1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
大正十三年法律第二號中改正法律案
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委員氏名名
委員長 伯爵 黒木三次君
副委員長 男爵 坂本俊篤君
公爵 徳川圀順君
子爵 松平康春君
内田重成君
山川端夫君
鍋島桂次郎君
田所美治君
八馬兼介君
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昭和六年二月十三日（金曜日）午後一時八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=0
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001・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 是ヨリ特別委
員會ヲ開會イタシマス、付託ニナリマシタ
ル大正十三年法律第二號中改正法律案ヲ議
題ニ供シマス、先ヅ政府委員ノ御說明ヲ願
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=1
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002・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 本案ニ付テ
御說明ヲ申上ゲマス、本改正法律案ニ關シ
マシテハ、既ニ議場ニ於テ御說明申上ゲマ
シタ通リ、一千九百三十年「ロンドン」條約
ノ各條規定ノ中ニハ國內法ニ依リ禁遏スル
ヲ要スル事項ガ二三存スルノデアリマス、
今ソレヲ一應玆ニ申上ゲマスレバ、第一口
徑六·一「インチ」卽チ百五十五「ミリメー
トル」ヲ超ユル備砲ヲ有スル基準排水量一
万噸卽チ一万百六十「メートル」式噸、以下
ノ航空母艦ハ自國ノ爲ニモ他國ノ爲ニモ其
法域內ニ於テ之ヲ建造スルコトガ出來ナイ
ト云フ制限デアリマス、是ハ第四條ニ規定
シテアリマス、第二ハ一万噸卽チ一万百六
十「メートル」式噸ヲ超ユル航空母艦ニ關シ
華府海軍軍備制限條約ニ色こノ規定ガ設ケ
テアリマスガ、其中ノ備砲關係事項中口徑
六「インチ」卽チ百五十一一「ミリメートル」ト
揭ゲテアルトキハ口徑六·一「インチ」卽チ
百五十五「ミリメートル」ヲ以テ之ニ代フル
ト云フ華府海軍軍備制限條約ノ改訂デアリ
マシテ、是ハ第五條ニ規定シテアリマス、
第三ハ排水量二千噸卽チ二千三十二「メー
トル」式噸ヲ超ユルカ又ハ口徑五·一「イン
チ」卽チ百三十「ミリメートル」ヲ超ユル砲
ヲ有スル潜水艦ハ自國ノ爲ニモ他國ノ爲ニ
モ其法域內ニ於テ之ヲ建造スルコトハ出來
ナイト云フ制限デアリマス、是ハ第七條ニ
規定シテアリマス、右ニ述ベマシタ條約上
ヨリ生ズル義務ヲ履行イタシマス爲ニハ國
內法ノ發布ヲ必要ト致シマスガ、現ニ大正
十二年條約第二號海軍軍備制限ニ關スル條
約ニ付キ大正十三年法律第二號海軍軍備制
限ニ關スル條約ノ實施ニ關スル法律ガ施行
セラレテ居リマスカラ、今囘ノ昭和六年條約
第一號千九百三十年「ロンドン」海軍條約ニ
付テ新ニ法律ヲ制定セズ右法律ニ適當ナル
改正ヲ施サントスル次第デゴザイマス、而
シテ改正ノ第一點ハ右法律ニ「海軍軍備制
限條約實施法」ナル題名ヲ附シタコトデア
リマス、是ハ右法律ガ廣ク海軍軍備制限條
約ニ對スル國內法ナルコトヲ明ニセントス
ル趣旨ニ出デタ次第デゴザイマス、改正ノ
第二點ハ、右法律第一條第二項中「大正十二
年條約第二號海軍軍備制限ニ關スル條約」
ノ下ニ「及昭和六年條約第一號千九百三十
年「ロンドン」海軍條約」ヲ加ヘ以テ本法ハ
所謂華府海軍軍備制限條約、「ロンドン」海
軍條約ノ雙方ノ實施ニ關シ適用アルモノトシ
タコトデアリマス、之ニ依リ「ロンドン」海
軍條約ニ定ムル制限ニ對スル違反ヲ未然ニ
防ギ且ツ取締ヲ容易ニシ兼ネテ各締約國ニ
對スル通知ノ材料ヲ豫メ知得スルコトガ出
來ル次第デアリマス、要スルニ本改正法律
案ハ大正十三年法律第二號ヲ以テ「ロンド
ン」海軍條約ノ實施ニ關シ其儘適用イタサ
ントスルモノデアリマシテ、「ロンドン」海
軍條約ニ依ル國際義務ヲ誠實ニ履行スル上
ニ於キマシテ必要ナルモノデアリマス、故
ニ何卒御協賛ヲ賜ハランコトヲ希望イタシ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=2
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003・田所美治
○田所美治君 皆其道ノ先輩ノ諸君ガ御出
デニナリマスノデ、迂濶ナ問デアルカモ知
レマセヌガ、二三御尋ネ致シマス、海軍軍
備制限條約實施法ト云フモノニ廣ク今度ハ
御改正ヲ爲サル、サウシテ名稱ヲ改メルト
云フコトデアレバ形式上ノ御尋デアリマス
ガ、第一條第二項中ノ大正十二年ノ條約第
二號ハ昭和六年條約第一號ト變ラナイデ將
來若シ必要ナ場合ニ於テハ改正ヲスレバ宜
イノデアリマスカラ、マダ今後幾度モ軍備
制限ニ關スル條約ガ出來ヤウト思フノデア
リマスカラ、名稱モ既ニ廣ク御改メニナラ
バ······廣クデス、將來ニ海軍軍備制限ニ關
スルモノハ總テ是ハ本條ノ第一條ノ軍艦製
造ト武裝ニ關スル制限デ先ヅ大體デスナ、
大體專門的ニ御考ヘニナッテ制限ガ出來テ
居ルト云フモノナラバ、モウ一層將來永久
ニ特別ノ改正ノ必要ノアルマデハ廣ク此名
稱ノ通リ將來ニ亙ッテ適用スルコト、卽チ第
一條ノ第二項ニ大正十二年條約第二號海軍
軍備制限ニ關スル條約及ビ昭和六年條約第
一號千九百三十年倫敦會議條約トセナイ
デ、主務大臣ハイキナリ廣ク海軍軍備制限
ニ關スル條約ノ規定ニ依ルト云フヤウニ爲
サッタナラバ一々又來年ニハアリハシマス
マイケレドモ、五年經ッテモアリマセウシ、
ト云フヤウニ考ヘラレマスガ、旣ニ名稱ヲ
御改メニナッテ第一條ノ御改正ヲ廣ク爲サッ
タノハデスナ、一方ヲ御擴ゲニナッテハ却テ
御窮屈デハナイカト思フノデアリマスガ、
又今度五年後ノ條約或ハソレヲ待タズシテ
モアルカ知レマセヌ、サウ云フ時分ニデス
矢張リ實費ハ其儘置イテ宜クトモ又加ヘナ
ケレバナラヌ御面倒ナコトデハナカラウ
カ、私ハ既ニ名稱ガ御考へツキニナッタナラ
バ一應内容モサウ爲サッタ方ガドウカト考
ヘル、ソレヲチヨット一ツ伺ヒタイ、ソレカ
ラ次イデ是ハ簡單ナ法律デアリマスカラ、
チヨット伺ッテ置キマスガ、此今度ノ條約ニ
依リマシテモ此軍艦ノ建造トソレカラ武裝
ノコト、此二箇條ダケデ、マア嚴正ニ言ヒ
マシテ此二ツノ制限デ宜イ譯デアリマス、
チヨットマア素人デ分リマセヌガ、只今矢吹
政府委員カラ御說明ガアッタヤウニ色ミナ
法則ガアルヤウデアリマス、例ヘバ一ツノ
軍艦ハ·······能夕分リマセヌケレドモ、巡洋
艦ヲ戰鬪艦ニスルトカ、變形スル場合、或
ル武裝ヲ大〓要スルカモ知レマセヌガ、變
造スルト云フヤウナ制限モ要リハシナイデ
セウカ、軍艦ノ新シイ建造デモナク、ソレ
カラ唯武裝ヲ船舶ニ施ス、船舶ヲ·······商船
ヲ軍艦ニ變更スルト云フ目的以外ニ、軍艦
ヲ變造スル、變型スルト云フヤウナ此兩方
ニ當嵌ラヌヤウナ場合ガアリハ致シマスマ
イカ、專門的ニ伺ヘバ誠ニ幼稚ナ迂濶ナ御
問カモ存ジマセヌガ、此二ツデ宜イモノデ
アリマセウカト云フコトデアリマス、ソレ
カラ續イテモウ簡單デゴザイマスカラ皆伺ッ
テシマヒマスガ、日本デハ外國軍艦ノ註文
ト云フモノヘハ此法律ハ當嵌リマセウガ、
日本政府ノ軍艦ト云フモノハ、マア民間ニ
ハ製造者ハ無イデアリマセウカラ、註文ト
云ヒマスカ命令ト云フカ、ソレデ國防計畫
ニ伴ッテ命令サレル、民間ニ、所謂民間ノ軍
艦ト云フモノハナイ筈デアラウト思フノデ
アリマス、ソコノ所ハ分リマセヌガ、義勇
艦ト云フモノガ出來ル、斯ウ云フ場合ハ日
本ニハ無イノデアリマスカラ、內國ノ······
帝國政府ノ軍艦ヲ製造スルト云フ場合ニ
ハ、從來ノ法律ノ大正十三年ノ法律二號ト
云フモノハ殆ド是ハ適用ノナイモノデハナ
カラウカ、是ハ外國軍艦ノ註文、今度ノ條
約デ云ヘバ條約國ノ軍艦ノ註文ヲ祕密ニ受
ケテ建造スルト云フヤウナモノノ場合ダケ
デアッテ、第一條ノ二項ノ一號、二號トアリ
マスガ、- て二號ノ制限ト云フモノハ外
國軍艦ダケニ限ッタモノデハアリマスマイ
カ、是ハマア現在ノ法律ニ對スル〓ヲ請フ
ノデアリマスガ、日本デハ國防計畫ト云フ
モノハ民間ニハ無イノデアリマスシ、義勇
艦隊モ無イノデアリマスカラ、政府ノ所謂
註文ヲ受ケテ、命令ニ依テ軍艦ヲ製造スル
ト云フノデアリマスカラ、勝手ニ軍艦ヲ製
造スルトカ、或ハ商船ヲ武裝スルト云フヤ
ウナ斯ウ云フ場合ハ、何カ戰時中ニ非常手
段デ、國民義勇ト云フヤウナコトニナッテヤ
ル場合ハ別デアリマセウケレドモ、普通ノ
法律ノ規定トシテハ、是ハ外國船舶ノ··
外國軍艦ノ建造、外國船舶ノ武裝ト云フヤ
ウナ場合デハナイノデアリマセウカ、ソレ
ヲマア一ツ伺ヒタイノデアリマス、是ハマ
ア現在ノ法律ニ對スル······孰レ當時ノ問答
ニモアッタカモ存ジマセヌケレドモ伺ッテ置
キマス、モウ一ツ伺フノハ此法律ハ大正十
三年ニ出マシタガ、適用ヲナサッタコトガゴ
ザンセウカ、マア外國軍艦ヲ製造ノヤウナ
場合ニ、華盛頓條約ニ對シテ許可ヲ受ケテ
ヤラナクチヤナラヌト云フヤウナコトデモ
アリマシタラウカ、牽聯シテソレヲ伺フ譯
デアリマス、ソレカラモウ一ツ伺ッテ置キマ
ス·カ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム」ト斯ウアリマスガ、此前ノヲ今見マ
シタガ、法律ヲ見マスト、法律ハ七月ニ出
テ居ッテ直キニ九月ニ勅令デ實施サレテ居
ルヤウデアリマス其年ノ······サウスレバ是
ハ直グトモウ此四月一日カラ出來ルトカ云
フヤウナコトニ、勅令デ別ニ之ヲ定メナク
トモ直グトモウ適用ノ期日ヲ此法律ノ中ヘ
御現ハシニナッテモ宜シイノデハナイカト
思フノデアリマス、或ハ是ハ條約國ノ、外
ノ國トノ關係デ、勅令デ多少ノ期間ヲ設ケ
テ置ク、斯ウ云フコトデモアッタノデアリ
マセウカ、大體此二三點ヲ伺ッテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=3
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004・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 只今ノ御質問ニ對
シテ私カラ御答ヘ致シマス、先ヅ初メノ法
律ニ斯ウ云フ一般的ノ名前ヲ與ヘタナラ
バ、其一條ノ二項ニアル「大正十二年條約第
二號海軍軍備制限ニ關スル條約」ト云フ之ヲ
一般的ノ名前ニスレバソレデ宜クハナイカ
ト云フ御尋デアリマス、此法律ノ制定ノ因
テ起ル本ノ實質ヲ摑ム必要ガアルカラシ
テ、矢張リ玆ニ「昭和六年法律第一號云々」ト
云フコトヲ加ヘル必要ガアルト云フ見解デ
ゴザイマス、ソレカラ軍艦ヲ變造スル場合
ノコトニ付テ御尋ガアッタノデアリマスガ、
是ハ變造ト申シマスノハ大砲ヲ換ヘルトカ
又其中ノ一部分ヲ、例ヘバ裝甲ヲ附ケルト
カ、砲塔ヲ附ケルト云フヤウナコトハ、改
造ト云フ言葉デ以テ此前ノ條約ニ示シテア
リマシテ、此前ノ大正十三年法律第二號制
定ノ時ニ於キマシテ、〓究ノ結果、改造ト
云フノハ廣イ意味ニ於テ建造ノ中ニ含マシ
テ居ルト云フ解釋デ、今日マデ來テ居ル次
第デゴザイマス、ソレカラ次ニハ軍艦ヲ建
造スル場合ハ、無論國內ニ於キマシテハ政
府カラ註文シテヤル場合、ソレカラ各造船
會社ガ外國ノ註文ヲ受ケル場合デゴザイマ
スガ、此政府カラ註文スル場合等ハモウ是ハ
差支ゴザイマセヌノデスガ、外國カラ註文
スル場合ガ之ニ相當スルノデアリマシテ、
國內デ勝手ニ造船會社ガ造ルトカ、或ハ國
內ノ或ル會社ガ又他ノ會社ニ軍艦ヲ註文ス
ルト云]フヤウナコトハ豫期シテ居リマセ
ヌ、外國ハ締約國モゴザイマスシ、又締約
國カラノ註文モアリ得ルモノト存ジテ居リ
マス、今日マデ此法律ノ適用ガアッタカドウ
カト云フ御質問デゴザイマシタガ、最近マ
デゴザイマセヌデシタガ、昨年ノ暮十二月
カラ今年ノ一月ニ掛ケマシテ中華民國ノ海
軍カラ播摩造船所ニ巡洋艦一艘ノ註文ガゴ
ザイマシテ、是ハ法律ニ依ック手續ヲ經マシ
テゴザイマス、認可ノ方ハ海軍大臣ガ認可
ヲシテ今デハ海軍省ノ手ヲ離レマシテ外務
省ノ方ニ移ッテ居リマス、海軍大臣デ認可
シテアル例ガ一ツダケゴザイマス、ソレカ
ラ施行期日ニ於キマシテハモウ既ニ條約モ
實施ニナッテ居ル次第デゴザイマスカラシ
テ、仰セノ通リモウ立法上ノ手續サヘ濟ミ
マスレバ直グ施行シテ宜シイコトニナッテ
居リマスガ、只今迄ノ普通ノ法律ノ例ニ傚
ヒマシタコトト、モウ一ツハ大シタ準備モ
ゴザイマセヌケレドモ、之ニ伴フ海軍大臣
ノ省令ヲ以テスル命令ト云フモノガゴザイ
マスカラ、ソレト伴ハシテ同ジニ致シタイ
ト云フコッチノ方ノ事務上ノ都合モゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=4
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005・田所美治
○田所美治君 斯ウ云フ簡單ナ法律デゴザ
イマスカラ修正ヲスルトカ何トカ云フ程ノ
考モナイノデアリマスケレドモ、今ノ政府
委員ノ御說明ニ依リマスト云フト、矢張リ
條約ノ基ヅク所ヲ書キ現ハシテ置ク方ガ宜
シイト云フ御考デ、列記的ニ爲サッタ第一條
ノ二項デアリマス、サウナルト云フト是ハ
又近ク同ジコトガ數年後ニ出テ來ルダラウ
ト思ヒマス、又條約ノ名稱ガ、是ハ卽チ法
制局デデモ言フコトデアリマスケレドモ、
名稱ヲ今度ハ廣ク爲サッテ海軍軍備制限云
云ト爲サッテ、ソレデ一般ノ軍艦ノ建造ノ取
締ト云フ、斯ウ云フコトヲオヤリニナルト
云フコトデアレバ一條ノ二項ハ主務大臣
ガ海軍軍備制限ニ關スル諸條約ト云ヒマス
カ、條約ノ規定ニ依ルト言ッテモ宜シウゴザ
イマセウカ、大正十二年或ハ昭和六年ト云
フ條約ノ本ヲ御現ハシニナラナクトモ、大
體デスカラ若シ將來ノ條約ニ基イテ此內容
ヲ變ヘナケレバナラヌ、取締ノ······サウ云
フ場合ガアレバ是ハ變ヘナケレバナラヌ、
或ハ改正シナケレバナラヌト云フコトモア
リマセウケレドモ、旣ニ表題デ名實ヲ現ハ
シマスヤウニ廣ク規定ヲ御拵ヘニナレバ、
條ノ二項ダケノ條約ハ、斯ウ云フ文字ヲ御
書キニナラヌデモ宜クハナイカト思フガ、
之ヲ私ハ今修正シヤウト云フ程ニモ考ヘテ
居ラナイガ、マアサウ云フ形式デ、面倒デ
アルケレドモ又次ノ時分ニハ同ジ條約ノ名
稱ヲ揭ゲル、斯ウ云フ御面倒ヲ執ラナイナ
ラバ別デゴザイマスガ、私ハ唯ソレ丈ノ御
理由ナラバ廣クナサッテオ置キニナッタ方ガ
宜クハナイカト思フノデス······是ハ意見
デアリマスガ、尙ホ之ニ對スル御答辯ヲ伺
ヘマスレバ伺ヒマス、ソレカラ尙ホ改造ト
云フヤウナ場合モ建造ト云フ中ニ這入ルト
云フコトデアリマスガ、是ハ大正十三年ノ
當時此法律ガ出來タ時分ニサウ云フ問答デ
モアリマシテサウ云フコトニ決ッテ居ルノ
デアリマセウカ、是ハ其條約ノ元ノ言葉ガ
ドウ云フ御言葉ニナッテ居リマスカ、原語デ
云フト建造ト云フコトヽ改造ト云フコトハ
何ト云フ言葉ヲ使ヒマスカ存ジマセヌガ、
違フダラウト思フノデアリマスガ、日本語
デハ建造ノ中ニ改造ハ入ルト云フコトデ宜
カラウト思フガ、原語デ漠然タル意味ニ於
テ言ヘバ、「ビルド」ト申シマスカ、サウ云
フ意味デゴザイマセウガ、改造ノ場合ニハ
何カ他ノ言葉デ、此建造ノ中ニ入リ惡イカ
トモ思フノデアリマスガ、是ハ大正十三年
以來列國モ是デ認メテ又華盛頓條約ノ時分
ニハ······チョット素人考デハ華盛頓條約ノ
時分ニハ戰鬪艦ダケノ制限デアリマシタカ
ラ、或ハソレデ宜カッタカ知レマセヌガ、今
度ノ條約ニハ政府委員ノ曩ニ仰セニナッタ
ヤウニ色〓巡洋艦以下驅逐艦マデ制限スル
シ、航空母艦モ出來テ來タシ、サウ云フ場合ニ
於テハ建造ノ中ニ改造ガ入ルト云フ御說明
デ行ケバ宜シイガ、外國語デ見ルトチット無
理ガ出來ハセヌカ、ソンナニモ考ヘル、サ
ウ云フ所モ將來ノ條約ニハモウチヨット他
ノ言葉ヲ使ハナケレバナラヌト云フ意味
デ、是ハ條約ガ矢張リ出ル度ニヤッテ行クガ
宜イ、斯ウ云フ或ハ理由ガアルカ知レマセ
ヌガ、サウ云フ御說明ナラバ分リマスガ、
建造ノ中ニ改造モ含メテ行クノダ、ソレカ
ラ武裝ト云フ中ニハ又廣ク解釋ガ出來ルト
云フコトデアレバ、是ハ永久ニ大體ノ制限
ノ「プリンシプル」ヲ置ケバ將來長ク此儘デ
行キハセヌカ、一々議會ニ法律ノ協贊ヲ求
メナクトモ、サウ云フ總括的ノ制限ガ出來
テ御便利デナイカト思フ、ソレカラ是ハ迂
濶ノ御尋デアリマスガ、軍艦ノ建造ト云フ
コトハ此法律ガナクテモ日本ノ國ノ政府以
外ノ軍艦ヲ造ルト云フコトハ絕對ニ不可能
ノコトデハアリマスマイカ、假ニ造ッタモノ
ガアルナラバ、ソレハ玩具ノ軍艦デアッテ、
國防用ニ供スルト云フコトニナラナイ、所
謂軍艦ノ製造ト云フコトニナレバ、此法律
ガ無クテモ日本ノ軍艦ヲ造ルト云フコト
ハ、所謂軍艦ノ用ヲ爲ス軍艦ヲ造ルト云フ
コトハ、此法律ガ無クテモ禁止事項デハアリ
マスマイカ、是ハ若シ是ガ然リトスレバ··
文字ヲ修正スルト云フ考モアリマセヌケレ
ドモ、外國ノ軍艦ノ製造デアル、第一條ノ
制限ハ外國政府ノ註文ニ對シテ軍艦ヲ建造
スル、或ハ外國ノ船舶ヲ軍艦ニ變更スル目
的ニ供スル、斯ウ云フコトト了承シテ宜シ
ウゴザイマセウカ、或ハ民間ノ造船所ガ常
ニ軍艦ヲ勝手ニ造ルナドト云フコトハ、海
軍大臣ノ許可ヲ得ヌデ造ル者モアリハシマ
スマイシ、是ハ海軍ノ國防計畫ノ中デ國費
ノ豫算ノ中デ御拵ヘニナルダケデ、許可ヲ
受ケテ製造スルト云フコトハアリマスマイ
シ、今ノ御說明ヲ承"テモ適用シタ場合ハ中
華民國ニタッタ一ツアッタ、斯ウ云フ御話デア
リマシタガ、卽チ是ハサウ云フ場合ダケニ
第一條ハ適用サレル、是ハ外國軍艦ノ建造
ト云フコトニ關スル法律ト了承シテ宜シウ
ゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=5
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006・堀悌吉
○〓府委員(堀悌吉君) 先程ノ改造デゴザ
イマスガ、「リコンストラクシヨン」ト云フ
字ガ使ッテアリマス、改造ヲ建造ノ中ニ含ム
ト云フコトモ本當ニ廣ク意味ヲ取ッタ結果
ダト思ヒマスガ、其事ハ當院ノ委員會ノ時
ニサウ云フ風ニシテ御諒解ヲ願シタト云フ、
サウ云フ記憶ガ遺フテ居リマス、ソレカラ華
盛頓條約デハ只今申上ゲマシタ「リコン
ストラクション」デアリマスガ、倫敦條約デ
ハ「リコンディション」ト云フ字ヲ使ッテ居
リマス、ソレカラ軍艦建造ハ御說ノ通リニ、
實際問題ト致シマシテハ、政府ハ國內ニ於
キマシテハ、內國用トシマシテハ、政府ガ
注文シタ以外ハアル譯ハゴザイマセヌガ、
實際各國デ以テ軍艦ヲ造ルノハドコカノ註
文ニ依ッテ造ルノデアリマシテ、日本ニ於キ
マシテモ政府以外ノ者ガ註文ヲスルト云フ
コトハ無イヤウニ思ハレマスケレドモ、唯
一遍サウ云フコトモゴザイマスカラ、軍艦
ノ建造ヲ禁上スルトカ云フヤウナ規定ガ國
內ニ無イ限リハ、サウ云フコトモ見テ書イ
テ置ク方ガ宜イデハナイカト云フ普通ノ解
釋デゴザイマス、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=6
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007・田所美治
○田所美治君 他ノ方ガ段々御尋ネデゴザ
イマセウ、段々御邪魔ヲ致シマスガ、此「リ
コンストラクション」ト云フ言葉ガ建造ト
云フコトデ、此大正十三年以來外國カラモ
何モ喧マシク申サナカッタデアリマセウガ、
ソレデ御慣習ガ付イテ居リマスレバ今度ノ
「リコンディション」ト申シマスカ、サウ云
フ新シイ言葉モ「リコンストラクション」ノ
言葉ノ中ニ入ッテ居ル、斯ウ云フ御說明デ行
クダラウト思フガ、何ダカ素人考デハ、今
度ノ條約ハ細カイ補助艦以下ノ制限ガアル
ノデアリマスカラ、或ハ「コンストラクショ
ン」ト云フ······新シイ「コンストラクショ
ン」、「ニユー·コンストラクション」ト云フ意
味ニ「リコンデイション」モ入ッテシマフト
云フコトハ、或ハ問題ヲ起シハシナイダラ
ウカト思フノデアリマスガ、外國カラ見レ
バ「コンストラクション」ハ許可ヲ得ナクチ
ヤナラヌ「リコンデイション」ノ方ハ此法律
ノ制限外、斯ウモ言ヘルカモ知レナイ、原
語デ之ヲ書キマスト其邊ハ無論十分ノ御調
ベガアリマセウケレドモ、差支ゴザイマセ
ヌカ、問題ガ起リハシナイカト思ヒマスガ、
添ヘテ置キマスガ、卽チ此建造及改造ニ關
スルコト、改造ト云ワ二字ガ深切ニ言ヘバ
萬國的ニ考ヘテノ話デアリマスガ、「コンス
トラクション·エンド·リコンデイション」
トシテ置カヌト云フト、前ノ華盛頓條約ヨ
リ今度ハ複雜ニナッテ居ルカラ、制限ガ日本
ノ國內法ト云フモノハ脫ケテ居ルト云フヤ
ウナコトニナリハシナイカ、斯ウ云フマア
譯ナンデアリマス、或ハソレデ說明ヲナサ
レマシテ從來通リ「リコンストラクション」
モ「リコンデイション」モ其中ニ這入ッテ居
ルト云フコトデ誤解ガ解ケレバ宜イガ、ソ
コノマア漢字ノ漠然タル通俗ノ言葉ニナッ
テ居ルノデアリマスガ、私自身分ラヌノデ
アリマスガ、其邊ニ付テ御尋ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=7
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008・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 法律制定ノ時ニハ
其意味デ以テ入レテ居ルト云フ御解釋デア
リマシタガ、省令デ以テ之ヲ更ニ細カイ實
施規定ヲ別ニ海軍省デモ發表シテ居リマス
ガ爲ニ、ソレニハ誤解ノナイヤウニ致シテ
置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=8
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009・田所美治
○田所美治君 現在アルノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=9
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010・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=10
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011・内田重成
○內田重成君 私モチヨット政府委員ニ伺,
テ置キマスガ、此法律ニ相當スル法律ガ英
米等ニ於テ矢張リ出來テ居ルダラウト思ヒ
マスガ、ソレハ此內容ニ於テドウ云フ風ニ
ナッテ居ルカ、御調ベニナッタモノガアリマ
スカ、之ヲ一ツ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=11
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012・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 遡リマシテ華盛頓
條約ノ時ノコトヲチヨット申上ゲマスガ、アノ
時ニハ英吉利ガ一番早ク國內法ヲ制定イタ
シマシタ、ソレカラ亞米利加ハ條約其モノガ
國內法ト同一ノ效力ヲ有スルモノトシテ實
施サレル關係上、特別ノ法令ヲ出シテ居リ
マセヌ、佛蘭西、伊太利ハ其時ニ出シテ居
リマス、今囘ハ英吉利ハ昨年七月ニ今囘ノ
條約ニ關スル實施法ヲ公布シテ之ヲ施行ス
ル手續中デアルト云フ所マデ分ッテ居リマ
スガ、此條約ガ實施サレテ居ル今日、モウ
旣ニ實施サレテ居ルコトト存ジテ居リマ
ス、亞米利加ハ矢張リ華盛頓條約ノ時ト同
ジヤウニ國內法ハ別ニ制定シナイコトト心
得テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=12
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013・内田重成
○內田重成君 其英吉利ノ實施法ノ內容ハ
矢張リ斯ウ云フ風ニ制限ノ範圍、ソレカラ
二條ノ規定及ビ之ニ附スル罰則ノ規定ト云
フヤウナ細カイ規定マデアルモノデゴザイ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=13
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014・堀悌吉
○〓府委員(堀悌吉君) 今囘ノ「ロンドン」
條約ニ關スル國內法ハ矢張リ本法ニアルガ
如ク、前ノ華盛頓條約ニ關スル法律ヲ矢張
リ改正スル形ニナッテ居リマス、其華盛頓條
約ニ關スル英吉利ノ法律ハ總テ六箇條附屬
書二ツカラ成ッテ居リマシテ、矢張リ本法ノ
ソレノ如ク認可主義ヲ採〃テ居リマシテ、其
一條ニ於キマシテ艦船ノ建造、艤裝、武裝
等ニ關スル餘程細カイ規定ガゴザイマシテ、
又許可手續マデ其中ニ這入ッテ居リマス、
第二條ニ於テ罰則ヲ規定シテ居リマス、第
三條ニ於キマシテ他ノ法令トノ關係ヲ明カ
ニシテ居リマス、第四條デ是ハ日本トハ違
ヒマシテ、潛水艦、毒瓦斯ニ關スル條約モ
一〓ニ施行シテ、ソレヲ國內法デ取締ルト
云フ立前ニナッテ居リマスルカラシテ、其潜
水艦、毒瓦斯ニ關スル條約ノ中ノ或ル行爲
ヲナシタ者ハ海賊行爲トシテ處斷スルト云
フ場合ノ規定モアリマスガ、ソレヲ取ッタノ
ガ第四條ニナッテ居リマス、第五條、第六條
デ法律ノ施行地域、期日サウ云フモノガ規
定シテアリマシテ細カイモノデゴザイマ
ス、ソレカラ今度ノ國內法ハ只今申上ゲマ
シタ華盛頓條約實施ニ關スル法律ノ第一條
卽チ艦船ノ建造、艤裝、武裝等ニ關スル制
限及ビ許可ノ手續、是ハ今囘ノ千九百三
十年ノ倫敦ニ於テ協約サレタ海軍ノ制限竝
ニ縮小條約ノ關係上、之ニ對シテ效力ヲ有
スルト云フノガ一ツノ項目デゴザイマス
シ、モウ一ツハ先程申上ゲマシタ第四條ノ
華盛頓デ締結サレマシタ潜水艦及ビ毒瓦斯
條約ノ施行ニ關スル法律デアリマスガ、施
行ニ關スル條約ノソレハ效力ヲ失フコトヲ
極メタモノデゴザイマシテ、第四條ハ削除
ニナル、ソレノ二ツガ今囘ノ英吉利ノ立法
ノ根本デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=14
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015・内田重成
○內田重成君 其英吉利ノ規則ノ中デ罰則
ノ最長期、最重期ナルモノ、一番長キモノ
一番重キモノハドウ云フ程度ニナッテ居リ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=15
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016・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 其條約實施法ノ第
二條ヲチヨット讀ンデ見マスガ「前條ノ規定
ヲ犯シタル者又ハ許可條件ヲ犯シ若クハ之
ヲ履行セサル者ハ二年以下ノ輕禁錮若クハ
重禁錮若クハ百「ポンド」以下ノ罰金ニ處
シ、若クハ禁錮ト罰金トヲ併セ科ス、犯罪
ノ目的物タル船舶及其裝備品ハ之ヲ沒收ス」
斯ウ云フコトニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=16
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017・内田重成
○內田重成君 是ハ極ク形式ノ問題デス
ガ、此條約ノ題名ガ條約ノ實施法ト云フ名
前ニナッテ居リマスガ、此文字ニ付キマシテ
ハ無論政府ニ於テ御詮議ニナッタコトデア
ラウト思フガ、條約ヲ對照シテ見マスルト、
此實施法ト云フ名前ハ適當デナイカノ感ジ
モシマスガ、是ハ先ニ私モ此法律ノ制定ノ
時ニ關與シテ居ル者デアリマシテ、先ノ時
モアノ條約ノ實施ニ關スル、アノ言葉ハ餘
リ面白クナイト云フ考ヲ始終其當時モ持ツ
テ居ノタ、何カ施行法ニ關スルヤウナ、施行
法ノヤウナ意味ニ取レルト云フノハ條約中
ニ色ミ政府ノ義務トシテ通告ノ義務等ガ規
定シテアル、其義務ノ履行ニ付テノ規定ノ
如ク標題ダケ見レバ見エルノデス、是ハ外
ニ適當ナ文字ハ御詮議ニナッタコトトハ思
ヒマスガ、何カ他ニ好イ文句ガナカッタカ、
ソレカラモウ一ツ序デニ伺ッテ置キマスガ、
此第一條ノ、是モ文字ノ話デスガ、第二項
ニ「條約ノ規定ニ依ル義務ヲ履行スル爲必要
アリト認ムル場合ニ於テハ前項ノ許可ヲ爲
サザルモノトス」、此文句モ頗ル適セヌモノ
ト其當時カラ、大正十三年當時カラ感ジテ
居ッタモノデアリマス、「必要アリト認ムル
場合」デハナイ、是ハ詰リ條約上ノ義務ヲ履行
スル爲ニハ當然許可セラルベキモノヂヤナ
イカ、此「必要アリト認ムル」ト云フ文句ハ
餘リ適當デナイト云フ、其當時意見ガアツ
タ、是ハ矢張リ今度ハ新ニ御詮議ニナッタノ
ヂヤナイカ、先ニ斯ウナッテ居ルカラ、其儘
其文句ヲ踏襲スルト云フダケノ御詮議ヂヤ
ナカッタカ知ラヌト私ハ考ヘル、今是ハ新シ
イ問題デハナイノデスケレドモ、何カ今度
改メテ其點ニ付テ御詮議ガアリハシナカッ
タカドウカト云フコトヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=17
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018・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 只今ノ御質問ノ中
ノ此名稱ノコトデアリマスガ、初メハ名稱
ハ付ケナイデ其儘改正スルト云フコトガ一
番初メノ案デ以テ進ンデ行キマシタケレド
モ、色ミ考ヘタ結果名稱ヲ付ケタラ取扱上
宜クハナイカ、其名稱ニ付キマシテモ海軍
ノミデアリマセヌ、法制局アタリデ色〓相
談イタシマシテ考ヘマシタガ、他ニ是以上
適當ナ奴ハ今見當ラヌ、是デ施行シテ戴キ
タイト云フ風ニ決定シタノデゴザイマス、
又其次ノ御質問ノ條約ノ規定ニ「義務ヲ履
行スル爲必要アリト認ムル場合ニ於テハ」
ト云フ、是ハ此前ノ制定ノ時ニ色ミ議論ガ
アッタコトト聞イテ居ルノデアリマスガ、今
囘ハ是ニハ觸レナカッタノデアリマス、今
度之ニ付テ更ニ再考イタシマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=18
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019・内田重成
○內田重成君 一應終リマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=19
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020・田所美治
○田所美治君 チヨットモウ一ツ念ノ爲メ
伺シテ置キマス、先程堀政府委員カラノ御
答デ建造ト云フ中ニ皆含メテシマッテ、省令
ノ建造ノ中ニハ改造モ皆這入ルコトトス
ル、斯ウ云フコトデゴザイマシタガ、私チ
ヨットムツカシク······建造又ハ改造、建造及
改造スルト云フコトヲ御加ヘニナッタ方ガ
一番宜カッタト思フノデアリマスガ、サウナ
サラナケレバ御困リニナリハ致シマスマイ
カト思フヤウナ感ジガスルノデアリマス、
ソレハ省令デ改造ト云フコトヲ御加ヘニナ
リ、建造ハ改造ナリト云フ說明ヲ御加ヘニ
ナッテモ、此法律ヲ適用シテ、今三條四條ノ
制裁ニ關スル問答ガアッタヤウデアリマス
ガ、ソレヲ伺ッテ居リマシテ、此法律ガ建造
ト云フコトデ出テ居リマスト云フト、改
造ニ關シテハ三條ノ制裁ヲ裁判官ガ科スル
ト云フコトガチヨット出來ナイノデハナイ
カ、行政上デ、或ハ國際上デ建造ト云フ中
ヘハ國際ノ解釋ノ上カラサウ云フ漢文ノ建
造ト云フ中ニハ改造ガ這入ルンダ、斯ウ云
フコトデマア諒解スルカモ知レマセヌガ、日
本ノ裁判所デ裁判事件ニデモナッタ場合ニ、
是ハ內田サンモ御出デニナリマスガ、三條
ノ······第一條第一項ノ規定ニ違反シタルモ
ノト云フ中ニ改造ヲシタ場合ニハチヨット
此制裁ガムツカシクナリハシナイカ、マア
申スマデモナク此法律ノ一條ト三條デ働カ
ナクチヤナリマセヌカラ、省令トカ、或ハ
勅令以下ノモノデハ建造ノ中ヘ改造ガ這入
ルンダ、固ヨリ私ノ先御尋シタノハ日本ノ
軍艦ヲ製造スル場合ハナイ、外國ノ注文軍
艦ニ限ッテ居ルト云フヤウニ諒解シテ、ソレ
デ宜カラウト思フノデアリマスカラ、ソン
ナニ實際ニ於テハ心配ハナイノデアリマス
ケレドモ、チヨット三條ヲ適用スル場合ニデ
スナ、改造トカ、變造トシタ場合ニハムツカ
シクナリハシナイカ、コンナニ思フノデス、
若シサウ云フ御不便ガ、アレバ是ハ何デモナ
イコトデアリマスカラ、改造スルトカ、變
造スルコトトカト云フ「リコンストラクシ
ヨン」ヲ御入レニナッテ置ク方ガ將來永遠ノ
法律ノ上カラ申シマスト云フト完璧ヲ期セ
ヤシナイカ、コンナニ思フノデアリマス、
私ハ形式ヲ申スノデハアリマセヌケレド
モ、寧口親切ナ上カラ全クナリハシナイカ
ト思フ、少シ建造ノ中ニ入レルノハ原本ガ
ソンナニ違クテ居ルト無理デナイカト思ハ
と 、第一、三條ヲ適用スル場合ニ省令ニ
サウアルカラト言ッテ、チヨットソレデ通リ
マセウカト思フノデアリマスガ、折角此法
ヲ御適用ニナル場合ニ·····念ノ爲ニモウ一
應御尋ネシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=20
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021・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 色〓御疑問ノ點誠
ニ御尤モト考ヘマスガ、此前ノ話ヲ申上ゲ
マスト云フト、此制定スル時ニ建造ト云フ
コトノ中ニサウ云フ風ナ、中ノ一部分ヲスッ
カリ改造スルトカ、艤裝變ヘスルトカ、武
裝ヲ變更スルトカ云フ廣イ意味モ皆含ムト
シテ法律ヲ制定サレマシタ次第デ、省令ハ
ソレヲ解釋シタト云フ譯デゴザイマセヌガ、
其法律ノ制定ノ趣旨ニ合フヤウニ省令ヲ出
シタト云フ歷史ニナッテ居リマス、左樣御諒
承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=21
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022・田所美治
○田所美治君 是ハ政府ノ方デ特ニ一ツ唯
御答辯ダケデナシニ、御考ヘノ上デ宜イノ
デゴザイマスガ、若シ改造ト云フ二字ダケ
ヲ加ヘテ置ク必要ガアレバ、サウ修正シテ
置キマスレバ、大變安心ダラウト思フ、外
國軍艦ヲ改造方ヲ注文ヲ受ケマシテ、改造
ハ一向許可ヲ得ナイ、斯ウ云フモノガ民間
ノ造船所ニ出來テ來ルト云フト、是ハ一條
ノ一項ノ建造ノ中ニ入レテ取締リ、二錢、
依ッテ制裁スルトカ何トカ云フコトガ、實際
問題ガ、サウ云フコトガ起ッテ來マシタラバ
御困リニナリヤシナイカ、コンナニ考ヘル
ノデアリマス、或ハ此場デ直グ御卽答ガ出
來ナケレバ、御〓究ノ上ニサウスル方ガ完
全ダト云フコトデアレバ、皆サンノ御意見
ハドウカ知レマセヌガ、「リコンストラクシ
ヨン」ヲ御入レニナッテ、此際改造ノ二字ヲ
御加ヘニナッタラドウカ、斯ウ思フノデアリ
マス、併シ色ミ立法上ノ御〓究デ、解釋上
ニ、建造ト云フ文字デ疑モナク、ソレデ行
ケルト云フコトニナラバ、ソレデ宜カラウト
思ヒマス、私ハ敢テ修正ヲ希望スルノデア
リマスガ、此際デアリマスカラ、何デモゴ
ザイマセヌカラ、議員ノ修正ニシテ置ケバ
宜クハナイカト思フノデアリマス、親切ノ
私ノ考カラ御考慮ヲ願ヒマス······チヨット
速記ヲ止メテ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=22
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023・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 速記ヲ止メ
テ
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=23
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024・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 懇談會ハ是デ
閉ヂマシテ速記ヲ始メテ下サイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=24
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025・山川端夫
○山川端夫君 私ノ伺フコトハ念ノ爲ノ質
問デアリマスカラ、唯御趣意ヲ確カメテ置
ケバ宜イノデアリマス、今度ノ條約ニ依リ
マスト、第四條航空母艦ト、ソレカラ第七
條ノ潜水艦ノ······第七條ノ第四、前ノハ第
四條ノ第二、詰リ航空母艦、潜水艦ハ締約
國ノ一切ノモノガ批准シナイ場合ニハ民間
デ之ヲ建造スルコトニ付テハ本條約ヲ適用
シナイ、今デハ、佛蘭西、伊太利ガ今度ハ
マダ加ハッテ居リマセヌカラ、此第四條第
二、第七條第四ト云フモノハ今日適用サレ
テ居ナイ、デ民間ノモノガ他國カラ註文ヲ
受ケテ此條約ノ規定以外ノ航空母艦、潜水
艦ヲ造ッテモ宜イト云フコトニナルヤウデ
ス、所ガ此法律ノ趣意ニ依ルト軍艦ヲ建造
スル時ニハ總テ許可ヲ受ケルト云フノデア
リマスカラ、此條約ノ適用ガナクトモ民間
デ他國ノ註文ヲ受ケテ航空母艦ナリ潜水艦
ヲ造ル時ニハ矢張リ常ニ政府ノ許可ヲ受ケ
ネバナラヌヤウニモ考ヘマス、サウ云フ風
ニ考ヘルノデスガ、政府ノ方デハドウ云フ
御解釋デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=25
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026・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) 法律ト致シマシテ
ハサウ云フ場合ニ矢張リ許可シナクチヤ
ナラヌト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=26
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027・山川端夫
○山川端夫君 サウスルト、マダ潜水母艦、
航空母艦、潜水艦ヲ民間ノ工場ガ外國政府
カラ註文ヲ受ケテ建造スル場合ニハ此條約
ノ趣旨ニ依ラナクテモ宜イト、今日ハナッテ
居ルノデスガ、サウ云フ場合デモ民間デ豫
メ建造スル前ニ政府ノ許可ヲ受ケネバナラ
ヌト云フコトニ御解釋ニナッテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=27
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028・堀悌吉
○〓府委員(堀悌吉君) サウ云フ風ニ解釋
シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=28
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029・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 他ニ御質問ア
リマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=29
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030・内田重成
○內田重成君 私モウ一言御尋ネシテ置キ
タイト思ヒマスガ、英吉利ノ規則ノ中ニハ、
之ニ相當スル規則ノ中ニハ四條及七條ニ相
當スル場合ニ、條約ノ四條及七條ニ相當ス
ル場合ニ取得ノコトハ矢張リ何ニモ書イテ
ナイ、規定ハナイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=30
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031・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) チヨット見當リマ
セヌデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=31
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032・内田重成
○內田重成君 此亞米利加ハ斯ウ云フ特別
ノ法規ヲ出サナイト云フノニハ何カ特殊ノ
理由ガアルノデアリマスカ、其點ニ付テ何
カ特別ニ諒解デモアルノデスカ、總テ斯ウ
云フモノハ相互的ノモノダラウト思フ、矢
張リ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=32
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033・堀悌吉
○政府委員(堀悌吉君) ハッキリシタ事ハ
分リマセヌデスガ、チヨット速記ヲ止メテ戴
キマシテ····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=33
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034・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 速記ヲ止メ
テ·
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=34
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035・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 懇談會ハ此程
度デ止メマシテ速記ヲ始メテ······如何デゴ
ザイマセウ、マダ少シク質疑應答ノ必要ガ
アリト本委員長ハ認メマスデゴザイマスカ
ラ、重ネテ御報〓ヲ致シマスル期日ニ第二
囘ヲ開キタイト思ヒマスカラ、今日ハ此程
度デ散會イタシタイト思ヒマスガ如何デス
カ
〔「異議ナシ」ト呼ス者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=35
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036・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ本日
ハ是デ散會イタシマス
午後二時二十三分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵黑木三次君
副委員長男爵坂本俊篤君
委員
子爵松平康春君
內田重成君
山川端夫君
鍋島桂次郞君
田所美治君
政府委員
外務參與官子爵織田信恒君
海軍政務次官男爵矢吹省三君
海軍少將堀悌吉君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902261X00119310213&spkNum=36
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