1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二十七日(金曜日)午前十時十九分開議
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議事日程 第四十一號
昭和六年三月二十七日
午前十時開議
政府の緬羊飼育奬勵施設充實に關する請願 會議
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001・近衞文麿
○副護長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ報〓ヲ
致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨二十六日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
商工會議所法中改正法律案
農會法中改正法律案
水產會法中改正法律案
畜產組合法申改正法律案
土地賃貸價格調査委員會法中改正法律案
所得稅法中改正法律案
刑事訴訟法申改正法律案
刑事訴訟法中改正法律案
刑事訴訟法中改正法律案
利息制限法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
借地借家調停法中改正法律案
借家法中改正法律案
司法代書人法申改正法律案
私生子ノ名稱ニ關スル法律案
身元保證ニ關スル法律案
恩給法中改正法律案
大日本帝國國旗法案
癈兵優遇ニ關スル法律案
耕地整理法中改正法律案
號外昭和六年三月二十八日
貴族院議事速記錄第四十一號
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
北海道石狩國ニ國立種馬所設置ノ請願外五
十三件ノ請願ハ各、意見書ヲ附シ卽日之ヲ
政府ニ送付セリ
本日產業組合中央金庫法中改正法律案特別
委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名
左ノ如シ
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長男爵園田武彥君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=1
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002・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ
開キマス、地租法案ノ特別委員會ニ於ケル
審議ノ都合土、暫時休憩ヲ致シマス
午前十時二十一分休憩
午後二時九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=2
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003・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ各般ノ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル
法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委
員長ノ氏名左ノ如シ
委員長侯爵西〓從德君
副委員長伯爵柳原義光君
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
地租法案可決報告書
營業收益稅法中改正法律案可決報〓書
砂糖消費稅法中改正法律案可決報告書
織物消費稅法中改正法律案可決報告書
明治四十一年法律第三十七號中改正法律
案可決報告書
大正十五年法律第二十四號中改正法律案
可決報〓書
都市計畫法中改正法律案可決報告書
耕地整理法中改正法律案可決報告書
產業組合中央金庫法中改正法律案可決報
告書
農會法中改正法律案可決報〓書
耕地整理法中改正法律案可決報〓書
地方鐵道及軌道ニ對スル地方稅免除ニ關
スル法律案可決報〓書
本日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
地租法案、明治四十一年法律第三十七號
中改正法律案
大正十五年法律第二十四號中改正法律案
ニ對スル修正案(水野鍊太郞君外三名發
議
〔伯爵柳澤保惠君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵徳川家鐘君) マダ開議ノ宣告
ヲ致シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=5
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006・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 此際議事日程ヲ變更追
加セラレマシテ、地租法案外七件、第一讀
會ノ續、委員長報告ヲ上程セラシムコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=6
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007・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 柳澤伯爵ノ動議
ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 地租法案、營業
收益稅法中改正法律案、砂糖消費稅法中改
正法律案、織物消費稅法中改正法律案、明
治四十一年法律第三十七號中改正法律案、
大正十五年法律第二十四號中改正法律案、
都市計畫法中改正法律案、耕地整理法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會ノ續、委員長報告、柳澤伯爵ノ登壇ヲ望
ミマス
地租法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
營業收益稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵徳川家達殿
砂糖消費稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
織物消費稅法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長仙爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
都市計畫法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵徳川家達殿
耕地整理法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=10
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011・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 是ヨリ御委託ニナリマ
シタル地租法案外七件ノ特別委員會ノ審査
ノ經過竝ニ結果ヲ出來ルダケ簡單ニ御報道
申上ゲタイト存ジマス、委員會ハ十五日間
開イタノデアリマス、此十五日間ニ於キマ
シテハ、午前午後ニ亙リ、每日相當長時間
ニ亙リマシタ、從"テ愼重審議ヲ致シタ次第
デゴザイマス、此法案ハ何レモ重要ナル法
案デゴザイマスルガ、特ニ地租法案ガ其重
要中ノ重要ナルモノデゴザイマシタノデ
之ニ對スル質疑應答ガ一番長ク續イタノデ
ゴザイマス、先ヅ順次ニ提出法案ノ內容ニ
付キマシテ、最モ重要ナルモノダケヲ一應
申上ゲテ置キマス、先ヅ地租法デ申上ゲマ
スガ、色ミノ箇條ガゴザイマシテ、ソレヲ
摘出イタシマシテモ相當時間ヲ要シマスル
ノデ、殊ニ其中ノ要點ヲ申上ゲマスルト
第一ハ現今地租ノ課稅標準タル地價ヲ廢シ
テ、賃貸價格ヲ課稅ノ標準ト致シ、十年目
每ニ之ヲ改定スルト云フコトガ一ツデアリ
マス、次ニ租率ハ各地目共之ヲ百分ノ三·八
ニスルコトデアリマス、自作農地ノ免稅ヲ
賃借價格二百圓ニスルコトデアリマス、又課
稅標準及稅率ノ改正ニ因リマスル負擔ノ激
增ヲ緩和スル爲ニ、新地租額ガ現在地租額
ノ三倍八割ヲ超エマスル土地ニ付キマシ
テハ、三倍八割ヲ超過シナイヤウニ賃貸價
格ヲ制限スル、先ヅ是ガ主ナモノデゴザイ
マス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
其結果地方稅及ビ其制限ニ關シマスル法
律、卽チ明治四十一年法律第三十七號、大
正十五年法律第二十四號中ニ改正ノ要ガ起
リマシタノデ、是モ改正セラレテ居リマス、
其影響ハ卽チ耕地整理法ニモ及ビマスノ
デ、此改正モ出タノデゴザイマス、又都市
計畫法中ニ改正ヲ要シマスルノデ、是モ亦
地租法制定ノ結果トシテ改正ガ茲ニ出テ居
ルノデアリマス、是ハ所謂減稅案デハア
リマセヌ、是ハ詰リ地租條例ノ改正デアリ
マシテ、之ニ新地租法ガ變ルノデアリマス、
併シ結果トシテ減稅ガ起リマス又增稅モ
起リマス、併シ差引ニ於キマシテハ減稅ト
ナルノデアリマス營業牧益稅ニ付キマシ
テハ、是ハ稅率ノ低下デアリマシテ、極ク
僅少ナルモノガアリマス、砂糖消費稅ニ付
キマシテハ是モ輕減ガゴザイマスルガ、
百斤ニ付テ五分乃至一割程度ノ輕減デアリ
マス織物消費稅ニ付キマシテハ是ハ課
稅セザル織物ノ範圍ヲ擴張イタシマシタ
又少シク上級ノ麻織物及下級ノ毛織物ノ類
ヲ加ヘタノモアリマス、又綿織物中ニ絹ヤ
人造絹絲ヲ混ゼマシテモ、全重量ノ百分ノ
五未滿ナルトキハ課稅セヌト云フコトニシ
タノデアリマス、其他稅率ノ百分ノ十ヲ百
分ノ九ニ改メマシタ、サウ云フヤウナコト
ガゴザイマス、以上申シマシタ如クニ、委
員付託ニナリマシタル諸案ノ中、地租法ガ
最モ重要ナモノト認メラレマシテ、之ニ付
テ種々論議ガ起リマシタ、元來地租ハ御承
知ノ如クニ地租條例ニ依リマシテ、法定地
價ニ依ッテ課稅セラレルノデアリマス、ソレ
ガ此度賃貸價格ニ依ッテ課稅スルコトニナ
ルノデゴザイマス、地價ハ明治四十三年ニ
至ッテ改正ガゴザイマシタガ、其後ハ地價ノ
修正ハゴザイマセヌ、而シテ輓近都市ノ發
達ニ連レマシテ、非常ニ人口都市集中ノ結
果、又經濟上ノ發展ノ結果、都市ト農村ト
ハ非常ナル土地ノ價格ニ變動ヲ見タノデア
リマス、單ニ土地ノ價格ノ變動ノミナラズ
農村ト都市トハ殊ニ特殊ナル所ノ特徴ヲ兩
方ガ持ツヤウニナリマシタ、玆ニ於テ長年
ノ課稅ノ不公平、不公正ニ氣ガ付カレマシ
テ此修正ニ付テハ相當是マデニ努力サレ
タノデアリマス、曾テ行ハレマシタル賃貸
借ニ關スル調査法ガ出マシテ、ソレニ付テ
二箇年ニ亙リマシテ、約千万圓ノ金ヲ投ジ
テ全國ニ於テ賃貸價格ノ調査ガ行ハレマシ
タ此賃貸價格ノ調査ト云フコトハ時ノ政
府ガ最モ宜イモノト考へタノデアリマス
之ニ付テハ或ハ土地ノ收獲主義、或ハ土地
ノ賣買主義等ニ付テモ考慮ヲ廻ラサレタノ
デアリマスガ、歸スル所土地ノ賃貸價格ニ
依ッテ之ヲ課稅ノ標準トスルコトガ適當デ
アルト云フコトデ、愈〓此調査ヲ行ヒマシテ、
又調査ノ結果ヲ調査會ノ議ニ付シマシテ、
ソレニ依ッテ愈〓コヽデ課率ノ標準ガ決マッタ
ノデアリマス、而シテ是ハ調査後昭和三年
ニ於テ行ハルベキ筈デアリマシタガ、是一
時ノ政府ノ更迭等ノ爲ニ延ビ延ビニナッタ
ノデアリマス、今囘提出サレマシタノハ賃
貸價格調査ノ時日カラ見マスルト六年後デ
アリマシテ、甚ダ古イ所ノ材料ニ依クテ課稅
ノ標準ガ決マルノデアリマスガ、是ガ先ヅ
一番適當ナルモノトシテ、政府ハ之ニ依ッテ
地租條例ヲ改正シ、新地租法ヲ實行セムト
スルノデアリマス、併ナガラ此前ノ賃貸價
格ノ調査法ニ於キマシテハ、單ニ賃貸價格
ノ調査ト云フコトハゴザイマシタガ、如何
ナル率ニ依フテ課稅スル、卽チ其課稅ノ標準
トナル所ノ稅率ニ付テハ何等規定ガナイノ
デ、初メテ今囘ノ法律ニ依テテ率ガ百分ノ
三·八ト云フコトニ決マッタノデアリマス、
勿論此三·八ト云フコトハ是ハ倫敦條約ノ結
果デアリマス、今年度ハ百分ノ四デアリマ
ス、此百分ノ四デアルト云フノハ是ハ種々
ノ財源ノ關係上已ムヲ得ズ四ニナッテ居リ
マスガ、其後ハ三·八ニナリマス、若シ是ガ
現今ノ租稅ノ總額同樣ナコトヲ考ヘマスレ
バ四·五ニナルノデアリマスガ、倫敦條約ノ
結果之ヲ三·八ニ致シテ、將來之ニ據ルコ
トニナッタノデアリマス、此率ガ決マリマシ
テ、之ニ依ッテ計算ヲシテ見マスト、ドウナ
ルカト申シマスト、農村ニハ減稅ノ結果ト
ナルノデアリマス、併ナガラ都市ニ於キマ
シテハ却ッテ是ガ增稅ニナルノデアリマス、
是ハ政府ノ計算ヲ御覽ニナリマシテモ千五
百万圓ノ減稅ハアリマシテモ、又一方ニ五
百万圓ノ增稅ガアリマスカラシテ、差引ニ
於テハ千万圓ノ、所謂負擔ハ輕クナルノデ
アリマスケレドモ、是ハ差引ノ結果デアリ
マシテ、之ヲ若シ或部分ニ付テ見マスレバ、
必ズシモ減稅トハナラヌノデアリマス、殊ニ
大都市ニ於テハ、人ミニ依リ多少計算ガ違,
テ居ルカハ存ジマセヌガ、我ミノ見ル所デ
モ大部增率ナノデアリマス、是ハ念ノ爲ニ
申上ゲテ置キマスガ、私ノ玆ニ申上ゲルノ
ハ詰リ委員會ニ於ケル所ノ論議ヲ綜合シテ
申スノデアリマス、私ノ意見ヲ挾ンデ居リ
マセヌカラ、ドウゾソレハ御諒解ヲ願ッテ置
キマス、倫敦條約ノ趣旨ヲ尊重スル上ニ於
キマシテハ、誠ニ民力ノ負擔ノ輕減ハ結構
デアリマス、全體カラ見·マシテ···、併ナガ
ラソレハ唯差引ノ全體デアッテ或部分ノモ
ノハ苦シムノデアリマス、內閣統計局ノ發
表シマシタ所ノ最近ノ國勢調査ノ結果ニ依
リマスルト、市町村ト假リニ三ツニ分ケマ
シテ申シマスト、市町ノ人口ノ加算ト村ノ
人口ノ數トハ僅カ二百余万ノ違ヒデアリマ
ス、只私ハ何時モ農村ト云フコトヲ申ス時
ニハ町村ヲ申シマス、町村ガ合併シマスト
是ガ約五千万人ニナリマス、ソレデ市ノ方
ガ之ニ比ベルト誠ニ少イノデアリマス、市
ノ方ハ僅カニ千五百余万人デアリマス、市
町村ニ付テ見マスト所謂農村ト申スノガ約
五千万人デアリマシテ市ガ千五百余万人デ
アリマス、强チ市ノ全部ガ增稅トハナリ
マセヌガ、兎ニ角人口ノ集中スル大都
會又中都會ニ於テハ茲ニ五百万圓ノ
增稅ニナル、從ッテ附加稅ヲ增徵サレルコト
モ疑ヒガナイノデアリマス倫敦條約ハ日
英米デ定メタノデアリマス、而シテ日本側
ニ於テハ、此議案ノ說明ニアルガ如ク一ツ
トシテ倫敦條約ノ效果ト云フコトガ書イテ
ナイノハナイノデアリマス、然ルニ英國ニ
於テハ增稅ヲ爲シ亞米利加ニ於テハ減稅ヲ
セヌヨウデアリマス、我國ガ一番率先シテ
最モ良イ處ノ規範ヲ與ヘテ居ルノデアリマ
ス、而シテ其結果トシマシテ海軍ノ軍事費
五億八百万圓ノ中ノ一億三千四百万圓ト云
フモノガ、其結果トシテ浮クコトニナリマ
シテ、是ガ所謂條約ノ結果トシテ國民ノ負
擔ノ輕減ト云フコトニナッタノデゴザイマ
ス、而シテ斯ノ如キ剩餘金ヲ減稅ニ向ケル
ノハ宜イガ、果シテ是デ海軍將來ノ軍備ニ
差支ヘハナイカト云フノハ、當然起ルベキ
所ノ問題デアッタノデアリマス、屢〓之ニ付
テ委員會ニ於テ又豫算委員會ニ於キマシテ
モ質問ガゴザイマシタガ、當局者ハ之ニ對
シマシテ或ハ多少ノ缺陷ハアルカモ知レ
ナイガ、ソレハ艦船ノ都合ヲ付ケ又飛行隊
ナドノ增加ヲスルニ於テハ十分補足スルコ
トガ出來ルノデ、是ガ缺點ガアルトハ申サ
レナイ、併ナガラ此計畫ノ實行ハ昭和十一
年度デ終ルノデアル、昭和十一年以前ニ於
テ、昭和十一年以後ノ或計畫ニ付テ必ズ補
充スベキモノガ起リ、之ニ何カ頭カ尻尾ヲ
出スコトガアルデアラウトハ政府モ考ヘラ
レテ居ルノデアリマス、然ラバ將來ノ海防、
廣ク申ス國防ハ不安心デハナイカト云フ論
ガ起ルノデアリマス、之ニ付テノ質問應答
ガゴザイマシタガ、結局豫算委員會ニ於ケ
ル所ノ質問應答ト大差ハナイト云フコトヲ
申上ゲテ置キマス、色ミノ質問ニ對シマシ
テモ政府ハ斯樣ニ申サレテ居リマス、成程
昭和十一年度以前ニ多少ノ補足ヲ要スル、
又將來モサウ云フコトモアルデアラウト云
フ、其必要ハ認メテ居ル、又其希望ハ確カ
ニ海軍當局ハ持ッテ居ル、併ナガラ希望ト必
要ハ持ヲテ居ルケレドモ具體的ノ計畫トシ
テハ何等持ヲテ居ラヌ、計畫ハナイト云フコ
トヲ斷言スルノデアル、故ニ此事ニ付テハ
政府ノ作ッタ〓計表ニモ出テ居ラヌ、〓計表
ニ出ナイノデアルカラシテ、所謂第二次計
畫ト云フモノハ持ッテ居ラヌト云フコトヲ、
濱口首相自ラ委員會ニ臨ンデ二度モ明言サ
レタノデゴザイマス、併ナガラ計畫ハナイ
ガ或時期ニ於テ國家必要ノ場合ニ遭遇スル
コトモアラウ、サウ云フ國難ノ場合ニ於テ
ハ萬難ヲ排シテモ之ヲ何トカシヨウ、卽チ
調達シヨウト云フコトハ認メル、併シソレ
ハ公債ニ依ルカ又ソレヲ增稅ニ依ルカト云
フ具體的ノ質問ガアレバ左樣ナコトニ付
テハ今日答辯ノ限リデハナイ、兎ニ角左樣
ナ場合ガ起シタラ萬難ヲ排シテ最善ノ努力
ヲスルト云フコトヲ申サレタノデアリマ
ス、以上ノヤウニ海軍ノ保留財源ヨリ一
億三千四百万圓ノ剩餘金ガ出マシテ之ヲ減
稅ニ充ツルコトニナリマシタノデ、今囘ノ
種々ノ法案ガ出タノデアリマスルガ、此財
源ニ付テモ疑問ガアルノデアリマズ、此財
源ハ恆久的ノモノデナクテハナラヌ、是ハ
一時ノモノデハナラヌ、併シ恆久的ノ財源
トシテ確信ガアルカト云フコトニ付テハ
極クハッキリトシテ申サレナカッタガ、何等
此財源ニ付テハ心配ハナイト云フ事ヲ申サ
レタノデアリマス、次ニ申上ゲタイノハ
今囘ノ提案ハ減稅ナリヤ將タ增稅ナリヤ
ト云フコトデアリマス、新規ニ制定サレマ
ス地租法ハ、減稅ノ目的ノ爲ニ制定セラレ
タノデハナイ、是ハ從來ノ地租ノ課率ノ標
準ヲ地價ニ依シタノヲ、今度ハ賃貸價格ニ改
メルノデアッテ、是ハ減稅ノ爲ニ創定シタノ
デハナイ、國民ノ負擔ノ不公平ト云フコト
ヲ此際ニ於テ一掃シテ、之ヲ公平ニシヤウ
ト云フノデアル、併ナガラ大都市ニ於キマ
シテハ、サッキ申上ゲタ如クニ、是ハ是マデ
隨分土地ノ發展其他ニ依リマシテ異狀ヲ呈
シテ居リマスノデアリマスカラ、ドウモ大
都市ニ於テハ不公平ニ課セラレテ居ルト云
フコトハ確ニ認メテ居ル、此不公平ノ課
稅ヲ今囘斷然打切ッテ、賃貸價格ヲ標準トシ
テ之ヲ前ノ地租條例ノ法定地價ニ換ヘル
其結果ハ農村ガ減稅トナリ、都會ノ人ニハ增
稅ニナルヤウニ、結果トシテハナルケレド
モ、相互比較ノ上、計算シテ見レバ是ハ
減稅デアル、但シ大都市ニ對シテハ附加稅
モ增稅ニナルヤウニ思フケレドモ、是ハ又
他ノ附加稅ノ方ノ制限、或ハ減少ヲシテ、
ソコデ裕リヲ見ルコトガ出來ル、故ニ總テ
ガ增稅ト云フコトデハナイト云フコトヲ種
種ノ場合ニ申サレテ居リマス、此大都市ニ
於ケル所ノ附加稅ノ增加ニ付キマシテハ
色ミ人ノ見ル所デ計算ガ違ヒマス、政府ノ
計算ト、或ル自治團體ノ計算、其他個人ノ
計算等ヲ較ベマスト、或ハ最小ノ課率ニ依
リ或ハ最大ノ率ニ依リ、種々根據トスル
數字ガ違ヒマスルノデ、皆サンノ御手許ニ
アル所ノ種々ノ材料中ニハ非常ナ大增稅ト
云フモノモ出テ居リマス、又左樣デナイモ
ノモ出テ居リマス、是ハ色〓見ヤウニ依ッテ
違ヒマスルガ、要スルニ增稅ハ確デアル、
一例ヲ東京市、大阪市、京都市、神戶市、
名古屋市等デ申上ゲルト分リマスガ、是に
サウ云フコトガアルト云フコトダケニ止メ
テ置キマシテ、大都市ハ增稅ハ免レナイト
云フコトヲ申上ゲテ置キマス、都會地ニ於
キマシテハ斯ノ如ク增稅ニナル結果ハ
此增稅ノ結果ハ他ノ人ニ移ルノデアリマ
ス、卽チ土地ノ課稅ノ增徵ノ結果ハ地代ニ
及ビ、借地料ニ及ブノデアリマス、卽チ
借地人竝ニ借家人ガ其影響ヲ受ケ、卽チ地
主ノ負擔ハ是等ニ轉嫁セラレマシテ、矢張
リ是等ノモノモ窮境ニ陷ル、地主モ困ルガ、
借家人モ借地人モ困ルト云フ狀況ヲ呈スル
ノデアリマス、デ近來梢、地代或ハ借家料
モ低下スルヤウナ傾向デアリマスルガ、是
モ低下スルコトハナクシテ、或ハ上ガルデ
アラウト云フ𣏌憂ヲ懷ク所ノ人モアリマ
ス、從テ中產階級以下ノ者ニ對シテ、矢張
リ之ガ苦痛トナリマス、隨分是ハ爲政者ノ
注意スベキ點デアルノデアリマス或ハ斯
樣ナ論モアリマス、成程、都會ノ人ハ非常
ナ重稅ニナルカハ知ラヌガ、是等ノ人ミハ
今マデ安イ所ノ地價ニ依っテ、安イ所ノ地租
ヲ納メテ居ルノデアルカラ、是ガ一躍二倍
ニナリ、三倍ニナリ、何倍ニナラウトモ、
ソレハ自然ノ結果デアッテ、自分ガ利得シテ
居ル所ノモノニ付テ稅ヲ拂フノデアルカ
ラ、重稅トハ云フヤウナモノノ、是ハ自分
ノ持物相當ナ稅ヲ拂フノデアルカラ、重稅
ニハナラナイ、是ハ唯、數ノ上ニ於テ增シ
タカラトテ、重稅ト云フコトニナルト云フ
コトヲ言フノハ是ハ間違デアルト云フコ
トノ論ガアリマス、而モソレハ都會ニ於テ
ハ殊ニ土地ノ價ノ暴騰ニ鑑ミラレテ、其暴
騰ニ依テ上ガル率モ三倍八割ニ止メルト云
フ所ノ制限モアルカラ、之ニ依ッテ緩和モ出
來ルノデアル、決シテ無闇ナ增稅ト云フノ
デハナイト云フ論ガ屢、又委員會デ出タノ
デアリマス、玆ニ東京府、大阪府、兵庫縣、
神奈川縣ニ於キマスル所ノ增稅ノ割合ヲ
持ッテ居リマスガ、是ハ唯、是等ノ土地ニ於テ
モ增稅ニナルト云フコトヲ申上ゲル爲ノ參
考ニ止メテ置キマス、政府ノ方ニ於テハ此
問題ガ屢〓起ル每ニ言フ所ノモノハ、詰リ一
點デアリマス、是ハ負擔ノ公正ヲ圖ル不
公正ナル所ノ負擔力ヲ直スノデアル外ノ
方ハ見テ居ラヌ、此一點張リデ進ンデ居ル
ノデアルト云フコトヲ、政府ハ始終答辯ヲ
サレテ居ルノデアリマス、先ヅ增稅デアル
カ、減稅デアルカト云フ所ノ大體ノ御說ハ
此邊ニ止メテ置キマス、御承知ノ如クニ昭
和六年度ノ豫算ニ於キマシテ、財政經濟調
査會ト云フモノノ費用ガ出マシテ、之ガ可
決ヲセラシマシタ僅ニ五万圓デアリマス
ルガ、是ハ政府トシテハ大規模ノ調査機關
デアッテ、從來在ッタヤウナモノデナイ
軽之ヲ最高ノ機關トシテ、之ニ依ッテ種々ナ
事ヲ解決セラレマスノデアリマス、而モ稅
制ノコトモ之ニ及ブヤウニ存ジテ居リマ
ス、斯ウ云フ機關ガ出來ルト云フコトヲ我
我ハ承知シテ居リマスガ爲ニ、何モ此際增
稅ナド急ニヤラヌデモ宜イヂヤナイカ成
程、賃貸價格調査ハ相當澤山ノ金ヲ使ハ
レクノデアルケレドモ旣ニ是ハ六年前
ノデアル、或ル人とハ六年前ノ賃貸價格ヲ
持ヲテ來ルノハ至當デハナイ、或ハ之ニ
横當ノ割引ヲシテ標準ニスルノガヨイト云
フ論モアルノデアルケレドモ、サウ云フ古
イモノヲ取ヶテ見ルヨリモ、最モ近イ所ノ
賃貸價格ヲ見ルコトガ必要デアル既ニ加
藤內閣ナドニ於テ調ベタコトノアル···
臨時財政經濟調査會ニ於テモ事柄ハ違フケ
レドモ、賃貸價格ニ付テノ調査ガアル、其
時ハ賃貸價格ニ付テハ個人ノ申告ヲ待ッテ、
ソレニ依ッテ課稅スルト云フ方法デアルカ
ラ、此度ノ方法トハ違フケレドモ、サウ云
フコトヲシタコトモアル故ニ來ルベキ所
ノ調査會ニ於テモ左樣ナコトモ考慮スルノ
モ宜カラウ又六年度ハ僅ニ六百何十万圓
ノ減稅デアルカラツテ、其位ノコトハモウ
明ニ來年度ノ歲入不足ガ分ルノデアルカ
ラ六百万圓ヤ千万圓ハドウセ不足ガ出
ルノダカラシテモウ減稅ノ目的モ其邊デ
達セラレテ居ルノデアルト云フヤウナ御
論モ出マシタ、是ハ政府ノ歲入ヲ過大ト見
テ、來年六年度ニ於テハ政府豫定ノ如キ歲
入ヲ得ラレヌトスル所ノ論者ノ論デアリマ
スガ、兎ニ角、此六年度ニ於テモ到底豫定
ノ歲入ヲ得ラレヌト云フ上ニ於キマシテ、
斯樣ナコトハ六年度ノ稅制ノ調査會ノ議ニ
カケテ、改メテ地租ノコトモ〓究シタラ宜
イヂヤナイカト云フヤウナ論ガ出タノデア
リマス、餘程調査會ニ重キヲ於カレマシ
テ左樣ナ御論モ出マシタ行政整理ノコ
トモ宜シイ、或ハ官吏ノ減俸ノコトモ、ソ
レデ論ジタラ宜カラウ、或ハ官吏ニ對スル
六千餘万圓ノ賞與金、此中カラ一割位引イ
テモ六百万餘ハ出ル、之ヲ向ケテモ宜イデ
ハナイカト云フヤウナ御論モ出マシタソ
レラノコトモ總テ調査會ニ諮フチ見テ宜イ
ノデアルカラシテ、サウ急ニスルニモ及ブ
マイ····增稅トナルベキ所ハ假令アルニシ
テモ、今日ノ場合少シデモ增稅ノ聲ガアル
ノハ面白クナイカラシテ、ドウカソレモ協
議ニ掛ケタラ宜カラウ、國民一般ニ平均ニ
減稅ニナレバ論ハナイガ、兎ニ角或ル部分
ニハ增稅ハ確ニアル、此增稅ト云フコトガ
倫敦條約ノ趣旨ニモ背クノデアルカラシ
テ、種々ナ場合ヲ考ヘテ見テ來年度ノ調査
會ニ之ヲ協議シタラ宜イヂヤナイカト云フ
御論ガ出タノデアリマス、餘リ長クナリマ
スルカラシテ、次ニ單ニ御質問ニナリマシ
タコトノ條項ノミヲ申上ゲテ置キマス是
モ中〓澤山アリマスカラ或ハ盡シテ居ラヌ
カモ知レマセヌ、御了承ヲ願ヒマス、其一
ツハ所謂六年度ノ減稅ノ如キ六百十餘万圓
ノヤウナ少イモノハ、是ハ自分共ガ見レバ
極ク不良會社ノ蛸配當ノヤウナモノデアル
ト云フヤウナ御論モ出タノデアリマス、故
ニ一年延バシテモ宜イノヂヤナイカ、又官
吏ノ減俸ノコトモ賞與金ノコトナドモ出マ
シタ斯樣ニシテ財源モ取レルノデアルカ
ラシテ斯樣ナ增稅トナルベキモノヲ先ヅ
見合セタラ宜カラウト云フコトニ付テノ御
質問デアリマス、ソレカラ其外ヲ申シマス
ト市街ノ宅地ノ增稅ノ分ダケヲ止メテ之
ヲ現在ノ儘ノ徵收ニシテ置イテ、他ノ增稅
スベキ部分ニ對シテハ色ミ繰合セヲ村ケテ
之ニ向ケタラ宜カラウト云フ御質問、又負
擔ノ均衡ト云フコトヲ政府ハ能ク言ハレル
ガ故ニ、負擔ノ本當ニ均衡ニナル分ダケハ
今囘實行シテ、負擔ノ不均衡ニナルヤウナ
都會地ニ於テ增稅ノ如キハ止メタラ宜カラ
ウト云フ御質問モアルノデアリマス、從來
ノ地租臺帳ニ村テノ御質問モアリマツク
是ハ今度ノ地租臺帳ニナルノデアリマスル
ガ是ハ甚ダ不完全ナモノデ、朝鮮臺灣デ
サヘモ完全ナモノハ出來テ居ルノニ內地ニ
ハ無イ、斯樣ナ不完全ナモノデヤルノハイ
カヌヂヤナイカト云フ御論モ出マシタ尙
ホ小笠原島、伊豆ノ七島ノ課稅ノ件、貯蓄
銀行ノ課稅ノコト、義務〓育費國庫負擔金
交付ノ狀況、佛蘭西伊太利間ノ海軍協約ニ
關スル件、燃料問題、獨逸賠償金ノ繰入、
煙草元賣捌廢止、葉煙草賠償金ノ引下、山
ノ賃貸價格、山林ノ地租、警察費連帶支辨
金補助額ノ低減ニ關スル件、「メートル」法採
用ノ件、其他營業收益稅ノ件、又米價ノ變
動ト地租法案ノ關係、耕地整理ニ關スル件、
ソレカラ内務省ニ於ケル色ミ總花的ニ出テ
居ル所ノ水道ノ補助金、僅カナ金デアルケ
レドモ是等ハ止メタラ宜イデアラウト云フ
ヤウナ御論モ出タノデアリマス、其他澤山
出マシタガ先ヅ是ダケニ御免ヲ蒙ヲテ置
キマス、ソレカラ茲ニ御承知ノ如クニ今般
ハ砂糖消費稅ト營業收益稅竝ニ織物消費稅
ガ出テ居リマス、ソレニ付テ外ノ方ノ間接
稅ノコトヲ考慮シタカ、例ヘバ〓酒ノ如キ、
例ヘバ〓凉飮料ノ如キモノガアルガ、是等
ハドウ考ヘテ居ルカ、是等ハ矢張リ政府ノ
方デハ考ヘラレテ居ッタヤウデアリマス
併ナガラ成ルベク一般ノ者ヲ目的トスル砂
糖ヤ、織物ト云フ普遍的ノモノヲ考ヘテ居
ルノデ、酒トカ〓凉飮料ノ如キモノハ又
ナカ〓〓此稅率ヲ變ヘルノモ面倒デアル
シ、困難デモアルシ、旁、斯樣ナモノハ考
ヘヤメタト云フコトヲ言ハレタノデアリマ
ヌ砂糖消費稅ニ付テハ臺灣ノ黑糖ニ付テ
ノ質問ガアリマシタ、消費稅ノ輕減ガ少シ
デハナイカ、ト云フヤウチ糖業政策ニ付テ
ノ質問等モアッタノデアリマス、先ヅ以上ノ
如タデゴザイマスガ、此外此度政府ガ衆議
院ニ御提出ニナリマシタ最モ必要ナル所ノ
參考材料ハ全部受ケ取リマシク、尙ホ其上
ニ委員ノ質問ニ對シテノ材料ヲ得タノデア
リマスルガ委員ノ請求セラレタダケノ滿
足ノ材料ハ無カッタト云フコトヲ申上ゲテ
置キマス、又以上要領ヲ申上ゲタ質問應答
ガゴザイマシタガ、政府ノ答辯ニ對シテ
ハ、總テ滿足セラレタ方ハ殆ド無イヤウニ
見受ケタノデアリマス、若シ滿足セラレル
コトガ出來マスレバ、コンナ長イ審査ノ期
間ヲ要スルコトハナイノデアリマセウ、ド
ウモ結果カラ申上ゲマスルト、質問者ハ何
レモ餘リ滿足サレナカッタト云フコトヲ私
ハ申上ゲテ置キマス、先ツ質問ノ件ハ是デ
止メマシテ、是デ愈、本日此法案ニ付テノ
討論ニ移フタノデアリマス、第一ハ反對論デ
アリマス、是ハ否決スベシト云フ反對論デ
アリマス、成程倫敦條約ヲ尊重シテ、國民
負擔ノ輕減ヲ圖ルト云フコトハ政府ノ一
本調子ノ御趣意デアル、併シ田畑ハ成程輕
減シテ居ルガ、山林ハ是ハ增シテ居ル、宅
地モ增シテ居ル、卽チ祖稅ニ於テ斯ウ三種
ニ分ケテ見ルト、增スモノモアリ減ルモノ
モアルガ都市デハ結局五百餘万圓ノ增加
トナルノデアル差引ニ於テハ無論輕減ニ
ナルガ、或ルモノハ增加ヲ見ルノデアル、
減稅ト云フコトハ大贊成デアルガ、少シデ
モ增額ト云フコトガアレバ是ハ贊成ガ出來
難イ、此增稅ヲ止メタラ宜イデハナイカ、
止メルニハ假令政府ト所見ヲ異ニスルモ、
玆ニ官吏ノ賞與金ト云フモノガ六千万圓ア
ル此中一割ヲ向ケテモ減稅ニナルデハナ
イカ、サウスレバ都會ノ者モ農村ノ者モ齊
シタ減稅ノ恩典ニ浴スルノデアルカラシ
テ、サウシタイモノデアルガ、政府ハ其意
圖ニ出テ居ラナイ、故ニ之ニ反對スルト云
フ御論デアリマス、贊成論者ハ甚ダ絕對的
ノ贊成トモ見受ケマセヌガ、結局ハ贊成ニ
ナッテ居リマス、但シ茲ニ三ツノ附帶決議ガ
アル、此附帶決議ヲ入レテ贊成スルト云フ
コトデアリマス、其附帶決議ハ後デ讀ミマ
ス、附帶決議ノ一ツハ成程色ミ論モアル
ケレドモ、兎ニ角六年前ニ千万圓モ費ツテ
賃貸價格ノ調査ヲ結了シタ、之ヲ地租ノ課
稅ノ標準トシタノデアッテ、而モ宅地ニ付テ
ハ一番高イモノモ三倍八割ニ止メテ居ル
斯ウ云フコトニナッテ居ル、無論此點ハ絕對
ニ完全ナモノトハ思ヘナイガ兎ニ角先ヅ斯
樣ニ決メテ、全體ノ結果トシテハ減稅ニナ
ルノデアルカラシテサウ非難スベキコト
モナイ、只今日ノ、狀況カラ見テ、ドウモ
唯此儘デ居ルト云フ譯ニ我ミハ參ラヌ、然
シ來年ハ財政經濟稅制ノ調査會モ實現セラ
レルノデアル故ニ此會ニ於テ殊ニ此點ニ
鑑ミテ、宅地租ノ急激ノ增加ノ無イヤウナ
コトヲ一ツ考慮シテ貰ヒタイ、其次ハ地方
費ニハ隨分無駄ナコトモ澤山アル、斯樣ナ
モノモ隨分整理スル必要モアル、又附加稅
モ隨分多イ、是等ニ付テハ當局ニ於テハ監
督ヲ十分ニシテ、此整理ヲ努メテ貰ヒタイ、
其次ハ今囘ノ海軍々縮ノ結果、玆ニ剩餘金
ガ出ク、之ヲ減稅ニ充ツルノデアル、併ナ
ガラ將來所謂第二次計畫ノ必要ト云フモノ
ハ何人モ認メテ居ルノデアル、是ガ昭和
十一年前ニ首ヲ出スト云フコトデアルカ
ラ、之ニ付テノ財源ニ付テハ出來得ルダケ
ノ努力ヲシテ、調達シテ貰ヒタイト云フコ
トデアリマス、其希望決議ハ文ニナッテ居
リマス、一應讀ミマス、第一ハ
(一)地租法制定ノ結果從來ニ比シ地租負
擔ノ公平ヲ期シ得ヘシトスルモ都市ニ
於ケル宅地租ノ急激ナル增加ハ納稅者
負擔ノ苦痛ヲ甚大ナシムル而巳ナラス
延テ地代及家賃ノ騰貴ヲ來タシ市民一
般ニモ亦困惑ヲ被ムラシムル虞アリ現
下經濟界ノ實情ニ鑑ミ時宜ヲ得サルモ
ノト認ム依テ政府ハ近ク開始セムトス
ル稅制ノ調査ニ際シ篤ト攻究審議ヲ遂
ケ昭和七年度以降ニ於テ宅地租激負擔
增ノ緩和ニ付更ニ適當ナル方法ヲ講セ
ラレムコトヲ望ム
(二)政府ハ地方財政ニ對スル監督ヲ一層
嚴ニシ出來得ル限リ地方費ノ膨張ヲ避
クルト共ニ特ニ都市ニ於ケル宅地租附
加稅ノ增徵ヲ防止スルニ努メ萬不得已
之カ增徵ヲ要スル場合ニ於テモ政府ノ
認可ヲ受ケシメ且必ス他ノ國稅附加稅
又ハ家屋稅等ヲ輕減シ以テ間接ニ宅地
租納稅者負擔ノ苦痛ヲ緩和スヘク地方
團體ヲ指導監督セラレムコトヲ望ム
(三)海軍軍縮剩餘金ノ一部ヲ以テ減稅ニ
充當シタルハ至當ナリト雖之カ爲昭和
十一年度以前ニ於テ著手スルコトアル
ヘキ海軍ノ艦艇補充等ニ要スル經費ニ
不足ナカラシムル爲之カ財源ニ付豫メ
最善ノ考慮ヲ拂ハレムコトヲ望ム
私ガ前ニ簡單ニ申上ゲタ說明ヨリモ此方
ガ詳シク書イテアリマス併シ此箇條ハ何
レモ私ノ前以テ申上ゲタ報告ニ大體アルコ
トデゴザイマス、ソレカラ修正ノ意見ガ出テ
居リマス、此修正論者ノ意見ノ趣旨ハ全體
ノ法案ニ付テ審議シテ見タガ、全ク是ガ十
分ナルモノト思ヘナイ但シ此內耕地整理
法中改正法律案、都市計晝法中改正法律案、
營業收益稅法中改正法律案、砂糖消費稅法
中改正法律案、織物消費稅法中改正法律案、
此五案ハ贊成ヲスル、併ナガラ地租法案外
地方稅制限ニ關スル二案、卽チ地租法案、明
治四十一年法律第三十七號中改正法律案、
大正十五年法律第二十四號中改正法律案、
此三案ニ付テハ自分ハ反對ヲスル、此反對
ヲスル趣旨ハ詰リ都會ニ於ケルトコロノ急
激ナル地租負擔ノ增加ヲ緩和スルト云フ意
味デアル、是ハ何レ此會議ニ於キマシテモ
御提出ニナルト思ヒマスカラシテ、細ミシ
イ修正ガゴザイマスルガソレハ申上ゲヌデ
置キマセウ、詰リ色ミノ割合等ニ付テノ步
合ヲ變ヘラレタノデアリマス、而モ其論者ト
雖モ此減稅ト云フ趣旨ニハ決シテ不贊成
デハナイ、此財源ノ不安ハ多少有ッテ居ル
ガ、減稅ニ付テハ何等反對ヲシテ居ラヌト
云フコトヲ申サレタノデアリマス、詰リ增
稅ノ點ガアルノヲ發見スルニ於テハ是ガ國
民ノ負擔ノ輕減ト云フコトニ付テ、全體ト
シテハ滅ジタト言ハレルケレドモ、或部分
ニハ減稅ニハナラヌ、此增稅ダケヲ唯止メ
テ貰ヒタイ、理窟ヲ色ミ政府デハ言ハレル
ノデアルガ、政治ハ理窟ノミデハ行クモノ
デハナイ、斯ウ云フコトモ考ヘテ貰ヒタイ
ト思フ、私共ハソレニ付テ修正ヲスルノデ
アル、而シテ是ガ農村ノ減稅ノ方ニ蠶食シ
テ行クノデハナイ農村ノ減稅ハ其儘トシ
テ屠ル斯ウナレバ此修正ノ結果トシテ大
體宅地ニ付テハ增稅トナラヌノデ居ル、又
都市ノ人ミノ負擔モ輕クナッテ增加スルコ
トハナイヤウニナル、此位此收入減ガ生ジ
テモ、是ハドンナ方法ヲ採ッテモウメルコト
ハ政府ニ出來ルデハナイカト云フコトヲ申
サレタノデアリマス、又希望決議ト云フモ
ノハ近來大分殖エテ來タ、併シ是ハ希望決
議ヲシタト云フコトヲ報告スルニ止マッテ、
是ハ貴族院ノ議決デハナイ、決議ニナルモ
ノデハナイ、殆ド此議場ニ現ハレルノハ··
其法案ガ通ッテモ斯樣ナ決議ハ雲トナリ霞
トナッテ消エルヤウナモノデアルト云フヤ
ウニ言ハレマシタ、而モ自分共ノ此修正ノ
說ハ今ノ希望決議ヲ出サレタトコロノ二箇
條ニハ全然合"テ居ルノデアル、アナタ方ノ
希望決議ヲ之ニ加ヘタト同樣ナモノナンデ
アルカラシテ、是ハ無理ナモノトハ思ハナ
イ、又此修正案ガ敗レテモ、少數デ敗レテ
モ斯樣ナ修正說ハ世相ニ鑑ミテ出シタ提案
デアルカラ、貴族院ニ斯樣ナコトガ現ハレ
タト云フコトガ世間ニ分レバ宜イト云フノ
デアルト、斯樣ニ言ハレマシタ、之ニ付テ
贊成モ出マシタ、決議ニナリマシテ愈〓採
決ノ結果修正說ハ少數デ否決トナリマシ
ク、附帶決議ハ多數ヲ以テ委員長タル私ガ
此議案ノ可決ト同時ニ之ヲ此處ニ報告スル
コトニナッタノデアリマス、之ニ對シマシテ
特ニ濱口總理大臣ハ發言ヲ求メラレマシ
タソレハ只今ノ三箇條ノ希望附帶決議ニ
付テデアリマス、言葉ハ極ク簡單デアリマ
ス、第一ノ點ニ付キマシテモ、第二、第三ニ付キ
マシテモ是ハ一括シテ申上ゲルコトガ出來
ルノデアリマス、何レモ某希望ニ副フヤウ
ニ取計ハウ、又地方ニ於テ無用ナ失費ガア
リ、又附加稅ガ增加シサウデアレバ極力ソ
レヲ止メテ監督ヲ十分ニシマセウト云フヤ
ウナ事デアリマス又海軍ノ財源ニ付キマ
シテモ十分ニ考慮シテ趣旨ニ副フヤウニシ
マセウト云フ一括シテ申上ゲマスレバ此
趣旨ノ精神ニ付テハ御認メニナッタコトト
委員長ハ考ヘルノデアリマス、甚ダ不完全
デゴザイマスガ、之ヲ以テ私ノ報〓ヲ終リ
マヽ、ドウゾ委員會ノ決議通リ御可決アラ
ムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=11
-
012・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ討論ニ
移リマス男爵坂本俊篤君
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=12
-
013・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 本員ハ切ニ國民負擔ノ
輕減ヲ希望スルモノデアリマス、唯夫レ國
民負擔ノ輕減ヲ希望イタシマスガ故ニ、斯
ノ如キ不完全極マル減稅案ニ反對スルモノ
デアリマス、換言スレバモット國民ノ期待ニ
副フタ完全ナル減稅案ヲ携ヘテ出直シテ來
タレト言フノデアリマス元來政府ハ何ト
申サレタノデアリマシタカ、軍縮ニ依ッテ國
庫ニ剩餘ヲ生ジタ場合ニハ之ヲ國民ノ負擔
輕減ニ充ツベシト、是ガ所謂國民ニ對スル
所ノ公約ナルモノデアルノデアリマス、併
ナガラ少シク退イテ御考ヲ願ヒタイノハ、
其公約ナルモノハ、ソレハ軍備縮少ガ理想
通リニ行ハレテ國防上何等ノ缺陷ヲ齎ラス
ヤウナコトナキ條約ノ締結ヲ豫期シタ時ノ
約束デアッタ、ソレガ事志ト違ヒ、ウマク行
カナカッタ、今日ハ自カラ別問題デアルト云
フコトハ當然ノ歸結デアラネバナラヌノデ
アリマス、ソレヲ無理遣リニ當時ノ公約ヲ
果シ、且ツ倫敦條約ヨリ生ズル所ノ國防上
ノ缺陷モ補塡セネバナラヌト云フ、此「ヂレ
ンマ」カラ脫レ出デヤウト藻搔イタ揚句ガ、
斯樣ナ不自然ナル畸形兒、卽チ國防計畫ト
シテモ不徹底、減稅案ト致シテモ不完全ナ
ルモノガ生レ、而シテ此誤レル出發點ガ何
處マデモ將來ノ海軍補充計畫ノ上ニモ、將
タ財政計畫ノ上ニモ非常ナル累ヲ貽サムト
スルモノデアリマス、元來海軍ノ補充計畫
ニ、第一次ダノ第二次ダノト、小刻ミニ刻
マレタモノガアラウ筈ガナイノデアリマ
ス、唯倫敦會議ノ後ヲ承ケテ其缺陷ヲ補充
シ、且ツ海軍本來ノ整備ヲ完ウシ、以テ國
防上遺策ナカラシムルニハ六億以上ノ經費
ヲ要スルコトハ、此度ノ議會ノ上ニ明カニ
ナッタノデアリマス、卽チ之ヲ實行イタサウ
ト致シマスルニハ減稅ニ充ツベキ金ハ一
文モ是ヨリ出ナ來ナイ筈デアリマス、ソコ
デ已ムヲ得ズ海軍補充計畫ヲ第一次二次ノ
二段ニ分チ、本來ナラバ其二段ノ計畫實行
ニ充ツベキ所ノ此保留財源ノ中ヨリ、時
海軍カラ立替ヘテ貰ヒ、今次ノ減稅案ナル
モノガ、ソレガ揑チ上ゲラレタモノデアリ
ママ、卽チ今囘ノ減稅ナルモノハ借金的ノ
減稅案デアリマス、借金ヲ以テ減稅ヲ爲ス
如キハ天下斯ノ如キ不合理ナル減稅案ナ
ルモノハアルデアリマセウカ、旣ニ借金デ
アル以上ハ、何レノ時カハ海軍ノ方ニ之ヲ
返濟シナケレバナラヌ運命ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、ソレハ如何ナル形式ニ依ルベ
キカ、增稅案カ、將タ公債募集カト、過日
大藏大臣ニ御尋ネ致シタコトヲ記憶スルモ
ノデアリマス、今囘ノ減稅案ノ基礎ノ薄弱
ナル實ニ斯ノ如キモノデアリマス、之ヲ以
テ見マシテモ、將來第二次補充計畫ノ遂行
上、當然保留サルベキ財源ヲ減稅ノ方ニ時
借リヲ致シテ置キナガラ、其第二次補充計
畫ノ財源ニ對シテハ、財務當局ニ於テ何等
準備モナケレバ、計畫モ持合セナイト云
フニ至リマシテハ之ヲ遺憾ト申サムヨリ
ハ寧ロ啞然トシテ言フ所ヲ知ラヌノデアリ
やく、政府ハ減稅案ヲ庇護スルニ急ナルガ
爲ニ、動モスレバ第二次補充計畫ヲ輕ク
取扱ハムトスルガ如キ口吻ノ仄ノ見エムト
致シマスコトハ甚ダ遺憾トスル所デアリ
マス卽チ曰ク、政府ハ減稅計畫アレドモ、
第二次補充計畫ナシト云フガ如キハ、偶〓人
ヲシテ政府ハ今囘提出ノ海軍補充計畫ノ後
ニ續ク所ノ何物モ持クテ居ラヌト云フガ如
キ過チニ人ヲ導カレ易イノデアリマスガ、
果シテ然リト致シタナラバ今日マデ幣原
首相代理竝ニ安保海軍大臣ノ申サレマシタ
コトハ皆噓デアルト云フコトニナリマス
ガ、マサカニソンナコトガアラウ筈モナク、
又左様ナコトガアリ得ベク、第一次補充計
畫ニ續ク所ノ海軍補充計畫ナルモノハ餘
リニ嚴肅ナル經過ト、根柢トヲ持ッテ居ルモ
ノデアリマス、然ラバ政府ノ所謂第二次補
充計畫ナシトハ如何ナルコトヲ意味スルカ
ト申シマスレバ、ソレハ斯樣デアリマス、
苟モ計畫ト云フ以上ハ如何ナル艦型ヲ以
テスルカ、如何ナル備砲ヲ以テスルカ、將
タ何年カラ著手スベキカ、其他内外ノ事情
ニ顧ミテ決定ヲ要スル事柄ガ色ミアルガ、
ソレ等ガ未ダ確定スル能ハザルノ故ヲ以
テ、今日ハ未ダ其計畫ガナイト云フ、斯樣
ナ意義ニ過ギヌノデアリマス、此點ハ最近
豫算委員總會ニ於ケル濱口首相竝ニ減稅委
員會ニ於ケル安保海軍大臣ノ言明ニ徴スル
モ一點疑フベキ餘地ノナキコトヲ知ルモ
ノデアリマス、尙ホ玆ニ指摘イタサネバナ
ラヌコトハ、假令前ニ申述ベル如キ意義ノ
計畫ト名ヅクベキモノハ、只今ハ其持合セ
ガナイト致シマシテモ、既ニ華府條約竝ニ
倫敦條約ニ依ッテ得タル造艦權利行使ニ基
ク所ノ「トン」數保有量ノ規定ガアリ、又ソ
レヲ著手スベキ時期ニハ自カラ制限ガアル
以上ハ之ニ要スル所ノ財源ノ準備、竝ニ
其實行ニ伴フ所ノ心算ナルモノハ、何ト致
シマシテモ今日其持合セガナクテハナラヌ
筈デアルノデアリマス況ヤ其時期トシテ
ハ一千九百三十六年以前ニ於テ著手セネバ
ナラヌコトハ條約ノ明示スル所アルニ於
テオヤデアリマス、苟モ國防ノ重倚ニ居リ、
其責任ヲ知ル閣臣、特ニ財務當局者ハ夙夜
思ヒヲ此處ニ致サネバナラヌト思フノデア
リマス、尙ホ此事柄ニ關シマシテ一言申添
ヘタイコトハ此海軍補充計畫、卽チ所謂
第二次計畫ヲ含ム所ノモノノ將來ニ關シマ
シテハ去ル三月三日、豫算委員總會ニ於
キマシテ、時ノ首相代理幣原國務大臣ト本
員トノ間ニ斯樣ナ問答ガ交換サレタノデア
リマス、卽チ速記錄第十二號第二頁ニアル
ノデアリマス、卽チ本員ハ此問題ハ源ヲ海
軍最高軍事諮問機關タル海軍軍事參議官會
議ノ奉答ノ事柄ニ發シ、次イデ濱口首相ニ
對スル奉答文ノ內覽允許ヨリ延イテ同首
相ヨリ之ニ對スル敷奏トナッタ經緯ヲ前提
ト致シタル後ニ、斯樣ニ申述ベタノデアリ
やっ、只今暫ク速記錄ニ付テ之ヲ讀ミ上ゲ
テ見タイノデアリマス、卽チ本員ノ申述べ
マシタコトヲ前略イタシマシテ、以下斯樣
デアリマス、「尙ホ今度ノ補充計畫ハ責任ヲ
以テ之ヲ遂行スルト云フコトハ是ハ勿論
肯定スル、斯ウ仰セラレタ、是ハ勿論ノコ
トデアラウト思フ、何モ私ハ左樣ナ當然ナ
コトヲ御尋ネスルノデハアリマセヌ、唯奉
答ニ基ク所ノ此補充計畫ナルモノハ斯樣
斯樣ノ徑路ヲ經テ玆ニ到ッタモノデアリマ
スカラ、之ニ對シテハ私ガ過日來申述ベマ
シタ通リ、此事柄ハ或ハ此趣旨ハト申
シテモ宜シウゴザイマスガ、將來ニ亙ッテ現
内閣ノ存續中ハ勿論ノコト、將來內閣ガ迭
ハルト雖モ、動カスベカラザルモノデアル
ト斯ウ考ヘル、繰返シテ申シマスガ、事ハ
最高諮問機關ノ奉答ニ基キ、ソレニ對シテ
濱口首相ハ其趣旨ニ依ッテ、將來獻替ヲ申上
グベキト云フコトヲ申述ベラレタノデアリ
やっ、普通ノ事柄トハ大變事ガ違フノデア
長
リマス、是ガ將來動クト云フヤウナコトハ
アリ得ベカラザルコトデアリマスルガ、併
ナガラ其コトニ對シテ種々憶測ガセラレテ
居リマスルカラ、其信念ヲ得ル爲ニ私ハ斯
樣ニ考ヘマスガ、首相代理ハ如何ニ御考ヘ
ニナリマセウ、斯ウ云フコトヲ御尋ネスル
ノデアリマス、何モ數量デアルトカ、時期
デアルトカ、程度デアルト云フヤウナコト
ヲ、左様ナコトヲ今前提トシテ之ヲ論ズル
ノデハアリマセヌ、斯樣ナ重大ナ此補充計
畫ノ將來ニ對シテ如何ニ御考ヘニナリマス
カト云フコトヲ御尋ネスルノデアリマス」、
之ニ對シテ國務大臣幣原男爵ハ曰ク「固ヨリ
補充計畫ノ重大ナル意義ヲ有スルト云フコ
トハ私モ能ク了解イタシテ居ルノデアリマ
ス、此政府ハ責任ヲ以テ之ヲ遂行スルノハ
勿論デアリマスルガ、假令政府ガ迭リマシ
テモ、內閣ガ迭リマシテモ、何レノ政府ト
雖モ是ハ責任ヲ以テ之ヲ遂行シナケレバナ
ラヌモノデアル、遂行スベキモノデアルト
ハ私ハ信ジテ居リマス」、ソレヨリ中程ヲ略
シマシテ斯樣ニ續キヲ仰セラテ居ルノデア
リマス、「敷奏文ト今囘ノ補充計畫ト云フモ
ノハ矛盾シタモノデハナイ、反對シテ居ル
モノデハナイト云フコトハ、私ハソレハ斷
言出來ルノデアリマス、併ナガラ坂本男爵
ノ御質問ノ要點ト云フモノハ此補充計畫
ハ重大ナモノデアル、又重要ナル手續ヲ經
テ決メラレタモノデアルカラ、現政府ハ勿
論將來ト雖モ是ハ必ズ之ヲ遂行スルト云
フコトヲ私ハ斷言シ得ルヤ否ヤト云フコト
デアリマスルカラ、此點ハ私ハ固ヨリ我〓
ノ關スル限リハ責任ヲ以テ之ヲ遂行スルト
云フコトヲ斷言シ、又將來ノ政府ト雖モ是
ハ必ズ遂行スベキモノデアルト云フコトハ
私ハ此所デ御答ヘスルノデアリマス、其趣
旨ニ於テ先刻御答ヲ致シタノデアリマス」、
斯樣ニ仰セラレタノデアリマス、之ニ對シ
テ本員ハ「只今首相代理ヨリ補充計畫ノ遂
行ノ將來ニ對シテハ現內閣ハ勿論ノコト將
來內閣ガ更迭スルトモ其內閣ハ必ズ之ヲ遂
行スベキモノデアルト考ヘル」、斯樣ニ質問
應答ヲ終ッタノデアリマス、所謂第二次補充
計畫ヲ含ム所ノ奉答ニ基ク所ノ海軍補充計
晝ナルモノハ斯樣ナ嚴肅ナル意義ト根柢
ヲ有スルモノデアリマスカラ、此ノ計畫ノ
遂行ハ將來微動ダモ許スコトノ出來ヌ性質
ヲ帶ビテ居ルモノデアリマス、卽チ海軍補
充計畫ノ前途ニハ斯カル嚴肅ナル意義ト根
柢ガ繋ッテ居ルノ故ヲ以チマシテ、之ニ要ス
ル所ノ財源ハ宜シク之ヲ保留シテ、其前途
ニ於テ避ク可ラザル此國防ノ費用ニ充當ス
ルコトコソ、上ハ聖明ノ懿志ニ對ヘ、下ハ
國民ノ期待ニ副フ所以デアルト思フノデア
リマス若夫レ國民負擔ノ輕減ニ至リマシ
テハ最モ望マシキモノデアリマスルガ故
二現在ノ減稅案ノ如ク、其內容ニ於テハ
一部國民ニ對シテ負擔輕減トナラズシテ、
却ッテ增加トナルガ如キ、所謂羊頭狗肉的ナ
ル姑息ナル減稅案ナルモノハ、宜シク之ヲ
撤囘シ、將來大イニ行政、財政、稅制ノ革
新ヲ行ヒ、其後ニ於テ規模ニ於テモ根柢ニ
於テモ、國民ノ期待ニ背カザル所ノ減稅案
ヲ携ヘテ出直シテ來タラルベキデアルト思
フノデアリマス、ソレハ恰モ慈雨ノ下ッテ一
樣ニ民草ヲ濕ホス如キ、其減稅ノ意義ニ於
テ適フ所ノ減稅案ヲ希望スルモノデアリマ
ス、苟モ國防內ニ滿チ國威外ニ揚ル時ハ
我ガ外交ハ勿論ノコト、經濟上ニモ、我國
民ノ企業ハ日ニ月ニ仲長スベク、之ニ反シ
テ國防內ニ全カラズ、國威外ニ揚ラザルニ
於テハ、外交ハ退嬰トナリ、國家ノ經濟ハ
萎縮シ、國民ノ元氣ハ日ニ月ニ餒ユルニ至
ルベキコトハ玆ニ喋々スルヲ待タヌコトデ
アリマス、卽チ知ル、先ヅ國防ヲ完フシ
以テ外侮リヲ禦グコトハ消極的ニ國民ノ
負擔ヲ輕滅スルヨリモ、寧ロ積極的ニ國民
ノ幸福ヲ增進スルノ所以ニ合スルモノナル
コトヲ私ハ信ゼント欲スルモノデアリマ
ス、若シ然ラズシテ、此儘將來我國防ヲシ
テ財政上不安ノ狀態ニ之ヲ放任センカ、諸
外國カラハ見ヨ日本ハ國ニ三大原則ヲ主
張シナガラ、今ハソレ以下ノ割當保有「ト
ン」數ニ對シテサヘ、之ヲ實現スルノ財政上
ノ力ナキニアラズヤト、果シテ斯ノ如クハ
啻ニ信ヲ國際間ニ失フノミナラズ、亦以テ
我ガ將來ノ國防上、多大ノ輕侮ヲ外國ヨリ
受クルノ因ヲナサンコトヲ虞ルルモノデア
リマス、只政府トシテハ軍縮ノ剩餘ハ之ヲ
國民ノ負擔輕減ニ充ツベシトノ公約ガ無ニ
ナリ、國民ヲ失望セシムベシト云フコトガ、
頗ル其立場ヲ困難ナラシムルト云フコト
ハ之ヲ察スルニ餘リアルモノデアリマス
ガ併ナガラ是モ前ニモ申シマスガ如ク、
軍縮ガ理想的ニ行ハレルト云フコトガ前提
トサレタ場合ノコトデア〃テ、ソレガ事志ト
違ッテ行ハレナカッタトスレバ、是亦已ムヲ
得ヌコトデアルト思フ、ノミナラズ、況ヤ
公約ナルモノハ軍縮ニ剩餘ヲ生ジタル場合
ヲ約束シタモノデアリマスカラ、其剩餘ナ
キ已ムヲ得ザル場合ニハ、必シモ之ヲ違約
ト言フ能ハザルニ於テオヤデアリマス、惟
フニ國民ト雖モ、此經緯ヲ明ニスルニ於キ
マシテハ、國防ノコトナドハドウデモ宜イ
カラ、何デモカンデモ約束通リ減稅ヲセネ
バ承知シナイト云フガ如キ、左樣ナ無理解ナ
ル國民デアラウトハ本員ハ考フルコトガ出
來ヌノデアリマス、世ノ中ニハ小信大義ヲ
誤ルト云フコトガ往々アルノデアリマス、强
テ小信ヲ全フセムト致シテ、却ッテ國家ノ大
局ヲ誤ルコトガ往々アルノデアリマス、此
際國民ニ對シテ小信ヲ全ウセントシテ却ツ
テ國民ニ對シテ國防上ノ大義ヲ誤ルコトア
ラムコトヲ虞ルルモノデアリマス、繰返シ
テ申シマス、本員ハ國民負擔ノ輕減ヲ最モ
希望スルモノデアリマス、故ニ斯ノ如ク姑
息ナル、軈テハ增稅ヲモ餘儀ナクサルル如
キ基礎ノ薄弱ナル減稅案ニ對シマシテハ
斷然之ニ反對スルモノデアリマス、何卒滿
場諸君ノ御贊成ヲ希フモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=13
-
014・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 小林嘉平治君
〔小林嘉平治君演壇ニ豆ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=14
-
015・小林嘉平治
○小林嘉平治君 玆ニ上程サレマシタ減稅
案ハ私ガ改メテ申ス迄モナク、我〓ノ生
活ニ卽シタ重要法案デアリマス、殊ニ地租
法案ノ如キハ明治初年制定以來、又議會ガ
開ケテ以來、其不公平デアルト云フコトガ
叫バレマシテ、今日マデ解決サレナカッタ重
要法案デアリマス、實ニ此法案ノ改正ト云
フモノハ所謂稅制史ノ一頁ヲ飾ル所ノ重要
法案デアリマス此上程ニ當リマシテ、政
治家トシテノ立場カラ、又學者トシテノ立
場カラ論究サレル方モアリマセウガ、私共
日々營々トシテ產業ニ從事シテ居ル我々ノ
立場カラ如何ニ之ヲ見テ居ルカト云フコト
ヲ論究スルト云フコトハ決シテ無意味デナカ
ラウト思フノデアリマス、殊ニ私ハ委員會
ニ於テ相當ノ日子ヲ費サシテ論究ヲサレ其
改正ノ精神モ明カニナッタノデアリマスカ
ラシテ、今更反對ノ聲ヲ擧ゲ修正ヲ爲ス方
ハ一人モナカラウト思フテ居タニ拘ラズ、
先刻モ演壇ニ於テ反對ノ聲ヲ聽キ、尙ホ修
正案ノ提出サレルコトヲ見マシテ一層私
ハ私共ガ此法案ニ向ッテ如何ナル考ヲ有。ツ
テ居ルカト云フコトヲ御示シテ置ク必要ガ
アルト云フコトヲ痛感イタシタ次第デアリ
マス、私ハ何ガ故ニ此法案ニ贊成ヲスルカ、
第一ハ此法案ハ正義人道ニ基イテ居ルモノ
デアル、第二ハ此減稅案ハ其種目ノ選擇最
モ宜シキヲ得テ居ル、一面ニハ社會政策的
ノ考慮ヲ缺イテ居ルト云フ說モアルガ、私
共ハ最モ考慮ガ費サレテアルト感ジテ居ル
ノデアリマス、第三ニハ負擔ノ公平ト云フ
コトガ主眼ニナッテ居ル、第四ニハ其財源宜
シキヲ得テ居ル、此四ツノ點デ以テ私ハ大イ
ニ贊意ヲ表シテ居ルモノデアリマス、私ガ
改メテ申ス迄モナク、此減稅案ハ、私ハ平
年度ニ付テ申上ゲマスルガ、地租ニ於テ一
千八十一万圓、營業收益稅ニ於テ四千六百
十五万圓、砂糖消費稅ニ於テ六百五十万九
千圓、織物消費稅ニ於テ四百十三万六千圓、
合計平年度ニ於テ二千五百六十二万二千圓
ノ減稅案デアリマス、何ガ故ニ種目選擇宜
シキヲ得タト申スカト云フト、今日產業不
振ノ折柄、產業ノ開發、發展ヲ圖ルト云フ
意味カラ此負擔ノ輕減ヲ圖ラネバナラヌト
云フコトハ言フ迄モアリマセヌ、此意味ニ
於テ、先ヅ第一、農民ニ對シテハ地租ヲ選
ビ、商工業者ニ對シテハ營業稅ヲ選ブト云
フコトハ勿論ノコトデアリマス、又消費稅
ニ於テ色ミノ種目ガアリマス、何ガ故ニ砂
糖稅ト織物稅ヲ選ンダノデアルカ、私共世間
ニ能ク言フ所ノ社會政策的考慮ヲ缺イテ居
ルト云フ非難ニ對シテハ絕對ニ反對ヲ致ス
モノデアリマス、消費稅ノ中ニ他ニ何ガア
ルカト申シマスト、其主ナルモノハ酒ノ稅
デアリマス、又一面、稅デハアリマセヌガ
煙草ノ專賣デアリマス、何ガ故ニ酒ノ稅ヲ
下ゲナイカ、煙草ノ値下ヲシナイカ是
民衆ノ多數ノ生活ニ關係ノアルモノデア
ル、斯ウ云フ點ヲ考慮シナカッタト云フコト
ヲ非難ヲ致シテ居ルノデアリマス、私ハ私
共ノ信ズル社會政策ト云フコトガ間違ガナ
カリセバ政府ノ執ッタ政策ハ確ニ其消費稅
ニ於テモ種目宜シキヲ得タト思フノデアリ
マく、社會政策ナルモノハ決シテ多數民衆
ニ向ッテ一時的所謂刹那ノ樂シミヲ與ヘル
ト云フ意味ヂヤアリマセヌ酒ト煙草ハ刹
那ノ樂シミヲ與ヘルニ過ギマセヌ、現ニ酒
ノ如キハ亞米利加ニ於テモ禁酒ヲ今尙ホ實
行シテ居ルデハアリマセヌカ、又最近ノ事
實ニ徵シマシテモ禁酒反對ヲ標榜シテ立〃
タ所ノ大統領候補者ガ敗レクト云フ事實ガ
現ニアルノデアリマス、又煙草ハ如何デア
リマスカ、私共此間、請願委員會デ現ニ此
處ニ居ラレル專賣局長官ニ御尋ヲ致シタコ
トガアルノデアリマス、私ハ煙草ト云フモ
ノハ贅澤品ト見テ居ルガ、〓專賣局長
官ハ如何ニ見テ居ルカ、此問ニ對シテ專賣
局長官ハ是ハムヅカシイ問題デアル、サ
スガハ專賣局ノ長官デアリマス、直ダニ贅
澤トハ申サレマセヌ、併ナガラ嗜好品デア
ル斯ウ云フ名目ヲ選バレマシタ、私共贅
澤品ト嗜好品ノ間ニドノ位ノ差ノアルカト
云フコトハ知リマセヌ、又次ニ「ニコチン」
ノ害ヲ御認メニナルカ、ソレハ認メテ居リ
Vマ、斯ウ云フコトデアリマス、玆ニ於デ
カ、私共ハ酒ト煙草ノ減稅ヲシ、値下ゲヲ
スル必要ノナイコトヲ痛感イタシタモノデ
アリマス、世間デ此問題ニ觸レナカッタト云
フ非難ヲスル者ガアリマス此前ノ若槻内
閣ノ稅制整理ニ當ッテモ矢張リ此非難ガ隨
分アリマシタ而モ其當時ハ寧ロ其內閣ニ
於テ酒ヲ增稅シサウシテ煙草ノ値上ヲシ
其財源ニ依クテ所謂社會政策ヲ加味シタ所
ノ彼ノ通行稅ヲ廢止シタ、又賣藥稅ヲ廢
止シタ、醤油稅ヲ廢止シタ織物、低級ノ
木綿ノ織物稅ヲ廢止シタ、卽チ是ハ必需品
デアリマス斯カルモノヲ減稅シタト云フ
コトハ確ニ社會政策ヲ實行シタモノデアリ
やく、今ノ內閣ニ於テモ此社會政策ヲ決シ
テ忘レルモノデハアリマセヌ、デアルカラ
シテ其必需品ノ一タル所ノ我ミハ、糖分
ハ必要デアリマス、秒糖ニ於テ玆ニ滅稅ヲ
シ、又我ミノ衣類デアル所ノ贅澤ニ屬セザ
ル部分ニ於テ減稅ヲシタト云フコトハ確
ニ社會政策ヲ加味シタ所ノ其滅稅ノ種自宜
シキヲ得タト云フコトヲ痛感イクスモノデ
アルノデアリマス、第三ニハ負擔ノ公平ヲ
主眼トシテ居ル、私過日此壇上カラモ其意
ヲ盡サウト思ッテ盡セナカッタノデアリマス
ガ、租稅ニ負擔ノ公平ノ必要ナルコトハ繰
返ス必要ハアリマセヌ、私共玆ニ出ル所ノ
修正案、又反對ノ議論ヲ見マシテ、租稅ノ
負擔ノ公平ノ必要ナルコトヲ御忘レニナツ
テ居ルノデアリハシナイカト云フ感ジガ致
スノデアリマス、第一新地租法ニ依ッテ其負
擔ガ最モ公平ニ取扱ハレルコトニナッタノ
デアリマス、先刻申上ゲタ通リ此地價ニ依ク
テ地種ヲ取ルト云フコトガ誠ニ不公平デア
ルト云フコトハ明治初年ニ地價ガ取決メマ
シテ以來以後二囘程修正ハ致シマシクケレ
ドモ、其姑息デアルコトハ皆樣御承知ノ通
リデアリマス、サウシテ今日ニ至ッテ居ル、
又宅地モ四十三年ニハ修正サレマシタケレ
ドモ、爾來二十年ニ至ッテ居ル、此時代ノ變
遷ト云ヒ、又交通ノ便否、又其他ノ事情ニ
依リマシテ、其利用價値ガ大變ニ變ヲテ居ル
ト云フコトハ私ガ御示シスル迄モナイ、現
ニ此田畑ニ付テ實例ヲ見マスルト云フト
詳シクハ私ハ時間ヲ節約スル意味デ申シマ
セヌガ、最高ノ所ニ於テ五十一圓何ガシト
云フモノデアル、田一段ニ付テ、最低ノ所ニ
於テハ二十圓何ガシデアリマス、是ハ各府縣
ノ平均デアリマス、其各府縣ノ平均ニ於キマ
シテ、田ニ於テ一段步ニ於テ三十圓ノソコニ
地價ノ差ガアル、又畑ニ於テ最高ノ所ニ於
テ二十二圓何ガシデアル、最低ノ所ハ二圓
何ガシデアリマス、二十圓ノ差ガアル斯
カル所ノ地價ト云フモノガ根據ニナッテ今
ノ租稅ヲ徵收イタシテ居ルノデアリマス
其不公平ナルコトハ申上ゲル迄モアリマセ
又、是ガ不公平デアルト云フ結果ガデス
アノ賃貸價格調査法トナッテ現ハレマシテ、
私共現ニ貴族院議員トシテ其審議ニ與カツ
タノデアリマス五十一議會ノ時デアリマ
シタ、卽チ賃貸價格調査法是デアリマス
又翌年ニ賃貸價格調査委員會法ト云フモノ
ガ審議ニ掛リマシタ、其時ノ議會ノ〓勢ヲ
見マスト云フト、委員會ニ於テ全會一致デ
可決イタシテ居リマス、又本會議ニ於テモ
多數デ以テ通過致シテ居ル一人モ反對ヲ
唱ヘタ者ハナイノデアリマス、又其時ニ旣
ニ此賃貸價格ト云フモノガ將來租稅ノ課稅
標準ニナルト云フコトハ明カニ當局大臣ハ
示シテ居ルノデアリマス、委員長ノ報〓ニ
依ッテモ明カデアリマス、此結果ガ今日ト
ナッテ現ハレタノデアリマシテ、若シ內閣ガ
續ケバ先刻ノ御話ノ通リ昭和三年度ニ實行
スベカリシ問題デアック、ソレガ今日ニ及ン
ダノデアリマス、若シ此方法ニシテ反對ヲ
唱ヘルナラバ、アノ賃貸價格法ノ實施サレ
タ當時ニ於テ反對ヲ唱フベキデアッタノデ
アル、又其實施サレタ時ノ經過ガドウ云フ
コトデアッタカ、又結果ガドウデアリマシタ
カ、私ハ如何ニ公平デアルカト云フコトヲ
示ス爲ニ、玆ニ實際ノ狀況ヲ御話シタイト
思ヒマス、賃貸價格ノ調査ト云フコトハ皆
樣御案内ノ通リニ各町村カラ一名以上ノ調
査委員ガ出マシテ、サウシテ稅務署ノ提案
ニ對シテ五十日ノ日子ヲ費シテ調査ヲ致シ
タノデアリマス、サウシテ出來ッタモノハ二
十日間之ヲ縱覽ヲ許シタノデアリマス若シ
不平ガアレバ稅務監督局ニ之ヲ申出ルノデ
アリマス、サウシテ又訴願ノ途ガ開イテア
リマス、行政裁判所ニモ持出ス所ノ途ガチ
ヤント開イテアル、而モ日本全國ニ於テ一
件モ、此裁判ニ係ッタモノガナイト云フ事實
ヲ見マシテモ、如何ニ公平ニ此調査法ガ行
ハレタカ、結果ガ公平デアルカト云フコト
ハ明カデアリマウテ、私共直接關係ハ致シ
マセヌガ、其實情ヲ明カニスル者ハ痛切ニ
其公平ナルコトヲ信ジテ疑ハナイノデアリ
さゝ、其結果ガ今日トナッテ此法案トナッテ
現ハレタノデアリマス、荀モ租稅ノ負擔ノ
公平デナケレバナラヌト云フ此原則、此鐵
則ヲ忘レナイ者デアルナラバ、今日宅地ガ
高ウチッタトカ、都會地ガドウカウト云フコ
トニ付テ私ハ議論ガアルベキ筋合ノモノデ
ナイト思フ試ニ私ハ反對ヲサルヽ方ノ一
二ノ議論ヲ捉ヘマシテ、反駁ヲ加ヘテ見ヤ
ウト思フノデアリマス、如何ニモ此調査ヲ
致シ今度發表サレテ居ル所ノ案ニ依リマシ
テ、大都市ノアル所ノ府縣ハ增稅ニナッテ居
ルノデアリマス、是ハ私ハ認メマス、卽チ
各府縣ノ總額ニ付テ申シマスト、東京府ニ
於テ二百九十一万圓ノ增稅トナッテ居リマ
ス、次ハ大阪府デアリマス、百一万圓デア
リマス、其次ニ增稅ニナリマシタノハ京都
神奈川、山口五府縣ニ過ギマセヌ、其他ハ
總テ減稅トナッテ居ルノデアリマス、是ハ總
體ニ付キ申シマス、又宅地ノミニ付テ言ヒ
マスト、東京府ハ三百万圓カラノ增稅ニナッ
テ居リマス、又大阪府ハ百五十八万圓カラ
ノ增稅ニナッテ居リマス、其他宅地ノミニ付
テ言ヒマスト、增稅ニナッタ所ノ府縣ハ十三
アリマス、併ナガラ其增稅五百四十五万圓
ノ中デ主ナルモノハ東京ノ三百万圓、大阪
ノ百五十幾万圓ヲ引キマスト、アトノ增稅
ト云フモノハホンノ僅カデアリマシテ宅
地ガ上ッタ〓〓ト云ハレルガ、此事實ヲ調
ベテ見マスト、他ノ三十幾縣ハ宅地ニ於テ
モ總テ減稅ニナッテ居ルノデアリマス、東京
ハ何ガ故ニ增稅ニナッタカ、是ハ私ガ改メテ
申ス迄モナク、東京ノ發展ガ如何ニ大デア
ルカ、又附近ノ郡町村ガ如何ニ發展シ居ル
カ此事實ヲ考ヘタナラバ直ニ了解ガ出
來マスコトハ多クノ言葉ヲ費ス必要ハナイ
ノデアリマス、而モ東京ハ若シ之ヲ其發展
ト云フコトヲ根據トシテ、賃貸價格ト云フ
コトヲ根據トシテ增稅ヲ致シマスナラバ
ヨリ多クノ增稅ニナルノデアリマシタガ、
所謂三倍八割ト云フコトデ押へテアル爲ニ、
東京府ニ於テモ百二万八千圓カラ其增稅ノ
額ハ減クテ居ルノデアリマス、而モ其減ツタ
額ハ誰ガ背負フカト云フト、是ハ地方ノ所
謂町村······農村ニ於テ其減シタダケハ背負。ツ
テ居ルノデアリマス、斯ウ云フ事實ヲ考ヘ
テ見マスト、私ハ東京市ノ御方トシテモサ
ウ小言ヲ仰シヤルコトハナカラウト思ヒマ
ス、此調査ノ結果ハ今囘ノ減稅ノ實施サ
レル結果ハ、個々ノ事實ニ付テ言ヒマスト
東京市バカリガ上ッテ居ルノデハアリマセ
ヌ、又宅地バカリガ上ッテ居ルノデハアリマ
セヌ、是ハ能ク御聽キヲ願ヒタイ、所謂農
村ハ減稅ニナルト言ハレテ居ルガ、田畑ニ
於テモ矢張リ上ッテ居ル所ガアルノデアリ
やく、一口ニ申シマスト、是マデ新田ト稱
ヘテ、サウシテ地價ノ安カッタ所ハ今度ハ增
稅ニナッテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ事實
ガアルノデアリマス、決シテ宅地バカリガ、
東京バカリガ增稅ニナッテ居ルノデアリマ
セヌ、併シ是モ負擔ノ公平ト云フコトヲ考
ヘルト、農村ニ住ンデ居ル我とデモ之ヲ拒
ムコトハ致シテ居ラヌ、東京市ニ於テ頻ニ
增稅ト云フコトニ付テ非難サルル方ガアル
ノデ、私ハ大藏省ニ付キマシテ個々ノ事實
ヲ捉ヘテ調ベテ見マシタ、東京市ノ宅地ニ
於キマシテモ必シモ上ルモノバカリハナイ
ノデアリマス、下ッテ居ルモノモ現ニアルノ
デアリマス、此コニ私ハ實例ヲ持ツテ居リマ
ス、又東京市内ノ以前カラ中心ニナッテ居ル
所ノ町デアリマシテ繁榮シテ居タ所ハ左
程上ッテ居ラヌト云フ事實ガアルノデアリ
マス、唯丸ノ内ノ如キ我ミノ書生時代ニ草
ノ茫々ト生エテ居ッタ所ハアア云フ所ハ
上ッテ居リマスガ、其事實ノ實例ヲ調ベマス
ト云フト、或ル地番ヲ調ベテ見マスト云フ
ト、四十四圓六十二錢ノ納稅デ宜カッタモノ
ガ、之ヲ今度賃貸價格ニ依ッテ正確ニ之ヲ算
用イタシマスト、六百四十四圓九十三錢納
メネバナラヌト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマス、而モ三倍八割ト云フコトデ押ヘ
テアル爲ニ是ガ百六十九圓五十五錢デ濟ン
デ居リマス、卽チ四百圓餘リハ此恩典ニ浴
シテ減稅ニナッテ居ルト云フ事實ガアルノ
デアリマス斯カル實例ヲ示セバ幾ラモア
リマスルガ、時間ヲ省ク意味ニ於テ此程度
ニ致シテ置キマス、斯ク考ヘ來リマシタナ
ラバ·····私ハ餘リニ東京市ノ方ガ不平ヲ言
ハレルカラシテ調ベテ見ルト事實ハ斯ノ
如クデアリマス、何處ニ不平ヲ言フ所ガア
リマスカ殊ニデス、東京市ガ先刻來モ農
村ノ爲ニ國費ヲドレダケ費シタト云フヤウ
ナコトヲ色〓御話ヲ聽キマスガ、私ハ此宅
地ヲ上ゲルト云フ、直接宅地ニ影響スル所
ノ國費ヲ國家ガドノ位東京市ニ捧ゲテ居ル
カト云フコトヲ又內務省ニ付テ調ベテ見マ
シタ、其調査ニ依リマスルト、此震災復興
ノ爲ニ國家自カラ道路河川改修ノ爲ニ數億
万ノ大イナルオ金ヲ費ツテ居ルト云ブコト
ハ私共玆ニ說明スル必要ハアリマセヌ
皆樣御承知ノ通リデアリマス、ガ現ニ今ノ
東京市自身トシテ爲シテ居ル所ノ事業ニ對
シテモ、其市ノ事業ニ對シテモ一億一千三
百餘万圓ヲ補助イタシテ居リマス、又國庫
ハ市ニ對シテ七千三百餘万圓ノ貸付ヲ致シ
テ居リマス、又復興費ノ爲ニ市ノ外國
債ニ對シテ元利ノ保證ヲシテ居ルノミナラ
ズ過去數年ニ亙ッテ利子ノ全部ヲ拂ウテ
居ル事實モアル、每年又經常費ニ於テ五
百万圓バカリ東京市ニ補助ヲ致シテ居
リマス、其中ノ內容ヲ調ベマスト街路
道ヲ良クスルトカ又水道ノ爲トカ、サウ云
フコトガ大部分デアリマシテ、要スルニ私
ハ今直接宅地ノ値打ヲ上ゲルタメニト見タ
所ノモノニ對シテノミ今申上ゲタノデアリ
やく、斯カル現狀デアリマス、斯ウ云フコ
トヲ御承知下サル所ノ東京市民ハ決シテ此
問題ニ向ッテ反對ヲ爲サル方ハナカラウト
思フ、現ニ我とノ知ッテ居ル貴族院議員ノ同
僚ハ決シテ反對ヲ爲スッテイラッシヤラヌノ
デアリマス、負擔ノ公平ト云フコトノ結果
ノ今日持來サレタト云フコトハ是ハ忍バ
ネバナラヌト云フコトヲ私共ニ斷言シテ居
ラレル方モ少ナタナイノデアリマス、ガ併
ナガラ私ハ世間ノ惑ヲ解ク爲ニ是ダケノコ
トヲ申上ゲテ置タノデアリマス、尙ホ宅地
ノ增設ニ付テ御心配ノ結果一部ノ方ミヨリ
修正案トナッテ現ハレルヤウデアリマスル
ガ元來宅地ト云フモノハ過去ニ於テ相當
ノ租稅力ヲ有ッテ居ル、田畑ニ比シテ利用價
値ノ多イモノデアルト云フコトハ、斯ウ云
フ事實ヲ以テモ證明サレルノデアリマス
アノ戰時ニ增稅ヲシマシタ時分ニ、郡村宅
地ニ於キマシテハ二·五ノ稅率ニ對シテ更
ニ五·五ノ增稅ヲ致シマシタ、是ハ郡村宅地
デアリマス、又市街宅地ニ對シテハ一一半ニ
對シテ十七·五ト云フモノヲ增稅シテ、サウ
シテ二十ヲ負擔シテ、ソレガ圓滿ニ行ハレ
タト云フ事實モアルノデアリマス、元來田
烟ニ比シマシテ其利用價値ノ多イ、卽チヨ
リ多クノ租稅ヲ負擔シテモ宜イト云フコト
ハ斯ウ云フ一例モ引キマシテモ明カニ立
證シ得ルノデアリマス、世間デハ或ハ此地
租ノ根本的稅制ノ改革ト減稅案トヲ切離シ
タラ宜カッタノデアル、斯ウ云フモノヲコン
ガラガスカラシテ其結果、理解ノ出來ニク
イヤウナ結果ヲ持來シタノデアル斯ウ云
フコトヲ非難スル人ガアルノデアリマス
一應尤モノヤウニ聞エマスルガ、私ハ減稅
ノ機會ヲ選シデ、サウシテ此根本的ノ改革
ヲ爲シタト云フコトハ誠ニ宜シキヲ得タト
考ヘテ居リマス、若シ之ヲ切離スナラバ世
間ノ期待ニ全ク反スル所ノ結果ヲ持來スノ
デアリマス、屢〓大藏當局ノ說明スル如ク
此減稅ナシニ新地租法ヲ行フナラバ、宅地
ノ增稅ハ九百万圓ニ上ルノデアリマス、而
モ此減稅ト云フコトヲ加味シテ、サウシテ
今度ノ地租法ヲ行ウタ結果ハ五百万圓餘リ
デアリマス卽チ此減稅ト云フコトヲ加味
シタ結果玆ニ宅地ノ增四百万圓ヲ救ヒ出サ
レタノデアリマス斯ウ云フコトヲ考慮イ
タシマシタナラバ、一層私共ハ政府ノ措置
宜シキヲ得タト云フコトヲ痛感セザルヲ得
ヌノデアリマス、之ヲ要スルニ都會地ニ於
テ三倍八分ニ苦シム御方ハ少カラヌノデ
アルガ、我〓地方ニ住ンデ居ル者ハドウカ
シテ地方ガ發展ヲシテ地方ノ宅地ガ發展
ヲシテ三倍八分デ苦ムヤウナ苦ミヲ一度デ
モ嘗メテ見タイモノダト云フコトヲ痛切ニ
感ジテ居ルノデアリマス、此一言ヲ以テ私
ハ或ル反對ヲ爲サル東京市民ノ一部ノ方ニ
御答ヲ致シテ置キマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
況ヤ其繁榮ヲ持來シタノハ單ナル自己ノ力
ノミデハアリマセヌ、先刻申上ゲタ通リ宅
地其モノニ直接ノ關係ヲ持ッテ、國家ガ如何
ニ援助ヲシテ居ルカト云フコトヲ考ヘタナラ
バ、少シハ御遠慮ヲ爲スッテモ宜カラウト思
フ(笑聲起ル)次ニハ其財源ハ最モ適切デア
ルト云フコトヲ申上ゲタイノデアリマス、
私ガ玆ニ改メテ申上ゲル迄モナク、此
減稅ハ先刻委員長カラ精シク御報告ニナッ
タ通リ軍縮ノ結果デアリマス、先刻私ハ申
上ゲマシタ、正義人道ニ基クモノデアルト
云フコトヲ申シタ、私共ハ不戰條約トカ軍
縮ト云フコトガデス、ココ十數年前マデハ
所謂理想家ノ空論ニ過ギナイト思ウテ居リ
マシタ、而モ之ガ實現シテ參フタノデアリマ
ス曩ニ又亞米利加大統領ノ發意ニ依リマ
シテ第二ノ軍縮ヲ發意シタ時ニハ失敗ニ了
リマシタ、然ルニ今回ハ我ガ日本全權ノ少
カラザル盡力ニ依ヶテ成立シタト申シテ宜
イト思ヒマス、是ハ單ニ若槻全權、現內閣
ノ誇デアルノミナラズ私共ノ時代ノ生ン
ダ一ツノ誇デアルノデアリマス其倫敦條
約ノ結果ガ所謂此減稅ノ結果ヲ持來シタノ
デアリマス、若シ倫敦條約ナカリセバ私共
ノ今日マデ聞イテ居ル所ニ依ルトドウシ
テモ昭和十一年度マデニ日本ノ海軍計畫ト
致シテハ十億万圓ノ御金ヲ費サナケレバナ
ラヌト云フコトデアリマス、而モ政府ガ屢〓
言明スル如ク三億七千四百万圓デ所謂國防
ノ根幹ハ完備スルト云フコトデアレバ玆
ニ國民ト致シテハ一億三千万圓ヂヤアリマ
セヌ、六億餘万圓ノ負擔ヲモ輕メラレタ結
果ヲ持來シタノデアリマス、併シ先刻申上
ゲマシタ十億ト云フモノハ留保シテ居ルモ
ノデアリマセヌ、留保財源ハ五億八百万圓、
其中三億七千四百万圓ヲ海軍ニ使ウテ、其
殘リ一億三千四百万圓ヲ此減稅ニ充テラレ
タノデアリマス、屢、〓政府ノ聲明スル如ク、
我ミノ了解シテ居ル如ク、此軍縮ノ目的ハ
一面ニハ所謂建艦競爭ヲ防止スルト共ニ、
一ツニハ國民負擔ノ輕減ニ充テルト云フコ
トヲ聲明イタシテ居ルノデアリマス、日本
ノミデアリマセヌ、列國ノ齊シク聲明イタ
シテ居ル所デアル、其聲明ノ結果ガ今日ニ
至ッタノデアリマス、私ガ財源最モ宜シキヲ
得タト云フノハ此所以デアリマス、先刻坂
本男爵ガ反對ヲセラレタ此點ニ付キマシ
テ少シク考慮ヲ致シテ見タイト思フノデ
アリマス、私共坂本男爵ガ貴族院議員トシ
テ、海軍方面ニ深イ知識ヲ以テ居ラッシヤル
結果、アノ結論ニ達セラレタト云フコトニ
ハ深ク敬意ヲ表シテ居ル者デアリマス、決
シテ男爵ノ御意見ヲ彼此レ申上ゲルノデハ
アリマセヌ、併ナガラ我〓議員ト致シマシ
テハ現内閣ガ現ニ海軍大臣トシテ又總理大
臣トシテ、所謂第一次計畫デ以テ國防ノ根
幹ハ完備シテ居ル、國防上不安ハナシト云
フコトヲ屢〓繰返シテ居ラレルノデアリマ
ス、勿論私ハ昭和十一年度マデニ或ル計畫
ノ必要デアルト云フコトハ承知ヲ致シテ居
リマス、承ッテ居リマス、併シ先刻委員長ノ
報〓ノ通リ、尙ホ計畫ト言ヒ、第二次計畫
ト······濱口首相ハ特ニ計畫ト云フ言葉ヲ避
ケラレマシタ、マダ其程度ニ達シテ居ナイ
モノヲ、我〓ハ心配シテ居ッタナラバイツ減
稅ガ行ハレルノデアリマセウカ、殊ニデス、
斯ウ云フコトヲ申上ゲテハ如何デアルカト
モ思フガ、何時ノ內閣デモ政府ニ剩餘金ガ
餘リニ餘計アルト碌ナコトハ致シマセヌ、
アノ嘗テ每年剩餘金ノ澤山集ッタ時分ニ何
ヲ致シマシタカ、其最モ大ナル一例ハ何カ
ト云フト、アノ西比利亞出兵デアリマシタ、
何億万圓ノ御金ヲ使ヒマシタガ、剩餘金ガ
ナカッタラ決シテ斯カル事ハ致シテ居リマ
セヌ、其結果今日ハ如何デアリマスカ、其
當時議會デモ頻ニ議論ガアッタノデアリマ
ス是ハ全ク餘リニ多ク剩餘金ヲ有ッテ居ッ
タ結果ガ、アノ結果ヲ持來シタノデアリマ
ス、是ハ最モ著シイ例デアリマスルガ、我
我ハ政府ヲ監督スル意味ニ於テ、政府自體
ガ減稅ヲ行ハウト云フノニ、或ル一部ノ方
方ガ、日本ハ軍縮ニ同意ヲナシ大ニ此盡力
ヲ致シタガ、其實軍備擴張ト云フコトヲ始
終考ヘテ居ルノヂヤナイカト、列國ニ疑ヲ
抱カセルヤウナ言動ノアルコトヲ、非常ニ
私ハ憂ヘテ居ルノデアリマス、或ル一部ノ
軍事參議官ノ要職ニ在ル方ガ、自分ノ所信
ヲ滿足······目的ヲ達スルコトノ出來ナカッ
タ爲ニ、國民ニ向ッテ······其當時ハモット重
要ナ位置ニ立ッテ居リマシタガ、一種ノ聲明
ヲ爲サレマシタコトハ私實ニ驚イタ、ケレ
ドモ尙ホ恕スベシデス、國防ニ〓心ノ餘リ
斯カル行動ヲ御執リニナルノデアルト恕シ
テ居リマシタ、然ルニ今日ニ至ッテモ尙ホ當
時ノ行動ヲ繰返サレルニ至ッテハ實ニ私ハ
驚カザルヲ得ヌノデアリマス、私ハ責任ノ
位地ニ立タナイ所ノ方ミノ、縱令軍人デアッ
テモデス、共斷言ヨリハ宣傳ヨリハデ
ス、現ニ其責任ノ位地ニ立ッテ居ラッシヤル
所ノ海軍大臣、又現內閣ノ言明ニ信賴シテ、
サウシテ私ハ其剩餘金ヲ以テ此減稅ニ充テ
ルト云フコトハ私共ノ贊成セザルヲ得ザ
ル點デアルノデアリマス、尙又私此議會ニ
於テ海軍ノ軍備擴張ニ類スル所ノ言動ノア
ルコトヲ憂フルト同時ニ······私共ハ陸軍ニ
向ッテモデス、大ナル軍縮ヲ行ウテ貰ヒタイ
ト云フコトヲ要望イタシテ居ルモノデアリ
PV、恐ラク或ル一部ノ方ミノ言動ト云フ
モノハ陸軍大臣ニハ誠ニ御都合ノ好イコ
トデアルト、心ノ中デハ喜ンデ居ラッシヤル
ノヂヤナイカト私ハ思フノデアリマス、私
ハ又之ニ類似ノ事ヲ今日見出ダシタノデア
リマス或ル一人ノ衆議院議員ヲ捉ヘテ
地方カラ澤山ナ有志ノ方ミガ······立派ナ方
方ガ集ヲテ、何カ要望ヲシテ居ラ,シヤルノ
デアリマス、何カト思ウテ見タ所ガ、所謂
裁判所ノ事務復活ノ運動デアリマス、マダ
事實ニ現ハレヌ先カラデス、私共此態度ニ
付キマシテ、衆議院ノ態度ヲ非常ニ惜ンダ
モノデアリマス、貴族院ハ決シテ斯カル態
度ヲ執ラナカッタト思ヒマス
〔「簡單」ト呼フ者アリ〕
中ニハ此今囘ノ減稅ハ寡少デアル、餘リニ
少イ、蚊ノ淚デアルトカ、或ハ飛行機カラ
水ヲ打撒イタモノデアルトカ云フヤウナコ
トヲ非難サレル方ガアッタノデアリマス、私
共ハ決シテ斯ク考ヘテ居リマセヌ、所謂野
黨ノ方ミカデス、宣傳セラレル所ニ依ルト、
其宣傳モデス、五千万圓ニ過ギナイノデハ
アリマセヌカ、私共國民ハ將來ニ於ケル宣
傳ノ五千万圓ヨリハ現實ニ行ハレル所ノ
二千六百万圓、年々二千六百万圓ノ減稅ヲ
大イニ喜ブ者デアリマス、國民ノ多クハ確
ニ私共ト感ヲ等シク致シテ居ルト思ヒマ
ス、先刻來財源ニ付テ色ミ心配ナサル方モ
アリマス、又今申上ゲタ通リ餘リ少イト云
フコトヲ心配ナサル方モアリマス、併ナガ
ラ私トテモ決シテ今ノ程度ノ減稅ヲ以テ滿
足イタシテ居ル者デハアリマセヌ、又財源
ニ付テ全ク安心ヲシテ居ルトモ申上ゲマセ
又、併ナガラ政府ハ來年度ニ於テ行財政稅
制ノ整理ヲシテ、而シテ玆ニ面目ヲ一新ス
ルト云フコトヲ誓ウテ居ラレルノデアリマ
ス、私ハ來年度ニ於テ必ズ財源ハ見出サレ
ルコトト思ヒマス、又其結果ハヨリ多クノ
負擔輕減トナッテ現ハレルコトヲ信ジテ疑
ハナイ者デアリマス
〔「簡單」ト呼フ者アリ〕
私ハ現内閣ガ此議會ノ開カルル最初ニ、
將來ニ於テ、來年度ニ於テ必ズ此財政行政
ノ整理ヲスルト云フコトヲ斷言サレタコト
ヲ深ク信ジテ居ル者デアリマス、殊ニデス、
私ハ濱口首相ハデス、必ズ此覺悟ヲ實現サ
ルルモノデアルト云フコトヲ信ジマス、私
ノミナラズデス、濱口首相ニ對シテ、我ニ
貴族院議員ガ如何ナル態度ヲ示シタ、世間
デ批難ノアル如ク、確ニ議會ニ出席サルル
コトハ數日ニ過ギナカッタノデアリマス、而
モ圓滿ニ議事ハ進メラレマシテ、今日ニ至
リマシタ、是如何ニ濱口首相ヲ我ミガ信賴
シテ居ルカト云フコトヲ立證スル者デアル
ト思フノデアリマス、私玆ニ於テカ、衆議
院ノ態度ニ向ヲテ疑ナキヲ得ヌノデアリマ
ス、私ハ
〔「脫線」ト呼フ者其ノ他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林君、成ルベ
ク問題ノ範圍內ニ願ヒタイ、御靜肅ニ願ヒ
マイ、若シ注意スベキ所ガアレバ議長ガ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=16
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017・小林嘉平治
○小林嘉平治君 要スルニ私ハ首相ノ遭難
ノ原因、又其同情ノ程度如何ニ拘ラズ、私
ハ是ハ政黨內閣ト云フモノノ特徴妙用ト云
フモノガ此議會ニ眼ノ前ニ見ルコトガ出來
タコトヲ非常ニ喜ブ者デアリマス、政黨內
閣ハ首領アッテノ政黨デアリマセヌ、有機的
ノモノデアリマス、一時的ノモノデハアリ
マセヌ、繼續的ノモノデアリマス、此特徵
妙用ガ此圓滿ナル議事ノ進行ヲ持來シタト
云フコトヲ痛切ニ感ズル者デアルノデアリ
マス、私先刻衆議院ノ行動ニ付テ非難ヲ致シ
マシタガ、併シアノ不信任案ノ提出サレタ時
ノ當時ノ樣子ヲ見テ、非常ニ喜ビマシタ
〔「問題外」ト呼フ者アリ〕
床次氏ハアノ演壇ニ立ッテ、一ツモ此首相問
題ニ觸レナカッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=17
-
018・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 小林君、小林君、
小林君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=18
-
019・小林嘉平治
○小林嘉平次君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=19
-
020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 成ルベク問題外
ニナラヌヤウニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=20
-
021・小林嘉平治
○小林嘉平次君 斯ノ如ク私共首相ノ將來
ニ望ヲ囑シテ居リマスカラ、必ズ來年度ニ
於テハ確實ナル財源ヲ見出シ、行財政ノ整
理ヲナサイマシテ國民ノ滿足スル所ノヨ
リ多クノ負擔輕減ヲナサルヤウニ御盡力ア
ラムコトヲ切ニ願ッテ、此演壇ヲ降リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=21
-
022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大橋新太郞君
〔大橋新太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=22
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023・大橋新太郎
○大橋新太郞君 私ハ大正十五年若槻內閣
ノ際ニ勅選議員ノ恩命ヲ受ケマシタノデア
リマス、爾來玆ニ六年、未ダ此演壇ニ登リ
マシテ諸君ニ自分ノ所見ヲ述べタコトガ一
囘モナイノデアリマス、殊ニ濱口首相ハ私
ハ日本ノ政治家ノ中デ最モ人格者トシテ平
生尊敬シテ居ルノデアリマス、又此濱口內
閣ガ斷行シマシタ所ノ金解禁問題ハ私ガ年
來主張シテ居ルコトデアリマス、此コトニ
付キマシテ議論ガアルナラバ及バズナガラ
此演壇ニ登リマシテ、井上大藏大臣ノ爲ニ
一言ヲ費シタイト思ウタノデアリマス、然
ルニ測ラザリキ自分ノ尊敬スル所ノ濱口內
閣ノ此提案ニ對シマシテ、自分ハ絕對的ノ
反對ノ意思ヲ有ッテ居ルノヂアリマス、何ガ
故ニ斯ル絕對的ノ反對ヲ爲スカト云フコト
ニ付キマシテ、是カラ精シク申上ゲマスガ、
自分ハ斯ル席ニ出マスルコトニ慣レマセヌ
カラ御聽キ苦シイ所ハ御容赦ヲ願ヒマシ
テ、數字ニ亙リマスカラ緩リ御聽キヲ願ヒ
マス(笑聲)私ガ現內閣ノ諸公ノ友誼モ顧
ミズ、此演壇ニ登リマシテ、特ニ此地租法
案ニ對シマシテ反對ノ意思ヲ表シマスノハ
往々世間ノ誤解ヲ受ケテ居ルノデアリマ
ス、或ハ六大都市ノ爲トカ、或ハ國民少數
ノ爲ニ此意見ヲ述ベルヤウニ誤解ヲ受ケテ
居ルノデアリマス、私ハ此度ノ地租法案改
正ノ結果、增稅ニ苦シム所ノ銀行ガ幾許ア
ルヤト云フコトヲ政府ノ御調ベヲ請ヒマシ
テ、玆ニ明ニ申上ゲルノデアリマス、此度
ノ地租法案ガ通過シマシテ增稅ニ泣ク所ノ
銀行幾許アリヤ、是ハ昨年ノ暮、內閣ニ於
キマシテ國勢調査ヲナサレマシタ結果ニ依
リマシテ、日本ノ人口六千四百四十四万人、
此內譯ガ一郡村トシテアリマスケレドモ、
此内閣ノ御報告ニハ村ト町ガ分ケテナイノ
デアリマス、此度ハ町ハ增稅ニナッテ村ハ下
ルノデアリマス、ソコデ此調ベヲ政府ニ請
求シマシタ所ガ、幾日カ掛リマシテ、內閣
デ御取調ノ上、此度增稅ニナリマスノハ市
ガ百九アリマス、此人口千五百四十四万人、
町ガ六千二百二十五アルノデアリマス、此
人口千五百五十八万人アリマス、合シマシ
テ三千百万人、殘ルノガ農村ノ人口三千三
百四十万人デアリマス、殆ド日本ノ人口ノ
稍、半數ニ近イモノガ此度ノ地租改正ノ結
果、直接增稅ノ苦ミヲ受ケルノデアリマス、
〔「ノー〓〓」ト呼フ者アリ〕
「ノー〓〓」ト仰シヤイマシテモ精シク數字
ヲ申上ゲマスカラ、能ク御〓聽ナサイ····
〔「ノー〓〓」ト呼フ者其他發言スル者
多シ〕
レ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=23
-
024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大橋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=24
-
025・大橋新太郎
○大橋新太郞君 議長ノアレデ取消ヲ致シ
マスソレデ······カルガ故ニ日本ノ人口ノ
過半數ヲ有スル所ノ此市竝ニ町ガ此度增稅
ニナリマシテ、衆議院ガ通過シ、玆ニ本日
貴族院ヲ通過シマスレバ······是ガ來年以後
ニ改正ノ出來ルモノナラバ自分ハ何ヲ苦
シンデ此演壇ニ登ルノデアリマセヌ、今日
ノ普通選擧ノ······現在ノ選擧ニ於キマシテ
此法案ガ此度通過シマスレバ、市及町ノモ
ノハ永ク此重稅ニ苦マヌケレバナラヌノデ
アリマス、又其改正ハ殆ド望ムコトガ出來
ナイノデアリマス、何ガ故ニ此改正が出來
ヌカト言ヒマスレバ選擧區ハ先キ申シマ
ス所ノ千五百万ノ町ト村トハ同一選擧區ニ
ナリマスカラ、千五百万ノ人間ト三千三百
万ノ人間ガ同一選擧區デ選擧ヲシマスレバ
勢ヒ農村ノ利益ヲ代表スル人ガ衆議院ニ多
數ヲ占メルト云フコトハ當然ノ結果デアリ
やく、故ニ此度衆議院ヲ通過シマシタ所ノ
此法案ガ本日玆ニ貴族院ヲ通過シマスレ
バ、永久ニ三千百万ノ人間ハ重稅ニ苦シミ、
其均衡ヲ得ザル所ノ負擔ノ輕減ガ殆ド望ミ
ガナイノデアリマス、是ガ私ガ今日茲ニ·····
甚ダ斯ウ云フ所ニ登ルコトヲ好ミマセヌケ
レドモ、玆ニ此演壇ニ立ツ所以デアリマス、
地租ハ御承知ノ通リ、日本ノ現在ノ財政狀
態カラ申シマスレバ、國ノ歲入ノ上ニ於テ
サウ大キナ金額ヲ占メテ居ラヌノデアリマ
ス、昭和六年度ノ此度、決定シマシタ豫算
ニ依リマスレバ租稅及官業收入等ヲ合セマ
シテ十三億七千万圓デアリマスカラ其内、
地租ハ六千七百万圓、極メテ微額デアリマ
シテ、所得稅カラ見マスレバ半額以下、酒
ノ稅カラ見マスレバ三分ノ一以下、誠ニ金
額ニ於キマシテハサウ大キイ金額デハナイ
ノデアリマス現在ニ於キマシテハ······併
ナガラ地租條例ヲ決メマシタ所ノ明治十七
年ノ日本ノ歲入六千七百万圓ニ對シマシテ
四千三百万圓ノ地租ハ國家ノ收入ノ三分ノ
二ヲ占メテ居タノデアリマス、是ガ地租條
例ヲ決メタ所ノ當初ノ稅額デアリマス、又
三十七年日露戰爭開戰ノ場合ニ於キマス國
ノ歲入、此歲入ト申シマスノハ稅及其關
係ノモノデアリマスガ、一億九千四百万圓、
是ガ國家ノ稅ノ總額デアリマス、而シテ其
三分ノ一、六千九十万圓ヲ地租カ古メテ居"
タノデアリマス、此時ハマダ國ノ收入ノ三
分ノ一ヲ占メテ居ッタノデアリマス、大正三
年歐羅巴大戰ガ起キマシタ時ニモ國家ノ稅
收入ノ三億四千三百万ニ對シマシテ地租ノ
收入ハ七千五百万、相當多額ヲ占メテ居ッタ
ノデアリマス、ソレガ今日前申シマスヤウ
ニ地租ト云フモノハ國ノ歲入ノ土カラ言
ヒマスレバ、甚ダ少イ金額デアリマス、併
ナガラ此地租ハ日本ノ開國以來二千五百年
間、日本ノ國ノ政費ヲ維持シタ所ノ根幹デ
アリマス、德川氏三百年ノ泰平モ、矢張リ
田畑ノ地租ガ最モ主ナルモノヲ占メテ居ッ
タノデアリマス、斯カル歷史ノアル所ノ租
稅ガ此度改正サレマシテ、其賃貸價格ニ御
依リニナル、是ハ過日大藏省ノ屬僚ノ方ニ
聽キマスト、一體ドコノ國ノ法律ヲ做ッテ此
賃貸價格ヲ考ヘタノデアルカト言ヒマス
ト、佛蘭西ニ此賃貸價格ニ依ルノガアッタカ
ラ、ソレヲ日本ニ採用シタト云フ話デアリ
マス、明治以來、地價ニ依ッテ租稅ヲ納メタ
モノヲ······ソレハ賃貸價格ノヤリ方ニ依。ツ
テハ公平ニナリマセウ、併ナガラ國民ガソ
レニ慣レテ居ル所ノ現行ノ地價ニ依ル法律
ヲ改メテ、今度ハ賃貸價格ヲ課稅ノ標準ニ
スル、皆サンモ御承知デアリマセウガ、此
度ノ賃貸價格ト云フモノハ、ドウ云フノカ
ト云ヘバ、田畑ナラバ小作人カラ地主ニ一
箇年ニ納メル所ノ米トカ麥トカ、若クハ其公
租ヲ加ヘタモノデアリマス、市ヤ町ノ宅地
ハ何ヲ以テ賃貸價格ヲ決メタカ申トシマスレ
バ、借地人カラ地主ニ納メマス一箇年ノ地代
竝ニ其公租ヲ加ヘタモノガ此一箇年ノ賃貸
價格デアルノデアリマス、此調査ガ實際ト
適應シマセヌケレバ、實行ノ上ニ非常ナ紛
更ヲ來スト云フコトハ極メテ明瞭ナル
事實デアリマス、唯稅務署ナリ又委員ヲ拵
ヘテ机ノ上デ理想的ナ此稅ヲ決メマシテ、
ソレガ實際ニ行ハレルヤ否ヤト云フコトニ
付テハ、非常ニ考慮ヲ要スルノデアリマス、
土地ヲ持ッテ地代ヲ取シテ苦シンデ居ル人デ
ナケレバ分ラナイ、唯理想的ニ物ヲ考ヘル
ト大イニ實行ノ上ニ非難攻撃ヲ受ケルト云
フコトハ極メテ明瞭ナ事實デアリマス東
京ノ土地ノ今ノ地代ト云フモノガ同ジ値打
ノ土地ガ十錢ノ所モアリマスレバ、五十錢ノ
所モアル、其持主ノ契約ニ依リ、貸シタ時ノ
契約ノ如何ニ依リ千差萬別ゲアリマス、之ヲ
此町內ハ幾ラノ値打ガアルカラ、角地面ハ
幾ラ、裏ハ幾ラト云フヤウナ、單ニ稅務署
ノ一ツノ評價デ決メマシテ、サウシテ之ヲ
今度ハ地代ノ標準トシテ認定スル、輕イ稅
ナレバ地主ト借地人ノ間ニ紛議モ起キヌカ
モ知レマセヌガ、此度ノ如ク急激ニ增稅ヲ
スル、而モ經濟界不振ノ場合ニ重大ナル增
稅ヲシテ、此紛更ガ起キヌト云フコトハ決
シテアルマジキコトデアリマス、サナキダ
ニ思想ノ惡イ今日、地主ト小作人ノ紛議ヲ
奬勵シ、借地人ト地主トノ間ニ紛議ヲ奬勵
スルヤウナ法案ヲ提出スルト云フコトハ
果シテ時代ニ合フモノカ否ヤハ是ハ冷靜
ナル諸君ノ御考ヲ願ハヌケレバナラヌノデ
アリマス、而シテ現在行ハレテ居リマス所
ノ地租ハ、諸君モ御承知ノ通リ、明治十七
年地租條例改正以來ノモノデアリマス、其
地租條例改正ノ場合ニハ田畑モ宅地モ百分
ノ二·五、詰リ百圓ノ地價ノ地面ニ對シテ
二圓五十錢ノ稅デアッタノデアリマス、ソレ
ガ現在ニ於キマシテハドウナッテ居ルカ、
其間ニ色ミノ變遷モアリマスガ、現在行ハ
レテ居マス所ノ風畑ノ地租ハ幾何デアルカ
ト申シマスナラバ百分ノ四·五、百圓ニ付
テ四圓五十錢デアリマス、又宅地ハ現在表
面ハ百分ノ二·五、二圓五十錢ニナッテ居リ
マスガ、是ハ事實大變違。ツテ居リマス、明治
三十八年國運ヲ賭シテ露西亞ト戰ヒマスル
ヤ、市街宅地ヲ百分ノ二十、百圓ノ地價ニ
對シテ二十圖ノ稅金ニ上シタノデアリマ
ス、現在ハ其二十圓ヲ減ラサヌ限リニ於
テ、明治四十三年ニ地價ヲ改正シマシタノ
デ、國家ノ收入トシマシテハ市街宅地ニ
付キマシテハ百分ノ二十ノ金額ガ國家ニ這
入ッテ居ルノデアリマス、故ニ明治十七年
ニ決メタ所ノ宅地竝ニ田畑百圓ニ付テ二圓
五十錢ノ負擔ハ田畑ガ今日四圓五十錢ニ
ナリ宅地ハ二十圓拂ッテ居ルノデアリマ
ス、平均シマシテ·····其内ニ地價ノ上ッタ
所、下ッタ所ハ多少ノ高下ガアリマス、決シ
テ地租ノミガ經濟界ノ變遷ニ對シマシテ、
稅ノ輕イノヲ受ケテ居ルノデハアリマセ
ヌ、卽チ田畑ハ二圓五十錢ニ對シテ四圓五
十錢、八割上ッタノデアリマス、宅地ハ二圓
五十錢ガ二十圓、八倍ニナッタノデアリマ
ス諸君、是等ノ數字ハ今マデ諸君ノ耳ニ
這入ッテ居ルヤ否ヤ分リマセヌケレドモ、數
多イ申ニハ此極メテ分リ易イ數字ガ御這入
リニナラヌ御方モアルヤニ存ズルノデアリ
マリ、尙ホ宅地租ヲ決メマシタ所ノ明治十
七年ノ米ノ相場ヲ、私ハソレ以來ノヤツヲ
調ベマシタ、深川ノ正米問屋ニ問合セ
マシタ、明治十七年ノ米ノ一石ノ平均
相場ハ如何ナルモノデアルカヲ問ヒ
マスト、其當時之ヲ二分五厘ニ決メマ
シタ時ノ米ノ一石ノ相場ハ、東京ノ深川
ノ正米根場、是ガ一石五圓十四錢、諸君、
一石五圓千四錢ノ時ノ米ノ相場デ決メタモ
ノヲ······今日米價下落シタト雖モ、マサカ
五國ヤ十圓ノ米ハ無イノデアリマス、米價
カラ標準ニシマスレバ、農家ノ地租ハ明治
十七年ノ當時ノ稅率ノ午額以下ニ下ッテ居
ルノデアリマス、是ハ大藏大臣トシテ此度
ノ地租ヲ改正ナサル上ニ、當然此米價如何
ハ考慮ニ置イテ御〓究ニナラナケレバナラ
ヌノデアリマス、然ルニ私ハ滅稅委員會ニ
於キマシテ、米價ノコトヲ聽イタケレドモ、
今以テ米價ノ調べハ出テ來ナイノデアリマ
ス蓋シ大藏省トシテ米價ナドハ眼中ニ置
カナイデ、理想的ノ此度ノ賃貸價格ヲ御定
メニナッタモノト思フノデアリマス、尙ホ其
上ニ民政黨內閣ハ此地方ノ農村ナリ、總
テノアレヲ救助スル爲ニ、國費ヲ以テ小學
校〓員ノ、詰リ國庫負擔ト云フコトヲ言ハ
レ昨年一千万圓ノモノヲ決メ、今ハ八千
五百万圓、政友會ハ地租委讓問題ヲ唱ヘテ、
是ガ雙方ノ政策ナンデアリマス、此今一箇
年ニ國費ヲ以テ全國ニ支拂ッテ居リマス所
ノ八千五百万圓ノ金ノ分配如何ハ、此度ノ
地租〓正ニ於キマシテ、大藏大臣ハ考慮ニ
置イテ、其事ヲ御考ヘナサルト云フコトハ
當然ノコトト思ヒマス、然ルニ私ガ此八千
五百万圓ノ國庫カラ出ス所ノ〓育費ハ何處
ニ分配シテアルカ、此度增稅ニナル所ノ市
竝ニ町ニハ幾ラ行ッテ居ル、村ニハ幾ラ行ク
テ居ルカヲ問ヒマスルト、此調ベハ大藏省
三〓〓〓內務省ニモナイノデアリマス、幾日
カ掛リマシテ漸ク交部省ニ行ッテ御調ベニ
ナッテ來テ、私ノ所ニ御報告ニナッタノヲ、
コヽデ諸君ニ申上ゲマス八千五百万圓國
庫カラ市町村ノ〓員ニ費用ヲ補助スルノ
ハ市ニ九百五十万圓、町ニ千九百万圓、
合セテ二千八百九十五万圓、村ニハ五千六
百四万二千圓行"テ居リマス、國家カラ此度
ノ地種改正案ニ依リマシテ、此全國ノ農村
カラ納メマスル所ノ田畑ノ租稅、竝ニ村ノ
宅地全部ノ租稅、之ヲ合セマシテ此度改正
ニナリマスレバ、全國ノ國家ニ納マル所ノ
地租ガ五千二百三十一万圓ニナルノデアリ
マス、國家カラ〓員ノ負擔ヲ村ニ補助スル
コト五千六百万圓、農村全部カラ、·三·
千三百万人ノ農材ノ人口ガ納メル所ノ租稅
ノ五千二百万圓デ、國カラ補助スルモノガ
五千六百万圓、農村三千二一百万人ノ人間ハ、
等シク國家ノ行政機關デアリマス·····其自
分ノ使フ金ヲ······國庫カラ救助サレナガ
ラ國費ヲ負擔シナイノト同ジ結果ニナル
ノデアリマス
〔「ノー〓〓」ト呼フ者アリ〕
是ガ果シテ稅制整理ノ案ヲ御作リニナル所
ノ、少タトモ自分ノ知ル所デハ此八千五
百万圓ナルモノヲ、此地租ノ稅率ヲ決メル
ニ付テ勘定ニ置イテ居ナイト云フコトハ
餘リニ無視シタ稅率ト思フノデアリマス、
諸君、只今申上ゲマシタノハ、大藏省カラ
受ケマシタ所ノ討數デアリマシテ、私ガ作ッ
タ所ノ計數デハアリマセヌ、諸君、此度ノ
地租改正ノ結果、町ト村ノ稅ハ平年度ニ於
テドウ云フ結果ニナルカト云フコトヲ
是モ自分カラ請求シマシテ、特ニ大藏省カ
ラ作ッテ貰ッタノデアリマス、大藏省カラ來
テ居ル材料ハコノ位アリマスガ、成ダケ分
ラナイヤウニ出來テ居ルノデアリマス、先
刻ノ小林君ガ分ラヌヤウナコトヲ述ベラレ
マシタガ、アンナ風ニ總テ材料ハ出來テ居
リマス、獨リ此減稅案ノ材料ノミナラズ
豫算ニ付テアル所ノ參考書類ナンカト云フ
モノハ成ベク委員ニ分ラヌヤウニ、ウマク
出來テ居マス、其事ヲ申上ゲマスト、市竝
ニ町ノ宅地租國稅ガ六百九十六万圓上ル、
道府縣ノ附加稅ニ於キマシテ此矢張リ市、
町ガ千二百万圓上ル、市町村ノ附加稅ニ於
キマシテ九百五十万圓上ル、此三ツヲ合セ
マスト此度ノ改正ノ結果、市、町ノモノハ
今マデ二千百二十一万圓納メタモノガ四千
丸百七十三万圓、差引キマシテ二千八百五
十二万圓ト云フ重稅ヲ受ケルノデアリマス、
此經濟界ノ不況ノ場合ニ斯カル增稅ヲナシ
テモ國民負擔ノ重キヲナサヌト云フコトノ
常識アリヤ否ヤヲ疑フノデアリマス、尤モ
此附加稅ハ一箇年ニ上ポスノデアリマセ
又、七箇年ニ分類シテ殖ヤスト云フコトデ
アリマス、尙ホ農村ノ方ニ於テ申上ゲマセ
ウ、農村ノ改正前ノ地租四千七百万圓ガ今
度減ジマシテ、差引キ千五百五十四万圓、
國稅ニ於テ地租ハ減ルノデアリマス、道府
縣ノ附加稅ニ於テ千三百三十万圓減ルノデ
アリマス、更ニ市町村稅ノ附加稅ニ於テ千
二十六万圓減ルノデアリマス農村ハ今マ
デ一億一千九百万圓負擔シタモノガ、改正
後ハ八千万圓ニ減シテ差引キ三千九百万圓
減ルノデアリマス、私ノ前ニ述ベタ所ノ多
額納稅者ノ諸君ハ自分ノ選擧區ガ農村デア
リマスカラ、農村ノ便宜ニ······稅ガ輕クナ
ルコトナラバ市民ハ泣イテモ宜イト云フヤ
ウナ考ヲ有ッテ居ルノヂヤナイカト思ヒマ
ス、マア併ナガラ等シク國民デアル、一體稅
ヲ市街ノ宅地ト農村ノ田畑ト云フモノヲ同
一ノ法律ノ下ニ制定シテ、此上ゲ下ゲデ市
ヤ町ノモノト農村ノモノガ互ニ敵視スルト
云フヤウナコトハ大イニ國家將來ノ爲ニ注
意ヲセネバナラヌ所デアリマス減稅委員
會ニ於キマシテ、我ミヨリ財政ノ知識アル
所ノ阪谷男爵ハ是ハ別ノモノニシテ大イニ
考究スベキモノデハナイカト云フ御話ガア
リマシタ、私モ阪谷男爵ノ此意見ニハ全然
贊成ノ意ヲ有ッタノデアリマス、日本ノ人口
ノ六千万ノ人口ハ農村ハ市ト町ノ稍、半分
デアル其半分ノモノハ、過半數ハ今ノ普
通選擧ノ權利ヲ有ッテ稅制ヲ決メテ、町ノモ
ノヲ泣カセル、市ノモノヲ泣カセル、國家
ノ平和ハ如何ニシテ維持ガ出來マスカ、尙
ホ此農村ニ對シマシテ申上ゲマスナラバ
御承知ノ通リ今マデ地價二百圓マデノモノ
ハ自作農奬勵ト云フ法律ノ下ニ農村ハ無稅
ニナッテ居リマス、此度ノ改正ハ一步進メテ
賃貸價格二百圓マデハ田畑ヲ有フテ居ルモ
ノハ無稅ニナルノデアリマス、此面積ガ幾
何アリヤト調ベテ見マスナラバ、是モ政府
ノ調ベデ私ノ調ベデハアリマセヌ、日本ノ
田畑ノ面積ガ五百八十二万町步アル、其內、
百五十二万町步ハ自作農トシテ全然無稅ニ
ナルノデアリマス此差ガ七百八十二万五
千圓ニナルノデアリマス、大藏當局ノ人ニ
賃貸價格二百圓ト云フノハドノ位ノ面積
ヲ有スル土地ヲ云フノカ、田ヲ六段、畑ヲ
六段、一町二段步耕スモノガ丁度賃貸價格
二百圓ニ相當スルサウデアリマス假ニ田
地ヲ自分デ·····自分ノ家デ耕シテ一町二段
步マデノモノハ地租ヲ一文モ納メナイ是
ガ此前ノ民政黨内閣ノ時ニ地積二百圓マデ
ヲ免稅ニシタノデアリマス、此度ハ一步ヲ
進メテ賃貸價格二百圓ニナックノデアリマ
ス、此前ノ面積ハ是程廣クナカッタノデア
ル、百三十万町步位デアリマス、而シテ大藏
省ノ調ベニ依。ッテ此人數ハ幾ラアルカト云
フト、大藏省ノ調べハ五百九十万人ハ此免
稅ノ恩典ヲ受ケル蓋シ是ハ選擧宣傳ニサ
レルデハナイカト思ヒマス、元來農林省ノ
調ベニ依リマスレバ日本ノ農家ノ數ガ總
體デ五百五十七万ヲ超エナイ、其免稅ニナ
ル者ガ五百九十万人アル蓋シ家族マデ御
勘定ニナッタカ、ソンナ調ベハドウシテ出
來タモノカ餘程不思議デアリマス、兎ニ⻆
一町二反歩マデノ自分ノ田ヲ耕ス者ハ國稅
ヲ一文モ納メナイ是等ハ日本國民トシテ
最モ中堅ノ、尊敬スベキ者ト私ハ思フ
ノデアリマス、自分ノ田ヲ夫婦親子デ耕シ
テ居ル、此人ハ無稅ニナルト云フコト
或ハ惡イトハ言ヘヌカモ知レヌケ
レドモ、之ヲ無稅ニシテヤルナラバ、又
附加稅ヲ安クシテヤルナラバ憐ムベキ
ハ小作人デアル、田ヲ耕ス、田畑カラ上ル
米ハ牛分地主ニ納メナケレバナラヌ、自分
ガ耕ス者ハ······半分地主ニ納メル者ハ有稅
デアッテ、自分ガ耕シテ自分デ丸取リニナル
者ハ無稅デアル、果シテ斯カル事ガ社會政
榮ノ當ヲ得タモノデアリマセウカ又國民
ニ恩典ヲ施スノハ宜イケレドモ、斯カル國
家ノ中堅ノ者ヲ全然國民負擔ヲサセヌト云
フコトハ、眞ニ普通選擧ヲ行フ今日ニ於テ適
當ナル政策デアルヤ否ヤト云フコトヲ、諸
君ノ冷靜ナル御判斷ヲ得クイノデアリマ
ス
尙ホ是ヨリ此宅地ノ修正ハ此度ノ市竝町
ニ及ボシマス宅地ノコトニ付テモウ一度申
上ゲマス、東京其他六大都市ニ於キマシテ、
此全國ノ市ノ中デモ、一番大キイ市ニ於キマ
シテ是ガ幾ラアルカト申シマスレバ六大都
市ガ平均七割八分四厘國稅ニ於テ上ガルノ
デアリマス、東京ハ七割九分上ガルノデア
リマス、名古屋ハ十割上ガルノデアリマス、
ソレカラ日本ノ市ハ前申シマス通リ百九ツ
アリマス此六ツノ市ヲ除キマシタ百ト三
ツノ市ハ幾ラ上ガルカト申シマスレバ四
割二分一厘國稅ガ上ガルノデアリマス此
外ノ附加稅ハ最前申ス通リ、更ニ此政府ノ
原案ニハ郡部ト稱シテ、村ト町トヲ分ケナ
イ、玆ニ參考書類ガ來テ居リマス、サウシ
テ此稅ガ五分七厘郡部ニ於テハ地租ハ下ガ
ル、斯ウ云フノガ、我ミガ最初大藏省カラ
戴イタ所ノ案デアリマス、私ハ之ニ不審ヲ
懷キマシテドウカ此町ト村ヲ分ケテ一ツ
御調ベヲ顯ヒタイト云フコトヲ申上ゲマシ
タ所ガ、非常ニ詳シク御取調べ下サイマシ
テ其結果、諸君、五分七煙郡部ノモノハ
下ガルト云フノニ、村ハ百五十万圓下ガッ
テ、二割五分三厘村ハ下ガルノデアリマス、
町ノモノハ九十五万圓增稅ニナッテ、二割四
分三厘上ガルノデアリマス、同ジ郡部ノ宅地
ニ於キマシテモ村ノ者ノミニ恩惠ヲ施シ
テ町ノ者ニ斯カル苦ミヲ與ヘルト云フコ
トガ何處ニアリマスカ、尙ホ東京ニ付テ、
諸君ニ冷靜ノ御判斷ヲ願ヒマス東京ニ於
キマシテハ麴町ハ丸「ビル」ナンカノ良イ區
域モアリマスカラ十五割平均麴町全體トシ
テ十五割上ガルノデアリマス、其中ニ丸「ビ
ル」アタリノ所ガアリマスカラ、先ヅ此高イ
ト云フコトハ忍ブベキデアリマス、併ナガ
ラ小石川アクリハ決シテ豪商モナケレバ何
モナイ、月給取リカ、小賣商人ノ住ム所デ
アリマス、麴町ハ今マデハ八万七千圓ノモ
ノガ、二十五万八千圓ニナル平均十九割
六分四厘上ガル、牛込亦十六割一分八厘上
ガリ、赤坂ガ十四割九分六煙、麻布ガ十七
割六分八種、本〓ハ十二割八分一厘上ル
斯カル十何割ト云フ稅ヲ此不景氣ノ際ニ上
ゲテ、此上ニ附加稅ガ上ルノデアリマスカ
ラ市ニ於テ之ヲ負擔シ得ラレルモノデハ
ナイ、必ズ宅地ノ契約ニ依テ法定地價ガ增
サレレバ、借地人ニ請求スル權利ノアル一般
ノ契約ニ依ッテ、借地人ニ地主ノ請求スルノ
ハ當然デアリマス、地代ガ上レバ從ッテ家賃
ニモ及ビマス、ソコデ借地人ト借家人トノ
間ニ當然爭ヒガ起リマス、此今日經濟不況
ノ場合斯カル急激ナル增稅ヲシテ、市民ノ苦
シミヲ顧ミズ負擔ヲ增スト云フコトハ果
シテ深切ナル政治デアルヤ否ヤ疑フノデア
リマス、此法案ニ付キマシテハ我ミヨリ
先議權ヲ持ツ所ノ衆議院ニ於テ相當種々ノ
問答ノアッタコトハ承知シテ居リマス、併ナ
ガラ私ガ大藏省カラ貰ヒマシタ材料デ足ラ
ヌデ、更ニ市ト町ト村トヲ分ケタヤウナ材
料ヲ貰ヒマシタガ、衆議院ニ於テハ是等ノ
點ニ付テ何等ノ論議ガナイノデアリマス
私ハ衆議院ノ先議權ヲ尊重シナイ者デハア
リマセヌ併ナガラ國民六千四百万ノ中三
千万以上ノ人口ニ、此不景氣ノ際ニ斯カル
苛酷ノ稅率ヲ以テ課稅セラレルト云フコト
ハ如何ニ此內閣諸公ニ對シテ私個人トシ
テノ交誼ガアッテモ、之ヲ默視スルト云フコ
トハ、貴族院ニ席ヲ持ッテ居ル以上ハ一言言
ハザルコトハ職ニ不忠實ナルモノト思ヒマ
シテ、淚ヲ飮ンデ玆ニ反對ノ意見ヲ表スル
ノデアリマス、此度ノ減稅ノ總額ハ海軍
條約ニ依ル減稅ノ總額ハ來年カラ以後ハ二
千五百万圓ニナリマス、本年ハ僅ニ九百十一
万圓シカ減稅ニナラヌノデアリマス、其丸
百十一万圓ノ滅稅ハ何ニ御使ヒニナルカト
言ヘバ、地租ニ六百七十七万圓減稅シ、營
業收益稅ニ百二十万圓減稅シ、砂糖消費稅
ニ二十一万圓、織物消費稅ニ九十一万圓
デ是デ丸百十一万圓ノ減稅、減稅ヲ
ナサルト云フコトニ付テハ大贊成ヲ生スル
ノデアリマスガ、國民今日此負擔ニ苦シム
時ニゝ而モ國民ノ收入ト目下ノ經濟界ノ狀
況カラ行キマスレバ、稅ノ上ニ減收ヲ來ス、
國民ノ收益ガ減テテ來レバ稅ノ自然減收ヲ
來スト云フコトハ申ス迄モナイコトデアリ
マス國ノ所得ニ於テ一千万圓減レバ納
メル者ニ於テハ一億万圓減ヲテ居ルニ違セ
ナイ、僅カ九百十一万圓ノ減稅ヲ昭和六年
度ニ於テ受ケムガ爲ニ前申スヤウナ市及
町ノ者ハ一度此議案ガ通過スレバ長ク改正
ガ望メヌ所ノ三千万圓以上ノ負擔ヲ增ス
ヤウナコトヲ決メラレテハ實ニ堪ラヌコト
デアリマス、私ハ斯カル所ニ登リマスノハ
極メテ嫌ヤデアリマスケレドモ、三千万ノ
市及町ニ住ンデ居リマス所ノ市民ヲ承知シ
ナガラ、默シテ此案ヲ通過サセルト云フコ
トガ、果シテ貴族院議員ノ本分ヲ盡スモノ
ナリヤ否ヤト云フコトニ付テハ諸君ノ御
考慮ヲ顧ヒタイノデアリマス尙ホ私ハ曩
ニ農村ノコトニ付キマシテ、何ダカ農村ヲ
目ノ敵ニスルヤウデアリマスガ、政黨政治
ノ結果、普通選擧ノ結果、選擧權ノ多數ナ
ル所ニ政治家ガ特ニ考慮ヲ用ヒルト云フ傾
キガアルノデアリマス、是ハ單ニ國政ノミ
デハアリマセヌ、地方ノ縣政ニ於テモ然リ、
町村政ニ於テモ亦然リデアリマス、先キ申
ス通リ農村民ノ納メル所ノ田畑ノ地租金額
ハ、農村ノ小學校ノ〓員ニ補助スル金額ヨ
リモ必ズ其地租ノ方ガ少イ、米ガ下レバ國
家ハ御承知ノ通リ、多數ノ農村ガ苦シムト
言ッテ米價ノ調節ヲスル、國ガ米ヲ買上ゲテ
御ヤリニナル、サウ云フコトノ爲ノ損金ガ
目下幾ラアリマスカト云フト、一億五千万
國モアル、此一億五千万圓ハマグ假拂ニナ〃
テ國ノ損失ニ御立テニナッテ居ラヌノデア
リマス、是ダケヲ埋メルノニモ今後三箇年
間全部ヲ米穀調節法ニ充テナケレバナラヌ
ノデアリマス、生絲又然リ、而シテ農林省
ノ今年度議決ニナッタ豫算ヲ見マスレバ、農
林省ノ農村ノ產業奬勵費ニ千四百八十七万
圓、農村振興費ニ三百八十六万圓、治水費
ニ百四十六万圓等、農村ノ爲ニ農林省ガ御
拂ヒナサル金ハ二千六百十三万圓ヲ昭和六
年度ノ豫算ニ計上シテアルノデアリマス、
市竝ニ町ノミデナイ、商工省ノ之ニ類スル
ヤウナ產業奬勵費、貿易振興費ヲ合セテ六
百万圓、之ヲ見テモ政府ガ農村ニ重キカ町
ニ重キカ、極メテ明瞭ナ數字デアリマス、
私ハ決シテ今日米ガ下ガッテ困ル農村ニ同
情シナイノデハアリマセヌ、是ハ深川ノ正
米値段ヲ取リマスト、歐羅巴大戰後、大正
八年頃、米ガ一石深川ノ平均相場ガ四十八
圓ニナッタコトガゴザイマス、此四十八圓ニ
米ガ上ガッタト云フコトガ今日矢張リ日本
ノ農村ノ苦シム······樂シテ自分ノ勤勞以上
ニ收入ノアッタト云フコトガ今日農村ノ患
ヒヲシテ居ルノデアリマス、國ノ財政亦然
リ始終輸入超過デ苦ンダ國ガ大正四年
カラ大正七年迄僅カノ中ニ、世界各國ガ戰
爭ノ最中ニ輸出超過ニナッテ、二三十億ノ金
ガ日本ニ入ッタノガ、是ガ今日ノ財政ヲ膨脹
サセ、地方財政ヲ膨脹サセ、國民ヲシテ拔
キ差シノナラヌヤウナ運命ニナラシメタ、是
ハ國民ノ勤勞以上ニ日本ニ金ガ入ッテ來タ
ト云フノガ、此國民ガ今日苦シム所以デハ
アリマセヌカ、二千五百年ノ歷史アル地租、
明治以來モ六十年ノ歷史ヲ持ツ地租、ソレ
ヲ佛蘭西ニ斯ウ云フ法律ガアルカラ改メ
ル、御改メナサルノモ宜イケレドモ、負擔
ノ均衡ト云ヒマスト米ノ値段ガ五圓十四
錢ノ時ト今ノ値段ト能ク算盤ヲ置イテ御覽
ナサレバ地租條例ノ決マッタ明治十七
年ト今日ト同ジ地租ガ米ハ何斗賣レバ上ガ
リマスカ、少シク其邊ヲ御調ベナサッタラ直
グ出ル算盤デアル、私ハ農村ノ稅ノ減ルコ
トヲ決シテ嫉ミマセヌ、昨日貴族院ニ於テ
大多數ヲ持ッテ居リマス所ノ〓究會ノ總會
ニ於キマシテ、私ハ此度ノ賃貸價格改正ノ
地租法案ハ餘リニ時ヲ得ナイモノデアル、
此不景氣ノ際ニ增稅ヲスルノハ宜シクナ
イドウカ政府ガ今年九百万圓ノ內農村ニ
六百六十七万圓ヲ出ス此金ヲ、此度ノ地租
條例ノ改正ヲ一年延バシテ、此金全部ハ舊
來ノ地租法ニ依ル田畑ノ地租ヲ二分デモ一
分五厘デモ下ゲルダケ下ゲテヤッテ農村ノ
人ヲ潤ハシテヤッテ宜イ、今年此內閣ガ財政
行政ノ整理會ヲ設ケルナラバ此財政行政
ノ整理會ハ現內閣ノ人ニ重キヲ置カナイ
デ、貴衆兩院ノ各派ノ主ナル人ヲ加ヘ之
ニ在野ノ主ナル人ヲ加ヘテ、眞ニ意義アル
財政行政整理會ヲ拵ヘテ、此會ガ終ヘテカ
ラ其他ノ總テノ法律案ヲ決定シテ貰ヒタイ
ト云フコトヲ、昨日突然〓究會ノ總會ニ發
議シタノデアリマス、〓究會ニ於テハ幹部
諸君ノ絕對的ノ反對ヲ受ケタニモ拘ラズ、
私ノヤウナモノガ述ベマスコトガ誠意デア
レバ
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
六十一票入ッタ、モウ四票入レバソレガ過半
數ニナッテ此今日ノ議場ノ大勢ヲ支配スル
ノデアリマス、私ハ是以上ニ議論ヲスルコ
トヲ止メマスガ此賃貸價格ノ地租法案ハ
相成ルベクハ諸君ノ同意ヲ得テ之ヲ一年延
バスヤウニ御配慮ヲ願ヒタイ、切ニ三千万
ノ市民町民ヲ代表シマシテ諸君ニ御願ヒヲ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=25
-
026・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 佐々木志賀二
君
〔佐々木志賀二君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=26
-
027・佐々木志賀二
○佐々木志賀二君 諸君私ハ田舍ノ農村カ
ラ選バレテ居ル所ノ一議員トシテ、皆樣ニ
御依賴ノ爲ニ此壇上ニ登リマシタモノデア
リマス、私ハ敢テ此壇上ニ於テ討論ヲシヤ
ウト云フヤウナ考ハナイノデアリマス、今
ヤ世界的不況ノ爲ニ其影響ヲ蒙リ、地方ノ
農村ハ非常ナル窮迫ニ陷,テ居ルノデアリ
VV、而シテ今日ノ此減稅案ガ一日モ早ク
實施セラレムコトヲ一日千秋ノ思ヒデ以テ
翹望シテ居ルノデアリマス、而シテ私ハ昨
日ノ〓究會ニ於テモ、此意見ヲ述ベテ多數
ノ同意ヲ得タノデアリマス、斯ク申ス私ハ
恐ラク諸君ノ中ニハ、佐々木ハ土地ヲ澤山
持ッテ居ル、自分ノ減稅ヲ欲スルガ爲ニ、此
地租法案ニ付テ非常ニ贊成ヲシテ居ルモノ
デアルト、斯樣ナル考ヲ持タレル御方ガア
ルカモ知レナイト思フノデアリマス諸君
不幸ニシテ私ハ非常ナル借財ヲ作ッテ、數年
前自分ノ所有シテ居ル所ノ農村ニ於ケル田
畑ヲ全部賣拂ハザルヲ得ナクナッテ賣拂ッタ
ノデアリマス、而シテ今日有スル所ノ土地
ハ何デアルカ、私ハ岡山市ニ於ケル市街地
ヲ所有シ其所有ニ依ッテ、其所得ニ依ッテ、
僅ニ今日生活シテ居ル所ノ貧弱ナル一議員
デアリマス、諸君私ハ此法案ニ付キマシテ
ハ、實ハ······實ヲ白狀シマスト反對シタイ、
自分一個ノ考カラ言フナラバ、私ハ非常ナ
ル打擊ヲ蒙ルノデアリマス、非常ナル私ノ
所有地ノ增稅ノ爲ニ、甚ダ困ルト云フコト
ヲ感ジテ居ルノデアリマス、併ナガラ自分
個人ノ爲ニ、社會民衆ノ爲ニ實施セラレル
所ノ此法案ニ反對スルト云フコトハ甚ダ
不都合千萬デアルト考ヘルガ故ニ、私ハ喜
ンデ此法案ニ贊成シテ居ルノデアリマス、
昨日〓究會ニ於テ修正案ガ出サレタノデア
リマス、其時ニ所謂農村ノ田畑ノ地租ヲ少
シ上ゲテ市街地ノ負擔ヲ輕クスル案ガ出
サレタノデアリマス、私ハ其時ニ甚ダ是ハ
有難イ案デアルト考ヘタノデアリマスルケ
レドモ、農村ノ實情ヲ見ルナラバ決シテ
其案ニ贊成スルト云フコトハ不合理ダト云
フコトヲ感ジマシタガ故ニ、敢然トシテ其
修正案ニ反對シタノデアリマス、諸君私ハ
若シ私ガ此案ニ反對スル場合ニ於テ、私ノ
所有シテ居ル所ノ土地ノ借地人ハ如何ニ考
ヘルデアリマセウカ、佐々木ハ此稅法ガ施
カレルナラバ負擔ガ重クナルカラシテ反對
シテ居ル、斯ウ考ヘルダラウ
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
少クトモ我〓貴族院議員トシテ居ル所ノ者
ガ、此法案ニ反對スルト云フコトハ甚ダ穩
當ヲ缺イテ居ルト私ハ考ヘテ居ルノデアリ
マス、又或議員ハ此稅法ガ施カレル場合ニ
ハ市街地ニ於ケル其增稅ノ分ハ借地人ニ
轉嫁サセルモノデアラウ、斯樣ニ言フテ居
ラレルノデアリマス、併ナガラ恐ラク借地
人ハ笑"テ居ルヂヤラウト思フ、何トナレバ
此增稅ト云フテ居リマスケレドモ、是ハ增
稅ニアラズ、偶ミ今マデノ法ノ不備ノ爲ニ
當然拂ハルベキモノガ不當ニ······不當利
得ヲ得テ脫稅的ノ不當利得ヲ得テ居ルモノ
ト私ハ考ヘ得ルノデアルサスレバ借地人
ガ如何ニ此稅法ノ實施ノ爲ニ少々ノ地代ガ
上テモ、是ハ上ガルニアラズシテ、正當ノ
地租ニ復活スルノデアルカラ、之ヲ自分方
ニ轉嫁スルト云フコトハ有リ得ナイコトデ
アル、然ルニ借地人ヲダシニ使ッテ此稅法ニ
反對スルト云フコトハ怪シカラヌ奴デア
ルト考ヘルデアリマセウ、故ニ私ハ此案ニ
喜ンデ贊成シテ居ルノデアリマス、私ハ田
舍ノ貧弱ナル議員デアリマス、所謂天下ノ
富豪デハアリマセヌ、少クトモ天下ノ富豪
タル者ハ喜ンデ此稅法ニ服シ、若シ不當ニ
安ク稅金ヲ拂ッテ居ルモノガアルナラバ、喜
ンデ此稅法ニ從ッテ正當ノ稅金ヲ拂フト云
フコトハ、國民ノ義務ト考ヘルノデアリマ
ス、今日農村ハ非常ナル窮迫ヲ來シテ居ルノ
デ、一日千秋ノ思ヒヲ以テ此稅法ノ實施ヲ
翹望シテ居ルノデアリマスルガ故ニ、冀ク
ハ此農村ノ窮狀ヲ御洞察ノ上、成ルベク多
數ヲ以テ此稅法ニ御贊成ヲ願ヒタイノデア
リマス、天下ノ民衆ハ今ヤ擧ッテ貴族院ニ注
目シテ居ルノデアリマス、貴族院ハ如何ナ
ル態度ヲ執ルデアリマセウカ、果シテ此稅
法ニ幾何ノ反對ガアルカ、幾何ノ贊成ガア
ルカト云フコトヲ非常ナル注目ヲ以テ注視
シテ居ルノデアリマスル、若シ多數ヲ以テ
此稅法ガ贊成セラルルナラバ恐ラク民衆
ハ非常ナル喜ビヲ以テ、貴族院ガ我ミノ窮
乏ニ向ッテ多大ナル同〓ヲ以テ迎ヘタトシ
テ非常ナル喜ビノ聲ヲ擧ゲルト信ズルノ
デアリマス、若シ貴族院ニ於キマシテ贊成
者ガ非常ニ少イトスルナラバ恐ラク天下
ノ民衆ハ貴族院ヲ非常ニ怨ム、怨嗟ノ聲ヲ
擧ゲルト私ハ信ズルノデアリマス
〔「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ〕
併ナガラ今日ニ於キマシテハ最早此稅法ハ
別ニ論議討論スル必要ナク、非常ナル御同
情ガアルト云フコトヲ私ハ知ッテ居ルノデ
アリマス、故ニ私ハ煩瑣ナル討論ハ致シマ
セヌ、威ルベク省略シテ、此際諸君ニ、成
ルベク多數ヲ以テ此稅法ニ御贊成アラムコ
トヲ御願セシテ此壇ヲ降ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=27
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028・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 議事進行ニ付テ發言ヲ御
許シヲ願ヒタイ、本員ハ議場ニ於ケル言論
ハ成ルベク之ヲ尊重イタシタイト云フ一人
デゴザイマスルガ、只今マデ議員ノ言論ヲ
謹ンデ拜聽イタシテ居リマスル所ガ、貴族
院ノ或一會派ニ屬スル所ノ內部ノ狀況ニ付
テ、此貴族院ノ公開ノ席上ニ於テ其所屬ノ
會派ノ內部ノ事情ヲ論議セラレルコトハ
其會派ニ屬セザル我ミハ迷惑至極デアリマ
ス、是等ノコトニ付キマシテハ其會派ニ屬
スル所ノ總會ニ於テ論議セラルルコトハ御
自由デアリマスルケレドモ、此公開ノ席上
ニ於テ單ニ一會派ニ屬スル所ノ內部ノ事情
ヲ論議セラルコトニ付テハ議長ハ其論議
ニ付テ御注意アラムコトヲ本員ハ希望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 長岡君ノ御述べ
ニナッタコトハ至極御尤モト考ヘマス、議場
ニオヰデノ諸君モ、長岡君ノ御申出ノコト
ヲ能ク御聽キヲ顯ヒマス······ソレデ宜シウ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ニテ通告者ハ
終リマシタ、採決ノ方法ニ付キ議長ヨリ申
上ゲマス、先刻特別委員長ハ一括シテ報〓
セラレマシタガ、先ヅ以テ地租法案ノ第二
讀會ヲ開クベキヤ否ヤノ決ヲ採ル積リデゴ
ザイマス、其方法ニ付キ溝口伯爵外四十一
名ヨリ、記名投票ヲ以テセラレタシトノ要
求ガ提出セラレマシタ、故ニ記名投票ヲ以
テ採決イタウマス、念ノ爲メ申述ベマスガ、
本院規則ノ第百十九條ニ依リ、本案ノ第二
讀會ヲ開クベシトスル諸君ハ白色票ヲ、開
クベカラズトセラルル諸君ハ靑色票ヲ願ヒ
やく、本日モ氏名點呼ヲ省略イタシマシテ
投票ノ爲ニ御登壇ヲ請ヒマス、近衞公爵ヨ
リ順次御登壇ヲ願ヒマス、時間ノ省略ノ爲
ニ成ルベク速ニ御登壇ヲ促シマス
〔投票執行〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 投票漏レハゴザ
イマセヌカ······投票漏レナシト認メマス、
書記官ヲシテ投票ヲ計算イタサセマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 記名投票ノ結果
ヲ御報告ニ及ビマス、投票總數二百四十三、
白色票卽チ第二讀會ヲ開クベシトセラルル
諸君二百三十四、靑色票卽チ第二讀會ヲ開
クベカラズトセラルル諸君九票、故ニ本案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ決シマシタ
〔參照〕
贊成二百三十四名
反對九名
贊成者氏名
公爵近衞文麿君侯爵蜂須賀正韶君
候爵大久保利武君侯爵細川護立君
侯爵佐佐木行忠君伯爵松木宗隆君
伯爵柳澤保惠君伯爵川村鐵太郞君
伯爵林博太郞君伯爵柳原義光君
伯爵奥平昌恭君伯爵樺山愛輔君
伯爵溝口直亮君伯爵小笠原長幹君
伯爵酒井忠克君伯爵黑木三次君
伯爵二荒芳德君伯爵堀田正恒君
伯爵有馬賴寧君男爵大井成元君
子爵高倉永則君子爵藤谷爲寛君
子爵樋口誠康君子爵梅小路定行君
子爵毛利高範君子爵五辻治仲君
子爵松平直平君子爵靑木信光君
子爵冷泉爲勇君子爵伊集院兼知君
子爵〓野忠篤君子爵大久保立君
子爵前田利定君子爵井上匡四郞君
子爵柳生俊久君子爵白川資長君
子爵池田政時君子爵西大路吉光君
子爵〓岡長言君子爵野村益三君
子爵櫛笥隆督君子爵渡邊千冬君
子爵今城定政君子爵吉田〓風君
子爵立花種忠君子爵藪篤麿君
子爵豐岡圭資君子爵秋月種英君
子爵伊東祐弘君子爵片桐貞央君
子爵大河内輝耕君子爵米津政賢君
子爵八條隆正君子爵保科正昭君
子爵岡部長景君子爵曾我祐邦君
子爵井伊直方君子爵花房太郞君
子爵三室戶〓光君子爵東園基光君
子爵大浦兼一君子爵新庄直知君
子爵牧野一成君子爵秋元春朝君
子爵伊東二郞丸君子爵西尾忠方君
子爵渡邊七郞君子爵裏松友光君
子爵秋田重季君子爵森俊成君
子爵戶澤正己君子爵鍋島直繩君
子爵織田信恒君子爵岩城隆德君
子爵毛利元恒君子爵米倉昌達君
子爵植村家治君子爵梅園篤彥君
子爵舟橋〓賢君子爵松下康春君
子爵土岐章君子爵三島通陽君
子爵瀧脇宏光君子爵綾小路護君
男爵北里柴三郞君男爵山本達雄君
田中館愛橘君佐藤三吉君
水上長次郞君渡邊暢君
大島健一君土方寧君
嘉納治五郞君藤澤利喜太郞君
男爵阪谷芳郞君石塚英藏君
水野鍊太郞君男爵松井慶四郞君
男爵平野長祥君男爵鍋島直明君
松浦鎭次郞君男爵幣原喜重郞君
有吉忠一君江木翼君
志水小一郞君男爵長松篤棐君
小松謙次郞君若林賚藏君
男爵大鳥富士太郞君若槻禮次郞君
男爵上田兵吉君井上準之助君
上山滿之進君伊澤多喜男君
男爵北大路實信君男爵今枝直規君
坂西利八郞君小野塚喜平次君
川崎卓吉君男爵千田嘉平君
太田政弘君男爵斯波忠三郞君
塚本〓治君山川端夫君
森賢吾君男爵千秋季隆君
男爵北河原公平君男爵赤松範一君
男爵小畑大太郞君男爵黑田長和君
男爵岩倉道倶君男爵矢吹省三君
男爵足立豐君男爵高木喜寛君
男爵松尾義夫君男爵松岡均平君
男爵近藤滋彌君男爵北島貴孝君
男爵沖貞男君男爵關義壽君
男爵三須精一君男爵佐藤達次郞君
男爵深尾隆太郞君中村純九郞君
福永吉之助君阪本彰之助君
片岡直溫君石渡敏一君
鍋島桂次郞君橋本圭三郞君
松本烝治君川上親晴君
安立綱之君湯川寛吉君
菅原通敬君湯地幸平君
田所美治君岡田文次君
靑木周三君西野元君
馬場鍈一君後藤文夫君
加藤政之助君大津淳一郞君
小久保喜七君樺山資英君
松村義一君馬越恭平君
服部金太郞君木村〓四郞君
內藤久寛君今井五介君
太田〓藏君佐々木志賀二君
伊澤平左衞門君中村圓一郞君
森平兵衛君尾崎元次郞君
本山彥一君澤山精八郎君
林平四郎君大川平三郞君
下出民義君坂田貞君
田村新吉君奥田榮之進君
齋藤喜十郞君磯貝浩君
金杉英五郞君小塩八郞右衞門君
齋藤善八君橋本萬右衞門君
平田吉胤君西本健次郞君
名取忠愛君高橋源次郞君
花井卓藏君磯村豐太郞君
土田萬助君金子元三郞君
藤原銀次郞君山崎龜吉君
瀨谷勇次郞君菅澤重雄君
北村宗四郞君森廣三郞君
吉田羊治郞君根本祐太郞君
八木春樹君大城兼義君
津村重舍君奥田亀造君
鵜澤總明君佐藤信古君
五十嵐甚藏君澤田喜彥君
橫出章君松本勝太郞君
濱口儀兵衞君長尾元太郞君
三木與吉郞君小林嘉平治君
田中一馬君野村德七君
小林暢君絲原武太郞君
濱平右衞門君高廣次平君
本間千代吉君森田福市君
瀨川彌右衞門君八馬兼介君
男爵渡邊汀君男爵原田熊雄君
反對者氏名
男爵坂本俊篤君內田重成君
川村竹治君男爵寺島敏三君
南弘君室田義文君
中川小十郞君長岡隆一郞君
大橋新太郞君
〔子爵西大路吉光君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 暫ク御待チヲ願
ヒタイ、御急ギニナラヌヤウニ願ヒマス、
玆ニ御諮リヲ致シタイノハ、御異議ガナケ
レバ他ノ七案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤノ決
ヲ採リタイト考ヘマス、只今議長ノ宣告イ
タシマシタ各案ノ第二讀會ヲ開クトスル諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵徳川家遠君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=35
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036・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ各
案ノ第二讀會ヲ直ニ開クベシトスル動議ニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=38
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039・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ各案ノ第
二讀會ヲ開キマス水野鍊太郞君ヨリ地租
法案、明治四十一年法律第三十七號中改正
法律案、大正十五年法律第二十四號中改正
法律案ニ對スル修正案ヲ提出セラレマシタ
カラ、其說明ヲ煩ハシマス、水野鍊太郞君
ノ登壇ヲ望ミマス
地租法案ニ對スル修正案
明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案ニ對スル修正案、
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案ニ對スル修正案
右議院法第二十九條ニ依リ提出候也
昭和六年三月二十七日
發議者
水野鍊太郞男爵井上〓純
長岡隆一郞森田福市
贊成者
公爵一條實孝男爵大井成元
內田重成岡喜七郞
川村竹治男爵福原俊丸
男爵金子有道男爵藤村義朗
中村純九郞石渡敏一
橋本圭三郞竹越與三郞
山之内一次南弘
室田義文安樂兼道
中川小十郞小久保喜七
林平四郞下出民義
坂田貞小塩八郞右衞門
花井卓藏瀨谷勇次郞
根本祐太郞佐藤信古
山上岩二
貴族院議長公爵德川家達殿
地租法案ニ對スル修正案
(小字及-ハ修正)
第十條地租ノ稅率ハ百分ノニ一·八トス
但シ宅地ニ在リテハ百分ノ三·二トス
第九十條本法ハ昭和六年四月一日ヨリ
之ヲ施行ス但シ昭和六年分地租ニ限リ
第十條ノ規定中百分ノ三·八トアルハ
〓宅地ニ在リテハ百分ノ三·二其ノ他ノ土
地ニ在リテハ
〓百分ノ四、第十一條ノ規定中宅地租
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
トアルハ其ノ年十一月一日ヨリ三十日
限、其ノ他第一期其ノ年九月一日ヨリ
三十日限トアルハ翌年一月一日ヨリ三
十一日限、其ノ他第二期其ノ年十一月
一日ヨリ三十日限トアルハ翌年三月一
日ヨリ三十一日限、第七十一條第一項
ノ規定中三月中トアルハ十二月中トス
明治四十一年法律第三十七號中改正
法律案ニ對スル修正案
第一條第一號中「宅地地租百分ノ三十四
宅地
其ノ他ノ土地地租百分ノ八十三」ヲ「地和
地租百分ノ三十四其ノ他ノ土地地租百分ノ百
百分ノ八十二」ニ、「宅地ニ在リテハ百分
二十一
ノ三十四、其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分
百二十一
ノ八十三」ヲ「百分ノ八十一一」ニ、同條第二
號中「宅地地租百分ノ二十八其ノ他ノ土地
宅地地租百分ノ二十
地租百分ノ六十六」ヲ「地租百分ノ六十
八其ノ他ノ土地地租百分ノ九十六
は」ニ「宅地ニ在リテハ百分ノ二十八、
其ノ他ノ土地ニ在リテハ百分ノ六十六」
九十六
ヲ「百分ノ六十六」ニ改ム
附則
昭和六年度分ニ付テハ第一條ノ改正規定
中百分ノ八十二トアルハ百分ノ七十九、
百分ノ六十六トアルハ百分ノ六十三トス
三
北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル第四
項ノ許可ノ職權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
大正十五年法律第二十四號中改正法
律案ニ對スル修正案
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
特別地稅ノ賦課率ハ賃貸價格百分ノ
四·五
三一以内トス
第四條第一項中「地價百分ノ二·九」ヲ「賃
三·六
貸價格百分ノ一·五」ニ改ム
〔水野鍊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=39
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040・水野錬太郎
○水野錬太郞君 只今問題ト相成ッテ居リ
マス地租法案竝ニ之ニ附隨イタシマス地方
稅制限ニ關シマスル二法案ニ付キマシテ、
私ハ修正案ヲ提出スルノ已ムヲ得ザルニ
至ッタノデアリマス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
此地租法案竝ニ之ニ關聯イタシマス地方稅
ノ法案ハ極メテ重大ナ案デアルノデアリ
ママ、國民ノ實際生活ニ卽スル所ノ最モ重
要ナル法案ト考ヘマス、ソレ故ニ私ハ是等
ノ諸法案ヲ審査〓究スルニ付キマシテ、種
種ノ方面ヲ考慮イタシタノデアリマス、第
一ニハ財源ノ點ヨリ之ヲ〓究イタシマシ
ク、第二ハ法案ノ內容ニ付テ檢討イタシマ
シタ、其結果玆ニドウシテモ修正セネバ相
成ラヌト云フ事實ヲ發見イタシマシタガ故
ニ、已ムヲ得ズ修正案ヲ提出スルニ至ッタノ
デアリマス、先ヅ第一ニ財源ノコトヲ考ヘ
テ見タイト思ヒマス、此財源ニ付キマシテ
ハ、政府ノ財政計畫ハ倫敦海軍條約ノ結果、
五億八百万圓ノ中カラ海軍補充ニ關スル費
用ヲ差引キマシテ、殘リ一億三千四百万圓
ヲ減稅ノ資ニ充ツルト云フコトナノデアリ
VV、之ニ付キマシテ政府ノ財政計畫竝ニ
本昭和六年度ノ豫算等ヲ探檢シテ見マス
ノニ、私ハ此政府ノ財政計畫ニ付テハ非常
ニ不安ヲ感ズルノデアリマス、此不安ヲ感
ジマスルノハ單リ私ノミナラズ、貴族院
ノ諸公ニ於テモ、同一ノ感ジヲ持ッテ居ラル
ルト思フノデアリマス、ソレ故ニ昭和六年
度ノ豫算ヲ審査スルニ當リマシテ、或ハ分
科會ニ於テ或ハ豫算總會ニ於テ、幾多ノ
質問應答アリ、其結果希望決議ナルモノガ
附帶セラレマシテ、昭和六年度ノ歲入ノ缺
陷ノナキコトヲ保セザルガ故ニ、之ニ付テ
ハ相當政府ニ於テ考慮セラレネバナラヌト
云フ趣旨ノ決議ガアッタノデアリマス、實際
ニ於テ今後ノ財政計畫ヲ見マスルト、數字
ノ上カラ見マシテモ、確カニ不安ヲ感ゼザ
ルヲ得ナイノデアリマス、政府ノ提出セラ
レマシタ計畫表ヲ見マスルノニ、歲出臨時
部ノ臨時費ニ於キマシテ、昭和六年ニハ一
億三千有餘万圓ノ金ガアルノデアリマスガ、
此費用ガ年々ニ減少イタシマシテ、終ニ昭
和十年及ビ十一年ニ至リマスルト五千万圓
位ニ減ルノデアリマス、又剩餘金ハドウ云
フ風ニナルカト見マスルト是モ多クハナ
イノデアリマス、最モ多イ年度ニ於テ、卽
チ昭和八年度ニ於テ四百万圓ヲ算シ、其他
ノ年度ニ於キマシテハ僅ニ百万圓餘ニ過ギ
ナイノデアリマス、而シテ今日ノ經濟界竝
ニ財界ノ情勢ヲ見マスルト、今度數年間ニ
ハ自然增收ノ多キヲ望ムコトハ出來ナイト
思フノデアリマス、從ッテ剩餘金ノ多キヲ望
ムコトモ是亦困難ト思フノデアリマス、而
シテ一面支出ノ點ヲ見マスルト、幾多ノ緊
急已ムベカラザル支出ガアルノデアリマ
ス、先程來此演壇ニ於キマシテモ將又本議
會開會以來貴衆兩院ニ於テ問題トナリマシ
タノハ海軍艦艇ノ費用デアリマス、所謂第
一次補充計畫ナルモノハ三億七千四百万圓
トシテ確定シタノデアリマスルガ、世間デ
云フ所ノ第二次計畫、第二次計畫ナル言葉
ハ正シクナイカモ知レマセヌケレドモ、世
間ニ於テサウ云ウテ居リマスカラ假ニ第二
次計畫ナル言葉ヲ使ヒマス、第二次計畫ノ
コトハドウ云フ風ニナルノデアルカ又之
ニ要スル財源ハドウナルノデアルカト云フ
コトハ、是ハ皆各員ガ心配シテ居ルノデア
リマス、之ニ付キマシテハ減稅委員會ニ於
キマシテモ質疑應答ガアッタノデアリマス
ルガ、濱口總理大臣ハ初メニハサウ云フ第
二次計畫ナルモノハ持。ッテ居ラヌ、サウ云フ
モノハナイト云フコトヲ言明セラレタノデ
アリマシタガ、是ハ能ク聽キ質シテ置カネ
バナラヌト思ヒマシテ、更ニ反問ヲ致シマ
シタ所ガ、所謂計畫ナルモノハマダソレハ
今日ハ立ッテ居ラヌ、艦船ノ種類、其著手ノ
時期等ニ付テハ所謂計畫ナルモノハナイ、
ガ併シ今後之ニ對スル所ノ何ガノ事柄ヲ爲
サネバナラヌト云フコトハ認メテ居ルト云
フコトデアリマス、海軍大臣モ同樣ノコト
ヲ言ハレテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ今
日確定的ノ第二次海軍計畫ナルモノハ無シ
トシマシテモ、何カ此四五年ノ中ニハ爲サ
ネバナラヌト云フコトハ事實デアリ、是ハ
濱口總理大臣モ將又海軍大臣モ之ヲ承認セ
ラレテ居ルノデアリマス然ラバ其財源ハ
有リヤト言ヒマシタナラバ此財源ハ無イ、
今見テ居ラナイ、斯ウ云フコトナノデアリ
VV、ガ併シソレガ必要デアルト云フコト
ガアルノデアルカラ、是カラ五年先キニナ
リマスカ、四年先キニナリマスカ、卽チ昭
和九年度ニナリマスカ、十年度ニナリマス
カハ分リマセヌガ、兎ニ角其時期ニ於キマ
シテハ、之ニ必要ナル費用ハ必ズ考ヘネバ
ナラヌ、今ハ何等ノ財源ヲ豫期シテハ居ラ
ヌケレドモ、其時ニナッテハ何トカシテ之ガ
經費ノ支辨ヲ考慮スルト云フコトナノデア
リマス、ソレデアリマスルカラ少クモ四五
年先ニ於キマシテハ、ソレノ費用ノ要ルコ
トガ明カナノデアリマス、而モ其費用ハ今
日確定シテ居ラナイトハ申シマスルモノ
ノ大體ニ於テ一億圓內外ノ要ルコトハ推
想ニ難カラザルノデアリマス、其他新艦ノ
維持費ノ如キモ今日ノ程度ヲ以テハ十分デ
ナイト云フコトモ亦推想シ得ラレルノデア
リマス、更ニ救護法ノ施行ノ爲ニ要スル費
用ハ本年度ハ僅カ七十五万圓デアリマスル
ケレドモ、昭和七年以降ニナリマシテハ
少クモ國カラ三百万圓ヲ支出セネバナラ
ヌ、而シテ此費用ハ年ヲ逐フニ從ッテ增スト
云フコトモ事實デアルノデアリマス、ソレ
故ニ此財源ヲドウスルカト云フコトニ付キ
マシテハ、政府ニ於テモ非常ニ苦慮セラレ、
或ハ競馬法ノ改正ヲナシ、ソレニ依"テ生ズ
ル收入ヲ之ニ當テムトシ或ハ甚シキハ地方
ノ警察費連帶支辨金ニ關スル經費ノ負擔ヲ
減ジテ之ヲ地方ニ轉嫁セシメテ、之ヲ以テ
財源トセムトシテ居ルト云フコトハ大藏大
臣モ言明セラレタノデアリマス、是等ハ二
三ノ實例ニ過ギマセヌケレドモ、是等ノ事
ヲ考ヘマスレバ、今後ノ財政計畫ニ付テハ
何トシテモ不安ヲ感ゼザルヲ得ナイノデア
リマス、私ハ此四五年先ニ於キマシテ、財
政ノ行詰リヲ生ズルノデハナイカト云フコ
トヲ深ク憂フルノデアリマス、斯カル場合
ニ於キマシテ、減稅ヲセムトスルノデアリ
マイ、而シテ其減稅ハ恆久的支出ト致シマ
シテ、平年度ニ於テ二千五百万圓ヲ要スル
ノデアリマス、デアリマスルカラ、之ヲ眞
面目ニ考ヘマスト、果シテ此事ニ協贊ヲ與
ヘテ宜イカドウカト云フコトニ付テ實ハ私
ハ迷ウタノデアリマス、ガ併シ一面今日ノ
都市竝ニ農村ノ狀況ヲ見マスルト、何レモ
不景氣ノ爲ニ國民ハ疲弊困憊イタシテ居ル
ノデアリマス、國民ノ收入ハ減リ、國民ノ
爲サムトスル所ノ產業ハ萎微振ハナイノデ
アリマスルカラ、ドウシテモ國民ノ負擔ヲ
輕減スルト云フコトハ是亦已ムヲ得ナイコ
トナノデアリマス、ソレデアリマスルカラ
私ハ一面ニ於テ國ノ財政計畫ニ付テ不安ヲ
懷キナガラモ此減稅ト云フコトニハ贊成セ
ザルヲ得ナイト思ッタノデアリマス、寧ロ此
減稅ノ額ノ少キコトヲ憾ム位デアリマシ
テ、今日ハ何トシテモ國民負擔ノ輕減ヲ圖
ルコトハ已ムヲ得ナイト云フコトヲ感ジマ
シタガ爲ニ、減稅ト云フ事ニ付テ私ハ贊成
ヲ表シ、只今ノ決議ニ當リマシテモ白票ヲ
投ジテ減稅ニ贊成ヲ致シタイノデアリマス、
併シ此減稅案ノ內容ヲ見マスルト、實ニ私
ハ意外ナルコトヲ發見シタノデアリマス、
此政府ノ提出セラレタル減稅案ヲ見ルマデ
ハ、所謂減稅デアル、我ミハ多少ナリトモ昭
和六年度ヨリハ負擔ガ幾ラカハ減ルデアラ
ウト云フコトヲ考ヘテ居タノデアリマス、
私ハ世間デハ法案ノ內容ヲ見ナイ人ハ必ズ
サウ考ヘテ居ッタト思フノデアリマス、然ル
ニ何ゾ圖ラン、一部若クハ或ル場所ニ於テ
ハ減稅ドコロカ增稅ニナルト云フ所ガアル
ノデアリマス、是ハ此前カラ段々此演壇デ
御話シニ相成リマシタガ如ク、總體ヲ勘定
イタシマスレバ、減稅ニハナリマセウケレ
ドモ、市部等ニ於キマシテハ確ニ增稅ニ相
成ルノデアリマス、而モ其增稅モ必シモ少
イ額デハナイノデアリマス、成程國稅ダケ
ヲ見マスルト、ソレ程餘計デハナイヤウデ
アリマスルガ、國稅ニ伴フ所ノ地租附加稅
ナリ、地方稅ヲ合セマスルト、相當多額ノ
增稅ニ相成ルノデアリマス、私ハ玆ニ詳シ
ク一々數字等ハ申述ベル煩ヲ避ケマスガ、
政府ヨリ提出セラレタル參考書ニ依リマス
レバ、市部及ビ町部ノ宅地ハ負擔額ガドノ
位增スカト云フト、先程モドナタカノ御話
ガアリマシタガ、約二千八百五十二万餘圓
增スノデアリマス、兎ニ角今日ノ狀態ニ於
テ我ミハ減稅ト思ッタノニ國稅竝ニ地方稅
ヲ合セテ二千八百万圓、約三千万圓ニ近キ
增稅ヲ見ルトハ實ハ思ヒモ寄ラナカッタノ
デアリマス、併ナガラ此度ノ法案ノ實質ヲ
見マスレバ其通リニ相成ルノデアリマス、
今日ノ社會狀態ヲ見マシテ果シテ斯カル增
稅ヲ爲スコトガ適當デアリヤ否ヤト云フコ
トハ私ハ恐ラクハ何人モ其コトガ適當デ
アルトハ考ヘラレナイノデアラウト思フノ
デアリマス、假令蚊ノ淚ニシロ、敷島一本
ノ減稅額ニシロ、減稅デアルト云フコトナ
ラバ我ミハ其額ノ少キコトヲ憾ミマスガ、
之ヲ以テ今日ハ滿足セネバナラヌト思フノ
デアリマス、然ルニ敷島一本ドコロデハナ
イ家賃ノ······今日ノ家賃ノ全額マデ增稅セ
ラルルト云フヤウナ狀況デアリマシタナラ
バ是ハ國民ノ感想上ニ於テモ如何デアラ
ウカト云フコトヲ私ハ眞ニ憂フルノデアリ
マス、ソレデアリマスカラ私ハ此場合ニ於
テハ何トシテモ增稅ニナルベキ所ハ是ハ止
メテ貫ヒタイ、減稅ハ少額ナリト雖モ是ハ
忍ンデ、少額ノ減稅ヲ以テ滿足シテ貰フト
同時ニ、增額ニナル所ハ之ヲ滅ジテ貰ヒタ
!是ハドウモ私ハ當然ノコトデハナイカ
ト思フノデアリマス、但シ斯ノ如ク田畑租
ト宅地租トノ間ニ斯ノ如キ增減ヲ生ジタノ
ハドウ云フ所カラ出テ來タカト申シマスル
レバ是ハ井上大藏大臣ガ度ミ御說明ニ相
成リマスガ如クニ、此度地租法ヲ改正シテ
從來地租課率ノ標準ヲ地價ニ取ッタノヲ賃
貸價格ニ改メタ其結果ガ斯ウ云フ數字ヲ
現ハシテ來ルノデアル、而シテソレガ所謂
負擔ノ公正ヲ圖ル所以デアルカラ、一部、
於テ增稅ヲ生ジテモ已ムヲ得ナイノデアル
ト云フ御說明ナノデアリマス成程數字ヲ
取ッテ見マスレバ其通リナノデアリマス、併
シ國民ノ實際生活ニ卽シタ親切ナル政治ヲ
爲サントスルノニハ唯銀行屋ノ算盤ダケ
デハイカナイト思ヒマス、其算盤勘定ガサ
ウ云フ風ニナッテモ、玆ニ社會的ノ狀況、經
濟界ノ情勢ヲ見テ、ソコニ考慮ヲ加ヘ、ソ
コニ斟酌ヲ爲スト云フコトガ、是ガ親切ナ
ル政治ヲ爲ス所以デハナイカト思フノデア
リマス、算盤ヲ取リマスレバ市部ニ於テ增
稅ニナリ農村ニ於テ減稅ニナルト云フコト
デアリマスルガ、減稅ハ兎ニ角トシテ、增
稅ダケハソコニ此法律上ノ修正ヲ爲シテ止
メルト云フコトガ、是ガ私ハ今日ノ實情ニ
照シテモ適當ナル處置デハナイカト思フノ
デアリマス、併シサウナルト地租ノ標準ヲ
賃貸價格ニ取ッタト云フコトカラ狂ヒヲ生
ジテ來ルト云フコトヲ言ハレマスガソレ
モ私ハ否ミマセヌ、否ミマセヌケレドモ
ソレハ法ノ立テ方ニ依レバ必シモサウデナ
クテモ濟ムノデアリマス、ソレデアリマス
ルカラ私ハ此際ニ於テハ法ヲ修正シテ、增
稅ニ當ル部分ダケハ止メタイト思フノデア
リマス、更ニ根本ニ遡シテ考ヘマスレバ、此
度ノ地租法改正ノ結果トシテ、其地租課率
ノ標準ヲ賃貸價格ニ取ッタノデアリマスガ、
此賃貸價格ニ取ッタト云フコトノ此原則ハ
必シモ否認ハ致シマセヌケレドモ、此賃貸
價格ハ大正十五年一月一日ノ現在ニ依ャテ
調査セラレタモノデアリマス、大正十五年ノ
經濟狀態、產業狀態、財界ノ有樣ト、今日
ト比較イタシテ見マスレバ、私ハ非常ニ變
動ガアルト思フノデアリマス、ソレ故ニ之
ヲ根本的ニ而モ深切ニ考ヘマスレバ、大正
十五年ノ賃貸價格ヲ更ニ調査シテ、此今日
ノ經濟狀況ニ合フヤウナ方法ヲ執ルコトガ
至當ダト思フノデアリマス、併シ賃貸價格
ノ調査ニハ相當ノ費用モ要スルノデアリマ
スルカラ、今此調査ヲ爲シテ其調査ノ結果
ニ依ッテ地租法ヲ改正セムトスルナラバ、是
ハ尙ホ一年位ハ遲クナルカモ知レナイノデ
アリマス、ソレデアリマスルカラ此減稅ヲ
一日モ早クシヤウト云フノナラバ、私ハ此
賃貸價格ヲ今日是非變ヘロト云フ迄ノ御無
理ハ申上ゲナイノデアリマス、ケレドモ心
カラハ私ハ寧ロ賃貸價格ノ再調査ヲシテ、
ソレニ依ッテ地租法ヲ改正シ國民負擔ノ正
當ナル比率ヲ見ルト云フコトガ適當デアル
ト思ヒマスルガ、是ハ今日此事ヲ申上ゲテ
モ政府ノ御方ニ無理ヲ强ユルヤウナコトニ
考ヘマスカラ、此事ハ申上ゲマセヌガ、ソ
コ迄ハ私ハ實ニ考慮シタイト思ッテ居ノタノデ
アリマス、デ斯ノ如キ地方ノ中ニ增稅······斯
ク全國ヲ通ジテ二倍三割三分ノ增稅ガアル
トスルナラバ、其增稅ヲ暫ク止メテ、サウシテ
今後一段ノ〓究調査ヲ爲スコトガ適當デアル
ト思フノデス、之ニ付キマシテハ、農村ト都市
ノ間ニ利害ノ衝突ガアリマシテ、農村ニ居ラ
ルル方ハ農村ノ減稅ヲ主張シ、都市ニ居ラル
ル方ハ都市ノ減稅ヲ主張セラルルヤウデア
リマスガ、私ハ此間ニ意思ノ疎隔ヲ來シ、都
市農村互ニ相爭フヤウナ結果ヲ生ズルコト
ハ國家ノ爲ニ非常ニ憂フベキコトト思フノ
デアリマス、都市ト言ハズ農村ト言ハズ、
所謂共存共榮ニ依ッテ相助ケ合ッテ行カナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、然ルニ先程
ノ御論議ヲ見マシテモ都市ニ在ル者ハ都市
ノ利益ヲ主張シ、農村ニ在ル者ハ農村ノ利
益ヲ主張スルト云フ風ニ、互ニ相反スルト
云フコトハ國家ノ爲ニ由々シキコトト思
フノデアリマス故ニ私ハ此共存共榮ノ主
義カラ申シマシテモ互ニ相調和セシメム
トスル國家政策上ノ上カラ申シマシテモ、
此場合ニハ市部町部ノ宅地ノ增稅ヲ止メル
コトガ適當デアルト思フノデアリマス、併
シ市部ノ宅地ノ增稅ヲ止メテ其尻ヲ農村ノ
方ニ持クテ行クト云フヤウナコトハ、是ハ私
ハイカヌト思フノデアリマス、〓究會ト云
フ言葉ヲ使フト如何ト思ヒマスガ、昨朝來
ノ新聞紙ノ報ズル所ニ依リ.マスルト云フ
ト〓究會ニ於カレテハ此意味ノ修正ヲナ
サレタト云フコトデアリマス、卽チ都市方
面、卽チ宅地ノ增稅ノ一部ヲ、全部ヂヤア
リマセヌ、一部ヲ修正ヲシテ、卽チ其增額ヲ
止メテ、サウシテ其增額ヲ止メル結果ノ一
部分ハ、農村ニ持テテ行ッテ、農村ノ減稅ヲ
シナイデ、減稅ノ額ヲ少カラシメムト云フ
ヤウナ修正案ガアッタト云フコトデアリマ
ス、此事ニ付キマシテハ、非常ナ「センセー
ション」ヲ起シタト云フコトハ皆樣御承
知ノコトデアリマス、殊ニ衆議院ノ與黨ノ
中カラ、是ハ實ニ不都合ナコトデアルサ
ウ云フヤウナコトデアルノナラバ、貴族院
ト戰ハネバナラヌ、貴族院ノ革正マデモ促
サネバナラヌト云フコトスラアッタト云フ
コトガ、新聞紙上ニ出テ居ッタノデアリマ
ス、私モ此點ニ付テハ衆議院ノ諸君ト御同
感デアッタノデアリマス、都市ノ增稅ヲ止メ
ルコトハ是ハ宜シイガ、其尻ヲ農村ヘ持ツ
テ行ッテ、農村ノ減稅ヲ減サウト云フコト
ハ是ハ執ルベカラザル政策ト思フノデア
リマス、之ニ對シマシテ世間ニ問題トナッタ
ノハ當然ノコトデアルノデアリマス、唯
誤解ヲ防グ爲ニ申シテ置キマス、斯ノ如キ
コトハ貴族院內ノ一部ノ說デハアッタケ
レドモ決シテ貴族院全體ノ說デハナイト
云フコトノ御承知ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス、(拍手)〓究會ニ於テモ、此世論ニ顧
ミラレル所ガアッタノデアリマシタカ、其修
正案ハ否決ニ相成ッタノデアリマシタ、是ハ
國家ノ爲ニ喜ブベキコトト思フノデアリマ
ス私共ガ提出シテ居ルノハ、決シテサウ
云フ趣旨デハナイノデアリマス、都市農村
共存共榮ノ趣旨ヲ以テノ修正案デアルト思
アノデアリマス、卽チ都市ト云ウテハ語弊
ガアリマスガ、要スルニ市部ノ宅地ノ增稅
トナル所ヲ止メル、農村ノ減稅ハ其儘ニ致
シテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスルカ
ラ、農村ハ都市ノ增稅ヲ止メルコトニ依フテ
何等ノ影響ヲ受ケナイノデアリマス
段々今日ノ事情ヲ見マスルノニ都市若クハ
市部ノ宅地ノ增稅ハ困ルト云フ聲ハ大キク
聞ク、ソレカラ又農村ノ減稅ヲ止メラレル
ト云フコトノ聲モ聞クノデアリマス、併シ
農村方面カラ都市ノ增稅ハ止メテ吳レル
ナ、ドン〓〓都市ノ方ニ增稅シテ吳レロト
云フ聲ハ無イノデアリマス、ソレ故私ハ農
村ニ付キマシテハ從來ノ政府ノ方針通リノ
減稅ヲ認メ、都市其他ノ市部ノ宅地ニ村キ
マシテハ增稅トナルベキ點ダケヲ減サウト
云フノデアリマス、是モ都市ノ方カラ言ヘ
バ今度ノハ減稅減稅ト云フノデアルカラ、
我ミモ幾ラニシテモ減稅ガアラウト思フノ
ニ、增稅ダケヲ止メラレタノデハイカヌ、
幾ラデモ減稅ガナケレバナラヌト云フコト
ヲ言フ者ガアリマセウケレドモ、私ハ此場
合デアリマスルカラ都市ノ方ミモ現狀ニ止
マルコトヲ以テ滿足セラレテ、減稅マデノ
聲ハ出サレヌヤウニシテ戴キタイト思フ
同時ニ農村ノ方面ノ人モ多少ナリトモ減稅
ガアリ、而シテソレハ政府提出案ノ通リデ
アッテ、之ニ對シテ何等ノ侵蝕ヲシテ居ルノ
デナイノデアルカラ、農村モ之ヲ以テ滿足
シ、都市ノ增稅マデ主張セラルルト云フコ
トハ止メテ貰ヒタイト思ヒ、恐ラクサウ云
フコトヲ言フ者ハ無イダラウト思フ、是ガ
私ハ今日ニ於テハ最モ必要ナルコトト思フ
ノデアリマス、成程純理カラ言ヒ、若クハ
算盤勘定カラ言ヒマスレバ、都市ニ增稅ニ
ナリ農村ニ減稅ニナルト云フコトニナリ
マセウ、少クトモ此理論ヲ認メルト致シマ
シテモ、今日ノ時機、經濟界不振ノ今日ノ
時期、產業ガ萎微振ハザル今日ノ時期、不
景氣ニ依ッテ苦シンデ居ル今日ノ時期ニ於
テ增稅ヲスルト云フコトハ理論ハ正シイ
ト致シマシテモ、實際ニ於テ之ヲ廢メルコ
トガ必要デアルト思フノデアリマス、此點
ニ付キマシテハ私ハ度ミ政府ニ考慮ヲ促
シタノデアリマス私ハ政府ノ御方ト共ニ
今日ノ事相ニ付テハ深ク憂ヲ懷イテ居ルモ
ノデアリマス又國家ノ將來ノ問題、財政
ハ言フマデモナイ、國民思想等ノ問題ニ付
キマシテモ、深キ〓〓憂ヲ懷カザルヲ得ナ
イノデアリマス、減稅案ノ如キハ其一端ニ
過ギマセヌケレドモ、是等ガ能ク行カナケ
レバ、隨分種々ノ惡結果ヲ生ゼザルナキヲ
保セナイノデアリマス、都市ノ增稅ヲ減ス
ト云フヤウナコトヲ言フトソレハ特權階
級ヲ保護スルモノデアル、若クハ或一部ノ
階級ニ屬シテ居ルモノノ利益ノミヲ見ルノ
デアルト云フコトヲ能ク言フノデアリマス
ガ、私ハ必シモ左樣デハナイト思フ、先程
カラ段々御話モアリマシタ通リニ、此地租
竝ニ地租附加稅ノ增額ニ依テ東京市ヲ初
メ主ナ大キナ市ニ於テハ、多キハ六百万
圖、少キモ百万圓以上ノ增額ニナルサウ
致シマスルト云フト、ソレガ必シモ地主ダ
ケノ負擔ニ止ラナイ、借家法、借地法ニ依
リマシテモ、公課ノ增シタ時ニハソレヲ借
地人、借家人ニ轉嫁スルコトガ出來ルト云
フヤウナコトガアリマスカラ、其結果ハ庶
民階級ニ屬スル所ノ人ニ負擔ヲ轉嫁セシム
ルコトニ相成ルト云フコトヲ避ケルコトハ
出來マイト思フ、サウ致シマスルト非常ナ
其間ニ紛爭ヲ來ス原因ヲナサナイトモ限ラ
ナイノデアリマス、私ハ是等ノコトヲ心カ
ラ憂ヘルノデアリマス、ソレデアリマスカ
ラ、必シモ都市ノ增稅ヲ廢メルト云フコト
ガ單リ特權階級者ノミノ保護ト云フコトニ
ハ相成ラヌト思フノデアリマス、是等ノコ
トヲ考慮イタサレマシテ、社會政策ノ上カ
ラ見マシテモ、今日ノ情勢カラ見マシテモ、
增稅トナル其コトダケヲ廢メルト云フコト
ハ是ハ私ハドナタモ御不同意ノ無イコト
ヂヤナイカト思フノデアリマス、固ヨリ之
エ付キマシテハ、私共ハ今後ノ財政經濟等
ノ調査ニ於キマシテ更ニ根本的ノ〓究ヲ爲
サネバナリマセヌガ少クモ今日ノ時代ニ
於テ此位ノコトハ致シテ置クコトガ適當ト
思フ、極ク理想ヲ申シマスレバ、都市ノ增
稅ヲ廢メルト同時ニ農村ノ減稅ヲモット餘
計ニシタラ宜カラウト思フノデアリマス
少クトモ都市ノ增稅ヲ廢メル······農村ニ於
テハ確カ千五百万圓位ノ減稅ニナルノデス
ガ、今一段奮發シテ、モウ千万圓位ノ減稅
ヲ爲スノガ適當デアラウト思フノデアリマ
ス唯是ハ財政ノ上ニ於テ困ルト云フコト
デアリマスルカラ、ソレマデハ主張イタサ
ナイノデアル、而シテ此都市ノ、卽チ市部
ノ宅地ノ增稅ヲ廢メル結果、約六百万圓ノ
收入ノ缺陷ヲ生ズルガ、其財源ヲドウスル
ノカト問ハレタ人モアルノデアリマス、是
ハ私ハ其財源ニ付テハ無論政府ニ於テモ考
ヘテ居ラレ、此位ノ財源ノ捻出ハ出來ナイ
コトハナイト思フ、併シ假ニ玆ニ自分ノ意
見ヲ今言ハシムルナラバ政府カラ提出セ
ラレマシタ參考書ノ內ニ今日ノ人件費ト致
シマシテ卽チ俸給、諸給、雜給ト云フヤウ
ナモノデアリマセウ、サウ云フモノガ昭和
四年度ニ於テハ二億七千有餘万圓、昭和五
年度ニ於テ二億七千有餘万圓、昭和六年度
ニ於テモ殆ド同ジ二億七千餘万圓、此申ニ
諸官吏其他ニ對スル賞與ト云フモノガ六千
四百万圓出テ居ルノデアリマス昭和三年
度ニ於テ六千四百万餘圓、昭和五年度ニ於
テハ六千五百万圓餘デアリマス固ヨリ今
日ノ官吏ニ對シテ私ハ減俸ヲシロトカ、賞
與ヲ止メヨトカ云フコトハ甚ダ不本意デ
ハアリマスケレドモ、兎ニ角今日ノ經濟界、
財界ノ狀況ヲ見マスレバ、賞與ニ付テ一割
位ヲ減少スル餘地ノナイコトハナイト思フ
ノデアリマス、賞與ノ一割ヲ減少イタシマ
スレバ、優ニ六百万圓ハ出ルノデアリマス、
私ハ寧ロ之ヲ二割モ滅シテ、一部ニ於テハ
都市ノ增稅ヲ止メ、一部ニ於テハ農村ノ減
稅ヲ增シタラ宜カラウ云フ位ニ思フノデア
リマス、今日ハ民間ノ事業ニ於キマシテモ、
其他諸方面ノ事業ニ於キマシテモ、非常ナ
窮迫ノ狀態ニアルノデアリマス、殊ニ地方
ノ府縣、市町村會ヲ見マスト、財源ノナキ
ニ窮シテ居ルノデアリマス、ソレデアリマ
スルカラ皆樣モ御承知ノ通リ、小學校〓員
ノ俸給ガ拂ヘナイト云フ町村迄モアルノデ
アリマス、是ハ恐クハ今後〓育界ノ問題ニ
ナルト思フノデアリマス、現ニ帝國〓育會
ニ於キマシテモ、是等ノコトニ付テハ憂慮
セラレマシテ調査ヲナサレテ居ルト云フコ
トデアリマス、事實市町村ヨリ支拂フ〓員
ノ俸給ガ拂へナイノデ〓、之ヲ滯ッテ居ル所ガ
多イ、ソレデアリマスカラ或ハ〓員ナドカ
ラ、寄附ノ名義ノ下ニ俸給ヲ減ジテ町村ニ
返シテ居ルト云フヤウナコトガアルノデア
リマス、是ニ付キマシテハ其裏面ノ內情ヲ
聞キマスト、私ハ誠ニ憂フベキコトガアル
ト思フノデアリマス、學校〓員ノ俸給ガ拂
く、、學校〓員ハ其日ミニノ生活、必ズシ
モ豐富ナリトハ言ヘナイノデアリマス、ソ
レニモ拘ラズ尙ホ自分ノ俸給ノ中カラ寄附
セネバナラヌト云フコトヲ强要セラレルコ
トハ誠ニ堪ヘザルコトデアル······堪ヘラレ
ナイコトデアルト云フヤウナコトハ、到ル
處ニ其聲ヲ聞クノデアリマスッ其結果、我
我ノ愛スベキ小學兒童ノ〓育ノ上ニモ、私
ハ影響ヲ及ボシテ居ルノデハナイカト思ヒ
マス、中ニハソレガ爲ニ反抗思想スラ持ヲテ
居ル者ガアルト云フコトヲ聞キマス、是等
ノ實情ヲ聞キマスレバ、私ハ國家ノ將來ノ
爲ニ深憂ヲ禁ゼザルヲ得ナイノデアリマ
ス而シテ其言フ所ニ依レバ我〓ハ減俸
セラレテ居ル、我ミハ俸給ノ支拂ヲ受ケズ
ニ居ル、然ルニ官吏······國家ノ官吏ト云フ
モノヲ見レバ、何等ノ減俸ハナイ、ノミナ
ラズ賞與スラ從前ノ通リ十分ニ貰フテ居ル、
是ハ小サナ者ヲイヂメテ大キナ者ハ依然ト
シテ其舊時ノ狀態ニアルト云フコトハ如何
ニモ不均衡デアルト云フヤウナ不平ノ聲ス
ラ放ツ者ガアルノデアリマス、ソレデアリ
マスカラ、ソレハ私ハ政府ノ諸公、殊ニ〓
育ノ衝ニアラレル御方ニハ、唯一時々々ノ
コトノミニ沒頭セラレナイデ國家ノ現狀竝
ニ國家ノ將來ニ對シテ、深キ思ヒヲ致サネ
バナラヌコトデアルト思フノデアリマス、
サウ云フヤウナ譯デアリマスカラ、國庫ヨ
リ支出スル俸給諸給ノ中ノ六千五百万圓
位ノ賞與ノ一割位ハ減稅ノ資ニ充テ、而
シテ之ヲ以テ增稅ニナルベキ所ヲ止メル位
ノコトハ御心配ニナラヌケレバナラヌコト
デナイカト私ハ思フノデアリマス、ソレ故
ニ私ハ此點ニ付テ心カラ心配ヲ致シマシテ、
深ク政府ニ意ヲ致シタノデアリマス、併
シ是ハ何トシテモ私ハ此法律ガ出マシタ以
上ハ、此法律ニ修正ヲ加ヘルノ時ハ無イト
思フヘ其意味ニ於テ修正ヲ加ヘタノガ、宅
地租ニ於キマシテノ課率竝ニ府縣及市町村
ニ於ケル附加稅ノ課率ヲ變ヘタノガ、此所
謂修正案ナノデアリマス、之ニ依リマシテ
大體ニ於テ增稅ニナル所ヲ增稅ニナラズシ
テ止メルコトガ出來ルノデアリマス、デ此
趣旨ニ於テ私ハ恐ラクハ〓究會ノ諸公モ必
ズ御同意下サルモノト思ヒマス、〓究會ノ
諸公カラ提出セラレマシタ希望決議ト云フ
モノガ今朝ノ特別委員會ニアッタノデアリ
マス、其希望決議ハドウ云フノデアルカト
云フト、地租法制定ノ結果從來ニ比シ地租
負擔ノ公平ヲ期シ得ベシトスルモ都市ニ於
ケル宅地租ノ急激ナル增加ハ納稅者負擔ノ
苦痛ヲ甚大ナラシムルノミナラズ延テ地代
及家賃ノ騰貴ヲ來シ市民一般ニモ亦困惑ヲ
被ラシムル虞レアリ現下經濟界ノ實情ニ鑑
ミ時宜ヲ得ザルモノト認ム」ト言ハレテ居ル
ノデアリマス、私ノ申シマシタノモ、〓究會
諸公ガ憂ヘテ居ラルル所モ同一ナノデアリ
マス、デ既ニ此事ヲ希望決議トシテ提出セ
ラレタナラバ何故ニ之ヲ法律ノ中ニ入レルコ
トガ惡イノデアリマセウ、私ハ從來貴族院
等ニ於キマシテ種々ノ事ニ付テ希望決議ナ
ルモノガ附帶セラルルノデアリマス、私ハ
寧ロ希望決議ノ濫發ヲ止メテ貰ヒタイト思
フ位ナノデアリマス、希望決議ハ唯希望ヲ
述ベタニ過ギナイノデアル、而シテ希望決
議ハ必シモ本議場ノ決議ヲ採ルノデハナイ
ノデアリマス、デアリマスルカラ本議場卽
チ貴族院ノ議トシテハ希望決議ト云フモノ
ハ認メラレナイノデアリマス、ガ併シ斯ウ
云フ希望ガアルノナラバ其事ヲ法文ニ揭ゲ
ルコトハ何デモナイノデアル、卽チ此趣旨
ヲ法文ニ揭ゲタノガ私ノ修正案ナノデアリ
マス故ニ此趣旨ガ正當ナリトスルノナラ
バ此事ヲ提出セラレ、若クハ之ニ贊成サレ
タル諸公ハ必ズヤ此修正案ニ御同意ノアル
ト云フコトヲ信ジテ疑ハナイノデアリマス、
私ハ此地租法ノ改正ニ依ッテ幾分ナリトモ
國民ノ負擔ヲ輕減スルコトニ相成ルコトヲ
喜ビマスガ、果シテ此趣旨ガ徹底シ得ラル
ルヤ否ヤニ付テハ疑ヲ實ハ有ッテ居ルノデ
アリマス、地方稅ニ於キマシテ、是ハ國稅
ハ別ト致シマシテ、地方稅ニ於キマシテ地
租附加稅ガ減ルノデアリマス、其額ガ千五
百万圓位ニナルノデアリマセウガ是ガ果
シテ適切ニ減稅ノ目的ガ達シ得ラルルヤ否
ヤト云フコトヲ實ハ疑ッテ居ルノデアリマ
ス
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
此度ノ減稅案ノ結果、卽チ地租ノ制限額ニ變
更ヲ及ボシタ結果ト云フモノハ地方團體ノ
財源ニ缺陷ヲ生ズルコトニ相成ルノデアリ
マス、極ク主モナ例ヲ取テテシシマシテモ、
岩手縣、宮城縣、山形縣、福島縣、埼玉縣、
千葉縣、富山縣、三重縣、滋賀縣、島根縣、
香川縣、佐賀縣、沖繩縣等ニ於キマシテハ
十万圓以上乃至五十万圓近クノ減收ニナル
ノデアリマス而モ是等ノ府縣ハ所謂貧弱
縣ト稱セラレ、財源ノナキニ苦シデ居ル縣
デアルノデアリマス、町村ニ行キマシテハ
農漁村ノ貧弱町村モ亦同一ナ結果ヲ生ズル
コトト思フノデアリマス、サウ云フ風デア
リマスレバ、地方ニ於テハ此減收ヲ何カニ
於テ取戾シテ行カネバナラヌト云フコトガ
生ジハシナイカト思フ、地方ノ實際ヲ御覽
ニ相成リマスレバ、今日ハ地方ノ府縣、町
村ト云フモノハ疲弊困憊ノ極ニ達シ、而シ
テ爲スベキ事業ガ爲シ得ラレヌト云フコト
ニナル、一面ニ於テハ子供ガ殖エル、就學
兒童ガ殖エル、之ニ對シテハ義務〓育ドシ
テ學校ノ設備ヲセネバナラヌ、校舍ノ腐朽
シテ居ルモノニ對シテハ之ヲ修繕セネバナ
ラヌ、是ハ子供ガ殖エテモ義務〓育デアリ
マスカラドウシテモ町村等ニ於テハ之ヲ
爲サネバナラヌ、交通狀態ヲ見マスレバ、
道路ニハデコポコガ出來テ居ル、橋ハ腐朽
シテ居ル之ヲ渡ルノニハ非常ニ危險デア
ルト云フコト流行病ガハヤレバ之ニ對シ
テ衞生ノ設備ヲセネバナラヌ、病院ヲ建テ
ネバナラヌ、水害ガアレバ此水害ニ對シテ
ノ改修工事ヲ爲サネバナラヌ、是等ハ府縣
ヤ市町村ニ於テ當然爲サネバナラヌコトデ
アリマス、之ヲ爲サネバ府縣民、町村民ノ
幸福利益ヲ招來スルコトガ出來ナイノデ
アリマス、是等ノ事柄ハ今日ノ地方ノ實情
デアルノデアリマス而シテ財源ハ何ガア
ルカト云フト、殆ド財源ハナイノデアリマ
ス、ソレデアリマスルカラシテ、其結果ト
云フモノガ、地租附加稅ニ於テ減收トナル
結果ト云フモノハ已ムヲ得ズ戶數割ト
カ、雜種稅トカ云フモノニ轉嫁セラルルノ
デハナイカト思フノデアリマス、殊ニ戶數
割ノ如キハ民衆ノ尤モ下層階級ニマデ行互
ル稅デアリマス、又雜種稅ノ中ニハ漁民ニ
對スル漁業稅ガアリマス、人力車ヤ荷馬車
ニ對シテ車稅ガアリマス、其他代書人稅ヤ
酌婦置屋稅トカ、誠ニ憐ムベキ者ニ對スル
稅ヲ漁ッテ行カナケレバナラヌト云フノガ
今日ノ實情デアルノデアリマス、私ハ是等
ノ實情ヲ見若ハ聞ク每ニ、地方農村ノ爲ニ
一滴ノ淚ヲ注ガザルヲ得ナイノデアリマ
スソレデ地租附加稅ニ於キマシテ減收ト
ナック結果ノ地方團體ニ於テ巳ムヲ得ズセ
ネバナラヌ事業ガアリマスルカラ、其缺陷
ヲ是等ノ所ニ轉嫁スルノデハナイカト云フ
コトヲ惧ルルノデアリマス、而シテ我ミノ
稅ヲ出スノハ國稅デアッテモ、府縣稅デアッ
テモ、地租デアッテモ、營業稅デアッテモ、
雜種稅、戶數割デモ、兎ニ角其種目ハ違ヒ其
稅種ハ違ヒマシテモ、同ジ「ポケット」カラ出
シテ行カナケレバナラヌノデアリマス、ソ
レデアリマスルカラ私ハ內閣諸公ニ望ムノ
デアリマス、是等ノ實ヲ能ク御考ヘ下サレ
テ國民ノ負擔ノ輕減ト云フコトヲ徹底的
ニ御實行下サルヤウニ、深甚ノ御心配ヲ頂
キタイト思フノデアリマス、尙ホ私ハ此場
合ニ貴族院ノ態度ニ付テ申述ベテ置キタイ
ト思ヒマス、私ハ豫算其他金錢法案等ニ關
スル議案ニ付キマシテハ衆議院ノ議決ヲ
重ンジテ居ルノデアリマス故ニ出來ルダ
ケ衆議院ニ於テ可決セラレタコトニ對シテ
ハ其可決ヲ重ンジ貴族院ニ於テ成ルベク
手ヲ入レヌヤウニ致シタイト云フノガ我ミ
ノ常ニ唱ヘテ居ル趣旨ナノデアリマス、然
ルニ此度地租法案ニ對シテ我ミハ修正セネ
バナラヌト云フ立場ニ至リマシタコトハ私
ハ實ニ遺憾ニ思フノデアリマス、併シ私ガ
衷心ヨリ考ヘテ居リマスル所ハ、ドウ致シ
マシテモ只今申シマスガ如キ增稅ニナルベ
キ所ダケヲ止メルト云フコトハ是ハ恐ラク
私ハ適當ノコトデハナイカト思フノデアリ
いく、而シテ其趣旨ガ能ク徹底セラレタナ
ラバ賢明ナル衆議院諸君ニ於テモ必ズ其意
ヲ諒セラレルコトニ相成ルコトデアラウト
思フノデアリマス、是ハ國民全體ノ考ト致
シマシテモ左樣ニ爲スコトガ適當ト云フコ
トハ信ジテ疑ハナイノデアリマス、此度ノ
〓究會案ノ如ク都市ノ負擔ヲ地方ニ轉嫁ス
ルト云フヤウナコトデハナイノデアリマ
ス、是ハ一面ニ於キマシテハ我ミノ誠心誠
意ノ態度、一面ニ於キマシテハ貴衆兩院共
同シテ國家國民ノ利益ヲ圖ラントスル所ノ
趣旨ニ外ナラナイノデアリマス、又是ガ或
ル意味ニ於テハ二院制度ノ妙味デアル、是
ガ決シテ貴族院ニ於ケル貴族其他ノ特權階
級ノ利益ノミヲ保護スルモノデナイト云フ
コトハ必ズヤ國民一般ノ御諒承下サルコ
トト思フノデアリマス尙ホ此場合ニ申シ
テ置キタイコトガアルノデアリマス、英吉
利ノ學者ガ嘗テ斯ウ云フコトヲ言ッタ、近視
眼ノ政略的政治家ハ次ノ總選擧ヲ見ル、深
キ慮ヲ持チ國家ノ爲ニ眞ニ憂ヘテ居ル人パ
次ノ時代ヲ見ル、斯ウ云フコトヲ言ッタノデ
アリマスガ、私ハ此言葉ニハ眞理ガアルト
思フ、我ミハ今日ノ事ノミナラズ今後ノ我
ガ國家ノ事ニ付キマシテ心配ヲシテ居ルノ
デアリマス、故ニ單ニ一時ノ利鈍成敗ト云
フヤウナコトニノミ意ヲ致シテ居ルノデハ
ナイノデアリマス、一時或ハ負ケルコトモ
アリマセウ、一時勝ツコトモアリマセウ、
ケレドモ是ハ國家國民全體トシテハ何等ノ
憂フベキコトデハナイ、唯徒ラニ政權ノ維
持政權ノ獲得ヲ目的トシテ居ル所ノ政爭ノ
ミガ國家ノ爲ニナルノデハアリマセヌ、私
ハ國家國民ノ爲ニ圖リマスノナラバ次ノ
時代ノコトヲ考ヘルト云フダケノ、其眞面
目サガナケレバナラヌ、其眞劍サガナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、是ハ何レノ
内閣諸公ニ於テモ此考ヲ持タレネバ相成ラ
ヌノデアリマスガ、特ニ現內閣ノ諸公ニ對
シマシテハ、將來ノ財政計畫、國家ノ現狀
ト云フコトニ付テハ唯一時ノコトノミヲ
考ヘナイデ、ドウゾ深ク深ク先ノコトマデ
モ御考慮ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
而シテ國家ノ現狀ヲ見マスレバ、私ハ憂フ
ベキコトガ實ニ多イト思フノデアリマス、
此意味ニ於キマシテ私ハ此減稅案ノ修正案
ヲ提出スルコトモ、其一端ニ外ナラナイノ
デアリマス、此修正案ヲ提案スルニ當リマ
シテ、事多岐ニ及ビ、又餘計ナコトヲ申シ
マシテ實ニ恐縮ニ堪ヘナイノデアリマスル
ガ、私ノ微忱ノ在ル所ヲ皆樣ニ開陳イタシ
マシテ、此修正案ニ御贊成ヲ希望スル次第
デアリマス
〔松村義一君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=40
-
041・徳川家達
○議長(公爵徳川家遠君) 松村君ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=41
-
042・松村義一
○松村義一君 私ハ簡單ニ提案者ニ質問ガ
アルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=42
-
043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマスカラ其後デ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=43
-
044・松村義一
○松村義一君 其後デ宜シウゴザイマス
〔石渡敏一君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=44
-
045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 石渡敏一君ハド
ウ云フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=45
-
046・石渡敏一
○石渡敏一君 議事進行ニ付キマシテチ
ヨット伺ッテ置キタイコトガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御述ベヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=47
-
048・石渡敏一
○石渡敏一君 水野君外三名カラ提出シマ
シタ此修正案ハ隨分苦心ノ結果デモアリ又
複雜シタ問題デアルト思ヒマス、贊成者ノ
私トシテハ皆サンノ前ニ此案ヲ供ヘテ御考
ヘヲ願ヒタイ、結局ノ贊否ハ別トシマシテ
政府ニモ一應ハ御覽ヲ願ヒタイ、反對ナサ
ル御方ニハ尙更便宜デアラウト云フ所カラ
出シマシタガ、所ガ是ハ我ミノ手遲レモ少
シハアリマセウガ、此案ガ只今ノ所デハ御
覽ノ通リドコノ手ニモ机上ニ見エナイ、持マ
テ御出ノ數モ十カ二十許リシカナイノデア
リマス、ソレデ今部屋へ行ッテ函ヲ探シテ見
テモ無イト云フコトノ報告ヲ得テ居ル、是
ハ少々遺憾デゴザイマス、殊ニ昨日ノ時ニ
ハ函ニ入レズニ此机ノ上ニ修正案ガアッテ
我ミハ拜見シタ斯ウ云フ混雜ノ際、最終
日デモアリ、部屋ニ入ッテ居ル人ナドハサウ
タント無イノデアリマスカラ、机ノ上ニ御
置キ下サルコトガ便宜デアッテ、サウ爲スッ
テ下サッタラ宜カッタラウト今更考ヘテ居
ル、ソレデ斯ウナッテシマヒマスレバドウ
モ仕方ガナイヤウナモノデアリマスガ、讀
ミ上ゲルナリ或ハ函ノ中ニ入ッテ居ルカラ
一遍歸ッテ探シテ來イトデモ御宣告ノアル
コトヲ私ハ切望スルノデアリマス、是ダケ
ヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=48
-
049・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 修正案ハ印刷ガ
出來マシテ本日ノ午後一時十分頃文書函ニ
配付シタ趣キデゴザイマス、ソレ以上議長
ヨリ申上ゲルコトハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=49
-
050・石渡敏一
○石渡敏一君 御言葉ヲ返スノハ甚ダ濟ミ
マセヌガ、只今ト云ッテモ······四時カラ五時
ノ間ニ、花井君ハ部屋ヘ行ッテ見マシタ所ガ
アリマセヌ、サウ云フコトデアリマスカラ、
文書函ニ御入レニナッタト云フコトハ、或ハ
上ノ方デハサウデアッタカモ知レマセヌガ、
實際ハ其通リニナッテ居ナイ、我とハ二時カ
ラ此處ニ居リマスガ、殆ド丸デ其事ヲ知ラ
ヌノデアリマス、此案ノ提出者ニ對シテ甚
ダ氣氣毒心持ヲ致シマスシ反對ナサル
方ノ目ドガナカラウト思ヒマスカラ御尋ネ
致シマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今石渡博士ノ
御希望モゴザイマスカラ一應議場ニ諮リマ
セウ、修正案ヲ朗讀イタサセルト云フ方ニ
同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔起立者少數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 少數ト認メマ
7.1小林嘉平次君ハ質疑ノ通〓ガゴザイ
マシタガ、誰ニ質疑ヲナサルノデアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=52
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053・小林嘉平治
○小林嘉平次君 私ハ議場ノ大勢ニ鑑ミマ
シテ質問ヲ見合セマス、但シ私ハ只今提
案者ノ說明ニ依リマシテ、疑ヲ起シタ點ガ
五六點アルノデアリマス、他日ノ適當ナ機
會ヲ選ビマシテ提案者トユル〓〓ト懇談ヲ
交ヘタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=53
-
054・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 小林君ハ通〓ヲ
撤囘セラレマシタ以上、次ニ發言ヲ許シマ
スノハ松村君ト考ヘマス松村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=54
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055・松村義一
○松村義一君 極ク簡單デゴザイマスカラ
此席カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 松村君ハ政府ニ
對スル質疑デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=56
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057・松村義一
○松村義一君 地租法案ニ對スル修正案ヲ
提出サレタ御方ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=57
-
058・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 修正案提出者ニ
對スル質疑発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=58
-
059・松村義一
○松村義一君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=59
-
060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=60
-
061・松村義一
○松村義一君 先程、水野君ノ修正案ノ御
說明ヲ承ッタノデアリマスガ、其最後ニ於キ
マシテ、政治家ハ遠キ慮ガナケレバナラヌ、
一時ノ成敗利鈍ニ驅ラレテハイケナイ、其
次ノ時代ヲ考ヘタガ宜カラウ、斯ウ云フ言葉
ヲ以テ政府ニ忠〓ヲナスッタノデアリマス、
從テ水野君御自身ハ其修正案ニ付キマシテ
ハ遠キ深キ慮ガアッタノダラウト思フノデ
アリマス、而シテ御說明ノ一番最初ニ於キ
マシテ、現內閣ノ財政計畫ハ如何ニモ不安
デアル、第一ニ歲入ニ於テ其見積ガ過大デ
アル而シテ此歲出ニ於テハ海軍ノ所謂第
二次計畫又新艦ノ維持費···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=61
-
062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 松村君ニ申上ゲ
マスガ、速記者ニ聽エマスヤウニ御注意ヲ
請ヒマス水野博士ニハ十分近ウゴザイマ
スカラ、御聽エニ相成ラウト存ジマスガ、
速記者ガ困ッテ居ル樣子デゴザイマス
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=62
-
063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 登壇ニ及ビマセ
ヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=63
-
064・松村義一
○松村義一君 新艦ノ維持費、其他又救護
費等澤山要スルノデアル、從テ數年後ニ於
テハ、財政上手違ヒヲ生ズル虞ヲ持ッテ居ル
ト云フ話デアリマス、而シテ此修正案ニ依
リマスレバ政府ノ減稅計畫二千五百万圓
ニ加フルニ、更ニ五百數十万圓ノ減稅ヲナサ
ウトスルノデゴザイマス、一方ニ於テハ財
政計畫ハ極メテ不安デアル數年後ニハ其
行詰リヲ生ズル虞ガアルト言ハレルニ對シ
マシテ二千五百万圓ニ加フルニ更ニ五百
万圓程ノ減稅ヲセヨト言ハレマスコトハ
ソレ自身大ナル矛盾ガアルヤウニ考ヘルノ
デゴザイマス、併ナガラ水野君ノ五百數十
万圓ニ對スル財源ニ付キマシテハ俸給ノ
一部、賞與ニ充ツベキ俸給ノ一部其他ニ依フ
テ賄ッタラ宜カラウト、斯ウ云フ御話デアル
カラ、ソレハ財源ガアルノダト、斯ウ云フ
御答ガアルカモ存ジマセヌガ、苟モ財政計
畫ハ不安デアル斯ウ言ハレマスナラバ、
先ヅ財政ノ基礎ヲ確立イタシマシテ、然ル
後ニ減稅計畫ヲスルト云フコトニナラナケ
レバナラヌノデアリマス、政府ハ行政財政
ノ整理ヲ計畫シテ居ルノデゴサイマスルカ
ラ此俸給ノ一部ノ如キモノハ、行政財政
ノ整理ノ資ニシテ、能ク、來年、財政ノ基
礎ヲ確立シタル後ニ、更ニ減稅ヲサレルト
云フコトガ適當デハナイカト思フノデゴザ
イマス、財政計畫ガ不安デアルニ拘ラズ、
兎ニ⻆斯ウ云フ餘剩ガアルカラ一時減稅ヲ
セヨト言ハレマスコトハ、如何ニモ國家ニ
對シ不忠實デアリ、國民ニ對シテ不深切デ
アルヤウニ思フ、一時ノ利鈍成敗ニ驅ラレ
テハイカヌ、遠キ慮ガナケレバナラヌト云
フ御話トハ矛盾シテ居ルヤウニ感ズルノデ
アリマス此點ニ對シマシテ私が分リマス
ルヤウニ詳細ニ簡明ニ·······詳細ニ明瞭ニ御
說明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス私ノ
心特ヲ忌憚ナク申上ゲマシタナラバ、此修
正案ナルモノハ明敏ナル水野君ニモ不似合
ナル輕率ナルコトデハナカラウカ、若シ慮
リガアルナラバ國民ニ媚ビル案デハナイカ
ト云フヤウナ感ジスラスル、從ッテソコヲ能
ク分リマスルヤウニ詳細ニ明瞭ニ御說明ヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=64
-
065・水野錬太郎
○水野錬太郞君 松村君ノ御問ニ御答へ致
シマス是ガ果シテ詳細且ツ明瞭ナ答ニナ
ルカドウカハ分リマセヌガ、私ノ信ジテ居
ル點ヲ述ベマス私ハ減稅案ノ修正案ヲ提
出スルニ當フテ言多岐ニ及ビマシタ點ハ甚
ダ恐縮イタシマス、併シ減稅案ニ付キマシ
テ私ハ減稅案ノ本旨ヲ貫クガ爲ニ修正案
ヲ提出イタシマシタ、卽チ增稅トナルト云
フ所ダケハ是ハヤメタラ宜カラウ、サウス
レバ少クトモ現狀維持デアッテ增稅ニハナ
ラサイノデアル是ガ適當デアルト思フノ
デアリマス、唯是ト財源トノ關係ニ付キマ
シテ、松村君ノ御尋ハ誠ニ御尤デアリマス、
ソシ故ニ私ハ此說明ニ於テ斯ウ申シテ居
ル今後ノ財政計畫ヲ見ルト不安ナルモノ
ガアルガ、併シ一面ニ於テ國民ノ負擔ヲ輕
減スルト云フコトハ是亦現時已ムベカラザ
ル情勢ニ在ルノデアル、ソレ故ニ不安ヲ懷
キツツ此滅稅案ニ贊成スルノデアル、ソレ
デアリマスルカラ不安ヲ懷クナラバドコ
迄モ其不安ヲ除イテ、財政計畫ノ確立ヲ待。ラ
テ滅稅案ニ贊成スルナラバ贊成シタラ宜カ
ラウト云フヤウナ御意味デスネ、私ハサウ
聽キマシタ、私ハ其點ハ成程御尤ト思フ、
併シワレハ今日ハ私ハ一日モ早ク又少シデ
モ滅稅スルコトガ宜イト思フノデアリマス
カラ財政計畫ニ於テ不安ヲ認メツツ之ヲ
贊成スル而シテ財政計畫ニ付テハ何レ政
府ニ於テモ昭和六年度ニ於テ豫算モ取ッテ
居ルノデアルカラ、財政行政稅制ノ整理ヲ
考慮スルト云フコトデアルカラ、サウ云フ
コトニ付テハ考慮セラルルデアラウ、又考
慮シテ戴キタイト云フ考デアルノデアリマ
ス、ソレデスカラ此際ハ財政上ノ不安ハア
ルケレドモ、六百万圓ノ增稅ヲヤメルト云
フコトハ其根本ノ財政計畫ニ涉ラナイデ
モ兎ニ角其財源ガ賞與ト云フモノカラ見
出シ得ラレルノデアルカラ、其點ニ付テハ
增稅ヲヤメルコトガ適當デアルト云フ趣旨
ニ外ナラヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=65
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066・松村義一
○松村義一君 只今詳細ニ御說明ヲ得マシ
タ併シナガラ遺憾ナガラ私ニハ不明瞭デ
アリマシタガ、是以上質問ヲスルコトハ皆樣
ノ御迷惑ニナルト思ヒマスカラ、私ハ不滿
足ナガラ質問ヲ是キリ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=66
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067・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 此修正案ニ對スル反
對演說ヲ致シマス前ニ私ハ數字上ノコト
ニ付キマシテ二三、大藏當局ニ此席ヨリ
質問ヲ致シタイト存ジマス、宜シウゴザイ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=67
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068・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス、成ベク御大聲ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=68
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069・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 宜シウゴザイマス、
私ハ一一ツノ點ニ付キマシテ大藏當局ニ御質
問イタシタイ、此點ハ數字ノコトデゴザイ
マスカラ大臣タルコトヲ要シナイ、ドナタ
デモ宜シウゴザイマス、其第一點ハ此案ハ
增稅案デアルト云フコトガ先程カラ度ミ論
議サレテ居ル、併シ私ノ信ズル所ニ依リマ
スレバ、本案ニ依リマシテ、宅地ノ地租、
是ハ附加稅トモ加ヘマシテ、地方ニ於キマ
シテ、其最高限ヲ出シマシタ所デモ、其增
加額ハ約二千九百万圓デアル而シテ田稅
ノ減、是ハ三千九百万圓デアル差引一千
餘万圓ノ減收ヲ來スノデアル、此地租ノ改
正ニ依ッテ一千万圓ノ減稅ヲ來スモノデア
ルトモ存ジマスルガ、此點ハ左樣ニ心得テ
宜シイカ是ガ私ノ伺フ所ノ第一點デアリ
Vマ、次ニ第二點ニ付キマシテハ只今ノ
水野博士ノ御提案ニ依リマス所ノ案、減
稅ノ所ハ總テ止メルト云フ御話デゴザイマ
ス······間違ヒマシタ、增稅ハ總テ避ケル
都會ニ於ケル增稅ハ總テ避ケタイト云フ御
考ダト承知シテ居リマスルガ、私ノ調査ス
ル所ニ依リマスルト、東京市ニ於キマシテ
ハ現行ノ地租額ハ二百二十八万餘圓、然ル
ニ水野博士ノ御案ニ依レバ是ガ增シマシ
テ、三百四十四万二千圓、卽チ一千百五十
九万······違ヒマシタ、百十五万九千餘圓ノ
增加、步合ニ致シマシテ五割八厘ノ增加ト
ナル、大阪市ニ於キマシテハ現行地租額ハ
百六十八万餘圓デアリマシテ、水野博士ノ御
提案ニ依リマスレバ、是ガ增加イタシマシ
テ二百六十八万餘圓トナル差引キ百万一
千圓ノ增、卽チ步合ニ致シマシテ五割九分
四厘ノ增加トナル、斯樣ニ私ハ計算ヲ致シ
マシタガ、是ハ大藏當局ニ於テ明確ニシテ
下サイマセウカ、此事ヲ先ヅ以テ意見ヲ述
ベマスル先キニ當リマシテ、前提トシテ御
伺ヲ致シマス
〔政府委員靑木得三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=69
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070・青木得三
○政府委員(靑木得三君) 只今ノ御質問ニ
御答ヲ致シマス地租ノ國稅ト附加稅ヲ通
ジマシテ宅地ニ於キマシテハ約二千九百万
圓ノ增加デアリマス、此二千九百万圓ノ增
加ハ七年後ニ至リマシテ初メテ其數字ヲ現
ハスノデアリマスガ、兎モ角モ二千九百万
圓ノ增加デアリマス、田畑ニ付キマシテハ
國稅附加稅ヲ通ジマシテ七年後ニ於テ三千
九百万圓ノ減稅ト相成リマス、ソレ故ニ只
今大河內子爵ノ御尋ニナリマシタヤウニ其
間千万圓ノ······約千万圓ノ減稅デゴザイマ
ス、是ハ國稅ニ於テハ千万圓ノ減稅ヲ致シ
マシテ、地租ノ附加稅ハ其總額ヲ動カサナ
イト云フ主義ヲ取ッテ居リマス當然ノ結果
デゴザイマス、質問ノ第二點ニ付テ御答ヲ
致シマス、此度ノ修正案ハ宅地租ノ總額ヲ日
本全國ニ付テハ動カサナイト云フ御趣旨デ
御提案ニナッテ居ルモノト存ジマス、從テ稅
率ヲ百分ノ三·一ニ致シマスレバ、宅地租ノ
總額ハ日本全國ニ付テ何等變化ハナイノデ
ゴザイマス、併ナガラ地租ノ課稅標準ヲ現
在ノ地價ヨリ賃貸價格ニ改メマスル結果
ハ日本全國ニ於キマシテ宅地租ノ總額ニ
變リガアリマセヌデモ、東京市、大阪市等
ノ賃貸價格ガ地價ニ對シマシテ大イニ增加
スル市ニ於キマシテハ矢張リ宅地租ノ增
ニナルコトヲ免レナイノデアリマシテ、其
數字ハ只今大河內子爵ノ御述ベニナリマシ
タ通リデアリマス、併ナガラ之ニ致シマシ
テモ政府原案ト比較イタシマスト政府原
案ニ於キマシテハ東京市ニ於ケル宅地租ノ
增加ハ百八十万圓デアリマスノガ、修正案
ニ依リマスルト百十五万圓ニ相成ルノデゴ
ザイマス、大阪市ニ於マキシテハ政府原案
ニ依リマスレバ宅地租ノ增ハ百五十万圓
デアリマスノガ、修正案ニ依リマスレバ只
今御質問ノ通リ百万圓ト相成ル次第デゴザ
イマス
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=70
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071・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 內務行政ニ於テ赫々
タル功績ヲ立テラレ、國家ノ重臣トシテ朝
野ノ衆望ヲ受ケラレル所ノ水野博士ガ今日
此都會ノ中小商工業者ノ困憊ノ狀態ニ同情
ヲ表セラレマシテ、玆ニ都會ノ增稅ヲ幾
分、都會ノ地主ノ增稅ヲ幾分ナリトモ緩
和シテヤラウト云フ所ノ誠意カラ此修正案
ヲ提出セラレマシタルコトハ私共深ク敬意
ヲ表スル次第デゴザイマス、只今水野博士
モ御述ベニナリマシタ通リ、希望決議ヲ出
シタモノハ之ニ贊成ヲスル義務ガアルト云
フ御話デゴザイマシタガ、私ハ遺憾ナガラ
此修正案ニ贊成ハ出來マセヌノデゴザイマ
スガ其趣旨ニ付キマシテハ全然御同感デ
ゴザイマス、併シ我〓共ハ決シテ農村ニ對
シテドウデモ宜イト申ス譯デハゴザイマセ
ヌ御承知ノ通り我〓ノ同志ニ於キマシテ
ハ農村ニ人ヲ派シテ其狀態ヲ見ヽ救護法ノ
促進ニ付キマシテハ十分ニ努力ヲ致シ、叉
アレダケ損ヲシテ居ル所ノ米穀會計ニ對シ
テハ一億五千万圓モ損ヲシテ居ルノニ尙
ホ八千万圓モソレニ注ギ込ンデ、サウシテ
農村ノ疲弊ヲ助ケヤウト云フヤウナコトマ
テモ協賛ヲシ更ニ農村ノ決議案ヲ出シテ
政府ノ後援ヲスル斯クマデニ我々ハ農村
ニ對シ多大ノ同情ヲ有,テ居リマスルガ、都
會ノ申小商工業者ニ對シマシテモ、是亦之
ニ劣ラザル所ノ同情ヲ有ッテ居ルノデゴザ
イマスル、御承知ノ通り日本ハ世界ノ不景
氣ノ影響ヲ受ケマシテ、是ハ何人ノ責任デ
アルトカ云フコトハ曹ラク此所デハ論ジマ
セヌガ、兎ニ角中小商工業者ガ非常ナ氣ノ
毒ナ狀態ニアル何トカ之ヲ致サナケレバ
ナラスト云フコトデ、昨年ニ於キマシテハ
建議案ヲ提出シ、更ニ議會閉會中ニ於キマ
シテハ會員ヲ····是ハ會派ノコトヲ申シテ
甚ダ如何デゴザイマスガ.同僚相申合ヒマ
シテ其道ニ堪能ナ御方ヲ各地ニ行ノテ戴イ
テ中小商工業者ノ狀態ニ對シテ詳細ニ調査
ヲ致シマシタ、其結果ガ此度ノ中小商工業
ノ決議案トナッテ現ハレ、政府ニ對シ產業ノ
統制其他中小商工業ノ合理化ニ付テ政府ノ
努力ヲ促シク次第デゴザイマスル、斯樣ニ
我ミハ農村ニ對シテ同情ヲ有スルト共ニ、
又都會ノ中小商工業ニ對シテモ甚大ナル同
情ヲ有ノヲ居ルモノデゴザイマスル、人或ハ
此度ノ原案ヲ稱シマシテ、是ハ都會ノ一部
ノ富裕ナル地主ノ負擔ヲ增加シテ、サウシ
テ農村ノ負擔ヲ輕減スルモノデアル、之ニ
反對スルモノハ是ハ都會ノ一地主階級ニ私
スルモノデアルト曲論セラルル御方モゴザ
イマスルガ、此點ニ於キマシテハ私ハ大橋君
ノ御說ト全然趣旨ヲ同ジフスルモノデゴザ
イマシテ、此案ヲ以テ「ブル」階級ノ負擔ヲ
增加シテ「プロ」ノ負擔ヲ減少スルト云フヤ
ウナコトハ少シ言ヒ過ギテハ居リマスマイ
カ、都會ノ地租ハ高稅ニナリマシテモ、是
ハ域程地主ノ負擔ニハナリマセウ、地主ノ
負擔ニハナリマセウガ、結局景氣ガ好タナ
ルト同時ニ、漸次中小商工業者ニ幾ラ····其
幾分ナリトモ轉嫁サルルト云フコトハ是ハ
租稅ノ性質上免レ難イコトカト存ジマス
ル此點ハ我ミモ覺梧イタサヌケレバナラ
ヌコトト仔ジマス、唯目下ノヤウニ不景氣
ノヤウナ狀況ニ於キマシテハ、是ガ直ニ轉
嫁サルルト云フコトハ是ハ到底覺束ナイコ
トト存ジマスル、併シ此根本ノ趣旨ハ先輩
水野博士竝ニ實業界ニ深イ經驗ヲ有ッテ居
ラルル大橋君ト大同小異ノ考デゴザイマス
ルガ、遺憾ナガラ此水野博士ノ修正案ニ對
シテハ私ハ同意ヲ表スルコトガ出來ナイ
誠ニ是ハ殘念ナコトデゴザイマスルガ、此
理由ヲ簡單ニ申述ベタイト存ジマス、第二
ノ理由ハ此修正案ニ依リマシテハ稅率ノ均
衡ヲ破ルト云フコトデアル、政府ハ地價ヲ
以テ賃貸價格ニ改メルト云フ多年ノ問題ヲ
大正十五年ニ解決シ、然ル後ニ非常ナ手數
ヲカケテ賃貸價格ヲ調查サレク是ハ誠ニ
時宜ヲ得タモノデアリマシテ、其爲ニ多年
ノ地租ノ不公平ガ之ニ依ッテ匡正サレ而
シテ之ニ依ッテ行ハレタトコロノ賃貸價格
ハ大體ニ於テ先ヅ公平ナモノデアルト一般
カラ認メラレテ居リマス、是ガ不公平デア
ルト云フコトハ餘リ此度モ論議ハ聞カヌヤ
ウデゴザイマス、サウシテソレヲ基トシテ
均一ノ稅率ヲカケラレテ居リマスカラシ
テ、ソレハ國稅ニ於テモ地方稅ニ於テモ、
又何等異論ハナイ所ト存ジマス、併シ之ヲ
只今水野博士ノ言ハルルヤウニ、都會ノ率
ダケハ下ゲルト云フコトニナリマスルト、
賃貸價格ハ公平デアッテモ、稅率ハ全ク均衡
ヲ得ナイ、所謂負擔ノ公平ヲ缺クト云フコ
トハ免レナイコトカト存ジマス更ニ水野
博士ハ都會ノ方ハ之ニ依ッテ增稅ハ防ギタ
イ負擔ノ增加ハ防ギタイト云フコトヲ只
今御遠ベニナリマシタガ、私ガ只今大藏省
ノ政府委員ニ御確カメヲスル所ニ依リマス
ルト、東京市ニ於キマシテハ、水野博士ノ
案ニ依リマシテハ三百餘万圓ノ······間違ヒ
マシタ百十五万圓ノ負擔增加トナリ大阪
市ニ於キマシテハ百万圓ノ增加トナル、矢
張リ是ハ唯市ダケ取リマシテモ水野博士ノ
目的ハ達セラレナイ、況ンヤ之ヲ個人ノ場
合ニ於テ見テミマシタナラバ、負擔增加ヲ
來クスコトハ矢張リ原案ト相去ルコト遠ク
ナカラウト存ジマス、尙ホ本案、此原案ハ
政府提出ノ原案ハ之ニ依っテ從來ノ負擔ノ
不公平ヲ極正スルモノデアル、是ハ申上ゲ
ルマデモナイコトデ、申上ゲルマデモナイ
コトデゴザイマスガ、說明ノ順序上一應申
上ゲマスルガ、從來地價ノ時代ニ於キマシ
テ、明治初年ニ地價ヲ定メラレタ場合ニ其
稅率ガ田煩ニ於テハ二·五デアッタ、サウシテ
宅地ニ於テモ矢張リ二·五デアッタ、所ガ最
近ノ此只今ハドウデアルカ、只今ハドウデ
アルカト云フト、田烟ニ於テハソレガ四·五
ニ上ガリ宅地ニ於テハ色ミ課稅標準ノ改
正ナドガゴザイマスカラ、サウ云フモノヲ
總テ考ヘテ計算イタシマシテ十一ニナッテ
居ル、サウ致シマスルト云フト、田畑ノ上
ガリ方ハ倍ハ上ガッテ居ラナイ、僅カマア
二·五ガ四·五ニナリマシテ、ソレデ宅地ノ
方ノ上ガリ方ハ丁度三倍······サウヂヤナ
イ、四倍少シ强ニナリマス、併シ數ハ大キ
ウゴザイマスガ、實際ノ實〓カラ都會ノ土
地ガ田舍ノ土地ニ比シマシテ二倍少シノ上
ガリデ濟ム、片ッ方ガ四·五デ、片ッ方ガ十一
デアレバ、到底是ハ均衡ヲ得ナイ、都會ノ
人ミハ今マデ不當··ト申シテハオカシイ
ノデゴザイマスガ、割合ニ低イ負擔ヲ受ケ
テ居ッタト云フコトハ、是ハ免レヌコトグラ
ウト存ジマス、尙ホ是ハ先程モ申シマシタ
ガ、決シテ此負擔ハ、都會ノ土地ノ地租ヲ
增スコトハ「ブル」階級ノ利益ヲ押ヘルト
云フモノデハナイト云フコトハ先程モ申述
ベマシタガ、試ミニ一人當リノ地價ヲ調べ
テ見マスルト云フト、市部ニ於テハ六百餘
圓、郡部ニ於テハ百六十圓、市部ノ方ガ遙
カニ擔稅力ガアルト云フコトハ、此一例ヲ
以テモ分ラウト存ジマス、尙ホソレヲ此度
直シマシタ賃貸價格ニ依リマスルト、一八
當リ市部ハ六百九十五圓、郡部ハ百三十圓
トナリマス、是デ如何ナル方面カラ見マシ
テモ、市部ノ方ガ郡部ニ比シマシテ、市部
ノ地主ノ方ガ遙ニ擔稅力ガ多イノデアリマ
ス、此比較的擔稅力ノ輕イ所ノ人ミニ對シ
テ之ヲ重クシ、比較的重イ人ニ對シテ之ヲ
輕クスルト云フコトハゞ是ハ財政當局トシ
テ執ラルル所ノ當然ノ措置ト考ヘマスヽ若
シ水野博士ノ御立案ニ依レバ、折角アレ程
均衡ヲ得タ所ノ案モ到底之ヲ實行シテ均衡
ヲ得セシムルコトガ出來ナイ結果ニ相成ル
ノデアリマス、尙ホ第三トシテ申上ゲタイ
コトハ、豫算ノ關係デゴザイマスガ、是ハ
只今松村君カラ御質問ノ中ニ御指摘ニナ
リ略、皆樣ニ於テモ御了解ノコトトハ存
ジマスルガ、尙ホ私カラモ說明ノ順序トシ
テ一應申上ゲナケレバナラナイノデゴザイ
マく、都會ノ地租ノ增加ヲ抑制スルコトニ
依リマシテ、國家ノ收入ニ缺陷ヲ生ズル
ト云フコトハ、是ハ當然ノコトデゴザイ
やく、併シ今日此財政窮乏ノ際、サウ云
フコトガ果ツテ出來ルモノカ、〓計表
ヲ御覽ニナリマスルト御分リニナッテ居
ル通リ、剩餘金ト云フモノハ殆ド無イ、
有ッテモ皆用途既定ノモノデ、是等ハ減サ
ウト思ッテモ滅スコトハ出來ナイ、只今
水野博士ハ賞與ヲ止メタラ宜カラウト云フ
ヤウナコトデゴザイマシタガ、是ハ主義政
策トシテハ兎ニ角、今日輕率······ト申シテ
ハナンデスガ突如トシテ斯カル問題ヲ持
出スコトハ私ハ贊成ハ出來ナイ、行政財
政整理ノ結果己ムヲ得ズシテ事茲ニ至タ
ナラバ是ハ已ムヲ得マセヌガ、今日唯大
藏省カラ賞與ノ調ベヲ貰ッテ、唯一割ダケ減
シテ、ソレデ金ガ出ルノデアルト云フヤウ
ニ、唯此問題ダケヲ捉マヘテ一時ニ決メル
ト云フコトハ餘リニ是ハ其場限リノ主義
デアル、勤勉忠實ナ官吏ハ我〓ノ爲ニ日夜
働イテ居ル、而モ薄給ニ甘ンジテ働イテ居
ル、之ニ對シテ突如トシテ······大ニ財政行
政ノ整理ヲヤッテ、已ムヲ得ズ茲ニ至ッタノ
ナラ兎ニ角、サウ云フコトデモナシニ、突
如トシテ是等ノ賞與ヲ減スナドト云フコト
ヲ此處デ以テ提議スルト云フコトハ私水
野博士ニ對シテ甚グ失禮ナ申分デハゴザイ
マスガ、私ハ不幸ニシテ同意スルコトガ出
來ナイ、コンナコトハ寧ロ政府ノ財政行政
ノ調査ニ委スベキモノデ、我ミトシテ決シ
テ口ニスベキコトデハナイ、我ミハ幾ラデモ
財政ノ許ス限リ官吏ノ賞與ヲ增加シテ、又
官吏ノ俸給モ增加シテ、其能率ヲ增進シ、
努メテ國家ノ爲ニ働イテ戴キタイト云フノ
ガ、我こノ希望スベキ所ダト、私ハ考ヘル、
是モ財政行政整理ノ結果ナラ已ムヲ得ヌ、
能ク調ベテカラナラバ已ムヲ得マセヌガ、
唯ソレダケノ問題トシテ出サレタナラバ
サウ御答スル外ニ仕方ガナイ、尙ホ先般來
歲入ガ不確實デアルト云フコトガ度ミ御論
議ニナッタ、豫算委員會ニ於キマシテ度ミ御
論議ニナッタ、昨年ノ議會ニ於キマシテ豫
算ノ執行上十分ノ注意ヲセヨト云フ所ノ希
望決議ガ附キ、今度ノ議會ニ於キマシテモ、
矢張リ希望決議ガ附キマシタ此希望決議
ヲ玆ニ讀上ゲテ見マス此、「第五十八議會ニ
於テ昭和五年度豫算ノ審議ニ際シ歲入ノ減收
ニツキ特ニ注意スル所アリタリ、然ルニ今
日提出ノ昭和六年度豫算案ヲ審スルニ同シ
ク歲入ノ見積過大ナル疑ナキ能ハス政府ハ
從來ノ言責ニ顧ミ所期ノ歲入ヲ擧ケンガ爲
苛欽誅求又ハ官林濫伐等ノ弊ニ陷ラサル樣
深甚ノ注意ヲ拂ハルヘシ」卽チドウモ豫算
デ見タ所、歲入デハ何ダカ劍呑デアルヤノ
ナ氣味ガ玆ニ現ハレテ居ル、是ハ寧ロ水野
博士ハ御贊成デアッタカドウカ存ジマセヌ
ガ水野博士ト主義政見ヲ同ジウセラレル
ヤウナ御方ハ皆此案ハ御贊成デアッタヤウ
ニ思フ、寧ロ御提案ニナッタノヂヤアルマイ
カト思フ、イヤ、私モ無論之ニ贊成スル、
私モ無論之ニ資成デゴザイマスガ皆樣御迷
惑デアッタト思フ、假ニサウデアルトスレバ
何ガ故ニ一方ニ斯ウ云フ決議ヲ出シテ、サ
ウシテ一方ニ於テ何トカシロ、如何ニモ御
無理ヂヤナイカ、ドッチカ、私ドモハ歲入ガ
危イト思ヘバソレハ歲出ヲ減セバ宜イ、
併シ賞與ヲ減シテモ宜イト云フコトナレ
バソレハ又其手ニ依ッテヤッテ行ク方法モ
アラウガ、何レカ一ツ歲入ガ多ケレバ歲出
ヲ殖ヤスモ宜シ、歲入ガ危ケレバ歲出ヲ減
スガ宜イ、ソレデ斯ウ云フ風ニ歲入ガ危イ
ト思ハレルノニ······歲入ガ危イト思ハレル
ノニ此歲入ヲ更ニ減スヤウナ案ヲ出サレル
ト云フコトハ、私ハ解スルコトガ出來ナイ、
次ニ伺ヒタイノハ實行豫算ノ問題デアリマ
ス、是ハ私ハ政府ガ協賛ヲ得タ豫算ハ其範圍
內デ使ヘバ宜インダカラ、ソレヲ減シタッテ
差支ヘナイ、サウ云フ意見デアル、併シ或
御方ノ如キハ是ハ憲法違反デアル、憲法違
反ダカラ樞密院ニ御諮詢ニナルヤウナ手續
ヲ取ッタラ宜カラウ、サウ云フコトマデ極論
サレタ御方モアル、ソレニモ拘ラズ此賞與
ヲ減シテシマヘ、初メカラ、マダ議會ノ協
贊ヲ經タバカリノモノニ持ッテ行ッテ、共中
カラソレダケノ金ヲ取レト仰シヤルノハ
如何ニモ私トシテ合點ガ參リマセヌ、實行
豫算······實行豫算ト言っチヤ言葉ガ惡ウゴ
ザイマスガ、議會ノ協贊ヲ經タ豫算ヲ減ジ
テ使フノガ惡ケレバ惡イデソレデ宜シイ、
其通リ實行シナケレバナラヌ、ソレデナケ
レバ憲法違反デアルト言ハレルナラバ、共
憲法違反論デ進マレルガ宜イデセウ、豫算ヲ
減ズコトハイケナイ、併シ賞與ヲ減セ、斯
ウ云フコトハ私ハ到底解スルコトガ出來ナ
イ尙ホ今一點ハ海軍ノ財源ノコトデアリ
マス、海軍ノ所謂、所謂第二次計畫ノ財源
ニ付キマシテハ是ハ第二次計畫ト申シテ
ハ惡イノデゴザイマスガ假リニ私ハ斯ウ
云フ言葉ヲ使ヒマス、所謂第二次計畫ノ財
源ニ付キマシテハ國民ヲ擧ゲテ一同之ヲ
憂慮イタシテ居ル、非常トモ是ガ缺陷ヲ生
ゼシメナイヤウニシタイト云フコトハ衆
議院ノ政友會モ民政黨モ、又此貴族院ノ總
テノ御方モ、又政府當局モ皆之ヲ心配イタ
シテ居ル、現ニ濱口首相モ減稅委員會ニ出
席イタサレマシテ、此點ハ十分ニヤル、必
ズヤル、責任ヲ以テ國防ノ缺陷ヲ生ゼシメ
ルヤウナコトハ斷ジテ致サナイト云フコト
ヲ數囘明言イタサレテ居ル、私ハ此政府當
局ノ明言ニ付テ、全然同意ヲ表スルモノデ
アッテ、他日若シ是ガ此議會ニ現ハレテ來タ
時ハ我ミハ分リマセヌガ專門ノコトデ
ゴザイマスルカラ分リマセヌガ、專門家デ
アル所ノ同僚諸君、專門ノ知識ヲ持。ッテ居ラ
レル同僚諸君ノ指導ニ依テテドウカ此國防
ノ缺陷ヲ生ゼシメナイヤウニ致シタイ、極
力努メタイト云フ決心ヲ持ヲテ居ルノデア
ル、皆樣モソレハ御同意ト思フ、サウシテ
其金ハ〓計表ノ上ニ上ボッテ居ルカト云フ
ト是ハ上ボッテ居ラナイ、〓計表ノ上ニ其
金ガ上ボッテ居ラナイノニ拘ラズ、歲入ヲ減
セト云フコトハ是ハ極メテ財政上危險ナ
計畫ト言ハナケレバナラヌ、確定ノ歲出ニ
對シテハ歲入ヲ以テスル、是ガ當然デアル
ノニ、今ヤ〓計表ニ上ポラナイ歲出ガアル
ノニ拘ラズ、一方ニ歲入ノ減ヲ圖ルト云フ
コトハ、財政ノ實行ヲシテ不可能ナラシメ、
勿論國防ノ必要トアレバ如何ナル方法ヲ以
テモヤリマセウケレドモ、斯カル重大ナル
責務ヲ、重大ナル責任ヲ我ミガ背負ッテ居ル
以上、斯ウ云フ其必要以上ニ稅ヲ減ズルト
云フヤウナコトハ最モ愼シマナケレバナラ
ヌコトダト存ジマス、尙ホ海軍以外ノ其他
ノ財源、恩給デアルトカ、或ハ幾多ノ社會
政策デアルトカ爲スベキ事業ハ多イデゴ
ザイマセウ、是ハ海軍程重大ナモノデモゴ
ザイマスマイガ、之ニ對スル財源ト雖モ亦
我〓ハ用意ヲ致シテ居ラナケレバナラヌ、
例ヘバ先日御建議ニナリマシタ學術〓究ノ
如キ、或ハ農村振興ノ如キ、或ハ中商工業
ノ振興ノ如キ、之ニ對シテ皆相當ニ金ハ要
ル是等ノモノ迄モ背負ハシテ置イテ、
方ニ歲入ヲ減ズルト云フノハ殆ド是ハ私ト
シテハ解スルコトガ出來ナイ、ソレデ併シ
私モ此修正案ヲ反對シ、原案ニ贊成スルニ
付キマシテ、唯無條件ニ之ヲ贊成ヲ致スノ
デハナイノデアリマス、我〓ノ贊成イタシ
マス趣旨ニ付キマシテハ、是ハ水野博士ト
大體ニ於テ相違ハナイ、卽チ我〓ハ先程委
員長ガ御報告ニナリマシタ通リ希望決議ヲ
豫算委員會ニ於テ決議イタシマシテ、尙ホ
其決議ヲ致シマシタ多數ノ同志ノ者ハ皆希
望決議ト同ジ考ヘヲ有ッテ居リ、且ツ政府モ
及ブ限リ此希望決議ヲ實行シヤウト云フコ
トヲ言明セラレタノデゴザイマスル、度ミ
讀ミマスノモウルサイヤウデゴザイマスル
ガ、大體ノ趣旨ヲ申上ゲマスレバ、都會ノ
宅地租ノ增加、ソレハ增加ヲスルコトハ從
來ノ負擔ノ不公平ヲ直ス方法ニハナラウケ
レドモ、今日此不況ノ際ニ當ッテ之ヲ急激ニ
行フコトハ洵ニ遺憾デアル、ソレデ是ハ近
ク開カレル所ノ稅制調査ニ際シテハ篤ト協
議遂ゲテ、昭和七年度以降ニ於テハ宅地租
負擔ノ激增ヲ緩和スルヤウニ相當ノ方法ヲ
取ッテ戴キタイ、斯樣ナ希望ヲ以テ此原案ニ
贊成ヲ致シタ次第デゴザリマス、水野博士
ハ俺ノ希望決議ニ贊成シタ者ハ必ズヤ修正
案ニ贊成ヲスルデアラウト御述べニナリマ
シタガ、修正案ニ贊成ノ出來マセヌ事情ハ
只今申述ベマシタ通リ、併シ水野博士ノ御
述ベニナリマシタコト、其趣旨ニ付キマシ
テハ我〓大ニ共鳴スル所アルト云フコトヲ
以ニ明言イタシマスル、尙ホ先日來我ミト
常ニ論爭ヲ重ネテ居フタ所ノ先輩大橋君ノ
所論ニ對シテモ我ミハ其趣旨ニ於テハ多
大ノ同情ヲ有ノテ居リマス、大橋君ガ多年ノ
經驗ヨリ都會ノ人〓ノ負擔ノ急激ニ增加ス
ルコトハ絕對ニ避ケナケレバナラヌト云フ
所ノ固キ信念カラ熱心ニ御盡力ニナリマシ
タ所ハ、確ニ我ミノ言ハント欲スル所ノ一
牛ヲ見テ居ル唯奈何セン財政上ノ都合或
ハ財政政策ノ上カラ之ヲ我ミガ御容レ申ス
コトガ出來ナカッタコトヲ甚ダ遺憾ト存ズ
ル次第デゴザイマス、以上申上ゲマシタ通
リノ趣意ニ依リマシテ、私ハ農村ニ對シマ
シテハ其前途ヲ祝福シ、都會ノ方ミニ對シ
テハ多大ナル同情ヲ有チ、水野博士ノ御提
案ニ對シテハ深甚ナル同情ヲ拂ヒマシテ、
尙ホ濱口首相ノ言明ニ對シテハ厚キ信賴ヲ
以テ淚ヲ呑ンデ此修正案ニ反對スル者デア
リマス
〔森田福市君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=71
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072・森田福市
○森田福市君 只今問題ニナッテ居リマス
地租法ノ修正案ニ對シテ、贊成ノ意見ヲ簡
單ニ申上ゲテ見タイト思フノデアリマス
時間ガ餘程經チマシタノデ、各位ニ長ク御
迷惑ヲ掛ケルコトハ恐縮ニ思ヒマスルガ故
ニ、出來得ル限リ簡單ニ中上ゲタイト思ヒ
マス、今囘ノ政府提案ノ減稅案、卽チ私ハ之
ヲ滅增稅案ト申シテ居リマス、此案ニ對シ
テ委員ノ一員トシテ十五日間審議ニ當ッテ、
政府ノ御答ニ依ッテ我〓ノ疑問ハ全ク氷解
シタカト云フタラ決シテサウデハナイノデ
アリマス、問ヘバ問フ程分ラナイヤウニナッ
テ來テ、更ニ要領ヲ得ナイヤウニナッテ來
マシタノデ、ソレガ爲ニ質問ヲ打切ッタヤウ
ナ次第デアリマス、今ソコデ我ミハ、先キ
ニ私ノ意見ヲ申上ゲテ置キマスガ、政府今
囘提案ノ減稅ニ對シテハ最初カラ贊成イタ
シテ居ルノデアリマス、減稅ニ對シテハ一
分一厘ノ反對モ致シテ居リマセヌ、減稅ガ
併シ誠ニ僅少ナモノデアリマス、誠ニ僅少
ナモノデアリマスケレドモ、其減稅ニ對シ
テハ兎モ角モ丁度先年義務〓育費ノ國庫負
擔ノ僅少增額ノコトガアリマシタ、ソレト
同ジヤウナ意味ニ於テ私ハ減稅ニ對シテハ
贊成シタノデアリマスガ、增稅ニ對シテハ
遺憾ナガラ贊成ガ出來ナカッタノデアリマ
ス、從ッテ茲ニ、併シ、然ラバドウスルガ
宜シイカ、本案ニ全然反對スルガ宜シイカ
ト云フト、ソレデハ郡部ノ所謂農山村民ノ
方面ニ對シテ、多少タリトモ減稅シヤウト
云フコトヲシテヤルコトガ出來ナイヤウ
ニナルコトハ甚ダ遺憾デアリマス、袋ヲ-
我〓ノ信ジテ居ル、卽チ減稅ニ贊成シ增稅
ニ反對シ、ソレヲ現狀維持ニ止メ置クト云
フノガ卽チ今囘ノ修正案ナノデアリマス、
此意味ニ於テ修正案ニ對スル、詳細ハ水野
サンヨリ先程詳シク御述ベニナリマシタカ
ラ、私ハ極ク簡單ニ感ジテ居ルコトヲ述べ
タイト思ヒマス、今囘ノ賃貸價格ノ調査
ガ完全ニ出來テ居ルト云フコトヲ、午後ノ
會議ヨリ屢、拜聽イタシタノデアリマス、
私ハ今囘ノ賃貸價格ガ、ソレ程完全ニ出來
テ居ルモノデナイト云フコトヲ考ヘテ居ル
ノデアリマス、其理由ハ第一ニ申上ゲマス
ルト各位ニ於テモ多少御了解下サルコト
デアラウト思フノハ、アノ賃貸價格ノ調査
ヲ始メタノハ大正十五年デアリマス、所謂
昭和元年デアリマス、當時若槻内閣ニ於テ
賃貸價格ノ調査費ヲ一千万圓計上シテ、之
ニ依ッテ全國ノ賃貸價格ノ調査ニ著手シタ
ノデアリマス、其當時ニ其賃貸價格ノ調査
中ニ政變ガアリマシテ、若槻内閣ニ代ルニ
田中內閣ガ出來タノデアリマス、此田中內
閣ハ各位ノ御承知ノ通リ、地租及營業收益
稅ハ地方へ委讓スルト云フ所ノ案ヲ本院ニ
モ御出シニナッタ、アレハ握潰シニナッタト
私ハ記憶ヲ致シテ居リマスガ、兎モ角モ其
政友會內閣ノ出シタル其案ニ依ルト營業收
益稅ト地租ハ地方ヘ委讓スルト云フコトニ
ナッテ、直ニソレガ全國ニ宣傳サレマシタガ
故ニ、此賃貸價格ノ調査中デハアッテ、其地
方地方ニ相當ニ紛糾ヲ來シテ居クタノデア
リマス、併シ是ハ今度ノ內閣ハ之ニ依ッテ稅
金ヲ取ルノニアラズシテ、地方ニ委讓サレ
タル結果ハ再ビ此地方ノ者ノ手ニ依フテ完
全ニ調査スルノデアルカラ、決シテ今異論
ヲ言ハズニ之ニ得心ヲシテ置イテ、後日再
ビ地方ニ委譲ニナッタ時ニ、其地方ソ人々ニ
依,テ之ヲ完全ナル調査ヲシテ課稅スルカ
ラ、ソレデ得心ヲセヨト其地方ノ稅務署長
ミカラ我〓モ屢、聽イタコトデアリマス、其稅
務署長直接ニ左樣ナ話ガアッタノデアリマ
ス、從ッテアノ紛糾ヲ來シテ居ッタ所ノ賃貸
價格ノ調査ト云フモノガ忽チニシテ纒ッテ、
報〓ガ本省ヘ現ハレテ居ルト云フコトハ旣
ニ私ガ申上ゲルマデモナク、御承知ノ御方
ガアルデアラウト思フノデアリマス、恰モ
賃貸價格ハ全ク公平無私ニ出來テ居ルカノ
如キ御話ヲ爲サル御方ハ私ハ不審ニ堪ヘ
ヌ、賃貸價格ガ完全ニ出來テ居ナイト云フ
コトニハ、行政訴訟其他ニ依ッテノ抗議ガ、
先般大藏當局ガ發表シタダケデモ數千件ア
ルデハアリマセヌカ、果シテ賃貸價格ガ公
正ニ出來テ居ルモノナラバ決シテ左樣ナ
抗議ガ出テ來ルモノデハアリマセヌ、否行
政訴訟ノ起ルモノデハアリマセヌ、ソレヲ
以テ見テモ賃貸價格ガ當時完全ニ出來テ居
ナカッタガ、忽チ今囘之ニ依ッテ課稅ヲ受ケ
ル國民ハ何ト考ヘルデアリマセウカ、恐ラ
クアノ賃貸價格ノ調査ノ結果ガ今日此三·八
ト云フ地租ヲ賦課サレテ、其納稅〓知書ヲ
受ケタル者ハ何ト考ヘルデアリマセウカ、
如何ニモ自分ノ賃貸價格ヲ高ク見テ居ラル
ルコトニ嘸ゾヤ驚クコトデアラウト私ハ考
ヘルノデアリマス、一體斯カル調査結了ノ
後ニハ單ナル市町村ノ〓示ニ止メズ、其納
稅者ノ所謂營業收益稅トカ所得稅ノ如ク、
其告知書ヲ納稅義務者ニ送ッテヤッテ、オ前
ノ賃貸價格ハ斯ク斯ク云ミニ決ッタ、異議ガ
アルナラバ向フ二十日間ニ之ガ手續ヲ取レ
ト云フ親切位ハ、私ハナクテハナラヌモノ
デアルト信ジテ居ルノデアリマス又賃貸
價格ニ依ッテ課稅スルノガ公平デアルト云
フ議論ガ屢、出タノデアリマスガ、私ハ決
シテ是亦公平ニ行ハレヌ、何故公平ニ行ハ
レヌカト云フト、政府ハ自カラ公平ニ行ハ
レテ居ラヌヤウナ結果ニナッテ居ルデハア
リマセヌカ、卽チ賃貸價格ノ百倍ニナッタモ
ノモ澤山アリマス、然ルニ政府案ニ依ルト
三倍八割デ止メテアル、其結果ハドウデア
ルカト云フト、實際ニ三倍八割程度上ッテ居
ル所ハ三倍八割ノ增稅ヲ受ケ、一方ニ八倍
以上上ボッテ居ルトシテ、依然トシテ三倍八
割ノ課稅ヲ受ケルノデアリマスガ、是デ公
平-デアリマセウカ、負擔ノ均衡ヲ保ツモノ
デアリマセウカ、先程ヨリ我ミノ先輩、所
謂偉イ御方ミガ此壇上ニ立ッテ、如何ニモ公
正ナ案デアルカノ如ク仰シヤッタノヲ私ハ
承ッテ、頭ノ置キ所ガ違ヘバ已ムヲ得ヌモノ
デアルト私ハ考ヘル、公正トカ負擔ノ均衡
ヲ保ツトカ云フヤウナコトハ、決シテ斯樣
ナコトヲ申スノデハアリマセヌ、三倍八割
ニ賃貸價格ノ上ボッテ居ルモノハ其儘課稅
ヲ受ケ、百割二百割ニ上ボッテ居ル賃貸價格
ノ持主ハ三倍八割デ止メラレルコトガ、果
シテ負擔ノ均衡ヲ保ツモノデアリマセウ
カ、我ミハ地方ニ在ッテ其賃貸價格ノ調査狀
況竝ニ調査ノ結果ハ詳シク知ッテ居ル者デ
アリマス、或ハ寧ロ大藏省ノ御役人サンヨ
リモ其點ハ詳シイカモ分ラヌ點ガアル、併
シ靑木主稅局長ハ中ミ能ク通曉サレテ居リ
マスカラ、私ハ敬意ヲ表シテ置キマス、十
五日間ノ質問應答ニ於テ中ミ能ク御說明下
サッタノデアリマス、ダガドウモ其說明タル
ヤ苛歛誅求ニ重キヲ置カレタ御答デアッタ
ガ爲ニ、本員ガ滿足シ得ナカッタト云フコト
ハ、甚ダ遺憾ニ思ッテ居ルノデアリマス、又
今囘ノ地租法ノ改正ニ依テ、地方ノハ誠ニ
小サイ問題デアルカノ如ク各位ニハ思ハレ
ルカモ知レマセヌガ「メートル」法ナドヲ
改メタル結果トシテ、田地、田畑、宅地ノ
賣買ニ一層不便ヲ生ジテ來ルノデアリマ
ス面モ國及ビ府縣竝ニ市町村ノ土地臺帳
ノ作成、測量ヲ新タニスル等、是亦莫大ノ
經費ヲ要スルノデアリマス、此國民負擔ノ
增加ノミヲ受ケテ收入ノ減ジチ居ル今日
此又負擔ヲ新タニ受ケナケレバナラヌ地方
民コソ眞ニ可哀相ナモノデアルト私ハ考ヘ
ルノデアリマス又此地租法ノ·····尤モ大
藏大臣ハ地租法ハ改正デアッテ減稅デハナ
イト言ヲテ居ラレル、或ハサウ云フ読辯ヲ弄
サレルコトモ一ツノ手段デハアリマス、ソレ
ナラバデス、倫敦條約ニ依テ以テ滅稅スル
ト同時ニ、地租法ヲ改正シテ地租ノ增減ヲ
行フト何故仰シヤラナイノデアリマセウカ
論敦鋒約ヲシタ結果ニ依ッテ、國民ノ負擔ヲ
滅ジテヤルト仰シヤリナガラ、事實ニ於テハ
其三分ノ一以上ノ國民ハ負擔ノ增加ヲ受ケ
ルコトニナルノデアリマス、是ハ取モ直サ
ズ私ハ委員會ニ於テモ屢〓申上ゲマシタノ
デアリマスガ、國民ノ負擔ノ增減ト云フコ
トヨリ、ソレヨリモ今日モ私ハ切ニ感ズ
ル政府黨ノ機關新聞デアッタト心得マス
ルガ今囘ノ減稅ガ若シ貴族院ヲ通過スル
デアラウ、否通過スルコトハ確實デアル
其結果ハ一億四五千万圓ノ減稅ニナルノデ
アル是ハ私ハ有名ナ新聞デアリマスカラ
間違ヒハアリマセヌ、世間ノ人ハ信ジマセ
ウ、是ハ民政黨ノ諸君ガ地方ニ遊說サレ
ル、來ル府縣會議員ノ選擧ノ時ニ既ニ左樣ニ
言フ積リデアルコトガ、此議會中ニ暴露シ
タト言フテモ私ハ差支ナイ、必ズ地方ニ遊
說ナサル時ニハ十倍ニモ一一十倍ニモ誇大ニ
吹聽ナサル本ヲ作ル爲ニ御努力ニナッテ、會
期マデ延長シテ、此國民ノ負擔ヲ輕クシテ
ヤルト稱シテ、實ハ增稅ヲ課セラレル結果
ニナルノデアリマス、一體內閣ハ何事デモ
選擧第一主義、安達サンハ選擧ノ神樣デア
ルト世間ノ人ノ言フ所ヲ眞ニ受ケラ
レテ、サウシテ何デモカンデモ選擧ノ
結果サヘ良ケレバ宜イト云フヤウニ御
考ヘニナッテ居ルコトガ、既ニ御間違
デナイカト否黨ノ爲ニハ御間違デ
ハアリマセヌ、政黨ノ爲ニハサウナタ
テハイケナイケレドモガ政黨其モノヨリ
モ國家自體ノ爲ニ御考ヲ願ヒタイ、私ハ斯
樣ニ思フノデアリマス、今囘ノ政府ノ提案
ニ依ッテ見テモ、何レノ案ガ眞ニ國家ノ爲
ニナル案デアッタデセウカ、小作法ト云ヒ
勞働組合法案ト云ヒ、或ハ婦人公民權案ト
云ヒ、今又此減稅案、何一ツトシテ國家國
民ノ爲ニナル案ガアリマスカ、是レ皆何レ
そ、婦人公民權案ノ如キ、或ハ勞働組合法
案ノ如キ、眞ニ內務大臣ガ通ス意思ガアル
ナラバ、何故ニ早ク本院ニ御送リニナラナ
イノデアリマセウカ何故ニ早ク帝國議會
ニ御提案ニナラナカッタデアリマセウカ、選
擧ノ時ニ當ッテ政府ハ如何ニモ自分等ガ主
張シタカノ如ク政談演說ヲ與黨ノ者ヲシテ
爲サシムル便宜ノ爲ニ、目的ノ爲ニ要スル
手段トシテ御用ヰニナッタノデアリマス
〔「簡單」ト呼フ者アリ〕
簡單ナドト仰シヤルト却ッテ長クナリマ
ス、私ハ斯樣ナコトハ成ルベク簡單ニヤリタ
イト思ッテ居ルガ、御希望トアラバ今夜十二
時マデモヤッテ宜シイ、御耳ガ痛イデセウ
ガ暫ク御辛抱ヲ願ヒマス、所謂今囘ノ減
稅案ト稱スルモノハ先程ノ小林君ハ營業
收益稅ニ於テ四千五百万圓云々ト仰シヤッ
タ、速記錄ヲ御覽ニナレバ明カニナッテ居
リマスガ、總額二千五百万圓ノ平年度ニ於
ケル中央ノ減稅ガ、營業收益稅ニ於テ四千
五百万圓減稅ナサレルコトハ、私ハエライ御
方デアルト感心ヲ致シタノデアリマス、左
樣ニ宣傳ヲ爲サルノデアリマスケレドモ
ガ、實際ハ決シテ左樣ナモノデハナイト云
フコトハ、是ハ私ハ此席ニ於テ反駁セズト
モ御承知ノ通リデアリマス、又營業收益稅
ノ方面ニ於テ僅少ノ減稅ヲナサッタ、是ハ減
稅ニハ間違ヒアリマセヌ、法人ノ如キモノ
ハ千圓ノ納稅ニ對シテ附加稅ヲ加ヘテ一圓
十錢ノ減稅ニナルノデアリマスカラ、增稅
デハアリマセヌ、減稅ニハ相違ナイガ、千
圓ノ納稅ニ對スル一圓十錢デアリマス、併
シソレダケデモ增稅ニナルヨリハ勿論マシ
デアリマス是ハ申ス迄モナイコトデアリ
マス、デアルカラ織物消費稅、銘仙一反ニ對
シ約二錢、砂糖一斤ニ對シテ約二毛、斯ウ
云フ程度ノ減稅デモ、マアシナイヨリハシ
タ方ガマシデアルト言へバ言ヘルノデアリ
マスガ、國民ノ負擔ニ大シタ關係ハアリマ
セヌ、サウ云フヤウナ減稅デアルノデアリ
マーン此點ノコトハ只今私ハ論ジル必要ガ
ナイ、コンナモノハ少クテモシタ方ガ宜イ
ト云フ議論デアルカラ······左樣ニ思フノデ
アリマス、又大藏大臣ハ借地及借家主ニハ
今囘ノ增稅ヲシテモ負擔ハ重クナラナイト
仰ッシヤッタガ、借地法案第十二條、借家法
案ノ第七條ヲ御覽ニナレバ決シテサウデハ
ナイ是ハ矢張リ轉嫁スルノデアルト云フ
コトハ政府ガ自カラノ法律ニ依ッテ御認メ
ニチッテ居ルノデアリマス、又此財源ノ問題
ガ屢〓問問ニナッテ居リマス、財源ハ、我ミガ
第一分科會デ歲入ハ過大ニ見積ヲテ居ルト
云フ注意ヲ促シタコトハ曩ニ大河內子爵
ノ仰ッシヤッタ通リデアリマス、其時ニ政府
ハ決シテ歲入過大ニアラズト强辯ヲナスッ
テ居ラレルノデアリマス、併シ歲入ガ過大
デアッタカナイカハ、昭和五年度ノ決算ヲセ
ラレタラ······最早決算ノ締切日ガ參ヲテ居
ルノデアリマスガ、歲入ガ大變激減アルガ
爲ニ、近日否今日發表ナサル筈デアッタガ、
議會ガ延長ニナッタ爲ニ、明日カ明後日カニ
御發表ニナルデアリマセウガ、是ハ屢〓本
院ナリ衆議院デ論ゼラレタ通リ、赤字ガ出
ルノデアリマス、其赤字ノ補塡策トシテハ
豫テ噂サニ聞イテ居ル通リ震災善後處理法
ニ依リ公債ヲ發行シテ、之ガ穴埋メヲナサル
ト云フコトハ間違ヒナイラシイヤウデアリ
マス、若シ質問ヲ許サレルナラバ、是ハ承タ
テ見タイノデス、デ卽チ此月ノ間ニ、大藏大
臣ノ歲入過大ニ見積ッテ居ラヌト云フコ
トガ直ニ、見積ヲテ居ッタト云フコトガ
明カニナルノデアリマス、又先程私ハ是カ
うつ····先程反對ヲナスッタ修正案ニ對ス
ル······簡單ニヤリマス、一部ノ人ハ簡單ト
仰ッシヤタノデアルカラ、其人ニ對シテハ私
ハ長クヤリタイノダガ、多數ノ人ニ御迷惑
ヲ掛ケルカラ簡單ニ致シマス元ノ······大
河內子爵ハ賃貸價格ニ依ッテ今囘ノ課稅ハ
最モ公平ニナッテ居ルモノヲ、修正案ニ依。フ
テ課稅ヲスルナラバ、此公平ナ武器ノ利用ガ
出來ナイノヂヤナイカト云フヤウナ意味ノ
反對論ガアッタノデアリマス、今日提案イタ
シテ居リマス、卽チ我ミ贊成ヲ致シテ出シ
タ修正案ハ矢張リ賃貸價格ニ課稅ヲスル
ノデアリマス、原案ガ賃貸價格ノ三·八トア
ルノヲ修正イタシテ、二·二ト修正イタスノ
デアリマスカラ、矢張リ賃貸價格ハ生キテ
利用サレルノデアリマス、結果ト致シマシ
テハ矢張リ此修正案ニ依リマシテモ、個人
個人ニ付テ言ヘバ增減ガ出來ルノデアリマ
ス、ケレドモガ地租ノ稅額其モノハ、前ニ取ッ
テ居ラレタ所ノ、所謂六大都市其他ノ都市
ヲ加ヘタ金額ノ約九百万圓ヲ押ヘマシテア
ルノデアリマス、改正法ハ六大都市其他ノ
都市ヲ合セテ一千五百万圓强ニアルノデア
リマス、ソレヲ現在ノ地租額ニ依ッテ······現
在ノ地租額ヲ割ッタ結果ガ三·二ニナッテ居ル
ノデアリマスルカラ、全額ノ地租額ハ今マ
デノ地租類ト何等變リハナイノデアリマ
ス、唯個人々々ニ付テ言ヘバ勿論賃貸價格
ニ課率ヲ加ヘルノデアリマスカラ相違ガ來
シマス、從ッテ大河內子爵ノ申サレマシタヤ
ウニ、賃貸價格ヲ利用セヌカラ不公平デア
ルト云フコトハ其意ヲ得ヌモノデアルト
御承知ガ願ヒタイノデアリマス、又今囘ノ
ハ滅稅ニナルト云フコトヲ屢〓仰シヤッタ
ノデアリマス差引ハ中央稅ニ於テ滅稅ニ
ナルガ、附加稅ヲ加ヘテ行ケバ決シテ減稅
コハナラナイ、寧ロ滅稅ニナル府縣ハ僅カ
ナ少數ニ止マルノデアリマス、殊ニ此山林
ノ如キハ同ジ農民デアルト雖モ山林ハ增
稅ニ相成ヲテ居ルノデアリマス、是ハ全國的
平均ニ山林ハ增稅ニナッテ居ル、卽チ今囘ノ
減稅ト稱スルモノデ、山林ト宅地租トガ增
稅ニナッテ、田畑ト其他ノ雜地租ガ減稅ニ
ナッテ居ルノデアリマス、デアルカラ地租改
正法案必ズシモ全部減稅ニナッテ居ラヌ、郡
部ノ負擔ヲスル山林ノ如キモノガサウナツ
テ居ルノデアリマスカラ、是亦私ハ是ハ都
會ノ人ノ持ツ山モ勿論アリマセウ、ケレド
モガ大部分ハ矢張リ農民ガ持ッテ居ル山ガ
多イヤウデアリマスガ、此山ニ向ッテモ增稅
ヲ加ヘテアルノデアリマス、又大河內子爵
ハ東京、大阪ハ增トナルケレドモ、其他ハ
云々ト仰シヤッタノデアリマスケレドモ、此
增稅ニナルノハ決シテ東京、大阪ノミニ止マ
リマセヌ、東京、神奈川縣、小林君ハ愛知
縣ハ拔イテ御話ニナリマシタガ、愛知縣モ
名古屋ハ大變ナ增稅デアリマス、ソレカラ
京都、大阪、兵庫、山口、斯樣ニ數ヘ來リ
マスレバ決シテ一二府縣ノ差引ノ增デハア
リマセヌ、確カ私ノ記憶スル所デハ十一府
縣ダト心得テ居リマス、又市部ノ地主ガ擔
稅力ガアルカラ差支ナイト、大河內子爵ハ
仰シヤッタノデアリマス、市部ノ地主必ズシ
モ私ハ擔稅力ナシト云フコトヲ簡單ニ申上
ゲテ見タイト思ヒマス、市部ノ大地主、所謂
大變ナ大地主ハ大抵地租ハ納メテ居リマセ
又、サウスルトドウ云フ譯デ納メテ居ラヌ
カト云フト營業ヲシテ居ル人ミノ大地主
ハ營業收益稅ノ中カラ各位ガ御協賛ナ
スック通リ、營業收益稅ノ中カラ市部ニ屬
スル地租額ヲ控除シテ行キマスカラ、大キ
イ地主、大商店ハ地租ハ納メテ居ラヌカラ、
今囘增稅ニナッテモ餘リ甚シキ影響ヲ受ケ
マセヌガ、之ニ反シテ中小、所謂自分ノ住
ンデ居ル住居ノ下位ノ程度ヲ有ッテ居ル其
地租ノ納稅者ハ大變ナ影響ヲ受ケルノデ
アリマス、此人ミガ果シテ擔稅力アリヤ否
ヤ、中小以下ノ商工業者ノ今日ノ收入ヲ
以テシテ、今日ノ利益率ヲ以テシテ、果シ
テ此人ミガ今日擔稅力ガ郡部ノ人ミニ勝ル
デアリマセウカ、勝ラナイカラコソ先般
モ本院ニ於テ中小商工業者ノ振興ニ關スル
決議ヲ滿場一致デ決議ナサッタデハアリマ
セヌカ、之ヲ以テシテモ中小商工業者、所
謂此地租ノ增稅ヲ受ケル程度ノ人ミハ擔稅
力ガナイト云フコトハ明カデアリマセヌ
カ又官吏ノ賞與ヲ一割滅ズルト云フコト
ハ、甚ダ宜クナイト仰シヤル、誠ニ是ハ大
河內子爵ニ對シテ官吏ハ敬意ヲ表スルデア
ラウト私ハ考ヘマス、併シ私等ニ對シテハ
非常ニ官吏ハ嫌フデアリマセウ、併シ今日ノ
賞與ニ付テ私ハ簡單ニ論ジテ見タイ、銀行
トカ會社トカ商店トカノ從業員ハ今日賞與
ハ愚ナコト、月給スラマデ每月ニ貰ヒ受ケ
ナイヤウニ困ッテ居ル會社商店ガ澤山アル
ノデアリマス、國家ノ官吏獨リ減俸ニ與ラ
ズ、賞與ノ減額ニ與ラズト云ウテ是ガ果
シテ國民ノ全ク本旨ニ悖ラナイモノデアリ
マセウカ、又我ニガ斯樣ナ演壇ニ立ツ度ニ、
官吏ノ減俸、官吏ノ賞與減額ヲ論ズルト、
廊下ナドデ出會フト大變御機嫌ガ惡イ、私
ハソレハ承知シテ居ルケレドモガ、此我と
ノ言フコトヲ今日御聽キニナレバ、國民ノ
怨府ノ的トナラズニ濟ムカト考ヘルノデア
リマス殊ニ此地租ノ增額ヲ受ケル六百
一万圓ノ······六大都市其他ノ都市ヲ合シタ
其增額ヲ受ケル所ノ六百一万圓ニ對シテ
官吏ノ賞與ガ六千五百万圓ノ一割弱デアリ
マス一割弱ノ賞與位減シテ今度ノ增減
ヲ見合セタカラトテ、決シテ官吏モ亦不服
ガアルベキモノデハナイ、寧ロ進ンデ自分
ノ方カラ提供ナサッテコソ、官吏ト云フモノ
ノ人格ヲ認メラレルコトガ出來ルノデハア
リマスマイカ、ドウモ國民ハ收入ガ減ジ疲
弊困態ニ陷リ、萎微縮小シテ困ッテ居ッテモ、
自分等ノ給料ト賞與ハ一文モ引クコトハ相
成ラヌト云フヤウナコトヲ仰シヤル人ハ稀
デアラウト私ハ思ヒマス、此意味ニ於テモ
ドウカ此席ニ居ラルル各大臣方ミノ各位ヲ
初メ、其他ノ御偉イ御役人樣ガ先ニ立ッテ、
賞與ノ一割位ハ自ラ減額ヲ申出ラレテコ
ツ、寧ロ私ハ將來ノ大減額ヲ行ハズシテ濟
マス所以デハナイカト考ヘルノデアリマ
ス、此減稅ヲ受ケル國民ノ負擔ノ輕減ヲ
受ケルト思ウテ居タ夕者ガ納稅〓知書ヲ貰ソ
テ初メテ增稅デアッタト知タ時ノ心持ハ如
何デアリマセウ、卽チ修正案ハソレヲ止メ
テ減稅ノ恩典モ與ヘヌガ、增稅モシテヤラ
ズ、其財源ハ······其財源ノコトハ修正者ノ
方ニハ餘リ深イ關係ハアリマセヌ、先程御
尋ニナッテ居,タヤウデアリマシタガ此財
源ノ問題ハ、政府ハ無理ニ賞與ヲ減ズルノ
ガ惡ケレバ他ノ方面カラ捻出ナサッテモ宜
シイ、他ノ方面ヲ儉約シテ·····併シ先程
仰シヤッタノニハ······大河內子爵ノ御話ヲ
承ッテ居リマスト、事業ヲヤル云々、所謂豫
算ノコトニ付テ、實行豫算ガ惡イト責メタ
デハナイカ、其責メテ居ル實行豫算デ、又
賞與ノ一割ヲ滅ジヤウト云フノハ惡イデハ
ナイカト云フヤウナ御話ガアリマシタガ
我ミガ此壇上ニ立ッテ責メタノハ事業ノコ
トデアリマス、法律ナリ豫算案ナリユ現ハ
レタル新規ノ事業ヲ全部繰延中止ヲスルコ
トガ惡イト申上ゲタノデアッテ、豫算ノ中
ニアル給料ハイツデモサウデアリマス若
シ假ニ之ヲ、給料ヲ嚴正ニ行ウタナラバ
缺員デアル所ノ官吏ガアル役所ニ於テハ此
給料ハ剩餘金ニナッテ現ハレナケレバナラ
ヌノデアリマス、剩餘金ニナッテ居ラヌ、イ
ツノ時ノ決算ヲ見テモ官吏ノ給料ノ所ハ尻
ガ零ニナッテ居ルト云フノハヽ取リモ直サズ
殘ッタ所ノ金ヲ全部賞與トシテ吳レテヤル
カラ、玆ニ官吏ノ給料ノ剩餘ト云フモノガ
一文モ出テ來ヌノデアリマス、是等ハ我國
ノ會計法ノ不備デアリマス、賞與ノ目ヲ設
ケテ、賞與ハ賞與トシテ立派ニ支給シ、
方給料ノ豫算ハ、缺員ニ依ッテ生ジタ俸給ノ
剩餘ハ全ク剩餘金トシテ翌年度ニ繰越スベ
キモノデアリマス、此修正案ニ對スル贊成
ノ詳細ヲ述ベルコトハ全ク御迷惑ヲ掛ケル
時間ガ長イト思ヒマスカラ、此程度ニ止メ
タイト思ヒマスガ、兎モ角モ此中小以下ノ
商工業者、若クハ借地人、借家人ニ只今振
リ掛ヲテ來ムトスル所ノ六百万圓ノ增稅ダ
ケハ各位ノ御考ニ依ッテ思ヒ止マッテ戴イ
テサウシテ······御役人樣ニハ御氣ノ毒デ
アリマスガ、賞與ノ六千五百万圓ノ一割ヲ
御辛棒ガ願ヒタイト云フコトヲ申上ゲテ、
本壇ヲ降リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=72
-
073・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ニテ討論ノ通
告者ハ終リマシタ御異議ガナケレバ、便
宜上修正案三件ヲ一括シテ採決イタシタイ
ト考ヘマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=73
-
074・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 地租法案、明治
四十一年法律第三十七號中改正法律案、大
正十五年法律第二十四號中改正法律案ニ對
スル修正案ノ表決ニ付、溝口伯爵外四十一
名ヨリ記名投票ノ要求ガ議長ノ手許ヘ提出
セラレマシタ、故ニ記名投票ヲ以テ採決イ
タシマス、念ノ爲ニ申上ゲマス、本院規則
第百十九條ニ依リ修正案ヲ可トセラルル諸
君ハ白票ヲ、否トセラルル諸君ハ靑票ヲ御
投票ヲ請ヒマス、此度モ氏名點呼ヲ省略イ
タシマシテ、近衞公爵ヨリ順次御登壇ヲ煩
ハシマス
〔投票執行〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=74
-
075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御投票漏レハゴ
ザイマセヌカ······投票漏レナシト認メマス、
書記官ヲシテ投票ヲ計算イタサセマス
〔書記官投票ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=75
-
076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 記名投票ノ結果
ヲ御報告ニ及ビマス、投票總數二百四十
五、白色票卽チ修正案ヲ可トセラルル諸君
三十六、靑色票卽チ修正案ヲ否トセラル
ル諸君二百九、故ニ修正案ハ否決セラレ
マシタ
〔參照〕
贊成三十六名
反對二百九名
贊成者氏名
男爵大井成元君男爵北里柴三郞君
男爵阪谷芳郞君水野鍊太郞君
內田重成君岡喜七郞君
川村竹治君男爵松尾義夫君
男爵寺島敏三君男爵井上〓純君
男爵高崎弓彥君男爵佐藤達次郞君
中村純九郞君福永吉之助君
石渡敏一君橋本圭三郞君
竹越與三郞君山之內一次君
南弘君中川小十郞君
長岡隆一郞君小久保喜七君
伊澤平左衞門君林平四郞君
大川平三郞君下出民義君
坂田貞君小塩八郞右衞門君
花井卓藏君瀨谷勇次郞君
吉田羊治郞君根本祐太郞君
鵜澤總明君佐藤信古君
山上岩二君森田福市君
反對者氏名
公爵近衞文麿君侯爵蜂須賀正韻君
侯爵細川護立君侯爵佐佐木行忠君
侯爵松平康昌君伯爵松木宗隆君
伯爵柳澤保惠君伯爵川村鐵太郞君
伯爵林博太郞君伯爵柳原義光君
伯爵奧平昌恭君伯爵樺山愛輔君
伯爵溝口直亮君伯爵小笠原長幹君
伯爵酒井忠克君伯爵黑木三次君
伯爵二荒芳德君伯爵堀田正恒君
伯爵有馬賴寧君伯爵酒井忠正君
子爵高倉永則君子爵藤谷爲寬君
子爵樋口誠康君子爵梅小路定行君
子爵毛利高範君子爵五辻治仲君
子爵松平直平君子爵靑木信光君
子爵冷泉爲勇君子爵伊集院兼知君
子爵牧野忠篤君子爵大久保立君
子爵前田利定君子爵井上匡四郞君
子爵柳生俊久君子爵白川資長君
子爵池田政時君子爵西大路吉光君
子爵〓岡長言君子爵野村益三君
子爵櫛笥隆督君子爵渡邊千冬君
子爵今城定政君子爵吉田〓風君
子爵立花種忠君子爵藪篤麿君
子爵豐岡圭資君子爵秋月種英君
子爵伊東祐弘君子爵片桐貞央君
子爵大河内輝耕君子爵米津政賢君
子爵八條隆正君子爵保科正昭君
子爵岡部長景君子爵曾我祐邦君
子爵井伊直方君子爵花房太郞君
子爵三室戶敬光君子爵東園基光君
子爵大浦兼一君子爵新庄直知君
子爵牧野一成君子爵秋元春朝君
子爵伊東二郞丸君子爵西尾忠方君
子爵渡邊七郞君子爵裏松友光君
子爵秋田重季君子爵森俊成君
子爵戶澤正己君子爵鍋島直繩君
子爵織田信恒君子爵岩城隆德君
子爵毛利元恒君子爵米倉昌達君
子爵植村家治君子爵梅園篤彥君
子爵舟橋〓賢君子爵松平康春君
子爵土岐章君子爵三島通陽君
子爵瀧脇宏光君子爵綾小路護君
男爵山本達雄君田中館愛橘君
佐藤三吉君水上長次郞君
渡邊暢君大島健一君
男爵坂本俊篤君土方寧君
嘉納治五郞君藤澤利喜太郞君
眞野文二君石塚英藏君
男爵平野長祥君男爵鍋島直明君
松浦鎭次郞君男爵幣原喜重郎君
有吉忠一君江木翼君
志水小一郞君男爵長松篤棐君
小松謙次郞君若林賚藏君
男爵大鳥富士太郞君若槻禮次郞君
男爵上田兵吉君井上準之助君
上山滿之進君伊澤多喜男君
男爵北大路實信君男爵今枝直規君
坂西利八郞君小野塚喜平次君
川崎卓吉君男爵千田嘉平君
太田政弘君男爵斯波忠三郞君
塚本〓治君山川端夫君
森賢吾君男爵千秋季隆君
男爵北河原公平君男爵小畑大太郞君
男爵黑田長和君男爵岩倉道倶君
男爵矢吹省三君男爵足立豐君
男爵高木喜寛君男爵松岡均平君
男爵北島貴孝君男爵沖貞男君
男爵三須精一君男爵稻田昌植君
男爵肝付兼英君男爵園田武彥君
男爵深尾隆太郞君原保太郞君
片岡直溫君川上親晴君
安立綱之君湯川寛吉君
菅原通敬君湯地幸平君
田所美治君岡田文次君
靑木周三君西野元君
馬場鍈一君後藤文夫君
加藤政之助君大津淳一郞君
樺山資英君松村義一君
馬越恭平君服部金太郞君
木村〓四郞君大橋新太郞君
內藤久寛君今井五介君
太田〓藏君佐々木志賀二君
中村圓一郞君森平兵衛君
尾崎元次郞君澤山精八郞君
田村新吉君奥田榮之進君
齋藤喜十郞君磯貝浩君
金杉英五郞君齋藤善八君
橋本萬右衞門君平田吉胤君
西本健次郞君名取忠愛君
高橋源次郞君磯村豐太郞君
土田萬助君金子元三郞君
藤原銀次郞君山崎龜吉君
菅澤重雄君北村宗四郎君
森廣三郞君八木春樹君
大城兼義君津村重舍君
奥田亀造君五十嵐甚藏君
澤田喜彥君橫山章君
松本勝太郞君濱口儀兵衞君
長尾元太郞君三木與吉郞君
小林嘉平治君田中一馬君
野村德七君小林暢君
絲原武太郞君濱平右衞門君
高廣次平君本間千代吉君
瀨川彌右衞門君八馬兼介君
男爵渡邊汀君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=76
-
077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ニ採決イタシ
マスルハ八案全部、原案ニ同意ノ諸君ノ起
立ヲ求メマス
〔起立者多數〕·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=77
-
078・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=78
-
079・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=79
-
080・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=80
-
081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=81
-
082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=82
-
083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=83
-
084・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=84
-
085・東園基光
○子爵東園基光君 本員ハ此際議案ノ緊急
上程ヲ求メマス、卽チ本日委員ニ付託セラ
レマシタル議案、產業組合中央金庫法中改
正法律案、農會法中改正法律案、耕地整理
法中改正法律案、右三案ヲ上程セラレマシ
テ委員長ノ說明ヲ求メ審議ヲ盡サレムコト
ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=85
-
086・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=86
-
087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=87
-
088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=88
-
089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 產業組合中央金
庫法中改正法律案、農會法中改正法律案、
耕地整理法中改正法律案、衆議院提出、第
一讀會ノ續、委員長報告、堀田伯爵ノ登壇
ヲ望ミマス
產業組合中央金庫法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵堀田正恒
貴族院議長公爵德川家達殿
農會法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵堀田正恒
貴族院議長公爵德川家達殿
耕地整理法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和六年三月二十七日
委員長伯爵堀田正恒
貴族院議長公爵德川家達殿
(伯爵堀田正恒君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=89
-
090・堀田正恒
○伯爵堀田正恒君 委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ簡單ニ御報告申上ゲマス、先ヅ產業組合
中央金庫法中改正法律案ニ付テ御報告申上
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=90
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091・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 堀田伯爵モット
御大聲ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=91
-
092・堀田正恒
○伯爵堀田正恒君 現行法ニ於キマシテハ
同金庫ニ所屬ノ產業組合聯合會又ハ所屬產
業組合ニ對シマスル貸付ハ五箇年以内ノ定期
償還貸付ニ制限セラレテ居リマス、併ナガラ
ソレデハ十分產業組合中央金庫ノ機能ヲ發
揮スルコトガ困難デアリ、又地方ト致シマ
シテモ、多年長期ノ貸付ヲ要望イタシテ居
リマスル結果、斯カル法案ガ衆議院ヲ通過
シテ提出セラレタコトト存ジマス、改正案
ニ於キマシテハ三十箇年以內ノ長期年賦貸
付ヲ認メルコトニ相成リマシタ、尙ホ有價
證劵ノ保護預リヲ認メ又有價證劵ノ委計賣
買ヲ認メルコトニナッタ次第デアリマス
此法案ニ付キマシテハ委員會ニ於キマシ
テハ適當ナルモノト認メ、又政府モ之ヲ認
メタ次第デゴザイマスル、故ニ委員會ハ
滿場一致可決イタシタ次第デゴザイマ
ス、次ニ農會法中改正法律案竝ニ耕地整理
法中改正法律案、此二案ハ關聯イタシテ居
リマスルカラ、一〓ニ御報告ヲ申上ゲマス、
町村農會及市農會ノ經費又ハ過怠金竝ニ耕
地整理組合ノ組合費其他ノ組合員ノ負擔金
ハ現行法ニ於キマシテハ其滯納ガアリマ
シタ場合ニハ農曾長又ハ耕地整理組合長
ノ請求ニ依リマシテ、市町村ニ於テ市町村
稅ノ例ニ依リマシテ處分スルコトニナッテ
居リマス、從來ノ實情ニ鑑ミマスノニ、右
ノ請求ガアリマシタ時ニ、ドウモソレガ餘
リ能ク效果ヲ現ハシテ居ラナイ不便ガアル
ノデゴザイマス、故ニ此度、原則ト致シマ
シテ市町村長ニ是ハ處分ヲ請求イタシマス
ルガ、若シモ之ヲ行使シナイ場合ニ、卽チ
三十日以内ニ其處分ニ著手シマセズ、又ハ
九十日以內ニ之ヲ終了スルコトガ出來ナ
カッタ場合ニハ、農會長又ハ組合長ハ地方長
官ノ認可ヲ得テ滯納處分ヲスルコトガ出來
ルト云フ改正案デゴザイマス、此二案ニ付
キマシテモ政府ハ同意ノ意ヲ答ヘ委員一
同適當ナモノト認メマシテ全會一致デ可決
イタシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=92
-
093・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 會期切迫ノ際デゴザイ
マスガ、只今ノ問題ハ容易ナラザル問題ト
思ヒマスカラ、能ク聽キ取レマセヌデスガ、
國稅徴收法ヲ會ノ會費ヲ取ルノニ適用シヤ
ウト云フノハ全體ドウ云フ譯ナンデス、前
年商工會議所ノ會費ヲ取ルノガ、ドウモ國
稅徴收法ノ適用ハ宜クアルマイト云フコト
デ、一旦削除シタコトガアリマスガ、其後、
商工會議所カラノ懇願ニ依リマシテ、只今
デハソレヲ復活イタシテ、復活イタシマシ
タガ、其際ニ、モウ斯ウ云フコトハ決シテ
ヤラナイト云フ政府ハ當時明言シテ居ッタ
ノデアル、御承知ノ通リニ、稅金ヲ納メル
ニハ是ハ國家ガ强制徵收スルト云フコト
ハ當然デアリマスガ、其外ノ事ハモウ民法
ニ依ルノ外ハナイ、一ツノ會ヘ斯ウ云フコ
トヲ御開キニナレバ、旣ニ一部分ハ開イテ
アルノデアリマスガ、其農會長ガ勝手ニ國
稅徴收法ヲ適用スルト云フヤウナコトヲ始
メタラ、私ハ澤山ノ會ヲ持ノテ居リマスガ、
其今ノサウ云フ事ヲ御許シニナルト云フコ
トニナルト、非常ニ是ハ民法ノ規定ヲ、差
別待遇ヲ與ヘルヤウナコトニナルト云フ譯
デ、斯ウ云フコトヲ委員會デ御決シニナッタ
ノヲ甚ダ私ハ疑フノデアリマシテ、モウ
少シ詳シク御說明ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=93
-
094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今ノ阪谷男爵
ノ御質疑ハ特別委員長ニ對スル御質疑ト
議長ハ認メテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=94
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095・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=95
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096・堀田正恒
○伯爵堀田正恒君 御答ヘ致シマスガ、國
稅滯納處分ノ例ニ做ウテヤルノデアリマス
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=96
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097・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 ドウモ本員ハチットモ
聽エマセヌガ、農林大臣カラ能ク分ルヤウ
ニ說明シテ貰ヒタイト思ヒマス、斯ウ云フ
事ハ止メタ方ガ宜イヂヤナイカト思フ、若
シ御止メニナルコトガ出來マセヌナラバ、
會期切迫ノ際、今日ハ二讀會ヲ開カズニ、
他日二讀會ヲ開クコトニシテ、モウ少シ〓
究シタラ宜カラウト思ヒマス
〔國務大臣町田忠治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=97
-
098・町田忠治
○國務大臣(町田忠治君) 阪谷男爵ニ御答
ヘ致シマス御質問ノ趣意ハ能ク了解イタ
シマセヌデシタガ、大體是ハ强制徴收ヲ許シ
テ既ニアルノデアリマス、只今ノ改正ニ依ッ
テ初メテ强制徵收ヲ許スノデハアリマセ
又、旣ニ是ハ許シテアルノデアリマス、唯
ソレヲ徵收スル方法ヲ、從來ハ町村長ニ委
ネテアッタノガ、町村長ガ農會長ノ依賴ニ
依ッテ機敏ニ其仕事ヲヤッテ吳レヌ場合ニ
ハ農會長自身デヤルト云フヤウナコトデ
アッテ、御心配ノヤウナコトノ强制徴收ヲ此
際新ニ設ケル次第デハナイト、斯ウ御承知
ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=98
-
099・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 一向分リマセヌガ、町
村長ガ强制執行ノ代理ヲスルト云フノハ
ソレハ一ツノ公吏デアルカラ差支ナイ、ケ
レドモ農會長ト云フモノハ一個人デアル、
ソレガ强制徴收ヲスルト云フヤウナ例ヲ開
クト云フコトハドウモ本員ニハ解セラレ
ナイ、是ハ其二讀會ハ矢張リ定規ニ依ッテ御
開キニナルコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=99
-
100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今特別委員長
ノ報告セラレマシタ三案共第二讀會ヲ開イ
テ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=100
-
101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=101
-
102・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第二讀會
ヲ開カレンコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=102
-
103・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=103
-
104・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ各
案ノ第二讀會ヲ直ニ開クト云フ說ニ同意ノ
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=104
-
105・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=105
-
106・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案全部ヲ問題
ニ供シマス、全案原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=106
-
107・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=107
-
108・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=108
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109・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=111
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112・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 各案共第二讀會
ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=112
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113・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=113
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114・徳川家達
○護長(公爵德川家達君) 是ヨリ議事日程
ニ移リマス、請願、會議
意見書案
政府ノ緬羊飼育奬勵施設充實ニ關スル
件
山形縣北村山郡楯岡町山形縣村山緬
羊畜產組合組合長樋口重次郞呈出
右ノ請願ハ我國ニ於ケル緬羊飼育ハ日尙
ホ淺キニ拘ラス農業經營狀態トヨク融和
シ且ツ羊毛家庭紡績ノ如キ婦女子ニ恰適
ノ副業ヲ與フル爲メ近時之ヲ飼育スルモ
ノ激增シ前途有望ナルモ其ノ生產羊毛ハ
未タ國內需要ノ三分ノ一ヲモ供給スルコ
トヲ得ス加之政府ノ奬勵施設亦徴々タル
モノニシテ僅ニ二簡所ノ種羊場アルニ過
キサルハ甚タ遺憾ナルニ依リ當局ニ於ケ
ル該奬勵施設ヲ充實シ農村振興ニ資セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和六年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣濱口雄幸殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=114
-
115・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此請願ハ請願委
員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔瀨古書記官朗讀〕
昭和六年三月二十七日
内閣總理大臣濱口雄幸
貴族院議長公爵德川家達殿
通牒
本月二十八日貴族院ニ於テ帝國議會閉院
式執行被仰出候発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ散會イタ
シマス
午後七時四十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005903242X04119310327&spkNum=118
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