1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五年五月三日(土曜日)
午後一時十六分開議
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議事日程 第七號
昭和五年五月三日
午後一時開議
第一 盜犯等の防止及處分に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 北海道土功組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 市制中改正法律案(末松偕一郎君外三十四名提出) 第一讀會
第五 町村制中改正法律案(末松偕一郎君外三十五名提出) 第一讀會
第六 北海道會法中改正法律案(末松偕一郎君外三十二名提出) 第一讀會
第七 市制中改正法律案(若宮貞夫君外十三名提出) 第一讀會
第八 町村制中改正法律案(若宮貞夫君外十三名提出) 第一讀會
第九 北海道會法中改正法律案(若宮貞夫君外十三名提出) 第一讀會
第十 借家法中改正法律案(小久江美代吉君外二名提出) 第一讀會
第十一 違警罪即决例中改正法律案(一松定吉君外二名提出) 第一讀會
第十二 行政執行法中改正法律案(一松定吉君外二名提出) 第一讀會
第十三 恩給法中改正法律案(神部爲藏君外九名提出) 第一讀會
第十四 恩給法中改正法律案(東武君外六名提出) 第一讀會
第十五 治安警察法中改正法律案(後藤亮一君外八名提出) 第一讀會
第十六 治安警察法中改正法律案(安藤正純君外六名提出) 第一讀會
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一 國務大臣の演説に對する質疑(前會の續)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一昨二日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
左ノ如シ
盜犯等ノ防止及處分ニ關スル法律案
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
牧野法案
提出者
八田宗吉君中島鵬六君
藤井達也君大石倫治君
小野寺章君
馬產ノ保護ニ關スル建議案
提出者
八田宗吉君中島鵬六君
藤井達也君大石倫治君
小野寺章君
(以上五月一日提出)
木材類ノ鐵道貨物運賃引下ニ關スル建議
案
提出者太田信治郞君
肝屬川治水工事ニ關スル建議案
提出者永田良吉君
志布志、古江間鐵道敷設速成ニ關スル建
議案
提出者
永田良吉君東郷實君
津崎尙武君
(以上五月二日提出)
大雪山國立公園設定ニ關スル建議案
提出者淺川浩君
寒河江、富澤間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者〓水德太郞君
新宮、若櫻間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者土井權大君
部落林野制制定ニ關スル建議案
提出者土井權大君
兵庫縣宍粟郡及神崎郡ノ聯隊區復舊ニ關
スル建議案
提出者土井權大君
人造絹絲織物消費稅撤廢ニ關スル建議案
提出者栗原彥三郞君
鹽專賣法撤廢ニ關スル建議案
提出者
栗原彥三郎君中村繼男君
絹綿交織織物ノ消費稅撤廢ニ關スル建議
案
提出者栗原彥三郞君
(以上五月三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
農業政策ニ關スル質問主意書
提出者
土井權大君胎中楠右衞門君
(以上五月一日提出)
地方財政ノ整理緊縮ニ關スル質問主意書
提出者船田中君
醫藥制度ノ大缺陷ニ關スル質問主意書
提出者鈴本梅四郞君
健康保險ノ被保險者診療ニ關スル質問主
意書
提出者鈴木梅四郞君
(以上五月三日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去一日內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令アリ
タル旨ノ通牒ヲ受領セリ
外務省歐米局長堀田正昭
外務省條約局長松永直吉
外務省所管事務政府委員被仰付
大藏書記官飯田九州雄
大藏技師矢部規矩治
大藏省所管事務政府委員被仰付
一去一日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第六部選出
豫算委員三宅磐君(飯塚春太
郞君補關)
第六部選出
決算委員渡邊泰邦君(佐藤啓君
補闕)
第八部選出
豫算委員西尾末廣君(片山哲君
補闕)
第九部選出
決算委員小俣政一君(寺島權藏
君補闕)
一去一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
市町村義務〓育費國庫負擔法中改正法律
案(政府提出)委員
委員長武內作平君
理事
山枡儀重君森平馬君
倉元要一君寺田市正君
輸出補償法案(政府提出)委員
委員長岡崎久次郞君
理事
中亥歲男君丹下茂十郞君
賠償金特別會計法中改正法律案(政府提
出)外一件委員
委員長櫻井兵五郞君
理事
海野數馬君庄晋太郞君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)委員
委員長永田善三郞君
理事
松尾四郞君鈴木吉之助君
北海道土功組合法中改正法律案(政府提
出)委員
委員長一柳仲次郞君
理事
手代木隆吉君三井德寶君
汚物掃除法中改正法律案(政府提出)委員
委員長中馬興丸君
理事
大里廣次郞君本田義成君
一去一日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府
提出)
則元由庸君服部英明君
山本平三郞君大島要三君
藍川〓成君堀內良平君
宮澤裕君中山貞雄君
熊谷巖君
昭和三年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外六件
横山金太郞君松本忠雄君
石塚讓君佐藤喜八郞君
中島琢之君戶部良祐君
高橋欽哉君當眞嗣合君
小村俊一君水上齋之助君
松實喜代太君瀬一二君
鈴木梅四郞君高草美代藏君
向井倭雄君三尾邦三君
平井信四郞君中田験郞君
一去一日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
豫算委員
理事猪野毛利榮君(理事植原悅二
郞君五月一日委員辭任ニ付
其ノ補闘)
決算委員
理事小俣政一君(理事寺島權藏
君四月三十日委員辭任ニ付
其ノ補闕)
一去一日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第二部選出
豫算委員鳩山一郞君
第三部選出
豫算委員池田敬八君
第四部選出
豫算委員海老澤爲次郞君
第五部選出
豫算委員前田米藏君
第七部選出
豫算委員八並武治君
第七部選出
豫算委員神部爲藏君
第九部選出
豫算委員植原悅二郞君
第二部選出
決算委員遠藤千元君
一去一日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
關稅定率法中改正法律案委員
辭任牧野良三君補闕瀧正雄君
北海道土功組合法中改正法律案委員
辭任工藤十三雄君補闕東條貞君
輸出補償法案委員
辭任鈴木英雄君補闕山崎猛君
辭任一柳仲次郞君補闕渡邊泰邦君
賠償金特別會計法中改正法律案外一件委
員
辭任櫻井兵五郞君補鬪北原阿智之助君
一昨二日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府
提出)委員
委員長大島要三君
理事
服部英明君中山貞雄君
昭和三年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外六件委員
委員長橫山金太郞君
理事
松本忠雄君高橋欽哉君
三尾邦三君平井信四郞君
一昨二日常任委員補開選擧ノ結果左ノ如シ
第二部選出
豫算委員守屋榮夫君(鳩山一郞
君補闕)
第三部選出
豫算委員栗原彥三郞君(池田敬八
君補闕)
第四部選出
豫算委員小峰滿男君(海老澤爲
次郞君補闕)
第五部選出
豫算委員名川佩市君(前田米藏
君補闕)
第七部選出
豫算委員遠藤千元君(八並武治
君補闘)
第七部選出
豫算委員澤田利吉君(神部爲藏
君補關)
第九部選出
豫算委員牧野良三君(植原悅二
郞君補闘)
第二部選出
決算委員古島宮次郞君(遠藤千元
君補闘)
一昨二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第八部選出
豫算委員西尾末廣君
第八部選出
決算委員櫻內辰郞君
一昨二日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
昭和三年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外六件委員
辭任松實喜代太君補闕志賀和多利君
輸出補償法案委員
辭任板谷順助君補闕上田孝吉君
辭任渡邊泰邦君補闕最上政三君
關稅定率法中改正法律案委員
辭任瀧正雄君補闕深澤豐太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス-御諮リ致シマス、第一部選出決算
委員岩本武助君、右常任委員辭任ノ申出ガ
アリマス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ガナケレバ
許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧
ヲ行ヒ御屆ケアランコトヲ望ミマス-大
植〓左衞門君病氣ニ付キ五月三日ヨリ五月
十三日マデ請暇ノ申出ガアリマス、許可ス
ルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ガナケレバ
許可致シマス--賠償金特別會計法中改正
法律案外一件、關稅定率法中改正法律案、輸
出補償法案ノ各委員長ヨリ本日本會議中
委員會ヲ開キタイトノ申出ガアリマス、之
ヲ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君). 御異議ナシト認メ
テ之ヲ許可致シマス-日程第一盜犯等
ノ防止及處分ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス、渡邊司法大臣
第盜犯等ノ防止及處分ニ關スル法
律案(政府提出、貴族院送付)第一讀會
盜犯等ノ防止及處分ニ關スル法律案
第一條左ノ各號ノ場合ニ於テ自己又ハ
他人ノ生命、身體又ハ貞操ニ對スル現
在ノ危險ヲ排除スル爲犯人ヲ殺傷シタ
ルトキハ刑法第三十六條第一項ノ防衞
行爲アリタルモノトス
-盗犯ヲ防止シ又ハ盗贓ヲ取還セン
トスルトキ
二兇器ヲ携帶シテ又ハ門戶牆壁等ヲ踰
越損壞シ若ハ鎖鑰ヲ開キテ人ノ住居
又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ
船舶ニ侵入スル者ヲ防止セントスル
トキ
三故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル
邸宅、建造物若ハ船舶ニ侵入シタル
者又ハ要求ヲ受ケテ此等ノ場所ヨリ
退去セザル者ヲ排斥セントスルト
キ
前項各號ノ場合ニ於テ自己又ハ他人ノ
生命、身體又ハ貞操ニ對スル現在ノ危
險アルニ非ズト雖モ行爲者恐怖、驚
愕、興奮又ハ狼狽ニ因リ現場ニ於テ犯
人ヲ殺傷スルニ至リタルトキハ之ヲ罰
セズ
第二條常習トシテ左ノ各號ノ方法ニ依
リ刑法第二百三十五條、第二百三十六
條、第二百三十八條若ハ第二百三十九
條ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ對
シ竊盜ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、
强盜ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ
有期懲役ニ處ス
一兇器ヲ携帶シテ犯シタルトキ
二二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シ
タルトキ
三門戶牆壁等ヲ踰越損壞シ又ハ鎖鑰
ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸
宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シ
タルトキ
四夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル
邸宅建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯
シタルトキ
第三條常習トシテ前條ニ揭ゲタル刑法
各條ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者
ニシテ其ノ行爲前十年內ニ此等ノ罪又
ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付三
囘以上六月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受
ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ
對シ刑ヲ科スベキトキハ前條ノ例ニ依
ル
第四條常習トシテ刑法第二百四十條前
段ノ罪若ハ第二百四十一條前段ノ罪又
ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ハ無期又ハ
十年以上ノ懲役ニ處ス
〔國務大臣子爵渡邊千冬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=5
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006・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邊千冬君) 盜犯等ノ防
止及處分ニ關スル法律案提出ノ理由ヲ御說
明致シタイト存ジマス
近時强竊盗又ハ家宅侵入者等ニシテ、生
命、身體、貞操等ニ對シ危害ヲ加ヘントス
ル者ガ續出致シマシテ、被害者ニ於テ臨機
ノ處置ニ依リ自ラ防衞ヲ致サナケレバ重
大ナル實害ヲ免ルヽコト能ハザル事例ガ少
シトセヌノデアリマス、然ルニ刑法正當防
衞ノ規定ハ其措辭ガ抽象的デアリマス爲
ニ、其適用ノ範圍ニ付テ解釋上ノ疑義ガア
リマシテ、被害者ニ於テ機宜ノ處置ニ依リ、
自衞ヲ全ウスルニ躊躇セザルヲ得ザル場合
ノアル憾ガアルノデアリマス、此ヲ以テ法
律上具體的ノ條件ヲ明示シテ、是等ノ場合
ニ於ケル防衛權ノ發動ヲ安固ニスル必要ガ
アルノデアリマス、又良民ガ盗賊又ハ侵入
者等ニ遭遇致シマス場合ニ、恐怖驚愕、
〓奮、狼狽等ノ結果、急迫重大ナル危險ノ存
否ニ對スル判斷力ヲ失ヒマシテ、殆ド無意
識ノ擧措ヲ敢テスルニ至ルコトノアリマス
ノハ、往々見ル所デアリマス斯ル場合ニ
於キマシテ、現行法ノ上ニ於テハ責任能力
ノ上カラ見デ、其罪ヲ罰セザルコトヲ得マ
スケレドモ、之ニ臨ムニ刑責ヲ以テスルノ
必要ガナイト云フコトヲ明ニシテ置クコ
トガ適當デアルト考ヘタノデアリマス、
是レ卽チ上記ノ諸點ニ關スル新ナル立法ヲ
必要ト認メタ所以デアリマス
次ニ從來ノ經驗ニ依リマスレバ、强盗、
竊盜犯人、殊ニ其常習犯人ハ、出獄後幾何
モナク其犯罪ヲ累行スルノヲ通例ト致スノ
デアリマシテ、社會ハ之ガ爲ニ重大ナル脅
威ヲ受ケテ居ルノデアリマス、此脅威ニ對
シ社會ヲ保護スルニハ、比較的長期ノ刑ヲ
課シテ、社會ヨリ犯人ヲ隔離スルト共ニ、
其改善ヲ圖ルコトヲ必要トスルノデアリマ
ス、然ルニ現行刑法運用上ノ慣例ニ於キマ
シテハ、是等ノ者ニ對スル課刑ガ輕キニ失
シ、短期間ニシテ常習性ノ保持者タルコト
明カナル者ヲ釋放スルノ已ムヲ得ザルニ至
リマシテ、社會防衞ヲ全ウスルコトハ出來
ナイヤウナ狀況デアルノデアリマス、之ガ
爲ニハ法律上其刑ヲ重クスル必要ガアルノ
デアリマス
以上ハ本案ヲ提出スル主ナル理由デアリ
やく、願クバ愼重ニ審議ノ上、御協贊ヲ與
ヘラレンコトヲ切望致スノデアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=6
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007・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 日程第二、右議案
ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=7
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008・岡本實太郎
○岡本實太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=8
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009・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)岡本君ノ動議ハ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=9
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010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマス-日程第
三、北海道土功組合法中改正法律案ノ第一
讀會ノ續ヲ開キマス委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長一柳仲次郞君
第三北海道土功組合法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
1北海道土功組合法中改正法律案(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和五年五月二日
委員長一柳仲次郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔一柳仲次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=10
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011・一柳仲次郎
○一柳仲次郞君 御付託ニナリマシタ北海
道土功組合法中改正法律案ノ委員會ニ於ケ
ル經過ト結果ヲ御報告致シマス委員會ハ
二囘開會致シマシテ、政府當局ノ提案ノ理由
ノ說明ヲ聽キ委員諸氏ヨリ質問應答ヲ重
ネ愼重審議ヲ致シマシタ結果、本案ハ全
會一致ヲ以テ可決サレタノデアリマス但
シ委員中ヨリ、本案ハ認ムルガ希望條件ヲ
附シタイト云フ御意見ガアッタノデアリマ
ス其希望條件ハ玆ニ朗讀致シマス
第六條改正ノ運用ニ際シテハ收穫ノ
豐凶經濟界ノ事情及組合員ツ實情等ヲ
考量斟酌シ處分ノ實行ヲ爲スヤウ組合
理事者ニ對シ相當ニ監督セラレンコト
フェニ
二、組合費ノ滯納者多キハ主トシテ土功
費負擔ノ過重ニ起因スルモノナルヲ以
テ之カ輕減ヲ圖ルヘク適當ノ措置ヲ講
セラレンコトヲ望ム
此二項ヲ附帶シテ決議サレタイト云フ御希
望ガアッタノデアリマス、採決ノ結果、遺憾
ナガラ少數ヲ以テ是ハ否決サレタノデアリ
マス、仍テ本案ハ原案其儘ニ總員一致ノ認ム
ル所トナッテ可決サレタノデアリ、マス、此段
御報告申上ゲマス、本會ニ於テモ速ニ御審
議ヲ御進メアランコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=11
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012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 討論ノ通〓ガアリ
マス-東條貞君
〔東條貞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=12
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013・東條貞
○東條貞君 本改正案ニ對シマシテ贊成ノ
意見ヲ申述べタイト存ズルノデアリマス
但シ此改正ハ土功組合ニ對シマシテ、公法
人ト致シマシテ完全ナル人格ヲ與ヘ、自ラ
滯納處分ヲ致シマスル所ノ權限ヲ與フルモ
ノデアリマシテ、之ニ依ッテ組合ノ經理ヲ致
シマスル上ニ、非常ニ都合ガ宜シイノデア
リマス一體土功組合ノ數ハ二百有餘アリ
マシテ、是ノ一箇年ノ歲入出ハ約一千万圓
デアリマス、然ルニ滯納額ハ百八十八万餘
圓ト承知ヲ致シテ居リマス、斯ノ如キ多額
ノ滯納ヲ生ジマスル原因ハ、決シテ組合員
ノ怠慢其他不都合ナル意思ニ原因ヲ致シテ
居ルモノデハナイノデアリマシテ、多數組
合ノ中ニハ、非常ナ窮境ニ陷ヲテ居ル者モ少
カラズアルノデアリマス、其原因ヲ考ヘマ
スノニ、國ガ頻リニ水田ノ造成ヲ奬勵致シ
マツタ場合、工事ノ設計及農事上ニ於ケル
技術上ノ調査ガ甚グ杜撰デアリマシテ、許
可スベカラザルモノニ許可ヲ與ヘ、認可スベ
カラザルモノニ認可ヲ與ヘマシタ事實ガア
ルノデアリマシテ、此事實ハ旣ニ當局ニ於
テモ認メラレマシテ、十八ノ組合ニ對シマ
シテハ、旣ニ相當ノ整理ヲ致サレタノデア
リマス、此多額ノ滯納ノ原因ガ、單ニ組合員
ノ怠慢ニ因ルニ非ザルモノニ對シマシテハ、
單ナル組合經理ノ都合上、滯納處分ヲ属行
致サレマスルナラバ、組合ニ依リマシテハ
組合員ノ非常ナル不利益迷惑ヲ釀スノデア
リマス、北海道ニ移住致シマシテ、苦心慘
憺土地ヲ拓キ、漸ク水田ノ造成ガ出來ルヤ
ウニ相成リマシテ、此處デ子孫將來ノ生活
ノ基礎ヲ漸クニ得マシタ所ノ多數ノ小ナル
農民ガ、此組合經理ノ都合上ト云フ僅ナル
理由ノ下ニ、其土地ヲ資本家ノ爲ニ、滯納
處分ニ依ッテ奪取サレテシマヒマス虞ガ少
カラズアルノデアリマス、隨テ此法ノ運用
ニ際シマシテハ、是等ノ事情ヲ能ク斟酌ヲ
致シマシテ、眞ニ怠慢ニ因ルモノデアルカ、
又實際ニ組合ノ負擔ガ非常ユ重ク、到底耐
ヘラレナイ爲ニ滯納ヲ生ジテ居ルモノデア
ルカト云フコトヲ、能ク考慮ヲ致シマシタ
上ニ於テ處分ヲ實行致サンケレバ、遂ニ角
ヲ矯メントシテ牛ヲ殺スト云フ結果ニ陷ル
ノデアリマス
更ニ斯樣ナ多數ノ滯納ヲ生ジマス原因ヲ
除クコトガ必要デアリマスガ、其原因ハ
前來申述ベマシタ通リ、企業ノ最初ニ於キ
マシテ計畫ガ杜撰デアリ、又之ヲ審査致シ、
調査致シマシテ、サウシテ許可ヲ與ヘマス
ル國ニ於テモ、其不成績ノ一半ノ責任ヲ持
タンケレバ相成ラヌノデアリマス、且ツ內
地ノ府縣ニ實施サレテ居リマス開墾助成法
ニ於キマシテハ、一段步當り平均七十圓ノ
補助ヲ與ヘテ居ルノデアリマスケレドモ、
北海道ノ土功組合ニ於キマシテハ、昭和元
年度以前ノ分ニ對シテハ僅ニ十圓六十九
錢昭和二年以後ノ分ニ對シマシテハ現
在ニ至ルマデ一段步平均三十三圓八十錢
內地ニ於ケル府縣ノ開墾助成法ニ依リマス
ル補助ノ半バニモ達シナイ補助シカ受ケテ
居ナイ、卽チ國ノ保護ガ薄イコト、計畫ノ
杜撰、而シテ此計畫ノ杜撰ハ單ニ組合ノミ
ノ責任ニ非ズシテ、設計其他ヲ調査シ、之ニ
認可許可ヲ與ヘマシタ政府當局ニモ、其一半
ノ責任ガアルノデアリマスカラ、是等ノ點
ヲ能ク考慮ヲ致シマシテ、斯樣ナ滯納ノ生
ジマスル原因ヲ除クベク、適當ナル措置ヲ
講ズルコトガ必要ナノデアリマス、卽チ委
員會ニ於テ希望條件ヲ付ケマシタ所ノ第二
ノ條件、之ニ付キマシテ組合ノ負擔ヲ輕減
スベク、適當ナル措置ヲ講ズルコトニ御努
力ヲ願ハンケレバ相成ラヌト共ニ、此法ノ
實施ニ當リマシテモ、能タ是等ノ關係ヲ考
慮致シマシテ、內地カラ北海道ニ移リ、漸
クニシテ是マデニ成功ヲ致シタ者ヲ、此不
況ノ場合ニ、唯、僅ナル滯納ノ爲ニ其土地ヲ
失ハシメテ、慘憺タル狀態ニ陷レマセヌヤ
ウニ、適當ナル運用上ノ注意ガ必要ナノデ
アリマス、此點ニ對スル希望ヲ述ベマシテ、
本案ニ對シテノ贊成意見ヲ申述ベタ次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=13
-
014・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=14
-
015・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)御異議ナシト認メ
マス本案ノ第一一讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=15
-
016・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=16
-
017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キマス
北海道土功組合法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=17
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018・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マリ、第三讀會ヲ省略シテ委員長ノ報告通
リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=18
-
019・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際政府提出汚物掃除法
中改正法律案ヲ議題トナシ、委員長ノ報〓
ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=19
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020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=20
-
021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
W ど、仍テ日程ハ變更セラレマシタ汚物
掃除法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ
マス、委員長ノ報告ヲ求メマス、中馬興丸君
汚物掃除法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一汚物掃除法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和五年五月三日
委員長中馬興丸
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔中馬興丸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=21
-
022・中馬興丸
○中馬興丸君 汚物掃除法中改正法律案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス
(「汚ナイ」ト呼フ者アリ)
此案ハ汚ナイト仰シヤルガ、極メテ汚ナ
イ物ヲ綺麗ニスル案デアリマスカラ御聽取
ヲ願ヒマス、委員會ヲ開クコト二囘、委員
ト政府委員トノ間ニ質間應答ヲ繰返シマシ
テ、全會一致ヲ以テ原案ノ通リ可決致シマ
シタ、此段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=22
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023・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=23
-
024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=24
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025・岡本實太郎
○岡本實太郞君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=25
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026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直ニ第二讀會ヲ開キマス
汚物掃除法中改正法律案第二讀會(確定
議
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=26
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027・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=27
-
028・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君重ネテ日程變更ノ緊急動
議ヲ提出致シマス、卽チ此際政府提出朝
鮮私設鐵道補助法中改正法律案ヲ議題ト爲
シ委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=28
-
029・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=29
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030・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)御異議ナシト認メ
Vく、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、朝鮮
私設鐵道補助法中改正法律案ノ第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス、
委員長大島要三君
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和五年五月三日
委員長大島要三
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔大島要三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=30
-
031・大島要三君
○大島要三君 朝鮮私設鐵道補助法中改正
法律案ハ特別委員會ヲ三囘ニ續キマシテ開
キマシテ、質問應答ヲ重ネマシタ結果ハ
特別委員一致致シマシテ之ヲ原案ノ通リ贊
成致シマシタ次第デアリマス、右報告致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=31
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032・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=32
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033・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=33
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034・岡本實太郞君
○岡本實太郞君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=34
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035・〓〓〓〓
○ 議長(藤澤幾之輔君)御異議ナシト認メ
Vく、仍テ直ニ第二讀會ヲ開キマス
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=35
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036・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ第三讀會ヲ省略シテ委員長報〓
通リ可決確定致シマシタ(拍手)是ニテ暫時
体憩致シマス
午後一時四十一分休憩
午後四時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=36
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037・〓〓〓〓
○ 議長(藤澤幾之輔君)休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス、御諮リスルコトガアリマス
第二部選出豫算委員平野光雄君、第五部選
出豫算委員藤田若水君、第八部選出豫算委
員堤康次郞君、右各常任委員辭任ノ申出ガ
アリマス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=37
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038・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ガナケレバ
許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闘選擧
ヲ行ヒ、御屆ケアランコトヲ望ミマス-
中田騒郞君カラ議事進行ニ付テノ發言ヲ求
メラレテ居リマス、中田縣郞君
〔中田縣郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=38
-
039・中田縣郞君
○中田縣郞君 議事進行ニ付キマシテ議長
ニ質問ヲ致スノデアリマス、武藤山治氏ノ
名ヲ以チマシテ提出シテゴザイマス救護法
施行ニ關スル決議案ハ、本特別議會ノ開會
ノ劈頭卽チ四月二十四日ノ日付ヲ以チマシ
テ、議長ノ手許マデ提出シテアルニ拘ハリ
マセズ今日マデ御上程ノナイノハ如何ナ
ル次第デアリマスカ、御答ヲ願ヒタイノデ
アリマス、御存知ノ通リ此救護法ハ曩ニ第五
十六議會ニ於キマシテ滿場一致ヲ以チマ
シテ通過シマシタ所ノ法律デアリマシテ、時
代ノ趨勢ニ鑑ミテ最モ緊急ニシテ必要ナル
モノト認メラレタモノデアルノデアリマ
ス、ニ拘ラズ其後政府ニ於テ如何ナル御都
合デアリマスカ、未ダ其施行ノ勅令ヲ發布
サレズ、又當議會ニ於キマシテモ其豫算ノ
御提出モナイノデアリマス、然ルニ此救護
法ノ施行ハ現代ノ世相ニ鑑ミマシテ、我國
ノ國民全體ガ一日モ早ク其施行ヲ見タイト
云フコトヲ熱望致シテ居ルノデアリマシテ、
現ニ私ハ靜岡縣ニ於テ、縣ノ社會事業協會
ノ副會長ヲ致シテ居リマスガ現ニ靜岡縣
ニ於キマシテモ社會事業協會等ニ於テ、非
常ニ此施行ノ速カナランコトヲ熱望致シテ
居リマス關係上、恐ラクハ此施行ハ全國ノ
國民ノ聲トシテ、其一日モ速ニ施行サレル
コトヲ望ンデ居ルモノト考ヘテ居ルノデア
リマス、サウシテ此武藤山治氏ノ名ヲ以テ
提出シテアリマス所ノ決議案ハ此特別議會
ニ其勅令ヲ發布サレ、竝ニ豫算案ヲ提出サ
レタイト云フコトノ希望ノ下ニ提出サレテ
居ルノデアリマスカラ、會期ノ短イ此議會
ニ餘リ遲ク上程サレマスレバ吾々ノ希望
ヲ達スル上ニ非常ナル障碍トナルモノト考
ヘルノデアリマス、議長ガ今日ニ至ルマデ
其上程ヲサレナイノハ如何ナル理由デアリ
マスカ、何卒速ニ是ガ上程ヲ見ルヤウニ御
取計ヒヲ廢ヒタイト云フコトヲ希望スルト
同時ニ、議長ノ御答ヲ願ヒタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=39
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040・〓〓〓〓
○ 議長(藤澤幾之輔君)御答致シマス、中
田君モ既ニ御承知ノ通リ殆ド連日會議ヲ
開イテ居ルノデアリマスガ未ダ法律案、
建議案等澤山アルノデアリマス、併シ何レ
近イ中ニ上程スルヤウニ相成ラウト思ヒマ
ス、ドウゾ左樣御承知ヲ願ヒマス
岡本實太郞君日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス此際日程ヲ變更シ國務大臣
ノ演說ニ對スル質疑ヲ繼續セラレンコトヲ
望ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=40
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041・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=41
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042・議長(藤澤幾之輔君)
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ひび、仍テ國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ヲ
繼續致シマス、通告順ニ依ッテ發言ヲ許シ
ママ、片山哲君
一國務大臣ノ演說ニ對スル質疑
(前會ノ續)
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=42
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043・片山哲君
○片山哲君 私ハ無產階級ノ立場カラ濱口
首相ノ施政方針演說ニ對シ、主トシテ失業
對策ヲ中心トシテ質問致シタイト思フノデ
アリマス、只今議長ニ首相內相、農相
及遞相ノ出席ヲ求メテ居ルノデアリマス
私ハ開會以來首相ノ答辯ヲ聽キマシタガ
失業對策ニ關スル具體案ガ殆ドナイト云フ
コトヲ感ジマシタ、其具體案ノ有無ニ付テ
私ハ是カラ質問ヲ開始致シタイト思フノデ
アリマス、併ナガラ其前ニ私ハ先ヅ今日最
モ問題ニナッテ居リマスル所ノ軍縮會議ニ
關スル、政府ガ海軍ノ保有勢力ノ決定ニ關
シ執リタル處置ニ對シ、在野黨カラ質問サ
レテ居リマスルコトニ關シ、政府ノ答辯ガ
極メテ朦朧トシテ居リ、且又不誠意デアル
此答辯囘避ノ態度ニ付キマシテ、吾々無產
大衆ノ立場カラ、一言政府ノ意見ヲ聽カナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス
此問題ニ付キマシテハ國民負擔ノ輕減ニ
關スルコトデアルカラ、今日無產大衆ハ此
問題ニ付キ全然無關係デアルコトハ出來ナ
イノデアリマス、其意味ニ於テ先ヅ吾々ノ
立場ヲ明ニシナケレバナラヌト思フノデア
ル而シテ其質問ノ要旨ヲ明ニスルコトガ
質問ノ前提トナルト考へルノデアリマス、
此問題ハ今日マデ繰返サレテ居ル經過ヲ見
んド、洵ニ意義ナキ論爭ナリト信ズル殊
ニ在野黨タル政友會ノ諸君ノ意見ヲ聽ク
ト主トシテ是ハ鳩山一郞君ニ依シテ代表
サレテ居ル質問ノ要旨ヲ考ヘテ見ルナラ
バドウデアルカ、卽チ國防計畫ニ關
シ軍部ノ意見ニ反對シ、或ハ又之ヲ變
更シタル政府ノ責任如何ト云フコトヲ中
心トシテ、質問サレテ居ルノデアルケ
レドモ濱口首相ハ之ニ對シテ何等ノ囘
答ヲ與ヘテ居ナイ、更ニ又豫算總會ニ於テ、
前田米藏君ノ憲法論ニ關スル質問ニ對シテ
モ、卽チ憲法第十一條ニ依ルカ、或ハ第十
二條ニ依ルカト云フ質問ニ對シテモ、首相
ハ少シモ明快ナル答辯ヲ與ヘズ、答辯囘避
ノ態度ニ終始致シテ居ルノデアリマス、私
ハ此濱口首相ノ態度、卽チ明答ヲ與ヘナイ、
囘答ヲ囘避シテ居ル態度ヲ私ハ攻擊シナケ
レバナラヌノデアリマス(拍手)今日吾々ハ
此普選ノ議會ニ於テ、殊ニ軍部ト今日ノ憲
法政治トノ關係ニ於キマシテ、最モ明快ナ
ル處置ヲ吾々ハ要求シテ已マナイノデア
ル、殊ニ今日現政府ハ明ルク强キ政治、公
明ナル政治ト云フコトヲ主張セラレテ居ル
ガ、其濱口首相ガ斯樣ナ重大ナル憲法論ニ
對シテ明答ヲ與ヘズ、且又朦朧ナル說明ヲ
シテ居ルト云フコトハ、如何ナル處存デア
ルカ、又如何ナル態度デアルカ、之ニ對シ
大ニ吾々ハ國民ノ聲トシテ攻擊シナケレバ
ナラヌノデアル
吾々ハ學問上カラ考ヘマシテモ、今日ノ
憲法學者ノ意見カラ申シマシテモ、軍縮會
議ニ於テ現政府ガ執リマシタル其處置ハ
卽チ憲法上カラ見ルナラバ、明カニ憲法第
十二條ニ依ル政府輔弼ノ責任ニ歸スベキ問
題デアルト云フコトヲ信ズルノデアル、吾
吾ノ態度、卽チ憲法ニ對スル態度ヲ明カニ
致シマスナラバ、明カニ憲法第十二條ニ依
ルベキモノデアルト云フコトヲ確信スルモ
ノデアリマス、首相ハ先ヅ其立場ヲ明カニ
シテ掛カルコトガ、今日憲法政治ヲ樹立ス
ル上ニ於テ、最モ必要ナルコトデアルト云
フコトヲ確信スルモノデアリマス、之ニ對
シテ濱口首相ハ何故ニ憲法第十二條ニ依ル
モノデアルト云フコトヲ明確ニシナイノデ
アルカ、斯ウ云フ立場ヲ取ルト云フコトガ、
卽チ明ルキ政治ヲ爲ス所以デアルト云フコ
トヲ何故濱口首相ハ考へナイノデアリマセ
ウカ、答辯ヲ囘避セラレテ居ルト云フ其處
置ハ、明ルキ政治ヲ布クト云フコトヲ裏切
ルト共ニ國民ヲ欺瞞スル言葉デアッタト云
フコトヲ言ッテモ、敢テ差支ナイト斷言シ得
ルノデアリマス更ニ又政友會ノ攻擊論法ヲ
解剖シテ見ルナラバ、政友會ノ諸君ノ考ハ
今日政府ノ執リマシタル處置ヲ憲法第十
二條ニ依ルト云フ論法ヲ採ラズシテ、時代
錯誤ノ第十一條ニ依ル議論ヲ採ッテ居ルヤ
ウニ考ヘラレルノデアリマス、是ハ吾々カ
ラ見ルナラバ、此問題ヲ先ヅ明確ニシテ出
發シナケレバナラナイ、今日吾々ガ明確ニ
聞カントスル問題ハ、卽チ此軍閥ニ對スル
問題ト、今日ノ憲法政治ニ對スル態度ヲ聞
カントスルモノデアルガ、大政黨タル政友
會ノ諸君ノ質問ノ要旨ハ、其問題ヲ明カニ
セズシテ敢テ軍閥ニ媚ビルガ如キ態度ヲ
執ッテ居ルノデアル、吾々ハ是ニ於テ此憲法
第十二條或ハ十三條ノ問題ヲ考究シテ見ル
ナラバ、明カニ此問題ニ對スル判斷ヲ明確
ニシ得ルノデアル然ルニモ拘ラズ今マデ繰
返サレテ居リマスル質問ハ、少シモ要點ニ
觸レズシテ、唯政爭ノ具トシテ居ルノデア
ルコトヲ吾々ハ判斷スルノデアリマス斯
ル問題ヲ捉ヘテ貴重ナル時間ヲ費シ、國民
ガ聞カントスル所ノ經濟問題、或ハ失業對
策ニ關スル問題ヲ中心トシテ論議セラレナ
イト云フコトハ、甚ダ遺憾千萬デアル今日ハ
旣ニ一千九百三十年デアッテ、世界平和或ハ
軍縮ニ關スル國民要求ノ聲ハ全國ニ揚ッテ
居ルノデアリマスルガ、普選第二次直後ノ
特別議會ニ於テ、斯ル反動的ナ問題ヲ以テ玆
ニ論議セラレテ居ルノハ、實ニ時代錯誤ナ
リト、私ハ斷言セザルヲ得ナイノデアル
是ニ於テ此憲法論ニ對シ、濱口首相ハ今迄
ノ行懸リヲ一擲シ、今迄軍部或ハ軍閥ニ對
シテ洵ニ恐レ戰イテ居ッタ態度ヲ捨テヽ最
モ勇敢ニ、最モ果敢ニ、此問題ニ對スル明
快ナル答辯ヲ爲スコトガ、濱口首相ノ執ルベ
キ態度ナリト吾々ハ信ズルノデアル、此問
題ニ付キマシテハ卽チ反動的ナ態度ヲ執ッ
テ居ル政友會ニ對シテ、或ハ又極メテ因循
姑息ナル態度ヲ執ッテ居リマスル所ノ民政黨
ニ對シ、此兩既成政黨ニ對シテ、私ハ大ニ痛
棒ヲ加ヘナケレバナラヌノデアル、濱口首
相ガ今日執ッテ居ル軍部ニ對スル媚ビ訣ッテ
居ル態度ガ若シ必要デアリ、今日ノ事情ニ
於キマシテサウセナケレバナラナイト云フ
コトデアッタナラバ、今迄ノ聲明ヲ裏切ルコ
ト甚シキモノナリト謂ハザルヲ得ナイ、サ
ウ云フ態度ヲ一掃シ勇敢ニ進マナケレバナ
ラナイ、若シ貴族院ガ之ニ對シテ反對ヲス
ルナラバ、或ハ樞密院ガ此問題ニ對シテ反
動的解釋ヲ執リ、反對スルナラバ、或ハ又
舊來ノ傳統的勢力ガ此態度ニ對シテ極メテ
古キ解釋ヲ固執スルナラバ、恐ラクハ國民
全體ハ今日憲法第十二條ニ依ル議論ヲ支持
シ、憲法第十二條ニ依ル憲法政治確立ノ爲
ニ、民衆ノ聲ガ揚ッテ來ルト云フコトヲ私ハ
信ジテ疑ハナイノデアル(拍手)今日旣
ニ各新聞ノ論調ヲ見マシテモ、或ハ新聞
ニ揭ゲテ居ル所ノ學者ノ意見ヲ見テモ、
新ラシキ解釋ヲ下ス絕好ノ機會デアル、
此絕好ノ機會ニ濱口首相ハ何故其態度ヲ
因循姑息ニシ瞹昧朦朧ニシテ居ルノデ
アルカ、吾々ハ之ヲ追及セザルヲ得ナイノ
デアル、此軍閥打破絕好ノ機會ニ宜シク
濱口首相ガ最モ明快ナル答辯ヲ與ヘラレ
テ、且又今日ノ軍閥ノ勢ヒ軍閥ノ干渉、
在來ノ傳統的勢力ヲ驅逐シテ、新シク憲法
政治確立ノ爲ニ戰ハナケレバナラヌコトヲ
私ハ警告スルノデアリマス其意氣ト其〓
意アリヤ否ヤヲ、私ハ濱口首相ニ質問致ス
ノデアリマス、此問題ニ關スル憲法ノ論據
ト而シテ今日軍縮會議ニ付キ執リタル處
置ニ對シ、今迄ノ答辯囘避ノ態度ヲ放擲シ
新シク最モ果敢ニ、卽チ憲法政治ニ對スル
新シキ確信ヲ明カニスル意思アリヤ否ヤ、
玆ニ私ハ其所見ヲ首相ニ質問スルモノデア
リマス
第二ニ失業問題ニ對スル質問ヲ私ハ致シ
タイノデアリマス、今日失業者ガ何故斯樣
ニ激增シテ居ルノデアルカ、今日ハ普通ノ
狀態ヨリモ急速度ヲ以テ失業者ハ殖エテ居
ル、不景氣ノ度ガ加速度ヲ以テ進行シテ居ル
根本問題ヲ考ヘテ行カナケレバナラナイ、
其原因ヲ追究シテ、而シテ之ニ對スル對策ヲ
執ッテ行カナケレバナラナイ、漫然ト今日失
業者ハ三十五萬デアルトカ、或ハ八十万
デアルトカ、或ハ百万デアルトカ、斯樣ニ
唯數字ヲ羅列シ、之ニ對スル對策ハ斯ウ云フ
風デアルト云ッテ、唯、其處ニ現ハレタ事實
ヲノミ見ルダケデハ宜シクナイ、進ンデ何
故ニ今日ノ失業者ガ斯樣ニ加速度ヲ以テ激
增シタモノデアルヤ否ヤト云フ、其問題ヲ
能ク攻究シテ行カナケレバナラナイノデア
ル、此失業者激增ノ原因如何ト云フコトヲ私
ハ政府ニ尋ネタイノデアル、私ハ今日此間
題ヲ考ヘマシテ、三ツニ分ケテ之ヲ論及シ、
私ノ質問ノ要旨ヲ明確ニ致シタイノデアリ
マス、卽チ今日失業者激增ノ第一ノ原因ハ、
今迄繰返サレタル金解禁ノ問題デアルケレド
モ、併ナガラソレハ唯〓時機ノ問題ニ付テノミ
政友會ハ攻擊ヲ加ヘ、政府ハ又之ニ對シテ
ノミ答辯シテ居ルダケデアルガ、私ハソレ
ニ對シテ金解禁ノ方法ガ誤、テ居ノタト云フ
コトヲ更ニ强ク主張シナケレバナラナイ、
卽チ政府ハ何故ニ舊平價ニ依ル所ノ解禁ヲ
シタノデアルカ新平價解禁ヲ何故ニ斷行
スルノ勇氣ヲ有タナカッタノデアルカ、此點
ヲ質シタイノデアリマス、卽チ舊平價ニ依
ル金解禁ヲシタナラバ當然急激ニ物價下
落ヲ來スノデアリマス、物價ガ急激ニ下落
スルナラバ、之ニ依ッテ利得ヲシ、且又之ニ
依ッテ損害ヲ轉嫁シ得ルモノハ誰デアルカ
ト云フト、卽チ是ハ債權者、金ヲ持ッテ居ル
階級デアリマス、其債權者ハ卽チ今日數字
ヲ擧ゲテ見ルナラバ國債五十八億圓ノ中
七割迄ハ金融資本家ノ手ニ這入ッテ居ル
ノデアリマス、社債ノ中デモ社債十三億圓
ノ中、其八割迄ハ是亦金融資本家ノ手ニ這
入ッテ居ルノデアリマス、舊平價ニ依ル金解
禁ノ結果、ソレガ爲メ債權者ハ一割五分ノ
利得ヲ致シテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ
風ニ債權者ガ不當ナル利得ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、是ガ爲ニ損害ヲ被ル者ハ誰デ
アルカト云フナラバ卽チ金ヲ持タザル者
デアル、物價ノ下落ニ依ッテ一割五分ノ損害
ヲ受ケル我々無產者ハ、之ヲ他ニ轉嫁シヤ
ウト思ッテモ、或ハ之ヲ他ニ廻サウト思ッテ
モ、其方法ト其機會ヲ持タナイノデアル、斯
樣ニシテ今日舊平價ニ依ル金解禁ニ依ッテ、
債權者ト債務者卽チ金融資本家ト無產階級
ニハ非常ナル差ガ出來テ、今日多クノ犠牲
ヲ無產階級ハ强ヒラレルノデアリマス無
產階級ハ此强ヒラレタ其犧牲ヲ如何ニ展開
スルコトガ出來ルカト云フト、無產階級ハ
有ユル方法ヲ剝奪セラレテ居ルノデアリマス、
是ニ於テ政府ハ其問題ニ對シ如何ナル經濟
對策ヲ取ァテ居ルカト云フナラバ、御承知ノ
通リ所謂消費節約、或ハ緊縮政策ノミヲ執ッ
テ居ルノデアル、消費節約ハ卽チ消費ノ方
面バカリヲ考ヘテ行クノデアル、何故此時
ニ收入ノ方面ヲ考ヘテ行カナイノデアルカ、
不當ナル收入ヲ致シテ居ル有產階級ノ不當
收入ノ問題ヲ、何故追窮シ、之ニ對シテ斧
鉞ヲ加ヘナイノデアリマセウカ、不當ナル
收入ヲ爲スモノトハ何デアルカト申シマス
ナラバ卽チ會社デ不當ナル配當ヲ致シテ
居ルモノデアル、或ハ又資本家ガ損ヲ致シ
マシテ、國家カラ其損害ノ塡補ヲ受ケテ居
ル、所謂先般ノ十億圓ノ特別融資ト云フ問
題ノ如キ、總テ金融資本家階級ハ自分ノ損
害ヲ國家ニ塡補サセヤウト云フコトヲ考ヘ
テ居ルノデアリマス、斯ウ云フ風ニシテ
第一ハ舊平價ノ金解禁ニ依ッテ今日金融資
本家階級ハ一割五分ノ利得ヲ受ケテ居ル
又其利得ヲ非常ニ能ク廻スコトガ出來ル特
別ナル便宜ヲ得テ居ルノデアル、斯ノ如ク
政府ノ緊縮政策ニ依ッテ消費ノ方面バカリ
コルカ、收入ノ方面ニ少シモ斧鉞ヲ加ヘナ
イ結果、不當ナル收入ニ依テ生活ヲ致シテ
居ル階級卽チ有產階級ハ、益〓太ッテ來ルト
云フ必然的狀勢ガ現レテ來ルノデアリマス、
斯樣ニシテ今日政府ノ執ッテ居ル所ノ不
景氣對策ト云フモノハ無產階級ニ忍ビ得
ザル所ノ苦痛ヲ與ヘルガ、有產階級特ニ金
融資本家階級ニ取〃テハ、此機會ヲ利用シ、
自分達ノ懷ヲ肥ス利便ヲ得テ居ルノデアリ
マス、斯樣ニ致シテ今日失業者ハ普通ノ狀
態ヨリモ倍以上ニ激加シ、且又其數ガ激增
シ、加速度ニ其失業者ガ殖エテ來ルヤウナ
計算ニナッテ來ルノデアリマス、內務省社會
局ノ發表ニ依ッテモ、半箇年ニ十万人ノ失業
者ガ殖エル、一日ニ五百人ノ失業者ガ殖エ
ルト云フヤウナ結果ニナッテ居リマス、實際
上ニ於テハ恐ラク百万人餘ノ失業群ノ
存在ヲ諸君ハ十分ニ承認シナケレバナラヌ
コトヽ私ハ考ヘルノデアル、此加速度ヲ以
テ殖エマシタ失業者ニ對スル對策ト致シマ
シテ、先般カラ承ルト政府ハ更ニ第二段ニ
於テ、所謂產業合理化ノ方法ニ依ラントス
ルノデアリマス、此產業合理化ニ付キ、先
般豫算總會ニ於テ西尾君カラ俵商工大臣ニ
對シ質問致シマシタケレドモ、其答辯ハ極
メテ曖昧デアッテ少シモ要領ヲ得ナイ、私ハ
今日政府ノ執ヶテ居ル所ノ產業合理化ハ
明カニ資本家階級擁護ノ產業合理化デアル
ト云フコトヲ斷言スルノデアル(「ノー〓〓」
「其通リ」ト呼フ者アリ)何トナラバ政府ノ
執ッテ居ル產業合理化ハ、ソレハ利潤本位デ
アル、今日資本主義ノ經濟組織ニ於テハ、
資本主義ノ混沌タル體系ハ愈々煩悶焦慮ノ
過程ヲ辿リツヽアル、此資本主義產業體系
ヲ何トカシテ統一整理シテ利潤ヲ多カラシ
メ一時的安定ヲ得タイト苦悶シツヽアル
ノデアル、彼等資本家ハ所謂資本ノ統制ト
カ、或ハ又勞働ノ機械化トカ、色ミ問題ガ
ソコニ絡マッテ參ルノデアリマス、主トシテ
是ハ生產方面カラノミ考ヘタ問題デアッテ、
今日政府ノ執ッテ居リマス產業合理化ハ、所
謂利潤ヲ如何ニシタナラバ殖スコトガ出來
ルカト云フ、利潤經濟ノ見地ニノミ立ッテ
居ル合理化運動デアッテ、其現レル所ハ何デ
アルカト云フナラバ、先ヅ勞働力ト云フモ
ノヲ機械化シテ行カナケレバナラヌ、之ヲ
科學化シテ行カナケレバナラナイ、斯樣ニ
シテ彼等ノ執ッテ居ル產業合理化ニ依ッテ
ハ、當然失業者ガ殖エテ參ルノデアリマス、
先般大山君ガ此處デ質問サレマシタ通リ、
今日ニ於ケル產業合理化ニ依ッテ、先ヅ獨逸
ニ於テハ何百万ト云フ失業者ガ現レテ居ル、
又米國ニ於キマシテモ矢張產業合理化ノ結
果、多クノ失業者ガ現レテ居ルノデアリマ
ス、斯樣ニシテ事實ニ於テ、今日政府ノ執ッ
テ居ル產業合理化ニ依ッテハ、必然的ニ多數
ノ失業者ヲ生ムト云フコトヲ實證サレタリ
ト、私ハ壇上ヨリ斷言シテ憚ラナイノデア
リマス、斯ウ云フヤウナ立場デアリマスカ
ラ、卽チ金解禁ノ方法ヲ誤〓タコト、又收入
問題ニ少シモ觸レザル消費節約ト云フ問題
ヲノミ高調シタル結果、失業者ガ加速度ヲ
以テ增加シ、更ニ之ニ加重スルニ產業合理
化、卽チ資本家階級擁護ノ、利潤本位ノ產
業合理化ヲ配スルガ故ニ、輪ニ輪ヲ掛ケマ
シテ今日失業群ガ百万ヲ算スル大嵐ノ襲來
トナッタモノト、私ハ確信スル者デアル、吾
吾カラ考ヘルナラバ、斯樣ナ意味ノ產業合
理化ハ實ニ有害デアッテ何等ノ價値ガナイ、
然ラバ如何ナル產業合理化ヲ主張スルカト
謂フナラバ今日ノ產業合理化ハ卽チ生活
ト云フコトヲ基準トシテ行カナケレバナラ
ナイ、利潤經濟ニ對シマシテ私ハ厚生經濟
ト云フ言葉ヲ採リタイト思フ、卽チ國民全
體、民衆全體ノ幸福ノ爲ニ、今日ノ產業ヲ
合理化シテ行カナケレバナラナイ、是ハ何
デアルカト云フナラバ、先ヅ動力產業ノ社
會化ヲ斷行シナケレバナラナイ、何トナラ
バ今日ノアノ電力ヲ御覽ナサイ、或ハ土地
ヲ御覽ナサイ、或ハ瓦斯ヲ御覽ナサイ、總
テ是ハ資本家ノ營利事業ニ委セラレテ居ル
ノデアリマセヌカ、此今日ノ動力產業、或ハ
資源產業ト云フモノヲ社會化シマシテ、或
ハ之ヲ公有化スル、或ハ之ヲ國有化スル、
斯樣ニシテ、動力產業ノ社會化ヲ實現スル
ニ非ザレバ、失業問題ヲ解決スルコトガ出
來ナイ、政府ノ稱スル今日ノ此產業合理化
ニ依ッテハ、失業者ガ增加スルノミナリト私
ハ信ジテ疑ハナイノデアル、尙此ノ外ニ私
ハ此社會的統制ニ依ル重要產業ノ民衆化ヲ
主張シナケレバナラナイ、左樣ニシナケレ
バ今日ノ所謂產業合理化ハ實ニ資本家本
位、利潤本位ナリト斷言サレテモ、何等ノ
抗辯ノ餘地ハナカラウト私ハ考ヘルノデア
ル、然ラバ重要ナル產業ノ社會化ニ關連シ
テ勞働ノ價値ト云フコトヲ考ヘテ行カナケ
レバナラナイ、卽チ今日ノ民衆ノ勞働力ト
云フコトヲ考ヘテ行カナケレバナラナイ、
勞働力或ハ勞働價値ト云フコトヲ考ヘルナ
ラバ、今日ハドウシテモ多勢ノ國結權、所
謂勞働組合ノ力ト云フコトヲ產業上ニ於テ
重要視シナケレバナラヌ、斯クシナケレバ
今日ノ產業合理化ハ失業者ヲ激增スルモノ
ナリト斷言シテ差支チイト私ハ信ジテ疑ハ
ナイノデアル、此意味ニ於テ政府ノ執ッテ居
リマスル產業合理化ハ少シモ勞働組合法
或ハ勞働組合ノ公認、サウ云フ問題ニ付テ
ハ觸レテ居リマセヌ、觸レテ居ラナイモノ
デアリマスルカラ、當然ノ歸結ト致シマシ
テ產業合理化ハ必ズ多クノ失業者ヲ生ン
デ居ルノデアリマス、私ハ此意味ニ於テ今
日資本家本位ノ合理化、利潤經濟ヲ驅逐シ、
厚生經濟ニ依ル新シキ產業合理化ガ、必然的
ニ叫バレナケレバナラヌト信ズルノデル
斯ウ云フ經路ヲ經テ玆ニ失業者ガ、加速度
ヲ以テ激增ヲシテ參ルノデアリマス、此原因
ヲ明確ニシ、扨テ之ニ對スル失業對策ヲ樹立
シナケレバナラナイノデアル、然ルニ拘ラズ、
只今マデ政府ノ方針ヲ聽キマスルト此失
業對策トシテ現ハレテ居ルモノハ、極メテ
朦朧タルモノノミデアル、曰ク產業ノ振興、
曰ク職業紹介事業ノ發展等デアル、斯樣ナ
ル產業ノ振興デアルトカ、或ハ職業紹介事
業ノ發展デアルトカ、斯樣ナ對策ハ殆ド是
ハ聽ク必要ノナイ言葉ノミデアル、或ハ〓
育ヲ旺ニスベシトカ、農村ヲ盛ニスベシト
カ、或ハ健康ヲ增進スベシトカ、斯樣ナ言
葉ト同樣デアッテ、政府ノ具體的政策トシテ
ハ全ク、一文ノ價値モナイ言葉デアルト私
ハ信ズル(拍手)何故ニモット具體的ニ今日
現レテ居ル失業者ヲ、如何ニスレバ救濟ス
ルコトガ出來ルトカ云フ、具體案ヲ出シテ
行カナケレバナラナイ、私ハ此意味ニ於テ
ドウシテモ不合理ニ激增致シテ居ル此失業
者ニ對シテハ先ヅ〓ヲ與ヘルト云フコト
ガ第一デナル、然ラザレバ金ヲ與ヘルコト
ガ第二デアッテ、是レ以外ニハ今日ノ失業
者ハ救濟出來ナイノデアリマス(「馬鹿ナコ
トヲ言フナ」ト呼フ者アリ)若シ其以外ニ方
法ガアルナラバ私ハ同ヒタイノデアル、政
府ガドウ云フ對策ヲ以テ大嵐ノヤウナ、怒
濤ノヤウナ此失業群ヲ救濟シ、之ニ對スル
對策ヲ執ッテ居ルノデアリマセウカ、其點ヲ
伺ヒタイノデアリマス、殊ニ地方起債トシ
テ、所謂二千四百万圓ノ起債ガ許可サレル
ト謂フガ若シ三十万ノ失業者アリトセバ
起債ノ三分ノ一タル七百五十万圓ヲ賃銀ニ
宛テヽモ一日一圓ノ賃銀ヲ與ヘマスルナラ
バ、其起債ダケデハ僅ニ三週間デ消エテ無
クナッテシマウノデアリマス、若シ百万人ノ
失業者ガアリト致シマスルナラバ、一週間
デ其金ハ無クナッテシマフ、斯ノ如ク非常ニ
激化致シテ居リマスル失業對策トシテ、斯
樣ナ鼻糞ノヤウナ金デ果シテ此失業群ヲ救
フコトガ出來マセウカ、大法螺ヲ吹ク此態
度、其根據ヲ私ハ嗤ハナケレバナラヌト思
ヒマス、吾々ハ之ニ對スル主張ヲ爲セバ更
ニ大キナ事業ヲ起ス爲ニ、地方起債ヲ起ス
コト卽チ起債ニ依ルナラバ少クトモ
億圓ノ起債ヲ起シテ、之ニ對スル賃銀三
千万圓ト云フ計算ヲ立テヽ失業者ニ所謂職
ヲ與ヘル事業ノ財源ヲ樹立シナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス(「百億圓出シテヤル
カラ安心シロ」ト呼フ者アリ)之ニ依ラザル失
業對策ハ前述ノ如ク無爲無能無策デアリマ
スカラ失業者ハ必ズヤ其數ハ增加シ、更
ニ其度ヲ激化スルコトヲ豫言シテ憚ラナイ
ノデアリマス、若シ社會不安ノ動亂ガ起ッテ
參リマシタナラバ失業群ガ更ニ其度ヲ
激化シテ參リマスル場合ニ於テハ政府ハ
如何ナル對策ヲ之ニ持ッテ居ルノデアリマ
スカ、治安ヲ維持スル上ニ於テ果シテ如何
ナル見地ヲ持ッテ居ルノデアリマセウカ、私
ハ內務大臣ニ其點ヲ伺ヒタイノデアル
私ハ更ニ此問題ガ農村ニ極メテ根强ク、
深ク浸潤シテ居ルト云フコトヲ考ヘザルヲ
得ナイノデアル、所謂農村振興策ト云フモ
ノハ政友會ノ時代ニ於テモ考ヘラレタコ
レラ、今日ノ政府ニ於テハドウ云フ對策ヲ
有ノテ居ルカ、首相ノ施政方針ニ於キマシテ
ハ農村振興、或ハ農民ノ窮乏ヲ救濟スル
ト云フ對策ヲ、殆ド言及サレテ居ラヌ此
問題ニ付イテ私ハ數字ヲ擧グルナラバ、所
謂金解禁ニ依リ極度ニ窮乏ヲ受ケテ居ル農
民ハ卽チ農產價格ヲ假ニ三十三億万圓ト
致シマスナラバ、此舊平價解禁ニ依リテ一
割五分ノ損害ヲ受ケテ居ル卽チ金額ト致
シマスナラバ四千五百万圓ノ收入減ヲ農民
ハ受ケテ居ル結果ニナリマス又農民ノ負
債ガ今日幾ラアルカト申シマスナラバ諸
君旣ニ御承知ノ通リ約五十億圓ノ負債ヲ農
民ハ背負ッテ居ルノデアリマス、是ガ又舊平
價金解禁ニ依リマシテ、今日ハ先ヅ一割五
分、卽チ七億五千万圓ノ負債增額ト云フ結
果ニナルノデアリマス、上ト下カラ左樣ニシ
テ增加シタ爲ニ、結局十二億四千五百万圓
ノ損害ヲ受ケナケレバナラヌト云フ結果ニナ
ルノデアリマス、之ヲ農家五百五十万戶ニ
當テテ見ルナラバ一戶當リ平均二百二十
四圓ノ損害ヲ受ケナケレバナラヌ結論ニナ
ルノデアル、斯ル農民ノ負債ヲ救濟スル爲
ニ、政府ハ一體ドウ云フ具體策ヲ有ッテ居
ルノデアルカ、卽チ之ニ對シテ吾々ノ考ヲ
申シマスナラバ、今日存在スル農村金融機
關ハ殆ド商工業者、或ハ資本家ノ手ニ掌握
セラレ、生產農業者ノ壓迫搾取スルコトニ
依テ自分ノ懷中ヲ肥ヤサントスル機關デア
ルト謂ヒ得ル、依ッテ是カラノ農村特別金融
機關ハ新シキ構成ニ依ッテ造ラレナケレバ
ナラナイ、所謂物的擔保ヨリ之ヲ解放シ、卽
チ物ガ無クトモ、生產ニ必要ナル所ノ農業資
金ヲ政府ガ貸付ケル方法ヲ與ヘテ行カナケ
レバナラナイ、所謂具體的ニ謂フナラバ、私
ハ農村銀行、或ハ農村特別銀行ト云フモノヲ
國營ヲ以テ設立シテ、之ヲ通ジ國庫金ヲ以テ
農民ノ窮乏ヲ救濟スル對策ヲ講ジテ行カナケ
レバナラナイ、今日ハ肥料業者ニ依ッテ搾取
サレテ居リマスカラ、肥料ハ宜シク公營シ
テ行カナケレバナラナイ、或ハ農具モ種子
モ今日總テ農民ノ負擔ヲ輕減スル爲ニ、肥
料公營、或ハ農具公營、種子公營等ノ方
法ヲ以テ行カナケレバナラナイト信ジマ
ス、斯クシテ行カナケレバ到底此五十億
圓更ニ今日不景氣ニ依ッテ加重セラレテ
來ル農民ノ大負債ヲ救濟スルコトガ絕對ニ
出來ナイト云フコトヲ私ハ斷言スルノデア
リマス、更ニ今日ノ小作人ノ立場ヲ救濟ス
ル爲ニ、何故政府ハ小作法ヲ制定シナイノ
デアルカ、今日ノ小作人、卽チ農民ノ中
ノ七割迄ヲ占メテ居ル小作人ハ攻勢的ナ
ル地主ノ壓迫ト、政府ノ無策ニ依クテ二重ノ
搾取ヲ受ケテ居ルノデアリマス、此農民、
小作人ニ對シテ如何ナル對策ヲ持ッテ居ル
カト云フコトヲ質シタイ、卽チ小作法ヲ何
故制定シナイカ、是ハ政友會時代ニ於テハ
所謂自作農創定主義ヲ採ッタノデアルガ、民
政黨ハ果シテ自作農創定主義デアルカ、或
ハ小作立法主義デアルカ、其根據ヲ何レニ
置イテ居ルヤヲ、町田農相ニ問ハントスル
モノデアリマス、自作農創定主義ニ對シ政
府ハ小作立法主義ヲ採ッテ居ルト云フナラ
バ、今日窮乏シテ居ル所ノ農民救濟ノ爲ニ、
何故ニ此特別議會ニ小作法ヲ提案シナイノ
デアルカ、旣ニ準備トシテ或ハ審議會ニ於
テ或ハ委員會ニ於テ、ソレ〓〓審議セラ
レテ居ルノデアリマスカラ、ソレヲ何故特別
議會ニ提出シテ、議會ノ審議ニ委サレナイ
ノデアラウカ、吾々ハ之ヲ疑フノデアリマ
ス、サウ云フヤウナ極メテ無策ナル態度ヲ
執ッテ居ル結果、現政府ノ農村振興策ハ全然
地主階級ヲ擁護スルカ、或ハ金融資本家ノ
利益ノミヲ圖ッテ、無產農民ヲ壓迫スルモノ
ナリト、玆ニ斷言シテ憚ラヌノデアリマス、
更ニ又斯樣ニ困シテ居ル農民ニ對シテ、或ハ
又都市勞働者ニ對シテ、或ハ中小商工業者
ニ對シテ、其負擔ノ輕減ニ關スル具體策トシ
テ、減稅ノ方法、卽チ生活必語品ノ消費稅
撤廢其他間接稅撤廢ヲ實行スル爲ニ、具體
案ヲ示サナイノデアルカ、吾々ハ之ヲ聞カ
ナケレバナラヌ、尙又今日農民ガ困ッテ居
リ、勞働者ガ困ノテ居ルノハ、戶數割ノ非常ニ
高イコトデアル、是ハ地方稅制デアリマスガ、
稅制ヲ整理致シテ無產階級ノ肩ノ荷
ヲ輕クスル爲ノ稅制整理ヲ、何故具體的ニ今
日ヤラナイノデアルカ、吾々ハ之ヲ聞カナケレ
バナラナイ、卽チ生活必需品ノ消費稅撤廢、
及ビ農民ヲ最モ苦メテ居ル戶數割ノ撤廢ノ
意思アリヤ否ヤヲ農林當局ニ質問致シタイ
ノデアリマス
次ニ今日軍縮問題ノ中海軍問題ニ付キテ
ハ色々議論ガ交サレテ居リマスガ、陸軍問題
ニ對シマシテハ政府ノ具體的方針ガ現ハレ
テ居ナイノデアリマス、民政黨ガ組閣致シ
マス時ニハ、或ハ十大政策ノ中ニ軍制改革デ
アルトカ、或ハ軍備縮小デアルトカ云フコト
ヲ現ハサレテ居リマシタガ、今日果シテ陸軍
軍縮ニ對シテ如何ナル具體的ノ見解ヲ持ツ
テ居ルカト云フコトヲ、吾々ハ聞クコトガ
出來ナイノデアル、私ハ吾々無產者ノ立場
カラ言フナラバ、卽チ陸軍ハ宜シク之ヲ半
減スベシト云フ意見ヲ持シテ居リマス、サウ
シテ經常費一億八千万圓ノ中、之ヲ半減致
シマシテ丸千万圓ノ金ヲ或ハ社會事業ノ爲
ニ無產階級ノ生活保障ノ爲ニ出スベキガ
當然デアルト考ヘマス、所謂陸軍軍縮ニ對ス
ル政府ノ所見ヲ聞カナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス
最後ニ私ハ勞働爭議ニ對スル所ノ政府卽
チ官憲ノ態度ニ付テ質問致シタイノデアリ
やく、先ヅ第一ニ私ハ川口間題ヲ擧ゲタイ
ノデアル、埼玉縣川口ニ於キマシテハ、ア
ソコハ非常ニ小工場ノ澤山アル所デアリマ
スガ、今日ノ不景氣ノ爲ニ小工場ノ倒レル
モノガ大變多イノデアリマス、此小工場ノ
倒レマス其中ニ、增金鑄物工場ト云フモノガ
アリマス、是ガ今日爭議ニナッテ居リマス
ガ、本年四月二十三日爭議ノ最中ニ、資本
家ガ工場ニ置イテ居ル鑄物ノ木型ヲ持去ラ
ウト致シタノデ、勞働者ハ是ガ持去ラレテ
ハ非常ニ勞働爭議ガ惡化スルノミナラズ、
王場閉鎖ト云フヤウナ結果ニ立到リマスカ
ラ、ドウシテモソレガ持去ラレルコトヲ止
メナケレバナラナイノデ、資本家ニ其時抗
爭シタ、所ガ其時參リマシタ巡査ガ資本家
ヲ助ケテ持去ルコトヲ手傳ッタ、或ハ之ニ反
對シタ勞働者ヲ蹴ル、毆ルト云フ態度ヲ執。ツ
ク、勞働者ハ憤激ノ餘リ資本家ニ對シマシ
テ、或ハ又自分ノ權利ヲ擁護スル爲ニ立チ
マシタ所、警官ハ遂ニ拔劍致シマシテ勞働
者ノ頭ヲ斬ヲタノデアリマス、卽チ川口警察
署ノ田島巡査ハ、其勞働者ノ長瀨鐵五郞、
小沼太郞、此兩名ニ對シマシテ、拔劍ヲ致
シマシテ負傷ヲ與ヘタノデアリマス、此官
憲ノ執リマシタル態度ヲ吾々糾彈シナケレバ
ナラナイ、勞働爭議ハ資本家ト勞働者ノ對
立カラ來ル當然ノ經濟闘爭デアル、然ルニ
モ拘ラズ、官憲ハ何故ニ資本家階級ヲ擁護
スル立場ヲ執ルノミナラズ、而モ尙ホ拔劒
ヲ致シマシテ、此兩名ノ頭ヲ斬ッタト云フヤ
ウナ不當ナルコトハ今日ノ社會ノ殆ド有
リ得ナイ、隨シテ極メテ重大ナル不祥事ノ現
象デアルト云フコトヲ吾々ハ考ヘルノデア
ル、斯樣ナ態度ニ對シマシテ、吾々ハ此官
憲ノ今日ノ態度ヲ疑ハナケレバナラナイノ
デアリマス、果シテ内相ハ之ニ對シテ
如何ナル處置ヲ執ラレルカ、此問題ヲ
如何ニ取扱フカ、其意見ヲ私ハ聞カナ
ケレバナラナイノデアル、今日被害者ハ
告訴ノ手續ヲ執リマシテ、目下司法官憲ノ
手ニ依ッテ調ベラレテ居ルノデアリマスガ、
併ナガラ斯樣ニ勞働爭議ニ際シ資本家階級
ノ味方ヲ致シマシテ、而モ尙ホ劒ヲ拔イテ
勞働者ヲ傷ケルト云フヤウナ、サウ云フヤ
ウナ處置ハ今日ドウ云フヤウナ氣持ニ依〃
テ、ドウ云フヤウナ意思ニ依ッテヤッテ居ル
カ、其根據ヲ私ハ聞キタイノデアリマス、更
ニ又市電ノ爭議ニ對スル問題ヲ追究シナケ
レバナラナイ、御承知ノ通リ今日ノ市電爭
議ハ解決致シテ居ルノデアリマスルガ、
此勞働爭議ニ對シマシテ所謂靑年團ト云フ
モノガ出動ヲ爲シ、サウシテ爭議團ノ意見
ニ拘ラズ自ラ電車ヲ運轉スル等ノ、所謂罷業
破リト云フコトヲヤルノデアリマス、斯ウ
云フコトヲヤリマスルナラバ、ソレハ勞働
爭議ヲ非常ニ惡化セシムルモノデアル、勞
働爭議ヲ惡化セシムルノミナラズ、更ニ之
ヲ永引カスモノデアル、而モ尙ホ勞働者ノ
反感ヲ買フモノデアル、所謂斯樣ナ罷業破
リト云フコトハ最モ今日ノ社會ノ問題カ
ラ又勞働問題ノ立場カラ實ニ嫌惡スベキ、
唾棄スベキ、卑怯ナル態度ナリトシテ排斥
サレテ居ルノデアル、斯ウ云フ問題ニ對シマ
シチ、或ハ官憲ガ其後押ヲスルトカ、或
之ニ對シテ便宜ヲ與ヘルトカ云フヤウナ態
度ヲ執ッテ居ルノデハナイカト云フ疑ガ極
メテ濃厚デアルノデアリマス、此問題ニ對
シマシテ內務大臣ノ所見ヲ聞カネバナラナ
イノデアリマス
更ニ問題ヲ漁民ニ轉ジマスルガ、新シキ
漁具ヲ資本家ガ色と利用スルコトニ依リマ
シテ、例ヘバ「トロール」船等ノ利用ニ依
リマシテ、漁民ガ非常ニ迷惑ヲ蒙ッテ居
ルノデアル今日ノ文明ノ所謂機械化
ニ依ッテ漁民大衆ガ困ッテ居ル、困ッテ居リマ
スル漁民大衆ガ自分達ノ生活上ノ叫ビヲ
擧ゲル爲ニ、之ヲ縣廳ニ抗議ヲ爲スベク上
申セントスル、處ガ該運動ニ對シテ、常ニ
官憲ハ無謀ナル取締、彈壓ヲ以テ之ニ臨ン
ダリ、或ハ干渉ヲ以テソレニ臨ンダリスル
結果、續々ト此陳情運動ガ暴動化シ、或ハ
騷擾化スル傾向ガアルノデアリマス、或
高知縣ニ於テ、或ハ富山縣ニ於テ、或ハ新
潟縣ニ於テ、其他各地ニ於キマシテ此漁民
ノ陳情ト云フモノガ、官憲ノ壓迫ニ依ッテ非
常ニ阻止サレ、是ガ惡化シ是ガ刑事問題
化シテ居ルト云フ事實ヲ吾々ハ見ルノデア
ル、斯樣ニシテ生活上ノ叫ビヲ漁民大衆ガ擧
ゲルト云フコトハ是ハ經濟上ノ問題デア
リマスカラ、自由行動ヲ許サナケレバナラ
ナイ、之ニ對シテ官憲ハ非常ナル干涉ヲシ、
不當ナル壓迫ヲ加ヘテ居ルト云フコトヲ吾
吾ハ考ヘル斯ウ云フヤウナコトニ關シマ
シテ、果シテ其態度ヲ尙ホ續ケテ執ルカ、又
如何ナル理由ニ依ッテ斯樣ナル態度ヲ執ッテ
居ルカト云フコトヲ、吾々ハ質問シナケレ
バナラナイノデアリマス
今一ツ遞信大臣ニ御伺ヲ致シタイノデア
リマスルガ、ソレハ遞信從業員ハ遞友同志
會ト云フモノヲ作リマシテ所謂勞働者ノ
團結ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ此從
業員-郵便配達夫ノ從業員ニ對シマシ
テ、遞信當局ハ先般ノ衆議院議員ノ總選
擧ニ對シ、斯樣ナル通牒ヲ發シテ居ルノデ
アリマス卽チ讀ンデ見マスルナラバ、「選
擧運動員トナラザルハ勿論是等ノ者ノ手傳
ヲ爲シ、又ハ推薦狀、廣告狀等ニ署名、或
ハ自ラ之ヲ發シ、其他應援演說ヲ爲サザル
コト」斯樣ナ通牒ヲ發シテ居ルノデアリマ
ス、是ハ明カニ今日、從業員卽チ民衆ニ與
ヘラレテ居ル所ノ政治上ノ自由ヲ剝奪スル
モノデアル、從業員諸君ハ、政治上ノ自由
ヲ十分ニ有タナケレバナラナイノデアル、
然ルニモ拘ラズ今日遞信當局ハ通牒ヲ發シ
マシテ、此政治的自由ヲ剝奪スルト云フヤ
ウナ態度ヲ執ッテ居ルノデアル、何故ニ今
日政治上ノ自由ヲ剝奪スルカノ如キ通牒ヲ
發シタカ、其根據ハ實ニ非立憲的行爲デア
ルト云フコトヲ斷言セザルヲ得ナイノデア
ル、此非立憲的行爲ヲ執ルニ至ッタ理由如
何、又今日此通牒ヲ發スル根據ヲ吾々ハ遞
信當局ニ對シテ質問シナケレバナラナイノ
デアル
以上ノ諸點ヲ擧ゲテ、卽チ今日ハ急速
度、加速度、激加ヲ以テ怒濤ノ如ク殖エテ
參リマスル失業對策ニ對シテ、果シテ今日
勇敢ニ-勇敢ニ現政府ハ之ニ臨ム勇氣
アリヤト云フコトヲ吾々ハ疑ハザルヲ得ナ
イノデアル、若シソレガ社會不安或ハ又社
會動亂ト云フヤウナ結果ニナッタ時ニ、果シ
テ其責任ヲ持ツコトガ出來ルデアリマセウ
カ、恐ラクハ今日ノ失業者ハ更ニ其數ヲ今
後ニ於テ、將來ニ於テ、尙ホ增ストモ減ラ
ナイ、決シテ其數ハ減ルコトナクシテ殖エ
ルト云フコトヲ吾々ハ信ズルノデアリマ
ス、此意味ニ於テ以上ノ諸點ニ對シマシテ、
政府當局ノ明快ナル所ノ答辯ヲ私ハ求メ
マシテ、玆ニ降壇ヲ致ス次第デアリマス
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=43
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044・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 片山君ノ御質問
ニ對シテ內務省ノ關スル限リハ大臣自身
ニ於テ答辯セラルベキ筈デアリマスルガ
只今豫算委員會ニ出席シテ居ラレマスルニ
依ッテ、本議場ニ出ラレナイコトヲ甚ダ遺憾
ト存ジマス、私ガ代ッテ御答ヲスルト云フ
ノデアリマセヌガ、政府委員トシテ一應簡
單ニ御答ヲ致シマス
第一ノ失業對策ニ付キマシテハ、過日ノ
本會議場ニ於テ質問應答ガ重ネラレテ居リ
マシテ、之ニ對スル政府ノ對策ハ十分ニ說
明セラレテ居リマスルニ依ッテ、是レ以上私
ガ答辯ヲ致スベキ餘地ハナイノデアリマス
第二ノ埼玉縣ノ川口ノ爭議ニ當リマシテ、
警察官ガ拔劒シタト云フコトデアリマスル
ケレドモ、政府ノ取調ベタ所ニ依リマスル
ト、警察官ガ拔劒ヲシタト云フ事實ハ毛頭
ゴザリマセヌ
第三ノ東京市電ノ罷業ノ際ニ當リマシテ、
靑年團ガ出動シタコトハ宜シクナイト云フ
ノデアリマスケレドモ、交通機關ガ罷業ノ
爲ニ停止シ、多數ノ民衆ガ不便ヲ蒙リマス
ル場合ニ當フテ、靑年團ガ自ラ進ンデ此缺陷
ヲ補フト云フコトハ、私ハ寧ロ賞スベキ事
デアリマシテ(拍手)決シテ排斥スベキ事デ
ハナイト思ヒマス、片山君ノ御質問ハ、內
務省ニ關スル限リハ此位ノ事デアルト思ヒ
マス何カ其他農民ニ對シテ過度ノ壓迫ヲ
スルト云フヤウナ御言葉デアリマシタガ、
サウ云フ事實モ全然ゴザイマセヌ(拍手)
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=44
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045・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 大臣ガ豫算委員
會ニ出テ居リマスルカラ、私代ッテ御答致
シマス、戶數割ノ件ヲ農林省ニ御問ヒニナ
リマシタケレドモ、是ハ少シ見當違ヒト思ヒ
マリ、要スルニ質問者ハ大體ニ於テ戶數
割ハ農村ニ於テ徵收スルモノデアリマスカ
ラ農林省ト間違ッタノデアリマセウ、是ハ
所管ハ內務省デアリマス、併シ農林省トシ
テノ意見モ大シテ差ハナイト思ヒマス、私
共ハ戶數割ハ其運用宜シキヲ得レバ、極メ
テ良稅ト信ジテ居ル、決シテ廢止スル意思
ハアリマセヌ、又戶數割ハ廢スルコトニ依ッ
テ生ズル町村ノ歲入ノ缺陷ヲ如何ニシテ補
充スルカト云フ考ナクシテ、之ヲ廢止スル
ト云フコトハ全然出來マセヌ
次ニ小作法ノ問題デアリマス、小作法ハ
御承知ノ通リ、此前ノ憲政會內閣ノ時ニ大
體成案ヲ得テ居リマシテ、今囘ノ民政黨内
閣ニナッテ社會政策審議會ニ對シテ、大體憲
政會內閣當時ニ出來タル其モノヲ、社會政
策審議會ニ諮問致シマシテ、大體前ノ通リ
デ差支ナイト云フ意味ノ答申ガゴザイマシ
タカラ、來ル通常議會ニハ無論提案スル積
リデゴザイマス、但シ此特別議會ニ出セト
云フコトハ是ハ餘リニ片山君實情ヲ知ラ
ヌヤウニ思ヒマス、案ハ出來テ居リマスケ
レドモ、到底此短期間ニ於テ解決出來ルヤ
ウナ簡單ナ問題デナイト思ヒマス、但シ案
ノ內容ガ片山君ノ言フヤウナ意見ニ一致ス
ルコトハ不可能ト思ヒマスケレドモ、兎エ
角出スダケハ出ス積リデアリマス
次ニ肥料ノ公營ト云フコトデアリマス、
私共モ實ハ公營ト云フ言葉トハ違ヒマスガ、
肥料ノ專賣ト云フコトヲ主張シタ時代モゴ
ザイマシタガ、色々ノ關係ヨリ〓究致シマ
シテ、中々困難ガ伴ヒマス、故ニ今囘ノ豫
算-昭和五年度ノ追加豫算ノ中、及ビ實
行豫算ノ中ニ、產業組合ヲ中心トシテ主
トシテ全購聯及ビ府縣聯合會、單位產業組
合ノ力ニ依ッテ、之ニ對シテ政府ガ相當ノ
保護助成ヲシテ、農家ニ對シテ比較的安ク
優良ナル肥料ヲ供給スルノ案ヲ立チマシ
テ、之ヲ豫算ニ計上シテアルヤウナ次第デ
アリマス、公營ハ今日ノ所實行不可能ト存
ジマス
次ニ農產物ノ價格ガ金ノ輸出解禁ニ依。ツ
テ非常ス下落シタ問題ニ付テヾアリマスル
ガ、是ハ成程直接ニ金輸出解禁ノ影響ヲ受
ケテ下ッタモノモゴザイマセウ、而シテ又金
輸出解禁ノ影響ノ極メテ微弱ナルモノモア
ルト思ヒマス、故ニ片山君ノ言フガ如キ金
額ニ、金輸出解禁ニ因リ農產物ノ價格ガ下"
テ居ルカドウカ、私玆ニ明言スルコトハ出
來マセヌガ、併ナガラ農民ノ賣ル品物ガ幾
分下ッタト同時ニ、農民ノ買フ各種ノ品物、
肥料ニシロ、或ハ其他ノ織物ニシロ、總テ
ノ物ガ下ッタト云フコトモ是レ當然デアレ
バ今日ノ財界救濟ノ場合ニ於テ、金輸出
解禁ヲ斷行スル場合ニ於テ已ムヲ得ザルコ
トデアルト信ジマス、米ニ付テ申セバ金
輸出解禁ノ影響ハ極メテ微々タルモノデア
リマス(「ノー/」拍手)以上大體片山君ノ
御問ニ答ヘタ積リデゴザイマス
〔政府委員中野正剛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=45
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046・中野正剛
○政府委員(中野正剛君) 只今ノ片山君ノ
御質問中、遞信省ニ係ル點ニ付テ答辯申上ゲ
やく、先般ノ總選擧ニ際シテ遞信省カラ從
業員ニ通告ヲ出シテ、選擧運動ニ携ルコト
ヲ禁ジタト云フ御非難デアリマシタガ、ソ
レハ今迄ヤッテ居ル從前ノ仕來リヲ其儘ヤッ
タダケデアリマス、御承知ノ通リ遞信從業
員ハ其事務取扱ノ公正ヲ期セネバナラズ
又通信ノ祕密ヲ保タナケレバナラズ、配達
其他ノ時間ヲ確保シナケレバナラヌ、斯ウ
云フ特殊ノ仕事デアリマシテ、公務デアリ
マス以上ハ選擧運動ニ對シテ多少ノ制限ヲ
加フルコトハ事務ノ公正ヲ期スル上ニ已
ムヲ得ヌ處置ト思フテ居ルノデアリマス、
併ナガラ何方カト申シマスレバ、斯樣ナ制
限ハ成ベク少イ方ガ宜イノデアリマシテ
公務ニ差支ナイ範圍ニ於テハ制限ヲ成ベク
加ヘナイヤウニスルノデアリマス、今迄ハ
仕來リ上候補者ニ立ツコトナドモ許シテ居
ナカッタノデアリマスガ、今囘ハ被選擧權ハ
十分ニ行使シテ宜イコトヽシテ居リマス
シ、隨テ選擧權ノ行使モ十分ニヤッテ宜イ
コトニシテ居リマス、唯〓遞信從業員ガ選
學運動ノ渦中ニ飛込ンデ、大ニ奔走スルコ
トヲ禁ジタダケデアリマス、ソレカラ遞友
同志會ト云フ從業員ノ組合ガアリマス、只
今御話ユナッタヤウデアリマスガ、是ハ勞働
總同盟ノ一部ニ屬シテ居ルト云フ話ヲ承ッ
テ居リマス、之ニ對シマシテハ私共ハ全ク
不干涉主義ヲ執ヶテ居ルノデアリマス、單ニ
不干涉主義バカリデナク、事務ノ取扱其他
ニ付キマシテハ色ミ御相談モ受ケテ居ルノ
デアリマシテ、幹部ノ方ミトハ昨年モ懇談
致シマシテ、從業員ノ待遇改善等ニ付キマ
シテハ大分御說ヲ採用シ、緊縮ノ折柄デハ
アリマスガ、昨年ハ從業員ノ待遇改善ニ百
七十万圓バカリノ費用ヲ、實行豫算ノ上ニ
認メテ居ルヤウナ譯デアリマシテ、是等ノ
點ニ付キマシテ遞信省ノ執ッテ居ル態度ハ
公平デアルノミナラズ、私ハ敬意ト友情ヲ
以テ遞友同志會ノ人ミト接觸シ、御懇意ニ
御話ヲ申上ゲテ居ルト云フコトヲ御認メニ
ナルト思ヒマス、是ダケ御答申上ゲテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=46
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047・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 片山君御質問ガゴ
ザイマシタラ
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=47
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048・片山哲
○片山哲君 齋藤內務次官ノ答辯ニ對シマ
シテ更ニ再質問ヲ致シマス
川口問題ニ付キマシテ警官ガ拔劒シタコ
トハナイト云フコトヲ言ハレテ居ル、併ナ
ガラ今日玆ニ被害者ノ診斷書二通ヲ取〃テ
居ルノデアリマス、之ニ依リマスルト明ニ刄
物ニ依ル所ノ裂傷、刀ニ依ル所ノ傷ト云フ
コトガ明カニセラレテ居ルノデアリマス、
斯ウ云フ議論ハ此處デ繰返サナイノデアリマ
スガ、併ナガラ他日司法官憲ニ依リマシテ、
警官ガ拔劒ヲシタト云フ事實ガ明瞭ニナッ
タ時ニ、其責任者及其當事者、是等ニ對シ
マシテ內務當局ハ如何ナル處置ヲ執ルカ、
如何ナル責任ヲ執ルカ、此問題ヲ更ニ內務
當局ニ伺ヒタイノデアリマス
更ニ又農林次官ニ對シマシテ伺ヒマスガ、
今日吾々ガ强調致シテ居リマス農民特別銀
行設置ノ件ニ付テ御答辯ガ無カッタノデア
リマス、卽チ今日ノ農工銀行、勸業銀行、
其外信用組合、或ハ產業組合ト云フモノハ、
總テ是ハ資本家階級ノ手先ニナッテ居ルノ
デアリマス、少シモ今日ノ小作農及ビ自作
農、耕作階級ノ金融機關トハナッテ居ナイ
ノデアリマス、彼等ハ之ニ依"テ自分ノ懷
ロヲ肥シテ居ルノデアル、斯ウ云フ風ナ金
融機關ニ依リマシテハ、到底今日ノ大勢ノ
耕作農民ヲ救フコトハ出來ナイ、其意味ニ
於テ自ラ進ンデ今日農村ニ特別銀行ヲ設置
スルノガ最大ノ急務デアルト考ヘル此點
ニ付キマシテ、小作法制定ト相竝ンデ、農
村金融機關、卽チ農民ノ負債ヲ救濟スル機
關ト致シマシテ、農民ノ特別銀行ガ最モ時
宜ヲ得タモノデアリ、又必要缺クベカラザ
ルモノデアルト云フコトヲ考ヘルノデアリ
さく、此點ヲ更ニ質問ヲ致ス次第デアリマ
ス、御答辯ヲ願ヒマス
又第一ノ憲法ノ第十一條及第十二條ノ問
題ニ付キマシテ濱口首相ガ只今御出席ニ
ナッテ居リマスカラ首相ノ明快ナル答辯ヲ
求メル次第デアリマス
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=48
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049・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 埼玉縣川口ノ爭
議ニ當リマシテ暴行ガ始リマシテ警察
官側ニ於テモ、勞働者側ニ於キマシテモ
數名ヅヽノ負傷者ヲ出シテ居リマス、警察
官ガ拔劒ヲシタト云フコトデアリマスガ
最前申シマシタヤウニ、政府ノ取調ベタ所
ニ依リマスルト云フト、拔劒ヲ致シタ事實
ハ更ニアリマセヌ、ノミナラズ其後ニハ負
傷者ニ對シテ醫師ガ診斷ヲシテ居リマスル
ガ、其診斷書ニモ、拔劒ニ因ル負傷デハナ
イト云フコトヲバ明記シテ居リマス(拍手)
併シ片山君ノ仰セノ如ク、何カ拔劒ニ付テ
告訴ガ起ッテ居リマシテ、告訴ノ結果拔劍ヲ
シタト云フ事實ガ確定シタナラバドウスル
カ、苟モ今日ノ時代ニ當リマシテ、警察官ガ
故ナク拔劍シテ人權ヲ蹂躪スルト云フガ如
キコトハ看過スベカラザルコトデアリマ
スルニ依ッテ、若シサウ云フ事實ガアリマシ
タナラバ、政府ニ於キマシテハ適當ノ處置
ヲスルコトニ少シモ躊躇スルモノデハアリ
マセヌ、是ダケノコトヲ御答シテ置キマス
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=49
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050・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 只今ノ金融ノ問
題デスガ、何カ農民ニ對スル特殊ノ銀行ヲ
造レト云フヤウナコトデスケレドモ、內容
ガ分リマセヌデ御答ノ仕樣ガナイト思ヒ
やく、但シ是ハ一般金融ニ關スルコトデゴ
ザイマスカラシテ、農林省バカリノ意見ト
シテ玆ニ確答ヲ申上ゲルコトハ私ニハ出來
マセヌ、而シテ內容ガ如何ニモ不十分デゴ
ザイマス、ドウ云フ意味ニ於テノ銀行デア
ルカ意味ガ分リマセヌカラシテ隨ッテ之
ニ對シテノ御答ハ當然出來マセヌ
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=50
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051・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 片山君ノ質問ノ
際ニハ私ハ不在デアリマシテ直接ニ承ル
コトガ出來ナカッタノデアリマス
第一ニハ軍縮ニ依フテ生ズベキ剩餘金ノ
使途ハドウカ、使ヒ途ハ如何ト云フ御質問デ
アッタヤウニ聽キマシタ、若シ左樣デアッタ
トスルナラバ軍縮ニ依ル剩餘金ハドウ云
フ程度ニ達スルカト云フコトハ今日ハ分リ
マセヌ、分リマセヌケレドモ相當ノ餘剩ヲ
生ズル見込デアリマス、生ジタル餘剩金ヲ
主トシテ、之ヲ國民負擔ノ輕減ニ充ツル方
針デアリマス(拍手)
第二ハ、軍部大臣ニ對スル質問ニ對シテ
ハ何人ガ答辯ヲスルカト云フ御趣意デアッ
タヤウデアリマス、若シ違ヒマシタレバ後
カラ御再問ヲ願ヒマス、海軍ニ關スル限リ
ハ、私ガ事務管理ヲヤッテ居リマスカラ是
ハ議論ガアリマセヌガ、陸軍大臣ニ對スル
質問ニ對シテハ、誰ガ答辯ヲスルカト云フ
御趣意デアッタデハナイカト想像ヲ致シマ
ス、違ヒマスレバ再質問ヲ待ッテ居リマス、
若シサウデアリマスレバ、國務大臣タル軍
部大臣ニ對スル質問ニ對シテハ、國務大臣
ガ答辯ヲシマス
第三ノ御質問ハ倫敦海軍條約締結ノ憲
法上根據如何ト云フコトデアッタヤウデア
リマス、是ハノ申スマデモナク條約ノ締結
權ニ依テ、政府ガ責任ヲ以テ締結ヲ致シマ
シタ(拍手)
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=51
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052・片山哲
○片山哲君 濱口首相ニ對シマシテハ私、
說明ヲ致シマシタ時ニ御列席ガナカッタモ
ノデアリマスカラシテ、第三ニ答辯サレマ
シタ問題ヲ更ニ要約シテ、モウ一度質問致
シマス、卽チ私ノ尋ネタイト云フ其點ハ、今
日濱日首相ハ最モ公明ナル政治ヲ布カン
ト云フコトヲ豫メ表明セラレタノデアリマ
ス、卽チ公明ナル政治ヲ布カントスル濱口
首相ハ、此壇上ニ於テ最モ國民ノ聞カント
スル軍縮ニ對スル所ノ政府ノ執リタル處置
ハ憲法上如何ナル根據ニ基イタト云フ點
ニ付テ、極メテ明快ナル態度ヲ以テ、明快ナ
ル答辯ヲ爲スベキガ當然デアルト云フコト
ヲ考ヘルノデアリマス、隨ッテ憲法第十一條
ニ依ルカ、第十二條ニ依ルカト云フコトヲ
明ニシナケレバナリマセヌ、是ガ卽チ憲法
政治ニ對スル確信ヲ明カニスル所以デアル
ト共ニ、今日ノ軍閥ニ對スル新シキ政治ヲ
樹立スル所以デアルト云フコトヲ考ヘルノ
デアル、殊ニ先程申シマシタヤウニ、政友
會ハ今マデ軍閥ニ對シテ反對ヲ表示シタ犬
養總裁ヲ首班トスル政黨タル其政友會ノ
質問ノ根據ガ甚ダ曖昧デアリマスガ依然
トシテ軍閥謳歌ノ態度ヲ執ッテ居ル、此間ニ
於テ濱口首相ハ、宜シク今日軍縮會議ニ執
リタル統帥權問題ノ根據ヲ、極メテ率直ニ、
極メテ勇敢ニ、極メテ明快ニ、此壇上ニ於
テ答辯スルコトガ、立憲政治家トシテ、又
政黨政治ヲ主張シ、政黨政治ノ首班タル首
相トシテ、最モ執ラナケレバナラナイ態度
デハナイカト言フノデアル、此意味ニ於テ
條約ニ關スル云々ト云フヤウナ、サウ云フ
言葉デハ滿足スルコトガ出來ナイ、今日軍
閥ノ力ニ媚ビルコトナク、今日又新シキ政
黨政治ヲ樹立シ、憲法政治ニ對スル强キ確
信ヲ持ッテ居ルナラバ、此壇上ニ於テ最モ明
快ナ答辯ヲ爲スノガ至當デアル、其態度如
何、其意見如何ト云フコトヲ首相ニ伺ヒタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=52
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053・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 政府ノ答辯ハアリ
マセヌ-濱田國松君
〔濱田國松君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=53
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054・濱田國松
○濱田國松君 私ハ濱口總理大臣ニ對シマ
シテ國務ノ故障ニ關スル質問ヲ致シタイト
存ジマス、此質問ハ政策問題デモナケレバ、
黨略ニ關係ノアル問題デモナイノデアリマ
シテ、國務ノ遂行ニ關スル根幹問題デアリ
やっ、又第二ニハ帝國議會內ニ於ケル質問
答辯ニ關スル重大ナル疑義ヲ決定スル質問
デアリマス、ドウカ總理大臣ニ於カレマシ
テモ、誠意ヲ以テ率直ニ御答辯アランコト
ヲ希望致シマス(拍手)
第一ニ御尋ヲ申上ゲマスルコトハ、宇垣
陸軍大臣ハ今期議會開會ノ初ヨリ一日モ
御登院ニハナッテ居リマセヌ、今日旣ニ十
數日ヲ開會以來經過致シタノデゴザイマス
ルガ、旣ニ會期半バ以上ヲ經過セントシマ
ス今日ニ於テモ、尙ホ御出席ガナイノデア
リマス、大凡此陸軍ノ國務ニ關係致シマシ
テ、陸軍大臣ニ對スル議會ノ質問ニ付キマ
シテハ單ニ政府委員ニ於テ答辯ノ資格ノ
無イコトハ明デアリマス、且ツ又政府委員
ニ於テ答辯ノ資格無キノミナラズ、總理大
臣竝ニ他ノ各省大臣ト雖モ、內閣官制第九
條ノ攝任竝ニ事務管理ノ形式的手續ヲ經ル
ニ非ザレバ、答辯ノ資格ノ無イコトハ先例
ニ依リ確定致シテ居ル事實デアリマス(拍
手)然ルニ濱口首相ガ斯ル先例、斯ル法制上
ノ解釋ヲ御取リニナルナラバ、今日迄國務
ノ遂行上何故ニ陸軍大臣ノ缺席ニ付テ、官
制第九條ノ手續ヲ執ラレナイノデアリマス
カ、之ヲ執ラレナイノハ國務ノ遂行ニ差支
ナシト云フ御見解デアリマスカ、此點ヲ第
ニ伺ヒタイノデアリマス
第二ニハ此內閣官制第九條ニ依ッテ陸軍
大臣闕缺ノ補充ヲ要スルコトハ當然デアリ
マスガ、此手續ヲ執ラレザルニ付テハ議
會內ニ於ケル答辯、竝ニ一般國務ノ遂行ニ
付テ故障ノ起ルコトハ當然デアリマス、現ニ
先刻片山君ガ此憲法第十一條、第十二條ト、
海軍ニ對スル關係ニ付テ疑義ヲ總理大臣ニ尋
ネテ居ラレル、此議會ハ種々問題モ重疊ハ致
シテ居リマスガ倫敦軍縮會議ノ關係ニ於
テ、何ト申シテモ軍縮問題ヲ中心問題トス
ル所ノ重要ナル議會デアリマス左樣ナ性
質ヲ持ッテ居ル議會デアリマスカラ、海軍大
臣ノ缺席ニ付テハ官制第九條ノ攝任竝ニ
管理ヲ必要トスルト云フ、國務遂行ノ必要
ニ從〓テ、總理大臣ハ現ニ海軍大臣ノ事務ヲ
管理ヲシテ居ラレル、然ルニ陸軍大臣ガ議
會ノ開會ヨリ一日モ出席ガナイト云フコト
ニ付テ、何故ニ陸軍大臣ノ事務ノ管掌ヲ置
カナイノカ、海軍ガ重クシテ陸軍ガ輕イト
云フ譯デモナカラウ、此理由ハ吾々ニハ不
可解デアル、私ノ聞ク所ニ依レバ海軍ニ
於テハ文官出身ノ他ノ大臣ノ管理ヲモヽ內
閣官制ノ第九條ノ適用デハ差支ナイト云フ
解釋ヲ執ッテ居ラルヽガ故ニ、文官出身ノ濱
口首相ガ之ヲ管理セラレル、併シ陸軍方面
ニハ、或ハ官制ノ根幹ニ示サレタル通リ、
軍人デナケレバ國務大臣タル能ハズト云フ
主義ヲ延長サレ、隨テ官制第九條ニ依リ、
臨時的ノ事務管理大臣モ亦軍人ナラザルベ
カラズト云フ議論、若クハ故障ガアル爲ニ、
總理大臣ハ管理ヲ置カナイノデアルマイ
カ、然ラズンバ海軍ニノミ置イテ、陸軍ニ
置カレナイト云フ理由ハ何處ニ在ル、陸軍
海軍共、國防ノ兩翼デハナイカ、然ルニ一
方ニハ必要アリトシテ管理ヲ置イテ一九.
ニ置カレナイト云フノハドウ云フ譯デアル
カ恐ラク海軍方面ト陸軍方面トノ官制第
九條ノ解釋ニ付テ、內閣ニ於テ統一ヲ取ル
コトヲ得ザルガ故ニ、斯ルコトニナルノデ
アラウト思フ、是ハ一面カラ見レバ、陸海
軍ノ議論ヲ統一シテ、官制第九條ノ規定ニ
彼ら、順當ニ管理大臣ヲ置クコトヲ得ザ
ル結果ニ立至ルノデアリマスガ、此管理大
臣ヲモ置カザル結果トシテヽ議會内ノ質問
應答ト云フモノハ、非常ニ不鮮明ナコトニ
ナッテ居ル、非常ニ澁滯ヲ致シテ居ル、是ヨ
リ生ズル所ノ結果ト致シマシテ、本院ニ於
テ將ニ豫算審議ノ本會ガ一兩日中ニ開カレ
ントスルノデアリマス、又明日邊リハ豫算
ノ總會ト云フノモ行ハレルノデアラウ、然
ルニ吾々議員側カラ言ヘバ、此軍部大臣ニ
對スル多數ノ質問ガ堆積致シテ居ル、然ル
ニ總理大臣ガ單ニ包括的ノ答辯ヲセラルヽ
ノミデハ豫算審議其他ニ於テ、吾々ハ十
分ニ議事ヲ進行スルコト能ハザル機會ニ遭
遇スルカモ分リマセヌ、斯ル場合ニ於テ總
理大臣ハ其責任ヲ負擔セラルヽノデアルカ
ドウデアルカ、之ヲ伺テ置キタイ
其次ハ審議ガ進捗致シマセヌケレバ、隨
テ短期ノ議會デアリマスルカラ、會期延長
ト云フ問題モ時ニ起ラザルヲ保シ難イノデ
アリマス、ソレハ何ノ爲ニ左樣ナ故障ガ起
ルカト申シマスレバ今ノ軍縮ヲ中心トシ
タル軍部大臣ニ對スル質問應答ガ、捗々シ
タ其局ヲ結バナイト云フ所カラ主トシテ
起ルノデアリマスルガ、此責任ヲ總理ハ御
執リニナルコトガ出來ルカドウカ
尙ホモウ一ツ終リニ御尋申上ゲタイト申
シマスルノハ總理大臣ハ豫算委員會其他
ニ於テ、宇垣陸軍大臣ノ健康ハ殆ド囘復ラ
シテ居ルノデアルガ、未ダ登院ノ期ニ達シ
ナイ、併シ事務ハ病床ニ於テ執ルコトノ出
來ル程度ニ達シテ居ルノデアルカラ、書面
ヲ以テ質問ヲスレバ、書面ヲ以テ答ヘルダ
ケノ準備ニハナッテ居ルト云フコトヲ豫算
委員會若クハ山崎達之輔君ノ質問ニ對シテ
答辯ヲサレテ居ルヤウデアリマス、併ナガ
ラ是ハ帝國議會ノ議員ノ質問權ト云フモノ
ヲ確保スル上ニ於テ、私ハ此點ヲ明カニシ
テ置キタイ、元來議會內ニ於テノ質問應答
ト云フモノハ、申スマデモナタ議院法竝ニ
衆議院規則ノ規定スル所ニ依ッテ明カデアツ
テ口頭デ尋ネテロ頭デ答辯ヲスルト云フ
ノガ原則ニナッテ居ルノデアル、唯、書面デ
尋ネタモノニ對シテ書面答ヘルト云フ慣例
ニナッテ居ル、然ルニ吾々ガ口頭ヲ以テ尋ネ
タコトヲ、一片ノ書面ヲ以テ答辯スルト云
フコトハ、所謂議員ノ發問權ト云フモノヲ
侮辱シタ所ノ-輕視シタル所ノモノデア
ルト思フノデアリマス(拍手)吾々ハ既往ノ
前例ニ依ッテモ、又將來吾々ノ發問權ヲ確保
スル上ニ於キマシテモ、議員ガ演說デ尋ネ
タナラバ、矢張大臣モ亦口頭ヲ以テ答ヘル
ト云フコトハ是ハ議院ノ慣例デアリ法規
ノ上デ明カニナッテ居ル、然ルニ總理大臣
ハ宇垣陸軍大臣ガ出ナタテモ宜イデハナ
イカ書面デ答辯シタラ宜イデハナイカト
言ハレルガ如キハ所謂官僚思想ニ出發シ
タル所ノ不穩當ナル御答辯デアルト信ジテ
居ル、果シテ斯ク論ジ來リマスナラバ、宇垣
陸軍大臣ノ缺勤ニ付テ總理ガ玆ニ內閣官制
第九條ノ形式ヲ履マレザルコトハ、甚ダ不
穩當ト思フノデアリマスルガ、今日ニモ其
手續ヲ遂行セラルヽ自信ガアルヤ否ヤ、若
シ自信ガナケレバ明日ニモ字垣陸軍大臣ガ
出席セラルヽ事情ニナッテ居ルカドウカ、出
席モ出來ズ、官制ノ規定ニ從ヲテ管理手續
ヲモ爲サズ、法制ヲ無視シテ漫然トシテ此
議會ヲ切拔ケラレントセラレル卑怯ナル態
度ニ出ラレントスルノデアルカドウカ、之
ヲ御尋申上ゲマス
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=54
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055・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 濱田君ニ御答致
シマス內閣ノ官制第九條ニハ如何ニモ御
說ノ如キ規定ガアリマス、國務大臣ガ故障
アルトキハ他ノ大臣ガ臨時兼攝或ハ事務管
理ヲ命ゼラルヽト云フ規定ガアリマス、然
ルニ宇垣陸軍大臣ノ今日ノ狀態ハ、官制第
九條ノ所謂故障ト認ムベキ程度デナイト考
ヘマス(拍手)私ハ濱田君ノ御質問ヲ總括
シテ御答致シマスルガ、國務大臣ガ議會ニ
出マスル以上ハ、各省大臣トシテヾハアリ
マセヌ、各省大臣トシテ自分ノ持ヲテ居ル所ノ
職務ノ權限外ニ涉ッテ、廣ク一般ノ國務ニ關シ
發言ヲシ、答辯ヲスル權利ガアリマス(拍手)
若シ諸君ガ國務大臣タル陸軍大臣ニ向ッテ
御質問ガアリマスルナラバ、此處ニ御述べ
ニナルガ宜シイ他ノ國務大臣ガ之ニ答辯
ヲ致シマス、代ッテ答辯ハ致シマセヌ、代理
デハアリマセヌ、國務大臣トシテ當然答辯
ヲ致シマス、國務大臣ハ皆ソレ〓〓揃ッテ
居リマス、政府委員モ多數居リマス、卽チ
政府ハ議會ニ臨ム所ノ陣容ハ十分ニ整ヘテ
臨ンデ居ル、ソレニ對シテ議員諸君ガ陸軍
大臣ガ居ナイカラ質問ヲサレヌト云フノハ、
ソレハアナタ方ノ自由デアル、吾々ハ其質
問ニ對シ答辯ヲ爲スダケノ用意ヲシテ居リ
マス卽チ私共ノ方ニ於テハ責任ハアリマ
セヌ、又何カ特殊ノ事項ノ爲ニ、是非トモ陸
軍大臣ノ直接ノ答辯ヲ要スルトサレルナラ
バ是ハ便宜書面ヲ以テ答辯ヲ求メラレテ
モ宜シイノデアリマス、其書面ノ答辯ハイ
カヌト云フナラバ、現ニ昨日ノ豫算委員會
ニ於テ政友會ノ山崎君カラ官制第九條ノ解
釋ニ關シ、陸軍大臣ニ書面ヲ發シテ答辯ヲ
求メラレタ、ソレニ對シテ本日書面ヲ以テ
答辯ガアッタノデアリマス、ソレハ卽チ議員
諸君ガ國務大臣ト質問應答ヲ爲スニ當シテ、
書面ヲ以テスルト云フコトヲ自ラ承認ニナフ
タ證據デアリマス(拍手)既ニ承認ニナッタ
以上ハ何故ニ其便法ヲ講ゼラレヌカ、又特
殊ニアラザル所ノ一般ノ國務ニ付テハ、私
初メ他ノ國務大臣ガ陸軍大臣ノ代理デナ
ク、代ッテヾナク、當然國務大臣トシテ答辯
ヲ致シマス、隨テ何等ノ資任ハアリマセヌ、
アナタ方ガ御質問ヲ爲サラヌノハ御自由デ
アリマス(拍手)
〔濱田國松君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=55
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056・濱田國松
○濱田國松君 私ハ先刻質問ノ劈頭ニ於キ
マシテ、是ハ黨略問題デモ政策問題デモナ
イノデアリマシテ、議院政治ノ根幹ニ觸レ
タル重要ナル問題デアリマスカラ、互ニ誠
意ヲ披瀝シテ、此制度解釋ノ確立ヲ致シタ
イト云フコトヲ、特ニ希望致シテ置イタノ
デアリマス、然ルニ只今濱日首相ノ御答辯
ニ依ルト-陸軍大臣ノ病氣ハ內閣官制
第九條ノ所謂故障ト云フモノニ相當スルカ
ドウカ、首相ノ解釋ニ依レバ、宇垣陸相ノ
病氣ノ爲ノ議院登院不能ハ、故障デハナイ
ト言ハレル、是ハ實ニ非常識極マル法文ノ
解釋デアルト思フ、何人ガ法令ヲ常識的ニ
解釋シテモ、國務大臣故障アル時ハト云フ、
之ニ病氣職務ヲ遂行シ得ザル場合ヲ包含シ
ナイト云フヤウナ、左樣ナ法令ノ解釋ト云
フモノハ、市井ノ無賴漢ト雖モ爲サヾル所
ノ解釋デアル、苟モ一國ノ政治ノ首班トシ
テ總テニ付テ範ヲ下サルベキ所ノ總理大
臣ガ、病氣ハ故障デナイト云フヤウナ、市
井ノ無賴漢モ爲スヲ憚ル所ノ答辯ヲ爲ス〓
云フコトハ、實ニ驚キ入ッタ次第デアリマ
ス又第二ニ申上ゲマスガ、國務大臣ハ相
互ニ連帶責任ヲ以テ立ツモノデアルカラ
陸軍ニ對スル質問ト雖モ他ノ大臣ガ答辯シ
テ差支ガナイト云フコトヲ言ハレル、是ハ
間違シテ居ル、政治ノ責任ハ連帶責任デアル、
政治ノ責任ハ連帶責任デアルガ、私ノ論ジ
タル尋ネント欲スル所ハ、議員ヨリ特ニ陸
軍大臣ト指定ヲシテ質問ヲシタル時ニハ
陸軍大臣ガ當然答ヘナケレバナラナイト云
フコトヲ言ッテ居ル(拍手)何モ政治ノ責任ヲ
尋ネテ居ルノデハナイ、陸軍大臣ニ質問シ
タ時ニハ陸軍大臣ガ答辯スルノガ院ノ先
例デアル(拍手)濱口君ガ政治ノ責任ト、院
內ニ於ケル質問ニ對スル答辯ノ權限トヲ混
同ヲセラレテ居ルモノデアルト私ハ思フノ
デアル(拍手)大凡ソ自己ノ良心ニ背イテ、
苦シキ說明ヲスル時ニハ顧ミテ他ヲ言フト
云フ古諺ガアル(拍手)謹厚濱口首相ニシテ、
尙且ツ此良心ニ背イタ、病氣ハ故障デナ
イト云フヤウナ答辯ヲ爲サル運命ニ在ルコ
トヲ、現內閣ノ爲ニ悲シム次第デアル(拍
手)病氣ハ有ユル場合ニ於テ故障デナイト
云フコトヲ尙ホ御申シニナルカ、モウ一度
御尋申シテ置キタイ
〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=56
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057・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) 字垣陸軍大臣ノ
今日ノ病狀ハ內閣ノ官制第九條ニ依ッテ
臨時兼搆、又ハ事務管理ヲ置クベキ程度ノ
モノデナイト申シタノデアリマス(拍手)ソ
レカラ國務大臣ハ議會ニ缺席ヲ致シマシ
テ、而モ臨時兼攝ヲ置カズ、又臨時事務管
理ヲ設ケナカッタ先例ハアリマス、決シテ
今囘ニ限ッタコトデハアリマセヌ(拍手)私
ノ記憶スル所ニ依レバ二ツダケノ先例ヲ持フ
テ居リマス一ツハ大正四年第三十七議
會ニ於キマシテ、十二月ノ一日ニ開院式ガ
行ハレ、翌年二月二十九日ニ閉院式ガ行ハ
レテ居リマスルガ、時ノ陸軍大臣岡中將ハ
一月ノ末マデ登院致シマシタケレドモ、病
氣ノ爲ニ二月ハ全部缺席ヲシテ居リマス
(拍手)此場合ニ於テモ時ノ內閣ハ陸軍大臣
ノ代理、又ハ事務管理ヲ置イテアリマセヌ、
其儘缺席ニナッテ居リマス、第二囘ノ例
ハ
〔「國務大臣ノ質疑ノ時ニハ出テ居ルデ
ハナイカ」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=57
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058・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=58
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059・濱口雄幸
○國務大臣(濱口雄幸君) (特)大正十一年
二月下旬マデ司法大臣大木遠吉伯ガ缺席ヲ
サレテ登院ガナカッタノデアリマスルガ、是
亦臨時代理ヲ置イテアリマセヌ、隨テ大臣
ガ缺席ヲシテ而モ臨時兼攝ヲ置カズ、又臨
時事務管理ヲ置カヌト云フコトガ、議會政
治ノ如何ニモ侮辱デアルカノ如ク論ゼラレ
タクハ是ハ先例ヲ知ラザル議論デアリマ
ス、先例ニ依レバサウ云フコトハアリマス、
隨テ陸軍ノ國務ニ關スル御質問ガアリマス
レバ、ドウカ御遠慮ナク御質疑ヲ願ヒタイ、
他ノ國務大臣ガ之ニ答辯ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=59
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060・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)加藤知正君-加
藤知正君
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=60
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061・加藤知正
○ 加藤知正君私ハ絲價安定融資補償法ト
絲價慘落ノ關係ニ付キマシテ總理大臣、大
藏大臣、農林大臣ニ質問ヲ致シタイト考ヘ
テ居リマスルケレドモ、總理大臣ハ御出席
ニナリマシタガ、農林大臣、大藏大臣ノ御
出席ガナイヤウデゴザイマス、殊ニ時間ニ
制限ガゴザイマシテ十分自分ノ述ベント
欲スル意見ヲ述ブル餘裕ガゴザイマセヌカ
ラ、極メテ簡單ニ二三ノ質問ヲ致シテ見タ
イト考ヘル次第デアリマス
此融資補償法ガ昨年ノ春開カレマシタ第
五十六議會ニ提案セラレマシタ其際ニ、民
政黨ノ諸君ハ黨議ヲ以テ之ニ反對ヲセラレ
タノデアリマス、其際ニ村上國吉君ハ民政
黨ヲ代表致シマシテ此壇上ニ於テ反對意
見ヲ述ベラレタノデアリマス、其演說速記
錄ノ全部ヲ玆ニ朗讀シタイケレドモ、是亦
時間ノ關係上
〔「加藤君政府委員ノ出ルマデヤルナ」
「待ッテ居ロ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=61
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062・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 政府委員ガ出席セ
ラレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=62
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063・加藤知正
○加藤知正君(續) 私ハ唯、其要旨ヲ玆ニ
申上ゲマス其反對意見ノ要旨ハ何デアル
カト申シマスレバ此融資補償法ノ如キハ
極メテ不完全、不徹底ナル所ノ法律案デア
ル暫定的ナ、一時的ナ、間ニ合セ的ナ、
斯樣ナ不完全不徹底ナ法律案ニハ吾々ハ反
對セナケレバナラナイ、又平時ニ於テ斯ノ
如キ法律ヲ制定シテ置タト云フコトハ徒
ニ當業者ヲシテ依賴心ヲ起サシメ、不謹愼
放漫ナル經營ヲ爲サシムル基ニナルノデア
ルカラシテ、反對ヲセナケレバナラナイ、
又斯ノ如キ法律ハ縱令之ヲ制定致シテ置キ
マシテモ、恐ラク五箇年ノ期限內ニ於テ之
ヲ運用スルコトハアルマイ、斯ル無用不急
ノ法律案ニハ吾々ハ反對セナケレバナラヌ
ト云フコトヲ、村上君ハ此壇上ニ於テ申述
ベラレタノデアリマス、然ルニ此三月八日ニ
於テ此法律ヲ運用セラルヽニ方リマシテ、
町田農林大臣ハ一ツノ聲明書ヲ發表セラレ
テ居リマス續イテ民政黨カラモ亦聲明書
ガ發表セラレテ居リマス、之ヲ私ハ搔摘ン
デ要旨ヲ朗讀致シマス「市場ノ形勢ヲ放任
センカ、内ニハ銀行ガ生絲資金ノ融通ヲ停
止スル恐レアリ、外ニハ銀塊相場ノ暴落等、
米國市場ニ於ケル一派ノ賣崩シト相俟チ、
絲價ノ大暴落ヲ招キ、斯業ノ基礎ヲ破壞ス
ルニ至ルハ火ヲ膳ルヨリモ明カナル實勢ト
ナレリ、我黨ハ玆ニ政府當局ニ對シテ之ガ
善處ノ勸〓ヲ爲シ、政府モ亦常ニ之ニ對シ
テ備フル所アリ遂ニ絲價安定融資補償法
ノ發動ヲ見ルニ至レリ、是ニ於テ我ガ國際
貿易ノ中樞タル絲價ヲ安定セシメ延イテ
ハ繭價ノ不當ナル低落ヲ防ギ、以テ農村蠶
業ノ安全ヲ期スルハ誠ニ當ヲ得タル處置ナ
リト信ズ」斯樣ニ申サレタノデアリマス
村上君ハ民政黨ヲ代表致シテ、先刻申上ゲタ
ヤウナ反對演說ヲシテ居ラレル此反對演
說ガ本當デアルトスレバ今ノ民政黨ノ此
聲明書ナルモノハ一片ノ反古ニ均シイモノ
ト謂ハナケレバナラヌ、又民政黨ノ此聲明書
ガ本當デアルナラバ、村上君ノ反對演說ナ
ルモノハ好イ加減ナ出鱈目ヲ言ッテ、反對ス
ベカラザルモノヲ反對シタト調ハナケレバ
ナラヌノデアリマス、一體ドチラガ本當ナ
ノデアリマセウカ、之ヲ私ハ現內閣ノ總理
大臣ニシテ民政黨ノ總裁デアル所ノ濱口氏
ニ御尋ネシタイノデアリマス(「居ナイ」ト
呼フ者アリ)
次ニ此度ノ絲價ガ暴落ヲ致スコトニ付キ
マシテ井上大藏大臣ハ何ト言ハレマシタ
カ、此間武藤氏ノ質問ニ對シマシテ、斯樣
ナコトヲ申シテ居ラレマス、卽チソレカラ
私ハ討論デハアリマセヌケレドモ、私ノ考
ノ違フ所ヲ武藤サンニ申シテ置キマスガ、
日本ノ生絲ガ今日下ッタ、是ハ全ク金解禁ノ
結果バカリダト、斯ウ仰セラレル、私ノ說
明ヲ一ツ聽イテ御覽ナサイ-先刻ノ武藤
サンノ數字ト違ヒマスガ、私ノ採ッテ居ル數
字デハ、金解禁ヲ吾々ガ發表シタ七月ニハ、
生絲ハ一俵千三百二十圓デアリマシタ、ソ
レガ爲替相場ガ七月カラズット上ッテ行クニ
拘ラズ、九月ノ末ニハ千三百四十圓マデ上
リマシタ何故是ガ今日ノ如ク千百五十圓
トカ云フ風ニ下ッタカト云ヘバ、卽チ十月ノ
末カラ亞米利加ノ不景氣ガ來タカラデアリ
マス」ト斯樣ニ申シテ居ラレマシテ、更ニ此
爲替相場ガ絲價ニハ何等ノ關係モナイヤウ
ナコトヲ申シテ居ラレルノデアリマス、所ガ
本日豫算會議ノ席上ニ於テ、東氏ノ質問ニ
對シ、井上藏相ハ何ト答ヘラレタカト云フ
コトヲ聞イテ居リマスト、爲替相場ガ一割
一分上レバ絲價ハ一割一分下ル、其他ノ
低落ノ原因ハ是ハ亞米利加ノ不景氣ノ關係
デアル、卽チ亞米利加ノ不景氣ガ六、七分、
爲替相場ガ三、四分絲價ニ關係シテ居ルト
云フヤウナ答辯ヲ致シテ居ラルヽノデアリ
やく、此武藤氏ニ答ヘラレタノガ本當デア
ルカ、ソレトモ東氏ニ答ヘラレタノガ本當
デアルカ、一體井上藏相ノ言ハレルコトハ
何レヲ信ジテ宜シイカ、好イ加減ナ出鱈目
ヲ申サレルモノデアルト云フコトヲ思ハザ
ルヲ得ヌノデアリマス(拍手)
尙ホ此爲替相場ト絲價ノ關係ニ付キマシ
テハ、色々此處ニ私ハ調査ノ材料ヲ持ッテ
居リマスルケレドモ時間ガアリマセヌカ
ラ省略ヲ致シテ置キマスルガ、唯〓私ハ今日
現内閣ガ絲價ノ暴落致シタノハ是ハ亞米
利加ノ不景氣ノ關係デアルト、ソレノミ一
點張リニ申シテ居ラレマスカラ、此不景氣
ノ爲ニ亞米利加ノ生絲ノ消費ハ決シテ減退
ハ致シテ居リマセヌ(「加藤君助ケルト思ッ
テ省略シロヨ」ト呼フ者アリ)省略スル(「寬
クリ〓〓」「大切ナ問題ダヨ」ト呼フ者アリ)
ト云フコトダケヲ私ハ玆ニ申上ゲテ置キタ
イト思ヒマス、紐育ノ消費高、卽チ大正四年
ノ一月ノ消費高ガ五万七千三百四十九俵、
五年ノ一月ガ五万七千六百八十三俵デ、三
百三十二俵增シテ居リマス、四年ノ二月ニ
ハ四万六千二百二十八俵デ、五年ノ同月ガ
四万九千八百五十二俵デアッテ、卽チ三千六
百二十四俵ヲ增シテ居ルノデアリマス四
年ノ三月ハ四万九千八百七十八俵デアッテ、
本年ノ同月ニハ五万八百六十三俵デ、九百
八十五俵增シテ居ルノデアリマス(拍手)若
シ不景氣ノ爲ニ生絲ガ賣レナイト云フコト
デアルナラバ、此消費高ガ斯ノ如ク增ス筈
ハアリマセヌ(拍手)詰リ本年一月カラ三月
迄ノ間ニ亞米利加ノ消費高ヲ合算スルト
四千九百四十一俵增シテ居ルノデアリマス、
斯ノ如ク亞米利加ニ於キマシテハ消費高ガ
段々增加スルトテモ、衰ヘテハ居ナイノデ
アル、然ルニ現內閣ノ諸公ハ亞米利加ガ不
景氣デアルカラ生絲ガ賣レナイ、賣レナイ
カラシテ生絲ノ値段ガ下ルノデアッテ、我國
ノ絲價ノ慘落ハ金解禁ノ關係デナイヤ
ウナコトヲ言ッテ胡麻化サントシテ居リマ
スガ、實ニ言語道斷、沙汰ノ限リト謂ハナ
ケレバナラヌト私ハ考ヘルノデアリマス
(拍手)
尙ホ私ハ此處ニ一言申上ゲタイ、ソレハ
何デアルカト申シマスレバ、我國ノ絲價慘
落ノ原因ハ主トシテ金解禁ニ胚胎シテ居ル
ノデアルト云フコトヲ、私ハ此處ニ斷言ヲ
致スノデアリマスルガ、尙ホ今一ツ申上ゲ
テ置カネバナラヌコトハ、現內閣ガ此絲價
安定融資補償法運用ノ時機ヲ誤リ、方法ヲ
誤ッタト云フコトガ、卽チ此絲價ノ低落ヲ來
シ、橫濱ヤ神戶ニ、十六万餘俵ト云フ恐ル
ベキ滯荷ヲ來シタコトニモ相成ルノデアリ
やっ、何故ニ時機ヲ誤ッタノデアルカト申
シマスナラバ、諸君モ御承知デアリマセウガ、
昨年ノ十一月カラシテ十二月ニ掛ケマシテ、
生絲ガドン〓〓下ッテ來タ、是ニ於テカ製絲
家ハ悲鳴ヲ擧ゲテ、以テ政府當局ニ此補償
法ノ運用ヲ迫ッタノデアリマス、ケレドモ當
局大臣ハ頑トシテ之ニ應ジナカッタノデア
ル、所ガ越エテ一月ノ十七日ニハ愈、其慘狀
見ルニ忍ビズト爲シ、帝國養蠶組合ハ理事
會ヲ開キマシテ、特ニ此事ヲ決議致シテ、
濱口總理大臣、町田農林大臣ニ對シテ速ニ
此融資補償法ヲ運用セラレンコトヲ迫ッタ
ノデアリマス又翌十八日ニハ全國蠶絲業
大會ガ開カレ同ジ決議ヲ致シマシテ、此補
償法ノ適用ヲ迫"タノデアリマス、然ルニ是
亦頭トシテ當局大臣ハ之ニ應ジナカッタノ
デアリマス、然ルニ其後五十日モ經マシテ、
三月初旬ニ至リ漸ク之ヲ運用スルト云フヤ
ウナコトニ致シタノデアリマスルガ、此處
ガ卽チ此運用ノ時機ヲ誤、タト云フコトニ
ナルノデアリマス、何故カト申シマスレバ、
昨年ノ十二月ト本年ノ一月ト此兩度ニ亙ヲ
テ全國ノ蠶絲業者ガ本法ノ運用ヲ迫ッタケ
レドモ、政府ハ之ニ應ジナイノデ內外輸出
商ノ或者ハ現內閣ハ從來ノ行掛リ上、到底
之ヲ運用スル譯ニハ行クマイ、又左樣ナ考
ハ持ッテ居ラナイデアラウト見テ取リ、盛ニ
先約束ノ安賣ヲ致シタノデアリマス、卽チ
或ル外商ハ-此處デハ私ハ特ニ名前ヲ申
シマセヌガ卽チ或外商ハ盛ニ安賣ヲヤッ
タノデアリマス、ソレニ又我ガ內地ニ於ケ
ル某モ盛ニ先約束デ安賣リヲヤッタノデア
リマス、所ガ三月ニ至ッテ突如トシテ此法
律ヲ運用致シタノデアリマス、是ニ於テカ
或ル外商ハ斯樣ナ事ヲ申シタト云フコトデ
アリマス、卽チ日本政府ノ補償法ガ失敗ニ
終ルカ、自分等ガ失敗ニ終ルカ、何處迄モ
勝敗ヲ爭フヨリ外ナイト言ッテ、今尙ホ先約
束ノ安賣ヲシテ居ルト云フコトデアリマス、
斯ノ如クセラルレバ我國ノ絲價ハ勢ヒ下落
セザルヲ得ヌノデアリマス、彼等ガ先約束安
賣ヲセザル內ニ本法ヲ運用スレバ、彼等モ恐
ラク斯クノ如キ態度ニ出ナカッタノデアラ
ウト思フノデアリマス、又其方法ヲ誤ッタ
ト云フコトハ補償價格デアリマス、何故ニ
千二百五十圓ト云フ時價ニ遙ニ隔ヲテ居ル、
高イ所ノ價格ヲ以テ補償價格ト致シタノデ
アリマセウカ、斯ウ云フヤウナコトヲ致シ
マスル結果、卽チ高イ所ニ補償價格ヲ置ク
結果ガ、遂ニ生絲ノ輸出ノ圓滑ヲ缺クコト
ニ相成ルノデアリマス、其上ニ六月十日ト
云フコトニ本法運用ノ期間ヲ限定シ而モ之
ヲ古絲ニノミ適用スルト云フコトニ致シマ
シタカラ旁、製絲家ハ急イデ繰絲シ送出ス
ルコトニナリ今日橫濱ヤ神戶ニ滯荷ヲ見ル
ヤウニナッタノデアリマス、斯樣ナ事實ハ考
ヘマスト絲價ガ今日未曾有ノ慘狀ニ陷ヲタ
ノハ是ハ誰ノ罪デモナイ、現內閣ノ重大ナ
ル責任デアルト云フコトヲ思ハナケレバナ
ラヌノデアリマス(拍手)
尙ホ私ハ寛クリ色々質問ヲ致シタイコト
ガアリマスケレドモ、最早時間モゴザイマ
セヌカラ、私ガ質問ヲ致シタイト思ヒマス
ル要旨ヲ認メテ置キマシタノヲ朗讀シマシ
テ然ルベキ機會ニ於テ當局大臣ノ御答
辯ヲ戴キタイト思フノデアリマス
應急策ニ對スル質問
一絲價安定融資補償法ノ制定當時極力
反對シタル現内閣殊ニ就任當時傳家ノ
寶刀デアル補償法ハメッタニ拔ク可キ
モノニ非ズト豪語シタル町田農林大臣
ハ如何ナル理由ヲ以テ之レヲ適用發動
シタルカ
二絲價補償法ヲ發動スレバ世界經濟界
ノ大勢ニ逆行シテモ我ガ生絲相場ハ釣
上ゲ維持セラレルモノト信ジタリヤ
三金解禁ニ伴ヒアラユル物價引下ゲニ
努力シツヽアル現內閣ニ於テ時價百斤
千百圓ノモノヲ千二百五十圓ニ釣上ゲ
テ維持セントシタルハ矛盾セル政策ニ
アラザルカ
四世界經濟界ノ大勢ニ逆行シテ日本生
絲ヲ釣上ゲル事ハ支那蠶絲業ノ發展竝
ニ人造絹絲ノ進出ヲ助長スルノ結果ト
ナリハセヌカ
五絲價補償法ノ根本精神ハ蠶絲業ノ危
機ニ及ンデ全般ノ救助ニ向テ發動スベ
キモノナルニ拘ラズ、昭和四年度產生
絲ニノミ之レヲ適用シタル結果養蠶業
者ニハ何等ノ恩惠ヲ被ラザルノミナラ
ズ、剩ヘ六月十日限リトシタル結果、
其ノ反動的絲價ノ慘落ニヨッテ繭價ノ
慘落ヲ見ルハ明カナルベツ、此ノ點ニ
ツイテ政府ハ考慮セルヤ
六絲價ガ現狀ノ如ク慘落スルニ至テハ
補償資金三千万圓ハ全部國庫ニ囘收シ
得ル見込アリヤ
七四月末日ニ於ケル横濱竝ニ神戶ニ於
ケル生絲滯荷ハ今ヤ十六万五千梱ニ達
シ有史以來デアルト言ハレル之レ
ガ絲價ヲ壓迫シ、今年ノ新繭相場ヲ極
度ニ壓迫スルヤニ思ハレル、此ノ場合
現政府ハ養蠶業者ニ如何ナル對策ヲ
モッテノゾマントスルカ
恒久策ニ對スル質問
政府ハ今囘ノ絲價釣上ゲ維持ノ不成
績不評判ニ省ミテ其ノ根本タル繭價ノ
安定維持ニ向テ將來〓究ヲスヽメル氣
ハナイカ
二國家重要ナル蠶絲業ガ年々歲々斯樣
ニ救濟援助ヲ仰ガネバナラヌハ甚ダ遺
憾デアル政府ハ其ノ根本缺陷ヲ突キ
トメテ此際本當ノ恒久的蠶絲業策ヲ講
ズル考ヘハナイカ
三吾人ノ信ズル處ニヨレバ蠶絲業ノ基
礎ヲ確立スルニハ二百万ノ繭生產者
タル養蠶家ニ主力ヲ注グ事デアル繭
ヲ安價ニシカモ良品ヲ作ラセル事ヨリ
外ニナイ、其方法トシテ極力共同働作
タル養蠶組合ノ活動ニ俟タネバナラ
ヌ、之レガ爲メニ速ニ養蠶組合法ヲ制
定スル意思ナキヤ
四政府ハ昨年來稚蠶共同桑園ノ助成、
稚蠶共同飼育室ノ奬勵等ニ著手シタ樣
ダガ、之レヲ適切有效ニ行ハシムルニ
ハ任意ノ組合デハ駄目デアル、此意味
カラモ養蠶組合法ハ必要ダト思フガ如
何カ
五政府ハ蠶絲業ノ統制竝國策樹立ノ機
關トシテ養蠶、製絲、蠶種、貿易其他
斯業ニ精通セル學者實業家ヲ打テ一丸
トスル蠶絲業聯盟會又ハ蠶絲業大調査
機關ヲ設クル意思ナキヤ
之ヲ私ハ御問ヲ致シタイト思ヒマスカラ、
政府當局ニ於キマシテハ、然ルベキ機會ニ於
テ答辯アランコトヲ御願致ス次第デアリ
マス
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=63
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064・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 私ガ本議場デ
武藤君ノ質問ニ對シテ答ヘマシタノト本
日豫算總會デ申シマシタノト矛盾シテ居リ
ハセヌカト云フ御質問デアリマシタサウデ
ゴザイマスカラ一應私ガ申シマシタコト
ヲ繰返シテ申シテ見マスガ生絲ノ値段ノ
經過ヲ申シマスト、昨年ノ六月ニ百斤千三
百五十圓ト云フノガ、大體ノ相場デアリマ
ス、ソレガ七月ニナリマシテ金解禁ノ聲
明ヲ致シマシテ、爲替相場ガ少シ上リマス
ト、ソレガ千三百二十圓カラ三十圓ニ下リ
マシタノデス、然ルニ爲替相場ハズット上リ
マスノニ拘ラズ、九月ニハソレガ千三百五
十圓ニマデ又上リマシタ、然ルニ十月ニナッ
テ亞米利加ノ景氣ガ轉換致シマスト、ソレ
カラズット生絲ガ下リマシテ、今日ノヤウナ
狀態ニナッタノデアリマス、ソレデ武藤君ニ
答ヘタノハ亞米利加ノ經濟界ノ不況ガ日本
ノ生絲ニドレダケ影響シテ居ル金ノ解禁
ガドレダケ影響シテ居ルカ、サウ云フコト
ヲ私ハ答ヘタ次第デアリマス、本日御答致
シマシタノハ、生絲ガ亞米利加ノ不況ノ爲
ニ下ッテ、三月ニハ千百二十圓迄下ッテ來タ、
サウシテ見ルト假ニ金ノ解禁ヲシタ爲ニ爲
替相場ガ一割一分騰ッタトシテモ、物價ハ
割一分下ッテ居リマスカラソレデ宜シイガ、
今ノ千三百二十圓トスルト一割七分位ニ當
リマス、サウスルト六分乃至七分位ハ亞米
利加ノ不況ノ爲メ、卽チ生絲ガ吾々カラ見
ル所ニ依ルト、外國ノ市場ノ爲ニ不當ニ下ッ
テ居ル、此大勢デ行ッタナラバ日本ノ蠶絲
界ガ非常ナ打擊ヲ蒙ルカラ、補償法ヲ適用
スルコトニ私ハ贊成シマシタ、斯ウ御答シ
タ次第デゴザイマス、ドウゾ御承知ヲ願ヒ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=64
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065・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)加藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=65
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066・加藤知正
○ 加藤知正君只今ノ井上藏相ノ御答辯ハ
屢〓此處ニ申サレタコトデアリマシテ、私ハ
能ク承知致シテ居リマス、ケレドモアレダ
ケノ說明デハ吾々ヲ滿足セシムルニ足リナ
イ、是ハ皆サンモ能ク御承知ダラウト思フ、
之ニ付キマシテハ私ハ適當ナ機會ニ於テ
十分自分ノ意見ヲ述ベテ見タイト思ヒマス
ガ、本日ハ旣ニ時間モナイコトデアリマス
カラ、此程度ニ於テ質問ハ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=66
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067・藤澤幾之輔
○ 議長(藤澤幾之輔君)土倉宗明君
〔土倉宗明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=67
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068・土倉宗明
○土倉宗明君 私ハ綱記肅正問題ニ付キマ
シテ御伺致シタイト思フノデアリマス、ソ
レハ富山縣ノ庄川、此川筋ニ於キマスル所
ノ發電事業ニ對シマシテ、現內閣ハ此川筋
ニ於テ庄川水力電氣株式會社及昭和電力株
式會社ニ對シマシテ、去月二十五日、此
發電ノ認可ヲ與ヘタノデゴザイマス此發
電ノ認可ニ當リマシテハ去ル大正十五年
以來、此發電計畫當初カラ此關係町村ノ人
人ハ山林業者、及漁業者或ハ是等ニ從事シ
テ居リマスル多數ノ勞働者、是等ノ者ガ縣
廳ニ對シ、或ハ內務省ニ對シテ其許可ノ不
當ナルコトヲ陳情ヲ重ネ、延イテハ行政訴
訟マデモ目下起サレテ係爭中デアルノデゴ
ザイマス、ソレガ俄然去月二十五日重大ナ
ル缺陷ガアリ、又幾多不合理ナル所ノ問題
ガアルニ拘ラズ、且ツ當初ニ許可ノ條件ニ
ナッテ居ル、ソレ等ノ條件ガ完全ニ具備シテ
居ラザルニ拘ラズ、俄然認可ヲ與ヘタト云
フ、此裏面ニハ何等カ醜キ所ノ新事實ガアル
カト云フコトヲ私ハ同ヒタイノデアリマス
ソコデ先ヅ最初ニ伺ッテ見タイノハ、此認
可ニ當ノテ條件トナッタ、其條件ガ今尙ホ
公然ト世上ニ示サレテ居ラナイ、極祕ニ附
サレテ居ル、此條件ヲ示シテ戴キタイト思
フノデアリマス、長年ニ亙ル所ノ係爭問題
デアルカラ、爭フ方ガ無理デアル地方沿
岸ノ人々ハ不合理ノ點ガアルナラバ、其不合
理ナ點ヲ指摘シテ深切ニ示サレ、同時ニ當然
許可ヲスルノガ當リ前ダト云フ根據ヲハッ
キリ御示シニナリマスルナラバ騷ギモナ
ケレバ騷動モナイ、當然是ガ許可ヲ與ヘ
テヤッテモ差支ガナイノデアルノニ拘ラズ、
今日只今ニ至リマスルマデ、何ガ故ニ許可
ヲシナカッタカ、又許シテヤッテモ是ダケノ
設備ナラバ差支ナイデハナイカト云フ、其
設備ヲ極祕ニ付サレテ居ルノデアリマスル
カ(拍手)昭和ノ聖代實ニ驚クベキ所ノ一大
不正ガ此間ニ伏在シテ居ルト私ハ思フノデ
アリマス(拍手)元來庄川水力電氣株式會社
ナルモノハ、先般安達現在ノ內務大臣、嘗テ
ハ遞信大臣デアリマシタ時ニ、此電氣株式
會社ノ池尾某ナル者ト結託シテ四十万圓ノ、
卽チ不當ナル利益ヲ得タト云フコトハ世間
ニ知ラレテ居ルノデアル(拍手)此日本電力
株式會社ノ姉妹會社デアリ內容ハ同一會
社デアル所ノ此電力株式會社ノ不合理ナル、
條件一切ガ整ハザルニ拘ラズ、自己ガ嘗テ
ハ指令ヲ發シタ其指令ニ背反スルヤウナ
今日直ニ許可ヲシタト云フコトニハ、何等
カノ根據ガアッテシタノデアルト云フコト
ヲ明瞭ニ示サナカッタナラバ、此國民ノ疑惑
ヲ晴ラス譯ニハ斷ジテ行クマイト私ハ思フ
(拍手)更ニ又私ハ御伺シナケレバナラナイ
ノハ今證據ヲ擧ゲマスガ、四月二十五日
許可ニナックト云フ、其極祕ニ附セラレテ居
ル世上ニ公表セラレテ居ラナイ其條件ノ
一部ヲ庄川水力電氣株式會社ハ旣ニ昨年
カラ著手致シテ、此四月二十五日前ニ旣ニ
玆ニ出來上ッテ居ルデハナイカ、諸君、此認
可ヲ與ヘルカ與ヘナイカ。ニ依ッテ、卽チ此條
件ガ成立スルカシナイカ、許可ノ根本ガ成
立スルカシナイカト云フ問題ニ對シテ、旣
ニ事前ニ工事ガ出來上ッテ居ルト云フニ至ッ
テハ、認可爲サズシテ卽チ電力會社ハ勝手
ニ工事ヲ致シテ居ノタノデハナイカ(拍手)
假ニ臭イ所ガナイト仰シヤルナラバ臭イ
所ガナイト仰シヤルナラバ、何デ此許可ナ
クシテ工事ヲシタカ、其責任ハ一體誰ガ負
フノデアリマスカ(拍手)此四月二十五日ニ
許可ガ與ヘラレタ、過去四代ノ內閣ニ亙ッテ
係爭中デアッテ決シ兼ネテ今日マデ持續セ
ラレテ居ッタモノヲ、此四月二十五日許可ヲ
與ヘラレタノデアル此二點ニ對シテ、其
一ツノ點ハ許可ヲ與ヘタ其條件ヲ玆ニ明白
ニ聞カシテ戴キタイコト、又許可ナクシテ
電力會社ガ勝手ニ無認可工事ヲナシテ居〃
タト云フ此事實ニ對シテ、如何ナル處置ヲ
執ラレテ居シタカト云フコト、此二點ヲ先ヅ
最初ニ私ハ承ッテ置キタイト思フノデアリ
マス
更ニ奇怪千万ナコトハ、此問題ハ多年爭
ハレテ居ル有名ナル問題ト相成ッテ居ルノ
デアリマスカラ、吾々ハ此問題ニ對シ批判
演說會ナルモノヲ開催致シマスルト、富山
縣當局ハ此問題ノ批判演說會ニ對シテ非常
ナル多數ノ暴漢ヲ會場ニ入レシメ、其暴漢
ハ何者デアルカト申シマスルト、所謂電氣
會社ノ人夫、土工、是等ノ者ヲ二時間モ三
時間モ前ニ會場ニ入レシメテ、サウシテ酒
ヲ飮マシメテ、サウシテ演說會ガ開會サレ
ルヤ、開會ノ辭スラモ述ベナイニ當ッテ、茲
ニ官憲ハ「トラック」五臺モ用意爲シ、サウシ
テ警戒萬端整へテ居ル形式ハシテ居ッテモ、
此取締ハ嘗テシナイバカリデハナイ、アベ
コベニ此電氣會社側ノ人々ト警察官ガ通謀
ヲシテ、此演說會ヲ故ナクシテ解散ヲ命ジタ
ノデゴザイマス(拍手)是ハ去ル四月ノ五日
ニ富山縣ノ靑島ニ於テ行ハレタ演說會ノ光
景デアリマス越エテ四月ノ六日、富山市
ニ於テ爲サレタル同一ノ演說會ノ如キハ
滿場聽衆ガ滿チテ居ル、然ルニ一人ノ暴漢
ガ現レテ、演壇ヲ引繰返シテ、ソレデ聽衆
全體ガ何等動搖モセズ、騷ギモ致シマセヌ
ノニ、之ヲ機會ニシテ、又々演說會ヲ解散
ヲシタト云フ此事實、此事實ハ單リ私ガ政
友會デアルナドヽ諸君ガ色眼鏡ヲ以テ見テ
ハ相成ラナイ、民政黨ノ選出代議士デアリ
マスル山田毅一君モ此現狀ヲ目視シ、又出
席辯士トシテ承諾サレテ居ッタモノデゴザイ
マスルカラ、此實情ニハ可ナリ山田君モ憤発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=68
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069・藤澤幾之輔
○シテ、 私ト共ニ警察部長ヲ彈効ニ行カレ
タト云フコトハ是レ爭フベカラザル事實
デアル諸君、斯ノ如ク富山縣ガ此庄川發
電問題ニ對シマシテ非常ナル肩ヲ持チ、偏
頗ナル處置ヲシテ居ルト云フコトハ、爭フコ
トノ出來ナイ事實デアル、ト同時ニ我ガ內
務當局、遞信當局及農林當局ノ如キハ此
庄川ノ上流ニハ、七万町步ノ國有林ガアル、
四万町步ノ民有林ガアル、十數万町步ニ亙
ル、卽チ此國家ノ富源此富源ガ埋沒セラレ
テハ材木ヲ伐出シテ流送スルコトガ出來
ナイ、卽チ國家ノ富源ヲ、此電力事業ノ爲
ニ埋沒セラレルノデアルトシテ、歷代ノ農
林當局ハ、此內務省ノ川倉式設備ト云フモ
ノニ對シテ堂々反對ヲシ來ッタニ拘ラズ、
單リ現內閣ノ農林當局ガ、此內務省ノ愚拙
ナル所ノ案ニ對シテ無條件デ同意ヲ表シタ
ト云フ裏面ノ眞相ヲ私ハ伺ヒタイノデアル、
諸君、卽チ此一點ハ少クトモ私ハ色眼鏡ヲ
以テ見ルノデハナイ、故ラニ此現内閣ノ綱
紀肅正ノ看板ニ傷ヲ付ケントスルモノデハ
ナイ、此有力ナル所ノ事實、此證據ヲ諸君
ガ御覽ニナッタナラバ如何ニ此問題ニ付テ
醜惡ナル半面ガ伴ウテ居ルカト云フコトハ
立證サレテ居ルノデアル(拍手)卽チ日本電
力株式會社ヨリ百万圓ノ金ガ選擧當時ニバ
ラ撒カレタト云フ事實ガアルノデアル、更
ニ選擧後ニ於テ、最近猛烈ニ此許可運動ヲ
企テラレタ時ニ於テモ、少ナカラヌ所ノ黃
白ガ撒布セラレテ居ッタト云フ所ノ事實ハ
彼ノ電氣會社ノ內部ノ帳簿ニ於テ說明ノ出
來ナイ所ノ假支出金ガ出サレテ居ッタト云
フコトガ何ヨリノ證據デアル諸君(「ハツ
キリ言ヘ」ト呼フ者アリ)ハッキリ言ッテ居ル
デナイカ(「ソンナ出鱈目ガアルカ」ト呼フ
者アリ)諸君、ソコデ此問題ガ綱紀肅正ノ看
板ノ手前ニ取ッテ申譯ノナイ一大醜事實デ
アルト云フコトノ證據ハ明カデアル(「明カ
デナイ」ト呼フ者アリ)明カデアル、何ヨリ
ノ證據ハ二十五日認可ヲ與ヘラレタ認可
ヲ與ヘラレタラ當然電氣會社ハ此工事ニ
著手ヲ爲シ、サウシテ完成シテ)五千万圓
モ掛ケタ此大ナル發電事業、此發電事業ニ
對シテ速ニ電力ヲ起ス手順ヲ進メテ行カナ
ケレバナラヌノニ、俄然大阪地方裁判所ノ
民事部ニ於テ、直ニ是ガ假執行ヲセラレタ
ノデアリマス、行政裁判所ノ問題ハ今ヤ審
理中デアリマシテ其〓末ハ處斷ニ及ンデ
居リマセヌケレドモ、一方民事ノ裁判所ト
雖モ、斯ノ如キ五千万圓モ掛ケタ大事業ニ
對シテ、僅カ三十万圓ノ保證金ヲ以テ、是
ガ假執行ガ出來ルト云フコトハ曾テ見ザ
ル所ノ現内閣ガ不當ナル所ノ處置ヲ爲シ
不正ナル所ノ動機ニ依ッテ許可ヲ與ヘタル
モノナリト云フコトヲ立證シテ餘リアルモ
ノト私ハ思フノデアリマス更ニ農林當局
ニ至ッテハ今迄農林大臣、否農林省ヲ擧ゲ
テ此內務省案ニ反對ヲ唱ヘテ居ッタ所、此
現内閣ノ農林當局ニ至ッテ、俄然內務省ニ同
意ヲ表シタ、同意ヲ表シタバカリデナイ
事務次官、其他技術者、關係ノ人々ノ調印
ヲ得ズシテ、同意ヲ得ルコトガ出來ナイデ、
去ル四月十九日內務大臣ト農林大臣ト遞信
大臣ノ三者ガ寄ッテ、各省ノ事務關係ノ官邊
ハ一切拔キニシテ、此問題ヲ決裁シタノデ
アリマスガ大臣ノ命令サヘアリサヘスレ
バソレデ宜イノカ、總理大臣サヘアレバソ
レデ宜イノカ、大臣ダケデ決裁ガ何事モ出
來ルト云フ方法ヲ、此問題ニ於テモ執ッタ
ト云フコトヲ私ハ申シテ居ルノデアリマス、
諸君、ソレデハ事務次官ガ居,テモ何ノ役
ニモ立タヌデナイカ、事務次官、官邊ガ一
切之ニ調印シテ居ラナイト云フコトガ果シ
テ事實デアルカナイカト云フコトヲ伺ヒタ
イノデアリマス、諸君、更ニ醜惡ナル所ノ
反面ノ事實ト致シマシテハ曾テハ此問題
ノ爲ニ反對ノ立場ヲ取ッテ居シタ所ノ有力者
及町村ニ向ッテ買收ノ手ヲ延ベテ、ソレト
全ク反對ノ、卽チ電氣會社擁護味方ノ態度
ヲ執ラシムルト云フ、此事實コソハ見逃シ
テハナラヌ所ノ問題デアルト私ハ思ヒマス、
之ニ對シテモ少カラヌ所ノ金ガ撒カレテ居
ルト云フ事實デアリマス、更ニ富山縣利賀
村ト云フ所ハ、本件行政訴訟ニ從參加ヲ致
シテ居ル村デアル、所ガ其村長ヲ縣當局ガ
呼寄セテ、村長ニ行政訴訟ノ從參加ヲ取下
ゲロ、取下ゲルコトガ出來ナケレバオ前ノ
軀ノ臭イ所ヲ洗ヲテ縛リ上ゲルト云フ恐喝
マデシ、行政訴訟ノ取下ハ罷リ成ラヌト斷
ルト、遂ニ現ニ收監セラレテ居ルデハナイ
カ(拍手)如何ナル問題デ今日收監サレテ居
ルノカ知リマセヌガ、恐ラクハ此庄川水力
問題ニ對シマシテ、行政裁判ニ從參加ヲシ
テ居ルコトヲ取消サナイ脫退ヲシナイ
ト云フ、一ツノ報復的手段ヲ用ヒテ之ヲ
窘メテ居ルモノナリト私ハ斷定ヲシタイノ
デアリマス、果シテ是ガ何ノ罪ニ依リ、何
ノ犯罪ノ嫌疑ニ依ッテ利賀村々長ナル者ガ
取調ヲ受ケテ居ルカト云フコトモ御伺ヒシ
ナケレバナラヌト思フノデゴザイマス
擧ゲテ見レバ此問題ハ富山縣當局ト內務
當局、殊ニ主トシテ内務當局安達內務
大臣ガ嘗テハ遞信大臣デアッタ時、日本電力
會社ト如何ハシキ關係アッタト云フ手續ヲ
以テ(拍手)今囘二十五日ニ認可ヲ與ヘラレ
タ所ノ問題モ、矢張リソレト同一ノ手順、手
續緣邊ヲ以テ、玆ニ取交ハサレタルガ爲
二、斯ノ如キ不當認可ガ起ッタモノデアル
ト私ハ思フノデアリマス
以上申述べマシタ點ニ付テ、農林及內務、
遞信ノ當局ニ私ハ御答ヲ承リタイト思フノ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=69
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070・齋藤隆夫
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ノ土倉君ノ質
問演說ノ中ニ不穩當ナル一節ガアルト認メ
マスガ(ノー〓〓)是ハ速記錄ヲ能ク取調ベ
夕上ニ處置ヲ執リマス(拍手)
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=70
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071・藤澤幾之輔
○ 政府委員(齋藤隆夫君)土倉君ヨリ所謂
庄川問題ニ對スル御質問ガアリマシタカラ
シテ、書類ニ基イテ大要御答致シマス
〔「アナタニ分リマスカ」「謹聽々々」其
他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=71
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072・齋藤隆夫
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
)政府委員(齋藤隆夫君)(금)少シ長タナ
ルカハ知リマセヌガ、暫クノ間御聽取ヲ願
ヒマス
富山縣ノ庄川筋ニ於キマシテ、大正十一
年七月五日富山縣知事ガ許可致シマシタ庄
川水力電氣株式會社ノ出願デアリマスル小
牧地點發電水利使用ノ工事ハ大正十五年
四月十日ニ工事ニ著手致シマシテ、木材輸
送ニ關スル設備ヲ除イテ、昭和四年三月ニ
大體工事ガ完成ヲ〓ゲタノデアリマス、又
其川筋ノ上流ノ祖山地點ニ於ケル大同電力
株式會社ノ出願ニ係リマスルモノハ昭和
二年五月十一日ニ工事ニ著手致シマシテ
是亦木材輸送設備ヲ除イテ、昭和四年九月
ニ大體工事ヲ完成シタノデアリマス、基に
認可ヲ留保致シマシタ所ノ木材ノ輸送設備
ニ關シマシテハ、昭和三年六月十三日富山
縣知事ヨリ認可ノ案ヲ具シテ内務大臣ニ禀
伺ヲシテ來タノデアル、然ルニ利害關係ヲ
有シテ居リマスル所ノ沿岸ノ木材業者、
漁民玆ニ用水關係者等ヨリ、本工事完成ノ
曉ニハソレ〓〓支障ヲ來スノ虞ガアリト
シテ、反對運動ヲ起スコトニ相成シタ、此川
筋ニ於キマシテ從來流木ヲ行ッテ居リマシ
タ所ノ利害關係者ノ一ツデアリマス飛州木
材會社ハ流水ヲ不可能ナラシムルモノト
シテ極力之ニ向フテ反對ヲシテ來テ居ルノ
デアリマス、ソコデ大正十五年五月二十八
日ニ下流ノ小牧地點ニ付テ、又昭和二年五
月二日ニハ上流ノ袒山地點ニ於テ、ソレゾ
レ行政訴訟ヲ提起シテ、本件ノ水利使用ノ
工事ハ自己ガ從來同川筋ニ於テ持ッテ居ッタ
所ノ流水權ヲ侵害スルモノデアルト云フ理
由ヲ以テ、富山縣知事ノ本件工事施行認可
ハ之ヲ取消サレタシト主張シテ、目下行政
裁判所ニ訴訟ガ繋屬シテ居ルノデアリマ
ス、右ノ如ク富山縣知事ノ禀伺ニ係ル木材
輸送ノ設備ハ、利害關係ガ重大ナルモノデ
アリマスカラ、內務省ニ於キマシテハ愼重
調査ヲ爲シマシテ、同年七月二十五日ヨリ
同月二十八日ニ亙ッテ、內務省、遞信省、農
林省及富山、岐阜ノ兩縣竝〓大大營營林局ノ
關係官ガ會合致シマシテ調査熟議ヲ重ネマ
シタ結果、富山縣知事ノ案ヲ基礎トシテ略〓
成案ヲ得タノデアリマスルガ、此堰堤ノ締
切ト云フモノハ、上述ノ如ク利害關係廣汎
ニシテ且ツ重大ナルモノガアリマスカラ、
内務省ニ於キマシテハ更ニ篤ト調査〓究ヲ
遂ゲマシテ、關係各省トモ折衝ヲ重ネテ、
此程漸ク具體的成案ヲ得、且ツ一方從來極
力反對陳情ヲ重ネマシタ所ノ富山、岐阜此
兩縣ノ利害關係者モ、前記ノ飛州木材會社
ヲ除キマシテハ、却テ認可促進ノ陳情ヲ爲
スニ至リマシタカラシテ、地方ノ人心モ安
定スルニ至ッタノデアリマス、仍テ去ル四月
ノ十九日富山縣知事ニ對シテ認可ノ指令ヲ
發シタノデアリマス、右ノ認可ニ係ル木材
輸送ノ設備ハ、富山堰堤排水ノ及ブ地點デア
リマス見座ト云フ地點ニ、重剛ナル流材誘
導堰ヲ設ケテ、之ニ依ッテ上流ヨリ流下シ來
ル所ノ木材ヲ堰止メ、沈材ト浮材トニ區分
致シマシテ、沈材ハ船ニ載セ浮材ハ筏ニ組
ミテ流下シ、堰堤ノ乘越ハ「コンベヤー」ヲ
以テ之ヲ行ヒマシテ、其輸送能力、十一日
間ニ三万石ヲ、見座ヨリ靑島貯木場ニ至ル
迄運ブ設備デアリマスケレドモ、天候其他
ノ關係ニ支障セラルヽコトガアリマスカ
ラ、相當安全率ヲ見込ムノ要アリ、仍テ本
川筋ノ流木ハ、從來每年十月十五日ヨリ翌年
二月末迄百三十七日間之ヲ許シテ居ルノデ
アリマスルガ故ニ、此流材期間ニハ從來
本川筋ニ於キマシテ流送サレタル十万石内
外ノ木材ハ、優ニ之ヲ運搬シ得ルノミナラ
ズ、今日豫想セラルヽ將來ノ增加石數ニ對
シテモ、其輸送能力アルモノト認メルノデ
アリマス、是ガ內務省ニ於キマシテ此工事
ヲ認可スルニ至ッタ大要デアルノデアリマ
ス
尙ホ附加ヘテ申上ゲマスガ、演說會ニ對
シテ臨監ノ警察官ガ、不當ニ解散ヲバシタ、
何カ此裏面ニ於テ會社ト警察官トノ間ニ於
テ不正行爲ガアルラシキ御話デゴザイマシ
タガ演說會ヲ解散スルニ付テハ演說會
ヲ解散スベキ適法ナ理由ガアルノデアリマ
ス演說會場ニ如何ナル醉漢ガ闖入シテ居
リマシタカ、サウ云フ事ハ警察官ノ關スル
所デハナイ、多數ノ聽衆ガ喧噪ヲ極メマシ
テ、之ヲ解散スルト云フ事ガ治安ヲ維持スル
ニ付テ最モ適當ナリト認メマシタニ依ッテ、
解散ヲ命ジタニ過ギナイノデアリマス決
シテ警察官ニ於テ權力ヲ濫用シタヤウナ形
跡ハ更ニゴザイマセヌ
更ニ何カ此事件ニ付テ政府當局者ニ於テ
不正ノ行爲ガアルラシキ御辯論デアリマシ
タガ、若シ假ニモ左樣ナ事ガアリマシタナ
ラバ、國民ノ權利ニ依フテ堂々ト〓訴〓發ヲ
シテ、司法權ノ發動ヲ求メルノガ宜シイノ
デアル、何等司法上ノ手續ヲ執ル所ノ勇氣
モナク唯徒ニ妄想ヲ述べテ公人ノ名譽ヲ
害スルガ如キハ、紳士ノ爲スベキ事デナイ
ト思フ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=72
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073・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 中野政府委員
〔政府委員中野正剛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=73
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074・中野正剛
○政府委員(中野正剛君) 只今ノ齋藤政府
委員ノ答辯デ、事ノ經過ダケハ十分ニ御分
リニナッタラウト思ヒマス、唯私只今質問演
說ヲ拜聽シテ居ル時ニ、寫眞ヲ出シテコ
ンナ物ガモウ出來上ッテ居ル、四月ノ二十一
日ニ許可サレタノニ之ニ先ダチテコンナ物
ガ出來テ居ルト仰ッシヤッタ時ニ、是ハ妙ナ
コトダト驚イタノデアリマスソコデ私能
ク調ベサセマシタ所ガ、彼ノ寫眞ハ此度許
可シタ流木設備ノ寫眞ヂハナクシテ、庄川
筋ニ於ケル堰堤ノ寫眞ダサウデアリマス
(拍手)其堰堤ヲ造ル所ノ許可デアリマスナ
ラバ、之ヲ許可致シマシタノハ現內閣デハナ
イノデアリマス、大正十一年ト大正十四年
ニソレ〓〓認可セラレテ居ル、ソレカラ此
堰堤ガ出來上"テシマッテ、愈々此水路ヲ閉
塞シテ發電スルコトニナルノデアリマスカ
ラ、其前ニ流木設備ヲ決定シナケレバナラ
ヌト云フノガ、是ガ議論ニナッテ居ルノデ
アリマス、其流木設備ニ對シマシテハヽ農
林省ト內務省トノ間ニ意見ノ相違ガアルト
云フ御話ヲ承ッタノデアリマスガ、ソレハ政
府內部ノコトデ申上ゲル必要モナイカト思
ヒマスガ、關係各省ニ於テ協議ヲ凝スニ際
シ、或ハ農林省ニ於キマシテハ農林事務
官ニ言ハスレバ農業本位ニ物ヲ考へ、內務
省カラ申セバ內務省本位ニ考ヘル遞信省
ニ於キマシテハ成ベク此東洋第一ノ大堰堤
ノ設備ガ働キ始メルコトヲ希望スルカラシ
テ是ハ促進シタイト、遞信事務官達ハ考ヘ
ル是等ノ話合ヲ打合セテ決定スルノガ
是ガ政府ノ處分デアリマス(拍手)此處分ヲ
下ス前ニハ實ニ昭和三年ノ、現內閣成立
以前ニ、政友會內閣ノ下ニ於ケル縣知事カ
ラ認可ノ方案ヲ具シテ禀伺シテ來テ居ルノ
デアリマス、ソレニ對シテ愼重ニ審議シ
關係者ノ利害ヲ聽キ、今日ニ於キマシテハ
此堰堤ヲ締切ルコトニ對シテ反對ノ態度ヲ
取ッテ居ルモノハ、飛州木材會社ヨリ外ニハ
ナクナッテ居ルノデアリマス、其他ノ富山、
岐阜方面ノ關係者及縣民デハ、寧ロ事業ノ
促進ヲ陳情シテ來テ居ル狀態ニナッテ居ル
ノデアリマス(拍手)只今色々ノ推察ニ依リ
テ或ハ之ヲ社會問題トナシ、政治問題ト
セラルヽ御話ヲ承リマシタガ、サウ云フ噂
ナラバ、電力會社ガ「モツプ」ヲ煽動シテ居
ルト云フ噂ノ半面ニハ、乾新兵衞ガ飛州本
材會社ニ向クテ多大ノ金ヲ流用シテ、是デ以
テ政府ヤ當業者ヲネダッテ、而シテ飛州木材
會社ノ私利ヲ營マントスルト云フ噂モアル
ノデアリマス、左樣ナ噂ヲ一々此處デ論ジ
立テヲスルコトハ、私滑稽ニ思フ、先般大
阪地方裁判所ニ於テ、堰堤ノ締切ニ對シテ
假處分ヲシタノハ明白ニ承ッテ居リマスル
ガ、第三者乾新兵衞カラ三十万圓ヲ提供シ
テ、此訴訟ヲ提起シテ居ルコトモ明白ニナソ
テ居リマス(拍手)裁判所ノ訴訟ニ關スル間
題ハ法ノ正當ナル手續ニ依リテ決定致シ
マスガ、當局者ノ關知スル限リ、吾々ノ爲
シタル處分ニ付テハ一點不公正ノ點ナキ
コトヲ此處ニ明言スルノデアル、(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=74
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075・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマスー
高田政府委員
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=75
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076・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) 只今ノ御質問ニ
御答シマス、土倉君ノ御質問ノ要旨ニ依レ
バ農林當局ガ前內閣時代ニ於テ不同意デ
アリシモノヲ現內閣ガ同意シタノハ如何
ナル理由デアルカト云フヤウニ承リマス
ソレハ前內閣時代ニ於キマシテハ其結論
ニハ達シマセヌガ、大體ニ纒ヲテ居ッタヤウ
ニ思ヒマス、而シテ今囘農林省ガ同意スル
ニ付テ、魚道ノ問題、或ハ魚類ノ增殖ノ問
題、木材ノ流送ノ問題ニ付キマシテモ深ク
注意シ、調査ヲ遂ゲ、必ズ完全ニ其目的ヲ
達シ得ルト信ジタガ故ニ同意シタノデアリ
V 、更ニ前內閣時代ニ於テハ、下流幾万
町步ノ水田ニ要スル灌漑水ニ付キマシテハ、
遺憾ナガラ何等意ヲ用ヒテ居ラナカッタ、所
ガ現內閣ニ至リマシテ、材木ノ流送問題ヨ
リモ、魚類ノ遡上問題ヨリモ最モ必要ナ
ル問題ハ數万町步ニ涉ル灌漑ニ付テ、極
メテ完全ニ調査シテ、渴水ノ時ニ於テモ何
等是ガ田用水ニ故障ヲ生ゼシメザルコトヲ
必要ト感ジマシテ、其事ニ付テ府縣知事ヲ
通ジテ、電氣事業者ト完全ナル協調ヲ遂ゲ、
安全ニ灌漑用水ヲ保全スルノ方法ヲ講ジタ
ノデゴザイマス、是ダケガ前內閣ト違ッタ
點デゴザイマス、前內閣ノ許可セヌト云フ
意見ト、現內閣ノ許可シタルコトガ違フト
云フノデアル··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=76
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077・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=77
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078・高田耘平
○政府委員(高田耘平君) (株)更ニ御參考
ニ申上ゲテ置クコトハ事務上ニ付テノ問
題デアリマス、何カ土倉君ハ、農林省ノ事
務官ノ者ガ同意シナイヂヤナイカトノ疑ヲ
以テ御質問ニナリマシタガ、全然僞リデア
リマス。吾々ガ政務官トシテ同意ヲ與フル
ニ付テハ能ク事務官ノ意見ヲ採ッテ、愼重
審議之ヲスルコトハ常道デアリマス、吾々
ハ決シテ斯樣ナル問題ニ付テ事務官ヲ無視
スル程ノ必要ヲ感ジマセヌ、卽チ全然虛構
ノ御質問デゴザイマス(拍手)更ニ前內閣時
代ニ許可セザルモノヲ許可シタ-更ニ前
内閣時代ニ許可セザリシモノヲ何故許可シ
タト云フコトデゴザイマス、サウスルト前
內閣時代ニハ許可シ得ベカラザル理由ガ
アッテ許可シナカッタ、吾々ハ調査〓究ノ上
ニ許可スルコトガ當然トシテ許可シタノデ
アル前內閣時代ニ許可シナイモノヲ吾々
モ許可シナイト云フコトニハ行キマセヌ
政策ニ於テ其通リ、金解禁ノ問題ニ於テ其
通リ、總テノ問題ニ於テ、前內閣ノ解決セ
ザル事ヲ解決スルノガ吾々ノ方針デアル
吾々ハ政友會內閣ガ、國家ノ爲ニ解決出來
ナイ所ノ總テヲ、國家本位トシテ解決セン
トシツヽ自ラ努メテ居ルト云フコトヲ御諒
承ヲ願ヒタイト思フノデゴザイマス、尙ホ
許可シタ上ニ何カ暗イ事ガアルトハ何事デ
アル、是ハ恐ラクハ己ノ心ヲ以テ人ノ心ヲ
忖度スルモノデナイカト思フ、支那カ何處
カニ於テ、何カ許可スル時ニ金ヲ取ル癖ガ
アッタ國ガアッタサウデアリマス、日本ノ政
黨ニハ左樣ナ政黨ハナイト思ヒマス或ル
利權ヲ許可シタ、其許可シタ所ニ金ガ付ク
ト云フ、サウ云フコトハ己ノ心ヲ以テ人ノ
心ヲ忖度スル、極メテ陋劣ナル心事デアリ
マス(拍手)私ハ政友會ト言ハズ、民政黨ト
言ハズ苟モ議員タル者ガ、何等ノ證據無
シニ、只推測的ニ己ノ心ヲ以テ人ノ心ヲ忖
度スルコトノ誤リデアルコトヲ申シテ置キ
マス(拍手)
〔土倉宗明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=78
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079・土倉宗明
○ 土倉宗明君只今政府委員ノ御答辯ヲ伺ッ
タノデアリマスガ、私ハ政府委員ノ方々ヨ
リ伺ハヌデ、モット此問題ヲハッキリ御存ジ
ノ御方ニ承リタイノデアリマス、何モ御存
ジノナイ、何モ知ラナイ所ノ政務次官ニ之
ヲ聽カウトハ私ハ思ハナイ(拍手)齋藤政府
委員ハ、只今斯ウ云フ御答辯ニナリマシタ、
條件ニ對シテハ筏デアルトカ、或ハ箱船ナ
ドヽ云フ御說明ガアリマシタ、庄川ノ年出
材額ハ二十万石ト號セラレテ居ル、此二十
万石ヲ二ツノ堰堤、小牧ト祖山ノ二ツノ堰堤
ヲ越シマスノニ、筏ニ組ミ、或ハ之ヲ解グ
シ、或ハ箱ニ乘セ、之ヲ又卸ス、此操作ノ手續
ヲ假ニ爲シ得ルモノト致シマシタナラバ、果
シテソレガ可能デアルカ、不可能デアルカ
ト云フ點ニ付テ御存ジガアルマイト思フノ
デゴザイマス、何故カナラバ、二十万石ノ
材木ハ、之ヲ本數ニ見積ッテ見レバ、大約六
十万本ニナル、此六十万本ニナル所ノ計數
ヲ筏ニ組ミ箱ニ乘セル、堰堤ニ卸シ、又乘
セルノニ一體ドレダケノ時間ガ掛ルカト云
フコトヲ御存ジナイ、流材ノ期間ハ二月カ
ラ十月マデ、此僅カノ短期間ガ流送ノ期限
ニ相成ッテ居リマス、此短時日ヲ以テシテ、
ドウシテ六十万本ノモノヲ筏ニ組ンダリ、
之ヲ箱船ニ乘セタリスル、此操作ガ時間
的ニ見積レバドレダケニナルカ御分リニナ
ルマイ、「燐寸」ノ棒ヲ算ヘルニモ、六十万
本カラノモノヲ算ヘルノハ容易ナコトデナ
イ、大體此案ヲ齋藤サンハ如何ニモ完全シタ
ヤウナ御說明デアリマシタガ、是ハ齋藤サ
ンノ完全シタト云フ御說ニハ、第一ニ農林省
ガ絕對ニ反對デアルノデアリマシテ、第一調印
ヲシテ居ラヌト云フコトヲ私ガ先程申上ゲタ、
調印ヲシテ居ルナラバ、此所ニ其調印サレタ
モノヲ提出シテ戴キタイ、內務省ニ於テモ其
通リデアリマス、潮次官以下事務官ガ之ニ同
意ノ判ハ確カニ捺シテ居ナイト思フ、捺シテ
居ルナラバ出シテ御覽ナサイ、ソレカラ演說
解散ノ理由ニ對シテノ御答ハ解散スベキ
筋合デアルカラ解散シタノダラウト云フヤ
ウナ、實ニ驚入ッタル御答辯デアリマス(拍
手)電氣會社ト策謀シテ其理由ヲ作,テ解散
シタノデアルト云フコトヲ、私ハ言明致シ
テ居ル、更ニ醜惡ナル半面ハ微塵モナイト
仰セニナリマシタケレドモ、軈テハ斯ノ如
キ堂々タル、而モ卑劣ナル、惡竦ナル奸惡
ナル事實トナッテ軈テ世上ニ現ハレルノデ
アリマス、其時期ハ遠カラザル將來ニソレ
ガ事實トナッテ現ハレル事ヲ私ハ言明シテ
置キマス、中野君ノ御答辯ノ中ニソレハ嘘
ダ、堰堤ノ寫眞ダト仰セニナッタガ、堰堤ノ
寫眞デアルカナイカ、之ヲ諸君ニ提供スル、
御覽ナサイ之ヲ事實ト稱シテ居ルノデア
リマス、堰堤ノ寫眞デハナイト云フガ「チ
エーン、コンビヤ」ノ工事ヲ明カニヤッテ居ル
コトハ、四月二十五日以前ニ旣ニ完成シテ
居ルデハナイカ(拍手)サウシテ反對シテ居
ルモノハ飛州木材會社ダケダト仰セニナリ
マシタガ、飛州木材會社ダケデアルカナイ
カハ私ノ知ル所デハナイガ現ニ私モ御質
問ヲ申上ゲテ居レバ、民政黨ノ山田毅一君
モ是ニハ反對シテ居ラルヽノデアリマス、
ソレカラ更ニ此民事ノ訴訟ニ三十万圓ノ資
金ガ、是ハ神戶ノ乾新兵衞君ガ出シタノデ
アルト云フヤウナコトヲ言ハレテ、如何ニ
モ何カ玆ニ臭イ問題デモアルトカ、如何ハ
シイ問題ガアルト斯ウ云フ風ニ言ハレテ
居ルノデアルガ、訴訟ノ保證金トシテ出サ
レタモノガ何人カラ出テ居ラウトモ、ソン
ナコトハ御構ヒハナイデハナイカ、ソレヨ
リハ寧ロサウ云フ莫大ナ三十万圓ノ巨額ノ
金ヲ積立テヽ爭ハナケレバナラナイ、此原
始產業ニ從事シテ居リマスル-此生業ヲ
奪ハレントシテ居ル所ノ富山縣一部ノ住民
ニ對スル所ノ同情ノ觀念ハ、諸君方ニハナ
イノデアルカ、更ニ高田君ニ至リマシテハ
甚シキ暴言ヲ述ベラレタノデアリマス、前
內閣ガ許可ヲシナイメデアル、ソレヲ現內
閣ガ愼重審議ヲ遂ゲテ許可ヲシタノデアツ
テ、不正ガアレバ前內閣ダト言ハレル、許
可セザルモノニ不正ガ發生スル理由ガゴザ
イマセヌ(拍手)從來電氣會社ガ今日マデ電
氣事業ノ勃興ニ伴ウテ、殊ニ我ガ上下ノ政
權ニ對シテハ黄金ノ力ヲ以テ今日マデ誘
惑シタ事實ガ澤山アルノデアリマス(拍手)
卽チ許可ヲスルト云フ權限ニ對シテ、是等
ノ不正ナルコトガ行使サレテ居ッタト云フ
コトハ事實デアッテ、未ダ曾テ許可ヲ爲サヾ
リシモノニ對シテ、左樣ナル醜惡ナルコト
ヲ私ハ聞イタコトガナイノデアル(發言ス
ル者多シ)御穿違ニナッテハ困リマス、諸君、
而モ歷代ノ農林大臣ハ悉ク反對デアッタト
云フコトハ是レ天下周知ノ事實デアッテ、
現ニ四月二十五日-發令ニナッタノハ四
月二十五日デアリマス、農林省及內務省、
遞信省、殊ニ是等三大臣ダケ寄ッテ決定ヲ
與ヘラレタノガ十九日デゴザイマス、二十三
日ノ大阪朝日新聞ニハ「農林省內ニ反對ノ聲
アリ松村次官私見ヲ發表ス」トシテ、卽チ暗
ニ不同意デアッタト云フコトヲ堂々ト書イテ
居ルデハナイカ(拍手)單リ是ハ大阪朝日新聞
ダケニハ限リマセヌ、我ガ帝都ノ有力ナル
新聞ガ悉ク此事實ヲ列記致シテ居ルデハナ
イカ、內務事務次官ニ於テモ矢張其通リ、是
等ノモノヲアナタ方ガ取消ヲ爲サレタコト
モアリマセヌ、又私ノ言フコトガ果シテ噓
デアルト言フナラバ、アナタ方ノ確實ナル
證據ヲ此前ニ出シテ戴キタイノデアリマ
ス、斯ノ如キ卽チ曖昧ナル御答辯ヲ私ハ要
求致シテ居ルノデアリマセヌ、卽チ本件ハ
流レルカ流レナイカ、灌漑其他ニ障礙ヲ及
サヾルカ及スカ、又漁業其他ニ就テ障礙ガ
アルカナイカト云フ、其有ルカ無イカト云
フ問題ニ究極ハ突詰マッテ居ルノデアルカ
ラ、有ルナラ有ルト云フハッキリシタ案サ
ヘ出シテ戴ケバ、天下公衆ノ前ニ出シテ、
是ガ出來ルカ出來ナイカト云フ鑑定ハ容易
ニ私ハ出來ルモノダト思フノデアル、ソレ
ヲ爲サズシテ、其出來ルト云フ具體案ナル
モノヲ極秘ニサレテ居ル所ニ、手品ノ儡傀
ガアルト私ハ思フノデアリマス諸君、此
手品ノ種ヲ見セレバ始メテ吾々ガ此問題ニ
付テ安心ヲスルコトガ出來ルノデアリマ
ス、唯、今迄ノ政務官ノ述ベラレタコトハ、
餘リ信用スルニ足リマセヌカラ、ドウカ此
問題ニ多年經驗ノアラレル技術者ノ人ニ私
ハ答辯ヲ求メタイト思フノデアリマス
〔政府委員高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=79
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080・高田耘平
○ 政府委員(高田耘平君)極メテ簡單ニ御
答申上ゲマス第一ノ土倉君ノ御問ノ調印
トカ何トカ云フノハ-調印ト云フノハ何
ヲ言フノデアルカ(土倉宗明君「許可スル時
ニ調印スルヂヤアリマセヌカ」ト呼フ)多分
サウ云フコトダト思ヒマスガ、アレハ農林
省ハ調印シナイヤウニナッテ居リマス、アナ
タ方ハ何モ形式ヲ知ラヌケレドモ、サウヂ
ヤナイ、電氣ノ問題ニ付テ地方長官ガ許可
權ヲ持ッテ居フテ、內務大臣ト遞信大臣ニ禀
伺ヲシテ總テノ許可ノ命令ヲ出スノガ今日ノ
形式デアル農林大臣ハ現在ノ形式デハソ
レニ調印スベキモノデハナイ、ソレヲ君ハ
知ラヌカラソンナ詰ラヌコトヲ質問スルノ
デアル(拍手笑聲)
第二ハ流材ノ問題デゴザイマスルガ、流
材ノ問題ニ付キマシテハ前內閣時代ニ立案
シタモノニ變更ヲ加へテ、極メテ鞏固ナル
川倉ヲ造ッテ、而シテ流送設備ヲ完全ニスル
ノデゴザイマス、但シ此處ニ申上ゲテ置カ
ナケレバナラヌ事柄ハ其設備費モ其區間
ニ於ケル流送賃、卽チ川倉ノ所在地ヨリ小
牧ノ堰堤ニ至ル間ノ此流送ノ賃銀ハ、總テ
會社ガ負擔スルノデゴザイマス、若シ材木
ノ流出損耗等ガアッタ場合ニ於キマシテモ、
是モ會社ガ全部負擔スルコトニ相成ッテ居
ルノデゴザイマスカラシテ、何等流材業者ニ
對シテ危害ヲ加ヘナイト吾々ハ信ジタ次第
デアリマス(拍手)併ナガラ若シ萬一流送ヲ
完全ニスルコトガ出來ナカッタコトガ判明
シタ以上ニハ、是ニ於テ森林鐵道ヲ會社ノ
費用ヲ以テ敷設セシムルノ命令ヲ出スコト
ニ相成ッテ居ルノデゴザイマス(「ドウ云フ
法律ノ權限デ此命令ヲ出シマスカ」ト呼フ
者アリ)ソコデ私ハ此流送ノ問題ヨリモ、
灌漑用水ノ問題ガ極メテ重大ナル問題トシ
テ〓究シテ居ルノニ、質問者ヨリ灌漑ノ問
題ニ付テ何等少シモ御質問ノナイコトヲ
甚ダ遺憾ニ考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス(拍手)更ニ三大臣協議云々ハ何等根據ガ
アリマセヌ、三大臣ガ作ネッテ協議シタコトハ
アリマセヌ又吾々ノ方ノ事務次官モ山林
局長モ、元ノ政友會ノ案デハ不同意デアツ
タカ知ラヌガ、今度ノ案ニハ全然同意致シ
マシタ、而シテ若シ事務官ガ不同意デアル
カラ、政府ガ何モ決定出來ナイトスレバ、
是ハ事務官政治ニ相成ルノデゴザイマシ
テ、政黨內閣ハ斯樣ナコトハ全然認メマセ
ヌ(「ヒヤ〓〓」拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=80
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081・岡本實太郎
○ 岡本實太郞君國務大臣ノ演說ニ對スル
質疑ハ此程度ニ於テ終局セラレンコトヲ望
ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=81
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082・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 岡本君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=82
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083・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ハ
終局スルニ決シマシタ、最早本日ハ定刻モ
過ギマシタカラ、本日ハ是ニテ延會致シマ
ス-次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シ
そう、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後七時四十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005813242X00819300503&spkNum=83
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