第59回帝国議会　衆議院　地租法案外六件委員会　第21号　昭和6年2月27日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  付託議案
  　地租法案（政府提出）
  　營業收益税法中改正法律案（政府提出）
  　砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
  　織物消費税法中改正法律案（政府提出）
  　明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（地方税制限に關する件）（政府提出）
  　大正十五年法律第二十四號中改正法律案（地方税に關する件）（政府提出）
  　都市計畫法中改正法律案（政府提出）
  　耕地整理法中改正法律案（政府提出）
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  　　　會議
  昭和六年二月二十七日（金曜日）午前十時三十分開議
  　出席委員左の如し
  　　　　　委員長　本田恒之君
  　　　　　　理事　西脇晉君
  　　　　　　理事　永田善三郎君
  　　　　　　理事　中村繼男君
  　　　　　　理事　高橋熊次郎君
  　　　　　　理事　清水銀藏君
  　　　　　　　　　海老澤爲次郎君　清水長郷君
  　　　　　　　　　松井文太郎君　本多眞喜雄君
  　　　　　　　　　松本忠雄君　鏑木忠正君
  　　　　　　　　　前田房之助君　一柳仲次郎君
  　　　　　　　　　竹田儀一君　内田信也君
  　　　　　　　　　木暮武太夫君　武田徳三郎君
  　　　　　　　　　大口喜六君　八田宗吉君
  　　　　　　　　　加藤鐐五郎君　岡田忠彦君
  　　　　　　　　　前田米藏君　松谷與二郎君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　内閣總理大臣臨時代理
  　　　　　　外務大臣　男爵　幣原喜重郎君
  　　　　　　大藏大臣　井上準之助君
  　　　　　　内務大臣　安達謙藏君
  　　　　　　農林大臣　町田忠治君
  　　　　　　海軍大臣　男爵　安保清種君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　内務參與官　一宮房治郎君
  　　　内務省地方局長　次田大三郎君
  　　　　　内務書記官　岡田周造君
  　　　　　内務書記官　鈴木敬一君
  　　　　大藏政務次官　小川郷太郎君
  　　　　　大藏參與官　勝正憲君
  　　　大藏省主税局長　青木得三君
  　　　　　大藏書記官　川越丈雄君
  　　　　　大藏書記官　野津高次郎君
  　　　　　大藏書記官　關原忠三君
  　　　　海軍政務次官　男爵　矢吹省三君
  　　　　海軍主計中將　加藤亮一君
  　　　　　　海軍少將　堀悌吉君
  　　　　　　海軍少將　寺島健吉君
  　　　　海軍主計大佐　佐々木重藏君
  　　　　　農林參與官　山田道兄君
  　　　農林省農務局長　石黒忠篤君
  　　　農林省山林局長　平熊友明君
  　　　　　農林書記官　田淵敬治君
  　　　　商工政務次官　横山勝太郎君
  　　　商工省工務局長　吉野信次君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　地租法案（政府提出）
  　營業收益税法中改正法律案（政府提出）
  　砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
  　織物消費税法中改正法律案（政府提出）
  　明治四十一年法律第三十七號中改正法律案（地方税制限に關する件）（政府提出）
  　大正十五年法律第二十四號中改正法律案（地方税に關する件）（政府提出）
  　都市計畫法中改正法律案（政府提出）

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• 001・本田恒之

  ○本田委員長　是ヨリ開會致シマス
  大口君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=1

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• 002・大口喜六

  ○大口委員　私ハ先ヅ總理大臣代理ニ
  承リタイノデアリマスガ、今日我國ノ
  經濟界ガ非常ナ不況デアリ、困難デア
  リマスコトハモウ私ガ申スマデモナ
  イ、此原因ト云フモノガ果シテ何處ニ
  在ルカト云フヤウナコトヲ、此處デ追
  窮討究スルコトニナリマスレバ、中々
  是ハ議論ガアラウト思ヒマス、ソレハ
  私ハ今日ハ言ハナイコトニ致シマス、
  事實ノ上ニ於テ、日本ノ今日ノ經濟界
  ト云フモノガ非常ナ不況ニ沈淪シテ居
  ルト云フコトハ、是ハ誰ガ見テモ間違
  ノナイ事實デアル、之ヲドウシテ救フ
  カ、ドウスレバ日本ノ今日ノ不況ガ救
  ハレルノデアルカ、日本ノ經濟界ヲド
  ウシテ救ウテ行クカ、是ガ政治上ニ於
  テ最モ重要ナ點ニナルデアラウト思
  フ、斯ウ云フ點カラ申シマスレバ、固
  ヨリ減稅ト云フコトハ一ツノ方法トシ
  テ善イ事デアルニ相違ナイ、減稅ト云
  フコトニ誰モ反對ヲスル人ハナカラウ
  ト私共ハ思ヒマス、寧ロ私共ハ今囘御
  出シニナッタヤウナ減稅案デハ極メテ
  少イノデアッテ、出來ルナラバモット徹
  底的ニ減稅ヲスルコトガ、今日ノ時代
  ニハ急務デアル位ニ私共ハ考ヘテ居
  ル、所ガ如何ニ減稅ガ善イ事ダト申シ
  タ所デ、財源ガ確實デナイト云フコト
  ニナルト、昭和六年度ニ減稅ヲシテ一
  時國民ヲ喜バセテ見タ所ガ、又ソレ以
  上ノ弊害、ソレ以上ノ困難ト云フモノ
  ガ直チニ國民ノ上ニ反映シテ來タ場合
  ニハ、減稅ハ效果ガナイノミナラズ、
  寧ロ非常ナ害ヲ後ニ貽スヤウナコトニ
  ナル、サウ云フ譯デアルカラ、餘程財
  政上ノ計畫ト云フモノヲ確實ニ致スコ
  トガ必要デアルト私共ハ考ヘテ居ル
  ソコデ此減稅ト云フモノガ、昭和六年
  度ダケデアルナラバ、昭和六年度ノ豫
  算ノ上デ見テ置ケバソレダケデアリマ
  スケレドモ、言フ迄モナク減稅ハ恆久
  的ノモノデアッテ、一年限リノモノデハ
  ナイ、シテ見レバ恆久的ノ財源ト云フ
  モノヲ十分ニ調査ヲシ、十分ニ〓究スル
  必要ガアリマスカラ、ソコデ所謂財政
  計畫ノ〓究ヲ必要トシテ參ッテ、〓計表
  ナドニ對シテモ之ヲ論ゼネバナラヌコ
  トニナル、ソコデ何レ是ハ大藏大臣ニ
  對スル質問ニモナリマスカラシテ、此
  場合申述ベテ置キタイノデアリマス
  ガ〓計表ト云フモノハ讀ンデ字ノ如
  〃所謂〓計デアッテ、決シテ精細ヲ極
  メタモノデナイト云フコトハ私モ能ク
  存ジテ居リマスガ、併シ我國ノ財政計
  畫ヲ討究シテ見ルニハ、今日ノ場合〓
  計表ヲ標準トシテ見ルヨリ外ニ據リ所
  ガナイ、ソコデ已ムヲ得ズ恆久的財源
  ト云フモノヲ吾々ガ調査〓究ヲシテ、
  是ナラバ將來我國ノ財政ハ大丈夫デア
  ルト云フ安心ヲ得ヨウトスルニハ、〓
  計表ヲ先ヅ中心トシテ、此〓究ヲスル
  コトガ大切デアル、斯ウ云フコトデア
  ルト私共ハ考ヘル、ソコデ今度ノ減稅
  ニ對シテ、然ラバ財源ガ果シテ確實デ
  アルカドウカト考究シテ見ルト玆
  五億八百萬圓ト云フ海軍ノ保留財源ガ
  剰ッテ出ルソレカラ今囘御提出ニナリ
  マシタ海軍ノ補充計畫ト云フモノヽ三
  億何千萬圓ト云フ金ヲ引イテ見ルト
  其殘額ガ一億三千餘萬圓アルカラ、之
  ヲ剰餘財源ト見テ、ソレニ依ッテ兎ニ角
  昭和十一年度マデハ、減稅ノ財源ガ先
  ヅ確實ト政府ハ見テ居ル、昭和十二年
  度以降ト云フモノハ、別ニ財政ノ計畫
  ガ大體ニ於テ立ッテ居ル、斯ウ云フモノ
  ダト段々說明ヲシテ居ラレル、一應表
  面カラ見マスト云フト尤モラシク考ヘ
  ラレルノデアルガ、玆ニ一ツノ大ナル
  疑問ガアル、此疑問ト云フノハ、私個
  人カラ言ヘバ、モウ今日ハ疑問デハナ
  イノデアル、ソレデ私ハ總理大臣代理
  ノ御出席ヲ要求シタ譯ニナル、ドウ云
  フ風ニ私ハ見テ居ルカト云フト、豫算
  會議以來今日マデノ質問應答ノ結果、
  ドウナッテ居ルカト云フト、今囘御提案
  ニナッタ所ノ海軍補充計畫ナルモノハ
  俗ニ謂フ第一補充計畫デアル、勿論海
  軍ノ方カラ言ヘバ第一補充計畫、第二
  補充計畫ト云フ區別ハナイ譯デアル
  ガ、便宜上先ヅ人ノ謂フ所ニ依ルト、
  今囘豫算ノ上ニ現ハレテ居ル三億何千
  萬圓ノ海軍補充計畫ト云フモノハ是
  ハ第一ノ計畫デ、根幹トナルベキモノ
  ヲ出シタ、此政府ノ答辯ヲ私ハ認メル、
  スルト俗ニ謂フ第二補充計畫ガ是ニ
  伴ッテ來ネバナラナイ、是ハドウデアル
  カ、是ガ一ツノ疑問デアル、所ガ今申
  シマス通リ質問應答ノ結果、私ハ最早
  疑問デハナイ、ドウ云フ譯デアルカト
  云フト、斯ウ云フ事ニナルト考ヘル、
  奉答文ノ內容ガドウデアルカトカ、其
  責任ヲドウ持ツカトカ、斯ウ云フ議論
  ニナルト、是ハ中々難カシイ問題デア
  リマシテ、之ヲ論ジタラ又長イ時間掛ツ
  テモ果シガ付カナイデアラウト思ヒマ
  スカラ、サウ云フ理窟ハ私ハ少シモ今
  日ハ言ハヌ、實際ノ上カラドウデアル
  カト云フト、兎ニ角此軍令部ノ方デ定
  マッタ事柄ト云フモノハ陛下ニ奉答ニ
  相成ッテ居ッテ、少クトモ此奉答文ノ內
  容ヲ知ッテ居ル筈ノ海軍大臣ガ、現內閣
  ノ一員トシテ居ラレル、濱口首相ニハ
  內覽ヲ御許シニ相成ッテ居ッテ、表向キ
  今ノ內閣諸公ガ知ッテ居ラレルカ居ラ
  レナイカハ別トシテ、奉答サレテ居ル
  ダケノ事ハ致サネバナラナイモノデア
  ルト云フ事ダケハ想像ガ出來ル、事實
  ノ上カラ綜合シテ段々考ヘテ見ルト云
  フト、今囘御出シニナッタダケノ、所謂
  吾々ノ謂フ第一補充計畫ダケデ、昭和
  十一年度マデ滿足ノ出來ルモノデハナ
  イ、世ノ中デ傳ヘテ居ルヤウニ、昭和
  九年度カラハ最早第二ノ計畫ガ頭ヲ出
  サネバナラヌ、是ハ此間中カラノ內田
  君ノ質問ナドデ、製艦能力ノ方面カラ
  申シテモ、又色々ノ海軍ノ計畫上カラ
  申シテモ、今日ハ私ハ速記錄ナドヲ引
  イテ、言葉尻ヲ取ッテ、此處デギユウギ
  ユウヤラウト考ヘマセヌカラ一々申シ
  マセヌガ、兎ニ角昭和十一年度以前ニ
  於テ、此第二ノ計畫ノ頭ヲ出ス必要ガ
  アル事ダケハ、總理大臣代理竝ニ海軍
  大臣ハ明ニ御認メニナッテ居ル、其、通リ
  デアルト思フ、是ハ吾々ガ見テ居ルヤ
  ウニ、果シテ第二ノ計畫ガ一億四千萬
  圓掛ルカ、一億三千萬圓デ濟ムカ、
  億五千萬圓デ濟ムカト云フ明確ナ數字
  マデハ、玆ニ政府ガ承認サレヌシ、又
  サレタ所デ、サウ云フモノト云フモノ
  ハドウシテモ昭和十一年度前ニ現ハ
  レルモノデアルト云フコトハ想像ニ難
  クナイノミナラズ、最早連日ノ質問應
  答ニ依ッテ明瞭ナ事實デアルコトヲ見
  ナクチヤナラヌ、ソコデ私ノ考ヲバ大
  體聞イテ戴キタイ、私共決シテ軍國主
  義者ヂヤナイ、是ハ宜シクナイ、故
  出來ルダケ私共モ軍備ノ縮小ヲ望ム者
  デアルシ、ソレカラ又軍事ニ要スル經
  費ト云フモノハ、出來ルダケ節約シタ
  イ論者デアル、論者デアルノミナラズ、
  實行致シタイト確ク考ヘテ居ル、併ナ
  ガラ國防ハ完全ニシテ置カナケレバナ
  ラヌ、國防ハ一日モ之ヲ忽セニシチヤ
  ナラヌ、斯ウ云フモノデアルカラシテ、
  其見地カラ言フト云フト、今日外國ノ
  樣子ヲ見テ、ソレカラ此方デ仕事ヲシ
  テ掛ルト云フコトハ、國防ノ見地カラ
  行ケバ、是ハドウシテモ本當ヂヤナイ
  サウ云フコトデ外國ニ對峙シテ、國防
  ト云フモノガ完全ニ期セラレルモノヂ
  ヤナイカラ、日本ハ日本デ一ツノ根柢
  ト云フモノヲ定メテ、此方ハ是デ行ク
  ノダ、ソレデ更ニ次ノ交涉ヲ外國ト開
  イテ見テ、ソコデ此處マデ行ケルナラ
  是デヤル、併ナガラ今日ノ日本ニ於テ
  ハ是ダケノコトハシテ掛ラナクチヤ、
  國防ハ完全ニ行カナイト云フコトガ無
  クチヤナラヌ、是ハ內閣諸公トシテハ
  勿論ノコトデ、國民全體トシテモサウ
  云フ考ガナクチヤナラヌ、其見地カラ
  考ヘテ見ルト云フト、昭和十一年度以
  前ニ於テ、少クトモ昭和九年度カラハ
  第二次海軍ノ-吾々ノ謂フ第二補充
  計畫ト云フモノガ頭ヲ出シテ來ルト云
  フコトハ認メナクチヤナラヌ、サウ考
  ヘマスト云フト、先刻申シタ〓計表カ
  ラ見マシテモ、今政府ノ御答辯ニナッテ
  居ル財政計畫カラ云フト、甚ダ是ハ財
  政上危イモノデアルト見ナクチヤナラ
  ヌ、ソコデ之ニ對シテハ、大藏大臣モ
  御認ニナッタ、サスレバ金ガ要ル、併シ
  其必要ナ所ノ財源ト云フモノハ今一
  厘モ保留シテナイ、斯ウ答ヘラレテ居
  ル、サウスルト云フト、餘程昭和十一
  年度マデノ我國ノ財政計畫ニハ大分缺
  陷ガアッテ、危イモノデアルト云フコト
  ハドウ考ヘテモ是ハ見エル、危イト
  云フ言葉ヲ使ヒマシタナラバ、或ハ危
  クナイト內閣ノ諸公ハ御答辯ニナラネ
  バナリマスマイガ、兎ニ角昭和十一年
  度マデノ我國ノ財政計畫ニ大イナル〓
  陷ガアルコトダケハ、如何ナル素人デ
  モ見エル、ソコデ內情ヲ露骨ニ、私ノ
  頭ニ映ジタ通リニ、此處デ打明話ヲシ
  テ見ルト、政府ニ於テモ斯ウ云フコト
  ハ確實ニヤリタイニキマッテ居ル、所ガ
  金ガ無イ、一面ニ於テ此軍縮條約ヲス
  ル以上ハ、國民ノ負擔ヲ輕減スル、必
  ズ減稅スルト言ハレテ居ルノデアルカ
  ラ、否ガ應デモ減稅ハシナクチヤナラ
  ヌ、所ガ經費ハ困難デアル、歲入ハ減ッ
  テ來ル、軍縮ノ剩餘金ハドウシテモ出
  ナイ、已ムヲ得ヌカラ海軍ノ補充計畫
  ト云フモノヲ二ツニ割カレテ、先ヅ差
  當ッテ私共ノ謂フ第一補充計畫ダケヲ
  此處ニ出サレテ、第二補充計畫ハマ
  ア惡ク言ヘバ隱シテ置キ、靜カニ別ニ
  取ッテ置イテ、サウシテ此處ニ財源ガ出
  タヤウニ拵ヘテ、財政計畫ノ辻褄ダケ
  ハ合セテ、一億三千有餘萬圓ノ剩餘金
  ガアルトシテ、減稅計畫ヲ立テラレタ
  モノデアルコトハモウ明瞭デ、疑フ餘
  地ガナイヤウニ私ハ思フ、ト云フノハ
  先日モ申シタ通リ、昭和十二年度カラ
  ト云フモノハ、却テ艦艇製造費ノ爲ニ
  六千萬圓ノ保留財源ガ取ッテアルシ、其
  他航空隊ナドニ對スル保留財源ハ六千
  萬圓以外ニ取ッテアルヤウニ計畫シテ
  アルノニ、却テ昭和十一年マデニハ必
  要ヲ認メテ居ルニ拘ラズ、第二ノ海軍
  補充計畫ニ對シテ一萬圓モ財源ガ取。ツ
  テナイト云フ極メテ不自然不條理ナ計
  畫ニナッテ居ル所ニ依ッテモ、其眞相ハ
  私ハ分ルヤウニ思フ、ソレヲ私ハ捉ヘ
  テ、此處デ攻擊ヲシヨウトカ、强ヒテ
  減稅案ガ惡イト云フ材料ニシヨウト私
  ハ此處デ考ヘヌケレドモ、御答辯ニ依ツ
  テハサウ云フコトニナルカモ知レヌカ
  ラ、御注意下サッテ御答辯下サルコトハ
  結構デアリマスガ、私ハサウ云フ目先
  ノ攻擊的議論ヲ致サウトスルノデハナ
  イ及バズナガラ國家ノ財政ノ前途ヲ
  憂フル者デアル、斯ウ云フ組織デ御互、
  誰ガヤッテモ、御互ノ政黨ガ今マデ言ッ
  タ言質ニ囚ハレタリ、失禮ナ言葉カ知
  レマセヌガ、體面ニ囚ハレタリシテ、
  サウシテ財政上ノコトデモ無理ヲ拵ヘ
  テ、表面ダケヲ糊塗シテ其場ダケヲ何
  トカシテ行クト云フコトニナルト、是
  ハ實ニ我國ノ將來ノ財政ハ危イト思
  フ、現內閣ガ只今冗談ノヤウニ申シテ
  居ラレタンデアルガ、是ガ幸ニ十年モ
  御續ケ下サレバ、又何處マデモ責任ヲ
  執ラレル譯デアルガ、內閣ト云フモノ
  ハ、何時ドウ云フ風ニ迭ルカ分ラヌ、
  誰ガヤッタ所ガ、斯ウ云フ無理ナ計畫ヲ
  立テヽ減稅ヲシテシマッテ、恆久的ノ財
  源ヲ失ッテシマッテ、サウシテ一方ニ恆
  久的財政計畫ト云フモノニ、今ノヤウ
  ナ缺陷ガ認メラレテ居ル、國防ヲ完全
  ニシヨウトスレバ金ガ足ラナイ、ソコ
  デ仕方ガナイカラ遂ニ又增稅デモスル
  カ、增稅ヲシナケレバ何處カ國家ノ事
  業ニ缺陷ヲ生ズル、斯ウ云フコトガア
  ルノヲ、理窟ヤ机ノ上ノ議論デ、大正
  六年度ダケガドウカ斯ウカ辻褄ガ合ツ
  テ行ケレバ宜イト云フノデ、斯ウ云フ
  コトヲヤルト云フコトニナルト、洵
  私ハ將來日本ノ財政上危イ、是ハ私ガ
  政友會ヲ代表シテ言フノデハアリマセ
  ヌ、大口喜六個人トシテ言フノデアル
  ガ、大口喜六個人モ、斯ウ云フ場合ニ
  ハ反省ヲシテ、國家ノ爲ニ眞面目ニ盡
  スコトヲ考ヘテ、其議論ヲセナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス、政府ニ於
  カレマシテモ、餘程是ハ國家ノ將來ヲ
  考ヘテ、財政ノ基礎ニ對シテハ、唯其
  場ノ議論デ、今マデノ行掛リデ通セバ
  宜イノダトハ御思ニハナッテ居リハス
  マイガ、サウ云フ弊ニ陷ラナイヤウニ
  シテ、眞面目ニ日本ノ將來ノ財政ヲ立
  テラレナクチヤナラヌト私ハ考ヘル、
  其點ニ對シマシテ、總理代理トサレテハ
  餘程一ツノ御確定ガ其處ニナクテハナ
  ラヌト私ハ思フノデス、此場合ソレヲ
  一ツ承ッテ置キタイ、何レ此〓計表ナド
  ノ詳シイコトニ付キマシテハ、大藏大
  臣ニ疑問ノ點ヲ伺ヒマスガ、一國ノ總
  理トサレテ、今日ノ日本ノ不況、今日
  ノ日本ノ、實ニ國民ノ苦ンデ居ル場合、
  ドウシテ之ヲ救フカ、斯ウ云フ大切ナ
  場合ニ當面シテ、假令僅カノ金デアッテ
  モ減稅ヲサレヨウト云フノデアッテ、恆
  久財源ニ關係シテ、將來我國ノ財政ノ
  計畫基礎ヲドウシヨウト云フコトデア
  リマスカラ、是ハドウシテモ總理代理
  ヲシテオ出デナサル幣原サンノ御答辯
  ヲ承ッテ置クコトガ必要ト考ヘテ、御出
  席ヲ要求シタ譯デアリマス、ソレニ對
  シマス御答辯ヲ伺ヒマスレバ、私ハ他
  ニハ大ナル質問ノ總理ニハナイ、後、
  海軍大臣ナリ、大藏大臣ニ承レバ宜イ
  ノデアリマスカラ、私ハ是ダケノ趣意
  ヲ述ベマシテ御答辯ヲ要求致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=2

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• 003・幣原喜重郎

  ○幣原國務大臣　大口サンノ御憂慮ニ
  ナリマシタ點ハ、逐一能ク了解致シマ
  シタ、要スルニ昭和十一年度以前ニ何
  等カノ計畫、所謂第二次計畫ナルモノ
  ヲドウシテモシナケレバナラヌノデハ
  ナイカ、ソレデナケレバ、國防ノ安固
  ヲ缺クト云フコトニナリハシナイカ
  若シ此國防ノ安固ト云フ點ニ付テ十分
  ノ保障ヲ得ルヤウナ計畫ヲスルナラ
  バ此減稅計畫モ結局行ハレナイコト
  ニナルノデハナイカト云フ御憂慮デア
  リマスガ、過日モ申述べマシタ通リ、
  昭和十一年度前ニ、何等カノ計畫ヲ、
  若干ノ計畫ヲ致サナケレバナラヌト云
  フコトノ必要ナルコトハ私モ認メタノ
  デアリマス、併ナガラ其計畫ノ程度ト
  カ、時機トカ云フコトハ、マダ實際ニ
  於テ定マッテ居ナイノデアリマス、何故
  定マッテ居ナイカト申シマスルノニ是
  ハ內外ノ情勢モ考ヘテ見ナケレバナラ
  ヌ、何故内外ノ情勢ヲ考ヘルカト仰セ
  ラレマスレバ、申スマデモナク海軍力
  ト云フモノハ相對的ノモノデアリマシ
  テ-海軍力ノ必要ト云フモノハ相對
  的ノモノデアリマシテ、列國ガ條約ノ
  範圍內ニ於テ權利ヲ行使シナイ、軍艦
  ヲ拵ヘナイデ置クト云フコトガアリマ
  スレバ吾々ノ方モ、强ヒテ日本側ニ
  於キマシテモ、殊更ニ拵ヘル必要ハナ
  イト云フ理窟ニナルノデアリマス、例
  ヘバ私ノ諒解致シテ居リマスル所デ
  ハ華盛頓條約ノ航空母艦ノ如キハ、
  各國デ噸數ガ割當テラレテアリマス
  ガ、併ナガラ少ナクトモ亞米利加ハ、
  其條約上ニ與ヘラレタル權利ヲ今日マ
  デ行使ヲシテ居ナイノデアリマス、十
  分條約ノ範圍內マデノ航空母艦ト云フ
  モノヲ拵ヘテ居ナイ、サウナッテ來ルト
  云フト、日本ノ方モヤハリソレニ應ジ
  テ、條約上ノ權利ノ問題ハ別ト致シマ
  シテモ、實際上我ガ國防上ノ見地カラ
  考ヘテ見テ、ソレ程ヤル必要ガナイト
  云フコトモ言ヒ得ルノデアリマス、今
  日列國デ倫敦條約ト云フモノガ出來マ
  シタケレドモ、此範圍內ニ於テ如何ナ
  ル計畫ヲスルカト云フコトハ、全ク今
  日ニ於テハ未定ナノデアリマス、ソレ
  ナラバ日本モ其計畫ヲ-外國ガドウ
  云フ計畫ヲスルカ、何時カラドウ云フ
  風ニ條約上ノ權利ヲ實行スルコトニナ
  ルカ、ソレヲ見定メル方ガ日本トシテ
  ハ宜シイノデハナイカ、又技術上ノ進
  步ト云フコトモ、日進月步ノ勢ヒデア
  リマス、而シテ列國ハ果シテ軍艦ヲ、
  條約ノ範圍內マデノ權利ヲ行使シテ拵
  ヘルカドウカト云フコトガ未定デアリ
  マスカラ、日本ノ方カラ進ンデ、條約
  上ノ範圍內ノ權利ヲ行使シテ、必ズ軍
  艦ヲ皆拵ヘルノデアルト云フコトヲ此
  所デ確定スルト、サウスレバヤハリ相
  對的デアリマスカラ、間接ニ列國ノ計
  畫ヲ刺戟スルコトニナリハシナイカト
  云フ憂慮ヲ懷イテ居ルノデアリマス、
  斯ノ如ク總テノ狀況ヲ考ヘマシテ、今
  少シク此第二次計畫ナルモノヽ程度、
  時機ト云フモノヲ確定シナイ方ガ宜シ
  イデハナイカ、昭和十一年ニ若干ノ頭
  ヲ出スト云フコトガアリマセウケレド
  モ、何レノ場合ニ於キマシテモ、申ス
  マデモナク國防上絕對ニ必要デアルト
  云フコトナラバ、是ハヤラナケレバナ
  ラヌコトデアリマスガ、併ナガラ今日
  ニ於テ、マダソレヲキメテ置ク必要ハ
  ナイ、內外ノ情勢ノ、モウ少シ進展ヲ
  待ノテキメテ宜シイ、斯樣ニ考ヘテ居ル
  ノデアリマス、所謂第二次計畫ナルモ
  ノモ、全ク其內容モ時期モ分ッテ居ナイ
  ノデアリマスカラ、今日其財源ヲ用意
  致シテ置クト云フコトハ、ソレマデニ
  ハ及ブマイ、サウシテサウ云フ風ニ財
  源ヲ用意シテ、各國ニ對シテ日本ガ計
  畫ヲシテ居ルノダト云フコトヲ發表シ
  テ、間接ニ列國ノ造艦計畫ヲ刺戟スル
  ト云フコトハ成ベク避ケラレルナラバ
  避ケル方ガ宜シイト云フ風ニ私ハ考ヘ
  テ居リマス、隨テ大口サンノ心配サレ
  ルヤウニ、其時ニナッテ非常ニ困ルノデ
  ハナイカト仰セラレルケレドモ、是一
  所謂全ク第二次計畫ナルモノヽ程度、
  時期ニ依ルモノデアリマシテ、左程私
  ハ其當時ニナッテ財源ヲ調達シテ心配
  シナケレバナラヌ、增稅ヲシナケレバ
  ナラヌト云フヤウナ必要ガ起ッテ來ル
  モノトハ私ハ考ヘテ居ナイノデアリマ
  ス、先ヅ今日之レ以上ノ餘剩財源ガ出
  テ來レバ、其餘剩財源ハ國民負擔ノ輕
  減ニ充テルト云フ方針デアッテ行ク方
  ガ、一番宜シイデハナイカト私ハ考ヘ
  テ居ルノデアリマス

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• 004・大口喜六

  ○大口委員　只今ノ總理大臣代理ノ御
  答辯ニ對シマシテハ、私ハ議論トシテ
  ハ非常ナ異論ガアリマス、到底承服ハ
  出來マセヌ、併ナガラ今日ハサウ云フ
  コトヲ申述ベテ、總理代理ト此處デ論
  難攻擊ヲシテ、議論ヲシテ見ヨウト云
  フ考デアリマセヌカラ、只今ノ御論ノ
  非常ニ不條理デアルト私ノ考ヘマス點
  ハ玆ニ述ベマセヌ、唯私ハ斯ウ云フコ
  トダケヲ承ッテ見タイノデアリマス總
  理大臣代理ハ、只今ノヤウニ第二次計
  畫ト云フモノハ世界ノ大勢ヲ見テ決メ
  ルモノデアルシ、又今カラ日本ガ發表
  スルノハ、却テ外國ヲ刺戟スルコトニ
  ナリマスカラ宜シクナイカラ決メナイ
  方ガ宜イ、從テ昭和十一年前ニ於テ、
  其必要アルコトハ認メルケレドモ財源
  ナドハ取ッテ置ク必要ハナイ、斯ウ言ハ
  ールサウスルト云フト先刻カラ言フ
  通リ、ソレヨリ先ノ昭和十二年以後ノ
  財源ガ取ッテアルノハヲカシイヂヤナ
  イカト云フ議論モ出マスケレドモ今
  言フ通リ、サウ云フコトヲ私ハ今アラ
  探シヲシテ、追窮スルヤウナコトハ致
  シマセヌ、唯私ハ玆ニモウ一ツ疑問ガ
  アル、只今幣原總理代理ノ言ハレルヤ
  ウナコトデ、私ハ海軍ガ安心シテ居ル
  道理ガナイト信ズル、私ハ何處マデモ
  海軍當事者ガ之ヲ言ヒ出スト云フト、
  又奉答文ガドウトカ敷奏文ガドウト
  カ、內閣ノ責任ガ何處ニアルカトカ、
  云フヤウナコトニナルカラ、私ハ細カ
  イコトヲ今日言ッテ、時間ヲ取ルコトヲ
  シマセヌ、今マデノ質問應答ノ繰返シ
  ハセヌ、セヌケレドモガ、兎ニ角海軍
  部內ニ於テドウ云フ事ヲ考ヘテ、責任
  者トシテ我國ノ國防ヲ維持シ、安固ヲ
  期スルコトニハドウデナケレバナラヌ
  ト云フコトハ海軍ノ方ニハ腹ガキマッ
  テ居ルノデアル、ソレダケノコトハ畏多
  クモ奉答シテアルニ相違ハナイ、ソコ
  デ此海軍ト云フモノハ、只今ノヤウナ、
  第二次補充計畫ト云フヤウナ、新·地
  理代理ハ御聽キニナッテ居リマセヌデ
  シタガ、一昨日カラ昨日ニ掛ケテ、內
  田信也君ノ質問ニ對スル海軍大臣ノ御
  答辯ハ、殆ド吾々ガ算盤ヲ彈ケバ分ル
  マデノ必要ナ量ト云フモノヲ御答辯ナ
  スッタト云フヤウニ相成ッテ居ル、唯オ互
  ヒニ金額ヲ玆ニハッキリ言ハナイダケ
  デ、モウ分リ切ッテ居ルノデス、モウ少
  シ算盤ヲ知ッテ居リ、海軍ノ事情ヲ知。ツ
  テ居ル者ガ見レバ······ソレダカラ海軍
  ガ只今ノ御答辯ノヤウナコトデ、其場
  合デ結構デゴザイマスト言ッテ承知シ
  テ居ル道理ハナイ、之ヲ承知シテ居ル
  ト言ヘバ海軍ト云フモノハソレハ餘
  程ドウモ私ハ自己ノ責任ヲ顧ミナイモ
  ノダト思フガ、サウ云フコトハ私ハナ
  イト思フ、シテ見ルトソコニ現内閣ト
  云フカ、濱口首相ト云フカ、海軍大臣
  ナリ、海軍トノ間ニ何カ其處ニ確實ナ
  責任ヲ負合ッテ居ラレルコトガナクテ
  ハ私ハナラヌト思フ、デ世ノ中デ傳ヘ
  ルニハ濱口首相カラ海軍大臣へ、其
  場合ハ必ズ考慮シテヤルト云フ一札ガ
  入レテアルト云フヤウナコトモ傳ヘラ
  レテ居リマスガ、斯ウ云フコトガドウ
  云フ關係ニナッテ居ル、何故私斯ウ云フ
  コトヲ聞クカト云フト、コンナコトヲ
  申スト云フト御笑ヒニナルカモ知レマ
  セヌガ、私ハドウノ斯ウノト云フ譯デ
  ハ決シテアリマセヌガ、今モ言フ通リ、
  此內閣ト雖モ迭ラナイトハ限リマセ
  ヌ、何時デモ其時ノ內閣、殊ニ大藏當
  局ガ困ルノハ、前內閣ト海軍トノ間ニ
  色々ナ約束ガアリ、陸軍トノ間ニモ約
  束ガアッテ内閣ガ迭ッテ、反對黨ノ內閣
  ニナッテモ、陸海軍軍費ニ對シテハ前
  ノ內閣ガ約束シテ居ル以上ハドウシテ
  モヤラナケレバナラヌト云フコトガ出
  來テ、非常ニ此軍事費ト云フモノヽ豫
  算編成ニ困ル、其事實ハ明瞭ニアリ、私
  モ實ハ經驗ヲシテ居ル、ソレダカラ斯
  ウ云フコトガ、今ノ內閣ガ今此處デハ
  吾々ニ只今總理代理ガ仰シヤルヤウナ
  コトヲ言ッテ此議會ヲ御通シニナッテ濟
  ミマスガ、サウ云フコトガアッテ、昭和
  九年ニ至ッテ、斯ウ云フ約束ガアル、第
  二次補充計畫ノ此費用ニ、現政府ガ之
  ヲヤラナイト云フコトハナイデハナイ
  カ、大藏大臣之ヲ容レナイ筈ハナイデ
  ハナイカト言ッテ、玆ニ今日財政計畫ニ
  ナイ、一厘モ金ハ取ッテ居ナイコトヲ
  持出サレテ、成程サウ云フ事ガアル以
  上ハ、吾々ハ當時議會デ其事ハ追窮シ
  タケレドモ、總理代理ハ斯ウ答ヘテ居
  ッタカラ、ドウモサウ云フ費用ハ出セナ
  イトハ其時ニ言ヘナイ、、誰ガヤッテモー
  -私ガヤルト云フ譯デハナイ、誰ガヤッ
  テモ、サウ云フ事ガアル爲ニ、今日マ
  デ大藏當局ト軍事當局トノ間ニハ、軍
  事費ノ編成上ニ困ル事實ガ大小澤山ア
  ル、斯ウ云フ大キイ問題ガサウ云フコ
  トニナッテ居ルト、此議會ハ只今ノ御
  答辯デ御通シニナッテモ、後日非常ニ困
  ル事ガ出來ル、ソコデ斯ウ云フ事柄ハ、
  事實ヲ言ヘバ濱口總理大臣ガ御登院ガ
  出來レバ、實ハ私ハ濱口總理大臣ニ本
  當ニ確メテ置クベキ事デアルト考ヘテ
  居リマスガドウモ今其手筈ニハ參リ
  マセヌカラ、已ムヲ得ズ今日責任ヲ負ツ
  テ居リマス、臨時代理ニ承ッテ居ルガ、
  此海軍ト總理大臣トノ-第二次補充
  計畫ト私ハ假ニ申シマスガ、ソレニ對
  スル諒解ガドウナッテ居ルカ、ソレハ白
  紙デアルカ、或ハ其間ニ相當ノ諒解ガ
  アルカ、是ダケハ今日明ニシテ置カナ
  イト、是ハ將來中々由々シキ財政上ノ
  問題デアルト考ヘマス、ソレデ是ハ金
  額ハ分ヲテ居ル筈デアリマス、ケレド
  モ、仰シヤル譯ニハ行キマスマイ、表
  向キ聞ケバ、只今ノヤウナ御答辯ヲ爲
  サレルニ付キマシテ、私ハ今日ソンナ
  揚足ハ取リマセヌガ、何處カラデモ突ツ
  込ミマスカラ、表面ハ今ノヤウナ御答
  辯ニナリマセウケレドモ、只今ノ點ダ
  ケハサウ云フ諒解ガアルトカ、或ハ其
  諒解ト云フモノハ白紙デアルトカ、是
  ダケハ此國民ノ代表者ニ、公ノ席上ニ
  於テ御示シ下サイマセヌト、後日海軍
  ト其時ノ內閣トノ間ニ容易ナラヌ問題
  ガ私ハ起ルト思フ、此處ダケ聞キタイ
  ノガ、私ノアナタニ質問スル趣意デア
  ルドウカ之ヲ明瞭ニシテ置イテ戴キ
  タイト考ヘマス

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• 005・幣原喜重郎

  ○幣原國務大臣　私ガ只今御答ヘ申シ
  マシタ所ハ何モ事實ヲ隱蔽シテ御答申
  シテ居ル趣旨デハナイノデアリマス、
  此豫算案ノ編成セラレマス時ニ、海軍
  ト內閣、其他ノ各大臣トノ間ニ色々ノ
  意見ノ交換モアリ、又總理大臣トノ間
  ニ色々ノ意見ノ交換モ勿論アッタノデ
  アリマスガ、其結果ト致シマシテ、今
  囘御協賛ヲ願ッテ居リマス此海軍兵力
  整備計畫デ、國防上ノ骨幹ハ是デ定マ
  ル、所謂第二次計畫此國防ノ骨幹ニ對
  シテ肉ヲ付ケルト云フヤウナコトハ、
  ソレハ昭和十一年度前ニ若干ノ其肉ヲ
  付ケル爲ノ計畫ハ必要デモアリマセウ
  ケレドモ、ソレハ此際ニハ何等確定シ
  ナイ、又海軍ノ方ニ於キマシテモ、此
  際之ヲ確定シナケレバナラヌ、確定シ
  テ其財源ヲドウシテモ用意シテ置イテ
  貰ハナケレバナラヌト云フ意見ヲ固執
  シタモノデハナイノデアリマシテ、兩軍
  部トノ間ニモ、總理大臣其他ノ閣僚ト
  ノ意見モ玆ニ纒マリマシテ、今日ノ整
  備計畫ナルモノハ編成セラレ、諸君ノ
  御協賛ヲ願ッテ居ルノデアリマス、何モ
  追ッテ軍艦何隻、其經費ハ幾ラト云フヤ
  ウナコトハ、必ズ其當時ニ至ッテ-昭
  和十一年度ニ近付クニ至ッテ、必ズヤラ
  ナケレバナラヌト云フヤウナ、協定ト
  申シマスカ、內交涉トカ云フヤウナモ
  ノハ、私ハ成立ッテ居ルモノデハナイト
  云フコトヲ信ジマス、又左様ナ次第デ
  モナイノデアリマス、今日私ガ申シマ
  シタコト、又海軍大臣ガ隨時申シテ居
  ラレマスコトハ、決シテ事實ヲ隱蔽致
  シテ居ルノデハナイノデアリマシテ、
  豫算ノ編成ニ際シテ色々ノ意見ノ交換
  ガアリマシタ結果、今日諸君ニ御協賛
  ヲ求メテ居ル計畫ガ定マリ、ソレカラ
  昭和十一年度ニ近付クニ至ッテ、所謂第
  二次計畫ト申シマスカ、今囘ノ計畫ニ
  多少ノ肉ヲ付ケルト云フヤウナ計畫
  ハソレハ多少樹テル必要モアリマセ
  ウケレドモ、ソレハ今日確定スベキモ
  ノニアラズ、是ハ內外ノ情勢ヲ見テカ
  ラガ宜シイ、ソレ故ニ今日如何ナル、
  何隻、何千萬圓、何億ヲ費シテ、之ヲ
  計畫スルト云フヤウナコトハ此際定メ
  ナイ方ガ宜シイ、又定メラレルベキモ
  ノデモナイト云フ趣旨デ話ガ纒マッテ、
  今日ノ提案ニナッテ居ルノデアリマス
  カラ、ソレ以上何等私ハ海軍ト內閣ト
  ノ間ニ協定ガアッタナドヽ云フコトハ
  考ヘラレナイノデアリマス

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• 006・大口喜六

  ○大口委員　只今ノ御答辯デ略〓分リ
  マシタガ、極メテ大切ノコトデアリマ
  スカラ、諄イヤウデアリマスガ簡單ニ
  私聽キ返シマス、只今ノ總理臨時代理
  ノ御答辯ニ依リマスト、今囘御提案ニ
  ナッタ海軍補充計畫以外ノ、所謂第二次
  補充計畫ト吾々ガ稱スルモノ、卽チ昭
  和十一年度以前ニ於テ、現計畫以外ニ
  現ハレ來ルベキ補充計畫ニ對シテハ、
  全然白紙デアッテ、總理大臣ト海軍大
  臣トノ間、又ハ海軍當局ト現內閣トノ
  間ニ特殊ノ諒解ハナイ全然白紙デア
  ル、而シテ世ガ傳ヘルガ如ク、總理大
  臣ヨリ海軍ニ一札ヲ入レテアルト云フ
  コトハ斷ジテナイト、斯ウ諒解サレル
  ヤウナ御答辯デアリマス、サウデアル
  ナラバアルト一言言ッテ下サレバ大分
  私ハ安心シテ、質問ハ總理大臣ニ對シ
  テハソレデ終リデ宜イノデアリマス、
  ソコヲ明ニ致シテ置キタイト思ヒマ
  ス

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• 007・幣原喜重郎

  ○幣原國務大臣　先刻申述ベタ通リデ
  アリマシテ、昭和十一年度以前ニ何等
  カノ計畫ハシナケレバナラヌ必要ガア
  ルデアラウト云フコトハ認メラレテ居
  ルノデアリマス、ソレハ豫算委員總會
  ニ於テモ申述ベタ通リデアリマスガ、
  其計畫ノ內容デアルトカ、何時カラ始
  メルト云フヤウナ時期ハ全ク定マッテ
  ナイノデアリマス、ソレハ其時ニ至ッテ
  定メテ宜シイト云フ話合ナラバアルノ
  デアリマスケレドモ、今日艦ヲ何隻、
  何千萬圓ト云フコトハ、具體的ニハ定
  マッテ居ナイト云フコトハ、是ハモウ御
  安心下サッテ宜イト思ヒマス

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• 008・大口喜六

  ○大口委員　マダ少シ判然シマセヌ
  ガソレカラ先ハ大藏大臣トノ質問應
  答デ分ッテ來マスカラ、總理大臣代理カ
  ラハ、只今ノ御答辯ヲ得テ置ケバ私ハ
  宜イト思ヒマス、總理代理御都合ガア
  ルヤウデゴザイマスカラ、今日ハ私ハ
  決シテ無理ヲ言ヒマセヌカラ、ソレダ
  ケ承レバ後ハ大藏大臣、海軍大臣ニ承
  リタイ、尙ホ私ハ承リタイ點ガアルデ
  スケレドモ、大藏大臣ニ對シテ他ノ御
  方ノ質問ガ留保サレテ居リマスカラ、
  私ハ海軍大臣ガ御出デノ上デ、海軍大
  藏兩大臣ニ向ッテ質問ヲシタ方ガ便利
  デアリマスノデ、出來得ベクンバ私ノ
  質問ハ玆ニ留保シテ置キマシテ、大藏
  大臣ニ對スル他ノ御方ノ御質問ガ終リ
  マシテ、都合ガ付ケバ更ニ內務大臣ニ
  對スル岡田君ノ御質問ガ終リマシテカ
  ラ、ソレカラ私ノ續イタ質問ヲ願ヘレ
  バ結構ダト思ヒマスガ、是ハ委員長ノ
  御指揮ニ從フコトニ致シマス

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• 009・本田恒之

  ○本田委員長　宜シウゴザイマス-
  ソレデハ高橋君

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• 010・高橋熊次郎

  ○高橋委員　昨日ヤリ掛ケテ居ッタ質
  問ヲ續ケテ申述べマスガ、是等ノ質問
  ニ付テハ、同僚ノ諸君竝ニ同僚先輩諸
  君ノ中カラモ色々關係シタコトニ付テ
  御質問モアルダラウト思ヒマスカラ、
  私ハ大體ニ付テ質疑ヲ致シタイト思フ
  次第デアリマス、昨日ノ質問ハ三倍八
  割ニ止メル制限ヲ致シタト云フコトニ
  付テ、私ノ質問ノ第一要點ヲ申述ベタ
  ノデアリマス、ソレデ四十三年ニ土地
  地價ノ修正ヲ行フタ、其際ニハ地價ノ騰
  貴率ト云フモノヲ、市街宅地ニ於テハ
  十八倍、郡村宅地ニ於テ七倍二割ニ止
  メタ、是ハ地價ヲ標準トシタモノデアツ
  タノデアル、今囘ハ全然ソレト趣旨ヲ
  變ヘテ、地租ノ負擔額ヲ三倍八割以上
  ニハ增加セシメナイト云フコトデ切ッ
  タノデアル、斯ウ云フコトデ、私ハ以
  前ノ十八倍トカ、七倍二割ト云フコト
  ト三倍八割ト云フコトヲ比較シタノ
  デハナイノデアル、ソレニ付テ色々御
  意見ガアッタヤウデアリマスルガ、私ハ
  何カ自分ノ趣旨ガ間違ヲテ居ルカト思ツ
  テ、色々書類ナドヲ出シテ調ベテ見マ
  シタ、計算モシテ見マシタ、所ガ靑木
  政府委員ノ言ハレルノハ、四十三年ノ
  時分ニハ郡村宅地ヲ七倍二割ニ止メ、
  ソレカラ市街宅地ヲ十八倍ニシタト云
  フコトハ、其時分ニハ地租ノ課率ガ同
  時ニ修正サレテ、現行地租ノ稅率ガ
  二·五トナッタノハ、其時デアッテ、其時
  マデハ市街宅地ト云フモノハ百分ノ二
  十デアル、郡村宅地ハ百分ノ八デアツ
  タ、ソレデアルカラシテ、地租ニ急激
  ナル變化ガアッテ、或ハ比例ノ權衡ヲ失
  スルヤウナコトガアッテハイカヌト云
  フノデ、二十ト八ト云フ隔リガアッタ
  モノヲ、一率ニ二·五ニ直スノデアル
  カラ、從テ其制限率モ十八倍ト七倍二
  割トシタノデアル、ソレヲ改正ノ稅率
  ニ當箝メルト云フト、共ニ二·二五ト云
  フヤウナコトニ兩方ナルカラ、ソレデ
  均衡ガ取レルト云フヤウナコトヲ私ニ
  逆襲サレル御積リデアッタト初メテ伺
  ヒマシタ、色々ニ罫紙一パイニ書イテ
  調ベタノデアリマスガ、結論ハソンナ
  話デ、何ノコトカト思ッテガッカリシタ
  ノデアル、ソンナヤウナコトヲ私ハ尋
  ネテ居ルノデハナイ、唯私ハ、地價ヲ
  前ニ標準トシタノデアル、私ノ立論ハ
  今囘地租ノ負擔ヲ捉ヘテ之ヲ三倍八割
  ニ止メルト云フヤウナコトデナクシ
  テ、賃貸價格ト云フモノガ今日出テ居
  ルノデアルカラ、其賃貸價格ヲ標準ニ
  定メラルベキデハナカッタカ、斯ウ云フ
  コトヲ私ハ此處デ論ジテ居ルノデアリ
  やっ、左樣デアリマスカラ、其以前ノ
  關係ト云フモノハ、前ハ只地價ヲ標準
  トシテ、地價ノ十八倍ト七倍二割ト云
  フコトデ止メタ、今度ハソレニ反シテ
  賃貸價格ニ變ヘタノデアルカラ、全然地
  價ト云フモノハ直ヲテ居ル、賃貸價格ヲ
  押ヘテ、是ノ何倍ニ止メルト云フコト
  ニナルノデハナイカ、斯ウ考ヘルノデ
  アリマス、サウスルト昨日モ一寸言ヒ
  掛ケマシタ如ク、實際ニ當リマシテ、
  賃貸價格ヲ捉ヘテ見ルト三倍八割ヲ掛
  ケテ、三·八デ割ルノデアリマスカラ、
  其結果實際今マデノ稅率ノ四·五、二·
  五、五·五ト云フモノガ、ソレガ倍數ニ
  變フテ、田畑ノ方面デハ賃貸價格ニ於テ
  四倍五割、宅地ノ方デハ二倍五割、其
  他ノ土地ハ五倍五割ト云フモノハ賃
  貸價格デ以テ制限率ガ變ッテ來ルノデ
  アリマス、詰リ百圓ノ田畑デアリマス
  ナラバ賃貸價格ガ四百五十圓マデハ取
  レル、宅地ノ方ハ百圓ノ宅地デアッタナ
  ラバ、是ハ二百五十圓デ止メル、其他
  ノ土地ハ、百圓ノ地價デアッタモノガ
  ドノ位ニナルカト云フト、五百五十圓
  ノ賃貸價格マデハ課稅サレル、斯ウ云
  フヤツナコトニナル、ソレデアルカラ
  其間ハ非常ニ不權衡ヲ來ス、斯ウ云フ
  ノガ私ノ此問題ニ對スル質問ノ第一點
  デアルノデアリマス、マダ是ダケヂヤ
  ナイ、之ニ付テハ色々他ニ疑問モアルノ
  デスガ、是ダケニ付テハ別ニ御異議ハ
  アルマイト思ヒマス、御異議ガアッタラ
  簡單ニ御說明ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=10

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• 011・青木得三

  ○靑木政府委員　只今仰セニナリマシ
  タコトハ、私モ洵ニ左樣ニ心得テ居リ
  やっく、卽チ之ヲ地租ノ三倍八割ニ制限
  ヲ致シマスノデ、宅地ニ付テハ賃貸價
  格ハ現在ノ地價ノ二倍半ニ止マルト云
  フコトニナリマス、田畑ニ付テハ四倍
  半ニ止マルト云フコトニナリマス其
  他ノ土地ニ付テハ五倍半ニ止マルト云
  フコトニナリマス、併ナガラ地租ノ負
  擔ハ宅地モ田畑モ、其他ノ土地モ總テ
  三倍八割ニ止マルノデアリマシテ此
  間ノ權衡ハ全ク能ク得テ居ルト思ッテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=11

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• 012・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私ハ現行ノ課率ト云フモ
  ノハ是ハ時々財政ノ都合其他ニ依ツ
  テ變ヘ得ルモノデアリマシテ、課稅
  標準ト云フモノハ、擔稅力ヲ認メル所
  ノ是ハ重要點デアルノデス、是レダケ
  アルト云フ擔稅力ノ基礎ト云フモノガ
  課稅標準デアリ、所謂賃貸價格デアル
  ノデアル、ソレデアルカラ、多額ノ費
  用ト、非常ナ努力ヲ費シテ之ヲ作上ゲ
  タノデアル、ソレデ今度ハ課率ニ持ッテ
  行ッテ、サウシテ課率ト云フモノヲ、ソ
  レニ掛合ハシテ、其結果ヲ見テ、公平
  デアルカ、不公平デアルカナドヽ云フ
  コトハ、此場合考フベキモノデナイダ
  ラウト思フ、ソレデアルカラ昨年ト今
  年ト一年ノ間ニ、昨年ハ四倍五割デ止
  メタノヲ、今年三倍八割デ止メルト云
  フコトハ、非常ナ違ヒデアル、三倍八
  割ト二倍八割ト云フノハ、餘程ノ違ヒ
  デアル、其違ヒト云フモノハ、何ノ爲
  ニ生ジタカト云フ吾々ハ疑問ヲ生ズル
  ノデアル、是ガマダ議會ノ問題ニナル
  マデハナラナカッタノデアルガ、其事ハ
  斯ウ云フ工合ニ改正ヲヤルノダト云フ
  コトデ、天下ニ御發表ニナッテ居ルノデ
  アル、ソレデアルカラ一年ノ間ニ、制限
  ガソンナニ下ルトカ上ルトカ云フヤウ
  ナコトハナイ筈デアル、此制限ノ數字
  ト云フモノハ、甚ダ不確實ナモノデアッ
  テ、私ハ三倍八割ニ止メタト云フコト、
  ソレ自身ガ私ノ腑ニ落チナイコトデア
  リマス、昨年ト今年トニ於テ、左樣ナ隔
  リガアルト云フコトモ私ハ中々諒解ニ
  苦シムノデス、サウ云フコトデアリマ
  スカラドウ考ヘテ見マシテモ、此賃貸
  價格デ公平ニ行クト云フコトヲ建前ニ
  シテ、賃貸價格ヲ課稅標準ニサレタ、ソ
  レデアルカラソレヲ吾々ハ取ッテ行カ
  ナケレバナラヌ、課率ノ改正ヲ以テ均
  衡ヲ得ルナドヽ云フコトハ、此稅ノ實
  際ノ建前デハナイト思フ、ソレハ何時
  デモ大藏大臣カラ御話ニナル如クニ減
  稅ト稅法ノ改正ハ別箇ニシナケレバナ
  ラヌ、斯ウ吾々ハ始終御叱リヲ受ケテ
  居ル、デアリマスカラ課率ノ上下ト云
  フモノハ、是ハ減稅ノ方面デアル、負擔
  ノ公平ヲ目的トシタル稅法ノ改正トハ
  違フ、賃貸價格ニ改メタ其賃貸價格ト
  云フモノハ、地目間ノ公平ト云フコト
  モ十分考慮セラレ、實地ニ就テ調査ヲ
  致シタ、斯ウ云フコトニ吾々ハ承知致
  シテ居ルノデアル、ソレデアリマスカ
  ラ私共ハ賃貸價格ト地租ノ課率ト云フ
  モノトヲ兩方混合シテ、負擔ノ公平ヲ
  圖ッタンダト云フ御議論ハ、私共ハ受入
  レル譯ニハ行キマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=12

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• 013・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、只
  今ノ御質問ヲ伺ヒ又昨日ノ御質問カラ
  考ヘテ見マスト、高橋サンノ御考ハ
  地租ヲ倍數デ制限シタノハ甚ダ不都合
  デアッテ、地價ニ對スル賃貸價格ノ割合
  詰リ地價ト賃貸價格デ倍數ヲ制限スベ
  キモノデアル、斯ウ云フ御意見ノヤウ
  ニ考ヘラレマスルノデ、私モ實ハ昨晩
  カラ今朝ニ掛ケテ計算シテ見タノデア
  リマス、例ヘバ分リ易ク申シマシテ、
  地價ニ對シテ賃貸價格ヲ四倍ニ止メ
  ル、ソレハ宅地デアラウト、田畑デア
  ラウト、其他ノ土地ニ付テモ地價ニ對
  シテ賃貸價格ハ四倍以上ヲ超エルコト
  ガ出來ナイ、斯ウ云フヤウニヤルト、
  高橋サンノ御趣旨ニ合スルヤウニ私ハ
  思ヒマス、サウスルトドウ云フ結果ガ
  玆ニ出テ參ルカ、例ヘバ地價百圓ト致
  シマスト其四倍ニ止メマスカラ、賃
  貸價格ハ四百圓ト云フコトニナリマ
  ス、サウスルト宅地ニ付テハ地價百圓
  ノ人ハ只今二圓五十錢拂ッテ居ル、所ガ
  今度ハ賃貸價格四倍ニ止メマスカラ、
  其四百圓ノ百分ノ三·八ヲ取ラレルノ
  デアリマシテ、十五圓二十錢ニナリマ
  ス、ソコデ是ハ六倍何割ニナルノデア
  リマス然ラバ田畑ニ付テハドウナル
  カト云フト、只今四圓五十錢拂ッテ居リ
  マス人ガ、十五圓二十錢拂フコトニナ
  リマスカラ、是ハ三倍三割何分ノ倍數
  ニナルノデアリマス、其他ノ土地ニ付
  テハ、只今五圓五十錢拂ッテ居ル、是ガ
  十五圓二十錢ニナリマスト、二倍七割
  何分ノ制限ヲ受ケルコトニナリマス、
  サウ致シマスト、宅地ノ方ハ非常ニ高
  ク、倍數ガ上ッテ、田畑ハ比較的少イ、
  其他ノ土地ハ尙ホ少イト云フコトニナ
  ルノデアリマス、或ハ御意見ハ今日ノ
  ヤウナ狀況ニ於テハ、宅地ノ地租ガ六
  倍位ニ激增シテモ宜シイガ、田畑其他
  ノ地租ハ激增ノ割合ガ少イ方ガ宜イト
  云フ御意見デアリマスレバ、此地價ニ
  對スル賃貸價格ノ倍數ヲ以テ制限スル
  ト云フコトモ一ツノヤリ方ト思ヒマ
  ス、ケレドモ私共ハ左樣ニ考ヘマセヌ
  ノデ、宅地デアリマセウトモ、田畑デ
  アリマセウトモ、其他ノ土地デアリマ
  セウトモ、地租ヲ負擔スル人ノ苦痛ハ
  其課稅標準デハナクシテ、納付スル地
  租ソレ自身ガ、租稅ヲ納メル人ノ苦痛
  ナノデアリマスカラ、賃貸價格ハ如何デ
  アリマセウトモ、實際納メル租稅ノ激
  增スルコトヲ緩和スル、斯ウ云フ考デ
  アリマスカラ、田畑、宅地、山林其他ヲ通
  ジテ、同ジヤウナ割合ノ三倍八割ニ止
  メルコトヲ以テ至當デアルト考ヘマス
  カラシテ、地價ニ對スル賃貸價格ノ倍
  數デ制限致シマセヌデ、地租ニ對スル
  地租ノ倍數デ以テ制限ヲ致シマシタ、
  四十三年宅地價修正ノ際ト全ク同ジ方
  針デアリマス

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• 014・高橋熊次郎

  ○高橋委員　今ノ地租ヲ激增シナイト
  云フコトヲ標準トシテヤッタト仰セニ
  ナルケレドモ、旣ニ三倍八割-三倍
  七割九分九厘ト云フ近所ニアルモノハ
  ヤハリ同ジ他ノ比例ニ依ッテ激增サレ、
  更ニ第二次激增ヲサレテ居ルノデア
  ル、ソレデアリマスカラソレ以上ノ所
  デダケサウ云フコトヲ御計リニナッタ
  所ガ、アナタノ仰セニナルヤウナコト
  ハ少シモ實際ノ上ニ於テハ激增ヲ止メ
  タト云フ御趣旨ニハ適ハナイノデス、
  此極ク稀レナル例ダケ稅金ニ致シマシ
  タナラバ、三·八デ幾ラニナル、百七八
  十萬デアル、賃貸價格ニシテ四千二三
  百萬圓、是ダケノモノガソレダケノ利
  益ヲ受ケルノデアル、今激增シテ居ル
  ト云フヤウナモノハ一〓ニハ言ハレマ
  セヌガ、ソレハ除外例モアリマセウ、
  併ナガラ大摑ミニ見ルト、左樣ナ激增
  スルモノハ、擔稅能力ハ其以下ノモノ
  ヨリモ多イト吾々ハ考ヘルノデアリマ
  スソレニ拘ラズ其擔稅力ノ多イト云
  フヤウナモノダケノ負擔ヲ、急激ナル
  增加ト云フモノハ困ルダラウカラ、擔
  稅能力ノ豐富ナモノハ之ヲ制限シテヤ
  ル擔稅力ノ比較的稀薄ナモノハ當リ
  前ニ取ッテヤル、斯ウ云フ風ニ相成ルト
  思フノデアリマス、左樣ナコトノ負擔
  輕減ノ趣旨ト云フモノハ、マルデ頓珍
  漢デアル、之ニ付テハドウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=14

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• 015・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、此
  度ノ賃貸價格ノ調査ハ賃貸價格ヲ以
  テ地租ノ擔稅力ヲ計ルニ、最モ適當ナ
  ル標準ト考ヘマシテ調ベタノデゴザイ
  マスカラ、其賃貸價格ヲ、在リノ儘制
  限シナイデ取リマシテ、ソレガ爲ニ地
  租ガ十倍ニナリマシテモ二十倍ニナリ
  マシテモ、ソレガ擔稅力ニ丁度當篏ッタ
  狀態デアルト云フ考ヘ方ハ、私ハ必ズ
  シモ否定出來ナイト思ヒマスケレド
  モ、假令擔稅力ニ旨ク當篏ッテ居ルト致
  シマシテモ、現在納メテ居リマス地租
  ヨリモ、一時ニ五倍モ六倍モ澤山ノ稅
  ヲ納メナケレバナラヌト云フコトハ
  非常ニ其人ノ苦痛デアリマス、ソレデ
  アリマスカラシテ、ソレガ理論ハ貫カ
  ヌカモ知レマセヌガ、併シソレニ何等
  制限ヲ加ヘナイナ云フヨリハ、或ル程
  度ノ制限ヲ加ヘタ方ガ宜シイ、サウナリ
  マスト只今御話ニナリマシタヤウニ、
  三倍七割九分ノ人ハ制限ヲ受ケナイデ
  三倍八割以上ノ人ガ制限ヲ受ケル、是
  モアナタノ仰シヤル通リデアリマス、ケ
  レドモ餘リ多ク激增スルコトガ氣ノ毒
  デアルカラト言ッテ、或ル程度ノ所ニ押
  ヘマスレバ、四倍ニ致シマシテモ五
  倍ニ致シマシテモ、其五倍ノ一寸下ノ
  方ノ人ハ制限ヲ受ケナクナルト云フコ
  トハ是ハドウモ已ムヲ得ナイコトヽ
  思ヒマス、ソレカラ先程答辯ヲ落シマ
  シタガ、三倍八割ト云フノハ、稅率ガ
  三分八厘ノ時ニ三倍八割、此前減稅問
  題ノ起ル前ニハ四倍五割デアッタ、其時
  ニハ稅率ガ四分五厘デゴザイマシタカ
  ラ、先程アナタガ仰セラレマシタ宅地
  ニ付テハ二倍半ニナリ、田畑ニ付テハ
  四倍半ニナリ、其他ノ土地ニ付テハ五
  倍半ニナル、是ハ地價ト賃貸價格ノ割
  合デアリマスガ、其稅率ガ四分五厘ノ
  時ニ四倍五割、三分八厘ノ時ガ三倍八
  割デアリマスカラ、アナタノ仰セラレ
  ル二倍半、四倍半、五倍半ト云フノハ
  四倍五割ノ時モ、三倍八割ノ時モ、稅
  率ガ變ヲテ居リマスカラ、其結果ハ同ジ
  デゴザイマス

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• 016・高橋熊次郎

  ○高橋委員　結果ハ同ジデス、結果ガ
  違フヂヤナイカト云フコトヲ聞イ居ル
  ノヂヤナイ、其時分ニハ三倍八割ニ止
  メ、昨年ハ四倍五割マデノ增加ヲ認メ
  テ居ル、斯ウ云フコトデス、增加率ガ
  昨年ヨリ多イ、一年後ノ今日低クシタ
  ト云フコトハドウ云フ理由ニ基クカ、
  斯ウ云フコトヲ聞イテ居ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=16

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• 017・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、是ハ
  別段三倍八割ト云フ端數ノ數字、或ハ
  四倍五割ト云フヤウナ端數ノ數字ニ付
  テハ別段何モ根據ガゴザイマセヌ、私
  共ノ方ノ大體ノ見當ガ四倍位ニ制限ス
  ルコトヲ以テ妥當デアルト、斯ウ考ヘ
  テ居ッタノデアリマス、五倍以上ニナ
  ルノハ氣ノ毒デアッテ、四倍程度ガ妥當
  デアルト思ッテ居リマス、所ガ地租ノ改
  正ハ中々大事業デゴザイマシテ、納期
  ヲ普通ノ年ヨリハ少シ遲ラセマシタケ
  レドモ、今年ノ十一月ニハ一切ノ稅務
  署ニ於ケル土地臺帳ヲ了シマシテ、市
  町村ニ通知シマシテ、市町村デ臺帳ヲ
  書改メナケレバナラナイト云フコトデ
  アリマシテ、餘程敏速ニ仕事ヲシナケ
  レバナラナイノデ、ソレデ四倍見當ノ
  時ニ、稅率ガ四分五厘デアッテ、倍數ハ
  四倍五割ト致シテ置キマスト、アナタ
  ノ仰セニナリマシタヤウナ、宅地ニ付
  テハ地價ノ二倍半ト云フモノヲ賃貸價
  格ニスレバ宜イノデアリマス、ソレカ
  ラ又田畑ニ付テハ、地價ノ四倍五割ニ
  スレバソコニ賃貸價格ガ出テ參リマ
  シテ、計算上非常ニ事務ノ手數ヲ省略
  スルコトガ出來マス、ソレデアリマス
  カラ、前ノ四倍五割ハ稅率ノ四分五厘
  ノ時ニ四倍五割トシ、今度ハ稅率ガ三
  分八厘ニナリマシタカラ三倍八割ニ致
  シマシタノデ、別段八割トカ五割ト云
  フ端數ニ付テ理窟ガゴザイマセヌ、唯
  大體ノ見當ヲ四倍見當ニ押ヘテ、事務
  ノ便利ヲ考ヘテ四倍半若クハ三倍八割
  ニシタト云フノデアリマス

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• 018・高橋熊次郎

  ○高橋委員　事務ノ便宜ト云フヤウナ
  コトデ、大體ハ四倍ト云フコトヲ標準
  トシテ上下ヲ見タ、斯フ云フヤウナコ
  トデアリマス、私ハソレモ一ツノ有力
  ナル理由デアリマセウ、併ナガラ大體
  增減ナキ範圍ダト云フヤウナコトヲ固
  執スル爲ニ、サウ云フコトヲ申サレル
  ガ、餘リ此時勢ニ依ル所ノ賃貸價格ノ
  增加ト云フモノヲ、或ル程度ニ止メル
  ト云フヤウナコトヲ、之ヲ考慮サレテ
  先ヅ今度ハ三·八位ニ止メルト云フト
  地租ニ大ナル增減ガナクナル、斯ウ云
  フヤウナコトヲ考ヘテ、賃貸價格ヲ押
  ヘタノヂヤナカラウカ、斯ウ云フ工合
  ニ私共ハ考ヘマスガ、是ハヤハリ一ツ
  ノ理由ニナッテ居ルデアラウト思フノ
  デアリマスガ、如何デスカ

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• 019・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、地租
  ニ增減ナカラシムルト申シマシタノハ
  日本全國ニ於ケル地租ノ總額ニ付テ增
  減ナカラシムルト云フ考デゴザイマシ
  タガ、其增減ナカラシムルト云フコト
  ニ付キマシテハ、倍數制限ヲシテ制限
  ヲシタ爲ニ地租ガ減ルト云フコトヲ考
  慮ニ入レテ、其上デ增減ナカラシムル
  ト云フコトデアリマシテ、其計算ハ先日
  御手許ニ差上ゲマシタ表ノ中ニ出テ居
  リマス、隨テ只今ノ御話ノ三倍八割、
  或ハ四倍五割ト云フヤウナ激增ヲ緩和
  スルニハ地租ニ增減ナカラシムル爲ニ
  ヤッタノデアルカト云フ御質問デゴザ
  イマスレバソレハ左樣デハゴザイマ
  セヌノデ、是ハ三倍八割ニナリマシテ
  モ、中々相當ナ負擔ノ增加デアルト思ッ
  テ居リマス、地租ノ增減ナカラシムル
  ト云フノハ、國家ノ徵收シマシタ地租
  ノ總額デアリマス、サウシテ計算ヲ致
  シマシタ時ハ、激增制限ノ爲ニ減リマ
  ス金額ハ、其計算ノ中ニ入レテ、サウ
  シテ增減ナカラシムル計算ヲ採ッテ置
  イタノデアリマス

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• 020・高橋熊次郎

  ○高橋委員　ソレハ其通リダト言ハレ
  レバ、地租法ノ改正ノ根本ガグラ付イ
  テ來マスカラ、サウハ御答辯ハ出來マ
  イト云フコトハ、豫メ私モ豫想シテ居。ツ
  タノデアリマスカラ別ニソンナ答辯ニ
  驚キハシマセヌガ、併シ私ガ考ヘルノ
  ニ色々ナ今マデノ質問應答ニ付テ論議
  ハアリマシタケレドモ、又足リナイ所
  ハ同僚、先輩ノ諸君ニ補足シテ戴クト
  云フコトモ豫想シテ居リマス、又私ダ
  ケ時間ヲ喰フト云フコトハ、此場合恐
  縮ト存ジマスカラ、段々素通リヲスル
  點モアルカト思フカ知レナイガ、私ハ
  ソレヲ見遁シテ居ルノデハナイ、サウ
  云フコトハ豫メ御承知置ヲ願ヒタイ、
  而シテ私ハ斯ウ考ヘテ居ル、今ノ質問
  ノ答辯ノ中カラ考ヘテ見マシテモ、ソ
  レナラバ私ハ三倍八割ニ止メタ-當
  然擔稅能力ガアリ、ソレダケノ價格ガ
  アル、能力ノアルト云フ土地ヲ、負擔
  ノ激增ヲ防グガ爲ニ止メタト云フダケ
  デ、擔稅能力ノ豐富ナルモノヲ、之ヲ
  見遁シタト云フコトニハ、ソレハ又意
  見ノ立テ方ニ依ッテ多少ノ相違モアリ
  マセウカラ、ソレハ時間ガナイカラ先
  ゾ預リニシテ置キマス、預リニシテ置
  キマスガ、ソレダケノ免稅-免稅ト
  云フト語弊ガアリマスガ、ソレダケハ
  免稅サレタ譯デ、價格カラ落サレルノ
  デスカラ、價格ヲ落シタ部分ダケハ誰
  ガ負擔シタカト云フコトヲ吾々ハ考ヘ
  ルノデアリマス、ソレヲ誰ガ負擔シタ
  カ、增減ナイト云フコトニナッテ、ズツ
  ト按配サレテ居ルノダカラ、誰カ負擔
  シナケレバナラヌ、詰リ負擔ヲスルト
  云フ積極的ノコトバカリ言ッテ居ルノ
  デハナイ、是ハ三百的ニ色々議論サレ
  ルト、又ムヅカシクナルカラ豫メ豫防
  線ヲ張ッテ置クノデアリマスガ、是ハ消
  極的ニ、若モソレハ其通リニ、當リ前
  ニ、是ガ幾ツトカ、モウ少シ制限率ヲ
  高メルト云フコトニナレバ、其間ノ地
  租ノ增加ト云フモノハ、他ノ一般ノモ
  ノ其以下ノモノニ均霑シマシテ、課率
  ガモット下ッテ宜シイト云フコトニナル、
  四·五デナク、四·三ニナルカ、四·二ニ
  ナルカ、或ハ四·四ニナルカ、ソコハ
  分リマセヌケレドモ、兎モ角地租ノ減
  少サレタ額ト云フモノハ其下級ノ者ノ
  土地ノ頭割ニ、其負擔ヲサセル原因ヲ
  拵ヘルコトニナル、斯ウ云フコトニナ
  ル、ソレデアリマスカラ輕減サレタ三
  倍八割デ止メラレタ、其上級ノモノヽ
  負擔スベキ增加地租ト云フモノハ、三
  倍八割以下、卽チ下級ノ土地ノ負擔ニ
  歸シテ、下級ノ土地ノ犠牲ニ依ッテ三
  倍八割以上ノ土地ハ負擔ガ輕減サレタ
  事ニ相成ッテ居ル、斯ウ云フコトニ私
  共ハ見ル、是ハドウモ私共ハ甚ダ奇怪
  至極デアルト斯樣ニ考ヘテ居ル、ソレ
  デアリマスカラ、三倍八割制限以下ノ
  下級ノ土地ノ納稅者ト云フモノハ、是
  ダケハ增稅ヲサレタト云フコトニ相成
  ルノデアリマス、ソレハ私ハ見遁スベ
  カラザル事實デアラウト思フノデアリ
  マスガ、是ハ大藏大臣カラ一ツ御答辯
  ヲ願ヒタイト思ヒマヌ、極ク簡單デス
  カラ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=20

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• 021・井上準之助

  ○井上國務大臣　道理ハ高橋サンノ言
  ハレル通リデアリマス、若シ七倍十倍
  ト云フモノヲ、ソレダケ餘計取ッテ、サ
  ウシテ地租ノ總額ヲ變ヘヌト致シマス
  レバ誰カガ負擔シナケレバナラヌモ
  ノヲ負擔致シマスカラ、他ノ誰カガ負
  擔シタ者ガアル譯デアリマス、併シ今
  高ガ大體分ヲテ居ルヤウデアリマスカ
  ラ、數字ヲ政府委員カラ御說明致ザセ
  マセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=21

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• 022・高橋熊次郎

  ○高橋委員　ソレハ御計算ニナッタ數
  字ハ出テ居リマス、賃貸價格ニ於テハ
  四千三百萬圓デアル、三·八デスルト云
  フト百六十六萬一千圓、ソレダケニ減ズ
  ルヤウニナル四·五デ計算スルト約二
  百萬圓-地租ト云フモノガ百九十何
  萬圓ニナル、ソレデアリマスカラ之ヲ
  實際ニ於テ考ヘテ見マスルニ、第一ニ擔
  稅能力、擔稅能力ト云フコトヲ當局者
  モ大藏大臣モ重キヲ置イテ居ルガ、土
  地財產ヲ持ッテ居レバ、其土地自體ト
  云フモノニ擔稅能力ガ生ズルモノデア
  ルト云フコトヲ認メテ宜イ、ソレデア
  ルカラ其年ノ景氣不景氣、或ハ物價ノ
  値下リト云フコトハ考慮ニ入レナイト
  言フコトヲ仰シヤッテ居ル、ソレナラバ
  當然增加致シタモノハ擔稅能力ヨリ
  以上ニ豐冨ナモノデアルト言ハナケレ
  バナラヌ、豐富ナモノヽ減稅ヲシテ、
  其減稅額ダケヲ他ノ貧弱ナル所ノ土地
  ノ頭ニ之ヲ課ケテ行クト云フコトハ
  負擔ノ公正ト云フ觀念ヲ著シク裏切ル
  モノデハナイカ、斯ウ吾々ハ考ヘルノデ
  アル、私共ハ擔稅能力ノ豐富ナモノハ
  相當ニ擔稅能力ヲ私ハ上ゲテ行カナケ
  レバナラスト思フ、ソレデアリマスカ
  ラ、私ハサウ云フ意見ヲ申述ベテ居ル
  ノデアリマス、ソレニ拘ラズ今囘ハ却
  テ擔稅能力ノ豐富ナモノニ對シテハ恩
  惠ヲ施シ、擔稅能力ノ豐富デナイモノ
  ニ對シテハ、是ハギリ〓〓結著マデソ
  レヲ課稅標準ニ取ッテ行クト云フコト
  ハ少クモ稅法ヲ改正ニナルト云フ、
  負擔ノ公正ヲ期スルト云フ觀念ヲ裏切
  ルモノデハナイカ、斯樣ニ考ヘテ居ル、
  東京市ノ例ヲ取ッテ見マシテモ、丸ノ內
  ノ如キ、東京驛前ノ如キハ非常ニ激增
  ヲ致シテ居ル、二十倍三十倍或ハ百倍
  ノ激增ヲ致シテ居ル、左樣デアリマス
  カラ此モノヲ三倍八割ニ止メテ置キ、
  東京附近ノ市街宅地ハ左樣ニ激增ヲシ
  テ居ラヌノニ、是ハ激增シタ三倍八割
  ダト云フノデ、殆ド全額ニ近イモノマ
  デ課稅標準ニ取ラレル、玆ニ於テ誰ガ
  考ヘテ見テモ、四谷ノ奧アタリヤ、ア
  ノ邊ノ土地、品川ノ一部邊リノ土地ト、
  丸ノ內ノ丸「ビル」ヤ何カノ建ッテ居ル
  土地ト比較致シテ、是ガ急激ナル增加
  ヲ恐レルカラ三倍八割ニ止メル、品川
  ヤ新宿邊ノハ三倍八割ガ相當ナドト
  云ッテ全額デ止メルト云フヤウナコト
  ハ、誰ガ考ヘテ見テモ負擔ガ公平ダナ
  ドトハ考ヘラレナイ、ソレデアリマス
  カラ此制限率ト云フモノヲ寧ロ低クス
  ル、昨年ハ四倍五割ニ止メタノヲ、今
  年ハ三倍八割ニ下ゲタナドト云フノハ
  沙汰ノ限リデアッテ、之ヲ上ニ上セルコ
  ソ適當ナモノデアル、成ルベク上セテ、
  下級ノモノヽ負擔ヲ幾分ナリトモ減ズ
  ルト云フコトノ建前ノ方ガ宜カラウト
  思フ、上セタラ上セタ切リ、下ゲタラ
  下ゲタ切リデハナイノデアル、地租ノ
  增減ヲサセナイト云フコトヲ標準トシ
  テヤッテ居ルノデアリマスカラ、上セ
  テ、餘計取レタダケガ下級ノモノヽ頭
  割ガ低クナル土臺ニナルノデアル、斯
  ウ云フコトヲ考ヘル時ニ於テ私ハ只今
  ノ答辯デハ到底滿足出來ナイノデアリ
  マスカラ、モウ一應御答辯願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=22

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• 023・井上準之助

  ○井上國務大臣　高橋君ノ常ニ例ニ致
  サレマス何萬坪、何十萬坪ノ土地ヲ獨
  リデ持フテ居ル人ノ例ヲ出シマスト、私
  モ左樣ニ考ヘマス、併ナガラ地租ノ性
  質トシテ、ドンナ僅カナ土地ヲ持ッテ居
  ル人デモ、ヤハリ上ッタ時ハ同ジ結果ニ
  ナリマス、例ヘバ今御話シニナッタ郊外
  ノ地所ノ値上リノ如キハ、可ナリ割合
  カラ言ノテ見マスト高クナッテ居リマ
  ス、ソレガ僅カナ坪數ニ分ケラレタト
  カ、或ハ賣買輾轉シテ他人ノ手ニ渡ツ
  タトカ云フヤウナモノデ考ヘテ見マシ
  テ、所謂獨リデエライ大キナ地所ヲ兼
  併シテ居ル人バカリノ例ヲ取ラレル
  ト寔ニ斯樣ニ考ヘラレマスガ、地租
  法ノ精神トシテ、土地其モノカラ、上ツ
  デ來ル稅ト考ヘマスト、相當ノ程度ノ
  最高限度ヲキメテ、餘リ急激ニ殖エヌ
  ヤウニシテ置イテ、サウシテ次ノ賃貸價
  格ノ調査ヲシマスマデ其儘ニシテ、今
  度ノ次ノ調査ヲ致ス場合ニ、其處ニ又
  考ヲ廻ラスト云フコトノ方ガ、段々實
  際ニ適當シテ行クヤウニ吾々ハ考ヘテ
  此案ヲ立テマシタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=23

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• 024・高橋熊次郎

  ○高橋委員　只今大藏大臣ノ御答辯
  ハ、私ノ例ヲ擧ゲタノヲ捉ヘテ兎ヤ角
  仰セニナリマシタガ、私ノ比較ハ丸「ビ
  ル」ノ建ッテアルヤウナ丸ノ內ナドヲ、
  四ツ谷若クハ新宿或ハ品川ナドト比較
  シタコトハ惡カッタカモ知レナイ、成程
  其一部分ニハ或ハ丸ノ內アタリニ劣ラ
  ズ、比較シテ場末ノ所ニ電車ガ通ッタリ
  シテ、急激ニ增加シタ所ノモアリマセ
  ウガ、私ハサウ云フコトヲ言ッテ居ル
  ノデハナイ、比較的左樣ニマデ上ラナ
  イモノガアル、或ハ今日ノ時價ニ照シ
  テハト云フテハ少シ語弊ガアリマス
  カラ、ヤハリ此賃貸價格ヲ定メタ當時
  ニ遡ッテ、大正十五年ノ四月一日ト云フ
  當時ノコトヲ基礎トシテ論ジナケレバ
  ナリマセヌト思ヒマスカラ、サウ云フ
  コトニ致シマスガ、其當時ニ致シマシ
  テモ、左程激增ヲシナイ土地ト云フモ
  ノハ左程繁華ニナラナイ土地ト云フ
  モノハ三倍八割ト云フ全額ニ近イモ
  ノデ制限サレテ居ル、其制限内ニ入ッテ
  居リマスカラ、ソレハ上ッタダケ全部
  ハ、ソレ自身カラ云フト三倍ニナッテモ、
  二倍ニナッテモ、五割增シテモ、急激ナ
  ル負擔ノ增加デアル、ソレデアリマス
  カラ、サウ云フ激增ト云フモノガ倍ニ
  ナリ、三倍ニナルト云フモノモ、三倍
  八割ニナリ四倍ニナルモノモ、激增ト
  云フコトニ於テハ、其苦痛ト云フコト
  ヲ考ヘルト同ジコトデアリマス、寧ロ
  土地ノ大激增ヲシテ、非常ニ地價ガ暴
  騰ヲシタヤウナモノハ、自然環境ガソ
  レニ伴ッテ利益ガ生レルト云フ狀況ニ
  其當時ニ出來テ居。ラタ、今日ハ多少事情
  モ違ヒマスケレドモ、其當時ハサウ出來
  テ居ッタ、ソレデアリマスカラ擔稅能力
  ガ十分アル、ソレデアリマスカラ相當
  ナ所ノ增加ト云フモノハ、稅制ノ上デ
  認メ得ラルベキモノデアルダラウト、
  斯樣ニ考ヘラレルノデアリマス、ソレ
  ヲ此稅金ヲ變ヘテ低クシタナゾト云フ
  コトハ、私ハ決シテ負擔ノ公正ト云フ
  觀念ニ一致スルモノデハナイ、殊ニ私
  ハ此六大都市ノ最高賃貸價格地價對照
  表ト云フ、稅第七號ノ材料ヲ見テ居リ
  マシテモ、却ッテ一坪當リノ地價ガ安ク
  ナッテ居ル所モアル、ソレデアリマスカ
  ラサウ云フヤウナ所ノ附近等ハ、此三
  倍八割デ制限サレタ所ハ、殆ド幾分カ
  地價ガ上ッテ居フテモ、全部其地價ト云
  フモノニ課稅標準ノ率ヲ取ノテシマフ、
  玆ニ名古屋ノ例ガアリマスノハ、五倍
  三割ニナッラ居ル、名古屋ノ中區ノ土地
  ハサウナッテ居ル、十二圓六錢ノモノガ
  今日賃貸價格ガ一坪六十五圓ニナッテ
  居ル、ソレデアリマスカラ斯ウ云フヤ
  ウナモノハ、其附近ノ土地ト云フモノ
  ハ殆ド全部賃貸價格ニ取ラレテシマフ
  ノデアリマス、サウ云フヤウナコトヲ
  考ヘマスト、此三倍八割デ止メラレタ
  ト云フコトハ、私ハ負擔ノ公平ト云フ
  モノヲ著シク阻害スルモノデアッテ、決
  シテ當ヲ得タモノデハナカッタノデハ
  ナイカ、斯ウ云フ工合ニ考ヘルノデア
  リマス、ソレデ私ハソレニ付テハ幾ラ
  質問應答ヲ重ネマシテモ、私ハ今私ノ
  申上ゲタ事實ニハ間違ガナイノデアリ
  マスカラ、是ハ否定サレル譯ニハ行カ
  ナイ、唯色々ナ稅法ノ建前デ、斯ウ云
  フ趣旨デヤッタ、アヽ云フ趣旨デヤッタ
  ト云フコトハ申述ベラレルデセウ、併
  シ私ノ立論シマシタコトニハ御否定
  ニナル譯ニハナルマイト思フ、ソレデ
  私ハ當然擔稅能力ノアル者、今ノ三倍
  八割ノ分ガ百六十何萬圓アル、之ヲ舊
  稅率ノ、前ノ標準ニ依ッタ四·五ト云フ
  モノデ之ヲ換算シテ見マスト、百九十
  何萬圓ニナル、是ダケト云フモノハ、
  是ハ當然減稅ニナルベキ筈ノモノガ減
  稅ニナラナイ、ソレデアリマスカラ、
  下級ノモノノ士地ノ頭ニ是ダケハ負擔
  セシメラレタモノデアル、斯樣ニ私共
  ハ考ヘル、是ダケハ隱レタル所ノ增稅
  デアルト云フヤウナコトノ一ツニ私共
  ハ考ヘラレルノデアリマス、之ニ付テ
  若シ御異論ガアレバ簡單ニ承ッテ置キ
  マス

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• 025・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、只
  今ハ此前ノ案デ四倍五割ニ止メテ居ツ
  タノヲ、今度ノ案デハ三倍八割ニ止メ
  タ、其制限ガ低クナッタコトヲ大變面白
  クナイヤウナ御話ガアリマシタガ、是
  ハ表デ差上ゲテ居リマスヤウニ、四倍
  五割ノ場合ニ二百六十二萬圓、三倍八
  割ノ時ニ二百二十一萬圓ト云フモノガ
  激增制限ニ依ル減デアリマスカラ、四
  倍五割ノ時ト三倍八割ノ時デハ、其金
  額ノ違ヒハ僅ニ四十一萬圓位ノモノデ
  アリマスカラ、是レ位ノ違ヒハドウモ
  稅率ノ方ニ移動ヲ生ゼシムルニ足ル金
  額デハナイト思ヒマス、尙ホ一言申上
  ゲテ置キマスコトハ、只今ハ此激增制
  限ヲ致シマス爲ニ下級ノ人ガ負擔スル
  ト云フコトヲ頻リニ仰セニナリマシタ
  ガ東京市ノ郊外等ニ於テハ、激增シテ
  居ルノガ非常ニ多イノデアリマスケレ
  ドモ、東京市ノ郊外ニ於テ地所ヲ持ッテ
  居ル、卽チ激增ノ恩典ニ浴スル人ガ、
  必ズシモ大地主バカリデアッテ、小サイ
  地主ハ含マレテ居ラヌト云フコトハド
  ウモ申兼ネルノデアリマスカラ、隨テ
  激增制限ノ結果、謂ハバ御話ニ依ル不
  利益ヲ被ムル下級ノ人ダケデアルト云
  フコトハ申サレナイカト思フノデアリ
  マス

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• 026・永田善三郎

  ○永田委員　高橋君ノ今ノ御話ハ、大
  變重要ナ點ト私共聽イテ居リマスガ、
  ドウモチグハグナ御答辯デ、ハッキリト
  區別シテ戴ケテ居ラヌヤウデアリマ
  ス、高橋サンノ御說ヲ忖度シテ恐入リ
  マスガ、間違ッタラ御訂正ヲ願ヒマス、
  簡單ナコトデ三ツダト思フ、制限ガ低
  カッタ四倍五割ノヤツヲ三倍八割ニシ
  タ、モット高クシタ方ガ宜カッタデハナ
  イカ、斯ウ云フ點ガ一ツ、ソレカラ一
  ツ非常ニヤヽコシイ、御答辯ガ完全デ
  ナイト思フノハ三倍八割マデ行ッタ人
  ガ、ソコデ三倍八割ダケ課稅セラレル
  ガ、假ニ今度ノ遞減率ヲ一トシマスレ
  が、一カラ上ッテ三倍八割ニ行クマデ
  ノ其眞中ニ居ル人ハ、上ッタダケ稅ガ課
  ケラレテ居ッテ、見積一杯ニナッテシマッ
  テ居ル、上ハ「ヂスカウント」サレテ居
  ルガ、其三倍八割以内ノモノハ少シモ
  上ニ「ヂスカウント」スルヤウナコトガ
  ナイ、負擔ノ激增ヲ防グト云フ心持デ
  アルナラバ、三倍八割ニ行クマデニ幾
  ラカ「ヂスカウント」ヲ考ヘル餘地ガア
  ル譯デハナイカ、斯ウ云フ意味ガ一ツ
  ソレカラ激增制限ノ結果、一般負擔者
  ノ負擔ガ減少スベキ分ヲ、其負擔ノ減
  少ヲ阻止シテシマッテ、高橋サンノ御話
  ハソレダケ增稅ニナル、私ノ言葉デ言
  ヘバ遞減率ヲ制限シテシマフ、モット遞
  減スベキモノヲソコデ阻止シタ、斯ウ
  云フ點ニ對シテドウ考ヘルカ、斯ウ三
  ツガ重要點ノヤウニ思ヒマスルガ如何
  デスカ

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• 027・井上準之助

  ○井上國務大臣　一應私カラ御答致シ
  マス、不充分ナ所ガアリマシタラ、政
  府委員カラ御答辯致シマス、第一ニ先
  刻政府委員カラ申シマシタ四倍ト云フ
  コトニ限リマシタコトハ何モエライ
  數字上ノ根據ガアルノデハアリマセ
  ヌ、小調デアリマス、先ヅ大體四倍三
  割ト云ヒ、或ハ四倍五割ト云フ數字モ
  出マスガ、四倍ト云フコトデ、押ヘテ
  是レ位デ最高極度ヲ押ヘタノデアリマ
  ス、ソコノ點ハ高イトカ低イトカ云フ
  コトガアリマセウ、ソレカラ第二ノ點
  ハ若シ此四倍ト云フモノガ六倍トカ
  七倍トカ云フ制限ニナッテ來テ、サウシ
  テ尙其下ニ、四倍トカ二倍トカ、云フ
  區切ヲ付ケテ押ヘルコトガ出來レバ永
  田サンノ言ハレルヤウナ實際問題ニ或
  ハ適合スルカモ知レマセス、ソレデハ
  到底手續ガ煩雜デ出來ヌカラ、先ヅ六
  倍トカ、七倍トカ、十倍トカ云フコト
  ヲ言ハズニ、四倍ト云フコトデ押へテ
  置イタナラバ、其以下ノモノハ今高橋
  サンノ言ハレルヤウナ多少ノ弊害ガア
  リマスガ、ソレデ大シテ苦痛ハナカラ
  ウ、卽チ今度ハ三倍八割ニナッテ居リ
  マスガ、假ニ三倍七割或ハ三倍マデ上ツ
  タ人ガ三倍八割ダケハ納メナケレバナ
  ラヌト云フコトガ茲ニ出テ來テ居リマ
  スガ、是ハ最高極度ト云フコトヲキメ
  タ場合ニハ其下ノ階級ヲ何時ニモ割
  レバ何時デモ弊害ガ防ゲマスガ、足足
  ドウモ手續ノ上カラ行ヲテ已ムヲ得ナ
  イコトヽ考ヘマス、卽チ四倍ト云フ數
  字ヲキメルノニハ、其處ハ考ヘナケレ
  パナラヌ點デアリマス、モウ一ツノ問
  題ハ此處ニ政府委員カラ出シマシタ所
  謂最高極度ヲ決メタ爲ニ、二百萬圓ト
  カ、百何十萬圓ト云フモノヽ稅ガ出テ
  來タ、其上ッテ來タ中カラ取ルベキ所ノ
  稅ヲ取ラナカッタ、斯ウ云フ稅ハ一體誰
  ガ負擔シテ居ルカト云フト、地租ヲ納
  メル人全部ガ負擔シテ居ルト斯ウ云フ
  コトニナリマス、敢テ其稅ヲ下層ノ人
  ガ負擔スルト云フ譯ヂヤナイノデス、
  卽チ全體ノ地租ノ總額ガ減ラヌヤウニ
  スルノデアリマスカラ、玆ニ出スベキ
  人ガ假ニ二百萬圓稅ヲ出サナカッタラ、
  其稅ハ全體ノ地租負擔者ガ負擔スルト
  斯ウ云フコトニナッテ居リマシテ、決シ
  テソレヲ下級ノ人ガ負擔シテ居ルトカ
  何トカト云フ意味デハアリマセス、ソ
  レダケ御答シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=27

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• 028・高橋熊次郎

  ○高橋委員　今大藏大臣ノ仰セニナツ
  タ事ハ先程カラ政府委員ヨリ御答辯ニ
  ナッタ事ト大差ナイノデアリマス、最後
  ノ御言葉ハソレハ皆同一デアリマシ
  テ.ヤッパリソレニ依ッテズット同ジヤ
  ウナ率ヲ以テ全部ニ課ヲテ參リマス、ソ
  レデアリマスルカラ私共ハ意見ハ別ニ
  持ヲテ居リマスガ、政府ノ御意見ニ依。ツ
  テ、此稅制ノ改正竝ニ稅率ノ改正ニ依
  ル減稅ト云フヤウナコトノ兩方ノ建前
  カラ見マシテモ、私共ハ多少意見ハ異
  リマス、政府ノ御意思ニ基イテ立案ス
  ルコトヽスルナラバ、色々ナ方法モ設
  ケルコトガ出來ル、此地租ヲ各地目別
  ニ或ハ地目ノ中デモ甲、こ、丙ノ階段
  ニ分ケル、階段ニ分ケルト云フノハ既
  ニ營業收益稅ニ於テモ階段ニ分ケラレ
  タノデアリマスカラ、地租ニ於テモ階
  段ニ分ケテ、一律ノ稅率デナク、稅率
  ヲ異ニスルコトモ出來ヤウト思ヒマ
  ス、又制限率モ多少ノ變更ガ出來ル、
  唯面倒ダ、面倒デナイト云フコトニ付
  テ御議論ノアル所デアルガ、總テ今ノ
  ガ面倒デナイ、何デモ同率一本デ行カ
  ウト云フヤウナコト、簡單デ宜イカラ
  ト云フヤウナコトノ御意思ガ、此稅制
  ニハ一貫シテ居ルヤウニモ思ハレル、
  其處ニ大ナル矛盾ガアル、斯ウ云フコ
  トデヤレバ出來ナイコトハナイノデア
  ル、唯面倒ダカラ出來ナイ、ウルサイカ
  ラ出來ナイト云フコトノ一點張リデ
  ハ、決シテ此稅制ト云フモノヽ改正ニ
  當ノテ居ル者ノ御心掛デナカラウ、斯ウ
  云フ工合ニ私ハ考ヘルガ故ニ、色々私
  ノ疑義ヲ申述べ且ツ負擔ヲ幾分ナリト
  モ他ニ轉嫁スルヤウナ事デアッテハ面
  白クナイト考ヘル、序ナガラ言ッテ置キ
  マスガ、先程靑木局長ノ言ハレタ四十
  何萬圓シカ違ハナイト云フコトハ私
  ノ御伺申シテ居ル事トハ違フ、私ハサ
  ウ云フ事ヲ言ッテ居ルノデハナイト云
  フコトヲ申上ゲテ置キマス、私ハ大體
  此點ニ付テノ質問ハ此程度ヲ以テ終リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=28

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• 029・本多眞喜雄

  ○本多委員長　是デ休憩致シマシテ午
  後ハ一時カラ開キマス
  午後零時三分休憩
  午後一時二十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=29

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• 030・本田恒之

  ○本田委員長　是ヨリ休憩前ニ引續キ
  會議ヲ開キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=30

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• 031・大口喜六

  ○大口委員　海軍大臣ガ御出席ノヤウ
  デアリマスカラ私カラ御質問申上ゲタ
  イト思ヒマス、第一ニ御尋ヲ致シタイ
  ノハ今朝程總理大臣代理ニ承リマシ
  タコトニ關聯スルノデアリマシテ、總
  理大臣代理ニ伺ヒマシタ時ニハ海軍大
  臣ハ御出席デアリマセナンダカラ、極
  メテ簡單ニ一應總理大臣代理ニ御質問
  申シマシタ筋道ヲ述べマシテ、海軍大
  臣ノ御答ヲ得タイト存ジマス
  今日我國ガ非常ナル不況ニ陷フテ居
  ルト云フ事柄ハ其原因ノ何タルカハ今
  日ハ論ジナイ積リデアリマス、假令其
  原因ガ世界的ノ不況デアラウト、金解
  禁ノ結果デアラウト、ソレニ言及致シ
  マスト、大分議論ニナリマスカラ申シ
  マセヌガ、兎ニ角今日ノ日本ノ不景氣
  ハ非常ニ深刻ナルモノデアルコトハ吾
  吾御互ハ事實ノ上カラ認メナケレバ
  ナラヌ、之ヲドウシテ救フカト云フコ
  トガ今日御互〓究スベキ要點デアルト
  考ヘル、其處ヘ行ケバ減稅ト云フコト
  ハ私共決シテ惡イ事トハ考ヘナイト今
  朝程モ申シタノデアリマスガ、今囘政
  府ガ提案サレタ減稅額デハ、殆ド之ヲ
  救フ力ガナイ程ノ僅カナモノデアルト
  私共ハ思ッテ居ルノデアリマス、併シ減
  稅ノ財源ハ恆久的ノモノデナクテハナ
  ラヌ、一時的ノ財源デ減稅ヲ致シタ所
  デ、減稅ハ恆久的デアリマスカラ、遂
  ニハ財政ノ上ニ於テ破綻ヲ生ジナイト
  ハ限ラナイノデアリマス、政ニ減稅ヲ
  シヨウト思ヘバ玆ニ恆久的ノ財源ガナ
  クテハナラヌ、此處ノ吟味ガ極メテ必
  要デアルト云フコトヲ私ハ今朝程モ述
  ベテ居ルノデアル、サウシテ今囘ノ減
  稅ノ財源トハドウ云フモノデアルカト
  云フト、申スマデモナク此五億八百萬
  ト云フモノガ今日マデ海軍ノ保留財源
  ニナッテ居ル、是ガ幸ヒ軍縮會議ノ結果
  不用ニ屬スルカラ、其中補充計畫二三
  億何千萬圓ヲ引キ殘ル一億三千餘萬圓
  ヲ以テ減稅ノ財源ニ充テヨウト云フノ
  ガ政府ノ御發案ノ御趣意ト考ヘル、然
  ラバ海軍ノ補充計畫ト云フモノガ、三
  億何千萬圓ノ今囘御提出ニナッタヾケ
  ノモノデ宜シイカ、ドウカ、此處ガ
  ツノ問題ニナッテ、先日來頻ニ質問應答
  ガ重ネラレタ譯デアリマス、ソコデ私
  ノ頭ニ映ジタコトハ例へバ海軍部內カ
  ラ陛下ニ對シ奉リ奉答サレテ居リマ
  ス奉答文ガアリマスガ、此奉答文ヲ見
  タカ見ナイカ、責任ヲ負フカト云フヤ
  ウナ議論ヲ此處デシタ所ガ、是ハ亦中
  中面倒ナ問題デ、私ハソレニ觸レヨウ
  トハ思ハナイ、ケレドモ兎ニ角海軍部
  內ニ於テ重要ナル人々ガ寄合フテ、奉答
  シテアルコトハ疑フベカラザル事實デ
  アリマス、此奉答ノ內容ハ海軍大臣ハ
  ドウシテモ御承知ニナッテ居ラナクテ
  ハナラナイト私ハ信ズル、其海軍大臣
  ガ加ッテ居ラレル現内閣デアリ、又濱口
  總理大臣ハ內覽ヲ許サレテ居ルノデア
  ルカラ、サウ云フ首班ヲ戴キ、サウ云
  フ海軍大臣ヲ持ヲテ居ル現內閣ガ定メ
  ラレル所ノ補充計畫デアルカラシテ、
  ドウシテモ奉答ニ副ヒ奉ルヤウニハ出
  來テ居ルモノデアルト私ハ考ヘル、是
  ガ奉答文ニ副ハナイ計畫デアルトハド
  ウシテモ言ヘナイ譯デアル
  ソコデ玆ニ疑ガアルノハ、私共分リ
  宜イ爲ニ第一補充計畫ト申シテ居リマ
  スガ、今囘御出シニナッタ三億何千萬
  圓ノ計畫ト云フモノハ、政府ニ於カレ
  テハ補充計畫ノ根幹デアル、是デ先ヅ
  根幹ダケハ出來ルト言ッテ居ラレルガ、
  其處ニ先刻言フ通リ疑ヲ持ツ、レベル
  ノハ、ソレ以外ニ尙ホ吾々ガ謂フ所謂
  第二補充計畫ト云フモノガナクテハナ
  ラスト考ヘル、是ハ第一補充計畫トカ
  第二補充計畫トカ分クベキモノデハナ
  イノデアッテ一ツデアルベキニ相違ナ
  イガ、政府ノ財政ノ都合上、二ツニ分
  ケタモノデアッテ、吾々ノ所謂第一一補充
  計畫ト云フモノガ此背後ニ潛ンデ居
  ル、是ガ全體ドレダケノ計畫デ、ドレ
  ダケノ金ガ要ルモノデ、ドウ云フ風ニ
  ナルカト云フコトガ分レバ、一等此財
  源ガ明確ニナルノデアリマスケレドモ
  ガ、ソレハ各國ノ事情ヲモ見ナクテハ
  ナラヌ、先刻總理大臣ノ御答辯ニ依リ
  マスト、サウ云フコトヲ今日明カニス
  レバ、他ノ國ヲ刺戟シテ面白クナイ傾
  向モアラウト思フカラ、今日ハソレヲ
  決メテ居ナイ、ソコデ金額ト云フモノ
  ハ一切分ラナイト云フ御返事ニ相成ッ
  テ居ル、假令決マッテ居ラスニシタ所
  デ、ドウシテモ此所謂第二補充計畫ト
  云フモノガ何處ニ潛ンデ居ヲテ頭ヲ出
  スベキモノデアルカ、何處へ現レテ來
  ルカ、是ガ內田君ナドガ先日御質問申
  シタ點デアリマス、之ヲ段々綜合シテ
  見ルト、只今政府ニ於カレマシテハ金
  額モ言ハレナイシ、定マッタコトハナイ
  ト言ッテ居ラレルガ、兎ニ角吾々ノ所謂
  第二補充計畫ナルモノガ、昭和十一年
  度以前ニ於テ現レテ來ルモノデアルト
  云フコトハドウシテモ認メネバナラ
  ヌ、是ハ海軍大臣モ必要デアルト言ハ
  レテ居リ、總理大臣モ、大藏大臣モ、
  是ハ認メテ居ラレマスカラ、ドウシテ
  モ第二補充計畫ト云フモノガ昭和十一
  年以內ニ頭ヲ出シテ來ル、其金額ハ明
  確デナイニシテモ、頭ヲ出シテ來ルモ
  ノデアル、サウシテ吾々ノ信ズル所デ
  ハ昭和九年カラドウモ出サナクテハナ
  ラスモノデアラウト、先ヅ質問應答ノ
  結果確信サレル、スルト之ニ對スル金
  ト云フモノハドウナルカト〓究シテ見
  ルトナイ、ソレハ大藏大臣モ一文モ保
  留シテナイト言ハレテ居ル、此處ガ洵
  ニ私共財源ノ上ニ於テ疑ヲ持ツ點デア
  ル
  ソコデ私ハ今日政府ヲ攻擊シタリ揚
  足取リヲスルヤウナコトハ言ハナイ、
  理窟モ言ハナイ決心デアル、同時ニ露
  骨ニ腹藏ナク言ッテ見マスト、第一海軍
  計畫ト云フモノハ第一補充計畫ト第二
  補充計畫ト分ケベキモノデハナイノデ
  アッテ、ドウシテモ國防ノ上カラ云ヘ
  バ或ル程度ノ補充計畫ガ必要デアル
  ガ、金ガ足リナイ、實ハ減稅ヲシナクチ
  ヤナラナイ、今度ノ條約ガ出來タ以上
  ハ、國民負擔ノ輕減ヲスルト云フコトヲ
  モウ明言シテアルノデアルカラ、其明
  言ノ手前カラ言フテモ、現內閣ハ假令僅
  カナリトモ減稅ヲシナクチヤナラナ
  イ、斯ウ考ヘマスカラ海軍ノ計畫ト云
  フモノガ十分ニ出來ナイ、ソコデ巳ム
  ヲ得ズ同ジ補充計畫ヲ二ツニ割イテ、
  私ノ方ノ所謂第一補充計畫、第二補充
  計畫ノ二ツニ割イテ、第一ノ分ダケヲ
  今囘計上シテ、ドウカ斯ウカソレデ減
  稅ノ締括リヲシテ、財政ノ辻褄ヲ合シ
  テ、其實內部ニハ第二補充計畫ト云フ
  モノガ潛ンデ居ルノデアル、其潜ンデ
  居ル點ヲ確カニ政府ハ認メラレタモノ
  デアルト私共ハ考ヘル
  ソコデ此財政計畫ナドデ色々議論ヲ
  スレバ、大分議論ニナリマスガ、先刻
  私モ腹藏ナイ御話ヲ總理大臣代理ニシ
  タノデアリマス、私ハ決シテ軍國主義
  ヲ宜イトハ思ハヌ、軍國主義者デハナ
  イ、ダカラ出來ルダケ列國ガ陸軍ナリ
  海軍ナリヲ縮小シテ、軍備計畫ノ縮小
  ガ出來レバ洵ニ私共結構デアリ、父
  面ニ於テ陸海軍ノ費用ト云フモノガ經
  濟的ニナッテ來テ減ズルコトガ出來レ
  バ洵ニ喜ブ者デアリマスガ、併シ國防
  ハ極メテ重大ダト思フ、國防ハ一日モ
  之ヲ忽セニシテハナラナイ、ソレガ爲
  ニハ私共相當ナ費用ヲ投ジテモ確實ニ
  シテ置カナケレバナラナイ、斯ウ云フ
  意見ヲ持ッテ居ル者デアリマスガ、海軍
  當局ニ於カレテモ、ヤハリ職責上何處
  マデモ國防ト云フモノハ確實ニ致シテ
  置カネバナラナイト思ハネバナラヌノ
  デアル、シテ見ルト奉答文ニドウ書イ
  テアルカハ御言明ハ出來マスマイガ、
  奉答文ニアリマスコトヲ根據ニサレ
  テ、海軍ハ相當ノ國防計畫ガ立ッテ居ラ
  ナクテハナラナイ、サウシテ今囘議會
  ニ於テ海軍大臣カラ御答ニナッタ所ヲ
  見ルト、昭和十一年前ニ於テ、吾々ガ
  謂フ第二補充計畫ト云フモノガ或ル程
  度ニ頭ヲ出サナケレバ、國防ト云フモ
  ノハ完全デナイト、ドウシテモ吾々ニハ
  認メラレル、所ガソレニ對シテノ財源
  ハ一厘モ保留シテナイ、スルト海軍ガ
  安心シテ居レル譯ハナイト私ハ思フ
  此處ガ問題デアリマス、是ハ上手ニ
  質問シテ行クト色々アリマセウケレド
  モ、質問上ノ上手下手ハアリマセウガ、
  私ハ今日ハサウ云フコトヲ考ヘズニ申
  シマス、成ベク一言ニシテ露骨ニ申シ
  マス先刻モ總理大臣ニ私ハ露骨ニ申
  シマシタ、ソレデスカラ世間傳フル所
  ニ依ルト、海軍ノ方デハ濱口總理大臣
  カラ一札ヲ取ッタ、此第二補充計畫ニ
  依ッテハ決シテ困ラセナイ、必ズ其時
  ニハ適當ノ金ヲ支出シテ方法ヲ立テル
  ト云フ意味ノ札ヲ海軍ガ握ッテ居ル
  カラ、海軍ハソコデ安心ヲシテ居ルト
  云フコトヲ傳ヘテ居ルガ、果シテ此處
  ハドウナッテ居ルカ、斯ウ云フ點ニ私
  疑ヲ持ッノデアリマス、斯ウ云フ事ガ
  今迄ニアル、陸海軍ト云フモノト大藏
  當局ト申シテ宜イカ、其時々ノ內閣ト
  ノ間ニ、內閣ニ列シナイ前ニハ一向知
  ラナンデ居フタ所ガ愈〓內閣ニ列シテ國
  ノ財政ヲヤッテ見ルコトニナルト、海軍
  カラ斯ウ要求ガアッタ、陸軍カラ斯ウ云
  フ要求ガッアタ、ソレハ迚モ大藏省ノ
  方デサウ云フ財源ハナイ、イヤソレハ
  何時ノ時代ニ斯ウ云フ約束ガアル、其
  時ノ大藏大臣ガ海軍大臣ニ斯ウ云フ言
  明ガアッタト云フヤウナコトガアッテ、
  ドウシテモソレヲヤラネバナラヌト云
  フ問題ガ起ッタ事實ハ私ハアルト信ジ
  テ居ル、是モ何モ惡イト言フノデハナ
  イ、ソレダカラ今日ノ議會ヲ通過サセ
  ラレルガ爲ニト言フト何カ攻擊スルヤ
  ウニナルガ、一時ヲ通ス爲ニ體裁ノ好
  イコトヲ言ハレテ、玆ニ此案ハ通リマ
  シテモ、此內閣ガ十年、十二年續ケバ
  反ッテ宜イカモ知レマセヌガ、サウ續
  クカ、續カナイカ分ルモノデナイ、ソ
  コデ誰ガ後ヲヤリマシテモ、今日ハ大分
  體裁ノ好イ第一補充計畫ダケデ辻褄ヲ
  合シテ通ラレテ、旣ニ昭和九年度ヘ行
  クト云フト第二計畫、是ダケノモノヲ
  引受ケナケレバ海軍ハ國防ガ全カラザ
  ルコトニナル、サウシテ其當時濱口氏
  ト斯ウ云フ約束ガアッタト云フヤウナ
  コトガ出テ來ルト、是ハ日本ノ財政計
  畫ハ立タナイ、ソコデ其點ニ對シテ全
  體海軍ト現內閣トノ間ガドウナッテ居
  ルカ、私ハ總理大臣代理ヲ更ニ有體ニ
  申シタ、全體其第二計畫ニ對スル財源ニ
  付テハ海軍ト今ノ內閣、又ハ總理大臣
  トノ間ニ白紙デアルカ、又ハ何カ御確
  實ナ諒解ガアルカ、斯ウ云フ御問ヲ申
  シタ、スルト總理大臣ノ御答ハ或程度
  迄ハ明カデアリマスガ、或ル程度ハ實
  ニ曖昧ニナッテ居ルト云フノハ、必要ト
  云フコトハ認メル、其第二補充計畫ガ
  昭和十一年度ヨリ前ニ頭ヲ出スコトノ
  必要ナコトヲ認メル、ケレドモ列國ノ
  事情モ見ナクテナラナイシ、先刻私ガ
  申シマシタ通リ今日發表スルガ如キコ
  トハ却テ外國ヲ刺戟スルガ虞ガアルカ
  ラ、決メナイ方ガ宜イカラ、軍艦ノ中
  例ヘバ巡洋艦ガ何艘トカ、潛水艦ガ何
  艘トカ、驅逐艦ガ何般ト云フヤウナコ
  トハ少シモ決メテナイ、ソレハ其時ニ
  打ッカッテ其時ニ當ッテノ話デアル斯ウ
  云フコトニナッテ居ルト云フ御答辯ニ
  ナッテ居ルノデアリマス、是デ一體海
  軍ノ方ガ安心シテ居ラレル道理ハナイ
  ト私ハ常識カラ考ヘル、其處ガ海軍ト
  內閣トノ間ノ關係ハ明カニシテ戴カナ
  イト、日本ノ財政計畫上非常ニ憂慮ニ
  堪ヘナイ點デアッテ、頗ル樞要ナ點デ
  アルト思ヒマスガ、ソコガ海軍ト內閣
  トノ間ガドウナッテ居ルカ、是ハ洵ニ海
  軍大臣トシテモ重要ナル事デアラレヤ
  ウト思ヒマスカラ伺ヒタイ、斯ウ云フ
  ノデアリマス
  是ガ普通ナラバ總理大臣ニ承ッテ後
  ハ大藏大臣デ宜イノデアリマスガ、此
  點ダケハ總理大臣ノ御立場ト、海軍大
  臣ノ御立場トハ自ラ違ヒマス、海軍大
  臣ハ一方ニ軍令部トノ關係ニ持ヲテ居
  ラレテ、奉答文ノ內容ヲ知ッテ居ラレ
  ル筈ノ方デスカラ、ソコデ內閣ヲ統一
  シテ居ル總理大臣ト、只今ノ立場デア
  ル海軍大臣トノ間ニ、第二次補充計畫
  ニ對シ、是ハ昭和十一年度以前ニ頭ヲ
  出ス必要ヲ各認メテ居ラレテ、而シテ
  財源ノナイコトモ現ニ認メテ居ラレ
  ル、然ラバ此財源ヲ得テ愈~補充計畫ノ
  頭ヲ出ス時ニハドウ云フヤリ方デヤル
  ト云フコトガ全然白紙デアルカ、乃至
  或程度ノ諒解ガアルカ、私ノ聽キタイ
  ノハ此點デアリマス、尙ホ私ノ趣意ガ
  御分リニナラナケレバ何度デモ申シマ
  スガ、私ハ今日面倒ハ言ハナイ積リデ
  アリマスカラ、私ガ何處ニ疑ガアルカ
  ト云フコトヲ御聽取リ下スッテ、了解ガ
  出來マスヤウニ御答出來ルダケノ範圍
  ハ御答ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=31

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• 032・安保清種

  ○安保國務大臣　只今大口サンカラ段
  段ノ御尋ガアリマシテ、洵ニ御尤ナ御
  質問ト存ジマス、午前ニ首相代理ニ御
  尋ニナッテ、首相代理ノ御答ニナッタコ
  トノ〓要モ只今承リマシタカラ、私モ
  ソレデ了承ヲ致シタノデアリマスガ、大
  口サンノ御質問ノ要點ガ、國防ノ重要
  性ニ鑑ミマシテ、此度計畫サレタ所ノ第
  一次-便宜上第一次、第二次ト言ツ
  タ方ガ今ノ大口サンノ御話デ却テ明瞭
  デアリマセウガ、第一次計畫ト云フモ
  ノダケヲ以テシテ、果シテ國防ガ不安
  ナイノデアルカ、而シテソレハ奉答文
  ノ內容ニ副フモノナリヤ否ヤ、斯ウ云
  フコトデアリマシタ、其點ヲ申上ゲマ
  スルト此度ノ計畫ヲ以テ致シマスレ
  バ今大口サンモ御述ニナリマシタヤ囘ノデアリマスカラ、
  ウニ、現狀ニ卽シテ國防ノ上ニ不安ナ
  イト云フ兵力ノ根幹ハ備ヘ得ルト云フ
  コトニナル次第デアリマシテ、而シテ
  是ハヤハリ奉答文ノ趣旨ニ副フモノデ
  アルト云フコトハ申上ゲテ宜イノデア
  リマス、而シテ第二次計畫ト云フヤウ
  ナモノガ、九年度ナリ、十年度ナリカ
  ラ早晩起ラナケレバナラヌモノデアラ
  ウガ、其內容ト云フモノガ相當今決ツ
  テ居ルベキデハナカラウカ、サウシテ
  其財源ト云フコトニ付テハ、政府ノ間
  ニ於テ相當確實ナル取極メデモナクテ
  ハナラヌノデナイカト云フ御趣意ト考
  ヘマスガ、第二次計畫ト云フモノニ付
  テハ、是ハドウ云フ隻數ヲ何時カラ、
  始メルコトヲ必要トスルト云フ、具體
  的ノ第二次計畫ト云フモノハ、是ハ本
  當ニマダ確立シテ居リマセヌノデアリ
  マス、是ハ最初ノ案ヲ立テマシテ、是
  ダケ必要ダト云フヤウナコトヲ政府
  部內デ考究致シマスル時分ニハ、ソレ
  ゾレ此隻數ガモウ少シ必要ダ、潛水艦
  ノ方ハマア條約一杯デアリマスガ、驅
  逐艦ノ如キハモウ少シ造ッテ置イタ方
  ガ宜カラウ、是ハ軍事當局トシテ當然
  思ッテ居ルノデアリマスケレドモ、財政
  上ノ關係等モ考慮致シマシテ、此際是
  非共必要トスルモノガ是ダケダト云フ
  コトニ致シマシテ、立テマシタノガ今
  初是ダケガ必要ダト考ヘタ殘リガ直チ
  ニ第二次計畫カトサウ云フコトニ參ラ
  ヌコトハ大口サンノ御承知ノ通リト思
  ヒマス、而シテ國防ノ關係カラ、海軍
  ニ於テハ特ニ所謂相當的關係ト云フ意
  味ニ於テ、其國際的威力ニ響クト云フ
  ヤウニ、海軍力ハ直チニ直接ノ關係ヲ
  有ツノデアリマスカラ、ドウシテモ外
  國海軍ノヤル所ヲ見テ、ソレニ對應ス
  ルト云フコトガ、全部デハアリマセヌ
  ガ、主トシテサウ云フ點ニ考慮ヲ置ク
  必要ガアリマスノデ、一面ニ於テハ攻
  擊作戰ヲ執リマスル方ノ側ノ、大體自
  分ノ豫想スル一ツノ計畫ヲ立テ、ソレ
  ゾレ驅逐艦ノ勢力ハ斯ウ潛水艦ガ斯ウ
  航空隊ガ斯ウト云フヤウニ作リマス
  ケレドモ、防禦作戰ニ立ツ時分ニ、本
  國附近ニ於テ之ヲ防衞スルニ足ルダケ
  ノ兵力ヲ持ッテ行カウカト云フ一ツノ
  方針ニ依ッテヤリマス時ニハ、其攻勢作
  戰ニ立ツモノヽ兵力ノ種類ト云フ點
  ニ重キヲ置イテ、ドウナッテ來ルカト
  云フコトニ對應スルト云フコトノ必要
  ガ、今ノ攻勢作戰ヲ執ル國ヨリ以上ノ
  必要ヲ感ジマスコトハ、大體御諒解ノ
  コトト存ジマス、サウ云フ意味モ加味
  致シマシテ、此次ノ所謂計畫ト云フモ
  ノニ付キマシテハ、今直グソレヲ具體
  的ニ計畫ヲ立テナクテモ、マダ〓〓相
  此殘リガ-最當當年月モアルコトデアリマスカラ、
  外國ノヤル所ヲ見テ、サウシテ此點ニ
  次囘ノ計晝ハ一ツ重キヲ置カウ、斯ウ
  云フコトニナリマスレバ或ハ航空隊ノ
  方ニ重キヲ置クトカ、或ハ巡洋艦ト云
  フコトニ考ヘルトカ、更ニ又次囘ノ軍
  縮會議ニナリマスト、現在倫敦條約ニ
  依ッテ定メラレマシタ、所謂日本ノ持分
  ト云フモノヽ三十六萬七千噸ト云フモ
  ノヽ上ヲ高クスルト云フコトハ軍擴
  ニナルヤウナ關係モアッテ、是ハ恐ラ
  ク總量ニ於テ高クナルト云フヤウナコ
  トハアルマイト存ジマスケレドモ、兵
  種ノ內容ニ於キマシテハ、是ハ作戰用
  兵ノ立場カラ、或ハ潛水艦ノ不足、或
  ハ八吋ヲモット欲シイト云フヤウナ意
  味ノ關係カラ、ソレガドウ云フヤウニ
  此會議ガ進ムカト云フコトハ分リ兼ネ
  やく、隨テ幾ラデモ噸數ノ持分ガアレ
  バ簡單デアリマスケレドモ、持分ガ定
  マッテ居ルト、其定マッテ居ル持分ノ中
  カラ兵種ノ遣繰ヲシテ、新シク要望ス
  ルモノヲ作ラネバナラヌト云フヤウナ
  關係モ自ラ生ズルノデアリマスカラ、
  餘リニ早ク自分ノ持分ガアリ、權利ガ
  アルカラ、一ツ造ッテ置カウト云フヤ
  ウナ意味ニモナリ兼ネル點モアルノデ
  アリマス、サウ云フヤウナ點ヲ色々考
  慮致シマシテ、是カラ今暫ク年月ノ經ツ
  タ後ニ、計畫ヲ立テルコトヲ寧ロ適當
  トスル、斯ウ云フヤウニ當局モ考ヘマ
  シタ次第デアリマス、
  畫ガ今度ノ計畫ニ加ハラナケレバ國防
  ニ不安ガアルカト云フコトデアリマシ
  タガ是ハ若シ不安デモアルト云フコ
  トナラバ、無論第二次ト云フヤウナコ
  トヲ言ハズニ、第一次ト共ニドウニカ
  シナケレバナラヌノデアリマスケレド
  モ、此度提案シタモノダケヲ先ヅ揃ヘ
  テ置ケバ、目下ノ狀況ニ於テハ是デ國
  防上不安ナモノト云フコトノ意見ガ、
  所謂軍令部ノ方ノ側、海軍省ノ側モ
  意見ガ一致イタシテ、此計畫ヲ立テマ
  シタ次第デアリマス、大口サンノ御話
  ノヤウニ第二次ト云フモノガ一次ノ計
  畫ト加ハラナケレバ、國防ニ不安ガア
  ルト云フヤウナ意味デハナイノデアリ
  マスト同時ニ、其內容ニ付キマシテハ
  今申上ゲマシタヤウナ理由デ、何ガ何
  艘何ガ何艘位ヲ大體必要トスルト云フ
  ヤウナコトモ、今日ハ申上ゲ兼ネル次
  第デアリマス
  最後ニ財源ノコトデアリマスルガ、
  是ハ御說ノ通リ財源ト云フモノガ容易
  デハナイ、幾ラ必要ガアッテモ急ニソレ
  ハ方法モ付クマイト云フ御言葉デアリ
  マスルガ、今日ノ狀態カラ鑑ミマシテ、
  マダ玆ニドレダケノ隻數トドレダケノ
  兵種ヲ必要トスルト云フコトノ計畫ノ
  定マリマセヌ中ニ、十一年度以前ニ於
  テ是ダケノモノヲ大體用意シテ貰ッテ
  然ラバ此次ノ計置クト云フヤウナコトハ、中々實際ニ
  ハ出來兼ネルト存ジマシテ、是ハ計畫
  ガマダ立タヌノデアルカラ、其處ニ財
  源ノ特別ノ用意ガナイコトモ已ムヲ得
  ヌト云フコトヲ、海軍當局モ認メマシ
  タ譯デアリマス、然ラバ其財源ト云フ
  モノヽ必要ガアッタ場合ニ十一年度以
  前ニ於テ何等カ其處ニ新シイ計畫ヲ起
  サナケレバナラヌト云フ場合ニ、ソレ
  ハドウスルカト云フコトニ付キマシテ
  ハ是ハ財政當局ノ方ニ信賴シ、其時
  ノ政府ニ於テ何トカ方法ガ立チ得ルモ
  ノト考ヘテ居ルノデアリマス、唯漠然
  ト立チ得ルダラウト言フト可怪シイヤ
  ウデアリマスケレドモ、昭和十二年度
  以降ニハ製艦ト云フヤウナ意味ニ於テ
  モ六千萬圓ト云フモノガアリ、所謂此
  度ノ航空隊維持費ト云フヤウナモノ
  二千七百萬圓ト云フヤウナ財源モ、確
  實ニ其處ニ用意ガシテアルト云フヤウ
  ナ意味デアリマシテ、此度ノ十一年度
  マデノ計畫ト、其次ノ十二年カラハ、
  其處ニ艦ノ方ダケデ六千萬圓ト云フモ
  ノガアリ、九年度ナリ、十年度、+一
  年度カラ起サナケレバナラヌト云フ、
  其處ニ財源ハ無イノデアリマスケレド
  モ、其處ハ方法ガ立チ得ルモノデアル
  ト私ハ信ジマシテ、今日ニ來ッテ居リマ
  スル次第デアリマス
  總理大臣ト海軍大臣ノ間ニドウ云フ
  約束ガアルカト云フ御尋デアリマシタ
  ガ、海軍大臣ト總理大臣ノ間ニ、此度
  ノ補充計畫ノコトニ付キマシテハ將
  來ノ事ニ亙ヲテ交渉ヲ致シマシタコト
  ハ事實デアリマスルガ、其交涉ハドウ
  云フ程度デドウ云フ言質ヲ取ッテ進
  ンデ居ルカト云フ其內容ノコトニ付キ
  マシテハ、此處デ斯ウ云フ程度ニナッテ
  居ルト云ヤウナコトハ御話ヲ致兼ネマ
  ス次第デアリマスカラ、左樣御諒承ヲ
  願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=32

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• 033・大口喜六

  ○大口委員　只今縷々御答辯ガアリマ
  シテ大體諒承致シマシタガ只今ノ海軍
  大臣ノ述ベラレタ中ニ、所謂第二補充
  計畫ト云フモノガ組立テラレルヤウニ
  ナル、ソレマデニ對スル御意見ニ付テ
  ハマダ私ハ諒承ノ出來ヌ不服ノ點ガ
  アリマス、又一部分ハ御尤ニ思フ點モ
  アリマス、ソレハ今論ジマセヌ、ソレ
  ヲ今日論ジテ、サウ云フコトデハ海軍
  ハ危イヂヤナイカト云フコトヲ、今日
  言ッテ見ヨウト云フ意味デハアリマセ
  ヌカラ、一應承リ置クコトニシマス
  唯私ノ極メテ捉ヘタイト思フ要點
  ガ、今ノ御答デハドウモ十分ニ得ラレ
  ヌト云フノハ、斯ウ承レバ端的ダト思
  ヒマス、然ラバ所謂第二補充計畫ガ昭
  和十一年度以前ニ於テ頭ヲ出シ、製造
  ニ著手シナケレバナラヌト云フコト
  ニ對スル財源ノ問題ニ對シテハ、現內
  閣トノ間ニ全然白紙ナリヤ否ヤト云フ
  コトデス、詳シク經緯ヲ承ラウトハ私
  ハ申シマセヌ、ソレハ仰シヤル譯ニハ
  行キマスマイ、又私モ强ヒテ承ラウト
  ハシマセヌ、結論ニ於テドウシテモ昭
  和九年ニ第二補充計畫ガ頭ヲ出サナケ
  レバナラヌト云フ場合ハ、何トカシテ
  財源ヲ造ラナケレバナラヌダケノ或
  ル德義上ノ責任ヲ負フベク今ノ內閣ガ
  ナッテ居ルカ、ドウデアルカ、此關係デ
  アリマス、全然白紙ナリヤ、ドウシテモ
  愈必要トシテ昭和十一年度以前ニ第
  二補充計畫ニ著手スル場合ハ其財源
  ヲ捻出スベキ或ル程度ノ責任ヲ現內閣
  ハ負フ譯ニナッテ居ルカ、責任ト申シ
  テモ色々アリマセウ、德義上ニシテモ
  ダ、兎ニ角紳士トシテ、政治家トシテ之
  ヲヤラナケバナラヌト云フ、玆ニ一ツ
  ノ言質ヲ與ヘテ居ルカ、全然白紙デア
  ルカ此處ヲ先ヅ聽キタイノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=33

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• 034・安保清種

  ○安保國務大臣　只今ノ大口サンノ御
  質問ニ御答致シマスガ、現在ノ計畫以
  外ニ、次ニ來ルベキ海軍ノ計畫ニ於テ
  其財源ニ付テ內閣ニ於テ、責任アル談
  合ヲシテアルカナイカト云フコトデア
  リマスガ、是ハ先程御答申上ゲマシタ
  ヤウニ、次ニ來ルベキ計畫ガ昭和十一
  年度以前ニ起レバ、其內容ト云フモノ
  ガヤハリ確實ニナッテ居ラヌト云フ關
  係モアルノデアリマスカラ、隨テ其財
  源ト云フモノガ用意シテナイ、其財源
  ニ付テ約束ガアルカト云フコトニ付キ
  マシテハ、此度ノ計畫及ビ此後ト云フコ
  トニ付テ首相ト海軍大臣トノ間ニ色々
  話合ヒハ致シマシタケレドモ、ソレヲ
  ドウ云フ程度ニ責任ヲ持ツコトニナッ
  テ居ルカト云フヤウナ其內部ニ涉リマ
  シタコトハ此處デ御話申上ゲ兼ネル、
  斯ウ先程申上ゲタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=34

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• 035・大口喜六

  ○大口委員　私ハ其內部ノ經緯ヲ聽カ
  ウト言フノデハアリマセヌ、ソコガ極
  メテ大切デ將來ノ我國ノ財政計畫ヲ議
  スル上ニ於テ、是ガ全然白紙デアルモ
  ノナラバ、例ヘバ昭和九年度ニナリマ
  シテ第二次海軍補充計畫ガ必要ナリト
  シテ頭ヲ出シテ來タ所ガ、帝國ノ財政
  ガ許サヌ、其場合ニ增稅ヲシテヤルカ、
  增稅ヲシナイカト云フヤウナコトニ到
  著シマスレバ、或ハ其時ノ內閣ノ多數
  ノ考ニ於テ增稅ハシナイ、同時ニ海軍
  ノ第二次海軍補充計畫ヲ何ト海軍大臣
  ガ言ッテモ、財政ノ都合上本年ハヤレナ
  イト言フコトハ出來マスガ、今日海軍
  大臣トノ間ニ-內部ノ間ニ或ル程度
  ノ諒解ヲ得テ居ルト云フコトニナル
  ト其場合ニ內閣ガ迭リマシテモ、其
  時ノ內閣ト云フモノハ現內閣ノ言質ニ
  顧ミテ、ドウシテモ海軍ノ言ヲ容レテ
  一年遲ラカシテモ宜イヂヤナイカト云
  フコトデアッテモ、專門家タル海軍大臣
  ニ主張サレヽバ、其言質ニドウシテモ
  囚レテ、假令增稅ヲシテモ之ヲヤラネ
  バナラヌト云フコトガ起ル次第デアリ
  です。議論ヲスレバ色々アリマスガ、
  國防ガ危イノダカラヤルノハ當然ダト
  云フヤウナ議論ハ出來マスガ、ソレハ
  机ノ上ノ議論デ、私ハ議論ヲ避ケテ實
  際問題ヲ話シテ居ル、サウ云フ事實ハ
  大小ノ事デ此處デ言明ヲ憚リマスガ、
  隨分今日マデアッタト思ヒマス
  現ニ豫算編成ノ上ニ於テ私モ小イサ
  イ事デ經驗シテ居ルノデアリマス、吾
  吾ガ夢ニモ知ラヌ事ダガ、前內閣ト是
  ガ斯ウ云フ話合ニナッテ居ルノダト言
  →假令大藏大臣トシテモ、ソレヲ
  知ラナイト云フ譯ニハ行カナイ、何ト
  カ財源ヲ拵ヘナケレバナラヌト云フ、
  玆ニ義理合、責任ト云フカ道德上ノ責
  任ト申シマスカ義理合ト申シマスカ
  是ハ紳士トシテ、政治家トシテ、大臣
  閣僚トシテ作ラナケレバナラヌト云フ
  コトニナル所ガ全然白紙デアル場合ハ
  大分其處ガ違フ、軍艦ヲ造ルカ、增稅
  ヲスルカト云フコトニナレバ、內閣ノ
  執ル方針ト云フモノガ違ッテ來ル、此處
  ノ結論ダケヲドウシテモ明カニシテ置
  カナケレバナラヌ、ソレガ全然白紙デ
  アルカ、或ハ內閣トノ間ニ或ル程度ノ
  諒解ガアルカ、是ガ分ッテ居ナイト大藏
  大臣ニ對スル質問モ甚ダ仕難クナル、
  是ダケハ御話シ下サルノハ當然ダラウ
  ト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=35

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• 036・安保清種

  ○安保國務大臣　今ノ大口サンノ御質
  問ニ御答致シマスルガ、大藏大臣ノ方
  ノ質問ノ關係デ、其處ヲ明ニシナケレ
  バナラヌト云フコトデアリマシタ、首
  相ト海軍大臣トノ間ニ色々話ヲ致シマ
  シタコトハ當然ノ事デアリマスケレド
  モドウ云フ程度ニ話ヲシタト云フコ
  トハ是ハ此處デ御話ヲ致シ兼ネル、
  斯ウ云フ事ヲ申シテ居ルノデアリマシ
  テ、而シテ昭和九年度、十年度ニナル
  ニ於テハ其時ノ情勢ニ應ジテ、又財政
  等ノ事モ其中ノ考慮ニ入レテ、新シク
  計畫ヲ立テルト云フ場合ニハ、當然其
  場合ノ國防ノ必要ト財政其他色々ノ
  狀況ヲ加味致シマシテ、其內閣デ無論
  決メラレルト云フコトニナラナケレバ
  ナラヌノデアルコトハ是ハ御承知ダ
  ラウト存ジマス、隨テ今日此場合ニ於
  キマシテ、ドウ云フ程度ニ話合ヲシテ
  居ッタカ、斯ウ云フコトノ內容ノ御話
  ハ、私ハ致シ兼ネルト信ジマス次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=36

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• 037・大口喜六

  ○大口委員　私ハ內容ヲ聽カウトハ思
  ハヌノデアリマス、其結論ダケデ宜イ、
  全然白紙デアルカ、或ル程度ノ諒解ヲ
  持ッテ居ルカ、是ダケデ宜シイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=37

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• 038・安保清種

  ○安保國務大臣　ソレガ卽チ內容ニナ
  ル譯デアルト私ハ存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=38

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• 039・大口喜六

  ○大口委員　私ハ今此處デ速記錄ナド
  ヲ持ッテ來テ突付ケテ、アナタニ彼此レ
  言フコトヲシタクナイト思フカラ、ソ
  レデ私ハ申サヌノデアリマスガ、頻ニ
  アナタハ疑惧ノ念ヲ抱イテ居ラレルカ
  モ知レマセヌガ、私ハアナタカラ言質
  ヲ取ッテ、ソレヲ捕ヘテ今ノ政府ヲ困ラ
  サウト云フ考ハナイ、將來ヲ考ヘテ居
  ルモット端的ニ露骨ニ言ッタラ或ル方
  面ノ方ハ御立腹ニナルカモ知レマセヌ
  ガ、私ハ此內閣ガ永ク續カウトハ思。ツ
  テ居リマセヌ、所ガ誰ガ此後ニ代ッテ
  ヤルニシテモ是デハヤレマセヌ、假令
  此內閣ガ永ク御續ニナルニシテモ今
  ノ大藏大臣ガ、十年モ御續ニナルカド
  ウカ頗ル疑問デアル
  ソレデ是ハ明ニシテ置カナケレバナ
  ラヌ、第二次補充計畫ト云フモノガ、
  昭和十一年度以前ニ頭ヲ出スベキモノ
  デアルト云フコトハ、出スコトガ必要
  デアルト云フコトハ總理大臣代理モ、
  アナタモ認メラレテ居ラレルヤウデア
  ル、然ルニソレニ對スル財源ハ一厘モ
  取ッテ居ナイト云フコトガ言明サレテ
  居ル、サウスルト云フト、此位計畫上
  海軍トシテ危イモノハ先ヅナイ、-1
  ニ言ヘバ-、危イト云フ言葉ヲ使ヒ
  マスト又言葉ニ付テノ議論ガ起リマ
  セウガ、不安ナモノハナイ、ケレドモ
  第二次補充計畫ト云フモノハソレ程大
  切ナモノト思ッテ居ラヌノデアルカ若
  シ必要ハ持ッテ居ルケレドモ、今何ニモ
  決メテナイ、決メテナイカラ財源ハ取ツ
  テナクテモソレ程心配ニ及バヌ。其時
  ノ政府ガドウカスルデアラウト云フ、
  單純ナル白紙デアルカ、或ハ現內閣ニ
  於テソレハ必ズ何トカ捻出スル諒解ヲ
  シテ居ル、シテ居ルカラ先ヅ今囘ハ所
  謂第一次補充計畫ダケ、根幹ダケニシ
  テ置ク、ソレダケノコトヲ政府ガ認メ
  ルナラバ、其間ノ細カイ話ナドヲ聽カ
  ウトハ言ハナイ、或ル程度ノ諒解ガア
  ルカドウカト、斯ウ言フノデス、ソレ
  ヲハッキリ言ウテ下サレバ宜イ、諒解ガ
  ナイトカ、多少ノ諒解ガアルトカ、或
  ハ全然白紙ダトカ、ソレデ宜シイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=39

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• 040・安保清種

  ○安保國務大臣　御答ヲ致シマスガ
  今ノ、ドウ云フ諒解ガアルカト云フコ
  トニ付キマシテハ、是ハ此議會ノ施政
  方針ヲ、首相代理ガ述ベラレマシタ中
  ニモ、海軍ノ計畫ハ緊急ナモノヲヤル、
  斯ウ云フ意味ノコトヲ謳ッテ居ラレマ
  シタ、卽チ先程モ申上ゲマシタ通リ、
  此度ノ計畫ハ卽チ國防上必要トスル所
  ノ根幹ヲ備ヘルモノデアルト云フコト
  ヲ言現サレテ居ル次第デアリマスルカ
  ラ、卽チ其中ニモ是カラ後ニ來ル所ノ
  相當必要ナモノニ付テハ考慮スルト云
  フコトハ自ラ其處ニアリマスル、尙又
  再三ノ御質問ニ對スル答辯ノ中ニ、首相
  代理竝ニ大藏大臣カラ、今日マダ計畫
  ガ立ッテ居ラヌケレドモ、相當必要トス
  ル計畫ガ其處ニ立ツ以上ハ、ソレハ何
  トカ財源ノ上ニモ方法ヲ執ルト、斯ウ
  云フコトヲ言ッテ居ラレマス、卽チソレ
  ハ內閣ノ心持ト云フ意味ニナリマスル
  譯デアリマスルガ、唯其以上ニドウ云
  フ經緯ガ首相ト海相ノ間ニアッタカト
  云ッタヤウナ意味ノ、內部ニ亙ルコトハ
  御話致シ兼ネルト、斯ウ云フコトヲ先
  程カラ申上ゲテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=40

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• 041・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト現内閣ニ於テ
  ハ多少ノ諒解ヲ持フテ居ル、其場合ハ、
  其財源ヲ相當ニ捻出スル考ヲ持ッテ居
  ル、斯ウ云フ話合ヒダケニハナッテ居ル
  ト云フ結論ト私ハ今承ルノデアリマス
  ガサウ云フコトデアリマスカ

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• 042・安保清種

  ○安保國務大臣　御尋ノ通リデアリ、マ
  ス

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• 043・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト、更ニ私承リ
  タイノデアリマスガ、是ハ此海軍ノ計
  畫ト云フモノハ私ガ申スマデモナク、
  中々永ク續イテ行クモノデアッテ、今ノ
  海軍大臣ガ果シテ其時マデ御居デニナ
  ルカドウカ、御居デニナルデモアリマ
  セウガ、御居デニナラナイカモ知レナ
  イ、內閣モ其通リデアリマス、所ガ此海
  軍計畫デハ只今申ス通リ內閣ノ更迭、
  海軍大臣ノ更迭ニ依ッテ變ルベキモノ
  デハナイ、國防ノ洵ニ大切ナル筋道ダ
  ト私共思フ、サウスルト餘程是ハ確實
  ニシテ置カナイト、其時ノ政府ガヤル
  ノデアル、其時ノ政府ガドウカスルデ
  アラウト云フノデ、今ノ內閣ガドウカ
  考ヘルト言ッタダケデ是ハ行ケルモノ
  デハナイ、ダカラ其時ノ政府ガドウカ
  スルデアラウト云フコトハ一體ドウ
  云フ所ヲ根據トシテ、ドウ云フ所ニ賴
  リヲ持ッテ居ラレルノデアリマセウカ、
  例ヘバ現內閣ガ續クトスレバ、此內閣
  トハ今大體ノ諒解ヲ得テ居ラレル、之
  ヲ何處マデモアナタハ續クモノダト信
  ジテ、斯ウ云フ諒解ヲ得テ居ルトナル
  ト.現在ノ大藏大臣ニ一ツ聽クコトニ
  ナルガ、內閣ガ迭ルカモ知ラヌ、アナ
  タガ迭ルカモ知ラヌケレドモ、海軍ノ
  計畫ガ變ッタラ是ハ大變デアル、ソレダ
  カラ其時ノ政府ノ意見ニ依リ、其時ノ
  政府ノヤッテ吳レルコトニ依リ、ソレヲ
  信賴スルト云フ今思召デアラウガ、ド
  ウ云フモノヲ一體根據トシテ捉ヘテ此
  計畫ヲヤル場合ニハ財政上確實デア
  ル、行ケルト御見込ニナッテ居ルカ玆
  ニ洵ニ私ハ疑ガアルノデスカラ、御心
  持ヲ聽クノデス、言葉ヲ捉へテアナタ
  ヲ此處デ攻擊シテ見ヨウト云フノデナ
  イノデス、ドウ云フ氣持デアナタハ居
  ラレルカト云フコトヲ聽キタイノデス

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• 044・安保清種

  ○安保國務大臣　御尋ノ御趣意ハ能ク
  分リマシタノデアリマスガ、今ノ場合
  ニ於テドウ云フ程度ノ考ヲ持ッテ居ル
  カト云フコトデアリマスガ、是ハ兎ニ
  角今日デハナク、或ル何年カノ後ノ其
  時ノ情勢及ビ又每度申シマスヤウニ技
  術ノ進步變遷等モ加味シ、又財政等ノ
  コトモ考慮シテ、是非トモ國防ノ上ニ
  今日ノ此國情ニ照シテハ是レダケノ國
  防ヲ是非トモ必要トスルト云フコトデ、
  無論計畫ハ立ツ譯デアリマスガ、其場
  合ニ海軍當局トシテハ、內閣ニ在ッテ
  其處ヲ能ク說明ヲシ、適當ノ方法ヲ執
  ルト云フコトハ、是ハ當然ナ話デアリ
  やく、其時ニナラヌ以前ニ於テノ今日
  ドウ云フ約束ヲシタカラ、ソレガ成立
  ツトカ、成立タヌトカ云フ意味ヨリ、
  モット私ハ重大ナ、其時ノ情勢ニ最モ適
  當シタ國防ノ案ヲ立テルト云フ事柄ガ
  必要ナコトデ、卽チソレガ最モ有力ナ
  モノト私ハ信ジテ居ル次第デアリマス

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• 045・大口喜六

  ○大口委員　其處ニ私ガ申シマス點ト
  喰違ガアルノデアリマス、只今ノ御說
  ノヤウニ第二補充計畫ト云フモノヽ細
  カイ組織組立ト云フモノニ對シテハ
  アナタノ御辯明ヲ先ヅ宜イトシテ、私
  ハソレニ對シテモ意見ガアル、アリマ
  スケレドモ意見ヲ鬪ハシテ居レバ、質
  問應答バカリ長クナッテ、却テ議論ニナ
  リマスカラ、ソレヲ避ケル爲ニアナタ
  ノ今仰シヤッタ全部ヲ、私ハ諒解セヌケ
  レドモガ、ソレハ議論ヲシナイコトニ
  スル、ソレダカラ外國ノ情勢ヲ見テ、是
  カラ御立テニナッテモドウナサッテモ、
  ソレハ御自由デアルガ、兎ニ角昭和十
  一年度以前ニ第二補充計畫ト云フモノ
  ガ、或ル程度ノ頭ヲ出スコトガ必要ナ
  コトヲ認メラレテ居ル、細カク言ヘバ
  內田君ニ對スル質問應答ニ於テ、少ク
  トモ最低限九百五十萬圓ハ要ルト云フ
  御答辯ニナッテ居ル、ソンナ事ハ私ハ此
  處デ念ヲ押サウトハ思ハヌガ、吾々カ
  ラ見レバモット多ク金ガ出ルト思フ、兎
  ニ角ドウ云フ組織ニシヨウト、外國ノ
  事情ニ依ッテドウ變ヘヨウト、第二補充
  計畫ノ一部分ガ、少クトモ昭和十一年
  度以前ニ出ルト云フコトハ確定的ノモ
  ノデアル、確定シナイモノナラバダケ
  レドモ、確定シタモノガアッテ、而モソ
  レガ國防ノ一部分デアル、其財源ガ一
  厘モ取ッテナイト云フノデ、海軍大臣ガ
  洵ニ呑氣ナコトヲ言ッテ居ラレル譯ハ
  ナイ、其處ニ非常ナ私ハ疑ヲ持ツ、確
  實ニシテ置カウト思ヘバ財源ヲ取ッテ
  置クヨリ他ニ仕方ガナイヂヤナイカ、
  其財源ナシデ現內閣トアナタト或ル程
  度ノ諒解ガアルコトニ付テハ、後ニ大
  藏大臣ニ問ウテ、大藏大臣デ分ラナケ
  レバ更ニ總理大臣ノ御出席モ要求シ
  やく、現內閣ノコトニ對シテハ後ニ聽
  クコトニスルガ、更ニ進ンデ此内閣ガ
  ドウ變ルトモ分ラヌ、アナタモ迭ルヤ
  ウニナルカモ分ラヌ、併シ海軍ノ計畫
  ダケハ變フテハイカヌ、而モ第二補充計
  畫ト云フモノガ昭和十一年度以前ニ頭
  ヲ出スト云フコトハ明瞭ニナッテ居ッテ、
  サウシナケレバ國防上十分デナイコト
  ハ明瞭デアル、サウシテ一厘モ金ガ取。ツ
  テナイノニ、海軍大臣ガ其時ノ內閣ガ
  ドウカシテ吳レヤウト言ッテ居ラレル
  コトハ甚ダ是ハ不安固デ、能クツレ
  デ安心シテ居ラレルモノダト私ハ疑フ
  ノデアル、之ヲ確實ニスルニハ財源ヲ
  取ッテ置クニ限ルヂヤアリマセヌカ
  サウ云フ論ニナルト、モウ一步進ン
  デチヨット言ッテ見タクナル、旣ニ昭和
  十二年前後ニハ六千萬圓ノ艦艇製造財
  源ト云フモノガ保留シテアルデハアリ
  マセヌカ、勿論是ニハ主力艦隊ノ代換
  建造費ガ這入ッテ來マセウカラ、六千萬
  圓デ宜イカドウカト云フ議論ニナルト
  大分面倒ニナル、サウ云フコトヲ必ズ
  仰シヤルダラウト思フカラ、最初私ハ
  昭和十二年以後ノ財政計畫ト云フモノ
  ヲ大體知ッテ置イテ論ジタイト思ッテ要、
  求シタガ、大藏省ノ係ノ方ガ、ソレハ
  困難ダカラ止メテ吳レナイカト仰シヤ
  ルカラ廢シタノデス、少クトモ昭和十
  五年度位マデノ財政計畫ト云フモノヽ
  デス、ダガ昭和十二年度以後ニハマダ
  何ニモ決ッテ居ラヌ、モット〓〓決ッテ
  居ナイモノニ對シテモ財源ヲ取ッテオ
  ヰデニナル、其外ニ又六千萬圓以外ニ
  航空隊ノ財源モ保留シテ居ル、此位昭
  和十二年度以後マデ確實ニヤッテ居ル、
  所ガ昭和十一年以前ノ目先ノ-二年
  ヤ三年直グ來マス、此大切ナ第二補充
  計畫ノ財源ニ對シテ一厘モ取ッテ居ラ
  ヌドウデアルカト云フト、ソレハ各
  國ノ形勢ヲ見テ、斯ウ云フ譯デソレカ
  ヲ決メルノダト云フコトデ、是デ吾々
  ヲ追拂ッテシマハウト云ッタッテ、ソレハ
  失禮ダガ常識ヲ持ッテ居ル者ハ承服ハ
  出來マセヌ、此位不確實ナコトハナイ、
  ソンナ不確實ナコトデアナタガガ安心
  シテオヰデナサル御方トハ私ハ思ハ
  ヌ、アナタガ安心サレテモ海軍部內ガ
  安心シマセヌ、ソレデ宜イナラ是カラ
  ノ大藏大臣ハ樂デスガ、是ハ海軍デハ
  自己ノ職責カラ、我國ノ國防デ大切ナ
  事デアルカラ、細カイ計畫マデハ定マッ
  テ居ナイコトヲ假ニ認メマス、ソレハ
  是カラデ宜シウゴザイマスガ、大體ノ
  押ヘト云フモノガアッテ、ソレニ對スル
  財源ガ保留シテナクテハナラス、一原
  ノ財源モ保留セヌデ、其時ノ政府ガド
  ウカシテ吳レルデアラウト云フガ如キ
  意味ヲ以テ、ソレデ是ダケノ事ヲ安心
  大體ヲ見ナイト細カクハ論ゼラレヌ譯シテ居ラレルト云フコトガ私ニハ疑問
  デアリマス、ソレデアナタハ財源ヲ保
  留シテ置クニ限ルト思フガ、財政上已
  ムヲ得ナイ、不確實カモ知ラヌガ、其
  時ノ政府ヲ賴ルヨリ外ナイカラ賴ッテ
  居ル、其時ノ內閣ガドウカスルト仰シ
  ヤレバソレデ答ニハナリマス、私ハ其
  アナタノ腹ノ底ノ心持ヲ聽キタイ、經
  緯ナドハ聽カヌデモ宜イ、何モ私ガ將
  來大藏省ヲヤラウト云フ意味デモ何デ
  モナイガ、此後代ッテ大藏省デヤル人
  ニナッテ見タラドウデアリマス、是ガ確
  實デナケレバヤレナイ、ソンナモノヲ
  引受ケタラ大變デアリマス、是ハ質疑
  シテ置カナケレバナラヌ、將來斯ウ云
  フ風ニナルコトニナッテ居ルト云フコ
  トガ分レバ一番宜イ、白紙ナラ白紙、
  ソレカラ後ニ一文モ金ハ取ッテナイ、洵
  ニ不確實デアル、御前ノ言フ通リ金ガ
  取ッテアレバソレニ越シタコトハナイ
  アナタノ言フ通リダガ、財政上今日已
  ムヲ得ヌカラ漠然トシテ居ルカモ知レ
  ヌガ、後ヲ唯信賴シテ居ルト言ヘバソ
  レモ答デアル、ソレヲ伺ヒタイノデス

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• 046・安保清種

  ○安保國務大臣　御答致シマスガ、先
  程御答致シマシタノト私ノ申上ゲマス
  趣意ハ變ル所ハナイノデアリマスガ
  今モ段々大口サンカラ斯ウ云フヤウナ
  答ガアレバ、ソレモ答ニハナルケレド
  モト云フ風ナコトヲ御示ニナリマシ
  タ、大體其意味ニ合ッテ居ル點モアル
  ノデアリマスガ、要スルニ六年カラ十
  一年度ニ亙リマシテ、其處ニ一ツノ計
  畫ト云フモノガアリ、ソレカラ海軍力
  ト云フモノヲ我帝國トシテドウシテモ
  持フテ行クト云フコトデアル以上、其處
  ニ財源ト云フモノガナケレバナラヌコ
  トハ明カデアリマス、ソレガ卽チ昭和
  十二年度以後ノ六千萬圓ト云フモノニ
  ナル譯デアル、卽チ今日艦ヲ造ルノカ
  ラ言ヘバ五千五百萬圓ト云フ艦ヲ造ル
  ノト其次ノ六千萬圓ト云フノト竝
  ンデクツ附イテ行ッテ居ル、ソレヲ十一
  年度以前ニ於テ或所ニ被セテ、五年ナ
  リ六年ナリニ亙リ次ニ來ル計畫ヲ立テ
  ナケレバナラヌト云フコトニナルコト
  ハ今大口サンノ御話ノ通リ必要ヲ認
  メテ居リマス次第デアリマスガ玆
  冠サル財源ヲ用意シテナクテドウシテ
  安心ガ行ケルカ、斯ウ云フノデアリマ
  スケレドモ、ソレハ全體ヲ通ジテ是カ
  ラ六年ナリ何年ナリノ次ノ計畫ヲ立テ
  マスニ付キマシテハ先程モ申シマシ
  タヤウニ、其時ニ於ケル內外ノ情勢ヲ
  考慮シマシテ、最モ適當トスル國防上
  又必要トスル一ツノ計畫ヲ立テテ行カ
  ナケレバナラヌト云フコトニナル譯デ
  アリマス、其際ニソコニ若干ノ重ナリマ
  スモノニ付テノ經費ヲ必要トスル、其
  經費ハ有ユル手段ヲ以テ方法ヲ講ジ得
  ルモノト私ハ確信シテ居ルノデアリマ
  シテ、之ヲ今囘取ッテナイノハ甚ダ不安
  心ダト云フ話デ、是ハ取ッテアルノニ越
  シタコトハ無論ナイノデアリマス併
  ナガラ今日ノ情勢ニ於キマシテハマ
  ダ本當ノ具體的ノ計畫ガ立ッテ居ラナ
  イノニ、ソコニ或ル財源ヲ用意スルト
  云フマデニハ及バナカッタ次第デアリ
  マスカラ、先程申上ゲマシタ趣意ニ於
  テ私ハソレデ已ムヲ得ヌコトト信ジテ
  居リマス

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• 047・大口喜六

  ○大口委員　實ハ是デ止メタイノデス
  ケレドモ、ドウモ御答ノ中ニ疑問ヲ生
  ズルカラ、モウ一言言ハナケレバナリ
  マセヌガ、其財源ヲ取ッテ置ク、取ッテ置
  カナイ、ドウデアルカト云フ細カイコ
  トニナレバ、其時ニドウカナルダラウ
  トカ、ナラナイダラウトカ云フコトハ
  是ハ大藏大臣ノ方ノ多ク所管ニナルデ
  アリマセウカラ、其後ニ私ハ聞キタイ
  ト思フ、唯海軍大臣ニ承リタイノハ、
  現在ソレニ對スル財源ヲ取ッテ居ナイ、
  此位不確實ナコトハナイ、ソレデ能ク
  安心ガ出來ル、詰リ其時ノ內閣ガドウ
  カシテ吳レルダラウト思ッテ居ルト云
  フナラバソレデ宜イノデス、所ガ其後
  ニ附加ヘテ、ソレダカラ十二年度カラ
  取ッタト云フヤウナコトヲ言ハレルカ
  ラ、私ハ又言ハナケレバナラヌコトニ
  ナル、十二年ナラモット不確實ニナル
  モット不確實ナコトデサへ取ッテ居ルノ
  ニ、モット確實性ヲ要シナケレバナラヌ
  十一年度前ニ一厘モナクテ、ソレデア
  ナタガ安心シテ居ラレルト云フコト
  ハドウシテモ疑問ガ解ケヌコトニナ
  ルソレハ其通リデアル、確實トハ思
  ひゝ、ソレハ先刻御話ノヤウニ財源ヲ
  取ッテ置クニ越シタコトハナイノデア
  ルガ、財政上大藏大臣ガ困ルト言フカ
  ラ已ムヲ得ヌ、ソレヲ信賴シテ居ルノ
  ダ、其時ノ政府ガドウカシテ吳レル積
  リダト仰シヤレバ、ソレハ先刻モ言フ
  通リ、アナタニ對スル質問ハ濟ムノデ
  アル、ソレヲ何トカ理窟ヲ御付ケニナ
  ルガ、其理窟ガ洵ニ不確實デアル、ソ
  レナラバナゼ十二年以後ニ取ッテ居ル
  カ、十二年以後ノ保留財源ガ十一年前
  ニドウシテ間ニ合フカト云フコトヲ聞
  キタクナル、ソレヲハッキリ御答願ヒ
  マス

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• 048・安保清種

  ○安保國務大臣　大口サンノ御話ノ色
  色言廻シデアリマスガ、私ノ今ノ考ガ
  今度ノ計畫ガアリ、又十二年以後ニ於
  テハ財源ガアルガ、其間ニ冠セル金ガ
  一厘モ取ッテナイノニ、ドウカナルダラ
  ウトシテ、晏如トシテ居ルト言フナラ
  ソレデ宜イト云フコトデアリマスガ
  先程カラモ段々申上ゲマシタヤウニ、
  決シテ晏如トシテ居ル意味デハナイノ
  デアリマス、卽チ此度ノ計畫ヲ提出致
  シマスニ付キマシテ、先程モ申上ゲマ
  シタヤウニ、總理大臣ノ施政演說ノ中
  こじ、此度ノモノハ緊急ノモノヲ以テ
  先ヅ根幹ヲ備ヘルノダト云フコトガ言
  現ハサレテ居リマスシ、又總理大臣代
  理ヤ大藏大臣等カラモ一度ナラズ計畫
  ガ今立ッテ居ラヌカラダケレドモ、此計
  畫ガ立ッタ以上ハ何トカ萬難ヲ排シテ
  經費ハ繰合セヲ付ケヤウト云フコトヲ
  言ッテ居ラレマス、サウ云フコトニ無論
  信賴ヲスルヨリ外ナイノデアリマス
  私ハ之ニハ十分ノ信賴ヲ持ッテ居ルト
  申上ゲルヨリ外ナイ譯デアリマス

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• 049・大口喜六

  ○大口委員　先ニサウ仰シヤレバ洵ニ
  明瞭ニナル、サウダラウト思フ、サウ
  スルト海軍大臣ハ私共ガ非常ニ不確實
  ダト思フ點デ安心シテ居ラレルノダト
  云フコトニナッテ、其點ハ大藏ノ方ニ御
  伺シタイト思フ、海軍大臣ニ對シテハ
  今ノ御答デ分リマス、サウスルト大藏
  大臣ニ御質問スル前ニ、海軍省ノ方ニ
  承ッタ方ガ宜イト私ハ思ヒマスガ、一昨
  日來內田信也君ト海軍當局トノ質問應
  答ヲ承ッテ居リマスト、海軍ノ繼續費ノ
  積算方法ト云フモノニ非常ナ疑問ヲ生
  ジテ參ッタノデアリマス、私ハ最初素人
  ダカラ、寧ロ內田君ノ質問ガ少々無理
  ナ質問デハナイカト思ッテ聽イテ居ツ
  タ、ナゼデアルカト云フト、海軍ニ於
  カレマシテハ斯ウシテ豫算ヲ吾々ニ御
  出シニナッテ、繼續費トシテ補助艦隊製
  造費ト云フモノガ明カニナリ、其總計
  金額モスッカリ書イテ、御演說ニナッタ
  ト同ジ通リナ金額ガ出テ、年度割ノ數
  字ガ出テ居ルノデアリマスカラ、伺ハ
  ナクテモ巡洋艦ハ幾ラデアリ、驅逐艦
  ハ幾ラデアリ、潛水艦ハ幾ラデアリ、
  特務艦ハ幾ラデアルト云フコトハ年度
  割ガ明瞭ナノデ、細カイ何圓マデノ數
  字ガ出テ居ル、所ガ內田君ノ質問ニ依ツ
  テ、之ガ出セルトカ出セヌトカ云フ御
  話デアルガ、サウスルトドウモ裏ノ裏
  ガアルモノデアッテ、玄人ハ違ッタモノ
  デアルト思ッテ昨日私承乃、サウスル
  ト吾々ニ御渡シニナッタ此豫算ト云フ
  モノハマルデ架空的ナモノデアッテ、何
  等事實ニ卽シ、豫定ガアルモノデハナ
  イ、其處ガサッパリ私ニハ分ラナクナッ
  タノデアリマス、此豫算ノ繼續費ノ組
  立ヲ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 050・安保清種

  ○安保國務大臣　申上ゲマスガ、此六
  年度カラ十一年度ニ亙リマスマデノ總
  額及ビソレニ必要ナ兵力ト云フモノ
  ガソレ〓〓分リマシテ、サウシテ斯ウ
  云フ年度ノモノヲ作ルコトヲ必要トス
  ルト云フ、大體ノ旣ニ兵力ガキマリマ
  シテ、之ヲ此年度マデニ拵ヘ上ゲルト
  云フノデスカラ、其中ノ細カク年度ヲ
  割ッテ、是ダケノモノヲ造ッタラバ宜カ
  ラウト云フ大體ノ見當ガ付ケバ、豫算
  ヲ大藏省ト交渉シテ年度々々ノ費用ト
  云フモノガ上リマシタ譯デアリマス、
  併ナガラ是ハ大體ノ見當ヲ付ケテ上ゲ
  マシタニ過ギマセヌノデ、一昨日デシ
  タカ昨日デシタカ、內田君ノ御質問ニ
  對シマシテ、吾々ノ方デ線表ト申シマ
  シテ居リマス、所謂工程表、是ハ中々
  簡單ナモノデハナイノデアリマシテ、
  工業能力ノ維持デアリマストカ、兵力
  ヲ整ヘルト云フコトノ關係、ソレカラ
  私立造船所ノ方ト官ノ方ノ造船所、ソ
  レ等ニ適當ニ割當テヽ手ノ空カナイ
  ヤウニ都合好クソレヲヤッテ行カナケ
  レバナラヌト云フノデ、線表ト云フモ
  ノニスッカリ六年度ノ間ノ造艦ヲスル
  ニ付テハ色々ノ點ヲ考慮シテ置カナケ
  バナラヌノデアリマスカラ、之ヲ目下
  〓究シツヽ作リツヽアル所デアリマ
  ス、隨テソレガキマリマセンケレバ、ド
  ノ年度ニ何ヲ著手シテ、其著手シタ年
  ハ八分ノ一ダケ經費ヲ支出スル、其次
  ニハ凡ソ何分ノ一ノ經費ヲ支出スルト
  云フコトヲ細カク割リマシテ、サウシ
  テ玆ニ揭ゲマシタ經費ト必ズ辻褄ノ合
  フヤウニ一ツノ表ヲ作ッテ、ソレヲ實行
  シテ行ク、斯ウ云フコトニナリマス、
  其實行シテ行クベキ工程ノ非常ニ細カ
  イ表ナルモノガ、マダスッカリ完備シテ
  居ル譯デハナイノデアリマスカラ、其
  內容ノ詳シイコトヲ、之ニドウ割ルト
  云フコトヲ假定シヲ御話スルコトハ出
  來ヌ、斯ウ云フ意味ニ申上ゲタノデア
  リマス、ソレカラ昨日內田サンカラモ
  段々御尋ガアリマシテ、假ニ祕密會デ
  說明シタモノト數字ヲ計算シテ見ルト
  大變違フデハナイカ、斯ウ云フ御話デア
  リマシタケレドモ、一ツハアノ祕密會
  デ申上ゲマシタノハ、ドノ年度ニドウ
  云フノガ竣工シ、サウシテドウ云フモ
  ノヲ廢棄スルト云フコトニナッテ、噸數
  ノ差ガ每年ドウ云フ風ニナル、ソレガ
  維持費ト云フモノニドウ云フ風ナ關係
  ヲ及ボスカト云フコトヲ一ツ示シテ貰
  ハナケレバ、維持費ノ見當ガ付カヌ、
  斯ウ云フ維持費ノ見當ト云フ意味デ御
  示ヲ致シタノデアリマス、ソレヲ所謂
  民間ニ註文スルト云フコトデアリマス
  ト、金ノ拂ヒ方ガズット工廠デ以テ一
  年度ヲ通ジテヤリマスノト、無論金ノ
  拂ヒ方等モ違フノデアリマスカラ、ソ
  レ等ヲ適當ニ調節シテ玆ニ本當ノ所謂
  線表ナルモノヲ作ッテ、ソレヲ實行シテ
  行ク、斯ウ云フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=50

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• 051・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト私ハ短ク承リ
  やっ、私ハ一體繼續費ノ豫算ト云フモ
  ノヲ作ルニハ細カイ線表ガ出來タリ、
  キチントシタモノガ出來ズトモ、大體
  ノ輪廓ト云フモノガ出來テ、根據ガ出
  來テサウシテ、私ハ此年度割ト云フモ
  ノガ出來ルモノダト今日只今マデ考ヘ
  テ居ッタノデアリマスガ、全體海軍デ斯
  ウ云フ豫算ヲ作ッテ年度割ヲ御作リニ
  ナルニハ、何ヲ根據トシテ數字ヲ御出
  シニナッタカ、此ノ計算ヲナスッタ根柢
  ハ每年六年度、七年度、八年度ト、何
  圓ト云フコトマデ出テ居ルヤウデアリ
  マスガ、斯ウ云フ豫算ヲ作ル根柢ハ何
  デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=51

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• 052・安保清種

  ○安保國務大臣　ソレハ只今申上ゲマ
  シタ大體ノ兵力量ガキマリ、隻數ガキ
  マリマシタモノニ付テ豫算ヲ大體工廠
  デ割振レバドウナル、民間ニ割振レバ
  ドウナルト云フコトヲ大體ヲキメマシ
  テ、大藏省ト折衝シテ、其折衝ニ付テ
  ハ金錢ノ上下ガアリマス、海軍ノ要望
  通リニカチントヤッテ戴ケレバ宜イノ
  デスケレドモ、ソレハサウハ參リマセ
  ヌ、大藏當局モ色々ノ關係ヲ考慮サレ
  テ相談ヲシマシタ上ニ、一ツノ之ヲ實
  行スル計畫トシテ玆ニ揭ゲテ御協贊ヲ
  經ルト云フコトニナッテ居リマス、偖テ
  之ヲ愈〓實地ニ當箝メテヤルト云フコ
  トニナリマスレバ、只今大體ノ見當ヲ
  付ケマシタコトガ實際ニ入ルノデアリ
  マスカラ、之ヲ細カク割當テヽ何年カ
  ラ著手シテ此支拂ハドウスル、此處ハ
  少シ金ガ多イカラドウスルト云フヤウ
  ナコトヲ細カイコトヲヤッテ、實施上此
  豫算ニ合フヤウニシテ、サウシテ海軍
  ノ要望スル兵力ヲ整備シテ行ク、斯ウ
  云フコトデ進ンデ行ク譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=52

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• 053・大口喜六

  ○大口委員　畫ヲ論ズル上ニ大切ナコトデアリマス
  カラ、大藏大臣ニ承リタイデスガ、大
  藏省ノ方ハドウシテ此年度割ヲキメ
  タカ、何カ根據ガナケレバナラヌノデ
  アリマス、〓計表ヲ作ル上ニ他ノ繼續
  費ト比ベテ見テ、唯大藏省ガ締括リヲ
  付ケル爲ニ自由ニ年度割ヲ變ヘタモノ
  デアルカ、何カ據リ處ガアッテ海軍ト協
  定シテ、斯ウ云フ年度割ヲキメタト云
  フ根據ガナケレバナラヌト思ヒマスガ
  大藏大臣ニ伺ヒマス

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• 054・井上準之助

  ○井上國務大臣　海軍カラ年度割ヲ
  持ッテ參リマス、大藏省デハソレヲ自分
  ノ持ッテ居ル財政計畫ト比較對照致シ
  マシテ、サウシテ交渉ヲ致スノデアリ
  マスガ、併シ海軍カラ申シマスト或
  ル年度マデニハ工業能力ノ維持ノ上カ
  ラ、對外的ノ兵力ノ上カラ、是ダケハ
  是非拵エナクテハナラヌト云フヤウナ
  議論ガアルコトハ夙ニ大口君ハ御承
  知ノコトデアル、ソレヲ斟酌シテ、ソ
  レニ妨ゲナイ範圍デ財政計畫ニ當篏メ
  ルト此年度割ニ割ニナリマス

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• 055・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト最初カラ實行
  ノ出來ナイ形式ノモノデアル、最初カ
  ラ實行ガ出來ナイト云フコトヲ認メラ
  レテ居ルコトニナリマスガ、ドウデア
  リマスカ、分リ易ク言ヒマスト、新計
  畫デ申シマスト昭和六年度カラ十一年
  サウスルト私是ハ財政計度マデノ總計金額ハ、必ズソレハキマッ
  テ居リマス、ソレダケノ間ハ同ジデア
  リマセウガ、六年度、七年度、八年度、
  九年度、十年度、十一年度ト、各年度割
  ト云フモノハ最初カラ實行ハ出來ハシ
  ナイ、實行出來ハシナイガ、唯大藏省
  ハ締括リヲ付ケル、海軍ノ方ハ又本當
  ノ計畫ヲ此中デ作ル積リデ、斯ウ云フ
  豫算ヲ作ッタモノトシカ思ヘナイガドン
  ウデアリマスカ

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• 056・井上準之助

  ○井上國務大臣　當初カラ實行ノ出來
  ナイヤウナ杜撰ナ計畫デハアリマセヌ
  ノデ、相當ノ程度ニ於テ只今申ス通リ、
  一方ハ工業能力ノ維持、一方ハ海軍ノ
  兵力量ヲ考ヘテ、此限度マデハ大藏省
  ノ言フ所ニ讓ルガ、是レ以上ハ讓レナ
  イ、此年度ハ是非是ダケノ金ガ要ル、
  此年度ハ是ダケ要ルト云フコトノ折衝
  ヲスル、其點ニ於キマシテハ何レモ海
  軍ハ自分ノ一番都合ノ好イヤウナ案ヲ
  持ッテ來マス、ソレカラ相當ニ數十日
  掛ッテ計畫ヲ立テルノデアリマスカラ、
  私ノ立場カラ言ヘバ當然實行ノ出來ル
  モノト考ヘテ居ルノデアリマス

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• 057・大口喜六

  ○大口委員　サウナリマスト、大藏大
  臣ノ答辯ハソレデ宜イデス、サウシマ
  スト海軍大臣ノ方ガ困ル、海軍ガ大藏
  省ト折衝シテ、今度大藏大臣ガ言ハレ
  タ通リデアルト、私ハ今線表ノコトナ
  ドハ言ハナイガ、内部ガ確實ニナッテ是
  デ行ケルト思ハナケレバ海軍ガ大藏省
  ノ協定ニ應ズル譯ハナイ、ソレハホン
  ノ大體ノコトデアル、ソレダカラ線表
  ヲ作ルコトニナルト、艦ノ一隻位ハ缺
  ケテ、結末ハ同ジデアルガ、年度割ハ
  變ッテ來ルカモ知レヌ、內田君ノ御話ハ
  分ラナイガ、私僅カデモ大藏省ニ居タ
  カラ、大藏大臣ガ答ヘラレル通リデナ
  ケレバナラヌ、ソレデナケレバ大藏省
  ニ出放題ノモノヲ提供シタト云フコト
  ニナル、海軍ガ大藏省ノ交渉ニ應ジタ
  時ニ於テ、此吾々ニ下サレタ通リノ年
  度割デ行ケルト云フ本ガナケレバナラ
  ヌ、ソレカラ內田君ノ質問ハ同僚デア
  ルケレドモ意外ニ思ッテ聽イテ居ッタ、
  アンナコトハ之ヲ出セバ分ルノダガ、
  出セルトカ出セヌトカ仰シヤルノデ、
  不思議ニ海軍ト云フモノハ中々祕密ガ
  アルト私ハ思ッタ、是ト違フ譯ハナイ、
  或ル場合ニハ數字ハ少シ位違ヒマセウ
  ガ、大體ニ於テ出セルノ出セヌノト云
  フモノデハナイ筈ダト思フ、海軍ト云
  フモノハ大藏省ト折衝スル時ニ、先ヅ
  最初ノ年度割ガナケレバナラヌガ、大
  藏省ノ方ハ大〓ノ程度ニ折合ヲテシマッ
  テ、吾々議員ニハ斯ウ云フ表ヲ出シテ
  置イテ、ソレガ通過シタラソレカラ細
  カク〓究ヲシテ、色々又年度割ハ折合
  セテ變ヘルト云フコトニナリマス、サ
  ウ云フコトデハ財政計畫ハ立チマセ
  ヌ、海軍ハソレデ宜イデセウガ、財政
  計畫ハ立チマセヌ、ソレデ大藏大臣ヲ
  捉ヘテ-捉ヘテト云フト失禮デス
  ガ、大藏大臣ニ向ッテ財政計畫上ノ質問
  ヲシタ所ガ、ソレデ話ガ合ッテモ海軍ト
  陸軍ガ片端カラ碎イテ行ッテハ本當ノ
  計畫ハ立チハシナイ、ソコガオカシイ
  デスガ、海軍ノ机ノ上ノ議論デナク、
  本當ノ話ヲ聽キタイ

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• 058・安保清種

  ○安保國務大臣　大口サンハ私ノ御答
  シタコトヲ少シ誤解ヲシテ、オイデノ
  ヤウデアル、玆ニ現ハレマシタ每年度
  ノ金額ヲ都合ノ好イヤウニ變ヘルトカ
  何トカ云フ意味ニ申上ゲタノデハナ
  イ、是ハ當然玆ニ現ハレタ通リヲ實行
  シテ行ケルノデアリマス、昨日內田君
  カラ御話ノアリマシタノハ、竣工ガ何
  年ト云フコトニ付テ、維持費ノ關係カ
  ラ御示シマシタノト、ソレカラ一方ニ
  於テハ私ガ申上ゲルマデモナク斯ウ云
  フ註文ヲスレバ、始カラ終ヒマデズット
  引續イテ經費ガ萬遍ナク要ルト云フコ
  トニナリマス、民間ニ註文スルト其拂
  フ期日ガ每月々々拂フト云フ意味デハ
  ナク、竣工ノ月ニ依ッテ色々約束ノ上カ
  ラ拂ッテ參リマスレバ、豫算面ニ現ハレ
  マスコトハチヤント艦艇ヲ整ヘテ行ク
  ノデ、其「レート」ト合ハシテ色々變化ガ
  起ルノデアリマスカラ、隨テ民間ニ註文
  スルト云フ一ツノ重要ナル事項ヲ全ク
  度外視シテ、假ニ海軍ノ工廠デ全部造
  ルトシタラ一體ドノ位每年掛ルカ、斯
  ウ云フノヲ示シテ吳レンカ、ソレデモ
  宜イカラト云フコトデアリマスカラ、
  サウ云フコトモ出來ルカモ知レナイ
  ガ、一ツ〓究シテ見ヤウト思ッテ〓究シ
  テ見マシタガ、ソレハ數字ノ出ヌコト
  モナイノデスガ、全ク民間ニ註文スル
  ト云フコトヲ離レテ、始カラ終ヒマデ
  同ジ「レート」ニ費用ガ掛ルト云フ、工
  廠ノモノヲ取ッテヤルト云フノデハ意
  味ヲ爲シマセヌカラ、提出ヲ控ヘマス
  ト云ッテ止メタノデアッテ、是カラ全部
  ヲ造ルト云フノハ、民間ニ註文スル
  !···何トカ年限其他ノコトヲ細カ
  クヤッテ、其數字ニ全ク合致スルヤウ
  ニ方法ヲ取ルト云フ意味デアリマシ
  テ、決シテ此處ニ現ハレテ居ル年度數
  ニ何處ガ多イトカ少イトカ言ッテソレ
  ヲ入レ換ヘルトカ、間違ヘルト云フヤ
  ウナ意味ノコトヲ申シテ居ルノデハナ
  イノデアリマスカラ、ソコヲ御諒承願
  ヒタイト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=58

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• 059・大口喜六

  ○大口委員　サウ云フコトヲ御答ニナ
  ルト、又元ニ戾ッテ內田君ヲ呼ンデ來
  ナケレバナラヌコトニナリマスガ、私
  ハサウ云フコトハシタクアリマセヌ、
  昨日休憩ノ一時ニ內田君ニ私ハ注意シ
  タ、ソレハ君ドウシテモ少シ位ハ細カ
  イ所ニ行クト違フデアラウ、大體ニ於
  テ此豫算表ニ出テ居ル繼續年度支出法
  ニアル譯ナンダカラ、大體ハ此通リダ
  ト海軍ガ數字ヲ出シテ、サウヂヤナイ、
  多少ハ實行上違ッテ來ル、大體ハ斯ウダ
  ト言ッテ出サレヽバ其通リダカラ、是ト
  コッチノ算盤ヲ合シテ見レバ幾ラカノ
  違ヒハアルデハナイカト、內田君ニ注
  意シタ、ソレダカラ內田君ハ昨日ソレ
  ニ言及シタ所ガ、アナタノ方デハ是ト
  合ヒマセヌト云フコトヲ政府委員モア
  ナタモ御認ニナッテ居ルソレト是トハ
  合ヒマセヌ、是カラ線表ヲ作ッテ色々確
  實ナ計畫ヲ立テルノダト云フヤウナコ
  トヲ仰シヤルカラ、海軍ノ計畫ト云フ
  モノヽ元ニ私ハ疑ヲ懷イタ、何故斯ウ
  云フコトヲ言フカト云フト、アナタヲ
  追窮致スノデハアリマセヌガ、每年度
  ノ財源ガアルカナイカト云フコトヲ論
  及シテ見タイト思フ、ソレニハ海軍ノ
  新計畫ガ骨子ニナル、ソレガグラ〓〓
  動イテハ話ニナラヌカラ、ソレデ突止
  メル爲メ斯ル質問ヲスルノデアル、ア
  ラ探シヲヤルノヂヤナイ、ドッチデモキ
  マレバ宜イ、是ト大キイ違ヒハナイノ
  ダ、幾ラカ違フノハ當然ダト云フ意味
  ニ御答ニナルカラ、昨日カラ問題ニナ
  ルト思フ、是カラ新シイモノヲ計畫シ
  テ線表ト云フモノハ是カラ作ルノダ、
  マダ確實ニナラヌカラアノ一表ト二表
  ノ違ヒガ出ル、ソレカラ本當ノモノニ
  ナッテ成タケ之ニ合ヘバ宜イノダト云
  フ意味ニ御答ニナッテ居ル、速記錄ヲ
  持ッテ來テ居ルカラ之ヲ讀メバ直グ分
  リマスガ、ソンナコトデアナタヲ追窮
  スル氣持デナイカラ、サウギユウ〓〓
  ハ私ハヤラヌガ、ソコニ違ヒガアルカ
  ラ私ノ睨ンダ所ヲ腹一杯ニ言ヘバ、大
  藏省ハ今ノ態度ニ出タニ相違ナイ、私
  ハ何時デモ大藏大臣ヲ攻擊スルガ、今
  ノ答ハ大藏大臣ノ答ガ宜イト思フ、大
  藏大臣ハ屹度川越君ナゾガ附イテ居ル
  カラ、アノ積リデヤッタニ相違ナイ、海
  軍ノ方デモ腹ノ中デハ困ルト御思ヒニ
  ナルケレドモ、大藏省ト能ク接衝シテ
  出來ヌケレバナラヌカラ、接衝シテ合
  シタモノダラウト思フ、實際トハ必ズ
  是ハ違ヲテ居ルガ、兎ニ角數字ヲ合シタ
  モノダラウト思フ、ソコノ內容ヲ知リ
  タイガ、ソレヲ露骨ニ仰シヤイト言ッテ
  モ、一寸面目ニ掛ル、威信ニ關スルカ
  ラ仰シヤイマスマイ、私ハ想像スル、
  ソコデ私ノ聞キタイ點ダケ確メテシマ
  ヒマス、ソレトハ多少ノ違ヒハアッテ
  モ、吾々ニ御出シニナッテ居ル豫算ニ
  伴ッテ居ル繼續年度割ト云フモノガ、大
  ナル變更ヲシナイト云フ決心ガアルカ
  ドウカ、此處ヲ聞イテ見マセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=59

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• 060・安保清種

  ○安保國務大臣　御答ヲ致シマスル
  ガ、此現レタノヲ變更スルト云フヤウ
  ナ意思ハ少シモゴザイマセヌ、ソレカ
  ラモウ少シ私ノ申上ゲタノガ能ク徹底
  シテ居リマセヌデスガ、昨日內田君ニ
  御話シマシテ、ソレハ其處ニ違ヒガア
  ルト云フコトヲ認メルト申シマシタノ
  ハ諄イヤウデアリマスケレドモ、民
  間ニ註文スルト云フ非常ニ重大ナ要素
  ヲ全ク除ケテ、民間ノ方ハ除ケテ、官ノ
  工廠ダケデ造ルト假定シタナラバ、ド
  ウカト云フ數字カラ御擧ゲニナッタモ
  ノト、是ト合ハヌコトガアルガドウカ
  ト云フ、斯ウ云フ御尋ニ對シテ、ソレ
  ハ其處ニ相當喰ヒ違ヒガアルト云フコ
  トヲ認メマスト、斯ウ言ッタノデ、ソヨ
  ニ工廠ト云フモノダケデヤルト云フコ
  トノ假定デハ、其處ニ誤解ガ起ルト云
  フコトヲ申シタノデアリマス、其事ヲ
  御諒承願ヲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=60

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• 061・大口喜六

  ○大口委員　今モ申上ゲマスヤウニ、
  海軍大臣ノ面日トシテサウ仰シヤルデ
  セウガ、サウ云フコトヲ言フト議論ガ
  アリマス、併シ今ハ追窮セヌ積リダカ
  ラ、サウ仰シヤルモ宜シウゴザイマス
  ガ結局是ガ違ハナイモノダト云フコ
  トヲ私ハ握レバ宜イ、サウナルト私ハ
  更ニ進ンデ巡洋艦、驅逐艦、特務艦ト一
  ツ〓〓擧ゲテ聞クト都合ガ好イガ、ソ
  レデハ長クナリマスカラ、其一例トシテ
  巡洋艦ダケデ承ッテ見タイ、此巡洋艦、
  是ガ私ノ方デハ材料ガ足ラヌカラ能ク
  分ラヌデスケレドモ、昭和六年度以降
  ノ追加額ト云フモノガ全體デ一億七百
  九十四萬三千二百八十三圓アリマス、
  是ハ主ナルモノデアリマス、海軍大臣
  デナクテモ政府委員デモ宜シウゴザイ
  マスガ、私ハ此處ニ疑問ガアル、此追
  加額ト云フモノハ全部ガ新規計畫デハ
  ナクシテ、舊計畫ノ追加額モアル譯ダ
  ト思フ、ソレガ艦艇製造費、補助艦艇
  製造費ト云フモノヽ全體ノ材料ヲ戴イ
  テ居レバ、算盤ニ當ッテ見ルコトガ出來
  ルガ、驅逐艦、巡洋艦、潛水艦ト云フ
  モノニ分ケタ材料ヲ戴イテ居リマセヌ
  カラ承ルノデアリマスガ、此追加額ト
  云フモノヽ全部ハ新規補充計畫デハナ
  イ、舊計畫ニ對スル追加モアルノデア
  ルカラ、巡洋艦ノ一億七百九十四萬三
  千二百八十三圓ノ中ニ舊計畫ノ追加ガ
  アル譯デアルカ、ソレハ幾ラアリマス
  カ、先ヅ其數字ヲ聞キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=61

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• 062・安保清種

  ○安保國務大臣　ソレハ無イ積リデア
  リマスルガ、詳シイコトハ政府委員カ
  ラ申上ゲサセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=62

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• 063・加藤亮一

  ○加藤政府委員　此追加額ハ舊計畫ノ
  繰延ニナリマシタモノヽ繰戾額デ追加
  セラレタモノト、補充計畫、今囘ノ新
  規計畫ニ依リマス追加額トノ兩方カラ
  成立ッテ居リマス、隨テ六年度ニ於キマ
  シテ例ヘバ巡洋艦ニ付キマシテハゴザ
  イマセヌガ、驅逐艦ナドニ付キマシテ
  ハ舊計畫ノ分ヲ九隻造ルノデアリマス
  カラ、サウ云フ風ニ兩方ハイッテ居ル
  ノデアリマシテ、全體トシテハ舊計畫
  ノ繰延ニナリマシタモノヽ六年度ニ於
  テ繰戾シタモノガハイッテ居ル、其影響
  ガ巡洋艦其他ノ方ニ及ンデ居リマス、
  巡洋艦ハ幾ラト云フコトハ表ガゴザイ
  マセヌカラ分リマセヌガ、サウ云フ風
  ニ出來テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=63

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• 064・大口喜六

  ○大口委員　私ハアラ探シヲヤルノデ
  ハナイ、財政計畫ノ元ヲ突止メタイト
  思ッテ、巡洋艦ヲ其一例トシテ承ルノデ
  アルガ、巡洋艦ノ追加額一億七百九十
  四萬三千二百八十三圓ノ中ニ舊計畫ノ
  追加額ハ今書類ヲ持ッテ居ラヌカラ分
  ラヌト仰シヤルノダガ、其處ガ大事ナ
  所デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=64

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• 065・加藤亮一

  ○加藤政府委員　ソレハ取調べマシテ
  カラ御返事致シマス、巡洋艦ノ分ニハ
  イッテ居ルカ、驅逐艦ノ分ニハイッテ居
  ルカガ、此處ニ書類ガナイカラ明瞭デ
  ナイノデアリマス、是非巡洋艦ノ分ダ
  ケヲ明カニシタイト云フコトデアリマ
  スナラバ、能ク調ベタ上デ申上ゲマス
  ガ、繰延ベタモノヽ繰戾シガ繰延額ニ
  ハイッテ居ルノガアリマス、實行豫算ニ
  於テ繰延ベタモノガアリマス、昭和五
  年ノ實行豫算デアリマスカラ、一旦繰
  戾シテ更ニ六年度以降ノ追加ノ形ニ於
  テハイッテ居ルノガアル、ソレガ巡洋艦
  ニ影響シテ居ルカドウカト云フコトハ
  今明瞭ニナッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=65

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• 066・大口喜六

  ○大口委員　他ノモノデ調ベテアレバ
  宜カッタガ、私ハ巡洋艦ヲ例ニ擧ゲテ調
  ベテ居ルノデアッテ、總額ナラバ分ルノ
  デスカラ、質問スル必要ハナイノデス
  ケレドモ、總額ダケデハ困ルカラ、巡
  洋艦ノ分ヲ分ラシテ戴キタイ、追加ノ
  形ニナッテハイッテ居ルモノガアルカナ
  イカ、アルナラバ八百六十九萬六千二
  百八十三圓ハイッテ居リマセヌカト思
  フ、ドウシテモ八百六十九萬六千二百
  八十三圓ハイッテ居ラヌト理窟ガ合ハ
  ヌデス、是ハ總數デ行クト默ッテ聞イテ
  居ル方ガ宜イケレドモ、早クヤル爲ニ
  私ノ數字ガ違ッテ居ルカモ分ラヌ、私材
  料ガ足ラヌカラソレヲ一ツ調ベテ下サ
  イ、其御答辯ヲ承ッタ上デ此點ハ質問致
  シマス

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• 067・加藤亮一

  ○加藤政府委員　取調ベテ御返事致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=67

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• 068・大口喜六

  ○大口委員　是ハ私ハ確實デアリマセ
  ヌカラ、違ッテ居ルカモ知レマセヌガ、
  餘リ大キナコトヲ言ッテ耻ヲ搔クカモ
  知レナイガ、私ガヤルトドウモサウ云
  フ算盤ニナル-其上デ之ヲ質問スル
  コトニ致シマス
  更ニ是ハ大藏省ノ方ノ大臣ニ承ル
  カ海軍大臣ニ承ルカドチラガ宜イカ
  分リマセヌガ、內田君ト海軍大臣トノ
  問題ニナッテ居リマシタ昭和六年度ノ
  潛水艦二隻ノ問題デアリマスガ、是
  海軍大臣ニ於テ一應御取消ニナリマシ
  テ、海軍ノ方ノ線表カラ言フト昭和六
  年度ニ於テハ新計畫ノ潛水艦三隻ヲ造
  ルト云フノデアッタガ段々內田君カラ
  明細書ニ依ッテ指摘サレテ、到頭御取消
  ニナッテ、二隻ト云フモノハ除クト云フ
  コトニアリマスガ、サウスルト昭和七
  年度ニハイルベキモノデアラウト私ハ
  思フ、コヽガ又色々財政計畫ヲ論ズル
  上ニ私ノ方カラ言フト重要ナ點ニナツ
  テ來ルノデアリマスガ、或ハ海軍ニ於
  テハ相變ラズ此二隻ト云フモノハ民間
  ニ向ッテ御註文デモナサッテー全體民
  間ニ註文スルノハ內田君カラ言ハシタ
  通リ、或ル程度ノ前金ヲヤラナケレバ
  ナラヌガ、前金ヲヤラナクテモ引受ケ
  ル所ニ之ヲ請負ハシムレバ詰局民間ニ
  請負ハシテ、昭和六年度ニ於テ二隻ノ
  著手ガ出來ル、斯ウ云フコトヲ相變ラ
  ズ思ッテ居ラレル、ヤラレルデアラウト
  云フヤウナ大分世評ガアルノデアリマ
  ス、ソレハ私ノ方カラ言ヘバドッチデ
  モ宜イ、ドッチデモ宜イ何等昭和六年度
  ニヤラレルノヲ惡イト云フノデハナ
  イ昭和七年度ニヤラレルノヲ宜イト
  云フノデハナイガ、年度割ヲ見ル上ニ
  於テ部屬ト云フモノガハッキリキマラ
  ヌト私ノ方デ算盤ガ出來ヌデ困ル、
  ソコデ私ノ承リタイノハ、假ニ昭和七
  年度ノ豫算ニナイ艦ヲ海軍省ガ民間ニ
  請負ハセルトシテ、手金ヲ一文モヤラ
  ズニ契約ヲスルト云フ場合ハ、假合繼
  續費デアッテモ特殊ノ年度ノ議決ガナ
  イカラ、私ハヤハリ是ハ豫算外國庫ノ
  負擔ニ依ル契約ニ依ルノ件デ、議會ノ
  議決ヲ經テ居ル範圍デナイトヤレナイ
  ヤウニ思フガ、果シテ是ハ今ノ政府ハ
  ドウ解釋シテ居ルカト云フコトガ一
  ツ、ソレカラモウ一ツハ、サウ云フ場
  合ハ契約ヲシタ時ノ年度ニ依ッテ支拂
  フカ、竣工シタ時ノ年度ニ依ッテ支拂フ
  カ、ソレハ支拂期日ノ契約ヲシタ、其
  契約ニ依ル支拂期日ノ年度ニ依ルカ、
  ソレハ會計法規カラ見ルト本當ラシク
  見ヘルガ、ソレヲドウ見テ居ルカ、此
  事ヲ確メテ置カナケレバ年度割ノ算盤
  ガ出來マセヌカラ、多分大藏省ガ御答
  ニナルデセウガ、御答ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=68

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• 069・井上準之助

  ○井上國務大臣　今只ノ潛水艦ノ何隻
  ト云フコトニ付テハ、イヅレ海軍大臣
  カラ御答ニナリマセウガ、今ノ大藏省
  ノ取扱方ヲ政府委員カラ、今ノ事柄ヲ
  說明致サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=69

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• 070・川越丈雄

  ○川越政府委員　海軍省ノ今ノ潛水艦
  二隻ヲドウスルカト云フ事實ノ問題ヲ
  離レテ、知リマセヌカラ論ジマセヌガ、
  其問題ヲ離レマシテ、唯會計法ノ法律
  論トシテ繼續費ノ將來ノ年度ニ繼續費
  ノ豫算ガ成立シテ居ッタモノ、契約ヲ、
  前ノ年度デ著手シ得ルヤ否ヤト云フ問言へバ大藏大臣ニ聞クベキ所デスケレ
  題ト考ヘマシテ、其法律論ダケ私ガ申
  上ゲマス、御承知ノ通リ豫算外契約ノ
  場合ニハサウ云フ場合ガ澤山アリマス
  ガ、是ハ問題デアリマセヌ、繼續費ハ
  會計法ノ理論ト致シマシテハ、數年間
  ニ亙リマシテ豫算ガ成立スルノデアリ
  やす、初年度ハ幾ラ、二年度ハ幾ラ、
  三年度ハ幾ラト豫算ガ成立致シマス、
  サウ致シマスルト、其翌年度ノ豫算ト
  云フモノガ今旣ニ成立ヲシテ居リマス
  カラ、其點カラ言ヒマスト翌年度ノ豫
  算外契約ヲ本年度爲シ得ルト同ジニヤ
  ウニ、來年度ニ於テ成立シタ豫算ヲ基
  礎ニシマシテ其豫算ヲ使フト云フコト
  ノ契約ヲ今致シマス、サウ致シ。マスト
  全ク拂フノハ勿論豫算ニアルモノデナ
  ケレバ金ヲ拂ヒマセヌカラ、翌年度ニ
  於テ金ヲ拂ヒマス、例ヘバ請負ニ致シ
  マスル場合ニハ、請負業者ト契約ヲス
  ル人トノ間ニ契約ヲシテ、此艦ハ來年
  竣工スル、サウシテ金ヲ來年拂フト云
  フコトデアリマシテ、著手ハ本年カラ
  著手スルト云フコトハ繼續ノ豫算ガ成
  立シテ居レバ、其豫算ノ範圍內ニ於テ
  ナラバ出來ルト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

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• 071・大口喜六

  ○大口委員　幸ニ良イ御答ヲ得タガ、
  ソコデ疑問ガ一ツアリマスカラ、モウ
  ツ疑問ヲ解イテ戴キタイ、是ハ現在ヲ
  ドモ昔ノ御師匠サンノ川越君カラデ
  結構デス、ソコガ非常ニ私今疑問ヲ學
  生トシテ持ッテ居ル、何故デアルカト云
  フト、最初川越君ノ御答ノ通リニ私モ
  思ッテ居ッタ、繼續費ト云フモノガソン
  ナ永イ間ノ繼續年期ト云フモノガ全
  體ガ貴衆兩院ノ議ヲ經テ居ルモノデア
  ルカラ、アナタノ御說ノ通リデ宜イト
  思ッテ居フタ、所ガサウ云フコトヽ云フ
  モノハ餘リニ放漫ナコトデアッテ、キマ
  リガ付カヌ、斯ウ考ヘタノデ、段々私
  モ〓究シテ見タ所ガ、果セル哉我國ニ
  於テハ三度シカナイト思ヒマス、繼續
  費ノ年限ヲ悉クヲ以テ一會計年度トシ
  タト云フコトハ、例ヘバ日〓戰爭ノ時、
  廣島ノ臨時議會ニ於テ議決ニナッタ、丁
  度此間切拔イテ持ッテ居マシタケレド
  モ、今日ハ持ッテ居リマセヌガ、アノ時
  一億圓ト云フ臨時費ヲ議決スル時ニ、
  繼續年期ヲ何年カキメテ、特ニ議決シ
  テ居リマス、此繼續年期間ヲ以テ一會
  計年度トスト云フ議決ニナッテ居ル、ソ
  レダカラ、アレハ一會計年度ニナッテ居
  ル、ソレカラ又例ノ西伯利出兵ノ時ノ
  軍事費ト云フモノガ其通リノ議決ニ
  ナッテ居ッテ、繼續年期ガキマッテ、支出
  方法ガキマッテ居ッテ、サウシテ特別ニ
  ソレヲキメル時ニ繼續期間中ヲ以テ一
  會計年度トスト云フ特別ノ議決ニナッ
  テ居ル、唯日露戰爭ノ時ノガヤハリサ
  ウ云フ繼續年期ヲ一會計年度ト見テ決
  議ヲシテ居ルニモ拘ラズ、ドウモ其議
  決ガ今日マデ見當ラヌデス、是ハ私白
  狀シマス、ソレデ是ハ餘程繼續費ト云
  フモノニハ問題ガアッテ、繼續費ト云フ
  モノガ繼續年期ト云フモノヲキメテ、支
  出方法ヲ貴衆兩院デキメタカラト言ツ
  テ、大體ヲキメタヾケデモ、ヤハリ年
  度ト云フモノハ其一年度ダケガ一會計
  年度デアッテ、來年ノ豫算ニ計上シテ行
  カレテ、其豫算ガ通過シテ、初メテソ
  コニ成立ツモノデアッテ、決シテ一會計
  年度ヲズット通ッテ、自由ニ爲シ得ベキ
  モノニアラズト云フコトハ、私ハ疑ハ
  ナイト思フ、今アナタノ仰シヤッタコト
  カラ考ヘルト、ドウモサウデナク見エ
  ル、コヽガドウモ今ノ政府委員ト私ノ
  解釋ガ違ッテ居ルト思フノデアルカラ、
  此際之ヲ確メテ置キタイト思フ

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• 072・川越丈雄

  ○川越政府委員　只今ノ御話ハ會計年
  度ノ御話ヲナスッタヤウニ承ッタノデア
  リマス、是ハ御話ノ如ク軍事費ニ付キ
  マシテ、日〓、日露竝ニ西伯利出兵、此
  三囘前例ガアリマス、是ハ法律ニ依リ
  マシテ、事件ノ發生ノ時カラ事件ノ終
  了ノ時マデ、一ツノ會計年度トスルト
  云フ、サウ云フ會計年度ニナッテ居リマ
  ス、曆年ヲ以テ會計年度トスルト云フ
  コトガ普通ノ會計法ノ原則デアリマス
  ケレドモ、戰爭ノヤウナ長ク續ク場合
  ニ於キマシテハ、曆年ニ依ラズシテ、
  事件ノ發生ノ時カラ事件ノ終了ノ時マ
  デヲ一ツノ會計年度トスルト云フコト
  ニナリマスカラ、戰爭トカ、西伯利出
  兵ノ時ニハ、七八年ノ長イ間、一ツノ
  會計年度トスルコトニナッタ例ハ、是ハ
  先例トシテ三囘程アリマス、是ハ繼續
  費ノ觀念トハ別ナ話デアル、戰爭ヲス
  ル費用デアリマシテ、是ハ繼續費デモ
  何デモナイ、普通ノ豫算デアル、臨時
  軍事費ト云フ豫算デアル、臨時軍事費
  ト云フ豫算デアリマスカラ、是ハ繼續
  費ニナッテ居ラナイノデ、詰リ十年間年
  度ガ延ビタト御考ニナッテ宜シイ、是ハ
  繼續費ノ觀念ト云フモノトハ全ク違フ
  ノデアッテ、普通ノモノデハ四月カラ翌
  年ノ三月マデノ一箇年ヲ以テ會計年度
  ト致シマシテ、其會計年度ハ繼續費デ
  アッテモヤハリ一ツノ會計年度デアル、
  例ヘバ一千萬圓デ或ル工事ヲ致シマス
  ノヲ十箇年ノ繼續費トスル、詰リ十箇
  年ノ會計年度、其十箇年ノ會計年度ヲ
  通ジテ、豫メ議會ノ協贊ヲ得テ置ク、
  豫算ハ一箇年ダケノ豫算デアリマスカ
  ラ、昭和六年度ノ豫算ヲ出シタ場合ニ
  ハ、昭和六年度ノ豫算ダケシカ議會ノ
  協賛ヲ經ナイノデアリマスケレドモ、
  繼續費デアリマスト、例ヘバ五箇年ノ
  じゅる繼續費トスレバ昭和六年度、七年度、
  八年度、九年度、十年度、此五箇年度
  ノ協賛ヲ議會ニ於テ前以テ得テ置ク、
  サウスルト昭和六年度ノ豫算ハ成立シ
  テ居ルガ、七年度、八年度、九年度、
  十年度モ同時ニ成立スル、ソコデ今度
  ハ契約ヲシマス、是ハ建築ノコトデ說
  明ヲ申上ゲルト最モ明瞭ダト思ヒマス
  ガ、三年間ニ三百萬圓デ大藏省ヲ建テ
  ルト云フ豫算ガアリマス、サウシマス
  トソレハ繼續費トシテ出シマシテ、初
  年度ガ百萬圓、二年目ガ百萬圓、三年
  目ガ百萬圓、斯ウ云フ見積豫算ヲ出シ
  やく、其儘其豫算ガ成立シマスト、其
  場合大藏省ガ契約ヲ致シマス時ニ、初
  年度ハ百萬圓拂フ、二年目ニハ百萬圓
  拂フ、三年目ニハ百萬圓拂フト云フ契
  約ヲ致シマス、サウシテ其工事ニ著手
  致シマス、詰リ昭和六年度ニ於テハ百
  萬圓拂フ、七年度ニ於テハ百萬圓拂フ、
  八年度ニ於テハ百萬圓拂フト、初年度
  ニ於テ三箇年分ノ契約ヲ爲シテ置クノ
  デアリマス、卽チ七年度ノ繼續費豫算、
  八年度ノ繼續費豫算ト云フモノヲ使フ
  ソレダケノ金ヲ拂ヒ、サウシテソ
  レダケノ工事ヲスルト云フ契約ヲ昭和
  六年度ニ於テヤルノデアリマス、詰リ
  將來繼續シテ年度割支出ヲスルト云フ
  契約ヲ前以テ、十年前トカ二十年前ト
  カニスル、斯ウ云フ事ガ善イカ惡イカ
  カハ別間題デアリマスガ、理論ヲ上カ
  ラハ許サレテ居リマス、但シ大藏財務
  當局ノ立場ト致シマシテハ、サウ云フ
  契約ヲ無暗ニヤラレテハ、將來ノ財政
  計畫ヲスルノニ非常ニ不都合ヲ生ジマ
  スカラ、ソレハ政策ノ上カラ成ダケヤッ
  テ貰フコトヲ希望ハ致シマセヌ、希望
  ハ致シマセヌガ、純理論ト致シマシテ
  ハサウ云フコトガ法律的ニ可能ナリ
  ヤ不可能ナリヤト云フ議論デアレバ、
  私共ハ可能ナリト云フ答辯ヲセザルヲ
  得ナイノデアリマス

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• 073・大口喜六

  ○大口委員　折角先生ノ御講釋デス
  ガ、私共ノ知リ切ッテ居ルコトモ言ハレ
  テ居ルガ、ソレハ知ッテ居ルノデス、ソ
  レ以上ニ疑問ガアル、實ハ今ノ御答デ
  私ガ最モ不服ナノハ、臨時軍事費ハ繼
  續費ニ非ズト云フコトハ直チニ承服致
  シマセス、是ハ折ヲ見テ私ハ色々議論
  ヲ立テ見タイト思ヒマスガ、政府ノ今
  持ッテ居ル學理ト、政治上カラヤラレテ
  ハ困ルト云フ御話ト、ソレカラ理論デ
  ハ宜イト云フコトヲ分ケテノ御話デ、
  政府ノ思召ノアル所ハ分リマシタ、實
  ハ川越君ハ政府委員デアリマスガ、
  是ハ大藏大臣ニ問フマデモナク、策源
  地デサウ云フコトノ本家デアルカラ、
  大藏大臣モ認メラレルデアラウト思ヒ
  マス、政府ノ御解釋トシテ只今承タ
  コトニハ私ハ大分異論ヲ持ッテ居リマ
  スガソンナ橫道へ這入ッテハ大變デ
  アリマスカラ、御〓授ダケ承ッテ、不服
  ノ點ガアルト云フコトヲ私ハ申シテ置
  キマス、ソレデ私ノ大藏大臣ニ對スル
  質問ハ大分アルノデ、是カラ大藏大臣
  ニ對スル質問ガ始マルノデアリマス
  ガ、海軍ニ關スルコトハ只今ノ數字ガ
  分リマシタラモウ少シ承リタイガ、大
  臣ハ此處ラデ私ハ宜シカラウト存ジマ
  ス、他ニ質問者ガナケレバ、御用モ御
  在リニナリマセウカラ、洵ニ海軍大臣
  有難ウゴザイマシタ、所デドウデセウ、
  是ハ委員長ノ御指圖ヲ受ケマスガ、他
  ノ方ノ大藏大臣ニ對スル質問中デス
  ガ、續ケテヤッテ宜シウゴザイマスカ

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• 074・本田恒之

  ○本田委員長　海軍ノ方ノ數字ガ分。ツ
  タサウデス

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• 075・加藤亮一

  ○加藤政府委員　巡洋艦ノ數字ノ御尋
  デアリマシタガ、六年度ノ追加額、此
  豫算ニ現ハレテ居リマス八百三十二萬
  千六百八十七圓ノ中ニ、舊計畫ノ分ガ
  五百九十七萬五千百九十圓入ッテ居リ
  やっ、ソレカラ七年度ハ追加額千四百
  九十五萬二千二十一圓ノ中、舊計畫ノ
  分ガ四百九十四萬四千二百二十五圓含
  ンデ居リマス、兩方合セマスト、千九
  十一萬九千四百十五圓デアリマス

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• 076・大口喜六

  ○大口委員　私ハ八百六十萬圓バカリ
  積ッタノデスガ私ノ計算ト少シ違ヒマ
  スガ、サウスルト巡洋艦デ新設サル
  モノハ昭和六年度カラ昭和七年度マデ
  ニ總計三萬四千噸ト承ッテ居リマスガ
  違ヒマスカ、新規計畫ハ

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• 077・加藤亮一

  ○加藤政府委員　其通リデアリマス

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• 078・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト一昨日カ昨日
  御示ニナッタ單價ヲソレニ掛ケマスト、
  九千九百三十四萬七千圓トナリマス
  ガ、是ハ違ヒマスカ

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• 079・加藤亮一

  ○加藤政府委員　單價ヲ巡洋艦四隻ニ
  掛ケマスト、九千九百三十三萬五千八
  百圓ニナリマス

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• 080・大口喜六

  ○大口委員　寸一萬圓バカリ私ト算
  盤ガ違ヒマスガ、私ハ一噸當リヲ二千
  九百二十二圓ト見タノデス、サウ御說
  明ニナッタト思ヒマス、ソレヲ掛ケルト
  私ノ言フヤウニナリマス、九千九百三
  十四萬七千圓トナルノデアリマス、
  萬圓バカリ違ッテモ大數ニ關係ハアリ
  マセヌネ、アナタノ方ガ正シケレバモ
  ウ一度承リタイノデアルガ、一萬圓位
  ノ違ヒハ、私ノガ違ッテ居テモ、ソッチガ
  違ヲテ居ッテモ宜シイ、今ノ御話ノ千九
  十一萬九千四百十五圓ヲ加ヘマスト、
  此總數ヨリハ金額ガ殖ヱルガ、ソレハ
  何處カラ出タノデスカ、サウ云フ違ヒ
  ガ方々ニ在ル、內田君ノ方カラ言ハレ
  ナクテモ、私ノ財政ノ方カラ言ッテモ
  サウ違ヒガ出ル、ソレデ海軍ノ表ニ疑
  問ヲ持ツノデアル、一億七百九十四萬
  三千二百八十三圓ニナリマセヌ

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• 081・加藤亮一

  ○加藤政府委員　只今ノハ全體ノ巡洋
  艦ノ數字ノ外ニ奏任俸給、判任俸給、
  若クハ監督諸費、ソレモ含ンデノ御計
  算デアリマスカ

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• 082・大口喜六

  ○大口委員　イヤ別デス、玆ニ巡洋艦
  ト書イテ、巡洋艦バカリノ所ガアリマ
  ス、此本ノ二十一頁ニ艦艇製造費ト云
  フモノガアリマス、ソレニ補助艦艇製
  造費ト書イテ內譯ガ出來テ居ッテ、奏任
  俸給、判任俸給、監督諸費、保管、運搬
  費ハ別デ、巡洋艦ト云フ目ガアッテ純粹
  ノ巡洋艦ト云フ目、是ハ巡洋艦ダケダ
  ト思フ、サウシテ此追加額ト云フモノ
  ガ一億七百九十四萬三千二百八十三圓
  トナッテ居。3、其中カラ三萬四千噸ノ
  新規計畫ノ巡洋艦ヲ、九千九百三十三
  萬幾ラト仰シヤイマシタガ、ソレヲ引
  キマスト、一千九十一萬圓トナラナイ
  ト思フ、八百六十萬圓近邊ダト思フ、
  算盤ガ合ヒハシマセヌ、サウ云フコ
  トガ起ルカラ、斯ウ云フ海軍ノ表ニ
  大藏省ノ川越君ガ居ッテドウシテ同意
  シタカ分ラヌガ、サッパリ合ハヌデス
  ネ

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• 083・川越丈雄

  ○川越政府委員　甚ダ僭越デアリマス
  ガ、私カラ御答申上ゲマス、昨日海軍
  大臣カラ御話ガアリマシタ巡洋艦一噸
  當リノ單價二千九百二十一圓ト申上ゲ
  マシタノハ、先程海軍ノ經理局長カラ
  申上ゲマシタ工事費モ、監督費モ、其
  他ノ俸給モ、軍艦製造ニ從事スル役人
  ノ給料トカ、其他事務費ト云フヤウナ
  モノヲ皆括メテ二千九百二十一圓ト云
  フコトニナリマス、ソレニアナタガ三
  萬四千噸ヲ掛ケルト、御持チニナル表
  ノ外ニ監督費、奏任俸給、判任俸給ト
  云フモノガ若干加ハル、アナタノ算盤
  ノ違ヒノ數字ハ其監督諸費ノ方ガ入ッ
  テ居ルモノ、斯ウ云フ風ニ御承知ヲ願
  ヒマス

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• 084・大口喜六

  ○大口委員　ソレデ大體分ッタ、サウス
  ルト一噸當リト云フモノヽ中ニハ奏任
  官俸給ダトカ、監督諸費、判任官俸給、
  保管、運搬費マデ含メテ居ル譯デアリマ
  スカ

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• 085・川越丈雄

  ○川越政府委員　左樣デアリマス

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• 086・大口喜六

  ○大口委員　ソレデ吾々カラ見ルト一
  噸當リト云フモノト內容トノ比較ノ仕樣
  ガ一寸ナイデスナ、モウ少シ根據ヲ示シ
  テ貰ハヌト困ル、此巡洋艦ト云フモノガ
  斯ウ云フ風ニシテ出テ來タト云フコト
  ヲ見ヤウト云フニハ、監督費ダノ役人
  ノ給料ト云フモノガドウ現ハレテ居ル
  カト云フ根據ヲ示シテ貰ヒタイ、サウ
  シナケレバ分リハシマセヌ

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• 087・川越丈雄

  ○川越政府委員　只今デハ時間ガ掛リ
  マスカラ、後程デモ表ニシテ宜シウゴ
  ザイマセウカ

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• 088・大口喜六

  ○大口委員　明朝デ宜シウゴザイマ
  ス、私ハ是デ一時海軍ニ對スル分ハ了
  リマス、表ヲ拜見シテ又質問ガアルカ
  モ知レマセヌ

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• 089・本田恒之

  ○本田委員長　岡田君ニ御相談致シマ
  スガ、今內務大臣ガ御出ニナルト云フ
  コトデスガ、此際アナタノ質問ニ移リ
  マスカ-ソレデハ內務大臣ニ御出ヲ
  願フコトニ致シマス

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• 090・岡田忠彦

  ○岡田委員　此際此間御尋シタ人絹ノ
  相場ニ付テ御答辯ヲ願ヒタイ

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• 091・吉野信次

  ○吉野政府委員　此間ノ御尋ニ御答致
  シマス、人絹ノ相場デゴザイマスガ、
  岡田サンガ御引ニナッタノハ二百六十
  「デニール」ノ人絹ノヤウニ拜聽シマシ
  タガ、人絹ノ普通ノ相場ヲ出シマスニ
  ハ百二十「デニール」ノ人絹ヲ採ッテ居
  リマス、百二十「デニール」ノヲ、或日
  ヲ取ッタノデハハッキリセヌカラ、去年
  ノ一月カラ十二月マデノモノヲ月ノ平
  均ニシテ見マシタ
  〔委員長退席、西脇理事著席〕
  サウスルト人絹ノ百二十「デニール」
  ノ市場價格ガ百封度ニ付テ一番高イノ
  ハ去年ノ四月百九十五圓、一番安イノ
  ハ七月ノ百十七圓デアリマス、而シテ、
  是ト人絹ニ交織スル綿絲トノ比較、斯
  ウ云フ御話デゴザイマシテ、人絹ニモ
  色々ナ番手ノ綿絲ヲ用ヒマスケレド
  モ元々御承知ノ通リ絹ニ見セヤウト
  云フノデスカラ、太イノハゴザイマセ
  ヌガ、大體先ヅ平均致シマシテ綿絲ハ
  四十番手位ノ物ガ人絹ト比較スルト交
  織スルニ相應シイト見マシテ、綿絲ノ
  四十番手ノ百封度ニ直シタ値段ヲ去年
  ノ一月カラ十二月マデ比較致シマス
  ト番高イノハ一月ノ六十八圓デゴ
  ザイマス、一番安イノハ八月ノ五十
  圓デゴザイマス、要スルニ去年ノ平均
  ヲ取リマスト、人絹相場ヨリ綿絲ノ四
  十番手ノ方ガ低イ、序デゴザイマスケ、
  レドモ人絹ノ一番良イ八十「デニールㄴ
  ト云フモノト、瓦斯絲ノ中ノ一番良イ
  百二十番手ト云フモノヲ比較スルト、
  殆ド同ジヤウナ値段ニナッテ、日ニ依ツ
  テ御示ノ通リ綿絲ノ方ガ高イト云フコ
  トモアルノデアリマス

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• 092・岡田忠彦

  ○岡田委員　私ハ今ノ說明デ大體分リ
  マシタガ、要スルニ人絹ノ相場ト綿絲
  ノ相場ト生絲相場ト三ツ集メテ見ルト
  云フト、寧ロ人絹ハ綿絲ニ近イモノデ
  アルト云フコトガハッキリ分ルダラウ
  ト思ヒマス、而モ人絹ト云フモノヽ値
  段ハ段々競爭其他技術ノ進步ノ結果
  下ッテ居ル譯デアルカラ、追々是ハ將ニ
  綿絲ト同等若クハソレ以下ニナルデア
  ラウト私ハ思フ、サウ致シマスト云フ
  ト我日本帝國政府トシテハ、ドウシ
  テモ之ニ向ッテ大ナル奬勵ヲ加ヘラレ
  テ、綿絲同樣ノ扱ニシテ、而モ是ハ南
  洋印度其他ノ方面ニ向フテハ殆ド八九
  千萬圓以上ノ輸出ガ今日アルノデアリ
  づく、其中我國ノ輸出ガ殆ドナイト云
  フ狀況デアル、サウスレバ今日奬勵サ
  レテ居ル交織、之ヲ奬勵スルヤウナ方
  策ヲ執ラレマシテ、一ハ以テ內地ノ消
  費ヲ奬メ、之ニ依ッテ海外ノ發展ニ資ス
  ルト云フコトハ、今日ノ急務デアルト
  思ヒマス、此點ガ用意ノナイノヲ遺憾
  トスル一層將來ハ此意味ニ於テ大藏
  當局ヲ鞭韃セラレテ、此機會若クハ他
  ノ機會ニ於テモ此趣旨ヲ貫徹セラレン
  コトヲ希望シテ置キマス
  內務省ノ質問ヲ成ベク急イデ致シマ
  ス、私ハ今日ハ時間ノ都合モアリマシ
  テ、成ベク急イデ質問ヲ終了致シマシ
  テ、其後ハ大口君其他ニ讓ル積リデア
  リマス
  第一ニ此義務〓育費ノ一千萬圓ヲ配
  當ニ依ッテ各地方ノ減稅竝ニ課率ノ減
  ト云フモノガ如何ホドアルト云フコト
  ヲ聞イタノデアル、是ハ申スマデモナ
  ク政府ノ聲明ニ依ッテ、各地方ノ負擔ヲ
  減ズルト云フ趣旨デアッタ、ソコデ段々
  詳シク伺ヒマスト、段々色々ノ材料モ
  出テ居リマスガ、私ハ此材料ヲ非常ニ
  疑ッテ見テ居ッタノデアル、所ガ一層其
  疑ヲ深クスルノデアリマスガ、卽チ此
  「義務〓育費國庫負擔金增額ニ依ル各
  都市減稅種目別金額竝ニ課稅輕減調」
  ト云フ此表ニ依ッテ盛岡ノ例ヲ伺ッタノ
  デアリマス、所ガ此三角ノ印ハ元金デ
  アルト云フコトデアッタ、ソレナラバ元
  金ハナンボアルト聞イテモ分ラヌト云
  フコトデアル、甚ダ是ハ根據ノナイ答
  辯デアリマスガ、元金ハナンボデアリ
  マスカ、ソレヲ先ニ聽キタイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=92

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• 093・岡田周造

  ○岡田政府委員　盛岡市ハ昭和五年度
  ノ當初豫算ノ金額ガ四萬二千圓デアリ
  マシテ、ソレガ今囘義務〓育費一千萬
  圓增額ニナリマシタ場合ニ於ケル標準
  ヲ基礎ト致シマシテ見込額ヲ立テマシ
  タ所ガ、ソレガ四萬一千二百四十四圓
  ニナルト、斯ウ云フ計算ニナリマシテ、
  其結果トシテ此三角ノ千百三十六圓ト
  云フ數字ガ出タ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=93

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• 094・岡田忠彦

  ○岡田委員　モットハッキリ仰シヤッテ
  下サイ-私ガ申シマセウ、此下ニア
  ルヤウニ、當初豫算ニ於テ增額ヲ財源
  トシテ戶數割一戶當リ四十七錢八厘ヲ
  減ジテ居ルノデアリマスカラ、減ジテ
  居ル源泉トナル金ハナンボデアリマ
  ス、此表デハ分ラヌデハナイカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=94

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• 095・岡田周造

  ○岡田政府委員　此金額ハ御承知ノヤ
  ウニ、當初豫算ニ現ハレマシタ課率ノ
  增減ヲ此處ニ現ハシタモノデアリマ
  ス、他ノ關係ハ義務〓育費增額ニ伴ヒ
  マシテ減稅シタ分ヲ現シテ居リマス、
  當初豫算ニ一千萬圓增額ヲ見越シマシ
  テ計上シマシタモノハ義務〓育費增額
  ニ依ル分幾ラ、共他ノ分幾ラト云フコ
  トニナッテ居リマセヌモノデスカラ、是
  ハ前年度トノ比較ヲ此處ニ計上シタ譯
  デアリマス、事柄ノ性質上已ムヲ得ナ
  カッタ譯デアリマシテ、御承知ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=95

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• 096・岡田忠彦

  ○岡田委員　デスカラ元金ヲ仰シヤツ
  テ下サイ、義務〓育費ノ增額ノ爲ニ幾
  ラ盛岡ニ配當サレテ、其爲ニ幾ラ減ニ
  ナッテ居ルカト云フコトヲ簡單ニ仰シ
  ヤッテ下サレバ宜イノデアリマス、盛岡
  ニ義務〓育費ヲ幾ラ增サレタカ、增サ
  レタコトニ依ッテ戶數割ハ減ゼラレテ
  居ルノデアルカラ、元金ハナンボ增シ
  タノデアッテ、其爲ニ四十七錢八厘ノ減
  額ヲナシタノデセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=96

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• 097・岡田周造

  ○岡田政府委員　ソレハ前年度トノ比
  較ヲ申上ゲタラ其點ガハッキリスルダ
  ラウト思ヒマス、昭和四年度ニ於キマ
  シテハ三萬六千六百圓ノ豫算デアリマ
  シタ、義務〓育費國庫負擔金ノ增額ガ
  盛岡市ニ付キマシテハ三萬六千六百圓
  デアリマシタ、ソレガ五年度ニ於キマ
  シテハ-是ハ此市バカリデハアリマ
  セヌ、多少サウ云フ町村ガアリマシタ
  ノデアリマスガ、ソレガ一千萬圓增額
  ニナルト云フコトヲ當初豫算ニ於テ早
  クモ見込ンデ計上シタモノガボツノ
  アッタノデアリマス、其結果トシテ四萬
  二千圓ヲ五年度ノ當初豫算ニ計上シタ
  ノデアリマス、サウスルト此差ガ五千
  四百圓バカリニナリマス、ソレダケガ
  盛岡市ニ於キマシテハ本年度增額ニナ
  ルト見込ミマシテ增額計上シタ分デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=97

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• 098・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウスルト詰リ、斯ウ云
  ノ事デスカ、五千四百圓ノ增ガアッタ、
  ソレガ爲ニ盛岡市ニ於テハ下ニアル所
  ノ四十七錢八厘ト云フ減ガ出タト、斯
  ウ仰シヤルノデアリマスカ-モウ一
  遍申シマセウカ、詰リ增額ノ結果戶數
  割ガ幾ラ減ジタカト云フコトヲ聞イテ
  居ルノデアリマスガ、此五千四百圓ノ
  增額ノ結果此下ニアル四十七錢八厘ト
  云フモノガ出タノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=98

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• 099・岡田周造

  ○岡田政府委員　五千四百圓增額致シ
  マシタ事ガ少シ增額シ過ギタ關係ニナ
  リマシテ、千三百三十六圓其中カラ戾
  サナケレバナラヌ、ソレヲ差引致シマ
  シタ四千三百六十四圓ト云フモノガ減
  稅ニナリマス

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• 100・岡田忠彦

  ○岡田委員　四千三百六十四圓ト云フ
  モノト盛岡市ノ戶數ト云フモノヲ對照
  シテ、四十七錢八厘ノ減ニナッタノデア
  リマスカ

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• 101・岡田周造

  ○岡田政府委員　ソレハ只今申上ゲマ
  シタヤウニ、當初豫算ノ減稅デアリマ
  スカラ、義務〓育費國庫負擔增額ニ依
  ル分ダケデナイノデアリマスカラ、其
  二ツノ關係ヲ區別スルコトガ出來マセ
  ヌノデ、是ハ當初豫算ニ於キマシテ前
  年度トノ課率ノ比較ヲ此處ニ書キマシ
  タノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=101

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• 102・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウ云フ譯デアリマシ
  テ、皆サン御聽キノ通リデアリマス、
  マルデ內務省ノ統計ト云フモノハ無茶
  デアル、私ハ義務〓育費ノ增額ニナッテ
  居ルト云フコトヲ度々聽イテ居ル、ソ
  レヲ此通リニ書イテ一般新聞ニモ出シ
  テ聲明サレテ居ルデハナイカ、ソレヲ
  今聞ケバサウデナイト言フ、左樣ナコ
  トハマルデ統計ノ基礎ヲ破壞スルモノ
  デハアリマセヌカ、斯樣ナ數字ヲ出シ
  テ、他ノ場合ニモアッタガ、サウシテ天
  下ヲ欺瞞スルト云フコトハ、甚ダ私ハ
  心得ヌコトヽ思フノデアル、ソレ故ニ
  私ハ此前カラ頻ニ聞イテ居ルノデアル、
  モットシッカリシタ答辯ヲシナケレバ駄
  目デハナイカ、私ハモウ政府委員ニハ
  聞キマセヌ、內務大臣ニ御尋致スノデ
  アル

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• 103・岡田周造

  ○岡田政府委員　此課率ノ點ハ先日モ
  申上ゲマシタヤウニ、後デ減稅シマシ
  タ分ハ玆ニ報告ガアリマシタリナンカ
  シテ、ソレカラ拾ヒ出シタノデアリマ
  スカラ、當初豫算ノ分ニ付キマシテハ
  少シ事情ガ違ッテ居ルノデアリマシテ、
  ソレヲ區別シテ申上ゲルコトハ甚ダ困
  難ナノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=103

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• 104・岡田忠彦

  ○岡田委員　成程其他ノ部分ト云フモ
  ノハアナタノ方ノ出サレタ材料デアル
  カラ、私ハ之ヲ「チエッコ」スル方法ハ
  ナイ、私ハ今機關ヲ持ッテ居ラナイケレ
  ドモ、此當初豫算ト云フモノハ、私ハ
  我黨ノ政務調査會ノ人ニ言ウテ調ベテ
  貰ッタノデアリマス、皆是ハ違フテ居ル、
  諸君、聽イテ下サイ、例へバ此處ニアル
  八戶、山口、伏見ト云フモノハ、四年
  度ニハ市デナカッタカラ、アナタノ方ノ
  地方〓計表ト云フモノニハナイノデア
  ル、ソコデ以テ斯ウ云フモノハ皆白紙
  ニシテ地方財政〓要ヲアナタ方デ作ツ
  タモノニ違ヒナイ、サウシテ東京市ノ
  如キ近所ノモノハ當然分ラナケレバナ
  ラナイデハナイカ、此前カラ聞イテ居
  ル、ソレヲ白紙デ出シテ居ルト云フコ
  トハ何タルコトデアル、電話ヲ掛ケテ
  聽ケバ直グ分ルデハナイカ、白紙デ出
  シタ所ハ何等囘答シテナイデハナイ
  カ、ノミナラズ、是ハ私ハ段々御話シ
  テ置キタイノデアリマスガ、松江市ニ
  於テハドウナッテ居ルカト言ヘバ、地方
  〓計表ニ依ルト云フト、却テ昭和五年
  度ノ國庫負擔金配當金ト云フモノハ
  百五十三圓ノ減額ヲ爲シテ居ルノデア
  ル〓計表ニ減トナッテ居ルノデアリマ
  ス、其減トナッテ居ル岐阜市ニ於テ戶數
  割ガ下ッタト云フコトハ、何ヲ意味スル
  ノデアリマスカ、殆ド其根據ハナイデ
  ハナイカ、又更ニ岐阜市ニ付テ私ハ調
  ベテ見タト云フノハ政友會ノ政務調査
  會ニ於テ調ベサセタノデアルガ、岐阜
  市ニ於テハ成程戶數割ハ減額サレテ居
  ルケレドモ、是ハ義務〓育費ノ增額ノ
  爲ニ減ジタモノトハ見ルコトガ出來ナ
  イ、ナゼカト申スナラバ、家屋稅ノ附加
  稅ニ於テ八萬二千餘圓ノ增額ヲ爲シテ
  居ル、內務省ノ地方〓計ガ語フテ居ル、
  營業稅ノ附加稅ニ於テ五萬九千圓ノ增
  額ヲ爲シテ居ル、雜種稅附加稅ニ於テ
  モ十七萬六千圓ナル增額ヲシテ居ル、
  此增額增收ヲ以テ戶數割ノ減ニ充ツル
  コトハ僅ニ二十四萬四千圓デアリマシ
  テ、此增收ヨリカ少イノデアル、ソレ
  故ニ是ハアナタノ方デ國庫負擔金ヲ增
  スト云フ關係デハナイコトハハキリ
  アナタノ統計ガ之ヲ示シテ居ルノデア
  ル、又佐賀市ニ於テハドウナッテ居ルカ
  ト云フナラバ、昭和四年ト五年度ノ比
  較ヲ致サレテ、佐賀市ニ於テハ戶數割
  ニ於テ二十七錢三厘增額ヲ爲シテ居ル
  ト云フニ拘ラズ、地方〓計表ニ依レバ
  ソレヲ却テ減ズルモノトシテ玆ニ表ガ
  出テ居ルト云フコトハ、全クアナタ方
  ノ方デハ此辻褄ヲ合サンガ爲ニ〓計表
  ヲ用ヒテ天下ヲ欺瞞シテ居ルモノデア
  ルト謂ハナケレバナラス、斯樣ナ欺瞞
  ノ數字ヲ以テ天下ニ公表シ、新聞記者
  ニマデ宣傳セラレテ、サウシテ我輩ハ
  斯ノ如クシテ戶數割ヲ減ズルト云フコ
  トハ、私ハ內務大臣トシテ不都合千萬
  デアルト思フ、故ニ私ハ此牛ヲ述ベテ
  置イテ、內務省ノ豫算關係ノ數字ハ殆
  ド信憑スルニ足ラザルモノデアルト云
  フコトヲ玆ニ聲明致シテ、此問題ハ打
  切ッテ置キタイト思ヒマス、御答辯ガア
  レイ·

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=104

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• 105・次田大三郎

  ○次田政府委員　其一ツ一ツニ付テノ
  御話ハ今此處ニ材料モアリマセヌカ
  ラ、全部ヲ御答ハ致シ兼ネマスケレド
  モ、東京市ノ分ハ是ハ明瞭ニ申上ゲマ
  ス、東京市ノ分ハ先達テ申上ゲマシタ
  如ク、ソレダケ增額ヲ致シマシテモ、
  之ヲ何ニ使フカト云フコトヲマダ決定
  シテ居ナイノデアリマス、隨テ此表ニ
  モ唯ソレダケノ增額ガアルト云フ見込
  ヲ揭ゲタダケデ、ドノ稅デ幾ラ減ジタ
  ト云フコトヲ表ニ現ハシヤウガナイノ
  デ、其儘ニシテ居ルノデアリマスガ、
  之ニ付テハ何度モ通牒ヲヤリマシテ、
  之ヲ減稅ニ充テルヤウニト云フコトヲ
  東京府知事ヲ通ジテヤッテ居ル譯デア
  リマス、是ハ書キヤウガナイノデ、書
  カナカッタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=105

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• 106・岡田忠彦

  ○岡田委員　兎ニ角分ラヌト言ヘバ分
  ラヌノデアリマセウケレドモ、東京市
  ノ如キ御膝下ノモノハヤハリ是ハ其目
  的ノ爲ニ出シテアル金デアル以上ハ、
  內務大臣ハ監督者トシテ近クニ居ルノ
  デアルカラ、速ニヤラセルガ宜イ、私
  ガ申上ゲテカラ旣ニ何日ニナリマス
  カ私ガ言ウテカラ後デモ手ガ著ケラ
  レルモノデハナイカ、マダ手ガ著ケテ
  ナイ、白紙デアルト云フコトハ如何ニ
  內務大臣ガ地方監督ニ對シテ不熱心デ
  アルカ、又義務〓育費一千萬圓ノ費途
  ニ付テ監督ガ不十分デアルト云フコト
  ヲ示スモノデアル、仍テ此問題ハ打切ッ
  テ置キマス、今度ハ本問ニ移ルノデア
  リマスガ、現行ノ此地租附加稅ノ課率
  ト云フモノハ各地目トモ不均一デアツ
  タノデアリマス、ソレヲ今囘均一ニサ
  レルノデアリマシテ、是ハ申スマデモ
  ナク府縣ニ於テモ、市町村ニ於キマシ
  テモ、附加稅ノ率ハ異ッテ居ル、卽チ市
  ノ方ガ割ガ安クナッタノデアルガ、今囘
  ハ宅地其他ノモノハ、市ニ於テモ宅地
  以外ノモノ、高イ方ニ準ズルヤウニサ
  レテ居ル、市町村ニ於テモ高イモノニ
  準ジテ均一サレテ居リマス、從前ノ不
  均一デアッタ所ノ理由ヲ一應伺ッテ見タ
  イノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=106

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• 107・次田大三郎

  ○次田政府委員　地租ノ附加稅ハ明治
  四十三年以來宅地ト其他ノ土地ニ依リ
  マシテ、其制限率ヲ異ニシテ居ッタコ
  トハ、今御話ノ通リデアリマス、是一
  從來宅地ト其他ノ土地ニ付キマシテ、
  本稅ノ制限率ガ違ッテ居リマシタノニ
  應ジテ、ソレニ對スル附加稅モ其制限
  率ヲ異ニシテ居ッタノデアリマス、今度
  ソレヲ一ッニ致シマシタノハ、本稅ノ方
  ガ地目ニ依ッテ稅率ヲ異ニスルコトヲ
  止メマシテ、各地トモ同一ノ方法ニ依。ツ
  テ調査シタ賃貸價格ニ改メテ、其稅率
  ヲ統一シタノデアリマスカラ、之ニ對
  スル附加稅モ地目ヲ異ニスルコトニ
  依ッテ、其制限率ヲ異ニスル理由ガナイ
  ト考ヘテ、各地目トモ之ヲ同一三郎ク
  タノデアリマス、稅ノ安イ宅地ノ方ニ
  引付ケタ譯デハアリマセヌ、總テノモ
  ノヲ合算致シマシテ、從來ト同ジ位ノ
  收入ヲ得ルト云フコトヲ目安トシテ課
  率ヲキメマシタノデアリマス、宅地ニ
  對スル稅ガ殖エマスノハ、本稅ガ殖エ
  マシタ結果ナノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=107

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• 108・岡田忠彦

  ○岡田委員　只今ノ御話ハ能ク私ニ解
  シ兼ネルノデアリマスガ、是迄宅地ニ
  付テハ例ヘバ府縣ノ宅地ニ付テハ百分
  ノ三十四、其他ニ付テハ百分ノ八十三
  デアッタ、市町村ニ付テハ宅地ガ百分ノ
  二十八、其他ガ百分ノ六十六、是ハ申
  上ゲルマデモナイ、今度ソレヲ府縣ニ
  於キマシテハ、殆ド均一ニ百分ノ八十
  二、又市町村ニ於テハ百分ノ六十六、
  斯ウ變ルノデアリマスガ、從前此二ツ
  ノ區別ガアッタノハドウ云フ意味デア
  ルカト云フコトヲ伺ヒタイ、從前何故
  之ヲ異ニシテ居ッタカ、ソレハ今ノ御話
  デハ本稅ガ別ニナッテ居ルト云フ單ナ
  ル理由ノヤウデアリマスガ、サウ致シ
  マスト左樣ナル理由ハ一ツノ机上論ニ
  過ギヌト云フコトハ、營業收益稅ニ於
  テハドウナッテ居ルカ、本稅ニ於テハ從
  前異ヲテ居ッタモノデモ、營業收益稅ノ
  附加稅ハ均一デアッタ、故ニ本稅ヲ均
  ニスルカラ附加稅モ均一ニスル、本稅
  ガ別ダカラ附加稅ヲ別ニスルト云フコ
  トノ理由ハ立タナイ、ヤハリ人々ノ負
  擔ガドウ云フ風ニナッテ居ルカト云フ
  コトヲ最モ深刻ニ內務大臣ニ於テ考ヘ
  テ、ソレニ對スル負擔ノ均衡ヲ得ナケ
  レバナルマイト思フ、左樣ナル簡單ナ
  机上ノ議論ニ依フテハ私ハ諒承スルコ
  トハ出來ナイ
  〔西脇理事退席、委員長復席〕
  之ニ對シテハ成ルベク地方局長、若ク
  ハ大臣ヨリ御答ヲ願ハヌト云フトド
  ウモ滿足ガ出來ナイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=108

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• 109・岡田周造

  ○岡田政府委員　地租附加稅ノ沿革ハ
  以前カラ申上ゲマスト色々ニナッテ居
  リマス、或ハ一ッニナッテ居リマシタリ
  或ハ稅率ガ只今ノヤウニ幾ツニモ分ッ
  テ居リマス、是ハ本稅ノ改正ニ伴フ結
  果デアリマシテ、本稅ヲ改正シタ場合
  ニ於テモ、尙ホ各地目ヲ均一ニスルト
  云フコトニシマスト、宅地ナラバ宅地
  ダケノ地價修正ヲヤッタ場合ニ於キマ
  シテ、ソレヲ相變ラズ均一ニシテ置キ
  マスト、宅地ノ負擔ガ或ハ他ニ移リ、
  或ハ他ノ負擔ガ宅地ニ來ルト云フヤウ
  ナ缺點ガアリマス、地租全體ヲ改正ス
  ル場合ニ於キマシテハ別問題デアリマ
  スカ、一部分ダケ改正スル場合ニハ
  各地目ニ付テ或ハ從來ト同ジニスル、
  或ハ從來異ノタモノヲ一〓ニスルト云
  フヤウナコトヲシマスト、負擔ノ變化
  ガ起ルコトヲ恐レマシテ、或ハ均ニ
  シタリ、或ハ均一ニナッテ居ル關係ノヤ
  ウニ考ヘテ居リマス、從來ハ明治四十
  二年マデ各地目ニ對シテ均一ニナッテ
  居タノデアリマスガ、四十三年以後ニ
  於キマシテ、先程申上ゲマシタヤウニ
  現在ノヤウナ制度ニ變,テ參ッタノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=109

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• 110・岡田忠彦

  ○岡田委員　私ハ申上ゲテ置キマス
  ガ成ベク大臣、若クハ地方局長ニ答
  ヘテ戴キタイ、三人モ四人モ掛ッテ仰シ
  ヤッテハ、後デ非常ニ困ルト思ヒマス、
  是ハ重大ナ問題デアリマスカラ、御二
  人ノ中カラ御答辯ヲ希望致シマス、尙
  ホ私ハ今ノ御答辯ニ滿足ノ出來ナイノ
  ハ一體此宅地ト云フモノハ從前ト
  雖モ本稅ガ旣ニ百分ノ二半ト云フコト
  ニシテ、田畑ハ百分ノ四五デアリマシ
  タカ、サウ云フモノトハ非常ニ率ガ違ツ
  テ居ル、今之ヲ成程其地價ヲ賃貸價格
  ニ直サレタモノデアリマスガ、何レニ
  シテモ標準ヲ直シタノミデアル、ソレ
  ヲ突然トシテ本稅ニ於テモ均一トヌル
  ト云フ一片ノ机上ノ議論カラヤッテシ
  マッタ又今度ハ附加稅ニ於テモドシン
  ト上ゲテシマッタ、卽チ宅地ニ付テ言ヘ
  バ百分ノ三十四ノモノヲ百分ノ八十二
  ニ致シ、市町村ニ於テモ百分ノ一一十八
  ノモノヲ百分ノ六十六ニ上ゲル、斯ウ
  言ヘバ地租附加稅ト云フモノハ一時ニ
  都會地ノモノガ上ッテシマフ、左樣ナ不
  均衡ナ負擔ヲ課スルト云フコトハ、如
  何ニ宅地ヲ持フテ居ル都會ノ人ニ深刻
  ナル影響ヲ與ヘルカト云フコトハ分ラ
  ナケレバナラヌ筈デアルト思フ、其深
  刻ナル痛サヲ考ヘズニ、均一デアルカ
  ラヤルト云フ、收益稅ニ付テハ從前ハ
  本稅ガ別ニナッテ居ルノニ、附加稅ハ均
  一ニナッテ居ルノデハナイカ、是ハ何レ
  モ皆負擔ノ均衡ヲ見テキメテ居ル深刻
  ナ立法デアルト云フコトハ御承知シ
  テ戴カナケレバナラヌ、今內務省ハ机
  上論ニ依フテ此重大ナ稅ヲ實施セント
  スル傾向ハ、私ハドウシテモ變ヘテ貰
  ハナケレバナラヌ、此希望ヲ玆ニ私ハ
  述ベテ置ク、戰時利得稅ト云フモノヲ
  本稅ニ直シタ、直シテソレマデト同
  ノ附加稅ヲ課スルト云フコトニナレ
  バ是ハ非常ニ宅地ヲ持ッテ居ル、都會ノ
  人ハ困ルカラ、此戰時利得稅ヲ本稅ニ
  直シタル四十三年ニ於テハ、附加稅ヲ
  多クシナカッタデハナイカ、四十三年當
  時ノ爲政家ハソレダケ。ノ用意ヲ持ッテ
  居ッタモノト思フ、今日ノ內務大臣初メ
  當局ハ其用意ガ無イ、御尋ヲシテモ內
  務大臣ハ何モ答ヘラレナカッタトシタ
  ナラバ、何ヲ以テ地方ノ人々ハ內務大
  臣ヲ信賴シ得ルカ、私ハ甚ダ之ヲ遺憾
  ト思ヒマス、急ギマスカラ此問題ハ是
  ダケニシテ切上ゲマス、ソレカラ家屋
  稅ハ若槻內閣ノ時ニ府縣稅トシテ之ヲ
  設定サレタ、吾々ハ之ヲ都會地ニ及ボ
  スコトハマダシモデアルケレドモ田舍
  ノ農村ニ至ルマデ家屋稅ヲ行フト云フ
  コトハ第一ニ無理ダト云フコトヲ唱
  道致シテ置イタノデアリマス、第二段ニ
  於テハ、假ニ課スルトスレバ、此家屋稅
  ト云フモノハ全國ニ於テドノ位ノ程度
  ニ止メルカト云フコトヲ尋ネタ所ガ、
  是ハ公約ト致シテ、國稅ハ三千萬圓、
  附加稅ハ千四百萬圓ニ止メルト云フコ
  トハ立派ニ速記錄ニ載ッテ居ル、今ヤ卽
  チ如何、內務大臣ハ今日ノ家屋稅ノ現
  狀ニ顧ミ、是ハ幾ラノ金ヲ取ラレテ居
  ルカト云フコトヲ御承知遊バシテ居ル
  カ、又其現狀ニ滿足シテ居ルモノデア
  ルカドウカ、御意見ヲ聽キタイノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=110

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• 111・次田大三郎

  ○次田政府委員　現在ノ家屋稅ノ總額
  ハ家屋稅及ビ附加稅ヲ合セテ約一億圓
  ニナルノデアリマス、此點ハ法律制定以
  後議會ニ於ケル公約ニ鑑ミテ、出來ル
  ダケ之ヲ制限シタイト云フコトニ隨分
  内務省トシテハ歷代ノ內閣ガ骨ヲ折ッタ
  ノデアリマスガ、地方費ノ膨脹ノ結果、
  地方ノ財源ガ涸渴致シマシテ、持ッテ行
  キ所ガナクテ、自然家屋稅ニ持ッテ行ツ
  タト云フ點ハ、內務省ニ於テモ甚ダ遺
  憾ニ考ヘテ居ル所デアリマス

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• 112・岡田忠彦

  ○岡田委員　內務大臣ハ無論其御意見
  デアラウト思ヒマス、詰リ若槻內閣當
  時ノ稅法ト云フモノハ、今日ノ此結果
  ヲ招來スルコトハ明瞭デアッタ、吾々ハ
  極論致シテ居ル、家屋稅ヲ田舍ニ施行
  スルコトノ不利ナルコトハ固ヨリ、地
  方ノ財源ヲ殆ド皆中央ニ集メテ置イ
  テ、ドウシテ行ケルカト云フコトヲ申
  シテ置イタ、果シテ其結果ガ、今日四千
  五百萬圓ニ止メヤウト云フノガ、總計
  一億以上ニ達シテ居ル、今囘ノ稅法ニ
  依ルト云フト、此前御質問申上ゲテ置
  イタ通リ、家屋稅、附加稅、戶數割ニ
  ドウシテモ掛ッテ行クノデアル、サウス
  ルト一般ノ市民ト申シマスルガ、般
  ノ人々ノ負擔スル稅目ノ方へ〓〓ト是
  ガ走ッテ行クコトニナル、其傾向ヲ止メ
  ルト云フ努力ハ少シモ致シテ居ラナ
  イ、今日ノ稅制整理、今日ノ稅法ニ付テ
  將來ドウスルカト云フ御考ガアリマス
  カ、此家屋稅ト云フモノ、戶數割ト云フ
  モノヲ廻ッテ一ツ內務大臣ノ御見込、御
  意見ヲ聽イテ見タイト思ヒマス

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• 113・次田大三郎

  ○次田政府委員　御意見ハ拜承致シマ
  ス、內務省デモ此家屋稅ノ殖エルコト
  戶數割ノ殖エルコトハ甚ダ遺憾デア
  ル、昨年、地方財政ノ整理節約ヲ致サ
  セマシタ際ニモ、成ベク家屋稅、附加
  稅、戶數割等ガ減ズルヤウニト云フコ
  トヲ申シテヤリマシタ、ソレカラ義務
  〓育費國庫負擔ガ增額ニナリマシタ時
  二·も成ベク家屋稅ノ附加稅、戶數割
  ヲ減ズルヤウニト云フコトヲ申シテヤ
  リマシテ、相當努力致シテ居ルノデア
  リマス、其根本的ニ家屋稅ヲドウスル
  カ、戶數割ヲドウスルカト云フコトニ
  付キマシテハ、今囘ノ地方稅制整理ニ
  關スル法律ハ、地租ノ改正ニ伴ッテ、從
  來ノ稅ト增減ノナイダケノ稅ヲ取リタ
  イト云フ考デ、ソレダケノ改正ニ止メ
  タノデアリマス、此家屋稅トカ、戶數
  割トカ云フヤウナ稅ヲ、如何ニ整理ス
  ルカト云フ根本的ノ問題ハ、昭和六年
  度ニ於テ開カレマス行財政整理ノ調査
  會デ十分ニ〓究シテ、適當ノ案ヲ得タ
  イト考ヘテ居リマス

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• 114・岡田忠彦

  ○岡田委員　來年度ノ行財政ノ整理、
  其時ニ考ヘテ見ル、一應御尤デアリマ
  スガ、併シ斯ウ云フモノハ皆政府ガ責
  任ヲ以テ原案ヲ作ルノデアル、大抵ハ
  何時デモ政府ノ人ガ作ッタ原案、次田
  君邊リガ幹事ニナッテ原案ヲ作ッテ出ス
  ノデアリマス、何處マデモ政府ガ中心
  トナッテヤルコトハ今日マデノ事實デ
  アル、サウスレバ今日ニ於テ此重大ナ
  ル缺陷ニ向ッテ、ドウシヤウト云フ相當
  ノ腹案ガナケレバナラヌト考ヘルノデ
  アリマス、ソレガアレバ此際伺ッテ置キ
  タイ

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• 115・次田大三郎

  ○次田政府委員　是ハ申スマデモナ
  ク、政府ノ案トシテ定ッタ譯デハアリマ
  セヌガ、地方局デ考ヘテ居リマスコト
  ハ、一體今日地方財政ガ非常ナ窮境ニ
  陷ッテ居ルト云フコトハ、歲入ノ方ノ問
  題モ去ルコトデアルガ、歲出ノ方デ色
  々ナモノヲ市町村ニ背負ハセテ居ルコ
  トガ、亦大キナ原因デアラウト思フノ
  デアリマス、卽チ地方費ト國費トノ分
  擔ノ規定ヲドウ云フヤウニ改メルカ、
  負擔ノ仕方ヲドウ云フヤウニ改メルカ
  ト云フ所ニ一ツノ〓究ノ題目ガアラウ
  ト思フ、今日市町村ノ義務トシテ擔任
  シテ居ル事柄、府縣ガ義務トシテ擔任
  シテ居ル事柄ニ、隨分是ハ酌ンデヤッテ
  宜カラウト思フコトガ澤山アリマス、
  小學校〓育ノ如キモ其一デアリマス、
  今日ノ市町村ニアレダケノモノヲ背負
  ハスコトガ適當デアルカドウカト云フ
  コトモ〓究ニ値スルコトヽ考ヘテ居リ
  やす、小學校〓員ノ恩給ノ如キモ今日
  府縣ノ義務ニナッテ居ルノデアリマス、
  段々增加シテ、年々何萬圓ト云フモノ
  ガ增加シテ、府縣ノ財政ハ非常ナ壓迫
  ヲ被ッテ居ル、俸給ヲ拂フノガ町村デ、
  恩給ヲ拂フノガ府縣ト云フ〓體デアル
  ト云フヤウナ定メ方ハ、餘程考究スル
  餘地ガアルト思ヒマス、サウ云フヤウ
  ナ點ニ付テ考究シテ見タイト云フ考ヲ
  持ッテ居リマス

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• 116・岡田忠彦

  ○岡田委員　此問題ハ此程度ニ止メテ
  置キマス、兎ニ角內務省トシテハむ)
  ト深刻ナ〓究ヲ遂ゲラレテ、而モ大藏
  省ハ何時デモ中央ノ都合デ地方支出ヲ
  增シテ居ルノデアリマス、現在ハ家屋
  稅戶數割ト云フモノニ過重ノ負擔ガ
  掛ッテ居ル、一體民政黨ノ人ハ考ヘ方ガ
  違ヲテ居ル、總テ中央集權主義ニナリテ
  居ル、ソレニ壓倒サレテシマッタ、安達
  內務大臣ハ之ヲ直シテ行クト云フ決心
  ヲ以テ、地方局ノ人モ左樣ナ考デナッテ
  貰ヒタイト思フ
  更ニ進ンデ質問致スコトハ、地方稅
  ノ增減調節ニ付テハ、此前ノ質問ニ依ツ
  テ略〓分ッテ居ル、卽チ地方稅ノ調節ヲ
  爲ス爲ニハ、先ヅ國稅ノ變化ノ爲メ、地
  方ノ收入ニ增減ナカラシメルト云フコ
  トガ根據ニナッテ居ルヤウデアリマス、
  大體ニ於テ地方ノ收入ヲ增減ナカラシ
  メルト云フコトニセラレテ、其結果ハ
  昨日モ申シマシタヤウニ、折角都市計
  畫ノ爲ニ法律ヲ以テ與ヘテアル所ノ此
  權限ト云フモノハ、今度ハソレヲ改正
  法ニ依ッテソレヲ取ッテシマフ-消シ
  テシマフ、就中何モ負擔シテ居ラヌヤ
  ウナ沖繩或ハ埼玉、又現ニ實行シテ居
  ラヌヤウナ三十何府縣ニ向ッテマデモ、
  將來ノ財源ヲ割イテ一般ノ收入ニ入レ
  テ居ルト云フ、斯ウ云フ苦シイコトモ
  サレテ居ル、隨分苦シカッタラウト思ヒ
  やす、偖テソコデ以テ此帳面ヅラニ於
  テハ增減ナカラシメテ居ルガ、其結果
  ト云フモノハ、內務省地方局ニ於テハ
  各府縣各市町村ニ伺ッテ戶別的ニドウ
  云フ影響ヲ及ボスカト云フ、卽チ各府
  縣各市町村ノ戶別稅ト云フモノガ、全
  ク閑却サレテ居ルヤウデアル、成程國
  ノ收入ハ、ソレ一本デアルカラ、ドウ
  云フ風ニヤッテモ宜シウゴザイマスガ、
  苟モ全國ノ府縣市町村ヲ統督サレテ居
  ル內務大臣ガ、此戶別稅ヲ閑却サレテ、
  各個々ノ町村、個々ノ府縣ト云フモノ
  ハドンナニナッテモ宜イト云フ考デ
  アルナラバ、私ハ非常ナ間違デアルト
  思ヒマス、其點ニ付テ大體論トシテ如
  何ナル考慮ヲ費サレタカ、是ハ最モ大
  事ナ點デアリマスカラ、內務大臣ノ御
  答ヲ願ヒマス

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• 117・安達謙藏

  ○安達國務大臣　先般來度々御答致シ
  テ居リマス通リ、此稅ノ均衡ヲ得ル爲
  三、昭和十二年マデ過渡的ノ茲ニ規
  定ヲ設ケテ置イテ、其間ニ急激ナル變
  化ヲ蒙ラナイヤウニシテ行キマスト云
  フノデアッテ、其後ハ結局御話ノ通リ財
  源ガ一方ニナリマスカラ、ソレデ其時
  ドウスルカト云フコトガ問題デアリマ
  ス、先刻地方局長カラ申シマシタヤウ
  二、其場合ハヤハリ第一トシテハ、地
  方ノ財政ノ整理緊縮ヲシナケレバナリ
  マセヌケレドモガ、其歲出ノ整理節約
  ニ依ッテ尙ホ補塡シ得ザル場合ハドウ
  スルカ、ソレハヤハリ他ニ方法ハナカ
  ラウト考ヘマス、今町村ニ許サレ居ル
  所ノ各種ノ稅ニ付テ、ソレヲ增徵スル
  外ハナカラウト考ヘテ居リマス、ソレ
  デ今囘ノ此稅制整理ニ付テハ、サウ云
  フ增徵ヲ爲スト云フコトハ不都合ダト
  云フ論モアリマセウケレドモ、土地ガ
  從來比較的ニ多クノ負擔ヲナシテ居ツ
  タノガ、今度ノ改正ニ依ッテソレガ是正
  セラレルノデアリマス、サウシテ始メ
  テ各稅ノ間ノ均衡ヲ得ルト云フコトニ
  ナルモノト認メマスカラ、是ハ已ムヲ
  得ナイコトヽ考ヘテ居リマス

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• 118・岡田忠彦

  ○岡田委員　今仰セノコトヲ綜合スル
  ト、詰リ財源ノナクナルモノハ仕方ガ
  ナイノデアル、其結果ハ兎ニ角、今、
  與ヘラレタル所ノ雜種稅其他ノ戶數
  割家屋稅ヲ增サナケレバナラスト云フ
  コトデアル、然ラバ其先ノ見透ガドウ
  ナルカ、ドンナ負擔ヲ庶民ニ與へ、如
  何ナル財政上ノ困難ニ市町村ガ遭フテ
  モ、深ク御考慮ニハナッテ居ラナイト
  私ハ思フノデアル、第一此市町村府縣
  ノ財源ヲ緊縮スルト云フコトデアッテ
  是ハ出來ル筈ハナイ、現ニ府縣ニ致シ
  マシテモ、現ニ今年三千萬圓ノ公債ヲ
  增シテ來テ居ル、何故カト云フト、度
  度內務大臣ガ口ヲ嗄ラシテ言ハレル失
  業問題デアリマス、失業問題ハ今日ノ
  政策ヲ遂行スル限リハ恆久的ノモノデ
  アルト思ヒマス、唯一年限ノモノデナ
  イノデアリマス、ソレヲ中央ガ僅カ三
  千萬圓出シテ救濟出來タヤウナ顏ヲシ
  テ居ルガ、大部分ハ是ハ地方民ニ負擔
  サセテ居ル、ソレガ爲ニ段々地方ハ負
  擔ガ增シテ來テ居ル、ソレヲ內務大臣
  ハ緊縮方面ノ監督ハシテ居ル、俺ハ是
  デ滿足ダ、是レ以上ハヤッテモ力ガ及
  バヌト、自己ノ力ヲ是デ發表シテ居ラ
  レルサウナッテ來レバ、地方財政ノ緊
  縮ハ出來ナイ、出來ナイナラバ、ドウ
  致シマシテモ惡稅トスル所ノ、卽チ民
  政黨內閣ノ作ッタ所ノ家屋稅賃貸價格
  ガモット重クナッテ行クコトハ明瞭デア
  ル、サウスレバ私ハ具體的ニモット申
  上ゲテ見タイト思ヒマスガ、今地租法
  案ノ結果ノミヲ見マシテモ、地租ノ附
  加稅ガ增加致ス府縣ト云フモノハ僅
  カ十府縣ニ過ギナイノデアリマシテ、
  全國デ三十何府縣ト云フモノハ明カ
  ニ地租附加稅ハ減ジマス、ソレデアリ
  マスカラ、特別稅モ同ジ經過ヲ以テ其
  處ニ關係ガ及ンデ來ルト思ヒマス、ソ
  コデ私ハ增ス方カラ聽イテ見タイ、政
  府ノ一片ノ法令ニ依ッテ增スノデアル、
  其增シタ所ノ金額ヲ如何ナル方法ヲ以
  テ、アナタハ監督サレントシテ居ルノ
  デアルカ、內務大臣ノ御明答ヲ伺ヒタ
  イ、必ズ之ハ腹案ガナケレバナラヌ、
  既ニ若槻內閣ニ於テ其憾ミガアッタ、其
  憾ミヲ再ビセザル爲ニハドウスルカ、
  ソレヲ伺ヒタイ

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• 119・安達謙藏

  ○安達國務大臣　地方局長カラ御答致
  サセマス

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• 120・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレハイケマセヌ、是ハ
  大キナ問題デアリマスカラ、內務大臣
  カラデナケレバイケマセヌ

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• 121・安達謙藏

  ○安達國務大臣　地租附加稅ノ增加シ
  マス地方ニ對シテハ、其〓體ニハソレ
  ダケ將來ノ財政ニ餘裕ガ生ジマスカ
  ラ、之ニ依ッテ他ノ國稅附加稅又ハ戶數
  割家屋稅其他ノ附加稅等ノ輕減ヲス
  ルコトヲ得ルモノト、斯ウ考ヘテ居リ
  マス

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• 122・岡田忠彦

  ○岡田委員　先程申シマシタ一千萬圓
  ノ義務〓育費ノ增加、ソレデスラ監督
  ガ出來テ居ナイ、旣ニ今日迄多數ノ日
  子ヲ費シテ居ルニモ拘ラズ、內務當局
  ハ明瞭ナル御答辯ガ出來ナイト云フ有
  樣デアル、私ハ內務省ノ統計表ト云フ
  モノハ、其根據ニ於テ信用出來ナイ、
  左樣ナル洵ニ薄弱ナル監督權シカ持ッ
  テ居ラヌ所ノ內務省ガ、突然斯ウ云フ
  ヤウナ增シ方ヲサレルノニハ、私ハ之
  ヲ信用スルコトガ出來ナイ、何カモット
  具體的ドウスルト云フ〓究ガナクチヤ
  ナラヌ、或ハ勅令ヲ發シ、或ハ取締ノ
  方法ヲ立テヽ之ヲドウ云フ風ニ用ユ
  ルカト云フコトノ、具體的ノ方法ヲ御
  示シ下サラヌ限リハ、私ハ安心シテ之
  ニ承服スルコトハ出來ナイ、必ズ內務
  省ニハ其ノ御考ガナクチヤナラヌト思
  ヒマス

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• 123・次田大三郎

  ○次田政府委員　御話ノ如ク突然附加
  稅ノ、制限一杯稅ヲ取ルト云フコト
  ニナリマスト、非常ナ增收ニナル譯
  デアリマス、併ナガラソレハ團體自身
  ニ取ッテモソレダケノ澤山ノ金ヲ今ノ
  所直グ必要トスル譯デハアリマセタ、
  又ソレダケ稅ヲ負擔スル者ノ方カラ申
  シマスレバ、非常ナ增稅ニナリマスコ
  トハ苦痛デアリマスカラ、是ハ法律ノ
  附則ニ書イテアリマス通リニ、都會ノ
  規定ニ依ッテ濟崩ニ少シヅヽ增シテ行
  クヤウニスル積リデアリマス濟崩シニ
  致シマシテモ、ドン〓〓年々增シヲ行
  クノデアリマスガ、ソレハ地方財政ノ
  監督ヲ十分ニ致シマシテ、地租附加稅
  以外ノ重イ稅ヲ整理サセタイト考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=123

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• 124・岡田忠彦

  ○岡田委員　其位ノ事ハ誰デモ考ヘル
  コトデアリマス、ソレヲ今日ノ如キ意
  思ノ徹底セザル內務省ハ、ドウ決行ス
  ル積リデアリマスカ、モット內務省ハ强
  イ所ノ勅令其他ノ方法ヲ以テシナケレ
  バ出來ヤシマセヌ、アナタノ方デ〓念
  ダケヲ述べテモ、私ハ滿足セヌ、之ヲ
  ドウ云フ風ニ決シテ行クカト云フ、具
  體的ノ觀點ガナイコトヲ憾ム者デアリ
  マス、幾ラ答辯ヲシテモ其アトハ聽キ
  マセヌ
  ソレカラ更エ地租竝ニ地租附加稅ノ
  變動ニ依リマシテ、都會地ト云フモノ
  ハ非常ナ負擔ヲ受ケテ居ルト云フコト
  ハアナタノ下サッタ數字デ明瞭デア
  ル軍縮ニ依ッテ地租ニ當ラレタル減稅
  ヲ差引キマシテモ、宅地ニ於テモ尙ホ
  略〓五百萬圓バカリ增稅ニナッテ居ルト
  思ヒマス、ソレニ附加稅ガ當然宅地ニ
  付テハ增スノデアリマス、サウ致シマ
  シテ、玆ニ六大都市ノ地租竝ニ各種ノ
  附加稅ヲ累計致シマスト、アナタノ統
  計ニ依ッテ見ルト東京市ニ於テハ六百
  四十四萬圓ト云フ、コンナニ大キナ增
  稅ニナッテシマフ、大阪市ハ九千五百萬
  圓、京都市ハ百二十萬圓、神戶市モ百
  二十萬圓、名古屋市ハ百六十萬圓、橫濱
  市ハ八十萬圓、斯樣ニ非常ナル增稅デ
  アリマス、東京市ノ如キハ六百四十四
  萬圓デ、卽チ一戶當リ十五圓以上モ增
  ス現狀デアリマスガ、殊ニ東京市ニ付
  テ見マスレバ、震災ノ後始末ガマダ出
  來テ居ラヌ、又他ノ都市ニ付テモ、對策
  ガ出來テ居ルカドウカ知ラヌガ、不況
  ガ沁ミテ居ル、斯樣ナ所ノ宅地ヲ持ッテ
  居ル者ニ增稅ヲ課ケテ、果シテ耐ヘ得
  ルカドウカ、又進ンデ是ガ思想ノ上ニ
  モ及ブモノト思ヒマス、
  政家トシテ此現狀ヲドウ見マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=124

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• 125・安達謙藏

  ○安達國務大臣　御話ノ地租附加稅ガ
  都會地ニ高クナルコトハ、御話ノ通リ
  デアリマスガ、ソレハ本稅ガ高クナッテ
  居リマスカラ、附加稅モ從ッテ高クナル
  コトハ已ムヲ得ナイト考ヘテ居リマ
  ス、ソレガ思想上ニ及ボスト云フヤウ
  ナコトヲ言ハレマスガソレダケ都會
  ハ發展シテ利益ヲ受ケテ居ルノデアリ
  マスカラ、私ハ左樣ナ結果ヲ茲ニ來ス
  コトハ已ムヲ得ザルモノト考ヘテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=125

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• 126・岡田忠彦

  ○岡田委員　先程申上ゲタ如クニ、明
  治四十三年ノ地租改正ノ時デスラモ、
  餘程考ヘテ居ッタノデアル、況ヤ今日ハ
  政治家トシテ、モット民衆的ニ、又國民
  ノ生活ニ卽シタル考ヲシナケレバナラ
  ヌ、只今ノ內務大臣ノ御答辯ハ驚クベ
  キモノデアル、本稅ガ增シテ居ルカラ
  已ムヲ得ナイト言ハレルガ、本稅バカ
  リデハナイ、附加稅モ增シテ居ル、本
  稅ガ增シタカラ附加稅モ增サナケレバ
  ナテヌト云フ其アナタノ根性ガ間違ツ
  テ居ル、本稅ヲ增シタカラ附加稅モ增
  サナケレバナラヌト云フコトハナイ
  此二ツヲ同ジヤウニ考ヘテ、サウ云フ
  コトハ已ムヲ得ナイナドヽ言ハレルコ
  トヲ、國民ガ聞イタナラバ、內務大臣
  ガ如何ニ國民生活ニ理解ガナイカヲ嘆
  內務大臣ハ爲クダラウト思ヒマス
  更ニ私ハ聽キタイノデアリマスガ、
  借地借家人ニ對シテ、今日ノ借地借家
  法ハ非常ニ地主ガ公課ヲ增サレタコト
  ヲ原因トシテ、地主ヨリ借地借家料ノ
  增率ヲ爲スコトガ出來ルト云フ權限ガ
  與ヘテアルヤウデアル、サウ致シマス
  ト、此宅地稅ノ增加ハ、借地借家ノ上
  ニ影響スルモノト思ヒマスガ、此點ハ
  如何ナル御〓究ガアッタカ、內務大臣ノ
  御所見ヲ伺ヒタイ

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• 127・安達謙藏

  ○安達國務大臣　民衆ノ云々ト云フ御
  話デアリマシタガ、第一ニ土地ヲ持ッテ
  居ル人ハ-細民ノ所謂大多數ノ民衆
  ハ土地ヲ持タナイモノデアル、其借地
  借家人ノ影響ト云フ御話デアリマシタ
  ガ、今日ノ如キ不景氣ナ場合ニ於キマ
  シテハ、ソレヲ借家人ナドニ土地所有
  者ガ轉嫁スルヤウナコトハナイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=127

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• 128・岡田忠彦

  ○岡田委員　ナイト云フ原因ヲ聽キタ
  イドウ云フ根據デナイト言フノデア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=128

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• 129・安達謙藏

  ○安達國務大臣　今日ノ不景氣ノ狀態
  デハサウ云フコトハ土地所有者ガ爲
  サレナイト云フコトヲ徹底的ニ知ッテ
  居ルト思ヒマス、ソレダカラ借家賃ナ
  ドヲ無理ニ高ク引上ゲマシテ苦シメル
  ヤウナコトハナイモノト、斯ウ云フ風
  ニ考ヘテ居リマス

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• 130・岡田忠彦

  ○岡田委員　今日ハ不況デアルカラ一
  般ノ細民ハ困フテ居ル、故ニ轉嫁出來
  ス、不況デアルカラ吾々ハ土地ノ稅ヲ
  上ゲテ貰ヒタクナイト思フ、一方ニハ
  上ゲル時ニハ上ゲタト言フ、其時ニハ
  不況ヲ考ヘズニヤッタト言フ、附加稅ニ
  就テハ何等考慮ナシニ當然上ゲタト云
  フコトヨリ考ヘテ居ラヌ、一方細民ハ
  ドウカト言フト不況ダカラ轉嫁セヌト
  云フ、左樣ナ一ツノ問題ヲ二ツニ捉ヘ
  テ言ハレルコトハ、殆ド確信ヲ缺クモ
  ノト私ハ思フ、殊ニ地租ハ細民ノ持ッテ
  居ルモノデナイカラ宜イデハナイカト
  言フ、成程一種ノ今日ノ社會政策カラ
  言ヘバ貴方ハ非常ニ進步シタル御考デ
  アリマセウケレドモ、遺憾ナガラ借地
  借家料ハ不況ヲ原因トシテ擧ゲ得ラレ
  ルノデアル、地主ハ此不況ニ應ジテド
  ウシテモ上ゲルダラウガ、細民ハ之ニ
  應ズルコトガ出來ヌトスレバ、是ニ於
  テ社會的ニ紛議ヲ起スデハナイカ、此
  政府ノ投ゲタ石ハ地主ノミノ影響デハ
  アリマセス、卽チ東京市ニ付テ言ヘバ
  市全體ノ人ニ影響ヲ及ボスコトヲ考ヘ
  ナケレバナラヌ、私ハ非常ニ爲政家ト
  シテ、貴方ノ考慮ノ足ラザルコトヲ憾
  ムモノデアリマス、是ハ內務大臣トシ
  テ確ニ失敗デアルト私ハ思ヒマス、ソ
  レデ此減ズル部分ニ付テ御話ヲ聽イテ
  置キタイノデアリマスガ、此地租竝地
  租附加稅ノ爲ニ、非常ナ減收ヲスルト
  云フコトハ貴方ノ御提出ニナッタ統計
  表ニ依テ明カデアリマス、私ハ試ニ三
  四ノ府縣ニ付テノ調ヲ御願ヒ致シタ所
  ガ、大變御面倒ナ所ヲ態〓御調べ下サ
  イマシテ、洵ニ有難ク御禮ヲ申上ゲル
  次第デアリマスガ、之ヲ讀ンデ私ハ有
  難ク思ッタドコロデハナイ、涙ヲ零シタ
  ノデアル、譬ヘテ申セバ、私ハ之ヲ速記
  ニ殘ス爲ニ讀上ゲテ見マセウ富山縣
  ニ於キマシテハ御取調ノ二百五十三箇
  町村ノ中デ、減稅トナッテ居ル所ノモノ
  ガ二百二十五デ、殆ド大部分デアリマ
  ス、就中一箇町村ニ於テ二千圓以上ノ
  地租附加稅ノ爲ニ減收ヲ來ス所ガ四十
  七アル、增加シ若クハ同等ニ止ッテ居ル
  モノハ僅カ二十八シカアリマセヌ、是
  ガ富山縣ノ取調デアル、三重縣ニ付テ
  申シマスト、百一箇町村ノ中デ減稅ニ
  ナッテ居ルモノハ九十六デアリマシテ、
  是亦大部分デアリマス、增稅ノモノハ
  僅ニ五箇町村、就中二千圓以上ノ減收
  トナルモノハ三十九モアルノデアリマ
  ス、サウシテ玆ニ不思議ナコトニハ、
  三重縣ハ百一箇町村デハナカラウト思
  フモット多イダラウト思フ、其中百
  箇町村御拔キニナッテ居ルノハ如何ナ
  ル譯カ分リマセヌ、兎ニ角此百一箇町
  村ノミヲ見テモ、非常ナ變化ヲ來シテ
  居ルコトガ明カデアル、ソレカラ滋賀
  縣デアリマスガ、百九十五箇町村ノ中
  デ、減トナルモノハ百八十六モアル、
  ヤハリ同ジ事デアル、增トナルモノハ
  僅ニ九箇町村、而モ現在二千圓以上ノ
  モノガ八十八箇町村ノ多キニ及ンデ居
  ルト云フ、是デ大勢ガ私ハ分ルト思フ、
  岡山縣ノ例ヲ先程頂戴致シタガ、是ハ
  マダ見テ居テヌカラ御話出來ヌガ、兎
  ニ角斯ウ云フヤウナ有樣デアリマス
  此中デ滋賀縣ノ坂田郡神照村ノ如キハ
  地租ニ於テ七千圓カラノ減トナッテ居
  リマス、而モ此町村ト云フモノハ戶數
  割ガ既ニ一萬圓以上掛ッテ居ル、ソコヘ
  持ッテ來テ今度七千圓、假令七箇年トシ
  テモ一箇年ニ千圓ヅヽ是ガナクナッタ
  ナラバドウスルカト云フコトデアリ
  ざる、必ズヤ是ハ一萬圓以上ノ重イ戶
  數割ノ上ニ、モット重キヲ加ヘルト思フ
  ノデアリマス、卽チ政府ノ爲ス所ノモ
  ノデアリマス、卽チ政府ノ爲ス所ノモ
  ノト云フモノハ全ク地方農村ニ於ケ
  ル所ノ府縣市町村ニ向ッテハ、比較的ニ
  有力ナ地主竝ニ資本ヲ擁シテ居ル營業
  者-大小ハ問ハス-ニ對シテ課稅
  ヲ減ゼンガ爲ニ、一般ノ細民ノ負擔ス
  ル戶數割ニ向ッテハ非常ナ重課ヲ一層
  加ヘツヽアル、繰返シテ申ス通リニ、
  此前ノ稅法ニ依ッテ非常ナ戶數割ノ負
  擔ヲシツヽアル、ソコヘ又今度稅法ノ
  改正ニ依テ、新ニ非常ナ負擔ヲ加ヘテ
  來ルト云フコトニナッタナラバ、今日ノ
  不況ト相俟ッテ、是等ノ町村ト云フモノ
  ハドウシテ立チ行クカト云フコトヲ考
  ヘナケレバナラヌ、之ニ對シテ內務大
  臣ハドウ考ヘテ居ラレマスカ、此新タ
  ナル稅法ト云フモノハ、非常ナル反動
  的、反社會政策的ノ結果ヲ來シハセヌ
  カト云フコトヲ虞レルノデアリマス、
  之ニ對スル內務大臣ノ御答辯ヲ願ヒマ
  ス、內務大臣ノ御答辯デナケレバ滿足
  致シマセス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=130

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• 131・安達謙藏

  ○安達國務大臣　簡單ニ申上ゲマス
  ト、今迄土地ニ對シテ負擔ガ過重ニナツ
  テ居。ッタ府縣-今御話ノ滋賀縣三重
  縣ト云フヤウナ所ガアリマスガ、其處
  ガ今度地租法ノ制定ニ依リマシテ、均
  衡ヲ得ルコトニナリマス、ソレデ今度
  財源ガ減ジマシタヾケハ、是ハヤハリ
  戶數割ナリ其他ノ各稅ニ依テ、分擔サ
  スヨリ外ハ致方ガナイト考ヘマスガ、
  其場合ニナッタナラバ、又戶數割等ニ付
  テハソレ〓〓均衡ヲ得ルヤウナコトニ
  ナコトニナルモノト思ヲテ居リマス

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• 132・岡田忠彦

  ○岡田委員　內務大臣ハマルデ天ヲ信
  ズル人デアリマシテ、自己ノ努力ニ依
  テ町村ヲ救ハウト云フ御決心ハ全ク無
  イ戶數割ハ增スデアラウト仰シヤル
  ガ、增サレタラ大變デハアリマセヌカ
  ソレニ對シテ救濟モ何モシナイト云フ
  コトハ、所謂內務大臣ノ任務ヲ缺クモ
  ノデアル、而モ此稅法ト云フモノハ、
  反動的ノモノデアルト云フコトヲ私ハ
  玆ニ斷言シテ置キマス、細カイ問題ハ
  時間ガアレバ後デ承ルコトニシマス
  ガ、今度營業收益稅ヲ御下ゲニナル結
  果、營業稅モ隨テ減收ヲ生ジテ來ル、
  ソコデ先以テ聽キタイノハ、其減收ヲ
  補フ爲ニ內務省ハ營業稅ノ制限外課稅
  ヲ許ス所ノ考ヲ、持ッテ居ルカ持ッテ居
  ナイカ、制限外課稅ヲ許スカ許サヌカ
  ト云フ決心ヲ聽キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=132

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• 133・次田大三郎

  ○次田政府委員　營業收益稅ガ減ジマ
  スル結果トシテ、同ジ業態デ純益四百
  圓未滿ノ營業稅ヲ納メテ居ル者ハ、權
  衡ヲ得ルガ爲ニ略〓同ジ率ニ減ジナケ
  レバナラナイト思ッテ居リマス、其結果
  府縣ノ財政ニ缺陷ヲ生ズル、其缺陷ヲ
  補ヒマスルノニハ、先以テ營業收益稅
  ノ課率ヲ從來ヨリカ百分ノ一·五ダケ
  引上ゲテ、其一部分ヲ補ヒマス、ソレ
  デ尙ホ足ラナイモノガザット百萬圓バ
  カリアルノデアリマス、其分ハ單リ營
  業稅ノミナラズ、許サレテ居ル色々ナ
  稅ノ均衡ヲ圖ッテ、補塡スル外ナイト思
  フノデアリマスガ、唯ドウシテモ立行
  カヌドウシテモ補塡ノ途ガナイト云フ
  所ニ於キマシテハ此法律ニハ書イテゴ
  ザイマセヌガ三箇年ダケ營業稅ノ制
  限外課稅ヲ認メヨウト思ヲテ居リマス、
  此三箇年ト云フコトヲ考ヘマシタノ
  一擧ニ百萬圓ノ歲入缺陷ヲ生ズル
  ト云フコトニナリマスレバ、府縣ガ非
  常ニ困ルデアラウカラ、三年ノ間ニ整
  理ヲサシタイト云フ趣旨デヤッタノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=133

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• 134・岡田忠彦

  ○岡田委員　辻褄ヲ合セルト云フコト
  ノミデ、此稅法ト云フモノヽ缺陷ガ社
  會ニ如何ナル影響ヲ及ボスカト云フヤ
  ウナコトハ、何ニモ御考ヘニナッテ居ラ
  ヌヤウニ思ハレル、兎ニ角今ノ御答辯
  ニ依リマスト、三箇年間ハ營業收益稅
  ノ下ッタ率ニ應ジテ、營業稅ヲ下ゲテ置
  キナガラ、又今囘制限外課稅ヲスルト
  云フコトニナリマスト、地方稅ヲ納メ
  ル者ハ此減額ノ惠澤ニ浴スル度ガ少
  イ、朝ニ與ヘテ夕ニ奪フモノデアル、
  是ハ非常ニ撞著矛盾ノ政策デアルト云
  フコトヲ、遺憾トシナケレバナラナイ
  更ニ進ンデ聞キマスガ、內務省ト大
  藏省トガ大分長ク論爭サレテ居ッタヤ
  ウデアリマス、新聞ニモ是ハ洩レテ居ツ
  タ、ソンナ內輪喧嘩ノコトヲ聞クノデ
  ハナイケレドモ、聞ク所ニ依ルト免
  稅點ノ問題デッアタヤウニ私ハ思フ、此
  前ニ私ガ聞イタ所ガ、地方ノ營業稅ニ
  對シテハ免稅スルト云フコトヲ一般的
  ニセヌ、ソレハ十七條デアリマシタカ、
  何條カニ依リ、シタイ地方長官ハスルデ
  アラウ、シタクナイ地方長官ハセヌデア
  ラウガ、內務省トシテハ一律ニ下ノ方
  ノモノヲ下ゲテヤルト云フ誠意ハ認メ
  ラレナカッタ、今度ハ府縣稅ノ上ノ方、
  四百圓以上ノモノ、例ヘバ五百圓ニモ
  免稅點ヲ上ゲテ、サウシテ一面ニ於テ
  ハ比較的ニ國稅カラ見テ下層ノ營業者
  ノ負擔ヲ輕減シ、第二ニ此免稅ニ依ッテ
  一面ニハ地方ノ財源ヲ涵養セシメテ、
  今囘ノ租稅計畫ニ依ル所ノ地方ニ對ス
  ル負擔ト云フモノヲ補ッテ行カウ、此事
  ハドウ致シテモ私ハ內務大臣トシテ
  ヤッテ貰ヒタカッタノデアリマス、ナゼ
  之ヲ爲サラナカッタノカ、其理由ヲ先以
  テ内務大臣ヨリ伺ヒタイ、是ハ大キナ
  問題デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=134

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• 135・安達謙藏

  ○安津國務大臣　今御尋ノコトハ內務
  省トシテ色々〓究ヲ致シマシタ、併ナ
  ガラ國ノ財政ノ上カラ、ドウシテモサ
  ウ云フコトハ此際ニ行ハレナイト云フ
  結論ヲ得マシタカラ、ソレデ此通リニ
  シタ次第デアリマス、御話ノヤウナ意
  見モ大分アッタト云フコトヲ申上ゲテ
  置キマス、併シ遺憾ナガラサウ云フコ
  トガ出來ナカッタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=135

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• 136・次田大三郎

  ○次田政府委員　チヨット私、補足シテ
  申上ゲマス、營業稅ニ付テ課率ヲ一部
  分引下ゲルコトニシタニ拘ラズ、更ニ制
  限外課稅ヲ許スト云フコトハ一旦與
  ヘテ直グソレヲ取上ゲルモノデアルト
  云フ御話デアリマシタガ、一應御尤モ
  デアリマスガ、是ハ私共ハ斯ウ云フ風
  ニシタイト思ッテ居リマス、營業稅ヲ下
  ゲマスト、サウスルト、ソコニ府縣ニ
  幾ラカノ歲入缺陷ガ生ズル、其歲入缺
  陷ガ生ズルモノハ總テノ外ノ稅デ、ソ
  レヲ補ハセタイ、譬ヘテ申シマスレバ
  營業收益稅ノ制限外課稅ト云フヤウナ
  コトモ、考ヘラレルト思フノデアリマ
  ス、サウシテモ尙ホドウシテモ其途ガ
  ナイ、制限外課稅ニ付テモ地租ノ附加
  稅營業稅附加稅、營業收益稅附加稅
  等ニ付テモ、ソレ〓〓制限外課稅ヲス
  ル限度ガ、ソレ〓〓決ッテ居ルモノデス
  カラ、ドウシテモ工面ガ付カナイト云
  フ際ニハ、營業稅ニ付テ制限外課稅ヲ、
  而モ今マデ課稅ヲ致シテ居ル範圍ヲ越
  ユルコトハ出來ナイノデアリマスガ
  其範圍內ニ於テ極ク僅カノ制限外課稅
  ヲ認メヨウ、申サバ營業收益稅ガアリ
  マシテ、ソレカラ營業稅ガアリマス、
  其營業收益稅ノ方ヲウント制限外課稅
  ヲシテ、餘計取ルヤウナ場合デアリマ
  セネバ、營業稅ノ制限外課稅ハサセナ
  イ積リデアリマス、一旦與ヘテ直ニソ
  レヲ取上ゲルト云フコトノ御非難ハ
  一應御尤モデアリマスガ、ソレハ行政
  上成ベクサウ云フコトハサセナイ、唯
  公共團體トシテハドウシデモ經驗ス
  ル事ガ出來ナイト云フ場合ガアリ得ル
  コトヲ考ヘマシテ、營業稅ノ制限外課
  稅ヲ三年ダケ、認メテ行カウト云フ趣
  旨デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=136

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• 137・岡田忠彦

  ○岡田委員　一應御尤モダ、私ハ一應
  モ二應モ御尤モダト思ッテ居ル、一應下
  ゲテ又上ゲル、ドッチデモ五十步百步デ
  アリマス、サウ言ハレルト非常ニ玆ニ
  不思議ナコトガ起ッテ來ル、營業稅ナ
  リ、營業收益稅ノ課率ト云フモノヲ上
  ゲル、下ゲルト云フコトハドウシテ
  事實上オヤリニナリマスカ、營業稅ナ
  ルモノハ、此前アナタノ示サレタ表ニ
  モアル通リ、外形標準ノ隨分込ミ入ッタ
  モノデアリマス、或ル府縣ニ於テハ純
  益ニ依ッテ、取ッテ居ルモノモアリマセ
  ウ、府縣ニ於テハ、外形的ニ取ッテ居ル
  モノモアル、之ヲ課率ヲ上ゲルトカ、
  下ゲルトカ云フコトハドウ云フ風ニ
  オヤリニナルノデアリマスカ、具體的
  ニ御話願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=137

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• 138・次田大三郎

  ○次田政府委員　御答致シマス、從來
  ノ課率ニ對シテ、或ル程度ノ上ゲ下ゲ
  ヲ致サセテ居リマス、サウシテソレハ
  內務省デ許可ヲスルトカ云フ方法デ、
  取締ッテ行ク積リデアリマス、營業稅ノ
  制限外課稅ヲスルニハ、無論內務省デ
  許可ヲ詮議スルノデアリマスガ、其課
  率ノ點ヲ昭和六年度、七年度ト、十分
  ニ內務省デ詮議スル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=138

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• 139・岡田忠彦

  ○岡田委員　一寸其課率問題ハ、又後
  ニ御話ヲスルコトニシテ、少シ話ガ混
  淆シテ參リマシタカラ、ソコデ止メテ
  戴キタイノデスガ、ソレデ今ノ話デ、
  内務大臣ノ御答辯ニ依リマスルト、免
  稅ヲ上ゲルコトハ、要スルニ國ノ財政
  ノ都合上、財源ノ都合上、出來ナカッタ、
  甚ダ遺憾デアル、ヤラウト云フ氣モアツ
  タ、氣分デモアッタト云フコトハ、私ハ
  非常ニ贊成スルノデアリマス、所ガ一
  面ニ於テハ賃貸價格ニ課スル爲、ニ、是
  ハ或ハ大藏省ノ事ニ屬スルノデアリマ
  セウ、例ノ二百圓ヲ二百四十圓ニスル
  問題デアル、二百圓ノモノガ二百四十
  圓見當ト云フコトニナッタノデアリマ
  スガ、其課率ヲ追ウテ行ケバ、ドウ致
  シテモ營業收益稅ハ先ヅ以テ四百圓、
  五百圓位ニシテ、免稅點ヲ均衡上決メ
  ナケレバナラナイト思フ、其均衡ヲ取
  ルト云フコトニ付テ考ガナカッタノデ
  アリマスカ、是ハ內務大臣デナケレバ
  大藏大臣カラデモ御答ヘ願ッタラ宜イ
  ト思ヒマス、私ハ其均衡ヲ取ルベキモ
  ノデアルト云フ考デアルガ其觀念ニ付
  テハ如何ナル御意見デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=139

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• 140・井上準之助

  ○井上國務大臣　營業收益稅ニ付キマ
  シテハ千圓ト云フ限界ヲ置イテ、其上
  ト下トノ課率ヲ變ヘマシタ、ソレニ依
  ッテ大體今岡田君ノ言ハレルヤウナ目
  的ヲ達シ得ル、斯ウ考ヘマシテ免稅點
  ヲ置キマスコトモ、アノ點デ、上ト下
  トニ急激ナ變化ヲ來シテ、可ナリ具合
  ノ惡イ所モアリマスガ、千圓ト云フ限
  度ヲ置イテ、只今ノヤウニシテ其目的
  ヲ達スルヤウニシタ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=140

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• 141・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウ致シマスト、地租ノ
  免稅點ハ二百四十圓ニナッタ、ソコデ營
  業收益稅ノ先ヅ千圓以下ノモノヲ少シ
  下ゲテヤッタカラ、均衡ヲ得タト云フノ
  デアリマスカ、詰リ均衡ノ事ヲ御考ヘ
  ニナッタノデアリマスカ、營業稅ト地租
  トノ均衡ト云フモノハ御考ヘニナラヌ
  ノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=141

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• 142・井上準之助

  ○井上國務大臣　私ガ申上ゲルマデモ
  ナク、地租ノ免稅點ハ、アレハ營業收
  益稅ノ免稅點トハ大變性質ヲ異ニシテ
  居リマス、一方ハ自作農ノ奬勵ノ爲メ
  ノミデゴザイマス、隨テ營業收益稅ノ
  免稅點ト、地租ノ免稅點ト云フノハ、
  全ク稅法カラ申シマスト目的ヲ異ニシ
  テ居ルト申シテ宜シイノデアリマス、
  隨テアノ間ニ釣合ヲ取ルト云フコトハ
  考ヘマセヌノデゴザイマス、唯釣合ト
  言ヒマスカ、社會政策ト言ヒマスカ、
  下層社會ニ對スルモノニ對シテハ千圓
  ヲ限度ニシテ、只今御手許ニ差出シテ
  アルヤウナ案ヲ拵ヘタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=142

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• 143・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレデハ詰リ結著、稅法
  ノ上カラ言ヘバ、免稅點ヲ作ルニ付テ
  ハ營業稅ト地租トハ權衡ヲ取ル必要ハ
  ナイ、斯ウ云フコトデアリマスカ-ソ
  レデハ更ニ伺ヒマスガ、元來地租、營
  業稅ト云フモノハ濱口君アタリノ言葉
  ニ依レバ、所謂兩翼トシテ、補完稅ト
  シテヤルト云フ時ニ、此均衡ヲ得セシ
  メテ、免稅點ヲ作ルト云フ所ノ御考ハ
  ナカッタノデアルカ、アルノデアルカト
  言ヘバアルヤウニ私ハ思フノデアリ
  やっ、ソレハアナタハ新シイ大藏大臣
  デアルガ、古イ人ガ居リマセウ、其時
  ノ速記等ニ依ッテ見ルト、必ズ是ハ均衡
  ヲ得セシメルヤウニシテ居ルモノト私
  ハ見テ居ルノデアル、政府ノ言明モ左
  樣デアッタヤウニ私ハ承知シテ居ル今
  大藏大臣ハ由來ヲ御承知ナイカラ、是
  ハ別ノモノデアルト此前モ言ハレタ、
  アレハ是、是ハアレト頻ニ仰シヤッテ居
  ルガ、私ハサウ思ハヌ、同ジク是ハ收
  益稅ノ一種デアル以上ハ、ソコニ均衡
  ヲ得ルト云フコトハ態形ヲ整ヘル上ニ
  於テ、ドウシテモシナケレバナラヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=143

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• 144・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、只
  今御質問ニゴザイマシタ此前ノ濱口大
  藏大臣ノ稅制整理ノ際ニ、地租ノ免稅
  點ノ二百圓ト云フモノト、營業收益稅
  ノ四百圓ト云フモノトハ權衡ヲ取ッテ
  決メタノデアルト云フ御答辯ガアッタ
  ヤウニ思フト云フ御話デゴザイマシタ
  ガ、私モ正確ニハ記憶致シマセヌケレ
  ドモ、サウ云フヤウナ事ガアッタヤウニ
  思ヒマヌ、併シ私共ガ今日考ヘテ居リ
  マス事ハ、只今大藏大臣カラ御述べニ
  ナリマシタヤウニ、
  稅點、ソレハ自作農ヲ奬勵スル爲ニ、田
  畑ニ限リマシテ、而モ自作スル者ニ限ツ
  テ之ヲ免稅スルト云フ趣旨デアリマシ
  テ、ソレ以下ハ地租ヲ負擔スル擔稅力
  ガナイト云フヤウナ趣旨カラ、出テ居
  ルノデハゴザイマセス、又營業收益稅
  ヲ四百圓ト云フ所デ、地方稅ト國稅ト
  ノ分界ヲ定メテ居リマスケレドモ、其
  四百圓ト云フ所ハ、四百圓以下ハ御承
  知ノ府縣營業稅ヲ取ルノデアリマシ
  テ、全然四百圓以下ノ人ガ所謂營業收
  益稅、營業稅ト云フヤウナ廣イ意味ノ、
  營業稅ヲ負擔シナイト云フ譯デハゴザ
  イマセヌノデ、私共ガ只今考ヘテ居リ
  マス所デハ、此地租ノ所謂免稅點ト云
  フノト、營業收益稅ノ所謂免稅點ト云
  フノハ全ク性質ノ違ッタモノデアルト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=144

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• 145・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウナッテ來ルト云フト、
  濱口君ニ病床ヨリ御出デヲ願ッテ來ナ
  ケレバナラヌト云フコトニナッテ、ソレ
  ダカラ臨時首相代理ガ困ルノダ-是
  ハ濱口君ノ意見ニ依レバ、所謂補完稅
  トシテ兩翼トスルノダ、故ニ免稅點ニ
  付テモ均衡ヲ得セシメナケレバナラヌ
  ト云フコトハ、始終口癖ノヤウニ言ウ
  テ居ルノデアリマス、已ムヲ得ナイカ
  ラ私ハ玆ニ速記錄ノ一端ヲ讀ンデ見マ
  セウ、皆樣御聽ヲ願ヒタイ、サウシテ
  地租ノ二百圓ノ免此濱口君ノ意見ノヤウニスルナラバ私
  ハ免稅點ト云フモノハ、少クトモ五百
  圓ニナサラナケレバナラヌ、是ハ濱口
  總理大臣、アノ時ハ大藏大臣デアッタ
  ガ、卽チ政府ヲ代表サレタ國務大臣ノ
  話デアッテ、國民ニ向ッテモ斯樣ニ言ッテ
  アルノデアルカラ、私ハ其趣旨ヲ變更
  サレルト云フナラバ、濱口君ハ總理大
  臣トシテ居ル譯ニハイカヌト思フ、其
  速記ヲ讀ンデ見マセウ、大正十五年ノ
  二月三日豫算總會ニ於テ我黨ノ武藤
  委員ニ對スル濱口國務大臣ノ御答辯デ
  アリマス、「法定地價二百圓ノ田畑ハ純
  益大體二百圓トナル、土地ハ純然タル
  資產デアル、營業ハ資產勤勞共同作用
  デアル、純然タル資產ニ對スル免稅點
  ハ資產勤勞共同動作ノ結果タル純益ニ
  對スル免稅點ヨリ低キガ當然デアル、
  ソレ故ニ地租ニ付テハ純益二百圓、營
  業稅ニ付テハ純益四百圓ト云フノガ補
  完稅トシテノ均衡ヲ得テ居ルモノデア
  ル」斯樣ニ斷言シテ居リマス、武藤君
  ハ之ニ納得シテ御同意申上ゲタノデア
  リマス、是程ノ言質ヲ與ヘテ居ルモノ
  ヲ、唯〓大藏大臣ガ新ラシクナッテ、元ノ
  コトハ御存ジデナイト云フコトハ、是
  ハ恕スベキコトデアルガ、靑木君マデ
  ガ之ヲ曲解致シテ、何カ今ノ大藏大臣
  ノ言ヲ庇護サレルト云フニ至ッテハ私
  ハアナタノ吏僚トシテノ良心ニ甚ダ疑
  ヲ挾ミマス、モウ一遍御答辯ヲ誰方カ
  ラデモ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=145

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• 146・青木得三

  ○靑木政府委員　先程モ高橋サンノ御
  質問ニ御答ヲ致シマシタヤウニ、此地
  租ノ免稅點ヲ引上ゲタト云フ風ニ仰セ
  ニナリマスケレドモ、是ハ先程モ申上
  ゲマシタガ、故意ニ引上ゲルト云フヤ
  ウナ意味ハゴザイマセヌデシタ、唯<
  正確ニ申シマスト云フト、八割九分何
  厘ト云フコトニナリマス、地價ト賃貸
  價格トノ割合ガソレデアリマスカラ、
  結果ハ成程アナタノ仰セニナルヤウデ
  アリマスケレドモ、詰リ端數ノ百七十
  圓デアリマスカ、サウ云フヤウナ所ニ
  免稅點ヲ置クト云フコトハ、洵ニ稅務
  行政ノ執行上甚ダ手數デアリマスカラ、
  二百圓ト云フコトニ致シマシタノデ、
  濱口國務大臣ノ御答辯ノ趣旨ヲ其儘採
  リマシテモ、是ガ營業收益稅ノ免稅點
  ヲ引上ゲル理由ニハナラナイヤウニ思
  フノデアリマス

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• 147・岡田忠彦

  ○岡田委員　今度ハソレヲ其儘御採リ
  ニナルノデスカ、今ノ御話デハ濱口君
  ノ言ヲ御採リニナリマスカ、先刻ハ少
  シモヂッタヤウデアリマスガ、今度ハ御
  採リニナルノデアリマスカ

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• 148・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、私ノ
  意見ハ先程大藏大臣ノ御述ニナリマシ
  タヤウニ私モ思ッテ居リマスガ、ソレデ
  ハ私ノ良心ヲ非常ニ御疑ニナルヤウナ
  御言葉モゴザイマシタカラ、ソレデ假
  ニ濱口大藏大臣ノ御意見通リト致シマ
  シテモ、營業收益稅ノ免稅點ヲ引上ゲ
  ルト云フコトニハナラナイト申上ゲタ
  譯デアリマス

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• 149・岡田忠彦

  ○岡田委員　濱口サンガ出テ來ナイカ
  ラ分ラヌノデアリマスガ、出テ來ルノ
  ヲ待ツヨリ外仕方ガナイ、兎ニ角政府
  ノ方針ト云フモノガ違ッテ居ル、今ノ速
  記ニハ此通リニナッテ居リマス、ソレデ
  以テ現大藏大臣、現小川次官、現靑木主
  稅局長ハ、今度ハ變へタ意見ヲ以テ對
  抗サレテ居ルノデアリマスガ、是デハ
  政府ノ方針ガ變ヲテシマッタ、ソレハ濱
  口君ノ御病氣ノ爲ニ一變シテシマッタ、
  斯ウ私ハ見ナケレバナラヌ、是ハ甚ダ
  遺憾ニ思フ、斯ウ云フヤウニ總テノ政
  府ガ變ッテハ困ルノデアリマス、ドウモ
  總テノ政策ガ變ヲテ居ルヤウニ思フ、大
  分變ヲテ居リマス、サウ致セバ私ハ假ニ
  修正案ヲ出スモノトスレバ、濱口君ノ
  御意見ニ盲從ヲ致シテ、二百四十圓ニ
  ナッタノデアルカラ、營業收益稅モソレ
  ノ均衡ヲ得ルヤウニ五百圓ニシテ貰ヒ
  タイト云フ修正案ヲ出スコトガ出來レ
  バ出シタイ、此事ヲ申上ゲテ置キマ
  ス、サウシナケレバ濱口君ノ心持ト云
  フモノガ達セラレナイ、更ニ進ンデ聞
  キマスガ、今ノ免稅點ノ問題、何ト言
  ヒマスカ、累進課稅ト云フノデスカ、
  學問上ノ言葉ハ知ラヌノデアルガ、兎
  ニモ角ニモ累進課率ト言ヒマスカ收益
  稅デアリマセウ、地租モ收益稅モ、資
  本利子モ家屋稅モサウデアラウト思ヒ
  マス、其收益稅ニ向ッテ斯樣ナ累進的ノ
  課率ヲ賦課サレルト云フコトハ、租稅
  ノ原理原則ノ立場カラ、私ハ非常ニ之
  ヲ不思議ニ思ッテ居ル、小川君ハ玆ニオ
  イデニナル學者デアルガ、小川君ニ聞
  キマス、小川君ハ斯ウ云フ收益稅ノ累
  進課率ヲ用ヰルト云フノハ、他ノ國ニ
  アリマスガ、累進課率ヲ課スル道理ヲ
  小川政務次官カラ承ハリタイ

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• 150・小川郷太郎

  ○小川政府委員　ソレハドナタカノ御
  質問ニ御答シテ置イタト思ヒマス、別
  ニ是ハ累進課稅トカ何トカ云フ意味ノ
  理窟ヲ玆ニ當箝ムベキモノデナイ、千
  圓以下ノ者ハ實際ニ於テ負擔ガ重イヤ
  ウデアルカラ、ソコデ千圓以上ノ者ヨ
  リモ餘計ニ輕クシテヤラウト云フ趣旨
  ニ外ナラヌノデアリマス、若シ累進課
  率ノ論ヲ以テ致セバ、幾ツモ階級ヲ刻
  マナケレバナラヌ、階級ヲ刻メバ刻ム
  程正確ニナルノデアリマスガ、サウ云
  フヤウナコトデ出來テ居ルノデナイ、
  各國ノ立法例ニ於キマシテモ、査定シ
  マス時分ニ控除査定ト申シテ、或額ヲ
  引ク、日本デモ所得稅法ニ於テ勤勞所
  得ニ付キ或割合ノモノヲ二割ナラ二
  割一割ナラ一割ヲ引イテ居ル、控除
  査定ト云フモノハ、稅率デ言ヘバ同ジ
  稅率デナイト云フコトニナル、丁度負
  擔ヲホド〓〓ニシヤウト云フヤウナ所
  カラ、サウ云フヤウナ立法例ト云フモ
  ノガ多クアルノデアリマス

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• 151・本田恒之

  ○本田委員長　岡田君ニ伺ヒマスガ、
  內務大臣ハ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=151

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• 152・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウハ行キマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=152

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• 153・本田恒之

  ○本田委員長　アッチノ方ハ開會スル
  都合ガアルサウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=153

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• 154・岡田忠彦

  ○岡田委員　成ベク早クヤリマセウ、
  ソコデ今ノ累進課率ト云フモノヲ用ヰ
  ルノハ、實ニ私ハ不思議ニ思フ、何故
  累進課率ヲ収ッタカ、實際ノ立法ノ原理
  ヲ聞イテ見タイ、何故千圓以下ニ於テ
  ハ斯ウ云フコトニサレタカ、ドウ云フ
  道理デサレタカ、其道理ヲ聞キタイ

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• 155・小川郷太郎

  ○小川政府委員　今申シタヤウニ同ジ
  ヤウナ率デ滅稅致シマスレバ、千圓以
  上ト千圓以下ニ於キマシテハ違フノデ
  アリマス、何故千圓以下ハサウデアル
  カト云フト、營業稅カラ營業收益稅ニ
  移リマシタ折ニモ、大分千圓以下ノ所
  ハ急ニ變ヲタヤウニモ思ヒマスシ、又現
  在ノ狀況カラ考ヘマシテモ、千圓以下
  ノ營業收益ヲシテ居ル營業者ハ、氣ノ
  毒ナヤウニ思ヒマスルノデ、ソレデ步合
  ヲ餘計減ジタト云フコトニナリマス、
  ソレハ理窟デアリマス、立法例ハ他ニ
  アリマスガ、營業收益稅ニ於テハ普
  魯西ノ立法ニモ階段ハ刻ンデ居リマ
  ス、普魯西ノ所得稅ハ非常ニ刻ンデア
  リマスガ、營業稅ト云フモノハ餘リ刻
  ンデ居ナイノデス、佛蘭西ノ商業所得
  稅ト云フモノモヤハリ同ジデアリマ
  ス、ソレデアリマスカラ、所得稅デア
  リマセヌ、營業稅デアリマス、營業稅
  或ハ營業收益稅ニ當ルモノデス、營
  業收益稅カ何カニ其立法例ハアリマス

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• 156・岡田忠彦

  ○岡田委員　是ハ地租トノ權衡問題ガ
  起キテ來ル、ソレハ先ニ繰返シ申ス通
  リニ、現內閣ノ大藏大臣ハ認メヌト言
  フガ、私ハ元ノ立法ノ起リト云フ由來
  歷史ガ、サウナッテ居ルト思フ、ソコデ
  千圓以下ノ者ハ稅ガ重イ、負擔ニ堪ヘ
  ヌデハナイカ、サウスレバ千圓以上ノ
  者モ、二千圓以上ノ者モ三千圓以上ノ
  者モ、次々ニヤッテ行クノデスカラ、收
  益ノ多イ者ハ、モット重イ負擔ヲシテモ
  宜イト云フコトニナリマスガ、ソレハ
  收益ノ多イ者程擔稅力ガ多イト云フ原
  理カラ行クノデスカ

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• 157・小川郷太郎

  ○小川政府委員　旣ニ答ヘタコトガア
  リマスガ、營業收益稅ハ資產ト勤勞ト
  云フモノガ、結付イテ出來テ居リマス
  カラ、資產ノ分子ガ少クテ勤勞ノ分子
  ガ多イト云フモノニハ、特ニ斟酌スル
  必要ガアル、千圓以下ノ者ニハ資本ノ
  分子ガ少クテ勤勞ノ分子ガ多イノデア
  リマスカラ、ソコヲ少シ緩メテヤル必
  要ガアルト、
  デアリマス、累進率トカ言ヒマスト、
  階段ヲ澤山刻ンデ行クヤウニ御考デア
  リマセウガ、現實サウナッテ居ルノデハ
  アリマセヌ

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• 158・岡田忠彦

  ○岡田委員　最後ニ申上ゲテ置キマ
  ス、其政府ノ考ハマルデ間違フテ居ル
  純益ガ多ケレバ勤勞ガ少イ、純益ガ少
  ケレバ勤勞ガ多イト云フコトハ間違ツ
  テ居ル、其近イ例ハ郵船會社デアル、
  今無配當デヤッテ居ルガ、勤勞ノ分子ガ
  多イトカ少イトカ言ヘルカ、斯樣ナ原
  理原則ニ依ッテ營業收益稅ノ減稅或ハ
  免稅ヲ期スルト云フコトハ、租稅ノ原
  理ニ於テ間違ヲテ居ルト、私ハ玆ニ言明
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=158

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• 159・小川郷太郎

  ○小川政府委員　今ノ御話ハ個人營業
  稅デアリマスカラ、公人デアリマセヌ
  個人營業收益稅デアリマスカラ、郵船
  會社ノヤウナ場合ハ·

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• 160・岡田忠彦

  ○岡田委員　サウ云フ間違ッタ考デヤ
  ラレテハ困ル、故ニ私ハ政府ノ方針ガ
  違ッテ居ルノデアルカラ、此稅法ハ間
  違ヲテ居ルト云フコトヲ玆ニ申上ゲテ、
  先ヘ進ミマス、ソレカラ先程營業稅ノ
  附加稅ニ付テハ少ク共三年間ハ限外課
  稅ヲ許スト云フコトデアリマシタ、サ
  ウスルト之ニ聯關シテ伺ヒタイ、營業
  稅ヲ減ズル、附加稅ハ多少擧ゲラレテ
  居ルガ、營業稅ヲ減ズル、營業稅的ノモ
  斯ウ云フ風ニ考ヘタ次第ノデアッテ、所謂雜種稅ニ入ルモノモア
  リマセウ、アレハドウナサルノデスカ
  一應減ジマスカ、減ジマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=160

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• 161・次田大三郎

  ○次田政府委員　雜種稅ニハ手ヲ觸レ
  ナイ積リデ居リマス、併シ雜種稅ノ中
  ニハ營業稅ト性質ノ同ジヤウナモノガ
  アリマス、其方ニ付テハ斟酌ヲ加ヘル
  積リデ居リマスガ、併シ制度論ト致シ
  マシテハ、營業稅ハ雜種稅トハ別ノモ
  ノトシテ考ヘル積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=161

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• 162・岡田忠彦

  ○岡田委員　總テノ內務省ノ考方、御
  答辯ト云フモノガ、皆紙ノ上ノ制度ヲ
  行フモノデアッテ、私ノ考トハ皆ナ違ツ
  テ居ル、私ハ擔稅力或ハ人々ノ生活狀
  態ヲ見テヤッテ貰ヒタイ、內務省ハ雜種
  稅ハ別ダ營業稅ハ減ズルト云フ左樣
  ナ机上論デ律スルコトハ宜クナイト申
  上ゲテ、先へ進ミマス、ソレカラ營業
  稅ニ付テ、其附加稅ニ付テノ問題デア
  リマス、アナタハ三年間ハ限外ハ許ス
  ト言ウテ居ルガ、斯ウ云フヤウナ制度
  ヲ行ッタナラバ、三年デハ濟マヌ、必ズ
  將來ニ於テモ許サナケレバナラヌト思
  フ、之ヲ許ス許サヌト云フコトニ付テ、
  私ハ非常ナ疑問ガアル、此處ニ地方營
  業稅ノ課稅標準、及ビ昭和五年度課率
  ト云フモノヲ配付セラレテ居リマス、
  北海道ハ純益百分ノ二·八トサレテ居
  ルガ、是ハ限外ヲ許スカ許サヌカ、併
  シ靑森縣ノ如キハ收入金ノ千分ノ四デ
  アル、從業者ハ一人ニ付テ四十錢ト云
  フヤウニ、外計標準ニ依ッテ居ル、是ハ
  多數ノ縣ガ皆サウデアリマス、ソレヲ
  アナタハ限外課稅ヲドウシテ扱フノデ
  アルカ、其ヤリ方ガ分ラナイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=162

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• 163・次田大三郎

  ○次田政府委員　現在ノ地方稅ニ關ス
  ル法律ノ施行勅令ニ、營業稅ハ營業收
  益稅ヨリ餘計取ルコトハナラヌト云フ
  法律ガアリマス、違ッタ業態ノモノハ別
  デアリマスガ、同ジヤウナ業態ノモノ
  ニ付テハ、營業稅ハ營業收益稅ヨリ餘
  計取ルコトハナラヌ、ソレデ外形標準
  デ定メテアリマス場合ニ於テモ餘計取
  ルコトハナラナイノデアリマスカラ、
  營業收益稅四百圓程ノ稅ニ達シテ居ナ
  イト考ヘナケレバナラヌ譯デアリマ
  ス反證ガアレバ、其點ハ斟酌致シマ
  スガ、反證ガナケレバ、最高額マデ賦
  課シテ居ルト考ヘマス、詰リ營業收益
  稅ト同一業態ノモノニ付テハ、現在ノ
  課率ヲ二十八分ノ二十二ニナリマスト
  同ジ割合ニ引下ゲルノデアリマス、譬
  ヘテ申セバ、今御示シノ靑森縣ノ收入
  金千分ノ四ト云フコトニナッテ居ルモ
  ノハ、其千分ノ四ニ二十八分ノ二十二
  ヲ掛ケタモノヲ稅率ニスレバ宜シイ
  ト思ッテ居リマス、サウスレバ丁度二十
  八ガ二十二ニナッタト同ジ割合ニ稅金
  ガ下ルサウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、
  他ノ外形標準ニ依ルモノモ同樣ニ考ヘ
  テ居リマス、併ナガラ例ヘバ靑森縣ニ
  付テ申シテ、收入金千分ノ四ト云フコ
  トガ純益ニ換算シテ百分ノ二八ニ達シ
  テ居ナイト云フコトガ明瞭デアリマシ
  テ、ソレガ百分ノ二·五ト云フヤウナ場
  合ニハ、ソレハ斟酌シテ考ヘマスガ、
  ソレガ反證ノナイ限リハ、純益ニ換算
  スレバ百分ノ二·八ノ課稅ヲセラレテ
  居ルモノト認メマシテ、ソレノ二十八
  分ノ六ダケ減少セシメレバ宜イト考ヘ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=163

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• 164・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレハ分リマシタガ、純
  益ニ換算スルト云フコトデスガ、誰ガ
  換算スルノデスカ、ソンナコトハ出來
  ナイト思フ、ソンナコトヲスルモノデス
  カ、遂ニシマイニハ外形標準ニ依ッテ、
  結著ハ各地方々々ニ於テ純益ヲ先ニ出
  シテ、ソレデ以テ率ヲ計ッテ、是ガ制限
  ニナルカナラヌカ、是ガ國稅營業稅ノ
  上カ下カ見ナケレバナラヌ、ソンナコ
  トヲヤッタナラバ徵稅費ニ掛ッテ迚モ稅
  ハ取レマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=164

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• 165・次田大三郎

  ○次田政府委員　ソレハ現在サウ云フ
  問題ガ起ルノデアリマス、營業稅ハ營
  業收益稅ヨリ餘計取ッテハナラヌト云
  フコトニナリマシテ、營業收益稅ハ
  純益ヲ標準ニシテ取ッテ居ルノデアリ
  やす、ソコデ收入金ノ千分ノ四ト云
  フノガ、現在ノ勅令違反ニナルカナ
  ラヌカ、此靑森縣ノ收入金千分ノ四
  ト云フノハ、此地方稅ニ關スル法律施
  行ニ際ニ內務省デ認可ヲシテアルノデ
  アリマス、其認可ノ際ニハ收入金千分
  ノ四ト云フコトデ課稅スレバ、純益ニ
  對シテ百分ノ二·八ニ匹敵スルト云フ
  ヤウニ考ヘテ認可シテ居ルノデアリマ
  ス、昭和六年度、七年度ニ於テノ營業
  稅ノ課稅率ハ、內務省デ別ニ認可スル
  積リデ居リマスカラ、其際ニ換算シテ
  ヤレバ宜シイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=165

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• 166・岡田忠彦

  ○岡田委員　例ヘバ茨城縣デ云ヘバ、
  賣上金ガ一等カラ二等、三等トナッテ居
  リマシテ、收入金ノ總額ヲ調ベテ見マ
  スト、多種多樣ニナッテ居リマス、之ヲ
  一營業收益稅ト比ベテ課率ヲ出スコト
  ハムヅカシイト思フ、ソコデ實際上監
  督ガ十分ニ行カヌト云フ結論ニナル、
  兎ニ角監督シヨウト思ヘバ、府縣稅ノ
  最高限度ノ營業稅者ト、國ノ最高限度
  ノ營業稅者トヲ比ベタ時ニハ最高限
  度ノモノハ大抵分ルデアリマセウ、併
  シ其下ノ方ニ行クト、一々之ヲ調査ス
  ルコトハ中々ムヅカシイ、ソコデ內務
  省ノ監督ガ事實屆カヌ、其結論トシテ
  上ノ方ハ內務省ニ對シテハ課率ヲ決メ
  テ認可申請スルガ、下ノ方ハ認可申請
  ノ範圍外デアルカラ、ソレニ對シテハ
  ヤタラ勝手ニ稅率ヲ設ケテ、高イ率デ
  取ラレルカラ、下ノ方ニ對シテハ過重
  サレテ來ル結果ガ生ジテ來ルト私ハ思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=166

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• 167・次田大三郎

  ○次田政府委員　最高限度ノモノニ付
  テ認可シタト申シマスノハ、現行ノ地
  方稅ニ關スル法律施行ノ際ノ御話デア
  リマシテ、昭和六年度七年度ニ認可ス
  ルト申シマスノハ、其課率ヲ調ベル積
  リデ居リマス、而シテ茨城縣ノ賣上金
  ガ一等カラ十等マデアリマヌモノニ付
  テモ、同ジ割合ニ二十八分ノ二十二ヲ
  之ニ掛ケタモノヲ以テ、賦課スルヤウ
  ニスル積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=167

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• 168・岡田忠彦

  ○岡田委員　詰リ最高限度ノ取締ハ出
  來ルガ、ズット下ノ方ノ取締ハドウス
  ルノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=168

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• 169・次田大三郎

  ○次田政府委員　是ハ純益ニ付テヤル
  ノデハナク、課稅標準ヲ外形ニ求メマ
  スト、上ノ方ト下ノ方ト全ク同ジ割合
  ニ課稅スルコトハ困難デアリマス、純
  益デ致シマスレバ一番餘計納メマス
  者モ、一番少ク納メマス者モ、百分ノ
  二·八乃至百分ノ二·二トシテ行ケル譯
  デアリマスガ、例ヘバ物品販賣業ノ賣
  上金ヲ三等ニ區別スルコトニナルト、
  千圓以上ノモノヲ一等トシ、千圓カラ
  五百圓マデヲ二等トシ、五百圓以下ヲ
  三等トスルトドウシテモ比例稅ニハ
  ナリマセヌ、純益ニ對シテ正確ニ稅ヲ
  掛ケラレルコトニナラナイノハ已ムヲ
  得マセヌ、併ナガラ何等々々ト云フ
  モノニ對スル課率ハ丁度二·八ヲ二·
  二ニ減ジタト同ジ割合ニ減ゼシメマス
  カラ、現在ノ外形標準デ稅ヲ課スル制
  度ノ下ニ於テハ、適當ナ減稅ヲサスコ
  トガ出來テ、此監督ハ十分出來ルト確
  信致シテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=169

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• 170・岡田忠彦

  ○岡田委員　外形標準ニ依ッテヤルノ
  ガ多イノデアリマスカラ、下ノ方ノ階
  級ニ付テ課率ヲ下ゲタ點ニ付テノ監督
  ガムヅカシイト思フ、ソコデ政府ハ先
  程申ス通リ、營業稅ヲ減率シタ缺損ニ
  向ッテハ、財源ヲ與ヘテナイノデアルカ
  テ、營業稅ノ上ノ分ハ減ジテ來ル、隨
  テ收入ガ減ッテ來ルコトニナルト、下ノ
  者ニ向ッテハ減稅率ヲ二割ニセズニ、
  割五分若クハ一割位ノ減稅ニシテ、不
  足額ヲ下ノ方ニ割込ンデ來ルト云フ危
  險ガ大ニアルト思フ、上ノ方ノ率ハ分
  ルガ、下ノ方ノ率ハ何割減ッタカハ純
  益ニ計算シナケレバ分ラナイ、其計算
  ガ非常ニ困難デアルカラ、町村收入ノ
  缺損ヲ補ハンガ爲ニ、上ノ方ハ內務省
  ガ押ヘルカラ宜シイガ、之ヲ營業稅者
  ノ下ノ者ニ割込ムコトニナルト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=170

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• 171・次田大三郎

  ○次田政府委員　其點ハ私共大丈夫デ
  アルト思ヒマス、例ヘバ茨城縣ノ例ヲ
  御覽下サッテモ、賣上金ヲ標準ニシテ
  定額賦課ヲシテ居ルノガ、一等カラ十
  等マデアリマスガ、今度認可ヲ申請サ
  セマスノハ一等ダケデハナク、等等
  ラ十等マデノ課率ニ付テ申請サセルノ
  デアリマス、假ニ一等デ一割ヲ減ジタ
  ナラバ、十等ニ付テモ一割減サセマス
  カラ、上ノ方ガ減ズルノミデ、下ノ方
  ガ減ズルコトハナイト云フコトハナイ
  ト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=171

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• 172・岡田忠彦

  ○岡田委員　下ヲ減ゼヌト申スノデハ
  ナイ、減ズル率ヲ少クシテ潜ッタ時ニ
  ドウシテ監督サレルカヲ問ウテ居ルノ
  デアリマス、併シ是ハ面倒ニナリマス
  カラ當局ノ御〓究ニ俟ツコトニ致シマ
  ス、次ニ地租法改正案ノ第三章ノ災害
  地ノ免租ニ關スル件デアリマス、災害
  地ヲ免租シテ地租ノ附加稅ハ取リマス
  カ、其御見込ヲ聽キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=172

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• 173・次田大三郎

  ○次田政府委員　附加稅ヲ取ラナイ考
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=173

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• 174・岡田忠彦

  ○岡田委員　取ラナイトナルト、大風、
  霜害其他ノ事デ、一箇町村殆ド全滅ト
  云フヤウナ場合ニハドウナリマスカ

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• 175・次田大三郎

  ○次田政府委員　今マデハ取ッテ居ッタ
  ノデアリマスガ、ソレハ無理ダト思ヒ
  やく、ソレデ取ラナイコトニスル、サ
  ウスルト其町村全體ガ災害ニ罹ッタ場
  合ニハ、其町村ノ地租附加稅ノ財源ガ
  全部ナクナッテ、町村ガ困ルデアラウ
  ト云フコトデアリマスガ、其年ダケハ
  町村債ヲ起シテヤラス積リデ居リマ
  ス、サウシテ其償還財源ヲ將來ノ地租
  附加稅デヤラス、斯ウ云フ考デアリマ
  ス

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• 176・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレハ通牒トカ其他ノ規
  定ニ依ッテ御定ニナルノデアリマスカ
  併セテ聽イテ置キマスガ、自作農ノ免
  租地ノ特別地稅ハ免租スルカドウカ

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• 177・次田大三郎

  ○次田政府委員　從來ハ取ラナイト云
  フ解釋デアリマシタガ、其解釋ガ惡イ
  ト云フノデ、ソレヲ改メテ地方ヘモ通
  達スル積リデ居リマス、ソレカラ自作
  農ノ免租地ニ關シテハ、一村擧ッテ地租
  ヲ免租サレルト云フ場合ニハ、其自作
  農ノ特別地租ヲ取ラセナイコトニ規定
  ヲ作ル積リデアリマス

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• 178・岡田忠彦

  ○岡田委員　規定ヲ作ルト云フノハ、
  何カ省令カ勅令ヲ出サウト云フノデス
  カ

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• 179・次田大三郎

  ○次田政府委員　地方稅ニ關スル法律
  ノ施行勅令ニ、其事ヲ書ク積リデ居リ
  マス

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• 180・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレデ序ニ希望シテ置キ
  マスガ、其結果ハ國稅ノ免租地ト地方
  稅ノ免租地ト云フモノハ、其認定スル
  人ガ違ッテ居ル爲ニ、色々違フ例ガアル
  ト思ヒマス、其邊ノ關係ヲ調和スルヤ
  ウニ御考慮ノ上、ヤルナラバヤッテ貰ヒ
  タイ.ソレカラモウ一ツ簡單ナコトヲ
  聽イテ置キマス、七年間ニ町村ノ土地
  ノ課率ト云フモノハ、減ノ分モ增ノ分
  モ七分ノ一ニナッテ居ルト思フガ、途中
  デ以テ荒地ガ-町村ノ中ノ半分ナラ
  半分ガ、洪水ナドデ荒地ニナッタト云フ
  ナラバ、計算ノ基礎ガナクナルノデハ
  ナイカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=180

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• 181・次田大三郎

  ○次田政府委員　是ハ一番始メニ計算
  ヲ致シマシテ、年々幾ラ〓〓ヅヽハ增
  スコトヲ認ムルトカ、年々幾ラ〓〓ヅ
  ツ減ズルコトヲ認ムルト云フコトヲ、
  先ヅ始メノ年度ニ決メテシマフ積リデ
  居リマス、サウシテ假ニ或ル年度ニソコ
  ノ土地ガ半分免租ニナッタト致シマス
  レバ、其半分ニ該當スルモノダケシカ
  取ラセナイ、例ヘバ從來ノ地租ニ較ベ
  テ來年ハ附加稅ヲ千圓ダケ殖ヤシテ宜
  イ、制限外トシテ取ッテ宜シイト云フヤ
  ウニナッテ居リマシタ場合ニ、其村ノ土
  地ガ半分災害ニ罹ッテ駄目ダト云フコ
  トニナリマスト、五百圓ダケハ取ッテ宜
  シイ、サウ云フコトニスル積リデ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=181

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• 182・岡田忠彦

  ○岡田委員　減收ノ村ガアッタトスル、
  減收ノ村ノ惡イ分ハ······、殘リノ宜イ
  部分ダケナラ增收ニナル、其時ハドウ
  ナルカ、是ハ事務上法令上ノコトデア
  リマスカラ、ドナタカラデモ宜シウゴ
  ザイマス、例ヲ擧ゲテ見マセウ、例
  バ百萬圓ノ地價ヲ持ッテ居ル村ガ、賃貸
  價格ノ結果百十萬圓ノ村ニナッタ、是ハ
  增收ヲ生ズル村デアリマスガ、其中ヲ
  半分ニ分ケテ見ルト「エー」ナ大字ニ於
  テハ五十萬圓ノ地價デアッタガ、今度ノ
  賃貸價格デ四十萬圓トナッタ、一方ノ半
  分ニ於テハ、同ジ五十萬圓ガ舊法ニ依
  ル地價デアッタケレドモ、今度ハ七十萬
  圓ニナッタト云フコトニナルト、詰リ元
  ハ五十萬圓ヅヽデアッタガ、今度ノ結果
  ハ半分ハ四十萬圓、半分ハ七十萬圓ニ
  ナリ、合計百十萬圓、斯ウ云フ時ニ「ビ
  ー」ノ大字ガ荒地ニナッタ、サウスルト
  元來增收スル村デアッタモノガ、殘リモ
  ノデ計算スルト減收ニナル、斯ウ云フ
  場合ニ計算ノ根據ガナクナッテシマフ
  ヤウニ思フガ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=182

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• 183・次田大三郎

  ○次田政府委員　私ノ申上ゲヤウガ惡
  ウゴザイマシテ、サウ云フヤウニ御尋
  ニナッタノダラウト思ヒマスカ、モット
  正確ニ申シマスレバ、七年間ノ課率ヲ
  始メノ年度ニ決メテ、其課率デ災害免
  租ニナラナカッタ土地ニ課スルコトニ
  致シマス

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• 184・岡田忠彦

  ○岡田委員　ソレハ條文ノ何處ニアリ
  マスカ

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• 185・岡田周造

  ○岡田政府委員　明治四十一年法律第
  三十號中改正法律案ニ付テ申シマスト
  其附則四項ニ依ッテ、勅令ノ定ムル所ニ
  依リ制限外課稅ガ出來ル、五項ノ方ニ
  付キマシテハ、勅令ヲ以テ此法律ノ制
  限ニ代ル制限ヲ命ズルコトガ出來ルコ
  トニナッテ居リマス、ソレニ基イタ勅令
  ガ出ル譯デアリマシテ、其勅令要項ノ
  四及六ガ主トシテ其規定デアリマス

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• 186・大口喜六

  ○大口委員　私シ內務大臣ニ御伺致シ
  マスコトハ、大分岡田君等ノ質問應答
  デ盡キテ居リマスガ、二點パカリ御說
  明ガ足ラナイヤウニ考ヘマスカラ、此
  ノ點ヲ御答辯煩ハシタイト考ヘマス
  第一ハ私共ノ考ト政府ノ考トニ於キ
  マシテ、自治體ノ財政ニ關シマシテ、
  根本ノ考ガ違ッテ居リハセヌカト云フ
  疑ガアル、現政府ニ於カレマシテハ
  組閣ノ當時カラ通牒ヲ頻ニ出サレマシ
  テ、地方自治體ニ對シテ財政ノ緊縮節
  約ヲ强要、要求サレテ居リマス、勿論無
  駄ハ何處マデモ省カナケレバナラヌカ
  ラ、緊縮出來ルモノヲ緊縮スルコトニ
  ハ、私等モ異論ハアリマセヌガ、政府
  自ラガヤラウト思フヤウナ緊縮ガ、地
  方自治體ノ財政ノ上ニ出來ルト思ッテ
  居ラレルコトガ、私共最初ヨリ不審デ
  アルノデアリマス、政府ノ財政ヲ緊縮節
  約スルカラ、地方財政モ同ジヤウニ緊
  縮節約サレヤウト思ハレマシテモ、財
  政ノ仕組ガ根本カラ違ッテ居ルノデア
  ル、例ヘバ府縣デ申シマスレバ、最モ
  多イ歲出ハ土木費デ、其土木費ノ中ノ
  主ナルモノハ道路橋梁事業デアリマ
  ス、之ヲ除ケバ後ハ洵ニ僅カナモノニ
  ナッテシマフ、又市町村ハ小學校〓育ノ
  費用ガ大部分ヲ占メテ、之ヲ除クト後
  ハ少イモノデアリマス、ソレニ次デハ
  土木費-ヤハリ道路デアリマセウ、
  サウ云フ譯デアルカラ、何處ヲ減ズル
  カト云フト、結論ハ〓育費ニ切込ムカ、
  土木費ニ切込ムカ、何レニシテモ其餘
  地ハ極メテ僅カナモノデアリマス、斯
  ウ云フ市町村ノ狀態デアルカラ、政府
  自ラガ義務費ヲ削ルダケノ力ガナイ事
  情ニアッテ、地方ノ自治體デ小學校ノ〓
  育費ヲ非常ニ削レ、或ハ土木費ヲウント
  削レト言ウタ所ガ、是ハ實ハ難キヲ人
  ニ求メルモノデアッテ、私共ハ頗ル無理
  ナ註文デアルト最初カラ考ヘテ、根柢
  カラ間違ッテ居ルデハナイカト思フノ
  デアル、其結果ハドウ云フ影響ヲ及ボ
  シテ居ルカト云フト、今日御覽ノ通リ
  ノ狀態デアリマス、之ヲ取上ゲテ追窮
  致シマシタラ、今岡田君ガ言ハレタヤ
  ウナコトヲ、一々竝ベテ行カナケレバ
  ナリマセヌケレドモ、之ヲ此處デ議論
  ヲスレバ、目ノ前ニ見エテ居ッテモ、イ
  ヤサウハ思ハヌト御答辯ニナルカモ知
  レナイ、併シ實際今日各府縣ヤ市町村
  ノ財政ヲ御覽ニナッタラ思ヒ半ニ過ギ
  ルデセウ、無理ニ辻褄ヲ合セル爲ニ、
  無理ニ作ッテ、一方ニ於テハ借金ノ殖エ
  ルヤウナ支出ヲ實現シテ居ルコトハ申
  スマデモナイ、市町村債ノ殖エタコト
  モ御承知ノ通リデアリマス、ソレデア
  ルカラ地方ニ向ッテ難キヲ責メテ、極端
  ナル緊縮節約ヲ行ヘト云フ根柢ガ、私
  ハ無理デアルト思フ、無理デナイト云フ
  ナラバ、何處ヲ削レト云フノデアルカ、
  之ヲ聽キタイ、ソコデ結論ハドウデア
  ルカト言ヘバ、私共ハ豫テ市町村ニモ
  無駄ガアルダラウト思フ、此無駄ハ出
  來ルダケ省イテ整理ヲシナケレバナラ
  ヌガ、今ノ政府ガ思ッテ居ルヤウナ大キ
  ナコトハ出來ヌ、政府ノ行政財政ノ整
  理ノヤウニ大キク行カナイ、ソコデ國
  家ハ益〓發達シテ、地方自治ト云フモノ
  モ發逹シテ行クカラ金ガ要ル、今囘政
  府ガ道路ヲヤルト仰シヤッテ居ルガ、失
  業救濟ノ名ニ於テ一年ニ其金額ハ僅ニ
  二千萬圓、是デドレダケ市町村ヲ益シ、
  府縣ヲ益シマスカ知レタモノデス、ア
  トハ市町村、府縣ガ引受ケテヤラナケ
  レバナラヌ、ソレダカラ市町村、府縣
  自治體ノ財政ト云フモノハ、今日我國
  ノ道路ノ發達ニ伴ッテ非常ニ苦シイモ
  ノデアッテ、財源ニ窮シテ居ルト云フコ
  トハ、苟モ爲政者ト云フ者ハ考ヘテ居
  ラナクチヤナラヌ、ソレデ地方ニハド
  ウ云フ財源ガアルカ、氣ノ利イタ財源
  ハ大〓政府ガ取ッテシマッテ居ル、サウ
  シテ附加稅ニ對シテハ、無論制限ヲ設
  ケラレテ居ル、何處デ一體市町村、府
  縣ハ財源ヲ得ルノデアルカト考ヘテ見
  レバ、家屋稅カ戶數割ニ行クヨリ外ニ
  仕方ガナイ、先刻カラ話ガアル通リ、
  家屋稅、戶數割ト云フモノハ非常ニ殖
  エル、家屋稅ハ私共ハ設ケラレル當時、
  惡イ稅デハナイガ、全國一般ニ行フコ
  トハ困難ナ稅デアル、三千萬圓以上ヤッ
  タラエライコトデアルト云フコトヲ論
  ジ、當時ノ內務大臣若槻氏モ幾ラト言
  ハレタカ、是レ以上ハ取ラセヌ方針ダ
  ト申シタノガ、多分市町村、府縣デ六
  千萬圓位デアッタト思フ、ソレガ一億近
  イモノニナッテ居ル、或ハ一億ヲ超シテ
  居ルカモ知レナイサウ云フヤウナコ
  トニナッテ居リマスカラ、此地方自治體
  ノ財政ト云フモノヲ少シ知ッテ居ル人
  ガ考ヘレバ、非常ニ困難デアル、ソレダ
  カラ吾々ハ國費ヲ減ゼラレルダケ減ジ
  テ、地方財政モ整理ヲスルダケハ整理
  ヲサセネバナラヌガ、一面ニハ寧ロ中
  央カラ財源ヲ與ヘテヤラナクチヤ地方
  自治ノ發達ハ出來ナイ、國民ハ非常ニ
  苦シム、ソレデ歴代ノ政府ト云フモノ
  ハドウ云フヤリ方ニナッテ居ルカト
  云フト貴衆兩院ニ對シテ國費ノ方ヲ
  工合好クヤラウト思フカラシテ、國費
  ノ方ヲ節約スルト言ヘバ、節約ノヤウ
  ナ形ヲ拵ヘテ見セル、其結果ハイツモ地
  方ニ仕事ガ轉嫁サレル、時間ガアレバ
  私ハ例ヲ擧ゲタイガ、大〓例ヲ暗誦シ
  テ居ルガ、地方ヘ轉嫁サレル、ソレダ
  カラ一ツ議會ガ濟ム每ニ地方ノ仕事ハ
  殖エマスゾ、議會ガ濟ム每ニ法律ガ殖
  エル、ソレニナント書イテアルカト云
  フト、市町村長之ヲ何トカスト云フヤ
  トナコトガアッテ、市町村ノ仕事ト云フ
  モノハ、議會ガ一ツ濟ム每ニ殖ヤサレ
  ル、國家ノ委任事務、管掌事務ト云フ
  モノハ、政府カラ一文モ吳レヤシマセ
  ヌ、ソレデ地方ニハ緊縮セヨ、ドウセ
  ヨト言フケレドモ、一體斯ンナ無理ナ
  縛らテ叩クヤウナヤリ方ハナイト思フ、
  之ニ對シテ內務大臣ハドウ思ッテ居ラ
  レルカ、之ヲ私ハ承ッテ見タイ、今囘ノ
  此地方稅ニ關スルコトデモ總括シテ考
  ヘルト、根本ニ於テ私共ノ考トアナタ
  方ノ考トドウモ違ヒガアルヤウニ見エ
  ル、モウ一ツ小サイ質問ガアリマスガ、
  此根本ノ問題ヲ分ラシテ下サレバ、モ
  ウ私ハ內務大臣ニハ用ハナイ、此質問
  ニ付テハ是ダケヲ申上ゲテ御所見ヲ承
  リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=186

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• 187・安達謙藏

  ○安達國務大臣　大變緊要ナ剴切ナ御
  問ト考ヘマス、地方町村ノ財政ノ困難
  ナコトハ能ク承知致シテ居リマス、ア
  ナタノ御尋ニ大體ニ於テ私モ同感申シ
  テ宜シウゴザイマス、此地方財政ノ困
  難ト云フコトハ現內閣ガ出來テカラ
  出來タノニアラズシテ、是ハ御承知ノ
  通リニ長イ間ニ有ユル仕事ヲシテ、サ
  ウシテ玆ニ大ナル行詰リヲ生ジテ居ル
  ト考ヘマス、然ルニ町村ヲ緊縮スル
  餘地ハナイデハナイカ、成程ソレハ緊
  縮スル餘地ハナイケレドモ、ソレハ別
  ニ考ヘテ戴キタイ、ソレハ玆ニ國家ノ
  財政ノ根本カラ建直シヲスルト云フ場
  合、意見ハ御互ニ違フケレドモ、總テ
  ノ方針ヲ-財政經濟ヲ根本カラ建直
  ス、卽チ金解禁ガ其主ナルモノデアル、
  其場合ニ當ッテ、玆ニ一度ハ中央及地方
  ガ緊縮整理ヲシナケレバナラヌト云フ
  コトハ當然ナ話デアリマスカラ、ソ
  レデ多少ソレハ無理ナコトモアリマセ
  ウケレドモ、國家非常ノ場合ニ際シテ
  ハ非常ノコトヲシナケレバナラヌカ
  ラ、玆ニハ中央モ地方モ苦シイナガラ
  出來ルダケノ緊縮ヲシテ、サウシテ兎
  ニ角國民ヲシテ、玆ニ思想ヲ根本カラ
  大轉換ヲセシメテ、緊縮セシメネバナ
  ラヌト云フ考デアル、是ハ御互ニ立場
  ヲ異ニシテ居ルカラ、其整理ノ方針ハ
  違フカモ知レマセヌケレドモ、兎モ角
  今マデ右ニ進ンデ居ヲタノヲ、今度ハ左
  ニ向換ヘル、國家ノ方針ニ大變動ヲ與
  ヘル時デアルカラ、中央モ地方モ已ム
  ヲ得ズ苦シイケレドモ、一度ハサウ云
  フコトヲシナケレバナラヌ、ソレデ今
  ノ御話ノ町村財政ノ困難ナコトハ能ク
  承知致シテ居リマス、又全國ノ町村長
  ノ代表者ナドカラモ、斷エズ聽イテ居
  リ、地方ヲ廻ッテ承ッテ居リマシテ、全
  ク同情ヲ表シマス、又委任事項ガ殖エ
  色々ナ事務ガ多クナルト云フコトモ同
  感デアリマス、要スルニドウスルカト
  云フコトハ、是ハ私ハ中々至難ナ問題
  デアルト思フ、ソレナラ大口サン方ガ
  政權ヲ取ラレタ時ニ、直グ出來ルカト
  言ヘバ中々是ハ一朝一夕ニ出來ルコ
  トデハナイ、私ハ非常ナ困難ナ問題ト
  思フ、吾々ノ今考ヘル所デハ、六年度
  ニ於テ財政行政ノ整理ヲスル時ニ、地
  方ノ問題モ、地方ノ稅制ノコトモ、根
  本カラ一ツ建直シヲシテ見ヨウト考ヘ
  やじ、是デドノ位出來マスカ、私非常
  ナ決心ヲ以テシナケレバナラヌト思フ
  ガ、モウ一ツ此處デ露骨ナ話ヲシテ見
  レバ、是ハ地方ノ政黨ノ弊害ガ私ハ目
  ニ見エテ居ル、決シテ政友會ガ惡クテ
  民政黨ガ善イトハ思ハナイ、此弊害ヲ
  何トカシテ除去スルコトニシナケレバ
  整理緊縮ヲシテ行クノニ非常ニ困難デ
  ハナカラウカト考ヘテ居リマス、是ハ
  御互ニ國政ヲ料理シ、殊ニ地方自治ノ
  コトヲ考ヘルナラバ、何時カ機會ガアッ
  タナラ-アナタ方トモ根本的ニサウ
  云フ點ノ御相談ヲスル機會ヲ造リタイ
  ト考ヘテ居リマス、サウシテ眞面目ニ
  ナッテ黨爭ノ弊害ヲ御互ニ除去スルト
  云フコトガ出來タナラ、私ハ是ハ餘程
  違フダラウト思フ、學校ノ如キ、町村
  ハ兎モ角、府縣ノ學校整理ナドハ頗ル
  至難ナコトデアリマス、誰モ氣ガ付イ
  テ居ル、氣ガ付イテ居ッテ斷行シ得ナ
  イノハ或郡ノ學校ヲ削ルコトガ確ニ
  宜イト云フコトハ分ッテ居ル、併シ其郡
  ノ學校ヲ削ルカト云フト、其郡ノ人ハ
  黨派ノ如何ヲ問ハズ、民政黨ノ人モ、
  政友會ノ人モ、嫌ヤダト言ッテ削ラナ
  イソレデ地方稅ノ根本的整理ガ出來
  ナイ、ドウモ私ハ痛感シテ居リマスカ
  ラ、中々民政黨ノ力バカリデイカヌ所
  モアリマス、政友會モ共ニ是ハサウ云
  フ地方ニ對スル政黨ノ弊害ヲ御互ニ自
  覺シテ、サウシテ除去スルト云フコト
  デ、眞面目ニ整理ヲスルト云フコトガ
  出來タラ、私ハ餘程地方ノ面目モ一新
  セラレルト考ヘマスガ、今日ノ狀態デ
  ハ中々ソレガ出來ナイ、併ナガラサウ
  云フ話ヲシテ見ヤウヂヤナイカト云フ
  コトニナッタラ、私ハ喜ンデ應ジマシ
  テ、吾々ノ同志ニモ注意警戒シテ、戒
  メル所ハ戒メテ行ッテ、政友會ニモサウ
  御願シ、サウシテ黨弊ヲ除去スルコト
  ガ出來タラ、私ハ本當ニ地方財政ノ整
  理ガ出來ハセヌカト痛感シテ居リマ
  ス、サウ云フ感ジヲ近來幾度カ浮ブガ
  幸ニ大口サンノヤウナ眞面目ナ方カラ
  御質問ガアリマシタカラ、私ハ平生ノ
  所感ヲ率直ニ披瀝シテ見ル次第デアリ
  やっ、何ト言ッテモ自治ノ基礎ハ町村
  ニアルノデアリマスカラ、御互ニソコ
  ニ詰ラナイ黨爭ナドヲセズニ置イテ、
  正シキコトヲシタラ、私ハ大ニ町村ノ
  自治ニ見ルベキモノガアリハセヌカト
  考ヘマスカラ、アナタノ御尋ニ對シテ
  覺エズ私ノ平生ノ所信ノ一端ヲ披瀝シ
  タ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=187

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• 188・大口喜六

  ○大口委員　只今ノ御答ニ對シテ、私
  モウ一言一寸伺ヒ旁々申上ゲタイノデ
  スガ、內務大臣ハ現在我國ノ地方自
  治體ガ財政上行詰リニナッテ居ルト云
  フコトハ只今明瞭ニ御認メニナッタ其
  行詰リガ今ニ始ッタコトデナイ、長イ間
  ノ因襲ト申スカ、習慣デ行詰リニ相成ッ
  テ居ル、是ハ何トカ救濟シナケレバナ
  ラヌト云フコトハ、只今御明言ニ相成ツ
  タ、併ナガラ今囘ハ金解禁ヲスルニ當ツ
  テ、我國ノ財政ノ建直シヲシナケレバ
  ナラヌノデ、根柢カラ大緊縮ヲシテ人
  心ヲ新タニスル必要上、已ムヲ得ズ今
  囘地方ニ向ッテモ、極端ナ緊縮節約ヲ强
  要シタト云フ思召デアリマスカラ、是
  ハ御議論トシテ、一ツノ御意見トシテ
  ハ、ソレデ宜イデアリマセウ、ソレノ
  善イ惡イハ、私ハ只今批評ハ致シマセ
  ヌケレドモ、結果カラ云フト、金解禁
  ノ爲ニ、此一ツノ我國ノ財政ノ根本ヲ
  建直スト云フコトノ爲ニ、或ル程度マ
  デ困惑シテ居ル所ノ地方自治體ヲ犠牲
  ニ致シタト云フコトダケハ、御承認ニ
  ナラナケレバナラヌノデアリマス、其
  犧牲ガ大キイカ、御建直シニナラウト
  云フ金解禁ノ效能ガ大キイカ、是ハ又
  別問題デアリマス、ソレカラ又其善
  惡意見ノ違フコトモ是亦別問題デア
  リマスケレドモ、兎ニ角ソレガ爲ニ困
  惑シテ居ル所ノ地方自治體ヲ今日一層
  困難ナラシメテ、或ル程度ノ犠牲ヲ拂
  ハシタト云フコトハ、是ハモウ否ムコ
  トハ出來ヌ、卽チ困惑シテ居ルモノニ
  對シテ、更ニ一ツノ重荷ヲ負ハシタノ
  デアルカラシテ、地方自治體ノ苦シミ
  マスコトハ、中央ノ財政以上デアルト
  云フコトモ、此處デ認メザルヲ得ナイ、
  ソコデ私ナドガヤッテモ餘程困難デア
  ラウト云フ仰セデアリマスガ、此點ハ
  或ル程度マデハ御同感デアッテ、中々ム
  ヅカシイコトト私ハ思ヒマス、併ナガ
  ラソレガ爲ニ私共ハ此地租委讓竝ニ營
  業收益稅ノ地方委讓ヲ企テタノデアリ
  マス、之ニ對シテハ色々御議論ガアツ
  テ宜クナイト云フ御議論モアリマセ
  ウ反對意見モアリマセウガ、私共ト
  シテハ强キ確信ヲ以テ、地方自治體ノ
  根柢ヲ財政カラ救フニハ、中央ノ財政
  ヲ成タケ緊縮ヲシテ、中央カラ浮ビ出
  シタ所ノ財源ノ一部ノ確實ナモノヲ地
  方ニ與ヘテ、地方ノ財政ノ基礎ヲ作ル、
  サウシテ與ヘテ置イテ、一面ニ於テ相
  當ナ監督ヲシテ無駄ハ省カセ、ヤハリ
  緊縮スベキ所ハ緊縮セシメテ、地方ノ
  產業ノ振興ヲ圖リ、自治ノ發達ヲ圖ラ
  ウト考ヘタ精神ガ、吾々ノ營業稅竝ニ
  地租委讓案ヲ出シタ譯デアリマス、此
  是非善惡ノ議論、意見ノ相違ハ別トシ
  テ、私共ノ兩稅ヲ地方ニ委讓セントシ
  タ所ノ根柢ノ肚ノ底ハ、ソコニアッタモ
  ノデアルト云フコトダケハ、私玆ニ申
  述ベタイト考ヘマス、ソコデ幸ヒ政黨
  關係ノ話ガ出マシタカラ、率直ナ御意
  見デアッタカラ、私モ一ツ率直ニ此場合
  內務大臣ニ意見ヲ述べテ見タイ、折ガ
  アッタラ話シテ見タイト思ッテ居ッタガ
  幸デアルカラ私モ一言率直ナ意見ヲ述
  ベサセテ戴キタイト思フ、此政黨ノ弊
  害ト云フコトニ付テハ洵ニ御同感デア
  リマス、是ハ地方バカリデハナイ、中
  央モ其通リデアリマス、政黨ハ極メテ
  必要ナモノデアッテ、立憲政治ノ下ニ於
  テ政黨ナカルベカラズト私ハ確信シ
  テ自ラ政黨員ニナッテ居ルモノデア
  ルガ、然ラバ政黨ハ善イコトバカリヤ
  ルカト言ヘバ中央地方ヲ問ハズ非常
  ナ弊害ガアル、此弊害ハ心アル者、上
  ニ立ツ者ハ何處マデモ之ヲ嬌メ直スコ
  トヲ御互ニ心懸ケナケレバナリマセ
  ス、アナタ方ガ胸襟ヲ開イテ來タラ何
  處マデモ相談スルト仰シヤッタガ、私モ
  アナタ方カラ胸襟ヲ開カレヽバ御相談
  ニ乘リタイト考ヘル、唯斯ウ云フコトヲ
  考ヘテ居ル、アナタ方ガ內閣ヲヤッテ居
  ラレルト、成タケ政黨ノ弊害ヲ去ッテ、
  俺等モ公平ニヤルカラ、皆揃ッテ政友會
  モ俺等ヲ援ケヨト仰シヤルガ、政友會
  內閣ニナルトキットサウハ仰シヤラヌ
  ノダ、假ニ吾々ガ政友會內閣ヲヤッテ
  居ノテ、政黨ト云フモノハ仲良クヤルノ
  ダカラ、アナタ方モドウカサウ反對セ
  ズニ、吾々ニ讓ッテ軟ラカニヤッテ下サ
  イト言ッテモ、中々其時ニハサウハ行カ
  ヌノダ、ソコデ困ル、今アナタハ內務
  大臣デオイデニナルカラ、大口ナドハ共
  共ニ力ヲ盡シテ弊害ノナイヤウニシテ
  呉レヌカ、胸襟ヲ開ケト仰シヤルガ、
  ソレナラアナタガ內務大臣ヲ罷メタラ
  ドウカ、此方ニヤラシタラドウカト云
  フト、キット反對デアル、ソコニ政黨ノ
  弊害ト云フモノガ起ル、私ハアナタガ
  選擧干渉ヲシタナドト云フコトハ此處
  デハ言ヒマセヌ、アナタ方ニ言ハシタ
  ラ、政友會モヤッタデハナイカト言ハレ
  ルデセウ、所ガ吾々ノ經驗カラ云フト、
  此間ノ選擧ノ如キ大干涉壓迫ヲ受ケタ
  ト感ジタコトハ實際ナイ、大口喜六ハ
  サウ感ジル、所ガソンナコトヲ此處ヘ
  持ッテ來テ言ヘバヤラナイト仰シヤル
  ニキマッテ居ル、私ハ長イ間政治生活ヲ
  シテ居ルカラ、縣廳ノ知事ヤ警察部長
  ヤ警察署長ナドガ、ドンナニ酷イコトヲ
  シテ居ルカ知ッテ居ル、無警察ナラマダ
  宜イケレドモ、吾々ハ惡辣ナ警察ト戰ツ
  テ此間ノ選擧ヲヤッテ來タノダガ、ソン
  ナコトヲ言ッタ所ガ野暮ダカラ私ハ言
  ヒマセヌ、肚ニ思ッテ居ルダケデ、何カ
  アレバヤッテヤラウト云フ氣デ居ルカ
  ラ、アナタニモ酷ク當ルコトニナル、
  何カアッタラバ罵倒シテヤラウ、面皮ヲ
  ヒン剝イテヤラウト云フ氣ニナッテ來
  ル、所ガ旣ニ二度モ議會ヲヤッテ、斯ウ
  云フコトヲ言ハシテ貰フト、幾ラカソ
  レガ緩和シテ來テ、サウ云フコトガ言
  ヘナクナル、サウ云フコトヲ振返ルト、
  ソレガ段々上ノ人ニ分ッテ、ドチラノ黨
  派デモ內閣ガ迭ッテ大臣ニナリ、政務次
  官ナドヲヤルト厭ニナル、アナタ方デ
  モ今ニ厭ニナリマス、厭ニナル時分ニ
  ハヤッテ下サイ、ヤッテ下サイト云フ、
  ドウモ俺ハ困ルト云フ時分ニハ人ガヤ
  ラセルヤウニナル、サウ云フ風ニ兩黨
  派ニ其事實ガ分ッテ來レバ、內閣ヲ取ラ
  ウトモ思ハヌ、又取ッタ所ガ權利ヲ馬鹿
  ニ振廻シモシナイ、或ハ此道路ナドハ
  ヤリタイガ、アレハ政友會ノ道路ダカ
  ラ棒引ニシヨウト云フヤウナコトハ
  ヤラナクナル、現ニ失業救濟ト稱スル
  道路、是ハ縣ニ起債ヲ許スノデセウ、
  ソレヲ利用シテ政黨ノ擴張ヲヤッテ居友會ヲ代表シテ言フノデハナイ、
  ルモノガ澤山アリマス、例ヲ擧ゲヨト
  言ヘバ私ハ言ヒマスケレドモ、サウ云
  フコトヲ言フノハ政黨員トシテ野暮ダ
  カラ私ハ言ハナイ、ソレカラ又政黨ト
  云フモノハ隨分-唯彼ト私ハ言ヒマ
  セヌガ、黨派ヲ擴張シテ自己ノ努力扶
  植ノ爲ニハ嘘ヲ言ヒ合フ、ドッチガ言フ
  トハ言ヒマセヌガ、之ヲ先ヅ第一偉イ
  人カラ止メナケレバナラヌ、本ヲ書イ
  テ出シテモ好イ加減ナコトヲ書イテ、
  自分ノ好イ方バカリ書イテ、惡イコト
  ハ棚ニ上ゲテ置イテ、反對派ヲ惡ク言
  フ、ソレカラ甚シキニ至ルト、大正九
  年ニドウダト云フヤウナ古イコトヲ言
  ヒ出シテ來ル、自分ノ方ノ惡イコトヲ
  抹殺スル爲ニ、十年十五年前ノ反對派
  ノコトヲ持出シテ抹殺シヨウト云フヤ
  ウナ議論ヲスル、ソレダカラ此方モ桂
  內閣ハドウダ、大隈內閣ハドウダ、或ハ
  若槻內閣ハ銀行ヲ潰シタデハナイカト
  云フヤウナコトヲ言ハナケレバナラナ
  イヤウニナル、斯ウ云フコトヲ大臣ニ
  ナッテ居ル人カラ愼ンデ、先ヅ自ヲ空シ
  クシテ掛レバ一等宜イ、斯ウ云フコト
  ヲ言ッテハ濟マヌカモ知レマセヌガ露
  骨ニ私ヲシテ言ハシムレバ、此我國ノ
  實ニ今日ノ如キ經濟國難ニ當ッテ、我ガ
  「帝國ヲドウスルト云フ時ニハ是マデ
  言フテハドウカ知レマセヌガ、私ハ政
  大口
  喜六ノ信念ヲ言フノダガ、アナタ方ガ
  內閣ヲ投出シテ、斯ウ云フ場合ハ共々
  ニ我ガ帝國ヲ料理シナケレバナラヌカ
  ラ、今マデノ怨ヲ捨テヽ內閣ノ大命
  ガ下ッタナラ共々ニ組織シテ、共々ニ我
  ガ帝國ノ爲ニ盡サウデハナイカト云フ
  コトニナレバ、私ハ應ズル、アナタダ
  ケガ大臣ヲシテ居ッテ、內閣ヲヤッテ、
  權利ヲ握ッテ、好イコトダケハヤッテ、
  材料ヲ出セト言ッテモ、大藏省ナドハ-
  ー昔私ガ大藏省ニ居ッタ時分ニハ出シ
  タ、所ガ今日ハ決シテ私ハ窘メヤシナ
  イト言フノニ、中々向フヲ向イテコソ
  コソシテ出サヌ、ソレデ大口ハエライ
  コトヲ知ッテ居ル、日本銀行ノ帳尻マデ
  知ッテ居ル、ソレハ大藏省デ漏シハセヌ
  カ、日本銀行デ漏シハモヌカト疑ハレ
  ル人ガアルト可哀相デ、氣ノ毒デアル
  カラ、大藏省ニモ、日本銀行ニモ寄付
  カヌヤウニシテ、苦心慘憺シテ、新聞
  記者ガ探ルヤウナヤリ方デ、私ガ理論
  的ニ藥ノ學問ヲシタ時ノヤウニ、ソレ
  位吾々ハ苦心慘憺ヲシナケレバ材料ガ
  得ラレヌト云フノデアルカラ、日本ト
  云フ國モ困ッタモノダ、大藏省デモ、內
  務省デモ、日本人ノ役所ダカ、民政黨
  ノ役所ダカ分ラヌヤウナコトデス、ア
  ナタハソンナコトハ感ジナイダラウ
  ガ、コヽデアナタハ罷メル氣ニナッテ
  先ヅ內閣ヲ御投ゲ出シナサイ、サウシ
  テ吾々ニ相談シナサイ、吾々ハ吾々ノ
  仲間ダケデヤラウトハ私ハ言ハヌ、政
  友會ハ何ト言フカ分ラヌカ、同ジ日本
  人デ親ノ讐デモ何デモナイノダカラ、
  一〓ニナッテ國民一致シテ共々ヤッタラ
  ドウカ-一體馬鹿ノコトダ-ソレ
  マデ分ッテッヤレバ地方自治體デモ、日
  本ノ財政デモ、直グ根柢ガ出來テ、失
  禮ダケレドモ、コンナアヤフヤナ財政
  計畫ヲヤラヌデモ、確ッカリシタモノガ
  出來ル、井上サンガ色々雄辯デオヤリ
  ニナラヌデモ、默ッテ居テモ通ル、ソレ
  マデ考ヘル氣ガアレバ、私ハ洵ニ安達
  サンダト言ヒマス、折角政黨ノコトヲ
  仰シヤッタカラ、私ハ腹藏ナイ意見ヲ言
  フノデ、內閣ハコッチデ取ッテ置イテ
  腹藏ナク巧クヤラウナド云ッテモ誰
  ガソンナコトヲ······(笑聲、拍手)
  私ハ護憲三派內閣ノ時ニハ身ヲ挺シテ
  盡シタ積リデアル、忠實ニ盡シタ積リ
  デアル、ソレ程內務大臣ガ御考付イタ
  ナラ、モウ一步ダカラ、一ツ根柢ニ向。ツ
  テモウ少シ御考ヲ願ヘレバ、委員會ナ
  ドモスラ〓〓ト通リマス、ドウカ一ツ
  御考ヘ願ヒタイ、內務大臣モ御用ガ多
  イカラ此位ニシテ置キマセウ、押問答
  シタ所ガ仕方ガナイ
  次ニ私ノ御伺致シタイコトハ段別割
  ノコトデスカラ、是ハ次田地方局長デ
  宜シイノデ、内務大臣ハ他ヘ御出ニナッ
  テモ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=188

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• 189・本田恒之

  ○本田委員長　內務大臣ガ退席セラレ
  ルナラバ、大口君ノ質問ヲ一寸御中止
  願ヲテ内務大臣ニ聞キタイト云フ人ガ
  アリマスカラ-鏑木君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=189

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• 190・鏑木忠正

  ○鏑木委員　內務大臣ハ大變御忙シイ
  ヤウデアリマスガ、此機會ヲ利用シテ
  簡單ニ要點ノミヲ御質問シタイト思フ
  ノデアリマス、ソレハ此前ニ一囘簡單ニ
  御質問シタコトガ、ゴザイマスガ地方畑、
  稅デアル所ノ山林原野ノ段別割ノ問題
  デアリマス、此段別割ハ御承知ノ通リ、
  明治四十一年法律第三十七號ヲ以テ、
  特別稅トシテ賦課サレルコトニナリマ
  シタ、併シ此稅ノ起リハ、元ト北海道
  ノ無租地ニ對シテ賦課シタ稅デアリマ
  スノデ、內地ニハ賦課シテ居ナカッタノ
  デアリマス、然ルニ世界大戰後地方財
  政ノ膨脹ニ伴ヒマシテ、市町村ノ財源
  トシテハ極メテ宜シイノデ、漸次之ヲ
  賦課スルヤウニナリマシテ、現在ハ全
  國デ三百七十七箇町村ノ多キニ及ンデ
  賦課シテ居ルノデアリマス、市町村ニ
  於テハ此段別割ハ田畑山林其他ニ付キ
  マシテ、各地目トモ平均一圓ヲ課シ得
  ルコトヽナッテ居ルノデアリマス、而シ
  テ今此山林ノ法定地價ヲ見マスト昭
  和四年四月大藏省ノ御發表デゴザイマ
  スガ一段步三十三錢ニ相成ッテ居ル、
  之ニ對スル畑ハ其約二十五倍、月カロ
  倍、宅地ガ五百倍ニナッテ居リマス、今
  度御改正ニナラントシテ居ル所ノ賃貸
  價格ヲ見マスト、山林原野ハ一段步五
  十一錢デアリマス、之ニ對シテ畑ハ約
  十六倍、田ガ五十七倍、宅地ガ三百倍
  ト云フ風ニナッテ居ル、斯樣ニ山林原野
  ニ對スル段別割ハ、之ヲ田畑宅地ノ賃
  貸價格ニ比較シテ見マシテ、モット安ク
  ナクテハナラヌノデアリマスノニ、田
  宅地、山林各地目トモ一率ニ平均
  一圓ヲ課シテアルト云フコトハ、是ノ
  甚ダ不合理、不公正デアルト考ヘルノ
  デアリマス、就キマシテハ今囘地租改
  正法案ガ提出サレテ、社會ノ經濟事情
  ノ變遷ニ應ジ、時勢ニ順應シテ適當ナ
  ル改正ヲ加ヘマシタコトハ、吾々ノ非
  常ニ悅ンデ居ル所デ、國家ノ爲ニ慶賀
  シテ居ル次第デアリマスガ、唯此段別
  割ニ付キマシテハ、折角此地租法ノ改
  正ヲサレルニ當リマシテハ何等手ヲ著
  ケナカッタト云フコトハ、多少ノ遺憾ヲ
  感ジテ居ルノデアリマス、聞ク所ニ依
  リマスレバ、來年度ニ於テ行政財政稅
  制ノ大調査會ヲ設ケマシテ、色々根本
  的ノ御〓究ニナルサウデアリマスガ、
  此調査會ニ於キマシテハ、必ズ段別割
  ニ付テ各地目共平均一圓ト云フヤウナ
  不合理、不公正ナ點ヲ改正スルヤウ
  ニ、宅地、田畑ト山林トノ比較ガ公正
  ヲ保ツヤウ御〓究御考慮ヲ願ヒタイト
  思フノデアリマス、此點ニ付テノ政府
  ノ御方針ヲ承リタイノデアリマス

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• 191・安達謙藏

  ○安達國務大臣　只今ノ御意見ノコト
  ハ能ク了承致シマシタ、御希望ノ點ハ
  明年度行政財政ノ根本調査ヲヤリマス
  ニ付テ、能ク考慮致シマシテ、御話ノ
  ヤウナコトガアッタラ、御希望ニ副フヤ
  ウニ努メタイト考ヘテ居リマス

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• 192・大口喜六

  ○大口委員　私モ同ジ質問デスカラモ
  ウ止シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=192

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• 193・本田恒之

  ○本田委員長　加藤君、農林大臣ガ繰
  合セテ御出ニナッテ居リマスカラ、此際
  農林大臣ニ對スル御質問ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=193

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• 194・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　私ハ時間モ大分迫ッテー居
  リマスカラ、極ク簡單ニ大綱ニ付テ御
  伺致シマス、今囘ノ地租法ガ愈。ミ實施サ
  レル場合ニ於テ、農林大臣トシテ農林
  省ノ從來ノ色々ノ仕事ノ上ニ相當ナル
  支障ヲ生ジ、若クハ從來ノ方針事業ヲ
  妨ゲルコトニナリハシナイカ、之ヲ先
  ヅ伺ヒタイ、極ク簡單デ宜シウゴザイ
  マス

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• 195・町田忠治

  ○町田國務大臣　加藤君ノ御質問ノ要
  旨ハマダ十分私ハ了解致シマセヌガ、
  此度ノ賃貸價格ニ依ル地租法改正ノ結
  果、大體ニ於テ農村ニ於キマシテハ負
  擔ノ輕減ニ相成ルコトト、大體ニ於テ
  其意味カラ此改正ヲ喜ンデ居ルノデア
  リマスガ、御尋ノ要領ヲ一寸了解仕兼
  マスカラ、モウ少シ詳シク御話ヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=195

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• 196・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　私ガ斯樣ニ質問ヲ致シマ
  スレバ、ピント頭へ來ベキ所デアラウ
  ト存ジマシタガ、存外サウ云フ方面ニ
  呑氣デアラレルコトヲ甚ダ遺憾トシマ
  ス、ソコデ賃貸價格ノ問題ハ申スマデ
  モナイノデアリマスガ、私ノ御尋スル
  コトハ、開墾事業ニ對シテ農林大臣ハ
  此地租法ガ實施セラレルコトヲ御喜ビ
  ニナルカ、私ハ大ニ農林大臣トシテハ
  相當抗議ガアルベキ筈デアラウト思フ
  ガ、ソレガ何ノコトデアラウカト言ハ
  レルノハ、頗ル呑氣過ギタコトデハナ
  イカト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=196

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• 197・町田忠治

  ○町田國務大臣　多分耕地整理ニ關係
  シタ御尋ト思ヒマスガ、左樣デゴザイ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=197

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• 198・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　益〓其呑氣サ加減ヲ發揮
  サレタコトデアリマシテ、何レ耕地整
  理ノ問題ハ-區劃整理ノ問題モアリ
  マシテ、前夜內務大臣ニ質疑ヲ致シ、何
  等內務大臣ハ此地租問題ニ對シテ御知
  識ガナカッタト私ハ大ニ惡口ヲ致シマ
  シタガ、此問題ニ付キマシテモ、農林
  大臣ガ何ノコトデアラウト言フコト
  ハ、實ニ私ハ驚カザルヲ得ヌ、是ハ開墾
  ニ付テヾゴザイマス、從來農林大臣ハ
  開墾事業ニ對シテハ助成方針ヲ執ラ
  レ、卽チ開墾助成法ナドヽ云フ法律ヲ
  出シテ、色々干拓シタリ、埋立シタリ、
  海ヤ湖ヲ開墾スルコトニ付テ努力シ、
  ソレニ金ヲ出シテ補助シテ居ラレル、
  サウ云フ立場デアラレル、農林省ハ
  此地租法ニ依ッテ、是ガ非常ナ阻害ヲ受
  ケル、開墾事業ニ非常ナ壓迫ヲ受ケル
  例ニ依ッテ井上サンノ搾取主義デ稅金
  ヲ取ラレテシマッテ、呑氣ニ構ヘテ居
  ル、是ハ何ノコトデゴザイマセウカ、
  開墾ト言ッテモ何ノコトカ分ラヌ、私ハ
  農林大臣ハ日本ノ農林事業ニ對シテハ
  俺一人ガ背負ッテ立ッテ居ルト云フヤウ
  ナコトヲ思ッテ居ラレルヤウデアリマ
  スガ、是程遺憾千萬ナコトハナイ、之
  ニ對シテ御返事ヲ得タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=198

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• 199・町田忠治

  ○町田國務大臣　加藤君ニ私ハ御願致
  シマス、相當〓究シテ居ル積リデスガ
  モウ少シ具體的ニ御質問ノ要旨ヲ仰シ
  ヤッテ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=199

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• 200・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　苟モ農林大臣ト致シマシ
  テハ、此地租法ノ大法典ガ出來ル時ニ
  當リマシテ、モウ少シ詳シク言ハナケ
  レバ分ラヌトハ實ニ驚キ入ッタ譯デア
  リマス、私ハ先ヅ大體ニ於テ農林大臣
  ハドウカト云フ漠然タル質問ヲ致シ
  タ、ソレヲ是ダケ開墾ニ關スルコトヲ
  言ッテモマダ分ラヌカラト云ウテ、ドウ
  云フコトデアラウナドヽ言ハレルノ
  ハ、如何ニモ呑氣加減ニ驚キニ堪ヘナ
  イノデアル、ソレデハ私細カク申上ゲ
  マス、詰リ此今囘ノ地租法ニ依リマシ
  テ.開墾ノ減租ノ年期ト云フモノガア
  ル、地目變換ノ減租サレタ所ノ年期、
  是ガ悉ク短カクサレタデハアリマセヌ
  カ、斯ウ云フコトハ開墾ノ仕事ノ上ニ
  於テドウ云フコトニ相成ルノデアリマ
  スカ、是ダケデハイケナイカラ、モウ
  少シ細カク申シマスト、條文ニ付テ言ッ
  タ方ガ他ノ委員諸君ニモ御分リガ宜カ
  ラウト存ジマシテ、條文ニ付テ申シマ
  ス

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• 201・高橋熊次郎

  ○高橋委員　委員長議事進行ニ付テ發
  言ヲ求メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=201

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• 202・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　委員長發言中デスカラ一
  寸待ッテ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=202

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• 203・高橋熊次郎

  ○高橋委員　一寸御待チナサイ、議事
  進行ニ付テ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=203

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• 204・本田恒之

  ○本田委員長　ソレデハ高橋君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=204

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• 205・高橋熊次郎

  ○高橋委員　吾々ハ逐條審議ヲシナケ
  レバナラヌ必要ガアルコトハ前カラ承
  知シテ居ルノデアリマス、然ルニ議事
  ヲ進行スル上カラ吾々ハ疑義ヲ狭ンデ
  居ルノモ我慢シテ、自分ハソレニ付テ
  拘泥セズシテ、サウシテ大要ニ付テ質疑
  ヲ盡クサウ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデア
  リマス、ソレデアリマスカラ今加藤君
  ノ質問ノ如キハ地租法ノ改正ニ於テ大
  切ナコトデアルト思フ、農林當局トシ
  テ主管ノ農家ノ事業ニ付テドレダケノ
  支障ヲ生ズルカ、利益ヲ生ズルカ豫メ
  之ヲ考ヘナイト云フコトハ何事デアル
  カト私共ハ思フ、此地租法改正ニ依ツ
  テ、今擧ゲラレタ開墾ニ付テドウ云フ
  利益ガアルカ、ドウ云フ弊害ガアルカ
  ト云フコトハ、疾ニ御承知ノ筈デアル、
  項目書ニモアナタハ取ッテ置カナケレ
  バナラヌ筈デアル、ソレデ此委員會ニ
  於テハ吾々モ十分自省ヲ致シテ、質問
  ノ要點ダケヲ成ベク〓括的ニ聞カウト
  云フコトヲ皆心掛ケテ居ラレルノデア
  ル、ソレヲ態々政府ノ方カラ指摘シテ、
  逐條ニ吾々ヲ審議セシメナケレバナラ
  ナイト云フコトハ、私共ハ議事進行ノ
  上カラ許スベカラザル行爲ナリト考ヘ
  ルノデアリマス、殊ニ國務大臣トシテ
  斯ノ如キ不用意ナコトハ何タルコトデ
  アルカト私ハ叫バザルヲ得ナイノデア
  リマス、加藤君ニ於カレマシテ、農林
  當局ニ對シテ詳細ニ此質問ヲ盡クシタ
  ナラバ恐ラクハ更ニ一日ヲ追加サレ
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  ソレデ加藤君ハ我慢ニ我慢ヲ重ネテ、
  サウシテ是ダケノ簡單ナル質問デ以テ
  自分ノ國政ニ對スル審議權ト云フモノ
  ヲ止メヨウト思ハレテ努力シテ居ルノ
  デアル、ソレニ敬意ヲ拂ハズシテ、サ
  ウシテモット何カ具體的ニ質問ノ要點
  ヲ擧ゲロナドヽ云フコトハ、何事デア
  ルカ、私ハ委員長ニ於テ農林大臣ニ對
  シテ注意ヲ與ヘラレンコトヲ議事進行
  ノ爲ニ望ム次第デアリマス

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• 206・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　只今高橋君ノ申サレマシ
  タ如ク、私ハ成ベク時間ヲ省略スル立
  場ヨリ大綱ニ付テ伺ヒマシタ所、此地
  租法ガ改正サレルコトニ依ッテ農林大
  臣ハ開墾ノコトヲ聞イテモ、ドウ云フ
  コトデスカト云フヤウナコトデ、其呑
  氣サ加減ハ私ハマルキリトンマノ狀態
  デナイカト思フ、ソコデ私ハ更ニ能ク
  分ルヤウニ條文ニ付テ、斯ウ云フコト
  ハドウカト云フコトヲ申上ゲタイト思
  フノデアリマス

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• 207・本田恒之

  ○本田委員長　加藤君ニ一寸申上ゲマ
  スガ、今場內ガゴタ〓〓シテ居リマシ
  タカラ、農林大臣モ聽落サレタト思ヒ
  マスガ、今發言ヲ求メラレテ居リマス
  カラ、アナタノ御質問ハ能ク徹底シタ
  ヤウデアリマス、條文マデ指摘サレル
  必要ハナカラウト思ヒマスノデ、應
  答辯ヲ御聽ニナランコトヲ希望致シマ
  ス

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• 208・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　私ノ發言中デアリマスカ
  ラ、政府委員ト雖モ議員ノ發言中ハ之
  ヲ阻止スルコトハ出來マセヌ、私ハ續
  ケマス、詰リ第三十六條ヲ御覽ニナレ
  バ一番能ク分リマスガ、開墾ニ著手致
  シマシタモノハ、其土地ノ所有者ガ之
  ニ對シテ開墾著手ノ申請ヲ致シマスレ
  バ地租ガ減租サレルノデアル、ソレ
  ガ現行地租條例ニ依リマシテハ十年以
  內ニ成功シ能ハザルモノハ四十年間減
  租ノ年期ガアルノデアリマス、然ルニ
  今囘ハ是ガ二十年內ニ成功シ能ハザル
  モノトアルノデアリマシテ、
  內ニ成功シ能ハザルモノモ四十年シカ
  減租年期ガナイ、十年以内ト申シマス
  ト、分リ惡イガ、十一年ニ成功スル所
  ノ開墾事業ニ對シテ四十年間ノ減租ノ
  年期ガアル、
  藏省ガ一寸變ヘテシマッタ爲ニ、二十年
  ヲ要スルモノニ非ザレバ四十年間ノ減
  租ト云フ恩典ガナイ、又地日變換ノ場
  合デモ左樣デゴザイマス、斯ウ云フコ
  トハ農林大臣ガ何ノコトデスカト言ハ
  レテ呑氣ニ構ヘテ居ラレル間ニ此開
  墾ニ對シテモ-恰モ內務大臣ガ都市
  計畫ノコトヲ私ガ質問スルト、何ノ
  事デスカト云ッタヤウナ調子デアリマ
  シタガ〓ニ、聰明ナル井上サンハチ
  ヤント稅金ヲ取ッテシマッテ居ル、アナ
  タモ亦今度サウ云フ風ニ呑氣ニ構ヘテ
  居ルカラ、開墾ヲ助成スル爲ニ金ヲ出
  シテ努力シナガラ、一方開墾スル者ニ
  對シテ、從來ノ特典ト申シマスカ、從
  來ノ減租ノ年期ヲ短縮サレテシマッテ、
  而モ何ノ事デスカト言ヲテ之ヲ知ラズ
  ニ居ラレルト云フノハ、實ニ私驚カザ
  ルヲ得ヌノデアリマス

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• 209・町田忠治

  ○町田國務大臣　只今ノ御尋ニ御答ヲ
  スル前ニ、直接ノ御答デハアリマセヌ
  ガ、一言私カラ申添ヘルコトノ御諒解
  ヲ得タイト思ヒマス、地租法ノ此度ノ
  賃貸價格ニ依ッテ改正ヲスル大體ノ趣
  二十年以意ニ於キマシテハ、地租全體ノ減ズル
  額ヨリモ農村ニ對スル減額ガ多イコト
  ハ御承知ノ通リデアリマス、此意味ニ
  於キマシテ私ノ立場トシテハ、農村問
  題ヲ中心トシタル考カラシマシテ、賃
  ソレヲ今度ハ二十年ニ大貸價格ニ依フテ此改正ヲスルコトノ大體
  ハ贊成致シテ居ルノデアリマス、同時
  ニ先刻御尋ノ加藤君ノ開墾ノ御話ハ、
  農林省關係カラ見マスレバ、主トシテ
  耕地整理ニ依ル開墾ガ多イノデアリマ
  スルガ故ニ、私ハ其耕地整理ノ關係ノ
  問題デアルカト思ッテ、アナタノ廣イ意
  味ノ御尋ニ對シテ左樣ナ御問ヒヲシタ
  ノデアリマス、ソレニ付テ私ニ對スル
  御批評ガアリマスガ、其御批評ニ對シ
  テハ、私玆ニ御答辯スルコトハ致シマ
  セヌ、併シ農林省トシテハ主トシテ關
  係致シマシタノハ、開墾ヲ主トシタル
  耕地整理ノ問題ニ對シテ、地租法ニ色
  色ナ關係ガアル點ニ於テ苦慮致シタノ
  デアリマス、例ヘテ申シマスレバ耕
  地整理ニ依ッテ行ク開墾ハ、御承知ノ通
  リ開墾ニ依ッテ新タナ收益ガ增シテモ
  現行法ニ依ッテモソレニ對シテ新ニ稅
  ヲ課シテ居ラヌコトハ御承知ノ通リデ
  アリマス、此度ノ稅法ニ依リマシテモ、
  耕地整理開墾ニ依フテ耕地ヲ整理シタ、
  是ガ爲ニ新タナ收益ガアル-一方他
  ノ一般ノ土地ハ十年每ニ賃貸價格ニ
  依ッテ訂正ヲシテ、或ル地方ニ於テハ稅
  額ガ殖エ、或ル地方ニ於テハ稅額ガ減
  ルト云フ、十年毎ニ改正ノ立テ方デア
  リマス、耕地整理ニ依ッテ土地ノ或ハ
  改良セラレ、或ハ地目變換等ニ依ッテ
  有利ナ土地ト相成ッタ場合ニハ、十年每
  ニ賃貸價格ニ依ッテ修正サレマスレバ
  非常ニ負擔ガ增ス筈デアリマス、現行
  法モソレヲ免ジテ居ルト同樣ニ、此度
  ノ耕地整理法ニ於テハ相成ベクハ現行
  ノ法律ノ如ク、永遠ニ之ヲ減ジタイト
  云フ考ヲ以テ、耕地整理法ノ此度ノ提
  案ヲ致ス時ニ長イ間〓究モシ、大藏當
  局トモ種々ナル協議ヲ致シマシタノデ
  アリマスガ、兎モ角モ一方ノ方ハ十年
  每ニ變ルト云フ原則ガ立チマシタ故
  ニ、多少私ノ方デモ考慮シテ、七十年
  ト云フ相當ナ長イ年限ノ間、耕地整理
  ニ依ッテ得タ所ノ利益ニ向ッテ負擔ヲ增
  サヌト云フ一ツノ妥協案ヲ作ッタノデ
  アリマス、是ガ第一デアリマス
  第二ニハ御承知ノ名古屋邊リニモ屢ミ
  アル問題ト私ハ承知致シテ居リマスル
  ガ、市街地若クハ市街地附近ニ於ケル
  耕地整理ノ關係デアリマス、之ニ對シ
  テ此度ノ法律ハ、市街地若クハ市街地
  附近ノ特殊ナル地域ニ於テ耕地整理ヲ
  致ス場合ニ於テ、是ハ市街地ニナルト
  思ハルヽ部分ニ對シテハ耕地整理法ノ
  特典ハ參ラヌノデアリマスガ、ソレニ
  對シテ相當ナル考慮ヲ加ヘテ、一番).
  特定ナ地域ヲ設ケテ之ニ恩典ヲ與ヘル
  ト云フコトニ致シマシタ、是等ハ開墾
  ノ上ニモ相當考慮シタ結果ト大體ニ於
  テ私ハ考ヘテ居リマス、御話ノ三十何
  條ト云フ事務的ノ點ニ對シテハ、今聞
  キマスルト變ッテ居ラヌト云フ話デア
  リマスガ、農務局長ナリ耕地課長ナリ、
  實際事務的ノ事ニ當ッタ專門家ヨリ御
  答シタ方ガ却テ御判リガ宜イカト思ヒ
  マス

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• 210・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　私ハ益〓驚カザルヲ得ヌ
  ノデアリマス、私ハ只今ハ地租法ニ付
  テ質疑ヲ致シテ居リマシテ、耕地整理
  法ニ付テハ、先日內務大臣ニ對シマシ
  テモ、ソレハ又別ナ場合ニ於テ質疑ヲ
  スルト云フコトヲ申シテ居リマスガ、
  私ハ地租法ニ付テ只今ハ質疑ヲ致シテ
  居リマスルノニ、農林大臣ハ耕地整理
  ノ御說明デ、名古屋ノコトマデ御話デ
  アリマスガ、ソレハ他日ノ時ニユック
  リ拜聽致シタイノデアリマス、故ニ私
  ハ條文マデ玆ニ出シタ、三十六條ヲ御
  讀ミニナルト明白ニ判ル、三十六條ノ
  第二項デアリマス、一ツ御覽ヲ願ヒタ
  イ今度ノ地租法ニハ「二十年內ニ成
  功シ能ハサル開墾地ニ付テハ前項ノ年
  期ハ開墾著手ノ年及其ノ翌年ヨリ四十
  年トス」トアル、尙ホ地味成熟セザル
  場合ハ十年內ノ年期延長ヲシテ五十年
  ニスルト云フコトニナッテ居ルノデア
  リマス、私ハ此事ヲ聽イテ居ル、從來
  ハ十一年位デ出來ル所ノ比較的小開墾
  ニ對シテ、五十年間ノ減租ガアルニ拘
  ラズ、之ヲ二十年トサレタ、二十年ト
  致シマスレバ大開墾デアル、サウシテ
  十一年ト云フヤウナモノハ全ク特典無
  シニナッテシマッタ、二十一年ヲ要スル
  大開墾ト云ヘバ本當ノ大地主デアル、
  而シテ十一年ヲ要スル開墾者ニ對シテ
  ハ此第三十六條ノ初メノ減租年期シ
  カ與ヘヌト云フコトニナリマシテ、從
  來十年デ五十年ノ年期ノアッタモノヲ、
  二十年ニ延バサレタ理由ヲ私ハ聽イテ
  居ル、是ハ事務的ノ事デハアリマセ
  ヌ、開墾ノ重大ナ問題デアル、農林大
  臣頗ル博學デアラセラレテ縱橫ニ御答
  辯ガアルノデアリマスガ、違ッタ方面
  ノ御答辯ハ駄目デアリマス、ソレハ又
  耕地整理ノ時ニ十分御高見ヲ拜聽致ス
  ノデアリマスガ、此十年以內ニ成功シ
  能ハザルト云フモノヲ、何故大地主ヲ
  保護スル爲ニ二十年トサレタカ、是デ
  大藏省ハ助カルデアリマセウ、何時デ
  モ大藏省ハ活馬ノ眼ヲ拔クヤウニ、內
  務大臣モヤラレテシマッテ居ル、農林大
  臣モヤラレテ居ル、農林大臣ハ斯ウ云
  フ事ハ能ク御承知ダト思ッテ居レバ又
  ヤラレテシマッタ、サウシテノホヽンヲ
  極メテ、何ノ事デスカ、具體的ニ說明
  ヲシロナント言フ、私ガ條文マデ引イ
  テ聽イタ所ガ、今度ハ耕地整理ノ話ヲ
  クダ〓〓トナサル、ソンナ事ヲ私ハ聽
  イテ居ルノヂヤナイ、三十六條デアリ
  やっ、十年ヲ何故二十年ト云フ風ニ大
  地主ヲ庇ハレタカ、農林省ハ開墾助成
  ニ付テハ、補助ヲシタリ色々ノ事ヲシ
  テ居ルニ拘ラズ、斯ウ云フ重大ナ事ヲ
  忘レテ農林大臣トシテドウスルカ、此
  事ヲ御尋シテ居ルノデアリマス、先ヅ
  農林大臣トシテノ御答辯ヲ得テ、ソレ
  カラ政府委員ノ方ノ御說明モ聽キマセ
  ウガ、先ヅ平素農村ノ事ハ俺ガ一人デ
  運命ヲ擔ッテ居ルト云フヤウナ顏ヲシ
  テ居ラッシヤル、スベテ博學デサウ云
  フ方面特ニ造詣ノ深イ農林大臣カラ、
  地租法ニ付テハ大藏省ト屢〓折衝シタ
  ト言ハレル、何ヲ折衝ナサッタカ、此重
  大ナ問題ヲ忘レテ何デアルカ、十年內
  ニ成功シ能ハザルモノト云フノヲ二十
  年ニ變ヘタト云フコトヲ明確ニ承レバ
  宜シイ

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• 211・町田忠治

  ○町田國務大臣　只今ノ御質問ニ對シ
  テ、大體ニ於テハ此度ノ賃貸價格ニ依ツ
  テ地租改正ノ根柢トスルト云フ趣意カ
  ラ、前申シマシタ通リ、農村ニ於ケル
  農家ノ負擔ガ、之ニ依フテ他ノ市街地以
  上ニ負擔ノ輕減ガ得ラレルト云フ大局
  ノ下ニ、私ハ此地租法ノ改正ニ贊成ヲ
  致シタノデアリマス、而シテ話ガ餘談
  ダト御叱リデアリマスガ、私ハ、實、
  此耕地法ノ事ニハ餘程思ヒヲ致シテ、
  此方ノ改正ニ對シテハ相當考慮致シマ
  シタガ、其他ノ條項ニ付テハ大シタ不
  便ガナイト大體ニ斯ウ見テ居ッタノデ
  アリマス、今ノ四十何條カ三十何條カ
  ノ細カイ關係ハ、甚ダ相濟ミマセヌガ
  〓究ハマダシテ居ラヌノデアリマス、
  大體宜シイト云フコトニシテ居ッタノ
  デアリマスカラ農務局長カラ一應答辯
  サセマス

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• 212・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　大臣カラ御答辯ヲ願ヒタ
  イ

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• 213・本田恒之

  ○本田委員長　政府委員ノ說明ヲ御聽
  キナサイ

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• 214・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　何ダ其言葉ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=214

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• 215・本田恒之

  ○本田委員長　政府委員ノ說明ヲ御聽
  キナサイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=215

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• 216・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　何ト云フコトヲ言フノダ

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• 217・本田恒之

  ○本田委員長　政府委員ノ說明ヲ御聽
  キナサイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=217

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• 218・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　御聽キ下サイト言ッタラ
  宜イ

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• 219・高橋熊次郎

  ○高橋委員　議事進行ニ付テ發言ヲ求
  メマス

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• 220・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　吾々ハ鄭重ニ簡潔ニシテ
  居ルノニ何ダ、注意シロ

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• 221・本田恒之

  ○本田委員長　何デサウ仰シヤルノカ
  私ニハ一向解リマセヌガ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=221

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• 222・高橋熊次郎

  ○高橋委員　議事進行ニ付テ······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=222

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• 223・本田恒之

  ○本田委員長　暫ク御待チ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=223

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• 224・高橋熊次郎

  ○高橋委員　政府委員ノ說明ニ先ダッ
  テ議事進行ニ付テ-政府委員ノ諸君
  ハ既ニ御承知ニナッテ居ルダラウト思
  フノデアリマスガ、此委員會ニハ色々
  ノ案件ガ付託サレテ、曆ノ上カラハ三
  十日間ニモ亙ッテ會議ヲ續ケテ居ルノ
  デアリマス、ソレデアリマスケレドモ、
  吾々ノ質問スル疑義ト云フモノハ盡キ
  ナイノデアリマス、併ナガラ理事竝ニ
  委員長ガ心配ヲ致シテ、議事ヲ圓滿ニ
  進メタイト云フ所カラシテ、吾々ノ質
  問權ヲ或ル程度マデ抛棄ヲ致シテ、サ
  ウシテ今日ハ質疑ヲ打切ルト云フノ打
  合セノ下ニ進ンデ居ルノデアリマス、
  ソレガ爲ニ、地租法外五件ニ遲レテ提
  出サレタ所ノ耕地整理法ハ到底吾々ハ
  審議ヲ進メルコトハ出來ナイカラ、是
  ハ第二次ニ審議ヲシヨウト云フノデ、
  其點ニハ觸レナイコトニ吾々ハ今朝理
  事ニ於テ申合セテ、委員長ノ承認ヲ得
  テ左樣ニ致シタ、委員長ハ又此委員會
  ニ向ッテハ此耕地整理法ノ改正案ヲ議
  事ニ付スルコトノ御宣言ハ未ダアリマ
  セヌ、左樣ナコトデアリマスカラ、加
  藤君ハ、此地租法ニアル所ノ開墾ニ關
  スル事項ヲ限ッテ御說明ヲ求メタノデ
  アリマス、ソレデアルカラ、サウ云フ事
  ノ御間違ノナイヤウニシナケレバナラ
  ヌ、其事ヲ知ッテ居リナガラト加藤君ガ
  思ハレテ居ルカラ感情ヲ刺激スルノデ
  アリマス、ソレデアルカラ、委員長モ、
  政府委員ノ說明ヲ聽ケ、ナドヽ云フヤ
  ウナ命令的ニ言ハレルカラ、加藤君ハ
  之ニ對シテ憤慨致シタノデアリマスカ
  ラ、委員長ニモ其點ハ十分御考慮アラ
  ンコトヲ望ミマス

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• 225・本田恒之

  ○本田委員長　御尤デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=225

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• 226・町田忠治

  ○町田國務大臣　只今ノ加藤君ノ御尋
  ニ對シテ先ヅ以テ私カラ大要ヲ御答ヘ
  シマス、實ハ率直ニ申シマスト私ノ此
  委員會ニ出ルノハ耕地整理ノ問題デア
  ルカラト云フコトヲ前以テサウ云フ話
  ヲ承ッテ居ッタカラ、自ラ答辯ガ其方ニ
  參ッタノデアリマシタ、併ナガラ今承ル
  ト耕地整理ノ問題ハ更ニ他ノ機會ニ於
  テヤッテ、今晩ハ其問題ニ關係ナイト云
  フコトヲ明ニ高橋君カラ今承ッテ能ク
  事情ハ分リマシタ-ソコデ御話ノ、
  從來十年デアッタノヲ二十年ニシタト
  云フコトニ對シテハ、此條文ノ上カラ
  言ヘバ左樣ナ御解釋ハ正當ト思ヒマ
  ス、卽チ是ガ開墾ノ上ニ非常ナ不利益
  デ、農村當局トシテ斯樣ナ箇條ヲ設ケ
  ルコトニ同意シタノハ如何ト云フ御尋
  ト大體承知シテ居リマスー御尤ナ御尋
  デアリマシテ、此點ニ付キマシテハ
  農林當局ト大藏當局ト屢〓交渉ヲシタ
  問題デアリマシテ、農林當局ハ、從來
  ノ如ク之ヲ十年ニスル事ニ對シテ强キ
  主張ヲ持ヲテ居リマス、併シ最後ニ兩省
  ノ間ニ相當ナ諒解ガ出來マシテ、他ノ
  權衡上二十年トスルコトニ致シマシタ
  モノヽ實際ハ從來ト同樣ノ有利ナ取
  扱ヲスルト云フコトニ大藏省トノ間ニ
  交涉ガ出來マシタ、隨テ之ヲ斯樣ナ年
  限ニ變ヘタニ拘ラズ、從來ト同樣ノ取
  扱ガ出來ルト云フ其ヤリ方ニ對シテ
  ハ、大藏當局カラ說明サシタ方ガ便宜
  カト思ヒマス、私ノ方デハ此年限ヲ二
  十年トシタコトノ法文上不利ナルコト
  ハ認メマス、ト同時ニ實際上ハ從來ト
  同樣ニ取扱フト云フ兩省ノ話ガ付キマ
  シテ此邊デ同意シタノデアリマスガ、
  然ラバ如何ニシテ此年數ガアルニ拘ラ
  ズ今日同樣ニスルカト云フ事務的ノ方
  法ハ、大藏當局ノ方カラ御答シタ方ガ
  便宜ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=226

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• 227・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　農林大臣ガ、今日ハ耕地
  整理ノ事デ呼ビ出サレタト思ッテ終ヒ
  マデ居リマシタノハ恐レ入ッタコトデ
  アリマス、コンナボケタ事ヲ仰シヤラ
  ナクテモ宜シイ、耕地整理ノ事ハ高橋
  君ガ言ハナクテモ私ガ初メカラ耕地整
  理ノ事ニ付テ聽クノデハナイ、地租ニ
  付テ、而モ地租ノ三十六條ニ付テトマ
  デ言ッテ居ルノデアル、ソレヲアナタハ
  呑氣ニチットモ知ラナカッタ、其處デ色
  色ト〓ヘテ貰ッテ、〓ヘテ貰ッタト言ハ
  ズニアヽサウ云フコトデスカト言ッテ
  欺瞞デ來ルト云フコトハ、アナタハ平
  素正直サウナ顏ヲシテ居ルノニ似合ヒ
  マセヌ、而モ賃貸價格ニシテ、農村ノ
  方ハ賃貸價格ガ安クナッタカラアナタ
  ノ先刻ノ御議論ハ少シ位從來ノ特權
  ガ取レタッテ構ハヌト云フヤウナ風ニ
  承リマシタガ、サウデナカッタナラバ宜
  シイガ、ソレハ間違ッテ居ルト言ハナケ
  レバナラヌ、兎ニ角只今十年ノモノヲ
  二十年ニ爲サッタト云フコトハ屢〓折衝
  ヲシタトアナタハチットモ仰シヤラナ
  カッタ、此點ハ內務大臣同樣デアル、ソ
  コデ以テドウ云フ折衝ヲシタカ、今御
  聽キニナッタダケノ御話デアル、大藏省
  デ加減ヲスルト云フガ、ドウ云フ加減
  ヲスルノデアリマスカ、法律デ二十年
  トナッタノヲ十年トドウ云フ加減ヲス
  ルカ、アナタノ如キ能ク分ッタ御方ガソ
  ンナ馬鹿氣タ事ヲ言ッテ、本當ニ今晩コ
  ソハアナタハ呑氣サ加減ヲ悉ク暴露シ
  タ、法律デハ二十年トナッテ居ルケレド
  モ、元ノ十年ノヤウニ何トカ加減スル
  ヤウナ折衝ガ出來テ居ルナラバ、ナゼ
  十年ト云フコトヲ書カレナカッタカ、大
  藏大臣カ靑木局長デモ宜シイ、二十年
  ト書イテアルノヲドウシテ十年ニサレ
  マスカ、ソンナ事ヲサレルナラバ法文
  ハ何ノ爲ニ之ヲ書イタノデアルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=227

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• 228・青木得三

  ○靑木政府委員　御答へ致シマス、此
  十年ヲ二十年ニ改メマシタ理由ヲ一應
  御聽取リヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=228

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• 229・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　理由ハ聽キマセヌ、農林
  省ガ來テ居ルノニ大藏省カラ理由ハ要
  ラヌ、二十年ヲ十年ト云フコトニ加減
  ヲスルト云フ事ヲ聽イテ居ルノデア

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=229

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• 230・青木得三

  ○靑木政府委員　ソレヲ申上ゲマス、
  是ハ元地租條例ハ御承知ノ如ク明治十
  七年ノ三月ノ布告第七號デアリマス
  ガ、其地租條例ノ第十六條ト云フモノ
  ハ明治二十二年ノ十一月ニ法律第三十
  號デ改正ニナッテ居リマス、其時ニドウ
  云フ條文デアッタカト申シマスト、「開墾
  ヲ爲サントスルトキハ地方廳ニ屆出ス
  - 、前項ノ開墾地ハ開墾著手ノ年ヨ
  リ十年目ニ其ノ成功ノ部分ニ對シ地價
  ヲ修正ス、十年以內ニ成功シ能ハザル
  開墾ヲ爲サントスルトキハ地方廳ニ願
  出鍬下年期ノ許可ヲ受クベシ、鍬下年
  期ハ三十年以內トス」ト云フコトニナッ
  テ居リマシタ、卽チ只今問題ニナッテ
  居リマス「十年以内ニ成功シ能ハサル
  開墾ヲ爲サントスルトキ」ト云フ文句
  ハ、第一項ノ方ガ十年デアッタ時ニ存
  在シテ居フタ言葉デアリマス、然ルニ大
  正八年ニ於キマシテ、衆議院カラ此改
  正法律案ガ出タノデアリマス、是ハ議
  員ノ提出ノ法律案デアリマス、サウシ
  テ只今申上ゲテ居リマス第一項ノ「十
  年ト云フノヲ「二十一年目」占セン
  ラレマシタ、ソレカラ第二項ノ「三十
  年」ト云フノヲ「四十年」ト改メラレ
  タノデアリマス、然ルニ第一項ガ二十
  年ニナレバ、第二項ノ十年以內ト云フ
  ノガ當然二十年ニナラナケレバナラヌ
  ノデアリマスガ、其點ニ付キマシテ、
  當時ノ議員提出ノ法律案ハ、此十年ヲ
  二十年ニ改メルコトヲ御忘レニナッタ
  モノト思ヒマス、
  理ナルコトガ起ッタノデアリマス、第一
  項ニ於キマシテ、二十一年目ニ成功ノ
  部分ニ對シテ地價ヲ修正スル、舊法ニ
  於テハ十年ノ成功ノ部分ニ對シテ地價
  ヲ修正スルガ、若シ十年以內ニ出來ナ
  ケレバ尙ホ三十年ヤル、今度ハ二十年
  ト初メノ方ヲ直シテ置イテ、アトガ二
  十年ニナラナイカラ、極メテ不合理ナ
  コトニナリマシテ、稅務監督局、稅務署
  ニ於テ、如何ニ之ヲ取扱フベキカト云
  フコトニ付テ非常ニ苦心ヲ致シタノデ
  アリマス、ソコデ大正九年三月ニ至リ
  マシテ、大藏省ハ斯樣ナ通牒ヲ各稅務
  監督局ニ出シタノデアリマス、卽チ「鍬
  下年期地ノ認定方ニ關シテハ往々見解
  ヲ異ニスル向有之ヤニ及聞候處右ハ實
  地ノ狀況ニ依リ各事業ノ難易ヲ參酌ス
  ヘキモノナルヲ以テ豫メ一定ノ標準ニ
  依リ難シト雖モ地租條例第十六條第二
  項ノ開墾地トノ權衡上大體ニ於テ開墾
  地ヨリ生スル收益ト開墾原地ヨリ生ス
  ル收益トノ差額ヲ以テ普通開墾年期卽
  チ二十年以内ニ投資費用ヲ完濟スルコ
  ト能ハサル程度ノモノニ限リ鍬下年期
  ヲ附與スルヲ妥當ト被存候ニ付右趣旨
  ニ依リ御取扱相成度」ト云フ通牒ヲ各
  稅務監督局ニ出シテ、左樣ナ取扱ヲシ
  テ居リマス、卽チ實際ニ於テハ十年以
  內ニ成功シ能ハザルコトハ、二十年以
  玆ニ於テ極メテ不合内ニ投資費用ヲ完濟スル能ハザル程度
  ノモノニ限ヲテ鍬下年期ヲヤルト云フ年ニ直サナケレバナラヌト云フ、
  コトニ取扱ッテ居リマス、ソレデアリマ
  スカラ、是ガ二十年ニ改メルコトハ當
  然デアリマス、然ルニ農林省ニ於テハ
  此十年ヲ二十年ニ改メルト云フコトニ
  付テ、從來ト取扱ヲ異ニスルコトガアッ
  テハ、開墾事業ニ對シテ重大ナ損害ヲ
  與ヘルコトデアルカラ、從來ト取扱ヲ
  異ニサレテハ困ル、單ニ條文ノ整理デ
  アッテ、前ノ條文ガ不合理デアルノヲ合
  理的ニ直スノデアルカラ、從來ト取扱
  方ヲ變ヘテ貰ッテハ困ルト云フ話デア
  リマシタカラ、此地租法其他耕地整理
  法ガ當院ニ提出セラレタ後、暫ラク經ツ
  テ二月五日ニ農林次官大藏次官ノ間ニ
  文書ヲ交換シテ、從來ト何等取扱ヲ異
  ニシナイ、單ニ條文ノ整理ニ過ギナイ
  カラ、從來ト同シ趣旨デヤルカラ、卽
  チ日本ノ開墾事業ニ損害ヲ與ヘルコト
  ハナイト云フ協定ヲ致シタ次第デアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=230

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• 231・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　只今靑木君ハ大變能ク御
  答辯ニナリマシタガ駄目デス、私此質
  疑ニ對シマシテハ、相當〓究シテヤッタ
  積リデアリマス、斯樣ナコトヲ申上ゲ
  ラ失禮デアリマスガ、實ハ私ハ靑木君
  ニ聽イタノダガ、靑木君ノ解釋ハ間違ツ
  テ居ル、是ハ面倒デスガ、重大ナコト
  デゴザイマスカラ申上ゲマス、アナタ
  ハ十年デハ惡イ理窟ガ合ハヌカラ二十
  私個
  人的ニ聽イタコトヲ言フノデハアリマ
  セヌガ、アナタノ解釋ハ、只今御讀ミ
  ニナッタヤツヲ私ニ御〓ヘニナッタノダ
  ガ、私ドウモ分リマセヌカラ、ソレハ
  間違ヒアリマセヌカト云フト間違ヒア
  リマセヌト云フ、私歸ッテ來テドウモ分
  ラヌカラ、是ハ必ズ間違アリマセヌカ
  ト云フタ、ソレハドウ云フコトカト云
  ヘバ開墾ニ著手シタル年ヨリ二十年間
  ハ減租ニスル、更ニ二十年內ニ開墾シ
  能ハザル時ハ四十年、卽チ六十年ニナ
  ル、ソレニ又十年加ヘルカラ七十年ト
  ナルト云フ解釋ヲシテ居ル、ソレヲ誰
  ヤラ議員提出法案、誰ヤラノ建議案ト
  カ、從來ノ例ヲ御讀ミニナッテ、私ニ〓
  ヘテ下サッタ、私ハ腑ニ落チマセヌカラ
  間違アリマセヌカト云フト、斷ジテ間
  違アリマセヌト云フ、私ガ歸ッテ來テ
  讀ンデ見ルトドウモ違フカラ、アナタ
  ノ所ニ行ッテ、重大ナル質疑ヲ町田サン
  ニシヤウト思フノデアルカラ、間違ア
  リマセヌカト云フト、斷ジテ間違ナイ
  ト言ッテ置キナガラ、間違ッタト言ッタ、
  ソレダカラ、ソンナモノヲ幾ラ御讀ミ
  ニナッテモ駄目デス、サウ云フコトヽ違
  ヒマス、是ハ重大ナルコトデアリマス
  カラ私ハハッキリ申上ゲマス、大藏大臣
  モ能ク聽イテ居ッテ戴キタイ、三十六條
  ハ開墾ニ著手シタル土地ニ付テハ、土
  地所有者ノ申請ニ依ッテ二十年間ノ開
  墾免租年期ヲ與ヘルト云フコトニナッ
  テ居ルノデアリマス、ソレデアリマス
  ルガ故ニ、開墾ニ著手シタナラバ、其
  土地ハ二十年間ノ減租ニナッテ居ルト
  云フコトハ、是ハ第一項ニ明白ニ證明
  シテ居ル、ソコデ現今ノ地租條例ニ依
  リマシテハ、十一年ヲ要スル稍大ナル
  開墾ニ對シテハ更ニ四十年ノ減租ヲ與
  ヘルト云フコトニナッテ居ルノデアリ
  やっ、ソレヲ今度二十年ニシタト云フ
  ニトハ、初メノモノヲ二十年ニシタカ
  ラ此所ヲ二十年ニシタト云フガ、ソレ
  ト全ク意味ガ違フ、ソレデアリマスル
  ガ故ニ、前ノトハ違フノデアリマスカ
  ラ、十一年ヲ要スル所ノ相當ノ開墾ニ
  對シテハ、四十年ト十年、卽チ五十年
  ノ減租年期ヲ與ヘル、今年二十一年ヲ
  要スルモノニモ同様ナ開墾減租年期ヲ
  與ヘルト云フコトハ不合理ダト云フノ
  デアリマス、十一年ノモノニ五十年與
  ヘタモノヲ、二十年トシタナラバ、今度
  六十年モ七十年モノモノニシナケレバ
  ナラヌ、ソレデアリマスルガ故ニ、ア
  ナタノ考ハ唯釣合カラ來タ、アナタノ
  誤解カラ來タモノデアルナラバ、ソレ
  デ宜シイ、サウスレバ能ク御〓究ニナツ
  テ是ハ十年トスル方ガ本當デアルト云
  フコトガ御分リニナルダラウト思フ、
  玆デ彼此議論致シマシテモ、其根據、頭
  ガ違ッテ居ル、サウスルト二十年ト云フ
  ト前ノ二十年ヲ引繼イデ來テ居ル、サ
  ウ云フコトデハナイ、是ハ私共ハ議論
  致シマセヌ、能ク御〓究ヲ願ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=231

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• 232・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、今ノ
  點ハ十分ニ〓究ヲ致シテ居ルノデアリ
  マシテ、十年以內ニ成功シ能ハザル開
  墾ヲ爲サントスルトキハト云フノハ十
  年經ッテカラ年期ヲ與ヘルノデアリマ
  セヌ、開墾ニ著手ノ時ニ、此四十年ノ
  鍬下年期ヲ與ヘルノデアリマス、ソレ
  デアリマスカラシテ、年期ヲ與ヘマス
  ノハ開墾ニ着手シタ時デアリマスカ
  ラ一體何年掛ルカト云フコトニ付テ
  ハ、是ハ將來ノ豫想ナノデアリマス、
  ソコデ先程申上ゲマシタヤウニ、現行
  法ノ解釋トシテ取扱ッテ居リマスノハ
  各稅務監督局ニ對シテ、此二十年以內
  ニ投資費用ヲ完濟シ能ハザル程度ノモ
  ノニ限ッテ鍬下年期ヲ付與スルヲ妥當
  ト認ムルカラ、左樣ニ取扱ヘト申シテ
  居ルノデアリマスカラ、アナタノ仰セ
  ノヤウニ十一年目ニ成功シ能ハザル開
  墾ヲ爲サントスル時ハ四十年ノ鍬下年
  期ヲ與ヘルト云フコトハ今日稅務署ニ
  於テ致シテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=232

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• 233・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　是ハ斯ウ云フ席デ幾ラ議
  論ヲシタ所ガ考ガ間違ッテ居ルノデア
  リマスカラ、能クモウ一遍御〓究願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=233

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• 234・本田恒之

  ○本田委員長　加藤サンニ一寸伺ヒマ
  スガ時間ガ何デスカラ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=234

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• 235・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　モウ少シデス-サウス
  レバ私序デニ農林大臣ニ伺ヒタイ、同
  ジヤウナコトガ幾ツモアル、ソレデ具
  體的ニ申ス爲ニ、條文ヲ讀ミマス、矢
  張三十六條デアリマス、此池ヤ沼ヲ開
  墾シタトキニハヤハリ是ト同樣ニ四十
  年減租年期シカナイ、所ガ公用水面ヲ
  埋立テタトキニハ六十年ト十年、七十
  年アルノデアリマス而シテ公用水面
  ニ於キマシテハ此地租法ニ依ッテ免租
  ニナルノデアリマス、池ヤ沼ヲ開墾シ
  テ-之ヲ埋メテサウシテ之ヲ開墾シ
  テ田畑ニ致シマシタ、所ガ是デ見ルト
  四十年シカナイ、一ツハ國家ノ海トカ
  沼トカサウ云フモノヲ自分ノモノニシ
  テ、ソレニ地租ノ免租ガ七十年アル、
  池ヲ埋メテ、自分ノ池デモ何デモ宜シ
  イソレヲ埋メテサウシテ四十年シカ
  ナクテ而モソレハ減租デアル、今度ノ
  地租法ニ於テ斯ウ云フコトガ澤山アル
  ノデアリマスガ、極ク簡單ニ是ダケ申
  シマスレバ分リマス、農林大臣ハトテ
  モ駄目デスカラ他ノ御方カラ大體御答
  辯ヲ願ヘバ宜シイ、農林大臣ノ御答辯
  ハモウ私ハ聞キマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=235

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• 236・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　是モ農林省ノ方ニト
  云フ御尋デアリマスカラ申シマス、農
  林省ノ方トシマシテハ出來ルダケ年期
  等ハ利益ヲ得タイ方ノ側デアルノデア
  リマスカラ、熱心ニ主張ヲシテ居リマ
  スルシ、注意モ致シテ居ル、只今ノ現
  行ノ法制ノ下ニ於キマスル個人ノ埋立
  公有水面ノ埋立等、此關係ニ於キマシ
  テハ、新地租法ハ何等變リガナイコト
  ニ承知ヲ致シテ居リマスノデ、大藏省
  ノ方ト此點ニ付テハ別段交涉シテ居リ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=236

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• 237・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　農林省ノ立場ハ私ハ承ツ
  テ置キマスガ、大藏省ト致シマシテ、
  片方ハ公用水面ヲ埋立テヽ所謂開墾ヲ
  シマス、例ヘバ海ヲ埋立テヽ公用水面
  ヲ埋立テヽソレヲ田ニ致シマス、サ
  ウスルト七十年間免租ナノデアリマ
  ス、元モサウデアリマスガ、今度ノ地
  租法ニ依ッテモ七十年間稅金ナシ、然ル
  ニ玆ニ一方ニ於テ自分ノ、例ヘバ沼ナ
  ラ沼ヲ埋立テヽ開墾スルモノニ四十年
  シカナイ、年限ガ少イノミナラズ、ソ
  レガ漸ク租稅ガ安クシテ貰ヘルダケデ
  アリマス、不合理デハナイカ、斯ウ云
  フコトナノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=237

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• 238・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマスガ、
  此地租ノ年期ノ問題ニ付キマシテハ、
  新地租法ヲ制定致シマストキニ於テ色
  色協議ヲ致シテ見マシタ、ソレデ此地
  租法ヲ編ミマスニ付キマシテ、年期ヲ
  今日現行法ニ依ッテ與ヘラレテ居リマ
  ス所ノ年期ト違ッタヤウニシヨウカト
  云フコトハ、一ツノ考ヘ方デアリマシ
  タ、ケレドモ從來種々ナル年期ヲ知得
  シテ居ラルヽモノ等ノ權衡カラ考ヘマ
  シテ、其年期ト云フモノハ大體ニ於
  テ其儘ニシテ置ク、殆ド全ク其儘ニシ
  テ置クト云フ方ガ宜シイト考ヘマシタ
  ノデアリマス、ソレデアリマスカラシ
  テ實際ノ取扱方トシテハ條文ハ大分
  文句ハ違ッテ居リマスガ、只今加藤サン
  ノ御讀ミニナッタヤウニ現行地租條例
  ニ於キマシテモ「官有ノ水面ヲ埋立テ
  又ハ干拓シ民有ニ歸セシ土地ハ六十年
  ノ新開免租年期」デ、免租デアリマス、
  ソレカラ尙ホ鍬下年期新開免租年期地
  價据置年期ノ延長ニ關スル法律ニ依リ
  マシテ、單行法ニ依ッテ尙ホ十年延バ
  シ得ルコトニナッテ居リマス、ソレカラ
  一方ノ民有地ヲ埋立テマシタヤウナ場
  合ニハ、卽チ只今問題ニナッテ居リマ
  シタ四十年ノ鍬下年期、鍬下年期ト云
  フノハ卽チ減地價ニ依ッテ地租ヲ取ル
  ノデアリマスカラ、此度ハ言葉ヲ改メ
  マシテ減租年期ト致シマシタ、現行法
  ノ實際ノ取扱方ヲ變ヘタ方ガ宜イト云
  フコトモ一ツノ御意見ト思ヒマスガ、
  吾々ハ變ヘルコトハ大體ニ於テヤメタ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=238

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• 239・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　ソレハ理窟ニナリマセ
  ヌ、全ク是ハ政黨的ノ問題デハアリマ
  セヌ、與黨ノ諸君モ是ハ能ク御聞置キ
  願ヒタイ、從來ノ惡イ所ヲ直ス爲ニ地
  租條例ヲ、地租法ニ改正ニナッタトキ
  二、又ソンナ理窟ヲ言ッテ、極端ニ云ヘ
  バ從來ノ地租條例デ宜イト云フコトニ
  ナルヂヤアリマセヌカ、ソレヲ自分達
  ハ分ラヌカラ、何デモ其儘ニシテ知ラ
  ヌ顏ヲシテ居ルト云フノデアルガ、是
  ハ能ク御〓究ニナリマシテ、明日デモ
  答辯ヲ願ヒタイ、私ハ此處デ彼是レ言ツ
  テモ時間ヲ要シマスカラモット御〓究
  ヲ願ヒタイト思ヒマス、要スルニ國家
  ノ公用水面ヲ埋立テヽソレガ自分ノ
  モノニナッテ、ソレガ七十年間稅金ガ只
  デ、民有地ヲ埋メテ、自分ノ池カ沼ヲ
  埋メテサウシテ自分ノモノデ-自分
  ニ埋メテ、ソレガ四十年デ只ニシテ貰
  ヘルカト云フト安クシテ貰ヘルダケデ
  アル是ハ實ニドウ考ヘテモ議論デハ
  ナイ、不合理デアルト思ヒマスニ依ツ
  テ、是ハ一ツノ問題トシテ農林大臣モ
  開墾ノ上カラ、私ハ惡口ヲ言フ譯デナ
  イ、是ハ眞面目ニ明日マデニ御〓究置
  ヲ願ヒタイ、サウデアリマセウ、國家
  ノモノヽ公用水面ヲ埋立テヽ自分ノモ
  ノニスル、ソレガ七十年間只、自分ノ
  池ヲ埋立テヽ四十年、而モソレガ稅金
  ガ安クシテ貫ヘルダケ、是ハ誰ガ聞イ
  テモ不合理デアルノデアリマス、此事
  ハ何レ又明日モ御目ニ懸カルニ依ッテ、
  是ハ〓究問題トシテ置キマス
  今度ハ農林省ハヤメマシテ大藏省ノ
  方ニモウ一ツ主ナル點ヲ伺ッテ置キタ
  イト思ヒマス、一口ニ申シマスレバ荒
  地免租ノ件デアリマス、是ハ農林大臣
  モ御聞ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=239

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• 240・本田恒之

  ○本田委員長　加藤サン、高橋君ガ農
  林大臣ニ聞キタイト云フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=240

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• 241・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　直グヤメマス-條文ノ
  方ガ分リ易イト思ヒマス、荒地デアリ
  マス、災害ニ依ッテ荒レテシマッタ地所、
  ソレニ對シテハ只今ノ現行法デナシ
  二、地租法ニ依ッテハ、十五年願出デレ
  バ免租ニシテ貰ヘルト云フコトニナッ
  テ居ルノデアリマス、詰リ第五十五條
  ノ「荒地ニ付テハ納稅義務者ノ申請ニ
  依リ荒地ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ
  十五年內ノ荒地免租年期ヲ許可ス」詰
  リ荒地ニナルト云フト、願出レバ十五
  年間ハ稅金ハ只ト云フコトニナル、ソ
  レカラ前記ノ年期滿了シテモ尙ホ荒地
  ノ場合ハ十五年間、三十年間ト云フコ
  トニナッテ居ルノデアリマス、サウ云フ
  コトニナル、十五年間荒地ニナルト云
  フト只、更ニ形狀ガ舊ニ復セヌトキハ、
  三十年間只、地租ハナシ、所ガ是ガ私
  共實例ハ幾ツモ持ヲテ居リマスガ、海岸
  デ、立派ナ田デアリマスガ、海嘯カ何
  カ來テ、何町步ト云フ廣イ、二十町步
  モノ間ガ海ニナッテ、干潮ニナルト少
  シ位出ル、斯ウ云フモノニ對シテ今度
  ノ地租法ニ依ッテ二十年間只ニナルト
  云フコトニナッテ居リマス、ソレデアリ
  マスガ故ニ十五年ハ當然、更ニ海ヤ川
  ヤ或ハ湖トナッタモノニハ二十年間免
  租、三十五年間ノ免租ト云フコトニナ
  ルノデアリマス、然ルニ公用水面ハ前
  記同樣デアリマス、自分ノ所有シテ居
  ルモノハ三十五年、災害ヲ受ケテ運ガ
  惡イ目ニ遭フテモ三十五年間シカ免租
  ニナッテ居ラヌ、ソレカラ國家ノ公用
  水面ヲ埋立テヽ自分ノモノニナルモノ
  ハ七十年、此間ハ甚ダドウモ不合理デ
  アル、御分リニナリマシタカ、自分ガ
  災害ニ遭ッタ-大藏大臣、一寸御考ヘ
  ニナッタカラ、分ラナケレバモウ一遍申
  上ゲマス、自分ノ地所ガ海嘯カ何カ、
  川デモ宜シイ、自分ノ田畑ガ海ニナツ
  テシマッタ場合ハ三十五年間免租ニナ
  ルノデアリマス、是ハ頗ル面倒デス、
  所ガ公用水面ニアッテハ前記ノ通リ、先
  刻申シマシタ如ク七十年、是ハ地租ノ
  二十條ニアルノデアルガ、頗ル不權衡
  デアルト思フノデアリマス、是ハドウ
  云フコトデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=241

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• 242・青木得三

  ○靑木政府委員　先程年期ノコトニ付
  キマシテ私ガ現行法ヲ大體其儘踏襲ス
  ルコトニ致シマシタト云ッタノガ、大變
  惡イヤウニ仰セニナリマシタガ、現行
  法ニモソレ相當ノ理由ガアルト思ヒマ
  ス、只今御話ニナリマシタヤウニ官有
  地ノ水面ヲ埋立テマシテ民有ニナリマ
  シタ場合ト、ソレカラ民有ノ池沼ヲ埋
  立テマシテサウシテソレガ他ノ地目
  ニナリマシタ場合トニ、斯樣ニ現行法
  ニ於テ區別ヲ設ケテ居リマスル理由
  ハ私共ノ解釋スル所デハ國有地ハ從
  來モ何等地租ヲ負擔セザル土地デアッ
  テ、ソレカラ今度地租ヲ負擔スル土地
  ニナリマスケレドモ、一方ニ同ジク地
  租ヲ負擔スル土地ガ直グ負擔スル土地
  ニ變ルト云フ時ニハ恐ラク察スル所現
  行法ニ區別ヲ設ケタ理由デハアルマイ
  カト思ヒマス、ソレカラ尙ホ只今ノ荒
  地ノコトノ御話ガゴザイマシテ、御〓
  里デアリマスカ、附近ニサウ云フ經驗
  モアルト云フコトヲ伺ッタノデアリマ
  スガ、此荒地ノ中ニ若シ今御話ニナリ
  マシタヤウナ、スッカリ水ガ被ッテシマ
  イマシテ、海トカ湖トカ云フヤウナモ
  ノニナリマシタ場合ニ於キマシテハ、
  其三十五年ノ年期ガ滿了致シマシタ時
  ニ、其土地ガドウ云フ狀況デアルカト
  云フコトヲ考ヘマシテ、其時ニモ尙ホ
  其狀況ガ不變デアッテ到底地租ヲ課ス
  ルヤウナ狀態デナケレバ、ソレハ最早
  海、湖、又ハ河川トナッタモノト看做ス
  ト云フ規定ヲ置キマシタカラ、結局三
  十五年經チマシテモヤハリソレニ地租
  ハ課ラナイコトニナリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=242

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• 243・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　サウスルト私更ニ伺ヒマ
  ス、唯海ニナルト云フノデスカ、例
  バ名古屋ノ附近ニアリマスモノナドハ
  何十町步ト云フモノガ海嘯ガ來テ、サ
  ウシテソレガ海ニナッテ居ル、水ガ引キ
  マスルト稍形體ガ出テ來ルガ大體海デ
  アルソレヲ三十五年間ハ地租ハ免租
  ト云フコトニナッテ居ル、三十五年ヲ過
  ギルト云フト海又ハ川ニナッタモノト
  認メルト云フノデスガ、サウスルト海
  川ニナッタモノハ誰ノ川デ誰ノ海デア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=243

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• 244・青木得三

  ○靑木政府委員　ソレハ法律論トシテ
  ハ餘程問題ノアル點デアリマシテ、ソ
  レハ民法上其所有權ヲ失フト云フヤウ
  ナコトニ相成リマスト云フト大變ニ
  重大ナ問題ニナリマスカラ此五十五條
  ノ第三項ニ於キマシテ「本法ノ適用ニ
  付テハ海、湖又ハ河川ト爲リタルモノ
  ト看做ス」、卽チ地租ヲ課シマセヌ、卽
  チ地租法ハ地租ヲ取ルコトニ關スル規
  定デアリマスカラ、其民法上ノ所有權
  ニハ決シテ立入リマセヌデ、本法ノ適
  用ニ付テハ海、湖又ハ河川トナルモノ
  ト規定致シタノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=244

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• 245・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　是ハ二ツノ不合理ガアル
  ト思フ、第一ハ公有水面ヲ埋立テ、自
  分ノ物トスルヤツハ七十年間免租ニス
  ルソレカラ自分ノ田畑ガ海水ノ爲ニ
  埋ッテシマッタ場合ハ三十五年免租ニシ
  テ、ソレカラ海ニナッタモノト認メル、
  然ラバ海ニナッタノハ誰ノ物カ、但書ニ
  「海、湖又ハ河川ト爲リタルモノト看做
  スレトアルノデアリマスガ、只今ノ地
  租條例ニ依リマシテモ二十四條ニ「川
  海、湖ニ歸スルモノトス」トアルノデ
  アリマス、此御渡シニナリマシタ對照
  表ニ依ルト······所ガ、私ハ細カイ法律
  論ハ知リマセヌ、法律ノコトハ知リマ
  セヌガ、海ヤ河ニナルト云フト是ハ國
  家ノ物ニナルト云フコトデアラウト思
  フ、卽チ海、河ヤ斯ウ云フモノニナル
  ト國家ノ物ニナル、所ガサウ云フ物ハ
  コヽノ此地所名稱區別ト云フモノニチ
  ヤント書イテアル、サウ云フ物ハ官有
  デアルト書イテアル、明治七年十一月
  七日太政官布告百二十號デチヤント書
  イテアル、所ガ此地租法ヲ讀ンデ見マ
  スト、サウ云フ法律ヲ廢スルトナルト、
  一體是ハドコニ行クカ、サウ云フモノ
  ハ今マデハ國家ノモノデアル、今度ハ
  ソレヲ取ッテシマッタ、國家ノモノデア
  ルト云フ法律ヲ取ッテシマッタ、私ハ法
  律ノコトハ知ラナイケレドモ、苟モ地
  所ヲ三十五年免租ニシテ海又ハ川ニ歸
  スルト云フコトガアリマスガ、是ハ-
  體誰ノモノニナルカ、私ハ法律論ハ知
  ラナイガ、國家ガ取ッテシマウノヂヤ
  ナイカト思フ、ドウ云フモノデアルカ
  ト云フコトヲ伺フ、地所名稱區別トカ
  云フモノヲ廢止サレテシマウ、サウス
  ルト一體ドコノモノニナルカ、之ヲ的
  確ニ自分ノモノデアルナラバ、海又ハ
  川ニナッテモ自分ノモノデアル、個人ノ
  所有デアルト云フナラバ、ドコカニ之
  ヲ明記シナケレバナラヌヤウニ思フノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=245

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• 246・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、成程
  現行法ニ於キマシテハ「他ノ地目ニ變
  セサルモノハ川、海、湖ニ歸スルモノト
  ス」ト書イテアリマシテ、卽チ此地租
  法ヲ制定致シマス時ニ、此條文ヲ能ク
  讀ンデミマスト、アナタノ御議論ノヤ
  ウニ一體所有權ハドウナルダラウカ
  ト云フコトハ、此二十四條ノ規定ニ於
  テハ甚ダ曖昧デアリマス、所ガ今ノ地
  所名稱區別ノ方カラ云フト、或ハ官有
  ニナルカノ如キ感ジモ致シマスルカ
  ラソレハ土地ノ所有權ニ關スルコト
  ヲ地租法ニ於テ規定スルト云フコト
  ハ法律論ト致シマシテハ甚ダ不穩當
  ノコトデアリマス、ソレデアリマスカ
  ラシテ地所名稱區別モ廢止ヲ致シマシ
  タ、サウシテ新法ニ於キマシテハ單ニ
  「本法ノ適用ニ付テハ海、湖又ハ河川ト
  爲リタルモノト看做ス」ト書キマシタ
  カラ、其土地ノ所有權ニ付テハ一般ノ民
  法ノ原則ニ依リマシテ、民法上ノ權利
  ニ依ッテ定マルコトデアリマシテ、地租
  法ノ規定スルコトデモアリマセヌシ、
  又私共大藏省主稅局デ取扱フ事柄デモ
  アリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=246

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• 247・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　此點ハ私ハ分ラヌデ御伺
  ヒシタノデアリマシタ、アナタ方ノ間
  違ダト云フテ反對モ非難モシテハ居ラ
  ヌ、伺フ積リデアリマシタガ、ソレデ
  所有權ハ失ハレルコトハアリマセヌ
  カ.モウ一度念ヲ入レテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=247

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• 248・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、地租
  法ノ「本法適用ニ付テハ海、湖又ハ河
  川ト爲リタルモノト看做ス」ト規定シ
  タル爲ニ、所有權ガナクナリ、或ハ其
  他ノ關係ニ於テ所有權ガ無クナルカナ
  ラヌカハ、ソレハ地租法若クハ私共ノ
  關係スル所デハアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=248

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• 249・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　是ハ大藏省デサウ云フ御
  言明ヲ得タ所ガソレハドウナルカ、私
  共ノ言明スル所デアリマセヌト答ヘラ
  レルガ、此何十町步ト云フモノガ海ニ
  ナルコトガアル、現ニ名古屋ノ附近ニ
  何十町步ト云フモノガアルノデアリマ
  スガ、是ハドウナッタカ分ラヌガ、是ハ
  私ハ疑問トシテ置キマス、アナタニ聽
  イタ所ガアナタガサウ思フト云フダケ
  デアッテ、此地目名稱區別ヲ廢止ナサツ
  タト云フコトハドウカト思ヒマスガ、
  此問題ハ私ハ〓究問題トシテ明日マデ
  御〓究ヲ願ヒタイ、是ハ大キイ問題デ
  アリマスガ故ニ、私ハ實際上ノ經驗カ
  ラ申上ゲルノデス、モウ一ツハ極ク小
  サイ問題デスガ申上ゲテ見タイ、地租
  法第三十二條ニ「分筆ヲ爲シタルトキ
  ハ測量シテ各筆ノ地積ヲ定ム」ト斯ウ
  アルノデアリマスガ、斯ウ云フコトガ
  出來ヌ場合ハドウスルノデアリマスカ、
  「分筆ヲ爲シタルトキハ測量シテ各筆
  ノ地積ヲ定ム」トアルガ、分筆ガ出來
  ヌ場合ガアルガ、サウ云フ場合ハドウ
  シマス、是ハ詰ラヌヤウデアリマスガ、
  實際問題デス

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• 250・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヘ申シマス前
  ニ一寸御伺ヒシタイノデアリマスガ、
  分筆ガ出來ナイ場合ト云フコトハ私共
  ハナイヤウニ思ヒマスガ、ドウ云フ場
  合デスカ

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• 251・加藤鐐五郎

  ○加藤委員　幸ヒ農林省ノ御方ガ御ヰ
  デニナリマスカラ、農林省ノ方カラ伺
  ヘバ宜シイノデスガ、サウ云フコトガ
  アル、耕地整理ノ時アル、事實ヲ私ノ方
  カラ申上ゲマスガ工事ニ著手シタル時
  ハドウシテ分ケル、是ハ分ラナイノデア
  ルソレデサウ云フ場合ハ特別ニ但書
  デモ御置キニナラヌト測量ノ出來ナ
  イ場合ガアル、皆工事中ニ毀シテ仕舞ツ
  テ居ル場合ガアル、是ハ今ドウト云フ
  コトハ言ハナイ何レ明日マデニ御〓究
  ヲ願ッテ、折角地租法ヲ御設定ニナッテ
  斯ウ云フ缺陷ノ穴ダラケ、農林大臣ハ
  自己ノ方ハ他ニスッカリ鼻毛ヲ拔カレ
  テ御存ジガナイ、大藏省ナドモソレヲ
  知ラズニヤッテ居ル、十年ノ奴ヲ二十年
  ニシテ居ル、違ッタ解釋ヲシテ居ル、ソ
  レダケ政府ガ增收ニナル譯デ、不豫想
  利得、是ハ豫想セザル利得ト云フコト
  ニ相成ルノデアリマス、尙ホ色々言ヒ
  タイ事ガアリマスガ、私ハ一應是デ質
  疑ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=251

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• 252・高橋熊次郎

  ○高橋委員　只今ノ川成地ト言ヒマス
  カ、川ト見做スト云フ方面ニ付テハ、
  大藏省ハ不確實ノヤウデアリマスルカ
  ラ、今日ノ此質問ノ終ルマデニ於テ司
  法當局カラ御說明ガアッテ、是ノ解釋ヲ
  確定シテ置イタラドウカト私ハ思フノ
  デアリマス、ソレカラ農林大臣ニ御注
  意マデニ申上ゲテ置キタイノデ極ク、
  分間カ二分間、簡單ニ申上ゲマスカラ
  能ク御忘レニナラナイヤウニ御聽キ下
  サイ、アナタハ開墾地ト云フモノハ大
  部分ハ耕地整理ニ依ルモノダト云フヤ
  ウナ、サウ云フ間違ッタコトヲ言フト
  云フノハ何事デアルカ、耕地整理ニ依
  ルモノハ極ク一部分シカナイノデアリ
  マス、耕地整理ニ依ルモノハ規定ガアツ
  テ、アナタノ言フヤウニ、耕地整理法ニ
  依ル開墾ト云フモノハ極ク僅デアル、
  件數カラ言ッテモ面積カラ言ッテモ、耕
  地整理法ニ依ラザル所ノ開墾ト云フモ
  ノガ大部分ヲ占メテ居ルノデアリマス、
  ソレデアリマスルカラ、サウ云フ僅カ
  ナコトデアルカラ、自分ハ考ヘナカツ
  タ、〓究シナカッタト云フヤウナ、ソン
  ナ馬鹿ナコトハ農林大臣トシテ言ハレ
  ベキモノデナイ、其一ツデサヘモ農民
  ノ代表デナイト云フコトヲ裏書スルヤ
  ウニナッテ居リマスカラ、モウ少シ御用
  意ニナッテ此議會ニ於テ言論ヲナサレ
  ンコトヲ私ハ特ニ農民ノ爲ニ、アナタ
  ニ御註文ヲ申上ゲテ、私ノ質問ハ折切
  リマス

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• 253・本田恒之

  ○本田委員長　是ニテ休憩致シマシ
  テ、八時ニ開キマス
  午後六時四十二分休憩
  午後八時十七分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=253

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• 254・本田恒之

  ○本田委員長　休憩前ニ引續キ開會致
  シマス-海老澤君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=254

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• 255・海老澤爲次郎

  ○海老澤委員　私ハ織物消費稅法中改
  正法律案ニ付キマシテ、僅ナ一事項デ
  ゴザイマスガ、大藏當局ニ御尋致シマ
  ス、此織物消費稅法ガ若シ本法通過ノ
  上、實施ノ曉ニハ、自然其當該織物ノ
  價額ハ當然ソレニ相當スルダケノ低下
  ヲ見ルモノダト存ゼラレマスガ、之二
  對スル當局ノ所見ハ如何デアリマセウ
  カ、先ヅ其所見ヲ御伺致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=255

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• 256・井上準之助

  ○井上國務大臣　當然低下スルモノト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=256

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• 257・海老澤爲次郎

  ○海老澤委員　大臣御答辯ノ如ク私モ
  確信シテ居リマス、而シテソレハ卽チ
  法ノ精神カラ見テ左樣ナ效果ノ擧ガル
  モノト信ジマス、然ル場合ハ自然其際
  ニ其織物ヲ現在所有致シテ居リマス
  所ノ當業者ハ、當然其價額ノ低下ニ連
  レル所ノ損害ヲ被ムルノデアリマス
  ガ是ハ申スマデモナク一般物價ノ低
  落ヨリ來リマスノデゴザイマセヌ、法
  令改正實施ノ結果現レテ參ル損害デア
  リマス、之ニ對シテ當局ハドウ云フ御
  處置ヲ執ルノ御考デゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=257

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• 258・井上準之助

  ○井上國務大臣　如何トモスルコトノ
  出來ナイコトデアリマシテ、又從來モ
  斯樣ナ場合ハ常ニアリマスコトデアリ
  マス、例ヘバ關稅ヲ上ゲマスニシテモ
  下ゲマスニシテモ、或ハ見越輸入トモ
  謂フヤウナコトモアリマセウ、今度ノ
  織物消費稅ノ如キハ大體ヲ謂ヒマスト
  免稅ノモノモ多ウゴザイマス、又全體
  ヲ通ジテ絹物ニ對シテノ稅デスガ、其
  値段ノ點モ餘程豫想サレテ居ルダラウ
  ト思ヒマス、恐ラクハ今後ニ於ケル取
  引ハ、四月一日カラ後ノ分ガドウト云
  フコトハ含マレテ居ルダラウト豫想シ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=258

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• 259・海老澤爲次郎

  ○海老澤委員　成程或ハ當業者ノ取引
  關係ニ於キマシテハ、旣ニ此案ノ當然
  通過スベキコトモ豫想サレテ居ルカモ
  知レマセヌ、從ヒマシテ又其分量以上
  ニモ一體ニ亙ッテ下落ノ趨勢ヲ辿ッテ居
  ルモノモアリマス、デアリマスカラ旣
  ニソレデ見越シテソレ位ノ低落ヲ見ル
  ヤウナ都合モアルカモ知レマセヌ、併
  ナガラソレハ一般ノ取引關係カラ起ル
  低落デアリマスカラ、法ノ實施ノ結果
  トシテ損害ヲ被ムル者モ、ソレアルガ
  爲ニ構ハヌデ宜イ、斯樣ナコトハ甚
  ダ不合理デハアルマイカ、私ノ承知シ
  テ居リマス所デ申シマスト、抑〓此織物
  消費稅ヲ實施致シマスル當初ニ於キマ
  シテハ悉ク織物ノ手持品ニ對シテ相
  當ノ取調ヲ致シ全國悉ク手持品ノ當
  業者ニ課稅シテ其稅金ヲ徵收シテ居リ
  マス、其時ニ若シ手持品ヲ、自然ノ價
  格ノ增減ニ伴フ儘ニ打捨テヽ置カレマ
  シタナラバ、今日ノ低落ニ付キマシテ
  モ、持品ガアッテモ、-當業者其人ハ
  變ッテ居リマシテモ、理窟上ハ變リナイ
  ト思ヒマス、旣ニ一番初メニ此法ヲ施
  行スル時ニ、左樣ナコトガアッタノデア
  リマス、當業者ヲ悉ク調査シテ、ソレ
  ニチヤント賦課徵收シタノデアリマ
  ス、然ルニ玆ニ來テカラ、此損害ヲ見
  ルト云フコトハ如何トモ致方ガナイ、
  拾置イテ可ナリト云フコトハ、全ク不
  合理デアリ、思ハザルノ甚シキモノデ
  ハナイカト存ゼラレマス、此點ニ付テ
  モウ一段ノ御考慮ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=259

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• 260・井上準之助

  ○井上國務大臣　過去ノ事ヲ、私ハ甚
  ダ不敏ニシテ聞イテ居リマセヌカラ、
  政府委員カラ一寸御答致サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=260

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• 261・青木得三

  ○青木政府委員　御答ヲ致シマスガ、
  此處ニ詳細ナル記錄ヲ持ッテ居リマセ
  ヌケレドモ、私ノ聞覺エニハ、只今海
  老澤サンノ仰セニナリマスコトハ、明
  治三十七年四月デアリマスカ、非常特
  別稅トシテ織物消費稅ヲ實施セラレタ
  時ニ、其後ニ生產サレル織物ダケニ稅
  ヲ課シタノデハナクシテ、法律施行當
  時ニ於テ、マダ消費者ノ手許ニ渡ッテ
  居ラナイ物ニ對シテ課稅ヲシタト云フ
  コトヲ聞及ンデ居リマス、又多分私ノ
  聞及ンデ居ル所ニ誤リハナカラウト思
  ヒマスガ織物消費稅ニ付キマシテハ
  御承知ノ如ク、三箇月ノ延納期間ガゴ
  ザイマス、ソレデ本法ハ御承知ノヤウ
  二、法律案ニ書イテアリマスヤウニ、
  昭和六年ノ十二月一日カラ之ヲ施行ス
  ルコトニナッテ居リマス、ソコデ私共ノ
  考デハ、十二月一日カラ施行スルト云
  フコトニナリマスト、十一月、十月、九
  月等ニ至リマスト、十二月カラハ減稅
  ニナルカラ、或ハ或ル物ハ免稅ニナル
  カラト云ッテ、自然其査定ヲ延期スル、
  取引ヲ遲延スルト云フコトニナリマス
  カラ、只今御心配ニナルヤウナ非常ナ
  大キナ損害ヲ與ヘルト云フコトハナイ
  ノデハナイト思ヒマス、詰リ稅金ヲ旣
  ニ納メタ品物ガマダ生產者ノ手許カラ
  消費者ノ手ニ移ラナイ間ニ此稅法ガ實
  施セラレテ、サウシテ稅ヲ納メタ品物
  ノ値段ガ下ッタト云フコトガ此稅法改
  正ノ結果起リマス損失ト言ヘバ損失ト
  言ハレルダラウト思ヒマスガサウ云
  フモノガ非常ニ澤山アルヤウニハ考ヘ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=261

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• 262・海老澤爲次郎

  ○海老澤委員　重ネテ御尋スルノモ甚
  ダ何デアリマスガ、此稅法ノ初メテ施
  行サレマシタ當時ノコトヲ只今明治三
  十七年ノ四月ノ其當時ノ狀況ヲ御覽ニ
  ナッタヾケデ深ク實施ノ有樣ヲ御承知
  ニナッテ居ラヌト云フ事柄ガ、自然只今
  御尋ノ如キ有樣デアルダラウト想像サ
  レマス、其當時ノコトヲ私ハ詳シク之
  ヲ知ッテ居リマス、當時立法府ニハ固ヨ
  リ立ッテ居リマセヌデシタガ、事情ハ詳
  シク知ッテ居リマス、悉ク全國ノ商人、
  機業家ハ勿論ノコト仲買、問屋、小商
  人、繭賣商人、小裂ヲ一尺賣ル者モ、
  其小裂ニ至ル迄モ一尺ドレ位ト云フ風
  ニ各稅務署ノ手ヲ經テ、稅務官吏立會
  ノ上悉ク調べ、非常ナ面倒ナ手續ガア
  リマシタ、ソレハ全ク容易ナラヌ手續
  デアリマシタ、其面倒ナ手續ヲ經テ國
  民ハ悉ク稅務官吏ノ確カナル承認ヲ得
  テ、之ニ相當スル其當時ノ實施上ノ課
  稅ヲ受ケテ徵收サレテ居リマス、ソヨ
  デ只今御答辯ニアリマス如ク、其損害
  ハ極メテ僅カデアラウ、或ハ左樣デア
  リマセウ、私モサウ思ヒマス、併ナガ
  ラ餘リニ損害ノ輕微ナルガ爲ニソレハ
  シナイデ宜イ-只今ノ御答辯ノ中ニ
  モ機場ヤ何カノ關係、大キク言ヘバ「モ
  スリン」會社ノ如キモヤハリ同樣デア
  リマス、或ル大キナ組織ト小サナ組織
  ニ論ナク、兎ニ角織控ヲスル、是等ハ
  モウ旣ニ提案サレテ居リマスル法案デ
  アルカラシテ、之ヲ見越シテ織控ヲス
  ル斯ウ云フコトモアリマセウケレド
  モ、現在ニ於テ夏織物ノ如キ、或ハ中
  形ノ如キ、染付ヤ何カ決シテ之ヲ捨テ
  テ置ケナイ、ソレガアルガ爲ニ此法案
  ノ通過ヲ夢見テ打捨テヽ置クコトハ出
  來ナイ、ソレデ相當ナ數ヲ取引サレテ
  機屋、加工場ニ廻ッテ居ル許リデナク、
  勿論小商人ノ手ニモ渡ッテ居ル是等ハ
  寧ロ憐ナル商人ノ手ニ渡ッテ、相當ナル
  損害ヲ免レルコトガ出來ヌ、ソレ故ニ
  最初ニ於テ左樣ナ實施ノ時ニ取ッテア
  ル稅金デアルカラ、謂ハヾ現在取ッテア
  ル稅金ハ現在ノ所有者ハ此改正法律實
  施ノ曉ニハ戾稅ト申スト語弊カ知リマ
  セヌガ、戾稅スベキヤウナ意味ヲ以テ
  相當補償的ニ致サナケレバナラヌモノ
  ダト私ハ信ズルノデアリマス、本法ノ
  精神ハ、此條文ノ改正ヲシナクテモ左
  樣ナコトハ私ハ出來得ルモノダト思ヒ
  マシテ此御尋ネヲシタノデアリマス、
  若シ大臣ガ既ニ左樣ナ御答辯ノヤウニ
  此最初ノ實施當時ニ於ケル情況ヲ更ニ
  御承知ガナク、隨テ漫然之ニハ氣ヲ留
  メナカッタト云フノデアリマシタナラ
  バ、深ク其當時ノ情況ヲ御穿鑿下サイ
  マシテ、是等憐ムベキ小商人ノ手ニア
  ル持合品、一切ノ全國ニ於ケル當業者
  ノ損害ヲドウシテモ補償シテヤリマス
  ルヤウニ一ツ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=262

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• 263・松本忠雄

  ○松本委員　先般來織物消費稅ニ付テ
  色々ナ御質疑ガアリマシタガ、私モ或
  モノニ付テ政府ノ御所見ヲ伺ッテ置キ
  タイノデアリマス、卽チ今度ノ改正ニ
  依ッテ四十七番手ノ麻織物ハ全部無稅、
  比較的上層階級ニ用ヒラレル純麻ノ白
  「リンネル」ノ洋服地ノ如キモノガ全部
  無稅トナッタノデアリマス、然ルニ同ジ
  ク麻織物ニシテ値段モ安ク實際ニ於テ
  一般大衆ニ使用セラルヽ「ラミー」織物
  類ハ大體八十番手ノ絲ヲ使用スル爲ニ
  免稅ノ恩典ニ浴シテ居ラヌノデアリマ
  ス、其間聊カ權衡ヲ失スルヤノ感ガア
  リマスガ、私共ハ決シテ今日此不權衡
  ヲ云々ショウトスル者デハアリマセ
  ヌ、唯將來織物消費稅ニ對シ改正ヲ加
  ヘラルヽヤウナ場合ニハ、此點ニ付テ
  何等カノ御考慮ヲ得ラルベキヤ否ヤノ
  御言明ヲ此場合ニ得ラレマスレバ仕合
  セト存ズルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=263

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• 264・井上準之助

  ○井上國務大臣　只今ノ松本君ヨリノ
  御注意ノ點ハ度々申上ゲマスヤウニ、
  昭和六年度ニ稅ノ全體ニ亙リマシタ調
  査ヲ致ス積リデアリマス、御注意ノ點
  ニ付キマシテハ重要ナ事項トシテ一ツ
  調査致シマシテ、左様ナ不權衡ノ點ガ
  アリマシタナラバ何トカ處置ヲ執ルヤ
  ウナコトニ考ヘタイト思ッテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=264

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• 265・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私モ控ヲ持ッテ來マシタ
  ノデ、朗讀的ニ質問ノ要點ダケヲ述べ
  マスカラ、成ベク時間ヲ喰ハナイヤウ
  ニ御答辯ヲシテ戴キタイト思ヒマス、
  是ハ大臣カラ御答辯ヲ願ヘレバ結構デ
  アリマスケレドモ、靑木局長カラデモ
  宜シウゴザイマス、是ハ數字ニ亙ル問
  題デアリマスルカラ、若シ私ノ質問ガ
  御理解ガ行カナカッタラ此處ニ鉛筆書
  キニシタモノガアリマスカラ、御手許
  へ差上ゲテモ宜シウゴザイマス、私ハ
  本會議ニ於テモ之ニ觸レタノデアリマ
  スガ、賃貸價格二百圓未滿ノ免租地、
  之ニ伴フ所ノ減額ト云フモノニ付テ疑
  義ヲ挾ンデ居ルノデアリマス、今囘ノ
  地租ノ減免ノ跡ヲ數字的ニ考ヘテ見マ
  スルト、免稅點ガ上ッタ、上ッタト言フコ
  トハ是ハ語弊ガアリマスカモ知レマセ
  ヌケレドモ、詰リ地價二百圓未滿ノモ
  ノガ賃貸價格ノ二百圓ニナッタト云フ
  コトハ、舊地價ニ依ルト二百四十圓位
  デアル、四十圓ト云フ隔リガ現レテ參
  ル、基本數字ニ於テソレダケ地租ヲ課
  稅サルベキモノガ、改正ニ依ッテ滅ズル
  譯ニナル、卽チ改正法ニ於ケル所ノ賃
  貸價格二百圓未滿ノ免租地ト云フモノ
  ハ田畑合計デ以テ大約百五十二萬町步
  ニナル、之ヲ詳シク申シマスナラバ
  材料ニアリマス通リニ百五十二萬一千
  二百二十一町步、卽チ現行ノ地價二百
  圓未演ノ免租地ト云フモノハ約百三十
  萬町步、詳シク申上ゲマスレバ百三十
  萬二千八百九町步、ソレデアルカラ差
  引スルト、二十二萬町步ノ增ニナルノ
  デアリマス、此增ニ對スル所ノ稅額ト
  云フモノハ當然減ルベキ筈デアルノガ
  減ラナイ、斯ウ自分ハ考ヘルノデアリ
  マス、ソレデ私ハ斯ウ云フ計算ヲヤッテ
  見タ、此免租地ノ增反別ニ對シテ地租
  ハドノ位ニナルカト云フコトヲ計算シ
  テ見マスト云フト、此表ニ現レテ居リ
  マス自作農ニ對スル免租稅額ト云フ
  モノハ、現行法ニ依ルト七百三十九萬
  圓ニナッテ居ル此七百三十九萬圓ニ二
  十二萬町步ヲ掛ケテ、之ヲ百三十萬町
  步デ割ッテ見ル、サウスルト百二十五萬
  圓ト云フモノガ出テ參ルノデアリマ
  ス、改正法ニ依リマスト、是ガ七百八
  十二萬圓ニナリマスカラ、二十二萬町
  步ヲ掛ケテ之ヲ百五十二萬町步デ割レ
  バ、百十三萬圓ト云フモノガ出テ來ル、
  是ハ三·八デヤッタノデ、之ヲ四·八ノ今
  迄通リデヤルト百二十五萬圓、是ダケ
  ガ當然減ズルコトニ相成ル、斯ウ云フ
  吾々ハ考ヲ持ッテ居リマス、ソレデアリ
  マスカラ此二十二萬町步ト云フモノ
  ハ、當然課稅ノ基準ノ減ジタルモノデ
  アルカラ、此基準ガ減ズルダケ、ソレ
  ダケノ段別ガ減ジテ居ルカラ之ニ對ス
  ル所ノ地租ト云フモノハ當然ソレダケ
  除外サルベキモノデアル、斯ウ考ヘテ
  居ルノデアリマス、然ルニ全體ヲ計算
  シテ見ルト是ハ減ジテ居ラナイ、計算
  ニ於テ百二十五萬町步ニナッテ居ル、又
  實際此全體ヲ計算シテ見タ表ニ依ルト
  云フト、全體ノ有租地ノ總段別ト云フ
  モノガ千六百八十二萬町步ニナッテ居リ
  マス、是ハ總體デアリマス、全部ノ有租
  地ノ面積ハ千六百八十二萬町步ニナツ
  テ居リマス、ダカラ百三十萬町步ノ免
  租地ヲ-現行法ニ依ッテヾアリマス、
  引クト云フト、其課稅段別ト云フ
  モノハ千五百五十二萬町步ニナル、之
  ニ對スル地租額ト云フモノハ表ニアリ
  マス通リニ、六千七百六十六萬七千圓
  ニナルノデアリマス、ソレデ之ヲ一町
  步當リニ前ノモノデ割フテ見マスト一町
  步當リガ四圓三十六錢ニナル-全體
  ノ總平均ガ······之ヲ改正法ニ依ルト云
  フトドウナルカト云フト、表ニ依ッテ見
  マスト改正法ニ依ル所ノ總面積ハ同ジ
  ク千六百八十二萬町步、ダカラ免租地
  ガ今度ハ殖エテ百五十一一萬町步ニナツ
  テ居ルカラ、之ヲ差引マスレバ、其殘
  リハ改正法デ幾分ハ減リマシテ、是ガ
  千五百三十萬町步ニナルノデアリマ
  ス、其地租ヲ見マスト是ガ六千七百五
  十四萬五千圓ニナル、是ハ皆表カラ出
  テ來ル數字デアリマス、ソレデアリマ
  スカラ段別デ之ヲ割ッテ見ルト一町步
  當リノ金額ガ四圓四十一錢四厘七毛ト
  云フコトニナル、之ヲ差引キマスト一
  町步當リデ五錢四厘七毛ト云フ差ガ出
  テ來ル、此五錢四厘七毛ト云フモノハ
  當然是ハ地租ヲ課稅サレル所ノ基本ガ
  減ッテ居ルノデアリマスカラ、是ダケハ
  ドウシテモ減ラナケレバナラヌ、ソレ
  デアリマスカラ此一町步五錢四厘七毛
  ト云フモノヲ總段別ノ千五百三十萬町
  步ニ掛ケテ見ルト八十三萬六千九百圓
  ト云フモノガ出來テ參ル、是ハ當然減
  ゼラルベキ筈ノモノガ減ゼラレナイト
  云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマス
  是ハ私ハ不當ニ課稅ヲ受ケタモノデア
  ルト斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
  是ハ當然減ゼラルベキモノガ減ゼラレ
  ナイデ、實際免稅點ガ上ッタ爲ニ減ゼラ
  ルベキモノガ依然トシテ減ゼラレズニ
  他ノ頭ノ上ニ負ハサレテアルノデア
  ル、斯ウ考ヘルノデアリマス

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• 266・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、本會
  以來色々御話ガゴザイマシテ、今日御
  話ノ點ヲ諒解シ得タヤウニ思フノデア
  リマス、詰リ御話ハ元ハ自作農ノ地價
  二百圓ガ免稅點デアッタ、ソレヲ賃貸
  價格二百圓ニシタ、ソレデアルカラ此
  自作農免除ノ段別ガ殖エテ居ル、サウ
  スレバ地租ノ課カル所ノ段別ハ減ッタ
  譯デアル、サウスルト一段步當リヲ出
  スト、地租ノ金額ガ殖エテ居ル、殖エ
  テ居リマスノハ、當然減ゼラルベキモ
  ノデナイカ、斯ウ云フ御話デアリマシ
  テ、御話ノ筋ハ私御尤ト思ヒマス、唯
  私共計算ニ依リテ地租ヲ增減ナカラシ
  ムルト云フノハ、今ノ自作農ノ免除デ
  アリマストカ、或ハ激增制限ト云フヤ
  ウナモノヲ、スッカリ計算ニ入レタ其末
  ノ金額ヲ增減ナカラシムルト云フコト
  ニ致シタカラ、ソレデ丁度先程御議論
  ニナッテ居リマシタ激增制限ヲスルト
  云フト其制限ヲセラレタ結果ト云フ
  モノハ一般他ノ地主ノ負擔ニナルデ
  ハナイカト云フヤウナ御說ト結局同ジ
  デアリマシテ、詰リ自作農免除地價二
  百圓ガ賃貸價格二百圓ニナッタ爲ニ、ソ
  レガ爲ニ自作農ノ免除サレル段別ガ殖
  云々、ソレデアルカラ其殖エタダケハ
  一般ノ地主ガ之ヲ負擔スル、ソレハ總
  額ニ於テ增減ナカラシムル爲ニ、サウ
  云フ結果ニ相成リマス、ドウモ總額ニ
  於テ增減ナカラシムルト云フコトヲ、
  自作農免除ト云フコトヲ考慮ニ入レテ
  ヤリマシタカラ、此私共ノヤリ方ハ已
  ムヲ得ナイト思ヒマスガ、高橋サンノ
  仰セニナルコトハ其通リノヤウニ私ハ
  了解致シマス

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• 267・高橋熊次郎

  ○高橋委員　此以上ハ議論ニナルカラヽ
  其事ヲ御認メ下サレバ私ハソレデ宜シ
  ウゴザイマス、ソレデ何レ又討論カ何
  カノ機會ニ於テ是ハ論ジタイト思ッテ
  居リマス、ソレカラ極ク簡單デアリマス
  カラ大藏大臣ニ御尋ヲスルノデアリマ
  スガ、大藏大臣ハ常ニ色々御說ヲ天下
  ニ御發表ニナルト云フコトハ、立憲政
  治家トシテ洵ニ其當ヲ得タ事ト思ッテ
  吾々ハ喜ンデ居ルノデス、喜ンデ居ル
  事デアリマスガ、時々大變宣傳ニ都合
  ノ好イヤウナ事實ヲ拾ヒ集メラレテ御
  宣傳ニナルト云フコトガ間々アルノデ
  ス、故意カ間違カソレハ分ラヌケレド
  モ、ソレデ吾々ハ大ニ迷惑ヲスルノデ
  アリマスガ、一體大藏大臣ハ此海軍ノ
  豫算等ニ於テ十分御〓究ニナッタニ違
  ナイノデアリマスケレドモ、世ノ中ニ
  御發表ニナッタ御意見デ、大分事實ト間
  違ッテ居ルデハナイカト思フヤウナ事
  ヲ御發表ニナッテ居ルノデアリマス、詰
  リ今此豫算ニアリマス所ノ海軍ノ補充
  計畫ト云フモノハ、條約デ以テ獲得シ
  タル權利ハ三億七千四百萬圓ノ經費デ
  以テ全部此計畫ハ實行出來ルンダ、其
  他ニ「オプシヨン」トシテ權利ガアル
  モノモ是モ大部分實行シテ居ルンダ、
  其他ニモ又航空隊ノ增勢增設ト云フヤ
  ウナ事ナドモ決行シテ居ルノデアル、
  ソレデ此三億七千四百萬圓デ賄ヒ得タ
  ト云フ、ソレデ五億八百萬圓ノ保留財
  源カラ之ヲ引イタ億三千四百萬圓ヲ
  減稅ニ充テルンダ、大分之ニ付テハ骨
  ガ折レタ、斯ウ云フヤウナ御意見ヲ御
  發表ニナッテ居リマスガ-斯ウ云フ
  意見ヲ御發表ニナッタコトハ御記憶ニ
  ナルダラウト思ヒマスガ、如何デアリ
  マスカ

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• 268・井上準之助

  ○井上國務大臣　其通リデアリマシ
  テ、今マデモ左樣考ヘテ居リマス

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• 269・高橋熊次郎

  ○高橋委員　サウスルト現ニ海軍大臣
  ノ御說明ニ依リマシテモ色々第二次計
  畫ガアルノドウノト云フコトハ別問題
  ニ致シマシテ、吾々ノ謂フ第一次計
  畫-其整備計畫ノ中ニアリマシテ
  モ當然條約ニハマダ驅逐艦ノ如キハ
  十八隻ヲ拵ヘ得ルダケノ權利ヲ持ッテ
  居ル、其中十二般ダケ造ッテアトノ六
  艘ト云フモノハ後廻シニスル、必要ニ
  應ジテ何時デモ之ヲ拵ヘルンダ、ソレ
  ハ今ノ豫算ニ上ッテ居ル所ノ三億七千
  四百萬圓ニハ含ンデ居ラヌ、サウト吾
  吾ハ解釋致シテ居ルノデアリマスガ、
  是ハ含メテ御計算ニナッテ居ルノデア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=269

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• 270・井上準之助

  ○井上國務大臣　今般議會ニ提出致シ
  マシタ海軍ノ艦艇製造費二億四千七百
  萬圓デ海軍ノ計畫ハ是デ今般ハ宜シ
  イ是ハ只今ノ所デ此上實行スルコト
  ハナイ、例ヘバ十一年前ニドウ云フ器
  具ヲ幾ラ据付ケテドウトカ云フコトハ
  海軍大臣カラ度々申上ゲタ如ク、只今
  計畫ガ立ッテ居ナイガ、其以外ノモノハ
  此計畫デ宜シイ、又航空隊ノ擴張ノ如
  キモ相當ニ出來テ居ル、斯ウ云フコト
  ニ考ヘテ居ルノデアリマス

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• 271・高橋熊次郎

  ○高橋委員　左樣ナ事ハ此議會デ吾々
  ハ海軍大臣カラ承ッテ居リマセヌ、此條
  約ト云フモノヽ中ニハ驅逐艦ノ六隻ハ
  必ズ含ンデ居ル、之ヲ後廻シニシタト
  云フコトヲ吾々ハ屢〓承ッタノデアリマ
  ス、大藏大臣モ是等ノ事ハ當然御承知
  置キノ筈ダト吾々ハ考ヘテ居ルノデ
  ス、其他ニマダ私共ハ是カラ洩レテ居
  ル、將來建造スルト云フモノハ相當ニ
  アルダラウト思フノデス、ソレデ私ハ
  後デ他ノ方カラ補充シテ戴キマスカ
  ラ、駈足デ行ッテシマヒマスガ、當然此
  驅逐艦六隻ト云フモノハ、條約デ以テ
  千九百三十六年マデニ完成シ得ル建造
  艦ノ總數ノ中ニ這ッテ來ルベキモノ
  中デ後廻シサレタノダ、第二次補充計
  畫ト云フモノヽ中ニ入レタンダ、サウ
  スレバ是ダケト云フモノハ當然後デ何
  時カノ機會ニ此六艘ヲ造ルニハ八九千
  萬圓ノ金ヲ要スルノデス、ソレダケノ
  モノハ此條約ニ依ッテ得タル所ノ權利
  ノ中カラ省ケルノデス、ソレカラ「オ
  プシヨン」トシテ有セラルヽト云フケ
  レドモ、私ハ倫敦條約デ日本側デ「オ
  プシヨン」デ取ッタナドヽ云フ權利ハ
  承知致サヌノデアリマス、マダ海軍大
  臣カラ「オプシヨン」デ取ッタナド
  云フコトハ-亞米利加ニハ「オプシ
  ヨン」ガアッテ、例ノ第一型巡洋艦ノ三
  萬噸ト云フノガ「オプシヨン」ニナッテ
  居ラテ、之ヲ小型ノ輕巡洋艦ニ致シマス
  レバ五割增ノ四萬五千噸ノ「オプシヨ
  ンレガアルト云フコトハ聞イテ居リマ
  スガ、日本デ「オプシヨン」ト云フノ
  ハドレダケカ私共ハ記憶致サヌノデア
  リマスガ、大藏大臣ハ「オプシヨン」
  ト云フノハ一體何ヲ指サレテ居ラレル
  ノデアリマスカ

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• 272・井上準之助

  ○井上國務大臣　專門的ノ言葉デアリ
  マスケレドモ、私ガ承知致シテ居ル所
  デハ、今般定メマシタ艦艇ニハソレゾ
  レ艦齡ガアリマス、其艦齡ニ至ラヌマ
  デニ「オプシヨン」トシテ日本ハソレヲ
  新造スルコトガ出來ル、例ヘバ潛水艦
  ノ如キハ一番著イモノデアリマシテ、
  千九百三十六年ニ艦齡ノ來ルモノハ
  ツモナイノデアリマスガ、左樣デヤッテ
  ハ潛水艦ノ如キ技術ノ非常ナ精巧ナコ
  トヲ要シ、技術ノ進步モ要スルノニ數
  年間潛水艦ヲ一切拵ヘヌコトハイカヌ
  カラト云フノデ、艦齡ノ來ナイノニ拘
  ラズ其代換ヲ拵ヘルコトガ出來ルト云
  フヤウナノガ「オプシヨン」ノ一ツデア
  リマス、拵ヘテモ宜シイ、拵ヘヌデモ宜
  シイ、斯ウ云フコトデアルノデアリマ
  ス、其他ニアリマスルヤウデアリマス
  ガ、極ク著シイ例ヲ採リマスルト、左
  樣ナモノヲ「オプシヨン」トシテ居ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=272

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• 273・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私共ハ不明ニシテ左樣ナ
  モノハ「オプシヨン」トシテ日本ガ取ツ
  テ居ルト云フヤウナコトハ、吾々ハ聽
  イテ居ナイコトヲ遺憾トスル次第デア
  リマシテ「オプシヨン」ト云フノハ左
  樣ナモノヲ含ンデ居ナイヤウニ吾々ハ
  考ヘテ居リマス、ソレデアリマスルカ
  ラシテ、此問題ニ付テ私共ガ考ヘマス
  ニ付テ、此處ニ書イタモノガアリマス
  カラ、一寸讀ンデ見マスガ、「經濟往來ㄴ
  ノ二月號ノ附錄トシテ「我國財政及ビ
  經濟ノ現狀トソノ將來」ト題シテ御書
  キニナッテ御投書ニナッタモノデ附錄デ
  アリマスカラ特別待遇ヲ致シテ居ルノ
  デアリマスガ(笑聲)軍縮剩餘金ノ性質
  ナドヲ色々御說キニナッテ「留保財源
  ノ使途」ト云フ所デ色々御說キニナッテ
  「海軍ノ補充計畫ノ詳細ヲ申述ベル自
  由ハナイノデアリマスガ、大體申シマ
  スト、海軍ノ軍縮條約ニヨリ與ヘラレ
  タル權利ノ全部ヲ實行シテ尙ホソレ以
  外ニモ「オプシヨン」ノアリマスモノハ
  大部分實行シテ、ソレ以外ニ航空隊ヲ
  擴張スルノデ、ソレニ依ッテ三億七千四
  百萬圓ノ金ヲ使用スルノデアリマス」
  ト云フヤウナコトガ書イテアルノデア
  リマス、之ヲ今大部分ヲ御實行ニナツ
  タト云フコトデアリマスカラ、私ハ時
  間ノ持合セガナク是ハ大口先輩ガ九時
  カラ御述べニナリ、又木暮君モヤルノ
  デアリマスカラ、其間ニ私ハ駈足デヤッ
  テ居ルノデアリマスガ、兎ニ角私共ハ
  大藏大臣ノ斯ク言フ事ノ中ニ-私モ
  餘リ專門デナイカラ詳シイコトハ後デ
  大口先生ニデモ御賴ミシヨウト思ヒマ
  スガ、兎モ角是ハ何ニ致シマシテモ、
  只今大藏大臣ガ御斷定ニナッタ通リニ、
  條約ニ依ッテ得タル權利ノ全部ヲ行使
  致シタナドト云フコトニ付テハ、私共
  ハ承服ハ出來ヌノデアリマス、私共、ハ
  忙シイノデ海軍大臣ガドレダケノコト
  ヲ此議會ニ於テ御申述ベニナッタカト
  云フコトヲ十分統計的ニハ取ッテ見ル
  暇ハアリマセヌケレドモ、少クトモ驅
  逐艦六隻ト云フモノハ、是ハ問題ニナツ
  タト云フコトハ明カデアリマス、其他
  ニモ條約ノ權利トシテ取ッタト云フモ
  ノハ權利ヲ抛棄シナイト云フ以上ハマ
  ダ澤山アルノデアリマス「オプシヨン」
  ト言ハレタノハ何カ說明サレマシタケ
  レドモ、ソレ以外ニ斯ウ云フコトモ私
  ハ其當時考ヘラレタノヂヤナイカト思
  フノデス、千九百三十六年マデニハ完
  成シテハイケナイケレドモ、其前ニ著
  手ハ出來ル、斯ウ云フヤウナコトモ「オ
  プシヨン」ト考ヘマシタノデハナイカ
  ソレモ得タル權利デアリマス、ソレデ
  アリマスカラ其當時得タル權利ノ全部
  ハ行ッテ居ナイ、今ノ計畫ニハナッテ居
  ナイ、是ノ尖端ガ幾分カ出ルトカ出ナ
  イトカ云フコトデ、大分此議會ニ於テ
  問題ニナッテ居ルノデアリマスカラ、倫
  敦條約ニ於テ得タル所ノ建造計畫ノ全
  部ヲ實行致シタ、斯ウ云フヤウナコト
  ニ御斷定ニナッタニ付テハ、是ハ誤リデ
  ハナイカト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、ソレデモ大藏大臣ハ誤リデナイト
  云フコトヲ御斷定ニナレバ、ソレデ宜
  シイノデ、マダ私ハ論議ハ他ノ機會ニ
  ヤリマスガ、間違ノナイヤウニ又改メ
  テ之ヲ讀ミマスガ、私ハ時間ヲ餘リ取
  원
  ル必要モナイシ、他ノ方デモウ少シ具
  體的ニ例ヲ擧ゲテ論議ヲスル機會ガア
  ルダラウト思ヒマスカラ、唯々之ヲ御
  否定ニナラナイト云フコトデアリサヘ
  スレバ宜シイノデアリマス、「海軍ノ軍
  縮條約ニヨリ與ヘラレタル權利ノ全部
  ヲ實行シテ、尙ソレ以外ニモ「オプシ
  ヨン」ノアリマスモノハ大部分實行シ
  テ、ソレ以外ニ航空隊ヲ擴張スルノデ、
  ソレニ依ッテ三億七千四百萬圓ノ金ヲ
  使用スルノデアリマス、減稅ニ振向ケ
  ル一億三千四百萬圓ハ少イト云フコト
  ノ非難ガアルノデアリマスガ、上ニ述
  ベマスヤウナ財政狀態ノ中カラ一億三
  千四百萬圓ノ減稅財源ヲ捻出スルコト
  ハ非常ニ困難ナ仕事デアッタト云フコ|萬圓、
  トヲ敢テ國民諸君ニ申上ゲタイノデア
  リマス」斯樣ニ仰セニナリマスルガ、
  是モ先程仰セニナッタヤウナ具合ニ之
  ニ間違ハ少シモナイ、此記事ニ付テハ
  全責任ヲ負ハレル、斯樣ニ承知シテ宜
  シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=273

  ---

• 274・井上準之助

  ○井上國務大臣　其通リニ考ヘテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=274

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• 275・高橋熊次郎

  ○高橋委員　ソレデハ私ハアトガツカ
  ヘマスカラ是ダケニシテ、何レ他ノ機
  會ニ於テ之ニ付テ論議ヲ致スコトニ致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=275

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• 276・本田恒之

  ○本田委員長　大口君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=276

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• 277・大口喜六

  ○大口委員　私ハ豫算總會デ承リマセ
  ナンダ點ニ對シテ少シ伺ッテ置キタイ
  ト思ヒマス、只今高橋君ヨリモ出マシ
  タ海軍保留財源五億八百萬圓ト云フノ
  デアリマスガ、是ハ何時ノ〓計表カ、
  何時ノ財政計畫ヲ根據トシテ出サレタ
  金デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=277

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• 278・井上準之助

  ○井上國務大臣　ソレハ昭和五年度デ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=278

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• 279・大口喜六

  ○大口委員　私モ左樣デアラウト考へ
  テ居ル、サウスルト云フト、先般モ
  寸私討論ノ時申シマシタヤウニ、昭和
  五年度ノ其當時ノ歲入ト云フモノハ經
  常部ガ十五億餘萬圓ノ時代デアル、所
  ガ昭和六年度、今日ニ至リマスト歲入
  ガ非常ニ減フテ參ッテ、經常部十三億餘
  ソレデアリマスカラ其間ニ非常
  ナ歲入ガ減ヲテ居リマス、現在此五億
  八百萬圓ト云フ金ハナイ譯ダト私ハ思
  フノデアルガ、之ヲ保留財源トシテ此
  處ニ擧ゲラレルト云フコトハドウ云フ
  譯デアリマセウカ、今日ノ歲入カラ考
  ヘレバ、卽チ今日ノ〓計表、財政計畫
  カラ見レバ、五億八百萬圓ノ中ガ其歲
  入ノ減ッタ割合ニ減ラサレテ居ラネバ
  ナラヌ譯デアル、ソレヲ今日ノ歲入ニ
  當嵌メテ、歲入ノ多カッタ時代ノ昭和五
  年度ニ出來テ居ル財政計畫ニ依ッテ、五
  億八百萬圓保留財源ガアリトサレルコ
  トガ第一分ラヌノデアリマスガ、其御
  說明ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=279

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• 280・井上準之助

  ○井上國務大臣　御尤モナ御質問デア
  リマスガ、丁度私ノ財政計畫ニソレトナ
  シニ今大口君ノ言ハレルヤウナ意味ヲ
  記載シテ置キマシタノデアリマス、大
  體ノ稅ガ減ルノデアルカラ、サウスレ
  バ普通ノ歲出デアルナラバ五億八百萬
  圓ト云フモノハ年々年度割ニシテモ可
  ナリ減ルノガ本當デアル、併ナガラソ
  レヲ減サズニ、五億八百萬圓ト云フモ
  ノダケハ減サズニ置カウ、サウシテ他
  ノ歲出デ減シテ歲入ノ減ッタノニ應ジ
  テ行カウト云フノデアルカラ、歲出ヲ
  各省ニ亙ッテ減スノガ非常ニ大キクナツ
  タ、斯ウ云フコトヲ申シテ置キマシタ
  ガ、左樣ナ事實デアリマス、五億八百萬
  圓ト云フモノニ手ヲ觸レズニ、他ノ歲
  出デ歲人ノ減ッタノニ應ジテ減シタノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=280

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• 281・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト、全體言ヘバ
  海軍ノ保留財源ハ五億八百萬圓ナイノ
  ガ本當デアルガ、ソレヲ强ヒテ五億八
  百萬圓取ラウトサレタ結果ハ、他ノ各
  省ノ歳出ニ向ッテ減シタト云フ話ニナ
  ルノデアリマスガ、成程昭和六年度ノ
  〓計表ヲ見ルト云フト、サウ云フ風ノ
  計畫ニ總テ現レテ參フテ居ル、ソコデ先
  日ノ豫算委員會デ大體私申シテ御質問
  シマシタガ、ドウモアヽ云フ場合デアツ
  テ、少シ要領ヲ得兼ネテ居リマスカラ、
  今一應詳シク申述ベテ說明ヲ乞ヒタイ
  ト思フノデアリマスガ、各省カラ減シ
  タト云フ金ガ少ケレバマダ宜イノデア
  ルガ、中々多ク減サレテ、其多ク減サ
  レテ居ルノナラバ之ヲ私ハ頷クコトガ
  出來ル、承認スルコトガ出來ル、所ガ
  經常部ニ於テハ殆ド-殆ドヂヤナ
  イ減サレテ居ナイト言ウテモ宜イ、
  幾ラカ減ッテ居リマスガ極メテ僅カナ
  モノデアリマス、此處デ讀ンデモ宜イ
  ノデアリマスガ、經常部ノ方デ申セバ
  昭和五年度ノ財政計畫デ見マスト云フ
  ト歲出經常部十二億圓バカリデアリ
  マスモノガ、十一億七千五百萬圓ニ今
  度ノ昭和六年度ノ新シイ計畫デハナツ
  テ居リマスカラ、二百餘萬ノ減額ハア
  リマスケレドモ、極メテ僅カデス、何
  デ減シタカト云フト、私ガ先日本議會
  場ニ於テ豫算ノ時論ジマシタ通リ、臨
  時部ニ於テ減サレテ居ル、事業ノ中止、
  繰延、是デ減シテ居ルノデス、經常部
  デ減シテ居ナイ、ソレダカラ結局臨時
  部ト云フモノヲ事業ノ中止、繰延ヲ致
  シテ結局强ヒテ五億八百萬圓ト云フモ
  ノヲ作ッタト云フコトニ相成ッテ居ルノ
  デアルカラ、臨時部ト云フモノガ非常
  ニ窮届ニ減ッテ居ル是カラモウ少シ色
  色承リタイガ、先ヅ私ノ今言ウタコト
  ハ御認ニナラナクチヤナルマイト思ヒ
  マスガ、如何デアリマセウ

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• 282・井上準之助

  ○井上國務大臣　大體サウデゴザイマ
  ス、經常部デ減スト云フコトハ中々大
  口君モ御承知ノ如ク困難デアリマス、
  臨時部デ餘計減ッテ居リマス

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• 283・大口喜六

  ○大口委員　餘計ト言ハレルガ、私ハ
  殆ド臨時部デ是ハ減サレテ居ルト思
  フ、ソレヲ私ハ數字デ擧ゲテ見ルト、
  大體ハ豫算總會デ申シマシタガ、尙ホ
  稍〓詳クク申スト昭和六年度デ申スト
  云フト、〓計表ニ依ル臨時歲出一一億六
  千八百餘萬圓ノ中繼續費ニ屬シマスモ
  ノガ一億四千六百餘萬圓デアリマス、
  デアリマスカラ差引一億二千二百餘萬
  圓デアリマスガ、其中海軍ノ補充計畫
  デ繼續費費屬屬スモノガ百二十三萬圓
  バカリデアリマス、ソレヲ差引クト
  億二千百十四萬六千三百九十圓ト云フ
  ノガ、昭和六年度ノ繼續費以外ノ臨時
  費デアリマス、此一億二千百萬圓ノ繼
  續費以外ノ臨時費デモ隨分窮屈ヲ感ジ
  テ總テノ事業ガ多ク中止繰延ベラレタ
  リシテ居ルノガ現狀デアリマス、所ガ昭
  和七年度ニ參ルトドウデアルカト云フ
  1、詳シイ計算ヲシテ持ッテ居リマスガ、
  節約シテ結末ダケ申スト、繼續費以外
  ノ臨時費デ七年度ニ八千九百餘萬圓ニ
  減フテシマフ、ソレカラ八年度ニ行ケバ
  モウ繼續費以外ノ臨時費ハ七千八百七
  十餘萬圓ニ減リマシテ昭和九年度へ行
  ケバ七千萬圓一寸餘ニナリマス、昭和十
  年度へ行クト五千七百萬圓ニ減フテシマ
  ヒマス、ソレカラ昭和十一年度ヘ行キ
  マスト五千三萬圓ニナルノデアッテ、非
  常ニ少イモノニ事實相成ヲテ居ル、斯ウ
  云フ風ニ繼續費以外ノ臨時費ト云フモ
  ノガ非常ニ少イノデアルガ、斯ウ云フ
  コトハ今マデノ財政計畫上私ハ殆ド見
  タコトハアリマセヌ、是デ少シ確メテ
  置キタイノデアルガ、後デ議論ニナル
  ト惡イカラ只今ノ私ノ言フ數字ガ違フ
  カ違ハナイカ先ヅ引合ハシテ見マス、
  私ノ計算違ガアルカモ知レマセス、サ
  ウシテ承ルト直グ分ルト思ヒマス

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• 284・井上準之助

  ○井上國務大臣　チヨット前ノヲ御答
  致シマスガ、經常部ノ節約額ガ三千七
  百萬圓、ソレカラ臨時部ノ方ノ節約ガ
  二千五百萬圓デ、繰延ガ六千五百萬圓、
  斯ウ云フ風ニナッテ居リマス、御說ノ如
  ク臨時部デ節約繰延ガアッテ、經常部ノ
  方デハチヨット三分ノ一强ニナッテ居リ
  マス
  ソレカラ只今ノ繰延以前ノ臨時費ハ
  大體先頃豫算委員會デ御質問ノ時ト同
  ジコトデゴザイマスガ、大體ノ數字ハ
  御說ノヤウデアリマス、唯先度ノ豫算
  委員會ノ時ノ御說ヲ承リマシテ、アノ
  時モチヨット申上ゲタノデアリマスガ、
  御承知ノ如ク繰延額ヲ致シマス時ニ、
  大口君モ御體驗ノアルコトデアラウト
  思ヒマスガ、何時デモ段々先ノ方ニ繰
  延ベテ行ク、併ナガラ先ニ行クダケ尻
  太リガシテ居ッテ、サウシテ手前ノ方ヲ
  成タケ少クシテ、ソレカラ陸軍ノ
  殊ニ陸軍デアリマスガ、陸軍ノ繰延ノ
  如キハ其時其年ニナッテ又繰延ベルト
  云フヤウナ事實ハ最近數年間之ヲ繰返
  シテ居ルノデアリマス、隨テ御說ノ如
  ク繼續費以外ノ臨時費ガ先ニ至ルト五
  千萬圓ニナリ大變少イト云フコトハ其
  通リデアリマスガ、只今ノヤウナ事情
  デアリマシテ、ソレニ依ッテ賄ッテ行ク
  ヨリ外ニナイト云フ數字上ノ狀態デア
  リマス、併ナガラ實際ハ、歲入ヲ其儘
  ニシテ置クナラバ、繰延ノモノヲ段々
  先送リニシテ行クト云フコトニナルノ
  デアリマス、御承知ノ如ク陸軍ガ非常
  ナ大キナ繼續費ヲ持ッテ居リマスノデ、
  陸軍ノ當局者ト大藏省ノ當局者トハ、
  モウ常ニ折衝ヲ重ネルノデアリマス
  ガ何時デモ所謂繼續費ノ繰延ト云フ
  モノガ、中々此歲出ヲ減ズル上ニ於テ
  ハ餘程重要ナ問題トナルヤウナ次第デ
  アリマスカラ、ソレデ財政計畫ニ於テ
  都合ヲ付ケテ行ケルト斯ウ考ヘタノデ
  ゴザイマス

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• 285・大口喜六

  ○大口委員　其處ニ稍〓疑問ガアルノデ
  ス、成程今マデハ隨分マダ繰延ベル餘
  地ガアッタ、陸軍デモ、海軍デモ、其他
  ノ省デモアッタノデアリマスガ、現內閣
  ニナラレマシテカラ、昭和四年以來繰
  延竝ニ事業ノ中止ト云フモノヲ盛ニ行
  ハレテ、今再ビ其數字ヲ此處デ繰返ス
  必要ハアリマセヌガ、其處デ帳簿ヲ御
  覽ニナレベ直グ分ルノデアルガ、殆ド
  繰延中止ヲシ盡シタト言フノハ少シ言
  葉ガ過ギマスガ、殆ド極端ナ所マデ行ツ
  テ居ルノガ現狀デアルト私ハ思フ、ソ
  レデアリマスカラ結局此繼續費ト云フ
  モノヽ幾分ヲ繰延ベルコトニシタ、所
  ガ中々サウエライ繰延ガ利クカ利カナ
  イカト云フコトハ一ツノ問題デアル、
  ソレデ海軍ヲ繰延ベレバ是ハ宜イノデ
  アリマス、海軍ハ新規ノ計畫デ、此計
  畫ヲ拵ヘルト同時ニ繰延ベル譯ニハ行
  キマセヌカラ、先ヅ今度ノ海軍ノ計畫ト
  云フモノハ豫定通リ行ハナケレバナラ
  ヌ、ソレデ私ハ今日海軍大臣ニモ念ヲ
  押シテ置イタ、斯ウ云フ風ナ年度割ヲ
  拵ヘテ、澤山ノ金ヲ取ッテ置イテ、サウ
  シテ議會ヲ通シテ置イテ、今日ハ極ク
  必要ナ事ト言ッテ置イテ、來年直グ繰
  延ヲヤル、サウ云フコトヲヤルカラ惡
  ク言フト欺瞞デスケレドモ、欺瞞ト云
  フ言葉ハ過ギマセウガ、如何ニモ國民
  ノ代表者ヲ馬鹿ニスルヤウナコトニナ
  ルソレダカラ私ハ此年度割ト云フモ
  ノハ違ハヌカト云フ念ヲシッカリ押シ
  テ置イタノデアル、海軍ヲ繰延ベナイ
  デ陸軍ダケデ幾ラ繰延ベタ所ガ、サウ
  ドウモエライ繰延ノ八千萬圓九千萬圓
  ト云フ繰延ヲスレバ、陸軍ノ事業ガ中
  止サレルヤウニナルカラ私ハ出來ナイ
  ト思フ、今ノ日本ノ財政ト云フモノハ
  惡ク言ヘバ行詰ッテ來テ居ル、以前トハ
  大分違フ、ソコデ各省ノ補助費ダケヲ
  合計シテ見マスト是ハ參考書ニ出テ
  居ルノデアリマシテ、政府ノ出サレタ
  數字ヲ云フノデアリマスガ、六千八百
  萬圓アルノデアリマス、是ハ參考書ヲ
  御覽ニナレバ分ル、各省ノ補助費合計
  ト云フノガ六千八百萬圓アリマス、是
  ハ大部分私ハ繼續費デハナイト思ヒマ
  ス、幾ラカ繼續費ガ這入ッテ居ルカモ
  知レヌガ、是ハ繼續費以外ノモノデア
  ル、ソレカラ內務省ダケノ祕續ト云
  フモノヲ段々寄合セテ見レバ二千七八
  百萬圓アリマス、農林省ノ臨時費全部
  ガ二千六百十三萬五百七十一圓デ、其
  中繼續費ハ僅ニ二十一萬五千八百十一
  圓デゴザイマス、ソレデアリマスカラ
  二千六百萬圓バカリ農林省ダケデ臨時
  費ガアル、商工省ハ割合ニ少イガ、ソ
  レデモ六百萬圓バカリ繼續費以外ノ臨
  時費ガアリマス、ソレデ農林省、商工省
  ト云フモノヲ、之ヲ能ク細カニ讀ンデ
  見マスト、極メテ細カナ金ガ集ッテ斯
  ウナッテ居ル、產業ノ奬勵トカ農事ノ
  改良トカ云フ、色々澤山ナ數ヘ切レナ
  イモノガ、集ッテ斯ウナッテ居ルノデア
  ル、ソレデアルカラ是ハ昭和九年度八
  年度ヲ待タズシテ、旣ニ昭和七年度ニ
  行ッテ八千九百萬圓ノ繼續費以外ノ臨
  時費ハイケナイト云フコトハ明瞭デア
  リマス、是位明瞭ナ數字ハナイ、何ト
  云ッテモ一億二千二百萬圓ノ現在ノ繼
  續費以外ノ臨時費ダケデモモウ一杯キ
  チキチデアル、惡口ヲ言ヘバ商工省、
  農林省デハ產業ノ奬勵ト云ッテヤッテ居
  ル僅カナモノマデ削ッテ、甚シキハ發明
  奬勵費マデ削ッタト云フヤウナコトデ、
  色々議論ガアルガ、サウ云フ細カイ事
  ハ言ハナイトシテモ酷イ所マデ詰メテ
  一億二千二百萬圓、ソレガ昭和七年度
  デ九千萬圓ニナリマス、是ハ陸軍ヲ繰
  延ベルト云ッテ、此處デ五千萬圓ノモノ
  ヲ繰延ガ出來レバ兎モ角デアルガ、サ
  ウ繰延々々トヤラレルモノデナイ、之
  ヲズット〓究シテ見ルト、私ハ昭和六年
  度ダケハ此豫算ガ通テテ居ル所カラ見
  レバ歲入ガ過大ニ見積ッテ居ルト云ツ
  テモ-昭和六年ノ豫算ハ危イモノト
  思ッテ居リマスガ、マダ〓〓昭和六年
  度ハ如何樣ニカヤレルデアリマセウガ
  昭和七年度ニ行ケバ差支ヘルト云フコ
  トハ、ドウシテ見テモ明瞭デアルト思
  フ、之ニ對シテドウシテヤル御考デア
  ルカ、斯ウ云フコトヲ一ツ本當ノ肚ノ
  中ヲ聽キタイ、ドウモ机ノ上デ議論サ
  レルナラバ、私ハ議論スル材料ヲ持ツ
  テ居リマスガ、ドウ議論シテ見タ所ガ
  事實ハ此處ニ來テ居ル、是ハ日本ノ財
  政ト云フモノヲ〓究シテ見ルト甚ダ
  切迫シタ酷イモノデアル、若シ數字ガ
  違ッテ居レバ、〓ヘテ戴キタイ、違ハヌ
  積リデ論ジテ居リマスガ、違ッテ居レバ
  私ハ承リマスガ、ドウモサウ考ヘラレ
  ル、之ヲドウ思ハレルカト云フコトヲ
  承リタイ

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• 286・井上準之助

  ○井上國務大臣　大口サンニ申上ゲマ
  スガ、億二千萬圓ト云フ歲出ヲ減ジ
  マシタ、サウシテ今謂フ留保財源ヲ其
  儘減ゼズニヤッタノデアリマスカラ、非
  常ナ極端ナ歲出ノ減デアリマス、最初
  ニハソレ程ノ減ニ對シテ昭和六年度ノ
  歲入ヲ過大ニ見積ラヌヤウニシテ、眞
  面目ノ計畫ヲ立テヤウト云フノデ、最
  初ハ茫然タル位ノモノデアッタノデア
  リマス、アナタ方ガ御經驗下スッテモ
  分リマスガ、一年ノ中ニ一億二千萬圓
  ト云フヤウナ國ノ財政ヲ立換ヘルト云
  フコトハ殆ド不可能デアリマス併ナ
  ガラ御覽下サル如ク陸軍デ二千萬圓、
  海軍デ三千何百萬圓ト思ッテ居リマス
  所謂何ト言ヒマスカ、無イ袖ハ振レヌ
  ト言ヒマスカ、所謂皆ガ歲入ノ非常ニ
  減ズルコトヲ能ク理解シテ此處マデ私
  ハ豫算ヲ作ッタ、能ク減シタト思フ位デ
  アル、隨テ此減シマシタ跡ヲ見マスル
  ト云フト、アナタノヤウナ御經驗ノオ
  アリノ方ハソレニ同情シテ下サルト共
  二、非常ニ拙イ財政計畫ガ出來テ居ル
  ト云フコトハ一目シテ能ク分ル、ソヨ
  デ次年度ハドウスル、此狀態デハ到底
  日本ノ財政ト云フモノハ行ケルモノデ
  ナイ、殆ド全部ニ於テ立直シヲ圖ラン
  ケレバイカヌモノダ、斯ウ考ヘテ先日
  加藤君カノ御質問ニ對シテ、行政整理
  竝ニ財政整理ハ必要ニ迫ラレテ居ルカ
  ラ、是マデヨリカ相當ノ效果ヲ擧ゲル
  積リデヤッタノモ其處ニアル、ソコデア
  ナタノ御指摘ニナルヤウナ無理ナ事ガ
  出來テ居ルノデアル、行政整理、財政
  整理ト云フモノハ、何人ガ之ニ當ッテモ
  私ハソレデ行クヨリ外ニ仕方ガナイト
  思フ、又行クノガ本當ノ道ダト斯ウ考
  ヘテ居ルノデアリマス、ソレデアリマ
  スカラアナタガ陸軍ノ繼續費ガ減セナ
  イ、何處ノ繼續費ガ減セナイ、歲出ガ
  減セナイト云フガ、私ハ二度三度、昭
  和四年度ノ實行豫算カラ三度經驗シテ
  見マシタガ、非常ニ困難デアリマス、
  併シ財政ヲ鞏固ニスル上ニ於テハド
  ウシテモ是デ行クヨリ仕方ガナイ、斯
  ウ考ヘテ居ルノデアリマス、隨テ之ヲ
  御批評ナサレテ、サウ云フ御批評モ出
  來マセウガ、吾々ニハ經驗ノ上カラサ
  ウ云フ確信ヲ以テサウシテ行カウト云
  フコトニ考ヘテ居ルノデゴザイマス

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• 287・大口喜六

  ○大口委員　前後ノ御答ハ私ハ洵ニ大
  藏大臣ニ同情ノ念ヲ禁ゼナイノデアリ
  マスガ、最後ノ御言葉ニ對シテハ大ニ
  酬イザルヲ得ヌ、極メテ了解セザル點
  デアリマス、ト云フノハドウ云フコト
  カト云フト、成程今日ノ不景氣ニ遭遇
  サレテ歲入ガ非常ニ減ッテ來テ來テ居
  ル、是モ承知シテ居ル、此不景氣ニナツ
  タ原因ハ何デアルカト云フコトハ今
  日私ハ之ヲ論ジマセヌガ、兎ニ角大藏
  大臣トシテハ、非常ニ御困リニナッテ居
  ル事デアラウ、御苦心ノ中ニ昭和六年
  度ノ豫算ヲ御編成ニナッタ御苦心ニ對
  シテハ、私確ニ同情致シマス、其處マ
  デハ私アナタニ同情スル、所ガソレデ
  陸軍ダトカ海軍ダトカニ減シタト云フ
  ノデ自慢シテ居ラレルガ、ソレハ事業
  ノ繰延中止デアリマスカラ、エライ事
  ヲヤッタト云ッテモ數字ノ辻褄ヲ合セタ
  ダケデ、御自慢ノヤウデアルガ、ソレ
  ハ借金ヲ後ノ年ニ送ッタト同ジデアル、
  ソレデアリマスカラ、段々アトノ繼續
  費ト云フモノガ、先刻御話ノヤウニ太ッ
  テ來テ、結局普通ノ臨時費ト云フモノ
  ハ減フテ參ッタ、弊害ガ玆ニ覿面ニ現レ
  テ來テ、現在マデドウカ斯ウカヤッタ
  ガ、直グニ後年ニナッテ七年、八年、九
  年、十年ト著々ト此財政ノ上ニ困難ガ
  現レテ來テ、繼續費ガ段々延バサレテ、
  繰延バサレタ結果、繼續費以外ノ臨時
  費ト云フモノヲ減シテ計上セザルヲ得
  ザルコトニナッテ來テ、事實出來ナイト
  云フコトニナル、是ハ前ノ御答デアナ
  タノ腹ハ能ク分ッテ居ル、困難ナ事情モ
  確ニ御察シ致シマスガ、サウ云フ事實
  ヲ明カニシテ行クト云フト、結局減稅
  ガ無理ダト云フコトニナル、減稅ガ無
  理ダ、今年九百萬圓ハ無理デモ、但位、
  歲入ヲ稍〓多ク見積ッテモ九百萬圓デア
  ルカラ出來マスガ、アトノ平年度ノ二
  千五百萬圓減稅ヲスルト云フコトガ出
  來ナイ問題デアル、出來ヌ仕事デアル、
  モト五億八百萬圓ハナイ金デアル、五
  億八百萬圓ナイ金ヲアルトシテ取ッテ
  置イテ、サウシテ無理ニ之ヲ留保シテ
  行クカラ、此財政計畫ノ上ニ於テ、ソ
  レガ他ノ經費ニ喰込マレテ今言フ通リ
  ナル財政ノ計畫ヲ立テナケレバナラヌ
  コトニナッテ來タ、所ガ現內閣ガ倫敦條
  約ノ結果減稅ヲスルト言ッタカラ、之ニ
  囚ハレテ、到底財政計畫上ヤレナイ無
  理ナ事ヲ、アナタガ大藏大臣トシテ强
  ヒラレタ譯デアル、アナタノ肚カラ云
  2減稅ハ出來ナイト御思ヒニナル
  ノハ本當デセウ、ケレドモソレハ此處
  ニ白狀ハ出來マスマイ、今內閣ニ列ッテ
  御居デニナルカラ-併シ誠ニ其苦衷
  ハ御察シ致シマス、ソレデ私ハ責メマ
  セヌ、責メマセヌガ、事實出來ナイ仕
  事ヲ茲ニシヨウト云フノダカラ、ドウ
  シテモ本當ノ計畫ハ立チマセヌ、此處
  デ私ハ減稅ニ反對シテ議論ヲシヨウト
  ハ思ヒマセヌ、略〓肚ノ中モ仰シヤッタヤ
  ウデアルカラ、然ラバ此處デ無理ナコ
  トヲシテ斯ウ云フコトデ減稅ヲシタ曉
  二、今ノ通リ繼續費以外ノ臨時費ハ七
  年度ガ足リマセヌ、ヤレル譯ハアリマ
  セヌ、サウスルト又今度ハ繼續費ノ方ヲ
  延バシテ行カウト云フ、私ハ段々詰リ
  詰ッテ來テ延バスモノハ極メテ少イト
  思フガ、アナタハ自分ノ手腕デ今マデ
  經驗ガアルカラ、モット延シテ見セルト
  言フガ、海軍ニ手ヲ著ケテ延セバ延ス
  コトハ出來マス、併シ之ニ手ヲ著ケル
  ト大變デアル、之ヲ今延バスト云フコ
  トガ分ッテ居レバ、全體ノ海軍ノ豫算ナ
  ドハ通ラヌ譯デアル、サウスルト他ノ
  所デ、陸軍ヲドウシテ御延シニナルカ
  知レナイガ、延シニ延シテ此以上延シ
  テ行ケバ、仕事ガ出來ナクナル、延シ
  タ所ガ又八年ガ困ル、八年ヲ延セバ九年
  ガ困ル、段々後ノ年ヘ災ヲ持ッテ行カナ
  ケレバナラヌコトハ當然デアリマス、
  ドウシテモ此無理ハアナタハ御認ニナ
  ラナケレバナラヌ、是ハ御同情申上ゲ
  ルト同時ニ私ハ日本ノ財政ト云フモノ
  ハ非常ニ窮乏ニ陷ッテ居ルモノダト云
  フコトヲ、御互ガ慨嘆シ、又憂ヘザル
  ヲ得ヌ、本當ニ胸襟ヲ開イテ言ヘバ減
  稅ハ無理デアル、二千五百萬圓ノ減稅
  ハ事實出來ナイ、ケレドモヤラナケレ
  バナラヌ、行掛リ上デオヤリニナル、
  ソコデドウナルカト云フト、今言フ通
  リ財政上困ル、是ハ行政財政ノ整理デヤ
  ルト言ハレタ、一寸机ノ上デハ好ク聞
  エマスガ、然ラバ昭和七年度デドウシ
  テ其財政行政ノ整理ノ頭ガ出テ、ソレ
  ダケノ節約ガ繼續費ニ加ヘラレテ行ク
  カ、斯ウナッテ來ルノデス、是ハアナタ
  モドレダケ行ケルカ分ラヌト仰セニナ
  リマスガ、行政財政ノ整理ヲ經常費ニ
  加ヘテ行カウト云フコトハ、私ノ考デ
  ハ中々半年ヤ一年デ出來ルモノデハ
  アリマセヌ、現ニアナタ方ハ御經驗ニ
  ナッテ居リマスガ、是ハ全體濱口總理大
  臣ハ今少シ御經驗ガナクテハナラヌト
  私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、實ハ井
  上大藏大臣ハ當時ハマダ餘リ-失禮
  デアリマスガ、大藏大臣トシテノ御經
  驗ハ少カッタカラシテ、思切ッテ自分ガ
  ヤッタラバ、行政財政ノ整理ガ出來ルト
  御考ヘニナッタカモ知レマセヌガ、濱口
  氏ハ相當ニ其經驗ヲ持ッテ居ラレル筈
  デアリマス、ソレガ組閣ノ當時十大政
  綱ノ中ニ書カレテ、行政財政ノ整理ヲ
  スル、緊縮ヲスル、其全豹ト云フモノ
  ハ昭和五年度ノ豫算ニ計上スルト云フ
  ヤウナコトヲ旗印ニ揚ゲラレタカラ、
  知ラナイ者ガ見ルト良イ事ヲヤッテ吳
  レルト思ッテ信賴シタデアリマセウガ、
  私ハ其趣意ニ贊成デアルト同時ニ、事
  實ハ出來ルモノデハナイト考ヘル、果
  セル哉、出來ヌデハアリマセヌカ、漸
  ク御經驗ニナッテ出來ナイ、唯事業ノ繰
  延中止以外ニハ經常部ニ對スル眞ノ行
  政財政ノ整理ト云フモノニハ、指ヲ染
  メルコトハ出來ナイト云フコトヲ今御
  經驗ニナッテ、五萬圓ノ金ヲ取ッテ是カ
  ラ行政財政整理ノ調査會ヲ設ケヤウト
  言フガ、調査ハ何箇月掛レバ出來マス
  カ、サウ云フコトガ出來ルモノデハア
  リマセヌ、如何ニアナタガ敏腕デアラ
  レテモ、昭和七年度ノ豫算デ、經常部
  ニ向ッテ行政財政ノ整理ニ於テ何千萬
  圓ト云フモノガ、昭和七年度ノ豫算ニ
  出ヨウトハ思ハレヌ、是ハドウモ人間
  業トシテハ容易ニ出來ルコトデナイ、
  昭和九年度マデ行ッテ、相當朝野力ヲ合
  セテ一大英斷ヲ以テヤルコトニナッタ
  ナラバ或ハ出來マセウガ、反對ヲ受ケ
  テ居ル內閣ガ茲ニ力ンデ見タ所デ、今
  日ノ如ク割據ノ狀況ニナッテ居ル各省
  ヲ統一シテ、繰延中止以外ノ本當ノ行
  政財政ノ整理ヲシヨウト云フコトハ餘
  程困難デアル、サウスルト是ガドウシ
  テ生レルカ、此處ガ餘程問題デ大藏大
  臣ノ御心中ヲ、懸値ノナイ話ヲ承ッテ見
  タイ、私此間カラ斯ウ思ッテ居リマス
  ガ、今晩最後ニ此點ヲ腹藏ナイ所ヲ承
  リタイト考ヘテ居リマス

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• 288・井上準之助

  ○井上國務大臣　今ノ大口サンカラ繰
  延或ハ臨時部ノ方ノ話ヲサレタガ、私
  ガ先刻申上ゲタ數字ハ違ッテ居リマシ
  タガ、昭和六年度デハ陸軍ガ一一千七百
  萬圓、海軍ガ四千五百萬圓、其次ニ多
  イノガ遞信省デ千九百萬圓、遞信省或
  ハ海軍ニ於テモ節減ハ勿論少ナク、繰
  延ガ多イノデアリマスガ、繰延ト云フ
  コトハ唯單ニ事業ヲ向フヘ送ルコトヽ
  言ハレマスケレドモ、政府ノ仕事ノ中
  ニハ此經濟界ニ應ジタ立場カラ見マ
  スト、今ヤラヌデ延バシテモ宜カラウ
  ト云フヤウナ仕事ハ可ナリアリマス、
  或年カラ云ヘバ、金ヲ使ハヌ程度カラ
  云ヘバ同ジコトデアル、サウシテ整理
  ヲシテ行ク上カラ云ヒマスト、繼續費
  ノ如キヲ繰延ベルト同時ニ其事業ヲ立
  直シテ行クト云フコトハ、此行政ノ整
  理ヲシテ行ク上ニ付テハ確ニ一ツノ方
  ガデアリマス、アナタモ御覽ノ如ク、
  政府部內ニハ節約ヲスレバ節約ノ出來
  ル課目ハ可ナリ多クアルヤウニ私ハ認
  メル、併ナガラ今ノ各省ノ轄據カラ言ツ
  テ、普段ノ是ハ整理ヲスルガ宜シイト云
  フヤウナ位ノ意味デ整理ヲスルノト、
  無イカラ、歲入ガ減ヲタカラ、是デ行カウ
  ト云フコトノ覺悟カラ言ヒマスト、餘
  程其處ノ所ハコッチニモ決心ヲ付ケテ
  行ケバ、普段ヨリカ成功スルト云フコ
  トハ私ハ確信ヲ持ヲテ居リマス、其處ガ
  吾々ノ考ヘル所デアリマシテ、又今大
  口君ノ擧ゲラレルヤウニ成程無理デア
  ル、併ナガラ樂ヲシテ考ヘテ見ルト皆
  無理デアリマセウ、五億八百萬圓ト云
  フモノモ歲入ガ減レバ當然減ル、之ヲ減
  サズニ他デ減シテ置イテ減稅デモシテ
  行カウト云フ、難儀ヲシテ見ヨウト云
  フコトニナレバ、其處ニ幾ラカ違ガ出
  テ來ル、是ハ迚モ減稅出來ヌ稅ガ減ッタ
  カラ減稅出來ヌト言ヘバソレマデノ話
  デアリマスガ、其處ニ吾々ハ相當ナ決
  心ヲ以テ臨ンデ見ヨウ、斯ウ云フ考デ
  アリマスカラ、今大口君ノ言ハレルヤ
  ウニ昭和七年度ニ至ッテドウシテ金ヲ
  出スカト言ハレマスト、是マデ繰返シ
  テ來タヤウナ覺悟デ行クヨリ他ニ途ハ
  ナイノデアル、斯ウ考ヘテ居リマス、
  又今日斯ノ如ク歲入ノ減ジタ時ニ應ジ
  テ行クノニハソレヨリ他ニ途ハナイ、
  又減稅ノ問題ニシテモ少シデモ減稅ガ
  出來ルナラバ、私ハ今日ノ如キ經濟界
  ニ對シテハ是ヨリ以上ニ有效ナル對策
  ハナイ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス
  カラ、其覺悟ノ點ヲ羅列シテ申上ゲテ
  置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=288

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• 289・大口喜六

  ○大口委員　大藏大臣ガサウ理窟ヲ仰
  シヤルト、私モ言ハザルヲ得ナイコト
  ニナル、サウ云フ理窮ヲ仰シヤルト、
  私ハ直グニ突込ミマス、大藏大臣ハ、
  吾々ニ決議サシテ居ル有ユル繼續費
  ヲ、今カラ繰延スルコトヲ決心シテ居
  ラレル、サウナレバマルデ噓ヲ吾々ニ
  決議サシテ居ルコトニナル、卽チ政府
  ノ繼續費年度割ハ皆當テニナラヌコト
  ニナル、ソレデアルカラ今日モ私ハ念
  ヲ押シタ、繼續費ト云フモノハ、年度
  割ヲ決メテ、ドウシテモ國家ノ爲ニ必
  要デアルカラ、是ハヤラナケレバナラ
  ヌトシテ議會ノ議決ヲ經テ置キ、其議
  決ヲ經ルカ經ナイカノ境カラ、既ニ場
  合ニ依レバ之ヲ繰延ベルト仰シヤル、
  ソレモ繰延ベルベキ事情ニナッテ來テ
  ノ繰延ナラバ、私共同意スルカモ知レ
  マセヌガ、今日カラ財政計畫上ヨリ見
  テ、繼續費ヲ繰延ベルヨリ外ニナイト
  決心シテ居ルト云フコトハ、何ノ爲ニ
  繼續費年度割ト云フモノヲ吾々ニ議決
  サシテ居ルノデアルカ、一ツモ信ズル
  コトガ出來ナイ、〓計表ハ〓計表デ宜
  シウゴザイマセウガ、繼續費年度割ハ
  川越君モ言ハレタ通リ、法律上ノ議論
  カラハッキリシテ居ルト云フコトヲ承
  認サレテ居ル、私共ハ之ニ對シテ意見
  ハアルガ、一度議會デ承認サシテ、何
  年度マデニ是ダケノ仕事ヲスルト、金
  額ヲ要求シテ、國民ノ代表者ヲ同意サ
  シテ、其瞬間カラ繰延ガ財政計畫上明
  瞭ニナッテ居ルト云フコトハ、此位不確
  實ナコトハナイ、故ニサウ云フ理窟ハ
  大藏大臣ハ御止メニナラナケレバイカ
  ヌ、全ク今ハ苦シイ時デアルカラ、場
  合ニ依レバ或ハ繰延ベルコトガアルカ
  モ知レナイ、又當然繰延ベテ宜イモノ
  モアルダラウガ、出來ルダケハ斯ク斯
  クノ方針ヲ以テ、行政財政ノ整理ヲ進
  ムノダ、斯ウ大藏大臣ガ言ハレルダラ
  ウト私ハ思ッテ居ッタ、ソレガ本當デア
  ル、サウナレバ吾々ト意見ガ一致スル
  カモ知レヌ、私ハ露骨ニ言ヒマスガ、
  行政財政整理ヲスル論者デアリマス、
  ケレドモ是ハ容易ニ出來ナイコトヲ知
  ッテ居ル、是ハ餘程强イ力ヲ以テ我國ハ
  將來一大行政財政ノ整理ヲシナケレバ
  ナラヌト思ッテ居ル、所ガ今ノ政府ノヤ
  リ方デハ事實口バカリデ出來ナイカ
  ラ、ソレガ出來ルヤウナ方法ニ付テ、
  今晩ハ意見ヲ鬪ハシテ見ヨウト思ッタ
  ノデアリマスガ、ソレヲ避ケラレテ、
  繼續費ヲ繰延ベルトカ云フ理窟ヲ言ツ
  テ行カレヨウトスル、是ハ私トアナタ
  ノ根柢ノ考ガ違ッテ居ル、私ハ繼續費ヲ
  定メタ以上ハ、成タケ繰延ベナイノガ
  本當デアルト思ヒマスケレドモ、時代
  ガ變ルカラ繰延ベテ宜イモノガアレ
  バ、ソレヲ繰延ベテ新シイモノヲヤッ
  タ方ガ宜イコトガアル、其場合ヲ比較
  對照シテ、舊イモノヲ繰延ベルノハ同
  意シマスケレドモ、今カラ繼續費トシ
  テ議決シテ置イテ、事實ハ繰延ベナケ
  レバヤレナイト云フコトハ、大藏大臣
  ハ行政財政ノ整理ニ對シテ誠意ナシト
  論ジナケレバナラヌ、事實ハサウデハ
  ナカラウト思ヒマス、誠ニ御氣ノ毒ニ
  思ヒマス、斯ウ論ズルノハ、實ハ私ト
  アナタハ同論ダト思ッテ居ルカラデア
  リマス、上手ニ御議論ヲナサッテ、私ヲ
  抑ヘヨウトスルカラ、私ハピン〓〓跳
  ネル、モット胸襟ヲ開カレタナラバドウ
  デアリマスカ、ドウシタ所デ是ハイケ
  ナイ、全體カラ申シテ減稅ガ無理ナノ
  デアル、ソコデ私ハ更ニ問ヒマスガ、
  今ノ財政計畫ハ〓計表ニ現レテ居ル、
  〓計表ハ其儘デ行ケマセウガ、更ニ海
  軍ノ問題ニ入リマスト、政府ハ如何ニ
  モ小サイ金デアルトシテ輕ク扱ハレヨ
  ウトサレマスガ、總理大臣代理及ビ海
  軍大臣モ言明サレ、大藏大臣モ御認ニ
  ナッタ通リニ、昭和十一年度以前ニ於
  テ、ドウシテモ吾々ノ所謂第二次補充
  計畫ト稱スルモノハ頭ヲ出シテ來ル、
  此金ヲ一文モ取ッテ居ナイガドウシマ
  スカ、海軍大臣ハ確實ナル約束ガナイ
  ヤウニ言ハレマスガ、今ノ內閣ニハ或
  ル程度ノ諒解ヲ得テ居ルヤウニ言ハレ
  ル、又或ル程度ノ諒解ガアルヤウニ大
  藏大臣ハ此間ノ豫算總會ニ於テモ言ハ
  レテ居ルガ、是ハ今カラ考ヘナケレバ
  ナラヌ、財源ハ一文モナイ、昭和九年
  カラ始マルト云フコトニシタ所ガ、十
  年ニシタ所ガ、之ヲ一體ドウシマス、
  是ハ繼續費デアル、サウシタナラバ陸
  海軍ノ舊イモノデ繰延ベテ、新シイモ
  ノヲヤルト云ッタ所ガ、海軍ノ方ニハ繰
  延ベルモノハナクナル、サウスレバド
  ウシテ此財源ヲ充タサレマスカ、ソヨ
  デ國防上ドウシテモ必要デアルト云フ
  コトニナレバ、是ハ增稅ヲシテヾモヤ
  ラナケレバナラヌコトハ明瞭デアリマ
  ス、私ハ先刻モ申シタ通リ軍國主義者
  デハナイ、出來ルダケ軍備ヲ縮少シテ
  少イ金デヤリタイノデアリマスガ、國
  防ハ一日モ忽セニスベカラザルモノデ
  アル、國防ニ缺陷ガアッタナラバ大變デ
  アル、此缺陷ハ飽マデモ其儘置イテハ
  ナラナイ、サウスルト增稅ヲシナケレ
  バナラヌコトハ明瞭デアリマス、此海
  軍ノ財源ニ對シテドウサレマスカ、其
  他財源ヲ要スルモノハ澤山眼ノ前ニ見
  エテ居ルガ、是ダケナリトモ、一ツ御
  說明ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=289

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• 290・井上準之助

  ○井上國務大臣　先刻私ノ言葉ガ不十
  分デアリマシテ、唯繼續費ノ繰延ト云
  フヤウニ御取リニナリマシタガ、行政
  ノ整理ヲスル、斯ウ云フコトヲ考ヘマ
  スト、普通ノ經費ニ付テ十分ノ節約ヲ
  行ヒ、同時ニ繼續費ノコトハ根本カラ
  考ヘテ見ナケレバナラヌ、斯ウ云フコ
  トガ行政整理ノ根本デアル、斯ウ考ヘ
  テ居ル結果ヲ申上ゲタノデアリマス
  ガソレヲ唯單ニ繼續費ダケヲ繰延ベ
  ルト云フヤウニ御取リニナリマシタノ
  ハ私ノ言葉ノ足ラナイ所デアリマシ
  タカラ、其點ハサウ御諒承ヲ願ッテ置キ
  タイト思ヒマス、尙ホ昭和十一年以前
  ニ海軍ニ多少ノ計畫ガアルガ、ソレニ
  對シテハ希望モアレバ、必要ヲ感ジテ
  居ルコトハ海軍大臣カラモ申シタ次第
  デアリマス、其點ニ付キマシテハ是
  マデ海軍大臣ガ度々繰返シテ申シテ
  居ッタヤウニ、甚ダ理窟ニハナリマセヌ
  ケレドモ、昭和十一年以前ト考ヘマス
  ト、十年ト見テ今カラマダ五年アル
  假ニ九年カラ始マルニシテモ、ソレハ
  四年アル、斯ウ云フコトヲ考ヘテ見ル、
  モウ一ツハ昭和十年ニ軍縮會議ガ再ビ
  アル、其以前カラ此會議ニ付テノ空氣
  ト云フコトガ、此計畫ノ主要ナルモノ
  ニナル、斯ウ云フコトハ、誰モ考ヘテ
  然ルベキコトデアルト思フノデアリマ
  ス、所謂千九百三十五年ノ會議前ノ空
  氣ガドウナルカ、其會議ノ結果ガドウ
  ナルカト云フコトニ考及ビマスト、所
  謂昭和十二年カラ後ノ日本ノ海軍ト云
  フモノハ、其處ニ大問題ヲ持ッテ居ルノ
  デアリマス、主力艦ノ代換建造ガ始マ
  ルヤ否ヤ、或ハ全體ノ世界ノ海軍ニ對
  スル狀況ガドウカト云フコトハ非常ニ
  變ヲテ來ルノデアリマシテ、隨ッテ今日
  ニ於キマシテハ、海軍大臣ガ度々言フ
  如ク、殆ド何等ノ計畫モ立テラレナイ
  希望モアレバ必要モ感ジテ居ルガ、今
  日ドノ程度ノ必要ヲ認メルカト云フコ
  トヲ考ヘマスト殆ドナイ、斯ウ云フコ
  トヲ考ヘテ見マスト、財政計畫カラ言
  ヘバ、ソレニ對スル金ガシマッテアルコ
  トハ勿論必要デアリマスガ、併ナガラ
  只今ノヤウナコトヲ考へテ見マスト
  是マデノ財政計畫ノ建方デモ、サウ云
  フ場合ニ必ズ確定的ノ金ガシマッテハ
  ナカッタ、勿論全體ノ財政計畫ノ裕リノ
  アル時ト無イ時トハ非常ニ違ヒマス
  併ナガラ今ノヤウナ工合デ行キマスレ
  バ-併シ昭和九年位カラ非常ニ世界
  ノ大勢ガ變ヲテ來テ、次ノ會議ニハ寧ロ
  大ニ軍擴デモシナケレバナラヌト云フ
  ヤウナ時ニハ、大口サンノ想像サレル
  如ク、中々將來ニハ波瀾ヲ含ム、斯ウ
  云フコトヲ考ヘテ居ラナケレバナラヌ
  ノデアリマスガ、先ヅ普通ノ場合ヲ考
  ヘマスト左程大キナコトハナカラウ、
  斯ウ吾々ハ考ヘテ居リマシテ、今玆ニ
  的確ニ何千萬圓ト云フヤウナ金ヲ持ッ
  テ居ラヌデモ、左程心配スルコトハナ
  カラウ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=290

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• 291・大口喜六

  ○大口委員　ソレハ御想像ノ上カラ、
  先ヅ五年先ガアル、少シ惡口デ言ヘバ
  ドウニカナルデアラウト思ッテ御出デ
  ニナル、此只今ノ御答辯ニ對シテ、色
  色私突込ンデ申シタイコトモアリマス
  ケレドモ、實ハ非常ニ御同情申シマス、
  大藏大臣ハモウ實ニ困ッテ居ラレル、五
  年後デアルカラ、其中ニハ又第三ノ軍
  縮ノ話モ出ルダラウシ、先ヅドウニカ
  ナラウト思ッテ御出デニナルノダガ、是是
  ハマア此程度デ止メテ置キマセウ、所
  ガソコデ續イテ非常ニ困ルコトハ-
  私意外ニ感ジテ居ルコトハ、何ダカ遞
  增費トカ言ハレマシタガ、當然殖エベ
  キ新シイモノ、例ヘバ恩給ノ如キモ數
  字デ拜見シマスト、每年三百萬圓位ハ
  當然殖エテ來ル樣子デアリマス、ソレ
  カラ內田信也君カラ色々質問サレテ、
  段々眞相ヲ突止メタ所ノ海軍ノ艦艇維
  持費、是モ每年殖エルコトハ明カデア
  ル一寸大體積ッテ見マシテモ、恩給ガ
  約三百萬圓、艦艇維持費ガ先ヅ二百萬
  圓以上三百萬圓、是ハドウシテモ殖エ
  テ來ル、斯ウ云フモノヽ財源ガ保留シ
  テアッタノヲ、今度取ラレタ、是ハ一體
  ドウスルノデアルカ、每年々々吾々ガ
  利息ヲ支拂フト同ジヤウニ、當然來ル
  ベキモノ、此財源ヲ外シテシマッタカラ
  無イ、ソレダケ玆ニ自然增收ガ現ハレ
  テ來レバ洵ニ宜シノデアルガ、今ノ世
  ノ中デ、昭和七年、八年ニ歲入ガ殖エ
  テ、自然增收ガ殖エヤウトハ思ハレナ
  イ私共ハ寧ロ歲入ハ多過ギルト見テ
  居リマス、政府ノ見ル通リデアルトシ
  テ、殖エルコトハナイ、ナイトスルト
  全體是ハドウシテ拂フカト考ヘテ見テ
  モ、減稅ト云フコトガ私ハ實ニ無理ダ
  ト考ヘル、今ノヤウナ財源ハドウシテ
  昭和七年度カラ捻出サレル考デアル
  カ、是モ承ッテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=291

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• 292・井上準之助

  ○井上國務大臣　先日委員會デ御答ヘ
  致シマシタヤウニ、遞增ハナイノデア
  リマスガ、恩給ト云フコトハ眼ノ前ニ
  殖エルモノデアル、御尤モナコトデア
  リマス、恩給ノ制度ニ付キマシテハ、
  大口君ナンカドウ考ヘテ居ラレマスカ
  知レマセヌガ、恩給ノ改正ヲシテ見ヨ
  ウト思ッテ、實ハ私案ヲ拵ヘテ居リマ
  ス、一方カラ申シマスト恩給ト云フコ
  トガ、今日ノ如ク段々細ッテ來タ日本
  ノ財政カラ言ヒマストドウシテモ改
  正ヲ根本的ニシナケレバナラヌモノト
  考ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ昭和
  七年度カラ其點ニ付キマシテハ一ツ改
  正ヲシヨウト云フ案ガ、私案ナガラ出
  來テ居リマスカラ、首相代理ノ施政方
  針ノ演說ニモ、恩給ノ改正ヲシヨウト
  云フコトヲ發表シマシタヤウナ次第デ
  アリマス
  海軍ノ維持費ノ問題ハ先日海軍大臣
  カラ說明致シマシタ如ク、七八年度ニ
  於キマシテ大體申シマスト、一萬八千
  噸位ノ艦ガ殖エルノデアリマスガ、ソ
  レカラ又段々減ッテ行キマシテ、結局昭
  和十一年度ニ確カ一萬八千噸、「ネットㄴ
  一萬八千噸位ノ艦ガ殖エル、ソレニ對
  シテノ維持費ガ要ルノデアリマス、ソ
  レヲ考ヘテ見マスト艦ノ殖エタリ減ツ
  タリスルコトハアリマスガ、左程大キ
  ナモノデモナイノデアリマシテ、大口
  君モ勿論御承知ノ如ク、海軍ノ維持費
  ト云フモノハ、是マデノ例ヲ申シマス
  ト、軍艦ヲ餘計拵ヘルコトニ忙ガシク
  シテ、海軍自體ガ維持費ヲ留保シテ居
  ルト云フコトハ、イツデモ缺ケテ居ル
  ノデアリマス、隨テ非常ニ大キナ豫算
  ヲ持ッテ居ル海軍トシテハ、種々樣々ナ
  繰合セヲシテ、是マデ要求スル何分ノ
  モ維持費ハヤッテ居ラヌノデアリマ
  ス、其事態カラ申シマスト、吾々ハ今
  朝モ海軍大臣カラ說明致シマシタ「ネッ
  ト」一萬八千噸位ノ艦ノ殖エルノニ對シ
  テノ維持費ハ、左程巨額ナモノト思ハ
  ヌノデアリマシテ、ソレ位ノコトハ自
  ラノ繰合セデモ出來ヨウ、又大藏當局
  者等ノ今マデノ交涉ノ點カラ行キマシ
  テハ、左程困難ナ問題トモ考ヘテ居リ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912373X02119310227&spkNum=292

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• 293・大口喜六

  ○大口委員　恩給ノ點ハ、アレヲ御改
  正ナサッテ、昭和七年度カラハ少クトモ
  今日ノ恩給ノ增加スル額ハ減ス、恩給
  法ノ改正ノ結果、モウ恩給ハ增加シナ
  イ程度ニ改正スル、サウナラナケレバ
  算盤ガ合ハヌ、恩給ハ每年三百萬圓以
  上增加スルガ、其財源ニ困ルデハナイ
  カト云フ質問ニ對シテ、恩給法ハ根本
  カラ改正ヲスル、ソレデ財政ガ良クナ
  ルト云フナラバ、恩給ニ依ッテ增加スル
  モノガ增加シナイヤウニ改正ヲスルト
  云フ意思アルモノト認メザルヲ得ヌ、
  ソレヲオヤリニナルト云フナラ、私共
  根柢ハ贊成デス、是ハヤルト云フ御言
  明ヲ得タモノトスレバ其點ハ滿足ス
  併シアナタノ仰シヤル維持費ハ大分
  違フ、是ハ海軍ノ方ハ、實ハ維持費ニ
  困ッテ居ル、大藏省ガ割合ニ維持費ヲ
  ヤラナイ、ソレデ海軍ノ方デハ維持費
  ガ少クナルモノダカラ、段々段々海軍
  ノ方デハ困ッテ來タ、海軍ノ方ニ言ハセ
  ルト三百萬圓ャ三百五十萬圓ノ維持費
  デハ、實際ハ艦ノ運轉ニ困ル、ソレデ向
  フモ色々ヤリ繰リヲシマシテ、大藏省
  ニモ掛合ヒマス、サウシテ其事情モ私
  ハ能ク知ッテ居ルガ、今アナタノ仰シヤ
  ル事情トハ大分違フト私ハ思ヒマス、
  此本當ノ事情ハ內田君ニデモ聽カナイ
  ト分リマセヌガ、先日大演習デ衝突シ
  タ艦ナドハ、働カセズニ長ク繫イデ居ツ
  タノヲ急ニ持出シタ結果、思フヤウニ
  角度ガ取レナクテ衝突シタト云フコト
  デアリマスガ海軍ノ維持費ニ付テハ、
  餘程アナタノ仰シヤルコトハ事情ガ違
  フト思ヒマスケレドモ、ソレハソレト
  シテ、更ニ私ハモウ一ツ伺ヒマス、斯
  ウ云フコトヲ言フト幾ツモアリマス
  ガ、大體分レバ宜イ、モウ一ツダケ問
  ヒマス、ソレハドウ云フコトデアルカ
  ト云フト公債デス、公債ヲ殖ヤサナイ
  ト云フ考ハ一方ニ於テ私ハ宜イコトダ
  ト思ヒマス、私ハアナタ方ノヤウニ、
  公債ガ非常ニ惡イモノダトモ思ッテハ
  居リマセヌ、或ル必要ナコトデ、國民
  全體カラ考ヘテ、算盤ガ採レルト言フ
  ト少シヲカシイノデスガ、間接ノ算盤
  デアッテモ、國家ヲ益スルコトデアル
  トカ、或ハ已ムヲ得ザル事デアルトカ
  云フモノデアルナラバ、私ハ敢テ公債
  ヲ辭スルモノデハナイ、ナイケレドモ
  借金サヘスレバ宜イトモ私共ハ考ヘテ
  居ラナイ、ダカラ出來ルナラバ公債ヲ
  殖ヤサナイト云フコトハ今日ノ如ク
  六十億內外ノ公債ヲ持ッテ居ル日本デ
  ハ其御方針ヲ敢テ私ハ非難ヲシナイ、
  然ラバ現內閣ハ公債ヲ減シタカト云フ
  ト、ドウモ公債ガ減ッテハ居ラナイ、減
  ラナイノミナラズ、借入金ト云フモノ
  ハ殖エテ居ル、借入金ト云フモノヲ公
  債ニ勘定セズニ發行シテ居ル、公債ダ
  ケデ隨分御議論ニナルヤウデアルガ、
  先日來申シマス通リ、公債ヲ募集シ得
  ル特殊法ノ中ニハ、公債ヲ發行シ、又
  ハ繰替借入金ヲ爲スコトヲ得ト大〓ノ
  法ニ書イテアル、ソレヲ利用サレテ、
  內輪デ公債ヲ發行セズシテ、繰替借入
  金ヲシテ居ラレル、此借入金ト云フモ
  ノハ無論前內閣時代ヨリ殖エテ居リ
  マス、雙方寄セテ見ルト云フト、此借
  金ト云フモノハ、今ノ內閣ニナッテ、減ッ
  テ居リマセヌ、ソレノミナラズ昭和六
  年度ノ公債ヲドウ云フ風ニスルカト見
  ルト、昭和六年度ノ豫算上ニ於テ、現
  内閣ガ募集スベキ公債ハ、今度ノ失業
  公債等ヲ入レルト、九千二百十萬圓ニ
  ナルト私ハ思フノデス、サウシテ此公
  債ヲ償還スル金ハドウデアルカト云フ
  ト、モウ剩餘金ハ無クナッテ來タカラ、
  剩餘金ノ何分ノ一ト云フモノヲ返スコ
  トハ出來ナイ、ソレカラ獨逸賠償金デ
  御返シニナッタノモ、是モ返セナイド
  レダケ償還スルカト云フト、昭和六年
  度ノ豫算中ニ於テ、例ノ一萬分ノ百十
  六ニ相當スル公債償還ニ廻ス金ハドレ
  ダケデアルカト云フト、六千九百十二
  萬九千七百三圓デアリマス、サウシテ
  其他ニ償還ニ廻ルモノガ六百八十萬圓
  バカリアリマスカラ、兩方寄セマシテ
  七千五百九十萬圓デアリマス、七千五
  百九十萬圓返シテ、九千二百十萬圓公
  債ダケデ、旣ニ募集サレル、此外ニ借入
  金モ出來ルカモ知レナイガ、交付公債
  ト云フモノハ別デゴザイマス、交付公
  債ヲマルデ別物ノヤウニ論ズル人ガア
  ルガ、政府ノ借金ニナルコトモ同ジデ
  アルシ、民間ニ公債ノ出ルコトモ同ジ
  デアリマス、交付公債ハ別ニシテ、九千
  二百十萬圓借リテ、サウシテ七千五百
  何十萬圓御返シニナルノダカラ、公債
  ハ殖エマシテ、組閣當時ニ御聲明ニナッ
  タコトハマルデ裏切ラレテシマフ、其
  事業ガ失業ノ名デアルト何デアルトヲ
  問ハズ、事實ハ此通リデアル、申譯ヤ議
  論ハ別ニシマス、其申譯ハ論ジマセヌ、
  數字ノ上カラ事實ガ斯ウナッテ、サウシ
  テ公債ノ上ニハ償還金ガ殖エテ行ク、
  卽チ萬分ノ百十六ガ殖エテ行クシ、利
  息モ拂ッテ行カネバナラヌノダカラ、所
  謂義務費ハ膨脹シテ行クニキマッテ居
  ル多分二億七千萬圓カ幾ラカ每年拂
  ハレテ居ル、此大キナ金ガ殖エテモ減
  リハシナイ、是デハ政策ガマルデ誤ッ
  テ居ルト思フガ、之ニ對シテハ大藏大
  臣ハドウ考ヘルカ、斯ウ云フ事ナンデ
  ス、ヤハリ今ノ政府ノ方針カラ行ケバ、
  ドウシテモ是デハモット整理シテ行カ
  ネバナラヌ、吾々ノ建前カラ行ケバ違
  ヒマスカラ、別ニ議論ガアリマスケレ
  ドモ、今ノ內閣ハ長イ間、今ノ借金ハ
  政友會バカリガシタヤウニ御演說シテ
  步イテ居ラレル、サウシテ如何ニモ此
  借金ヲ減ス內閣ノ如ク宣傳シテ步イ
  テ居ラレル、是デハ借金ガ殖エルバカ
  リデアル、是デハドウシテモ財政計畫
  ノ上ニ於テ、行政財政ノ整理ヲシヨウ
  トカ、義務費ヲ減サウトシテモイケナ
  イドウ云フ御考ヲ根柢カラ持ヲテ居
  ラレルカ、仕事ノ是非善惡ハ今論ジマ
  セヌ、其御考ヲ聽イテ置キタイト思ヒ
  マス

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• 294・井上準之助

  ○井上國務大臣　一寸前ノ御說ニ付テ
  駄目ヲ押シテ置キマスガ、三百萬圓恩
  給ノ資金ガ每年殖エル、昭和七年度カ
  ラ其額ヲ全部減ス、減サンケレバ勘定
  ガ合ハヌヂヤナイカ、斯ウ云フ御話デ
  アリマスガ、恩給法ノ改正ガ直ニ昭和
  七年度ニ三百萬圓影響シテ來ルカ否ヤ
  一、未ダ私ハ確信ハ其處マデ持ッテ居
  リマセヌ、併ナガラ根本ニ於テ後年度
  ニ亙リマシテモ、一ツ根本的ニ恩給法
  ヲ改正シテ行カウト、斯ウ云フ考ヲ持ツ
  テ居リマスコトヲ申上ゲテ置キマス
  ソレカラ只今ノ公債ノ問題デアリマ
  ス、今大體御說明ノ通リニ、公債其モノ
  ノ總額ガ幾ラカ殖エマス、昭和六年度
  ノ年度末ニナリマシテ、六十億以上ニ
  ハナラヌデモ、約ソ六十億ニ達スルン
  ヂヤナイカ、或ハ交付公債ヲ入レマス
  トドウ云フ風ニナルカト云フ勘定ハ
  ハッキリ致シマセヌガ、サウ云フ程度ニ
  ナリマシテ、吾々ノ豫期ニ反シテ居リ
  マス、公債ガ殖エ、減債基金ガ減リ、
  剩餘金モ減ル爲ニ減債スル金ガ減ッテ、
  サウシテ今度ノ失業公債ト云フ爲ニ三
  千五百五十萬圓程公債ヲ餘計發行シタ
  コトハ、吾々ノ前ニ-組閣當時ニ考
  ヘマシタコトヽ其後吾々ガズット考
  ヘマシタコトヽハ豫期ニ反シテ居リマ
  ス、是ハ御說ノ通リデアリマス、併ナ
  ガラ度々繰返シテ申シマス如ク、是ハ
  今日ノ日本ノ不況ニ對スル特別ナ處置
  トシテ已ムヲ得ズ斯ウ云フコトニナツ
  タンダ、斯ウ云フ考デ居ルノデアリマ
  ス、其點ハドウゾ御承知ヲ願ッテ置キ
  マス

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• 295・大口喜六

  ○大口委員　私ハ先ニモ申シマシタ通
  リナゼ公債ヲ殖ヤスカトカ、或ハ曩
  ノ御聲明ト反スルガドウダト云フヤウ
  ナコトヲ、今夜詰寄ラウト云フノデア
  リマセヌ、ソレハアナタノ方ニモ相當
  ナ申譯ハアリマセウ、申譯ヲ爲サレバ
  私ハ又攻擊スル材料ヲ持ッテ居ルガソ
  レハ今夜ハ言ハナイ、唯金ガ殖エテ財
  政計畫ノ上ニ惡クナリ、ソレカラ公債
  ガ六十億ヲ超ス超サヌハ別問題トシ
  テ、借入金ガ殖エテ居ル、借入金ハ公
  債ニ代ハルベキモノダカラ、公債ニ
  換ヘレバ無論六十億ヲ超シマスケレド
  モ、ソンナコトハドウデモ宜イ、借入
  金ガ隨分アル、借入金ト云フモノヲ入
  、 。バサウナル、借金ガ殖エ、支拂ガ
  殖エテ行ク、ソレニ對シテドウ思ハ
  レルカ、將來整理ヲシテ公債ヲ減ス
  積リデアルカ、最早主義ヲ變ヘタトハ
  言ハナクテモ、已ムヲ得ズ借金ガ殖エ
  テモ仕方ガナイ、借金ヲ殖ヤス金ハ斯
  ウシテ引出ス、斯ウ言ハレルカ、或ハ
  此借金ハ今ハ殖エタガ、翌年ハ返ス考
  デアルト云フノデアルカ、其アナタノ
  腹案ガ聽キタイト云フノデアル、借金
  ノ申譯ヤ御聲明ト反シテ居ル點ヲ、今
  ハ責メナイ、場合ニ依ッテハ責メマス
  ガアナタガ仰シヤラネバ今夜ハ言ハ
  ヌ積リデアリマス、財政計畫ニ付テ今
  夜ハ聽クノデアリマス

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• 296・井上準之助

  ○井上國務大臣　今日ノ財政狀態カラ
  申シマシタラバ、剰餘金ヲ作ッテ減債
  基金ヲ殖ヤスト斯ウ云フ、恐ラクハ此
  一二年ニハサウ云フ事態ハ出テ參ラヌ
  ダラウト思ッテ居リマス、ソレナラバ消
  極的ニ斯ウヤルヨリ外ニナイ、成タケ
  歲出ヲ減シテ、財政ノ鞏固ヲ圖ッテ縱シ
  失業公債等ニ今度ノヤウナ金ヲ借リル
  コトガアッテモ、ソレハ事態其モノヲ救
  フダケノ高ニハシテ行カナクチヤナリ
  マセヌガ、成タケ緊縮シタ方針ヲ用ヒ
  テ行カナケレバナラヌ、斯ウ覺悟シテ
  居リマス、成タケ金ヲ借リル高ヲ減シ
  テ行カンケレバナラヌト云フコトハ覺
  悟シテ居ルノデアリマス

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• 297・大口喜六

  ○大口委員　サウ考ヘテ數字ヲ見ルト
  ヤハリ減稅ガ無理ダト云フコトニナリ
  ハシマセヌカ、ヤハリ九千二百萬圓ノ
  借金ヲシテ、七千五百萬圓借金ヲ返ス
  ノデアル、サウシテ九百萬圓ノ減稅ヲ
  スルンダト言フ、ドウシテモ無イ金ヲ
  世ノ中ヘ振撒クト云フノデハ、是ハ國
  民モ喜ブカ喜バヌカ分ラヌ、私ハ直ニ
  或ル時代ニ或ル方ガ論ゼラレタヤウ
  ニ、借金ヲシテ減稅スルノダト言ッテ、
  机ハ叩キマセヌケレドモ、實際ハサウ
  ナル、是ハドウモ餘程此處ガ現內閣ノ
  借金ガ惡イ、借金ガ惡イカラ、之ヲ整
  理スルト御宣言ニナッタ、此今ノ內閣ノ
  方針カラ言ッテモ、此財政計畫カラ言ッ
  テモ、本年ノ九百萬圓ノ減稅ト云フモ
  ノハ甚ダオカシイモノダ、サウシテ吾
  吾ガ地租委譲營業稅委讓ヲ致シタ時ニ
  ハ其時ノ借金ト云フモノハアリマシ
  タケレドモ、震災後公債、天災地變已
  ムヲ得ザルモノデ、既ニ議決ニナッテ
  居ル公債ヲ公債トシテ募集シタノデア
  ルノニ、オ前等ハ一方ニ於テ借金ヲシ
  テ減稅ヲスル、委讓スルト云フノハ何ダ
  ト仰セラレタ、其御方ガ借金ハイカナ
  イ、借金ハ減ズル、公債ハ殖ヤサナイ
  六千萬圓以上ニナルトカ、ナラヌトカ
  言ッテ、御自慢ニナル今ノ內閣ガ、本年
  九千二百十萬圓ノ公債ヲ募集サレタ、
  是ハ交付公債ハ別デス、此外ニ今生絲
  補償ノ後始末ヲ付ケル爲ニ三千萬圓、
  ソレカラ失業救濟ト稱シテ二千何百萬
  圓ノ交付公債ガ出ル、是ハ假ニ別ニシ
  タ所デ、借金ヲ返スノガ七千五百萬圓
  デ、新タニ借リルノガ九千二百萬圓デ、
  マルデ今マデノ政府ノ聲明方針ト違ッ
  タコトヲシテ居ッテ、其借金ヲ一方ニシ
  テ、一方デ九百萬圓ノ減稅ヲシタト云
  フノハ、ドウモ今ノ內閣トシテハ、オ
  カシイヂヤアリマセヌカ、如何デゴザ
  イマスカ

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• 298・井上準之助

  ○井上國務大臣　度々申上ゲマシタ如
  ク三千五百五十萬圓ノ金ヲ借入レテ
  公債ヲ募集シマスコトハ、是ハ今日ノ
  特別ノ時代ニ應ズル策デアリマス、何
  モ公債ヲ每年三千五百五十萬圓、モッ
  ト借リテ行カウ、斯ウ云フ意味ヂヤナ
  イノデアリマス、ソレデスカラ一方ニ
  減稅ヲシテ、一方ニ借金ヲシテ居ルト
  云フ批評ハ、直接ニハ當ラヌ、卽チ今
  アナタノ言ハレル如ク、減債基金ガ減
  フタカラ公債ハ殖エルヂヤナイカ、殖エ
  ルノガズット每年續イタトシタラ、減
  稅トハ相容レヌト云フ議論ハアリマセ
  ウ、併シソコハ吾々ガ今日デハ一年限
  リノ公債デアルト云フ考デ、一時的ニ
  特別ノ事件ニ應ズル爲メノモノデア
  ル、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス、

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• 299・大口喜六

  ○大口委員　ソレハ議論ニナリ、意見
  ノ相違ニナリマスカラ、私ハ今晩ハ論
  ジマスマイ、只今ノ御論ハ、ソレハ筋
  ノ通ラヌ御論ダト思ヒマスケレドモ、
  是ハ反駁ハ致シマセヌ、御意見トシテ
  承ッテ置キマスガ、私共ニ言ハセルト、事
  實ハ今ノ通リニナッテ居ル、洵ニドウモ
  私共ハ不思議ナコトデアルト云フヨリ
  外ニ申シ樣ハアリマセヌ、ソレデ財政
  計畫ニ對シテハ、大分遲クナリマシタ
  カラ、今ノヤウナ點ヲ擧ゲマストマダ
  細カイコトハ澤山アリマスガ、先ヅ其
  位ナコトニ致シマシテ、簡單ニ片付ケ
  タイト思ヒマスガ、アトデオヤリニナ
  ル行政財政整理ノ中ニ於キマシテ、稅
  制ノ整理モ根本カラヤラウト言ハレル
  ノデアリマスガ、昨日加藤鐐五郞君ニ
  對シマスル御答ノ中ニ、今囘御出シニ
  ナッタ減稅案ノ此四種類ニ付テハ、稅制
  整理ヲスル場合モ、「是ハイヂラナイト
  言ハレタノデアリマスガ、之ニハ手ヲ
  著ケナイ考デアルト云フ意味デアル
  カ、或ハヤハリ是ハ同ジヤウニ稅制整
  理ノ場合ハ根本カラ只今御出シニナツ
  テ居ル四種ノ稅ニ對シテモ改正ヲ行
  フ、斯ウ云フ意味デアルカ、ソレヲハッ
  キリ承ッテ置キタイ

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• 300・井上準之助

  ○井上國務大臣　昨日加藤君ニ對シテ
  ハッキリ御答申シテ置イタ積リデアリ
  マシタガ、稅制整理ハ稅ノ總テニ亙ッテ
  一ツ調査ヲ致シテ見ヤウト思ヒマス、
  其調査ハ今屆イテ居リマセヌ、隨テ織
  物消費稅トカ、或ハ砂糖消費稅ト云フ
  モノヲ、今度減稅致シマシタガ、ソレ
  ハズット調査致シテ見マシタ上デ、或ハ
  今松本君ガ唱ヘタヤウナ、斯ウ云フモ
  ノガアルカラ、之ヲ一ツ調査シテ見タ
  ラドウカ、聽イテ見マスト御尤トモ
  思フノデス、之ヲ調査シテ見マシタ結
  果、アノ品物ガ他ノ品物ト對シテ、非
  常ナ不公平デアルト云フヤウナラバ、
  アレヲ無稅ニスル、或ハ麻絲ノ番手ヲ
  變ヘルト云フヤウナコトモ出テ來ヤウ
  カト思ヒマス、ソレナラバ今日茲ニ稅
  ヲ出シナガラ、直ニ變ヘル氣カ、斯ウ
  云フコトニナリマシタナラバ、今日ハ
  私ハ變ヘル氣ハアリマセヌ、殊ニ地租、
  營業收益稅ノ如キハ、今日ノ所デハ是
  デ宜イト考ヘテ居リマスガ、今ノ如ク
  全體ニ亙ッテ調査シタ結果、ドウ云フ風
  ノ釣合ニナルカ、其上デ決メルヨリ外
  ニ仕方ガゴザイマセヌ、斯ウ申上ゲテ
  居ル次第デアリマス

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• 301・大口喜六

  ○大口委員　ソコニ一ツ疑問ガ殘ルノ
  デス、ソコデ先日デアリマスカ、色々
  同僚カラ議論ニナッタノデアリマスガ、
  小川政府委員ハ御取消ニナリマシテ、
  大藏大臣ノ御言明ノ方ガ宜イト云フコ
  トニナリマシタガ、私共ハ趣意ニ於キ
  マシテ、大藏大臣ノ仰シヤルコトニ同
  意デアリマス、卽チ稅ヲ決メルニハ、
  一面ニハ負擔力ヲ見ルコトハ是ハ當然
  デアリマス、併ナガラ同時ニ社會政策
  竝ニ產業政策ニ對シテモ大ニ考慮ヲシ
  テ、總テノ事情ヲ加味シテ、稅ヲ決メタ
  イト私共ハ考ヘテ居ル、所ガ今度ノ四
  種類ト云フモノハ、今囘御出シニナリ
  マシタ案デハ、大體產業政策ハ含マレ
  テ居ナイ、ソレハ明瞭ニ御答ニナッタ、
  小川政府委員ノ如キハ、產業政策ハ入ッ
  テ居ナイト斷言シタ、大藏大臣ハ何カ
  一部分產業政策ラシク見エルモノガア
  ルト云フコトヲ言ハレテ居リマス、小
  川政府委員ハ、一切產業政策ハ見テ居
  ナイト斷言サレテ居ル位デアル、何故
  之ニ產業政策ヲ加味シナイカト云フ點
  ニ對シテハ、ソレハ金ガ限ラレテ居ル
  カラ加味シタカッタガ、遺憾ナガラソコ
  マデ手ガ屆カナカッタト云フ、大藏大臣
  ノ御答辯デアルカラ、趣意ニ於テハ深
  ク之ヲ諒トシテ居ル、サウスルト云フ
  ト今度ノ稅制ヲ根柢カラ整理シヤウ
  ト云ヘバ、其中ニ產業政策モ加味シテ
  ヤラナケレバナラヌト云フコトハ決。
  タモノデアル、今度ノ四種類ニハ產業
  政策ハ入ッテ居ナイ、ヤハリ今度ノ稅制
  整理ニ於テハ、產業政策ヲ加味シテ考ヘ
  ルコトニナレバ、全體ヤリ直シノ中ニ
  入レナケレバ、四種類ダケ產業政策ヲ
  加味セラレナイモノガ殘ッテ、後デ〓究
  シテヤラレルモノニハ產業政策ガ入ル
  ト云フコトニナル、稅ノ建前ガ根柢カ
  ラ誤ッテ居ル、ドウシテモ產業政策ヲ加
  味シテ、稅制ノ根柢ヲ樹テルト云フ
  コトガ正シイモノナリトスレバ、今囘
  ノ四種類ハ暫定的ノモノデ、本年一年
  限リノモノデアルト、吾々ハ斷ジナク
  チヤナラヌガ、此處ガドウナリマスカ
  餘程疑問ガアルヤウデス

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• 302・井上準之助

  ○井上國務大臣　織物稅ヲ取ッテ一ツ
  之ヲ說明致シテ見マスト、今度ハ產業
  政策ヲ加味スル餘地ガナカッタト云フ
  コトヲ、私ガ申シテ居リマスノハ、產
  業政策ハ從來ノ織物稅ニハ殆ド入ッテ
  居ルト思フノデアリマス、此問題ハ斯
  ウ云フ所カラ出テ來タノデアリマスカ
  ラ、其歷史ヲ取ルト直グ分リマス、例
  ヘバ「レイヨン」ヲ無稅ニシタラバドウ
  カト云フヤウナ問題ニナルト、ソレハ
  「レイヨン」ハ無稅ニナッテ居ナイト斯
  ウ云フコトデアッタラウト思ヒマス、若
  シ今度「レイヨン」織物ヲ無稅ニスル
  「レイヨン」ヲ大ニ盛ニスルカラト云フ
  コトデアリマスナラバ、今度ノ減稅ニ
  モ產業政策ヲ加味スルト云フコトデア
  ルガ、產業政策ニ依ッテ出來タ稅ハソッ
  クリ其儘ニシテ置イテ、今度織物稅ヲ
  下ゲマシタノハ、全ク社會政策ノ見地
  カラ云ッテ、下層社會ノ用ヒルモノヲ無
  稅ニシタト云フコトニシカ過ギヌ位ノ
  餘地ホカナカッタノデアリマス、其處ヲ
  申シテ居ルノデアリマスカラ、其點ハ
  ソレデ宜シイ、將來稅制ヲ建直シタラ
  ドウカト云フ、斯ウ云フ意味ニナリマ
  シタラ、先刻私ガ說明申上ゲル如ク、
  色々ナコトヲ考ヘテ見テ、釣合上、或
  ハ大口君ノ言フ如ク、或點ニナレバ消
  費稅ノ如キハ全部ヲ變ヘルカ、全部ト
  云ヒマシテモ、總テノモノニ付テ〓究
  スルカ、或ハ一二種ノモノヲ取ッテ公平
  ヲ保ツヤウニスルカ、サウ云フコトハ
  アリ得ルデアラウト思ッテ居リマス、併
  ナガラマア比較論デ行キマスカラ、地
  租トカ、營業收益稅ノ如キハ是デ大體
  吾々ハサウ云フ考デヤッタ積リデアリ
  マスカラ、今日ノ所デ之ヲ變ヘヤウト
  云フヤウナ考ハシテ居リマセヌノデア
  リマス

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• 303・大口喜六

  ○大口委員　私ハ此營業稅ナドニ對シ
  テハ、大イニ考慮ヲ要スベキ今日ノ時
  代ニナッテ居ル、殊ニ產業政策上カラハ
  最モ必要デアルト考ヘテ居ル者デアリ
  マスガ、ソレハ大藏大臣ガサウ云フ御
  答辯デアレバ、又議論ニナリマスカラ、
  普通ナラモウ少シ一口ニ分リ能ク言フ
  ト追窮モシテ見タイノデスガ、マア
  議論ハ避ケマシテ、私ハ其問題ハ此處
  デ止シマス
  ソコデ次ニ段々問題ガ小サクナッテ
  行キマスガ、二ツ三ツ小サイ問題ヲ承ツ
  テ置キタイノデアル、今囘地租ノ賃貸
  價格ヲ御決メニナルニ付テ、東京市ノ
  如キハドウ云フ風ニナッテ居リマスカ、
  內容ヲ承リタイノデアルガ、全體賃貸
  價格ヲ決メマス時ニ政府ガ長イ間掛ツ
  テ下調ベヲサレテ、ソレヲ委員ガ出來
  テ、多分アレハ當時地方々々ノ稅務監
  督局デ委員ノ議ニ掛ケタ筈デアリマ
  ス、其委員ノ議ニ掛ケマシタ時ニハ
  私モ實ハ政府當局ノ一人デアッテ、稍
  內容ヲ知ッテ居リマスガ、諸方ニ於テ色
  色ナ異論ガアッタ、此賃貸價格ニ付テハ
  異論ガアッタガ何トカシテ之ヲ纒メタ
  イト云フノデ、色々稅務監督局長ガ骨
  ヲ折ラレテ兎ニ角今日ノ如ク纒メラレ
  タノデアルガ、其當時委員會カラハ色
  色ナ附帶決議ヲシテ政府ニ申出テ居ル
  コトガアルノデアリマス、殊ニ東京ナ
  ドハ大分喧シイ問題ガアリマシテ、其
  當時ノ附帶決議ヲ丁度私此處ニ持ッテ
  居リマスガ靑木君ハ其時監督局長デ
  アラセラレタカト私ハ思フノデアリマ
  スガ、斯ウ云フコトガ京橋ナドニ於テ
  モ京橋區ノ稅務署內ノ委員長ナドカ
  ラ附帶決議ガ出テ居ル、「今囘本調査會
  ニ提案セラレタル土地賃貸價格ハ全國
  ノ權衡ヲ得ル爲メ土地權利金ヲ過大ニ
  見積リ加算シタル結果現實ニ副ハザル
  モノトナレリ、然レドモ原案中甚ダシ
  キ不均衡ナル點ヲ修正シ、制度上巳ム
  ヲ得ズ原案ヲ認ムト雖モ現在ノ實情ニ
  徵シ原案ヨリ約三割ヲ減額スルヲ適當
  ト認ム」斯ウ云フ實ハ附帶決議ガ付イ
  テ居ル、是ハ東京バカリデナカッタト思
  フ全國デ隨分アッタト思フ、斯ウ云フ
  コトハ斟酌サレテ居ルデセウカ、斟酌
  サレテ居ナイデセウカ、是ハ餘程重要
  ナ點ト思フ

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• 304・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、只
  今ノ京橋稅務署管內ノ賃貸價格調査會
  ノ希望決議ト云フモノハ、私モ只今正
  確ニ記憶致シテ居リマセヌケレドモ、
  其當時京橋稅務署長カラ私ガ報告ヲ受
  ケマシタ事柄ノ中ニ大體只今仰セニ
  ナッタヤウナコトガアッタヤウニ私ハ記
  憶致シテ居リマス、デ其當時政務次官
  デオイデニナリマシタ大口サンノ所ニ
  ハ東京市內ノ賃貸價格調査委員ノ代
  表者ガ陳情ニ參ッタコトモゴザイマシ
  タ、日本全國デ最モ賃貸價格調査會ノ
  紛糾ヲ致シマシタノハ東京市內デアリ
  やく、ソレハ今日賃貸價格表デ御覽ニ
  ナリマスヤウニ、其時ハ地租ノ稅率ガ
  決マッテ居リマセヌケレドモ、賃貸價格
  ガ激增スルト申シマスカ、今日ノ結果
  カラ言ヘバ地租ノ激增スル所ハ東京市
  內デゴザイマスカラ、ソレデ東京市內
  ノ賃貸價格調査會ガ最モ紛糾ヲ致シタ
  ノデアリマスソレハ負擔ノ激增ト云
  フコトヲ非常ニ恐レタモノデアルト思
  ヒマス、デアルカラ日本全國ニモ多少
  再調査ヲ致シマシタヤウナ場所モアリ
  マスケレドモ、最モ紛糾致シマシタノ
  ハ東京市內デアリマス、併シ是ハ每々
  申上ゲテ居リマス通リ、日本全國ノ土
  地負擔ノ公正ヲ得ル爲ニハ、東京大阪
  其他六大都市ガ重キ負擔ニナッテ來ル
  ト云フコトハドウモ已ムヲ得ザル結
  果デアリマスカラ、只今御述べニナリ
  マシタヤウナ此調査會ノ決議ヲ致シマ
  シタ賃貸價格ニ何割引キヲスルト云フ
  ヤウナコトハ只今考ヘテ居リマセヌ、
  サウ云フコトハ致サヌ積リデアリマス

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• 305・大口喜六

  ○大口委員　是ハ餘程重大ナ問題ニ
  ナッテ來ヨウカト思ヒマスガ、私ガ承ル
  所デハ是ハ靑木サン自身ノ書カレタ手
  ダトカ云フコトデスガドウデス、サウ
  デスカ、サウデハアリマセヌカ、何デモ
  斯ウ云フ風ニキメテ吳レヨト云ハレタ
  ケレドモ是ハ困ルカラト云フノデ、
  私ガ今讀ミ上ゲタヤウナ決議ニナッタ、
  其時ノ附帶決議ハ地價ノ課稅標準トシ
  テハ日本全國ノ均衡ヲ得ル爲メ稅務署
  提案ヲ認ムルヲ巳ムヲ得ズトスト雖
  モ、地主ガ借地人ヨリ徵收スル地代ト
  シテハ稅務署提案金額ニ對シ、其約三
  割ヲ減ジタルモノヲ以テ適當ノ額ト認
  ムレ斯ウ云フ決議ニシテ吳レヨト賴マ
  レルガドウモイカヌカラ、今私ガ讀
  上ゲタヤウナ決議ヲ致シマシタカラト
  云フコトデアッタノデスガ、アナタガ御
  書キニナッタノデモ何デモドッチデモ宜
  イガ、是ハ稅務署カラ出シタモノデ、當
  時ノ稅務監督局長ガ書カレタト、斯ウ
  聞イテ居リマスガ、是ハ誰ガ書カレテ
  モ同ジデスガ、今ノヤウナ御答辯ヲ爲
  サルト、明日カラ東京市ノ人ガヤッテ
  來マスゾ、是ハ決シテアナタヲ苛メル
  譯デハアリマセヌ、サウ云フ當時事實
  ガアルノデアリマス

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• 306・青木得三

  ○靑木政府委員　御答ヲ致シマス、是
  ハ確ニ私ノ書イタ字デアリマス、ソヨ
  デ今大口サンノ仰セニナルヤウニ、是
  デハ向フガ滿足シナカッタト今ノ御話
  デハ見エマス、ソレハ滿足シナイノハ
  尤モト思ハレマスガ、詰リコヽハ地主
  ガ借地人カラ徵收スル地代トシテハ約
  三割ヲ減ジタルモノヲ以テ適當ナル額
  トス、詰リ地租ノ課稅標準トシテハ稅
  務署ノ提案シタノガ宜シイケレドモ、
  今ノ地租ガ上ルト地代ガ上リハシナイ
  カト云フコトガ一方ニ議論ニナッタコ
  トモアル、ソレデ實際借地人カラ取ル地
  代トシテハ、今ノ權利金ノ關係ガアリ
  マスカラ、三割位減ラシタモノガ適當
  デアルト認メルト云フ意味デ私ガ書イ
  タト、當時ノ記憶デアリマス、所ガ向
  フガ滿足シマセヌカラ、前ニ申上ゲタ
  附帶決議ヲ付ケタモノト思ヒマス、ソ
  コデ法律上ノ開キガ起ッタト云フコト
  ヲ申上ゲマスレバ、一體土地賃貸價格
  調査委員會ノ決議ニハ附帶條件ヲ付ケ
  ルト云フコトハ法律上ニ認メラレナイ
  コトヽ思フ、贊成スルカ、反對スルカ、
  修正スルカト云フ事ト思ヒマスガ、今
  仰セニナリマシタヤウナ事實ガアッタ
  ト云フコトハ私モ朧氣ナガラサウ云フ
  コトガアッタト記憶ヲ致シマス、京橋稅
  務署長カラ其報告ヲ受ケタヤウニ記憶
  致シマス

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• 307・大口喜六

  ○大口委員　是ハ靑木サンガ大臣デモ
  何デモナイ、サウ云フ責任者デモナイ
  靑木サンノ責任ヲ責メル譯デハアリマ
  セヌガ、法律上附帶決議ヲ付ケル權限
  ガ有ル無シニ拘ラズ、其當時斯ウ云フ
  意見ガ出テ、色々ソレヲ纒メル爲ニ當
  時ノ監督局長ガ兎ニ角今ノヤウナコト
  ニシテ三割減ズルヲ適當ダト云フコト
  ヲ書イテ御渡シニナッタ、モウ今日ハソ
  レニハ及バナイ、サウ云フコトハ顧ミ
  ナイ、サウ云フヤウナ答辯ヲナスッテハ
  東京ノ人ガ聞イテ少々驚キマス、ドウ
  デセウ、靑木サン、サウ云フコトハ政
  府トシテハ少シハ考ヘラレヌトドウモ
  宜クナイト思フガ如何デゴザイマス

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• 308・青木得三

  ○靑木政府委員　御答致シマス、私ガ
  書キマシタノハ只今申上ゲマシタヤウ
  ニ地主ガ借地人カラ地代トシテ徵收ス
  ル稅務署提案金額ニ對シ約三割ヲ減ジ
  タルモノヲ以テ適當ノ額ト認メル、斯
  ウ書キマシタ、三割ト云フモノハ、向
  フデハ三割ノ決議ヲショウト云フ考ガ
  アッタカラ、斯ウ書イタト思ヒマス、併
  シ向フデハソレデハ滿足致シマセヌ
  デ、賃貸價格調査會ノ時ニサウ云フ希
  望條件ト云フモノガ付イテ居ッタラウ
  ト思ヒマス、併シソレハ法律上ノ手續
  カラ申シマスレバ、ヤハリ賃貸價格ト
  云フモノハ調査會ノ議ヲ經テ、稅務署
  長ガ之ヲ決定シテ區役所ニ公示致シ
  マシタカラ法律上ハソレハ完全ナモノ
  デアルト思ヒマス、事實上東京市ノ賃
  貸價格ガ非常ニ增加ヲ致シマシタ、詰
  リ日本全國デ以テ此宅地租ノ增加致シ
  マシタモノガ五百六十萬圓、其中デ四
  百二十萬圓ガ六大都市ト云フノデアリ
  マスカラ、ソレハ激增スルコトハ十分
  認メマス、併シ私ハソレハ權衡ヲ得テ
  ナイトハ思ハナイノデアリマス

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• 309・大口喜六

  ○大口委員　私ハ權衡ヲ得テ居ルト
  カ、居ラヌトカ大阪ガドウダト云フノ
  デナイ、サウ云フ事情ガアッタノニ只今
  ノヤウナ、スゲナク理窟一點デ御ヤリ
  ニナッテ國民ト云フモノガ納得スルモ
  ノデアラウカドウデアルカ、大臣デモ
  政務次官デモ御在リニナラヌノデス
  ガ、政府トシテ大藏大臣モ此事情ヲ御
  承知ニナッタラバ、政治家トシテハ餘程
  御留意ニナラナケレバナラヌ、斯ウ云
  フコトヲ理窟ト法律デ御張リニナッテ
  御答辯ニナッタノデハ如何デアラウカ
  ト御注意ヲ申シタダケデ、別ニ靑木君
  ガ惡イト申シタノデハナイノデアリマ
  スカラ御心配ニハ及ビマセヌ、尙ホ私
  ハ簡單ニ一ツダケ伺ッテ終リマス、モウ
  一ツ御伺シタイノハ、今マデニ質問ガ
  アッタコトヽ思ヒマスガ、私聽漏シタカ
  モ存ジマセヌシ、少々私腑ニ著チナイ
  點ガアルカラ承リマス、今囘ノ地租ノ
  本ニナル賃貸價格ト云フモノハ何年カ
  前ニキマッタモノデアル、其當時ト今日
  トハ非常ニ事情ガ違ッテ居リマスノデ、
  或ハ田ヤ畑ハ幾ラカ地租ガ下ルヤウニ
  モ言ハレテ居リマスガ、併シ今日ノ畑
  トカ、殊ニ山林ハ少シ殖エハセヌカト
  思ヒマスガ、今此處デ表ヲ開ケテ見レ
  バ分リマスケレドモ、諳誦シテ言フノ
  デアリマスカラ少シ違ヒガアルカモ知
  レマセヌガ、山林ハ寧ロ稍〓殖エルト思
  ヒマス、畑ハ稍減ルト思ヒマスガ、畑
  ニシタ所デ、繭ノ値ノ高イ時ニ積ラレ
  テアリマスカラ、是ナドハ餘程高ク見
  ラレテ一貫七圓、八圓シタ繭ガ今ハ一
  圓臺ト云フコトデアルカラ餘程畑ノ値
  ト云フモノハ下ッテ居ルノデアルカラ、
  此儘行フト云フコトハ今日カラ言ヘバ
  非常ニ不公平ト見テ居ルト云フコトハ
  已ムヲ得ヌトシテモ、政府ハ之ヲ認メ
  ネバナラヌト思フガドウデアリマセ
  ウ、殊ニ山林ト云フモノハ此材木ノ價
  格ノ下ッテ居ルコトガ私ガ申スマデモ
  ナクヒドイモノデアル、ソレデアルカ
  ラ山林ノ賃貸價格ト云フモノハエライ
  下ラネバナラヌ、是ハドウセ十年ニ一
  遍改正スルモノデアルカラ、其不公平
  ハ申スマデモナイモノデアルト云フヤ
  ウナ理窟ナラバ承ラナクテモ私ハ宜シ
  イト思フ、今日カラ見テ兎ニ角現狀ニ
  卽シテハ隨分不公平ナ點ガアルト云フ
  コトダケハ、御認メニナルダラウト思
  ヒマスガ、此點ハ大藏大臣ハ如何デア
  リマセウカ

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• 310・井上準之助

  ○井上國務大臣　本會議ニ於テ高橋君
  カラ同ジヤウナ質問デアリマシタガ、
  此賃貸價格ノ調査方法、實地ヲ調査シ
  テドウナッテ居ルト云フコトハ申上ゲ
  ルマデモナイ御承知デアリマス、大體
  今般ノヤウナ經濟ノ狀態ガ來マスト、
  一度ニ同ジヤウニズット下ッタ、其中ニ
  ハ拾ヒ上ゲテ見マスト、是ハ下ッテ居ナ
  イ、是ハ下リ過ギテ居ルト云フヤウナ
  コトモアリマセウガ、大體言ヘバ宅地
  モ田畑モ皆一〓ニズット値段ガ下ッタト
  考ヘテエライサウ無理モナカラウガ
  ソレハ種々實例ヲ取リマシテ、格段ノ
  場合ヲ収上ゲテ見タラ此方ハ餘計下ッ
  テ此方ハ下ッテ居ナイト云フ點モアリ
  マセウ、併シ大體見ルト-全般ヲ取ツ
  テ見レバサウ考ヘテ宜カラウト考ヘテ
  此事ヲ實行シツヽアル所以デアリマ
  ス

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• 311・大口喜六

  ○大口委員　成程サウ云フ御答デアッ
  タカト思ヒマスガ、一層確メルコトヲ
  得マシタガ非常ニ間違ッタ考デアッタ、
  ソレハ實際ニ卽セザル御考デアルト云
  フコトヲ私申シマス、モウ少シ山林ヤ
  畑ナドノ事情ヲ能ク御調ベヲ願ヒタ
  イ、是ハ事情ニ卽セザル御考デアルト
  云フコトダケハ私モ申上ゲマス、ソコ
  デ更ニ賃貸價格ヲ決メルノハ今度ハ昭
  和十三年ノ筈ダト思ヒマスガ、十三年
  ノ改定ニ當ッテ相當費用ガ要ルト思ヒ
  じて、ソレハドノ位ノ費用ヲ要スルト
  云フ御考デアリマスカ

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• 312・井上準之助

  ○井上國務大臣　此前ノ豫算デ千萬圓
  程使用致シマシタガ、今度ノ次カラハ
  ソレ程ハ要ラヌト考ヘテ居リマス、見
  込ヲ立テタコトハアリマセヌガソレ
  程ハ私ハ要ラヌト考ヘテ居リマス、見
  込ヲ立テタコトモアリマセヌケレド
  モ、大體順序ガ定マッテ居リマスガ、何
  割カ引イテ宜カラウカト考ヘテ居リマ
  ス

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• 313・大口喜六

  ○大口委員　川越君モ居ラレルヤウデ
  アリマスガ、是ハ〓計表ニ取ッテ居リマ
  スカ此費用ハ〓計表ニアレバ分ル譯デ
  セウ

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• 314・川越丈雄

  ○川越政府委員　〓計表ニハ見テアリ
  マセヌ

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• 315・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト又〓計表ガ怪
  シクナリマシタ、千萬圓近イ金ガ幾ラ
  要ラナイト言ッタ所ガ七百萬圓ヤ八百
  萬圓ハ要ルト思フ、此位ハ法律デ定マッ
  テ明カナモノガ、財政計畫ニナクチヤ
  ソレハイキナリ千萬圓近イ穴ガアイテ
  シマヒマス、是ハドウモ怪シイモノト
  私ハ考ヘマスガ如何デアリマスカ

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• 316・井上準之助

  ○井上國務大臣　申上ゲマスガ、十三
  年ハ六百萬圓、十四年ハ一一千二百萬圓、
  十五年ニハ五千五百萬圓ノ金ガ餘ッテ
  居ルノデアリマスカラ、十三年カラ先
  ハ大〓宜イダラウト考ヘマス

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• 317・大口喜六

  ○大口委員　十三年先ノコトヲ言フナ
  ラバ、私ハマダ非常ニ金ノ要ルコトガ
  アルコトヲ知ッテ居リマスカラ、十三年
  先ノ〓計表ヲモウ少シ詳シイモノヲ知
  リタイト言ッタガ、ソレガ知レマセヌ
  ガ詰リ十三年ト云フモノニ付テハマ
  ダ色々ナ外ノモノガアルノデアリマス

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• 318・井上準之助

  ○井上國務大臣　一寸アナタノ誤解デ
  アリマスガ、私ノ申上ゲマシタノハ昭
  和十三年デゴザイマス、昭和十三年、
  十四年、十五年デゴザイマス、十三年
  先デハアリマセヌ

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• 319・大口喜六

  ○大口委員　サウスルト昭和十三年ニ
  ハ此〓計表デ見タノデハ六百萬圓ニナ
  ルノデアリマス、
  テ來マスシ、種々ナ問題ガ段々現ハレ
  テ來ルノデ六千萬圓シカ海軍ノ財源ハ
  留保シテハアリマセヌ、十二年以後ハ-
  ー主力艦隊ノ代換建造ト云フモノガ來
  ネバナラヌ、サウ云フ事カラ論ジデ行
  クト云フト此六百萬圓デ今ノ地租ノ改
  定ガ出來ルノダラウト云フコトハ思ヘ
  マセヌケレドモ、昭和十三年ノコトデ
  アリマスカラ宜イヤウナモノデアリマ
  スガ、サウ云フ風ニ論ジテ行クト是モ
  ヤハリ十三年ハ怪シイモノダト云フコ
  トヲ見ネバナラヌノデアリマス、私ハ
  兎ニ角是デ打切リタイト思ヒマス

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• 320・高橋熊次郎

  ○高橋委員　私ハ此場合ニ發言ヲ求メ
  マシテ、理事會ノ申合セニ基キマシテ、
  昨日委員長ヨリ御宣言ノアリマシタル
  如クニ本日中デ質問ヲ打切ルコトニ相
  成ッテ居リマス、未ダ委員中ニハ幾多ノ
  質問事項ヲ有スルコトヽ思フノデアリ
  マスケレドモ、既ニ時刻モ十時半ニ垂
  ント致シテ居リマス左樣デアリマスカ
  ラ本委員會ニ付託ヲ致サレマシタ地租
  法外六件ニ關スル質問ハ此程度ニ於テ
  止メラレンコトヲ遺憾ナガラ希望ヲ申
  上ゲル次第デアリマス(拍手)

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• 321・本田恒之

  ○本田委員長　委員長ノ手許ニ質問ヲ
  要求セラレタ方ノ全部ノ質問ヲ終リマ
  シタ、之ヲ以テ質問ハ終了シタルモノ
  ト認定致シマス-委員長ハ一箇月ニ
  所ガ海軍ノ問題モ出亙ル長イ間諸君ガ御精勵下サレタコト
  ヲ、委員長トシテ深ク謝シマス、明日
  ハ各派ノ意見發表ノ爲ニ午後四時ヨリ
  開會致シマス、之ヲ以テ散會ト致シマ
  ス
  午後十時二十九分散會

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