第59回帝国議会　貴族院　本会議　第32号　昭和6年3月13日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和六年三月十三日（金曜日）午前十時十七分開議
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  　議事日程　第三十二號
  　　昭和六年三月十三日
  　　　午前十時開議
  　第一　昭和六年度歳入歳出總豫算案竝昭和六年度各特別會計歳入歳出豫算案　會議（委員長報告）
  　第二　豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件　會議（委員長報告）
  　第三　輸出組合法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會
  　第四　重要輸出品工業組合法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會
  　第五　特別會計に於ける營繕費に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第六　特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第七　賠償金特別會計法廢止法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第八　昭和四年法律第二十六號中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第九　京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十　製鐵所特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十一　簡易生命保險特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付）　第一讀會の續（委員長報告）
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• 001・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ書記官ヲ
  シテ報告ヲ致サセマス
  〔瀨古書記官朗讀〕
  昨十二日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領
  セリ
  輸出組合法中改正法律案
  重要輸出品工業組合法中改正法律案
  無盡業法改正法律案
  自動車交通事業法案

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• 002・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ會議ヲ開
  キマス議事日程第一昭和六年度歲入歳
  出總豫算案竝昭和六年度各特別會計歲入歲
  出豫算案第二、豫算外國庫ノ負擔トナル
  ベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、會議委員長
  報〓豫算委員長林伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
  一昭和六年度歲入歳出總豫算案
  一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
  スヲ要スル件
  右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
  テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
  ト議決セリ依テ及報告候也
  昭和六年三月十日
  委員長伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  一昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算案
  右衆議院ヨリ受領シタル案ヲ審査シ別册
  ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
  昭和六年三月十日
  委員長伯爵林博太郞
  貴族院議長公爵德川家達殿
  ヲ印刷ス小字及(3000年)一月証券ハ)
  昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算
  甲號
  拓務省所管
  朝鮮總督府
  歲入
  臨時部
  五四頁-五五頁
  第八款前年度剩餘金繰入
  、三六五、一六五
  三五六五
  第一項前年度剩餘金繰入
  、三六五、一六五
  二五六五
  三五Hami
  臨時部合計三戻
  三八、五七二、八七三
  合計一二八四二一、八七三
  歲出
  臨時部
  六四頁-六五頁
  二、八八四、八九五
  第五款營繕費二、七三四、八九五
  第四項忠〓南遣廳舎新營費
  一五〇、〇〇〇
  五
  第四項京城拘置監新營費
  一二〇、〇〇〇、
  六
  第五項電信電話整備費
  五二四、七三二
  七
  第六項電信電話營繕費
  二八六、五八〇
  八
  第七項航路樣議營繕費
  七〇、一四三
  九
  第八項新營及設備費
  、一二一、三七二
  十
  張れ、修繕費二九、四八〇
  六九頁
  五一、九四四、三九○
  臨時部合計五七九四、三九
  二三八、五七二、八七=
  合計一三八四二二、八七
  乙號
  拓務省所管
  耕鮮總督府
  一二三頁京城醫學專門學校附
  屬醫院新營費ノ次
  忠〓南道廳舎新營費
  總額
  〓營繕費
  (現身忠〓南道廳舎新營費
  三五九、〇〇〇
  年額
  昭和六年度一五〇、〇〇〇
  昭和七年度二〇九、〇〇〇
  說明
  前記ノ費途ハ前揭ノ二箇年度ニ亙リ繼續費
  ト爲スヲ要ス
  〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕

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• 003・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　是ヨリ豫算委員會ノ經
  過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス、昭和六年
  度歲入歲出總豫算案、同ジタ各特別會計歲
  入歲出豫算案、同ジク豫算外國庫ノ負擔ト
  ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件等、豫算案
  全部ノ委員會ノ經過ヲ御報〓イタシマス、
  此豫算ノ計數ニ付キマシテハ、既ニ大藏太
  臣ヨリ衆議院ニ於テモ貴族院ニ於テモ御
  說明ガアリマシタカラ玆ニ省略ヲ致シマス、
  昭和六年二月十八日貴族院ニ於テ豫算案ヲ
  受領イタシマシテ、十九日午前本會議ニ上
  程、午後二時第一囘豫算總會ヲ開キマシテ、
  爾來三月三日迄愼重ニ質問應答ヲ致シタ次
  第デアリマス三月三日ヨリ三月九日マデ
  答分科會ヲ開催ヲ致シマシタ、三月九日午
  後二時各分科主査ノ報〓ヲ得マシテ、三月
  十日總會劈頭ニ第二分科所屬關係ノ區裁判
  所六十二箇所ノ停止問題ニ付テ質問應答ガ
  アリマシタ、結局更ニ第二分科ヲ開クト云
  フコトニ相成リマシタノデアリマス、午前
  十一時デアリマシタ、一方總會ヲ繼續イタ
  シマシテ、又更ニ三時四十分ニ第二分科主
  査ノ報告ガアッテ、サウシテ討論、採決、全
  部可決ト相成シタ次第デゴザイマス、是ハ全
  體ニ付テノ綱要ヲ簡單ニ申上ゲマシタ次第
  デゴザイマス、次ニ質問ニ付キマシテ今
  囘ハ海防ニ、思想問題其他ニ、色ミ重要ナ
  問題ガ輻湊イタシテ居リマシタノデ、非常
  ニ綿密ナル質問應答ガアリマシタ次第デゴ
  ザイマス、私ハ玆ニ其一々ヲ申上ゲルコト
  ハ時間ノ許シマセヌノヲ誠ニ遺憾ト致シマ
  スルガ、其中ノ主タルモノニ付キマシテ一
  應御紹介ヲ致シテ置キタイト思フノデアリ
  マス豫算總會ノ劈頭ニ於テ豫算ヲ審議ス
  ルニ當ル前ニ於キマシテ、一應其審議スル
  條件トシテ最モ緊要ナル質疑ガアルト云フ
  コトデ、一員ヨリ質問ガアリマシタ、ソレ
  ハ第一、此豫算ノ編成ニ付テ濱口首相ハ責
  任ヲ有スルカ、第二、此豫算案ノ奏上ニ付
  テハ濱口首相ハ責任ヲ負フカ、第三、豫
  算ノ提出ニ付キ濱口首相ハ責任ヲ負フカ、
  第四、此豫算案ノ實行、卽チ豫算ヲ有リノ
  儘ニ實行スル實行ト云フ意味ニ於テ、帝國
  議會ノ協賛ヲナシタル此豫算ヲ實行スル責
  任ヲ濱口首相ハ負ウテ居ルカ、第五、會議
  中國務大臣ノ爲シタル發言ニ對シ濱口首相
  ハ責任ヲ負フカ、第六、是ハ濱口內閣ナリ
  ヤ、第七、濱口君ハ名實共ニ內閣總理大臣
  ト考ヘルカ、萬一印綬ヲ解カルルトセバ、
  其時ニ至ル迄依然內閣總理大臣濱口君トシ
  テ此政局ニ立タレタモノト認ムベキヤ、第
  八幣原國務大臣ガ衆議院ニ於テ爲シタル
  山崎代議士ヘノ答辯ノ趣旨ハ今尙ホ主張
  セラルルヤ否ヤ、之ニ付テ首相代理ノ答辯
  ガアリマシタ、豫算ノ作成、奏上、提出、
  實行ニ付テハ濱口首相ハ責任ヲ有シマス
  國務大臣ノ發言ニ付テ濱口首相ハ責任ヲ有
  シマス、現內閣ハ濱口內閣ナリ、濱口氏ハ
  總理ノ現官ヲ持〓テ居リマス、引籠中デハア
  リマスガ、從ッテ現ニ職務ハ行シテ居リマセ
  ヌケレドモ現官ヲ有シテ居リマス、代理問
  題ニ付テハ衆議院ニ於テ山崎君ニ答辯シタ
  通リデアリマス、斯ウ云フコトデアリマ
  スソレヨリ通〓順ニ依リマシテ質問應答
  ガアッタ次第デゴザイマス、第一ニ海防ノコ
  トニ付キマシテ其要領ダケヲ摘ンデ申上ゲ
  タイト思ヒマス、奉答文竝ニ敷奏文、內閣
  官制第七條、海軍大臣ガ首相ニ報〓セラル
  ルノハ是ハ國務ニ關係ヲ有スル場合デアル、
  從ッテ軍機軍令ニ關スルモノデアッテ內閣ニ
  御下付モナク、又總理大臣ニ對シテ海軍大
  臣ヨリ報〓ノナイ事項モ少クナイノデア
  ル、此差別ハ國務ニ關係ヲ有ズル事項ト有
  セザル事項トニ依ルモノデアルト云フコト
  ガ、從來ノ內閣ノ解釋デアリマス故ニ奉
  答文ハ國務ニ關係ヲ有セザルモノト解釋シ
  テ誤リナイト云フコトガ、結局政府ノ是ハ
  答辯デアリマス、又是ハ帷幄ノ下ニアル軍
  事參議院ニ御諮詢ニナッタ、其意見ヲ議長カ
  ラ奉答シタル奉答文デアル、奉答文其モノ
  ノ內容ニ付テハ純、タル統帥事項デアル、
  此故ニ其性質上國務ニ非ズ、總理ニ報〓ス
  ベキモノニ非ズ、又斯カル例ハ過去ニ於テ
  多々アッタノデアル、大體ニ於テ軍事參議院
  ガ意見ヲ奏上スル計ラヒハ軍令部長モ海軍
  大臣モ直接之ニ與ラズ、其議長デ初メテ之
  ニ與ルノデアル、併ナガラ内閣官制第七條
  ニ當ルヤ否ヤノ解釋ハ此際差控ヘルト云
  フコトデアリマス、又內覽ノコトニ付キマ
  シテ質問應答ガアリマシタ、內覽ト云フコ
  トハ是ハ總理トシテ內々奉答文ヲ拜見スル
  ト云フコトデアル、內覽ノ御允許ト御下付
  ト云フコトトハ決シテ同一ト見ルベキモノ
  デナイ、總理トシテ拜見スル所ノ奉答文ソ
  レ自身ガ、此故ニ國務ニ關係ヲ有スト云フ
  證據ニハナリマセヌ、奉答文ハ純然タル統
  帥事項デアッテ國務ト關係ガナイ、是ガ政府
  ノ主張デアリマス、次ニ敷奏文ニ付テ中ミ
  詳シイ所ノ質問ガ出タノデアリマス、是モ
  矢張リ大體サウ云フ要領ヲ以テ政府ガ答辯
  ヲ致シテ居リマスガ、奉答文ノ方ハ幣原首
  相代理ハ拜見シテ居ラナイカラ知ラナイ、敷
  奏文ハ濱口首相カラ國務大臣ニ報告シタノ
  デアルカラ是ハ承知シテ居ル併ナガラ敷
  奏文ト奉答文トノ內容上ノ關係ハ答ヘルベ
  キ筋ノモノデナイ、卽チ敷奏文ト云フモノ
  ハ御下問ニ奉答シタモノデハナイ、奉答文
  ノ內覽ヲ賜フテカラ敷奏文ガ出來タノデハ
  ナイ、其點ハ知ラナイ、又軍部ノ決定セラ
  レタル意思ガ內閣ニ移クテ來タノデアルカ
  ラ豫算トナッタノデハナイカ、豫算トナッテ
  現ハレタノデハナイカト云フ質問デアリマ
  シタ、豫算ニ付キマシテハ海軍大臣ト十分
  ニ意見ヲ交換シタノデアル兵力量ノ決定
  ニハ海軍大臣ト軍令部長トノ間ニ意見ハ一
  致スベキ筈ノモノデアリマス此故ニ濱口
  君ハ「軍部ノ專門的意見ヲ十分ニ料酌シテ」
  ト言ッタノデアル、而シテ政府ガ外部ニ對シ
  テ、例ヘバ條約ノ調印等ヲ決定スルト云フ
  ヤウナコトニ付テ、又御批准ノ奏請ニ付テ
  モ責任ヲ十分ニ持ッテ致シタノデアルト云
  フ答辯デアリマス、軍令部長ハ軍部ノ意思
  ガ政府ニ容レラレザルニ依ッテ辭職シタノ
  デハナイ、辭職シタト云フコトガ現實ニ現
  ハレテ居ル以上ハ、內閣ト軍令部トノ間ニ
  一致スルト云フコトハドウモ常識カラ見テ
  考ヘラレヌノデナイカト云フコトニ對シテ、
  是ハ全ク內部ノ關係デ、昨年モ濱口君ハ答
  ヘナカッタノデアルカラ、今囘モ新タニ答辯
  スベキ筋合ノモノデナイ、大體斯ウ云フ要
  領デ奉答文竝ニ敷奏文ニ對スル政府ノ答辯
  ガアッタノデアリマス、併ナガラモウ是カラ
  先ハ濃霧深クシテチヨット窺ヒ知ルコトハ
  出來マセヌ、其邊ハ諸君ニ於カレマシテ以
  心傳心ニ御了解ヲ願ヒタイト思ヒマス、引
  續キマシテ軍備問題、海防問題デアリマス、
  倫敦條約ハ既ニ官報ニ出テ居リマシタカラ
  御承知ノコトト考ヘマスガ、之ニ必要ナ所
  ダケハ引出シテ見タイト思ヒマス、抑〓此條
  約ノ劈頭ニ於テ、斯ウ云フコトガ書イテア
  リマス、「競爭的軍備ニ常ニ伴フ危險ヲ防止
  シ目負擔ヲ輕減センコトヲ希望シ」云々ト、
  明瞭ニ書イテアルコトデアリマス、是ガ軈
  テ政府ガ減稅案ト云フモノヲ出スヤウニ
  ナッテ、國民ノ負擔輕減ヲ致ス所ノ計畫ガ出
  テ來タ理由デアルト考ヘマス又嘗テアリ
  マシタ所ノ華盛頓會議ニ於テハ、戰鬪艦ニ付
  テノ五·五·三ノ比率ヲ決メタノデアリマス
  ガ今囘ノ倫敦條約ト云フモノハ其外ノ、
  卽チ補助艦ダケニ付テノ問題デアリマス、
  而シテ此海防ノ質問應答ニ付テ最モ關係ノ
  深イノガ倫敦條約ノ第十八條ニ關シテデア
  リマスカラ、其十八條ハ簡單デアリマスカラ
  一應則讀イタシテ置キマス「第十八條合衆
  國ハ(甲)級巡洋艦十五隻總トン數十五万ト
  ンヲ千九百三十五年迄ニ竣工スルノ企圖ヲ
  有ス合衆國ハ自國ガ建造スルノ權利ヲ與ヘ
  ラレタル殘餘ノ(甲)級巡洋艦三隻ノ各隻
  ニ代フルニ(乙)級巡洋艦ノ一万五千百六十
  六トンヲ以テスルコトヲ選擇スルコトヲ
  得、合衆國ガ右殘餘ノ(甲)級巡洋艦三隻中
  ノ一隻又ハ二隻以上ヲ建造スル場合ニ
  於テハ第十六隻ハ千九百三十三年前ニ
  ハ起工セラレザルベク且千九百三十六年前
  ニハ竣工セラレザルベシ第十七隻ハ千
  九百三十四年前ニハ起工セラレザルベク
  且千九百三十七年前ニハ竣工セラレザルベ
  シ第十八隻ハ千九百三十五年前ニハ竣工セ
  ラレザルベク且千九百三十八年前ニハ竣工
  セラレザルベシ」、是ハ十八條デアリマシテ、
  十五艘ハ八吋砲ノ巡洋艦デ、ズット斯ウ造ッ
  テ行キマシテ、ソレカラ先キノ三隻ハ或ハ
  六吋ノ巡洋艦ニ代ヘルコトヲ許サレテ居ル
  ノデアリマス、ソコデ質問ノ應答ハ······主ト
  シテ此巡洋艦中ノ最モ威力ノアル八吋砲遜
  洋艦ニ付テノ質問デアリマス、亞米利加ノ
  八吋砲巡洋艦ガ段々增加シテ行クノト、日
  本ノ八吋巡洋艦ガ其間ニ於テ如何ニナリ行
  クカト云フ比率ガ、卽チ此問題ノ決勝點デ
  アリマス、之ヲ考ヘテ見マスルト八吋巡洋
  艦對米比率ハ只今ノ十八條ノ通リニ亞米
  利加ノ軍艦ガ出來ルモノトシマスナラバ
  千九百三十六年一月一日ニハ米國ハ十六万
  順、日本ガ十万八千四百噸、日本ノ十万八
  千四百噸ハ艦ヲ造リマセヌカラ、ズット是ハ
  暫ク此儘繼續イタシマス、此比率ハ六割七
  分七厘、千九百三十七年一月一日ニハ米國
  ハ十七万噸、日本ハ矢張リ十万八千四百〓、
  此比率ハ六割三分七厘、千九百三十八年一
  月一日ニハ米國ハ十八万噸ニナッテ日本ハ
  十万八千四百噸依然トシテ存在シテ居ル、此
  比率ハ六割二厘ニ當ルノデアリマスデ此
  條約ノ有效存續スル限リニ於キマシテハ
  八吋砲巡洋艦ニ於テ對米比率ハ仕舞ヒニハ
  六割ニナッテシマフト云フコトニナリマス、
  是ハ數字デアリマスカラシテ質問者ノ意見
  ト當局者ノ意見トハ全然一致シテ居ル次第
  デアリマス、唯之ヲ如何ニシテ、海防上緩
  和スルヤ否ヤト云フコトガ質問應答ノ要領
  デアリマス、ソコデ倫敦條約ノ結果ガ如何
  ニ推移スルカト云フコトヲ考ヘナケレバナ
  ラナイ、日本ガ今持ッテ居ルモノハ中〓大キ
  ナ噸數ヲ持ッテ居リマシテ、日本ハ現在ノ現
  有勢力ト云フモノハ四十二万噸デアリマ
  ス其中ニ先程申上ゲマシタ八吋巡洋艦ガ
  十万八千四百噸デアル、所ガ此倫敦條約ノ
  結果トシマシテ、米國ノ保有量ハ五十二万
  六百噸、日本ノ保有量ハ三十六万七千五十
  噸ト決ッタノデアリマス、ソレデスカラ此四
  十二万噸ト云フモノハ、此條約ノ期限ノ中
  ニ於キマシテ、最後ニハ三十六万七千五十
  噸ニシナケレバナラナイト云フコトニナッ
  テ居リマス、而シテ米國ノ保有量ト日本ノ
  保有量トノ比率ハ六割九分七厘ニモ······約
  七割ニ全體トシテハナッテ居ルト云フコト
  ニナッテ居ルノテアリマス、而シテ本條約
  ノ、倫敦條約ノ第五編第二十三條ニハ斯ウ
  云フコトガアリマス、「左ノ例外ヲ留保シ本
  條約ハ千九百三十六年十二月三十一日ニ至
  ル迄引續キ效力ヲ有スベシ」次ノ會議ハ千九
  百三十五年デアリマスケレドモ、此條約ノ
  效力ハ千九百三十六年ノ末マデ效力ヲ持。ツ
  テ居ルト云フコトガ此處ニアリマス、デア
  リマスルカラ、此千九百三十六年カラ千九
  百四十年迄ノ間ハ八吋巡洋艦ニ於テ、日本
  ニハ大ナル缺陷ガ起ッテ來ル、六割ニナッテ
  シマヒマスカラ、此意味ニ於テ當局ハ之ヲ
  知リナガラ御批准ヲ仰イダモノデアルカド
  ウカト云フ質問ガ出マシタ、當局ハ此〓陷
  ハ認メテ居ルンデアル、千九百三十五年ノ
  會議デ以テ、建造ノ權利ガ得ラレルモノデ
  アルトスルナラバ之ニ準備ヲ致シテ置キ
  マシテ、千九百三十七年ノ一月一日ニ起工
  シテ、ソレカラ後急ゲバ十八箇月デ以テ竣
  工スルコトガ出來ル十八箇月ノ缺陷ト云
  フモノハ何トカ他ノ方法ヲ以テ補ヒ得ルモ
  ノト確信ヲ持ッテ居リマスカラ、御批准ヲ仰
  イダモノデアリマスト云フ答辯デアリマ
  ス、卽チ第一次補充計畫ノ費用ハ三億七千
  四百万圓ト云フモノデアリマシテ、之ヲ以
  テ海防ノ骨幹ト云フモノガ出來ルノデアリ
  マスカラ、先以テ當面ノ補ヒハ付クノデア
  ル、後ハ追ッテ考ヘルト云フノデ、所謂五億
  八百万圓ノ中カラ、三億七千四百万圓ヲ以
  テ骨幹ヲ造ッテ、其剩餘ヲ以テ減稅ニ充テ
  ル、斯ウ云フ意思デアルノデアリマス、元
  來海防三原則ト云フモノガ我ガ當局ニアリ
  マシテ、ソレハ卽チ總括噸數ニ於テハ七割、
  潜航艇ニ於テハ七万八千噸ヲ割ッテハイカ
  又、八吋巡洋艦ハ是非七割ニ留メテ置キタ
  イ、斯ウ云フ三ツノ原則ヲ持ッテ立ッテ居ッ
  タノデアリマス、然ルニ八吋巡洋艦ハ先程
  申上ゲマシタ如ク、結局ハ六割二厘ニナッテ
  シマフ、潜航艇ハ三箇國共ニ五万二千七百
  噸ニ下ゲラレテシマッタ、ソレデスカラ總噸
  數ニ於テ總括兵力量ニ於テ七割ヲ維持ス
  ル爲ニハ六吋ノ巡洋艦、驅逐艦等ニ依ッテ補
  ハナケレバナラナクナッタノデアリマス、此
  點ニ於テハ今囘ハ四万噸モ加ッテ居ルカラ、
  總括量ハ七割ニナル、サウ云フ意味デアリ
  マスカラ大體差支ハナカラウ、今ノ三億七
  千四百万圓ノ中ニ此六吋巡洋艦ガ四隻ア
  ル、又驅逐艦ガ十二隻、潜水艇ガ九ツアル
  ト云フコトニナッテ居ルノデアル、尙ホ更ニ
  我ガ海軍ガ持ッテ居ル所ノ權利ニハ餘裕ガ
  アル、千九百三十六年迄ニ竣エスル所ノ千
  四百噸級ノ驅逐艦六隻、又千九百三十六年
  迄ニ著手シ得ル權利ノアルモノガ若干ア
  ル、所謂之ガ第二次計畫デアリマス、卽チ
  此倫敦條約ノ期間內ニ頭ヲ出シテ準備スベ
  キモノデアル、此第二次計畫ノ實現ハ政府
  モ希望シテ居ルト云フコトデアリマス叉
  其必要モ認メテ居ルノデアル併ナガラ其
  時期ト內容ハ內外ノ情勢ヲ見テカラ極メテ
  決シテ遲クナイト確信シマス、此故ニ內容
  ガハッキリ極ッテ居リマセヌカラ、今日財源
  ヲ持ッテ居ラナイダケデアルト、斯ウ云フ說
  明デアリマス、此内外ノ情勢ニ依ルト云フ
  コトハ先程十八條ニアリマシタ米國ガ
  第十六第十七第十八隻ノ八吋砲巡洋艦ヲ六
  吋砲巡洋艦ニ代ヘテモ宜イト云フコトガア
  リマスカラ、或ハ米國ハ之ニ代ヘルカモ知
  レナイ、サウスレバ我ガ之ニ對スル所ノ工
  夫モ亦多少動クノデアルソレ等ノ事情ヲ
  考ヘテ見テモマダ其外ニ彼我ノ間ニ色ミ
  ノ關係ガ動イテ來ル見込ガアルカラ、今日
  其內容及ビ時期ヲ極メル必要モナシ、極メ
  ラレナイモノデアルト斯ウ云フ當局ノ主
  張デアリマス、デ兵力ノ權衡カラ云フト
  此八吋砲巡洋艦ノ缺陷ト云フモノハ第一
  次補充計畫卽チ整備計畫ノ中ノ六吋砲巡洋
  艦デ補フコトガ出來ル積リデアル、斯ウ云
  フコトヲ又當局ガ言"テ居ルノデアリマス、
  亞米利加ノ八吋砲ト云フモノハ旣ニ古イモ
  ノデアル、今日以後ハ知ラヌケレドモ、日
  本ガ是カラ造ル所ノ六吋砲ト云フモノハ
  或ハ極メテ威力ガアッテ、中ミ有效ナモノガ
  出來ル見込ガアルノダ、是等ノコトヲ考ヘ
  テ見テモ先ヅ悲觀スルニハ及ブマイ、色ミ
  サウ云フ風ナ答辯モアッタノデアリマス、ノ
  ミナラズ航空隊デ緩和スルト云フコトガ出
  來ル、所デソレナラバ八吋ト六吋トノ間ノ
  モノヲ造ッタラドウカト云フト、ソレハ條約
  ガ許サナイノデ、六·一吋以上ニナルト、ソ
  レハ八吋ニ計算スルト云フ條約ダサウデア
  リマシテ、六吋ナラザレバ八吋ナラザルヲ
  得ナイト云フコトデアリマス、日本ノ潜航
  艇ガ三分ノ一今度ハ無クナッテシマフノデ
  アリマス、ケレドモ是モ當局ニ於テハ大體
  補ヘル三分ノ一ニナルト云フコトハ亞
  米利加ガ太平洋マデ潜航艇ヲ持ッテ來テ、其
  中ニアル人間ヲ入換へタリ、色ミ新陳代謝
  ヲシナケレバナラナイ、ソレ等ニ付テノ工
  夫ハ日本ノ方ガ餘程便宜デアル、ソレデア
  ルカラシテ、サウ云フコトヲ考ヘテ見ルト
  三分ノ一減ラサレタト云フコトハ數ノミ
  ヲ以テ之ヲ換算スルコトハ出來ナイ
  況ヤ之ニ補フノニ、驅逐艦、水雷艇、航
  空隊ヲ以テスルカラ、當面ノ場合ニ於
  テハサシタル變化ハナイト考ヘルト、斯
  ウ云フ風ナ要領デアリマス、ドウモ細カ
  イ所迄ハ御互ニ行カウトシテモ、問題ガ
  問題デアリマシテ、辻褄ノ合フト云フヤウ
  ナ問題ニハナリ得ナイノハ已ムヲ得ナイ
  コトデアルト思ヒマス、從ッテ總會ニ於キ
  マシテハ先ヅ其邊ノ程度ヲ以テ止マッタモ
  ノデアリマス、之ニ補足イタシテ置キマス
  ガ、昨年大演習地ニ於テ不祥事件ガ起ノタ、
  卽チ阿武隈北上ノ衝突事件デアリマス
  今日海軍ノ比率ノヤカマシイ時ニ、五千百
  噸ノ阿武隈ヲ失フト云フコトハ甚ダ歎息ス
  ベキコトデアル、ノミナラズ日本ハ經費ヲ
  節減シ、油ヲ節減シ、石炭ヲ節減シ、其上
  ニ持ッテ來テ艦ノ上ノ士官ノ更迭ガ甚ダシ
  イ、馬デモ癖ヲ知ラナケレバ乗レナイ、軍
  艦デモ癖ヲ知ラナケレバ操縦出來ナイノ
  ニ艦長ガ始終動タコトガアルト云フコト
  ハ甚ダ宜シクナイコトデアル、設備ガ惡ク
  テ失敗シタ時ニ、其艦長以下ヲ罰スルコト
  ハ尙更イカヌコトデアルカラ大イニ當局
  ニ於テモ考ヘテ貰ヒタイト云フコトモアリ
  マシタ、是ハ序デニ矢張リ海軍ノコトデア
  リマスカラ附加ヘテ置キマス、又二月十一
  日幣原首相代理ノ失言問題ニ付テノ質問モ
  アリマシタ、元來此取消ハ自發的ノ取消デ
  ハナクテ日ガ經ッテカラ、政治的ノ妥協デ
  出來タモノデアル、面モ發言ノ日ヲ去ル遠
  キ後デアッタノデアル、此發言ハ憲法第三條
  竝ニ第五十五條ノ大義ニ背クモノデハナイ
  カ、至尊ニ對シ奉リ恐懼ノ意ヲ表スルノ意
  思ナキカト云フ質問ガアリマシタ此二月
  十二日ニ發言ノ機會ヲ得マシタカラ失言
  デアルカラ取消ト卒直ニ申述ベタノデア
  ル、決シテ責任ヲ囘避シナイ既ニ二月三
  日ニモ述ベタノデアル、御批准奏請ト云フ
  代リニ御批准ト云フ言葉ヲ使ッテ居ッタノデ
  アリマス併ナガラ失言ハ失言デアルカラ
  シテ取消シタノデアル、決シテ責任ヲ上御
  一人ニ歸シ奉ルト云フ意思ハ毛頭ナイノデ
  アルト云フ答辯デアリマス次ニハ思想問
  題、今日ノ思想國難ト云フコトハ既ニ輿論
  ニ於テモ人ノ喋々スル所デゴザイマスカラ
  多ク述ベル必要ハアリマセヌ、從來ノ佛〓
  モ日本ニ同化サレテ、儒〓モ日本ニ同化サ
  レテ、基督〓モ或意味ニ於テ同化サレタノ
  デアル今日迄ハ萬世一系ノ國體ハ儼然ト
  シテ存在シ、又是ハ未來永劫存續スベキモ
  ノデアル、然ルニ「マルキシズム」ガ入ッテ來
  ルト云フト、是ハ少シク趣ヲ異ニシテ我
  圖ノ階級全體ヲ打破スルト云フヤウナ傾向
  ガアルヤウニ見エル、是ハドウ云フ風ニシ
  テ政府ハ是等ノ問題ニ付テ對應スルノデア
  ルカ、又今度政府自ラ提出シタ勞働組合法
  案ノ如キハ或ハ「マルキシズム」ノ實行ノ
  第一步デアルカノ如キ感ガアルト言フ人ガ
  アルガ、政府ハ之ニ付テ如何ニ考フルヤ等
  ノ問題モ出タノデアリマス、政府ハ是等ニ
  對シマシテ十分ニ取締ル、特ニ共產主義ノ
  宣傳ノ如キハ法律ノ禁ズル所デアリマスカ
  ラシテ、是ハモウ十分ニ取締ル考デアル、
  勞働組合ハ共產主義ノ加味ト云フヤウナコ
  トハ毛頭ナイノデアルト云フ答辯デアリマ
  ス又自然科學ニ對シテ人文科學ノ〓究會
  ヲ造ッテ、健全ナル思想ヲ培養シテハドウカ
  ト云フヤウナ質問モ出タノデアリマス政
  府ハ是等ニ付キマシテハ〓化總動員、學
  生主事ヲ設ケ、其他ノ事柄ニ依リマシテ十
  分ニ思想ノ善導ニ盡ス考デアル、又一委員
  カラ、此惡思想ニ感染シテ善良ナル靑年ガ
  動モスレバ誘惑ヲサレテ赤イ思想ニナル
  者ガ大分アルヤウデアルガ、ソレ等ヲ司法
  問題ニシテ一生ヲ誤ラセルヨリ、是ハ矢張
  リ人間的ニ解決ヲシテ、〓育的ニ之ヲ解決
  シナケレバナラヌト思フノデアルガ文部
  當局ハ之ニ對シテ如何ナル考ヲ持ッテ居ル
  カト云フヤウナ質問モ出タノデアリマス
  當局ハ之ニ對シテ、出來ルダケ司法問題ニ
  シナイデ之ヲ解決スルヤウニ努メテ居リ、
  又將來モ大イニ努メナケレバナラナイト云
  フコトノ確信ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ答
  辯サレテ居リマス、〓育問題、〓育問題ト
  シマシテハ今度ハ色〓出テ居リマスルガ、
  先ヅ第一ニ文理科大學ノ內容改善ノ問題モ
  出タノデアリマス是ハ當局ニ於キマシテ
  ハ文政審議會ト云フモノガ總ベテノ學制
  ノ改善ニ付テハ圖ラナケレバナラナイ機關
  ニナッテ居ルノデアル、文理科大學ハ未ダ卒
  業生モ出テ居ラナイ、始マッタバカリノモノ
  デアル、ソレニ對シテ內容ノ改善ト云フコ
  トハ尙早ノ感ガアル、併ナガラ大イニ此〓
  育問題ニ付テハ色ミノ考慮ヲ致シマス、督
  學官ト云フモノガ僅カナ數アルノデアル
  ガ、此督學官ト云フモノハ多クハ此處デ以
  テ見習ヲシテ、高等學校長ニナル迄其處ニ
  居ルト云フヤウナ狀況ニナッテ、腰掛ノ狀況
  ニ在ルノデアル是ハ〓育ノ全體ヲ監督ス
  ル上ニ於テ、思想善導ノ最モ必要ナ時ニ於
  テ、斯ノ如キ制度ハ先ヅ宜シクナイモノデ
  ハナイカ、我國ニハ本統ノ教育者ト云フモ
  ノヲ今日ハ必要トスルノデアル督學官ノ
  如キ者ハ特ニ其人ヲ要スルノデアルガ、當
  局ノ考ヘハドウデアルカト云フヤウナ質問
  ガアリマシタ當局ハ之ニ對シテ出來ルダ
  ケ努力スル、併ナガラ一方ニ於テ立身シテ
  行クト云フコトモ、高等學校長ニナルト云
  フヤウナ例デ、必シモ惡イコトデハナカラ
  ウ、又督學官ヲ特ニ優遇セヨト云フヤウナ
  御話デアルガ督學官ダケヲ優遇スルト云
  フコトハ如何ナモノデアラウカト云フヤウ
  ナコトデアリマシタ、其他一委員カラ、非
  常ニ良イカラト云ッテ之ヲ優遇スレバ、外ノ
  督學官ノ月給ヲ皆ナ喰ッテシマフト云フコ
  トニナッテ來テ、中ミ權衡ヲ持スル上ニ於テ
  モ困難ガアルト思フ、併ナガラ御說ハ一々
  尤モデアルカラ將來大ニ注意スル、近頃「ス
  トライキ」ガ澤山アル、是ハ當局校長ノ人格
  其宜シキヲ得ナイ爲デアルト思フカドウデ
  アルカ、是等ニ付テモ大ニ考慮スルト云フ
  コトデアリマシタ、ソレカラ小學校〓員ノ
  減俸問題ガ、今日地方ニ於テ最モヤカマシ
  イノデアリマスガ、之ニ付キマシテハ詳シ
  イ統計ヲ以テ質問サレタ方ガアリマス、此間
  題ハ今日ニ於テ確カニ〓育界ノ、最モ速ニ解
  決スベキモノデアッテ、又解決ノ困難ナルモ
  ノデアリマス、內務省ト文部省トハ極力之ニ
  對シマシテ緩和ヲ圖ッテ居リマスケレドモ如
  何ニセン農林省ノ關係ノ農民ノ疲弊、農村
  ノ疲弊、一口ニ言ヘバ米ガ安イ、稅ガ拂ヘナ
  イト云フヤウナコトカラシテ、農村ガ自然
  危クナッテ居ルカラ、此〓員ノ緩和ト云フコ
  トハ中〓困難ナコトデアル、併シ從來ニ於
  テモ文部省、内務省當局ハ非常ニ之ニ努力
  シテ居ル、今後モ怠ラズ大ニ努力スルト云
  フコトデアリマス、ソレカラ義務〓育費八
  千五百万圓ノ補助ヲ受ケテ居リナガラ、〓
  員ノ給料ガ拂ヘナイ場所ガ確カニアルト云
  フノデ、統計デ事實ノ上カラ證明シテ質問
  ガ出タノデアリマス、之ニ對シテ當局ハ文
  部省ニ於テモ調ベタケレドモ、誠ニ是ハ事
  實デアッテ遺憾ナコトデアル、此負擔法ノ金
  ヲ分配スルト云フコトニ付キマシテハ將
  來大ニ〓究ヲ致シテ見ヤウト思フ、併シ餘
  リ煩雜ナ規則ヲ作ルト云フコトハ、却ッテ又
  外ノ地方ニモ不便ヲ感ズルコトガアリマス
  カラソコラノ緩急宜シキヲ得ナケレバナ
  ラナイカラ、其邊ハ大ニ注意スルノデアル、
  尙ホ又小學校長ノ俸給全額ヲ皆拂ヘトカ、
  色ミナ質問應答ガアリマシタ、ソレカラ此
  財界ノ問題デアリマス、金解禁ト不景氣、
  世界的不景氣トノ關係デアリマス一是等ニ
  付テモ質問ガ中ミ深刻ニアッタノデアリマ
  ス當局ハ大正九年以來、經濟界ガ不況ニ
  ナッテ來タノデ是ハ考ヘテ居ッタノデアル
  カラ、金解禁ノ準備ト致シマシテハ財政ノ緊
  縮消費ノ節約ト云フコトヲ致シタノデア
  ルサウシテ爲替相場ガ平均シテ六七分
  下ッテ居ッタ爲替ガ騰ル結果、間接直接ニ我
  ガ經濟界ニ六七分ノ影響ガアルト思ッテ居ツ
  タ、一昨年ノ末カラ昨年一月爲替相場ガ騰ツ
  テ來テ、物價ガ下落シタト云フコトモ其爲
  デアリマス其後世界的不景氣ガ來ルコト
  ハ是ハ何トモ我ミニハ分ラナカッタノデア
  ル、併シ此不景氣ガ來タノニ際シテ矢張リ
  財政ノ緊縮ト節約ヲ以テ、所謂國民全體ガ
  緊張スル態度デ應ジタト云フコトハ日本
  ノ幸ヒデアッタト考ヘル、若シ金解禁モ財政
  緊縮モシナイデ、此世界的不景氣ニ遭ッタナ
  ラバ、決シテ今ヨリハ好クハナカッタデアラ
  ウ、故ニ金解禁ヲヤッタ事ニ付テハ決シテ後
  悔ハシナイノデアル何トナレバ是ハ不自
  然的ナルモノヲ自然ニ囘復シタノデアルト
  云フ答辯ノ要領デアリマス、近頃小サナ銀
  行ガ段々危ナクナッテ來テ居ルヤウデアル、
  大キナ銀行デモ危ナクナッテ來テ居ルヤ
  ウデアル、五十万圓以下ノ銀行ハ來年マデ
  ニ皆上メテシマハナケレバナラヌ、政府ハ
  大キナ銀行ニ合併スルヤウニシテ居ル
  是ハドウモ不都合デハナイカト云フ質問ガ
  出タノデアリマスガ之ニ對シマシテハ
  今日ハ大イニ勸誘ハシタガ餘計ナ干涉ハシ
  ナイ、一ツノ銀行ガ增資シテ獨立シテ行ケ
  得ルモノガアレバ、成ルベク其方面モ奬勵
  スルト云フ御話デアリマス、又石油石炭間
  題ニ付キマシテモ質問ガ出マシタ又經濟
  問題トシテハ生絲ト云フコトガ大キナ問題
  デアリマス、生絲補償法ノ出動ノ時期ヲ誤ク
  タガ爲ニ、一俵五百圓以下ニ下ッタト云フヤ
  ウナコトガ起ッテ來タガ、ソレハドウデアル
  カト云フヤウナ質問ガ出ダノデアリマス
  生絲補償法ガ出動ヲシナカッタナラバ、急轉
  直下一千圓以下ニ落チタデアラウ、サウナッ
  テ來ルト其時ノ生絲機關關係者ノ破滅ト云
  フコトハモウ明カナ事デアッタノデアル、ゾ
  レカラ又米國デハ僅カ三万七千俵モ需要ガ
  減ジタト云フコトヲ言ッテ居ルガ、是ハ前年
  度カラノ持越モ考ヘテ行カナケレバナラナ
  イト云フヤウナ答辯デアスタノデアリマス
  要スルニ支那ニ於ケル銀ノ暴落ト云フコト
  ガ······支那ノ絲ガ亞米利加ニ餘計入ッテ、其
  爲ニ日本ノ絲ガ下ッタト云プコトガ最モ穩
  健ナ考ヘ方デアルヤウニ見エマス、又失業
  問題ニ付キマシテモ大イニ質問應答ガアツ
  タノデアリマス政府ハ事業ヲ緊縮シクル
  ガ爲ニ、ソレハ成程多少ノ失業者ガ出テ居
  ルノデアル、ダカラ豫算ニ於テモ緊縮ト同
  時ニ大イニ手加減ヲシテ、河川港灣等ノ事
  業デ成ルベク失業者ヲ出サナイヤウニ努メ
  テ居ルノデアル而シテ三十八万人ノ失業
  者ノ數ト云フモノハ是ハ經濟界全體ノ不
  況ノ結果デアリマシテ、直接政府ノ爲シタ
  ル緊縮ノ結果トノミハ認メルコトハ出來ナ
  イト云フ話デアリマス、又失業ニ關係シマ
  シテ兩國御茶水間、御茶水飯田町間、城東
  線ト云フ三ツノ線ガ必要デアルナラバ.此
  一千二百万圓ノ公債ハ鐵道會計法ノ示ス所
  ニ依ッテヤッタラ宜イト考ヘル、然ルニ鐵道
  會計法ニ依ラズシテ、特ニ失業公債ト云フ
  ヤウナ意味デ一年ヲ限テ公債ヲ募集シタ
  ト云フコトハ從來ノ鐵道ノ會計トハ全ク
  違ッタヤリ方デアッテ、將來ノ惡例トナルノ
  デアルガドウデアルカ、斯ウ云フ質問デアッ
  タノデアリマスガ之ニ對シマシテハ失業
  者ガ今日兎ニ角アル之ヲ救フニハY何處
  カ都合ノ好イ鐵道ハナカラウカト云フノ
  デ、此三ツノ線ガ必要デアッテ繰延ニナッテ
  居ルノダカラ、此際三ツノ線ヲ一年限リデヤ
  ラウト云フコトニナッタノデアルト云フ答
  辯デアリマシテ、是ハ相當長イ開ノ質問應
  答ガアッタノデアリマスガ、結局御互ノ質問
  應答ハ肯綮ニ當"テ居リマセヌ、農村問題ニ
  付キマシテモ詳シイ質問ガアリマシタ農
  產物ノ下落ハ今日十億圓デアル實ニ此地
  方稅以下ノ負擔モアルシ、農村ハ非常ニ今
  日困ッテ居ル、是ハドウシタ問題デアル又
  米穀法ニ關スル賃問モ出タノデアリマス
  臺灣朝鮮米ノ事ニ付キマシテハ課稅率ガ
  低イカラシテ到底内地米ノ値段ヨリモ安ク
  テ、之ニ對抗スルコトハ間來ナイカラ、幾ラ
  カデモ又內地米ヲ壓迫スルコトニナルガ、
  之ニ付テノ方法ハ如何ニ考ヘルノデアル
  カゝ農相ハ之ニ對シマシテ米ト云フ問題
  ニ付テバ內地米ヲ中心トシテ暴騰暴落ヲ防
  イデ、米穀法ヲ改正シマシテ、物價ニ對ス
  ル米價ノ趨勢ニ依ル率勢米價ヲ基準トシ
  テ他面ニハ米ノ生產費、又一般ノ消費者
  ヲ考ヘマシテ、生產費生計費ヲ基礎トスル
  兩方面カラ基準ヲ立テル事ヲ米價對第ノ根
  本トシテ、臺灣朝鮮內地ノ米ヲ一括シテ對
  策ヲ講ズベキモノト考ヘル、之ニ依ッテ米價
  維持ノ效果ハ生ズルモノデアル、生產費ヲ
  減ズル政策、增收ヲ圖ル政策、販賣ヲ成ル
  ベク簡便ナラシムル政策、國稅及地方稅以
  下ノ負擔ヲ減ズルト云フコトニ依ッテ、大イ
  ニ其方法ヲ考ヘル積リデアル、昨年ハ四千
  万圓ノ養蠶應急資金ガ出テ居リマス、又中
  小工農資金二千五百万圓モ事實ニ現ハレテ
  居ルノデアッテ、漸次此農村竝ニ商工業者
  ノ改善ヲ圖ッテ行ク積リデアル、又水產ニ付
  キマシテモドウモ其政府ノ監視船ト云フモ
  ノガ一艘シカナイカラ此底曳網ト云フモ
  ノガ根コソギ小サナ魚マデ取ッテ荒シテ步
  クガ此取締ヲドウカシナケレバナラヌ
  ソレガ又見付カッテモ罰金五十圓以下ト云
  フノデアリマスカラ平氣デ以テ漁ヲシテ步
  クヂヤナイカト云フ問答モアリマシタ、又
  林業ニ付キマシテモ此木材ニ付テモ非常
  ニ此民業ヲ壓迫スルコトガ無イヤウニ、又
  是等ノ問題ニ付キマシテ沿海州、樺太等ノ
  木材ニモ課稅ヲシテ、サウシテ沿海州ニハ
  課稅ナドヲシテ、サウシテ我國ノ木材業ヲ
  壓迫シナイヤウニ出來ルダケヤッテ貰ヒタ
  イト云フコトデアリマシタ次ニハ霧社事
  件デアリマスガ是ハモウ既ニ御承知ノコ
  トデアリマスカラシテ簡單ニ致シテ置キマ
  ス¥是ハドウモ理蕃政策ノ宜シキヲ得ザリ
  シ結果デハナイカ、今日ノヤウナ工合ニヤ〃
  テ居ルト第二、第三ノ霧社事件ガ陸續トシ
  テ後カラ起ルト考ヘルガドウデアルカト云
  フコトニ對シテハ理蕃政策ハドウシテモ
  是ハ改善ヲシナケレバナラヌ、霧社管内ノ
  建築ハ平年ニ比シテ確カニ多カッタノデア
  ル又肩デ擔グ所謂擔送ノコトモ今後ハ改
  善スル積リデアル、要スルニ勞役ノ方法、
  ソレカラ又其時期ニ付テハ決シテ此蕃民ヲ
  刺激シナイヤウニ出來ルダケ工夫ヲ致ス考
  デアル、理蕃通ガ段々無クナック爲メ斯ウ
  云フ結果ガ起ッタノデハナイカト云フコト
  ニ對シテ、政府ハ理蕃通ニ對シテハ是ハド
  ウモ新陳代謝ト云フモノハ已ムヲ得ナイ
  是ハ今囘ニ限テテニニカカスト云フコトハ
  ナイノデアル、又警察ノ鎭定ノ行動ニハ遺
  憾ハナカッタト考ヘル、警察ガ兵隊ニ鐵砲ヲ
  擊ッタト云フヤウナコトハ、ソレハ無イノデ
  アル、要スルニ新總督ノ意見ヲ聽イテ愼重
  ニ此方面ハ改善スル考デアル、竝ニ司法部ノ
  廓〓モスルノデアル、討伐行動ハ努メテ必要
  ナ最小限度ノ範圍ヲ超ヱタモノデハナイ、又
  慘虐ナ行動ニハ決シテ渉ラナカッタ、流丸ニ
  當ッテ斃レタ者ハアッタガ特ニ慘虐ナ行動ハ
  我ガ兵士ニハ無カッタト云フ陸軍當局ノ話
  ガアリマシク之ニ付テモ隨分長イ應答ガ
  アリマシタガ、是ハ速記錄ニ付テ御覽ヲ願
  ヒマス、斯クテ三月三日ニ大體御賛問ヲ終
  リマシテ三月四日カラ九日マデ各分科會、
  三月九日午後二時カラ各分科ノ主査ノ報〓
  ヲ受ケマシタ、三月十日午前十時三十分豫
  算總會ヲ開キマシタ、所ガ俄然全國區裁判
  所六十二箇所事務停止問題ニ關スル質問應
  答ガ起ッタノデアリマス、此六十二箇所ノ裁
  判事務停止ニ依ル節減額ト云フモノハ今日
  ノ抵當證劵法ノ實施ニ密接ナル關係アルモ
  ノニアラズヤト云フヤウナ質問ガ出タノデ
  アリマス、當局ハ之ニハ全然關係ガナ
  イ··然ラバ此停止ヲ行ヒ得ルノ法律上
  ノ根據如何、答、裁判所構成法第十三條第
  二項ニ依ルモノデアルY經費節減ノ爲ニ從
  來ノ例ニ依シテ〓示ニ依リ停止ヲ行ッタ次第
  デアリマス、司法大臣ハ之ニ對シテ幾多ノ
  先例ヲ擧ゲラレタノデアリマス、此際ニ第
  二分科ニ移シマシテ再審査ノ動議ガ出マシ
  タ而シテ四十二對六ノ多數デ以テ再審査
  ノ動議ガ可決サレマシタ、玆ニ直ニ二分科
  會ヲ開クト共ニ豫算總會ヲ繼續致シマシタ
  次第デアリマス午後三時四十分第二分科
  會主査ノ報〓ガアリマシテ、此裁判所停止
  問題ハ附帶決議ヲ附シ、昭和六年度歲入歲
  出總豫算案、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
  契約ヲ要スル件ヲ議題トシテ討論ニ入リマ
  シテ採決ノ結果可決ニ相成リマシタ昭和
  六年度各特別會計豫算案中第六分科會ノ修
  正ニ係ル朝鮮總督府ノ中忠〓南道廳舍新營
  費關係ヲ除キ、其他ヲ一括議題トシテ掛リ
  マシテ討論ニ入リ採決可決ニ相成リマシ
  タ、次ニ此忠〓南道廳舎新營費關係ノミヲ
  議題トシテ討論ニ入リマシタ、此討論ニ入
  リマシタ時ニ復活反對論ト復活贊成論ガア
  リマシタ、復活反對論、政府ハ旣ニ衆議院
  デ以テ修正ヲ致シタ以上ハ政治問題トナッ
  タノデアッテ敢テ原案ヲ固執シナイ、斯ウ云
  フノニモ拘ラス、之ヲ復活スル必要ハ無イ
  デハナイカ、政府委員モ復活ヲ希望セズ、
  復活ヲ希望セズト當局デ言ッテ居ルノデア
  リマシテ一方ニ於テハ總督ノ威信ニ關ス
  ルカラ復活セヨト云フ御議論モアルヤウデ
  アルガ、總督ノ威信ニ關スルコトヲ希望ス
  ル氣遺ヒハナイノデアルカラ、此意味カラ
  見マシテモ是ハ復活ニ反對スベキモノデア
  ルト云フ議論デアリマス、復活贊成論、是
  ハ總督ノ威信ニ關スル、今日移轉ヲスルト
  云フコトヲ言ッテ置キナガラ、元ニ戾スト云
  フヤウナコトニナッタナラバ是ハ總督ノ威
  信ニ關スルノデアル一體斯ウ云フ事柄ハ
  要スルニ總督ノ意思如何ト云フコトヲ深ク
  考慮スルノガ當リ前デハナイカ、而モ是ハ
  朝鮮全體ノ輿論デアル而シテ昭和六年度
  カラ著手スル必要ガアルト云フコトデアル
  カラ復活ニ贊成ト云フノガ復活贊成論ノ趣
  旨デアリマス、記名投票ノ動議ガ出マシテ
  之ニ贊成ガアリマシタケレドモ、是ハ成立
  イタシマセヌ、起立ニ問ヒマシタ所ガ三十
  二對二十ノ多數デ以テ復活スルコトニナリ
  マシタ、豫算復活ヲ數字的ニ示シマスト次
  ノヤウナコトニナリマス是ハ少シ數字上
  ノ問題デスカラ讀上ゲマス、昭和六年度各
  特別會計歲入歲出豫算案甲號拓務省所管朝
  鮮總督府歲入臨時部第八款前年度剩餘金繰
  入竝第一項前年度剩餘金繰入ハ各百二十一
  万五千百六十五圓ヲ百三十六万五千百六十
  五圓ニ改メ、臨時部合計三千二百十万千三
  百三十六圓ヲ三千二百一一十五万千三百三十
  六圓ニ、合計二億三千八百四十一一万二千八
  百七十三圓ヲ二億三千八百五十七万二千八
  百七十三圓ト改ム、又歲出臨時部第五款營
  繕費二百七十三万四千八百九十五圓ヲ二百
  八十八万四千八百九十五圓ニ改メ、第四項
  忠〓南道廳舎新營費十五万圓ヲ設ケ、其結
  果第四項ヲ第五項ニ以下第九項迄ヲ順次繰
  リ下ゲ、臨時部合計五千百七十九万四千三
  百九十圓ヲ五千百九十四万四千三百九十圓
  ニ、合計二億三千八百四十二万二千八百七
  十三圓ヲ二億三千八百五十七万二千八百七
  十三圓ニ改メ、乙號拓務省所管朝鮮總督府
  ノ忠〓南道廳舍新營費、總額(款)營繕費、
  (項)忠〓南道廳舍新營費、三十五万九千圓、
  年額、昭和六年度十五万圓、昭和七年度二
  十万九千圓ト爲スノ修正案ヲ可決致シタ次
  第デアリマス、ソレカラ各分科會ノ附帶希
  望ヲ讀ンデ見マス、而シテ此附帶希望ト云
  ヲモノハ悉ク豫算委員會ノ總會ノ決議ヲ經
  マシテ、委員長ヨリ本會議ニ報告スベキモ
  ノトナッタノデアリマス
  第一分科希望決議
  歲入
  第五十八議會ニ於テ昭和五年度豫算ノ審
  議ニ際シ歲入ノ減收ニツキ特ニ注意スル
  所アリタリ然ルニ今囘提出ノ昭和六年度
  豫算案ヲ審査スルニ同シク歲入ノ見積過
  大ナル疑ナキ能ハス政府ハ從來ノ言責ニ
  顧ミ所期ノ歲入ヲ擧ケンカ爲苛斂誅求又
  ハ官林濫伐等ノ弊ニ陷ラサル樣深甚ノ注
  意ヲ拂ハルヘシ
  第二分科希望決議
  司法省所管
  政府カ司法部經費ヲ節減スルニ當リ六十
  二區裁判所ノ裁判事務ヲ停止スルハ法律
  ノ運用上妥當ナラサルモノト認ム
  第三分科希望決議
  內務省所管
  從來臨時神社費ハ僅少且ツ不定ニシテ現
  時社殿ノ大破ヲ招キ神域ノ荒廢ヲ來セル
  モノ尠カラス政府ハ速カニ案ヲ具シ常時
  神社費ヲ增加シ以テ神社尊崇ノ本義ヲ完
  ウセラレンコトヲ望ム
  文部省所管
  近時思想ノ惡化益〓甚シク殊ニ〓育方面
  ニ涉リ其實行運動ヲ企ツルニ至レルハ國
  家ノ爲深憂ニ堪ヘス政府ハ此際一層之カ
  防遏ニ付適切有效ナル方法ヲ講セラレン
  コトヲ望ム
  第四分科希望決議
  陸軍省所管
  本分科會ハ昭和六年度陸軍省所管歲出豫
  算繼續費中二十一年間ノ長期ニ亙ル支出
  ヲ豫定シアルモノアリ斯ノ如キハ豫算審
  議上不便ノ點尠シトセズ政府ハ將來財政
  ノ許ス範圍ニ於テ必要ナル繼續費ノ繰リ
  上ゲヲ行ヒ以テ豫算審議ニ遺憾ナカラシ
  メムコトヲ望ム
  海軍省所管
  倫敦條約ノ權利行使ニ方リ政府ハ國防上
  兵力ニ不足ヲ來サザル樣萬全ノ對策ヲ講
  ゼラレムコトヲ望ム
  第五分科希望決議
  商工省所管
  我國石油ノ產額ハ其ノ最大消費者タル海
  軍所用ヲ除キタル國內需用ニ對シ猶三割
  ヲ充タスニ足ラス餘ハ悉ク之ヲ海外ヨリ
  ノ輸入ニ待タサルヘカラス國家ノ前途轉
  タ寒心ニ堪ヘサルモノアリ政府ハ宜シク
  燃料國策樹立ノ計ヲ促進シ以テ國防上將
  タ產業上速カニ此ノ危險ヨリ免カルルノ
  途ヲ講セラレムコトヲ切望ス
  以上ガ卽チ希望デアリマス、之ヲ以チマシ
  テ大體豫算委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓
  イタシマシタ次第デ、要スルニ豫算案ト云
  フモノハ、例ノ朝鮮忠〓南道ノ豫算ノ復活
  ヲ除キマシテハ、全部可決ニ相成リマシタ
  次第デアリマス此段御報〓ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=3

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• 004・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　本日藤村男爵都
  合ニ依リ地租法案外七件特別委員ヲ辭任シ
  タキ旨ノ申出ガゴザイマシタ、許可ヲシテ
  御異存ゴザイマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=4

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• 005・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　御異議ナイト認
  メマス、右補關トシテ井上男爵ヲ指名イタ
  シマス

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• 006・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　本日ハ宮中ニ於
  テ行ハセラレマス內親王御命名式ニ付參內
  ノ關係モゴザイマスカラ是ニテ休憩ヲ致シ
  やっ、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマ
  ス
  午前十一時十五分休憩
  午後一時四十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=6

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• 007・近衞文麿

  ○副議長(公爵近衞文麿君)　是ヨリ午後ノ
  會議ヲ開キマス、通告ニ依リマシテ田中館
  君ノ質疑ヲ許シマス
  〔田中館愛橘君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=7

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• 008・田中館愛橘

  ○田中館愛橘君　昨年ノ第五十八囘ノ議會
  ニ於キマシテ、本員ガ產業合理化ノ根本ニ
  付テ御尋ヲ致シマシタ時ニ、商工大臣ハ「將
  來ニ於キマシテドウシテモソコ迄一ツ進ン
  デ〓究機關ノ考ヲ付ケヌケレバイカヌト考
  ヘテ居リマス」ト御述べニナリマシテ、又大
  藏大臣ハ世界的〓究ヲシテ、人的財產ヲ段
  段殖シテ行クト云フコトニ付テハ政府モ
  心シテ居ル積リデゴザイマスカラ、サウ御
  承知ヲ願ッテ置キマスト斯樣ニ御答辯ヲ下
  サッタノデアリマス、是等ノ御言葉ニ鑑ミマ
  シテ、今年ノ豫算ニハ定メシ見ルベキモノ
  ガアラウト期待イタシテ居リマシタ、所ガ
  不幸ニシテ經濟界ニ於ケル圖ラザル恐慌ガ
  起リマシタ爲ニ、今年度ノ豫算ニ於キマシ
  テハ僅カニ割引ノ手加減ガアルカノヤウニ
  ハ見受ケマスケレドモ、何等ノ目ニ立ツタモ
  ノヲ見當リマセヌコトハ誠ニ遺憾ト致ス所
  デゴザリマス當局ニ於カレマシテモ定メ
  シ御同感ノコトト存ジマス、本員ノ見ル所
  ニ依リマスレバ〓究機關ヲ別ニ改メテ設ケ
  マセヌデモ、今現ニアル機關ニ對シテ今少
  シク手加減ヲ加ヘマシタナラバ、其效率ヲ
  高メル、效果ヲ擧ゲルコトハ少クナカラウ
  ト信ジマス、具體的ノ實例ハ大抵皆樣ノ御
  承知ノコトデゴザイマスカラ差控ヘマス
  ガ、大體ヲ申シマスレバ、機械ヤ器具ノ設
  備ガ出來上ッテ居リマシテモ、人ガ足リナイ
  爲ニ仕事ノ進メラレナイ所、又人ガアッテモ
  機械ト材料ノ買入レガ不自由ナ爲ニ、其仕
  事ヲ進メルコトノ出來ナイ所ガアルヤウニ
  思ヒマス、是モ一般ノ豫算割引ニ於テ已ム
  ヲ得ザルコトト存ジマスガ、中ニハ少シノ
  金額ヲ與ヘマシテモ、將來ニ對シテ少ナカ
  ラザル效果ヲ擧ゲルモノガアラウト信ジマ
  ス政府ハ行政ノ整理ヲ爲サルト云フコト
  ヲ此議場ニ於テ屢。聲明セラレテ居リマス
  カラ、其調査機關ニ依フテ十分ナル調査ヲ爲
  サルコトハ勿論其調査機關ソレ自身ノ組織
  ニ付テモ更ニ一層ノ御考慮ヲ盡サレムコ
  トヲ望ンデ置キマス、經濟界ノ恐慌ガ世界
  的デアルコトハ何人モ否定イタスモノハゴ
  ザリマスマイ、然ラバソレノ救濟モ亦世界·
  ト共ニ致シマセヌケレバ本當ノ安定ヲ得ル
  所ニ達セザルコトモ亦明カナル道理デゴザ
  イマス、獨リ經濟界ト云ハズ學問ニ於テモ軍
  備ニ於テモ、今日ハ國際協調ニ依クテ其解決
  ヲ求メル時代デゴザイマス、殊ニ學術ノ〓
  究ニ於キマシテハ昔カラ學問ニ國境ナシ
  ト言ハレマシタ通リ各國相共ニ心ト力ヲ
  合セテ仕上ゲルベキ仕事ガ年ト共ニ多ク
  ナッテ參リマス、昨年モ此席デ申上ゲマシタ
  ガ學問ノ〓究ニ於テハ個人性ヲ尊重スベ
  キハ勿論デゴザイマスガ、是ト同時ニ又協
  同〓究モ必要デゴザイマズ、協同〓究ノ最
  モ廣イモノハ國際協同デアリマス、天文、
  溯地、海洋學、地震、氣象等ニ於ケル問題
  ニ付テハ國際協力ニ非ザレバ解決シ得ラレ
  ナイモノガ少カラヌノデアリマス近來無
  線電信ヤ飛行機ノ發達ニ依リ、交通ガ開ケ
  マシテカラ、殊ニ斯樣ナ協同〓究ノ必要ガ
  感ゼラレルヤウニナルノデゴザイマス、茲
  ニ於テ水員ノ當局ニ伺ヒタイコトガ一ツゴ
  ザリマス是ハ本員自身ノ責任上、國家ニ
  對スル責任ト國際ニ對スル責任感ニ對シテ
  默スルコトガ出來マセヌ、故ニ此差迫リマ
  シタル時助ニ於テ敢テ酉疑ヲ致ス次第デゴ
  ザイマス、ソレハ今度ノ豫算ノ中ニ極地觀
  測五十年期國際觀測ニ對スル準備ノ費用ガ
  見當リマセヌ、是ハドウ云フ譯デゴザイマ
  セウカ、之ヲ何ヒマス、質問ノ趣意ヲ明カ
  ニ致シマス爲ニ、講演ハ致シマセヌガ、此
  極地觀測ノ起リト成行ヲ極ク簡單ニ申上ゲ
  ルコトノ御許シヲ願ヒマス、極地觀測ノ起
  リハ西曆千八百七十五年ニ、其道ニ名高キ
  「ワイプレヒト」ノ計畫ニ基キマシテ、歐米
  ノ十二箇國ガ協同イタシマシテ、千八百八
  十二年カラ翌八十三年ニ掛ケテ、マル一箇
  年間北極ト南極ノ地方ニ、十四ノ遠征隊ヲ
  派遣シ、非常ナル困難ヲ侵シ、其一部ノ如
  キハ救護船ノ達スル迄ニ〓物ガ盡キ、寒氣
  ニ侵サレ遂ニ餓死スル位ニ至ル迄ノ辛苦
  ヲ嘗メテ氣象ト地磁氣ノ觀測ヲ爲シマシ
  テ貴重ナル材料ヲ學界ニ提供イタシマシ
  テ之ニ依フテ當時ノ幼稚ナル氣象學、天氣豫
  報ナドモマダ頗ルアヤフヤナ狀態ヨリ今日
  マデ引上ゲルコトガ出來タノデアリマス
  一體空氣ガ北極南極ニ行ッテドウ動イテ居
  ルノカ、ドウ云フ筋道ヲ通ッテ暖帶地方ニ
  流レルカ、其樣子ヲ明カニシマセヌデ、氣
  象學ヲ論ズルコトハ誠ニ心細イ次第デアリ
  やく、況ヤ今日ハ飛行機、飛行船ガ發達シ
  テ、氣象ノ知識ガ最モ必要ニナッテ來タノ
  デアリマス、五十年前ニ取シタ古イ種ニ賴ッ
  テ居リマスコトハ各國ノ氣象學者皆共ニ
  其不完全ナルコトヲ感ジテ、如何ニカシテ
  之ヲ一層確實ナルモノニ致ス希望ヲ持ッテ
  居リマシタガ、恰モ好シ來年ハ此記念スベ
  キ千八百八十二年カラ五十年目ニ當リマス
  ノデ、之ヲ機會ニ來年カラ再來年ニカケ
  テ、マル一年餘ノ問各國協同デ第二囘ノ極
  地觀測ヲ實行シヤウト云フノデアリマス、
  此事ハ昨年「コペンハーゲン」デ開カレマシ
  タ國際氣象會議ニ提案サレマシテ論議ヲ致
  シマシタ結果、全會一致ヲ以テ實行イタス
  コトニ決シマシタ、而シテ其準備委員ヲ任
  命イタシタノデアリマス、此委員ガ各國ニ
  照會シテ此共同觀測ニ參加スル同意ヲ求メ
  マシタ所、二十五ヶ國ガラ贊成ノ返事ヲ得タ
  ノデアリマス、是是昨ノ初メマデデアリ
  やく、而シテ是等ノ各國ヨリ送ッテ參リマ
  シタ所ノ意見ヲ取リ纒メマシテ、昨年ノ八
  月更ニ準備委員會ヲ開イタノデアリマス、
  ソレニ付テ「ソヴイエット」共和國ハ此準備
  委員會議ヲ「レニングラード」ノ學士院ニ
  於テ開クコトノ招待ヲ申込ミマシタ、是一
  此前ノ極地觀測ノ時ニ其當時ノ「ピーター
  スボルグ」デ同ジ委員會ヲ開イタ歷史的ノ
  緣故モアリ、又極地地方ニ澤山ノ觀測所ヲ
  設ケル關係モアルカラト察セラレマス、丁度
  私ハ此時「ストックホルム」ノ地球物理學會
  ニ出テ居リマシタノデ之ニ招カレマシタ
  一度ハ斷リマシタガ、東洋ノ者トシテ是非
  ニト云フコトデアリマシテ到頭出席イタ
  シマシタ、御承知ノ如ク「ソヴイエット」共
  和國ハ今日物資ガ餘リ豐カデゴザイマセ
  ヌソレニモ拘ラズ我ミ十五六名ノ者ニ叮
  嚀ナ歡待ヲ與ヘマシタ、尙ホ此協同事業ニ
  對シテハ北氷洋ヨリ西比利亞ニカケ、南地
  方ニカケマシテ八十三箇所ノ觀測所ニ於テ
  此觀測ニ參加スル準備ヲ致シテ居リマス、
  獨逸伊太利等モ同樣ニ財政困難ニアリナガ
  ラ、特別ノ觀測船ヲ「グリンランド」ニ送ル
  計畫ヲ立テテ居リマス、此會議ニ於テ決議
  シタル事項ハ數箇條ニ亙テ居リマスガ、其
  主要ナル點ダケヲ申述ベテ見マス
  〔議長公爵徳川家達君議長席ニ著ク〕
  第一ニ今度ノ極地觀測ハ名前ハ極地觀測デ
  ハゴザイマスケレドモ、單ニ極地ダケニ限ッ
  テハイケナイ、同時ニ赤道地方カラ極ニ至
  ル迄ノ總テノ點ニ於テ觀測ヲ行ハナケレバ
  今日ノ學術ノ要求ニ適ハナイト云フコトデ
  アリマス、次ニ世界的ノ氣象變化ヲ大摑ミ
  ニスル爲ニハ表面ニ於ケル變化ヲ山ヤ河
  ナドノ影響ヲ取リ除ケタ所ノ氣象狀態ヲ調
  ベネバナリマセヌカラ、成ルベタ高イ山ノ
  上ニ臨時觀測所ヲ造ルコト、是ガ其第一、
  第二ハ飛行機デ高イ所ノ觀測ヲスルコト、
  第三ハ最モ大切ナコトデアリマスガ、自動
  「ラヂオ」ニ依ッテ成層圈ノ狀態ヲ觀測スル
  コト、成層圈ト申シマスノハ比較的新シイ
  言葉デゴザイマスカラ、チヨット說明ヲ加ヘ
  ル御許シヲ願ヒマス、昔ハ此地球ヲ包ム所
  ノ大氣ヲ唯一ツノモノト見マシテ、上ニ行
  クニ從ッテ、段々空氣ガ稀薄ニナル位ノ考デ
  居リマシタガ、今日ハ此大氣ヲ二ツノ、明カ
  ニ區別スルコトノ出來ル層ニ分ケマス、其
  下ノ方ヲ對流圈、飜譯デゴザイマスガ「ト
  ロポスフェーア」、約一万一千「メートル」以下
  ノ所ハ「トロポスフェーア」デアリマシテ、
  雨ヤ雲ノアル所、ソコ迄ハ地球ノ表面ヨリ
  段々溫度ガ下ッテ參リマス、ソレ以上一万一
  千「メートル」以上ハ之ヲ成層圈「ストラト
  スフェーア」ト名付マシテ、此處ニハ雨モ雲
  モナイ、溫度ガ上ルニ從ッテ段々高クナル
  斯ウ二ツノモノニ分レマス、此高イ所ハ比
  較的〓究ガ出來テ居リマセヌノデ、今度ノ
  機會ニ於テ特ニ此〓究ヲ加ヘル斯ウ云フ
  コトニ相成リマシタ、高層氣象ト飛行機ノ
  關係ニ付テ一言申述べマス、全體飛行機ハ
  船ノヤウニ重イ水ノ上ニ浮ンデ走ルモノデ
  ナク、輕イ空氣ノ中ヲ早ク走ッテ浮ブノデ
  アリマスカラ、空氣ノ薄イ所ヲ極ク早ク飛
  ベバ其本能ガ愈、發揮セラレルモノデアリマ
  スソレデ今一万「メートル」以上ノ雨モ雲
  モ無タナル所ヲ飛プト云フ計畫ガ各方面ニ
  於テ熱心ニ〓究サレテ居リマス、昨年獨逸
  ノ一設計者ニ會ヒマシテ一万五千「メート
  ル」ノ高サヲ飛ブ計晝ノ話ヲ聞キマシタガ、
  容易ノ問題デハアリマセヌケレドモ、現代
  ノ材料竝ニ技術ノ進步カラ致シマスレバ決
  シテ遠イ未來ノ問題デナイコトヲ信ジマ
  ス、是ハ經濟上及ビ軍事上カラ見マシテ、
  決シテ忽セニスルコトノ出來ナイモノト思
  ヒマス、第一速度ハ同ジ動力ヲ利用出來ル
  ト致シマスレバ、地上ノ倍以上ノ早サニナ
  リマス、又軍事上ノ問題ト致シマシテハ、
  富士ノ山ノ四倍以上ノ所ヲ飛ビマスレバ下
  カラ能ク見エマセヌ、海軍ニ於ケル潛航艇
  ト同ジヤウナ殺ヲスルコトニ相成リマス
  コンナモノガ出來上ル見込ノ窺ハレル所ヲ
  ザット申シテ見マスルナラバ、昨年ノ九月獨
  逸ノ飛行機製造會社ノ一支配人ハ飛行學會
  ニ於テ飛行機製造ノ合理化ト申ス問題ヲ講
  演シテ居リマス、其論文ヲ讀ンデ見マスル
  ト.總テ工業ノ合理化ハ多量製造ヲ假定シ
  チ居ル、所ガ飛行機ハ其形式ノ變ルコトハ
  早ク致シマシテ八箇月、遲キモ十五六箇月
  ニ於テ形式ハスッカリ改マル、ソコデ材料
  材料ノ形等ノ規格ヲ決メテ置キマシテモ、
  直グ八箇月乃至十五六箇月デ變ルカラ甚ダ
  困難デアルト云フコトヲ申シテ居リマス
  他事ノヤウデアリマスガ、私ハ勞働者諸氏
  ニ向ッテモ同情ヲ吝マヌノデアリマスガ、同
  時ニ斯樣ナル製造家ニ向テモ其心配ノ度
  ハ如何バカリ大キイモノデアルカト云フコ
  トヲ同情イタシテ居リマス、多量製造ヲ或
  事業ニ致シテ居リマス、他カラソレト同樣
  ノモノノ更ニ效力アル發明ガ出マスレバ
  或場合ニハ破產ヲシナケレバナラヌト云フ
  コトニナリマスカラ、製造家諸氏ノ心勞ノ
  程ヲ御察シ申ス次第デアリマスソレデ此
  獨逸ノ支配人ノ申シマスコトハ此飛行機
  ノ如キモノノ製造ニ付テ最モ良キ合理化ハ、
  優秀ナル設計者ヲ取入レテ置クコトデア
  ル是ガ最モ良キ合理化デアル、先手々々
  ト打ッテ他ノ發明ニ後レザルヤウニシテ行
  クコトガ、最モ合理化デアルト云フコトヲ
  申シテ居リマス、設計者モ斯クノ通リデア
  リマスガ、又之ニ要スル所ノ金デアリマス、
  良キ物、良キ物ト造アテ參リマスレバ自然
  ニ金ガ掛リマス、ソレデ此頃英國ノ公立飛
  行學會ト申シマセウカ、「ローヤル·エイロ
  ノーチヤル·ソサイテイー」ノ會長ガ過去十
  年間ノ航空界ノ進步ノ狀況ヲ取調ベタモノ
  ガ近頃屆キマシタ、之ニ依ッテ大體ヲ見マ
  スト、陸海軍及ビ航空〓究所デ使ヒマス所
  ク政府ノ豫算、議會ノ協賛シタル豫算額ガ
  數年間ノ間曲線ニシテ現ハレテアリマス、
  之ニ依リマスト英帝國ニ於テモ米國ニ於テ
  モ、其豫算ノ額ハ大約二億圓デアリマス
  此過去十年間每年凡ソ二億圓ノ豫算ヲ掛ケ
  テ居ルノデアリマス、伊太利、獨逸、佛蘭西
  等ハ約一億圓ノ豫算ヲ使テ居ルヤウデア
  リマス、ソコデ我ガ航空界ノ豫算ヲ飜シテ
  見マス、ザット寄セ算ヲ致シテ見マスル所、
  陸海軍竝ニ〓究所ノ豫算ヲ合セマウテ三百三
  十何万圓ト云フヤウナ數ニナリマス、遞信省
  ノ豫算ハ省キマス、是ハ外國ノ表モ、民間
  飛行ノ補助竝ニ郵便飛行等ハ省イテアリマ
  ス、陸海軍及ビ〓究所ダケデアリマスカ
  ラコチラモ斯ウシテ比較イタシマストド
  ンナモノカト云フニ、之ヲ二億ノ豫算ニ比
  較イタシマスレバ我國ノ豫算ハ僅ニ其二
  「ペルセント」ニ足リマセヌ、私ハ航空機ヲ
  以テ戰爭ノアルコトハ······無キコトヲ衷心
  ヨリ祈ッテ居ル者デアリマス、併ナガラ若シ
  萬々一飛行機ヲ以テ戰爭スル如キ機會ガ出マ
  シタナラバ、此二「ペルセント」ノ勢力ヲ以テ
  所謂五十倍ノモノト相對スルコトニナリマ
  シタナラバ如何デアリマセウカ、之ヲ思ヒ
  マスレバ軍艦ガ七割ニナルトカ、六割ニナ
  ルトカ云フコトハ殆ド此議場ニ於テ議スルニ
  足ラヌ問題デナカラウカト云フ感ヲ起シマ
  ス、斯ウ云フコトハ勿論豫算バカリアッテ
  モ人ガナケレバ出來マセヌ、人ヲ造ルニハ
  追ミニ進ミマセヌケレバ、急造ハ出來ナイ、
  是ト同時ニ之ニ關係アル所ノ空中ノ〓究、卽
  チ高層氣象ノ如キハ是カラ先ノ飛行機ノ働
  キ場所トナル所ノ高層氣象、續イテハ下層氣
  象ニ付テモ明ニ關係シマスガ、之ヲ〓究シ
  テ置ク如キハ決シテ忽セニスベキコトデナ
  イト存ジマス、今度ノ國際ノ企テノ如キハ、
  我國ダケデアリマシテモ是非ニ行ッテ見タ
  イノデアリマス、而シテ之ヲ行ヒマスコト
  ハ一箇國ダケデヤッタノデハ斯ウ云フ高層
  ノコトハ分リマセヌ、ドウアッテモ各國協
  力ニ挨タナケレバナラヌ、是ガ卽チ明年カ
  ラ行ヒマス所ノ國際協力ニ依ル〓地觀測ノ
  事業デアリマシテ、我ミノ見落シテハナラ
  ヌ所ノ事業デアルト信ジマス、ソレデ昨ノ
  八月「レニングラード」カラ此準備委員會ノ
  決議ノ樣子ヲ書キマシテ、當事者タル所ノ
  中央氣象臺長ニ報告致シマシタ、ソレニ付
  テ必ズ今年ノ豫算ニ其準備費ガ出テ居ルコ
  トト考ヘマシテ調ペマシタガ、私ニハ見當
  リマセヌ、之ヲドウ御取計ヒニナリマスル
  カ之ヲ伺ヒマス、或ハ來年ノコトデアルカ
  ラ、其時デモ宜カラウト云フ御考ヘモアル
  カ知レマセヌガ、斯ウ云フコトハ前以テ能
  ク下拵ヘヲ致シテ置キマセヌケレバ兎角
  手違ヒノ起リ勝チナモノデゴザリマシテ
  本員モ自ラ苦ガイ經驗ヲ持ッテ居リマス、ソ
  レデ此「レニングラード」ニ於ケル準備委員
  會ノ決議ノ一項ニモ、豫備觀測ヲスル、其
  豫備觀測ハ成ルベク一年前カラ、少クモ六
  箇月前カラ始メルコトト云フ一箇條ガゴザ
  イマス、殊ニ我國ハ遺憾ナガラ外國ニ註文
  ヲ致サナケレバ間ニ合ハナイ品ガアルノデ
  ゴザイマス一ツノ例ヲ申シマスレバ今
  ノ一万「メートル」以上ノ氣象ヲ測リマスル
  爲ニ、今度ノ計畫ノ爲ニ特ニ獨逸、露西亞ニ
  於テ〓究イタシマシタ自動無線氣象觀測機
  トデモ申ス如キ、零下五十度以下ノ寒イ高
  イ所ニ至リマシテ自動的ニ無線電信ヲ發シ
  テ其處ノ溫度、濕度等ヲ下ニ知ラセルコト
  ノ出來ル機械ガ出來マシタ、零下五十度以
  下ニ於テ效力ノアル電池ノ如キハ矢張リ
  英米國ニ於テモ此獨逸ノ〓究所タル「リン
  デンベルグ」ニ註文ヲ致ス相談ガゴザイマ
  シタ、是等ニ對シテ來年度ノ豫算ガナクテ
  ハ何トモ致方ガアルマイカト心配ヲ致シマ
  ス、曩ニ若槻内閣ノ時デゴザイマシタ、奧
  丹後地震ノ際ニハ特ニ責任支出ヲセラレマ
  シテ研究ヲ遂ゲタノデアリマス、其道ノ方
  カラノ請求ノ半バニモ達シナイ額デアリマ
  シタガ幸ニ陸海軍ノ熱心ナル御助力ニ依
  リマシテ〓究スルコトガ出來マシテ、之ニ
  依ッテ今日ノ所謂地塊運動ナルモノガ愈、へ
  明カニナリマシテ、昨年ノ「ストックホルム」
  ノ會ニ於テモ今村博士ヨリ報告ヲ致シマシ
  テ、各國ニ於テモ地震ノアル國デハ此日本
  ガシタヤウナ方法ニ依ッテ、地塊運動ヲ〓究
  スルコトヲ勸メルト云フ動議ヲ全會一致デ
  決シク次第デアリマス、序デナガラ陸海軍
  大臣ニ伺ヒマスガ、來年、再來年ニカケテ
  斯樣ナ高層氣象、一般氣象ニ付テノ國際計
  畫ガアリマスルカラ、御都合ノ出來ル限リ
  是等ニ對シテ前丹後地震ニ對スル如キ御助
  力ヲ賜ハルコトガ出來マセウカ、御言葉ヲ
  伺ヘマスレバ誠ニ幸ヒト存ジマス、要ルニ
  此準備費ノ御組入ニナラナイコトハドウ云
  フ御都合デアリマスカ、ソレヲ伺ヒマスノ
  デアリマス
  〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=8

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• 009・井上準之助

  ○國務大臣(井上準之助君)　只今ノ田中館
  博士カラノ御質問ニ對シテ、豫算關係デゴ
  ザイマスカラ私カラ答辯イタシマス、極地
  觀測ノコトハ昭和七年ノ八月カラ昭和八年
  ノ八月三十一日ニ至リマス十三箇月間ノ觀
  測デアリマシテ、之ニハ建物ヲ要シマス
  其建物及ビ觀測ヲ致シマスル種々ノ費用
  ハ昭和七年ノ豫算ニ計上スル覺悟ト用意
  ヲ致シテ居ル次第デアリマス、當局ノ者ト
  打合セマシタ結果ガ昭和七年ノ豫算デ間ニ
  合フ、差支ハナイト斯ウ云フコトニナッテ居
  リマスカラ、昭和七年ノ豫算ニ計上イタシ
  マシテ御協賛ヲ仰グ積リデ居リマスカラ、
  御承知置キヲ願ヲテ置キマス
  〔國務大臣宇垣一成君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=9

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• 010・宇垣一成

  ○國務大臣(宇垣一成君)　只今、田中館博
  士ノ御質問ノ中ニ、陸軍ニ關係シタコトガ
  若干含マレテ居ックヤウデアリマスルカラ御
  答ヲ申上ゲマス、御說ノ通リ、斷エズ十分
  ナル〓究ヲ遂ゲテ置イテ、サウシテ有事ノ
  際ニハ常ニ斬新ノ物ヲ以テ軍ヲ整備シテ相
  手ヲ制シテ行クト云フコトハ、全體ニ於テ、
  一般的ニ是ハ極メテ必要ナコトデアリマ
  ス殊ニ御述ベニナリマシタ此飛行機デア
  ルトカ、或ハ電氣ノ利用ト云フコトニ於テ
  ハ一層ソレガ肝要デアラウト我こモ考へ
  テ居ルヤウナ次第デアリマス、所ガ只今御
  述べニナリマシタ通リ、其〓究調査ト云フ
  方面ニ使用イタシテ居ル豫算ノ額ト云フモ
  ノハ御說ノ通リ尙ホ極メテ微少ナルモノ
  デアリマス、之ニ滿足イタシテ居ル者デモ
  ナク、陸軍ニ於テ更ニ今後、軍備ノ整理ヲ
  計畫ヲ致シテ調査ヲ進メテ居リマスルガ、
  其結果ニ於テハ、マダ今日ハッキリト申上ゲ
  ル譯ニハ參リマセヌケレドモ、其中ニ於テ
  此〓究調査ト云フモノニ大イニ力ヲ用ヒ、
  此方面ニモ格段ニ費用ノ多クヲ投ジタイ、
  斯ウ云フ考ヲ以テ今調査ノ進行ガ致シテ居
  ルヤウナ次第デアリマスカラ、左樣御諒承
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=10

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• 011・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是デ昭和六年度
  豫算案外二件ニ對スル質疑ノ通〓ハ終リマ
  シタ
  〔田中館愛橘君發言ノ許可ヲ求ム〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=11

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• 012・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　田中館君ハマダ
  質疑ヲ爲サル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=12

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• 013・田中館愛橘

  ○田中館愛橘君　質疑ノ續デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=13

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• 014・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　田中館君ノ質疑
  ハ終了ヲ〓ゲタト議長ハ考ヘマシタ故ニ、
  通〓者ハ終了イタシタト申述べマシタガ、
  ソレハ議長ノ推察誤リデゴザイマシテ、田
  中館君ハ再ビ質疑ノ續デゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=14

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• 015・田中館愛橘

  ○田中館愛橘君　極メテ簡單ナコトデゴザ
  イマス、此席ヨリ申述べマスコトヲ御許シ
  ヲ願ヒマス

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• 016・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマ
  ス、宜シウゴザイマス

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• 017・田中館愛橘

  ○田中館愛橘君　只今ノ大藏大臣竝ニ陸軍
  大臣ノ御答辯ニ付テハ大體ニ於テ滿足イ
  タシマシタ、唯私ノ伺ヒタイト思フノハ
  外國註文ヲ要スル物ハ六年度ニ於テ致シマ
  セヌケレバ、七年度ノ仕事ニ間ニ合ハヌカ
  ト思フノデアリマス、其點ハ當局ハソレデ
  宜イト御認メデゴザイマスカ、一言···
  〔國務大臣井上準之助君演壇ニ登ル〕

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• 018・井上準之助

  ○國務大臣(井上準之助君)　只今ノ再度ノ
  御質問デアリマスガ、大體、文部當局者、
  大藏省ト打合セマシテ、只今、田中館博士
  ノ言ハレルヤウナ外國註文、其他富士山ノ
  頂上ノ建物、總テ間ニ合フ考デ用意ヲシテ
  居ル次第デアリマス

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• 019・田中館愛橘

  ○田中館愛橘君　之ヲ以テ本員ノ質問ハ終
  リマス
  〔小野塚喜平次君發言ノ許可ヲ求ム〕

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• 020・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　小野塚君ハ

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• 021・小野塚喜平次

  ○小野塚喜平次君　簡單デゴザイマスカ
  ラ、豫算委員長ニ此席ヨリ質問スルコトノ
  御許シヲ得タイト思ヒマス

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• 022・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　宜シウゴザイマ
  ス

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• 023・小野塚喜平次

  ○小野塚喜平次君　先程、豫算委員長ノ御
  報告ノ中デ忠〓南道廳舍新營費ノ復活ト云
  フコトニ付テノ御報告ガアリマシタ其點
  ニ付テ御伺ヒシテ見タイコトハ、其討議ノ
  際ニ、衆議院ノ先議權ニ聯關イタシマシテ、
  先議權ノ外、法律上、憲法上ノ解釋トシテ、
  貴族院ハ相當ノ權限ヲ豫算ニ對シテ持ヲテ
  居ルト云フコトハ何人モ異存ナイト思ヒマ
  スガ其實際ノ立憲政治ノ運用上ニ於テハ
  頗ル微妙ナル關係ヲ、本邦ニ於テモ持チ、
  又各國ニ於テモ持シテ居クタコトハ今喋々
  スルノ必要ハナイト思ヒマス、デ私ハ此問
  題ニ對シテ相當重キヲ置キマシテ、昭和二
  年ノ春ノ議會ニ於キマシテ本會議ニ於キマ
  シテモ亦議院法中改正法律案ノ特別委員會
  ノ一委員ト致シマシテモ、其意味ニ於テ發
  言ヲシテ居ルノデアリマス、其緣故ヲ以チ
  マシテ、此忠〓南道ノ廳舍ノ新營費ト云フ
  コトガ、色ミノ見地カラ此間題ヲ御〓究ニ
  ナッタデアラウト思ヒマスシ、ソレハ又必要
  ナコトト思ヒマス、單ニ衆議院デ或事ヲ決
  議シテ來タカラ萬事盲從シロト云フヤウナ
  意味ハ私ハ毛頭持ッテ居リマセヌ、併ナガラ
  衆議院ノ議決シタコトニ對シテ豫算ニ手ヲ
  觸ルルト云フコトニ關シテハ餘程重大ナ
  ル事由、其事由モ隱レタル事由デハナクシ
  テ、識者モ國民一般モ、サウデアル、成程
  ドウモ衆議院ノ議決ガイケナイ、此際ニ於
  テ國民ノ聲ヲ貴族院デ述ベテ吳レタト云
  フ大體ニ於テハサウ云フ風ナ空氣ノア
  ル時ニハ無論是ハ豫算ノ削除ヲスルナリ
  復活スルナリシテ宜イト思ヒマス、併シサ
  ウ云フ重大ナル事由ノ無イ時ニ於テ、單ニ
  其一項目ノ豫算ガ宜イカ惡イカ、斯ウ云フ
  見地カラ見テ此問題ヲ取扱ハルルト云フコ
  トハ私トシテハ非常ニイカヌト思フノデ
  ス、多分委員諸君ニ於テハサウ云フコトデ
  ハナイ、此衆議院ノ議決ト云フモヲニハ相
  當ノ價値ヲ認メル、ケレドモ此場合ニ於テ
  ハ重大ナル理由ガアルカラシテ、殘念ナガ
  ラソレニ反シテ復活スルト、斯ウ云フ風ナ
  御討議當時、其點ニ觸レタ御話ガ有ノタコト
  デアラウト思ヒマスガ、若シ有ッタナラバ其
  要旨ヲ御聽カセヲ願ヒタイノデアリマス

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• 024・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　小野塚議員ニ御答ヲ致
  シマスガ、此問題ニ付キマシテハ非常ニ重
  要ナコトト考ベマシテ、殊ニ特別會計ノ中
  カラ離切シテ討議ヲ致シマシタ次第デゴザ
  イマス、事苟モ朝鮮統治ノコトニ關シ、而モ
  朝鮮ノ輿論ノ如何ニ關シ、又延イテハ其衆
  議院ニ於ケル議決ガ動モスレバ總督ノ統治
  上ノ威信ニ關スルト云フヤウナ、重大ナル意
  味ヲ持ノテ居ル問題デアリマスト云フ所デ、
  分科會ニ於キマシテモ又總會ニ於キマシテ
  モ是ハ愼重ニ審議シテ討論議決イタシタ
  次第デアルト私ハ考ヘルノデゴザイマス、
  併シ直接ニ憲法或ハ其他ノ問題ニ付テ先議
  權云々ト云フヤウナコトハ總會ニ於テハ
  私ハ承ッテ居ラナイ次第デゴザイマス

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• 025・小野塚喜平次

  ○小野塚喜平次君　簡單デゴザイマスカ
  ラ、再度ノ此席ヨリノ發言ヲ御許シヲ願ヒ
  マス

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• 026・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　矢張リ質疑デゴ
  ザイマスカ

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• 027・小野塚喜平次

  ○小野塚喜平次君　今ノ事ニ付テノ質疑デ
  ゴザイマス

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• 028・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　質疑ニ御止メヲ
  願ヒタイ

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• 029・小野塚喜平次

  ○小野塚喜平次君　承知イタシマシタ御
  迷惑ニナラナイヤウニト考ヘテ居ルノデゴ
  ザイマス、見今ノ委員長ノ御話デアルト云フ
  ト、直接ニハ此問題ニハ觸レナカッタ朝鮮
  總督ノ威信トカ、統治上ノ色ミノ點ヲ愼重
  御考慮ナスッタト云フノデアルガ、直接ニ此
  點ニハ觸レテハ居ラヌ、サウ御記憶ニナッテ
  居ルヤウナ討議ハナカッタ、斯ウ云フコトニ
  承知シテ宜イノデゴザイマスカ

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• 030・林博太郎

  ○伯爵林博太郞君　御答ヲ致シマス、此間
  題ニ付キマシテハ分科會ノ內部ノ問題ハ私
  承知シテ居リマセヌカラ其場合ニ或ハ直
  接其方面ノ御討議ガアッタカモ知レマセヌ
  ガ總會ニ於ケル經過ハ只今申上ゲタ通リ
  デゴザイマス、併シナガラ總督ノ威信問題
  ダケニ止マッテ、其方面ノ考慮ガ無カッタカ
  ト云フト、發言サレタ方ハ無クテモ、其邊
  ノ考慮ハ或ハ有ッタカトモ思ヒマスガ、ソレ
  ハ委員長トシテ付度スベキ限リデナイト思
  ヒマスカラ、其點ハ申上ゲマセヌガ、只今
  マデノ申上ゲタ所デ大體御諒察ヲ願ヒタイ

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• 031・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ニテ總豫算ニ
  對スル質疑ハ終ッタモノト認メマス、是ヨリ
  總豫算竝ニ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契
  約ニ關スル件ニ對シ討論ニ移リマス通〓
  順ニ依リマシテ發言ヲ許シマス、藤村男爵
  〔男爵藤村義朗君演壇ニ登ル〕

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• 032・藤村義朗

  ○男爵藤村義朗君　私ハ只今上程中ノ豫算
  案ニ對シマシテ、委員長ノ報告通リ贊成ヲ
  致シタイト欲スルモノデアリマス、併ナガ
  ラ私ハ本豫算ヲ以テ今日ノ國家ノ現狀ニ顧
  ミマシテ、適當確實ナル歲計ノ豫算ナリト
  ハ認メテ居リマセヌ、誠ニ財政ノ基礎ヲ不
  安ナラシムル惡博算デアルト思ッテ居リマ
  ス實ハ私ハ此豫算ニ對シテハ全然反對ヲ
  致シタイノデアリマスケレドモ、丁度只今
  小野塚博士ノ仰セラレマシタ如キ、豫算先
  議權ニ對スル考モアリマス、又今日ノ情勢
  ニ於キマシテ本豫算ヲ否決シ去リマスト
  云フコトハ妥當デナイト考ヘマスルノデ、
  已ムヲ得ズ贊成ヲ致シタ次第デアリマス、
  ゾレ付キマシテハ私ノ良心ニ顧ミマシテ
  唯獸シテ贊成スルコトハ出來ナイ、一應ノ所
  見ヲ述ベテ贊成ヲ致シタイト存ズルノデア
  リマスノデドウゾ暫クノ間御〓聽ヲ煩ハ
  シタイト仔ジマス現內閣ハ財政ノ整理緊
  縮財界ノ現狀打開ヲ以テ起タレタ內閣デ
  アリマス、而シテ財政ノ整理方法トシテハ
  豫算ノ緊縮方針、非募債主義確立實行ヲ聲
  明公約シテ居ラレルノデアリマス、私ハ政
  府ノ根本方針ニ對シマシテハ
  〔副議長公爵近衛文麿君議長席ニ著ク〕
  全然贊意ヲ表スル者デアリマス、番ニ贊成
  イタシマスルノミナラズ、是非共ソレヲス
  ル必要ガアルト云フコトヲ私ハ此數年來常
  ニ申シテ居ル所デ、此壇上ニ於キマシテモ
  屢、之ヲ速ベテ居ル所デアリマス、ソレデ私
  ガ政府ニ期待イタシマス所ハ財政ノ整理
  緊縮トシマシテハ現在中央及地方ヲ通ジ
  テ三十億以上ノ此尨大ナル歲出入ヲ掌ッテ
  居リマスル所ノ政府ノ行政ノ全部ニ亙ッテ、
  其機關及ビ運用ヲ徹底的ニ合埋的ニ整理ヲ
  シテ大英斷ヲ以テ明治維新以來政府部內
  ニ蟠居欝積シテ居リマスル總テノ無駄、冗
  費濫費及情實情弊ヲ排除打破イタシテ、
  最モ少ナイ最小限度ノ經費ヲ以テ最大限度
  ノ能率ヲ擧ゲルト云フ、是コソ本統ノ政務
  ノ經濟化ト云フ此根本整理ヲシテ貰ヒタイ、
  而シテ他方ニ於キマシテハ財政ノ根本整理
  ニ依ッテ國民負擔ノ均衡ト公正ヲ圖リ、同時
  ニ今日國民ガ擔稅ノ過重ニ苦ンデ居リマス
  ル租稅ノ負擔額ヲ國民所得ニ適應シタル額
  ニマデ輕減イタシテ、民力ノ休養及發展ヲ
  圖リ、而シテ若シ餘裕ガアリマシタナラバ
  其餘リハ國家ノ進步發達ニ必要ナル各種ノ
  事業ニ振當テテ貰ヒタイト私ハ斯ノ如キ
  整理緊縮ヲ政府ニ期待シテ居ノタノデアリ
  マス、一部デハ斯樣ナ徹底的ノ整理ナドハ
  到底出來ルモノデハナイト云フ說モ多イト
  承ハリマス、併ナガラ私ハ私ノ只今申シマ
  シタ所ヲ以テ、決シテ架空ノ說デアリ空理
  空論デアルトハ存ジテ居リマセヌ、必要デ
  アレバ何時デモ其具體的方案ヲ提出スルノ
  用意ヲ私ハ持フテ居ル、唯ソレガ出來ルカ出
  來ナイカハ政府ノ決心ト斷行ノ如何ニ懸ッ
  テ居ルコトト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、
  政府ハ財政ノ整理緊縮ヲ唱ヘラレ、其全豹
  ニ至ッテハ五年度豫算編成ニ於テ之ガ實現
  ヲ期スルト云フコトヲ一昨年聲明セラレマ
  シタ、而シテ此五年度ノ豫算ハ不幸ニシテ
  議會ノ解散ニ依ッテ不成立ニ終リマシタノ
  デ六年度ノ豫算、卽チ茲ニ出テ居リマス
  ル豫算ニ依クテ必ズ政府ハ完全ニ其公約ヲ
  果サレ徹底的合理的ナ整理緊縮ト時局ノ
  大策ニ關スル抱負經綸トヲ其中ニ織込ンダ
  消極的デハアリマセウケレドモ生氣アル
  光彩ノアル、建設的ノ分子ヲ含ンダ豫算ヲ
  我ミニ示サレルデアラウト云フコトヲ窃
  ニ期待シテ居リマシタケレドモ、北期待ハ
  全ク裏切ラレタノデアリマス今日我ミノ
  手許ニ出テ居リマスル豫算ハか實ニ失禮デ
  ハアルガ、支離滅裂ノ辛ウジテ編成シ得
  タル遺繰リ豫算デアリマス啻ニソレガ
  遣繰リ豫算ナルノミナラズ、其內容ヲ見テ
  見マスレバ見レバ見ル程財政ノ基礎ニ容
  易ナラヌ龜裂ヲ生ジ、又歲計出入ノ均衡ニ
  甚シイ缺陷ノアルト云フコトヲ見ルニ至リ
  マシテ、實ニ我〓ハ我ガ財政ノ前途ニ大ナ
  ル不安ヲ感ゼザルヲ得ナイト云フコトヲ痛
  切ニ考ヘサセラレルノデアリマス、勿論今
  日ノ時節柄、豫算ノ編成ニ付キマシテ大藏
  大臣初メ政府當局ノ御苦心ハ、誠ニ私ハ御
  同情ニ餘リアルト思ヒマス、併ナガラ本豫
  算ヲ見マスレバ實ニ餘リニ無爲無策、唯
  目先キノ辻褄ヲ合セルト云フコトノミデ
  何等財政ノ將來ニ亙ッテ考ヘテ居ラレル所
  ハナイノデアリマス、ソレハ政府カラ我ミニ
  配付サレマシタ政府ノ財政ノ十年計畫ノ〓
  算表ヲ見マシテモ、直ダニ分ル話デアリマ
  ス、而シテ其整理方針ノ殆ト何等ノ跡ヲモ
  認メ得ラレナイト云フコトハ先達テ私ノ
  此壇上カラノ質疑ニ對スル政府ノ御答辯ニ
  依リマシテモ、節約ガ一億七千万圓アル、
  繰延ベガ二億二千万圓アル、繰延ベト云フ
  コトハ節約デハナイケレドモ、其年ノ歲出
  ヲ減ズルト云フ上カラ言ヘバ是モ亦一種
  ノ節約ト看做シテ宜イト云フ如キ政府ノ御
  答辯デアリマシタ、私ハ多言ヲ要シマセヌ、
  繼續事業ノ繰延ハd實ハ後年ノ財政ニ非常
  t
  ナル障碍ヲ招來スル極メテ危險ナル遺繰リ
  デアリマス、而シテ之ヲ以テ節約ノ一種ナ
  リト云フニ至リマシテハ實ニ其奉强附會
  モ甚シイモノト私ハ言ハナケレバナラヌト
  思ヒマス、國家ノ經濟ハ不良事業會社ノ遣
  繰リ算段トハ全ク違フテ居ルト云フコトハ
  ドウカ政府ハ篤ト頭ニ入レテ置イテ戴キタ
  イト私ハ思フノデアリマス、政府ニ於カレ
  マシテハ頻ニ整理ヲシタ、緊縮ヲシタト言
  ウテ居ラレマスルケレドモ豫算ノ人件費
  ニ於テ、又事務費ニ於テ、或ハ又國防費ニ
  於テ、或ハ又事業ノ中止繰延ニ於キマシテ
  實際如何ナル節約ヲナシ、如何ナル整理ヲ
  ナサレタト云フコトニ付キマシテハ、政府
  ハ的確ニ我ミニ示サレル所ノモノハ何モノ
  モ無イノデアリマス、唯幾多質疑應答ハア
  リマシタケレドモ、悉ク·····私ハ全部ト申
  シテモ宜カラウト思ヒマスルガ極メテ巧
  妙デ誠シヤカデハアリマスルガ、其場限リ
  ノ遁辭デアリマス、サモナケレバ顧ミテ他
  ヲ言フト云フ類ニ過ギナカッタノデアリマ
  ス、政府ノ聲ノ大ナルニ似ズ、何等整理緊
  縮ノ實ガ擧ガッテ居ラヌト云フコトハ、過日
  此壇上デモ申上ゲマシタケレドモ、其後政
  府ノ應答ヲ承リマシテ、多々益〓私ノ所信ヲ
  確カメルノミデアリマス、又政府ノ財政政
  策ノ中隨一ノ誇トシテ居ラレ而シテ屢〓聲聲
  明セラレテ居リマスル此非募債方針、是ハ
  モウ皆サンモ御承知ノ通リ其後現實ニ破綻
  シ抛棄サレテ居ルノデアリマス、唯今日デ
  ハ其殘骸ヲ止メテ居ルニ過ギナイ實際デア
  リマス、故ニ私ハ過日政府ニ向ッテ斯樣ナ極
  メテ無意義ナ主義ニ拘泥サレテ、サウシテ自
  繩自縛ノ愚ヲ守ラムヨリハ寧ロ潔ク政府
  ノ故策ノ中カラ此看板ハ撤囘サレタラ如何
  デアルカト云フコトヲ御勸告申上ゲタニ對
  シマシテ、政府ハ我〓ハ毛頭左樣ナ考ハ持。ラ
  テ居ラヌ、財政ノ現狀ニ於テハ失業救濟ノ
  如キ非常特別ノ場合ニハドウモ公債ニ依ル
  ノ外ナイ、且ツ今囘ノ募債ハ一時的ノモノ
  デアルカラ決シテ差支ナイト云フ御答辯デ
  アッタノデアリマス、又同僚ノ一人ノ質疑ニ
  答ヘラレマシテ非募債主義ハ原則デアル、
  原則ニハ例外ノアルト云フコトハ當然デア
  ルト云フヤウナ答ヲシテ居ラレマス我國
  ノ現狀ニ於キマシテハ失業救濟ノミガ非常
  特別ノ事件デハナイノデアリマス、我國現
  在ノ事態ソレ自身ガモウ旣ニ總テ非常特別
  ノ場合デアリマシテ、獨リ失業問題ノミガ
  非常特別ト云フコトハ決シテ私ハ言ヘヌト
  思ヒマス、失業救濟以上ニ非常特別ノ整
  理ヲ要スル、處理ヲ要スル一層重大ナル
  問題ハ多々アルト私ハ思テテリマス、又一
  時限リトカ一年限リト云フヤウナコトモ仰
  セラレマスケレドモ、是ハ實際ニ徵シテ不
  可能ノコトデアリマス唯政府ガ小細工的
  ニ斯樣ナコトヲ申サレルノニ過ギナイト私
  ハ存ジテ居リマスドウモ非常特別ト云フ
  如キ極メテ抽象的ノ言葉ニ依ッテ、自ラノ政
  策破綻ノ失敗ヲ蔽ハムトセラレルガ如キ
  ハ私ハ斷ジテ取ラヌ所デアリマス、又原
  則ノ例外ト云フガ如キコトモ是モ一種ノ議
  論ニ過ギナイ、主義ノ實行ニ例外ヲ許スト
  云フガ如キコトハ取モ直サズ主義ノ破綻ニ
  外ナラヌノデアリマス、國民ニ對スル公約
  ノ破棄ハ政治道德上カラハドウシテモ是ハ
  責任問題ニナラナケレバナラヌ、事情ノ變
  化デアルトカ、或ハ非常特別ノ場合デアル
  トカ云フ名ノ下エ、公約ヲ一片ノ反古同樣ニ
  破棄シ去ッテ、政治上ノ責任ナシトハ私ハド
  ウシテモ申サレヌト思ヒマス、斯樣ナコト
  ヲナサラズト、徒ラニ面目ニ拘泥スルコト
  ナク、極夕淡白ニ今日ノ必要ハ政策ノ轉換
  ヲ餘儀ナクスルト云フ言明ヲナサレタ方
  ガ、ドレ程賢明ナル正直ナル御處置デアル
  カモ知レヌト私ハ思ッテ居ルノデアリマス、
  以上ハ政府ガ特ニ標傍シテ居ラレマス財政
  政策ガ實ニ有名無實デアルト云フコトノ〓
  要ヲ結論的ニ申上ゲタバカリデアリマス、
  其詳細ニ至リマシテハモウ議會ノ開會以來
  質疑ニ質疑ヲ重ネ應答ニ應答ヲ積ンデ居リ
  マー、皆サン能ク御承知ノコトト存ジマス
  カラ私ハ此上ノコトハ申シマセヌ、唯私ハ
  本豫算カラ見マシテ、今日朝野ノ間ニ重要
  視サレテ居リマスル歲入見積リノ正當デア
  ルヤ正當デナキヤト云フ此點カラ、財政ノ
  基礎ニ大ナル不安ヲ懷イテ居ルト云フコト
  ニ付テ、一應ノ考察ヲ致シテ見タイト思ヒ
  マス、是ガ今日我ミガ財政ノ將來ニ付テ最
  モ心配ヲシテ居ル問題デアルノデアリマ
  ス、政府ハ昭和六年度ノ歲入ノ見積リヲ爲ス
  ニ當リマシテ、大體昭和五年度ノ實數ヨリ
  推シテ計算ヲ立テタノデアルト云フコトヲ
  我ミニ說イテ居ラレマス、故ニ六年度ノ豫算
  ガ確實デアルカ不確實デアルカ、其豫算ニ
  實行性ガアルカナイカ、又歲出入ガ果シテ
  均衡ヲ得テ居ルヤ否ヤト云フコトヲ知ル爲
  ニハ昭和五年度ノ豫算ノ實蹟ヲ見レバ直
  グニ分ルノデアリマス、ソレニ付キマシテ
  ハ甚ダ御迷惑ナ次第デアリマスケレドモ、
  少シク數字ヲ竝ベテ申上ゲナケレバナラヌ
  ト思ヒマスドウゾ暫クノ間ノ御辛抱ヲ願
  ヒタイ、極ク簡單ニ殆ド結論的ニ申上ゲル
  積リデアリマス、先ヅ五年度豫算ノ實蹟·ニ
  付テ見マスルノニ、昨年ノ十二月末ニ於ケ
  ル歲入國庫現ニ計依リマスレバ、租稅收入及
  ビ印紙ノ收入、ソレカラ官業及官有財產ノ
  收入ノ此三科目ニ於キマシテ、昭和四年度
  卽チ前年度同月ニ較ベテ五千七百万圓ノ減
  額ヲ示シテ居ルノデアリマス、故ニ五年度
  全部全年度ヲ通ジテハ、此三科目ダケデ約
  一億六百万圓ノ減收トナルノデアル、ソレ
  デ其他ノ科目ニ於テハ五年度豫算同樣ノ收
  入ガアルト致シマシテモ、四年度決算ニ較
  ベテ六百万圓ノ減收ハアルノデアリマス
  サウシテ其外ニ剩餘金ガ四年度決算ニ較べ
  テ、五年度デハ約一億百万圓ノ減收デアル、
  ソレカラ公債ガ同ジク約一億圓ノ減收デア
  リマスカラ、五年度ノ實蹟ハ四年度決算ニ
  較ベテ三億一千四百万圓ノ減收トナルノデ
  アリマス、其中二億五千八百万圓ト云フモ
  ノハモウ確定額デアリマス、五千六百万圓
  ダケガ推算ノ額デアリマス、卽チ四年度決
  算ノ十八億二千六百万圓カラ、此減收額三
  億一千四百万圓ヲ差引イタ十五億一千二百
  万圓ト云フモノガ、五年度ノ歲入額デアリ
  マシテ之ヲ政府ノ實行豫算額十六億八百
  万圓ニ較ベマスルト云フト正ニ九千六百
  万圓ノ減收デアリマス所ガ一方五年度ノ
  歲出ハ十六億八百万圓デアリマスルケレド
  モ、前年度繰越一億五百万圓ト云フモノガ
  アル、之ニ對スル引當ノ財源ハ一文モナイ
  譯デアル、凡ソ計算上ニ於キマシテハ繰越
  ハ一種ノ經費デアリマス、故ニ此經費ニ財
  源ノ伴ハナイト云フコトハ全然ナイ譯デア
  リマス其財源ガ此一億五千万圓ニ引當ガ
  ナイ四年度決算デ九千万圓ノ剩餘金ハ出
  テ居リマスルケレドモ、ソレモ旣ニ五年度
  豫算ノ財源ニ引當濟ニナッテ居リマス、ソレ
  故ニ繰越ノ一億五千万圓ニ對シテハ何ノ財
  源ノ引當モ無イ、卽チ五年度ニ於テ使フ歲
  出豫算十七億一千三百万圓ニ對シマシテ、
  歲入ハ十五億一千二百万圓デアリマスルカ
  ラ兼引二億百万圓ト云フモノガ實際ノ不
  足額トナルト、私ハ推算ヲ致シテ居リマス、
  之ニ對シテ政府ハモウ八千百万圓ハ不足デ
  アルト云フコトヲ認メテ、所謂政治ノ經濟
  化トカ何トカ云フ名前デ、彌縫補充ノ引當
  ハアルト云フコトデアリマスカラ、殘リノ
  一億二千万圓バカリノ不足ガドウナルカト
  云フコトガ問題デアリマス、或ハ財源ノナ
  イ繰越ヲ斷行サレテ六年度ニ負擔ヲサセル
  ト云フコトニナルカモ知レマセヌ或ハ幾
  分公債發行ヲサレテ補充シテ、殘リダケヲ
  六年度負擔ニスルト云フコトニナルカモ知
  レヌ、ドッチ道、ソンナコトデモシナケレ
  バ、ドウニモ納マリハ付カヌト私ハ思フノデ
  アリマス、是ガ私ノ推算ニ依ル五年度ノ豫
  算ノ歲入見積ノ不足デアリマス、所ガ今度
  ハ六年度豫算、卽チ本豫算デアリマス、之
  ニ付キマシテハ假令政府ノ言ハレル通リ
  デアルト致シマシテモ前年度ノ繰越ニ對シ
  テ何等ノ財源ノ目當ノナイト云フコトハ明
  白デアリマスノデ、從ッテ六年度ニ於ケル歲
  計ノ均衡ト云フモノハ保タレテ居ラヌト云
  フコトハモウ明カデアルドウゾ尙ホ簡單
  ニ數字的ニ吟味ヲ致シテ見タイト思ヒマス
  カラモウ暫クノ御辛抱ヲ願ヒタイ、六年
  度歲入ノ見積ハ五年度ノ實數カラ推算シタト
  政府ハ言ッテ居ラレルノデアリマスカラ、ソ
  レヲ基礎トシテ推算シテ見マスルノニ、五
  年度ノ減收ハ一億三千六百万圓デアリマス
  カラ、六年度ニ於キマシテモ同樣ト見レバ
  六年度ノ歲入ハ五年度ニ比べテ二億七千二
  百万圓ノ減トナルト云フ譯デアリマス、然
  ルニ六年度ニ於テハ政府ノ說明ノ通リ專賣
  局益金トカ何トカ色ミノ增收ガ約三千七百
  万圓アリマスルカラ差引經常部ハ二億三
  千五百万圓ノ減少トナル譯デアリマス之
  ニ臨時部ノ減額三千万圓ヲ合計イタシマス
  レバ六年度歲入ハ五年度ノ實行豫算ニ比
  ベテ二億六千五百万圓ノ減少トナル、卽チ
  六年度歲入ハ十三億四千万圓トナッテ、政府
  ノ豫算十四億五千八百万圓ニ比ベマスレバ、
  一億千五百万圓ノ減、卽チソレダケガ收入
  見積過大ヲ示シテ居ルト云フコトニナルノ
  デアリマス是ハ政府ノ總テ御示シニナリ
  マシタ數字ニ依ッテ私ガ推算シタノデアリマ
  スカラ大體ニ於テ間違ヒノナイ積リデアリ
  マス、數字上ノ不足ハ斯クノ通リト私ハ思フ
  ノデアリマス、尙ホ財界ノ現狀ニ顧ミマシテ
  昨年來ノ不景氣深刻化ノ實際ノ影響ハ六
  年度ニ於テ最モ如實ニ現ハレテ參ルモノト
  スレバ、歲入ノ惡化ハ實ニ是以上ノモノガ
  豫想ゼラレルニ於ギマシテ、財政ノ不安バ
  益、大ナラザルヲ得ナイト、私ハ思フノデア
  リマス、故ニ政府ハ政府トシテ當然ナサレ
  ナケレバナラナイ所ノ煙草ノ値段ノ引下モ
  ナサレ得ズ、或ハ恩給ノ財源ヲ特別會計ニ
  求メテ見タリ、或ハ郵便貯金利子ノ引下ヨ
  リ得タル預金部ノ利益ヲ持出シテ見タリ、
  或ハ國債ノ整理ニ引當テタ賠償金マデモ使
  ハナケレバナラヌト云フガ如キ、無理ヲ敢
  テサレマシテ、向ホ其上國家事業トシテ必
  要ナル各種ノ事業ヲ全部打切ラレテ此歲
  入不足ノ不安緩和ニ努メラレツツアルノデ
  アリマス、ソコヘ持ッテ來テ政府ハ民力涵養
  ノ爲ナリナドト唱ヘラレマシテ、明年度ニ
  於テ九百万圓ノ減稅ヲ企テラレテ居ルノデ
  アリマス、今日出テ居リマスル減稅案、所
  謂減稅案ト云フモノハソレデアリマス併
  ナガラ其手品ノ種ヲ割,テ見マスレバ、減稅
  ドコロノ話デハナイ、其實一方カラハ減稅
  額以上ノ負擔增額ノ手段ヲ行ッテ居ラレル
  ト云フ事實ハ是ハ歷々トシテ指摘シ得ラ
  レルト私ハ考ヘルノデアリマス斯ノ如ク
  實ニ不安ハ大キイノデアル、而モ現在ノ狀
  態ニ於テ此不安ヲ取除クト云フコトハ誠
  ニ困難ナコトト思ヒマス、私考ヘマスルノ
  ニ此六年度ノ豫算ガ確實ニ實行シ得ラル
  ベシトハ、全國民ヲ擧ゲテ誰一人サウ思ヶテ
  居ル者ハナイト思ヒマスルガ、就中最モ不
  安ヲ感ジテ居ラレル御方ハ大藏大臣ソノ人
  デハナイカト云フコトヲ私ハ思フノデアリ
  マス
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  私ハ此壇上ニ立ッテ決シテ證據ノ無イコト
  ハ申シマセヌ、碓高談放言シテ獨リ自カラ
  快シトスル者デハアリマセヌ、六年度豫算
  ニ於テ、政府ガ大藏省證劵發行ノ最高限度
  ヲ、五年度ノ一億五千万圓カラ一躍シテ二
  億五千万圓ニ增額サレタ事實ガ、收入及支
  出ノ不均衡ニ關シテ政府ガ最モ不安ヲ感ジ
  テ居ラレルト云フ、是ハ的確ナル證據デア
  リマス、豫算ノ實行上不安ガアレバコソ
  此用意ヲ必要トサレタノデアリマス、政府
  ガ政府自身、自己ノ豫算ニ信念ガ無イカラ
  コソ、此〓濟ヲ大藏省證劵ニ向ッテ求メラレ
  タノデアリマス、二億五千万圓ハ政府ニ豫
  算ト云フモノガアッテ以來未曾有ノ高イ額
  デアリマス、證劵發行ノ限度ハ是マデハ大
  體五千万圓ガ通常デアリマシタソレガ本
  年度卽チ五年度ニ於テハ一億五千万圓ニ
  ナッテ居ル而シテ本豫算、卽チ明年度ニ於
  テハ一罐シテ二億五千万圓ニナルノデアリ
  マス、十六億圓十七億圓ノ歲計豫算ノ時ス
  ラ、此大藏省證劵ノ發行額ハ五千万圓位デ
  アッタ、或ハ一億ノ時モアッタカモ知レマセ
  ヌ、ソレガ豫算ガ十四億圓臺ノ今日、二億
  五千万圓ト云フコトハ如何ニモ私ハ不可解
  千萬ニ思フノデアリマス、政府ノ御答辯ニ
  依レバソレハ仕方ガナイ、今日我ミハ剩
  餘金ト云フモノヲ持ノテ居ラヌカラ、ドウモ
  遣繰リガ困難デアルカラ、之ヲ增額スルノ
  デアルト云フ御話デアリマスルガ實ハ私
  ハ是ガ抑、ノ大間違ヒデハナイカト思フ、
  剩餘金ヲ收支ノ遣繰リニ利用スルト云フコ
  トヲ以テ、政府ガ原則トシテ居ラレルト云
  フガ如キコトハ大ナル心得違ヒデハナイカ
  ト思ヒマス、又假ニ百步ヲ讓ッテ剩餘金ノ無
  イト云フ理由ヲ此程度ニ認メマシテモ本
  年度卽チ五年度デハ一億五千万圓、是ガド
  ウモ來年度ニナッテカラ急ニ二億五千万圓
  ヲドウシテモ要スルト云フ理由ガ、私ニハ
  ドウシテモ分ラヌ、會計法第七條ノ規定ハ
  國庫金ノ出納上非常時ノ是ハ救濟規定デア
  リマス、卽チ收支ノ不均衡ヲ一時調節スル
  手段ニ、此大藏證劵ノ發行ト云フコトガ認
  メラレテ居ル、從フテ是ハサウ無暗ニ利用ス
  ベキモノデハナイ、又其高モ無暗ニ擴張ス
  ベキモノデハナイノデ、出來ルダケ最小限
  度ニ止メテ置クノガ本當ノコトト私ハ思
  フ此豫算ノコトハ能ク知リマセヌケレド
  モ、常識ニ考ヘマシテモ豫算ト云フモノハ
  常ニ均衡ヲ保"テ行クベキモノ、又行カナケ
  レバナラヌモノト思フ、ソレニ此不均衡、
  收支ノ不均衡ヲ生ズルト云フコトハ何處カ
  此豫算ニ缺陷ガナケレバナラナイ、缺陷ガ
  アル爲デアルト私ハ思フ、從ッテ此不均衡ヲ
  調節スル爲ニ、發行シマスル大藏省證劵ト
  云フモノハ恰度豫算ノ危險ノ度ヲ示ス「メー
  トル」ト同ジヤウナモノデアリマス、危險
  ノ率ガ多ケレバ多イ程發行限度ヲ擴張シ
  少ナケレバ少イ程縮少シテ參ルノデアリマ
  ヌ加之此十四億圓ノ豫算デ、二億五千万
  圓ノ證劵ヲ發行サレテ、果シテ年度內ニ其
  償還ガ返濟ガ出來ルカドウカト云フコ
  トガ非常ナ疑問ト私ハ思フ、凡ソ歲計ハ大
  體ニ於テ每月ノ「バランス」ガ採レテ行クベ
  キ筈ノモノデアルト私ハ思ヒマスルガ、ソレ
  ガマル二タ月以上モ不足シテ參ッテ、ドウシ
  テ年度末ニ至ッテ返濟ガ出來マセウカ、斯ノ
  如キコトハ理論上カラ申シマシテモ、亦實
  際上カラ考ヘマシテモ不可能ノコトト想フ
  ノデアリマス、殊ニ此大藏省證劵ニハ相當
  ノ利息ガツキマス、デアリマスルカラ、政
  府ノ豫定以上ノ收入ノ成績ヲ擧ゲ得ナケレ
  バ此利息ガ拂ヘヌト益ミ以テ困難ハ多
  クナルト思フノデアリマス、元來政府ハ口
  サヘ開ケバ緊縮ノ爲ニ政府ノ財政ノ基礎ハ
  鞏固ニナッタト云フヤウナコトヲ言ハレテ
  居リマスガ、斯ノ如キ證券發行ノ激增ヲ餘
  儀ナタスルヤウナ危險率ノ多イ豫算、致府
  自身ガ收支均衡ヲ非常ニ氣遣ヲテ不安心ニ
  感ゼラルヽガ如キ豫算ヲ作ラレテ、ソレデ
  財政ノ基礎鞏固ナリト云フガ如キコトハ
  實ニ不可解千萬ナコトト私ハ思フノデアリ
  マス、斯ノ如ク此例外規定デアル非常手段
  ヲ恰モ民間ノ不良事業會社ガ、返スコト
  モ出來ナイ單名手形ヲ無闇ニ發行シテ、事
  業ノ彌縫ヲスルノト同樣ニ、政府ガ無反省
  ニ利用スルト云フコトハ、償還ノ成算無キ
  公債ノ濫發ニ依フテ國民ノ負擔ヲ加重セシ
  メル如キハ尙ホ一層ノ罪惡デアルト私ハ
  思フ、而カモ此證劵ノ發行ニハ議會ハ協賛
  シナケレバナラナイ、議會ガ此手形ノ裏書
  ヲスルト云フコトデアリマス是ハ勿論國
  民負擔ノ過重トナルノミナラズヤリクリ
  豫算ノ窮餘ノ結果タル苛斂誅求ヲ一層激成
  スル原因ヲ成スモノデアルト私ハ考ヘルノ
  デアリマス政府ガ非募債非募債ト宣傳セ
  ラレマス裏面ニハ斯樣ナ募債ニモ增シタ
  借金政策ヲ採ッテ國民ニ難儀ヲ懸ケ、國家ノ
  利益ヲ傷ケラレルカラクリガ潜ンデ居ルノ
  デアル、小サナ自分ノ體面維持ノ爲ニ國
  民ノ利益ヲ機牲ニシテ斯樣ナ權道ヲ進マ
  レムヨリハ寧ロ堂々ト募債ナラ募債ヲヤ
  ルト云フ正道ヲ進マレルコトコソ、責任有
  ル政治家ノ當然採ルベキ道デハナイカト私
  ハ考ヘルノデアル、要スルニ昭和六年度豫
  算ハ、大藏省證劵二億五千万圓ト云フ老大
  ナル準備ガナクテハ收支ノ均衡ヲ採ルコ
  トニ危險ナリト云フコトデアリマスレバ
  此豫算案ハ政府自ラ之ヲ撤囘サレテ、更ニ
  雜實性ノアル豫算ヲ編成シテ御提出ニナル
  ベキデアル、若シ又此豫算ニ少シノ不安モ
  ナイト云フ御確信ガアルナラバ證劵ノ發
  行額ヲ政府自身進ンデ一億圓以下ニ訂正サ
  ルベキデアリマス、若シ兩者トモ是ガ出來
  ナイト云フコトデアリマスレバ、我ガ財政
  ノ基礎ハ鞏固ナルモノデナイト云フコトヲ
  我ミハ遺憾ナガラ斷定セザルヲ得ヌノデア
  リマス、斯ノ如ク今日ノ財政ハ行詰ッテ居リ
  マス、モウ行詰リノドン底ニ在ル、經濟界
  ト同ジコトデス、此際ニ於テ此財政ノ難關
  ヲ打開スベキ一縷ノ光明ガ有ルカ無イカト
  云フコトヲ仔細ニ考ヘテ見マスルト、ソシ
  ハ私ガ劈頭ニ申シマシタ行政財政ノ徹底的
  合理的ノ根本整理ニ依ッテ、國家財政ノ基礎
  ヲ立直スト云フヨリ外ニハモウ私ハ何等
  ノ策ハナイト思ヒマス、而モ此事タル實
  ハ政府ガ金ノ解禁ヨリモ、或ハ財界ノ立直
  シヨリモ、何ヨリモ眞〓先ニ大鉈ヲ振ッテ自
  分デ斷行サレネバナラヌコトデ、政府自ラ
  眞ヲ先ニ之ヲヤラレテ、サウシテ緊縮整理ノ
  範ヲ民間ニ示サレナケレバナラヌト云フコ
  トデアルト私ハ思フ、併ナガラアベコベニ、
  政府ハ己レヲ責ムルコトハ極メテ寬デアル
  ガ、人ヲ責ムルコトハ〓ナリト云フ方針ヲ
  執ラレタ、是ガ抑〓ノ間違デアッタト私ハ思フ
  ノデアリマス、政府モ、併ナガラ財政ガ斯
  樣ニ行詰ッテカラ昨年ノ秋ニナラレマシテ、
  漸ク少シ眼ヲ覺マサレタヤウデアル、サウ
  シテ此議會閉會後ニ於テハ財政行〓整理ノ
  調査會ヲ設ケテ調査スルト云フコトヲ言ウ
  テ居ラレルノデアリマス)併ナガラ私ハ致
  府ガ整理ヲ眞ニ徹底的ニ行ハレル意思ガア
  ルヤ否ヤト云フコトニ村テ今日マデマダ
  尙ホ多大ノ不安ヲ懐イテ居ル者デアリマ
  ス此事ニ付キマシテ當議會ニ於ケル政府
  ノ聲明或ハ說明ヲ承ッテ見マスト、政府ノ御
  意思ハ唯單ニ歲出歲入ノ辻褄ヲ合セル爲ニ
  今日ノ場合實ニ已ムヲ得ナイ、外ニ方法ガ
  無イカラ行政財政ノ整理ヲスルノデアル
  ト云フヤウ」ナ意思ガ明カニ見エテ居リマ
  ス、サウシテ過日私ノ質疑ニ對シテモ政
  府ノ御答辯ハ政府ハ行政ノ組織ヲ根本的
  ニ考ヘテ見タイ、又昨年八月以來、行政刷
  新委員會ト云フモノガ出來テ、色ミ〓究シ
  テ相當ノ案モ出來テ居ルト云フコトヲ御答
  辯ニナッタ、又衆議院ニ於キマシテハ行政整
  理ニ依ッデ官吏ノ淘汰ト云フコトハ有リ得
  ルケレドモ、滅俸ハ考ヘテ居ナイト云フヤ
  ウナコトモ言ウテ居ラレルノデアリマス、
  實ニ何ダカ分ラヌ、極メテ茫漢タル、心許
  ナイ所ノ話デアリマス、最近、政府ハ考ヘ
  テ見タイトカ、考ヘテハ居ナイトカ、實第
  譯ノ分ラヌ答辯回避ノ新案ヲ發明サレマシ
  テ、頻ニ之ヲ利用シデオイデニナル、實ハ
  甚ダ無責任極マルコトデハナイカ、怪シカ
  ラヌコトノヤウニ私ハ思テ居ルノデアリ
  マス、又政府部內ノ委員會デ相當ナ案ガ出
  來テ居ルナドト云フコトヲ仰セラレマスケ
  レドモ、役人同士ガ寄ッテタカッテ、自分等
  ノ刷新淘汰ヲスル改善ガ、徹底的ニ立案ガ
  ドウシテ出來ルダラウカト云フコトハ常
  識判斷デ直グニ分ルコトデアリマス到底
  役人ガ自分ノコトヲ彼レ此レ改善スルナン
  ト云フコトハ出來ルモノデハアリマセヌ、
  政府ガ若シ斯樣ナコトヲ當テニシテ居ラレ
  ルヤウデハ今囘ノ調査ニ碌ナ效果ヲ期待
  シ得ルコトガ出來ナイト云フコトハ是ハ
  申サズトモ一目瞭然デアリマス、故ニ私ハ
  此際政府トシテハシッカリ腹ヲ入レ換ヘテ
  戴イテ、眞ニ行政財政ノ維新改革ヲ行フト云
  フ決心ヲ以テ、斷乎タル刷新改善ノ實ヲ擧
  ゲルト云フ方針デ、調査會ノ成立ヲ圖ラレ
  ムコトヲ返ス返スモ衷心ヨリ希望スル次第
  デアリマス、實ハ今回ノ機ヲ逸シマシテハ
  財政ノ根本基礎ヲ確立シテ、其信用安定ヲ
  囘復スルト云フコトハ、今後ハ益〓困難ニナ
  ルト私ハ思ヒマス、ドウカ國家ノ大局カラ
  見マシテ、切ニ善處セラレムコトヲ、私ハ
  政府ニ向シテ冀フ次第デアリマス、要ハ斷行
  ノ一事ニ存スルノミト思フ、斷行ノ決心サ
  ヘアレバ、立派ナ根本整理ガ出來ルコトト
  私ハ存ズルノデアリマス、斯樣ニ私トシマ
  シテハ昭和六年度ノ豫算ヲ以テ實ハ近
  年稀ナル惡豫算、モウ氣息奄々タル病的豫
  算デアルト私ハ思フノデアリマスルケレド
  モ、唯一點ヽ只今申上ゲマシタ行政整理ノ
  調査會ニ一縷ノ望ヲ繫イデ居リマスルガ爲
  ニ、實ハ惡イコトトハ知リツツ、考ヘツツ
  モ、抂ゲテ委員長ノ御報〓ヲ是認スルモノ
  デアルト云フコトヲ、ドウゾ御諒承ヲ願ヒ
  マシテ、併セテ政府ニ向フテ警告的ニ深甚ナ
  ル反省考慮ヲ促シテ置クモノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=32

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• 033・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　嘉納治五郞君
  〔嘉納治五郞君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=33

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• 034・嘉納治五郎

  ○嘉納治五郞君　私ハ本豫算ニ贊成ヲ表ス
  ル者デゴザイマス、併ナガラ只今藤村男爵
  ガ述ベラレタヤウニ、悉ク當ヲ得テ居ル豫算
  デアルカラ贊成スルト云フノデハゴザイマ
  セヌ、先ヅ衆議院ノ議決ヲ重ンジ、又大體
  ノ方針トシテ緊縮ノ方針ヲ執ラレタト云フ
  コトハ、是ハ今日已ムヲ得ヌコトデアルト
  思ヒマス、細イコトニ付テハ色ミ論ズベキ
  點モゴザイマスルケレドモ、大體ニ於テ贊
  成スルヲ適當ト認メマス、併ナガラ一々ニ
  付テ考ヘテ見マスルト、隨分無理ナ削減ヲ
  ナシ、無理ナ延長ガシテアルノデアリマス、
  詰リ繰延デゴザイマス、削減繰延ト云フヤ
  ウナコトニ付テハ隨分無理ガシテアルヤウ
  デアリマス其必要ナル事ヲ削減シ、必要
  ナル事ヲ繰延ベルナラバ、他ノ事ニ付テハ
  少シモ無駄ガナイト云フコトガ認メラレナ
  ケレバナラヌノデアリマスルガ、隨分無駄
  ナ事ニ豫算ガ組マレテアルノデアリマス、
  多クノ事ニ付テ申上ゲルト時ヲ要シマスル
  シ又私ニソレ程ノ確乎タル意見モゴザイ
  マセヌカラ、自分ガ相當ニ調査シ確乎タル
  自信ヲ持ッテ居ル事柄ニ付テダケ申述べマ
  ス、其確乎タル考ヲ持ッテ居ルコトモ數多ゴ
  ザイマスルガ併シ極メテ大切ナ事ヲ少シ
  バカリ申述ベマス、今日、我國ノ總テノ人
  ガ最モ憂慮シテ居ルノハ思想問題デゴザイ
  マハ此思想問題ト云フコトハ色ミノ事ニ
  渉ッテ考ヘルコトガ出來マス、被ノ危險思
  想之ヲドウシテ防止スルカ、又ドウシテ
  健全ナル思想ヲ國民ニ養フカト云フヤウナ
  コトハ餘程今日大切ナ問題デアッテ、少數
  ナ、危險思想ヲ自ラ懷イテ居ルヤウナ人ヲ
  除イテハ悉タ皆深ク憂憂シテ居ル問題デ
  アリマス、他ノ方面カラ見マスルト今日
  一般ノ國民ガ責任觀念ガ薄クナッテ來テ居
  ルコトデアリマス、此二ツノ點カラ考ヘテ
  見マスルト、原因ハ何處ニアリヤ、之ヲ質
  シテ見ルト、〓育ノ缺陷ニ關スルコトガ甚
  ダ多イト思フ、昔ハ御承知ノ通リ、〓育ハ
  今日ヨリハ完備シテ居リマセナンダ、併ナ
  ガラ子弟ニ對スル薰陶ト云フモノハ或程度
  マデ行ハレテ居リマシタ感化ノ力モゴザ
  イマシタ人ノ師タル者ハ眞心ヲ以テ自分
  ノ弟子ヲ善ク育テル、自分ノ弟子ガ良クナ
  ルト云フコトハ何ヨリノ自分ノ滿足デア
  リ、又樂ミデアル、斯ウ云フ態度デゴザリ
  マシタ、併シ今日ノ學校〓育ヲ眺メテ見マ
  スルニ、サウ云フ態度ヲ以テ己レノ弟子ニ
  臨ンデ居ル者ガ幾ラゴザイマセウカ、絕無
  トハ申シマセヌ、隨分、中ニハ感心ナ先生
  ガ小學校ニモアレバ中學校ニモアリ又
  其以上ノ學校ニモゴザイマスル、併ナガラ
  押竝ベテ論ズルト云フト、今日ノ〓育家ハ
  己レノ業務ヲ樂ミ、又己レノ業務ニ對シテ
  大ナル信念ヲ持ッテ居ルト云フコトハ甚ダ
  乏シイノデアリマス或所ニ於テハ所謂切
  賣〓授ト云フヤウナコトガ行ハレテ居ルノ
  デアル恰モ商人ガ物品ヲ賣ル如ク、何時
  問働イテドレダケノ金ヲ貰ッテソレガ濟ム
  、、其生徒ガドウアラウト構フコトナシニ、
  サッサト家ニ歸ッテシマフト云フヤウナ類ノ
  〓育ガ隨分彼方此方モ行ハレテ居ルノデア
  リマスサウ云フコトデドウシテ本當ノ人
  間ガ出來マセウ、又今日ノ〓育ハ知識ヲ傳
  達スル、〓授スルト云フコトハ相當ニ成功
  シテ居リマセウガ、ソレモ十分ニ〓究シテ
  見ルト云フト、多クノ缺陷ガアリマス、併
  ナガラ深ク知識ヲ〓授シ傳達スル意味ニ於
  テハ、比較的成功シテ居ルト申シテモ宜カ
  ラウト思ヒマス、併ナガラ人ヲ作ル、品性
  ヲ陶冶スルト云フコトニ付テハ甚ダ缺陷ヲ
  認メルノデアリマス、此原因ハ何處ニアリ
  ヤ、誠ニ分リ易イコトデアリマス、此原因
  ハ詰リ知識尊重ト云フコトガ風ヲ成シタト
  云フコトニ原因シテ居ルノデアリマス御
  承知ノ通リ日本ノ新シイ〓育ハ彼ノ蕃書取
  調所ガ色ミノ變遷ヲシテ、終ニ開成學校ト
  ナリ、又東京大學トナリ、今ノ帝國大學ニ
  ナッタ、此沿革ヲ考ヘテ見マスルト、知識ヲ
  海外ニ求メルト云フコトガマア何ヨリ大事
  ナ目的デアッタ、人間ヲ作ルト云フコトハ勿
  論決シテ閑却サレタ譯デハアリマセヌケレ
  ドモ、知識ヲ求メ、又後ニハ學問ヲ〓究ス
  ルト云フコトノ精神ガ最モ濃厚デアッタノ
  デアリマス、又サウ云フ意味ニ於テ値打ノ
  アル人ガ集ヲタノデアリマス、文部省ガ海外
  ニ留學生ヲ派遣シテ、ソレ等ノ人ガ色ミノ
  學問ヲシテ戾"テ參リマスト、或人ハ西洋カ
  ブレ、或人ハ西洋カブレニ非ザルモ唯學究
  的ニ學問ヲスルト云フコトニ沒頭シテ人
  間ヲ作ル子弟ノ品性ヲ陶冶スル〓育者ノ
  精神ヲ養フト云フヤウナコトハ殆ド重キヲ
  置カナカッタノデアリマス、現ニ私共ガ其學
  校カラ出テ、其〓育ヲ受ケテ、現實ニ其實
  際ノコトヲ目擊シ能ク承知シテ居ルノデア
  リマス、其系統デ今日マデズット帝國大學ト
  云フモノハ進ンデ來タノデアリマス、所ガ
  最初ノ帝國大學ノ出來タ時ニ、最モ重キヲ
  置イタ目的ハ達セラレテ居ルノデアリマ
  ス、是ハ帝國大學ト申サズ、蕃書取調所以
  來是等ノ學校ニ從事シタ人ミノ大ナル功
  績ト申シテモ宜シイ、今日ノ日本ガ斯ノ如
  ク歐米ノ第一流ノ國ト對等ノ位置ニ立チ得
  ルヤウニナッタト云フコトハ、ソレ等ノ人ノ
  努力ニ依ル所ガ甚ダ多イ、ソレ故ニ私ハ決
  シテ今日マデ帝國大學ニ從事シテ居々タ所
  ノ人ミノ功勞ヲ少ク視テ居ル一人デハアリ
  マセヌ、又今日斯ク澤山ナ人方ヲ輩出シテ各
  方面ノコトニ從事シテ、今日ノ日本ノ力ヲ
  斯クマデ進メタト云フコトハ、ソレ等ノ人
  ノ努力ニ負フコトガ甚ダ多イノデアリマ
  ス、私立ノ學校ニ於テモ相當ニ人材ガ出マ
  シタ、併ナガラ東京大學以來、帝國大學ガ
  日本ノ文化ヲ今日ニマデ進メケト云フコト
  ノ功績ハ、決シテ小サイコトデハナカラウ
  ト思ヒマス、併ナガラ私ガ先程モ申上ゲタ
  ヤウニ、〓育ヲ樂シミ、〓育ノ値打ヲ認メ
  ル責任觀念ヲ强クスル、從テ自分ノ職務
  ヲ忠實ニ盡ス、サウ云フヤウナ精神ガ今日
  マデノ帝國大學以前ノ大學、東京大學カラ
  湧出シテ來ルトハ私ハ思ヒマセヌ、私共ハ
  全クサウ云フ空氣ニハ育テラレナカッタノ
  デアリマス、隨分、東京大學、帝國大學ノ
  出身者ノ中ニ値打アル〓育家モゴザイマス
  ガソレハ天禀ノ〓育家デアル、學校ノ空
  氣ガサウ云フ人ヲ作ッタノデハナイノデア
  リマス、ソレデハサウ云フ精神ヲ養ヒ、サ
  ウ云フ人間ヲ作ル所ガ何處ニ一體ゴザイマ
  セウ、今日ノヤウナ或意味ニ於テハ偉大ナ
  ル日本帝國ヲ作ッタケレドモ、併ナガラ內部
  ニ實ニ遺憾ナ點ガアル、卽チ精神的ニ大ナ
  ル缺陷ノ生ジテ來タト云フコトハ玆ニ在
  ルノデアラウト思フ、私ハ偶然ノコトカラ、
  元ハ東京大學ノ政治、理財ヲ專攻スル學科
  ヲ出テ、或關係カラ學習院ニ從事イタシマ
  シタ、偶〓〓育ノコトニ携ハリマシタト云フ
  ヤウナコトカラ、遂ニ文部省ノ直轄ノ高等
  師範學校長ニナリマシタ、爾來〓育ト云フ
  コトニ自分ハ身ヲ投ジテ色ミ〓究ヲ致シテ
  見マシタ初メテ今日マデ自分ノ受ケテ來
  タ〓育、多クソ自分ノ仲間ノ受ケテ居ル〓
  育カラ離レテ、人間ヲ造ルト云フ〓育ガ必
  要デアルト云フコトヲ痛切ニ感ズルニ至リ
  マシタ、ソレ故ニ自分ガ就職以來、ドウカ
  〓育者ヲ造ルニ適當ナル學校ニシタイト云
  フ考ヲ有ノテ、歷代ノ文部大臣ニ對シテ强ク
  自分ノ主張ヲ述ベマシタ、時勢ガ許サヌノ
  カ、其自分ノ精神ハ貫徹セズ、漸ク彼ノ臨
  時〓育會議ト云フモノガ設ケラレタ時分ニ
  至ファン初メテ半バ自分ノ意見ガ通ノテ、高
  等師範學校ヲ一居有力ナ〓育機關ニスル、
  〓育者ヲ養成スルト云フコトヲ目的トシタ
  所ノ權威アル學校ニスル、年限モ帝國大學
  ト同ジダケノ年限ニシテ、〓授ニモ有力ナ
  人ヲ入レ、又設備其他ノ事ニ付テモ充實セ
  シムルト云フヤウナコトガ議決セラレ初
  メテ自分ノ考ヘガ一部ナリトモ通ノタト云
  フコトヲ甚ダ喜ンデ居,タ、然ルニ何ゾ圖ラ
  ン、當時文部大臣ガ何等著手スルコトナイ
  ハ勿論、其次ノ文部大臣モ何等シナイ、臨
  時〓育會議ハ斯ノ如ク決議シテ置イタニ拘
  ラズ、全クソレ等ノコトヲ抛擲シテ居ッタ
  ガ、彼ノ皆サン御承知デゴザイマセウ、新聞
  紙ニモヤカマシク現ハレテ居リマシタ彼ノ昇
  格運動ト云フモノガ起ヲテ來タ、其關係カラ考
  ヘテ見ルト、ドウシテモ高等師範學校ヲ改造
  スルカ、或ハ其上ニ〓育者ヲ養成スル所ノ大
  學ガ出來ナケレバナラヌノデアル、然ルニ今
  日ノ彼ノ文理科大學ト云フモノハ一體何デア
  リマスカ、是ハ帝國大學ノ文學部ト理學部ノ
  出店ノヤウナモノデアル、卽チ私ガ他ノ意
  味ニ於テハ大イナル功績モアリ、國家ニ
  必要ナ〓育ノ機關デハアルケレドモ、人
  間ヲ造ルト云フコト精神ヲ養フト云フコ
  ト〓育者ヲ養フト云フコトニ付テハ甚
  シキ〓陷ガアルト認メテ居ル所ノ、其〓
  育ノ方法ヲ此新シク出來タ所ノ學校ニ應
  用シヤウトシタノガ、卽チ今日ノ文理科
  大學デアリマス、今日思想問題ノ解決ガ出
  來ナイ、國民ニ義務ノ觀念ガ少イ、責任ヲ
  重ンズル所ノ考ヘガナイ、本當ノ〓育者ガ
  ナイト云フナラバ、責任ハ何處ニアルカト
  云フタラバ、折角〓育者ヲ養成スルト云フ
  精神ヲ以テ出來タ所ノ、卽チ臨時〓育會議
  ガソレヲ認メテ造ッタ所ノ此組織ヲ、帝國大
  學ノ出張所ニシテシマッタト云フコトニア
  ルノデアリマス、今ハ一日モサウ云フコト
  ハ許スコトハ出來マセヌ、私ハ組織ヲドウ
  スルトカ斯ウスルト云フコトハ此席デ遠
  慮ヲシテ申上ゲマセヌ、併ナガラ考ヘテ御
  覽ニナッテモ分リマス、今ノ文理科大學ト云
  フモノハ旣ニ帝國大學ノ文學部、理學部デ
  十分事足リテ居ルノデス、今日經費缺乏ノ
  際ニ於テ何ヲ苦ンデサウ云フ費用ヲ又二重
  ニ費ス必要ガ何處ニゴザイマセウカ、大事
  ナモノガ繰延ベラレ、大事ナモノガ削減サ
  レテ、ソレガ爲ニドレダケノ國ノ發達ガ遲
  レテ居ルカ分ラヌト云フヤウナ時代ニ、帝
  國大學ノ今ノ五分ノ一ノ經費ヲ與フレバ立
  派ニ今ノ文理科大學ノヤッテ居ル位ノコト
  ハ出來ル、文學部デモ〓場ニ人ガ多過ギ
  テサウシテ這入レヌト云フ程ノ人ガ參ッ
  テ居リマスカ、圖書館ガ足リナクテ、ッ
  ノ帝國大學圖書館ニ人ガ這入リキレヌト云
  フ程ニ人ガ這入ッテ居リマスカ、立派ナ圖
  書ガアル立派ナ先生ガ帝國大學ニアルノ
  デアル、ソレ等ノ人ガアッテ、ソレ等ノ人ノ
  〓ヘヲ受ケレバソレデ澤山ナノデアル、今
  ノヤウナコトヲヤッテ居ルヨリモ······ソレ
  デ足リナケレバ幾人カ〓授ヲ帝國大學ニ增
  シサヘスレバソレデ宜イノデス、先般來九
  州大學其他ニ於テ種々紛擾ガ起リマシタ、是
  ハ何ノ爲デス、要スルニ準備モナイノニ無
  暗ニ大學ヲ拵ヘタカラ適當ナ〓授ガ得ラレ
  ナイ、紛擾ダラケ、サウ云フ所デ育ッタ所ノ
  人間ニドウシテ値打ノアル人間ガ出來マス
  カ、學間ノ切賣リヲシ學問ヲ切リ切リニ
  買ハウト云フヤウナ意味ニハ人ハ育ツカモ
  知レヌケレドモ、本當ノ〓育ハ矢張リ本當
  ノ値打ノアル〓授ニ依ッテデナケレバ行ハ
  レマセヌ、サウ云フ譯デ、大學ヲ拵ヘテモ
  人ガ無イト云フコトヤ······〓ヘル先生ガ足
  リナイト······廣島ノ文理科大學ノ話ヲ聞イテ
  見ルト云フト、募ッテモ應募ノ生徒ガ甚ダ少
  イト云フヤウナコトヲ考ヘテ見ルト、只デ
  サヘモ多過ギル程出來タ大學ニ對シテ尙
  ホ東京ニモ文理科大學ヲ拵ヘ廣島ニモ文
  理科大學ヲ拵ヘルト云フコトハ一體何ノ
  コトデセウ、ソコデ私ハ昨年モ此演壇ニ於
  テ文部大臣ニ對シテ、之ヲ御改造ニナル御
  考ハゴザイマセヌカト云フコトヲ伺ッタ所
  ガ、自分モ同樣ナ意見デアルト仰シヤッタ、
  ダカラ著々其改革ニ御進ミニナルコトカト
  思フテ居ルト云フト、豈圖ランヤ、何ノコ
  トモナサラヌ、此度豫算會議ニ於テ伺ッテ
  見ルト、私モ其通リノ考デアル、併ナガラ
  幾人カノ〓育ノ先輩ニモ意見ヲ聞イテ見タ
  ラ、ツイ此間拵ヘタバカリノ學校デアルカ
  ラ、卒業生ガ出來ルマデ其改革ノコトヲ考
  ヘルノハ未ダ早イデハナイカ、斯ウ云フ意
  見モアッタカラ自分モサウ云フ氣ニナッタ
  是デハ甚ダ情ケナイ、日本ノ文〓ニ付テ大
  責任ヲ帶ビテ居ラッシヤル所ノ文部大臣デ
  アル、今日ノ思想上ノ問題ガ御心配ニナリ
  マセヌカ、其局ニ當ラズトモ普通一般ノ人
  デモドウシタラ宜イカト云フコトヲ心配シ
  テ居ル、之ヲ解決スル所ノ唯一ノ案ハ本
  當ノ〓育者ヲ養成スル所ノ權威アル學校ガ
  出來ルト云フコトニ在ル、之ヲ顧ミズニ卒
  業生カ出テカラ、ソレヲ付ッテト云フコトハ
  一體何ノコトデセウ、ソレモ誰カガ一新機
  軸ヲ出シテ或一ツノ考案ニ基イタ學校ガ
  建テラレタ、其成蹟ヲ見ルニハ卒業生ガ出
  テカラデナケレバ分ラヌト云フコトハ是
  ハ尤モナ話デス、ケレドモサッキカラ申述
  ベル通リ、今ノ大學令ニ依ッタ帝國大學ノ出
  張所ノヤウナモノヲ拵ヘテ、其卒業生ガ出
  ルマデ成蹟ガ分ラヌト云フコトハドウ考ヘ
  テ見テモ私ハ判斷ニ苦シム、或ハ學者トシ
  テハ曩ニ申ス通リ、帝國大學ハ中ミ大ナル
  成蹟ヲ現ハシテ居ルノダカラソレニ似タ
  ヤウナ成蹟ヲ現ハシ得ルヂヤラウト思フカ
  ラ····幾分カ不十分デアル、不十分ナガ
  ラモサウ云フ成蹟ヲ現ハシマスケレドモ
  國家ガ今日本當ニ要求シテ居ル所ノ〓育者
  ヲ養成スルト云フコトニ付テハ甚ダ緣ノ
  遠イ學校デアル、今日ノ高等師範學校ノ生
  徒ニ聞イテ見マスルト不平ダラダラ何故
  カト云フト自分等ハ〓育者ニナル積リデ
  此學校ニ這入ッテ來タ、〓育者ニナル積リデ
  此學校へ這入ッテ來タカラ、大學ニ行クナラ
  バ其詰リ繼續ノ學校タルトコロノ大學ニ這
  入レルダラウト思ッテ居ッタ、然ルニ何ゾ圖
  ラン、今ノ大學ト云フモノハ高等學校ヲ三
  年卒業ツタ者ガズルズルット這入ル大學デ、
  高等師範學校ヲ卒業シタ者ハ四箇年ヲ經テ
  漸クソレニ這入ルノダ、サウスルト云フト
  元來ガ一體精神ハ師範大學ヲ造ルニアルダ
  カラ、高等師範學校ガ發達スルノデアルト
  云フコトガ元來ノ精神デアッタ、然ルニ高等
  師範學校ニ這入ッタ者ハ四箇年經タナケレ
  バ大學ニ進ムコトガ出來ナイ、高等學校ヲ
  經ル者ハ三年デ出來ル、斯ウ云フコトハ一
  體理〓ニ適フタコトデアリマセウカ、ノミナ
  ラズ其四箇年ヲヤッタ者ガ、生徒カラ聞イテ
  見ルトモウ手ニ取ルヤウニ彼等ガ苦ンデ
  居ルコトガ分ル、ドウ云フ譯カト云フト
  同ジ先生······高等師範學校デ〓育學ヲ〓ヘ
  タ人ハ矢張リ大學ヘ行フテモ〓育學ヲ〓ヘ
  ル、同ジ講義ヲ二度聞イテ居ル、斯ウ云フ
  損ガ立ッテ居ルノデスガ、今ノ現在ノヤリ方
  デハ其他〓育一體ノ大學デアルナラバ
  小學校〓育ハドウスル、中等學校〓育ハド
  ウスル、實業學校ニ付テハドウ、特殊學校
  ハドウ、視學ノコトハドウ、サウ云フヤウ
  ナコトニ付テ〓究モシ又サウ云フヤウナ
  コトニ付テ講習モシ、又サウ云フモノニ付
  テ色ミト既ニ社會ニ出テ、小學、中學、實
  業學校、其他特殊學校ニ對シテ從事シテ居
  リ又視學ノ任務ニ就イテ居ルヤウナ人間
  ヲ集メテソレ等ヲ指導スルト云フヤウナ
  コトガ、其〓究所デ出來ナケレバナラヌガ、
  ソンナコトハ全ク抛擲サレテ居クテ、唯帝
  國大學ノ文學部ト理學部ニアルヤウナ、同
  ジ學科目ガダラリト竝ンデ居ッテ、サウシテ
  其講義ヲ聽イテ居ルト云フ話デアル之ヲ
  シテ此大事ナ經費ヲ無駄ニ使ハスト言ハヌ
  デ何ト一體申シマセウカ、若シ國ニ金ガ餘
  リアッテ、何處デモ此處デモ無駄ナコトヲシ
  テ居ルコトガ許サレルナラバマダシモノ
  コトデアリマス、ケレドモ實ニ今日ノヤウ
  ニ僅カ一万圓二万圓ノ金デモ實ニ大事ナ金
  デアリマシテ、之ヲ活カシテ使ハナケレバ
  ナラヌ、一方ニ學校ヲ有リ過ギルホド、同
  ジヤウナ學校ヲ立テテ置イテ、サウシテ置
  イテ一方デ全ク缺乏シテ居ノテ、之ニ依ッテ
  初メテ今日ノ此國ヲ救フゴトガ出來ルカ、
  思想問題·····本當ノ〓育者ラツイ〓育者ヲ
  養成スルト云フコトハ、此權威アル師範大
  學ナリ〓育大學ヲ拵ヘテ、初メテ解決出來
  ル問題デアリマスガ、其事ヲ抛擲シテ置イ
  テ卒業生ガ出ルマデ待ツト云フコトハ私
  ハドウ考ヘテ見テモ今日責任ヲ有ッテ居ル
  所ノ文部大臣ノ御考トハ私ハ考ヘラレマセ
  又、ソレ故ニ私ハ今日質問ヲスルノデモ何
  デモナイ、ナゼ此本會議ニ於テ再ビ此事ヲ
  申上ゲルカト云フノハ今日ノ豫算ハ曩ニ
  申上ゲル通リ隨分或方面ニ於テハ無理ガ出
  來テ居ル、併シ金ガ無イ、金ガ無イカラ已ム
  ヲ得ナイト云フコトハ是ハ我慢ガ出來ル
  ノデアリマス、然ルニ一方ニソンナ無駄ヲ
  シテ置イテ、必要ナ改革ヲセズニ投ッテ置ク
  ト云フコトハ私ハドウシテモ合點ガ行カ
  ナイ、ソレ故ニ私ハ此本會議デ之ヲ再ビ述
  ベルト云フ譯ハ豫算委員會議ノ御方バカ
  リデナク全體ノ貴族院議員ニ此意見ヲ聽
  イテ戴イテ、御同感ノ御方ハソレ等ノ人こ
  ト共ミニ此改革ヲ一ツ圖リタイト思ヒマ
  ス、又此私ノ今日ノ演說ハ官報ニモ出マ
  セウ、日本全國ノ人ハ之ヲ見マセウ、ソ
  レ等ノ人ミト共ミニ考究ヲシテ、サウ
  シテ一刻モ早ク此權威アル〓育者養成ノ大
  學ヲ造ルト云フコトニ進ンデ行カナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス、又今一面カラ
  言フト、今日ハ學制ノ改革ト云フコトガモ
  ウ輿論ニナッテ居リマス、少クモ識者ノ輿論
  デアリマス、徒ニ大學ヲ卒業スルマデノ間
  ノ年限ガ長過ギル、之ヲ今ノヤウナ五年制
  度、七年制度ノ高等學校ヲ卒ヘテ這入ルガ
  宜イカ、或ハ六年デ宜イカ、ソコハマダ〓
  究ノ餘地ガゴザイマス、ソレ故ニ私ハハッキ
  リトドウセニヤナラヌト云フコトハ申上
  ゲマセヌガ、兎モ角モ年限ヲ短縮シテ、モ。フ
  ト早ク學生ヲ社會ニ出スヤウニシナケレバ
  ナラヌト云フコトハ、是ハ識者ノ輿論デア
  リマス長ク學窓ニ居ルト人ハ學究的ニナ
  リマス、氣位バカリ高クナッテ實際ハ中ミ社
  會ニ出テ役ニ立タナクナッテシマウ、何故役
  ニ立タヌカ、能力ノアル人デモ色ミノ新シ
  イコトニ適應性ヲ失ッテシマウテ役ニ立チ
  マセヌ、ソレ故ニ成ルタケ早ク社會ニ出シ
  マシテ、サウシテ自分ノ從事スル事柄ニ付
  チ〓究シテ、ソレニ適應スルヤウニ己レヲ
  訓練シテサウシテソレニ必要ノ學問ハ何
  處マデモ高クスル、斯ウ云フコトニナッテ行
  カナケレバナラヌ、ソレヲ何處ニ行ク人間
  モ同ジヤウニ長イ間學窓ニ居ッテ、サウシテ
  モウ殆ド學問デ疲レテシマッテ、サウシテ社
  會ニ出テ行クカラシテ、新シクサウ云フ人
  ヲ用ヰル人ハ誠ニ使ヒニクイ、或實業家ナ
  ドカラ聞イタコトガアリマスガ寧ロモット
  低イ程度ノ學校ノ生徒ノ方ガ餘程使フノニ
  都合ガ好イ、又サウ云フ人ガ相當ニ仲ビル
  ト云フコトハ色ミノ人カラ聞イテ居ルガ、
  私ハサウダラウト思ヒマスダカラ大學ト
  云フモノハモット早ク年ノ行カヌ時分ニ社
  會ニ出シテ、サウシテ各·ノ從事スル所ニ
  依ッテ、ソレニ適應セシムルヤウニ己レヲ修
  養シ、サウシテ尙ホソレ以上ニ勉强スルト
  云フヤウナ風ニ誘シテ行カナケレバナラ
  ナイ、誰デモ同ジヤウニ唯高イ學問ヲシテ、
  サウシテ同ジヤウニ育テテ、世ノ中ニ出ス
  ト云フトモウ草疲シテシマウ、又今日親ガ
  學費ノ爲ニ實ニ多額ノ金ヲ要スル、田地ヲ
  質ニ置キ賣拂ッテ、親ハ貧乏シテ其子供ヲ
  長イ間學校ニ送ル、子供ガ學校ヲ卒業シテ
  見ルト職業ガナイ、こ偶、職業ガアッテモ在學
  中ニ親カ送タ學費ヨリハ遙カニ低イ給料
  ヲ貰ッテ、サウシテ不平タラダラデ勤務ヲシ
  テ居ル、斯ウ云フヤウナ場合ヲ多ク目擊ス
  ルノデアル、ソレヨリハモット早捌キヲスル
  ヤウニズン〓〓社會ニ出シテ、ソレデ實際
  ノ力ヲ以テ此社會ニ於テ伸ビテ行クヤウニ
  スル、ソレト同時ニ學問ノ〓究所トシテ大
  學ハ十分ニ力ヲ入レナケレバナラヌ、私ハ
  今日東京ノ大學デモ京都ノ大學デモマダ
  マダ〓究ニ付テノ力ノ入レ方ガ足リナイト
  思ヒマス、モット十分ナ經費ヲ與ヘテ、サウ
  ジテ〓究上ニ付テハ遺憾ナキヤウニセナケ
  レバナラヌ、學生ノ中ニ〓究ニ適スルヤウ
  ナ人間ハ社會ニ於テノ〓究ト、自分ノヤッ
  テ居ル所ノ專攻ノ學科ト沒交涉ノヤウナ所
  ニ行ッテ働カサナイデ、ソレヲ其〓究所ニ入
  レテ仲ビサセテ、サウシテ何處迄モ此學問
  ノ〓究ト云フモノヲ大學デ高イ所マデ出
  來ルヤウニ便宜ヲ與ヘルダカラ一面ニ於
  テハ高イ〓究所ヲ拵ヘル大學ヲ離レク理
  化學〓究所、航空機〓究所、傳染病〓究所
  ト云フヤウナモノモ澤山出來ルガ宜シ、又
  大學其モノニ於テモ、〓究ニ於テハ今ヨリ
  一段ノ力ヲ用ヰナケレバナラヌ、其代リニ
  學生ハモット早捌キヲシテ、ズンズン出ルナ
  リ或ハモット高イ講義ヲ聽キタイヤウナ學
  生ニ對シテハ高イ講義ヲ聽キ又〓究スル
  便宜ヲ與ヘル、斯ウ云フ風ニナッテ來レバ私
  初メテ疏通ガ出來ルデアラウト思ヒマス
  ソコデ今日ハ大學〓育ノ爲ニ隨分多額ノ金
  ガ費サレテ居ルケレドモ、大部分ハ餘リ有
  效ニ働カサレテ居ラヌト思ヒマスサウ云
  フコトヲ考ヘテ見マスルト私ハ今日學制改
  革ノ根本的調査ヲスル必要ガアルト思ヒマ
  ス、サウシテ其學制調查ニ付テハ單ニ學者
  バカリデナク社會ノ實務ニ當ッテ社會ノ實
  際ヲ能ク承知シテ居ルヤウナ人ヲ多數委員
  ニ入レテサウシテ十分ノ調査ヲシテ將來
  ノ國ノ〓育ノ方針ヲ決メルト云フコトニナツ
  テ行カナケレバ、唯傳統的ニ斯ウヤリ來ッタ
  カラ、斯ウヤルト云フヤウナコトデハ今日
  ノ缺陷ヲ補フコトガ出來ヌト思ヒマス、ソ
  レ故ニ今日ハ豫算ニ對シテハ贊意ヲ表シマ
  スケレドモ、併ナガラ今申上ゲル通リ甚ダ
  無理ガ出來テ居ル、其無理ノ出來テ居ルト
  云フノハ總テノ經費ガ有效ニ使ハレルト云
  フコトニ付テ始メテ忍ビ得ルノデアリマ
  ス、一方ニハ無駄ナコトヲシテ、一方ニハ
  無理チコトヲシテ居ルト云フコトデハ是
  ハ到底國民ノ堪へ得ル所デハナイノデアリ
  きくわ。私ハ文部省······文部大臣トハ申サナ
  イ、政府ニ於テ私ガ今日中述ベタコトヲ能
  ク御〓究ニナッテ適當ノ方法ヲ定メラレム
  コトヲ希望スルノデアリマス、豫算ニ對シ
  テハ贊成ヲ表スルト同時ニ私ハ眞ニ私ノ心
  カラ自分ノ考ヘテ居ル所ヲ述ベルノデアリ
  マス(拍手起ル)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=34

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• 035・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　只今柳澤伯爵ガ
  緊急ニ政府ニ對シ質疑ヲシタキ旨ノ申出ガ
  ゴザイマシタ、只今ハ豫算案ニ付キ討論中
  デゴザイマスガ、柳澤伯爵ノ要求ヲ許シテ
  宜シイカ、諸君ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒ
  マス、柳澤伯爵ノ要求ヲ許スベシトスル諸
  君ノ起立ヲ請ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=35

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• 036・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマ
  ス、柳澤伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
  〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=36

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• 037・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　最早本豫算ニ對スル御
  贊成ノ演說ハ御一人デゴザイマス場合ニ、
  私ガ此壇上ニ登リマスコトハ誠ニ恐縮ニ
  存ジマス、事態誠ニ已ムヲ得ヌト考ヘマス
  ノデ暫時御〓聽ヲ願ヒタイト思ヒマス、先
  般豫算第二分科司法部ニ於キマシテ區裁判
  所停止ニ關スル質問應答ガゴザイマシタ、
  之ニ對シマシテ委員ヨリ其六十二箇所ノ場
  所ノ明示ヲ請ウタノデアリマス司法大臣
  ハ斷ジテ明示ヲサレマセヌ、唯僅ニ委員ノ
  質問ニ對シテ停止サルベキ場所ト事務ヲ新
  タニ執ラムトスル所ノ距離及ビ地理上ノ便
  宜ニ付テ、極クアッサリト御答辯ガアッタダ
  ケデアリマス、尙ホ委員ヨリ之ヲ祕密會ニ
  致シテ聞キタイト云フコトモ請求サレタノ
  デアリマス、斷ジテ渡邊君ハ之ニ應ゼラレ
  ヌノデアリマス、然ラバ衆議院ニ於テ同樣
  ノ應答ノアル場合ニハ同樣ノ態度ヲ御執リ
  ニナラヌケレバナラヌノガ當然カト心得テ
  居リマス、私ハ今ヨリ三十分程前自分ノ控
  室ニ居リマシタ、偶然ニモ豫算委員長タル林
  伯爵モ居ラレタノデアリマス、其處ヘ御名
  前ハ存ジマセヌガ、多分政務官ダラウト思
  ヒマス、私ノ知リ合ノ屬官ト共ニ其處ニ來
  ラレマシテ申サレタノハ衆議院ニ於テ只
  今、停止サルベキ所ノ六十二箇所ノ場所ヲ
  明カニ申サレマシタ、依テ本院ニモ其コト
  ヲ申サレル筈デアルト云フコトヲ申サレマ
  シタ、私ハ甚ダ奇々怪々ト存ジマスルノデ
  此處ニ立ッタノデゴザイマスルガ、私誠ニ御
  懇意ナ渡邊君ニ對シテハ甚ダ恐縮デアリマ
  スケレドモ、私情ト國務トハ差ガアルコト
  ヲ御承知願ヒタイノデアリマス、何故ニ司
  法部ノ分科會ニ於カレマシテ、ドウシテモ
  仰セニナラヌ所ノ場所ヲ衆議院ニ於テ言ハ
  レタノデアリマセウカ、是ハ私共ガ豫算ヲ
  協議スルニ當リマシテ、贊否ヲ決定スルニ
  重大ナコトト考ヘテ居ルノデアリマス、如
  何ニモ貴族院ニ對シテ甚ダ輕侮ノ念ヲ持タ
  レタヤウニモ考ヘルノデアリマス若シサ
  ウデナイトスレバ何故ニ本院ニ於テソレヲ
  明示セラレズシテ衆議院ニ於テ之ヲ明示セ
  ラレマシタカ、此點ヲ伺ヒタイノデアリマ
  ス
  〔國務大臣子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=37

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• 038・渡邊千冬

  ○國務大臣(子爵渡邊千冬君)　只今柳澤伯
  爵カラ、私ガ過日豫算第二分科會ニ於キマ
  シテ、委員ノ此度一時事務ヲ停止イタシマ
  ス區裁判所ノ名前ヲ發表セヨト云フ御希望
  ガアリマシタニ對シ、之ヲ發表イタサズシ
  テ、本日衆議院ニ於テ之ヲ發表シタノハ
  貴族院ヲ輕ンズルト云フヤウニ思ハレルガ
  ドウ云フ趣旨デアルカ、斯ウ御質問デアッタ
  ノデアリマス、柳澤伯爵ノ御質問ニ對シテ
  ハ私ハ誠ニ恐縮ニ堪ヘマセヌ、唯多少事情
  ノ異ッテ居リマスコトヲ申上ゲテ議員各位
  ノ御了承ヲ願ヒタイト存ジマス、過日豫算
  總會及第二分科會ニ於テドノ區裁判所ノ事
  務ヲ停止スルカト云フコトヲ、此豫算ヲ審
  議スルニハ必要デアルカラ、知ラシテ貰ヒ
  タイト云フ御希望ノアリマシタコトハ私モ
  十分記憶シテ居リマス、之ニ對シマシテ私
  ハヽ此一時事務ヲ停止イタシマス區裁判所
  ノ名前ト云フモノハ數日ノ後ニハ〓示ヲ
  以テ之ヲ世ノ申ニ公ケニ致サナケレバナラ
  ナイモノデアリマスカラ、是ハ絕對的ニ祕
  密ノモノデハナイト思ヒマス、唯併ナガラ
  斯ウ云フコトハ一日早ク發表イタシマスト
  ソレダケ各種ノ面倒ナコトガ起ル虞ガアリ
  マスカラ、ドウゾ申上ゲナクテ濟ミマスナ
  ラバ申上ゲナイ儘デ御審議ヲ願ヒタイト云
  フコトヲ申上ゲマシテ、私ハ委員諸君ガ其
  儘御審議下サッタノヲ見マシテ、私ノ申上ゲ
  タコトヲ了承サレタコトデアラウト私ハ考
  ヘテ居ッタノデアリマス、私ハ右樣ノ意味ヲ
  以チマシテ申上ゲナカッタノデアリマス、然
  ルニ本日衆議院ノ豫算總會ニ於キマシテ
  ハ事情ガ多少違クテ居ルノデアリマス、政
  友會ノ或委員カラ是非發表ヲシテ貰ヒタイ
  ト云フ要求ガアリマシテ、之ニ對シテ民政
  黨ノ議員ガ贊成ヲ致シ、豫算委員一人ナシ
  ヨリシテ是非發表ヲ致サナケレバ困ルト云
  フコトニナリマシテ、委員長カラ私ニ正式
  ニ是非發表ヲ致シテ貰ヒタイト云フ請求ガ
  アリマシタノデアリマス、私ハ貴族院ニ於
  キマシテ二三ノ委員ノ諸君カラノ御希望デ
  アルカラ、之ヲ輕ンジ、多數ノ議員カラノ
  請求デアルカラ、之ヲ重ンズルト云フ譯デ
  ハナイノデアリマシタケレドモ、此一時事
  務ヲ停止イタシマス區裁判所ノ名前ヲ發表
  イタスト云フコトハ當時貴族院ニ於キマ
  シテ、御容議ヲ願ヒマシテカラ、今日ハ旣
  ニ三日モ經過イタシテ居ルノデアリマスカ
  ラ、ソレダケ告示ヲ致スベキ時ニハ近付イ
  テ居リマスシ、此方デハ數人ノ御希望デア
  リ、向フデハ委員會全體ノ御希望デアッタ
  モノデアリマスカラ、若シ向フデ發表イタ
  セバ、ソレト同時ニ貴族院ノ豫算委員諸君
  ニハ直ニ同ジヤウナ發表ヲ致ス、其手續ヲ
  執リマシタナラバ、決シテ貴族院ヲ輕ンジ
  衆議院ヲ重ンズルト云フヤウナ疑モ受ケズ
  シテ濟ムコトデアラウト云フ考デ、サウ云
  フ手筈ヲ致シタノデアリマス、唯考ヘテ見
  マシタ所ガ、旣ニ是ハ豫算委員會ノ手ヲ離
  レテ本議場ノ問題ニナリマシク以上ハ、議
  員全體ニ其表ヲ御配付ヲ致シタ方ガ宜イト
  存ジマシテ、今ソレヲ大急ギデ手分ケヲシ
  テ印刷中デアルノデアリマス幸ニ是ガ速
  ニ印刷ガ出來マスレバ宜シイガト云フコト
  ヲ、私ハ深ク考ヘテ居ルノデアリマス、右
  樣ナ次第デアリマシテ、決シテ私ハ貴族院
  ヲ輕ンジ、衆議院ヲ重ンズルト云フ意味ハ
  毛頭ナカッタノデアリマス、唯形ノ上ニ於テ
  甚ダ向フト此方ト、私ノ致シマシタコトニ
  相違ガアリマシテ、サウ云フ御不滿ノ念ヲ
  御懷キ下サッタト云フコトハ、甚ダ恐縮ニ堪
  ヘナイノデアリマスカラ、ドウゾ其邊ノコ
  トハ十分御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス
  〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=38

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• 039・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保惠君　世ノ中デ詭辯ト云フコ
  トヲ申シマス、此等ノ御答ガ本當ノ詭辯デハナ
  イカ(拍手起ル)丸デ我とヲ瞞著シタルガ如
  キモノデ、惡イ言葉デ申上ゲレバ、所謂誤
  魔化シナコトヲ言ハレタノハ甚ダ怪シカラ
  又、初メハ司法大臣ハ恐縮シタト言ハレタ
  ガ、後ノ方ハ一向惡縮シテ居ラレヌヤウデ
  アリマス、而モ衆議院ノ方ハ全體ノ意見、
  委員長ノ請求デアル、本院ノ分科會ハ二三
  ノ人ガ言ッタダケノコトデアル、斯ウ云フ風
  ナコトニ言ハレル、ソレハ貴族院ハ極メテ
  上品デアリマスカラシテ、或ハ二三ノ人ガ
  言ウテ、アトハ默ッテ居ルコトモゴザイマ
  ス、ケレドモ是ハ二三ノ他ノ人ニ不贊成ト
  云フ譯デハナイ、何時デモサウ云フ例ハ澤
  山アリマス、試ミニ此場所ニ於テ異議アリ
  ヤ否ヤト云フコトニ對シテ、二三人ノ「異議
  ナシ」ガ直ニ全體ノ異議ナシニ代ルコトガ隨
  分アリマス、同ジコトデアリマス、分科會
  ハ人ハ少ウゴザイマス、衆議院ノ豫算委員
  會ニ比シマスレバ、人數ハ大層少ウゴザイ
  マス併ナガラ此間、問ハレタコトハ二三
  ノ委員デハゴザイマスガ、是ハ私ハモウ其
  全體ノ委員ノ御希望ト見テ居リマス、何ト
  ナレバ、ソレヲ妨ゲタ方ハ一人モナイ以上
  ニハ二三ノ委員ノ言ハレタコトハ全體ノ委
  員ノ希望ト見テモ宜イダラウト思ヒマス、
  而モ祕密會ヲ請求シタ、祕密會ノコトハ祕
  密會ダケノ事柄デ、何處ニモ是ハ洩レヌノ
  デアリマス、渡邊君ハ是ハ別ニ祕密ノモノ
  デハナイ、ドウセ數日後ニハ分ルト云フコ
  トヲ言ハレマシタガ、併ナガラ兎ニ角分科
  會ニ於ケル所ノ御態度ハ、是ハ祕密會ニテ
  モ言ハヌト言ハレタノデアル、言ハヌト言
  ハレタコトヲ衆議院デハ言ッテシマハレタ、
  私ハソレ以上申サヌデモ、此位人ヲ馬鹿ニ
  シタ、瞞著サレタコトハナイダラウト思フ、
  ドウゾ其邊ハ御反省ヲ願ヒタイ、ソレカラ
  尙ホ只今急ニ刷物ヲ御廻シニナルト云フコ
  トデアリマスガ、是ハ何分後ニ出來マスカ、
  直グ出来レバ此處デ頂戴シマスガ、若シ是
  ガ相當時間ガ掛カルナラバ其間此會議ヲ休
  憩シテ私共ハソレヲ見タイト存ジマス、(拍
  手起ル)只今ノ司法大臣ノ御言葉ニ對シテ
  私ノ遠慮ナイ所ノコトヲ申上ゲマシタガ、
  私ハ只今直グニ刷物ガ〓リマセヌケレバ暫
  時ノ間休憩シタイト云フ動議ヲ提出シマ
  ス、御贊成ヲ願ヒマス(拍手起ル)
  〔國務大臣子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕

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• 040・渡邊千冬

  ○國務大臣(子爵渡邊千冬君)　私ハ私ノ申
  シマシタコトガ、私ノ思フ儘ノコトヲ申シ
  タ積リデアリマスケレドモ、柳澤君ハ詭辯
  デアルト御セニナッタノデアリマス、之ニ對
  シテハ私ハ何トモ反駁ハ致シマセヌ、只今、
  私ハ印刷ハマダヤッテハ居リマスケレド
  モ、正確ニ申上ゲルコトハ出來マセヌ、
  二時間ハ掛カルカモ知ラヌト思ヒマス、私
  ハ若シ之ヲ發表イタサナケレバ御審議ガ出
  來ナイト云フコトデアリ。マシタナラバ、此
  處デ朗讀ヲ致シタイト思ヒ、マスカラ、ソレ
  ヲ以テ御滿足ヲ願ヒタイト思ヒマス、權限
  變更ヲ致シマス地方裁判所ノ支部ト云フノ
  ハ三十三箇所デアルノデアリマス、甲號支
  部ヲ乙號支部ト致シマスモノガ十六箇所、
  甲號支部ト申シマスノハ普通ノ地方裁判所
  ト同ジク民事ト刑事ト豫審ヲ取扱フノデア
  リマス乙號支部ト云フノハ刑事事件ヲ取
  扱ハナイノデアリマス、其甲號ヲ乙號ト致
  スモノガ熊谷、下妻、栃木、上田、飯田、
  新發田、田邊、七尾、岩國、西條、古川、
  白河、米澤、大舘、八戶、網走デアリマス、
  甲號支部ヲ丙號支部ト致スモノガ十二箇
  所丙號ト申シマスノハ豫審バカリ取扱フ
  ノデアリマス、木更津、髙田、豐岡、三次、
  濱田、八代、石卷、鶴岡、酒田調橫
  平、大曲、乙號支部ヲ丙號ト致シマスモノ
  ガ、卽チ民事ト豫審ヲヤッテ居リマスモノヲ
  豫器ダケニ致スモノガ五箇所、洲本、五條、
  高山、大洲、根室是ダケデアリマス、事務
  停止ヲ致シマス區裁判所ハ六十二箇所デア
  リマス、越ケ谷、秩父、佐倉、一宮本〓、
  北條、佐原、太田、龍ケ崎、麻生、芳賀、
  沼田、中ノ條、北甘樂、鰍澤、飯山、木曾、
  大町、村上、糸魚川、柏崎、六日町、園部、
  峰山、舞鶴、社柏原、宇陀、水口、御坊、
  川島、觀音寺、須崎、新城、八幡、大野、
  敦賀、出町、庄原、新見、勝山、木次、大
  森、大村、伊萬里、甘木、吉井、八女、臼
  杵、玉津、高瀨、三角、山鹿、知覽、高千
  穗平良、大河原、相馬、新庄、二戶、湯
  澤壽都、增毛、左樣ニナッテ居リマスカラ、
  左樣御承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=40

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• 041・柳澤保惠

  ○伯爵柳澤保憲君　私ハ先刻六十二箇所ニ
  付テノ副物ヲ御請求イタシマシタガ、只今
  渡邊司法大臣ハ朗讀サレマシタ、ナカ/
  記憶ハ出來マセヌガ其御志ヲ嘉シマシテ
  体憩ノ動議ヲ撤回イタウマス

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• 042・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ通〓順ニ
  依リマシテ坂本男爵ニ發言ヲ許シマス
  〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕

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• 043・坂本俊篤

  ○男爵坂本俊篤君　海軍補充計畫ト減稅案
  ノ關係ニ付キマシテハ旣ニ豫算委員會ニ
  於テ鄙見ヲ申述べテ置イタノデアリマス、
  今此豫算ヲ贊成イタシマスニ當リマシテ一
  言玆ニ言及スルコトヲ御許シヲ願ヒタイト
  存ジマス、既ニ、只今豫算委員長ヨリ報〓
  ニナリマシタ如ク第四分科ノ希望決議中、
  海軍省所管ニ對シマシテ斯樣ナ希望決議ガ
  附サレタノデアリマス、卽チ「倫敦條約ノ權
  利行使ニ方リ政府ハ國防上兵力ニ不足ヲ來
  サザル樣萬全ノ對策ヲ講ゼラレンコトヲ望
  ム」卽チ我ガ海軍ガ倫敦會議ヲ權利ヲ行使
  シ、國防上兵力量ノ不足ヲ來サザラムコト
  ヲ期シマスニハ將來此上ニモ莫大ナル所
  ノ國帑ノ支出ヲ待タナケレバナラヌニモ拘
  ラズ、財務當局ハ之ニ對シテ財政上未ダ何
  等ノ準備ナキコトガ明カニナリマシタコト
  ニ顧ミマシテ、本員ハ將來國防計畫遂行上
  言フベカラザル不安ヲ感ゼザルヲ得ナイノ
  デアリマス、倫敦條約制限内ノ權利行使ニ
  屬シマス所、尙ホ四万三千八百噸ヲ剩ツテ
  居ルノデアリマス、之ニ華盛頓條約ニ依ッテ
  得マシタ所ノ殘餘ト、倫敦條約ニ依ル制限
  外ノ權利行使ニ屬スルモノ五千噸ヲ合セマ
  ストキニハ合計一万七千噸ヲ剩シマス、卽
  チ總計ニ於テハ六万八百噸ト云フモノノ建
  造スル權利ヲ華盛頓竝倫敦條約ニ於テ得テ
  居リマスコトハ是ハ明白ノ事實デアリマ
  ス、今囘海軍整備計畫トシテ協賛ヲ待チマ
  ス所ノ艦艇建造量ノ制限內制限外ヲ含マシ
  テ七万五千三百噸、之ニ要スル所ノ建造費
  ハ二億四千七百八万圓ト云フコトニナッテ
  居ルノデアリマス、卽チ此比例ヲ以チマシ
  テ、將來建造サルベキ所ノ此艦艇ノ總量タ
  ル六万八百噸ヲ推算イタシマスレバ、約二
  億圓ヲ要スルコトハ數字上明カニナッテ居
  ルノデアリマス、財務ノ當局ハ曰ク昭和十
  一七、卽チ千九百三十六年マデハ此度ノ整
  備計畫ヲ以テ保留財源ハ全部之ヲ使ヒ盡シ
  剩ス所ハナイガ、昭和十二年卽チ千九百三
  十七年以後ニ於テハ年々六千万圓ノ財源ガ
  アリマスカラ、之ヲ以テ之ニ引當テニサレ
  ル如キ有樣デアルノデアリマス、然ルニ此
  年ニナリマスルト倫敦條約ニ依ッデ建造ガ
  延期サレマシタ所ノ主力艦ノ建造ニ著手セ
  ネバナラヌコトニナッテ居ルノデアリマス、
  卽チ華盛頓條約ノ定ムル所ニ依リマスレバ
  日本ハ每年一隻、英米ハ一隻乃至二隻ヅツ
  ヲ建造セネバナラヌコトニナッテ居ルノデ
  アリマス、而シテ主力艦ノ建造費ハ假リニ
  將來之ガ艦型其他縮小サレマスルト致シマ
  シテモ、排水量ガ約二万五千噸ト致シマツ
  テモ、其價格ハ一隻六千万圓ヲ下ラヌト思
  フノデアリマス卽チ保留財源六千万圓ハ
  年々主力艦一隻建造ノ爲ニ皆之ニ依ッテ消
  エテシマフト云フ有樣ニナッテ居ルノデア
  リマス、殊ニ倫敦條約ノ權利行使ニ當リマ
  シテ、昭和九年乃至十年ノ頃ニハ遲クモ建港
  ニ著手セネバナラヌモノニ對シマシテハ
  全然當局ニ於テハ財源ニ見當テナク、强ヒ
  テ之ヲ追究イタシマスレバ曰ク、其時ニ臨
  ミ國防上是非必要トアレバ財源ハ如何樣ト
  モ工面シテ其需メニ應ズルコトニスベシ
  又曰ク外國ノ狀勢ヲ考慮スル必要ガアレバ
  今カラ左樣ナコトヲ極メル必要ハナイ、極
  マラヌモノニ對シテ今カラ財源ヲ彼是レ言
  フノ要ナシ、斯樣ニ申サレテ居ルノデアリ
  マス、殆ド他ヲ······顧ミテ他ヲ言フガ如キ、
  ホンノ一時ノ逃レノ答辯タルニ過ギマセ
  ヌ、眞ニ經綸アリ抱負アル財務當局ノコト
  ト致シテハ受取リ能ハザル所ノモノデアリ
  マス、玆ニ於テ一言指摘イタシタイコトハ
  此種ノ質問ニ對シマシテハ此議會ヲ通ジ
  マシテ各閣僚カラ到ル處ニ於テ、斯樣ナ御
  言葉ガ聽カサルルノデアリマス、卽チ外國
  ノ狀勢モ考慮セネバナラズ、從シテ今カラ取
  極メルコトガ出來ナイ、故ニ之ニ要スル所
  ノ財源ニ付テモ今兎ヤ角ヤ言フニハ及バナ
  イト、斯樣ナ言葉ガ屢、各〓僚ニ依ッテ繰返
  サレテ居ルノデアリマス、無條件ニ之ヲ聽
  キマス時ニハ如何ニモ左様ニ聞エ、極メテ
  都合ノ好イ逃ゲ口上デアルト思フノデアリ
  マスガ、併ナガラ之ヲ日本ノ特殊ノ立場ニ
  アルモノカラ見マスレバ其言譯ハ必シモ
  御尤デアルト云フコトハ出來ヌノデアリマ
  ス、成程其艦型デアルトカ、排水量デアル
  トカ乃至砲ノ口徑デアルトカ云フモノハ、
  是ハ日進月步ノ今日ニ於キマシテハ、他ノ
  外國ノ爲ス所ヲ見マシテ、然ル後之ヲ決定
  セネバナラヌト云フコトハ勿論デアリマス
  ガ、併ナガラ倫敦條約ノ權利ヲ行使スルニ
  要スル所ノ財源マデ今ソレヲ考慮スルニ及
  バナイ、又ハ準備スルヲ要サナイ、左樣ナ
  申譯ハナラヌト思フノデアリマス、如何ト
  ナレバ日本ハ條約量ニ於テハ國防上既ニ不
  足デアルト云フコトガ前提サレテ居ルノデ
  アリマス、卽チ艦艇ノ建造ノ權利ヲ全部行
  使イタシマシテモ尙目ツ不足デアルト云フ
  ノデ、已ムヲ得ズ其補足ノ艦艇以外ニ機能
  ノ全ク違フ所ノ航空兵力ヲ以チ尙且ツソレ
  ニ忍ンデ充實スルコトニ依リマシテ、其缺
  陷ヲ補足セネバナラヌ、左樣ナ立場ニアル
  コトヲ顧ミマシテモ、只今申サレルガ如キモ
  ノハ是ハ申譯ニハナラヌト云フコトヲ考ヘ
  ラレマス、之ヲ以テ見マシテモ今ノ閣僚諸
  公達ノ用ヰラレマス所ノ其御言葉ハ此特殊
  ノ地位ニ置カレタ所ノ日本ニハ通用セヌモ
  ノデアルト云フコトハ明カデアリマス、以
  上申述ベマシタ如ク、海軍補充計畫ニ對ス
  ル所ノ財政上ノ前途ハ極メテ不安デアルト
  云フコトハ玆ニ斷言シテ憚ラヌノデアリ
  マス、第四分科ガ海軍ニ向テテ望決議ヲ附
  シ、國防上兵力ノ不足ヲ來サザルヤウ萬全
  ノ對策ヲ講ゼヨ、左樣ニ申シマシテモ、其兵
  力量ヲ補充スル所ノ此財政計畫ガ之ニ伴フ
  ニアラザレバ、之ヲ如何トモスルコトハ能
  ハナイノデアリマス、鳥ハ翼ガ無クシテハ
  飛ブコトガ出來マセヌ、此場合鳥ノ翼ヲナ
  スモノハ實ニ財源デアリマス、眞ニ經綸ア
  ル所ノ財政計畫デアリマス、本員ハ此點ニ
  於テ深ク深ク當局ノ省察ヲ希望スルモノデ
  アリマス、次ニハ燃料問題ニ付テ言及イタ
  シタイト思フノデアリマス、次ニ本員ハ豫
  算委員第五分科ニ於ケル燃料國策ニ關スル
  希望決議ニ關聯イタシマシテ一言申述ベタ
  イト思フノデアリマス、卽チ「我國石油ノ產
  額ハ其ノ最大消費者タル海軍所用ヲ除キタ
  ル國內需用ニ對シ猶三割ヲ充タスニ足ラズ
  餘ハ悉ク之ヲ海外ヨリノ輸入ニ待タザルベ
  カラズ、國家ノ前途轉タ寒心ニ堪ヘザルモ
  ノアリ、政府ハ宜シク燃料國策樹立ノ計ヲ
  促進シ、以テ國防上將タ產業上速カニ此危
  險ヨリ免ルルノ途ヲ講ゼラレムコトヲ希望
  ス」斯樣ニ申サレテ居ルノデアリマス、之ニ
  依ッテ見マシテモ我國ノ石油ノ最大消費者
  ハ海軍デアルコトハ明白デアルノデアリマ
  ス、而シテ我ミノ最モ寒心ニ堪ヘマセヌコ
  トハ一朝有事ノ日ニ我ガ海軍ガ此石油燃
  料ノ缺乏ニ堪ヘ得ルヤ否ヤト云フコトデア
  リマス、是ハ我國バカリデゴザイマセヌ、
  各國共ニ斯樣ナ狀態ニ立至ッタコトハ、去ル
  歐洲大戰ノ際ニモ佛國アタリハ石炭ノ窮乏
  カラ、遂ニハ彼ノ有名ナル「フオッシユ」元帥
  ノ如キハ、石油ノ一滴ハ血ノ一滴ニ値スル
  トマデ極言サレタト云フコトニ見テモ分ル
  ノデアリマス、海軍ノ補充計畫ニ付キマシ
  テハ國防ニ目覺メタル所ノ國民ノ間ニハ
  隨分ヤカマシク言ハレテ居リマスガ獨リ
  此大切ナル所ノ燃料計畫ニ付キマシテハ
  餘リニ無關心デアルト云フコトハ本員ノ
  最モ怪訝ニ堪ヘナイ所ノモノデアリマス
  海軍ニシテ燃料ナキハ、恰モ兵隊ニ足ノ無
  イノト同樣デアリマス、燃料ノ無キ海軍ハ、
  百万噸ノ艨艟ヲ擁シマシテモ一ツノ海上ノ
  漂流物タルニ過ギヌノデアリマス、併ナガ
  ラ今日ハ每年北樺太ノ油田カラ供給サレル
  所ノ原油約十五万噸、之ニ露國「シンヂケー
  ト」ヨリ買上ゲマスル所ノ石油五万噸ヲ合
  セマスレバ、此方面ヨリスルモノ約二十万
  噸之ニ南滿ノ撫順炭礦ヨリスル頁岩乾餾
  法ニ依ル所ノ、卽チ「オイル·シェル」ニ依ル所
  ノ液體燃料約六万噸ヲ入曰セマスルトキニ
  ハ年額ニ於テ約二十五六万噸ノ供給ハ先
  ヅ確實ト見ルコトガ出來ルノデアリマス
  之ヲ今日ヨリ十年以前ニ比シマスレバ、此
  問題ノ上ニ大ナル改善ノ跡ヲ見ルニ至リマ
  シタコトハ國家ノ爲メ慶賀ニ堪ヘザル次
  第デアリマス、併ナガラ一朝有事ノ際、其
  全海軍ヲ擧ゲテ活動スル際ノ消費量ニ想ヒ
  到ルトキニハ甚ダ寒心ニ堪ヘヌモノガア
  ルノデアリマス、容易ニ樂觀ヲ許サザルモ
  ノガアルノデアリマス此點ニ付キマシテ
  ハ特ニ當局ニ對シテ艦艇ノ補充計畫ト燃
  料補充計畫トハ輕重スル所ナク、互ニ併行
  シテ、共充實ニ於テ遺策ナカラムコトヲ希
  望スルモノデアリマス、次デ一般國民間ノ
  石油ノ需用供給ノ間題デアリマスガ、今ヤ
  國內ノ產額ハ其需用ノ三割ヲ充タスニ足ラ
  ズ、其七割餘ト云フモノハ悉ク之ヲ海外ノ
  輸入ニ俟チツツアリト云フ狀態デアルノデ
  アリマス不時ハ尙ホ可ナリト致シマスル
  ガ、一朝太平洋ニ波立チ騒イデ、我ガ海上
  權ガ西部太平洋ニ蹙マッテ參リマスル日ニ
  ハ是マデ南北米竝ニ南洋方面ヨリ供給シ
  マシタ所ハ是等ノ海外輸入ハ一時ニ杜絕
  スルト云フノ危險ニ暴露シツツアルノデア
  リマス、此場合ハ如何デアリマセウカ、船
  舶ハ駛ルコト能ハズ、自動車ハ動クコト能
  ハズ飛行機、飛行船モ飛ブコト能ハズ、
  國家ノ活動機關ハ文字通リニ一時ニ停止セ
  ザルヲ得ナイノデアリマス我ハ一艦
  兵卒モ之ヲ損セザルニ先チ、卽チ未ダ戰ハ
  ザルニ、我ハ先ヅ此點ニ於テ屈服ヲ餘儀ナ
  クサレナケレバナラヌト云フコトニナルノ
  デアリマス、一念此ニ及ベバ、三伏ノ日尙
  ホ膚ニ粟ヲ生ゼザルヲ得ナイノデアリマ
  ス、故ニ此危險ニ直面シテ、若シ我國ニ於
  テ國策樹立上先ヅ其焦眉ノ急ナルモノヲ求
  メマシタナラバ、恐ラクハ此石油燃料國策
  樹立ヨリ急ナルモノハナカラウト思フノデ
  アリマス、幸ニ政府當局ノ御手許ニハ曩ニ
  商工審議會ヨリ幾多ノ歲月ト周匝ナル斯界
  權威ノ檢討イタシマシタル所ノ此燃料國
  策樹立ニ關スル答申案ノ進達サレテ居ルモ
  ノガアリマスカラ、當局ニ於テハ其答申ニ
  基キ銳意之ガ實現ニ努メラレ、國防上ニ將
  タ產業上ニ、現下我國ガ最モ暴露サレツツ
  アル所ノ弱點ニ向ッテ、之ガ匡救ノ途ヲ講ゼ
  ラレンコトヲ偏ニ希望スル次第デアリマ
  ス、以上申述ベマシタコトニ對シマシテハ、
  政府當局ニ於テモ必ズヤ愼重ニ考慮ヲ費サ
  ルベキコトヲ信ズルモノデアリマス、玆
  本豫算ニ贊成スルニ當リマシテ一言申述べ
  テ置ク次第デアリマス(拍手起ル)

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• 044・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　是ニテ通〓者ハ
  終了ヲ〓ゲマシタ、總豫算竝ニ豫算外國庫
  ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件ニ
  付テ採決ヲ致サウト存ジマス、只今議長ノ
  申述ベマシタ豫算案全部ヲ問題ニ供シマ
  ス、原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
  〔起立者多數〕

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• 045・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=45

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• 046・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　是ヨリ各特別會
  計像算案ニ移リマス、只今議長ノ宣告イタ
  シマシタ通リ、各特別會計豫算案ヲ議題ト
  致シマスガ、其中、拓務省所管中朝鮮總督
  府忠〓南道廳舍新營費ニ關シ委員會修正ガ
  アリマス、其修正ニ付キ贊否兩者ヨリ討論
  ノ通告ガゴザイマス、先ヅ此部分ヲ問題ト
  シ討論ヲ許ス積リデゴザイマス通〓順
  ハ阪本彰之助君デゴザイマスガ、議席ニ居
  ラレマセヌカラ、阪合男爵ニ發言ヲ許シマ
  ス、同君ノ登壇ヲ望ミマス
  〔男爵阪谷芳郎君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=46

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• 047・阪谷芳郎

  ○男爵阪谷芳郞君　忠〓南道道廳ハ只今公
  州ニ在リマスルノヲ此度大田ノ方ニ移シタ
  イト云フ意味ヲ以テ道廳移轉費ト云フモノ
  ガ豫算ニ揭載セラレテアルノデアリマス、
  其金額ハ十五万圓、今年度分ハ十五万圓デ
  アリマス、繼續費トナッテ居リマス、衆議院
  ニ於テハ之ヲ削除イタシマシテ貴族院ノ
  方へ〓付ニナッタノデアリマス、貴族院ニ於
  キマシテハ豫算委員總會ニ於キマシテ
  又分科會ニ於テモ、此點ニ付テ十分審議ガ
  アリマシタ共結果、衆議院ノ修正ハ穩當ヲ
  缺クカラシテ政府案ノ通リニ復活シタラ宜
  カラウト云フコトニ採決ノ結果ナリマシタ
  ノデゴザリマス、サウ致シマスルト是ガ本
  院ヲ通過イタシマスレバ衆議院ガ直チニ
  同意セラレルカ、若シ同意セラレヌナラバ
  協議會トナッテ、其協議案ノ結果如何ニ依リ
  マシテハ、只今問題トナッテ居リマスル特別
  會計全部ガ不成立ニナルト云フコトニナリ
  マスノデス、デ私ハ此道廳移轉費復活ト云
  フコトニハ反對ノ意見ヲ述ベタイノデアリ
  やく、此問題ハ十五万圓ノ金額ノ問題デゴ
  ザイマスルガ、我ミハ大イニ注意ヲ拂ハネ
  バナラヌト云フ〓訓ヲ得タノデアリマス
  朝鮮ノ半島ノ問題ヲ兎角內地ノ人ハ等閑ニ
  見テイカヌ習慣ガゴザイマス、此點ガ著シ
  ク朝鮮統治ノ上ニ影響イタスノデゴザイマ
  ス、例ヘバ豆滿江ノ間島ニ於ケル日本人虐
  待、其日本人ト申シテモ多クハ朝鮮民族ニ
  屬スル人デアリマス、其虐待問題ニ付テモ
  屢〓問題ガ起リマシテ、ドウモ間鳥問題ニ付
  テノ外務當局ノ熱心ガ足リナイト云フヤウ
  ナコトガ、朝鮮半島ノ人ハ內地ノ人ヨリモ
  ヨリ著シク感ジテ居ルノデアリマス、此度
  ノ問題ニ付キマシテ貴衆兩院ノ議論ハ唯
  單純ノ議論デ、憲法ノ上ニ於テハドウ、議
  院法ノ上ニ於テハドウト云フヤウナコトデ
  アリマスルガ、朝鮮半島ノ人ハソレ以上ニ
  考ヘテ居ルノデアリマス、デ朝鮮半島ノ人
  ハ朝鮮ノ問題ハ朝鮮ノ人ガ議論シテ決定
  スベキデアル、デ今日、朝鮮ノ民族ノ代表
  者ガ、衆議院ニモ貴族院ニモ居ラザルコト
  ヲ遺憾トスル、斯ウ云フ念ガ大變强イノデ
  アリマス、其念ガ此度ノ問題ニ現レテ居ル
  ノデ、私ノ申シマシタ大イナル〓訓ヲ得ク、
  日本ノ貴衆兩院ノ議員ハ勿論、政治家ハ此
  朝鮮半島ノ人心ノ在ル所ヲ能ク注意ヲ拂。ツ
  テ、物ヲ輕ミニ、十五万圓ノコトデ、何ダ
  カ、オカシイト云フコトデ、削ッタリ活カシ
  タリスルコトハ宜シクナイ、然ルニ此公州
  移轉ノ問題ニ付テハ、ドウモ政府當局者ニ
  手落チガアルノヂヤナイカト云フ感ヲ致ス
  ノデアリマス、御承知ノ通リニ、公州ト云
  フ所ハ、百濟ノ都デ、今カラ千三百年程以
  前ニハ卽チ神功皇后ノ御征伐ノ時代ニハ
  日本政府ガ置カレテ居タト思ヒマス、アノ
  近所ニ、位置ハ能ク分リマセヌガ、今日ノ
  統監府ト稱スベキモノデアリマシタ、ソレ
  クラヰ此公州ハ古イ所デアリマス、新羅、
  任那、百濟、所謂三韓ト云フ、アスコニ三
  ツノ國ガアッテ、相爭ッタ時ハ、百濟ハ始終
  日本ニ對シテ援助ヲ求メテ來タ、ソレ故ニ
  神功皇后ノ御征伐ト云フヤウナコトモアツ
  タ、是ハマア古イ歷史デアリマス、其以來
  ノ都ヲ移サレルト云フコトハ、公州ノ人ハ
  非常ニ問題トシテ居ルノデアリマス、又公
  州ニハ朝鮮半島ノ人ノ方ガ澤山ニ居ル是
  ハ古來ノ都デアルカラ澤山ニ居ッテ、日本人
  ノ方ノ數ハ少イノデアル之ニ反シテ大田
  ノ方ハ日本人ガ非常ニ多數デ、朝鮮半島ノ
  人ノ方ガ數ガ少イ、サウ云フヤウナコトガ內
  地ノ諸君ガ御考ヘナサル以上ニ、朝鮮ノ人心
  ニハ影響シテ居ルト云フコトヲ考ヘナケリ
  ヤナラヌ、言葉ヲ換ヘテ申セバ、我ミハ朝
  鮮半島ノ人ミノ代表セラレテ居ラヌト云フ
  コトニ、深キ同情ヲ以テ我ミハ十分ニ朝鮮
  ノ民族ノ人ノ利害ヲ能ク聞質シテ此事ヲ
  決定セネバナラヌト云フ義務ガアリマス、
  若シ此事ヲ等閑ニシテデス、唯我ミガ輕〓
  ニ事ヲ處シテ行ノテ、憲法ノ上ニ於テハ斯
  ウ、議院法ノ上ニ於テハ斯ウト云フヤウナ
  コトデ行フタナラバ、詰リ愛蘭ト云フヤウナ
  コトニナッテシマウ、愛蘭ノ問題ガ非常ニム
  ヅカシクナッテ來タノハ、詰リ民族爭ヒカラ
  起ッタ、ソレデ我ミガ十分ナル同情ヲ以テ、
  十分ニ緻密ニ審議スレバコソ、朝鮮半島ノ
  人モ初メテ滿足スル譯ニナル、然ルニ此問
  題ト云フモノハ未ダ十分ニ熟シテナイ問
  題デアル、私ハ今日ハ持參イタシマセヌケ
  レドモ、私ノ所へ雙方カラ來テ居ル書類ハ
  コンナニアル、電信ガアリ手紙モアル實
  ニ澤山ナモノデ、其中ニハ或ハ雙方ノ人ガ
  物ヲ誇大ニシテ、自分ノ主張ニ熱心ノ餘リ
  ニ餘リニ事ヲ大キク言ヒ過ギテ居ルヂヤ
  ナイカト云フヤウナ感ノモノモアリマス
  又或ハ此甚シク〓權ヲ以テ壓迫ヲシタト云
  フヤウナコトモ見エル其果シテ官權デ壓
  迫シタトカドウトカ云フヤウナコトハ是
  ハ或ハ言葉ガ過ギテ居ルノカモ知レマセ
  ヌ又公州ノ人民ハ不滿ノ餘リ石油庫ニ火
  ヲ付ケタトカ、或ハ山林ニ火ヲ付ケタトカ、
  尙ホ今日ハ公州ガ不穩デアル、一々、政府
  ニ聽イテ見ルト云フト左程ニ不穩デハナイ
  ト云フ、ドウモ人民側ノ言ハレルコトト、
  政府側ノ言ハレルコトトガ一致シテ居リマ
  セヌガ、併ナガラ多少ノ事實ハ兩方ニアルト
  云フコトヲ認メナケレバナラヌ卽チ公州
  ノ人モ不滿足デアル大田ノ人モ不滿足デ
  アル要スルニ熟シテ居ラヌ、未熟ノ問題
  デアルト思ヒマス
  〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
  其未熟ノ問題ヲ貴衆兩院ヘ持フテ來ラレタ
  ト云フコトハ甚ダ朝鮮總督ノ方トシテハ
  手落デアル、我ミトシテハ甚ダ迷惑デアル、
  之ニ容易ニ判斷ヲ下スト云フト、ドウモ此
  朝鮮半島デハ代表者ヲ出シテ居ナイ、衆議
  院ニモ代表者ヲ出シテ居ナイ、貴族院ニモ
  出シテ居ナイ、ドウモ我ミハ虐待セラレル
  ト云フ此觀念ガ私ハ非常ニ恐ロシイト思
  フ、決シテサウ云フ觀念ノ朝鮮半島ノ人〓
  ニ增長セヌヤウニ增長セヌヤウニト、我ミ
  ハ十分ニ注意ヲ盡シ、成ベク早ク朝鮮半島
  ノ文化ガ、代議士ヲ出シ貴族院ニモ人ヲ入
  レル、或ハ朝鮮ノ人ハ此節ハ自治機關ト云
  フコトヲ言ッテ居リマスガ、ソレハ憲法ノ上
  ニドウ云フ修正ヲ加フルヤウニナルノカ、
  其邊ハ分リマセヌガ、要スルニ朝鮮ノ人ミ
  ノ政治思想ト云フモノハ朝鮮ガ合邦ニナ
  リマシタ當時ヨリモ餘程今日ハ進ンデ居リ
  マート而シテ私ハ始終其朝鮮ノ所謂元老株
  ノ人······若イ人ニモ接觸シテ居リマスガ
  元老株ノ人ニモ接觸イタシテ居リマシテ、
  此度ノ問題ニ付テモ色ミナ手紙ヲ受取ッテ
  居リマス、要スルニ此問題ヲ輕率ニシテハ
  ナラヌト云フコトノ强キ〓訓ガ、此度ノ問
  題ニ依ッテ我ミニ與ヘラレタノデアリマス、
  所ガ今衆議院ハ削除ニナッテ、サウシテコチ
  ラニ廻サレタ、ソコデ貴族院ニ對シテノ色
  色朝鮮側ノ主張ハ威信ニ關スル總督ノ
  威信ニ關スルト云フコトヲ言ハレテアルノ
  デアリマスガ、併ナガラ總督ノ威信ニ關ス
  ルト言フナラ今日參議院ガ削除シタモノ
  ヲ復活スレバ衆議院ノ威信ニ關スルト云フ
  又問題ガ起ッテ來ル甚ダドウモ取扱ヒガム
  ヅカシイ、此問題ハ······共總督府ノ威信ニ
  關スルト云フ問題モ、私ノ所ヘ來タ手紙ヲ
  分析シテ見マスト全ク違ッタ二ツニナル朝
  鮮總督ト云フモノガ一旦聲明シタコトガ反
  古ニナレバ威信ニ關スルト云フ、是ハ普通
  官憲者流ノ云フ成信ニ關スル問題デアリマ
  ス、ソレカラモウ一ツノ威信ニ關スルト云
  フコトハ、朝鮮半島ノコトヲ朝鮮總督ガ決
  メタノデアルカラ、ソレハ我ミノ民意デア
  ル、ト云フ風ニ解シテ居ル、成信ニ關スル
  ト云フコトモアル、併シ是ハマア少シ無理
  ナ解釋ト思フノデアリマスガ、如何トナレ
  バ此問題ガ何カ共代表機關ヲ經テ總督ガ決
  メタノナラ宜イケレドモ、總督ガ極メテ獨
  斷的ニ決メラレタト云フコトデアル公州
  ノ人ガ東京ニ來テ移轉セラレテハ困リマス
  ト云フコトニ付テノ陳情ヲシテ居ル最中
  ニ、突然發表ニナッタト云フヤウナ譯デアル
  カラ、或ル機關、或ル地方的機關若クハ諮問
  機關、或ハ商工會議所デモ何デモ、何等カ
  ノ民意ヲ代表スル機關ヲ經テ總督カ決メテ
  居ルト云フコトハ、私ハマダ承知シテ居ラ
  ヌ、サウスルト今ノ此コトガ若シ復活セラ
  レナケレバ威信ヲ損スルト云フ議論ガ、民
  意ヲ代表シタ感信ト云フ方ノ解釋ノ方カラ
  成立タヌコトニナリマス、ソレカラ又今一
  ツモウ一ツ困ルコトハソレホド公州ノ人
  ガ利害ヲ感ジテ居ル間題ニ付テ、何等公州
  ニ對シテノ慰安ノ途ハ講ジテナイ、公州ノ
  人ハ千三百年ノ日本トノ交通ガアッテ以來
  ノ郡突然トシテ大田ノ方へ移ルノデスカ
  ラ其歷史的感ノ上カラ論ジテモ、亦土
  地家不動產ニ金ヲ入レテ居ル經濟的價値
  ノ方ノ觀念カラ云ッテモ、公州ノ方ノ人ガ如
  何ニモ道憾ニ思フノハ論ヲ俟チマセヌガ、
  何等カソレニ對シテ大田ニ移ス、併ナガラ
  公州ニハ斯ウ云フコトヲシテヤルト云フ方
  法ガアリサウナモノデアル或ハ鐵道ヲ開
  クトカ、現ニ鐵道ハ四本デスカ三本デスカ、
  出願ガ出テ居ルト云フノデスガ其鐵道ヲ
  闢イテヤルトカ、或ハ移轉ヲシテモ後へ斯ウ
  云フ風ニ學校ヲ作ッテヤルトカ何トカ、公州
  ノ人ガ稍と滿足ヲ表シ得ル手段ガ講ジテア
  ルカト云ヘバ、何等ソレ等モ講ジテ居ナイ、
  是ハ誠ニ事情ヲ聞キマスト氣ノ毒デゴザイ
  マスデスナ、極ク平タク申上ゲレバ、事情
  ヲ聞クト公州ノ人ニハ氣ノ毒デアル、併シ大
  掛ノ方ノ人モ相當ニ運動シテ費用ヲ使ッテ居
  ルノデスガ、ソレモ能ク聞イテ見タラ氣ノ
  毒ノ點モアルデセウガ、要スルニ問題ハ未
  熟ト云フコトニ私ハ判斷スル外ナイ、未熟
  ノ問題ナラバドウシタラ宜イカ、威信トカ
  何トカ云フヤウナ問題ヲ離レテ、ドウシク
  ラ宜イカト云フト、モウ一年待ツト云フコト
  ガ一番宜イ、詰リ衆議院ノ決議通リニ致シ
  テ、此一年間ニ能ク朝鮮總督ニ考ヘテ、公
  州ノ人民大田ノ人民ト能タ膝ヲ交ヘテド
  ウシタラ宜イ、愈「移スカ移サヌカ、移ス
  ニ付テハ公州ニモ氣ノ毒デアルカラ鐵道ヲ
  架ケテヤルトカ、學校モ置イテヤルトカ、
  何等カ公州ノ繁榮ヲ保チ得ル方法ヲ講ジテ
  ヤッタラ宜イダラウ、何カ問題ノ熟シテカラ
  議シタ方カ安全デアル、今此處デ唯運動者
  ノ說ヲ聞イタリ、威信ニ關スルトカ關セヌ
  トカ云フ簡單ナ問題デ此問題ヲ決スルト
  怖シイ大キナ問題カ後ニ控ヘテ居ル、愛蘭
  ノ問題ト云ックヤウナモノガ控ヘテ居ル、現
  ニ皆樣御承知デアリマセウガ、現ニ大阪市
  ガ、大大阪ヲ造ルト云フ時分ニ、私共モ都
  市計畫委員デシタガ、アノ中ニ堺ヲ人レル
  ト云フ、堺ヲ入レルトチヨット〓劃カ良タナ
  ルケレドモ、堺ノ人民ハ承知シナイ、堺市
  ハ太開校以來、大阪ヨリ先へ出來タ市デア
  s、ソレデ大大阪ニ入ラレル理窟ハナイ、
  域程經濟上カラ論ズレバ問題ニナラヌヤウ
  ニ見エマスケレドモ、其處ガ卽チ民族トカ、
  或ハ國民ノ自治心トカ愛國心トカ云フモ
  ノノ最モ趣味ノアル、卽チ面白イ所デアラ
  ウト思フ、又現ニ東京ノ傍ニ浦和ガアル、
  浦和ト云フモノハ今多少人ガ殖エマシタケ
  レドモ浦和ニ縣廳ヲ置イタ頃ハ實ニ淋シ
  イ所デアッタ、熊谷デアルトカ、或ハ大宮ト
  カ、本庄トカ幾ラモ埼玉縣ノ本庄ハ
  ドウダッタカ知ラヌガ、熊谷ト云フヤウナ、
  立派ナ縣廳ヲ置ク場所ガアッタノデスガ、ド
  ウシテモサウハイカナイデ、浦和ト云フ所
  ニ縣廳ガ出來テ、ソレガ長イコト、ヨク縣
  廳ヲ熊谷ヘ持ラテ行カウト云フコトモアッタ
  ガ、其儘今日ニ至ッテ居ル、是ハドウモ道魔
  ヲ移スト云フヤウナコトモデスネ、殊ニ代
  表者モ出シテ居ナイ、衆議院ニモ貴族院ニ
  モ代表者ガ出テ、双方ノ人ガロヲ利クコト
  ガ出來ナイノデアッテ見レバ、我ミハ安全ナ
  方ノ考ヲ持シタ方ガ適當ト思フ、殊エ貴族院
  トシテハ適當ト思フノデス、ソレデ之ヲ豫
  算委員會ガ復活シヤウト云フノモ一理ナキ
  ニハアリマセヌケレドモ、ドウシテモソレ
  デハ却ッテ無理ガアル、後ノ結果ガ私ハ面白
  クナイト思フ、ソンナコトハドウデモ宜イ
  ト仰シヤルカ知レマセヌケレドモ、先議權
  ヲ重ンズル、衆議院ノ先議權ヲ重ンズルト
  云フヤウナコトハ、是ハ此兩院ノ德義ダト
  思フ、何カソコニ强イ理由ガアレバ、ツレハ
  我ミハ我〓ノ修正權ヲ振"テモ宜イケレドモ、
  僅カ十五万圓ノコトデスガ、ドウ考ヘテモモ
  ウ一年待ツ方ガ穩當ダ、モット良ク調ベテカ
  ラヤルト云フノガ穩當デアル、サウ云フ場
  合ニ先議橫ヲ有ノテ居ル衆議院ニ望ンデ見
  タ所ガ、甚ダドウモ議論ガムヅカシイ、膝
  ヲ交ヘテ、ドウカ衆議院ノ御方ニ、此方へ
  撮從ナサイト言フテモ、議論ガ立チニタイ
  ト思ヒマスカラ、ソレヨリモ豫算委員ノ議
  論ニハ少シ反シマスガ、二十人ト三十二人
  デスカラ殆ド半々ニ近イ議論デアル、ド
  ウカ本會議ニ於テハ衆議院ノ削除ノ方ニ御
  同意アランコトヲ希望イタスノデアリマ
  ス、卽チ豫算委員長ノ復活論ニ反對ノ意見
  ヲ申上ゲテ御贊成ヲ求メマス
  〔伯爵御原義光君演壇コ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=47

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• 048・柳原義光

  ○伯爵柳原義光君　私ハ不幸ニシテ先輩タ
  ル所ノ阪谷男爵ノ御意見ニ反對イタス者デ
  アリマス而シテ冒頭ニ先ヅ申上ゲテ置キ
  マスルガ、私ハ飽クマデモ衆議院ノ豫算先
  議權ヲ尊重イタス者デアリマス、尊重ハ致
  シマスケレドモ、菊モ之ニ向ッテ修正ヲ加ヘ
  テ差支ナイ大ナル理由ガアリマスレバ、貴
  族院ハ貴族院ノ權能ト致シテ、豫算ニ修正
  ヲ加ヘ、斧鉞ヲ加ヘテモ毫モ差支ナイモノ
  ト私ハ信ズルモノデアリマス、只今私ハ其
  理山ヲ極ク簡單ニ陳述イクシテ、諸君ノ御
  〓聽ヲ煩ハシタイト考ヘマスル、私ハ豫算
  委員長ガ御報告ニナリマシタル如ク、卽チ
  其修正議決セラレタリト申サレタル所ノ通
  リ朝鮮ノ忠〓南道道廳移轉ノ問題ニ付キ
  マシテハ卽チ委員長報告ノ如ク衆議院ノ
  削除セル忠〓南道廳舎新築費三十五万九千
  圓ヲ復活スルコトニ贊或ヲ表スル一人デア
  リマスル、更ニ之ヲ的確ニ申上ゲマスレバ、
  昭和六年度各特別會計歲入歳出豫算案中、
  拓務省所管、朝鮮總督府ノ歳出ニ於テ營繕
  費トシテ前記ノ三十五万九千圓、年額ニ致
  シマスルト、六年度ニ於テ十五万圓、七年
  度ニ於テ二十万九千圓ヲ復活スルコトヲ私
  ハ贊成イタスノデアリマスル、更ニ之ヲ具
  體的ノ事業トシテ申上ゲマスレバ、道廳ヲ
  公州ヨリ大田ニ移スコトニ私ハ熱心ニ贊成
  ヲ致スモノデアリマスル、簡單ニ其理由ヲ
  申上ゲテ見タイト考ヘマスル、元來此問題
  ハ豫算ノ金額カラ見マスルト、極メテ僅カ
  ナ徵々タル金額デアルコトハ皆樣方ノ御
  存ジノ通リナノデゴザイマスル、金額カラ
  見タラ誠ニ僅カナモノデアリマスル、先頃
  幣原首相臨時代理ノ御演說中ニモ、昭和六
  年度ノ豫算ニ付テハ財界竝ニ國庫歲入ノ
  狀況ニ鑑ミ、既定經費ニ對シテハ極力整理
  緊縮ヲ加フルト共ニ、新規ノ事業ハ眞ニ緊
  急已ムヲ得ザルモノノ外、之ヲ認メナイ方
  針デアルト云フコトヲ言ハレタノデアリマ
  六 片而シテ井上大藏大臣モ亦是ト同樣ナ
  意味ノコトヲ有ユル機會ニ於テ述ベテ居ラ
  レルノデアリマス、然ラバ此豫算ニ之ヲ計
  上セラレタト云フモノハ卽チ此緊急已ム
  ヲ得ザルモノデ、全ク政府トシテハ必要ノ
  モノトシテ、之ヲ豫算ニ計上イタサレタモ
  ノト私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマスル又
  サウアラネバ相成ラヌコトト考フル者デア
  リマスル、卽チ朝鮮總督ニ於テモ勿論緊急
  必要ナリトシテ政府ニ之ヲ要求イタサレ、政
  府ハ之ヲ愼重ニ審議サレ、適當ナリト認メ
  テ閣議ヲ經テ決定シ、上奏シタル後、帝國
  議會ニ提出イクサレタモノデアルト私ハ信
  ズルノデアリマス、卽チ諄イヤウデアリマ
  スルガ、卽チ總督府ガ必要ト信ジ、拓務大
  臣亦之ヲ必要ト認メ、政府モ之ヲ必要ト認
  メ豫算ニ計上イタシテ居ル、所ガ諸君御承
  知ノ如タ、誠ニ私等ノ如キ頭腦ノ明敏ナラ
  ザル者ニハ郡邊ニ理由ガアルノデアリマス
  鬼 り、其理由ヲ探ルニ苦シムノデアリマス
  ガ、極力政府案ヲ維持スベキ興黨ニ於テ
  此豫算ヲ······此費用ヲ削除イタシタノデア
  リマス、誠ニドウ云フ理由デアリマスル
  カ、私等ノ如キ淺薄ナル頭腦ヲ以テ、此微
  妙ナル所ノ理由ヲ見出スコトニ全然苦シム
  ノデアリマス、努メテ、併シ如何ナル所ニ
  其理由ガアルカト云フコトヲ探リマス爲ニ、
  私ハ衆議院ノ速記錄ヲ詳細ニ一通リ讀ンデ
  見タノデアリマス、斯ウ云フコトガ先ヅ重
  モナ理由ノヤウデアリマス、其一ツトシテ
  ハ「此經費ハ諸般ノ狀況ニ鑑ミ、此際之ヲ削
  除スルガ妥當ナリト考ヘマス」斯ウ云フコ
  トガ一ツノ······一箇條ノ理由ニ相成ッテ居
  ルノデアリマス、諸般ノ狀況ニ鑑ミ、此際
  之ヲ削除云々ト云フコトハ極メテ含蓄ノ
  アル言葉デアッテ、誠ニ妙味ノ頗ルアル言葉
  デアリマセウガ、具體的ニ何ヲ其處ニ意味
  スルノデアルカ、誠ニ分ラナイ、曖昧朦
  朧頗ル了解ニ苦シム渾沌タル言葉デアリ
  マス、私ノヤウナ頭腦ノ極メテ鈍イ者ニハ、
  全ク之ヲ理解スルコトノ出來ナイ、ムツカ
  シイ理窟デアリマスル、其次ノ第二ノ理由
  ト致シマシテハ、「公州ハ古キ歷史上ノ關係
  ガアリマス、公州ハ相當人ノ集リタル
  〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
  都會地デアルト云フ關係上、種々綜合イタ
  シマシテ公州ニ其儘置ク、コトガ至當ト考ヘ
  タ次第デアリマス」斯ウ云フ理由デアリマ
  スルガ、勿論是ハ移スベキ所モ將ニ移サレ
  ントスル所モ、人ノ居ラヌ無人境デハナイ
  ノデアリマスル、ドチラモ人ノ居ルト云フ
  コトハ當リ前ノ話デアリマスルカラ、相當
  人ノ集リタルト云フヤウナ曖昧模糊ノ理由
  デアル、是ハ御尤ト云フコトニハ私ハドウ
  シテモ參リ兼ネルノデアリマスル、而シテ
  阪谷男爵モ今仰セラレタヤウデアリマスル
  ガ、公州ハ古キ歷史上ノ關係ガアルト云フ
  コトヲ深ク御力說ニ相成リマシタガ、私ガ
  調べ且ツ承知イタシテ居ル所ニ依リマスル
  ト、公州ハ百濟以來千四百年來ノ舊都ト云
  フコトハ是ハ事實デアリマスルケレドモ、百
  濟沒落後ハ單ニ風光明媚ノ地トシテ文人墨
  客ノ遊覽地タルニ過ギヌト云フコトニ私ハ
  承ッテ居ルノデアリマスル、サウ致シマスル
  ト強ヒテ申セバ我ガ內地ニ於ケル奈良トカ
  乃至モウ少シ變タタ地地デ申シマスレバ、
  奧州ノ先キニアル平泉ノ藤原秀衡······泰衡
  デアリマシタカ、金色堂ノ在ル所位ノモノ
  デアラウト思フノデアリマス、要スルニ是
  モ强イ理由デアルノデハナイ、强イドコロ
  ヂヤナイ、全ク理由ノナイ理由ト思フノデ
  アリマス、ソレカラモウ一ツノ理由ハ强
  ヒテ考ヘマスレバ三十五万九千圓ヲ新ニ出
  シテ移轉スルマデノ必要モアリマスマイト
  云フノガ、是亦一ツノ理由デアリマス是
  ハ私等カラ言ヘバ强ヒテ今三十五万九千圓
  ヲ新ニ出シテ移轉スルマデノ必要モアリマ
  スマイト云フコトハ强ヒテ言ハナクテモ
  宜シカラウト云フ、反問的ニ是ハ解釋ノ出
  來ルコトト思ヒマスル、極メテ是モ論據薄
  弱ナ理由ノヤウニ思フノデアリマスルド
  ウ考ヘテ見マシテモ此削除ノ理由ハ極メテ
  薄弱ニ考ヘルノデアリマスル而シテ方面
  ヲ變ヘマシテ公州ヨリ大田ニ移轉スル理由
  ヲ私ハ政府當局ナリ其他ノ者カラ承ッテ見
  マスルト左ノ八ツノ點デアルヤウデアリ
  マツ、卽チ朝鮮統治ノ政治的方面カラ見テ
  モ之ヲ移ス方ガ宜イト云フコトト交通上
  ノ方面カラ見テモ之ヲ移スコトガ可ナリト
  申スコトト、通信上ノ方面カラ見テモ之ヲ
  移スコトガ可ナリト申スコトト、又經濟上
  ノ方面カラ見テモ之ヲ移スコトガ可ナリト
  云フコト、此四ツノ理由デアリマスル、其
  理由ヲ小別ケ致シマスルト、中ニ二ツ宛附
  イテ居リマスルカラ、都合八ツノ點ニ於テ、
  移スコトガ至當デアルト云フ理由ヲ私ハ承,
  テ居ルノデアリマスル、是ハ印刷物トシテ
  普ク政府ガ配付イタサレテ居ルノデアリマ
  スルカラ、定メテ皆樣ノ御手許ニアルコトト
  信ジマスル、一々之ヲ讀上ゲテ御紹介イタス
  コトハ何デモアリマセヌガ、餘リ時間ガ長ク
  ナリマスカラ單ニ今申上ゲタ政治的方面、
  交通上ノ方面、通信上ノ方面、經濟上ノ方
  面カラ移スコトヲ是ナリトスル理由デアル
  ト云フコトヲ私ハ申上ゲテ置ク次第デアリ
  マス、元來此道廳ノ移轉ハ豫算ガ伴ハナケ
  レバ總督ノ權限デ當然是ハ出來ルコトデア
  リマスル豫算ガ伴フガ故ニ帝國議會ノ協
  贊ヲ經ルト云フ形式ヲ取ルノデアリマス
  ル而シテ單ニ此理由ノ一ツデアル交通ノ
  點カラ見マシテモ、私ハ一昨年朝鮮ニ參タ
  ノデアリマシテ、旅行ヲシテ居ルカラ略、
  之ヲ一般的ニ知リ得ル知識ヲ得マシテ、
  通リ成程斯ウデアラウカト云フコトモ私ハ
  知リ得テ居ルノデアリマスル斯ノ如クニ
  冷靜ニ政府當局ノ說明ト衆議院ニ於ケル削
  除ノ理由トヲ比較研究シテ見マシテドウ
  モ政府當局ノ說明卽チ大田ニ移スコトガ至
  當デアルト云フヤウニ私ハ考ヘルノデアリ
  やく、勿論公州一部ノ人ハ是ハ誠ニ不滿デ
  アラウト思ヒマス、是ハモウ常識カラ考ヘ
  テ見テモ申ス迄モナイコトデアリマスル
  ガ、私ハサウ信ズルノデアリマス私ハ更
  ニ全ク別種ノ大所高觀セル所ノ見地カラ致
  シマシテ、政府ノ原案卽チ衆議院ニ於テ削
  除セル豫算ヲ更ニ復活スル大ナル理由ヲ
  玆ニ認メルノデアリマス、暫ク此點ニ付テ申
  上ゲタイト考ヘマスル、ソレハ朝鮮ノ如キ
  新領土ニ於テハ總督ノ威嚴ヲ固ク保ッテ、其
  地位ニ深キ敬意ト信賴ノ念ヲ起サシムルノ
  ガ私ハ最モ必要ナルコトト······政治上最
  モ是ガ必要デアルト私ハ信ズルノデアリマ
  ス申スマデモナク朝鮮ノ總督ト臺灣ノ總
  督トハ全然其性質ガ異ッテ居リマシテ、畏ク
  モ陛下ノ御名代ト申スガ如キ意味ニ於
  テ、朝鮮統治ノ重任ニ就イテ居ルノデアリ
  マスル、而シテ其職務ハ言フマデモナク、
  新附ノ臣民ヲ愛撫シテ、常ニ政治的ニ幸福
  ニナラシムルヤウニ圖ルノガ當然ナノデア
  リマス、常ニ春風騎蕩タルガ如キ溫カキ態
  度ヲ以テ之ニ臨ムコトハ勿論必要デアリマ
  スケレドモ又他ノ一方ニ於テハ、秋霜烈
  日ノ如キ威嚴ヲ保タナケレバ私ハイケナイ
  コトト深ク信ズルノデアリマス
  〔「ノー〓〓」ト呼フ者アリ〕
  卽チ一方ニ於テハ大慈大悲ノ觀世音ノ如キ
  溫容ヲ有スルト共ニ、他方ニ於テハ大威德
  不動明王ノ如ク、降魔ノ利劍ヲ以テ苟モ赦
  サザル所ノ威嚴ヲ保タナケレバ統治スルコ
  トガ出來ナイト信ズルノデアリマス、「ノー
  ノー」ト仰セラレル方ハ遺憾ナガラ私ト意
  見ヲ異ニスルノデゴザイマス、而シテ若シ
  此削除說ガ成立イタシマシテ、前述ノ如ク
  朝鮮總督ガ先ヅ之ヲ唱ヘ拓相ガ之ヲ容
  レ政府ガ之ニ贊成シタル道廳ノ移轉ガ出
  來ヌコトト相成リマシタナラバ總督ノ威
  嚴ガ私ハ失墜スルモノデアラウト思ヒマス
  ル、其結果ニ於テ由々シキ私ハ大事ニナル
  ノデアラウト信ズルノデアリマス或ル御
  方ハ英吉利ノ帝國ガ愛蘭ヲ取扱フヤウニ
  朝鮮ヲ致シタラ宜カラウト云フ御意見ヲ仰
  セラレル人ガアリマスガ、是ハ彼我ノ歷史
  ト我ガ國體ヲ知ラザル愚論デアルト私ハ明
  カニ申スコトヲ憚ラヌノデアリマスル(拍
  手起ル)勿論冐頭ニ於テ申上ゲマシタル如
  〃、衆議院ノ豫算先議權ヲ尊重スルト云フ
  コトハ出來得ルダケ之ヲ尊重シナケレバ
  ナラヌノデアッテ、是ハ中ス迄モナイコトデ
  アリマス、サリナガラ相當ニ重大ナル理由
  ガアリマシタ以上ハ憲法上貴族院トシテ
  之ニ修正ヲ加ヘテモ毫モ差支ナイノデアリ
  マスル殊ニ私ガ只今マデ述べマシダル如
  ク、極メテ不明瞭ナル衆議院ノ削除說ハ考
  慮スル價値ガ頗ル私ハ乏シイモノデアルト
  考ヘルノデアリマス、卽チ此豫算ガ政府原
  案ノ如ク復活ニ相成リマスモノト致シマシ
  タナラバ、必ズヤ、私ハ思フ、政府モ之ヲ
  喜ビ、又松田拓相モ政局ノ大體カラ考ヘテ
  見テ、敢テ之ヲ固執セヌト言ッテ居ラレル
  ノデアリマスカラ、當院ニ於テ是ガ復活
  シ、幸ニシテ衆議院ガ之ニ同意ヲ表スルト
  云フコトデアッタナラバ、松田拓相モ大イニ
  欣然トシテ御喜ビニナルコトヽ存ズルノデ
  アリマス、必ズヤ私ハサウデアルト信ジマ
  ス、俳シ私ハ政府、拓相、朝鮮總督ガ喜ブ
  モ喜バナイモ、ソレハ自ラ私ノ立場カラ申
  セバ全然別問題デアリマス、唯私ハ只今申
  シマシタル如ク、朝鮮統治ノ大方針ヨリ見
  テ總督ノ威嚴ヲ保ツコトガ最モ私ハ必要ト
  考ヘテ、區々タル情實ヲ超越シテ大所カラ
  見テ、此復活ニ贊同シタノデアリマスル
  而シテ若シ此復活ガ通ルト致シマスレバ、
  誠ニ氣ノ毒ナノハ申ス迄モナク公州ノ人デ
  アリマス、併シ之ニ對シテハ總督府ハ他ノ
  方法ニ依シテ十分考慮ヲ拂ヒ、深切ニ取計ラ
  ヒ出來ルダケ相當ノ慰藉ノ途ヲ講ズルト
  云フコトヲ言明シテ居ルノデアリマスカ
  ラ私トシテハ之ヲ信賴シテ可ナリ、信賴
  シテ差支ナイ、之ニ信賴スルコトノ價値ノ
  アルコトト私ハ信ズルノデアリマス、又此
  問題ハ拓相トシテハ誠ニ斯ウ痛シ痒シト云
  フヤウナ御立場ニアルト云フコトヲ私ハ深
  ク之ヲ御同情ヲ以テ考ヘル次第デアリマ
  ス此豫算ヲ政府與黨ガ衆議院ニ於テ削除
  シタノデアリマスガ、今本院ニ於テ之ヲ復
  活シタナラバ、私ハ拓相ハ眞ニ貴族院ニ於
  テ我ガ知己アリト仰セラレテ內心欣然
  トシテ御喜ビニナルノヂヤナカラウカト、
  私ハ決シテ皮肉デモ何デモナイノデアリマ
  スルガ、私ハサウ考ヘル次第デアリマス
  私個人トシテハ平素松田拓相ハ大ニ畏敬シ
  テ居ル所ノ友人デアリマス、此友人ハ私ノ
  此說ニハ衷心最モ共鳴セラレルコトト私ハ
  確信スルノデアリマス、御喜ビニ相成ルコ
  トト私ハ信ジマス、又或ル論者ハ此成行ヲ
  見テ若シ衆議院ガ之ニ贊意ヲ表スレバ宜
  イノデアルガ、若シ是ガ兩院協議會ニ當然
  掛カルモノト相成ッタナラバドウスルカト
  云フヤウナコトヲ憂ヘラレル御方ガアルノ
  デアリマス、勿論兩院協議會ノ結果ハ神ナ
  ラヌ私モドウナリマスルカ、是ハ分ラヌコ
  トデアリマスル、併ナガラ私ハ思ヒマス、
  賢明ナル衆議院ノ議員諸君ハ此問題ヲ最モ
  巧ニ取扱ハレテ、大局カラ見テ善處セラレ
  ルコトト私ハ信ジマス、極メテ是ハ含蓄ノ
  ヤルヤウナ意味デ申上ゲマスルガ、サウ云
  フ譯デハナイノデアリマス、私ハ唯〓善處
  セラレルト云フコトヲ私ノ腹ノ中カラ信ジ
  テ居リマスル、デ私自身ト致シマシテハ
  兩院協議會ノ事マデハ敢テ巾ス必要モナイ
  ノデアッテ、唯前述ノ如ク、私ノ信ズル所ヲ
  率直ニ述ベテ、此復活ニ〓心ニ贊同イタス
  次第デアリマス、長クハ中シ述ベマセヌ、
  簡單ニ此理由ヲ以テ私ガ委員長ノ報〓通
  リニ、復活ニ贊同ヲ表スルコトヲ諸君ニ申
  上ゲテ此壇ヲ退キマス、左樣御承知ヲ願ヒ
  マス(拍手起ル)
  〔阪本釤之助君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=48

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• 049・阪本さん之助

  ○阪本彰之助君　私ハ隨分以前ハ頻ニ御喋
  リヲシタモノデアリマシタガ、近來ハ常ニ
  愼ンデモウ段々年ヲ取リマスルカラ
  差控ヘルコトニ政シテ居リマスガ、此度ノ
  問題ハ如何ニモ默スルコトガ出來ナイ、將
  來ノ朝鮮統治ノ上ニ於テハ由々シキ結果ヲ
  見ルモノヂヤナイカト云フコトヲ國ノ爲ニ
  憂ヘマスル故ニ、先日來豫算委国會ニ於キ
  マシテモ種々御尋ヲ致シ、又一昨日ハ公州
  方面ニ於ケル民心ノ不穩ノ狀況ヲ聞キマシ
  テ如何ニモ憂慮ニ堪ヘマセヌ、故ニ特ニ
  緊急質疑ヲ以テ、拓務大臣ノ意見ヲモ聽イ
  タヤウナ次第デアリマス、デ今日ハ皆樣ノ
  御迷惑ヲ顯ミズ、此豫算委員會ノ決議ニ反
  對イタシマスル理由ヲ少シク述ベマシテ
  御同情ヲ得タイト存ジマスルノデアリマ
  ス、先刻阪各議員ハ公州ノ歷史ニ付キマシ
  テ、又朝鮮統治ノ大局ニ付キマシテ縷ミ御
  述ベニナリマシテ、本員ノ言ハムト欲スル
  所ノ一部ハ旣ニ御述べ下サレマシタカラ
  是等ノ點ハ略シマスルノデアリマスガ、柳
  原伯爵ノ御陳述中ニ此衆議院ノ削除ノ理由
  ガ甚ダ淺薄デアル、是ガ卽チ豫算委員會ニ
  於テモ私共ノ敗北ヲ取リマシタ······卽チ復
  活論者ノ一番ノ是ハ根據デアル、第二ニハ
  總督ノ威信ヲ害スルト云フコトデアルガ
  却ッテ本員ハ此反對シマスル理出ノ最モ是
  ガ又重ナルモノデアリマシテ、先刻柳原伯
  爵ガ御讀上ゲニナリマシタカラ、再ビ讀上ゲ
  ハ致シマセヌガ、豫算委員長ノ武內作平君
  ガ二月十八日ニ此本會ニ報告セラレテ居リ
  マスル、共報告ヲ讀ミマシテモ、極クアッサリ
  シタコトガ申シテアリマス、ソレデ尙ホソレ
  ノ基キマスル所ノ分科會、衆議院デハ是ガ第
  一分科會ニ掛カッテ居ルヤウデアリマスガ、第
  一分科會ノ討論ノ模樣ヲ速記錄ヲ翻シテ見マ
  スルト、矢張リアッサリ致シテ居ル、主査ノ報
  告ト云フモノハ下元鹿之助君ガ主査ト
  シテ報告ヲ致シテ居ラレマスルノニ、忠〓南
  道廳舍新營費ヲ削除シ、其他ハ可決シタト云
  フ分科ノ報〓ガアリマシタト云フコトヲ、
  是ハ卽チ、武內君ノ報〓デアリマスガ、ソレ
  ニ工藤鐵男君ガ贊成イタシテ居ル譯デアリ
  やく、工藤君ノ贊成ヲ讀ミマスト
  〔高聲ニ願ヒマス」「聞エマセヌ」ト呼
  フ者アリ〕
  簡單ト云フヤウナ御聲ガアリマスカラ
  差控ヘマスガ、極メテ簡單ナモノデアル、
  是ガ卽チ見ヤウニ依ッテ非常ニ違フ所デ
  アリマシテ本員ノ見マス所デハヽ絕
  對多數ヲ有ッテ居ル政府ガ、僅カニ二
  箇年ニ亙シテノ豫算デハアリマスルガ三
  十五万九千圓ト云フ金ヲ出サレマシテ、ソ
  レガ一ト溜リモナク與黨ノ爲ニ破ラレルト
  云フコトハドウ云フコトデアルカ、唯當リ
  前ニ考ヘマスルト、如何ニモ是コソ政府ノ
  威信ガナイノデアルガ、與黨ガ此我ガ與
  黨政府ニ幾ラカ恥ヲ搔カスルヤウナ事ヲ忍
  ンデスルト云フコトハ餘程深イ理山ガナ
  クテハシナイモノダラウト思フ豫算分科
  會ニ於テノ討論、豫算委員長ガ本會議ニ向ラ
  テノ報〓等ハ極クアッサリ致シテ居テテ何
  處ニ本當ノ深イ理由ガアルカト云フコト
  ハハッキリ分ラヌヤウナコトヲ報〓シテ居
  ル、是ニハ非常ナ悲哀ガ含ンデ居ルモノダ
  ト思フ、是ハ餘リ明瞭ニ述ベルト、政府ヲ傷
  ツケルカ與黨ヲ傷ツケルカ、兎ニ角此公州
  問題ガ出テ來ル所ノ原因ト云フモノヲ何カ
  言ハナクチヤナラヌ、ソレヲ言ッタ日ニハ大
  變デアルケレドモ今申シタ通リ、我ガ與
  黨政府ニ非常ナ打擊ヲ與ヘル事柄ヲ忍ン
  デ、斷然修正ヲシタト云フコトハ二百七
  十人ノ政黨ニ於テ非常ナ悲哀ヲ感ジテ居ラ
  レルコトダラウト思フ、是ハ餘リ穿タズニ、
  卽チ私ノ觀察ヲ以テシテ、此問題ハ中ミ容
  易ニ同意スベキ問題ヂヤナイ、イヤ同意ヂ
  ヤナイ、飜スベキ問題チヤナイ、宜シク是
  ハ······マア甚ダ言葉ニハ弊ガアルカ存ジマ
  セヌガ、現內閣及ビ與黨ノ內輪ノ何カ言フ
  ベカラザル事柄ガアルノヂヤナイカト思
  フデスカラ是ハ宜シク御内輪ノ經緯ニ委
  セテ置イテ、貴族院ハ高所ニ立ッテ、其內輪同
  士デ奧サント旦那サントノ意見ガ合ハナ
  イ、ソレヲ隣ノ親爺ガ行ッテ、ヤ御氣ノ毒ダ
  カラ奧サンノ言フコトヲ通シテヤラウヂヤ
  ナイカト云フヤウナコトハ言ハヌ方ガ宜カ
  ラウト思フ夫婦喧嘩ハ夫婦喧嘩デ止メテ
  置イテ隣ノ爺サンハ矢張リ夫婦喧嘩其儘
  デ治マッテ行クモノナラ治メテ置イテ、知ラ
  ヌ顏シテ居ルト云フコトガ宜クハナイカ、
  是ハ極ク卑近ナ喩ヲ申上ゲルノデス、若シ
  之ヲ下手ナコトヲシテ奧サンカ旦那サン
  カドチラカ知リマセヌガ、共意見ヲ飜シ
  テ貴族院ガ復活ヲシタ、而シテ復活ヲシタ
  ナラバ政府ガ非常ニ滿足シテ御蔭デ助カ
  リマシタト云フ譯ナラバ一肩入レテ見テモ
  宜シウゴザイマスガ只今段々御述べモア
  リマシタ通リ、先日來ノ豫算委員會ハドウ
  デゴザイマセウカ、度ミ推問シタ人モアリ、
  私共モ聽イタ一人デアリマスガ、當局大臣
  ハ固執セヌ、衆議院ノ決議ハ决シテ固執セ
  ヌト云フコトヲ頻リニ言ッテ居ル、尙ホソレ
  ノミナラズ、第六分科會ノ愈〓討論終結く
  場合ニ、政府ヲ代表シタル所ノ政府委員ハ、
  言葉ハ多少違フカ知レマセヌガ、復活ヲ希
  望セヌト云フ意味ヲ明カニ言ノテ居ル、自ラ
  出シタ議案ガ衆議院デ破ラレ、或ハ貴族院
  ガ之ヲ復活スルカモ知レヌト云フ鍔際ニ於テ
  復活ハ希望セヌ言換ヘテ見レバ迷惑デア
  ルト言ハヌバカリノ陳述ヲシテ居ラレルノ
  デアル、ソレヲ貴族院ガ是非復活セネバナ
  ラヌト云フ理由ハ本員ハ認メマセヌ、加之
  近頃此朝鮮ニ於ケル狀況ハ如何デゴザイマ
  ス、是ハマア朝鮮ニモ限リマセヌガ、內地
  デモ縣廳ヲ移ストカ云フト大騒ギガ起リマ
  セウガ朝鮮ノ民心ハ又一種特別ナモノデ
  アリ、日本新附ノ國民デアッテ、ドコヤラニ
  マダ不安ヲ持ッテ居ル、此不安ヲ持ッテ居ル
  國民ニ臨ムノニ、更ニ不安ヲ挑發スルヤウ
  ナコトヲスルト云フコトハ餘程考ヘ物デハ
  アリマスマイカ、此忠〓南道ノ移廳問題ハ
  殆ド二十年來ノ宿題ダト聞イテ居リマス
  總督府ニ於テハ一ツノ是ハ難物ニ扱ッテ居,
  タモノデアル度ミ話ハ出ルケレドモ今日
  マデ斷行シテ居ナカッタ、ソレガ一朝此經費
  節減ノ一圓ノ金デモ儉約シヤウト云フコト
  ヲ考ヘテ居ル現內閣ガ、容易ク發案ヲセラ
  レタト云フコトニ付テハ、曰ク言ヒ難キ內
  容ガアルモノデハナイカ、此邊ノ消息ヲ知
  リ得タ政府與黨ガ、是ハ暫ク削ッテ置イタ方
  ガ政府ノ爲ニナルト云フ······愛政府心ヨリ
  起ヲタコトデハナイカト云フコトヲ私ハ付
  度スルノデアリマス、現ニモウ此問題ガ紛
  糾イタシテ貴衆兩院ノ間ニ橫タハッテ居ル
  ト云フコトヲ聽キマシテ、先刻阪谷君モ仰
  シヤッタ通リ、種々ナ電報歎願書ガ御手許
  ニ參フテ居リマスガ、此費用バカリデモ大シ
  タモノデアル、其間ニ又動イテ居ル所ノ人
  達ノ費用ト云フモノハ夥シイモノデアル
  是ハ皆公州邊ノ人ノ負擔ニ歸スルノデア
  ル、サウシテ其結果ハ若シ此事ガ本院ノ卽
  チ一部ノ御方ノ御主張ニナルヤウニ復活ヲ
  致シテ若シ實行ニデモナリマシタナラバ、
  其騒ギヤ實ニ憂フベキモノガアリハセヌ
  カ現ニ昨今ノ公州地方ノ人ハ非常ニ騒擾
  ヲ極メテ居ル爲ニ警察ノ力ヲ以テ之ヲ彈壓
  シテ居ル、此點ニ付テハ此間拓務大臣ニ御
  質問イタシタ所ガ大シタコトハ聞イテ居ラ
  又、併ナガラ段々店ヲ閉ザス者ガアルト云
  フコトダケハ聞イテ居ル、斯ウ云フコトデ
  アル、所ガ朝鮮人ガ店ヲ閉ザスト云フコト
  ハ極度ニ興奮シ又憎慨シタ時ノ場合ダサウ
  デス、先年ヤカマシカッタ萬歲事件ノ時ナド
  デモ都會ノ人ミハ店ヲ閉ヂテシマッタト云
  フ、日本デハチヨット考ヘ付カヌコトデア
  リマスガ、アヽ云フ非常ニ壓制ナ政治ヲ受
  ケタ國民デアリマスルカラ、妙ナコトヲス
  ルト直グニ引ノ捕ヘテドヤサレル、首モ飛ブ
  ト云フヤウナコトデアルカラ先ヅ一番ノ
  不平ヲ漏ラシ一番ノ不穩ト云フコトハ自
  分ノ店ヲ閉ザシテ營業ヲ休止スルト云ンコ
  トダサウデアリマス、萬歲事件ノ時ナドハ
  店ヲ閉ザシテ居ル者ハルルッ端カラ引捕ヘテ
  牢ヘ抛リ込ンダト云フコトモアッタサウデ
  アリマス、此度モ公州地方ノ人ガサウ云フ
  コトヲスルト、アノ頃トハ總督府ノ態度ハ
  變リマシタデセウガ、併シ中〓······內地ノ
  警察モ隨分時ニ依ルトヒドイコトヲナサリ
  マスガ內地ドコロヂヤナイ、隨分警察官
  モ興奮スルト、ドンナコトヲ店ヲ閉ヂ
  テ居ル者ヲ見テ牢ヘ抛リ込ム位ノコトカナ
  イニモ限ラナイ、現ニ消防夫ト云フモノハ
  皆總辭職シテ火事ガアッテモ止メナイト云
  フ意味デアリマセウ、總辭職ヲシテ居ル、
  旣ニ石油庫ニ火ヲ放シタトカ、此間モ錦水館
  ト云フ、何カ公會堂ミタ樣ナモノデアリマ
  セウ、共他十四箇所ニ火ヲ放ヲタ、或ハ山林
  ニ火ヲ放ッタ、偶、神社等ニ少シ多數ガ集。ン
  テ居ルト直グ之ヲ檢宋スル、官憲ノ方カラ
  言ヒマスレバ斯ウシテ防ガナケレバ治マ
  リガ著カヌト云フコトデアリマセウ、共間
  ノ關係ト云フモノハ考慮シテヤラナケレバ
  ナラヌ、此問題ハドウシテ起,タカト云フ
  ト、政府ガ偶〓三十五万九千圓ノ移轉費ヲ
  出サレタト云フコトニ原因シテ居ルノデア
  ル、之ガソンナラバ復活シタカラト云ッテ、治
  マリノ著クコトナラバ束モ角、復活シタト
  スレバ益〓薪ニ油ヲ注グヤウナ結果ニナル
  ト云フコトハ見易イコトデアル、先刻モ阪
  谷男爵ノ言ハレマシタ通リ兎ニ角熟考ノ餘
  地ヲ與ヘタ方ガ宜カラウ、來年ト云フコト
  ヲ仰シヤイマシタガ、私ハ必ズシモ來年ニ
  限ラヌ、何モ必ズソンナニ急イデ忠〓南道
  ノ道廳ヲ是非大田ニ一日モ早ク移サナケレ
  バナラヌト云フ理山ハ如何ニ之ヲ贊成ナサ
  ル御方デモ、ソレヲ是非トハ仰シヤリハシ
  マイト思フ、ダカラ是ハ餘程先ヅ此度ハ兎
  ニ角先議權ノアル衆族院ガ何等カ見ル所ガ
  アッテ、只今申シタ通リ餘程之ニハ意味アリ
  氣ナ削除デアリマス大イナル含蓄ノアル
  意味ヲ以テ削除シタモノデアルカラ先ヅ
  此度ハ貴族院ハ衆議院ノ爲ス所ニ任セテ
  宜シク贊成ヲ致シテ置イテ、能ク又內閣ナ
  ドヘモ交渉ヲ致シテ材料デモ貰プトカ、或
  ハ志ノアル者ハ一應アノ邊ニ見ニ行フテ來
  ルトカ色ミナコトヲシマシテ、一ツ此問題
  ハドウデアルカト云フコトヲ官民共ニ冷靜
  ニ考ヘテ後、決シタ方ガ、彼我ノ爲ニ大變
  仕合セデハナイカト存ジマス、故ニ兎ニ角
  此度ハ此案ハ衆議院ノ爲ス所ニ從ヒマシ
  テ穩カニ治マリヲ著ケタ方ガ宜カラウ
  ト云フ見地ヨリ致シテ、何處マデモ私ハ衆
  議案ヲ修正スルト云フコトニハ不同意デア
  リマス此意思ヲ表示イタシテ置キマス
  (拍手起ル)
  〔川村竹治君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=49

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• 050・川村竹治

  ○川村竹治君　私ハ只今問題トナッテ居リ
  マスル朝鮮思〓南道廳ノ移轉ニ要スル經費
  ノ復活ノ說ニ贊成スルモノデアリマス、之
  ニ付キマシテハ先刻柳原伯爵カラ共理山ヲ
  述ベラレマシテ大體盡キテ居ルト思フノデ
  アリマス、從ヶテ私ハ玆ニ蛇足ヲ加ヘルノ必
  要モナイト思ヒマスガ、簡單ニ私ノ考ヘテ
  居ル所ヲ申述べテ見タイト思ヒマス、第一
  ニ此削除ハ其理由ガ極メテ薄弱デアルト思
  フノデアリマス、衆議院ニ於ケル修正案提
  出者ノ說明ニ依リマスレバ、其主ナル點ハ
  公州ハ千數百年來ノ古キ歷史ヲ持ッテ居ル
  ト云フ一點ニ止マルノデアリマス古キ歷
  史ハ歷史トシテ之ヲ尊重スベキハ勿論デア
  リマスルガ、古キ歷史ガアルカラト言ッテ
  是ガ道廳所在地トシテ適當デアルト云フ結
  論ニハナラヌノデアリマス、政府ノ提出サ
  レタル調書ニ依リマスレバ、其人口ノ點ニ
  於テ又經濟力ノ點ニ於テ遙カニ大田ノ方ガ
  優ヲテ居ルノデアリマス、殊ニ交通關係ニ至
  リマシテハ殆ド比較ニナラナイノデアリマ
  ス大田ノ方ガ遙カニ宜イノデアル、一般
  道廳ト云フモノハ如何ナルモノデアルカト
  申スト、申ス迄モナク是ハ總督ガ統治スル
  上ニ於キマシテ、行政上ノ機關デアルノデ
  アリマス故ニ總督ガ其行政上最モ適當ナ
  リ最モ便利ナリトスル場所ニ之ヲ置クト云
  フコトハ是ハ極メテ至當ノコトデアル
  又一般ノ民衆側カラ見マスレバ、是ハ公ノ
  機關デアル、啻ニ忠〓南道廳ノ住民ノミナ
  ラズ一般ノ朝鮮人ガ彼等ニ取ヶテ最モ便
  利ナ場所ニ置キタイト云フコトガ是亦至當
  ノ要求デアルノデアリマス、玆ヲ以テ道廳
  ノ大田移轉ト云フ問題ハ數年前カラ唱道サ
  レタ所ノモノデアリマシテ、今日ニ於テハ
  先ヅ朝鮮全般ノ輿論ト申シテ宜イノデアリ
  マリ、忠〓南道廳ノ評議員會ニ於キマシテ
  モ是ハ大多數ヲ以テ其移轉ヲ認メテ居ル
  ノデアリマス、ソコデ朝鮮〓督ハ其行政上
  ノ便否ニ考ヘラレマシテ、又一般民衆ノ輿
  論ニ照シマシテ、此移轉ハ必要ナルモノト
  考ヘラレマシテ、之ヲ決定シ、之ヲ中央政
  府ニ出シ、拓務省デハ愼重審議ノ上ニ、此
  移轉ハ十分ナル理由ガアリ、又其必要ガア
  ルト認メマシテ、閣議ノ決定ヲ經テ、之ヲ
  帝國議會ニ提出ニナッタノデアリマス、而モ
  朝鮮總督ハ目下地方行政ノ刷新ニ銳意セラ
  レテ居ル關係カラシテ、是ハ昭和六年度カ
  ラ著手シテ、成ベク速ニ之ヲ實行シタイト
  云フ趣意カラ中央政府ニ於キマシテモ、昭
  和六年度ノ豫算ニ計上シ、二箇年度繼續費
  トシテ之ヲ認メタノデアリマス、然ルニ此
  豫算ハ衆議院ニ於テ御承知ノ通リ削除セラ
  レタノデアリマス、而シテ之ニ對シマシテ
  拓務大臣ハ、此復活ヲ希望スルヤ否ヤト云
  フコトニ關シテハ曖昧ナル答辯ヲセラレテ
  居ルノデアリマス、然レドモ其移轉ノ理由
  ノアルコト、又其必要ノアルコトハ之ヲ認
  メテ居ラレルノデアリマス、殊ニ朝鮮總督
  ニ於キマシテハ、依然トシテ前ノ主張ヲ固
  執サレテ、是非トモ是ガ復活ヲ希望シテ居
  ル、是ハ最近總督ガ新聞記者トノ御會見ノ
  際ニ於キマシテ爲シタル所ノ談話ニ付キマ
  シテモ·······話話ニ依ッテモ明瞭ナル事柄デ
  アリマス、第二ニ此削除ヲ此儘ニ認メル
  ト云フコトハ、植民地統治ノ上ニ於キマシ
  テ將來大ナル禍根ヲ貽スモノデアルト私ハ
  信ズルノデアル、此豫算ハ衆議院ニ於テ不
  十分ナル理由、卽チ私ガ不十分ナリト認ム
  ル理由ニ依リマシテ、是ガ削除セラレタ、
  而シテ此削除ヲ爲スニ至タノハ、政府ノ與
  黨タル民政黨ガ其黨議ヲ以テ之ヲ決シタ爲
  メデアリマス而シテ民政黨ガ斯ノ如ク其
  黨議ヲ決スルニ至リマシタ其裏面ニ於テハ
  公州地方民ノ猛烈ナル運動ニ依ッタト云フ
  コトハ是ハ世間デ認メル所デアリマス、斯
  ノ如ク運動ニ依ッテ中央政府ノ意ヲ動カシ、
  或ハ議會ノ意ヲ動カスト云フコトニナルト
  云フコトハ是ハ植民地ノ統治ノ將來ニ於
  キマシテ誠ニ憂フベキコトデアルト私ハ思
  フノデアル、今後事有ル每ニ總督ヲ差措イ
  テ直ニ中央政府ニ運動ヲシ、又ハ議會ニ運
  動スルト云フ風潮ヲ是カラ段々起スヤウニ
  ナリヤシナイカト云フコトヲ深ク憂慮スル
  ノデアリマス、現朝鮮總督ハ其大命ヲ奉ジ
  テ其任ニ臨マレ、銳意朝鮮ノ開發、朝鮮住
  民ノ幸福ヲ圖ッテ居ルノデアリマス、併ナガ
  ラ如何ニ名總督ト雖モ或ル事柄ヲ爲スニ當
  リマシテハ二千万ノ住民ノ悉クニ滿足ヲ
  與ヘルト云フコトハ、是ハ到底出來ヌノデ
  アル、是ハ理想デアリマスケレドモ、實際
  ハ不可能デアリマス、然ラバ其處ニ幾分カ
  ノ不滿者ト云フモノハ是ハ有リ得ルノデア
  リマス、サウシテ此幾分カノ不滿者ガ常ニ
  總督ヲ差措イテ、中央ニ運動シ、政府ニ、
  或ハ議會ニ運動シテ其少數ノ意見ヲ貫徹
  セムトスルヤウナコトガアリマシタラ、如
  何ニシテ總督ガ其統治ヲ行ヒ得ルデアリマ
  セウカ、是ハ到底出來ヌノデアル、此故ニ
  何レノ國家ニ於キマシテモ、總督ノ地位ト
  云フモノハ極メテ重イモノデアル、是ハ卽
  チ主權ノ延長トシ、又主權者ノ名代トシテ
  任地ニ臨ンデ居ルノデアリマス、植民地ノ
  住民ハ其意味ヲ以テ、其心得ヲ以テ之ヲ戴
  キ、是ニ絕對ノ敬意ヲ拂ッテ居ル、斯ノ如ク
  シテ總督ノ威令ハ行ハレ、其威嚴ガ保タレ
  テアルモノト思フノデアリマス、殊ニ現在
  ニ於キマシテハ阪谷男爵ガ言ハレタ如ク
  ニ、植民地カラハ帝國議會ニハ代表者ヲ出
  シテ居ラナイノデアル、從テテ意意ノ反映ト
  云フモノハナイノデアル、然ラバ植民地ニ
  於ケル所ノ民意ト云フモノヲ何人ガ能ク之
  ヲ知ルカト云フト、是ハ疑モナク總督其人
  デアルト私ハ斷言スル、然ルニ其總督ガ之
  ヲ輿論ナリト認メテ、之ヲ政治ノ上ニ行ハ
  ムトスル場合ニ、其少數ノ人ガ少數ノ不滿
  者ガ中央ニ運動シテ、其總督ノ實行ヲ妨ゲ
  ムトスルコトニナッタナラバ、私ハ是ハ植
  民地統治上ノ大ナル禍根デアルト言ハナケ
  レバナラヌ、固ヨリ衆議院ノ豫算先議權ト
  云フモノモ是ハ尊重シナケレバナラヌノデ
  アル、併ナガラ此先議權ヲモ十分ナル考慮
  ニ入レテモ、尙ホ是ハ復活シナケレバ我
  國ノ植民地統治上ニ重大ナル禍根ヲ貽スト
  思フモノデアルカラ、私ハソレヲ考慮ニ入
  レテモ、尙且ツ之ヲ復活ノ必要アリト言フ
  ノデアリマス、第三ニハ移轉後ノ善後處置
  デアリマス、此豫算ハ目下問題ニナッテ居
  リマスノデ、此決定ハ如何ニナリマスカ、
  是ハ未定ノ問題デアリマス、ケレドモ假リ
  ニ之ガ移轉ト決定セラルル時ニハ、公州ハ
  相當ノ打擊ヲ受ケナケレバナラヌ、社會上、
  經濟上ノ相當ノ打擊ヲ受ケルコトハ是
  ハ想像シ得ルノデアリマス、我ミモ此點ニ
  付キマシテハ十分ナル考慮ヲ拂ヒ、十分
  ナル同情ヲ寄セテ居ルノデアリマス、從シテ
  豫算委員會若クハ分科會ニ於テモ、之ニ關
  スル質問ガ出タノデアリマス、之ニ對スル
  政府ノ答辯ニ依リマスルト云フト、ソレハ
  政府ニ於テモ十分考慮シテ居ル、決シテ公
  州地方ガ立行カヌヤウニ、公州ノ住民ガ非
  常ニ困難スルヤウナコトハ決シテシナイノ
  デアル、此點ニ對シテハ十分ナル考慮ヲ
  拂ッテ之ヲ慰安スルコトノ方法モ執ラウシ
  又經濟上ノ色ミノ施設モスルデアラウト云
  フ答辯ヲシテ居ルノデアリマス、デ私ハ必
  ズヤ當局ハ此言明ヲ重ンジテ相當ノ事ヲサ
  ルルト云フコトヲ信ズルノデアリマス、而
  シテ一視同仁ノ聖旨ニ副ヒ奉ルベキ事柄ダ
  ケハスルデアラウト私ハ確信スルノデアリ
  やく、又移轉後ニ於ケル、又移轉ト決ック
  後ニ於ケル所ノ公州地方ノ治安ノコトニ關
  シマシテモ、是ハ我ミモ十分考慮シナケレ
  バナラヌ問題デアリマス、新聞ノ報道ニ依
  リマスト云フト、多少不安ノ空氣モアルヤ
  ウニ伺ハレマス、併ナガラ此點ニ對シテモ
  質問應答ガアッタノデアリマスルガ、政府ノ
  答辯ニ依リマスルト云フト、今日ニ於テハ
  大シタコトハナイノデアリマス、併ナガラ
  此點ハ十分ニ取調べ、又警戒モ加ヘテ萬遺
  算ナイヤウニスルト云フコトノ答辯ニナツ
  テ居ルノデアリマス、此點モ然ラバ我ミハ
  當局ノ言明ニ信賴シテ當局ノ處置ニ信用ヲ
  置イテ暫ラク其成果ヲ見ル方ガ適當デアル
  ト思フ、斯ノ如ク治安ノ點ニ於キマシテモ、
  亦經濟上社會上ノ打擊ニ付キマシテモ、政
  府ハ十分考慮ヲ拂フト云フノデアリマスル
  カラ、私共ハ是デ安心ヲスルノデアリマス、
  此問題ハ金額ニ於テハ僅カ十五万圓ノ問題
  デアリマスルケレドモ、事柄其コトハ我ガ
  植民地統治ノ根本ニ觸レル所ノ問題デアリ
  マシテ、是ハ輕々ニ取扱フコトノ出來ヌ間
  題デアルト私ハ信ズルノデアリマス、前ニ
  擧ゲマシタ所ノ此三ツノ理由ヲ以テ私ハ此
  原案復活ニ贊成ヲ致スノデアリマスドウ
  ゾ諸君ニ於カレテモ御贊成下サイマシテ、
  此原案ガ復活スルヤウニ切ニ希望イタシマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=50

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• 051・東園基光

  ○子爵東園基光君　只今議題ニナッテ居リ
  マスル昭和六年度各特別會計歲入歲出豫算
  案中朝鮮總督府ノ豫算ニ付キマシテハ、贊
  否ソレノ〓論議ガ盡サレテ居ルモノト認メ
  ラレマスニ依リ、玆ニ討論終結ノ動議ヲ提
  出イタシマス、ドウゾ御賛成ヲ願ヒマス
  〔「贊成」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=51

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• 052・大津淳一郎

  ○大津淳一郞君　私ハ通告ヲ致シテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=52

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• 053・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　討論終局ノ動議
  ガ出マスト、成規ノ贊成者ヲ得マシタ時ニ
  ハ先ヅ以テ討論ヲ用ヒズシテ採決ヲ致シ
  マス、採決ノ結果、討論終局ガ否決セラレマ
  シタナラバ、大津君ニ發言ヲ許サウト考ヘ
  テ居リマス、暫ク御待チヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=53

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• 054・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　討論終局ノ動議
  ニハ成規ノ贊成者ガアッタト認メマス、東園
  子爵ノ討論終局ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立
  ヲ求メマス
  〔起立者多數〕

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• 055・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマ
  ス、討論ハ終局セラレマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=55

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• 056・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　昭和六年度各特
  別會計歲入歲出豫算案中、朝鮮總督府忠〓
  南道廳舍新營費ニ關スル表決ニ付記名投票
  ヲ以テセラレタキ旨蜂須賀侯爵外七十二名
  ヨリ、無名投票ヲ以テセラレタキ旨大井男
  爵外二十四名ヨリ、何レモ要求ガゴザイマ
  シタ又右表決ニ付キ記名投票ヲ以テスル
  ヤ無名投票ヲ以テスルヤノ決定ニ付キ記
  名投票ヲ以テセラレタキ旨蜂須賀候爵外三
  十四名ヨリ要求ガゴザイマシタカラ、先ヅ
  以テ投票ノ方法ヲ定メマス爲ニ記名投票ヲ
  行ヒマス、念ノ爲メ申上ゲマス記名投票
  ヲ可トスル諸君ハ白票ヲ、無名投票ヲ可ト
  スル諸君ハ靑票ヲ御投入ヲ請ヒマス本日
  ハ書記官ヲシテ御席ヘ投票ヲ集メニハ差出
  シマセヌカラ一條公爵ヨリ順次御登壇ノ
  上御投票ヲ請ヒマス
  〔投票執行〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=56

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• 057・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　投票漏レハゴザ
  イマセヌカ······投票漏レナント認メマス
  書記官ヲシテ投票ノ計算ヲ數サセマス
  〔書記官投票ヲ計算ス〕

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• 058・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御投票ノ結果ヲ
  御報告ニ及ビマス投票總數二百四十九、
  白票卽チ記名投票ヲ可トセラルヽモノ百六
  十七、靑票卽チ無名投票ヲ可トセラルヽモ
  ノ八十二、故ニ記名投票ヲ以テ採決スルコ
  トニ決定イタシマス
  〔參照〕
  贊成百六十七名
  反對八十二名
  贊成者氏名
  公稱一條實孝君公爵近衞文麿君
  〓爵蜂須賀正詔君候爵大久保利武君
  侯爵西〓從總君伯爵松木宗隆君
  狛爵柳澤保惠君伯爵川村鐵太郞君
  伯爵林博太郞君伯爵柳原義光君
  紬爵松平賴壽君伯爵奥平昌恭君
  独爵樺山愛輔君伯爵溝口直亮君
  伯爵小笠原長幹君狛爵酒井忠克君
  伯爵二荒芳德君伯爵堀田正恒君
  狛爵有馬賴寧君伯爵酒井忠正君
  子爵稻垣太祥君子爵高倉永則君
  子爵藤谷爲寛君子爵樋口誠康君
  子爵梅小路定行君子爵毛利高範君
  子爵五辻治仲君子爵松平直平君
  子爵青木信光君子爵冷泉爲勇君
  子爵伊集院兼知君子爵牧野忠篤君
  子爵大久保立君子爵前田利定君
  子爵井上匡四郞君子爵柳生俊久君
  子傳白川資長君子爵池泗數時君
  子爵西大路吉光君子爵〓岡長言君
  子傳櫛笥隆督君子爵今城定數君
  子爵吉田〓風君子爵立花種患君
  子傳數篤麿君子爵豐岡圭資君
  子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君
  子爵片桐貞央君子爵大河內輝耕君
  子爵米津政賢君子爵八條隆正君
  子爵保科正昭君子傳岡部長景君
  子爵井伊直方君子爵三室戶敬光君
  子爵東園基光君子爵大浦兼一君
  子爵新庄直知君子爵牧野一戒君
  子爵秋元春朝君子爵西尾忠方君
  子爵渡邊七郞君子爵裏松友光君
  子爵秋田重季君子爵森俊成君
  子爵戶澤正己君子爵岩城隆德君
  子爵毛利元恒君子爵米倉昌達君
  子爵植村家治君子爵梅園篤彥君
  子爵舟橋〓賢君子爵松平康春君
  子爵土岐章君子稱三島通陽君
  子爵瀧脇宏光君子爵綾小路護君
  男爵北里柴三郞君田中舘愛橘君
  莊藤三吉君水上長次郞君
  渡邊暢君木場貞長君
  鈴木喜三郎君男爵松井慶四郎君
  男爵小原騒吉君志水小一郞君
  男爵神山郡昭君外松謙次郞君
  若林賚藏君内四嘉吉君
  三井〓一郞君內田重成君
  岡喜七郞君勝田主計君
  坂西利八郞君小野塚喜平次君
  川村竹治君桑山鐵男君
  男爵岩倉道倶君男爵寺島敏三君
  中村純九郞君岡崎邦輔君
  福永吉之助君石渡敏一君
  橋本圭三郞君竹越與三郞君
  山之内一次君南弘君
  倉知鐵吉君山岡萬之助君
  松本烝治君宮田光雄君
  室田義文君安樂兼道君
  中川小十郞君湯川寛吉君
  湯地幸平君岡田文次君
  西野元君八田嘉明君
  馬場鍈君長岡隆一郎君
  大津淳一瑯君小久保喜七君
  樺山資英君馬越恭平君
  大橋新太郞君今井五介君
  太田〓藏君伊澤平左衞門君
  森平兵衛君板谷宮吉君
  石川三郞君關直彥君
  林平四郎君坂田貞君
  上郷〓助君齋藤喜十郎君
  金杉英五郞君小塩八郎右衞門君
  田村駒治郎君西本健次郞君
  名取忠愛君高橋源次郞君
  花井卓藏君磯村豐太郞君
  藤原銀次郞君山崎龜吉君
  瀨谷勇次郎君菅澤重雄君
  北村宗四郞君森廣三郞君
  吉田羊治郞君根本祐太郞君
  鵜澤總明君五十嵐甚藏君
  若尾璋八君小林嘉平治君
  風間八左衞門君小林暢君
  絲原武太郞君山上岩二君
  本間千代吉君森田福市君
  八馬兼介君
  反對者氏名
  男爵木越安綱君男爵大井成元君
  男爵坂本俊篤君土方寧君
  嘉納治五郞君藤澤利喜太郞君
  眞野文二君新渡戶稻造君
  男爵阪谷芳鄭君石塚英藏君
  男爵平野長祥君男爵鍋島直明君
  男爵紀俊秀君松浦鎭次郞君
  男爵長松篤棐君男爵上田兵吉君
  上山滿之進君伊澤多喜男君
  男爵北大路實信君男爵今枝直規君
  男爵千田嘉平君男爵斯波忠三郞君
  男爵中島久萬吉君森賢吾君
  男爵千秋季隆君男爵北河原公平君
  男爵福原俊丸君男爵辻太郞君
  男爵金子有道君男爵赤松範一君
  男爵小畑大太郞君男爵有地藤三郞君
  男爵野田龜喜君男爵黑田·長和君
  男爵井田磐輔君男爵今園國貞君
  男爵東〓安君男爵矢吹省三君
  男爵足立豐君男爵高木喜寛君
  男爵松尾義夫君男爵井上〓純君
  男爵伊江朝助君男爵中村謙一君
  男爵周布兼道君男爵北島貴孝君
  男爵沖貞男君男爵關義壽君
  男爵三須精一君男爵稻田昌植君
  男爵肝付兼英君男爵大寺純藏君
  男爵園田武彥君男爵渡邊修二君
  男爵深尾隆太郞君阪本彰之助君
  片岡直溫君川上親晴君
  安立綱之君菅原通数君
  田所美治君靑本周三君
  後藤文夫君松村義一君
  服部金太郞君尾崎元次郞君
  田村新吉君磯貝浩君
  齋藤善八君橋本萬右衞門君
  平田吉胤君土田萬助君
  八木春樹君大城兼義君
  澤田喜彥君松本勝太郞君
  長尾元太郞君田中一馬君
  濱平右衞門君高廣次平君
  男爵渡邊汀君男爵原田熊雄君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=58

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• 059・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　委員會ノ修正ヲ
  可トセラルル諸君ハ白票、否トセラル諸君
  ハ靑票ヲ以テ御投票ヲ願ヒマス、順序ハ前
  ノ通リデゴザイマス、時間ヲ省略スル爲ニ
  成ルベク早ク御投票ヲ願ヒマス
  〔投票執行〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=59

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• 060・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　御投票漏レハゴ
  ザイマセヌカ···投票漏レハナイト認メマ
  ス、書記官ヲシテ、投票ヲ計算イタサセマ
  ス
  〔書記官投票ヲ計算ス〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=60

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• 061・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　記名投票ノ結果
  ヲ御報告キ及ビマス、投票總數二百四十九、
  白票卽チ委員會ノ修正ヲ可トセラルル諸
  君白票ヲ投ジタル者百七十六、靑票卽チ
  修正ニ反對ノ諸君ハ七十三、故ニ委員會ノ
  修正通リニ決シマシタ
  〔拍手起ル〕
  〔參照〕
  贊成百七十六名
  反對七十三名
  贊成者氏名
  公爵近衞文麿君侯爵蜂須賀正詔君
  侯爵大久保利武君伯爵松木宗隆君
  伯爵柳澤保惠君伯爵川村鐵太郞君
  柏爵林博太郞君伯爵柳原義光君
  伯爵松平賴壽君伯爵奧平昌恭君
  伯爵樺山愛輔右伯爵溝口直亮君
  伯爵小笠原長幹君伯爵酒井忠克君
  伯爵二荒芳德君伯爵堀田正恒君
  伯爵有馬賴寧君伯爵酒井忠正君
  子爵梢垣太祥君子爵高倉永則君
  子爵藤谷爲寛君子爵樋口誠康君
  子爵梅小路定行君子爵毛利高範君
  子爵五辻治仲君子爵松平直平君
  子爵靑木信光君子爵冷泉爲男君
  子爵伊集院兼知君子爵牧野忠篤君
  子爵大久保立君子爵前田利定君
  子爵井上匡四郞君子爵柳生俊久君
  子爵白川資長君子爵池田政時君
  子爵西大路吉光君子爵〓岡長言君
  子爵櫛笥隆督君子爵今城定政君
  子爵吉田〓風君子爵立花種忠君
  子爵藪篤麿君子爵豐岡圭資君
  子爵秋月種英君子爵伊東祐弘君
  子爵片桐貞央君子爵大河內輝耕君
  子爵米津政賢君子爵八條隆正君
  子爵保科正昭君子爵岡部長景君
  子爵井伊直方君子爵三室戶敬光君
  子爵東園基光君子爵大浦兼一君
  子爵新庄直知君子爵牧野一成君
  子爵秋元春朝君子爵西尾。忠方君
  子爵渡邊七郞君子爵裏松友光君
  子爵秋田重季君子爵森俊成君
  子爵戶澤正己君子爵岩城隆德君
  子爵毛利元恒君子爵米倉昌達君
  子爵植村家治君子爵梅園篤彥君
  子爵舟橋〓賢君子爵松平康春君
  子爵土岐章君子爵三島通陽君
  子爵瀧脇宏光君子爵綾小路護君
  男爵北里柴三郞君田中館愛橘君
  佐藤三吉君渡邊暢君
  男爵坂本俊篤君土方寧君
  木場貞長君鈴木喜三郞君
  男爵松井慶四郞君男爵小原駐吉君
  松浦鎭次郞君志水小一郞君
  男爵神山郡昭君小松謙次郞君
  若林賚藏君內田嘉吉君
  三井〓一郞君內出重成君
  岡喜七郞君男爵上田兵吉君
  勝田主計君坂西利八郞君
  川村竹治君男爵福原俊丸君
  桑山鐵男君男爵辻太郞君
  男爵赤松範一君男爵有地藤三郞君
  男爵野田龜喜君男爵岩倉道倶君
  男爵寺島敏三君男爵周布兼道君
  男爵肝付兼英君男爵大寺純藏君
  男爵園田武彥君中村純九郞君
  岡崎邦輔君福永吉之助君
  石渡敏一君橋本圭三郞君
  竹越與三郞君山之內一次君
  南弘君倉知鐵吉君
  山岡萬之助君松本烝治君
  宮田光雄君室田義文君
  安樂兼道君中川小十郞君
  湯川寛吉君湯地幸平君
  田所美治君岡田文次君
  西野元君八田嘉明君
  馬場鍈一君長岡隆一郞君
  小久保喜七君樺山資英君
  馬越恭平君服部金太郞君
  大橋新太郞君今井五介君
  太田〓藏君伊澤平左衞門君
  森平兵衞君板谷宮吉君
  尾崎元次郞君石川三郞君
  林平四郞君坂田貞君
  上郞〓助君齋藤喜十郞君
  金杉英五郞君小塩八郎右衞門君
  田村駒治郞君西本健次郞君
  名取忠愛君高橋源次郞君
  磯村豐太郞君藤原銀次郞君
  山崎龜吉君瀨谷勇次郞君
  菅澤重雄君北村宗四郞君
  森廣三郞君吉田羊治郞君
  根本祐太郞君鵜澤總明君
  五十嵐甚藏君若尾璋八君
  田中一馬君風間八左衞門君
  小林暢君絲原武太郞君
  山上岩二君本間千代吉君
  森田福市君八馬兼介君
  反對者氏名
  公爵一條實孝君侯爵西〓從德君
  男爵木越安綱君男爵大井成元君
  水上長次郞君嘉納治五郞君
  藤澤利喜太郞君眞野文二君
  新渡戶稻造君男爵阪谷芳郞君
  石塚英藏君男爵平野長祥君
  男爵鍋島直明君男爵紀俊秀君
  男爵長松篤業君上山滿之進君
  伊澤多喜男君男爵北大路實信君
  男爵今枝直規君小野塚喜平次君
  男爵千田嘉平君男爵斯波思三郞君
  男爵中島久萬吉君森賢吾君
  男爵千秋季降君男爵北河原公平君
  男爵金子有道君男爵小畑大太郎君
  男爵黑田長和君男爵井田磐楠君
  男爵今園國貞君男爵東〓安君
  男爵矢吹省三君男爵足立豐君
  男爵高木喜寛君男爵松尾義夫君
  男爵井上〓純君男爵伊江朝助君
  男爵中村謙一君男爵北島貴孝君
  男爵沖貞男昌男爵開義義君
  男爵三須精一君男爵稻田昌植君
  男爵渡邊修二君男爵深尾隆太郞君
  阪本釤之助君片岡直溫君
  川上親晴君安立綱之君
  菅原通敬君靑木周三君
  後藤文夫君大津淳一郞君
  松村義一君關直彥君
  田村新吉君磯貝浩君
  齋藤善八君橋本萬右衞門君
  平田吉胤君花井卓藏君
  土田萬助君八木春樹君
  大城兼義君澤田喜彥君
  松本勝太郞君長尾元太郞君
  小林嘉平治君濱平右衞門君
  高廣次平君男爵渡邊汀君
  男爵原田熊雄君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=61

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• 062・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　殘リノ豫算全部
  ヲ問題ニ供シマス原案ニ同意ノ諸君ノ起
  立ヲ請ヒマス
  〔起立者多數〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=62

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• 063・徳川家達

  ○議長(公爵德川家達君)　過半數ト認メマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=63

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• 064・徳川家達

  ○議長(公爵徳川家達君)　日程第三、輸出
  組合法中改正法律案、政府提出、衆議院送
  付、第四、重要輸出品工業組合法中改正法
  律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
  俵商工大臣
  輸出組合法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
  院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  昭和六年三月十二日
  衆議院議長藤澤幾之輔
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  輸出組合法中改正法律案
  輸出組合法中左ノ通改正ス
  第三條輸出組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
  ヲ得
  一組合員ノ取扱商品ノ委託輸出、輸
  出ノ斡旋、保管、選別、包裝、荷造
  其ノ他組合員ノ營業ニ關スル共同施
  設
  二組合員ノ取扱商品ノ檢査其ノ他必
  要ナル取締又ハ事業經營ニ對スル制
  限
  三海外市場ノ調査、新販路ノ開拓、
  其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナ
  ル施設
  組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ノ取扱商
  品ノ買取輸出、組合員ニ對シ其ノ營業
  ニ必要ナル資金ノ貸付又ハ組合員ノ貯
  金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ得
  第一項ニ揭ゲタル組合ノ施設ハ組合員
  ノ利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ
  非ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ
  之ヲ利用セシムルコトヲ得
  第七條ノ二輸出組合定款ノ定ムル所ニ
  依リ組合員ノ事業經營ニ對スル制限ヲ
  行フ場合ニ於テハ之ニ關スル規程ヲ定
  メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ其ノ規程
  ヲ變更セントスル場合亦同ジ
  第八條及第九條中「營業上ノ弊害ヲ矯正
  スル爲」ヲ「營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯
  正スル爲」ニ改ム
  第九條ノ二同一種類ノ重要輸出品ノ輸
  出ヲ業トスル者ヲ以テ設立セル輸出組
  合又ハ其ノ組合員ハ其ノ營業ニ關スル
  重要物產同業組合法ニ依ル同業組合ニ
  加入セズ又ハ之ヨリ脫退スルコトヲ得
  第十六條第二項中第四號ヲ第五號トシ第
  五號ヲ第六號トシ第三號ノ次ニ左ノ一號
  ヲ加フ
  四第十八條ノ二ノ組合ニ在リテハ各
  組合員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證
  金額
  第十八條ノ二輸出組合ハ定款ノ定ムル
  所ニ依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完
  濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員
  ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ
  限度トシテ責任ヲ負擔スルモノト爲ス
  コトヲ得
  第二十條第三項中「理事」ヲ「理事又ハ監
  事」ニ改ム
  第二十一條中「十分ノ一」ヲ「十分ノ三」ニ
  改ム
  第二十八條ノ二組合ノ事業若ハ組合財
  產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
  ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法
  令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ
  タルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキ
  ハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
  一總會ノ決議ノ取消
  二役員又ハ〓算人ノ解任
  三組合ノ事業ノ停止
  四組合ノ解散
  第二十八條ノ三輸出組合聯合會ハ所屬
  ノ輸川組合及輸出組合聯合會ノ共同ノ
  目的ヲ達スル爲之ヲ設立スルコトヲ得
  聯合會ハ輸出組合又ハ輸出組合聯合會
  ヲ以テ之ヲ組織ス
  聯合會ハ法人トス
  第二十八條ノ四輸出組合聯合會ヲ設立
  セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依
  リ所屬ノ各組合及聯合會ニ於テ選任シ
  タル創立委員ヲ以テ創立委員會ヲ開キ
  定款其ノ他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ
  選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
  第二十八條ノ五創立委員會ニ於ケル議
  決及役員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分
  ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
  第十四條ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準
  用ス
  第二十八條ノ六輸出組合聯合會ノ理事
  及監事ハ總會ニ於テ所屬ノ組合及聯合
  會ノ理事又ハ監事ノ中ヨリ之ヲ選任ス
  但シ聯合會設立當時ノ理事及監事ハ創
  立委員會ニ於テ之ヲ選任スベシ
  特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
  所屬ノ組合及聯合會ノ理事又ハ監事ニ
  非ザル者ヨリ之ヲ選任ズルコトヲ得此
  ノ場合ニ於テハ其ノ選任ニ付主務大臣
  ノ認可ヲ受クベシ
  第二十八條ノ七輸出組合ニ關スル規定
  ハ第三十三條ノ規定ニ依リ準用シタル
  產業組合法第三十八條ノ一一ノ規定ヲ除
  クノ外輸出組合聯合會ニ付之ヲ準用ス
  但シ第三條中組合員トアルハ所屬ノ組
  合、聯合會及組合員トス
  第三十條第一項但書中「出資一口ノ金額
  減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少若ハ第十
  八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ減
  少」ニ、同條第三項中「出資一口ノ金額減
  少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少又ハ第十八
  條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ減少」
  三位人
  第三十三條中「第百三十八條ノ二ヲ「第
  百三十八條ノ三」ニ、「第三十九條乃至第
  四十一條、第四十三條乃至第四十六條」
  ヲ「第三十八條ノ二乃至第四十六條」
  ニ、「第五十一條乃至第五十七條、第六十
  條乃至第六十一條」ヲ「第五十一條乃至第
  五十八條、第六十條、第六十條ノ二」ニ、
  「第六十七條」ヲ「第六十七條、第六十八
  條」ニ、「第七十四條ノ二第一項」ヲ「第七十
  四條ノ二第一項、第七十七條第三項、第
  七十八條」ニ改ム
  第三十五條第十號ヲ左ノ如ク改ム
  十本法ニ違反シテ出資一口ノ金額ヲ
  減少シ、第十八條ノ二ノ規定ニ依ル
  組合員ノ責任ヲ減少シ、第三十三條
  ノ規定ニ依リ準用シタル產業組合法
  第五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ
  又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  印紙稅法及登錄稅法中輸出組合トアルハ
  輸出組合又ハ輸出組合聯合會トス
  重要輸出品工業組合法中改正法律案
  右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
  テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
  昭和六年三月十二日
  衆議院議長藤澤幾之輔
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  重要輸出品工業組合法中改正法律案
  重要輸出品工業組合法中左ノ通改正ス
  「重要輸出品工業組合法」ヲ「工業組合法」
  三段人
  第一條中「重要輸出品」ヲ「重要工產品」ニ
  改ム
  第三條工業組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
  ヲ得
  組合員ノ製品、其ノ原料若ハ材料
  又ハ製造若ハ加工ノ設備ニ對スル檢
  査其ノ他必要ナル取締又ハ事業經營
  ニ對スル制限
  二組合員ノ製品ノ加工又ハ販賣、組
  合員ノ營業ニ必要ナル物ノ供給、共
  同設備ノ設置其ノ他組合員ノ營業ニ
  關スル共同施設
  三組合員ノ營業ニ關スル指導、〓究、
  調査其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必
  要ナル施設
  組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ニ對シ其
  ノ營業ニ必要ナル資金ノ貸付又ハ組合
  員ノ貯金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ得
  第一項ニ揭ゲタル組合ノ施設ハ組合員
  ノ利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ
  非ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ
  之ヲ利用セシムルコトヲ得
  第六條ノ二工業組合定款ノ定ムル所ニ
  依リ組合員ノ事業經營ニ對スル制限ヲ
  行フ場合ニ於テハ之ニ關スル規程ヲ定
  メ行政官廳ノ認可ヲ受タベシ其ノ規程
  ヲ變更セントスル場合亦同ジ
  第七條及第八條中「營業上ノ弊害ヲ矯正
  スル爲」ヲ「營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯
  正スル爲」ニ改ム
  第九條中「工業組合」ヲ「重要輸出品ニ關
  スル工業組合」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ
  加フ
  前項ノ重要輸出品ハ主務大臣之ヲ指定ヌ
  第十六條第二項中第四號ヲ第五號トシ第
  五號ヲ第六號トシ第三號ノ次ニ左ノ一號
  ヲ加フ
  四第十八條ノ二ノ組合ニ在リテハ各
  組合員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證
  金額
  第十八條ノ二工業組合ハ定款ノ定ムル
  所ニ依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完
  濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員
  ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ
  限度トシテ責任ヲ負擔スルモノト爲ス
  コトヲ得
  第二十條第三項中「理事」ヲ「理事又ハ監
  事」ニ改ム
  第二十一條中「十分ノ一」ヲ「十分ノ三」ニ
  改ム
  第二十八條ノ二組合ノ事業若ハ組合財
  產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
  ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法
  令、定款若ハ行政官廳ノ命令ニ違反シ
  タルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキ
  ハ行政官廳ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
  -總會ノ決議ノ取消
  二役員又ハ〓算人ノ解任
  三組合ノ事業ノ停止
  四組合ノ解散
  第二十九條第二項ニ左ノ粗書ヲ加フ
  但シ特別ノ事由アルトキハ組合、聯合
  會又ハ其ノ組合ノ組合員ト同種ノ工業
  ヲ營ム者ヲ以テ之ヲ組織スルコトヲ得
  第三十條中「所屬ノ各組合及聯合會」ヲ
  「所屬ノ各組合、聯合會及工業者」ニ改ム
  第三十二條中「所屬ノ組合及聯合會ノ理
  事又ハ監事」ヲ「所屬ノ組合及聯合會ノ理
  事若ハ監事又ハ所屬ノ工業者」ニ、同條第
  二項申「特別ノ事由アルトキハ理事ハ」ヲ
  「特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ」
  二六人
  第三十三條但書中「所屬ノ組合、聯合會及
  組合員」ヲ「所屬ノ組合、聯合會、工業者
  及組合員」ニ改ム
  第三十五條第一項但書中「出資一口ノ金
  額減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少若ハ第
  十八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ
  減少」ニ、同條第三項中「出資一口ノ金額
  減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少又ハ第十
  八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ滅
  少」ニ改ム
  第三十八條中「第百三十八條ノ二」ヲ「第
  百三十八條ノ三」ニ、「第三十八條ノ二乃
  至第四十一條、第四十三條乃至第四十六
  條』ヲ「第三十八條ノ二乃至第四十六條」
  ニ、「第五十一條乃至第五十七條、第六十
  條乃至第六十一條」ヲ「第五十一條乃至第
  五十八條、第六十條、第六十條ノ二」ニ、
  「第六十七條」ヲ「第六十七條、第六十八
  俊二、「第七十四條ノ二第一項」ヲ「第七
  十四條ノ二第一項、第七十七條第三項」ニ
  改ム
  第三十九條第十號ヲ左ノ如ク改ム
  +本法ニ違反シテ出資一口ノ金額ヲ
  減少シ、第十八條ノ二ノ規定ニ依ル
  組合員ノ責任ヲ減少シ、第三十八條
  ノ規定ニ依リ準用シタル產業組合法
  第五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ
  又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  日本勤業銀行法、農工銀行法、北海道拓
  殖銀行法、印紙稅法及登錄稅法中重要輸
  出品工業組合トアルハ工業組合トシ重要
  輸出品工業組合聯合會トアルハ工業組合
  聯合會トシ重要輸出品工業組合法トアル
  ハ工業組合法トス
  〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=64

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• 065・俵孫一

  ○國務大臣(俵孫一君)　只今上程イタサレ
  マシタ輸出組合法中改正法律案及ビ重要輸
  出品工業組合法中改正法律案、此兩案ヲ便
  宜同時ニ御說明ヲ申上ゲタイト思ヒマス、
  先ヅ第一ニ輸出組合法中改正法律案ノ提案
  ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、我國產業ノ發
  達ヲ圖リマスルニハ、輸出貿易ノ振興ニ俟
  チマスルコト多キモノアリマスルコトハ申
  ス迄モナイコトデアリマス、曩ニ大正十四
  年輸出組合法ヲ制定イタシマシテ、海外販
  路ノ開拓ニ努メマシタノニ、其成蹟ノ見ル
  ベキモノガ少カラヌノデアリマス、此法律
  ニ準據イタシマシテ組織イタサレマシタ組
  合モ相當數ニ上ボッテ居リマスルシ、業蹟モ
  亦顯著ナルモノガアルノデゴザイマス、併
  ナガラ現行法ハ之ヲ實施ノ結果ニ徵シマス
  ルノニ、未ダ十分ナラザルモノガアリマス、
  卽チ輸出業者間ノ統制ヲ保チマスル點ニ於
  キマシテ缺クル所ガアリマス、徒ラニ無益
  ナル競爭ヲナスガ如キ將タ又其資力信用ガ
  薄クアリマシテ、海外販路ノ開拓ノ力ニ乏
  シキモノアル等デアリマス、斯カル現狀ニ
  鑑ミマシテ今〓現行法ヲ改正イタシテ輸出
  組合ノ行フ輸出業者ノ統制ヲ畫一ナラシム
  ルコトト、輸出組合聯合會ノ制度ヲ設ケマ
  シテ輸出業者ノ全國的統制ヲ徹底ヲ期シタ
  イト思ヒマス、且又輸出組合ノ事業範圍ヲ
  擴張イタシマシテ組合ノ輸出金融ヲモ認メ
  マシテ更ニ組合ヲシテ其組合員ニ對スル營
  業ニ關スル金融ノ便ヲ圖ルコトニ致シマシ
  テ他面ニ於テハ組合員ノ決議權ノ修正ヲ
  致シマシテ大輪出業者ノ組合加入ニモ便ナ
  ラシムルコトニ致シタイト思フノデアリマ
  ス斯ウ云フ趣意ヲ以チマシテ玆ニ本案ヲ
  提出イタシマシタ譯デアルノデアリマス、
  次ニ重要輸出品工業組合法中改正法律案ノ
  御說明ヲ申上ゲマス、我ガ輸出中小工業ノ
  改善振作ヲ圖ル目的ヲ以テ制定イタサレマ
  シタ此法律ハ大正十四年ニ此實施ヲ致シマ
  シタ其以來本法ニ基ク工業組合、此工業組
  合ハ普ク輸出工業品ニ亙ッテ居リマシテ、堅
  實ナル發達ヲ致シテ居リ、著々產業合理化
  促進ニ貢獻ヲ致シテ居ル次第デアルノデア
  リマス、併ナガラ時勢ノ進運ト本法施行以
  來ノ實蹟ニ鑑ミマシテ今囘是ガ一部改正ヲ
  加ヘマシテ更ニ其機能ヲ發揮イタスヤウニ
  致シタイト云フ考デアリマス
  〔副議長公爵近衞文磨君議長席ニ著ク〕
  其改正ノ要點ヲ簡單ニ申述ベマスルナラバ
  第一ニ本組合法適用ノ範圍ヲ擴張イタシマ
  シテ、從來ハ重要輸出品工業デアリマシタ
  ノデアリマスガ、此輸出品ノ品目ニ限ラズ
  廣ク一般工業ニ及ボスコトト致シマシテ、
  從ヒマシテ重要輸出品工業組合法ノ題號ヲ
  改メマシテ工業組合法ト云フコトニ致シタ
  イノデアリマス、第二ニハ組合事業ト致シ
  マシテ新タニ貯金ノ受入及ビ資金ノ貸付等
  ヲ行ヒマシテ工業組合ヲシテ中小工業ニ關
  スル金融機關タル機能ヲ尙ホ一層擴張イタ
  シタイト云フ考デアリマス、第三ニハ中小
  工業ニ關スル企業ノ統制ヲ徹底セシムル爲
  ニ組合ノ法規ヲ整備イタシタ點デアルノデ
  アリマス、尙ホ此場合附加ヘテ申述ベテ置
  キタイト考ヘルコトハ、改正法律案ニ付キ
  マシテ衆議院ニ於テ一箇條ノ修正ガゴザイ
  マシタ此修正ニ對シマシテハ政府ハ同意ヲ
  致シテ居ル次第デアリマス、右兩案トモ御
  審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望イ
  タシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=65

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• 066・森平兵衞

  ○森平兵衛君　簡單デアリマスカラ自席カ
  ラ申上ゲテ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=66

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• 067・近衞文麿

  ○副議長(公爵近衞文麿君)　宜シウゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=67

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• 068・森平兵衞

  ○森平兵衛君　只今上程ニナリマシタ組合
  法ノ法案ハ誠ニ機宜ニ適シタ改正案ト思フ
  ノデアリマスルガ、私ハ此二ツノ法案ヲ改
  正ナサル前ニ何故ニ明治三十三年ニ制定セ
  ラレマシタ重要物產同業組合ト云フモノガ
  組織セラレマシテ既ニ三十幾年經過シテ居
  ルノデアリマス、殊ニ昭和五年度ノ私ノ調
  ベニ依リマスト、全國ニ於テ同業組合ノ數
  ガ約千五百八十五バカリアルノデアリマ
  ス、ソレヲ一組合平均約三百人居ルト致シ
  マシテモ、其組合員ハ約五十万人ニ上ルト
  思フノデアリマス、今囘ノ此輸出組合法竝
  ニ輸出工業組合法ト云フヤウナモノハ其重
  要物產同業組合ニ關聯スルコトガ頗ル多イ
  ノデアリマス、過般來、東京竝ニ近畿ノ產
  業團體ガ萬一此法案ガ通過スル場合ニ於テ
  ハ重要物產同業組合ニ脅威ヲ受ケルト云フ
  コトデ、頻ニ運動ヲシテ居ル者モアルト思
  フノデアリマス、故ニ政府ハ此衆議院ノ意
  向ニ依リマシテ、第九條ヲ御修正ニナッタサ
  ウデアリマスガ、私ハ先ヅ其衆議院ノ修正
  ノ重要輸出品ニ關スルト云フ文字ガドウ云
  フ工合ニ解釋シテ宜イカト云フコトヲ第一
  ニ御尋ネシタイト思フノデアリマス、第二
  點ハ此同業組合法ノ中ニ大正五年デアリマ
  シタカ、時ノ農商務次官カラ價格協定ト云
  フコトヲシテハイケナイト云フ通牒ガアル
  ノデアリマス、私ハ斯ウ云フヤウナコトガ
  此今囘ノ產業統制案又輸出品工業組合、輸
  出組合法ニ付テノ統制上、頗ル私ハ此通牒
  ガ愈、運用スルト云フ場合ニ於テ非常ニ此
  通牒ヲ御廢止ニナラヌコトニハ困ッタコト
  ガ起リハセヌカト思フノデアリマス、此點
  ハ商工大臣ニ於テドウ御考ヘニナッテ居ル
  カ其點、モウ一點ハ、私ハ先刻申上ゲマ
  シタ通リ、重要物產同業組合ト云フモノハ
  全國ニ組織シテ既ニ三十幾年ヲ經過シテ居
  ル今日ニ於テ何故、此法案ヲ其儘放任ナサッ
  テ置イテ之ヲ御改正ニナラナカッタカト云
  フコトニ付テ、政府ノ御意見ヲ承リタイ、
  簡單ニ此事ヲ御質問スル次第デアリマス
  〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=68

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• 069・俵孫一

  ○國務大臣(俵孫一君)　只今、森君ノ御尋
  ニ對シマシテ御答申上ゲテ置キマス、第
  點ハ此度衆議院ニ於テ修正ヲ致シタ其修正
  條文ノ中ノ重要輸出品ト云フ解釋ヲドウス
  ルカト云フコトデアッタヤウデアリマス、此
  修正ハ要スルニ現行ノ重要輸出品ニ對シテ
  第九條ノ適用ガアリマシタ限度ヲ押ヘテ、
  其以上ニハ擴張シナイト云フ趣意ノ修正デ
  アリマス、之ヲ以テ御諒承ヲ願ヒマス、第
  二點ハ同業組合ニ對スル所謂次官通牒、同
  業組合ノ價格協定ニ關スル制限、價格協定
  ヲ認メヌト云フ趣旨ノ通牒、此通牒ニ對シ
  テ如何ニ考ヘルカト云フ御趣意ノヤウデア
  リマシタ、御尤ノ御質問デアルト思ヒマス、
  御請ノ如ク、工業組合ノ統制ニ付キマシテハ
  將來ニ或ハ債格協定ト云フ點モアルデアリ
  マセウ、併ナガラ同業組合ニ對シテハ次官
  通牒ヲ以テ價格ノ協定ヲ許サヌト云フコト
  ニチッテ居ル點ニ於テ矛盾ガアリハシナイ
  カト云フ御尋デアルト存ジマス、此同業組
  合ニ對スル次官通牒ハ當時物價騰貴ノ趨勢
  ニアリマシタコト、尙ホ彌ガ上ニ同業組合
  ニ於テ價格釣上ゲノ行爲ガアルト云フコト
  ニ心配イタシマツテ、此通牒ヲ發シタノデ
  アリマス、而シテ今日ハ稍〓其趨勢ヲ異ニ
  致シテ居ル點ガアルノデアリマス、卽チ工
  業組合ニ於キマシテハ賣崩シニ對スル如キ
  點ニ對ジテ、價格ノ協定ヲシナケレバナラ
  ヌト云フ、其當時ノ趨勢ト違ッタ、全タ反對
  ノ協定ヲシナケレバナラナイヤウナ場合ガ
  想像シ得ラレルノデアリマス、從ヒマシテ
  同業組合ノ次官通牒ニ對シテハ何トカ考慮
  シテハドウカト云フ陳情モアルノデアリマ
  ス、私ハ徒ラニ消費者ノ利益ヲ害シマシタ
  同業組合ノ價格釣上ゲニ付キマシテハ、今
  日ト雖モ尙ホ其必要ヲ認メマスルノデアリ
  マスルケレドモガ、當時物價騰費ノ趨勢ニ
  アル價格釣上ゲニ對シテ絕對禁止ヲシタ此
  通牒ハ、今日ノ趨勢ニ於キマシテハ多少ハ
  緩和シナケレバナラヌノデハナイカト考ヘテ
  居リマス、之ニ付テハ更ニ十分ニ研究ヲ致
  シマシタ結果ヲ以テ、此處置ヲ致シタイト
  思ッテ居リマス、第三ノ同業組合法ヲ何故ニ
  改正シナカッタカ、是ハ極ク簡單ニ申シマス
  ルナラバ、同業組合ノ今日ニ至ル所ノ實業
  奬勵ニ關スル貢獻ハ十分ニ認メテ居リマス
  ルシ、只今御話ノ如ク同業組合ガ組合數ニ
  於テモ組合員ニ於テモ盛ンチ趨勢デアルコ
  トハ認メマスデゴザイマスルガ、同時ニ此
  法律ニ對シマシテハ今日ニ於テハ之ヲ改正
  スルト云フコトノ必要ヲ認メテ居ラヌノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=69

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• 070・森平兵衞

  ○森平兵衛君　第一點ニ於ケル重要輸出品
  ニ對スル工業組合ハ同業組合ニ加入セズ又
  組合員ガ之ヲ脫會スル云々ト云フコトデア
  リマスガ、其品目ハ商工大臣ニ於テ之ヲ御
  定メニナッテ、之ヲ限定スルト云フコトハ分
  リマシタガ、此重要輸出品ト云フコトニ付
  テ我ミハ陳情ヲ聞イテ居リマスト、製造業
  ノミニ限定シテ貰ヒタイ、販賣ニ關スルト
  云フコトニナルト同業組合ノ基礎ヲ危ウス
  ル、同業組合ト云フモノハ御承知ノ通リ公
  益團體デアリマス、全體ノ同業者ヲ統制ス
  ルモノデアル、一方ノ工業組合ハ所謂私設
  團體デアッテ、各自ノ利益ヲ重ンジ、又金融
  ノ業ヲ掌ルト云ウテ、所謂私益國體トモ申
  シテモ宜イコトデアリマスカラ、此組合ノ
  爲ニ同業組合ノ統制ヲ紊ルト云フコトハ
  甚ダ同業組合トシテハ脅威ヲ感ズルカラ、
  之ヲ局限シテ貰ヒタイト云フコトヲ、我ミ
  ハ聞イテ居ルノデアリマス、此衆議院ノ修
  正ノ重要輸出品ニ關スル工業組合ト云フコ
  トハ製造ノミニ我〓ハ限ルト云フコトニ
  解釋シテ差支ナイノデアリマスカ、此點ダ
  ケヲモウ一應御尋ネ致シマス
  〔國務大臣俵孫一君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=70

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• 071・俵孫一

  ○國務大臣(俵孫一君)　御答ヘ致シマス、
  衆議院ノ修正ハ重要輸出品製造ニ關スル工
  業組合又ハ工業者ト云フ文字デアッタト記
  憶イタシマス、卽チ製造ニ關スルモノノミ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=71

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• 072・森平兵衞

  ○森平兵衛君　私ノ質問ハ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=72

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• 073・近衞文麿

  ○翻議長(公爵近衛文麿君)　特別委員ノ氏
  名ヲ朗讀イタサセマス
  〔瀬古書記官朗讀〕
  輸出組合法中改正法律案外一件特別委員
  侯爵大久保利武君侯爵中御門經恭君
  伯爵樺山愛輔君子爵曾我祐邦君
  男爵中島久萬吉君服部金太郞君
  菊池恭三君大川平三郞君
  山崎龜吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=73

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• 074・近衞文麿

  ○副議長(公爵近衞文麿君)　日程第五ヨリ
  第十一マデ一括シテ議題ニ供シマス、委員
  長西〓侯爵
  特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
  案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報〓候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰
  入ルルコトニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和六年三月十二日
  委自長侯野西〓從德
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  賠償金特別會計法廢止法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  昭和四年法律第二十六號中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報〓候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
  タル金額ノ補塡ニ關スル法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵徳川家達殿
  製鐵所特別會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵德川家達殿
  簡易生命保險特別會計法中改正法律案
  右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
  報告候也
  昭和六年三月十二日
  委員長侯爵西〓從德
  貴族院議長公爵德川家達殿
  〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03219310313&spkNum=74

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• 075・西郷從徳

  ○侯爵西郷從德君　特別會計ニ於ケル營繕
  費ニ關スル法律案特別委員ハ去月二十六
  日正副委員長ノ互選ヲ終リマシテ、其後
  委員會ヲ六囘開催ヲ致シマシタ、政府委員
  ト質疑應答ヲ重ネ、又委員相互ノ間ニモ互
  ニ〓究ヲ致シマシタ、御承知ノ如ク此委員
  ニ付託ニナリマシタ法律案ガ七ツデゴザイ
  マスカラ、其順ニ簡單ニ御報告ヲ申上ゲマ
  ス、第一ニ特別會計ニ於ケル營繕實ニ關ス
  ル法律案ニ付テハ大藏省ノ管財局ニ營繕
  事業ヲ統一ヲ致サウト云フ案デゴザイマ
  ス、勿論政府モ特例ヲ認メテ居リマスシ、
  委員モ之ヲ統一スルト云フコトノ利益ヲ認
  メテハ居リマスガ、統一ノ名ニ囚ハレテ大
  學ヲ始メ特別ナル建築物等ニ於テ却テ不便、
  不利益、不經濟ト云フヤウナ點ガナイヤウ
  ニ十分注意サレタイト云フ意味ノ希望ヲ委
  員ハ持チマシクノデアリマス、左樣申述べ
  マシタ所、政府ニ於テモ此點ニ意ヲ用ヒル
  要ハ從來ノ行掛リ感情等ヲ一掃シテ大改善
  ヲ實施スルト云フ御答辯ヲ得マシテ、委員
  會ハ全會一致、原案ヲ可決イタシマシタ、
  第二、特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ
  繰入ルルコトニ關スル法律案ニ付テハ從來
  官公吏ハ最後ノ勤務廳ニ於テ恩給ヲ支給シ
  タモノヲ統一イタサウト云フ改正デアリマ
  シテ、恩給法ハ目下大改正ガ眼前ニ迫レテ
  居ル、ソレト同時ニ此改正ヲ致シテハドウ
  カト云フ意見モ出マシタガ、委員ハ全會一
  致原案ヲ可決イタシマシタ、第三ハ賠償
  金特別會計法廢止法律案デゴザイマス、昨
  年制定サレタ所ノモノヲ直チニ廢止スルト
  云フノハ餘リ朝令暮改ヂヤナイカト云フヤ
  ウナ委員ノ問ガ出マシテ、政府ノ答辯ハ減
  債基金繰入中止ノ理由ハ······賠償金ノ減債
  基金繰入中止ト云フノハ一般會計ノ歲入ヲ
  增加スルノニヤサシイト云フヤウナ譯デハ
  ナク、全ク異常ナル歲入減ニ伴ウテ巳ムヲ得
  ナイノデアル、非募債主義ヲ棄テルノデハ
  ナイカラシテ將來整理ノ結果又復活セシム
  ルニ至ルモノデアル、ト云フ答ガゴザイマ
  マシタノデ、委員會ハ附帶決議ヲ附シテ全
  會一致、原案ヲ可決イタシマシタ、只今附
  帶決議ヲ一應朗讀ヲ致シマス
  附帶決議
  昭和五年度以降ニ於ケル賠償金收入ハ之
  ヲ減債基金ニ充當スヘシトノ政策ヲ樹立
  シタルニ一年ナラスシテ之ヲ改ムルハ目
  下ノ財政ノ不況ニ處スル途トシテ蓋シ巳
  ムヲ得サルモノト認ムルモ政府ノ處置洵
  ニ遺憾ニ堪ヘサルモノト認ム
  是ダケデゴザイマス、第四ハ昭和四年法律
  第二十六號中改正法律案デアリマシテ、實
  際ノ所ハ神戶高等商業學校ガ商業大學ニ昇
  格イタシマシタ爲ニ、其改築ノ費用ガ官立
  大學資金カラ一般會計ニ繰入レルヤウニナ
  リマシテ、ソレヲ一度ニ繰入レルト云フ都
  合ガ付キマセヌノデ、昭和十一年度迄ニ繰
  入レルト云フ改正デアリマシテ、委員會ハ
  全會一致原案ヲ可決イタシマシタ、第五ハ
  京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シタル
  金額ノ補塡ニ關スル法律案デゴザイマシ
  テ、同校ハ都市計畫ノ必要上、移轉ヲ致シ
  マシテ、丁度今月卽チ昭和六年ノ三月ニ完
  成ヲスルノデアリマスガ、其金額ヲ一度ニ
  一般會計ニ取ラナイデ、昭和六年乃至八年
  ニ學校及圖書館資金カラ一般會計ニ繰入レ
  ルト云フノデゴザイマシテ、委員會ハ全會
  一々、原案ヲ可決イタシマシタ、第六ハ製
  鐵所特別會計法中改正法律案デゴザイマシ
  テ、製鐵所ノ在庫品ガ增加シマシテ、一方、
  在庫品ガ增加スル爲ニ運轉資金ガ圓滑ヲ缺
  クト云フ心配ガアルノデ、用意ノ爲ニ運轉
  資金ニ充當スベキ金額ノ限度ヲ增加スルコ
  トデゴザイマシテ、委員會ハ全會一致、原
  案ヲ可決イタシマシタ、第七ハ簡易生命保
  險特別會計法中改正法律案デアリマシテ、
  元來、簡易生命保險特別會計ハ創設ノ初メ
  ニ成ベク旣設ノ設備、廳舍ヲ利用シテヤッテ
  行クト云フ計畫デアリマシタガ、御承知ノ
  ヤウニ、事業ガ發達ヲ致シマシタニ伴ヒマ
  シテ、旣ニ大正十二年ニ法律第二十二號ヲ
  以テ當分ノ內土地建物云々ト云フコトガ出
  テ居ルノデアリマスガ、差當リ福岡支局ヲ
  建設スル必要ニ直面シテ居リマスノト、事
  業ガ大キクナリマシタ爲ニ將來營繕費ヲ加
  ヘルト云フノデアリマシテ、委員會ハ全會
  致原案ヲ可決イタシマシタ、以上各案
  ヲ通ジマシテ、只今申上ゲマシタヤウニ、
  ソレゾレ必要上、已ムヲ得ザルモノト認メ
  マシテ、委員會ハ全會一致、原案ヲ可ト決
  シマシタ次第デゴザイマスカラ只今御報〓
  ヲ致シマス

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• 076・近衞文麿

  ○副議長(公爵近衞文麿君)　本日ハ大分時
  間モ經過イタシマシタシ、且ツ定足數ヲ缺
  ク虞レガアリマスカラ、是ニテ延會イタシ
  タイト存ジマス、次ノ議事日程ハ彙報ヲ以
  テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ〓會イ
  タシマス
  午後六時四十六分散會

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