1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月五日（木曜日）午前十時三十二分開議
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議事日程 第二十六號
昭和六年三月五日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第二十三日）
第二 地租法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 營業收益税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 砂糖消費税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 織物消費税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 大正十五年法律第二十四號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 都市計畫法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨四日政府ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレ
タル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第五十九囘帝國議會內務省所管事務政府
委員
社會局部長大野綠一郞君
同石原雅二郞君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第六囘報〓)
本日第四部ニ於テ請願委員藤安辰次郞君ノ
補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果根本祐太郞君
當選セリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、本日モ議事日程變更ニ關シ
テ御諮リヲ致シマス、本日モ日程第一ヲ第
八ノ終リニ〓シタイト存ジマス、御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二ヨリ第
八第一讀會、池田男爵
〔男爵池田長康君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=4
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005・池田長康
○男爵池田長康君 昨日私ハ質疑ヲ致シマ
シテ、法制局長官ノ御答辯ヲ煩ハシタノデ
アリマス所デ本員ガ少シ自分ノ質問ニ付
テ考ヘテ見マスルト、減稅案其モノト聊カ
緣ノ遠イ議論ヲ、又質疑ヲ致スヤウニ考へ
ラレマスノデ、此問題ハ他日ノ機會ニ讓リ
マシテ、今日ハ財源ニ關スル質疑ヲ致シタ
イト思フノデアリマス、但シ此昨日來質疑
ヲ致シマスル法理論ハ、私ハ他日ノ機會ニ
必ズ御尋ネ致ス考ヘデアルノデアリマス
就キマシテハ其時ノ御答辯ノ御便宜ノ上
ニ一應政府當局ニ御參考ニ一言申上ゲテ
置キマス、昨日法制局長官ノ御答辯ニナリマ
シタル內閣官制第七條ノ御解釋ニ付キマシ
テハ本員ハ意見ヲ異ニ致シテ居リマス、
其點ヲ指摘イタシマシテ次ノ機會ニ御尋ネ
筋ノ通ッタ御議論、又政府ハ一致シタル御議
論デ御答辯ノ御用意ノアルコトヲ玆ニ希望
イタシマシテ、暫ク此問題ハ此機會カラ保
留イタシテ置キマス、此度減稅ニ關スル所
ノ法律案ガ我ガ貴族院ニ上程サレタノデア
リマスルガ此財源其モノガ何カラ生ジタ
カト申シマスルナラバ、國務大臣ノ御說明
ノ如ク、是ハ倫敦條約ノ結果ニ依ヶテ國防上
ニ剩餘金ヲ生ジタ、卽チ保留財源カラ剩餘
金ヲ生ジタ、ソレヲ以テ減稅ニ充テルト云
フ御說明デアルノデアリマス、ソコニ本員
ハ疑ヲ持ツ、減稅案ノ上程サレマシタ際ニ
於キマシテ、此點ハ尙ホ明カニ私ハ致シテ置
キタイト思フノデアリマス、海軍ノ保留財
源ガ如何ナルモノデアルカト云フコトハ姑
ク措キマシテ、昭和十一年度末マデニ五億
八百万圓ノ財源ガアル、海軍ノ爲ニ保留サ
レタ所ノ財源ガアル、是ハ財政計畫ノ立前
デアリマスルガ、左樣ナ立前ニナッテ居ルノ
デアリマス、サウシテ我ガ海軍國防ノ上ニ
於テ、不安ナキコトヲ計畫サレタノデアリ
マス、然ルニ此度倫敦條約ノ結果ト致サレ
マシテ、補充計畫トシテ三億七千万圓、又
減稅ノ財源トシテ一億三千万圓、此二ツニ
分ケラレタノデアリマス、然ルニ委員會竝
ニ本會議又衆議院等ニ於カレマシテ、當局
ノ御說明、殊ニ海軍大臣ノ御說明等ヲ拜聽
イタシマスルト、遺憾ナガラ此點ニ於テ尙
ホ明確ヲ缺ク所ガアルノデアリマス、併ナ
ガラ結論ニ至リマスト、昭和十一年度以前
ニ於テ、尙ホ海軍國防ノ上ニ於テ要求サル
ベキモノガアルト信ゼラレル節ガアルノデ
リマスケレドモソコニ相當ノ附加ヘルト
云フモノハ、ドウシテモ矢張リ必要デアル
ノデアリマスルカラ、是ハ昭和十一年度以
前ニ於テ著手ヲスル希望ト、必要ハ十分持。ツ
テ居ルト云フ、斯ウ云フ意味デアリマス」、
其他ノ機會ニ於キマシテ、或ハ艦船技術上
ノ職工其他ノ關係カラ維持スル所ノ費用ヲ
要シ又新造艦ニ對スル所ノ維持費ノ要ス
ルト云フコトモ明白ニナッテ居ルノデアリ
マく、ソコデ如何ニ海軍大臣ガ此保留財源
ノ一部ヲ放棄セラレ······海軍側カラ申シマ
スルト放棄セラレルノデアリマス、放棄サ
レマスル事柄ニ付テノ、ソレデモ構ハヌト
云フ風ナ御理由ト致シマシテハ、外國ノ情
勢ガドウナルカヲ見ナケレバナラヌ、外國
ガ條約ヲ完全ニ履行シテ來ルカドウカヲ見
ナケレバナラヌト云フ意味デアリマセウ、
又日進月步ノ此世ノ中ニ於キマシテ技術上
ノ進步モ考ヘナケレバナラヌ、仍テ實行計
畫ト云フモノハマダ定メテ居ラヌ、故ニ其
時期ト云フモノモマダ定マッテ居ラヌ、故ニ
此經濟上ノ狀況ニ依ッテハ保留財源ヲ減稅
ニ差向ケルコトモ差支ヘナイ、斯ウ云フ御
議論ノヤウニ考ヘルノデアリマス、又サウ
仰セニナッテ居ルノデアリマス、又國防ノ缺
陷モ答辯ニ於テハ國防ノ缺陷ハナイト、斯
ウ仰セラレテ居ルノデアリマス、併ナガラ
是ハ一面ニ於キマシテ誠ニ筋ノ通ッタ御議
論デアルカノヤウニ見エマスケレドモ、其
一枚皮ヲハグッテ考ヘテ見マスルト、是ハ私
ハ御辯明ニハナラヌト思フ、卽チ海軍保留
財源ヲ放棄サレル所ノ御理由ニナラヌト思
フノデアリマス、將來殊ニ昭和十一年度以
前ニ於キマシテ、海軍大臣自ラ言ハレタヤ
ウニ、豫算ノ提出ヲ希望モシ又必要ヲ感ゼ
ラレテ居ルノデアリマス、少クトモ是等ニ
對シマシテハ、國防實施計畫ガ未決定ノモ
ノデアルノデアリマスマダ確定イタシテ
居ラヌノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ申シマ
スナラバマダ必要ガナイト斷定ハ出來ナ
イノデアリマス、必要デアルカモ知ラヌ、
必要デアルカモ知ラヌト云フ可能性ガ多イ
ノデアッテ、不必要ナリト斷定スルコトハ出
來ヌノデアリマス、此未確定ノ國防計畫ニ
於テ、未確定ナ此際ニ於テ此保留財源ヲ放
棄サレルト云フコトノ意味ガ分ラヌ、御精
神ガ分ラヌノデアル、愈〓是ガ必要ガ無ク
ナッタ、卽チ是ダケノモノハ金額ガ必要ハ
ナクナッタト云フ時ニ於テ、初メテ減稅ノ案
ヲ御立テニナルコトガ當然デアル、是ガ健
全デアル、國防ノ上ニ於テモ健全デアルノ
ミナラズ、財政計畫ヲ立テル上ニ於テモ健
全デアルノデアリマス、然ルニマダ是ガ確
定セヌ、未確定ノ間ニ於テ減稅、卽チ減稅
ヲ一度イタシマスルナラバ、恆久的ニ一般
歲入ニソレダケノモノハ入ッテ參ラヌノデ
アリマス、言葉ヲ言ヒ換へルナラバ、減稅ノ
財源ハ永久ニナルノデアリマス、此點ニ付キ
マシテ私ハ海軍當局ガ保留財源ヲ放棄サレル
所ノ御精神ガ分ラヌノデアル、愈〓之ガ必要ガ
ナクナッタト云フ場合ニ於テ、減稅サレルト
云フコトヲ承認セラレテモ宜イカモ知レ
又、爲ルニ未ダ要ルカモ要ラヌカモ分ラヌ
保留財源ガ海軍ノ爲ニ存シテ居ルノデアル、
マダ未確定ノ間ニ之ヲ放棄サレルト云フコ
トノ御精神ガ私ニハ分ラヌ、又保留財源ナ
ルモノハアレハ預金部ニ、此處ニ現金ト
ナッテ五億八百万圓ガ預金デモサレテ居ル
ト云フ觀念ヲ持クテハ相成リマセヌ、ソレナ
ラバ此一兩年ノ間必要ガナイノナラバ之
ヲ以テ何カノ國民ノ負擔輕減ヲ圖ル途ニ之
ヲ充當スル、金ヲ遊バスト云フコトナシニ
之ヲ動カスト云フコトモ考ヘラレマセウ、
併ナガラ此保留財源ナルモノハ御承知ノ通
リニ年々國庫ノ歲入カラ是ダケノモノヲ別
除シテ置クト云フ財政上ノ立前ニ過ギナイ
ノデアリマシテ、今日茲ニ五億八百万圓ガ
存在シテ居ルノデハナイノデアリマス、故
ニ尙更ニ此問題ヲ未確定ノ間ニ於テ處分ノ
案ヲ議スルト云フコトハ私ニハ分ラヌノデ
アリマス、又假リニ玆ニ昭和九年度迄位ニ
於キマシテ此國防計畫補充ノ必要ハナイト
致シマスナラバ今日ノ財政、財界ノ樣子
ニ依リマシテ、國民負擔ノ輕減ヲ圖ルガ爲
ニ、之ヲ或ハ臨時緊急ノ費途ニ、或ハ救濟
ノ事業ニ之ヲ投ズル、充當スルト云フガ如
キデアリマスルナラバ臨時、一時的ノモ
ノデアリマスルナラバ、マダ國防計畫ノ將
來要ルカ要ラヌカノ確定スル迄、其金額ヲ
以テ國民負擔ノ輕減ヲ圖ルト云フコトデア
ルナラバ、意味ハ通ルノデアリマス、併ナ
ガラ之ヲ減稅ノ如キ恆久的ノ財源ヲ要スベ
キ所ノモノニ充當セラレルト云フ事柄ハ
度ミ繰返シマスケレドモ、本員ハ意味ガ分
ラヌノデアリマス、併ナガラ若シ之ニ代ル
ベキ財源ガ外ニ目安ガ付イテ居ルト云フコ
トデアリマスルナラバ是ハ別論デアリマ
ス、ソコデ本員ハ御尋ネ致シタイノデアル、
一般行政整理ヲサレマシテ必要ヲ生ジタ
ル場合ニ於テ補充計畫ニ對スル所ノ財源ヲ
御求メニナルノデアリマスルカ、又公債ヲ
募集シテ之ニ充當サレルノデアリマスル
カ、又必要デアル······此國防上必要ト相成ッ
タ場合ニ於キマシテハ國防關係デアリマ
スルカラ絕對ニ必要ナモノト相成ルノデア
リマス、故ニ增稅ヲセラルル御考デアリマ
スルカ、又經濟界ノ復活ヲ俟ッテ自然增收ノ
來タルコトヲ目安ト致サレテ居ラレルノデ
アリマスカ、外ニ何カ必要ヲ生ジテ來タ場
合ニ於テ、減稅ニ此度仕向ケタモノニ變ル
ベキ財源ノ目安ヲ御持チニナッテ居ルノデ
アリマスルカドウカ、マダ此補充計畫ノ實
施モ確定ハ致シテ居リマセヌ、ケレドモ既
ニ海軍大臣ハ其希望ト其必要ヲ認メラレテ
居ルノデアリマス、唯實施ノ計畫ヲ今日立ッ
テ居ラヌト云フダケデアル、必要ノ金デハ
十分デアルノデアリマスルカラ、玆ニ海軍
ノ爲ニ保留財源ノアルモノヲ放棄スル場合
ニ於テハ、ソレダケノ財政上玆ニ目安ガナ
ケレバナラヌ、自然增收デアリマシテモ·····
此財政上ノ狀況ニ於キマシテハ年々國庫
ノ歲入ガ減ルト云フヤウナ狀況デアリマ
ス此數年ノ間、自然增收ヲ必シモ期待シ
テ計畫ヲ立テルト云フコトハ危險デアリマ
ス、又繰越ノ事業ガ澤山殘ッテ居リマス、是
等モ又シナケレバナラヌ情勢ニアルノデア
リマス、故ニ自然增收ト云フモノニ期待ス
ルコトハ多クハ出來ヌノデアリマス、又行
政整理、之ニ依ッテ費額ヲ產ミ出スト云フコ
トモ必要デアリマセウケレドモ、此社會上
ノ進步ノ狀況ニ適應スル爲ニ、社會的施設
ノ必要ガアルノデアリマスルカラ是モ亦
期待ハ出來ヌノデアリマス、又公債募集、
此現內閣ノ方針トセラレマシテモ可能デ
アラウカ、此處デ御述べニナッテ居ル通リ、
非募債主義デ原則ハ立ッテ居ラレル、殊ニ不
生產的ナル國防計畫ノ爲ニ公債ヲ募集セラ
ルルト云フコトハ我〓ハ期待出來ヌノデア
リマス、然ラバ巳ムヲ得ヌ、國防上巳ムヲ
得ヌカラシテ、更ニ增稅ニ依ル外ハナイト
云フ結論ニナル、將來若シ必要ガアッタ場合
ニハ增稅ヲスルト云フコトニ、事柄ガ歸結
シテ相成ルト云フコトガ想像サレル、然ラ
バ今日減稅ヲスルト云フコトト、相矛盾ス
ルコトガ此數年ノ後ニ於テ生ズルコトハナ
イカ、之ヲ私ハ憂フルノデアリマス、卽チ
是ハ失禮ナ申シヤウデアリマスルケレド
モ、減稅ト云フ美名ノ下ニ政策ヲ立テラレ
テ、サウシテ其實質ハ誠ニ貧弱ナル、サウ
シテ言葉ヲ荒立テテ申シマスルナラバ、羊
頭ヲ懸ケテ狗肉ヲ賣ルト云フ批判ヲ下シテ
モ差支ナイ、世間ヲシテ減稅ト云フ美名ノ
下ニ、唯國防計畫ノ將來ニ對スル對策ニ付
テノ用意周到ヲ缺キ又財政計畫ニ對スル
所ノ用意周到ヲ缺イデ、唯此減稅ナル美名
ヲ以テ國民ニ接セムトセラルルノデハナイ
カ、斯樣ナコトガアッテハ私ハ國家ヲ贖シウ
スル所ノ結果ニナリハシナイカト云フコト
ヲ痛感スルモノデアルノデアリマス、依ッテ
私ハ先ヅ海軍大臣ニ御尋シヤウト思フノデ
アリマス、卽チ海軍大臣ガ仰セニナッテ居ラ
ルル將來、昭和十一年度以前ニ於キマシテ
ノ國防上、ソレガ第二次計畫ト云ハウト第
一補充計畫ト言ハウトモ、何ト云フトモ、
名稱ハ兎ニ角、玆ニ必要ナルモノアリト云
フコトヲ言ハレテ居ルノデアリマスルガ、
殊ニ條約ノ結果、列國ガ其條約ヲ皆滿タス
ト云フ權利ヲ實行スルト云フコトニ相成リ
マスル場合ニ於テハ、明カニ我國ニ於テモ
此權利ヲ實行センケレバナラヌノハ明カデ
アルノデアリマス、其時ニ此補充計畫ヲ立
テベキ所ノ財源ニ對シテ、如何ナル所ニ目
安ヲ持ッテ居ラルルカト云フコトヲ、先ヅ以
テ海軍大臣ニ伺ハヌケレバナラヌノデアリ
マス、其點ヲ私ハ海軍大臣ニ御尋ネ致シマ
ス
〔國務大臣男爵安保〓種君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=5
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006・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 只今池田男
爵カラ御質問ガアリマシタノニ付テ御答ヲ
申上ゲマス、第一ニ昨日池田男爵カラ御尋
ニナリマシタコトニ付テ、川崎政府委員カ
ラ御答ヘ致シマシタル其事ニ關聯シテ、私
ガ此豫算委員會ニ於テ申シマシタコトト矛
盾シテ居ルト云フヤウナコトヲ御指摘ニナ
リマシタガ、私ハ豫算委員會ニ於テ山岡君
ノ御質問ニ對シテ前日答辯ヲ致シマシタ、
其翌日、ソレニ付テ池田男爵ノ御質疑ガア
リマシタ其時ニモ能ク敷衍シテ申上ゲテ
置キマシタ積リデアリマス、內閣官制第七
條ノ解釋ニ付キマシテハ、昨日川崎政府委員
ノ答辯セラレタ所ト、私ノ申シマシタ所ト
ハ別ニ違ッテ居ラナイ、同一ノ意味ニナッテ
居ルト考ヘテ居リマスカラ、念ノ爲メソレ
ダケハ申上ゲテ置キマス、次ニ此度ノ海軍
ノ兵力整備計畫ニ付テ、保留財源ナルモノノ
中カラ三億七千四百万圓ヲ海軍ノ整備計
畫······兵力整備計畫ニ取テ、後ノ餘リノ一
億三千四百万圓ヲ減稅ニ致シタノデアル
ガ、此度ノデハ尙ホ國防上必シモ十分デナ
イト云フ意味デ、次ノ計畫ガアルヤウニ思
フ、此事ニ付テノ御尋デアリマシタガ、念
ノ爲メ能ク申上ゲマスルガ、此度提出イタ
シテ御協賛ヲ願ヲテ居リマスル三億七千四
百万圓ノ此案ガ幸ニ御協賛ヲ得マスレバ
之ニ付テ國防上ノ必要トスル兵力ノ骨幹ハ
備ハリマシテ、當面ノ情勢ニ於テ國防上不
安ナイト云フコトモ幾度モ申上ゲテ居リマ
スル、卽チ其通リデアリマス、之ニ若干ノ
兵力ヲ尙ホ附加ヘルト云フコトハ必要ト認
メテ居リマス、昭和十一年度以前ニ於テ附
加ヘル必要ヲ認メテ居リマスルガ、其必要
ト云フモノハ豫テカラ申シマスル通リ、外
國ノ海軍ノ情勢、卽チ此倫敦條約ノ權利ヲ
ドウ云フ程度ニ行使スルカ、而シテ其行使ス
ルニ於テドウ云フ兵種ニ重キヲ置イテヤラム
トスルカト云フヤウナコトヲ見極メ、又技術
ノ進步變遷等ニ鑑ミ、又內ニハ財政ノ狀況
等ヲ考慮シテカラ之ヲ決定スベキデ、今日
ソレヲ具體的ノ計畫トシテ持ッテ居ル次第
デハナイト云フコトヲ幾度カ申上ゲテ居リ
マスル次第デアリマス、卽チサウ云フ意味
ニ於キマシテ、マダ幾年カノ後ニ於テ立テ
ベキ計畫デアリマスルカラ、ソレニ對シテ
特ニ財源ヲ用意イタサヌデモ宜カラウト云
フ意味ニ於キマシテ、今日ノ情勢ニ於テ是
非共必要トスルモノノ計畫ヲ立テマシテ
ソレヲ實行スル上ニ於テ國防上不安ナイト
見極メマシタ、其餘剩ノ財源ト云フモノガ
是ハ矢張リ倫敦軍縮會議ノ目的ノ、主要ナ
ル目的ノ一ツデアリマスル國民負擔ノ輕減
ト云フ意味ニ當リマスル其減稅ト云フコト
ニ向ケラレルコトハ、是ハ當然ノコトト考
ヘタ次第デアリマス、而シテ只今マデ述べ
マシタ其外國ノ狀況ニ依ルト云フヤウナ事
柄デハ少シモ其財源ヲ減稅ノ方ニ割イタ
理由ニハナラヌト云フコトヲ、池田男爵
カラ段々御指摘ニナリマシタガ、海軍當局
ノ見マスル所ニ於キマシテハ、今日ニ於テ
是非共必要トスルモノハ別問題デアリマス
ルケレドモ、更ニ若干年延バシテ宜イモノ
ニ付キマシテハ、是ハ外國ノ狀況等ニ依ッテ
極メルト云フコトガ、當然ノ次第デアリマ
シテ、餘リ早ク極メテシマウト云フコト
ハ却ッテ折角ノ兵力ニ、或場合ニハ不都合
ヲ來スト云フヤウナ場合モ生ズルノデアリ
マく、ソレデ極メテ最小ノ經費ヲ以テ、最
大ノ兵力ヲ造ッテ、サウシテ國防ノ責ニ當ラ
ナケレバナラヌト云フ立前デ進ムノデアリ
マスルカラシテ、每度申シマスルヤウデア
リマスルケレドモ、攻勢ノ作戰ヲ採ルト云
フコトヲ立前トスル國ハ自分デ許サレテ
居ル兵力ノ中デ、斯ウ云フモノヲ主トシテ
備フルコトガ必要ダト云フ、其計畫ニ當テ
嵌メテノ造艦計畫ト云フモノヲ進メルコト
ガ出來、又ソレガ當然デアルノデアリマス
ルケレドモ、守勢作戰ヲ以テ立ツ國ニ於キ
マシテハ、其攻勢ノ作戰ノ國ガ、ドウ云フ
種類ノ所ノ兵種ニ重キヲ置イテヤルカト云
フコトヲ、徐ロニ見極メタ上デソレニ對抗
スル、進ンデハ更ニソレニ打勝ツ方法ヲ考
ヘテ計畫スルト云フコトハ時期ガ差支ヘ
ナケレバサウ云フ方法ヲ執ルコトハ最モ
適當ト考ヘテ居ル次第デアリマス、從ッテ第
二期ニ來ル所ノ、此次ニ來ル所ノ計畫ト云
フモノハサウ云フ所ニ考慮イタシマシテ
計畫ヲ立テタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、而シテ其財源ト云フモノニ付
テ、極メテ不確實ナルモノデアル、全ク無
イノハドウ云フモノカ、斯ウ云フコトデア
リマシタガ、ソレニ付テ申上ゲマスレバ
此度ノ計畫ハ昭和六年度ニ起リマシテ、昭
和十一年度ニ終リマスル次第デアリマスル
ガ、昭和十二年度以後ニ於テハ、年々六千
万圓ト云フモノガ、製艦、艦ヲ造ルト云フ
方ニ付テ保留ガシテアル次第デアリマスル
カラ、卽チ茲ニ一ツノ造艦計畫ヲ立テルト
致シマスレバ、昭和十一年度以前ニ計畫ヲ
立テマシテモ、矢張リ五年ナリ六年ナリノ
繼續計畫トシテ參リマスル、サウ云フ計畫
ニナリマスノニ付テハ、昭和十二年度以後
ニハ六千万圓、其モノデ果シテ足リルカ
足ラヌカハ問題デアリマスケレドモ、兎〓
角ソコニ財源ガアル、併ナガラ此度ノ計畫
ト或年度重ナル必要ガ起ル、十二年度以後
ニハ取ッテアリマスルガ、十一年度以前ニ計
畫ヲ起ス場合ニハソコニ若干重複ヲ致ス
必要ガアル、其重複ヲスル費用ハ、財源ハ
ナイ、取ッテナイヂヤナイカト云フコトニナリ
マスルガ、ソレハ今日ニ於キマシテハ其
財源ヲ特ニ用意シテ置クト云フコトノ立場
ニハナイト考ヘルノデアリマシテ、今日ノ財
政ノ狀況等ヲ考慮イタシマシテ、マダ若干
年後ニ計畫シテ宜シイモノニ對シテハ、特
ニ其爲ニ財源ヲ取ッテ置キマセヌデモ、必要
ノ場合場合ニ一ツノ計畫ヲ立テテ、サウシ
テ是ガ是非トモ國防上之ヲ必要トスル場合
ニ於テ一ツノ計畫ヲ立テマスル、政府ニ於
キマシテ、此經費ト云フモノヲ、相當繰合
セハ付ケ得ルト云フコトハ是ハ當然ノコ
トト私ハ考ヘテ居ルノデアリマシテ、此
點ニ付キマシテハ首相代理、又大藏大臣等
ニ於カレマシテモ、從來サウ云フ計畫ノ起
リマシタ場合ニハ、財源ハ今取ッテナイケレ
ドモ、經費ハ出來ルダケノ方法ヲ執ッテ之ニ
善處スルト云フコトヲ申サレテ居リマスノ
デ、私ハサウ云フ點ニ十分ノ信賴ヲ置キ得
ルモノト考ヘテ居ル次第デアリマス、終リ
〔男爵池田長康君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=6
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007・池田長康
○男爵池田長康君 只今海軍大臣ガ豫算總
會ニ於テ述ベタコトト、又法制局長官ノ說
明ト矛盾ハシテ居ラヌト云フ御話デアリマ
ス、是ハ矛盾イタシテ居ルト私ハ思ヒマ
ス、其事實ヲ擧ゲテ申上ゲタイノデアリマ
スケレドモ、是ハ他ノ機會ニ讓リマスルカ
ラ、此場合ハ此コトハ言及イタシマセヌ、
併シ能ク速記錄ヲ御覽ニナリマシテ、法制
局ノ意見モ能ク參考ニ供セラレテ、不統一
デアル御答辯ノナイヤウニ次ノ機會ニ於テ
御用意ヲ願ッテ置ク次第デアリマス、只今財
源ニ關スル海軍大臣ノ御答辯ガアリマシタ
ガ、本員ハモウ御尋ネスル要點ハ、此計畫
ヲ今立テテ居ル、立テテ居ラヌト云フ問題
デハナイノデアリマス、本員ガ此減稅案ヲ
審議イタシマスル前提ト致シマシテハ昭
和十一年度以前ニ於キマシテ、海軍當局ト
致シマシテハ補充計畫ニ對スルモノ三億
八千万圓ノ此度豫算ニ要求シタモノ以外ニ
ハ金ハ必要ナイト云フコトヲ斷言サレル
ノデアリマスルカ、昭和十一年度以後ノコ
トヲ申スノデハアリマセヌ、先ヅ昭和十一
年度末マデノ間······所謂保留財源ガ五億八
百万圓ト云フノハ昭和十一年度末マデノ
コトデアリマスルカラ、、昭和十一年度マデ
ニ海軍ト致サレマシテハ、三億八千万圓ノ
此度豫算ニ計上サレタル以外ノ金額ハ其
間ニ於テ御請求ハナイモノト議會ニ於テ、議
院ニ於テ認メテモ宜シイノデゴザリマスル
カ、之ヲモウ要求シナイト云フコトデアリ
マスルナラバ、ソレナラバ減稅ヲ決定スル
ノハ宜シイノデアリマス、其點ガ明白デア
リマセヌト、要ルカモ知レヌ、要ラヌカモ
知レヌ、マダ未確定デアル、未確定デアル
ナラバ、今日恒久的ノ財源ヲ失フ所ノ減稅
ヲスルノハ早イデハナイカト云フコトヲ私ハ
申上ゲテ居ル、故ニ之ニ代ルベキ何等カ他ニ、
確定ヲ致サナクテモ、可能性ノアル財源ノ
目安デモアルナラバ、ソレナラバ宜シイノデ
アリマス、ケレドモ其目安モナクシテ唯大
藏當局ヲ信賴スル、其御言葉デハ相成ラヌ
ノデアリマス、此點ニ付キマシテハ玆ニ速
記錄ガアリマスルガ、曾テ地租委讓ノ場合
ニ於キマシテ民政黨ノ長老デ現在アラレル
所ノ若槻禮次郞君ガ、時ノ岡田海軍大臣ニ
尋ネラレタ一節ガアルノデアリマス、其
節ヲ私ハ玆ニ御紹介シテ置キタイ、諸君ニ
+〓+此地租委譲ノ場合ニ於テ若槻禮次
郞君ガ言ハレマシタ事柄ハ此場合トヨク
似テ居リマスルケレドモ、其當時ノ場合ヨ
リハ、今度ノ場合ノ方ガ、一層之ニ付テハ重
要性ヲ帶ビテ居ルメデアリマス、一ツハ倫
敦條約ニ依ッテ國防ニ缺陷ヲ來ス點ガアル、
是ハ明白ダ、又海軍ノ保留財源ヲ、海軍ノ
爲ニ取ッテアル保留財源ヲ棄テルノデアリ
マイカ地租委譲ノ場合ニ於テノ問題トハ
餘程其本質ガ違フノデアリ地租委譲ノ
場合ニ於ケル所ノ論ハマダ今日ノ場合ヨ
リハ輕イメデアリマス、然ルニモ拘ラズ若
槻禮次郞君ガ如何ナル見地ニ於テ岡田海軍
大臣ニ質問ツテ居ラレルカト云フ事柄ハ
議員諸君ノ御參考ニモ相成ルコトデアリマ
スルカラ、私ハ茲ニ御紹介シタイト思フノ
デアリマス、多少前後ハ致シマスルケレド
モ、昭和四年二月一日國務大臣ニ對スル質
疑ト致サレマシテ、若槻君ガ質疑ヲシテ居
ラレルノデアリマス、矢張リ海軍ノ將來國
防討畫ヲ憂フルノ餘リ、岡田海軍大臣ニ質
問ヲシテ居ラレマス、ソレニ對セラレマシ
テ、岡田海軍太臣ハ斯樣ニ言ッテ居ラレル
「華盛頓條約ニハ昭和六年度ヨリ著手スル
コトニナッテ居リマス、從ッテ昭和六年度ヨ
リ多額ノ金ガ要ルト云フコトハ是ハ明白ナ
コトデアリマス、併ナガラ此財源ニ付テハ
大藏當局ガ相當考慮シテ居ルト云フコトデ
アリマスカラ、是ホド確カナコトハナイノ
デアリマス、私共ハ大藏當局ト能ク協議ヲ
シマツテ、國防上聊カモ遺憾ガナイヤウニ
致シタイト考ヘテ居リマス」、尙ホ若槻君ハ
斯ウ云フコトヲ言ハレテ居ル、餘リ長クナ
リマスルカラ省略イタシマシテ、「華盛頓會
議ノ製艦休止期間ガ滿了シタナラバ、戰艦
ノ代艦ヲ造ラナケレバナラヌト言ッテ居ル、
私ハ昭和七年ト言ッテ居ル、海軍大臣ハソレ
ヲ訂正シテ昭和六年カラダト言ハレル、
ソレナラバ益、必要ガ接近シテ居ルノデ
アリマス、ソレヲ大藏大臣ハ眼ノ前ニ海
軍省カラ要求書ガ突附ケラレル迄ハ、政府
ハソンナコトハ考ヘテ居ラヌデ宜イト言ハ
レル、是ハ實ニ何ト云フコトデアルカ、私
ハ全ク理解ガ出來ヌノデアリマス、帝國ハ
前ニ申上ゲタ通リ島國デアルノデアリマ
ス、島國ノ國防ハ海軍ガ最モ大切デアルノ
デアリマス、而モ海軍ノ勢力ト云フモノハ、
海軍ノ威力ト云フモノハ艦艇ニアルノデア
リマス、軍艦其他ノ艦船ガ海軍ノ威力ノ土
臺デアルノデアリマス、是ノ補充ガ缺ケタ
ナラバ、海軍力ハ丸デ減退シテ行タト云フ
コトヲ認メヌケレバナラヌノデアリマス」
云々ト言ッテ居ラレルノデアリマス、ソレカ
ラ又是ハ若槻禮次郞君ノ御發言ノ中デアリ
マスガ、「海軍大臣モ亦大藏大臣ガ何トカ考
ヘテ居ルト云フコトデ、ソレニ安心シテ居
ラレテ、大藏大臣ガ出來ナカッタラ、海軍ハ
止メテ宜シイノデアリマスカ(笑聲起ル)」ト
アリマス之ニ對シマシテ岡田君ハ弘
財政ノコトハ全タ素人デアリマス、大藏大
臣ノ言明ヲ信用スルヨリ他ニ方法ハナイノ
デアリマス、丁度私共ガ自分ノ體ガ病氣ニ
ナッタ時ニ、醫術ヲ知ラヌ者ハ醫者ノ言葉ヲ
信用スルヨリ他ニ方法ハナイト同ジデアリ
マスハ(笑聲起ル)」トアリマス、之ニ對シマシ
テ若槻君ハ斯ウ言フテ居ラレル「唯大臣ノ答
辯ハ私ノ問フ所ニ當ッテ居ナイト云フコト
ダケヲ申上ゲルノデアリマス」是カラデアリ
マス「若シ夫レ海事大臣ノ御答辯ニ至ッテハ
私ハ驚入ルノデアリマス、國務大臣ガ政治
家トシテ政府ノ局ニ立ッテ居ノテ、自分ノ所
管ノ事業ガ實行セラレルヤ否ヤト云フコト
ノ確信ナク、一ニ他ノ閣僚ノ言ハレタコト
ヲ信用シテ居ラレ、自分ノ意見ハ一ツモ無
イト言ハシルニ至ッテハ私ハ驚クノ外ハナ
イノデアリマス」、斯ウ言フテ居ラレルノデ
アリマス、ソコデ私ハ只今安保海軍大臣ガ
言ハレル、私ノ質問ニ對シテ、マダ實施計
畫ヲ立ッテ居ルトカ居ラヌトカ云フコトヲ
言ハレル、ソレハ仰セノ通リ列國ガ條約ヲ
ドウ履行シテ來ルカ、其他ノ按排ガアリマ
セウカラ、實際之ヲ實行スル所ノ御計畫ハ
今日御立テニナラナクテモ宜イノデアリマ
ス、併ナガラ昭和十一年度以前ニ必要ガア
ルカ無イカト云フコトハ、無イトハ御斷言
出來ナイダラウト思フ、無イト云フコトヲ
御斷言出來ナケレバ、其財源ノ爲ニ取ッテア
ル所ノ保留財源ヲ、卽チ恆久的性質ヲ有ス
ル減稅ノ財源ニ放棄セラレルト云フコトニ
付テハ、私ハ海軍大臣ノ心事ヲ私ハ疑ハザ
ルヲ得ヌ、又終リニ於テ大藏當局ガ考慮ス
ルダラウ、信賴スルト云フタ御言葉ハ、嘗
テ若槻君ガ岡田海軍大臣ニ呈サレタ言葉ヲ
以テ申上ゲル外ハナイ、能ク此點ニ付テハ、
將來國家百年ノ國防ノ大責任ヲ持ッテ居ラ
レル所ノ軍務大臣トシテハ、能ク此點ニ付
テ考慮ヲ願ハナケレバナラヌト思フノデア
リマス、唯私ハ是デ質問ヲ終リマスルケレ
ドモ、ドウシテモ御答ヲ願ハナケレバナラ
ヌノハ、海軍大臣ト致サレマツテ、將來必
要ガアッタ場合ニ於ケル財政上ノ御確信ガ、
海軍大臣自ラニ御有リニナルノデアルカド
ウカ、此點ヲ私ハ伺ヒタイノデアリマス
〔國務大臣男爵安保〓種君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=7
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008・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 只今重ネテ
池田男爵カラ御質問ガアリマシタノニ御答
ヲ申上ゲマス、昭和十一年度以前ノ計畫ハ
不要ト云フノカ、要ラナイカ、斯ウ云フノ
デアリマスガ、是ハ色ミナ機會ニモ申上ゲ
テ居リマスルヤウニ、此度ノ計畫ガ十一年
度デ終ルノデアリマスルガ、其昭和十一年
度以前ニ於テ、次ノ計畫ヲ立テル必要ハ認
メテ居リマスル次第デアリマス、ソレカラ
其財源ノ事ニ付キマシテ、單ニ大藏當局ヲ
信賴スルト云フコトデハ一向意味ヲ爲サ
又、ソレガドウ云フ目安デアルカ、增稅ニ
依ルカ、或ハ自然增收ト云フコトヲ期待ス
ルカ、又段々御話ノアリマシタヤウニ、行
政整理等ヲヤルカ增稅ヲヤルカ、色ミナ
事柄ガアリマシタガ、是ハ其時ニ於テドウ
云フ方法ヲ執ルカト云フコトヲ申上ゲル譯
ニハ無論參リマセヌノデアリマスルケレド
モ玆ニ一ツノ計畫ト云フモノニ付テノコ
トハ、先程申上ゲマシタヤウニ、此度ノ計
畫ガ本年度カラ起リマシテ、昭和六年度カ
ラ起リマシテ、十一年度ニ至ル一ツノ計畫
デアッテ、サウシテ十二年度カラハ兎モ角
其處ニ六千万圓ト云フ財源ガ用意ヲシテア
ル此用意シテアル財源ヲ無論用ヒテ、サ
ウシテ其處ニ第二ノ計畫ヲ立テル其計畫
ハ十一年度以前ニ起ル、其財源ハ用意シテ
ナイト、斯ウ云フ意味ニナルノデアリマシ
〃、私ハツコニ重ナル所ノ財源ト云フモノ
ハ其時ノ國防上デ是非トモ是ガ必要デア
リト云フ計畫ヲ立テテ、政府ガ考慮スル場
合ニハ出來ルダケノ方法ヲ取ッテ、其經費
ヲ捻出シ得ラルベキモノト信ジテ居ル次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=8
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009・池田長康
○男爵池田長康君 只今海軍大臣ノ御答辯
ニ對シマシテハ私ハ滿足イタシ兼ネマス
ガ、此點ニ付キマシテハ御答辯ハ出來ヌト
思フノデアリマス、唯一言今日此財源等ニ
對スル目安モナクシテ、此議院ニ於テ減稅
ノ爲ニ海軍保留財源ヲ效棄セラルルト云フ
事柄ハ將來海軍ノ豫算ヲ御提出ニナル場
合ニ於キマシテ矛盾ヲ來タスコトガアリハ
シナイカト云フコトヲ心配スルノデアリマ
ス、尙ホ總理大臣ニ御尋ネ致シタイト思フ
ノデアリマスケレドモ、是ハ嘗テ本員ガ御
尋ネ致シマシタ事柄ニ付キマシテ、意見ヲ
異ニ致シマス爲ニ、質問ヲ私ハ爲シ得ナイ
ノデアリマス、故ニ遺憾ナガラ此點ハ質問
ヲ致シマセヌ、是デ本員ノ質疑ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ通〓順ハ森
田福市君デゴザイマスガ、同君ハ本議場ニ
居ラレマセヌカラ、規則上次ノ通〓者ニ發
言ヲ許サウト存ジマス、三井〓一郞君
〔三井〓一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=10
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011・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ハ此度御提案ニナリマ
シタ所ノ地租改正案其他六件ハ重大ナル
法案ト考ヘマシテ色ミ考ヘテ見マスルト
此法案ヲ實行スル上ニ付テ種々ノ疑間ヲ生
ズルノデアリマス、カルガ故ニ私ノ疑問ト
スル五六ノ點ヲ政府ニ御尋ヲシテ見タイノ
デアリマス、第一ニ政府ハ此軍縮ト減稅ヲ
結付ケテ御考ニナッテ居ルヤウデアリマス
ガ、是ハ色ミ倫敦條約ノ關係モアリマセウ
ガ、切リ離シテ十分ニ御考慮ニナル必要ガ
アリマセヌカ、此點デアリマス、間ヒハ非
常ニ簡單ノヤウデアリマスガ、此點ガ非常
ニ重要ナ事項ト私ハ信ズルノデアリマス、
御承知ノ如グ倫敦條約ハ國際平和ノ促進
ト人類福社ノ增進ヲ日標トシテ開カレタ
ト云フコトハ今日何人モ疑ハナイ所デア
リマス、又我ガ政府モ此處ニ重キヲ置イテ、
卽チ軍縮ニ依クテ財政ノ餘剩ヲ作リ、之ヲ以
テ現今ニ於ケル此逼迫シテ居ル生活狀態ヲ
救濟シテ行ク、卽チ國民ノ負擔ヲ輕減シヤ
ウ、斯ウ云フ考デ、進ンデ此會議ニ參加セ
ラレタト云フコトモ能ク明カニナッテ居ル
次第デアリマス、併ナガラ此條約ヲ締結ス
ル會議ニ參加シタカラト申シマシテモ
國ノ國防ノ最少限、卽チ自國ヲ守ル所ノ兵
力量ヲ維持シナケレバナラヌト云フ所ノ此
程度ヲ考ヘテ、此會議ニ參加スルト云フコ
トハ申ス迄モナイノデアリマス、故ニ我ガ
全權ハ出發前ニ於テ所謂三大原則ヲ能ク御
考ヘニナッテ、又之ヲ何處マデモ主張スルト
云フ決意ヲ以テ會議ニ臨マレタト云フコト
ハ、是亦何人モ疑フ所ハナイノデアリマス、
然ルニ御承知ノ如キ經過ヲ迪リ、今日我國
ニ於テハ朝野殆ド此條約ノ締結ノ結果、國
防上ニ缺陷アリト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス、又我ミ國民ガサウ考ヘルバカリヂヤア
リマセヌ、御承知ノ御方モアリマセウガ、
米國ニ於テハ斯ウ云フコトヲ言フテ居リマ
ス、「日本代表及ビ政府ハ非常ニ困難ナル立
場ト任務ヲ忍ビ、委員諸君ノ困難ハ彼等ノ
立場ニ立ツニ非ザレバ之ヲ理解スルコト難
カラン、全米國代表ハ是等ノ事ニ依リ日
本代表及日本政府ニ未曾有ニシテ甚大ナル
讚辭ヲ呈シタリ、米國ガ日本ヲ凌駕スルマ
デ日本ハ自ラヲ拘束シ足踏條約ヲ締結セ
ル勇氣ト目ツ自カラ千九百三十六年後、條約
ガ接續セザル場合ニ際シ、米國ニ好地位ヲ
能フル條約ヲ强ヒテ締結シタル日本政府
ハ、容易ナラザル難局デアッタノデアル、此
難關ハ議論ヲ以テ律シタリ、財政上經濟上
ノ事情ニ依リテモ律シ能ハザルベク、如何
ナル貧弱國デモ製艦競爭デ威壓サレルモノ
デハナイノデアル、余ハ此條約ニ關シ日本
政府ニ敬意ヲ表シ脫帽スル者デアル」、斯ウ
云フヤウニ米國デモ言フテ居ルノデアリマ
スカラ、何方ノ方面カラ考へテ見マシテ
モ、此條約ノ結果ハ國防ニ缺陷ヲ生ズルト
云フコトハ斷言シテ差支ナイト信ズルノデ
アリマス、本議場ニ於テ度ミ之ニ對スル質
問應答ガアリマシタガ、政府ハ何處マデモ
此缺陷ノ無キコトヲ主張セラレテ居リマス
ルケレドモ、此缺陷ガアルガ爲ニ此條約ガ
批准セラルルマデノ間ノ、非常ナ色ミナ經
緯ガアリマシタガ、結局第一補充計畫ト云
フモノガ現ハレ、サウシテ此缺陷ヲ補充ス
ルト云フコトニナッタコトハ、缺陷アリト云
フコトヲ斷言シテ差支ナイト云フコトヲ私
ハ信ズルノデアリマス、如何ニ言葉巧ミニ
御答辯ニナリマシテモ、事實ガ之ヲ證明シ
トルノデアリマス、故ニ此海軍ガ昭和六年
度以降六年間デ五億八百万圓ノ財源ヲ保留
シタ、此財源ガ此缺陷ヲ眞ニ補充ヲシタナ
ラバ、無論足ラナクテモ、餘剩ガ出ル筈ハ
ナイノデアリマス、然ルニ政府ハ無理ニ此
補充計畫ヲ或程度ニ制シ、サウシテ御承知
ノ一億三千四百万圓ト云フ金ヲ搾リ出シ
之ヲ以テ今囘ノ減稅案ヲ仕組マシタノデア
リマス、私ハ此今囘ノ減稅案ハ斯ウ云フ點
カラ出發シテ居リマスルカラ、甚ダ不純ナ
感ヲ生スルノデアリマス、我ミハ今日ノ財
界ノ有樣、今日ノ農村其他地方ノ自治ノ狀
態ヲ見マシテ、ドウシテモ滅稅ヲセナケレ
バナラヌト云フコトハ是ハ無論何等異論
ガナイノデアル、大々的ニ減稅ヲシテ國民
ヲ休養サセナケレバナラヌト云フコトニ付
キマシテハ何等ノ異存ガナイノデアリマ
スルガ、唯減稅ト倫敦條約ヲ無理ニ結付ケ
テ偶然ニモ六箇年度デ五億八百万圓ト云
フ財源ガアル、是モ實際金ガアッテノ財源
デナクシテ、所謂計數上ノ財源デアリマス、
此財源ヲ二ツニ區分シ、兩方ヲ實行シヤウ
ト爲サレマシタカラシテ、所謂兩兎ヲ追フ
テ一兎ヲ得ザル結果ニ陷リヤセヌカト思フ
ノデアリマス、一體此五億八百万圓ト云フ
保留財源ト云フモノハ十五億以上ノ歲入
ノアッタ時ニ財政計畫ノ中ニ織込マレタノ
デアラウト思ヒマス、彼ノ時代ニハ豫算上
デハ十五億デアリマシテモ、自然增收ガア
リマシテ、年々一億以上ノ剩餘金ガ出來タ
時デアリマスルカラ、其當時ノ十五億ノ歲
入豫算ハ十六億乃至十七億收入ガアッタノ
デアリマス、ソレデアリマスカラ、此五億八
百万圓ト云フ繼續的ノ支出ノ計畫ハ無理ハ
ナカッタノデアリマスルガ、今年愈、實行セ
ムト云フ時期ニナリマシテハ、十四億ノ歲
入ガムツカシイト云フ狀況ニナリ來タタ
ノデアリマス、此十四億ノ歲入ガムツカ
シイト云フ現時ノ狀況ニ於テ、十五億、
十六七億ノ歲入ノアッタ時ニ計畫シタ其
數字ヲ其儘取ッテ、サウシテ一部ハ海軍
ノ補充計畫ニ充當シ、其一部分ヲ減稅
ニ引當テル斯ウ云フ意味ニ爲サレタト
云フコトハ畢竟此條約ト減稅ト云フ
コトヲ確ッカリ釘付ケニシテ、之ヲ別ニ考
ヘラレナカッタ結果ヂヤナイカト考ヘルノ
デアリマス、我ミハ會議ノ目的ガ假令國民
負擔ノ輕減ニアルニモセヨ、旣ニ會議ヲ結
了シタ後ハ內政ニ付テハ政府ノ自由自在
ニ、如何ナル方法ヲ執ラレテモ差支ナイト
信ジテ居ルノデアリマスルガ、ドウモ此五
億八百万圓ニ引摺ラレテ、大々的ニ減稅ヲ
スルト云フ御決心ガ出來ナカッタノハ、甚ダ
遺憾ト存ズルノデアリマス、斯ノ如キ最初
ノ出發點ガドウシテモ條約ト減稅トヲ切離
スコトガ出來ナイト云フ觀念カラシテ、今
日ノ僅ニ一億三千四百万圓ノ減稅ヲヤッテ、
卽チソレヲ六年間ニ配當ヲシ、初メノ年
卽チ昭和六年度ニ於テハ僅ニ九百何十万
圓、諸稅公課ノ僅ニ一分ニ過ギナイ、又平
年ニ於キマシテモ二千五百万圓、諸稅公課
ノ三分ニ過ギナイ、此世評ガ雀ノ淚、或ハ
勺水以テ火ヲ救フニ類セリト云フヤウナ批
評ヲスルヤウナ、眞ニ名ノミデ實ノナイ減
稅案ヲ仕組マレナケレバナラヌト云フニ立
至ッタコトハ、甚ダ遺憾トスルノデアリマ
ス、私ハ前囘ニ於テ大藏大臣ニ質問イタシ
マシタ所ガ、私ノ質問ハ、大藏大臣ハ國庫ノ
財源ヲ充實スルニ付テノ工夫ヲ凝ラスダケ
ノ責任ヲ御持チニナッテ居ルコトヲ申上ゲ
タ所ガ、根本ニ於テ三井君トハ意見ヲ異ニ
スル、我〓ハ收入ガアッタラソレダケデ支
出ヲヤッテ、景氣ノ來ルノヲ待ツト云フヤウ
ナ御答ガアッテ、私ハ其御答ニ對シテモ實ハ
心中驚イタノデアリマス、斯ノ如キ御考デ
アッテハ、私ハ今日最モ重要ナ此國民負擔ヲ
輕減シテ民力ヲ体養シナケレバナラナイ、
最モ大事ナ時期ニ於テ、却ッテ後ニハ增稅ヲ
シナケレバナラナイ事實ガ發生セナイカド
ウカト云フコトヲ、非常ニ憂慮スル一人デ
アリマス、兎ニ角斯ノ如キ僅少ナル所ノ減
稅ハ私ハ寧ロ能ク〓究シテ、急ガナイデ、ヤ
ル時ニハ大々的ニヤル方ガ宜イト考ヘルノ
デアリマス、併シ玆ニ至ッタト云フ其根本ハ
私ハ政府ガ倫敦條約ト此減稅ト云フコトト
引離スコトガ出來ナイ觀念カラ、斯ウ云フ
結果ヲ生ジテ居ルト考ヘマスルガ、政府ノ
御所見ハ如何デアリマスカ、第二ニ私ハ政
府ガ此減稅案ヲ提出シテ、之ヲ實行セラレ
ムトスルナラバ、將來恆久的財源ヲ要シマ
スルガ、之ヲ實行シテ、將來ニ於テ支障ナ
キヤ否ヤ、此點デアリマス、此承知ノ如ク
保留財源ノ五億八百万圓ト云フモノハ臨時
費デアリマシテ、昭和六年カラ十一年マデ
六箇年間ノ繼續的ノ經費デアリマス、其總
額ガ五億八百万圓デアルノデアリマス、此
中ノ一億三千四百万圓ヲ切リ取ッテ減稅ノ
財源ニ充テマシタノデアリマスカラ軍縮
ノ餘剩ヲ以テ國民負擔ノ輕減ヲスルト云フ
コトハ、此六箇年ニ限ルノデアリマス、ソ
レカラ先ハ恆久的財源ヲ見付ケテ行カナケ
レバ此實施ガ危ナイノデアリマス、デ私ハ
豫算總會ニ於キマシテ、海軍大臣ト質疑應
答ヲ重ネマシタ結果、今囘ノ條約ニ基キ又
第一補充計畫ヲ實行シ、サウシテ此兵力ヲ
維持セント致シマシタナラバ、多大ノ經費
ヲ要スルガ、如何デアルカト云フコトニ付
テ質問應答ヲ致シマシタ所ガ、海軍大臣ハ
到頭最後ニハ幾ラカ考ヘナクテハナラヌト
云フ濁ッタ御言葉デアッタノデアリマシテ、
我〓ハ海軍大臣ノ胸中ニハ我ミト同樣ノ心
覿ガアルガ、現在ノ地位上赤裸々ニ御答ガ
出來ナイト考ヘマシタカラ、追究ハ致サナ
カッタノデアリマス、併シ我ミノ調ベタ大要
ヲ申シマスルト、餘程大キナ金ガ不足シテ
來ルノデアリマス、之ヲ細カク中シマスト、
一日申上ゲテ居シテモ事盡キマセヌカラ、私
ハ摘ンデ極ク大要ヲ申上ゲマスルガ、昭和
六年カラ十一年度ニ至ル年次表及新計畫ノ
艦艇及航空隊等ノ維持費ハ我ミガ最モ消
極ニ、而モ此計算ハ海軍ガ從來ヤッテ居ル殆
ド半額位ニ見積フテデス、尙ホ此維持費ガ七
百三十九万圓餘要スルノデアリマス、ソレ
ニ御承知ノ條約ノ權利ヲ行使セントシタナ
ラバ三万二千九百噸ノ建造ヲ要シマスコ
トハ海軍大臣ノ答辯デ明カナノデアリマ
ス、此經費ヲ見積リマスト云フト、一億四
千八百餘万圓ヲ要スルノデアル、ソレカラ
第二次計畫ナドト云フモノヲ先ヅ考ヘナイ
テ、十一年ニナリマシテ工業力維持ノ爲ニ何
レダケ要ルト云フコト、最小限九百五十万
圓、是ハ衆議院ニ於テノ間答、貴族院ニ於テ
ノ問答デ、殆ド此額ハ一致シテ居ルノデア
リマス、ソレヲ合計シマスト、十一年度迄ニ
一億六千五百万圓ノ金ヲ要スルノデアリマ
ス、此上海軍大臣ガ過日衆議院ニ於テ御答
ヘニナリマシタ所ノ第二次計畫ハ若干頭ヲ
出サヌナラヌト云フノ御意向ヲ漏ラシテ御
イデニナリマスカラ、此金ヲドレダケ要ル
カト計算シテ見マスト極ク切リ詰メテ見
マシテモ一億三四千万圓ヲ要スルノデアリ
マス是等ヲ合計イタシマスト、三億餘ノ
經費ガ將來ニ於テ要ルノデアリマス、此三
億餘要ルト云フコトハ、海軍大臣ノ胸中ニハ
明カニ分シテ居ラレルノデアリマスルガ、確
實的ニ是ダケ要ルト云フコトハマダ計畫
ニ著手シナイカラ、何トモ言ヘナイト云フ
御返答デアリマスルガ、併シ此若干ノ金ハ
要ルト云フコトハ首相代理モ大藏大臣モ
認メラレテ居ルノデアリマス、シテ見マス
ルト、今玆ニ一億三千四百万圓ヲ減稅シテ
モ、何時カ其金ハヨリ以上ノモノヲ要ス
ルト云フ時ガ來ルノデアリマス、又我ミガ
其上ニ政府ガ御提出ニナリマシタ所ノ財政
計畫、卽チ十年間ノ〓計表ヲ檢討シテ見マ
スルト甚ダ此財政計畫ガ基礎ガ危イノデア
リマス、私ガ此財政計畫ノ內譯ヲ政府ニ提
出ヲ要求イタシマシタケレドモ、到頭確實
ナ內譯表ガ出マセヌ、到頭海軍ノ繼續費ト其
他ノ繼續費ト、及ビ其他ノ豫備的ニ持ツ金
ノ此三ツニ分ケタ內譯表ヲ頂戴シタノデア
リマスルガ、之ニ依ッテ見マシテモ、海軍大臣
ハ常ニ仰セラルル所ノ十一一年以降ノ六千万
圓ノ保留ヲシテ、其殘リハ各省ノ繼續費ヲ
計上シテ、其他トシテ殘ッテ居ル金ハ五六千
万圓ニ過ギナイノデアリマス、是ハ我ミノ
豫算ニ付テ終始著意シテ居ルモノカラ見ル
ト、誠ニ貧弱ナ豫備費的ノモノデアリマシ
テ、年々災害復舊其他ノ追加豫算ハドウシ
テモ四五千万圓ハ要スル、共外ニマダ色ミ
ノ公約的保留ノ金ガ此六千万圓バカリノ中
ニ這入ッテ居ルノデアリマス、到頭是ハ金ガ
足ラヌト云フコトニナルノデアリマス、而
シテ此財政計畫ハ昭和六年度ノ豫算ヲ基準
トシテ財政計畫ガ出來テ居リマスルカラ、
今後ニ於テ財界ノ不況益"深刻化シテ歲入
ガ減ジタナラバ到底此財政計畫ヲ維持ス
ルコトハ出來ナイノデアリマス、斯ノ如キ
基礎ノ弱イ財政計畫ニ依テ而モ將來三億
以上ノ負擔ヲ豫期シテ、而シテ一億三千四
百万圓ノ減稅ヲ玆ニ計上セラレタカラト云
ウテ、決シテ現政府ノ御手柄デハナイト信
ズルノデアリマス、而シテ我ミハ歲入ノ狀
況ハ如何ト〓究ヲ致シテ見マスルト、是ハ
私ハ本會議ニ於テモ、昭和五年度ニ於テ大
體ノ質疑ヲ致シマシテ、政府ニ要求ヲシテ
アリマスルガ一向其書類ガ出テ來マセヌ
カラ分リマセヌ、卽チ私ノ要求イタシマシ
タノハ此本會議バカリヂヤナイ、豫算總
會ニモ二囘私ハ此書類ヲ要求シタノデアリ
やく、卽チ我ミハ五年度ノ歲入缺陷ハ六
年度ノ歲入ヲ審査スル上ニ於テ最モ必要ナ
資料デアル、五年度ニ非常ナ缺陷ガアルト
スレバ、六年度ノ歲入ハ餘程注意シテ審査
ヲシナケレバナラス、此審査ノ資料トシテ
要求シタノデアリマスガ、出マセヌノデア
リマス、其要求シタ書類ハドウシテモ行政
廳ガ豫算ヲ確實ニ執行スル上ニ付テハ、必
要ナ計算書デアリマス、所謂行政決算、中
仕切決算ト申シマス、是ガ一月ノ初メニ各
省ハ取ッテナケレバナラナイ、若シ例年ハ經
費ニ餘裕ガアッテ、ソレダケノ心配ガナイト
致シマシテモ、今日ノヤウニ此收入ノ非常
ニ減少スル場合ニ於テハ、ドウシテモ取ラ
ナケバナラヌ書類デアリマス、之ヲ總括シ
テ見ルト云フト、三月盡日マデニドレダケ
ノ支出見込ガアルト云フ確實ナ數字ヲ握リ
得ルノデアリマス、ソコデ昭和五年度ノ歲
入ノ缺陷ハドレダケアル、ソコデ歲出ガ是
ダケ要ル、ドレダケ不足スルカ、餘ルカト
云フ確實ナ數字ヲ見得ルノデアリマス、之
ヲ見得タナラバ我ミハ昭和六年度ノ歲入
ニ付テ審議イタシマスノニ、政府ヲ信賴ス
ルニ足ルノデアリマスルガ、唯歲入ハ五
年度ハ缺陷ハナイト、煙草ノ專賣ノ賣上ノ
金二千万圓、或ハ各省ノ不用額約二千万圓
ト見テ差支ナイト云フ、唯空ナ想像的ノ數
字ヲ御述べニナッテ居ルニ過ギナイノデア
リマス、外ノモノナラバ私ハ右ヘ行ヲテ
モ、左へ行ッテモ融通ノ付クモノナラバ宜イ
ノデアリマスルガ、此經濟ノコトハ本當ニ
確實ナ數字ヲ握ラナケレバ議論ハ出來ナ
イノデアリマス、故ニ此要求ヲシタノデア
リマスルガ、出マセヌカラ、到頭昭和五年
度ノ歲入ガ如何ナル狀況ニアルカト云フコ
トハ確實ナ所ヲ突キ止メ得ナカッタ、ソコデ
昭和六年度ノ歲入ヲ我ミガ〓究ヲ致シテ見
マスルト云フト、政府ノ御見積リニナッテ居
ル所ノ歲入ハ九千八百万圓バカリ見積リ過
大ニ我ミハ檢定ヲシテ居ルノデアリマス
卽チ九千八百万圓ノ歲入ガ政府ノ豫定ヨリ
缺陷ヲ生ズルト云フコトヲ我ミハ考ヘテ居
ル、又前年度ノ歲入ハ尙ホ我ミガ····書類
ガ出マセヌカラ、我〓ノ方デ〓究シテ見マ
スルト、是モ尙ホ政府ガ八千百万圓ノ行政
經濟化デ節約ヲシタト仰シヤイマスガ、
其八千百万圓出來タモノトシテ尙ホドレダ
ケ不足スルカト云フト、五千万圓バカリ不
足スル計算ニナリマス、併ナガラ五年度ノ
決算ニ付キマシテハ、政府ハ稍、樂觀シ得
ル原因ヲ御持チニナッテ居ル、ト申シマスノ
ハ昨年ノ行政經濟化ノ際ニ於テ、海軍ト陸
軍デ二千四、五百万圓ノ、此一年度翌年ヘ
繰延ヲヤッテ居リマス、二千四五百万圓ノ
中、陸軍ノ方ハ七月頃ニ、所謂七月ノ初メ
ニ決定ヲシテ居ルヤウデアリマスルガ、海
軍ノ方ハ容易ニ其金ヲ出スコトガ出來ナク
テ、苦心慘澹シテ交渉ヲ重ネタ結果、十月
ニ至ッテ初メテ千五百何十万圓ト云フ金ヲ
繰延ベテ居リマス、是ハ此海軍省ノ豫算表
テ明カニナッテ居リマス、又此質問應答ヲシ
テモ、其答ヲ得タノデアリマス、此二千五
百万圓バカリノ金ヲ豫算ノ實行、就中會計
年度ノ半バ以降ニ於テ、是ダケヲ切取ッテ翌
年ニ繰延バスト云フコトハ、非常ニ是ハ豫
算執行者トシテハ難儀ナ次第デアル、私ハ
是ゲケノ大キナ金ヲ翌年ヘ繰延バス結果
ガ、如何ナル事實ガ其間ニ伏在スルカト云
フコトヲ憂慮スルモノデアリマス、卽チ契
約ヲ解除スルカ若クハ繼續費デ契約ヲシ
テ居ルモノデアッタナラバ、其支拂ヲ翌年度
ヘ繰越ス、幸ニ會計規則ハ工合好ク出來テ
居リマス、支拂ノ屬スル年度、會計年度ノ
區分ガ支拂ノ屬スル年度トナッテ居リマス
カラ、大變工合ガ宜イノデアリマス、繰延
ヲヤレ、併ナガラ或ルモノガ出來上ツテソレ
ヲ受取ラナイデ置ク譯ニ行カナイ、艦船ノ
如キハドウシテモ受取ラナケレバナラナ
イ、受取ルト云フト其處ニ維持費ガ要ッテ、
ソレヲ動カサナケレバナラナイ、併ナガラ
金ハ拂ヘナイ、斯ウ云フ事實ガ發生スルモ
ノトシタナラバ是ハ會計上餘程注意スベ
キ事柄デアラウト思フノデアリマス斯ノ
如キコトヲ繰返シテ行キマシタナラバ一
時ヲ彌縫シテ歲入缺陷ヲドウカ斯ウカ補塡
シ六、赤字ヲ出サズニ濟ムコトガ出來ルカ
モ知レマセヌガ、是ハ行政執行ノ手續デハ
ナイ既ニ會計法ノ根本ノ精神ニ反シテ居
リマスカラ注意ヲシナケレバナラヌコト
デアル、又非常ナ不經濟行爲デアリマス、
契約シタモノヲ解除スルニハ時ニ依ッテ
ハ相當ノ賠償ヲシナケレバナラナイ、又
出來上ッタモノニ金ヲ拂ハナカッタナラバ、
之ニ對スル金利ヲ支拂ハナクテハナラナイ、
請負或ハ指定工場ノモノガ出來上ツテモ、此
金利ヲ要求シナイトシマシタナラバ是ハ
何時カノ中ニソレダケノモノハ埋合セヲシ
ナケレバナラナイト云フコトハ明カデアリ
やっ、カルガ故ニ斯ウ云フ行政行爲ト云フ
モノハ、餘程注意ヲシナケレバナラヌコト
ト私ハ考ヘルノデアリマス、斯ノ如ク〓究
シテ見マスルト云フト、歲入ノ缺陷ハ非常
ニ大キイ、將來マダ我ミモ餘程綿密ニ調べ
マスガ、此數字ヨリモ尙ホ大キニナルカモ
知レナイ、斯ウ云フヤウナ狀態ニ於テ、旣
ニ海軍デハ三億、尙ホ此歲入ノ狀況カラ九
千八百万圓、斯ウ云フ狀態ニ於キマシテ今
一億三千四百万圓ノ減稅ヲ組立テラレ、其
減稅ガ非常ナ有效ナ減稅ナラバ我〓ハモ
ウ詰ラナイコトヲ申シマセヌ、雙手ヲ擧ゲ
テ贊成スルノデアリマスルガ、世評ニアル如
ク雀ノ淚ノヤウナ減稅ヲ爲サレ、此減稅
ノ內容ニ付テハ後ノ問題ニ付テ申上ゲマス
ルガ、兎ニ角斯ウ云フ狀態デアリマスルカ
ラ、私ハ此恆久的財源ガ如何ニシテ立テラ
レテ居ラレルカト云フコトヲ承リタイノデ
アリマス、茲デ打切ッテ置キマシテ、午後申
上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=11
-
012・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 休憩ヲ致シマ
ス、午後ハ一時三十分カラ開會イタシマス
午後零時三分休憩
午後一時五十九分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=12
-
013・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、議事ノ都合上暫時休憩イタ
シマス
午後二時休憩
午後二時四十九分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=13
-
014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ請願委員根本祐太郞君ヲ第
二分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報〓書ヲ
提出セリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 休憩前ニ引續キ
マシテ開會イタシマス、三井〓一郞君
〔三井〓一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=15
-
016・三井清一郎
○三井〓一郞君 午前ニ續キマシテ御尋ヲ
致シマス、第三ニ、政府ハ一方ニ減稅ヲ爲
サレ、一方ニ增稅ヲセラレルト云フヤウナ
狀況ニアリマス、今後財源涵養ニ御盡力ニ
ナリマセナカッタナラバ、五六年後ニハ必ズ
增稅セナケレバナラヌヤウニ立至ルト考ヘ
ルノデアル、午前述ベマシタ如ク、財源ガ
非常ニ枯渴シテ居リマス、ドウシテモ斯ウ
云フ結果ハ來ルト思ヒマスガ、政府ノ御所
見ハ如何デアルカ、政府ハ減稅ヲ計畫セラ
レマシタガ、一方ニハ失業救濟ノ爲ニ公
債ヲ······鐵道ヲ除キマシテ一般會計デ二千
三百五十万圓募集セラレタ、此公債ノ二千三
百五十万圓ハ首相代理ノ御答辯ニ依リマス
ト一年限リダト仰セニナッテ居リマスル
ガ、我ミハ現下ノ此財界ノ狀況カラ推究イ
タシマシテ、到底一年限リデ此救濟ヲ止メ
ルト云フコトハ如何ナル人ガ御考ヘニナフ
テモ諒承出來ナイト思フノデアリマス、財
界ガ何時囘復スルカ、此經濟上ニ實際家、
學者等ノ誰モ此先キヲ見透シ得ル人ガナイ
ト云フ今日ノ狀況デアリマス、世界ノ不況、
是ガドノ程度ニ影響シテ居ルト云フコトモ
疑問デアリマスルガ、此世界ノ不景氣ガ影
響シテ居ルト致シマシテモ、今日ノヤウナ
金ノ爭奪戰ガアリ、或ハ生產過剩ニ陷フテ居
ル、其他自給自足ヲヤル結果貿易ニ垣根ガ
出來ル、斯ウ云フ有樣デ進ンデ居リマシタ
ラ、ココ四五年此景氣ガ囘復スルト云フコ
トハ何人モ斷言スルコトハ出來ナイノデア
リマス、從ッテ私ハココ五年、先ヅ昭和七年
カラ五年間、矢張リ二千万圓程度ノ失業救
濟ヲ致シマストスレバ、玆ニ一億ノ金ヲ要
スルノデアリマス、又御承知ノ生絲融資補
償法ガ發動ニナッテ居リマス、此二十万梱ノ
足掻キニ付キマシテハ、目下新聞ニ出テ居
ル如ク色ミ〓究セラレテハ居リマスルガ、
結局ハ政府ガ二千四百万圓位ノ交付公債ヲ
出サナケレバナラヌヤウニ至リハセヌカト
思フノデアルソレニ近頃御提出ニナル追
加豫算デ、海軍ノ工廠ノ從業員ノ整理、之
ガ爲ニ此資金ガ六百八十万圓ヲ要スルノデ
アル、ソレカラ御承知ノ如ク現政府ハ公債
非募債主義ヲ御執リニナリ、且ツ國債ヲ低
減シヤウト云フ政策ヲ御執リニナッテ居ル
ノデ、獨逸ノ賠償金ハ昨年ノ臨時議會ニ於
テ特別會計ヘ入レルコトニ爲サレマシタ
ガ、此六百三十万圓ノ金ハ昭和六年度カラ
一般會計ノ收入ノ方ニナテテルル、卽チ減債
償還資金ノ方ニ繰入ノ分ハ外シタノデア
ル、是等ヲ合計シテ見マスルト一億七千四
百万圓トナルノデアル、ココ五年ノ間ニ一
億七千四百万圓ノ公債其他ノ借入金等ヲセ
ナケレバナラヌ、是ハ一方ニ於テハ國民ノ
負擔ヲ增加スルノデアリマスカラ、結論ト
シテハ增稅ニナル次第デアリマス、其外恩
給遞增ノ金ダトカ、又地租改正ニ依リマシ
テ第二囘ノ賃貸價格ノ調査ヲ致サンナラヌ
其經費ダトカ、或ハ若シ小作法ガ通過イタ
シマスレバ是ノ人件費ダトカ、斯ウ云フモ
ノデ約八百万圓バカリ要ルノデアリマス
其外米穀法ガ通過イタシマスト借入金一億
五千万圓要ル、斯ウ云フヤウナ狀態デアリ
マスルカラ、ドウシテモ我〓ハ此一方ニ一
億三千四百万圓ノ減稅ヲ爲サレルガ、他面
ニ於テハ此年限內ニ一億七千四百万圓ニ今
アトニ附加ヘタモノガ殖エテ來ル、之ヲ「バ
ランス」ヲ採ッテ見マスルト一向減稅ニナラ
ナイ、却ッテ增稅ノ結果ヲ來タスノデアリ
マく、諄ク申シマセヌガ、之ニ對シテ政府
ハ如何御考ニナッテ居ルカ、第四ニハ今囘ノ
減稅ハ軍縮剩餘金ヲ以テ計畫セラレマシタ
ガ爲ニ、稅制ノ根本ニ觸レテ改正セラレタ
ノデハナイノデアリマス、從ッテ直接稅ト間
接稅ノ權衡ヲ得ザル點ガ多イ、斯ウ云フ狀
況デアリマスカラ、寧ロ行政、財政、稅制
ノ整理ヲ實行スルト云フコトヲ御聲明ニ
ナッテ居リマスルカラ、此時マデ、卽チ行
政、財政、稅制ノ整理ヲシテ財源ヲ涵養
シ、而シテ稅制整理ハ根本的ニ體系カラ、
課稅標準カラ、總テ負擔ノ公正カラ、悉ク
〓究ヲシテ、同時ニオヤリニナッタラドウ
カ、ソレマデ暫ク此減稅ト云フコトヲ保留
セラレテハ如何、御延期ニナッテハ如何、斯
ウ思フノデアリマス、御所見ヲ承ハリタイ、
我ミハ此租稅中ニハ納稅者ノ經濟力ニ應ジ
マシテ課スル所ノ直接稅ト、其經濟力ニ顧
慮スルコトナク課スル所ノ間接稅ガアリマ
ス、此兩者ノ權衡ヲ得ルコトハ稅制上最モ
重要ナルコトデアリマス、況ヤ今日ノ如キ
國民生活ガ脅威セラレテアル場合ニ於テオ
ヤデアリマス、政府今囘ノ御提案ハ昨日長
岡君ノ質問セラレタ如ク、一方ニハ增稅ト
ナルコトガ明カデアリマス、卽チ課稅標準
ト稅率ノ改正ノ結果、地租ガ平年ニ千八百
十一万圓減稅トナリマスルガ、地租納入者
ノ全體ガ平等ニ此恩典ニ浴スルノデハナク
シテ、農村ノ田畑ノ負擔ハ約千六百万圓ヲ
減ジ宅地ノ負擔ハ約五百万圓ヲ增加スル
ト云フコトハ昨日大藏大臣ガ此席デ御述
ベニナッタノデアリマス、斯樣ニ一方ニハ減
稅ヲ致シマスト共ニ、一方ニハ增稅ノ事實
ヲ生ズル、殊ニ私ハ長岡君ハ此增稅ハ六大
都市等ニ付テ御述べニナリマシタガ、私ハ
農村デモ皆樣ガ御承知ノ如ク、宅地ダケヲ
持ッテサウシテ働イテ食ッテ居ル者ガ、一村
ノ三分ノ一以上ト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、宅地稅ガ增加スルト云フコトハ漸ク宅
地ト小サナ家ヲ持ノテ居ル一番下層ノ者ガ
負擔ヲ大キクスルト云フコトニナリマスノ
デ、是ハ最モ私ハ現政府ノ社會政策的ニ色
色御考ヘニナル上カラ見レバ注意スベキ
コトデアラウト信ズルノデアリマス、今日
ノ場合此標準改正ハ誠ニ〓究ヲ要スルコト
ト思フノデアリマス我ミハ寧ロ此減稅ヲ
延期シテ、民衆ノ爲ニハ政府ガ煙草ノ引下
ヲオヤリニナラナイ、此煙草ハ濱口總理大
臣ガ加藤内閣ノ時ニ大藏大臣ノ時ニ値上ヲ
ナサッタ、ソレ限リニナッテ居ルノデアル、
故ニ此煙草ノ値段ハ高イ、ソコヘ持ッテ行フ
テ、總テノ物價ガ三割五分乃至四割以上低
落シテ居ルノニ、政府專賣ノ煙草ハ何等ノ
値下ヲシテオ出デニナリマセヌ、元來此煙
草ハ一般ニ中以上ノ人ハ煙草ヲ喫シ過ギル
ト害ガアルトカ色々申シマスルガ、此勤勞
シテ居ル者ハ煙草バカリ吸テテフヲテ働働ケ
ナイカラ、是ハ喫ミ過ギモ何モシナイノデ
アリマス、皆樣ガ郊外へ御散策ナサル時ニ、
田畑ノ畔ニ腰打掛ケテ一服吸フト云フ、此
氣分ヲ御味ハヒニナッタナラバ、成程必要ダ
ト斯ウ云フ御感ジガ出ルダラウト思ヒマ
ス一日孜々營々ト働イテ其間ニ疲勞ヲ
醫スル爲ニ煙草ヲ一服吸。子っ是ガ無限ノ
味合ト無量ノ慰安ニナルノデアリマス煙
草ハ贅澤品、不健康品デアル斯ウ云フ
モノヲ吸フト云フコトハ働カズニ煙
草ヲ吸カシテ居ル結果デアリマシテ、
勤勞ノ人ガ煙草ヲ間ニ吸フテ慰安ヲス
ルト云フコトハ最モ私ハ必要ト考ヘルノデ
アリマス、私ハ元來煙草ヲ餘計喫ミマセヌ
ケレドモ、サウ云フ感ジガスルノデアリ
マス、サウシテ是ハ大衆的デアリマス、此
煙草ノ値ヲ下ゲナイデ御置キニナッテ、サウ
シテ一方ニ後カラ述べマスガ、色ミマダ〓
究ノ餘地ガアル所ノ此減稅法案ヲ御出シニ
ナルト云フコトハ、私ハ若干ノ疑問ナキ能
ハズデアリマス、又此減稅ヲナサルノニ我
我ガ殊ニ此貴族院トシテ最モ希望シタ所ノ
救護法ガマダ確定セナイノデアリマス此
兩三日間ノ新聞ヲ讀ミマスト競馬法ヲ改
正シテ此財源ヲ取ッテ約七八十万圓ヲ救護
法ノ資金ニスルト云フヤウナコトガ出テ居
リマシタガ、果シテサウデアリマスルナラ
バ私ハ誠ニ意外トスル所デアリマス、救護
法ヲ實施イタシマスレバ四百万圓位ヲ出シ
テヤランナラヌノデス、少クモ其半額二百
万圓ハ出シテヤラヌナラヌノデス、此方面
委員ガ窮狀ヲ訴ヘタ此言葉ヲ聞クト我ミハ
知ラズ識ラズ落淚スルノデアリマス、斯ノ
如キ狀況ニアル人ヲ救ハナイデ、此減稅法
案ヲ御出シニナッテ居ル、是ハ餘程〓究ヲ要
スベキコトト考ヘルノデアル尙ホ私ハ今
日ノヤウナ社會狀態ニ於キマシテハ間接稅
ヲ減ズル方ガ寧ロ宜イト思フノデアリマ
ス、無論間接稅モ色ミアリマス、藏相ハ昨
日間接稅ヲ減ズルト云ヲト矢張リ此小賣
共他ガ一向價格ヲ下ゲナケレバ、減ジタダ
ケノ效果ガナイト云フ、ソレハ僅カナ或品
物ニ付テ一厘カ一錢カノ減稅ナラバ無論大
シタ影響ハアリマスマイ、併ナガラ相當ノ
減稅ヲシテ、而シテ暴利取締ヲ嚴重ニナサ
レタナラバ、決シテ效果ガ擧ラヌコトハナ
イト信ズルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ
關係カラ私ハ是非政府ガ行政、財政、之ヲ
根本的ニ御整理ニナッテ、是ニ財源ヲ十分御
造リニナリ、而シテ減稅ヲ最モ公正ニ、且
ツ課稅標準ヲ適當ニシ、負擔ノ公正ヲ期シ、
サウシテ今日ノ此地方ノ窮狀ヲ幾ラカ救
ヒ、民力ヲ休養スルヤウニシテ戴キタイト
思フノデアリマス、故ニ今急イデ僅ニ六年
度デ九百万圓、僅カナ減稅ヲナサレルヨリ
モ、モウ少シ愼重ニ御〓究ニナッテ欲シイト
考ヘル者デアリマス、第五ニ今囘御提案ノ
減稅ノ中デ、營業收益稅、砂糖消費稅、織
物消費稅ハ單ナル減稅デアリマスルガ
地租ハ現行ノ土地價格主義ヲ收益主義ニ御
改メニナッタノデアリマス、卽チ地價ニ據ル
ノヲ御止メニナッテ、土地ノ賃貸價格ヲ課稅
標準ト定メラレタノデアリマス、是ハ地租
稅制ヲ歷史的ニ考ヘマスト云フト一大變革
デアリマス、前內閣時代ニ於キマシテハ
地方ニ此地租ヲ委讓セントシタコトモアリ
故ニ此變革ハ十分ナル〓究ヲ要スル
ト考ヘルノデアリマスルガ、政府ハ此案ヲ
稅制委員會トカ、共他相當機關ニ御諮問ニ
カット。一般ノ空氣ヲ御覽ニナッタノカドウ
カ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、元來現行
地租ノ根據法規ハ、御承知ノ如ク明治六年
ノ七月ノ第二百七十二號布告、地租改正條
例ニ依ッテ、地價ヲ課稅標準トシタノデアリ
マス爾來數囘ニ互リマシテ、地價ノ不權
衡ヲ是正シ、三十一年ノ法律三十一號ニ依
リマシテ、田畑地價ノ修正ヲ行ヒ、更ニ明
治四十三年法律第三號ニ基キマシテ、賃貸
價格ヲ標準トシテ、宅地ノ地價ヲ修正シタ
ノデアリマス、爾來此地租收入ハ增加シテ
來マシテ、大正三年ニハ國民一人デ八圓八
十錢餘納メルコトニナッテ居リマシタガ、今
日ニ於キマシテハ、國民一人デ二十二圓餘
ヲ負擔スルコトニナッテ居リマス、卽チ歐洲
大戰前ニ比シマシテ二倍半ニナッテ居ル、我
國モ世界大戰ニ依リマシテ騰リマシタ物
價其他經濟現象ハ漸次此戰前ニ歸リツツ
アルノデアリマス、物價ハ尙ホ大正三年ノ
指數ニ對シテハ二十六七多イノデアリマス
ガ、併シ非常ニ低落シテ來マシテ、漸次大
正三年ノ物價指數ニ接近シテ居リマス、其
他財界ノ有樣ガ漸次此戰前ニ歸ラウトシツ
ツアル而モ此地租ハ少シモソレニ近ヅカ
ナイ、斯ウ云フ狀態ニアリマス、二倍半デ
アリマス、併シ最早此地租モ伸張力ヲ缺イ
テ來マシテ國稅トシテハ六千七百万圓程
度ヲ維持シテ居ルノデアリマス、サウシテ
御承知ノ如ク酒稅、所得稅、關稅、砂糖消
費稅ノ次ニ地租ガ位置スルヤウナ狀態ニ
ナッテ居ルノデアリマス、併ナガラ道府縣町
村ハ此地和附加稅、特別地稅附加稅ヲ課シ
マシテ、是等ノ地方稅ハ一億二千万圓ニ上
ボッテ居リマス、斯樣ニ地租ハ國庫カラ幾ラ
カ離レテ、地方財政ヲ助ケテ行クト云フ情
勢ニアルノデアリマス、カルガ故ニ地租ノ
課稅主體ヲ地方ニ委議セントスル論ガ生
ジ、又現政府ノ執ラレル如ク課稅標準ヲ賃
貸價格ニ改正スルト云フ案モ出テ來ル牌以
デアリマス、我ミハ今日ノ我國家ノ基礎ヲ
鞏固ニセムガ爲ニハ、此自治體ニ獨立ノ財
源ヲ與ヘテ、自治體ガ自ラ其自治體ヲ發達
セシメ、共自治體ノ發達ノ幸福ヲ又自ラニ
還元スルヤウニ所謂自治ノ精神ヲ向上シ
テ行クト云フコトハ、國家ノ爲ニ最モ大切
ナルコトト考ヘテ居ル一人デアリマス、又
斯ノ如キ稅ヲ地方ニ委讓シマシタナラバ、
地價ノ修正トカ、其他徵稅等ガ容易デアリ
マシテ、自治體ノ收入ニ關係アルカラ、自
治體自ラガ其氣分ニナッテ行ヒマスカラ、
非常ニ是ハ樂デアリマス、併ナガラ之ニ付
テハ歷史カラ色ミノ關係カラ、地租ヲ地方
ニ委讓スルト云フコトニ、國民ノ聲ガ一致
シテ居ナイト云フコトモ事實デアルデ萬
一此地租ガ委讓ガ出來ナイトシタナラバ、
寧ロ此賃貸價格ノ課稅標準モ、理論的ニ申
セバ地租稅制トシテ一進步ダト考ヘルコト
モ出來ルノデアリマス、併ナガラ今日ノ場
合ニ於テ此課稅標準ヲ採ルト云フコトガ
果シテ適切デアルヤ否ヤト云フコトハ昨
日長岡君ハ喋々ト御述ベニナッテ居リマス
ルカラ、私ハ重複ヲ虞レテ此處ニ述ベマセ
ヌガ、結局政府ハ相當ノ諮間機關ニ諮ラレ
テ、十分ニ檢討セラレテ居ルカ否ヤト云フ
コトヲ承ッテ置キタイノデアリマス、次ニ私
ハ第六トシテ減稅種目ノ選擇ハ何ヲ標準ト
セラレタカ、又其減稅額ノ配當ハ何ヲ根據ト
ナサレタカト云フコトヲ御尋ネシタイ、我
我ハ今囘ノ減稅案ノ內容ヲ〓究シテ見マス
ルニ、營業收益稅ノ如キハ六年度ノ減收ガ
千二百何十万圓カニナリマス、其減收ガア
ルニモ拘ラズ、尙ホ四百六十万圓ヲ配當シ
テアリマス、又地租ハ千八十一万圓ノ減稅
ニ引當テルコトニナッテ居リマス、是ガ相互
權衡ヲ得ナイヤウニ考ヘラレルノデアリマ
ス、砂糖消費稅ニ付テ觀察イタシマスルニ、
此砂糖一人ノ消費ガ統計ニ依リマスト二十
斤トナッテ居リマス、之ニ對スル減稅ガ一斤
ガ僅カニ、三厘·······三厘ニ過ギナイノデア
ル砂糖ノ消費ガ斯クノ如ク少イト云フコ
トハ御承知ノ如ク農村ナドデ砂糖ヲ料理
ニ使フナント云フ贅澤ヲシテ居ル所ハ殆ド
見ナイノデアル、目下最モ窮狀ニ陷ヲテ居ル
所ノ農村ナドノ減稅ニハ少シモナリマセ
又、此消費稅ハ、又織物消費稅ノ如キハ
價格ニ影響スル程ノ減稅ニナッテ居リマセ
ヌ、殆ドモウ言フニ足ラナイノデアリマス、
統計デ計算シテ見マスト數字ニ盛ルコト
ガ出來ナイ位ナ減稅デアリマス、斯ウ云フ
減稅ハ藏相ガ仰セニナッタ如ク、小賣其他
「デパート」デ決シテ安クナリマセヌ一體
斯ウ云フ織物ノ如キ、國民ニ其地質其他價
格ノ鑑識ガナイ以上ハ唯値段ノ高イ物ガ
良イト云フ觀念ニ驅ラレマシテ、決シテ、
少シ、五厘ヤ一錢安イカラト云ウテソレヲ
買フト云フノハアリマセヌ、三越ノ「デパー
ト」ナドニ參リマスルト、價格ヲ安ク付ケテ
置イタラ賣レナイ、倍クラヰニシタラ賣レ
出シタト云フヤウナ話モ承ッテ居リマスガ、
是ハ値段ガ高イカラ良イ物ダト云フ考ヘデ
アリマシテ、品物其物ヲ鑑識スル能力ガ普
通ノ人ニハナカ〓〓ムツカシイ、殊ニ著物
ノ如キハムツカシイノデアリマス、チヨット
シタ色合ニモ、色ノ付ケ方、或ハ模樣ノ付
ケ方デ、非常ニ價格ニ相違ガ來マスカラ、
ナカ〓〓此價格ヲ鑑識シテ、適當ナ價格デ
購買スルト云フコトハ、事實行ハレ難イ、
故ニ、織物消費稅ナド、眞ニ此雀ノ淚クラ
ヰヲ減ジマシタ所デ、決シテ消費者ノ利得
トハナリマセヌト云フコトハ、是ハ何人モ
サウ御考ヘニナルト、私ハ信ズルノデアリ
マヽ、政府ハ今囘ノ減稅ハ大體ニ於テ地
方收入ヲ增減ナカラシムルヤウニナッテ居
ルト申サレマスルガ、實際ハ地方團體ノ減
收ハ免レヌト思フノデアリマス第七ニ政
府ハ地方財政ノ困窮ヲ如何ニ觀察セラレテ
居リマスルカト云フコトヲ御尋ネシタイノ
デアル、極ク簡單ナ御尋ネデアリマス、ド
ウモ我ミガ見テ居リマスト、地方財政ニ付
テ政府ノ御心配ガ誠ニ足ラヌヤウナ感ジガ
致スノデアリマス、此事實ハ昨日長岡君
ガ玆ニ喋々御述べニナッテ、證據ヲ擧ゲテ御
述べニナッテ居リマスカラ、申上ゲヌデモ十
分御分リデゴザイマセウガ、唯一時的膏藥
貼ヲナサレ、一時押ヘルト云フヤウナ風ガ
アルノミデアリマシテ、決シテ此地方財政
ヲドウシテヤラウト言フヤウナ、積極的ノ
御考ヘガナイヤウニ感ズルノデアリマス、
其證據ニハ、現政府ハ小學校ノ國庫負擔ヲ
全額負擔ノ主張ヲナサレテ居ル政府デア
ル然ルニ昨年ノ臨時議會ニ、誠ニ申譯的
ノ僅カニ一千万圓ノ國庫負擔ノ增加ヲシタ
ノデアル、我ミハ地方ヲ廻ッテ聽イテ見マス
ルト一千万圓ノ國庫負擔ノ增加ハ如何ナル
影響ヲ與ヘテ居ルカト申シマスト、御承知
ノ如ク、貧弱町村ハ旣ニ九割五分マデ行。テ
居リマスカラ、今日、目下非常ニ窮狀ニ陷ヲ
テ居ル所ノ農村ハ、僅カニ一一分位シカ增加ヲ
受ケテ居ナイノデアル、誠ニ何厘ト云フ··
是モ一ノ所謂減稅デアリマスガ······減稅ニ
シカナッテ居ナイ、富裕町村ハ一年ニ一錢ヤ
二錢ノ減稅ヲシテ戴クヨリハ、我〓ハ金融
ヲ滑ラカニシテ、我ミガ働キ得ルヤウニシ
テ下サレタナラバ、十錢ヤ二十錢ノ稅ヲ國
家ニ拂フコトハ何デモナイ、富裕町村ハサ
ウ考ヘルノハ無理デハナイト思フ、相當ノ
仕事ヲシテ居ルノデアル、所ガ、我ミハドウ
云フ者ヲ今日救ハナケレバナラヌカト云フ
ト、今日食フニ困ル、ドン底ニ陷ッテ居ル人
ヲ救ハナケレバナラヌト云フ考ヘヲ持ッテ
居ルノデアル、ドウシテモ其方面ニモフト
著意シテ戴キタイノデアル、救護法ト云ヒ、
此國庫負擔金ノ方法ト云ヒ、全額負擔ヲ國
庫ガスルト云フ、此政策ヲ御持チニナッタル
現政府ガ、何等今年ニ於テ、此國庫負擔金ノ
增加ヲ御計畫ニナッテ居ナイ、是ハ今日ノ農
村ノ窮狀カラ見マシテ、先般來本議場ニ於
テ、殆ド此壇上ニ立ツ人ハ之ヲ絕叫シナイ人
ガナイノデアリマス、實ニ慘憺タル有樣デ、
小學校ノ先生ニ寄附ヲ要求スル······强要ス
ルトカ、或ハ俸給ノ支拂ヲ六箇月モシナイ
トカ、是ガ大キナ數ニナッテ、文相モ是等ノ
數ヲ調ベテ驚イテ居ラレル筈デアリマス
カヽル狀況ニアルニ際シテ、何等ノ手段モ
御盡シニナラナイデ、此小學校ノ〓育ハ如
何ニナサレマスカ、今日就學年齡ニ達シテ
居ル所ノ兒童ノ爲ニハ誠ニ不幸ナコトデア
リマス、小學校ノ〓員ガ俸給ヲ寄附セナイ
ト云フト、子供ヲ登校セシメナイト云フコ
ト迄ニ至ッテ居リマス、斯クノ如キ狀況ハ如
何デアリマセウモウ少シ是等ノ點ニ御著
意下サレムコトヲ私ハ切望スルノデアリマ
ス、第八ト致シマシテ、私ハ此地租法ニア
リマス公供團體公有地ノ多キ土地ニ關シ
テ政府ハ如何ナル補償法ヲ御定メニナリ
マスカト云フコトデアリマス、モウ一度申
シマスガ、公共團體公有地ノ多キ土地ニ關
シテ、政府ハ如何ナル補償法ヲナサイマス
カ、是ハデス、ドウ云フコトカト申スト、
此地租法ニ依ッテ課稅ヲシナイモノハ、公有
官有或ハ一部神社、佛閣、斯ウ云フヤウ
ナ土地ニハ課稅ヲシナイノデアル所ガ、
政府ノ施設ヲ殆ド其各町村ニ蔓ラシテ居ル
ヤウナ一例ヲ申セバ、海軍工廠ガ蔓"テ居ル
所ノ吳ノ如キ、或ハ舞鶴ノ如キ、或ハ陸軍
デ申シマシテモ、此近郊ニ兵營其他演習地
ノ非常ニ多イ所トカ、斯ウ云フヤウナ所ガ、
全國ニ······其區域ニアル所ノ町村ハ附加
稅ヲ課スルコトモ出來ヌシ、收入ヲ非常ニ
減ジテ、其土地ニ對スル諸稅ヲ皆頭割ニ負
擔シテ居ルノデアリマス、ドウシテモ斯ウ
云フヤウニ偏シテ、國防其他カラ斯ウ云フ
設備ヲスル以上ハ、之ニ適當ナル補償ヲス
ルト云フコトハ今日ノ時代ニハ最モ必要
ト私ハ感ズルノデアリマス昔ノヤウニ
ドノ人ノ權利モ何モ蹂躪シテ、サウシテ空
イテ居ル所ハ使ッタト云フヤウナ時代トハ
今日ハ違ヒマス、ドウシテモ是等ニ付テハ
相當ノ考慮ヲ拂ッテヤラナケレバナラヌト
思フノデアリマスガ、政府ハ是等ニ付テ如
何ナル方法ヲ御執リニナラムトスルカ、私
ガ承ル所ニ依ルト、從來各省ハ······各省ト
云フテモ陸軍ノ方デハヤッテ居リマセウガ、
海軍ノ方デアリマセウガ、若干ノ豫算ヲ運用
シテ其補償ニ當テラレテ居ルヤウナコトモ
聞イテ居リマスガ、ソレガ果シテ事實デア
リマスカ、是ガ果シテ事實トシタナラバ如
何ナル法律、如何ナル手續デ、ソレヲ補償
ナサレテ居ルカ、之ヲ合セテ承リタイノデ
アリマス、兎ニ角此減稅ヲナサレテ、國民
負擔ヲ輕減スルト云フコトハ、我〓ハ少シ
モ反對スルモノヂヤアリマセヌ寧ロ大々
的ニナサレムコトヲ希望スルモノデアリマ
ス併ナガラ姑息的ニ今日ノヤウナ倫敦條
約ト釘付ケニシタ所ノ僅カノ金ヲ六年間ニ
振撒イテ、此減稅計畫ヲナサレタト云フコ
トニ付テハ決シテ我ミハ同意ガ出來ナイ
ノデアリマス、今日ノ如キ不景氣ニ於キマ
シテハ益、稅收入ヲ減ジテ、國家財政ヲ窮
乏ニ導イテ居リマス、遂ニハ又增稅ノ巳ム
ナキニ至ッテ來ヤセヌカ、之ヲ私等ハ心配ス
ルノデアリマス、況シテ先刻來述べマシタ
如ク、將來尙ホ軍艦等其他ノ經費ガ非常ニ
增加スルト云フコトガ眼ノ先ニブラ下ッテ
居リマスト同時ニ、現下ニ於ケル國際政局
ハ決シテ安心ガ出來ナイト云フコトハ
政府諸公ノ御承知ノ通リデアリマス、我〓
ハ現在ノ我國防力ガ是レ以上ニ滅縮スルト
云フコトガ出來ナイ狀況ニアルト云フコト
ヲ確信シテ居リマス、サウ云フ心配ヲ我ミ
ハ持フテ居ルノデアリマス、故ニ將來減稅ノ
財源ヲ國防力カラ出シテ行クト云フコト
ハナカ〓〓困難デアルト信ジテ居ル一人
デアリマス、結局私ハ只今擧ゲマシタ所ノ
八項ニ係ル質疑ヲナシマシタノハ、此法案
其モノノ重大性ニ鑑ミマシテ、誠ニ僣越デ
アリマスルガ、此壇ニ登,テ御尋ネスル次第
デアリマスドウゾ政府ニ於カレマシテハ
深切ニ明快ニ御答辯アラムコトヲ切ニ御願
ヒ致シマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=16
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017・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今ノ三井氏
ノ御質問ハ私ニ關係スルコトガ多イヤウデ
ゴザイマスカラ、一應御答辯ヲ致シマシテ
不十分ナ所ガアリマシタカラ他ノ大臣カラ
モ御答ヘスルコトニ致シタイト思ヒマス、
第一ノ御問ヒハ此軍縮ニヨル關係ト減稅ト
ヲ切離シテヤルコトガ能クハナイカ、海軍
ノ爲ニ、留保シテアル財源カラ無理ニ剩餘
金ヲ出シテ、ソレヲ減稅ニ當嵌メタカラシ
テ、海軍ノ整備計畫モ不完全デアルシ、減
稅モ頗ル少額デアル兩者相立タナイヤウ
ナ關係ニナッテ居ルヂヤナイカ、ソレデアル
カラ寧ロ切離シテ、海軍ノ補充計畫ノ不十
分ナコトガアルカラ、ソノ爲ニ財源ヲ尙ホ
留保シテ置イテサウシテ減稅ヲ止メタラ
ドウカ、斯樣ナ小額ノ減稅ヲチビ〓〓ヤル
コトハ效果ガナクシテ寧ロ行政ノ整理ヲ
ヤッテ減稅額ヲ殖ヤシテ實行シタ方ガ非常
ニ有效デアラウ、斯ウ云フヤウナ第一問デ
アリマスガ、我とハ斯ウ考ヘテ居リマシタ
ノデアリマス、留保財源ガ餘リ巨額デナカッ
ク、十分デハナイノデアル、併ナガラ第一
ハ昭和六年カラ主力艦ノ代換建造ト云フコ
トヲ止メルコトガ出來ル、中止スルコトガ
出來ル、其爲ニ相當ナ財源ノ餘剩ガ出テ來
タ斯ウ云フコトハ卽チ倫敦軍縮會議ノ結
果生ジタ事情デアリマス、ソレデアリマス
カラ、其留保シテアル財源ヲ軍縮會議ノ目
的デアル國民負擔ノ輕減ト云フコトハ是非
トモ實行シタイ、又一方カラ考ヘマスト
如何ニ少額デアッテモ、今日ノ如キ經濟界ノ
急激ナ變動ノアル時ニ對シテハ、政府ノ處
置トシテハ私ハ然ルベキ處置デアラウト
考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ我〓ノ決心
ノアル所、考ヘノアル所ヲ國民ニ示スト云
フコトハ、私ハ其額ノ少イコトハ如何ニモ
遺憾デアリマスケレドモ、其事柄ハ今日ノ
ヤウナ經濟界、今日ノヤウナ國民ノ狀態ニ
對シテハ、非常ナ私ハ適當ナ處置ト考ヘテ、
是非トモ此減稅ヲヤリタイ、斯ウ考ヘテ居"
タノデアリマス、勿論國防ノ缺陷アルコト
ヲ見テヤルト云フコトハ、是ハ當然出來ル
仕事デナイノデアリマス、國防ハ一日モ忽
セニスベカラズ、其爲ニハ適當ナ財源ヲ分
配シテ、餘剩金ガ出來マシタナラバ減稅ヲ
スルト云フコトハ之ヲ切離シテモ、如何
ニ、ドウシテモ、私ハ適當ナ處置デアル、
又苟モ倫敦軍縮會議ニ臨ンダ以上ハ、又留
保財源カラ餘剩金ガ出シ得ルナラバ私ハ
國民ハ左樣ニ期待スベキ性質ノモノト考ヘ
ルノデアリマス、私ハ三井君ノ御問デモナ
カッタノデアリマスガ、五億八百万圓ノ留保
財源ノ性質ヲ極ク簡單ニ說明イタシテ置キ
タイノデアリマス、三井氏ノ言ハレルヤウ
ニ五億八百万圓ノ留保財源ヲ財政計畫ノ中
ニ入レマシタノハ昭和五年ノ財政計畫ノ
時ニ入レマシタノデアリマス、從ッテ三井氏
ノ指摘サレル如ク十五億以上ノ歲入ノアッ
タ時代ニ入レタノデアリマス、ソレガ昭和
五年度ノ實行スル場合ニナリマシテハ
億二千万圓ト云フ稅ト官業ノ收入ハ減ッタ
ノデアリマス、減リマシタカラ其處ニ非常
ナ財政上ノ狀態ノ變化ヲ來シテ居リマス、
三井氏ノ言ハレルヤウニ、五億八百万圓ト
云フノハ現金ガ積ンデアル譯デハナイ、稅
ガ減レバソレダケ減ル譯デアリマス、然ル
ニ只今申上ゲル如ク國防ノ爲ニハ適當ナ金
ヲ使ハナケレバナラヌシ、今日ノ經濟界ノ
爲ニハ少クトモ減稅ヲスベキモノト考ヘタ
結果ガ、五億八百万圓ト云フモノニハ
一 り、稅ガ減ルケレドモ、此モノニハ減サ
ズニ、他ノ各省ノ經費デ減シタノデアリマ
ス、然ルニ五億八百万圓ト云フモノガ今後
存在シテ居ル譯デアリマシテ、卽チ昭和六
年度ニ於テ各省ノ歲出ニ巨額ナ減額ヲ見タ
譯ハソコニアリマス、併ナガラソレハ一
方カラ言ヘバ、國防ノ爲、又減稅ノ爲ニ
已ムヲ得ヌ處置、卽チソレガ今日ノ時局ニ
對スル適當ナ處置ト考ヘテ、其事ヲ決行シ
タ所以デアリマス、ソレカラ第二ノ御問ハ
大體ノ財政計畫ノ御話デアリマシテ、御問
ノ趣意ハ今日減稅ヲ致シテモ將來ニ於テ差
支ナイカ、斯ウ云フ御問ニナルノデアリマ
ス、私ハ只今申上ゲルヤウニ、留保財源ガ
アッテ、ソレデ海軍ノ計畫ヲ立テテ、サウシ
テ剩餘財源ヲ減稅ニ持ッテ行ッテ、御覽ク如
ク財政計畫ハ出來テ居ルノデアリマス、世
ノ中ノ事ハ今日アッテ明日如何ナルコトガ
出來ルカソレハ分リマセヌ、何人ト雖モ分
ラヌノデアリマシテ、今日假ニ斯ウ云フ財
政計畫ガ立ッテ居リマシテモ、過去ノ經驗カ
ラ申シマシテモ、何時デモ稅ハ殖エルコト
モアレバ減ルコトモアリマス、過去二十
年間ノ歷史ヲ考ヘテ見マスト、何時デモ五
年六年先ノコトヲ豫想シタコトハ變ノテ居
ルコトモアリマス、減ルコトモアレバ殖エ
ルコトモアリマス、昭和五年ニ考ヘタ稅ガ
昭和六年度ニ至ッテ一億一一千万減ルコトモ
アリマス併ナガヲ十五億モアル此財政計
畫ノ中デ一億二千万圓ト云フモノノ伸縮ノ
出來マスルト云フコトハ、日本ノ此財政計
畫ノ狀態デアリマス、非常ナ······一割近イ
歲出ヲ減シマスルコトハ非常ナ無理ガ行キ
マく、無理ガ行キマスカラ色〓度〓申上ゲ
ルヤウナ無理ガ行ッテ居リマスケレドモ、ソ
レダケヲ減ジテ行政ガ運用ガ出來ルト云フ
ヤウナ計畫ニナッテ居リマスコトハ、私ハ過
去ノ財政當局者ニ非常ナ感謝スベキコトト
思フノデアリマス、ソレナラバ左樣ニ減ジ
タ後ノ狀態ヲ見ルト、度ミ申上ゲマスル如
ク、財政ノ計畫ニ於テ過去ト比較シテ決シ
テ安固ト言ヘヌカラ、財政ノ或ハ行政ノ整
理ヲシテ、サウシテ此計畫ヲ安固ニ立テテ
行カウ、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、
此中デ私ハ三井氏ノ御言葉ガ惡カッタカ、私
ガ聽キ方ガ惡カッタカ、チヨット誤解ノヤウ
ナ點ヲ見付ケ出シマシタカラ、是ハ辯明解
釋イタシテ置キマスガ、留保財源ト財政計
畫トノ關係ヲ申シテ置キマスト留保財源
ハ昭和六年度ガ大數デ申シマスト、財政計
畫ノ中ニハ千八百万圓、ソレカラ昭和十一
年ニハ一億千何百万圓、一億二千万圓近イ
ノガ這入ッテ居ルノデアリマス、卽チソレガ
昭和十二年度ノ數字ニナルノデアリマス
ガ、其中カラ航空隊ノ維持費ノ二千五百万
圓モ取リマス、ソレカラ減稅ノ二千五百万
圓モ差引キマシテ、殘リガ六千万圓アルノ
デアリマス、從ヒマシテ財政計畫ノ上カラ
申シマスト、六千万圓ハ臨時費デモ何デモ
一時的ノモノデナシニ、所謂永久財源トシ
テ續クモノデアリマス、誤解モアリマセヌ
デシタラウガ、御言葉ノ中ニ十二年度以降
ハ外ニ恒久的ノ財源ヲ求メナクチヤナラヌ
ヂヤナイカ、留保財源ハ一時的ノモノヂヤ
ナイカ、斯ウ仰シヤラレマシタガ、今ノ私
ガ申シマス一億二千万圓近イ金ハズット這
入ッテ居リマシテ、其中カラ五千万圓近イ維
持費ト減稅ヲ引クト云フコトノ理窟ニナリ
マス、コッチカラ歲入ノ方カラ減稅ハ引キマ
スカラ、專門的ニ云ヘバ違ヒマスケレドモ、
說明イタシマスレバサウナリマス、ソレカ
ラ海軍ノ維持費ガ足リナイ、得テ居ル權利
ノ全部ヲ行使スレバ金ガ幾ラ要ル、工業能
力維持ノ爲ニ金ガ幾ラ要ル、ソレカラ昭和
十二年度以降ノ頭ヲ多少出ス爲ニ金ガ幾ラ
要ル、合計シテ三億モ要スル、斯ウ云フ御
話デアリマシテ、ソレヲ〓計表ノ上ニ照シ
テ見ルト、頗ル〓計表ハソレトハ非常ナ不
適當ナ狀態ニナッテ居ルガ、財政計畫ノ非常
ニ薄弱ナモノヂヤナイカ、斯ウ云フ御言葉
デアリマスガ、維持費ハ昭和十一年以前ニ
幾ラノ金ガ要ルカ、斯ウ云フヤウナコトニ
付テハ、海軍大臣ヨリ度ミ御說明モアリマ
シタガ、私ハ大體財政計畫ノコトヲ御話申
上ゲテ見テ置キタイト思ヒマス、成程軍艦
ノ新シク出來マス噸數ガ殖エマス、スレバ
維持費ガ要リマス、併ナガラ昭和五年度以
前ノ維持費ハ兎ニ角分配サレテ全部艦ハ動
イテ居ル今後殖エルモノハ左程ニ多クノ
噸數デハナイ、私ガ一ツ是マデノ海軍ト大
藏省トノ間ノ狀態ヲ御話シ申上ゲテ、此三
井氏ノ御問ヒニ對スル御答ニシテ置キタイ
ノデアリマスガ、海軍ノ艦ガ何噸出來ル、
算盤ヲ採レバ是ダケノ維持費ガ要ルト云フ
コトハ直グ出テ參リマス、併ナガラ今日マ
デノ日本ノ財政ノ上カラ左樣ナユトリガナ
イ、又剩餘金ノアリマシタ時ニ於キマシテ、
海軍自カラガ自分ノ多クノ財源、多クノ廣
イ艦カラ種々樣〓ノ計畫ヲ致シマシテ、此
維持費ノ如キハ大部分海軍デヤリマシタ、
サウシテ財政ニ餘裕ガアッタ時ニハ何時デ
モ大藏省モ喜ンデ海軍ニ此維持費ヲ提供シ
テ居ルノデアリマス、サウデアリマス
カラ數字、理想的ニ割出サレタ維持費
ガ、何時デモ海軍ガ大藏當局者カラ取ッ
テ居ルト云フ次第デハアリマセヌ、ソレ
ハモウ何レノ國ノ財政デモ私ハ左樣ニ
考ヘマスガ、サウ云フコトデ兩者ノ間
ニ協定ガ出來テ左程ナ困難モシテ居リ
マセヌ、ソレカラ昭和十一年以前ニ權利
ノ行使ニ付テハ希望モアリ必要モ認メル
斯ウ云フコトデアルガ、ソレニ對シテ何等
財源ガ用意ガシテナイ、成程三井氏ノ言ハ
レル、私ハ數字ヲ、只今ハッキリ頭ニ入レ
テ居リマセヌガ、權利ノ全部ヲ行使イタシ
マシタラ左樣ナ數字モ出テ參リマセウ、併
ナガラ度〓海軍大臣カラ申上ゲル如ク、成
程希望モアレバ必要モ認メテ居ルガ、是ハ
相對的ノコトデアリマスカラ、外國ノ狀態
如何ニ依リ、程度モ極マレバ年限モ極マル、
斯ウ云フコトデアリマシテ、斯樣ナ事態ニ
應ジマシテ是マデハ財源ニ餘裕ガアレバ何
時デモ仕舞ッテ置キマス、今カラ申シマシテ
五年ノ中、卽チ昭和十一年マデノ間ニ之ヲ
實行スル、マダ程度モハッキリシテ居ナイ、
ト云フヤウナ事態ニ應ジマシテ、是マデノ
日本ノ財政デ的確ニ凡ソノ計畫ヲ立テテ
何億トカ何千万圓ト云フ數字ヲ留保シテ
居ッタヤウナコトハ、殆ドナイノデアリマ
ス、先刻池田男爵ガ繰返サレマシタ時、卽
チアノ時ヲ考ヘテ見マスト、昭和六年ハ華
盛頓條約ニ依ル主力艦ノ代換建造ガ始マル
年デアル、殆ド的確的ニ何噸ノ主力艦ヲ拵
ヘナケレバナラヌ、金ハ幾ラト云フコトガ
ハッキリシテ居リマスガ、左樣ナ場合デサヘ
モ潤澤ナ金ハナカナカ用意ノ出來兼ネル次
第デアリマスサウ云フコトデ、今日迄ノ
財政ハヤリ來ッテ居〓テ、サウシテ一方ニハ
先刻池田男爵ノ御問ヒノ如ク、實際ニ於テ
國防缺陷ガアル場合ハドウスルカ、增稅ヲ
スルカ公債ヲヤルカ、如何ナル方法デ之ヲ
實行シテ行クカト云フヤウナ御問ヒニ對シ
テハ是ハ國ノ國防ノ缺陷ガアルト云フコ
トガハッキリ致シマシタナラバ、私ハ如何ナ
ル方法ヲ採リマシテモ其時ニ出來ルダケノ
方法ヲ講ジテ財源ヲ捻出スルト云フコト
ハ、國ノ財政ノ上カラ云ッタラ當然ノ儀ト考
ヘテ居ル次第デアリマス、第三ノ御問ヒハ
一方ニハ減稅ヲシテ一方ニハ失業公債ヲ募
集スル、非常ナ矛盾テハナイカ、失業公債
ノ如キハ決シテ一時的デハナカラウ、ソレ
ガ五年モ續ケバ一億圓ノ金トナル、賠償金
モ一時中止シタデハナイカ、左樣ナ金ヲ集
メタナラバ非常ニ大キナ借金ヲココニ殖ヤ
スコトニナル、私ハ昨日長岡君ノ質問ニ對
シテ大要御答へ致シタノデアリマスガ、成
程若シ假リニ一方ニ減稅ヲ致シマス、サウ
シテ永ラクニ亙ル公債財源ヲ以テスル事業
ヲ計畫イタシマシタラバ、ソレハ御說ノ如
ク一方ニハ借金ヲ殖ヤシ、一方ニハ減稅ヲ
スルト云フ矛盾ニナリマス、ハッキリサウナ
ルノデアリマスガ、併ナガラ今日ノ狀態ハ、
經濟界ニ對スル處置トシテハ、政府ノヤル
コトトシテハ色ミナ御說モ伺ヒマス、國
民ノ所得ヲ殖ヤシテヤレ、或ハ國民ノ窮民
ノ救濟ヲシテヤレト云フヤウナ御說モアリ
マスガ、國ノ處置ト致シマシテハ斯樣ナ
場合ニ減稅ヲヤルト云フコトガ、私共ハ最
モ適當ナル處置ト考ヘルノデアリマスデ
アリマスカラ減稅ハ致シマスガ、併ナガラ
今日ノヤウナ場合ニ出テ來タ失業ニ對スル
救濟ヲ行フコトガ、三井氏ノ言ハレル永久
ニ續クカ、五年續クカ、或ハ私等ガ考ヘマ
ス如ク一年二年デ切レルカ、ソコノ所ハ何
人モハッキリ致シマセヌガ、日本ニ三十万以
上ノ失業者ガ若シ今後五年、七年或ハ十年
續キマスナラバ、ソレハ日本トシテハ失業救
濟デナシニ根本的ノ處置ヲ講ズル必要ガ私
共ハアルト思ッテ居リマス、理窟ハ當ラヌカ
モ知レマセヌガ、或ハ舊イノカモ知レマセ
ヌガ、世ノ中ノ景氣不景氣ハ相當ノ年限ニ
於キマシテハ何時デモ轉換シテ居ル、三井
氏ノ言ハレルヤウニ、此今ノ世界ノ經濟界
ハ容易ニ直ラヌト言ハレルノモ一案カモ知
レマセヌ、併シ何人トシテモ左樣ナハッキリ
スル譯デハナイノデアリマス、是迄ノ過去
ノ經歷ヲ以テ我〓ノ知識ノ根本ト致シマス
ナラバ永久ニ此狀態ガ變化シナイト斯
ウ云フコトモ、決シテ私ハ、確カナ事實デ
ハナイノヂヤナイカ、斯ウ考ヘマス次第デ
アリマス、又一方カラ言ヒマスレバ過去
ノ經驗カラ言ヒマスト國家ハ生物デアリ
マシテ、昭和六年ニ考ヘマシタ此國家財政
狀態ガ永久ニ續ク、十年續ク二十年續クト
云フヤウナコトヲ、此處ニ考ヘマシタラバ
ドウナルカ、斯ウ云ヘバ今日ノ物價ガ是ヨ
リ下ラズニ今日ノ歲入ガ減ッタナラバ、我
我ガ考ヘテ居リマス如ク、增稅ヤ財政ノ整
理ヲシテ、之ニ當嵌メテ行クヨリ外ナイ、
若シ玆ニ之ニ應ジテ物價ガ減ッタナラバ、ソ
レモ當然ノ結果トシテ出テ參リマス、サウ
云フコトヲ考ヘマスト、今日ノ急激ニ稅ガ
減ッタコトヲ以テ直ニ百年ノ計ヲ玆ニ考ヘ
テ行キマスコトモ、可ナリ無理ガ出來ル次
第デアリマシテ、議論ニ亙リマスヤウデア
リマスケレドモ、サウ考ヘテ見マスト私
ハ今日減稅イタシマスコトガ直ニ將來ニ是
ガ增稅ニ變化スルト云フヤウナコトハ財
政當局者ノ努力ニ依ッテ是ハヤメルコトモ
出來ル、卽チサウ云フコトノ無力ナラシム
ルヤウニ努力イタシマシタラ、其效果ハ擧
ガルトモ考ヘテ居ル次第デアリマス、減稅
ノ內容ニ亙ラレテ、減稅ハ直接稅ト間接稅
トノ權衡ヲ頗ル宜シキヲ得ナイカラ、之ヲ
當分ヤメタラドウカ、斯ウ云フヤウナ御話
デアリマシタノデアリマスガ、昨日モ長岡
氏ノ間ニ對シテ私ハ答ヘマシタヤウニ、今
日ノ農村······今日ノ農村ノコトヲ考ヘテ見
マスルト地租法ノ改正ニ依リマシテ成程
六百万圓田畑ニ於テ滅稅ニナリマス、宅地
ニ於キマシテ五百万圓ホド增稅ニナルノデ
アリマス、併ナガラ減稅ヲ致シマス場合ニ
目前ノ經濟狀態バカリニ囚ハレルコトノ不
可ナルコトハ當然ノコトデアリマスガ、今
日ノ場合ニ於テ地租法ヲ玆ニ改正シテ見ヤ
ウ、斯ウ云フコトヲ考へテ見マスト農村
ノ狀態ニ對シテ地租ニ對シ相當ノ減稅ヲシ
タイ、斯ウ云フコトハ實際ノ當局者カラ申
シマスト、サウ云フ感ジガ起ッテ參リマス、
農村ノ減稅ヲシテ見マスト、ソレト對立シ
テ居リマス營業收益稅、卽チ市街地ニ於ケ
ル商工業者ノ小サイモノ、ソレニ對シテ稅
ヲ減ジテヤリタイ、斯ウ云フヤウナ感ジハ
起ルノデアリマシテ、若シソレニ對シテ御
非難ガアリマシタラ、金額モ一定シテ居ル、
減稅ヲヤラウ、稅制ノ根本ニ亙ッテ金額ヲ嫌
ハズニ稅制ノ公正ヲ期スル爲ニヤッタ整理
案デナイノデアリマスカラ、私、自分ガ申
シマスヤウナ、サウ云フ感ジガアッテ實行シ
タノデアリマス、數字上ノ根據ヲ······此稅
此稅ト絕對的ニ調査ヲシテ、數字上ノ根據
ヲ示セト仰シヤルナラバソレハアリマセ
又、只今申シマスヤウナ事態デアルノデ
アリマス、ソレカラ宅地租ハ市街地デナシ
ニ農村ニ於テモ宅地ガ上ガッテ居ルダラウ、
斯ウ云フヤウナ御話デアリマシテ、農村ニ
於テモ宅地ホカ持タズニ、他ノ田畑ヲ持タ
ナイ者ガ多カラウ、斯ウ云フ御話デゴザイ
マシタガ、昨日申上ゲマシタ如ク、宅地ダ
ケデ申シマスト、郡部デハ五十五万八千圓
程地租ガ滅租ニナッテ居リマス、決シテ其郡
部ノ宅地租ハ上ガッテ居リマセヌ、デアリマ
スカラ、其點ハ私訂正申上ゲテ置キタイト
思ヒマス煙草ノ値下ゲハドウカ、煙草ノ
値下ゲハ間接稅ノ最モ重要ナモノデアリナ
ガラ、政府自體ノ煙草ノ値下ゲヲセズニ置
イテ、他ノ四種ヲ取シテサウシテ稅ヲ下ゲ
タヽ誠ニ御尤モナ話デ、我ミモ今日ノ煙草
需要者ガ決シテ全然贅澤ナモノ、斯ウハ考
ヘマセヌ、併ナガラ煙草ノ値下ゲヲ致シマ
スノニハ非常ニ巨額ナ財源ヲ要シマス
種ノ煙草ニ對シテ何錢カ下ゲマシテモ中
中巨額ナ財源ヲ要シマスノデ、私左樣ナ勘
定ヲシタコトモアリマセヌガ、サウ云フ二
千五百万圓ノ減稅ヲ全部煙草ニ持ッテ行ク
コトガ出來マスナラバソレハ相當ニ有效
トモ考ヘマスガ、煙草ノ値下ゲハ相當ナ財
源ヲ要シマスノデ實ハ今日ノ財政狀態デ
ハ容易ニ手ノ著ケラレナイヤウナ事態デゴ
ザイマス減稅ヲシナガラ救護法ヲ出サナ
イ窮民ノ救濟ニ努メタ方ガ減稅カラ見
タラ宜カラウ斯ウ云フ御話デアリマ
シタガ誠ニ御尤モニ考ヘマス救護
法ノ財源ニ付キマシテハ大體ノ見込
ガ付キマシタノデ是非共今年度カラ··
所謂昭和六年度ノ或時期カラ實行期ヲ決メ
テサウシテ實行シタイト考ヘテ居リマシ
テ遠カラズ御協贊ヲ仰グコトニナルト
考ヘテ居リマス併ナガラ過日湯地君ノ御
問ニ答ヘマシタヤウニ、此倫敦ノ軍縮ノ餘
剩金ヲ以テ斯樣ナ救護法ニ充テタ方ガ宜ク
ハナイカ、何故之ニ充テナイカト云フ御說
デアリマスナラバ我ミハ當初カラアノ留
保財源カラ得ラレル金ハ是非租稅ヲ減ジヤ
ウ或ハ間接稅ヲ減ジヤウト云フコトヲ最
初カラ考ヘテ、其道ニズット進ンデ參リマシ
タ又ソレガ我〓ハ適當ナコトト考ヘマシ
タ次第デアルノデアリマスカラサウ云フ
御問デゴザイマスナラバ、我〓ノ考ト違ッテ
居リマシタノデ···ソレカラ賃貸價格ヲ
標準ニシテ地租ヲ變更スルニ付テ愼重ニ考
慮ヲ拂ッタカ、誠ニ御尤モデアリマス、今日
ノヤウナ經濟界ノ變動シタ場合ニ、賃貸價
格ニ依ッテ地租法ヲ改正スルノハドウカ、又
昨日長岡君ノ言フヤウニ、五百万圓デアッテ
モ市街地ニ增稅ニナルヤウナモノハ今日止
メタ方ガ宜イヂヤナイカト云フヤウナ御說
モアルヤウナ次第デアリマスガ、併ナガラ
賃貸價格ノ調査ハ大正十四年カラ大凡準備
ヲ致シマシテ十五年ノ四月一日ノ現在ノ
地租ヲ負擔シテ居ル全部ノ土地ヲ調査イタ
シマシテ、サウシテ二箇年間カカリマシ
テ······非常ナ努力ニ依リマシテ二箇年····
丸二箇年カカリマシテ、日本全國ノ土地ヲ
調査イタシマシタノデアリマスサウ致シ
マシテ土地賃貸價格調査法及ビ土地賃貸價
格調査委員ノ制度ヲ日本全國ニ設ケマシ
テ丁度之ニ使ヒマシタ金ハ千万圓程之
ニ金ヲ掛ケマシテサウシテ調査シタ次第
デアリマスソレデアリマスカラ考ヘマ
スト···其時ニ可ナリ深ク考へテ居リマシ
タノデ土地ノ收益ヲ本ニシテ法定地價ヲ
變ヘルノモ一案ダソレカラ土地ノ地價ヲ
標準トシテ之ヲ計算スルノモ一案ダソレ
カラ賃貸價格、此三ツニ付テ可ナリ〓究モ
シ議論モシタ結果ガ、ヤッパリ適當ナルモノ
ハ賃貸價格デアル、斯ウ決メマシタノデア
リマシテ左樣ニ可ナリ年月モ要シ、金モ
掛ケ、深ク〓究シテ居リマス、唯只今ノ
ヤウニ一方ニ市街地ノ增稅ニナルト云フノ
ハドウカト云フ御考モアリマスガ、是ハ昨
日御答ヘ申ス如ク負擔ノ公正ト云フコト
ヲ圖ル爲ニ出テ來マシタ地租法ノ改正ノ餘
儀ナイ次第デアリマシテ、ソレデモ減稅ヲ
此處ニ持シテ來ルコトガ出來マシタ爲ニ、市
街地ニ於キマシテモ約殆ンド五百万圓程
ノ負擔ハ矢張リソレデ輕クナッテ居リマス、
サウ云フ次第デアリマスカラ、ソレヲ兩者
加味シテ御考ヘ下サルト適當デアラウト
考ヘテ居リマス、ソレカラ非常ナ經濟界ノ
變動ノアッタ時ダカラ賃貸價格調査ノ基礎
ガ違ッテ居ハセヌカト云フヤウナ御說モア
リマセウガ、成程或ル、特定ノ田畑宅地ヲ取
リマシテ見マシタナラサウ云フコトモアリ
マセウ、併ナガラ全體ノ日本ノ經濟界カラ
申シマシタナラバ今日ノ狀態デ言ヒマス
ト皆大體經濟界ノ調子ガ下ッテ居リマス
カラ、左程不釣合ハナイモノト私ハ確信シ
テ居リマスソレカラ地方財政ノ疲弊困態
ヲ如何ニスルカト云フコトニ論及サレテ義
務〓育費問題ガアリマシタガ、義務〓育費
ヲ千万圓特別議會デ增加ヲ致シマシタ時ニ
モハッキリ政府ノ考ヲ申シテ置キマシタノ
デアリマシテ、全額負擔トカ色ミナ過去ニ
於テ議論モアリマシタケレドモ、先ヅ特別
議會デ千万圓殖ヤシマスレバ、今後當分ノ
間ハ義務〓育費ハ殖ヤスコトハセヌ積リデ
ゴザイマスト云フコトヲ申シテ置イタノハ
今日モサウ考ヘテ居リマス、義務〓育費ノ
千万圓ヲ增額イタシマシテ、全部地方稅ノ
減稅ニ使用シテ居リマスガ、實際ノ問題デ
申シマスト東京市其外數多ノ場所デマダ
減稅ニ振向ケテ居ナイ整理中ノモノモアリ
マスガ是ハ千万圓ハ千万圓地方稅ノ減稅
ノ金額ニ充當スルト云フ考デ、又議會ニモ
左樣申上ゲタヤウニ其方針デズット進ミ來ッ
テ居リマス、ソレカラ只今公有或ハ官有
神社佛閣ノ非常ナ廣大ナ土地ガアッテ、其地
方民ガ之ニ附加稅モ課スルコトハ出來ズニ
非常ニ困。ッテ居ルガドウシテ居ルカト、斯ウ
云フ御話デアリマスガ······御問ヒデゴザイ
マシタカラ申上ゲマスガ、一般會計ニ於キ
マシテ市町村ノ助成金ト稱シマシテ八十二
万九千八百五十四圓、是ハ內務省所管デ北
海道ノ國有林野所在地ノ市町村ニ對シテ
其官有林ヤ國有林ガアリマスト、其附近ノ
市町村ガ困リマスカラ、ソレニヤッテ居ルノ
デアリマス又海軍省ノ所管ニ於キマシ
ニ歸軍工廠ノ所在ノ市町村ニクシテ交付ジ
テ居ル高ガ三十一万二千二百圓、ソレカラ
農林省ニ於キマシテハ是ハ國有林野所在
地ノ市町村ニ交付シテ居リマス特別會計
ノ方デハ海軍ノ火藥廠、ソレカラ海軍ノ燃
料廠ソレカラ製鐵所ガ一番大キナ金高デ
アリマシテ五十九万三千三百圓ホドアノ土
地ノ市町村ニ交付シテ居ルノデアリマス
是ハ三井氏ノ言ハレル如ク稅ガ取レヌノ
デ勞働者ガ澤山寄ッテ來ル勞働者、卽チ
擔稅力ノ少イモノバカリガ寄ッテ市町村ヲ
成シテサウシテ〓育等ニハ非常ナ金ヲ要
スルノニ、其支出ノ途ガナイカラト云フコト
デ、斯樣ニ支出シテ居リマス、合計イタシ
マシテ百四十四万八千圓程一般會計、特別
會計デ渡シテ居リマス常ニ是ノ不足ヲ訴
ヘラレ又新シク請求シテ來ル所モ澤山ア
リマスガ、中ミ要求通リニハ參ッテ居リマセ
ヌケレドモ、斯樣ナコトヲシテ救濟ハシテ
居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 午後四時ヲ過ギ
マシタカラ是デ議事ヲ延會イタシマス、明
日ノ議事日程ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及
ビマス本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後四時十五分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02619310305&spkNum=18
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