1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
抵當證券法案(政府提出)
不動産登記法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟法中改正法律案(政府提出)
競賣法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出)
日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
國税徴收法中改正法律案(政府提出)
貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)
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會議
昭和六年二月二十三日(月曜日)午前十時二十九分開議
出席委員左の如し
委員長 荒川五郎君
理事 小峰滿男君
理事 篠原陸朗君
理事 勝田永吉君
理事 大崎清作君
理事 板谷順助君
小村俊一君 藍川清成君
本多眞喜雄君 關口志行君
山田又司君 瀬川嘉助君
名川侃市君 石崎敏行君
中田ろく郎君
出席國務大臣左の如し
司法大臣 子爵 渡邊千冬君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 小川郷太郎君
大藏參與官 勝正憲君
大藏省銀行局長 大久保偵次君
司法政務次官 川崎克君
司法參與官 井本常作君
司法省民事局長 長島毅君
本日の會議に上りたる議案左の如し
抵當證券法案(政府提出)
不動産登記法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟法中改正法律案(政府提出)
競賣法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出)
日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
國税徴收法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=0
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001・荒川五郎
○荒川委員長 是ヨリ證劵抵當法外九
件ノ委員會ヲ開キマス、本案ハ最初ノ
試ミデモアリマス、皆サンニ十分ニ御
〓究ヲ願ヒタイト思ヒマシテ、昨日
ハ特ニ委員會ヲ開カズシテ、參考書ハ
私ノ手許ヘ預ッテ、一昨日議場ニ於テ特
ニ皆サンニ御配付シテ、先ヅ御一見下
サルノガ便宜ト思。ツタノデアリマスガ、
尙ホ御受取ニナラヌ御方ハ書記ノ手ヨ
リ御受取ヲ願ヒマス、本案ニ付キマシ
記速)第二囘
テハ、只今申スヤウニ最初ノ試ミデモ
アリマス、土地ヲ金融化致シ、從ッテハ土
地ノ價モ出テ來ル、農村ノ發達ニモ利
シヨウト云フ案デアリマス、旁々皆サン
ノ十分御審議ヲ願ヒマスノハ勿論デア
リマスガ、幸ニ本會議ニ於テ名川君、上
田君、板谷君等カラ有力ナ質疑應答ガ
重ネラレマシテ、大分本案ノ審議ハ進
行致シタ譯デアリマス、ソレ等ニ關シ
テハ重複ヲ避ケルコトハ勿論、尙ホ熱
心ナ委員諸君ノ御盡力ニ依リマシテ、
成ベク質問ハ重複ヲ避ケテ、十分ノ審
議ヲ圖リマスヤウニ御願ヒ致シタイト
心得テ居リマス、ドウゾ其積リデ委員
諸君ハ本案ノ議事ノ進行ニ御盡力アラ
ンコトヲ希望致シマス、本案ニ付テハ
本會議デ說明モアリマシタガ、尙ホ政
府ニ於テ御說明ガゴザイマスレバ、此
際御述ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=1
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002・渡邊千冬
○渡邊國務大臣 此抵當證劵法以下九
案ノ說明ニ付キマシテハ過日本議場ニ
於キマシテ大體申述ベテ置キマシタ通
リデアリマス、詰リ今日我國ノ不動產
金融ノ狀態ガ思フヤウニ行ッテ居ラナ
付託議案
抵當證劵法案(政府提出)
不動產登記法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟法中改正法律案(政府提出)
競賣法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟用印紙法中改正法律案政府提出)
日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
國稅徵收法中改正法律案(政府提出)
貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)
イ、債務ノ總額ハ昭和三年度末ニ於テ
六十二億ヲ超ユル巨額ニ上ッテ居ルノデ
アリマスケレドモ、是ガ殆ド固定ヲ致
シテ居リマスノデ、之ヲドウカシテ融
通性ヲ持タシタイ、卽チ流動化トカ資
金化トカ云フコトヲ致サナケレバ、此
上不動產金融ト云フモノヲ一層滑カニ
致スコトガムヅカシイト云フコトカ
ラ、此法案ガ考ヘ出サレタノデアリマ
シテ、抵當證券法以下四ツノ法案ハ皆
手續上ノ改正ヲスルコトガ必要ニナリ
マシタノデアリマシテ、抵當證劵自體
ト致シマシテモ、其精神ハ右申シマシ
タコトニ盡キテ居ルノデアリマス、ア
トハソレヲ證劵ト致ス上ノ手續及細カ
イ法律上ノ關係ヲ多少規定致シテアル
ノデアリマスカラ、御質問ニ應ジマシ
テ私ナリ又政府委員ナリカラ御說明ヲ
申上ゲタ方ガ、御便宜デハナイカト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=2
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003・荒川五郎
○荒川委員長 ソレデハ是ヨリ御通告
ノ順ニ依リマシテ、質疑ヲ御紹介致シ
マス-板谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=3
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004・板谷順助
○板谷委員 私ハ政府ニ參考資料ノ提
出ヲ願ヒタイト思ヒマス、一昨日頂戴
致シマシタ參考資料ニ依リマシテモ、
又只今司法大臣ノ御說明ニ依リマシテ
モ、昭和三年度ニ於ケル全國不動產抵
當債務ガ六十二億アルト云フノデアリ
マスガ、其後ノ御調査ガ出來テ居リマ
スナラバ、最近ノ統計ヲ御示ヲ願ヒタ
イ
ソレカラ此六十二億ノ中ニ勸業、農
エ、北海道拓殖ハ十二億アルト云フコ
トデアリマスガ、其外ニ普通銀行、或
ハ個人其他ノ關係ノ貸付割合ガドウ云
フヤウナ數字ニナッテ居リマスカ、ソレ
ヲ御提出願ヒマス
ソレカラノ不動產ノ抵當債務ノ中市
街宅地、田畑、雜種地ノ貸付割合ガド
ウ云フ數字ニナ。テ居リマスカ、其割合
ヲ御示ヲ願ヒタイ
ソレカラ勸業、農工、北海道拓殖ノ
貸付步合ノ利子及普通銀行其他ノ貸付
步合ノ利子ノ平均ヲ御示ヲ願ヒタイ
尙ホ貸付金額ノ中ニ低利資金ト普通
貸金ガアリマスガ、只今申上ゲマシタ
三銀行ニ於キマシテ、其割合ガドウ云
フ數字ニナッテ居リマスカ、ソレノ御示
ヲ願ヒマス
更ニ前三箇年ニ於ケル勸業銀行、農
工銀行、北海道拓殖銀行ノ競賣金額ノ
割合ト、若シ普通銀行其他ノ競賣サレ
タ金額ノ步合ガ分リマシタナラバソ
レモ御示ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ競賣申立カラ終結ニ至ル日
數ガ今日マデ相當ニ掛テ居ルノデア
リマスガ、其日數ノ統計ガ凡ソドレ位
掛ッテ居ルカ、御分リニナッタナラバ御
示ヲ願ヒタイ
ソレカラ先達テ本會議ノ議場ニ於テ
滌除ヲ爲シタル數ガ極メテ僅少デアル
ト云フ御說明デアリマシタガ、若シ其
統計ガアリマスナラバソレヲ御示願ヒ
タイ
ソレカラ抵當權及債權ノ讓渡、又抵
當權ノミノ讓渡、是ガ分リマシタナラ
バ御示ヲ願ヒタイ、參考資料ニ關スル
コトハ、ソレダケデアリマス
尙ホ一昨日頂戴シマシタ參考資料ノ
條文中ノ疑義ガアル點ニ付テ御尋ヲ致
シマス、大體金融調査會ノ決定ニ依リ
マスト、抵當證券法ト云フモノヽ主ナ
ル目的ハ、從來普通銀行ガ貸付シテ居ッ
タ、ソレヲ資金化センガ爲ニ勸業、農
工及拓殖銀行ノ銀行法ヲ改正シテ、之
ニ抵當證劵ヲ取扱ハサセル、斯ウ云フ
風ニ解釋シテ宜シイノデゴザイマス
カ、是ガ先ヅ第一、ソレカラ抵當證劵
ハ不動產抵當附債權ヲ手形ノ上ニ現ハ
シタヤウナ證劵デアル、斯ウ云フ御說
明ニナッテ居リマシテ、後段ヲ讀ンデ見
マスト、債權ノ償還ハ前者ニノミ限ル
ヤウニモ書イテアリ、或ハ又手形ノ性
質ト同樣デアッテ、裏書人全體ガ連帶責
任デアルヤウニモ考ヘラレルノデアリ
マスガ、其點ガハッキリシテ居リマセヌ
ノデ、之ヲ一ツ御說明願ヒタイト思ヒ
マス、ソレカラ本法ノ施行區域ハ勅令ヲ
以テ定メラレルコトニナッテ居リマス、
其地域ハ市制施行地、借地法施行地及
ビ浦和町ノ豫定デアリマシテ、從テ此
際ハ市街地ノ土地建物ノミガ抵當證劵
ノ目的トナル譯デアリマス、斯ウ書イ
テアルノデアリマスガ、市街宅地ニ限
ルノデアルカドウカ、此點モ一ツ御說
明願ヒタイノデアリマス
更ニ抵當證劵發行ノ條件ト致シマシ
テハ抵當證劵發行ノ特約ナキトキハ發
行スルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ意味
ガ書イテアリマシテ、而シテ又後段ニ
於キマシテ、抵當證劵ノ發行ノ條件ト
致シマシテ、先ヅ申請者ハ權利ニ關ス
ル登記濟證、債權ニ關スル證書竝ニ抵
當權設定者、第三取得者及ビ債務者ノ
同意書ヲ添ヘテ、管轄登記所ニ申請書
ヲ提出致シマスト云フコトニナッテ居
ルノデアリマスガ、此點カラ見マスト
云フト、抵當證劵ノ發行ノ特約ナキ場
合ニ於キマシテモ、卽チ第三取得者及
ビ債務者ノ同意書其他ノ權利ニ關スル
書類ヲ添ヘテ管轄登記所ニ申請ヲシタ
ナラバ、手續ガ出來ルヤウニ書イテア
ル、又後段ニ於キマシテ債務者其他ノ
利害關係者ニ對シテ異議アレバ、一定)
ノ期間內ニ申立ツベキ旨ヲ催告シマス、
斯ノ如ク債務者其他ノ利害關係者ニ對
シテ催告ヲ爲シ、異議ノ申立ノ途ヲ開
クト共ニ、異議申立ヲ爲サズシテ抵當
證劵ガ發行サレタトキハ、催告ヲ受ケ
タル者ハ大體ニ於テ證劵ニ記載サレタ
ル事項ヲ爭フコトガ出來ナクナルノデ
アリマス、斯ウ書イテアリマス、又抵
當證劵發行ノ特約ノナイ場合ニ於テ
ハ、發行ガ出來ナイト云フコトガ書イ
テアリ、更ニ又債務者ノ同意書ヲ添ヘ
テ出シタナラバ、此手續ガ出來ルト云
フコトガ書イテアッテ、是等ノ手續ガ完
備シテ居ルニモ拘ラズ、更ニ又此點ニ
對シマシテ債務者其他ノ利害關係者ニ
異議ガアルナラバ一定ノ期間內ニ申
立テルコトガ出來ルカ、此點ガドウモ
ハッキリシテ居ラヌヤウニ思ヒマスカ
ラ、此內容ヲ一ツ御說明ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス
ソレカラ此證劵發行ノ目的ハ、長期
ニシテ低利資金ノ貸付ヲスル目的ニア
ルヤウニ思ハレルノデアリマスガ、此
點カラ考ヘテ見マスルト、從來普通銀
行ガ一割デ例ヘバ百萬圓ノ金ヲ貸シテ
居ノシ、其證劵ヲ更ニ北海道拓殖銀行ニ
八十萬圓金ヲ借リテ割引ヲスル、更ハ
又其證劵ヲ以テ勸業銀行カラ六十萬圓
ヲ借リルト云フ場合ニ於キマシテハ、
利子ノ步合ト云フモノハ、ソレ〓〓違
フノデアリマス、又特殊銀行ハ銀行法
ニ依ッテ詰リ最低ノ貸付歩合ガ決ッテ居
ルノデアリマスカラ、初メ普通銀行カ
ラ借リマシタモノガ一割デアルトシテ
モ、其後八分トナリ六分トナルノデア
リマスガ、債務者ニ於キマシテ此利子
ノ支拂ガドウ云フ關係ニナルノデアリ
マスカ、此點モ一ツ御說明ヲ願フテ置
キタイト思フノデアリマス
先ヅ大體其點ノ御說明ヲ承リマシテ
又御尋シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=4
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005・長島毅
○長島政府委員 材料ノ御求メガゴザ
イマシタガ、甚ダ恐縮デゴザイマスケ
レドモ、御書キニナッタモノヲ後デ頂
戴致シトウゴザイマス、滌除ノ分ハ
寸調ベテアリマスカラ後デ差上ゲルコ
トニ致シマス、ソレカラ私ハ第二點、
三點、四點ノコトヲ御答致シマシテ、
一點ト五點ハ何レ大藏省ノ側カラ御答
ニナルコトヽ思ヒマス
第二點ハ裏書關係ノ御尋ノコトヽ思
ヒマスガ、是ハ大體ハ手形ノ裏書人ト
略〓同ジコトニナッテ居リマス、卽チ最
後ノ裏書人卽チ最後ノ抵當證劵所持人
ガ、愈〓抵當權ヲ實行致シマシテ、尙且
其辨濟ノ足リナイ部分ガゴザイマス
ト、ソレハ裏書人ヘ、自己ノ前者ニ對
シマシテ償還請求ヲ致スコトニナッテ
居ルノデアリマス、此意味カラ申シマ
スト、詰リ總テノ裏書人ハ其後者ニ對
シテ其抵當證劵ノ金額ニ付キマシテ擔
保ノ責任ヲ持ノテ居ルト云フコトニナ
ルノデアリマス
ソレカラ第三ノ點デゴザイマスガ、
此施行區域ハ今御問ノ中ニモアリマシ
タ通リニ、大體地方裁判所ノ所在地ト、
ソレカラ市部ノ、市制ノ行ハレテ居リ
マス所ト、ソレカラ借地法ノ行ハレテ居
リマス場合デアリマスト隣接町村、サ
ウ云フ所ダケニ限ラレテ居ルノデアリ
やっ、併ナガラ無論御承知ノ如クニ市
制ノ行ハレテ居ル所ニハ、多少ハ事實
上宅地デナイ所モゴザイマスカラ、實
際ニハ宅地デナイ所モ多少含マレルコ
トヽ存ジマスガ、大體ニ於テハ市街地
ダケニナッテ居ルノデアリマス、其理由
ハ私共ノ仕事ノ方ノ立場カラ申シマス
上、此法律ハ相當新シイ法律デアリマ
シテ、尙且中々解釋ノムヅカイシ法律デ
アリマスカラ、餘リ手馴レテ居リマセ
ス所ノ田舍ノ方ノ登記所ナドニ此事ヲ
行ハサセマスト、或ハ俄ニ煩ヲ生ズル
虞ガアリマスカラ、漸次之ヲ擴ゲテ行
クト云フ方針デ、先ヅ市街地ダケニ施
行シタ方ガドウデアラウカト云フコト
ヲ考ヘテ居ル次第デアリマス
尙ホ金融ノ方面ノ關係ニ付テハ大藏
省ノ方カラ御說明ガアルコトカト存ジ
マスガ、私ノ方面ト致シマシテハ大體
一度ニ此法律ヲ全國ニ施スト云フコト
ハ、如何ニモ手廻リ兼ネルト云フヤウ
ナコトカラデゴザイマス、詳シイコト
ヲ申上ゲマスト、色々手續ニ付キマシ
テハ非常ニ細カイ準備ヲ要スルコトデ
アリマスカラ、餘リ全國ニ擴ゲマシテ
手違ヒヲ生ジマシテモ困ルト云フコト
カラ、私ノ方デハ制限ヲシテ居ルノデア
リマス、金融方面ニ付テモ相當ノ理由
ガアルノデアリマスガ、其點ハ大藏省
ノ方カラ御說明ニナルコトト思ヒマス
ソレカラ第四點デアリマスガ、是ノ
御質問ノ中ニモアリマシタヤウニ、抵當
證劵ヲ發行致シマスニハ特約カ、又ハ
同意書ガ要ルコトニナッテ居リマス、卽
チ抵當權設定當時ニ於テ、此抵當權ニ付
テハ抵當證劵ヲ出シテ貰ッテモ構ハヌ
ト云フ約束ガアッテ、ソレガ登記ガ出來
テ居リマスカ、若シサウ云フ特約ガア
リマセヌケレバ抵當證劵ヲ愈〓發行ス
ル時ニ、卽チ登記所へ抵當證劵發行ノ
申請ヲ致シマス場合ニ、債務者ナドト
約束ヲ致シマス、其ドチラカ-詰リ初
ニ抵當權設定當時ニ約束ガアルカ、抵
當證劵ヲ發行スル際ニ於テ約束ガアル
カ、何レカヲ必要ト致シマス、抵當證
劵ガ愈〓流通スルコトニナリマスト云
フト、抵當權者ノ權利ハ非常ニ强クナ
リマスケレドモ、柢當權債務者ノ方ノ
責任ハ重クナルノデアリマスカラ、特
約ヲ必要ト致シマス、然ラバ異議ト云
フヤウナ方法ハ要ラナイデハナイカト
云フ御疑問ト存ジマスガ、其特約後ニ
於キマシテ、色々事情ノ變化ガ起リマ
シテ、或ハ其債務ガ辨濟サレテ居ルト
云フヤウナコトカ、又ハ其後ニナッテ
債務者ノ方ニ相殺ノ出來ルヤウナ反對
債權ガ出來テ居ルト云フヤウナコトモ
アリマセウシ、又登記ト抵當證劵發行
ノ申請書トノ間ニ、色々ト喰違フタ
故意或ハ故意ニアラズシテ間違リテ居
ルヤウナ事柄モアリマセウシ、實際登
記シテアル事柄デアリマシテモ事實
ト違フヤウナコトモアルノデアリマス
カラ、是等ノ點ニ付テハ、結局異議ヲ
言ハセルト云フ方法ヲ講ジタノデアリ
やっ、サウ致シマセヌト-少シ專門
的ノ問題ニナルノデアリマスガ、日本
デハ登記ト云フモノヲ公示主義ヲ採ツ
テ居リマシテ、登記ガ假令シテアリマ
シテモ、事實ト違ヒマスト、必ズシモ
登記通リノ主張ガ出來ナイコトニナツ
テ居ルノデアリマス、デアリマスカラ
登記面ニ例ヘバ千圓ノ抵當權ガアリ
マシテモ、辨濟シテ無クナッテ居リマス
トヤハリ抵當權ハ無クナッテシマフト
云フ制度ヲ日本デハ採ヲテ居リマスカ
ラ、ソコデ登記簿ニ基イテ抵當證劵ガ
出マシテモ、何カ打切ル方法ヲ講ジテ
置キマセヌト云フト、其抵當證劵ガ空ツ
ポノモノニナルト云フ虞ガアルノデア
リマス、ソコデ餘程此點ハ考ヘマシタ
ノデアリマスガ、ドウシテモ異議カ何
カヲ言ハセテ打切ルヨリ仕樣ガナイ、
ソコデ一定ノ期間ニ異議ヲ申立サセ
テ、異議ガナカッタナラバ抵當證劵ト云
フモノヲ完全ナモノニシテシマッテ、ソ
レカラ以後ハ一切債務者等ニ異議ヲ言
ハセナイ、抵當證劵ノ所持人ニ對シテ
一切文句ヲ言ハセナイト云フヤウニ、
之ヲ打切ラナケレバ困ルト云フコトカ
ラ、一異議ト云フコトヲ規定シタノデア
リマス、御氣附ノ如ク異議ガアリマス
結果ハ、多少抵當權者ニ對シテハ面倒
ナ手續ニナリマスケレドモ、日本ノ登
記法ト云フモノハ公示主義ヲ執ッテ居
リマス結果、ツマリ元ノ權利者デアリ
やっ、抵當物ノ所有者ナドノ權利ハ非
常ニ重ンジテ居ルト云フ制度デアリマ
スカラ、ソレデドウシテモ打切ト云フ
事ヲシナケレバナラヌト云フ關係カ
ラ、今ノヤウナ異議ノ手續ヲ執ラセタ
ノデアリマス、其代リニ異議ノ手續ヲ
執リマシテ若シ異議ノ申立ガナイ、或
ハ異議ノ申立ガアッタケレドモ理由ガ
ナイト云フコトニナリマスレバ其後
ニ於テハ殆ド抵當證劵ト云フモノハ完
全ナモノニナリマシテ、ソレニ付テモ
ウ債務者ハ何ニモ異議ガ言ヘナイ、安
心シテ流通サレルト云フコトニナル譯
デアリマス、一寸申上ゲ方ガ錯雜シテ
御判リニナラナカッタカモ知レマセヌ
ガ、若シ御不明ノ點ガアリマシタラ更
ニ御答ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=5
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006・荒川五郎
○荒川委員長 一寸此際-抵當事務
ノ上カラ司法大臣ハ本會議デモ說明セ
ラレマシタガ、其實體ノ上カラ大藏大
臣ノ出席モ求メテ居ルノデアリマス
ガ、他ノ委員會、貴族院等ノ關係デ只
今マデ御出席ガナカッタノデアリマス、
幸ヒ小川大藏次官ガ御出席ニナリマシ
タカラ、此案ノ實體ニ付テ此際御說明
ヲ御紹介シテ置クコトガ、議事ノ進行
ニ便利ト存ジマス、小川政務次官ノ說
明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=6
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007・小川郷太郎
○小川政府委員 今御質問ガアリマシ
タヤウデスガソレハ後カラ御答申上
ゲルサウデス-ソレデハ私カラ大藏
省關係ノ法律案ノ提案ノ理由ヲ申上ゲ
テ置キタイト思ヒマス、大體本會議デ
說明ヲシテ置イタノデアリマスケレド
モ更ニ當委員會ニ於テ御說明申上ゲ
テ置キマス、第5ニ日本勸業銀行法中
改正法律案、農工銀行法中改正法律案
及ビ北海道拓殖銀行法中改正法律案、
此三案ヲ一括シテ提案ノ趣旨ヲ申述ベ
タイト思ヒマス
我國ニ於ケル不動產金融ノ金額ハ土
地建物及ビ各種財〓ヲ含メマシテ、是
等ヲ抵當トスル貸出金額ガ六十二億四
千萬圓ニ上ッテ居リマス、而シテ此金融
ヲシテ居ル者カラ申セバ個人等ガ二十
七億五千萬圓デ最モ多額ヲ貸出シテ居
ル、次ニ普通銀行及ビ貯蓄銀行ガ十七
億圓ホド貸出シテ居リマシテ之ニ次イ
デ居リマス、主トシテ不動產金融ヲ業
トシテ居ル日本銀行、農工銀行及ビ北
海道拓殖銀行ガ十二億五千萬圓貸出シ
テ居リマシテ、全體ノ金額ノ中デ約二
割ヲ占メテ居ル現狀デアリマス、本來
申セバ不動產金融ノ專門機關ガ普通銀
行ノ不動產金融上ニ占メテ居ル地位ニ
取ッテ代ルコトガ望マシイノデアリマ
ス、普通銀行、貯蓄銀行トシテモ、ソ
レガ經營上適當デアルト考ヘルノデア
リマスガ、實狀ハ此希望ヲ實現致シテ
居ラナイノデアリマス
一方不動產ヲ擔保トスル金融ノ必要
ハ我國經濟ノ關係上益、增加致シマス
シ、又此必要ヲ充シテ行クベキ制度ナ
リ方法ナリニ付テハ十分ノ攻究ヲ重
ネナケレバナラヌ所デアリマス、數字
ニ付テ見マスレバ大正元年ニ於ケル不
動產抵當貸付金ハ十四億五千萬圓デア
リマシタガ、ソレガ昭和三年末ニナリ
マシテ六十二億圓ト相成ル如キ增加ノ
趨勢デアリマスカラ、不動產金融ノ圓
滑竝ニ不動產金融機關ノ機能ノ增進ヲ
圖ルコトハ、我國經濟ノ發達上最モ重
大ナル關係ヲ持ッテ居ル事柄デアリマ
ス、サテ不動產金融ノ圓滑ヲ圖ル上ニ
於キマシテ、不動產抵當附債權ヲ證劵化
シテ、之ヲ容易ニ輾轉流通セシメ得ル
制度ヲ執ルト云フコトハ、甚ダ重要ナ
ル事柄デアリマシテ、此證劵化ニ依ル
不動產貸出ガ兎角固定シ易イ、又隨
テ不動產貸出ハ行ハレ難イト云フ缺
點ヲ除去スルコトガ出來ルノデアリマ
ス、殊ニ我國ニ於テハ只今申述ベマシ
タ如ク、專門金融機關以外ノ金融機關
等ニ於テ、巨額ノ不動產貸付ヲ行ッテ居
ルヤウナ實情デアリマシテ、是ガ資金
ノ固定ガ我ガ金融上重大ナル問題デア
ルカラ、其固定ヲ解イテ更ニ資金化ス
ル方法ハ、現在ノ制度ニ於テハ十分設
備ヲ致シテハ居ラナイノデアリマス、
隨テ平時ニ於テハ勿論、金融界ニ變調
ノアル場合ニ於テモ常ニ不便ヲ感ジ、
又現在ニ於テモ洵ニ不便ヲ來タシテ居
ル次第デアリマス、サウシテ今度政府
ガ提案シテ居リマス、此抵當證劵制度
ノ案ニ依リマスレバ、第一ハ公示ノ手
續ヲ要シナイデ、單ニ裏書ニ依ッテ不動
產抵當附債權ノ讓渡ガ出來ルコトニナ
リマシテ、頗ル簡便デアリマス
第二ニハ土地建物又ハ地上權ト云フ
物的擔保ノ代リニ、裏書上ノ責任ヲ設
ケテアリマスカラ、證劵上ノ權利ガ益s
確實ニナッテ、流通上ノ便宜ヲ增加セシ
メテ居ルコトニナリマス
第三ニハ抵當證劵ニ記載シテアル以
上ハ、旣ニ債務者其他ノ利害關係人ニ
於テ爭ヒノ生ゼザル事項トナッテ居ル
ノデアリマスカラ、確實性ガ强イト云
フコトニナルノデアリマス
第四ニハ裏書人ガ非常ニ信用ノアル
人デアレバ、場合ニ依ッテハ擔保物件ノ
調査ヲ或ル程度マデ省略シ得ルノデア
リマス、サウ云フヤウナ長所ガアリマ
スノデ不動產抵當附債權ヲ證劵化シ
テ、不動產金融ヲ圓滑ナラシメルコト
ガ出來ルト考ヘルノデアリマス、更ニ
不動產金融ノ圓滑ヲ圖ル爲ニハ我國
ニ於ケル專門ノ金融機關ヲシテ、十分
ニ機能ヲ發揮シテ其業務ヲ進展セシ
メ特權デアル所ノ債劵ノ發行ニ依リ
マシテ、吸收シタル長期低利ノ資金ヲ
一般ニ普及セシムルト共ニ、都鄙ノ金
融ヲ疏通セシメルコトガ必要デアリマ
ス、玆ニ抵當證劵制度ガ創設セラレマ
スレバ、不動產金融機關ト致シマシテ
ハ同樣ノ意味ニ於テ不動產ヲ抵當トス
ル債權ノ資金化ニ關スル業務ヲ營マシ
メルコトガ、最モ事誼ニ適フ所以デア
リマス、卽チ日本勸業銀行、農工銀行、
及ビ北海道拓殖銀行ニ不動產ヲ抵當ト
スル債權及ビ抵當權ヲ質トスル定期償
還貸付ヲ行フコトヲ得セシメ、又之ニ
抵當證劵ノ賣買ヲ行フコトヲ得ルヤウ
ニ改正致シタイト考ヘルノデアリマ
ス、是等ノ業務ヲ認メルコトニ依リマ
シテ、其目的ヲ十分達セシメル爲ニ、
現行法ニ於テハ日本勸業銀行及ビ農工
銀行ノ定期償還貸付ノ限度ハ、拂込資
本金及ビ積立金總高ニ相當スル金額ニ
限ラレテ居ルノデアリマスガ、此際ハ
其限度ヲ二倍ニスル必要ガアル、又農
工銀行及ビ北海道拓殖銀行ニ於キマシ
テハ、其債劵ノ發行限度ハ拂込資本金
ノ十倍ニ限ラレテ居ルノデアリマス
ガ是等ノ銀行ノ中ニハ債劵發行限度
ノ餘裕ガ甚ダ僅少ノ額ニナッテ居ルモ
ノモアリマスカラ、是モ亦十五倍マデ
擴張スル必要ガアルト考ヘマス、此點
ハ本會ニ於キマシテモ北海道拓殖銀行
ニ付テ御質問ガアリマシテ、私答ヘテ
居ッタ點デアリマス、其他市街地貸付
制度ニ關スル規定、割增金付勸業債劵
ノ發行ニ依ッテ得タル資金ノ使途ノ制
限ニ關スル規定、及ビ定期預金ノ使途
ニ關スル規定等ニ關シマシテモ、ソレ
ソレ改正ヲ加ヘル必要ガアリマス、斯
ノ如キ抵當證劵制度ヲ設ケマシタト同
時ニ、不動產金融ノ專門機關ニ付キマ
シテ、之ニ伴フ種々ノ改正ヲ加フルコ
トヽ致シマシタガ、是ハ普通銀行等ガ
不動產金融事務ニ大ニ進出スルコトヲ
奬勵スル意味ヲ持ッテ居ル次第デハア
リマセヌ、政府今同ノ改正ノ結果ニ依
リマスルモ、從來ノ方針ヲ維持シテ相
當ノ制限ヲ、監督上普通銀行ノ不動產
銀行ニ加ヘテ行キタイト考ヘテ居ル次
第デアリマス、又日本銀行、農工銀行
及北海道拓殖銀行ニ於キマシテハ、農
業者、工業者又ハ漁業者ニ對シマシテ、
十人以上ノ連帶アルトキハ、五ヶ年以
內ノ定期償還ノ方法ニ依ッテ、無抵當貸
付ヲ爲スコトハ現行法ニ於テモ既ニ認
メテ居リマスガ、更ニ是等ノ人ニ對シ
テ長期ノ低利資金ヲ利用セシムル爲
ニ、十ヶ年以內ノ年賦償還ノ方法ニ依
ル無抵當貸付ヲ認ムルコトハ中小農
工業者ノ金融ノ上ヨリ見マスルモ適切
ナル施設デアルト考へマス、又農工銀
行及北海道拓殖銀行ニ於キマシテハ、
市町村ノミニ對スル無抵當ノ貸付ヲ認
メラレテ居リマスガ、今日ニ於テハ兩
行トモニ資力モ相當充實シテ居ルノデ
アリマスカラ、道縣ニ對スル無抵當貸
付ヲ認ムルコトガ適當デアルト考ヘマ
ス
尙ホ日本銀行ガ政府ノ所有又ハ保管
ニ係ル有價證劵ヲ管理シテ居リマス
ガ、其中デ日本勸業銀行發行ノモノガ、
其數量ニ於テ大部分ヲ占メテ居ルノデ
アリマシテ、日本勸業銀行ヲシテ、日
本銀行ノ代リニ之ヲ管理セシムルコト
ガ、便益ガ多イノデアリマス、又農工
銀行ガ發行シテ居リマス農工債劵ハ
現在ニ於テハ全國ニ廣ク普及サレテ居
ルノデアリマシテ、是ガ元利ノ支拂等
ノ關係デ農工銀行相互間ニ代理店トナ
ルコトハ便宜デアリマスカラ、之ヲ認
ムル必要ガアルト考ヘマス
以上ノ事項ニ關シテ、其大綱ニ付キ
マシテハ、金融制度調査會ニ諮問シタ
ノデアリマスガ、同會ニ於テモ滿場一
致デ可決セラレタ所デアリマス、何卒
御審議ノ上速ニ御可決アランコトヲ希
望致シマス
只今ノガ抵當證劵法ニ關聯シタ日本
勸業銀行法中改正法律案、農工銀行法
中改正法律案、北海道拓殖銀行法中改
正法律案ノ說明デアリマスガ、尙ホ此
委員會ニハ之ニ關係アル國稅徵收法中
改正法律案ト、貯蓄銀行法中改正法律
案ガ併託ニナッテ居ルト思ヒマスガ、其
方ノ說明モ此際致シマセウカ、ソレト
モ其審議ハ後廻シニセラレテ、其際ニ
御說明致シマセウカ
〔「後廻シニ願ヒマス」ト呼フ者ア
リ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=7
-
008・荒川五郎
○荒川委員長 政府ノ方デハドチラガ
御便利デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=8
-
009・小川郷太郎
○小川政府委員 國稅徴收法ハ之ニ關
聯シテ居リマスカラ此際一寸··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=9
-
010・荒川五郎
○荒川委員長 ソレデハ國稅徵收法ノ
分ノミヲ御說明願ヒマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=10
-
011・小川郷太郎
○小川政府委員 國稅徵收法中改正法
律案ノ說明モ、本會議デ說明シテ置キ
マシタガ、此際尙ホ簡單ニ此處デ御說
明申上ゲテ置キマス、現行法ニ於キマシ
テ納稅者ノ財產ノ上ニ抵當權ヲ有シテ
居リマス者ガ、國稅ニ對シ先取權ヲ行
使シマス場合ニハ、其抵當權ノ設定ガ、
國稅ノ納付ハ期限ヨリ一ケ年前ニアル
コトヲ證明シナケレバナラナイコトニ
ナッテ居リマス、然ルニ今囘抵當權ノ制
度ガ出來マシテ、納稅者ノ財產ノ上ニ
設定セラレマシタ抵當權ノ上ニ付テ、
抵當證劵ガ發行セラレタ場合、抵當權
ガ輾轉シマシテ、其所有權者ガ何人デ
アルカ分明シナイ、隨テ稅務署ガ權利
者ニ通知ガ出來ズ、其結果トシテ債權
者ガ國稅ニ對シ先取權ヲ行使スル機會
ヲ失フガ如キ場合ヲ生ズル虞ガアリマ
ス斯ノ如キ場合ニハ相當期間ノ猶豫
ヲ與ヘ、其權利行使ノ機會ヲ得セシム
ル必要ヲ認メマシテ、玆ニ本案ヲ提出
致シタ次第デアリマス、尙ホ此度ノ改
革ニ依リマシテ改正ヲ要スル點ヲ認メ
マスノデ、之ヲ改正スルコトニナリマ
シタ、何卒御審議ノ上速ニ可決アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=11
-
012・大久保偵次
○大久保政府委員 先程板谷サンノ御
質問ニ對シマシテ、長島政府委員カラ
御答ヘニナリマシタ以外ノ方面ニ付キ
マシテ、補足致シテ置キタイト思ヒマ
ス、第一ハ金融制度調査會ノ決議ニ付
キマシテ、普通銀行ト勸業銀行、農工
銀行及ビ北海道拓殖銀行等ノ關係ヲ、
主ニ規律致シテ居ルヤウデアルガ、目
標ハ何處ニ在ルカト云フヤウナ、御趣
旨ノヤウニ承リマシタ、此不動產抵當
證劵ハ敢テ普通銀行ト勸業銀行以下ノ
銀行ノ關係ヲ規律スルバカリデアリマ
セヌ、目標ハ全體ノ不動產金融ヲ出來ル
ダケ圓滑ニ致シテ行キタイト云フ趣旨
カラ、發足致シテ居ルノデアリマスガ、
此不動產抵當證劵ニ關スル事柄ノ利用
ハ何人デアルカヲ問ヒマセヌ趣意デ
アリマス、但シ御承知ノ通リ之ヲ金融
機關ノ方面カラ見マスルト云フト、不
動產金融ヲ專門ニ取扱ッテ居ルト云フ
風ニナッテ居リマスノハ、御述ベニナリ
マシタ通リ、日本勸業銀行、農工銀行、
北海道拓殖銀行、斯ウ云フモノガ其中
心機關ニナッテ居リマス、全國ノ不動產
資金ヲ出來ルダケ圓滑ニシテ行キタイ
ト云フコトハ誰モ彼モ望ムシ、利用
モ誰モ彼モスルコトデハゴザイマス
ガ、併シ金融ノ實際ノ運用ノ方面カラ
言ヒマスルト、是等ノ機關ハ專門機關
ガ其方面ノ仕事ノ上ニ大キナ事態ヲ持
ツ言葉ガ過ギルカモ知レマセヌガ、
結局ノ所是等ノ銀行ニ行カナイト云フ
ト、十分ノ働キガ出來ナイデアラウ、
其三ツノ中デモ殊ニ日本勸業銀行ハ全
國ヲ舞臺トシテ居リマス銀行デゴザイ
マシテ、不動產ニ關スル限リ、言ハヾ
不動產ノ中央銀行ト云フ風ナ地位ニ居
ルノデゴザイマスカラ、是等ノ三ツノ
銀行ガ不動產證劵ノ方ニ餘程働キヲス
ルト云フコトガ必要デアルト云フ風ナ
趣旨デ、此三銀行法ノ改正ヲ、同時ニ
金融制度調査會ニ提案致シマシタ趣旨
デゴザイマス
ソレカラ抵當證劵法ノ施行區域ノ事
ニ付キマシテハ、旣ニ司法省ノ政府委
員カラ御答ヘ申上ゲテアル次第デゴザ
イマスガ金融方面ニ付テ少シ御殘シ
ニナッテ居ルヤウデゴザイマスカラ、是
亦補足致シテ置キタイト思ヒマス、此
案ハ委員長カラモ申サレマシタ通リ、
初メテノ試ミデアリマシテ、法律上ノ
點、其他ノ事柄ニ付キマシテモ相當攻
究スル餘地ガアリマスト云フコトデ
此働キ方ニ付テハ主トシテ司法省ノ方
デ御擔當下サッタ次第デゴザイマス、司
法省ノ政府委員カラ說明シマシタ通リ
ニ、直ニ之ヲ全國ニ一律ニヤッテ行クト
云フコトハ、頗ル望マシイコトデハゴ
ザイマスケレドモ、色々ノ立法ノ關係
等カラ致シマシテ、先程御述べニナッタ
通リデアリマス、何トナレバ、或ル期
間ヲ置イテ實行スルト云フコトハ用
心深イヤリ方デアラウト思ヒマス、其
局ニ當ル者ハ安心シテ實行ガ出來ルモ
ノデアラウト思フノデアリマス、併シ
運用ノ實際ハ一日モ早イ方ガ宜イト云
フ、實行上ノ必要モアルノデアリマス
殊ニ先程板谷サンノ御述ベニナリマシ
タ通リ、浦和町ト云フ縣廳ノ所在地ノ
市制施行地、斯ウ云フ方面ニ付テハ
實行上宜カラウ、斯ウ云フヤウナ趣旨
カラ出テ居ルノデゴザイマス、サウ致
シマスト所謂農村ト云フヤウナ方面ニ
於テハ、多少之ヲ利用スルニ遲イト云
フ惧レモアリハシナイカト云フヤウナ
憂ヒモアルノデアリマス、此點ニ付キ
マシテハ、金融制度調査會ニ提案サレ
タ時ニモ餘程攻究致シマシテ、先程小
川政務次官カラ詳細御說明ニナリマシ
タ通リ此抵當證劵法ヲ創設致シマスル
ト同時ニ、全國ニ於キマスル所ノ不動
產抵當權ヲ其儘デ、普通銀行、農工銀
行勸業銀行及ビ北海道拓殖銀行ニ質
トシテ貸付ガ出來ル、謂ハヾ農村方面
ヲ主トシテ擔當致シテ居リマスル是等
ノ銀行ハ、サウ云フ風ナ方面ニ固定貸ニ
ナッテ居ル所ノ不動產抵當權付債權ヲ、
今度法律改正ニ依リマシテ、直ニ斯ウ
云フ風ナ不動產專門ノ金融機關ニ持ツ
テ行クコトガ出來ルノデゴザイマス、
其場合ニハ地方ニ及ボス所ノ影響ガ頗
ル大キイデアラウト考ヘルノデゴザイ
マス、此意味カラ以チマシテ、同時ニ是
等ノ仕事モ、是等ノ不動產專門ノ金融
機關ニ致サセタイト云フ趣旨ヲ以チマ
シテ、玆ニ改正案ヲ提出シテアル次第
デゴザイマス、謂ハヾ抵當證劵ノ關ス
ル限リハ、或ハ抵當證劵ノ運用ニ依リ、
或ハ債劵其儘ヲ資金化スル直接ノ方法
ニ依リマシテ、出來ルダケ不動產金融
ノ圓滑ヲ圖リマシテ、急ナ要求ニ應ジ
タイト云フ風ナコトガ、金融調査會ノ
決議ニナッテ居ル次第デゴザイマス、左
樣ニ御承知ヲ願ヒマス
ソレカラシテ抵當證劵ノ場合ニ付キ
マシテ、例ヘバ一割デ貸シテアッタモ
ノヲ、今度ハ更ニ其次ニ讓渡シ輾轉シ
テ行フタ場合ニ付テノ御尋ガアッタヤウ
ニ思ヒマスガ、是ハ二ツノ場合ヲ考ヘ
テ居リマシテ、抵當證劵ハ賣買ノ方法
ニ依ッテモ行ハレマス、或ハ又モウ一ツ
ノ方法トシテ、此抵當證劵ヲ質トシテ
讓渡シテ行ク方法モゴザイマス、何レ
ノ場合ニ致シマシテモ、元ノ債務者ハ
從前ノ契約ニ依ル義務ヲ有ッテ居リマ
ス、其次ニ之ヲ讓受ケタ者ハ其初ノ債
務者ノ立場ニ代ル譯デハゴザイマセ
ヌ、御例示ノ場合ニ於キマシテハ、第
一ノ債務者ハ、其通リノ義務ヲ負擔シ
テ行キマス、次ニ輾轉サレマシテ、其
利息ガ安クナッタト云フヤウナ場合ニ、
ハ其次ノ債務者ノ關係ニナッテ行クノ
デゴザイマス、勸業銀行ガ之ヲ引受ケ
タ場合、或ハ買入レタ場合、若クハ質
入レヲシタ場合ニハ、矢張勸業銀行ハ
只今ノ法制ニ基イテヤッテ行クト云フ
仕組ニナッテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=12
-
013・板谷順助
○板谷委員 先程參考資料ノ御請求ヲ
申上ゲタノデアリマスガ、更ニ勸業銀
行農工銀行、北海道拓殖銀行ノ銀行
法ノ全文ヲ揭載シタ書類ガアリマシタ
ナラバ、御提出ヲ願ヒタイ
ソレカラ只今ノ私ノ質問ニ對スル御
答辯ニ尙ホ疑義ガアリマスノデ、伺ヒ
タイト思ヒマスガ、只今小川次官ノ御
說明ニ依リマシテ、大體此證劵發行ノ
趣旨ハ分リマシタ、併ナガラ此目的ガ
不動產ノ金融ヲ圓滑ニシテ、長期ニシ
テ而モ低利ナ資金ノ貸出ヲスルニアル
ト致シマシタナラバ、
金ノ固定シテ最モ困ッテ居ルノハ農村
デアル、然ルニ新シイ試ミデアルカ.ラ
ト云フノデ、市制施行地卽チ市街地ノ
ミニ當分限ルト云フコトデアルガ、金
融調査會ノ決定事項ノ大體ノ眼目ガ、
不動產金融ノ圓滑ニアルトシタナラバ
勿論農村ノ田畑ニ對シテ之ヲ適用スル
コトガ當然デハナイカト思フ、然ルニ
之ヲ除外シタノハドウ云フ不都合ト不
便ガアルカラデアルカ、私ハ是ハ大體
ノ目的ニ副ハヌヤウニ考ヘルノデアリ
マスガ、之ニ對スル御所見ヲ承リタイ
ト思ヒマス
更ニ只今大久保サンノ御說明ニ依リ
マスト初メ普通銀行カラ一割デ借リ
テ居ッタ者ガ、更ニ拓殖銀行ニ之ヲ質ニ
シタ場合ニ於テハ、勿論最高步合ノ規
定ガアルカラ、高イ利子ヲ取ル譯ニ行
カナイ、是ハ八分ニナル、第三者ガ裏
書ヲシテ貸シタ場合ニ、勸業銀行ハ七
分ニナリ、段々利子ガ低下スル、併ナ
ガラ其利子ノ低下シタコトガ本元ノ債
務者ニ均霑シナイ、債務者ハ矢張初メ
普通銀行カラ借リタ一割デ、元利ヲ拂
ハナケレバナラヌコトニナルトスレバ
債務者ニ取ッテハ何等利益ガナイノミ
ナラズ、低利資金借換ノ機會ガナイヤ
ウニ思フ、隨ッテ或ハ證劵發行ノ特約條
伴ニ同意スルカドウカ、私ハ此點ハ非
今日不動產ノ資常ニ疑問ダト思ヒマスガ、之ニ對スル
御見解ハ如何デアリマスカ
更ニ又只今政府委員ノ御答辯ニ依リ
マスト、特約條件ガアル、或ハ又第三
者其他債務者ノ同意ガアッタ場合ニ於
テ、抵當證劵ト云フモノハ發行サレル
ガ、異議ノ途ヲ開イテ居ル、此異議ノ
途ヲ開イテアルト云フコトニ付テ、債
務者ガ若シ自分ノ立場ニ於テ不利益デ
アルナラバ證劵發行ニ必ズシモ同意
ハセヌト思フ、折角資金ノ融通ヲ圓滑
ニスル目的ニ於テ制定サレタモノガ債
務者ニ何等利益ガナイトスレバ、同意
スル譯ハナイカラ、隨ッテ此利用ト云フ
モノハ果シテ政府ノ見込通リ行ハレル
カドウカ、此點ニ付テ私ハ非常ナ疑問
ヲ持ヲテ居ル者デアリマス、之ニ對スル
御見解ハドウデアルカ
ソレカラ此條文ヲ讀ンデ見マスト、
債務者ガ元本ノ辨濟ヲ爲サナイトキニ
ハ、辨濟期日ノ三箇月以內ニ抵當權ノ
目的物ニ對シテ競賣ノ申立ヲシナケレ
バナリマセヌ、又結果抵當證劵ノ所持
人ハ、競賣代金ヲ以テ辨濟ヲ受ケルコ
トニナリマスガ、若シ競賣代金ヲ以テ
辨濟スルコトガ出來ナイ場合ガ生ジタ
トキニハ、其不足部分ニ對シテ其裏書
ヲ爲シタ前者ニ對シテ、償還ノ請求ヲ
スルコトガ出來マス、此解釋カラ行キ
マスト期日ガ來タ場合ニ於テ、債務
者ガ辨濟ヲシナイトキニハ、其抵當物
件ヲ競賣シテ、其金額ニ充タヌ場合ニ
ハ前者ニ請求スルコトガ出來ルガ、其
他ニ於テ競賣以外ニ、此債務ニ對スル
辨濟ヲ受ケルト云フ途ガナイノデアル
カ、此點ニ付テ一ツ伺ッテ置キタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=13
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014・大久保偵次
○大久保政府委員 第一ノ御質問ハ勅
令ヲ以テ執行地域ヲ主トシテ市街地ニ
決定シタノハ、今日ノ農村ノ必要ヲ充
サナイヂヤナイカト云フ御質問ト承リ
マシタ、其點ハ金融制度調査會ノ時ニ
モ矢張質問ガ出タノデゴザイマス、私
共ノ大體ノ希望ト致シマシテハ、先程
モ申上ゲマシタ通リ、都鄙ノ區別ナク
全國一律ニ施行致シタイト云フ點ニ付
テハ御同感デアリマスガ、民法其他此
處ニ出テ居リマスヤウナ法規ノ例外ヲ
致ス重要ナル新シイ試ミデゴザイマス
ノデ、一方ニハ成ベク早ク之ガ實施ヲ
シタイト云フ希望モゴザイマス、先程
司法省ノ政府委員カラ御答ニナリマシ
タヤウニ、成ベク早ク之ヲ行ハント欲
スレバ、全國一律ニスルコトハ實際上
非常ニ不便ガ多イ、ソレデ吾々ト致シ
テハ成ベク全國千八百ト云フ多クノ登
記所ノ關係者ヲシテ習熟サセ、色々ナ點
ニ於テ準備ヲ整ヘマシタナラバ一刻
モ早ク都鄙ノ區別ナク實施シタイト云
フ趣旨ニ於テハ、少シモ御質問者ト變
リハナイノデアリマス、唯成ベク早ク
實施シタイト云フ趣旨カラ、差當リ斯
ウ云フ風ニシテヤッテ見ヨウト云フ考
デアリマス、其實際上ノ不便ノ問題ニ
付キマシテハ先程申上ゲマシタ通リ、
地方農村ノ不動產抵當附債權ヲ資金化
スル途ヲ同時ニ講ジタ次第デゴザイマ
ス、ソレハ主トシテ地方農村ノ利用ガ
多カラウト思ヒマス、ソレヲ竝ビ行ヒ
マス結果、多少其處ニ準備ノ時代ヲ置
イテモ已ムヲ得ナイデハナイカト、實
務者側トシテハ考ヘタ次第デアリマ
ス、左樣御諒承ヲ願ヒマス
次ニ原債務者ガ其後ニ利息ガ變ッタ
場合ニハ、其利益ヲ受ケナイ、殊ニ低
利資金ナドノ場合ヲ御擧ゲニナリマシ
テ其恩典ニ浴シ得ナイノハドウ云フ
譯デアルカトノ御質問デゴザイマス、此
抵當證劵法ノ目的トシテ居リマス所ハ
原債務者ノ債務ノ肩替リヲサセルト云
フ趣旨デハ元々ゴザイマセヌ、茲ニ二箇
年ナラ二箇年ト云フ期限デ、原債務者
ガ抵當權ヲ債權者ニ渡シテ居リマス場
合、其抵當權附債權ヲ出來ルダケ輾轉
流通サセルト云フノガ、目標ニナッテ
居ルノデアリマシテ、元ノ債務者ノ例
ヘバ二年間ノ期間デ、一割ト云フ利息
ノモノヲ直チニ肩替リサセルト云フ趣
旨ニハ、出來テ居ラヌノデアリマス、
原債務者ノ債務ヲ、肩替リ又ハ變更サ
セルト云フコトニナリマスト、是ハ其
債權債務ノ關係ヲ、直チニ變更スル目
標デ行ハレルコトニナリマスカラ、サ
ウナルト色々ナ場合ガ起ルダラウト思
ヒマスガ、是ハ旣ニ決定サレタ債權債
務關係ヲ、例ヘバ二箇年ノ期間デ一割
ト云フ債權ヲ持ッテ居ル人ガ輾轉融通
サシテ、固定サセヌト云フ仕組ニナッ
テ居ルノデ、元ノ債務者ニハチヤント
登記ヲシマシタ通リ、其登記ガ所謂抵
當證劵ニ載ッテ居リマス通リノ、其權利
義務ノ態樣ヲ續ケテ參リマス次第デア
リマス、丁度普通ノ手形等ニ付テモ同
ジコトデゴザイマスノデ、旣ニ手形ヲ
發行致シマシタナラバ、其手形ノ期間
中ハ其手形ノ債務關係ヲ途中ニ變ヘテ
行フト云フ譯ニハ行カヌダラウト思ヒ
マス、旣ニ有價證劵ニナッテ輾轉シテ
居リマス以上ハ、ソレヲ安ク買ヒマセ
ウガ或ハ利息ヲ以テモット安ク、金額モ
安ク買フカモ知レマセス、或ハ新タニ
讓渡ヲ受ケタ者ノ關係ヲ拵ヘル一ツノ
原因ニハナリマスケレドモ、元々ノ債
權債務ニハ響キハアリマセヌ、元々ノ
債權債務ヲ變更スルト云フ趣旨デハゴ
ザイマセヌ、旣ニ出來テ居リマス債權
債務ヲ出來ルダケ固定ヲ避ケテ、輾轉
融通ヲサセテ行ク、萬圓ノモノヲ或
ハ八千圓デ買フ場合モ起ルカモ知マセ
ス、ソレガ爲ニ元々ノ債務者ノ一萬圓
ト云フモノノ債務ニハ何等ノ影響ヲ及
ボスノデハゴザイマセス、右樣御承知
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=14
-
015・板谷順助
○板谷委員 私ノ質問ハ是デ保留シテ
置キマス、政府ノ參考資料ヲ頂戴シタ
後ニ、改メテ致シタイト思ヒマスカラ
左樣ドウゾ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=15
-
016・荒川五郎
○荒川委員長 承知致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=16
-
017・大崎清作
○大崎委員 私ハ只今板谷サンカラ色
色御質問ガアリマシタガ、ソレト趣旨
ノ違フ方面カラ、此抵當證劵法案ガ社
會ニドウ云フヤウナ影響ヲ及ボスカト
云フコトデアリマスカラ、當局者ノ御
答辯ヲ願ヒタイト存ジマス、一體此住
宅ト云フモノハ非常ニ私ハ大切ナヤウ
ニ思ッテ居リマスルノデ、殊ニ此住宅ニ
不安ヲ來スト云フヤウナコトハ、上ノ
者モ下ノ者モ、殊ニ細民ニ至ッテハ非常
ニ脅威ヲ感ズル次第デアリマス、隨テ
此土地建物ト云フガ如ヰ不動產ハ、成
ベク動カナイデ、サウシテ住ンデ居ル
者ニ對シテ安心ヲ與ヘルト云フコト
ガ、私ハ政府トシテハ取ルベキ途ヂヤ
ナイカト信ズルノデアリマス、デ現在
ノ狀態ニ於キマシテ一番不安ヲ感ジテ
居ル者ハ、先ヅ借家人ガ立退ヲ食フ、
家賃ガ滯ッテ、日拂ヒガ出來ナイデ立退
ヲ食フ、何處ニモ行ク家ガナイト云フ
ヤウニ、ドウスルコトモ出來ナイ狀態
ノ者ガ、數多クアルノデアリマス、是
ハモウ司法大臣ハ能ク知ッテ居ラルル
コトデアリマスカラ、私ノ申上ゲル要
ハナイト信ズルノデアリマス、ソレカ
ラ又現在サウ云フ狀態ガ何ノ原因ニ
依ッテ起ッテ來ルカト云ヒマスト、多ク
ハ土地建物ヲ賣買シテ、第三者第四者
ノ手ニ渡ルガ爲ニ、此立退ト云フモノ
ガ直クニ起ッテ來ルノデアリマス、是ハ
政府トシテハドウシテモサウ云フヤウ
ナコトハ成ベク防ガナケレバナラヌ、社
會政策上防ガナケレバナラヌ、殊ニ現
在ノ此不況時代ニ於テハ、勸業銀行ト
云ハズ、或ハ普通銀行ト云ハズ、不動
產ニ澤出ノ資金ヲ投ジテ居ッテ、是ガ囘
收ニ困ッテ居ル若シ本案ノ如キモノガ
通過シテ、是ガ輾轉致シマシテ、第三
者、第四者ヨリ是ガ競賣ニナッテドン
ドント家屋ノ所有主若クハ土地ノ所有
主ガ變ルト云フコトニナリマスルト云
フト、此立退ト云フ不安ヲ感ズル人ガ
多クナル結果ニナリハセヌカト思フノ
デアリマス、斯樣ナ次第デ此本法案ノ
如キハ、金融業者若クハ資本家階級ニ
ハ或ル程度ノ便宜ヲ與へルコトニナリ
マスルガ、實際ノ土地家屋ニ居住スル
所ノ者ハ、是ガ爲ニ非常ナル脅威ヲ
感ジマスルカラ、此邊ノコトヲ此立法
者ハドウ云フヤウナ狀態ニ考ヘテ居ル
カト云フコトヲ、一ツ御尋致シタイノ
デアリマス、ソレカラ今一ツハ本法ヲ
施行スルニ於テ政府ノ經費ガ幾ラ位掛
カリマスルカ、一ケ年ノ豫定ト致シマ
シテ-又之ニ對スル登錄上ノ收入等
ガ幾ラ位アリマスルカ、此「バランス」
ヲ私ハ承知シテ置キタイ、此御答辯ヲ
承ッテ又質問ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=17
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018・長島毅
○長島政府委員 第一ノ御問ハ借家人
借地人等ノ保護ガ抵當證劵法施行ノ爲
ニ害セラレルヤウナコトハナイカト云
フ御尋カト存ジマス、御承知ノ如クニ
借地人ニ付キマシテハ建物保護法ノ規
定ガアリマシテ、其建物ニ付テ保存登
記ヲ致シテ置キマスレバ、其後ニ土地
ノ所有者ガ變リマシテモ、借地權ヲ以
テ對抗スルコトガ出來ルヤウニナッテ
居リマス、ソレデアリマスカラ、多ク
ノ場合ニ於テ大體安全ナ地位ニ立ッテ
居ルヤウナ次第デアリマス、此借地借
家關係ノ紛議ノ最モ著シイ市街地ニ於
キマシテハ借地法ノ適用ガアリマシ
テ、相當ニ借地人ノ保護ガサレテ居ル
ノデアリマス、尙借家人ニ付キマシテ
ハ特殊ノ土地ニ付キマシテハ借家法
ノ規定ガアリマシテ、借家人ノ保護ガ
或程度マデ出來テ居リマスガ、其外ノ
土地ニ於キマシテハ、仰ノ如ク家主ガ變
ルト借家人ノ地位ト云フモノガ法律上
ニ不安ニナル次第デアリマス、併シ是
ハ餘程ムヅカシイ問題デアリマシテ、
借家人ノ權利ヲドノ程度ニ保護スル
カ、又家主ノ權利ヲドノ程度ニ保護ス
ルカ、結局家主ト借家人トノ關係問題デ
アリマスカラ、非常ニムヅカシイ問題
デアリマシテ、抵當證劵ノ發行ト云フ
事トハ別問題ニ考ヘナケレバナラヌト
信ズルノデアリマス、成程抵當證劵ガ
發行サレヽバ、抵當權ノ讓渡ハ相當圓
滑ニナルコトデアリマセウガ、併ナガ
ラ若シ抵當權者ガ故意ニ其借家人ヲ苦
シメルト云フヤウナ考デアリマスレ
バ抵當證劵ノ發行ヲ俟タズ致シマシ
テモ他人ノ名儀ニ抵當權ヲ讓渡シテ、
サウシテ競賣ヲシテ借家人ヲ追出スト
云フコトモ出來ルノデアリマスガ、ソ
レハ必ズシモ抵當證劵ノ發行ト云フコ
トヽハ伴ハナイノデハナイカト思ヒマ
ス、唯併ナガラ多少輾轉スルコトガ多
クナルト云フ點ニ於テ、借家人ノ地位
ノ不安ヲ招來スルヤウナコトハ多少ア
ルカモ存ジマセヌガ、併ナガラモトモ
ト抵當證劵ヲ利用スルト云フノハ、自
己ガ抵當ニ取ッタモノヲ圓滑ニ金融ノ
目的ニ使用シヨウト云フノデアリマス
カラ、故意ニ借家人ヲ苦メル爲ニ之ヲ
利用スルヤウナコトハナイノデハナイ
カト思ヒマス、又借家人ヲ苦メル積リ
ナラバ抵當證劵ヲ發行シナクテモ、
サウ云フコトガ行ハレルノデアリマス
カラ、餘リニ此點ハ關係ガナイト考ヘ
やく、唯根本問題ト致シマシテ、今仰
セノ借家人ト家ノ所有者ト、借家權ト
家ノ所有權トノ關係ヲドウスルカト云
フコトハ是ハ仰ノ如ク別ニ殘ヲテ居ル
問題デアルノデアリマス、第二ノ豫算
ノ點ハ一寸今直グ御答ヘスルコトガ出
來ナイノデアリマス、後ニ御答ヘ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=18
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019・大崎清作
○大崎委員 答辯デハ別ニ本法ヲ制定
シナクテモ、地主ガ借地人若クハ借家
人ヲ苦シメルト云フ意思デアレバ出來
ルカラ、別ニ關係ハナイヂヤナイカト
云フヤウナ御答辯デアリマスガ、ソレ
ハ私ハ大變ニ誤解シテ居リハセヌカト
思フノデアリマス、多クノ場合ニ、現
在ニ於テモ先程申上ゲマシタヤウニ立
退トカ競賣トカ云フヤウナコトハ必
ズ一番最初ノ債權者デナクシテ、第二
者第三者ニ渡ッタモノガ多イノデアリ
マス、是ガ爲ニドレ位訴訟事件ヲ多ク
スルカ分ラナイ、サウシテ是ハ根本問
題ニ亙リマスケレドモ、土地建物ノ如
キ不動產ノ如キモノハ、實際ハ資本化
スルコトガ間違ッテ居リハセヌカト思
フ、吾々ガ茲ニ住宅ヲ求メルニ於テハ
其住宅ノ如キモノハ、現在ニ於テ資本
制度ニ偏ッテ居リマスルケレドモ、是ハ
モウ當然住ンデ居ル者ノ所有ニ歸サナ
ケレバナラヌト私ハ思フノデアリマ
ス、其時分ニ住ンデ居ル所ノモノガ第
三者ニ渡ルコトヲ現在ニ於テハ認メテ
アリマスケレドモ、是ガ輕々ニドンド
ン移轉シテ行クト云フコトハ、非常ニ
不安ヲ感ズルコトデアリマスカラ、餘
程ナ事情デナケレバ、サウ云フコトハ
ヤッテハイケナイト思フ、何カ弊害ガア
ルノデアリマスレバ、無論本法ヲ制定シ
ナケレバナラナイノデアリマスケレド
モ、別ニ何モ弊害ノナイモノヲ、日本
國民ノ全般ニ弊害ノナイモノヲ、經費ヲ
カケテ何モ本法ヲ制定スル必要ハナカ
ラウト思フノデアリマス、大部分ノ日
本國民、東京市民ノ大部分ハ借家人、
借地人デアルノデアリマス、借家人、
借地人ヲ基礎トシテノ立法デアリマス
ナラバ、私ハ喜ンデ贊成スルノデアリ
マスケレドモ、地主トカ、家主トカ大
部分ノ者ノ便利、殊ニ金ヲ貸シタ人ノ
便利ヲ圖ル爲ニ、
定スルト云フコトガ私ハ惡イト思フ爲
ニ、質問スルノデアリマスカラ、此大
體ノ基礎ノ點ガ違フテ居ル、デアリマス
カラ、今政府委員ガ申スヤウニ、借地
人、借家人ヲ苦メルト云フ意思デアルナ
ラバ-本法ヲ制定シテモ現在ニ於テ
同ジコトダト言ヒマスケレドモ、本法
ヲ制定スル爲ニ借地人、借家人ヲ苦メ
ル機會ガ多クナッテ來ルト云フコトヲ、
私ハ申上ゲタノデアリマス、デアリマ
スカラ、私ハドウシテモ根本問題ト致シ
マシテハ、此不動產、家ノ如キモノハ
住ンデ居ル者ニ政府デ或ル程度ノ保障
ヲ與ヘナケレバナラナイト云フヤウニ
私ハ極端ニ思ウテ居ルノデアリマス、
斯ノ如キ考ヲ持ッテ居ル所ニ、是ガ詰リ
資金化サレテ、金ヲ融通スルノニハ非
常ニ便利デアリマスカラ此上ナイコト
ト思ヒマスケレドモ、東京市民トシ、
國民全般トシ、殊ニ是ガ地方ニ施行サ
レテ、サウシテ小作地ニマデモ本法ガ
適用サレルト云フコトニナリマシタナ
ラバ、日本國民ノ大部分ハ之ニ不安ヲ
感ズルコトニナルヤウニ思フノデアリ
マス、一體物ヲ貸スト云フコトハ間違ッ
テ居ルト思フ、貸スト云フコトハ餘ッタ
モノヲ人ニ貸シテ居ルノデアリマス、
貸シタモノカラ利息ヲ取リ、高イ地代
ヲ取リ、高イ家賃ヲ取リ、サウシテ本
本法ノ如キモノヲ制人ヲ苦メルト云フコトハ、
イケナイト思フ、今ノ資本制度ニ於テ
ハ左樣ナコトヲ言フト笑ハレマスケレ
ドモ、私ハ左樣ニ存ジテ居ルノデアリ
マスカラ、本問題ノ如キモノハ、此法
律ヲ制定シナケレバ、社會ニ何カ非常
ナ害ガアルト云フナラバ宜シウゴザイ
マスガ、何モ害ノナイモノヲ本法ヲ制
定シテ、假令僅カナリトモ借地人、借
家人若クハ小作人ト云フヤウナ者ニ不
安ヲ與ヘルト云フコトハ、本案ヲ提出
スル趣旨ガ、詰リ資本制度ニ餘リ重キ
ヲ置イテ、サウシテ大衆ヲ無視シタル法
案デハナイカト云フヤウニ思ヒマスカ
ラ、此邊ノ點ハ大藏大臣ハ資本制度ノ
立場カラ本法ニ贊成デアリマセウケレ
ドモ、內務大臣、其他ノ社會政策ヲ考ヘ
ル人ノ方カラハ、ドウ云フヤウニ考ヘ
テ居ルカト云フコトヲ、私ハ政府全體
トシテ質問スル次第デアリマス、此點
ヲ十分明瞭ニ御答ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=19
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020・長島毅
○長島政府委員 ソコノ問題ニナリマ
スト非常ニ根本問題デ、私ニモ能ク分
ラナイノデアリマスガ、唯御承知ノヤ
ウニ抵當證劵ヲ發行致シマスノハ家
主トカ或ハ地主ガ現在デハ金融ニ困ツ
テ居リマスカラ、金融ノ便宜ヲ與ヘル
ト云フ意味デ抵當證劵ガ出ルノデアリ
やる、其時ニ結果ハドウナリマスカ存
私ハ精神上ジマセヌガ、別段ニ抵當ニ取ッタ者ガ借
家人トカ借地人トカ云フモノヲ、特ニ
虐メル必要ハナイノデアリマス、虐メ
ル必要ハナイノデスカラ、何カ非常ニ
抵當權者ト借地人トカ借家人ト喧嘩デ
モスレバ別デゴザイマスケレドモ、ソ
レデナケレバ-金融上已ムヲ得ズ處
分スルト云フコトハアルカモ存ジマセ
ヌガ、ソレデナケレバ無イ譯デアリマ
ス、デスカラ抵當證劵ガ出タガ故ニ例
ヘバ借地人トカ借家人ト感情ノ衝突デ
モ起ッタ時ニ、之ヲ利用スルト云フ場合
ニハ幾ラカ便利ニナルカモ知レマセヌ
ガ、是有ルガ故ニ特ニ競賣ヲ餘計ヤッテ
苦シメルト云フコトハ、私ハ出テ來ナ
イノデハナイカ、是ハ私ノ考デスカラ
分リマセヌガ、サウ云フ風ニ考ヘテ居
リマス、根本論ニナリマスト、一體是
ハ私ノ申上ゲルコトデハナイカモ存ジ
マセスガ、或ル程度ニ於テハ地面ヤ或
ハ家ノ融通ガ利クト云フコトガ、多少
家賃ヤ何カヲ却ッテ安クスルト云フヤ
ウナ原因ニナリハシナイカ、勿論惡家
主惡地主ガ暴利ヲ貪レバ別デスケレド
モ、サウデナケレバ多少融通ガ利クト
云フコトガ、ヤハリ家賃ヤ地代ノ上ニ
モ好影響ヲ來タシハシナイカ、御承知
ノヤウニ獨逸ノ戰後ヲ見テモ、餘リ借
家人ナドヲ保護致シマスト、家ト云フ
モノガ丸デ無クナッテシマッテサウシ
テ何處ノ家ニ住ハセルカト云フコトデ
非常ニ喧嘩ガ起ッタト云フヤウナ狀態
モアリマスカラ、是ハ私ノ領分デハア
リマセヌケレドモ、一〓ニ抵當證劵ガ
出タコトガ、借家人借地人ニ非常ナ不
利益ニナルカドウカト云フコトハ、私
ハ能ク分ラナイ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=20
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021・板谷順助
○板谷委員 只今私ノ質問ニ對シテ政
府委員ノ御答辯ガ漏レテ居ルヤウニ思
フノデアリマスガ、更ニ申上ゲマス、
抵當證劵法ハ手形法ニ類シタルモノデ
アッテ、大部分手形法ヲ應用スルト云フ
御說明ニナッテ居ルノデアリマスガ、抵
當證劵ノ償還ヲ受ケルト云フコトニ付
テハ競賣ニ依ル以外ニ、他ニ何等ノ方
法ハ無イノデアリマスカドウカ、若シ
サウ云フ場合デアルト致シマシタナラ
バ、裏書人ガ輾轉シタ場合ニハ前者ニ
對シテ、前者ハ前者ニ對シテ請求スル
ト云フヤウナコトデ、非常ニ煩雜ノヤ
ウニ考ヘルノデアリマスガ、之ニ對シ
テドウ云フ風ニ御考ヘニナッテ居リマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=21
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022・長島毅
○長島政府委員 是ハ若シ所持人ガ前
者ニ償還請求ヲシヨウト思ヘバ競賣
ヲシテカラ其殘額ニ付テ償還ノ要求ヲ
シナケレバナラヌト云フコトニナッテ
居リマスガ、併ナガラ談合デ所持人ガ
返濟ヲ受ケマシテ、抵當物ヲ返スト云
フヤウナ程度ニ於テ返濟ヲ受ケルト云
フコトハ、無論出來ル譯デアリマス、ソ
レカラ又競賣ヲスル時期ガドウモ今デ
ハ困ル、非常ニ安ク競賣ヤ何カヲサレ
マスト、今度ハ前者ノ方デ澤山ノ金ニ
付テ償還請求ガ參リマスカラ、サウ云
フコトガ裏書人ノ不利益ニナルコトガ
隨分アラウト思ヒマス、ソレデアリマ
スカラ規定ヲ置キマシテ、愈〓支拂ノ請
求ヲ所持人ガ致シマシテ、支拂ガアリ
マセヌ時ニハソレヲ裏書人ニ五日以
內ニ通知スルヤウニ致シマスカラ、裏
書人ハ今競賣サレテハ困ルト云フ時ニ
ハ自分ノ方へ手形ヲ金ヲ拂ッテ戾シ
テ、自分ガ抵當權ヲ持ッテ居ルト云フコ
トガ出來ルヤウニナッテ居ル譯デアリ
マン、之ヲ要スルニ、必ズシモ競賣ヲ
シナケレバナラヌト云フコトデハナイ
ノデアリマス、唯今申シタヤウニ嚴格
ナ手續デ償還ヲ請求シテ行カウト思へ
バ競賣ヲシテ、サウシテ殘ッタ金デ行カ
ナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニナル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=22
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023・板谷順助
○板谷委員 先程申上ゲタヤウニ、參
考資料ヲ頂戴シテカラ御伺スルコトニ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=23
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024・勝田永吉
○勝田委員 抵當證劵法ノヤウナ法律
ハ、外國ニモアルヤウニ思ヒマスガ、
若シアレバ外國ノ法制ヲ戴キタイ、ソ
レカラモウ一ツハ抵當證劵ノ「フオー
ムレガ出來テ居ルト思ヒマスガ、若シ
出來テ居レバ、其「フオーム」ヲ御示ヲ
願ヒタイ、手形ヲ論ズルニハ手形ガア
ルトハッキリ致シマスカラ、ドウ云フ
ヤウナ證劵ヲ發行セラレルカト云フコ
トヲ、吾々ハ豫メ知ッテ置キタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=24
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025・大崎清作
○大崎委員 只今政府委員カラ御答ガ
アリマシタガ、意見ガ違フカラ是ハ已
ムヲ得マセヌガ、尙一點御尋致シマス、
此資本制度カラ言フテ斯ノ如キモノデ
資本ノ融通ガ圓滑ニ行クト云フコト
ハ、私ハ趣意トシテハ賛成シテ居ル一
人デアリマス、別ニ本法制定ニ反對シ
テ居ル譯デハアリマセヌガ、唯社會制
度ノ上カラ考ヘナケレバナラヌノデ質
問スル次第デアリマス、若シ資本ノ融
通ト云フ點カラ、土地建物所有者ノ資
本ノ融通ヲ圓滑ナラシムル爲ニ、本法
ヲ設ケルト云フヤウナ御趣旨デアリマ
スナラバ、私ハ今一歩進メテ不動產證
劵ト云フヤウナモノヲ發行スル方ガ、
宜クナイカト思ヒマス、此點ニ於テ政
府ハドウ云フ譯デ抵當證劵法ダケヲ提
出シテ、不動產證劵ノ方ヲ躊躇サレタ
カ、其理由ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=25
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026・長島毅
○長島政府委員 其點ハ相當〓究致シ
タノデアリマスガ、現今デハ御承知ノ
ヤウニ登記デ以テ、總テノ不動產關係
ヲハッキリサセルヤウニナッテ居リマシ
テ、固定シタ登記簿ヲ見レバ何デモ分
ルコトニナッテ居リマス、地劵ハ斯ウ致
シマスレバ、取引ヲ致シマス方ノ人間
ニハ、地劵ニ依ッテ總テノコトガ分リマ
スカラ、非常ニ便利デアリマス、併ナ
ガラ第三者カラ見マスルト、地劵ト云
フモノヲ見ル機會ガゴザイマセヌノ
デ、結局登記簿ヲ見ル方ガ、一般人ニ
ハ安心ナノデアリマス、ソレデ此流通
ヲ圓滑ニ致シマスト、自然危險ガ伴フ
モノデアリマスカラ、大體私共ノ考ト
致シマシテハ、抵當權、詰リ現在ニ於
テハ之ヲ融通スル方面サヘ圓滑ニ行ケ
バ、土地ノ所有權自身ノ融通マデ、サ
ウ行カナクテモ宜イデハナイカ、ソレ
ガ爲ニ却テ第三者一般人ノ取引ヲ害
シ、其安全ヲ犧牲ニスル所マデ行カナ
クテモ宜イデハナイカ、現在ハ日本ハ
全然登記制度ニ依ッテ、登記簿ガ基礎ニ
ナッテ居リマスカラ、根本的ノサウ云フ
點マデ改メルノハ、現在ニ於テハ考ヘ
物デハナイカト云フノデ、必要ナ限度
ニ於テ、抵當權ダケニ於テ之ヲ認メタ
譯デアリマス、而モ此抵當證劵制度ハ全
然同時主義ヲ棄テタ譯デハアリマセ
ヌ、後ニ申シマスヤウニ、發行當時ニ
於テハ、抵當證劵ノ記載事項ガ、必ズ
登記簿ニ載ッテ居ナケレバナラズ、又其
抵當證劵ノ記載事項ヲ變更致シマス場
合ニハ、同時ニ登記簿モ變更致スト云
フコトニナッテ居リマスノデ、ヤハリ登
記簿ヲ基礎ニシテ、現在ノ制度ヲ傷ケ
ナイ程度ニ於テ、抵當證劵ノ融通ヲ圖
ルト云フ方ガ、現在ノ所デハ宜イノデ
ハナイカト考ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=26
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027・大崎清作
○大崎委員 只今ノ政府委員ノ御答
ハ詰リ現在ハ登記簿ニ依ッテ總テヲ
證明シテ居ルカラ、金融業者ノ賣買ハ
却ッテ危險ガアルカラ、不動產證劵ノ發
行ハ差控ヘタ、ソレデ現在ハ抵當權ノ
融通ノ場合ニ於ケル抵當證劵ヲ發行ス
ルノダト思ハレマスガ、此點ハ私ハ遺
憾ニ思フノデアリマス、本法ニ對シテ
斯ウ云フコトヲ論ズルノハ少シオカシ
ウゴザイマスガ、總テノ法律ヲ制定ス
ル上ニ於テモ、先程申上ゲタヤウニ、
私ハドウシテモ不動產證劵ノ方ニ於テ
ハ、不動產所有者ノ便宜ヲ圖ルノガ私
ハ趣意デハナイカト思ヒマスガ、本法
ノ趣旨ハ不動產ヲ所有スル者ノ便宜ヲ
圖ルノデナク、又借地人、借家人ノ便
宜ヲ圖ルノデナク、唯金融業者ノ便宜
ノミヲ圖ッテ居ルヤウニ思ヒマス、現在
ノ社會ノ狀態ニ於テ、一番幸福ナ地位
ニ居ラレ、又便宜ナ地位ニ居ラレルノ
ハ、私ハ金融業者デハナカラウカト思
ヒマス、金ヲ借リル人モ困ッテ居ルシ、
又借家人モ借地人モ困,テ居ル、何レモ
困ッテ居ル者ノ方ハ、之ヲホッテ置イテ、
サウシテ一番便宜ヲ得テ居ル所ノ金融
業者ノ便宜ヲ圖ルト云フ法案ハ、私
不本意デナラナイノデアリマス、政府
ノ方針ガサウ云フ方針ナラバ、是ハ意
見ノ相違ニナルカモ知レヌカラ、吾々
ハ爭フテモ仕方ガアリマセヌガ、此點
ハドウカ今少シ總テノモノヲ社會的
二又實際ノ所有者若クハ實際ノ當事
者ヲ保護スルヤウナ法案ニ、是非共シ
テ戴キタイト云フ希望ヲ私ハ持ッテ居
リマスカラ、色々ノ事ヲ質問申上ゲル
次第デアリマス
只今ノヤウニ若シ不動產所有者ノ便
宜ヲ圖ルト云フコトデアッテ、又不動產
所有者ノ金融ヲ圓滑ナラシムルト云フ
コトナラバ、寧ロ一步進ンデ地劵ノ發
行ヲ願ヒタイト云フ希望ヲ持ッテ居ル
一人デアリマス、只今ノ御話デハ、地
劵ノ發行ハ政府ノ方デハヤラナイト云
フ御話デアリマスガ、本法ノ制定ハ私
共カラ見マスレバ、ヤハリ地劵發行ノ
前提デハナカラウカト思ヒマス、足ノ
現在ノ政府當局ハ地劵發行ノ前提トシ
テ本案ヲ御制定ナサルノカドウカ、全
然地劵ト云フモノヲ發行スル意思ハナ
クテ、本法デ澤山ダト云フ御意思デア
ルカト云フ事ヲ御尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=27
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028・長島毅
○長島政府委員 地劵發行ハ、現在迄
長ク行ハレテ居リマシタ登記制度ヲ、
又ズット十數年-數十年前ノ制度ニ
戾スモノデアリマシテ、是ハ不動產制
度ノ根本的改革デアリマスカラ、只今
一寸言明致シ兼ネル次第デアリマス、
唯、御話ノアリマシタ、是ハ大藏省ノ
御答ニナル事カモ存ジマセヌガ、本法
案ハ金融業者バカリノ利益デ、所有者ノ
利益ニハナラヌデハナイカト云フ御議
論デアリマスガ、私素人的ニ考ヘマス
ト、ヤハリ所有者ガ證劵ヲ自由ニ金融
ノ目的ニ使フコトガ出來ルト云フコト
ハ一面カラ言ヘバ所有者ノ利益ニナ
リ、恰モ所有者ガ自由ニ物ヲ賣レルト
同ジク、之ヲ所有者ガ非常ニ便利ニ擔
保ニ入レ、擔保ニ入レタモノガ自由ニ
輾轉シテ行クト云フ事ニナル譯デアリ
マスカラ、サウスレバ抵當ニ取ル方モ
之ヲ相當有利ニ取ルコトニナル、結局
所有者ノ利益ニモナルヂヤナイカト私
ハ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=28
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029・大崎清作
○大崎委員 前提デナイト云フ事モ御
言明ニナリマシタカラ分リマシタガ、
然ラバ今一點御尋ヲ致シマス、詰リ土
地建物不動產ヲ所有シテ居ル者ガ、或
場合ニ必要ガ生ジテ、資金ノ融通ヲ受
ケルノデアリマス、私共ト致シマシテ
ハ別ニ惡イトハ言ヒマセヌケレドモ
個人ガ如何ナル事ヲヤラウトモ、是ハ
勝手デアリマスカラ、敢テ咎メル必要
ハアリマセヌガ、政府ト致シマシテハ
不都合ナ、社會ニ間違ッタト思フヤウ
ナコトハ成ルベクヤラセナイヤウナ法
律ニシナケレバナラナイヤウニ私ハ思
ヒマス、然ルニ本法ガ制定サレマス
ト、地所建物ヲ持ッテ居ル者ガ-自
分ノ住宅以外ニ澤山ノモノヲ所有スル
コトガマア間違ッテ居リマスガ、幾分ナ
リトモ安イ利息ノ金ヲ借リテ、サウシ
テ土地建物ヲ買ッテ、之ヲ貸付ケテ地
代家賃ヲ取ッテ其間ニ利益ヲ見ル、利
益ガアルカナイカ知ラヌガ私ハ利益ガ
アルカラヤッテ居ルモノヽヤウニ思フ
ガ、是ハ社會ノ爲ニ惡イコトデハナカ
ラウカ、自分ニ力ガアッテ、金ヲ借リナ
イデ土地建物ヲ所有シテ之ヲ安ク貸ス
ト云フナラバ、土地建物ヲ所有シ、貸
スコトノ意義ガアル、併ナガラ他カラ
金ヲ借リテ土地建物ヲ買ヲテ、之ヲ人ニ
貸付ケテ、サウシテ人カラ高イ地代ヤ
高イ家賃ヲ取ッテ人ニ不安ヲ感ゼシメ
ルコトハ間違ヲテ居ル、此間違ッテ居ル
コトヲ尙更助長セシメルノガ本法案デ
ハナカラウカト思フ、斯樣ナ間違ッタ
コトヲヤルカラ益々不安ヲ來ス、現在
百圓カ百五十圓ノ月給ヲ取フテ居ル者
ガ土地ヲ借リ、或ハ家ヲ借リテ住ンデ
居ル者ノ身ニナッテ吾々ガ考ヘテ見レ
バ能ク分ル、百圓ノ月給デ以テ十圓ナ
リ二十圓ナリノ家賃ヲ拂ヒ、或ハ地代
ヲ拂ヒ、生活費其他一切ヲ拂ッテ行ク
コトハ非常ナ苦痛ヲ感ズルコトデア
ル、ダカラ家賃ヤ地代ト云フモノハ取
ラナイコトガ社會政策ノ本義デハナカ
ラウカト思フ、ソレヲ只今申スヤウニ
間違ッテ居ルコトヲ益々助長セシムル
ヤウナ本法案ヲ政府ハ出サレタ、是
金融業者ノミガ便利ヲシテ、土地建物ノ
所有者ハ、幾分ノ便利ハアルケレドモ、
間違ッタコトヲシテ居ルト云フ點ニ於
テ、自分ヲ益々苦境ニ陷ルコトヲヤラ
セル、自分ハ金ヲ借リラ土地建物ヲ買
ヒ之ヲ人ニ貸シテアル、併シ世ノ中
ガ進ムニ隨テソレハ惡イコトデアルト
云フコトガ人々ニ分ッテ來レバ家賃地
代ノ滯納ト云フモノハ益々殖エル、隨
テ銀行ニ金ガ這入ラナイ、ソコデ銀行
ハ、只今ノ法律ニ依ルト之ヲ第三者ニ
賣ル、卽チ競賣ト云フコトニナッテ來
テ、玆ニ第三者ト借家人ト家主トノ爭
ヒニナル、其處ニ社會ノ思想ニ惡イ結
果ヲ來スト云フコトニナルノデアルカ
ラ、何カ特別ニ非常ナル必要ガナケレ
バ本法案ノ如キコトヲヤッテハイケ
ナイト思フノデアリマスケレドモ此
點ニ付テ、本法案ヲ出サレルニ付テド
ウ御考ニナルカ、私ハ解釋ニ苦シム、
デアリマスカラ、ドウシテモ本法ヲ制
定シナケレバ社會ノ不安ガ除カレナイ
ト云フ御理由ガアルナラバ、私ハ其理
由ヲ御說明願ヒタイ、サウシテ又現在
ニ於テ人カラ金ヲ借リテ土地建物ヲ
買ッテ、サウシテ之ヲ第三者ニ貸シテ利
益ヲ得ルト云フコトハ間違ッテ居ル、其
間違ヲテ居ルコトヲ助長セシメルト云
フ本案ヲ提出スル人ノ-ー政府ハドウ
云フ理由デ斯ノ如キ考ヲ持ッテ居ルカ
ト云フコトヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=29
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030・小川郷太郎
○小川政府委員 他ノ政府委員カラモ
御答ヘニナッテ居リマスカラ、私カラ答
ヘル程ノ必要ハアリマセヌケレドモ、簡
單ニ御答ヘ致シマスガ、何カ不動產所
有者ノ便宜デハナイ、金融業者ダケノ
便宜デアルト云フヤウナ御意見ノ下ニ
御質問ノヤウデアリマスケレドモ、是
ハ不動產所有者ノ便宜ニモナルト思ヒ
やっ、一體金融ト云フノハ借リル人ト
貸ス人トノ間ノ關係デアリマシテ、貸
ス人バカリノ問題デハナイノデアリマ
ス、御質問ハ貸ス人ダケノコトヲ考ヘ
テ金融ノ事ヲ御議論ニナッテ居ルヤウ
デアリマスガ、不動產金融ニ致シマシ
タ所デ、苟モ借リル人ノ方ノ便宜ヲ圖
ラウト思ヘバ、資金ガ固定セヌデ、其
時々々ニタップリシタ資金デ貸シテ貰
ヘルト云フコトニナレバ都合ノ好イ
コトニナリマス、ソレデ今抵當證劵ヲ
發行スレバ資金ガ固定シナイコトニナ
ルノデアリマスカラ、ソコニ餘裕モ出
來ル譯デスカラ、借リル人カラ言ヘバ
又都合ノ好イ事モ起ッテ來ル譯デス
ソレカラ又一旦抵當證劵デ資金ヲ得
レバ、他ノ人ナリ他ノ不動產所有者ニ
モ貸スコトガ出來ル、斯ウ云フコトニ
ナリマスカラ、借リル人ノ便宜ニモナ
ル卽チ土地不動產所有者ノ便宜ニナ
ル、土地不動產所有者ノ便宜ニナルト
云フコトハ、借家人ナリ何カ續イテノ
人ヲイヂメルト云フコトニナラヌト思
ヒマス、アナタノ前提ガ少シ違ヲテ居
ルデハナイカト思フノデアリマス
ソレカラ第二ノ問題ハ寧ロ社會制度
ニ關係致シテ、資本主義ノ社會ガイカ
ヌトシテ、社會主義ノ國家ヲ拵ヘヨウ
ト云フヤウナ考カラ御議論ガ出來テ居
ルヤウニ思フノデアリマシテ、苟モ所
有權制度ヲ認メテ居ル以上ハ、ソレノ
賣買移轉貸借ト云フモノガ自由ニ出來
ルト云フコトガ良イ事ナノデスカラ、
ソレヲ地代ヤ家賃ヲ取ラズニ置ク方ガ
宜イト斯ウ云フコトニナレバ、總テノ
土地建物ヲ國家ガ分配シテ行クト云フ
ヤウナ社會主義ノ制度ヲ認メナケレバ
ナラヌ、サウ云フコトハ出來兼ネルト
思フノデアリマス、現在ノ制度デアル
以上ハソレノ賣買移轉貸借ト云フモノ
ガ容易ニ出來テ、サウシテ金融モソレ
デ能ク出來ルト云フノガ、總テノ關係
者ニ好イト云フコトニナルト思フノデ
アリマス、現ニ今日デモ土地ノ抵當貸
付ガ六十二億ニ上ッテ居ルノハドウ云
フコトデアルカト云フニ、ソレハ金融
機關バカリガ便宜デハナイ、金融ヲ得
テ居ル所ノ土地所有者、家屋所有者其
モノガ便宜ヲ得テ居ル、其必要カラ斯
ウ云フ金融ガ起ルノデアリマスカラ、
社會主義ノ國家ヲ前提トシテノ御議論
ハ、根本的ニ違ッテ居ルト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=30
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031・荒川五郎
○荒川委員長 是デ休憩致シマシテ、
午後一時カラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=31
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032・板谷順助
○板谷委員 政府ニ參考資料ヲ色々注
文シテ置イタノデアリマスガ、私共ハ其
參考資料ガ參ラナイト質問出來マセヌ
カラ、參資考料ガ參リマスルマデ、御
延期ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=32
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033・荒川五郎
○荒川委員長 ソレデハ參考資料ニ
依ッテヾナクテハ、質問ヲ進行ノ出來ナ
イ御方モアルサウデアリマスカラ、政
府ニ於テハ成ベク速ニ參考資料ノ御提
出ヲ望ミマス、其以外ニ於テ御質問ノ
アル御方ハ、引續イテ御質問ヲ續行願
ヒタイト思フノデアリマス、隨テ一應
午後一時半カラ再開スルコトニ致シマ
シテ、休憩致シマス、左樣御承知置ヲ
願ヒマス
午後零時十一分休憩
午後一時五十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=33
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034・荒川五郎
○荒川委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=34
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035・勝田永吉
○勝田委員 此度政府カラ御提出ニナ
リマシタル本案ハ、實際時代ノ要求ニ
副ッタ洵ニ結構ナ案デアルト、私共ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、隨テ之ヲ御出
シニナリマシタ根本ノ趣旨ニ付キマシ
テハ、吾々ハ反對ノ意見トカ異存ヲ持
ツ者デアリマセヌ、唯此法案ノ全部ヲ
通ジマシテ、又此法文ノ各條項ヲ通ジ
マシテ、多少ノ疑問ガゴザイマスノデ、
此際其疑問ノ點ヲ明カニシテ置キタイ
ト思ヒマス、勿論疑問ト申シマシテモ、
全然眞ノ疑問ノ場合モアリマスシ、又
此委員ヲ通シテ此重大ナル法文ノ解釋
ヲ判明シタイ、斯ウ云フヤウナ趣旨ノ
下ニ御尋スルコトモアルノデアリマ
ス、其點ヲ豫メ申上ゲテ置キマス、尙
逐條的ノ質問デアリマストカ、特ニ大
藏大臣竝ニ司法大臣カラ御答辯ヲ願ハ
ナケレバナラヌ事項ニ付テハ、是ハ保
留致シテ置クト云フコトヲ申上ゲテ置
キマス、先ヅ最初ニ御伺致シタイノハ
此抵當證劵法ノ適用ヲ受ケマスルモノ
ハ、土地建物又ハ地上權ヲ目的トスル
抵當權、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデ
ゴザイマスガ、永小作權デアルトカ、
其他各種ノ財〓、譬ヘテ申シマスレバ鐵
道財團デアルトカ、工場財團デアルト
カ云フヤウナモノハ、此法律ノ當然ノ
結果トシテ、包含セラレナイヤウニ思
フノデアリマスガ、此點ニ付テ政府委
員ノ御見解ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=35
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036・長島毅
○長島政府委員 是ハ御尤ナ御尋デア
リマシテ、起案當時ニモ斯ウ云フモノ
ヲ抵當證劵ノ目的物トスルカドウカト
云フコトヲ、相當考ヘタノデアリマス
ガ大藏省ノ方トモ御相談ノ結果、斯
ウ云フモノヲ抵當證劵トシテ、有價證
劵化シテヤル程ノ必要ハ大シテアルマ
イト云フ御見込デアリマシタノト、ソ
レカラ私共ノ方カラ申シマシテモ、御
承知ノヤウニ工場抵當法ソレ自身ガ非
常ニムヅカシイ法規デアリマシテ、又
抵當證劵法ノ新シイ法規ヲ適用致シマ
スト云フコトニナリマスト、二ツノ複
雜シタ法規ガ相交錯致シマシテ、法律
關係ガ相當ムヅカシクナルト云フヤウ
ナ點カラ、抵當證券法ノ中カラハ今申
上ゲタコトヲ除イタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=36
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037・大久保偵次
○大久保政府委員 只今ノ勝田サンノ
御質問ニ對シテ、長島民事局長ノ御答
ニ少シ補充ヲ致シタイト思ヒマス、實
ハ起案ノ當時ニ於テ、色々ノ抵當權ニ
付テ大分問題ガ出マシタ、第一ニ永小
作權ニ付テ考ヘテ見タノデアリマスガ、
色々調ベテ見マスト、永小作權ノミヲ
抵當權トシテ居ル場合ハ極少ナイノデ
アリマス、ソレカラ地上權ノ場合モ實
ハ餘リ端的ノ例ガ少ナイヤウデアリマ
スケレドモ、建物ト共ニ抵當トスル場
合ニハ、可ナリ多カラウト云フ理由カ
ラ、地上權ハ加ヘタノデアリマス、先程
仰セノ財團トカ云フヤウナモノハ、
程如何ニモ-一寸計數ガハッキリシ
タ計數モアリマセヌケレドモ、調ベテ
見マシタ所ガ、一ト口當リノ財團ノ金
額ナドハ中々多イヤウデアリマス、平
均シテ見マスト大正元年度ハ十五萬九
千圓、大正十年度ハ三十二萬八千圓、
昭和元年度ハ五十七萬四千圓、昭和三
年度ハ百十一萬一千圓ト云フ風ニ、中
中大口ノモノデゴザイマスカラ、此案
ノ目的トシテ居ルヤウナ實行上ノ問題
カラ致シマシテ、個人ニハドウデアラ
ウカ、其他船舶等ニ付テモ色々考ヘテ
見マシタガ、要スルニ結論トシテ本制
度ハ我國ニ於テハ初メテノ制度デアリ
〒や、先ヅ必要ノ多イト思ハレル土地
建物ニ付キマシテ實施ヲシタ方ガ、此
際適當デハナカラウカ、尙ホ經驗ニ徵
シマシテ實際ニ此制度ガ運用宜シキヲ
得ルナラバ、漸次追加シテ行クト云フ
コトニ付テハ、毛頭異存ハゴザイマセ
ヌ、要ハ創設當時デアリマスカラ、成
ベク此程度デ一ツ實績ヲ徵シテ見ヤウ
ヂヤナイカト云フ趣旨デアルノデアリ
マスカラ、一寸補充致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=37
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038・勝田永吉
○勝田委員 只今ノ御答辯ノ御趣旨ハ
能ク分リマシタガ、尙ホ其點ニ關聯致
シマシテ御確メ致シテ置キタイノデア
リマスガ、工場抵當法ノ第二條第三條
デアリマスカ、工場ニ附加シテ一體ヲ
成成シタルモノハ、抵當權ノ目的物ニナッ
テ居ルヤウデアリマス、アノ規定ノ適
用ヲ受ケマスモノハ此本抵當證劵法ノ
第一條ノ適用ヲ受ケル範圍內デアルヤ
ウニ考ヘテ居リマスガッ如何デアリマ
スカ、此點ヲ明ニシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=38
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039・長島毅
○長島政府委員 能ク〓究ヲ致シテ居
リマセヌノデ分リマセヌガ、大體ハ私
モサウ云フ風ニ思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=39
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040・勝田永吉
○勝田委員 若シ左樣デアリマスレ
バ、私ハ豫メ政府ニ對シマシテ參考書
ノ提出ヲ求メテ居リマス意味ニ於テ、
例ノ抵當證劵ノ書式ヲ御示ヲ願ヒタイ
ト思ッテ居リマスガ、普通ノ抵當權デゴ
ザイマスト、比較的簡單ニ抵當證劵ナ
ルモノハ作リ得ルト思ヒマス、若シ只
今政府委員ノ御答ヘニナルヤウナモノ
マデモ包含致シマスト、斯ウ云フコトニ
ナリマスト是ガ法律ノ規定ノ解釋カ
ラ申シマスレバ正シイコトデアリマス
ガ、サウ云フコトニナリマスト、此抵
當證劵ノ作製ト云フモノガ、非常ニ複
雜ニナッテ來ハシナイカ、少クトモ此
證劵面ニ現ハレマス文字ノ數カラ申シ
マシテモ、非常ニヤヽコシクナッテ來
ルヤウニ思フノデアリマス、勿論御如
才ナイコトト信ジマスガ、サウ云フヤ
ウナ點モ十分ニ御參考下サイマシテ、
抵當證劵其ノモノヲ御作リ願ヒタイ、
斯樣ニ考ヘテ居ル者デアリマス
ソレカラ次ニ矢張根本的ノ問題デゴ
ザイマスガ、抵當證劵ヲ發行致スニ付
キマシテノ原因-證書デアリマス、
是ハ規定ニ依リマスト「手形其ノ他ノ
債權ニ關スル證書」ト云フヤウナコト
ガ第三條ノ三ニ書イテゴザイマス、抵當
證劵ハ私ガ申スマデモナク、若シ此制
度ガ行ハレマスレバ一種ノ有價證劵同
樣ノ效用ヲ發揮スルモノデアラウト思
フノデアリマス、例ヘバ有價證劵デア
ルトカ、株式引替證デアルトカ、形式
ハ多少違ヒマスガ、サウ云フヤウナモ
ノハ同ジヤウニ經濟的效果ヲ持ツモノ
ト思ヒマス、然ルニ此原因ガ手形其他
ノ證書ト云フコトデ、相當不正確デア
リマスト、根本ニ爭ガ起ッタ結果、折角
流通シテ居リマス所ノ抵當證劵ノ基礎
ニ動搖ヲ與ヘ、隨テ流通ガ甚ダ面白ク
ナイヤウナコトニナルコトヲ心配致シ
マス、寧ロ私ハモウ少シ明確ナル證書、
例ヘバ公正證書ヲ以テ契約シテ居ルモ
ノニ限ッテ、抵當證劵ヲ發行セシムルト
云フヤウナコトニシタ方ガ宜シイヤウ
ニ思ヒマスガ、此點ニ對スル政府ノ御
意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=40
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041・長島毅
○長島政府委員 第一ノコトハ御質問
デハナイヤウニ思ヒマスガ、念ノ爲ニ
一寸申上ゲテ置キタイト思ヒマス、何
レ抵當證劵ノ書式ハ、明日デモ早速差
出ス積リデ居リマスケレドモ、此書式
ハ省令カ訓示カ何カノヤウナモノデ定
メル積リデアリマスガ、今的確ノモノ
ハゴザイマセヌガ、少クトモ此法案ノ
設定當時ニ豫期シテ居リマシタコト
ハ例ヘバ土地ノ表示ニシマシテモ非
常ニ澤山ノ場合ガ想像サレマスノデ、
小サナ證劵面ニハ書キ切レナイヤウナ
コトガゴザイマス、サウ云フトキニハ
目錄カ何カ附ケテ表示スルト云フ考デ
ゴザイマスカラ、工場抵當法第二條ノ
關係ニ於テモ、御趣旨ニ副フヤウナコ
トガ大體出來ルト考ヘテ居リマス
ソレカラ第二ノ問ハ、是ハ債權者ノ
便宜ヲ考ヘマスカ、債務者ノ便宜ヲ考
ヘマスカト云フ二ツノ問題デアリマシ
テ、此權衡問題ガ常ニ本法ヲ支配シテ
居ルノデアリマス、抵當證劵ノ發行ヲ
要求スル債權者側、竝ニ此所持人ノ利
益ヲ保護スルカ、債務者ノ利益ヲ保護
スルカト云フ點ハ非常ニムヅカシイ點
デアリマス、此點ニ付テハ債務者ノ利
益モ相當保護シナケレバナラヌト云フ
所カラ、異議ノ申立權ト云フモノヲ認
メマシテ、一定ノ期間ニ異議ヲ申出ス、
異議ヲ申出サナケレバ打切リニシラ抵
當證劵ヲ出ス、其代リニ債務者ガ其後
ニ於テハ善意ノ抵當證劵ノ取得者ニハ
對抗スルコトガ出來ナイト云フコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、ソコデ異議權
ト云フモノヲ債務者ニ認メテ居リマス
ノデ、相當債務者ノ利益ト云フモノハ
是デ保護サレ、又半面ニ於テハソレニ
依テ抗辯ヲ打切ルト云フコトガ出來ル
ダラウト云フヤウナ考カラ、此三ノ債
權ニ關スル證書ト云フ方ニハ、餘リニ
非常ナ制限ヲ置カナイコトニ致シタ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=41
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042・勝田永吉
○勝田委員 次ニ御伺ヒ致シタイ點
ハ、是ハ本會議デモ確カ政府委員ガ御
答辯ニナッテ居ルヤウデアリマスガ、御
答辯ノ御趣旨ヲ今一應明確ニシタイト
思ヒマス、ソレハ此法律案ヲ拜見致シ
マスト、一個ノ債權ニ對シテ一個ノ證
劵ガ發行サレルコトニ相成ッテ居ルト
思ヒマスガ、左樣デゴガイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=42
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043・長島毅
○長島政府委員 御問ヒノ通リデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=43
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044・勝田永吉
○勝田委員 サウ致シマスト、若モ當
事者間ニ於キマシテ合意上抵當證劵ヲ
二通ニシテ吳レトカ、三通ニシテ吳レ
トカ云フヤウナ場合ガアリマシテモ、
ソレハ出來得ナイコトニナリマセウ
ガ本議場ニ於ケル政府委員ノ御答辯
ハ其點ニ付キマシテ、何ダカ出來ル
ヤウニ聽イテ居ッタノデゴザイマスガ
其點ヲ一ツ明確ニドチラデモ宜シウゴ
ザイマスガ、明確ニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=44
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045・長島毅
○長島政府委員 或ハ本議場デ御答致
シタ言葉ガ足リナカッタカモ知レマセ
ヌガ詰リ登記ノ上デ一ツノ抵當權、
一ツノ債權ニナッテ居リマスレバドウ
シテモ是ハ抵當證劵ハ一ツニナルノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ、抵當
證劵ヲ若シ二ツニ分ケタイト云フヤウ
ナコトニナリマスト、利害關係人ノ同
意ヲ得マシテ、登記ノ上カラ分ケテ來
ナケレバ、抵當證劵ハ二枚ニナリマセ
ヌ、併ナガラ今申シマシタヤウナ次第
デアリマスカラ、抵當證劵ヲ二ツニ分
ケルト云フ手段ガ絕對ニナイ譯デハア
リマセヌガ、相當手續ガ面倒ニナル譯
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=45
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046・勝田永吉
○勝田委員 ソレデ能ク分リマシタ、
結局ソレデ見ルト、一箇ノ債權ニ付テ
一箇ノ抵當證劵ト云フヤウニナルト考
ヘマス、是ハ成程理窟カラ申セバソレ
デ宜イノデゴザイマセウ、又其方ガ總
テノ點ニ於テ便利ダラウト考ヘマス
ガ、一方經濟的方面カラ考ヘル時、只
今仰シヤッタヤウナ登記カラ分ケルノ
デナク登記ハヤハリ其儘ニシテ置イ
テ、一箇ノ抵當權ニ付テ二枚三枚ノ抵
當證劵ヲ發行セラレルヤウナ方法ガナ
イモノデアラウカ、ドウカ、斯ウ云フ
コトヲ一ツ御考ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、是ハ質問ト申シマスカ、希望ト申
シマスカ分リマセヌガ、サウ云フコト
ハ出來ナイモノデセウカ、御考ヘ下サッ
テ居ルノデセウカ、其點ニ付キマシテ
伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=46
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047・長島毅
○長島政府委員 是ハ實ハ不動產ノ法
制ニ關スル根本的ノ問題デアリマス
ガ、兎ニ角此案ハ前ニ申シタヤウニ、
登記制度ト云フモノヲ全然捨テナイ
デ、抵當權ダケニ付テ抵當證劵ヲ出ス
ト云フ主義ヲ執ッタモノデアリマスカ
ラ、結局ハ、ドコマデモ登記簿ト抵當
權ト云フモノガ一致シナケレバナラヌ
ト云フ主義ヲ執ッタノデアリマス、ソコ
デ例ヘバ十六條デアリマスガ、抵當證
劵ヲ發行シタ時ニハ、抵當權ノ變更ト
云フモノハ、不動產登記簿ノ定ムル所
デ、先ヅ變更ノ登記ヲシ、ニ而シテ抵當
證劵ノ記載ヲ變更シナケレバ、第三者
ニ對抗スルコトガ出來ナイト云フヤウ
ナコトニシテ詰リ元ニナルノハ登記簿
デ、ソレニ基イテ抵當證劵ガ出ル、唯ミ
其點ハ裏書ニ依ッテ出來ルト云フ主義
ヲ執リマシタモノデアリマスカラ、抵
當證劵ヲ分ケルト云フコトニナレバ、
ドウシテモ元ノ登記簿ハ分ケテ來テ吳
レナケレバ困ルト云フ主義デ出來タノ
デアリマス、是ハ非常ナ根本問題デア
リマシテ、詰リ不動產ノ法制ニ付テ登
記制度ト云フモノヲ根本的ニ取換ヘレ
バ又別デアリマスガ、先ヅ現在ノ所デ
ハ、現狀ニ卽シテ此位ガ宜カラウト云
フノデ、斯ウ云フ風ニ致シタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=47
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048・勝田永吉
○勝田委員 次ニ伺ヒマスノハ、午前
ニ板谷君カラ御質問ニナリマシタ點ニ
關聯スルモノデ、此抵當證劵ハ其所持
人ガ支拂ヲ受ケマセヌトキニハ手形
ナドヽ違ッテ直チニ裏書人ニ請求ガ出
來ナイコトニナッテ居リマシテ、ヤハリ
競賣ヲ致シマシテ、代金ニ不足ガアッタ
場合ニ、請求ヲスルコトニナッテ居ルノ
デアリマス、ヤハリ是ハ手形ノヤウニ
モウ一步此抵當證劵ノ效力ヲ强メル、
卽チ此法律ノ狙ッテ居ル所ヲモウ少シ
ハッキリセシメル意味ニ於キマシテ、
手形ト同樣ニ直ニ裏書人ニ對シテ償還
ノ請求ヲスルコトガ出來ナイノデアリ
マスカラ、ソレニ對スル當局ノ明解ナ
ル御答辯ヲ、利害ノ得失ノ上カラ伺ッテ
置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=48
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049・長島毅
○長島政府委員 償還請求ト云フコト
ハ裏書人ニハ利害關係ノ相當ニ重大ナ
モノデ、是ハ申上ゲルマデモナイ、御
承知ノ如クニ手形ニ付テモ、手形ノ呈
示期間ナドガ非常ニ嚴格ナ短イ期間ニ
ナッテ居リマスシ、又拒絶證書ノ作成
等色々嚴格ナル手續ガアリマシテ、之
ヲ出サナイナラバ償還請求ガ出來ナイ
ヤウニナッテ居リマス、是ハ御承知ノ通
リニ償還ヲ受ケル者ノ方面カラシテ、
手形ナドモ隨分考慮致シテ居ルノデア
リマス、償還請求ヲ受ケルコトソレ自
身ガ、非常ニ、何ト言ヒマスカ、商取
引的ニ冷酷ニ出來テ居リマスカラ、其
結果ハ償還請求ヲスル前ノ手續ニ付テ
ハヤハリ手形ナドモ相當ニ嚴格ナ手
續ヲ、一方ニ於テハ設ケテ居ル次第デ
アリマス、抵當證劵ニ付テハ、少ク共
抵當ガ附イテ居ル所ノ證劵デアリマシ
テ、裏書人ハドコマデモ抵當權附ノ債
權ヲ裏書シテ補塡シテ行クト云フ考デ
アル、抵當權ト云フモノニ付テ自分ガ
裏書ヲ受ケル時ニ、ソレヲ當テニシテ
裏書ヲ受ケテ居リマスカラ、自分ガ償
還ヲ受ケル時ニモ、少ク共抵當權ノ範
圍ニ於テハ自分ノ責任ガ輕イモノデア
ルト云フコトヲ豫期シテ居ルモノト見
ルノガ宜イプデハナイカト思フノデア
リマス、サウ云フ次第デアリマスカラ、
所持人ノ側カラ言ヘバ多少不便デアリ
マスシ、又抵當證劵ノ流通性ト云フ所
カラ申スト聊カ不便ノ點ガアリマス
ガ裏書人ノ利益、又自分ガ裏書ヲ受
ケ、裏書ヲスル時ノ心持カラ申スト、
矢張抵當權ヲ取ッテ居ル者トシテノ考
ヲ、相當見ナケレバナラヌヤウニ思フ
ノデアリマス、實ハ白狀シマスト、此程
度デモ非常ニ債券的ノ色彩ガ多クナツ
テ、ドウモ抵當附ト云フ色彩ガ多少少
イヤウニ思ハレルノデアリマスガ、仰
セノ如ク致スト、殆ド抵當證劵ト云フ
名前ガナクナッテシマフノデ、此程度ノ
コトハ已ムヲ得ナイカト思ッテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=49
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050・勝田永吉
○勝田委員 私モ左樣ニ考ヘルノデア
リマス、隨ッテ此抵當證劵ノ狙ッテ居ル
所ガ、ドウモ手形的デアルト考ヘマシ
タカラ、サウ云フ御問ヲシタ譯デアリ
マス
次ニ御尋シタイノハ、此法律ニ依ル
ト此抵當證劵ハ一番抵當權ノミナラズ、
二番三番ノ抵當權ニ付テモ發行セラレ
ルコトニ相成ッテ居リマス、實際ノ作用
カラ申シテ、二番抵當權、三番抵當權
ヲ以テ抵當證劵ヲ發行セラレルヤウナ
コトハ、或ハ少ウゴザイマセウ、併ナ
ガラ法律ノ建前カラ矢張左樣ニ相成。ツ
テ居リマス、又理窟上カラスレバソ
レガ當然デアルト思ヒマスガ、理窟ハ
理窟トシテ、此法律ハ經濟的ノ效用ト
云フ所ニ重キヲ置カナケレバナラヌ、
ソコデ先程償還請求ト云フヤウナ問題
モ出テ來タノデアリマスガ、此抵當證
劵ノ經濟的ノ效用ヲ强ク明確ニセシメ
ル爲ニハ寧ロ二番三番ト云フヤウナ
價値ノ頗ル不安定デアル抵當權ニ對シ
テ、證劵ヲ發行セシムルト云フヤウナ
コトガ、抵當證劵ノ經濟的效用ヲ少カ
ラシメル所以デハナイカト考ヘルノデ
アリマスガ、其點ニ關スル政府當局ノ
御說明ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=50
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051・長島毅
○長島政府委員 實ハ前ニモ申シタヤ
ウニ、裏書人ニ償還ノ義務ガゴザイマ
スノデ、假ニ第一ノ裏書人ガ非常ニ信
用アル銀行デアレバ、二番抵當權ノ抵
當證劵ガ出タヤウナ場合デモ、恐クハ
其信用アル銀行ガ二番抵當ニ餘リガア
ルカドウカト云フヤウナコトヲ十分ニ
調査シテ、之ヲ取ルモノト見ナケレバ
ナラヌノデアリマス、其銀行ガ裏書ヲ
スレバ、結局自分ヘ償還ガ來ルノデア
リマスカラ、信用ノアル銀行ガ第二ノ
裏書ヲスル時ニハ、之ヲ十分調査シテ
致スコトヽ思フノデアリマス、前ニ御
斷リシタヤウニ、此法律ハ一方ニ於テ
ハ抵當權、他方ニ於テハ裏書人ノ信用
ト云フコトヽ兩者相俟ッテ居ルノデア
リマスカラ、場合ニ依ッテハ二番抵當權
ノヤウナモノニ付テモ、抵當證劵ガ出
テ、ソレガ完全ニ流通スルト云フヤウ
ナコトモアリ得ルコトヽ存ジマス、勿
論仰セノヤウニ非常ニ異例デアルカモ
知レマセヌガ、絕無デハナイノデアリ
やす、特ニ此法律ニ付テ、二番三番ノ
抵當ニ付テ、抵當證劵ノ發行ヲ除外ス
ルマデノ必要ハナカラウト云フノデ、
設ケタ次第デアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=51
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052・勝田永吉
○勝田委員 次ニ御伺致シタイ點ハ
多少問題ヲ離レルノデゴザイマスガ
斯ウ云フコトヲ一ツ-是ハ大藏當局
ノ方ニ御伺スルノデスガ、此抵當證劵
ノ目的ニナッテ居リマス不動產ニ對シ
マス租稅、公課、是ガ相當ノ御斟酌ヲ
給ハルベキ事項デハナイカト思フノデ
アリマス、例ヘバ抵當證劵ヲ持ヲテ居
リマス人ハ、是ハドン〓〓抵當證劵デ
アルト云フノデ安心シテ買ッテ居リマ
ス、不動產ノ價格ヲ其儘ニ見テ買ッテ
居リマス、所ガソレニハ租稅公課ガ澤
山課カッテ居リマシテ、結局競賣シテシ
マヒマスト餘リ澤山殘ラナイ、斯ウ云
フヤウナコトニナル事例ガアルノデア
リマス、無論現在デモアルノデアリマ
スガ、併ナガラ抵當證劵ヲ發行セラレ
マシテ、證劵ガ流通セラレルト云フコ
トニナリマスト、斯ウ云フヤウナ點ニ
付テモ抵當證劵ノ流通性ヲ力强クセシ
ムル爲ニハ稅法ノ上ニ於テ御考慮願
ハナケレバナラヌ點デハナイカト思ヒ
やべ、例ヘバ抵當證劵ヲ發行セラレマ
シタル不動產ニ付キマシテノ、所謂國
稅ニ付キマシテハ其不動產其物ニ關係
ノアル稅金以外ノモノハ課ケナイト
カ、何トカ云フコトニ依リマシテ、多
少ノ制限ヲソコニ加ヘテ行クト云フコ
トハ、理窟ヲ拔キト致シマシテ不動產
證劵ヲ圓滿ニ流通セシムル上ニ於テ、
相當必要ダラウト思ヒマスガ、之ニ付
キマシテ大藏當局ハ相當御考下サッタ
ノデアリマスカ、ソレトモ何等御考慮
ハナカッタノデアリマスカ、伺ヒタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=52
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053・小川郷太郎
○小川政府委員 租稅公課ノ問題ハ、
全然別問題デアリマスカラ、抵當證劵
ヲ發行スルガ故ニ、租稅ヲ輕クスルト
カ何トカ云フコトハ起ッテ來ナイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=53
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054・勝田永吉
○勝田委員 私ハサウ云フコトヲ伺ツ
タノデハゴザイマセヌ、別問題デアル
コトハ百モ承知シテ居リマス、苟モ抵
當證劵ヲ出シテ、不動產證劵ノ流通ヲ
圓滿ニスルト云フ御意思ガアル以上
ハ、租稅ノ方デ抑ヘラレテシマッテ、抵
當證劵ニアル不動產ガ一番抵當デアル
ト思ッテ居ッタ所ガ、豈圖ランヤ租稅ノ
爲ニ二番抵當ニナッタ、斯ウ云フコトデ
アリマスト、抵當證劵ノ經濟的ノ效用
ハ脅サレルノデアリマス、恐ラクハ此
法律ハ司法省ガ法文上ノ責任ヲ持ッテ
居ラレルノデゴザイマセウガ、此法律ヲ
御作リニナル根本ノ趣旨ハ、大藏省ノ
方カラ出タト云フコトハ、參考資料ヲ
頂戴シテ明ニナッテ居リマス、大藏省ガ
斯ウ云フ法律ガ必要デアル、抵當證劵
ヲ流通セシメテ日本ノ不動產金融ヲ圓
滿ニスルノデアル、大キク申シマスト
現在ノ行詰ッテ居ル經濟界ヲ緩和スル
モノデアルト云フ御趣旨デ御出發ニナ
ッタ以上ハ、此位ノ親切サガアッテモ宜
カラウヂヤナイカト云フコトデ、質問
致シタノデアリマスガ、只今ノ政府委
員ノ御答辯ハ、私ノ質問シマシタ點ト
多少違ッテ居リマスカラ、ドウカ其趣
旨ニ於テ御答辯願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=54
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055・小川郷太郎
○小川政府委員 私ノ答辯致シマシタ
ノハ、其抵當證劵ヲ發行シタ爲ニ、他
ノ方面ニ於テ租稅ヲ輕クスルト云フヤ
ウナコトハ出來ナイト申シマシタノデ
アリマスガ、丁度此委員會ニ付託セラ
レテ居リマスル國稅徴收方法改正法律
案ハ、午前中ニ說明シタヤウナ風デ、
抵當證劵ヲ發行シマスニ付キマシテ、國
稅徵收法中第二十八條ニ一項ヲ加ヘテ
「賣却シタル物件抵當證劵ヲ發行シタ
ル抵當權ノ目的物ニシテ、第二條ノ證
明ヲ爲スベキ抵當證劵所持人分明ナラ
ザル場合ニ於テ其ノ代金ヨリ督促手數
料、延滯金及滯納處分費ヲ徵シタル殘
額ガ債權者ニ交付スベキ債務額及徵收
スベキ稅金ニ充タサルトキハ其ノ抵
當證劵所持人ニ交付スベキ金額ハ之ヲ
保管ス」ト、サウ云フ風ナ改正ヲ加ヘマ
シテ、ソコニ一ツノ緩和ヲシヨウト考
ヘテ居ルノデアリマシテ、今御質問點
ガ玆ニアルナラバ、丁度此處ニサウ云
フ改正ヲ加ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=55
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056・勝田永吉
○勝田委員 ソレハアルコトハ分ッテ
居リマス、分ッテ居リマスカラ、コヽマ
デ御心配ニナッテ居ルノデアルカラ、私
ハ更ニ申シタノデ、大藏當局ト致シマ
シテハ、此抵當證劵法ヲ御出シニナル
ニ付テハ、國稅ノ方面マデモ御心配ニ
ナッテ居ル、ダカラ尙ホモウ少シ進ン
デ、稅ノ徵收ノ及ブ範圍、卽チ具體的
ニ申シマスレバ、不動產ニ付キマシテ
色々ノ稅金ガ課カル、吾々ハ思ハナイ
所ノ稅金ノ爲ニ抵當權ヲ脅カサレルコ
トガアル、寧ロ不動產其物ニ直接關係
アル稅金以外ノ稅金ハ、不動產ニ及バ
ナイト云フ位ノ、强イ保護ヲ與ヘラレ
ルカドウカ、サウ云フコトニ付テ御考
ニナッタコトガアルカドウカト云フ質
問デ、只今ノ御趣旨ハ分ッテ居リマス
ガ、サウ云フ御趣旨デ御答ヲ願ヒマ
ス、ナケレバナイデ宜イノデスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=56
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057・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレハヤハリ私ガ初
メニ答ヘタ分ニ屬シテ居リマシテ、別
ナ問題ニナリハセヌカト思フ、其邊ハ
稅金ト云フコトニナルト、別ニ考慮シ
ナケレバナラヌカラ、其點ハチヨット
ドウモ出來ナイト申上ゲルヨリホカ、
仕方ガナイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=57
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058・勝田永吉
○勝田委員 御考慮下サッテ居レバ結
構デスガ、全然問題ニナッタカナラナ
イカト云フコトヲ伺ッテ居ル次第デア
リマシテ······ソレデハ宜シウゴザイマ
ス-ソレカラ大臣ハ此委員會ニ御出
席ニナルノデゴザイマスカ、別ニ私ハ
要求スル譯デハアリマセヌガ、此根本
ニ付キマシテ御伺ヒシタイノデアリマ
ス-ソレデハ私ハ大臣ニ對スル質問
ト各條文其モノニ對スル逐條的ノ質
問ヲ留保致シマシテ、此程度デ質問ヲ
打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=58
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059・藍川清成
○藍川委員 私モ逐條的ニ色々御伺ヒ
シタイ點ガアリマスガ、取敢ズ一二伺
ヒタイノハ、大體此抵當證劵法案ハ時
宜ニ適シタル法案デ、大イニ結構トハ
存ジテ居リマスガ、抵當權ノ消滅ヲシ
タニ拘ラズ、尙ホ此讓渡人ノ輾轉スル
場合ガアルガ、ヤハリサウ云フ事實ヲ
御認メニナッテ居リマスカ、或ハサウ
云フ場合ニハ流通ヲ止メルヤウナコト
ニナッテ居リマスカ、第一ニソレヲ御伺
ヒ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=59
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060・長島毅
○長島政府委員 抵當證劵ガ流通中ニ
抵當物ガ滅失スルト云フ場合ハ、想像
致シテ居リマス、卽チ普通ノ場合ニハ
抵當物ガゴザイマスカラ、最後ノ所持
人ガ抵當物ヲ競賣致シマシテ、其殘リ
ノ金ヲ裏書人ニ請求ニ參リマスガ抵
當物ガ全然無クナッテシマッテ居ル場合
ニハ競賣ハ出來マセヌカラ、競賣致
シマセヌデ、其全額ニ付テ裏書人ニ償
還ノ請求ガ出來ルヤウニナッテ居リマ
ス、卽チ之ニ付テハ抵當證劵法ノ三十
二條デ、サウ云フ規定ヲ設ケテアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=60
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061・藍川清成
○藍川委員 兎ニ角此證劵ハ手形同樣
ノ作用ヲ爲スモノデアリマスガ、或ル
心理カラ言ヘバ、旣ニ抵當權其モノハ
消滅シテ居ルノニ、裏書人ガ輾轉スルノ
二、尙ホ責任ヲ負ハナケレバナラヌト
云フノハ、少シ理窟上如何カト思フノ
デアリマス、旣ニ權利ハ消滅シテ抵當
權其モノハ-例ヘバ建物ガ消滅シテ
シマッタ、ソレヲ讓渡人ハ知ラナイノミ
ナラズ、其事實ヲ知ラズシテ、段々甲
カラ乙、乙カラ丙ニ變ルト云フコトハ
非常ニ是ハ不理窟ノヤウニ考ヘマス
ガ、何カサウ云フ時ニハ告示カ何カ
ノ方法ニ於テ、此證劵ノ流通ヲ止メル
ト云フ工風ヲ設ケラレタ方ガ宜クハナ
イカト、斯ウ考ヘマスガ、其點ハ如何
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=61
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062・長島毅
○長島政府委員 結局此抵當物ガ無ク
ナリマシタ時ニ、誰ガ其損失ヲ負擔ス
ルカト云フ問題ニナル譯デアリマス
ガ、御說ノ如クニ最後ノ抵當證劵ノ所
持人ガ、其損失ヲ負擔スルト云フノモ
其一ツデアリマスガ、本法ニ於テハ抵
當證劵ノ流通ヲ成ベク圓滑ニスルト云
フ意味カラ、其證劵ガ無クナリマシタ
場合ニ於テモ、裏書人ガ其責任ヲ負フ
ト云フ主義ヲ執リマシタ、是ハ結局抵
當證劵ノ圓滑ナル流通ヲ欲スル爲メデ
アリマス、尙ホ斯ノ如キ場合ニ於テハ
證劵ノ流通ヲ止メルヤウナ方法ヲ講ジ
タラドウカト云フ御說デアリマスガ、
中々此證劵ノ流通ヲ止メルト云フコト
ハ困難ナ問題デアリマス、證劵ノ所持
人ガ現ニ分ッテ居ル場合ニハ宜シウゴ
ザイマスガ、分ヲテ居ラナイ場合ニハ
公告ナドデ止メルト申シテモ、御承知
ノ如クニ公〓ト云ヲヤウナモノハ、
際ハ甚ダ利キ目ノ無イモノデアリマシ
テ、抵當證劵ノ取引ヲシテ居ル者ハ、
常ニ此公告ヲ見ルト云フナウナコトニ
ハ參リマセヌモノデスカラ、證劵ノ無
クナリマシタ場合ノ再下付ノヤウナ已
ムヲ得ナイ場合ニハ、公示催〓ノ手續
ヲ用ヒテ居リマスガ、其外ノ場合ニハ
サウ云フ規定ヲ置キマスト、却ッテ抵當
證劵ノ流通ヲ害シテ、取引ノ安全ヲ害
スルト云フ所カラ、其制度ヲ用ヰズヤ
メタ次第デアリマス、抵當證劵ノ流通
ヲ圓滑ナラシメルト云フ趣旨カラ、多
少ノ犠牲ト云ヒマスカ、損失ノ負擔者
ニ多少苛酷ナル結果ニナルコトヲ忍ン
ダ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=62
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063・藍川清成
○藍川委員 サウ致シマスト、ヤハリ
是ハ融通性ノ方ニ重キヲ置カレタモノ
ト考ヘマス、ソレデ色々問題ガ起リマ
スガ、例ヘバ未成年者ノ行爲デ之ヲ
取消ス場合ニ、裏書人ニ對シテ手形法
ノ如ク扱ッテ差支ナイコトニナリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=63
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064・長島毅
○長島政府委員 其場合ニハ大體-
-ト云ヒマスカ、殆ド全部手形法ト同
ジ扱ヒニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=64
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065・藍川清成
○藍川委員 尙伺ヒマスガ、此證劵法
ノ中ニ「請求」云々ト云フ文字ガアル、
又二十七條ニハ公證人又ハ執達吏ガ支
拂ナキ旨ノ證明ヲスルト云フヤウナ條
實項モアルヤウデスガ、此「請求」ト云
フコトハ、呈示請求ト云フモノニ對ス
ルノデスカ、或ハ又普通ノ言葉ノ詰求
デ差支ナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=65
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066・長島毅
○長島政府委員 ソレハ手形ノヤウニ
呈示請求デアリマス、御承知ノ通リ指
圖債劵デアリマスカラ、呈示請求デア
リマシテ、今一寸條文ヲ擧ゲルニ困難
デアリマスガ、呈示請求デアルト云フ
コトニハ、商法ノ規定モ準用致スノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=66
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067・藍川清成
○藍川委員 此證劵法案ニ依リマシ
テ.賣買ト質權ノ設定ト兩方出來ルヤ
ウニ考ヘテ居リマス、賣買ノ方ハ普通
ノ手形ノ裏書ノ如ク致スヤウニ考ヘテ
居リマスガ、質權ノ設定ノ場合ハ手形
法ニ類スルヤウナ文字ヲ書イテ、質權
ノ設定ト云フコトヲ明カニ致シマス
カ、或ハドウ云フ方法ニ依ッテ證劵ニ
對スル質權ナリヤ否ヤト云フコトヲ見
分ケルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=67
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068・長島毅
○長島政府委員 其點ハ實ハ私共ノ方
デモ、成ベクナラバ質入裏書ト云フモ
ノヲ認メヨウト思ッテ、法文ノ中ニ一度
入レ掛ケタノデアリマスガ、是ハ一方
ニ於テハ抵當權ト云フ物權ノ關係モア
リマスルシ、他方ニ於テハ債劵ノ關係
上立法技術ノ上カラ非常ニ困難ナ問題
ニ逢著シマシテ、結局普通ノ信託的ノ
ヤハリ讓渡裏書ヲシテ質權ヲ設定スル
方法ニ依ル外仕方ガナイト云フコトニ
ナッタノデアリマス、御承知ノ如ク現在
ノ手形デモ質入裏書ト云フコトニ付キ
マシテハ只單純ノ裏書デ質ニ入レテ
居リマス次第デゴザイマスカラ、ソレ
トヤハリ振合ヲ同ジニスル外仕樣ガナ
カラウ、結局ハ質權設定者ガ質取主ヲ
信用シテヤルヨリ仕方ガナイト云フコ
トニ、落付イタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=68
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069・荒川五郎
○荒川委員長 今日ハ此程度ニ措キマ
シテ、明日ハ午前十時ヨリ開會致シマ
ス、是デ散會致シマス
午後二時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00219310223&spkNum=69
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