七千八百噸提供シテ、七万一千二百株
引受ケ、三百十一万五千圓受取ッタ、日本汽
船中山說太郞ガ一万七千三百噸提供シテ、
六万九千二百株引受ケ、三百二万七千五百
圓受取ッタ、石川島造船所渡邊嘉一ガ五千噸
提供シテ、二万株引受ケ、八十七万五千圓
受取シタ、其際ニ受取ッタ金ノ中ニハ預金
部カラ其當時貸シタ二千五百万圓ト云フモ
ノガ入ッテ居ルノデアル、其當時ノ船成金ト
云フモノハ決シテ斯樣ニ政府ガ金マデ出
シテ援助シテヤル必要ハ全然ナカッタノデ
アル當時ノ船成金ハ實ニ社會ニ害毒コソ
流セ、何等貢獻シテ居ナカッタ、併シ全部ガ
全部サウデアッタノデハナイ、山下龜三郎君
トカ、内田信也君ノ如キハ、學校ニ百万圓モ
寄附シタト云フヤウナ氣ノ利イタコトヲシ
タ人モナイデハナイガ、大部分ノ者ハ宜ク
ナイコトヲヤッテ居ッタ或者ハ朝鮮ニ虎狩
ニ行シテ、加藤清正ノ向フヲ張ルト云フヤウ
ナ豪快ナコトヲヤッタ者モアリ、或ハ可憐ナ
ル少女ヲ蹂躪シテ數万圓ノ金ヲ投ズル、斯
樣ナ事ヲヤッテ實ニ社會ノ人心ヲ荼毒シテ
居ルノデアッテ、斯樣ナ者ハ全然救濟スベキ
所ノ必要ノナイ、卽チ同情スベキ必要ノナ
イ者デアッタ、然ルニ之ヲ救助スルガ爲ニ
出シタ金ト云フモノハ預金部ノ金デアル
是ハ言フマデモナク全國ニ蛸ノ足ノ如ク
擴ッテ居ル郵便局カラ、額ニ汗シテ稼イダ勞
働者ノ貯金ダトカ、或ハ爪デ燈火ヲ點スヤ
ウニシテ蓄メタ老人ノ臍繰金ヲ貯金シタモ
ノヲ集メテ、之ヲ大藏省ノ預金部ヘ持ッテ
行ッタモノデアル、斯ウ云フ金ヲ貸シテ其當
時ノ船成金ヲ救濟シタノデアルカラ、此成
立ノ動機ガ洵ニ不純ナモノト謂ハナケレバ
ナラヌ、是ハ誰ガヤッタカト云フト、其當時
ノ內閣總理大臣ハ原敬デアリ、遞信大臣ガ
野田卵太郎、大藏大臣ガ高橋是〓デアッテ、
純然タル政友會内閣デアル斯ノ如ク此會
社ハ設立ノ根本ニ於テ、實ニ政府ト政商ト
ノ妥協ニ依テ出來タル不純ナル結晶デアル
ト信ジテ居ルノデアル、左樣ナモノハ一日
モ早ク吾々ノ眼前カラ姿ヲ消スト云フコト
ガ最モ必要ナルコトデアルト思フノニ、今
度又三千万圓ノ公債ヲ發行シテ、株券ヲ持ツ
テ之ヲ救濟セントスルニ至ッテハ、實ニ是ハ
社會風〓ヲ害シ、世道人心ヲ茶毒スルノ甚
シイモノデアルト思フ、卽チ斯ノ如キ案ヲ
出シテ、本日此議場デ審議ヲシテ居ル時モ
時横濱「ドツク」會社デハ五千人ノ職工ガ
「ストライキ」ヲヤッテ居ルデハナイカ、政
府ハ口ニ勞資ノ協調ヲ說キ、或ハ思想ノ善
導ヲ論ズルケレドモ、斯樣ナルコトヲヤッテ
居ッタナラバ、幾ラ言ッタ所ガ是ハ畢竟鬼ノ
空念佛ニ過ギナイ、眞ニ勞資ノ協調ヲシ、
思想ノ善導ヲ爲サシメルニハ天下萬民ヲ
シテ首肯セシメルニ足ルベキ明ルイ、正シイ
政治ヲ行フト云フコトガ其要點デアル拍
手)斯ノ如キ案ヲ提出シテ、是ガ明ルイ正
シイ政治デアルト言ヘルカドウカ此點ニ
付テ社會風〓ノ上ニ如何ナル影響ヲ及ボス
カト云フコトニ付テハ、秋田内務次官カラ
御答辯ヲ煩シタイ
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=74
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075・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 國際汽船會社ノ
船ヲ一時ニ處分スルト云フト我ガ海運界
ガ非常ナ打擊ヲ受ケルト云フコトヲ言ハレ
ルケレドモ旣ニ此會社ハ段々船ヲ處分シ
テ居ルデハナイカ而シテ又新ナル船ヲ買
入レテ居ルデハナイカト云フ御意見デアリ
マシタガ、是ハ固ヨリ其迪リヤッテ居リマス、
此會社ニハ船ガ約四十八万噸アリマスル
ガ、此四十八万噸ハ多過ギルト見テ居ルノ
デアリマス、而シテ其中若干ヲ處分シテ、
卽チ海運界ニ影響ヲ及ボサミル範圍ノモノ
ヲ處分致シマシテ、之ニ依テ第一社債ノ償
還ニ充テル、又殘リノ船ニ付キマシテハ
卽チ古イ船ヲ賣シテ買換ヘテ「ディーゼル
エンヂン」式ニ變へテ行ク、サウシテ長ク
此會社ヲ持續セシムルト、斯ウ云フ方針デ
アリマス故ニ此賣却ニ付キマシテハ遞
信大臣、大藏大臣ノ認可ヲ經ナケレバ賣却
シテ居ラヌノデアリマス、私共ハ一々責任
ヲ持ッテ居ルノデアリマス、左樣御承知ヲ願
ヒマス、而シテ繰返シテ申シマスルガ、若
シ茲ニ三銀行ニ對シテ債權ヲ取立テマス
三銀行ハ銀行デアリマスルカラシテ、國策
等ハ考ヘマセヌ、隨テ銀行ハ銀行トシテ、唯
金融業者ノ立場カラ債權ヲ行使スルコトハ
決タテ居ル、債權ヲ行使スレバ直ニ此會社ハ
潰レルノデアリマス、潰レタ影響如何ト云
フコトガ問題デアリマシテ、私共ハ潰レテ
ハ困ルト考ヘマスルガ故ニ、此方ヲ採ッタノ
デアリマス又政府ガ是ダケノ犠牲ヲ拂ヒ
マスノミナラズ、第一銀行モ、興業銀行モ、
十五銀行モ、皆犠牲ヲ拂フノデアリマス、
而シテ政府ガ決シテ官業ヲヤルノデハアリ
マセヌ、政府ハ一般會計ニ於テ株ヲ持ツダ
ケデアリマシテ、會社ノ經營ハ全然民間ノ
經營ニ讓ルノデアリマス、終リニ於キマシ
テ、只今此會社ノ成立ノ歷史ヲ述ベラレテ、
恰モ政友會內閣時代ニ斯様ナ會社ヲ造ラシ
テ、非常ナ罪惡ヲ作ッタヤウナコトヲ仰セラ
レマスガ、是ハ以ノ外ノコトデアリマス、
私ハ此會社ノ設立ニ付キマシテ大體申上ゲ
マス御承知ノ通リ此會社ガ出來マシタノ
ハ大正八年ノ七月デアリマス、其頃ハ歐洲
戰爭ガ終熄致シマシテ、世界中ノ船ガ一時
ニ非常ニ曾シマシテ、船ガ有リ過ギタノデ
アリマス、而シテ日本ガ急ニ商船ノ增加ヲ
致シマシタモノヲ、之ヲ處分スル-處分
スルト致シマスルト云フトドウナルカト
云フコトハ、海運政策トシテ考ヘナケレバ
ナラヌ、何モ船會社ヲ助ケルトカ、成金ヲ
ドウスルトカ云フヤウナ問題デハナイ、日
本ノ國家トシテ、其當時澤山出來テ居ッタ船
ヲドウ處分スルカ、之ヲ市場ニ賣出シマス
ナラバ財界ニ非常ナ打撃ヲ與ヘル、日本
ガ折角是程造ッタ船ヲンレヲ大體ニ於テ維
持スル、卽チ之ヲ一ツ社外船トシテ働イテ、
日本ノ世界ニ於ケル航海權ヲ擴張スル、是
ガ國策デアルト云フコトヲ時ノ政府ガ考へ
タノデアリマス、サウシテ如何ニスルカト
申シマスルト、其當時ニ於キマシテハ、皆
新シイ出來タテノ船デアリマシテ、噸當リ
三百八、九十圓、若クハ三百七、八十圓シ
テ居ッタノデアリマス、ソレヲ三百五十圓ト
見テ、其中デ預金部カラ金ヲ貸シマスニハ、
更ニ其半額ノ百七十五圓ト見タノデアリマ
ス噸當リ百七十五圓ト見テ預金部モ金ヲ
貸シ第一銀行モ、十五銀行モ、興業銀行
モ金ヲ貸シタノデアリマス、第一銀行ノ如
キ先刻堤君ガ仰シヤッタ通リ、只今ノ頭取
佐々木勇之助君ハ極メテ堅實ナ人デアリマ
ス斯樣ナ堅實ナ人ガ、若シ是ガ危險ナラ
バ金ヲ貸ス譯ガナイ、然ルニ預金部ニ對シ
テ資金ノ融通ヲ求ムルト同時ニ、第一銀行
モ十五銀行モ、之ニ對シテ融通ヲ致シ、
川崎造船所及神戶ノ鈴本商店等ハ之ニ對シ
テ裏書ヲ致シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ
コトデ此船會社ガ出來マシタ、卽チ當時ノ
船價ト致シマシテ噸當リ三百五十圓ナラ
バ確實ト見テ居ル其船價ノ更ニ半額ヲ擔
保トシテ金ヲ貸シタノデアリマス、而シテ
會社ハ大正八年七月ニ成立シテ、其年ノ下
半期ニ於テハ非常ナ巨額ノ利益ヲ擧ゲ、大
正九年ノ上半期ニ於テモ多額ノ利益ヲ擧ゲ
タノデアリマス大正九年ノ下半期ニナリ
マシテ、財界一般ノ動亂ノ影響ヲ受ケマシ
テ、非常ナ悲況ニ陷ッタノデアリマス、是ハ
單リ國際汽船ノミナラズ、世界ノ船皆同樣
ナ悲運ニ遭遇致シマシタ爲ニ、玆ニ計畫ノ
齟齬ヲ來シマシテ今日迄ニ非常ニ苦ンデ
參ッタノデアリマス、故ニ其以來ニ於キマシ
テ、度と整理案ヲ立テマシテ政府ニ於テ
モ色ミ苦心斡旋ヲ致シタコトハ諸君御水知
ノ通リデアリマスンコデ此國際汽船會社
ガ大正八年ニ出來マシテ以來、ドウ云フ仕
事ヲシタカト申シマスルトヽ先刻遞信大臣
ガ言ハレマシタ通リ「ハンブルヒ」紐育間、
或ハ伊太利紐育問、其他大西洋ヲ橫切リ、
太平洋ヲ横切リ、世界ノ各地ニ亙ッテ日本ノ
先人未發ノ荒原ヲ開拓シテ國際貸借ノ上
ニ非常ナ貢獻シテ參ッタノデアリマス、故ニ
會社設立ノ當時ノ狀況ガ進ミマシタナラバ
此船會社ト云フモノガ非常ニ貢獻致シタノ
デアルガ、今日此不況ニ遭遇致シマシタ場
合ニ於テ、之ヲ如何ニスルカト云フコトガ
問題デアル、先刻來申シマシタ通リ、之ヲ
政府ガ投ゲテシマヘバ銀行ハ全ク金融業
者デアリマスカラ、債權ノ取立ヲ遠慮致シ
マセヌ、サウスレバ此會社ガ潰レル、會社ガ
潰レヽバ現在ノ海運界ノ不況ノ際ニ船價ニ
激變ヲ來シ、船腹ニ激變ヲ來シマスカラ、
一般ノ船會社ガ非常ナ打撃ヲ被リ、隨テ一
般財界ニ恐ルベキ影響ヲ及ボスノデアリマ
ス、之ヲ防グコトガ吾々ノ目的デアリマ
ス、動モスレバ國際汽船會社ノ設立ニ對シ
テ、是迄私共聞キマス所ニ依ルト、反對黨
ノ諸君ハ恰モ是ガ政友會內閣ノ罪惡デアル
カノ如ク唱へ、非常ナ揣摩臆測ヲシテ、讒誣
中傷致シテ居ルノデアリマスガ、怪シカラ
ヌト思ヒマス(拍手)私ハ斯樣ナコトガ國民
思想ニ影響スルカト云フ御質問デアリマス
ガ心アル國民、思慮アル國民、事理ヲ解
スル國民ハ斯樣ナ事ヲ致スコトハ當然デ
アル是ガ爲ニ國民ノ思想ニハ寸毫モ影響
ガ無イト考ヘマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=75
-
076・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 秋田内務政務次官
〔政府委員秋田清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=76
-
077・秋田清
○政府委員(秋田〓君) 堤サンハ私ノ名前
ヲ指シテ御質問デアリマスカラ一寸御答
致シテ置キマス、本案提出ノ趣意ハ大藏大
臣カラ御述べニナッタ通リデ、詰リ國際汽船
會社ノ整理救濟ヲ目的ト致シテ居ル卽チ
財界ノ安定ヲ圖ラウト云フ趣旨ニ外ナラヌ
ノデアリマス、社會風〓ノ維持竝ニ堅實ナ
ル思想ノ保全ハ矢張財界ガ安定ヲ致スト
云フコトガ第一ノ條件デアラウト思フノデ
アリマス、斯樣ニ考ヘテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=77
-
078・堤康次郎
○堤康次郞君 尙ホ質疑スベキ點ハ澤山ア
リマスケレドモ委員會ニ讓リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=78
-
079・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 之ヲ以テ質疑ヲ終
リマシタ-日程第八、右議案ノ審査ヲ付
託スベキ委員ノ選舉ヲ議題ト致シマス
第八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=79
-
080・青木精一
○靑木精一君 本案ハ政府提出製鹽地整理
ニ關スル法律案ノ委員ニ併セ付託セラレン
コトヲ望ミマス
〔「賛成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=80
-
081・清瀬一郎
○副議長(清瀨一郞君) 靑木君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔『異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=81
-
082・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
動議ノ如ク決シマス-日程第九、造幣局
特別會計法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-三土大藏大臣
第九造幣局特別會計法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
造幣局特別會計法中改正法律案
造幣局特別會計法中左ノ通改正ス
第二條ニ左ノ一項ヲ加フ
貨幣製造ノ準備トシテ必要ナル材料地
金ハ資金ヲ以テ之ヲ保有スルコトヲ得
第二條ノ二製造濟ノ補助貨ニシテ年度
內ニ發行ニ至ラサルモノハ資金ニ受入
レ之ヲ保有スルコトヲ得
第六條作業上益金ヲ生シタルトキハ之
ヲ資金ニ編入シ損失ヲ生シタルトキハ
之ヲ資金ヨリ補塡スヘシ
附則
本法ハ昭和五年度ヨリ之ヲ施行ス
明治四十五年法律第一號ニ依リ〓國事件
費支辨ノ爲繰替使用シタル造幣局資金二
百二十八萬七百九十七圓五十七錢五厘及
大正五年法律第四號ニ依リ大正三年臨時
事件費支辨ノ爲繰替使用シタル造幣局資
金三百五十萬圓ニ付テハ之ニ相當スル金
額ヲ造幣局資金ヨリ減額シテ整理スルコ
トヲ得
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=82
-
083・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 只今議題トナリ
マシタル造幣局特別會計法中改正法律案ニ
付キマシテ、其大要ヲ說明致シマス、貨幣製
造ノ材料タル地金ハ常ニ相當ノ餘裕額ヲ保
有シ、臨時緊急ノ用ニ備へ置クノ必要ガア
リマスルコトハ申ス迄モアリマセヌ此材
料地金ハ造幣局資金ヲ以テ保有スルコトガ
最モ適當ノ方法デアリマスルカラ、其途ヲ
開キマスル必要ガアルノデアリマス、次ニ
補助貨ノ需要ハ財界ノ狀況ニ伴ヒ、消長免
レザルモノデアリマスカラ、不況時ニ於テ
モ相當豫備額ヲ製造シ、將來ノ需要ノ激曾
ニ備ヘルコトガ造幣作業ノ圓滑ヲ期スル
上ニ於テ最モ適當ノ措置デアルノデアリマ
ス、然ルニ從來ノ如ク製造濟補助貨ヲ直ニ
發行ニ立テマス時ハ未ダ需要ナキモノニ
付キマシテハ、通貨タル作用ヲ發揮セザル
ニ拘ラズ、政府預金ト造幣局資金トヲ架空
的ニ膨脹セシムル弊ヲ生ズル譯デアリマ
ス、仍テ製造濟補助貨ニシテ未ダ需要ヲ生
ゼザルモノハ未發行ノ儘資金ヲ以テ保有
スルコトヲ得ル途ヲ開クコトヲ適當ト考へ
マス、又造幣局資金ノ內、明治四十五年法
律第一號ヲ以テ〓國事變ノ爲繰替使用セル
モノ二百二十八万餘圓、及大正五年法律第
四號ヲ以テ大正三年臨時事件費支辨ノ爲繰
替使用セルモノ三百五十万圓ニ付キマシテ
ハ從來國庫ニ對スル造幣局資金ノ財源ト
シテ取扱ッテ參タノデアリマスガ、資金ニ
餘裕アル今日ニ於キマシテハ之ヲ資金ノ
減額トシテ整理ヲ致スコトガ適當デアルト
考ヘタノデアリマス、右ノ趣旨ヲ達スル爲
ニ本改正案ヲ提案シタ次第デアリマス、何
卒御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=83
-
084・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 本案ニ關シテハ質
疑ノ通告ハアリマセヌ、日程第十、右議案
ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=84
-
085・青木精一
○靑木精一君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=85
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086・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 靑木君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=86
-
087・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナイト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十
大正十四年法律第五十一號中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス-三土大藏大臣
第十一大正十四年法律第五十一號中
改正法律案(關東州ノ生產品輸入稅
免除等ノ件)(政府提出)第一讀會
大正十四年法律第五十一號中改正法
律案
大正十四年法律第五十一號中左ノ通改正
ス
別表甲號輸入稅表番號第二百三十號ノ內
ノ項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
二七二綿織絲
同第二百九十六號ノ内ノ項中「苧麻繩」ヲ
「苧麻線、苧麻繩、黃麻線及黃麻繩」ニ改
ム
同第三百二十六號ノ内ノ項ノ次ニ左ノ
項ヲ加フ
三三九ノ内ガンニー囊(關東州ノ生產
ニ係ルガンニー布ヲ原料トシタルモ
ノニシテ長九十五センチメートル、
幅六十センチメートルヲ超エタルモ
ノ
同第四百三十六號ノ內ノ項ヲ左ノ如ク改
ム
四三六煉瓦(セメント製ノモノヲ除
ク
四三七瓦(粘土製ノモノ)
同第四百七十六號ノ內ノ項中「線」ヲ「紐、
帶及線ニ」改メ同項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
五七〇ノ內ゲージグラス
同第六百十七號ノ内ノ項ノ次ニ左ノ一項
ヨタノ
六三五ノ內安全燈ホヤ
別表乙號輸入稅表番號第百二十號ノ内ノ
項ノ前ニ左ノ一項ヲ加フ
五二ノ內牛肉(生鮮ナルモノ)
每百斤一·〇〇
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣三土忠造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=87
-
088・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 大正十四年法律
第五十一號ハ、關東州ノ生產ニ係ル生活必
需品又ハ工業原料品等ニ對シ、輸入稅ヲ免
除又ハ輕減シテ、關東州ニ於ケル產業開發
ニ資スルト共ニ、本邦物資ノ補給ヲ圓滑ナ
ラシムル趣旨ヲ以テ制定セラレタモノデア
リマス、然ルニ更ニ綿織絲外八品ヲ其指定
品目中ニ追加シ、是等物品ノ輸入稅ヲ免除
又ハ輕減スルヲ適當ト認メマシテ、玆ニ此
改正案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何卒
御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=88
-
089・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 日程第十二、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第十二右案議ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=89
-
090・青木精一
○靑木精一君 本案ハ政府提出關稅定率法
中改正法律案外二件ノ委員ニ併セ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=90
-
091・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 靑木君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=91
-
092・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
十三乃至十五、是ハ同一委員ニ付託セラレ
タル議案デアリマス、仍テ一括議題トナス
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=92
-
093・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
マス、日程第十三
〔「鐵道大臣ノ出席ヲ要求シマス」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=93
-
094・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 呼ビニヤリマス、
日程第十三、地方鐵道法中改正法律案、日
程第十四、軌道法中改正法律案日程第十
五、非訟事件手續法中改正法律案ヲ一括シ
テ、其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報告ヲ求メマスー委員長若宮貞夫君
송
第十三地力鐵道法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一地方鐵道法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和四年三月十五日
委員長若宮貞夫
衆議院議長川原茂輔殿
第十四軌道法中改正法律案(政府提
也第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一軌道法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和四年三月十五日
委員長若宮貞夫
衆議院議長川原茂輔殿
第十五非訟事件手續法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一非訟事件手續法中改正法律案(政府提
也
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決
致候此段及報告候也
昭和四年三月十五日
委員長若宮貞夫
衆議院議長川原茂輔殿
〔若宮貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=94
-
095・若宮貞夫
○若宮貞夫君 此三案ハ總テ關聯ヲ致シテ
居ル事柄デアリマシテ、卽チ地方鐵道法及
軌道法中ニ大體四ツノ點ノ改正ヲ加ヘヤウ
トスルモノデアリマス、先ヅ其第一ハ現
行規定ニ於キマシテハ地方鐵道ノ軌間、卽チ
軌道ノ幅ヲ三尺六寸ト限定ヲセラレテ居ル
ノヲ、或特殊ノ地方鐵道ニ限ッテ此制限ヲ緩
和シヤウト云フノガ其一點、第二ニハ鐵道
ニ對シテ有勝チデアル所ノ社會ノ要求ニ應
ズルガ爲ニ、地方鐵道ニ限ヶテ後配株、後カ
ラ配當ヲ爲ス所ノ株式ヲ發行スル一ツノ特
例ヲ開キタイト云フノガ其二點、第三ニハ
從來ノ經驗ニ照シテ特ニ監督干涉ヲスルノ
必要ナシト認メラレル所ノ或事柄、卽チ鐵
道ガ兼業ヲ營ム場合ニ於テノ認可、又ハ社
債ヲ發行スル場合ニ於ケル認可ト云フガ如
キハ、特ニ認可手續ヲ經セシメルマデノ必
要ガナイト云フ實驗ニ照シテ、此手續ヲ省
略シヤウト云フノガ其三點、又第四ニハ
一般社會ノ實情ト要求トニ應ジテ、私設鐵
道ヲ買收又ハ補償ヲスルト云フ場合ニ關シ
マシテ、其一ツハ現行法ニ於テハ總テ如
何ナル場合ニ於テモ、公債ノ額面ヲ以テ代
價ヲ交付スルト云フコトニナッテ居ルノヲ、
建設費以下ニ於テ買收補償ヲスル場合ニ
限シテハ公債ノ時價ヲ以テ交付スルコトノ
途ヲ開カントスル、其二ニハ營業ノ實際
ノ狀況ニ應ジテ、法律デ決メラレテアル所
ノ買收價額ノ五分以内ヲ割曾ヲシテ與ヘル
コトガ出來ルト云フ途ヲ開クコト、又其三
ニハ現行法ニ於テハ未開業ノ線路ヲ交付
公債ヲ以テ買收スルコトノ規定ヲ缺イテ居
ルノデアリマスガ、必要ニ應ジテ未開業ノ
線路ト雖モ交付公債ヲ以テ買收スルト云フ
コトノ規定ヲ設ケヤウトスルコト以上大
要申シタ所ノ四ツノ點ニ於テ、現在ノ社會ノ
必要ニ應ジテ改正ヲ加ヘヤウト云フコトガ、
本案ノ骨子トナッテ居ルノデアリマシテ、軌
道法ニ於テハ右地方鐵道ニ付テ申シタ所ノ
各箇條ヲ準用致シ、又非訟事件手續法ニ付
テハ只今申述ベタ後配株ナルモノヲ認メ
ル結果トシテ、必要ナル所ノ手續規定ヲ加
ヘントスルノガ其要領デアリマス、委員會
ニ於テハ極メテ愼重ナル審議ヲ遂ゲラレタ
末ニ、全會一致ヲ以テ三案共ニ原案ノ通リ
ニ可決セラルベキモノナリト議決セラレタ
ノデアリマス、此段御報告申上ゲマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=95
-
096・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 質疑ノ通告ガアリ
マス、之ヲ許シマス牧山耕藏君
〔牧山耕藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=96
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097・牧山耕藏
○牧山耕藏君 私ハ只今上程サレマシタ議
案ニ關聯致シマシテ一言御尋ヲ致シタイト
思フノデアリマス、近來鐵道ニ關スル事故
ガ頻々トシテ起リマスルコトハ洵ニ遺憾デ
アリマス、只今私共ノ知リ得タル情報ニ依
リマスレバ本日ノ午後零時二十分頃、富
海、戶田間ノ姥石隧道ニ於テ、下關發急行
列車ガ〓覆ヲシテ、多數ノ死傷者ヲ出シタ
ト云フコトデアリマス、新間社ニ達シタル
情報ニ依リマスレバ其數ハ二百餘名ト云
フコトデアリマスガ、果シテ其數ガ本當デ
アルカト云フコトモ詳細ニ承リタイト思フ
ノデアリマス、此〓覆ノ原因ガ從業者ノ怠
慢デアリマシタカ、或ハ設備ノ不完全ナ爲
デアリマシタカ、其原因竝ニ死傷者ノ數、其
職業、氏名、遭難ノ實情、又遭難者ニ對ス
ル醫療救護ノ方法ニ付テモ、政府ハ如何ナ
ル處置ヲ御執リニナッテ居ルノデアリマス
カ、此機會ニ於テ詳細ナル御說明ヲ鐵道大
臣ヨリ伺ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=97
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098・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 只今御質問ノ鐵
道ノ事故ニ付テ御答ヲ致シマス、洵ニ遺憾
ナ出來事デゴザイマスルガ、今朝下關ヲ十
時半ニ出マシタ急行列車ガ、午後零時三十
分頃ニ富海、戶田驛間ニ於テ機關車ガ脫線
ヲ致シマシタ、隨テ客車六輛ダケガ傾斜ヲ
致シタノデアリマス、傾イタノデアリマス、
而シテ乘客ガ六名ダケ輕傷、輕微ナ傷ヲ負
ウテ居リマス、職員ノ機關手一名、助手一
名ガ重傷、同ジク助手一名輕傷、此脫線ノ
原因ハ調査中デゴザイマスガマダ報道ガ
參リマセヌ、出來事ハ今日ノ零時三十分頃
ノ出來事デアリマス間モナク報告ガ到著
致シマスモノト只今之ヲ待チツヽアル次第
デアリマス、列車ノ開通ハ勿論、負傷者ノ
手當等ニ付テハ十分ニ當局者ハ努力ヲ致
シテ居ル次第デアリマス、左樣御承知ヲ願
ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=98
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099・牧山耕藏
○牧山耕藏君 小川鐵道大臣ハ鐵道建設ノ
事ニ付テハ非常ニ御熱心デアリマスガ、改
良ノ事ニ對シテハ怠慢デアルト云フ非難ヲ
屡、受ケテ居ラルヽヤウデアリマス、其列車
〓覆ノ原因ガ何レニアルカハ只今詳細ニ
知ルコトハ出來ナイノデアリマスガ、近頃
頻々トシテ起ル鐵道ノ事故ニ鑑ミテ、鐵道
大臣ハ更ニ改良ノ方面ニ向テ、一段ノ努力
ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘラレ
ナイカト云フコトニ付テ、鐵道大臣ノ御答
辯ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
〔國務大臣小川平吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=99
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100・小川平吉
○國務大臣(小川平吉君) 御答ヲ致シマス
ガ、只今牧山君ノ御述べニナリマシタ事ヲ
時々耳ニ致シマスガ、ソレハ大變ナ間違デ
アリマス、先達當院ヲ通過致シマシタル豫
算ニ付テ御覽ニナリマシテモ明ナル通リ、
此改良事業ノ中運送ノ正確、敏速、安全ヲ
保ツト云フコトニ付キマシテハ前內閣時
代ヨリモ私ノ計畫ノ方ガ改良費ヲ多ク使ッ
テ居リマス卽チ線路ヲ取替ヘル費用、或
ハ橋梁ノ架換、若クハ電氣ノ設備ノ安全信
號ニ對シテハ、以前ノ計畫ヨリモ金ヲ殖シ
テ居ルノデアリマス、故ニ此點ニ付テハ一
部ノ人ハ全ク誤解ヲシテ居ルノデアリマ
ス是ハ豫算ノ上ニ明瞭ニ現レテ居リマス
カラ御覽ニナレバ能ク分ルコトヽ思ヒマ
ス(拍手)但シ改良費ノ少クナリマシタ所以
ハ數年前ノ好景氣時代ニ於テ非常ニ大キ
ナ計畫ヲ立テヽ居ッタノデアリマス、旅客
モ貨物モ一割以上位增加スルト云フ勘定ヲ
以テ非常ニ大キナ計畫ヲ立テヽ居ッタ、或
ハ操車場ノ途方モナイ大キナモノヲ造ル
停車場ノ大變ナモノヲ造ル或ハ車輛ノ如
キモ大變ナ車ト云フモノヲ拵ヘル計畫ヲ立
テヽ居シタ、然ルニ此經濟界ノ事情ガ御承知
ノ通リデアリマシテ一割以上ト思ヒマシ
タ旅客貨物ノ增加ノ割合ガ五分位ニナッテ
シマッタ、隨テ列車ノ數モサウハ要ラナイ
操車場ノ大キナモノモ必要ガナイ、停車場
モ亦其通リト云フコトニナリマシタカラ
此旅客、貨物ノ增加ノ實際ノ狀況ニ應ズル
ダケノ改良計畫ヲ縮メタノデアリマス或
ハ繰延ベタモノモアリマス、是ガ爲ニ金高
ガ減ッタノデアリマシテ、決シテ旅客貨物
ノ輸送上ノ正確、安全、敏速、斯ウ云フコ
トニ付テハ以前ニ較ベマシテ優ッテ居ル次
第デアリマシテ、少シモ劣ッテ居リマセヌ、
ドウゾ左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=100
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101・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 質疑ヲ終リマシ
タ討論ニ入リマス工藤鐵男君
〔工藤鐵男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=101
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102・工藤鐵男
○工藤鐵男君 先刻若宮委員長カラ報告ニ
ナリマシタ地方鐵道改正法案竝ニ外二件デ
アリマス、本案ニ付キマシテハ其内容ハ
委員長ヨリ既ニ報告致シマシタ、吾々同志
ハ此地方鐵道法ノ審議ニ當ッテ最モ注意致
シマシタル點ハ現内閣成立以來、我ガ帝
國ノ國有鐵道政策ヲ實行スルニ當ッテ、極メ
テ大切ナル所ノ我ガ鐵道方針ト云フモノ
ガ、動モスルト云ウト蹂躪セラレテ居ル點
ヲ發見シタノデアリマス、卽ヲ我ガ帝國ノ
鐵道政策ハ、申ス迄モナク鐵道國有法竝ニ
鐵道敷設法ニ依テ明白ニ致サレテ居リマ
ス、隨テ此鐵道國有法竝ニ鐵道敷設法ノ立
法ノ精神カラ考ヘマスレバ、現内閣ハ成立以
來地方鐵道ニ對シテ濫ニ免許ヲ與ヘタト云
フコトノ事實ヲ發見シタノデアリマス元
來我國ノ鐵道政策ハ國策トシテ極メテ大
切ナモノトシテ鐵道國有ヲ斷行シテ居ル
面シテ此鐵道政策ハ、申ス迄モナク國有ト致
スニ依テ軍事上或ハ連絡上、或ハ又運賃
ノ低下、竝ニ經費ノ節減等、而シテ其及ボス
所ハ文化ノ普及ニ、產業ノ上ニ、大ナル影
響ガアルノデアリマス、鐵道國有ハ斯ノ如
クニシテ制定セラレ、之ヲ國策トシテ實行
スル所ニ、我ガ鐵鐵政策ノ使命ガアルノデ
アリマスカラ、玆ニ鐵道國有政策ヲ斷行シ
タ、多大ナル國家ハ犠牲ヲ拂シテ之ヲ採用致
シ、而シテ又更ニ鐵道敷設法ヲ制定致シ
テ、帝國ノ鐵道ヲ完成スル爲ニ、政府ノ敷
設スベキ所ノ豫定線路ト云フモノヲ別表
1-卽チ國有鐵道ヲ完成スルガ爲ニ、鐵
道敷設法ヲ吾々ハ制定致シテ居ッテ、帝國鐵
道網ノ理想ヲ玆ニ現シテ居ルニ拘ラズ、此
豫定線路ノ大部分-大部分トハ申シマセ
ヌケレドモ、多クハ現內閣ニ依テ濫ニ民間
ニ之ヲ許可スルト云フコトハ卽チ私共ハ
委員會ニ於テ警告ヲ致シマシタル「現內閣
ノ地方鐵道及軌道ノ濫許ハ鐵道國有法ノ精
神ニ背反スルモノト認ム、仍テ特ニ將來深
甚ナル注意ヲ拂フコト」ト云フコトハ卽チ
是デアリマス、政府ヨリ提出致シタル所ノ
鐵道許可ニ關スル材料ニ依テ見テモ、私共
ハ只今申上ゲマシタル所ノ濫ニ免許ヲ與ヘ
タル形跡ガアリマス、殊ニ私有鐵道ト致シ
マシテハ國有鐵道ノ精神ヲ蹂躪スルヤウ
ナ線、或ハ黨勢擴張ノ爲ニ、或ハ利權ノ財
源ノ爲ニ、之ヲ許シタト云フコトノ疑ハ澤
山アルノデアリマス、而シテ此鐵道ヲ許ス
ニ付テハ省内ニ於キマシテ幾多ノ議論ガ
アッタガ、此事ヲ掌ッテ居リマス所ノ官吏モ
不當ニ轉任セラレ、若クハ種々ナル所ノ手
段ニ依テ、其地位ヲ去ラシメタト云フコト
ノ事實モアルノデアリマス、委員會ニ於テ
:小川鐵道大臣ガ屢〓私共ニ答辯ヲ致シマシ
タ私有鐵道デアラウガ何ダラウガ、鐵道
ハ架ケサヘスレバ宜イデナイカト云フ答辯
デアリマシタ、然レドモ國有鐵道法竝ニ敷
設法ニ依テ、國家ノ爲スベキ所ノ鐵道ハ
旣ニ定ッテ居ルト云フコトデアリマスレバ、
徒ニ民間ノ資本デヤルト早イカラト云フ譯
ニハ參リマセヌ、卽チ運賃ノ關係、軍事上
ノ關係、竝ニ經費ノ關係、地方產業ノ振興
等ニ對シテ、之ヲ主ナル標準トシテ國有鐵
道政策ヲ執ッテ居ルノデアリマスカラ、小川
鐵道大臣ハ早ク架ケレバ宜カラウ、早カラ
ウ惡カラウト云フコトニ歸著シタ場合ニ於
テハ斷ジテ私共ハ現政府ノ方針ニ向ッテ
贊成スルコトハ出來ナイノデアリマス次
ニハ私共ノ意見トシテ警告ノ第二「事務簡捷
ノ爲メ社債募集及他事業兼營等ヲ不要認可
事項ト致シタルハ地方鐵道ノ經營ヲ放漫
ナラシムル虞アルヲ以テ、特ニ、嚴重ナル監
督權ヲ行使スル事」此鐵道敷設法中改正ニ
於テ、今日迄監督上必要ナリトシテ認可ヲ
要求シテ居リマシタ所ノ種々ナル取扱ヲ變
更致シタノデアリマス、卽チ法規ニ改正ヲ
加ヘタノデアリマス、政府ノ言フ所ハ事務
簡㨗ト云フコトデアリマス、事務簡㨗ハ我
黨モ會テ政務ノ上ニ斷行致シ、今日ニ至ッテ
モ事務ハ煩雜ニ流シテ、官僚ノ弊ヲ匡正スル
コトニ付キマシテハ異議ノナイ所デアリマ
ス、然レドモ現内閣ノ如ク放漫ナル政治、混
亂セル所ノ政治ニ流レツヽアルヤウナ狀態
ヲ見マシテハ此監督權ヲ寬大ニスル所ニ
官紀紊亂問題ガ起リ、綱紀紊亂問題ガ起リ
マスカラ、現內閣ノ如ク私有鐵道ヲ濫ニ許
ス場合ニ於キマシテハ、斷ジテ此監督權ハ
嚴正ニ行使セラレナケレバナラヌト私共ハ
信ジテ居ルノデアリマス、而シテ吾々ガ社
債竝ニ兼業ニ付キマシテノ條件ヲ付シタル
所以ノモノハ何デアリマス政府ノ吾々ニ
示シタル所ノ參考材料ニ依ルト鐵道、軌
道ノ會社ノ數ハ五十二、而シテ其拂込金ハ
十二億一千八百九十六万二千四百四十圓ニ
ナッテ居リマス、十二億一千八百万圓以上デ
アリマス、此拂込金ニ對シマシテ、社債ハ
幾許アルカト申シマレバ七億三百七万二
千圓餘アルノデアリマス、シテ見マスレバ
拂込額ノ約六割ト云フモノガ、社債ニ依テ
會社ガ經營セラレテ居ルト云フコトデアリ
マスレバ此社債ニ對シマシテ自由發行ヲ
許スト云フコトニ相成ルト云フト、會社ソ
レ自身ノ經營ガ放漫ニ流ルヽノデアリマ
ス、更ニ又他ノ事業ノ兼營デアリマス、政
府ノ提出致シマシタル所ノ他ノ事業、鐵道
會社、軌道會社ガ他ノ事業ヲ經營スルコト
ニ付キマシテ調査材料ヲ求メマシタル所
ガ、三百七十六ノ會社ニ於テ、他ノ事業ヲ
兼營シテ居ル所ノ興業費ナルモノハ幾ラ
アルカト申シマスレバ十九億七千三百
七十六万一千圓アルノデアリマス斯ノ如
ク兼營ノ仕事卽チ副業ノ方ガ其資本莫大
デアリマシテ、隨ノ此事業ノ中ニハ種々ナ
ルモノガアリマス若シ公益上ヨリ會社ニ
向ッテ敷設ヲ認メ、之ヲ免許シ、而モ此本
業ヨリモ寧口副業、兼業ニ向ッテ會社ガ多ク
ノカヲ入レルト云フコトデアリマスレバ
交通上ニ對シ直接ノ關係アルモノハ別ト致
シマシテ、然ラザルモノニマデ自由兼業ヲ
許スト云フヤウナ場合ニ於テハ遂ニ私有
鐵道ノ經濟ヲ混亂セシメ此經營ヲ放漫ナ
ラシムル所ノ虞ガアルノデアリマス、故ニ
私共ハ先刻申上ゲマシタ通リ、事務管掌其
他ニ付キマシテハ固ヨリ反對ハ致シマセヌ
ケレドモ、社債募集ノ如キ兼業ノ如キモノ
ハ不要認可スルコトハ洵ニ將來禍ヲ貽ス
モノデアルト云フコトヲ考ヘルノデアリマ
ス、此點ニ關シ政府ハ縱令此改正案ニ付テ
ハ吾々ハ修正ヲ試ミマセヌケレドモ、此監
督權ニ關シテハ十分嚴重ニシテ貰ヒタイト
云フノガ其趣旨デアリマス以上ノ如キ趣
旨ニ依テ私共ハ本案ハ大體ニ於キマシテハ
民間鐡道業者ノ希望モアリ、又政府モ他年
之ヲ調査致シマシタ經過ニ鑑ミテ贊成ヲ致
シマス、ケレドモ、現內閣ノ如ク行政機關
ノ運用ガ動トモスルト放漫ニ流レ、黨政ト
國政トヲ混淆スルノ虞アル現内閣ニ向ッテ
ハ斯ノ如キ警告ヲ發シテ之ヲ要求スルノ
ハ最モ時宜ニ適シタモノナリト信ズル者デ
アリマス私ハ斯樣ナ見地カラ此警告ヲ與
ヘテ之ニ贊成致シマス而シテ現内閣ハ國
有鐵道ノ精神ヲ尊重シ、而シテ國有鐵道ハ
我ガ帝國ノ鐵道政策ノ根幹デアリマスルカ
ラ此國有鐵道ノ精神ヲ實行スルガ爲ニ、幾
多ノ私有鐵道ヲ買收シテ居ルノデアリマ
ス、若シ私有鐵道ノ經營竝其經濟的基礎ガ
動搖シタ場合ニ於キマシテハ他日國有鐵
道ノ系統土已ムヲ得ズ之ヲ買收スルモノト
致シマシテモ、國家ガ被ル所ノ損害ノ大ナ
ルモノアルヲ恐レ茲ニ豫メ之ニ對スル所
ノ用意ハ必要ナリト致シ、玆ニ本警告ヲ發
シテ贊成ノ意ヲ表スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=102
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103・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 議題トナッテ居リ
マスル三案ヲ一括シテ採決致シマス、三案
ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=103
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104・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナイト認〓
マス、御二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=104
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105・原惣兵衞
○原惣兵衞君 直ニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可
決セラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ-
、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=105
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106・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郎君) 御異議ナイト認メ
マス、仍テ直ニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
地方鐵道法中改正法律案
第二讀會(確定議)
軌道法中改正法律案第二讀會(確定議)
非訟事件手續法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=106
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107・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ三案共委員
長報告通り可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=107
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108・原惣兵衞
○原惣兵衞君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程ヲ變更シヽ鶴
見祐輔君提出、對米對支外交ニ關スル緊急
質問ノ趣旨辯明ヲ爲サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=108
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109・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 原君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=109
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110・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナイト認メ
マス仍テ日程ハ變更セラレマシタ、但シ內
閣總理大臣兼外務大臣田中義一君ハ已ムナ
キ差支ノ爲ニ出席サレマセヌ鶴見君趣旨
辯明ヲサレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=110
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111・鶴見祐輔
○鶴見祐輔君 外務大臣ノ出席マデ此趣意
辯明ヲ保留致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=111
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112・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 保留ニ決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=112
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113・原惣兵衞
○原惣兵衞君 引續キ日程ニ這入ラレンコ
トヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=113
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114・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) サウ致シマス、日
程第十六、衆議院議員選擧法中改正法律案
ノ第一讀會ヲ開キマス提案者ノ趣旨辯明
ヲ求メマス-二見甚〓君
第十六衆議院議員選舉法中改正法律
案(二見甚〓君外一名提出)第一讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第七十五條第四項ヲ削ル
第七十九條第一項及第五項中「其ノ闕員
ノ數同一選擧區ニ於テ二人ニ達スルヲ
待チ最後ニ」ヲ削リ同項中「第二項」ヲ「第
一項」ニ、「第三項」ヲ「第二項」ニ改ム
附則
本法ハ昭和四年四月十五日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行ノ際現ニ存スル闕員ニ付テハ本
法施行ノ日ヨリ二十日以内ニ補闘選舉ヲ
行ハシムヘシ
〔二見甚〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=114
-
115・二見甚郷
○二見甚〓君 只今議題ニナリマシタ衆議
院議員選舉法中改正法律案ノ提案ノ理由ヲ
說明致シマス現行選擧法ニ於キマシテハ
議員ニ缺員ヲ生ジマシテモ、其缺員ノ數ガ
同一選擧區ニ於キマシテ二人ニ達スルマデ
ハ補關選擧ハ之ヲ行ハズ、又再選擧ヲ行フ
ベキ事由ガ議員ノ任期終了前六箇月以內ニ
生ジマシタ場合ニモ、再選擧ハ之ヲ行ハナイ
コトニナッテ居リマス、本案ハ此二點ニ關シ
マシテ之ヲ改メテ、議員ガ缺員トナリマシ
夕場合及再選擧ノ事由ガ生ジマシタ場合ニ
ハ、速ニ補闘選擧又ハ再選擧ヲ行ヒ、以テ常
ニ議員ノ定數ヲ補充シ、堪ヘズ輿論ヲ政治
ニ反映セシメルト云フノガ其眼目デアリマ
ス、帝國議會又ハ地方議會ノ議員ノ定數
ハ國民又ハ地方〓體、住民ノ意思ヲ議會
ニ代表セシメ輿論ヲ政治ニ反映セシムル
ニ付キ、最モ適當ト認メラルヽ程度ニ於テ
之ヲ定メタモノト考ヘマス、隨テ議員ガ缺
員トナリマシタ場合ニハ、速ニ其補充ノ途
ヲ講ジ、常ニ議員ノ定數ヲ充實シ、以テ議
員定數ヲ定ムル所ノ注意ヲ徹底セシムルノ
ガ至當デアリマス、此趣旨ニ基イテ府縣制
竝ニ市制及町村制ハ闘員補充制ヲ採ッテ居
リマスガ單リ衆議院議員選擧法ノミハ同
一ノ選擧區ニ於テ、闕員二人ニ達スルマデ
ハ絕對ニ補闘選擧ヲ許サナイコトニナッテ
居リマス(「議長定數ヲ闕イテ居」ト呼ヒ
其他發言スル者アリ)此立法理由ノ第一ハ、
中選擧區制ヲ採用致シマシタ結果、選舉區
ガ著シク擴大シ選擧ノ煩累ヲ及ボス區域
ガ擴ガルコトヽナリマシタガ爲ニ、成ベク
補關選擧ニ伴フ煩累ヲ避ケタイト云フ趣旨
カト考ヘマス、併ナガラ選擧ノ煩累ニ藉口
シテ國民參政權ノ要素タル選擧權ノ行使
ヲ制限スルコトノ不當ナルコトハ申迄モナ
ク殊ニ中選擧區制ヲ採用シタル爲ニ補
關選擧ノ煩累アリト致シマシタナラパ是
卽チ中選擧區制其モノヽ缺點ト申ス外ナイ
ノデアリマス、立法理由ノ第二ニハ各選
擧區ハ必ズ三人乃至五人ノ議員定數ヲ有
シ單ニ一人ノ關員ヲ生ジタルダケデハ實
際上代議制度ノ運用ニ、直ニ支障ヲ生ズル
虞ナシト云フコトノヤウデアリマスガ同
一選擧區デ缺員一名ノ場合ハ、代議制度ノ
運用ニ支障ナシ、二人ニ至レバ支障ヲ生ズ
ルト言フガ如キハ洵ニ無意義ノコトデア
リマス、議員ハ一團トナッテ一個ノ衆議院ヲ
組織スルノデアリマスカラ、憲政運用上ノ
補闕選擧ノ良否ヲ決スルニハ衆議院ノ議
員定數ヲ基調トシテ考査スベキモノデ、各
選擧區ニ於ケル議員ノ定數ヲ本位トスベキ
モノデナイト云フコトハ申ス迄モナイコ
トデアリマス從來ノ例ニ依リマスト、衆
議院ハ一箇年凡ソ十名位ノ割合ヲ以テ缺員
ヲ生ジテ參シテ居リマス、隨テ現議員ノ任期
終了マデ缺員ノ補充ヲシナイデ行クコトニ
致シマスルト、任期ノ終了マデニハ彼此レ
四十名ノ缺員ヲ生ズル譯デアリマス而シ
テ此缺員ハ必シモ各政堂間ニ比例シテ生ズ
ルモノデハナイノデアリマス缺員ノ生ズ
ル最大原因ハ議員ノ死亡デアリマスガ、政
黨政治ニ於テ政黨ノ勢力ガ政治關係以外ノ
自然ノ事實ニ依テ左右セラルヽコトハ甚
ダ不都合デアリマス、殊ニ朝野兩黨ノ勢力
ガ非常ニ接近致シテ居リマス場合ニハ假
令一人ノ議員ト雖モ政治上重大ナル關係ヲ
有スルノデアリマスガ二十人三十人ト云
フヤウナ多數ノ關員ガ政治關係以外ノ原因
カラ或ハ甲黨ニ生ジ或ハ乙黨ニ生ズル
ト云フヤウナコトニナリマスルト政治關
係以外ノ原因ニ依テ、政界ニ變動ヲ生ズル
結果トナリマスカラ、政黨政治ノ運用上見
逃スコトノ出來ナイ一大缺點ト申サネバナ
リマセヌ、以上ハ補闕選舉ニ關シテ申シタ
ノデアリマスガ、再選擧ヲ行フベキ事由ガ、
議員ノ任期終了前六箇月以内ニ生ジタル場
合ニ於テ、再選舉ヲ行ハシメズト云フ規定
モ、亦殆ド同様ノ不都合ナル結果ヲ生ズル
ノデアリマスカラ、此點モ同時ニ改正スル
ノガ至當デアルト考ヘマス提案ノ理由ハ
大體以上ノ通リデアリマス、私ハ多數ノ諸
君ノ御贊成ヲ得マシテ、本案ノ通過ヲ切望
致スノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=115
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116・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本案ハ床次竹二郞君外十九
名提出ノ衆議院議員選舉法中改正法律案ノ
委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=116
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117・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=117
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118・清瀬一郎
○副議長(〓瀨一郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、本日ハ
最早定刻ヲ過ギマシタカラ之ヲ以テ散會
ヲ致シマス次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通
知致シマス
午後六時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005613242X03419290316&spkNum=118
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