1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
地租法案
營業收益税法中改正法律案
砂糖消費税法中改正法律案
織物消費税法中改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中改正法律案
大正十五年法律第二十四號中改正法律案
都市計畫法中改正法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 柳澤保惠君
副委員長 男爵 阪谷芳郎君
公爵 一條實孝君
侯爵 細川護立君
子爵 梅小路定行君
子爵 大久保立君
子爵 大河内輝耕君
子爵 裏松友光君
水野錬太郎君
伊澤多喜男君
男爵 藤村義朗君
男爵 小畑大太郎君
男爵 黒田長和君
片岡直温君
藤田四郎君
湯地幸平君
馬場えい一君
長岡隆一郎君
後藤文夫君
木村清四郎君
大橋新太郎君
森平兵衞君
尾崎元次郎君
濱口儀兵衞君
田中一馬君
小林暢君
森田福市君
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昭和六年三月十一日(水曜日)午後一時十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=0
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001・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 是ヨリ委員會
ヲ開キマス、大藏大臣ヨリ先般議場ニ於テ
說明ヲシタコトガアッタガ、尙ホ御要求ニ依
レバ說明ヲシテ宜シイト云フコトデゴザイ
マスガ、或ハ簡單ニ要點ノ御說明ガアレバ
伺ヒタイト存ジテ居リマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=1
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002・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 先般本會議ニ
於キマシテ、大體ノ說明ヲ致シマシタガ、
極ク具體的ニ付キマシテ今日ハ先般ノ本會
議ノ補足トシテ說明イタシタイト存ジマス、
地租ノ改正ト減稅ト云フモノニ付キマシテ
申シマスト、一ハ現行地租ノ課稅標準デア
リマス、地價ヲ廢シテ賃貸價格ヲ課稅標準
ト致シマシテ十年目每ニ之ヲ改訂イタシマ
ス、サウシテ改正當初ノ賃貸價格ハ曩ニ賃
貸價格調査法ニ依リマシテ決定シタモノニ
依リマス、二ハ現行地租條例ハ之ヲ全然廢
止イタシマシテ新タニ地租法ヲ制定イタシ
やく、第三ニハ租率ハ各地目トモ之ヲ百分
ノ三·八ト致シマス、第四ハ地租ノ納期ハ大
體從前ノ通リト致シマスガ、但シ田租ノ第
一期ヲ翌年一月一日カラ三十一日限リト改
メマス、第五、自作農地ノ免稅點ヲ賃貸價
格二百圓ト致シマス、第六ハ課稅標準及稅
率ノ改正ニ因ル負擔ノ激增ヲ緩和スル爲
ニ、新地租額ガ現在地租額ノ三倍八割ヲ超
ユル土地ニ付キマシテハ、三倍八割ヲ超過
セザルヤウ賃貸價格ヲ制限イタシマス、七、
賃貸價格ヲ一般的ニ改訂スルマデノ期間ニ
於ケル異動地ニ付テハ類地比準ニ依リ稅務
署長ニ於キマシテ其賃貸價格ノ設定又ハ修
正ヲ致シマス、第八開墾、地目變換其他土
地ノ異動ニ依リマシテ課稅標準ノ設定又ハ
修正ヲ爲スニ當リマシテ必要ト認ムル場合
ノ外ハ地盤ノ丈量ヲ省略スル方針ヲ以テ改
正ヲ加ヘマス、九、各種ノ年期ハ大體現行
通リト致シマス、+、年期明地、免租年期
地、開墾又ハ地目變換ノ年期等ニ對スル賃
貸價格ノ設定又ハ修正ハ年期滿了ノ年ニ於
テ之ヲ致シマス、十一、賃貸價格ノ設定又
ハ修正ヲ爲シタル土地ニ付テハ其翌年ヨリ
設定又ハ修正ノ賃貸價格ニ依リマシテ地租
ヲ徵收イタシマス、十二、改正法ハ昭和六
年度ヨリ之ヲ實行イタシマス、十三、昭和
六年度ニ限リマシテ稅率ヲ百分ノ四ト致シ
やく、十四、賃貸價格ノ第一囘ノ改訂ハ昭
和十一年四月一日ノ現在ニ依リ調査シ、昭
和十三年ニ於テ課稅標準額ノ改訂ヲ行ヒマ
ス、ソレカラ今度ハ營業收益稅ノコトヲ極
ク要領ヲ申上ゲマスト、法人ノ稅率ヲ百分
ノ三·四、現行ハ百分ノ三·六デアリマス
ガ、ソレニ個人ノ稅率ヲ百分二·六ニ改メ
Vく、現行ハ二·八デアリマス、第二、個
人ノ小營業者ニ對スル負擔ヲ緩和スル爲ニ
千圓以下ノ純益ニ付キマシテハ稅率ヲ百分
二·二ト致シマス、第三、個人ニ付キマシ
テハ昭和六年度分ヨリ改正法ヲ適用スルコ
ト、但シ昭和六年ニ於テハ千圓以下ノ純益
ニ對スル稅率ヲ百分二、五トシ、千圓ヲ超
ユル純益ニ對シマシテハ稅率ヲ二、八トシ
テ適用イタシマス、第四、法人ニ付キマシ
テハ昭和七年四月以降ニ終了スル事業年度
分ヨリ改正法ヲ適用イタシマス、砂糖消費
稅ノ輕減ニ付キマシテハ、稅率ヲ左ノ通リ
改正イタシマス、是ハ單ニ數字デゴザイマ
ズガ、一ツ私ガ試ミニ讀上ゲテ見マスガ、
第一種甲ト云フノヲ是ハ一ツ斤ガ脫ケテ居
リマスガ、百斤ト云フコトニ全部······總テ
ノコトヲ百斤ト立テテ居リマスガラ、甲ノ
百斤一圓ト云フノヲ九十錢ニ下ゲマス、第
一種ノ乙ハ二圓ノヲ一圓八十錢、第一種ノ
丙ハ二圓五十錢ノ二圓二十五錢、第二種ハ
五圓ノヲ四圓五十五錢第三種ハ七圓三十五
錢ノヲ六圓七十五錢、第四種ノ八圓三十五
錢ヲ七圓七十五錢、第五種ノ十圓ヲ九圓五
十錢、ソレカラ、糖蜜ノ方ハ第一種ノ甲ハ
三圓ノヲ二圓七十錢、乙ノ八圓三十五錢ヲ
七圓七十五錢、第二種ノ甲ハ一圓ノヲ九十
錢ソレカラ乙ハ二圓五十錢ノヲ二圓二十
五錢、糖水ハ七圓三十五錢ノヲ六圓七十五
錢ニ改メマシテ、改正法ハ昭和七年一月一日
ヨリ之ヲ施行イタシマス、織物消費稅ノ輕減
ハ課稅セザル織物ノ範圍ヲ擴張イタシマシ
テ、下級ノ麻織物及ビ下級ノ毛織物類ヲ加ヘ
マス、又綿織物ノ絹、人造絹等ヲ交織シマ
スモノヲ全重量ノ百分ノ五未滿ナル時ハ課
稅セヌコトニ改正イタシマス、是ハ此書キ
方デハチヨット要領ヲ得マセヌガ、今マデハ
百分ノ五未滿デアリマシテモ絹ガ一本デモ
或ハ人造絹ガ一本デモ這入ッテ居リマスト
課稅シテ居ッタノヲ斯樣ニ改メタノデアリ
マス、ソレカラ稅率從價百分ノ十ヲ百分ノ
九ニ全體ヲ改メマス、三ノ改正法ハ昭和六
年十二月一日カラ之ヲ施行イタシマス、其
結果ガ減稅計畫ニ依ル輕減額ガ平年度ニ於
キマシテハ、地租デ千八十一万圓、營業收
益稅デ四百六十一万五千圓、砂糖消費稅デ
六百五万九千圓、織物消費稅デ四百十三万
六千圓、合計イタシマシテ二千五百六十二
万二千圓、昭和六年度ニ於キマシテハ總額
ガ年度割ガ少カッタ爲ニ大變減ッテ居リマジ
テ、地租ニ於キマシテハ六百七十七万圓、
營業收益稅ニ於テ百二十一万四千圓、砂糖
消費稅ニ於テ二十一万七千圓、織物消費稅
ニ於テ九十一万一千圓、合計イタシマシテ
九百十一万三千圓ダケ減稅ニナル計畫デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=2
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003・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 只今大臣ヨリ
御說明ガゴザイマシタガ、是ヨリ皆樣ガ御
質疑ニナルコトト存ジテ居リマスルガ、本
案ハナカ〓〓多クゴザイマスルノデ、先ヅ
當分ノ中ハ大體ノコトニ付テ御質問ヲ願ヒ
タイト存ジテ居リマス、大體ガ濟ミマシタ
ラ順次法案ニ付テ御質問ニナッタラ宜シカ
ラウト存ジマス、如何デゴザイマスカ、ソ
レデ宜シウゴザイマセウカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=3
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004・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレデハ左樣
ニ取計ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=4
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005・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 地方稅ノ方モ關聯シテ居
リマスガ、是ハ內務大臣ハ御出ニナリマセ
ヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=5
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006・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 內務大臣ハ只
今伺ッタ所ニ依リマスト、ドウシテモ衆議院
ヲ離レラレヌサウデゴザイマシテ、此次ニ
願ヒタイト云フコトデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=6
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007・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 チヨット材料ノ要求ヲ致
シタイト思ヒマスガ、此際申上ゲテ宜シウ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=7
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008・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=8
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009・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 昨日當局ヨリ種々ノ材料
ヲ御配付ニナリマシテ誠ニ感謝イタシマス、
尙ホ其外ニ誠ニ御面倒デ恐レ入リマスガ、
本案ノ審議上參考ト致シタイ材料ヲ御送付
ヲ願ヒタイノデアリマス、第一ハ各國ニ於
ケル直接稅間接稅ノ稅額竝ニ其割合、是
各國ト申シマシテモ世界各國全部ト云フヤ
ウナ、サウ云フ無理ナコトヲ御願ヒスル趣
旨デハゴザイマセヌノデ、御調ベノ付キマ
スル歐米ノ主ナル國ミニ於ケル直接稅間接
稅ノ稅額及ビ其割合、第二ハ昭和五年度ニ
入リマシテ以後ノ各府縣別ノ縣稅市町村稅
ノ徵稅〓況、是ハ確カ衆議院デモ要求ガアッ
タサウデゴザイマスガ、未ダ御配付ニナッテ
居ラヌヤウデゴザイマスガ、府縣ノ當局者
ニ聞キマスト、此調べニ付テハ大分前ニ內
務省ニ囘答ヲシテアルト云フコトデゴザイ
マスカラ、今日デハ地方局デ御調ベガ付イ
テ居ルヤウニ承ッテ居リマスノデ、昭和五年
度ニ入リテ以後ノ各府縣別ノ縣稅市町村稅
ノ徴稅〓況、之ヲ御配付ヲ願ヒタイト存ジ
マス、ソレカラ第三ハ埼玉、新潟、福島各
縣、三重縣ノ一部、奈良佐賀兩縣ニ於ケル
各市町村ノ昭和五年度稅收入總額、戶數割
總額、地租附加稅制限內徵收額、及ビ改正
稅法ニ依ル平年度地租附加稅制限內徵收見
込額、是ハ昨日御配付ニナリマシタ書類ノ
中岡山縣、栃木縣、三重縣ノ一部ト云フヤ
ウナ御調ベヲ頂戴イタシマシテ非常ニ參考
ニ相成リマシタ、尙ホ栃木縣其他ト全ク狀
況ヲ異ニ致シテ居リマスル寧ロ反對ノ狀況
ヲ示スベシト思ハレル只今申上ゲマシタ五
縣及三重縣ノ殘部ニ付テノ御調ベヲ御配布
ヲ願ヒタウゴザイマス、ソレカラ第四ガ昭
和四年度市町村歲入歲出決算調、第五ガ昭
和五年度四月一日以降今日マデノ地方起債
許可申請額、本年二月末日地方起債許可額
調、內務省ニ於テ許可ヲ決シ、大藏省ニ送
付シタル起債申請額、ソレカラ第六ハ衆議
院ニ御提出ニナリ、又昨日御配布ニナリマ
シタ參考書類ノ中ノ地方稅關係改正法律
案、施行勅令要項、今囘ノ地方稅改正ニ伴
フ勅令案ノ全部デゴザイマスレバソレデ宜
シウゴザイマスガ、若シ之ガ全部デナケレ
バ又全部ニアラズト認メラレルヤウナ節
モゴザイマスカラ、地方稅制限法ノ施行勅
令案ノ要項、ソレカラ地方稅ニ關スル法律
施行勅令及省令案ノ要項、全部御配付ヲ願
ヒタウゴザイマス、今一ツ第七東京市內ニ
於ケル法人ノ納ムル地租額ヲ各會社別ニ、
各會社ノ最近年度ノ營業收益稅額、及ビ將
來改正地租法ニ依ル地租納稅見込額、之ダ
ケヲ御調ベノ上ニ、誠ニ御迷惑デゴザイマ
スルガ御配付ヲ願ヒタウゴザイマス、ソレ
カラ尙衆議院ノ特別委員會ニ御配付ニナリ
マシタ書類全部昨日御配付ニナッタコトト
考ヘテ居リマスルガ、漏レタモノモアルヤ
ウデゴザイマスカラ、衆議院ノ特別委員會
ニ御提出ニナリマシタ書類ハ全部御提出ヲ
願ヒタウゴザイマス、尙ホソレニ付加ヘテ
申上ゲマスノハ、義務〓育費國庫負擔金增
額一千万圓ニ依ル地方ノ負擔輕減調、是ハ
都市ハ各都市別ニ又町村ハ府縣別、稅務局
別デ宜シウゴザイマス、此中ノ都市ノ御調
ベヲマダ全部戴イテ居リマセヌヤウニ存ジ
マスガ、マダ實ハ昨日戴イタ書類ヲ全部調
査シテ居リマセヌカラ、戴イテ居ルノカモ
存ジマセヌガ、單リ此問題ノミナラズ、只今
申上ゲマシタ書類モ若シ重複シテ居リマシ
タラ御注意ヲ願ッテ御省キヲ願ッテモ差支ゴ
ザイマセヌ、殊ニ此義務〓育費國庫負擔金
增額一千万圓ニ依ル府縣輕減調、衆議院ニ
御配付ニナリマシタ參考書類ノ中若シ萬一
數字ニ間違ガゴザイマシタナラバ、御訂正
ノ上ニ御提出ヲ願ヒタイト存ジマス、御間
違ヒガゴザイマセヌケレバ其儘デ宜シウゴ
ザイマス、御間違ヒガゴザイマシテ御訂正
ニナルヤウデゴザイマシタナラバ、元ノ衆
議院ニ御提出ニナッタ書類ト、御訂正ニナッ
タ書類ト對照シテ見タイト思ヒマスノデ、
兩樣御提出ヲ願ヒタイト存ジマス、誠ニ御
迷惑デゴザイマスルガ、私ハ是ダケノ書類
ノ御提出ヲ要求イタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=9
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010・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 今日ハ實ハ外務大臣、海
軍大臣ガ御出ニナッテ居リマセヌカラ御答
ハ如何カト思ヒマスガ、大藏大臣モ閣議ニ
列セラレテ居ルノデアリマスカラ、御事情
ハ御承知ノコトト思ヒマスカラ、其點ヲ第
一ニ伺ヒタイ、新聞紙ノ傳フル所ニ依ルト
此度佛伊卽チ佛蘭西ト伊太利間ニ海軍ノ軍
縮ニ關スル條約ガ成立シタト云フノヲ承知
シマシタノデアリマス、外字新聞等ヲ見マ
シテモサウ云フコトガアリマシテ、而モ或
ル程度ノ內容マデモ出テ來ル、ソレニ依リ
マスルト佛蘭西ノ海軍ノ如キハ或ル意味ニ
於テ擴張ノヤウニモ見エルノデアリマス、
殊ニ潛水艇ノ如キハ其兵力量ガ確カ八万二
千噸トカ云フコトガ新聞ニ出テ居ル、此佛
伊條約ノ結果ト云フモノハ倫敦條約ニドウ
云フ影響ヲ及ボスモノデアルカ、又其結果
ガ日本ガ倫敦條約ニ於テ日英米ノ間ニ取結
バレタ所ノ條約トドウ云フ關聯ガアルノデ
アリマスカ、又其結果ニ依リマスレバ或ハ
我國ノ財政計畫ニモ考ヲ及ボサネバナラヌ
ノデハナイカト云フ疑ヲ持ツノデアリマ
ス、此事實ノ內容ニ付テハ、實ハ精シイコ
トヲ承知イタシテ居リマセヌケレドモ、此
問題ハ我帝國ニ於ケル海軍ノ問題ニ關シマ
シテハ極メテ重大デアル、又其結果ガ將來
云ハバ財政ノ上ニ影響ヲ及ボスコトナキヲ
保セナイト思フ、併シ是ハ私ハ事實ヲ實ハ
能ク承知シテ居ラヌ、全クノ疑ナノデアリ
やく、而シテ此佛伊條約ハ日本ニモ無論通
知ニナッテ居ルト思フノデアリマス、我日本
帝國ノ態度ハマダ極ッテ居ルカドウカマダ
承知イタシテ居リマセヌ、唯新聞ニ依ルト
今日十一日ニハ其コトガ發表ニナルト云フ
ヤウナコトガアルノデアリマスルガ、是等
ニ付テ定メシ內閣ニ於テハ其實情ハ大體ニ
於テ御分リニナッテ居ルコトト思フノデア
リマス、但シソレヲ今日御發表ガ出來ルカ
ドウカハ承知イタシマセヌガ、又直グ私ノ
此問ヒニ付テ御答ガ出來ルカドウカト云フ
コトハ分リマセヌガ、此コトニ付キマシテ
ハ一應其內容ト竝ニ此問題ニ對シテ今後帝
國政府ノ執ルベキ方針ガ御極マリニナッテ
居ルナラバ、ソレヲ此處デ御話ヲ願ヒタイ、
斯ウ思フノデアリマス、大藏大臣ガ此コト
ニ付テ御答ガ出來ヌト云フコトデアリマス
ルナラバ、外務大臣竝ニ海軍大臣ノ御出席
ヲ求メマシテ伺ヒタイト思ッテ居ルノデア
リマス、若シ大藏大臣ニシテ此大要ナリト
モ御說明下サルコトガ出來ルナラバ仕合セ
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=10
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011・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 事柄ヲ或ル程
度マデ承知イタシテ居リマスガ、外交ノ關係
デアリマスルノデアリマスカラ、私ハ是ハ
外務大臣ト海軍大臣ノ臨席ヲ求メテ答辯イ
タシマシタ方ガ宜シイト云フ考デアリマス
ガ、只今ナラバ私カラ申シテ宜シウゴザイ
マス、又他日デ宜シイト云フ御考ナラバ、
ソレニ依リマシテ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=11
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012・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 今日ト限ル譯デハナイノ
デアリマス、唯此法案ト或ル程度ニ於テ漆
聯シテ居ルモノデハナイカト云フ疑ヲ持チ
マスノデ、明日デモ宜シウゴザイマス、ドウ
ゾ外務大臣、海軍大臣ニ其意ヲ御傳へ下サ
イマシテ、玆ニ御出席ニナッテ御答辯アラン
コトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=12
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013・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 委細承知イタ
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=13
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014・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 此先程委員長カラ御述べ
ニナリマシタ通リニ、先ヅ此大局カラ見タ所
ノ大體ノ問題ニ付キマシテ、政府ノ御意嚮
ヲ伺ッテ置キタイト思フノデアリマス、詳細
ノ點ハ今述ベル時機デナイト思ッテ居リマ
スガ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=14
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015・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=15
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016・水野錬太郎
○水野錬太郞君 此度ノ減稅案ハ國稅、地
方稅ニ付テノ重要ナル改正デアルノデアリ
マス、此法案ヲ詳細ニ一應ハ拜見イタシマ
シタケレドモ、寔ニ複雜デアッテ、十分ニ領得
シ得ナイ點ガ多クアルノデアリマス、併シ
其內容ニ付テハ今之ヲ御尋ネシヤウト言フ
ノデアリマセヌ、大體論ニ付テ御伺ヲ致シ
マヽ、此所謂減稅案ト稱シテ居リマスモノ
ヲ、中央財政竝ニ地方財政ヲ通ジテ見マス
ト、同時ニ來年度ニ於ケル豫算ヲ見マスル
ト、私ハドウモ此政府ノ財政計畫ニハ何ト
ナク不安ヲ感ジテ居ルノデアリマス、將來此
財政計畫ガ能ク行ハレテ行クコトデアルヤ
否ヤ、或ハ又其間ニ缺陷ヲ生ジ、若クハ蹉跌
ヲ生ズルコトナキヤ否ヤト云フコトニ付キ
マシテ、實ハ私ハ非常ニ不安ヲ感ズルト同
時ニ、心配ヲ致シテ居ルノデアリマス、此
財界ノ不況ノ際ニ當リマシテ、大藏大臣ト
シテ來年度ノ豫算案ヲ御作成ニ相成リ、又
之ニ伴フ諸般ノ法令ヲ御出シニ相成リマシ
タ、其間ニハ寔ニ苦心ノ存スル所ガアッタ
ラウト思フノデアリマス、私ハ此點ニ於キ
マシテハ衷心ヨリ大藏大臣ニ御同情ヲ表ス
ルノデアリマス、何レノ時ニ於キマシテモ、
豫算編成ニハ困難ガアルノデアリマスガ、
殊ニ現時ノ狀態ニ於テ、總テノ方面ニ滿足
ヲ與ヘルヤウナ豫算ヲ作ル、財政計畫ヲ樹
テルト云フコトノ御困難デアルト云フコト
ハ、是ハ私モヨク諒承シテ居ルノデアリマ
ス、ソレニモ拘ラズ兎ニ角アレダケノ豫算
ヲ御作リニナリ、又ソレニ伴フ所ノ諸法案
ヲ御拵ヘニ相成ッタト云フ點ニ付キマシテ
ハ寧ロ深ク御同情イタスノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=16
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017・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) チヨット水野
サンニ何デスガ、今總理大臣ガ議場ニ見エ
ラレルサウデアリマス、若シ皆樣御出ニナ
レバ暫時中止イタシマスガ如何デスカ
〔「サウ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=17
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018・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレデハ暫時
休憩イタシマス
午後一時四十四分休憩
午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=18
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019・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 只今ヨリ開會
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=19
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020・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 私ハ此來年度ノ豫算竝ニ
政府ノ財政計畫ニ付テ不安ヲ懷クト申上ゲ
タノデアリマスガ、是ハ獨リ私一人ノ𣏌憂
デハナイト思フノデアリマス、世間一般ノ
人モ同一ナ感想ヲ持ッテ居ルノデハナイカ
ト思フノデアリマス、殊ニ本貴族院ニ於キ
マシテモ、豫算委員會ニ於キマシテモ、種
種ノ質問應答ガアッタノデアリマス、而シテ
其結果ガ未ダ豫算委員長ノ報〓ヲ受ケテ居
リマセヌカラ、ヨク分ラナイト申シテモ宜
イカモ知レナイノデアリマスガ、是ハ皆樣
モ御承知ノ如ク、豫算ノ第一分科ニ於キマ
シテ、所謂希望決議ナルモノガ附帶セラレ
テ居ッタト思フノデアリマス、併シ其希望決
議ハ恐クハ豫算總會竝ニ本會ニ於テモ認メ
ラルヽコトト相成ルノデアラウト思ヒマ
ス、其希望決議ノ中ニハ、此豫算ノ收入ノ
見積リニ付テハ過大デアルト云フ虞レナキ
能ハズ云々ト云フヤウナ言葉ガアッタカノ
如クニ承知イタシテ居ルノデアリマス、來年
度ノ豫算ヲ見マスルト云フト、今日ノ不況
時代ニ際シマシテ、確カニ收入ニ於テ缺陷
ガ生ジハシナイカ、政府ノ收入見積ガ過大
デハナイカト云フ不安ヲ懷イテ居ルノハ、
是ハ私ハ確カデアラウト思フノデアリマ
ス、政府ノ御話ニナリマシタ如ク、サウ云
フコトハナイ、サウ云フコトハ考ヘテ居ラ
ヌト云フコトデアリマシテ、果シテ政府ノ
言フガ如キ、歲入ニ缺陷ヲ生ゼズ、豫算ノ
見積リガ正當デアッタト云フコトニナリマ
スレバ、是ハ實ハ國家ノ爲ニ大慶ト存ズル
ノデアリマス、併シ是ハ昭和五年度ノ實例
モアルノデアリマスルガ、昭和五年度ニ於
キマシテモ、貴族院ハ之ヲ憂慮イタシマシ
テ、歲入見積リガ過大デアル、缺陷ヲ生ジ
ヤシナイカト云フノデ、是ニ對シテ希望條
件スラ附シタノデアリマス、然ルニ政府ハ
其憂ヒハナイト言ハレタニモ拘ラズ、豫算
決議後一ケ月足ラズシテ、收入ノ激減ヲ見
ルヤウナ情勢ニナリ、支出ニ於テ八千万圓
近クノ節減ヲ加ヘネバ相成ラヌト云フ事ニ
ナッタ先例ガアルノデアリマス、其時ノ狀況
ト今日ノ狀況ガ餘程違ッテ居ルト云フナラ
バ、兎モ角モデアリマスガ、大體ニ於テ財
界ノ情況ハ餘リ良クナッテハ居ラナイノデハ
ナイカト思フノデアリマス、是故ニ只今申
シマシタガ如キ、希望決議ヲ附スルノ止ム
ナキニ立至ッタモノデアラウト思フノデア
リマス、從來貴族院ニ於キマシテハ、歲入
ノコトニ付キマシテハ、實ハ餘リ多ク問題
ニナッタコトハナイノデアリマス、詰リ大藏
省ノ立方ガ健全デアリ、是ニ付テハ大藏省
ヲ信任スルト云フ意味デアリマシタラウ、
私モ多年此コトニ關係ヲ致シテ來マシタ
ガ、歲入ノ方面ニ付テハ餘リ多ク問題ガナ
カッタ、然ルニ昨年以來此問題ニ付テハ我ガ
貴族院ニ於テモ、之ヲ論議セネバナラヌヤ
ウニ相成ッタ、而シテ貴族院ノ論議シタ其結
果ガ、其通リニ相成ッタト云フコトデアリマ
スノデ之ニ付テハ、サウ云フコトモアルカ
ラ、今度ノ歲入見積リモ不安デハナイカト
云フ疑ヒノ起ルコトハ止ムヲ得ナイコトデ
アリマス、マア第一ニ、ソレニ付テモ不安
ガアルノデアリマスガ、尙ホ此我國ノ將來
ノ財政ニ付テ考慮イタシマスレバ、更ニ
般ノ不安ヲ感ズルノデアリマス、私ハ政府
當局ト共ニ其憂ヒヲ分チタイト思フノデア
リマス、何人ガ局ニ當リマシテモ、今日ノ
實情ニ於テ我國ノ財政ヲ立直スコトハ困難
デアルノデアリマスガ、是ハ朝ニ在ルト野
ニ在ルトヲ問ハズ、共ニ共ニ心ヲ同ジウシ
テ、我國將來ノ財政ニ付テハ堅實ナル方法
ヲ取ッテ行クコトガ、國家ノ爲ニ必要デアル
ト思フノデアリマス、ソレ故ニ私ハ大藏大
臣ノ今日ノ御立場ニ御同情ヲ表スルト共
ニ、大藏大臣ニ向ッテドウシテモ確メテ置カ
ネバナラヌコトガアルノデアリマス、誠ニ
御迷惑デアリマセウガ、何卒此點ハ御互ニ
胸襟ヲ開イテ、國家ノ爲ニ十分ニ容議ヲ盡
シタイト思フノデアリマス、デ、其結果ト
云フモノガ此減稅案ニ及ンデ來ルノデアリ
マスカラ、私ハ大體論トシテ二三ノ點ヲ御
確メ致シタイト思フノデアリマス、來年度
ノ豫算ハ兎ニ角數字ニ於テ辻褄ガ合ッテ、而
シテ又減稅案ト云フヤウナモノモ御提出ニ
相成ッタノデアリマス、併シ國家ハ唯一年ダ
ケノ財政計畫ヲ以テ滿足シテ居ル譯ニハイ
カナイノデアリマス、將來ノコトモ考ヘヲ
及ボサナケレバナラヌノデアリマス、尤モ
將來ト云ッテモ、永イ將來ハ考ヘル必要ハア
リマセヌガ、少クモ此一一一年ノコトハ御互ニ
考慮シテ行カネバナラヌト思フノデアリマ
ス、ソレデ將來ト申シマシテモ、來年度來
來年度、一二年ダケノコトヲ考ヘマスト、
私ハ此日本ノ財政ニ非常ニ行詰リヲ生ジハ
シナイカト云フコトヲ心カラ憂ヘテ居ルノ
デアリマス、ソレハ、先ヅ第一ニハ海軍ノ
軍縮、之ニ伴フ所ノ第二次計畫ト云フモノ
ガ論議サレテ居ルノデアリマス、此度倫敦
條約ノ結果ト致シマシテ、從來ノ艦艇費ト
申シマスカ、海軍ノ費用ニ付キマシテハ、
幾ラカノ餘剩ヲ見タノデアリマス、從來五
億八百万圓ト稱シテ居リマス、五億八百万
圓ト云フノハ、是ハ現金ガアルノデハナク、
唯紙ノ上ノ數字ニ於テハサウ云フコトノ
數字ガ現ハレルト云フノデアリマスガ、併
シソレハサウ云フ數字ガ現ハレルデアリマ
セウ、併シ其中デ海軍ノ方面ニ使ハネバナ
ラヌ、而シテ剩餘ガアレバ、之ヲ減稅ニ充
テル、斯ウ云フノガ此度ノ財政計畫ニナル
ノデアリマス、海軍ノ軍備ノコトニ付キマ
シテモ、倫敦條約ノ結果幾ラカノ餘裕ハ見
タノデアリマスルケレドモ、倫敦條約ノ海
軍ノ條約ダケデハ國防上足レリトシナイノ
デアリマスルカラ、更ニ其上ニ飛行機其他
ノコトニ付テ、新シク計畫ヲ立テネバナラ
ヌト云フノデ、海軍ニ於キマシテハ、倫
敦條約ノ結果ニ鑑ミマシテ、一億幾ラデ
アリマシタカ、總額ニ於テ三億七千万圓
位ノ費用ヲ要求サレタノデアリマス、併シ
是ダケノ費用モ海軍ノ方カラ申シマスレ
バ、決シテ十分ダト云フテハ居ラナイノデ
アリマス、ケレドモ是ハ流石ニ大藏大臣ハ
能ク其點ニ付キマシテ、海軍當局ト御相談
相成リ、先ヅ此程度ヲ以テ滿足シテ貰ヒタ
イト云フコトデ、其點ニ付テ海軍省トノ協
定ガ整ヒ、而シテ其殘ッタ所ノ一億三千四百
万圓デシタカ、ソレダケヲ此減稅ニ充テル
ト、斯ウ云フコトニナッテ居ル、私ハ大藏大
臣ノ御胸中ヲ付度イタシマスレバ、甚ダ御
不滿デアッタラウト思フ、此減稅額ニ付テ
ハ、モット餘計減稅シタイト云フ考ガ必ズア
ルダラウト思フノデアリマス、又世間デモ
サウ云フ風ニ期待シテ居。タ、然ルニ此度ノ
減稅額ヲ見マスルト、平年度ニ於テ二千五
百万圓、誠ニ微々タルモノデアリマス、而
モ其減ノ種目ガ僅カニ四ツニ限ラレテ居
ルト云フコトデアリマスルカラ、能ク世間
ガ之ヲ評シテ、蚊ノ淚デアルトカ、大空ヨ
リ一滴ノ水ヲ流シタモノデアルト云フヤウ
ナ批評ヲ爲スノデアリマス、此批評ヲ聞カ
レマシテ、私ハ井上大藏大臣ハ非常ニ御不
滿デアラウト思フ、井上大藏大臣トシテハ
海軍ノ方ノ費用ヲモット節約ガ出來レバ、減
稅額ヲモット增シタイト、斯ウ云フ御考ヲ
持ッテ居ッタラウト思フノデアリマス、日本
ノ國防ノ上ニ於テ倫敦條約ノ結果其モノダ
ケデアリマスレバ、今少シクハ減稅額ニ向
ケルコトガ出來タ、併ナガラ倫敦條約ノ結
果ダケデハ國防上足レリトシナイガ爲ニ、ヨ
リ以上ノ要求ガアッタノデアリマスカラ、是
ハ已ムヲ得ナイト認メテ、ソレヲ承認サレ
タト同時ニ、減稅々々ト云フコトヲ云フテ
居フタノデアリマスカラ、玆ニ一億三千四百
万圓デスカ、ソレヲ無理々々ニ出シテ、玆
ニ減稅案トシテ現ハレタコトト思フノデ
ス、ソレ故ニ私ハ大藏大臣トシテ之ヲ滿足
シテヤッテ居ル、是デ宜イト思ッテヤッテ居ル
カト云フト、私ハ決シテサウデナイト思フ、
モウ少シ何カ外ノ方法ガ出來、又他ニ財源
ガアッタナラバ、今少シ餘計ニ減稅ヲシタイ
ト云フ考ハヤマ〓〓御有リニナッタト云フ
コトヲ推測スルノデアリマスガ、併シ兎ニ
角ソレニ付テ一億三千四百万圓ノ國稅ニ付
テ減稅ハ御出シニナッタガ、是ガ果シテ此財
源ガアリヤ否ヤ、又成程來年度、再來年度
位ハドウカ知リマセヌガ、將來ニ鑑ミマシ
テ、此減稅ヲウマク運用シテ行ケルカドウ
カト云フコトハ疑ヲ持ツノデアリマス、幸ヒ
ニ今年度減稅案ガ通リマシテモ、他日一、
二年カ、四五年ノ中ニ又之ヲ何トカシテ
減稅ヲ戾シテ、增稅ヲセネバナラヌト云フ
コトニナリマスレバ、私ハ是ハ國民ニ取リ
マシテ由々シキ問題デアルト思フ、ソレデ
海軍ノ今日ノ問題ハソレデ濟ンダノデアリ
マスガ、海軍ノ軍備ノ第二次ノ計畫ト云フ
モノ、之ヲ言フテ居ルノデアリマス、是ハ
兩院ニ於テモ私ハ其問題ガ出タト思フ、又
海軍ニ於テモ私ハ表向キニハ今日尙ホ總額
等ヲ云フテ居リマセヌケレドモ、確カニ第
二次計畫ヲ立テネバナラヌト云フコト
ハ、國防上當然ノコトト思フ、但シ第二次
計畫ト云フノハ、昭和九年ニナリマスカ、
十年ニナリマスカ、デアラウトハ思ヒマス
ケレドモ、何レ此三四年ノ中ニハ、何トカ
是ハ工夫セネバナラヌト云フコトハ、是人
私ハ海軍大臣ガ其答辯デハ何ト云ハレマス
カ知レマセヌケレドモ、事實ハ其通リデア
ラウト思フ、海軍條約ハ千九百三十五年デ
終ルノデアリマスルカラ、其先ハ更ニ又三
國ノ會議ニ依ッテドウナルカ、ソレハ分リマ
セヌガ、ソレハ別ト致シマシテ、今日ノ現
狀ニ於テモ第二次計晝ト云フコトハ考ヘネ
バナラヌ、現ニ其費用ハドレ位アルカト云
フニ、一億四千万圓アルト云フ、是ハ公知
ノ事實デアル、但シ其計畫ハ今日正確ニハ
立ッテ居ラヌ、對外關係モ考ヘネバナラヌ、
日本ノ財政狀態モ考へネバナラヌ、又船ノ
造リ方モ考ヘネバナラヌノデアリマスカラ、
今日ハ明ニサウ云フ事ニ付テハ決ッテ居ラ
ナイト云フコトニ、海軍大臣ハ御答ニナッテ
居ル、私ハ是ハ御尤モノコトト思フ、併シ
何レニ致シマシテモ、今日ノ海軍ノ國防ニ
付キマシテハ、第二次計畫ヲ立テネバナラ
ヌコトハ是ハ疑ナイ事實、唯其立テ方竝ニ
其財源ヲドウスルカト云フコトハ、是ハ未
定デアリマスルケレドモ、立テネバナラヌ
コトソレ自身ハ疑ノナイ事ト思フ、ノミナ
ラズ是ハ御承知ノ如クニ第一次海軍ノ計畫
ガ完了シマシテモ、其間ノ繋ギト云フコト
ハドウシテモ作ノテ行カナケレバナラヌ、千
九百三十六年後ノ倫敦條約ノ結果ガドウナ
ルカ分ラナイニシテモ、間ノ繫ギハ作ッテ行
カナケレバナラヌコトハ疑ナイノデアリマ
スカラ、其點ニ付キマシテ金額ハドウナル
カ分リマセヌケレドモ、少クモ一億圓内外
ノ費用ガ其時ニナレバ要ルト云フコトハ、
是ハ覺悟セナケレバナラヌ、又此度ノ海軍
ノ造艦計畫ヲ見マシテモ、アレデハ十分デ
ナイ、少クモ新艦ノ維持費ト云フコトニ付
テハ考ヲ及ボサナケレバナラヌ、是ハ來年
度ノ豫算編成ニ付テハサウ云フコトハ困ル
カラ、先ハ先デ其時ニハ何トカシヤウカラ
ト云フ意味ヲ以テ、維持費ニ付テモ不十分
デアルト云フコトハ、是モ亦單リ海軍當局
ノミナラズ、何人モ認ムル所デアラウト思
フノデアリマス、ソレカラ此繼續費其他ノ
繰延等ニ付テ考ヘテ見マスルト、來年度ハ
兎ニ角辻褄ヲ合セル、併ナガラ之ガ先ニ參
リマスルト云フト、繰延ベタ其仕事ト云フ
モノハドウシテモヤッテ行カナケレバナラ
ヌ、殊ニ又此地方國體ノ事業トシテ港灣、
河川、道路ト云フモノノ計畫ヲナシ、之二
對シテ國ガ補助ヲ與ヘルコトニナッテ居リ
マスガ、其補助費モ今日ノ財政ガ苦シイガ
爲ニ、初メニ地方ノ方へ分擔サセテ居ルノ
デアリマス、今度ノ豫算ヲ通覽シテ見マス
ルト、兎ニ角地方ニ先へ金ヲ出サセテ、苦
シイ地方ノ經濟財政ノ中カラ繰替ヘテ出サ
シテ居ルガ、是ハ先ニナレバドウシテモ國
カラ二分ノ一カ三分ノ一カ何カト云フモノ
ハ、其事業ノ繼續ノ終リ迄ニハ支出シテ行
カナケレバナラヌト云フコトハ云フ迄モナ
イノデアリマス、ソレ故此先ノ事ヲ考ヘマ
スレバ、サウ云フ點ニ於テ國ノ歲出ト云フ
モノハ非常ニ殖エテ行カナケレバナラヌ、
ソレカラ今日ハ財源ガ極メテ窮乏イタシテ
居リマスルガ爲ニ、大藏大臣ガ非常ニ苦心
シテ各省ノ要求ヲ御削減ニ相成ッテ、是ハ各
省ノ方面カラ見レバ遺憾デアルガ、私ハ是
ハ已ムヲ得ナイト思フ、大藏大臣ノ御振リ
ニナッタ鉈ノ御手腕ニ對シテ、私ハ敬意ヲ表
シテ居ルノデアリマス、併ナガラ其中ニモ
ドウシテモ放シテ置ケナイモノガアル、例へ
バ例ヲ申シマスレバ幾ラモアリマス、此度
ハ追加豫算トシテ御提出ニ相成リマシタ
ガ、救護法實施ノ費用、是ハ大藏大臣ハ其
必要ハ認メテ居ラレル、併シ財源ガナイト
云フコトデ內務大臣ノ要求ヲ御拒ミニナツ
タケレドモ、救護法ノ實施ト云フコトハ今
日ハ一日モ緩ウスルコトガ出來ナイノデア
リマス、ソレ故ニ市町村長ヲ始メト致シマ
シテ各市ノ方面委員ナドハ上奏ヲシテ迄此
救護法ノ實施ヲ迫ラウト云フ聲ガ出タノデ
アリマス、而シテ實際ニハ私ハ救護法ハ實
施シテ行クコトハ今日ハ巳ムヲ得ナイト思
ヒマスガ、唯財源ナキヲ如何セムト云フコ
トデ其儘ニナッタノデアリマスガ、到頭大藏
大臣モオ負ケニナリマシテ、追加豫算トシ
テ救護法實施ノ費用ヲ出シタ、來年度ハ僅
カ七十八万圓位デアリマシテ、來年ハ僅デ
アリマス、併ナガラ將來ハドノ位增シテ行
クカ、ソレハ相當增シテ行ク、先ヅ普通ノ
平年度ニ於テ最小限度トシテ國ガ四百万圓
モ出サナケレバナルマイ、ソレカラ地方ノ
府縣市町村ニ於テモソレト同額ヲ出サナケ
レバナラヌ、而シテ是ノ年々增加スル傾向
ガアルノデアリマス、ソレハ四百万圓カ五
百万圓、六百万圓ニ年々增加シテ行カナケ
レバナラヌ、此財源モ私ハ考ヘテ置カナケ
レバナラナイコトト思フノデアリマス、ソ
レカラ更ニ本年ハ失業救濟ノ名ノ下ニ道路
修築ニ關スル所ノ資源ヲ公債ニ御取リニ
ナッタノデアリマス、是ハ一部カラハ非常ニ
非難ガアリマス、政府ノ非募債主義ガ之デ
以テ壞ハレタト云ヒマスガ、是ハ今日ノ時
ニ主義トカ行懸リト云フモノハ捨テテ貰ヒ
タイト思フノデゴザイマス、今日ハ財界ニ
於テハ非常ナ時デアルカラ、其非常ノ
時ニ處スルノニハ非常ナコトヲ考ヘナ
ケレバナラヌ、從來現政府ハ所謂非募
債主義ト云フモノヲ採ラレテ居"タノデ
アリマスガ、今日ノ財政ガドウシテモ
他ニ財源ガナイ、而シテ又ソレニ付テ
募債ヲスル、而シテ其募債ノ結果ガ必ズシ
モ相當ニ金融界、財界ニ影響ヲ來サナイト
云フナラバ、或程度ノ募債ハ已ムヲ得ナイ
コトデアリマセウ、政府モソコニ意ヲ致サ
レタノデアリマセウ、所謂失業救濟ト云フ
名ノ下ニ道路公債ト云フモノヲ御發行ニ相
成ヶタノデアリマス、是ハ已ムヲ得マスマイ
ガ、併シ此後始末ハ私ハ考ヘテ頂カナケレ
バ相成ラヌト思フノデアリマス、失業救濟
ノ名ノ下ニ道路費トシテ一一千二百万圓ヲ御
出シニナッタ、ソレデ是ハ中央ニ二千二百万
圓バカリデハナイ、地方ニモ五百万圓以上
ノ負擔ヲサセネバナラヌコトニ相成ッタノ
デアリマス、此公債ハ一年限リト云ハレテ
居リマスガ、是ハ昭和六年度ノ一年限リデ
果シテ失業者ガナクナルヤ否ヤ、此先ノ財
界、經濟界ノコトハ是ハ神ナラヌ身ノ御互
ニ豫想ハ出來マセヌケレドモ、先ヅサウ急
激ニ此財界、經濟界ガ好クナッテ來ルトハ思
ハレナイ、從ッテ失業者ト云フモノハ一年度
限リデ消エテシモウ、ナクナッテシモウ、サ
ウ云フコトハ私ハアリ得ナイト思フノデア
リマス、サウスルト失業救濟ノ名ノ下ニ道
路公債ヲ發行シテ、是ハ一年度ダケデアル
カラ先ハヤラヌナドト云フ御辯明デアリマ
スルケレドモ、是ハ來年ノ七月以降ニ於テ
新シク豫算ヲ作ル時ニ於キマシテハ、此始
末ヲドウカナサラナケレバナラヌト云フコ
トハ必ズ起ルト思ヒマス、從テ失業救濟ニ
付テ他ノ方法ガナイ以上ハ、同ジク失業救
濟ノ名ノ下ニ道路公債ニナルカ、港灣ノ公
債ニナルカ、耕地整理ノ公債ニナルカ、何
カ分リマセヌケレドモ、地方事業ヲ興シテ、
之ニ依ッテ失業者ヲ救濟セネバナラヌト云
フコトハ、今日ト同ジコトニ相成リハシナ
イカト私ハ思フノデアリマス、而シテ之ニ
付テハ相當ノ利子モ要ルシ、又後ノ始末モ
考ヘネバナラヌノデアリマスカラ、是等ノ
コトニ考ヲ及ボシマスト、私政府ガ此際
ニ唯一時限リ、唯其日ニミノコトダケデ宜
イト云フヤウナコトデ、斯カル案ヲ御提出
ニナルト云フコトハ如何デアラウカト思フ
ノデアリマス、ソレノミナラズ實際ノ事ニ
付キマシテモ、私ハ井上大臣ガ如何ニ此豫
算ノ編成ニ苦心セラレタカト云フコトガ分
ルカト思ヒマス、從來我國ノ制度トシテサ
ウ缺陷モ認メテ居ラナカッタ所ノ煙草ノ元
賣捌制度ヲ止メテ、其方法ヲ變ヘテマデ收
入ヲ得ネバナラヌト云フヤウナコトモナ
サッテ御出デニナル、又獨逸賠償金ヲ減債基
金ニ繰入レテ、其事ガ如何ニモ御手柄デアッ
タカノ如クニ御吹聽ニナッタニモ拘ラズ、直
グ今年ヨリソレヲ變更セネバナラヌト云フ
コトニナッタ、更ニ最近ノ例ヲ取ッテ申シマ
スレバ、昨日モ確カ豫算總會デ問題ニナッタ
サウデアリマスガ、財源ガナイ爲ニ司法省
ノ裁判所ノ事務停止ヲヤル、六十二箇所ノ
裁判所ノ事務停止ヲヤラネバナラヌト云フ
程財政ハ窮乏シテ居ル、故ニアチラヲ漁リ
コチラヲ考ヘテ無理矢理ニサウ云フ財政計
畫ヲ立テラレタ、今日ハ斯ウ云フ際ナンデ
アリマス、其際ニ私ハ果シテ此減稅ト云フ
モノガ行ハレルノデアラウカドウカ、又假
リニ一年二年ハ行ハレテモ亦後戾リヲスル
ト云フヤウナコトノ憂ハナイモノデアルカ
ドウカト云フコトニ付テ、心カラ心配ヲ致
シテ居ルノデアリマス、是ハ井上君モ始終
本會議等ニ於テ御話ニナラレタ通リ、今日
各國ノ狀況ハドウカト云フト、增稅ヲヤッテ
居ル、增稅ヲヤッテ、サウシテ事業ヲ興シ、
失業者ヲ救濟スルト云フヤウナコトヲヤッ
テ居ル、ソレヲ今日本デハ全ク是ダケノコ
トヲシテ減稅ヲスル、其苦心ハ買ッテ貰ハナ
ケレバナラヌ、誠ニ其通リデアリマス、私
ハ其通リデアルト思ヒマス、併シ減稅ト云
フコトヲ私ハ決シテ惡イト言フノデハナイ、
今日ノ國民負擔ノ情勢ヲ見マシテモ非常ニ
重イノデアリマスルカラ、國民負擔ヲ減ズ
ルト云フコトハ誠ニ同感デアリマス、併シ
此內容ヲ見ルト、必シモ國民負擔ヲ減少ス
ルコトニナッテ居ラナイノデアリマス、全體
ヲ通ジテハ是ダケノ數字ガアルト云フケレ
ドモ、現ニ此度地租、營業稅ノ改正竝ニ府
縣市町村ノ地方稅ノ改正ヲ致シマシテ、之
ヲ通覽シテ見マスルト、或ル所ニハ非常ナ
增稅ニナッテ居ル所モアリ、或ハ東京市ヲ初
メト致シマシテ、都市竝ニ數府縣ニ於テハ
確ニ、事實今此處ニ數字ヲ述べルヤウナコ
トハ致シマセヌガ、確ニ增稅トナッテ居ル、
而モ大都市ニ於テハ甚シキ增稅ニナッテ居
ル、私ハ之ヲ見テ實ニ心配ヲシタノデス、
今日政府デ減稅案ヲ出シテ國民ノ負擔ヲ輕
クスル、斯ウ言ッテ居ルノダカラ、是ハ減稅
ニナルノダ、減稅ニナルノダト、誰デモ思ッ
テ居ルノデアリマス、私共モ初メハサウ思ッ
テ居ッタ、是ハマア今日ノ財界ノ狀況デハ誠
ニ結構ナコトダト思ヒマシタガ、詳シク內
容ヲ見ルト必シモ減稅ニハナラナイ、ソレ
ハ減稅ニナル所モアリマス、ケレドモ或ル
所ニハ今日ノ財界ノ狀況ニ於テハ增稅ダト
思フノデアリマス、減稅ダ減稅ダト思ッテ居
ルノニ、實際ヤッテ見ルト增稅ニナッテ居ル、
斯ウナレバ國民ノ思想ノ上カラ見テモ如何
デアラウカト思フノデアリマス、ソレハ國
稅ダケ考ヘテ見テモサウデアリマス、況ヤ
之ヲ地方稅ト一〓ニ御覽ニナッタラ、地方稅
ト牽聯シテ見マスルト隨分多クノ增稅ニナ
ル所ガアル、假ニ地方稅ノ方カラ申シマス
レイ、地租ノ附加稅トカ營業稅ノ附加稅、
サウ云フモノハ數字ノ上ニ於テハ、或ル所
デハ減ッテ居リマス、併ナガラ其數字ガ其通
リニハ行カナイ、必ズ他ノ方面ニ轉化セラ
レテ、他ノ稅種目ニ向フテ增稅ヲ爲サネバナ
ラヌト云フコトガ必然ニ起ヲテ來ルト思フ
ノデアリマス、是ハ私ハ內務大臣ガ出マシ
タ時ニ大藏大臣ト御一〓ニ聽イテ貰ヒタイ
ト思フノデアリマスガ、今日ハ內務大臣モ
出ラレタシ、地方稅ノ方ノ問題ニ論究シテ
居リマセヌカラ、是ハ私ハ留保イタシテ置
キマシテ他日其點ニ付テ更ニ大體論ヲ御伺
ヒ致シタイト、斯ウ思フノデアリイスガ、
要スルニ國稅地方稅ヲ通ジテ見マスルト、
必シモ減稅デハナイ、殊ニ地方稅ノ如キハ
私ハ或意味ニ於テ增稅ニナルト思フノデス、
此法文ノ書方ハ非常ナ苦心ヲサレテ居ルヤ
ウデアリマス、明治四十一年ノ法律第三十
七號ヲ一應御讀上ゲ下サリマスレバ分リマ
スケレドモ、是ハナカナカ一度ヤ二度讀ン
デモ分ラナイ、實ニ其點ニドンナニ苦心サ
レテ居ルカト云フコトガ分ルシ、サウ云フ
コトマデシテ、今日サウ云フコトマデセネ
バナラヌカドウカ、私ハ根本カラ申シマス
レバ減稅モ宜シイ、財政ノ建直シモ宜カラ
ウト思フ、ソレニハ、モウ少シ筋ノ立ッタ國
民ヲシテ了得シ、納得セシムルヤウナ減稅
ヲ爲シ、財政計畫ヲ樹テテ戴キタイト云フ
風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレニハ丁
度今好イ時機ガ來タノデアリマス、今此昭
和六年度ノ豫算編成ニ際シテ、無理無理ヤ
ラウト思ヒマスカラ、只今申シマスヤウナ
缺點ガ出テ來タノデアリマス、然ルニ政府
モ之ヲ以テ滿足シテ居ラナイ、ソレ故ニ昭
和六年度ノ豫算ニハ行政、財政、稅政ノ整
理請査費ト云フモノヲ五万圓ヲ要求ニ相成
リマシタ、此要求額ガ多イカ少イカハ別問
題デアリマスガ、兎ニ角是デハイカヌ、モウ
少シ根本ニ亙ッタ所ノ財政ノ整理、行政ノ整
理、更ニ又ソレニ伴ウテ稅制ノ整理ヲシヤ
ウ、斯ウ云フ御考ガアル、私ハ至極結構ナ
コトト思ヒマス、寧ロ其時機ノ遲キヲ憾ン
ダノデアリマス、此內閣成立以來、直グソ
コニ御著手ニナッタナラバ、本年度ニ斯ンナ
缺陷ノアル法案ヲ出サズニ御濟ミニナッタ
モノト思フ、併シ過去ハ言フモ詮ナイコト
デスカラソレハ申シマセヌガ、少クモ今日
御氣付ニナリ、本年度ニ於テ行政、財政、
稅政ノ根本整理ヲシヤウ、斯ウ云フ御考ニ
出ラレタコトヲ、私ハ國家ノ爲ニ深ク喜ブ
ノデアリマス、旣ニサウ云フコトガアルト
云フコトデアリマスルナラバ、今日唯人氣
取ニ、唯一時ヲ糊塗スルガ爲ニ不完全デア
リ缺陷ガ多ク、而モ國民ヲシテ根本カラ滿
足セシメナイヤウナ法案ヲ御作リニナラナ
イデ、減稅ヲ何處マデモスル、國民ノ負擔
ヲ減ラス、ソレニハ斯ウ云フ方法デアルンダ
ト云フ風ノ御建前ニ至ラナイカト云フコト
ヲ、私ハ遠カラ御伺ヒ致シタイト思ッタノデ
ス、而シテ其時ニナリマスレバ、私共ハ、
必シモ斯ウ云フ不完全デナイ、モット根本的
案ヲ立テラレ得ルト私ハ考ヘテ居ル、僅カ
ニ二千五百万圓バカリノミナラズ、又稅ノ
種目ガ四種目ニ限ラズ、殊ニ地方稅ノ如キ
ハ尙ホ根本的ニ於イテ種々ノ考究スベキコ
トガアリマスルカラ、サウ云フコトヲ努メ
ラレテ、國民ヲシテ滿足セシメ、如何ニモ
尤モデアルト云フヤウナ風ニ向ハシメタイ
ト思フノデアリマス、ドウカ一年ノ辛棒デ
アリマスルカラ、私ハ國民モ其聲ヲ聽キ、
サウ云フ深切ナル考ヲ以テ、臨ンデ吳レル
ト云フコトナラバ、必シモ一年ヲ爭フモノ
デハナイト思フカ、私ハ必シモ之ヲ頭カラ
否決シテ了フトカ何トカ云フノヂヤアリマ
セヌガ、サウ云フ點ニ付テ、私ハ實ハ國家ノ
財政ノ將來ヲ非常ニ憂慮心配シテ居リマス
ノデ、實ハ打解ケテ今日、私ハ心カラノ御
話ヲシタイノデアリマスルガ、ドウゾ大藏
大臣ニ於テモ裃ヲ著ナイデ、本當ニ一ツ胸
襟ヲ開イテ御相談ヲ致シタイト、斯ウ思ヒ
マス、先ヅ是ダケノコトヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=20
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021・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今財政計畫
ノ根本ニ付テノ御注意、御意見デアリマシ
タカラ、一應申述ベテ答辯ニ代ヘタイト思
ヒマスガ、實ハ昨日豫算總會ニ於キマシテ
モ、阪谷男爵カラ昭和六年度ノ財政計畫及
ビ將來ニ亙ッテノ殆ド御同樣ノ御話ガアリ
マシタノデアリマス、其處デ其御覽下サイ
マシタ結果ニ付テノ御批評ニ付キマシテ
ハ、私ハ決シテソレニ對シテ强辯モ致シマ
セヌ、又其通リトモ考ヘマス、ナゼサウカ
ト申シマスレバ、大體ノ日本ノ財政ノ建方
ハ歲入デ參リマスト、過去五年間ト云フヤ
ウナ歲入ノ平均ヲ採リマシテ、サウシテ將
來ヲソレニ依ッテ推測スル、其上ニ財政當局
者ノ多少ノ將來ニ對スル腰ダメノ見込ヲツ
ケテ置クガ、大體ノ計畫、ソレカラ酒トカ
或ハ第三種所得稅ノ如キハ、或ル年度ニ確定
シテ了フト云フヤウナ風デ出來テ居ルノデ
アリマスガ、昨年ノ五、七月カラ昭和六年度ノ
豫算ヲ作リ、歲入ヲ見積リマス、時代ニ、
全ク左樣ナ是マデノ大藏省ノ傳統的ノ計數
等ハ何等ノ參考ニナラナイヤウニ急激ニ變
更シタ時代デアリマス、ザット多少ノ數字ノ
細カイ數字ニハ違ヒガアリマスガ、昭和五
年度ノ不成立豫算ニ對シマシテ、千万圓歲
入ヲ減シテ居リマス、ソレガ七月ニハ到底
ソレデ行カヌカラシテ、見込ヲ立テマシタ
ノハ八千万圓程減シマシタ、ソレカラソレ
ニ對シテ又今度ハ昭和六年ハ一億五千五百
万圓程減ヲテ居リマスカラ、恰度七千万圓以
上歲入ガ一ケ年ノ間ニ減ル譯ニナリマス、
是マデノヤウナ狀態ノ所謂日本ノ經濟界ガ
良クナルカ、或ハズット平準ヲ保ッテ進ンデ
居リマシタ時トハ、全ク根本ニ變フテ來タノ
デアリマシテ、非常ニ其點ニ付テハ實ハ困ッ
テ居ルノデアリマス、ソンナラ昭和六年度
ニ一億五千五百万圓ノ歲入ガ減クタカラ、扨
テソレニ應ジテ歲出ヲ減シテ堅固ナ財政ヲ
立テルコトガ出來ルカト、斯ウ申シマスト、
十四億······チョット十五億ト見マスト、七億
足ラズノ義務費ト云フモノガアリマシテ、
根本ノ財政計畫ヲ建變ヘヌケレバ一切手ノ
ツケラレナイ金デアリマス、サウシマスト、
殆ド後ノ七億ニ對シテ一億五千五百万圓ノ
割減シヲシテ、歲出ヲ減シテ行カナケレバ
ナラヌ、斯ウ云フヤウナ狀態デアルノデア
リマス、ソレナラバトックノ昔ニ左樣ニ來ル
コトハ分ッテ居ルカラ、財政計畫ヲ建直ヲシ
テ應ズベキモノガ當然デアリマスガ、昨年
ノ六月カラ財界ガ非常ニ急激ナ變化ヲシテ
行キマス中ニ立ッテ、先キノ見込ヲ立テマス
ノト同時ニ、根本ノ建變ヘヲシテ整理ヲシ
テ行カウト云フコトハ、實際ニ打明ケテ申
シマスト、殆ド出來ナカッタノデアリマス、
從ヒマシテ昭和六年度ノ豫算ノ上デ、數字デ
御覽下サリマシテモ餘裕ガナイ、卽チ餘裕
ノ財源ガ少イ、斯ウ云フコトハ最モ確カナ
事實デアルノデアリマス、千万圓ノ金ガア
リマシテ、ソレヲ追加豫算ノ財源ニ使ハナ
ケレバナラヌト云フヤウナ狀態デアリマシ
テ、確ニ左樣デアルノデアリマス、併ナガ
ラ其將來ノ計畫ニ對シマシタ話ニナリマス
ト、〓計表ハ阪谷男爵モ御話デアリマス
ガ、只今水野サンモ言ハレル通リ一種ノ參
考デハアリマスガ、大藏當局者トシテハア
レヲ非常ナ重要ナ事項トシテ〓計表ト云フ
モノヲ拵ヘテヤッテ居ルノデアリマスカラ、
數字ニ出マシタ上ニ、何ニモ僞リモ無ケレ
バ隱シモナイノデアリマス、併ナガラ餘剩
財源ガノ財政上ナイ、サウシテ只今御擧ゲ
ニナッタヤウナ將來ニ要ルベキ金ハ澤山ア
ルト云フヤウナ御議論モアリマセウ、併ナ
ガラ昭和六年度、ソレカラ將來ニ對シテノ
數字ノ上カラ行キマシタナラバ、何ニモ不
都合ガアリマセヌ、只財政ノ餘裕ガナイ、
斯ウ云フコトノ御非難ハ其通リデアリマ
ス、又過去ノ歷史デ申シマスレバ、是マデ
ハ戰爭中ハ、自然增收ト云フモノガ常ニアッ
タノデアリマス、其結果ガ使ッテモ使ヒ切レ
ズニ剩餘金ト云フモノガドッサリアリマシ
テ、ソレヲ歲入ニズットイツデモ入レテ、サ
ウシテ歲計ヲ立テタノデアリマスカラ、頗
ル樂ニ行キ、財政ノ餘裕モアリ、仕事ヲセ
ムトスレバ、ソレデ出來タノデアリマス
ガ、左樣ナ狀態ハ昭和四年度ノ決算ニ於キ
マシテ、殆ド其事態ハナクナッテシマッタノ
デアリマス、今日ニハ剩餘金ト云フモノハ
全クナイ、斯ウ云フヤウナ狀態デアリマ
ス、サウ云フコトデアリマスカラ、財政計
畫其モノノ數字ニ付テハ何ニモ不都合ハア
リマセヌガ、餘裕ガナイ、斯ウ云フコトニ
付テハモウ御話ノ通リデアラウト思ヒマ
ス、從ッテ財政行政稅制ノ整理ヲシヤウ、
斯ウ云フコトハ、是マデハ只目前ノコトガ
出來ルダケデアッテ、國家ノ將來ヲ考ヘルト
云フト、是デハ到底イカヌカラシテ、大イ
ニ一ツ行政ノ整理ヲシ、以テ財政ヲ堅固ニ
シテ稅制ノ整理ヲシテ、國民負擔ノ公正ヲ
圖ラウ、斯ウ云フコトニ決心ヲシタ所以デ
アリマス、ソレカラ只今ノ水野氏ノ擧ゲラ
レマシタ、各項目ニ付テ諄ク申上ゲルコト
モナイデハアリマセヌガ、只今海軍ノ第二
次計畫、或ハ維持費ノ點、維持費ノ點ノ如
キハ一万八千噸ニ對スル維持費ガ昭和十一
年度以前、殊ニ此七八年ニ必要デアルコト
モ能ク承知イタシテ居リマス、併ナガラ今
日ノ經濟狀態カラ割出シマスト、成程維持
費ガ是ダケ要ルト言ハレテ、財政當局者ガ
ソレニ用意ヲシテ置カヌト云フコトハ如何
ニモ不都合ノヤウニ御覽ニナリマスケレド
モ、アレ程ノ海軍ナリ陸軍デ大ナル豫算ヲ
持ッテ居ルアノ省ト致シマシテハ、是マデノ
大藏省ト海軍省トノ間デハ斯樣ナ金ガ要ル
ト、ソレナラバ海軍自ラガ節約ヲシテ、相
當之ニ應ジ得ルヂヤナイカ、ココニ無駄ガ
アル、アスコニ無駄ガアル、ココニアルカ
ラ、何ニモ國防ノ缺陷ヲ彼此レ言ハヌトモ
節約ガ出來ルカラヤッテ來イト云フコトデ、
今日マデモ維持費等ニ付テ十分ノ金ヲヤッ
テ居ルト云フコトハ、曾テ是マデノ例ニハ
ナイノデアリマス、ソレハ一方カラ言ヘバ、
不十分ト言ヘバ不十分デアリマスガ、左樣
ナコトハ差支ナク出來ルヤウニ······ソレナ
ラバ、一千九百三十六年以前ニ海軍ノ所謂
第二次計畫ニ相當ノ金ガ要ル、金ガ要リマ
セウ、幾ラ要ルカ分リマセヌガ、相當ナ金
ガ要ル、ソレニ付テ用意ヲシテナイト云フ
コトモ事實デアリマス、併ナガラ過去ノ日
本ノ、サウ一〓ニ私ハ申サレマスト、如何
ニモ財政計畫ガアヤフヤノヤウデアリマス
ガ、千九百三十七年後ニハ六千万圓ノ餘裕
財源ガ其爲ニ藏ッテアリマス、其以前ニ要ル
金ハ幾ラカ要ル、斯ウ云フコトモ必ズ實現
シテ參リマセウ、幾ラカ要リマスガ、一億
圓以上全部ノ計畫ヲ遂行イタシマシタラ
バ、水野氏ノ擧ゲラレル通リニナリマセ
ウ、併ナガラ我ミハ果シテ全部ヲヤルカ、
イツカラ實行スルカト云フコトハ不確定ナ
コトトモ考ヘテ居ル次第デゴザイマシテ、
是マデノ計畫ニ於キマシテモ、前例ヲ擧ゲ
テ何モ自分ノコトヲ彼レ此レ言フ譯デモナ
イノデアリマスガ、華盛頓會議ガ濟ム、
主力艦ノ代換建造ガ始マル、サウ云フコ
トハ殆ド的確的ニ目ノ前ニ見エテ居
リマシテモ、ソレニ對シテ十二分ニ
金ガ藏"テ置ケルカト日本ノ財政カラ考ヘ
テ見マスト、左樣ナコトハナカ/〓出來ナ
イ、ソレナラバ假ニ華盛頓會議ガ昭和六年
度カラ主力艦ノ代換建造ガ始マリ、其他ノ
海軍ノ造艦競爭デモ始マッタラドウスルカ
ト尋ネラレタラ、非常ニ不確定ナヤウデア
リマスケレドモ、其時ハ其時デ所謂其狀態
ニ應ジテ財政計畫ヲ立直スヨリ外ニナイヤ
ウナ次第デアリマシデ、左樣ニ潤澤ニ行キ
得レバ、又剩餘金ノアルヤウナ時代ナラ左
樣ナコトモ出來マシタケレドモ、今日ノヤ
ウナ狀態デハソレハ出來ヌ、出來ナクテモ
是カラ先數年後ノコトヲ考ヘテ見マスト云
フ、又過去ノ財政計畫ノ立テ方カラ見マ
スト只今仰シヤルヤウニ、不都合、不完
全、不十分、斯ウモ我ミハ實ハ考ヘテ居ラ
ナイ次第デアリマス、又財政ノ困難ナ爲ニ
種々樣ミナ窮策ガシテアル、斯ウ仰シヤラ
レテ、成程賠償公債ノ六百三十万圓ヲ一遍
減債基金ニ入レル主義ヲ立テ、政策ヲ立テ、
一昨年ニ發表シテ、僅カ昭和五年ニ之ヲ實
行シテ、サウシテ昭和六年度カラ此政策ノ
發表シタモノヲ取消サナケレバナラヌト云
フコトハ、是ハ政治家トシテハ此上モナイ
遺憾ナコトデアリマス、併ナガラ只今申シ
マス如ク、一億五千五百万圓ノ稅ガ減ッテ、
ソレヲ七億ト云フ少シ上ノ數字デ歲出ヲ減
ジテ行カウト、斯ウ云フコトヲ考ヘマシテ、
段々各部ノ行政組織ヲ見マスト、只今擧ゲ
ラレタヤウニ各所ニ無理ガ行ッテ居リマス、
各所ニ無理ガ行ノテ、節約ヲスルニハ無理ガ
行ッテ居リマスガ、斯樣ナ無理ヲ此上スルコ
トハ到底行政ノ運用ニ差支ヘルト云フコト
デ、實ニ遺憾至極デアリマス、一旦國民ニ
誓ッタモノヲ一年ダケ實行シテ廢メルト云
フヤウナコトハ非常ニ遺憾ニ思ヒマスケレ
ドモ、只今申シマスヤウナ經濟界ノ急激ナ
ル變動ニ應ズル特別ノ處置トシテハ、此行
政ノ運用ニ支障ヲ來スヤウナコトガアッテ
ハ困ルト云フコトデ、其點ハ御非難ノ通リ
ノ事情デ廢メタノデアリマス、尙ホ煙草元
賣捌ヲ廢メテサウシテ一時的ノ歲入ヲ圖〃
テ居ルト云フ御話デアリマシタガ、是ハ昨
日モ阪谷男カラノ御質問、御非難モアリマ
シタヤウデアリマスガ、此分科會ニ於キマ
シテ直接御答辯申上ゲルコトハ出來マセヌ
デシタカラ此處デ一應申上ゲテ置キマス
ガ、煙草元賣捌ノ制度ト云フモノハ阪谷男
ガ言ハレマシタ如ク、數十年間日本デ實行
サレテ來タ制度デアリマス、ソコデ何故ニ
之ヲ止メタカ、斯ウ仰セラレマスト、甚ダ細
カイ事情ノ話ニナリマスガ、年ヲ經ツニ從
ヒマシテ、此元賣捌ト云フモノハ地方ノ政
治トスッカリ結付イテシマッテ居リマシテ、
昨日阪谷男ガ擧ゲラレタヤウニ、三年每ニ
期限ガ來テ、期限ガ來タ時ニ自分ガ元賣捌
人ヲヤラシテ吳レロト云,テ、請求スル人ヲ
拒絕スル位ノコトハ如何ナ弱者デモソレハ
出來マス、併ナガラ一方ニ於テ煙草元賣捌
人ガ何時デモ地方ノ政治ノ地盤ニクッツイ
テ居ル、或ハ選擧費ヲ出ストカ、或ハソレ
ガ所謂政治家ト惡イ因緣ヲ生ジテ居ルノデ
アリマス、ソコデ我ミガ非常ナ改正ヲシタ
イ、是ハ申上ゲマスト、煙草元賣捌ヲ市町
村ニヤラセル市町村ノ歲入ガ少ナイカラ、
元賣捌ヲヤラシテ吳レット云ッテ、是ハ大分
前カラノ議論デアリマスケレドモ、市町村
ノ制度ヲ能ク〓究イタシマスト左樣ナ營利
事業ヲヤラセルト云フコトニハナラヌノデ
アリマシテ、其點モ餘程考ヘテ、寧ロ其方
ヲ當初ノ間デハ〓究シテ見マシタケレドモ、
ドウシテモソレハ出來マセヌ、從ァテ私自身
ガ丁度昨年此期限ノ來マシタ時ノ體驗カラ
申シマスト、ソレハ到底弊害ニ忍ビナイノ
デアリマス、ソレハモウ其點ニ於キマシテ、
斯ウ云フモノハ年ガ延ビレバ延ビルダケ非
常ナソコニ惡イモノガクッツイク、ソレカラ
一應是ハ止メルヨリ外仕方ナイ、斯ウ云フ
コトニナリマシタノデアリマス、成程其結
果ト致シマシテ數千万圓ノ歲入ヲ五年度ト
六年度ニ分ケテ入リマスノデアリマスガ、
是ハ決シテ左樣御推察下サルヤウニ、財源
ヲ得タイ爲ニ元賣捌制度ノ善惡邪正ヲ見ズ
ニ之フ變ヘテシマッテト云フヤウナコトハ
毛頭コザイマセヌカラ、其點ハ一ツサウ御
覽置キ願シテ置キタウゴザイマス、ソレカラ
救護法ノコトハ、今日マテ度ミ申上ゲマシ
タヤウナコトデアリマシテ、成程今御質問
ノ出テ居リマスノハ、今年度デハ七十万圓
以上使ヒマス、來年度カラ丁度之ニ對シテ
三百万圓金ガ要ル、斯ウ云フコトデ財政計
畫ノ上テ三百万圓ダケノ金ガ出ルヤウニ覺
悟ヲシテ今年救護法ヲ七十万圓以上カケテ
實行スルコトニシテ居リマス、左樣ナ風デ
アリマシテ、尙ホ繼續費ヲ除イタ臨時費等
ニ對シテノ用意ガ少ナイ、成程度〓此點ハ
御質問ガアリマシタノデアリマスガ、併ナ
ガラ少ナイノデアリマス、併シ今日ノヤウ
ニ經濟界ガ急激ニ變更シテ行キマス場合ニ
ハ私ガ申シマス如ク、行政財政ノ整理ヲシ
テ、サウシテ財政ノ基礎ヲ固クシ同時ニ此
減ッタ歲入ニ對スル國家ノ行政ノ範圍ヲ決
メテ行クヨリ外ニハナカラウ、若シ水野氏
ノ言ハレルヤウニ今日ノ如キ行政ノ組織、
或ハ補助金ノ組織、其他ノ事ヲ歲出ヲ減ス
コトハセヌト云ノコトヲ土臺ニシテ歲入ノ
方ヲ御考ヘ下サイマシタナラバ、ソレハ非
常ニアヤフヤダト云フコトモ言ヘマセウ、
併ナガラ今申上ゲル如ク今日ノ財界ノ事情
ハ非常ナ歲入ガ減シタ、ソレニ對シテ歲出ヲ
減シタ、サウシテ今度ソレヲ釣合ヲ取ッテ、
財政ノ基礎ヲ固クシテ行,テ見ヤウ、斯ウ云
フコトノ決心ヲ致シテ居リマス、財政ノ當
局者ト致シマシテハ、左程將來ニ於テ非常
ナ不堅固ナ財政計畫ト考へテ居ラヌノデア
リマス、尙ホ此減稅ノ實際ニ付テノ御話デ、
減稅案ハ減稅ト思ッテ居,タ所ガ、或ル部分
ハ增稅ニナッタ、斯ウ云フ御話デアリマス、
其通リデアリマス、是ハドウシテ斯樣ニナ
リマスカト云フト、地租法ノ改正ト減稅案
ト一〓ニシテ喰ッ付ケテ御覽下サイマスト
其通リニナリマス、併ナガラ地租法ノ改正
ハ度ミ御說明申上ル如ク、大正十五年ノ議
會ニ出シテ賃貸價格ノ調査法ヲ通過シテ、
サウシテ二年間掛ヲテ千万圓ノ金ヲ使ッテ非
常ナ廣汎ナ調査ヲシテ出來テ、昭和三年カ
ラ實行スベキモノヲ種々ノ事情ノ爲ニ今日
マデ實行シテ居ラヌノデゴザイマシテ、此
際之ヲ實行シヤウ、斯ウ云フコトニ考ヘタ
ノデアリマス、卽チ昨年ノ議會ニ地租法ダ
ケヲ出シマシタ、今度ノ議會ニハ地租法ト
減稅トクッ付ケマシタカラ左樣ニ御覽下サ
イマスガ、地租法ト減稅ヲ離シテ御考下サ
イマスト御了解下サルト思ヒマス、卽チ地
租法ノ改正ノ趣意ハ何處ニアルカト云フ
ト、數十年間地租條例ヲ改正シナイ爲ニ、
非常ナ經濟狀態カ變リ、交通狀態ガ變リ、
ソレニ負擔ノ公正ガ缺ケテ居ル、負擔ノ公
正ヲ圖ルト云フ計畫ガ、只今申上ゲマシタ
如ク、市街地ニ於キマシテハ大部分ハ宅地
デアリマスガ、宅地デ五百万圓程ノ稅ガ殖
エマス、其代リニ田畑ニ於キマシテハ丁度
千五百万圓以上減稅サレル、サウ云フヤウ
ナコトニナリマシテ、若シ減稅ヲ玆ニ
持テ參リマセヌケレバ、減稅ヲ之ニ適用ス
ル前ノコトヲ考ヘマスト、宅地ニ於テ九百万
圓ノ增稅トナリ、田畑ニ於テ九百万圓ノ減
稅ニナッテ居リマス、ソレニ減稅ヲ適用致
シマスカラ、只今申シマス如ク宅地ニ於テ
五百万圓ノ增稅デ田畑ノ方ニ於テハ千五百
万圓ノ減稅ニナックノデアリマス、成程先度
私本會議デモ申シマシタデスガ、斯樣ナ經
濟界ノ場合ニ幾ラ何ンデモ增稅ヲ行フト云
フコトハ誠ニ避ケナケレバナラヌコトデア
ル、併ナガラ又一方カラ申シマスト此地租
法ノ從來ノ行掛リ、又負擔ノ公正ヲ圖ルコ
トハ一日モ速ニスルト云フコトガ適當ダト
云フコトヲ考ヘマシテ、地租法ヲ今度實行
スルコトニ致シタノデアリマス、其結果只
今ノヤウニナリマスコトハ是ハドウモ巳ム
ヲ得ナイ事情デアッテ、此際之ヲ遲延致シマ
スコトハ、又再ビ之ヲ實行スルコトガ出來
ナクナルト云フヤウナ考ニナッテ、之ヲ實行
致シマシタ次第デアリマス、ソレナラバ左
樣ナ姑息ナモノデアルカラ、來年此昭和六
年度ニソレハ根本的ニ減稅ノ調査ヲスルナ
ラバ、其時マデ延バシタラ宜イデナイカト
云フ御話デアリマスガ、其點ハ本議會デモ
私誰方カノ質問ニ對シテ答ヘマシタガ、我
我ハ政府ノ經濟界ニ對スル處置ト致シマシ
テハ出來ルダケ減稅ヲスルコトガ最モ當
ヲ得タ處置ダト、斯ウ考ヘマスノデアリマ
ス、其外ニ色ミ經濟政策モアリマセウ、種
種樣ミナ經濟政策モアリマセウガ、ナカナ
カ弊害ノ他日ニ殘ラナイ經濟政策トシテハ
餘リ澤山モ斯樣ナ時代ニナイト考△ 5
ガ、減稅ヲスル、國民負擔ヲ輕減スルト云
フコトハ、如何ニ高ガ少クテモ、如何ニアソ
テモ一日モ早ク之ヲ決行シタイ、斯ウ云フ
考カラシテ、海軍ノ補充計畫餘剩金ヲ以テ
ヤッタ譯デアリマスガ、ソレナラバ將來ノ根
本的整理ヲスル場合ニ、今度ノ減稅計畫ガ
妨ゲヲスルカ、斯ウ言ハレマスト、私ハ決
シテ妨ゲ致サヌト考ヘルノデアリマス、卽
チ昭和六年ニ九百万圓、平年度ニ二千五百
万圓ト云ハモノハ、卽チ減稅ヲシテ仕舞ッタ
後ノ形ヲ以テ、根本的調査ヲ致シマスレバ、
ソレデ宜イノデアリマシテ、決シテ差支ハ
ナイト考ヘテ居リマス、唯御氣遣ヒニナル
所ハ玆デ減稅ヲシテモ亦再ビ增稅ニナルヤ
ウナコトガアリヤセヌカト言ハレマスガ、
ソレハ私等ハ今日ノヤウナ所謂普通ノ時代
ヲ豫想イタシマシタ今日ニ於キマシテハ左
樣ナコトガアッテハナラヌト考ヘテ居ルノ
デアリマシテ、又今日ノ財政計畫カラ言ウ
タナラバ左樣ナコトヲシテハナラヌ、又サ
ウセヌデモイケルト、斯ウ考ヘテ居ル次第
デゴザイマス、尙ホ多少粗漏デ拔ケマシタ
點ガアリマシタラ御指摘下サイマシタラ御
答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=21
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022・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 御懇切ナル御說明デ御趣
旨ハ能ク了承イタシマシタ、私ガ質問イタ
シマスル理由ノ中ニ多少自己ノ意見ヲ含マ
セタヤウニ見エタノデアリマスケレドモ、
私ハ今日マダ意見ヲ述べル時機デナイト考
ヘマスカラ、意見ヲ述ベルコトハ差控ヘル
ノデアリマス、唯例示トシテ大藏大臣ガ昭
和六年度ノ豫算ヲ編成スルノニ非常ニ苦心
ヲサレテ、種々ノ財源ヲ漁ラレタ、ソレ程
今日ノ我國ノ財源ト云フモノガ窮乏シテ居
ルノダト云フ其ノ例トシテ、獨逸賠償金ヲ
僅カ一年ニシテ元ヘ戾サストカ、煙草ノ賣
捌方法ヲ變ヘルトカ、司法省ノ裁判所六十
二ヶ所ノ事務ヲ停止スルト云フヤウナ、斯
ウ云フヤウナコトマデセネバナラヌダケ、
ソレダケ財政ガ窮乏シテ居ルノデアリマ
ス、此賠償金ヲ一般會計ニ繰入レタトカ、
煙草ノ賣捌方法ヲ變ヘタガ宜イカ惡イカト
云フコトハ、是ハ私ハ必シモ自分ノ意見ト
シテ申上ゲタノデナイノデアリマス、併シ
今ノ御話ニ依クテ大藏大臣トシテハ、非常ニ
困難ヲセラレタト云フトハ能ク分ルノデア
リマス、唯此後ノ方ノ地租法ノコトニ付テ
ノ御答ニ付テハ私必シモ御答ニ滿足シ得ラ
レヌノデアリマス、御趣旨ハ能ク分ッテ居リ
マヽ、詰リ此度地租法等ノ改正ト減稅案ガ
伴ッタカラシテ、或ル所ニハ增稅ガアルヤウ
ニ見エルケレドモ、之ヲ分離スレバ必シモ
サウ云フ意味ニモ取ラレナイデモ宜カラウ
ト云フ御趣旨デアッタ、ソレハ能ク了承シ
テ居ル、詰リ此度ノ地租法ノ改正ト云フコ
トハ明治七年ノ地租條例以來ノ改正デアリ
マスカラ、私ハ是ハ極メテ重大ナ改正ト思
フノデアリマス、從來度ミ地租ノ賦課ニ付
テハ公正ヲ失ッテ居ル、地價ヲ基礎トシタノ
デアルカラ、公正ヲ失ッテ居ルカラ、所謂地
價修正トカ、課稅標準ヲ變ヘルト云フコト
ハ度ミ出タノデアリマスル······ト云フ問題ハ
起ッタノデアリマス、其結果トシテ大正十五
年デアリマシタカ、此地價ノ地租ノ課稅標
準ヲ變ヘテ、他價ヲ止メテ賃貸價格ニシタ
ト云フコトニハ、是ハ其根本ニ付テハ議論
ガアルカモ知レマセヌガ、私ハ大體ニ於テ
是ハ巳ムヲ得ナイト思フ、ソレデアリマス
カラ是ガ實ヲ言ヘバ、モット早ク實行シ得タ
ト思ウタガ、此間ニ內閣ノ更迭トカ、政變
トカアッタガ爲ニソレガ行ハレナイデ、今度
井上大藏大臣ノ手ニ依ッテ此改正ガ出來タ
ノデアリマスカラ、其點ハ私ハ認メテ居ル、
サウスレバ減稅問題ヲ離レテ、地租課稅標
準ヲ變ヘレバ或ル所ニハ增稅ニナリ、或ル
所ニハ減稅ニナル、是ハ當然起ルノデス、
是ハ減稅ト離レテモ起ル、併シ私ハ今日ノ
實情ニ鑑ミテ、此不況時代ニ鑑ミテ假令少
シデモ、一部デアッテモ增稅ト云フコトハ私
ハ成ルベクナラバ避ケタイ、斯ウ云フ風ナ
感ジヲ持ツ、ソレデアリマスカラ先キニモ
其コトヲ言フノデアリマスルケレドモ、大
藏大臣ハソレハ減稅ト云フコトト、地租法
ノ改正ト云フコトヲ混同シテ居ルガ爲ニサ
ウ云フコトガ起ル、斯ウ云フノデアリマス
ルガ、私ハ左樣ニ思ハナイ、若シ果シテ增
稅ガ宜シクナイト云フナラバ、增稅ヲシナ
イ方法ヲ採ルコトガ宜イ、是ハ幾ラデモ出
來ル、卽チソレハ法ノ立方ニ依ッテハ增稅ヲ
避ケ得ル方法ヲ採ルコトガ出來ルノデア
ル、ト云フ譯デアリマスルカラ、私ハ今日
ノ實情ニ鑑ミテ、增稅ニナルト云フコトハ、
甚ダドウモ面白クナイト感ズルノデアリマ
ス、併シ其先キハ意見ニナリマスカラ申上
ゲマセヌ、併シソレガ出來ルカドウカ、出
來ル部分ハ無論アル、殊ニ井上君ハ今中央
財政、中央稅制ノコトバカリ御考ニナリマ
シタガ、地方稅制ト牽聯シテ御考ヲ願ヒタ
イ、是亦非常ナ不均衡デアリ、而モ增稅ガ
一層甚シクナル、或ル所ニハ減稅モアリマ
スルケレドモ、或所ニハ此附加稅ガアリマ
スルカラ、其結果ト云フモノガ地方ノ方モ
重クナッテ來マス、但シソコハ內務省ノ方デ
注意サレテ成ルベク地方ノ方ニ歲入ニ增減
ナカラシムルト云フコトハ爲スッテ御出ニ
ナルノデアリマスルケレドモ、地方稅ト國
ノ稅トヲ合セマスレバ、其點ガ殊ニ或ル增
稅ナドノ著シイ所ヲ見ルノデアリマス、併
シ是ハ私ハ內務大臣ガ見エテ、地方ノ實情
ヲ承ハリ、又自分モ其點ニ付テ質問ヲ致シ
タイト思ヒマスルカラ、ソレデ內務大臣ガ
出ラレタ場合ニ地方稅ト牽聯シテ更ニ御伺
ヒ申シタイト思フ、私ノ述べマシタ點ニ付
テハ趣旨ハ大體ニ於テ御同感デアッテ、但シ
今日ノ實情ガ之ニ副ハヌト云フヤウナ御答
デアッタノデアリマス、御答辯ニ依リマシテ
大藏大臣ノ御意向ハ了承イタシマシタ、是
ヨリ以上ハ議論ニ亙リマスカラ之ヲ避ケテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=22
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023・阪谷芳郎
○男爵飯谷芳郞君 私モチヨット簡單ニ御
尋ネ致シマス、一般會計ニ於テモ、又特別
會計ニ於テモ等シク政府ノ會計デアル、何
レノ會計ニシテモ不足ハ不足デアリマス、
米穀調節特別會計デ一億五千万圓不足シテ
居ルト云フコトヲ伺シタ、缺損ガアル、特別
會計ニ於テソレダケノ不足ガ生ジテ居ル譯
ナノデアリマス、缺損モ不足モマア同ジヤ
ウナモノデアリマスルガ、サウ云フモノハ
擲シテ置イテサウシテ一方ニ減稅案ヲ出ス
ト云フヤウナコトハ、ドウ云フ譯ニナルノ
カ、今大藏大臣ノ御話ニナッタ減稅計畫ノ參
考材料ノ總テニ括弧ヲンテ、海軍條約ノ趣
旨ニ依ル減稅額ト云フコトガ書イテアル、
減稅ガ海軍條約ノ趣旨ニ依ル減稅トカ云フ
コトハチヨット私ニハ異樣ニ思フノデスガ、
減稅ト云フモノハ無論國民ガ負擔ニ苦シム
カラ歲計ニ餘剩ガアレバ其減稅ヲスルトシ
テモ歲計ニ餘剩ガナイナラバ一方ニハ何カ
ヲ增シテ、一方ニ過重ノモノヲ減ズルト云フ
コトガ減稅デアラウト思フノデスガ、海軍
條約ノ趣旨ダカラ、他ニ大キナ穴ガ明イテ
居ッテモ、減稅スルノダト云フコトハ、ドウ
モチヨット了解ニ苦シムノデスガ、是ハドウ
云フ積リデ大藏大臣ハ減稅案ヲ出サレタノ
デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=23
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024・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 御承知ノ如ク
倫敦軍縮會議ノ招待狀ニモ書イテアリマス
如ク、世界ノ恒久ノ平和ニ貢獻スルト云フ
コトト、國民負擔ノ輕減ヲ圖ラウ、斯ウ云フ
趣意ガ謳ッテアリマス、是ハ英米ハ勿論留保
財源ガアル譯デモナシ、從ッテ其國カラ申シ
マシタラバ、海軍擴張ノ爲ニ彌ガ上ニ殖ヘ
ル國民ノ負擔ヲ殖ヤサヌヤウニシヤウト云
フ趣旨デアッタニ相違ゴザイマセヌ、併シ日
本ニハドウカト申シマスト、六ケ年間ニ五
億八百万圓ト云フ海軍ノ爲ニ當テテ置イ
テ、一方カラ言ヘバ華盛頓會議ノ主力艦代
換建造ノ年限ガ來ル、其爲ニトシテ當テテ
置イタ財源ガアル、斯ウ云フコトニナリマ
スト、若シ軍縮會議ノ招待狀ノ趣意カラ申
シマスト、是ダケ必要ナ金デアルトシテ置
イタ其金ノ使ヒ殘リガアリマシタナラバ、
國民負擔ノ輕減ニ持ッテ行クト云フコトハ、
是ハ私ハ財政當局者トシテハ當然努メナケ
レバナラヌ、他ニ幾ラ努メテモ其減稅ガ出
來ナイナラバ是モ已ムヲ得ヌノデアリマス
ガ、出來ルコトナラソレヲ試ミルコトガ本
當デアラウ、斯ウ云フ考ヲ有ッテ此計畫ヲ立
テタノデアリマス、ソレカラ只今言ハレル
米穀法ニ······此年度ノ末マデノ勘定ヲ致シ
マスト、一億五千万圓ノ損ニナッテ居リマ
ス、其損ノ來タ所以ヲ段々〓究イタシマシ
テ見ルト、途方モナイ間違,タ特別會計ヲ置
キマシテ利息······事務員ノ經費、米穀倉庫
ヲ拵ヘル何モカモ利息ノ附クヤウナ金デ
ヤッテ居リマス、勿論之ヲ公債ニ代ヘマシテ
干、利息ハ當然附クノデアリマスガ、特別
會計其モノトシテハ頗ル惡イ、成ベク早ク
此整理ヲセヌケレバナラヌ、斯ウ云フコト
ハ大分前カラノ議論デアリマスガ、私自分
ノ個人ノ議論ヲ申シマスト、米穀法ノ根本
ガ決マラヌ內ニアア云フモノヲ實ハ整理ヲ
シテ、サウシテ幾ラデモ必要ノ金ヲ出スコ
トガ宜イカ惡イカト云フコトニ付テノ議論
モ澤山アリマス、從ッテ何トカ米穀法ノ根本
ガ決マルナラバ、ソレヲ見テ、サウシタ上
デ財政ノ狀態ト照シ合シテアノ整理ヲシヤ
ウ、斯ウ云フコトデアリマシテ、衆議院ニ
於キマシテモ、此一億五千万圓ノ金ハ一般
會計ニ於テ、之ヲ引取ッテ、交付公債カ、何
カデ處分スルノハ贊成シマス、併ナガラ今
日ノ財政狀態所謂昭和六年度ノ財政狀態デ
ハ之ヲ······公債ヲ渡シテソレヲスル餘裕ガ
ナカッタ、斯ウ信ジモシ、サウ答ヘマシタ、
丁度アレヲ利拂ヒヲ減債基金其他カラシマ
スト云フト、千万圓以上ノ恒久財源ヲ要ス
ルコトニナリマスノデ、卽チ昭和六年度ニ
ハ其財政ノ餘裕ガナカッタガ、成ベク根本法
ガ決マッタラ早キ機會ニ於テ、是ハ一ツ特別
會計ヲ立テ直スト云フコトヲ考ヘテ居リマ
ス爲ニ、ソレヲサウ明言イタシテ居リマス
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=24
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025・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 サウ云フ風ナ大キナ不
足ガ、卽チ會計ノ上ニアルナラバ、其爲ニ
少シデモ餘ッタ金ヲ取ッテ置カヌト云フト、
又公債デモ發行シナケレバナラヌト云フコ
トニナル、其發行ノ方法ハ預金部ニ引受ケ
ルトカ何トカ云フコトニナルニシテモ、矢
張リ此民間ノ金融ヲ壓迫スルコトニナルノ
ダカラ、一億五千万モ穴ガ明イテ居ルナラ
バ、先ヅ其穴埋メノ方ニ減稅ニヤッテ居ルモ
ノヲ振リ向ケル、ソレデ海軍條約ノ趣旨ハ、
國民ノ負擔ヲ減ズルト云フコトハ、是ハ皆
其積リニ相違ナイ、マア海軍ノ計畫ヲ縮小
シテ吳レレバ、ソレダケハ國民ノ負擔ハ減ク
タ譯デアルケレドモ、必シモソレガ減稅ニ
ナラナケレバナラヌト云フノデハナイノ
デ、其國ノ歲計ニ餘裕ガアレバコソ初メテ
減稅ト云フコトガ起ルベキデアル、然ルニ
大藏大臣ハ一方大キナ六ガアッテ不足ノ出
ルト云フコトハ御認メニナッテ居リナガラ、
一方ノ金ヲ減シテ御仕舞ニナルト云フコト
ハドウモ少シ減稅ト云フコトガ、先刻水
野サンノ御心配ノヤウニ唯美名ニ驅ラレ
テ、サウシテ國民ガ是ハ一向減稅ニハナラ
ナカッタト云ッテ案外驚クト云フヤウニ、却ッ
テソコニ國民ノ不平ノ聲ガ大イニ起ルト云
フヤウナコトニナリハシナイカ、其減ズベキ
理由ガアッテ減ズルノハ宜イケレドモ、減ズ
ベカラザル穴ガ明イテ居フテモソレヲ減ジ
テ國民ノ負擔ガ減ッタ減っタト云ッテモ、豈ゾ
知ラン一方ニハ大變ナ借金ガ殖ヘテ居ル、
借金ヲ殖ヤシテ減稅ト云フコト、一方ハ減
稅デアル、借金ノ殖ヘルノハ、ソレハ借金
デアルト言ヘヌコトハナイケレドモ、ソレ
ハ滿足ナ減稅トハ思ヘヌヤウデアル、ドウ
云フ御解釋デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=25
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026・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 阪谷男ノ言ハ
レルヤウニ、一方ニ今後金ヲ借リテ、サウ
シテ一方ニ減稅ヲスル、斯ウ云フコトデアッ
テ、其金ヲ借リマスノニ、何カ永久ニ亙ル
計畫ヲ立テテ、サウシテ每年相當金額ノ借
入金ヲシテ、サウシテ玆ニ滅稅計畫ヲ立テ
マスナラバ、モウ決シテ減稅ニナラヌコト
ヲ自ラ白狀スル譯デアリマスケレドモ、今
ノ交付公債ト云フモノ······卽チ法律ニ依リ
マス交付公債ハ米穀特別會計ノミナラズ、
其他ニモアリマセウ、アリマセウガ、今後
ノ財政上餘裕ヲ求メテ、之ヲ段々整理シテ
行クト云フコトデ然ルベキコトトモ考ヘテ
居リマス、今日一億五千万圓ノ······何カ、
先年臺灣銀行ノ救濟トカ或ハ何トカ言ッテ、
或ハ特別ノ事件ノ爲ニ何億ト云フ公債ヲ出
シタト云フヤウナコトデハアリマセヌノ
デ、何年間カ掛ッテアレダケノ損ガ重ナリ重
ナッテ來タノデアリマシテ、今後數年間ニア
レヲ段々整理ヲシテ行ク案ヲ立テマシタラ
バ、ソレデ左樣不都合ナコトモナイノデナ
イカト考ヘマス、又少シ御考ノ點ガ違ヒマ
スヤウデスガ、海軍ノ爲ニ是ダケ金ガ仕舞ク
テアッタ、サウシテ軍縮ヲスルコトハ國民負
擔ノ輕減ヲスルノガ一ツノ主要ナ目的デア
ル、サウシテ日本ニ留保財源ガ是ダケアッ
テ、其金ガ是ダケ要ラナクナッタ、斯ウ云フ
コトデアリマスナラバ、是ハ勿論外ノ財政
ノコトモ餘程考ヘナクチヤナラヌコトハ當
然デアリマスガ、今日ノ經濟界ニ對スル處
置トシテハ、アレヲ國民負擔ノ輕減ニ持ッテ
行クノガ適當ナ處置デアラウ、斯ウ考ヘタ
ノデアリマス、只今何カ他ニ之ヲト云フヤ
ウナ御考モアリマシタガ、色ミナ議論ガ世
間ニモアリマシテ、救護法ノ如キモ此金デ
處辨シタラ宜シイヂヤナイカト云フ御議論
モアリマシタケレドモ、政府ハ國民負擔ノ
輕減ト云フコトデ驀地ニ進ンデ來タ所ガソ
コニアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=26
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027・水野錬太郎
○水野錬太郞君 私ハ減稅計畫ニ對シテ
ハ、海軍條約ニ依テ得タル金ヲ減稅ニ振向
ケルノハドウカト云フ、阪谷男爵ト同ジヤ
ウナ疑ヲ持ッタノデアリマス、海軍條約デハ
必ズシモ減稅スルコトヲ拘束サレテ居ラナ
イノダト思フノデス、唯軍縮ノ精神ト云フ
モノハ何デアルカト云フト建造競爭ヲ勝
手ニヤラナイ、ソシテ其結果トシテハ國民
ノ負擔ヲ減ズル方ガ宜イ、斯ウ云フ趣旨デ
アルト思ヒマス、是ハ必シモ此度ノ倫敦條
約ノ爲ニ起ッタコトデハナイ、現ニ「ジユネ
ーヴ」ノ國際聯盟ノ軍縮會議ニモサウ云フ
コトヲ云ッテ居ル、此度ノ倫敦條約會議ノ招
待狀ニモサウ云フ趣旨ハアッタト思ヒマス、
條約ノ「プレアンブル」カ何處カニサウ云フ
コトヲ書イテアリマスガ、是ハ必シモ條約ニ
依ッテ考ヘネバナラナイコトデハナイ、國ノ
一國ノ財政狀態ヲ鑑ミテ減稅スルヨリハ、
ヨリ以上ノ必要ナコトガアル、而シテ國民
ノ利益デアルト云フコトデアレバ、必シモ
減稅セヌデ其減稅ノ金ヲ以テ、他ノ國民ノ
利益ニナル仕事ヲヤッテモ、一向差支ナイ、
現ニ英吉利デモ亞米利加デモ必シモ減稅ヲ
ヤッテヤシナイ、唯日本デハ海軍ノ建造費ニ
五億八百万圓ト云フ金ヲ殘シテ置イタ、殘
シテ置イタト云ッチヤ惡イカモ知ラヌガ、紙
ノ上デサウ云フ數字ガアッタ、偶ミサウ云フ
コトガアッタモノデアルカラ、其五億八百万
圓ト云フ金ヲ兩方ニ振向ケヤウト、斯ウ云
フコトカラ出テ來タノデアラウト思フノデ
スカラ、ソレハ振向ケルコトモアルカモ知
レヌノデス、他ニ內政上必要ナ仕事モナク
其國民ノ負擔ヲ輕減スルト云フ風ニ仕向ケ
ルコトガ必要ナラバ、ソレヲヤッテモ決シテ
惡イト云フノデハナイケレドモ、是ガ必シモ
海軍條約ニ依ッテ拘束サレタ結果デアルト、
云ハヌデモ宜イノヂヤナイデセウカ、ソコ
ラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=27
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028・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 條約ニ依テ決
シテ拘束サレタ所ガアルノデモ何デモナイ
ノデアリマス、御說ノ如ク軍縮會議ノ目的
ガ今ノ國民負擔ノ輕減ニアルト云フコトデ
アリマシテ、英米ニハ留保財源ガ無シ、ソ
レデ減稅モシテ居ラヌ、ノミナラズ英吉利
ノ如キハ、昨年モ今年モ亦少ナカラザル增
稅ヲ致シマス、併シ日本ト致シマシテハ留
保財源ガアル、ソレデ是デ御議論モアルノ
デアリマスケレドモ、先ヅ一通リ是デ海軍
ノ整備計畫ハ是デ宜シイトシテ、ソレニ三
億七千四百万圓ノ金ヲ使用シテ、アトニ六
箇年ヲ縱ニ合計シテ居テ、一億三千四百万
圓ノ金ガ殘ッタ、斯ウ云フナラバ他ニ支障ガ
ナケレバ、他ニ財政狀態ガ之ヲ許スナラバ、
私ハ國民トシテハ是デ以テ減稅ヲシロト云
フ考ガ、當然ソコニ來ルノヂヤナイカ、我
我モサウ考ヘテ、此金ハ兎ニ角減稅ヲスベ
キモノデアル、斯ウ考ヘテ計畫ヲ立ッタノ
デアリマス、五億八百万圓ト云フ金ガ留保
シテアルモノナラバ、又ズット減稅額モ多カ
ラウト思ヒマスガ、先刻御答ヘ申シマシタ
ヤウニ、華盛頓會議ノ條項ニ依テ、昭和六
年度カラ主力艦ノ代換建造トハ云ヒナガラ
モ、ソレニ對スル十分ノ金モ從來ノ如クナ
カッタ、從來モナイノデアリマスガ、稍〓不
十分デアッタ爲ニ、減稅額モ少ナカッタト云
フ結果デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=28
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029・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 私ハ少シ問題ガ稅法カ
ラ外レルカモ知レマセヌガ、チヨット矢張リ
收入ニ關シマスルカラ御尋ネシタイノデア
リマスガ、此米穀調節法ノ特別會計ナリ、
其他ノ特別會計ト云フモノハ、大藏大臣ガ
皆連署シテ居ラレルヤウニ考ヘマスガ、詰
リ特別會計ト雖モ一般會計若クハソレ以上
ノ注意ヲ拂ハレル會計デアラウト思フ、隨
分米穀法ノ運用ノ仕方ト云フモノハドウモ
殆ド常識ヲ外レテ居リハセヌカト思フヤウ
ニ、法其モノモ惡イノデセウケレドモ、米
ヲ高ク買"テ、サウシテ腐ラス、蟲ガ著ク、到
底マア殆ド常識デ考ヘラレヌ取扱ヒノヤウ
ニ私ハ思ヒマスガ、アヽ云フ場合ニハ會計
檢査院バカリヂヤナイ、大藏大臣モ何トカ
モウ少シ小言ナリ監督ナリハ出來ヌモノデ
アリマセウカ、又今一ツノ例ヲ擧ゲテ見レ
バ製鐵所特別會計デ、先日鐵ヲ投賣リサレ
テ居ル、一噸七十圓位ノ物ヲ四十圓位ニ投
賣リヲセラレテ居ル、ソレガ爲ニ民間ノ製
鐵業者ノ間ニ非常ナ騷動ヲ起シテ、民間ハ
苦シム、政府ハ幾ラ損ヲ爲サッタカ知ラヌ
ガ、ドウシテモ五百万圓以上ダラウト思フ、
ソレデマア政府ガ損ヲスルバカリデナク、
民間ノ製鐵業者ガ迷惑ヲスル、到頭ソレガ
爲ニ又ヤカマシクナッテ、製鐵業者聯合會ト
カ何トカ云フモノガ起ッテ、是モ商工省ノ特
別會計デハアルケレドモ、大藏大臣ナリ會
計檢査院ガモウ少シ監督ガ出來ルノヂヤ
ナイデスカ、ドウモ米デハ一億五千万圓モ損
ヲスル、製鐵所モ景氣ノ好イ時ハ大層儲カッ
タノデアリマスケレドモ、景氣ノ惡イ時ニ
ナレバ、投賣ヲシテ五百万圓モ損ヲスル、
サウシテ今貴族院ノ方ニ案ガ〓ッテ居ルノ
デスカ、一千万圓借入金ノ範圍ヲ殖ヤスト
カト云フ案ガ囘ッテ居ル、サウシテ、又損シ
テ借入金ヲスル、之デハ際限ガナイヤウニ
思ヒマスガ、何ノ爲ノ特別會計カ、何ノ爲
ニ會計檢査院ト云フモノガ設ケテアルノ
カ、殆ド疑フノデス、アヽ云フコトニ對シ
テハ、能ク小言ヲ仰ッシヤッタノカ、小言ト
云フコトモアリマスマイガ、ソレヲ大藏大
臣ガ監督權ヲ以テ相談ニ與カッテ居ラレタ
ノカドウデアリマスカ、一方ニ成ベク我〓
モ減稅シタイノデアリマスガ、ケレドモ一
方ニ甚ダ無駄ナ金ヲ使ッテ居ラレル、又無駄
ニ歲入ヲ損ヲシテ居ラレルヤウナコトハ、
餘リ斯ウ賢明ナラザル仕方ノヤウニ思ハレ
ルノデアリマスガ、チヨット御尋ネシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=29
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030・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 今度米穀法
ト、米穀需給調節特別會計法ノ改正案ヲ提
出イタシテ、貴族院ニ廻ッテ居リマスガ、過
去ノ成蹟ガ只今阪谷男ノ云ハレル通リニ、
餘リ好マシクナイモノデアリマスカラ、今
度ハ率勢米價ト云フ大層ムヅカシイ算盤デ
アリマスガ、兎ニ角率勢米價ヲ出シテ國民
ノ生計費ト、生產費ヲ調査イタシマシテ、
サウシテ上ト下ノ最高最低ノ極度ヲ決メ
テハサウシテ率勢米價ヲ應用シテ米ヲ買ハ
ウ、卽チ米穀法ノ出動イタシマス時機ヲ、
之マデノ人爲的ナ腰ダメニ非ズシテ、數字
ニ根據ノアルモノニシヤウト云フコトノ改
正デアリマシテ、ソレガ改正サレマシタナ
ラバ、之マデノヤウニ需給調節特別會計ニ
アンナ大キナ損ヲカケルト云フコトモナカ
ラウト思ッテ居リマス、ソレガ決マリマセヌ
間ハ、生產費モ分ラナイガ何ニモ分ラヌ、
唯ダ米ガ安クナッタ、買ハウ、斯ウ云フコト
デ、殆ド標準ナシニ行キマス爲ニ、非常ナ
損ヲ來スト云フヤウナコトデアリマシテ、
長イ間ノ習慣ガ左樣ナ狀態ニナッテ居リマ
シテ、モウ弊害ノアル所ハ十分認メテ居ル
ノデアリマス、併シ今度ノ改正案ガ行ハレ
マスレバ、是マデノヤウナコトハ斷ジテナ
イト、斯ウ云フコトヲ確信シテ居ルノデゴ
ザイマス、只今製鐵所ノ御話ガアリマシタ
ノデスガ、御承知ノ如ク、千万圓ノ借入金
ヲ增ス案モ貴族院ニ提出イタシテアリマ
ス、只今ノ投賣ヲヤリマシタコトハ、別
私ハ相談ニ預"テ居ッテドウト云フコトハア
リマセヌ、後デ話ヲ聽イテ、只今阪谷男爵
ノ言ハレルヤウナ感ジヲ持ッテ居ル次第デ
アリマシテ、機會ガアリマシタナラバ、當
局者ガ此處へ參リマシテ、詳細ニ說明ヲ致
サセルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=30
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031・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ノ御尋スルノハ特
別會計ト雖モ、大藏大臣ガサウ云フ餘リ非
常識ナ場合ニハ監督ガ出來ルノデハ、ナイ
カト思フノデスガ、其マア決シテ農林省ヤ
商工省ノ役人ガ非常識ト云フ譯デハナイケ
レドモ、ソレガ爲ニ大藏大臣ハ是ハ連署シ
テ居ラレルノデハナイカ、會計檢査院モソ
レガ爲ニアルノデハナイカト思フガ、余ハ
ドウモヒドイヤウニ思フノデ、念ノ爲ニ御伺
シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=31
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032・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 今マデノ大藏
省ト當局者トノ間ニハ豫算ヲ定メマス時
ハ、私ハモウ何ト申シマスカ、最近ノ二三
年間私ガ就任イタシマシテカラ蛇蝎ノ如ク
嫌ハレル程ヤカマシク根本ニ遡ッテ調査イ
タシマスガ、偖テ豫算ガ出來マスト其豫
算ノ範圍ノ執行ニ付キマシテハ、大體是マ
デノ狀態ヲ申シマスト、目ニ餘ルヤウナコ
トガアレバ兎モ角モ、サウデナイ以上ハ、
當局大臣ガ專行イタシマスコトハ習慣ニナッ
テ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=32
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033・湯地幸平
○湯地幸平君 大藏大臣ニ伺ヒマスガ、此
倫敦條約ト減稅トノ關係ニ付テ、質問應答
ヲ承ッテ居リマスト、斯ウ云フ風ニ解釋シテ
宜シイデスカ、倫敦條約デ製艦競爭ヲ避ケ
ルト云フ事柄ハ、是ハモウ當然國民負擔ノ
輕減ニナル、製艦ヲスル費用ハ國民ガ出ス
ノデスカラ趣意ハモウ減稅ニナルト云フコ
トハ製艦競爭ヲ止メルト云フコトデ其中ニ
含ンデ居ルノ譯デスネ、ソレガ倫敦條約ノ
趣旨デアル、併シ其趣旨ヲ實行スルトセヌ
トハ此國情ニ依テ違フ譯デアル、一方ニハ
先刻御話ノヤウナ起債マデモシテ利息ヲ拂
フ、此結果國民ノ負擔ヲ增スト云フコトモ
アラウ、又一方ニ於テハ國ノ收入ガ非常ニ
減ジテ居ッテ困ルト云フヤウナ國情ハ、其趣
旨ヲ必ズシモ實行スル必要ハナイ、實行ス
ルトセヌトハ此國情ノ如何ニ依ル、又其減
稅ヲ實行スルトシテモ、其條約ヲシタ年カ
其翌年ニ必ズ之ヲシナクチヤナラヌコトハ
ナイ、何レ倫敦條約ト云フモノハ永年ニ亙ッ
テ效力ヲ持ツ、ソコデ製艦競爭ヲ止メルコ
トニナレバ、五年ノ後ナリ、三年ノ後ナリ
ニ、其恩澤ヲ受クル譯ニナリマス、之ヲ昭
和六年度ニ必ズ減稅シナケレバナラヌ、七
年度ニ必ズ減稅シナケレバナラヌト云フコ
トハナイ、結局倫敦條約ガ出來テ居リマス
レバ、製艦競爭ヲ止メレバ恩澤ヲ受クル時
期ガ來ル、ソレデスカラ減稅ト云フ事柄ヲ
實施スルト云フコトハ、其國情ノ如何ト、
其國ノ又其年ノ狀況デ收入ノ如何ト、之ニ
依テ自由ニ考ヘテ宜イコトデアルト、斯ウ
私ハ解釋イタシマシタガ、ソレニ間違ヒゴ
ザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=33
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034・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 少シ湯地君ノ
考ト日本ノ事情ノ違ヒマス所ハ、五億八
百万圓ト云フ、六ヶ年ニ割當テタ、海軍ノ
爲ニ仕舞ッテナッタ金ガアリマス、ソコデ外
國トモ違ヒ、又誰モ考ガソコガ違フ所デア
ラウト思ヒマス、併シ假リニ斯ウナリマシ
タナラバ、サウナラザルヲ得ヌノデアリマ
ス、昭和六年度七年度ニハ海軍ガ巨額ナ金
ヲ要スル、從ッテ留保財源ガソコデハナイ、
ソレヂヤカラ昭和六年七年ハ減稅ガ出來ヌ
ガ、昭和八年カラ減稅ヲシタラ宜イヂヤナ
イカ、ソレヨリ外ニニハ實行ガ出來ヌト云
フヤウナ場合モアリ得ルノデ、ソレナラバ
湯地君ノ言ハレルヤウニ、ソレデ宜カラウ
ト思フ、併シナガラ留保財源ガココニアッテ、
海軍ノ整備計畫ガ是ホド要ル、殘リガ是ダ
ケ殘ッタ、斯ウ云ッタ場合ニ、其金ヲドウス
ルカト云フコトヲ考ヘマスト、財政計畫ガ他
ニエライ缺陷ガナシニ減稅か出來得ルモノ
ナラバ、私ハ減稅ハ當然スベキモノト、斯
ウ考ヘタノデアリマス、若シ留保財源ガナ
カッタナラバ······或ハ同ジク留保財源ガ
アッテモ、海軍ガ最初ノ中ニ從來ノ造艦計畫
ノ殘リノ金、殘リノ仕事ガナシニ昭和六年
度カラ非常ナ巨額ナモノヲ拵ヘヌケレバ、
到底相手方ノ國ニ對シテ位置ガ保テヌト、
斯ウ云フナラバ是モ巳ムヲ得ナイ、併シ整
備計畫ガ年度割ガズット出來テ、其年度割ノ
如何ニ依ッテ減稅計畫ガ出來ルナラバ、私ハ
ソレハ減稅スルコトガ當然ノ理ダト考ヘタ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=34
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035・湯地幸平
○湯地幸平君 五億八百万圓ト云フ所ノ此
保留財源ハ現ニ實在シテ居ルト云フ今ノ御
話ニナッテ來ルト、是ハ其內ヲ海軍ニ三億
使ッテ、二億圓殘ッタ、ソレダカラ是ダケハ減
稅ヲシテ民力ヲ涵養シタガ、宜イヂヤナイ
カト云フコトニナル、ソレハ紙ノ上ダケデ
實際ハ金ハ何モナイノデアル、斯ウ云フ御
話ニナルト、チヨット今ノ大藏大臣ノ御話ダ
ケデハ少シ足ラヌヤウニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=35
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036・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) ソコガ湯地サ
ンニ申上ゲマスガ、海軍ニ軍縮條約ガ出來
ク、昭和六年度デハ私ガ言フ如ク、一億五
千五百万圓ノ稅ガ減ッテ······、其時ニ五億八
百万圓ノ留保財源ヲ如何ニ見ルカト云フコ
トニ依クテ、今ノ御質問ハ決マル、私ハ此五
億八百万圓ノ留保財源ハ、是ハ手ヲ著ケナ
イ、是ハマア財政計畫ノ中ニ入レテ置ク、
外ノ歲出デ一億五千五百万圓ノ稅ヲ減サ
ウ、斯ウ云フコトデ進ンデ行キマシテ、
億五千五百万圓ノ稅ノ減ルニ付テ、他ノ各
省ノ歲出ヲ減シ得タ時ハ、五億八百万圓ハ
財政計畫ノ中カラ行キマスレバ、現金ノア
ルノトハ違ヒマスケレドモ他ノ繼續費·····
他ノ省ニ於テ充テマシタ繼續費ト同ジコト
ニナリマス、卽チ海軍ガ三億七千四百万圓
ノ計畫ヲ六ヶ年ノ期間デチヤント持ッテ居
ル、今日ハ海軍トシテハ、ソレダケノ金ハ
使ヘルモノトシテ仕事ノ計畫ヲシテ行ク、
而シテ一億三千四百万圓、是ダケ的確ニ殘
ルトシテ減稅ヲシテ行ッテ宜イノデアル、ソ
レハ財政計畫ハ將來ニ於テ、現金ガアルノ
ト違ッテ、狂フコトハアル、斯ウ云フコトヲ
仰シヤラレマスガ、狂フ時ハソレハマア特
別ナ事情デ今日昭和六年度カラ將來卽チ昭
和十一年度マデノ計畫ヲ見マストキハ、私
ノ見タヤウニ見ナケレバ、ソレハ問題ハ出
來マセヌ、御手許ニ差出シテ審議ヲ願ヲテ御
協贊ヲ仰グ時ハ、卽チ此計畫通リニ實行シ
マスト云フ立前デナケレバ御協賛ハ仰ギ得
ナイノデアリマスルカラ、ソレガ餘程ソコ
ニ違ッテ來テ居ルト我々ハ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=36
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037・湯地幸平
○湯地幸平君 只今大藏大臣ノ御考ニナッ
テ居ルヤウナ立テ方モアリマセウ、ソレハ
私ハ違タ立テ方ヲシタト云ッテモ、何モ倫
敦條約ノ趣旨ニ反スル結果ニハナラヌト思
フ、併ナガラ今御答辯ノ如ク御考ヘニナル
ノモ又一ツノ見方デアル、假ニ其見方ガ宜
イト致シマシテモ、一體減稅ト云フ事柄ハ
何ノ爲デアルカト云フト負擔ヲ輕クスル、
負擔ヲ輕クスルノハ何ノ爲カト云フト所謂
國民生活ノ安定、尙ホ煎ジ詰メレバ國民ノ
共存共榮ト云フコトデスカラ、此前カラ此
救護法ガ問題ニナリマシタ、此救護法ニナ
ゼ充テナイカ、國民ノ負擔ヲ輕クスルヨリ
モ飢餓ニ迫ッテ居ル者ヲ救フト云フ事柄ハ、
先刻大藏大臣ノ言ハレル趣意カラ云フト此
方ガ急ノヤウニ思フ、又減稅ト云フ事柄ハ
飢餓ニ迫ル中間ノソレニ行ク途筋ノ人ヲ少
シ負擔ヲ輕クスルト云フノデアルガ、一ガ
ニ於テ食へナイ者ヲ救フ、サウ云フコトニ
ナル、其御趣旨ヲ貫イテ行ケバ先ヅ減稅ヨ
リ先ニ救護費ニ充テルト云フコトガ理論上
至當ノヤウニ思フ、之ニ付テノ御考ハ如何
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=37
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038・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 本會議ニ於テ
モ湯池君ノ御議論ハサウデアリマシタガ、
我々ハ少シ窮窟ニ解釋イタシタカ知レマセ
ヌガ、國民負擔ノ輕減ト云フコトヲ窮窟ニ
考ヘテ、減稅ガ宜シイ、減稅スベキ成行デ
アル、斯ウ考ヘマスノト同時ニ、斯ウ云フ
場合ニ湯地君ノ言ハレルヤウニ、之ヲ何處
ニデモ使フガ宜シイ、政府當局者ノ意見ニ
依ッテ救護法ニモ使ヒ、其他ノ生產事業ニモ
使フト云フヤウナ濫ニ流レルコトヲ致シマ
スヨリモ、我々ハ是ハ國民ニ公約スル上カ
ラ言ッテ、財政當局者モ此處ニ行クノガ本當
ノ途、自ラモ之ニ依ッテ拘束サレテ行クト
云フコトデ、我々ハアナタト違ヒマシテ、
少シ窮窟ト云ヒマスカ、サウ云フ風ニ考ヘ
テ來タノデアリマス、成程御說ノヤウニソ
レヨリ以上ニ必要ナルモノガアッタラ使ッテ
モ宜イヂヤナイカト云フ議論モ立ツケレド
モ、我々ハサウ廣クハアレヲ考ヘマセヌデ
ゴザイマシダ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=38
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039・湯地幸平
○湯地幸平君 私ノ考ヘテ居ルノハ、減稅
ト云フコトバカリデナク、外ニ濫ニ使ッテ宜
イヂヤナイカト云フ考ハ無イノデアリマス、
減稅ト云ノモノハ結局國民ノ負擔ヲ輕ク
シ、國民ノ生活ヲ安定セシメ、共存共榮ノ
目的ヲ達スル、煎ズル所ソコニアルノデア
リマス、積極的產業ニ使フ、或ハ〓育ニ使
フトカ云フノトハチヨット違ヒマス、飢餓ニ
迫ッテ居ル所ノ同胞二十万以上ノ人間ガア
ルナラバ、サウ云フ者ヲ幾分減稅ヲ止メテ
此方ニ使ハレテモ減稅ト同ジ趣意ニナリハ
シナイカ、減稅ノ終極トシテ居ル目的ト合
致シハシナイカ、外ノモノニ濫ニ使フト云
フ意味デハナイ、今大藏大臣ハ產業資金ニ
使フトカ、或ハ救護費ニ使フトカ云フ風ニ
濫ニ使フコトハシナイ方ガ宜イト云フ御答
辯デアリマシタガ、ソレハ同感デアリマス
ガ、尤モ減稅ヲ······段々此趣意ヲ推シ擴メ
テ行クト、結局ノ所ハ人間ノ生活ヲ維持サ
シテ行クト云フコトニ落チルノデアリマ
ス、其點ハ救護費ダケハ減稅ノ趣意ト同ジ
コトニナリハシナイカ、是ダケノコトヲ申
上ゲテ置キマス、是カラ先ハ又色ミ御考ノ
範圍、廣狹ガ違ッテ來ルカラ、ソルハ申上ゲ
マセヌ、尙ホ他ノ機會ニモウ少シ詳シク申
上ゲル機會ガアラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=39
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040・大橋新太郎
○大橋新太郞君 段々色ミ御質問ガアリマ
スガ、私ノ質問シマスフハ、今マデノ御話
ト少シ筋ガ違ヒマス、段々御質問ヲ本會議
竝ニ委員會デ承リマシテモ、減稅スルト云
フコトモ、外ニマダ中ミ海軍ノ問題ト云フ
コトモ、又阪谷男爵ノ仰シヤルヤウニ米穀
法ノ缺陷モアルノニ、減稅ヲスルト云フコ
トヨリマダ先ニスベキコトガアリハシナイ
カト云フヤウナ御質問ガ多イト思フ、私
減稅ヲ大イニヤッテ貰ヒタイト云フ意見ヲ
持ッテ居ル、ナゼヤッテ貰ヒタイト云フ意見
ヲ持チマスカト云ヒマスト、今日ノ經濟ノ
行詰リ、色ミ社會政策ノ上ニ於テ實行シナ
ケレバナラヌト云フヤウナコトヲ生ジマシ
タノハ要スルニ歐羅巴大戰ノ結果ガ今日
ノヤウナ成行キヲナシ、歐羅巴大戰ガ始マッ
タ大正三年、四年五年頃ノ日本ノ國費ハ通
常經濟竝ニ輸入品マデ合セマシテモ國ノ經
濟ガ五億乃至六億圓、地方經濟ハ全部合セ
テ府縣稅町村稅マデ合セテ三億何千万圓ト
云フ數字デアリマシテ、兩方合セテモ十億
万圓位ノ地方稅竝ニ國稅ヲ合セテモ國民ノ
負擔ガ十億圓デ濟ンダモノガ、今日ハ國稅
ト地方稅ヲ合セレバ三十四五億ノ數字ニ
上ッテ居ルノデアリマス、民間ノ經濟ハ米ノ
値段ト云ヒ又生絲ノ値段ト云ヒ一般ノ商工
業者ノ事情モ矢張リ歐羅巴大戰ノ始マッタ
十億前後ノ財政ノ狀態ト今ハ殆ド違ハヌ程
度マデニ民間ノ經濟界ハナッテ居ルノデア
リマス、然ルニ國ノ財政竝ニ地方稅ハ三十
幾億ノ多額ニ上ッテ居ル、今度減稅ナサラヌ
ト云フヨリハ、ナサルノハ誠ニ結構ナ話
デ、小ナリト雖モ二千万圓デモ千万圓デモ
減稅ナサル御心掛ケニ對シテハ、我〓國民
ハ感謝ノ意ヲ表シマスガ、餘リニ增稅ノ時
ニハ非常ニ勇敢ナ大藏省ガ、國民負擔ノ輕
減ヲ計ラナケレバナラヌ時ニハ餘リニ貧弱
ナ······此間蚊ノ淚トカ云フ話ガアッタノデ
アリマスガ、蚊ノ淚カ何ノ淚カ知リマセ
ヌ、一千万圓トカ二千万圓トカ云フヤウナ
數デ、國民ノ經濟能力ト云フモノニ適合ス
ル一體數額デアリマセウカ、經濟界ハ大分
變動ガ來テ居ルノデスガ、上ボス時ダケハ
ドン〓〓上ボシテ、減ラス時ハ甚ダ勇氣ノ
ナイ御減ジ方ノヤウニ考ヘルノデアリマス
ガ、而モ御減ラシナサルノハ······何カ御質
問ガ大分色ミノ方面ニアリマスガ、先年、
何年デスカ、豫算委員會ノアッタ時ニ、時ノ
海軍大臣ニ伺フト、華盛頓條約ガナクテ八
八艦隊ヲ殘ラズ遂行スレバ、海軍省ダケデ
モ一箇年ノ經費ハ十四億五千万圓ニナルト
云フヤウナ答辯ヲ得タヤウナ記憶ガアリマ
ス、ソレハ過去ッタコトデアリマスガ、兎ニ
角海軍省ダケデモ十四億五千万圓ノ計畫ヲ
スルト云フヤウナコトヲ認メチ財政計畫ヲ
御立テナスッタ時代ハ、マルッキリ歐羅巴大
戰ノ時ノ有樣カラ其無謀ノ計畫ヲシ、無謀
ノ豫算モ出來タカモ知レヌガ、今日歐羅巴
大戰ガ終ヘ、一般ノ經濟狀態モ逆轉シテ來
テ、歐羅巴大戰ノ前ニ戾リツヽアルヤウナ
今日ニ於テ、減稅ガ一ケ年二千万圓、而モ
都市ノ地租ハ減稅デナクテ、先キ御話ニ
ナッタヤウニ增稅ニナリハシナイカト云フ
ヤウナ、詳シク調ベテ見マセヌガ、餘リ國
民ノ收入ト國家ノ政治費ノ割合ガ權衡ヲ得
テ居ナイヤウナ氣ガシマスガ、大藏大臣ハ
此點ニ付テ、斯ウ云フ今ノヤウナ負擔ヲサ
シテ、國民經濟ハ差支ナイト云フ御考デア
リマスカ、一應御意見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=40
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041・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 大橋氏ノ言ハ
レルコトモ御尤ト考ヘマスノデ、此前モ本
會議デ一般會計ノ節約ニ依ッテ減稅ヲスル
コトガ可能性ガアレバ、當然ヤラナクチヤ
ナリマセヌ、又一億五千五百万圓稅ガ減ジ
タ所ニ應ジテ歲出ヲ減シタノデスカラ、若
シ稅ガ減ラヌト致シマスレバ、一億五千五
百万圓程、歲入ニ餘リガ出來テ居ル譯デス
ガ、ソレガ經濟界ノ變動ニ依ッテ歲入ガ一億
五千五百万圓減シタト云フコトハ、明ニ經濟
界ノ狀態ガ反映シテ居リマス、ソコデソレ
ニ對シテ歲出ヲ減ジマスダケデモナカ〓〓
先刻御話スル如ク、半分ハ義務費デ、殆ド
手ノ付ケラレナイヤウナ金デアリマスル爲
ニ、ナカ〓〓ソレデモ容易デナカッタ爲ニ、
海軍ノ剩餘財源ニ依ルダケノ減稅ホカ出來
ナカッタノデアリマス、言ッテ甚ダ不甲斐ナ
イヤウナ御返事ヲシタヤウナ次第デアリマ
スガ、ナカ〓〓今日ノ日本ノ財政ハ急激ニ
稅ガ減リマシタ爲ニ、希望ノ點ハ幾ラモア
リマスガ、希望ヲ達スルコトガ出來ズニ非
常ナ財政當局者ハ困難ヲシテ居ルノデアリ
やく、財政ノ計畫ハ鞏固ニ保タナケレバナ
ラヌ、將來ニ對シテモ相當ナ鞏固ノ道ヲ圖
ラヌケレバナラヌ、今ノ目ノ前ニアル經濟
狀態デ言ヘバ、國民ノ爲ニ大イニ減稅ヲシ
テ之ニ應ズルト云フコトガ當然ノ理ト考ヘ
マスルノデスガ、只今申ス如ク、稅ガウン
ト減リマスト、急激ニ減"テ、ナカ〓〓此儘
デハイカヌノデアリマシテ、何トカシテ日
本ノ財政ノ一ツ立テ換ハシナケレバイケ
ナイ、稅ノ減シタノニ應ジテ、ドウシテモ立
テ換ヲスルト云フコトハ絕對必要ト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=41
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042・大橋新太郎
○大橋新太郞君 ナカ〓〓現在ノ稅ガ御話
ノ通リ、地方稅モ國稅モ政府ノ實收ガ稅率
ヲ減ラサナイデモ······經濟界ハ其點ハ變ッ
テ居リマスカラ、關稅其他ガ總テ減ルト云
フコトハ當然ノ結果デアリマス、併シ現在
ノ稅率ガ如何ニ重イカト云フコトヲ云ヒマ
スト、最モ今年ハ米ガ安イ、先刻モ多額納
稅者ノ貴族院議員ノ五十嵐甚藏君ノ話ヲ聞
クト、今年ハ米ガ、一俵小作米ヲ取ルト云
フト所得稅マデモ殘ラズ拂,テ二圓五十錢
持出ガ要ル、家計費ハ何モ掛ケナイデ、國
稅地方稅ヲ總テ拂フト、小作米一俵取ヲタ
所ヘ二圓五十錢、地主トシテハ自分ガソレ
ダケ餘計持チ出サナケレバナラヌ、熱ノ比
拂ガ出來ナイ、斯ウ云フ風デ、先生ナンカ
ハ資產家デアルカラ、所得稅ノ割合ガ多イ
カラ、サウ云フ計算ニナルカモ知レマセヌ
ガ、兎ニ角サウ云フ風ノ稅制ナラバ、段々
稅ヲ納メル能力ガ減ッテ來テ、國民ガ非常ニ
經濟上行詰リヲ生ズルト云フコトハ極メテ
明瞭ナ譯デアリマス、政府自身モ稅率ヲ御
減ラシニナラヌデモ、地方稅モ益ミ未納者
ガ多クナリマセウシ、國稅モ亦ソレト同シ
ヤウナコトガ起キテ來ル譯デアリマスガ、
モウ少シ勇氣ノアル······增稅ノ如キモノニ
ハ無暗ニ勇氣ヲ御出シニナッテ、減稅スル時
ニハ思ヒ切ッタ勇氣ガナイ、先達テモ俸給ヲ
減ラスト云フアナタノ御計畫ハ、御發表ニ
ナラナイ前ニ御中止ニナリマシタガ、地方
ナンカハ小學校ノ〓員ノ給料デモ減ラサヌ
ケレバ、實際ニ村ノ經濟ガ立行カヌ所モ隨
分、新聞ナドニ書イテアル所ニ依ッテ見マ
スト、アルノデアリマス、何トカ國稅モ地
方稅モ斯ウ云フ九百万圓トカ二千万圓デナ
クテ、增ス時ハ十億足ラズノモノヲ三十億
ニ御上ボシニナルノダカラ、ソコデ其二三
割位ハ減ラスダケノ財政整理、行政整理ヲ
ヤル譯ニ行カヌモノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=42
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043・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 今大橋サンノ
御質問ハナカ〓〓數字ガ大キウゴザイマス
ガ、實際左程膨脹シタ財政ヲ一朝ニシテ減
シマスコトハ餘程困難デス、餘程困難デ、
昭和六年度ニアレ程、稅ガ減リマスノヲ、
留保財源ニ手ヲ付ケズニ、外ノ省デ減シテ
見タ經驗カラ申シマスト、ナカ〓〓困難デ
ゴザイマス、委員ノ方ミニ過去ニ於テ大藏
大臣ヲ御勤メ下サッタ方モ澤山居リマスガ、
是ハ決シテ容易イト仰シヤラヌコトト思ヒ
そく、極メテ困難デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=43
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044・大橋新太郎
○大橋新太郞君 大藏大臣ガ御困難ト仰シ
ヤルノハ御尤デスガ、丁度我〓民間ノ會社
ガ經濟界ガ變ヲテ利益ガナクナッタ時ニ、高
イ配當ヲシ、サウシテ會社ノ基礎ヲトウト
ウ過ッテ破產ノ狀態ニ陷ルヤウナ民間會社
ガ御承知ノ通リアッテ、大藏大臣ハ銀行ニ餘
計ナ配當ヲシテハイカヌゾト云フコトヲ、
日本銀行總裁時分カラ仰シヤッタコトモア
ルヤウニ思フノデス、丁度今ノ稅ノヤリ方
ハ民間ノ會社ガ收入ガ減レバ配當ヲ減ス
ト同ジヤウナ整理ヲナサラヌケレバ、國ノ
經濟ガ成立ツ譯ハナイト思フノデス、色、
貴族院ナンカデ質問ヲ承ッテ居ルト、却テ經
費ヲ增サヌケレバイケナイト云フヤウナ御
質問、增ス結果ニナルヤウナ御質問ガ多イ
ヤウニ、私ハ聽キ樣ガ惡イノカ知レマセヌ
ケレドモ、是ヂヤ困ッタモノヂヤナイカト云
フヤウナ氣ガスルノデスガ、モウ少シ、十
億デアッタモノヲ僅ニ歐羅巴大戰ノ結果三
十億ニ膨脹サレテ、減ラス時ハ九百万圓、
二千万圓ト云フ、是ハ民間ノ會社ナラバ直
チニ破產シナケレバナラヌ、先程阪谷男爵
ノ御質問ニ、米穀法ガ一億何千万圓カノ缺
損ガアッテ、ソレヲ其儘ニシテ置クノハ怪シ
カラヌト云フ、米穀法ニソレダケ缺損ガアツ
タノカドウカ、我〓ハ迂濶デ初メテ承ルノ
デスガ、ソンナモノヲ後〓シニナサッテ、今
度ハ情ナイ減稅ガ出來ル譯デスケレドモ、
モウ少シ思ヒ切ッタ······國事多端ノ際ニハ
財政狀態ノ眞情ヲ國民ニ愬ヘテ、全議員モ
眞面目ニナッテ、モウ少シ思ヒ切ッタ財政計
畫ノ立直シヲヤル譯ニ行カヌモノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=44
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045・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 誠ニ御意見御
尤デアリマシテ、財政當局者ニ對シマシテ
非常ナ御深切ナ御忠告デアリマス、出來ヌ
迄モサウ云フ趣意デハ勿論努メナケレバナ
ラヌト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=45
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046・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 皆樣ニ御諮リ
ヲ致シマス、今日ハ此程度デ散會シテ宜シ
ウゴザイマセウカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=46
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047・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレデハ散會
イタシマス、明日ハ本會議ニ豫算ガ上程セ
ラレマスガ、本委員會ハ十時ニ矢張リ始メ
やく、若シ午前缺員ニナリマスレバ午前ハ
休ンデモ宜シウゴザイマス、兎ニ角十時ニ
始メマスカラ、ドウゾ其御積リデ御出デヲ
願ヒマス、散會イタシマス
午後三時五十一分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵柳澤保惠君
副委員長男爵阪谷芳郞君
委員
公爵一條實孝君
子爵梅小路定行君
子爵大久保立君
子爵大河內輝耕君
子爵裏松友光君
水野鍊太郞君
伊澤多喜男君
男爵藤村義朗君
男爵小畑大太郞君
男爵黑田長和君
片岡直溫君
藤田四郞君
湯地幸平君
馬場鍈一君
長岡隆一郞君
後藤文夫君
木村〓四郞君
大橋新太郞君
尾崎元次郞君
濱口儀兵衞君
田中一馬君
森田福市君
國務大臣
大藏大臣井上準之助君
政府委員
大藏政務次官小川〓太郞君
大藏參與官勝正憲君
大藏省主稅局長靑木得三君
大藏省理財局長冨田勇太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00119310311&spkNum=47
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