1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月四日(水曜日)午前十時二十一分開議
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議事日程 第二十五號
昭和六年三月四日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件(第二十三日)
第二 地租法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 營業收益税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 織物消費税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 都市計畫法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔額古書記官期讀〕
昨三日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長
ノ氏名左ノ如シ
船舶積量測度法中改正法律案特制委員會
委員長子爵西大路吉光君
副委員長桑山鐵男君
號外昭和六年三月五日
貴族院議事速記錄第二十五號
取引所稅法中改正法律案特別委員會
委員長侯傳松平康昌君
副委員長子爵松平直平君
同日可決シタル議員藤安辰次郎君ニ對スル
弔辭ハ卽日之ヲ贈レリ
同日政府ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレク
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第五十九囘帝國議會農林省新管事務政府
委員
農林書記官村上龍太郞君
同荷見安君
同井野碩哉君
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
震災被害者ニ對スル租稅ノ減免猶豫等ニ
關スル法律案可決報告書
國際決濟銀行ニ租稅等ヲ課セザルコトニ
關スル法律案可決報告書
同日委員長ヨリ豫算委員第四分科擔當委員
男爵鍋島直明君ヲ第五分科兼務委員ニ選定
シタル旨ノ報〓書ヲ提出セリ
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
地租法案
營業收益稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中改正法律案
織物消費稅法中改正法律案
明治四十一年法律第三十七號中改正法律
案
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案
都市計畫法中改正法律案
本日市制中改正法律案特別委員會ニ於テ當
選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵酒井忠正君
副委員長男爵黑田長和君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=1
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002・徳川家達
○議員(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス藤安長女郞君死亡ニ依リ請
願委員ニ缺員ヲ生ジマシク就キマシテハ
第四部ニ於テ其補關選擧ヲ行ハレムコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日板谷宮吉
君、業務上ノ都合ニ依リ船舶積量測度法中
改正法律案特別委員ヲ辭任シ度キ旨申出ガ
ゴザイマシタ、許可ヲ致シテ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、右補缺トシテ西本健次郞君ヲ指名
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議事日程變更ニ
付御諮リヲ致シマス、議事日程第一ヲ第八
ノ終リニ〓ハシタイト考ヘマス、御異存ハ
ゴザイマセヌカ
「「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二ヨリ第
八マデ、一括シテ議題ト致シマス、井上大
藏大臣
地租法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
地租法案
地租法
第一章總則
第一條本法施行地ニ在ル土地ニハ本法
ニ依リ地租ヲ課ス
第二條左ニ揭グル土地ニハ地租ヲ課セ
ズ但シ有料借地ナルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
國府縣、市町村其ノ他勅令ヲ以
テ指定スル公共團體ニ於テ公用又ハ
公共ノ用ニ供スル土地
二府縣、市町村其ノ他勅令ヲ以テ指
定スル公共團體ニ於テ公用又ハ公共
ノ用ニ供スルモノト決定シタル其ノ
所有地但シ其ノ決定ヲ爲シタル日ヨ
リ一年內ニ公用又ハ公共ノ用ニ供セ
ザルモノヲ除ク
三府縣社地、〓村社地、招魂社地
四墳墓地
五公衆用道路、鐵道用地、軌道用地、
運河用地
六用惡水路、溜池、堤塘、井溝
七保安林
第三條土地ニハ一筆每ニ地番ヲ附シ其
ノ地目、地積及賃貸價格(無租地及免租
年期地ニ付テハ賃貸價格ヲ除ク)ヲ定
ム
第四條稅務署ニ土地臺帳ヲ備ヘ左ノ事
項ヲ登錄ス
一土地ノ所在
二地番
三地目
四地積
五賃貸價格
六所有者ノ住所及氏名又ハ名稱
七質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ
定アル地上權ノ目的タル土地ニ付テ
ハ其ノ質權者又ハ地上權者ノ住所及
氏名又ハ名稱
本法ニ定ムルモノノ外土地臺帳ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條地番ハ市町村、大字、字又ハ之
ニ準ズベキ地域ヲ以テ地番區域トシ其
ノ區域每ニ起番シテ之ヲ定ム
第六條有租地ノ地目ハ土地ノ種類ニ從
ヒ左ノ如ク區別シテ之ヲ定ム
第一類地田、畑、宅地、鹽田、鑛
泉地
第二類地池沼、山林、牧場、原野、
雜種地
無租地ノ地目ハ第二條第三號乃至第七
號ノ土地ニ在リテハ各其ノ區別ニ依リ、
其ノ他ノ土地ニ在リテハ其ノ現況ニ依
リ適當ニ區別シテ之ヲ定ム
第七條地積ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之
ヲルム
→宅地及鑛泉地ノ地積ハ平方メート
ルヲ單位トシテ之ヲ定メ一平方メー
トルノ百分ノ一未滿ノ端數ハ之ヲ切
捨ツ
二宅地及鑛泉地以外ノ土地ノ地積ハ
アールヲ單位トシテ之ヲ定メ一アー
ルノ百分ノ一未滿ノ端數ハ之ヲ切捨
ツ但シ一筆ノ地積一アールノ百分ノ
一未滿ナルモノニ付テハ一アールノ
一萬分ノ一未滿ノ端數ヲ切捨ツ
第八條地租ノ課稅標準ハ土地臺帳ニ登
錄シタル賃貸價格トス
賃貸價格ハ貸主ガ公課、修繕費其ノ他
土地ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル
條件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸
主ノ收得スベキ一年分ノ金額ニ依リ之
ヲルム
第九條賃貸價格ハ十年每ニ一般ニ之ヲ
改訂ス第一囘ノ改訂ハ昭和十三年ニ於
テ之ヲ行フ
前項ノ改訂ニ關スル事項ハ其ノ都度別
ニ之ヲ定ム
土地ノ異動ニ因リ賃貸價格ヲ設定シ又
ハ修正スル必要アルトキハ類地ノ賃貸
價格ニ比準シ其ノ土地ノ品位及情況ニ
應ジ之ヲ定ム
第十條地租ノ稅率ハ百分ノ三·八トス
第十一條地租ハ每年左ノ納期ニ於テ之
ヲ徵收ス
宅地租
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一
日限年額ノ二分ノ一
第二期翌年一月一日ヨリ三十一日
限年額ノ二分ノ一
二田租
第一期翌年一月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
第二期翌年二月一日ヨリ末日限
年額ノ四分ノ一
第三期翌年三月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
第四期翌年五月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
三其ノ他
第一期其ノ年九月一日ヨリ三十日
限年額ノ二分ノ一
第二期其ノ年十一月一日ヨリ三十
日限年額ノ二分ノ一
特別ノ事情アル地方ニシテ前項ノ納期
ニ依リ難キモノニ付テハ勅令ヲ以テ特
別ノ納期ヲ定ムルコトヲ得
第十二條地租ハ納期開始ノ時ニ於テ土
地臺帳ニ所有者トシテ登錄セラレタル
者ヨリ之ヲ徵收ス
但シ質權ノ目的タル土地又ハ百年ヨリ
長キ存續期間ノ定アル地上權ノ目的タ
ル土地ニ付テハ土地臺帳ニ質權者又ハ
地上權者トシテ登錄セラレタル者ヨリ
之ヲ徵收ス
第十三條土地ノ異動アリタル場合ニ於
テハ地番、地目、地積及賃貸價格ハ土
地所有者ノ申〓ニ依リ、申〓ナキトキ
若ハ申〓ヲ不相當ト認ムルトキ又ハ申
〓ヲ要セザルトキハ稅務署長ノ調査ニ
依リ稅務署長之ヲ定ム
第二章土地ノ異動
第一節有租地及無租地ノ轉換
第十四條本法ニ於テ無租地ト稱スルハ
地租ヲ課セザル土地(免租年期地、災
害免租地及自作農免租地ヲ含マズ)ヲ
謂ヒ有租地ト稱スルハ其ノ他ノ土地ヲ
謂フ
第十五條無租地ガ有租地ト爲リタルト
キ又ハ有租地ガ無租地ト爲リタルトキ
ハ土地所有者ハ三十日內ニ之ヲ稅務署
長ニ申告スベシ但シ有租地ガ無租地ト
爲リタル場合ニ於テ之ニ關シ豫メ政府
ノ許可ヲ受ケ若ハ申〓ヲ爲シタルモノ
又ハ官公署ニ於テ公示シタルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ當該地番區域内ニ
於ケル最終ノ地番ヲ追ヒ順次其ノ地番
ヲ定ム但シ特別ノ事情アルトキハ適宜
ノ地番ヲ定ムルコトヲ得
第十七條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ直ニ其ノ地目ヲ設
定ス
土地臺帳ニ登錄セラレタル無租地ガ有
租地ト爲リ又ハ有租地ガ無租地ト爲リ
タルトキハ直ニ其ノ地目ヲ修正ス
第十八條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ直ニ之ヲ測量シテ
其ノ地積ヲ定ム
土地臺帳ニ登錄セラレタル無租地ガ有
租地ト爲リタルトキハ直ニ其ノ地積ヲ
改測ス但シ其ノ地積ニ異動ナシト認ム
ルトキハ之ヲ省略スルコトヲ得
第十九條國有財產法第二十一條ノ規定
ニ依リ賣拂又ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタル
土地ニシテ開拓ノ事業成功ニ因リ賣拂
又ハ讓與ヲ受ケ有租地ト爲リタルモノ
ニ付テハ土地所有者ノ申請ニ依リ有租
地ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ二十年
ノ開拓減租年期ヲ許可シ年期中ハ其ノ
原地(開拓前ノ土地)相當ノ賃貸價格ニ
依リ地租ヲ徴收ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
第二十條國有財產法第二十一條ノ規定
ニ依リ賣拂又ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタル
土地ニシテ埋立(干拓ヲ含ム)ノ事業成
功ニ因リ賣拂又ハ讓與ヲ受ケ有租地ト
爲リタルモノ又ハ公有水面埋立法第二
十四條若ハ第五十條ノ規定ニ依リ埋立
地ノ所有權ヲ取得シ有租地ト爲リタル
土地ニ付テハ土地所有者ノ申請ニ依リ
有租地ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ六
十年ノ埋立免租年期ヲ許可ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
第二十一條前二條ノ規定ニ依リ開拓減
和年期又ハ埋立免租年期ノ許可ヲ受ケ
ントスル者ハ有租地ト爲リタル日ヨリ
六十日內ニ、開拓減租年期又ハ埋立免
租年期延長ノ許可ヲ受ケントスル者ハ
年期ノ滿了スル年ノ六月三十日迄ニ稅
務署長ニ申請スベシ
第二十二條開拓減租年期中ニ於テ地類
變換ヲ爲シタルトキハ開拓減租年期ハ
消滅ス
開拓減租年期中ニ於テ地目變換ヲ爲シ
タルトキハ其ノ地目ヲ修正スルモ其ノ
賃貸價格ハ之ヲ修正セズ
埋立免租年期中ニ於テ地目變換、地類
變換又ハ開墾ニ該當スル土地ノ異動ア
ルモ地目變換、地類變換又ハ開墾ナキ
モノト看做ス此ノ場合ニ於テハ免租年
期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ地目ヲ修正
ス
第二十三條開拓減租年期地又ハ埋立免
租年期地ニ付テハ土地所有者ハ年期ノ
滿了スル年ノ六月三十日迄ニ年期滿了
申〓書ヲ稅務署長ニ提出スベシ
第二十四條無租地ガ有租地ト爲リタル
トキハ直ニ其ノ賃貸價格ヲ設定ス
開拓減租年期地ニ付テハ有租地ト爲リ
タルトキ直ニ原地相當ノ賃貸價格ヲ設
定シ開拓減租年期ノ滿了スル年ニ於テ
其ノ賃貸價格ヲ修正ス
埋立免租年期地ニ付テハ其ノ年期ノ滿
了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ設定ス
第二十五條開拓減租年期又ハ埋立免租
年期ノ滿了ニ因リ賃貸價格ヲ設定シ又
ハ修正スル場合ニ於テ必要アリト認ム
ルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第二十六條無租地ガ有租地ト爲リタル
トキハ賃貸價格ヲ設定(第二十四條第
三項ノ設定ヲ含ム)シタル年ノ翌年分
ヨリ地和ヲ徴收ス
開拓減租年期ノ滿了ニ因リ賃貸價格ヲ
修正シタル土地ニ付テハ其ノ修正ヲ爲
シタル年ノ翌年分ヨリ修正賃貸價格ニ
依リ地租ヲ徴收ス
第二十七條有租地ガ無租地ト爲リタル
トキハ其ノ申〓ヲ要スルモノニ付テハ
申〓アリタル後ニ開始スル納期ヨリ、
其ノ申告ヲ要セザルモノニ付テハ稅務
署長ガ共ノ事實ヲ認メタル後ニ開始ス
ル納期ヨリ地租ヲ徵收セズ
第二節分筆及合筆
第二十八條本法ニ於テ分筆ト稱スルハ
一筆ノ土地ヲ數筆ノ土地ト爲スヲ謂ヒ
合筆ト稱スルハ數筆ノ土地ヲ一筆ノ土
地ト爲スヲ謂フ
第二十九條分筆又ハ合筆ヲ爲サントス
ルトキハ土地所有者ハ之ヲ稅務署長ニ
申告スベシ
第三十條一筆ノ土地ノ一部ガ左ノ各號
ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ前條
ノ申〓ナキ場合ニ於テモ稅務署長八其
ノ土地ヲ分筆ス
一別地目ト爲ルトキ
二無租地ガ有租地ト爲リ又ハ有租地
ガ無租地ト爲ルトキ
三所有者ヲ異ニスルトキ
四質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ
定アル地上權ノ目的ト爲ルトキ
五地番區域ヲ異ニスルトキ
第三十一條分筆シタル土地ニ付テハ分
筆前ノ地番ニ符號ヲ附シテ各筆ノ地番
司法官
合筆シタル土地ニ付テハ合筆前ノ地番
中ノ首位ノモノヲ以テ其ノ地番トス
特別ノ事情アルトキハ前二項ノ規定ニ
拘ラズ適宜ノ地番ヲ定ムルコトヲ得
第三十二條分筆ヲ爲シタルトキハ測量
シテ各筆ノ地積ヲ定ム
合筆ヲ爲シタルトキハ合筆前ノ各筆ノ
地積ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ地積ト
ス
第三十三條分筆ヲ爲シタルトキハ各筆
ノ品位及情況ニ應ジ分筆前ノ賃貸價格
ヲ配分シテ其ノ賃貸價格ヲ定ム
合筆ヲ爲シタルトキハ合筆前ノ各筆ノ
賃貸價格ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ
賃貸價格トス
第三節開墾
第三十四條本法ニ於テ開墾ト稱スルハ
第二類地ヲ第一類地ト爲スヲ謂フ
第三十五條開墾成功シタルトキハ土地
所有者ハ三十日內ニ之ヲ稅務署長ニ申
告スベシ
第三十六條開墾ニ著手シタル土地ニ付
テハ土地所有者ノ申請ニ依リ開墾著手
ノ年及其ノ翌年ヨリ二十年ノ開墾減租
年期ヲ許可シ年期中ハ原地(開墾前ノ
土地)相當ノ賃貸價格ニ依リ地租ヲ徵
收ス但シ地類變換ヲ爲シタル後五年內
ニ開墾ニ著手シタル土地ニ付テハ之ヲ
許可セズ
二十年內ニ成功シ能ハザル開墾地ニ付
テハ前項ノ年期ハ開墾著手ノ年及其ノ
翌年ヨリ四十年トス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
宅地又ハ鑛泉地ト爲ス開墾地ニ付テハ
其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ開墾減租年
期ヲ短縮スルコトヲ得
第三十七條前條ノ規定ニ依リ開墾減租
年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ開墾著
手ノ日ヨリ三十日內ニ、開墾滅租年期
延長ノ許可ヲ受ケントスル者ハ年期ノ
滿了スル年ノ六月三十日迄ニ稅務署長
ニ申請スベシ
第三十八條開墾減租年期中ニ於テ開墾
成功シタルトキ又ハ其ノ成功地ニ付地
目變換ヲ爲シタルトキハ其ノ地目ヲ修
正スルモ共ノ賃貸價格ハ之ヲ修正セ
ズ
開墾減租年期中ニ於テ其ノ原地ニ付地
目變換ヲ爲シタルトキ又ハ其ノ成功地
ニ付地類變換ヲ爲シタルトキハ開墾減
租年期ハ消滅ス
第三十九條開墾減租年期地ミ付テハ土
地所有者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三十
日迄ニ年期滿了申〓書ヲ稅務署長ニ提
出スベシ
第四十條聞墾成功シタルトキハ(開墾
減租年期中ナルト否トヲ問ハズ)直ニ
其ノ地目ヲ修正ス
第四十一條開墾成功シタルトキハ開墾
減租年期地ヲ除クノ外直ニ其ノ賃貸價
格ヲ修正ス
開墾減租年期地ニ付テハ其ノ年期ノ滿
了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
但シ年期滿了スルモ尙開墾成功セザル
土地ニ付テハ開墾成功シタルトキ直ニ
其ノ賃貸價格ヲ修正ス
第四十二條開墾ニ因リ賃貸價格ヲ修正
スル場合ニ於テハ其ノ地積ヲ改測ス但
シ其ノ地積ニ異動ナシト認ムルトキハ
之ヲ省略スルコトヲ得
第四十三條開墾ニ因リ地目又ハ賃貸價
格ヲ修正シタル土地ニ付テハ其ノ修正
ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ修正地目又
ハ修正賃貸價格ニ依リ地租ヲ徵收ス
第四節地目變換及地類變換
第四十四條本法ニ於テ地目變換ト稱ス
ルハ第一類地中又ハ第二類地中ノ各地
目ヲ變更スルヲ謂ヒ地類變換ト稱スル
ハ第一類地ヲ第二類地ト爲スヲ謂フ
第四十五條地目變換又ハ地類變換ヲ爲
シタルトキハ土地所有者ハ三十日內ニ
之ヲ稅務署長ニ申告スベシ
第四十六條二十年內ニ成功シ能ハザル
地目變換地ニ付テハ土地所有者ノ申請
ニ依リ地目變換著手ノ年及其ノ翌年ヨ
リ四十年ノ地目變換減租年期ヲ許可シ
年期中ハ原地(變換前ノ土地)相當ノ賃
貸價格ニ依リ地租ヲ徵收ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
宅地又ハ鑛泉地ニ變換スル土地ニ付テ
ハ其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ地目變換
減租年期ヲ短縮スルコトヲ得
第四十七條前條ノ規定ニ依リ地目變換
減租年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ地
目變換著手ノ日ヨリ三十日內ニ、地目
變換減租年期延長ノ許可ヲ受ケントス
ル者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三十日
迄ニ稅務署長ニ中請スベシ
第四十八條地目變換減租年期中ニ於テ
其ノ原地又ハ變換地ニ付地目變換ヲ爲
シタルトキハ其ノ地目ヲ修正スルモ其
ノ賃貸價格ハ之ヲ修正セズ
地目變換減租年期中ニ於テ地類變換ヲ
爲シタルトキハ地目變換減租年期ハ消
滅ス
第四十九條地目變換減租年期地ニ付テ
ハ土地所有者ハ年期ノ滿了スル年ノ六
月三十日迄ニ年期滿了申告書ヲ稅務署
長ニ提出スベシ
第五十條地目變換又ハ地類變換ヲ爲シ
タルトキハ(地目變換減租年期中ナル
ト否トヲ問ハズ)直ニ其ノ地目ヲ修正
ス
第五十一條地目變換又ハ地類變換ヲ爲
シタルトキハ地目變換減租年期地ヲ除
タノ外直ニ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
地目變換滅租年期地ニ付テハ其ノ年期
ノ滿了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ修
正ス但シ年期滿了スルモ尙地目變換セ
ザル土地ニ付テハ地目變換シタルトキ
直ニ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
第五十二條地目變換又ハ地類變換ニ因
リ賃貸價格ヲ修正スル場合ニ於テ必要
アリト認ムルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第五十三條地目變換又ハ地類變換ニ因
リ地目又ハ賃貸價格ヲ修正シタル土地
ニ付テハ其ノ修正ヲ爲シタル年ノ翌年
分ヨリ修正地目又ハ修正賃貸價格ニ依
リ地租ヲ徴收ス
第五節荒地免租
第五十四條本法ニ於テ荒地ト稱スルハ
災害ニ因リ地形ヲ變ジ又ハ作土ヲ損傷
シタル土地ヲ謂フ
第五十五條荒地ニ付テハ納稅義務者ノ
申請ニ依リ荒地ト爲リタル年及其ノ翌
年ヨリ十五年內ノ荒地免租年期ヲ許可
ス
前項ノ年期滿了スルモ尙荒地ノ形狀ヲ
存スルモノニ付テハ更ニ十五年內ノ年
期延長ヲ許可スルコトヲ得
海湖又ハ河川ノ狀況ト爲リタル荒地
ニ付テハ前項ノ延長年期ハ二十年內ト
ス其ノ年期滿了スルモ尙海、湖又ハ河
用ノ狀況ニ在ルモノハ本法ノ適用ニ付
テハ海、湖又ハ河川ト爲リタルモノト
看做ス
第五十六條前條ノ規定ニ依リ荒地免租
年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ稅務署
長ニ申請スベシ
荒地免租年期延長ノ許可ヲ受ケントス
ル者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三十日
迄ニ稅務署長ニ申請スベシ
第五十七條荒地免租年期地ニ付テハ免
租年期許可ノ申請アリタル後ニ開始ス
ル納期ヨリ地租ヲ徵收セズ
第五十八條荒地免租年期中ノ土地ガ再
ビ荒地ト爲リ免租年期ノ許可ヲ受ケタ
ルトキハ前ノ年期ハ消滅ス
第五十九條開拓減租年期、埋立免租年
期開墾減租年期又ハ地目變換滅租年
期中ノ土地ニ付荒地免租年期ヲ許可シ
タルトキハ其ノ許可ヲ爲シタル年ヨリ
荒地免租年期滿了ニ至ル迄ハ開拓減租
年期、埋立免租年期、開墾滅租年期又
ハ地目變換減租年期ハ其ノ進行ヲ止
ム
前項ノ規定ハ他ノ法律ニ依リ一定ノ期
間地租ノ全部又ハ一部ヲ免除シタル土
地ニ付荒地免租年期ヲ許可シタル場合
ニ之ヲ準用ス
第六十條荒地免租年期中ニ於テ地目變
換地類變換又ハ開墾ニ該當スル土地
ノ異動アルモ地目變換、地類變換又ハ
開墾ナキモノト看做ス此ノ場合ニ於テ
ハ免租年期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ地
目ヲ修正ス
第六十一條荒地免租年期地ニ付テハ納
稅義務者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三
十日迄ニ年期滿了申〓書ヲ稅務署長ニ
提出スベシ
第六十二條荒地免租年期地ニ付テハ其
ノ年期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ賃貸價
格ヲ設定ス
第六十三條荒地免租年期ノ滿了ニ因リ
賃貸價格ヲ設定スル場合ニ於テ必要ア
リト認ムルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第六十四條荒地免租年期ノ滿了ニ因リ
賃貸價格ヲ設定シタル土地ニ付テハ其
ノ設定ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ地租
ヲ徵收ス
第三章災害地免租
第六十五條北海道又ハ府縣ノ全部又ハ
一部ニ亙ル災害又ハ天候不順ニ因リ收
穫皆無ニ歸シタル田畑ニ付テハ納稅義
務者ノ申請ニ依リ其ノ年分地租ハ之ヲ
免除ス
第六十六條地目變換若ハ開墾成功ノ申
告アリタル土地又ハ耕地整理工事完了
シ賃貸價格配賦ノ申出アリタル土地ニ
シテ未ダ土地臺帳ヲ更正セザルモノニ
付テハ其ノ成功地目ガ田畑ナルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ヲ準
用ス
第六十七條前二條ノ規定ニ依リ地租ノ
免除ヲ受ケントスル者ハ被害現狀ノ存
スル間ニ於テ其ノ事實ヲ明ニシテ稅務
署長ニ申請スベシ
第六十八條前條ノ申請アリタルトキハ
被害ノ調査中其ノ年分地租ノ徴收ヲ猶
豫スルコトヲ得
第六十九條第六十五條又ハ第六十六條
ノ規定ニ依リ免除シタル地租ハ法律上
總テノ納稅資格中ヨリ之ヲ控除セズ
第四章自作農地免租
第七十條田畑地租ノ納期開始ノ時ニ於
テ納稅義務者(法人ヲ除ク)ノ住所地市
町村及隣接市町村内ニ於ケル田畑賃貸
價格ノ合計金額ガ其ノ同居家族ノ分ト
合算シ二百圓未滿ナルトキハ納稅義務
者ノ申請ニ依リ其ノ田畑ノ當該納期分
地租ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ免除
ス但シ小作ニ付シタル田畑ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
民法施行前ヨリ引續キ存スル永小作權
ニ付其ノ設定ノ當時舊來ノ慣行ニ依リ
テ小作料支拂ノ外當該田畑ノ地租ノ全
額ヲ永小作權者ニ於テ負擔スルコトヲ
約シタル田畑ニ關シテハ命令ノ定ムル
所ニ依リ永小作權者ヲ所有者ト看做シ
テ前項ノ規定ヲ適用ス
第七十一條前條ノ規定ニ依リ地租ノ免
除ヲ受ケントスル者ハ每年三月中ニ住
所地市町村ヲ經由シ稅務署長ニ申請ス
ベシ
前項ノ申請期間經過後新ニ前條ノ規定
ニ該當スルニ至リタル田畑ニ付テハ次
ノ納期開始前ニ於テ前項ノ申請ヲ爲ス
コトヲ得
第五章地租徵收
第七十二條稅務署長ハ土地ノ異動其ノ
他地租徵收ニ關シ必要ト認ムル事項ヲ
市町村ニ通知スベシ
第七十三條地租ハ各納稅義務者ニ付同
一市町村內ニ於ケル同一地目ノ賃貸價
格ノ合計金額ニ依リ算出シ之ヲ徴收ス
但シ賃貸價格ノ合計金額ガ一圓ニ滿タ
ザルトキハ地租ヲ徵收セズ
田畑宅地以外ノ土地ハ之ヲ同一地
目ノ土地ト看做シテ前項ノ規定ヲ適用
ス
第七十四條市町村ハ地租ノ納期每ニ其
ノ納期開始前十五日迄ニ賃貸價格及地
租ノ總額竝ニ其ノ各納期ニ於ケル納額
ヲ稅務署長ニ報告スベシ但シ前報告後
異動ナキトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ報告後納期開始迄ニ報告事項ニ
異動ヲ生ジタルトキハ直ニ其ノ異動額
ヲ稅務署長ニ報告スベシ
第七十五條市町村ハ第七十條ノ規定ニ
依リ地租ヲ免除スル田畑ノ賃貸價格ノ
總額ヲ前條ノ例ニ準ジ稅務署長ニ報告
スベシ
第七十六條大藏大臣ハ稅務署長又ハ其
ノ代理官ヲシテ隨時市町村ニ於ケル國
稅徵收ニ關スル事務ヲ監督セシムベ
シ
第六章雜則
第七十七條他ノ法律ニ依リ一定メ期間
地租ヲ免除シタル土地ニ付テハ別段ノ
規定アル場合ヲ除クノ外第五十七條及
第六十條乃至第六十四條ノ規定ヲ準用
ス
第七十八條稅務署長土地ノ異動ニ因リ
地番、地目、地積又ハ賃貸價格ヲ土地
臺帳ニ登錄シタルトキ又ハ登錄ヲ變更
シタルトキハ土地所有者及納稅義務者
ニ通知スベシ
第七十九條納稅義務者其ノ土地所在ノ
市町村內ニ現住セザルトキハ地租ニ關
スル事項ヲ處理セシムル爲其ノ市町村
內ニ現住スル者ニ就キ納稅管理人ヲ定
メ當該市町村長ニ申〓スベシ
第八十條土地所有者ニ變更アリタル場
合ニ於テハ舊所有者ガ爲スベカリシ申
告ハ所有者ノ變更アリタル日ヨリ三十
日內ニ新所有者ヨリ之ヲ爲スベシ
第八十一條本法ニ依リ土地所有者ヨリ
爲スベキ申告又ハ申請ハ質權ノ目的タ
ル土地又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ定
アル地上權ノ目的タル土地ニ付テハ土
地臺帳ニ登錄セラレタル質權者又ハ地
上權者ヨリ之ヲ爲スコトヲ得
第八十二條本法ニ依リ申〓ヲ爲スベキ
義務ヲ有スル者其ノ申〓ヲ爲サザルト
キハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用
ス
第八十三條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依
リ地租ヲ逋脫シタル者ハ其ノ通脫シタ
ル稅金ノ五倍ニ相當スル罰金又ハ科料
ニ處シ直ニ其ノ地租ヲ徵收ス但シ自首
シタル者又ハ稅務署長ニ申出デタル者
ハ其ノ罪ヲ問ハズ
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十
八條第三項但書、第三十九條第二項、
第四十條、第四十一條、第四十八條第
二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ
用ヒズ
第八十四條本法ニ依リ申〓ヲ爲スベキ
義務ヲ有スル者其ノ申告ヲ爲サズ仍テ
地租ニ不足額アルトキハ直ニ之ヲ徵收
ス
第八十五條前二條ノ規定ニ依リ地租ヲ
徵收スル場合ニ於テハ第七十三條ノ規
定ニ拘ラズ當該土地一筆每ニ其ノ地租
ヲ算出ス
第八十六條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ
土地ノ檢査ヲ爲シ又ハ土地ノ所有者、
質權者、地上權者其ノ他利害關係人ニ
對シ必要ナル事項ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ土地ノ檢査ヲ拒ミ又
ハ之ヲ妨ゲタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第八十七條市制第六條又ハ第八十一一條
第三項ノ市ニ於テハ本法中市ニ關スル
規定ハ區ニ、市長ニ關スル規定ハ區長
ニ之ヲ適用ス
町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中
町村ニ關スル規定ハ町村ニ準ズベキモ
ノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ
準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第八十八條本法ハ國有地ニ之ヲ適用セ
ズ
第八十九條府縣、市町村其ノ他ノ公共
團體ハ第二條ノ規定ニ依リ地租ヲ課セ
ザル土地ニ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スル
コトヲ得ズ但シ所有者以外ノ者同條第
一號又ハ第二號ノ土地ヲ使用收益スル
場合ニ於テ其ノ土地ニ付使用者ニ租稅
其ノ他ノ公課ヲ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
附則
第九十條本法ハ昭和六年四月一日ヨリ
之ヲ施行ス但シ昭和六年分地租ニ限
リ第十條ノ規定中百分ノ三·八トアル
ハ百分ノ四、第十一條ノ規定中宅地租
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
トアルハ其ノ年十一月一日ヨリ三十
日限、其ノ他第一期其ノ年九月一日ヨ
リ三十日限トアルハ翌年一月一日ヨリ
三十一日限、其ノ他第二期其ノ年十一
月一日ヨリ三十日限トアルハ翌年三月
一日ヨリ三十一日限、第七十一條第一
項ノ規定中三月中トアルハ十二月中トス
第九十一條左ノ法律ハ之ヲ廢止ス但シ
昭和五年分以前ノ地租ニ關シテハ仍舊
法ニ依ル
地租條例
災害地地租免除法
宅地地價修正法
明治七年第百二十號布告地所名稱區
別
明治三十四年法律第三十號
明治三十四年法律第三十一號
明治三十七年法律第十二號
明治三十七年法律第十六號
大正十五年法律第四十七號
第九十二條土地賃貸價格調査法ニ依リ
賃貸價格ノ調査ヲ爲シタル土地ニ付テ
ハ同法ニ依リ調査シタル賃貸價格ヲ以
テ本法施行ノ際ニ於ケル賃貸價格トス
但シ其ノ賃貸價格ニ依リ算出シタル本
法ノ地租額ガ從前ノ地價ニ依リ算出シ
タル舊法ノ地租額ノ三倍八割ヲ超ユル
土地ニ在リテハ舊法ノ地租額ノ三倍八
割ニ相當スル金額ヲ百分ノ三·八ヲ以テ
除シタル金額ヲ以テ其ノ賃貸價格トス
第九十三條大正十五年四月一日後本法
施行前ニ於テ地價ヲ設定シ又ハ修正シ
タル土地(免租年期又ハ低價年期ノ滿
了ニ因リ原地價ニ復シタルモノヲ含
ム)ニ付テハ第九條第三項ノ例ニ準ジ
其ノ賃貸價格ヲ定ム
大正十五年四月一日後本法施行前ニ於
テ分筆又ハ合筆ヲ爲シタル土地ニ付テ
ハ第三十三條ノ例ニ準ジ前條ノ賃貸價
格ヲ配分又ハ合算シテ其ノ賃貸價格ヲ
定ム
第九十四條舊法ニ依リ低價年期ノ許可
ヲ受ケタル土地ニシテ本法施行ノ際未
ダ原地價ニ復セザルモノニ付テハ第九
條第三項ノ例ニ準ジ其ノ賃貸價格ヲ定
ム
第九十五條前三條ノ規定ニ依リ賃貸價
格ヲ定メタル土地ニ付テハ昭和六年分
ヨリ本法ニ依リ地租ヲ徴收ス
第九十六條本法施行前ニ於ケル土地ノ
異動中本法施行ノ際未ダ舊法ニ依リ地
價ノ設定又ハ修正其ノ他ノ處分ヲ爲サ
ザルモノニシテ本法中之ニ相當スル規
定アルモノニ關シテハ本法ヲ適用ス但
シ第九十一條但書ノ規定ノ適用ヲ妨ゲ
ズ
第九十七條舊法ニ依ル屆出又ハ申請ニ
シテ本法中之ニ相當スル規定アルモノ
ハ之ヲ本法ニ依ル申〓又ハ申請ト看做
ス
第九十八條舊法ニ依リ開墾ノ屆出アリ
タル土地ニシテ本法施行ノ際開墾著手後
未ダ二十年ヲ經過セザルモノハ第三十六
條第一項ノ規定ニ依リ開墾減租年期ヲ
許可セラレタルモノト看做ス但シ地類
變換ヲ爲シタル後五年內ニ開墾ヲ爲シ
タル土地ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十九條舊法ニ依リ免租年期、鍬下年
期又ハ地價据置年期ノ許可ヲ受ケタル
土地ニシテ本法施行ノ際未ダ其ノ年期
ノ滿了セザルモノハ左ノ區分ニ從ヒ本
法ニ依リ免租年期又ハ減租年期ヲ許可
セラレタルモノト看做ス
地租條例第十六條第三項ノ鍬下年
期ハ第三十六條第二項ノ開墾減租年
期トス
二地租條例第十六條第四項ノ鍬下年
期ハ第十九條第一項ノ開拓減租年期
トス
三地租條例第十六條第五項ノ新開免
租年期ハ第二十條第一項ノ埋立免租
年期トス
四地租條例第十六條第六項ノ地價据
置年期ハ第四十六條第一項ノ地目變
換減租年期トス
五明治三十四年法律第三十號ノ年期
延長ハ前各號ノ例ニ準ジ第十九條第
二項、第二十條第二項、第三十六
條第三項又ハ第四十六條第二項ノ年
期延長トス
六地和條例第二十條ノ荒地免租年期
ハ第五十五條第一項ノ荒地免租年期
トス
七地租條例第二十三條又ハ第二十四
條ノ免租繼年期ハ荒地ノ種類ニ從ヒ
第五十五條第二項又ハ第三項ノ年期
延長トス
前項ノ年期ハ舊法ニ依リ許可セラレタ
ル年期ノ殘年期間ノ經過スル年ノ翌年
ニ於テ滿了ス
第百條地積ハ第七條ノ規定ニ拘ラズ當
分ノ內左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ定ム
宅地及鑛泉地ノ地積ハ六尺平方ヲ
坪、坪ノ十分ノ一ヲ合、合ノ十分ノ
一ヲ勺トシテ之ヲ定メ勺未滿ノ端數
ハ之ヲ切捨ツ
二宅地及鑛泉地以外ノ土地ノ地積ハ
六尺平方ヲ步、三十步ヲ畝、十畝ヲ
段、十段ヲ町トシテ之ヲ定メ步未滿
ノ端數ハ之ヲ切拾ツ但シ一筆ノ地積
一步未滿ナルモノニ付テハ步ノ十分
ノ一ヲ合、合ノ十分ノ一ヲ勺トシテ
之ヲ定メ勺未滿ノ端數ハ之ヲ切捨ツ
第百一條舊法ノ土地臺帳ハ之ヲ本法ノ
土地臺帳ト看做ス
第百二條小笠原島及伊豆七島ノ地租ニ
付テハ當分ノ內仍從前ノ例ニ依ル
營業收益稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
營業收益稅法中改正法律案
營業收益稅法中左ノ通改正ス
第十條第一項ヲ左ノ如ク改ム
營業收益稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課
ス
法人百分ノ三·四
個人
純益金額千圓以下ナルトキ
百分ノ二·二
純益金額千圓以下ノ金額
千圓ヲ超百分ノ二·二
ユルトキ千圓ヲ超ユル金額
百分ノ二·六
附則
本法ハ個人ノ營業收益稅ニ付テハ昭和六
年分ヨリ、法人ノ營業收益稅ニ付テハ昭
和七年四月一日以後ニ終了スル事業年度
分ヨリ之ヲ適用ス但シ昭和六年分ノ個人
ノ營業收益稅ニ限リ改正規定中百分ノ
二·二トアルハ百分ノ二·五、百分ノ二·六
トアルハ百分ノ二·八トス
昭和七年三月三十一日以前ニ終了スル事
業年度分ノ法人ノ營業收益稅及昭和五年
分以前ノ個人ノ營業收益稅ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル
砂糖消費稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
砂糖消費稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中左ノ通改正ス
第三條消費稅ノ割合左ノ如シ
砂糖
第一種砂糖色相和蘭標本第十一號
未滿ノ砂糖
甲樽入黑糖
百斤ニ付九十錢
乙樽入白下糖但シ分蜜シタルモ
ノ白下糖以外ノ砂糖ニ加工
シテ製造シタルモノ及全部又
ハ一部ノ新式機械ニ依リ製造
シタルモノヲ除ク
百斤ニ付一圓八十錢
丙其ノ他ノモノ
百斤ニ付二圓二十五錢
第二種砂糖色相和蘭標本第十八號
未滿ノ砂糖
百斤ニ付四圓五十五錢
第三種砂糖色相和蘭標本第二十二
號未滿ノ砂糖
百斤ニ付六圓七十五錢
第四種砂糖色相和蘭標本第二十二
號以上ノ砂糖
百斤ニ付七圓七十五錢
第五種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其
ノ他類似ノモノ
百斤ニ付九圓五十錢
二糖蜜
第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生
スル糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超
エサルモノ
百斤ニ付二圓七十錢
乙其ノ他ノモノ
糖分ヲ蔗糖トシテ計算シ
タル重量百斤ニ付
七圓七十五錢ノ割合ヲ
以テ算出シタル金額
第二種其ノ他ノ糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超
エサルモノ
百斤ニ付九十錢
乙其ノ他ノモノ
百斤ニ付二圓二十五錢
三糖水百斤ニ付六圓七十五錢
附則
本法ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ニ揭クル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニ付テハ
仍從前ノ例ニ依ル
-本法施行前消費稅ヲ課スヘカリシ
モノ
二本法施行前製造場若ハ保稅地域ヨ
リ引取リ又ハ製造場外ニ移出シタル
モノニシテ第五條第三項、第七條第
三項又ハ第十一條ノ一第三項ノ規定
ニ依リ消費稅ヲ徵收スヘキモノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
織物消費稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
織物消費稅法中改正法律案
織物消費稅法中左ノ通改正ス
第一條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル織物ニ付
テハ此ノ限ニ在ラス
一綿織物
二麻又ハ麻ト綿トヲ以テ組成シ其ノ
麻ノ單絲カ英式番手四十二番ヲ超エ
サル織物
三經絲ニ綿絲ノミヲ用ヰ緯絲ニ左ニ
揭クル絲ノミヲ用ヰタル織物但シ
「パイル」組織ノ織物ヲ除ク
イ紡毛絲
ロ命令ヲ以テ紡毛絲ト看做シタル
絲
ハ紡毛絲及命令ヲ以テ紡毛絲ト看
做シタル絲
ニ綿絲及イ、ロ又ハハニ揭クル絲
第一條ノ二前條ニ於テ綿織物ト稱スル
ハ全重量百分中九十五以上ノ綿、絹紡
紬絲、芭蕉絲其ノ他命令ヲ以テ定ムル
原料ヲ以テ組成スル織物ヲ謂フ
第二條中「百分ノ十」ヲ「百分ノ九」ニ改ム
第二十三條中「綿織物」ヲ「第一條但書ノ
織物」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年十二月一日ヨリ之ヲ施行
ス
左ニ揭クル織物又ハ之ヲ以テ製造シタル
物品ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
本法施行前消費稅ヲ課スヘカリシ
モノ
二本法施行前外國輸出若ハ朝鮮移出
ノ目的ヲ以テ又ハ第七條ノ規定ニ依
リテ消費稅ヲ納付セスシテ製造場又
ハ保稅地域ヨリ引取リタルモノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
四本法施行前消費稅ヲ納付シテ外國
ニ輸出シ又ハ朝鮮ニ移出シタルモノ
本法施行前消費稅ヲ納付シタル織物又ハ
之ヲ以テ製造シタル物品ヲ本法施行後外
國ニ輸出シ又ハ朝鮮ニ移出シタル場合ニ
於テ第三條第二項ノ規定ニ依リ交付スル
金額ハ消費稅額ノ十分ノ九ニ相當スル金
額トス但シ第一條但書ノ改正規定ニ依リ
消費稅ヲ課セサルコトト爲リタル織物又
ハ之ヲ以テ製造シタル物品ニ付テハ第三
條第二項ノ規定ヲ適用セス
明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十一年法律第三十七號中改正
法律案
明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改
正ス
第一條第一號中「宅地地租百分ノ三十四
其ノ他ノ土地地租百分ノ八
十三」ヲ「地租百分ノ八十二」ニ、「宅地ニ
在リテハ百分ノ三十四、其ノ他ノ土地ニ
在リテハ百分ノ八十三」ヲ「百分ノ八十
二」ニ、同條第二號中「宅地地租百分ノ二十
其ノ他ノ土地地租百
八ヲ「地租百分ノ六十六」ニ、「宅
分ノ六十六」
地ニ在リテハ百分ノ二十八、其ノ他ノ土
地ニ在リテハ百分ノ六十六」ヲ「百分ノ六
十六」ニ改ム
第二條第一項第一號中「百分ノ四十一」ヲ
「百分ノ四十六半」ニ、同項第二號中「百分
ノ六十」ヲ「百分ノ六十六」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年度分ヨリ之ヲ適用ス但シ
第二條ノ改正規定ハ昭和七年度分ヨリ之
ヲ適用ス
昭和六年度分ニ付テハ第一條ノ改正規定
中百分ノ八十二トアルハ百分ノ七十九、百
分ノ六十六トアルハ百分ノ六十三トス
昭和六年度分ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依
リ從前ノ地租ヲ標準トシ從前ノ規定ニ依
リ地租附加稅ヲ賦課スルコトヲ得此ノ場
合ニ於テ段別割ヲ併課スルトキハ段別割
ノ總額ノ制限ハ從前ノ規定ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
地租附加稅額ト特別地稅額又ハ其ノ附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地租又ハ地價ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ地租附加稅額ト特別地稅額又
ハ其ノ附加稅額トノ合算額ニ達セザル場
合ニ於テ特別ノ必要アルトキハ昭和十二
年度分迄ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ差額ノ範圍內ニ於テ內務大藏兩大臣ノ
許可ヲ受ケ第一條又ハ第四條ノ制限及第
五條第一項ノ制限ヲ超過シテ課稅スルコ
トヲ得
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
地租附加稅額ト特別地稅額又ハ其ノ附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地租又ハ地價ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ地租附加稅額ト特別地稅額又
ハ其ノ附加稅額トノ合算額ヲ超ユル場合
ニ關シテハ昭和十二年度分迄ニ限リ勅令
ヲ以テ第一條及第四條ノ制限內ニ於テ之
ニ代ルベキ課稅ノ制限ヲ定ムルコトヲ得
前二項ニ揭グル地租附加稅額、特別地稅
額及其ノ附加稅額ノ算定ニ關シテハ內務
大藏兩大臣ノ定ムル所ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於テ段
別割ノミヲ賦課スル場合ニ於テハ前三項
ノ規定ヲ適用セズ
昭和六年度分ニ限リ個人ニ對スル營業收
益稅附加稅ノ賦課ニ付テハ從前ノ稅率ニ
依リ算出シタルモノヲ以テ營業收益稅額
ト看做ス
北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル第四
項ノ許可ノ職權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
參照
明治四十一年法律第三十七號ハ地方稅
制限ニ關スル法律ナリ
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十五年法律第二十四號中改正法
律案
大正十五年法律第二十四號中左ノ通改正
ス
第二條特別地稅ハ地租法第七十條ノ規
定ニ依リテ地租ヲ免除シタル田畑ニ對
シ地租法第八條ノ賃貸價格ヲ標準トシ
テ之ヲ賦課ス
特別地稅ノ徵收ニ關シテハ地租法第十
二條ノ規定ヲ準用ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
特別地稅ノ賦課率ハ賃貸價格百分ノ三·
一以內トス
第四條第一項中「地價百分ノ二·九」ヲ「賃
貸價格百分ノ二·五」ニ改ム
第八條中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年度分ヨリ之ヲ適用ス
昭和六年度分ニ付從前ノ地租ヲ標準トシ
地租附加稅ヲ賦課スル北海道、府縣其
ノ他ノ公共團體ガ昭和六年度分特別地稅
又ハ其ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ從前ノ地價ヲ標準トシ從
前ノ規定ニ依リ之ヲ賦課スベシ此ノ場合
ニ於テ段別割ヲ併課スルトキハ段別割ノ
總額ノ制限ハ從前ノ規定ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
特別地稅額又ハ其ノ附加稅額ト地租附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地價又ハ地租ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ特別地稅額又ハ其ノ附加稅額
ト地租附加稅額トノ合算額ニ達セザル場
合ニ於テ特別ノ必要アルトキハ昭和十二
年度分迄ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ差額ノ範圍內ニ於テ內務大臣及大藏大
臣ノ許可ヲ受ケ第三條乃至第五條ニ規定
スル制限及第七條第一項ノ制限ヲ超過シ
テ課稅スルコトヲ得
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正翻數率ニ依リ賊課スルコトヲ得ベキ
物別堆稅額又ハ其ノ附加稅額ト地租附加
稅額〓ノ合算額ガ從前ノ地價又ハ地租ヲ
標單トシ從前ノ制〓率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ特別地稅額又ハ其ノ附加稅額
ト堆世附加糖額トノ合算額ヲ超ユル場合
ニ關ウテハ昭和十二年度分迄ニ限リ勅令
ヲ以テ第三條乃至第五條ノ制限內ニ於テ
之ニ代ルベキ課稅ノ制限ヲ定ムルコトヲ
得
前二項ニ掲グル特別地稅額、其ノ附加稅
獨及地租附加稅額ノ算定ニ關シテハ內務
大區及大藏大臣ノ定ムル所ニ依ル
北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル第三
項ノ許可ノ騰權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
參歷
大正十五年法律第二十四號ハ地方稅ニ
關スル法律ナリ
都市計畫法中改正法律案
右政麻提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月三日
衆議院議長藤澤〓之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
都市計畫法中改正法律案
〓南計畫法中左ノ通改正ス
第八條第一項第一號中「百分ノ十二半」ヲ
「百分ノ九」ニ同項第四號中「北海道及
其ノ市町村ニ在リテハ地價千分ノ四以
内、將縣及其ノ市町村ニ在リテハ地價千分
ノ五」ヲ「賃貸價格千分ノ三·四」ニ同條
第三項中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
第十五條中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
但シ第八條ノ改正規定ハ昭和六年度分ヨ
リ之ヲ適用ス
昭和六年度分ニ付テハ第八條ノ改正規定
中百分ノ九トアルハ百分ノ八、千分ノ三·
四トアルハ千分ノ三·二トス
昭和六年度分ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依
リ從前ノ地租ヲ標準トシ從前ノ規定ニ依
リ地租割ヲ賦課スルコトラ得此ノ場合ニ
於テ特別地稅ヲ賦課スルトキハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ從前ノ地價ヲ標準トシ從前
ノ規定ニ依リ之ヲ賦課スベシ
〔國務大臣井上準之助君濵壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=7
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008・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 玆ニ議題トナ
リマシタ地租法案、營業收益稅法、砂糖消
費稅法及織物消費稅法中改正法律案ニ付キ
マシテ大體ノ說明ヲ致シタイト考ヘマス
倫敦海軍條約ノ成立ニ依リマシテ生ジタル
餘科財源ハ同條約ノ趣旨ニ從ヒ之ヲ國民
負擔ノ輕減ニ充當スルヲ適當ナリト認メマ
シテ、今囘地租、營業收益稅、砂糖消費稅及
織物消費稅ニ付テ、ソレ〓〓律法ヲ改正イ
タシ、國民負擔ヲ輕減シ、併セテ其公正ヲ
期スルコトニ致シマシタ、尙ボ地種ニ付キ
マウテハ其課稅標準クル地價ヲ賃貸價格
ニ改メルト共ニ、地租制度ノ全般ニ亙リ
相當廣汎ナル改正ヲ加フルノ必要ヲ認メマ
シタノデ、地租條例ヲ廢止シ、新ニ地租法
ヲ制定スルコトニ致シタノデアリマス、是
ヨリ各法律案ニ付キマシテ、順次說明ヲ致
シマス、先ヅ地租法ノ改正ニ付テ述ベマス
レバ我國現行地租ノ課稅標凖タル地價ハ
明治初年地租改正ノ際ニ於ケル調査ニ係リ
いで、卽チ明治六年七月地租改正法ヲ公布
セラレ、同八年地租改正事務局ヲ設置セラ
V、同十五年ニ至リ完成シタルモノデアリ
マー、其後田畑ノ地價ニ付テハ、數次部分
的修正ヲ加ヘ宅地ノ地價ニ付テハ明治四
十三年其修正ヲ行ヒマシタガ既ニ長年月
ヲ經過シテ居リマス、其間ニ時勢ノ進展、
經濟事情ノ變遷、交通機關ノ發達其他講般
ノ事情ニ因リマシテ、土地ノ利用狀況ガ著
シク變動シテ居ルニ拘ラズ全國各地目
ニ亙リ一般的ニ地價ノ修正ヲ行フコトナク
シテ今日ニ及ンデ居リマス結果ハ、我國地
租ノ負擔ガ甚ダ公平ヲ失スルニ至リマシ
テ之ヲ根本的ニ改正スル必要ノアルコト
ハ申ス迄モナイコトデアリマス、之ヲ以チ
マシテ大正十五年ノ稅制整理ヲ行フニ際
シ政府ハ地租ノ課稅標準夕ル地價ヲ賃貸
價格ニ改メ、以テ現行制度ノ缺點ヲ除キ、
土地ノ負擔ノ公平ヲ得セシムル計畫ノ下
ニ土地賃貸價格調査法案ヲ第五十一囘帝
國議會ニ提出イタシ、御協賛ヲ得マシタノ
デ大正十五年四月ヨリ全國稅務機關ノ全
力ヲ擧ダテ賃貸價格ノ調査ニ當リ、昭和二
年度末迄ニ全國各地ニ於テ土地賃貸價格ノ
決定ヲ見ルコトヲ得マシテ、豫定ノ如ク調
査ノ完了ヲ〓ゲタノデアリマス、而シテ當
初ノ計畫ニ從ヘバ、昭和三年ニ於テ此賃貸
價格ヲ課稅標準トシテ、地租ノ改正ヲ爲ス
ベキ筈デアリマシタガ、内閣ノ更迭等ノ事
情ニ依ッテ其實現ヲ見ズシテ今日ニ及ンデ
居リマス、併ナガラ我國土地負擔ノ甚シク
不公平ナル現況ニ鑑ミ地租改正ノ急務ナ
ルヲ信ジ、政府ハ當初計畫ノ如ク地租ノ課
稅標準ヲ賃貸價格ニ改正スルコトニ致シ、
尙ホ地租制度ノ全般ニ亙リ適當ナル改正ヲ
加フルノ必要アルヲ認メ地租條例ヲ廢止
シ、新ニ地租法ヲ制定シテ曜和六年度ヨリ
之ヲ實施スルコトニ致シタ次第デアリマ
ス、今其主要ナル點ヲ擧ゲマスレバ、第
地租ノ課稅標準タル地價ヲ賃貸價格ニ改ム
ルト共ニ、之ヲ十年每ニ改訂スルコトニ致
シマシタ、地租ノ課稅標準トシテハ土地ノ
賃貸價格ガ最モ適當ナルモノデアルト信ジ
マスガ、將來久シキニ亙リ之ガ修正ヲ行ハ
ザレバ、現行地租ノ如ク負據ノ不公平ナル結
果ラ來スコトトナリマスノデ、相當ノ期間
每ニ一般的ニ賃貸價格ヲ修正シ時勢ノ變
遷ニ適應セシムルノ必要ガアリマスノデ
十年每ニ之ヲ改訂スルコトニ致シマシタ、
而シテ第一囘ノ改訂ハ昭和十三年ニ之ヲ行
フノデアリマス、第二、稅率ハ各地目共之
ヲ百分ノ三·八ト致シマシタ、現行ノ稅率ハ
數同改正ノ沿革ニ依リマシテ、宅地百分ノ
二·五、田畑百分ノ四·五、其他百分ノ五五五
區別シ、尙ホ北海道ニ於ケル宅地以外ノ土
地ニ付テハ特別ノ稅率ヲ設ケテ居リマス
ガ、一般的ニ課稅標準ヲ改正シ、全國ニ亙
リ各地目共同一ノ方法ニ依リ調査シタル新
課稅機準ヲ採用スルコトニナリマスレバ、
地目ヲ異ニスルガ爲ニ、又地域ヲ異ニスル
方程式、其稅率ヲ異ニスベキ理由ハナイト
認メマシテ總テ同一稅率ニ致シマシダ、
而シテ今囘調査シタル賃貸價格ヲ基礎トシ
テ、現在地租總額ノ限度ニ於テ其稅率ヲ算
定シマスレバ百分ノ四·五トナルノデアリマ
スガ、倫敦海軍條約ノ成立ノ結果生ジタル
財源ノ一部ヲ以テ其負擔ヲ輕滅スルコトニ
致シ、稅奉ヲ百分三·八ト定メ、約一割五分
ノ引下ゲヲ行ックノデアリマス、第三、自作
農地ノ免稅點ハ賃貸價格二百圓ト致シマシ
タ、現在ニ於ケル免稅點ハ佳所地、市町村
及隣接市町村ニ於ケル田畑合計地價二百圓
デアリマスガ之ヲ田畑合計賃貸價格二百
圓ニ改メマシタ、而シテ田畑賃貸價格ハ大
體ニ於テ現在ノ地價ニ比シテ相當減ジテ居
リマズノデ、此改正ノ結果免稅ヲ受クベキ
納稅者ノ數及土地ノ面積ハ相當增加スルコ
トドナルノデアリマス、第四、地租改正ニ
依ル負擔ノ激增ヲ緩和スル爲メ適當ナル方
法ヲ講ジマシタ、地租ノ課稅標準及稅率ヲ
改正スルガ爲ニ、地租ノ負擔ニ增減アルベ
キハ固ヨリ當然ノコトデアリマスガ負擔
激增ヲ緩和スルコトヲ穩當ト認メマシ
テ、新地租額ガ現在地租額ノ三倍八割ヲ超
ユル土地ニ付テハ三倍八割ヲ超過セザル
ヤウ賃貸價格ヲ制限イタスノデアリマス
第五、土地ノ異動ニ因リ課稅標準ノ設定又
ハ修正ヲ爲ス場合、必要ト認ムル外土地ノ
測量ヲ省略スルコトト致シマシタ、現行法
ニ於キマシテハ土地ノ異動スル每ニ必ズ
之ヲ測量スル制度デアリマスガ、實際上其
必要ナキ場合モアリマスシ、又之ガ爲ニ土
地異動ノ處理ヲ遲延セシムル虞モアリマス
ノデ、土地ノ測量ヲ省略シ得ル場合ヲ認ム
ルコトニ改正シマシテ、官民相互ノ手數ヲ
省クコトニ致シタノデアリマス、第六土
地ノ異動ニ因ル課稅標準ノ設定又ハ修正ノ
方法、各種年期地ノ取扱納期及徵收方法ニ
付キマシテハ大體現行ノ制度ニ則リマシ
タガ、多少ノ修正ヲ加ヘタノデアリマス、
以上ノ改正ニ依リ平年度ニ於テ千八十餘万
圓ノ減稅トナルノデアリマス、次ニ營業收
益稅ニ付テハ法人個人ヲ通ジ、其稅率ヲ引
下グルコトト致シマシタ、卽チ法人ノ稅率
百分ノ三·六ヲ百分ノ三·四ニ、個人ノ稅率百
分ノ二·八ヲ百分ノ二·六ニ引下グルト共ニ、
更ニ個人ノ純益千圓以下ノ金額ノニ對シ特
ニ其負擔ヲ輕減スル必要ヲ認メ、低キ稅率
ヲ適用スルコトニ改正イタシマシテ、其稅
率ヲ百分ノ二·二ト致シマシタ、從ッテ純益
千圓以下ノ個人ノ營業收益稅納稅者ハ從來
ニ比シ二割餘ノ負擔ノ輕減ヲ受ケルコトニ
ナルノデアリマス、營業所得ハ資產、勤勞
ノ共働所得デアリマスガ、小營業者ニアリ
マシテハ大營業者ニ比シ勤勞ノ部分〓シ
テ多キモノアルヲ認メマシタノデ、個人ノ
營業收益稅ノ稅率ヲ單一ナル比例稅ノ儘之
ヲ引下グルコトハ適當ナラズト信ジマシ
テ、特ニ小營業者ノ負擔ヲ一層輕減シタ次
第デアリマス、此改正ニ依リ平年度ニ於テ
四百六十餘万圓ノ減稅トナリマス、次ニ砂
糖消費稅ニ付キマシテハ各種別ヲ通ジテ
稅率ノ引下ゲヲ行フコトト致シマシタ而
シテ稅率ノ引下ゲヲ行フニ當リマシテ、下
級糖ニ對シテハ輕減割合ヲ多クシ、上級糖
ニハ減稅割合ヲ少クスルヤウニ案排シタノ
デアリマス卽チ第一種糖ハ甲乙丙ヲ通ジ
稅率一割ヲ引下ゲ、第二種糖ハ九分、第三
種糖ハ八分、第四種糖ハ七分ヲ引下ゲ、第
五種糖ニ對シテハ其輕減率ヲ五分ニ止メ
タノデアリマス、糖蜜ニ付キマシテハ砂糖
ノ稅率改正ニ伴ヒソレ〓〓適當ナル改正ヲ
加ヘタ次第デアリマス、此改正ニ依リマシ
テ、平年度ニ於テ六百餘万圓ノ減稅トナル
ノデアリマス次ニ織物消費稅ニ付テハ
其稅率百分ノ十ヲ百分ノ九ニ引下ゲ總テ
ノ課稅織物ニ對シ一割ノ減稅ヲ行フ外、免
稅織物ノ範圍ヲ擴張スルコトニ致シタノデ
アリマス、大正十五年ノ改正ニ當リマシ
テ、綿織物ヲ免稅ト致シマシタガ、絹人
造絹等ノ混織シタルモノハ、其分量ガ僅少デ
アリマシテモ總テ課稅スルコトニナッテ居
リマス、今囘之ヲ改正イタシマシテ少量
ノ絹、人造絹等ヲ混織シテモ之ヲ免稅織物
トスルコトニ改メ、更ニ麻織物及毛織物中
ノ下級品ハ之ヲ免稅スルコトニ致シマシタ、
此改正ニ依リマシテ、平年度ニ於テ四百十
餘万圓ノ減稅トナリマス、右ハ今囘ノ減稅
計畫ノ大要デアリマスガ、昭和六年度ニ於
キマシテハ財源ノ關係上、地租ノ稅率ハ賃
貸價格百分ノ四トシ營業收益稅ハ個人ノ
純益千圓以下ノ金額ニ限リ稅率百分ノ二·五
ヲ適用スルコトトシ砂糖消費稅ノ改正ハ
昭和七年一月一日ヨリ、織物消費稅ノ改正
ハ昭和六年十二月一日ヨリ之ヲ施行スルコ
トニ致シマシク、此結果ハ昭和六年度ニ
於テハ地租六百七十餘万圓、營業收益稅百
二十餘万圓、砂糖消費稅二十餘万圓、織物
消費稅九十餘万圓ノ減稅トナリマス、以上
申述ベタル減稅金額ヲ合計イタシマスト
平年度ニ於キマシテハ一一千五百六十餘万
圓、昭和六年度ニ於テハ九百十餘万圓トナ
ルノデアリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協
贊アラムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=8
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009・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 玆ニ議題トナッ
テ居リマスル明治四十一年法律第三十七號
中政正法律案外二件ノ法律案ニ付キ一括シ
テ其大要ノ說明ヲ致シマス、今何倫敦海軍條
約ノ成立ニ依リ生ジマシタ財源ヲ以テ、國稅
地租及營業收益稅ノ輕減ヲ行ヒ且ツ地和ニ
關スル制度ヲ改正シテ地租法ヲ制定スルコ
トトナリタルニ付キマシテ、之ニ關聯アル
地方稅ニ付キ、地方總體ニ於ケル從前ノ收
入ヲ維持スルト共ニ、之ガ負擔ノ公正ヲ期
スル目的ヲ以チマシテ、之ニ必要ナル法律
ノ改正ヲ行フコトト致シタ次第デアリマス、
卽チ國稅ニ於テ地租ノ課稅標準ヲ賃貸價格
ニ改メ且ツ其稅率ヲ輕減スルニ伴ヒマシ
テ、地方稅タル特別地稅ノ課稅標準ヲ賃貸
價格ニ改メ、又地租附加稅、特別地稅及其
附加稅ノ制限率ヲ地方總體ニ付キ從前ト增
減ナキ收入ヲ得ベキ限度ニ整理スルコトト
致シマシタ唯地租及特別地稅ノ課稅標準
ヲ改正イタシマス結果制限率ヲ斯樣ニ定
メマシテモ、地租附加稅、特別地租又ハ其
附加稅ノ收入ハ、之ヲ地方團體各個ニ付テ
見マスルトキハ、從前ニ比較シテ少カラズ增
減ヲ來ス場合ヲ生ズルコトハ免レナイノデ
アリマスガ、斯カル場合ニ付キマシテハ地
租及特別地稅ノ課稅標準タル賃貸價格ノ次
ノ改訂期、卽チ昭和十二年度マデ經過的便
法ヲ設ケマシテ、以テ一面ニハ地方團體ノ
財政ニ不時ノ缺陷ヲ生ズルコトナカラシム
ルト共ニ、一面ニハ都市ニ對スル地方負擔
ノ增加ヲ避ケ地方財政ノ妄リナル膨脹ヲ
抑制スルコトト致シマシク次ニ國稅營業
收益稅ノ減稅ニ伴ヒマシテ地方稅ニ於テ
其附加稅ノ制限率ヲ改正スルコトト致シマ
シタ又是ト同時ニ府縣稅營業稅ニ付テ、
營業收益稅ト同一程度ノ減稅ヲ行フコトト
致シマシタ其輕減割合ハ昭和六年度ニ於
テ約一割、昭和七年度以降ニ於テ二割餘デ
アリマシテ其減稅額ハ平年度ニ於キマシ
テ約百八十餘万圓トナル見込デアリマス
蓋シ府縣稅營業稅ハ主トシテ國稅ノ營業
收益稅免稅點以下ノ小營業者ニ對シテ課稅
スルモノデアリマスルガ故ニ、營業收益稅ニ
付テ減稅ヲ爲ス以上ハ負擔ノ權衡上營業
稅ニ付テモ又減稅ヲ〓シマスルコトヲ相當
ト認メタルガ爲テアリマス、尙ホ都市計畫
特別稅ニ付キマシテモ、地租ノ改正ニ伴ヒ
マシテ、地租割及ビ特別地稅ニ付キ必要ナ
ル改正ヲ加フルコトト致シマシタ以上ハ
改正法律案ノ〓要デアリマス、何卒十分御
審議ノ上速ニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ通〓順ニ
依リマシテ本案ニ對スル質疑ノ發言ヲ許
シマス、長岡隆一郞君ノ登壇ヲ望ミマス
〔長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=10
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011・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 本員ハ只今議題トナッテ
居リマスル所ノ世ニ所謂減稅案、卽チ地租
法案外六件ノ法律案ニ對シテ幾多ノ疑問ヲ
有ノテ居ル一人デゴザイマス、本案ハ當期議
會ニ提出サレマシタル法律案ノ中最モ重大
ナルモノノ一ニ屬スルト考ヘテ居リマスガ
故ニ出來得ベクンバ幣原首相代理ヨリ御
答辯ヲ願ヒタイト考ヘテ居リマスルケレド
モ率直ニ申上ゲマシテ此問題ハ首相代理
ニハ御專門外ノコトト考へテ居リマスルカ
ラシテ本員ハ强ヒテ首相代理ノ御答辯ヲ
要求イタシマセヌ、併ナガラ是ト同時ニ政
府委員ヨリ御答辯ヲ顧ヒマスルヤウナ事務
上ノ問題ニ付キマシテハ、他日若シ機會ヲ
得マスルナラバ詳細ニ質問ヲ申上ゲタイト
考ヘマスルガ故ニ、本日本員ノ質問イタシ
マスル所ノ重モナル問題、卽チ數點ニ付キ
マシテハワレ〓〓主管國務大臣ヨリ御答辯
ヲ願ヒタイト考ヘテ居リマス、本員ノ質問
セント欲スル所ノ第一ノ問題ハ政府ハ其
財政政策ノ破綻ヲ地方財政ニ轉嫁シ、其當
然自カラ負擔スベキ費用ヲ地方ニ負擔セシ
ス、爲ニ疲弊困憊ノ極ニ達シテ居ル所ノ地
方財政ヲ苦シムル傾向ガ甚ダ著シイト信
ジテ居リマス、本減稅案モ亦其例ニ漏レズ、
政府ハ將來斯カル方針ヲ改ムル意思アリヤ
否ヤト云フコトガ本員ノ第一ノ質問デゴザ
イマス元來國ノ財政ト地方財政ト比較イ
タシテ見マスルト之ヲ鳥ノ變翼デアルト
カ或ハ車ノ兩輪デアルトカ云フヤウナコ
トヲ申シマスルガ、寧ロ適切ニ申シマスル
ナラバ、親子ノ關係ト言ッテモ宜シカラウト
思フノデゴザイマス、國家ノ財政ガ如何ニ
堅實ニ行ハレマシテモ、地方財政ニ甚シキ
無理ガアリマスル時ニハ國ノ財政ト云フ
モノバ決シテ健全ニ發達イタシマセヌ、獨
リ現內閣ノミナラズ歴代ノ政府ハ、口ニ地
方財政ノ緊縮ヲ說キナガラ、事實ハ中央ノ
財政ニ於テ當然支辨スベキ費用ヲ地方ニ負
擔セシメ、濫リニ地方財政ヲ壓迫イタシ、
之ヲ不自然ニ膨脹セシメル弊害ガ甚ダ多カッ
タト本員ハ信ジテ居リマス、現內閣成立以
來此傾向ハ特ニ著シク、地方ハ擧ケテ之ニ
對シテ怨嗟ノ聲ヲ擧ゲツツゴザイマス、其
事例數フルニ遑モゴザイマセヌ、少クトモ
現內閣ハ地方財政ノ指導ト監督トニ對シテ
甚シク深切ト誠意ヲ缺クモノアリト申シテ
モ決シテ過言デハナイト信ジマス、今囘ノ
減稅案ニ付キマシテモ亦其例ニ漏レズ、本
案ガ地方財政ニ對シテ果シテ如何ナル具體
的ノ影響ヲ與フルヤ否ヤニ對シテ、深切ニ
考慮〓究シタル跡ヲ見ルコトガ出來マセヌ、
政府ハ將來斯ノ如キ地方財政ヲ苦シメ、之
ヲ壓迫スル方針ヲ改ムル意思アリヤ否ヤ、
是レ本員ノ第一質疑デゴザイマス、第二ノ
質疑ハ今囘ノ地租法改正ニ依リマシテ、
六大都市ノ如キ市街地ノ地租ハ著シク增稅
セラレル結果ト相成リマス、政府ハ今日ヲ以
テ國民ノ一部ニ對シテ增稅ヲ課スルニ適當
ナル時期ト思量セラレルヤ否ヤ、是レ第二
ノ質問デゴザイマス、地租ノ課稅標準ハ法
定地價ヲ以テ適當トスルヤ、或ハ賃貸價格
ヲ以テ適當トスルヤ、或ハ純益主義ニ依ル
ヲ適當トスルヤ、是等ノ根本的ノ問題ニ付
キマシテハ今日私ハ之ヲ論ズル考ヘモゴ
ザイマセヌシ、又之ニ付テ質問ヲスル考ヘ
モゴザイマセヌ、併ナガラ政府ノ考ヘテ居
ラレルガ如ク、賃貸價格ニ依。ッテ地租ヲ課
稅スルコトヲ以テ最モ適當デアルト致シマ
シテモ、今日之ヲ課スルニ適當ナル時期デ
アリヤ否ヤト云フニトニ付テ、如何ナル御
考ヲ持ノテ居ラレルカ、卽チ國民ノ一部ニ租
稅ヲ課スルニハ宜シク適當ナル時期ヲ選
バニヤナラヌト本員ハ考ヘテ居リマス、政
府ノ發表サレタ數字ヲ見マスルト云フト
東京市內ニアリマシテハ、今囘ノ地租法改
正ニ依リマシテ、地租ノ增稅セラレルコト
約百八十万圓、之ヲ東京市ノ世帶數四十一
万三千戶ヲ以テ除シマスレバ一戶平均約
四圓三十錢ノ增稅ト相成リマス、更ニ地租
附加稅ヲ加算イタシマスレバ、東京市ノ增
稅額ハ六百四十四万圓ト相成リマシテ、
只今申上ゲマシタ東京市ノ世帶數四十一万
三千戶ヲ以テ除シマスレバ東京市ノ一戶
平均ノ增稅額ハ十四圓六十錢ト云フヤウナ
コトニ相成リマス、之ヲ他ノ五大都市ニ見
マスルト、大阪ノ地租ノ增稅額ガ百五十万
圓地租附加稅ヲ合シテ五百十八万圓、京
都市ノ地租增稅額三十四万圓、地租附加稅
ヲ合シマシテ百二十四万圓、神戶市ノ地租
增加額ガ二十九万圓、地租附加稅ヲ合シテ
百二十二万圓、名古屋市ハ地租增加額ガ
四十九万圓、地租附加稅ヲ合シテ百六十
二万圓、橫濱市地租增加額十七万圓、地租
附加稅ヲ合シテ八十一万圓、卽チ六大都
市ノ地租及地租附加稅ノ增稅額ハ
平年度ノ計算ニ於キマシテ實ニ千六百五
十二万圓ト云フコトニ相成ッテ居ルノデゴ
ザイマス、之ニ付キマシテハ政府ハ附
加稅ニ付テハ將來七年間ニ累進增遞セシム
ルト云フ過渡的規定ヲ勅令ニ依ッテ設ク
ト云フコトヲ說明セラレテ居リマスガ、結
局右ノ如キ增稅ノ結果ヲ見ルト云フコト
ハ、私後ニ述ベル所ノ理山ニ依ッテ明カデゴ
ザイマス、卽チ六大都市共他ノ市街地ニ於
キマシテハ營業收益稅ニ於キマシテ僅カ
バカリノ輕減ヲセラレマシテモ六大都市
ノ市民ハ差引非常ナ增額ヲ見ルト云フヤウ
ナ結果ト相成ルノデゴザイマス、前ニ申上
ゲマシタ如ク、地租ノ課稅標準ヲ賃貸價格
ニ改メルコトガ、良イトカ惡イトカ云フコ
トノ理論上ノ議論ハ今日イタシマセヌガ、
假ニ理論上地租ノ課稅標準ヲ賃貸價格ニ改
メルト云フコトガ適當ナリト致シマシテ
モ、今日果シテ斯ノ如ク六大都市若クハ市
街地ノ住民ニ對シテ增稅ヲ致スト云フコ
トガ適當ナ時期デアリヤ否ヤ、是レ本員ノ
政府ニ質問スル要點デゴザイマス、本員ノ
承知イタシテ居ル所ノ限リニ於キマシテ
ハ、鐵道省ニ於キマシテハ鐵道ノ收入ガ、運
賃收入ガ非常ニ減少イタシマシタ爲ニ、ソ
レヲ補塡スル意味デアルカドウカハ存ジマ
セヌガ、各停車場ニ於キマスル所ノ賣店、
食堂、「ホテル」、理髪店等ノ賃貸料ヲ昨年
以來非常ニ引上ゲテ居ラレル之ヲ係ノ方
ニ聞イテ見マスルト云フト、今マデノ賃貸
料ガ安イカラ引上ゲタト云フコトヲ仰シ
ヤッテ居ラレマスガ、今マデ賃貸料ガ假令安
クアリマシテモ、之ヲ引上ゲルト云フコト
ニ付テハ私ハ今日時期宜シキヲ得クモノ
ト考ヘテハ居リマセヌ、今囘ノ減稅案ノ蔭
ニ潜ンデ居リマス所ノ市街地ノ地租增稅案
モ、時期ガ果シテ適當デアルカドウカト云
フコトヲ、政府ガ御考ヘニナッタカドウデ
アルカ、卽チ今日ハ不景氣ノ爲ニ家賃デア
リマストカ、地代デアリマスルトカ云フモ
ノガ夥シク下ッテ居リマス、下ッテ居ルコト
ハ是ハ宜シイ、下ッテ居ルコトハ宜シイノデ
アリマスルガ、家賃、地代ノ不納同盟デア
ルトカ云フヤウナ、穩ヤカナラナイ所ノ運
動ガ起リマシテ都會ニ於キマスル所ノ地
主ト云フモノモ決シテ左リ團扇デ暮シテ居
ル譯デハゴザイマセヌ、此際ニ議會ニ減稅
案ガ提出サレマシテ、地租法改正ノ結果
國民ノ多クハ地租ノ總テガ都市農村ヲ通ジ
テ輕減セラルルコトト思ッテ居リマシタ所
ガ圖ラザリキ此減稅案ガ議會ニ於テ協贊
ヲ得テ通過イタシマシタ結果ハ此減稅案
ガ通過イタシマシタ結果、東京外五大都市
ニ於ケル所ノ市街地ニ於テ、配付セラルル
徵稅令書ト云フモノヲ見マスルト、減稅ド
コロデハゴザイマセヌ、增稅セラレテ居リ
マシテ、例ヘバ東京市ニ於キマシテハ平
年度一戶平均十四圓六十錢ノ增稅ト相成ル
ト云フコトニナッテ居リマス、玆ニ於キマシ
テ六大都市ノ住民ト云フモノハ初メテ此滅
稅案ノ蔭ニ、卽チ美シキ減稅ト云フモノノ
花ノ蔭ニ、怖ロシイ增稅ト云フ所ノ棘ガ潜
ンデ居フテ、所謂「パン」ヲ求メテ石ヲ得タリ、
魚ヲ求メテ蛇ヲ得タリ、此增稅ト云フトコ
ロノ徴稅令書ガ來ルト云フコトニ氣付クノ
デゴザイマス、地主ノ負擔ノ增加ハ尙ホ忍
ブベシ、地租ノ增稅ノ結果ハ地代ノ値上ト
相成リ、地代ノ値上ハ家賃ノ値上ト相成ル、
結局此增稅ト云フモノハ中產以下ノ勤勞階
級ニ轉嫁セラルルコトガナイト云フコト
ガ、誰ガ保證出來マセウカ、政府ハ衆議院ノ
特別委員會ニ於キマシテ地租ノ轉嫁ト云フ
モノハ政府ハ豫想シテ居ラナイ、今日ノ如
キ不景氣ノ時代ニ於キマシテハ地代ヤ家賃
ヲ値上ヲ致シマスルナラバ、借手ガ付カナ
イカラシテ、此地租ノ增稅ノ結果、轉嫁ス
ルト云フコトハ決シテナイト云フヤウナコ
トヲ御答辯ニナッテ居リマスルガ、經濟上ノ
現象ト云フモノハ政府ノ各位ガ机ノ上デ御
考ヘニナッタヤウナ譯ニ參リマセヌ、例ヘバ
人ノ土地ヲ借リテ家ヲ建テテ居リマス者
ガ、地代ヲ値上ゲサレタ場合ニ於キマシテ、
蝸牛ノ如ク自分ノ家ヲ背負ッテ移轉スルト
云フ譯ニハ參ラナイノデアリマス、私ハ地
租ノ增稅ノ全部ガ轉嫁サレルト云フコトハ
考ヘテ居リマセヌケレドモ、政府ノ想像セ
ラレテ居ルガ如ク、其全部ガ轉嫁セラレズ
ト云フコトヲ考ヘテ居ラレルト云フコト
モ、亦實際ニ迂遠ナ議論ト考ヘナケレバナ
ラヌト信ジテ居リマス、玆ニ於キマシテ無
屆地ノ地目ノ變換ニ伴フ所ノ、所謂移動地
整理ニ依ル百六十六万圓ノ增稅ト云フモノ
ハ本員モ是ハ認メマス、之ニ付テハ異議ハ
ゴザイマセヌ、其他ノ市街地ニ於ケル所ノ
今囘ノ地租法案ガ伴フ所ノ增稅ト云フモノ
ハ景氣ガ囘復スルマデ之ヲ御延期ニナリ
マシテ、卽チ賃貸價格ニ依ル所ノ課稅標準
ノ變更ト云フモノハドウセ今日マデ延ビ
テ居ッタノデゴザリマスルガ故ニ、モウ一二
年景氣ノ直ルマデ御見合セニナルト云フ御
考ヘハゴザイマセヌカ而モ此犧牲ニ依リ
マシテ農村ガ救濟サレルト云フコトデアリ
マスレバ是ハ致方ガナイノデゴザイマス
ルガ、農林省ノ昭和四年二月ヨリ昭和五年
一月マデ全國四十二府縣ニ亙リマシテ調査
サレマシタ所ノ農村ノ公租公課ノ負擔額ヲ
見マスト云フト、此地租ノ減稅ト云フコト
ニ依フテ農村ハ決シテ救ハレマセヌ、農林省
ノ調査ニ依リマスルト、最モ農村ニ於テ負
擔ニ苦ンデ居ル者ハ地方稅デアル卽チ一
村ノ平均ハ七万九百餘圓ト云フ公租公課ノ
負擔ニナッテ居リマスルガ、內、最モ重キモ
ノハ町村稅ノ二万八千圓、次ニ重キモノハ
府縣稅ノ二万餘圓デアリマシテ、最モ輕イ
モノハ國稅ノ一万一千圓デアル、內、地租
ハ僅ニ八千七百餘圓デゴザイマシテ、農村
ノ總負擔カラ申シマスレバ僅ニ一割二分デ
ゴザイマス、今囘地租額ノ一割五分ヲ減稅
サレタト云フコトヲ申シマスケレドモ
村ノ公課、卽チ七万九百餘圓ニ對シマスル
ト云フト、僅ニ一千三百餘圓、割合ニ申シ
マスルナラバ僅カ一分八厘、千分ノ十八
ニ過ギナイノデゴザイマシテ、今囘ノ地租
ノ輕滅ト云フモノガ農村ノ救濟ニ對シテ如
何ニ無價値デアルト云フコトガ分ルノデゴ
ザイマス、卽チ本員ノ第二ノ質問ハ政府ハ
地租法ノ改正ニ依ッテ六大都市ノ如キ市街
地ニ對シテ增稅スルト云フコトハ今日果
シテ適當ナ時期デアルヤ否ヤト云フコトヲ
御考ヘニナッテ居ルカドウカト云フコトデ
ゴザイマス、本員ノ第三ノ質問ハ今囘ノ減
稅案ノ結果ハ地方財政ヲ甚シキ混亂ニ陷ラ
シムル虞レガアルト云フコトデゴザイマ
ス、之ニ對シテ政府ノ所見如何、本員ノ計
算ニ依リマスレバ、今囘ノ地租法ノ改正ニ
依リマシテ、地租附加稅ノ增加スル府縣ハ
十府縣デゴザイマシテ、其金額ハ約千二百
万圓デゴザイマス、之ヲ內譯ヲ申シマスル
ト云フト府縣約七百万圓、市町村ガ約五
百六十七万圓ト云フコトニ相成ッテ居ル、又
地租附加稅ノ減少スル府縣ハ三十七府縣デ
ゴザイマシテ、其金額ハ約千百万圓デゴザ
イマス、其內譯ヲ申上ゲマスルト云フト、
府縣ガ約六百六十五万圓デゴザイマシテ、
市町村ガ約五百九万圓デゴザイマス、本員
ノ計算ト云フモノハ私自身ガ致シタモノ
デゴザイマスカラ、或ハ多少ノ計算ノ間
違ヒト云フモノハアルカモ存ジマセヌ
井上大藏大臣ハ昨年ノ特別議會ニ於キ
マシテ、施政ノ方針ノ演說ニ於テ、昭和
五年度ノ地方當初豫算ト云フモノハ
昭和四年度ノ地方當初豫算ニ比シテ二億
五千餘万圓ヲ緊縮セシメタト云フコトヲ堂
堂ト御演說ニ相成リマシタガ、過日ノ此議
場ニ於テ御辯明ニナッタ御趣旨ヲ伺ヒマス
ルト云フト二億五千餘万圓ノ緊縮ト云フ
モノハ御間違ヒデアッテ、實ハ一億八千餘万
圓ノ緊縮デアル、卽チ約六千万圓ト云フモ
ノハ掛値ト申上ゲテハ甚ダ失禮デアリマ
スルガ、井上大藏大臣ハ御間違ヒニナッタト
云フコトデアリマス是ハ間違ヒト云フモ
ノハ人間ハドウモ致方ガナイノデアル、弘
法ニモ筆ノ誤リ、博學多才ノ井上大藏大臣
ノ千慮ノ一失ト云フコトハ、是ハ已ムヲ得
ナイノデゴザイマスルガ、併ナガラ私ハ帝
國議會始マリマシテ何人ノ大藏大臣ガ御更
リニナリマシタカ存ジマセヌガ、苟モ帝國
議會ニ於ケル施政ノ方針ノ演說ニ於キマシ
テ六千万圓ト云フ間違ヒノ數字ノ御演說ヲ
ナスッタ大藏大臣ト云フモノハ、本員寡聞ニ
シテ承タコトガゴザイマセヌ、只今申上ゲ
マシタ地租附加稅ノ私ノ計算ト云フモノモ
多少ノ間違ヒガアルカ、是ハ請合ヒマセヌ
ガ、併ナガラ私ノ申上ゲマシタ數字ガ井上
大藏大臣ガ施政ノ方針ノ御演說ニ於テ御述
ベニナリマシタヤウナ、桁外レノ間違ノナ
イコトダケハ保證イタシテ置キマス扨テ
此千二百万圓ヲ增稅徵收シ得ル府縣市町村
ハ如何相成ルカ、地方〓體ニ於キマシテハ
今日ニ於テモナスベキ事業ハ山ノ如ク積ソ
テ居リマス、而モ此財源ガナイノニ苦ンデ
居ルト云フ狀況デゴザイマス、一タビ此財
源ヲ與ヘマスルナラバ如何ニ當局ガ監督
ヲ御嚴重ニナサレマシテモ、恰モ空氣ガ眞
空管ノ中ニ膨脹スルガ如ク、七年ノ間ニハ
此地租附加稅ト云フモノハ制限一杯ニ增徵
セラレマシテ、結局千二百万圓ノ增稅ノ結
果ヲ見ルコトハ過去ノ實蹟ニ徵シテ火ヲ睹
ルヨリモ明カナリト私ハ信ジテ居リマス、
他方ニ於キマシテ千百万圓ノ地租附加稅ヲ
減少スル、府縣市町村ニ於キマシテハ如何
相成ルカ是等ノ地方團體ハ大體ニ於キマ
シテ財源ノ貧弱ナル團體デゴザイマス當
局ノ說明ヲ伺ヒマスルト云フト、地租附加
稅ノ減收トナルベキ地方ニ於テハ、勅令ノ
規定ニ依リマシテ七年間ニ之ヲ漸次低減セ
シメルト云フ御方針ダト云フコトヲ述べテ
居ラレマスガ、果シテ此期間ニ地方團體ノ
歲出ヲ整理シ得ルカ否ヤト云フコトガ餘程
問題デゴザイマス、此例ヲ町村ニ取ッテ申上
ゲマスルナラバ、是等ノ農村地方ノ町村ニ
於キマシテ、其歲出ノ主ナルモノハ私ガ申
上ゲル迄モナク、小學校ノ義務〓育費デゴ
ザイマス小學校ノ義務〓育費ハ學齡兒童
ノ增加、學級數ノ增加ニ依リマシテ、將來
ノ七年間ニ於キマシテ增加スルコトガアリ
マシテモ決シテ減少スルコトハゴザイマセ
ヌ歲出ノ整理ニ依リマシテ、此地租ノ附
加稅ヲ減額スルト云フコトガ出來ナケレ
バ、結局他ノ稅ノ收入ニ依ッテ補塡シナケレ
バナラヌト云フコトニ相成ルノデアリマ
ス、本員ハ明瞭ニ今日カラ豫言ヲ致シマス、
結局地租附加稅ニ於テ減額セラレマシタ分
ハ市町村ニ於キマシテハ、七年間ノ中ニ
漸次戶數割ノ增額ニ依ヶテ辻褄ヲ合ハスヨ
リ外ハナイコトニ相成ルノデアリマス是
ハ大地ヲ打ツ槌ガ外レマシテモ、本員ノ豫
告ハ決シテ外レナイト云フコトヲ申上ゲテ
置キマス、地租ノ附加稅ノ減少、誠ニ喜ブ
ベキニ似タリト雖モ、所要ノアッタ際ニハ其
減少額ヲ戶數割ニ轉嫁サレ、所謂新稅偏重
ノ傾向ヲ生ムノミナラズ、一部地主ノ負擔
ヲ町村民大衆ノ負擔ニ移スコトト相成リ、
地方財政上、又社會政策上憂慮スベキ現象
ト相成ルト云フコトハ今日カラ考ヘラル
ルコトデゴザイマス、卽チ今日ノ地租法及
ビ其關係法規ノ改正ニ依リマシテ、一九九
於キマシテハ比較的財源ニ富ンデ居ル所ノ
地方團體ニ對シマシテハ、地方費膨脹ノ端
ヲ開カルル、他方ニ於テ資力薄弱ナル所ノ
地方團體ニ對シテハ下級階級ニ對シマシ
テ、七年間ニ割當テラレタ所ノ增稅ヲ課ス
ルコトト相成リ、兩者合シテ地方稅ノ增稅
ト相成ル結果トナルノデゴザイマス、卽チ
政府ハ國稅減稅ノ羊頭ヲ懸ゲテ地方稅增稅
ノ狗肉ヲ賣ルモノナリト申上ゲテモ、是一
決シテ過ギタル言葉デハナイト考ヘマス
ガ、之ニ對シテ政府ノ所見ハ如何デアルカ、
第四ノ本員ノ質問ハ、今囘ノ減稅案ニ依リ
マスレバ、國稅營業收益稅ト府縣稅營業
稅トノ間ニ、減稅ノ比率甚シク其權衡ヲ失
シ、非社會政策的ノ結果ヲ生ズル虞アリ、
政府ノ所見如何、斯ウ云フコトデアリマス、
政府ハ今囘ノ減稅ハ軍縮ニ據ル所ノ剩餘財
源ニ依ルモノアルガ故ニ、主トシテ國稅ノ
輕減ニ充テルモノデアッテ、地方稅ノコトハ
考ヘテ居ラヌト云フコトヲ、屢、答辯ヲセラ
レテ居リマスルガ、是ハ徵稅ノ技術アルヲ
知ッテ、財政ノ全般ヲ知ラザル、所謂官僚的
俗論デアルト考ヘルノデゴザイマス、國稅
ト申シマシテモ、地方稅ト申シマシテモ、
納メルモノノ上カラ言ヘバ、其苦痛ニ何等
ノ變リハアリマセヌ、苟モ此財源ニ餘裕ガ
アリマスナラバ、國稅ト云ハズ、地方稅ト
云ハズ、其量モ納稅ニ苦ンデ居ル所ノ課稅
ト云フモノカラシテ、之ヲ輕減シナケレバ
ナラヌト考ヘテ居リマス殊ニ營業稅ノ系
統ニ付テ申シマスナラバ、私ガ申上ゲルマ
デモナク原則ト致シマシテ、一年四百圓
以上ノ純益ノアル所ノ個人營業者ハ、國稅
營業收益稅ヲ默課セラレル、ソレ以下ノ收
入ノアル所ノ同種ノ個人營業者ハ府縣稅
營業稅ヲ賦課セラルルト云フコトニ相成シテ
居ルノデゴザイマス、併ナガラ納稅者ノミ
ニ取フテ見マスレバ、其國稅タルト、府縣稅
タルトヲ問ハズ、納稅ノ苦痛ト云フモノニ
付キマシテハ何等ノ差別モゴザイマセヌ、
ソレ故ニ若シ財源ニ餘裕ガアリマスナラ
バ、小營業者卽チ此四百圓以下ノ收入ノアル
所ノ府縣稅營業稅ヲ納メテ居ル所ノ營業者
ニ對シマシテ最先ニ輕減ヲシナケレバナ
ラヌト云フコトハ誠ニ見易キノ道理ト考
ヘテ居リマス、國稅營業收益稅ノ輕減ニ付
キマシテハ、所謂軍縮ニ依ル留保財源ナル
モノガゴザイマシテ、其正體ト云フモノハ
所謂勘定合ッテ錢足ラズ、頗ル怪シイモノデ
アルト云フコトハ後ニ申述ベマスガ、兎ニ
角机ノ上、帳簿ノ上ニ於キマシテハ此軍
縮ニ依ル所ノ留保財源ナルモノガゴザイマ
シテ、營業收益稅ノ輕減ノ爲ニ昭和六年度
ニ於テ百二十方〓、平年度ニ於テ四百三十
万圓ト云フモノノ留保財源ガ政府ニ於テ留
保シテアルノデゴザイマス、然ルニ府縣稅
ノ營業稅ノ輕滅ニ付キマシテハ地方ニ殆
ド財源ト云フモノガゴザイマセヌ、府縣稅
營業稅モ國稅ニ關スル規定改正ノ結果自
然ニ之ヲ減少セシメル御趣旨ト承ハッテ居
リマスケレドモ、其府縣稅營業稅ノ輕減ノ
財源ト云フモノハ、果シテ何レニ之ヲ御求
メニナル積リデアルカ、當局ニ於テ御印刷
ニナリマシタ所ノ、地方稅改正後ノ各稅增
減調ト云フモノヲ拜見イタシマスルニ府
縣稅營業稅ノ平年度ノ減收額ト云フモノハ
百八十五万圓ト云フモノニ相成フテ居ル、是
ハ初メノ御印刷デハ二百二万圓ト云フコト
ニ書イテアリマシタガ、ドウ云フ御駈引カ
存ジマセヌガ、二百二万圓ガ百八十五万圓
ト云フヤウニ御減シニナ〃テ居ルガ、ドチラ
デモ宜シイ、此百八十五万圓ノ中、既ニ輕
減セル府縣ノ分三十四万圓ヲ除キ、國稅營
業收益稅附加稅ノ增徵五十八万圓ヲ差引
キ、結局九十三万圓ト云フモノヲ將來輕減
スルト云フコトヲ發表サレテ居ルガ、又市
町村ノ營業稅附加稅ノ減收ト云フモノハ
平年度ニ於テ六十五万圓ト云フモノヲ御發
表ニナッテ居ル、初メハ八十三万圓ト云フ數
字ヲ御發表ニナッテ居リマシタガ、ドウ云フ
御間違カ、或ハ御駈引カ知レマセヌガ、
後ニハ六十五万圓ト云フヤウニ御變更
ニナッテ居リマスガ、ソレハドチラデモ
宜シイ、此府縣ニ於キマスル所ノ九十三万
圓、市町村ニ於キマス所ノ六十五万圓ノ財
源ト云フモノハ、何處ニ御求メニナル積
リデアルカ、只今申上ゲマシタ地方稅改正
後ノ各稅增減調ト云フモノノ備考欄ヲ見
マスルト市町村ノ減收ハ財政ノ整理
按排ニ依ルノ外、已ムヲ得ザル場合ニ於テ
ハ營業稅ノ制限外課稅ニ依リ、之ヲ一時補
塡セシムル見込ナリト云フコトガ書イテア
ル、卽チ當局ノ御見込ハ第一ニハ府縣地
方費ノ節約デアル、此節約ガ出來ナカッタ時
ニハ第二ニ制限外ノ課稅ニ依ル、斯ウ云
フコトガ書イテアリマス、ソコデ本員ハ此
地方ノ府縣費ノ節約ト云フモノガ、果シテ
行ハレ得ルカト云フコトヲ〓究イタシテ見
タイト思フノデアリマス、私ハ昭和五年ノ
八月十六日ノ內務次官ノ依命通牒ト云フモ
ノヲ拜見イタシマシタ、是ハ六年度地方豫
算ノ編成ニ對スル方針ヲ御示シニナッタモ
ノデアル歲出ハ出來得ル限リ整理節約ヲ
行ヒ、其總額ハ少クトモ前年度當初ノ豫算
總額ヲ超ユルベカラザルコト斯ウ云フ通
牒ヲ內務省カラ御發シニナッテ居ル、地方長
官ハ此六年度ノ豫算編成ノ方針ニ從ヒマシ
テ苦心慘海整理節約ヲ致シタモノト考ヘ
テ居リマス、然ルニ昭和六年度ノ道府縣當
初豫算額調、是ハ一般會計〓和六年度議決
豫算額ハ昭和五年度ノ當初豫算額ニ比シテ、
皮肉ニモ二千七百三十三万圓ト云フモノヲ
增加イタシテ居リマス、是ハ私ハ地方長官
ガ內務大臣ノ御方針ニ背イテ、斯ノ如キ增
額ヲ致シタモノトハ考ヘテ居リマセヌ、府
縣ニ於キマシテモ不景氣ノ影響ヲ受ケテ
歲入ノ缺陷ト云フモノハ漸々增加イタシテ
參ッテ居ル、然ルニ府縣ノ歲出ト云フモノ
ハ旣ニ再三整理、緊縮ニ緊縮ヲ重ネテ、
此上節約ノ餘地ハアリマセヌソレ以外ニ
地方費負擔ノ恩給支出額ト云フモノハ年一
年增加イタシ、公立學校職員加俸令ニ依ル
所ノ中等〓員ノ加トトフモノハ自然ニ增
加シ、地方長官ハ苦心ニ苦心ヲ重ネテモ
尙且ツ昭和五年度ニ比シテ昭和六年度ハ二
千七百三十三万圓ト云フモノヲ當初豫算ニ
於テ增シテ居ル、斯ノ如キ狀況ニ於キマシ
テ、何處ニ府縣稅營業稅ノ輕減ノ財源ヲ見
出シ得ルカ否カ、是レ本員ノ政府ニ質問イ
タシタイコトデゴザイマス、數日前ニ本員
ガ福島縣ノ縣參事會ノ決議錄ヲ取寄セテ調
査イタシテ見マシタ所ガ、昭和五年ノ十月
ニ於キマシテ、福島縣ニ於テ官吏ノ俸給ノ
支拂ニ窮シ四十万圓ノ短期借入ヲ決議イタ
シテ居リマス、同年卽チ昭和五年ノ十二月
ニハ俸給年末賞與ノ支拂ニ窮シテ、又復四
十万圓ノ借入ノ決議ヲ致シテ、辛ウジテ年
末ヲ凌イデ居リマス、斯ノ如キハ唯福島縣
ダケノ例デゴザイマスルガ、神奈川縣初メ
斯ノ如キ例ハ非常ニ多イノデゴザイマス、
本員長イ間地方官ヲ致シテ居リマシタケレ
ドモ、斯ノ如キ例ト云フモノハ見タコトモ
聞イタコトモゴザイマセヌ、地方財政ノ窮
況ト云フモノハ斯ノ如キ狀況ニ達シテ居
ル又當局ノ御發表ニナリマシタ數字ヲ見
マシテモ昭和六年度ニ於ケル所ノ地方ニ
於ケル稅收入ト云フモノハ一千三百六万圓
ト云フモノヲ減ジテ居リマス、然ルニ拘ラ
ズ稅外收入ト云フモノハ四千万圓增シテ居
リマス其稅外收入ノ中三千万圓ト云フモ
ノハ公債收入ノ增デアリマズ、地方財政ニ
於キマシテ稅收入ハ段々ニ減ジ、公債收入
ハ段々ニ增スト云フコトハ決シテ健全ナ狀
熊デハゴザイマセヌ、如何イタシマシテ六
年度ニ於テ五十万圓、平年度ニ於テ九十三
万圓ト云フ營業稅ノ輕減ノ財源ト云フモノ
ヲ當局ハ御捻出ニナル積リデアルカ、金額
ハ誠ニ少イヤウデゴザイマスルケレドモ
今日ノ地方財政カラ言ヒマスルナラバ所
謂重荷ニ小付ケデアッテ、是ハ餘程困難ナコ
トデアラウト本員ハ考ヘテ居リマス、本案
通過ノ曉ニ、若シ地方長官ガ臨時府縣會若
クハ急施參事會ヲ招集イタシテ六年度ノ豫
算ヲ更正減額スル餘地ガアリトシマスルナ
ラバ內務大臣ノ整理緊縮ノ御命令ト云フ
モノハ過去ニ於テ守ラレナカッタト見ナケ
レバナリマセヌ若又内務大臣ノ昭和六年
度ニ對スル所ノ緊縮ノ御命令ガ守ラレテ
居クテ、地方長官ガ能タ此內務大臣ノ命令ヲ
遵奉イタシテ、一厘一毛モ懸値ノナイ所ノ
緊縮豫算ヲ編成イタシタモノトスルナラバ
此上營業稅輕減ノ財源ト云フモノヲ捻出ス
ル餘地ハナイ筈デゴザイマス玆ニ於テ知
ルベシ所謂當局ノ已ムヲ得ザル場合ニ於
テハ營業稅ノ制限外課稅ニ依リ之ヲ補塡セ
シメル見込ナリト云フ當局ノ奧ノ手ガ出テ
來ル譯デゴザイマス卽チ當局ニ於テハ原
則トシテハ府縣稅營業稅ノ負擔額ヲ國稅營業
收益稅ノ減稅率ニ比例シテ之ヲ引下グル如
ク宣傳サレテ居リマスルガ、併ナガラ若シ
府縣ニ於テ財源ヲ捻出シ得ザル場合ニ於テ
ハ制限外課稅ヲ許シテ之ヲ賦課スルト云フ
奧ノ手ガ出テ來ルト云フコトニ相成ッテ居
ル是デハ元ノ杢阿彌デアッテ、府縣稅ヲ賦
課セラルル所ノ小營業者ト云フモノハ何時
マデ經。一テテ浮ブ瀨ガナイト云フコトニ相
成リマス、卽チ四百圓以上ノ純益アル營業
石ハ本減稅案ニ依リマシテ國稅營業收益稅
ノ減稅ノ恩典ヲ受クルコトガアリマシテモ、
國百圓以下ノ收益ノアル小營業者ハ依然ト
シテ苛稅ニ泣クト云フヤウナ不公平ナ結果
ヲ生ズルコトト考ヘマス元來今迄デモ兩
者ノ間ニハ非常ナ不權衡ナコトガゴザイマ
ス、國稅營業收益稅ヲ納メル所ノ大營業者
ハ假令堂々タル店舗ヲ構ヘ、數万ノ資本ヲ
運轉イタシテ居ル者モアリマシテモ、實際
ノ純益ガゴザイマセヌ場合ニ於キマシテハ
文ノ納稅ノ義務モゴザイマセヌ、斯ウ云
フ立前デゴザイマス·是ハ數日前ニ實際ハ
然ラズト云フヤウナコトガ暴露サレマシタ
タレドモ、兎ニ角方針立前ト云フモノハ斯
樣ニ相成ヲテ居ル、然ルニ政府ノ發表シテ居
リマスル所ノ調査ニ依リマスレバ地方稅
營業稅ヲ純益ニ依ノテ課稅シテ居リマスル
蔣縣ハ僅ニ十餘縣デアリマタテ、殘リ三十
餘縣ト云フモノハ外形標準ニ依ッテ課稅シ
テ居ルト云フコトデゴザイマスルガ故ニ、
囲百圓以下ノ牧入ガアリマスル所ノ營業者
ハ假令純益ガ一文モナタテモ府縣ノ營業稅
ヲ賦課セラルルト云フコトニ相成ッテ居ル、
元來斯メ如キ不公平アルニ加ヘマシテ今回
ノ改正ニ依リマクテ兩者ノ不權衡ト云フモ
メハ益〓甚シタ相成ル疑ガアルノデアリマ
ス、政府ノ類ニ宣傳シテ居ラレル所ノ社會
政策ト云フモノハ、抑〓何處ニ行方不明ニ相
成リマシタカ、若シ府縣稅營業稅ヲ輕減セ
ラルル確信ヲ有ッテ居ラレルナラバハ財政ノ
按排ニ依ッテ之ヲ輕減スルナドト云フ曖昧
ナコトヲ仰シヤラズニ、其財源ヲ明示イタ
シテ戴キタイト想フノデゴザイマス、是レ
本員ノ第四ノ質疑デゴザイマス、第五ノ質
變ハ今囘ノ減稅案ニ依ル減稅比率ハ立法技
術ノ〓究不完全ナルガ爲ニ種々ノ點ニ於テ
不合理ノ結果ヲ生ズル虞アリ、政府ノ所見
如何、假ニ例ヲ營業收益稅ニ取ッテ申上ゲマ
スルナラバ昭和六年一月八日當局ニ於テ
御制セラレマシタ平年度營業收益稅改正後
法人負擔調及ビ平年度純益百圓以上一万圓
マデノ營業者負擔輕減調之ヲ見マスルト
云フト、今囘ノ法律改正ノ結果法人デアル
所ノ營業者ハ純益一千圖ノモノハ國稅地
方稅ヲ合シテ輕減額ハ十一錢デアル、純益
一万圓ノモノハ國稅地方稅ヲ合シテ輕減額
ガ一圓十錢デアル、此輕減割合ハ二者何レ
モ一厘、卽チ千分ノ一ト云フコトニ相成ッテ
居リマス、衆議院ニ御配付ニナリマシタ書
類ニ依リマスルト千分ノ二ト書イテアリマ
スガ、是ハ御間違ヒ、之ニ反シマシテ個人
ノ營業者ニアリマシテハ純益一千圓ノモノ
ガ國稅地方稅ヲ合シテ輕減額ガ九圓五十三
錢輕減割合が一割六分+同タ一万圓ノモ
ノハ輕減額ガ十八圓八十錢デアリマシテ、
輕減割合ガ三分三厘ト云フコトニ相成ヲテ
居リマス、本員ハ敢テ法人ト個人ト同ジ割
合ニ營業收益稅ヲ輕減スベシト云フヤウナ
議論ハ申上ゲマセヌ、併ナガラ個人ハ法人
ニ比シテ其或ルモノハ金額ニ於テ約九十
倍、輕減割合ニ於テ約百六十倍モ滅稅セラ
ルルト云フコトハ、兩者ノ比率ガ餘リ權衡
ヲ失シタモノト、政府ハ御考ヘニナリマセ
ヌカ、加之法人ニシテ田畑ノ地租ヲ納ムル
モノノ營業收益稅及附加稅ハ營業收益稅
法第十條第二項ノ規定ニ依ル控除金額
ガ減少イタシマスル結果、其者ノ納ムル
營業收益稅ハ今囘ノ改正ニ依リ、却ッテ增稅
セラルル結果ト相成ッテ居リマス、例ヘバ從
來十圓ノ田地租ヲ納メテ純益四百圓ヲ擧ゲ
テ居リマスル所ノ法人ガ、營業收益稅法第十
條第二項ノ規定ニ依リマシテ從來四圓四十
錢ノ營業收益稅ヲ納メマシタモノガ、今囘
ノ改正ノ結果七圓ヲ納メルコトニ相成リマ
ス、又附加稅ヲ合算イタシマスレバ、從來
八圓八十四錢四厘ヲ納メタモノガ、今囘ノ
改正ノ結果十四圓八十七錢五厘ヲ納メルコ
トニ相成リマシテ、其營業ニ關スル限リ、
租稅ノ關係ニ於キマシテ殆ド今囘ノ改正
ニ依ッテ倍額增稅セラルルト云フ結果ニ相
成ルノデアリマス、當局者ハ或ハ斯カル實
例ハ澤山ハナイト傳シヤルカハ知レマセヌ
ケレドモ、斯カル明白ナル論理上ノ矛盾ヲ
生ズルト云フコトハ、立法技術ノ〓究ノ足
ラザル故ト申上ゲテ宜シカラウト思フ、本
員ハ此際ニ於テ質疑ヲ致シテ居ルノデゴザ
イマシテ、敢テ討論ヲ致シテ居ルノデハア
リマセヌカラ、自分ノ意見ヲ申上ゲルコト
ハ絕對ニ避ケマス、併ナガラ若シ營業收益
稅ニ關スル減稅額ヲ公平ニ按排セント欲ス
ルナラバ、國稅營業收益稅ノ免稅點ヲ六百
圓若クハ七百圖ニ引上ゲ·······今マデ四百
圓デアッタモノヲ卽チ國稅營業收益稅ノ免
稅點ヲ六百圓又ハ七百圓ニ引上ゲ、府縣稅
營業稅ノ免稅點ヲ相當ノ額ニ制限サルルニ
於テハ改正ノ手續簡易明瞭デゴザイマシテ、
社會政策的減稅方針亦一貫セラルルト考ヘ
ルノデゴザイマス、當局者ガ何ガ故ニ此方
針ヲ取ラレザリシカト云フコトヲ〓究シテ
見マスルト表面ニハ色々ノ理由ヲ述ベテ
居ラレマスルケレドモ、其眞相ヲ承ルト、
斯ノ如タスルニ於テハ、七十三万人ノ營業
收益稅ノ納稅者ノ中、假ニ免稅點ヲ七百圓
ト致シマスレバ三十五万人、假ニ之ヲ六
百圓ト致シマスレバ三十万人ガ府縣稅營
業收益稅ノ納稅者ニ落チマツテ、甞テ閣僚
諸公ガ御反對ニナリマシタ營業收益稅地方
委讓ト云フコトニ御方針ガ接近シタリト云
フコトヲ御嫌ヒニナッタ結果ト承ッテ居リマ
ス。又坊間ニモ斯ノ如ク傳へテ居リマス
元來營業收益稅ハ地租及資本利子稅ト網竝
ショ、所謂世間デハ收益稅ト言ハレマシ
テ所得稅ノ補完稅トシテ相竝立シテ居ル
モノデゴザイマス、小川政務次官ノ衆議院
ノ特別委員會ニ於テ御說明ニ相成ッタコト
ヲ聽キマスルト、卽チ地租ニ於テ累進課稅
ヲ取ルベカラズ、斯ウ云フ御說明ノ中ニ十
兩步ノ地主ハ必シモ一町步ノ地主ヨリ富裕
ナラズ、一町步ノ地主ハ土地ノ收入ノ外他
ニ大イナル財產若クハ大イナル收入ヲ有ス
ルコトアルベク、十町歩ノ地主ハ土地收入
以外ニ何等ノ收入何等ノ財產ナキコトアル
ベシ、卽チ稅ヲ負擔スル個人能力全體ヲ考
慮シテ初メテ累進課稅ヲ課スベキモノデア
ル、今申シタヤウナ地租デアルトカ、資本
利子稅デアルトカ、營業收益稅デアルト
カ······云フヤウナモノニ對シテハ累進課稅
ヲ課スベキモノデナイト云フヤウナ御說ヲ
爲スッチ居ル、是ハ私ハ一應御尤デアル此
小川政務次官ノ御講義ニ對シテ敬服ヲ致シ
テ居ル然ラバ同ジ理窟ハ營業收益稅ニ付
テモ當嵌マルノデゴザイマス地租ト資本
利子稅ガ一本ノ率ニ依ル所メ比例稅率ニ依
ル以上ハ營業收益稅ノミ階級稅率ニ依ル
ト云フコトハ私ハ解スルコトガ出來ナイ
是ハ甚ダ內部ノコトヲ申上ゲテ恐多イノデ
アリマスガ、大藏省內ニ於キマシテモ、小
川政務次官、又最モ稅制ニ通曉セラレテ居
ル所ノ野津大藏書記官ノ如キハ營業收益稅
ノミニ付テ階級稅率ヲ賦課スルト云フコト
ハ不公平ダト云フ說ヲ述べラレテ居ルト云
フコトヲ私ハ能ク承知シテ居ル、然ルニ井
上大藏大臣ノ天降リ的ヲ御命令ニ依ッテ、養
業收益稅ノミニ限リマシテ個人營業者ニ付
テハ千圓以上ト以下トニ依ッテ稅率ヲ區別
シ、輕キ超過累進稅率ニ依ルコトト相成ッ
ラ居リマスガ爲ニ、種々立法技術上無理ガ
生ジタコトト考ヘルノデアリマス、之ヲ要
スルニ各法案ニ亙リマシテ立法技術ノ不完
全チル點ヲ列擧イタシマスレバ尙ホ澤山
ゴザイマスルケレドモ是ハ他日ノ機會ニ
讓リマシテ、今日ハ申上ゲマセヌ、〓ナガ
ラ大藏大臣ハ此不完全ナル又缺陷ノ多キ減
稅案ニ對シテ更ニ事務官ノ意見ヲ御徵シニ
ナリ、事務官ノ意見ヲ御聽キニナッテ、之ヲ
練リ直ス御考ヘガゴザイマセヌカドウ
カ、是レ本員ノ第五質問デゴザイマス、第
六ノ質問ハ今囘ノ減稅案ハ直接稅ト間接稅
トノ關係ニ於テ、其按排宜シキヲ得タルモ
ノト政府ハ御考ヘニナッテ居ルカ、如何ト云
フコトデゴザイマス、元來國稅ノ體系ニ於
キマシテハ直接國稅ニ重點ヲ置キ、間接
稅ヲ第二位ニ置クト云フコトハ世界各國ノ
稅制ニ於テ其通ノ原則デゴザイマス、我國
ニ於キマシテモ日〓戰爭ノ前ニ於キマシ
テハ直接國稅ガ六割二分、間接國稅ガ三
割八分ト云フヤウナ比例ニ相成シテ居ル、然
ルニ現在ニ於キマシテハ直接國稅ガ三割五
分六厘、間接國稅ガ六割四分四厘ト云フコ
トニ相成ッテ居ル、斯ノ如ク割合ノ逆轉イ
タシマシタ最近ノ原因ハ若槻内閣ニ於キ
マス所ノ酒ノ稅ノ値上及ビ煙草ノ値上ト云
フモノガ最近ノ原因ヲナシテ居リマス、只
今私ノ申上ゲマシタ比率ト云フモノハ必シ
モ是ハ正確ニ算出スルコトハ出來マセヌ、
又間接稅ノ中ニハ、或ハ奢侈稅的ナモノモ
偶ニハゴザイマスカラ、間接稅必シモ細民
稅ト申上ゲルコトハ出來マセヌ、併ナガラ
我國ノ稅收入ノ中ニ於キマシテ間接稅ノ割
合ガ外國ニ比シテ多イト云フコトハ般
ニ於テ唱ヘラレテ居ル所デアリマスノミナ
ラズ消費稅輕減ト云フコトハ、一般勤勞
階級ノ聲デゴザイマシテ、又現内閣ノ基礎
トナッテ居リマス所ノ政黨ハ過般ノ總選
擧ニ際シテ、盛ニ消費稅輕減ノ宣傳ヲサレ
タノデゴザイマス、今囘提出セラレマシタ
減稅案ヲ見マスト、直接稅ノ輕減ハ平年度
ニ於キマシテ一千五百万圓、然ルニ間接稅
ノ輕減ハ平年度ニ於キマシテ一千万圓ニ過
ギマセヌ、其理由トシテ井上大藏大臣ノ御
說明ハ今日物價ガ下落シタカラト云フコ
トダケヲ申シテ居ラレル、併ナガラ物價ノ
下落シタ時ハ卽チ失業者ノ多イ時デアル、
失業者ノ多イ時ハ卽チ一般民衆ノ生活ガ困
難ナル時デゴザイマス、之ヲ御忘レニナッテ
ハイケマセヌ、ソコデ今囘ノ減稅案ニ依リ
マシテ下層階級ノモノガ如何ナル恩典ヲ受
ケルカト云フコトヲ本員ガ調ベテ見マシ
ク、卽チ織物消費稅法中改正法律案ニ依リ
マスト、稅率ヲ一割引下ゲニナッタ外、絹人
絹織交ゼ麻織物、毛織物ノ下級品ヲ新タニ
免稅品ニ加ヘラレマシタガ、綿織物ハ從來
ヨリモ無稅品デアリ、今日マデモ無稅品デ
アリ、綿織物ノミヲ使用シテ居ル所ノ下層
階級、細民階級ノモノニ取リマシテハ今
日ノ改正ニ依リマシテ、果シテ如何ナル恩
典ヲ政府ニ依"テ受ケテ居リマスカ、强ヒテ
言ヒマスナラバ、細民階級、下層階級ノ受
ケマス所ノ恩典ト云フモノハ、砂糖消費稅
ノ改正ダケデゴザイマス大正十年十一月
施行ノ細民家計調査統計ト云フモノヲ調べ
テ見マス、之ニ現ハレタ砂糖購入費調ト云
フモノヲ本員ハ調ベテ見マシタ、四谷區旭
町調査戶數百六十一世帶ニ於キマシテ
ハ一世帶平均砂糖消費量ハ三十二錢デゴ
ザイマス、淺草區淺草町、調査戶數百五十
九世帶ニ於キマシテハ一世帶ノ平均砂糖
消費量ガ三十二錢デゴザイマス、深川區本
村町及猿江裏町、調査戶數百七十七世帶ニ
於キマシテハ一世帶平均砂糖消費量ガ三
十錢デゴザイマス、此調査ハ大正十年デゴ
ザイマシテ、今日ヨリ稍〓古イモノデゴザ
イマスガ、此以後ノ細民砂糖消費調ト云フ
モノガ見當リマセヌカラ已ムヲ得マセヌ、其
後ノ大藏省ノ發表ニ依リマスト云フト、國
民一人當リノ砂糖消費量ハ近年漸次減退シ
ツツアリマスカラシテ、物價ノ下落ト相俟
チマシテ、細民下層階級ノ砂糖消費量ハ大
正十年ノ今ノ調査ニ比シマシテ、益〓減少
シテ居ルモノト見ナケレバナラヌト考ヘテ
居リマス、唯私ガ意外ニ減ジテ居リマスノ
ハ、此細民ノ砂糖消費ト云フ砂糖ノ種類ガ、
案外高級品ヲ使シテ居リマスカラ、私ハ假ニ
三盆白ヲ例ニ取ッテ申上ゲマスガ、三盆白消
費稅ガ百斤ニ付テ平均六十錢デゴザイマ
ス、今囘ノ減稅案ニ依リマシテ、一斤ノ減
稅額ガ、一斤ニ付キマシテ約六厘ト相成ル、
而シテ三盆白ノ一斤ノ時價ハ今日二十三錢
ト云フコトヲ申シテ居リマスカラ其內ニ含
マレテ居ル所ノ消費稅ト云フモノハ一斤ニ
付キマシテ八錢三厘五毛ト云フコトニ相成
ル、今囘ノ減稅案ニ依リマシテ、假ニ六厘
引下ゲラレマシタトシマシテモ、又理篇通
リニ此小賣値段ガ下ガリマシテモ、三盆白
一斤二十三錢ト云フモノガ僅カニ二十二錢
四厘ト云フコトニ相成ルノ外ハナイ、併シ
果シテ理論通リ消費者ノ負擔ガ輕クナル
カ是ハ問題デゴザイマシテ、世間デハ今
囘ノ砂糖消費稅法中改正法律案ニ依ッテ利
益ヲ受ケル者ハ砂糖會社ト卸賣業者、小賣
業者ト精々砂糖ヲ原料トスル菓子屋位ノモ
ノデアラウト言ッテ居リマス、井上大藏大臣
ハ業議院ノ特別委員會ニ於キマシテ、「減稅
ニ依ッテ物價ヲ引下ゲルト云フコトハ餘程
困難デ過去ノ歷史ニ徵シテ見マシテモ左樣
ニ行ッテ居リマセヌ」······是ハ三月二十三日ノ
速記錄ノ三十五頁、假ニ百步ヲ讓リマシテ、今
囘ノ減稅ノ減額ガ小賣相場ニ影響イタシマ
シテソレダケ下落スルト致シマシテモ、
細民一世帶ノ受ケル恩典ト云フモノハ、僅
ニ八厘何毛デゴザイマシテ一錢ニモ足リマ
セヌ、雀ノ淚ト申シタイケレドモ、雀ノ淚ニ
モ足リナイ、先ヅ蚊ノ淚ノモノデアリマス、
卽チ土地ヲ所有セズ、營業收益稅若クハ營
業稅ヲ納メル資力ナク、絹織物、毛織物、
麻織物ヲ買フコト能ハザル階級ノ者ニ對シ
マシテハ今囘ノ減稅ニ依リマシテ受ケル
所ノ利益ハ、僅ニ一世帶八厘内外ニ過ギナ
イノデゴザイマス、只今マデハ細民ノコト
ヲ申上ゲマシタガ、假ニ細民ヲ除外イタシ
マシテ一般國民ヲ對象トシテ考ヘテ見マス
ルトキニハ、ドウデアルカト申シマスルノニ、
昭和四年一年間ノ砂糖消費量ハ十三億六千
五百二十一万五千九百八十三斤、卽チ國民
一人當リハ二十一斤七デアリマスカラシ
テ、一年一人ノ減稅額ノ恩典ハ僅カ四錢二
厘ニ過ギマセヌ、減稅案ノ正體ハ實ニ斯ノ
如キモノデゴザイマス、此外織物消費稅ノ
コトヲ申上ゲテモ宜シイガ、長クナリマス
カラ略シテ置キマスガ、簡單ニ申上ゲマス
ト、銘仙一反ノ減稅額ト云フモノハ僅ニ二
錢ニ過ギマセヌ、農家ノ家計調査ニ依リマ
スト云フト、直接國稅ノ平均ト云フモノハ
一戶一圓三十一錢デアル、酒及煙草ノ間接
稅ノ負擔ト云フモノハ一戶平均七十七錢デ
ゴザイマス、假ニ之ヲモット農家ノ平均ヨリ
低イ階級ニ見マスト、間接稅ノ平均ト云フ
モノハ高マッテ參リマス、卽チ六十圓未滿
ノ所得ノ農家ノ間ニ於キマシテ見マスト、
間接稅ハ直接稅ニ比シマシテハ八十二「パ
ーセント」ト云フコトニ相成ッテ居リマス、
卽チ農家ノ負擔ヲ社會政策的ニ輕減セント
欲スルナラバ、是等ノ消費稅ヲ輕減シナケ
レバナラヌト考ヘテ居リマス、然ルニ政府
ノ爲ス所ハ全ク之ニ反シテ居リマス、政府
ハ一昨年ノ暮ニ肥料ノ下落ヲ口實ト致シテ
葉煙草賠償價格ヲ引下ゲラレ、サラデダニ
困窮ノ極ニ達シテ居リマシタ所ノ農民ノ收
入ヲ一層引下ゲラレマシタ、又煙草製造ノ
職工ノ初任級ヲ引下ゲラレマシテ、勞働賃
銀ヲ三十九万圓減ゼラレマシタ、又元賣捌人
ノ廢止ニ依ッテ百五十万圓ヲ御儲ケニナ
ル更ニ來年度ニ於キマシテハ煙草小賣商
人ノ利益ヲ一分減ジマシテ三百万圓ヲ國庫
ニ取上ゲラレルト云フコトニナッテ居ル、誠
ニ弱者ヲ誅求スルコトニ於キマシテハ至レ
リ盡セリ併ナガラ政府ノ賣ル所ノ煙草ノ
値段ト云フモノハ一厘一毛モ引下ゲルト云
フコトノ御計畫ガ無イノデアリマス、特別
議會ニ於ケル所ノ井上大藏大臣ノ御說明ニ
依リマスレバ農民ヨリ買上ゲラレタル葉
煙草ト云フモノハ一年間倉庫ノ中ニ之ヲ貯
藏シ之ヲ乾燥シタル後ニ製品ノ原料ニ用ヒ
ルモノナルガ故ニ、葉煙草賠償價格ヲ昭和
五年度ニ於テ引下ゲタルガ故ニ、直チニ製
品ノ値段ヲ引下ゲル譯ニハイカヌ、斯樣ニ
御說明ニナッテ居ル、今ヤ其時ヨリ一年ヲ經
過イタシマシテ、當時農民ヨリ値切リ倒シ
テ御買上ニナッタ所ノ原料ニ依ヶテ製造サレ
タ所ノ煙草ガ、昭和六年度ニ於テハ市場ニ
現ハレル時期ニナッテ居ル、而モ政府ニ於キ
マシテハ煙草ノ賣下代金ヲ一厘一毛モ引下
ゲルト云フ御計畫モ無イ、衆議院ニ於ケル
所ノ質問ニ對シテハ井土大藏大臣ハ來年度
出來ル所ノ行政財政稅制ニ關スル調査會ニ
於テ之ヲ〓究スルト云フコトノ御說明デア
ル、私ハ消費稅輕減ニ對スル所ノ政府ノ誠
意誠ニ足ラザルモノアリト申上ゲテモ過言
デナイト信ジマス、殊ニ酒ノ稅ニ至リマシ
テハ大正九年七月ノ臨時議會ニ於キマシ
テ、海軍國防費ノ充實ノ爲ニ所得稅ト共ニ
增稅サレタ歷史ヲ有スルモノデゴザイマ
ス今囘海軍軍縮ニ依ル所ノ財源ニ餘剩ガ
アルニ於テハ政府ハ第一ニ此酒ノ稅ト云
フモノヲ御引下ニナル義務ガアルト中シテ
モ宜カラウト思フ、而モ政府ハ物價ガ下落
シタガ故ニ、消費稅ノ直接稅ニ對スル所ノ
割合ハ今日ノ減稅案ノ程度ヲ以テ適當ナリ
ト信ジテ居ラレルヤ否ヤ、是レ本員ノ第六
ノ質問デゴザイマス、本員ノ第七ノ質問ハ
政府ハ今囘ノ減稅案ニ依ッテ生ズル所ノ都
市計畫ノ財源ノ缺陷ヲ如何ニシテ補塡セラ
レル御見込ナリヤ、尙ホ都市計畫ノ財源ニ
關スル規定ヲ改正スベク、貴族院ニ對スル
公約ヲ履行セザル理由如何、是ガ第七ノ質
問デゴザイマス、政府ハ今囘ノ減稅案ニ依
リマシテ營業收益稅及營業稅ヲ輕減セラレ
ル旨ヲ明言セラレ、尙ホ明治四十一年法律
第三十七號ノ附加稅ノ稅率ヲ改正セラレタ
ルニ拘ラズ、都市計畫法第八條第一項第二
號及第三號ノ規定ニ依リ營業收益稅割及營
業稅ノ制限率ヲ緩和セラレザルヲ以テ本
稅ノ減少ニ伴フ都市計畫特別稅ノ稅額ニ減
少ヲ生スルコトハ當然デゴザイマス之ム
依シテ生ズル府縣市町村ノ財源ノ缺陷ハ如
何ニシテ之ヲ補塡セラレル御見込デアリマ
スカ、現ニ東京府ニ於キマシテハ、其市部經
濟ニ於キマシテモ、又其郡部經濟ニ於キマ
シテモ、都市計畫特別稅、營業收益稅割ハ
本稅一圓ニ付二十二錢、卽チ制限一杯マデ
徴收イタシテ居リマス、又東京府管內ノ町
村ノ豫算決講書ヲ本員ハ取寄セテ一々調べ
テ見マシタガ、現ニ北豐島郡王子町ノ如キ
ハ營業收益稅割ハ、本稅一圓ニ付二十二錢、
營業稅ハ一圓ニ付四十錢、卽チ何レモ制限
一杯ニ徵收イタシテ居リマス、尙又政府シ
御發表ニナッタ調査書類ヲ見マスト、橫濱
市、濱松市、名古屋市、大阪市、堺市等ニ
於キマシテモ、營業收益稅割ニ付キマシテ
ハ制限一杯ニ課稅シテ居ルノデアリマス、
政府ハ今囘ノ〓正ニ伴フ此財源ノ缺陷ニ
依ッテ生ズル都市計畫事業ノ停頓ヲ其儘ニ
放任セラレル御意思デアルヤ否ヤ、然ラズ
ンバ其財源ハ如何ニシテ之ヲ補塡セラレル
御見込デアルカ、衆議院ノ特別委員會ニ於
キマス所ノ政府委員ノ答辯ニ依ルト、1政府
ハ今マデ都市計畫ノ財源ノ缺陷ハ他ノ地
方稅ニ依シテ補塡シテ居ノタト、將來モ他ノ
地方稅ノ補塡ニ依ッテ都市計畫ノ財源ヲ補
フ積リデアルト云フコトヲ仰シヤッテ居リ
マスガ、本員ガ地方ノ都市計畫ニ關係ノ當
事者ヲ招集シテ聽イテ見マスト、是以上一
般地方稅ヲ都市計畫ノ財源ニ流川スルト云
フコトハ到底不可能デアルト云フコトヲ異
口同音ニ申シテ居リマス尙ホ本員ガ今囘
ノ減稅案ヲ調査檢討スルニ當リマシテ、過
去ノ稅制整理ニ關スル所ノ貴族院、衆議院
ニ於ケル本會議、特別委員會等ノ速記錄ハ
一々之ヲ點檢イタシテ見マシタ、大正十五
年ノ第五十一議會ニ於テ、所得稅法中改正
法律案外二十一件ノ貴族院特別委員會ニ於
テ、志村源太郞君ノ質問ニ對シテ政府ハ都市
計畫法第八條、卽チ都市計畫ノ財源ニ關ス
ル規定ハ近ク根本的改正ヲ加フル旨ヲ答辯
シ且ツ之ヲ御約束ニナッテ居リマス、卽チ
當時ノ政府委員ノ言葉ヲ借リテ申シマス
ルナラバ元來東京ノ日本橋ノ眞中ニ於ケ
ル所ノ道路ヲ修繕スル費用ヲ三多摩郡ノ山
ノ中ノ田畑ニ賦課スルト云フコトハ是ハ
理窟ハ兎モ角トシテ、實際ニ於テハ非常識
デアル、只今ノ議會ハ會期ガ旣ニ切迫シテ
居リマスルカラ、此際ハ局部的ノ一部改正
ニ止メマスルケレドモ、此根本的改正ニ付
テハ近ク御審議ヲ願フ積リデゴザイマスル
カラ此際ハ本案ニ贊成セラレタイト云フ
意味ヲ述ベテ居ラルルノデゴザイマス爾
來年ヲ經ルコト既ニ五年、今囘都市計畫法
中改正法律案ヲ御提案ニナルニ付キマシテ
ハ恰モ當時貴族院ニ對スル御公約ヲ實行
セラルベキ絕好ノ機會デアルト本員ハ信ジ
テ居リマスルガ、然ルニ政府ハ單ナル地租
割ノ改正ヲ提出セラレルニ止メテ當時ノ
公約ヲ履行セザルハ如何ナル理由デアル
カ是本員ノ第七ノ質問デゴザリマス、第
八ハ今囘ノ減稅ノ財源ハ果シテ確實ナリヤ
否ヤ、若シ財源ニシテ確實ナラズトセバ、
政府ハ本減稅案ヲ一時延期スル意思ナキヤ
否ヤ政府7歲入ノ見積ノ過大ナルコトハ
旣ニ本議場ニ於テ再三再四論議セラレタコ
トデゴザイマスルカラ今日私ハ之ヲ繰返
スコトヲ欲シマセヌ、過日ノ豫算總會ニ於
テ配布セラレタ書類ヲ見マスルト、五年度
ノ實行豫算ニ於テ森林收入ノ減ガ約五百万
回郵便電信電話ノ收入ガ約千五百万圓、
租稅及印紙收入ノ減ハ約六千万圓卽チ合計
約八千万圓ノ歲入缺陷ノアル旨ヲ豫算總會
ニ於テ政府ハ書類ヲ配布セラレテ居ル、其
後ノ現計ヲ調査イタシマスルト八千万圓
ニ止マリマセヌガ、是ハ枝葉末節ニ涉リマ
スルカラ今日ハ中上ゲマセヌ、本員ハ敢テ
先見ノ明ヲ誇ルガ如キ嫌味ナコトヲ申上ゲ
ル積リハ一ツモナイ、併ナガラ、右ハ特別
議會ニ於テ而モ豫算總會ニ於テ、本員ガ井
上大藏大臣ニ質問イタシタ事實ト殆ド一致
スルノデゴザイマス當時濱口總理大臣及
ビ井上大藏大臣ハ何ト御答辯ニ相成ッテ居
リマスルカ、ヨモヤ御忘レデハゴザリマス
マイ、私今日之ヲ想出シテモ憤慨ニ堪ヘマ
セヌ、井上大藏大臣ハ五年度ノ實行豫算ノ
歲入ノ見積ハ自分ハ立派ナモノデアルト信
ジテ居ルト云フコトノ御答辯デアッタ、濱曰
總理大臣ハ五年度ノ歲入見積ニ付テハ歲入
ニ關係アル各省ノ官吏ニ命ジ正確ナル材料
ニ據リ愼重ニ調查セシメタルモノデアルガ
故ニ、全體ヲ通ジテ斷ジテ歲入減ノ虞ナシ
ト斯ウ言ハレテ居ル、然ルニ其舌根未ダ
乾カザル內、卽チ特別議會閉會後約二十日
ニ歲入缺陷ノ事實ヲ御發表ニナリ行政ノ
經濟化ト稱シテ事業ノ繰延ヲ行ヒ、事實ニ
於テ行政ノ不經濟化ヲ圖ラレタコトハ我
我ノ記億ニ新ナル所デゴザイマス、六年度
ノ歲入ノ見積ノ過大ナルコトモ同ジク歷然
タル事實デゴザイマス、本員ハ約三週間ニ
亙ッテ蒐集シタ材料ヲ持シテ居リマスルカ
ラ政府ニ於テ若シ御希望トアルナラバ六
年度ノ歲入ノ見積ノ過大ナル所以ヲ、歲入
豫算ノ各款項ニ亙ッテ或ル機會ニ於テ御質
問申上ゲテ一向差支ゴザイマセヌ、併ナガ
ラ本員ガ今日マデ未ダ之ヲ爲サザルハ六
年度ノ收入見積ニ付テハ十目ノ見ル所十指
ノ指ス所、其過大ナル事實ハ餘リニ歷然タ
ルモノガアルカラデゴザイマス何レ斯ウ
申上ゲマスルト井上大藏大臣ハ六年度ノ
歲入ニ付テハ斷ジテ過大ノ見積ナシト斯ウ
御答辯ニナリマセウガ、甚ダ失禮ノコトヲ
中上ゲルヤウデゴザリマスルガ、事苟クモ
歲入ニ關スル限リ、井上大藏大臣ノ御言明
ニ對シテ本員ハ多クソ信用ヲ置クコトハ出
來マセヌ、何レ本議會ノ終了後何日カ經チ
マシタナラバ、何トカ豫期セザル世界ノ不
景氣ニ依リ物價ノ著シキ變動アリタルガ爲
ニ行政ノ經濟化ヲ圖リ、歲入ノ減ヲ補塡ス
ル必要ヲ生ジタリナドト仰シヤイマシテ、
又復實行豫算ヲ御編成ニナルト云フコト
ヲ······サウ云フコトガ無イト云フコトヲ、
何人ガ保證出來マセウカ、既ニ過日ノ本會
議ノ議場ニ於キマシテ幣原首相代理ハ問フ
ニ落チズ語ルニ落チル、歲入ノ減少フ場合
ニハ六年度ニ於キマシテハ歲出ノ整理ヲ爲
ス外ナシトシテ、暗ニ來ルベキ實行豫算ノ
編成ニ付テ、其御計畫ノ一端ヲ御漏ラシニ
ナッテ居ル、卽チ來年度九百万圓ノ所謂留保
財源トハ畫イタ餅ノ如キモノデハナイカ、
之ニ付テ政府ノ御所見ハ如何、而モ井上大
藏大臣ノ御言葉ノ時〓變リマスコトハ、獨
リ歲入ノ問題ニ止マリマセズ、又施政ノ御
演說ノ中ニ······施政方針ノ御演說ノ中ノ六
千万圓ノ御間違ニ止マラズ、時ミ又御間違
ガゴザイマス、昭和四年七月二十四日附ヲ
以テ貴族院ノ事務局ヨリ我〓ニ配付セラレ
タ井上大藏大臣ノ御著書ガゴザイマス、「國
民經濟ノ立直シト金解禁ノ決行ニ就テ國民
ニ訴フ」斯ウ云フ御著書ヲ頂キマシタ、謹
ンデ拜讀イタシマシタ、井上大藏大臣ノ御
著書ヲ拜讀イタシマスレバ一般會計ニ於
テハ斷ジテ公債ヲ募集セズト、斯ウ仰シ
ヤッテ居ル、ソレヲ引用イタシマスレバ、昭
和五年度以後、一般會計ニハ一切新規公債
ヲ發行シナイト、斯ウ書イテアル失業公
債ハ例外ダナンテ云フコトハ書イテアリマ
セヌ、又獨逸賠償金ハ國債償還ノ基金ニ繰
入レルト云フコトガ書イテアル、堂々タル
御言葉ガ此御著書ニ書イテアリマシテ而
モ此御著書ノ終リニ是ハ豫算編成ノ方針
トシテ發表シタノデゴザリマシテ、此約束
ハ濱口內閣ノ續タ限リハ中心實ニ實行イタシ
マスト斯ウ書イテアリマス、濱口總理大
臣ハマダ議會へ御登院ニハナリマセヌガ
本員ハ濱口內閣ガ潰レタト云フコトハマダ
聞キマセヌ、濱口內閣ハマダ繼續シテ居リ
マスルガ、此御約束ハモウ潰レテ居リマス
獨逸ノ賠償金ハ國債償還基金ニ繰入レルト
云フコトハ御中止ニナリ、一般會計ニ於キ
マシテモ失業救濟公債ト云フモノヲ募集サ
レルコトニ相成ッテ居ル、井上大藏大臣ノ御
答辯ヲ承リマスルト失業救濟ノ公債ハ一
年限リノモノナルガ故ニ、是ハ原則ノ例外
ダト、斯ウ言ハレテ居ル、一年限リノモノ
デアリマシテモ公債ハ公債、失業救濟ノ目
的デアリマシテモ公債ハ公債、一年限リノ
公債ハ公債ニ非ズ、失業救濟ノ目的ニスル
公債ハ公債ニ非ズ卽チ白馬ハ馬ニ非ズト
云フ御證明ガナイ以上ハ、現內閣ノ豫算編
成ノ方針ト云フモノハ見事ニ裏切ラレタモ
ノト、申上ゲテモ宜カラウト思ヒマス、加
之昭和六年一月十五日ニ御印刷ニナッタ昭
和五年度以降失業救濟事業總括表ト云フ印
刷物ヲ拜見イタシマスルト、政府ハ昭和八
年度マデ失業救濟事業ノ計畫ヲ御立テニ
ナッテ居ル、失業救濟ノ御計畫ガ六年度限リ
デナイト云フコトハ、政府自ラ御認メニナツ
テ居ル、我國ノ財界ノ某有力者ガ申シマス
ルノニ、今囘ノ減稅ハ蛸配當的ノ減稅デア
ルト言ッテ居ル、其意味ヲ本員ガ忖度スルニ
民間ノ會社ニ於キマシテ、一方ニ於テハ借
金ヲ殖ヤス、借金ヲ返ス金ハ減少イタス、
收益ハ少シモ無イノニ資本ヲ食"テ配當ス
ルノヲ之ヲ蛸配當ト申シマス政府ハ獨逸
ノ賠償金ノ減債基金繰入ヲ御中止ニナッタ、
卽チ借金ヲ返ス金ハ少ナクナサッタ、公約ニ
反シテ、一般會計ニ於テハ公債ヲ募集ニナ
リ、借金ハ增加スルコトニナスッタ、歲入ハ
益減少イタシテ之ヲ補ハン爲ニ益、苛歛
誅求ト云フコトヲ御始メニナッテ居ル、而シ
テ一方ニ於テ滅稅ヲ爲サレルト云フコト
ハ、民間ノ會社デ云フ蛸配當デアル、卽チ
令囘ノ減稅案ハ蛸配的減稅案ナリト、斯ウ
云フ意味デアラウト思フ、其言ハ稍〓奇矯
ナルガ如シト雖モ、又穿チ得テ妙ナリトモ
申サレル、モウ暫クデアリマス、附加ヘテ
申シマスルガ、今囘ノ海軍ノ補充計畫ト云
フモノハ私ニハ能ク分リマセヌ、第一次ノ
補充計畫ニ依フテ國防ノ不安ナシ、若クハ國
防ノ不安ガ緩和セラレタト云フコトヲ何人
カ答辯サレテ居リマシタガ、何時ノ間ニカ
第一次補充計畫デハ足ラナイ、一箇月バカ
リ前カラシテ第二次補充計畫ト云フモノガ
空ノ中ノ登龍ノヤウニチラ〓〓ト片鱗ガ現
ハレテ參リマシタ、第二次補充計畫ト云フ
モノハ列國ノ形勢ヲ見、又其造艦技術ノ進
歩ヲ見テ徐ロニ之ヲ定メルト云フ、斯ウ云
フ御答辯ヲセラレタト思フト、昭和九年度
カ遲クトモ昭和十年度ニハ第二次補充計
畫ニ著手セザレバ政府ハ民間ノ造艦能力ハ
到底維持シナイト云フ御答辯モアッタヤウ
ニ記憶スル六年度ノ豫算各目明細書ヲ見
ルト、第一次補充計畫中ノ驅逐艦ノ建造計畫
ハ四隻デアルト思フト、衆議院ノ特別委員
會ニ於ケル海軍大臣ノ艦艇建造豫定表ニ基
ヅク御答辯ニ依ルト是ハ三隻ニ相成ッテ
居ル同ジク六年度ノ潜水艦ノ建造計畫ハ
明細書デ三隻ト思ヒマスルト是ハ何時ノ
間ニカ一隻ニナッテ居ル、端倪スベカラザ
ル補充計畫デアル、又今囘ノ補充計畫ニ艦
艇維持費ヲ含マズト云フコトデアリマス
カラ、補充計畫ニ依ッテ出來タ軍艦ハ動
カサズニ其儘港ニ繫イデ置クノカト思ヒマ
スト、又廢艦ニ依ッテ出來夕金ヲ以テ軍艦
ノ維持費ニ充テル、斯ウ云フヤウナ說明モ
アル、今マデ海軍デハ隨分廢艦ノコトヲナ
サイマシタケレドモ、維持費ヲ大藏省ニ御
返シニナッタ例ハ餘リ聞カナイ、誠ニ今囘ハ
御殊勝ノコトト思フト、六年度マデニ一万
八千噸ノ造艦ニ相成ルガ、此六年度マデノ
一万八千噸ニ對スル艦艇維持費ト云フモノ
ハ最低九百万圓ヲ要スル、併シソレ迄ハ廢
艦ニナルモノハ一隻モナイ、斯ウ云フ御說
明デアル、誠ニ此頭腦明晰ナ方カラ言ヘバ、
此間ノ一貫セル理窟ガアルノデゴザイマセ
ウケレドモ、本員ノ如キ平凡ナル頭腦ノ者
デハ殆ド何ガ何ヤラ分ラヌ、私ハ海軍大臣
ガ貴衆兩院ニ於ル所ノ質問ヲ誤解ニナッテ
居ヤセヌカト思フ、兩院ニ於ケル質問ヲ見
マスルト、海軍ニ對シテ敢テ之ヲ苦シメル
趣旨ハ毛頭モナイヤウニゴザイマス、四面
環海ノ我國ト致シマシテ、國防ヲ維持スル
ニ必要ナル海軍力ハ、他ノ何物ヲ節シマシ
テモ之ヲ保持シナケレバナラヌト云フコ
トハ心アル國民ノ一致スル考デゴザイマ
シテ、本員ノ如キ誠ニ微力デハゴザイマス
ケレドモ、海軍軍備ノ將來ヲ心配イタシテ、
出來得ルナラバ微力ヲ捧ゲテ其海軍軍備
充實ノ御後援ヲ申上ゲタイ考ヲ有ッテ居ル、
海軍大臣ハ何カ大藏大臣ニ御氣兼ネガアル
ノカ存ジマセヌガ、常ニ霞ヲ隔テテ花ヲ見
ルガ如キ御答辯ヲナスッテ居ル、誠ニ軍人ラ
シク要ルモノハ要ル、必要ノモノハ必要ト
率直ニ御答辯ニナレバ本員其ハ滿足スルノ
デアリマスガ、尙ホ大藏省カラ御取リニナッ
タ一札ト云フモノヲ發表サレタナラバ此
豫算ノ内容ハ益〓明カニナルモノト考ヘテ
居ル、ソコデ昭和六年以降ノ歲入歲出豫算
〓計表ヲ拜見シマスト、六年度ニ於ケル歲
出臨時費ト云フモノハ二億六千八百万圓、
其中繼續費ガ一億四千六百万圓、之ヲ除キ
マシタ卽チ繼續費ニアラザル臨時費ト云フ
モノハ一億二千二百万圓、六年度ニ於テハ
一億二千二百万圓以上ゴザイマスルガ、七
年度ニ於テハ是ガ九千万圓ニ減ジ、八年度
ニ於テ七千八百万圓ニ減ジ、九年度ニ於テ
ハ七千二十万圓ニ減ジ、十年度ニ於テ五千
九百万圓ニ減ジ、十一年度ニ於テ五千万圓
ニ滅ズルト云フ、斯ウ云フ〓計表ニ相成ッテ
居ル富士山ハ白扇ヲ倒シマシタト云フコ
トヲ聞イテ居リマスガ、此白扇ヲ倒シマシ
タ富士山ヲ又倒シマシタヤウデ、末ニ行ク
程益〓繼續費外ノ臨時費ト云フモノガ少ク
ナル形ニ相成ッテ居ル、是ハ餘程ノ大決心ヲ
以テ大行政整理ヲナサレナケレバ〓計表
ト云フモノハ御實行出來ナイ、ノミナラズ
常識ヲ以テ想像セラレマス所ノ臨時費ノ增
加ガアル、第一ハ恩給ノ增額ト云フモノモ
ノガ每年三百万圓デアリマスカ、豫算ノ此
〓計表ノ中ニハ此遞增費ト云フモノガ入レ
テアリマシタガ、今囘ハ御除キナッテ居ル、
海軍第二次計畫ト云フモノハ是ハ世間デハ
一億五千万圓ト云フコトヲ申シテ居リマス
ガ、海軍大臣ガ御說明ニナリマセヌカラ幾
ラカ是ハ分リマセヌガ、是モ入ッテ居リマセ
ヌ、海軍艦艇維持費ト云フモノモ是モ入ッテ
居リマセヌ、米穀特別會計ノ缺損一億五六
千万圓ト云フモノノ處分等モ是ハ二三年
ノ中ニ當然ナサナケレバナラヌト思ッテ居
リマスガ、是モ入ッテ居リマセヌ、絲價補償
公債ニ依ル三千万圓ト云フモノハ是ハド
ウセ交付公債ヲ御出シニナルノデゴザイマ
セウガ、其利子及償還財源ト云フモノハ〓
計表中ニ入ッテ居リマセヌ、此頃我とニ配付
ニナッタ昭和六年度以降ノ歲入歲出豫算〓
計表ト云フモノハアトハ野トナレ山トナ
レノ〓計表デアリマシテ、減稅ドコロデナ
イ增稅ノ危機ヲ孕ンデ居ル〓計表デアル
ト、本員ハ考ヘテ居ル、ソコデ本員ハ政府
ニ伺ヒタイコトハ、幸ヒ政府ニ於キマシテ、
來年度ニ於キマシテ、行政財政及ビ稅制ニ
關スル調査會ト云フモノヲ設置セラレ、朝
野ノ有識者ヲ集メテ稅制ニ關スル根本的調
査ヲ致サレ、國民負擔ノ均衡ヲ圖ラルル
斯ウ云フコトデゴザイマスル、而モ此調査
會ニ於テハ今囘改正セラレムトスル四ツノ
稅法案ハ是ハ一切觸レナイノカト云フト
實ハサウデナイラシイ、衆議院ノ特別委員
會ニ於ケル政府委員ノ御答辯ヲ見マスル
ト地租法ハ此調査會ニ於テハ根本的改正
ニハ手ヲ著ケナイガ稅率ダケハ改正スル
カモ知レヌ、·斯ウ云フコトヲ言ッテ居ラレ
ル、他ノ營業收益稅法、織物消費稅法、砂
糖消費稅法ハ之ニ關スル答辯ヲ留保シタ
イ、斯ウ言ッテ居ラレル、又井上大藏大臣ハ
原則トシテハ此四ツノ法律ニハ手ヲ著ケヌ
コト、斯ウ仰シヤッテ居ルカラ、或ハ例外トシ
テ手テオ著ケニナルノカモ知レヌ、政府ハ
如何ナル御考デアルカ、是ハ別ト致シマシ
テ、本員ガ質問トシテ伺ヒタイコトハ、政府
ハ何モ急イデ今期議會ニ缺陷グラケノ減稅
案ヲ御提出ニナラズシテ、右ノ調査會ニ於
テユックリ稅制ノ御〓究ヲナサレ、財源ノ缺
陷ノ狀況モ能ク御調査ニナリ、昭和五年
十年ノ初メノ海軍第二期補充計畫ノ他ノ財
源モ、能ク海軍省ト御打合セニナリ、叉〓
計表ニ現ハレテ居ル所ノ將來必要デアル臨
時費ト云フコトノ御調査ニモナリ、又海軍
ノ艦艇維持費ト云フコトニ必要ナ財源ト云
フモノモ御調査ニナリ、尙且ツ減稅ノ餘地
ガアル場合、卽チソレ等ノモノヲ差引イテ
モ尙且ツ減稅ノ餘地ノアルコトガ明カニ
ナッタ場合ニハ、次ノ議會ニ於テ完全ナル減
稅法案ヲ御提出ニナルコトニ御考へ直シハ
出來マセヌカ、勿論減稅ト云フモノハ一日
モ早イ方ガ宜シイノデアル、サウ云フコト
ヲ仰シヤルカモ知レマセヌガ、六年度ノ過
渡的ノ減稅額ト云フモノハ、總額ハ僅ニ九
百万圓、是ハ八億ノ稅收入ニ較ベマスト僅
ニ九十分ノ一七千万ノ國民ノ數ニ割リ當
テマスレバ、一人ノ減稅額ハ一人僅カ十二
錢八厘、一月平均一人一錢ニ過ギマセヌ、
旱魃ノ時ニ飛行機カラ、「コップ」ノ水ヲ一
杯注グヤウナモノデアリマシテ、水ハ大地
ヲ濕ス前ニ空中ニ於テ蒸發シテシマフコト
ハ明カデアル、帶ニモ短イシ、襷ニモ短イ
減稅案デゴザイマス、以上ノ理由ニ依リマ
シテ政府ハ本案ヲ一旦撤囘セラレテ若
クハ此本案ヲ一年延期セラレルト云フヤウ
ナ意思ガナキヤ否ヤ、是レ本員ノ第八ノ質
問デゴザイマス、是デ一ト先ヅ質問ヲ終リ
マスガ、特ニ井上大藏大臣ニ御願ヒ致シマ
スノハ甚ダ失禮ノコトデゴザイマスガ
井上大藏大臣ハ質問中ノ片言隻語ヲ捕ヘル
コトナク、又同時ニ囚ヘラルルコトナク、
各質問ノ趣旨ノ存スル所ニ對シ適切ナル御
答辯ヲ戴カムコトヲ望ム、又安達內務大臣
ハ衆議院ノ本會議ニ於キマシテ、答辯ハ委
員會ニ讓ルト云フコトヲ再々申シテ居ラレ
マスルガ貴族院ニ於キマシテハ願ハク
ハ答辯ヲ委員會ニ讓ルト云フ答辯ヲ以テ
答辯ヲ同避セラルルコトナク、本會議ニ於
ケル質問ニ對シテハ本會議ニ於テ御答辯ア
ラムコトヲ希望イタシマスデ若シ此國務
大臣ノ答辯ニシテ誠意アリ、深切ニシテ要
領ヲ得ルニ於テハ、本期議會ハ餘ス所僅ニ
三週間、本員ノ後ニマダ質問ノ通〓者ガア
ルコトヲ聞イテ居リマスルカラ、此答辯ニ
シテ要領ヲ得ルニ於テハ、再ビ再質問ヲ··
再ビ登壇ヲ致シテ再質問ヲ致シマセヌ、併
ナガラ國務大臣ノ答辯ニシテ深切ヲ缺キ、
誠意ヲ缺キ要領ヲ得ザルニ於テハ、甚ダ
不本意デハゴザイマスルケレドモ、議長ノ
許可ヲ得テ、再ビ質問ヲ繰返スカモ知レマ
セヌ、此點ハ御許シヲ願ヒマシテ明快ナル
御答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=11
-
012・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 此際休憩イタシ
マシテ、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシ
マス
午後零時十一分休憩
午後一時五十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=12
-
013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス內務大臣安達謙藏君
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=13
-
014・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 私ハ長岡君ノ御
問ニ對シマシテ、重モニ地方稅ニ關スルコ
トヲ御答ヘ致シマスガ、御尋ノ中ノ第一ト、
第三ト第四ト、第七ニ付テ御答ベスルコ
トガ當然ト考ヘマス、此御答ヲ致ス前ニ當
リマシテ、私ハ御話ノ中デ大體論トシテ簡
單ニ御答ヲ致シテ置クコトガ必要ト考ヘマ
スカラ、一言申上ゲテ置キマス、ソレハ地
方財政、特ニ町村財政ノ今日ノ狀態、今日
ノ窮境ト云フモノハ、是ハ一朝一夕ニ起ッタ
コトデハアリマセヌ、是ハ長イ間ニ諸般ノ
施設經營其當ヲ得マセヌ爲ニ、今日ノヤウ
ナ行詰リヲ生ジタモノト私ハ考ヘテ居リマ
ス長岡君ノ例トシテ御引キニナリマシタ
福島縣ノ俸給ノ拂ハレナイ爲ニ、年末ニ借
入金ヲシタト云フコトデアリマシタガ、此
例ヲ御引キナサッタコトヲ以テ申上ゲルト
云フト、福島縣ニ於キマシテハ一昨年七
月縣知事ガ赴任イタシマシタ時ニ、旣ニ數
箇月間俸給ガ延滯シテ居リマシタ爲ニ、ソ
レデ已ムヲ得ズ借入金ヲシタ其後モ亦同
樣ノコトヲシテ居ル、斯ウ云フコトデアリ
マシテ、昨年トカ今年トカニ起ッタ狀態デハ
ナイノデアリマスカラ、ソレデ私ハ此地方
ノ財政ノ今日ノ行詰リ、此窮境ヲ打開スル
ニ付キマシテハ、〓心、銳意、努力シテ居
リマス、又私ガ各地方長官ニ對シテ財政ノ
整理緊縮ノ方針ヲ訓示シタニ拘ラズ、其豫
算ガ膨脹シテ居ル、二千七百何十万圓ト云
フ御話デアリマシタガ、豫算ガ膨脹シテ居
ル一向緊縮整理ノ方針ガ徹底シテ居ラヌ
ト云フ御話デアリマシタ、成程若干豫算ハ
殖エテ居リマスガ、此增加イタシマシタ數
字ハ是ハ全ケ失業救濟ノ爲ニ已ムヲ得ズ
事業ヲ起エシタカラ致シマシテ、此數字ガ
增加イタシテ居ルノデアリマス、稅外ノ收
入ガ增加シテ居ル是モ失業ノ爲ニ起債ヲ
シタモノダラウト考へマス收入デハアリ
マセヌ、支出デアリマス、ソレデ此支出ガ
增加シテ居ル、起債ノ增加ト云フ爲ニ是
デ節約ノ方針ヲ變更シタトハ言ハレマセヌ、
相變ラズ整理節約ノ方針ト云フモノハ變更
セズニ、依然トシテソレヲ守ラシメテ居リ
マスガ、已ムヲ得ザル場合ノ爲ニ失業救濟
ノ事業ヲ起エシテ、其爲ニ此數字ガ增加シ
タト云フコトニ御承知ヲ願ッテ置キマス、ソ
レカラ御問ノ、政府ハ中央ニ於テ支辨スベ
キモノヲ地方ノ負擔ニ移シテシマフ、サウ
シテ地方財政ヲ壓迫スルヤウナコトヲナシ
ツツアルデハナイカ、將來ハ之ヲ改ムルノ
意思ガアルカドウカト云フ御尋デアリマ
ス此中央ト地方トノ負擔ヲ適正ニ區分イ
タシマシテ、サウシテ濫ニ地方財政ヲ壓迫
スルヤウナコトノナイヤウニスルト云フコ
トニ付キマシテハ、是ハ歴代ノ內閣ト共ニ
現政府ニ於テモ常ニ之ヲ念トシツツアリマ
ス、ソレデ將來ト雖モ各種ノ場合ニ此方針
ヲ以テ臨ミマシテサウシテ中央ハ地方ト
ノ費用ノ負擔ノ其區分ト云フモノヲ合理的
ナラシメテ、之ガ爲ニ濫ニ地方財政ヲ壓迫
スルコトノナイヤウニ努メルコトニ考ヘテ
居リマス、ソレカラ第三ノ御問ノ今囘ノ地
方稅制ノ改正ハ、地方〓體ノ財政ニ對シテ
十分深切ナル考慮ヲ拂ハザリシ嫌ヒガアル、
其爲ニ財源ノ乏シキ地方團體ニアリテハ、
將來財政ノ經理ニ困難ヲ來ス、或ハ其財政
ヲ混亂セシムルガ如キコトガアルデハナイ
カ、斯ウ云フ意味ノ御尋デアッタト考ヘマス
ガ、此度ノ地方稅制ノ改正ニ當リマシテハ、
一面地方負擔ノ公正ヲ期シマスルト共ニ、
一面ニハ地方團體ノ財政ニ對シマシテ最モ
愼重ナル考慮ヲ拂ヒタルモノト信ジマス
卽チ地租附加稅等ノ增減ヲ生ジマス地方團
體ニ對シテハ、經過的便法ヲ設ケマシテ
一面ニハ地方團體ノ財政ニ不時ノ缺陷ヲ生
ズルコトナカラシムルト共ニ一面ニハ土
地ニ對スル地方負擔ノ增加ヲ以テ、地方財
政ノ濫リナル膨脹ヲ抑制スルコトトナシマ
シタ、併シ之ヲ昭和十三年ニ至ッテ考ヘテ見
マスルト、地租附加稅ノ收入ニ增減ノアル
ト云フコトハ御說ノ通リデアリマス地租
附加稅ノ增加スベキ地方團體ニ於キマシテ
ソレダケ將來財政ノ餘裕ヲ生ジマスカ
ラシテ、ソレニ依ッテ他ノ國稅附加稅又ハ戶
數割、家屋稅及ビ其附加稅等ノ輕減ヲスル
コトニナルノデアリマス、ソレカラ此度ハ
逆ニ地租附加稅ノ減收トナル市町村ニ對シ
マシテハ、第一ニ、其歲出ノ整理節約ニ依
リマシテ此減收ヲ補塡スルコトガ適當ト認
メマス、歲出ノ整理節約ニ依リ之ヲ補塡シ
得ザル場合ハ、其市町村ニ對シテ既ニ許サ
レテ居ル他ノ各稅ノ增徵ニ待ツノ外ナシト
認メマス、若シ地方稅制全般ニ亙シテ改正ヲ
加ヘマスルトセバ、一方ニ於テ失フ所ヲ
他方ニ於テ得ルコトトナリ、地方團體ノ各
個ニ付キマシテ見ル時ハ損得償フ場合ヲ
生ズルコトガアリマスルモ、今囘ノ地方稅
制ノ改正ハ國稅ノ改正ト直接關係アル範圍
ニ止メマシタカラシテ自然此點マデ及ブ
コトノ出來ナカッタノハ是ハ已ムヲ得ザル
コトデアリマス、地方園體ノ財政狀態ハ種
種樣ミデアリマス、財源ノ乏シキモノモア
リ又然ラザルモノモアリマス、之ヲ規律ス
ルニハ劃一的ナル法制ヲ以テスル結果、一
方ニ財源ヲ失フモノアルト共ニ、他方ニ之
ヲ失フモノヲ生ズルモ、全國的ニ負擔ノ公
正ヲ期スル上ニ於キマシテハ是モ亦誠ニ
巳ムヲ得ザル所デアルト認メマス、今囘ノ
改正ニ依リマシテ、地租附加稅等ニ增減ヲ
生ジタルハ、土地ニ對スル地方負擔ガ、之
ニ依テ公正トナリタル結果ニ外ナラヌノデ
アリマス、故ニ從前ニ比較イタシマシテ、
將來ハ各種負擔ノ均衡ヲ得タル狀態ノ下ニ、
地方ノ必要ナル費用ヲ負擔スルコトトナリ
マスルカラシテ、從前ニ比較シテ之ヲ負擔
スル苦痛ハ却テ緩和セラレマス、之ヲ以チ
地方財政ヲ混亂ニ導クモノノヤウニ考ヘル
ノハ當ラザルコトト信ジマス、ソレカラ第
四ノ御問ノ府縣稅營業稅及其附加稅ノ減稅
財源ハ是ハ何レニ求ムルカト斯ウ云フ御
尋デアリマス、府縣稅營業稅ハ御承知ノ如
ク百八十餘万圓デアリマス又營業稅附加稅
ノ減稅額ハ六十餘万圓ノ見込デアリマス
ガ、是ガ減稅財源ハ府縣ニ於テハ其一部ヲ
營業收益稅附加稅ノ增收ニ求メ、又他ノ一
部ヲ共財政ノ整理緊縮ニ求メマシテ、尙ホ
足ラザル場合ニ於テハ先ニ御話ノ通リ昭和
八年度マデニ限リ營業稅ノ制限外課稅ニ求
メシムル見込デアリマス、又市町村ニ於キ
マシテハ減稅財源ハ其一部ヲ財政ノ整理
緊縮ニ求メ、其足ラザル場合ハ營業附加稅
ノ制限外課稅ニ求メシムル見込デアリマ
ス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
減稅財源ハ地方總體ニ於キマシテハ相當ノ
金額トナリマスルモ、之ヲバ各團體的別ニ
見マスルトキハ、必シモ差シタル金額デハゴ
ザイマセヌ、故ニ財政ノ整理緊縮ニ依リマ
シテ支辨シ得ルモノト信ジテ居リマス、ソ
レカラ第七ノ御尋ネノ都市計畫特別稅ハ今
囘ノ改正ニ依リ相當ノ收入減トナル、都市
計畫事業ノ執行ニ故障ヲ生ジヤシナイカ、
都市計畫特別稅ニ對スル根本的改正ニ付キ
玆ニ提案ヲセザルハ如何ナル理由カ、斯ウ
云フ御尋ネノヤウデアリマスルガ、都市計
畫特別稅ニ付キマシテハ、今囘ノ改正ニ當
リマシテ、地租割ノ如ク稅率ヲ變更シタル
モノニ付テハ、地方總體ノ收入ノ增減ナキ
ヲ期シタルモノデアリマシテ格別減收ト
ナラズ、團體ニ依リテハ却テ增收トナリマ
ス、又營業收益稅割、營業稅割ノ如ク稅率
ヲ改正セザルモノニ付キマシテハ御見込ノ
如ク幾分減收トナルヲ免レマセヌモ其程
度ガ頗ル輕微デアリマスカラシテ、ソレデ
都市計畫事業ノ執行ニハ支障ヲ來スガ如キ
虞ナシト認メテ居リマス、大正十五年第五
十一議會ニ於ケル志村委員ト政府委員トノ
問答トナレル事項ニ付キマシテハ其後考
究ヲ致シテ居リマスルモ、未ダ適當ノ斷案
ヲ見ルニ至リマセヌ、是ハ明年度行ハレマ
スル行政稅制ノ調査ニ當リマシテ、本件モ
地方稅制全體ニ亙リ總括的二十分調査考究
スル見込デアリマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=14
-
015・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 長岡君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ致シマスガ、第一ハ地租
法ノ改正ニ依ッテ市街地ガ增稅ニナル、此經
濟界ノ時代ニ增稅トナルコトハ非常ナ不都
合デハナイカト斯ウ云フコトデアリマ
シタガ、今日ノ經濟界ノ時代ニ如何ナル種
類ノ事柄デアリマシテモ增稅ヲスルト云フ
コトハ長岡君ノ御議論ノヤウニ出來ルダ
ケ避ケニヤナラヌコトハ是ハ當然デアリ
マー、併ナガラ此地租法ノ改正ハ日本全國
ニ通ジマシテ負擔ノ公正ヲ圖ル、斯ウ云フコ
トノ爲ニ出發イタシマシタモノデアッテ、負
擔ノ公正ハ成ルベク速カニ之ヲ是正シテ置
クト云フコトガ當然ノ義デアラウ、斯ウ云
フコトヲ考ヘマシテ出來ルダケ增稅ニチル
ト云フコトハ負擔ノ公正ニ妨ゲノナイ程
度ニ致シマシテ努メテ之ヲ避ケタ積リデア
リマス、一應簡單ニ申上ゲテ置キマスト、
減稅ナシノ地租法ダケニ依リマスト、斯ウ
云フコトニナリマス、大體田畑ニ於キマシ
テ九百六十万圓程減稅ニナリマシテ、サウ
シテ宅地ニ於キマシテ同額······殆ド同額ガ
增稅ニナリマス、九百万圓田畑ニ減稅ニナツ
テ、九百万圓宅地ニ增稅ニナルノデアリマ
ス、ソレヲ今度ノ減稅ヲ機會ニ、平年ニ於
キマシテ、千八十万減ジマス爲ニ、丁度其
割合ガ田畑ニ於キマシテ千八百万圓ノ減稅
ニナリマシテ、宅地ニ於キマシテ五百四十
五万三千圓程增稅ノ形ニナルノデアリマ
ス、卽チ一方ニ減ジテ一方ニ殖エルト云フ
コトニナリマシテ、是ハ負擔ノ公正ヲ計ル點
カラ出發イタシマシタノデ已ムヲ得ザル次
第デアリマス、ソレデ宅地ノ稅源ノ表ヲ出
シテ見マスト、長岡君ノ擧ゲラレタヤウニ
東京市ニ於キマシテ百八十万圓、大阪ニ於
キマシテ百五十万圓、京都市デ三十四万圓
神戶市ニ於テ二十九万一千圓、名古屋市ニ
於テ四十九万一千圓、橫濱市ニ於キマシテ
十七万九千圓、合計四百六十二万圓ノ宅地
租ガ殖エマス、其他ノ市部ニ於キマシテ百
三十九万圓殖エマシテ、郡部ニ於キマシテ
五十五万八千圓程減ジマス、其結果ガ五百
四十五万二千圓程宅地租ニ於テ殖エルコト
ニナルノデアリマス、併シ只今申シマシタ
ヤウニ、此際ドコノ部分ニ於キマシテ增稅
ニナルト云フヤウナコトハ他ノ意味カラ
申シマシタナラバ頗ル避ケナケレバナラ
ヌ話デアリマスガ、此地租法ノ改正ハ只今
申上グルヤウナ意味ニ於テ出發イタシマシ
タノデアリマシテ、是ハ已ムヲ得ザル事態
ト考ヘテ居ル次第デアリマス、其次ノ私ニ
御問ヒハ營業收益稅ニ於テ、今度ノ減稅案
ハ不合理ノ結果、法人ノ減稅ト個人ノ減稅
ノ割合ガ非常ニ不釣合ダ、斯ウ云フ御話デ
アリマス、又免稅點ヲ引上ゲテ、此減稅ヲ
計ルコトノ方ガ寧ロ公正デアラウト云フ御
意見デアッタノデアリマスガ、今般ノ取扱
デ、是マデモ法人ト個人トハ區別的取扱ヲ
シテ居リマス、是ハモウ根本ノ理窟ハ申上
ゲルマデモナイ、能ク分ッテ居ル話デアリ
マスガ、尙ホ法人ノ方ト個人トノ間ニ一層
開キヲ多クシタノデアリマス、是ハ道理ハ
申上ゲル必要モアリマセヌガ、段々徴稅ヲ
取扱シタ經驗上、左様ニ致シマスコトノ方
ガ、寧ロ一般ノ下層社會······下層社會ト云
フ言葉ハ惡ルウゴザイマスガ、社會政策的
ノ意味カラ行ケバ、ソレノ方ガ適合スル
斯ウ云フ考ヘデアリマシテ、法人ノ方ハ平
年度ニ於キマシテ百分ノ三·六ヲ百分ノ三·
四ニ致シマシテ僅カ五分五厘ノ減稅ニホ
カナッテ居リマセヌ、併ナガラ個人ノ方ハ平
年度ニ於キマシテハ一千圓ト云フ所デ限リ
マシテ是ハ免稅點ハ長岡君ハ引上ゲタ方
ガ宜シイ、サウシテソコノ御意見ハ少シ聽
落シマシタガ、地方ノ營業稅ノ上ニモ免稅
點ヲ拵ヘタラドウカト云フ御意見ノヤウデ
アリマシタガ、成程營業收益稅ニ免稅點ヲ
拵ヘ、尙ホ營業稅ニ免稅點ヲ拵ヘマシタラ、
ソレモ一案カト考ヘマス、併シ頗ル取扱ニ
ハ面倒ナ手數ノ掛ルコトト考ヘマスルガ、
我〓ハ一千圓ト云フ、個人ニハ限リヲ置キ
マシテ、其上ノ稅ト、其下ノ稅ヲ變ヘマシ
タカラ、先刻、所得稅ノ累進稅ノヤウナ御
話デアリマシタガ、別ニ是ハ累進ト云フ意
味ハ寧ロ我ミハ考ヘテ居リマセヌ、千圓ト
云フ分界ヲ置イテ、其上ト下トノ稅率ヲ變
ヘテ見タダケノ話デアリマス、總テ平年度
ニ於キマシテ、千圓以上ハ七分一厘減シテ
居リマス、千圓以下ニナリマスト一一割一分
四厘程減ルコトニナッテ居リマシテ、法人ト
個人トノ間ノ區別ヲ一層甚ダシク、個人ノ
中デモ千圓以下ノ者ニ對シテ稅率ヲ一層下
ゲテ見タ、斯ウ云フコトニナリマシテ大
體ノ我〓ノ趣意ハ長岡氏ノ言ハレル所ト大
シク違ヒハナカラウト、斯ウ考ヘテ居リマ
ス、ソレカラ其次ノ御問ヒハ直接稅ト間
接稅トノ權衡ヲ得テ居ナイ、斯ウ云フコト
デアリマシタガ、是ハ私ハ一ツ御斷リ申シ
テ置キマス、若シ稅制ノ根本ニ溯ッテ調査イ
タシマシテ、之ヲ改正イタシマスナラバ
別ニ種々ノ考ヘモアリマシタラウ、併ナガ
ラ二千五百万圓ト云フ一定ノ金額ヲ以テ之
ヲ減稅ヲ致シマスノデアリマスルカラ、ド
コニ此減稅ヲ振向ケタラバ宜シイカ、斯ウ
云フコトハ最初ニ起ッテ來ル考ヘデアリマ
ス、稅制ノ整理、減稅ノ場合ニ、目前ノ經
濟上ノ事情バカリヲ考へソレニ囚ハレテ
減稅案ヲ立テマスルト云フコトハ、勿論正
シイコトト考ヘルノデアリマスガ、第一今
日ノ農村ノ狀態ト云フコトヲ考ヘマスコト
ハ非常ニ必要デハナイカ、サスレバソレ
ニ對シテ、權衡比較ヲ取ッテ、數字的ニ申上
ゲルコトモ出來兼ネマスルケレドモ、是マ
デ地租ト營業收益稅ヲ相對立シテ居ルト云
フヤウナ考ヘカラシテ、今日ノ商工業者、
殊ニ中小商工業者ノ狀態ヲ考ヘマスルト
營業稅ニ相當ニ減稅ヲシテ見タイ、斯ウ云
フ考ヘハ當然浮ンデ來ル考ヘデアラウト思
ヒマス、尙ホ消費稅······消費稅ニ二千五百
万圓ノ金ヲ全部振向ケテ見ヤウト云フコト
モ一應考ヘモシ、又〓究ヲ進メテ見タコト
モゴザイマス、併ナガラ極ク平ッタイ言葉デ
言ヘバ、今日ノ、織物ガ下ッタ、砂糖ノ値段モ
下ッテ居ル、斯ウ云フ場合ニ、消費稅ヲ或
一種ノ稅ヲ全部ナクスルダケノ玆ニ金ガア
リマスナラバ或ハソレモ一案カモ知レマ
セヌ、併ナガラ消費稅ハ餘程努力イタシマ
セヌト、稅ヲ下ゲタダケ其モノノ値段ヲ下
ゲルコトニハ豫ネテ、何時デモ、困難ガ
伴フヤウナコトヲ考へマスト國稅消費稅
ト云フヤウナコトヲズット割當テテ考ヘテ、
只今ノヤウナ結論ガ山テヤッタ譯デアリマ
ス、ソレナラ之ニ對スル四ツノ稅ノ間ニ斯
樣ナ稅ヲ下ゲタ數字上ノ根據ヲ示セト仰シ
ヤルナラバ、左程正確ナ數字上ノ根據モナ
イノデアリマス、ソレカラ先刻餘リニ消費
稅ガ少ナイ爲ニ飛行機カラ水ヲ落スヤウナ
モノダト云フ御叱リモアリマシタノデアリ
マスガ、只今申上ゲル如ク一定ノ金額ヲ、
卽チ海軍ノ補充計畫ノ餘剩財源ヲ持ッテ來
タノデアリマスカラ、其點ニ付テハ御批評
ガアリマシテモ、左樣ナ風ニ御批評下サリ
マシテ、或ハ巳ムヲ得ヌ所モアリマス、併
ナガラ是ハ限定サレタ財源ヲ以テ減稅ヲシ
タト云フ所デ一ツ御了承願ッテ置キタイノ
デアリマス、次ハ此減稅ノ財源ハ確實ナリ
ヤト云フ御質問デアリマシテ、私ガ昭和五
年ノ豫算ヲ、實行豫算ヲ拵ヘマシテ、特別
議會ニ出シタ時ノ言葉ヲ引用サレテ私ノ
言フコトニ付テ信用ナシ、斯ウ云フ御斷定
デアリマシタガ、本議會ニ於キマシテモ度
度申上ゲマシタ如ク、斯樣ニ經濟界ガ急激
ニ變化シヤウト云フコトハ不明ノ至リ、我
我ハ不敏ヲ詫ビルノデアリマスガ、全ク昭
和五年ノ五六月カラ日本ノ經濟界ニ斯樣ナ
變化ガ來ヤウ······其原因ハ日本特殊ノ原因
モアリマセウ、世界不景氣ノ現象モアリマ
セウガ、左樣ナ見込ガ付カナカッタ爲ニ、ア
レ程ノ歲入缺陷ヲ生ジタト云フコトハ明
カナ、是ハ事實トシテ眼ノ前ニ出テ來テ居
ルノデアリマス、其點ヲ本トシテ御責メ下
サリマスレバ、事實ハ事實トシテ甘ンジテ
我ミノ不明ヲ謝スル次第デアリマス、併ナ
ガラ一方ニ失業公債ヲ二千二百万圓募リナ
ガラ減稅ヲスルト云フコトハ非常ナ矛盾ヂ
ヤナイカ、是ハ蛸配當、俗ニ所謂蛸配當デ
アルト云フ御非難デアリマシタガ、斯ウ云
フコトト、我ミハ考ヘテ此處置ヲ執リ、今
デモサウ考ヘテ居リマスガ、假ニ玆ニ二千
二百万圓ノ借入金ナリ公債ヲ發行イタシマ
シテ、其事柄ガ、永久ニ亙ル事業ガ其起債
ノ原因デアル、卽チ每年一般會計ノ上ニ二
千二百万圓ト云フ公債ヲ計上シテ置イテ、ソ
レデ一方ニ二千二百万圓ノ減稅ヲ致シマス
ナラバ是ハモウ明カニ我〓ハ矛盾シテ居
ルト存ジマス併ナガラ今日ノ經濟界ノ狀
態カラ出テ來タ失業者、之ニ對スル救濟ガ
何年、何十年續カウトモ我〓ハ今日見テ居
ラヌノデアリマス、卽チ一時限リノ救濟方
法トシテ昭和六年度限リノ財源トシテソレ
ヲ見テ居ル、減稅ハ未來永劫ニ亙ル減稅デ
アル、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマスカラ、
俗ニ所謂蛸配當ト云フ批評ハ少シ私ハ酷ニ
過ギル批評ト考ヘテ、御返上申シタイ言
葉ノヤウニ考ヘマス、ソレカラ維持費、
臨時費ノ海軍ノ維持費ガ不十分、繼續
費以外ノ普通ノ臨時費ノ部ガ少ナイ、恩
給ノ增額ニ付テ用意ガ足リナイ、從ッテ
今度ノ減稅ノ財源ハ不確定ダ、ソレデア
ルカラ、折角來年度行政、財政、稅制ノ整
理ヲスルナラバ昭和六年度一時限リノ減
稅トシテ置イテ、ヤリ直シテハドウカ、之
ヲ引込メテハドウカ、斯ウ云フ御話デアリ
マスガ、我〓ハ左樣考ヘマセヌ、減稅ガ一
年限リト云フヤウナ減稅ハ國民ニ向シテ左
樣ナ事柄ハ出來得ナイ、斯ウ考ヘマス、又
今般ノ減稅ハ普通ノ財源カラ出テ來タノデ
ナイノデアリマシテ海軍補充計畫ノ餘剩
金ヲ以テ出テ來タノデアリマスカラ、減稅
ヲ致シマシテ其減稅ノ出來タ後ニ日本ノ稅
制ヲ根本的ニ整理スレバソレデ宜イノデア
リマシテ、長岡君ト遺憾ナガラ其點ニ付キ
マシテハ我〓ハ意見ヲ異ニシテ居ル次第デ
アリマス
〔長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=15
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016・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 本員ハ午前ニ申上ゲマシ
タ通リ國務大臣ノ答辯ニシテ要領ヲ得ルニ
於テハ再質問ヲ致サナイト云フコトヲ御約
束ヲ致シタノデゴザイマスルガ、不幸ニ致
シテ兩國務大臣ノ御答辯ハ要領ヲ得ズ、誠
意ヲ缺キ、深切ヲ缺キ、只本員ノ片言隻語
ノ揚足取リ又ハ小股掬ヒニ止ッテ居ルノデ
ゴザイマシテ、只答ヘ易キニ答ヘテ故ラ
ニ答ヘ難キニ答ヘズ、若シ本員ニシテ討論
ヲ許サルルナラバ、只今ノ御答辯ノ中ニア
ル御議論ハ粉碎スルコト易々タルモノデゴ
ザイマスケレドモ、只今ハ討論ノ場合デゴ
ザイマセヌカラ、ソレハ申上ゲマセヌ、只
國務大臣ノ答辯中ニ餘リニ事實ニ相違イタ
シタ點ニ付キマシテハ、多少本員ハ事實ト證
據トヲ擧ゲテ再ビ御質問ヲ申上ゲル外ハヲ
イノデゴザイマス、是ハ問題ト御答辯ト紛
糾イタシマスルカラシテ、順序ト秩序トヲ
正サナケレバナリマセヌカラ、本員ノ第一
ノ質問、之ニ對スル御答辯、之ニ局限ヲ致
シテ質問應答ヲ重ネタイト思フクデゴザイ
マス、卽チ本員ハ現内閣成立以來、此中央
ノ財政ノ行詰リ若クハ破綻ト云フコトヲ地
方財政ニ轉嫁スル、或ハ國家ガ當然支辨ス
ベキ事業若クハ費用ヲ地方財政ニ轉嫁イタ
スト云フコトヲ質問イタシマシタガ、第.
ノ質問ニ對シマシテ、只今安達內務大臣ハ
地方財政ヲ壓迫セザル樣、歷代ノ內閣ト共
ニ努メテ居ルト、斯樣ナ御答辯デアッタノデ
アリマス先ヅ第一ニ之ニ付テ質問應答ヲ
重ネタイト思ヒマス、果シテ現内閣ハ地方
財政ヲ壓迫セザル樣、努メテ居ラルヽヤ否
ヤ其第一ノ例ハ河川港灣等ノ土木工事ノ
繰延ベニ際シ、國費ノ不足ヲ補ハンガ爲ニ
地方費ノ分擔金ヲ繰上納入セシメタル事實
非常ニ多シ本員ノ調査シタル所ニ依リマ
スレバヽ昭和五年度ノ實行豫算ノ河川費及
ビ砂防費ニ於キマシテ國庫ノ責任支出額ヨ
リ約七十七万圓ヲ繰延ベ、地方ヲ强制致シ
テ地方分擔金ヨリ二百三十六万圓餘ヲ繰上
補充セシメタル事實ガゴザイマス、又昭和
六年度ニ於キマツテハ、國庫ノ責任支出額
ヨリ四百十一万圓餘ヲ繰延ベマシテ、地方
費ヨリ四百十一万圓餘ヲ繰上納付セシメタ
事實ガゴザイマス、港灣修築費ニ於キマシ
テモ同樣ノ遣繰リガ行ハレテ居ルノデゴザ
イマス、卽チ昭和六年度ノ治水事業費ニ於
キマシテ、地方費ノ分擔ヲ見マスルト當
該年度ニ於テ地方費ノ分擔計上ナカリシニ
狗ラズ、新タニ納入ヲ命ジタルモノ荒川上
流改修工事、神通川改修工事、富士川改修
工事、綠川改修工事、千曲川改修工事、阿
賀川及阿武隈州改修工事、天龍川改修工事、
紀ノ川改修工事、信濃川上流改修工事等デ
ゴザイマシテ、當年度治水事業費ニ少々
ノ地方費ノ分擔金ノ豫定ハアリマシタケレ
ドモ、新タニ巨額ノ增額支出ヲ命ジタルモ
ノ、筑後川改修工事、蘆田川改修工事、鬼
怒川改修工事、及ビ手取川砂防工事費等デ
ゴザイマス、又港灣修築費ニ於キマシテハ、
五年度ニ於テ地方費ノ繰上納入ヲ內務大臣
ガ御命ジニナリマシタモノ、神戶港、橫濱
港、〓水港、小松島港、鹿兒島港等デゴザ
イマシテ、昭和六年度ニ於キマシテ、地方
費ノ繰上納入ヲ御命ジニナリマシタモノ
ハヽ鹿兒島港、小名濱港、浦戶港、尾道港、
博多港、舞鶴港等デゴザイマス、玆ニ本員
ハ治水工事費地方分擔金改修年度割表及ビ
港灣改良費、豫算改訂ニ依レル地方費繰上
表、是ハ持參致シテ居リマス、御必要デゴ
ザイマスレバ御目ニ懸ケマス、併ナガラ今
ハ時間ヲ省ク爲ニ省略致シマス、安達内務
大臣ハ一月二十七日ノ衆議院ノ本會議ニ於
キマシテ是等ノ地方費ノ繰上ハ地方ノ希
望ヲ若干デモ滿サウト云フ爲デアッテ、決シ
テ弱者ヲ窘メル趣旨デハナイ、斯樣ニ御答
ニ相成ッテ居リマス、併ナガラ事實ハ全ク之
ニ相反シテ居リマス、地方費ノ經理ガ困難
ヲ極メテ居リマスルコトハ先程申上マシタ
ガ、如何ナル地方ニ於キマシテモ、約束以
上ノ金ヲ而カモ起積マデ致シテ、國家ニ納
入スルコトヲ喜ンデ致ス者ハゴザイマセ
又、何故之ヲ致スカト言ヘバ工事費ヲ打
切ラレルト云フコトガ怖イノト、安達內務
大臣ガ怖イカラ泣ク泣ク之ヲ致シテ居ル
内務大臣ガ斯ノ如キ御答辯ヲ爲サルダラウ
ト云フコトヲ本員ハ豫想致シテ居リマシタ
カラ、實ハ本員ハ此地方ノ府縣會ノ速記錄
ヲ悉ク取寄セテ調査致シテ見マシタ、山形
縣會ノ速記錄ヲ見マスルト云フト、昭和五
年度ニ於キマシテ、最上川改修工事ノ納付
金十四万四百二十二圓ヲ新タニ計上スルニ
當リマシテ、山形縣知事ハ山形縣會ニ於テ
本件ハ既定計畫上昭和五年度ニ於テハ納付
ヲ要セザルモノデハゴザイマシタガ過般
内務大臣ノ訓令ヲ以テ······過般內務大臣ノ
訓令ヲ以テ繰上納入ヲ命ゼラレマシタフ
デ、是ガ所要經費ヲ計上致シマシタ、斯樣
ニ速記錄ニゴザイマス、又靑森縣會ノ議事
錄ヲ見マスルト、岩木川ノ改修工事分擔金、
十一万二千十圓ヲ議決スルニ當リマシテ
元來昭和五年度ハ既定計畫ニ依レバ、縣ハ
分擔金ヲ納入スルヲ要セズ、然ルニ政府ヨ
リ新タニ納入ヲ命ゼラレタルモノトシテ旣
ニ議決ヲ經居レリ、起債及ビ償還方法ノ變
更ヲ議決スルノ已ムヲ得ザルニ至ッタ、ト云
フコトニナッテ居ル、元來此汽船ニハ經濟速
力ガアルガ如ク、土木ノ工事ニハ經濟工程
ト云フモノガアリマス、餘リニ此工事ヲ急
グト云フト、金ハ掛リマスケレドモ··
其經濟工程ニ依ッテ工事ヲヤッテ居リマスル
時ニ、突然之ヲ繰延マスルト云フト、其爲
ニ技師モ遊バセテ置カナケレバナラヌ、或
ハ此機械ニハ錆止メヲシテ置カナケレバナ
ラヌト云フヤウナコトカラ、非常ナ不經濟
ニ相成ルノデアル、技術者ノ言ヲ聽キマス
ルト、河川改修工事ト云フモノハ七分出來、
若クハ八分出來ト云フモノガ一番危ナイ
危險ナ狀態デアリマシテ、其時ニハ堤防ヲ
切ッテ仕事ヲシテ居ルコトモゴザイマス、若
クハ河川ノ中心ニ於テ機械ヲ据著ケテ掘鑿
ヲシテ居ルコトモゴザイマスカラ、其時ニ
繰延若クハ打切ヲヤラレタナラバ沿岸ノ
住民ハマグ河川改修ニ著手セザル時ヨリ危
ナイ、又港灣改良ニ於キマシテモ同ジデゴ
ザイマシテ、例ヘバ防波堤ノ基礎工事ヲ途
中デ止メマスト、人工ヲ以テ海底ニ此暗礁
ヲ造ッタヤウナモノデゴザイマシテ、出入ノ
船舶ト云フモノハ危險極リガナイ、而モ暴
風ノ爲ニ基礎工事ノ捨石ト云フモノガ海底
ニ散亂イタシマスルカラ、斯ノ如キ時ニ繰
延ヲ致サレタナラバ是ハ堪ラナイヽ卽チ
安達内務大臣ガ衆議院デ御答辯ニナリマシ
タ地方ノ希望ト云フノハ、地方費ヲ繰土ゲ
國庫ニ納入シタイト云フ希望ニ非ズ、卽チ
地方ノ希望トハ、工事ヲ打切リ繰延ベザル
コトノ希望デゴザル、是ガ卽チ地方ノ希望
デアリマス、此國庫ガ繰延ベマスルコトニ
對シテ、地方費ガ繰上納付スル金ト云フモ
ノハ全部トハ申シマセヌガヽ殆ド全部ハ
起債ニ依ッテ居リマス、是ハ本員確ナ證據ヲ
有ッテ居リマス、殆ド全部ハ起債ニ依ッテ居
リマスガ故ニ、此地方費カラ繰土納付イタ
シマシタ金ノ起債ニ依ッタ納付金ノ利子ト
云フモノハ、是ハ殆ド全部地方費ノ負擔ニ
ナルノデアリマスハ此道路改良費ニ付テモ
同ジヤウナコトガゴザイマスガヽ管ミシイ
カラ、是ハ止メテ置キマス、斯ノ如キ事實
アルニ拘ラズ、尙且國費ノ歲出ヲ滅ズル
ガ爲ニ其患ヒヲ地方費ニ轉嫁シ、地方費
ノ納付ヲ繰上ゲタ事實ナシ、斯ウ仰シヤ
ルノデゴザイマスカ、伺ヒタイ、第二ノ政
府ハ米價調節維持ノ爲ニ、卽チ米ノ買
上ノ費用ニ窮シタカラ、國家ガ府縣ノ罹災
救助基金若クハ町村ノ基本財產等ヲ流用セ
シメタコトガ其例デゴザイマス、昨年ノ秋
ニ未曾有ノ豐作ノ爲ニ米價ガ著シク下落イ
タシマスルヤ、政府ハ米價調節ノ·····維持
ノ爲ニ米ヲ買上ゲント欲シマシテモ、其米
穀特別會計ハ既ニ損失ニ損失ヲ重ネ、買上
ノ餘力幾何モナカッタ爲ニ、農林省ヨリ白羽
ノ矢ヲ立テタモノハ、卽チ府縣及ビ町村ノ
積立テマシタ罹災救助基金及ビ町村ノ基本
財產デゴザリマス、當時地方長官ニ發シマ
シタ往復書類ヲ調査イタシマスルニ、十月
ノ七日農務局長依命通牒、十一月八日農林
次官依命通牒十一月四日內務次官通牒、
十一月二十日農務局長依命通牒、十一月二
十九日農務局長依命通牒、十二月十六日農
務局長依命通牒、マダ澤山アリマスケレド
モ、此中本員ノ質問ニ關係ノ無イコトハ略
シテ置キマス、又其中ニ祕通牒ト書イテア
リマスモノハ、本員ハ德義上斯ウ云フ公ヲ
席デ發表イタシマセヌガ、其通牒ノ全部ハ此
處ニ持參イタシテ居リマス、唯其中注意イ
タスベキモノハ十一月二十二日ノ農務局長
ノ通牒デゴザリマス、是ハ地方財政ニ對シ
テ大混亂ヲ與ヘタ通牒デゴザリマス、「農局
一三七〇一號、昭和五年十一月二十二日
農林省農務局長、各府縣知事殿、米穀對策
ニ關スル件、本月二十二日開會致シタル米
穀委員會ニ於テ諮問事項ニ付キ別紙ノ通リ
農林大臣ヨリ說明相成リ候所右ハ米穀對策
ニ關スル當局ノ方針ヲ示スモノニ有之候條
御參考ノ爲ニ送付ニ及ビ候也」斯ノ如ク書
イテアリマス而シテ此農林大臣ノ御演說
ノ第四項ノ中ニ「羅災救助基金其他ノ財源
ヲ以テ道府縣及町村ヲシテ全國ニ亘リ若干
數量ノ籾又ハ玄米ヲ買入レ、貯藏セシムル
コトニ主管省タル內務大藏兩省ト協議ヲ遂
ゲマシタ、面シテ其數量ハ農林省トシテハ
道府縣ヲ通ジテ凡ソ五十万石ヲ下ラザル希
望ヲ以テ目下交渉中デアリマス、卽チ此通
牒ガ原因ト相成リマシテ地方財政ニ大混亂
ヲ生ジクノデアリマス、元來罹災救助基金
ナルモノハ天災事變ニ際シテ憐ムベキ罹
災民ヲ救助スベキ目的ヲ以テ、長年月ヲ費
シテ府縣ニ於テ積立テタ大事ノ基金デゴザ
イマス或ハ夜半警鐘ニ夢ヲ破ラレテ身ヲ
以テ燒死ヲ免レ或ハ濁水滔々軒ヲ洗フ際
ニ一夜屋上ニ立ヲテ救ヒヲ求メル、斯メ如
キ際ニ於キマシテハ自己ガ貯金ヲ致シテ
居ル所ノ郵便局ハ燒ケ出サレ、平素取引シ
テ居ル所ノ銀行ト云フモノハ共ニ水ニ流サ
レタト云フ場合ガ少クナイノデアリマス、
卽チ罹災民ハ斯カル際ニハ數日間茫然自
失爲スコトヲ知ラザルコトガ多イノデゴザ
イマスルガ、此際ノ處置ト致シマシテハ之
ニ對シテ炊出シ米ヲ與ヘ衣類ヲ給シ小屋
掛ケノ材料ヲ與ヘルト云フコトハ、人道上
當然ノコトデアルヲミナラズ、自治團體ニ
對スル恩惠ノ念ヲ養ハシメ、其〓土ヲ愛ス
ルト云フ念ヲ養ハシメル大事ノ機會ト本員
ハ考ヘテ居リマス、從ヒマシテ羅災救助基
金ニ對シテハ之ガ管理運用ニ付テハ今
迄ハ嚴重ナル規定ガアリマシタノガ、之ヲ
現内閣ハ忽チ御崩シニナッテ居ル、罹災救助
基金法ノ第十七條第一項第二號ニ依リマシ
テ、「豫メ給與品ヲ買入レルコトヲ得」ト云
フコトガアリマスルカラ、當局ハ初メニ豫
メ給與品ヲ買人レルコトヲ得ト云フ規定ニ
依テ處置ヲ爲スッタ、最近卽チ二月ノ二十六
目ニナッテ其御方針ハ變ジテ居リマスルガ、
初メハサウ云フ御方針デアック、卽チ當局ノ
御方針ニ依レバ米價ノ下落ト云フモノハ地
方民ヲ甚シク苦シメルモノデアルガ故ニ
豫メ非常災害ノ場合ノ炊出シ米用トシテ
米穀ヲ買入レ貯藏スルト云フコトハ米價
維持ヲ目的トスルコトト備荒貯蓄ヲ目的
トスルコトト一石二鳥ヲ得ルト云フヤウ
ナ御考ヘデアッタラシイ、此御考ヘヲ伺ヒマ
シタカラ、本員ハ過去ニ於ケル所ノ罹災救
助基金ノ決算ヲ悉ク調ペテ見マシタ卽チ
非常時ノ炊出シ米ハ交通機關ノ完備セザル
時代ニ於キマシテハ豫メ買入レルコトガ必
要デゴザイマセウガヽ過去ノ罹災救助基金
ノ食料費支出額ト云フモノノ決算ヲ調ベテ
見マスト、大正十三年度ニ於キマシテハ十
一万圓餘、大正十四年度ニ於キマシテハ十
四万圓餘、大正十五昭和元年度ニ於キマシ
テハ二十六万圓餘、昭和二年度ニ於キマシ
テハ二十五万圓ト云フヤウナ決算ト相成ヲ
テ居ルノデアリマシテ、卽チ炊出シ米トシ
テ必要ナモノハ一年僅ニ一万石内外デゴザ
イマス今農林省ノ通牒ヲ御發シニナリマ
シタ此五十万石ヲ買入レルコトニ致シマシ
クナラバ、一石二十圓ト致シマシテ府縣ノ
支出ハ一千万圓、十八圓ト致シテ九百万圓、
十六圓ト致シテ八百万圓ト相成ルノデアル、
卽チ過去ノ罹災救助基金ノ食料費ノ決算カ
ラ見マスルナラバ斯カル莫大ナル買入レ
ヲシタ米ト云フモノハ約五十年ヲ經過シナ
ケレバ炊出シ米トシテ使用シ盡セナイト云
フコトニ相成シテ居リマス、御承知ノ通リ米
ハ長タ貯藏イタシマスレバ品質ヲ損ジマス
鼠喰ヒ蟲喰ヒ等ノ爲ニ數量ヲ減ジ、倉庫ノ
保管料モ要シ、金利モ食フト云フコトニ相
ナル、米穀特別會計ニ於テ一億五六千万圓
ノ損失ヲ生ジテ居ルト云フコトガ、此原因
茲ニ存スルノデゴザイマス、然ルニ本員ノ
調査スル所ニ依リマスレバ、岩手縣ニ於キ
マシテハ右ノ通牒ニ依リマシテ既ニ罹災救
助基金ノ中カラ十七万九千六百七十八圓ト
云フモノノ米ヲ買上グベク決議ヲ經テ居リ
やく、青森縣ニ於キマシテモ同撮ノ手續ヲ
經クト云フコトヲ兩三日前ニ聞キマシタ
ガ、其金額ハマガ本員ニ報〓ガゴザイマセ
又、斯ノ如キコトガ各府縣ニ行ハレマシタ
ナラバ、折角多年苦ンデ積立テマシタ罹災
救助基金ト云フモノハ春ノ泡雪ノ如ケ消
エ去ルト云フコトハ當然デアリマス、最近
ニ至リマシテ當局ハ方針ヲ變ゼラレマシ
テ權災救助基金法第十七條第一項第二號
ノ規定ニ依ラズ同條第一項第一號ノ規定ニ
依リマシテ一旦權災救助基金ヲ府縣ニ貸
付ケ一般會計ニ於テ起債セシメ籾又ハ
玄米ヲ買入レシムルコトトシテ數日前ニ通
牒ヲ御發シニナリマシタ、ソレハ本員此處
ニ持ッテ居リマス、「昭和六年二月二十六日
各地方長官宛、地方公共團體ニ於テ籾又ハ
玄米購入貯藏ニ關スル件依命通牒、權災救
助基金ヲ以テ糎又ハ玄米ヲ購入貯藏スルモ
差支ヘナキヤ否ヤニ關シ御問ヒ合セノ向モ
有之候處、農村救濟ノ爲メ府縣其他ノ公共
國體ニ於テ之ガ購入、貯藏ヲ爲スハ已ヲ得
ザル義ト存ゼラレ候ヘ共」云々、追書ト致シ
テ「追而地方公共團體ニ於テ之ガ購入貯藏ヲ
爲サムトスル場合ハ罹災救助基金等ヨリ資
金ヲ運用シ一般會計(又ハ特別會計)ニ於テ
購入相成リ度ク」云々斯ウ云フコトニ相
成ッテ居ル、右ノ方針ハ前ノ方針ヨリ幾分其
弊ヲ少クシテ居リマスケレドモ、結局罹災
救助基金ノ損失ヲ一般地方費ニ轉嫁シタト
云フコトニ過ギマセヌ、加之明ニ府縣制ノ
第百十七條ニ違反イタシテ居リマス、府縣
制ノ第百十七條ニ曰ク「府縣ハ其ノ負債ヲ
償還スル爲又ハ府縣ノ永久ノ利益トナルベ
キ支出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲必要
アル場合ニ限リ府縣會ノ議決ヲ經テ府縣債
ヲ起スコトヲ得」斯ウ云フ規定ニ相成ッテ居
ル卽チ府縣ガ罹災救助基金カラ金ヲ借入
レテ起債ヲスルト云フノハ三ツノ場合シカ
ナイ第一ハ負債ヲ償還スル爲、之ニハ該
當イタシマセヌ、天災事變ノ爲メ、之ニモ
該當イタシマセヌ、卽チ强イテコヂ付ケレ
バ「府縣ノ永久ノ利益トナルベキ支出ヲ要ス
ル爲」、之ニ當テ嵌メタモノト考ヘテ居ルノ
デアリマス、從來ノ例ニ依リマスルト、府
縣ノ永久ノ利益トナルベキト云フコトハヽ
或ハ治水事業ヲ致シマシテ之ニ依ッテ沿岸
ノ苦痛ヲ除クトカ、或ハ道路ヲ改修イタシ
テ之ニ依ツテ產業ノ發展ヲ圖ルトカ云フヤ
ウナ場合ニ限ラレテルノデアッテ、目前ノ米
價メ釣上ゲノ爲ニ、卽チ府縣ノ自治國體永
久ノ利益ノ爲ニ何等ノ關係ガナイ、米價ノ
釣上ゲノ爲ニ、起債ヲ許スト云フ例ハ今日
マデゴザイマセヌ、强イテ例ヲ求メマスル
ト云フト、或ハ生業資金ノ爲ニ起債ヲ許
シタコトモゴザイマス、町村ノ歲入缺陷ノ
爲ニ起債ヲ許シタコトモゴザイマスルガ
是ハ何レモ惡例デアル而モ現內閣ハ非募
債主義ヲ標榜サレテ、成ルベク府縣ニ起債
ヲ許サナイト云フ方針ヲ執ッテ居ラルルニ
拘ラズ、米價釣上ゲト云フ物價政策ヲ、自
治團體ノ永久ノ利益ト認メテ、非募債主義
ヲ破綻セシメタト云フコトハ、是ハ如何ナ
ルモノデゴザイマセウカ、斯メ如キモノニ
起債ヲ擴ゲマシタナラバ、府縣ノ行フ所ノ
有ラユル事業ニ對シテ結局起債ヲ許ス外ハ
ナイト思ヒマス、次ニ農林省ノ通牒ニ依リ
マシテ、町村ノ基本財產ヲ流用シテ玄米ヲ
買上ゲタ例ハ天下ニ澤山アリマス、是ハ例
ガ澤山ゴザイマスルガ、私ハ一例ヲ擧ゲマ
ス、福井縣ニ於キマシテハ昭和五年十一月
二十九日、縣令第二十四號ヲ以テ市町村基
本財產管理監督規定ヲ改正イタシ、否、改
惡ヲ致シ、從來市町村ノ基本財產ハ嚴重ニ
保管管理セシメタルニ拘ラズ新タニ玄米買
入ノ爲ニ流用ノ途ヲ開キ、町村ノ基本財產
ヲ流用シテ米ヲ買上ゲシメタ例ガアルノデ
アリマス、此處ニ福井縣ノ縣令第二十四號
ヲ持參イタシテ居リマス、又福井縣ノ此市
町村基本財產管理監督規定ノ改正ノ結果、
町村ノ基本財產ヲ流用イタシテ籾ト玄米ヲ
買上ゲマシタ實例ハ此處ニ持ッテ參リマシ
タケレドモ、管ミシイカラ省キマスソコ
デ本員ハ敢テ此米價調節ヲ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
非ナリト申ス者デハアリマセヌ、何カ本員
ガ米價調節維持其モノニ反對スルガ如ク誤
解ヲサレタナラバ、本員ハ大イニ迷惑ヲ致
ス、本員ノ如キハ長崎縣ノ一農村ノ出身デ
アリマシテ、農家ノ窮狀ト云フモノハ實ニ
外ノ人ヨリモ身ニ染ミテ感ジテ居ル、此農
家ノ救濟ノ爲ニ農林省ノ事務官ノ諸君ガ能
ク御苦心ナサッテ居ルト云フコトハ本員蔭
ナガラ感謝イタシテ居ル、米價調節其モノ
ニ付テ何等不平ハゴザイマセヌガ、併ナガラ
米穀法ノ精神ニ照シ、又米穀法立法當時ノ
議會ニ於ケル質問應答ノ狀況ヨリ見マシ
テ米價ノ調節維持ト云フモノハ專ラ米穀
特別會計ノ運用ニ俟ツベキモノニシテ、府
縣ノ罹災救助基金、若クハ町村ノ基本財產
マデ之ヲ使ヒ込ムト云フ趣旨デハナイト云
フコトハ明瞭デゴザイマス、政府當局ハ目
的ノ爲ニ手段ヲ選バズ、米穀特別會計運用
ノ行詰リヲ地方財政ニ轉嫁イタシ、府縣市
町村自治團體ニ對シ、其職能ノ範圍ヲ超越
セシメ、損失ヲ地方費ニ轉嫁スルト云フコ
トハ是ハ本員贊成出來ナイノデアル右ノ
如キ問題ニ對シマシテ本員ハ農林大臣ヨリ
米價對策ノ御答辯ヲ伺ヒタイトハ思ハナ
1、又此土木費ニ對シテ、其事項ソレ自身
ニ對シテ內務大臣ヨリ御答辯ヲ願ハナイ、
併ナガラ主務大臣ハ斯ノ如キコトヲ致シナ
ガラ尙且ツ國ノ當然負擔スベキ費用ヲ地方
費ニ轉嫁シタル事實ナシト、斯ノ如ク仰シ
ヤル御勇氣アル否ヤ、斯ノ如キ例ヲ擧ゲマ
シタナラバ澤山ゴザイマス、國ノ當然支出
ヲ要スベキ失業救濟ノ費用ヲ、主トシテ地
方ニ負擔セシメタルガ如キ其一例デアル、
救護法ノ施行ハ本員ノ最モ〓望スル所デア
ルガ其財源トシテ東京府及大阪府ニ對シ
テ警察費ノ連帶支辨金ヲ減ジ國庫下渡金
ヲ減ズルト云フヤウナ、地方費デ支拂サセ
ルト云フコトノ一例モアル、斯ノ如キ例ヲ
擧ゲマシタナラバ枚擧ニ遑ナイ、本日ハ之
ヲ略シテ置キマス、ソコデ今囘御提案ニナ
リマシダ減稅案モ亦其例ニ漏レズ、其實例
ハ之ヲ擧グルニ其數餘リニ多キヲ苦ンデ居
ルノデアリマス併ナガラ此處ニ實例ヲ擧
ゲマスレバ國稅徴收法第五條ノ規定ニ依ル
所ノ市町村交付金ノ如キモノモ、今囘ノ改
正ニ依リマシテ昭和六年度ニ於キマシテハ
二十三万九千五百四十七圓ヲ減ジ、平年度
ニ於キマシテハ四十一万七百二十三圓ヲ減
少イタスト云フコトニ相成クテ居ル、此市町
村ノ財源ノ缺陷ニ付テ政府ハ何ノ御考慮モ
拂ハレテ居リマセヌ、大正十五年ノ稅制整
理案ガ帝國議會ニ提出サレマシタ時ハ當
時ノ政府ハ市町村交付金ノ減少ニ依ル地方
費ノ缺陷ヲ補フガ爲ニ、他ノ財源ヲ此市町
村ニ與ヘテ市町村財政ノ苦痛ヲ救濟シテ居
リマス、是ハ市町村ノ財政ニ深切ナル政府
トシテ當然執ルベキ方法ト考ヘテ居リマス
ルガ、今囘ノ市町村交付金ノ減少ニ付テハ
何等政府ニ於テハ御考ガナイ、更ニ政府ノ
言明セラルルガ如キ營業稅ノ、卽チ府縣稅
ノ營業稅ノ輕減ガ行ハルルモノトシマスレ
バ府縣制施行令第三十一條ノ規定ニ依リ
マシテ、此市町村ニ對スル交付金モ亦減少
スルモノト見ナケレバナリマセヌガ、之二
對シテ政府ハ何等ノ御考慮モ拂ッテ居ラレ
マセヌ、政府ハ尙ホ地方財政ニ付テ深切ト
誠意ヲ缺クモノト御認メニナリマセヌカ、
本員ハ以上列擧シタル事實ニ付キマシテ各
主管大臣ヨリ卽チ内務大臣、農林大臣等
ヨリ其事項其モノニ對スル御答辯ヲ要求シ
テ居ル者デハゴザイマセヌ、併シナガラ主
管大臣ハ以上ノ事實ヲ示シ、之ヲ歸納イタ
シテ尙且ツ政府ハ地方財政ヲ壓迫セル事實
ナシト仰シヤルノデアルカ、尙且ツ國家ノ
當然負擔スベキモノヲ地方經濟ニ轉嫁セシ
メタル事實ナシト仰シヤルノデアルカ尙
且ツ政府ハ地方財政ノ指導ト監督トニ誠意
ト深切トヲ缺ケル事實ナシト仰シヤルノデ
アルカ、ソレトモ主管大臣ハ潔ク前言ヲ御
取消シニナリマシテ、從前ノ地方財政壓迫
ノ事實ヲ御認メニナリ、將來此方針ヲ改善
スル意思アリト卒直ニ仰シヤル御勇氣アリ
ヤ否ヤ或ハ是ガ永年ノ政府ノ〓究ノ末ナ
リトシテ相變ラズ前ノ御答辯ヲ御繰返シ
ニナルヤ否ヤ、本員ハ只今申上ゲマシタ趣
旨ニ依リマシテ第一ノ質問ニ對スル御答辯
ニ依リマシテハ第二、第三、第四、第五、
第六、第七、第八ノ質問ニ付キマシテモ
更ニ當局ニ調査シタル材料ニ依リマシテ
證據ト事實トヲ擧ゲテ、再質問ヲ致シタイ
ト考ヘテ居ル、之ニ對シテ主管大臣ノ明瞭
ナル、而モ明快ナル御答辯ヲ求メタイト考
八 八
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=16
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017・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 長岡君ニ御答ヘ
致スガ第一ノ御尋ネハ河川港灣等ノ經費
ニ付キマシテ中央國庫デ負擔スベキ所ノモ
ノヲ地方費ニ轉嫁シテシマウ、ソレデ衆議
院デ弱者ヲイヂメルモノデハナイカト云フ
質問ニ對シテ、サウデハナイト云フコトヲ
答ヘタト云フ、大體ニ於キマシテハ河川港
灣ノ經費ヲ地方ニ轉嫁スル、此質問ニ對シ
マシテハ大體財政ノ整理緊縮ヲ致シマス
ニ付キマシテハ各方面トモ節約繰延ヲス
ルガ當然デアリマス、單リ土木費ノミ繰延
ベスル譯ニハ參リマセヌ、殊ニ金額ノ多イ
ノハ土木費デアリマス爲ニ、去リナガラ地
方ノ希望ヲ申シマスモノハドウカト申シマ
スト、地方ハ河川ニ於キマシテモ、港灣ニ
於キマシテモ、非常ニ其竣工ノ速カナラム
コトヲ希望シテ居リマス、ソレデ玆ニ中央
カラ財政ノ整理緊縮節約ヲスルト云フ大方
針ト、地方ノ一日モ速ニ河川ナリ、港灣ナ
リノ速ニ竣成ヲ欲スルト云フ所ノ要望ト
ハ玆ニ確カニ矛盾ガアリマス、中央カラ
整理節約シタイ、地方ハ一日モ速ニ竣成ヲ
希望スル、ソレデ之ヲドウシテ調和スルカ
ト云フコトガ、是ガ問題デアッテ、ソコニ政
治ノ妙諦モアルト私ハ考ヘテ居ル、大方針
トシテハ整理節約ヲスル、御話ノ通リニソ
レハ或ル場合ハ技師モ遊バセル、機械ヲ錆
ニスル、成ルベクサウ云フコトノナイヤウ
ニ致シマスケレドモ、極端ニ言ヘバサウ云
フコトガアッテモ、茲ニ根本方針トシテ、國
家ノ財政ノ整理緊縮ヲスルト云フ以上ハ
御尋ノヤウナコトガアッテモ已ムヲ得ヌ、ソ
コ迄ノ決心ガナケレバ根本的ノ整理節約ハ
出來マセヌ、ソレデ一方ニハ整理節約ヲス
ルト云フコトト、地方ノ希望ハ非常ナ痛切
ナ希望ガアル、其希望ヲ若干滿タスト云フ
コトノ、卽チ相互ノ調和ヲ圖ラネバナリマ
セヌカラ、ソレデ御尋ノヤウナコトハ、或
ハ地方負擔ヲ繰上ゲマシテ、サウシテ是マ
デノ年度ヲ變更イタシテ、先キニ地方費ヲ
出スコトヲ許シタ所ガアリマス、是ハ其地
方ハ皆起債ノ力ガアリマシテ、此起債ヲ先
キデ爲サネバナラヌモノヲ、ソレヲ幾年カ
繰上ゲテ今日其起債ヲ致シマシテモ、其地
方ハ決シテ負擔ニ於テ困ルコトハナイト云
フ負擔力ノ確カニアル所デアリマスカラシ
テ、是ハ此土木行政ニ於テ、私ハサウ云フ
コトヲスルノモ已ムヲ得ナイト考ヘテ居
ル、決シテ、中央ノ負擔ヲ地方ニ轉嫁シテ、
中央ハ無責任ナコトヲスルデハナイカト云
フ御問ヒデスガ、幾年カノ後ニハ必ズ國庫
カラ之ヲ負擔スルコトハ當然ナコトデアリ
マスカラ、決シテ無責任ナコトデハアリマセ
ヌ、又地方ハ十分起債スルノ負擔力ガアル
ト云フコトヲ確メマシテ、又其起債ハ決シ
テ無用ニナラナイト云フコトガ的確ニ分リ
マシテ、サウシテ之ヲ許シテ居リマスカラ、
地方ハ是デ元ノ計畫通リニ參リマセナクト
モ、今日ノヤウナ財政窮乏ノ間ニ於テ、自
分ノ要望スル所ノ港灣ナリ河川ナリガ速ニ
出來ルト云フコトハ大變喜ンデ居リマス、
ソレカラ第二ノ御問ヒデアリマス、罹災救
助基金ノコトデアリマスガ是ハ最後ニ御
讀上ゲニナリマシタ通牒ガ事實デアリマシ
テ、罹災救助基金ヲ以テ直ニ米及籾ヲ買入
レルト云フヤウナコトハ致シタコトハア
リマセヌ、罹災救助基金ノ性質ハ能ク承知
イタシテ居リマス、唯地方カラサウ云フコ
トヲシタイト云フヤウナ要望ノアリマ
ス爲ニ、ソレデ誤ラザルヤウニ注意イタ
シマシテ通牒ヲ出シテ置キマシタガ、
ソレハ御朗讀ノ通リノ通牒デアリマシテ、
罹災救助基金デ米及籾ナドヲ買入レタコ
トハアリマセヌ、其罹災救助基金ヲ府縣
會又ハ參事會ナドデ借入ノ決議ヲ致シマシ
テサウシテ農村ノ疲弊困憊ガ其極點ニ達
シテ居ル、其疲弊困憊ノ極點ニ達シテ居ル
所ノ萬々已ムヲ得ザル所デ其救濟ヲ致シタ
イト云フ考カラ、低利ノ罹災救助基金ヲ利
用スルト云フヤウナコトハソレハ差支ハ
ナイト云フ意味ノコトニナッテ居リマスカ
ラ、敢テ罹災救助基金ノ其性質ヲソレガ爲
ニ壞ハスヤウナコトハアリマセヌ萬一損
失ガアッタ場合ハ府縣ガ其損失ハ負擔イタ
シマスカラ、罹災救助基金ニハ何等ノ損失
ヲ與ヘルコトハ萬々ナイノデアリマス、福
井縣其他ノ御尋ノコトニ付キマシテハ農
林省ノ方ノ調ガアルト考ヘマスガ私ノ方
ニハ分シテ居リマセヌカラ、是ハ後デ取調べ
マシテ私カラ御答ヘ致シマスカ、又ハ農林
大臣カラ御答ヘ致スコトガ相應シイト考ヘ
マス、ソレカラ失業救濟ニ關シテ、地方ニ
事業ヲ起サシメテ、サウシテ國家ハ之ヲ負
擔セヌト云フヤウナ御尋ガアリマシタガ、
是モ失業救濟ノ爲メ、已ムヲ得ザルト認メ
マシテ事業ヲ起スコトヲ許シテ居リマス、
併シ其事業タルヤ、各地方ニ於キマシテ、
多年其事業ノ起工スルコトヲ要望シテ居ル
問題デ、決シテ失業救濟バカリノ爲デ其事
業ガ地方ノ用ニ立タナイコトハ萬々アリ
マセヌ、皆地方ガ多年要望シテ居ル所ノ事
業ヲ特ニ選ビマシテ、サウシテ失業救濟ノ
爲ニ起債ヲ許シ、起工スルコトヲ許シテ居
リマスカラ、此點カラ言ヒマシタラバ一擧
兩得ト申シテ宜シウゴザイマスカ、其爲ニ
失業者モ救濟サレル、無論失業ノ防止ニハ
ナリマスガ、殊ニ地方ノ產業ノ發展ニモ其
事業ハ裨益スル所頗ル大デアリマスカラ
決シテ失業救濟ヲ地方ニ轉嫁シテ、地方ヲ
壓迫スルヤウナコトハアリマセヌ、是モ各
町村トモサウ云フ起債ヲ致シマス所ノ其力
ヲ調ベテ、十分起債ノ力ガアルト云フコト
ヲ確メテ、又其事業ノ性質、將來ノコトナ
ドモ考慮ヲ致シマシテ、之ヲ許可ヲシテ居
リマスルカラ、何等ノ不都合モナイト考へ
マス、ソレカラ今度ノ減稅案ニ付キマシテ、市
町村交付金ノ減少ニ依ル市町村費ノ缺陷ニ
ハ何故手ヲ著ケナイカト云フコトデアリマ
スガ、ソレハ國稅府縣稅ノ徵收事務ガ減少
イタシマス爲ニ、交付金ヲ增加スルノ必要
ハナイト考ヘテ居リマス、大體御尋ノ意味
ハ盡セタカト考ヘマスカラ、此段御答ヘ申
上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=17
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018・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 甚ダ簡單デゴザイマスル
カラ、當席ヨリ御質問ノ御許シヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=18
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019・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=19
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020・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 只今國務大臣ノ御答辯ヲ
伺ヒマスルト云フト、單ニ本員ノ質問ノ趣旨
ヲ御諒解ニナッテ居ラザルノミナラズ、甚ダ
失禮ナコトヲ申上ゲマスガ、本員ノ質問ノ
趣旨ヲ御諒解ニナリマスル基礎的ノ御知識
モ亦缺ケタルヤニ拜承イタスノデアリマ
ス、是ハ他日或機會ヲ得マシテ、御諒解ヲ
願ヒ易イヤウナ言葉ヲ以テ、他日御質問ヲ
申上ゲルコトト致シテ、本日ハ當席ニ於キ
マスル此問題ニ對スル質問ヲ打切リマス
尙ホ本員ハ只今質問ヲ致シマシタ八項ノ間
題ノ中ニ外ノ二三ノ問題ニ付テ、卽チ此減
稅案ノ贊否ヲ決スルニ付テ、濱口總理大臣
ヨリ御答辯ヲ直接願ヒタイヤウナ問題ヲ
持ノテ居ルノデアリマス、是ハ本日申上ゲマ
セヌ、私ハ同僚花井卓藏君カラ申上ゲマシ
タヤウニ、强ヒテ此御負傷後ノ又此御衰
弱ニナッテ居ル濱口總理大臣ニ對シテ、御登
院ヲ願フト云フヤウナ考ハ本員個人トシ
テハ毛頭持ッテ居リマセヌ、是ハ花井君ノ御
考ト同樣デゴザイマスルカ、併ナガラ幣原
國務大臣ハ其コトヲ能ク考慮イタシタ上ニ
近日、三月上旬ニ濱口總理大臣ハ登院セラ
ハ斯ウ云フ御答辯デゴザイマシタガ故
ニ、卽チ濱口總理大臣ハ貴衆兩院議員ニ對
スル答辯ハ質問應答ニ耐ユルダケノ
健康ヲ囘復サレテ、三月上旬、卽チ遲クモ
三月十日迄ニハ御登院ニナル、斯ウ云フ御
趣意ト承リマスルガ故ニ、本員ハ此減稅案
ノ贊否ヲ決スル重要ナ二三ノ問題ニ付キマ
シテハ、濱口總理大臣ガ三月十日マデニ御
登院ニナッタ時ニ於キマシテ、或ル機會ヲ得
マシテ御許シヲ得テ更ニ質問ヲ致シマシテ
之ニ依ッテ本員ノ贊否ヲ決シタイト考ヘテ
居リマス、本日ハ之ヲ以テ質問ヲ打切リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 池田男爵
〔男爵池田長康君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=21
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022・池田長康
○男爵池田長康君 本員ガ此減稅案ノ法律
案ガ提出サレマシタ際伺ヒマス點ハ二箇ノ
點デアリマス、一ツハ此減稅ガ起リマシタ
原因ハ倫敦條約ノ締結ノ結果デアリマシテ、
サウシテ此海軍ノ保留財源ニ剩餘ガ出ル、
ソレヲ以テ減稅ニ充テラレル、斯ウ云フコ
トデアリマス、故ニ此國防ニ關係致シマス
ル點ガアリマスルカラ、其點ニ付キマシテ、
卽チ根本ノ問題ニ付キマシテ、聊カ御尋シ
ナケレバナラヌ法理論デアリマス、他ハ此
財源、減稅ヲセラレル所ノ財源ニ關スル問
題、此二箇ノ問題ヲ以テ御質シタイト思
フノデアリマス濱口內閣成立以來此本議
會ニ於キマシテノ御演說又ハ御答辯ヲ拜聽
致シマスルト、甚ダ遺憾ナル點ガ多イノデ
アリマス、殊ニ法理論的ニ至リマシテハ支
離滅裂ト申シテモ私ハ差支ナイト思フ位ナ
御答辯デアルノデアリマス、昨年ノコトデ
アリマス、又本年ノ議會ニ於キマシテモ、
如何ナルコトヲ言ハレタカ、彼ノ斟酌ノ間
題ノ如キ、是ハ最早私ハ論議致シマセヌ、
諸君ノ御判斷、又ハ國民一般ガ此政府ノ答
辯ヲ以テ滿足スル者ハ一人モナカラウト思
フノデアリマス、又昨年實行豫算ニ關スル
法理論ヲ致シマシテ違憲ナリト云フコトヲ
申述ベタ本年ハ亦桑山君ガ此演壇ニ於テ
同樣ノコトヲ述ベラレテ居ル、之ニ對シマ
シテモ、是ハ桑山君ガ保留サレテ居リマス
ガ、何レ此御答辯モアル筈ト本員ハ期待シ
テ居ルノデアリマス、併シ此御答辯ニ對シ
マシテモ、私ハ今マデノ御答辯ハ誠ニ牽强
附會ナル御說デアルト私ハ信ジテ居ル又
奉答文ニ關スル問題此問題ニ付キマシテ
モ當局ノ御辯明ト云フモノハ、誠ニ筋ガ立ッ
テ居ラヌノデアリマス、是ハ共起リガ、
幣原首相代理ニ於カレマシテ、私ハ、過去.
アヽ云フ御答辯ノアッタモノダト思フ、其結
果過レルコトヲ訂サヌ、又責任ヲ問ハレル
ト云フコトノ結果、知ラザルト云フコトヲ
以テ何處マデモ押通サウトカト考ヘラレテ
生ズルトノ辯明ガ、是ガ支離滅裂ナルノハ當
然デアリマス、斯樣ニ種々ノ此憲法ノ本
義又ハ此重要ナル國家政務ノ基本ノ法規
ニ付テノ御解釋ガ支離滅裂ニ相成リマス事
柄ハ政治ヲ行ヒマス上ニ、立憲政治ヲ行
ヒマス上ニ、政治ノ途筋ヲ立テマス上ニ於
キマシテ、甚ダ遺憾ナコトデアルト思フノ
デアリマスソコデ本員ハ又別箇ク見地ヨ
リ砌カ此際ニ於テ政府當局ノ意見ヲ質シ
タイト思フコトガアルノデアリマス、併ヲ
ガラ首相代理ニ於カレマジテモ、亦海軍大
臣ニ於カレマシテモ、法理ノ專門家デアラ
レルソデアリマセヌ故ニ質問ヲ致ス者モ
其點ニ付テハ相當ノ考慮ヲ拂ッテ質問セナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス之ヲ强
セテ御當人ノ答辯ヲ得ント致シマスルト間
違ガツコニ出テ來テ、サウシテ是正セラレ
ルト云フコトヨリハ、一旦言フタラ取消ス
コトガ出來ヌト思フテ、過チハ過ヲ以テ進
ンデ行カレルト云フ弊害ガ出ルノデアリマ
ス、故ニ本員モ亦、反省シテ、是ハ內閣ニ
於牛マシテハ法制局ナリ立派ナル法理ニ關
スル所ノ機關ガアルノデアリマス、又長官
モ居ラレルノデアリマスルカラ、先ヅ以テ法
理上ノ見解ニ付キマシテ、現內閣ガ如何ナ
ル法理上ノ解釋ヲ持ッテ居ラレルカト云フ
コトニ付キマシテハ法制局長官ノ御意見
ヲ徵スルト云フコトガ、最モ適當ダト思フ
ノデアリマス、唯ソレヲ如何ニ行ッテ居ラ
レルカ、如何ニ之ヲ履行シテ居ラレルカト
云フ事實問題ニ付キマシテハ其局ニ當ラ
レル所ノ國務大臣ニ質サナケレバナリマセ
又、故ニ先ヅ本員ハ最初ニ法制局長官ニ御
尋シヤウト思フノデアリマス、此コトハ去ル
豫算總會ニ於キマシテ、本員ガ委員外ノ發
言ヲ許可サレテ御尋致シマシタ時ニモ、ド
ウカ國務大臣ノ法理ニ關スル御答辯ニ付キ
マシテハ法制局モアルコトデアリマスルカ
ラ能ク御打合セノ上ニ間違ヒノナイ御答
辯ヲ顧ヒタイ、或ハ積極ノ論、或ハ消極ノ
論、兩論ガアリマシテモ、自カラソコニ筋
途ノ立ックル所ノ御論ヲ承ハラナケレバ數
治ガ紊レルノデアリマス、散ニ只今玆ニ私
ハ法制局長官ニ先ヅ以テ御尋シテ置キタイ
ト思フノデアリマス、サウシテ本員ガ此質
問ヲ致シマス目標ハ何處ニアルカト云フコ
トヲ一應御參考ニ申土ゲテ置カナケレバナ
ラヌソレハ此度愈、此兵力量ノ決定卽チ
統帥事項ニ於キマシテハ確立致シタノデア
リマス是ハ結構デアリマス併ナガラソ
レニ議論ガ走ッタ爲ニ又政府ノ施設ガ之ニ
注意ヲシ過ギタガ爲ニ、總理大臣タル身分
ヲ有スル國務大臣ノ權限ガ曖昧ニサリツツ
アルノデアリマス、本員ハ一面ニ於テ就帥
事項ノ確立ヲ要求スルト同時ニ輔弼論總
理大臣ノ輔弼ノ責任ニ對スル所ノ責任ノ誠
ニ重大ナリト云フコトヲ私ハ考ヘザルヲ得
ヌ其點ニ付テ過日來ノ御答辯ニ依クテ聊
カ本員ハ疑惑ヲ抱ク者デアリマス、此目約
ヲ十分、政府ノ答辯ニ依。ッテ解決致シテ置
キタイノハ此際ニ於ケル法制局長官ニ御
質シ致ス所ノ目的デアルノデアリマス、ソ
コデ本員ガ御尋ネ致シマス事柄ハ抽象的ニ
御尋ハ致シマセヌ、先ヅ內閣官制第七條、事
ノ軍機軍令ニ係リ奏上スルモノハ天皇ノ旨
ニ依リ之ヲ內閣ニ下付セラルルノ件ヲ除ク
外陸軍大臣海軍大臣ヨリ內閣總理大臣ニ報
告スヘシ」トアリマス、ソコデ此條文ヲ素
直ニ解釋イタシマスルナラバ、事ノ軍機軍
令ニ關スルモノハサウシテ上奏イタシタ
ルモノハ、内閣總理大臣ニ報〓セナケレバ
ナラヌノデアリマス、「報〓スヘシ」トアリ
マン、然ルニ首相代理其他ヨリ御答辯ニ依
リマスルト國務ニ關セザルモノハ報告シ
ナクテモ宜シイト云フ慣行ニ相成シテ居ル
ト云フコトデアリマス、ソコデ第一ニ伺ヒ
タイノハ、此官制第七條ニ於キマシテ條
件ハ附シテナクシテ單ニ事ノ軍機軍令ニ係
ハルトアリマス、是ハ國務ニ關係アル所ノ
軍機軍令トハ書イテナイノデアリマス、ソ
レヲ慣習上此解釋ヲ國務ニ關係セラルルモ
ノトセラレテ居ルト、斯ウ云フ御說明ノヤ
ウニアリマスルガ、其點ニ付テノ御說明ヲ
煩ハサナケレバナラヌ、次ニハ官制第七條
ニ「奏上スル」トアリマス、其奏上ト云フ事
柄ハ海軍大臣陸軍大臣ノ奏上、其事ヲ意
味スルノデアリマスルカ否ヤ、此二點ニ付
テ法制局ニ於テハ如何ナル解釋ヲ有シテ居
ラレルカ、次ニ御尋ネ致シマスル問題ハ
軍事參議院會ノ奉答、軍事參議院會ニ於キ
マシテハ諮詢ヲ待ッテ之ニ御答申土ゲルノ
ガ官制ニアル通リデアリマス、法規ニアル
通リデアリマス此軍事參議院會ニ於ケル
所ノ此上奏ハデス、此官制第七條ニ依ルモ
ノデアルヤ否ヤ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=22
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023・議長(公爵徳川家達君)
○議長(公爵徳川家達君) 池田男爵··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=23
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024・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 只今議長ヨリ本案ニ城
ルベク關係ノアルヤウニ本案ヨリ說シナ
イヤウニト云フ御注意ガアリマシタ斯樣
ナ御注意ガアリマセウト云フコトハ存ジ上
ゲテ居リマシタノデアリマス、併シ此財源
問題ヲ御尋ネ致シマス上ニ於キマシテハ
此法理上ノ關係ヲ私ガ承シテ置キマセヌト、
財源ノ質問ニ至リマシテ質問ガ出來ナイヤ
ウニナリマスノデ、暫クノ間御〓聽ガ顯ヒ
タイ、ソコデ此軍事參議院會ノ此上奏ナル
モノハ、内閣官制第七條ニハ、無關係デアルノ
デアリマスルカ否カ、ト云フコトノ御答辯
ヲ先ヅ以テ私ハ伺ヒタイノデアリマス
〔政府委員川崎卓吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=24
-
025・政府委員(川崎卓吉君)
○政府委員(川崎卓吉君) 池田男爵ノ御質
間ニ御答イタシマス、官制第七條ハ只今御
讀上ゲニナリマシタヤウニ、「事ノ軍機軍令
ニ係リ上奏スルモノハ天皇ノ旨ニ依リ之ヲ
内閣ニ下付セラルヽノ件ヲ除ク外陸軍大臣
海軍大臣ヨリ內閣總理大臣ニ報〓スヘシン
斯ウナッテ居ルノデアリマス、之ヲ文字通リ
ニ解釋イタシマスルト池田男爵ノ言ハレ
ル如クニ事ノ軍機軍令ニ關スルモノデ、
天皇ニ上奏シタモノハ、御下付ニナルカ
或ハ軍部大臣カラ報告アルカドチラ
アル、新ウ云フ風ニ 、文字通リニラカデ
スレバサウ云フコトニナッテ居ルノデアリ
マス併シ事實今日迄ノ解釋、今日迄ノ
慣行ニ依リマスルト云フト此軍機軍令ニ
關シテ上奏シタモノデアリマシテ、御下付
ニモナラズ又軍部大臣カラ報〓ニモナラ
ヌモノガ澤山アルノデアリマス、簡單ナモ
ノヲ申シマスレバ、特命檢閱使ノ檢閱シテ
上奏サレル、是ハ御下付ニモナラズ報〓
もうえへへえ
モナイ、ソレハ簡單デアリマセウガ又是
ヨリ重大ナモノデアッテ、御下付ニモナラズ
又報告セラレヌト云フモノガ澤山アルノデ
アリマス、ソレガ今日迄ノ慣行ニナッテ居
ルノデアリマスルガ、其慣行ノ生ジタノ
ハ、上奏サレタ軍機軍令ニ關スルモノデアッ
テモ、國務ニ關係アルモノヲ御下付ニサリ
或ハ軍部大臣カラ報告スルト云フヤウサ風
二、此條文ヲ解釋シ來ッテ居ルノデアリマ
スソレデ御問ノ、條件ガ附シテナイ··
國務ニ關係アリト云フ條件ガ附シテナイ
ガ何故國務ニ關係アリト云フカト云フ
クガ第一點ノ御間デアッタヤウニ思フノデ
アリマスルガ、只今申シマシタ如ク、文字
通リニ申シマスレバ條件ハ附シテアリマセ
次、併シ今日迄ノ解釋、今日迄ノ慣行ハ、
國務ニ附シタル···國務ニ關係アルモノト
云フ風ニ、之ヲ解釋シ來ッテ居ルノデアリマ
ス、是ハ恐ラク精神上カラノ斯ウ云フ解釋
ニナリ來ッテ居ルモノト思フノデアリマス、
ワレカラ奏上ハ海軍大臣陸軍大臣カト云フ
御話デアリマシタガ、是ハ帷幄機關ノ奏上
ハ總テ之ニ這入ッテ居ルモノト考ヘテ居リ
ママ、從ッテ今囘ノ軍事參議院ニ於ケル上
奏モ、此七條上奏ノ中ニ入ッテ居ルモノト
解釋イタシテ居リマス、左樣御承知ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=25
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026・議長(公爵徳川家達君)
○議長(公爵徳川家達君) 池田男爵ニ伺ヒ
マスガ池田男爵ノ御質議ハ大分長ク相成
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=26
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027・男爵池田長康君
○男爵池田長康君 相當長クナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=27
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028・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) モウ一遍願ヒマ
ス
0男爵池田長康君相當長ク相成リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=28
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029・議長(公爵德川家達君)
○議長(公爵德川家達君) 定足數ニ缺ケル
虞ガゴザイマスカラ、御異議ガナケレバ本
日ハ是デ延會イタシタイト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=29
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030・護長(公爵德川家達君)
○護長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ
決定次第御通知ニ及ビマス、本日ハ之ニテ
散會
午後三時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02519310304&spkNum=30
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