1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年二月二十七日（金曜日）午前十時二十六分開議
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議事日程 第二十二號
昭和六年二月二十七日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第二十一日）
第二 地方鐵道補助法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 著作權法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第四 大正十三年法律第二號中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵徳用家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
一昨二十五日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出
セリ
請顯文書表(第五囘報告)
昨二十六日政府ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
船舶積量測度法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
取引所稅法中改正法律案
同日政府ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
號外昭和六年二月二十八日
貴族院議事速記錄第二十二號
第五十九囘帝國議會內務省所管事務政府
委員
內務書記官鈴木敬一君
本日刑事補償法案特別委員會ニ於テ當選シ
タル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長侯爵中御門經恭君
副委員長鵜澤總明君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、請暇ノ件ニ付キ御諮リヲ致シ
マス、犬塚勝太郎君病氣ニ付キ二十日間、
安樂兼道君病氣ニ付キ十五日間ノ請暇ノ申
出ガゴザイマシタ、何レモ許可シテ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程變更ニ
關シ御諮リヲ致シマス、本日ノ日程第二、
第三、第四ヲ第一ノ前ニ付議シタイト存ジ
マス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 日程第二、地方
鐵道補助法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、鐵道大臣、江木翼君
地方鐵道補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年二月二十四日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
地方鐵道補助法中改正法律案
地方鐵道補助法中左ノ通改正ス
附則第二項ヲ左ノ如タ改ム
本法ハ昭和六年一月一日以後ニ免許ヲ申
請シタル地方鐵道、同七年一月一日以後
ニ免許ヲ受ケタル地方鐵道及同十二年一
月一日以後ニ營業ヲ開始シタル地方鐵道
ニハ之ヲ適用セス
〔國務大臣江木翼君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=6
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007・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 現行地方鐵道補助
法附則第二項ノ規定ニ依リマスト、昭和七
年一月一日以後ハ新タニ補助ヲ爲スコトガ
出來ナイコトニナッテ居ルノデゴザイマス、
而シテ地方鐵道ノ現狀ヲ見マスルニ、開業
線四千餘哩中、現ニ本年度ニ於テモ七百五
十万圓ノ補助金ヲ支給イタスコトニ依ッテ、
營業ヲ爲シツツアル狀態ニアリマスルモノ
ガ一千餘哩ニ及ビ、尙ホ既ニ免許ヲ受ケ
テ工事ニ著手シ、若クハ其準備計畫中ニ屬
シマスルモノガ、三千餘哩ニ達シテ居ルノ
デアリマス、是等ノ未成線中ニハ相當助成
ヲ必要トスルモノモ多數存在スルコトト推
測イタスノデアリマス、事情右樣ノ次第デ
アリマスルカラ、本附則ヲ改正イタシマシ
テ、補助ヲナス期間ヲ延長セムトスルノデ
アリマス、去リナガラ地方鐵道モ今ヤ新
興交通機關ヂアリマスル所ノ自動車ノ進
出ニ依リテ、漸次壓迫ヲ受ケ、業蹟ノ低下
ヲ來シツツアルノデアリマシテ、地方鐵道ガ
現在ノヤウニ普及イタシマシタ點カラ考ヘ
マシテモ、將又其助成ノ效果ト云フ點カラ
考ヘマシテモ、從來ノ補助ヲ無條件ニ延長
スルト云フコトハ國有鐵道財政ノ將來ト
併セ考ヘテ困難ト致ス所デアリマス、玆ヲ
以チマシテ、一面企業者ノ期待ヲ尊重イタ
シマスト共ニ、他面國家財政ノ負擔ヲ成ベ
ク輕減スルノ趣旨ヲ以チマシテ、本案ヲ提
出イタシタ次第デアリマス、何卒愼重御審
議ノ上ニ宜シク速カニ御協賛アラムコトヲ
希望イタス次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 別ニ御質疑モナ
イト認メマスカラ、本案ノ特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
地方鐵道補助法中改正法律案特別委員
侯爵德川賴貞君伯爵樺山愛輔君
子爵新庄直知君子爵灌脇宏光君
大島健一君男爵近藤滋彌君
山之內一次君八田嘉明君
土田萬助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、著作
權法中改正法律案、政府提出、第一讀會ノ
續、委員長報告、柳原伯爵
著作權法中改正法律案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和六年二月二十四日
委員長伯爵柳原義光
貴族院議長公爵德川家達殿
(株)健身VONER SHOPSING.
第一條第一項中「美術」ヲ「美術(音樂ヲ含ム
以下之ニ同ジ)」ニ改ム
第十八條他人ノ著作物ヲ發行又ハ興行
○著作者ノ生存中ハ
スル場合ニ於テハ○著作者ガ現ニ其ノ
著作權ヲ有スルト否トニ拘ラズ又其ノ
生存中タルト死後タルトニ拘ラズ其ノ
著作者若ハ
同意ナクシテ其ノ氏名稱號ヲ變更又ハ
隱匿シ又ハ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ變更
隱匿スルコトヲ得ズ
ヲ加へ若ハ其ノ題號ヲ改ムルコトヲ得ズ
他人ノ著作物ヲ發行又ハ興行スル場合
ノ死後ハ著作權ノ消滅シ
ニ於テハ著作者ガ現ニ其ノ著作業ヲ有
タル後ト雖モ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ變
スルト否トニ拘ラズ又其ノ生存中タル
更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ又ハ其ノ題號
ト死後タルトニ拘ラズ其ノ同意ナクシ
ヲ改メ若ハ著作者ノ氏名稱號ヲ變更若ハ隱
テ之ニ改竄、增減其ノ他ノ變更ヲ加ヘ
匿スルコトヲ得ズ
又ハ其ノ題號ヲ改ムルコトヲ得ズ但シ
著作者ノ聲望名譽ヲ害セザルトキハ此
ノ限ニ在ラズ
前二項ノ規定ハ第二十條、第二十條ノ二、第
二十二條ノ五第二項及第三十條第一項第二
號乃至第六號ノ場合ニ於テモ之ヲ適用ス
第二十條新聞紙又ハ雜誌ニ揭載シタル
脛濟上、政治上又ハ宗〓上ノ時事問題
○(學術上ノ著作物ヲ
ヲ論議シタル記事○ハ特ニ轉載ヲ禁ズ
除ク)
ル旨ノ明記ナキトキハ其ノ出所ヲ明示
シテ之ヲ他ノ新聞紙又ハ雜誌ニ轉載ス
ルコトヲ得
第二十二條ノ五文藝、學術又ハ美術ノ
範圍ニ屬スル著作物ノ著作權ハ其ノ著
作物ノ無線電話ニ依ル放送ヲ許諾スル
ノ權利ヲ包含ス
無線電信法及之ニ基キ發スル命令ニ依
リ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル放送無線
シタル
電話施設者ハ旣ニ發行又ハ興行セラレ
他人ノ著作物ヲ放送セントスルトキハ著作
タル他人ノ著作物ニ付テハ前項ノ許諾
權者ト協議ヲ爲スコトヲ要ス協議調ハザル
ナキ場合ト雖モ之ヲ放送スルコトヲ得
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ定
但シ相當ノ償金ヲ支拂フコトヲ要ス
ムル相當ノ償金ヲ支拂ヒ其ノ著作物ヲ放送
スルコトヲ得
前項ノ償金ノ額ニ付異議アル者ハ民事裁判
所ニ出訴スルコトヲ得
第三十六條ノ二第十八條ノ規定ニ違反
シタル行爲ヲ爲シタル者ニ對シテハ著
作者ハ著作者タルコトヲ確保シ又ハ
○訂正其ノ他
〓其ノ聲望名譽ヲ囘復スルニ適當ナル
處分ヲ請求シ及民法第三編第五章ノ規
程ニ從ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ
得
第十八條ノ規定ニ違反シタル行爲ヲ爲
シタル者ニ對シテハ著作者ノ死後ニ於
親族
テハ著作者ノ父、母、配偶者又ハ子ニ於
テ其ノ著作者タルコトヲ確保シ又ハ
○訂正其ノ他
〓其ノ聲望名譽ヲ囘復スルニ適當ナル
處分ヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル民事ノ訴訟ニ付テ
ハ前二條ノ規定ヲ準用ス
〔伯爵柳原義光君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=9
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010・柳原義光
○伯爵柳原義光君 只今議題ニ相成ッテ居
リマスル、著作權法中改正法律案ノ委員會
ノ經過竝ニ結果ヲ成ルベク簡單ニ御報道申
上ゲマス、此委員會ハ數囘開キマシタ、政
府委員ニ付キマシテ詳細ナル說明ヲ承リ、
是ニ付キマシテ委員ヨリ微ニ入リ細ニ亙
リ、幾多ノ質問應答ヲ重ネマシタ、而シテ
其結果、委員タル水野鍊太郞君ヨリ修正案
ガ提出イタサレタノデアリマスルガ、其修正
案ハ諸君ノ御手許ニ配付ニ相成ッテ居ルコト
ト信ジマスノデアリマス、而シテ全會一致ヲ
以チマシテ此修正案ヲ委員會ニ於テハ可決
イタシタノデアリマス、而シテ其修正案ニ
觸レザル點ハ全部政府原案ヲ承認、全會一
致ヲ以テ同樣可決ヲ致シタンデアリマス、
又此委員會ニハ文部大臣モ出席イタサレマ
シテ答辯ヲ致サレタノデアリマス、簡單ニ
申上ゲマスルト、本案提出ノ要旨ハ昭和
三年ニ伊太利羅馬ニ於テ開カレタル文學的
及ヒ美術的著作物保護ニ關スル「ベルヌ」條
約改正會議ノ結果、現行法ニ多少ノ修正ヲ
加フル必要ガアルト同時ニ、現時我國ニ於
ケル文運ノ進步ニ伴ヒマシテ、多少修正ヲ
加ヘル必要ノアルモノガアリマシタガ爲ニ、
政府ガ此改正案ヲ提出イタサレタノデアリ
マスル、其改正案ノ要點ハ第一番ニハ、
專ラ著作者ノ人格權ヲ保護シタノデアリマ
スル、第二ニハ活動寫眞及映畫ノ保護ヲシ
タノデアリマス、第三ニハ著作物ヲ「ラヂ
オ」ニ放送スル場合ニ關スル保護ヲシタノ
デアリマス、第四ハ時事問題ニ付テ公開ノ
席上ニ爲シタル演說ノ保護、及之ヲ新聞雜
誌等ニ揭載スル特權等ニ付テノ規定及保護
ヲ致シタノデアリマス、第五ハ新聞雜誌ノ
記事ニ轉載スル規定ノ改正ヲ致シタノデア
リマスル是ガ政府ガ改正案ヲ企テラレタ
所ノ趣旨ノ極メテ要點デアルノデアリマ
ス、而シテ委員會ニ於テ修正ヲ致シマシタ
ル修正案ノ要旨ハ、勿論此政府案ノ根本ノ
趣旨ニハ必ズシモ觸レテ······大差ハナイノ
デアリマス、大體ニ於テハ政府案ト大差ハ
ナイノデアリマスルガ、唯此法律ヲ更ニ完
璧ニシ、又世間ニ於テ往々問題ト相成ヶテ
居リマスル所ヲ、極メテ明瞭ニシテ、此法
律ノ施行ヲ圓滿ニシヤウト云フノガ、此修
正ヲ致シタル所ノ趣旨デアリマスル、後デ
詳シイコトハ大體申上ゲマスルガ、大體此
修正案ノ要旨ハ五ツアリマス、第一ハ、第
一條中ニ「美術」ノ後ニ更ニ「音樂」ノ二字ヲ
挿入シタノデアリマス、ソレカラ次ハ十八
條第二項ノ「聲望名譽」ト云フ四字ガアルノ
デアリマスガ、此「聲望名譽」ナル四字ヲ全
然削除イタシマシテ、而シテ又作家生存中
ハ其同意ヲ要スルコトトシテ、ソレカラ又
死後ニ於テハ其意ヲ害セザル限リ······其死
後ハ其意ヲ害セザル限リトノ制限ヲ加ヘタ
ノデアリマシテ、讀本モ亦是ニ準ズルコト
ニ致シタンデアリマス、又第二十條ノ時事
問題ノ中ニ、經濟、宗〓ト云フ字ガアリマ
スガ、全然此字ヲ削リマシテ、單ニ政治上
ノミニ限リ、轉載シ云々ト政治ト云フ字
ダケニ致シタノデアリマス、ソレカラ第二
十二條ノ五第二項「ラヂオ」放送ハ作家ト
應協議シテ、而シテ其協議ガ不調ノ場合ニ
ノミ主務大臣ノ定ムル相當額ノ償金ヲ豫メ
支拂ッタ後ニ於テ、之ヲ放送シ得ル、斯ウ云
フコトノ修正案デアリマス、ソレカラ第三
十六條ノ二第二項ニ「父母、配偶者又ハ子」
ト云フノヲ、之ヲ「親族」ト云フコトニ改メ
マシテ、卽チ其範圍ヲ擴メタノデアリマス、
大體此修正ノ趣旨ヲ是ヨリ簡單ニ御說明申
上ゲマスル、ソレデ只今第一條第一項中ニ
「美術」ト云フ文字ノ外ニ「美術(音樂ヲ含ム
以下之ニ同ジ)」ト云フ譯デ、此「音樂」ト云
フ字ヲ入レタノデアリマス、廣イ意味ニ於
テハ勿論美術ノ中ニ音樂ハ含ムノデアリマ
ス、去リ乍ラ社會上用語ノ通稱ト致シマシ
テハ、只今ハ音樂、美術ト云フモノハ自ラ
別ニ取扱シテ居ルヤウデアリマス、卑近ナ例
ヲ以テ中セバ美術學校ト云フモノガアリ、
是ニ對シテ音樂學校ト云フモノガアル、斯
ノ如ク音樂、美術ト云フモノハ通常ノ用ヒ
方ニ於テハ別ニ致シテ居リマスカラ、此際
ハ矢張リ此美術ノ以外ニ於テ、音樂ト云フ
字ヲ入レテ、第一項中ノ「美術」ト云フ所ヲ、
「美術(音樂ヲ含ム以下之ニ同ジ)」斯ウ云フ
修正ヲシテ、卽チ「音樂」ト云フ字ヲ入レテ
其意義ヲ明確ニシタ譯デアリマス、ソレカ
ラ第十八條ノ修正ハ是ハ專ラ著作者ノ人格
權ヲ保護スル規定デアリマシテ、要スルニ
此案ノ最モ大切ナル骨子ト相成ルベキモノ
デアルノデアリマス、ソレデ政府ノ提案ニ
依リマスト「他人ノ著作物ヲ發行又ハ興行
スル場合ニ於テハ著作者ガ現ニ其著作權ヲ
有スルト否トニ拘ラズ又其ノ生存中タルト
死後タルトニ拘ラズ其ノ同意ナクシテ其ノ
氏名稱號ヲ變更又ハ隱匿スルコトヲ得ズ」
斯ウアルノヲ、之ヲ著作者ガ生キテ居マス
場合ヲ規定イタシマシテ、「著作者ノ生存
中ハ」ト云フ文字ヲ······「興行スル場合ニ於
テハ」ノ下ニ「著作者ノ生存中ハ」ト云フ字
ヲ入レタノデアリマス、ソレカラ「又其ノ生
存中タルト死後タルトニ拘ラズ」ト云フノ
ヲ之ヲ削除イタシマシテ、「其ノ同意ナクシ
テ著作者ノ氏名稱號ヲ變更若ハ隱匿シ又ハ
其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ變更ヲ加ヘ若ハ
其ノ題號ヲ改ムルコトヲ得ズ」云々トシタノ
デアリマシテ、是ハ著作者ガ生キテ居ル場
合ニ對シテ、著作者ノ人格權ヲ認メ之ヲ保
護シ之ヲ尊重スル規定デアリマスル、ソレ
カラ其次ニハ二項ハ死後ニ關スルコトデア
リマシテ、原案ハ「他人ノ著作物ヲ發行又ハ
興行スル場合ニ於テハ著作者ガ現ニ其ノ著
作權ヲ有スルト否トニ拘ラズ又其ノ生存中タ
ルト死後タルトニ拘ラズ其ノ同意ナクシテ
之ニ改竄、增減其ノ他ノ變更ヲ加へ又ハ其
ノ題號ヲ改ムルコトヲ得ズ但シ著作者ノ聲
望名譽ヲ害セザルトキハ此ノ限ニ在ラズ」
是ガ原案デアリマス、然ル所修正案ニハ
前ヲ省キマスルガ「著作者ノ死後ハ著作權
ノ消滅シタル後ト雖モ其ノ著作物ニ改竄其
ノ他ノ變更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ又ハ
其ノ題號ヲ改メ若ハ著作者ノ氏名稱號ヲ變
更若ハ隱匿スルコトヲ得ズ」斯ウ云フ風ニ致
シタノデアリマシテ、卽チ此著作者ノ意ヲ
害スト云フノハ、例ヘバ假名ノ訂正デアル
トカ、文字ノ誤植トカ云フヤウニ、誰ガ考
ヘテ見テモ誤植デアルト云フヤウナ些細ナ
場合ニ於テハ是ハ著作者ノ意ヲ害スルノ
デナイノデアリマスカラ、改竄シテモ差支
ナイノデアリマスルガ、其他ノコトハ全然
矢張リ生キテ居ル著作者ト同ジヤウニ、著
作者ガ死ンダ場合ニ於テモ、人格權ヲ最モ
尊重スルト云フコトニ致シマシテ、原案ヨ
リハ最モ强ク著作者ノ人格權ヲ確保確認シ
タ規定デアリマスル、而シテ「但シ著作者ノ
聲望名譽ヲ害セザルトキハ此ノ限ニ在ラ
ズ」ト云フ文句ハ勿論之ヲ削除シテシマッタ
ノデアリマス、此「著作者ノ聲望名譽ヲ害セ
ザルトキハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ是ハ最モ
問題ノアッタ點デアリマシテ、著作者ノ聲望
名譽ト云フコトハ極メテ漠然タルモノデアッ
テ、著作者ノ側カラ見ルト、是ハ重大ナルコ
トデアッテ、是ハ最モ是點ニ留意ヲシテ、聲望
名譽ヲ害セザルタメニ、深ク之ヲ尊重セヌケ
レバナラヌト云フ場合ニモ、著作者以外ノモノ
カラ見マスルト、左程ニ此ノ聲望名譽ヲ害
セヌト云フヤウニ見ラレル場合モ多イノデ
アッテ、此點ハ實例ガ澤山アリマシテ、著作
者ガ往々此點ニ於テ聲望名譽ヲ害セラレタ
ト認メテ不快ニ思ヒ、之ニ異議ヲ挾メル場
合ガ澤山アッタノデアリマス、殊ニ此ノ讀
本ヲ編纂スル場合ニ於テハ、最モ著作者ノ
不滿足ヲ買ッタ點ガ今日マデニ多々アッタノ
デアリマス、斯ノ如ク聲望名譽ト云フヤウ
ナ、見ル人ノ解釋ニ依ッテ二三······ドウニデ
モナルヤウナ規定ハ、全然省イテシマッタ方
ガ穩當デアルト考ヘマシタガ故ニ、是ハ全
然省キマシテ、專ラ著作者ノ人格權ヲ擁護
確保スルニ努メタノデアリマス、此點ハ特
ニ深ク留意イタシテ委員會修正案ヲ提出シ
タ次第デアリマス、ソレカラ第二十條ノ原
案ニハ「新聞紙又ハ雜誌ニ揭載シタル經濟
上、政治上又ハ宗〓上ノ時事問題ヲ論議シ
タル記事」云々ト云フコトガアルノデアリ
マスルガ、誠ニ是デハ經濟トカ、宗〓トカ
云フコトハ範圍ガ廣イノデアッテ、〓育問題
モ宗〓ニ涉ルコトモアルシ、又宗〓問題モ
〓育ニ涉ルコトモアリ、又經濟問題、財政
問題、誠ニ其間ノ區別ガムヅカシイノデア
リマスカラ、寧ロ單ニ是ハ政治上、政治上
ノ時事問題ト云フコトニシテ、政治ト云フ
範圍ニ總テノモノヲ籠メテシマフ方ガ穩健
デアルト云フノデ、此經濟上、宗〓上ト云
フ文字ヲ省キマシテ、政治上ト云フ意味ニ
於テノミ此規定ヲ明カニシタノデアリマ
ス、卽チ時ノ政治問題デアリマスレバ產業
ノ問題デモ、文藝ノ問題デモ、交通ノ問題
デモ宗〓ノ問題デモ皆此政治上ノ時事問
題ト云フコトニ含ムコトガ出來マスルガ故
ニ、斯ノ如クニ致シタノデアリマス、ソレ
カラ第二十二條ノ五ハ專ラ此ノ「ラヂオ」ヲ
放送スル場合ヲ規定イタシタノデアリマシ
テ、是ハ文藝、學術又ハ美術ノ範圍ニ屬ス
ル著作權者ハ其ノ著作物ヲ無線······「ラヂ
オ」ニ放送スルコトヲ許諾スル所ノ權利ヲ
有シテ居ルノデアリマス、而シテ今マデハ、
此ノ放送······他人ノ著作物ニ付テハ許諾ナ
キ場合ト雖モ之ヲ放送シテ、サウシテ後カ
ラ相當ノ償金ヲ拂フコトヲ要スト云フ此原
案ハ規定デアリマス、是モ矢張リ著作者ノ
人格權ヲ認メマシテ、「他人ノ著作物ヲ放送
セントスルトキハ著作權者ト協議ヲ爲スコ
トヲ要ス」ト斯ウ致シタノデアリマス、若シ
其「協議調ハザルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ主務大臣ノ定ムル相當ノ償金ヲ支拂」"
テ其著作物ヲ放送スルコトガ出來ル、斯ウ
云フ規定ニ致シタノデアリマス、主務大臣
トハ專ラ此場合ニハ遞信大臣ト內務大臣デ
アルノデアリマス、又此主務大臣ガ定ムル
所ノ相當ノ償金ニ付テ異議ノアル場合ニ於
テハ始メテ裁判所ニ出訴スルコトヲ得テ、
裁判所ニ於テ之ヲ正ス、斯ウ云フコトニ規
定ヲ致シタノデアリマス、修正ノ趣旨ハ矢
張リ左樣デアルノデアリマス、ソレカラ第
三十六條ノ此著者ガ死後ニ於キマシテハ著
作者ノ親族······、「著作者ノ父母、配偶者又ハ
子ニ於テ」ト云フノヲ、之ヲ範圍ヲ擴メテ、
「親族」ト云フコトニ致シタノデアリマス、
卽チ是ハ範圍ヲ擴メタノデアリマス、大體
此修正案ノ說明ハ斯ノ如キモノデアリマス
ル、ソレデ又政府委員ガ言ハレルノニ、元
來改正法律案ハ今囘ハ羅馬會議ノ結果ニ基
イテ爲シタル所ノ小修正デアルノデアッテ、
來ル昭和十年ニ著作權ノ同盟會議ガアルカ
ラ、其時ニハ根本的ニ更ニ大ニ改正ヲ加ヘ
ル、修正ヲ加ヘル積リデアル、斯ウ云フコ
トヲ違ベラレクノデアリマス、大體此修正
案ノ說明ハ之ヲ以テ御了承下サレタコトト
信ジマス委細ノコトハ速記錄ニ載セテア
リマスルカラ、連記錄ニ付テ御覽ヲ願ヒマス
レバ、識ニ仕合セト存ジマスル、之ヲ以テ
此委員長ノ報告ハ終リマスルガ、終リユ臨ミ
マクテ、委員會ニ於テ斯ウ云フ注意ヲ政府
ニ述ベラレク委員ガアックノデアリマスル、
ソレハ此著作者ノ人格權ヲ斯ノ如キ法規ニ
依ヶテ尊重スルコトハ誠ニ結構ナコトデア
ルガ、ドウモ近頃ノ出版物テリ或ハ繪畫等
ヲ見ルト、誠ニ取締ガ稍〓緩タナックヤウニ
考ヘラレルモノガ往々アル、風俗上カラ見
テモ誠ニ不穩當ノモノガ公ニナッテ居ルモ
メガアルカノ如ク思フノデアル、殊ニ又新
開紙上ノ廣〓ノ例ナドヲ引イテ見マスルト
格別必要モナイノニ裸體ノ婦入ノ像ナドヲ
新聞ノ廣〓ニ揭ゲテ、誠ニ心アル人ヲウテ
擊蹙セシムルヤウテ新聞ソ廣告等ガアル
是等ハ風俗上カラ見テ誠ニ不穩當ト思フカ
ラ、政府ハ相當ヲ取締ナリ第ヲ講ジタラ宜
カラウト云フ注意ガアックノデアリマス、而
ジテ其注意ニ對シテ政府當局者ノ答辯セラ
ルル所ニ依ルト、何分現時ノ世相ハ十年前
カラ見ルト段々變ッテ居ルノデアル、十年前
ニハ禁止シタモノモ、只今ニナルト之ヲ禁
止スルコトガ出來ナイヤウナモノガ往々ア
ルノデアッテ、十年前ニ取締ヲタ時ノ基準ヲ
以テ、今日ノ文藝品ナリ美術品ナリヲ律ス
ルコトハ出來ナイ、併シ委員ノ御注意ニナ
ルコトハ誠ニ御尤モデアルカラ、精々其御
注意ノ趣旨ニ副フヤウニ致ス考デアルト云
フコトハ文部大臣モ本內務當局ニ於テモ
之ヲ遠ペラレグノデアリマスル、併セテ此
段モ御報告申上ゲテ置キマス、何卒此修正
案ニ御同意ヲ下サリマシテ、修正ニ觸レザ
ル點ニ於テハ政府原案ヲ御可決下サルヤウ
ニ希望イクス次第デアリマス、之ヲ以テ御
報〓ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ヲ第二讀會
エ移スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=12
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013・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=13
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014・池田政時
○子爵池田改時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵徳川家違君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部委員長ノ報告通リデ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=18
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019・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=19
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020・池田政時
○子爵池田〓時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナメト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、大正
十三年法律第二號中改正法律案、政府提出、
第一讀會ノ續、委員長報告、黑木伯爵
大正十三年法律第二號中改正法律案
右別冊ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和六年二月二十日
委員長柏爵黑木三次
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字ハ特別委員修正)
大正十三年法律第二號中左ノ通改正ス
本法ニ左ノ題名ヲ附ス
海軍軍備制限條約實施法
第一項第一號中「建造」ノ下ニ「又ハ
第一條0第二項中「大正十二年條約第二
改裝」ヲ、同條
號海軍軍備制根ニ關スル條約」ノ下ニ「及
昭和六年條約第一號千九百三十年「ロン
ドン」海軍條約」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔伯爵黑木三次君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=25
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026・黒木三次
○伯爵黑木三次君 是ヨリ大正十三年法律
第二號中改正法律案特別委員會ノ經過竝ニ
結果ヲ御報〓申上ゲマス、委員會ヲ開キマ
シタコトガ二囘、愼重審議イタシマシテ修
正可決イタシマシタ次第デアリマス、今說
明ノ順序ト致シマシテ、至極簡單ナ法律デ
ゴザイマスルカラ、法律ノ大要ヲ申上ゲタ
イト思ヒマス、此法律ハ旣ニ御存知ノ如ク、
去ル大正十二年ニ華盛頓ニ開カレマシタル
海軍軍備制限ノ條約ニ基イテ作ラレマシタ
國內法デゴザイマス、第一條ニ於キマシテ
軍艦ヲ建造スルコト、商船ヲ軍艦ニ變更ス
ル目的ヲ以テ武裝スルコト及其準備ヲスル
コト此二ツノコトハ主務大臣ノ許可ヲ要
云れ、斯ウ云フコトガ規定シテゴザイマシ
テ、要スルニ主務大臣ノ許可權デゴザイマ
ス、第二項ニ於キマシテ、是ハ華盛頓條約
ニ於テ制限サレタコトニ村テハハ大臣ハ許
可シナイモメダト云フ許可權ノ制限ガ規定
シテゴザイマス、第二條ハソレノ取締規定
ト云フヤウナモノデ、工場ニ這入ッタリ、又
ハ設計ノ計畫ヲ提出サシタリシテ、檢査ス
ルコトメ出來ルト云フ規定デゴザイマス、
第三條ハ第一條ニ違反シタル者ニ對スル罰
期デゴザイマシテ、是ハ可ナリ重タナッテ居
リマシテ、二年以下ノ懲役又ハ禁錮、斯ウ
云フ風ニナッテ居リマス、又罰金モ二千圓科
セラレルヤウナコトニナ〃テ居リマス、第四
條ハ第二條ノ取締規定ニ違反シタル者ニ關
シマスル罰則デゴザイマス、此非常ニ簡單
ナ國條カラ成クテ居ル法律デゴザイマス、ソ
レデ今回ノ改正ノ要旨ハ、此大正十三年法
律第二號ト云フノヲ改正イタシマシテ、海
軍軍備制限條約實施法ト云フ風ナ名ヲ村ケ
ルコトデゴザイマス、ソレカラ第二ハ、此
第二項ニゴザイマスル「主務大臣ハ大正十
二年條約第二號海軍軍備制限ニ關スル條約」
ト云フ其後ニ、「及昭和六年條約第一號千九
百三十年「ロンドン」海軍條約」ト云フ字ヲ
加ヘマシテ、制限ノ範圍ヲモット擴メタ次
第デゴザイマスソレデ質疑應答ノ大要ヲ
申上ゲマスト、此海軍軍備制限條約實施法
ト云フ、此實施ト云フ字ガ面白クナイヂヤ
ナイカ、何カ舛ニウマイ字デモアルカト云
フ御質問デゴザイマシタが、是モ當局ニ於
テ色ミト詮議ヲシタケレドモ、ドウモ面白
イ字モ見付カラナイカラト云フコトデゴザ
イマシテ、委員モ之ヲ諒ト致シマシタ第
二番目ニハ「「ロンドン」條約」云々ト云フ字
ヲ入レルトキニ、是ハモウ旣ニ千九百三十
五年ニハ又第二同第三囘ノ海軍ノ軍備制限
ニ關スル會議ガゴザイマスルカラ、是ノ條
約ガ出來タ際ニ又之ヲ改正シナケレバナラ
又、サウ何週モスルコトヲ止メテ、廣ク海
軍軍備制限ニ關スル條約ト規定ツテハドウ
カト云フ御質問デゴザイマシタ、所ガ當局
ハ其繰返サナケレバナラナイ手數ノコトハ
考ヘルケレドモ斯ウ云フ風ナ重イ罰則ノ
附イテ居リマスル規定ガ、ドウ云フコトニ
根據クテ居ルカト云フコトヲ明カニ示ス必
要ガアルカラ、ドウモ是ハ一々其條約ノ名
前マデ入レテ置タ方ガ、自分ノ方トシテハ
至當ト思フト云フコトデゴザイマシテ、又
是モ委員會デハ諒トシタ次第デゴザイマス、
ソレカラ又覺法律ニ相當スル法律ハ、各締
約國ニ於テモソレ〓〓制定セラレテ居ルカ、
斯ウ云フ御賃問ガゴザイマシク、當局ノ御
答ハ華盛頓條約ノ後デ一番初メニ國內規定
ヲ作ッタノハ英國デゴザイマス、又今度ノ倫
敦條約ノアトニ改正ヲ致シマシタノモ、去
年ノ七月ニ改正ヲシテ居ル、斯ウ云フ譯デゴ
ザイマス、伊太利、佛蘭西、共ニ國內法ハ旣
ニ出テ居リマス、唯米國ハ米國ノ憲法及ビ
法律ニ依リマシテ、米國政府ハ米國ガ加入
シテ居ル條約違反ヲ阻止スルコトガ出來ル、
其方法ハ政府ガ法廷ニ訴ヘテ、條約上ノ違
反行爲ノ差止命令ヲ出シテ、之ニ肯カナイ
モノハ、法廷侮辱罪トシテ禁錮又ハ罰金ヲ
命ズルコトガ出來ルト云フヤウナコトデア
ルト云フ御答デゴザイマシタ、一番最後ニ
問題トナリマシタノハ、此第一條ノ第一項
ノ第一ニ軍艦ヲ建造スルコトト云フ、此建
造ト云フノハドウ云フモノカ、華盛頓條約
ノ時ニハ御存知ノ如ク、是ハ主力艦デゴザ
イマシタカラ、改造其他ノコトハ非常ニ技
衛上ムツカシイコトデゴザイマス、併シ今
度ノ倫敦ノ會議ハ小艦艇ニマデ及ンデ居リ
マスカラ、何カ改造ト云フヤウナ字ハ······
此建造又ハ改造ト云スヤウナコトハ必要デ
ハアルマイカ、斯ウ云フ御質問デゴザイマ
シテ、之ニハ既ニ御手許コ差上ゲテアリマ
ス速記錄ニアリマスヤウニ屢、論ゼラレマシ
テ、初メ當局ノ御說明ハ建造ノ文字ノ中
二、廣ク解シマシテ改造モ入〓テ居ルノダ、
サウシテ是ハ大正十三年ノ第四十九囘ノ議
會ニ同案ガ提出サレタノデゴザイマスガ、
其時ノ委員會ニ於テモ委員ノ諒承ヲ得テ居
ル斯ウ云フ御話デゴザイマシタ、併ナガ
ラ委員會モ議ガ多ク分レマシタモノデアリ
マスカラ、第一囘ノ終リニハ懇誤會ヲ開イ
テ意見ノ一致ヲ圖ノタ次第デゴザイマス、又
第二囘ノ委員會ノ初メニ當リマシテ、政府
當局カラ前同ノ說明ニ多少ノ正誤ヲ要スル
所、又附加シナケレバナラナイ所ガアルカ
ラト云フ意味合デ、御說明ガアリマシタ、
之ニ依ッテ委員モ諒承シマシテ、能ク政府ノ
心持ノアル所モ伺ッタ次第デアリマス、サウ
シテ尙ホ委員カラモ英國ノ規定ハ非常ニ詳
細ナコトヲ云ッテ居リマスカラ、斯ウ云フヤ
ウナ字ヲ示シタ方ガ條約ヲ誠實ニ履行スル
ト云フ精神カラ言ッタラ適當デハアルマイ
カ、斯ウ云フ論ガゴザイマシテ、之ニハ政
府モ結局何か字ガ······改造ト云フ字デハ少
シ困ルケレドモ、改裝ト云フ字ナラ、ソレ
ノ方ガ宜カラウト云フ意見ガ一致シマシタ、
ソレデ質問ヲ打切リマシテ、討論ニ入ッテ、
田所君ヨリ第一條第一項第一號ノ軍艦ヲ建
造ノ下ニ「又ハ改裝」ト云フ此四字ヲ加ヘル
修正勤議ガ出マシテ、委員會ニ於テ之ヲ可
決イタシマシタ、此修正ノ意味ヲ以テノ原
案ニ滿場一致可決イタシマシタ次第デアリ
やく、之ヲ以テ委員會ノ報〓ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ヲ第二讀會
ニ移スコトニ御異存ゴザイマセスカ
〔「異議ナン」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=28
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029・西大路吉光
○子講西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=29
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030・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ本
案ノ第二讀會ヲ直ニ開クト云フ動議ニ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供ジマス、全部委員長ノ報告通リデ御異
存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=35
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036・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達者) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川〓達君) 日程第一、國務
大臣ノ演說ニ關スル件、內務大臣ガ發言ヲ
求メラレマシタ、內務大臣安達謙藏君
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=41
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042・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 先日前田子爵ガ
本議場ニ於キマシテ、御質問ノ御演說ガア
リマツタ場合ニ、私已ムヲ得ザル用事ガア
リマシテ缺席イタシテ居リマシテ、御質問
ニ御答スルコトガ出來マセヌデ、誠ニ遺憾
ニ堪ハマセヌ次第デアリマス、就キマシテ
ハ當時ノ御演說ヲ拜聽シテ居リマシタ政府
委員ノ聽取リマシタ御演說ノ大要ニ付キマ
シテ、玆ニ一ト通リ御答ヘ致サウト思ヒマ
スー先ヅ第一ハ失業ノ狀況ニ關スル點デア
リマスガ、其御質問ノ要旨ハ失業者ハ政
府ノ對策如何ニ拘ラズ益、增加シテ居ル、
昨年ノ初メ三十五万人ナリシモノガ三十八
万人ニ增加シタ、尙ホ社會局ノ調査ハ歸農
者及ビ學校卒業ノ未就職者ヲ含マザルモノ
ナルヲ以デ、是等ヲ加フル時ハ百万ヲ下ラ
ヌデアラウ、是デ政府ノ經濟政策及ビ失業
對策ノ無力ナルコトガ知ラルルト云フ意味
ノ御質問デアリマス、私ハ此御問ヒニ御答
ヘ致シマスガ、社會局ノ推定失業者ノ數ハ
昨年二月、三十五万人デアリマシテ、其後
漸次ニ增加イタシマシテ、最高ノ時ハ九月
デアリマシテ三十九万五千人デアリマス
ガ、十月ニハ三十七万四千人、十一月ハ三
十五万人ニ減ジマシタ、ソレカラ十月一日
ニ施行セラレマシタ國勢調査ノ失業者調
ハ略ボ社會局ノ推定ト失業ノ定義ヲ同ジ
クスルモノデアリマスガ、全國三十二万二
千人ノ數ニ上ボッテ居リマス、之ニ依ッテ見
マスルト、失業者ノ漸增ノ傾向ガアリマシ
タコトハ認メラレマスガ、其增加ノ勢ヒガ
世間デ傳ヘラルルガ如キ著シキモノデナイ
コトハ明カデアリマス、社會局ノ調査及ビ
國勢調査ニ於キマシテ、學校卒業ノ未就職
煮自營者等ヲ含マセマセヌノハ、失業調
査ノ性質上自然ノコトデアリマシテ、何等
ノ意圖アルノデモアリマセヌ、尤モ是等ノ
現象モ亦社會問題トシテ重要ナルコトハ勿
論デアリマスルカラ、政府ハ失業統計ト併
セテ、學校卒業者就職調、小學校卒業生職
業紹介調、工場鑛山ノ雇入及解雇者歸趨調
等ヲ行ヒマシテ、職業問題ニ關スル正確ナ
ル資料ヲ蒐集シ、之ガ對策ヲ講ズルニ遺憾
ナキヲ期シテ居リマス、其次ノ御問ヒノ要
旨ハ、各方面ノ報〓ヲ綜合スルニ、不景氣
ノ結果、空屋空間ノ增加、家賃ノ滯納、商
工業者ノ衰頽、支那、南洋貿易ノ不振、婦人
小兒ノ求職者ノ激增及ビ就職難、窃盜ノ增
加棄兒、一家心中、親子心中等ノ增加等、
總テ不景氣、生活難ノ益、甚シキヲ示スモノ
ナルニモ拘ラズ、政府ハ之ガ對策トシテ何等
有效ナル施設ヲ施サズ、救護法ノ實施ニモ
未ダ著手セズ、失業保險ヲモ實行セザルハ如
何デアルカト云フ意味ノ御問ヒデアリマス、
私ハ此御問ヒニ對シマシテハ、不景氣ニ原
因スル生活難ノ有ラユル世相ハ、或程度ニ
之ヲ認メマスルガ、現下ノ不景氣ニ基ク社
會問題ヲバ決シテ輕視スルモノデハアリマ
セヌ、救護法ノ施行ハ近日追加豫算ヲ以テ
提案スル豫定デアリマス、施行ノ時期ヲ明
年一月ヨリトシマスノハ、財源ノ關係、及
ビ施行準備ノ爲メデアリマシテ已ムヲ得ザ
ル所デアリマス、失業保險ノコトハ之ヲ海
外諸國ノ實例ニ鑑ミマシテモ、其範圍ヲ如
何ニスルカ、强制保險ニスルカ、或ハ任意
保險ニスルカ、又事業主ト勞働者トノ負擔
ヲ如何ニスルカ、又國家ノ負擔ヲ如何ニス
ルカ、其財源ヲ如何ニスルカト云フコト
ハ、最モ愼重ナル考慮ヲ要スルモノデアリ
マー、仍テ今俄ニ之ヲ實施スルハ國家將
來ノ爲メ如何カト考ヘマス、本問題ニ付キ
マシテハ失業防止委員會等ニ於キマシテモ、
愼重ニ考究イタシテ居リマス、御承知ノ通
リ英國等デハ此失業保險ノ爲メ國家ハ巨額
ノ負擔ヲナシ、國民ハ重稅ニ苦ミ、勞働者
ハ失業ヲ職業トスル者ガ續出スルニ至リマ
シテ、政治家ハ其善後處置ニ困リ拔イテ居
リマス、若シ我國デモ失業保險政策ヲ誤マ
リマシタラ、國民ノ負擔ヲ重カラシムルノ
ミナラズ、失業ヲ職業トスル者續出シマシ
テ、昨年本院デ御建議ニナリマシタ建議案
ノ遊民、惰民ヲ造ルノ虞アリト思ヒマス、
仍テ失業保險ノコトハ十分ノ考究、〓究ヲ
要スルコトト考ヘテ居リマス、而シテ其他
ノ失業對策ニ付キマシテハ、失業救濟
事業ノ施行、一、事業ノ調査、一、職業紹
介機關ノ增設及其活動ヲ促進スルコト、一
失業救濟施設、職業指導及職業輔導、
一、國產獎勵其他ノ產業政策、一、勞働時
間ノ短縮等、有ラユル方策ヲ綜合的ニ實施
イタシマシテ、極力失業ノ防止緩和ニ努メ
ツツアリマシテ、決シテ之ヲ等閑ニ放置シ
テ置クモノデハアリマセヌ、其次ノ御問ハ、
政府ハ公益質屋ニ於ケル生業資金融通ノ制
限額ヲ緩和シテ、小商工業者ノ金融ヲ圖ル
トノ聲明デアルモ、實際之ニ依ッテ何等ノ效
果ガアリタルカ、大藏省ノ調査ニ依ルモ、
貸出額ハ全然不明デハナイカト云フ御問デ
アリマス、此御尋ネニ對シマシテハ、私ハ
先ヅ公益質屋ノ〓況ヨリ御話イタサウト思
ヒマス、公益質屋ノ數ハ逐年增設セラレツ
ツアリマスガ、昭和四年三月ニハ百十九箇
所デアリマシタモノガ、昭和五年ノ十二月
ニハ殆ド倍ニ殖エマシテ、二百三十五箇所
トナッテ居リマス、又貸付ノ金額ハ年々著シ
ク增加ノ趨勢ニアリマシテ、昭和三年度ハ
百五十五万圓デアリマシタノガ、昭和四年度
ガ二百六十二万圓、昭和五年度ノ十二月マ
デニ二百九十四万圓トナテ居リマス、尙ホ
昨年ノ四月、生業資金ノ貸付ニ付キマシテ、
一口ノ貸付金額制限ヲ緩和イタシマシタ
ガ、右二百三十五箇所ノ公益質屋ノ中、昨
年ノ十二月末マデニ生業資金ノ貸付ヲ爲セ
ルモノガ八十六箇所、此貸付金額ガ二十七万
餘圓デアリマシテ、是亦益〓增加ノ傾向ニア
リマス、其次ノ御問ハ、政府ハ失業救濟事
業トシテ、昭和六年度ニ於テ地方公共團體
ノ土木事業、國道、府縣道ノ改修事業、鐵道
省關係事業等ニ於テ總額七千万圓餘ノ事業
ヲ施行スト云フモ、是等ノ事業ハ〓ネ都市
ニ行ハルヽモノニシテ、其他ノ地方ニ行渡"
テ居ラヌ、又事業ハ筋肉勞働者ヲ對象トシ
テ、知識階級ノ失業救濟ノ事業ハ僅ニ六十
万圓餘ニ過ギズ、ソレカラ國道改修ハ本來
府縣知事ニ於テ爲スヲ原則トスベキ故ニ、
主務大臣ニ於テ行ハムトスルハ黨略ノ爲
ニ之ヲ利用スルヤノ噂ヲ生ズルコト等ニ依
リ首肯シ難シ云々トノ御尋ネデアリマス、
此御問ニ對シマシテハ、此第一ニ從前ノ失
業救濟事業ハ主要都市ニ行ハレタモノガ多
クアリマシタケレドモガ、現在ハ必シモ事
業ノ施行ヲ都市ニ限リマセズ、尙ホ都市ニ
於テ事業ヲ行フ場合ニモ登錄制度其他ノ方
法ニ依リマシテ、出來得ル限リ勞働者都市
集中ノ弊ヲ避クルニ努メツツアリマス、國
道改良工事ハ北海道及三十二府縣ニ亙リ、
府縣道改良工事ハ全國各府縣悉ク之ヲ行フ
モノデアリマシテ、共ニ都市偏重ト云フガ
如キ虞ハアリマセヌ、又知識階級ノ失業ハ
最モ憂フベキ問題デアリマスガ、知識階級
ニ對スル授職事業ヲ大規模ニ實行スルヤウ
ナコトハ到底不可能デアリマス、但シ各種
ノ失業救濟事業ノ實施ニ依リマシテ、知識
階級ノ人ミノ使用セラルルモノ相當多キヲ
以テ、是亦緩和ニ相當ノ效果ナツト云フコ
トハ出來マセヌ、次ニ國道改良事業ハ、常
時ニ於キマシテハ府縣知事ヲシテ之ヲ行ハ
シムルコト御說ノ通リデアリマス、併ナガ
ラ今囘ハ失業救濟事業ハ單ニ之ヲ地方團
體ヲシテ行ハシムルニ止マラズ、國家ガ自
ラ之ニ當ルノ趣旨ヲ持チマシテ、政府ニ於
テ失業對策トシテ最モ有效適切ナルヤウ之
ヲ實行セントスルモノデアリマシテ、國ガ
地方ト協力シテ實行スルコトガ最モ救濟ノ
效果ヲ擧グル所以デアルト信ジマス、其次
ノ御間ハ政府ハ職業紹介所補助費ヲ五万餘
圓增加計上セルモ、紹介所ハ元來桂庵同樣
ノモノニシテ、職業ヲ創設シ得ベキモノデ
ナイ、ソレデ其效果ヤ知ルベキノミト云フ
御尋デアリマス、私ノ考デハ職業紹介所ハ
決シテ御尋ノ如ク輕視スベキモノデハアリ
マセヌ、紹介、就職、共濟其他有ラユル失
業對策ノ基本トナルモノデアリマシテ、政府
ノ失業對策トシテ最モ力ヲ注グモノノ一ツ
デアリマス、現內閣組閣以來職業紹介所ノ
創設セラレタルモノ六十餘箇所デアリマシ
テ、現在ハ三百七箇所ニ及ンデ居リマス、
昭和五年一月ヨリ十一月ニ至リマス間ノ紹
介ノ件數ハ一般紹介ニ於テ五十六万四千
件、一箇所一日平均六人四分、日傭勞働ニ
於キマシテ紹介件數ガ四百四十九万件、
箇所一日平均二百七十二人デアリマス、之
ヲ營利紹介ノ取扱一箇所一日平均僅ニ一人
ナルニ比較イタシマスレバ、其效果ノ見ル
ベキモノアリト言ハネバナリマセヌ、況ヤ
失業救濟事業ノ實施、求人開拓、職工ノ移
動紹介、少年職業指導等ハ紹介所ニ依ルニ
アラザレバ、到底其效果ヲ期待シ得べカラ
ズト思フノデアリマス、米國ニ於キマシテ
モ目下職業紹介所ノ大擴張ヲ圖リ、以テ
失業防止救濟ノ機能ヲ發揮セントノ議ガア
ル位デアリマシテ、職業紹介機關ハ大ニ政
府ノ認ムル所デアリマス、以上ハ御質問ニ
對スル答辯デアリマスルガ、私ハ失業問題
ヲ御答ヘスルニ當リマシテ、閑却シテハナ
ラヌコトガアリマスカラ、玆ニ一言申添へ
テ置クコトヲ御許シヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、ソレハ朝鮮人勞働者ノコトデアリマス、
朝鮮ノ勞働者ハ先年來每年數万人ヅヽ渡航
シテ參リマシテ、其總數二十八九万ニ上リ
マシテ、大阪、名古屋ヲ始メ各大都市ノ失
業者ノ三四割以上ヲ占メテ居リマスガ、昨
年來彼ノ地ニ治水、道路、鐵道等ノ事業ヲ
起シマシテ、又六年度以降三箇年間更二六
千五百万圓ノ借入金ヲナシテ土木其他ノ事
業ヲ起スコトニナリマシタカラ、全部トハ
中シマセヌケレドモ、若干ハ其影響ト思ハ
レマスガ、昨年ノ七月以來每月朝鮮ヨリ渡
航シ來ル者ガ減ジマシテ、コチラカラ歸ル
者ガ非常ニ增加イタシマシタ、其差每月四
五千人ヅヽ歸ル者ガ多クナ〃テ居リマス、此
趨勢ガ幸ニ當分續キマシタナラバ、鮮人ノ
勞働者ノ減少ノ爲メ失業問題ハ非常ニ緩和
セラレルコトデアリマスカラ、私ハ御參考
マデニ玆ニ申添ヘテ置ク次第デアリマス、
之ヲ要シマスルニ政府ハ失業ノ防止救濟ニ
相當ノ努力ヲナシマスト同時ニ、國民ガ堅
忍持久ノ決心ヲナシテ、今日ノ難局ニ處シ
マシテ遊民惰民トナラザルヤウニ、注意イ
タシテ居ル次第デゴザイマス、此段御答ヘ
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=42
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043・前田利定
○子爵前田利定君 只今內務大臣ノ過日私
ノ質疑ニ對シマシテノ御答辯ガゴザイマシ
タガ、簡單デゴザイマスカラ、自席カラ質
問スルコトノ御許シヲ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=44
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045・前田利定
○子爵前田利定君 內務大臣ノ御答辯ニ付
キマシテ先ヅ私ノ感ジマシタコトハ議員ノ
質疑ニ對シマシテ往々國務大臣ノ御答辯ガ
的ヲ外レテ居フタリ或ハ問フ所ノモノト
違ッタコトヲ答ヘラレタリ、或ハ五ツ問ウテ
アルモノニ對シテ二ツ答ヘルト云フヤウ
ナ、誠ニ御粗漏ノ御答辯ガ多イノデアリマ
スリ、只今内務大臣ノ御答辯ハ、私ノ議場
ニ於ケル質疑ヲ他ノ政務官カラ御聽取ニ
ナッタ上デ、尙ホ私ノ速記錄モ御讀ミ下サッ
タコトデアラウト思ヒマス、誠ニ能ク私、
質疑ニ對シマシテ各點ニ付キマシテ御深切
ナ御答辯ヲ得マシタコトハ、其點ハ誠ニ感
謝イタシマス、又御述ベニナリマシタ點ニ
於キマシテ、私ノ了承イタシマシタ點モゴ
ザイマス、併ナガラ多少尙ホ承服イタシマ
セヌ點モゴザイマスルノデ、一應ソレヲ申
上ゲタイト思ヒマス、失業ノ狀況ニ付キマ
シテ第一ニ御答辯ニナッテ居リマスガ、內務
大臣ノ御答辯ノ基礎ハ社會局ノ調査竝ニ國
勢調査ヲ基トシテ御答ヘニナッテ居ルノデ
アリマス、是ハ過日モ申上ゲマシタ通リニ
社會局ノ調査ト云フモノハ甚ダ杜撰デアリ
マス、又國勢調査ノ調査上ニ付キマシテモ、
其當時ニ於キマシテモ色〓批評ガゴザイマ
シタケレドモ、是モ端的ニ申上ゲマスレバ、
甚ダ杜撰ナモノデアリマス、斯樣ナ杜撰ナ
モノヲ基礎トシテ、失業者ノ數ガ左程增加
シテ居ラヌト云フヤウナコトヲ、答ヘテ居
ラレルノデアリマスガ、私ハ此點ニ於キマ
シテ意見ヲ異ニシテ居リマス、到底社會局
ノ調査ヤ國勢調査ガ、社會政策ノ基本トナ
ルベキモノノ調査資料ト致シマシテハ、甚
ダ不十分ナモノデアルト云フコトヲ申上ゲ
テ置キタイト思ヒマス、尙ホ申上ゲル迄モ
ナク、人體ニ於ケル體溫ノ如キモノ、脈搏
ノ如キモノト同樣ニ、失業者ノ數ト云フモ
ノハ、一高一低イタスデアラウト思ヒマス、
或ル時ハ高マリ、或ル時ハ低マル、三十五
万人ノモノガ三十八万人ニナリ、或ル場合
ニハ三十二万人ニモナルコトガアリマセウ
ガ、其波ヲ打ッテ行ク間ニ、其趨向ガ段々高
マッテ行クカ、低マッテ行クカト云フコトヲ
先ヅ見通サナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、成程昨年ノ十月アタリニハ三十七万
四千デアッタノガ、或ハ昨年ノ末頃ニハ多少
低マッタ數字ガ現ハレテ居ルカモ知レマセ
又、固ヨリ此社會局ノ調査ダケニ付テ申上
ゲテ居リマスガ······併ナガラ唯ソレヲ以テ
左マデ失業者ガ殖エテ居ラヌト云フヤウナ
御觀察デアルト、大變私ハ正鵠ヲ逸スルデ
アラウト思ヒマス、希クハ社會局ノ調査ノ
外ニ實際ノ世相ヲ御覽ニナリマシテ······既
ニ內務大臣モ御氣付ニナッテ居リマス、學校
ヲ卒業シテ職業ニ有リツケヌ者、又鑛山ヤ
工場カラ解雇サレマシタ者デ身ノ振方ニ
困ッテ居ル者、又例ヘバ大工トカ左官トカ
申シマスヤウナ生業ヲ有ッテ居リマス者
デアリマシテモ、仕事ガナケレバ矢張リ失
業者ト同樣デアルト私ハ思フノデアリマ
ス、左樣ナ數ヲ綜合イタシテ合算イタシマ
スルト、社會局ノ調査ノ數ヲ基礎トシテ御
考ヘニナッテ居ルト云フコトハ、大變ナ御思
ヒ違ヒデアルト私ハ思フ、第二ハ、不景氣
ノ世相ニ付テモ、或ル程度マデハ御認メ下
サルト云フコトデアリマス、或ル程度ノ御
認メヲ戴クト云フコトハ、私ト致シマシテ
甚ダ遺憾デアリマス、十分ニドウカ此險惡
不安ナル社會ノ實相ヲ明察、思察サレンコ
トヲ望ミマス、尙ホ救護法ノ實施ニ付テハ
先般ノ私ノ質疑ノ際ニモ申上ゲマシタ通
リ遲蒔デアルケレドモ救護法ヲ實施ナサ
ルト云フコトハ結構ナコトデアルト私ハ申
上ゲテアリマス、唯其實施ガ明年一月カ二
月ニ御始メニナルト云フコトハ、今日生キ
ルカ死ヌカ其岐路ニ立ッテ居リマスル者ニ
取リマシテハ、誠ニ優長千萬デアルト私ハ
思フ、元來昭和六年度ノ豫算ニ御組ミニナ
リ、昭和六年度ノ施政方針ヲ御決メニナル
時ニ救護法實施ニ關スル豫算等ハ、當然其
時ニ御組込ミニナッテ然ルベキモノデアル
ト、私ハ思フ、今更ニナッテ追加豫算デ以テ
後レ馳セニ御出シニナルト云フヤウナコト
ハ甚ダ私ハ失禮ナ申分デアリマスケレド
モ、不覺ナ致シ方デアッタト思フ、單リ救護
法バカリデハゴザイマセヌ、豫テ此內閣ガ
天下ニ聲明サレタ所ノ重要法案ハ餘リ今年
ハ出テ參リマセヌノデ、是等ノコトヲ申上
ゲマスルト話ガ又他ヘ參リマスカラ申シマ
セヌガ、兎ニ角救護法ノ如キモノハ、政府
ガ疾ニ之ヲ御提出ニナル政治上ノ義務ガ
アック問題デアリマス、當然昭和六年度ノ本
豫算ニ御織込ミニナルベキモノト私ハ思
フ、御提案ノ時期ガ後レタト云フコトハ甚
ダ遺憾デアル、而シテ其御實施ノ著手ガ來
年一月カ二月ト云フノハ誠ニ優長千萬デア
ルト思フ、不景氣ノ世相ヲ或ル程度マデ御
認メニナッタ······、十分不景氣ノ世相ヲ御認
メニナッタナラバ、斯樣ナ手ヌルイ不覺ナコ
トハナカッタラウト、私ハ甚ダ遺憾ヲ感ズル
次第デアリマス、失業保險ノコトニ付テ御
說明ガゴザイマシタ、固ヨリ是ハ愼重ニチ
サルベキモノデアリマス、是モ後レテ居ル
ト思ッテ居リマスガ、併シ愼重ニ御詮議中デ
アルト云フコトデアリマスレバ、ドウカ實
施後ニ悔ノ殘リマセヌヤウニ御考究ニナリ
マシテ、是亦一日モ早ク御實行アラムコト
ヲ望ム次第デアリマス、次ニ公設質屋ニ付
テ御話ガゴザイマシタ、成程貸付額ガ殖エ
テ參ッタコトハ慶スベキコトト私承知イタ
シマスルガ、私ガ過般公設質屋ニ付テハ兎
角ノ批評ガ出來ナイト云フコトヲ申上ゲマ
シタノハ、大藏省カラ私ノ戴キマシタ調査
書類ニ依リマスルト、或ル年度ノモノハ貸
付金額ガアリマスケレドモ利用シタ數ガ不
明ト云フコトニ書イテ居ル、或ハ貸付金額
ガ亦不明デアルト云フヤウニ、不明々々ト
活字デ押シテアリマシテ、果シテ此貸付金
額ガドレダケノ人ニ利用サレタノデアル
カ、少シモ此資料ノ上カラ理解ガ出來ナイ、
大藏大臣ハ嘗テ公設質屋ノ一口ノ金額ヲバ
擴張シタ爲ニ非常ニ緩和シタト云フコトヲ
申サレテ居リマスルケレドモ、緩和シタカ
シナイカ、大藏省カラ御出シニナッテ居ル調
査資料ニ付キマシテハ、稅ノ愚カナ爲メデ
アルカ分リマセヌガ、不明々々ト云フ活字
バカリ押シテアリマスカラシテ、分リマセ
ヌノデス、サウ云フコトヲ申上ゲタ譯デア
リマス、尙ホ申添ヘマスガ、公設質屋ノ御
實行ト云フコトハ、其事柄自體ニ付キマシ
テハ無論不贊成デハアリマセヌ、結構ナコ
トデアリマス、ドウカ此公設質屋ノ一ロノ
擴張、金額ガ擴張サレマシテ、多クノ庶民
階級ガ之ヲ利用、善用スルヤウチ運ビニ至
ランコトヲバ希望シテ居リマス、ガ、如何
ニ公設質屋ト申シマシテモ、質草ヲ持ヲテ行
カナケレバ借リラレナイノデアリマス、質
草ノアルモノハ宜シウゴザイマスガ、今日
ハ庶民階級ニ於キマシテハ、元ハ質草ニナ
ルベキモノモ持"テ居リマセウケレドモ、不
景氣ガ深刻ニナリ、今年中モ斯ウ云フ不景
氣ガ尙ホ續クト云フコトデアリマシタナラ
バ、持合セノ所謂質草迄モ無クナシテシマッ
テ、如何ニ公設質屋ガ店ヲ開イテ一口ノ限
度ヲ擴張サレマシテモ、借リニ行カウト思ッ
テモ借リニ行カレヌヤウナ狀況ニ至リハセ
ヌカト思フノデアリマス、ドウカ世ノ中ノ
此不景氣ヲ囘復スルヤウニ、十分御留意願
ヒタイト思ヒマス、第四ハ失業救濟ノ爲ニ
土木工事、此點ニ付キマシテ御說明ガアリ
マシタ、ガ、此點ハ私ガ申上ゲマシタコト
モ、内務大臣ニハ能ク御分リニナッテ居ルト
思ヒマスッ卽チ七千万圓ト云フ鐵道ノ工事、
道路ノ工事ノ總額ニ對シマシテ、六十三万
圓バカリガ知識階級ニ〓サレルト云フコト
ハ、如何ニモ偏重ノ嫌ガアリハセヌカ、何
トカ此知識階級者ヲシテ職ヲ得セシメ、知
識階級者ヲシテ思想上惡化ヲ來シマセヌヤ
ウニ、無論筋肉勞働者ノ救濟モ必要デアリ
マスルケレドモ、知識階級者ノ救濟ト云フ
コトニ付キマシテハ、今一層ノ御高配ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス、次ニ道路法ニ
付テノ御釋明ガアリマシタ、是モ過日私ガ
申上ゲマシタ通リニ但書ガゴザイマスルカ
ラ、其但書ニ依ッテ主務大臣ガ管理ヲ爲サッテ
モ違法デハアルマイ、ガ併シ元來其各府縣
ノ知事ヲシテ管理ノ采配ヲ振ラセルト云フコ
トニ法律ノ成文ハナッテ居ルノデアリマスルカ
ラ、其成文ニ依ラズシテ、除外例ニ依ラレタ
有力ナル根據ヲ伺ヒタイ、而シテ其コトガ國
家社會ニ如何ニ有效デアリ適切デアルカト
云フコトヲ、御示シヲ願ヒタイト云フコトヲ
申上ゲタノデアリマスルガ、內務大臣ノ御
答辯ハ、ソレガ有效適切デアルト云フコト
デアリマシテ、鸚鵡返シ見タイナ御答辯デ
アッタノデアリマス、其有效適切デアルト云
フコトハドウ云フコトデアルカト云フコト
ヲ伺ヒタイト言ッタノデアリマス、併ナガラ
內務大臣ハ、決シテ斯樣ナコトヲ以テ黨略
ニ利用スルノデハナイト云フ御意思ノヤウ
ニ伺ヒマシタカラ、其點ハ了承イタシマシ
テ、職業紹介所ノ增設ニ付キマシテノ御說
明ガゴザイマシタ、私モ固ヨリ此職業紹介
所ト云フモノハ輕視ジテ居リマセヌ、過般
ノ質疑ノ演說ヲ申上ゲマシタ時ニモ、決シ
テ職業紹介所ヲ輕視シタヤウナコトハ少シ
モ申シテ居ラヌノデアリマス、但シ職業紹
介所ト云フモノヽ性質ガ職業ヲ拵ヘル所デ
ナイノデアリマスルカラ、唯職業紹介所ヲ
澤山拵ヘタト云フコトノミヲ以テ、失業者
ノ救濟ハ出來テ居ルンデハナイト云フコト
ヲ申上ゲタノデアリマス、尙ソレニ付キマ
シテ職業紹介所ノ色ミ御話ガアリマシタガ
唯職業紹介所ノ見世ガ······事務所ガ澤山出
來タト云フコトガ、卽チ失業者ノ救濟ト云
フモノニハ直ニナラヌノデアリマスルカラ、
ドウカ職業紹介所ヲシテ其機能ヲ發揮出來
マスヤウニ、御政治振ヲバ直シテ戴キタイ
ト思フノデアリマス、結論トシテ內務大臣
ハ此社會世相ニ對シテ十分ニ努力スルト
云フ御話デアリマシタ、政府當局者ト致シ
マシテ努力スルノハ當然ナ話デアリマス、
唯私ノ希望スル所ハ、唯努力スルト云フコ
トダケデハ物足ラヌノデアリマシテ、努力
セラレタ結果ガ實蹟ガ擧ガルト云フコトデ
ナケレバ、我ミハ滿足ガ出來乗ネルノデア
リマス、御努力下サル御精神ハ誠ニ之ヲ諒
ト致シマス、唯憾ムラクハ御努力ノ結果ガ
具體的ニ現ハレテ居ナイト云フコトヲバ遺
憾トスル者デアリマス、ドウカ御精神通リ
ニ實蹟モ共ニ備ハルヤウニ一段ノ御努力ヲ
願ヒタイト思ヒマス、私ト致シマシテハ之
ヲ以テ申上ゲルコトハゴザイマセヌ
〔金杉英五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=45
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046・金杉英五郎
○金杉英五郞君 內務大臣ニ伺ヒタイコト
ノ第一ハ產兒調節ニ關スルコトデアリマ
ス、之ヲ伺ヒマスル前ニ一言申上ゲテ置キ
マスルコトハ、幣原總理代理ニ伺ヒマスル
時ニ熊澤蕃山ノ說ヲ引キマシテ決シテ反問
シナイト云フコトヲ申上ゲテ置キマシタ
ガ、ドウモ熊澤蕃山ノ考ト首相代理ノ御考
ト一致シナイ所ガアリマシチ、反問セザル
爲ニ趣旨ノ徹底セザルコトアルヲ發見イタ
シマシタ、今日ハ若シ私ノ伺ッタコトニ一致
セザル點ガアリマシタナレバ反問イタスト
云フコトヲ申上ゲテ置キマス、例ヘバ過日
ノ質問ニ對シテ第一濱口首相ガ前議會ニ
於テ悲觀無用ト云フコトノ御話ガアッタガ、
其後漸次悲觀狀態ガ激シタナッタデハナイ
カト云フコトノ問ニ對シマシテ誠ニ御同感
デアリマスル、世相ハ全ク憂慮スベキ狀態
ニアリマスル、併ナガラ悲觀スルニハ及バ
ナイ、斯ウ云フ御話デアリマス、世相ガ憂
慮スル狀態ニアリ、ソレガ推移シテ前途ヲ
悲觀シナイト云フノハ、誠ニ理窟ニ合ハヌ
コトノヤウニ、私ハ考ヘマスル、第二ニ施
政方針中ニ〓育竝ニ衞生ノコトヲ加ヘザリ
シハドウ云フ譯カト云フコトニ對シマシ
テ、ソレハ事理明白ノ事柄デアルカラ加ヘ
ナカッタト、斯ウ云フコトデアリマス、事理
明白ノコトデアルナレバ、施政方針全部マ
ルデ何ニモ言ハヌデモ宜カラウト、斯ウ云
フ議論ニナルノデアリマス、ソレカラ第三
)、議會中心政治ナルモノニ付テノ御間ニ
對シマシテ、無論日本ノ國體トシテ政體ト
シテ天皇中心政治デアルコトハ申ス迄モナ
イコトデアル、議會中心政治ト云フ名前ノ
當否ハ別トシテト云フヤウナコトヲ仰シヤ
イマシタ、サウスルト是モ亦議會中心政治
ト云フ名ニ封シテノ疑念ノアルト云フコト
モ發見サレタ譯デアリマス、サウ云フ工合
ニモウ一度御問ヲシナイト、ドウモ意思ノ
徹底セザルコトガソコニ生ジマシテ、新聞
ナドデモ、或ル新聞ニハ支離滅裂、意思徹
底セズナント云フ惡ロヲ書カレタ譯デアリ
マス、首相代理ヲ信用イタシ熊澤蕃山ノ說
ヲ守ッタル爲ノ過失デアリマシテ、此點ハ今
日改心イタシマシテ、安達內務大臣ノ御答
辯ノ狀態ニ依リマシテハ、再ビ御問ヲ申上
ゲルト云フコトヲ前提ニ御質問申ス次第デ
アリマス、御存ジノ如ク人口問題ノ著シク
高唱セラルヽニ至リマシタコトハ百有餘年
前ノコトデアリマシテ、一時ハ、人類死亡
率ノ增シテ出產率ノ減ズルコトハ、人口增
加ノ自然防止デアッテ、所謂自然淘汰デアル
トマデ稱シタル一派ガ、歐米諸國ニアッタ程
デアリマス、申ス迄モナタ今ヨリ百三十餘年
前ニ英吉利人ノ「トーマス·マルサス」ガ抑制
ナキ人口增殖ハ自然的ニ社會難生活難ノ苦
境ニ到達スベシ、卽チ人口增殖スレバ食料
ノ不足ヲ生ジ、人口增殖スレバ一般ノ賃銀
ガ低下シテ細民菜色ヲ帶ブルニ至ルト唱道
イタシマシタ、而シテ「マルサス」ノ人口調
節ノ主義ハ、抑制主義ト稱シマシテ、第一
ニ結婚ヲ遲クスルコト、晩婚デアリマス、
第二ニ獨身生活デアリマス、第三ニ禁慾主
義デアリマス、卽チ抑制主義、道義調節主
義トモ稱スベキモノデアリマス、是ガ一度
發表サレマシテカラ、歐米至ル所其說ニ共
鳴スル者ガ多クナリマシテ諸所ニ聯盟ノ會
ヲ起シテ大ニ普及ヲ圖ッタモノデアリマス、
其間ニ各種ノ書物ガ出版サレマシテ、中ト
ハ極ク簡單ナ避姙法ハ接觸後ニ身體ノ激動、
嚏ヲスルコト、咳ヲスルコト、息ヲ突ッ張ル
コトナドガ極ク良イ方法デアルト云フヤウ
ナ、極ク低級ナ議論マデ書出シタ人ガアリ
やく、ナカ〓〓嚏ヲシタ位デハ避姙法ニハ
餘リ效力ハナイノデアリマス、同ジク英吉
利人デ「ジエームス·ミル」ト云フ人ガ出デ
マシテ、新「マルサス」主義ヲ提唱シタノデ
アリマス、玆デ新「マルサス」聯盟ト云フモ
ノガ成立イタシマシテ、此新「マルサヌ」主
義ノ主張ハ食料以上ニ······人ロガ食料以上
ニ絕エズ增加スルノ傾向アルコトハ、困窮
者ヤ無智ナルモノヤ、犯罪者ナドヲ多ク起
ス原因トナルカラ、抑制スルコトガ必要デ
アル、其抑制ハ積極的トシテハ天死ヲスル
か、ら饑饉デ死ヌコト、戰爭デ死ヌコト、
赤ン坊ヲ捻リ殺スコト、之ガ積極的抑制デ
アリマス、豫防的トシテハ、獨身生活ダノ、
ソレカラ禁慾主義ダノ、晩婚ダノト云フヤウ
ナコトハ、到底出來ルモノデハナイ、是ハ
ドウシテモソレ等ノ爲ニ多クノ性的犯罪ダ
ノ病氣ナリヲ起スカラ、却ッテ結婚ハ早クサ
セル、卽チ早婚者ノ貞操、家庭ノ和樂、幸
福ト云フヤウナコトニ比較イタシマシテ、
晩婚ト云フモノハ決シテ幸福デナイカラ宜
シクナイ、モウ一ツハ衣〓ヲ給シ〓育ヲ爲
シ得ラルル程度以上ニ、多數ノ子女ヲ產ム
コトハ罪惡デアルト云フコトヲ宣傳シタノ
デアリマス、尙ホ附加ヘマシテ、官憲ハ人
口問題ヲ討議スル場合ニ限ッテ、之ヲ社會ノ
重要事ト認メテ、此論議ニ對シテハ刑事的
制裁ヲ加ヘナイヤウニシタイト云フコト
ガ、大體ノ綱領デアリマス、而シテ其主義
ヲ煎ジ詰メテ見マスルト、第一ガ避姙法デ
アリ、第二ガ堕胎法デアリマシテ、ソレガ早
速歐米諸國ニ彌漫イタシマシテ、古イ「マル
サス」主義ハ一掃サレテ、新「マルサス」主義
トナッタノデアリマス、最モ大ビラナノハ和
蘭デアリマシテ、此避姙、墮胎ト云フモノ
ハ一ツノ公共事業デアルトマデ言フテ居リ
やく、米國、佛蘭西、白耳義、瑞典等ニ於
キマシテハ、新「マルサス」主義ノ宣傳及ビ
避姙用器具ノ廣〓ハ禁ジテ居リマスルケレ
ドモ、米國ニ於キマシテハ、「サンガー」夫
人、「ベンネット」夫人ナドガ有力ナル首唱者
テアリマシテ、新團體ヲ諸所ニ組織イタシ
テ、活躍イタシテ居リマス、斯ノ如ク廣〓
ヤ宣傳ヲ禁ジテ居ルニモ拘ラズ、避姙相談
所ガ諸所ニアリマシテ、又墮胎ノ數モ少カ
ラザルヤウニ聞及ンデ居リマス、殆ド强制
的ニ新「マルサス」主義ヲヤッテ居リマスル
ノガ、何事モ人間離レノシタ露西亞デアリ
マス、先般視察シテ歸朝セラレタ者ノ記載
シタル物ニ依リマスルト、莫斯科ニ避姙指
南所ガ三十二箇所アリマス、其一箇所ニ付
テ一日ニ二三十人ヅツガ指南ヲ受ケニ參リ
マス、又公立ノ堕胎所ガ十箇所アリマシテ、
其十箇所デ一日ニ二百人ヅツ取扱シテ居ル
ト云フコトデアリマス、如何ニモ露西亞式
デアリマシテ、人類道義ノ上カラ考ヘテ、
不思義千萬ニ思ハレルノデアリマス、斯ノ
如ク新「マルクス」主義ハ諸方ニ彌漫イタシ
マシテ、其間ニ現ハレマシタノガ「ガルト
ン」ノ統計的視察ト、「メンデル」ノ遺傳實驗
的觀察ヲ本ト致シマシタル所ノ優生學、民
族衞生學的ヨリ唱道シタル所ノ產兒制限デ
アリマシテ、ソレハ低能デアルトカ、惡疾
デアルトカ、或ハ精神異常ノアル者デアル
トカ云フヤウナ者ノ子孫ヲ、防遏イタス目
的デ現ハレタノデアリマス、ソコデ今日世
上ニ行ハレテ居ルノハ、新「マルサス」主義
ニ加フルニ優生學的ノ產兒制限法デアリマ
入、御承知ノ通リ日本ニモ昔ニハ上下共ニ
隨分赤ン坊ヲ捻リ殺シタ例ハ澤山アリマ
ス、ソレハ御大名ノ前デ申上ゲテハ失禮デ
スガ、御大名ノ中ナドニモ澤山アッタノデ
アリマス、是ハ家庭ノ關係或ハ時ノ政治上
ノ關係ナドデ、御大名デハ之ヲ水ニスルト
申シテ居リマス、捻リ殺シテ置イテ水ニス
ルト云フコトニナッテ居,タノデアリマス、
ソレ等ノ記錄ハ澤山アリマスルガ、先ヅ御
遠慮申シテ置キマス、ソレカラ天保頃カラ
奉行ダノ代官ナドガ貧民救濟法ヲ講ジマシ
テ、子殺シヲ防禦スルコトニ致シマシタ、
全體公カラハ德川時代デハ禁ジテ居フタノデ
,アリマス、堕胎ハ禁ジテ居,タノデアリマスルガ、
ナカ〓〓手ガ行屆キマセヌデ、先ヅ殆ド默許
ノ狀態ニアッタノデ、天保頃カラハ奉行ヤ代
官ナドガ大ニ奔走シテ、貧民ナルガ故ニ子ヲ
殺スノデアルト云フコトデ、救護法ナドヲ講
ジマシテ、下總ノ佐倉藩內地方ナドデハ、子
育陰德講ト云フモノヲ起シマシテ、貧民ニ
シテ育兒シ難キ者ヲ救助シタノデアリマ
ス、此帳面ナドハマダ我〓ノ手許ニモ殘ッテ
居リマス、堀田伯ナドハサウ云フコトハ御
存ジアルマイト思ヒマス、又知ラヌデモ宜
イコトデアリマス、又此時代ニハ子供ヲ殺
スト云フコトハ甚ダ罪惡デアル、不道德デ
アルト云フノデ、諸所カラ子供育ツル〓へ
草ト云フヤウナ「パンフレット」ガ〓リマシ
テ、社會ヲ戒メタノデアリマス、ソコデ批
評ヲシテ見マスレバ、「マルサス」主義ハ聖
人君子ノ集團ノ國デナケレバ、チヨットムツ
カシイノデアリマス、之ガ英吉利ニ始マッ
テ、英吉利ノ紳士ニ依ヲテ行ハレ、又歐羅巴
及ビ亞米利加ノ紳士ニ依ッテ行ハレタノデ
アルカラ、一時ハ盛ンデアリマシタケレド
毛、晩婚、ソレカラ制慾、獨身生活、是ハ
ナカ〓〓仙人カ聖人カノ集リデナケレバ到
底ムツカシイノデアリマス、又新「マルサ
ス」主義ニナリマスルト、ドウシテモ避姙、
墮胎法ニ依ッテナケレバナラナイノデ、此處
ガ今日爲政當局者ノ御意見ヲ定ムル所デア
リ、又我ミモ大イニ考究シナケレバナラヌ
問題デアリマスル、今日ノ所デハ道義ヲ重
ンズル日本帝國ガ、堕胎ニ付キマシテハ世
界第一嚴重デアリマス、之ヲ手傳ヲタ所ノ、
卽チ手術ヲシタル所ノ醫者、產婆等ハ行政
處分ヲ受ケマス、又手術ヲシテ貰ッタ人間モ
重イ刑ニ處セラルルコトニナッテ居リマス、
是ハ私ハ當然ノコトデアラウト思フノデア
リマス、人口調節ノ爲ニ產兒制限ヲ唱フル
コトモ、一ツノ政策トシテ案出セラルベキ
問題デアルト、私ナドモ考ヘテ居リマス、
併ナガラ是ハ能ク考ヘナケレバナラヌコト
デアリマシテ、佛蘭西ノ例ニ付テ考へマス
ルノニ、佛蘭西ハ往年人口調節ヲ爲シタル
爲ニ漸次人口ガ減少イタシマシテ、近年ニ
於テモ出產率ヨリモ死亡率ガ多クナリマシ
テ、從ッテ識者ハ國勢ノ衰微著シキモノアル
ヲ憂慮イタシテ居リマス、世界大戰時ノ如
キモ、此制度ヲ非常ニ慷慨イタシタ書物ガ
澤山著ハレテ居ルコトハ御承知ノ通リノ次
第デアリマス、中ニハ佛蘭西ノ產兒制限ガ
惰性ニナッテ來タル此制度ハ、將來ノ危險デ
アルトマデ論ジマシタ人ガアリマス、此邊
ガ我とノ餘程考ヘチケレバナラヌコトデア
リマシテ、今日識者ノ唱フル所ハ一年ニ七
八十万ノ人口增殖デ、是カラ段々進ンデ行ッ
タナレバ、食糧ニ非常ニ困難デアルト云フ
ヤウナコトガ、先ヅ重モナル心配ナヤウデ
アリマス、併ナガラ、我ミハ子供ノ增スコ
トガ國寶ノ增スト同樣ニ考ヘテ居ルノデ、
爲政家ニ御願ヒ申シ、又我ミモ考究シテ、
ドウカ此新「マルサス」主義ナドニハ共鳴シ
ナイヤウニシタイト考へテ居ルノデアリマ
ス、此人口增殖ノ關係ハ、是ハ私ハ爲政家ノ
力量如何ニ依リマシテ、如何トモナルモノ
デアラウト思フノデアリマス、世界ハ廣大
ニシテ、尙ホ人口稀薄ノ國ガ澤山アリマス、
而シテ生物愛ヨリ論ジマスレバ、其人口稀
薄ノ地ハ、甲ノ物デモナク、乙ノ物デモナ
ク、丙ノ物デモナク、人口濃厚ノ地ニ在ル
者ノ物デアルト云フコトガ言ヘルノデアリ
マス、例ヘバ本國ノ人口ガ濃厚デアル所ノ
英吉利、和蘭、白耳義等ハ、國外ニ廣大ナ
ル植民地ヲ有"テ居ルデハアリマセヌカ、加
之廣大ナル土地ヲ持チナガラ、尙ホ比律賓、
布哇等ニ手ヲ伸バシテ居ル北米合衆國ノヤ
ウナモノモアリマス、而シテ人口ノ濃度ト
稀薄度ト比較イタシマスルノニ、例ヘバ日
本人ガ一里ニ一人ノ割合ニ住ムモノトスレ
バ、北米合衆國ハ十一里ニ一人、加奈陀及
ビ濠洲ハ共ニ百五十七里ニ一人ノ割合ニナ
ルノデアリマス、右ノ割合ハ決シテ人類平
等ノ生存權ヲ保有シタト云フコトハ出來ナ
イノデアリマス、之ヲ基督、釋迦、孔子ナ
ドノ考ヘカラ申シマスレバ、人道ニ違反シ
タモノデアルト言ハナケレバナリマセヌ、
卽チ人口ノ濃厚ナル地ニアル者ハ、人口ノ
稀薄ナル地ニアル者ニ對シ、土地ノ平等ナ
ル分配ト、經濟資源ノ公平ナル分配ヲ要求
スルコトハ、道德上ノ權利デアッテ、又世界
人類ノ共同ノ幸福デアラウト思フノデアリ
マス、是ハ當サニ爲政家ノ後世大キナル手
腕ニ俟ツベキモノデアリマシテ、而シテ又
ソレハ決シテ難事デハナイト私ハ考ヘルノ
デアリマス、幣原外交ノ所謂定石外交ヲ以
テスレバ、是ナドガ最モ定石ニ當嵌マル、
道具外レヲ打タズニ濟ム所ノ正道ナル要求
デアルト、私ハ考ヘルノデアリマス、ソコデ
モウ一ツハ、若モ其事ガ成ラナカッタトスレ
バ、人口增殖シテ食物ハドウスルカト云
フノデアリマス、天惠ト云フモノハ實ニ驚
クベキモノデアリマシテ、過去四十年間ノ
歷史ニ徵シテ見マスルニ、人口ガ增殖スレ
バ、ソレダケ主食物ノ收穫高ガ增シテ來ル
ト云フコトガ甚ダ不思議デアリマス、御承
知ノ通リ明治十五六年頃ハ人口ガ三千二百
万人デアリマシタ、米ノ收穫ガ三千万石、
同ジク二十七八年頃ハ四千万人、米ノ收穫
ガ四千万石、同ジク三十七八年頃ハ五千万
人、米ノ收穫ガ五千万石、大正五六年頃ガ
人ロガ六千万人、米ノ收穫ガ六千万石、昭
和五年ガ人口六千二百万人、米ノ收穫ガ六
千七百万石、右樣ノ收穫デアリマシテ、幸
ヒニ主食物ガ米デアリマスル爲ニ、米ヲ取
リマスルニハ誠ニ適シタル氣候溫和ナル土
地デアリマス、是ニ副食物トシテ魚類ヲ得
ルコトノ非常ニ容易イコトモ亦天惠デアリ
マス、四方環海ノ地デアリマシテ、到ル處
魚類ノ取レザル處ハナイノデアリマス、營
養食トカ、滋養食トカ、頻ニ喧マシク言フ
ケレドモ、米ヲ能ク搗カズニ、ソレニ鰯デ
モ食ベテ居リマスレバ、是ヨリ好イ滋養分
ハナイノデアリマス、若シ米ガ足ラナケレ
バ、山デモ何處デモ取レル所ノ馬鈴薯、馬
鈴薯ヲ、〓ヲテ野菜ヲ食ベテ鰯ノ一二匹モ食
ベテ居レバ立派ナ滋養デアル、ソレ故ニ人
ロガ二三百万ヅツ殖エタ所ガ別ニ驚クコト
ハナイノデアル、是ト兩々相俟チマシテ、
日本ノ人口增殖ハ左程恐ロシイモノデハナ
イト存ジマスルノデ、我〓ノ意見トシテハ
堕胎ハ固ヨリ避姙法ナドト云フコトモ、少
シ考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、ソレガ一ツノ罪惡デアルト云フバカリ
デナク、避姙法ニシテモ、墮胎ニシテモ、
其身體ニ非常ナ病ヲ殘シマス、是モ近頃外
國カラ歸ッテ來タ人ノ記載シタモノデアリ
マスルガ、伯林ニ於キマシテ堕胎シタ者ノ
半分ハ子宮病ヲ起シマス、而シテ其三分ノ
一ハ死亡イタシマス、避姙ニ於テモサウデ
アリマス、不完全ナ避妊法ニ依クテ爲サレタ
ル所ノ避姙ハ後ニ容易ナラザル害ヲ殘スノ
デアリマス、此邊ハ能ク考慮イタシマシテ、
當局者ニ於キマシテモ、徒ラニ此避姙法、
特ニ堕胎法ナドニ共鳴シナイヤウニ、今日
カラ願ヒ置キタイト思フノデアリマス、之
ニ付キマシテモ、當局者ハ目下ドウ云フ御
高見ヲ持ッテ御出ニナルカト云フコトヲ伺ク
テ置キマスコトガ、我ミノ今後考究スル上
ニ於テ必要ナコトデアルト存ズルノデアリ
マく、尙モウ一ツアリマスルガ、時間ノ都
合上今日ハ是マデニ致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=46
-
047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲ致シマ
ス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマス
午後零時十四分休憩
午後二時八分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=47
-
048・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 書記官ヲシテ
報〓イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ直ニ之ヲ衆議院ニ送付セリ
著作權法中改正法律案
大正十三年法律第二號中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=48
-
049・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 午後ノ會議ヲ
開キマス、金杉英五郞君
〔金杉英五郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=49
-
050・金杉英五郎
○金杉英五郞君 第二ニ內務大臣ニ御伺ヒ
申シマスルコトハ、結核病ノ始末ヲドウナ
サルルカト云フコトデアリマス、此質問ヲ
開始スルニ先ダチマシテ、午前ニ產兒調節
ノ御質問中ニ、避姙ノコトニ付キマシテ少
シク不穩當ナル言葉ノアリマシタルコトヲ
議長ヨリ注意ヲ受ケマシタ、段々考ヘテ見
マシタラ、御尤モ千萬ノコトデアルト考ヘ
マス、科學的ノ言葉ハ如何ニ注意ヲシヤウ
ト思ヒマシテモ、知ラズ識ラズ、アヽ云フ
コトガ······何ト云フコトハ申シマセヌガ、
アヽ云フコトガ出マスルノデ、誠ニ注意ノ
上ニモ注意ヲシテ居クテ、斯ノ如キコトノ出
來マシタルコトハ、大シテ申譯ガナイトモ
思ヒマセヌケレドモ、宜シクナイコトデア
ルト云フコトハ、自覺イタシタノデアリマ
ス、改メテ取消シマスル意味デモアリマセ
ヌガ、大イニ愼ミマスルト云フコトダケハ
申上ゲテ置キマス、私ハ結核病ノ豫防撲滅
ニ付キマシテハ歷代ノ政府ニ對シ、貴衆兩
院ヲ通ジテ既ニ十數囘ノ質問ヲ重ネテ居リ
マスル、御承知ノ通リ歐米諸國ニ於キマシ
テハ、結核豫防撲滅ノコトハ旣ニ實行期ノ
半バヲ過ギテ居リマスル際ニ、結核豫防撲
滅ニ關スル質問應答ヲ帝國議會ノ壇上ニ於
テ今尙ホ交換シテ居ルト云フコトハ、列國
ニ對シテ誠ニ恥カシキ次第デアリマスル
ガ、當局者ガ奮發シテ之ヲ實行イタシ、其
實蹟ノ擧ルマデハ、命ノアラム限リハ此壇
上ニ登リマシテ質問ヲ重ネテ、皆樣ニ御迷
惑ヲカケルト云フコトヲ豫メ申上ゲテ置ク
次第デアリマス、申上ゲルマデモナク結核
病豫防ノコトハ、目下我國ニ閑却サレテ居
ル各種ノ事業ノ中デ、最モ緊急ニシテ且ツ
最モ重大デアルト云フコトハ、少シク心ア
ル人ハ悉ク御信ジ下サルコトト存ジマスル、
安達內務大臣ハ衞生保健ニ大ナル理解ノア
ル御方デアリマス、其證據ハ今議會ニ於キ
マシテモ衞生保健ニ關スル各種ノ法案、衞
生組合法案、癩豫防法案、寄生蟲豫防法案
等、必要ナル法案ヲ澤山御提出ニナリマシ
タ、此衛生組合法ヲ初メ悉ク滿場一致ヲ以テ
通過サセナケレバナラヌ目下緊急ノ案バカ
リデアリマス、新聞ニ依リマスルト衞生組
合法ガ多少行惱ンデ居ルト云フヤウナコト
モ記載シテアリマスルガ、幣原首相代理ノ
御說ノ如ク新聞ノ記事ガ虛構デアリ揑造デ
アルトスリヤ別問題デアリマスルガ、之ガ
事實デアッタトシタナラバ、由々敷キ一大事
ト思ッテ居リマス、是ハ安達內務大臣ノ出シ
タル案ヲ迎合スルト云フ意味バカリデハア
リマセヌ、或場合ニハ安達內務大臣ノ言論行
動等ニハ迎合シナイコトモ澤山私ハアリマ
スケレドモ、是等ノ案ハドウシテモ虛心怛
懷ニ國家ノ保健衞生ノ上カラ是非通サナケ
レバナラヌ案デアルト私ハ信ジテ居ル、斯
ノ如ク安達内務大臣ハ不思議ニモ衞生保健
ノコトニ非常ニ熱心デアリマス、理解ガア
リマス、唯遺憾トスルノハ最モ緊急ヲ要ス
ル結核病豫防撲滅ニ對スル施設ノ、尙ホ緩
慢遲延ノ狀態ニアリマスルコトデアリマシ
テ、昨年ノ本議會ニ於テモ申シマシタル通
リ、往年結核豫防法ノ中ノ第六條第八條ニ
依リマシテ、差當リ全國ノ人口五万以上ノ市
街ニ公立療養所一箇所宛ヲ設置スルノ規定
トナッタノデアリマシタ、ソレガ出來マスレ
バ丁度六十箇所ニナリマスル譯デアリマス
ルガ、今日迄出來マシタノガ僅ニ十六箇所
デアリマス、其十六箇所ニ私立病院ノ結核
病收容所數ヲ加ヘテ僅々六十七箇所、其病
床ノ數ハ六千餘ニ止ッテ居ルノデアリマス、
其後今日ニ至ルモ公私共ニ其療養所竝ニ病
床數ノ別ニ增多シタル模樣モアリマセヌ、
之ヲ他ノ列國ニ比ベテ見マスルト、御話ニ
ナラナイ程ノ差ガアルノデアリマス、我ガ
帝都タル東京市ニ於キマシテモ、結核患者
ノ數ハ大凡十三万人ト統計ニハ載フテ居リ
マスルガ、實際ハ其倍モ三倍モアルノデア
リマス、多クハ隱シテ居ル、結核病屆出規
則ト云フモノノナイ爲ニ多クハ隱シテ居ル
ノデ、現ハレテ居ル所ハ十三万デアッテモ、
實際ハ其二倍三倍ニ達シテ居ルノデアリマ
ス、之ニ收容スル所ノ病床ノ數ハ東京市療
養所ガ八百七十、其他公私立病院ヲ合シテ
二千ヲ超エザル狀態デアリマス、十三万乃
至二十万モアリマスル患者ニ二千ノ病床數
デハ之ガ豫防或ハ隔離ノ效力ヲドウシテ發
揮スルコトガ出來マセウカ、申上グルマデ
モナク、此病ハ傳染病デアリマシテ、今日
デハ此豫防撲滅ノ法トシテハ、唯患者ヲ隔
離スルノ外ハナイノデアリマス、前申シマ
シタル通リ、外國ニ於キマシテハ、結核療
養所ノ數モ、又病床ノ數モ實ニ大シタモノ
デアリマシテ、玆ニ丁抹、加奈陀、獨逸、
北米合衆國、墺地利、「イングランド、ウエー
ルス」、佛蘭西、白耳義、伊太利「チエッコ·
スロヴアキア」、洪牙利、此諸國ノ病床數ト
結核死亡數ト、ソレカラ結核病死者百人ニ
對スル病床數トノ表ガアリマスルガ、其一
二ヲ申上ゲマスレバ、加奈陀ガ結核病ノ病
床數九千七百四十九、一箇年ノ結核死亡數
ガ七千九百三十人、結核死亡者百名ニ對ス
ル結核病ノ病室百二十二·九、是ガ加奈陀デ
アリマス、獨逸ハ結核病床數ガ五万七千五百
七十一、一箇年結核ノ死亡數ガ六万千四百
八、ソレカラ結核死亡者百名ニ對スル結核
病ノ病室ガ八十四、ソレカラズット下ッタ所
デ伊太利ガ結核病ノ病床數一万五千九百十
七、一箇年ノ結核死亡數ガ五万九千八百二
十七、結核死亡者百名ニ對スル結核病室ガ
二十六·六デアリマス、日本ハドウデアル
カト申シマスルノニ、結核病床、卽チ結核
患者ノ病室ガ僅ニ六千二百十六デアリマス、
之ニ反シテ結核ノ爲ニ死亡スル者ガ十一万
九千四百三十九人、結核病者百名ニ對スル
病室ノ數ガ五ツデアリマス、非常ナ相違デ
アリマス、而シテ今デハ露西亞、或ハ「バル
カン」半島ノ二三ノ國ヲ除クノ外ハ、日本ガ
結核ノ數ハ一番多イノデアリマス、ソレ故
ニ、亞米利加、英吉利、獨逸アタリノ人ハ
日本ヲ傳染病國ト稱シテ窒扶斯デアレ、猩
紅熱デアレ、赤痢デアレ、斯ノ如キ急性傳
染病及ビ漫性傳染病タル結核ハ世界第一デ
アルト云フノデ、傳染病國ト稱シテ居リマ
ス、觀光局ナドト申シテ頻ニ客ヲ呼ブ工夫
ヲシテ居リマスルガ、日本ニ入ッテ來ル紳士
淑女ハ非常ナ恐レヲナシテ入ッテ參リマス、
我ミノ知ッテ居ル範圍ニ於キマシテハ、特ニ
皆サン御承知デアリマセウガ、帝國「ホテ
ル」ナドニ泊リマスル客ハ野菜物ヲ食
ベマセヌ、殊ニ「キヤベツ」ヲ食べマセヌ、
アノ中ニハ窒扶斯ハ固ヨリ、色ニナ黴菌ガ
入ッテ居ルト云フノデ食ベマセヌ、御承知ノ
通リ歐米人ハ野菜物ガ殊ニ好キデアリマス
ケレドモ、我慢ヲシテ食ベズニ居リマス、
サウ云フ狀態デアリマス、此表ハ內務大臣
ノ命令ノ下ニ、衞生局長ノ拵ヘタル表デア
リマシテ、誠ニ良イ表デアリマス、何レ議
長ノ御許シヲ得マシテ、此表全體ヲ速記錄
ニ載セテ置キマスルコトハ、後ミノ參考ニ
ナラウト存ジマス······御許シヲ得マシタカ
ラ······現下日本全體ニ付テ觀察イタシマス
ルノニ、結核ノ豫防トシテハ誠ニ無關心デア
リマス、第一ニハ、最モ早ク隔離シナケレバ
ナラヌ、隔離ヲスルノニハ療養所ガナケレ
バナラヌ、病床ノ數ガ多クナケレバナラヌ
ト云フノニ、ソレガ以前申シタル通リデ、全
國ニ二百何十万ト云フ結核患者ノ居ルノ
ニ、僅ニ六千ノ病床デアリマス、何ト云ッテ
モ是ハ豫防ノ仕樣ガナイ、悉ク雜居シテ居
ルノデアリマス、結核ト雜居シテ居ルノデ
アリマス、一ツノ痰ノ中ニ多タハ數億、少
クモ一万カラノ黴菌ノ居リマスル所ノ痰ヲ
方々ヘ吐キ通シデアルシ、又一家一族、殊
ニ貧民ニ於キマシテハ、每日一〓ニ居リ、
一〓ニ物ヲ食ベテ居ルノデアリマスルカラ
シテ、日々殖エテ行クトモ減ル氣遣ヒハナ
イノデ、丁度我國ノ學術ノ進步ト反比例シ
テ居ルノガ結核及傳染病蔓延ノ狀態デアリ
マス、而シテ此結核病ガ「ペスト」ヤ「コレ
ラ」ノヤウニ一時的ノモノデアルナラバ左
程恐ロシクモアリマセス、又今度出サレタ
ル法案ノ癩ノ如キモノデアルナラ傳染力ガ
非常ニ弱イノデアリマス、是ハ格別怖ロシ
クハナイノデ、結核ハ傳染力ガ非常ニ强タ
テ、サウシテ今日ノヤウニ蔓延シテ居ルノ
デアリマスカラシテ、此儘ニシテ置キマシ
クナラバ國民全體ガ結核病者ニナルト云フ
コトヲ言フテモ決シテ差支ナイモノデアラ
ウト思フノデ、學理上カラサウ云フ譯ニナ
ルノデアリマス、死亡數ガ十二、三万乃至
二十二、三万人モ年々アルト云フヤウナコ
トハ、他ノ事柄ニ於テノ死亡數ニ比較シテ
モ非常ニ多イ、御承知ノ通リ日露戰爭ハ世
界大戰ニ亞イデノ大戰爭デアリマシタガ、
其死亡者ハ十万ヲ出デマセヌ、大正十二年
ノ大震火災ハ近年稀ナル震災デアリマシタ
ガ、其死亡數ハ九万ヲ出デマセヌ、然ルニ
結核ハ年々十二、三万、正確ニ調ベレバ二
十何万ト云フモノガ死亡シテ居ルノデアリ
やく、其死亡ノ爲ニ當人ハ兎モ角モ周圍ノ
能率ヲ減少スルコトト、從ッテ國民思想ノ全
般ニ惡影響ヲ及ボスト云フコトハ、モウ別
ニ私ハ改メテ申ス迄モナク大變ナコトデア
ルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此儘捨
置キマシタナラバ經濟上ヨリ考ヘマスル
モ、思想上ヨリ考ヘマシテモ、容易ナラザ
ル禍根ヲ生ズルニ至ルデアラウト思ヒマス
ル、而シテ之ガ豫防撲滅ハ困難デアルカト
申シマスルト、歐米ノ例ニ依リマシテモ決
シテムヅカシイコトデハナク、唯療養所ノ
設置ガ非常ニ大切ナコトデアリマスル、ソ
レ故ニ當事者タル內務大臣ハ此際大奮發ヲ
致シテ、既定ノ療養所設置ノコトハ固ヨリ、
進ンデ大イニ療養所設置ノ方法ヲ講ジナケ
レバナラヌト思フノデアリマスル、斯タ伺
ヒマスレバ、必ズ其御答ニハ、財政緊縮ノ
折柄デアリ財源ガナイ、行政整理デモシテ
カラト云フヤウナコトデアリマセウガ、御
承知ノ通リ結核豫防撲滅ハ一ツノ大戰爭ト
シテ歐米諸國デハカカッテ居ッタノデ、之ガ
一國ト一國トノ戰爭デアッタナラバ、國民總
動員、一錢ノ金マデモ出シテ戰ハナケレバ
ナラヌ筈ノモノデアリマスルノヲ、殆ド抛
リ放シテ置クヤウナ狀態デアリマスナラ
バ、戰爭ト云フ意味ヲ唯人間ト人間、一國
ト一國ノ摑ミ合ニ歸スルノミト評シテモ差
支ナイコトデアッテ、甚ダ面白カラザルコト
ノヤウニ思フノデアリマス、其財源ニ付キ
マシテハ色ミ案ガアルト私ハ思フ、若槻内
閣時代ニ不可解ナル社會政策ノ下ニ賣藥稅
廢止ヲ決行サレマシタ、其當時モ私ハ抗議
ヲ申込ミマシタ、賣藥者ガ別ニ懇願スル意
味デモナイ賣藥稅ヲ何故ニ廢スカ、賣藥稅
ト云フモノハ元和蘭人ノ忠告ニ依テ、衞生
費ニ使ッタラ宜カラウト云フコトガ元デ、今
カラ五十年程前ノ衞生局長ガ之ヲ取リ出シ
タノガ初メデアル、元衞生費ニ使フト云フ
積リデアッタノガ、稅ガ段々多クナッタノデ、
大藏省ニ皆ナ取上ゲラレタト云フヤウナ經
歷ガアルノデアリマス、丁度若機內閣ノ時
ニハ一千百万圓程ノ稅デアリマシタガ、今
日デハ賣藥稅ヲ廢シタル爲ニ出願者ガ續出
イタシマシテ、少クモ二千二三百万圓ニハ
達シテ居ルノデアリマス、是ガ可ナリ結核
豫防撲滅ニ使ヒ得ルト思フノデアリマス
ル、斯ノ如キ不可解ナル社會政策ヲ振廻ス
コトハ、何ノ益ナキノミナラズ、唯黨利黨
略ト云フヤウナコトバカリ疑ハレルダケ
デ、社會政策ノ上ニハ何等ノ效果モナイノ
デアリマス、藥劑師ノ方モオ出デアリマシ
テ御立腹カモ知レマセヌケレドモ、是ハ其
以前ニモ私ガ申シタル通リ、賣藥稅ヲ廢シ
タカラトテソレガ保險衞生上ニドノ位ノ效
果ガアルカ、是ハ內務大臣ガ其後必ズ御調
ベニナリマシタト思ヒマスカラシテ、此社
會政策ト云フモノガ、ドノ位ノ效果ガアッタ
ト云フコトモ、序デニ伺フテ置クコトハ我ミ
ノ參考ニナルト思フノデアリマス、モウ一ツ
ハ全國ノ多額納稅者カラ、殆ド一万人程カラ
シテ、一万圓宛寄附サセレバ一億圓出マス、
是ハ英吉利デモ、白耳義デモ亞米利加デモ、
皆ナシタコトデアリマシテ、平均一万圓宛出
セバ一億以上ニ達シマスルカラ、是モ可ナ
リノ財源デアリマス、安達內相ノ手腕ヲ以
テスレバ、是モ極ク易々タルコトデアルト
私ハ信ジマスル、モウ一ツハ全國ノ公立病
院例ヘバ赤十字病院、其他各種ノ公立病
院私立病院ト云フヤウナモノヲ差當リ悉
ク結核患者收容所ニ充ツルコトデアリマ
ス、之ガ非常ナ名案デアリマシテ、結核患
者ノ兵營ニナル、其處へ押込メテ、大イニ
健康者ガソレト戰フト云フ譯デアリマス、
是モ私ハ非常ニ名案グト自分デ考ヘテ居リ
マス、其他當事者ニ於キマシテハ、必ズヨ
リ良キ名案ノアルコトハ御推察申シテ居ル
次第デアリマスルカラ、何等ノ方法ニ依ル
ニ拘ラズ、一日モ早ク收容所ヲ增設シテ、
病床ヲ增加イダシテ、一人モ多ク結核患者
ヲ隔離スルト云フコトガ大切デアルト云フ
コトヲ考ヘナケレバナリマセヌ、然ラザレ
バ過日モ申シタル通リ、安達內務大臣ハ衞
生保健、衛生保健ト唯其聲ヲ大ニシテ實行
セザルノ人デアル、斯ウ私ハ後ミニ言ヒタイ
ト思フノデアル、是ガ大切ナ分レ目デアリマ
ス、折角衞生保健ニ御盡力ニナッテモ、最モ
大切ナル結核豫防ノコトニ丸デ冷淡デア
ル、冷淡デアルト云ウテハ相濟ミマセヌ、
唯頗ル意ハ用ヰテ居ラルルデアラウケレド
モ、マダソコニ至ラナイト云フノハ甚ダ遺
憾千萬ニ存ズルノデアリマス、寄生蟲豫防
法案モ結構、癩豫防法案モ結構、衞生組合
法案ニ付テハ特ニ結構デアリマス、是等モ
亦結核豫防ノ上ニ間接直接ニ大ナル關係ガ
アリマス、ケレドモ其最モ大切ナルモノガ
結核豫防デアル、斯ウ云フコトヲ頭ニ初中
終御入レニナリマシテ、他ノコトハ先ヅ外
ノ人ニ御委セニナッテ、全力ヲ結核豫防ニ御
集注ニナルト云フコトガ今日ノ急務デアラ
ウト、私ハ考ヘルノデアリマス、長ク自分
ノ意見ダケヲ申述ベテ甚ダ相濟マヌコトデ
アリマスルケレドモ、之ニ付テドウ云フ御
考ガアルカト云フコトヲ御伺ヒシタイノデ
アリマス、尙ホ度ミ申上ゲテ相濟マヌコト
デアリマスルガ、私ノ方ヘハ議長ノ聲ヨリ
外ハ是マデ聞エタコトガ無イノデアリマ
ス、成ルベク高イ聲デ御明答アラムコトヲ
切ニ御願ヒ致シマスル次第デアリマス
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=50
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051・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 金杉サンヨリ午
前午後ニ亙リマシテ人口〓糧問題、產兒制
限問題又結核豫防撲滅ニ關スル御高說ヲ承
リマシタ、其御質問ノ大要ニ付キマシテ御
答ヲ致シマス、人口食糧問題ニ付キマシテ
種々ノ御高說ヲ謹聽イタシマシタガ、私特
ニ御答ヲセナケレバナラヌ所ノモノハ、其
中ニ於キマシテ、御話中ノ人口ノ稀薄ノ土
地ハ人口濃厚ナル地方ノ者ノ所有デアルト
云フ意味ノ御話ガアッテ、人類平等ノ生存權
カラ申シタラ、全ク御話ノ通リト考へマス
ルケレドモガ、此理想ヲ實現スルト云フコ
トハ、殊ニ世界ノ舞臺ノ上ニ立チマシテ之
ヲ實現スルト云フコトハ、容易ナコトデハ
ゴザリマセヌガ、我國ノ勢力ノ範圍內ニ於
キマシテモ、御話ノ通リ、人口ノ稀薄ナ所
ト濃厚ナ所トアリマスカラ、此間ノ調節ハ
大分出來ルコトト考ヘテ居リマス、金杉サン
ハ人口ノ增殖ハ恐ルヽニ足ラヌト云フ御話
デアリマシテ、私モ全然御同感デアリマ
ス、產兒制限ナドノ御質問デアリマスカ
ラ、人口ノ增殖ニ付テノ調節ノ御意見カト
考ヘマシタラバ、大體ニ於テ人口ノ增殖恐
ルヽニ足ラヌト云フ御話ニハ全然御同感デ
アリマス、而シテ人口ノ增スニ從ッテ、其國ノ
動植物ト云フ御話デアリマシタ、其動植物
ナドモ增シテ行ク、收穫高ガ增加スル、斯
ウ云フ御意見デアル、是モ私御贊成申シマ
ス、全クサウト考ヘテ居リマス、日本ノ今
日米麥ナドノ收穫高ノ增加スルノモ御意見
ノ通リデアリマスカラ、就中其御話ノ中ニ
此魚類ノコトヲ御話ニナリマシタ、是ハ多
年海洋立國論ヲ支持シテ居ル私ト致シマシ
テハ、非常ナル愉快ナ御話ヲ拜聽イタシマ
シテ、此魚類ノ收穫高、殊ニ四面環ラスニ
海ヲ以テシテ居ル日本ノ魚類ノ收穫高ハ、
今後其方法宜シキヲ得タナラバ、私ハ金高
ニ積リマシテ北ヨリ、南ヨリ、各方面ノ魚
類ノ收穫高ハ、今後數億圓ヲ以テ數ヘテ宜
イヤウナ增收ガアリハセヌカト云フ位ノ理
想ヲ描イテ居リマスカラ、是ハ日本ノ人口、
食料問題ニ、御話ノ通リ大關係アルコトト
考ヘマス、人口ノ增加ヲ調節スベク懸念ス
ルヤウナ論者モアリマスケレドモガ、御話
ノ通リ、人口ノ增殖ヲ私ハ決シテ恐レヌ、恐
レヌノミナラズ、國ノ進步ハ人口ノ增加ト
比例スルト申シテモ私ハ宜シイカト考ヘテ
居リマス、我國ノ維新以來、今日マデノ發
達イタシマシタノモ、人口ノ增加ニ大關
係ヲ有スルト考ヘテ居リマスカラシテ、將
來モ我國ノ進運ニ付キマシテ、人口ノ增加
ヲ之ヲ避ケルヤウナ態度ヲ取ルベキモノデ
ナイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、唯此產
兒制限ノ問題ニ關係イタシマシテハ、先刻
御話ノ優生學的產兒制限法ト申シマスカ、
人ノ遺傳ニ依ル病氣トカ、或ハ御話ノ低能、
惡疾トカ、精神異狀トカ云フヤウナ方面デ
ス、サウ云フ方面ニ付テ此產兒制限ヲスル
ト云フコトハ、餘程考慮スル必要ハナカラ
ウカト云フコトハ考ヘテ居リマス、而シテ
產兒制限ニ付キマシテハ、內務省ニ於キマ
シテ保健衞生調査會ガアリマシテ、其中ニ
民族衞生ニ關スル特別委員ガ設ケテアリマ
シテ、專門家ノ〓究ノ一ツトシテ目下〓究
中デアリマス、而シテ同委員會ニ於キマシ
テハ、差當リ此避姙ノ用ニ使用イタシマス
ル所ノ器具器械デアリマシテ、此器具器械
ノ、御話ノ通リ衞生上有害ナルモノノ販賣
ヲ禁止スルノ必要ヲ認メマシテ、其特別委
員會ノ答申ガアリマシタカラシテ、其意見
ニ基キマシテ內務省令ヲ以テ、有害ノ避姙
用ノ器具取締ノ規定ヲ制定イタシマシテ、
本年ノ一月ヨリ之ヲ實行スルコトニナッテ
居リマス、又人口問題ニ付キマシテハ、前
內閣ノ時カラ、人口食種問題調査會ト云フ
モノガアリマシテ、其人口部會ニ於キマシ
テ、斯ウ云フコトガ決定サレテ居リマス
二内外移住方策一、勞働需給調節ニ關ス
ル方策一、內地以外諸地方ニ於ケル人口對
策一、人口統制ニ關スル諸方策、一、生
產增進ニ關スル答申、一、分配及消費ニ關
スル方策答申」、ソレカラ決議ト致シマシテ
一一、人口問題ニ關スル常設調査機關設置
ニ關スル件、社會省設置ニ關スル件」、
斯ウ云フコトガ決議サレテアリマシテ、ソ
レデ此人口調査會ナルモノハ、今後設ケタ
イト云フ考ヲ持クテ居リマス、日本ノ人口ノ
動態ニ徵シマシテ、非常ニ日本ハ死亡率ガ
髙イ、サウシテ出生率モ更ニ著シク高クア
リマス、其結果ガ日本ハ非常ナ多產國デア
ルト同時ニ多死國デアリマス、斯ウ云フ奇
態ナ現象ヲ呈シテ居リマシテ、國民ノ平均
年齡ガ御承知ノ如ク短キコトモ大イニ注意
ヲ要シマスカラ、此點ニ付キマシテハ、今
後十分調査ヲ進メタイト云フ考ヲ持ヲテ居
リマス、ソレカラ只今ノ御質問ノ結核病豫
防撲滅ニ關シマスルコトハ、是ハ色ミ統計
等ノ數字ヲ御讀上ゲニナリマシタガ、全然
御讀上ゲニナリマシタ通リデアリマス、此
結核病ノ豫防撲滅ノコトハ頗ル大問題デア
ルト同時ニ、頗ル至難ナ問題デアリマシ
テ、我國ノ衞生上ニ於キマシテ最モ至難ナ
ル事業ト考ヘテ居リマス、決シテ之ヲ閑却
イタシテハ居リマセヌケレドモガ、其事業
ガ意ノ如ク進捗イタシマセズ、御希望ニ副
フヤウニ參ラザルヲ甚ダ遺憾ト致シテ居リ
さく、去リナガラ出來得ルダケ此結核療養
所增設等ノコトニ付キマシテハ注意ヲ致サ
ウト考ヘテ居リマス、本年ノ豫算ニモ是ハ
特別ニ公益法人ノ經營スル所ガ岩手縣ニ出
來ルコトニナッテ居リマス、其他道府縣ノ豫
防ノ補助、又療養所ノ爲ニ出ス金モ相當ニ
議定イタシテ居リマス、地方ニ續々療養所
ガ出來マセヌ原因ハ何カト申シマスト、第
一ハ財政關係デハアリマスガ、唯財政關係
ノミデハアリマセヌ、地方ノ都市ノ市民ガ
其療養所ヲ設ケマスコトヲ非常ニ忌ミ嫌ヒ
マス、非常ニ嫌ヒマス爲ニ最早出來ネバナ
ラヌヤウニ諸般ノ準備ガ整ウテ居リマシテ
モ、數年間出來ザル所ガアリマス、近キ一
例ヲ申シマスト廣島市ノ如キガ其一ツデア
リマス、廣島市ニモ近來出來ルコトニナッタ
ト云フコトデアリマスガ、財政關係トソレ
カラ地方市民ガ非常ニ此設立ヲ嫌フ爲ニ、
此療養所ノ增設ノ意ノ如クナラザルコトヲ
甚ダ遺憾ト致シテ居リマス、併ナガラ有ラ
ユル故障ヲ廢シマシテ、出來得ルダケ御希
望ニ副フヤウニ努力イタシタイト云フコト
ヲ切ニ感ジテ居リマス、只今其財源等ノコ
トニ付キマシテ種々ノ御話ガアリマシタ
ガ、是ハ御話ニ依リマシテ財源ヲ〓究スル
一ツノ資料ト致サウト考ヘテ居リマス、公
立及ビ私立病院ヲ、之ヲ悉ク結核患者ノ收
容ニ充ツルコトト云フ御意見モ、是ハ有力
ナル御意見ト思ヒマスカラ、謹ンデ私ハ承
聽イタシテ置キマス、地方ノ狀況ニ應ジテ
幸ニサウ云フコトニナリマスレバ、誠ニ幸
福ト考ヘテ居リマス、要シマスルニ、結核
病ノ今日非常ニ全國ニ擴ガリマスコトハ申
上ゲル迄モアリマセヌ、殊ニ從來農村ハ頗
ル結核患者ガ少カッタノガ、都市ノ紡績ナド
ニ女工ガ參リマシテ、サウシテ結核ニ感染
シテ歸ル爲ニ、農村モ近來結核ノ流行スル
コトガ甚シイヤウナコトヲ認メテ居リマシ
テ、決シテ一日モ閑却スベカラザル是ハ大
切ナル問題ト考ヘマスカラ、出來得ルダケ
努力イタシマス、ドウゾ左樣ニ御承知願ヒ
マシテ、アナタ方ノ醫會ノ方面カラモ十分
御同情下サイマシテ、官民一致シテ其治績
ノ擧ルヤウニ致シタイト云フコトヲ切ニ感
ジテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=51
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052・金杉英五郎
○金杉英五郞君 只今安達內務大臣ノ御答
辯ハ誠ニ懇切ナルモノデアリマシテ、何等
反問スルコトハアリマセヌ、是ニテ私ノ質
問ハ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=52
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053・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 本日ハ本院規
則第六十條ニ依リマシテ、是ニテ延會ヲ致
シマス、次ノ議事日程ハ決定次第彙報ヲ以
テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イ
タシマス
午後二時五十八分散會
〔參照〕
結核病ニ關スル各國統計表
(一九二七年度)
結核死亡
國名結核病床數一ヶ年結者百名ニ
核死亡數對スル結
核病床數
デンマーク三、五六五二、八一一一二六·六
キャナダ九、七四九七、九三〇一二二·九
獨乙五七、五七一六一、四〇八八〇·〇
北米七二、七二三八七、五六七八三·一
オースト九、〇六三一一、六三六七七·九
リー
phrtmcleral二三、一九八三八、一七三8AR
Parametrium
フランス二四、三九〇六六、八四三受注入
白耳義二、六二〇七、九三四三三·〇
伊太利一五、九一七五九、八二七二六·
コス六、二二九二八、〇〇〇二二·二
ハンチーガアツリキ1ア
三、三五〇二〇、三四五一六九〇
日本六、二一六一一九、四三九五·二発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02219310227&spkNum=53
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