1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年二月二十三日（月曜日）午前十時二十五分開議
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議事日程 第二十號
昭和六年二月二十三日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第十九日）
第二 特別會計に於ける營繕費に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 賠償金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 昭和四年法律第二十六號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 製鐵所特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 簡易生命保險特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル二十日可決シタル議員從三位勳三等鮫
島武之助君ニ對スル弔辭ハ一昨二十一目之
ヲ贈レリ
號外昭和六年二月二十四日
貴族院議事速記錄第二十號
一昨二十一日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出
セリ
請願委員會特別報告第三號
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
刑事補償法案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス本日モ日程變更ニ關シ御諮
リヲ致シマス、議事ノ都合上、日程第二ヨ
リ第八マデノ議案ヲ第一ノ前ニ付議シタ
イト存ジマスガ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二ヨリ第
八、政府提出、衆議院送付、第一讀會、小
川大藏政務次官
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法
律案
特別會計所屬ノ營繕ニ關スル經費ハ當該
特別會計法ノ規定ニ拘ラズ之ヲ一般會計
ノ所屬ト爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ一般會計ノ所屬ト爲シ
タル經費ニ充用スル爲必要ナル金額ハ當
該特別會計ヨリ之ヲ一般會計ニ繰入ルル
モノトス
前項ノ規定ニ依リ各特別會計ノ一般會計
ニ繰入ルベキ金額ノ每年度歲出豫算ニ於
ケル支出殘額ハ遞次之ヲ翌年度ニ繰越シ
使用スルコトヲ得
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰
入ルルコトニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ
繰入ルルコトニ關スル法律案
各特別會計ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ當該
會計ニ於テ俸給又ハ給料ヲ支辨シタル公
務員若ハ之ニ準ズベキ者又ハ其ノ遺族ノ恩
給粉, 1顆量會 合支拂ニ充ツベキ金額ヲ一
般會計ニ繰入ルルコトヲ得恩給法第十七
條ノ規定ニ依リ國庫ノ分擔スル金額ニ付
亦同ジ
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
賠償金特別會計法廢止法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
賠償金特別會計法廢止法律案
賠償金特別會計法ハ昭和五年度限リ之ヲ
廢止ス
賠償金特別會計ニ屬スル資金及權利義務
ハ之ヲ一般會計ニ歸屬セシム
昭和五年度賠償金特別會計ノ歲出豫算ニ
於ケル支出殘額ハ之ヲ一般會計ニ繰越シ
使用スルコトヲ得
昭和四年法律第二十六號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
昭和四年法律第二十六號中改正法律
案
昭和四年法律第二十六號中左ノ通改正ス
第二項ヲ左ノ如ク改ム
昭和三年度ニ於テ施行シタル元神戶高等
商業學校ノ移轉改築ノ經費竝ニ昭和四年
度乃至昭和九年度ニ亙リ施行スル神戶商
業大學ノ移轉改築ノ經費ニ充用シタル金
額ヲ補塡シ又ハ其ノ經費ニ充用スル爲昭
和十一年度迄ニ官立大學資金ノ内百三十
六万四千百十六圓ヲ限リ一般會計ニ繰入
ルルコトヲ得
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和四年法律第二十六號ハ神戶商業大
學移轉改築費ニ關スル法律ナリ
京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
タル金額ノ補塡ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用
シタル金額ノ補塡ニ關スル法律案
大正十五年度乃至昭和五年度ニ亙リ施行
シタル京都高等工藝學校ノ移轉改築ノ經
費ニ充用シタル金額ヲ補塡スル爲昭和六
年度乃至昭和八年度ニ於テ學校及圖書館
資金ノ內百六十萬圓ヲ限リ一般會計ニ繰
入ルルコトヲ得
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
大正十五年法律第三十一號ハ之ヲ廢止ス
製鐵所特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
製鐵所特別會計法中改正法律案
製鐵所特別會計法中左ノ通改正ス
第二條第二項中「六千萬圓」ヲ「七千萬圓」
三菱八
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
簡易生命保險特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月十九日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
簡易生命保險特別會計法中改正法律
案
簡易生命保險特別會計法中左ノ通改正ス
第二條中「事業取扱費」ノ下ニ「、營繕費」
フルグノ
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
大正十二年法律第二十二號ハ之ヲ廢止ス
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=4
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005・小川郷太郎
○政府委員(小川郷太郞君) 只今議題トナ
リマシタ特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル
法律案ニ付キ、其提案ノ理由ヲ說明イタシ
マス、各廳ノ營繕事業ニ付キマシテハ、行
政事務ノ刷新及經濟化ヲ圖ル爲メ、特殊ノ
事由アルモノヲ除クノ外ハ、總テ營繕管財
局ニ於テ統一シテ施行スルコトト致シマシ
タ、就キマシテハ其統一セラレタル範圍ノ
營繕ハ營繕管財局ノ司掌ニ屬スルコトト
ナリ、從ッテ其經費ハ當該特別會計ニ於テ
ハ直接ニ之ヲ施行シ得ナイコトトナリマ
シタ、然ルニ現行法規ノ下ニ於キマシテ、
各特別會計所屬ノ營繕ニ付キマシテハ〓
ネ當該特別會計ノ支辨トシマシテ、一般會
計ノ支辨トナスコトガ出來ナイノデアリマ
ス、仍テ特別會計負擔ノ營繕ヲ一般會計ニ
於テ施行シ得ルノ途ヲ開クノ必要ガアリマ
ス、當該營繕費ノ財源ハ當該特別會計ヨリ
之ヲ繰入レルコトトシ、且ツ該繰入金ハ一
般會計營繕費ノ施行ニ應ジマシテ繰入ルベ
キモノデアリマスカラ、之ガ歲出豫算ニ於
ケル支出殘額ハ、遞次之ヲ翌年度ニ繰越使
用スルノ途ヲ開ク必要ガアリマシテ本案ヲ
提出イタシマシタ次第デアリマス、何卒御
審議ノ上協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタ
シマス、次ニ同時ニ議題トナリマシタ特別
會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰入ルコト
ニ關スル法律案ニ付キマシテ、其提案ノ理
由ヲ說明イタシマス、特別會計ニ於キマシ
テ俸給又ハ給料ヲ支辨イタシマシタ公務員、
又ハ之ニ準ズベキ者、又ハ其遺族ノ恩給及外
國人恩給、竝ニ恩給法第十七條ノ規定ニ依
リマシテ一般會計ガ國庫以外ノ他ノ經濟ニ
支拂フベキ恩給金額ノ分擔額ニ付キマシテ
ハ從來〓ネ一般會計ニ於テ負擔イタシマ
シタガ、右ハ各特別會計所屬職員ノ俸給其
他ノ諸給與ト同ジク、條理上特別會計ノ負
擔ト致シマスコトヲ妥當ト認メマシテ昭
和六年度以降各特別會計ノ負擔トシ之ガ
資金ヲ一般會計ニ繰入ルノ途ヲ開クノ必要
ガアリマシテ、本案ヲ提出イタシタ次第デア
リマス、何卒御審議ノ上協賛ヲ與ヘラレム
コトヲ希望イタシマス、更ニ同時ニ議題ト
ナッテ居リマス賠償金特別會計法廢止法律
案ニ付キマシテ、其提案ノ理由ヲ說明イタ
シマス、賠償金特別會計ハ大正九年ニ設置
セラレマシテ、獨逸國トノ平和條約賠償金
條項ニ基キ受領スル賠償金等ノ爲ニ、特別
ノ經理ヲシテ居"タノデアリマス、然ルニ獨
逸國及ビ其同盟國トノ戰爭ニ依リ損害ヲ被
リマシタ、帝國臣民ニ對スル救恤金ニ付キマ
シテモ、支出ヲ終了イタシマシタノデ、將來
ニ於キマシテハ特ニ此特別會計ヲ存置スルノ
必要アリトモ認メマセヌノデ、本會計ハ昭和
五年度限リ之ヲ廢止イタシタイト思ヒマシ
テ、本案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマ
ス、何卒御審議ノ上協贊ヲ與ヘラレムコト
ヲ希望イタシマス、次ニ又議題トナリマシ
タ昭和四年法律第二十六號中改正法律案ニ
付キマシテ、其提案ノ理由ヲ說明イタシマ
ス、神戶商業大學移轉改築費ハ其總額百五
十四万八千七百六十圓デアリマシタノヲ、
昭和五年度ニ於テ七万六千二百七十八圓、
同六年度ノ豫算ニ於テ十万八千三百六十六
圓合計十八万四千六百四十四圓ヲ節減シ
且ツ昭和四年度及同五年度ノ二箇年ノ繼續
費デアリマシタノヲ、別途昭和六年度豫算
トシテ提出イタシマシタ如ク、繼續年度ヲ
四箇年延長イタシマシテ、昭和四年度乃至
同九年度ニ改訂シ、之ニ伴ヒ本法ヲ改正ス
ルノ必要ガアリマシテ本案ヲ提出イタシ
タ次第デアリマス、何卒御審議ノ上協贊ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス、次ニ又
議題トナリマシタ京都高等工藝學校移轉改
築費ニ充用シタル金額ノ補塡ニ關スル法律
案ニ付キマシテ、其提案ノ理由ヲ說明イタ
シマス、曩ニ議會ノ協賛ヲ經マシテ、大正
十五年度乃至昭和五年度ニ亙リ施行イタシ
マシタ京都高等工藝學校ノ移轉改築費ニ要
スル經費ノ財源ハ其工事ノ施行年度ニ應
ジマシテ學校及圖書館資金ノ中百六十万圓
ヲ限度トシマシテ一般會計ニ繰入ルルコ
トヲ得ルコトニ、大正十五年法律第三十一
號ヲ以テ規定セラレテ居リマシタ所、學校
及圖書館資金ハ前述ノ年度內ニ繰入ヲナス
コトノ出來ナイ實情デアリマシタカラ、右
移轉改築費トシテ一般會計ノ支出イタシマ
シタ金額ヲ補塡スル爲、昭和六年度乃至同
八年度ニ於テ、學校及圖書館資金ノ中、當
該經費ニ相當スル金額ヲ、一般會計ニ繰入
ルルノ必要ガアリマシテ、本案ヲ提出イタ
シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス、
次ニ又議題トナリマシタ製鐵所特別會計法
中改正法律案ニ付キマシテ、其提案ノ理由
ヲ說明イタシマス、製鐵所ニ於キマシテハ、
製鐵所特別會計法實施······卽チ昭和二年
四月一日、當時ニ比シマシテ、生產規模ノ
擴大ニ伴ヒマシテ運轉資金ニ不足ヲ生ジマ
シタノト、近時經濟界不況ノ爲メ在庫品ガ
著シク增加イタシマシタ爲ニ、資金ノ運轉
圓滑ヲ缺クニ至リマシタ、而モ强ヒテ資金
ノ運轉ヲ期スル爲ニ製品ノ賣急ギヲナスト
致シマスト、民間製鐵業者ヲ益〓窮地ニ陷
レ市場ヲ混亂セシムルノ虞ガアリマスカ
ラ、製鐵所運轉資金ニ充當スベキ金額ノ限
度ヲ一千万圓增加スルノ必要ガアリマシ
テ本案ヲ提出イタシマシタ次第デアリマ
ス何卒御審議ノ上協贊ヲ與ヘラレムコト
ヲ希望イタシマス、次ニ又議題トナリマシ
タ簡易生命保險特別會計法中改正法律案ニ
付キマシテ、其提案ノ理由ヲ說明イタシマ
ス、簡易生命保險特別會計所屬ノ營繕ニ付キ
マシテハ、大正十二年法律第二十二號ノ規定
ニ依リマシテ、簡易保險局廳舍ニ充ツル爲
ニ當分ノ中土地建物ヲ買入、又ハ建物ヲ建
設シ得ルコトトナッテ居リマスガ、同會計ノ
事業ノ發展ニ伴ヒマシテ、昭和六年度及同
七年度ノ繼續費トシテ福岡ニ簡易保險支局
ヲ新營スル必要ガ生ジマシテ、之ガ豫算ハ
別途昭和六年度豫算ニ計上イタシテアリマ
ス、此經費ノ施行ヲ前述ノ法律ニ依リ施行
イタシマスコトハ妥當デアリマセヌノト
且ツ同會計ノ事業ノ將來ニ鑑ミマシテ、將來
同樣ノ必要ヲ生ジマスノデ、此際營繕費ヲ
常時的ニ同會計ノ負擔トナスノ途ヲ開クヲ
適當ト認メマシテ、本案ヲ提出イタシマシ
タ次第デアリマス、何卒御審議ノ上協賛ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 別ニ質疑モナイ
ト認メマスカラ、特別委員ノ氏名ヲ書記官
ヲシテ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律案
外六件特別委員
侯爵西〓從德君子爵大河内輝耕君
子爵綾小路護君眞野文二君
男爵長基連君高橋琢也君
馬越恭平君田村駒治郞君
長尾元太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第一、國務
大臣ノ演說ニ關スル件、第十九日······紀男
爵ニ伺ヒマス、紀男爵ハ先日ノ質疑ノ續キ
ヲ御希望デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=7
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008・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 ドウカ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御登壇ヲ願ヒマ
ス
〔男爵紀俊秀君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=9
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010・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 前囘文〓ノコトニ關シマ
シテ、殊ニ國務大臣ノ施政方針ノコトニ關
シマシテ御伺ヲ申上ゲタノデゴザイマス
當時首相代理ハ御出席ニナッテ居リマセヌ
ノデ、代ッテ文部大臣ヨリ御答辯ヲ得タノ
デアリマスルガ、本日ハ首相代理カラ御答
辯ヲ願ヒタイト存ジテ居リマシタガ、豫算
會議ノ御都合デ御出席ガゴザイマセヌノ
デ、遺憾ナガラ首相代理ニハ御尋スルコト
ガ出來マセヌ、尤モ首相代理ハ一時的ニ首
相ヲ代理セラレル方デアリマシテ、申サバ
外務大臣ト云フ著物ノ上ニ首相代理ト云フ
羽織ヲ召シテ居ルノデ、今ニ首相代理ト云
フ羽織ヲ御說ギニナル方デアリマス、丁度
之ニ付テ想ヒ起シマスガ平〓盛ガ平重盛
ノ諫言ニ出會ヒマシタ時ニ、鎧ノ上ニ衣ヲ
著テ出タト云フコトガ平家物語ニアリマス
ガ、丁度ソレト同ジコトデ、時〓衣ノ下カ
ラ鎧ガ覗キマス、デスカラ實質上ニ於テハ
外務大臣デ居ラッシヤルノダカラ、此外務大
臣ニ對シテ文〓ノコトヲ御尋ネスルト云フ
コトハ實ハ御無理ノコトカモ知レマセヌ
ノデアリマスルカラ、今日御出席ガゴザイ
マセヌカラ首相代理カラハ御答辯ヲ願ヒマ
セヌガ、此程文部大臣ガ御答ヘ下サッタコト
ニ付テハ私ハ尙ホ一層疑ヲ增シタノデアリ
¥ 、尤モ文部大臣ハ極メテ率直ニ、極メ
テ虛心坦懷ニ御返答ヲ戴キマシタ、其點ハ
私非常ニ感謝イタシマス、是ハ文〓ノ爲ニ
モ思想ノ上ノ爲ニモ、僞ラズ飾ラズシテ御
答辯下サッタト云フコトハ非常ニ私是ハ感
謝イタシマスル、併ナガラ其御答辯ハ斯ウ
云フ御答辯デアッタト存ジマス、此程ノ施政
方針ノ演說中ニ、文〓ノ事ニ對シテ實ハ自
分ハ或一節ヲ入レテ貰ヒタイト思ッタカラ
要求シタノデアル、併ナガラドウモ施政方
針ノ演說ガ長クナルカラト云フ故ヲ以テ、
ドウシテモ入レテ吳レナカフタ、是ハ或ハ自
分ガ伴食大臣ノ故デアルカモ知レナイケレ
ドモ、併シ之ヲ入レテ吳レナカッタノハ殘念
デアルガ、全ク長過ギルト云フヤウナコト
ノ爲ニ入レテ吳レナカッタノデアラウト、斯
ウ御返答ヲ得タノデアリマス、ガ此程ノ施
政方針ノ演說ハ、私ハソレ程長イト思ヒマ
セヌ、五十八議會ニ於ケル濱口首相ノ施政
方針ノ御演說ハ餘程長イモノデアリマシ
ク、デアリマスルカラ文〓ノ事ニ關シテ是
ガ必要デアルト云フコトニナレバ一節二
節ヲ御加ヘニナッテモ何等長クナラナイ、又
長クナッタ所デ宜シイ、ドノ位長クナッタ所
デ大切ナコトヲ御書キニナルナラバ宜シイ
ト思フ、又伴食ノ故ヲ以テ入レテ貰フコト
ガ出來ナカッタト御謙遜デアルケレドモ、私
ハ文部大臣ガ左樣ノ御心掛デアッテハイケ
ナイト思フ、文〓ノコトハ最モ大切ナコト
デアラウト存ジマス、殊ニ前囘ニ申述ベタ
通リニ、文〓ノコトニ關シテハ貴族院ノ傳
統的ノ精神トモ申シテモ宜シイト思フノデ
アリマス、デアリマスルカラ若シ是ガ長ク
ナルト云フコトナラ、貴族院ダケデモ御說
明ニナッテモ宜カラウト思フノデアリマス、
丁度衆議院ノ施政方針ノ演說ヲ爲サル時ニ
ハ、施政方針ノ御演說ガ濟ミマシタ時ニ、
後デ大藏大臣ハ必ズ豫算ノ說明ヲ衆議院デ
サレルカノ如クニ、文〓ノ事ニ關シテハ貴
族院デナサッテモ宜カラウト思フノデアリ
やく、文〓ノ事ホド大事ナコトハナイノデ
アリマスルカラ、文〓ノコトニ關シテハ特
ニ施政方針ノ中ニ何故御入レニナラナカツ
タノデアラウカ、殊ニデス殊ニ今日ハ小
學校ノ〓員ハ地方ノ費用ヲ以テ十分ニ賄七
得ラレナイ有樣デアリマスノデ、初等〓育
ニ對シマシテハ日本全國脅威ヲ感ジテ居ル
時デアリマス又義務〓育費國庫全額支辨
ト云フコトハ是ハ民政黨内閣ノ政綱ノ一
ツデアルト同時ニ現政府ノ一大使命デアラ
ウト存ズル、其一大使命デアル所ノ文〓ノ
事ニ關シテ、何等之ニ載セラレナカッタト云
フコトハ甚ダ文部大臣ノ御ヤリ方ガ私ハ
不行屆デアッタト存ジマス、長イトカ短イト
カ伴食トカ、サウ云フヤウナコトハ問題デ
ナカラウト思フ、併ナガラ最早施政方針ノ
演說ニハドウシテモ載ッテ居リマセヌノデ
アリマスルカラ、今日ソレヲ申上ゲタ所デ
致方アリマセヌカラ、此問題ハ是デ止メテ
置キマス、併ナガラ今後ドウカ施政方針ノ
御演說ヲ爲サル時ニハ、文〓ノコトヲ先ヅ
書イテ戴キタイト思フノデアリマス、明治
大帝ハ〓育ニ最モ力ヲ御注ギニナッテ、萬世
不易ノアノ〓育勅語ト云フモノヲ下シ賜
ハッテ居リマス、精神作興ノ御詔勅ニ於テモ
「先帝意ヲ〓育ニ留メサセラレ」ト云フコト
ヲ大正天皇樣ハ宣ハセラレテ居リマス、斯
クマデ明治大帝陛下ハ〓育ニ向ッテ力ヲ
注ガセラレタ、〓育ト云フモノハ最モ大事
ナモノデアル、前囘ニ私ガ申述ベマシタ通
リ孟子ガ梁ノ惠王ニ見エタ時、「王何ゾ必
シモ利ヲ言ハム又仁義アルノミ」、此疲弊シ
タ時ヲ救フニハ仁義デナケレバナラナイト
云フコトヲ言ハレテ居リマスガ、是モ前囘
申上ゲマシタケレドモ、此程ノ施政方針ノ
御演說ノ中ニモ明カニ其事ヲ仰シヤッテ居
ル此不景氣、此經濟國難ニ處スルニハ
堅忍不拔ノ精神アルノミデアルト仰シヤッ
テ居ル、其堅忍不拔ノ精神ヲ養フノハ何處
カラ來ルカト申シマスレバドウシテモ〓
育ノ力、思想涵養ノ力ニ依テ之ヲ養ハナク
テハナラナイト思フ、ソレニ御拔カリニナソ
タコトハ甚ダ遺憾ニ思ヒマスガ、今日カラ
詮議ヲシテモ仕方ガアリマセヌカラ今後
ノ施政方針演說ニハ必ズ文〓ノコトヲ御入
レニナラナケレバ、ソレコソ伴食ダト世間
ノ人ハ批評イタシマス、ドウゾ必ズ之ヲ入
レナケレバナラヌト云フコトハ文部大臣
トシテ最モ重責ヲ御考ヘニナルヤウニ願ヒ
タイト思ヒマス、ソレカラ義務〓育費ノ全
額支辨ト云フコトハ自分モヤリタインデア
ル此內閣モヤリタインデアル併ナガラ
財政ガ之ヲ許サナイ、ソレデアルカラ已ム
ヲ得ズ今度ハサウ云フヤウナ計畫ハ出來ナ
イガ併ナガラ漸ヲ逐ウテ之ヲヤリタイト
云フヤウナ御趣意ノ御說明ガゴザイマシタ、
是ハ特別議會ノ時ニ濱口總理大臣ノ御說明
ニナッタ所ト多少ノ趣ヲ異ニ致シテ居リマ
ス是ハ此節小學校ノ〓員ト云フモノハ非
常ニ脅威ヲ感ジ、初等〓員ト云フモノハ非
常ニ脅カサレテ居ルコトニ鑑ミラレテ、進
步セラレタル御意見ガ出タノデアラウト私
ハ思フノデアリマス、前囘特別議會ノ時ニ
特別委員會デ濱口首相カラ承ハリマシタ所
ハ先ヅ當分是ヨリ增スコトガ出來ナイ、
此度ハ一千万圓ト云フモノヲ增額シタガ、
今後暫クノ間ト云フモノハ是ヨリ增額ハ出
來ナイ、先ヅ之ガオシマヒダラウト思フト
云フヤウナ御意味ノ御話ガアッタノデアリ
マス然ルニ前囘ノ私ノ質問ニ對シテ、文
部大臣ハサウデハナクシテ、財政ノ許ス限
リハ漸ヲ逐ウテヤリタイ積リデアルト斯ウ
仰シヤッタ、デアリマスルカラ濱口首相ノ御
考ヨリハ一步此度ハ御進ミニナッテ居ル、是
ハ私非常ニ多ト致シマス、財政ガ遣繰リガ
付ケバヤルンデアルト斯ウ云フ仰セデア
ルソンナラ財政ガ遣繰リガ付カヌカト云
ヘバ私付キマズト思ヒマス、文部省内
ニ於テ御計畫ガ出來ルダラウト思フノデ
アリマス、何トナレバ今日中等學校以上ノ
學校ノ數ノ多イト云フコトハ旣ニ世評モア
リマス、師範學校ナドモ必ズ一府縣ニ一ツナ
ケレバナラナイト云フ譯デハアリマセヌ
今日ノ師範學校ノ卒業生ト云フモノハ非常
ニ過多ニシテ、非常ニ多過ギル、併ナガラ
師範學校ヲ卒業サレタ以上ハドウシテモ就
職サセナケレバナラナイ、ゾレデ漸次、經
驗ノアル人、或ハ月給ノ高イ人、サウ云フ
ヤウナ人ヲ罷メサシテ、サウシテ今度ノ新
卒業生ヲ收容スルト云フヤウナコトニナ。フ
テ居リマス、是ハ又サウ云フ方針ヲドウシ
テモ採ッテ行カナケレバナラヌ、他ノ中等學
校デアリマシタナラバ、卒業イタシマシテ
モ、何レノ道ヘカ就職スルコトガ出來マス
ケレドモ、師範學校卒業生ニ對シテハドウ
シテモ小學校〓員ニシカ用ヒラレナイ、而
モ小學校〓員ニナル迄ノ養成ノ仕方ハ、地
方費ヲ以テ其生徒ヲ養ヲテ、サウシテ十分費
用ヲ掛ケテ卒業サシテヤリマスノデアリマ
スカラ、此生徒ガ今度卒業シタ後ニ就職ガ
出來ナカッタ、遊ンデ居ルト云フコトニナル
ト、個人ノ爲ニモイケナケレバ國家ノ爲ニ
モ不利益ニナッテ居ル、所ガ學校ガ多クッテ、
卒業生ガ多イ爲ニ、今日ハ溢レ返ッテ居ル、
殊ニ此節、地地方財政ガ苦シイ爲ニ、代用〓
員ナドヲ隨分澤山用ヰテ居リマス、帝國大
學ヲ卒業シタ人間デ就職ガ出來ナイ、ド
ウモ遊ンデ居ノテハ近所ニ對シテモ見ットモ
ナイ朝辨當ヲ持ッテ、洋服ヲ著テ出テ行ッ
テ、夕方ニ歸ッテ來ルト云フヤウチ工合ニ
ナラナイト、近所ニ對シテモ濟マナイカラ
幾ラデモ宜イカラ代用〓員ニ使ッテ吳レナ
イカト云フコトヲ望ンデ居ルモノガ隨分ア
リマス、サウシテ又地方モ財政ガ苦シイカ
ラ、サウ云フヤウナ殆ド無月給位ノ人ヲ殊
ニ高等〓育マデ受ケテ居ルヤウナ人ヲ採用
シタ方ガ利益デアルト云フノデ、隨分サウ
云フ方法ヲ執ッテ居ル所モアリマス、サウ云
フヤウナ有樣デアリマスカラ、師範學校ノ
卒業生ト云フモノハ就職ノ實際出來ナイモ
ノガ隨分アル、或府縣ナドデハ仕方ガナイ
カラ、一旦來テ直グ休職ニシテ、月ニ一圓
位ノ手當ヲ與ヘテ、補缺ガアッタラ使ッテヤ
ラウト云フヤウナ工合ニシテ、待タシテ居
ルト云フヤウナ有樣デアリマス、デアリマ
スカラ、師範學校デアルトカ、中等學校デ
アルトカ、進ンデ高等以上ノ學校ニナリマ
シタナレバ、實際整理イタシマスレバ相當
ノ或財源ガ出テ來ルダラウト思ヒマス、此
處ニ具體的ノ計算ハ持ッテ居リマセヌガ、
併ナガラ之ヲ計畫シロト云フコトデアリマ
スレバ私計畫ヲ致シマス、デアリマスカラ
中等學校以上ノ學校ヲ整理スルト云フコト
ニナルト云フト、餘程ツコニ或財源ガ出テ來
ルダラウト思フノデアリマス、デ此中等學
校ヲ整理イタシマシタ財源ヲ之ニ充テルト
云フコトニナレバ、全額ヲ支辨スルコトハ
出來ナクナッテモ、幾分カ、マダ五百万圓ナ
リ、六百万圓ナリ支給スルコトガ出來テ行
〃、漸ヲ追ウテ行クト云フコトガ出來ルダ
ラウト思フノデアリマス、併ナガラ文部省
ハ斯ウ云フ御意見ガアルヤウニ傳ヘ聞イテ
居リマス、成程師範學校ノ卒業生ガ多イ
師範學校ガ多イ、ダカラ成ルベク學校ノ數
ヲ少クシタイノダ、併ナガラ其地方地方ニハ
必ズ問題ガ起ルニ違ヒナイ、一ツノ學校ヲ
置イテヤラウト云フコトニナッタラ喜ンデ、
之ニ贊成スルガイザ一ツノ學校デモ廢メ
ルト云フコトニナッタラ、地方ハ群ガリ立〃
テ之ニ反對シテ、一大騷動ヲ起スカラ困ル
ト云フヤウナ御意見ガアルヤウニ伺ッテ居
リマス、是モ一ツノ御尤ナ理窟ダラウト私
ハ思フノデアリマス、併ナガラ此民政黨内
闇此內閣ハ何ヲ以テオ立チニチッテ居ル
カ、强ク、正シク明ルクト云フコトガ民
政黨內閣ノ政綱ダト私存ジマス濱口首相
ハラヂオヲ通シ、著書ヲ通シ、演說ヲ通シ
テ、種々ノ機會ニ强ク、正シク、明ルクト
云フコトヲ仰シヤッテ居ル、私モ此點ニ於キ
マシテハ、濱口首相ノ人格ト共ニ最モ尊敬
ヲ致シテ居ルノデアリマス、此三大政綱ヲ
御現ハシニナルノハ今日ノ秋デアル今日
强ク、正シク、明ルクシテ、地方ニ少々ノ
反對ガアッテモ、ソレガ正義ナリトシテ····
ソレガ正義ナリト致シマシタナラバ、之ヲ
御斷行ニナルダケノ勇氣ガナケレバ、强キ
人トハ申サレマセヌ、正シキ人トハ申サレ
マセヌ、デアリマスカラドウシテモ强ク、
正シク、明ルクオヤリニナルニハ、些々タ
ル末節ニ拘泥シテ居ルヤウナコトデハ到底
出來ナイ、是ハ私ハ確カニ能ハザルニ非ズ
シテ、爲サザルナリデアラウト思フノデア
リマス、シヤウト云フ勇氣ガアッタラ出來易
イコトデアル、今日ノ初等〓育ト云フモノ
ハ最モ大事ナモノ最モ必要ナモノト
十分御考ニナッタラ、私ハソレダケノ御斷
行ハ出來ルダラウト思フ、私前囘ニ文部大
臣ヨリノ此御答辯ヲ得テ非常ニ勇氣ヲ得マ
シタ、財政サヘ許セバ必ズヤッテヤル、殊ニ
漸ヲ追ウテヤルノダト云フ、只今ノヤウニ
中等學校以上ノ學校ヲ整理スル、是ハ義務
〓育デハアリマセヌ、義務〓育デハアリマ
セヌカラ政府ノ方デ御考ガアレバ今日ハ
私立學校ナドモ最モ進步イタシテ居ルノデ
アリマスカラ、或モノハ私立學校ニ之ヲ委
ス、或モノハ之ヲ廢シテ行クト云フヤウニ
ナサッテコソ、文〓ノ爲ニ私ハ御盡シニナル
ノヂヤナイカト思ヒマスガ、此文部大臣ノ
御答ヲ得マシテ、私ハ非常ニ力强ク感ジマ
シテ大ニ期待ヲ致シテ居リマスドウゾ文
〓ノコトニ付キマシテハ文部省内デ能ク
御〓究ニナリマシテ、サウシテ初等〓育ト
中等〓育トノ比較研究ヲナサッテ、正シク、
明ルク、强ク、御考ヘ下サッテ、サウシテド
ウカ十分邁進セラルル所ノ途ヲ御執リヲ願
ヒタイト思ブノデアリマス、ソレカラ前囘
ニ文部大臣ハ支拂不能或ハ減俸等ニ對シテ
ノ御意見ヲ御述べニナリマシタ、是ハ下度
先日首相代理カラ湯地君ニ御答ニナリマシ
タノト殆ド同ジヤウナ御答デアリマシタ、
是ハ私ガ前囘ニモ申述べマシタ通リニ、是
ガ若シ首相代理ノ御口カラ出タト云フコト
ナラ、私ハ善意ニ解釋ヲ致シマシテ、ツレ
ハ御尤ナコトデアル、外務大臣ガ御承知ナ
ラヌノハ尤モデアル、是ハ御存知ナイカラ
斯ウ云フコトヲ仰シヤッテ居ルノデアルト
云フコトニ致シマシテ、私ハモウ殆ド一笑
ニ付シテ置キマス、併ナガラ一國ノ文部大
臣ガサウ云フヤウニ御考ニナッテ居ルト云
フコトハ是ハ實ニ許スベカラザル事實ダ
ラウト思フノデアリマス、文部大臣ノ御話
ニ依リマスルト、寄附强要ト云フ所ハ僅ニ
五縣デアル、減俸ト云フ所ハ僅ニ十七縣デ
アルソレハ一縣デモ、一校デモ、サウ云
フコトガアッテハイケナイ、一校デモ、一縣
デモアッテハイケナイガ、兎ニ角、ソレ程世間
ガ騒ダ程、、減俸問題ヤ、寄附强要ト云フコ
トハナイノダト云フヤウナ御說ヲ承ハリマ
シタ、是ハ私餘程文部大臣ノ御反省ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス、斯ウ云フ御答辯
ハ今ヨリ二十年程前デアリマシタナラバ
成程御尤デアル、文部省ノ御調査ガ的確デ
アル、仰シヤッテ居ルコトガ、尤モデアルト
私感心イタシマス、併ナガラ今日ノ有樣デ
ハ實情ト全ク反シテ居リマス、文部省ガ府
縣ニ命令ヲシテ、サウシテオ前ノ方ノ部下
デ寄附强要ヲシテ居ル所ノ町村ガアルダラ
ウカ、或ハ減俸ヲシテ居ル所ガアルダラウ
カ、アレバ早速通告ヲシテ來イ、斯ウ云フ
ヤウナ御通牒ヲ御出シニナッテモ、其通リニ
畏ッテ町村、或ハ府縣ガ此命令通リニ嚴行イ
タシマスモノデアリマセウカ、自分ノ府縣
ニ一ツデモ寄附强要ノ所ガアルト云フコト
ハ其府縣ノ恥デアリマス、又減俸ナドヲ實
行イタシテ居リマスト云フコトハ其町村ノ
恥デアリマスデアリマスカラ町村ガ私
ノ村デハ盛ンニ減棒ヲ致シテ居リマス、盛
ンニ寄附强要ヲシテ居ルト云フコトヲ、何
處ノ町村ガ正確ニ報〓ヲ致シマスモノデセ
ウカ又府縣ノ知事ガ之ニ對シテ其通リニ
直ニ眞直グニソレヲ報〓スルモノデアリマ
セウカ、ソレハ以前郡役所ト云フモノガア
リマシテ、郡役所ガ仲介シテヤッテ居マシタ
時デアルト云フト、或ハ又今ヨリハマシデ
アッタカモ知レヌト思ヒマス、私郡役所ノ問
題ニ付テハ反對モ致シマシタガ俄然、郡
役所ヲ廢止ヲサレタト云フ非難ガ今日起リ
マシテ郡役所ノ廢止ノ爲ニ皆困ッテ居リ
マス斯ウ云フ問題モ其一例デ、若シ郡役
所ト云フモノガアシテ、其地方ノ郡民ト常ニ
親シクツキ合ノテ居リ、又實情モ知リ易イト
云フ郡長ガアリマシタナラバ幾ラカ的確
ノ材料ヲ得ラレマセウケレドモ、縣廳カラ
遠ク離レタ所ノ町村、或ハ漁村、山間ノ僻
地等ニ對シテ唯一本ノ電報デ以テ照會スル、
其電報ニ付テ直ニ返事ヲスルト云フヤウナ
コトハ正確ニ望ミ得ラレナイノハ當リ前
ノコトダラウト思フデアリマスカラサウ
云フヤウナ調査ハ私ハ何ニモナラナイト思
フ、之ヲ學校學校ニ付キ、〓職員ニ付キ調
査ヲ致シマセネバ是ハ本當ノ材料ト
云フモノハ得ラレマセヌノデアリマ
ス、玆ニ一ツかノ的確ナル實例ガアリマ
ス、事文〓ニ關シテハ居リマセヌガ御參
考マデニ申上ゲマス、只今衞生組合法
案ガ貴族院ノ特別委員會ニ付セラレテ居リ
マスルガ、私モ委員ノ一名デアリマスルガ、
特別委員會ノ席上ニ於キマシテ私カラ一ツ
ノ材料ヲ要求シタノデアリマス、ソレハ衞
生組合ト云フモノデ實際仕事ヲヤッテ居リ
マスル所トソレカラシテ町會、或ハ町總
代會等ニ於テヤッテ居リマス所ノ區別ヲ知
リタイト存ジマシタノデ、其表ヲ御作リヲ
顎ヒタイト云フコトヲ御註文申上ゲテ置イ
タノデス、サウ致シマシテ二三日經チマシ
テ日曜ニナリマシタカラ或地方へ旅行イタ
シマシタ、サウシテ、或市ノ方ヘ參リマシ
タ所ガ、其市吏員ノ申シマスノニハ內務
省カラシテ電報デ至急ニ衞生組合ノ數ヲ知
ラシテ來イト云フコトヲ縣廳カラ言ウテ參
リマシタ、所ガ私ノ市ニ於テハ實ハ衞生組
合ト云フモノガナイノデアリマス、無イノ
デアリマシテ、ソレハドウ云フ譯デ無イカ
ト云フタラ、町會デヤラシテ居ルノデ町
會ト云フモノデヤッテ居ルカラ衞生組合
ノ數ヲ知ラシテ來イト言フタ所デ、ナイノ
デアル、所ガ縣廳ノ方デハナイヂヤ困ル、何
カ報告ヲシナケレバナラヌト段々言ハレタ
末ニ、ソレヂヤ町會、町總代會ノ數ヲ衞生組
合ノ數ニ代ヘテ報告シテ置カウカト云ウテ
報告ヲ致シテ置キマシタデアリマスルカ
ラ、私ノ方ノ市ノアノ衞生組合ノ數ト云フ
モノハ衞生組合ノ數ニアラズシテ町會ノ數
デゴザイマス其基本財產若クハ決算額ト
云フモノハ皆町會ノ費用デアリマシテ衞
生組合ノ數ヂヤナイノデアリマスケレドモ、
ドウモサウシテ置カナケレバイケナイト
云フコトデアッタカラ致シマシタト云フノ
ヲミ偶〓私旅行ヲ致シマシタ時ニ聞キマシ
ク、サウ云フヤウナ實情デアル何デモ其
場ヲ繕ノテ置ケバ宜シイ聞キニ來ル者モ
唯議員カラシテ何カ表ヲ作レ、提案ヲシロ
統計ガナクチヤ濟マヌト云フコトデ電報
デ直ニ照會スル、サウスルト市町村ノ方ハ
色ミニ解釋シテ、サウシテ是ハ矢張リ衞生
組合ト云フモノガ無カッタラ叱ラレルノカ
モ知レナイト云フヤウナ所カラ、サウ云フ
ヤウニ事實ヲ曲ゲテ報告ヲスル、ソレガ私
ハ極メテ好イ例ダト思フノデス、サウ云フ
ヤウナ工合デアリマスカラ、只今ノヤウナ
報告ト云フモノハ文部省ノ机ノ上ニ文書ト
シテ現ハレテ來ル報告ハ、何ニモナラヌ
私ハ統計ダト思ヒマス、デアリマスカラ
私ハ二十年程ノ前デアッタラ、是ハ其通
リノ統計ヲ本當ノ統計ト思ヒマスケレドモ、
私ハ今日ニナッタナラバ誰一人之ヲ信ズ
ル者ハナイダラウト思フ、現ニ昨晩ノ夕刊
ノ都新聞ニ於テ全國ノ〓員ガ起ツ全國ノ
〓育會ガ起ツト云フコトノ見出シノ下ニ
文部大臣ノ仰シヤッタコトハ嘘デアル、怪
シカラヌコトヲ仰シヤルト云フコトヲ言ツ
タコトガ昨日ノ夕刊ノ都新聞ニ載ッテ居
リマシタ、是ハ昨日ノ夕刊バカリデナイ
是迄サウ云フヤウナ寄附ヲ强要シ或ハ減
俸ヲサレテ居ル所ノ町村ノ數ハ非常ニ多イ
モノデアルト云フコトハ是ハ天下ノ新聞
紙ニ悉ク載シテ居リマス、是レ私一人ノ言
デナイ、サウ云フヤウナコトヲドウカ之ヲ
仰シヤラヌヤウニシテ戴キタイト思フ是
ハ併シ文部大區ガ何モ欺ク爲ニ、手前ヲ作
ル爲ニ仰シヤッタノデナイ實際サウ云フ
モノダラウト御思ヒニナッテ居ルノダラウ
ト思フ、デアリマスケレドモ是ハモウ一
遍御尋ネシマスガ是ハ確ニ違フテ居ルト
思ヒマスルガ、フレダケ申上ゲテモ矢張リ
文部省ノ受取シテ居ル所ノ統計ハ正シイモ
ノト仰シヤイマスカ、ドウデアリマスカ
此點ハ一ツ伺ヒタイト思ヒマス、ツルカラ
シテ全額支給ガ出來ナカッタラバ、セメテ
其間グケデモ校長給ノ俸給ダケハ國庫カラ
御出シニナッテハドウデアリマスカ、ト云フ
コトニ對シテ色ミ御意見ガアリマシタ、併
ナガラ是ハ考ヘテ置カウト云フ御話、マダ
十分決定シテ居ナイカラ研究シテ置カウト
云フ御話デアリマスカラ、御〓究ノ結果私
ノ考ヘタコトト一致スルカモ知レマセヌ、
併ナガラ尙ホ一ツ御尋ネヲシ又之ヲ確カメ
テ置キタイト思ヒマヌ、文部大臣ノ前囘ノ
御答ハ校長級ダケハ國庫カラ支辨スル部
下ノ〓員ハ地方カラ出シテ貰ッテ居ル、地
方ガ疲弊シタ爲ニ部下ノ〓員ノ方ハ俸給ハ
貰ヘナイ、校長ダケハ一人國庫カラ支辨サ
レテ居ルカラ貰ウンダ、サウ云フヤウニナッ
タラ其間ニ非常ニ考ヘルベキ問題ガアルヂ
ヤナイカト、斯ウ仰シヤイマシタケレドモ
ソレハ考ヘ樣次第デアリマス、〓員ガ自分ノ
俸給ガ拂ッテ貰フコトガ出來ナイ、併ナガラ
校長ノ方ガ國庫支辨トシテ拂ッテ貰ッテ居ル
フデアル、サウスレハ文部大臣ハ漸ヲ追フテ
國庫支辨ト云フコトヲヤリタイト云フ考デ
アルノデアルカラ、今デコツ我ミハ市町村
ノ御厄介ニナッテ居ルカラ俸給ハ貰フコト
ハ出來ナイケレドモ、今ニ校長同樣ニ我〓
ハ國庫カラ支辨セラレテ、安全ナル地位ヲ
保ツコトガ出來ルンダカラ、此處ハ今暫ク
ノ所ダカラ踏ン張ラウト云フ氣モ必ズ起,
テ來ルダラウト思フ、而モ是レ以外ニ非常
ニ良イ心證ヲ與ヘルト思ヒマスノハ前囘
ニモ申述ベタ通リニ地方費支辨デアリマス
北海道道〓員ト云フモノハ其土地ノ有力者
或ハ理事者、或ハ議決ニ携ハル人、卽チ市
町村會議員ト云フヤウナ者ノ爲ニ隨分左右
サレテ居リマス殆ド小學校ノ〓員ト云フ
モノハ地方ノ雇人デアルガ如キ有樣ヲ極言
スレバ有ッテ居リマス、ソレガ校長ダケデ
モ是ハ圍ノ御役人デ、國カラシテ月給ヲ載
イテ居ルノデアルト云フコトニナッタナラ
バサウ云フ父兄ニ對シマシテモ、市町村
ノ理事者ニ對シテモ、自分ハ行ハムト欲ス
ル所ハ遠慮ナク行ヒ得ラレル、サウ云フヤ
ウナコトノ爲ニセメテハ出來ナイノナラ
校長給ダケナサッテ、サウシテ校長ノ位置
ノ安全ヲ保證スルト共ニ、校長タルモノノ
神聖ヲ保クス爲ニナサッテハ如何デアリマ
セウカト申上ゲタノデ、〓員ガドウデアル
トカ校長トノ間ガドウデアルトカ云フヤ
ウナ、サウ云フ小節ニ私ハ拘泥イタシマシ
テ申上ゲタノデハアリマセヌ、是ダサ申上
ゲテモ文部大臣ハマダ考へル餘地ガアルト
仰シヤルカ或ハ成ルホドオ前ノ言フノハ
尤モダ校長級ダケハ何トカ卽時一ツ考ヘ
テ見ヤウト云ワヤウテ御考ガ出ナイカ、め
レヲ一ツ承ハリタイト思ヒマス、ソレカラ
文部大臣ハ大層御丁寧ニ、私ハ初等〓育ト
云フモノハ隨分〓究シテ居ル、現ニ小學校
ノ〓科書ナドモ卷ノ一カラ讀ンデ居ルノデ
アルト云フ御話デアリマシタガ、是ハ是迄
ノ文部大臣ニハナサッタコトノナイ事例デア
リマシテ、其點私文部大臣ニ對シテ大イニ
敬意ヲ表シマス、併ナガラ百尺竿頭一步ヲ
進メテモウ一ツ進ンダ考ヲ持,テ戴クコ
トガ出來ナイモノデアラウカト思ヒマス
最明寺入道時賴ハ諸國ヲ廻リマシタガ爲ニ
佐野常世ト云フ立派ナ士ヲ得タ、水戶黄門
光圀卿ハ日本ヲ漫遊セラレテ實地ニ就テ御
調ベニナッタカラ、民ノ塗炭ニ苦シムノヲ
救ハレタト云フコトガアル大臣室デ小學
校ノ卷ノ一ヲ御覽ニナッタ所デ、多少ノ御利
益ハアルダラウケレドモ、ソレ程ノ私ハ御
利益ハナイダラウト思フ、ソレヨリ近イ所
ノ府下ノ小學校ノ五六ヲ御覽ニナリマシテ、
實際ノ狀況ヲ御覽ニナリ、實際小學校長等
ニ御聽キニナッテ······地方官等ニ御聽キニ
ナッテモ駄目デス、小學校長其他ノ〓育ニ
從事スル所ノ人ニ實際ヲ御聽キニナッタナ
ラバ、ドレ程利益サレルカト云フコトハ思
ヒ餘リアルノデアリマス、デアリマスルカ
ラ〓科書ヲ御讀ミニナルノハ結構デアル
ガ〓科書ヲ御讀ミニナル御暇ニハ親シク
近イ所ノ府下ノ小學校ヲ御訪ネニナラナケ
レバイケマセヌ、今日靑年團ヲ指導セラル
ル方、或ハ少年團ヲ指導セラルルヤウナ方
ハ、靑年團ナリ少年團ノ年齡ニ比シテハズッ
ト御年ヲ召シタ方デモアルシ、皆相當社會
上ノ位置ヲ占メラレタ方デアリマス、併ナ
ガラ少年團ヲ指導シ、靑年團ヲ指導スルニ
ハ唯少年團、靑年團ノ集ノタ時ニ、唯一ツ
ノ講演ヲナサルトカ、或ハ靑年ノ話ヲ聽ク
トカ云フヤウナコトニ止テテリマセヌデ、
倶ニ共ニ艱難ヲ共ニシテ、サウシテ遠足ス
ル時ニハ一〓ニ遠足ヲサレル、不斷一等車
ニ乗ッテ居ラレテモ、其時バカリハ三等車
ニ乘ッテ、御一〓ニ行ッテ.下サル、不斷美食
ヲ上ッテ居ッテモ、其時ハ竹ノ皮ニ握飯ヲ包
ンデイラッシヤル、サウ云フヤウニ靑年ト
共ニ、少年ト共ニ親ンデ、サウシテ御自分
ガ少年トナリ靑年トナッテイラッシヤレバコ
ツ、今日靑年團ノ活氣ト云フモノハ非常ニ
揚ノテ居リマスケレドモ、申スモ畏キコトデ
アリマスケレドモ先年今上陛下ガ親シク
御親閲ヲ賜リマシタ時ノアノ時ノ實狀ハ
如何デアリマス、アスコマデ天皇陛下ガ靑年
ノ爲ニ思召サレル其大御心ニ對シチ應ヘ奉ラ
ナケレバナラナイト云フノデ、御親閲以來ノ
靑年ノ士氣、少年ノ士氣ト云フモノハ非常ニ
揚フテ居ルノデアリマスル、ソコマデ踏込ン
デナサラナケレバ何等ノ益ガナイ、唯大臣
室デ「ハタ、タコマリ」ナドト云フヤウナ
コトヲ御讀ミニナック所デ、是ハ多少ノ利
益ハアリマセウ、是マデノ文部大臣ノ御ヤ
リニナッタコトノ無イコトヲ御ヤリニナル
ノダカラ私ハ敬服シマスケレドモ、ソコ迄ノ
御氣持ガアルナラバモウ一ツ進ンデ戴キタ
イ又ソレハ御進ミニナルノガ當然ナコト
デアラウト私ハ思ヒマスノデアリマス、デ
私ハ今後文部大臣ハ初等〓育ト云フモノノ
大切ナルコトヲ考ヘラレテサウシテ親シ
ク御覽ニナルト云フダケノ勇氣アルヤ否
ヤ必ズ御實行ナサルヤ否ヤト云フコトヲ
御尋ネシタイト思ヒマス、ソレカラ御話ノ
中ニオ前ハ普通學ト云フモノヲ大層文部省
ハ輕ク見テ居ルヤウニ言フケレドモ、決シ
テサウデナイ普通學務局ト云フモノハ文
部省デモ一番大キナ局デ、位置トシテモ高
イノデアルソコニ督學官ト云フモノガア
リ、學藝官ト云フモノガアッテ、普通學ニ對
シテハ大イニ意ヲ用ヒテ居ルノデアルト仰
シヤイマシタガ、ソレハ其通リデアル、併
ナガラ此普通學務局ハ中等學校以上ノ普通
學ニ力ヲ入レテ居ラレル督學官、成程督
學官ト云フ者ガアリマス、此督學官ト云フ
者ハドウ云フコトヲシテ居ルカト言ヘバ、
中等學校以上ノ督學官デアル、此前ニ小學
校ヲ視テ貰ヒタイ、一度少年團ノ有樣ヲ視
テ貰ヒタイト云フノデ督學官ヲ御訪ネシタ
ガ、遂ニオ出デニナラナカッタ、三度御願ヒ
シテ三度目ニ遂ニオ出デ下サッタケレドモ、
誠ニオ出デ下サッタノニ、申スクモ如何デ
スガ、ホンノ素通リシテ下サッタト云フヤウ
ナ有樣デ、ナカ〓〓小學校ヲ御覽下サルモ
クデアリマセヌ、所ガ警學官ハ十人居ラウ
ガ十五人居ラウガ、小學校ノ初等〓育ニ付
キマシテハ私ハ何等ノ關係ガチイト思フノ
デアリマス、又普通學務局ハ成程大キナ
局デアッテモ、中等學校以上ノ事ニ御心ヲ用
ヒラレマスケレドモ、私ノ最モ大事ト思フ
所ノ初等〓育ニハ餘リ御關係下サラヌノデ
アリマス、明治大帝ノ御製ニ「マチビヤニ
入リニシ日ヨリウナヰ子ガモノイヒサヘモ
カハリケルカナ」ト云フ御歌ガアリマス、是
ハ確ニ初等〓育ト云フモノハ大事デアルト
云フ御歌デアラウト存ジマスウナヰ子ト
仰シヤッテ學ビ屋ニ入ッタ日カラウナヰ子ハ
言葉サヘモ變ルノダ、ダカラシテ行儀ハ變
ルダラウ、精神モ進ムダラウ、學術モ進ム
ダラウト、斯ウ云フヤウニ御考ニナッタ御歌
ト思ヒマス、學習院ニ於テモ近衞公爵或ハ
乃木將軍ハ最モ力ヲ初等〓育ニ御入レニ
ナリマシタ、近衞前公爵、乃木將軍ハ師範
學校ノ御卒業生デモナケレバ、〓育家デモ
アリマセヌケレドモ、實ニ〓育ノ大本ト云
フ所ヲ御摑ミニナッテ初等〓育ヲ改善シ、初
等〓育ニ力ヲ入レナケレバナラヌト云フノ
デ御力ヲ入レテ下サッタクデアラウト思フ
ノデアル、デアリマスルカラ前申述ペマシ
タヤウニ、文部省ノ普通學務局ハ唯位置ガ
上デアル、中等學校、大學、高等學校ト言
ヘバ位置ガ上デアルト云フヤウナコトニノ
ミ眼ヲ御著ケニナラナイデ、實際初等〓育
ト云フモノハ最モ大事ナモノデアル是ガ
基本〓育デアル、是ガ根柢〓育デアル、前
同ニ申述ベマシタ通リニ、國民ノ百分ノ九
十ト云フモノハ、小學校〓育ノミ受ケクモ
ノデアルト云フコトニ御心ヲ著ケラレルノ
ナラバ此方へ向ケラレナケレバナラヌト
思フノデアリマス、ドウモ世上此大學校、中
學校、小學校ト云フヤウチ何ガアリマス爲
ニ、大學トカ、中等學校ト云フモノハ大事ニ
セナケレバナラヌ、小學校ハ粗末ニシテモ
宜シイト云フヤウナ御考ヲ持ッテ居ラレル
方モアリマス、汽車ノ一等二等ノ客ハ大事
ニシナケレバナラヌ、三等ハ粗末ニシテモ
宜イ、昔ハアレヲ上等、中等下等ト分ケ
テ、下等客下等客ト云ッテ隨分惡クアシラッ
タヤウニ思ヒマスルガ、サウ云フヤウナ御
考ヲ以テ普通學務局ヲ如何ニ御擴張ニナ
リ、如何ニ御力ヲ御入レニナッテモ、ツレハ
何ニモナラヌノデアリマスカラ此點モ特ニ
考ヘテ戴キタイ、師範學校ノ〓育ナドモ今
度ハ改善シテ二部〓授ノ方ノ年限ヲ增シテ
居ルヂヤナイカ、サウ云フコトモ矢張リ初
等〓育ニ關係シテ居ルヂヤナイカト云フ前
同ノ御話デアリマシタケレドモ、是ハ私ハ
甚ダ失禮ダケレドモホンノ手前ヲ飾ルダケ
ノ御話グラウト思フ、ソレヨリハ進ンデ
師範學校ノ卒業生ヲ何トカ少クシテ、經驗
ノアル良イ〓師ヲ罷メサセナイヤウニスル
ト云フ方ガ、ドレ程大事ナコトカト思ヒマ
スノデアリマス、其邊ニ對シマシテ更ニ
一ツ文部大臣ノ御考ヲ承リタイト思ヒマ
ス、尙ホ又映畫ノ事ニ付キマシテモ段々御
話ヲ承リマシテ謹ンデ拜承イタシマシタ、
併ナガラ此映畫モデス、私ハ映畫局ト云フ
ヤウナ少シ大キナモノニシテモツト力ヲ御
入レニナックラドウデアリマセウカト申上
ゲタノニ對シテ、ドウモ費用ガナクテ困ル、
今日ノ實情デ忍ンデ居ナケレバナラナイノ
デアル、併ナガラ〓育映畫ノ必要ハ感ジテ
居ル、映畫局ノ大切ナルコトハ感ジテ居ル
ノダガ、如何セン費用ガナイノデト云フ御
話デアッタガ、是ナドモ爲サラウト思ッタラ、
費用ハ私ハ文部省内デ出ルンダラウト思
フ、思想善導ノ爲ニ此節中等學校ニハ主事
ヲ置キマシテ、學生主事ヲ置キマシテ、サ
ウシテソレニ相當ノ費用ヲ御出シニナッテ
御ヤリニナッテ居リマス、此效果ハ甚ダ私ハ
怪シイヤウニ思フ、是ハ此御計畫ノ始メニ
御話ヲ承リマシタ時ニ、私意見ヲ申述ベタ
コトモアリマス、所ガ果シテ今日御實行ニ
ナッテ見ルト餘リ效果ガナイヤウニ見エマ
ス、新聞紙ノ傳フル所ニ依レバ、ドウモ其
金ガ僅カデドウモ使ヒ途ガナイ、仕方ガナ
イカラ學校ノ金庫ニ入レテ置ク所モアル、
又或ル場合ニハ仕方ガナイカラ、マア〓
師ト生徒ト話ヲスル時ニ饅頭ヲ出シタリ、
煎餅ヲ出シタリ、ソレノ費用ニ充テル、ソ
レ故ニ其饅頭ノコトヤ煎餅ノコトヲ、マダ
思想饅頭ガ出ナイダラウカ、思想煎餅ガ出
ナイノダラウカト云フヤウナコトヲ學校デ
申シテ、何等カ嘲笑ノ形ニナッテ居ッテ思
想善導ニ非ズシテ、却ッテサウ云フコトヲ嘲
ケリ笑フヤウナ傾キガアルト云フコトハ
各種ノ新聞ニ載シテ居リマス、實際サウダラ
ウト思フ、之ニ代フルニ〓育映畫ヲシタラ
ドレダケ功績ガ多イカト思フ、此節ヨク衞
生講話トカ學術講話トカ、色ミノ講話講演
會トカ〓究會トカアリマシテ、サウシテ地方
地方ヘヨク講演ニ行ラッシヤル、所ガ中ミ斯
ウ云フ講演會ナドニハ聽衆ガ少イ、ソコデ
已ムヲ得ズ活動寫眞ヲ餘興ニスル、サウス
ルト云フト活動寫眞ヲ觀タイガ爲ニ大勢
ヤッテ來ル、デアリマスルカラ是ハ私ハ實
際實驗シテ居ル所デアリマスガ、此節ノ講
演會ハ活動寫眞ヲ餘興ニ致シマシタナラ
バソレハ殆ド溢レル位人ガ來ル、所ガ活
動寫眞ガナカッタラ、チットモ來ナイ、此程
私淺草ノ通リヲ步イテ見マシタガ、淺草公
園ノアスコニ佛〓ノ法話會ガアリマスガ
其佛〓ノ法話會ハ入場料モ何ニモ取ッテハ
居ナイガ聽衆ハ僅ニ五六人デアル、所ガ
六區ノ活動寫眞館へ行クト云フト、アノ切
符ヲ買ヒタイト云フ者ガ道路ニ溢レテ居ル
ト云フヤウナ有樣デアル、其位今日活動寫
眞ト云フモノニ趣味ヲ持テテルノデアリ
やく、其趣味ヲ利用シテサウシテ國民ノ思
想ノ善導ニ何故オ努メニナラナイカ、又文
部省ハソレニ疾ニ御氣ガ付イテ居ル、御氣
ガ付イテ居レバコソ、拙イ活動寫眞デハアッ
タケレドモ、「日出ヅル國」ト云フヤウナ活動
寫眞ヲ出シテ、サウシテ國民思想ノ善導ニ
資スルガ爲ニオヤリニナッテ居ル、デアリマ
スカラ、文部省モ〓育映畫ト云フモノガ非
常ナ大事ナモノデアルト云フコトハ御考ヘ
ニナッテ居ルノデアリマス、所ガ前囘申述べ
タ通リニ只一局部ニ偏在シテ、俸給モ文
部省カラ拂ヘナイト云フヤウナ有樣デア
ルデアリマスカラ、何處カノ專門家興業
師ニ賴ンデ「日出ヅル國」ト云フヤウナ寫眞
ヲ作ッテモラフヨリ仕方ガナイ、文部省モ作
リタイト云フ意思ハアルガ、作ルニ付テハ
何等ノ御誠意モナケレバ御熱心モナイ、興
業師ニ賴ンデ拵ヘテモラッタ、デスカラアヽ
云フヤウナ只目先ダケガ宜イト云フヤウナ
映畫ニ終ッテ居リマス、デアリマスカラ、ド
ウカ一ツ此映畫ト云フコトニ御力ヲ盡シタイ
ト云フコトヲ御考ヘニナッテ居ルナラ、費用ハ
何處カラデモ川テ來マス、今一例ヲ擧ゲタノハ
思想饅頭思想煎餅デアリマスカラ、サウ云フ
方カラデモ出テ來マス、デアリマスカラ是ハ
ドウシテモ私カラ考ヘタラ能ハザルニ非ズ、
セザルナリデアル、シヤウト云フ考ガアッタ
ラ何處カラデモ金ガ出テ來ル、ソレニ對シ
テモウ一遍御伺ヒシタイ、ソレカラシテソ
レニ附隨イタシマシテ、私此前ニ大阪每日
新聞デアルトカ、或ハ帝國〓育映畫株式會
社デアルトカ云フコトノ御話ヲ致シマシタ
ガ、政府ニ於テモサウ云フ民間ノ有志者ト
協力シテ、サウシテ善處シタイト思ッテ居
ル、付テハ是ヲ推薦スルトカ或ハ認可スル
トカ云フヤウナコトニモ努メテ居ルト云フ
御話デアル是ハ結構ナ御話デアリマス
ガ、モウ一ツ進ンデ、文部省ニ於テモ隨分
不完全ナコトヲ爲サッテ居ル、デアリマス
カラ、民間ニ於テサウ云フヤウナコトヲ考
ヘテ居ラレルニ對シテ、或ハ會社ニ對シテ
或ハ新聞社ニ對シテ、何トカ補助ヲスルト
カ奬勵スルトカ云フヤウナ途ヲ一ツ御考ニ
ナッタラドウデアラウカト思フ、失禮ナガラ
大阪每日新聞ノ映畫ナドハ文部省デ御作リ
ニナッテ居ル物ヨリモ隨分宜イ物ヲ各所デ
拜見イタシテ居リマス、其點ニ付テ一ツ御
考ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、餘リ長
クナリマスカラ、文部大臣ニ對シテハソレ
ダケニ致シテ置キマス、內務大臣折角御出
デニナッテ居リマスルカラ、私一應申述ベテ
見タイト思ヒマスガ、內務大臣ハ過日御話
ニ義務〓育費ノ增額ヲシタケレドモ、其增
額ハ決シテ地方デハ土木費トカ、其他ノ費
用ニ流用シテ居ルモノデハナイ、ソレハ嚴
シク府縣ノ方へ申渡シテサウ云フコトノナ
イコトヲ期シテ居ル、ダカラサウ云フヤウ
ナコトハ決シテナイト云フ御話デアリマ
ス、若シサウ云フコトガナイト云フコトナ
ラ私誠ニ結構ナコトダト思フノデアリマ
ス、併ナガラ是ハ前囘ニモ申述べマシタ通
リニ、既ニ其年ノ豫算ト云フモノガ市町村
テ於テ決ッテ居リマスレバ、モウ公表ヲシテ
居リマスル後デアッタナレバ、成ル程ソレカ
ラ削減シテ、其削減シタ所ノ金額ヲ以テ減
稅ニ充テルト云フコトハソレハ事實出來
ルコトナンデアリマス、所ガ本年度、六年
度ノ豫算ニナッテハサウ行キマセヌ、御承知
ノ通リ日本ノ人ロト云フモノハ八十万乃至
百万殖エテ來ルノデアリマスカラ、日本全
國ニ於テ八十万、百万ノ學童ノ殖エルト云
フコトハ、ドウシテモ豫期シナケレバナラ
ナイコトデアル之ニ對スル總テノ費用ガ
掛ルノデアリマスカラ、從ッテ〓育費ト云フ
モノダケデモ隨分每年殖エテ行キマス、デ
アリマスルカラ昨年ノ豫算ト今年ノ豫算ト
較ベルト、今年ノ豫算ノ方ガドウシテモソ
レダケデモ殖エテ來マス、其代リニ又外ノ
途デ防イダリモシマスケレドモ、其色ミヤ
リ繰リヲシテ地方財政ハヤッテ居ルノデア
リマスカラ、是ハ義務〓育費カラ下渡シテ
下サッタ金ダカラ此袋ニ入レテ置カウ、是ハ
地方ノ財政ノ金ダカラ是ハ此袋ニ入レテ置
ク、サウ云フヤウナ區別ハ出來マセヌ、金ニ
印ヲ付ケルコトハ出來マセヌ、デアリマス
ルカラ、サウ云フコトヲ好ンデスルノデハ
ナイガサウ云フコトヲセザルヤウニシ
ナケレバナラナイヤウニナッテ參リマスノ
デアリマス、殊ニ只今地方財政ノ豫算モ議
定中デアリマス、各地方ニ於テ······ソレガ
私ハ殆ド悉クソレニ現レテ來ルダラウト思
フ、成ル程地方廳ニ對シテ御傳達ハ出テ居
リマス、アノ時ノ特別委員會ニモ希望條件ト
シテ御願ヒモシテ居リマスルシ、又其點ニ
付キマシテハ特ニ大臣ハ御考ヘ下サッテ居
ルコトデモアリマセウシ、其結果ガ各府縣
へ嚴シク御傳逹ニナッテ居リマス、御傳逹ニ
地方廳マデハナッテ居リマスケレドモ、其御
傳達ニナッタ趣意ガ、果シテ町村ニ徹底シテ
居ルカ、又ソレヲ町村ガ聞イテモ實行スル
ヤ否ヤト云フコトニ私疑問ヲ懷イテ居ル、
斯ウ云フ私一ツノ實例ヲ見テ居ル、或ル村
ノ小學校ノ校長ガ其土地ノ府縣廳ノ意志ニ
反シタコトヲシタト云フ故ヲ以テ、其小學
校ノ校長ヲ罷メサシタ、所ガ今度小學校
ヲ罷メサシタニ付テハ新シイ小學校長ヲ
向ケタ、所ガ其小學校長ニ對シテ其村ノ人
達ハ是ハ縣廳カラ差向ケテ來タケレドモ、
我ミノ氣ニ入ッテ居ル校長デナイ、コンナ者
ニ俸給ヲヤル必要ハナイト云フヤウナコト
デ六七箇月俸給ヲヤラナカッタコトガアル、
ソレガ爲ニ校長ハ罷メタイケレドモ、罷メ
ルト云プト何ダカ俸給ノ爲ニ天職ヲ擲ツコ
トニナルカラ、困ッテハ居ルケレドモ六七箇
月ヤッテ居ル、併ナガラソレガ種々ノ方面ニ
現レテ來マス、最モ著シイコトハ訓育ノ上ニ
現レテ來マシテ、ソコデ土地ノ有志ガ心配シ
テ色ミ交渉ヲシタ結果圓滿ニ解決ヲ致シマ
シタケレドモ縣廳ガ進ンデ色ミト傳達モ
シマスレバ干渉モツテ居ノテモ、ナカ〓〓
地方ノ自治體ハ聞キマセヌ、殊ニ御承知通
リ此節市町村長ト云フヤウナ者ガ隨分縣會
議員ニモ成シテ居リマス者モアリマスレバ
市會議員ニモナッテ居リマス者モアリマス
シ或ハ貴衆兩院ノ議員ニナッタ者モアリ
マスカラナカ〓〓地方廳カラ言ッテ來テ
〓、自分ガ良イト思ッタラ聞キマスケレド
〓、惡イト思ヲタラ聞キマセヌ、殊ニ斯ウ云
フ財政ノ苦シイ時ニハ、ヤリ繰ヲシテ居ル
ヤウナ此財政ノ苦シイ時ニハナカ〓〓聞ク
モノデハアリマセヌ、內務大臣ガ仰ヲシヤ
ルカラ、知事サンガ仰ッシヤルカラト言ッテ
ソレダケデナカ〓〓聞キマセヌ、サウ云フ
時代ハ餘程前ノ時代デアリマス、又縣廳ハ
サウ云フコトニハ手心ヲ用ヰテ居リマス
サウ云フヤウナコトノ爲ニ一本槍デ御通牒
ヲ御出シニナッタト云フノハ、是ハ唯ホンノ
形式ニ止マル話デ、事實ハサウ云フコトニ
サリマセヌノデアリマスデアリマスルカ
ラ其點特ニ御考慮ヲ願セタイト思ヲノデア
リマス、ケレドモ通牒ヲ出シテ居ル、嚴シク
言村ケテ居ルカラキット聽イテ居ルダラ
ウト云フヤウナ、斯ウ云フヤウナコトハ
中ミアリマセヌ、ソレカラ映畫ノコトニ對
シチ、内務大臣ハオ前ト大體ニ於テハ同感
デアルカラ、尙ホ一層取締ル、今迄モヨク
取締ッテ居ルンダ斯ウ云フ御話デアリマ
シタガ、此點有難ク拜承イタシマシタ而
シテ私ハ相當取締ッチ居ルト仰シヤルノデ
アリマスケレドモ、私ハ相當取締ルト云フ
點ニ付テハ、多少遺憾ノ點ガアルヤウニ存
ジマス、御承知ノ通リ、外國カラ入ッテ參リ
マスル映畫ハ隨分思想ニ於キマシテモ
精神ニ於キマシテモ、國情ニ······日本ノ國
情エデス、日本ノ國情ニ適シナイモノガ隨
分アルヤウニ想ヒマス、而モ其現ハシ方ガ
鼈分巧妙ニ現ハサレテ居リマス、ソレガ爲
ニ餘程ノ知識アリ、餘程ノ經驗アル人デナ
ケレバ是ノ辨別ガ付カナイ場合ガアルノ
デアリマス、御承知通リ映畫ト云フモノハ、
一室ヲ眞暗ニシテシマッテ唯一場面ノ明
ルイ所ニ眼ヲ集注サセマスカラ、普通ノ演
劇トカ、音樂ト云フモノヨリハ、其心身ニ
影響イタシマスル所ハ非常ニ探刻デアリマ
スチヨット事ガ恐ロシク廣ク擴ガリマス、
映畫デハチヨット見セク積リダガ、受取ル人
間ノ頭ニ於テハ、ソレヲ大キク橫ク考ヘラ
レルト云フモノハ是ガ映畫ノ特質デアリ
マスデアリマスカラ斯ウ云フ點ハ特ニ注
意ヲシテ貰ヒタイ、警視廳ノ唯一部デ以テ
「カット」ヲシマシタリ、止メサシタリシテ居
ル位ノコトデハ中ミイケナイノデアリマス、
是ハ格段ニ心ヲ用ヒテ戴キタイト思フ、前
囘ニモ申述ベマシタ通リニ、映畫ト云フモ
ノハ唯映畫其モノダケデナシニ、思想ニ
於キマシテモ、健康ノ土ニ於キマシテモ、
是カラ來マシタ影響ト云フモノハ非常ニ大
キイ、善イコトガアッタラヨリ大キク擴ガ
リマス、惡イコトガアッタラソレガ大キク擴
ガルノデアルカラ、内務省ガ土臺ニナッテ居
ルンダカラ、內務省デ「スタート」ヲ切ル時
ニ餘程嚴重ニナサッテ置カナイト、ソイツガ
擴ガッテシマセマスカラ、ソレニ對シテ細
心ノ御注意ヲ願ヒタイ、是ニ對シテハ相當
ノ費用ヲ御掛ケニナッテモ宜イダラウト思
ヒマス之ガ思想ノ上ニ於テ、訓育ノ上ニ
於テ、及ブ所ガ非常ニ大サルモノガアリマ
スカラ、相當考ヘテ居ルト仰シヤルガ、私
ハ相當、マグ、考ヘテハ居ラッシヤルケレギ
モ實行ト云フコトハ遺憾ナガラ經費ノ都
合ヤソンナコトデ出來テ居ナイ、併ナガラ、
經費ト云フモノヽ外ニ御努メニナル方法ハ
マダ幾ラモアルダラウト思ヒマス、何卒其
點ハ一ツ御考ヲ顯ヒタイソト、是ダケ私ガ
申上ゲマシタニ付キマシテハソシニ對シ
テノ一ツ御考ヲ承ハリタイト思フノデアリ
やっ、何卒是ダケデ御答辯ヲ願ヒタイノデ
アリマス
〔國務大臣田中隆三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=10
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011・田中隆三
○國務大臣(田中隆三君) 初等義務〓育ノ
コトニ付キマシテ段々御深切ナ御意見ニ
付キマシテハ謹ンデ敬意ヲ表シマス而
シテ此〓育ノ爲ニ文部當局ノ施設イタシテ
居リマスル事情、又苦心ヲ致シテ居リマス
ル大體ノコトニ付キマシテハ先キニ御話
申上ゲタコトデ相當御了解ヲ得タコトト存
ジテ居リマスガ、紀男爵ハ此〓育ニ殊ニ重
キヲ置ク意味ヲ以テ政府ノ財政土困ルト
云フコトデアルナラバ文部省ノ力ヲ範圍
內ニ於テ、或モノヲ整理シテ此方ノ計畫ヲ
整備スルコトモ出來ルヂヤナイカ、例ヘバ
其一例トシテ、中等學校等ノ制度ヲ學校
サドハ多過ギルカラ、之ヲ改廢シテデモ其
費用ヲ取ッテ、以テ其方面ニ使フコトニシテ
ハドウカト云フ御意見デアリマス、其御意
見ニ付キマシテモ私必シモ反對ヌルト云
フ意味デハゴザイマセヌガ事實ナカ〓〓
御言葉ニモアリマシタ通リ困難デアリマス、
困難ト云フ點ハ何カト云フト、ナカ〓〓其
一ツノ學校ヲ廢スル、移轉スルト云フコト
デモ地方ノ大問題ガ起ルノデアリマス
現ニドコソコ縣、ドコソコ縣ト云フ縣ヲ茲
ニ指摘スルコトハ面白クアリマセヌカラ申
シマセヌガ、大騷動ヲ旣ニ起シ、又起シツ
ツアル所モアルノデス、ソレハ唯一方ノ師
範學校ヲ今日ノ制度ノ上カラモ又實況ノ
上カラモ一ツノ學校デ間ニ合フカラシテ
之ヲ此方ニ移サウト云フ、極ク正シイ明瞭
ヲ理由ノ下ニサウ云フ決議ヲシテモデス、
ナカ〓〓腕力ニ訴ヘテデモソレヲ防グ其
結果トシテ大騷動ガ起ルト云フコトガ現在
デアルノデアリマス、ソレデソレヲシヤウ
トシテモ事實ヤリ得ナイ、ソレ〓〓地方ニ
ハ縣會ガアル、又更ニ中等學校以上ノ政府
直轄ノ問題ニナリマスト云フト、議會ノ協
贊ヲ經ナケレバナラヌ、所ガデス、矢張リ、
地方モ帝國議會モ矢張リ同ジヤウナ趣旨ガ
流レテ居リマシテ、地方ツレ〓〓ハ財政ニ
非常ニ行惱ンデ居ル際デモ莫大ナル寄附
ヲシテデモ學校ノ增設ヲ希望スルト云フ
ノガ實際ナンデス、之ヲ今度逆ニ既ニ旣設
ノ學校ヲ整理スルト云フコトニナリマシテ
モ行ハウトシテモ行ヒ得ナイノデアリマ
ス誠ニ其點ニ付テハ大イニ考フベキコト
デハゴザイマスルケレドモ、事實サウ云フ
コトハ容易ニ出來ルト云フヤウナコトデア
リマセヌ、政府ノ力ガ足リナイカラ十抑シ
ヤルカモ知レマセヌケレドモ單リ政府ト
言ハズ、地方ノ議會ニ致シマシタ所ガ政
府ノ力デ之ヲ壓迫ノシヤウガナイノデアル、
無論御趣旨ニ反對スル意味デハアリマセ
又、サウ云フコトハ御言葉ノ通リ正シイコ
トデアリマセウ、其正シイコトニ進ムヤウ
ニ御互大イニ努メナケレバナリマセヌケレ
ドモ、ソレガ容易ニ出來ルコトデアルカト
仰シヤレバ、ツレハ出來マセヌト云フコト
ヲ申土ゲルヨリ仕方アリマセヌ、現ニ偶、と
强硬ニ之ヲ實行セムトスルト云フト其地
方ノ大騷動ガ起ル、又起ッタンデス、ソレ程
地方民ニ取リマスト云フト、矢張リ種々ノ
關係カラ、簡單ナ學校其モノノミカラ見タ
理窟バカリデモゴザイマスマイ、其學校一
ツ其處ニアル爲ニ、地方ノ商賣、取引、其
他ノ關係ニ於キマシテ、隨分地方ニ便宜ヲ
與ヘテ居ル、利益スル所モアルト云フ事情
モアルノデアリマスルノデ、旁〓此問題ハ
非常ニ大キナ問題デアリマス、從ッテ容易ニ
遂行スルコトノ困難ナ事情ガアルト云フコ
トダケハ、御承知ヲ願ッテ置キタウゴザイマ
又、ソレカラ寄附金ノ强要、或ハ俸給ノ減
額等ノコトニ付キマシテ前日私ノ申土ゲ
マシタコトニ付テ、重ネテ御尋デゴザイマ
スカ、速記錄ハ間違ッテ居リマセヌガ、新
聞ニ私ガ五縣トカ十七縣ト申上ゲタ縣ヲ、
件數ノ件ヲ書イテアルノデアリマス是
新聞ノ誤リデアリマス、速記錄ニゴザイマ
ス通リ、縣廳ノ縣ヲ書カナケレバナラナカツ
タノデアリマスデアリマスルカラ事件ノ
所謂數カラ申シマスレバ、相當大キウゴザ
イマス、ト云フノガ例ヘバ〓員ノ俸給ヲ一
圓デモ二圓デモ平均給ヲ下ゲルト云フコト
ニナリマスルト、其一縣內ニ於テハデス、
大部分其同ジ方針デズット進ムヤウナコト
ニナルノデアリマス、又甚ダ耳障リナコト
デアリマスルケレドモ、所謂寄附ヲドウス
ルト云フヤウナコトガ起リマシテモ、隣リ
ノ町村デサウ云フコトガアレバ次ノ町村
ニ早ク移ルト云フコトノ實際モアルノデア
リマセウ、兎モ角モ或縣內デハ中ミヒドイ勢
ヒヲ以テ進ンデ居リマシテモ、外ノ縣ニハ
サウ云フコトハ起ッテ居ナイト云フ大勢ヲ
私申上ゲマシテ、所謂五縣トカ、十七縣ト
申上ゲタノデアリマスガ、其縣內ニ於テモ
件數ヲ言ヘバ相當大キナ數ニ上ボッテ居リ
やく、併ナガラ前日モ繰返シテ申上ゲマシ
タ通リ、假令其事柄ガ一件數デモ、二件數
デモ〓育上ノ恥辱デアル、決シテ數ヲ以テ
私ガ彼此レ爭フ意味ヂヤアリマセヌ、併ナ
ガラ全國何處ノ府縣デモ、サウ云フコトガ
既ニ燃エ移ッテ居ル、蔓ッテ居ルト云フノガ
實際カト云フ意味ニ誤解スル人モアルノデ
アリマスカラ念ノ爲ニ其事ヲ附加ヘマシ
タダケデアリマス、而シテ其事ニ付キマシ
テハ極力之ヲ防止スルヤウニ、又能ク其縣
廳其他ト力ヲ合セマシテ、其中間ニ立ッテ圓
滿ナ解決ヲ運バセルヤウニ、努メテ居リマ
スルト云フコトヲ御承知願ッテ置キマス、尙
ホソレニ關聯シテ、地方等カラ出ル報〓ハ
甚ダ賴リナイモノガ多イ、文部省モサウ云
フ間違ヒカラ、ソンナ杜撰ナ答辯ヲシタラ
ウト云フヤウナ意味合ノ御言葉デアリマシ
タガ、御話ノ通リ報〓等ニハ往往ニシテ
確實ナラザルモノガアルコトハ事實ゴザイ
マセウ、ガ此問題ハデス、殊ニ重大デアル
ノ故ヲ以テ、特ニデゴザイマス、特ニ學務部
長ニ東京ニ參集シテ貰ッテ、此問題ニ付テ特
ニ御相談ヲシタイカラ、而モ其問題ニ關シ
タ各府縣、町村ノ實際ノ模樣ヲ調ベテ、其
報告ヲ纏メテ、サウシテ文部省ニ集"テ貫ヒ
タイト云フコトデ、學務部長ニ其問題ノミ
デ集ッテ貰ッタンデ、報告モ持ツテ參リ、又其
時ニハ報〓ヲ纏メ鍛ネテ實況ノ半バヲ持ツ
テ來タ學務部長モゴザイマシタケレドモヽ
其後追加報〓等モゴザイマシテ、只今申上
ゲマシタヤウナ統計ヲ得マシタケレドモ、
大分意ヲ用ヒ、注意ヲシテ是等ノ點ニ付テ
報〓モ取リ、善後策ヲ講ズルコトニ付テ努
メテ居リマス、單リ學務部長ノミナラズ、
又縣視學ニモ來テ貰ッタンデ、尙ホ細カイ所
ニ亙ッテ相談ヲ致シマシク、又文部省カラモ
デス、特ニ其評判ノ高キ或地方ニハ官吏ヲ
派遣イタシマシテ、實況ヲ調ベニヤック所モ
ゴザイマス、兎ニモ角ニモ此問題ニ付キマ
シテハ最善ヲ盡シテ注意イタシテ居リマ
スコトヲモ御諒解ヲ願ヒタウゴザイマス、
次ニ小學校ノ校長ノ俸給ヲ、國庫カラ支辨
スルコトニ付テノ御尋ネデゴザイマシタガ、
是ハ前日モ申上ゲマシタ通リ、元ミ御尋ノ
趣旨ハ所謂〓員ノ俸給不拂トカ、或ハ强要
寄附トカ云フヤウナコトガアル、セメテハ
校長ノ感信ヲ保ツ爲ニ校長ノ棒給ダケデ
モ國庫カラシテ支給スルト云フコトニシテ
ハドウカト云フ風ニ、所謂俸給不拂等ノ問
題ニ關聯シテノ御尋ト私ハ考ヘテ居リマシ
タノデ、其問題デアリトスレバ其點ダケ
デモ、多數居ル〓員ノ中デ、校長ダケハ全
額俸給ノ支拂ヲ受ケタ、外ノ多數ノ〓員ハ
滯リガアリ、支拂ニ差支ヲ生ジタト云フコ
トモ、是ハ相當考慮ヲ要スルコトデハナカ
ラウカト云フ點モアルト云フコトヲ申上ゲ
タノデアリマシタガ、其問題ハ〓トシテ、
校長ト云フモノヲ優遇スル意味デ、國庫カ
ラシテ棒給ヲ支辨スルト云フコトヲ、シテ
ハドウカト云フヤウナ意味合モ假ニアリト
致シマスレバ其點モ大イニ〓究ヲ要スル
コトト私ハ思ッテ居リマス、兎ニモ角ニモ今
日ノ學校ノ制度ハ、初等〓育ハ町村ガ之ニ
當リ中等〓育ハ府縣ガ之ニ當リゝソレ以
上ノ高等〓育ハ國ガ當ル、斯ウ云フ根本ノ
立前デ、總テノ〓育上ノ組織制度ガ出來テ
居リマス、サウシテ其縣ガヤル、町村ガ擔
任スルカラト云ッテ、〓育ノ見地カラ見テ其
間ニ優劣ノアル譯ハアリマセヌ、或ハ繰返
シ御言葉ニモアリマシタ通リ、所謂初等〓
育ナルモノハ町村ニ義務トシテ課シテ居ル
位デアリマシテ、是ハ〓育ノ中ニモ特ニ重
キヲ置カナケレバナラヌ事デアルコトハ勿
論デアリマスケレドモ、只今申上ゲマスル
通リ、〓育ノ制度ノ上カラ三段ニ分ケテ、
各〓分擔ヲシテ、其各、ノ職責ヲ明カニシテ
アルノデアリマス、ソレヲ今〓育ノ······或
〓育ヲ特ニ重ンズルト云ス故ヲ以テ、其間
ニチヤント方針、原則各、分界ヲ立テテ責
任ヲ明カニシテ居ル、其間ヲ錯綜セシムル
ヤウナコトハ、是ハ制度ノ上カラ相當考ヘ
ナケレバナラヌコトデハナカラウカ、決シ
テ異論ヲ申スノデハアリマセヌ、アリマセ
ヌケレドモ只今申ス通リ、大體ノ原則ガチ
ヤント三段ニ分フテ居リマスルカラ、其町村
ノチヤント責任ヲ以テ纒メテ居リマスルモ
ノヲ、或部分ダケハ國庫ガ又直接ニ取扱ヲ
スルト云フコトニナリマスト云フト其制
度ノ根本カラ改メテ掛カラナケレバナラヌ
事デハナカラウカ、而モ〓育制度ノコトニ
付キマシテハ、內閣ノ變動等ノ爲ニ其根本
義ガ動クヤウナコトガアッテハ相成ラヌ、何
處マデモ國家ノ見地カラ見テ、終始一貫シ
タ方針ノ下ニ〓育ノ制度ヲ定メナケレバナ
ラヌト云フコトデ、現在ニ於キマシテハ文政
審議會······色と以前ニハ、或ハ〓育調査會、
〓育制度調査會トカ色ミナ名前ノ變ッタコ
トモアリマシタケレドモ、兎ニモ角ニモ今
日ノ文政審議會ト同ジヤウナ權限ノアリ、
而モ〓育上、特ニ〓育上ニ付テノ權威者ガ
集ッテ、ソレ等ノ重要ナル間題ハ審議決定セ
ラレル制度ニナッテ居ルノデアリマス、デ是
等ノ方ミノ御意見ニ基イテ、我國ノ〓育制
度ノ根本義ト云フモノハ、現在ノ通リニ定ッ
テ居リマス、之ヲ動カスノデアリマスルカ
ラ無論サウ云フ考ヲ私共起シタトシテモ
其議ニ付シテサウシテ審議調査シテ戴カナ
ケレバナラヌ事柄ニ屬シマヌ、旁、此事ノ
ミナラズ、甚ダ不束ナガラ〓育制度ノ根本
ニ亙ルコトニ付キマシテ、色ミナ御註文ヲ
就職以來受取ッテ居リマス、デ斯ウ云フコト
モアヽ云フコトモ一ツ審議會ニ御諮詢シ
タイト云フ位ノ心持ヲ持ッテ居リマスルケ
レドモ、一ツノコトハ必ズ外ノコトニ關聯
スル、ナカ〓〓之ヲサウ云フ制度ノコトニ
付テ御相談ヲスルト云フコトニナリマスル
ニ付テハ、相當ノ調査〓究ガ要リマスノデ、
私ガ調査〓究ト申上ゲタコトハサウ云フ意
味ヲモ含ンデ居リマス、相當〓究イタシテ
居ル積リデゴザイマス、唯〓日迄ノ實際カ
ラ云フト、旣ニ審議會デ御相談ヲシテ決ッタ
コトデモ、色ミナ關係ニ於テ實行セラレヌ
コトモアルノデ、兎モ角モ其方ニ一ツ手ヲ
著ケテ、早ク一ツ〓〓進メテ行ク方ガ急務
ト存ジマシテ、昨年來僅カバカリデアリマ
スルケレドモ相當ノ······改廢ト云フ言葉ヲ
之ニ冠ラシムルコトハ少シ大袈裟カモ知レ
マセヌケレドモ、大キク申シマスレバ相當
ノ改廢ニ關スルコトノ一二ノコトヲモ、旣
ニ實行ニ著手シテ居ルヤウナ譯デアリマス、
而シテ今年度ニ於テハ主トシテ今マデ既ニ
決マッタコトヲ實行ニ移スコトニ全力ヲ注
イデ居リマスノデ、矢矢リ施政ノ方針ノコ
トモ今日繰返シテ御注意デゴザイマシタガ、
新タナル〓育上ノ施設方針ト云フモノハ今
年ハゴサイマセヌ、極メテ些細ナコトデ寧
ロ實行ニ移スコトニ關聯シタ僅カノコトノ
ミヲ御協賛ヲ求メルヤウナコトニナッテ居
リマスカラ、所謂重要ナル事項ヲ羅列シタ
施政ノ方針ノ中ニ、〓育上ノ事ガ漏レテ居,
タト云フコトガ事實デアリマス、無論根本
トシテ〓育其モノノ根本ニ付テ施政ノ方針
ニ飼カ一言アッテ然ルベキデナイカト云フ、
〓育ヲ重ンゼラレル御趣意カラノ御質問ニ
付キマシテハ、謹ンデ私承ッテ居ッタ譯デア
リマス、ソレカラ尙ホ普通學務局ハ成程初
等〓育ノコトヲ掌ッテ居ルケレドモ、中等〓
育ノコトヲモヤッテ居シテ、重モニ中等〓育
ノコトノミニ眼ヲ著ケテ、初等〓育ヲオロ
ソカニスルヤウナコトガアルト云フヤウナ
御注意デゴザイマシタガ、サウ云フ積リハ
萬々ゴザイマセヌケレドモ、初等〓育ノコ
トニ付キマシテ文部當局ノ足ラザル所アル
ト云フ御注意ニ付キマシテハ、謹ンデ將來
ノ大切ナ事項トシテ深ク注意ヲ致ス積リデ
アリマス、アリマスガ私就任後、前囘モ
申上ゲマシタ通リ督學官ト云フモノガ文部
省ノ中ニゴザイマシテ、督學官ハソレ〓
初等ノ學校ナリ中等學校ナリ或ハ高等ナ
リ、大體分擔ヲ定メマシテ始終各府縣ヲ〓ッ
テ步イテ居リマス、其廻ッテ參リマシタ結果
ハ復命書トシテ報〓ヲ出シマスガ、兎角私
モ無論デアリマスガ、或ハ其他ニ致シマシ
テモ、大部ノ、厚イ報告書ヲ受取ッテモソレ
ヲドウモ見ルコトガ兎角遲レルノデアリマ
ス、結局時ガ遲レルト云フトツイ見ナイ
デ其儘ニ報〓書ガ棚ノ中ニ束ネラレルヤウ
ナコトガ往々アルヤウデアリマス、ソレ等
ノコトモ甚ダ面白クナイコトト思ヒマシテ、
督學官ユハ必ズ月ニ數囘私初メ局長其他
關係者ガ集"テ報告ヲ聽クコトニ致シマシ
テ、地方監督ノ爲ニ廻ッテ來テ、歸リマスレ
バ順次ニソレ等ノ話ヲ聽クコトニ致シマシ
テ、丁度御注意ノアルヤウナコトニ付テ同
ジ考ヲ以チマシテ、此〓育ノコトニ付キマ
シテ萬遺憾ナキコトヲ期シテ居ル譯デアリ
マス、ソレハ唯手續ダケデ、マダ、ドウ云
フ效果ガアッタカト仰ッシヤラレレバ、效果
ガアッタトカ何トカ申上ゲルノデアリマセ
ヌケレドモ、ソレヲ粗末ニシテ居ラヌ、注
意ヲ怠ッテ居ラナイ、督學官ノ所謂督學上ニ
關スル實況ト、又ソレニ依ッテ見ル所ニ依ッ
テ〓育制度ノ如何ニ取扱ハレツツアルカト
云フコトニ付キマシテハ、此上ニモ十分ナ
注意ヲ拂フ積リデアリマス、尙ホ小學校等
ニ付テ實際ニ私初メ見聞ヲ廣メルヤウニ、
施政上ノ參考ニスルヤウニ、實際ヲ見ルヤ
ウニスルガ宜イ、ドウモ兎角大臣初メ小學
校ト言ヘバ後〓シニスル、後廻シニスル所
デナイ、何ニモ手ヲ觸レヌト云フヤウナ御
叱リモゴザイマシタガ、無論大臣デアラウ
ト次官デアラウト、サウ云フ御注意ノ如ク
ニ小學校モ一々手ガ屆キマスト結構ナコト
ト思ヒマス、又サウアラムコトヲ希望イタ
シマスガ、實際ノ問題ト致シマシテ、私ニ
小學校ヲ〓ノテ步ケト云フ御註文ガアッテモ
中ミソレハ實行出來マセヌ、或機會或場合
ニハ出來ルダケ御趣旨ニ副フヤウニ致シタ
イト云フ心持ヲ持ッテ居リマス、此處デ體裁
ヨク私ガ謹ンデ御受ケヲスルト言ヘバソ
レデ誠ニ簡單ニ濟ミマスケレドモ、中ミド
ウモサウハ參リマセヌ、デアリマスルガ故
ニソレニ代ヘルト云フ意味デハゴザイマセ
ヌケレドモ、督學官ナリ其他ノ者ナリヲシ
テ廻ラシメ、視セシメ、其報告ヲ必ズ聽ク
コトニシテ、御趣意ニ副フヤウナ心持ヲ以
テ職務ヲ執ッテ居リマスト云フコトヲ御承
知ヲ願ッテ置キマス、無論希望ハ致シマス、
ソレカラ映畫〓育ノ事ニ付テノ御話ガゴザ
イマシタガ、是モ先日申上ゲマシタ通リ文
部省ハ甚ダ屆キマセヌ、殊ニ不慣レノコト
デモゴザイマセウ、旁、段々御忠告モ受ケ
マシタ通リ、文部省自身ガ天狗ニナッテ全國
ニ持〓ノタ物ガ、又極メテ御非難ガ多カッタ
ト云フヤウナ事モ承知イタシテ居リマス、
ソレニ付キマシテモ今後ノ拵ヘル物ニ付キ
マシテハ、一段注意ヲ致サセツツアリマス、
此際此時ト申シマセウカ、民間ノ方デモ非
常ニ御奮勵ニナッテ、中ミ得難イ立派ナ優秀
ナ映畫ヲ段々御拵ヘニナッテ、ソレヲ文部省
デモ非常ニ大イナル力ト致シマシテ、サウ
云ウコトガ段々ニ發表スルヤウニ······、又
今日ハ三會社四會社アルトシテモ、或ハ其
會社ソレ自カラ仲ビテ行クコトモゴザイ
マセウシ、又更ニ新タナル會社モ出來マセ
ウシ、ソレ等ノ御力ノ方ガ十分デアレバ
文部省ハ文部省トシテ自カラ不慣ナ事ニ手
ヲ著ケルヨリハ、其關係ノ方ミニ多少ナリ
ト御手傳デモシテ、文部省ノ手ノ方ハ却ッテ
縮メル方ガ結局利益カモ知レマセヌケレド
モ、何セヨ、漸ク是ハ始マッタバカリデゴザ
イマシテ、而モ御話ノゴザイマシタ通リ、
中ミ多數ノ觀覽者ガアリ、又〓育上非常ニ
大切ナ事ト存ジマスルガ故ニ、兎ニモ角ニ
モ文部省ト民間ト力ヲ協セテ、此映畫ノ事
ニ付テハ今後尙ホ一層ノ力ヲ盡シテ見タイ
ト云フ考ヲ以テ、ソレ〓〓關係者ヲ督勵イ
タシテ居リマス、ケレドモ如何セン、豫算
全體ニ亙リマシテ、ドウシテモソレ〓〓削
減等ノコトガ起ッタノデアリマシテ、此映畫
ノ事ニ付キマシテモ相當削減ガアリマシタ
コトハ事實デアリマス、非常ニ殘念ニ思ッテ
居リマスルケレドモ、其必要ナルコトハ政
府ノ中デモ別ニ異存ノアル人モ無イノデア
リマシテ、豫算、財政ガ許ス限リハ此上
ニモ擴張デモ致シマシテ、擴張其モノハ只
今申シマスル通リ、從來通リニ文部省ノ手
ダケデスルト云フコトガ宜シイカ、更ニ民
間ノ方ニ僅カノ經費デモ奬勵的ニ之ヲ分ケ
テ御手傅スルト云フ方ガ利目ガアルカ、十
分ニ一ツ〓究イタシテ見ヤウト思ッテ居リ
マス
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=11
-
012・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 紀男爵ノ義務〓
育費ノ國庫負擔金ノ使途ニ付キマシテ亂レ
易イ、土木費其他ニ消費シ易イト云フ御質
問ヲ更ニ繰返シテ御話ガアリマシタガ、大
體ニ於キマシテハ先日御答へ致シテ置キマ
シタ通リ、嚴重ニ監督イタシマシテ、昨年
ノ協賛ヲ得マシタ一千万圓モ、負擔ノ輕減
ニ充ツルヤウニナッテ居リマス、去リナガラ
御懸念ノヤウニ、地方町村ニ於テハ財政窮
乏ノ爲ニ確カニ遺繰リハ行ハレ易イノデア
リマス、又御話ノ通リ近來縣會議員トカ、
其他有力ナル人ガ町村長ニナッテ居リマス、
地方廳ノ命令ガアリマシテモソレヲ聞入レヌ
ト云フヤウナ傾キモナキニシモアラズト私
モ考ヘマス、去リナガラ私ハ此事ニ付キマ
シテハ、特ニ十分注意ヲ致シテ居リマス、
最近ニ於テモ取調ベテ居リマスガ、今日ニ
於キマシテハ御懸念ノヤウナコトニハナッ
テ居ラヌト考ヘマス、併シ將來永久ノ事ヲ
考ヘマスト、私在任中ハ決シテ亂ラサヌ積
リデアリマスケレドモ、內務大臣ヲ罷メマ
シテ後ノ事ヲ考ヘマシタラ、或ハ御懸念ノ
ヤウナコトニナリハセヌカト考ヘマスルカ
ラ此場合ノ御尋ノ、特別會計ニスル意思
ナキヤ否ヤト云フコトハ御尤ナル御意見ト
考ヘマスカラ、私アノ御質問後直ニ地方局
長ニ命ジマシテ、特別會計ノ其得失可否ニ
付テ〓究スルヤウニ致シテ置キマシタ、ソ
レカラ映畫ノコトハデス、先日モ御答へ致
シマシタ通リ十分注意ヲ致シテ居リマス、
ソレデ私自ラモ映畫ノ撮影所ナドヲ視察イ
タシマシテ、其當局者、主任者ニ向ッテハ自
己ノ意思ノアル所ヲ話ヲシタヤウナコトモ
アリマスガ、併ナガラ御話ノ通リ種々ノ弊害
モアリマスシ、國民思想ノ上ニ、訓育ノ
上ニ、大影響ガアルノデアリマスカラ、更
ニ一層十分注意ヲ致シテ過ナイヤウニ、其
弊害ヲ少クスルヤウニ取締ヲスル積リデゴ
ザリマス、重ネテ御答へ致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=12
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013・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 簡單デゴザイマスカラ此
席カラ發言ヲドウゾ御許シヲ願ヒタウゴザ
イマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=14
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015・紀俊秀
○男爵紀俊秀君 只今ノ御答辯ニ對シマシ
テ、マダ少シ伺ヒタイコトモアリマスケレ
ドモ、マダ質疑ヲセラレル方ガ十數名モオ
アリデアルヤウデアリマスカラ、私ノ質問
ハ是デ打切リニ致シマス、尙又文部內務兩
大臣ニ於カレマシテハ、私ノ質問ニ對シマ
シーハー多少私ノ意思ト反シタ所ハアリマ
スケレドモ、極メテ御深切ニ御丁寧ニ御答
辯下サッタコトヲ感謝イタシマス、之ヲ以テ
打切リト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ金杉君ニ
發言ヲ許シタイト存ジテ居リマシタガ、同
君ノ質疑ハ大分時間ヲ要スル趣キデゴザイ
マスカラ、諸君ニ於テ御異議ガナケレバ
本日ハ是デ議事ヲ延會イタシタイト考ヘマ
ス、本會議ハ明後日開會イタシマス、議事
日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後零時八分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02019310223&spkNum=16
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