1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月十四日(土曜日)午前十時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=0
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001・阪谷芳郎
○副委員長(男爵阪谷芳郞君) ソレデハ今
日ハ委員長ガ少シ御出席ガ遲レルサウデス
カラ、私ニ代理シテ吳レト云フコトデゴザ
イマスカラ、只今カラ開會イタシマス、井
上男爵ハ海軍大臣ガ御出ニナッテカラ、御質
間ニナリマスカ、大藏大臣ガ居ラレマスカ
ラ續イテ御質問ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=1
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002・井上清純
○男爵井上〓純君 大藏大臣ガ見エテ居ラ
レマスカラ、大藏大臣ニ御尋ネ致シマスガ、
今囘ノ減稅ノ財源ニ付テデアリマスガ、此
五億八百万圓ハ、他ノ委員ノ御方カラ御質
問ガアッタカモ知レマセヌデアリマスルガ、
自分ハ今囘初メテ出席シタモノデアリマス
カラ、重ネテ御尋ネスルコトニシタイノデ
ゴザイマス、五億八百万圓ト云フモノハ留
保セラレテ居ッタ、私ノ考ヘマスル所ニ依ル
ト、此五億八百万圓ト云フモノハ、恰モ昭
和六年度カラ、補助艦ノ代換建造計畫ヲ立
テナケレバナラヌ時機ニモナッテ居ルシ、又
華盛頓條約ニ於ケル所ノ主力艦代艦ヲ六年
度カラ建造ツナケレバナラヌ時機ニモ際會
シテ居ルカラ、相當ニ準備ヲシテ置カナケ
レバナラヌト云フ議論ガ出マシテ、確カ前
前內閣ノ頃、濱口大藏大臣ノ時代ニ、相當
ナ金ヲ留保シテ置クコトニ御決メニナッタ
ヤウニ記憶シテ居ルノデアリマス、爾來此
前ノ内閣ノ時ニ地租委讓ニ關聯シマシテ再
ビ其額ヲ殖ヤスコトヲ、三土大藏大臣ガ、
貴族院ノ議ヲ容レラレテ殖ヤサレタモノダ
ト思フノデアリマス、丁度今迄ハ大藏大臣
モ御存ジノ通リニ、海軍ノ攻防力維持ノ爲
ニ、約八千八百万圓程度ノ造艦費用ヲ每年御
使ヒニナッテ來テ居ルノデアリマシテ、先ヅ
六年度カラ十一年度ニ掛ケマシテ、每年平
均八千五百万圓程度ノ留保ヲサレタラバ適
當デアラウト云フ御考ノ下ニ、其六年分ノ
五億八百万圓ト云フモノヲ留保セラレルコ
トニナッタト思フノデアリマス、ソレデアリ
マスルカラ、此五億八百万圓ト云フモノハ、
主ニ昭和六年度カラ始マリマス所ノ主力艦
ノ代艦ノ建造費ニ充テラレル積リデアッタ
カト思フノデアリマス、卽チ本年度ニ於キ
マシテハ、條約ガナカッタ場合ニ於テハ金剛
ノ代艦ガ「キール」ヲ据ヱナケレバナラヌノ
デアリマシテ、其爲ニソレダケノ金ガ留保
サレテ居ッタモノト記憶スルノデアリマス、
併シ留保ト申シマシテモ、繼續費デナイノ
デアリマスカラ、言ハバ大藏大臣ガ先ニ之
ヲ取ラレル、所謂先取權ヲ持ツヤウナ意味合
ノ留保ダト承知シテ居ルノデアリマス、甚
ダ考ヘニクイ留保デアリマスルケレドモ、
サウ云フ意味合ノ留保デアリマシテ、現金
ガソコニアル譯デモナイ、六年度ノ豫算ヲ
編成セラレル場合ニ於テ、其留保ガ始マル
ノデアラウト思フノデアリマス、斯樣ナ意
味ノ、五億八百万圓ハ、留保デアッタカト云
フコトヲ先ヅ伺ヒタイノデアリマス
〔伯爵柳澤保惠君委員長席ニ就ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=2
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003・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 大體御質問ノ
通リデゴザイマスルガ、御承知ノ如ク昭和
六年度ニ於キマシテ、華盛頓會議其他ガ假
ニ關係ナイモノト致シマシテモ、海軍ノ補
助艦艇ノ製造ガ、大體昭和六年度デ終リマ
ス計畫ニナッテ居リマス、ソコデ昭和六年カ
ラ始マリマシテ、昭和十一年度マデノ間ニ
五億八百万圓ガ留保シテアリマス、ソレハ
只今井上男爵ノ御尋ノ如ク主力艦ノ代艦ノ
建造、補助艦ノ建造ト云フ、所謂艦艇ノ製
造ノ爲ニ留保シテアッタノデアリマスガ、
ソレナラバ年度割ガ出來、又艦種ニ付テモ
相當ノ交渉ガアッテ、五億八百万圓ト云フモ
ノヲ留保シタノデアルカト云フ御尋ニナリ
マスト、海軍ニハ必ズアッタラウト思ヒマ
ス、大藏省ノ方ト交涉シタ意味ニ於キマシ
テハ、左樣ニ的確的ニハ出來テ居ラナカッタ
ノデアリマス、ソレカラ五億八百万圓ノ留
保ト云フ性質ハ、御手許ニ差出シテアリマ
スル十年計畫ノ〓計表ヲ御覽下サイマスト
一番能ク分リマスガ、大藏省ノ立テ方ハ恒
久歲入ガ·······經常歲入ガ幾ラ、臨時歲入ガ
幾ラ、斯ウナッテ居リマシテ、サウシテ歲出
ノ方ガソレニ見合ガ付イテ居リマスノデア
リマス、サウシテソコニ或ル年度ニハ殘リ
ガ多イ年モアレバ、少イ年モアリマス、卽
チ其〓計表ヲ御覽下サイマスト、五億八百
万圓ト云フ金ハ、其中ニ歲出ニズット立テテ
アルノデアリマス、ソレデアリマスカラ、
五億八百万圓ト云フモノハ現金ガ貯ヘテア
ル譯デモ何デモナシニ、卽チ昭和五年度ニ
立テマシタ場合ニハ昭和五年度ノ歲入ガ
アルモノトシテ〓計表ガ出來テ居リマス、
又昭和六年度ノ此歲計豫算ニ於キマシテ
ハ、昭和六年度ノ歲入ハアルトシテ歲出ガ
計上シテアルノデアリマシテ、留保財源ト
云フモノハサウ云フ性質ニナッテ居リマス、
サウイタシマシテ、昭和六年度ニハ只今申
シマス如ク、全部ノ金ハ要ラナイト云フコ
トデ、僅カ千八百万圓ガ留保シテアリマシ
テ、昭和十一年度ニハ大凡一億二千万圓ノ
金ガ留保シテアルノデ、ソレヲ縱ニ合計イ
タシマシタ場合ニ五億八百万圓トナルノデ
アリマス、サウ御答ヘ申上ゲテ宜シカラウ
カト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=3
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004・井上清純
○男爵井上〓純君 五億八百万圓ノ出所ニ
付キマシテ了解シタノデアリマス、其五億
八百万圓ノ中カラ今囘倫敦條約ノ結果ニ依
リマシテ、其補充計畫ノ爲ニ三億七千四百
万圓ト云フモノヲ取去ラレタ後ノ餘財ヲ以
テ、減稅ノ財源ニ御使ヒナサル御豫定ノヤ
ウデアリマスルガ、今囘ノ補充計畫ノ中ニ
ハ三億七千四百万圓以外ニ、十二年度、
十三年度ニ亙リマシテ、繼續費トシマシテ
合計五千万圓ト云フモノガ出テ居ルノデア
リマス、其五千万圓ト云フモノハ、全ク此
五億八百万圓以外ノ財源カラ出タモノデア
ルノデアリマシテ、ソレハ航空隊二隊ノ建
造費竝ニ維持費ノ外、十四隊ノ維持費ガ含
マレテ居ルノデアリマス、サウ云フ補充計
畫ニ屬スルモノヲ、何故ニ此五億八百万圓
ノ財源ノ中カラ御取リニナラナイデ、他ノ
財源カラ御取リニナッテ居ルノデアリマス
カ、其點ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=4
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005・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) ソレハ斯ウ云
フ儀デゴザイマス、御質問ノ通リニ、十二
年ニ二千五百万圓、十三年ニ二千五百万圓
ノ航空隊ノ製造費、維持費ガアリマス、ソ
レハ海軍ニ於キマシテ、强チシモ十一年以
前ニ此二隊ヲ拵ヘル必要ガナイ、斯ウ云フ
コトデ、十二年十三年ニ拵ヘレバ十分デア
ル、斯シ云フコトガ決定イタシマシタ以上
ハ、十二年十三年ニ其金ヲ要シマスカラ、
其年ノ歲計カラソレヲ捻出スレバ宜イノデ
ゴザイマス、又維持費モ十二年後ニ亙リマ
ス維持費ト云フモノハ苟モ航空隊ガ現在
ノ隊數アル以上ニハ永久ニ其金ヲ必要トス
ルノデアリマスカラ、十二年十三年ニ限ッタ
譯ヂヤナイノデアリマシテ、其航空隊ノ數
ガアラン限リニハ、永久ニ其金ハ要ルノデ
アリマシテ、之ヲ留保財源カラ其方ニ振向
ケルト云フコトハ、是迄ノ財政計畫ノ立テ
方デ左樣ニシテ居リマセヌ、卽チ十二年後
ニ要ル金ハ十二年後ニ捻出スルト云フコト
デ、財政計畫ニソレダケガ這入ッテ居ル次
第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=5
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006・井上清純
○男爵井上〓純君 續イテ伺ヒマスガ、第
一ノ補充計畫ノ外ニ第二次補充計畫ノ必要
ナルコトハ、政府ノ諸公ノ認メラルル所デ
アリマス、第一次、第二次補充計畫ヲ併セ
テ海軍ノ補充計畫トナッテ居ルモノダト承
知シテ居ッタノデアリマス、唯財政ノ都合、
内閣ノ御都合ニ依リマシテ、之ヲ唯單ニ便
宜的ニ御分ケニナッタモノノヤウデアリマ
スルガ、其第二次計畫ノ希望ト必要ヲ持チ
ナガラ、何故ニ其財源ヲ他ニ利用サレルヤ
ウナ御考ヲ起シタノデアリマスルカ、承リ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=6
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007・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 此點ニ付キマ
シテハ、海軍大臣及首相代理カラ度〓申上
ゲマシタ如ク、成程希望モアリ、必要モ感
ジテ居ルカラ、或ル程度ノ金ガ要ルノデア
ラウ、併ナガライツカラ要ルノカ、ドノ程
度ニ要ルカ分ラナイ、斯ウ云フコトデアリ
やく、ソレデモ今日ハ其金ヲ留保シテ置ク
ト云フコトヲ致シマスレバ、ソレハソレヨ
リ以上ノコトハナイノデアリマスガ、併ナ
ガラ是マデノ財政計畫ノ立テ方ガ假ニ此ノ
問題ニナッテ居リマス華盛頓會議ノ期限ガ
來テ、サウシテ主力艦ノ代換建造ガ始マッ
テ、サウ云フコトガ、或ル年度カラチヤン
ト的確ニナッテ居リマスヤウナ場合ガアリ
マシテモ、今日マデノ財政ノ立テ方デハ、
ソレヲ數年前カラ······或ル程度ノ財源ハソ
レハ留保シテ置キマス、例ヘバ十二年後ニ
六千万圓ノ留保財源ヲ留保シテアリマスヤ
ウニ致シマスガ、先日ノ坂本男爵カラ御尋
ネニナッタヤウニ、六千万圓ヂヤ足ラヌヂヤ
ナイカト云フヤウニ言ハレルヤウナ事態モ
必ズ出テ參ラウト考へテ居リマス、併ナガ
ラ時期モ程度モ分ラズニ居ルモノデアリマ
スルナラバ、大體內外ノ事情ヲ見テソレヲ
決メテ、又日本ノ財政狀態モ考ノ中ニ入レ
テ、之ヲ決メナケレバナラヌト云フヤウナ
コトモアリマス爲ニ、必シモ其意味ノ爲ニ
ドレダケノ財源ヲ留保シテ置カヌカラト
云ッテ、直ニ日本ノ財政ガ非常ニ缺陷ガア
ル、非常ニ不完全ダト云フ意味ニモ私ハ考
ヘテ居リマセヌ、取ルコトガ出來マスレバ
此上モゴザイマセヌガ、左樣ニモ考ヘテ居
ラヌ次第デゴザイマス、併ナガラ今日其爲
ニ財源ガ用意シテナイ、斯ウ云フコトハ確
カデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=7
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008・井上清純
○男爵井上〓純君 豫算委員會ニ於キマシ
テ、大藏大臣ハ阪本男爵ニ對シテ斯樣ナ答
辯ヲサレテ居ルノデアリマス、速記錄十二
號ノ二十八頁ニアリマス、「十一年以前ノ事
柄ニ付キマシテハ、相當ノ程度ノ計畫ヲ實
行シナキヤナラヌ必要モ認メテ居リマスカ
ラデアリマスガ、是レカラ丁度五箇年ノ
コトニナリマスノデ、財政ノ當局者トシテ
ハ一日モ忽セニ此コトヲ考ヘルコトハ出來
ヌノデ、外國ノ狀態ヲ見テ、ソレニ應ジテ
常ニ海軍ノ當局者ト相提携シテ、財源ノコ
トニ付テハ大ニ考ヘナキヤナラヌト云フコ
トハ、是ハモウ當然ノ理デアリマスガ、今
的確ニ斯ウシテ財源ヲ求メマスト斯ウ云フ
コトノ考ハ持クテ居リマセヌ、併ナガラ國防
ニ缺陷ガアルト云フコトヲ認メ、又外國ノ
態度如何ニ依リマシテハ、ソレハモウ國ト
致シマシテ、私ハ增稅モ已ムヲ得ナイ、公
債モ已ムヲ得ナイト云フコトハ、是ハ日本
國民ノ性質トシテハ當然ノ儀デアラウト考
ヘテ居リマス」、旣ニ其必要ヲ認メラレ希望
モ認メラレテ、持ッテ居ラレルノデアリマ
ス、然ラバ國防ノ爲ニハ財源ヲ取ッテナイ
ト云フコトデアレバ、增稅サレルカ、或
公債ヲ發行サレルモノト考ヘマスルガ、第
二次補充計畫ニ付テハ斯樣ニシテ實現サレ
ル思召デアリマセウカ、ハッキリト承ハリタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=8
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009・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今速記錄ヲ
御朗讀サレタ通リニ、今日デモ考ヘテ居リ
マスカラ、希望モアリ必要モ認メテ居ルノ
デ、假ニ今日ノヤウナ情勢デ參リマシタナ
ラバ、其金額ガエライ多額ニモ上リマスマ
イ、トモ思ヒマスケレドモ、是ハ相手方ノ
アルコトデアリマスカラ、如何ナル相手方
ノ狀態ニナリマスカ知リマセヌガ、假ニ相
手方ノ狀態ガ日本ヲシテ總テノ權利ヲ行使
セネバナラヌ、又所謂條約以外ノモノニ於
テモ大イニ擴張シテ之ニ應ジナケレバナラ
メト云フヤウナ場合ヲ想像イタシマシテ、
其場合ニ我ミハ常ニ注意シテ財源ノコトヲ
考ヘテ置カナケレバナリマセヌガ、其場合
ニ外國ノ狀態ニ依ッテ日本ノ國防ニ缺陷ガ
アルト、ソレデモ金ガナイト、斯ウ云フコ
トヲ想像イタシマシタナラバ、私ハ阪本男
爵ニ申上ゲタヤウニ、如何ナル方法ニ依ッテ
モ國ノ國防ニ缺陷ナカラシムルヤウニハ努
メナケレバナラヌコトハ當然ノ儀ト考ヘ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=9
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010・井上清純
○男爵井上〓純君 甚ダ長イコト質問シテ
相濟マナイノデアリマスガ、關係事項デア
リマスカラ、引續イテ海軍大臣ニ御尋ヲシ
タイノデアリマス、此第二次計畫ト云フモ
ノヲ第一次計畫ト併セマシテ、始メテ完全
ナル計畫ガ成立ツノデアリマセウカ、實、
此點ニ付テハ昨日餘リ長ク述べ過ギタヤウ
ナ點モアッタノデアリマスガ、私ハ實ニ之ヲ
疑フノデアリマス、昨年米國案ニ依ッテ囘訓
案ガ出サレタ當時、時ノ軍令部長加藤大將
ハ其米國案ニ依ッテノ國防計畫ハ成立タヌ
モノデアルト云フコトヲ上奏モサレ、其コ
トヲ中外ニ聲明サレタノデアリマス、其米
國案ト云フモノニ依ッテ今日ノ條約ハ結バ
レテシマッタノデアリマスカラ、謂ハヾ倫敦
條約ノ兵力量ヲ以テシテハ、國防ヲ全ウス
ルコトガ出來ナイノデアル、國防計畫ヲ安
固ニスルコトガ出來ナイノダト、軍令部長
ノ意思トシテドウシテモ默ッテ置クコトバ
出來ナイモノデアルカラ、上奏ヲサレ、サ
ウシテ之ヲ新聞ニ公表サレタノデアリマ
ス、爾來御批准ノコトニナリマシテ、其際
ニ於テ軍事參議院ハ屢〓正式ノ會議ヲ開カ
レテ、サウシテ其結果ヲ奉答文ニ認メラレ
テ、上聞ニ達シテ居ルコトハ、是亦周知ノ
事實デアリマス、一體斯ノ如ク海軍軍令機
關ガ心配シタノハ、僅カ五億万圓トカ六億
万圓トカ云フ金ヲ以テ購フコトガ出來ヌサ
ウ云フ缺陷ヲ心配サレタノデアリマス、其
金デハ購フコトガ出來ナイカラ、茲ニ大キ
ナ波紋ヲ投ジタノデアルカト思フノデアリ
マス、十億圓ヲ投ジテモ、此缺陷ハ救フコ
トガ出來ナイト云フヤウナ、サウ云フ大キ
ナ缺陷ヲ何故ニ之ヲ生ジタカ、是ハ昨日來
縷々申上ゲタ通リニ、軍隊ノ編制權ニ觸レ
テ政治家ガ獨斷專行ヲヤラレタ爲ニ、內容
ノ編制ガ不足ニナッテ來タノデアリマス、純
然タル統帥權ニ屬スル所ノ編制權ニ政治家
ガ觸レタ爲ニ、此國防ニ大缺陷ヲ生ジテ來
タノデアリマス、全體ノ兵力量デハナイノ
デアリマス、兵力量ヲ構成スル所ノ、編制
スル所ノ艦種ノ不足デアリマス、其艦種ノ
不足ハ如何ナル方策ヲ講ジテモ、作戰計畫
ガ作レナイト云フ所ニ於テ上奏モサレ、軍
事參議院ノ奉答トモナッタノデアリマス、
併ナガラ軍事參議院ハ條約批准ノ輔翼機關
デアリマセヌカラ、萬一ニ其輔翼機關ガ批
准可ナリト云フ奉答ガアッタ場合ニハ、之ヲ
遮ルコトハ不可能デアリマスガ爲ニ、若シ
萬一サウ云フ批准ガ······甚ダ不利ナ條約デ
アルケレドモ、萬一批准サレルヤウナ場合
ニ於テハ、已ムヲ得ナイカラ是々斯ク〓〓
ノ補充計畫ヲ立テレバ、ドウヤラ三十五年
ノ次ノ會議マデノコトデアルカラ、當面ノ
國防ノ缺陷ヲ補ヒ了セルカト思フト云フ奉
答文ノ意味デアッタト思フノデアリマス、其
最小限度ノ補充計畫ガ第一次、第二次補充
計畫トシテ、現レタモノデナケレバナラヌ
ノデアリマス、其最小限度ノ補充計畫ヲ二
ツニ分ケラレテ、一般ノ第一次補充計畫ヲ
以テ足レリトサレルト云フコトハ、ソレデ
宜シイト云フコトデアルナラバ、我〓國民
ハ惑ハナクチヤナラヌノデアリマス、何故
ニシテ軍事最高機關ガ僅カ三億七千万圓、其
內容ハ何カト云ヘバ、驅逐艦ガ十二隻、敷設
艦ガ一隻、巡洋艦ガ四隻、水雷艇ガ四隻、掃
海艇ガ三隻ソンナヤウナモノデ補フコトガ出
來ルト云フヤウナ程度ヲ、何故ニシテアンナ
大キナ問題ヲ起サレタノカ、又サウ云フ大
キナ問題ヲ起サレテ國論ヲ沸騰サセテ、サ
ウシテ内閣ノ壽命スラモ脅カサレタ所ノ海
軍首腦部ト云フモノハ、非常ニ誤ヲタモノ
デナケレバナラヌト思フノデアリマス、其
首腦部ヲ其儘ニサレテ、サウシテ此補充計
畫ハ其儘デ宜イト仰シヤルコトデアレバ
國民ハ惑ハナイ譯ニ參ラヌノデアリマス、
延イテハ海軍ト云フモノノ國防ニ對スル信
念ヲ國民ハ疑ハナイ譯ニ參ラナイノデアリ
マス、斯ノ如クニシテ信念ナキ所ノ國防計
畫デアリマスルナラバ、私共ハ何モ第一次
補充計畫ナドハ協賛ハ與ヘナイノデアリマ
ス、世ノ中ニ戰ッテ當然負ケルト云フヤウ
ナ失敗ノ軍備ホド不經濟ノモノハナイノデ
アリマス、ソンナ無用ナモノハ全部御止メ
ニナッタ方ガ宜カラウト思ヒマス、モット理
窟ガ合ッタモノデナケレバ我ミハ協贊ヲ申
上ゲルコトガ出來ヌト云フコトハ、過日豫
算委員會ノ席上ニ於テ縷々私ハ申述ベタノ
デアリマス、其結論トシテ海軍大臣モ御承
知ノ通リ決議案ト云フモノガ出タノデアリ
やく、其決議案ノ說明ハ、主査カラ細カク
サレタノデアリマスカラ、今再ビ玆ニ申上
ゲル必要ハナイノデアリマスルケレドモ、
アノ意味合ハ最モ簡單ニ籠メテアリマスル
ケレドモ、其意味合ハ申スマデモナク、倫
敦條約デ殘サレタル所ノ權利行使ヲ實現ス
ル爲ニハ、財政上前途甚ダ憂フベキモノガ
有ルノデアル、政府ハ宜シク既定國防方針
ニ基キ作戰計畫ヲ維持遂行スル上ニ於テ萬
全ノ······遺憾ナカラムコトヲ希望シタ譯デ
アリマス、卽チ今ハ第二次計畫ガ甚ダ危イ
モノニナッテ居ルノデアリマス、是ガ支障
ナク第一次補充計畫ダケデ以テ十分デアル
ト云フナラバ、私共ハ之ヲ歡迎シナイ譯ニ
ハ參ラヌノデアリマス、僅カナ費用デ以テ
國防ヲ完ウスルコトガ出來ル、是ホド喜バ
シイコトハナイノデアリマス、併ナガラ第
二次計畫ノ必要ヲ認メラレテ居リ、又其希
望ヲ有シテ居ラレル、然ラバ其第二次補充
計畫ガナカッタナラバ、國防ニ缺陷ヲ生ズル
モノデアルト思フノハ道理デアリマス、其
國防ヲ補充スル所ノ第二次補充計畫ノ實現
ニ向ッテハ、貴族院ハ默ッテ居ル譯ニハ參ラ
ヌノデアリマス、ドウシテモ希望條件トシ
テ、ソコニ決議ガ起ヲテ來ルノハ當然ナコ
トデアリマシテ、此決議タルヤ誠ニ簡單ナ
モノデアリマスルケレドモ、意味ハ深長デ
アリマス、ソレハ語ヲ換ヘテ言ヘバ、第二
次補充計畫ヲ十一年度前ニ實現スルコトニ
向ッテ、萬違算ナキコトヲ望ム決議案デアッ
タノデアリマス、其事ハ十分ニ海軍大臣ハ
御承知デアリ、又今マデノ經緯カラ存ジテ
居ラナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ
昨日來、第二次補充計畫ハ外國ノ狀態ヲ見
テカラ決メルノダ、今內容ハ決マッテ居ラヌ
ト云フコトヲ御申シニナッテ居ルガ、決マッ
テ居ラナイノデアリマスカ、果シテ先達テ
衆議院ノ委員會ノ席上ニ於テ經理局長
ハ······或ハ〓究會ノ調査部ノ席上ニ於テデ
アリマスルカ、加藤經理局長ハ、是ハ昭和
九年度カラ始メルノダ、內容モ云とダト、
其概略ヲ申述ニナッタヤウデアリマス、モ
ウ海軍デハチヤント艦種ノ名前、ソレカラ
隻數モチヤント決マッテ居ル譯デアル、然ル
ニ政治家ノ御考カラ、卽チ此倫敦條約ガ成功
デアルカ不成功デアッタカト云フ「バロメー
ター」見タイナ······其減稅財源ガ有ルカ無
イカニ依ッテ、此倫敦條約ノ成否ガ岐レル
ノデアリマスカラ、若モ是ガ不成功デアッ
タト云フコトデアッタナラバ、内閣ニ關スル
コトガ非常ニ多イノデアリマスカラ、ソコ
デ此第二次補充計畫ノ避クベカラザルコト
ハ、萬人ノ認メル所デアリマス、然ルニ外
國ノ狀態ヲ見ナケレバ、具體案ガ出來ナイ
ト云フヤウナコトヲ海軍當局者マデガ仰セ
ニナルト云フコトハ、私ハドウシテ不可解
デアリマス、是ハ心ニモナイコトヲ仰セニ
ナッテ居ルモノト私ハ固ク信ジマス、尙且ソ
レデ宜シイノデアリマスルカ、海軍大臣カ
ラ御信念ノ程ヲ御披瀝ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=10
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011・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 井上男爵ニ
御答ヲ申上ゲマスルガ、昨日モ御質問ニ對
シマシテ縷々私ハ御得心ノ行クヤウニ申上
ゲマシタ積リデゴザイマスルガ、今日御尋
ノ點ニ付キマシテハ、倫敦條約ノコトニ付
テノ經緯等段々御話ガアリマシタガ、足に
昨日モ申上ゲマシタ通リ、倫敦條約ト云フ
モノハ、旣ニソコニ出來上ッテ居ッテ、今日
ノ海軍當局ノ立場ト致シマシテ、現在ニ於
テドウ云フ方法ヲ以テスレバ國防上最モ適
切ナルモノヲ案出シ得ラレルカト云フコト
ニ依ッテ進ンデ行クヨリ外ハナイノデアリ
マシテ、ソレニ依ッテ十分各方面ヲ考慮シ、
又每度申上ゲマスル通リ無論軍令當局トモ
十分熟議ヲ遂ゲマシタ上立テマシタノガ、
此度ノ計畫デアルノデアリマス、其計畫ト
云フコトニ付キマシテハ、每度申上ゲマス
ルヤウニ、國防上必要トスル兵力ノ骨幹ナ
ルモノハ漏レナク網羅ヲシタノデアルカ
ラ、當面ノ情勢ニ於テ是ガ成立チマスレバ、
國防上不安ナイモノト認メマスルト云フコ
トハ、幾度カ申上ゲタ通リデアリマシテ、
井上男爵ハ今度ノヤウナモノデハ到底イケ
ナイ、斯ウ云フコトデ、サウシテ加藤前軍
令部長ノ奏上サレタ內容、或ハ軍事參議院
ノ奉答文ノ內容ノコトヲ、斯ウダラウア
ダラウト云フヤウナ御推察ニナッテノ、段々
御議論ガアリマシタコトト承知イタシタノ
デアリマスルガ、是ハソレガ當テ居ル、當
ラヌト云フコトヲ玆デ私ハ色ミ御話合ヲ致
スコトハ避ケタイト存ジマスルガ、要スル
ニ海軍當局ト致シマシテ軍令部トノ間ニ十
分ニ熟議ヲ遂ゲマシテ提出ヲ致シマシタノ
ガ、此度ノ計畫デアリマシタ、此度ノ計畫
ハ決シテ不用ノモノデアッテコンナモノデ
國防ガ完ウ出來ナイト云フヤウナ意味ノモ
ノデハ斷ジテナイノデゴザイマス、サウシ
テ是ガ第二次計畫トノ關係ト云フコトニ付
テ御話ガアリマシタ、昨日モアリマシタノ
デ御答ヲ致シマシタガ、凡ソ從來海軍計畫
ヲ致シマスル場合ニ、海軍當局トシテ、或
ル一ツノ案ヲ以テ大藏當局トモ折衝ヲシ、
內閣ニモ提出シテ、ソレゾレ詮議ヲ重ネテ
貰フト云フコトニナリマスル場合ニ、是ダ
ケノ兵力ヲ是非トモ必要トスルト云フ或ル
兵力ハアルノデアリマスルケレドモ、其所
ハ財政當局ハ打合セラレテ、玆數年ノ間ハ
是ノ計畫デ行カウト云フ最後ノ決定ヲ見ル
マデニハ、ソコニ、幾多ノ曲折ノアルコト
ハ當然ノコトデアリマスルガ、併ナガラ既
ニ玆ニ或ル計畫ガ決リマシタ以上ト云フモ
ノハ、其以外ニ若干ノモノガ必要ガアリト
致シマシテモ、是ハ直グ其時ニ必要ガアル
ト云フモノデナケレバ、又若干年ノ後ニ計
晝ヲ立テテ差支ナイト云フモノハ、ソレハ
今カラ何ガ何艘何ガ何艘ト云フコトデ決メ
テ置クベキ性質ノモノデハナイノデアリマ
ス、是ハ又軍令當局モ更リマセウシ海軍當
局モ更リマセウ、何時マデモソレヲ束縛ス
ルト云フ意味ニハナリ得ナイノデアリマ
ス當然其場合ニ最モ適切ナ兵力ヲ構成シ
テ、之ヲ計畫トシテ國防ノ案ヲ立テナケレ
バナラヌト云フコトハ當然ナ事柄デアルノ
デアリマス、外國ノ狀況ヲ見テ初メテ作ル
ト云フヤウナコトデハイカヌト云フコトヲ
繰返シ仰セデゴザイマシタケレドモ、每度
申上ゲマスルヤウニ、所謂守勢作戰ニ於テ
相手ノ者ガドウ云フ兵種ヲ以テドウ云フ風
ニ現ハレテ來ルカト云フコトヲ見究メテ、
ソレノ兵種ニ應ズル又一種ノ特徴ノモノヲ
コチラデ用意スルト云フコトハ十分相對
的軍備ヲ備ヘル上ニ、當然ナヤリロデアル
譯デアル、全部ト云フノデアリマセヌケレ
ドモ、或ルモノニ依ッテハドウシテモサウ云
フ風ナ意味ニナル譯デアリマシテ、玆ニ此
度ノ計畫ヲ一應立テマシテ、次ニ起ルベキ
計畫ト云フモノニ付キマシテノ其內容ハ、
倫敦條約ノ上カラ言ヒマスレバ、マダ權利
ヲ全部行使スルニハ、何ガ何艘何ガ何艘殘ッ
テ居ルト云フコトハ申上ゲ得ラレヌ譯デア
リマスルケレドモ、其中ノドレヲ何時カラ
著手スル、或ハ驅逐艦ノヤウナモノヲ止メ
テ、其噸數ヲ巡洋艦ニ廻ハス方ガ更ニ適切
ナ國防ガ出來ルヤ否ヤト云フヤウナ問題ノ
コトハドウシテモ是ハ今後ニ〓究シナケ
レバナラヌ問題デアル譯デアリマスカラ、
サウ云フヤウナ意味ヲ加味イタシマシテ、
矢張リ此外國ノ海軍軍備ノ行キ方ヲ見、又
外國ガドウ云フ程度ニ此倫敦條約ノ權利ヲ
行使セムトシツツアルカヲ全ク見ズニ、自
分ハ自分サヘヤレバ宜イト云フヤウナ意味
ニハ進ミ難イダラウト考ヘテ居ル譯デアリ
さく、從ヲテ此度ノ計畫ト云フモノニ、更ニ
加フルニ第二次ト云フモノガ加ハラナケレ
バ、國防ヲ全ウスルモノデナイト云フ譯デ
ハアリマセヌノデアリマシテ、第二次計畫
ハ勿論必要デアリマスガ、其内容及時期ト
云フモノハ、今日確定的ニ決マッテ居ル譯デ
ハナイノデアリマシテ、當面ノ情勢ニ於テ
ハ此度ノ計畫ヲ以テ國防上不安ナイト云フ
コトヲ申上ゲマスル次第デアリマス、左樣
御諒承願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=11
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012・井上清純
○男爵井上〓純君 重ネテ御尋ヲ致スノデ
アリマスガ、只今外國ノ情勢ヲ見テカラ決
メルノガ正シイ方法デアルト云フ御說明デ
アリマシタ、如何ニモ平生ノ補充計畫ヲ御
立テニナル場合ニ於テハ其通リデアラウト
思フノデアリマス、併ナガラ此度ノ第二次
補充計畫ト云フモノハサウ云フ意味合ヂヤ
ナイノデアリマシテ、條約上ノ權利ノ行使
デアリマス、何故ニシテサウ云フ權利ヲ有ッ
タカ云ヘバ、必要已ムヲ得ナイ權利ヲ有ッタ
ンデアル、一體倫敦條約ニ於テ帝國ハ相當
ノ造艦權利ヲ有チ得タノデアリマスケレド
〓、其有ッタ所ノ權利ヲ行使シマシテモ、旣
定ノ國防方針ニ基ク作戰遂行上······作戰計
畫ヲ遂行シ維持スル上ニ於テ、兵力量ノ不
足ヲ感ズルト云フコトハ、軍令部長モ申サ
レテ居ルシ、海軍大臣自ラモ仰セニナッテ居
ルノデハナイノデアリマセウカ、其權利ヲ
全部行使シテモ國防ニ缺陷ヲ生ジテ居ルコト
ハ、現ニ申サレテ居ルノデハアリマセヌカ、
第二次計畫ト云フモノハ、補充計畫ト云フ
モノハ、其他ニ言フノデハナイノデアリマ
シテ、其權利行使ノ中ニ殘サレタル權利ガ
アルノデアリマスルガ、當然全部ヲ御使ヒ
ニナッテモマダ足リナイノデアリマス、其他
ニ殘サレテ居ルト云フコトハドウ云フ譯デ
アリマスカ、若シ殘サレテ宜イモノデアル
ナラバ、アノ通リノ騒動ハ起サレハシマセ
ヌ、又サウ云フ餘裕ノアル會議デハナカッタ
ヤウニ思フノデアリマス、切リ詰メラレテ
アル最低「リミット」ノ權利ヲ漸ク日本ハ保
有シ得タノデアリマス、其僅カ許リ得タ所
ノ權利ヲ全部ヲ行使サレナイデ、殘サレテ
居ルト云フコトハドウ云フ譯デアリマス
カ、只今ノ海軍大臣ノ御說明デハ、サウ云
フコトハ到底得心ガ行カヌノデアリマス、
一體殘サレタ第二次補充計畫ニハ何ガアル
カト云ヘバ、屢〓申上ゲタ通リ驅逐艦ガ六
隻殘ッテ居リマス、敷設艦ガ一隻殘ッテ居ル、
是ハ五千噸ノ敷設艦、殊ニ日本ニ限ッテ許サ
レタル所ノ敷設艦デアリマス、何故ニシテ
日本ニ限ッテサウ云フモノヲ許サレタカト
云ヘバ、日本ノ海軍ハ之ヲ要望シタカラデ
アル、自ラ要望シテ居ッテ、一隻シカ造ラナ
イデ、アト一隻殘サレテ居ルト云フコトモ、
譯ノ分ラヌコトデアリマス、其外大事ナ所
ノ是ハ華盛頓條約ニ關聯スルコトデアル
ガ、航空母艦一隻一万二千噸ノモノガ殘ッテ
居ルノデアル、今ヤ亞米利加ニ對スル比率
ハ、航空母艦ニ於テハ六割デアリマス、殊
ニ今囘不利ノ條約ヲ結ンダ爲ニ、航空母艦
式ノ巡洋艦モ亦六割ノ比率ヲ强要セラレテ
居ルノデアリマス、此飛行機ト云フモノハ、
航續距離ガ先ヅ六百哩ト思フノデアリマ
ス、到底太平洋ヲ横斷スルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、必ズ航空母艦トカサウ云フ
モノニ積マナケレバ日本ヲ襲フコトモ出來
ナイノデアリマスルカラ、此航空母艦竝ニ
航空母艦式ノ巡洋艦ト云フモノノ價値ハ大
ナルコトハ申スマデモナイコトデアリマ
ス、然ルニ其大ナル所ノ價値アル所ノ航空
母艦ニ於テ六割デアリマス、少クトモ外ノ
モノヲ見ルドコロノ騷ギデナイ、現時ニ於
テ缺陷シテ居ルノデアルカラ、航空母艦ガ
一隻殘ッテ居ルト云フコトハ、恐ラクハ、航
空母艦ト云フモノハ維持費ガ非常ニ掛カ
ル、恐ラクハ六百万圓位掛カルデアラウト
思フ、其爲ニ後ニ殘サレタモノデアルト思
フノデアリマス、今條約ヲ當然行使シナケ
レバナラヌ權利ハ、ソレダケノモノダケデ
モ殘ッテ居ルノデアリマス、是ハ骨幹デハナ
イカト云フコトハ、本會議ニ於テモ御尋シ
タノデアリマスルケレドモ、····是ハドコ
カ腕ノ骨カ足ノ骨位ニ當ルト思フノデアリ
マス、骨幹ノ中ノ骨幹デアリマス、其大事
ナモノヲ殘サレテ居ッテ、第一次補充計畫ダ
ケデ以テ足リルト云フヤウナ御考ヲ何處マ
デモ固執セラレルナラバ、私ハ先達テ花井
博士ノ御讀上ニナッタ所ノモノニ付テ伺ハ
ナケレバナラヌノデアリマス、花井博士ハ
當時ドウ云フコトヲ言ハレタノデアルカ、
速記錄ノ第九號ノ三十三頁ニ載ッテ居ルノ
デアリマスガ、其前ニ、加藤軍令部長ガ軍
事參議官トナラレテ海軍ノ演習ニ臨マレ
ク、其歸途新聞ニ聲明サレタモノガアルノ
デアリマス、其一節ヲ讀上ゲマス、「元來今
囘ノ「ロンドン」條約ニヨル我兵力量ハ世間
ノ一部デ見テ居ル如ク八疊座敷ガ四ツアル
ノヲ不景氣ノ際ダカラト云"テ三ツニ減ラシ
タノデハナク、三本柱ニヨッテ支ヘラレテ居
ル家ノ眞中ノ柱ガチヨット太クナッタガ、後
ノ二ツノ支柱ヲウント細クシタノデアッテ、
何時屋臺骨ガグラ〓〓ト行クカ分ラヌト云
フ結果トナッテ居ルノガ條約ノ兵力量ナノ
デアルカラ、之ガ安全ヲ期スル補充案ハ、充
分細密ナ〓究ト技術上其他ニヨリ內容ノ充
實ヲ期セネバナラヌコトハ勿論デアル、此
點ニ付テハ安保海相モ谷口軍令部長モ同樣
ノ見解ヲ有シテ居ラレルト信ジテ居ル、而
シテ現下ノ經濟狀態ヲ考慮シテ最少限度ノ
補充案トシテ提案サレ、タノガ、今囘ノ豫算
ニ現レタ五億圓程度ノモノデアルト思フ
ノデ、軍部トシテハ此程度デハマダ〓〓
到底國防ノ完全ヲ期スルコトガ出來ナイノ
ニ、ソレヲ更ニ三億五千万圓以下ニ減ジテ
殆ド補充案ノ根本ヲ覆スガ如キ査定ニ對シ
テハ到底默視シ難イ所デアル、一體我ニガ
軍縮ニ對シテ飽マデ所期ノ信念ヲ主張スル
所ノモノハ、軍備ハ決シテ戰爭ヲ目的トス
ルモノデナク、唯國家ノ存立ヲ危フカラシ
メザル爲ニ各國ガコレヲ保有シテ居ルモノ
デアリ、今囘ノ「ロンドン」條約ノ兵力量デ
ハ此補充案ニ相當遺憾ナキヲ期セヌ限リ國
家ノ存亡ニモ關スル重大問題デアル、殊
政府ハ條約御批准ニ際シ國防ノ完備ヲ期ス
ル旨ヲ奉答シテ居ル以上、國防計畫充實ノ
補充案ニ對シテハ充分ニ愼重ナ態度ヲ以テ
臨マネバナラヌト思フ、然ルニ其重大ナル
國防計畫ヲ政治的ニ解決スル等言フガ如キ
ハ危險此上モナイ素人論デ、眞ニ寒心ニ堪
ヘヌモノデアル」、斯ウ云フコトヲ述べテ居
ラレルノデアリマス、尙ホ花井博士ガ讀マ
レマシタ通リニ大要左ノ如キモノヲ······
「倫敦條約缺陷補充問題ニ就テ」ト云フ標題
デ、讀マレタノデアリマス、「一、倫敦」······
是ハ加藤大將ノ聲明サレタ······他ノ折ニ聲
明サレタ事柄デアリマス「一、倫敦條約ニ
ヨル國防ノ缺陷補充ヲ保留財源中ヨリ三億
七千四百万圓、及右財源外ヨリ五千万圓ヲ
以テスルコトハ、所謂第一次計書デアリ、
旣ニ世間周知ノ事デアリマス、一、此外ニ
第二次補充計畫トシテ總額一億四千万圓位
ノモノガアルノデアリマス、是ハ材料其他
ヲ平常ニ於テ整備シ置キ、短少ノ期間ヲ組
立テ得ルヤウ準備スルモノデアリマシテ、
昭和九年度カラ著手スルコトニナッテ居リ
マス、一、其内容ハ航空隊二隊、驅逐艦四
隻、敷設艦二隻、航空母艦一隻、條約制限
外ノ水雷艇四隻デアリマス、一、元來補充
計畫ハ第一次第二次等ト分割スベキモノデ
ハアリマセヌガ、是ハ政府ノ都合等モアリ
區別スルコトニナッタノデアリマス、一
從ッテ第一次補充計畫ハ緊急絕對ニ必要ナ
ル根幹ヲナスモノノミデアリマス、
此第一次、第二次計畫ノモノ、全部ヲ以テ
初メテ軍事參議院ノ奉答文ノ缺陷補充ニ關
スル內容ヲ具體的ニ整備スルモノデアリマ
シテ、濱口首相モ當然承知デノコトデアリ
マス、一、右第二次計畫ニ就テハ責任ヲ以
テ必ズ實現スルト云フ濱口首相ノ捺印アル
覺書ヲ我ガ海軍ハ取得シテアルノデ、內閣
ノ更迭ガアッテモ決シテ心配ナイモノト信
ジテ居リマス」、右ガ加藤軍事參議官ガ中サ
レタノデアリマス、之ヲ花井博士ガ先日豫
算委員會ノ席上ニ於テ御朗讀ニナッタノデ
アリマス、之ニ對シテ安保海軍大臣ハ「加
藤大將ガサウ云フ事ヲ言ハレタトハ私ハ信
ジマセヌノデアリマス」ト云フ御答ガアッタ
ノデアリマス、私ハ是ハ國ノ大事デアリマ
スカラ、果シテ軍事參議官タル加藤大將ガ
京都ニ於テ斯ノ如キ聲明ヲ發セラレ、又他
ノ場所ニ於テ今讀上ゲマシタヤウナ聲明ヲ
發セラレマシタカニ付キマシテハ、非常ナ
疑ヲ持ッタノデアリマス、若モ是ガ事實デア
ラザルトスルナラバ、何故ニシテ海軍大臣
ハ之ニ對シテ取消ヲサレナカッタノデアリ
マスカ、取消ガナイ所ヲ見ルト事實デアル
ト承知シマシテ、加藤大將ニ對シテ私ハ是
ガ事實デアルカ否カヲ問ウタノデアリマ
ス、加藤大將ハ私ニ御答ガアッタノデアリマ
ス、是ハ軍事參議官トシテノ加藤大將ヲ殺
スカ活カスカノ岐レ路デアリマシテ、私信
デハアリマスケレドモ、私ハ自分ノ責任ヲ
擔ッテ此事ヲ玆デ申上ゲテ宜シイト思フノ
デアリマス、前ノ方ハ全部略シマシテ、全
文ヲ讀上ゲマス、「拜復補充計畫問題ニ關シ
連續眞摯周到ナル御支援帝國海軍ノ爲眞ニ
感謝不能措處ニ御座候貴意之件ニ就テハ安
保海相ニ於テモ眞ニ誠意誠心ヲ以テ事ニ當
リ一身ノ利害ノ如キ況ヤ政府ノ存亡問題ノ
如キヲ度外視シ目下ノ環境ニ於テ海軍ノ爲
最善ヲ盡シ居ルコト小生ヨリ保證致候恐ラ
ク刻下ノ情勢ニ於テ何人ガ立ツトモ海軍ノ
爲安保海相以上ノコトハ斷ジテ不可能ナル
コトヲ御諒承被下度安保海相ハ決シテ自己
ヲ欺カズ海軍ヲモ欺カズ況ヤ上御一人ヲ中
心トシ奉ル前後ノ關係ニ於テヲヤニ御座候
後段數字ノ件ハ」數字ト申シマスノハ敷設
艦ガ二隻ト云フコトガ出テ居リマスカラ、
ソレハ一隻ハ第一次計畫ニアルカラ、第二
次計畫ニハ一隻分ノ誤デハナイカト云フコ
トヲ申上ゲタ點ヲ指サレタノデアリマス、
其「後段數字ノ件ハ阿蘇常盤代艦ノ事ニテ
今囘一隻著手スレバ後ハ一隻ト相成候以上
甚ダ抽象的ナガラ貴酬マデ敬具、三月一日、
加藤寛治、井上〓純宛」斯ノ如キ書面ヲ戴
イタノデアリマス、無論是ハ私信デアリマ
シテ、公ケノ席上ニ於テ之ヲ披瀝スルコト
ハ差控ヘナケレバナラヌモノトハ考ヘマス
ルケレドモガ、加藤大將ハ現ニ軍事參議官
ノ位置ニ居ラレマシテ、此條約ノ終始ニ亙ッ
テ其當面ニ當ラレタ所ノ······重責ヲ荷ハレ
タ所ノ加藤軍事參議官其人ノ言ト云フモノ
ハ、餘程重ク見ナケレバナラヌノデアリマ
ス、私ハ加藤大將カラノ御許可ヲ得ナイデ
御私信ヲ此公開ノ席上ニ於テ開イタコトハ
相濟マヌト考ヘテ居リマスルケレドモ、國
ノ大事ニハ替ヘラレナイノデアリマス、斯
ウチヤント決ッテアル補充計畫ヲ御仕舞ヒ
ニナッテ、今ハ內閣ノ都合上減稅ノ方ニ振向
ケナケレバ、此倫敦條約ガ成功シタルモノ
トハ言ヘナイト云フ御立場ノ爲ニ、强ヒテ
國民ノ眼カラ是ヲ隱シテ置カレテモ、二三
年過ギ、九年ト云ヘバ三年後デアリマス、
三年後ニハ是ガ實現シナケレバナラヌト云
フコトヲ我ミガ承知シテ居ルカラニハ、ド
ウシテモ其財源ハ斯ク〓〓デ以テヤルト云
フコトヲ承ハラヌ限リニ於キマシテハ、是
ガ餘ッタ財源デアルカラ他ニ流用シテモ宜
シイト云フコトガ出テ來ナイノデアリマ
ス、此點ニ付キマシテ安保海相カラ最後ノ
御答辯ガアリマスレバ承ハリマスケレド
モ、强ヒテ海軍大臣ニ私ハ御答辯ヲ要求シ
ナイノデアリマス、大藏大臣モ餘程ヨク御
考ヘニナリマシテ····一內閣ノ一ツノ問
題デハナイノデアリマス、一體海軍條約ハ
大失敗デアッタト云フコトヲ御自覺ナサラ
ナケレバナラヌノデアリマス、サウシテ失
敗ダッタケレドモ、結バレタ條約デアルカ
ラ、最善ノコトヲサレタト云フコトハ、海
軍大臣モサッキ仰セニナッタノデアリマスカ
ラ、此際如實ニ此事ヲ告白サレテ、茲ニ第二
次計畫ト云フモノガ立ツ、ソレデ先ヅ當面
ハ是デ國防ハ全キモノデアルト云フコトヲ
聲明ナサラナケレバナラヌ譯デアラウカト
考ヘルノデアリマス、此點ニ對シテ御所見
ガアリマスレバ承ハリタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=12
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013・湯地幸平
○湯地幸平君 チヨット伺ヒタイ、私モ同ジ
コトデアリマスガ、是ハ海軍大臣モ大藏大
臣モ御考慮ヲ願ヒタイト思フ、第二次計畫
ノ必要デアルト云フ事柄ハ度ミ申シテ居
ル、サウシテ又條約上ノ權利トナッテ居ルモ
ノガマダ此計畫ニ這入ッテ居ラヌ、大體ノ御
見込ハアリサウナモノデアリマス、此豫算
ノ計畫ヲ立テラレルニ於テモ、五年モ十年
モ先ノ計畫ヲ大藏大臣ハ御立テニナッテ居
ラレルガ、ソレデ私ノ希望スル所ハ、海軍
大臣ト大藏大臣ト御相談ノ上ニ、玆ニ其疑
問トナッテ居ルモノヲ玆デ說明セラレナイ
デ此案ヲ進メロト云フコトナラ、私等モ考
ヘナケレバナラヌ、休憩モシナクチヤナラ
ヌカモ知レヌ、ソレニ動議モ劈頭ニ提出ス
ルヤモ知レヌ、併シソレハ計畫デアリマス
カラ其通リ實施トハ違ヒマスガ、其時ニ依ッ
テソレダケ實施ヲシナイデ濟ムカモ知レマ
セヌケレドモ、サウ云フ海軍ニ必要ノ迫ッタ
場合ニ於テ、如何ナルコトヲシテモ是ハシ
ナケレバナラヌト云フ大藏大臣ノ言葉ダケ
デハ、ドウモ少シ不安ダト思フ、例ヘバ救護
法ノヤウナ問題デモ、全國ノ方面委員ガア
レダケ此爲ニ上奏マデモスルト云フ、
デ其費用ノ撿出ノ爲ニハ非常ニ御苦心ニ
ナッテ僅カ七十万圓ノ費用ノ捻出デアリマ
ス、海軍ノ方ノ費用デアリマスルト金額モ
多額ニ上リマスカラ、其時ノ關係デドウデ
モスルト仰シヤッテモ、今日ノ財政狀態ニ於
テハ、ドウモソコハ、ソレヂヤドウカナサ
ルデセウ、ソレデ、安心イタシマスト云フ
譯ニ參ラヌノデス、ソレヲ御說明ニナッタラ
ドウデアリマス、ソレヲ必ズ實施スルト云
フコトデハナイノデアリマス、或ハ何カノ
增稅ニ依ッテソレヲ實施スル際ニハ斯ウ云
フ增稅ノ方法ヲ講ジテ、或ハ行政整理デモ
致ストカ、或ハ增稅ト行政整理デ行ク積リ
デアルトカ、何カソコニ少シ御說明ガナイ
ト、甚ダ物足ラヌヤウニ思フ、今玆ニ卽席
ニハ事柄ガ重大ノ問題デセウカラ要求イタ
シマセヌガ、此點ニ付テ御考慮ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、ソレデ實際ヲ申シマスト云フ
ト、漏レテ居リマス、第二次計畫ノコト
ハ······是ハ事柄モ薄ミ知ッテ居リマスルガ、
漏レテ大體ノ計畫ハ分ッテ居ル人ガ多カラ
ウト思フ、ソレハ此公開ノ席デハ言ヘヌカ
ラ默ッテ居ル、デ先刻來海軍大臣ノ御答辯ニ
依リマスルト、實施ト計晝トヲ混同シテ居
ラレハセナイカ、實施ノ際ニハソレハ其通
リニナリマスケレドモ、相對關係デ歐米ノ
關係モ見テ斯ウ云フ場合ニ於テハ止メテ宜
シ、又其計畫カラ增シテモ宜イト云フコト
モ生ジマス、併シ第二次計畫ガ必要ダト云
フコトヲ明言セラレタ以上ハ、何等ノ計畫
モナク、何等ノ見込モナク、何等ノ財政上
ノ計畫モナクテ、其時ニハヤルト斯ウ仰シ
ヤッテモ、ソレハドウモ進メル譯ニ行カヌヤ
ウニ思ヒマスガ、其減稅ト云フモノガ一年
限リナラ宜シウゴザイマセウ、是ハズット永
年續イテ行ク國家ノ收入ノ減少ニナリマス
カラ、其時ニナッテ又非常ナ困難ナ狀況ニ陷
ル、ソレデ今日私ハソレヲ要求ハ致シマセ
ヌガ、適當ナ機會ニ御相談ノ上ニ大體ノ計
畫デモ仰セ下サレバ仕合セデアリマス、祕
密會ト云フコトニシテ願ッテモ宜シウゴザ
イマス、絕對ニ新聞ニ漏ラサナイト云フ
約束ノ下ニ於テモ宜シウゴザイマス、其點
ハ私ハ希望ヲ述べテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=13
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014・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 チヨット序デデアリマス
カラ井上男爵ノ御答ヲ受クルニ付キマシテ
私ノ希望ヲ述ベテ置キマス、井上男爵ハ我
ガ國防ノ將來ニ付テ非常ニ憂慮セラレマシ
タ結果、只今ノヤウナコトヲ御述ベニナッタ
コトト思フノデアリマス、之ニ付テハ實ハ
私共モ國防ノ將來竝ニ財政ノ將來ニ付キマ
シテハ不安ヲ懷キ憂慮イタシテ居ルノデア
リマス、ソレ故ニ先日モ地租法案ヲ審議ス
ルニ當シテ御迷惑デアルト思ヒマシタケレ
ドモ、海軍大臣ノ御出ヲ願ヒ、又外務大臣
ノ御出ヲ願ッテ對外關係ノ上カラ見マシテ
モ、日本ノ國防ガドウ云フ風ニナルカ、ソ
レニ依ッテ國家ノ財政ト云フモノヲ考慮シ
テ行カネバナラヌ、斯ウ云フ風ニ考ヘマシ
タノデ、海軍大臣ニハ甚ダ御迷惑デアラウト
思ヒマシタケレドモ、ソレカラ又同ジヤウナ
コトヲ何時モ何時モ答ヘテ居ルト云フコトデ
アリマシタガ、其點ニ付テハ我ミノ疑ガ十
分ニ解ケテナイ、デアリマスカラ之ニ付テ
ハ齊シク我ミハ國家ノ事ヲ審議シテ居ルノ
デアリマスカラ、政府ト云ハズ、我ミト云ハ
ズ、共ニ倶ニ胸襟ヲ開イテ打解ケテ十分ナ
ル御話ヲ得タイト思ッテ居ルノデアリマス、
只今マデノ御答ハ、一應ハ御答ニナッテ居ル
ト思フ、併シ其間ニ靴ヲ隔テテ痒キヲ搔ク
感ガアルノデアリマス、時ニハ此點ハマダ
言ヘヌトカ、政府部內ノコトハ話ガ出來ヌ
トカ云フヤウナ答モアリマシタガ、是モ必
シモ無理トハ申シマセヌケレドモ、併シ我
我ガ斯ク迄ニ心配ヲシテ居ルノデアルト云
フコトヲ能ク御諒察下サレテ、モウ少シ打
解ケタ御答ヲ私ハ受ケタイト思フ、我ミハ
今減稅案ナルモノヲ審議シ、而シテ此減稅
ト云フモノハ國費ノ方カラ申シマスレバ一
億三千四百万圓デスカ、平年度ニ於キマシ
テ二千五百万圓宛減少シテ行クノデアリマ
ス、國民ノ負擔ヲ輕減スル、民力ヲ休養ス
ルト云フコトノ必要ナルコトハ、ドコ迄モ
之ヲ認メテ居ルノデス、寧ロ此度ノ減稅ト
申スコトハ低キニ失シテ居ル、出來得ベク
ンバ、ヨリ以上ノ減稅ヲシテ國民ノ負擔ヲ
輕減シタイト云フ考ハ山〓持ッテ居ルノデ
アリマス、ソレ故ニ案ノ趣旨ニハ敢テ反對
ハ致シマセヌ、併ナガラ他ノ一面ヲ考ヘマ
スルト云フト、國防問題殊ニ海軍ノ問題ニ
付キマシテハ種々ノ論議ガアルノデアリマ
ス、昨年以來色ミナ問題ガ出、是ガ爲ニ紛
爭ヲ來タシタコトハ實ニ國家ノ爲ニ遺憾デ
アルト思ッテ居ルノデアリマス、併シサウ云
フ問題ガ起ッテ、サウ云フ爭ノアッタト云フ
コトハ、是ハ蔽フベカラザルコトナンデス、
ソレ故ニ今後ドウ云フ風ニナッテ行クカト
云フコトニ付キマシテハ、國民トシテモ、
殊ニ我ミノ心配スルノハ無理ノナイコトデ
アル、其點カラシテ井上男爵ガ、詳シイ而
モ或點ニ於テハ祕密デアリマスルガ、サウ
云フコト迄モ打明ケテ御話ニナッタ、實ハ私
共モ初メテ聞イタヤウナコトモアルノデア
リマス、要スルニ問題ハ今日ノ詰リ計畫三
億七千四百万圓デスカ、此度豫算ニ出タ此
計畫ヲ以テ我ガ海軍ノ將來ハ差支ヘナイノ
デアルカドウカ、斯ウ云フ事柄ノ疑デアリ
マスルガ、海軍大臣ハ國防ノ根幹ニハ差支
ヘナイト云フコトヲ仰シヤル、國防ノ根幹
ト云フコトハ、ドウ云フ意味カ分リマセヌ
ケレドモ、要スルニ所謂根幹デアリマスル
カラ、國防ノ根トナリ幹トナルコト迄ハ兎
ニ角ソレダケハ宜イ、兎ニ角ソレダケノコ
トハドウカシテ行ケルダラウト云フコトガ
海軍ノ一致シタ御意見デアル、成程サウ云
フコトガ海軍ノ方面ノ救術的方面カラ出來
テ行ケバ我〓素人ガ何等申ス所ハナイ、併
シ之ヲ以テ足レリトシテ居ラヌト云フコト
ハ、是ハ海軍大臣モ言ッテ居ル、ソレデアリ
マスカラ第二次計畫ト云フヤウナ言葉ガ出
テ、其計畫ト云フモノハヤッテ行カネバナラ
ヌト云フコトヲ言フ、ソレ故ニ今日デハ根
幹ト云フモノガ出來テ居ルノデアリマセウ
ケレドモ、其根幹ガマダ本當ノ根幹デナイ、
之ニ更ニモウ一ツ枝ヲ附ケナケレバナラ
又、モウ一ツ幹ノアル所ニ何カ附加ヘナケ
レバナラヌ、是ガ出來ナケレバイカヌト云
フコトハ、是ハ私ハ海軍大臣モ御認メニナ
ルコトト思フ、ソレデアリマスカラ將來所
謂第二次計畫、詰リ此度計畫サレテ居ル外
ノ計畫ト云フモノヲ立テナケレバナラヌ、
是ハ御認メニナルコトニ決マッテ居ルノデ
アリマス、ソレ故ニ本當ノ根幹ヂヤナイ、
モウ一ツ根幹ニ何カ附ケナケレバナラヌノ
デアル、是ハ確ニ御話ニナッテ居ル、而シテ
其根幹ニ附加スベキモノハ何時カラデアル
カ、又ドウ云フモノデアルカト云フト、海
軍大臣ハ時期竝ニ其計畫ノ內容ハマダ決マッ
テ居ラヌカラ、今カラソレハドウ云フ風ニ
スルト言フコトハ出來ナイト仰シヤル、ソ
レモ成程サウ云フ風ナコトニ認メルケレド
〓、時期及內容ハ分ラヌト云ッテモ、兎ニ角
何カ附ケナケレバナラヌ、是ダケハ御認メ
ニナッテ居ルコトト思フ、何カヲ附ケナケレ
バナラヌ、其何カガ何デアルカト云フコト
ヲ私共承リタイガ、ソレハマダ決マッテ居ラ
ヌト云フノデアル、ソレハ私ハ詳シイコト
ハ伺ハウトハ思ハナイ、サウ云フヤウニ根
幹ガ出來タガ、其根幹ニ何カ附加セネバナ
ラヌト云フコトノ必要ガアルト云フコト
ハ、是ハ蔽フベカラザル事實デアル、而シ
テソレガ何時カラ出ルカト云フト、先程、
井上男爵ノ御話ニ依レバ昭和九年カラソレ
ハ頭ヲ出シテ來ルト云フコトデアル、是モ
時期ハ私モ能ク分ラナイ、併ナガラ要スル
ニ昭和十一年前ニハ之ニ付テ著手セラレネ
バ相成ラヌ、ソレガ昭和九年ニナリマスカ、
昭和十年ニナリマスカ分リマセヌガ、要ス
ルニ昭和十一年前ニ之ヲ御實行ニ相成ラナ
ケレバナラヌ、昭和九年ト致シマスレバ三
年後デゴザイマス、サウスルト昭和八年ノ
豫算ト云フコトニ直グニ關係シテ來ル、昭
和十年トスレバ昭和九年ノ豫算ニ關係シテ
來ルコトヲ考ヘナケレバナラヌト云フコト
ニナル、ソレハ卽チ財政ニ關係スル、金二
關係スルト云フコトニナル、其金ハドウ云
フ風ニ作ッテ行カレルカト云フコトハ、是ハ
大藏大臣モ言ハレテ居リマスガ、ソレハ今
ハ考ヘテ居ラナイ、其必要ハアルカモ知レ
ヌケレドモ、今日カラマダ其計畫モ確定シ
テ居ルノデナイカラ、サウ云フ金ヲ今カラ
取ッテ置クト云フコトハ出來ナイカラ、ソレ
ニ付テハ何等考慮シテ居ラナイト云フコト
デアル、而シテ之ニ付テハ海軍大臣モ御同
意ニ相成ッテ居リマス、御同意ト云フノハ、
計畫ヲスルト云フコトハ、御話ニナッテ、併
ナガラ金ヲドウスルト云フコトハ、是ハ今
カラ豫定ハ出來ナイ、ソレハ已ムヲ得マセ
ヌ、斯ウ云フコトニ相成ッテ居ルノデアラウ
ト思フ、ソコガ卽チ我ミガ心配スル所デア
リマス、昭和九年デアリマスルカ、昭和十年
デアリマスルカ、ソレハ分リマセヌガ、要
スルニ世間デ言フ第二次計畫、卽チ今日ノ
根幹ニ何カ附加セネバナラヌト云フ計畫、
其金ハドノ位デアルカト云フト、先程井上
男爵ガ言ハレタノハ一億四千万圓、併シ是
ハ何所カラ出ク數字カ知ラヌケレドモ、我
我ノ頭ニモ一億四千万圓ト云フヤウナコト
ガ時〓觸レテ來ル、併シ是ハ私ハ海軍大臣
ノ御言葉ヲ信ジテ今サウ云フコトハ決マッ
テ居ラヌト思フ、今カラチヤントドウ云フ
艦種ヲ造ッテドウヤルト云フコトハ決ッテ居
ラナイデ、此二三年間ニ十分ニ〓究ヲシテ
ヤラナケレバナラヌ、ソレガ一億四千万圓
ニナルカ、一億三千万圓ニナルカ、將タ一
億ニナルカ、ソコハ分ラヌケレドモ、兎ニ
角其近所、其額ニ近イ所ノ金ガ要ルト云フ
コトハ、是ハ間違ヒナイコトデアル、ソレ
故ニ私ハ推測イタシマスルニ、恐ラクハ其
事ハ海軍大臣モ責任ヲ有タレテ内閣エ於テ
モ話ヲサレ、首相ニモ話ヲサレ、大藏大臣
ニモ十分話ヲサレテ居ルコトト思フ、海軍
大臣ガ無責任ニソンナコトハ今考ヘテ居ラ
ヌ、先ハ先ダ、斯ウ云フヤウナコトハ決シ
テ御考ヘニナッテ居ラナイデ、十分ニ其點ハ
考慮シテ、總理大臣ニモ話ヲシ、大藏大臣
ニモ話ヲシ、何カ玆ニ一札ヲ入レチ居ルト
カ何トカ云フヤウナコトモ言ッテ居ル、是ハ
甚ダオカシナ話デ、ソンナコトハ有ルカ無
イカ知レヌガ、サウ云フコトノ空氣ガ何所
カラカ出テ來テ居ル、併シ是ハ私ハ斯ウ考
ヘル、海軍大臣トシテハ昭和九年ニナルカ、
昭和十年ニナルカ、此先キ三四年後ニハ
所謂第二次計畫ト云フモノハ、是ハ何トシ
テモ造ラナケレバナリマセヌ、ソレニ付テ
ノ豫算ト云フモノヲ考ヘテ置イテ貰ヒタ
イ、財源ヲ一ツ貰ヒタイト云フ話ハ必ズナ
スッタラウト思フ、併シ其財源ハ今カラ作ッ
テ行クコトハ出來ヌ、一面ニハ減稅モシナケ
レバナラヌ、ソレハ今カラ作ッテ置ク譯ニハ
行カナイ、若シソレガ行カナイノナラバ、
昭和九年カ十年ニナッテ其計畫ヲスル時ニ
ドウシテ下サルカ、是マデノ念ハ押サレテ
居ルト思フ、其時ニ大藏大臣モ總理大臣モ、
イヤ、ソレハ其時ニナッタラ其時ニドウカス
ル、必ズ工夫ヲスル、若シ國防上是非必要
ナリトスルナラバ、其時ニナッタナラバ、各
省ノ他ノ費用ヲ減シテモ其財源ハ作ラウ、
又增稅ノコトモ言ハレタカドウカ知ラヌ
ガ、增稅モ必要ナラバ致サウ······恐ラクソ
レハ其時ノ事柄デ、今カラサウ云フコトヲ
言ハヌデモ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フヤウ
ナコトヲ大藏大臣モ言ハレ、總理大臣モ言
ハレタラウト思フ、サウスルト海軍大臣ハ
其時ハドウカシテヤル、斯ウ云フノデアル
カラ、其金ヲドウシテ下サルカ、其金ヲ積
ンデ置イテ吳レ、斯ウ云フヤウナコトマデ
モ言ヘナイノデアルカラ、ソコヘ行ケバ、
總理大臣ナリ、大藏大臣ヲ信賴シテ置クノ
外ハナイ、故ニ今日トシテハ三億七千万圓
デスカ、ソレダケノ金額ヲ以テ滿足シテ、
ソレデ後ノコトハ後ノコトデ考ヘヤウ、是
ダケノ兎ニ角首相竝ニ藏相ノ言質ヲ取ッテ
置クノデアルカラ、已ムヲ得ズ滿足シテ置
クノ外ハナイ、又ソレデ海軍部內ノ人モ慰
安ニナッタラウト、斯ウ思フ、此處ヲ井上男
爵ハ御心配ニナルノデアル、併シ私ガ考へ
ルノニ、ソレガ事實ヂヤナイカト思フ、所
ガ其時ニナッテドウカスルト云フコトニナツ
テ來ルト、ドウモ大藏大臣ナリ總理大臣ガ
サウ言フノダカラ、ソレ以上ノコトハ出來
ヌカラ、已ムヲ得マイ、斯ウ云ッタコトデ、
我ミニ說明スル所ノ根幹ガ出來タノダ、併
シ將來ノコトハ將來ノコトデ以テ何トカ考
ヘルノダ、斯ウ云フコトデ行クノ外ハナイ、
斯ウ云フコトデハナイカト思フ、詰リ言葉
ヲ換ヘテ言ヘバ、海軍大臣ガ昭和八年カ九
年ニソレダケノ費用モ要スルト云フコトハ
頭ニ入ッテ居ルト思フ、一億四千万圓、一億
三千万圓、サウ云フコトハ今ハ言ヘマセヌ
ガ、併シ大凡一億四千万圓、其位ノ計畫ハ
海軍デ立ッテ居ラヌ筈ハナイ、凡ソハ立ッテ
居ルケレドモ、併シ是ハ豫想デアル、カラ、
ドウナルカ、今カラ言ヘヌト云フコトデ、
我ミニハ御說明ニナラヌノデアリマス、ソ
レモ已ムヲ得マセヌケレドモ、其費用ハ今
言ッタ通リニ、首相ナリ、大藏大臣ナリカラ
一札モ取ッテ居ルカモ知レナイ、サウ言フ
トサウ云フコトハ何レ其時ニ於テ考慮ス
ベキコトデアルト云フ位ノ返事ハ御貰ヒニ
ナッテ居ルカモ知レナイト思フ、唯私ガ心配
スルノハ、サウ云フヤウナコトハ過去ニモ
能クアッタ譯デハアリマスガ、此二三年ノ財
政計畫ガドウ云フ風ニナッテ行クカ分ラヌ、
段々景氣ガ囘復シ、自然增收ガ出來、剩餘
金ガ出來タヤウナ場合ニハ、今ノ一億圓カ
一億四千万圓ハ、是ハ容易ニ出シ得ルデア
ラウ、是ハ三四年先キノコトデアルカラ、
ドウ云フコトニナルカ知レマセヌケレド
モ、先ヅ當分ハ自然增收ト云フモノモ剩餘
金モサウ餘計出テ來ナイ、寧ロ私ハ來年度
ハ自然減收デハナイカト思ヒマス、サウナ
リマスト、昭和九年カ十年カノ豫算ヲ編成
スル內閣ト云フモノガ非常ナ苦境ニ陷ル、
今ノ大藏大臣、今ノ總理大臣ガ居ラレタ場
合ニハ、ソレハ何トカ爲サレマセウガ、其
將來ヲ考ヘマスト、私ハ是ハ政治上ニ於テ
モ餘程困難ガ生ジテ來ルト思フノデアリマ
ス、併シ今ハサウ云フ御考デアルトシマシ
テ、是ハ加藤友三郞君ガ海軍大臣タリシ時
ニアノ艦艇計畫ヲ立テタ、其時ニ財源ハド
ウスルカト云フコトヲ能ク突込ンダ、殊ニ
私共ハ其點ニ付テ突込ンダ、其時ノ大藏大
臣ハ武富時敏君デアッタガ、ソレハ何トカス
ル、斯ウ云フコトデアリマス、私ハ海軍大
臣ニ向ッテ國防上是非必要デアルト云フナ
ラバ、何故ニ、其財源マデモ突込マナイカ、
斯ウ云フ質問ヲシタラ、是ハ國防上必要デ
アル、併ナガラ財源ハ大藏大臣ガドウトカ
スルト言フカラ、大藏大臣ヲ信賴シタ、ソレ
カラ私ハ大藏大臣ニ、海軍大臣ハ斯ウ言フ
ノデアルガ、大藏大臣ハドウ爲サルカ、斯ウ
言ッタラ、其時ニ武富大藏大臣ハ、最善ノ努
力ヲ盡ス、最善ノ努力ヲ盡シマスト云フコ
トノ一言ヲ以テ最後マデ突張ッタ、內容ヲモ
ウ少シ示シテ吳レ、イヤ內容ハ示スコトハ
出來ヌ、最善ノ努力ヲ盡ス、ソコデアノ貴
族院ニ於テ減債基金半減ト云フ問題モ出マ
スレバ種々ノ話モアッタノデアリマス、露ト
尾花トガ互ニ相親ンデ居ルダケデ、露ト尾
花ノ間ノ話ト云フモノハ世間ニハ言ヘナイ
ノダ、斯ウ云フ狂歌スラ出來タト云フヤウ
ナ歷史スラモアル、丁度今ノ情勢ハサウ云
フヤウナコトデハナイカト私ハ考ヘル、玆
ニ於テ井上君ナドハ非常ニ此點ニ付テ心カ
ラ憂慮セラレテ居ルノデアリマス、果シテ
是ガ國家ノ爲ニ是デ宜イカドウカト云フコ
トヲ心カラ憂ヘラレテ居ルノデアリマス、
私モ其點ニ付テハ憂ヲ同ジウスルノデアリ
マスガ、ソコデドウモ私ハ鎧兜ヲ脫〃テ、眞
裸ニハナレヌニシテモ、少クトモ「チヨッキ」
位ハ脫ヲテ、釦ヲ外シテ、モウ少シ話ヲシテ
下スッテ、サウシテ我ミモ、サウ云フコトデ
アレバ已ムヲ得マイト云フヤウナ所ノ御話
ヲ承ルヤウニシタイト思フノデアリマス、丁
度今井上君カラ御話ガ出マシタカラ、御話
ヲ申上ゲテ置キマス、併シ今デナクテモ宜
シウゴサイマス、能ク御相談ヲナスッタ上デ
宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=14
-
015・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 只今井上男爵
カラ御話ガアリ、湯地君ヨリモ今返事ヲ爲
サラヌデモ宜シイ、又水野君モ之ヲ敷衍シ
テ御要求デゴザイマスガ、如何デゴザイマ
セウカ、兩大臣ニ於テハ別ニ御相談ナクシ
テ直グ御返事ガ出來マセウカ、若シ出來マ
スレバ直チニ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=15
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016・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 直グ申上ゲ
マセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=16
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017・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 湯地君ガ居ラ
レナイガ、ドウシマセウカ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=17
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018・水野錬太郎
○水野錬太郞君 湯地君モ呼バレタ方ガ宜
イ、折角聽キタイト云フコトデアルカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=18
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019・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 如何デアリマ
セウカ、ソレデハ湯地君モ居ラレマセヌシ
時間モ迫ヲテ居リマスカラ、是デ休憩シテ午
後一時ヨリ開會シテ如何デゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=19
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020・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレデハ休憩
イタシマス
午前十一時四十一分休憩
午後一時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=20
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021・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 休憩前ニ引續
キ開會イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=21
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022・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 會期ガ切迫シテ參リマ
シタガ、豫算總會デ凡ソ質問ノ順序ヲ委員
長ガ御決メニナリマシタガ、必ズシモ其通
リニ守レヌ場合ガアリマスカ知リマセヌガ、
凡ソ大體ノ質問ヲ一度終リ、又各法案ニ付
テノ質問應答ヲ終ッテ、何レ討論ニ移ルト云
フヤウナ風ニ御決メ願ヘマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=22
-
023・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 私ハ何モ思ッ
テ居リマセヌカラ、御提議ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=23
-
024・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 ソレハ質問ニ依リハシマ
セヌガ、其程度範圍ヲ限ッテ模樣ニ依ッテ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=24
-
025・藤田四郎
○藤田四郞君 別段强イタル意見モゴザイ
マセヌガ、海軍問題ハ今日ダケニ止メテ十
二時マデ掛ッテモヤルト云フコトニシテ、ア
トハ質問ヲ爲サッタラ如何デスカ、凡ソ海軍
ノ方ハ何遍モ蒸返シマストナカ〓〓限リハ
ナイダラウト思ヒマス、今日ハ海軍ノ問題
ハ一應質問ヲ終ッテ、サウシテ逐條ノ質問ヲ
始メルト云フコトニ······軍縮問題ダケハ今
日デ止メタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=25
-
026・森田福市
○森田福市君 長岡君ガ海軍大臣ニ質問申
シタイト言ッテ居ラレマシタガ、今日ハ見エ
テ居リマセヌガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=26
-
027・伊澤多喜男
○伊澤多喜男君 藤田君ト同樣ノ考ヲ持ッ
テ居リマス、長岡君ノ外ニモ默ッテ居ル人モ
澤山アリマスカラシテ、ソレ〓〓質問ナサ
ルヤウナ方ガアラウト存ジマス、矢張リ大
體海軍問題ハ長ク掛リマスカラ、海軍ハ是
テ〓〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=27
-
028・井上清純
○男爵井上〓純君 色ミ御話ガアリマシタ
ガ、質問ト云フモノハ關聯シテ居ルモノデ
アリマシテ、海軍問題ニ限ラレテ今日以後
ハスルコトハ出來ナイ、是カラ先ハ內務大
臣ノ質問應答、是カラ先キハ大藏大臣ノ質
問應答ダ、サウ云フモノヂヤナイダラウト
思ヒマス、一體減稅案ト申スモノハ、關係
スル所、凡ソ是ハ殆ド內閣ノ全部ニ關係ス
ルモノデナイカト思ヒマス、又恐ラクハ此
內閣ノ死命ヲ制スルヤウナ問題デアルカモ
知レヌ、サウ云フ大キナ問題デ、殊ニ國民
全般ニ及ボス所ノ關係アル問題デアリマス
カラ、隨時ニ各大臣ニ質問スル自由ヲ委員
ニ御許シ下サラヌ限リ、此重要ナル問題ヲ
審議スル上ニ於テ非常ニ困難ヲ感ズルコト
ニナルダラウト思ヒマス、今ノ制限サレタ
所ノ御提案ヲ委員諸君カラ御出シニナルト
云フコトハ甚ダ不可解ダト考ヘルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=28
-
029・伊澤多喜男
○伊澤多喜男君 私共ガ只今ノ事ヲ申上ゲ
マシタノハ、要スルニ各國務大臣、各政府
委員ガ單リ此委員會ノミニ關係アルノデハ
ナク、アチラコチラニ引張ラレル、ソレデ
矢張リ豫算委員會デ大體ノ順序ヲ付ケルト
云フコトモ其必要カラ來ル、矢張リ同ジヤ
ウナ意味合ヒニ於テ、矢張リ纒メテヤリマ
セヌト、自他ノ爲ニ、委員會ノ爲ニ、政府
ノ爲ニ、非常ニ迷惑ト思フノデス、阪谷君
ノ御意見モ大體サウ云フコトダラウト思フ、
彼レ此レ私共ハ質問サレルコトヲ制限ス
ル、ソンナ卑劣サ考ハ有,テ居リマセヌ、成
ベク時間ヲ有益ニ使フト云フコトカラ、サ
ウ云フコトガ必要デアラウト思フ、ソレデ
只今藤田君ニ贊成シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=29
-
030・藤田四郎
○藤田四郞君 私ハ何モ今日海軍ノ質問ヲ
終ッタラ、モウ海軍ノ質問ヲシテハナラヌト
云フ意味ヲ申シタノデハナイ、今申上ゲタ
ノハ軍縮關係ノコトニ付テ大分豫算委員會
デモ委員方カラ聞イテ居リマスシ、又此案
ニ付テ重大ナ法律其モノノ問題ニ付テ聞カ
ヌナラヌコトガ澤山アルト思ヒマス、ソレ
デ申シタ譯デアリマスカラ、此上ハ委員長
ニ御一任イタシマシテ臨機御取計ヒヲ願ヒ
マス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=30
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031・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 井上サンニ御
相談シマスガ、玆デアナタノ御聽キニナル
コトヲ御制限申上ゲルノデハナイノデアリ
マシテ、マダ追加豫算ノ豫算委員會モアリ
マス、成ベクサウ云フ御考デ、又其場合ニ
御質問ガ出マセウカラ其點御考慮ヲ願ヲテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=31
-
032・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 私ハ藤田君ト同ジヤウニ
打切ルト云フタカラトテ、モウ其問題ヲ言ッ
テハナラヌト云フ意味デハナイ、是ハ稅源、
財源ニ關スル問題デアッテ、此財源ニ關聯シ
テ海軍ノコトヲ聞カナケレバナラヌコトモ
アルシ、內務省ノコトモ聞カナケレバナラ
ヌシ、農林省ノコトモ聞カナケレバナラヌ
コトモアラウ、ソレニ牽聯シテ斯ウ云フ點
ヲ確メテ置カナケレバナラヌト云フ事實ガ
生ジテ來タ以上、其時ニ任カシテ必要ニ應
ジテヤルコトニシタラ如何デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=32
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033・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 今日、海軍問
題ヲ打切ルト云フコトガ出マシテモ、ソレ
ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=33
-
034・藤田四郎
○藤田四郞君 ソレハ委員長ニ御任セシマ
ス、尙ホ各位デ、モウ少シ質問シテ聞カナ
ケレバナラヌト云フコトニナレバ繼續ナ
スッテモ宜カラウシ、外ノモノヲヤッテ又問
題ガモウ一遍出テ來ルト云フコトニナッテ
モ決シテ苦情ヲ申スノデハナイノデアリマ
ス、大體ノ精神ヲ申上ゲタノデスカラドウ
ゾ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=34
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035・伊澤多喜男
○伊澤多喜男君 藤田君ト同樣ナ考デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=35
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036・森田福市
○森田福市君 藤田サンノ御話ノ通リニ贊
成デス、只ドノ大臣ニハ今日ニ限リ出來ヌ
ト云フコトノナイヤウニ、又イツデモ隨時
ニ質問ハ出來ルノデアリマスカラ、其事ヲ
御考慮ヲ願ノテ藤田サンニ贊成デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=36
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037・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレハ委員長
ガ含ンデ居リマスカラ皆サン其意味デ御質
問ヲ願ヒマス、海軍大臣御答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=37
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038・安保清種
○國務大臣(安保〓種君) 午前ニ御質問ニ
ナリマシタ井上男爵、ソレカラ湯地サント、
ソレカラ水野サンノズット關聯シタ御尋デ
アリマシタ、ソレヲ一ツニ纒メテ御返事ヲ
申上ゲタイト思ヒマス、先程能ク大藏大臣
トモ相談ヲシテ緩ックリ答ヘラレテモ宜イ
ト云フヤウナ意味ノ御話ガアリマシタノデ
アリマスルガ、此件ニ付キマシテハ十分ニ
私ノ方トシマシテハ、當局トシマシテハ愼
重審議ノ結果、提案ヲ致シテ居リマスルノ
デアリマシテ、其場デ直グ御答ヲ申上ゲヤ
ウト思ヒマシタガ、色ミノ關係上、午後ニ
延ビマシタヤウナ譯デアリマス、先ヅ井上
男爵カラ加藤大將ノ新聞ニ述ベラレタコ
ト、又私信等マデ讀ミ上ゲラレマシテ段々
ノ御尋ガアリマシタガ、私信ニマデ觸レテ
ノコトハ、是ハ私ハソレニ觸レナイ方ガ宜
カラウト存ジマス、第二次計畫ト云フモノ
ニ付テ段々ト御尋ガアリマシテ、權利ト云
フモノヲ、倫敦條約ニ於テ得タ權利ヲ全部
行使シテモ尙且ツ兵力ニ不足ガアルト云フ
ノデアルノニ、其權利ヲ幾分カデモ殘シテ
置クト云フコトハ當ヲ得ナイ、ドウシテモ
其權利ヲ全部行使スルト云フコトヲ含ンデ
始メテ完全ナル計畫ニナルノデハナイカト
云フヤウナ意味ノ御尋デアリマシタガ、是
ハ昨日モ御答ヲ申上ゲタト存ジマスルシ、
ソレカラ先程モ第一ノ井上男爵ノ御尋ノ時
モ、ソレニ關シテ御答ヲ申上ゲタカト存ジ
マスルガ、兎モ角、條約ニ現レマシタ各國
ノ權利ト申シマスルノハ、其國デ行使シ得
ル最上限ノモノガ決メラレテアルコトハ申
ス迄モナイ所デアリマシテ從テ之ヲ兵力量
ノ中ニ或兵種ニ不足アリト申シマスノハ、
卽チ倫敦會議ニ帝國ノ主張イタシマシタ三
大主張ト云フモノノ中ニ、八吋巡洋艦、潜
水艦ノ現有量ト云フモノガ其所期ニ達セナ
カッタト云フ所ニ、卽チ缺陷ノアルト云フコ
トハ、是ハ御承知ノ通リデアルノデアリマ
ス、從テ此度ノ計畫ニ於キマシテ、卽チ骨
幹ト云フコトヲ屢、申上ゲマシタガ、骨幹
モソレニ肉ガ附カナケレバ何ニモナラヌヂ
ヤナイカト云フ御話モアリマスガ、卽チ其
骨幹ト云フモノハ、大切ナ、缺ケテ居ル所
ガアルノヲ是非補フ上ニ於テ第一必要ナモ
ノハ、潜水艦モ許サレテ居ル量ノ全部ヲ行
使スルト云フコトニ致シテ居リマスルシ、
ソレカラ六吋巡洋艦デハ八吋巡洋艦ノ補ヒ
ニハ全クナラヌト云フ段々昨日カラノ御議
論モアリマシタガ、是ハ色〓細カク申シマ
スルト、ナカ〓〓專門ニ涉ッテムヅカシイ問
題ニモナリマスル、所謂豫算ノ分科會ニ於
テ速記ヲ止メテノ懇談會デモ段々御話ヲ申
上ゲマシタヤウニ八吋巡洋艦其モノヲ直チ
ニ六吋巡洋艦ヲ以テ、船對船ノ艦對艦ダケ
デ補ヒ得ベシトハ信ジテ居リマセヌケレド
モ、此度計畫イタシマシタ六吋巡洋艦ト云
フモノハ、サウ云フ點ニ相當有力ナル補ヒ
ヲ爲シ得ルト云フ意味ニ於テ、特ニ考慮ヲ
用ヒテ大體ノ計畫ヲシ、又是カラモ〓究ヲ
進メムトシツヽアリマスル所デアリマス、
ソレカラ潜水艦ト云フヤウナモノニ付キマ
シテハ是モ詳シク申上ゲタノデアリマスル
ガ、同ジ噸數デアリマスケレドモ、此同ジ
噸數ヲ種々ノ方法ヲ以テ內容充實ト云フヤ
ウナコトヲヤッテ、戰時トカ必要ノ場合ニハ
持ッテ居ル分量ノ出來ルダケ多クノモノガ
活動ガ出來ルヤウニシテ、卽チ本當ノ實力
ニ於キマシテハ從來ノ七万八千噸ト云フモ
ノマデニハ達セナクテモ、ソレニ成ベク近
イ所ノ活動ノ出來ルヤウニモ方法ヲ取リマ
スルトカ、又航空隊ノ補ヒト云フモノハ卽
チ航空隊ヲ以テ遠クカラ敵ノ動靜ヲ探知ス
ルコトガ出來ルノデアリマスカラ、敵ノ狀
況ニ應ジテ、或一地區ヲ警戒スル潜水艦ト
云フモノハ、從來或ハ水道ヲ警戒スルノニ
十艘ガ十艘ヲ是非トモ必要トスルモノヲ遠
クカラ敵情ヲ偵察シ得ラレヽバ、ソレヲ七
艘ナラ七艘ヲ以テ其警戒ノ任務ヲ果シ得ラ
レルト云フヤウナ意味ノコトモ考慮シテ、
其處ニ航空隊ト云フモノヽ補ヒヲ致シタ、
卽チ兵力ノ或種ニ於ケル不足ト云フモノノ
補ヒト云フモノハ此度其骨幹ヲ揃ヘタト云
フ中ニハ十分ソレヲ考慮シテ備ヘマシタ次
第デアリマス、ソレデ各國ノ狀況ニ依ルト
云フコトハ幾度モ申上ゲマスルケレドモ、
サウ云フ意味ニ於キマシテ此全部ヲ行使シ
タ場合ニ、コチラノ全部ヲ行使シテモ或ル
種ノ兵力ニ不足ガアルト云フ、斯ウ云フノ
デアリマシテ、例ヘバ驅逐艦ノ如キハ若シ
三大主張ガ通リマスレバ、今迄ノ分量ヨリ
ハ六吋巡洋艦及潛水艦ニ於テハ四万一千噸
ダケハ少イノデアリマス、四万一千噸ダケ
少クテ甘ンジナケレバナラナイノデアリマ
スガ、此度ノハ卽チ六吋巡洋艦ト驅逐艦ニ
於テ四万一千噸ダケ三大主張ノ場合ヨリ殖
エテ居ル、サウ云フモノヲ以テモ矢張リ補
ヒガ相當付キ得ルノデアル、其補ヒガ付キ
得ル中ニモ、驅逐艦ト云フヤウナモノハ今
直グニ造ラヌデモ、十八隻造リ得ル權利ノ
中ヲ十二艘造ノテ、他ノ六隻ト云フモノハ急
造モ出來ルコトデアルカラ、若干後ニ延バ
スト云フコトハ、是ハ自ラ財政ノ事柄トモ
調節イタシマシテ、必ズシモ不可能ノコト
デハナイト考ヘマス、尙ホ又此序デニ權利
行使ト云フコトニ付テ申上ゲマスルガ、巡
洋艦ノ方ハ別ト致シマシテ、航空母艦ト云
フモノニ付テ亞米利加ガ段々造ヲテ行ク、亞
米利加ニ對スル日本ノ立場トシテ······巡洋
艦ガ、是ハ倫敦會議デハアリマセヌ、華盛
頓會議デアリマスケレドモ、一万二千噸尙
ホ造リ得ル、何故造ラナイカ、斯ウ云フ御
話デアリマスケレドモ、是ハ幾度モ申上ゲ
タト存ジマスルガ、今現ニ龍驤ト云フモノ
ヲ建造シテ居リマシテ、四月初メニソレガ
進水スルト云フ狀況ニナッテ居ルノデアリ
やく、而シテ玆ニ殘シテアル一万二千噸ト
云フモノヲ此度若シ使ヒマスレバ、日本ノ
八万千噸ノ持分ト云フモノハ殆ド······殆ド
デハアリマセヌ、全部塡メラレテ仕舞ヒマス
カラ、是カラ十數年ニ亙ッテ最早航空母艦ト
云フモノヲ新シク造ルコトガ出來ナイノデ
アリマス、從ッテ航空母艦ト云フモノハ極メ
テ大切ナモノデアッテ、亞米利加等デ以テ今
モ一艘建造中デアリマスガ、一万三千噸ノ
モノヲ······サウ云フモノアタリノ狀況モ見、
ソレカラ又三隻モ四隻モ亞米利加ノ方デハ
造ラナケレバ亞米利加ノ持分ノ十三万噸ニ
ハナラナイノデアリマス、サウ云フヤウナ
將來モウ少シ見極メヲ付ケテカラ、最モ日
本ノ作戰計畫ノ中ニ適應スルヤウナ艦種ヲ
選ンデ拵ヘルト云フコトヲ寧ロ適當トスル
ト云フヤウナ意味モアリマシテ、航空母艦
ト云フモノハ若干年後ニ延バスト云フコト
ニ致シテ居リマス譯デアリマス、機雷敷設
艦ト云フヤウナモノニ付キマシテモ、今八
重山ト云フモノガ建造中デアルカラ、此度
一隻計畫シテ卽チモウ一隻造リ得ル權利
ハアリマスケレドモ、之モマダモ少シ年月
ヲ延バシテ後ニ計畫ニ著手スルコトヲ適當
トスルト云フヤウナ意味モアリマシテ、決
シテ不用トハ考テハ居ラヌ、絕對必要ト
ハ思ヒマスガ、今日ノ此計畫ノ中ニ是非
組入レテヤラナケレバナラヌ程デナク、寧
ロ暫ク年月ノ經ッタ後ニ新シイ計畫ヲ樹
テタ方ガ適當ト云フモノハ後ニ延バシテ、
ソレヲ卽チ緊急已ムヲ得ズ計畫シタモノノ
骨幹ト云フモノト、後ニ若干延バシテ宜イ
モノト、其處ニ若干區別ヲ付ケマシテ計畫
ヲ樹テマシタ次第デアリマス、亞米利加ノ
例ヘバ航空母艦、是ハ華盛頓會議ニ於テ幾ラ
デアリマシタカ、十三万五千噸許サレテ居
ル華盛頓會議カラ基イテ相當長イ年月ガ
經ッテ居リマスルケレドモ、此中造ッテ居リ
マスノハ七割ニハマダ達シテ居リマセヌ、
其以外ノモノハマダ噸數ガ剩シテアル、適
當ノモノヲ造ラウト云フコトデ出來ズニ居
ルガ、昨年十月契約致シマシタ一万三千噸
ノヤツガ、三番目ノ「レキシントン」「ソナ
タ」ニ次イデ三番目ニ出來ムトシテ居ルモノ
デアル、日本ガ權利ヲ八万一千噸有ッテ居リ
マス中ハ、亞米利加ノ割合ヨリカ多クモウ
建造シテ、剩ス所一万二千噸ト云フコトニ
ナッテ居リマス、斯ウ云フ狀況ヲ比較致シマ
スルト、亞米利加ガマダ今後何隻モ航空母
艦ヲ造レルコトニナッテ、是モマダ豫算ト云
フモノハ昨年ノ十一月以後ノモノハ豫算ハ
何等取〃テナイノデアリマス、サウ云フノニ
對シテ日本ダケ此剩ァテ居ル一万二千噸ヲ
直ニ實行スルト云フコトハ考物デアルト云
フヤウナ意味モ考慮致シマシテ、今度ノ計
畫ト云フモノモ立テヽ居リマスル次第デア
リマス、ソレデ湯地サンヤ水野サンカラモ
大體此二次計畫ト云フモノハソコニ在ル、
ソコニ在ルノヲ、何カソコニ被セテ、マダ
内容モ時期モ不明ダト云ッテ居ルダケデハ、
甚ダ安心ガ出來ヌト云フヤウナ御言葉モア
リマシタ、御尤モノ御尋ト存ジマスルガ、
是ハ條約ノ權利ヲ全部行使致シマスレバ大
體何ガ何艘ヲ必要トスル、何ヲ何艘ダケ造
ルト云フコトハ權利ニアル、斯ウ云フコト
ハ無論判ッテ居リマスルノデ、ソレヲ假リニ
隻數ヲ申上ゲマスルト云フト、此度殘シ
テ······今度ノ計畫ノ中ニ殘シテアリマシタ
ノハ先程井上男爵カラモ御指摘ニナリマシ
タヤウニ、驅逐艦六隻ト云フモノハ後ニ殘
シテアル、ソレカラ機械水雷敷設艦ノ五千
噸ガ一隻殘シテ、只今ノ航空母艦ノガ一隻
殘シテアリマス、更ニ昭和十一年度迄ニ於テ
建造ニ著手シテ居ノテモ宜イト云フノヲ許
サレテ居ルノハ、驅逐艦ヲ今ト同ジニ千四百
噸ノ驅逐艦ヲ造ルトスレバ七隻ヲ造リ得ル
ノデアリマス、卽チ前ノ六隻ト合セマスト
十三隻ハ造掛ケテモ宜イ、完成ヲスルノハ
六隻以上ハ許サレナイノデアリマスガ、著
手スルノハ更ニ七隻ヲ著手シテモ宜シイ、
巡洋艦ハ矢張リ一万五千三百噸ダケ著手シ
テモ宜シイ、建造シテ完成シテ宜シイト云
フモノハ今度殆ド全部ヲ行使致シマシテ八
千四百噸ノ巡洋艦ガ四隻出來ルコトニナッ
テ居ル譯デアリマス、ソレカラ潜水艦モ七
千二百噸ハ著手シテモ宜シイト云フノガ
殘ッテ居マス、ソレデ合セマシテ、ソレガ
三万二千九百噸ト云フモノガ剩ッテ居リマ
スカラ、假リニ條約上ノ權利ヲ全部行使致
シマスルト云フコトニナリマスレバ只今
ノヤウナ艦種隻數ナルモノヲ必要トスルト
云フノデアリマスルケレドモ、海軍當局ト
致シマシテ、之ヲドレダケノモノヲ何時カ
ラ著手スルト云フコトニ致シマスルニ付キ
マシテハ、今申上ゲマシタ外國ノヤリ方ガ
ドウ云フ程度デアルカ······是ハ亞米利加モ
英吉利モ似タモノデアリマスルケレドモ、
ズット六年ニ亙ッテ全部此豫算ヲ以テノ計畫
ヲ協贊ヲ經ルト云フ立前ニハナッテ居ラナ
イノデアリマスルカラ、先ミノコトハ今度
日本デ計畫ヲ出シマシタヤウニハ現ハレナ
イノデアリマス、其年々ニ必要ナ隻數ダケ
ヲヤリマスルガ、最近ノ亞米利加ノ上院、
下院ヲ通過イタシマシタ海軍案ナルモノハ
矢張リ航空母艦ト云フモノヲ豫算ニハアリ
マシタケレドモ削ッテ居リマス、巡洋艦モ
削ッテ居ルノデアル、潜水艦ノ方モ削リマシ
タ、驅逐隊ヲ十一隻造ルト云フコトニナッテ
居リマス、八吋巡洋艦ハ繼續シテ造ルト云
フコトニナッテ居ル、左樣ニマダ〓〓此權利
全部ヲ行使スル步合ト云フモノハナカ〓〓
今日豫想ガ出來得ルモノデハナイノデアリ
マく、從テ我帝國ダケハ今申上ゲマシタ權
利ガアルカラ此權利ハ當然使"テ宜イノダ
カラ直ク豫算モ伴フ所ノ一ツノ計畫ヲヤッ
タ方ガ宜イ、斯ウ云フヤウナ意味ニハナリ
兼ネルノデアリマス、井上男爵モ申述ベラ
レマシタヤウニ、最小ノ經費ヲ以テ最大ノ
效力アル兵種ヲ備ヘテ海軍軍備ト云フモノ
ヲ按配シテ行カナキヤナラヌト云フコトハ
申ス迄モナイノデアリマスルカラ、從テ權
利ガ玆ニアルカラ、皆ソレハヤッテツマハナ
キヤナラヌト云フノデハナク、矢張リ相對
的軍備ト云フモノガアリマスルカラ、ドウ
シテモ是ハ外國ノアル所ヲ尙ホ見、每度申
シマスル技術ノ進步變遷ト云フヤウナコト
ニ鑑ミマシテ、適當ニ此中ヲドレダケ行使
シテ、サウシテドレヲ先ニシ、ドレヲ後ニ
スルカト云フヤウナコトヲ最モ適當ト當局
ハ信ジテ、卽チ茲ニ一ツノ計畫ヲ樹テ、サ
ウシテ次ニ起ルベキモノハ條約最高限度ノ
所謂權利ハ分シテ居ルノデアリマスルケレ
ドモ、其內容ヲドノ程度ニドウ云フ種類ニ
重キヲ置イテ何時著手スルカ、斯ウ云フコ
トガ具體的ニ計畫ガ立ッテ居ラヌト、斯ウ云
フコトニ申上ゲテ居リマスルノハ、御承知
ノ通リト存ジマスルノデアリマス、從テ水
野サンモ段々御話ガアリマシタ上衣デモ脫
イデ一ツ打開ケテト云フ御話ガアリマシタ
ガ、是ハ卽チ打開ケテ赤裸々ニ御話シテ居
リマスルノデ、決シテ玆ニ或計畫ガアッテ其
計畫ニ付テノコトハ暫ク取シテ置イテ外ニ
現ハサズニ居ルンダ、實ハチヤントシタ計
畫ヲ持ッテ居ルンダト云フヤウナ意味合ハ
決シテナイノデアリマス、先程井上男爵ニ
モ申上ゲマシタノデアリマスルガ、凡ソ海
軍ノ一ツノ計畫ヲ樹テマスル時分ニハハ之
モ必要ダラウ、之モ必要ダラウト言ッテ、是
カラ六年ナリ七年ナリニ亙ル計畫デアリマ
スルカラ、相當ソコニ必要ナモノモ竝ベマ
スルガ、是ハドウシテモ財政トノソコニ調
和ヲ圖ッテ、或ル實行的ノ案ニ立テ直サナケ
レバナラヌコトハ當然ノ話デアル、卽チ最
初ニ軍部ニ於テ、之ガ必要ダラウ、アレガ
必要ダラウト云フコトニ話ヲ進メマシタ、
其モノガ計畫全部ト云フ意味デハナイノデ
アリマス、此度成立チマシタモノノ殘リガ
卽チ直接ニ第二次計畫ニナルノダト云フ風
ニハ、軍事當局ハ考ヘテ居リマセヌ、之ダ
ケノモノガ殘ッテ居ルケレドモ、ソレハマダ
幾年力ノ後ニ最モ其當時ニ於テ國防ニ適當
デアル、之ガ是非必要ダト云フ本當ノ狀勢
カラ按配シテ計畫ヲ立テ、サウシテ其時ノ
內閣ニ於テ是非トモ是ハ國防上必要ダト云
フモノニ付テハ、萬難ヲ排シテ、其成立ヲ
期スルト云フコトガ、是ハ當然ノコトト考
ヘルノデアリマス、從テ此度ノ計畫ト云フ
モノヲ立テマシタ以外ニ、或ル計畫ヲ立テ
ナケレバナラヌコトハ、モウ當然デアリマ
ス、卽チ其次ニ來ルベキ計畫ノ必要ト希望
ガアルト云フコトハ屢〓述ベテ居リマスル
ケレドモ、其內容ト云フモノハ今申上ゲマ
シタヤウナ事情ニ依テ、サウ簡單ニドレド
レト言ッテ指摘スルヤウナ譯ニイカナイノ
デアリマス、尙又驅逐艦ガ六隻殘ッテ居リマ
スノデ、其噸數ニ付テ先程井上男爵ハ航空
巡洋艦ト云フモノガ今度出來タ、是ハ亞米
利加デ造ル、ソレモ日本ハ六割ホカナイト
云フヤウナ意味ノ御話ガアリマシタケレド
モ、航空母艦ハ六割、華盛頓會議デアリマ
スカラ六割ニナッテ居リマスガ、航空巡洋艦
ト云フモノハ、總テ持ッテ居ル巡洋艦ノ二割
五分ヲ、航空巡洋艦ニシテ宜イト云フノデ
アリマスカラ、是ハ日本モ持ッテ居ル巡洋艦
ノ總テヲ航空巡洋艦ニスルト云ヘバ、ソレ
ハ六割デハアリマセヌ、モットソレヨリ以上
ニナルノデアリマス、八吋巡洋艦ヲ別ト致
シマスレバ七割ニナルガ、兩方ヲ合セマシ
テモ六割五分ニナリマスガ、併ナガラサウ
云フヤウナモノヲ假ニ必要ナリト致シマシ
タ場合ニハ、井上男爵モ分科會カ何カデ既
ニ御意見ガアリマシタ、其御意見ノ通リ、
玆ニ日本モ航空巡洋艦ト云フモノガ必要ダ
ト言ヒマスルケレドモ、モウ此度四艘造ッタ
カラ條約上ニハ噸數ハ持テテラライイデ
アリマス、併ナガラ日本ニ限ラズ各國巡洋
艦ト驅逐艦トハ融通ガ出來ル、一割ノ融通
ガ出來ルト云フコトニナッテ居リマスルカ
ラ、日本デ持ッテ居ル巡洋艦ハ十万四百五十
噸デアリマス、十万四百五十噸デアリマス
カラ、其一割ノ約一万噸ト云フモノハ驅逐
艦カラ融通シテモ宜イ權利ヲ持ッテ居ル、卽
チ驅逐艦ヲ造ルヨリカ寧ロ巡洋艦ヲ造ルノ
ヲ適當トスルト云フコトニ考ヘマスレバ、
卽チ巡洋艦ヲ造ッタ方ガ宜イカモ知レヌ、サ
ウ云フコトハ卽チ外國ノ出樣如何ニ依ッテ
色ミ計畫ノ上ニモ影響ヲ來スノデアリマス
ルカラ、卽チ只今申上ゲマシタヤウニ、此
度ノ計畫ヲ以テ一先ヅ玆ニ一段トシテ之ヲ
以テ每度申シマスルヤウナ骨幹ト云フモノ
ハ、先程御說明ヲ申上ゲマシタヤウナ趣意
ニ於テ、是非トモ今度著手シナケレバナラ
ヌト言ッタヤウナ種類ノモノガ、玆ニ網羅イ
タシマシタノデアリマスルカラ、之ヲ以テ
濟ム、而シテ當局ノ情勢ニ於テハ國防ニ不
安ハナシ、而シテ次ニ來ルベキ計畫ト云フ
モノニ付テハ能ク外國ノヤル所ヲ見テ、
ツ最モ適切ナ計畫ヲ立テルヤウニシタガ宜
イ、斯ウ云フヤウナ意味ニ於テ、第二次計
畫ト云ヒマスカ、次ノ計畫ナルモノノ內容、
時期ト云フモノハマダ極テテリマセヌ、斯
ウ云フコトヲ幾度モ申上ゲテ居リマスル次
第デアリマス、尙ホ其財源ノコトニ付キマ
シテハ是ハ幾度モ申上ゲマシタガ、昨日水
野サンノ御尋ニ對シテ申上ゲマシタヤウ
二、是ハモウサウ云フモノノ必要ガアル以
上其處ニ財源ノナケレバナラヌト云フコト
ハ明カデアリマスルケレドモ、是ハ大藏大
臣モ時〓申述べラレマシタヤウニ、何時ノ
時代ニモ財源ナルモノヲ此補充計畫ニ對シ
テ殆ド全部ニ近イモノヲ用意シテアッタト
云フ例ハ無論アリハシマセヌノデアリマ
ス、此昭和六年カラ、各國トモ華盛頓條約
ニ依リマシテ戰艦建造ニ著手シナケレバナ
ラヌノデアリマス、戰艦ノ建造ニ著手シナ
ケレバナラヌト申シマスルノデ、倫敦會議
ガナケレバ當然玆ニ代艦ヲ著手シナケレバ
ナラヌ、サウスレバ一年ニ一艦ヅヽ著手ス
ルト云フコトニナリマシテ、其費用ヲ考ヘ
テ見マスルト云フト、到底此前ノ内閣時代
カラ每年六千五百万圓ヅヽ取ッテアッタ所謂
製艦費ナドデハ到底是ハ賄ッテ行ケル筈ハ
ナイノデアリマス、併ナガラソレハ其時ノ
情勢ニ於テ、是非トモ日本ハ主力艦ガ必要
ナリトシテ昭和六年度カラ著手スル場合
ハ、何トデモソコニ方法ガ付ケ得ラレルト
云フ意味ヲ以テ、進ンデ參ッテ居リマシタヤ
ウナ次第デアルノデアリマス、此度モ昨日
申上ゲマシタヤウニ、此度ノ計畫ガ十一年
度ニ終リマシテ、十二年度カラハ更ニソコ
ニ六千万圓ヅツノモノガ取ッテアリマス、ソ
レヲ昭和九年ナリ十年ナリ、兎ニ角、昭和
十一年度以前ニ於テ著手スル爲ニ相當茲ニ
冠サッタ、冠サリマスコトモ、是ハ種々ノ關
係上、防禦能力ト云フヤウナ關係ガアッテ、
既ニ其時モ製艦費ト云フモノハ、五千五百
万圓程度ノ製艦費ハ今度ノ計畫ノ中ニ昭和
十一年ニモアルノデアリマスカラ、サウ云
フソコニ非常ニ大キナモノヲ其時ダケ冠セ
ルト云フヤウナ意味ニモナラヌ譯ニナルニ
違ヒナイ、是ハ、矢張リ六年計畫ナリ、八
年計畫ナリ或計畫ヲ以テ海軍計畫ト云フモ
ノガ起ルノデアリマスカラ、其冠セルト云
フコトニ付テノ財源ト云フモノハ、大藏大
臣アタリカラモ段々話ガアリマスルヤウ
ニ、何トデモ方法ヲ取リ得ルモノトシテ、
特ニ其爲ニ財源ト云フモノヲ今日カラ揭ゲ
テナイト云フコトデ、我慢スルヨリ外ハナ
イ、斯ウ云フ意味ニナッテ居リマスル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=38
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039・水野錬太郎
○水野錬太郞君 尙ホ一點承"テ置キタイ、
先程井上男爵ガ御朗讀ニナリマシタ軍事參
議官タル加藤大將カラノ私見デアリマス
カ、アヽ云フ意見ハ私初メテ承シタ、アレハ
何デスカ、海軍省、海軍當局ニ於テハ別ニ
認メテ居ルノデハナク、加藤大將ノアレハ
一私見ニ過ギナイト云フ譯デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=39
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040・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 豫算委員會
デアリマシタカ、花井サンノ御尋ニ對シテ
御答ヘ致シマシタヤウニ、加藤大將ガ、サ
ウ云フコトヲ具體的ニ言明サレタトハ思ヒ
マセヌ、斯ウ御答ヘ致シマシタノデアリマ
スガ、其通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=40
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041・森田福市
○森田福市君 差支ヘアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=41
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042・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ドウゾ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=42
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043・森田福市
○森田福市君 海軍大臣ノ······他ノ委員ノ
御方ノ御尋ト、海軍大臣ノ御答ト、斯ウ此
處ニ座ッテ聽イテ居ルト云フト、問ハレル方
ノ要領ハ能ク分リマス、答ヘル方ノ要領モ
能ク分リマスガ、海軍大臣ガ大分御答辯ガ
御上手ニナラレタノカ、又ハ的ヲ外サレル
ノカ、或ハサウデナクシテ、アヽ云フ風ニ
答ヘラレルノカ、ソコガチヨット分ラヌノダ
ガ、私ハ問ハレル方ノ人ノ要領ハ能ク分
ル、我とノ聞カムト欲シテ居ル所ハ補充ト
カ、艦種トカ云フコトニ付テハ、我とハ玄
人デナイ、素人デアルカラ全然知ラナイ、
併シ要スルニ第二次ノ計畫ガアルト云フコ
トハ、海軍大臣ハ明カニ言ハレテ居ラレル、
サウスルト今ノ玆ニ我〓ノ腑ニ落チナイノ
ハ、第二次計畫ガイツ頭ヲ出スカ、內容ハ
別問題······屢〓海軍大臣ハ同ジコトヲ繰返
シテ居ラレルガ、內容ハ外國ノ將來ノ情勢
ヲ見テ見ナケレバイケナイ、私ハ御尤ダ其
通リデアラウト御察シスル、併シ內容ハド
ンナモノデアラウト、兎モ角、第二次ノ計
畫ガアルト云フコトハ、モウ爭フ餘地ノナ
イ問題ニナッテ來テ居ル、サウスルト其第
二次ノ計畫ハ一體昭和九年デアルカ、十年
デアルカ、十一年デアルカト云フコトガ分ラ
ナイガ、イツ其頭ヲ出スモノデアルカ、サ
ウシテ其財源ハ斯ウ云フ減稅ヲスル重要ナ
場合デアルカラ、此減稅ヲ斷行シテ、ソレ
ダケノ國稅ノ收入ヲ二千五百万圓モ減稅ス
ルヤウナコトヲシテモ······是ハ實ハ減稅デ
ハナイガ、其點ハ何レ別ナ機會ニ於テ述べ
ルガ、是ハ減稅ト言ハレテモ、一方ノ人間
カラ取リ上ゲテ、一方ノ人間ニクレテヤル
ダケデアッテ、何等總體的ノ減稅ニモ何ニモ
ナラナイガ、其議論ハ今シマセヌ、サウ云
フモノヲ減稅シテモ第二次計畫ノ頭ヲ出ス
時ニハ何トカスルト云フコトデハ、我ミニハ
分ラヌカラ、所謂此財源ヲ以テ、此程度ハ
充テヤウト云フコトヲ、大藏省ト話ガ付イ
テ居ルカト云フコトヲ明瞭ニ聞キタイ、唯
大藏大臣ト海軍大臣トノ間ニ、今ノ海軍大
臣ノ話デハ何トカスル、ソレハ從來ト雖モ
斯樣ナ補充計畫ニ對シテ全部ノ財源ヲ留保
シテアッタコトハナイ、斯ウ仰シヤッテ居リ
マスガ、五十六議會頃カラ、今度ノ五億八
百万圓ハハッキラ決マッテ居ッタ、五億八百万
圓ノ總財源ハ一ヶ年約六千万圓デ決マッテ
居る、デアルカラ今度ノ第二次計畫ガソ
コガハッキリサヘスレバ、昭和十年頃カラ、
從ッテ此財源是レ〓〓斯ク〓〓ノモノヲ持ツ
テ行クヤウニナッテ居ル、此減稅シテモ何等心
配ハナイ、海軍トシテモ差支ヘナイ、無論昭
和九年ニナッテモ十年ニナッテモ、其頃ニ二
度目ノ內閣ガ出來レバ、今ノ內閣ガ出來ル
カ、或ハアナタ方ノ二度目ノ內閣ガ出來レ
バドウカ知ラヌガ、ソレハドウ云フ內閣ガ
出來ルカ全然分ラナイ、ドナタ樣ガオヤリ
ニナルカ分ラヌノデアリマスガ、分ラヌニ
シテモ文書ノ上デ明カニシテ置カヌト、國
民ノ代表者デアル我ミガ此減稅案ノ贊否ヲ
決スルニシテモ、ソコガ心配デアル、斯ウ
云フ風ニ質問シテ居ラレルヤウニ私ハ聽イ
テ居ルノデアリマス、海軍大臣ハ其內容ニ
付テハ隨分千言万言ヲ費サレルノデアリマ
スガ、財源ノ所ニ至ルトコソ〓〓ト言ハレ
ルダケデ、ソコガハッキラトシナイ、委員ノ
分ル人ニハ宜イガ、私等ノヤウニ頭ノ惡イ
者ニハ分ラナイ、デ質問スル人ハ大體分ラ
ヌ人間ガ聽キマス、能ク分タ人ハ問ヒマセ
又、能ク分クタ人ハ其必要ガナイガ、私ノヤ
ウナ、ツマラヌ頭ヲ持ッテ居ル者ハ根掘リ
葉掘リ聽イテ見ヌト、ソコガ能ク分ラヌ、
ダカラ得心ガ行クヤウニ說明ヲシテ貰フノ
三、質問ノ要旨ト答辯要旨ト喰違ヒガ出
來ナイヤウニサヘシテ貰ヘバ、早ク進ミハ
セヌカト考ヘマスガ、此點ヲ第一トシテ伺
ヒマス、ソレカラ續イテ、第二ニ斯ウ云フ
コトヲ私ハ聽クノデス、一體私ハ擴張論者
デハナイ、先般來屢〓申上ゲマス通リ、陸
軍ノ擴張ヤ海軍ノ擴張ハ無論言ハヌデモ宜
シイ、陸軍ナゾ縮小々々大縮小、內治ニ備
ヘルダケデ結構デアル、海軍モ二次計畫デ
モ三次計畫デモ、現在貰ッテ居ル二億圓ノ
中カラ持ッテ行クカラ心配スルナ、決シテ國
民ニ苛歛誅求ハシナイカラト、ハッキリ仰シ
ヤレバ、根掘リ葉掘リ問フ者ハナイノデア
リマスガ、私ハ軍擴論者デナクテ、大橋サ
ント同感ノ論者デ、要スルニ、此上、國民
ノ負擔ガ增スヤウナコトヲヤッテ貰ッテハイ
ケナイ、減稅ノ如キモノモ、蚤ノ淚見タヤ
ウナコトヲシテ貰ハズ徹底的ニ國民ガ助カ
ルヤウナ減稅ヲシテ貰ヒタイ、或ハ瑞典ノ
國見タヤウナ風ニ一切喧嘩ヲセヌ、餘所ノ
國ト喧嘩ハ止メルト云フコトニシテ貰ウ
テ、全部廢シテシマッテモ異論ハ一ツモナ
イ、所ガソレハサウ云フコトハ出來ナ
イ、ソレナラバ陸軍ニ軍縮ガ出來ナイト云
フト、先ヅ第一、將校ガ多過ギル、兵隊ハ
宜インデスガ、他デ働イテ居ルンデスカラ、
取ッテ貰ハヌ方ガ大變助カル、將校ハサウ
云フ譯ニイカヌト云フノデ、軍縮ハ困難ノ
ヤウニ聞イテ居ルガ、海軍ノ方ハサウ詳シ
クナイカラ知ラヌガ、併ナガラ海軍デモ斯
ウ云フコトヲ聞イテ居ル、私ガ聞イタノニ
ハ今度ノ倫敦條約ハ失敗ダト、內部ノ人
モ言ハレルノデアリマスガ、ドナタガ仰シ
ヤッタカマデ、サウ云フコトハ言フ必要ハナ
イガ、私ハ海軍大臣モコイツハ肚ノ中デハ
知ッテ居ル、ト思フコトハ、倫敦ニ居ラレテ
能ク知ッテ居ラレル、アナタノ倫敦デ話サレ
タコトモ私ハ軍人カラ聞イテ知ッテ居ル、サ
ウハ思ウテ居ルンヂヤガ、內閣ノ人トシテ
ハサウ云フコトハ言ハレヌコトハ分ッテ居
ル、ソコデ私ガ聽キタイノハ、海軍ノ軍人
ニハ懸引ガアルカナイカ、ソレヲドウシテ
聽クンダカト云フト、我ミノ所へ海軍ノ古
イ將校······古イ將校ト言ヘバオカシイガ、
在〓軍人ガヤッテ來テカラニ、今度ノ對英對
米ニ關スル補助艦ノ今度ノ問題ハ、七割ヲ
要求シナケレバイカヌノダ、今ハ國民外交
ニ待タナケレバナラヌカラ、一ツ會議所ヲ
貸シテ吳レ、公會堂ヲ貸シテ吳レ、ソコデ
演說會ヲ開イテ、國民ニ徹底サシテヤラナ
ケレバナラヌト云フ軍人サンノ話、自分ハ
軍人ナラヨモヤ噓ハ言フマイ、政治家ハ嘘
バカリ言ウテ居ルカラ是ハ信ジナイガ、先
ヅ軍人ナラ噓ハ言ハヌダラウ、眞ニ七割補
充シナケレバ、國防ノ充實ヲ圖ル譯ニイカ
又、國防ヲ完ウスル譯ニイカヌ、是ハ事實
ノコトデアラウト思フ、サウ云フ風ニ我ミ
ハ信ジテ、其御先棒ヲ承ッテ、色ミノ御世
話ヲシテ、電報ヲ打ッテ吳レト云フノデ、經
費ヲ使ッテアナタ方ノ所へ、倫敦ヘ行カレタ
人ノ所へ電報ヲ打ッテ、色ミナ國民運動デ金
ヲ使ハレテ、サウシテ全權ノ人ミハ亞米利
加へ寄ッテ、亞米利加デモ頻リト宣傳ヲサ
レテ、如何ニモ日本ハ對米七割ヲ保タナケ
レバイカヌト云フコトヲ誠シヤカニ宣傳サ
レテ、ソレモサウ云フ風ニシテ行カレルト
云フコトヲ決シテ疑フノデハナイ、是マデ
事實トシテ私共ハ思ッテ居ッタガ、サレバト
云ウテ、條約ヲ締結シヤウ、調印シヤウト云
フ段取ニナルト、ソレヲ非常ニ御負ケニナツ
ク、玆ニ私ハアチラコチラデ聽カレテ居ル
ガ、日本ハ實際對米七割ヲ持タナケレバ國
防ヲ全ウスルコトガ出來ナイト云フガ、ソ
レハ懸引デアッテ、實ハアノ程度ニ負ケテモ
差支ナイノカ、若シ負ケタラ日本ノ軍人ハ
餘リ信用出來ヌガ、又懸引デナイトシタナ
ラバ、日本ハ國防ガ危ナイ、其何レニ屬ス
ルカト云フヤウナ質問ヲ受ケタノデアリマ
ス、昨年ノ夏デアリマス、ソコデ私等モ實
際ノコトハ知ラヌ、ドッチガ事實カ、七割ヲ
保持シナケレバ國防ガ心配デアルカ、若シ
サウデアルナラバ大變デアル、併シ調印サ
レタ所ヲ見ルト、サウデモナイ、アレハ海
軍ノ勢力ヲ維持スル爲ニ言ウタノデ國防ニ
ハ實ハアレデモ宜イト云フ風ニ取ッテモ宜
イヤウニ想ハレルガ、一體軍人サンノ言ハ
レルコトハ、國民トシテ、ドノ程度マデガ
事實トシテ、ドノ程度マデガ懸引デアル
カ、割引ヲシテ聞ケバ宜イカ、是ガ第二點、
ソレカラ第三點ハ斯ウ云フコトヲ言ウテ居
ル、實ハ海軍大臣ハ是ハ一體ドウ思ハレル
カ知ラヌガ、去年海軍ノ大演習ガアッタ、大
演習カ中演習カ知リマセヌガ、兎ニ角演習
ト云フモノガアッタ、其當時ノ海軍ノ將校ノ
話デハドウモ今度ノ演習位力ノ付カヌ演
習ハ無カッタ、モウ玆四五年ニテ亞米利加ト
戰爭スレバ負ケルト云フコトガ決ッテ居ル
カラ、此演習位元氣ノ出ヌ演習ハ無カッタ
ト云フコトヲ海軍ノ將校ガ話シタ、是ハ或
ル將校ノ話デアルガ、其點ハ果シテドウデ
アルカ、我〓色〓海軍々人デ知ッテ居ル人
ガ、現在亞米利加ト戰爭ヲスレバ勝テル、
現在ノ國防、兵備ト云フカ、兵力ト云フ
カ、ソレデアレバ勝テル、併シ千九百三十
五年以後ニヤレバ、必ズ負ケル、ドウシテ
モ國防ヲドンナニ補充機關ヲ備ヘテ見タ所
デ、ソレハ駄目ダ、肝腎要ノモノガ足ラヌ
カラ、飛行機ヲ增シタリ、航空母艦ヲ增シ
タリ、色〓算段ヲヤッテモ、ソレハ唯机ノ上
デヤッテ經費ヲ使フダケデ、實戰ニ際シテハ
サウ簡單ニ行クモノヂヤナイ、ダカラ千九
百三十五年マデニ戰爭ヲスレバ負ケナイ
ガ、千九百三十五年以後ニヤレバ負ケルト
云フコトヲ話シマシタガ、併シ是ハ假定的
ノ問題デ、海軍大臣ノ方カラ言ハレルナラ
バ負ケヌト云ウテモ差支ナイカモ知レナ
イ、實際ハ今日矢張リヤラヌノダカラ······
ヤルナラバ、負ケル負ケヌトサウ簡單ニ返
事ハ出來ヌトシテモ、ヤラヌノダカラ宜イ
ト云フコトハ、御答辯ガ出來ヌコトハナカ
ラウト思ハレルガ、ソコデ私ハ井上男爵ニ
加藤大將カラ御寄越シニナッタ毛紙ヲ見テ
モ、眞劍ニ御考ヘニナッタナラバ、現在ノ儘
デアルナラバ勝テルガ、千九百三十五年後
ハ勝テサウニナイカラ、勝テルナラバ一戰
ヲ交ヘテモ宜イ、ソノ位ノ勇氣ガ海軍當局
ニハアッテ欲シイ、實際私ハ負ケサウニナ
イ、勝テサウナ場合ニヤッタ方ガ宜イト云
フ考ヲ持ッテ居ル、今日國民思想ガ斯ウ云
フ風ニナッテ居ル場合、實際ヤッタ方ガ宜シ
イ、國民ノ士氣ガ沮喪シテ居ル時デアルカ
ラ、一戰ヲ交ヘレバ左傾思想ナドハフッ飛
バシテシマフコトガ出來ル、簡單ナモノデ
アルカラ、大イニ勇氣ト云フモノガ必要デ
アル、所ガ海軍ノ將校自ラガ負ケサウダナ
ドト言ウテヘコタレサウデアルガ、先ヅ此
三點ヲ聽イテ、ソレカラ又御尋ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=43
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044・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 森田サンノ
御尋ニ御答ヘ致シマスガ、第一ハ段々兵力
量等ノ事ニ付テノコトハ了解イタシタガ、
其財源ト云フ所ニ於テ、何處カラ其財源ヲ
得ルト云フコトノ了解ヲ得テ減稅ニ贊成シ
テ居ルカト云フヤウナノガ、第一ノ御問ダ
ト思ヒマスガ、是ハ幾度カ申上ゲマシタコ
トヲ繰返スヨリ外ナイノデアリマシテ、今
申上ゲマシタ十一年度迄ノモノガ今度ノ計
畫、十二年度ノ六千万圓デカブセルト云フ
意味ノ財源トシテハ取ッテナイノデアリマ
スガ、併ナガラソレハ大藏大臣モ、此處デモ
豫算委員會ノ席デモ申サレマシタヤウニ、
何トデモ繰合セハ付ケ得ル、ダカラ斯ウ云
フ決心ヲ持ッテ居ラレル、今日ソレヲ何カ
ラ、或ハ增稅トカ、或ハ公債トカ、或ル具
體的ナ方法ヲ以テハ申上ゲラレヌト云フコ
トヲ、大藏大臣モ言ッテ居ラレマシタノデ、
私カラモ其決ッタ財源ハ何カ、何處カラソレ
ヲ集メルカト云フ意味ノ事ニ付テハ、是ハ
其時ノ大藏當局ヲ信賴シテヤル外ナイノデ
アリマシテ、玆ニ私カラ具體的ニ之ヲ何カ
ラ求メルト云フ約束ガアッタカラト云フコ
トハ、申上ゲラレマセヌ次第デアリマス、
ソレカラ第二ノ海軍ガ駈引ガアルト云フコ
トノ意味ガアリマシタガ、是ハ或ル場合ノ
座談等ニモ往々出ル言葉カト存ジマスルケ
レドモ、是モ色ミノ機會ニ申上ゲマシタヤ
ウニ、此度ノ倫敦會議ニ臨ムニ方ッテ、我ガ
帝國ノ所要兵力ト云フ意味ニ於キマシテ、
三大主張ヲ致シマシタ、其土臺ニ於キマシ
テハ、是ハ數年ノ演習其他種々ノ〓究ノ結
果玆ニ至リマシタノデ、今日ノ作戰計畫ヲ
遂行スルニハ、此兵力ノ按配ガ最モ適當デ
アル、有效デアルト云フコトノ、其非常ナ
堅イ信念ヲ以テ臨ミマシタコトニハ、駈引
モ何モアッタ譯デハナイ、併ナガラ是ハ海軍
當局ガ此信念ヲ以テ進ミマシタ事柄ト、ソ
レカラ此倫敦會議ニ於テ、帝國ガ大局カラ
見テ斯ウ云フ方法デ之ヲ纒メテ行カナケレ
バナラヌト云フコト······條約上ニ決メマシ
タ事柄ト、ソコニ若干ノ喰違ヒガアル、其
喰違ヒガアッタコトニ依ッテ、何モ海軍ガ駈
引ガアルト云フ意味ニハ私ハナラヌカト存
ズルノデアリマス、勿論最初ノ主張ト異ル
譯デアリマスルカラ、海軍當局トスレバ、
ソレハ淚ヲ呑ンデ其條約ヲ見タデアリマセ
ウ、卽チ今日ニ於テハ斯ウ決マリマシタ·····
國際的ニ決マリマシタ以上ハ、ソレノ上デ
以テ此約束ノ上カラ出テ來タ所ノ拘束ヲ色
色考慮シテ、是デ最モ適當ナル國防ト、兵
種ノ按配ヲシナケレバナラヌト云フ所カラ、
愼重審議ノ上デ初メテ茲ニ提出イタシマシ
タノガ今度ノ計畫ト、斯ウ云フ意味ニナル
ノデアリマシテ、其邊ハ御諒承ヲ願ヒタイ
ト存ジマス、第三ノ昨年ノ大演習ニ於テノ
士官ノ話ト云フ、澤山ノ士官ノ中ニハ色〓
ノ考ヲ以テ、サウ云フコトモ洩シタ者モア
ルデアリマセウ、併シ是ハ森田サンノ御話
ノヤウニ、三十五年以前ノ一戰ト云フヤウ
ナ意味ノコトハ、是ハ御答ヲ差控ヘルノガ
適當ト思ヒマスガ、兎ニ角今日ニ於テ軍人
ノ士氣ハ旺盛デ、決シテ不安疑惑等ハナク、
一意其本分ニ邁進シツヽアリマス點ダケ
ハ、此際申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=44
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045・森田福市
○森田福市君 第一ノ問題ハ相變ラズ要領
ヲ得マセヌ、結局海軍大臣ノ仰シヤルコト
ハ、財源ガナイト云フコトハ能ク分リマシ
タガ、大藏大臣ガ其時ニ至ッテ······其時ノ大
藏大臣、今ノ大藏大臣ガト云フ意味デハア
リマセヌ、其時ニ至ッテ、其時ノ大藏大臣ガ
何トカ考ヘテ吳レルダラウ、斯ウ云フ風ニ
言ハレル、尤モ今ノ大藏大臣ガ昭和十年迄
御續キニナルカ知レマセヌガ、其時ノ大藏
大臣ガト云フ意味デアルガ、ソレデハ少ク
モ委員ノ中ノ一人トシテ考ヘルノニハ、賴リ
ナイヤウニ思フノデアリマス、寧ロ公債、
增稅或ハ是〓云ミノ財源ニ依ル、此三ツノ
中ノ一ツガ現レテ來ヌ限リ、財源ガナイト
云フ結論ニ私ハ到達シハシナイカ、或
私ノ言フヤウニ、ドチラデモ宜イ、公債ニ
依ッテヤルトカ、或ハ增稅ニ依ッテヤルト
カ、ドチラデモ宜イ其時ノ海軍ノ費用ヲ、
二億圓ノ豫算ヲ以テヤルコトニナルトカ云
フヤウナ風ニ、ハッキリシテ吳レレバソレデ
宜イガ、兎ニ角其時ニ至ッテ、其時ノ大藏大
臣ガ考ヘテ、好イ工合ニヤッテ吳レルト言ハ
レルノハ、何カラ出スノデアリマスカ、大
藏大臣ガ私財カラ出スト云フコトナラ頗ル
簡單デアリマスガ、サウデナイ限リ、此〓
計表ト云フモノノ中ニ含ンデ居ラナケレバ
ナラヌ筈デアル、或ハ私ノ頭ガ惡クテ勘定
ノ仕樣ガ惡イト云フコトナラバ、仕方ガア
リマセヌガ、昭和十年ノ中ニ入レル、卽チ
所謂第二次計畫ニ要スル豫算ノ大體ノ金ガ、
ソコヘ頭ヲ現ハシテ居ラナケレバナラヌ、
サウデナケレバ、此十箇年ノ〓計表ト云フ
モノニ信ヲ置クコトハ出來ヌノデアリマ
ス、ソレガ含ンデ居ラヌト云フコトハ、海
軍大臣ノ仰シヤル通リ、全ク當ガナイ、當
ガナイカラ本會議、豫算會議ニ於テ、又當
委員會ニ於テ、屢〓其財源ノ點ガ問題ニナツ
テ居ルノデアリマス、勿論專門ノ御方ハ兵
種艦種ニ付テノ色〓ノ御議論ハアリマス
ガ、素人デアル我ミハ、其兵種艦種ト云フ
ヤウナコトハ、專門家デアルアナタ方ニ御
任セシテ置ケバ宜シイノデ、我々素人ハ其
財源ノ方ヲ、國民ノ代表者トシテ〓究ヲシ
テ、今此減稅ニ付テモ、昭和十年ニ大體公
債ニ依ルノカ、或ハ增稅ニ依ル:ノカ、幾八
何ニ依ルノカト云フコトヲ考ヘテ置カナケ
レバ、唯無暗ニ減稅ヲシテモ、其時ニ至ッテ
直ニ又公債ニ依レバ、其利子ヲ國民ハ負擔
シナケレバナラヌシ、又增稅ニ依レバ直接
其全部ノ負擔ヲ國民ハシナケレバナラヌ、
ドチラニシテモ其問題ヲハッキリシテ置ク
コトガ、私ハ此減稅案ヲ審議シテ行ク上ニ
於テ、非常ニ便宜デハナイカ、若シ海軍大
臣ヤ大藏大臣ノ仰シヤルヤウナコトデアレ
バ、結局財源ガナイモノト考ヘテ宜シイノ
デアル、全ク計畫ノ中ニ、其財源ト云フモ
ノガ何處カラモ捻出サレナイシ、其時ニ至ッ
テハ又其時ニ至ッテト云フコトハ、所謂刹那
主義デアル、其刹那主義ニ依ッテ何トカ考慮
スルノダト云フ風ニ考ヘテ、本案ヲ審議ス
ルベキモノデアラウカ、我ミハソレハ取ル
ベキデハナイト思ヒマス、此凡ソ計畫ノ大
略ノ軍艦ノ種類ハドンナモノヲ御造リニナ
ラウガ、又ドンナ兵種ヲドウシヤウガ、ソ
レハ我ミ素人ノ關係スル所ヂヤナイ、要ス
ルニ何ヲヤラウト云フ時ニ、其計畫ヲ立テ
タ時ニ、其財源ハ何所カラ出ルカ、其財源
ノ出ル方法ガドウト云フコトガ豫メ分ッテ
居ラヌト、ソレガ全ク分ラヌト云フコトデ、
唯時ノ大藏大臣或ハ海軍大臣ガ相談シテ善
處スルト云フヤウナ、是デハ迚モ完全ナ計
畫トハ云ヘナイ、不安心ナモノデ、斯ウ云
フ不完全ナ計畫ニハ迚モ信ヲ置クニハ足ラ
ヌ、ソレデハドウシテモ質疑應答スルニシ
テモ工合ガ惡イト考へマス、デアルカラモ
ウ少シ、國務大臣トモアルベキ人ハ、モット
能ク〓究サレテ、ハッキリト斯ウ云フ方面カ
ラ此財源ヲ捻出スルノダカラ少シモ心配無
用デアル、是ハ海軍ノ費用ノ中カラソレダ
ゲ出スト云フコトガハッキリシタラ、ソレハ
大藏省モ喜ブシ、國民モ喜ブダラウト思ヒ
マス、併シソレガドウモハッキリセヌノデア
リマス、ソレガドウナルカ分ラヌカラ、ソ
コヲモウ少シハッキリト聽カシテ貰ヒタイ、
ソレカラ第二ハ倫敦條約ニ行ッテ、······思ウ
テ行ッタ事トヤッタ事トニ、腸ノ嘴ノ喰違ガ
出來タ、斯ウ云フコトガ有ッタノデアリマ
スガ、若槻サント海軍大臣ト顧問ノアナタ
ト一〓ニ行ッテ居ノタノデアリマスカラ、每
日膝突合セテ日本側ノ全權會議ヲ開イテ、
其所デイカヌケレバイカヌ、宜ケレバ宜イ、
何モ海軍ノ信念ヲ曲ゲテ迄成立サセナケレ
バナラヌト云フモノヂヤアリマスマイ、是
ハ對米七割ト云フモノヲ保持シナケレバ國
防ガ安全ヲ期セラレナイ、斯ウ云フ風ニ宣
傳ヲサレ、是ハ議會デモ我ミガ屢〓聞イテ
モ居フタシ、又中央ヘ海軍ノ軍人ガ御越シニ
ナッテ會合ヲシテ宣傳ヲシタ時モ其通リ、デ
アルカラ喰違ガアルベキ筈デナシ、又喰違
ガナイヤウニセナケレバナラヌ、又喰違ガ
アッタナラバ、調印セヌヤウニ阻止サレタラ
宜カッタノヂヤナイカ、何モ亞米利加ヤ英國
ニ遠慮ナドスルニハ及バナイ、ソレデ今日
向ウデハドウカト云フト、向ウデハ日本ニ
對スル空氣ガ好イナント云フコトヲ言ッテ
居ルガ、ソレハ向ウハ空氣ノ好イノハ當リ
前デアル、日本ヲトッチメルノニ都合ガ好
クナッタカラ、向ウノ空氣ガ好イノデアッテ
幣原サンノ御話ノアノ點ハ、餘程私ハ誤解
ガアルト思ヒマス、今ノ政府ノ人ハ、非常
ニ之ヲ成功ダ、亞米利加ヤ英國ノ連中ガ日
本ノ者共ニ對シテ大變好イ感ジヲ持ッテ居
ルト言ッテ居ラレルガ、誰デモ喧嘩ヲシテ勝
テサウニ都合好クナレバ、其相手ニ對シテ
好イ感ジヲ持ツシ、ソレガ又アベコベニ負
ケサウナコトニナレバ惡イ感ジニナルコト
ハ分シテ居ル、當リ前ノコトデアル、併シ日
本人自身ハ好イ感ジヲ持ッテ居ル者ハ少カ
ラウト思フ、デアルカラ此點ハ、海軍大臣
ナドハ幣原サントハ同ジ頭デハナイト信ジ
テ居リマス、唯政府ノ閣僚ノ一人トシテ苦
シイ立場ニ立ッテ居ラレルモノダト思フカ
ラ、アナタニ對シテハサウ何ニモ質問ハナ
ニセズニ、或ル程度デ行キ居ル積リデアリ
マスガ、肚ノ底ハ大變御骨ノ折レルコトダ
ラウト思ヒマス、併シ其事モ實際國家ノ爲
ト云フコトニナレバ、此內閣ノ椅子ノ一ツ
位失"テモ、海軍大將ト云フヤウナ榮譽アル
地位ニ居ル人ハ、何トモナイト思ヒマスカ
ラ、此海軍ノ財源ヲ留保スル爲ニ、大イニ
閣內デ主張サレテ、取ッテ置カレル方ガ宜イ
ヂヤナイカ、此減稅モ眞ニ國民ノ減稅ニナ
ルモノナラバ大贊成デアルガ、何レ此點ハ
大藏大臣ニモ總理大臣ニモ質疑應答ヲ重ネ
ル積リデアリマスガ、是ハ私ドウ計算シテ
見テモ、宅地租ノ如キモ現在附加稅ガ六十
二錢デ濟ンデ居ッタモノガ、今度ハ一圓四十
八錢ト云フコトニナルト、八十錢モ地方稅
ニ於テ增スノデアル、而モ一部ノ農民カ地
主カ栃木縣ナドニ減ル人ガアッテモ、地方稅
ガ、是ハ私ハ詳シイコトハ言ハヌガ、是ハ
增スコトニナル、サウシテ增シタ上ニ、地
方稅トシテ附加稅ノ出來ナイモノハ戶數別
ニ持ッテ行ッテ掛ケテ、從來ノモノヲ取ルノ
デアリマスカラ、國民全般トシテハ一錢一
厘モ減稅ニハナッテ居ラヌ、減稅々々ト云ッ
テ述べ立ヲテ居ルガ、全クアレハ間違ヂヤナ
イカ知ラヌト思フ位デアル、唯政府ハ宣傳
センガ爲ニ、此案ヲ企ッテ居ルヤウデアル
ガ、何處ヲ見テモ斯ンナ減稅法案ト云フ法
律ガナイノニ、減稅案、減稅案ト言ッテ居
ル、一體地租法ハ地租法ノ改正ガアリ、又
營業收益稅ハ營業收益稅ノ改正ガアリ、砂
糖消費稅ハ砂糖消費稅ノ改正ト云フモノガ
アル、然ルニ減稅案ト云フモノヲ御出シニ
ナッテ、······斯ンナ減稅案ナント云フ法律ガ
何處ニアルノカ、私ハマダ不幸ニシテサウ
云フモノヲ見テ居リマセヌ、是ハ私共ノ手
許ニ御配リニナラヌモノニ減稅案ト云フヤ
ウナモノガアルダラウト信ジテ居リマス
ガ、兎ニ角實際ニ於テ減稅ニナラヌ、減稅
ノ財源ガ無イヂヤナイカ、無イヂヤナイカ
トアレ程ヤカマシク言ッテ居ラレルノニ、海
軍大臣モ此處ニ於テ、十日モ二十日モ汗水
流シテヤッテ來ラレル必要ハナイ、唯此點ヲ
一言ハッキリサヘスレバ、直ニ此問題ハ解決
出來ルノヂヤナイカト思フ、今日質問打切
ニ付テ色ミ意見ガ出タガ、五十六議會ナド
デハ、國際汽船ニ預金部カラ貸シテ居ル金
ヲ、一般會計ニ肩替リヲシヤウト云フ時ニ、
會期ノ末日ノ十一時五十何分ニナッテモ質
問ガ盡キナカッタ、私ハ一一日カ三日ヤラシテ
貰ヘバ、ソレデ終ルノデアリマスガ、私ガ
サウ云フコトヲヤルト云フ前觸レデナイコ
トハ、御承知置キヲ願ヒマス、今頃質問ノ
コトヲ······此質問應答デハ、此次ハ何大臣
ニ行カレタラ宜クハナイカト云フヤウナコ
トヲ言ハレル御方ガアリマスガ、海軍大臣
ナドハ初メカラ終ヒマデ應答ヲ願ハナケレ
バナラヌト考ヘテ居リマス、私ハ決シテ質
問封ジノヤウナコトハヤリマセヌ······贊成
イタシマセヌガ、ソレヲ早ク解決シヤウト
スレバ、ソレハ簡單ニアナタノ御言葉一ツ
デ解決ガ付イテシマフ問題デアル、汗水出
シテ此處ヘ每日々々來テヤラヌデモ宜イノ
デハナイカト云フヤウナ考ガアルノデス
ガ、率直ニ······水野サンハ率直ニト言ハレ
マシタガ、私ハ素裸ニナッテヤッテ貰ヘバ早
ク片ガ付クト思フ、サウ云フ意味デアルカ
ラ、其喰違ノアッタ點ト今ノ點トヲツキ混ゼ
テ御返事ヲシテ貰ヒタイ、ソレカラ第三ノ
澤山アル將校ノ中デアルカラ、サウ云フコ
トヲ考ヘテ居ル者モアルカモ知レヌ、斯ウ
云フコトデアリマスガ、ソレハアナタガ海
軍大臣ニナッテカラハ多少取返シタノデア
ルカラ、サウデセウガ、財部サンノ大臣ノ
時ニハ、何ト言ッテ居リマシタカ、海軍部內
ニ澤山將校ガ居ルト云ッテモ、アノ人ヲ褒メ
タ將校ハ一人モナイ、殆ド誰デモ、今度ノ
ヤウナ始末ハ大失敗デアル、アンナ馬鹿ナ
コトヲシテ居ルト言ウテ、或ハ僕ノ所ニ寄
リモセズニ歸ッタ、寄ッテモ合セル顏ガナイ
カラ寄ラナイト云フヤウナ話モアルシ、是
ハ迚モ部內デモ、誰デモ、我國ヲ任セル海軍
大臣ドコロヂヤナイ、海軍大將トシテモム
ヅカシイヂヤナイカトサヘ考ヘラレタト云
フ位デ、今日ハ士氣ガ多少囘復サレタデア
ラウケレドモ、マダ今日斯ウ云フ風デアル
カラ、全然囘復シテ居ルモノト思ッタラ、私ハ
間違ヒヂヤナイカト思フ、一層海軍大臣ハ
努力サレテ、眞ニ軍人ガ左樣ナコトヲロニ
セヌヤウニ、肚ノ底ハ負ケルト思ッテ居ッテ
モ、口ニ出シテハイケマセヌ、最後マデ、
ドンナコトガアッテモ、勝ノテ見セルト云フ
勇氣ト元氣ヲ、飽クマデ軍人ハ持ッテ居ラナ
ケレバナラヌ、士氣ガ沮喪シテハイケナイ、
サウ云フ將校ガアッタト思ッテモ、サウ云フ
者ハ無カッタデアラウト言ウテ貰ヒタイト
云フコトガ一ツ、ダカラ其點ハヨク、將來
ハ機會アル每ニ、戰爭ニ負ケヌヤウニ勇氣
ヲ鼓吹シテ貰ヒタイ、ソレデ私ガ言フヤウ
ニ、戰爭ニ負ケヌト云フ信念ガアッタナラ
早ク御ヤリニナレバ宜イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=45
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046・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 今ノ森田サ
ンノ重ネテノ御尋ニ御答ヘ致シマスガ、先
程申シマシタ中デ、財源ノコトニ付テ、其
時ノ大藏大臣ガドウカスルト云フノハ、無
論其計畫ヲ立テタ場合ニ、其最善ヲ盡スト
云フ意味カラ、其時ト云フヤウナ意味ヲ申
シマシタガ、唯其時ノ大藏大臣ガスルト云
フバカリデナク、是ハモウ豫算委員會ニ於
テ、確カ坂本男爵ニ對シテモ大藏大臣ガ其
點ニ付テ答ヘラレタト思ヒマスガ、矢張リ
〓計表ニハ上ッテ居ラヌガ、今日カラ昭和十
一年度以前ニ於テ其計畫ヲヤラナクチヤナ
ラヌト云フコトヲ頭ニ置イテ、出來ルダケ
財政ノ方ニ餘裕デモ生ズルヤウニ、方法ハ
色ミ講ズル、モウ今日カラ以後數年ニ亙ッテ
講ジテ、段々ソコニ、今日〓計表ニ上ッテ居
ラヌケレドモ、方法ヲ取ルト云ッテ居リマシ
タ、ソコハ一ツ御含ミヲ願ヒタイト存ジマ
ス、ソレカラ尙ホ要ルモノハ取ッテ置カナケ
レバナラヌヂヤナイカト云フヤウナコト
ハ幾度モ申上ゲマシタヤウニ、權利行使
ト云フモノニ付テハ、外國ノ狀況ニ依ルト
云フコトヲ申上ゲマシタニ付テ、其量ト云
フモノガ矢張リ不確實ナンデアリマシテ、
ドノ位ノ分量ヲヤルカト云フコトガ分ラヌ
カラ、先ヅ相當要ルダラウカラ、チヨット此
位取ッテ置イテ貰ハウカト云フヤウナ今ド
コニモ使ハヌト云フモノヲ、〓計表ニ一ツ
揭ゲテ貰フト云フコトハ、私ハ困難ト存ズ
ルノデアリマス、從ッテ外國ノコトバカリデ
ハアリマセヌケレドモ、主トシテ外國ガ其權
利ヲ行使スル上ニ關係ヲ持テ、ドレダケノ
量ヲヤルカ、又金高モ亦ドノ位ニナルカ
ト云フコトモ不明デアリマスカラ、サウ云
フ關係上、ソコニ財源ト云フモノガ〓計表
ニハ揭ゲナイ、斯ウ云フコトニ御承知ヲ願
ヒタイト思ヒマス、ソレカラ倫敦ノコトノ
喰ヒ違ノ話ガアリマシタガ、是ハ海軍デ考
ヘテ居リマス事柄ト、ソレカラ政府ガ條約
ヲ結ブニ當ッテソレ〓〓各般ノ狀況ヲ大局
カラ見テ決メラレタコトニ、ソコニ若干ノ
違ヒガ起ルト云フコトハ、單リ此度ノコト
ノミデモナイ、サウ云フコトハ自然アリ得
ルコトト考ヘル、ソレデ海軍ノ要望通リデ
ナケレバ總テ條約ハ破壊シナケレバナラ
又、ト云フヤウナ意味合ニモ至リ兼ネルノ
デ、其邊ハ色ミ幾微ノ關係ガアルト思ヒマ
ス、ソレカラ一番終ヒノ士氣ノコトニ付テ
ハ、是ハ森田サンノ海軍ニ對スル御忠言ト
シマシテ、謹ンデ承ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=46
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047・森田福市
○森田福市君 二ト三トノ問題ハ、大抵ノ
所デ又後日ニ讓ルコトトシテ、政府ノヤル
コトガ多少ノ喰違ヒガアルコトハ已ムヲ得
ヌ、併シ多少ヂヤナイ、當時新聞ハ軍令部
長ト時ノ海軍大臣代理トノ間ハ大變ナ·····
少々ドコロデハナイ、大キナ喰違ヒガ出來
テ大騷ギガアッタノハ、御承知ノ通リデアリ
マス、多少ドコロデハナイ、ソコノ所ハ論
ジマセヌガ、財源ノ問題ハ承知セイト仰シ
ヤルガ、ソレガ分ラズノ承知ナラバ承知シ
テ宜イガ、分ッテ承知ハ難カシイ、海軍大臣
ノ仰シヤルノハ、財源ハ、ドウ云フ形ノモ
シ、ドウ云フ量ヲ造ルカ分ラヌノデアル
カラ、今カラ金ヲ取ッテ置カヌデ宜イト斯ウ
私ハ聽イタノデスガ、サウスルト第二次補
充計畫ト云フモノハ無イト現在假定シテ居
ルノカ、有ルモノナラバ先キデヤラウ、ドン
ナ家ヲ建テヤウカ、鐵筋「コクンリート」ニ
スルカ、煉瓦造ニスルカ、又木造ニスル、
カ分ラヌガ、兎ニ角昭和十年カラ建テヤ
ウト云フナラバ、凡ソ坪當リ幾ラト云フ
財源ハ、取ッテ置カナケレバナラヌ、デ
アルカラ海軍大臣ノ仰シヤルヤウニ、第二
次計畫ハ必要デアル、併シ形ト數量ガ分ラ
ヌノデアルカラ、金ノ計算ハ出來ナイ、如
何ニモ曖昧ノヤウニ私ハ思ハレルノデアリ
マス、十年計畫ノ〓計表ニハサウシテ載ッテ
居ラヌ、今ノ大藏大臣ガ責任ヲ負フカラ宜イ
ト云ッテモ、私ハ此點ヲ······時ノ大藏大臣モ
今ノ大藏大臣モ、結果ニ於テハ是ハ同ジコ
トニナルノデアルガ、若シ今〓計表ニ這入"
テナイト假定スル、サウシタ場合ニ今ノ大
藏大臣ガ昭和十一年マデ現在ノ椅子ニ居ラ
レ、アナタガ居ラレテ、兩方ガ居ラレレバ
誠ニ結構ナコトデス、口約束デモ紳士ト紳
士ノ約束デアリ、閣僚ト閣僚ノ御約束デア
ルカラ間違ヒハナイ、ケレドモ昭和十一年
十二年ニナッタ時ニ、現在ノ井上大藏大臣ガ
總理大臣ニデモナラレテ居レバマダ宜イ
ガ、ドノ大臣ニモナラレズニ居タ場合、ア
ナタガ居ラレヌ場合、〓計表ニ這入"テ居ラ
ヌ場合、出來ルデアリマセウカ、サウシテ
內閣デモ若シ更ッタ場合ニハ、ドウデアリマ
セウカ、ソレヨリモハッキリシテ置カレタ方
ガ完全ヂヤナイカ、空ニシテ置イタンデハ
何ニモナラヌ、ソコデ私ハ國防ノ偉イ方〓
ノ論ズル重點デハナイカト私ハ思ハレル、
其點ガハッキリシテ來サヘスレバ宜イノ
デ·······其點ヲ曖昧ノ中ニ諒承セイト仰シ
ヤッテモ無理ヂヤナイカト思フ、私ハ海軍大
臣ト大藏大臣トノ間ニ簡單ナ、斯ウ云フ時
ニハ何トカスル、何トカシヤウト云フコト
ガアルカラ安心セイト仰シヤッテモ、人間デ
アリマス、生身ノ人間デアリマスカラ、サ
ウ云フヤウナコトガ二人ノ間ニアッタダケ
デ、實行出來ルモノデハアリマセヌ、矢張リ
〓計表ト云フモノガアフテ、計畫ガアッテ、
其計畫ノ財源ガ出來テ居レバ、今ノ大藏大
臣ガ居ラヌデモ、今ノ海軍大臣ガ居ラヌデ
モ、其時期ガ來レバ實現サレルコトハ易々
タル問題デアリマス、ケレドモ只今ノ大臣
同士ノ口約束デ以テ、ソレデ國民ノ代表者
ガ安心シテ置イテ宜イモノトアナタハ思ハ
レルデアリマセウカ、私ハ其點ハ無言ノ中
ニ承認セイト云フ意味カモ知レナイガ、頭
ガ惡イカラ矢張リハッキリシテ來ナイト分
ラヌノデアルカラ、今少シ私ハ其點ハ
ツ·····何ト云フカ、好イ時ガアレバ減稅ハ
撤囘シテ元ノ增稅ヲヤル、或ハ公債ニ依ル
トカ、或ハ海軍ノ何ニ依ルトカ、或ハ其他
ニ好イ分別ガアレバ、何ナリトアナタノ思
フ通リノコトヲ、大藏大臣ト相談シテヤラ
レレバ宜イ、卽チ何ト云フ字ハ何ト何トニ
依ッテ何ニナルノカ、ソコガハッキリシテ來
レバ宜シイ、今ノヤウニ何ニモナクチヤイ
ケマセヌ、何ニモナクチヤ減稅ハ考慮シナ
ケレバナラヌコトニナッテ來ル、海軍大臣ガ
此減稅案ニ贊成ナサレタコトニ付テ、一ツ
聽イテ見タイガ、是ハ減稅ナサレナイデモ
減稅以上ニ······主稅局長モ此處ニ居ラレマ
スガ、每年々々減ッテ來ル、剩餘金モナクナ
リ繰越金モナクナル、獨逸ノ賠償金マデモ
財源トシテ繰入レナケレバナラヌ程無理ニ
稅率ヲ改正シテ低メヌデモ、稅收ニ於テ日
進月步ノ勢デ減ジテ行ク、決シテ增シテ行
クノデハナイ、二千万圓ヤ三千万圓減稅ナ
サラナイデ、昭和六年度ノ總豫算ニ於テ、
第一分科デ附帶決議マデ附ケタガ、歲入ニ
於テ二千五百万圓ヤ三千万圓ノ不足ヂヤナ
イ、一億ニ近イ金ガ不足スルカモ知レナイ、
デアルカラサウ云フ風ニ此減稅ヲナサラヌ
デモ、現政府ガ減稅ヲシテ歲入ヲ減ス計畫
ヲ立テナクテモ、獨リデニ減ル、私ハ斯ウ
云フコトヲ、財政家トシテ偉イ御方ガ居ラ
レルニシテハ不似合ナコトヂヤナイカト思
フ、私共會社ノ事業ヲヤルニシテモ餘程考
慮シテ、收入ノアル場合ト·······收入ノナイ
場合ニハ、株主配當モ一割ノモノナラバ八
朱、八朱ノモノナラバ六朱ニ減ス、更ニ其
收支ヲ保フテ行クヤウニシテ色〓ノ工面算
段ヲシテ其內容ノ充實ヲ圖ルモノデアリマ
スガ、國家ノ財政ヲ掌ッテ居ル大藏省ノ偉イ
方ミガ、斯ウ云フモノヲ作ッタト云フコト
ハ、不思議デ堪ラヌ、本氣デ眞ニ是ガ宜イ
ト思ッテヤッタモノカ、次ノ選擧ノ道具ニ、
政爭ノ具ニ供スル爲ニ、此減稅案ヲ利用ス
ル爲ニ御企テニナッタカ、ドチラカ知リマセ
ヌガ、減稅ヲスル時期デアルカ時期デナイ
カト云フコトハ、御考へニナラナケレバナラ
又、減稅ヲ此時期ニ於テ爲サラヌデモ····
是ハ總理大臣ニ聽ク積リデアリマスガ、海
軍大臣ハ閣僚ノ一人デアリマスシ、減稅案
ニ贊成ナスッタノデアリマス、贊成ナスッタ
ニ付テハ、斯ウ云フ歲入ノ減ル場合ニ減稅
ヲスル時期デアルト思ハレルカ否ヤ、個人
トシテノ意見デモ結構デアリマス、又海軍
大臣トシテノ御意見ナラ尙ホ結構デアリマ
ス、私ハドウモアナタ方ノヤウナ偉イ御方
ガ御寄リニナッテ、此減收ノ場合ニ減稅ヲス
ル、率ヲ下ゲル、率ヲ下ゲルニシテモ額ニ
於テ二千五百万圓ノ金ヲ、稅率ニ依ッテ下ゲ
ヌデモ、自然ニ減シテ來マス、昭和六年度ノ
實行豫算ヲ編成シテ、何百万圓ト云フモノ
ヲ、議會ガ濟ンデカラ大藏省ニ通知ノ行ク
ト云フコトハ、火ヲ睹ルヨリモ明カナコト
ヲ言明イタシマス、デアリマスカラ、海軍
大臣ハ此減稅案ニ御贊成ナサルノハ、一體
何ヲ根據ニシテ今ガ減稅ノ時期ナリト思ハ
レルノデアルカドウカ、或ハ倫敦條約ニ依ッ
テヤル、是ハモウ失敗ト言フモ言ハヌモナ
イ、成功デハアリハシマセヌ、大失敗デア
〓、ソレニモ拘ハラズ海軍大臣ガ減稅案ニ
贊成シタト云フコトハ、甚ダ其意ヲ得ヌト
思フノデアリマス、其點ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=47
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048・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 森田サンノ
三度御尋ネノ事ニ付テ御答ヲ致シマスガ、
最初ノ唯口約束デ何處カラカ財源ガ出テ來
ルダラウ、ソレニ信賴ヲシテ居ルカト云フ
意味デアリマシタガ、此處デ先程晝後ニ參
リマシテカラ直グ御話ヲ致シマシタ中ニ、
ソレ等ハ十分盡シテ居ルト私ハ存ジテ居リ
マシタ、口約束デアラウガ何ダラウガ、サ
ウ云フコトヲ當ニシテ居ラレル譯デハ無論
ナイノデアリマス、其時ニ實際ノ條約ニ照
シテ、國防上是非トモ是ダケノ兵力ガ必要
デアルト云フコトノ上カラ立脚シテ、或ル
計畫ヲ立テヽ其計畫ヲ其時ノ政府ニ於テ
之ヲ適當ト認メテ決行スル場合ニ、其財源
ト云フモノガ〓計表ニ無クッテモ、相當ノ
經費ヲ案出スルト云フコトハ、萬難ヲ排シ
テヤルト云フコトヲ信ジテ居ルト云フコト
ヲ申上ゲタノデアル、卽チサウ云フ意味ニ
御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ減
稅ト云フコトニ付テノ內容又企テノ時期ト
云フヤウナコトニ付テ御話デアリマシタ
ガ、減稅ノ內容又減稅ノ企ニ付テノ時期ト
云フヤウナコトニ付テハ、是ハ大藏大臣カ
ラモ御話ガアリマセウト思ヒマスガ、海軍
大臣ト致シマシテハ、私ハ此度ノ減稅ト云
フモノハ、ヤハリ其目的ニ副ヒ、又倫敦會
議ノ趣意ノ一ツニモ適ヒ得ルモノデアルト
云フコトヲ信ジテ贊成ヲシテ居リマスモノ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=48
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049・森田福市
○森田福市君 マア今カラ先キハ一層議論
ニナルヤウニ思ヒマスガ、海軍大臣ノ御答
辯ニ依ッテ見ルト、企テル時ニハ、他ノ行政
費ヲ檢約シテデモ、必要ナモノデアルナラ
バ、時ノ大藏大臣ガ出シテ吳レル、其必要
ナモノデアルト云フコトマデハ分シタ、唯內
容ガ分カラヌダケ、サウシテ今ノ其時是非
必要デアルトカ、必要デナイト云フコト
ハ、一體誰ガ斷定スル、海軍大臣ハ必要ダ
ト言フ、大藏大臣ハ其必要ハナシト言ッタ時
ニ、ソレハ適當デアルトカ適當デナイトカ、
總理大臣ガ裁定スルノデアリマセウガ、併
シ必要不必要ハ今度ノ公平不公平ノヤウナ
モノデ、分ルモノデナイ、矢張リ頭ヲ出シ
テ置カナケレバ、實現スル可能性ガ乏シイ
ノデナイカ、デアルケレドモ、海軍大臣ガ、
井上サント約束シタコトヲ金城鐵壁ナリト
信ジテオヤリニナル、オヤリニナルト言フ
ナラバ、是以上ハ無用ノ問答ニナルト思ヒ
マスカラシテ、是ハ追究セヌデ宜シイガ、
是ハ私ハ皆ガ皆一同ガ得心ハシナイ、一部
ノ人ハ得心スル人ガアッテモ、國民全般ガ得
心スルコトハムヅカシイデナイカ、サウ
云フヤウナ不安ナコトニ對シテ、了承ヲ與
ヘルコトハ困難デナイカ、煎シ詰メタ所ガ
第二次計畫モ必要デアル、昭和十一年カラ
頭ヲ出スコトハ、スル迄モナイ、十一年度
ハ財源ハナシ、其財源ハ其時ノ場合ニ依ッテ
捻出シテ吳レルモノデアルト云フ程度ニ承
知シテ置ク、是ヨリ外ニ私ハ途ハナイト考
ヘルノデアリマス、海軍大臣ニ對スル質問
ガ終ッタ譯デモ何デモアリマセヌ、今後又考
ハイ、質問要項ヲ考ヘ、ソレカラ改メテ質
問シマスガ、今日ハ海軍大臣ノ質問ハ此程
度ニ止メテ置キマス、尙ホ一ツ委員長ニ御
願ヒシテ置キタイコトガアリマス、私ハ總
理大臣ニ對シテ、減稅ノ趣旨ニ付テ、十分
ニ徹底的ニ御尋ネシテ見タイト思ヒマスカ
ラ、大藏大臣ニ此御願ヲシテ置キマシタガ、
聽カレタカラ御實行下サルモノト存ジテ
居ッタガ、アノ人ノ答辯ト同ジコトデ、ヌラ
リクラリトシテ、全ク信ゼラレマセヌ、從ッテ
委員長カライツ此會議ニ出テ、討論ヲヤ〃
テ居ル各論ニ這入ラナイ場合ニ、御出席下
サルカト云フコトヲ、御確メヲ願ヒタイ、
私ハ總理大臣、大藏大臣、內務大臣、此三
者ニ主トシテ御尋ネシタイト云フ考ヲ持ッ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=49
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050・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 只今ノ御言葉
ハ、海軍大臣ガ控ヘテ居ラレマスカラ、海
軍大臣カラ傳言ガアルコトト信ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=50
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051・森田福市
○森田福市君 ソレデハドウゾ海軍大臣カ
ラ御言傳テ下サッテ、イツノ會議ニ出席シテ
答ヘテヤル······イツト限タ譯デアリマセ
又、併シ私ハ此點ヲ明カニシテ置キマス、
健康ガ云々、健康ノ惡カッタノデ、健康ガ恢
復サレルマデ代理ヲ御置キニナッテ、サウシ
テ恢復サレタカラ代理ヲ解イテ此議會ニ御
出マシニナッタ、ソレヲ又病人上リダカラ勞
ハルヤウニセウト云フコトデアリマスガ、
ソレハ一體誰ガ言フコトデアリマスカ、國
政ヲ審議スル場合、病人揚ゲクダカラサシ
テハイケナイ、ソレデハ議員ハ誰ヲ摑マヘ
テ質疑ヲスルカ、議員ハ總理大臣ト質問應
答ヲ重ネテ了解ヲ得レバ宜イ、個人ノ情ト、
公人トシテノ立場ハ、全然別ノモノデアル
ト云フコトヲ御傳へ願ヒタイ、勞ハルトカ
勞ハラヌトカ、國家ノ國政ヲ審議スルニ當ッ
テ、左樣ナ區別ヲ付ケルモノデアリマセヌ、
又左樣ナ考ヲ持ッテ居ル人ガ居ラレタラ、
ソレハ大變誤ッタ考デアリマス、其コトヲ附
加ヘテ御傳ヘヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=51
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052・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 今ノ森田サ
ンノ御話ハ、首相ト內務大臣ト大藏大臣ノ
三人デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=52
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053・森田福市
○森田福市君 外ノ大臣ハ每日出テ居ラレ
マスカラ、私ノ願フノハ總理大臣デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=53
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054・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 內務大臣ハ明
後日カラ出ラレルサウデアリマス、大藏
大臣ハ衆議院ノ本會議ノ關係上、三時過ギ
デナイト出ラレヌト云フコトヲ申シ出ラレ
マシタ······モウ海軍大臣ニ御質問ゴザイマ
セヌカ、或ハ暫時休憩イタシマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=54
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055・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 チヨット將來ノ色ミ
財源ノ事ニ付テ御尋ネ致シマスガ、此邊ハ
マア度々繰返サレタ問題デアリマスガ、私
ハ將來ノ事モゴザイマスノデ、玆デ海軍大
臣ノ御意見ヲ簡單ニ伺ッテ置キタイ、此間ノ
軍縮會議デ、海軍ノ方々ガ外國ニ對スル比
率ノ爲ニ非常ニ御盡力ニナリマシタコト
ハ、是ハ國民一同感謝シテ居リマス、又玆
デ皆サンカラソレニ付テノ色ミ御質問應答
ノアルコトモ、非常ナ〓心カラ來ラレタコ
トト思ヒマスガ、唯私少シ、私ノ記憶ガ材
料ガ足リナイノカモ知レマセヌケレドモ、
チト腑ニ落チヌト思フノハ、アヽ云フ倫敦
條約ノヤウナモノヲヤラレル場合ニハ、全
體ノ數量ニ付テ、モット少ナクスルト云フコ
トニ付テノ海軍當局ノ努力ガ、ドウモ十分
デナカッタヤウニ、唯外觀上サウ云フヤウニ
思ハレル、サウ云フコトハ事實ナカッタカ
知ラヌガ、····勿論潜水艇ノ如キモノハ一
定ノ數量ヲ持タナケレバナラヌカラ、之ヲ
絕對ニ止メルト云フコトハ、是ハ許サレマ
スマイ、併シ主力艦トカ云フヤウナモノハ、
專門家ニ御意見ヲ伺ッテモ、外ノ國サヘ減セ
バ、日本ハ減シテモ宜イ、外ノ國ガ無ケレ
バ日本ハ無クトモ宜イト云フ御說ヲ聽イ
テ居ル、ソレナラバ將來ノ計畫ニシテモ、
又此次ノ會議ノアル時ニシテモ、出來ル丈
總數量ハ減シテ行ク、外國ニ對スル相當ノ
比率ヲ持タナケレバナラヌコトハ勿論デア
ルガ、サウデナク、外國ノ比率ト云フモノ
ハ暫ク我ミノ言フ通リニナルモノトシテ、
サウシテ總數量ハ出來ル丈減シテ行クト云
フヤウニ、モ少シ努力シテ戴キタイト思フ、
是ハ前カラ例ガアルコトデアリマシテ、日
露戰爭以後ドウモ、モ少シ亞米利加アタリ
ト能ク協調シテヤッタナラバ、日露戰爭以後
ノ海軍ガアンナニ膨脹シテシマッテ、亞米利
加ノ太平洋ニ對スル防備ガアンナニナルヤ
ウナ事ハ無カッタラウト思フ、アノ時ニ海軍
當局ガ外務當局ト打合サレテ、海軍ノ膨脹
シナイヤウニ圖ラレタナラバ、アノ位ニ酷
イモノニナラナカッタ、アンナ大キナ海軍ハ
出來ナカッタラウト思ハレル、無論日本ノ國
力ガ亞米利加ニ比シテ遙ニ劣ッテ居ルコト
ハ分リ切ッタコトデ、如何ナル點カラ見テモ
絕對ニ數量ガ少ナイト云フコトハ望マシイ
コトデ、誰モ反對スル者ハ無カラウト思ヒ
マスケレドモ、此點ハ海軍當局ハ如何ニ御
考ヘニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=55
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056・安保清種
○國務大臣(男爵安保清種君) 大河內子爵
ノ御尋ニ御答ヲ致シマス、誠ニ御尤ナ御尋
ト存ジマス、是ハ海軍ノ要求スル所ハ、潛
水艦ハ今モ御觸レニナリマシタガ、保有量
ト云フコトニ致シマシタガ、其以外ノモノ
ハ八吋巡洋艦ニ致シマシテモ、又六吋巡洋
艦及驅逐艦ニ致シマシテモ、所謂英米ノ七
割ヲ持テバ宜イト云フコトデアッテ、ソコデ
亞米利加ノ計畫ハ三十三艘ノ八吋巡洋艦ヲ
持ツト云フコトニナッテ居ッタガ、英吉利ト
モ話合シテ二十一艘トスルト云フ所マデ下ッ
テ居リマシタノハ、倫敦會議ノ初メデアリ
マスガ、倫敦會議ニ臨ムニ當リマシテ、日
本デハ、日本ノ全權ノ所謂「モツトー」ト致
シマシテ「レダクション」ト云フコトヲ非常
ニ主張イタシノデアリマス、總數量ヲ下ゲ
ルト云フコトヲ矢張リ立前ノ一ツト致シマ
シタノデ、ソレデ亞米利加ノ實際ノ交涉ニ
當リマシテモ、亞米利加ノ八吋巡洋艦ヲ十
五艘ニセヌカ、サウスレバ日本ハ全ク現在
ノデ一ツモ造ラヌデ、ソレデ七割若干ニナ
ルノダカラ、ソレデ十八艘ニ是非スルト云
フノヲ、十五艘ニセヌカト云フコトハ、可
ナリ長イ間ノ交渉デアリマシタヤウナ次第
デ、日本ノ立場ト致シマシテハ此度ノ倫
敦會議ニ於キマシテモ、極力一番上ノ數字
ハ減ラサウ、サウスレバ從ッテ日本ノ持分モ
減ルガ、此率ハ矢張リ最初ノ主張通リニ行
〃、斯ウ云フ立前ヲ以テ終始一貫シテ主張
イタシマシタノデ、丁度大河內子爵ノ御述
ベニナッタ趣意ヲ以テ行ッテ居リマシタノ
デ、此後ノ會議ニ於キマシテモ、恐ラク其
點ニ於テハ變ル所ハナカラウカト存ジマス
次第デアリマス、尙ホ後ノ日米ノ競爭ガ段
段アッテ、日本ガ八八艦隊ヲヤルト云フコト
ニナリマシタノモ、其以前ニ於テ何等カ話
合ヲ付ケレバ宜カッタト云フコトモ、御尤ノ
事柄ト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=56
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057・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 只今ノ御答デ大體御
趣旨ハ諒承致シマシタガ、尙ホ此點ハ實ハ
外務大臣ニモ出テ戴イテ、御列席ノ上デト
思ヒマシタガ、今ノデ十分分リマシタカラ、
ドウカ外務當局ニ海軍大臣カラ御傳ヘヲ願
ヒマス、尙ホ外務當局ト協力サレテ、十分
此趣旨ガ貫徹スルヤウニ希望致シテ置キマ
ス、私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=57
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058・藤田四郎
○藤田四郞君 私ノ御尋ネスルノハ、或
皆樣ト精神ハ違フカ知リマセヌガ、大藏大
臣ハ豫算委員會ニ於テハ、六年度ハ勿論其
先キ十年度迄ハ金ガ無イト云フコトヲ言ハ
レテ居ルノデアリマスガ、ソレカラシテ海
軍大臣ハ、九年頃ニナルト外國ノ狀況ヲ見
テ或ハ計畫ヲ立テナケレバナラヌコトガア
ル、ソレハソレダケノコトヲ計ラフト云フ
御決心ノヤウニモ伺フ、無論大藏大臣デナ
イカラ、自分デ御金ヲドウスルト云フコト
ハ出來マスマイガ、兎モ角サウ云フ御趣意
ノヤウニ承ッタノデアリマスガ、ソレハ無論
私共ニ於キマシテハ、今日ノ〓計表ニ···
將來ノ〓計表ニ於テ其金ガ無イカラト云ッ
テ、私ハ苦情ハ申シマセヌ、其時ニ至ッタナ
ラバ其時ノ大臣ガ必ズソレダケノ責任ヲ負
ウテ始末ヲシテ拵ヘルダラウト思ヒマス
ガ、ソレヲ强ヒテ私ハ言フノデハアリマセ
又、併ナガラ先刻來井上男爵ナリ其他ノ御
質問ノアッタノハ、卽チ國防上ノ不安ト云フ
コトヲ非常ニ心配サレテ居ルノデ、心配セ
ラレタ上ニ於テハ······私共ト多少意見ハ相
違致シマスガ、心配セラレタコトニ付テハ
私モ同論デアリマスガ、一方デハ金ハ無イ
ト云ハレル方ガアル、又一方デハ金ハドウ
ニカシテト云フ風ニナッテ、其邊ガマダ此間
中カラノ質問ノ點ニ於テ、一致シテ居ラヌ
ヤウニ思ヒマスガ、詰リ先刻森田君モ御話
ガアリマシタ如ク、詰リ〓計表ノ中ニ於テ
モ、卽チ是〓ノ臨時ノモノガ無クナル、繼
續費ノ契約ノモノガ無クナルト云フノデ、
ソレハ九年頃ニ於テモ、十年頃ニ於テモ、
其金ハドウニカ捻出サレルト云フ何ガアル
ノデアリマスカ、十一年以後ノモノハ能ク
分ッテ居リマスガ、其前ノニ付テハ、大藏大
臣ハ金ガギシ〓〓デ出所ガナイヤウニ言ハ
レテ居ルノデアル、其趣意ト、海軍大臣ガ
外國ノ狀況ヲ見テ其狀況ノ上ニ於テ經濟的
ニコチラガ國防上ニ安全ヲ期スル途ヲ取ラ
ナケレバナラヌト云フ上ニ於テハ要ルノデ
アル、其點ガチヨット分リ惡イヤウデアリマ
スガ、今大藏大臣ガ居ラレマセヌガ、海軍
大臣ノ御答辯ヲ伺ッテ置ケバ宜イト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=58
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059・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 只今ノ藤田
サンノ御尋ニ付キマシテハ大藏大臣モ、此
席ニ於キマシテ、又其以外ノ場合ニモ、矢
張リ言明シテ居ラレマスル所ハ、マダ具體
的ノ計畫ガ立ッテ居ラヌカラ、財源トシテ特
ニ用意ハシテ居ラヌ、卽チ〓計表ニハ上ッテ
居ラヌケレドモ、併ナガラ國防上必要ナリ
トシテ、適當ノ時期ニ於テ適當ニ案ヲ立ッ
テ、今ノ補充計畫ト云フモノヲ立テルト云
フコトニナッタ以上ハ、ソレニ付テノ經費ト
云フモノハ、萬難ヲ排シテ之ヲ調ヘルヤウニ
スルト云フコトハ言明ヲ致シテ居リマス
ルノデアリマスルガ、私ガ今日、又其以前
ニ於テモ申シテ居リマスル所ト、違ッテ居ル
意味ハナイカノヤウニ私ハ了解致シテ居リ
NY 、ソレダケ御答ヘ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=59
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060・藤田四郎
○藤田四郞君 尙ホ此機會ニ序ニ伺シテ置
キタイト思ヒマスルノハ、私ハ豫算委員會
デモチヨット一言或ル機會ニ申シタノデゴ
ザイマスルガ、先刻海軍大臣ノ御說明デハ、
米國ナドハ此數年ノモノハ何スルガ、六年
七年ニ亙ルモノハ、繼續スルモノノ計畫ハ
アチラニアルダラウガ、議會ノ協贊ヲ得テ
居ラヌト云フヤウナ御話ガアッタノデアリ
マスガ、海軍省卽チ我ガ政府ニ於テハ、矢
張リ此第二次計畫ヲモ、金サヘアレバヤラ
ヌナラヌト、ソレガ當リ前ダト云フヤウナ
御考デアルノデゴザイマセウカ、二年三年
ノモノサヘアレバ、其先ノハ或ハ豫算ニ載
セナイ······要求ヲ爲サヌ方ガ、各國ノ增艦
競爭ト云フモノヲ幾何カ防グト云フヤウナ
傾ガアルモノデハナイノデゴザイマセウ
カ、コチラガ昭和十一年度十二年度、十三
年度マデノ增艦計畫ヲ豫算ニ計上スルコト
ニナレバ、亞米利加モ亦其通リニシテ行ク
ト云フコトニ、互ニ競爭シテ、倫敦條約範
圍內ノ競爭ヲ有リ切リ盡スト云フコトニナ
ルノデゴザイマセウカ、ソレハドウ云フ工
合デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=60
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061・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 御答ヲ申上
ゲマス、亞米利加ハ御承知ノ通リ一ツノ計
畫トシテ、或ル場合ニハ是ダケノ······何年
カノ間ニ是ダケヲ造ルト云フ其案ヲ、議會
ヲ通スト云フコトニハナッテ居リマス、サウ
シテソレニハ豫算ハ伴ッテ居ラナイノデア
リマス、豫算ニハ每年々々、今年ハ巡洋艦
一艘ニ驅逐艦八艘潜水艦一艘ト云フヤウナ
モノノ豫算ヲ出シテ協贊ヲ經ル、斯ウ云フ
趣意ニハナッテ居リマスル、唯英吉利ノ方モ
サウ云フ意味デアリマスルカラ、從テ此度
日本ノハ昭和六年度ヨリ十一年度ニ亙ッテ、
所謂千九百三十六年マデニ亙ッテ、一ツノ計
畫ト云フモノガ豫算ヲ伴ッテ成立ツト云フ
コトニナルノデアリマスルケレドモ、英吉
利、亞米利加アタリノハ、今年ノ必要ナモノ
ダケヲ造ッテ居ル、併ナガラ海軍大臣アタリ
ガ言明シテ居ルノハ大體此邊ノ數量デ每年
造ッテ行キタイト云フ風ノコトヲ言ヒ表ハ
シテ居ルニ過ギナイノデアリマス、ソレノ
言ヒ表ハシ方ヲ綜合イタシマスルト云フ
ト、少クモ驅逐艦ノヤウナモノハ、其全量
ヲ······條約全部ヲ行使スルト云フヤウニハ
見エマセヌ、併シ是ハ每年々々ヤルノデア
リマスルカラ、或ル時ニ非常ナル海軍論者
ガ又局ニ立ツト云フヤウナ時代ニハ、氣
呵成ニ非常ナ大々的ナ計畫ヲ立テルト云フ
コトモ、ソレハ有ルカモ知レマセヌケレド
モ、大體今日ニ於テハ、サウ云フ意味ニナッ
テ居リマス、尙ホ日本ノ次ノ計畫ト云フヤ
ウナモノハ、ヤラヌデ濟ムト考ヘテ居ルカ、
或ハソレヲ餘リ早ク立テテシマフト、五三
競爭ニナリハセヌカト云フ意味ノコトハ、
是ハサウ云フ傾モ起リ得ルコトト存ジマ
ス、從テ第二次計畫ト云フモノヲドウ云フ
風ニヤルカト云フコトニ付キマシテハ、玆
デ先程カラ申シマスルヤウニ、亞米利加等
ガ每年々々是カラズット行クノニ、ドウ云フ
風ニ其權利ノ中ノ船ヲ拵ヘテ行クト云フコ
トガ、非常ニコチラノ次ニ計畫スベキモノ
ノ基礎ノ一部分ヲ爲ス譯デアリマスルカ
ラ、サウ云フ意味デ今第二次計畫ヲヤラナ
ケレバナラヌコトハ存ジテ居リマスルガ、
ドウ云フ程度ニヤルカト云フコトハ、幾度
モ申シマスヤウニ決マリマセヌ、ト云フノ
ハ亞米利加、英吉利ノ行キ方ヲ能ク靜視シ
テカラヤッテ行キタイ、サウスレバ自ラマア
競爭ヲ防グト云フ意味ノ幾分ニモ相成ルカ
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=61
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062・藤田四郎
○藤田四郞君 私ガ御尋ヲシタ言葉ガ足リ
ナンダカ知レマセヌガ第二次計畫ヲ止スコ
トガ出來ルカト云フヤウナ意味ハ御尋ネシ
ナイノデアリマス、唯第二次計畫モ今カラ
ハッキリシテ置クト云フコトニナルト、互ニ
條約範圍內ノモノガ「フル·エキステンショ
ン」ヲ盡スコトニナッテ、造艦競爭ヲスルト
云フコトニナリハセヌカト思フ、又餘リ長
イ計畫ヲシテ置クコトハ宜クナイヤウニ思
フカラ、御尋ネシタノデゴザイマス、私
モウソレデ宜シイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=62
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063・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 速記ヲ止メテチヨッ
ト御尋ネ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=63
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064・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ドウ云フコト
デスカ、唯速記ヲ止メテト云フト、事柄ガ
分リマセヌカラ、命題ヲ仰シヤシバ御了解
ガ早イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=64
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065・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 海軍ノ聲明ノコトニ
付テ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=65
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066・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 如何デスカ今
ノ點ニ付テ速記ヲ止メテ宜シイデスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=66
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067・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 速記停止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=67
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068・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=68
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069・馬場えい一
○馬場鍈一君 今日ハ大藏大臣ガ御出席ニ
ナラヌヤウデスカラ、土曜日デモアリマス
カラ、是デ散會ヲ願ヒタイ
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=69
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070・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) 御多數ナラバ
決シマスガ、御三人デゴザイマスカ、二三
人ダト困リマスカラ······御多數ナラバ宜シ
ウゴザイマスガ······
〔「贊成」ト呼フ者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=70
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071・柳澤保惠
○委員長(伯爵柳澤保惠君) ソレデハ散會
イタシマス、明日ハ休會イタシマス、明後
日ハ午前十時ヨリ開會イタシマス
午後三時一分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵柳澤保惠君
副委員長男爵阪谷芳郞君
委員
公爵一條實孝君
子爵梅小路定行君
子爵大久保立君
子爵大河內輝耕君
子爵裏松友光君
水野鍊太郞君
伊澤多喜男君
男爵小畑大太郞君
男爵黑田長和君
男爵井上〓純君
片岡直溫君
藤田四郞君
湯地幸平君
馬場鍈一君
後藤文夫君
木村〓四郞君
大橋新太郞君
森平兵衛君
尾崎元次郞君
濱口儀兵衞君
田中一馬君
小林暢君
森田福市君
國務大臣
大藏大臣井上準之助君
海軍大臣男爵安保〓種君
政府委員
大藏省主稅局長靑木得三君
大藏書記官川越丈雄君
同野津高次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005902374X00419310314&spkNum=71
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