1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月七日（土曜日）午前十時二十八分開議
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議事日程 第二十八號
昭和六年三月七日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第二十三日）
第二 地租法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 營業收益税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 砂糖消費税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 織物消費税法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 大正十五年法律第二十四號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 都市計畫法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第九 米穀法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第十 米穀需給調節特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第十一 船舶積量測度法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十二 鑛業法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出
案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院
ニ通知セリ
震災被害者ニ對スル租稅ノ滅免猶豫等ニ
關スル法律案
國際決濟銀行ニ租稅等ヲ課セザルコトニ
關スル法律案
同日政府ヨリ左ノ通政府委員仰付ケラレタ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第五十九囘帝國議會農林省所管事務政府
委員
農林技師有働良夫君
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第五號発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、昨六日、樺山伯爵病氣ニ付キ
地方鐵道補助法中改正法律案特別委員ヲ辭
任セラレマシタ其辭任ヲ許可シテ宜シウ
ゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ補闘トシテ川村伯
爵ヲ指名イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議事日程變更ニ
付キ御諸リヲ致シマスヽ本日モ議事ノ都合
上、目程第二ヨリ第八迄ヲ先ニ議題ト致シ
タク存ジマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ昨日ニ引
續キマシテ高橋球也君ニ發言ヲ許サウト存
ジマスガ、御許シ申ス前ニ高橋君ニ伺ッテ見
タイコトガゴザイマス幣原國務大臣ハ只
今衆議院ノ委員會ニ出席セラレテ居リマシ
テ、モウ直キニ議場ヘモ出席セラレル趣デ
ゴザイマスガ出席ヲ御待チニナラズニ質
疑ヲ御始メニナッテハドウデゴザイマセウ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=6
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007・高橋琢也
○高橋琢也君 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 然ラバ登壇ヲ望
ミマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=8
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009・高橋琢也
○高橋琢也君 只今議題ニ上ボッテ居リマ
スル地租法案以下ノ減稅ニ關係ノ法案ニ付
キマシテ質問ヲ致シタイト存ジマス昨日
大藏大臣ニ御質問ヲ致シタ積リデゴザイマ
スガ、或ハ私ノ申上ゲヤウガ惡カッタカ、十
分御耳ニ達シマセナンダノカ、一言モ御答
ヘガゴザイマセナンダ、就キマシテハ本日
改メテ伺フコトモゴザイマス、昨日私ガ申
上ゲマシタ、此地租法案ガ實行セラレマス
ル至リマシタ場合、今囘御出シニナック法案
ニ依シテ、本年度ハ九百万圓ノ減稅ガ出來
ル、勿論各法案ヲ通ジテデゴザイマスルガ、
來年度カラ卽チ昭和七年度カラハ二千五百
万圓ヅツ出來ル、斯ウ云フコトニナッテ居ル
ヤウデゴザイマス、其丸百万圓モ此法案ヲ
實施爲サルニ付テハ非常ナ御手數モカカル
筈デアル、又後稅ノ上ニ多額ナ費用ガ掛ラ
ウト、斯ウ私ハ信ジテ居リマスル、其徵稅
ニ係ッタ費用其他此法律ヲ實行ナサル上ニ
モ必要ナ費用ヲ除キ去ッテ、卽チ之ヲ差引イ
テ純益ガ初メテ本法律ニ謂ハレル國民負擔
ノ輕減ヲスルト云フ實際ノ金額ニ當ルノデ
アラウト思ヒマスル、其金額ハドノ位ニナ
リマスルカ、所謂徵稅費ノ中デ私ハ總テノ
費用ヲ籠メテ御話ヲスルノデアリマス、徵
稅費ヲ引去ッテ實際ノ所謂純收益、ソレガド
ノ位ノ金高ニナリマスルカ、之ニ向ッテ國民
ハ初メテ自分ノ負擔ヲ輕減セラルヽ金ハ是
ダケデアルト云フコトヲ知ルコトガ出來得
ルノダ、斯ウ信ジマシタ故ニ、之ヲ伺ッタノ
デゴザイマスソレカラ今一ツ前內閣時
代ニ計畫ヲ致シマシタ地租委讓ノ調査ト云
フモノハ確カスッカリ出來テアル筈ダト思
ヒマス、ソレヲモ昨日ハ申上ゲタカラ略ボ
御分リニナッテ居ルデアラウト思ヒマスル
ガ、之ヲ實施イタシマシタ場合ニハ、矢張
リ地方ノ負擔ヲ滅ズル結果ニナルデアラウ
ト思ッテ居リマシタ、果シテサウデゴザイマ
スルナラバ、今回ノ地租法ニ依テテ地租ヲ滅
ゼラレタ額ト對照イタシマシテ、ドチラガ
利益デアルカ、其得失ニ付テ伺ヒタイノデ
ゴザイマス、是ハ現政府ニ於テ殊ニ財政ノ
コトニハ最モ鍛鍊ヲシテオ出デナサル現大
藏大臣デアルカラ、無論是等ハ十分ナ御取
調ヲナサッテオ出デニナルノデアラウト存
ジマスル、之ニ對スル御所見ヲ承ハリタイ
ト存ジマス、此地租條例ヲ初メ重要ナ法
律······私ガ今地租條例ト申シタノハ(セン
ト云フ字ハ餘計ナコトデゴザイマシタ、是カ
ラ廢セラレヤウト云フ地租條例ノコトデア
ル、現在ノ地租條例ヲ初メ九ツノ重要法案
ガ廢棄セラレマシテ、就中其中デ昨日申上
ゲク、明治七年發布セラレタ地所名稱區別、
御承知ノ如ク官有地第一種、第二種、第三
種等ノ移動ハ、之ニ依ッテ何時デモ超ッテ來
テ居ルノデアリマス、中ニモ最モ大キナ彼
ノ御料林ナドモ之ニ依ッテ設定セラレルノ
デアル、ソレ故ニ國有林、國有地カラ御料
地御料林、御料林野等ニ編入セラレルモ
ノハ、元ハ地所名稱區別デ出來テ居ッタノデ
ゴザイマス、其以後ハドウ云フコトニナッテ
居リマスルカ、私長イ間官吏ノ籍ヲ離レテ
居リマスノデ、實ハ實際ノ取扱ヲ今ハ存ジ
マセヌ、之ニ代リマスルモノ、卽チ今囘廢
止セラレヤウト云フ九法律ノ中ノ一番古イ
是ハ法律デアル之ヲ廢シマシタナレバ、
今後ハ右申上ゲタヤウナ取扱ノ例、敢テ御
料林、御料林野トバカリ私ハ申スノデハゴ
ザイマセヌ、總テノ取扱ガドウ云フヤウニ
ナリマスルカ、同ジ官有地デアッテモ甲ノ省
カラ乙ノ省ヘ移ス、斯ウ云フ場合、ソレハ
ドウナッテ居リマスルカ、勿論國有財產ハ大
藏省デ總テ管理ヲシテオ出デニナルケレド
モ、大藏省デ管理シテオ出デニナルモノ
ハ其豪帳ニハ載ッテ居リマセウガ、各省
ノ所管ニ移ッテ居ルモノノ澤山アルコトハ、
能ク御承知ノ通リデアル、況ヤ森林原野ノ
如キハ內地、北海道、而モ之ガ別ニナッテ
居ル、又樺太、其他ノ地モ同ジ國有ニナツ
テ居ッテ、是ハ別ニナッテ居ル、ソレ故ニ是
等ニ對シマスル土地ノ移讓ノ場合ハドウ云
フヤウニナッテ居リマスルカ、確カ普通ノ
官有地デアッテ見レバ、一旦使用ヲ廢止ス
ル、例ヘバ陸軍省デ使シテ居ッタ土地デ、中
ニモ練兵場ノ如キハ、何レノ地方ニモ多イ、
大キナモノモアル、殊ニ非常ニ價格ノ高イ
モノデアル、斯ウ云フモノハ大〓其必要ガ
ナクナルト、元帳ヲ持ッテ居ラレル大藏省
ニ戾ルヤウニ思ッテ居リマシタガ、現在ハド
ウ云フ御取扱ニナッテ居リマスカ、之ヲ賣却
スル場合ニハ確カ大藏省デ賣却セラレル、
然ルニ陸軍省所管ノ土地デ之ヲ他ノ民有地
ト交換シ、-ククハ他ノ人ニ拂下ヲスル拂
下ゲル時ニハ大藏省ヘ戾スケレドモ、土地
ト土地ト交換スル場合、或ハ土地以外ノモ
ノモゴザイマセウ、其上ニ建物モアルソ
レヲ込メテ價格ガ其位ニ突合フカラ是ハ交
換シヤウ、斯ウ云フ場合ニハ確カ交換ガ、
現在所有シテ居ラルル官廳デ出來ルト思ッ
テ居リマスルガ、サウスルト是ハ元ノ大藏
省ニ返ラヌト云フコトニナルガ、是ハドウ
云フヤウニナッテ居リマスルカ、是モ伺ヒタ
1、大藏大臣ハ衆議院ニ於テ先年議會ノ協
贊ヲ經タ時ヨリ今日ハ以上デアルト云フコ
トヲ、賃貸價格ニ付テ言ッテ居ラレル、此賃
貸價格ナルモノハ、先キニ法律ガ出來テ賃
貸價格ヲ定メル、サウシテ賃貸價格ヲ
定メテ之ヲ實地ニ適用シテ、昭和三年カ
ラ之ヲ實施スル、初メノ法律ハ昭和三年
カラト云フコトデナイト思ヒマシタ、ソ
レ故ニ先年ト仰シヤッタガ、私モ其先年ハ
何年デアッタカ、大正何年デアッタカ能ク記
憶イタシマセヌ位デ、前ノコトデアル、サ
ウシテ之ヲ實行シヤウト言ッタノガ、昭和三
年デアル、然ルニ遂ニ之ガ實行ガ出來得ナ
カッタ、サウシテ見ルト賃貸價格、卽チ土地
ノ賃貸價格ト云フモノハ之ヲ調ベルト云フ
コトハ餘程困難デアル、斯ウ信ジマスル、土
地臺帳ニ依ッテ其地目ヤ地籍ヲ調べル、ソ
レカラソレ〓〓實地ニ付テ測量モシ、又一例
ヲ擧ゲマスルト、一村ノ土地デモ甲ノ地ト乙
ノ地ト丙丁亦然リ、是ハ誠ニ日當リノ良イ、
而モ肥料ノ多イ所、土地ガ豐穰デアルカラ
是ハ大變ニ良ク出來ル、隣ノ田畑ハドウデ
アルカ、是ハ甚ダ瘠地デアル、ソレノミナ
ラズ、此處ハ丁度此山ノ松ノ蔭デアル、或
ハ山カラ落チテ來ル······田ノ中ニ落チテ來
ル水ハ針葉樹林ガ上ニアレバ、必ズ田ノ水
ガ冷イノデス、杉林ダトカ、檜林ダトカ
或ハ梶林デアルトカ、斯ウ云フ就中陰樹ノ
アル山林カラ出テ來ル溪水、卽チ谷ノ水ハ
大變冷イモノデアル、冷イ水ノ流レ込ム田
地ハ米ノ出來ガ非常ニ惡クッテ晩イノデス、
甚シケレバ少シ雨ノ餘計アル年、早ク寒サ
ノ來ル地方デハ米ハ作ッテモ晩稻ハ取レナ
イト云フヤウナ有樣デアル、ソレ故ニ同ジ
隣同志ノ土地デアッテモ、此水ヲ被ムル所ノ
土地、而モソレハ陰デアル此方ノ方ハ大
變暖イ、斯ウアルト云フト、甲ト乙ト隣リ
合セニ居シテスラ非常ナ收穫ガ違フノデス、
從シテ此土地ノ價ト云フモノハ大變······賃
貸價格ガ、同ジ村デアルカラ、是ハ此一箇
所ヲ調ベタ、之ニ依シテズット賃貸價格ヲ決
メヤウ、是ハ絕對ニ出來ナイ話ダシ、又其
地主ナリ之ヲ小作スル者ノ承知スルモノデ
モゴザイマセヌ、又無理ナ話デアル、此法
案ニ依ルト、一筆每ニ地目地積ヲ調ベテ、
サウシテ賃貸價格ヲ定ムルトアルガ、ナカ
ナカ賃貸價格ヲ定メルト云フコトハ容易ナ
コトデナイ況ヤ臺帳ハ舊臺帳ニ依ルト仰
シヤルナレバ、此臺帳ホド實ハ不完全ナモ
ノハナイノデス、明治ノ初メ地租改正ヲヤッ
タ其當時ニ依ッテ拵ヘタ臺帳ノ如キハ殊ニ
ヒドイ、又御承知ノヤウニ山林ノ下戾······
山林ノミデゴザイマセヌ、原野モ隨分澤山
アル、此下戾カラ特別拂下、豫約開墾拂下
ト云フモノハ大變ナ地積ニ上ッテ居ル、是等
ニ對シマスル取扱、元官有ノ臺帳デ、就中元
ノ官林臺帳ナドト云フモノハ、非常ナ實際
ト違ッタモノデアッテ、後ニ實測ヲ致シマシ
テ大變違ヲテ居ル、例ヘバ大キナモノニナリ
マスルガ、今ノ御料林卽チ日本ノ一大山林
ト云フ、而モ木曾ノ五木ト云ッテ、木曾ハ日
本ノ一番良イ檜、槇、羅漢柏、「ネヅコ」、椹、
之ヲ五木ト云フ、此位ノ良木ハ無イノデス、
伊勢ノ大廟ヲ初メアノヤウナ神社ハ悉ク、
殊ニ伊勢ノ如キハ二十年每ニ改築ヲセラレ
ル、皆ナ檜デゴザイマス、能ク檜舞臺デト
云フコトヲ言フ位デ、日本ノ木トシテハ實
際木ノ王デアルノデアリマス、是ノ出來ル
木曾ノ山林ハ舊反別ガ確カ五十四万町步ト
覺エテ居リマス、然ルニ假ニ御料局デ三角
測量ヲシテ、之ニ依ッテ實際ノ反別ガ亂暴ニ
ナッタ、十五万町步程ニナリマシタノデアリ
きく、天城ノ如キ亦是デアル、皆ナ例ノヤ
ウニ非常ナ大キナモノデアル、秋田ハ百六
万町步ト云フ官林臺帳デス、官林臺帳ハ百
六万町步デアルガ、若シ官林臺帳通リニ秋
田ノ地積ガアッタナラバ、秋田ノ水田モ畑モ
宅地モ皆ナドコカ空中ニデモナクテハ····
ソレデモ足ラナイ、秋田ノ全地積ヲ見レバ
直グ分ル、斯ウ云フ有樣デアリマス、何故
其ヤウナコトヲシタカ、ソシニハ二ツモ三
ツモ原因ガアリマスガ、本日ハ時間ガアリ
マセヌカラ、ソンナ原因ハ申シマセヌ、馬
鹿氣キッタ原因ガアルケレドモ、未開ノ時デ
アルカラ是ハ仕方アリマセヌ、唯一例ニ一
言言ッテ置キマスガ、東海道地方デハ小
サイモノヲ大キイト云ッタノハ何ノ爲カト
云フト、外國人ガ來タ時ニ日本ハ小サイト
言ハレテハナラヌカラ、是ハ大キクシテア
ルノデゴザイマス、斯ウ答ヘタ山林官ガア
ル、事實デアル、其通リデアル、ソレダカラ、
イツデモソレヲ實際ニ調ベテ見ルト三分ノ
一アレバ餘程良イ位デアル、今一ツハ段別ハ餘
計アレバ政府ガ經費ヲ段別ニ依ッテ分ケテ吳レ
ル、秋田ノ百六万町步ナドモ是カラ起ッテ居
ル、斯ウ云フモノガ皆元ニナッテ出來テ居ル
臺帳デス、元ノ臺帳ナルモノノ杜撰ナト云フ
モノハ御話ニナラナイ、其後實測段別ト云フ
モノハ幾ラカ實際ニ當ルヤウニナッタ、併ナ
ガラ直ニ此ニ據レナイコトガ多イ、今囘ノ
地租法案デハ舊豪帳······舊臺帳ハ今申上ゲ
ルヤウナ意味ガ出來テ居ルモノガ多イ、併
シ地租ヲ定メル時ニハ兎ニ角地方ガ總動員
ヲシテ測量ヲシタモノデアル、明治ノ初デ
ゴザイマスルカラ、其測量ハ極メテ不完全ナ
モノデ、殊ニ之ニ用ヰタ測量器ナドト云ッタ
ラ偶、こ獨逸ノ「メスティツシュ」、「ブレンテイ
ブル」、アンナモノガアッテ之ヲ調ベタト云ヘ
バ餘程宜イコトニナル、鎖ヲ引張ッタカラ幾
ラ、實際其誤差ナドハ知ラナイ人間ガヤッテ
居ル、「ベッセル」ノ測量法ニ依ッテ基線ヲ引イ
テモ恐ラク百分ノ七ノ誤差ガ出ル「コウス」
ノ最小方數ニ行カナケレバ、神ノ目カラ見
テモ間違ヒハナイト云フヤウナ數字ハ出テ
來ナイ、ソレデアルカラ此不完全極マッタモ
シ、マダ此上ニ最モヒドイノハ地租改正
ノ時分ニ、或ル地方ハ非常ナ恩典ヲ蒙ッテ居
ル之ニ反シテ或ル地方ハ非常ナ虐待ヲ受
ケテ居ル、一例ヲ擧ゲマスト、鹿兒島縣ハ
非常ナ恩典ヲ受ケテ居ル、廣島縣ハ非常ナ
虐待ヲ受ケテ居ル、斯ウ云フヤウナ實際ノ
取扱ガアルノデス、當時鹿兒島藩ノ勢ガ非
常ニ盛デアッタカラト云フ譯デハナイノデ
ゴザリマセウ、廣島藩ナドハ隅ノ方ニ入ッテ
小サクナッテ居ル、俗ニ謂フ三文ノ黑砂糖ノ
ヤウナコトデアッタカラ頭ガ上ラナクテ、御
上ノ仰セニ直ニ服從シタト云フヤウナコト
モアッタデアラウト思ヒマス、此地租ノ不平
均、ハ後ニ是非改正ヲスルト云フコトニナツ
テ、屢、政治家ハ議論ヲシタモノデゴザイマ
スガ、其後改正ガ出來マシタカ如何デゴザ
イマシタカ、舊臺帳ニ、此ニ·······ルルト云
ヘバ、矢張リアノ儘ノ臺帳ヲ元ニシテヤル
ト云フコトデアルカ、或ハソレハ曩ニ斯ク
斯クナ手段デ改正ガ出來タト云フ、是ハ私
ガ大藏省ニハ居リマセヌデシタカラ、實ハ
能ク實際ヲ知リマセヌ、此頃ノ取扱ヲ··
ソレ故ニ何モカモ能ク御取調ニナッテ居ル
大藏大臣デアルカラ、殊ニ私ガ之ヲ伺フ、
之ヲ伺テテ其元ニ遡ッテ行カナケレバ······今
囘ハ賃貸價格デ初メテ此法律ニ依ッテ地租
ヲ御極メニナルト云フ、而モ一口每ニ之ヲ
調ベテ行クト云フコトニナレバ、是ハ大變
ナ手數デス、其點ニ付テハ尙ホ別ニ御尋ネ
申上ゲル、ソレカラ曩ニ賃貸價格ヲ調査セ
ラレタ、斯ウ大藏大臣ハ衆議院デ仰セニナツ
テ居ルヤウデアル、ソレハ實際調査シマシ
タノハ何年デゴザイマスカ、其調査シタ時
ト今日トハ、單リ地價ノミデハナイ、之ヲ
調査シマスル人夫ナドニモ其賃料ガ旣ニ非
常ニ違マテ居ルト思ヒマス、以前ハ非常ニ高
カッタ、今日ハ御承知ノヤウニ雪ガ降ッタ、
自由勞働者ヲ引張ッテ來タカラシテ、彼等ハ
一圓貰シテ非常ニ歡喜シタト云フコトハ此
間ノ話デアル、偶ミ雪ガ降ッテ來テソレヘ
出テ自由勞働者ガ一圓貰ッテ喜ンデ行クト
云ヲ時代ト、今ヨリ十年若クハ十五年前ノ
問題ニナリマスト、勞銀バカリデモ非常ニ
違ヒガゴザイマセウト思ヒマス、況ヤ都市
ニ於キマシテハ今日ハ殆ド單リ地方ノ農
耕地バカリデハゴザリマセヌ、都會ニ於キ
マシテモ抵當ニ這入"テ居ルモノガ十中ノ
八九デアルト聞イテ居リマスル、斯ウ云フ
時代ノ土地デゴザイマスカラ、此頃モ蠶ヲ
ヤッテ居ル地方卽チ養蠶ヲシテ居ル地方ノ
田畑ノ地價ト云フモノハ非常ニ下落シテ居
ル、就中桑畑ト云フモノハ非常ナモノデス、
厄介ナコトニハ桑畑ハ桑ヲ引ッコ拔カナケ
レバ他ノ作物ハ出來ナイ、サウスルト丁度
山林ヲ新タニ開墾スルヤウナモノデアル、
斯ウ云フヤウナ手數ヲ掛ケルノデゴザイマ
スカラ、ウッカリ之ヲ買ヒマシテモ、新タニ
開墾ヲスルト云ヘバ山林ヲ拂下ゲタノト同
ジヤウナ結果ニナル、ソレ故ニ承ル所デハ
僅ニ群馬縣、長野縣、福島縣、斯ウ云フヤ
ウナ、殊ニ養蠶ノ盛ナ地方ノ土地ハ非常ナ
下落デ、農民ハ困ッテ居ルサウデゴザリマ
ス、斯ウ云フ所ノ賃貸價格ハドウナリマセ
ウカ、ノミナラズ今日ト前年賃貸價格ヲ調
ベタ時分ト、固ヨリ全部ノ調ベハ出來テ居
ラヌト思ヒマスガ、出來テ居ルト假定シテ
大變ナ差ガアル、然ルニ今囘ハ矢張リ前年
取調ベタモノヲ其ママ應用ナサルヤウニ、
チヨット法律ノ上デハ見エマスルガ、是ハ不
當ナコトデアラウト思フ、之ガ爲ニ減稅ノ
恩典ニ浴スルドコロヂヤナイ、却ッテ非常ナ
苛歛誅求ヲセラレル結果ニナリハセヌカト
思フ、ソレデハ減稅ヲシテ貰ハヌ方ガ國民
ハ非常ニ利益デアル、一般ノ人ハ兎ニ角減
稅ト云フコトデアル、下サル物ハ夏モ小袖、
マア吳レヤウト云フノデアルカラ貰ハウ
ヂヤナイカ、是程結構ナコトハナイ、棄テル
ノハイツデモ棄テラレルト云フ、成程小袖
ナレバイツデモ棄テラレル、質屋ノ藏ヘ棄
テナクテモ、川へ持ッテ行ッテ棄テレバ、屑
買デモ拾ッテ行クガ、ソレトハ違フ、此法律
ガ通過スルト其結果、非常ナ高イ賃貸價格
ニ依ラナケレバナラヌ、況ヤ賃貸價格ヲ定
メルト云フコトニ付テハ今申上ゲタヤウ
ナ經濟界ノ況不況ガ甚シイ、玆ニ影響ヲ受
ケテ生ズル、之ガ爲ニ一般ノ被リマスル所
ノ損害ハ私ハ容易ナラヌモノデアラウト思
ヒマスル、ソレニモ拘ラズ唯一率ニ是デ賃
貸價格ヲ定メテ······第一賃貸價格ヲ定メル
ト云フコトガ非常ナ困難デアル、地方ニ行"
テ甲ノ土地ハ誰某ガ借地シテ居ル、借地シ
テ居ルカラ借地料ニ行ケバ宜シイ、都會ナ
ラマダ幾分仕合セ、耕地ハサウ云フ譯ニ行
カナイ、詰リ之ガ爲ニ小作米ヲ幾ラ出スノ
ダ、斯ウ云フ、ソレガ先程申上ゲタヤウニ
土地ニ依ッテ樣ミノ違ヒガアル、同ジ字、同
ジ村、ソレデ以テ甲乙丙丁ト價格ハエライ差
ガアル、ソレヲ悉ク······ソレデモ實際調べ
テ誰モ借リテ居ラヌ所ヲ調ベヤウタッテ標
準ノ取リヤウガナイ、價格ハ地所々々違フ
ノニ、タッテ十アル地所ヲ一ツ其中ノ賃貸ヲ
シテ居ル者ガアルト、ソレヲ取ッテ來テソレ
ヲ標準ニシテ一般ニ推シ及ポサウヂヤナイ
カ、推定ニシヤウヂヤナイカト云フコトヨ
リ仕方ガナカラウ、ソレニナッタラ大變デア
ル、此間ノ幸不幸ト云フモノハ大變ナモノ
デアル、其ヤウナ大變ナ面倒ヲナサッテマ
デ、今日ノヤウナ場合ニ直グ之ヲ應用スル、
此法律ヲ應用シナイデモ、私ハ他ニ方法ガ
アリハセヌカト思フ、寧ロ舊來ノ儘デ幾割
ヲ減ズルト云フコトナラバ一番早カラウト
思フガ、此法律ヲ實行スルトナルト、是ハ
政府デ御考ヘニナッテ居ルコトハスッカリ裏
切ラレテシマフト私ハ信ジテ居ル、是ハ大
藏大臣ハ如何ニ御考ヘニナッテ居リマセウ
カ、此邊ニ付テハ定メシ精シイ御調ガゴザ
リマセウト思ヒマスルデ、オ前ノ考ハ間違,
テ居ル、實際ハ斯ウナッテ居ルソヨト言ウ
テ戴キマスト、私ハ寧ロ知ラヌデモ大事ナ
イガ、國民ハソレヲ聞イテ初メテ、イヤ、
斯ウ云フ大藏大臣ノ御意見デアレバ、我〓
ハ安心ナモノデアルト云フノデ、初メテ
國民ガ安心イタシマセウト思ヒマスル
カラ、此法律ヲ實行スル上ニ於テ、今
申上ゲルヤウナコトガ澤山ゴザリマスル
ガ、ソレハ今囘ノ委員ハ多分多數ナ委員デゴ
ザイマセウ、二十七名カラニナルノデゴザイ
マセウト思フ而モ私ノヤウナ惡イ頭ノ人
間ハ、中ニハ一人モ選マレナイト思フ、必
ズ一粒選リノ委員ガオ出來ニナルコトト思
ヒマスカラ此二十七人ガ御調ベニナルコ
トデアルカラ、萬遺策ノアラウ筈ハナイ
ソレデ以テ私ハ誠ニ喜ンデ居リマスルト同
時ニ、各條項ニ入ッテ細カイ質問ヲスルト云
フヤウナコトハ避ケマスル、又避ケナケレ
バナラヌ、行ク先ヲ考ヘルトモウ一一遇間ア
ルカナイカト云フ議會デゴザリマスルカ
ラ、實ハ此演壇ニ立ッテ居リマシテモ氣ガ
氣デナイノデス、本法ノ施行ニ付テハ先刻
申上ゲテ置キマシタガ、昭和六年ノ四月一
日カラ之ヲ施行スルト法律ニハゴザイマス
ルガ、實際之ガ出來マセウカ、昨日モ私ハ
ソレヲ申上ゲタ、之ニ付テ昨日モ何トカ出
來ル方法ヲ御辯明ガアルカト思シテ待ッテ居
リマシタガ、昨日ハ御都合モゴザイマシタ
ノデセウ、何ノ御答辯モゴザイマセヌデシ
ク、併シ昭和六年ト言ヘバ既ニ今日ガ昭
和六年ノ三月七日デアル、其四月一日ト云
フト、指ヲ折ッテ算ヘテ見テモ直グ分ル、此
議會ガ長クナッテモ今月一杯ハ過ギマスマ
イ、サウスルト議會ガ濟メバ直グニ是ハ實
施スル無論ソレハサウデゴザイマセウ
著手ハ其時ニナラナケレバ出來マスマイ
ガ、今申上ゲタ一筆每ニ種目地籍ヲ臺帳ノ
上デ、而モ其臺帳ヲ改正シテ之ヲ擧ゲル
況ヤ地籍ノ實測ガアルノデゴザイマセウ、
宅地、鑛泉地ト云フヤウナモノハ法律ニ依
ルト平方デ御調ベニナル、山林原野、總テ
藪地傾斜地ハドウナサル、宅地ノ中ニモ御
承知ノ如ク地方ニオ出デニナルト直グ分ル
ガ殆ド山林デモ容易ニ木モ植ラヌヂヤナ
イカト云フヤウナ所ヲ、皆石垣ヲ築イテ地籍
ヲ拵ヘテ家ヲ建テテ居ル、山間ノ農家ハ皆
然リ、四十五度ノ傾斜地デスラ利用シテ居
ル位デゴザイマスルカラ、宅地ト雖モサウ
平坦地デナイ、況ヤ是マデニ測量ヲセラレ
タ地租改正ノ時ノ測量ハ傾斜面デアル、
御承知デゴザイマセウ、其後官廳デ測量ヲ
シマシク土地ハ總テ平面積デゴザイマス、
平面積ト傾斜地ハ日本ノヤウナ殆ド國ノ百
分ノ八、九十ハ傾斜地デアリ、山林デアル、
斯ウ云フ土地デアルカラ、此方ノ面積ヲ平
面積ニ移シマスレバ、改正スレバ非常ナ地
籍ハ減ルノデゴザイマス、又御承知ノヤウ
ニ先キニ國有林不要存置處分ト云フモノガ
アル、今日ハマダ一切處分切リニハナッテ
居ラヌ、多少ノ拂下地モ殘ッテ居ッタ、尙ホ
現在モ年々拂下ゲヲシテ居ルヤウデゴザイ
マスガ、是ハ大變ナ山林地、、所謂國有林野
ヲ拂下ゲマシタ、其他開墾豫約地、是ハ皆
平面積、サウスルト平面積トカ、傾斜面
積、斜面積、是ハ皆違ッテ居ル、今度ハドウ
ナサル御積リデスカ、法律ニ依レバ宅地······
住宅地ト鑛泉地ダケト云フヤウデアル鑛
泉地ハ御承知ノヤウニ、別府ノヤウナ鑛泉
地ハ誠ニ日本ニハ少イ、世界ノ三大溫泉ノ
一ト言ハレル北海道ノ登別、是等モ山ノ中
デアル其他東北ノ一番山林ノ多イ所ニ一
番鑛泉地ガ多イ、靑森縣、斯ウ云フヤウデ
以テ鑛泉地トシテ殆ド平面地デアルモノハ
何處カ、九州アタリ、ソレカラ北陸路ニ少
シバカリゴザイマス、アトハ皆山林地デア
ルソレニモ拘ラズ是ハ平面デ測量ヲナサ
ルヤウデアルガ此意味ガ私ニ分ラナイ、
ドウシテ普通ノ山林地ニハ之ヲ御用ヒニナ
ラナイノカ、鑛泉地ト住宅地、住宅地モ先
刻申上ゲタヤウニ四十五度ノ傾斜地へ石垣
ヲ立テテ拵ヘテ居ルカラ、是モ澤山アル
是ハドウナサル、ソレカラ舊臺帳ヲ用ヒル
ト仰シヤルガ、是ハ皆唯改竄スルダケデハ
イカヌ、算盤ノ上デ之ヲ改正スルト云フコ
トハ出來マセヌ、實地へ臨ンデ測量シナケ
レバナラヌ、是ハドウナサル御積リデアル
カ、之ヲ承ハリタイ、ソレカラ國有林、國
有原野、此中ニハ燒烟、切畑ガ何千筆ゴザ
オマスカ、是モ承ハリタイ、新墾地ハドノ
位ゴザイマスカ、是モ承ハリタイ、其箇所
ト段別ヲ承ハリタイ、是ハドウナサル御積
リデアルカ、既ニ土地ヲ利用シテ居ル拂
下ゲタモノモゴザイマセウ、渡シタモノモ
ゴザイマセウ、交換シタモノモゴザイマセ
ウ、故ニ純粹ノ民有地トナッテ居ルモノモ
アル、併シ本法ニハ此法律ハ國有地ニハ適
用セヌトアリマスカラ、國有地ノ儘デアル
トスレバ、ソレニハ適用ナサラヌ御積リデ
アラウト思フ、併シ利用シテ居ル者ハ人民
デアルサウスルト課稅ト云フモノノ標準
トシテハ何カ之ヲ拵ヘテナイト、租稅ト
云フモノハ矢張リ國民ハ皆分擔ヲシテ出シ
テ置カナケレバ······國ノ費用ヲ出スノデア
ル、無論是ハ出スベキモノト思フ、就中最
モ多イノハ、國民ノ利用ヲシテ利益ノ多イ
モノハ部分林デアル、尤モ部分林ハ三官七
民、詰リ官ガ三分取ヲテ、七分ハ人民、卽チ
此使用者ガ取ル、是ハ長年ノ間、國ノ地所
ヲ利用シテ初メテ······ズット樹ガ大キクナン
テ、今度伐ッタ時ニ初メテ百万圓ノモノナ
ラ、七十万圓ハ人民ガ取ッテ、二一十万圓ハ政
府ガ收メル、斯ウ云フ結果ニナル、是ハド
ウナルノデスカ、初メニ苗ヲ植エテ置ケバ、
獨リデニ保護シテ吳レテ獨リデニ犬キナ山
林ニナル是ハ課稅ヲシナイ御積リナノデ
アルカ之ヲ承ハリタイ、ソレカラ今同今
調査中ニナッテ居ル國有林野ト云フモノノ
整理ガ出來テ、其整理ニ依ッテ拂下ゲルモノ
ハ今日ニハザット積ッテモ二千万圓以上ノ
金ニナルノデアラウト思ヒマス、此整理委員
ハ私モ其委員ノ一人トシテ末席ヲ汚シテ居
ルヤウナコトデゴザイマス、大藏大臣ハ是
ハ御考慮ニナッタノデゴザイマスカ、伺ヒタ
イソレカラ此法案ヲ見マスルト、保安林
ハ免除スルコトニナッテ居ル、是ハ保安林ヲ
持ッテ居ル者ガ大變喜ビマセウ、併シ一般ノ
民有地デアッテ、財產ガ其處カラ涌キ來ルモ
ノニ對シテハ、租稅ハ課スルト云フノガ當
然ナ話ダト思フシ、國家トシテ矢張リ是カ
ラ稅ハ取ラナケレバナラヌノデアラウト思
フガ、此保安林ニ對スルモノハ免租ニナッテ
居ル、免租ノ中ニ入ッテ居ル、是ハドウ云フ
意味カラ斯ウナッテ居リマスカ、私ドウモ了
解ガ出來ナイ、ソレ故ニ之ヲ御除キニナッタ
御趣意ヲ承ハリタイト思フ、私ガ山林家ト
自ラ言ッチヤ濟マヌケレドモ、先ヅ山林家ノ
卵見タヤウナモノデゴザイマスガ、矢張リ
山林ハ可愛イイカラ、斯ウ云フコトハ實際
ハ私御禮ヲ申サニヤナラヌ方ノ立場ニ居リ
マスルケレドモ、國民トシテハチヨット片方
ニ偏スルヤウナ嫌ヒガアルト思フカラ政
府デ之ヲ御除キニナッタコトハ極ク有難イ
ガ、御除キニナッタ御趣意ハ何ガ原因シテ
居ルカ、其理由ヲ承ハリタイト申上ゲルノ
デアリマス、政府ハ國有林、國有原野、卽
チ國有地ニハ之ヲ適用セヌト仰有ルガ、國
家ガ收利ヲ目的トシテ利用シテ居ルモノニ
對シテ總テ租稅ヲ取ラナイ、斯ウ云フ御趣
意ノヤウデアル、是マデ固ヨリ取ッテ居リ
マセヌ、併シ取ッテ居ラナイノハ國有林ニ
シテモ、國有原野ニシテモ、之ヲ利用シテ
其收入ガ入"テ來ル、其收入、是ハ租稅ノ分
ニ當ルノデアル是ハ森林ヲ利用シテ得
タ所ノ收穫デアル、人民ガ個人デヤルモノ
ト同ジコトデアルガ手數ガ二重ニナルカ
ラ是ハ取ラヌノデアル、斯ウ云フ意味デア
ルカ、サウデハナイ、國ト云フモノノ名ガ
付イテ居ル、其籍ニアルモノハ總テ稅ハ取
ラナイノデアル、斯ウ云フ御趣意デアルカ、
私ハ其御趣意ガ承ハリタイ、是ハアトカラ
又御答辯ニ依ッテ私ガ再質問三質問シナケ
レバナラヌカモ知レナイ、之ニ依ッテ總テノ
國有地ノ御取扱ガ定マル、幸ヒニ私ハ之ニ
關聯シテ大藏大臣ニ承ハリタイコトガア
ル大藏省デハ兎角國有地、總テ國有財產
ヲ管理ナサル精神カラデゴザイマセウガ、
國有林モ國有原野モ成ルベク大藏省デ主管
シタイノデアル、併シ今ハ農林省ト云フモノ
ガアルカラ、仕方ガナイ、北海道ノ大キナ
國有林ハ內務省ガ主管シテ居ル、內務大臣
モ、吳レト云フケレドモ是ハ吳レナイ、農
林大臣モ、吳レト云ッテモ是ハ吳レナイ、ソ
レ故ニ大藏省ハ欲シイガ、如何トモシヤウ
ハナイ斯ウ云フコトハ是ハ無理ノナイコ
トナンダ、大藏大臣トシテハ歷代ノ大藏大
臣皆之ヲ望ンデ居ル、ソレハドウモアノ大
キナモノガ目ノ前ニブラ下ッテ居ル、財源ガ
ナクテ競馬法ヲ出シテ初メテ國民ノ餓死
線上ニ彷徨シテ居ル者ヲ救ハナケレバナラ
ヌト云フヤウチ情ナイ身代デアルカラ、欲
シクテナラヌノハ何時ノ時代デモ同ジデア
ル、併ナガラ私ガ之ヲ承ハルノハ從來大
藏省ノ遣リ方ト私等ノ考ヘトハ餘程違ノテ
居リマスカラ伺フ、太藏省ハ何時デモ森林
ヲ不動產ト見テオ出デニナラヌヤウニ思
フ現大藏大臣ハ森林ヲ不動產ト見テオ出
デニナルヤ否ヤト云フコトヲ私ハ第一ニ一
ツ伺ヒタイ、課稅ヲスルニ付テ、總テニ對
シテ森林ハ不動產ト見テオ出デニナルカ
既ニ此議會ガ開ケヤウト云ッタ二十三年ノ
少シ前、二十二年デゴザイマシタト記憶シ
マス當時ノ大藏大臣ハ官有財產法ヲ出シ
テ、而モ其第三條ニ土地ハ大藏大臣之ヲ管
理シ、立本ハ農商務大臣之ヲ管理スルト云
フ、第三條ニ非常ナハッキリシタ大藏省ノ御
意見ガ載ッテアル、私ハ當時、靑森大林區署
ノ署長デゴザイマシタ、之ヲ聞イテ夜行シ
テ上京シタノデアル、松方大藏大臣ニド
ウ爲サルノデス、是ハ如何ニ大藏大臣ガ山
林ガ欲シクテモ斯ウ云フ事ヲ爲サルト云フ
コトハナイヂヤナイカ其意味ハ斯タ斯ク
デアルト云ッテ、私ハ言ッタ時ニ、アアサウ
デゴザンスカ、ソレヂヤ仕方ガナイ、私ハ
玆ニ匕首ヲ呑ンデ來マシタヨ、若シアナタ
ガ之ヲ通スト仰シヤックナラバ、實ハ刺違へ
ヤウト思ッタノダ、何故私ガソレ程ニ言タ
カ、若シ之ヲヤリマシタラバ日本ノ森林
ト云フモノハ其法律ガ出タ其日カラ無タ
ナッテシマフ、此樣ナ恐シイ法律ガ大藏省カ
ラ出タノデアル、而モソレガ樞密院ニ御諮
詢ニナッテアルト云フコトヲ聞キマシタノ
デ飛出シテ來テ、當時ノ農商務大臣、次官、
法制局長官等ニ、是ハエライコトダ、ドウ
シテ斯ウ云フモノヲ農商務省デハ御聽キニ
ナッタノデアルカ、局長ガ宜イト云フカラ宜
カラウト思ウテ······ソンナ局長ハ罷メサシ
テオシマヒナサイ、トンデモナイ話ダ斯
ク斯クデアル、成程聞イテ見レバサウデア
ルカ、ソレカラ平田東助氏ガ法制局長官デ
アッタカラ、平田君、是ハドウスルノダ何
故斯ウ云フヤウナ馬鹿ナ事ヲスルカ、惡イ
カ、惡イニモ宜イユモ、コンナコトヲシタ
日限リ日本ニハ森林ガ無タナルヨ、森林ガ
無クナレバ日本ノ米ハ一粒モ取レヤシナ
1、何ニ依ッテ水源涵養ガ出來ルカ、何
依ッテ田ガ作レルカ、ソンナエライ事ニナル
ノカ、マア行ク處マデ行ケバ其處ニ至ルノ
ダ、ソレダカラ森林ハヤル譯ニイカヌゾ
直グニ是ハドウカ撤同シテ吳レ給ヘ、ソレ
ハ樞密院ヲ撤囘シテ農商務大臣ニ之ヲ引繼
ガセロサウカナア、マア今初耳ダカラ先
ヅ考ヘテ見ヤウ、誰ガサウ云フコトヲ言ッ
タ或ル新聞社ノ主筆ガ斯ウ云フコトガ出
テ居ルガ差支ナイカト云フ手紙ガ來タカ
ラ、ビックリシテ僕ハ飛ンデ來タ、トンデモ
ナイ事ダ、ト言ッテソレカラ大藏大臣ノ所ニ
仲良、松方サンノ三田ノ屋敷ニ行ッテ松方
サンニ會ッテ、ドウシテ斯ウ云フコトヲ爲サ
ルカ元來農商務省ト云フモノガ分レテ來
テ、其時ニ總テ國有森林原野ヲ農商務省ノ
主管ニ大藏省カラ移シタノハドウ云フ譯デ
アルカ、アナタハ御承知ガゴザイマスマイ、
サウデナケレバソンナ事ハ出來マスマイ、
ソレハ斯ク斯クノ次第デアル、決シテ各國
ガ······各國ノ中、小國ハ大藏省デ持ッテ居ル、
是ハ理財主義ノ爲デアル、「フィナンス·シ
ステム」ノ爲デアル、所ガ大國ハ悉ク之ヲ大
藏省ノ手ヲ離シテ他ノ官廳ニ移シテ居,
テ主管サセルノハ「エコノミー·システム」
ノ爲デアル、「エコノミー·システム」ヲ外レ
テ森林ヲ管理シグラ國家ハ滅ビテシマフ、
サウカ、實ハ斯ウ云フコトガアルマア宜
シイ、斯ク斯クノ女第デアル、ソレハ
却ッテアナタノ耳ガ少シ何カ先入主トナッテ
聞キ込ンダコトノ間違ガ玆ニ起キテ居
ル此誤解カラ是程大キナアナタノ······ソ
レハサウ云フコトデナイ、實際斯ク斯クノ
コトデアル、且ツ其事ハ私ガ聞イタカラ直グ
止メサセチヤッタ、是ハ出來ナイ、當時ノ農
商務大臣ハアヽサウカ、ツレトハ知ラナカツ
タト云ッテ流石ニ井上サンデアル、直グ分ッ
テピシヤット止メテシマック、ソレダカラア
ナタノ御氣遣ヒノ點ハナイ、而モ一大臣ガ
斯ウ言ッタカラ、一大臣ガ斯ウシタカラト云
フヤウナコトデ、國家ノ森林經濟ノ根本的
ニ破壞シテシマフト云フヤウナ法律ヲ出シ
テドウシマスカアナタ、サウデスカ、ドウ
シタラ宜シウゴザイマスカ、撤囘ヲシテ農
商務省ニ御渡シナサイ、其以上ハ私ガ居リ
マスカラ改案シテ出サセマスカラ······サウ
デスカ、ソレヂヤサウシマセウ、斯ウ云フ
コトニナッテ、直グニ法制局長官平田君ニ言
ウテヤッテソレハ幸ニ撤囘ガ出來マシテ、
農商務省ニ引繼イデ······其時ニ私ノ建議モ
一〓ニクッ付イテ居リマシタガ、惜シイ哉、
先ノ大震災デ其書類ハ確カ燃ケタヤウデゴ
ザイマスガ併シ之ガ爲ニ原敬ト私ハ絕交
シタヤウナコトマデ起ッタノデス、サウ云フ
ヤウナ經緯ガアルノデス、デ現大藏大臣ハ
ドウ云フヤウニ之ニ御考ヲ持ッテ居ラツ
シヤルカ、之ヲ伺ヒタイ、卽チ立木ヲ毛上ト
シテ取扱フテ、森林ノ土地ダケヲ不動產ト視
ルト云フコトガ、從來ノ大藏省ノ遣リロデ
アッテ、今日モマダ其臭氣ハ殘ヶテ居ルカラ、
先ニ官有財產法ノ出タ時ニ矢張リ私ハ非常
ニ苦慮イタシマシタ、其點ニ付テ色ミナナ
ニガアッタガ、ソレハ今日餘計ナコトデスカ
ラ申上ゲナイ、先ヅアレナレバ差向キハ宜
シウゴザイマセウ、井上サン、又陸奥サン
ガ農商務大臣トシテ、斯ウツタナラバ、地
方ノ爲ニ宜カラウト言ッテ、所謂地方ノ財源
ノ爲ニ盡力サレクコトガアルガ、例ヘバ官
林官有地取調委員ヲ組織シテ、私ガ而モ委
員デ居リ幹事ヲシテ御料局、內務省アタ
リノ局長ナドハ皆一〓ニナッテ委員ニナッ
テ、取調ベテ幸ニ私ガ幹事デアッテ、スカカ
リ調ベテ實際出來得ナイコトヲ報告ヲシ
テ、初メテ井上サンモ成程斯ウ云フコトカ
知ラナカッタ、實ハ野ニ在ルトツイ斯ウ云フ
コトヲ考ヘル、後ニ陸奥サンガ出テ來テモ、
井上ノ時ニ出來ナカッタサウダ、アレハドウ
ナルノカ、是レ是レダト言ッタラ、アアサウ
カト言ッテ、陸奥サンモアノ機敏ナ頭腦ヲ
持ッテ居ラレルカラ早ク分ッタノデス、ソレ
デ其時モ止メラレタ、斯ウ云フヤウナ譯、
ソレ故エ是ハ大問題デアルカラ、今後大藏
省モ之ニ向シテハ何分カノ御取扱ヲ變ヘラ
レルダラウト私ハ思ッタ、何故ナレバ、今玆
ニ私ガ伺フ國有林野ハ農商務省ノ主管ニ在
ルモノト、北海道廳ノ主管ニ在ルモノト二
ツアル、北海道廳ハ内務省デ其上ヲ管理シ
テ居ル、此大キナモノヲ將來大藏省ハドウ
御扱ヒニナル積リカ、今囘ノ減稅案デ出テ
來ル金ハ誠ニ僅カナモノデアル、ソシ故ニ
國有林、國有原野ヲ矢張リ地租ノ財源ニ出
來タラ非常ナ金高ニナル、何ヲ苦シンデ、
アノヤウナ救護法ノ爲ニ競馬法ヲ改正スル
ノデセウ、今囘モ亦此演壇デ私ノ前ニ、多
數ノ議員ガ、此樣ナ僅カチ減稅ヲヤッテ、之デ
國民ガ安心ヲシマスルカ、國民ガ之ヲ歡迎
スルデセウカ、ト云ッタヤウナ質問バカリ此
所デ重ネテ居ル、財源ガ無イト云ッテモ餘リ
ヒドイヂヤナイカ此僅カナ法案デアルケ
レドモ、法案ガ法案デアル、如何ニモ不完
全デアル、其結果確カ此演壇デ大藏大臣ガ
本案ヲ提出セラレタ時說明ヲセラレタノハ
去ンヌル四日ト私ハ信ジテ居ル、恐ラク政府
ノ出シマシタ法案デ委員會ニモマダ移スコ
トガ出來ナイト云フヤウナコトハ是マデ殆
ド例ガナイ....アルデセウ、澤山アルデセ
ウガ、私ガ寡聞ニシテ知ラナイノデゴザイ
マスガ、旣ニ今日ハ七日デアル、是ガ今日
中ニハ無論委員付託ニナルデゴザイマセウ
ガ、或ハ知ラヌ、マダ私ノ後ニ控へテ居ル
人ガル、此御方ハ至ッテ短イヤウデアルガ、
此演壇ニ立ツトツイ長クナルカモ知レナイ、
サウスルト又今日モ之デ以テヤリ切レナイ
デ明日此殘リハヤリマスヨ、ト云フヤウナ結
果ニナルトマダ委員付託ガ出來ナイ、是
ハ我ミモ甚ダ迷惑、唯玆ニ立ツ以上ハ多少
ノ覺悟ガナクチヤ立テマセヌカラ、私ハ病
後デアルニモ拘ラズ、昨日モ五時ニ漸ク歸ン
テ休ムコトガ出來タト云フ位、今日モ亦該
ニ貧乏籤ヲ引イテ之ニ上ラナケレバナラヌ
ヤウナコトニナッタ、只今申上ゲタ國有林野
ニ對スル租稅關係ノ御所感ハ如何デアル
カ、大藏大臣ニ之ヲ承リタイ、申上ゲル迄
モナク、國家ハ國有林野ハ唯之ヲ利用スル爲
ニ主管シテ居ルノデアルカ、サウヂヤナイ、
保安林其他國ノ爲ニ所謂國土保安等ノ爲ニ
政府ガ之ヲ主管シナケレバナラヌヂヤナイ
カ、斯ウ云フ御方モアルカモ知ラヌガソ
レハ民有林ニモ町村林ニモ社寺林ニモ法律
ハ同ジヤウニ立テテ居ルカラ、少シモソコ
ノ差ハナイノデス、サスレバドウスルカ、
ドウシテモ是ハ先進國ガ皆ヤッテ居ルヤウ
ニ、此大キナ財源ト云フモノハ旣ニ人民
ガシテ居ルト同ジ營利事業ヲ國ガシテ居ル
ノデアルカラ、營利事業トシテハ土地ヲ
利用スル以上ハアノ大キナ土地ヲ占領シ
テ居ル國有林野ハ矢張リ之ヲ課稅ノ目的
トシテ稅源トシテ置カナケレバナラヌ、政
府ガ何故、之ヲ是マデ能ウシナカッタカ、能
ウシナイト云フモノパ、實ハ之ニ手數ヲ掛
ケテモ手數料ダケモ入ラヌカモ知ラヌ、斯
ウ云フ御考ガアルノデゴザイマセウ、何故
ナラバアノ大キナモノヲ悉ク調ベテ、之二
課說ヲスル、斯ウナリマスト、森林收入ハ
今ヨリ十倍モナケレバ到底出來ルコトヂヤ
ナイ、斯ウ言フ方ガアルカモ知レナイ、ソ
レハ仕方ガナイ、セナケレバセナイマデノ
話官吏ガ澤山置イテアル、官吏ガ此森林
ヲ取扱フ費用、之ヲ差引イテ、其官吏ハ年
ガ寄リヤ恩給マデヤラナクチヤナラヌカ
ラ、ナカ〓〓大變ナ金ガ掛カルノデス、之
ヲ差引イタナラバ偖テ森林ノ收入ハ僅ナ
モノデアリマス、サウスルト一段當リノ收
入ト云フモノハ民林ニ比ベルト殆ド有ルカ
無イカ分ラヌヤウナ、誰カ頻ニ蚊ノ淚ト云
フコトヲ言ッテ居ラレルガ、蚊ノ淚ノヤウデ
アルカ、モット卑シイ譬喩ヲ以テ言フナラ
バ蚤ノ-ミタヤウナモノニナルカモ知
レナイ、之ニ對スル政府ノ御所見ハ如何、
原則トシテハ矢張リ課稅ノ性質ヲ帶ビテ居
ルモノデアルカラ、之ニハ私ハマダ進ンデ
言ヒタイコトガアルガ、ソレハ今日ハ控ヘ
テ置ク、マダ大キナ財源ガアル、ソレカラ
森林稅ト云フモノハ政府ハ御考ヘニナッテ
居ラナイノデスカ、明治六七年、確カ森
林ノ稅ハ地租改正ノ時ニ定メラレタ、併シ
今日ハ所ニ依ッテ高イモアリ、低イモアル、是
ハ頗ル不適當ナ取扱ニナッテ居ルノデス、何
レニシテモ森林ヲ利用スルト云フコトハ
ドコマデモ取ルベキ租稅ハ取ッテ、利用ハ十
分ニ利用サセルト云フ途ヲ執ラナクチヤナ
ラヌ、其策ヲ施サナクチヤナラヌ、ドウモ
稅ガ少イカラ斯ンナモノハ打ヤッテ置イテ
モ宜シイ、斯ウ云フヤウニナリマシテハ
町村其他公共團體ノ有ノテ居ル森林ヲ首メ、
個人ノ有ッテ居ル森林ハ非常ニ大キナモノ
デゴザイマスガ、其森林ト云フモノハ唯土
地ニ昔稅ヲ賦シタ、恐ラクハ斯ウ云フコト
ガ、土地ハ不動產デアリ、立木ハ毛上デア
ルト云フヤウナ考ヲ起サシタカモ知レナ
イ、之ニ對スル御考ハ如何デアルカ、近イ
將來ニ於テ森林稅ト云フモノヲ拵ヘルト云
フ御積リデアルカ、是ハ何時マデモ此儘デ
置クノデアル、斯ウ云フ御考デアルカ、之
ヲ承リタイ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=9
-
010・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 高橋君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=10
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011・高橋琢也
○高橋琢也君 私ガ先ニ蚤ノ淚ト言ハウト
思ウテ、ウッカリト言ヒマシタガ、是ハ
取消シマス、是ハ私ノ言ヒ損ヒデス、大變
ニ長イコト演壇ヲ塞ゲタノニ、實ハ今時計
ヲ見テ初メテ氣ガ付キマシタ、私ハドウモ
頭ガ惡イモノデスカラ、遂ニ心付キマセヌ
デ、今ノヤウナコトヲ言ッタリ、或ハ時計ヲ
見損ッタリシテ相濟ミマセヌガ、何レ此御答
辯ガゴザイマシタラ、之ニ對シテ、今度ハ
詳シク伺フコトニナルカモ知レマセヌ、再
質問或ハ三質問、四質問ニナルカモ知レナ
イ、又私ノ頭デゴザイマスカラ、例ノ羊ノ
頭ト云フ奴ハ極メテ鈍イモノデス、ドウカ
御答辯モ能ク此羊ノ頭デモ分ルヤウニシテ
戴キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今高橋君ノ用
ヒラレマシタ言葉ハ同君ヨリ幸ニ取消サレ
マシテ、誠ニ議長ハ欣ンデ居リマス、申上
ゲルマデモゴザイマセヌガ、本議場デ御用
ヰニナル言葉ハ成ルベク御注意ヲ願ヒタイ
ト存ジマス、幾ラ取消サレマシテモ、一度
申述ベタコトハ諸君ノ耳ニハ殘ッテ居ルノ
デアリマスカラ、是ダケ申上ゲテ置キマ
ス、議事ノ都合上少シ早ウゴザイマスガ休
憩ヲ致シマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會
イタシマス
午前十一時五十二分休憩
午後一時四十八分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=12
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013・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致タサセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
取引所稅法中改正法律案可決報告書発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、茲ニ御諮リヲスルコトガゴ
ザイマス、本日午後零時二分、內親王殿下
御誕生アラセラレタル趣キ、宮內大臣ヨリノ
通牒ニ接シマシタ、誠ニ慶賀ノ至リニ堪へ
マセヌ、就キマシテハ議長ハ議院ヲ代表シ、
本日竝ニ御命名式當日參內イタシ兩陛下
ニ、又大宮御所ニ參殿シテ皇太后陛下ニ、
御祝詞ヲ言上イタシタク存ジマス、只今議
長ノ申上ゲタコトニ御同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
〔總員起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 井上大藏大臣ガ
發言ヲ求メラレマシタ
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=16
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017・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 午前中ノ高橋
琢也氏ノ御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス
ガ、順序ハ少シ違ヒマスケレドモ、第三ノ
御質問ノ賃貸價格ノ調査ニ付テ種々ノ御質
問ガゴザイマシタカラ、賃貸價格ノ調査ノ
事ニ付キマシテ一應申述ベマシタナラバ
大體御答ニナルカト思ヒマスカラ、少シ順
序ハ狂ヒマスケレドモ、サウ致シタイト思
ヒマス、賃貸價格ニ依ッテ地租條例ヲ改正シ
ヤウト云ヒマスコトハ大分前カラノ議論
デアリマシテ愈〓之ヲ決シマシタノハ大正
十五年ノ議會デアリマス、土地賃貸價格法ト
云フモノガ議會ヲ通過イタシマシテ、大正
十五年四月一日ノ地租ヲ負擔シテ居ル總テ
ノ日本全部ノ土地ニ付テ賃貸價格ヲ調査ス
ル、斯ウ云フコトニ決マリマシテ、千万圓
ノ豫算ヲ取リマシテ二箇年間ニ日本全國ニ
亙リマシテ調査ヲ致シマシタノデアリマ
ス、其調査ノ仕方ニ付キマシテハ先刻高橋
氏ガ擧ゲラレマシタヤウニ、例ヘテ見レバ
田地田畑デモ其向キニ依ッテ違フ、或ハ針葉
樹ノアル水ノ流レテ來ル所ハ違フ、各種ノ
モノニ付キマシテ區域ヲ定メマシテ、サウ
シテ此賃貸價格ヲ調查イタシマシタノデア
リマス、宅地ノ賃貸價格調査ノ如キハ有リ
ト有ラユル方便ヲ用ヰマシテ、昨日森田君
ノ御質問ニモ御答ヘ致シマシタヤウニ、宅
地ト同ジ市街地デモ、其宅地ノ價値ニ付テ
等級ヲ分ケマシテ、サウシテ之ヲ調ベタノ
デアリマス、二箇年ニ亙リマシテ日本全國
ノ稅務署ノ下ニ多數ノ人員ヲ使ッテ之ヲ調
查イタシマシテ、調査ノ出來マシタ所デ、
日本全國ニ土地賃貸價格調査委員會ト云フ
モノヲ設ケマシテ、其委員會ニカケマシテ、
其土地ノ事情ニ直接利害關係モアレバ、其
土地ノ最モ詳シイ人ヲ委員ニ選定シテ、サ
ウシテ調査委員ト云フモノヲ置イテ、其人
方ノ議決ヲ經テ、サウシテ出來上ッタノデア
リマス、デアリマスカラ先刻御話ノヤウナ
是ハ調査ヲスルノデハナイノデアリマシ
テ、二年ニ調査ガ出來テシマッテ、當リ前デ
參リマスレバ昭和三年カラ之ヲ實行スルコ
トニナッテ居ッタノデアリマス、然ルニ先刻
高橋氏ガ擧ゲラレテ、指摘サレタ其間ニ地
租委讓ノ問題ガココニ入。テ來マシテ、地租
委讓ノ問題ノ爲ニ此賃貸價格ニ依ル地租法
ノ改正ト云フモノガ今日マデ延ビテ居リマ
シタノデアリマス、昨年ノ春ノ議會ニ實ハ
提案スルコトヲ決メマシテ、當初ノ大藏大
臣ノ財政演說ニモ其事ヲ申上ゲタノデアリ
マスガ解散ニナリマシテ、昨年ソレヲ提
案スルニ至ラナカッタノデアリマス、然ラバ
賃貸價格調査ト云フモノノ大體ノ骨子ヲ申
上ゲマスト、日本ノ地價ハ······地價ト申シマ
スカ、地租ハ時ガ經ッテ居ルト云フコトト、
ソレカラ經濟狀態ガ非常ニ違ッテ居ルコト
ト、ソレカラ高橋氏自ラガ御擧ゲニナリマ
シタ只今ノ地租條例ノ出來夕時ニ當初カ
ラ地方ニ依ッテ不公平ガアッタ例ヘバ擧ゲラ
レマシタ鹿兒島ガドウトカ、何處ガドウト
カ云フヤウナ不公正ガアッタト云フコトヲ
認メマシテ、成ルベク早ク地租條例ヲ改正
シヤウト云フコトデアリマス、地租條例ヲ
改正シマス根本ノ趣旨ハ地租ノ總額ヲ變
ヘナイ、地租ノ總額ガ六千七八百万圓年々
納メテ居リマスガ、其高ハ一文モ變ヘナイ、
サウシテ其申デ只今ノヤウナ時ガ經ッタ、經
濟狀態ガ違ッタ、元カラ多少杜撰ナコトガ
アッタカラ、之ヲ公正ニ負擔ヲ圖ラウト云
フコトデアリマスノデ、ソレデ地租ハ大體
ニ殖ヱナイ法案ニシテ、此負擔者ノ公平ナ
コトヲ目的トシテヤッタノデアリマス、ヤリ
マシタ結果ガ昨日說明申シマシタヤウニ、
市街地ノ宅地ニ於テ五百万程負擔ガ重ク
カンス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
地方ノ··地方ト申シマスカ田畑ニ於テ同
額廉クナル斯ウ云フコトデアリマスガ
ソレヲ減稅イタシマス爲ニ地方ニ於テ極ク
ザット數字ヲ申シマスト、千五百万圓程ノ田
畑ガ減稅ニナッテ、市街宅地デ五百万圓ノ增
稅ニナル、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、ソレダケノコトデアリマシテ、此一
番當初ノ御質問ノ所ニ移リマスガ、ソレナ
ラバ此賃貸價格ニ依ル地租法ノ改正ハ昭和
六年度カラ實行スルト云フガ、ドウシテサ
ウ云フ風ノ便利ニ實行ガ出來ルカ、何時カ
ラドウナルカ、斯ウ云フ御質問デアリマシ
タガ、豫算ノ上ニモ經費ガ請求シテアリマ
スガ、百七十万圓ノ金ヲ以チマシテ議會ヲ
通過イタシマシタラバ直ニ稅務監督局ノ者
ヲ使用イタシマシテ十一月ノ一日マデニハ
總テノ臺帳、賃貸價格ノ記入ヲ取計ラッテ、
サウシテ此宅地租、田租、田畑ノ地租ノ納
期マデニ間ニ合ハセル積リデアリマス、御
承知ノ如ク十一月一日前ニ納期ノ參リマス
モノガ二ツ程アリマスカラ、ソレハ十一月
以後ニ延バシテ置キマス、サウシテ四月カ
ラ十一月一パイニ掛ケテ御取計ラヒヲ致シ
マー、併ナガラ只今申上ゲタ如ク賃貸價格
ノ調査ハモウ全部完結シテ居ルノデアリマ
シテ之ヲ先刻申シマシタ土地臺帳ニ賃貸
價格ヲ書キ載セレバ宜イノデアリマスカ
ラソレダケノ月日トソレダケノ金額ガア
レバ十分間ニ合フ積リデ居リマス、ソレカ
ラ然ラバ賃貸價格ノ調査ハ昭和二年マデニ
終ヲタノデアルカラ、其後ノ經濟狀態ガ非常
ニ違ッテ居ルカラ非常ナ不公正ニナリヤセ
ヌカ、斯ウ云フ御尋ニナリマスガハ昨日モ
森田氏ニ御答へ致シマシタヤウニ、成程昭
和二年ト今日ハ經濟上違,テ居リマス、併ナ
ガラ賃貸價格ヲ調査シテ、地租ヲ決メマス
根本ガ六千七八百万圓ノ租稅ハ變へナイヤ
ウニシテ、其間ノ負擔ノ公正ヲ圖ルト云フ
コトデアリマスカラ、從テ新シイ稅ヲ設ケ
タ譯デモナケラネバ何デモナイノデアリマ
スカラ、經濟上ノ狀態ガ全體ニ調子ガ變ヲ
テ、全體ガ今日下ガッテ居ルト見レバ、其
負擔者ノ間ニ不公平ハナイ積リデ居リマ
ス、更ニ農村ノ成程米ガ下ガリ、田地田畑ノ
時價ハ餘程下ガッテ居リマス、併ナガラ今日
ノ賃貸價格ノ調査ハ大部分ト申シマスト、
小作地、小作料デアリマスガ、同時ニ市街
地ノ宅地ノ時價モ下ガリ、種々ノ市街地ニ
於キマス狀態モ變ヲテ居ルカラ、兩者ノ間ニ
エライ不釣合ガ生ジタトハ考ヘテ居リマセ
ヌカラ、從テ是デ宜イト斯ウ考ヘマスト
同時ニ、是マデハ數十年間地和條例ハ改正
ガ出來ナカッタノデアリマス、今度ハ大體申
シマスト、十年每ニ賃貸價格ノ調査ヲシテ、
ソレデ經濟界ノ變遷ニ應ジテ、此地租ノ負
擔ノ不公平ノナイヤウニシヤウ、斯ウ云フ
コトデアリマス、只今中シマス如ク、昭和
三年ニ實行スベキモノガ昭和六年マデ延ビ
マシタカラ一番最初ノ賃貸價格ノ調査ハ繰
上ゲマシテ、昭和十三年ニ致スコトニ此法
律デ決メテ居ルノデアリマス、ソレデモウ
一ツ附加ヘテ置キマスト、先刻高橋氏ガ擧
ゲラレマシタ日本全國ニ擴ガッテ居ル、是マ
デ地租條例ニ人ガ指摘シテ非常ニ不公正
ダ、地方ニ依ッテ非常ニ當初カラ不公正デア
ルト云フヤウナモノハ賃貸價格ノ調査ノ結
果、明カニ訂正サレテ居リマス、是マデ非
常ニ安カッタト思フモノハ割合ニ上ガッテ
居ヲテ、ソレカラ高カッタト思フモノハ割合
ニ上ッテ居ラヌト云フヤウナ風ニナッテ賃
貸價格ノ調査表ヲ各府縣別ノヲ御覽下サイ
マスト、ハッキリサウ云フ所ハ現ハレテ居ル
次第デアリマスソレカラモウ一ツ附加へ
テ置キマスガ、先刻地租委讓ノコトノ調査
ガ出來テ居ッタ筈ダ、今度地租法ヲ改正スル
ニ付テモ、其事ヲ比較〓究シタカドウカ、
勿論比較〓究ヲ致シマシテサウシテ地租
法ノ方ガ適當デアル、斯ウ云フコトヲ考ヘ
マシタ結果デアリマス、私ハ今記錄ニ依リ
マセヌカラ、果シテ多少ソコノ程度ガ違フ
カモ知レマセヌガ、地和委讓ヲ致シマツテ
モ、地方ニ於キマシテハ矢張リ賃貸價格ニ
依ッテ地租ニ代ル收入ヲ圖ラウト云フコト
ハ當然アノ地租委讓ノ場合デモ考ヘテ居ッ
タノデアリマス、從テソレノ適否、便畜ト
云フ議論ハアリマセウケレドモ賃貸價格
ソノモノハ矢張リ地方ニ委讓サレタ後ニ
モ、ソレヲ。實行スルト云フコトハ當然考へ
ラレテ居ッタヤウニ私ハ記憶イタシテ居リ
マハ、ソレカラ序デアリマスガ、先刻度ミ
御擧ゲニナリマシタ國有財產法ガ制定セラ
レマシタ結果ト致シマシテ、擧ゲラレマン
タ地租名稱區別ト云フモノハ此頃デハ全
ク成程空文ニナッテ居リマス、併シマダ正式
ニハアノ事柄ハ廢止サレテハ居ラヌノデア
リマス、ソレカラ御承知ノ如ク國有地ト御
料地ハ此地租法以外デゴザイマス、此地租
法ハ國有地及御料地ニハ適用ガゴザイマセ
ヌ、從テ先刻色ミ御話デアリマシタコトハ、
私ガ拾上ゲテ御答へ致シマスト、成程官有
林或ハ國有ノ原野ト云フモノヲ民間ニ貸シ
テ居ルノモアリマス、併シソレカラ金ヲ取ッ
テ居リマスガ、是ハ只今申シマス如ク地租
法ノ適用ヲ受ケヌノデアリマシテ、全ク是
ハ貸地デアリマス、租稅ニ非ズシテ貸地ノ
貸料ヲ取ッテ居ルト云フノデアリマス、ソレ
カラ國有ノ林野ニ租稅ヲ掛ケタナラバ非常
ニ稅ガ餘計取レル譯ヂヤナイカ、其方ニ何
トカ改正ヲシタナラバト云フ御考デアリマ
シタガ、御尤デアリマス、今日ハ國有林ハ
御承知ノ如ク農林省ノ所管デアリマシテ、
森林收入ト云フモノヲアノ國有林カラ擧ゲ
テ居リマス、年々少イ時デモ四千万圓、多
イ時ニハ五六千万圓ノ收入ガ國家ニ這入,
テ來テ居リマス、從テ此國有林カラ參リマ
ス收入ハ相當ニ這入ッテ居ルト思フノデア
リマス、ソレカラ先刻國家ノ國有財產ニ稅
ヲ掛ケルカ否ヤト云フヤウナ御話モアリマ
シタヤウデ、少シ誤解デアッタカ知レマセヌ
ガサウ云フ風ニ承ッテ居ッタノデアリマス
ガ國稅ト致シマシテ森林稅ヲ掛ケルト云
フ考ハゴザイマセヌ、國有林ニ租稅ヲ掛ケ
ル必要ノナイコトハ、御承知ノ如ク今日ノ
狀態デ行キマスレバ、國ガ國ニ稅ヲ掛ケヌ
コトハ當然デアリマスガ民有地ノ森林稅
ト云フ御話デアッタラウト思ヒマスガ、其稅
ヲ掛ケル考ハアリマセヌ、地方稅ト致シマ
シテドコノ縣デアリマシタカ、奈良縣カ
ドコカト思ッテ居リマスガ、地方稅トシテ森
林稅ヲ掛ケタイ、斯ウ云フヤウナコトノ相
談ニ與ッタコトハ、內務省デアリマスサウデ
スガ、地方稅トシテモ森林稅ハ掛ケナイト
云フコトデ、是ハ許可イタシマセヌコトノ
過去ノ歷史ガゴザイマスカラ、ソレハ申上
ゲテ置キマス、ソレカラ保安林ハ何故免租
スルカ、是ハ保安林ニ對シマシテハ公益ノ
爲ニ相當ナ制限ヲ付シテ居リマス、御承知
ノ如ク保安林ハ自ラノ勝手ニ木ヲ伐ルコト
ハナラヌ、斯ウ云フ制限ヲ置イテ居リマス、
卽チ私有財產ニ對スル公益ノ爲ノ制限デア
リマカラ、其意味ニ於テ保安林ニ對シテ
ハ免租ヲ致シテ居リマス、ソレカラ先刻官
有地等ノ所管ト云フコトガ所々方々ニ分レ
テ居ルガ、大藏省ハ常ニ大藏省ノ所管ニ移
シタイ考ヲ持ッテ居ルヤウダガドウカト、斯
ウ云フ御話デアリマシタガ、只今ノ所、都
合好ク運行ガ出來テ居リマスノデ、今日ノ
所管其モノヲ直ニ變ヘル考ヲ致シテ居リマ
セヌ、ソレカラ森林ヲ不動產ト見ルヤ否ヤ
ト斯ウ云フ御話デアリマシタガ、ドウ云
フ御立場カラノ御質問カ知リマセヌガ、立
木ハ矢張リ其土地ニクッ附イタモノトシテ
見テ居リマスヤウデス、併ナガラ此問題ハ
別ト致シマシテ、森林經營ニ付キマシテハ
高橋氏ノ言ハレル如ク所謂經濟的ノ見地カ
ラシテ國有ノ森林ト云フモノハ經營イタシ
テ居リマス、稅ヲ取ルバカリノ目的デナイ
ノデアリマス、森林ノ造林植林改善等ニ付
テハ少カラザル金ヲ掛ケテ居リマシテ、此
點ニ付テハ先刻高橋サンノ言ハレル所謂經
濟的見地カラ經營シテ居ルト申上ゲテ宜シ
ウゴザイマス、ソレカラ山林ノ賃貸價格ヲ
評價イタシタ場合ニハ其山林ニアリマス本
ノ種類、卽チ杉デアルカ、檜デアルカ、如
何ナル種類ノ本ガ植ワッテ居ルカト云フコ
トハ、賃貸價格ヲ調査イタシマス場合ニハ、
當然者慮ノ中ニ這入ッテ居ルノデゴザイマ
ス、ソレカラ高知縣ノ御話ノ切替畑或ハ燒
畑トカ云フモノガアリマシタガ、之ヲ擧ゲ
マシテノ御質問デアリマシタガ、是ハ矢張
リ賃貸價格ヲ調査イタシマス場合ニハ、勿
論是モ調査シテアリマス、サウシテ御尋デ
アリマシタ其面積ハ三十二万千三百十三
町今度ノ賃貸價格デ調査シタ中ニ、ソレ
ダケ這入ッテ居ル次第デアリマス、大體御答
ヘ致シマシタ積リデアリマスガ何カ又不足
ガゴザイマシタラバ、御指摘ヲ戴イテ答辯
イタシマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=17
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018・高橋琢也
○高橋琢也君 井上準之助氏ハ先刻私
ガ····昨日モ質問ヲシタ其御答ガ無イカラ
今日モ伺ッタ、然ルニ井上準之助氏ハソレヲ
答辯ヲ避ケラレテ······忘レラレタノデ、若
イカラソレハ忘レラレルコトモアラウケレ
ドモ······今回ノ地租法ヲ實施シタ曉、現在
一筆ヅツ地目、地籍、之ヲ調ベテ賃貸價格
ヲ定メルト云フコトガ、法文ニチヤント載ツ
テアル是ダケノ仕事ヲスルノデモ容易ナ
コトデナイ斯ウ思フ、果シテ然リ、今ヤ
百餘万圓ノ經費ガ調査費トシテ今囘ノ豫算
ニ出シテアル斯ウ言ハレル、サスレバ此
調査事業モ容易デナイト思フ、況ヤ之ヘ對
スル純粹ノ徵稅費ダケデモ相當ニ金ガ掛カ
ル、是等ノ費用ヲ引去ッテドレダケノ純收
入ガアルカドレダケガ眞ニ減稅ニ當ッテ、
地方ノ負擔ヲ輕減シテヤルト云フコトガ出
來ルノカ斯ウ云フコトヲ御尋ネシタ、ソ
レニ向ッチヤ昨日モ今日モ答辯ヲ避ケテ居
ル一番大事ナコトト私ハ見ル、ドウカ是
ハ更ニ申上ゲルカラ御答ヲ戴キタイ、ソレ
カラ賃貸價格ト云フモノハ旣ニ大正十五年
取調ヲシテ居ル二年掛カッテ居ル、斯ウ言
ハレル、ソレカラ今日ハドノ位ノ月日ガ過
ギテ居リマスカ、況ヤ當時ト今日トノ土地
ノ價ノ相違スルコトハ先刻私ガ申上ゲタカ
ラ、是ハマサカ御頭ニナイコトハナカラウ
ト思フ之ヘ對シテ、今囘賃貸價格ヲ調べ
タカラ之ニ依クテヤルノデアルガ、地租ノ總
額ハ舊來ノ額ニ違ヒハナイ、ソレヘ向ッテ何
割減ズルカラ減稅ニナルノデアル、斯ウ仰
シヤルヤウニ聞エル、ソレナラバ何ニモ進
ンデ新シイ法律ヲ出シテ、大變ナ手數ヲ掛
ケテ賃貸價格マデモ調ベテ減稅ヲナサル必
要ハナイト思フ、旣ニ調査ヲシテ賃賃價格
ハ現在ノ實際ヤッテ居ル賃貸價格ト云フモ
ノヲ見テ、之ニ對シテ地租ヲ減ズルト、斯
ウ云フコトデアレバ隨分大キナ額ガ減ジ
得ラレルノデアラウト私ハ思フ、是デハ大
變ニ減ズルト云フヤウデアルガ、實ハ舊來
ノ稅額ニ對シテ六千餘万圓、ソレヲ是ダケ
減ズルノデアル······是デ以テ澤山ナ話、是
ダケノ法律ヲ出シテ賃貸價格ヲ調ベ而モ
ソレハ二年モ掛カッテ調ベタモノガアルカ
ラソレニ依ッテヤル、斯ウ言ハレル賃貸價格
ハ實際今日ノ賃貸價格デハナイヤウニ思
フ夙ニ先年調ベタ賃貸價格ノ如キハドコ
ヘカ行ッテシマッテ居ル、書面ハ殘ッテ居ルダ
ラウケレドモ、賃貸價格其モノハ、大正十
五年昭和一年二年ト云フ時ノ賃貸價格ト、
昭和六年ノ賃貸價格ト是ハ違テテ居ル、大變
ニ違ッテ居ルト云フコトダケハ、今日ノ不
況ノ事情ヲ先刻モ申上ゲマシタガ、ヨク井
上氏ハ御承知ノ筈デアル、然ルニ賃貸價格
ニ依ッテ今公平ナ價ガ出ル、斯ウ·····人民ハ
是デ滿足スルダラウト、斯ウ云フ御考ヘカ
モ知レマセヌガ、實ハ本當ノ賃貸價格ヂヤ
ナイ、今日トシテハ〓ノ賃貸價格デアル
サウスルト之ニ國民ガ滿足スルデセウカ、
恐ラクハ滿足シナイダラウト思フ、私ハ折
角現政府ハ昨年既ニ是ガ出シタカッタ、所ガ
議會ガ解散ニナッテ、其結果今囘出サレタ
ト斯ウ云フ、其間ニ一ツ議會ガゴザイ
マスヨ、議會ガ解散ニナッタ後ニ第五十八
議會ト云フ特別議會ガアッタコトハ慥カ
御忘レデハアルマイ、何故井上氏ハ此際ニ
出サレナカッタノデアルカ、私ニハ分ラナ
1、ソレハ臨時議會デアルカラ差控ヘタノ
ダト斯ウ仰有ルカモ知レナイ、所ガ一日一
日ト日ガ經ツ程、賃貸價格ヲ取調ベタ元ノ
調査書ト云フモノハ黴ガ涌イテ來ルノデス
ヨ、段々黴菌ガ固マッテ來ルノデアル、其
腐ッタモノヲ以テ來テ、之ヲ如何ニシテ今日
ハオ使ヒニナラウト云フノデアルカ國民
ハソレデ滿足シマセウカ、私ハ滿足シナイ
ト思フ、折角新法律ガ出來テ、之ニ依テ新シ
イ賃貸價格ヲ調べサウシテ適當ナル賃貸
價格ヲ標準トシテ定メラレタ地租ナレバ
國民ハ承服スルデセウ、今日旣ニ噓ノ賃貸
價格デアル、而モ今囘之ヲヤルト、十年ノ
後デナケラニヤ改正ガ出來ナイノデセウ、
サウスルト又十年······左樣十年ナラマダ宜
イカモ知レナイガ、モウ十年、二囘目ニナ
ルト私ハ此演壇ニ立チ兼ネルカモ知レナイ、
マダ百四ツヤ五ツヂヤ倒レヌ積リヂヤアル
ケレドモ、或ハ立チ兼ネル、ソレダカラ其
時ニ私ハ井上氏ニ向ッテ、何故曩ニハ斯ウ云
フヤウナ法律ヲ出シタノデアルト云ヒタイ
ケレドモソレハ少シ前途ガ遠イカラ先
キノコトハ分リマセヌカラ、ドウシテモ今
日推測ノ出來得ベキダケハ推測シテ豫メ申
上ゲナクチヤナラヌ、賃貸價格ヲ御調ベニ
サカリ。古イモノデモ新シクシテ御持チニ
ナッタ、宜シイ、ソレダケデ以テ、唯是マデ
ノ稅ノ幾分ヲ賃貸價格ニ依テヤルノデアッ
テ、外ニ變リハナイノデアルト、斯ウ云フ
コトダケヲ國民ガ知レバ、滿足スルカ不滿
足ヲ表スルカ、是ハ分ルデアラウト思ヒマ
ス、私ハ深クハ斯樣ナコトヲ申サナイ、ソ
レカラ保安林ハ公共ノ爲ニ設ケテアルモノ
デアル、所謂國土保安ノ爲ニソレハ設ケテ
アル、私少シバカリ森林ノコトヲ知ッテ居リ
マスカラ、此位ノコトハ分ッテ居ルノデス、
併シ保安林ト云フモノハ二ツアリマスヨ
禁伐林ト云フモノガアル、普通保安林ト云
フモノガアル、禁伐林ハ誠ニ僅カナモノデ
アル、是ハ伐木ヲ禁止シテ居ルカラ利用ス
ルコトガ出來ナイ、ソレ故ニ此租稅ヲ省ク、
卽チ此租稅ヲ掛ケルト云フコトハ不當デア
ルカラ、無論森林法ヲ拵ヘル時ニモ其積リ
デ保安林、一般ニ保安林ニハ是ハ國有林
ニモ民有林ニモ町村林ニモ社寺林ニモアル
ノデス、併シ保安林ナルモノハ伐木年度ガ
少シ延ビルト云フ·····唯是ハ針葉樹ナレ
バ斯ク斯ク、濶葉樹ナレバ斯ク斯クデアル、
而カモソレガ喬林デアル、中林デアル、矮
林デアルト云フト又違フノデス、然ルニ課
稅ノ標準ガ總テ正當ニヤラネバナラヌトス
しや、少ク利用スルモノニハ少イ割ノ稅ガ
掛カリ、大キク利用スルモノニハ大キナ稅
ガ掛カルト云フノガ當然ヂヤナイカト思
フ、ナゼナレバ、其收入ニ對シテ其幾分ノ
租稅ヲ取ルト云フコトデナクテハナルマイ
ト思フ、是ハドウデアルカ又官有地ニア
ル土地ヲ利用スル部分林ノコトヲ私ハ申上
ゲマス、部分林ニ付テハ官有林ノ中ニアル
モノデアル、見續山ノ如キハ矢張リハ官地
デゴザイマス、全部民木デアルノデス、是
モ同ジヤウナ御取扱ヒ、ず總テ是ハ掛ケナイ
ノデアル、斯ウ仰ッシヤルノデアラウト思
フ、私ガ例ヲ澤山出シテ一々伺ッタケレド
モ、御忙ガシイ爲デアルカ、極メテ簡單ナ
御答辯、簡單ナラマダ結構、簡單ダケナラ
マダ結構ダガ私ガ伺ヲタコトヲ皆御答ヘニ
ナラナイ、高知縣ノ切畑ヲ燒畑、斯ウ仰ッシ
ヤル、ソレハ私ノ聞キ損イカモ知ラヌ、高
知縣ト申上ゲナイ、全國ナンダカラ是ハド
ウ云フ御考ヘデ仰クシヤッタコトダカ·····高
知縣ニハ寧ロ少イダラウト思フ、燒畑切畑
ノコトヲ御承知アルカ知ラヌ、或ハ新墾地、
是等モ御承知アッテ仰クシヤルコトカ、私
ハ解ラヌ、面カモ是ニハ稅ヲ掛ケルト仰ッシ
ヤル、サウスルト燒加切畑ハ官地ニアッテモ
稅ヲ御掛ケニナル、官林中ニアッテモ稅ヲ御
持ケニナル一方デハ國有林官有地ニアル
モノニハ稅ヲ掛ケヌト仰ッシヤル、サウシテ
燒畑切畑ニハ掛ケルト仰ッシヤル、是ハドウ
云フノカ、是ハ明カニ御答ヘヲ戴キタイ、
ソレカラ井上氏ハ國有林ト云フモノ、是人
稅ヲ掛ケナイノデアル、ソレハ尤モデアル、
私ノ說ガ尤モデアル、稅ハ掛ケナイノデア
ル掛ケナイヤウニナッテ居ル、ソレモ私ガ
能ク知ッテ居ルカラ、ドウ云フモノデ之ニ
對シテ御考慮ニナラナイカ、是ハドウナサ
ル御積リカト、現ニ林制ノ最モ能ク整ッタ林
相ノ最モ盛ナ且ツ私ガ先ニ演壇デ申シタ經
濟主義デアル、理財主義デナイ歐羅巴ノ大
國、就中獨逸ノ如キ、租稅ハ國有林ニ掛ケ
ルノデアル、租稅ハ掛ケルノデアルガ、租
稅ノ調ベモソレデアルカラスル、租稅ノ調
ベモスルガ併シ何レ國庫ニ入ル金デアル
カラ、兩方ノ手數ヲスルト云フコトハ不得
策ソレ故ニ租稅ハ掛ケテモ只國有林收入
ノ中、是ダケハ稅トシテ、卽チ國稅トシテ
收入スルソレハ金デ割當テル、是ダケハ
森林ヲ利用シタ收入デアル、此事ヲ私ハ言。ツ
ク、元と國有林ト云フモノモ保安林デナイ
以上ハ普通ノ森林、是ハ全ク營利事業デア
ル、營利事業デアレバ稅ヲ負擔スベキ筈
ノモノデアルコトハ申ス迄モナイコトデア
ル、ソレ故ニ私ハ申上ゲタ、所ガ此趣意ガ
御分リニナラナカッタト見エテ先刻ノ御答
辯デハ官林ハ稅ヲ掛ケナイヤウニナッテ居
ルゾヨ國有林ハ稅ヲ掛ケナインダヨト仰
セニナッタヤウデアル、其事ハ私ハ今ヨリ三
四十年前カラ承知シテ居ルカラ、別ニソレ
ヲ〓ヘテ戴カナクテモ宜イガ、恐ラクハ先
刻御話ニナッタコトガ遠ヲチヤ居ラヌカト思
フ、又國有林ニ付テ、殊ニ森林ニ付テノ地
木ヲ合シタ、卽チ土地ト樹木、之ヲ合シタ
モノガ卽チ森林、森林ト云フモノハ一ツノ
不動產ニナッテアル、ソレヲ先刻ハ矢張リ毛
上ノ如ク御話ニナッタ、土地ノ上ニアル木デ
アル、木ハ本デ處分スル土地ハ土地デ處
分スルトカ云フヤウナ御話デアッテ頗ル暖
眛デアッタカラ、是ハ判然ト伺ヒタイ、ソレ
カラ森林ガ不動產デアル上ノ木ハ動產デ
アルト若シ言フナラバ、動產ノ扱ヒヲスルナラ
バ法律上大變ナコトニナル、ソレデアルカ
ラ殊ニ是ハ全ク森林ハ地木ヲ合シタ不割ノ
不動產デアル、木デアレバ、材木ニナッテ來レ
バ、是ハ別ノコトデアル、生キテ樹木デ居ル間
ハ······而モ今日原野ニ樹木ガアル、是ハ取
扱ヲ別ニシテ居リマス、元來言フト森林刑
法ノ如キハ原野ニ這入ッテ居ル土地ヲ主ト
スル所ノ利用ト、サウシテ森林デアッテ森
林ノ中カラ伐ル所ノ木ノ利用、是ハ違フノ
デス、只一般ニ林相ナドヲシテ居ル原野ガ
アル爲ニ、現在ノ林相若クハ樹木ノ存在ス
ルノヲ見テ森林ノ扱ヒニシテ居ル所ガ多イ、
甚シケレバ司法官ノ如キ森林盜伐トシテ取
扱ヲスルコトガアル是ハ普通刑法ニ這入
ルベキモノデ決シテ森林法ノ刑罰ヲ當テベ
キモノデナイ、如何トナレバ森林法ハ混成
公法デアッテ、法律ノ根源カラシテ違ッテ居
ル現ニ日本ノ刑法デハ自由刑、卽チ身體
ノ刑ト云フモノヲ刑ノ主體トシテ破廉恥罪
ノ主體トシテ居ル、併シ森林法ハ寧ロ財產
刑ヲ主體トシテ居ルト云ウテ宜シイ、其趣
意デ現ニ私ガ各國ノ森林法ヲ調ベテ、日本
ノ各藩ノ舊時ノ森林制度、法律ヲ調ベテ、
誠ニ日本ノト歐羅巴ノ各國トノ能ク似テ居
ルモノガ多イ、就中秋田ノ林區制度ナドハ
ソレ程ニ進ンデ居ルカト思フヤウナ制度ニ
ナッテ居リマス、ソレ故ニ森林法ノ刑法ト云
フモノハ此立前ニナッテアルカラ、司法省デ
モ又法制局デモ、最初ニ日本ノ刑法ニ對シ
テノ原則トハ違ッテ居ルト云フノデ隨分暄
シカッタノデス、画倒デゴザイマシク、ケレ
ドモ私ハ是ハ混成公法デアッテ、佛蘭西ハ斯
ウナッテ居ル、獨逸ハ斷ウナッテ居ル伊太
利ハ斯ウ云フヤウニシテ居ル英國ノ印度
ハ斯ウシテ居ル、蘇格蘭ハ斯ウシテ居ル、是
等ヲ調ペテ日本ノ舊藩ノ森林刑法マデ調ベ
マシテ、之ヲ參考ニシテ話シマシタ結果、
サウカ、ソレヂヤ仕方ガナイ、日本ハ一ツ
此ナニヲ開カウ、斯ウ云フコトデアノ森林
法律ヲ皆容レテ吳レラレテ、遂ニ議會ヘ出
シマシテ、議會デモ協賛ヲ得タ譯デアリマ
ス、併ナガラ一度ハ保安林デ喧シイノデアフ
テ、保安林ハ賠償ヲスル斯ウ云フコトデ
衆議院ハソレダケ修正ヲサレマシタ、貴族
院ヘ來テ原案ニ復活スルノニハ、自分デ申
シテハ甚ダ相濟ミマセヌガ、非常ナ努力ヲ
致シマシタガ、流石ニ貴族院ノ諸君デス、
國家ノ事ニ於テハ少シモイヤナ御考ヲ持ッ
テ御居デニナラナイ極メテ公正ナ考ヲ持。ツ
テ御居デニナルカラ宜シイ、是ハ政府案ニ
復活セラレテ遂ニ兩院協議會トナッテ、幸ニ
當時ノ內閣モ亦之ニ同意シテ、私ハ政府委
員デアルカラ當時ノ內閣ガ同意スルト
言ッチヤオカシイデスガ、其間ニ矢張リ妙ナ
空氣ガゴザイマシタガ、其時ノ法制局長官
ヤ、內閣書記官長ガ非常ナ力ヲ入レテ吳レ
マシテ森林ハ到底是デハイカヌ、是ハ農
商務省ノ提案通リデナクチヤナラナイ、斯
ウ云フコトニナッテ、遂ニ兩院協議會モ貴族
院ノ勝利ニナリマシテアノヤウナ完全ナ
森林法ニナッタノデゴザイマス、ソレデアル
カラ森林ノ保安林ノ事ヲ先刻申上ゲマシタ
ガ、私ハ聊カ其方ノコトハ知ッテ居ル、ソレ
カラ又府縣知事ガ森林法ニ依フテ伐木禁止
ヲヤルケレドモ、保安林デハナイ、府縣知
事ガ自由ノ伐採ヲ許サナイ斯ウ云フ場合
ハ是ハドウナリマスカ、サウ云フ場合ハ森
林法ニ依ラズシテ、府縣知事ガ公共ノ爲ニ
國土保安ノ爲ニ是ハ許サナイ、斯ウ言ッテ伐
木ヲ禁ズル、卽チ森林產物ノ利用禁止ヲシ
タ場合、是ハドウナリマスデスカ其場合
ニ對シテハ其地所ノ租稅ハドウナルノデゴ
ザイマスカ、餘リ長クナリマスカラ先ヅ
是グケノ事ニ付テ再ビ御答ヲ希望イタシマ
ス
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
〔國務太臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=18
-
019・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 高橋氏ノ午前
ノ御間ニ對シテ、私ガ甚ダ粗漏デ全部ヲ御
答へ致シマセヌコトハ、誠ニ相濟マヌ次第
デゴザイマシタ、其問題ハ賃貸價格ノ調
査ハ出來上ッテ居リマスノデ、ソレヲ土地臺
帳ニ記入シ、總テ土地ノ地租ノ徵稅ノ出
來マス手續ヲ致シマス爲ニ四月カラ十月マ
デ日數ガ掛カリマシテ、ソレニ對シテ經費
ヲ百七十万圓程拂ヒマス、其百七十万圓ハ
一時的ノ經費ガ要リマスコトハ確ナ事實デ
アリマス、併ナガラ是ハ御答ヘスルコトデ
モアリマセヌガ、此計算ハ斯ウ云フ風ニ取ッ
テ居リマス、御承知ノ如ク田畑ノ納期ハ四
ツニ分レテ居リマシテ、昭和五年度ノ田畑
ノ最終ノ納期ハ昭和六年度ニ納マリマスノ
デアリマスサウ致シマスルト昭和六年
度カラ地租ハ地租法ガ變リマシテ、田畑ニ
減稅ニナリマシテ宅地ニ多少增稅······殖エ
ルコトニナリマスガ、田畑ハ減ルノデアリ
マスガ、昭和五年度ノ田畑ノ地租デアリマ
スカラ、財政計畫カラ言ヒマスト昭和六年
度ニ入リマスケレドモ、ソレハ昭和五年度
ノ稅デアリマス爲ニ、減稅ニ其點ハナリマ
セヌ、其金ガ百七十万圓ヨリズット以上アリ
マス爲ニ、約三百万圓パカリアリマス爲ニ、
其點ニ於キマシテハ相當收支ノ計算ガ立ラ
ノデアリマス、ソレカラ高橋氏ノ御間デハ
アリマセヌデシタガ、地租ガ總額ニ於テ減
リマス爲ニ徵稅ノ費用ハ寧ロ減リマス、其
減リマスノハ昨日カ一昨日カ、森田福市君
カラ御尋ノ、豫算ニ載ッテ居リマス町村ニ交
付イタシマス交付金ガ昭和六年度ニ於テ一一
十万圓程減"テ居リマス、ソレハドウ云フコ
トカト云ヘバ、地租ノ總額ガ減リマスカラ、
從テ總金額ニ對スル割合デ交付金ヲヤリマ
スカラ減リマスノデアリマス、ソレカラ先刻
私ガ切畑燒畑ノ總坪數ヲ申シマシタノハ、ア
レハ日本全國デ民有地ノ分デアリマス、官
林ハ入ッテ居ラヌノデアリマス、ソレガ三十
二万千三百十三町步アリマス、其以外ニ官
林ヲ借入レテ同一ナコトヲ致シマスレバ、
是カラ貸賃ヲ官有地ハ取テ居リマス、併シ
是ハ地租法ニ依ル租稅デハゴザイマセヌ、
ソレカラ賃貸價格ノ調査ガ非常ニ古クナッ
タカラソレヲ此際稅制ヲソレニ依ッテ改正
スルコトハドウカト云フ御話デアリマシタ
ガ、成程昭和二年ニ調査イタシタノデアリ
マスガ、昭和二年ノ經濟界ト今日ハ變クテ居
リマス、併ナガラ先刻申シマス如ク、或ル一
種ノ財產ニ稅ヲ掛ケルノデハナイノデアリ
マシテ、地租ト云フモノノ稅額ハ變ヘズニ、其
中デ負擔ノ公正ヲ圖ルト云フノデアリマス
カラ、結果ガ御承知ノ如ク田畑デ下ガッテ宅
地デ少シ上ガッタ、然ラバ調査シタ時ト今日
田畑ト宅地ノ收入或ハ價格ト申シマスカ、
賃貸價格ガ同ジ割合デ下ガッタト致シマシ
タナラバ、何モ左程無理ナコトモナケレバ、
古クナッタカラト言ッテモソレガ用ヲ足サヌ
コトハナカラウト思ヒマス、卽チ成程、地
方ノ田畑ノ地價ハ下ガリマシタ、併ナガラ
市街宅地ノ地價モ下ガリマシタ、賃貸價格
モ兩樣ニ下ガッテ居ル、其下ガリ方ガ、一方
ニエラク何カ特別ノ事情デ下ガッテ、一方ニ
何カ特別ノ事情ガアッテ下ガラナカッタナラ
バ御說ノ通リデアリマスガ、今般ノ經濟上
ノ狀態ハ日本全國ニ於キマシテ左樣ナ事實
ガ擧ッテ來テ居ル、斯ウ考ヘテ居リマス、況
ンヤ過去ノ地價ト云フモノハ御承知ノ如ク
數十年間一切動カサナカッタ、今般之ヲ動カ
シテ、十年每ニ調査シテ、實際ノ經濟狀態、
納稅者ノ擔稅力ヲ基ニシテ段々ヤッテ行
カウト斯ウ考ヘマスト、十年間ノコトヲ考
ヘテ見マスレバ、經濟界ガ上ガッタリ下ガツ
タリ或ハ好クナッタリ惡クナッタリスルコト
モアリマセウ、併ナガラ過去ノ日本ノ地租
條例ト云フモノヲ數十年間動カサズニ實際
ニ適合シナイコトヲ考ヘテ見マシタナラバ
一段ノ改善ト考ヘテ居リマス、ソレカラ保
安林ヲ私ハ引ヲ包メテ申シマシタガ、保安林
ニ付キマシテハ補償ヲ與ヘマシタリ、色〓
ナ込入ッタコトガアリマスヤウデアリマス
カラ、農林省ノ政府委員カラ御答辯イタサ
セマス
〔政府委員山田道兄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=19
-
020・山田道兄
○政府委員(山田道兄君) 只今高橋サンカ
ラ御尋ニ係リマシタ農林省關係ノ部分ニ付
テ御答へ申上ゲマス、禁伐保安林ト申シ或
ハ普通ノ保安林ト申シ、共ニ收益ノ自由ヲ
束縛イタシテ居ルト云フ爲ニ地租ハ免稅ヲ
致シテ居ルノデアリマスルガ、禁伐保安林
ニ對シマシテハ申ス迄モナク全然伐ルコ
トヲ中止イタサセテ居ル爲ニ、政府ハ之ニ
對シテ補償金ヲ出シマシテ普通保安林トノ
區別ヲ立テテ居ルノデゴザイマス、尙ホ地
方長官ノ手ニ依リマシテ一時的伐採ヲ止メ
テ居リマスルノハ御案内ノ如ク是ハ極メ
テ一時的デゴザリマシテ、直ニ之ヲ保安林
ニスベキヤ否ヤヲ詮議ヲ致シテ決定ヲ致ス
マデノ間デゴザイマスカラ、此間地租ヲド
ウスルト云フ必要ハナイヤウニ考ヘテ右樣
ノ取扱ヲ致シテ居ルヤウデゴザイマス、右
御答へ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議長ハ只今宮城
ヘ參內イタシマシテ、河井侍從次長、皇后
宮大夫ヲ經由シ兩陛下ニ先刻全會一致ヲ
以テ決議ニ相成リマシタ、本日內親王殿下
御誕生アラセラレマシタ御祝詞ヲ言上イタ
シマシタ、又大宮御所へ參殿イタシマシテ、
三條事務官ヲ經由シ皇太后陛下ヘ同樣ノ
御祝詞ヲ言上イタシマシタ此段御報〓ニ
及ビマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=21
-
022・高橋琢也
○高橋琢也君 簡單デゴザイマス、此席デ
御許シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=22
-
023・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 簡單ヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=23
-
024・高橋琢也
○高橋琢也君 井上氏ハ本員ノ質問ニ對シ
テ頗ル冷淡ナ御答辯ヲナサル私ハ昨日來
大分時間ヲ費シテ細カニ伺ッタノデアルガ、
極メテ簡單ト申シテ宜カラウカ、今陳謝モ
セラレタ位デアルカラ、御忘レニナッタコト
ハ先刻了解シマシタガ、併シ餘リ不深切デ
ハゴザイマセヌカ併シ私ノ質問ニ對シテ
特ニサウ云フヤウナ不深切ナ答辯ヲナサル
ノデハナカラウト思フ私ヘノ御答辯デア
ルトスレバ、如何ニ御深切デナク、ドレ程
ニ冷淡ニナサッテモ不深切デアッテモ、私ハ
何トモ思ヒマセヌ併シ此議場デ御答辯ニ
ナルコトハ國民ガ皆聽クコトデゴザイマセ
ウト思ヒマス、之ヲ聽イタ國民ハ井上大
藏大臣ハエライ深切ナ人デアルト申シマセ
ウカ、井上準之助氏ハ不深切ナ人デアルト
申シマセウカ、私カラハ何トモ申上ゲヌ、
御自分ニ今晩ニモ御休ミニナッタ場合ニユッ
クリ御考ヘニナルト分ラウト思ヒマス私
ノ質問ハ他日機會ヲ得テ更ニ致ス場合ガア
ラウト存ジマス、今日ハ是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 志水小一郞君ノ
登壇ヲ望ミマス
〔志水小一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=25
-
026・志水小一郎
○志水小一郞君 私ノ御尋ハ減稅案其モノ
ノ內容ニ付テヨリハ、寧ロ減稅案ト補充計
畫トノ關係等ニ付テノ疑問デアリマス、先
ヅ第一ニ伺ヒタイノハ先日來幾多ノ質問ヲ
本議場デ拜聽イタシマシタガ、其中ニハ政
府ノ財政計畫ヲ此マヽ遂行シテ行ッタナラ
バ早晩財源ニ不足ヲ感ズルデアラウ、不
足ヲ感ズルト云ハンガ如キ御論ガ澤山アフ
タノデアリマス、之ニ對シテハ政府ハ强チ
御是認ニハナリマセナカッタケドモ、悉ク御
否認ニナッタト云フ風ニモ拜聽セナカッタ
ノデアリマス、仍テ伺ヒマスノハ此政府ノ
財政計畫ヲ遂行シマシタナラバ、財源ニ早
晩不足ヲ生ズル、生ズルデアラウト云フ事
實ハ政府モ亦御認メニナッテ居ルノデアリ
マセウカドウカ、是ガ第一ノ御尋デアリマ
ス、ソレカラ假ニ政府ノ財政計畫ヲ實行シ
タナラバ、財源ニ不足ヲ生ズル生ズルデ
アラウト云フコトニ付テ考ヘマスルノニ
是ニハ甚ダ不可解ニ存ズルコトガアルノデ
ス第一減稅計畫ニ付テ考ヘマスノニ、減
稅計畫ハ卽チ立法事項デアリマス、減ズル
所ノ稅率ハ法律デ定マルノデアリマスソ
レカラ其減稅計畫ニ依ッテ減ズル所ノ金額
ノ總額ト云フモノハ一億三千四百万圓ト
伺ッテ居ル、デ稅率ガ法律デ極リ、其減ズル
所ノ稅ノ總額ガ極ッテ居ル、サスレバ立法事
項ニ依ッテ其減稅計畫ヲ行ヒマシタカラト
云ッテ財源ニ缺乏ヲ生ズルト云フコトハ無
ササウナモノデアル、ト云フノガ私ノ疑問デ
アリマス、然ルニ政府ハ諸君ノ質問ヲ敢テ
悉ク御否認ニナル樣子モナイノデアリマス
カラ、政府モ亦財源ニ缺乏ヲ或ハ生ズルナ
ラムト、少クモ御認メニナッテ居ルダラウト
思フノデアリマスガ果シテサウデアリマ
セウカ、ソレナラ其主モナル理由ハ何處ニ
アルノデアリマセウカ、ソレガ伺ヒタイ、
ソレカラ財源ニ缺乏ヲ生ズルト云フノハ減
稅計畫ニ付テデハナイ、却ッテ補充計畫ノコ
トニ付テデアルト云フ御意見カモ知レヌ、
ソレニ付テモ尙ホ私ハ不可解ニ存ジテ居リ
マイカ補充計畫ト云フモノハチヤント此頃
マデニ內容モ極シテ居リ金高モ極ッテ居ル筈
デアリマス、ソレニ付テ今ニ至ッテ財源ノ
不足ヲ告ゲルト云フコトモチヨット私ニハ
分ラヌノデアリマスガ、等シク補充計畫デ
アッテモ、世間デ申シマス所謂第二次補充計
書き、是ハ甚ダ今日マデ私ガ伺フ所デハ浮イ
テ居ル問題デアリマス、一口ニ言ヘバ關係
諸國卽チ對手ノ國防ノ狀態ヲ窺ッテ、其樣
子ニ依ッテ我ガ國防計畫ヲ議スル、而シテ決
シテ遲カラズ、斯ウ云フヤウナ御論ニ基イ
テ今ニ第二次補充計畫ト云フモノハ內容モ
定マラズ、從ッテ金額モ亦定マッテ居ナイノ
デアリマス、其財源ニ或ハ不足ヲ告グルナ
ラムト云フ心配ハ其第二次補充計畫ニ付テ
デアリマセウカドウカ、減稅問題ニ付テハ
財源ニ不足ヲ告グルト云フヤウナ心配ハナ
ササウナモノデアルサスレバ補充計畫デ
アルガ、補充計畫ニ付テモ第一次補充計畫
ニ付テハ今日ニ至リ財源ハ不足ヲ〓ゲルナ
ント云フコトハナイ筈デアル、サスレバ第二
次補充計畫デアルカドウカ、政府ノ御意見
ハドノ點ニ存スルノデアルカト云フコトガ
伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ次ニ伺ヒ
タイノハ、政府ノ稅源ニ不足ヲ告ゲルデア
ラウト云フ御心配ハドノ點ニアリマシテ
モ、兎ニ角政府ノ財政計畫ヲ遂行スル上ニ
於テハ、或ハ稅源ニ不足ヲ生ズルカモ知レ
ヌト云フ前提ノ下ニ考ヘマスルト云フト、
減稅計畫ト所謂補充計畫、補充計畫ニ付テ
ハ第一補充計畫、第二補充計畫ガアリマス
ガ、其減稅案ト補充計畫トヲ、竝ビニ、政府
ハ遂行サルルノ御決心デアリマスカドウ
カ、ソレニシマシテモ事業ノ性質カラ考ヘ
マシテモ、補充計畫ト云フモノハ〓シテ國
防ノ缺陷ヲ生ジタ其缺陷ヲ補フノガ卽チ
補充計畫デアル、サウスルト補充計畫ヲ止
メテ減稅計畫ノミヲ實行スルト云フコトハ
ナイ筈デアラウト本員ハ考ヘルノデアリマ
スガ、政府ノ御方針モ亦果シテサウデアリ
マセウカ、補充計畫ヲ止メテ、或ハ補充計
畫ヲ後ニシテ、先ヅ減稅計畫ヲ實行スルト
云フコトハナイ筈デアラウト思フノデアリ
マスガ、政府ノ御方針モ亦果シテサウデア
リマセウカソレカラ等シク補充計畫、減
稅計畫竝ニ之ヲ遂行スル上ニ於テモ若シ問
題ガ何レヲ先ニスルヤ、緩急前後等ノ問題
ガ起リマシタナラバ、是亦無論補充計畫ヲ
先ニシテ減稅計畫ハ後トニ廻サレタラウト
思ヒマスガ、政府ノ御方針ハ果シテサウデ
アリマセウカ、是ガ御尋ノ一ツデアリマス、
ソレカラ所謂補充計畫デアリマスガ、所謂
補充計畫ト云フモノハ〓シテ所謂兵力量問
題等ニ關聯シテ居ルダラウト思フノデアリ
マスカ、サスレバ補充計畫ヲ決定スル上ニ
於テハ少クモ軍令機關、卽チ軍令部長ノ
承認ガ必要デアラウト思フノデアリマス
軍令部長ノ承認ヲ得ズシテ政府ガ獨斷專行
ヲ以テ決セラレルベキ筈ノモノデモナイ、又
政府ノ考ノミヲ以テ、其取捨選擇宜シキニ
從"テ決定セラレルト云ハムガ如キモノデ
ナカラウト思フノデゴザイマスガ、政府ノ
御考ヘモ亦果シテサウデアリマセウカソ
レカラ次ニハ第二次補充計畫ニ付テノ御尋
ネデアリマスガ此御尋ネハ主トシテ海相
ニ向ッテ御尋ネヲスルノデアリマス、第二次
補充計畫モ亦主タル目的ハ依ッテ以テ國
防上ノ缺陷ヲ補フト云フニ外ナラヌデアラ
ウト考ヘマス、果シテ然ラバ是ガ內容トシ
テ、密ニ各國ト言ハムカ、關係國ト言ハム
カ、其國防ノ狀態、形勢ヲ窺ヒマシテ、其
關係國ノ行動ニ鑑ミテ、受動的ニ初メテ我
ガ方針ヲ決定ヲスルガ如キハ、果シテ是ハ
賢明ナル策デアリマセウカドウカ、將又我
ガ國防ノ安固ヲ確保セムト欲スル上ニ
於テ、遺憾ナキヲ得ルノデアリマセウ
カドウカ、寧ロ我ハ主我的國防ヲ旨トシ
テ、各般ノ場合ヲ慮ッテ、我ニ必要ノ存
スル限リ、我國力ノ許ス限リノコトヲ致ス
ベキデハアルマイカドウカ、此種ノ問題ニ
付テハ我ミハ素人デアルト云フコトヲ
信ジテ居ルノデアル、デ此點ニ付キマ
シテハ、海相ノ、專行者タリ、責任者
者タル海相ノ御意見ヲ特ニ伺ヒタイノデア
リマス、又所謂第二補充計畫ニ付キマシテ
ハ政府ハ、我ガ政府ハ常ニマダ其時期ニ
達セズ、具體的計畫ヲスルノ時期ニ達セズ
ト云フコトノ一點張リニ、其事一點張リニ
シテ、今日、今日ト推移シテ居ラレルヤウ
ニ窺ハレマスガ、右ノ狀態ヲ以テ推移サレ
マシタナラバ、第二次補充計畫ニ充ツベキ
金額ハ、勤勉ナル政治家ニ先鞭ヲ著ケラレ
テ、悉ク減稅ノ資ニ充用セラレ終ッテ、之ガ
爲ニ所謂必要ノ補充計畫ハ實行出來ナイコ
トニナリハシマセヌカ之ヲ特ニ伺ヒタイ
ノデアリマス、海相ハ其邊ノコトニ付テハ
疎カナイカラ無用ノ心配ダト、斯ウ仰シヤ
ラレマスカドウカ、是ハ官府ニアッテ役人生
活ヲシテ居ル者ニハ能ク分クテ居ルコトデ
アリマスガ、官府ニハ豫算會議ト云フモノ
ガアリマシテ、豫算ノ爭奪ヲスルノガ慣例
デアリマスソレデ勤勉ナル長官ハ其豫算
會議ニ於テ多大ノ獲物ヲスルガ、正直ニシ
テ勤勉ナラザル長官ハ何時デモ必要ナル獲
物ヲスルコトガ出來ヌ、斯ウ云フ狀態ニナツ
テ居ルコトハ官府ノ御經歷ノアル御方ハ
能ク御分リニナッテ居ルコトト思ヒマスガ、
所謂第二補充計畫ニ充ツベキ資金ノ如キモ
ノハサウ云フ狀態ニナッテ、勤勉ナル政治
家ノ爲ニ奪ヒ去ラレテ詰リ所謂補充計畫
ト云フコトニハ用ヰラレナイコトナリハス
マイカ、失禮ナガラ御伺ヒイタシマス我
我如キ出身ノ者ニハ所謂補充計畫ト云フモ
ノニ非常ナ重キヲ置イテ居ルノデ、補充計
晝ハ卽チ國防上缺陷ヲ生ジタ所ノ其缺陷其
モノヲ補フノガ補充計畫デ、第二補充計畫
モ亦然リ、斯ウマア見テ居ルソレヂヤカ
ラシテドンナ事ガアッテモ補充計畫ト云フ
モノハ實行サレムケレバナラヌ、減稅問題
ノミ實行セラレテ補充計畫ハ實行セラレ
タ不實行ニ終リ又ハ後廻シニナルト云フ
ヤウナコトデアッテハ、軍事ニ關シテ必要ガ
充タサレヌノデアリマスガ、サウ云フコト
ハ到底アリ得ベカラザルコトト思フノデア
リマスガ、政府ノ御見解ハ如何デアリマセ
ウ、ソレカラ補充計畫ト減稅問題トヲ對照
イタシマシテ何方ガ急務デアルカ、何方
ガ必要デアルカト云フヤウナコトニ考ヘマ
スルト云フト、勢ヒ倫敦條約ガ我ガ國防ノ
不利ヲ來シタカ否カ、倫敦條約ノ結果ハ國
防ニ缺陷ヲ來シタカ否カト云フ問題ニ遡〃
テ考ヘナケレバナラヌノデアリマスカラ、
其事ヲ少シク繰返シタイノデアリマス、先
達テ此問題ヲ提出シテ首相代理ニ御尋ヲ致
シマシタ所ガ、首相代理ノ答辯ノ要ニ曰ク、
倫敦會議ノ結果ハ國防ニ缺陷ヲ生セズ、斯
ウ斷言サレマシタ、併シ條約ガ付イテ居リ
そく、併ナガラ倫敦條約ノ結果トシテ海軍
ノ從來計畫シテ居ラレタ所ノ作戰計畫、攻
守作戰計畫デアリマセウ、ソレヲ豫定ノ如
ク實行セントスルノニ、兵力ノ上ニ於テ少
シク缺乏ヲ感ズルニ至ッタト、斯ウ正シク首
相代理ハ言ハレタノデアリマス、ソレガ私
ニハ甚ダ分ラヌノデアリマシテ、從來海軍
デ計畫シテ居ル所ノ作戰計畫ガ實行サレ
ヌ、ソレヲ實行スルニ付テハ兵力ニ少シク
不足ヲ〓グルニ至ッタ、是ガ卽チ國防ノ缺陷
デアッテ、國防ノ缺陷ニアラズシテ何ゾヤト
云フ、斯ウ云フ私ハ考ヲ有ッテ居ルノデア
ルデ當時首相代理モ亦此事ハ海軍當局ノ
意見亦然リト云ハムガ如キコトヲ、確カニ
仰セラレマシタカラシテ、今日ノ海相ガオ
出デニナッテ居リマスカラ、海相ニ御伺ヲ致
シタイノデアリマスガ、ドウカ御明示相成
ラムコトヲ希望スルノデアリマス、海軍ノ
從來ノ豫定計畫ヲ實行スルニハ兵力ガ足リ
ナイ、ソレハ卽チ國防ノ缺陷デハアリマセ
ヌカト斯ウ云フ御尋ヲスル否ナ國防ノ
缺陷トハ違フノデアルト、斯ウ云フ御說明
デアリマスナラバ、我〓素人ニ能ク諒解シ
得ルガ如ク御示シヲ願ヒタイノデアリマ
ス、ソレカラ是ハ少シク橫道ニ入ルノ嫌ヒ
ガアルガ如クデアリマスケレドモ、矢張リ
當面ノ問題ニ私ハ密接ノ關係ガアルト思フ
ノデアリマス、チヨット伺ヒタイノデアリマ
スガ、一昨日デアリマシタカ、池田男爵ガ
內閣官制第七條ノ解釋如何ト言ハムガ如キ
問題ヲ提出サレマシテ、之ニ對シテ法制局
長官ガ御答ヘニナリマシタ所ハ其答トシ
テハ十分ノ一ニモ値セヌヤウナコトヲ仰シ
ヤッタノデアリマス、ソレハ軍機軍令ニ關ス
ル事項ヲ陸海軍兩大臣ガ雑幄上奏ヲシタカ
ラト云ッテ、全部悉ク內閣官制第七條ニ依y
テ總理大臣ニ報告セラルルニハ極ッテ居ナ
イ、報告セラレヌ例ガ幾多モアルト云フ如
キノ御意見ヲ述ベラレタヤウニ私ハ記憶イ
タシマスノデソレニ對シテ海相ハ只
今法制局長官ノ言ハレタコトハ全部同意デ
アリマス、私モ亦同感デアリマスト言ハム
ガ如キコトヲ仰シヤッタヤウニ記億シテ居
リマスガ是ハ時節柄內閣官制第七條ヲ陸
海軍兩大臣ガドウ讀ンデ居ルカト云フコト
ハ大變重要ナ問題デアリマスカラ御尋ネ
致シマスガ、內閣官制第七條ヲ海相ハ如何
ニ御解釋ニナッテ居リマスカ、時局問題ニ牽
聯シテ此際伺ッテ置キタイノデアリマス、色
色御尋ネスレバアリマスケレドモ私ノ本
日ノ御尋ハ是ダケニ此メテ置キマス
〔國務大臣男爵安保〓種君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=26
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027・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 只今志水サ
ンカラ御尋ネニナリマシタコトニ付キマシ
テ、私ニ對シテノ御質問ニ付テ御答ヲ申上
ゲマス、私ニ對スル御質問ノ第一ハ此度
ノ提出ノ海軍兵力整備計畫、是ハ兵力量ニ
關係ガアルガ、其決定ハ軍令部長ト能ク話
合ガ出來テ居ルモノデアルカドウカ斯ウ
云フノデアリマシタガ、是ハ御尋ネノ通リ
此計畫ヲ立テマスルニ付キマシテハ、十分
海軍大臣ト軍令部長ノ間ニ愼重審議ヲ重ネ
マシテ決定ヲシテ內閣ニ請議シテサウ
シテ内閣ニ於テ之ヲ又財政當局其他トモ話
合ヲシテ、政府ニ於テ決定イタシマシタモ
ノデアリマス第二ノ御尋ネハ補充計畫ハ
國防ノ缺陷ヲ補フ爲デアルカドウカ斯ウ
云フノデアリマシタガ、國防ノ缺陷ヲ補フ
ト云フ意味トハ少々違ヒマスルガ此補充
計畫ト仰シヤイマシタノハ海軍ノ兵力ハ
申上ゲマス迄モナク、其軍艦ニ於キマシテ
ハソレ〓〓艦齡ガ御承知ノ通リゴザイマス
爲ニ、何年カヲ經過イタシマスレバ其勢
力ハ失ハレテシマフノデアリマシテ或ル
時期々々ニ是ガ新シイ補ヒヲ付ケテ行カナ
ケレバナラヌノガ、普通ヤッテ居リマスル所
謂海軍補充計畫デアリマシテ是ガ何年カ
續キマシテソレガ無タナリマス時分ニ更
ニ第二ノ補充計畫ヲ以テ常ニ海軍力ノ一定
ノ勢力ヲ保持シテ參ル、斯ウ云フノガ補充
計畫デアルノデゴザイマシテ、此度ノ計畫
ニ於キマシテハ倫敦條約等ノ關係ヲ考慮
イタシマシテ其處ニ、後程申上ゲマスルガ、
或ル兵種ノ中ニ足ラナイモノモ生ジタト云
フヤウナコトモアリマスルカラ、サウ云フ
所ヲ十分ニ考慮イタシマシテ、今日ノ事情
ニ卽シテ國防上不安ナシト云フコトヲ目標
ニ立テマシテ計畫ヲ致シマシタモノデアリ
マス、尙ホ外國ノ狀況等ニ依。ッテ國防ノコト
ヲ決メルト云フノデナク、自主的ニ之ヲヤッ
テ國力ノ許ス限リ兵備ヲ整ヘタナラバ宜シ
イデハナイカ斯ウ云フ御話デアリマシタ
ガ是ハ申ス迄モナク、國トシテ自主的ニ
相當ノ國力ニ應ジテ兵備ヲ用意スルト云フ
コトハ當然ノコトデアリマスルケレドモ
海軍ノ兵力ト云フヤウナコトニ付キマシテ
ハ矢張リ外國海軍ノ爲ス所ヲ見マシテ
サウシテ之ニ依ッテコチラノ計畫ヲ調節按
排シテ行クト云フコトハドウシテモ其必
要ガアルノデアリマス申上ゲマスル迄モ
ナク、最小ノ經費ヲ以テ最大ノ效力ノアル
國防ヲ致サナケレバナラナイ次第デアリマ
スルカラシテ、自主的ニ或ル兵力ヲ用意ス
ルコトハ必要デアリマスルガ、玆ニ度ミ申
上ゲマシタヤウデアリマスルガ.矢張リ我
國ノ方針ト致シマシテ、西太平洋ニ於テ防
勢ノ作戰ヲ致スト云フコトニ付キマシテ
ハ攻勢作戰ノ、攻メテ來ル國ノ立前ト
防グ國ノ立前トハ自ラソコニ違フ點モ生ジ
テ居ルノデアリマシテ、攻擊ヲ以テ立前ト
スル所ノ國ハ許サレテ居ル兵力ノ中ノ、
必要トスルモノヲ計畫ニ應ジテ準備イタス
ト云フコトニナルノデアリマスルガ、防勢
作戰ト云フ意味ニ於キマシテハ最モ有效
ニ其兵力ヲ整ヘルト云フコトノ必要カラ致
シマシテ、矢張リ其攻擊ヲ取ッテ來ル可能性
ノアル國ノ兵備ト云フモノハドウ云フ兵
力ノ兵種ニ重キヲ置イテ、ドウ云フ所ニ力
ヲ用ヰテドウ云フ種類ニ最モ多數ノモノ
ヲ用意スルカ、ドウ云フ艦ガ特長ヲ持ッテ來
ルカト云フコトヲ相當見極メマシタ上、此
部分デ之ニ打勝ツト云フコトヲ、出來ルダケ
少イ經費ヲ以テヤルト云フ立前ニ致シマス
ルニハ矢張リ兵種ノ或ル物ニ付キマシテ
ハ徐ロニ外國海軍ノ爲ス所ヲ見テカラ
之ニ應ジテ晩カラヌ種類ノモノハサウ云
フ方法ヲ取ルコト最モ賢明ト致ス次第ト考
ヘルノデアリマス、次ニ第二次計畫ト云フ
モノニ付テハマダ其時期ニ達シテ居ラヌ
カラ、其開始スル時期モ內容モ不明デアル
ト云フコトデアルガ其財源ト云フモノガ
ナクテハ實行ガ出來ナイガ、是ガドウナッテ
居ルカ斯ウ云フ御尋ト存ジマスルガ、是
モ前ニモ申上ゲタ次第デアリマスルガ此
度ノ計畫、是ガ此六年度カラ十一年度迄ニ
終ルノデアリマスカラシテ、此計畫ガ一ツ
ノ計畫トシテ立チ、而シテ昭和十二年度以後
ニ於キマシテハ六千万圓ト云フ財源ガ艦艇
製造ト云フコトノ爲ニノミ準備ガサレテア
ルノデアリマシテソレガ每年六千万圓ト
云フモノガソコニアッテ、其財源ト云フモノ
ガ次ノ計畫ニ勿論關係ヲ持ッノデアリマス
ルガ此度ノ計畫ニ續イテ來ルベキ次ノ計
畫ガ、十一年度以前ニ於テ開始ヲスル必要
ガアルコトハ認メテ居ルノデアリマスルカ
ラ、卽チ是ガ若干カブサルト云フコトノ必要
ガアル、其カブサル財源ト云フモノガナイ
斯ウ云フ意味ニナル譯デアリマスルガ、此
カブサル財源ヲ豫メ用意シテアルニ無論越
シタコトハナイノデアリマスルケレド
モ是ハ此度ノ計畫ニ於キマシテ航空隊ト
云フヤウナモノヲ從來ノ航空隊十七隊ガ
殆ド本年ヲ以テ終リマシテゝ次ノ計畫トシ
テ十四隊ノ新計畫ヲ出シテ居リマス此新
計畫ト前ノ計畫トヲ併セマシテノ維持費ト
云フヤウナモノモ、總テソコニ用意ヲシテア
リマス、サウ云フヤウナ關係デ從來維持費
ト云フヤウナモノノ財源ト云フモノガ中〓
困難デアッタノデアリマスルガ、航空隊ト云
フヤウナモノノ維持費ハ特ニ必要ト云フヤ
ウナ意味デ、之ヲ矢張リ此度ノ計畫ノ中ニ
取入レタト云フヤウナ意味モアリマス、種
種ノ關係デ此次ニ來ルベキ計畫ノカブサル
財源ト云フモノハ、其時期ニ至ッテ是ガ必要
トシテ一ツノ計畫ヲ立テマシタナラバ、其
計畫ナルモノガ其時ノ狀況ニ應ジ、國防上
是非トモ必要ナリトスルモノデアル以上
政府ニ於テモ其財源ハ何トカ致シテ出來
ルダケノ方法ヲ取ッテ、之ニ善處サレ得ルモ
ノト確信ヲ致シマシテ、其財源ヲ特ニ海軍
ト致シマシテハ見テ居リマセヌ次第デアリ
マス次ニ倫敦條約ハ國防ニ缺陷ガアルヤ
否ヤ先般志水サンカラ首相代理ニ御尋ネ
ニナリマシタ時ニ、首相代理カラノ答辯ガア
リマシタガヽ其答辯モ要領ヲ得テ居ラヌカ
ノヤウニ只今ノ御話デハ承リマシタ、デア
リマスルガ是ハ前ニ御說明ヲ申上ゲマシ
タ中ニ天使之マシタノデアリマスケレド
モ倫敦條約ニ於キマシテハ御承知ノ通リ
帝國ト致シマシテハ、三ツノ、所謂三大主張
ト云フヤウナモノヲ主張イタシマシタノ
デ其事柄ヲ述ベマスト餘リ諄クナリマス
大體ニ於キマシテ總括的ノ七割
ニナッタノデアリ
北京市公安局海淀分局上海市浦和局有限公司其外ノ八吋砲巡洋艦及潜水艦ト
ハナリマセヌ
デ卽チ是ガ國防ノ缺陷ト云フ
意好ガパナリハヲタンディークアリマシテ或ル兵種ニ
不足ヲ生ジタト云フ意味ニナルノデアリマ
スルガ、是ハ國防方針ニ基キマシテ立テマ
シタ現在ノ作戰計畫ヲ遂行シテ行キマスノ
ニハ、ソレ〓〓各兵種ニ適當ナ按排ガシテア
リマスル其按排ニ、或ル兵種ニ不足ノモ
ノヲ感ズルト云フ次第デアリマス、併ナガ
ラ其不足ト云フモノニ付キマシテハ何等
カ之ヲ補ヒ得ル途ガアルカ否カト云フコト
ニ付キマシテ、海軍首腦部ニ於キマシテモ
十分ナ〓究ヲ遂ゲマシタ次第デアリマスル
ガ、相當ノ對策ヲ講ズルニ於キマシテハ
此或ル兵種ノ不足ト云フモノハ補ヒ得ルモ
ノト云フ意見ニ一致ヲ致シマシタ次第デア
リマス卽チ此度ノ計畫ニ於キマシテハ
其意味ノコトヲ十分ソコニ組入レマシテ計
畫ヲ立テマシタ次第デアリマスルカラ此
計畫ニ依リマシタ案ガ幸ニ御協賛ヲ得マス
ルナラバ只今申上ゲマシタ若干ノ兵種ノ
不足ノ補ヒモ付キマシテ當面ノ〓勢ニ於
キマシテ國防上不安ナイト云フコトヲ申
上ゲ得ル次第デアリマス最後ニ内閣官制
第七條ニ付テ、先般用崎法制局長官カラ答
辯ヲ池田男爵ノ御尋ニ對シテサレマシタ、
ワレニ付テ私モソレト同樣ノ考ヲ持ッテ居
ルト云フコトヲ申上ゲタニ付テ疑義ノ御尋
ガアリマシタヤウデアリマスルガ、內閣官
制第七條ニ依リマシテ事ノ軍機軍令ニ關シ
マスルモノニ付テ上奏ヲ致スト云フ、其上
奏スルト云フコトニ付キマシテハ是ハ總
テノ軍機軍令ハ全部ヲ含ンデ居ルカヽ或ハ
ソレハ其文面ニハ明カニナッテ居ラヌケレ
ドモ、今マデノ慣行ニ依リ、永年ノ慣行ニ
依ッテソコニ國務ニ關スルト云フ意味ガア
ルノデアルト云フコトヲ、川崎長官モ述ベ
ラレタノデアリマスルガ、私モソレト同樣
ノ考ヲ持クテ居リマスル次第デアリマス、尙
今一ツハ此上奏ト云フ事柄ハ軍事參議院
カラノ上奏、軍令部長カラノ上奏ト云フヤ
ウナモノモ含ンデ居ルカト、斯ウ云フヤウ
ナ意味ノコトニ付キマシテハ、總テサウ云
フモノモ含ンデ居リマシテ、單リ海軍大臣、
陸軍大臣ノ奏上ト云フ意味ノミデハナイト
云フコトハ私モ左樣考ヘテ居リマスル次
第デアリマス、御承知ト存ジマスルガ事
ノ軍機軍令ニ關シテ奏上イタシマシテ軍
令部長カラ······一ツノ例ヲ申上ゲマスレ
バ軍令部長カラ上奏ヲ致シマシテ、御親
裁ノ後之ヲ海軍大臣ニ移サレマシテ、ソレ
ガ國務ニ關係ヲ有スルモノデアリマシタナ
ラバ是ハ必ズ總理大臣ニ報告ヲ致スト云
フコトニ致シテ居リマスルガ、例ヘバ作戰
計畫ノ如キ、或ハ防備計畫ノ如キ、海戰要務
令ノ如キ、サウ云フヤウナ純然タル統帥事項
ノモノハ、是ハ御親裁ノ後ニアリマシテモ、
總理大臣ニ移スト云フコトニハヤッテ居リ
マセヌ次第デアリマス
〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=27
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028・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今ノ海軍大
臣ノ答辯ニ依リマシテ、志水氏カラノ第一、
第二ノ質問モ大體御了解下サッタノデアラウ
ト思ヒマスガ私カラ極ク簡單ニ答辯申上
ゲテ置キタイト思ヒマス、卽チ減稅案ト補
充計畫トノ關係デゴザイマス只今玆ニ御
協賛ヲ仰イデ居リマスル補充計畫ト減稅計
畫ハ共ニ何等ノ支障ナク實行スルノデア
リマス只今御說ノ如ク補充計畫ノ財源ニ
不足ヲ生ズルデハナイカ、斯ウ云フ事柄ハ、
只今海軍大臣カラ言ハレタヤウニ、第二次
計畫ト云ハレルモノニ對シテハ希望モアレ
バ必要ヲ認メテ居ルガ、其時期程度ガ分ラ
ヌカラ今日財源ガ確保シテナイ斯ウ云フ
意味ニ於キマスルト然ラバソレヲ實行ス
ル時ハ何處カラ財源ヲ持ッテ來ルカト、斯ウ
云フ問題ニナッテ來ル次第デアリマシテ、卽
チ只今玆ニ提案シテ居リマス補充計畫關係
デハナイノデゴザイマス、從ッテ減稅案モ補
充計畫モ其意味ニ於テ共ニ實行サレルノデ
アリマス唯能ク兩者ヲ對照イタシマス場
合ニ、時ミサウ云フコトヲ承ハリマスルカ
ラ申上ゲテ置キマスガ、補充計畫ハ昭和六
年度カラ昭和十一年度マデ三億七千四百万
圓然ルニ減稅ハ一億三千四百万圓ト申シ
マスモノハ唯偶然ニ昭和六年度カラ昭和十
一年度マデヲ縱ニ合計シタ數字デアリマシ
テ是ハ留保財源カラ偶然ニモ出來テ來マ
シタ金額デアリマシテ減稅案ニ依リマス
レバ昭和六年度ガ九百万圓昭和七年度以
後ガ二千五百万圓ノ減稅ヲズツト續ケテヤ
ルト云フ財政計畫ニナッテ居ルノデゴザイ
マスソレデ尙ホ財源ニ不足ヲ生ジタ場合
ニハ補充計畫ガ遂行ガ出來ルカサウ云フ
御尋モアリマシタ、或ハ其場合ニハ兩々相
俟ツテ實行ガ出來ルカ、財源ガ足リナクナツ
タナラバ、緩急ガアッテ一方ヲ實行シテ一方
ヲ實行シナイヤウナコトガアルカ斯ウ云
フ御尋デアリマシタガ、只今申シマス如ク、
只今玆ニ提案シテ居リマス、減稅案其モノ
ハ、補充計畫ト相俟シテ、共ニ實行ノ出來ル
モノト斯ウ云フコトヲ考ヘテ居リマシテ
其間ニ輕重、緩急ノアラウト云フコトヲ考
ヘテ居ラヌ次第デアリマス、大體御答へ致
シタト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=28
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029・志水小一郎
○志水小一郞君 簡單ニ海相ニ御尋ヲ致シ
マスソレハ論敦條約ノ結果ガ國防ニ缺陷
ヲ來シタカ否ヤト云フ問題デアリマスガ
此事ハ先刻述ベマシタ如ク先日首相代理ニ
向ッテ御尋ヲ致シマシタ所ガ、首相代理ガ曰
ク缺陷ハ生ジナイト、正シクサウ御答ヘ
ニナリマシタ、併シ唯玆ニ聽クベキハ海軍
ノ從來計畫シテ居ル所ノ作戰計畫、卽チ攻
守作戰計畫デアリマセウ、其作戰計畫ヲ實
行セムトスル上ニ於テ、兵力ニ若干ノ不足
ヲ感ズル、斯ウ仰シヤイマシタ、ソレデ本
員ノ御尋モ海軍ノ從來計畫シタ所ノ作戰計
畫ニ兵力ニ不足ヲ感ズルナラバ、ソレガ
卽チ國防ノ缺陷デハアリマセヌカト云フノ
ガ私ノ御尋デアリマス、此御尋ニ付テ最初
ノ御答モ私ハ頗ル滿足出來マセヌノデ却
テ海相ノ種々ノ御答ハ兵力ニ缺陷ヲ生ジ
タコトヲ證據立テル爲ノ御答ニ受取レマ
ス、例ヘバ斯ク斯ク案ヲ提出シタカラシテ、
幸ニ之ヲ御承認下サルナラバ遺憾ナク補
充モ出來ルト云フ意味デアリマスカラソ
レハ寧ロ倫敦條約ガ國防ノ缺陷ヲ生ズル
其事ヲ證明スルモノデアリマシテ、倫敦條約
ガ國防ニ何等缺陷ヲ生ゼナイト云フ御說明
ニハ値セヌモノト思フノデアリマスカラ、
其事ヲモウ一遍御答ヲ願ヒマス、其他御說
明ノ狀態ハ御苦心ノ狀モ窺ハレマシテ私
ハ是レ以上追究ハ致シマセヌ
〔國務大臣男爵安保〓種君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=29
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030・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 志水サンカ
ラ重ネテノ御尋ニ御答ヘ申上ゲマス、國防
ニ缺陷ナキヤト云フ意味ノコトハ能ク誤
解ヲ生ジ易イノデアリマスカラ少シ委シ
ク先程申上ゲタ次第デアリマスルガ只今
ノ御尋ノヤウニ倫敦條約ノ結果ト致シマシ
テハ國防上作戰計畫ヲ立テマス上ニ於キ
マシテ或ル種ノ兵力ニ缺陷ヲ生ジテ居ル
ト云フコトハ御尋ノ通リデアリマス併ナ
ガラ國防ト云フモノガ缺陷ガアリヤ否ヤト
云フコトハソレヲ補フ方法ガアルト云フ
コトト、ナイトニ於キマシテ違ヲ生ジマ
スル次第デアリマスカラ、單ニ倫敦條約ノ
結果ノミニ於キマシテハ或兵種ニ國防方
針ニ基ク作戰計畫ノ上ニ不足ヲ生ズル兵
力ニ不足ヲ生ジマスガ其不足ハ之ヲ相當
ノ對策ヲ樹テルニ於テハ補ヒ得ルト云フコ
トニナリマスシ、卽チ之ヲ補ヒ得マスルガ
故ニ、國防上カラ見テ缺陷ナイ斯ウ云フ
コトヲ申上ゲテ宜イ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=30
-
031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通〓者ハ
終リマシタ
〔佐々木志賀二君「議長、私ハ簡單
ニト述フ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 佐々木君ハドウ
云フコトデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=32
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033・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 此問題ニ付テ······減稅
案ニ付テ、頗ル簡單ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 質疑ヲ御希
望発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=34
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035・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 エエ、質疑ヲ述ベルノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 頗ル簡單デアレ
バ御自席デ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=36
-
037・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 私ハ此減稅案ニ付テハ
無論贊成デアルノデアリマス、私ハ此減稅
案ハモウ少シ、ヨリ多クヤッテ戴キタイト云
フ促進的ノ意味ニ依ッテ、少シ御尋ネシタイ
ト思ヒマス我ミ國民ハ現政府ガ非常ナル
努力ヲ以テ、或場合ニハ反對黨ノ反對ヲ押
シ切リ又或場合ニハ樞密院ノ有ラユル壓
迫ヲ押シ切リヽ而シテ濱口首相ガ軍縮ヲ成
功シテ今日一億數千万圓ノ減說ヲヤラレル
ト云フコトハ、國民ハ多大ナル感謝ノ意ヲ
表シテ居ルト我〓ハ信ズルノデアリマス
唯我ミハ此減稅案ハ十分デナイ、今少シク、
ヨリ多クノ減稅ガ出來タンデハナイカト云
フコトニ付テ非常ナル遺憾ノ意ヲ表シテ
居ル、意ヲ持ッテ居ルノデアリマス、卽チ五
億八百万圓ノ剩餘ノ財源ノ中、少クトモ半
數······半額若クハ四割程度ノ減稅ヲ施行セ
ラレルモノト、我〓國民ハ希望シテ居ッタノ
デアリマス、然ルニ軍閥或一部ノ軍閥ガ
統帥權ト云フモノヲ盾ニシテ遂ニ色ミ政
府ヲ壓迫シテ、半數ハ愚カ四割モ減稅ヲ施
行セラレズ、遂ニ僅ニ一億三千万圓餘ノ減
稅ヲ施行セラレルト云フコトニナッタンデ
アリマス、我ミ國民トシテハ今日ノ世界ノ
情勢ニ於テハ、軍備ハ段々縮小シテ宜シイ、
軍備ヲ縮小シテモ決シテ今日國防ヲ危クス
ルモノニ非ズト云フコトハ國民一般ニ信
ゼムトシテ居ルト、我ミハ信ジテ居ルノデ
アリマス然ルニ一部軍閥ハ統帥權ヲ盾ニ
シート、此所謂國民ノ期待ヲ裏切ッテ政府
ノ正ニ半額若クハ四割ノ、剩餘財源ノ中
ノ四割以上ヲ減稅ニ振向ケムトシタモノ
ヲ遂ニ一億三千餘万圓〓減稅ニ止メタト
云フコトハ我ミ國民トシテハ如何ニシテ
モ殘念至極ニ思ッテ居ルノデアリマス、將來
一部軍閥ガ統帥權ト云フモノヲ盾ニシテ
我と國民ガ一般ニ之ニ於テハ國防ヲ危クス
ルモノニ非ズト、國民ノ輿論トシテ信ジテ
居ル場合ニ於テモ軍閥ハ常ニ統帥權ヲ盾
ニシテ政府ノ施設ヲ妨害シ得ルモノデアラ
ウカ之ニ付テ我ミハ非常ナル疑ヲ持ッテ
居ルモノデアル、將來世界ハ益〓平和ニ赴キ、
軍備ハ依然トシテ之ヲ縮小スルト云フコト
ハ是ハ世界ノ大勢ニナッテ居ルノデアル
然ラバ我〓國民ハ考ヘル非常ナル不況
ノ今日負擔ノナカ〓〓重キヲ我ミハ感ジ
テ居ルノデアル、成ベク軍備ノ縮小ヲ圖。ツ
テ、而シテ國民ノ負擔ノ椰減ヲ圖。ッテ貰ヒタ
イト云フコトハ殆ド國民ノ大多數ノ輿論
トナッテ居ルノデアリマス、然ラバ將來統帥
權ト云フモノニ依ッテ制限サレル、而モ一部
軍閥ガ統帥權ト云フモノヲ盾ニシテ、國民
ノ輿論ヲ押シ切リ此所謂減稅ヲ、多額ノ
減稅ヲ政府ガ爲サムトスル所ヲ阻止スルト
云フコトニ付テハ、非常ナル遺憾ヲ、國民ハ
遺憾ヲ意ヲ表シテ居ルノデアリマス、此発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 佐々木君ニ伺ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=38
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039・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 ハイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 餘リ、頗ル簡單
デモナイヤウデアリマスガ御質疑デゴザ
イマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=40
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041・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 エ、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御質疑デゴザイ
マスカ、御意見デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=42
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043・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 質疑デゴザイマス、簡
單ニ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 成ベク質疑ノ範
圍內ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=44
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045・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 私ハ決シテ妨害ハシマ
セヌ或議員ノ如ク非常ナル長イコトハ申
シマセヌ今暫ク······統帥權ナルモノガ非
常ナル······統帥權ナルモノヲ盾ニシテ一部
軍閥ガ政府ノ施設ヲ妨害スルト云フコトヲ
國民ハ感ジテ居ルノデアリマスルガ、將來
斯ノ如クナルナラバ、統帥權ナルモノヲ盾
ニスル軍閥ハドコ迄モ國民ノ負擔ノ輕減
ヲ政府ノ施設ニ向シテ軍閥ガ妨害スル
ト云フコトノ虞ガアルカナイカ、之ヲ私ハ
御尋ネシタノデアリマス、成程憲法上ニ統
帥權ト云フモノハ認メテ居ル國民一般、
或ハ輿論トシテ國防ニ危キヲ感ゼズト云フ
輿論ガアル場合ニ於テモ、一部ノ軍閥ハ常ニ
統帥權ト云フコトヲ盾ニシテ政府ノ施設ヲ
妨害スルカドウカ此虞ガアルカ無イカト
云フコトヲ私ハ御尋ネシタイノデアリマ
ス、ソレカラ·····是ガ第一デアリマス第
二ニ付キマシテハ簡單ニ申シマスガゝ今ヤ
我ミ國民ハ國稅ニ於テノミナラズ地方稅ニ
於テ非常ナル負擔ノ重キヲ感ジテ居ルノデ
アル地方稅ハ今日我ミ國民ノ最モ苦痛ニ
感ジテ居ルノデアリマス、將來政府ハ此中
央稅ノミナラズ地方稅ニ於テモ輕減ヲ爲
サル御考ガアルカドウカ、是ハ私ノ岡山縣
ノ例ヲ申シマス、岡山縣ハ政友會ノ盛ンナ
所デ、常ニ積極主義借金主義ヲ以テ岡
山縣ハ、縣會ノ多數ノ政友會議員ハ主張シ
テ居ル所デアリマス、然ルニ今日岡山縣ニ
於キマシテハ其積極主義借金主義ヲ唱ヘ
テ居ッタ政友會ノ議員ガ今日ニ於テハ却ッ
テ我〓民政黨員ノ唱ヘテ居ッタ所ノ消極主
義ヲ唱ヘ減稅主義ヲ政友會ノ議員ガ此頃
唱ヘルト云フ狀況ニナッテ居ルノデアリマ
ス卽チ岡山縣ニ於キマシテハ先年縣會議
員ノ選擧ニ於テ、其縣會議員ノ選擧ヲスル
黨略ノ爲ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 佐々木君ニ申上
ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=46
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047・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 政友會ノ議員ハ有ラユ
ル積極発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 佐々木君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=48
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049・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 ハイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 頗ル簡單ト申サ
レマシタガ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=50
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051・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 モウ少シデゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長ノ言フコト
ヲ御聽キナサイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=52
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053・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 ハイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 簡單デアリマセ
ヌカラ登壇ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=54
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055・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 ふく宜シイ····
〔佐々木志賀二君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=55
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056・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 岡山縣ニ於キマシテハ
先刻申シマシタ如ク、多年積極主義ヲ唱ヘ
テ居ッタ政友會ノ議員デスラ、今日ニ於テハ
ソレハイケナイ、積極主義ハイケナイ、所
謂消極主義ニ依ッテ減稅ヲシナケレバイケ
ナイト云フコトヲ此頃唱ヘラレツツアルノ
デアル、是ハ實ニ變ノタ現象デ、我ミハ驚イ
テ居ル是マデ非常ナル積極主義、借金主
義ヲ唱ヘテ居ッタ所ノ政友會ガ、政友會ノ縣
會議員ガ漸ク其非ヲ悟ノテ、今日ハ減稅デナ
ケレバイケナイ民力ノ休養ガ第一主義デ
アルト云フコトヲ、今日岡山縣ノ政友會ノ
縣會議員諸君ガ唱ヘテ居ル而シテ此頃ハ
非常ニ奇態ニ······我ガ民政黨內閣ノ下ニア
ル知事ガ却ッテ受身ニナッテ甚ダ困ッテ居ル、
是ハ實ニ奇態ナ現象デアリマス、而シテ政
友會ノ議員ガ消極主義ヲ唱ヘ、減稅ヲ唱ヘ
ルニ至ッタト云フコトハ、如何ニ地方ノ所謂
縣民ガ此縣稅ノ負擔ノ重キニ苦ンデ居ルカ
ト云フコトヲ證明シテ居ルト思フノデアリ
マス之ニ向ッテハ政府ハ將來此縣稅、町村
稅ニ向ッテノ輕減ヲ圖ラレル御意見ガアル
カドウカ、之ニ向。ッテ私ハ御尋ネシタイノデ
アリマス希クハ一層ノ努力ヲ以テ地方費
ノ輕減ヲ圖ラレムコトヲ我〓ハ希望スルノ
デアリマス、將來ソレニ向ッテ政府ノ御考ガ
ドウデアルカ、之ニ向テ御問ヒヲシタイノ
デアリマス、私ハマダ御尋ネシタイコトモ
アリマスケレドモ、時間モ長クナリマスカ
ラ、議長ノ御叱リヲ蒙ッテモ困リマスカラ、
是デ止メマス
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君演壇ニ登
ル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=56
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057・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 只今ノ御
質問ヲ承シテ居リマスルト、今囘ノ減稅計畫
ヲ定メマスニ際シマシテ、軍部ガ政府ヲ壓
迫イタシタヤウニ御感ジニナツテ居ラレル
ヤウデアリマス、左樣ナ事實ハ毛頭アリマ
セヌ國民負擔ノ輕減ト云フコトハ誠ニ望
マシイコトデアリマス、ケレドモ是ト同時
ニ國防ハ一日モ空シクスベカラズ、今囘減
稅計畫ヲ立テマスルニ付キマシテハ軍部
ト政府トノ間ニ於キマシテモ十分意思ノ疎
通ヲ遂ゲマシテ、意見ガ完全ニ纏。テテ玆
政府ノ提案トシテ皆樣ノ御協賛ヲ求メルコ
トガ出來ルヤウニナッタ次第デアリマスル
カラ、此點ハ御安心ヲ願ヒタイノデアリマ
ス第二ノ點ハ地方稅ノ輕減ヲ行フノ意思
ナキヤ否ヤト云フコトデアリマス、誠ニ今
日地方稅ガ如何ニモ重イト云フコトハ我
我ニモ深ク感ジテ居ル次第デアリマスルカ
ラ、追クテ設ケラルベキ稅制ノ調査會ニ於キ
マシテモ是等ノ點ハ能ク考慮ヲ致シマシ
テ然ルベキ方法ヲ執リタイト考ヘテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=57
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058・東園基光
○子爵東園基光君 只今日程ニ上ボッテ居
リマス第二ヨリ第八ニ至リマス諸法案ハ
何モ重要ナル案件ト認メマスルニ依リマシ
テ、是ノ特別委員ノ數ハ其數ヲ二十七名ト
イタシマシテ、其選擧ハ議長ニ一任イタシ
タイト仔ジマス、何卒御贊成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=58
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059・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ動議
ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イ
タサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
地租法案外六件特別委員
公爵一條實孝君侯爵細川護立君
伯爵柳澤保惠君子爵梅小路定行君
子爵大久保立君子爵大河內輝耕君
子爵裏松友光君男爵阪谷芳郞君
水野鍊太郞君伊澤多喜男君
男爵藤村義朗君男爵小畑大太郞君
男爵黑田長和君片岡直溫君
藤田湯地幸平君
馬場文鍈四鍈夫一郞君君君長岡隆一郞君
後藤木村〓四郞君
大橋新太郞君森平兵衛君
尾崎元次郞君濱口儀兵衞君
田中一馬君小林暢君
森田福市君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際再ビ議事日
程變更ニ付キ御諮リヲ致シマス、日程第九、
第十ヲ、日程第一ヨリ前ニ議シタイト存ジ
マス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、第十、
第一讀會
米穀法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月五日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
米穀法中改正法律案
米穀法中左ノ通改正ス
第二條中「米穀ノ輸入稅ヲ增減若ハ免除
シ又ハ其ノ輸入若ハ輸出ヲ制限スルコト
ヲ得」ヲ「米穀ノ輸入稅ヲ增減又ハ免除ス
ルコトヲ得」ニ改ム
第三條米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別
段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可
ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得
ズ
第四條ヲ第六條トシ第五條中「前條」ヲ
「第六條」ニ改メ同條ヲ第八條トス
第四條政府ガ帝國內ニ於テ第一條ノ規
定ニ依リ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲スハ
米價ガ政府ノ〓示シタル最低價格又ハ
最高價格ヲ超エ低落又ハ騰貴シタル場
合ニ限ル但シ米穀ノ買換貯藏米穀整
理ノ爲ニスル賣渡、輸入ヲ目的トスル
米穀ノ買入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ
賣渡ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ米價ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ其
ノ指定スル市場ノ相場ニ依リ之ヲ定ム
第一項ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ
準據シテ之ヲ定メ同項但書ノ場合ヲ除
クノ外之ヲ告示ス
第五條前條ノ最低價格又ハ最高價格ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ揭グル事項
ヲ基礎トシ之ヲ定ム
米穀生產費
家計費
米價指數ノ物價指數ニ對スル割合ノ
趨勢ニ依リ算出シタル價格
第七條第三條ノ規定ニ違反シテ米穀ヲ
輸入又ハ輸出シタル者ハ五千圓以下ノ
罰金ニ處シ其ノ米穀ヲ沒收ス若シ其ノ
米穀ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能
ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徴ス
營業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用
ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力
ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇
人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第
三條ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ
指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ
免ルルコトヲ得ズ
法人ノ代表者其ノ他ノ從業者法人ノ業
務ニ關シ第三條ノ規定ニ違反シタルト
キハ其ノ罰則ヲ法人ニ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
命令ノ定ムル所ニ依リ當分ノ內第四條ノ
最低價格又ハ最高價格ハ第五條ノ規定ニ
拘ラズ米價指數ノ物價指數ニ對スル割合
ノ趨勢ニ依リ算出シタル價格ヲ基礎トシ
之ヲ定ム
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月五日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
米穀需給調節特別會計法中改正法律
案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正ス
第二條第二項ヲ削ル
第四條ノ二第三條ノ規定ニ依リ發行ス
ル證劵ノ借換ノ爲政府ハ借入ヲ爲シ又
ハ一年內ニ償還スヘキ證劵ヲ發行スル
コトヲ得其ノ借換ニ付亦同シ
第四條ノ三本會計ノ負擔ニ屬スル證劵
及借入金ノ額ハ通シテ最高三億五千萬
圓トス
附則
本法ハ昭和六年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=64
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065・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 只今上程セラレ
マシタ米穀法中改正法案ヲ提出イタシマ
スル理由ノ大體ヲ御說明申上ゲマス、米穀
調節ノ問題ハ一面農家經濟、他ノ一面一
般國民ノ生活ノ安定ト離ルベカラザル重大
ナル關係ガアルノデゴザイマス故ニ是ガ
根本的調査ヲ遂ゲマシテ、確乎タル政策ヲ
樹立イタシマスルコトハ、一日ヲ緩ウスベ
カラザル緊急ナル要務ト存ジマス、御承知
ノ如ク前內閣ハ米穀調査會ヲ設立イタシマ
シテ米穀需給及價格ノ調節ニ關シ執ルベ
キ方策如何ト云ヘル諮問ヲ審議ニ付シタノ
デアリマス、審議終了ニ至ラズシテ、内閣ノ
更迭ト相成リ、現内閣ハ此諮問ヲバ其儘繼
續調査セシムルコトト致シマシテ、調査會、
ニ於テモ銳意〓究ヲ重ネタ次第デアリマス
其結果、昨年五月其答申ヲ得マシタノデア
リマス其答申ノ中、主ナル事項ハ左ノ通
リデアリマス、「米價基準ヲ設定スルハ緊要
ナリト認ム仍テ政府ハ速カニ米穀法ノ發動
ニ必要ナル米價ノ最高最低基準ヲ調査決定
スベシ」ト云フ第一項デアリマスモウ一
ツノ一項ハ「外國米輸入許可制度ヲ設ケ一定
數量ノ輸入ヲ許可シ
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
同時ニ輸出ヲモ許可ヲ受ケシムルコトトシ
外國米輸出入ノ管理統制ヲ圖ルベシ」、右二
箇條ニ付キマシテハ政府ハ米穀法ノ改正
ヲ必要ト認メマシテ、愼重考究ノ結果、米
穀法ノ發動ニ必要ナル米價基準ニ關スル案
ヲ更ニ米穀調査會ニ諮問イタシタノデアリ
マス、昨年十二月其答申ヲ得タ次第デアリマ
ス、米穀法ヲ運用スルニ當リマシテ執ル
ベキ米價ノ最高及最低ノ基準ヲ設ケマスル
コトハ從來ノ經驗ニ徵シマスルト米穀
法ノ發動ヲ公正ニシテ其運用ニ遺憾ナカ
ラシムル上ニ於テハ極メテ緊要ナルコト
ト認メマシタノデ、是ト米穀調査會ノ答申
ヲ基礎ト致シマシテ、米穀ノ市價ヲ調節ス
ル爲ニ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ致ス場合ニ、
其基準トナルベキ最高又最低ノ價格ハ如何
ニシテ定ムルカト中セバ其價格ハ米穀ノ
生產費、一般國民ノ家計費及所謂率勢米價
ヲ基礎トシテ決定スルコトニ致シタノデア
リマス率勢米價ト私共ノ申シテ居リマス
ルノハ米價指數ノ物價指數ニ對スル割合
ノ趨勢ニ依ッテ算出シタ米價ヲ申スノデア
リマス但シ生產費、家計費ヲ決メマスル
資料ノ整備スルマデハ所謂率勢米價ノミ
ヲ基礎トシテ、暫定的ニ之ヲ定ムルコトト
致シタノデアリマス、又米穀ノ輸入及輸出
ニ付キマシテハ現行米穀法第二條ニ於キ
マシテハ、米穀ノ數量及市價ヲ調節スル
爲、特ニ必要アリト認メルトキハ期間ヲ定
メマシテ、之ヲ致スコトノ出來ル規定デア
リマスケレドモ右ハ臨時的調節策ニ過ギ
マセヌガ故ニ、米穀政策遂行上ニ遺憾ノ點
ガ從來ノ經驗ニ依。ッテアルノデアリマス
デアリマスルガ故ニ、此度ハ常時許可ニ依ツ
テ米穀ノ輸入及輸出ヲ制限スルコトニ致シ
タノデアリマス右ハ本改正案ヲ提出イタ
シマシタ理由ノ大要デアリマス何卒愼重
御審議ノ上ニ御協賛アラムコトヲ望ム次第
デアリマス
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=65
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066・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今議題トナ
リマシタ米穀需給調節特別會計法中改正法
律案ニ付キマシテ其提案ノ理由ヲ說明イ
タシマス米穀法ノ運用ヲ全カラシムル爲
ニハ現在ノ米穀需給調節特別會計ノ資金
デハ不十分デアリマスカラ、其限度ヲ八千
万圓ダケ擴張イタシマシテ之ヲ三億五千
万圓トスルコトト致シ、尙ホ從來本會計ニ
於テ米穀ノ買入代金トシテ交付スル米穀證
劵ハ借入金ニ依リ之ヲ償還スルコトト致
シテ居リマスガ、其借換ヲ認メルコトヲ適
當ト認メマシテ、法律ヲ改正スルコトト致
シタイト存ジマス、何卒御審議ノ上協贊
ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=66
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067・東園基光
○子爵東園基光君 只今日程ニ上ッテ居リ
マスル第九、第十ノ兩法律案ハ是亦重要ナ
ル法案ト認メマスルニ依リマシテ特別委
員ノ數ハ特ニ十八名ニ致シマシテ、其指名
ハ議長ニ一任イタシタイト存ジマス、御贊
成ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=67
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068・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=68
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069・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 只今ノ東園子
爵ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=69
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070・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト
認メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ
朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
米穀法中改正法律案特別委員
侯爵松平康昌君伯爵堀田正恒君
子爵松平直平君子爵片桐貞央君
子爵土岐章君木場貞長君
男爵長松篤棐君上山滿之進君
男爵今枝直規君男爵足立豐君
男爵三須精一君橋本圭三郞君
湯用寛吉君本山彥一君
田村新吉君佐藤信古君
絲原武太郞君本間千代吉君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=70
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071・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 日程ノ變更ニ
付テ御諮リ致シマス、日程第一ヲ最後ニ廻
スコトニ御御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=71
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072・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=72
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073・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 日程第十一、
第一讀會ノ續、委員長報告
船舶積量測度法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月六日
委員長子爵西大路吉光
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵西大路吉光君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=73
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074・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 船舶積量測度法中改
正法律案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御
報告申上ゲマス本案ノ特別委員會ハ三囘
開會ヲ致シマシタ、第一日ニハ正副委員長
ノ選擧ヲ行ヒ、第二日ニハ政府當局ノ出席
ヲ求メ、本案ニ關シマスル提案ノ趣旨理由
ヲ詳細承シタノデアリマス、第三日ニハ本案
ニ關シマシテ質疑應答ヲ重ネタノデアリマ
ス、質疑應答ヲ終リマシタル後討議ニ入リ、
何等ノ意見異議ナク採決ノ結果、本案ハ原
案通リ可決ニ相成ッタノデアリマス、提案ノ
理由ハ先般本議場ニ於テ本案ノ上程ニ相成
リマシタル際ニ、主務大臣ヨリ詳細ニ承ッタ
ノデアリマスルガ故ニ、私ハ其詳シイコト
ハ省略ヲ致シ、唯單ニ本案ノ趣旨ノ要點ヲ
申上ゲヤウト思フノデアリマス要點ハ第
一ニ從來尺呎ヲ以テ測度ト致シテ居リマシ
タノヲバ大正十三年七月一日ヨリ「メー
トル」法實施ノ結果ニ伴ヒマシテ··
【議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
「メートル」單位ニ改メタイト云フノデアリ
マス第二ニハ從來石數ヲ以テ測度ト致シ
テ居リマシタル其名數ヲバ廢止ヲ致スト云
フノデアリマス近頃ニ至リマシテ石數ヲ
以テ名數ト致シテ居リマスル小船舶ハ年々
減少イタシテ參ッテ居ルノデアリマシテ、又
小船舶ヲ改造又修繕ヲ加ヘル每ニ石數ヲ以
テ名數トスル船舶ニ段々ナラナクナッテ減
少シテ參ッタノデアリマスガ故ニ、今囘石數
ヲ名數トスル其名數ヲバ廢シタイト云フノ
デアリマス、第三ニハ小形船舶ノ測度方法
ヲ簡單ニシマスル爲ニ、主務大臣ニ對シテ
委任規定ヲ設ケタイト云フノデアリマス
從來大小船舶共ニ其測度方法ハ一律ニ測定
ヲ致シテ居フタノデアリマスルガ故ニ、小
船舶ノ測定ニ取リマシテハ極メテ煩瑣ヲ致
スノデアリマスルガ故ニ、今囘ハ其測度方
法ヲ簡單ニシマスル爲ニ、主務大臣ニ委任
ノ規定ヲ設ケルト云フノデアリマス、其他
ハ條文ノ字句ノ改正デアリマス「量噸甲板」
ト申スノヲ此度ハ「測度甲板」ニ改メ、「噸
數」ヲ「積量」ニ、「總噸數」ヲ「總積量」ニ
「登薄噸數」ヲ「純積量」ト改メルノデアリマ
ス、委員會ニ於キマシテ愼重審議ヲ致シ、
質疑ニ移リマシタ所、格別本議場ニ取立テ
テ御報告ヲ申上ゲル程ノコトハナカッタノ
デアリマスガ一二申上ゲテ見ヤウト思フ
ノデアリマス、第一ニハ現行ノ呎ヲ以テ噸
數ヲ現ハシテ居ルノデハ、今囘改正ノ「メー
トル」法ニ依ル一噸トノ差ハ有ルノカ、無イ
ノカト云フ御尋デアリマシタ、政府ハ之ニ
對シテ是マデノ百立方呎ヲ以テ一噸ト致シ
テ居ッタノヲバ、其一万噸ニ換算ヲ致シテ
改正法ノ三百五十ノ三分ノ千立方「メートル」
ノ一噸ニ對シマシテハ、九千九百九十六噸ニ
相成ルト云フコトデ僅ニ四噸ノ差デアリ
やく、此度改正ニナリマスト四噸ダケ滅ル
ノデアリマス、併ナガラ其「パーセンテー
ヂ」カラ申シマスレバ僅ニ〇·〇四「バ
セント」ニ相成ル聊カナモノデアリマスガ故
ニ實質的ニハ左程ニ影響ハシナイ、所謂
公差ト見テ差支ナイト云フ答辯デアリマシ
タ次ニハ船ノ長サヲバ何處デ測ルカ尙
又長サヲ二十「メートル」ト云フノハ何ヲ
以テ二十「メートル」ト云フコトニ押ヘタノ
カト云フ間ニ對シマシテ、政府委員ハ船ノ
長サヲ測ルノハ上甲板ノ上ノ船首材ノ前
面カラ船尾材ノ後面マデノ長サヲ測ルノデ
アルト云フコトデアリマス、又二十「メート
ル」ヲ何處デ押へタカト云フコトノ間ニ對
シマシテハ元來二十噸以內ノ小形ノ船舶
ハ大〓其長サハ二十「メートル」デアル
併ナガラ例外トシテハ、長サト幅ト深サ
ヲ掛ケテ四十噸以上ニ相成ルモノガアルガ、
元來此二十「メートル」ト押ヘタノハ、噸數
ヲ現ハシ得ルガ爲ニ、其尺度ヲ以テ見出シ
ト致スコトガ簡單デアルト云フコトノ答辯
デアリマシタ以上申上ゲマシタル如タ委
員會ハ大體ニ於テ質疑モナク、對議ニ移リ
マシタ所何等ノ意見モナカッタノデアリ
マシテ、採決ノ結果何等ノ原案修正モナク
原案通リ可決相成ッタノデアリマス、之ヲ要
シマスニ本案ハ事理明白ナ案デアリマスガ
故ニ、何卒本議場ニ於キマシテモ特別委
員會ノ決議通リ速ニ可決確定アラムコトヲ
希望イタシ報告ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 本案ヲ第二讀會
ニ移スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=76
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077・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直ニ第二讀會ヲ開カレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=77
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078・戸澤正己
○子爵戸澤正已君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二
讀會ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長〔公爵徳川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=82
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083・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直ニ第三讀會ヲ開カレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=83
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084・戸澤正己
○子爵戸澤正已君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第三讀會ヲ
開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=86
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087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 鑛業法中改正法
律案、衆議院提出第一讀會
鑛業法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和六年三月五日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
鑛業法中左ノ通改正ス
第八十五條中「百分ノ一」ヲ「千分ノ五」ニ
改ム
第八十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
北海道、府縣及市町村ハ鑛業稅ニ對シ各
左ノ制限內ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得
一北海道、府縣
試掘鑛區稅千分ノ三十
採掘鑛區稅千分ノ七十
鑛產稅千分ノ二百
二市町村
試掘鑛區稅千分ノ三十
採掘鑛區稅千分ノ七十
鑛產稅千分ノ千二百
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ質疑モナイ
ト認メマスカラ、本案ノ特別委員ノ氏名ヲ
書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
鑛業法中改正法律案特別委員
侯爵大隈信常君伯爵二荒芳德君
子爵豐岡圭資君岡喜七郞君
男爵周布兼道君岡田文次君
內藤久寛君濱口儀兵衞君
高廣次平君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本日ハ午後四時
ヲ過ギマシタカラ是デ議事ヲ延會イタシ
マス次ノ議事日程ハ決定次第御通知ニ及
ビマス本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後四時二十二分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X02819310307&spkNum=91
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