1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月十九日(木曜日)午前十時二十一分開議
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議事日程 第三十五號
昭和六年三月十九日
午前十時開議
第一 勞働組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 勞働爭議調停法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 「ロンドン」海軍條約實施に伴ふ海軍職工整理に關する公債發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 明治四十二年法律第二十二號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 昭和四年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第六 昭和四年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第七 昭和四年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第八 昭和四年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第九 昭和四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十 昭和五年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十一 昭和五年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十二 昭和五年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議
第十三 特別會計に於ける營繕費に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十四 特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十五 賠償金特別會計法廢止法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十六 昭和四年法律第二十六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十七 京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十八 製鐵所特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第十九 簡易生命保險特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續
第二十 製鐵業奬勵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 違警罪即决例中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十二 鑛業法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 一時金癈兵恩給法中改正の請願 會議
第二十四 菊川改修の請願 會議
第二十五 鍼灸醫師法制定の請願 會議
第二十六 北海道色丹郡斜古丹村に無線電信施設の請願 會議
第二十七 樺太元泊郡知取町に區裁判所設置の請願 會議
第二十八 北海道落石燈臺に霧笛設置の請願 會議
第二十九 水産物冷藏奬勵の請願 會議
第三十 秋刀魚漁期制限の請願 會議
第三十一 漁村金融の改善に關する請願 會議
第三十二 郡市水産會技術員國庫補助の請願 會議
第三十三 水産物の鐵道運賃輕減の請願 會議
第三十四 軍人傷痍記章令中改正即行の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨十八日本院ニ於テ可決シタル左ノ建議ハ
文書ヲ以テ卽日之ヲ政府ニ呈出セリ
學術〓究ノ奬勵助長ニ關スル建議
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
輸出生絲檢査法中改正法律案可決報告書
製鐵業奬勵法中改正法律案可決報告書
入營者職業保障法案可決報告書
鑛業法中改正法律案可決報告書
請願文書表(第八回報〓)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、勞働組合法案、
第二、勞働爭議調停法中改正法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會、有馬伯爵ニ
伺ヒマス、有馬伯爵ハ昨日ニ續キマシテ質
疑ノ御希望ガゴザイマカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=2
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003・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 簡單ニモウ少シ質問シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 登壇ヲ望ミマス
〔伯爵有馬賴寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=4
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005・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 私ハ昨日勞働組合法案
ニ付キマシテ內務大臣ニ御質間ヲ致シマシ
テ、更ニ御尋ネスルコトハ餘リ澤山ハナイ
ノデアリマスシ、又時間モ極メテ少イヤウ
デアリマスルカラ、簡單ニ少シバカリ御尋
ネヲシタイト思ヒマス、昨日私ガ質問イタ
シマシタ第一ノ點ニ付キマシテ、內務大臣
カラ御答辯ガアッタノデアリマスルガ、社會
局ノ案トシテ發表サレタモノハソレハ政府
ノ確定的ノモノデハナクテ、今度提案サレ
タモノガ、是ガ本當ノモノデアルト云フ風
ナ御說明ガアリマシタ、私共ハ所調政府ノ
局デアル所ノ社會局ノ案トシテ、而カモ
ソレガ社會政策審議會ノ答申ヲ基礎ニシテ
居ルト云フ點ニ於キマシテ、私共ガ餘リニ
ソレヲ信用シ、餘リニソレニ重キヲ置キ過
ギタノガ、私共ノ誤リデアッタト云フコト
ヲ知ィタノデアリマス、其點ニ付キマシテハ
最早繰返シテ申上ゲル必要ハナイノデアリ
やっ、條文ノ內容ノ中デモウ一點御伺ヒシ
タイト思フコトガゴザイマス、ソレハ或ハ
條文ガ間違ヲテ居ルカモ知レマセヌガ、第十
四條ト思ヒマスガ、新ニ挿入サレタ條項デ
アリマシテ、ソレハ勞働組合ヲシテ產業組
合ノ致シマスル仕事ト大體ニ於テ同ジ仕事
ヲサセル、卽チ共同販賣デアルトカ、或ハ
購買組合ノヤウナ仕事デアルトカ、サウ云
フ風ナモノヲシテ、ソレニ對シテハ營業收
益稅デアルトカ、或ハ其他ノ稅金ヲ免除ス
ルト云フ規定ガ新タニ挿入サレタノデアリ
マス、是ハ勞働者側ノ、勞働組合側ノ從來
希望シテ居ル所デアルノデアリマシテ、其
聲明ノ中ニモ明カニソレヲ希望シテ居ルノ
デアリマス、若シ政府ガ此勞働團體ノ主張
ニ基イテ、之ヲ此條文ヲ挿入サレタトスレ
バ非常ニ進ンダ態度ヲ執ラレタモノト私
ハ思フノデアリマスルガ、サウ云フ風ナ經
濟的ナ非常ナ力ヲ勞働組合ニ與ヘルト云フ
條項ヲ設ケラレタコトガ、勞働組合運動ノ
將來ノ上ニ於テドウ云フ影響ヲ持チ來スモ
ノデアルカト云フコトハ相當ニ考慮ヲ要
スル問題デハナカラウカト思フノデアリマ
ス、又一面此產業組合ノヤッテ居リマスル
仕事ノ殆ド同ジモノヲ勞働組合ニ認メル、
斯ウ云フコトハ現在ノ日本ノ產業組合運動
ノ上カラ中シマシテ、非常ナ影響ガアルヤ
ウニ思ヒマス、販賣事業トカ購買事業トカ、
サウ云ッタ風ノモノガ、現在ハ產業組合法ト
云フモノニ依ッテ、全國的ニ統一サレテ、
ツノ運動ニナッテ居ルノデアリマスルガ、
若シ玆デ勞働組合ニサウ云フコトヲ認メ、
又或ハ一面ニ於テ、是ハ別ノ問題デアリマ
スガ、工業組合ニテ之ヲ認メルト云フ風ニ
ナリマスルト云フト、所謂日本ノ產業組合
運動ト云フモノガ非常ニ統一サレナイ、支
離滅裂ナモノニナル虞レガアルト思フノデ
アリマス、此點ハ政府ニ於カレテドウ云フ
風ニ御考ヘニナッテイラッシヤルノデアリマ
スカ、此條文ヲ挿入サレタ趣旨ハ何處ニア
ルノカト云フコトヲ御伺ヒシタイノデアリ
マス、尙ホ今囘モ此前ト同ジヤウニ勞働組
合法ニ件ッテ爭議調停法ノ改正案ガ提出サ
レマシタ、世間デハ此爭議調停法ノ提出ニ對
シテ、多少ノ疑念ヲ有ノテ居ルヤウニ聞キ及
ンデ居ルノデアリマス、ソレハ勞働組合法
ト云フモノハ、ズット前カラ此案ガ世間ニ出
サレテ、所謂輿論ニ問ハレタノデアリマス
ルガ爭議調停法ト云フモノノ改正案ト云
フモノガ出ルト云フヤウナ噂ハ、最近マデ
全然ナカッタノデアリマス、私共新聞ヲ通シ
テ見マシテモ、又共他ノ機會ニ於キマシテ
モ勞働組合法ハ提出サレルト云フヤウナ噂
ハアリマシタケレドモ、爭議調停法ノ改正
ガ行ハレルト云フヤウナコトハ、殆ド此法
案ガ提出サレル間際マデ私共ハ聞カナカッ
タノデアリマス、世間デハ此爭議調停法ノ
改正案ニ付テ斯ウ云フ噂ヲシテ居リマス、
資本家側カラ勞働組合法ト云フモノガ非常
ニ進ミ過ギテ居ルカラシテ、是非爭議取締
法ト云フモノヲ之ニ伴ッテ出ス必要ガアル
ト云フコトヲ非常ニ主張シテ居ル、併ナガ
ラ政府トシテハ爭議調停······取締法ト云フ
モノヲ出スコトハ同意ガ出來ナイ、斯ウ云
フ風ニ言ハレマシタ結果、爭議取締法ヲ出
ス代リニ所謂爭議調停法ヲ改正シテ、之h
依ッテ所謂爭議取締ノ目的ヲ達スルンダ、斯
ウ云フ風ニ世間デハ噂ヲシテ居ルノデアリ
やっ、果シテサウデアルカドウカ私ハ存ジ
マセヌガ、實際ノ法案ノ提出ノ徑路ヲ考ヘ
テ見マスルト、其噂ガ或ハ眞デハナイカト
云フ風ニ私等ニモ思ハレルノデアリマス、
ソレハ爭議調停法ノ改正ノ要點ニ付テ考ヘ
テ見マスルト云フト、所謂公益事業デナイ
所ノ私益事業デモ强制的ニ之ヲ調停スルコ
トガ出來ルト云フ風ニナッテ居リマスルシ、
又公益事業ノ爭議ノ所謂龍業ノ場合ニハ、
豫メ之ヲ通告シナケレバナラヌトカ何ント
カ云フヤウナ非常ニ難カシイ規定ガ設ケラ
レルコトニナリマス、是ハ要スルニ所謂勞
働者側ノ武器デアル所ノ「ストライキ」ヲ殆
ド不可能ナラシメルト云フ結果ニナルヤウ
ニ考ヘラレルノデアリマス、サウ云フコトカ
ラ歸納シテ參リマスト云フト、此爭議調停法
ノ改正ト云フモノガ世間ノ言フ所ノ所謂爭議
取締法ト同ジ目的ヲ持ッテ居ルノダ、同ジ所ニ
歸著スルノダト云フ風ナ噂ガ必シモ單ナル疑
デハナイヤウニ考ヘラレルノデアリマス、
其點ニ付テ政府ノ御答辯ヲ煩シタイト思ヒ
マス、更ニ昨日、私ガ最後ニ勞働組合法ト
思想問題ノコトニ付テ御伺ヲ致シマシタ、
稍〓私ノ質問ガ意見ニ涉リマシタコトヲ甚
ダ恐縮ニ思フノデアリマスルガ、內務大臣
ハ私ノ述ベマシタコトヲ大層新シイ言葉デ
以テ尖端的ダトカ云フヤウナ御批評ガアリ
マシタ、私ハ決シテ、サウシタ今日使ハレ
テ居ル尖端的ト云フ言葉ノヤウナ浮イタ、
ウワツイタ氣持デ、私ハアアシタ質問ヲ申
上ゲタノデナイノデアリマシテ、所謂人各
各見ル所ガ異リマスシ、其人ノ立場ニ依フテ
今日ノ社會狀態ヲ見ル目ハ皆違フノデアリ
マスルガ、私ハ現時ノ日本ノ社會狀勢全般
ニ亙リ、殊ニ斯ウシタ勞働運動ト云フ方面
ヲ見マスル時ニ、非常ニ切迫シ、非常ニ窮
迫シタ狀態ニマデ今日追詰メラレテ居ルト
云フコトヲ、私ハ痛感シテ居ル者ノ一人デ
アリマス、從テ非常ニ深刻ナ社會狀勢ニ對
シテ之ヲ救濟シ、之ヲ打開シテ行ク爲ニ、
生半可ノ中途半端ナ、生溫イ手段ヲ以テ之
ヲ解決スルト云フコトハ殆ド困難デアル、
從テ此問題ヲ解決スル爲ニハ相當力强イ
徹底シタ所ノ政策ニ依ルニアラザレバ之
ヲ救濟シ得ナイト云フ風ニ私ハ信ジテ居ル
ノデアリマス、從テサウシタ意味ニ於テ御
尋ネシタノデアリマシテ、勞働組合法、今
日提出サレタ所ノ勞働組合法案ト云フヤウ
ナ程度ノモノデハ、私ノ見ル今日ノ社會狀
勢ト云フモノヲ如何トモシ難イト云フ風ニ
私ハ信ジタノデアリマスガ故ニ、アアシタ
質問ヲ申上ゲタノデアリマス、併ナガラ內
務大臣ノ御意見ハ、私ノヤウナ意見モアリ、
又全然反對ノ意見モアルノデアルカラ、所
謂政府ノ採ッタ所ノモノハ其中庸ヲ得タモ
ノデアルカラシテ、是ガ一番宜イノダト云
フヤウナ御答辯ガアッタノデアリマス、敢テ
之ニ對シテ意見ヲ鬪ハスト云フヤウナモノ
デハアリマセヌカラシテ、此點ニ付テノ私
ノ質問ハ打切リニ致シマスガ、只今申上ゲ
マシタ爭議調停法ノ改正ニ付キマシタ點ト、
竝ニ第十四條ノ產業組合式ノ仕事ヲ勞働組
合ニ許スト云フ、此二ツノ點ニ付キマシテ、
御答辯ヲ得ルコトガ出來レバ非常ニ仕合セ
デアリマス、時間ノ少イ際デアリマスカラ、
私ノ質問ハ此程度ニ於テ打切リタイト思ヒ
マス
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=5
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006・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 御答ヘ致シマ
ス、社會局ノ案ナルモノハ御話ノ通リ、社
會政策審議會ノ答申ヲ基礎ト致シマシテ、
其答申ニ依ヲテ拵ヘタ案デゴザイマシテ、マ
ダ政府ノ確定セル案デハ確ニナカッタノデ
アリマス、ソレデ昨日申上ゲマシタ通リ
其案ガ出來マスヤ、之ヲ世間ニ公ニシテ、
世論ノ批評ヲ問ウテ見タノデアリマス、審
議會ノ案其モノヲ政府ノ案トセナケレバナ
ラヌト云フコトハナイノデアリマシテ、政
府ノ諮詢ニ應ジテ答申ヲ得タ案ヲ基礎トシ
テ社會局デ拵ヘタ案デアリマス、政府ノ確
定ノモノデハナイト云フコトヲ更ニ申上ゲ
チ置キマス、今日御尋ノ第十四條ノ規定ハ
デス、御話ノ通リ、產業組合ノ爲スベキヤ
ウナコトヲ爲サセマスノデアリマスガ、ソ
レハ第一條ノ共同利益ノ保護增進ヲ目的ト
スルト云フコトニ基キマシテ、營利ヲ主タ
ル目的トセズシテ、一般ノ營利業者ニ影響
ナク、他ノ商人ト競爭スル虞レナクシテ、
サウシテ產業組合的ノ事ヲ爲スノデアリマ
ス、勞働組合ハ勞働者ノ共同ノ福利ヲ日的
トスルモノデアリマスカラシテ、斯カル事
業ヲヤラセマシテ、サウシテ保護助長セム
トスルモノデアリマスカラ、第一條ト照應
シテ初メテ此十四條ガ働キマシテ、勞働組
合ヲシテ產業團體タラシムル所ノ目的ヲ全
ウシ得ルノデアリマシテ、ソレデ此產業組
合ノ制度ヲ紊亂スルト云フ虞レハ毫モナイ
ト考ヘテ居リマス、ソレカラ第二ノ御問ノ
爭議調停法ニ關スルコト、之ニ付キマシテ
バ世間ノ噂話ヲ以テ、此調停法ヲ出シマシ
タコトニ付テノ御判斷ヲ下サルコトハ、私
ハ間違シテ居ルト考ヘマス、今マデ行ハレテ
居リマシタ所ノ爭議調停法ナルモノガ不備
ノ點ガアリマシテ、昨日モ申上ゲマシタヤ
ウニ既往五箇年間ニ僅ニ二囘ダケ外、アノ
調停法ヲ利用スルコトハ出來ナイト云フヤ
ウナ狀態デアリマスカラ、其不備ヲ補ハム
ガ爲ニ今度改正イタシタ次第デアリマス、
御話ノヤウニ「ストライキ」ヲ不可能ナラシ
メルト云フヤウナコトハ全然無イノデアリ
マシテ、此爭議ノ取締ト云フコトヲ企ツル
ノデハナイノデアリマシテ、唯爭議ノ圓滿
ニ迅速ニ解決セムコトヲ期スル爲ニ調停法
ヲ作ルノデアリマシテ、決シテ「ストライ
キ」ヲ不可能ナラシメルト云フコトデハナ
1、爭議ハ成ベク圓滿ニ、成ベク迅速ニ治
マルヤウニスルト云フ其方法ヲ規定シタニ
過ギマセヌカラ左樣御承知ヲ願シテ置キマ
ス
〔赤池濃君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=6
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007・赤池濃
○赤池濃君 本案ハ初メテ我國ニ於テ勞働
組合ヲ公認シ、勞働運動ヲ法律ヲ以テ保護
セムトスルモノデアリマシテ、卽チ我國ノ
勞働立法ノ上カラ見マシテ極メテ重大ナル
モノデアルト同時ニ、其影響ノ極メテ測ル
ベカラザルモノガアルト云フコトハ言フヲ
俟タナイ次第デアルノデアリマス、從テ之
ニ對シテハ愼重審議ヲ盡スノガ議員ノ當然
ノ任務ト心得ル次第デアリマス、衆議院ニ
於テ過去二箇月ニ亙ッテ十數囘ノ會議ヲ重
ネマシタコトニ付テハ、我〓ハ衆議院ノ勞
力ヲ深ク多トスル次第デアルノデアリマ
ス、偖昨日ノ當院ニ於ケル所ノ論戰竝ニ衆
議院ニ於ケル所ノ論戰ノ跡ヲ見マスルト云
フト、期セズシテ此法案ヲ論ズル際ニ、思
想問題竝ニ政治問題ガ非常ニ議論サレテ居
リマス、或ハ經濟問題ヨリモ寧ロ重キヲ政
治若クハ思想ノ問題ニ於テ論議サレテ居ル
ト云フノハ、餘程注意スベキ現象ダト考ヘル
ノデアリマス、恐ラク事情ヲ知ラナイ人ガ
アリマシタナラバ、不思議ノ感ヲ懷ク位デ
アラウト思フ、或ハ外國人ノ如キハ殆ド理
解ガ出來ヌカモ知レヌト思フノデアリマ
ス、此コニ我國ノ勞働立法ノ特色ガ存スル
コトダト思ヒマス、我國ノ勞働團體ハ皆樣
ガ御感ジノ如ク、御承知ノ如ク、一面ニ於
テハ思想〓體デアル、一面ニ於テハ政治〓
體デアル、卽チ一身ニシテ三ツノ面、三面
ヲ持クテ居ル所ノモノデアルコトハ、是ハ世
界ノ、他ニ殆ド例ヲ見ナイ所ノ現象デアル
ノデアリマス、恰モ觀音菩薩ガ三十三身ヲ
示現シテ、サウシテ自由自在ニ變形シテ働
ク如ク、此我國ノ勞働團體ハ必要ニ應ジテ
其姿ヲ變ヘテ、政治或ハ思想或ハ勞働、ソ
レゾレニ活躍シテ居ルト云フノガ今日ノ情
勢デアルノデアリマス、此狀況ヲ知ッテサウ
シテ之ニ適應スルヤウナ法案ヲ作リマセヌ
ト云フト、實際ニ卽シナイ所ノ法案ガ出來
ルト云フコトハ、是ハ言フヲ俟タナイ次第
デアルノデアリマス、卽チ外國ノ立法例ヲ
持ッテ參リマシテ、我國ノ勞働法ニシヤウト
致シマシテモ、ソレハ役ニ立チマセヌノデ
アリマス、彼ノ國ニ行ハレテ居ル所ノ勞働
理論ヲ持ヲテ參リマシテ、直グニ我國ノ理論
トシテ之ヲ何トカシヤウト思ッテモ到底合
ハヌノデアリマス、卽チ我國ノ勞働運動ハ
非常ニ複雜ナルモノデアル、特殊ナル性質
ヲ持ッテ居ルト云フコトヲハッキリ意識シテ
居ラナカッタナラバ、最モ必要ト感ズル點ニ
對シテ十分ニ立法ガ出來ナイト云フ結果ニ
相成ル譯デアリマス、我ミハ今囘ノ如ク重
大ナ法案ニ付キマシテハ、十分ニ我國ノ現
狀ニ適應スルヤウナ法律ヲ作ルト云フコト
ニ付テ專心努力ヲシナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、而シテ現在ハ過去ノ成果デ
アルコトガ多イノデアリマスルカラシテ、
從ッテ現在ノミナラズ過去ノ狀況モ能ク調
査イタシマシテ、何ガ一番今日ノ勞働立法ニ
付テ必要デアルカト云フコトヲ明カニシナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス、近來動
モスレバ立法ノ際ニ於テ兎角抽象論······理
論ニ流レマシテ實際ニ卽シナイ所ノ法律ガ
大分出來テ居リマス、法律ハ出來タケレド
モ實行ニ苦シム、或ハ實用ガナイト云フ法
律ガ屢〓散見スルノデアリマスルカラシテ、
今囘ニ於テハサウ云フヤウナコトノ弊害ガ
ナイヤウニ愼重愼議ヲ盡スノガ、我〓議員
ノ任務ダト考ヘル次第デアリマス、此意味
ニ於キマシテ、私ハ內務大臣ニ三箇ノ點ニ
付テ御尋ヲ致シタイト思フノデアリマス、
第一ハ、政府ハ我ガ勞働運動ノ現在ノ狀況
ヲ詳シク御承知ノ上デ此法案ヲ御提出ニ
ナッタカ、······現在ノ狀況ヲ詳シク御承知ノ
上ニ於テ此法案ヲ御提案ニナッタカ、第二ハ
政府ハ我ガ勞働運動ノ歷史沿革ヲ詳シク御
承知ノ上デ此法案ヲ御提案ニナッタカ、第三
ハ政府ハ此法案ヲ提出スルニ當ッテ準備行
爲トシテ如何ナルコトヲ爲サレ、又如何ナ
ル成蹟ヲ旣ニ收メテ居ラレルカト云フ、此
三點ヲ御聽キシタイノデアリマス、御答辯
ヲ得ルニ御便利ダト考へマスルノデアリマ
スカラシテ、私ガ少イ記憾デアリマスケレ
ドモ、記憶シテ居ル所若クハ見テ居ル所ノ
モノヲ申上ゲテ御參考ニ供シマシテ、私ノ
眞意ヲ明カニシテ、ソレデ以テ御答辯ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス、先ヅ第一ノ質
閹カラシテ事實ヲ申述べテ御答辯ノ資ニ供
ツクイト思フノデアリマス、近來勞働爭議
ガ頻發イタシマスコトハ誠ニ產業ノ爲ニ遺
憾ニ堪ヘマセズ、殊ニ惡性ノ爭議ガ往々ニ
シテ現ハレマスノハ國家ノ爲ニ眞ニ憂慮ニ
堪ヘマセタノデアリマス、而シテ此爭議ノ
賓況ヲ見マスルト云フト、爭議ハ其工場內
ニ於ケル所ノ太多數ノ人ニ依ッテ起サレル
セリハ寧ロ少數ノ人ニ依テ起サレルコト
ガ多イ、中ニハ全ク工場外ノ人ニ依ッテ起サ
レル實例モアリマス、是ハマア極メテ例外
デアリマスガ、兎ニ角サウ云フコトモアル、
斯タ如キハ殆ド外國ニ於テハ想像モ付カヌ
コトデアラウト思フヲデアリマス、而シテ
爭議ガ一旦發生シタ後ニ於テハ、其工場內
ヲ職工ハ専心一意其爭議ニ付テ、勞働ク改
善ノ爲ニ努力スベキ筈デア。リマスニ拘ラ
ズ事實ハ之ニ反シテ所謂爭議團ト云フモ
ノガ出マシテ、爭議ハ大抵爭議團ノ手ニ引
渡サレテ爭議團ガ責任ヲ以テ資本家側ト
交涉スルト云フノガ實例デアルノデアリマ
ス、其爭議團ト申シマスモノハ工場內ノ
人モアリマスルケレドモ、工場外ノ人ガ來
マシテカラシテ、サウシテソレヲヤリマス、
或ハ工場外ノ人ニ依ッテ其爭議團ガ指導サレ
ルコトガ多イノデアリマス、斯謂勞働組合ノ
幹部其他ノ人ガヤッテ參リマシテ、爭議團ノ
指揮ヲ執ッテ居ルト云フノガ多ク見ル所ヲ實
例デアルノデアリマス、而シテ工場內ノ職
エハ手ヲ拱イテ、ドウ云フ結果ニナルカト云
フコトヲ待ッテ居ル譯デアフテ、唯指揮命令ノ
下ニ於テ成行ヲ待ッテ居ルト云フノガ多イ、
直接利害關係ガナイ所ヲ人ガ爭議ヲスルト
云フコトハ、是ハ原則デアリマセウカ、確
ニ是ハ變態ト考ヘナケレバサラヌト思フ、
其昔、爭議ノ日本ノ歷史ヲ見マスルト云フ
4、外部ノ人若クハ「インテリゲンチヤ」若
クハ勞働運動ノ指導者ナル者ガ勞働者ヲ指
導シ、勞働爭議ヲ起サシタタコトガアリマ
スガ、ソレノ遺物ダト云ヘバソレ迄デアリ
マスケレドモ、是ハ唯過渡時代ノ現象トシ
テ單純ニ見逃スコトガ出來ルデアリマセウ
カ、ドウデアリマセウカ、工場ニ付テ格別
緣故ガナイ人ガ爭議ヲスル際ニ於テ、工場
ニ對シテ深切ナ態度ヲ取ルコトガ出來ル
カト云フコトハ、是ハ甚ダ疑ハツイコトデ
アリマス、我ミハ屢〓外國ニ於ケル爭議ノ倒
ヲ聞イテ居ル、外國ノ爭議ト云フモノハ勞
働條件ノ改善若クハ同上ニ付テノ爭議ヲ起
〓產業本位ニ於テ起ス、從フテ爭議ヲスル
際ニ於テハ先ジ機械ノ錆止メヲシテ、ソ
レデ以テ機械ノ損失ガナイト云フヤウナ風
ニシテ、又ソレガ爲ニ將來自分達ヲ本義ヲ
失ハナイト云フヤウヲ風ナ精神ヲ持ッテ居
ル、爭議ハ爭議、所謂勞働條件ノ〓善ハ勞
働條件ノ改善ヲ以テスル、產業ハ何處マデ
モ保護シナケレバナラヌト云ヲ立場デヤッ
テ居ル例ヲ屢、聞イテ居リマス、然ルニ戰國
ノ爭議ヲ見マスト云フト、太抵ノ場合ニ於
テハ機械ニ對スル所ノ或種ノ破壞ガ行ハ
レテ居ル、機械ニ向ッテノ最善ヲ注意ヲ盡ス
ト云フ風ナコトハ殆ず聞カナイノデアル、
我ミガ若シ本當ニ、唯勞働條件ノ〓善ヲ目
的トシテ爭議ガ起サレルナラバ、決シテ今
日ノ如キ、現在ニ見ルガ如キ爭議ガ起ラサ
イダラウト思フノデアリマス、爭議中ニ於
テハ屢、示威運動ガ行ハレマス、外國ノ示威
運動ニ付キマシテハ·唯所謂行列ガアルト
カ何トカノ示威運動ガアルダケデアリマシ
テ、ソルニ付テハ殆ド何等ノ暴行モ伴ヒマ
セヌケレドモ、我國ノ示威運動ニ付テハ、
必ズヤ一種ノ暴行ガソレニ伴フテ起ルト云
フノハ、是ハ事實デアリマス、此暴行ヲ大
目ニ見テ居レバ、警察ハ萬歲ト禮讚サレル、
若シ之ヲ取締リヲシヤウトスルト、是ハ警
察ハ彈壓スルト云ッテ非難サレルノデアル、
先日來內務大臣ハ爭議ニ對シテハ十分ノ取
締ヲスルト仰セラレテ居リマスガ、十分ナ
取締リガ出來テ居レバ誠ニ結構デアリマ
ス、私共何ヲカ言ハムヤデアリマス、多分
御報告ヲ見テノ御答辯グラウト思フ、然ラ
ザレバ賓際爭議ヲ御存知ナイ人ノ言ダト思
フノデアリマス、是等ハ平穩ノ爭議ニ於テ
現ハレル現象デアリマス、惡性ノ爭議ニナ
リマスト云フト、決シテコンナ生マヤサシ
イモノデハアリマセヌ、其程度ニハ色ミ差
ハアリマセウケレドモ、惡性ノ爭議ニ於テ
ハ、必ズ大ナル損害ヲ與ヘ、往々治安ヲ紊
ルモノガアルト云フコトハ、是ハ內務大臣モヨ
ク御承知ノコトダラウト思フ、惡性ノ勞働
爭議ニ於キマシテ、常ニ見ル所ノ現象ハ暴
行、脅迫、革命歌ヲ歌フ、不穩文書ヲ散布
スルコトガ、是ガマア定石ト申シテモ差支
ヘナイト思フ、暴行脅迫ハ昨日モ藤原君ノ
御話ガアリマシタガ、勞働爭議ニ於ケル所
ノ戰術ノ一ツト思フノデアリマス、所謂赤
色「テロ」ト云フモノノ中ニ網羅サレルモノ
デアリマシテ、是ハ消極、積極ノ色ミナ方
法ニ依リマシテ、資本家ノ心膽ヲ寒カラシ
ムル、其鬪ヲ志、所謂鬪志ヲ碎クニ殺立ツ
モノデアリマシテ、此手段方法ハ近來益〓巧
妙ニ赴イテ來マシテ、唯資本家ノ人ニ對ス
ルノミサラズ、資本家リ妻子ニ對シテモリ
種々ナルコトヲ致シマシテ、其心理狀態ヲ
シテモウ堪ラナイ、是ヂヤモウ、此爭議ガ
ドウナラウト、斯ウナラウト一日モ早ク爭
議ヲ終了シタイモノダト云フヤウナ風ノ心
ヲ起サシメルヤウナ風ニ仕向ケテ參ッテ居
リマス、赤色「テロ」ヲ以テ心理狀態ヲ左樣ニ
導イテ居ルト云フコトハ是ハ現在ノ狀況
デアリマス、而シテ此赤色「テロ」ハ爭議ノ
際ニ於テ非常ヲ威力ヲ發揮シテ居ルニ枸ラ
ズ、動モスレバ世人ハ兎角之ヲ閑却シ、又
之ヲ知ラナイ振ヲシテ居ルヤウナ風ノコト
ガアル、或ハ思想ヲ以テ鬪フベキモノデア
ルトカ、勞働條件ハ當事者ノ自由任意ニ解
決サスベキモノデアルトカ云フ風ノコトヲ
言ッテハ唯〓念論ヲ以テ爭議ヲ觀察シテ居ル
ノデアリマスデ是ハ如何ニモ實際ヲ見ナ
イ所ノ議論デアリマシテ、是ガドウデアリ
マセウカ、實際ニ爭議ハドウ云フ風ノ働キ
ヲシテ、サウシテ其心理狀態ヲ動カサレテ、
サウシテドウ云フ風ノ苦痛ヲ感ジテ解決シ
ヤウトシテ居ルノデアルカト云フコトヲ、
全ク知ラチイ所ノ議論デアルノデアリマ
ス、思想ハ思想ヲ以テ對抗スルモノデハア
リマスルガ、一方ノ方ニ於テハ思想「プラ
ス」或暴力若クハ脅迫デアルノデアリマス、
ソレヲ以テ對抗シテ居ルト云フ事實ヲ忘レ
テハ、總テ勞働運動ナリ他ノ爭議ノ狀況ハ
本當ノコトハ分ラナイノデアリマス、ツレ
ヲ取締ッテ、サウシテ兩方同ジヤウナ風ナ水
平ニ置イテコソ、初メテ自由意思ヲ以テ任
意ニ解決スルコトガ出來ルノデアリマス、
一旦其コトヲ失ッテ居ル以上ト云フモノハ、
決シテ其自由任意ニヤルトハ申サルナイノ
デアリマス、此點ハ爭議ヲ論ズル際ニ於テ
必ズ考ヘテ置カナケレバナラタ問題デアル
ト思フノデアリマス、又總テ論戰ノ間ニ於
テ警察ノ不取締ナントカヲ皆サンガ論ジテ
居ルト云フノハ其點ニ重キヲ置イテ言ハ
レテ居ルノデアルト思フノデアリマス、内
務大臣モ勿論其聲ヲ御聞キニナルコトガ必
要ダト思ヒマス、資本家ノ方ニ於テ、若シ
或力ヲ借リタナラバ直グ暴力團ト非難サレ
ルダカラシテ何カ自衞ノ方法ヲ講ズルコ
トサヘモ困難ナ狀況デアル、警察ガ何カス
ルト云フト取締ルト彈壓ダト言ハレル
モノデスカラ、警察官モ成ルベク手心ヲ加
ヘルト云フ風ノ狀況モアルノデアリマス
是ガ屢、此論戰ノ跡ヲ見マシチ、連記錄ニ現
ハレテ居ル所ノ議論ノ起ル所以ダド思フノ
デアリマス、革命歌ノ何モノタルカト云フ
コトニ付キマシテハ是ハ言フ迄モアリマ
セヌ、少シク革命歌ノ內容ヲ知ッテ居リマス
者ハ、實ニソレヲ口ニスルコトサヘモ憚カ
リマス私ハ此際ドウ云フ風ニ革命歌ガ歌
ハレテ居ルカドウデアルカト云フコトハ
申シマセヌ、兎ニ角爭議ノ際ニ於テ、革命
歌ト云フモノガドウ云フ風ニ勞働者ヲ結束
セシメ勞働者ノ士氣ヲ鼓舞シ、サウシテ
或一種ノ作用ヲ起シテ居ルカト云フコトヲ
知レバソレデ澤山ダト思フノデアリマス、
此點ハ内務大臣ガ詳シク御承知ノコトダト
思ヒマスカラシテ私ハ繰返シマセヌ、不穩
文書ニ付テ申シマシタナラバ、是ハ尙更ノ
コトデアリマス、私共ハ不穩文書ノ內容ヲ
詳シク申上ゲルニ忍ビマセヌノデアリマス、
餘リニ我ミトシテハ恐懼ニ堪ヘナイコトガ
澤山書イテアルノデアリマスカラ、此壇上
ニ於テ私ガ此事ヲ申スコトハ出來マセヌノ
デアリマス、併シ如何ナル險惡ノ性質ノモ
ノデアルカ、ドンナコトガ書イテアルカト
云フコトハ、御特斷ニ任セマス、デ爭議ノ際
ニ於テハ其爭議ノ外ニ必ズソレニ附隨シテ、
私ガロニスル能ハザル所ノ文句ヲ書イタ所
ノ宣傳「ビラ」不穩「ビラ」ガ盛ンニ頒布サレ
テ居ルノデアリマス、昨日藤原君ノ質問ニ對シ
テ内務大臣ハサウ云フモノハ皆俺ノ方デ以テ
ヨク取締ヲテ居ルト云フ御話ガアリマシタ、内
務大臣ノ取締ト云フモノハドウ云フ意味ノ
御取締デアルカ、一日配布サレタモノヲ、
散スサレタモノヲ、御集メニナッタリ、散ラ
サレタ後ニ於テ、ソレデ以テ取締ヲサレタ
コトデモアリマスマイ、不穩文書ノ散布前
ニ於テドノ位官憲ノ手ニ於テソレガ差揮ヘ
ラレタノデアルカ、撒カレタ後カラアレヲ
拾ッタカラト云ッテ、是ガ取締ト云フコトハ
決シテ申サレナイノデアリマス、尙ホ一歩
進メテ申シマスレバ我ミハサウ云フ不穩ビ
ラガ散布セラレナイ前ニ於テ、十分ニソレ
ガ差押へラレルコトヲ希望ウマス、其以上
ニサウ云フヤウナモノヲ散ラスト云フヤウ
ナ風ノ思想カ超ラナイヤウニ、又ソレニ書
イテ、文字ニ表ハシテ居ルヤウナ風ノ思想
ガナイヤウニト云フコトヲ、本當ニ取締ッテ
貰ヒタイト思ヒマス、是ハ内務大臣ダケノ
力デハ無論イキマセヌ、國家總動員ノカヲ
以テ、ソレ位ノ覺悟ヲ以テヤラナケレバ此
コトハ出來マセヌデアリマスルケレドモ、
其ヤウナ風ニ心ヲ用ヰテ貰ヒタイト思フ、
書イタモノヲソレヲ押へタカラト云ッテ是
デ取締ガ出來タト云フ風ノコトデアッタナ
ラバ餘リニ人ヲ馬鹿ニシテ居ル所ノ御話
ダト思フ、不穩文書ノ配布ナリ若タハ革命
歌ナリ、其他色ミノコトニ付キマシテ中ミ
イヤナコトガ澤山アリマス、併シ是ハ官憲
モ餘リロニシテ居ラナイ、私共モ之ヲ口ニ
スルコトヲ憚リマス、始終是ハ沈默ヲ守ッテ
居リマシタ、是ハ言フヨリハ言ハナイ方ガ
利益ダト考ヘテ居リマス、國家ノ爲ニ利益
ト考ヘテ居リマスモノデアリマスカラシ
テ、從來ハ沈默シテ申シマセヌデアリマシ
"、併ナガラ今日ハ勞働立法ヲ議スル時デ
アルノデアリマス、政層ノ原案ニ依リマス
ルト云フト、勞働組合ヲ保護シ、此勞働運
動ヲ是認シテ之ヲ保護シヤウトスル所ノ問
題デアルノデアリマス、サウ云フ時デアリ
マスルカラシテ、此現在ノ勞働運動ガドウ
云フモノデアルカト云フコトノ眞相ヲ鳴カ
ニシテ、サウシテ居ラナカックナラバ、多勢
ノ人ガ判斷ヲ謨ル虞レガアルト思フノデア
リマス、唯暗黑面ヲソレヲ隱シテシマッテ
居シテ唯斯ウ云フ風デアル、單純ナル勞働運
動ノヤウナ風ニ裝ウテ、サウシテ何カ言ッチ
居ルナラバ、人ヲシテ勞働爭議ノ眞相ヲ誤ク
テ、同時ニ此法案ヲ議スル時ニアッテ、肝腎
ノ判斷ヲ誤テシムル虞レガアルモノデアリ
マスカラシテ、私ハ已ムヲ得ズ此席ニ於テ
此事ヲ言ハナケレバナラヌ羽目ニ迫ラレタ
ノデアリマス、誠ニ已ムヲ得ザルコトデア
ルノデアリマス、尙ホ甚シキニ至リマシテ
ハ現今ノ爭議ノ惡性ナルモノハ革命ノ豫
行演習ト稱シテ、サウシテ殺傷······人ヲ殺
シタリ傷ケタリ致シマストカ、放火モ致ツ
やく、掠奪モ致シマス、機械ノ破壞ハ勿論
ノコト、サウ云フヤウナ風ノコト迄致シマ
スルシ、更ニ錢砲ノ彈丸ガ飛ブト云フヤウ
ナ風ノコトモアルノデアリマス或ハ又街
路ニアル所ノ電燈ヲ壞シテ市街ヲ暗黑トシ
テ居ル、サウシテ襲擊ヲ試ミルノデアリマ
ス、市街戰ト稱シテソレヲ敢テスルヤウナ
風ノ狀況マデモアルノデアリマス、最モ極
端ト稱セラレテ居ル所ノ濱松ノ業器會社ノ
爭議ニ付テ見マスルト云フト斯ノ如キ狀
況ガ續イタコトハ數十日デアリマス、市民
ハ戰々兢々トシテ其増ニ安ンゼズ、サシモ
殷賑ヲ極メタ所ノ市ハ一時ハ全ク死ノ都ノ
如ク相成ッタノデアリマス、面モ此爭議ニハ
露西亞大使館ノ高官ガ之ニ參與シタト傳ヘ
ラレテ居ルノデアリマス、相當ノ人ノ自白
ニモソレガ載タテ居ルト噂サレテ居ル位デ
アリマス、如何ニ我國ノ勞働爭議ト云フモ
ノガ、ドノ位ノ程度マデ及ンデ居ルカト云
フコトヲ見マスルト云フト、我ミハ唯之ヲ
單純ナル爭議トシテ、ソレデ以テ簡單ニ勞
働爭議ナドト簡單ニ取扱フ譯ニ行キマセヌ
ノデアリマス、従ッテ爭議ハ變ジテ騷擾罪ト
ナリ、或ハ傷害罪トナリ、殺人罪トナッテ刑
法ニ觸レルコトモ屢、アルノデアリマス、現
ニ昭和二年以來第一審ノ判決ヲ經クモノデ
モ騒擾罪ガ十件、此人間ガ二百六十五人、
殺人罪ガ一件、斯ウ云フ風ナコトガ現ハレ
テ居ルノデアリマス、勞働爭議ニ於テ、斯
ウ云フヤウナ風ノ殺人罪ト云フ風ノモノマ
デ出テ來ルト云フコトハ是ハ他國ニ於チ
殆ド類例ヲ見テイコトダラウト思フノデア
リマス、我々ハ之ニ對シテ實ニ憂慮ニ堪ヘ
ナイ、又國家ノ爲ニ眞ニ憂慮ニ堪ヘナイモ
ノガアルト思フノデアリマス、產業上カラ
ハ勿論ノコトデアリマス、斯ノ如キコトハ
何カラ發スルカ、衆議院ノ速記錄、又昨日
藤原君ニ對スル所ノ内務大臣ノ御答辯ヲ承
ハリマスト云フト、內務大臣ハ資本家ニ不
都合ノ點ガアルカラシテ不必要ノ抗爭ヲ起
スンダ、斯ウ云フ風ノ御答辯ガアリマシタ、
勞働爭議ノ原因ハサウ云フヤウナ風ニ御話
ニナッタ、內務大臣ノ御話ハ確ニ一面ノ事實ダ
ト思フ、我〓モ今日資本家ノ態度ニ對シテハ
甚ダ不滿ノ點ガ少クナク、資本家ノ横暴ヲ攻
擊スルコトニ付テハ決シテ私共人後ニ落チ
ルモノデハアリマセヌ、彼等ノ罪惡ニ付テ
ハ許スベカラザルモノノアルコトモ知ッテ
居ルノデアリマス、就中資本「ブローカー」
ト云フモノノ罪惡ハ勞働「ブローカー」ト
相竝ンデ、決シテ是ハ容スベキモノデナ
イト云フコトモ思ヒマス、デ資本家ニ對シ
テハ十分ナ反省ヲ促スト云フコトハ是ハ
言フ迄モナイ話デアルノデアリマス、ケレ
ドモ唯簡單ニ、內務大臣ノ如ク、現今ノ爭
議ハ資本家ノ態度ノ爲ニ不必要ナ抗爭ヲ勞
働者ニ起サセルノダト云フノデアリマセウ
カ、ソレガ唯一ノ原因デアリマセウカ、ソ
レガ主ナル原因デアリマセウカ、私ハ甚ダ
疑フ、私ハ敢テ言フ、勞働組合ノ綱領ニシ
テ現在ノ如クアル以上ハ、又勞働運動ノ「イ
デイオロギー」ガ階級鬪爭ノ上ニアル以上
ハ、而モ組織團結ノ力ニ依ッテ資本家ヲ克服
セシメナケレバナラナイト云フコトヲ書イ
テアル以上ハ、此爭議ト云フモノハ、全然
跡ヲ斷ツモノデハアリマセヌ、今日ノ勞働組
合ノ綱領ヲ見レバ、其文字ヤ若クハ表現ノ
方法ニ付テハ多少ノ程度ノ差異ハアリマス
ケレドモ、何レモ皆「マルクス」主義ニ則ッ
テ、階級闘爭ヲ基礎觀念トシテ團結ノ威力
ヲ極度ニ發揮セシムルコトヲ標榜シナイモ
ノハナイノデアリマス、是ガナイ組合デアッ
タナラバ御用組合トカ何トカ冷笑サレテ
居ルノデアリマシテ、大抵ノ組合ニ於テハ
必ズ其事ヲ揭ゲテ居ル、此階級鬪爭ノ觀念
ニ從ヘバ、此「イデイオロギー」ニ從ッタナラ
バ勞資·勞働ト資本トハ必然的ニ闘爭
スベキモノデアル、協調スベキモノデナイ
ト云フコトヲ申シテ居リマス、資本家ハ勞
働者ヲ搾取シテソレデ其富ヲ成シタモノ
デ、勞働家ハ資本家カラシテ其富ヲ奪還ス
ル、奪返ス所ノ權利ガアルノダ、現今ノ社
會ハ、資本家「ブルジョア」ニ依ッテ、「ブルジ
ヨア」ノ爲ニ「ブルジョア」ノ便利ノ爲ニ造
ラレテ居〓テ「ブルジョア」ニ支配セラレテ
居ル所ノ社會デアル、我〓「プロ」ノ人間トハ
相容レナイ所ノ社會デアルノダカラシテ、
我〓ハ團結ノ力ニ依ッテ、之ヲ打破シナケレ
バナラナイ、サウシテ「プロ」ノ獨裁政治ト
シナケレバナラナイト云フノガ、今ノ勞働
運動ニ於ケル所ノ指導精神ノ主ナルモノデ
アルノデアリマス、此主義ノ下ニ於テ此指
導精神ニ依ッテ指導サレテ居ル以上ハ、爭議
ナリ總テノ運動ト云フモノガ、是ガ平穩ニ
行ハルベキモノト思ハレマスルカドウカ、
此社會ハ不合理デアル、呪フベキモノデ不
都合ノモノデアルト云フコトヲ絕叫シテ
居ッテ、サウシテ一面ニ於テハ資本家ノ罪惡
ヲ唱ヘテ居ル、將來ハ自分達ノ天下ニスル
ト云フコトデ多勢ヲ鼓吹シテ居ル、勞働家
ノ天下ニナルト云フ此一言ホド、勞働者ノ
心ヲ動カスモノガアリマセウカ、勞働運動
ニ携ハル者ガ肉ガ躍リ血ガ湧キ面白クテ堪
ラヌノハ勞働者ノ天下ニナルゾト、「プ
ロ」ノ天下ニナルゾト、鼓吹サレテ、革命歌
ニ依ッテ鼓吹サレル、色ミナコトニ依ッテ煽
動サレルカラ、ソコニ熱ガ加ハッテ來ルノハ
言フ迄モアリマセヌ、富ヲ奪ヒ還シテシマ
ヘト云フコトホド、勞働者ノ敵〓心ヲ奮起
サセルモノガアリマセウカ、而モ是ガチヤ
ント理論ヲ附ケラレテ居〓テ、今ノ資本家ノ
富ハ搾取シタモノデアル、ソレダカラオ前
達ハソレヲ奪ヒ還シテモ差支ナイゾト、斯
ウ云フ風ノ理論ヲ附ケラレテヤル以上ハ、
ソコニ一種ノ信念ヲ伴フテ、勞働者ガ或種ノ
活動ヲスルト云フコトハ、是ハ言フ迄モナ
イ話デアリマス、此標語「スローガン」ガ改
マラナイ以上ハ、勞働運動ノ穩健ヲ望ムノ
ハ望ム方ガ誤リデハナイデセウカ、勞働者
ハ此「スローガン」ニ依ッテ、兎ニ角所謂「マル
クス」理論ニ依リマシテ、階級鬪爭ノ主義ニ
依リマシテ、一種ノ理論ガアルノデアリマ
ス、卽チ此勞働運動ニハ一種ノ信念ガアリ
論理ガアリ、ソコニ熱情ガアルノデアリマ
ス、若シ勞働運動ガ何等ノ信念ガナク指導
精神ガナカッタナラバ、一時的ノ發作的ノ暴
動ニ止マッテシマヒマスルケレドモ、發作的
ノ一時限リノモノデナイト云フコトハソ
コニ强烈ナル或種ノ理論信念ガアルカラ
起ッテ來ルノデアリマス、而モ斯樣ナルコト
ハ當然デアルノダト云フコトヲ考ヘルカ
ラ、絕エズ行ッテ居ルト云フコトハ、是ハ見
逃ガスベカザラル現象デアルノデアリマ
ス、內務大臣ガ眞ニ今日ノ惡性ノ勞働運動
ヲ憂フルナラバドウ云フ風ニシテカラシ
テ、此間違ッタ所ノ指導精神ヲ、此基礎觀念
ヲ轉囘スルカト云フコトニ付テ、御努力ニナ
ルベキノガ當リ前ダト思フ、ソレヲチットモ
捨テテ顧ミズシテ、唯法案ヲ出シタ所ガ百ノ
法案、千ノ法案何ノ役ニ立ツモノガアリマセ
ウカ、勞働運動ヲ穩健ニ導カウト云フ考デアッ
タナラバ、先ヅ其根本ノ所ニ付テソレ〓〓ノ
御考ヲ廻ラサレナケレバ相成ラナイダラウ
ト思ヒマス、是ハ議論ニ亙リマシテ甚ダ失
禮デアリマスケレドモ、兎ニ角事實ヲ申上
ゲルト遂ニ言ハザルヲ得ナクナッテ來ル、勞
働法案ガ提出サレテ以來二月ニ亙ル論戰ノ
中ニ於テ、內務大臣ノ御口カラシテ一言モ
此事ニ付テ御話ガナカッタコトハ、我ミハ深
ク遺憾トスル點デアルノデアリマス、內務
大臣ノ御經綸ヲ伺フコトガ出來ナカッタノ
ハ甚ダ私トシテハ遺憾千萬デアリマス、尙
ホ、又此「イデイオロギイ」此基礎觀念ノ下ニ
於テ、「プロレット·カルチユア」、所謂「プロ
カル」ト云フモノヲ施シテ居ル、其內容ハ此
處ニ申上ゲマセヌガ如何ナルモノデアル
カ、所謂此綱領ノ下ニ於テ戰術戰略ヲ〓ヘ
ルモノデアリマス、而モ是ハ革命式ニ依ッテ
〓ヘル所ノ戰略戰術デアルノデアリマス、
或信念ヲ持ッテ居ル人間ガソレヲ實行スル
方法ヲ〓ハッテ居ッテ、其戰術ニ依ッテ今日
勞働爭議ヲ營ミツヽアルノデアリマス、デ
私ハ是レ以上ノコトハ餘リ申シタクアリマ
セヌ、内務大臣ガ御承知ノモノト思ヒマス
カラシテ、篤ト內務大臣ノ御考慮ヲ促スト
云フ程度ニ止メテ置キマシテ、治安ニ關係
アルト思ヒマスカラ餘リ此處ニ申上ゲマ
セヌ、デ玆ニ於テカ第一問ハ、卽チ內務大
臣ハ現在ノ爭議ノ狀態ヲ能ク御承知ノ上
デ、此法案ヲ御提出ニナッタカト云フコトヲ
御聞キスル爲ニ申上ゲタモノデアルノデア
リマス、次ギ第二問ニ參リマス、卽チ內務
大臣ハ、政府ハ我國ノ勞働運動ノ歷史沿革
ヲ能ク御承知ノ上デ此提案ヲ爲サッタカト
云フコトデアルノデアリマス、我國ノ勞働
運動ハ大正七八年カラ起,タト先ヅ申上ゲ
テ大シタ誤リデナイト思ヒマス、當時最モ
勞働者ノ心ヲ摑ミ、勞働者ノ尊敬ヲ博シタ
モノハ社會主義者デアリマス、玆ニ社會主
義者ト申シマスルト云フト、無政府主義者
モ共產主義者モ悉ク込メマシテ申シマス、
嚴格ニ申シマスレバソレヲ込メテ言ヘバ誤
リデアリマスケレドモ、併シ社會通念ハ其
力ガ分リ易イト思ヒマスカラ、假リニ之ヲ
社會主義者ト〓括シテ申シマスカラシテ、
左樣ニ御聽取ヲ願ヒタイト思ヒマス、蓋シ
世界大戰ノ時及ビ戰後ニ於ケル所ノ外國ノ
事情、就中外國ノ勞働者及ビ其庶民階級ガ
非常ニ活躍全盛ヲ極メタコトヲ、社會主義
者ガ報道イタシマシテ、大衆ノ眼ヲ開カ
セ、其知識ヲ豐ニセントシタノデアリマス
カラ、玆ニ於テカ社會主義者ハ啓蒙運動ニ
付テハ大成功ヲ博シタ、デ啓蒙運動ニ成功
シタ主義者ハ、勞働問題ニ力ヲ集中イタシ
マシテ、サウシテ此資本家ノ橫暴ヲ鳴ラ
シ搾取ヲ叫ンデ勞働條件ノ改善ヲ唱ヘ、
勞働運動ヲ起シタノデアリマス、勞働運動
ヲ大イニ鼓吹シタノデアリマス、勞働者ハ
心カラシテ感謝ノ念ヲ捧ゲ、救世主ノ如ク
之ヲ渴仰シ、甘ンジテ其說ニ服シタノデアッ
タノデアリマス、故ニ當時ノ狀況ヲ見マス
ト勞働者ノ集會ガアレバ必ズ其處ニ社會
主義者ノ姿ガ現ハレル、會議ヲ開ケバ必ズ
其處ニ社會主義者ガアル、勞働組合ノ大會
ノ際ニハ傍聽席カラ社會主義者ガソレヲ指
導スル、斯ウ云フ風ナ狀況デアッタノデアリ
や 、此間ニ於テ斯ノ如ク社會主義者ガ勞
働運動ヲ指導シタ際ニ於テ、何ヲ勞働者ニ
〓ヘタノデアリマセウ、壺中ノ消息ハ諸君
ノ御判斷ニ委セマス唯一言御話シナケレ
バナラヌコトハオ前達ノ將來「プロ」ノ天
下ニナルソ、「プロ」ノ獨裁政治ヲスルヤウナ
コトニナルソト云フコトヲ固ク〓ヘ込ンダ
コトハ是ハ特ニ注意シナケレバナラヌト
思フノデアリマス、萬國ノ勞働者團結セヨ、
勞働者團結セヨ、團結ノ力ヲ以テスレバ社
會鬪爭ニ於テ、階級闘爭ニ於テ小數ナル資
本家ヲ倒スコトガ出來ルノダ、而シテ「プロ」
ノ天下ニナル、實現スルコトガ出來ルノダ
ト云フコトヲ深ク〓へ込ンダノデアリマ
ス、從來勞働者ト申シマスレバ兎角人カラ
シテ先ヅ卑メラレテ居,タモノデアル、又自
ラモ卑下シテ居ノタモノデアル、此勞働者ニ
向ッテ、今ニオ前達ノ天下ニナルゾ、オ前達
ガ努力スレバナルゾト云フ位勞働者ヲ動カ
スト云フモノハ何處ニアリマセウカ、勞働
者ガ敢然トシテ起ッテ、社會主義者ノ下ニ
走ッタト云フノハ私共少シモ怪ムニ足ラナ
イト思フ、初メテ大理想ガアル、別天地ガ
開ケタノデアリマス、希望ニ滿チタ所ノ世
界ガ現レタヤウニ感ジタノデスカラ、ソコ
ニ出デタト云フコトハ何ンノ不思議モナ
イコトデアルト思フノデアリマス、同樣ナ
筆法ハ水平社問題ニ付テモサウデアリマ
ス、農民運動ニ付テモサウデアルノデアリ
マス、兎ニ角、彼等ニ非常ナ刺戟ヲ與ヘ、
嘗テ聞カザル所ノ、嘗テ見ザル所ノ、夢一
モ想ハナカッタ所ノ或ル力ヲ與ヘタモノデ
アリマスカラ、玆ニ於テカ、非常ナ勢ヲ以
テ此運動ガ起ッタト云フコトハ、是ハ當然デ
アルノデアリマシテ、何等怪シムニ足リマ
セヌノデアリマス、當時勞働者ヲ指導イタ
シマシタリ若クハ援助シタ者ハ澤山アリマ
シタケレドモ、社會主義者以外ニアリマシ
タケレドモ、是等ノ人ト云フモノハ到底社
會主義者ノ與フル感化力トハ比較ニハナリ
マセヌデシタ、普通ノ人ガ當リ前ノコトヲ
言ッテモ、斯ノ如キ全ク別個ノ觀念ヲ以テ本
當ニ血ヲ沸カスヤウナ言葉ヲ以テ指導スル
者トハ、比較ニナラヌノハ當リ前デアリマ
ス、玆ニ於テカ、勞働者ハ勞働階級、廣ク
勞働階級ト申シマス、農民運動モ水平運動
モ込メテ申シテモ差支ナイト思ヒマス、此
指導ノ下ニ服シテ、將來勞働運動ハ「エー」
カ「ビー」カト云フコトガ盛ニ行ハレタ、「エ
ー「ト申シマスノハ「アナーキスト」、「ビー」
ト申シマスノハ「ポルシエビーキ」、兎ニ角、
無政府主義者ガ勞働運動ヲ指導スルダラウ
カ、共產主義者ガ勞働運動ヲ指導スルダラ
ウカト云フコトガ、寄レバ觸レバ問題デ、
其結果ハ遂ニ「ボルシエビーキ」ノ勝利ニ歸
シタト云フコトハ御承知ノ通リ、而シテ勞
働運動其他ノ組合ヲ造ル際ニ於キマシテ
モ、是ハ「ソヴィエット」式ニ依ッテ居リマス
ルシ、行動スル際ニ於テモ細胞組織、戰術ニ
於キマシテモ······「プロ·カル」ニ於テハ革命
戰術、此アレヲ以テ勞働運動ガ事實行ハレ
タノデアリマス、今日ノ爭議ニ於テモ尙且
ツ其遺風ハ殘"テ居ルノデアリマス、此沿革
ヲ知ラナイデ、ソレデ以テ今日ノ勞働運動
ヲ見テ居ッタナラバ、知ラナカッタナラバ、
問題ノ核心ニハ觸レマセヌノデアリマス、
而シテ此共產系モ無政府系モ共ニ外國ト密
接ナ關係ガアッタト云フコトハ申ス迄モア
リマセヌ、如何ナル程度ニ於テ密接ノ關係
ヲ持ノテ居ッタカ、ドンナ交涉ガアッタカト云
フコトハ、餘リ機微ニ涉リマスルカラシテ
避ケマス、又何カ申シマスルト、或ハ想像
ヲ混ヘテ居ルト云フ風ナ疑ガアリマスル
カラ、其點モ避ケマス、是ハ別ニ諸君ノ
御判斷ニ委セマス、併ナガラ尙ホ一言注
意スルノハ今日ニ於キマシテモ、尙且ツ
「ソヴィエット」露西亞ヲ守レ、ト言フ者ガ餘
リ少クナイ、此事ダケヲ特ニ諸君ノ御耳
ニ達シテ置キタイト思フノデアリマス、
共產系ガ勞働運動ノ指導權ヲ得タ當時
ニ於テ勞働界ニドウ云フ現象ガ起ッタカ、
勞働者ノ「スローガン」トシテ、勞働運動ニ於
テ行ハレタコトニ付キマシテハ、西比利亞
カラ卽時撤兵シロ、露西亞ヲ卽時承認シロ、
日露通商ヲ開ケト云フコトヲ言ッタノデア
リマス、殆ド勞働運動、勞働爭議ニ何等關
係ガナイト思ハレル所ノコトト云フモノ
ガ、是ガ堂々ト論議サレテ、此旗ヲ以テ一
種ノ勞働運動ヲ起サレタト云フコトハ是
ハ逸スベカラザル所ノ現象ト思フノデアリ
マス、又、上海ニ於キマシテ紡績騒動ガ起ル
ト云フト、外務省ニ向。シテ、日本ノ資本家ヲ
援助スルノ政策ヲ執ルナト云フコトヲ戒〓
シタヤウナ次第デアルノデアリマス、ドウ
云フ風ノ海外トノ聯絡ヲ持チ、如何ナル思
想ヲ以テ此勞働運動ガヤラレタカ、之ヲ以
テ單純ニ勞働條件ノ改善デアルトカ何ント
カ言フ者ガアリマシタナラバ、非常ナドウ
モ見當違ヒト思フ、「メーデー」ノ標語ヲ露
西亞ノ承認、卽時承認若クハ西比利亞撒兵
ニ置カウトシタ位デモアッタノデアリマス、
又露西亞ハ我ガ勞働組合ヲ誘フ餘リ、西比
利亞ノ利權ヲ供給スルカラト云フコトヲ以
テシテ居ルノデアル、是ガ爲ニ組合員ハ支
那ニ赴イテ熱心ニ露西亞ノ大官ト交涉ヲ開
イタト云フヤウナ風ノ事實モアルノデアリ
マヽ、運動資金ガ露西亞カラ來タト云フ所
ノ報道ハ頻々トシテ傳へラレタノデアリマ
ス、或ハ露西亞カラシテ色ミナ······勞働者
ニ、震災ニ同情ヲ持ッテ來タト云フ船ガ來タ
コトモアッタヤウニ思ハレル、露西亞ハ大學
ヲ開イテ我國ノ勞働者ノ訓練ヲシタ、兎ニ
モ角ニモ、外國トノ關係ニ於テハ隨分色ミ
ナ交涉ガアッタ、我國ノ勞働運動ハ極メテ複
雜ナル所ノ內容ヲ以テ行ハレタト云フコト
ヲ申上ゲレバ、ソレデ盡キルダラウト思ヒ
マく、是以上ノ詳シイコトハ餘リ煩雜ニナ
リマスカラ申上ゲマセヌ、而シテ勞働運動
ハ段々深刻ニナリマシテ、サウシテ「プロ」
ノ獨裁デアルトカ、若クハ革命ノ豫行演習
デアルトカ云フヤウナコトガ、屢〓爭議ノ
際ニ於テ繰返サレタ言葉デアリマス、或ハ
是ハ常套語トシテ繰返サレタノデアリマ
ス此際ニ於テハ機械ノ破壞トカ、工場ノ
破壞トカ云フコトハ勿論ノコト、隨分ヒド
イ所ノコトマデ及ンデ居リマシテ、其極ハ、
先程申上ゲマシタ如ク、實際市街戰マデ演
ジタヤウナ風ノ狀況デアリマス、不穩文書
ニ書イテ居ルコトノ如キハ隨分ヒドイモノ
ガ段々增シテ來タ譯デアリマス、斯カル間
ニアノ共產黨ノ檢擧事件ガアリマシテ、
第一次、若クハ第二次ノ三一五事件、第三
次ノ四一六事件ト云フヤウナ風ニ、漸次起
訴サレタノデアリマス、其起訴サレタ所ノ
數ヲ見マスト、一千四百名ヲ越エテ居リマ
ス、其中デ組合員ノ檢擧セラレタ者ガ、三一
五事件ニ於テハ二百八名、四一六事件ニ於
テハ二百二名、而シテ其重立ッタ者ガ組合ノ
指導者デアッタト云フ事實ガアルノデアリ
W 2/3我ミハ此勞働運動ヲ點檢シツツ、少
クトモ此樣ナ風ノ事件ヲ見ツツ、色ミナ勞
働運動ニ對シテハ、國家トシテ眞ニ憂慮ヲ
懷カザルヲ得ナクナッタノデアリマス、之ヲ
考ヘナイデ以テ、唯勞働條件ハドウデアル
トカ、斯ウデアルトカ言フノハ、少シモ今
日ノ日本ノ勞働運動ノ眞相ニ觸レナイ者ノ
言ダト思フノデアリマス、我とハ勞働組合
ガ全部惡イトハ決シテ申シマセヌ、況ヤ勞
働組合員ノ大部分ガ惡イトハ申シマセヌ、
悉ク陛下ノ赤子、我ミノ同胞デアルノデア
リマシテ、忠實國ヲ愛スル念ニ於テハ誰モ
彼モ同ジダト思フノデアリマスガ、一人誤ッ
タル所ノ指導精神ヲ以テ、誤フタル所ノ精神
ヲ以テ指導シタル所ノ者ガ、勞働組合ニ働
イテ居ッタ、ソレニ依ッテ勞働組合ノ人ガ惑
ハサレテ居ッタト云フコトハ、遺憾ナガラ認
メナケレバナラヌノデアリマス、デ我とガ
政府ニ望ム所ノモノト云フモノハ、ドウカ
シテ此毒素ヲ除クヤウナ風ニヤッテ貰ヒタ
イト云フ一念デアリマス、毒カラ離レタナ
ラバ人ハ健全ニナルノデアリマス、毒素カ
ラシテ組合ガ切離サレタナラバ組合ハ健全
ニナルノデアリマス、之ヲドウスルカト云
フコトヲ聽キタイノデアリマス、以上長ミ
シク沿革ヲ申シマシタノハ、兎ニ角、最初
成立ノ際ニ於テ、若クハ勞働運動ヲ起ス當
時ニ於キマシテ、或人ノ毒素ガ勞働運動ニ
這入ッテ居ッタモノデアリマスカラ、ソレガ
爲ニ勞働運動ガ今日ノヤウナ險惡ノ狀態ヲ
呈シテ居ルト云フコトヲ申上ゲマシテ、サ
ウシテ之ヲ除カナカッタナラバ、健全ナル勞
働運動ハ出來ナイモノデアル、勞働運動ヲ
軌道ニ載セルコトガ出來ナイモノダト思フ
ノデアリマスカラ、此趣意ヲ明カニスル爲
二、此狀況ヲ申上ゲテ御參考ニ供シタ次第
デアリマス、卽チ內務大臣、政府ハ日本ノ
勞働運動ノ過去、沿革ヲ能ク御承知ノ上デ
以テ、此法案ヲ出サレタカト云フコトガ第
二問ノ趣意デアリマス、次ニ第三間ニ移リ
マス卽チ內務大臣ハ此法案ヲ施行スル前
ニ於テ準備行爲トシテ何ヲ爲サレタカ、又
如何ナル、ソレニ對シテ成蹟ヲ收メラレテ
居ッタカト云フコトヲ聽キタイ、衆議院ノ速
記錄ヲ拜見イタシマシテ、又昨日ノ論戰ヲ
拜聽イタシマシタケレドモ、內務大臣ハ法
案ガ出タナラバ、其時ニ現今ノ勞働組合ナ
リ、勞働運動ヲ何トカシヤウト云フ御話ノ
ヤウニ私ハ聽取シタノデアリマス、此法案
ノ提出前ニ於テ斯ウ云フヤウニスッカリ掃
除シタ、斯ウ云フ準備ガアルト云フヤウナ
コトヲ承ハラントシテ居リマシタ所ガ、ド
ウモサウ云フヤウニ私ハ聽取レナカッタノ
デアリマス、是ハ私ノ聽取リ方ガ惡カッタカ
ドウカ分リマセヌガ、サウ云フヤウニ思ハ
レマシタ、御客樣ガ來テカラ後ニ座敷ノ掃除
ヲシヤウ庭掃除ヲシヤウト云フ意味ノ外ニ
ハドウモ受取レナカッタ、ソレカラ又法案ガ
出タナラバ、水ヲ治メルヤウナ風デアッテ、
水ヲ流スコトガ出來ルンダ、斯ウ云フヤウナ
御話ガアリマシタケレドモ、其水タルヤ何處
カラ流レテ來タモノデアルカ、水量ハドノ
位デアルカ、水質ハドウデアルカ、現ニ害
毒ハドノ位流レツヽアルカト云フコトニ付
テ、之ヲスッカリ流シ込ム方法ニ付テハ少シ
モ御話ガナカッタ、唯漫然言フノハ、法案ガ
出レバ萬事解決スル、勞働組合モ軌道ニ乘
ル、險惡ナ爭議ガ直ルンダト云フコトヨリ
外ニハ承ハラチカッタノデアリマス、是デハ
私共ハ實ニ甚ダ心細イ、不安ニ堪ヘナイ、
何カ內務大臣トシテ本當ノ經綸ヲ知リタイ
モノデアリマス、現在ノ勞働爭議ハドノ位
險惡ナモノデアルカ、屢論議サレル如ク
我ガ國體ニモ關係スルモノデアル、國家ノ
基礎ヲ危クスルモノデアルカ、產業ヲ破壞
スルモノデアルカ、國家ノ基礎ヲ危クスル
モノデアルカ、爭議ヲドウ治メルカト云フ
コトニ付テ何ニモ考ヘナクテ、唯法案サヘ
出セバ宜イ、一片ノ法案サヘ出シタナラバ
ソレデ宜シイト云フコトデアッタチラバ、我
我ハ極メテ不安デアルノデアリマス、ドウ
ゾドウ云フヤウニ今迄シテ居ッタカ、若クハ
ソレニ依ッテ斯ウ云フ成蹟ガアッタ、將來ハ
ゾレガドウナルカト云フヤウナコトヲ能ク
御聽キシタイト思フノデアリマス、若シ此
儘ニシテ、附則ニアルヤウナ狀況ヲ以テシ
マシタナラバ、ドウデアルカト申シマシタ
ナラバ、益、團結ノ力ヲ利用シマシテ、サウ
シテ其力ニ毒素ヲ益〓鼓吹シテ、大イニ國ヲ
毒スルヤウナ運動ガ益〓盛ニナラヌトモ限リ
マセヌノデアリマス、私玆ニ質問イタシマ
スコトニ付テハ深ク心ニ期スル所ガアッテ
致スノデアリマス、內務大臣モ眞ニ心カラ
出ル所ノ責任アル御答辯ヲ承ハリタイモノ
デアリマス
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=7
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008・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 御答へ致シマス
ガ、赤池君ノ御尋ノ此立法ヲ爲ズニ付テハ
第一勞働運動ノ現在ノ狀況ヲ精シク承知シ
テ居ルカト云フコトガ一ツ、第二ガ勞働運
動ノ歷史沿革ヲ承知シテ居ルカ、第三ガ準
備行爲トシテ如何ナルコトヲ爲シタカト云
フコトデアリマシタガ、而シテ勞働運動ノ
現在ノ狀況ヲ御話ニナリマシテ精シク御述
ベニナリマシタ、謹ンデ御話ヲ拜聽シテ居
リマシタガ、赤池君ノ御話ハ此日本ノ政黨
ノ中ノ無產政黨ト申シマスカ、共產主義者
ト申シマスカ、サウ云フ方面ノ無政府主義、
共產運動ノコトト、此勞働組合トヲ混同シ
テ絕エズ御話ニナッタト考ヘマス、或ル所ハ
御話ノ中ニ混同シタ所ガアリマス、併ナガ
ラ私ハイツモ申シテ居リマスガ、我國ニ行
ハルヽ「ストライキ」ハ悉ク經濟爭議デアル
ト申シマセヌ、サリナガラ其「ストライキ」
ニ加盟スル人ガ悉ク無產者········產產主義
者、無政府主義者カ、サウデハナイノデア
リマス、總テ御話ハ一貫イタシテ其點ガ混
合サレテ居リマス、之ヲ區別シナケレバナ
ラヌト考ヘテ居リマス、御話ノ色ミナ弊害
ガアッタコトハ、御列擧ニナリマシタ、大體
ニ於テ私御話ヲ否定ヲ致シマセヌ、其爭議
ノ類發スルト云フコトモ決シテ國家ノ爲、
又我國産業ノ爲ニ喜ブベキコトデナイ、又
工場內ノ少數ノ人、工場外ノ少數ノ人ニ依ッ
テ爭議ガ起サレル、ソレモ御話ノ通リデア
リマス、爭議團ノ手ニ其爭議ガ引移サレテ
云々、サウ云フコトモアリマス、外國ノ爭
議ガ產業本位ニ起ッテ居ル、爭議ヲ起シテモ
機械ノ錆止ヲスル、ソレモ承知ヲ致シテ居
リマス、悉ク日本ノ爭議ガ無政府主義者、
共產主義者ニ依ッテ行ハルヽカノ如キ御斷
定ニナルト云フコトハ、是ハ私ハ誤ッテ居ル
ト思フケレドモ其裏面ニ潜ンデ居ルコト
ハ、實ニ読激ナ思想ヲ持シテ居ル者ガ居シテ
煽動ヲスルト云フコトモ往々アルノデアリ
マスカラ、其點ヲ區別シテ取締ヲシナケレ
バナラヌト云フコトヲ、私絕エズ注意ヲ致
シテ居リマス、外國ニテ示威運動ヲスル、
暴行ハ伴ハヌ、日本ニ於ケル示感運動ハ暴
行ガ伴フ、是モ往々アリマス、日本デ之ヲ
取締レバ彈壓ト言ハレマス、度ミアリマ
ス、資本家カラ言ハレルト取締ガ足ラナ
イト言ハレル、今度ハ勞働者ノ側カラ言フ
ト絕エズ安達內務大臣ハ彈壓バカリ致シテ
居ルト云フ批評ヲ受ケテ居リマヌ、サウ云
フコトヲ唯報告ヲ見テサウシテ報告ノ儘ヲ
答辯スルノデハナイカト云フ御言葉ガアリ
マシタガ、私ハモウ少シ精シク調査ヲ致シ
テ居ルト云フコトヲ御答シテ置キマス、唯
一片ノ書付ケノ報告ノミニ依ッテ斷定ヲ致
スノデゴザイマセヌ、御話ノ惡性ノ爭議ハ
無論取締リマス、併ナガラ玆ニ勞働組合法
ヲ制定スルニ當クテ、サウ云フ惡性ノ爭議ガ
アルカラ玆デ組合法ナドヲ作ル必要ハナイ
ト云フコトハ言ハレナイ、私ヲシテ率直ニ
言ハシムレバ斯カル惡性ノ爭議ガ起ルカ
ラ玆ニ組合法ヲ制定シテ、其爭議ノ基準ヲ
與ヘテヤル、サウシテ正シキ「レール」ニ載
セタイ、斯ウ云フ考カラ組合法ヲ制定スル
所以デアリマス、現狀ノ惡イ所ハ十分知ッテ
居リマス、知ッテ居ルカラ之ヲ取締リタイ、
取締ルニ付キマシテハ、御話ノヤウナ思想
問題カラ來ル所ノモノハ是ハ別ニ取締ラナ
ケレバナラヌ、唯單ニ勞働爭議トシテ取締
ルノデハナイ、是ハ我國ノ治安ニ關スル問
題デアリマスカラ、治安ノ上カラ取締ラネ
バナラヌ、是ト勞働爭議ノ取締ト云フモノ
ハ區別シナケレバナリマセヌ、要シマスル
ニ御話ハソコヲ混同セラレテノ御話デアリ
やく、我〓ハソコヲ能ク區別シテ、サウシ
テ今日ノ日本ノ國情ニ適スルヤウナコトヲ
致シタイ、サウ云フ憂慮スベキコトガ決シ
テ無イデハアリマセヌ、其方ノ治安ニ關ス
ルコトハ別ニ取締リマス、サウシテ勞働爭
議ハ其爭議ヲシテ正シキ軌道ニ之ヲ載セル
ヤウニ致シタイト云フコトガ、此法案ヲ提
案スル所以デアリマス、斯ル今日ノヤウナ
情勢ダカラ、ソレダカラ法案ナドヲ出スト
云フコトハ時機デナイト云フヤウナ御考デ
アッタナラバ、ソコハ間違クテ居リマス、私
カラ申上ゲルト······革命ノ歌云々ト云フヤ
ウナ御話ガアリマシタ、革命ノ歡ハ十分是
ハ取締ッテ居リマスカラシテ、サウ云フモ
ノノ發賣頗布ハ勿論禁止シテ居リマス、又
嚴重ニ歌ヲ謠フコトヲ取締ッテ居リマス、不
穩ノ文書ノコトモ、ソレハ御話ノ通リ其不穩
ノ文書ヲ撒布シタ後ニ取締ルト云フヤウナ
コトハ抑〓ノ末ノコトデアリマス、撒布前ニ
出來ルダケ差押ヘヲスルコトガ當然デアリ
マス、其邊ノコトハ十分注意ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、御話ノ通リサウ云フ思想ガ
起ラザルヤウニスルコトガ最モ必要デアル、
ソレハ政府ト致シマシテハ有ラユル方法ヲ
講ゼナケレバナラヌ、其根本ヲ匡シマスニ
ハ、是ハ文〓ノ方カラ致サネバナラヌト云フ
コトモ御話ノ通ト考ヘマス、濱松ノ樂器會
社ノ「ストライキ」ナドモ御話ニナリ、マシタ
ガ、承知イタシテ居リマスガ、此各會社ニ行
ハレマス所ノ「ストライキ」ニ於テ、三四一
過激思想ヲ持ッテ居ル人ガ入リ込ンデ、内部
カラ煽動スルコトヲ非常ニ注意シ、取締ノテ
居ルト云フコトヲ繰返シテ申シテ置キマ
ス、第二ニ此勞働運動ノ沿革歷史ヲ知ッテ提
案シタカ、今申シタヤウナコトデ、私一通
リ勞働運動ノ沿革歷史ハ承知イタシテ居リ
マス、社會主義者ガ啓蒙運動ヲ起ス、其啓
蒙運動デ勞働者ニ鼓吹スル、勞働者ノ運動
ノアル所ニハ必ズ社會主義者ガ現ハレル、
社會主義者ガ煽動スル狀況、水平運動、農
民運動ヲスルト云フ御話、能ク承知イタシ
テ居リマス、斯ル運動ヲナシマス其弊害ガ
一方ニアルト云フコトハ能ク認メテ居リマ
ス、殊ニ小作爭議ノ如キモ地方ニ續々頻發
イタシテ居ル、其中デ爭議ノ中デ最モ惡性
ノモノモアリマス、サウ云フ狀況デアリマ
スカラ、此場合ニ當ノテ、或ハ小作立法ヲナ
シ、一方ニハ勞働立法ノヤウナモノヲナシ
テ行ク必要ヲ感ズルノデアリマス、沿革ハ
承知イタシテ居ルト云フコトヲ申上ゲテ
置キマス、ソレデ玆ニ共產黨事件ノ御話ガ
アリマシタガ、赤池君ノ腦裏ニハ此勞働運
動ト共產黨事件ト矢張リ結付ケテ居ラッシ
ヤル、私ハ是ハ確ニ區別シテ考ヘネバナラ
ヌ、斯カル意味アル事柄ノ起ルノヲ豫防ス
ルニハ、勞働組合法ノ如キモノハ、私ハ之
ヲ唯一ノ手段トハ申シマセヌ、勞働組合法
ノ如キモノガ制定セラレテ、サウシテ一方
ニ此勞働運動ヲシテ穩健ナラシムル、中正
ナラシムルト云フコトガ、我國ノ思想ノ緩
和ノ上ニ大影響ヲスルト云フコトヲ考ヘテ
居ル次第デアリマス、何ヨリモカヨリモ
最初ニ毒素ヲ除クコトヲセナケレバナラヌ、
勿論此毒素ヲ除クコトニ努メナケレバナリ
マセヌ、今日ノ勞働組合ハ悉ク共產系、無
政府系ト御斷定ニナルト云フコトハ、私ハ
間違ッテ居リハセヌカト考ヘルノデアリマ
ス、今日ノ勞働組合ガ悉ク共產主義者、無
政府主義者ノ如ク考ヘテ之ヲ取締ルト云フ
ヤウナコトニシテ行キマシタナラバ、大變
私ハ玆ニ政治ヲ誤ルダラウト考ヘマス、ソ
レカラ第三ニ準備行爲トシテ如何ナルコト
ヲナシタカト云フ御話デアリマスガ、此勞働
組合法ヲ出シマス前ノ準備行爲トシテハ
ソレハ此法案ヲ今日ノ時世ニ提案スルコト
ガ最モ時代ニ適應シタコトト云フ信念ノ下
ニ立案スル所ノ諸般ノ準備ヲ致シマシタ
ガ、御話ハサウ云フ立案ニ對スル準備ト云
フ意味デナクシテ、斯カル法案ヲ出ス以上
ハ諸般ノ問題ニ付テ何カ準備ヲシナケレバ
ナラヌト云フ御意味カト考ヘマスガ、唯客ガ
來タカラ座敷ノ掃除ヲスルトカ、庭ニ水ヲ
打ツト云フヤウナコトデナイ、私ガ今此法
案ヲ出スコトガ、今御尋ノ中ニアリマシタ
通リ、日本ノ思想界ノ、殊ニ多數ノ民衆ノ
思想ノ流レヲ、之ヲ緩和シテ行クト云フコ
トガ最モ必要ダ、決シテ此勞働組合法一ツ
デハアリマセヌ、勞働組合ハ單ニ其目的デ
ハアリマセヌ、思想問題カラ立論イタシマ
シタナラバ、矢張リ此勞働立法ト云フモノ
我國ノ民衆ノ多數ノ意思ヲ緩和シ穩健
ナラシムルコトニハ、非常ナ效益ガアルト
云フ考ヲ持ッテ居ル次第デアリマス、決シテ
此組合法ガ出來マシテ、爭議團體ヲ保護ス
ル、サウ云フコトハ絕對ニアリマセヌ、飽
クマデ勞資協調ノ下ニ勞働組合ノ發達ヲ
圖ッテ行キタイ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ居リマ
ス、國家ノ基礎、產業ノ基礎ヲ破壞スルヤ
ウナコトハ全然考ヘナイ、斯カル組合法ガ
出來テ始メテ國家ノ基礎モ安定シ、產業モ
平和ニ發達シテ行クト云フ考ヲ持ノテ立案
シタ次第デアリマス
〔赤池濃君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=8
-
009・赤池濃
○赤池濃君 私ガ長ク其事實ヲ述べマシ
テ、內務大臣ニ御尋ヲシマシタ、殊ニ現在
ノ勞働爭議ノ狀況竝ニ過去ノ沿革ヲ說イ
テ、内務大臣ニ質問イタシタノハ他デモア
リマセヌ、此法案ヲ施行スルニ際シテハ、
色ミナ問題ガ發生スルコトヲ恐レルノデア
リマスカラシテ、今日此儘ニ於テ、唯ヤリ
マシタナラバ、私ハドンナ事ガ出來ルカ分
ラヌト云フコトヲ考ヘルノデアリマスカ
ラ、ソレデ如何ナル準備行爲ヲナサレタカ
ト云フコトヲ承ッタノデアリマシテ、ドウ云
フ處置ヲ講ゼラレ、ドウ云フ考ヲ以テ此法
案ヲ運用サレルカト云フコトヲ聽イタノデ
アリマス、所謂政治家トシテノ······政治家
トシテノ內務大臣ノ經綸ヲ聽イタノデアリ
さき、所ガ、ソレニ付テハ何等御答ガナク
本案ガ出來レバソレデ宜シイノダト云フコ
トヲ言ハレル、是デハ私ノ質問ノ根本ノ趣
意ニ達シマセヌ、此以上、私ハ決シテ御尋
ヲ致シマセヌ、無限ノ失望ノ念ヲ以テ此壇
ヲ去ル者デアリマス、唯一言注意イタシマ
スノ私ハ辯明ヲ致シマス、私ガ何カ、
今日ノ勞動運動ハ總テ皆無政府系若クハ共
產系ノ運動デアルカノ如ク、又今日ノ勞働
運動ノ眞相ヲ誤解シテ居ルカノ如ク、混同
シテ居ルカノ如ク御話ガアリマシタ、全部
貴總テノ運動ガサウデアルカノ如キ風ノ
御話ガアリマシタ、是ハドウ御聽取リニナ
リマシタカ知ラナイガ、私ニ取リマシテハ
實ニ心外千萬、迷惑ノ骨頂デアルノデアリ
やく、私ハ無政府系若クハ共產系ノ人ガ、
當初ニ於テ勞働運動ヲ指導シタ、啓蒙運動
ニ付テ、ソレデ以テ指導シタト云フコトヲ
申シマシタ譯デアリマス、ソレハ當初ノコ
トヲ言フノデアリマス、唯同時ニ、其時ニ
入レラレタ所ノ毒素ガ今日殘"テ居ルコト
ヲ申シタノデアリマス、今日ノ勞働運動ガ
彼等ニ依ッテ總テ指揮サレルモノトハ決シ
テ申シマセヌノデアリマス、又ソレヲ混同
モシテ居リマセヌノデアリマス、私ガ事ヲ
分ケテ申シマシタノハ、普通ノ勞働運動ハ
ドウデアルカ、普通ノ勞働運動デモ斯ウ云
フコトガアル、其中ノ惡性ノモノハ斯ウデ
アル、其惡性ノ原因ハ、サウ云フ風ノ「マル
クス」主義ニ依ッテヤッテ居ルノガ極メテ惡
性デアルノダト云フコトヲ、ハッキリト申シ
タノデアリマス、其點バクレ〓〓モ誤解ノ
ナイヤウニ申シテ置キマス、之ヲ混同シテ
以テ、ソレデ以テ御答辯ニナリマスト、全
ク御答辯ノ體ヲ成シテ居ラヌト思フノデア
リマス、私ハ今日、日本ノ現在ノ惡性ノ勞
働爭議ニ鑑ミマシテ、志士仁人ガ起ヲテ、何
トカシテ勞働運動ヲ正義ノ道ニ復サウト云
フ考ヲ以テ、國家ヲ愛シ、產業ヲ愛スル考
ヲ以テヤッテ居ル勞働運動ガ現ニ幾分起キ
ツツアルノヲ認メルノデアリマスガ、又先
ニ間違シタ考ヲ以テ、勞働運動ニ從事シタ人
モ今日前非ヲ後、シシヤヤッテ居ル狀況モ知ッ
テ居ルノデアリマス、私ハソレニ對シテ政
府ガドウ云フ考ヲ持ッテ居ルカト云フコト
ヲ御聽キシタカッタノデアリマスケレドモ、
如何ニモ唯法案ガ出レバ、ソレデ萬事解決
スルト云フ御話デアリマシタカラシテ、之
ヲ質問イタス勇氣モ何モアリマセヌデゴザ
イマスカラ、色ミノコトハ申シマセヌ、唯
如何ニモ無限ノ恨ヲ飮ンデ此壇ヲ下ルモノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 午後一時三十分
マデ休憩イタシマス
午前十一時五十五分休憩
午後一時四十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日電氣事業法改正法律案特別委員會ニ
於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如
委員長侯爵大隈信常君
副委員長內田嘉吉君
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
抵當證劵法案可決報告書
不動產登記法中改正法律案可決報告書
民事訴訟法中改正法律案可決報告書
競賣法中改正法律案可決報〓書
民事訴訟用印紙法中改正法律案可決報〓
書
日本勸業銀行法中改正法律案可決報告書
農工銀行法中改正法律案可決報〓書
北海道拓殖銀行法中改正法律案可決報〓
書
國稅徴收法中改正法律案可決報告書
貯蓄銀行法中改正法律案可決報告書
軍事救護法中改正法律案可決報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=11
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012・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、鵜澤總明君ノ登壇ヲ望ミマ
ス
〔鵜澤總明君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=12
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013・鵜澤總明
○鵜澤總明君 私ハ內務大臣ニ、只今問題
ニナッテ居リマスル勞働組合法案外一件ノ
議案ニ付テ伺ヒタイノデゴザイマス、此法
案ニ付キマシテハ或ハ高所大所ヨリ、或ハ
現在ノ勞働運動ノ狀態ヨリ或ハ資本家ノ立
場ヨリ種々ナル方面ニ於テ意見ノ交換ガ
行ハレタノデアリマス、又衆議院ニ於テモ
十分ニ論議ヲ盡サレテ居ルト思フノデアリ
やく、而シテ當院ニ於キマシテモ、內務大
臣ノ御意見ヲ拜聽イタシマスルト、此法案
ニ付テハ資本家ノ方面ニ於テモ餘リ贊成ハ
ナイ、贊成ハナイドコロデハナイ反對デア
ル、勞働者ノ方面ハ或ハ無關心ニ過ギテ居
リ、或ハ贊成ヲシナイ、此兩方ニ贊成ノナ
イ所、是ガ卽チ此方面ノ妙味デアル、妙味
デアルガ故ニ此法案ヲ玆ニ通過シナケレバ
ナラヌ、斯ウ云フヤウナ御意見ニ拜聽シタ
ノデゴザイマス、而シテ今日ノ勞働問題ノ解
決、勞働運動ノ解決ヲ恰モ昔ノ支那ノ大禹
ガ洪水ヲ治メタヤウニ、或ハ孟子ガ思想ノ
戰ヲ致シマシタヤウニ、此現下ノ狀態ニ於
ケル種々ナル問題ニ對シテハ、唯此勞働組
合法案ノ可決ニ依リ、此通過ニ依ッテノミ解
決ガ出來ル、斯ウ云フヤウナ御〓心ヲ持ヲテ
居ラルルノデアリマス、私ハ誠ニ此〓心ノ
事情ヲ深ク諒承イタシマシテ、而シテ果シ
テ此案ニ於キマシテ御希望ガ達セラレルカ
ドウカト云フコトニ付テノ疑ヲ御伺ヒ致シ
タイノデゴザイマス、第一ハ勞働條件ノ意
義及ビ限界デゴザイマス、法案ニ於テ此勞
働條件ヲ如何ニ御定メニナルカ、又今日勞
働條件ト云フコトヲドノ程度ニ於テ規定ス
ルコトニ依リテ、我國ノ今日ノ勞働問題ノ
解決ガ付クカト云フコトハ私ハ甚ダ大切
ナコトデアラウト思フノデアリマス、勞働條
件ト云フコトニ付テハ、或ハ勞働法ノ〓究
ヲスル人ノ間ニ於テモ、或ハ資本家ノ間ニ
於テモ、或ハ勞働者ノ間ニ於テモソレ/
ノ意見ハ持ッテ居ルコトデアラウト考ヘマ
スルケレドモ、而モ法案ヲ立ツルニ當リマ
シテハ如何ナル程度、如何ナル範圍、如何
ナル限界、如何ナル意義ニ於テ此勞働條件
ヲ決定シ、其勞働條件ノ維持、或ハ保護或
ハ改善、或ハ增進ト云フヤウナコトヲ目的
トスルカト云フ事柄ガ、極メテ大切ナコト
デアラウト存ズルノデゴザイマス、デ御說
明ニ依リマスルト、勞働法案ハ社會政策審
議會ノ答申ニ基キマシテ、政府ガ愼重ナ〓
究ヲ遂ゲテ成案トナッタ次第ト諒承イタシ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ此法案ノ實
質ニ於キマシテ、果シテ內務大臣ノ御主張
ニナラレマスル穩健中正ト云フコトニ當ル
カ、又內務大臣ノ仰セラルル穩健中正ト云
フコトハ、果シテドノ點ヲ指シテデゴザイ
マスルカ、大イニ疑ヒガ存シテ居ルノデア
リマス、内務大臣ノ御說明ニ依リマスレバ
法案ノ中ニ職業別、產業別ノ組合ヲ原則ト
致シマシテ規定シタ點ニ於テ、是ハ卽チ實
業家又ハ資本家側ノ要求ヲ容レタモノデア
ル、是ト又相對シテ雇傭又ハ解雇ノ條件ヲ、
組合員タルコトニ拘ハラシメナイ、卽チ組
合員タルガ故ニ雇傭シナイ、或ハ組合員タ
ルガ故ニ解雇スルトカ云フヤウナコトヲシ
ナイ、此規定ヲ御設ニナリマシタ點ハ、是
ハ卽チ組合員側、勞働者側ノ意見ヲ容レタ
モノデアル、デ此兩點ニ於テ兩方ノ意見ヲ
採ッタノデアルカラシテ、此意味ニ於テ或ハ
穩健中正ト云フコトヲ申サレテ居ルノデア
ルカトモ存ズルノデアリマス、併ナガラ斯
樣ナ關係ニ於キマシテ却ッテ統一ヲ致シテ
居リマスル理路ノ一貫ヲ見ルコトノ出來ナ
イ爲ニ、安達內相ノ申サレマスルヤウニ、
一方ニ於キマシテハ實業家ノ反對ヲ受ケ
ル又一方ニ於テハ勞働者方面ノ非難ヲ買
フ、此恰モ二理背反ノヤウナ事柄ガ是ガ却。フ
テ妙味デアル、斯ウ云フコトニ仰セラレテ
居ルノデアリマスルケレドモ、私ハ是等ノ
點ニ付キマシテ、是ハ結局此勞働條件ト云
フコトヲドノ程度ニ置カレルカト云フコト
ヲ御決定ニナラナイ爲ニ、玆ニ斯樣ナ結果
ヲ生ジテ來テ居ルモノデアラウト思フノデ
アリマス、デ勞働組合法ノ如ク、我國ノ產
業經濟ニ甚大ナル影響ヲ有シ、延ヒテハ玆
ニ色ミ論議セラレマシタヤウニ、思想問題
ニモ關聯スルト云フ、法律ニ對シマスル穩
健中正ト云フ事柄ガ、果シテ此程度デ事足
ルモノデアリマスルナラバ、ソレハ極メテ
私ハ容易ナコトト考ヘルノデアリマス、デ
斯ク簡單ナ問題デゴザイマスルナラバ、別
ニ考慮ヲ煩ハス必要ハナイト思フノデアリ
マス、併ナガラ私ハ今日ノ現在ノ狀態、我
國ノ事情、世界ノ大勢、是等ノ方面カラ御
考ヲ願ヒマスルナラバ、斯ノ如ク事態ハ簡
單ナモノデハナイ、斯ノ如ク樂天的ノ態度
ヲ以テ納マリ返ヘルコトハ出來ナイ、現
或有名ナル政治家デモアリ、評論家デモゴ
ザイマスル人デゴザイマスルガデス、今日
ノ世界ノ不安、此世界ノ不安ナルモノハ經
濟ノ狀態ニモ依リ、或ハ世界ノ不景氣ト云
フコトニモ依ルコトデアリマスルケレドモ、
最大ノ不安ハ歐羅巴文明正反對ニ立ツ所
ノ新タナル制度ヲ起サムトスル或國ガアル
カラデアル、其國ハ歐羅巴人カラ考ヘルナラバ
デス、ソレハ恰モ革命ニ依っテ歐羅巴ノ文明
ヲ採用スルコトデアラウト思ッタ所ガ、歐羅
巴ニ於テ道德ナリトスル所ハ、之ヲ本道德
ナリトスル、歐羅巴ニ於テ適法ナリトスル
所ハ、之ヲ不適法ナリトスル、歐羅巴ニ於
テ人情ナリトスル所ハ、之ヲ不人情ナリト
スル、斯樣ナ國ガ出來テ、其國ガ總テノ點
ニ於テ世界各方面ニ宣戰ノ布〓ヲ致シテ居
ルカラ、是ガ世界ノ大ナル不安デアル、此
不安ノ原因ガ除カレザル中ハ各國共安ン
ズルコトハ出來ナイ、斯ウ云フヤウナ意見
ヲ述べテ居ル人モアル位デアリマス、我國
ニ於テ今日此勞働組合法ノ如キ、各方面ニ
於テ影響ノアル立法ヲシマス事柄ハ是ハ
私ハ極メテ大切ナル事柄デアルト考ヘルノ
デアリマスケレドモ、併ナガラ其法案ハデ
ス、餘程愼重ニ審議セラレマシテ、サウシ
テ其法案ニ依"テ眞ニ內務大臣ノ仰セラレ
ルヤウニ、或ハ勞働運動ニ基準ヲ與ヘル、
或ハ穩健中正ナル眞ノ正シイ中間ノ道、或
ハ據ルベキ正道ニ從ウト云フヤウナコトニ
ナルコトヲ期センケレバナラヌト思フノデ
ゴザイマス、ソコデ私ハ本法案ニ於テノ勞
働條件ノ維持改善デアル、或ハ組合員ノ共
濟、修養、其他共同利益ノ保護增進ト云フ
ヤウナコトヲ、本案ニ於テ目的ト致シテ居
ルノデゴザイマスルガ、此間ニ於テデス、
最モ明白ニ致シテ置カヌケレバナリマセヌ
點ハ、卽チ本法案ノ目的ト致シテ居ル所ノ
勞働條件、此勞働條件ト云フモノハ今日ハ
ドノ程度ニアル、今日以後ニ於テハドウ云
フ發展ヲ遂ゲル、此發展ヲ遂ゲル爲ニ如何
ナル運動ガ起ルト云フヤウナ、斯ウ云フコ
トマデモ御考ヲ願ハナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、衆議院ニ於ケル政府委員ノ
御說明ニ依リマスルト、勞働條件ハ民法上
ノ雇傭契約カラ規定セラレルノデアル、斯
ウ云フヤウニ申サレマシタガ、是ハ固ヨリ
當然ノコトデアルト思フノデアリマス、併
ナガラ唯此履傭契約ノ條件デアル、斯ウ云
フコトニ致シマスルト云フト契約者雙方
ノ合意ト云フコトノ必要ナルコトハ、是ハ
申ス迄モナイノデアリマス、此場合ニ組合
ガ契約者ノ間ニ介在イタシマシテ斡旋スル
コトニ依ッテ、勞働條件ト云フモノヲ維持
シ、勞働條件ト云フモノヲ改善スルト云フ
ヤウナ趣旨デアリマセウカ、若シサウ云フ
コトデアルナラバ或ハ團體協約ノ規定ト
云フコトモ必要デハナカッタノデアラウカ
ト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、然ルニ
此案ニ依リマスルト云フト、社會政策審議
會ノ答申ニ基カレマシテ、團體協約ノコト
ハ考ヘテ居ラヌノデアル、更ニ勞働方面ニ
關スル限リニ於キマシテハ、組合員ノコト
デゴザリマスルカラ、組合ニ於テ決定ガ出
來ルコトデアラウト思フノデアリマス、併
シナガラ契約ノ他ノ當事者ニナリマスト
組合ノ決議デ拘東ヲ致シマスルト云フ事柄
ハ是ハ不可能デアラウト考ヘルノデアリ
マス、若シ同ジ組合內ニ於テ決定ガ出來ル
勞働條件ノ程度、卽チ羅傭契約ノ範圍內デ
決定ノ出來得ル勞働條件デゴザリマスルナ
ラバ、或ハ民法ノ規定ニ依ル組合又ハ法人
デ其目的ヲ達シ得ルモノト見ラレルノデア
リマス、之ニ反シテ若シ勞働條件ガ單純ナル
雇傭契約、殊ニ個人的對立ノ關係ニアル雇傭
契約カラ規定サレタ勞働條件以上ノモリデ
アリ、或ハ別ニ一般的ニ又ハ蓮帶的ニ拘束
性ヲ持シテ居ルベキ筈ノモフデアリト致シ
マヌレバ、其場合ニハ始メテ玆ニ獨立イタ
シマシタ勞働組合法ガ必要デアルト思フク
デアリマス、併シチガラ斯カル場合ニ於キ
マシテハ、勞働者バカリガ組合員デアッチハ
目的ハ達セラレナイノデアリマス、勞働者
ノ方デ自由ニ決メタモノデ他ノ方面ノ者ニ
之ヲ强行スルコトガ出來ナイ、デ恰モ此點
ニ付テハ、私ハ獨逸ノ新憲法ハ頗ル重大ニ
考ヘテ規定ヲ設ケラレテ居ルト思フツデア
カマス、卽チ獨逸ノ憲法第百六十五條ク如
ク、賃銀條件、勞働條件······獨逸ク憲法デ
ハ勞働條件ノ以外ニ賃銀條件ト云フ言葉モ
使ッテ居ル、又經濟條件ト云フ言葉モ使ッテ
居ル、從テ此勞働條件ト云フ言葉ガ甚グ普
通ニ考ヘラレテ居ルコトヨリモ狹イカノヤ
ウニモ見エルノデアリマス、併シ此賃銀條
件、勞働條件竝ニ生產力ノ協同的經濟發
展······賃銀モ必要デアリ勞働モ必要デア
リ、之ト共ニ此生產力ノ協同的ノ經濟上ノ
發展ヲチスト云フコトガ必要デアル、斯カ
ル事柄ノ爲ニ規定ヲチスニ付キマシテハ
勞働者ガ資本家、經營家ト協力シテ、鼎立
シテ行動スルコトヲ認メル、斯ウ云フヤウ
ニ考ヘラルル規定〓獨逸ノ憲法ノ第百六十
五條ニアルツデアリマヌ、而シテ獨逸ノ憲
法ニ於キマシテハ、斯樣ナ方式ヲ取リ、卽
チ單ニ勞働者バカリデ組合ヲ造ルト云フ組
合法ニ依ラズシテ、勞働者モ、資本家モ經營
家モ協力ヲシ鼎立ヲシテ、而シテ是等ノモ
ノガ寄ッテ行動シ、相互ニ發展スルノ必要ナ
ル條件ノ、賃銀條件デアルトカ、或ハ勞働
條件デアルトカ、或ハ生產力ノ協同、經濟
上ク發展デアルトカ云フコトヲ考ヘナケレ
バ、眞ニ勞働ト云フモノニ對スル對策ヲ決
スルコトハ出來ナイノデアル、斯ウ云フ所
ニ重キヲ置イテ勞働立法ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、卽チ此方式ヲ取リマヌルナラバ、
是ハ單純ナ勞働組合法ト云カヤウナ問題ヨ
リモ、更ニ廣クナッテ居リマシテ、一ツノ勞
働憲法トモ言フベキモノデアリマス、獨逸
ガ大戰ノ後ニ於テ軍人其他ノ者ガ戰爭ヲ止
タテ、而シテ此勞働ニ就カヌケレバナラヌ、
一時ニ多數ノ勞働者ノ群ガ生ジタ、之ニ對
シテ獨逸ノ國家ハドウ云フヤウナ方式ヲ取
ラヌケレバナラヌカト云フコトハ、極メテ
大切ノ問題ニナッテ居ッタノデアリマス、併
ナガラ此獨逸ノ憲法ヲ制定スルニ力ツアリ
マシタ「プロイス」サドノ時代ニ於テハ、マ
ダ此勞働ト云フ問題ニ付テハ餘リ深ク及ン
デ居ラナカッタノデアリマス、唯今日成立ッ
テ居リマスル所ク憲法ニ依リマスルバ、單
ニ此一方カラ見ル、一方カラ〓究スル、
方カラ考ヘルト云フノデハナクシテ、勞働
者、資本家、經營家、卽チ此三者ガ鼎立シ
テ、玆ニ何等カタ產業ノ發展ノ大イナル方
策ヲ立テ、經綸ヲ立テヌケルバナラヌ、其
方策經綸、、其實行ノ出來ルヤウニ勞働問題
ヲ導イテ行カウト云フノガ、卽チ此獨逸ノ
勞働立法ノ一ツツ方式デアルト私ハ考ヘル
ノデアリマス、我國ク勞働立法ト致シマシ
テモ、此點ハ大イニ考慮スベキコトデアラ
ウト思フクデアリマス、勞働組合法ト申シ
マシタ所デ、蕾ニ勞働ノ私法的關係バカリ
デハ固ヨリ目的ヲ達シ得ナイノデアリマ
ス、從テ此只今出テ居リマスル所ク組合法
ニ對シテ、政府ハ如何ナル體系ヲ法律ト云
フ御說明ニナルカハ存ジマセヌケレドモ、
先ヅ規定ヲ太體見テ參リマスルト、民事法
系ク規定ニ依ル所モ相當ニアルヤウデアリ
W.Y.併ナガラ唯此民事法系ノ規定ダケデ
ハ固ヨリ不十分デアリマス、而シテ勞働組
合法トシテ規定スルヤウナ場合ハ、之ヲ組
合トシチ組織スルト云フ事柄ガ論理的デア
ルカ、又ハ此憲法土ノ結社ノ領域ニ根據ヲ
置キマシテ、其結社權ト云フコトヲ重ンジ
チ勞働立法ヲナスコトガ論理的デアルカ、
此點ニ村キマシテモ、法律ノ體系上考慮ス
ベキ問題デアルト思フヲデアリマス、ソコ
デ此法案ニ於テ、先ヅ此勞働條件ト云フコト
ニ付テ、如何ナル意義ヲ織込マレタノデア
ルカ、此點ヲ明ニスルコトガ甚ダ私ハ必要
デアルト思フノデアリマス、勞働ハ甚ダ大
切サモノデゴザリマスルケレドモ、勞勸ハ
ソレ自體ニ於テハ獨步スルコトモ出來ナイ
獨立獨行スルコトノ出來ナイモノデアリマ
ス、多クノ場合ニ於テハ此勞働ト云フ事柄ガ
今日マデノ發達ニ於テ、如何ナル個人主義、
或ハ個人ノ絕對自由ヲ說ク國ニ於キマシテ
〓、唯勞働自體ノ獨リノ働キデ進步發達シ
テ居ルト云フコトハ出來ナイノデアリマ
ス、或ハ國家權力ノ下ニ統制セラレルカ、
若クハ國家權力ト云フコトニ對スル反抗ガ
起リマスレバ、之ト相對スル社會的權力ノ
下ニ統制セラレルト云フヤウチ狀態ニチツ
テ居ルノデアリマス、今日ノ社會〓究家ハ
或ハ政治家デアルトカ、或ハ國家デアル
トカ云フコトニ付テ、多大ノ疑ヲ起シ多大
ツ反抗ヲ生ジマシテ、社會的ノ力或ハ社會
的ノ權力ト云フヤウナ言葉ヲ用ヒ、其社會
的ノ權力ト云フヤウヲコトニ依ッテ、各國ノ
國家組織ニ對シテ或ル程度マデノ變革ヲ加
ヘントスルヤウナ狀況モ現ニ存在シテ居ル
ト云フコトハ、御承知ノ通リデアリマス、
此社會的ノ權力ト云フコトニ付キマシテ
ハ特ニ近時ノ團體〓究者ノ唱道スル所デ
ゴザイマシテ、中ニハ之ニ對シテ主權ト云
フヤウナ言葉ヲ使"テ居ル人モアルソデゴ
ザイマス、卽チ主權複數論ノ意見ガ此場合
ニ當ルノデアリマス、是ハ或ル時代ニ於テ
ハ大キサ問題トナッテ、國際的ニ脅威ヲ感ズ
ルヤウナ事柄ガ起リハシマイカト、私ハ思
フクデゴザイマスガ、今日ハ唯社會的ノ權
力ト云フヤウナ下ニ勞働ガ統制セラレルト
云フヤウナ場合ニ於テハ、矢張リ勞働ハ一
ツノ彈壓ヲ受ケルト云フコトニチルノデア
リマス、唯國家的ノ權力ノ下ニ統制セラレ
ルカラ彈壓ヲ受ケルト云フバカリデハナ
イ、社會的ノ權力ノ下ニ統制セラレテモ矢
張リ同ジク彈壓ヲ受ケルノデアリマス、勞
働ヲ經濟的ノ關係デアルト見マシテモ、何
レカノ權力カラ全然離脫スルト云フコトハ
出來ナイノデアリマス、我國ニ於キマシテ
ハ固ヨリ國權ト對立スル所ノ社會的權力ヲ
認メルコトヲ許サチイ、當然國家ノ制度ト
シテ勞働法ヲ制定スベキデアリマス、層糖
關係ニ立ツ前ニ、然ラバ國家ト致シマシテハ
勞働ニ對シテ其勞働ヲ活動スベキ權利ヲ認
ムルコトガ出來ルカドウカ、又之ヲ認メナ
ケレバナラヌモノデアルカドウカ、之ニ對
シテドノ程度ノ保障ヲ與フベキモノデアル
カナイカト云フコトヲ、先ツ勞働立法ノ際
ニ當ッテハ考究ヲセヌケレバナラヌト想フ
ノデアリマス、失業者ガ多イト云フヤウナ
コトデ非常ニ失業ノ救濟ニ骨ヲ折ラシマス
ルケレドモ、其失業ノ救濟前ニ、勞働ノ不
斷ノ機會、卽チ此勞働ノ可能ヲ準備スルト
云フ事柄ガ、果シテ國家トシテ爲スベキコ
トデアルカ、又爲サネバナラヌコトデアル
カト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌノデア
リマス、若シ斯樣ニ觀察イタシマスルトキ
ハ、國家ハ常ニ產業ニ對シテ、ドノ程度ノ
保護ヲ加ヘ、ドノ程度ノ產業ニ對スル所ノ
準備ヲシナケレバナラヌカト云フヤウナコ
トモ問題ニナッテ來ル、此問題ノ岐路ニ立ッ
テ居ルモノガ、若シ此問題ヲ解決セズシ
テ、直チニ勞働組合法ヲ作ルカラト申シマ
シテモ、此場合ニハ私ハ必シモ宜イ所ノ結
果ヲ贏チ得ルカドウカト云フコトニ付テ疑
ヲ懷カヌケレバナラヌノデアル、勞働條件
ハ固ヨリ本案ニ於キマシテ斯カル經濟上ノ
關係ヲ顧慮シテ其意義ヲ御定メニナッタコ
トデアルト思フノデアリマス、安達內務大
臣ニ於カレマシテハ昨日此議場ニ於テ、我
ガ國情ニ適スル法案ヲ成立セシメタイ、斯
ウ申サレテ居ルノデアリマスルガ、若シ我
ガ國情ニ適スル法案ト云フコトデゴザリマ
スナラバ、而シテ此勞働組合法案ガ果シテ
我ガ國情ニ適シテ居ルト云フモノデゴザリ
マスナラバ、本法案ニ於テ採用セラレマシ
タル勞働條件ト云フコトハ略ドノ位ノ
意義ヲ持クテ居ルモノデアリ又略、とドノ位
ノ限界ヲ持ッテ居ルモノデアルカト云フコ
トヲ承ハリタイノデアリマス、是ガ卽チ私
ノ第一ノ御尋ノ點デゴザイマス、ソレカラ
第二ハ勞働條件ノ維持改善ヲ目的トスル以
上ハ之ニ達スル手段ガ考ヘラレテ居ナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、所ガ茲ニ私
ハ、昨日來色〓問答ヲ交換セラレ、而シテ
安達內務大臣ニ於カレマシテハ、資本家側
ハ非常ニ神經過敏デアル、或ハ、此問題ニ
付テ現在ノ勞働運動ナリ或ハ政治運動ナリ
ト云フヤウナ事柄ガ混同セラレテ居ル、マ
アサウ云フヤウニ說明ニナッタコトデアル
ト思フノデゴザリマスルケレドモ、此維持
改善ノ目的ヲ達スル手段ト云フコトガ、或
ル場合ニ於テ、遂ニ私有財產制度ヲ破壞ス
ル、而シテ共產制度ニ到達スル所ノ虞ト云
フモノガナイトモ限ラナイ、此點ハ唯組合
ヲ作ッテ、組合ニ於テ條件ノ維持改善ヲセシ
メルト云フヤウナ場合ニ於テハ、斯ウ云フ
ヤウナ所ニ走ル虞ハナイカドウカト云フコ
トヲ御考ヘニナラヌケレバナラヌト思フノ
デアリマス、本法案ニ於テハ、斯樣ナ危險
ヲ防グ爲ニ特別ニ勞働運動ニ基準ヲ與ヘタ
所ガ果シテアルカナイカト云フコトヲ承リ
タイノデアリマス、勞働ヲ單純ニ社會的ニ
觀察ヲスル、斯クテ此勞働問題ヲ社會化ス
ル、近頃頻ニ此社會化スルト云フヤウナ言
葉ガ用ヒラレテ居ルノデゴザリマスルガ、
此問題ヲ社會化スルト云フヤウナ場合ニ於
テハ各個人ノ權利財產ノ自由ト云フコト
ハ全然認メラレナイト云フヤウナコトニ到
達スルヤウナコトノ論理ガ或ハアリハシマ
イカ、斯ウ云フ點ニ付テハハァキリ論理
的ニ此處ニ到達スル、斯樣ニ主張セラレテ
居ル所ノモノモ無イトモ限ラヌノデアリマ
ス、而シテ現代社會ハ階級闘爭ノ上ニ築カ
レテアル、斯ウ云フ思想カラ經濟生活ヲ囘
轉セシメヤウトスル實行運動モアルノデア
リマス、內務大臣ノ仰セラレル所ニ依レ
バ、斯カル實行運動ニ對スル取締ト云フモ
ノハ別ニ方法ガアル、ソレハ其方デ取締レ
バ宜シイ、斯ウ云フノデゴザリマスルケレ
ドモ、一ツノ目的ヲ規定シ其目的ニ達スル
所ノ手段ニ付テ眞ノ指導原理ナリ或ハ標準
ト云フコトガ定メラレテナイト云フヤウナ
場合ニ於キマシテハ、平時ノ勞働運動ニ於
テ、此危險ニ至ラシメナイヤウナ用意ト準
備ガ必要デアルト思フノデゴザリマスルガ、
本案ニ於テ果シテ斯樣ナル事柄ガ慮ラレテ
規定セラレテ居ルト云フコトデゴザリマス
ルナラバ、其條規ノ御指定ヲ願ヒタイノデ
ゴザリマス、是ガ第二ノ御尋デアリマス、
第三ハ政府ハ階級闘爭ヲ以テ社會生活ノ
常態ト認メ、闘爭ハ社會通念ニ於テ免ルベ
カラザルモノデアルト御覽ニナッテ本法案ヲ
制定シタモノデアルトハ考ヘナイノデゴザ
リマスルケレドモ、併ナガラ或ハ交換セラレ
タル問答ノ趣旨ニ依リマシテ、例ヘバ安達內
務大臣ノ仰セラルル徹底セル協調主義、此
徹底セル協調主義ト云フコトハ、其前ニ遡ッ
テ、資本ト勞働トノ間ニ行ハレル階級闘爭
ガアル、之ヲ前提トシテ之ヲ徹底的ニ協調
セシムルト云フ御趣旨デアリマスカ如何デ
アリマスカ、此點ガ伺ヒタイノデアリマス、
階級鬪爭ノ上ニ立ツ協調ト、或ハ東洋ニ今日
マデ發達シテ參ッタ慈悲仁愛ノ偉大ナル生
活ニ淵源スル共存生活トノ間ニハ區別ノア
ルコトハ是ハ申ス迄モナイコトデアリマ
ス、東洋ニハ、殊ニ日本ニハ、安達內務大
臣モ仰セラレマシタヤウニ社會生活ニ對ス
ル獨自ノ意義ノアルト云フコトハ、是ハ固
ヨリデアラウト思フノデゴザイマスルガ、
今日橫ニ勞働運動ガ擴ガッテ、橫ニ唯世界的
ニナッテ居リマスル所ノ關係カラ、往々ニシ
テ縦ニ發達シテ參ノタ東洋カラ見ル所ノ社
會生活ノ意義ト云フモノガ甚シク輕ンゼラ
レル、是モ時代ノ大勢デアルカラ已ムヲ得
ナイ、斯ウ云フコトデゴザリマスレバソレ
迄デゴザリマスケレドモ、此時代ノ大勢ト
云フコトト、我國ノ從來發達シテ參リマシ
タ歷史的ニ、我ミノ國民生活、我〓ノ社會
生活ヲ見ル、此事ニ付テノ根本ノ理路ト云
フモノヲ質シ、然ル上ニ此立法ヲナサレル
ト云フコトデゴザリマスルナラバ或ハ此階
級鬪爭ト云フコトニ今日現在ノ生活ガ基礎
ヅケラレテ居ルモノデハナク、ソレデ徹底
セル協調ト云フ意味ハ其意味デハナイ、モッ
ト統一スル所ノ高イ地位カラ出テ來テ居ル
モノデアルト云フコトデゴザイマスルナラ
バ、其趣旨ヲ承リタイノデアリマス、是ガ
第三デアリマス、ソレカラ第四ハ團體協約
ト云フコトニ付テノ規定ヲ省カレタ理由ハ
何レニ在ルノデゴザリマセウ、卽チ法案ノ
性質上必要ナイモノト認メラレタコトニ依
ルノデゴザリマスカ、又ハ團體協約ノ運用
ニ對スル懸念カラ御採用ニナラナイト云フ
點ニアルノデゴザリマスカ、デ本法案ニ於
キマシテ勞働條件ノ意義ノ立テ方ニ依リマ
シテハ組合員各自ガ資本家又ハ事業主ト
契約スルダケデハ組合ノ目的ガ達セラレナ
イ場合ガアル、團體協約ヲ必要トスル場合
ガ却テ多クアルヤウニモ思ハレルノデアリ
マスガ、此規定ヲ省カレタ所ノ理由ト云フ
モノハ、何レニカ相當ニアルト考ヘマスル
ノデ、之ヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレカ
ラ第五ハ勞働爭議調停法中改正法律案ニ付
テ一點ダケ御尋ヲ致シテ置キタイノデアリ
マス、勞働爭議ノ調停ト云フコトニ付テハ、
是モ今日各國共ニ相當ニ骨ヲ折リ、又苦心
ヲ致シマシテ、種々ナル方法ヲ〓究ヲ遂ゲ、
又制度ヲ立テヽ居ルノデアリマス、ソコデ
此勞働組合法案ト共ニ勞働爭議調停法ノ改
正ヲセラレタト云フコトニ付テハ、何カ此
意味ノ頗ル深イ所ガ存在シテ居ルコトト考
ヘルノデゴザイマスルケレドモ、此改正ノ
條項ヲ一渡リ讀ンデ參リマシテ、何レノ點
ニ左樣ナ深イ趣旨ノ存在シテ居ルモノデア
ルカナイカト云フコトガ、私共ニ見分ケル
コトガ出來ナカッタノデアリマス、ソコデ伺
ヒマスルノハ、此改正案ノ中ニモ合法的同
盟擺業或ハ作業閉鎖、斯ウ云フヤウナコト
ヲ致シマスル場合ヲ明ニ認メタヤウデゴザ
リマスルガ、此樣ナ規定ヲ設ケラレマスル
事柄ハ、或ハ此勞働爭議調停法中ニ置クコ
トガ適當デアルカナイカト云フコトモ問題
デゴザリマスルケレドモ、此改正ノ規定ヲ
設ケマスルコトノ爲ニ却テ同盟罷業ヲ誘發
スル虞レガナイカドウカト云フコトヲ私ハ
承リタイノデアリマス、同盟罷業ヲ經濟的
爭議ノ手段ト致シマシテ認メテ參リマシタ
英國デゴザリマシテモ、只今ハ私ノ申ス迄
モナク「ストライキ」ト云フモノガ容易ニ政
治的ノ目的ニ轉化スルト云フコトヲ憂慮ス
ルニ至ッタノデゴザリマス、經濟的デゴザリ
マシテモ、或ハ國家ノ存立、國民ノ生活ニ
重大ナル關係ヲ有ッテ居ル產業ニ對シマシ
テハ其產業ヲ脅スト云フヤウナコトバカリ
デハナク、其痛苦ヲ感ズルモノハ勞働者方
面ニモ決シテ少クハナイノデアリマス、從
テ斯カル場合ノ「ストライキ」ニ付キマシテ
ハ現ニ今日英國ノ議會ニ於テ各政治家ニ
依ッテ討論セラレ、論議セラレテ居ルノデア
リマス、デ私ノ申ス迄モナク、獨逸ノ憲法
ノ精神デハ、「ストライキ」ハ契約違反ト見、
從テ之ヲ合法ト認メル規定ヲ設ケテハナイ
ノデゴザリマスルガ、勞働爭議ノ調停ニ付
キマシテハ、勞働爭議ノ種類ト性質ニ鑑ミ
マシテ、「ストライキ」ニ至ラザル工夫ヲ必
要トスベキコトト思フノデアリマス、恐ラ
クハ此改正案ハ「ストライキ」ニ至ラザル工
夫ヲ設ケル積リデ御規定ニナッタコトデア
ルト考ヘルノデゴザリマスルケレドモ、唯、
此作業ノ閉鎖或ハ同盟罷業ヲナス場合ハ三
日前ニ調停委員會ヲ請求セヨ、斯樣ニ規定
イタシマシタダケデハ私共ノ見ル所ヲ以
テ致シマシテハ、不法危險ナル「ストライ
キ」ヲ避ケル效果ハナイコトデアラウ、或ハ
此規定ハ却テ「ストライキ」ヲ誘引スルコト
トモナルデアラウ、無論「ストライキ」ハ勞働
者ニ取ッテモ決シテ喜ブベキコトデハナイ、
最後ノ手段デゴザリマス、ソレ故ニ出來ル
ダケ避ケナケレバナラヌ、此規定ノ爲ニ弱
イ所ノ「ストライキ」ト云フコトニ付キマシ
テハ、事前ニ封鎖スルコトモ出來マセウ、
或ハ事前ニ屏息セシムルコトモ出來マセ
ウ、併ナガラ危險ナ「ストライキ」ニ對シマ
シーハー、斯樣ナ規定ハ何等ノ力ヲ有タヌノ
デアリマス、三日前ニ「ストライキ」ヲ致シ
タイ、ソレ故ニ此調停委員會ヲ開イテ吳レ
ト云フコトヲ屆ケテ置イテ、大キナ「ストラ
イキ」ヲ始メルト云フ場合ヲ、此規定ノ爲ニ
防グ譯ニハ行カヌノデアリマス、ソレカラ
又請求ヲシナイト云フヤウナ爲ス科料デア
ルトカ或ハ拘留ト云フヤウナコトニ處セラ
レルコトニナッテ居ルヤウデゴザリマスル
ケレドモ、左樣ナ刑罰規定ト云フモノガ、
ソレ程ニ效果ヲ運ブモノデハナカラウト、
私ハ考ヘルノデアリマス、デ此點ハ同ジク
資本家或ハ事業家ノ方面カラモ非難セラ
V、又一方勞働組合ノ方面カラモ非難セラ
レルト云フヤウナ立場ニナッテ居ルノデア
リマス、デ此點ハ果シテドウ云フ趣旨ヲ以
テ御規定ニナッタノデゴザリマセウカ、或ハ
私ハ此爭議調停法ニ對シテマデ改正ヲセラ
レル案ヲ今日御提出ニナルノハ、何カ特別
ニ急イダ所ノ理由ガアルノデハナイカト思
フノデゴザリマスルガ、果シテ如何ナルモ
ノデゴザリマセウ、度ミ外國ノ事ヲ申上ゲ
ルヤウデゴザリマスガ、當院ノ各位ハ我ミ常
ニ最モ尊敬イタシテ居リマシテ、殊ニ此外
國ノ問題ニ付テハ私共ハ各位ノ御指導、御
〓ヲ受ケネバナラヌノデゴザリマスルガ、
併シ英吉利ノ今日勞働黨ト自由黨トノ間ニ
不法ナ「ストライキ」ニ關スル規定ニ付テ色
色相談ヲ重ネ、商議ヲ重ネテ居ルノデアリ
さっ、而シテ此自由黨ノ不法「ストライキ」
ニ對スル修正案ト云フモノハ職業爭議ノ
進行ト異ッタル又ハ附加シタル目的ヲ以
テ主タル目的トスル「ストライキ」又ハ「ロソ
クアウト」ハ、其目的ガ、「ストライキ」又
ハ「ロックアウト」ヲナスニ至ッタ職業又ハ
產業界ニ存スルト否ヤトヲ問ハズ、決シテ
合法ト認ムベキモノデハナイ、卽チ斯ウ云
フ事柄ヲ案ト致シマシテ、英吉利ノ政治家ハ
「ストライキ」ニハ多クノ場合、派生ノ目的
又ハ追加ノ目的ガ原因トナッテ、非常ニ恐ル
ベキ憂フベキ所ノ結果ヲ生ズルト云フヤウ
ナ事柄ヲ、體驗ヲ致シタノデアリマス、ソコ
デ此「ストライキ」ヲ自由ニシタ時代ノ其時
ノ法制ノ程度ニ止マルベキモノデアルカ、
或ハ之ヲ制限シタ所ノ時代ノ法制ニ止マル
ベキモノデアルカ、サウ云フヤウナコトニ付
キマシテ、今日盛ニ議論ガ交換セラレテ居ル
ノデゴザリマス、而シテ先ヅ此職務上、
職業上卽チ產業上、經濟上ノ爭議ノ進行ト
云フコトデアリマスレバ、是ハ先ヅ法律ニ
於テ禁ジナイノデアルケレドモ、其爭議ヲ
進行セシムルコトトハ異ッタ所ノ目的ヲ有〃
テ居リ、又ハ其進行ト附加シタル別ノ目的
ヲ以テ、ソレヲ「ストライキ」ノ主ナル目的
トスルト云フヤウナ場合ニ於テハ、其「スト
ライキ」ガ起ッタ所ノ職業又ハ產業ト云フコ
トニ關係ナシニ、斯樣ナル「ストライキ」ト
云フモノハ合法トハシナイ、斯ウ云フヤウ
ナ改正案ヲ出サウト云フ趣旨デアルヤウニ
思ハレルノデアリマス、デ此點ニ付テハ檢
事總長ナリ其外ノ人ミガ寄ッテ英國ノ現在
法ニ於ケル「ストライキ」ニ對スル對策意見
ヲ發表スルト云フヤウナ、如何ニモ此問題
ハ單純ナ「ストライキ」ノ問題ダケデゴザイ
マスルケレドモ、非常ニ此問題ヲ今日ノ此
英國ノ國運ニ鑑ミテ、是ハ容易ナラザル事
柄デアルトシテ、政治家ノ苦心經營ヲ致シ
デ居ル狀況ガ窺ハレルノデアリマス、勞働
組合法案ト云フモノハ、實ハ今日內務大臣
ニ於カレマシテハ非常ナ御熱心ナ御奮鬪デ
實ニ、申上ゲル言葉ハ穩カデナイカモ存ジ
マセヌガ、副總理ノ格ヲ以テ、斯樣ナ、私
ハ、日本ノ產業界ニ統制ヲ與ヘル、或ハ基
準ヲ與ヘル、或ハ標準ヲ與ヘルト云フ大間
題デゴザリマスルカラ、是ハ一朝一夕ノ問
題デハナイ、今年ダケノ問題デハチイ、是
カラ後ノ日本ノ勞働問題、是カラ後ノ日本
ノ產業問題、サウ云フコトニ極メテ大キナ
關係ヲ持。ッテ居ル案デゴザリマスルカラ、出
來ルコトデゴザリマスルナラバ、內閣ノ各
位御列席ノ上デ此問題ノ討議ヲ致スコトガ、
是ガ自然ノ順序デアラウト存ジマスルケレ
ドモ、色ミノ御都合ニ依リ內務大臣御單身
ニ之ヲ御引受ケニナッテ、而モ此熱烈ナル御
考デ此問題ノ討議ニ當ラレマスル事柄ハ、
私ハ實ニ敬服ヲ申上ゲルト云フ外ハナイノ
デゴザリマスルガ、併シ果シテ今年ノ議會
ニ於テ御提案ノ通リ通過スルカシナイカ分
ラサイ、是ハ普通選擧ノ例ヲ內務大臣ハ御
列キユナラレマヌルケレドモ、普通選擧ノ
如ク、唯年齡ヲ低下スルトカ、或ハ年齡ノ
制限ヲ撤廢スルトカ、或ハ財產ノ制限ヲ撤
發スルトカト云フヤウナ簡單ナ問題デハナ
クシテ、玆ニ此勞働問題ヲ組織スルト云フ、
糎メテ大キナ意味ヲ持ッテ居ルツデゴザイ
マスルカラ、從テ今年之ガ審議未了ニ終ル
サラ政府ハソレデ最早構ハナイ、斯ウ云フ
ヤウナ譯ニハ參ラヌ、又資本家モ今年之ガ
審議未了ニ終レバソレデ宜シイト云フノデ
ハナイ、勞働者モ此儘ニ審議未了ニ終レバ
ソレデ宜シイト云フノデハナイクデゴザイ
甲〓、是ハ我ミ日本國民ト致シマシテ、日
本帝國ノ臣民ト致シマシテ我國ノ今日ニ至
ル迄ノ產業、今日以後ノ產業ノ狀態ヲ考
)、又我團ノ諸般ク制度、卽チ此制度ノ延
イテ參リマスル所ハ、或ハ私有財產制度ヲ
廢スル方ガ宜イカ惡イカ、是ハ將來ニ起ル
問題デアラウト思ヲクデゴザイマスルガ、
左樣サ事柄ニ對シテ迄モ問題ヲ生ズル、サ
ウ云フヤウナ法案ガ此處ニ出テ居ルノデゴ
ザイマスルカラ、斯ウ云ヲ點ニ村キマシテ
私ハ數府ニ於テ單純ナル一時ク政權メ問題
以外ニ超越セラレテ、之ヲ國家ノ大經綸ト
シテ内務太臣ノ御所見ヲ承リタイクデゴザ
イマヌ(拍手起ル)
〔國務大臣安達謙藏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=13
-
014・安達謙藏
○國務大臣(安達謙蔵君) 鵜澤君ノ御間ニ
對シマシテ御答ヘ致シマネ、御尋ノ通リ此
問題ニ付キマシテ高斯大所ヨリ之ヲ見、叉
勞働者測ノ立場カラ、資本主ク立場カラ見
テ行クト云フコトハ當然ノコトデアリマス
ガ、私ノ度と衆議院デモ申シマスシ、貴族
院デモ御話イウシマシタ通リ、此案ニ付チ
資本主側ク方モ今田デハ滿足ク意志ヲ表シ
テ居ラレマセヌ、又勞働者側ノ方モ之ヲ不
滿足ト考ヘテ居リマスガ、種々ノ行掛リガ
アリ、又種々ノ意志ノ疎隔ヲシタヤウナコ
トモ若干アリマシテ、サウシテ其感情ノ爲
ニ徹底ヲ缺イタヤウナ所モ若干アリマス、
私ハソレデ結局冷靜ニナッテ考慮シマシク
曉ハ、資本主ニ於キマシテモ勞勸者側ニ於
キマシテモ、此案ニ贊成セラルルモノト確
信ヲ持ノテ居リマス、只今ニ於キマシテハ成
程種々ノ意見ヲ發表セラルル方ミハ、勞働
者ノ方モ資本主ノ方モ不滿足デアリマスケ
レドモ、多數ノ人ハ沈默ヲ守ッテ居リマス、
又個人トシテ訪問ヲ受ケマスル時ニハ符外
ニ同情ヲ表シテ吳ルル人モアリマスカラ、
今日資本主ガ悉ク、勞働者ヲ方ガ悉ク、此
案ニ反對ト云フ斷定ヲ下ス譯ニハイキマセ
ヌト考ヘマス、今日ノ思想上ノ太問題ニ對
シテ此案ノミデ解決スルカノ如ク考ヘテ居
ルヤウニ御話デゴザイマシタガ、サウハ考
ヘテ居リマセヌ、併ナガラ思想上ノ問題ニ
觸レテノ御問デアリマスカラ、思想問題ナ
ドヲ解決スルニ付キマシテ、卽チ今日我國
エ流レテ居ル所ノ此民衆的ノ思想、其思想
ノ解決ニ大イニ稗益スル所ガアリ、其思想
ノ惡化スルノヲ緩和スルニ於テハ尠カラザ
ル是ハ貢獻ガアル、斯ウ考ヘテ私ハ話ヲシ
テ居ルクデアリマス、殊ニ此勞働立法ヲミ
ヲ以テ思想問題等ヲ解決スルツ唯一ク材料
トハ考ヘテ居リマセヌ、又社會問題モ此問
題ノミ一於テ解決ガ出來ルト考ヘテ居リマ
セヌ、而シテ最モ重キヲ置イチ御尋ネニサ
リマシタ所クモノハ勞働條料ノ維持改善
ト云フモノハ如何ナル事ヲ爲スクデアルカ
ト云フコトガ一番ノ御話ノヤウデアッタヲ
デアリマス、此勞働條件ト申シマスト、先
ヅ賃銀ト勞働時間ト云フコトハ申ス迄モア
リマセヌ、第一、賃銀ヲ定メルコト、勞働
時間ヲ定メルコト或ハ其他直接ニ雇傭契
約ノ内容タルモノノ外ニハ勞働者ノ衞生ニ
關スル施設ヲスルコト、或ハ危害豫防ノ裝
置ヲスルト云フコト、要シマスルニ勞働ニ
從事スルニ付キマシテ事業主ト勞働者間ノ
各種ノ條件ヲ勞働條件ト申シテ居リマス、
只單ニ勞働條件ノ維持改善ノミナラズ、其
他ニ共濟、修養、其他ノ福利增進、而シテ
產業別、職業別ニスルト云フコトガ、私ハ
度ミ申ス、此程度ガ、是ガ卽チ穩健中正ナ
ル所以ト申シテ居ル次第デアリマス、穩健
中正ト云フコトハ此第一條ニ包含サレテ居
ル、茲ニ於キマシテ此勞働組合ニ對スル指
導精神モ私ハ十分統一シテ、所謂理路ノ一
貫セルモノアリト云フコトヲ固ク信ジテ居
リマス、我國ノ事情、世界ノ大勢、世界ノ
不安等ヲ考慮シナケレバナラヌト云フ意味
ノ御話デアリマシタ、無論其通リデアリマ
ス、我國ノ事情ハ十分考慮シタ上ニ、今日
ノ場合ニ於テ、此社會立法ヲナス勞働組合
法案ヲ作ルト云フコトガ、決シテ······一方
カラ、財界ガ非常ニ不況ダカラ、斯ウ云フ
時ニハ提案スベカラズト云フ御論ガアルニ
モ拘ハラズ、私ハ速ニ此場合ニ此勞働立法
ヲ出シマシテ、サウシテ勞働者ノ位置ヲ向
上セシムルコト、又其勞働運動ニ基準ヲ與
ヘルト云フコトガ、最モ必要ダト考ヘタ次
第デアリマス、決シテ今日ノ精勢ヲ無視シ
テサウシテ出シタノデハアリマセヌ、ツル
カラ只今獨逸ク憲法ノコトヲ御引キニナリ
マシテ色〓御話ニナリマシタガ、無論勞働
者ト資本主ト事業主、此三者ノ鼎立シテ協
調シテ行ウト云フコトガ必要デアリマス
サウ認メテ居リマス、ソレデ御話ニナッタ獨
逸ノ憲法ニ於キマシテモ、一方ニハ此勞資
恊同規律ニ付テ規定シヲ居リ、サウシテ一
方ニ於テハ勞働組合ヲ〓結ヲ保韓スル所ノ
規定ヲ設ケテ居ル、勞働組合ノ團結ヲ保障
スル所ノ規定ヲ有ッテ居ル、サウシテ茲ニ
御話ノ通リ勞働者、資本主、事業主ノ鼎立
ト云フコトヲ認メルト云フコトガ必要デア
リマス、飽クマデ私ハ徹底セル協調主義ト
云フモノハ、此三者ノ間ガ能ク諒解イタシ
マツテ、サウシテ行クコトガ、、徹底セル協
調主義ト云フ所以デアリマシテ、無論國家
ハ產業ニ對シテ出來得ルダケノ保護ヲ與ヘ
ルト云フコトハ當然ナコト、其產業ノ發達
ヲ助長スルコトハ言フ迄モナイコトデアリ
マスガ、併シ靜カニ今日ノ我國ノ勞働者ク
狀態ハ其生活程度等ノコトヲ歐米ニ比較イ
タシマシテ見マシクナラバ、公平ニ考ヘテ
私ハマダ及バザル所ガアルダラウト考ヘテ
居リマス、ソレカラ第三ニアリマシタガ、
私有財產制度ヲ破壞スルヤウナコトガアリ
ハセナイカ、サウ云フコトハ全然ナイト申
上ゲテ宜シウゴザイマス、若モ勞働組合ノ
事業及ビ其活動ガ、私有財產制度ヲ破壞ス
ルヤウナ場合ガアリマシタナラバ、今度ノ
成案第十六條第十七條第十八條等ニ依リマ
シテ之ヲ統制イタシマス、其他刑法、治安
維持法等ニ觸レル場合ハ又斷乎タル處置ヲ
爲スト云フコトハ當然ノコトデアリマス、
ソレカラ階級鬪爭ニ關スルコトノ御話ガア
リマシタガ、我ミハ勞資ク協調ヲ主眼ト致
シテ居リマスカラ、飽クマデ階級闘爭ナド
ク起ラチイヤウニ努メル積リデアリマス、
全ク此階級闘爭ヲ除去スルコトハ、根本ガ勞
資ノ間ノ闘爭ヲ前提トスルモノデハナイト
考ヘテ居リマス、此勞働者ト資本主トノ間
ノ利害ト云フモノハ、結局一致スルモノト
信ジテ居リマス、ソレデ徹底セル勞資ノ協
調ト云フコトヲ言ッテ置キマスノハ、此資本
主ト勞働者ノ方ノ此雙方ノ利益ヲ一致ヲセ
シメテ、共存共榮ノ本義ニ則ラシメルト云
フコトガ目的デアリマス、階級闘爭ノコト
ハ全然之ヲ否認シテ、階級鬪爭ナカラシム
ルコトニ努メタイノデアリマス、ソレカラ
團體協約ノコトニ付テノ御話ガアリマシタ
ガ、此團體協約ノコトニ付キマシテハ大分
議論ガアリマシテ、ソレハ勞働者側ナドデ
ハ團體協約ノ法規ヲ設クルガ宜イト云フ論
ガアリマシタガ、去リナガラ團體協約ノ形
式內容、效力等ニ關シマシテ、如何ニ之
ヲ定メルカト云フコトハ、愼重ナル考究ヲ
要スルコトデアリマス、ソレデ是ハ組合法
中ニ〓體協約ヲ設クルノ必要ナクシテ、又
團體協約ノコトヲ規定シヤウト致シマシタ
ナラバ一條ヤ二條デ收マルモノデアリマセ
ヌカラ、是ハ別ニ規定スル必要ガアルト考
ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ此爭議調
停ニ關スルコトデアリマスガ、勞働爭議ヲ
調停シテ「ストライキ」ヲ出來得ルダケ之ヲ
避ケルト云フコトハ、是ハ當然ノコトデア
リマス、ソレデ公益事業デアルカラト云ッ
テ罷業ヲ法規ヲ以テ全然禁止スルト云フ
譯ニモ當ラヌト思フノデアリマス、ソレデ
罷業ニ至リマセズシテ、サウシテ大多數···
或ハ不幸ニシテ罷業スルコトニナリマシテ
モ、成ルベク速ニ之ヲ解決スルコトヲ期ス
ルガ當然デアリマスカラ、爭議調停法ヲ設ケ
テ其足ラザル所ヲ今度改正イタシマシテ、
此爭議調停法ノ運用ヲ十分發揮セシメタイ
ト考ヘテ居リマス、作業閉鎖トカ云フヤウ
ナコトハソレヲ前提トシナケレバ立法ス
ル必要ハゴザイマセヌガ、其罷業ノコトハ
從來ノ法規ニモ規定シテアリマシタノデア
リマス、此爭議調停法ヲ拵ヘルガ爲ニ同盟
罷業ヲ誘發スルノ虞ガアリハシナイカ、却フ
テ誘發シハセヌカト云フ御尋ネデアリマシ
タガ、サウ云フコトハ全然ナイト云フコト
ノ確信ヲ持ノテ居リマス、之ヲ要シマスルニ
最後ノ御話ノ通リ、此勞働組合法ハ我國ノ今
日ノ情勢ニ於キマシテ最モ緊要ナコトト考
ヘテ居リマス、ソレデ鄭重ニ考慮シ、審議
ノ上ニ一ツノ成案ヲ得テ、玆ニ提案イタシ
タ次第デアリマスカラ、政府ト致シマシテ、
又內務省ト致シマシテハ此案ノ通過ヲ切
望イタシマシテ、此案ニ依ッテ今日ノ惡化セ
ル所ノ勞働運動ヲモ善導シ指導シテ行ク、
而シテ資本主ノ方モ決シテ之ガ爲ニ脅威ヲ
受ケラレルコトナキヤウニ致シマシテ、勞
資ノ協調ノ圓滿ニ行ハレムコトヲ切望シテ
居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=14
-
015・鵜澤總明
○鵜澤總明君 簡單デアリマスカラ、此席
カラ御願ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=16
-
017・鵜澤總明
○鵜澤總明君 只今內務大臣ノ御答ヲ得マ
シタガ、私ノ御尋ネ致シマシタ所ニ正當ニ
御答ヘニナラレテ居ル點ガ甚ダ少イノデア
リマス、唯此法文ニ書イテアルコトデゴザ
リマスルナラバ讀ンダダケデ分ルノデゴ
ザリマスルケレドモ、斯樣ナ法案ヲ提案ス
ルコトニ依ッテ、之ヲ成案トナサシムルコト
ニ於テ、私共ノ心配ヲ致シテ居ル目的、內
務大臣ノ熱心ヲ籠メテ居ル目的ガ、果シテ
達セラルルカドウカト云フコトヲ、私ハ御
聽キヲ致シタカッタノデゴザイマス、併ナガ
ラ之ニ付テノ御答ハナイ、是レ以上ノ御尋
ネハ追窮ニナリマスルカラ、私ハ之ヲ以テ
質疑ヲ打切リタイト思フ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 是ニテ質疑ノ通
告者ハ終了イタシマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=18
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019・東園基光
○子爵東園基光君 只今議題ニ上ボッテ居
リマスル勞働組合法案、勞働爭議調停法中
改正法律案、此二案ハ何レモ重要ナル法案
ト認メマスルニ依リマシテ、此特別委員ノ
數ヲ二十七名トシ、其選擧ヲ議長ニ一任シ
タイト存ジマス、御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=19
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020・立花種忠
○子爵立花種忠君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子傳ノ動議
ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、本案ノ特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ
朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
勞働組合法案特別委員
侯爵中御門經恭君伯爵有馬賴寧君
子爵前田利定君子爵岩城隆德君
子爵土岐章君土方寧君
男爵中島久萬吉君男爵福原俊丸君
男爵〓誠之助君男爵伊江朝助君
高橋琢也君山岡萬之助君
赤池濃君大津淳一郞君
樺山資英君松村義一君
內藤久寬君稻畑勝太郞君
森平兵衛君根津嘉一郞君
磯貝浩君磯村豐太郞君
藤原銀次郞君根本祐太郞君
津村重舍君鵜澤總明君
松本勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=22
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023・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 日程第三、「ロン
ドン」海軍條約實施ニ伴フ海軍職工整理ニ
關スル公債發行ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、小川大藏政務次官
「ロンドン」海軍條約實施ニ伴フ海軍職
工整理ニ關スル公債發行ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十七日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
「ロンドン」海軍條約實施ニ伴フ海軍
職工整理ニ關スル公債發行ニ關スル
法律案
昭和六年條約第一號千九百三十年「ロン
ドン」海軍條約ノ實施ニ伴フ艦艇建造ニ
關スル經費ノ減少ニ基キ解傭セラレタル
海軍職工ニ特別ノ手當トシテ交付スル爲
政府ハ額面六百八十萬圓ヲ限リ公債ヲ發
行スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=23
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024・小川郷太郎
○政府委員(小川郷太郞君) 只今議題トナ
リマシタ「ロンドン」海軍條約實施ニ伴フ海
軍職工整理ニ關スル公債發行ニ關スル法律
案ニ付キマシテ、其提案ノ理由ヲ說明イタ
シマス、倫敦海軍條約ノ實施ニ伴ヒマシテ、
艦艇建造ニ關スル經費ガ昭和六年度以降減
少イタスコトトナリマシタ結果トシテ、是
マデ艦艇ノ建造ニ從事シテ居リマシタ海軍
職工ノ中、相當ノ人員ヲ整理シナケレバナ
ラヌノデアリマス、而シテ今日一般經濟界
ノ不況ノ時機ニ際會イタシマシテ、是等多
數ノ人ミガ一時ニ離職セシメラルルニ付キ
マシテハ、之ニ適當ノ待遇ヲ與ヘルコトヲ
必要ト考ヘマシテ、特別ノ手當金ヲ支給ス
ルコトト致シタイト考ヘマス、此特別手當
ハ其一部ハ現金ヲ以テ支給シ、其大部分ハ
公債ヲ以テ給與スルコトヲ適當ト考ヘマ
ス而シテ之ニ要シマスル金額ハ其價格ヲ
時價ニ依ッテ換算イタシマスレバ、額面六百
八十万圓トナリマスノデ、之ガ公債發行ニ
關スル法律案ヲ提出シタ次第デアリマス、
何卒御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ
希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ハ先キニ指
名イタシマシタ特別會計ニ於ケル營繕費ニ
關スル法律案外六件ノ特別委員ニ付託イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第四、明治
四十二年法律第二十二號中改正法律案、政
府提出、衆議院送付、第一讀會、司法參與
官井本常作君
明治四十二年法津第二十二號中改正法
律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十七日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十二年法律第二十二號中改正
法律案
明治四十二年法律第二十二號中左ノ通改
正ス
第一條中「植栽ニ依リ生立セシメタル」ヲ
「生立スル」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ樹木ノ集團ノ範圍ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
參照
明治四十二年法律第二十一一號ハ立木ニ
關スル法律ナリ
〔政府委員井本常作君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=26
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027・井本常作
○政府委員(井本常作君) 只今議題トナッ
テ居リマスル明治四十二年法律第二十二號
中改正法律案ノ理山ヲ御說明申上ゲマス、
現在ノ明治四十二年法律第二十二號ハ植栽
ニ依ッテ成立イタシマシタ樹木ノ集團ニ付
テハ所有權保存ノ登記ヲ爲シタルモノハ
之ヲ不動產ト看做シマシテ、土地ト分離シ
テ讓渡ヲ爲シ、又ハ抵當權ノ目的ト爲スコ
トハ出來ルノデアリマス、然ルニ天然林ニ
付キマシテハ此規定ガナカッタノデアリマ
シテ、山林所有者ニ於テ齊シク不便ヲ感ジ
テ居クタノデアリマス、元來我國ノ林野ノ狀
態ハ天然林ガ大部分ヲ占メテ居リマシテ、
人工植栽林ト其經濟的ノ價値ニ於キマシテ
ハ何等撰ブ所ガナイノデアリマス、又其成
立イタシテ居ル狀態モ、人工植栽林ト同樣
ナモノハ少クナイノデアリマシテ、二四、
於テ林業技術ノ普及發達ニ依リマシテ、從
來ノ天然林ニ付キテ困難トセラレテ居ッタ
所ノ、登記事項ノ確定モ亦容易トナッタノデ
アリマスカラ、此時ニ當リマシテ、天然林
ノ樹木ノ集團ニ對シマシテハ所有權保存登
記ヲ許シマシテ、ソレヲ一個ノ不動產ト看
做スモ、何等權利關係ニ於テ混雜紛糾ヲ爲
スノ虞レナシト見ラルルニ至ッタノデアリ
マス、玆ニ於キマシテ、天然林ニ付テハ是
マデ人工植栽林ニ適用セラレテ來マシタ所
ノ登記制度ヲ擴張イタシマシテ、之ヲ土地
ト分離シ、讓渡ヲ爲シ、又抵當權ノ目的タ
ルコトヲ得セシメテ金融ヲ圓滑ナラシムル
コトハ、時宜ニ適シタル處置デアルト信ズ
ルノデアリマス、仍テ本案ヲ提出シタ次第
デアリマス、何卒御審議ノ上協贊ヲ與ヘラ
レムコトヲ切ニ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ特別委員
ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
明治四十二年法律第二十二號中改正法律
案特別委員
公爵鷹司信輔君子爵片桐貞央君
子爵毛利元恒君男爵足立豐君
鍋島桂次郞君安立綱之君
湯地幸平君北村宗四郞君
根本祐太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵徳川家違君) 日程第五ヨリ第
十二、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會議、
大藏政務次官小川〓太郞君
昭和四年度第一豫備金支出ノ件
昭和四年度特別會計第一豫備金支出ノ
件
昭和四年度豫備金外ニ於テ豫算超過及
豫豫外支出ノ件追加
昭和四年度特別會計第二豫備金支出ノ
件
昭和四年度特別會計豫備金外ニ於テ豫
算超過及豫算外支出ノ件追加
昭和五年度第二豫備金支出ノ件
昭和五年度特別會計第二豫備金支出ノ
件
昭和五年度特別會計豫備金外ニ於テ豫
算外支出ノ件
右本院ニ於テ承諾スヘキモノト議決セリ
因テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和六年三月十七日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=29
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030・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 昭和四年度第
一豫備金支出外七件ニ關スル事後承諾ヲ求
ムル爲ニ玆ニ議案ヲ提出シタニ付キマシ
テ、其大體ノ說明ヲ致サウト存ジマス、昭
和四年度第一豫備金ノ豫算額ハ六百万圓デ
アリマスガ、昭和四年勅令第九十七號ニ依
リマシテ、第一豫備金ヨリ補充イタシマシ
タ主ナル事項ハ、外國在勤俸、衞生試驗所
阿片費、市町村交付金、受託造修費、家畜
傳染病豫防費及製鐵業奬勵金等デアリマシ
テ、其總額ハ六百万圓デアリマス、各特別
會計ニ於キマシテモ其第一豫備金ヨリ豫算
超過ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス、次
ニ昭和四年度豫備金外支出追加ニ付キマシ
テ申上ゲマス、昭和五年一月二十一日、第
五十七囘帝國議會ニ於テ衆議院ガ解散セラ
レタル結果、昭和四年度ニ於テ支出ヲ要ス
ル費途ニ對シ政府ハ已ムヲ得ズ昭和五年一
月二十四日ヨリ同年三月二十五日迄ノ間ニ
於キマシテ歲計剩餘金ヲ以テ豫算超過及豫
算外ノ支出ヲナシタルモノガアリマス、其
事項ノ主ナルモノハ警察費連帶支辨金、諸
拂戾及補塡金、恩給、衆議院議員總選擧諸
費、失業救濟事業費補助、衆議院議員總選
擧通信取扱費等デアリマシテ、其總額ハ千
六百三十五万九千三百六十四圓デアリマ
ス、各特別會計ニ於キマシテモ第二豫備金
及豫備金外ニ於テ、其歲計剩餘金、或ハ歲
入金ヲ以テ豫算超過及豫算外ノ支出ヲ爲シ
タルモノガアリマス、次ニ昭和五年度第二
豫備金支出ニ付テ申上ゲマスレバ、昭和四
年度一般會計第二豫備金ノ豫算額ハ八百万
圓デアリマスガ、其支出ノ主ナル事項ヲ申
上ゲマスレバ、倫敦海軍會議參列費、失業
救濟臨時施設費補助、臺灣匪徒鎭定費及ビ
各省所營ニ互ル火災風水害其他ニ因ル復蕾
費等デアリマシテ、其總額ハ四百四十六万
千二百九十一圓デアリマス、尙ホ各特別會
計ニ於キマシテモ其第二豫備金及豫備金外
ニ於テ豫算外ノ支出ヲ爲シタルモノガアリ
マス、何卒御審議ノ上承諾ヲ與ヘラレムコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ指名
ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔〓古書記官朗讀〕
昭和四年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)特別委員
伯爵溝口直亮君子爵毛利高範君
子爵立花種忠君佐藤三吉君
藤澤利喜太郞君森賢吾君
男爵千秋季隆君橋本萬右衞門君
五十嵐甚藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十三ヨリ
第十丸、法律案、政府提出、衆議院送村、
第一讀倉ノ續発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十五ニハ
高橋琢也君ノ質疑ノ通告ガゴザイロス高
轎君ニ徇ヒマスガ、大藏大臣ハ目下衆議院
リ委員會ニ出席中デ本院ニハ出席不可能デ
ゴザイマスガ、大藏政務次官ハ出席シテ居
ラレマスガ、ツレデ質疑ヲナサイマスカ、如
他デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=33
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034・高橋琢也
○高橋藏也霜 國務太臣ハ一人モ居ラレマ
セヌデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御覽ノ通リデア
リマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=35
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036・高橋琢也
○高橋琢也君 宜シウゴザイマス、致シマ
ヌ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 高橋君ハ質疑ヲ
ナサイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=37
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038・高橋琢也
○高橋琢也君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 登壇ヲ望ミマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=39
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040・高橋琢也
○高橋琢也君 私ハ度モ大藏大臣ノ御出席
ヲ請求シテ置キマシタガ、大臣ノ御都合ガ
出來マセヌ樣子デゴザイマス、最早時日モ
ゴザイマセヌカラ大藏政務次官ニ質問ヲ致
シテ置キマスカラ、政務次官カラドウカ大
臣へ御傳達下サイマシテ大臣カラ御答辯ガ
顱ハレクイ、私ノ伺ハムトスルコトハ昨年
ノ一月二十一日デアル、續口總理大臣ガ此
席ニ於テ施政方針ノ演說セラレタ其場合ノ
コトト、今日ノ此賠償金ク法案ニ對シマス
ル政府ノ御意嚮ト大變ニ是ガ異ッテ居リマ
スノミナラズ、曩ニ幣原菌相代理ガ此席デ
以テ本年ノ施政方針ノ横稅ノ時ニ獨逸ノ賠
償金ニ付テノ誠ニ簡單ナ御演說ガゴザイマ
シタ、ソレト皆符合オタシマセヌカラ已ム
コトヲ得ズ私ハ之ヲ伺フコトニ致シク、y
レ故ニ總理大臣ガオ出デニチリマスリヤ最
モ宜シイメデスケレドモ、是ハ御病中ノコ
トデアルカラ私ハマア此處カラ差控ヘマシ
ク、併シ國務大臣ガ一人モ居ラレマセヌ、
斯ウ云フコトデゴザイマスカラ、誠ニ遺憾
デゴザイマスガ、尙ホ私ハ豫メ政務次官ニ
申上ゲマス、先般來此特別會計ノ七法案ニ
付テ私ガ質問ヲ致シタ場合ニ、七法案殆ド
全部ニ亙ッテ私ガ質問スル每ニ反對スルト
仰シヤッタ、少シモ討論ニ移ッテ居ラヌ場合
ノコトデ、質問ニ必要ナコトダケハ述ベマ
シタ、ソレヲ一々反對スルガ爲ニ反對スル
モノノヤウナ語氣ガアッタカラ、當時私ハ其
點ヲ御咎メ申シタコトハ御記憶デアラウト
思フ、ソレ故今日ハ其ヤウナ考ヲ持タズ極
メテ正シキ御考ヲ持ッテ御聽キヲ願ヒタイ、
私ノ伺フノハ簡單デアル、此獨逸ノ賠償金、
之ヲ特別會計カラ一般會計ニ移ス、唯是ダ
ケノ法案デアル、併シドウ云フ理由デ之ヲ
特別會計カラ一般會計ニ御移シニナラナケ
レバナラナイノデアルカ、之ガ伺ヒタイ、
此法案ノ理由書ニ依ルト存置ノ要ガナイカ
ラ一般會計ニ移ス必要ガアルト書イテア
ル、存置ノ必要ガ無クナッタ理由ハ何處ニア
ルノデスカ、ソレガ伺ヒタイ、ソレカラ今
ッ、此賠償金ナルモノヲ特別會計カラ一
般會計ニ移シテ何ニ御使ヒニナルノデアル
カ、其使途ガ伺ヒタイ、使フ途ガ伺ヒタイ、
之ヲ御答辯ヲ得タ後ニ又伺フコトニ致シマ
ス
【政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=40
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041・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 高橋サンノ御
質問ニ御答ヘ政シマス、第一點ハ獨逸賠償
金特別會計法ヲ廢止スル理由ハ何處ニアル
"、斯ウ云フコトデアリマス、獨逸賠償金
特別會計法ガ出來マシタ當時ハ、御承知ノ
通リ大體現金ヲ以テ支拂フト云フコトガ少
ナクアリマシテ、物ヲ以テ支拂ハレルコトガ
多クアリマシタガ、「ドーズ」案ガ出來マシテ
現金ヲ以テ支拂ハレルト云フ目度ガ立ック
ノデアリマス、今度「ヤング」案ガ出來マシ
テ益〓ソレガ確定シテ來タノデアリマス、
「ドーズ」案ガ出來マシタ時分ハ大正十三年
頃デアリマシタガ、十四年ニ撥止法律案ガ
出來タノデアリマス、一應ソレガ提案サレ
タノデゴザイマス、ソレハ一ツハ此特別會
計カラ致シマシテ救恤金ヲ支拂フト云フコ
トニナッテ居リマシテ、其救恤金ヲ支拂フト
云フ仕事モ大體太正十四年ノ法律ガ出來ル
コトニナリマシタカラデ、ソレカラ後ニナ
リマシタラバ獨逸ノ賠償金ヲ一般會計ニ受
入レテ宜シイト云フコトデ、賠償金特別會
計ヲ存置スル理由ハナイ、斯ウ云フコトデ
アリマシテ、デ一應廢止法律案ガ提案サル
タノデアリマスガ、衆議院ヲ通過イタシマ
シテ貴族院ニ參ッタノデアリマス、所ガ更ニ
モウ少シ救恤シタラドウカト云フヤウナ御
議論モアリマシテ、其救恤金ノ全ク濟ミマ
ス迄猶豫シタラドウカト云フヤウナ御意見
ガアリマシテ、ソレデ貴族院デ其儘ニナッタ
ノデアリマス、然ルニ其後ニ於キマシテ第
二同ノ救恤金モ支拂ハレルト云フコトニナ
リマシテ、第一囘ガ五百万圓、第二囘ガ四
百万圓デ、九百万圓程救恤金ヲ支拂フト云
フコトニナリマシテ、サウ云フ關係ハ濟ミ
マシタノデ、此特別會計ヲ存置スル必要ハ
ナイ、ソレデ從前ノ經緯カラ見マシテモ今
日ニ於キマシチモ之ヲ廢シテ然ルベキデア
ル、斯ウ云フ風ニ考ヘタノデアリマシテ
ソレガ、最早存置スル必要ナシト斯ウ提案
ニ申述ベタ次第デアリマス、ソレカラ第二
點ハ此一般會計ニ移シマシテ何處ニ使フ、
如何ナル使途ニ之ヲ使フカト云ヲ御質聞デ
アリマシタ、是ハ御承知ノ通リニ今日ニ於
キマシテモアノ特別會計ノ法律ノ中ニュ或
モノハ一般會計ニ繰入レマシテ、ソレヲ移
植民、ソレカラ國際聯盟、航空施設ト云フ
風ニ使フト云フコトニナッテ居リマス、所ガ
此法律ガ廢止致シマスト云フト、サウ云
フ一定ノ目的ト使途ト云フモノガ無クナリ
マスカラシテ、一般會計ノ何處ニ使ヲテモ宜
イト云フコトニナリマス、併シツレガ爲ニ
國際聯盟、或ハ航空施設、移植民保護奬勵
ト云フヤウチ風ノ費用ト云フモノハ、分後
出ナイカト云フトソレハサウデハナイト思
ヒマス、必要ニ應ジテ是ハ出テ來ルコトニ
ナラウト思ヒマス、大體御答へ致シマス
〔高橋琢也君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=41
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042・高橋琢也
○高橋環也君 本年ノ一月幣原代理首相ハ
此演壇ニ於テ、獨逸賭償金、是ハ當分一般
會計ニ繰入レル譯チ特別會計ニ置ク必要
ハオイト期ウ云フ意味ノコトヲ仰シヤッ
タヤウユ考ヘルガ、當分ト云フコトハ何月
飼且ト云フロトデナイカラ期日ハ固ヨリ
分リマセスケンドモ其ヤウユ長イコトデ
アルマイ、見エモ⻆ニモ當分ト云フノデア
ルカラ、又今他ニ必要ガアルテ仕方ナシニ之
ニ使フカラ當分一般會計ニ入レルガソ
レガ止ンデシマッタラバ、公債整理ノ基金ニ
又入レルノデアル、今回ハ公債ノ整理基金
ニ入レルヨトヲシナイソレハ當分デアル
ト斯ウ仰セラレルノデアル、サウスルト必
ズ來年度カ再來年度カ又之ヲ公債整理ノ方
ノ基金エ人レラレルコトデアルノデスカ、
之ヲ一ウ伺セタイ、ソレカラ今私ガ伺ッタヤ
ウニ此理由書ニ〓レバ存置ノ必要ガナ
1存置ノ必要ガナイト言ウテ、サウ
シテ當分ト斯ウ片ノ方デ言っテ居ラレルガ、
何方ガ本當カ實ハ分ラナイ、大藏大臣ノ御
考ヘト首相代理ノ御考ヘトハ違タノヂア
ラウト私ハ思フデ此點ニ付テハ大藏大臣
カラ御答辯下サルデアラウト思ヒマスカ
ラ······私ガ殊更之ヲ飼フノハ外ヂヤナイ、
昨年ノ一月二十一日ユ濱ロ總理大臣ハ大變
此演壇デ以テ綿密ト申シマセウカ、私デアッ
タラ長談議ト言ハレルニ違ヒナイ、速記錄
四頁ニュル施政方針ヲ述ベラレク、幣原外
務大臣ノ施政方針ガ三頁、兩方デ以テ七頁
アル、確カ其言語ハ一万六七千ニナッテ居ル
ト私ハ思フ、何故ニ斯樣ナ丁寧ナ、綿密ナ
施政方針ヲヤラレタカ、就中國債整理ト云
フコトニハ非常ナ力ヲ入レラレタ、其御演
說ニ至ヲテハ私ハ誠ニ感服ヲ致シタノデア
リマス、所謂言々火ヲ吐クト云フノハ此事
デアラウト私ハ思フ、ワレ故ニ私ハ連記ノ
寫シヲ甚ダ相濟ミマセヌケレドモ此處テ讀
ミマスガヽ少シ時間ヲ御許シヲ願ヒタイ
「昭和四年度豫算ニ於キマシテモ九千百餘
万圓ノ公債發行ヲ豫定シチ層ッタノデアリ
マスルノミナラズ、既定ノ財政計畫ニ依リ
マスレバ昭和五年度以降ニ於テモ每年相當
巨額ノ公債財源ヲ要スルコトニナ〃テ屠ッタ
ノデアリマス、此事タルヤ實ニ帝國財政ノ
非常ナル弱點デアリマシテ内外ノ信用エ
影響スルコト尠カラザルノミナラズ、特別
會計ニ於ケル公債新規發行額ノ累增ト相
俟シテ、公債總額ノ遞增殆ド其止マル所ヲ知
ラズ、爲ニ財界ヲ壓迫シテ產業ノ發達ヲ阻
害シ、公債ノ信用ヲ毀損シ、公債ノ元利拂
ニ對スル國民ノ負擔ヲ加重スルニ至ルノデ
アリマス、故を政府ハ昭和四年度豫算ヲ實
行スルニ當リマシテ、緊縮節約ニ依ッテ公債
ノ發行ヲ出來得ルダケ減額イタシ、更ニ昭
和五年度一般會計豫算ノ編威ニ當リマシテ
ハ前ニ述ベマシタル如ク公債財源ニ依ルコ
トヲ全然廢止シテシマックノデアリマス·
公債財源ニ依ルコトヲ全然廢止シテシマッ
タノデアリマス、断ノ如キハ大正圓年度以
來十五箇年ノ間絕エテ見ルヲ得ナカッタ現
象デアリマシチ、政府ハ昭和五年度豫算ノ
編成ニ臨ミ斷乎タル決心ヲ以ヲ之ヲ遂行シ
タル次第デアリマス、公債又ハ借入金ヲ全
然計上シナイ所ノ豫算ガ如何ニ財政ノ基礎
ヲ鞏固ナラシメ、如何ニ帝國ノ經濟的信用
ヲ高ムルニ效果ガアッタカト云フコトハ玆
ニ多言ヲ要セヌ事柄デアリマシテ、財政緊
縮ノ斷行ト相俟チ金解禁ノ實現ニ向元 気
メテ良好ナル效果ヲ齎ラシタト云フコトハ
天下周知ノ事實デアリマス而シテ政府ハ
將來ニ向テヲホホ方針ヲ持續スル決心デ
アリマス又特別會計ニ於キマシテモ公債
發行豫定額ヲ半減イタシ總額五千五百餘
万圓ノ程度ニ止メタノデアリマス、斯ノ如
ク政府ハ昭和五年度豫算ノ編成ニ當リマシ
テ、國債整理計畫ヲ立テ、原則ト致シマシ
テ其總額ヲ昭和四年度末ノ現在豫定高、卽
チ約六十億圓ヨリ增加セシメナイノミナラ
ズ、却ッテ漸次之ヲ減少セシムルノ方針ヲ立
テタノデアリマス、卽チ昭和五年度ニ於ケ
ル國債ノ償還額ハ從來ノ規定ニ依リマスル
所ノ八千四百餘万圓ノ外ニ、新ニ獨逸カラ
受取ルベキ賠償金年額六百餘万圓ヲ充當ス
ルコトニ数シマシテ、結局國債償還ノ總額
ハ九千餘万圓ト相成リ、同年度ニ於ケル特
別會計ノ新規發行公債五千五百餘万圓ヲ差
引キマシテモ、三千五百餘万圓ダケ此關係
ニ於テハ國債ノ減少ヲ見ル計算デアリマシ
テ。公債政策上一新紀元ヲ劃スルコトトナ
ルノヂアリマス」ト斯ウ言ハレテ居ル、大變
ニドウモ結構千萬ナ實ハ御計畫ト言ッテ宜
シイ抱負ト言ッテ宜シイ、經綸ト言ッチ宜
シイ.實ニ私ハ竊ニ淚ヲコボシテ喜ンダ、
定メシ國民ハ皆之ヲ聞イテ喜ンダデゴザイ
マセウ、其喜ビハドウデゴザイマセウ、此
五年度ニ於テ何處カヘ飛ンデシマック、現ニ
此獨逸ノ六百餘万圓ト云フ賠償金、之ヲ公
債整理ノ基金ニ入レルト云フコトヲ殊更ニ
玆デ言ッテオイデニナル、ソレニモ拘ラズ今
ハソッチノ必要ガナイカラ、是ハ一般會計ニ
スル、一般會計ユスルト仰シヤッテ、現ニ首
相代理ハ整理基金ニ入レルコトヲ當分ノ中
ハ中止スルト仰シヤル、餘リ人ヲ馬鹿ニシ
タ申條ト私ハ思フ、是ハ約一千言、而モ今
讀上ゲマシタヤウニ、將來公債ガ一文モ殖
エナイノヂヤ、ズン〓〓減クテ行ク、此處マ
デ保證セラレタ、一新組元マデ作ルト
然ルエ今日ハアチラデハ千二百万圓、コチ
ラデハ二千万圓、公債ヲ發行スル、併シ是
ハ本年限リデアルトカ、臨時デアルトカ云
フヤウナ御話デアル、獨逸ノ賠償金ダケハ
マサカニト思ウタラ、是ハ當分整理基金エ
入レルコトヲ中止スルト斯ウ云フコトヲ
言ハレタ、誠ニ驚入ッタ、昨年ノ一月是ダ
ケノコトヲ仰シヤッタノガ、悉ク雲散霧消シ
テシマッタ、マサカ當時之ヲ仰シヤルノニ
アレハ、是モ一時、彼モ一時、アノ時チヨット
思ヒ付イクカラ、チヨット言ッタト仰シヤフタ
ノデハナカラウト思フ、然ルニ現在モ矢張リ
濱口內閣デアラウト思フ、其濱口内閣ノ本
年ノ施政方針デ、是程ノ、猫ノ眼見タイニ
變ッタコトヲナサルト云フノハ、實ニ何トモ
申上ゲヤウガナイ、御忘レニナッタノデナケ
ラネバマサカアノヤウナコトハ出來ナイ筈
デアリマスル、獨逸ノ賠償金ヲ巳ムヲ得
ズ斯ウ云フコトニ使フト云フコトデアルナ
ラバソレヲ明言シテ戴キタイト私ガ伺ソ
タ所ガ、何ニモ其明答ハシナイヂ、一般會
計ユ入レレバ、何ニデモ使フ、斯ウ云フ御
答辯デアル、驚入ッタ、ドウシテ斯ウ云フコ
トヲ仰セニナルカ、マサカ濱日總理大臣ヤ
大藏大臣ナラ斯カル御答辯ハナカラウト思
フ、ソレ故ニ此事ハドウカ首相竝ニ大藏大
臣ニ能ク御傳ヘニナ,テ、モウ少シ確實ナ御
答ヲ戴キタイ、何故ナラバ濱口サンハ今ハ
御病體デオイデエナルカラ、サウ始終モ出
ラレモセヌデセウ、私モソレハ殊更ニ願ハ
ナカッタノデアリマス、併ナガラ是ダケノ
コトヲ言ッテ國民ニ之ヲ公表シテ置イテ、サ
ウシテ之ヲ反古ニナサルト云フコトハ恐
ラク之ヲ仰シヤル當時ハナサル御積デハナ
カッタラウト思フ、サウスルト、濱口サン
ハ病氣ダシ、アトノ大臣達ハ忘レテシマッタ、
マサカサウデモナカラウ、是ガ一行カ二行
ノ文字ナラ忘レテシマッタト云フコトモア
ルガ、千言近イ、而モ之ヲ支那人ニ評セシ
ムレバ、電光ノ舌ヲ吐キ波濤ノ辯ヲ馳スル
ト云フ位ノ評ヲスルダラウト思フ、是程ノ
大言壯語ヲシテ置イテ、サウシテソレハマ
ルキリ忘レタカノ如キ取扱ヲナサルト云フ
コトハ、驚入ッタコトデアリマス、既ニ先般
私ハ幣原首相代理ニ此コトヲ伺ッタ、公債ノ
一新紀元ト云フコトヲ濱口君ガ仰シヤッタ
ケレドモ、是ハドコカデ消滅シテシマッタノ
デスカト迄言ッタガ、一言モ之ニ對シテハ代
理首相ノ御答ガナイ、是ハチヨット御答モ出
來ナイカモ知レナイ、併ナガラ責任ト云フ
モノガアル以上ハ、御答ヲナサラナケレバ
ナラヌ筈デアル、之ヲ御答ヘナサラヌト云
フノニシテ見ルト、私ハ益〓疑フ、初メヨリ
是ハ斯ウ云フ抱負ダトカ、經綸ダトカ云フ
コトハ、御考ヘハナカッタノヂナイカト
ソロ〓〓疑ガ起シテ來ル、何故ナレバ昨年ノ
一月二十一日ハ議會ノ解散ノ前デセウ、議
會解散ノ前デアッテ、議會解散ヲシタラ續イ
テ直グ總選擧、成程是程ノ立派ナコトヲ言
ウテ、貴族院ノ議場ハ申スニ及バズ、衆議
院ノ議場デモ、兩院デ此コトヲ言ッテ、國民
ハ皆聞イテ居ル、國民ガ皆聞イテ居ルバカ
リヂヤアリマセヌ、總理大臣ノ施政方針ノ
演說デアルカラ世界ノ各國ノ政治家ハ少
クトモ皆聞イテ居ル、之ヲ天下ニ聲明シテ
置イテ、サウシテ議會ヲポーント解散シテ
シマッテ、サア總選擧ト來タカラ、國民ハソ
レハ隨喜ノ淚、アヽ濱口內閣ハエライモノ
ダ、是程日本人ガ常ニドウカアノ借金ヲ、
公債ヲ······ト斯ウ思ヲテ頭ヲ惱マシテ居ル
ノヲ皆無クシテヤラウト云フ、斯ウ云フ良
イ政策ヲ立テル程ノ人ダ、況ヤ一方ニ社會
政策ニハ最モ重キヲ置イテ居ルト書イテア
ル、サア斯ウ云フ結構ナ內閣ガ出來タ、國
民ハ此内閣デナクチヤナラヌ、此內閣ナラ
十年モ二十年モ續イテ貰ヒタイ、ソレニハ
良イ代議士ヲ議會ヘ送ラナケレバ駄目ダゾ
ヨト、斯ウ思ウタニ違ヒナイト私ハ思フ、
デ其效ガゴザイマシテ、今ノ代議士ハ七十
人カラ餘計政友會ヨリアル、政友會ハ前ニ
多數デアッタトスレバ、差引勘定スルト大變
ナ收穫ガアッタ、ダカラ是ハ徒爾デハナカッ
タラウト思フ、徒爾デハナカッタラウガ、併
シ濱口君ノアノ謹厚ナ人ガ、サウ云フ政策
ノ爲ニ御出シニナッタト云フコトハ、萬々私
ハナカラウト思フ、然ラバ何故ニ是程ノ偉
イコトヲ此演壇デ仰シヤッタ政策ヲ、破レ履
ヲ棄テルガ如ク、御棄テニナッタノハドウデ
アルカ、私ハ是ニ對シテ十分ナ、總理大臣
ナリ大藏大臣ノ御答辯ガ戴キタイ、今日直
チニ政務次官ノ御答辯ヲ戴カヌデモ宜シイ
ノデスヨ是ハソレカラ先ニ私ガ此金
ノ使途ヲ聞イタノハ外ヂヤナイ、何ニナサ
ルカ、大正三年ニ日本帝國ガ世界大戰ニ參
加シヤウト云フ時ノ國民ノ覺悟ハ、ドウデ
ゴザイマシタラウ、陸軍ヲ靑島ニ送リ、海
軍ヲ地中海カラ太平洋ヘ遠征セシメタ時
ノ國民ノ考ハドウアッタ、國家ハ終ニドウナ
ルノデアラウカ、苟モ東西ノ分ッテ居ル者ハ
之ヲ憂ヘナカッタ者ハ一人モナイ、ソレガ幸
ニシテ古今未曾有ノ世界大戰ニ勝利ニナ、
テ、其勝利ニナッタ曉ニ記念トナルベキモノ
ハ何デアルカ、此六百餘万圓ノ賠償金、年
年來ル所ノ賠償金、此外ニ委任統治ノ南洋
ガアルダケデアルソレ故ニ若シ之ヲ使
フトスレバ他ニ使フ途ガアルダラウ、況ヤ
此金ハ我國トシテハ實ニアノ世界大戰ノ記
念ノ、ドウシテモ忘レ得ルコトノ出來ナイ
大事ナ收穫デアル、所ガ今「ドーズ」案ガ斯ウ
ダト仰シヤルガ、御承知ノヤウニ當時「ヴェ
ルサイユ」ノ平和會議、アレニ行カレタ西
園寺公モ御健全デオ出デニナルガ、主タル
五大强國ト云フモノハ日米英佛伊デアル、
是ハ聯合國デアル、此聯合國ノ外ニ白耳義
ヲ初メ二十二箇國ト云フモノガ矢張リ聯合
國ト共ニ「ヴェルサイユ」會議ヲ構成シテ居
ル、獨逸ハ此二十七箇國ヲ向フニ廻ハシテ、
平和條約ヲ結ンデ其金ヲ出シテ居ルノデア
ル、ソレ故ニ此金高ハ少イデセウ、年々六
百餘万圓デアルカラ餘リ大シタ金デハナイ、
併ナガラ金モ其ノノ性質ガ今申上ゲタヤウ
ナ非常ニ大事ナモノデアル、濱口內閣ハ組
閣ノ當時十大政綱ノ確カ第二デアッタラウ
ト思フ、國體ノ觀念ト云フモノハ之ヲ涵養
シナケレバナラヌ、之ヲ涵養スルコトニハ
留意スルゾヨ、國民精神ノ作興ニハ努メル
ゾヨ、斯ウ云フコトヲ聲明デ明言シテ居ラ
レル政治ヲ明カニスルト言ウタ次ニ直グ
之ヲ言フテ居ラレル、誠ニ結構ノ話デアル、
併シ此國體觀念ヲ涵養スル、國民精神ノ作
興ニ努メルト云フコトハ此六百餘万圓、斯
ウ云フ金ヲ使フベキ途へ使ッテコソ初メテ
國體觀念ノ涵養モ出來ルノデアリマセウ、
國民精神ノ作興モ出來ルデアリマセウ、ソ
レヲ何ニ持ッテ行ッテモモウ差支ナイノダ、
大藏大臣ハ金ト云フコトニハ眼ガナイガ、
其金ノ起シテ來タ因ハ何處ニアルト云フコ
トヲマサカ御存ジナイノヂヤアルマイ、共
金ヲ何處へ使ッテモ宜シイト云フノガ已ニ
業ニ、金以外ニ何ニモ頭ニナイカラ斯ウ云
フコトヲ爲サレル、ソレ故ニ私ハ此法案ハ
實ハ否決シタイト思ッテ居ルケレドモ、丁度
私ガ出マセヌ日ニ大藏大臣ガ見エテ、出マ
セヌ日デハナイ、此處デ演說ヲシテ居ル爲
ニ委員會ニヨウ臨マナカッタ、ソレ故ニ委員
會ハ之ニ附帶條件ヲ附ケルト云フコトデ鳧
ガ付イタト承ッタ、ソレデ私ハ此時日モ切迫
シテ居ルコトヲモ顧ミズ此處ニ出テ、斯ウ
マデ質問ヲ致サナケレバナラナイノハ、誠
ニ私トシテハ心外ニ堪ヘナイノデス、併シ
餘リ爲サレ方ガヒドイ、一方ニ斯ウ云フ此
金ノ使途ニ付テ是ダケノコトガ御分リニ
ナッタラ、之ヲドウカ能ク大臣ニ御申出デ下
サイ、サウシテ其上デ大臣カラ御答辯ヲ願
ヒマス、ソレデ是ハモウ少シ然ルベキ途
ニ······殊殊ニ軍人軍屬ノ遺族ニ給與スルヤ
ウナ途ニ御使ヒ爲サレ、或ハ海軍ノ補充計
畫其他ニ御使ヒ爲サレトハ申上ゲナイガ、
政府トシテハ段ミ有意義ナ使ヒ方ガアル筈
ダト思フノデアリマスガ、サウ云フコトハ
一切考ヘテ居ラヌト云フノデアリマスカラ、
是ハ何處へ使ッテモ宜イト仰シヤルカ、ソレ
ガ伺ヒタイ、今日殊更ニ政務次官ノ御答ハ
アッタラ伺ッテモ宜シイガ、ソレハ別ニシテ
貰ヒタイ、必ズ是ハ大臣ニ御傳言ノ上デ大
臣ノ御答辯ヲ承ハリタイ
〔侯爵西〓從德君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=42
-
043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西〓侯爵ハドウ
云フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=43
-
044・西郷從徳
○侯爵西郷從德君 委員長ト致シマシテ、
高橋君ニ誤解ガアルヤウデアリマスカ
ラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=44
-
045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス
〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=45
-
046・西郷從徳
○侯爵西〓從德君 私ハ委員長デゴザイマ
シク關係上、只今ノ高橋君ノ御演說ニハ多
少ノ誤解ガアリマシテ、之ヲ第二讀會ニ進
メルノニ、皆樣ニ御判斷ノ誤リガアルトイ
ケマセメカラ、西〓カラ申上ゲテ置キマス、
實ハ大藏大臣モ委員會ニ三度來テ下サッタ
ノデアリマスガ、委員長ノ不行屆カラ二囘
ハオ流レニナリマシテ、又委員會モ六囘開
キマシタノデアリマスカラ、大藏大臣トハ
應答ヲ御重ネニナル機會ガ得ラレタ筈デア
リマスガ、高橋君ハ不幸ニシテ御健康ガ惡
カッタリ色ミナコトデ行違ヒマシタノデ
アリマス、只今ノ御話ハ斯ウ云フ風ニ思ヒ
マス、實際歲入ガ減シテ來テ萬已ムヲ得ナイ
カラ、六百餘万圓ヲ歲入ニ入レルノデアッ
テ、之ヲ取消セバ歲入增加ニヤサシイト云
フヤウナコトデハナイ、本當ニ金ガ足ラナ
イ、ソレカラソレヲ來年返ス再來年返スト
云フコトハ今ノ所デハ極メラレナイ、從ク
テ之ヲ或委員カラ說ノ出マシタヤウニ、內
閣ノ更ル度ニ取消シタリ出シタリシナイヤ
ウニ、軍艦ノ補充デモスルヤウナコトニ極
リヲ付ケタラドウカト云フヤウナコトモア
リマシタガ、ソレハ他日復活ヲスル時ニス
ルノデ、非募債主義ヲ決シテ棄テテ居ルノデ
ハナイト云フコトデ、高橋サンノ今オ終ヒ
ニ仰シヤリマシタコトモ、委員會ノ席デハ、
大藏大臣ガ明瞭ニ答ヘラレタノデアリマ
ス、ソコデ委員會ハ附帶條件ハ附ケマシタ
ガ、全會一致、原案ヲ可決イタシタ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=46
-
047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小川政務次官
〔高橋琢也君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=47
-
048・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 小川君ガ發言ヲ
求メラレマシタ
〔政府委員小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=48
-
049・小川郷太郎
○政府委員(小川郷太郞君) 高橋サンノ只
今ノ御質問ニ付キマシテ大體大藏大臣ニ傳
ヘロト云フコトデゴザイマスカラ傳ヘマス
ガ、私ノ先刻答へマシタコトニ關聯イタシ
マシテ、モウ少シ補ッテ置イタ方ガ宜カラ
ウト考ヘマス、玆ニ發言ヲ求メタ次第デア
リマス、獨逸賠償金ノ使途ニ關係シテノ御
質問中ニ、私ガ之ヲ廢スレバ一般財源トナ
ルト云フコトヲ申シマシタ、ソレニ付キマ
シテ又御質問ガアリマシタカラ、ソレヲ先
ヅ申上ゲマス、獨逸賠償金ノ使途ニ付キマ
シテハ、大體、昨年ノ此法律改正案ノ時ニ
モ申述ベマシタ通リニ、事ノ性質ハ臨時的
收入デアリマスカラシテ、之ヲ臨時的ノ方
ニ使フ方ガ宜シイ、卽チ公債償還ニ使ッタノ
ガ最モ適當デアル、殊ニ獨逸ノ戰爭ニ關聯
イタシマシテ日本ノ國債ハ非常ニ殖エテ來
タノデアリマスカラ、賠償金ガ這入ッテ來マ
スレバ、ソレヲ減債基金ノ方ニ繰入レタノ
ガ至當デアル、ソレガ濱口內閣ノ一ツノ政
策ニナリマシテ、高橋サンガ只今御引用ニ
ナッタ所デアリマス、年々六百三十万圓グラ
イノモノヲ減債基金ニ繰入レルト云フ豫定
デアッタノデアリマス、然ルニ共前ノ······之ヲ
改正セザル前ノ法律ハ先刻私ガ說明イタシ
マシタ通リニ、國際聯盟、移植民及航空施
設ニ關スル經費ニ使用スルト云フコトデア
リマシテ、若シ使途ガ法律ニ定ッテアルト云
フナラバ、現行法デハ國際聯盟、移植民及
航空施設ニ關スル經費ニ使フト云フコト
ト、ソレカラ減債基金ニ繰入レテ公債償還
ノ經費ニ使フ、斯ウ云フコトニ此使途ガ決
マッテ居ルノデアリマス、現內閣ハ寧ロ公債
償還ノ方ニ使フ方ガ宜イ、斯ウ云フヤウナ
政策ヲ決メマシテ、ソレデ此法律ノ改正ヲ
昨年行ッタ譯デアリマス、所デ今囘此法律ヲ
廢止イタシマスレバ、獨逸ノ賠償金ハ直チ
ニ一般會計ニ這入リマスカラ、一般會計デ
之ヲ使フト云フコトニナルノデ、卽チ普通
財源トナルト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
WV、併シ之ヲ政策ノ上カラ申シマスト云
フト、現內閣ハ矢張リ斯ウ云フ金ハ減債基
金ノ方ニ繰入レルノガ宜イト思ッテ居ルノ
デアリマス、唯、只今委員長カラモ御話ガア
リマシタ通リニ、今日ノ財政ノ狀態ガ頗ル
苦シイノデアリマスカラ、先ヅ當分ノ內、
此減債基金ニ繰入レルト云フ此政策モ止メ
テ置ク、併シ當分ノ內デアリマスカラシテ、
此政策ヲ棄テタノデハナイ、成ベク速ニ之
ヲ囘復シテ減債基金ニ繰入レタイト考ヘテ
居ルノデアリマシテ、其當分ト云フノガ來
年カ再來年カト云フコトハ申上ゲ兼ネマ
ス、唯財政整理ヲ致シマスシ、或ハ財界ノ
囘復ト云フヤウナ時ヲ待チマシテ、財源ガ
出來次第、此賠償金ヲ減債基金ノ方ニ繰入
レルト云フ政策ヲ行ヲテ行キタイ、サウ云フ
風ニ考ヘテ居リマスノデ、濱口首相、ソレカ
ラ幣原臨時首相代理ノ御話ノナッタニハ、サウ
云フ所ニ關係シテデアルト思ヒマス、尙ホ
六百三十万圓ノ繰入ヲスルコトヲ止メタト
云フコトニ付キマシテ、チヨット或ハ私ノ聽
キ違ヒカモ知レマセヌケレドモ、一ツモ之
ヲ行ハナイヤウニ御考ヘニナリマシタナラ
バ、ソレハ間違デアリマシテ、昭和五年ニ
ハ六百三十万圓ヲ此賠償金特別會計カラ減
債基金ノ方ニ繰入レテ居ルノデアリマス、
昭和六年度カラ之ヲ一時止メテ行クト云フ
コトニナルノデアリマス、幾重ニモ御了解
ヲ願ヒタイノハ、其政策ヲ棄テタニ非ズシ
テ、今日ハ非常特別ノ場合デアルカラシテ
當分止メテ行クノデアル、斯ウ云フ風ニ御
了解ヲ願ヒタイノデアリマス、尙ホ公債政
策全體ニ付テノ御話モアリマシタガ、起債
政策ソレカラ償還政策ニ付テノ御話モアリ
マシタ、其起債政策ノ中ニモ、今度ノ失業
公債ナンカニ關係シテ御話ガアリマシタケ
レドモ、是モ只今ノ賠償金ノ間題ト同ジヤ
ウニ非常特別ノ場合デアリマスカラシテ、
一般會計ニハ公債ヲ起サヌト云フ政策ヲ執
リツツモ、尙ホ例外的ニ失業公債ハ昭和六
年ニ認メザルヲ得ナクナッタノデアリマス、
償還ノ方法モ大體今日ノ現在ノ制度デヤッ
テ居リマスルガ、其中デ獨逸賠償金ダケハ
繰入レ得ナイト云フニ過ギナイノデアリマ
ス、減債基金ノ制度ハ御承知ノ通リニ、立
前ハ自由償還制度ニ對立イタシマシテ强制
的ニ公債ヲ償還スルト云フ所ニ精神ガアリ
マシテ、其前年度首ニ於ケル公債額ノ万分
ノ百十六ヲ繰入レテ行クト云フ所ガ最モ大
切ナ點デアリマス、其外ニ減債基金ニ規定
シテアリマスモノハ、例ヘバ新ニ出來マシ
タ剩餘金ノ四分ノ一繰入レル、ソレカラ震
災手形ニ關聯シテ戾ッテ來ル金ガアルナラ
バ、又アノ昭和二年ノ財界ノ變動ニ依リマ
シテ政府カラ保障イタシマシタヤウナモノ
ノ返シテ來ル金ガ來マスト云フト、ソレ
ヲ減債基金ノ方ヘ繰入レルト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、サウ云フモノハ卽チ這
入ッテ參レバ入レル、强制的ノモノデハナ
イ、無ケレバ入レナイ、這入ッテ來レバ
入レル、這入ッテ來ル程度ニ入レルト云フノ
デアリマシテ、同ジ減債基金繰入ト申シマ
シテモ少シ趣ガ違ッテ居リマス、獨逸賠償金
モ、卽チ斯ウ云フヤウナ種類デアリマシ
テ、實ハ獨逸賠償金ガ這入レバ、卽チ入レ
ルト云フヤウナ此臨時的ノモノニナルノデ
アリマス、減債基金ノ繰入ヲ中止シマスト
云フト、何ダカ公債政策ニ非常ニ激變ガ來
タヤウニ考ヘラレマスカモ知レマセヌガ、
ソレハ百分ノ百十六ト云フヤウナ義務的ナ
强制的ノ減債基金繰入ト云フモノヲ廢止イ
タシマスト云フト、是ハ大キナ問題トナラ
ウト思フノデアリマス、併シ財政上ニ困リ
マシタ時分ニハ其萬分ノ百十六ニ當ルヤウ
ナモノモ中止シタコトガアリマス、アノ八
八艦隊完成ノ時ニ當リマシテ、サウ云フヤ
ウナコトモアッタノデアリマス、今回ハサウ
云フヤウナ問題デアリマセヌノデ、唯獨逸
賠償金ト云フモノガ臨時的ノモノデ偶、ア
レバ之ヲ入レルト云フヤウナ風ノ立前ノモ
ノデアリマスカラシテ、此財界ノ不況、財
政ノ困難ナル時ニ、一時之ヲ止メマシテ、
當分之ヲ止メテ置キマシテ、後ニ又之ヲ囘
復シテ行クト云フヤウナコトハ、何モ公債
政策上ノ大變ナ矛盾デモナイ、斯ウ考ヘテ
居ルヤウナ次第デアリマシテ、從ヶテ又六十
億ニ上セナイヤウニシヤウト云フヤウナ考
モ今日マデ貫イテ居リマシテ、公債ノ總額
ト云フモノハ六十億ニ達シテ居ナイノデア
リマス、前內閣時代ニ於キマシテノ公債計
畫ニ依リマスルト年々ニ一一億圓位ノ起債ヲ
シテ行クト云フコトデアリマシテ、公債ノ
額ガ非常ニ多クナッテ來マシテ、ソレガ財界
ニ、又財政ノ上ニ色ミナル惡イ影響ヲ及ボ
シタノデアリマスカラシテ、ソレヲ斷然止
メテ行クト云フノデ、濱口內閣ノ公債政策ハ
寧ロ公債ヲ發行スルコトヲ成ルベク減ジテ
行カウ、サウシテ償還ノ方トモ釣合ハセマ
シテ公債ガ殖エナイヤウニシヤウト云フ所
ニ精神ガアリマシテ、今日ノ非常特別ノ場
合ニ多少ノ公債ノ償還ノ額ガ思フヤウニナ
ラナカッタリ、公債ノ發行額ガ失業公債等デ
少シ殖エタリ致シマシテモ、全體ヲ引シ括
メテ考ヘテ見マスルト云フト、公債ノ額ハ
增シテ行カナイノデアリマシテ、前內閣ノ
執リマシク公債政策ト云フモノトハ大變ニ
違ッテ居ルト考ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=49
-
050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 諸君ニ御諮リヲ
致シマス、日程第十五ノ法律案ニハ高橋君
ノ大藏大臣ニ對スル質疑ガゴサイマシテ、
小川大藏政務次官ノ答辯ヲ要求セラレマセ
ヌノデ、大藏大臣ノ出席ヲ待,テ同大臣ヨ
リノ答辯ヲ望マルル樣子デゴザイマスカ
テ、其答辯ノ濟ムマデ、此法律案ノ第二讀
會ニ移スベキヤ否ヤノ決ヲ採ルノハ、聊カ
不穩當ノ嫌ガゴザイマスカラ、諸君ニ於テ
御異議ガナケレバ、此日程第十五ノ法律案
ダケ採決ヲ他日ニ延バシテハ如何デゴザイ
マスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナケレ
バ、先刻議長ノ申述べマシタ第十三ヨリ第
十九迄ノ法律案ハ、第十五ヲ除キマシテ、
各案ヲ第二讀會ニ移シテ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=51
-
052・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=52
-
053・清岡長言
○子爵清岡長言君 直ニ各案ノ第二讀會ヲ
開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=53
-
054・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=54
-
055・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=55
-
056・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=56
-
057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案全部ヲ議題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=58
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059・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直ニ各案ノ第三讀會ヲ
開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=59
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060・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=62
-
063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十、製
鐵業奬勵法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、特別委
員長二荒伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
製鐵業奬勵法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長伯爵二荒芳德
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=65
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066・二荒芳徳
○伯爵二芳荒德君 製鐵業奬勵法中改正法
律案ノ特別委員會ノ經過ヲ申上ゲタイト存
ジマス、本委員會ハ前後二囘ニ亙リマシテ
會議ヲ致シマシタ、此奬勵法ト申シマスモ
ノハ、銑鐵ト鋼鐵トノ兩方ノ作業ヲ一貫シ
テ奬勵スルコトヲ目的ト致シタモノデゴザ
イマシテ、一定ノ能力以上ノ製鐵事業ニ對
シマシテハ、或ハ土地收用法ノ適用デアル
トカ、或ハ機械器具ノ輸入稅ノ免除デアル
トカ云フヤウナ特典ヲ與ヘテ居リマス法律
デアリマス、而シテ本改正案ニ指示サレテ
居リマス所ノモノハ附則ノ一部デゴザイマ
ウテ、附題ノ第二項中ニゴザイマス「五年間」
ト云フ期限ヲ「十年間」ニ改メマスコトト、附
動ノ第三項中ニ「十五年間」ノ下ニ、「(其ノ十
五年ノ期間ガ昭和十年迄ニ滿了スルモノニ
在リテハ昭和十一年迄)」ト云フ字ヲ加ヘタ
ト云フ改正デアリマス、此法律案ハ本年ノ
四月九日ニ現行法ニ依リマシテ此特權ガ切
レマス爲ニ、特ニ之ヲ延バシマシテ、サウ
シテ舊式ナ製鐵事業等ニ對シマシテハ此
特典ヲ延長イタシマシテ、一層銑鐵事業ノ
完全ナル改良ヲ期シタイ、斯ウ云フ改正案
デアリマス、此五年間ノ期間ヲ何故延長シ
ナケレバナラヌカト申シマスト世界大戰
ノ後ニ於キマシテ、色ニ此銑鐵事業ト云フ
モノガ振ハナイ點モゴザイマスノデ、特
今日之ヲ延バシマスコトガ獎勵上非常ニ必
要デアルト云フコトデゴザイマス、之ニ付
キマシテハ、本特別委員曾ニ於キマシテハ、
事情已ムヲ得ナイモノデアルト云フコトヲ
認メマシテ可決ヲ致シマシケ次第デアリマ
ズ右御報〓ヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=68
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069・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直ニ第二讀會ヲ開カレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=69
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070・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=70
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071・徳川家達
○議長(公爵徳川家蓮君) 〓岡子爵ノ本案
ノ第二讀會ヲ直ニ開クト云フ動議ニ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=71
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072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=74
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075・清岡長言
○子爵濟岡長言君 直ニ第三讀會ヲ開カレ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=75
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076・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=76
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077・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=77
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078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=78
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079・徳川家達
○讀長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異作ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德周家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第二十一、
違警罪卽决例中改正法律案、衆議院提出、
第一讀會
違警罪卽決例中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和六年三月十七日
衆議院議長藤澤幾之輔
貴族院議長公爵德川家達殿
違警罪卽决例中左ノ通改正ス
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
被〓人ノ法定代理人、保佐人又ハ配偶
者ハ被〓人ノ爲獨立ジテ前項ノ講求ヲ
爲スコトヲ得
第十條ノ二前二條ノ規定ニ依リ留置シ
タル場合ニ於テハ連ニ被〓人ノ法定代
理人、保佐人、直系尊屬、直系卑屬、
配偶者及ヒ被〓人ノ屬スル家ノ戶主中
被告人ノ指定スル者ニ其旨ヲ通知スヘ
第十四條第丸條又ハ第十條ノ規定ニ依
リ留置セラレタル者ノ接見又ハ書類其
他ノ物ノ接受ニ付テハ刑事訴訟法第百
十一條及ヒ第百十二條第一項ノ規定ヲ
準用ス但接見ハ之ヲ禁止スルコトヲ得
ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ハ刑事補償
法案特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十二、
鑛業法中改正法律案、衆議院提出、第一讀
會ノ續、委員長報告、二荒伯爵ノ登壇ヲ望
ミマス
鑛業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長伯爵二荒芳德
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=83
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084・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 鑛業法中改正法律案特
別委員會ノ經過ヲ御報〓イタシマス、此法
律案ハ衆議院ノ提出デゴザイマシテ、鑛產
稅ト申ウマスモノハ、鑛產物ノ價格ニ依リ
マシテ國稅及其附加稅ヲ決メテ居リマスノ
デアリマス、本法律案ハ此比率ヲ變ヘヤウ
ト云フ案デゴザイマス、卽チ第八十五條中
ニ「百分ノ一」トゴザイマスノヲ「千分ノ五」
ニ、八十八條一項ニゴザイマス北海道、府
縣及市町村ノ鑛産稅ニ對シマシテ、各〓新シ
イ比率ニ改メヤウト云フ案デゴザイマス、
此政正ノ要點ハ永年ノ問題デゴザイマシ
テ、政府委員ノ說明ニ依リマスレバ、成べ
ク早ク改正ヲ致シタイト云フ考デアッタサ
ウデアリマス、併ナガラ稅制整理ガ件ヒマ
セヌ爲ニ、遂ニ政府ノ案ト致シマシテハ出ス
機會ヲ失シテ居リマシタ所ガ、今囘、衆議
院カラ出マシタノデアリマシテ、政府トシ
マシテハ誠ニ適當ナ改正案ダト云フ說明デ
ゴサイマス、此特別委員會ニ於テ出マシタ
所ノ質間ノ一、二ヲ擧ゲマスナラバ、鑛業
權者ニ於テハ今囘ノ改正ニ於テ別ニ負擔ノ
差ハナイカト云フ質問モゴザイマシタ、之
ニ對シテハ唯國稅トシテ有ッテ居ルモノガ
市町村ニ移リマスノデアリマシテ、何等鑛
業權者ニ對シテ負擔ノ差ハナイト云フ說明
デゴザイマス、又他ノ委員カラハ、ドノ位
ノ國稅ガ市町村ニ移ルノカト云フ質問モゴ
ザイマシタ、政府ハ之ニ答ヘマシテ、三百
万圓內外ノ額ガ市町村ニ移ルト云フコトデ
ゴザイマシタ、一番問題ニナリマシタノハ、
此法律ノ施行ノ期日ト云フモノガ勅令ニ
依シテ定マルト云フコトデゴザイマス、卽チ
他ノ言葉ヲ以テ申シマスナラバ、此法律ノ
施行期限ト云フモノハ一ニ勅令ニ係ッテ居
リマシテ、其期限ヲ的確ニ決メテナイト云
フ點ニアルノデアリマス、卽チ何時カラ之
ヲ施行スベキモノデアルカト云フコトノ義
務ガ、政府ニ確實ニ決マッテ居ラヌト云フ點
デアリマス、之ニ付キマシテ可ナリ繰返サ
レマシテ質問モゴザイマシタガ、政府委員
ノ答ヘラレル所ニ依リマスレバ、明年度ニ
ハ稅制ヲ根本的ニ整理ヲシタイト云フ計畫
モアルガ故ニ、出來ルコトナラバ其時カラ
致シタイ希望ヲ持ッテ居ル、斯ウ云フ御返事
デアリマシタ、前後三囘ニ亙リマシテ色ミ
ト質疑應答ヲ重ネマシタ結果、本特別委員
會ト致シマシテハ、成ベク早ク此改正ガ出
來マスヤウニ、卽チ政府ノ答ヘラレマシタ
所ノ、出來ルナラバ明年カラデモ之ヲ施行
サレタイト云フ希望ヲ以チマシテ、本改正
案ヲ可決確定イタシマシタ次第デアリマ
ス右御報〓ヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開イテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=86
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087・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直チニ第二讀會ヲ開カ
レムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=87
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088・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=89
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090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=92
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093・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直チニ第三讀會ヲ開カ
レムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=93
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094・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵徳川家違君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=95
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096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=96
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097・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二十三ヨ
リ第三十四マデ、請願、會議
意見書案
一時金發兵恩給法中改正ノ件
廣島縣廣島市中島新町平民〓員楠原
仙太郞外八十名呈出
山形縣山形市七日町平民蟻川久三郞
外九名呈出
東京府荏原郡荏原町土木建築請負業
石川金太郞外十四名呈出
廣島縣豐田郡木ノ江町平民眞鍋萬吉
外十二名呈出
德島縣美馬郡半田町平民加藤作助外
五名呈出
福島縣雙葉郡新山町平民農相樂昌外
十八名呈出
神奈川縣橫濱市中區麥田町平民石田
定五郎外九名呈出
沖繩縣那覇市垣花町農宮里樽外五名
呈出
福島縣若松市馬場上二ノ町平民商金
子孫七外二十七名呈出
福井縣大飯郡和田村理髪業原田蔦治
郞外十一名呈出
宮城縣宮城郡松島町平民池田準治外
五十二名呈出
廣島縣高田郡吉田町平民農平原福次
郞外十六名呈出
和歌山縣和歌山市南休賀町米穀商狩
谷彌太郞外五十八名呈出
滋賀縣神崎郡八幡村平民農德岡實次
郞外九十九名呈出
群馬縣佐波郡宮〓村平民農石原嘉藏
外九十二名呈出
廣島縣山縣郡新庄村平民森山京市外
五名呈出
京都市中京區大宮通平民菓子製造業
森本伊之助外三十一名呈出
廣島縣山縣郡大朝村平民田村與市外
六名呈出
靑森縣靑森市米町平民商肴倉嘉吉呈
出栃木縣下都賀郡藤岡町農平間正一
郞外七名呈出
兵庫縣神戶市山本通平民北川原榮次
郞外四十九名呈出
岡山縣岡山市上出石町平民寺尾安太
郞外十九名呈出
右ノ請願ハ世態ノ進運ト經濟界ノ推移ニ
伴ヒ文武官ノ恩給ハ漸次改正セラレタル
ニ拘ラス軍人傷痍者ノ大半ハ單ニ一時金
ヲ受ケタルノミニシテ生活上何等ノ保障
ナク爲ニ今ヤ窮境ニ陷レルモノ尠カラサ
ルハ國民士氣振興上甚タ遺憾ナルニ依リ
速ニ恩給法ヲ改正シ以テ此等ノ者ニ對シ
テモ優遇安定ノ途ヲ講セシメラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
菊川改修ノ件
靜岡縣小笠郡平田村長澤田三郞治外
五十四名呈出
右ノ請願ハ靜岡縣小笠郡ヲ貫流スル菊川
ハ本支流共ニ隨處ニ幅員ヲ異ニシ一朝七
爾襲來セハ一瞬ニシテ氾濫又ハ決潰シ爲
ニ農蠶業ノ被害著シク曩ニ第二期治水計
畫ニ編入セラレタルニ拘ラス未タ其ノ改
修ヲ見サルハ住民ノ不安不利甚シキニ依
リ昭和七年度ヨリ之カ工事ニ著手セラレ
クシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
鍼灸醫師法制定ノ件
大阪市北區南森町鍼灸業車戶喜一郞
外九百四十一名呈出
右ノ請願ハ鍼灸術ハ古來我國獨特ノ醫術
ニシテ其ノ治療效果顯著ナルノミナラス
亦科學的證明明白ナルニ拘ラス斯業ニ關
スル法制ノ未タ整備セラレサルハ國民保
健上甚タ遺憾ナルニ依リ速ニ鍼灸醫師法
ヲ制定シテ其ノ資格、資格試驗竝ニ同醫
師會ノ設置等ニ關シ請願人等所案ノ如キ
要項ヲ具備セシメラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
北海道色丹郡斜古丹村ニ無線電信施設
ノ件
北海道色丹郡斜古丹村長氏家與四郞
呈出
右ノ請願ハ北海道色丹郡斜古丹村ハ千島
列島ノ一ニシテ近海ノ魚族豐富ナルニ依
リ漁業經營上有望ノ根據地ナルモ未タ通
信機關ノ設備ナク水產業者ノ不利不便多
大ニシテ且ツ同村ノ發展上甚タ遺憾ナル
ヲ以テ昭和六年度ニ於テ同島ニ無線電信
ヲ架設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵徳川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
樺太元泊郡知取町ニ區裁判所設置ノ件
樺太元泊郡知取町公吏伊藤英吉外三
百十八名呈出
右ノ請願ハ樺太東海岸地方ハ近時戶口ノ
增加、產業ノ發達著シク從テ各種訴訟事
件夥多ナルニ拘ラス之ヲ管轄スル豐原區
裁判所遠ク住民ノ不便不利甚シキハ遺憾
ナルニ依リ速ニ敷香、元泊ノ兩郡及ヒ榮
濱郡ノ一部ヲ管轄スル區裁判所ヲ恰當ノ
地ナル元泊郡知取町ニ設置セラレタク廳
舍官舎等ノ費用ハ地元町ヨリ寄附スヘシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
北海道落石燈臺ニ霧笛設置ノ件
北海道根室郡和田村長關谷兵吉呈出
右ノ請願ハ北海道根室郡和田村大字落石
ハ東岸ニ於ケル天與ノ良港ニシテ魚族豐
富ナル大平洋ニ面シ好適ノ漁業根據地ト
シテ漁船ノ出入頻繁ナルノミナラス航海
船舶ノ來往亦夥シク之等ハ皆同港所在ノ
燈臺ヲ最モ有力ナル標識トナシ以テ其ノ
安全ヲ期セリ然ルニ夏期海霧ノ襲來甚シ
ク往々思尺ヲ辨セサルニ至リ爲ニ燈臺其
ノ用ヲ爲サス船舶ノ不安不利多大ナルニ
依リ速ニ落石燈臺ニ霧笛ヲ設置セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
水產物冷藏奬勵ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ水產物ノ如キ保存性ニ乏シキ
モノノ需給ヲ圓滑ナラシムル爲メノ冷藏
設備ハ曩ニ水產冷藏奬勵規則ノ制定ニヨ
リ近時漸ク發達ノ機運ヲ見ルモ尙ホ益々
之カ普及ヲ計ルノ急務ナルニ拘ラス水產
冷藏奬勵施設ハ昭和七年度ニテ滿期トナ
ラムトスルカ如キモ斯クテハ現下ノ情勢
ニ鑑ミ遺憾ナルニ依リ既定ノ施設ヲ繼續
スルノミナラス其ノ擴張ヲ爲シ以テ斯業
ノ發達ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
秋刀魚漁期制限ノ件
東京市麴町區内山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ秋刀魚漁業ハ年々競フテ漁期
ヲ早ムル爲メ其ノ蕃殖ヲ阻害セラルルノ
ミナラス經費ノ激增、漁具ノ腐朽、魚味
ノ低下、產額ノ激減等甚シク斯業者ノ困
憊尠カラサルニ依リ該漁期ヲ制限シテ之
ヲ保護セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
漁村金融ノ改善ニ關スル件
東京市麴町區内山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
有ノ請願ハ水產金融ノ改善ハ漁村ノ振興
竝ニ水產業ノ發達上最モ急務ナルニ拘ラ
ス曩ニ漁業法ノ制定ニ伴ヒ水產投資ノ途
關ケ、更ニ近年漁業財團抵當法制定セラ
ルル等多少ノ改善ナキニアラサルモ今尙
ホ舊套ニ泥ミ不備不振ニシテ斯業ノ沈滯
甚シキハ遺憾ナルニ依リ速ニ水產金融改
善ノ方法ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ〓意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
郡市水產會技術員國庫補助ノ件
東京市麴町區内山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ系統農會ノ單位ナル町村農會
技術員設置ニ付テハ國庫ヨリ補助シ之ヲ
助成スルニ拘ラス系統水產會ノ單位ナル
郡市水產會技術員ノ設置ニ對シ未タ何等
ノ施設ナキハ系統水產會不振ノ重要原因
タルノミナラス斯業發達上遣憾ナルニ依
リ郡市水產會技術員設置ニ付キ國庫ヨリ
相當補助セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
水產物ノ鐵道運賃輕減ノ件
東京市麴町區內山下町帝國水產會會
長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ水產物ノ運賃ハ近年著シク改
善セラレタルモ其ノ負擔未タ輕カラス加
之最近魚價ノ激落ニ伴ヒ漁村ノ不況甚シ
キニ依リ愈々之カ荷重ノ結果トナリ爲ニ
漁業ノ經營困難ヲ極メ延テハ生產ノ減
少、生活必需品タル水產物需給ノ不圓滑
トナルハ遺憾ナルヲ以テ之カ運賃ヲ一層
輕減シ以テ其ノ需給ノ圓滑ヲ計ルト共ニ
漁村ノ窮情打開ニ資セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和六年·月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿
意見書案
軍人傷痍記章令中改正卽行ノ件
群馬縣群馬郡長野村平民農中嶋周吉
外九十二名呈出
京都市中京區大宮通平民菓子製造業
森本伊之助外三十一名呈出
靑森縣靑森市米町平民商肴倉嘉吉呈
出
兵庫縣神戶市山本通平民北川原榮次
郞外五十二名呈出
岡山縣岡山市上出石町平民寺尾安太
郞外十九名呈出
右ノ請願ハ軍人ニシテ傷痍ヲ受ケ兵役ヲ
免除セラレタル者ハ假令傷痍ノ輕重アリ
ト雖モ兵役義務ニ服シ國家ニ盡スコト敢
テ軒軽ナキニ拘ラス軍人傷痍記章令ニハ
軍人傷痍記章受領者ヲ增加恩給受給者ニ
限リタルハ甚タ遺憾ナルニ依リ該記章ヲ
一時恩給者竝ニ無給與傷痍者ニモ授與セ
ラルルヤウ速ニ同令ヲ改正セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト決議致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 請願委員長ノ報
告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
中小產業者竝失業者ノ救濟ニ關スル決議
案(公爵一條實孝君外十五名發議)
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
蠶絲業組合法案可決報告書
蠶絲業法中改正法律案可決報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=102
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103・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明二十日午前十
時ヨリ開會イタシマス、議事日程ハ決定次
第御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イ
タシマス
午後四時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X03519310319&spkNum=103
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